トランプ(その55)(第二次トランプ政権はどこへ向かうのか?、ハリス氏惨敗の背景に「アメリカ中流階級の生活苦の悲鳴」が聞こえる、「圧勝」トランプの「経済政策」で日本の自動車メーカーは大打撃…!そしてアメリカ国民を待ち受ける、まさかの「悲惨な末路」)
トランプについては、本年10月22日に取上げた。今日は、(その55)(第二次トランプ政権はどこへ向かうのか?、ハリス氏惨敗の背景に「アメリカ中流階級の生活苦の悲鳴」が聞こえる、「圧勝」トランプの「経済政策」で日本の自動車メーカーは大打撃…!そしてアメリカ国民を待ち受ける、まさかの「悲惨な末路」)である。
先ずは、11月7日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家の冷泉彰彦氏による「第二次トランプ政権はどこへ向かうのか?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2024/11/post-1373_1.php
・『<実業家のマスクや実務家のバンスといった天才級の頭脳を周囲に置いた二期目は、現実的な保守路線へと帰結するのでは> 米大統領選の結果が判明しました。投票日の深夜から翌日未明にかけて当確が出るというのは、2016年以前に戻ったようでもありますが、とにかく混乱した2020年と比べると、画期的な改善を見たと思います。共和党が前回は否定していた期日前投票、郵送投票を認めて積極的に投票を促したことに加えて、これを受けて各州の選管が作業の前倒しを徹底するなど、事務方の努力が実ったわけです。選挙結果の信頼性も含めて、民主主義は機能したとも言えます。 それはともかく、一度落選して退任した大統領が再び当選して就任するというのは、1892年に民主党のグローバー・クリーブランドが2度目の当選をして以来となります。この時も、雇用と関税をめぐるバトルが激しく、労働者の利害を代表して大企業を批判したことで、クリーブランドは返り咲きを果たしました。それから132年後の今回は、グローバル経済を推進する民主党に対して、自国ファーストを掲げて「現状不満層」の結集に成功したのが共和党のトランプ氏ということで、アメリカの対立軸は1世紀半を経て大きく入れ替わったことを示しています。 トランプ氏の勝因は、とにかく経済問題が主だと思います。物価への強い不満、雇用への強い不安が巨大なエネルギーとなって現状批判のモメンタムを作り出しました。2016年の勝利が価値観やカルチャーの戦いだったとすれば、今回は経済の現状への不信任というのが主だと思います。 それはともかく、高齢で再選へ向けた候補から降りたバイデン大統領と、大統領を目指して落選したハリス副大統領の求心力は、これで雲散霧消することになりました。事実上、この11月6日からは共和党による次期政権、つまり第二次トランプ政権が動き出すという理解をして良いと思います』、「トランプ氏の勝因は、とにかく経済問題が主だと思います。物価への強い不満、雇用への強い不安が巨大なエネルギーとなって現状批判のモメンタムを作り出しました。2016年の勝利が価値観やカルチャーの戦いだったとすれば、今回は経済の現状への不信任というのが主だと思います」、なるほど。
・『マスク、バンスという天才級頭脳 では、この第二次政権はどんな姿になっていくのか、まず指摘できるのは第一次政権とは本質が異なるということです。もちろん、反移民、反多様性といった保守カルチャーについては変わらないと思いますが、その他では大きく3点が異なります。 1点目は、政権の陣容です。一期目の場合は、トランプ氏の周囲にはスチーブン・バノン氏のような「ポピュリズム発信の試行錯誤」をするグループがありました。一方で、歴代の補佐官や長女イバンカ氏夫妻などは、これとは別に「現実の政治」との橋渡しをしていました。 トランプ氏は、時にバノン氏などと相談して過激発言をしたり、わざとツイートを炎上させたりして求心力を維持。それが行き過ぎると、イバンカ夫妻やホワイトハウス官僚の言うことを聞いて、常識的な政策を行うなどの振幅がありました。 ところが、今回の陣容は異なります。まず、トランプ氏の側近としては、イーロン・マスク氏と、バンス次期副大統領という、天才級の頭脳が控えています。マスク氏には、良くも悪くも文明論的な独自の世界観があり、バンス氏には議会との人脈、軍歴、ビジネス歴などを通じて獲得した実務能力があります。 彼らが、おそらく政権の軸となると思われますし、既に78歳と高齢のトランプ氏は、これまで以上に彼らを重用し、その周囲には新しい世代の実務家が集まるかもしれません。日本の外交においては、一期目の場合は安倍晋三氏の必死の努力で、基本的には反日政策に走る潜在リスクを、首脳間の信頼関係で最小化するという作戦が成功しました。ですが、今回はトランプ主義の裏にマスク氏の思想、バンス氏の新保守主義などが控えていることから、彼らの深謀遠慮も読み解きながらの外交が必要です。) 第2は、経済政策です。現在、最新の時点では物価は相当程度の沈静化をしています。外食は下がらないものの、ファストフードは安売りの必要性に追い込まれています。卵や缶コーラは下がらないものの、スーパーは多くの商品で安売りを始めました。 これは、中国経済の失速を受けて原油価格が沈静化したこともありますが、何よりも連銀のパウエル議長による「失速しない程度に景気を減速させる」というギリギリのソフトランディング策が成功しているからでもあります。そう考えると、雇用情勢の悪化はその副作用とも言えます。 ですから、雇用を重視して景気を再加熱させるようだと、再び悪性のインフレが出るわけで、経済の舵取りはそう簡単ではありません。第二次トランプ政権は、そこでどんな手が打てるのかというと、かなりカードは限られると思います。そんな中で、不法移民を大量追放すれば農業とサービス業は回りません。中国製品に高額関税をかければ消費は一気に冷え込みます。 無理をしてスマホやタブレットを、アメリカの国内生産に切り替えれば、テスラのようにロボットを使った省力化が進み雇用は増えません。そうした中で、巨大な現状不満を受けて当選してもできることは限られています。ここは、待ったなしの課題であり、政策を最適解に寄せることができるのか、厳しく問われると思います』、「トランプ氏の側近としては、イーロン・マスク氏と、バンス次期副大統領という、天才級の頭脳が控えています。マスク氏には、良くも悪くも文明論的な独自の世界観があり、バンス氏には議会との人脈、軍歴、ビジネス歴などを通じて獲得した実務能力があります。 彼らが、おそらく政権の軸となると思われますし、既に78歳と高齢のトランプ氏は、これまで以上に彼らを重用し、その周囲には新しい世代の実務家が集まるかもしれません。日本の外交においては、一期目の場合は安倍晋三氏の必死の努力で、基本的には反日政策に走る潜在リスクを、首脳間の信頼関係で最小化するという作戦が成功しました。ですが、今回はトランプ主義の裏にマスク氏の思想、バンス氏の新保守主義などが控えていることから、彼らの深謀遠慮も読み解きながらの外交が必要です・・・第2は、経済政策です。現在、最新の時点では物価は相当程度の沈静化をしています。外食は下がらないものの、ファストフードは安売りの必要性に追い込まれています。卵や缶コーラは下がらないものの、スーパーは多くの商品で安売りを始めました。 これは、中国経済の失速を受けて原油価格が沈静化したこともありますが、何よりも連銀のパウエル議長による「失速しない程度に景気を減速させる」というギリギリのソフトランディング策が成功しているからでもあります・・・第二次トランプ政権は、そこでどんな手が打てるのかというと、かなりカードは限られると思います。そんな中で、不法移民を大量追放すれば農業とサービス業は回りません。中国製品に高額関税をかければ消費は一気に冷え込みます。 無理をしてスマホやタブレットを、アメリカの国内生産に切り替えれば、テスラのようにロボットを使った省力化が進み雇用は増えません。そうした中で、巨大な現状不満を受けて当選してもできることは限られています。ここは、待ったなしの課題であり、政策を最適解に寄せることができるのか、厳しく問われると思います」、なるほど。
・『ウクライナを「停戦」させられるか 3つ目は、ウクライナ戦争の落とし所です。トランプ氏はプーチン氏と相談して停戦へ持っていくとしています。また、バンス氏はウクライナはアメリカの生命線になるような国益では「ない」と言い切っています。マスク氏にしても、プーチン氏との個人的関係を隠そうとしません。 そんな中で、では今回にトランプ氏に入れた巨大な票は、NATOの結束を緩め、ウクライナの一方的な敗戦を認めるかというと、そこまで考えたうえでの投票行動ではないと思います。つまり、ウクライナ問題には今回の争点として民意の判断は無かったとも言えます。そんな中で、トランプ氏にできることには限りがあります。 何よりも、プーチン氏自身の中に戦時体制と戦時経済による求心力維持、これに依存する部分があるのであれば、多少の好条件でも停戦をのむ選択はないのかもしれません。仮にそうした大局的な観点から「自分が当選したら即時停戦して見せる」という発言が、シリアスなものではなく、現実的な、つまりNATOや西側同盟の基盤を壊さない方向に着地する可能性も残っていると思います。 これは時間的には待ったなしという面があり、二期目の政権の性格を占う上での試金石になると思います。ちなみに、議会の上下両院の議席はまだ確定していませんが、少なくとも共和党は上院の多数を占めることは確定しています。一見すると、トランプ氏には有利なように見えますが、上院の多数派が持つ権力は大きく、例えばNATOの結束を守るということでは、仮にトランプ氏が相当に手を突っ込みそうになった場合には議会共和党が防波堤になる可能性も残っています。 いずれにしても、世論や政財界も、トランプ氏の性格については既知であるというところが、一期目とは大きく異なります。結局は、暴言を軸とした無謀な政治ではなく、実現可能な保守政治へと軟着陸してゆく、それが二期目の行く末の可能性としては大きいと思います。経済と外交でそのようなカラーが見えてくるのかどうか、これからの動きに注目したいと思います』、「今回にトランプ氏に入れた巨大な票は、NATOの結束を緩め、ウクライナの一方的な敗戦を認めるかというと、そこまで考えたうえでの投票行動ではないと思います。つまり、ウクライナ問題には今回の争点として民意の判断は無かったとも言えます。そんな中で、トランプ氏にできることには限りがあります。 何よりも、プーチン氏自身の中に戦時体制と戦時経済による求心力維持、これに依存する部分があるのであれば、多少の好条件でも停戦をのむ選択はないのかもしれません。仮にそうした大局的な観点から「自分が当選したら即時停戦して見せる」という発言が、シリアスなものではなく、現実的な、つまりNATOや西側同盟の基盤を壊さない方向に着地する可能性も残っていると思います・・・暴言を軸とした無謀な政治ではなく、実現可能な保守政治へと軟着陸してゆく、それが二期目の行く末の可能性としては大きいと思います。経済と外交でそのようなカラーが見えてくるのかどうか、これからの動きに注目したいと思います」、なるほど。
