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生命科学(その4)(養老孟司×菊池愛騎 熱血対談3題:「光に集まるなら 昼間は全部太陽に向かうはずでしょ」昔から解明されないナゾ…夜の灯りに虫が集まるのはなぜ?、「子どもの虫離れ」が進む一方 虫好きな女性は増えている? 日本人が“虫に親しみを感じる”理由とは、「人間って相当にアホだと思いません?」「地面をガチンガチンに固めてしまって…」解剖学者・養老孟司が“環境問題”に思うこと) [科学技術]

生命科学については、本年5月8日に取上げた。今日は、(その4)(養老孟司×菊池愛騎 熱血対談3題:「光に集まるなら 昼間は全部太陽に向かうはずでしょ」昔から解明されないナゾ…夜の灯りに虫が集まるのはなぜ?、「子どもの虫離れ」が進む一方 虫好きな女性は増えている? 日本人が“虫に親しみを感じる”理由とは、「人間って相当にアホだと思いません?」「地面をガチンガチンに固めてしまって…」解剖学者・養老孟司が“環境問題”に思うこと)である。

先ずは、8月21日付け文春オンラインが掲載した解剖学者の養老孟司氏とクワガタ・ハンターの菊池愛騎氏による熱血対談「「光に集まるなら、昼間は全部太陽に向かうはずでしょ」昔から解明されないナゾ…夜の灯りに虫が集まるのはなぜ?」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/72873
・『虫好きで知られる養老孟司(86)さんと、最強のクワガタ・ハンター菊池愛騎(39)さんとの対談が実現した。養老さんはゾウムシを求めて、80代の今も海外まで採集に行くほどエネルギッシュだ。 一方の菊池さんは、最強の採集家集団“インフィニティー・ブラック”の二代目リーダー。彼らが探し求めるのは日本昆虫界のスーパースター・オオクワガタだ。採集難易度が極めて高いにもかかわらず、メンバーは新規生息地発見に挑む。断崖絶壁や雪山、真夜中の森での熊や心霊現象にも怯まない。好きな虫がゾウムシとオオクワガタであっても、ともに自然界のロマンに引き寄せられているのは同じだ。 菊池さんの属するインフィニティー・ブラックの活動を3年にわたって追った『オオクワガタに人生を懸けた男たち』(野澤亘伸著・双葉社刊)より、二人の熱血対談を紹介する。(全3回の1回目/続きを読む)』、興味深そうだ。
・『わからないから面白い  養老孟司(以下、養老) 僕はラオスやブータン、マレーシアによく採集に行くんですけど、「何が採れるんですか?」って聞かれる。採れるものがわかっていたら行かないよ。今の人はなんでも計画通りじゃないと気が済まない。 菊池愛騎(以下、キクリン) オオクワガタの採集でも、それと近い部分があります。いるってわかっている場所には特に興味がないですね。いるかどうかわからないから、探すのが楽しい。 養老 僕はゾウムシ屋なんだけど、場所によって個体に変異があることが多い。だから同じ種類でも丁寧に採るので、標本の数が増えてどうしようもない(笑)。  キクリン 自分はオオクワガタも地域ごとの違いを感じています。それは虫の動きとか生態的な部分で形になって現れている部分がありますね。 養老 僕はオオクワガタを採ったことがないんです。生きた姿にお会いしたことがない(笑)。 キクリン 場所によって昆虫の個体や生態に少しずつ違いが現れてくるのは、地形の成り立ちの歴史に関係あるんでしょうか? 養老 完全に歴史でしょう。孤立した集団はひとりでに遺伝子が特定のタイプに固定していきます。1個の遺伝子じゃなくて全体ですね。 キクリン 自分が気になっていることがありまして、雪国のオオクワガタは雪が積もるような低い場所には滅多に(卵を)産まないんです。でも山梨とか平地の里山にいる個体は関係なく産む。雪国で産まなくなったのは、低いところに産まれた子たちが絶えてしまったからでしょうか? 学習するってことはないと思うんですけど。 養老 学習はしないでしょう。ただ、本当かどうか昔から言いますよね。雪の多いところはカマキリの卵が高いところにある、と。 キクリン 夏にはその場所に雪が降るなんてわかりませんから、たぶん湿度に反応してるんだと思います。雪はけがいい場所では、低いところでも生んでいたりするんです。ここには雪が積もらないことを想像できないだろうから、そうなると湿度を感知しているとしか思えない。 養老 他に彼らが何かを察知する要素としては、例えば我々には菌類が見えてない。菌類の生態系が違っている可能性もある。菌は見えないので、研究が遅れてるんですよ。  キクリン 虫は感知してますよね。) 養老 もちろん。ゾウムシはずいぶん菌食いのやつが多い。キノコを食うやつはもうヒゲナガゾウムシに特殊化してますからね。僕が学生の頃と比べて一番変わったのは生物を3つに分けることです。動物、植物、菌類という。