宇宙(その3)(インフレーション宇宙論:3題:「ビッグバン」の前に何が起きていたのか教えよう…「宇宙の起源」のナゾを解く新理論の「スゴすぎる中身」、おかしい 「ビッグバン」の大爆発から始まったにしてはあまりにも…素朴な問いから生まれた「宇宙最大の難問」、宇宙誕生直後に分かれた「4つの力」が統一できるとしたら…アインシュタインも夢見た「究極の理論」が実現する日) [科学技術]
宇宙については、本年9月11日に取上げた。今日は、(その3)(インフレーション宇宙論:3題:「ビッグバン」の前に何が起きていたのか教えよう…「宇宙の起源」のナゾを解く新理論の「スゴすぎる中身」、おかしい 「ビッグバン」の大爆発から始まったにしてはあまりにも…素朴な問いから生まれた「宇宙最大の難問」、宇宙誕生直後に分かれた「4つの力」が統一できるとしたら…アインシュタインも夢見た「究極の理論」が実現する日)である。
先ずは、本年11月12日付け現代ビジネスが掲載したインフレーション宇宙論の提唱者である東大名誉教授の佐藤勝彦氏による「「ビッグバン」の前に何が起きていたのか教えよう…「宇宙の起源」のナゾを解く新理論の「スゴすぎる中身」」を「紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/139997
・『宇宙はどのように始まったのか―― これまで多くの物理学者たちが挑んできた難問だ。火の玉から始まったとするビッグバン理論が有名だが、未だよくわかっていない点も多い。 そこで提唱されたのが「インフレーション理論」である。本連載では、インフレーション理論の世界的権威が、そのエッセンスをわかりやすく解説。宇宙創生の秘密に迫る、物理学の叡智をご紹介する。 *本記事は、佐藤勝彦著『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです』、興味深そうだ。
・『宇宙のはじまり ――私たちの住んでいるこの宇宙には、「はじまり」があったのだろうか? もし「はじまり」があったのなら、それはどのようなものだったのか?―― これらは、人類の歴史が始まった頃から問われつづけている疑問です。かつては、これらの疑問に答えられるのは宗教や哲学しかないと考えられていました。あまりにも雲をつかむような話なので、科学では太刀打ちできないとされていたのです。 しかし、いま、「科学の言葉」でこれらの疑問に答えることができる時代になってきています。宇宙の誕生や進化・構造について研究する学問分野である「宇宙論」が、この100年ほどの間に驚くほどの進歩を遂げたからです。 たかだか百数十年前、人間にとって宇宙とは、私たちが住む天の川銀河がすべてでした。人間が観測できる宇宙が、そこまでだったのです。しかし今世紀のはじめ、観測技術の爆発的進歩により、宇宙は少なくとも400億光年の大きさまで広がっていて、そこには無数の銀河が存在し、天の川銀河はその一つにすぎないことを私たちは知っています。そして、この宇宙はビッグバンと呼ばれる「火の玉」から始まったことまで、私たちは知ることができました。 ただ、このような宇宙についての知の広がりに貢献したのは、観測だけではありません。むしろ観測より先に、「宇宙はこうなっているのではないか」と予想する理論があり、それが観測によって証明されることで、宇宙論は発展してきました。 20世紀初頭にアインシュタインによってつくられた、時間や空間を考える相対性理論、また、同じくこの時期にボーア、ハイゼンベルグ、シュレディンガーらによりつくられた、ミクロの世界を記述する量子論。これらは現代の物理学を支える2本の柱ですが、宇宙論もまた、この2つの理論が確立されたことで、飛躍的な進歩を遂げたのです。 とりつくしまもないような宇宙のさまざまなナゾが、物理学の理論によって解き明かせるようになったことを、私も物理学者の一人として大いに誇りに思っています。 いまや有名になったビッグバン理論も相対性理論と量子論をもとに築かれたものですが、137億年も前の宇宙誕生のシナリオが理論によって予言され、それがのちに観測事実によって証明されるというのは本当に驚くべきことで、すばらしいことだと思います。 しかし、やがて研究が進むにつれ、ビッグバン理論だけでは宇宙創生について十分に説明しきれないことがわかってきました。たとえばビッグバン理論では、宇宙がなぜ「火の玉」から始まったかについては、答えることができません。また、ビッグバン理論を推し進めていくと、宇宙の究極のはじまりは「特異点」という、物理学の法則がまったく破綻した点であったと考えざるをえなくなります。いわば宇宙には物理学が及ばない「神の領域」があることを認めざるをえないわけで、これは物理学に携わる者として容易にはうけいれがたいことです』、「むしろ観測より先に、「宇宙はこうなっているのではないか」と予想する理論があり、それが観測によって証明されることで、宇宙論は発展してきました。 20世紀初頭にアインシュタインによってつくられた、時間や空間を考える相対性理論、また、同じくこの時期にボーア、ハイゼンベルグ、シュレディンガーらによりつくられた、ミクロの世界を記述する量子論。これらは現代の物理学を支える2本の柱ですが、宇宙論もまた、この2つの理論が確立されたことで、飛躍的な進歩を遂げたのです・・・ビッグバン理論だけでは宇宙創生について十分に説明しきれないことがわかってきました。たとえばビッグバン理論では、宇宙がなぜ「火の玉」から始まったかについては、答えることができません。また、ビッグバン理論を推し進めていくと、宇宙の究極のはじまりは「特異点」という、物理学の法則がまったく破綻した点であったと考えざるをえなくなります。いわば宇宙には物理学が及ばない「神の領域」があることを認めざるをえないわけで、これは物理学に携わる者として容易にはうけいれがたいことです」、なるほど。
・『「インフレーション理論」の衝撃的な登場 私やグースらが提唱したインフレーション理論とは、ごく大づかみに言えば、物理学の言葉で宇宙創生を記述しようという理論です。最初は突拍子もない説という見方もありましたが、いまではインフレーション理論は宇宙創生の標準理論として認知されるまでになりました。 さらにインフレーション理論によって、宇宙創生のみならず、宇宙はこれからどうなるのか、そして宇宙とはどのような姿をしているのかについても予言できるようになりました。10の100乗年後という途方もない未来や、宇宙は私たちの宇宙のほかにも無数にあるというマルチバースの考え方など、想像を絶するような宇宙像が新たに提示されてきているのです。 『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』は、そうしたインフレーション理論とはどのようなものか、宇宙論の初心者である読者にも「およそこういうことなのだな」と輪郭をつかんでいただくことをめざして書かれたものです。 なにしろ物理学の最先端の話ですから、どうしても難しい言葉や概念は避けて通れません。しかし、可能なかぎり厳密さよりもわかりやすさを優先し、言及しなくとも大筋の理解には支障がなさそうな事柄は、思いきって説明を省きました。そのため、少し宇宙論にくわしい方には物足りない点もあるかもしれませんが、木にとらわれずに大きな森の姿を広く一般の方に知っていただきたいという思いからとご理解ください。 近年では宇宙は、ダークマターやダークエネルギーなどの新たな難問をわれわれ物理学者に投げかけてきています。これらは宇宙についての理論や観測が進歩したからこそ発見された問題です。新しいことを知れば、新たな問題に突き当たり、それを解決することでまた新たな発見がある。物理学はこうして進歩してきたのであり、これらの難問もいずれは解決され、その過程でまた新たな知の扉がひとつ開かれることでしょう。 大切なのは、なにごとにおいてもどうしたら科学の言葉で説明できるだろうかと考えぬく態度ではないかと思います。この本を通して読者のみなさんにも、そうした物理学者の精神を感じとっていただければ幸いです。 さらに「インフレーション宇宙論」シリーズの連載記事では、宇宙物理学の最前線を紹介していく。 【続き<おかしい、「ビッグバン」の大爆発から始まったにしてはあまりにも…素朴な問いから生まれた「宇宙最大の難問」>を読む】』、「インフレーション理論とは、ごく大づかみに言えば、物理学の言葉で宇宙創生を記述しようという理論です。最初は突拍子もない説という見方もありましたが、いまではインフレーション理論は宇宙創生の標準理論として認知されるまでになりました。 さらにインフレーション理論によって、宇宙創生のみならず、宇宙はこれからどうなるのか、そして宇宙とはどのような姿をしているのかについても予言できるようになりました。10の100乗年後という途方もない未来や、宇宙は私たちの宇宙のほかにも無数にあるというマルチバースの考え方など、想像を絶するような宇宙像が新たに提示されてきているのです・・・大切なのは、なにごとにおいてもどうしたら科学の言葉で説明できるだろうかと考えぬく態度ではないかと思います」、なるほど。