次に、11月8日付けNewsweek日本版が掲載した本誌記者のジョシュア・レット・ミラー氏による「ハリス氏惨敗の背景に「アメリカ中流階級の生活苦の悲鳴」が聞こえる」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2024/11/523370_1.php
・『<民主党はなぜ敗れたのかー。経済指標は良好で、株式相場も絶好調とバイデン政権は自画自賛していたが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くの庶民に実感はなかった> ミネソタ州グランドラピッズで生活する5人家族の母親、クリスティン・マディ(44)は、少しでも出費を切り詰めるために安売り店で買い物をし、旅行に行くのも控えている。食品価格の上昇を乗り切るために、ニワトリやガチョウやカモも飼い始めた。 マディは看護師として「立派な給料」を受け取っていて、夫のライアンも重機操縦の職に就いているが、一家の暮らしはギリギリだという。ところが、相次ぐ利上げによりインフレが沈静化し、景気が冷え込むことなしにアメリカ経済がソフトランディング(軟着陸)に成功するという見通しを示す人たちもいる。 ジョー・バイデン米大統領もその1人だ。8月半ばには、新型コロナのパンデミックとロシアのウクライナ侵攻をきっかけに急速に進行したインフレを克服できたと思うかと尋ねられて、こう述べている──「ソフトランディングできそうだ。私の政策は効果を発揮しつつある。そう書いておいてくれよ」。 マディはこの主張に真っ向から異を唱える。「現実が全く見えていない。私たち夫婦の給料は合計で年間17万5000ドルくらい。出費はどうにか賄えるけれど、手元にお金は全く残らない」 インフレの影響はあまりに大きいと、マディは言い切る。「今まで買っていたものが2倍、3倍に値上がりしていて、危機感を覚える」) コロナ禍以前は、中流であるマディ一家の経済状況は安定していて、よくデパートに買い物に行き、いちいち値札を確認せずに買い物をしていた。今は「買い物の仕方がすっかり変わってしまった」と、マディは言う。 「娘の誕生日のための買い物も1ドルショップで済ませている。昔は、こんなときは(大手スーパーの)ターゲットやパーティー用品のお店で買っていたけれど、それはもう無理になった」 食品も近所の食品スーパーでは買わなくなったという。安売り店でまとめ買いをするようになった。大手スーパーと比べると、価格が3割くらい違う場合もあるからだ。 「ストレスはとても大きい」と、マディは語る。「以前と同じようには買い物ができなくなったし、最近は旅行にも行けなくなった。生活のいろいろな局面で倹約と貯蓄を考えなくてはならない。クリスマスの過ごし方も様変わりしてしまった」 26歳の息子ジャックの暮らしも、ゆとりがあるとはとうてい言えない。海軍を除隊し、今は警察官として働くジャックは、出費を賄い、住宅ローンを返済するために、週に80時間働くこともあるという。 「いつも決まって中流層が一番損をする」と、マディは語る。 「政府による支援プログラムの受給対象には当てはまらず、そうかといって生活苦を感じずに済むほどの収入もない。日々の食料品を買えないという心配はないけれど、かなりあくせく働かなくてはならない」) 日々の生活の苦しさを訴える人たちがいる一方で、アメリカの株式相場は目下、絶好調と言っていいだろう。今年5月には、ニューヨーク株式市場でダウ平均株価が史上初めて4万ドルを突破した。 こうした株価の上昇を受けて、大企業のトップたちは、庶民には想像もつかないような巨額の報酬を受け取ることが可能になっている。 アメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)が8月に発表した調査によると、アメリカの代表的な株価指数「S&P500」を構成する企業のCEOが昨年1年間に受け取った報酬は、平均的な働き手が5回以上の勤労人生を送らなければ稼げない金額に達しているという。 例えば、スターバックスのCEOを退任したばかりのラクスマン・ナラシムハンは、1400万ドルを超す報酬を受け取っていた。これは、2023会計年度に平均的な働き手が受け取る給料の1028倍に上る。 しかし、後任のブライアン・ニコルはさらに上を行く。9月9日にスターバックスのCEOに就任したニコルは、1年目だけで1億ドル以上を受け取る可能性がある。成果に連動して報酬が決まる面が大きいためだ』、「経済指標は良好で、株式相場も絶好調とバイデン政権は自画自賛していたが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くの庶民に実感はなかった> ミネソタ州グランドラピッズで生活する5人家族の母親、クリスティン・マディ(44)は、少しでも出費を切り詰めるために安売り店で買い物をし、旅行に行くのも控えている。食品価格の上昇を乗り切るために、ニワトリやガチョウやカモも飼い始めた。 マディは看護師として「立派な給料」を受け取っていて、夫のライアンも重機操縦の職に就いているが、一家の暮らしはギリギリだという・・・アメリカの株式相場は目下、絶好調と言っていいだろう。今年5月には、ニューヨーク株式市場でダウ平均株価が史上初めて4万ドルを突破した。 こうした株価の上昇を受けて、大企業のトップたちは、庶民には想像もつかないような巨額の報酬を受け取ることが可能になっている。 アメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)が8月に発表した調査によると、アメリカの代表的な株価指数「S&P500」を構成する企業のCEOが昨年1年間に受け取った報酬は、平均的な働き手が5回以上の勤労人生を送らなければ稼げない金額に達しているという」、なるほど。
・『政府の楽観論に抱く違和感 インフレ脱却をめぐるバイデンの楽観的な発言に、こうした途方もない格差の存在が合わさって、多くの中流層は政府との間に大きな断絶を感じていると、マディは指摘する。) 「現政権から無視されているという思いを抱いている」と、マディは言う。 「経済は堅調だという政府の言葉を聞くと、突き放されたように感じる。そうした主張は、私たちが日々の生活の中で体感していることと全く違う」 楽観できる材料がないわけではない。7月には、インフレ率が2.9%まで下落した。これは21年3月以来最も低い値だ。7月には、小売業の売上高も市場の予想を大きく上回り、前月比で1%増加した。 しかし、食品や住宅、その他の必需品やサービスの価格が上昇し続けている状況が人々の心理に及ぼしている影響は極めて大きいと、エコノミストたちは指摘する。 投資会社ワーニック・スピアー・ウェルス・マネジャーズのファイナンシャルアドバイザー、ジョーダン・ロドリゲスによれば、同社の顧客である投資家たちの間では、インフレが最大の関心事であり続けている。中小企業のオーナーの場合、その傾向がとりわけ顕著だという。 「(中小企業のオーナーたちにとって)最大の不安材料は景気減退ではない。製造業やそれに類する業種では、受注はたいてい減っていない」と、ロドリゲスは言う。 「最大の不安材料は優れた人材の確保でもない。ほとんどの経営者は、インフレが最大の不安材料だと言っている」) フロリダ州ケープコーラルに住むジョン・オルセン(53)も、そのような不安を痛感している。犬の誕生パーティー用品などを取りそろえたオンラインショップ「ポーティーエクスプレス・ドットコム」を経営するオルセンは、燃料費や食品価格の上昇などにより膨れ上がる事業経費に苦しめられている。 いまオルセンはクレジットカードの債務を抱えていて、会社が廃業に追い込まれるのではないかと恐れている。バイデンが言う「ソフトランディング」どころの話ではない。 「政府は私たちをだまそうとしているのではないか」と、オルセンは言う。「普通の人たちの感覚に比べて、信憑性の乏しいデータを基に発言しているように思う」 オルセンによれば、ビジネスオーナーとして最も手ごわく感じる問題はインフレだという。22年には、1981年以来最悪の9.1%までインフレ率が上昇したこともあった。 例えば、オーガニックチキンの仕入れ値は、ここ数年で2倍に跳ね上がった。これでは、ウォルマートや、ペット用品オンライン販売大手のチューイーといった大型チェーン店とは競争できない。 卵やガソリン、自動車保険といった基本的な生活用品やサービスの価格も、コロナ禍前と比べると大幅に上昇している』、「インフレ脱却をめぐるバイデンの楽観的な発言に、こうした途方もない格差の存在が合わさって、多くの中流層は政府との間に大きな断絶を感じていると、マディは指摘する。) 「現政権から無視されているという思いを抱いている」と、マディは言う。 「経済は堅調だという政府の言葉を聞くと、突き放されたように感じる。そうした主張は、私たちが日々の生活の中で体感していることと全く違う」・・・フロリダ州ケープコーラルに住むジョン・オルセン(53)も、そのような不安を痛感している。犬の誕生パーティー用品などを取りそろえたオンラインショップ「ポーティーエクスプレス・ドットコム」を経営するオルセンは、燃料費や食品価格の上昇などにより膨れ上がる事業経費に苦しめられている。 いまオルセンはクレジットカードの債務を抱えていて、会社が廃業に追い込まれるのではないかと恐れている。バイデンが言う「ソフトランディング」どころの話ではない。 「政府は私たちをだまそうとしているのではないか」と、オルセンは言う。「普通の人たちの感覚に比べて、信憑性の乏しいデータを基に発言しているように思う」 オルセンによれば、ビジネスオーナーとして最も手ごわく感じる問題はインフレだという」、「政府は私たちをだまそうとしているのではないか」と、政府統計への懐疑論まで出てい¥くるのは深刻だ。