今、虫が減ってるのには、菌類の構成が変わっている可能性がある。 キクリン その要因は、どんなことが考えられるのでしょうか? 養老 人が土をいじるからでしょう。農耕の歴史が1万年ある。一昨年(2022年)、ゲイブ・ブラウンっていう人の本が出たんです。『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』(NHK出版)。これはアメリカの農家の話です。化学肥料をやらない、除草剤をまかない、殺虫剤をまかない。いわゆる有機農業ですね。プラス、耕さない。ジャガイモを作るなら、自分の畑に種イモを置いて。上に枯れ草をかけて終わり。普通は掘るでしょ。 そうすると菌が網の目のように土に構造を作ってるのを壊してしまう。ほとんど目に見えないから、そういう構造に注意してこなかった。それからもう一つは人間の癖でね、やっぱり、種イモを置いただけでジャガイモができたっていうと気に入らないんじゃないですか。額に汗してその成果が得られたっていう気持ちをもちたいから。でも、自然に関してはほっとけばいいんです。雑草も何もかも生やしておいて、その中に作物を置いていく。それでダメなものはダメだと諦めるしかない』、「『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』(NHK出版)。これはアメリカの農家の話です。化学肥料をやらない、除草剤をまかない、殺虫剤をまかない。いわゆる有機農業ですね。プラス、耕さない。ジャガイモを作るなら、自分の畑に種イモを置いて。上に枯れ草をかけて終わり。普通は掘るでしょ。 そうすると菌が網の目のように土に構造を作ってるのを壊してしまう。ほとんど目に見えないから、そういう構造に注意してこなかった。それからもう一つは人間の癖でね、やっぱり、種イモを置いただけでジャガイモができたっていうと気に入らないんじゃないですか。額に汗してその成果が得られたっていう気持ちをもちたいから。でも、自然に関してはほっとけばいいんです」、「有機農業」のメリットの一部を理解できた。
・『日本の土壌が豊かな理由   キクリン 山に入っていて、虫が減ったなと感じる地域はありますか? 養老 どこも減っているでしょう。 キクリン 一方で、見たことがない虫が増えていたりすることがあります。外来種だったりとか......。山林自体が減れば虫も減るのは当然だと思いますが、国土がこれだけ緑に覆われている国は世界的にも少ないんですよね? 養老 数字で計算すると、日本の山林の割合は北欧に匹敵している。北欧は木を切れないんですよ。下が永久凍土で、森を切ると湖に変わっちゃうから。でも、日本の場合は切りまくっているのに残っているんだよね。  キクリン なぜでしょう? 養老 やっぱり東南アジアモンスーン地帯というのがあるでしょう。しかも温帯でしょ。熱帯はすぐに熱帯雨林になってしまうので、表土が薄いんです。でも日本は厚い。 キクリン 黒土がこれだけある国も少ないそうですね。  養老 一つは火山があるから。長年の間に火山灰が積もる。もう一つは中国から黄砂が飛んでくる(笑)。毎年空が曇るくらい飛んでくるんだから、それが1000年経ったら大変なものです。実は、火山というのは恵みなんです。ジャレド・ダイアモンド(進化生物学者)が太平洋の島々を調べて、文明が続く島と続かない島があるという。島は資源が少ないから森を切り尽くしてしまって終わる。その中で島に森が残る条件をいろいろ挙げていますが、一つに火山が入っている。もう一つが黄砂です。 キクリン 黄砂は意外でした』、「日本の山林の割合は北欧に匹敵している。北欧は木を切れないんですよ。下が永久凍土で、森を切ると湖に変わっちゃうから。でも、日本の場合は切りまくっているのに残っているんだよね。  キクリン なぜでしょう? 養老 やっぱり東南アジアモンスーン地帯というのがあるでしょう。しかも温帯でしょ。熱帯はすぐに熱帯雨林になってしまうので、表土が薄いんです。でも日本は厚い・・・黒土がこれだけある国も少ないそうですね。  養老 一つは火山があるから。長年の間に火山灰が積もる。もう一つは中国から黄砂が飛んでくる・・・ジャレド・ダイアモンド・・・が太平洋の島々を調べて、文明が続く島と続かない島があるという。島は資源が少ないから森を切り尽くしてしまって終わる。その中で島に森が残る条件をいろいろ挙げていますが、一つに火山が入っている。もう一つが黄砂です」、なるほど。