・『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか 本書の詳しい内容はこちら 多くの人に知ってほしい「宇宙のはじまり」の話 提唱者が思いきりやさしく書いた1番わかりやすいインフレーション理論入門 ――宇宙の誕生から終焉まで そしてマルチバースを予言―― 宇宙は火の玉から始まったとするビッグバン理論では、特異点すなわち「神の一撃」を認めざるをえない。物理学の言葉だけで宇宙創生を記述したい、という著者の願いがインフレーション理論を生み、現在では宇宙創生の標準理論として認知された。その内容を万人が理解できるよう書かれた、最も平明なインフレーション理論の入門書! 《目次》 第1章 インフレーション理論以前の宇宙像 第2章 インフレーション理論の誕生 第3章 観測が示したインフレーションの証拠と新たな謎 第4章 インフレーションが予測する宇宙の未来 第5章 インフレーションが予言するマルチバース 第6章 「人間原理」という考え方』、「インフレーション理論入門 ――宇宙の誕生から終焉まで そしてマルチバースを予言―― 宇宙は火の玉から始まったとするビッグバン理論では、特異点すなわち「神の一撃」を認めざるをえない。物理学の言葉だけで宇宙創生を記述したい、という著者の願いがインフレーション理論を生み、現在では宇宙創生の標準理論として認知された。その内容を万人が理解できるよう書かれた、最も平明なインフレーション理論の入門書! 、なるほど、
次に、11月12日付け現代ビジネスが掲載した佐藤勝彦氏による「おかしい、「ビッグバン」の大爆発から始まったにしてはあまりにも…素朴な問いから生まれた「宇宙最大の難問」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/139999
・『・・・『ビッグバン理論が解けない難問 ――なぜなのかはわからないけれども、宇宙は火の玉として生まれた。そして、膨張していくなかで次第に温度が下がり、ガスが固まって星が生まれ、銀河や銀河団が形成され、現在のような多様で美しい宇宙がつくられた―― これが、ビッグバン理論の概要です。ビッグバン理論は、現実の観測によって傍証が示されました。そのことは確かなのですが、実はこの理論には、原理的に困難な問題がいくつかあるのです。本記事ではまず、そのことを見ていきます。 まず一つには、宇宙が「特異点」から始まったと考えざるをえないことです。特異点とは、物理学の法則が破綻する「密度が無限大」「温度が無限大」の点のことです。宇宙が膨張しているということは、その時間を逆にたどっていくと、宇宙はどんどん小さくなって、エネルギー密度はどんどん高くなっていきます。そして宇宙のはじまりが点であったならば、ついにエネルギー密度は無限大になってしまうのです。 つまり、宇宙のはじまりは物理学が破綻した点だったと考えざるをえないのです。キリスト教世界では「神の一撃」といわれますが、そういう物理学を超越した概念を持ってこなければ、宇宙が始まらないということです。思い上がりだと言われるかもしれませんが、物理学者は神の力を借りずに物理法則だけで宇宙の創造を語りたいと考えるものです。しかし、ビッグバン理論だけでは、それはできないのです。 二つめは、ビッグバン理論は、宇宙はなぜ火の玉になったのかについては、何も答えていないことです。初期の宇宙が火の玉になる理由は何も説明していないのです。これでは、宇宙のはじまりについて説明していることにはならないともいえます。 また、ビッグバン理論では現在の宇宙構造の起源を説明できないという問題もあります。宇宙の大きさが非常に小さかったときに、その中に「密度ゆらぎ」といわれる小さな濃淡のムラがあったことで、のちに濃度の濃いところを中心にガスが固まり、星や銀河、銀河団といった構造ができたと考えられています。しかし、ビッグバン理論では非常に小さな「ゆらぎ」しかつくれず、宇宙の初期に、銀河や銀河団のタネになるような濃淡をつくることが理論的に難しいのです』、「ビッグバン理論は、現実の観測によって傍証が示されました。そのことは確かなのですが、実はこの理論には、原理的に困難な問題がいくつかあるのです。本記事ではまず、そのことを見ていきます。 まず一つには、宇宙が「特異点」から始まったと考えざるをえないことです。特異点とは、物理学の法則が破綻する「密度が無限大」「温度が無限大」の点のことです。宇宙が膨張しているということは、その時間を逆にたどっていくと、宇宙はどんどん小さくなって、エネルギー密度はどんどん高くなっていきます。そして宇宙のはじまりが点であったならば、ついにエネルギー密度は無限大になってしまうのです。 つまり、宇宙のはじまりは物理学が破綻した点だったと考えざるをえないのです。キリスト教世界では「神の一撃」といわれますが、そういう物理学を超越した概念を持ってこなければ、宇宙が始まらないということです・・・二つめは、ビッグバン理論は、宇宙はなぜ火の玉になったのかについては、何も答えていないことです。初期の宇宙が火の玉になる理由は何も説明していないのです。これでは、宇宙のはじまりについて説明していることにはならないともいえます。 また、ビッグバン理論では現在の宇宙構造の起源を説明できないという問題もあります。宇宙の大きさが非常に小さかったときに、その中に「密度ゆらぎ」といわれる小さな濃淡のムラがあったことで、のちに濃度の濃いところを中心にガスが固まり、星や銀河、銀河団といった構造ができたと考えられています。しかし、ビッグバン理論では非常に小さな「ゆらぎ」しかつくれず、宇宙の初期に、銀河や銀河団のタネになるような濃淡をつくることが理論的に難しいのです』、なるほど。
・『なぜ宇宙は「なめらか」に見えるのか それから、「ゆらぎ」の問題と裏表の話になりますが、宇宙の構造は遠いところまですべて一様なのはなぜかという問題があります。たとえば私たちの住む銀河から100億光年離れたところにある銀河と、その銀河とは反対方向に100億光年離れたところにある銀河とは、宇宙のはじまりから現在まで一度も因果関係を持ったことはありません。因果関係を持たない領域どうしが、言い換えれば、これまでまったく関わりを持たず相談もできないような遠方の領域どうしが、同じような構造をしているのはなぜなのかという問題です。これを「一様性問題」といいますが、この問題に対して、ビッグバン理論は答えることができません。 さらに、宇宙は膨張を続けているわけですが、観測によるかぎり、われわれの宇宙はほとんど曲がっていません(曲率がゼロに近い)。ユークリッド幾何学が成り立つような平坦な宇宙です。しかし、平坦なまま大きく膨張させることは、数学的には非常に困難なのです。これはプリンストン大学のロバート・ディッケが指摘した問題で、「平坦性問題」といわれています。これにもビッグバン理論は答えることができません。 このことを簡単に説明しましょう。 最初に、神様が「宇宙」という名のロケットを打ち上げると考えてみます。このロケットは、曲率が正か負かによって飛翔(=膨張)のしかたが変わってきます。神様が宇宙を打ち上げる力が少しでも弱い(曲率が正)と、加速度が足りず、宇宙は十分に飛翔せずに重力で落下してつぶれてしまいます。宇宙は短命となるため、私たちのような生命は誕生できません。逆に神様の力が少しでも強すぎる(曲率が負)と、非常に速い飛翔をしてしまい、ガスは一様に希薄になってしまうので、ガスが固まって天体を構成することができません。もちろん、生命は存在できません(図2―1)。 (図2―1 平坦性問題 はリンク先参照) 私たちが宇宙に存在するためには、神様が打ち上げの速度をきわめて精密に調整して、打ち上げから140億年近くたった現在でも曲率がほぼゼロという平坦な宇宙になるように設定しなければなりません。ほんの少しでも力が強かったり、弱かったりすると、現在の私たちは存在できないのです。そのためには打ち上げの速度(=膨張速度)を、なんと100桁という精度で微調整しなければなりません。 しかも、物理学には量子的な「ゆらぎ」、いわゆる「量子ゆらぎ」というものがあってつねに微小な振動をしているため、このような精度を確保することはきわめて難しいのです。「神様の手」さえも量子的にゆらいでいるため、曲率がほぼゼロになるよう(宇宙が平坦になるよう)、膨張速度を微調整することは至難の業なのです。これが「平坦性問題」です。 