・『クレカ債務という甘い誘惑 ピュー・リサーチセンターの調査によると、6月の時点で、シリアルや牛乳など朝食の定番品の価格は、20年1月と比べて約40%も高かった。食品全般で見ても、19〜23年の4年間で25%上昇と、住宅価格や娯楽費、医療費などの上昇を上回っている。 米農務省によると、同時期に輸送コストも27.1%上昇した。ただ、ガソリンの小売価格は乱高下が激しい。6月の小売価格は20年1月と比べると35.9%高かったが、7月下旬には1ガロン当たり3.598ドルと、22年半ばのピーク時と比べれば半額近くまで下がっている。8月半ば過ぎには3.382ドルと、1年前よりもわずかに安くなっている。 これに対して6月の自動車保険料は、20年1月と比べて47.3%も上昇した。その背景には、修理費の上昇(47.5%)がある。 「今は自宅のソファに寝転がっているしかない。ここ6〜7回企画したイベントは、利益がほとんど出なかったから」と、オルセンはため息をつく。「2年半前は年40〜50%のペースで売り上げが伸びていたのに、今はゼロに近い」 首都ワシントンに住むアディソン・ムーア(24)は、2つのアルバイトを掛け持ちしながら、職業訓練学校に通っている。月収600ドルでは贅沢をする余裕はほとんどなく、目先の数カ月を乗り切れるか考えるだけで精いっぱいだ。) 「正直言って、生活はかなり苦しい」とムーアは言う。「クレジットカードのおかげで生き延びているようなものだ。カードなら毎月の返済額を抑えることができるから」 現在は友人の実家に居候しているが、フードスタンプ(低所得者向け食料クーポン)の受給資格は失ってしまったため、1週間の食費を100ドル以下に抑えるのに必死だ。定期的な貯蓄はほとんどできない。 アメリカンドリームなんて夢のまた夢だ。「夢見る以前に乗り越えなければならないハードルが多すぎる」と、ムーアは浮かない顔で言う。 インフレが収束し、雇用指標も良好だから、米経済は景気後退を回避できるという見方に、ムーアは同意できない。経済指標は、多くのアメリカ人の置かれた状況を反映していないというのだ。 「数字は良好でも、私たちはとうてい明るい気分にはなれない」とムーアは言う。「指標が物語ることは、経済の末端で起きていることとは全く違う気がする」 ムーアと同じように、多くのアメリカ人はクレジットカードで生活費の支払いをしている。ニューヨーク連邦準備銀行によると、今年4〜6月期のアメリカの家計のクレジットカード債務残高は過去最高の1兆1400億ドルに達した。前年と比べて5.8%もの増加だ。 クレジットカードは、「あとで返済できる収入だと思っている」と、ムーアは語る。「いつも限度額ぎりぎりまで使い切っているのは、とにかく生活費が高いから。贅沢をしているわけじゃない」』、「首都ワシントンに住むアディソン・ムーア(24)は、2つのアルバイトを掛け持ちしながら、職業訓練学校に通っている。月収600ドルでは贅沢をする余裕はほとんどなく、目先の数カ月を乗り切れるか考えるだけで精いっぱいだ・・・米経済は景気後退を回避できるという見方に、ムーアは同意できない。経済指標は、多くのアメリカ人の置かれた状況を反映していないというのだ」、またまた政府統計への不信が出てきた。やはり、ハリス候補もこうした市井の市民の感覚も取り入れた演説をしなかったので、票が逃げていったのだろう。
・『年収15万ドル以上でも不安 モンタナ州ハバーに住むタイラー・アズア(31)も、夫を含む10人家族の毎月の生活費はクレジットカードで支払っている。週600ドルほどになる食料品もカード払いだ。 「とんでもない状況だ」と、アズアは言う。「(カードの返済で)私と夫の給料はほとんど手元に残らない。でも、どこを切り詰めればいいか分からない。毎晩ラーメンで済ますわけにもいかないし」 アズアは事務部門の管理職だが、1月にも9人目の子を出産予定で、好況への期待感より、将来への不安のほうが大きい。「クレジットカードは3枚持っているけれど、全部限度額まで使い切っている」と彼女は言う。「そして毎月の返済額は最小限に抑えている」 一家は1月に6LDKの家に引っ越したばかりだが、将来のことは全くわからないと、アズアは言う。「子供を産み、充実した人生を送り、子供たちが親よりも良い人生を送れるようにする経済的な余裕、そういうものが今は全然ない」と、アズアは語る。 「そうなればいいなと思うけれど、現実味は乏しい」 生活に不安を抱いているのは、低所得層や中間層だけではない。6月に発表されたフィラデルフィア連邦準備銀行の調査では、年収15万ドル以上のアメリカ人の約32.5%が、向こう6カ月の家計が赤字に陥らないか心配だと答えている。1年前は21.7%だったから大幅な上昇だ。 ただ、この調査で「将来が不安だ」と答えた人の割合が最も大きかったのは、年収4万ドル以下の層で、40%に上った。全調査対象者の平均は34.9%だった。) 「最近の経済指標は景気後退の可能性が低いことを示しているが、高金利、多額の債務、物価上昇の影響は家計に大きくのしかかっている」と、米調査会社ウォレットハブのアナリストであるチップ・ルポは語る。 「年初は家計のクレジットカード債務が5000億ドルほど減ったが、だんだんと雲行きが怪しくなってきた。今後はもっとひどくなるだろう。例年、クレジットカード債務が最も増えるのは秋以降だから」 FRBは9月、4年半ぶりに利下げに踏み切ったが、やりすぎればインフレの再燃につながる恐れがあると、ルポは警告する。 「多額の債務と物価上昇の根強い不安には、慎重な金融政策で対処する必要がある。確かにほとんどの人は今のところ仕事に就いているが、相当なやりくりをしなければ、その仕事では生活していけない」 それに経済指標は良好でも、多くの家庭にとって、猛烈な物価上昇の痛手は簡単には消えないと、職場文化の専門家であるジェシカ・クリーゲルは語る。「マクロ経済指標は、普通の人たちが肌身で感じる日常を反映していない」 そんななか、今後の波乱に備えるためにも、人々は自分の内面に目を向けるべきだと、クリーゲルは言う。 「こうなったのは誰のせいだと考えるのではなく、これから自分に起こる可能性があることをコントロールするために、いま自分にできることに意識を集中して、賢い選択をしていく必要がある」』、「「多額の債務と物価上昇の根強い不安には、慎重な金融政策で対処する必要がある。確かにほとんどの人は今のところ仕事に就いているが、相当なやりくりをしなければ、その仕事では生活していけない」 それに経済指標は良好でも、多くの家庭にとって、猛烈な物価上昇の痛手は簡単には消えないと、職場文化の専門家であるジェシカ・クリーゲルは語る。「マクロ経済指標は、普通の人たちが肌身で感じる日常を反映していない」 そんななか、今後の波乱に備えるためにも、人々は自分の内面に目を向けるべきだと、クリーゲルは言う。 「こうなったのは誰のせいだと考えるのではなく、これから自分に起こる可能性があることをコントロールするために、いま自分にできることに意識を集中して、賢い選択をしていく必要がある」、その通りだろう。
第三に、11月8日付け現代ビジネスが掲載した一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「「圧勝」トランプの「経済政策」で日本の自動車メーカーは大打撃…!そしてアメリカ国民を待ち受ける、まさかの「悲惨な末路」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/140945?imp=0
・『トランプ氏の経済政策は、企業寄りのものと考えられている。しかし、中長期的な観点からすると、さまざまな問題がある。高関税の賦課は、日本の自動車メーカーにも大きな影響を与える。それだけでなく、長期的に見れば、アメリカの成長をも阻害することになる』、興味深そうだ。
・『トランプ氏再選をマーケットは歓迎しているが…… アメリカ大統領選挙で、トランプ氏が勝った。また、共和党が上院を制することとなった。以下では、今後に予想される政策と、日本への影響について考えたい。 この問題については、短期的な影響と長期的な影響を分けて考えることが必要だ。 短期的な影響は、株式市場や為替市場に対する影響だ。長期的な影響は、通商関係や世界的分業に対する影響である。そして、減税政策がもたらす影響だ。 大統領選挙でトランプ氏優勢が伝わると、アメリカの株価だけでなく、日本の株価も上昇し、為替レートは円安に動いた。 一般に、トランプ氏の経済政策は企業寄りのものと解釈されているからだろう。特に法人税の減税が期待されているのだろう。 しかし、トランプ氏の経済政策が日本経済にとってプラスかどうかは分からない。法人税減税は、日本にとっては直接のメリットにはならない。その反面で、高関税は日本の輸出に悪影響を与える可能性が強い。 特に、メキシコからの輸入車に対する高税率の関税や、EV政策の見直しは、日本の自動車メーカーにとって大きな問題となる可能性もある』、メキシコ、アメリカ、カナダの3カ国はNAFTA(北米自由貿易協定をトランプは対象外にするようだ、アメリカファーストが国際条約にまで及ぶとは酷い話だ。影響を短期と長期に分けて分析するとはさすがだ。
・『円安が進む可能性、ただし攪乱要因も 金融市場ではトランプ氏の再選を織り込む「トランプトレード」が、選挙戦の終盤ですでに起こっていた。そして、インフレの再加速や財政悪化を懸念した国債の売り圧力が高まり、金利が上昇していた。 以下で述べるように、トランプ氏は大規模減税や関税引き上げを公約に掲げており、インフレの再燃や財政赤字の拡大を招く可能性がある。 こうした政策でインフレが再燃すれば、利上げが必要となる可能性がある。実際に米長期金利が上昇すれば、2024年7月の円安を超えた円安が進行する可能性もある。 ただし、トランプ氏は、もともとドル安志向だ。そして、景気刺激のために利下げを主張している。したがって、同氏の圧力が金融政策にかかれば、日米金利差がさらに縮小し、円高が進む可能性がある。 トランプ氏は、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の金融政策に対して大統領が発言権を持つべきだと主張しているので、こうした圧力は無視できない。ただし、いうまでもないことだが、現在の制度では、大統領がFRBの決定に介入することはできない』、「現在の制度では、大統領がFRBの決定に介入することはできない」のは確かだが、なにせ「トランプ」のことゆえ、裏技を繰り出す可能性も否定できない。どう展開するか、楽しみだ。