・『人間には見えない虫の道  養老 人間には見えないものとして菌類が一つと、もう一つは気象、空気の流れです。僕らはよく吹き上げといって、尾根で待っていると虫が結構上がってくる。その近辺で採集しているといろんなものが採れます。 キクリン 山頂には蝶もよく上がってきます。 養老 蝶は尾根で連れ合いを探すという人もいますね。前にカミキリを採っている人と山梨の下部温泉に、スネケブカヒロコバネカミキリが採れるというので行ったことがある。 アカメガシワに飛んでくるというのでみんなで探したら、満開の木があった。反対側がスギ林になっていて、こんもりとした空間に、5分に1回飛んでくるんですよ。あの場所が好きなんだな。アカメガシワの花が好きなのではなくてね。 キクリン 自分はクワガタしかわからないですけど、虫が飛ぶ場所には絶対何か理由があると思っているんです。 養老 よくフェロモンというでしょう? (アンリ・)ファーブル(昆虫学者)が計算していますけどね。虫がフェロモンを四方八方に立体的に拡散すると、ものすごく薄くなる。そんなものを感じるわけがないだろうと。感じるとしても匂いの元がどこかわからないから、反対の方に行ってしまうかもしれない。そうじゃなくて、たぶん筋状に流れていると思うんですよ。 キクリン 垂れ流しになっているような感じですね。 養老 そうです。その筋にぶつかると反応して、また次の筋に飛んでいく。筋状に出ていれば、ひっかかる頻度が上がるように飛んでいけるわけです。出すのに効果的な環境も知っている。そこら中に飛んでいってしまうところでは意味がないから。 キクリン それですね。 養老 そういう微小な環境は、枝を1本切っただけでも壊れるでしょ。風の流れが変わってくる。虫サイズで考えると、ものすごく環境って微妙なんですよ。 キクリン 林道を1本切り拓いただけでも......。 養老 虫にしてみたら大きな変化です。まさに蝶道がそうですね、決まった道を通るでしょ。あれは日高敏隆さん(動物行動学者)が戦後に一生懸命に苦労して調べたもので、日向と日陰のちょうど間を飛ぶんです。蝶も日向ばかり飛んでいたら体が暑くなってしまうから、すぐ日陰に入れるようにその間を飛んでる。ライトをつけていると虫が集まるからといって、それで光源を広げるために白い布を張るというのも、違うと思っていて。光に集まるんだったら、昼間は全部太陽に向かって飛んでいくはずでしょ。そうならないからやっぱり、光と陰の間を飛ぶんだよね。  キクリン 昔から虫が光に集まる理由というのが解明されない謎だと言われていますね。 養老 僕が昔読んだ説明では、光源に対して常に一定の角度で飛んでいると。右の目に光が入ったら左の筋肉が動くように。でもたぶん灯りがあると、当然暗いところもあるわけで、その境目に対して垂直に飛んでくるんだと思うんです。 キクリン 太古の夜は月の明かりしかなく、その光は地球に対してほとんど垂直なんですよね。 養老 無限遠ですから。  キクリン だから、どう飛んでも同じ角度になる。 養老 月を頼りにしていたのが、現代ではやたら“月”だらけになっちゃった(笑)』、「虫がフェロモンを四方八方に立体的に拡散すると、ものすごく薄くなる。そんなものを感じるわけがないだろうと。感じるとしても匂いの元がどこかわからないから、反対の方に行ってしまうかもしれない。そうじゃなくて、たぶん筋状に流れていると思うんですよ。 キクリン 垂れ流しになっているような感じですね。 養老 そうです。その筋にぶつかると反応して、また次の筋に飛んでいく。筋状に出ていれば、ひっかかる頻度が上がるように飛んでいけるわけです。出すのに効果的な環境も知っている。そこら中に飛んでいってしまうところでは意味がないから。 キクリン それですね。 養老 そういう微小な環境は、枝を1本切っただけでも壊れるでしょ。風の流れが変わってくる。虫サイズで考えると、ものすごく環境って微妙なんですよ・・・光源に対して常に一定の角度で飛んでいると。右の目に光が入ったら左の筋肉が動くように。でもたぶん灯りがあると、当然暗いところもあるわけで、その境目に対して垂直に飛んでくるんだと思うんです。 キクリン 太古の夜は月の明かりしかなく、その光は地球に対してほとんど垂直なんですよね。 養老 無限遠ですから。  キクリン だから、どう飛んでも同じ角度になる。 養老 月を頼りにしていたのが、現代ではやたら“月”だらけになっちゃった(笑)」、なるほど。

次に、8月21日付け文春オンラインが掲載した解剖学者の養老孟司氏とクワガタ・ハンター菊池愛騎 氏の熱血対談「「子どもの虫離れ」が進む一方、虫好きな女性は増えている? 日本人が“虫に親しみを感じる”理由とは」を紹介しよう。
