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アフガニスタン問題(その2)(カブール救出作戦 日本はなぜ韓国にも“大負け”したのか アフガン人協力者らを置き去りに、風を読む:やっぱり奥大使は泣いている、中国がタリバンに見せる「友好姿勢」に透ける意図 中国のアフガン関与は日本にどんな意味があるか) [外交]

アフガニスタン問題については、9月4日に取上げた。今日は、(その2)(カブール救出作戦 日本はなぜ韓国にも“大負け”したのか アフガン人協力者らを置き去りに、風を読む:やっぱり奥大使は泣いている、中国がタリバンに見せる「友好姿勢」に透ける意図 中国のアフガン関与は日本にどんな意味があるか)である。

先ずは、9月9日付けデイリー新潮「カブール救出作戦、日本はなぜ韓国にも“大負け”したのか アフガン人協力者らを置き去りに」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/09090558/?all=1
・『アフガンから怒りの声を上げるのは、現地で日本人の活動を支えながらも見捨てられたアフガン人たち。盟友を保護すべく「カブール救出作戦」で結果を出した韓国と比較すれば、我々とて日本政府の体たらくには憤りを覚える。いったい何が明暗を分けたのか。 〈日本、カブールの恥辱〉との見出しで〈アフガニスタン退避計画は失敗に終わった〉と報じたのは、8月28日付の韓国紙・中央日報だ。東亜日報など他の大手メディアも横並びで日本政府の対応を取り上げると共に、中国メディアまでもが〈韓国紙が日本を嘲笑〉と報じるなど、中韓がここぞとばかりに“日本叩き”に熱をあげている。 情けない話だが、かの国々が喧伝するように日本が大負けしたのは否めない事実だ。振り返れば、米国が今年4月にアフガンからの撤退を表明して以降、イスラム原理主義組織タリバンは攻勢を強め、米軍の後ろ盾を失ったアフガニスタン政府は壊滅状態に陥った。8月15日にはタリバンが首都カブールを掌握。以降、31日の米軍完全撤退に間に合わせるべく、タリバンの制圧下で唯一の脱出口となったカブール国際空港には、世界各国から航空機が殺到したのだった。その目的は残留する自国民と、協力者として通訳や警備業務などに従事したアフガン人とその家族の救出である。 実際、韓国政府はアフガン人協力者390人を3機の輸送機にわけて移送。25日にカブールを発ち、パキスタンを経由して無事に韓国まで送り届けている。冒頭の韓国紙は文在寅大統領が陣頭指揮を執った脱出劇を〈ミラクル作戦〉と呼び、〈カブールのミラクルが成し遂げられた〉と褒め称えた。 片や日本はといえば、韓国軍機がアフガンを飛び立った翌日の26日、ようやく自衛隊の輸送機がカブールに到着。現地で飲食店などを営みながら共同通信のカブール通信員を務めていた安井浩美さん(57)ただ一人を救出できたが、日本大使館や国際協力機構(JICA)の現地事務所に雇われて、日本人と共に汗を流してきたアフガン人協力者の退避希望者約500人は置き去りにされた。 タリバンは外国勢力に協力したアフガン人の身柄を次々に拘束し、場合によっては殺害しているともいわれており、彼らは命の危険に晒されている』、「〈日本、カブールの恥辱〉との見出しで〈アフガニスタン退避計画は失敗に終わった〉と報じたのは・・・韓国紙・中央日報だ。東亜日報など他の大手メディアも横並びで日本政府の対応を取り上げると共に、中国メディアまでもが〈韓国紙が日本を嘲笑〉と報じるなど、中韓がここぞとばかりに“日本叩き”に熱をあげている」、全く国辱ものの不手際だ。何度読んでも、腹が立つ。
・『全国紙の外報部記者曰く、「日本政府は、カブール市内に集まった脱出希望者をバスに乗せるところまではこぎ着けたのですが、折悪しく26日に空港周辺で米兵を含む140名もの死傷者が出た自爆テロが発生し、自衛隊機まで運ぶことができなかったのです。あと1日早ければという声もありますが、そもそも日本政府が自衛隊機の出動を決めたのは23日になってからでした。カブール陥落後、すぐ軍用機を出して救援活動に乗り出した欧米各国と比べれば、1週間ほど遅かったと思います」。 結論からいえば、日本政府の初動が遅れた理由は二つ。一つ目は現地事情に最も精通しているはずの外務省の対応にある。 「救出作戦の明暗を分けた背景には、日韓の“外交官格差”があると思います」 とは、元時事通信外信部長で拓殖大学海外事情研究所教授の名越健郎氏だ。 「韓国の報道によれば、カブールが陥落してから韓国の大使館員も国外へ一旦避難してはいますが、救出作戦を遂行するために4人が現地に戻り、大混乱の中でも、米軍が契約するバスを素早くチャーターして空港まで脱出希望者を送り届けることに成功しています。外交官の日頃の人脈や行動力、機転が成功につながったのだと思いますが、これに対して日本大使館の日本人職員12人は、カブール陥落2日後の17日、全員が英国軍の輸送機に便乗してドバイへと脱出してしまっているのです」 ちなみに日本大使館ご一行様が脱出時に頼ったイギリスは、米軍が撤退するギリギリのタイミングまで大使自らが残留し、ビザ発給業務などを続けたという。結果、取り残された人々がいるものの、英国は8千人超、ドイツは4千人超のアフガン人を退避させることに成功した』、「韓国の大使館員も・・・救出作戦を遂行するために4人が現地に戻り、大混乱の中でも、米軍が契約するバスを素早くチャーターして空港まで脱出希望者を送り届けることに成功」、他方「日本大使館の日本人職員12人は、カブール陥落2日後の17日、全員が英国軍の輸送機に便乗してドバイへと脱出」、「イギリスは、米軍が撤退するギリギリのタイミングまで大使自らが残留し、ビザ発給業務などを続けた」、「日本人職員」は本当に腰抜けだ。