・『トランプ高関税が引き起こすさまざまの問題 中長期的な問題として重要なのは、まず第1に、トランプ氏がアメリカの産業を保護するため、関税の引き上げを行なうとしていることだ。トランプ氏は、全ての輸入品に対して10~20%の関税をかけるとしている。そして、中国製品に対しては、60%の関税をかけるとしている。 また、中国に対する最恵国待遇を撤回し、中国への依存度を引き下げるとしている。 こうした措置は、自由貿易に対する大きな障害となるだろう。トランプ前政権時のような米中間関税引き上げ競争が再発すれば、世界的なサプライチェーンに大きな影響が及ぶ危険がある。 前政権時に実施された対中関税引き上げは、日本にはあまり大きな影響は及ばなかった。しかし、後で述べるように、今回は違うかもしれない。 また、高率関税は、アメリカ国内の物価上昇を加速化する可能性がある。前回は、人民元の切り下げや、サプライチェーンによる関税負担のために、アメリカ国内の物価への影響は限定的だった。しかし、今回は、引き上げ率も対象国も前回を上回るため、アメリカ国内の物価を上昇させる可能性がある。 トランプ氏は、規制緩和によってアメリカ国内で原油や天然ガスを増産し、それによってインフレを防止するとしている。しかし、そうした効果があるかどうかは疑問だ。 インフレが再加速すれば、FRBが金利引下げのテンポを弱めるだろう。仮にそうなれば、日米金利差が縮小せず、円安が進む可能性がある。 ただし、追加関税措置など保護主義的な政策が実行されることによって景気減速の懸念が広がり、利下げ圧力が強まるかもしれない』、問題はTSMCなど台湾のファウンドリーメーカーの関税がどうなるかだ。
・『日本の自動車産業に大きな影響の可能性 トランプ氏は、メキシコで生産してアメリカに輸入される自動車に100%の関税を課すとしている。10月10日のデトロイトでの演説では、メキシコの国境を越えて輸入されるすべての自動車に200%の関税をかけるとした。 仮にこうした関税引き上げが本当に実施されれば、日本の自動車業界にとっては大きな打撃となるだろう。 また、トランプ氏は、バイデン政権によるEV(電気自動車)の普及政策を非難していた。そして、EVの普及策を終わらせると約束していた。このため、EV購入に対する連邦税控除の廃止や、関税引き上げを実施するかもしれない。 EVの普及を進める政策が大幅に修正されれば、EVメーカーに打撃になるように思われる。そして、ガソリン車やディーゼル車、ハイブリッド車のメーカーには、プラスに働くように思える。 しかし、事態はそれほど簡単ではない。EV支援策縮小は、テスラよりも競合他社の方が大きいと言われる。仮にテスラがEV市場で優越的な立場を維持できるなら、EV支援の縮小によって、テスラが恩恵を受ける可能性が高いとも言われる』、「メキシコ」からの自動車輸入に関税をかけるとすれば、NAFTAに沿ってメキシコで生産してきた日本のメーカーには大打撃だ。
・『減税は短期的には恩恵だが、財政赤字を拡大 国内の税政策はどうか?トランプ氏は、前政権時代の2017年に、経済政策の柱として、10年間で総額1.5兆ドル規模の大型減税を実施した。これによって、法人税率を35%から21%に引き下げ、個人所得税の最高税率を39.6%から37%に引き下げた。 これは、富裕層優遇の減税策との批判があったのだが、トランプ氏は、今回の選挙戦で、減税策の期限を撤廃し、恒久的な制度にすると公約した。また、法人税率を、21%からさらに15%に引き下げるとした。 また、接客業に携わる人々が受け取っているチップや、社会保障の給付金への課税を廃止するとした。そして、住宅ローン金利を引き下げ、税制優遇措置などを通じて住宅の購入を支援するとした。一方、高齢者に対しては、公的医療保険や社会保障は、一切削減しないと明言した。 このような富裕層減税や法人税率の引き下げなどの政策は、短期的には、確かに企業に恩恵をもたらす。 ただし、それは、財政赤字の拡大を招く。そして、財政赤字の拡大はインフレ再燃をもたらす危険がある。 トランプ氏の支持基盤は、ラストベルト地帯などの貧しい白人が中心だと言われる。しかし、上記の減税政策を見る限り、こうした人たちが政策の対象として意識されているとは思えない。それにもかかわらず、貧しい白人がトランプ氏を支持するのはなぜなのであろうか? 私には、まったく不思議なことにしか思えない』、「トランプ氏の支持基盤は、ラストベルト地帯などの貧しい白人が中心だと言われる。しかし、上記の減税政策を見る限り、こうした人たちが政策の対象として意識されているとは思えない。それにもかかわらず、貧しい白人がトランプ氏を支持するのはなぜなのであろうか? 私には、まったく不思議なことにしか思えない」、私も同様だ。
・『長期的な経済成長にはマイナス アメリカでは、コロナから回復の初期において大量の早期退職が発生したため、顕著な労働力不足が生じた。それは賃金を上昇させ、インフレの原因となった。 こうした労働力不足を補ったのは、大量の不法移民であり、現在も安価な労働力としてインフレ沈静化と景気拡大に貢献している。不法移民を取り締まるのは当然だろうが、あまりに進めれば、アメリカの最大の長所である人種的寛容性を捨て去ることにもなる。 高関税による国内産業の保護は、長期的には、アメリカの経済発展の阻害要因になる。日本車への関税引き上げが実施されれば、日本の自動車業界にとっては大きな打撃となるが、それだけではない。アメリカに従来タイプの自動車産業が残ることが、アメリカの長期的な発展には阻害要因となるだろう。 トランプ氏の経済政策は、アメリカを強くするというのだが、長期的にはアメリカの発展にとってマイナスの効果をもたらすこととなる可能性が強い』、「トランプ氏の経済政策は、アメリカを強くするというのだが、長期的にはアメリカの発展にとってマイナスの効果をもたらすこととなる可能性が強い」、その通りだ。
先ずは、11月7日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家の冷泉彰彦氏による「第二次トランプ政権はどこへ向かうのか?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2024/11/post-1373_1.php
・『<実業家のマスクや実務家のバンスといった天才級の頭脳を周囲に置いた二期目は、現実的な保守路線へと帰結するのでは> 米大統領選の結果が判明しました。投票日の深夜から翌日未明にかけて当確が出るというのは、2016年以前に戻ったようでもありますが、とにかく混乱した2020年と比べると、画期的な改善を見たと思います。共和党が前回は否定していた期日前投票、郵送投票を認めて積極的に投票を促したことに加えて、これを受けて各州の選管が作業の前倒しを徹底するなど、事務方の努力が実ったわけです。選挙結果の信頼性も含めて、民主主義は機能したとも言えます。 それはともかく、一度落選して退任した大統領が再び当選して就任するというのは、1892年に民主党のグローバー・クリーブランドが2度目の当選をして以来となります。この時も、雇用と関税をめぐるバトルが激しく、労働者の利害を代表して大企業を批判したことで、クリーブランドは返り咲きを果たしました。それから132年後の今回は、グローバル経済を推進する民主党に対して、自国ファーストを掲げて「現状不満層」の結集に成功したのが共和党のトランプ氏ということで、アメリカの対立軸は1世紀半を経て大きく入れ替わったことを示しています。 トランプ氏の勝因は、とにかく経済問題が主だと思います。物価への強い不満、雇用への強い不安が巨大なエネルギーとなって現状批判のモメンタムを作り出しました。2016年の勝利が価値観やカルチャーの戦いだったとすれば、今回は経済の現状への不信任というのが主だと思います。 それはともかく、高齢で再選へ向けた候補から降りたバイデン大統領と、大統領を目指して落選したハリス副大統領の求心力は、これで雲散霧消することになりました。事実上、この11月6日からは共和党による次期政権、つまり第二次トランプ政権が動き出すという理解をして良いと思います』、「トランプ氏の勝因は、とにかく経済問題が主だと思います。物価への強い不満、雇用への強い不安が巨大なエネルギーとなって現状批判のモメンタムを作り出しました。2016年の勝利が価値観やカルチャーの戦いだったとすれば、今回は経済の現状への不信任というのが主だと思います」、なるほど。
・『マスク、バンスという天才級頭脳 では、この第二次政権はどんな姿になっていくのか、まず指摘できるのは第一次政権とは本質が異なるということです。もちろん、反移民、反多様性といった保守カルチャーについては変わらないと思いますが、その他では大きく3点が異なります。 1点目は、政権の陣容です。一期目の場合は、トランプ氏の周囲にはスチーブン・バノン氏のような「ポピュリズム発信の試行錯誤」をするグループがありました。一方で、歴代の補佐官や長女イバンカ氏夫妻などは、これとは別に「現実の政治」との橋渡しをしていました。 トランプ氏は、時にバノン氏などと相談して過激発言をしたり、わざとツイートを炎上させたりして求心力を維持。それが行き過ぎると、イバンカ夫妻やホワイトハウス官僚の言うことを聞いて、常識的な政策を行うなどの振幅がありました。 ところが、今回の陣容は異なります。まず、トランプ氏の側近としては、イーロン・マスク氏と、バンス次期副大統領という、天才級の頭脳が控えています。マスク氏には、良くも悪くも文明論的な独自の世界観があり、バンス氏には議会との人脈、軍歴、ビジネス歴などを通じて獲得した実務能力があります。 彼らが、おそらく政権の軸となると思われますし、既に78歳と高齢のトランプ氏は、これまで以上に彼らを重用し、その周囲には新しい世代の実務家が集まるかもしれません。日本の外交においては、一期目の場合は安倍晋三氏の必死の努力で、基本的には反日政策に走る潜在リスクを、首脳間の信頼関係で最小化するという作戦が成功しました。ですが、今回はトランプ主義の裏にマスク氏の思想、バンス氏の新保守主義などが控えていることから、彼らの深謀遠慮も読み解きながらの外交が必要です。) 第2は、経済政策です。