・・・・環境要求性の高い虫  菊池愛騎(以下、キクリン) オオクワガタの成虫は、棲家をとても選びます。しかし、オスとメスが潜める樹液の出ているウロやめくれは、一つの山で数カ所しかない。入れなかった成虫たちは、他のクワガタみたいに土に潜ることは基本的にしないので、外敵に食べられたりします。 養老孟司(以下、養老) 環境要求性が高い。それは、いろんな虫でよく感じます。ちょっとでも変わったら嫌だって、何か直感的に知っている。僕らは、この虫ならこの木にいるはずだって考えるんだけど、1種類の木に限っても、いない木にはいない。 キクリン まさにオオクワガタがそうです。複数の条件が全部重なった木には基本的には絶対いると思うんですけど、条件が少しでも外れると、もういない。 養老 必ずいるのは“御神木”です。 キクリン そうです。御神木は一つの山に1本ぐらいしかない。それを探すのはすごく大変なんですけど、その木さえ見つけてしまえば、行ったら絶対ついている感じです。  養老 僕は御神木を探すのが苦手。だから、どこにでもいる虫を探している。でも、中には御神木を探すのが、非常に得意な人がいてね。生物の生存本能みたいなものを内に残していて、風向きとか湿気とか匂いとか、いろんなものを総合して判断してるんだと思う。 僕はそれが鈍いんですけど、乾季のタイで虫採りをしたときに、ここには虫がいるって感じたことはある。乾季に虫が採れるところといったら、枯れたバナナの葉っぱなんですよ。湿度を含んで中に菌が入ってる。キノコが生えて、大きな虫が入っていたり。なんでこんなにいるんだってくらいに、いろんな虫が入ってます』、「僕らは、この虫ならこの木にいるはずだって考えるんだけど、1種類の木に限っても、いない木にはいない。 キクリン まさにオオクワガタがそうです。複数の条件が全部重なった木には基本的には絶対いると思うんですけど、条件が少しでも外れると、もういない。 養老 必ずいるのは“御神木”です。 キクリン そうです。御神木は一つの山に1本ぐらいしかない。それを探すのはすごく大変なんですけど、その木さえ見つけてしまえば、行ったら絶対ついている感じです・・・乾季のタイで虫採りをしたときに、ここには虫がいるって感じたことはある。乾季に虫が採れるところといったら、枯れたバナナの葉っぱなんですよ。湿度を含んで中に菌が入ってる。キノコが生えて、大きな虫が入っていたり。なんでこんなにいるんだってくらいに、いろんな虫が入ってます」、なるほど。
・『採集圧で虫は減るのか   キクリン 人間が虫を採ることで一つの種が非常に減少したり、絶滅したりすることはあるでしょうか? 養老 ありえない。砂漠のオアシスのように、非常に限られた場所なら確かに採集圧がかかると思いますが、やっぱり環境破壊が一番大きい。  キクリン オオクワガタは知名度が高い種類というか、数が少ないことも広く認知されているので、人間が採るから減るんだ、みたいなことを言われたりします。 養老 採った分だけは確かに減りますね。 キクリン でも、自分が山に入って見ている限りは、回復するんです。例えば決まった木にオスは1頭しか入れない。メスは産卵に行くから入れ替わる。そこでオスを採ったら、違うオスが入るんですよ。もし最初のオスを採らなかったら、次のオスは入れなくて捕食されると思うのですが。 養老 どのくらい産卵するんですか? キクリン オオクワガタは産み分けをしています。1回産卵してから一度樹液に帰ってきて、また産卵に行って、というふうにしています。飼育下では1回に30個は産んでいたりします。 養老 30のうち1匹残ればいいわけですよね。だから残りの29匹は採っていいんですよ。 キクリン 本当にそのくらいの感じがします。採ろうと思っても、全く採りきれないというのが実感ですね。通常では、採集圧で虫は減らないと自分は思っています』、「採ろうと思っても、全く採りきれないというのが実感ですね。通常では、採集圧で虫は減らないと自分は思っています」、なるほど。
・『虫に親しむ土壌  キクリン 日本には虫に親しむ土壌があるように思うのですが。 養老 去年、イギリス人の女性が調べに来ていた。カルチャー・エントモロジストって言ってたな。つまり、文化人類学っていうのがあるように、文化昆虫学ということでしょう。やっぱり身近にたくさんの虫がいて、親しいからじゃないですか。僕はオーストラリアにいた時期があるけど、あそこは虫が身近にいませんからね。採っていると、とんでもないものが見つかることもあるけど、普通にいる種類は日本と全然違うんです。クワガタは変なのばっかりですよ。 キクリン 最近では日本でも子どもたちの虫離れがすごく言われるんですけど、小さいときに虫と触れ合うことが育んでくれるものって何でしょうか?  養老 言ってみれば虫は自然の象徴ですからね。触れ合うことで、背景に大自然があるっていうことにだんだん気がつく。やっぱり親しむ方がいいんじゃないですかね。だいたい小学校以降がダメなんですよ。僕、保育園の理事長を30年やってたけど、保育園の子どもは虫を好き嫌いしません。なんでも平気で捕まえるから、危なっかしいくらいです。  キクリン 子どものときってそうです。危険かどうかを、自分の目を通して学ぶんですよね。 養老 そうなんです。オーストラリアにいたときに、ドイツ人の医者の夫婦がいたんだけど、子連れで家に呼んだら、2歳の子どもが床這いしてなんでも口に入れる。向こうの家は靴で入るでしょ。「汚いよ」って言ったら、「大丈夫、食べられないものは吐き出すから」と。