・『頼りにならない国  一方、現場の“最高責任者”である岡田隆・アフガン大使の姿が、カブール空港で見られることはなかった。日本の名誉のため付言すれば、自衛隊の先遣隊が派遣された22日以降、一部の日本大使館員がカブールに戻って救援業務にあたったとの報道もある。とはいえ、刻一刻と治安状況が悪化するにもかかわらず、米軍やタリバンとの折衝などにおいて空白期間があったことは否めない。 名越氏はこうも指摘する。「日本政府は過去20年で約7700億円もの援助をアフガンに行い、欧米諸国と違って自衛隊を派遣してタリバンと戦ってはいません。日本人外交官が危害を加えられることは考えられない。現地に踏みとどまる気概はなかったのでしょうか」 時代や状況は異なれど、ナチスに迫害されたユダヤ人を救うために「命のビザ」を発給し続けた杉原千畝のような外交官はいなかったのか。 そして、もう一つの理由は法律上の限界である。当初は民間機をチャーターして救援に向かう計画だったが、想定よりカブール陥落が早く急遽自衛隊に要請が下った。本来の自衛隊は、騒乱の現場で邦人を保護して空港へ運び、日本まで退避させる訓練を積んでいるというが、現状ではその能力をフルに発揮できないというのだ。 防衛大学校名誉教授の佐瀬昌盛氏によれば、 「自衛隊法84条の4では、海外で邦人輸送できるのは〈安全に実施することができると認めるとき〉との要件が定められ、今回は米軍のコントロール下にあるカブール空港の中でしか活動できなかった。もともと自国民が危険に晒されているから自衛隊を派遣するのに、安全な場所でしか行動できないというのは矛盾しています。政治家はこのような現実を直視して法改正を検討すべきですが、今の菅首相や政権与党は喉元過ぎれば熱さを忘れる。そうした危機意識の欠如が、救出作戦が難航した理由だと思います」 米軍が完全にアフガンを去った今、日本政府は出国を希望する協力者の救出を求めてタリバンと交渉するとは明言しているが、タリバンは9月上旬にも新政府を樹立すると意気込む。いざという時に頼りにならない国だとの烙印を押されないよう、救出作戦を完遂する必要がある。残された時間は限りなく少ない』、「もともと自国民が危険に晒されているから自衛隊を派遣するのに、安全な場所でしか行動できないというのは矛盾しています。政治家はこのような現実を直視して法改正を検討すべきですが、今の菅首相や政権与党は喉元過ぎれば熱さを忘れる。そうした危機意識の欠如が、救出作戦が難航した理由」、「いざという時に頼りにならない国だとの烙印を押されないよう、救出作戦を完遂する必要」、その通りだ。

次に、9月14日付け産経新聞「風を読む」欄を紹介しよう。
https://www.sankei.com/article/20210914-YZY7SEGLMFO4DMOFXCHUPQ333M/
・『「9・11」から20年の歳月が流れた。だが、その後の国際情勢の激変に日本は対応できていない。いや、日本人そのものの劣化が進行したのではないか、とさえ感じる「事件」があった。 在アフガニスタン大使館での現地職員「置き去り事件」である。タリバンの攻勢で首都・カブールが陥落した8月15日の2日後、12人の日本人外交官は、英国軍機で逃げ出した。 米軍から「日本大使館を警護できない」と通告され、空港のパニック状況を考慮すれば情状酌量の余地はあるが、完全なミスである。恐怖政治でしられるタリバンとて今後の外交を考慮すれば、むやみに大使館員の身柄を拘束するとは考えにくい。英国大使は、ギリギリまで現地に残り、協力者にビザを出し続けた。第一、司令官たる岡田隆大使が、カブールに不在だったのは、更迭に値する。 外務省では、厳しい環境で勤務する外交官をケアするためローテーションを組んで年に何回か任地を離れて英気を養うことを認めている。この制度を利用して大使は、日本に帰国しており、慌てて現地に戻ろうとしたが、イスタンブールから先へは行けなかった。 大使館の情報収集力は、ゼロといっていい。米軍撤収の1カ月前には、「ごく近いうちにカブールは陥落する」との情報が出回っており、東京にいる私の耳にも入っていた。現地職員も早くから退避を進言していたとの報道もある。 外務省も何もしなかったわけではない。18日に民間機をチャーターして脱出させようとしたが、失敗。ここで即、自衛隊機の派遣を要請すればよかったのに、派遣が決まったのは、陥落から8日後で、間に合わなかった。 外務省出身の評論家、宮家邦彦氏は「『置き去りにして逃げる』などあり得ない」と本紙に寄稿した(9日付オピニオン面)が、政治も外交も結果がすべてである。 18年前、イラクで凶弾に倒れた奥克彦大使は、その3カ月前、バグダッドの国連事務所が爆破された跡地で、犠牲になった友人の血染めの名刺を見つけた。 「わが日本の友人よ、まっすぐ前に向かって行け!」「何を躊躇(ためら)っているんだ。やることがあるじゃないか」と感じた彼は、イラク復興に文字通り命を捧(ささ)げた。 今の外務省に「奥克彦」はいないのか。産経抄(8月30日付)の通り、やっぱり彼は泣いている』、産経新聞にしては、珍しい政府批判で、同感である。通常、このブログでは新聞記事は扱わないのを原則としているが、この記事はコンパクトにまとまっていたので、紹介した次第である。

第三に、9月27日付け東洋経済オンラインが掲載したAPI地経学ブリーフィング(山口信治/防衛研究所主任研究官)による「中国がタリバンに見せる「友好姿勢」に透ける意図 中国のアフガン関与は日本にどんな意味があるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/457773
・『米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。 コロナウイルス危機で先が見えない霧の中にいる今、独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく』、興味深そうだ。
・『中国にとってのアフガン問題  中国は、タリバンについてポジティブイメージを前面に出すような報道を繰り返している。8月15日のカブール陥落に合わせて「人民日報」の微博(ウェイボー)アカウントは、「60秒でわかるタリバン」という動画を投稿した。これはテロ活動についてまったく触れずに、タリバンを民族主義的勢力として紹介する内容で、国内で批判が相次ぎ、4時間余りで削除された。しかしその後も中国の対外宣伝メディアであるCGTNは、タリバンが秩序回復のために努力する姿を強調して報道している。 中国のタリバンに対する友好的な姿勢は、こうした宣伝にとどまらず、建設的な関係構築に向けて動いているように見える。9月8日、中国はアフガニスタンに対する人道支援として、ワクチンや食糧など2億元(約34億円)相当の提供を発表した。 さらに同日、中国は、欧米の主催するアフガニスタンに関する会議には出席せず、パキスタンやイラン、中央アジア諸国との間で周辺国によるアフガン問題外相会議を開催した。