これらが、ビッグバン理論の原理的な困難です(図2―2)。 (図2―2 ビッグバン理論の原理的困難 はリンク先参照) そして、こうした問題に物理学の言葉で答えるのが、1981年に私やアラン・グースらが提唱したインフレーション理論なのです。次回から、ご説明していきましょう。 さらに「インフレーション宇宙論」シリーズの連載記事では、宇宙物理学の最前線を紹介していく。 【続き<宇宙誕生直後に分かれた「4つの力」が統一できるとしたら…アインシュタインも夢見た「究極の理論」が実現する日>を読む】 〈インフレーション宇宙論〉各回記事はこちらから)』、「神様が「宇宙」という名のロケットを打ち上げると考えてみます。このロケットは、曲率が正か負かによって飛翔(=膨張)のしかたが変わってきます。神様が宇宙を打ち上げる力が少しでも弱い(曲率が正)と、加速度が足りず、宇宙は十分に飛翔せずに重力で落下してつぶれてしまいます。宇宙は短命となるため、私たちのような生命は誕生できません。逆に神様の力が少しでも強すぎる(曲率が負)と、非常に速い飛翔をしてしまい、ガスは一様に希薄になってしまうので、ガスが固まって天体を構成することができません。もちろん、生命は存在できません(図2―1)。 (図2―1 平坦性問題 はリンク先参照) 私たちが宇宙に存在するためには、神様が打ち上げの速度をきわめて精密に調整して、打ち上げから140億年近くたった現在でも曲率がほぼゼロという平坦な宇宙になるように設定しなければなりません。ほんの少しでも力が強かったり、弱かったりすると、現在の私たちは存在できないのです。そのためには打ち上げの速度(=膨張速度)を、なんと100桁という精度で微調整しなければなりません。 しかも、物理学には量子的な「ゆらぎ」、いわゆる「量子ゆらぎ」というものがあってつねに微小な振動をしているため、このような精度を確保することはきわめて難しいのです。「神様の手」さえも量子的にゆらいでいるため、曲率がほぼゼロになるよう(宇宙が平坦になるよう)、膨張速度を微調整することは至難の業なのです。これが「平坦性問題」です」、なるほど。
第三に、11月13日付け現代ビジネスが掲載した佐藤勝彦氏による「宇宙誕生直後に分かれた「4つの力」が統一できるとしたら…アインシュタインも夢見た「究極の理論」が実現する日」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/140000?imp=0
・・・・枝分かれした「四つの力」 ここからは、インフレーション理論がどのように生まれたのかを見ていきましょう。 私がこの理論を考えたきっかけには、素粒子についての理論である「力の統一理論」がありました。そこで、まずは力の統一理論について簡単に説明しましょう。ここからの話は少し難しくなります。これまでいろいろな宇宙論の本を読んできた読者のみなさんにも、この力の統一理論の話になると急に難しくなって挫折してしまったという方が多いかもしれません。この本ではそういうことがないよう、できるだけやさしくお話ししていくつもりです。 さて、私たちの世界に存在する物質が加速運動しているとき、そこにはつねに、力が働いています。すべての力は基本的に、四つに分類されると考えられています。これらの力のことを「四つの力」といいます。 その四つの力とは、万有引力として知られる「重力」、電気や磁石の力である「電磁気力」、原子核の中で働いている「弱い力」と、「強い力」です。弱い力、強い力とは、原子核の中で働いている二つの力のうち弱いほうの力、強いほうの力という意味で、現在では固有名詞になっています。このうち強い力は、湯川秀樹先生が見つけた、中性子と陽子を結びつける力で、原爆や水爆のエネルギーを出す力でもあります。弱い力というのは、中性子が電子(ベータ粒子)と反電子ニュートリノを放出して陽子になったりする、「ベータ崩壊」という変化を導く力です。 それぞれ別々のふるまいをするように見えるこれら四つの力を統一して、一つの力の法則にしようというのが、力の統一理論という考え方です。たとえば、ジェームズ・マクスウェルは1864年にマスウェル方程式を導き出し、それまでは別の力と考えられていた電気の力と磁気の力が同じ一つの力であることを示しました。同じ力であるということは、同じ理論で説明できるということです。このようにして、いずれは四つの力をすべて一つの理論で説明することができるのではないか、という考え方なのです。アインシュタインは晩年、プリンストン大学で、力の統一理論の走りというべき統一場(電磁気力と重力の統一理論)の研究に、一生懸命に取り組んでいました。彼が成功しなかったために、この理論は「アインシュタインの夢」ともいわれています』、「すべての力は基本的に、四つに分類されると考えられています。これらの力のことを「四つの力」といいます。 その四つの力とは、万有引力として知られる「重力」、電気や磁石の力である「電磁気力」、原子核の中で働いている「弱い力」と、「強い力」です。弱い力、強い力とは、原子核の中で働いている二つの力のうち弱いほうの力、強いほうの力という意味で、現在では固有名詞になっています。このうち強い力は、湯川秀樹先生が見つけた、中性子と陽子を結びつける力で、原爆や水爆のエネルギーを出す力でもあります。弱い力というのは、中性子が電子(ベータ粒子)と反電子ニュートリノを放出して陽子になったりする、「ベータ崩壊」という変化を導く力です。 それぞれ別々のふるまいをするように見えるこれら四つの力を統一して、一つの力の法則にしようというのが、力の統一理論という考え方です・・・いずれは四つの力をすべて一つの理論で説明することができるのではないか、という考え方なのです。アインシュタインは晩年、プリンストン大学で、力の統一理論の走りというべき統一場(電磁気力と重力の統一理論)の研究に、一生懸命に取り組んでいました。彼が成功しなかったために、この理論は「アインシュタインの夢」ともいわれています」、なるほど。
・『「アインシュタインの夢」がついに実現? しかし、1967年に、アインシュタインの夢を実現する一つの理論が生まれてきました。それが、アメリカのスティーヴン・ワインバーグとパキスタンのアブドゥス・サラムによる、ワインバーグ=サラム理論です。この理論によって、電磁気力と弱い力が統一されました。そのため、この理論は電弱統一理論、あるいは単純に統一理論とも呼ばれます。 さらに、その後、完全に完成した理論ではありませんが、重力を除く三つの力を統一した、大統一理論も現れました。これらの理論によって、現在、四つに分かれて存在している力は、元は一つの力であり、「宇宙誕生直後に枝分かれした」と考えられるようになってきたのです。 たとえば、電磁気力と弱い力は、絶対温度で1000兆Kという高温(=高エネルギー)状態を設定すれば、同様のふるまいをします。この電磁気力と弱い力に強い力を加えた三つの力は、さらに高エネルギーの10の28乗Kという状態を作り出せば、同じふるまいをするのです。 とすれば、私たちの世界にある四つの力は、宇宙誕生直後の高温(=高エネルギー)状態では、実は一つのものだったのではないか、それが宇宙の温度低下とともに枝分かれをしていったのではないか、ということが、四つの力を理論的に統一する研究を通して考えられるようになりました。 宇宙が誕生すると、10のマイナス44乗秒後という、時計では計れないような非常に短い時間の頃に、まず重力が、他の三つの力と分かれました。10のマイナス36乗秒後には、湯川先生が発見された強い力が枝分かれしました。そして10のマイナス11乗秒後には、電磁気力と弱い力が分かれたのです。 このように、宇宙誕生直後に次々と力が分かれて、現在のような四つの力がそろったという描像が、力の統一理論から考えられるようになりました。 言ってみれば、類人猿が進化して人間が生まれてくる過程で、チンパンジーやオランウータンに枝分かれをしたように、重力、強い力、そして電磁気力と弱い力が分かれてきたということです。言い換えれば、人間が過去に逆戻りするとチンパンジーやオランウータンと一緒になるように、四つの力も最初は一つのものだったのではないか。そう予言したのがこの理論でした。 こうした進化がなぜ起こるのかを考えるとき、生命の場合では突然変異と自然選択という進化の理論によって説明がなされます。では、力の進化(=力の枝分かれ)は、なぜ起こるのでしょうか。 力の統一理論では、これは「真空の相転移」によって起こるとしています。相転移とは、水が氷になるように、物質の性質(相)が変わることです。あらかじめ簡単に言っておきますと、宇宙の初期に温度が急激に下がったことで「真空の相転移」が起こり、真空の空間自体の性質が変わりました。すると、真空での力の伝わり方も変わったのです。そのような相転移が次々に起こり、そのたびに、重力が枝分かれし、強い力が枝分かれし、電磁気力と弱い力が枝分かれをしていったというのです』、「人間が過去に逆戻りするとチンパンジーやオランウータンと一緒になるように、四つの力も最初は一つのものだったのではないか。そう予言したのがこの理論でした。 こうした進化がなぜ起こるのかを考えるとき、生命の場合では突然変異と自然選択という進化の理論によって説明がなされます。では、力の進化(=力の枝分かれ)は、なぜ起こるのでしょうか。 力の統一理論では、これは「真空の相転移」によって起こるとしています。相転移とは、水が氷になるように、物質の性質(相)が変わることです。あらかじめ簡単に言っておきますと、宇宙の初期に温度が急激に下がったことで「真空の相転移」が起こり、真空の空間自体の性質が変わりました。すると、真空での力の伝わり方も変わったのです。そのような相転移が次々に起こり、そのたびに、重力が枝分かれし、強い力が枝分かれし、電磁気力と弱い力が枝分かれをしていったというのです」、壮大な理論だ。