そういう育て方してました。虫に馴染めない子は、大抵はお母さんが嫌いなんじゃないですか。) キクリン うちは子どもが4人いるんですけど妻が虫嫌いなので、長男は最初から母親の反応を見て虫が怖いという概念をもっちゃったんです。でも次男は自分と一緒に遊んできて、そうすると毛虫でもなんでも触れる。それはダメだってやつも関係なくつかんじゃう。本当に親を見てるんだなあって思います。先生の奥さんはどうなんですか?  養老 無関心。ただうちの奥さんは目がいいんでね、一緒に行くとよく見つけます。最近は虫好きな女性も多いですけどね。 キクリン 結構ジャンルが固定されている気がします。 養老 毛虫、芋虫だね。 キクリン 男の方が虫が好きだって自己表現してるだけなのかもしれないですね。女性でも虫が好きな人はいっぱいいます。山に行っていると、自然が好きで登ってくる女性の方がたくさんいるんですよ。たぶん、そういう人は生き物が好きだから、虫好きな人も結構いると思います』、「キクリン 男の方が虫が好きだって自己表現してるだけなのかもしれないですね。女性でも虫が好きな人はいっぱいいます。山に行っていると、自然が好きで登ってくる女性の方がたくさんいるんですよ。たぶん、そういう人は生き物が好きだから、虫好きな人も結構いると思います」、なるほど。
・『とにかく虫のことを知りたい   キクリン 先ほど土壌の歴史の話をうかがいましたけども、氷河期に生き残った虫は、どんなものが多かったのでしょうか? また、それが現在に繋がっている部分としては? 養老 ラオスあたりに行くと面白いんですよ。あそこは今では熱帯と亜熱帯でしょ。だけど氷河期の頃の虫が生き残っているんです。そういう寒い系統の虫が採れるのは日本に似ているなと思う。普通は暑いと、そういう虫は標高の高いところにしかいられない。日本はそうでしょ。西日本は高い山がないので、寒い系統のやつはみんないなくなった。 ただ変なのは紀伊半島で、それが逆転する、(低地に寒い系統の)虫がいる。なぜかというと紀伊半島は渓流と谷が深い。崖面は鹿が食わないし、そういうところに生えている植物についてる蝶なんかは、むしろ渓流の下の方に残ってるんですね。そこは、言ってみれば寒いところだから。  キクリン 紀伊半島にはそういう場所があるわけですね。 養老 そういうことを調べて本を書いた人がいますよ。高校の先生だったかな? はじめは学会であまり信用してもらえなくて。紀伊半島にそんなものがいるか、ってね。 キクリン 高校の先生が書いたっていう話ですけど日本の昆虫学って基本的にアマチュアの方が進化させてきたことだと思うんですけど。 養老 だいたいその「学」っていうのは、人間が勝手に決めてる。「お前のやってるのは学じゃねえ」って言われます。僕は学会っていうのを「業界」って呼んでいるんですよ。何らかの意味で商売つながりでしょ。  キクリン なるほど、そういう話になっちゃうわけですね。 養老 僕らがやっているのは、商売じゃないもん。 キクリン だから楽しいっていうのがありますよね。商売にはできそうもない。自分の好きなことですから。  養老 面白いからやってる。それが十分な見返りですよ。 キクリン 一緒です。あと自分は知りたいっていうことだけですね。どうなっているのかを知りたい、どこにいるのかを知りたい、この時間は何やってるんだろうとか。とにかく自分がフォーカスしている虫のことを知りたいっていう一心ですね。それを見つけたときはやっぱり嬉しい』、「養老 面白いからやってる。それが十分な見返りですよ。 キクリン 一緒です。あと自分は知りたいっていうことだけですね。どうなっているのかを知りたい、どこにいるのかを知りたい、この時間は何やってるんだろうとか。とにかく自分がフォーカスしている虫のことを知りたいっていう一心ですね。それを見つけたときはやっぱり嬉しい」、なるほど。

第三に、8月21日付け文春オンラインが掲載した解剖学者の養老孟司氏とクワガタ・ハンターの菊池愛騎氏による熱血対談「「人間って相当にアホだと思いません?」「地面をガチンガチンに固めてしまって…」解剖学者・養老孟司が“環境問題”に思うこと」を紹介しよう。