9月17日には上海協力機構(SCO)サミットとSCOとロシアを中心とする集団安全保障条約(CSTO)の合同サミットが開催されるなど、アフガニスタンをめぐる中国外交が活発となっている。 中国は、アメリカ軍撤退後のアフガニスタン情勢にどのように関わろうとしているのだろうか。この地域の秩序をリーダーとして牽引し、中国中心の秩序を作ろうとしているのだろうか。中国の対アフガニスタン政策の根底にあるロジックを探ってみたい。 中国の国内安全保障問題が、アフガニスタン問題に対する中国の中心的関心となっている。これは、アフガニスタンの安定は、新疆ウイグル自治区の安定と関わると中国が考えているためである。中国は、新疆ウイグル自治区の分離を目指す東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)などの分離独立勢力やテロリズムが外国勢力とつながるという警戒を、一貫して抱いてきた。とくにこれらと中央アジアやアフガニスタンのテロリズムとのつながりを警戒している。) アフガニスタンがこうしたテロリストや分離独立運動の温床となるのが、中国にとって最大の懸念である。中国は分離独立運動に対して過剰とも思えるほどの懸念を抱き、国内ではウイグル族やカザフ族に対する抑圧を強化している。アフガンが不安定化し、テロリストの活動が活発化することは、中国の恐怖を増大させるだろう。こうした意味で、アフガニスタンの安定は中国の国益につながる重要な問題である。 またアフガニスタンの国内が安定することで、その鉱物資源などの資源採掘や、一帯一路協力などの経済的協力が可能になるかもしれない。しばしば中国は鉱物資源を狙ってアフガン進出を強化するという予測がみられるが、事はそれほど単純ではない。 中国はアフガンにおける銅山採掘の契約を締結するなど、これまでもある程度の経済進出を試みてきたものの、安全への懸念やインフラの不備などから、プロジェクトはほとんど進んでこなかった。よって、中国にとってアフガンは、経済的利益は潜在的にあるものの、国内の安定なくして、それを得ることはできない、というのが実情である』、「中国は分離独立運動に対して過剰とも思えるほどの懸念を抱き・・・アフガンが不安定化し、テロリストの活動が活発化することは、中国の恐怖を増大させるだろう・・・経済的利益は潜在的にあるものの、国内の安定なくして、それを得ることはできない」、なるほど。
・『中国外交の試金石  アフガニスタンの安定に中国がどのように関与していくかが、中国がどのようにリーダーシップを発揮し、自国中心の秩序をどの程度積極的に構築していくかを図る試金石になる。中国は従来、リーダーシップを発揮して秩序を担うことには消極的だった。習近平政権までに、より積極的に国際秩序を主導することをうたうようになったが、あくまで理念的レベルにとどまっており、実際にリーダーシップを発揮することは少なかった。 中国は従来、国際秩序を支える原則として、国連憲章や平和五原則の主権平等、内政不干渉が重要との立場を取っており、これを外交の原則として掲げてきた。欧米が民主や人権をかざして他国の内政に介入することに中国は批判的立場を取り続け、中国は相手国の政治体制がどのように抑圧的な体制であろうとも、プラグマティックに外交を行うことができるとアピールしてきた。 アメリカ軍撤退とそれに続くカブール陥落の劇的な展開は、中国にはアメリカの失敗と衰退を象徴しているように映っているだろう。またアメリカの掲げてきた介入による民主主義国家建設は失敗し、人権を信奉するアメリカが多くのアフガニスタン住民を見捨てて逃げざるをえなかったことは、その大義の失敗を示していると中国は捉えている。その意味では、タリバンの勝利は中国にとって喜ぶべき展開なのかもしれない。) しかし従来、中国はアフガンの安定化を丸投げに近いかたちでアメリカにほぼ依存してきた。アメリカ軍が全面的に撤退し、力の空白が生まれたことで、アフガンの安定化という役割を誰が担うのかが大きな課題となっていることも事実だ。 これは中国外交の大きなトレンドとしての、他国への介入の必要性の増大と関わる。中国の台頭に伴って海外における利益が拡大し、それを守る必要が増大していること、そして過剰なまでの国内安全保障への不安感が高まっていることから、中国外交において以前よりも積極的に他国に関与したり、介入したりするインセンティブが高まりつつある。 中国では、従来の内政不干渉という建前を守りつつ、自国の影響力を他国に及ぼしていくために、「中国の特色ある建設的介入」(王毅外相)を行うべきという議論が行われている』、「中国の特色ある建設的介入」といっても、「アフガンの安定化という役割」、まで負うかどうかは不透明だ。
・『中国のアプローチと不安  では、中国はどのようにアフガニスタン問題に関わろうとしているのだろうか。現在のところ、中国にとっては、タリバンを中心とした政権が、外国におけるテロ活動を支援せず、原理主義的な立場を改めて穏健化したうえで、これを中心とした安定政権を築くことが最善となっている。経済協力や外交的承認を誘因にして、タリバンの穏健化を促すのが、中国が使える手段となるだろう。 中国がタリバンのポジティブイメージを宣伝しているのは、国内に向けてタリバン政権と友好的関係を作ることを説得するのと同時に、ある意味でタリバンに向けたメッセージであるともいえるかもしれない。 中国にとって重要なのは、多国間の協力であり、とくにパキスタン、ロシア、イラン、中央アジア諸国との協力を重視している。9月8日、パキスタンの主催で、中国、パキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン、タジキスタン、イランによる周辺諸国外相会議が開催された。また、9月17日にはSCOサミットとSCO-CSTOの合同サミットが開催され、その中でアフガニスタン問題が取り上げられている。 これに併せて、前日には中国、ロシア、パキスタン、イランによるアフガニスタン問題に関する非公式外相会談が開催された。これら会議では、アフガニスタン問題についてこれら周辺国が協力して対処することを確認し、タリバンに対して包括的政治枠組みを作り、穏健な政策を取ることを促すとともに、反テロ協力を進めることがうたわれた。