・『カギになるのは「真空の相転移」 普通、真空とは何もない空っぽの状態と考えられています。その「真空」が、水が氷になるような相転移を起こすとはどういうことだろう? と、みなさんは不思議に思われるでしょう。 目に見えない微小な現象を説明する量子論の考え方で言えば、実は真空というのは真の空っぽの状態ではありません。よくよく見てみると、その空間では粒子と反粒子がペアで生まれては合体して消滅する、対生成・対消滅というものを繰り返しているのです(図2―3)』、「量子論の考え方で言えば、実は真空というのは真の空っぽの状態ではありません。よくよく見てみると、その空間では粒子と反粒子がペアで生まれては合体して消滅する、対生成・対消滅というものを繰り返しているのです」、なるほど。
・『真空にも物理的な実体がある たとえば電子という素粒子には、陽電子という反粒子があります。医学ではこの陽電子を使ったPET(陽電子放射断層撮影)という機器が作られています。この陽電子と電子も一つになると完全に消滅し、二つのガンマ線を放出します。 このように、粒子はペアで生まれたり消滅したりしているのです。真空の空間とは、本当に何もない空っぽの空間なのではなく、ただエネルギー的にいちばん低い基底状態を「真空」と呼んでいるだけなのです。つまり、真空にも物理的な実体があるということになります。 とすれば、真空が相転移を起こしても不思議なことではありません。 このことを最初に理論化したのが南部陽一郎先生で、2008年にノーベル賞を受賞しました。ノーベル物理学賞では、たとえば新しい粒子を発見したというような、何かを発見したという受賞理由は多くありますが、南部先生の受賞は具体的なものを発見したというのではなく、きわめて基礎的な、物理学全体に関わるような理論を構築したことによるのです。 先に述べた、力の統一理論の最初の理論であるワインバーグ=サラム理論は1979年にノーベル賞を受賞しましたが、これも南部先生の理論がもとになっています。真空の相転移という考え方が、電磁気力と弱い力を統一する電弱統一理論を生み出したわけです。 さらに「インフレーション宇宙論」シリーズの連載記事では、宇宙物理学の最前線を紹介していく。 【続き<インフレーション理論による「宇宙誕生のシナリオ」が革新的すぎる… 厳密な計算が示した「衝撃の結論」>を読む】 〈インフレーション宇宙論〉各回記事はこちらから)』、「真空の空間とは、本当に何もない空っぽの空間なのではなく、ただエネルギー的にいちばん低い基底状態を「真空」と呼んでいるだけなのです。つまり、真空にも物理的な実体があるということになります。 とすれば、真空が相転移を起こしても不思議なことではありません。 このことを最初に理論化したのが南部陽一郎先生で、2008年にノーベル賞を受賞しました。ノーベル物理学賞では、たとえば新しい粒子を発見したというような、何かを発見したという受賞理由は多くありますが、南部先生の受賞は具体的なものを発見したというのではなく、きわめて基礎的な、物理学全体に関わるような理論を構築したことによるのです」』、今後の「インフレーション宇宙論」の展開は適宜、フォローしていくつもりである。
先ずは、本年11月12日付け現代ビジネスが掲載したインフレーション宇宙論の提唱者である東大名誉教授の佐藤勝彦氏による「「ビッグバン」の前に何が起きていたのか教えよう…「宇宙の起源」のナゾを解く新理論の「スゴすぎる中身」」を「紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/139997
・『宇宙はどのように始まったのか―― これまで多くの物理学者たちが挑んできた難問だ。火の玉から始まったとするビッグバン理論が有名だが、未だよくわかっていない点も多い。 そこで提唱されたのが「インフレーション理論」である。本連載では、インフレーション理論の世界的権威が、そのエッセンスをわかりやすく解説。宇宙創生の秘密に迫る、物理学の叡智をご紹介する。 *本記事は、佐藤勝彦著『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです』、興味深そうだ。
・『宇宙のはじまり ――私たちの住んでいるこの宇宙には、「はじまり」があったのだろうか? もし「はじまり」があったのなら、それはどのようなものだったのか?―― これらは、人類の歴史が始まった頃から問われつづけている疑問です。かつては、これらの疑問に答えられるのは宗教や哲学しかないと考えられていました。あまりにも雲をつかむような話なので、科学では太刀打ちできないとされていたのです。 しかし、いま、「科学の言葉」でこれらの疑問に答えることができる時代になってきています。宇宙の誕生や進化・構造について研究する学問分野である「宇宙論」が、この100年ほどの間に驚くほどの進歩を遂げたからです。 たかだか百数十年前、人間にとって宇宙とは、私たちが住む天の川銀河がすべてでした。人間が観測できる宇宙が、そこまでだったのです。しかし今世紀のはじめ、観測技術の爆発的進歩により、宇宙は少なくとも400億光年の大きさまで広がっていて、そこには無数の銀河が存在し、天の川銀河はその一つにすぎないことを私たちは知っています。そして、この宇宙はビッグバンと呼ばれる「火の玉」から始まったことまで、私たちは知ることができました。 ただ、このような宇宙についての知の広がりに貢献したのは、観測だけではありません。むしろ観測より先に、「宇宙はこうなっているのではないか」と予想する理論があり、それが観測によって証明されることで、宇宙論は発展してきました。 20世紀初頭にアインシュタインによってつくられた、時間や空間を考える相対性理論、また、同じくこの時期にボーア、ハイゼンベルグ、シュレディンガーらによりつくられた、ミクロの世界を記述する量子論。これらは現代の物理学を支える2本の柱ですが、宇宙論もまた、この2つの理論が確立されたことで、飛躍的な進歩を遂げたのです。 とりつくしまもないような宇宙のさまざまなナゾが、物理学の理論によって解き明かせるようになったことを、私も物理学者の一人として大いに誇りに思っています。 いまや有名になったビッグバン理論も相対性理論と量子論をもとに築かれたものですが、137億年も前の宇宙誕生のシナリオが理論によって予言され、それがのちに観測事実によって証明されるというのは本当に驚くべきことで、すばらしいことだと思います。 しかし、やがて研究が進むにつれ、ビッグバン理論だけでは宇宙創生について十分に説明しきれないことがわかってきました。たとえばビッグバン理論では、宇宙がなぜ「火の玉」から始まったかについては、答えることができません。また、ビッグバン理論を推し進めていくと、宇宙の究極のはじまりは「特異点」という、物理学の法則がまったく破綻した点であったと考えざるをえなくなります。いわば宇宙には物理学が及ばない「神の領域」があることを認めざるをえないわけで、これは物理学に携わる者として容易にはうけいれがたいことです』、「むしろ観測より先に、「宇宙はこうなっているのではないか」と予想する理論があり、それが観測によって証明されることで、宇宙論は発展してきました。 20世紀初頭にアインシュタインによってつくられた、時間や空間を考える相対性理論、また、同じくこの時期にボーア、ハイゼンベルグ、シュレディンガーらによりつくられた、ミクロの世界を記述する量子論。これらは現代の物理学を支える2本の柱ですが、宇宙論もまた、この2つの理論が確立されたことで、飛躍的な進歩を遂げたのです・・・ビッグバン理論だけでは宇宙創生について十分に説明しきれないことがわかってきました。たとえばビッグバン理論では、宇宙がなぜ「火の玉」から始まったかについては、答えることができません。また、ビッグバン理論を推し進めていくと、宇宙の究極のはじまりは「特異点」という、物理学の法則がまったく破綻した点であったと考えざるをえなくなります。いわば宇宙には物理学が及ばない「神の領域」があることを認めざるをえないわけで、これは物理学に携わる者として容易にはうけいれがたいことです」、なるほど。