現在、最新の時点では物価は相当程度の沈静化をしています。外食は下がらないものの、ファストフードは安売りの必要性に追い込まれています。卵や缶コーラは下がらないものの、スーパーは多くの商品で安売りを始めました。 これは、中国経済の失速を受けて原油価格が沈静化したこともありますが、何よりも連銀のパウエル議長による「失速しない程度に景気を減速させる」というギリギリのソフトランディング策が成功しているからでもあります。そう考えると、雇用情勢の悪化はその副作用とも言えます。 ですから、雇用を重視して景気を再加熱させるようだと、再び悪性のインフレが出るわけで、経済の舵取りはそう簡単ではありません。第二次トランプ政権は、そこでどんな手が打てるのかというと、かなりカードは限られると思います。そんな中で、不法移民を大量追放すれば農業とサービス業は回りません。中国製品に高額関税をかければ消費は一気に冷え込みます。 無理をしてスマホやタブレットを、アメリカの国内生産に切り替えれば、テスラのようにロボットを使った省力化が進み雇用は増えません。そうした中で、巨大な現状不満を受けて当選してもできることは限られています。ここは、待ったなしの課題であり、政策を最適解に寄せることができるのか、厳しく問われると思います』、「トランプ氏の側近としては、イーロン・マスク氏と、バンス次期副大統領という、天才級の頭脳が控えています。マスク氏には、良くも悪くも文明論的な独自の世界観があり、バンス氏には議会との人脈、軍歴、ビジネス歴などを通じて獲得した実務能力があります。 彼らが、おそらく政権の軸となると思われますし、既に78歳と高齢のトランプ氏は、これまで以上に彼らを重用し、その周囲には新しい世代の実務家が集まるかもしれません。日本の外交においては、一期目の場合は安倍晋三氏の必死の努力で、基本的には反日政策に走る潜在リスクを、首脳間の信頼関係で最小化するという作戦が成功しました。ですが、今回はトランプ主義の裏にマスク氏の思想、バンス氏の新保守主義などが控えていることから、彼らの深謀遠慮も読み解きながらの外交が必要です・・・第2は、経済政策です。現在、最新の時点では物価は相当程度の沈静化をしています。外食は下がらないものの、ファストフードは安売りの必要性に追い込まれています。卵や缶コーラは下がらないものの、スーパーは多くの商品で安売りを始めました。 これは、中国経済の失速を受けて原油価格が沈静化したこともありますが、何よりも連銀のパウエル議長による「失速しない程度に景気を減速させる」というギリギリのソフトランディング策が成功しているからでもあります・・・第二次トランプ政権は、そこでどんな手が打てるのかというと、かなりカードは限られると思います。そんな中で、不法移民を大量追放すれば農業とサービス業は回りません。中国製品に高額関税をかければ消費は一気に冷え込みます。 無理をしてスマホやタブレットを、アメリカの国内生産に切り替えれば、テスラのようにロボットを使った省力化が進み雇用は増えません。そうした中で、巨大な現状不満を受けて当選してもできることは限られています。ここは、待ったなしの課題であり、政策を最適解に寄せることができるのか、厳しく問われると思います」、なるほど。
・『ウクライナを「停戦」させられるか 3つ目は、ウクライナ戦争の落とし所です。トランプ氏はプーチン氏と相談して停戦へ持っていくとしています。また、バンス氏はウクライナはアメリカの生命線になるような国益では「ない」と言い切っています。マスク氏にしても、プーチン氏との個人的関係を隠そうとしません。 そんな中で、では今回にトランプ氏に入れた巨大な票は、NATOの結束を緩め、ウクライナの一方的な敗戦を認めるかというと、そこまで考えたうえでの投票行動ではないと思います。つまり、ウクライナ問題には今回の争点として民意の判断は無かったとも言えます。そんな中で、トランプ氏にできることには限りがあります。 何よりも、プーチン氏自身の中に戦時体制と戦時経済による求心力維持、これに依存する部分があるのであれば、多少の好条件でも停戦をのむ選択はないのかもしれません。仮にそうした大局的な観点から「自分が当選したら即時停戦して見せる」という発言が、シリアスなものではなく、現実的な、つまりNATOや西側同盟の基盤を壊さない方向に着地する可能性も残っていると思います。 これは時間的には待ったなしという面があり、二期目の政権の性格を占う上での試金石になると思います。ちなみに、議会の上下両院の議席はまだ確定していませんが、少なくとも共和党は上院の多数を占めることは確定しています。一見すると、トランプ氏には有利なように見えますが、上院の多数派が持つ権力は大きく、例えばNATOの結束を守るということでは、仮にトランプ氏が相当に手を突っ込みそうになった場合には議会共和党が防波堤になる可能性も残っています。 いずれにしても、世論や政財界も、トランプ氏の性格については既知であるというところが、一期目とは大きく異なります。結局は、暴言を軸とした無謀な政治ではなく、実現可能な保守政治へと軟着陸してゆく、それが二期目の行く末の可能性としては大きいと思います。経済と外交でそのようなカラーが見えてくるのかどうか、これからの動きに注目したいと思います』、「今回にトランプ氏に入れた巨大な票は、NATOの結束を緩め、ウクライナの一方的な敗戦を認めるかというと、そこまで考えたうえでの投票行動ではないと思います。つまり、ウクライナ問題には今回の争点として民意の判断は無かったとも言えます。そんな中で、トランプ氏にできることには限りがあります。 何よりも、プーチン氏自身の中に戦時体制と戦時経済による求心力維持、これに依存する部分があるのであれば、多少の好条件でも停戦をのむ選択はないのかもしれません。仮にそうした大局的な観点から「自分が当選したら即時停戦して見せる」という発言が、シリアスなものではなく、現実的な、つまりNATOや西側同盟の基盤を壊さない方向に着地する可能性も残っていると思います・・・暴言を軸とした無謀な政治ではなく、実現可能な保守政治へと軟着陸してゆく、それが二期目の行く末の可能性としては大きいと思います。経済と外交でそのようなカラーが見えてくるのかどうか、これからの動きに注目したいと思います」、なるほど。
次に、11月8日付けNewsweek日本版が掲載した本誌記者のジョシュア・レット・ミラー氏による「ハリス氏惨敗の背景に「アメリカ中流階級の生活苦の悲鳴」が聞こえる」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2024/11/523370_1.php
・『<民主党はなぜ敗れたのかー。経済指標は良好で、株式相場も絶好調とバイデン政権は自画自賛していたが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くの庶民に実感はなかった> ミネソタ州グランドラピッズで生活する5人家族の母親、クリスティン・マディ(44)は、少しでも出費を切り詰めるために安売り店で買い物をし、旅行に行くのも控えている。食品価格の上昇を乗り切るために、ニワトリやガチョウやカモも飼い始めた。 マディは看護師として「立派な給料」を受け取っていて、夫のライアンも重機操縦の職に就いているが、一家の暮らしはギリギリだという。ところが、相次ぐ利上げによりインフレが沈静化し、景気が冷え込むことなしにアメリカ経済がソフトランディング(軟着陸)に成功するという見通しを示す人たちもいる。 ジョー・バイデン米大統領もその1人だ。8月半ばには、新型コロナのパンデミックとロシアのウクライナ侵攻をきっかけに急速に進行したインフレを克服できたと思うかと尋ねられて、こう述べている──「ソフトランディングできそうだ。私の政策は効果を発揮しつつある。そう書いておいてくれよ」。 マディはこの主張に真っ向から異を唱える。「現実が全く見えていない。私たち夫婦の給料は合計で年間17万5000ドルくらい。出費はどうにか賄えるけれど、手元にお金は全く残らない」 インフレの影響はあまりに大きいと、マディは言い切る。「今まで買っていたものが2倍、3倍に値上がりしていて、危機感を覚える」) コロナ禍以前は、中流であるマディ一家の経済状況は安定していて、よくデパートに買い物に行き、いちいち値札を確認せずに買い物をしていた。今は「買い物の仕方がすっかり変わってしまった」と、マディは言う。 「娘の誕生日のための買い物も1ドルショップで済ませている。昔は、こんなときは(大手スーパーの)ターゲットやパーティー用品のお店で買っていたけれど、それはもう無理になった」 食品も近所の食品スーパーでは買わなくなったという。安売り店でまとめ買いをするようになった。大手スーパーと比べると、価格が3割くらい違う場合もあるからだ。 「ストレスはとても大きい」と、マディは語る。「以前と同じようには買い物ができなくなったし、最近は旅行にも行けなくなった。生活のいろいろな局面で倹約と貯蓄を考えなくてはならない。クリスマスの過ごし方も様変わりしてしまった」 26歳の息子ジャックの暮らしも、ゆとりがあるとはとうてい言えない。海軍を除隊し、今は警察官として働くジャックは、出費を賄い、住宅ローンを返済するために、週に80時間働くこともあるという。 「いつも決まって中流層が一番損をする」と、マディは語る。 「政府による支援プログラムの受給対象には当てはまらず、そうかといって生活苦を感じずに済むほどの収入もない。日々の食料品を買えないという心配はないけれど、かなりあくせく働かなくてはならない」) 日々の生活の苦しさを訴える人たちがいる一方で、アメリカの株式相場は目下、絶好調と言っていいだろう。今年5月には、ニューヨーク株式市場でダウ平均株価が史上初めて4万ドルを突破した。 こうした株価の上昇を受けて、大企業のトップたちは、庶民には想像もつかないような巨額の報酬を受け取ることが可能になっている。 アメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)が8月に発表した調査によると、アメリカの代表的な株価指数「S&P500」を構成する企業のCEOが昨年1年間に受け取った報酬は、平均的な働き手が5回以上の勤労人生を送らなければ稼げない金額に達しているという。 例えば、スターバックスのCEOを退任したばかりのラクスマン・ナラシムハンは、1400万ドルを超す報酬を受け取っていた。