・・・・人間って相当にアホだと思いません?  菊池愛騎(以下、キクリン) (ナラ枯れの原因と言われる)カシノナガキクイムシについて聞きたかったんです。あれは行政的にも増殖を止めようとしてますけど。 養老孟司(以下、養老) 放っておけばいい。うちの木にも入ってますよ。でも枯れてない。必ずしも枯れてしまうわけではない。 キクリン なぜ、対策を頑張ってやってるのかがわからないんですけど......。 養老 そういう仕事があるからですよ。 キクリン なるほど。自分の家の周りも何年か前から結構入ってきていて、ナラ枯れが進行しています。でもやっている対策がとんちんかんというか、結局全く止まらずに進行している。でも、それが起きたからナラがなくなるわけじゃないと思うんです。いずれまた回復してくる。カシノナガがそこまで何か大きな影響を与えてるのかと疑問に感じているんですけども。 養老 マツ枯れのときと同じで、全然教訓になってない。子どもの頃に鎌倉のマツ並木が、全部なくなりましたからね。だから僕が知ってる虫って言ったら、マツの枯れ木につくやつばかりだよ。クロカミキリとか。 キクリン なんで爆発的にマツクイムシが増えたのでしょうか? 養老 やはり根の手入れをしなくなったからでしょう。昔は草があって、落ち葉を拾って焚き火もしていた。それが戦争中くらいから人手が足りなくなって、放置状態になっため腐葉土化した。マツにしては豊かすぎる土壌になっちゃったんですよ。そうすると湿気が高くなり、カビが出てくる。要するに菌類のバランスが変わってしまう。 キクリン 崩れるわけですか? じゃあマツ並木というのは、古くから人間の手入れが入って保たれていたと?  養老 そうなんです。例えば今、桜島の一番低い一帯がマツクイムシにかかってます。あんなところ本来は栄養なんてありそうもないでしょ? 火山が作ったできたばっかりの土地だから。 キクリン 根元の栄養からマツクイムシの被害が来るというのは......。) 養老 マツは弱いんですよ。木は葉っぱを払って、逆さまにした形で考えるんです。そうすると根っこの張り方、枝の張り方がわかる。それで言ったら、東京なんか地面をガチンガチンに固めてしまって......。  キクリン よく木が頑張ってますよね。 養老 人間って相当にアホだと思いません? 僕はよく言うんですけど、考えてなんとかなるという発想には限度がきてますよ。考えてなんとかならないことが全部問題として残っている。それを環境問題って言ってるんです。何が解決に繋がるのかわからないから、僕はいつも「しょうがない、なるようになる」って言ってますよ。なるようになるというのは、社会で生きていく上では必要な自然な感覚です。でも都会の感覚ではないんですよ。都会で「なるようになる」なんて言ったら、たちまち押しつぶされる。 キクリン 都会ではダメですか?  養老 社会の原理が違いますからね。そんなこと言ってたら、食っていけなくなるのが都会ですから。田舎は逆でしょ。耕せば収穫が得られる、そんなの嘘です。そもそもジャガイモの原種ってどうやって生きてたんですかね? 南米で、勝手に生えてたんでしょ。 『木村さんのリンゴ』(小原田泰久/Gakken)っていう本を読むとよくわかります。木村さんのリンゴ園は隣と接してるんですよ。ある日ね、隣のおじさんが来て、「木村さんが草ぼうぼうにしてるから、虫が寄ってくる」と言う。木村さんが「わかりました、あとでもう1回来てください」と。夕方になって隣のおじさんが来たら、木村さんがリンゴ園の境に立って見ている。すると、木村さんの果樹園の方から向こうに行くんじゃなくて、隣のおじさんの方から、虫がみんな飛んでくる。こっちの方がいいんだもん。草が生えてるから』、「なんで爆発的にマツクイムシが増えたのでしょうか? 養老 やはり根の手入れをしなくなったからでしょう。昔は草があって、落ち葉を拾って焚き火もしていた。それが戦争中くらいから人手が足りなくなって、放置状態になっため腐葉土化した。マツにしては豊かすぎる土壌になっちゃったんですよ。そうすると湿気が高くなり、カビが出てくる。要するに菌類のバランスが変わってしまう。 キクリン 崩れるわけですか? じゃあマツ並木というのは、古くから人間の手入れが入って保たれていたと?  養老 そうなんです。例えば今、桜島の一番低い一帯がマツクイムシにかかってます。あんなところ本来は栄養なんてありそうもないでしょ? 火山が作ったできたばっかりの土地だから。 キクリン 根元の栄養からマツクイムシの被害が来るというのは......」、なるほど。
・『今も分布を広げているのか?   キクリン 日本は氷河期が終わって、そこから暖かくなってきて最初は草原が広がり、木が生えてくる時代になる。虫が多くなり、各地に分布していくのはそのあたりからなんでしょうか? 養老 日本列島ができあがった頃のことを、頭に入れておくのが一番いいと思います。僕の頭の中では氷河期なんてついこの間のことです。日本列島成立直後を地質学者が書いた地図がありましてね、これが参考になる。いわゆる虫の多いところというのは、基本的にその頃に陸地だったところです。関東なら日光や秩父で、虫で有名なところばっかりですよ。 ゾウムシのことで調べていて気になったのが、四国の東と西。おそらくこの時期に、少なくともその前後には切れていたんだと思うんです。東で採るのと西で採るのとでは違うので。オオクワガタではどうですか? キクリン 四国の中での東と西ということですね。香川県側はよくいるんですけど、愛媛県側はなかなか採れないんで。でも、もともといたのは間違いないでしょう。