・『「インフレーション理論」の衝撃的な登場 私やグースらが提唱したインフレーション理論とは、ごく大づかみに言えば、物理学の言葉で宇宙創生を記述しようという理論です。最初は突拍子もない説という見方もありましたが、いまではインフレーション理論は宇宙創生の標準理論として認知されるまでになりました。 さらにインフレーション理論によって、宇宙創生のみならず、宇宙はこれからどうなるのか、そして宇宙とはどのような姿をしているのかについても予言できるようになりました。10の100乗年後という途方もない未来や、宇宙は私たちの宇宙のほかにも無数にあるというマルチバースの考え方など、想像を絶するような宇宙像が新たに提示されてきているのです。 『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』は、そうしたインフレーション理論とはどのようなものか、宇宙論の初心者である読者にも「およそこういうことなのだな」と輪郭をつかんでいただくことをめざして書かれたものです。 なにしろ物理学の最先端の話ですから、どうしても難しい言葉や概念は避けて通れません。しかし、可能なかぎり厳密さよりもわかりやすさを優先し、言及しなくとも大筋の理解には支障がなさそうな事柄は、思いきって説明を省きました。そのため、少し宇宙論にくわしい方には物足りない点もあるかもしれませんが、木にとらわれずに大きな森の姿を広く一般の方に知っていただきたいという思いからとご理解ください。 近年では宇宙は、ダークマターやダークエネルギーなどの新たな難問をわれわれ物理学者に投げかけてきています。これらは宇宙についての理論や観測が進歩したからこそ発見された問題です。新しいことを知れば、新たな問題に突き当たり、それを解決することでまた新たな発見がある。物理学はこうして進歩してきたのであり、これらの難問もいずれは解決され、その過程でまた新たな知の扉がひとつ開かれることでしょう。 大切なのは、なにごとにおいてもどうしたら科学の言葉で説明できるだろうかと考えぬく態度ではないかと思います。この本を通して読者のみなさんにも、そうした物理学者の精神を感じとっていただければ幸いです。 さらに「インフレーション宇宙論」シリーズの連載記事では、宇宙物理学の最前線を紹介していく。 【続き<おかしい、「ビッグバン」の大爆発から始まったにしてはあまりにも…素朴な問いから生まれた「宇宙最大の難問」>を読む】』、「インフレーション理論とは、ごく大づかみに言えば、物理学の言葉で宇宙創生を記述しようという理論です。最初は突拍子もない説という見方もありましたが、いまではインフレーション理論は宇宙創生の標準理論として認知されるまでになりました。 さらにインフレーション理論によって、宇宙創生のみならず、宇宙はこれからどうなるのか、そして宇宙とはどのような姿をしているのかについても予言できるようになりました。10の100乗年後という途方もない未来や、宇宙は私たちの宇宙のほかにも無数にあるというマルチバースの考え方など、想像を絶するような宇宙像が新たに提示されてきているのです・・・大切なのは、なにごとにおいてもどうしたら科学の言葉で説明できるだろうかと考えぬく態度ではないかと思います」、なるほど。
・『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか 本書の詳しい内容はこちら 多くの人に知ってほしい「宇宙のはじまり」の話 提唱者が思いきりやさしく書いた1番わかりやすいインフレーション理論入門 ――宇宙の誕生から終焉まで そしてマルチバースを予言―― 宇宙は火の玉から始まったとするビッグバン理論では、特異点すなわち「神の一撃」を認めざるをえない。物理学の言葉だけで宇宙創生を記述したい、という著者の願いがインフレーション理論を生み、現在では宇宙創生の標準理論として認知された。その内容を万人が理解できるよう書かれた、最も平明なインフレーション理論の入門書! 《目次》 第1章 インフレーション理論以前の宇宙像 第2章 インフレーション理論の誕生 第3章 観測が示したインフレーションの証拠と新たな謎 第4章 インフレーションが予測する宇宙の未来 第5章 インフレーションが予言するマルチバース 第6章 「人間原理」という考え方』、「インフレーション理論入門 ――宇宙の誕生から終焉まで そしてマルチバースを予言―― 宇宙は火の玉から始まったとするビッグバン理論では、特異点すなわち「神の一撃」を認めざるをえない。物理学の言葉だけで宇宙創生を記述したい、という著者の願いがインフレーション理論を生み、現在では宇宙創生の標準理論として認知された。その内容を万人が理解できるよう書かれた、最も平明なインフレーション理論の入門書! 、なるほど、
次に、11月12日付け現代ビジネスが掲載した佐藤勝彦氏による「おかしい、「ビッグバン」の大爆発から始まったにしてはあまりにも…素朴な問いから生まれた「宇宙最大の難問」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/139999
・『・・・『ビッグバン理論が解けない難問 ――なぜなのかはわからないけれども、宇宙は火の玉として生まれた。そして、膨張していくなかで次第に温度が下がり、ガスが固まって星が生まれ、銀河や銀河団が形成され、現在のような多様で美しい宇宙がつくられた―― これが、ビッグバン理論の概要です。ビッグバン理論は、現実の観測によって傍証が示されました。そのことは確かなのですが、実はこの理論には、原理的に困難な問題がいくつかあるのです。本記事ではまず、そのことを見ていきます。 まず一つには、宇宙が「特異点」から始まったと考えざるをえないことです。特異点とは、物理学の法則が破綻する「密度が無限大」「温度が無限大」の点のことです。宇宙が膨張しているということは、その時間を逆にたどっていくと、宇宙はどんどん小さくなって、エネルギー密度はどんどん高くなっていきます。そして宇宙のはじまりが点であったならば、ついにエネルギー密度は無限大になってしまうのです。 つまり、宇宙のはじまりは物理学が破綻した点だったと考えざるをえないのです。キリスト教世界では「神の一撃」といわれますが、そういう物理学を超越した概念を持ってこなければ、宇宙が始まらないということです。思い上がりだと言われるかもしれませんが、物理学者は神の力を借りずに物理法則だけで宇宙の創造を語りたいと考えるものです。しかし、ビッグバン理論だけでは、それはできないのです。 二つめは、ビッグバン理論は、宇宙はなぜ火の玉になったのかについては、何も答えていないことです。初期の宇宙が火の玉になる理由は何も説明していないのです。これでは、宇宙のはじまりについて説明していることにはならないともいえます。 また、ビッグバン理論では現在の宇宙構造の起源を説明できないという問題もあります。宇宙の大きさが非常に小さかったときに、その中に「密度ゆらぎ」といわれる小さな濃淡のムラがあったことで、のちに濃度の濃いところを中心にガスが固まり、星や銀河、銀河団といった構造ができたと考えられています。しかし、ビッグバン理論では非常に小さな「ゆらぎ」しかつくれず、宇宙の初期に、銀河や銀河団のタネになるような濃淡をつくることが理論的に難しいのです』、「ビッグバン理論は、現実の観測によって傍証が示されました。そのことは確かなのですが、実はこの理論には、原理的に困難な問題がいくつかあるのです。本記事ではまず、そのことを見ていきます。 まず一つには、宇宙が「特異点」から始まったと考えざるをえないことです。特異点とは、物理学の法則が破綻する「密度が無限大」「温度が無限大」の点のことです。宇宙が膨張しているということは、その時間を逆にたどっていくと、宇宙はどんどん小さくなって、エネルギー密度はどんどん高くなっていきます。そして宇宙のはじまりが点であったならば、ついにエネルギー密度は無限大になってしまうのです。 つまり、宇宙のはじまりは物理学が破綻した点だったと考えざるをえないのです。キリスト教世界では「神の一撃」といわれますが、そういう物理学を超越した概念を持ってこなければ、宇宙が始まらないということです・・・二つめは、ビッグバン理論は、宇宙はなぜ火の玉になったのかについては、何も答えていないことです。初期の宇宙が火の玉になる理由は何も説明していないのです。これでは、宇宙のはじまりについて説明していることにはならないともいえます。 また、ビッグバン理論では現在の宇宙構造の起源を説明できないという問題もあります。宇宙の大きさが非常に小さかったときに、その中に「密度ゆらぎ」といわれる小さな濃淡のムラがあったことで、のちに濃度の濃いところを中心にガスが固まり、星や銀河、銀河団といった構造ができたと考えられています。しかし、ビッグバン理論では非常に小さな「ゆらぎ」しかつくれず、宇宙の初期に、銀河や銀河団のタネになるような濃淡をつくることが理論的に難しいのです』、なるほど。