中国がパキスタンなどとの協力の下で、アメリカ撤退後の地域秩序をうまく安定させることができれば、それは中国主導の地域秩序への第一歩となるかもしれない。 だが、中国の思い描くような展開とならない可能性は十分にある。タリバン政権が内政を安定化させることができるかどうか未知数であるし、タリバンが穏健化する保証はどこにもない。さらに、タリバンが末端組織を統制できるとも限らない。 タリバンの政権奪取に伴うテロ活動の活発化はすでに懸念されるところとなっている。王毅外相は、「アフガニスタンに拠点を置く国際テロ組織が周辺国に侵入しようとしている」と警告している』、「中国がパキスタンなどとの協力の下で、アメリカ撤退後の地域秩序をうまく安定させることができれば、それは中国主導の地域秩序への第一歩となるかもしれない。 だが・・・「タリバン政権が内政を安定化させることができるかどうか未知数」、「タリバンが穏健化する保証はどこにもない」、「タリバンが末端組織を統制できるとも限らない」、まだまだなんとも言えないようだ。
・『中国のタリバンに対する不安感と不信感  中国は再三にわたってタリバンに対して、過激派との関係を完全に断ち、これらに対して強硬な態度を保つよう要請している。このことが示すのは、中国のタリバンに対する不安感や不信感であるように見える。 実際に、7月から8月にかけてパキスタンの自爆テロで中国人が殺害される事件が起きるなど、地域全体の不安定化の傾向がみられる。王毅外相は、周辺国外相会議において、インテリジェンス協力や国境管理を強化し、アフガニスタンからテロ集団が流入することを共同で防ぐことを提案している。 問題は、仮にタリバンの穏健化というシナリオがうまくいかなかった場合、中国はどうするのかということである。自国内に過激派や分離独立勢力が侵入し、新疆の不安定をもたらす可能性が高まれば、中国がアフガン内政により介入する誘因が高まるかもしれない。 しかし、しばしば「帝国の墓場」と呼ばれるアフガンに過度に介入することは、ソ連やアメリカの二の舞いになる危険性もあるため、中国としては避けたいところであろう。中国にとってここでも重要となるのは、ロシアや中央アジア諸国との共同歩調ということになるだろう。 日本から見れば、中国のアフガニスタンへの関与の増大は、いい面と悪い面の入り交じったものである。中国がアフガニスタンの安定化に積極的に乗り出すならば、それは地域における中国の影響力増大につながるかもしれない。 しかし中国がそれまで地域秩序の維持にほとんど貢献してこなかったことを考えれば、地域の安定に責任を負うこと自体を否定すべきではないだろう。また中国の関心が海洋よりも西側の内陸に向けられることは、海洋で紛争を抱える国々にとって、圧力の軽減にもつながりうるかもしれない』、「中国の関心が海洋よりも西側の内陸に向けられることは・・・」、はいささか虫が良すぎるが、「中国が・・・地域の安定に責任を負うこと自体を否定すべきではないだろう」、その通りだ。実際には、どのように展開していくか、大いに注目される。 
タグ:「〈日本、カブールの恥辱〉との見出しで〈アフガニスタン退避計画は失敗に終わった〉と報じたのは・・・韓国紙・中央日報だ。東亜日報など他の大手メディアも横並びで日本政府の対応を取り上げると共に、中国メディアまでもが〈韓国紙が日本を嘲笑〉と報じるなど、中韓がここぞとばかりに“日本叩き”に熱をあげている」、全く国辱ものの不手際だ。何度読んでも、腹が立つ。 「カブール救出作戦、日本はなぜ韓国にも“大負け”したのか アフガン人協力者らを置き去りに」 デイリー新潮 アフガニスタン問題 (その2)(カブール救出作戦 日本はなぜ韓国にも“大負け”したのか アフガン人協力者らを置き去りに、風を読む:やっぱり奥大使は泣いている、中国がタリバンに見せる「友好姿勢」に透ける意図 中国のアフガン関与は日本にどんな意味があるか) 「韓国の大使館員も・・・救出作戦を遂行するために4人が現地に戻り、大混乱の中でも、米軍が契約するバスを素早くチャーターして空港まで脱出希望者を送り届けることに成功」、他方「日本大使館の日本人職員12人は、カブール陥落2日後の17日、全員が英国軍の輸送機に便乗してドバイへと脱出」、「イギリスは、米軍が撤退するギリギリのタイミングまで大使自らが残留し、ビザ発給業務などを続けた」、「日本人職員」は本当に腰抜けだ。 「もともと自国民が危険に晒されているから自衛隊を派遣するのに、安全な場所でしか行動できないというのは矛盾しています。政治家はこのような現実を直視して法改正を検討すべきですが、今の菅首相や政権与党は喉元過ぎれば熱さを忘れる。そうした危機意識の欠如が、救出作戦が難航した理由」、「いざという時に頼りにならない国だとの烙印を押されないよう、救出作戦を完遂する必要」、その通りだ。 産経新聞「風を読む」欄 「やっぱり奥大使は泣いている 論説委員長・乾正人」 産経新聞にしては、珍しい政府批判で、同感である。通常、このブログでは新聞記事は扱わないのを原則としているが、この記事はコンパクトにまとまっていたので、紹介した次第である。 東洋経済オンライン API地経学ブリーフィング 「中国がタリバンに見せる「友好姿勢」に透ける意図 中国のアフガン関与は日本にどんな意味があるか」 「中国は分離独立運動に対して過剰とも思えるほどの懸念を抱き・・・アフガンが不安定化し、テロリストの活動が活発化することは、中国の恐怖を増大させるだろう・・・経済的利益は潜在的にあるものの、国内の安定なくして、それを得ることはできない」、なるほど。 「中国の特色ある建設的介入」といっても、「アフガンの安定化という役割」、まで負うかどうかは不透明だ。 「中国がパキスタンなどとの協力の下で、アメリカ撤退後の地域秩序をうまく安定させることができれば、それは中国主導の地域秩序への第一歩となるかもしれない。 だが・・・「タリバン政権が内政を安定化させることができるかどうか未知数」、「タリバンが穏健化する保証はどこにもない」、「タリバンが末端組織を統制できるとも限らない」、まだまだなんとも言えないようだ。 「中国の関心が海洋よりも西側の内陸に向けられることは・・・」、はいささか虫が良すぎるが、「中国が・・・地域の安定に責任を負うこと自体を否定すべきではないだろう」、その通りだ。実際には、どのように展開していくか、大いに注目される。