分布のルート的にたぶん、対馬経由で大陸から来ている感じがします。 養老 後からできた陸地はそれまでは海だったわけで、虫は少ない。由緒正しい虫がいない。おそらくそういうところに、古くから陸だった場所にいた虫がこぼれていった。関東だと秩父と日光から広がっていったのでしょう。) キクリン オオクワガタ自体が、日本ではすごく新しい虫と言われています。縄文時代、6000年前とか7000年前とかに入ってきて、分布を広げ始めた可能性がある。 養老 日本で氷河期終わったのが1万2000年前。  キクリン そこから2000年後ぐらいに、木ができ始めたんだと思うんですよね。ブナとかミズナラなどが。 養老 東北のブナ林なんて、氷河期以降の産物です。 キクリン 森林が熟成してきて、どこかから入ってきたオオクワガタが分布していくんですけど、東北は標高が高い山間部に、西は標高が低いところにいる。西日本のブナ林にはオオクワガタはいないんですよ。東はブナ帯がメインになっているので、血統が違うんじゃないかなと思っています。もしかしたら入ってきた時期も違う。 養老 ニホンザルも、西と東が違うんだって説がありますよね。だからルーツが違うんじゃないかな。 キクリン オオクワガタは分布を広げないなんて言われていたりするんですけど、もとは分布を広げてきた。開発によって途中で絶えた場所もあり、現在では点在的にはなっているんですけど、環境が残された場所では、現在進行形で分布を広げているんじゃないかとも考えています。実際に分布を追っていった先で採れたりするので、やっぱりここまで来ているんだなって、思うことがあります』、「日本列島成立直後を地質学者が書いた地図がありましてね、これが参考になる。いわゆる虫の多いところというのは、基本的にその頃に陸地だったところです。関東なら日光や秩父で、虫で有名なところばっかりですよ・・・日本で氷河期終わったのが1万2000年前。  キクリン そこから2000年後ぐらいに、木ができ始めたんだと思うんですよね。ブナとかミズナラなどが。 養老 東北のブナ林なんて、氷河期以降の産物です・・・キクリン 森林が熟成してきて、どこかから入ってきたオオクワガタが分布していくんですけど、東北は標高が高い山間部に、西は標高が低いところにいる。西日本のブナ林にはオオクワガタはいないんですよ。東はブナ帯がメインになっているので、血統が違うんじゃないかなと思っています。もしかしたら入ってきた時期も違う」、このように歴史的に眺めてみるのも有用だ。 
タグ:生命科学 (その4)(養老孟司×菊池愛騎 熱血対談3題:「光に集まるなら 昼間は全部太陽に向かうはずでしょ」昔から解明されないナゾ…夜の灯りに虫が集まるのはなぜ?、「子どもの虫離れ」が進む一方 虫好きな女性は増えている? 日本人が“虫に親しみを感じる”理由とは、「人間って相当にアホだと思いません?」「地面をガチンガチンに固めてしまって…」解剖学者・養老孟司が“環境問題”に思うこと) 文春オンライン 養老孟司氏 菊池愛騎氏による熱血対談「「光に集まるなら、昼間は全部太陽に向かうはずでしょ」昔から解明されないナゾ…夜の灯りに虫が集まるのはなぜ?」 『オオクワガタに人生を懸けた男たち』(野澤亘伸著・双葉社刊) 「『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』(NHK出版)。これはアメリカの農家の話です。化学肥料をやらない、除草剤をまかない、殺虫剤をまかない。いわゆる有機農業ですね。プラス、耕さない。ジャガイモを作るなら、自分の畑に種イモを置いて。上に枯れ草をかけて終わり。普通は掘るでしょ。 そうすると菌が網の目のように土に構造を作ってるのを壊してしまう。ほとんど目に見えないから、そういう構造に注意してこなかった。それからもう一つは人間の癖でね、やっぱり、種イモを置いただけでジャガイモ ができたっていうと気に入らないんじゃないですか。額に汗してその成果が得られたっていう気持ちをもちたいから。でも、自然に関してはほっとけばいいんです」、「有機農業」のメリットの一部を理解できた。 「日本の山林の割合は北欧に匹敵している。北欧は木を切れないんですよ。下が永久凍土で、森を切ると湖に変わっちゃうから。でも、日本の場合は切りまくっているのに残っているんだよね。  キクリン なぜでしょう? 養老 やっぱり東南アジアモンスーン地帯というのがあるでしょう。しかも温帯でしょ。熱帯はすぐに熱帯雨林になってしまうので、表土が薄いんです。でも日本は厚い・・・黒土がこれだけある国も少ないそうですね。  養老 一つは火山があるから。 長年の間に火山灰が積もる。もう一つは中国から黄砂が飛んでくる・・・ジャレド・ダイアモンド・・・が太平洋の島々を調べて、文明が続く島と続かない島があるという。島は資源が少ないから森を切り尽くしてしまって終わる。