・『なぜ宇宙は「なめらか」に見えるのか それから、「ゆらぎ」の問題と裏表の話になりますが、宇宙の構造は遠いところまですべて一様なのはなぜかという問題があります。たとえば私たちの住む銀河から100億光年離れたところにある銀河と、その銀河とは反対方向に100億光年離れたところにある銀河とは、宇宙のはじまりから現在まで一度も因果関係を持ったことはありません。因果関係を持たない領域どうしが、言い換えれば、これまでまったく関わりを持たず相談もできないような遠方の領域どうしが、同じような構造をしているのはなぜなのかという問題です。これを「一様性問題」といいますが、この問題に対して、ビッグバン理論は答えることができません。 さらに、宇宙は膨張を続けているわけですが、観測によるかぎり、われわれの宇宙はほとんど曲がっていません(曲率がゼロに近い)。ユークリッド幾何学が成り立つような平坦な宇宙です。しかし、平坦なまま大きく膨張させることは、数学的には非常に困難なのです。これはプリンストン大学のロバート・ディッケが指摘した問題で、「平坦性問題」といわれています。これにもビッグバン理論は答えることができません。 このことを簡単に説明しましょう。 最初に、神様が「宇宙」という名のロケットを打ち上げると考えてみます。このロケットは、曲率が正か負かによって飛翔(=膨張)のしかたが変わってきます。神様が宇宙を打ち上げる力が少しでも弱い(曲率が正)と、加速度が足りず、宇宙は十分に飛翔せずに重力で落下してつぶれてしまいます。宇宙は短命となるため、私たちのような生命は誕生できません。逆に神様の力が少しでも強すぎる(曲率が負)と、非常に速い飛翔をしてしまい、ガスは一様に希薄になってしまうので、ガスが固まって天体を構成することができません。もちろん、生命は存在できません(図2―1)。 (図2―1 平坦性問題 はリンク先参照) 私たちが宇宙に存在するためには、神様が打ち上げの速度をきわめて精密に調整して、打ち上げから140億年近くたった現在でも曲率がほぼゼロという平坦な宇宙になるように設定しなければなりません。ほんの少しでも力が強かったり、弱かったりすると、現在の私たちは存在できないのです。そのためには打ち上げの速度(=膨張速度)を、なんと100桁という精度で微調整しなければなりません。 しかも、物理学には量子的な「ゆらぎ」、いわゆる「量子ゆらぎ」というものがあってつねに微小な振動をしているため、このような精度を確保することはきわめて難しいのです。「神様の手」さえも量子的にゆらいでいるため、曲率がほぼゼロになるよう(宇宙が平坦になるよう)、膨張速度を微調整することは至難の業なのです。これが「平坦性問題」です。 これらが、ビッグバン理論の原理的な困難です(図2―2)。 (図2―2 ビッグバン理論の原理的困難 はリンク先参照) そして、こうした問題に物理学の言葉で答えるのが、1981年に私やアラン・グースらが提唱したインフレーション理論なのです。次回から、ご説明していきましょう。 さらに「インフレーション宇宙論」シリーズの連載記事では、宇宙物理学の最前線を紹介していく。 【続き<宇宙誕生直後に分かれた「4つの力」が統一できるとしたら…アインシュタインも夢見た「究極の理論」が実現する日>を読む】 〈インフレーション宇宙論〉各回記事はこちらから)』、「神様が「宇宙」という名のロケットを打ち上げると考えてみます。このロケットは、曲率が正か負かによって飛翔(=膨張)のしかたが変わってきます。神様が宇宙を打ち上げる力が少しでも弱い(曲率が正)と、加速度が足りず、宇宙は十分に飛翔せずに重力で落下してつぶれてしまいます。宇宙は短命となるため、私たちのような生命は誕生できません。逆に神様の力が少しでも強すぎる(曲率が負)と、非常に速い飛翔をしてしまい、ガスは一様に希薄になってしまうので、ガスが固まって天体を構成することができません。もちろん、生命は存在できません(図2―1)。 (図2―1 平坦性問題 はリンク先参照) 私たちが宇宙に存在するためには、神様が打ち上げの速度をきわめて精密に調整して、打ち上げから140億年近くたった現在でも曲率がほぼゼロという平坦な宇宙になるように設定しなければなりません。ほんの少しでも力が強かったり、弱かったりすると、現在の私たちは存在できないのです。そのためには打ち上げの速度(=膨張速度)を、なんと100桁という精度で微調整しなければなりません。 しかも、物理学には量子的な「ゆらぎ」、いわゆる「量子ゆらぎ」というものがあってつねに微小な振動をしているため、このような精度を確保することはきわめて難しいのです。「神様の手」さえも量子的にゆらいでいるため、曲率がほぼゼロになるよう(宇宙が平坦になるよう)、膨張速度を微調整することは至難の業なのです。これが「平坦性問題」です」、なるほど。
第三に、11月13日付け現代ビジネスが掲載した佐藤勝彦氏による「宇宙誕生直後に分かれた「4つの力」が統一できるとしたら…アインシュタインも夢見た「究極の理論」が実現する日」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/140000?imp=0
・・・・枝分かれした「四つの力」 ここからは、インフレーション理論がどのように生まれたのかを見ていきましょう。 私がこの理論を考えたきっかけには、素粒子についての理論である「力の統一理論」がありました。そこで、まずは力の統一理論について簡単に説明しましょう。ここからの話は少し難しくなります。これまでいろいろな宇宙論の本を読んできた読者のみなさんにも、この力の統一理論の話になると急に難しくなって挫折してしまったという方が多いかもしれません。この本ではそういうことがないよう、できるだけやさしくお話ししていくつもりです。 さて、私たちの世界に存在する物質が加速運動しているとき、そこにはつねに、力が働いています。すべての力は基本的に、四つに分類されると考えられています。これらの力のことを「四つの力」といいます。 その四つの力とは、万有引力として知られる「重力」、電気や磁石の力である「電磁気力」、原子核の中で働いている「弱い力」と、「強い力」です。弱い力、強い力とは、原子核の中で働いている二つの力のうち弱いほうの力、強いほうの力という意味で、現在では固有名詞になっています。このうち強い力は、湯川秀樹先生が見つけた、中性子と陽子を結びつける力で、原爆や水爆のエネルギーを出す力でもあります。弱い力というのは、中性子が電子(ベータ粒子)と反電子ニュートリノを放出して陽子になったりする、「ベータ崩壊」という変化を導く力です。 それぞれ別々のふるまいをするように見えるこれら四つの力を統一して、一つの力の法則にしようというのが、力の統一理論という考え方です。たとえば、ジェームズ・マクスウェルは1864年にマスウェル方程式を導き出し、それまでは別の力と考えられていた電気の力と磁気の力が同じ一つの力であることを示しました。同じ力であるということは、同じ理論で説明できるということです。このようにして、いずれは四つの力をすべて一つの理論で説明することができるのではないか、という考え方なのです。アインシュタインは晩年、プリンストン大学で、力の統一理論の走りというべき統一場(電磁気力と重力の統一理論)の研究に、一生懸命に取り組んでいました。彼が成功しなかったために、この理論は「アインシュタインの夢」ともいわれています』、「すべての力は基本的に、四つに分類されると考えられています。これらの力のことを「四つの力」といいます。 その四つの力とは、万有引力として知られる「重力」、電気や磁石の力である「電磁気力」、原子核の中で働いている「弱い力」と、「強い力」です。弱い力、強い力とは、原子核の中で働いている二つの力のうち弱いほうの力、強いほうの力という意味で、現在では固有名詞になっています。このうち強い力は、湯川秀樹先生が見つけた、中性子と陽子を結びつける力で、原爆や水爆のエネルギーを出す力でもあります。弱い力というのは、中性子が電子(ベータ粒子)と反電子ニュートリノを放出して陽子になったりする、「ベータ崩壊」という変化を導く力です。 それぞれ別々のふるまいをするように見えるこれら四つの力を統一して、一つの力の法則にしようというのが、力の統一理論という考え方です・・・いずれは四つの力をすべて一つの理論で説明することができるのではないか、という考え方なのです。アインシュタインは晩年、プリンストン大学で、力の統一理論の走りというべき統一場(電磁気力と重力の統一理論)の研究に、一生懸命に取り組んでいました。彼が成功しなかったために、この理論は「アインシュタインの夢」ともいわれています」、なるほど。