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日韓関係(その15)(帰国に追い込まれた在韓日本公使“妄言"の真相 韓国メディアのどうしようもない反日体質と対韓外交の難しさ、韓国の次期大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策、韓国に残され韓国経済に貢献した日本資産の行方 「日本から補償はもう必要ない」韓国研究者の大胆な研究成果) [外交]

日韓関係については、7月25日に取上げた。今日は、(その15)(帰国に追い込まれた在韓日本公使“妄言"の真相 韓国メディアのどうしようもない反日体質と対韓外交の難しさ、韓国の次期大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策、韓国に残され韓国経済に貢献した日本資産の行方 「日本から補償はもう必要ない」韓国研究者の大胆な研究成果)である。

先ずは、8月15日付け東洋経済オンラインが掲載した産経新聞ソウル駐在客員論説委員・神田外語大学客員教授の黒田 勝弘氏による「帰国に追い込まれた在韓日本公使“妄言"の真相 韓国メディアのどうしようもない反日体質と対韓外交の難しさ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/448082
・『韓国メディアの“オフレコ破り”によって解任、帰国に追い込まれた在韓日本大使館・相馬弘尚公使の事件は、韓国メディアのどうしようもない反日体質と、日本の対韓外交の難しさを改めて印象付けている。 外交官の異動には通常、発令後1カ月近くの時間的余裕が保障されているが、相馬・前公使は発令からわずか10日後の2021年8月11日、追われるように帰国となった。 帰国に際し本人は「2次被害を避けるため」と電話口で苦笑していたが、内心、忸怩たるところがあっただろう。再起を期待したい』、新聞だけでは経緯がよく分からないので、興味深い。
・『「オフレコ」が通じない韓国メディア  相馬公使は韓国をよく知るいわゆる“コリア・スクール”のエリート外交官である。これまで韓国語を駆使して対韓情報発信に果敢に取り組んできた。歴代の日本大使館幹部のなかでは韓国メディアと最も積極的に接触してきた外交官だった。今回はそれが逆にアダとなった形で、韓国メディアの罠にはめられてしまった。今、この事件をめぐって在韓日本人たちの間の共通の懸念は「これで日本大使館の外交官たちが萎縮しなければいいが……」である。 事件のポイントは2点ある。1つは「妄言」として外交問題になり、解任の理由となった「文在寅大統領に対する性的な不適切発言」の問題であり、もう1つはその発言の場になった韓国の特定メデイアとのオフレコ(非公開)懇談の問題である。 事件としては前者が大騒ぎになり印象的だが、実態的には「これじゃ韓国は信頼できない!」という意味で、日韓関係的には後者のほうがより重要である。 問題になった韓国メディア「JTBC」との昼食懇談は2021年7月15日、メデイア側の要請で行われた。場所はメディア側が準備した大使館近くの洋食レストラン。相馬公使と面識のある先輩記者が、後輩の大統領官邸担当の女性記者を紹介する形だった。懇談の中身は主に日韓関係の現状についてで、時期的には文大統領の東京五輪開会式出席のための訪日問題が取りざたされているときだった。 伝えられている話を総合すると、相馬公使は懇談の際、韓国の対日外交を「独りよがり」「自己満足的」として不満を述べるにあたって「文大統領はマスターベーションをしている」という比喩を使った。この表現について相馬公使はその場で撤回し、JTBCの報道でも「(相馬公使は)“失礼した”と謝った」となっている。 報道は翌7月16日夕刻の番組だったが、その間、相馬公使には女性記者から問題の発言について確認の電話があった。そこで相馬公使は、懇談が非公開のオフレコだったことや、問題の表現についてはその場で撤回し謝ったことを指摘したうえで、かつ「韓国外交について語ったもので決して文大統領を名指ししたものではない」と釈明したという。 それにもかかわらずJTBCは報道に踏み切った。そのことについてJTBCは報道の際、まずキャスターが「公開懇談会の場ではなかったけれども、発言の内容が常識的ではないと判断し報道を決定しました」と説明した後、担当記者自ら「(相馬公使は)文大統領の歩みを評価する際、口に出せないような表現を使いました。駐在国の首脳に対する性的表現を相手国言論人の前で使うのは常識的でありません」と伝えている』、「“コリア・スクール”のエリート外交官・・・これまで韓国語を駆使して対韓情報発信に果敢に取り組んできた。歴代の日本大使館幹部のなかでは韓国メディアと最も積極的に接触してきた外交官」、完全に韓国側の罠にハメられたようだ。
・『信義、信頼、マナーなどお構いなし  オフレコの約束を破り、しかもその場で撤回・謝罪をうけながらもそれを無視し、暴露(報道)してしまったのだ。明らかに背信行為である。 JTBCはケーブル系有力テレビチャンネルの1つで、先年、朴槿恵大統領追い落としの暴露報道で名を挙げた。筆者も日ごろ、対韓歴史認識などをめぐって「妄言製造機・極右クロダ記者また妄言!」などと顔写真付きで報道してもらっているが、先ごろ“戦犯企業ミツビシ”叩きの企画番組もやっており反日報道にはことのほか熱心である。 今回も「単独(特ダネ)」と銘打っており、メディアとしての約束、信義、信頼、マナーなどお構いなしに一発当て込んでの暴露報道だった。対外的背信行為である暴露報道にJTBC内部でも当然、議論があったに違いない。マナー違反がわかっている担当の女性記者は、報道することに消極的だっただろう。だから報道は翌日にずれ込んでいる。しかしこのところ視聴率低下に悩むJTBC上層部は、「これはいける!」というビジネス判断で暴露に踏み切った――。 以上は筆者の想像だが、同じメディア界の人間としてこれはほぼ間違いだろう。 韓国メディアは日本叩きの反日ネタには何でも飛びつく。オフレコ破りだろうが背信行為だろうが関係ない。JTBCの報道をきっかけに全メディアが「相馬妄言」に飛びつき、日本政府に謝罪要求、相馬を処罰しろ、大統領の日本訪問反対などといつもの反日キャンペーンとなった。 韓国外交省は日本大使を呼びつけて抗議し、次期大統領選に向けて忙しい政界も「日本公使妄言糾弾」に熱を上げるなど、外交的大問題に仕立て上げてしまった。