これは、2023会計年度に平均的な働き手が受け取る給料の1028倍に上る。 しかし、後任のブライアン・ニコルはさらに上を行く。9月9日にスターバックスのCEOに就任したニコルは、1年目だけで1億ドル以上を受け取る可能性がある。成果に連動して報酬が決まる面が大きいためだ』、「経済指標は良好で、株式相場も絶好調とバイデン政権は自画自賛していたが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くの庶民に実感はなかった> ミネソタ州グランドラピッズで生活する5人家族の母親、クリスティン・マディ(44)は、少しでも出費を切り詰めるために安売り店で買い物をし、旅行に行くのも控えている。食品価格の上昇を乗り切るために、ニワトリやガチョウやカモも飼い始めた。 マディは看護師として「立派な給料」を受け取っていて、夫のライアンも重機操縦の職に就いているが、一家の暮らしはギリギリだという・・・アメリカの株式相場は目下、絶好調と言っていいだろう。今年5月には、ニューヨーク株式市場でダウ平均株価が史上初めて4万ドルを突破した。 こうした株価の上昇を受けて、大企業のトップたちは、庶民には想像もつかないような巨額の報酬を受け取ることが可能になっている。 アメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)が8月に発表した調査によると、アメリカの代表的な株価指数「S&P500」を構成する企業のCEOが昨年1年間に受け取った報酬は、平均的な働き手が5回以上の勤労人生を送らなければ稼げない金額に達しているという」、なるほど。
・『政府の楽観論に抱く違和感 インフレ脱却をめぐるバイデンの楽観的な発言に、こうした途方もない格差の存在が合わさって、多くの中流層は政府との間に大きな断絶を感じていると、マディは指摘する。) 「現政権から無視されているという思いを抱いている」と、マディは言う。 「経済は堅調だという政府の言葉を聞くと、突き放されたように感じる。そうした主張は、私たちが日々の生活の中で体感していることと全く違う」 楽観できる材料がないわけではない。7月には、インフレ率が2.9%まで下落した。これは21年3月以来最も低い値だ。7月には、小売業の売上高も市場の予想を大きく上回り、前月比で1%増加した。 しかし、食品や住宅、その他の必需品やサービスの価格が上昇し続けている状況が人々の心理に及ぼしている影響は極めて大きいと、エコノミストたちは指摘する。 投資会社ワーニック・スピアー・ウェルス・マネジャーズのファイナンシャルアドバイザー、ジョーダン・ロドリゲスによれば、同社の顧客である投資家たちの間では、インフレが最大の関心事であり続けている。中小企業のオーナーの場合、その傾向がとりわけ顕著だという。 「(中小企業のオーナーたちにとって)最大の不安材料は景気減退ではない。製造業やそれに類する業種では、受注はたいてい減っていない」と、ロドリゲスは言う。 「最大の不安材料は優れた人材の確保でもない。ほとんどの経営者は、インフレが最大の不安材料だと言っている」) フロリダ州ケープコーラルに住むジョン・オルセン(53)も、そのような不安を痛感している。犬の誕生パーティー用品などを取りそろえたオンラインショップ「ポーティーエクスプレス・ドットコム」を経営するオルセンは、燃料費や食品価格の上昇などにより膨れ上がる事業経費に苦しめられている。 いまオルセンはクレジットカードの債務を抱えていて、会社が廃業に追い込まれるのではないかと恐れている。バイデンが言う「ソフトランディング」どころの話ではない。 「政府は私たちをだまそうとしているのではないか」と、オルセンは言う。「普通の人たちの感覚に比べて、信憑性の乏しいデータを基に発言しているように思う」 オルセンによれば、ビジネスオーナーとして最も手ごわく感じる問題はインフレだという。22年には、1981年以来最悪の9.1%までインフレ率が上昇したこともあった。 例えば、オーガニックチキンの仕入れ値は、ここ数年で2倍に跳ね上がった。これでは、ウォルマートや、ペット用品オンライン販売大手のチューイーといった大型チェーン店とは競争できない。 卵やガソリン、自動車保険といった基本的な生活用品やサービスの価格も、コロナ禍前と比べると大幅に上昇している』、「インフレ脱却をめぐるバイデンの楽観的な発言に、こうした途方もない格差の存在が合わさって、多くの中流層は政府との間に大きな断絶を感じていると、マディは指摘する。) 「現政権から無視されているという思いを抱いている」と、マディは言う。 「経済は堅調だという政府の言葉を聞くと、突き放されたように感じる。そうした主張は、私たちが日々の生活の中で体感していることと全く違う」・・・フロリダ州ケープコーラルに住むジョン・オルセン(53)も、そのような不安を痛感している。犬の誕生パーティー用品などを取りそろえたオンラインショップ「ポーティーエクスプレス・ドットコム」を経営するオルセンは、燃料費や食品価格の上昇などにより膨れ上がる事業経費に苦しめられている。 いまオルセンはクレジットカードの債務を抱えていて、会社が廃業に追い込まれるのではないかと恐れている。バイデンが言う「ソフトランディング」どころの話ではない。 「政府は私たちをだまそうとしているのではないか」と、オルセンは言う。「普通の人たちの感覚に比べて、信憑性の乏しいデータを基に発言しているように思う」 オルセンによれば、ビジネスオーナーとして最も手ごわく感じる問題はインフレだという」、「政府は私たちをだまそうとしているのではないか」と、政府統計への懐疑論まで出てい¥くるのは深刻だ。
・『クレカ債務という甘い誘惑 ピュー・リサーチセンターの調査によると、6月の時点で、シリアルや牛乳など朝食の定番品の価格は、20年1月と比べて約40%も高かった。食品全般で見ても、19〜23年の4年間で25%上昇と、住宅価格や娯楽費、医療費などの上昇を上回っている。 米農務省によると、同時期に輸送コストも27.1%上昇した。ただ、ガソリンの小売価格は乱高下が激しい。6月の小売価格は20年1月と比べると35.9%高かったが、7月下旬には1ガロン当たり3.598ドルと、22年半ばのピーク時と比べれば半額近くまで下がっている。8月半ば過ぎには3.382ドルと、1年前よりもわずかに安くなっている。 これに対して6月の自動車保険料は、20年1月と比べて47.3%も上昇した。その背景には、修理費の上昇(47.5%)がある。 「今は自宅のソファに寝転がっているしかない。ここ6〜7回企画したイベントは、利益がほとんど出なかったから」と、オルセンはため息をつく。「2年半前は年40〜50%のペースで売り上げが伸びていたのに、今はゼロに近い」 首都ワシントンに住むアディソン・ムーア(24)は、2つのアルバイトを掛け持ちしながら、職業訓練学校に通っている。月収600ドルでは贅沢をする余裕はほとんどなく、目先の数カ月を乗り切れるか考えるだけで精いっぱいだ。) 「正直言って、生活はかなり苦しい」とムーアは言う。「クレジットカードのおかげで生き延びているようなものだ。カードなら毎月の返済額を抑えることができるから」 現在は友人の実家に居候しているが、フードスタンプ(低所得者向け食料クーポン)の受給資格は失ってしまったため、1週間の食費を100ドル以下に抑えるのに必死だ。定期的な貯蓄はほとんどできない。 アメリカンドリームなんて夢のまた夢だ。「夢見る以前に乗り越えなければならないハードルが多すぎる」と、ムーアは浮かない顔で言う。 インフレが収束し、雇用指標も良好だから、米経済は景気後退を回避できるという見方に、ムーアは同意できない。経済指標は、多くのアメリカ人の置かれた状況を反映していないというのだ。 「数字は良好でも、私たちはとうてい明るい気分にはなれない」とムーアは言う。「指標が物語ることは、経済の末端で起きていることとは全く違う気がする」 ムーアと同じように、多くのアメリカ人はクレジットカードで生活費の支払いをしている。ニューヨーク連邦準備銀行によると、今年4〜6月期のアメリカの家計のクレジットカード債務残高は過去最高の1兆1400億ドルに達した。前年と比べて5.8%もの増加だ。 クレジットカードは、「あとで返済できる収入だと思っている」と、ムーアは語る。「いつも限度額ぎりぎりまで使い切っているのは、とにかく生活費が高いから。贅沢をしているわけじゃない」』、「首都ワシントンに住むアディソン・ムーア(24)は、2つのアルバイトを掛け持ちしながら、職業訓練学校に通っている。月収600ドルでは贅沢をする余裕はほとんどなく、目先の数カ月を乗り切れるか考えるだけで精いっぱいだ・・・米経済は景気後退を回避できるという見方に、ムーアは同意できない。経済指標は、多くのアメリカ人の置かれた状況を反映していないというのだ」、またまた政府統計への不信が出てきた。やはり、ハリス候補もこうした市井の市民の感覚も取り入れた演説をしなかったので、票が逃げていったのだろう。