・『「アインシュタインの夢」がついに実現? しかし、1967年に、アインシュタインの夢を実現する一つの理論が生まれてきました。それが、アメリカのスティーヴン・ワインバーグとパキスタンのアブドゥス・サラムによる、ワインバーグ=サラム理論です。この理論によって、電磁気力と弱い力が統一されました。そのため、この理論は電弱統一理論、あるいは単純に統一理論とも呼ばれます。 さらに、その後、完全に完成した理論ではありませんが、重力を除く三つの力を統一した、大統一理論も現れました。これらの理論によって、現在、四つに分かれて存在している力は、元は一つの力であり、「宇宙誕生直後に枝分かれした」と考えられるようになってきたのです。 たとえば、電磁気力と弱い力は、絶対温度で1000兆Kという高温(=高エネルギー)状態を設定すれば、同様のふるまいをします。この電磁気力と弱い力に強い力を加えた三つの力は、さらに高エネルギーの10の28乗Kという状態を作り出せば、同じふるまいをするのです。 とすれば、私たちの世界にある四つの力は、宇宙誕生直後の高温(=高エネルギー)状態では、実は一つのものだったのではないか、それが宇宙の温度低下とともに枝分かれをしていったのではないか、ということが、四つの力を理論的に統一する研究を通して考えられるようになりました。 宇宙が誕生すると、10のマイナス44乗秒後という、時計では計れないような非常に短い時間の頃に、まず重力が、他の三つの力と分かれました。10のマイナス36乗秒後には、湯川先生が発見された強い力が枝分かれしました。そして10のマイナス11乗秒後には、電磁気力と弱い力が分かれたのです。 このように、宇宙誕生直後に次々と力が分かれて、現在のような四つの力がそろったという描像が、力の統一理論から考えられるようになりました。 言ってみれば、類人猿が進化して人間が生まれてくる過程で、チンパンジーやオランウータンに枝分かれをしたように、重力、強い力、そして電磁気力と弱い力が分かれてきたということです。言い換えれば、人間が過去に逆戻りするとチンパンジーやオランウータンと一緒になるように、四つの力も最初は一つのものだったのではないか。そう予言したのがこの理論でした。 こうした進化がなぜ起こるのかを考えるとき、生命の場合では突然変異と自然選択という進化の理論によって説明がなされます。では、力の進化(=力の枝分かれ)は、なぜ起こるのでしょうか。 力の統一理論では、これは「真空の相転移」によって起こるとしています。相転移とは、水が氷になるように、物質の性質(相)が変わることです。あらかじめ簡単に言っておきますと、宇宙の初期に温度が急激に下がったことで「真空の相転移」が起こり、真空の空間自体の性質が変わりました。すると、真空での力の伝わり方も変わったのです。そのような相転移が次々に起こり、そのたびに、重力が枝分かれし、強い力が枝分かれし、電磁気力と弱い力が枝分かれをしていったというのです』、「人間が過去に逆戻りするとチンパンジーやオランウータンと一緒になるように、四つの力も最初は一つのものだったのではないか。そう予言したのがこの理論でした。 こうした進化がなぜ起こるのかを考えるとき、生命の場合では突然変異と自然選択という進化の理論によって説明がなされます。では、力の進化(=力の枝分かれ)は、なぜ起こるのでしょうか。 力の統一理論では、これは「真空の相転移」によって起こるとしています。相転移とは、水が氷になるように、物質の性質(相)が変わることです。あらかじめ簡単に言っておきますと、宇宙の初期に温度が急激に下がったことで「真空の相転移」が起こり、真空の空間自体の性質が変わりました。すると、真空での力の伝わり方も変わったのです。そのような相転移が次々に起こり、そのたびに、重力が枝分かれし、強い力が枝分かれし、電磁気力と弱い力が枝分かれをしていったというのです」、壮大な理論だ。
・『カギになるのは「真空の相転移」 普通、真空とは何もない空っぽの状態と考えられています。その「真空」が、水が氷になるような相転移を起こすとはどういうことだろう? と、みなさんは不思議に思われるでしょう。 目に見えない微小な現象を説明する量子論の考え方で言えば、実は真空というのは真の空っぽの状態ではありません。よくよく見てみると、その空間では粒子と反粒子がペアで生まれては合体して消滅する、対生成・対消滅というものを繰り返しているのです(図2―3)』、「量子論の考え方で言えば、実は真空というのは真の空っぽの状態ではありません。よくよく見てみると、その空間では粒子と反粒子がペアで生まれては合体して消滅する、対生成・対消滅というものを繰り返しているのです」、なるほど。
・『真空にも物理的な実体がある たとえば電子という素粒子には、陽電子という反粒子があります。医学ではこの陽電子を使ったPET(陽電子放射断層撮影)という機器が作られています。この陽電子と電子も一つになると完全に消滅し、二つのガンマ線を放出します。 このように、粒子はペアで生まれたり消滅したりしているのです。真空の空間とは、本当に何もない空っぽの空間なのではなく、ただエネルギー的にいちばん低い基底状態を「真空」と呼んでいるだけなのです。つまり、真空にも物理的な実体があるということになります。 とすれば、真空が相転移を起こしても不思議なことではありません。 このことを最初に理論化したのが南部陽一郎先生で、2008年にノーベル賞を受賞しました。ノーベル物理学賞では、たとえば新しい粒子を発見したというような、何かを発見したという受賞理由は多くありますが、南部先生の受賞は具体的なものを発見したというのではなく、きわめて基礎的な、物理学全体に関わるような理論を構築したことによるのです。 先に述べた、力の統一理論の最初の理論であるワインバーグ=サラム理論は1979年にノーベル賞を受賞しましたが、これも南部先生の理論がもとになっています。真空の相転移という考え方が、電磁気力と弱い力を統一する電弱統一理論を生み出したわけです。 さらに「インフレーション宇宙論」シリーズの連載記事では、宇宙物理学の最前線を紹介していく。 【続き<インフレーション理論による「宇宙誕生のシナリオ」が革新的すぎる… 厳密な計算が示した「衝撃の結論」>を読む】 〈インフレーション宇宙論〉各回記事はこちらから)』、「真空の空間とは、本当に何もない空っぽの空間なのではなく、ただエネルギー的にいちばん低い基底状態を「真空」と呼んでいるだけなのです。つまり、真空にも物理的な実体があるということになります。 とすれば、真空が相転移を起こしても不思議なことではありません。 このことを最初に理論化したのが南部陽一郎先生で、2008年にノーベル賞を受賞しました。ノーベル物理学賞では、たとえば新しい粒子を発見したというような、何かを発見したという受賞理由は多くありますが、南部先生の受賞は具体的なものを発見したというのではなく、きわめて基礎的な、物理学全体に関わるような理論を構築したことによるのです」』、今後の「インフレーション宇宙論」の展開は適宜、フォローしていくつもりである。