その結果、五輪訪日計画をめぐる事前の対日交渉がうまくいかず、訪日が難しくなっていた文大統領にとっては、「訪日中止」の責任を日本のせいにするいい口実となった。伝えられている話を総合すると、相馬公使は懇談の際、韓国の対日外交を「独りよがり」「自己満足的」として不満を述べるにあたって「文大統領はマスターベーションをしている」という比喩を使った。この表現について相馬公使はその場で撤回し、JTBCの報道でも「(相馬公使は)“失礼した”と謝った」となっている。 報道は翌7月16日夕刻の番組だったが、その間、相馬公使には女性記者から問題の発言について確認の電話があった。そこで相馬公使は、懇談が非公開のオフレコだったことや、問題の表現についてはその場で撤回し謝ったことを指摘したうえで、かつ「韓国外交について語ったもので決して文大統領を名指ししたものではない」と釈明したという。 それにもかかわらずJTBCは報道に踏み切った。そのことについてJTBCは報道の際、まずキャスターが「公開懇談会の場ではなかったけれども、発言の内容が常識的ではないと判断し報道を決定しました」と説明した後、担当記者自ら「(相馬公使は)文大統領の歩みを評価する際、口に出せないような表現を使いました。駐在国の首脳に対する性的表現を相手国言論人の前で使うのは常識的でありません」と伝えている』、「JTBCはケーブル系有力テレビチャンネルの1つで、先年、朴槿恵大統領追い落としの暴露報道で名を挙げた・・・反日報道にはことのほか熱心」、こんなところのインタビューには殊の外、慎重に対応すべきだが、韓国のことは知り尽くしていると自信過剰になっていたところを突かれるとは、お粗末だ。
・『信義、信頼、マナーなどお構いなし  オフレコの約束を破り、しかもその場で撤回・謝罪をうけながらもそれを無視し、暴露(報道)してしまったのだ。明らかに背信行為である。 JTBCはケーブル系有力テレビチャンネルの1つで、先年、朴槿恵大統領追い落としの暴露報道で名を挙げた。筆者も日ごろ、対韓歴史認識などをめぐって「妄言製造機・極右クロダ記者また妄言!」などと顔写真付きで報道してもらっているが、先ごろ“戦犯企業ミツビシ”叩きの企画番組もやっており反日報道にはことのほか熱心である。 今回も「単独(特ダネ)」と銘打っており、メディアとしての約束、信義、信頼、マナーなどお構いなしに一発当て込んでの暴露報道だった。対外的背信行為である暴露報道にJTBC内部でも当然、議論があったに違いない。マナー違反がわかっている担当の女性記者は、報道することに消極的だっただろう。だから報道は翌日にずれ込んでいる。しかしこのところ視聴率低下に悩むJTBC上層部は、「これはいける!」というビジネス判断で暴露に踏み切った――。 以上は筆者の想像だが、同じメディア界の人間としてこれはほぼ間違いだろう。 韓国メディアは日本叩きの反日ネタには何でも飛びつく。オフレコ破りだろうが背信行為だろうが関係ない。JTBCの報道をきっかけに全メディアが「相馬妄言」に飛びつき、日本政府に謝罪要求、相馬を処罰しろ、大統領の日本訪問反対などといつもの反日キャンペーンとなった。 韓国外交省は日本大使を呼びつけて抗議し、次期大統領選に向けて忙しい政界も「日本公使妄言糾弾」に熱を上げるなど、外交的大問題に仕立て上げてしまった。その結果、五輪訪日計画をめぐる事前の対日交渉がうまくいかず、訪日が難しくなっていた文大統領にとっては、「訪日中止」の責任を日本のせいにするいい口実となった。 今回、相馬公使にとっての不幸を一言でいえば「相手が悪かった」である。JTBCのメディアとしての傾向、体質についてはすでに触れた。 これとは別に、懇談の相手が女性記者だったことが事件につながったと思う。韓国社会は近年、男女差別や性的問題に極めて敏感である。公的人物や有名人のセクハラ問題が、非難や告発事件として毎日のようにメディアを賑わせている。メディアはそのことに鵜の目鷹の目、虎視眈々である』、「オフレコ破り」は日本でもよくある話で、それがあり得るとの前提で、取材を受けねばならない筈だ。
・『男女差別や性的問題に極めて敏感な韓国社会  したがって、今の韓国では「女性記者の前でマスターベーションという言葉」は、そこだけを抜き出していえば十分問題になりうる。今回、仮に担当の女性記者はその場でことさら羞恥心を感じず問題視しなかったとしても、帰社した後、周囲にそのことを語れば周りは間違いなく「セクハラじゃないか!」と騒ぐ。とくに相手が日本外交官だったということを聞けば。 日本大使館は報道があった後、7月17日の午前2時(!)過ぎに「相馬妄言事件」について大使名義の公式コメントを発表し「懇談中の発言とはいえ外交官として極めて不適切で大変遺憾であり、厳重に注意した」と頭を下げた。日本国内でも加藤勝信官房長官が記者会見で同様の見解を発表しているが、日本政府としては「コトが大統領がらみ」と「韓国世論への刺激」を考え、外交問題化を避けようと早期鎮火のため素早く頭を下げたというわけだ。 外交的にはこの措置はやむをえなかっただろう。これまでの経験からも、韓国社会はメディア主導(世論)で反日妄言キャンペーンが始まるとブレーキが利かなくなるからだ。しかも問題が「性的な不適切発言」とあっては勝ち目はない。 韓国における近年の日本外交官受難史をひもとけば、発言をめぐっては高野紀元大使(2003~2005年)の「竹島発言」問題が印象深い。日本の島根県が「竹島の日」を制定したことに反発、韓国で反日ムードが高まっていたときだった。 ソウル外信記者クラブの昼食会見で竹島問題を質問された際、「歴史的にも国際法的にも日本の固有の領土」という日本政府の公式見解を述べたところ、これが韓国メディアによって「日本大使がソウルのど真ん中で妄言!」と報じられ、日本大使館に連日、反日デモが押し掛ける騒ぎになった。日本の国を代表する日本大使が、公式の場で問われて日本の国家としての公式見解を語ることが「妄言」として排撃、非難される。 当時、この事件でおじけついた日本大使館は竹島問題での想定問答を作成し、できるだけ具体的には触れず「従来の立場に変わりはない」程度にとどめるようにしたと記憶する。ことなかれ主義で萎縮してしまったのだ。 今回、「マスターベーション」はまずかったとして、だからといって日本外交官が韓国相手の対外情報発信において萎縮したりいじけては元も子もない。「虎穴に入らずんば虎子を得ず」である。相馬公使は日韓情報戦争で韓国メディアのテロに遭い、"戦死"したようなものである。駐韓日本外交官たちは、途中下車を余儀なくされた相馬公使の“弔い合戦”の気概が求められる』、「女性記者の前でマスターベーションという言葉」は韓国でなく、日本でも問題になる。問題があるマスコミを前に、軽率だった。筆者は「相馬公使」を必死にかばっている。確かに同情できる点もあるとはいえ、「韓国外交省は日本大使を呼びつけて抗議し・・・外交的大問題に仕立て上げてしまった」、深刻な外交問題を引き起こしてしまった以上、「相馬公使」の責任も重大で、更迭は当然だと思う。