・『年収15万ドル以上でも不安 モンタナ州ハバーに住むタイラー・アズア(31)も、夫を含む10人家族の毎月の生活費はクレジットカードで支払っている。週600ドルほどになる食料品もカード払いだ。 「とんでもない状況だ」と、アズアは言う。「(カードの返済で)私と夫の給料はほとんど手元に残らない。でも、どこを切り詰めればいいか分からない。毎晩ラーメンで済ますわけにもいかないし」 アズアは事務部門の管理職だが、1月にも9人目の子を出産予定で、好況への期待感より、将来への不安のほうが大きい。「クレジットカードは3枚持っているけれど、全部限度額まで使い切っている」と彼女は言う。「そして毎月の返済額は最小限に抑えている」 一家は1月に6LDKの家に引っ越したばかりだが、将来のことは全くわからないと、アズアは言う。「子供を産み、充実した人生を送り、子供たちが親よりも良い人生を送れるようにする経済的な余裕、そういうものが今は全然ない」と、アズアは語る。 「そうなればいいなと思うけれど、現実味は乏しい」 生活に不安を抱いているのは、低所得層や中間層だけではない。6月に発表されたフィラデルフィア連邦準備銀行の調査では、年収15万ドル以上のアメリカ人の約32.5%が、向こう6カ月の家計が赤字に陥らないか心配だと答えている。1年前は21.7%だったから大幅な上昇だ。 ただ、この調査で「将来が不安だ」と答えた人の割合が最も大きかったのは、年収4万ドル以下の層で、40%に上った。全調査対象者の平均は34.9%だった。) 「最近の経済指標は景気後退の可能性が低いことを示しているが、高金利、多額の債務、物価上昇の影響は家計に大きくのしかかっている」と、米調査会社ウォレットハブのアナリストであるチップ・ルポは語る。 「年初は家計のクレジットカード債務が5000億ドルほど減ったが、だんだんと雲行きが怪しくなってきた。今後はもっとひどくなるだろう。例年、クレジットカード債務が最も増えるのは秋以降だから」 FRBは9月、4年半ぶりに利下げに踏み切ったが、やりすぎればインフレの再燃につながる恐れがあると、ルポは警告する。 「多額の債務と物価上昇の根強い不安には、慎重な金融政策で対処する必要がある。確かにほとんどの人は今のところ仕事に就いているが、相当なやりくりをしなければ、その仕事では生活していけない」 それに経済指標は良好でも、多くの家庭にとって、猛烈な物価上昇の痛手は簡単には消えないと、職場文化の専門家であるジェシカ・クリーゲルは語る。「マクロ経済指標は、普通の人たちが肌身で感じる日常を反映していない」 そんななか、今後の波乱に備えるためにも、人々は自分の内面に目を向けるべきだと、クリーゲルは言う。 「こうなったのは誰のせいだと考えるのではなく、これから自分に起こる可能性があることをコントロールするために、いま自分にできることに意識を集中して、賢い選択をしていく必要がある」』、「「多額の債務と物価上昇の根強い不安には、慎重な金融政策で対処する必要がある。確かにほとんどの人は今のところ仕事に就いているが、相当なやりくりをしなければ、その仕事では生活していけない」 それに経済指標は良好でも、多くの家庭にとって、猛烈な物価上昇の痛手は簡単には消えないと、職場文化の専門家であるジェシカ・クリーゲルは語る。「マクロ経済指標は、普通の人たちが肌身で感じる日常を反映していない」 そんななか、今後の波乱に備えるためにも、人々は自分の内面に目を向けるべきだと、クリーゲルは言う。 「こうなったのは誰のせいだと考えるのではなく、これから自分に起こる可能性があることをコントロールするために、いま自分にできることに意識を集中して、賢い選択をしていく必要がある」、その通りだろう。
第三に、11月8日付け現代ビジネスが掲載した一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「「圧勝」トランプの「経済政策」で日本の自動車メーカーは大打撃…!そしてアメリカ国民を待ち受ける、まさかの「悲惨な末路」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/140945?imp=0
・『トランプ氏の経済政策は、企業寄りのものと考えられている。しかし、中長期的な観点からすると、さまざまな問題がある。高関税の賦課は、日本の自動車メーカーにも大きな影響を与える。それだけでなく、長期的に見れば、アメリカの成長をも阻害することになる』、興味深そうだ。
・『トランプ氏再選をマーケットは歓迎しているが…… アメリカ大統領選挙で、トランプ氏が勝った。また、共和党が上院を制することとなった。以下では、今後に予想される政策と、日本への影響について考えたい。 この問題については、短期的な影響と長期的な影響を分けて考えることが必要だ。 短期的な影響は、株式市場や為替市場に対する影響だ。長期的な影響は、通商関係や世界的分業に対する影響である。そして、減税政策がもたらす影響だ。 大統領選挙でトランプ氏優勢が伝わると、アメリカの株価だけでなく、日本の株価も上昇し、為替レートは円安に動いた。 一般に、トランプ氏の経済政策は企業寄りのものと解釈されているからだろう。特に法人税の減税が期待されているのだろう。 しかし、トランプ氏の経済政策が日本経済にとってプラスかどうかは分からない。法人税減税は、日本にとっては直接のメリットにはならない。その反面で、高関税は日本の輸出に悪影響を与える可能性が強い。 特に、メキシコからの輸入車に対する高税率の関税や、EV政策の見直しは、日本の自動車メーカーにとって大きな問題となる可能性もある』、メキシコ、アメリカ、カナダの3カ国はNAFTA(北米自由貿易協定をトランプは対象外にするようだ、アメリカファーストが国際条約にまで及ぶとは酷い話だ。影響を短期と長期に分けて分析するとはさすがだ。
・『円安が進む可能性、ただし攪乱要因も 金融市場ではトランプ氏の再選を織り込む「トランプトレード」が、選挙戦の終盤ですでに起こっていた。そして、インフレの再加速や財政悪化を懸念した国債の売り圧力が高まり、金利が上昇していた。 以下で述べるように、トランプ氏は大規模減税や関税引き上げを公約に掲げており、インフレの再燃や財政赤字の拡大を招く可能性がある。 こうした政策でインフレが再燃すれば、利上げが必要となる可能性がある。実際に米長期金利が上昇すれば、2024年7月の円安を超えた円安が進行する可能性もある。 ただし、トランプ氏は、もともとドル安志向だ。そして、景気刺激のために利下げを主張している。したがって、同氏の圧力が金融政策にかかれば、日米金利差がさらに縮小し、円高が進む可能性がある。 トランプ氏は、FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の金融政策に対して大統領が発言権を持つべきだと主張しているので、こうした圧力は無視できない。ただし、いうまでもないことだが、現在の制度では、大統領がFRBの決定に介入することはできない』、「現在の制度では、大統領がFRBの決定に介入することはできない」のは確かだが、なにせ「トランプ」のことゆえ、裏技を繰り出す可能性も否定できない。どう展開するか、楽しみだ。
・『トランプ高関税が引き起こすさまざまの問題 中長期的な問題として重要なのは、まず第1に、トランプ氏がアメリカの産業を保護するため、関税の引き上げを行なうとしていることだ。トランプ氏は、全ての輸入品に対して10~20%の関税をかけるとしている。そして、中国製品に対しては、60%の関税をかけるとしている。 また、中国に対する最恵国待遇を撤回し、中国への依存度を引き下げるとしている。 こうした措置は、自由貿易に対する大きな障害となるだろう。トランプ前政権時のような米中間関税引き上げ競争が再発すれば、世界的なサプライチェーンに大きな影響が及ぶ危険がある。 前政権時に実施された対中関税引き上げは、日本にはあまり大きな影響は及ばなかった。しかし、後で述べるように、今回は違うかもしれない。 また、高率関税は、アメリカ国内の物価上昇を加速化する可能性がある。前回は、人民元の切り下げや、サプライチェーンによる関税負担のために、アメリカ国内の物価への影響は限定的だった。しかし、今回は、引き上げ率も対象国も前回を上回るため、アメリカ国内の物価を上昇させる可能性がある。 トランプ氏は、規制緩和によってアメリカ国内で原油や天然ガスを増産し、それによってインフレを防止するとしている。しかし、そうした効果があるかどうかは疑問だ。 インフレが再加速すれば、FRBが金利引下げのテンポを弱めるだろう。仮にそうなれば、日米金利差が縮小せず、円安が進む可能性がある。 ただし、追加関税措置など保護主義的な政策が実行されることによって景気減速の懸念が広がり、利下げ圧力が強まるかもしれない』、問題はTSMCなど台湾のファウンドリーメーカーの関税がどうなるかだ。
・『日本の自動車産業に大きな影響の可能性 トランプ氏は、メキシコで生産してアメリカに輸入される自動車に100%の関税を課すとしている。10月10日のデトロイトでの演説では、メキシコの国境を越えて輸入されるすべての自動車に200%の関税をかけるとした。 仮にこうした関税引き上げが本当に実施されれば、日本の自動車業界にとっては大きな打撃となるだろう。 また、トランプ氏は、バイデン政権によるEV(電気自動車)の普及政策を非難していた。そして、EVの普及策を終わらせると約束していた。このため、EV購入に対する連邦税控除の廃止や、関税引き上げを実施するかもしれない。 EVの普及を進める政策が大幅に修正されれば、EVメーカーに打撃になるように思われる。そして、ガソリン車やディーゼル車、ハイブリッド車のメーカーには、プラスに働くように思える。 しかし、事態はそれほど簡単ではない。EV支援策縮小は、テスラよりも競合他社の方が大きいと言われる。仮にテスラがEV市場で優越的な立場を維持できるなら、EV支援の縮小によって、テスラが恩恵を受ける可能性が高いとも言われる』、「メキシコ」からの自動車輸入に関税をかけるとすれば、NAFTAに沿ってメキシコで生産してきた日本のメーカーには大打撃だ。
・『減税は短期的には恩恵だが、財政赤字を拡大 国内の税政策はどうか?トランプ氏は、前政権時代の2017年に、経済政策の柱として、10年間で総額1.5兆ドル規模の大型減税を実施した。これによって、法人税率を35%から21%に引き下げ、個人所得税の最高税率を39.6%から37%に引き下げた。 これは、富裕層優遇の減税策との批判があったのだが、トランプ氏は、今回の選挙戦で、減税策の期限を撤廃し、恒久的な制度にすると公約した。また、法人税率を、21%からさらに15%に引き下げるとした。 また、接客業に携わる人々が受け取っているチップや、社会保障の給付金への課税を廃止するとした。そして、住宅ローン金利を引き下げ、税制優遇措置などを通じて住宅の購入を支援するとした。一方、高齢者に対しては、公的医療保険や社会保障は、一切削減しないと明言した。 このような富裕層減税や法人税率の引き下げなどの政策は、短期的には、確かに企業に恩恵をもたらす。 ただし、それは、財政赤字の拡大を招く。そして、財政赤字の拡大はインフレ再燃をもたらす危険がある。 トランプ氏の支持基盤は、ラストベルト地帯などの貧しい白人が中心だと言われる。しかし、上記の減税政策を見る限り、こうした人たちが政策の対象として意識されているとは思えない。それにもかかわらず、貧しい白人がトランプ氏を支持するのはなぜなのであろうか? 私には、まったく不思議なことにしか思えない』、「トランプ氏の支持基盤は、ラストベルト地帯などの貧しい白人が中心だと言われる。しかし、上記の減税政策を見る限り、こうした人たちが政策の対象として意識されているとは思えない。それにもかかわらず、貧しい白人がトランプ氏を支持するのはなぜなのであろうか? 私には、まったく不思議なことにしか思えない」、私も同様だ。