タグ:宇宙 (その3)(インフレーション宇宙論:3題:「ビッグバン」の前に何が起きていたのか教えよう…「宇宙の起源」のナゾを解く新理論の「スゴすぎる中身」、おかしい 「ビッグバン」の大爆発から始まったにしてはあまりにも…素朴な問いから生まれた「宇宙最大の難問」、宇宙誕生直後に分かれた「4つの力」が統一できるとしたら…アインシュタインも夢見た「究極の理論」が実現する日) 現代ビジネス 佐藤勝彦氏による「「ビッグバン」の前に何が起きていたのか教えよう…「宇宙の起源」のナゾを解く新理論の「スゴすぎる中身」」 佐藤勝彦著『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』(ブルーバックス) 「むしろ観測より先に、「宇宙はこうなっているのではないか」と予想する理論があり、それが観測によって証明されることで、宇宙論は発展してきました。 20世紀初頭にアインシュタインによってつくられた、時間や空間を考える相対性理論、また、同じくこの時期にボーア、ハイゼンベルグ、シュレディンガーらによりつくられた、ミクロの世界を記述する量子論。これらは現代の物理学を支える2本の柱ですが、宇宙論もまた、この2つの理論が確立されたことで、飛躍的な進歩を遂げたのです・・・ ビッグバン理論だけでは宇宙創生について十分に説明しきれないことがわかってきました。たとえばビッグバン理論では、宇宙がなぜ「火の玉」から始まったかについては、答えることができません。また、ビッグバン理論を推し進めていくと、宇宙の究極のはじまりは「特異点」という、物理学の法則がまったく破綻した点であったと考えざるをえなくなります。いわば宇宙には物理学が及ばない「神の領域」があることを認めざるをえないわけで、これは物理学に携わる者として容易にはうけいれがたいことです」、なるほど。 「インフレーション理論とは、ごく大づかみに言えば、物理学の言葉で宇宙創生を記述しようという理論です。最初は突拍子もない説という見方もありましたが、いまではインフレーション理論は宇宙創生の標準理論として認知されるまでになりました。 さらにインフレーション理論によって、宇宙創生のみならず、宇宙はこれからどうなるのか、そして宇宙とはどのような姿をしているのかについても予言できるようになりました。10の100乗年後という途方もない未来や、宇宙は私たちの宇宙のほかにも無数にあるというマルチバースの考え方など、想像を 絶するような宇宙像が新たに提示されてきているのです・・・大切なのは、なにごとにおいてもどうしたら科学の言葉で説明できるだろうかと考えぬく態度ではないかと思います」、なるほど。 「インフレーション理論入門 ――宇宙の誕生から終焉まで そしてマルチバースを予言―― 宇宙は火の玉から始まったとするビッグバン理論では、特異点すなわち「神の一撃」を認めざるをえない。物理学の言葉だけで宇宙創生を記述したい、という著者の願いがインフレーション理論を生み、現在では宇宙創生の標準理論として認知された。その内容を万人が理解できるよう書かれた、最も平明なインフレーション理論の入門書! 、なるほど、 佐藤勝彦氏による「おかしい、「ビッグバン」の大爆発から始まったにしてはあまりにも…素朴な問いから生まれた「宇宙最大の難問」」 「ビッグバン理論は、現実の観測によって傍証が示されました。そのことは確かなのですが、実はこの理論には、原理的に困難な問題がいくつかあるのです。本記事ではまず、そのことを見ていきます。 まず一つには、宇宙が「特異点」から始まったと考えざるをえないことです。特異点とは、物理学の法則が破綻する「密度が無限大」「温度が無限大」の点のことです。宇宙が膨張しているということは、その時間を逆にたどっていくと、宇宙はどんどん小さくなって、エネルギー密度はどんどん高くなっていきます。 そして宇宙のはじまりが点であったならば、ついにエネルギー密度は無限大になってしまうのです。 つまり、宇宙のはじまりは物理学が破綻した点だったと考えざるをえないのです。キリスト教世界では「神の一撃」といわれますが、そういう物理学を超越した概念を持ってこなければ、宇宙が始まらないということです・・・二つめは、ビッグバン理論は、宇宙はなぜ火の玉になったのかについては、何も答えていないことです。 初期の宇宙が火の玉になる理由は何も説明していないのです。これでは、宇宙のはじまりについて説明していることにはならないともいえます。 また、ビッグバン理論では現在の宇宙構造の起源を説明できないという問題もあります。宇宙の大きさが非常に小さかったときに、その中に「密度ゆらぎ」といわれる小さな濃淡のムラがあったことで、のちに濃度の濃いところを中心にガスが固まり、星や銀河、銀河団といった構造ができたと考えられています。しかし、ビッグバン理論では非常に小さな「ゆらぎ」しかつくれず、宇宙の初期に、銀河や銀河団のタネに なるような濃淡をつくることが理論的に難しいのです』、なるほど。 「神様が「宇宙」という名のロケットを打ち上げると考えてみます。このロケットは、曲率が正か負かによって飛翔(=膨張)のしかたが変わってきます。神様が宇宙を打ち上げる力が少しでも弱い(曲率が正)と、加速度が足りず、宇宙は十分に飛翔せずに重力で落下してつぶれてしまいます。宇宙は短命となるため、私たちのような生命は誕生できません。逆に神様の力が少しでも強すぎる(曲率が負)と、非常に速い飛翔をしてしまい、ガスは一様に希薄になってしまうので、ガスが固まって天体を構成することができません。もちろん、生命は存在できません (図2―1)。 (図2―1 平坦性問題 はリンク先参照) 私たちが宇宙に存在するためには、神様が打ち上げの速度をきわめて精密に調整して、打ち上げから140億年近くたった現在でも曲率がほぼゼロという平坦な宇宙になるように設定しなければなりません。ほんの少しでも力が強かったり、弱かったりすると、現在の私たちは存在できないのです。そのためには打ち上げの速度(=膨張速度)を、なんと100桁という精度で微調整しなければなりません。 しかも、物理学には量子的な「ゆらぎ」、いわゆる「量子ゆらぎ」というものがあってつねに微小な振動をしているため、このような精度を確保することはきわめて難しいのです。「神様の手」さえも量子的にゆらいでいるため、曲率がほぼゼロになるよう(宇宙が平坦になるよう)、膨張速度を微調整することは至難の業なのです。これが「平坦性問題」です」、なるほど。 佐藤勝彦氏による「宇宙誕生直後に分かれた「4つの力」が統一できるとしたら…アインシュタインも夢見た「究極の理論」が実現する日」 「すべての力は基本的に、四つに分類されると考えられています。これらの力のことを「四つの力」といいます。 その四つの力とは、万有引力として知られる「重力」、電気や磁石の力である「電磁気力」、原子核の中で働いている「弱い力」と、「強い力」です。弱い力、強い力とは、原子核の中で働いている二つの力のうち弱いほうの力、強いほうの力という意味で、現在では固有名詞になっています。このうち強い力は、湯川秀樹先生が見つけた、中性子と陽子を結びつける力で、原爆や水爆のエネルギーを出す力でもあります。 弱い力というのは、中性子が電子(ベータ粒子)と反電子ニュートリノを放出して陽子になったりする、「ベータ崩壊」という変化を導く力です。 それぞれ別々のふるまいをするように見えるこれら四つの力を統一して、一つの力の法則にしようというのが、力の統一理論という考え方です・・・いずれは四つの力をすべて一つの理論で説明することができるのではないか、という考え方なのです。アインシュタインは晩年、プリンストン大学で、力の統一理論の走りというべき統一場(電磁気力と重力の統一理論)の研究に、一生懸命に取り組んでいました。彼が 成功しなかったために、この理論は「アインシュタインの夢」ともいわれています」、なるほど。 「人間が過去に逆戻りするとチンパンジーやオランウータンと一緒になるように、四つの力も最初は一つのものだったのではないか。そう予言したのがこの理論でした。 こうした進化がなぜ起こるのかを考えるとき、生命の場合では突然変異と自然選択という進化の理論によって説明がなされます。では、力の進化(=力の枝分かれ)は、なぜ起こるのでしょうか。 力の統一理論では、これは「真空の相転移」によって起こるとしています。 相転移とは、水が氷になるように、物質の性質(相)が変わることです。あらかじめ簡単に言っておきますと、宇宙の初期に温度が急激に下がったことで「真空の相転移」が起こり、真空の空間自体の性質が変わりました。すると、真空での力の伝わり方も変わったのです。そのような相転移が次々に起こり、そのたびに、重力が枝分かれし、強い力が枝分かれし、電磁気力と弱い力が枝分かれをしていったというのです」、壮大な理論だ。 「量子論の考え方で言えば、実は真空というのは真の空っぽの状態ではありません。よくよく見てみると、その空間では粒子と反粒子がペアで生まれては合体して消滅する、対生成・対消滅というものを繰り返しているのです」、なるほど。 「真空の空間とは、本当に何もない空っぽの空間なのではなく、ただエネルギー的にいちばん低い基底状態を「真空」と呼んでいるだけなのです。つまり、真空にも物理的な実体があるということになります。 とすれば、真空が相転移を起こしても不思議なことではありません。 このことを最初に理論化したのが南部陽一郎先生で、2008年にノーベル賞を受賞しました。 ノーベル物理学賞では、たとえば新しい粒子を発見したというような、何かを発見したという受賞理由は多くありますが、南部先生の受賞は具体的なものを発見したというのではなく、きわめて基礎的な、物理学全体に関わるような理論を構築したことによるのです」』、今後の「インフレーション宇宙論」の展開は適宜、フォローしていくつもりである。