次に、9月10日付けNewsweek日本版が掲載したニッセイ基礎研究所 准主任研究員の金 明中氏による「韓国の次期大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策」を紹介しよう。
・『<反日・親北の李在明氏、知日・親北の李洛淵氏、対日協力と対北強硬姿勢の尹錫悦氏> 来年3月に行われる韓国大統領選をめぐり、進歩(革新)系与党「共に民主党」と保守系最大野党「国民の力」が候補者を絞り出す予備選挙を始める等、11月上旬の候補選出に向けた争いが本格的に始まった。与野党の候補者の中でも最も注目されているのが与党「共に民主党」の李洛淵(イ・ナギョン、以下、李洛淵氏)前代表と、同じ与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン、以下、李在明氏)京畿道知事、そして、野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル、以下、尹錫悦氏)前検察総長の3人である。 大統領選挙の雰囲気が熱くなると、特に対日政策と対北朝鮮政策が注目される。その理由は対日政策と対北朝鮮政策が選挙結果を大きく左右する要因になるからである。 例えば、朴正熙政権(大統領任期:1963年12月17日 - 1979年10月26日)、全斗煥政権(同 1980年8月27日 - 1988年2月24日)、盧泰愚政権(1988年2月25日 - 1993年2月25日)時代には北朝鮮に対する反共主義が「万能薬」のように使われた』、「対北朝鮮政策」が注目されるのは当然だが、「対日政策」も注目されるのは困ったことだ。
・『大統領選の行方を左右  しかしながら、金泳三(同1993年2月25日 - 1998年2月25日)政権時代の1995年10月の村山富市総理発言(「日韓合併条約は当時の国際関係等歴史的観点から法的に有効に締結したものだと認識している」)や江藤隆美総務庁長官発言(「日本は植民地時代に韓国に良いこともやった」)、1996年2月の池田行彦外務大臣の竹島(韓国名・独島)領有権主張(韓国政府が発表した竹島での接岸施設建設計画発表に対し「竹島は日本固有の領土」であると抗議、建設中止を求めた)以降、韓国国内で反日感情が高まると、金泳三政権は世論を意識して反日姿勢を強化する等、日韓関係は政権の維持や獲得において重要な手段として使われることになった。 さらに、初めて国民の選挙により政権交代が実現された金大中政権(同 1998年2月25日 - 2003年2月25日)以降は、北朝鮮に対する反共主義は弱まり、日本に対する反日主義が選挙により影響を及ぼすことになった。金大中政権、盧武鉉政権(同 2003年2月25日 - 2008年2月25日)が「太陽政策」など親北路線を強化したからだ。但し、北朝鮮に対する反共主義は過去に比べて影響力は弱まったものの、南北が分断されており、徴兵制度が残っている韓国においては相変わらず重要な選挙手段の一つとして使われている。 では、上述した3人の大統領候補者の対日・対北朝鮮政策はどうだろうか。まず、与党・共に民主党の李在明氏から見てみよう。人口約1300万人の京畿道知事である李在明氏は、マスコミにより過去のスキャンダルや失言が報じられている中でも、与党の次期大統領選挙候補レースで不動のトップを維持している。9月4日には韓国の中部、大田・忠南で与党「共に民主党」の候補を決める予備選が始まり、李在明氏は得票率54.8%で勝利し、順調な滑り出しを見せた。2位の李洛淵氏(27.4%)を大きく上回る数値だ。ちなみに、「共に民主党」は9月4日から10月10日まで全国11か所で順次、党員と、事前登録した国民による投票を行い、最終候補者を決定する』、「金大中政権・・・以降は、北朝鮮に対する反共主義は弱まり、日本に対する反日主義が選挙により影響を及ぼすことになった」、ますます困った成り行きだ。 
・『「問題は日本国民ではなく保守右翼」  李在明氏の対日政策は、過去に対日強硬派とも言われるほど強い発言が目立っており、今後もこの姿勢はある程度維持されると考えられる。彼は2018年3月1日の3.1節行事で「侵略国家がその責任で分断・占領されるのが歴史の法則であるが、代わりに朝鮮半島が分割・占領された」と述べながら分断の悲しさを強調した。そして、今年の7月2日に行われたオンライン記者会見では「私を反日的だと評価する人がいるが、私は日本を嫌ったり、日本国民に対して反感は持っていない。(中略)問題は日本の保守右翼政治集団である。(中略)日韓関係は同伴者的関係で、お互いに認めて行くことが正しい。その過程が屈辱的になってはならない。(中略)容赦は被害者がするものである。加害者がするのは容赦ではない。問題をすべて明らかにし、必要なものはお互いに受け入れて認めるべきである。そうすることで新しい未来、合理的関係が開かれると思う」と主張した。 対北朝鮮政策は、基本的に文政権の親北政策を維持しながら、場合によっては文政権とは差別化した政策を展開する可能性がある。上述の7月2日の記者関係では、今後の南北関係に対する質問に対して「侵略国家である日本が分断されなければならないのに、日本に侵略された被害国家である我々がなぜ分断されなければならないのか」と南北に分かれている現実を嘆きながら、「米中葛藤が朝鮮半島に及ぼす影響はとても大きいが、どちらかに巻き込まれず自主的立場から南北関係を解決すべきであり、そこから危機を乗り越えるのみならず、新しい機会を作ることができると思う」と答えるなど南北関係改善に期待感を表明した。 