その中で島に森が残る条件をいろいろ挙げていますが、一つに火山が入っている。もう一つが黄砂です」、なるほど。 「虫がフェロモンを四方八方に立体的に拡散すると、ものすごく薄くなる。そんなものを感じるわけがないだろうと。感じるとしても匂いの元がどこかわからないから、反対の方に行ってしまうかもしれない。そうじゃなくて、たぶん筋状に流れていると思うんですよ。 キクリン 垂れ流しになっているような感じですね。 養老 そうです。その筋にぶつかると反応して、また次の筋に飛んでいく。筋状に出ていれば、ひっかかる頻度が上がるように飛んでいけるわけです。出すのに効果的な環境も知っている。そこ ら中に飛んでいってしまうところでは意味がないから。 キクリン それですね。 養老 そういう微小な環境は、枝を1本切っただけでも壊れるでしょ。風の流れが変わってくる。虫サイズで考えると、ものすごく環境って微妙なんですよ・・・光源に対して常に一定の角度で飛んでいると。右の目に光が入ったら左の筋肉が動くように。でもたぶん灯りがあると、当然暗いところもあるわけで、その境目に対して垂直に飛んでくるんだと思うんです。 キクリン 太古の夜は月の明かりしかなく、その光は地球に 対してほとんど垂直なんですよね。 養老 無限遠ですから。  キクリン だから、どう飛んでも同じ角度になる。 養老 月を頼りにしていたのが、現代ではやたら“月”だらけになっちゃった(笑)」、なるほど。 菊池愛騎 氏の熱血対談「「子どもの虫離れ」が進む一方、虫好きな女性は増えている? 日本人が“虫に親しみを感じる”理由とは」 「僕らは、この虫ならこの木にいるはずだって考えるんだけど、1種類の木に限っても、いない木にはいない。 キクリン まさにオオクワガタがそうです。複数の条件が全部重なった木には基本的には絶対いると思うんですけど、条件が少しでも外れると、もういない。 養老 必ずいるのは“御神木”です。 キクリン そうです。御神木は一つの山に1本ぐらいしかない。それを探すのはすごく大変なんですけど、その木さえ見つけてしまえば、行ったら絶対ついている感じです・・・ 乾季のタイで虫採りをしたときに、ここには虫がいるって感じたことはある。乾季に虫が採れるところといったら、枯れたバナナの葉っぱなんですよ。湿度を含んで中に菌が入ってる。キノコが生えて、大きな虫が入っていたり。なんでこんなにいるんだってくらいに、いろんな虫が入ってます」、なるほど。 「採ろうと思っても、全く採りきれないというのが実感ですね。通常では、採集圧で虫は減らないと自分は思っています」、なるほど。 「キクリン 男の方が虫が好きだって自己表現してるだけなのかもしれないですね。女性でも虫が好きな人はいっぱいいます。山に行っていると、自然が好きで登ってくる女性の方がたくさんいるんですよ。たぶん、そういう人は生き物が好きだから、虫好きな人も結構いると思います」、なるほど。 「養老 面白いからやってる。それが十分な見返りですよ。 キクリン 一緒です。あと自分は知りたいっていうことだけですね。どうなっているのかを知りたい、どこにいるのかを知りたい、この時間は何やってるんだろうとか。とにかく自分がフォーカスしている虫のことを知りたいっていう一心ですね。それを見つけたときはやっぱり嬉しい」、なるほど。 菊池愛騎氏による熱血対談「「人間って相当にアホだと思いません?」「地面をガチンガチンに固めてしまって…」解剖学者・養老孟司が“環境問題”に思うこと」 「なんで爆発的にマツクイムシが増えたのでしょうか? 養老 やはり根の手入れをしなくなったからでしょう。昔は草があって、落ち葉を拾って焚き火もしていた。それが戦争中くらいから人手が足りなくなって、放置状態になっため腐葉土化した。マツにしては豊かすぎる土壌になっちゃったんですよ。そうすると湿気が高くなり、カビが出てくる。要するに菌類のバランスが変わってしまう。 キクリン 崩れるわけですか? じゃあマツ並木というのは、古くから人間の手入れが入って保たれていたと?  養老 そうなんです。例えば今、桜島の一番低い一帯がマツクイムシにかかってます。あんなところ本来は栄養なんてありそうもないでしょ? 火山が作ったできたばっかりの土地だから。 キクリン 根元の栄養からマツクイムシの被害が来るというのは......」、なるほど。 「日本列島成立直後を地質学者が書いた地図がありましてね、これが参考になる。いわゆる虫の多いところというのは、基本的にその頃に陸地だったところです。関東なら日光や秩父で、虫で有名なところばっかりですよ・・・日本で氷河期終わったのが1万2000年前。  キクリン そこから2000年後ぐらいに、木ができ始めたんだと思うんですよね。ブナとかミズナラなどが。 養老 東北のブナ林なんて、氷河期以降の産物です・・・
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