・『長期的な経済成長にはマイナス アメリカでは、コロナから回復の初期において大量の早期退職が発生したため、顕著な労働力不足が生じた。それは賃金を上昇させ、インフレの原因となった。 こうした労働力不足を補ったのは、大量の不法移民であり、現在も安価な労働力としてインフレ沈静化と景気拡大に貢献している。不法移民を取り締まるのは当然だろうが、あまりに進めれば、アメリカの最大の長所である人種的寛容性を捨て去ることにもなる。 高関税による国内産業の保護は、長期的には、アメリカの経済発展の阻害要因になる。日本車への関税引き上げが実施されれば、日本の自動車業界にとっては大きな打撃となるが、それだけではない。アメリカに従来タイプの自動車産業が残ることが、アメリカの長期的な発展には阻害要因となるだろう。 トランプ氏の経済政策は、アメリカを強くするというのだが、長期的にはアメリカの発展にとってマイナスの効果をもたらすこととなる可能性が強い』、「トランプ氏の経済政策は、アメリカを強くするというのだが、長期的にはアメリカの発展にとってマイナスの効果をもたらすこととなる可能性が強い」、その通りだ。
タグ:トランプ (その55)(第二次トランプ政権はどこへ向かうのか?、ハリス氏惨敗の背景に「アメリカ中流階級の生活苦の悲鳴」が聞こえる、「圧勝」トランプの「経済政策」で日本の自動車メーカーは大打撃…!そしてアメリカ国民を待ち受ける、まさかの「悲惨な末路」) Newsweek日本版 冷泉彰彦氏による「第二次トランプ政権はどこへ向かうのか?」 「トランプ氏の勝因は、とにかく経済問題が主だと思います。物価への強い不満、雇用への強い不安が巨大なエネルギーとなって現状批判のモメンタムを作り出しました。2016年の勝利が価値観やカルチャーの戦いだったとすれば、今回は経済の現状への不信任というのが主だと思います」、なるほど。 「トランプ氏の側近としては、イーロン・マスク氏と、バンス次期副大統領という、天才級の頭脳が控えています。マスク氏には、良くも悪くも文明論的な独自の世界観があり、バンス氏には議会との人脈、軍歴、ビジネス歴などを通じて獲得した実務能力があります。 彼らが、おそらく政権の軸となると思われますし、既に78歳と高齢のトランプ氏は、これまで以上に彼らを重用し、その周囲には新しい世代の実務家が集まるかもしれません。 日本の外交においては、一期目の場合は安倍晋三氏の必死の努力で、基本的には反日政策に走る潜在リスクを、首脳間の信頼関係で最小化するという作戦が成功しました。ですが、今回はトランプ主義の裏にマスク氏の思想、バンス氏の新保守主義などが控えていることから、彼らの深謀遠慮も読み解きながらの外交が必要です・・・第2は、経済政策です。現在、最新の時点では物価は相当程度の沈静化をしています。 外食は下がらないものの、ファストフードは安売りの必要性に追い込まれています。卵や缶コーラは下がらないものの、スーパーは多くの商品で安売りを始めました。 これは、中国経済の失速を受けて原油価格が沈静化したこともありますが、何よりも連銀のパウエル議長による「失速しない程度に景気を減速させる」というギリギリのソフトランディング策が成功しているからでもあります・・・第二次トランプ政権は、そこでどんな手が打てるのかというと、かなりカードは限られると思います。 そんな中で、不法移民を大量追放すれば農業とサービス業は回りません。中国製品に高額関税をかければ消費は一気に冷え込みます。 無理をしてスマホやタブレットを、アメリカの国内生産に切り替えれば、テスラのようにロボットを使った省力化が進み雇用は増えません。そうした中で、巨大な現状不満を受けて当選してもできることは限られています。ここは、待ったなしの課題であり、政策を最適解に寄せることができるのか、厳しく問われると思います」、なるほど。 「今回にトランプ氏に入れた巨大な票は、NATOの結束を緩め、ウクライナの一方的な敗戦を認めるかというと、そこまで考えたうえでの投票行動ではないと思います。つまり、ウクライナ問題には今回の争点として民意の判断は無かったとも言えます。そんな中で、トランプ氏にできることには限りがあります。 何よりも、プーチン氏自身の中に戦時体制と戦時経済による求心力維持、これに依存する部分があるのであれば、多少の好条件でも停戦をのむ選択はないのかもしれません。 仮にそうした大局的な観点から「自分が当選したら即時停戦して見せる」という発言が、シリアスなものではなく、現実的な、つまりNATOや西側同盟の基盤を壊さない方向に着地する可能性も残っていると思います・・・暴言を軸とした無謀な政治ではなく、実現可能な保守政治へと軟着陸してゆく、それが二期目の行く末の可能性としては大きいと思います。経済と外交でそのようなカラーが見えてくるのかどうか、これからの動きに注目したいと思います」、なるほど。 ジョシュア・レット・ミラー氏による「ハリス氏惨敗の背景に「アメリカ中流階級の生活苦の悲鳴」が聞こえる」 「経済指標は良好で、株式相場も絶好調とバイデン政権は自画自賛していたが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くの庶民に実感はなかった> ミネソタ州グランドラピッズで生活する5人家族の母親、クリスティン・マディ(44)は、少しでも出費を切り詰めるために安売り店で買い物をし、旅行に行くのも控えている。食品価格の上昇を乗り切るために、ニワトリやガチョウやカモも飼い始めた。 マディは看護師として「立派な給料」を受け取っていて、夫のライアンも重機操縦の職に就いているが、一家の暮らしはギリギリだという・・・ アメリカの株式相場は目下、絶好調と言っていいだろう。今年5月には、ニューヨーク株式市場でダウ平均株価が史上初めて4万ドルを突破した。 こうした株価の上昇を受けて、大企業のトップたちは、庶民には想像もつかないような巨額の報酬を受け取ることが可能になっている。 アメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)が8月に発表した調査によると、アメリカの代表的な株価指数「S&P500」を構成する企業のCEOが昨年1年間に受け取った報酬は、平均的な働き手が5回以上の勤労人生を送らなければ稼げない金額に達していると という」、なるほど。 「インフレ脱却をめぐるバイデンの楽観的な発言に、こうした途方もない格差の存在が合わさって、多くの中流層は政府との間に大きな断絶を感じていると、マディは指摘する。) 「現政権から無視されているという思いを抱いている」と、マディは言う。 「経済は堅調だという政府の言葉を聞くと、突き放されたように感じる。そうした主張は、私たちが日々の生活の中で体感していることと全く違う」・・・フロリダ州ケープコーラルに住むジョン・オルセン(53)も、そのような不安を痛感している。 犬の誕生パーティー用品などを取りそろえたオンラインショップ「ポーティーエクスプレス・ドットコム」を経営するオルセンは、燃料費や食品価格の上昇などにより膨れ上がる事業経費に苦しめられている。 いまオルセンはクレジットカードの債務を抱えていて、会社が廃業に追い込まれるのではないかと恐れている。バイデンが言う「ソフトランディング」どころの話ではない。 「政府は私たちをだまそうとしているのではないか」と、オルセンは言う。「普通の人たちの感覚に比べて、信憑性の乏しいデータを基に発言しているように思う」 オルセンによれば、ビジネスオーナーとして最も手ごわく感じる問題はインフレだという」、「政府は私たちをだまそうとしているのではないか」と、政府統計への懐疑論まで出てい¥くるのは深刻だ。 「首都ワシントンに住むアディソン・ムーア(24)は、2つのアルバイトを掛け持ちしながら、職業訓練学校に通っている。月収600ドルでは贅沢をする余裕はほとんどなく、目先の数カ月を乗り切れるか考えるだけで精いっぱいだ・・・米経済は景気後退を回避できるという見方に、ムーアは同意できない。経済指標は、多くのアメリカ人の置かれた状況を反映していないというのだ」、またまた政府統計への不信が出てきた。やはり、ハリス候補もこうした市井の市民の感覚も取り入れた演説をしなかったので、票が逃げていったのだろう。 「「多額の債務と物価上昇の根強い不安には、慎重な金融政策で対処する必要がある。確かにほとんどの人は今のところ仕事に就いているが、相当なやりくりをしなければ、その仕事では生活していけない」 それに経済指標は良好でも、多くの家庭にとって、猛烈な物価上昇の痛手は簡単には消えないと、職場文化の専門家であるジェシカ・クリーゲルは語る。「マクロ経済指標は、普通の人たちが肌身で感じる日常を反映していない」 そんななか、今後の波乱に備えるためにも、人々は自分の内面に目を向けるべきだと、クリーゲルは言う。 「こうなったのは誰のせいだと考えるのではなく、これから自分に起こる可能性があることをコントロールするために、いま自分にできることに意識を集中して、賢い選択をしていく必要がある」、その通りだろう。 現代ビジネス 野口 悠紀雄氏による「「圧勝」トランプの「経済政策」で日本の自動車メーカーは大打撃…!そしてアメリカ国民を待ち受ける、まさかの「悲惨な末路」」 メキシコ、アメリカ、カナダの3カ国はNAFTA(北米自由貿易協定をトランプは対象外にするようだ、アメリカファーストが国際条約にまで及ぶとは酷い話だ。影響を短期と長期に分けて分析するとはさすがだ。 「現在の制度では、大統領がFRBの決定に介入することはできない」のは確かだが、なにせ「トランプ」のことゆえ、裏技を繰り出す可能性も否定できない。どう展開するか、楽しみだ。 問題はTSMCなど台湾のファウンドリーメーカーの関税がどうなるかだ。 「メキシコ」からの自動車輸入に関税をかけるとすれば、NAFTAに沿ってメキシコで生産してきた日本のメーカーには大打撃だ。 「トランプ氏の支持基盤は、ラストベルト地帯などの貧しい白人が中心だと言われる。しかし、上記の減税政策を見る限り、こうした人たちが政策の対象として意識されているとは思えない。それにもかかわらず、貧しい白人がトランプ氏を支持するのはなぜなのであろうか? 私には、まったく不思議なことにしか思えない」、私も同様だ。 「トランプ氏の経済政策は、アメリカを強くするというのだが、長期的にはアメリカの発展にとってマイナスの効果をもたらすこととなる可能性が強い」、その通りだ。