一方、8月22日に発表した「大転換時代に統一外交構想」では韓国と北朝鮮の絶対多数は朝鮮戦争以前の単一国家を経験していない世代であることを強調しながら、「今後は単一民族に基づいた必然的統一論理では国民の同意を得ることができない。(中略)統一外交政策も理念と体制を乗り越えて韓国と北朝鮮両方の成長と発展に役に立つ実用的方向への転換が必要だ」と強調した。一方、北朝鮮が間違った行動をした場合には明確に韓国政府の立場を伝える。そして北朝鮮の呼応がない状態で南北協力事業を一方的に進めないと主張する等、文政権とは差別化した対北朝鮮政策を実施する可能性を示唆した。 次は、与党「共に民主党」の李洛淵氏の対日政策と対北朝鮮政策を見てみよう。李洛淵氏の対日政策は、李在明氏より、そして現在の文政権より親日になる可能性が高い。李洛淵氏は、東亜日報(韓国の大手紙)の東京特派員を務めた経験もあり、韓国の政治圏内では「最高の知日派」として知られている。しかし支持率においてはライバルとなる李在明氏に抜かれている』、「最高の知日派」の「李洛淵氏」が「支持率においてはライバルとなる李在明氏に抜かれている」のは残念だ。
・『竹島の削除を要求  支持率を意識したのか、東京オリンピックの参加をめぐって世論が分かれていた今年の5月には自分のフェイスブックに、東京オリンピック・パラリンピックの公式ホームページに掲載されている日本の地図に、竹島(韓国名・独島)が表示されていることについて、「直ちに削除することを要求する」と書いた。また、東京オリンピック・パラリンピックのボイコットを含めて可能なすべての手段を使い、断固対応すると主張した。知日で親日派と言われている彼がここまで極端的な行動をしたことに対して、専門家らは日本に対する強硬な姿勢で支持基盤を拡大した李在明氏や文大統領を意識した可能性が高いと解釈している。 対北朝鮮政策について李洛淵氏は、文政権の政策を継承する立場を明らかにした。2020年10月21日に外国のマスコミ向けに開かれた記者会見で、「現政権の対北朝鮮政策について、部分的に補完することはあり得るが、大枠では継承することが正しいと信じる」と述べた。 最後に、尹錫悦氏は対日政策と対北朝鮮政策についてまだ明確に言及していないが、日本に対しては「対日協力路線」を、そして北朝鮮に対しては文政権の対北朝鮮政策を大きく修正した「強硬路線」を取る可能性が高い。尹錫悦氏は今年の8月に政策ブレーンとなる政策諮問団42人を公開しており、42人には昨年末まで文政権で北朝鮮の核問題を総括した李度勲(イ・ドフン)前外交部朝鮮半島平和交渉本部長らが含まれている。対日政策と対北朝鮮政策共に文政権の失敗を強調しながら、次々と具体的な代替案を発表すると予想される。) 最近、野党「国民の力」の洪準杓(ホン・ジュンピョ)議員の支持率上昇が目立っているが、大きな変数がない限り、上述の3人のうち、一人が韓国の第20代大統領になる可能性が高いと考えられる。今後3人がどのような対日政策と対北朝鮮政策を発表するのか今後の3人の動きに注目したい。 (■韓国第20代大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策等」の表はリンク先参照)』、「尹錫悦氏は・・・日本に対しては「対日協力路線」を、そして北朝鮮に対しては文政権の対北朝鮮政策を大きく修正した「強硬路線」を取る可能性が高い」、「今後の3人の動きに注目したい」、さてどうなるのだろう。

第三に、10月15日付け東洋経済オンラインが掲載した産経新聞ソウル駐在客員論説委員・神田外語大学客員教授の黒田 勝弘氏による「韓国に残され韓国経済に貢献した日本資産の行方 「日本から補償はもう必要ない」韓国研究者の大胆な研究成果」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/461861
・『慰安婦や徴用工問題など、日韓関係をこじらせる問題は韓国でどのように研究されているのか。韓国では史実よりも感情的に連呼されている。では、韓国で日本の植民地時代とその後の事実を究明する研究はないのか。韓国在住40年、日本を代表する朝鮮半島ジャーナリストが発掘し、日本で翻訳出版された『帰属財産研究―韓国に埋もれた「日本資産」の真実』(李大根著、金光英実訳・黒田勝弘監訳、文藝春秋)から、そのポイントと現実的意義を紹介する。 最悪といわれる日韓関係がここまで悪化しているのは、慰安婦問題や徴用工問題など歴史にかかわる韓国側の執拗な要求、対日非難が背景にある。日本側は過去についてはすでに1965年の国交正常化の際「清算され解決済み」と主張しているのに対し、韓国側は「いや個人補償の権利はある」といって韓国内の日本企業の資産を差し押さえし、売却を強行しようとしている』、「韓国側の「いや個人補償の権利はある」」との主張は、本当に腹が立つ。
・『日本が朝鮮半島に残した資産は数千億ドル  実は歴史的に日本は敗戦後、朝鮮半島からの撤収に際して膨大な資産を彼の地に残しているのだ。これによって韓国経済は発展した。その実態を多くの資料を駆使し、実証的に分析・研究した本が、韓国で2015年に出版された李大根氏の著書『帰属財産研究』だ。 本書は、戦前の朝鮮半島における日本資産の形成過程と戦後のその行方を追求したものだが、われわれには「戦後の行方」のほうが興味深い。1945年の終戦当時、朝鮮半島には約100万人の日本人がおり、うち7割が民間人だった。すべての日本人が着の身着のまま、両手に下げ背負える荷物とわずかな現金だけを持って強制退去させられた。 財産は公私を問わず、企業・個人財産も含めすべて没収された。接収された日本人企業は約2400社。日本資産の総額は当時の金額で52億ドル、約700億円相当といわれる。現在の価値でいえば数千億ドルになるとの非公式試算もある。これらの日本資産は進駐米軍経由ですべて韓国に譲渡され、解放・独立後の韓国経済を支えた。 ところで、韓国との過去補償問題の背景にはいわゆる請求権問題がある。日本が撤収した後、アメリカ軍政を経て韓国は独立した。1950年代に入り国交正常化交渉が始まり、相手側に残した資産に対する「請求権」が問題になった。韓国側は日本の支配による人的・物的被害を日本に請求し、日本側は逆に韓国に残した資産を根拠に「むしろ日本側がもらうべきだ」などと主張して大もめした。 最後は日本側が経済協力資金5億ドルを提供し、請求権つまり補償問題は「完全かつ最終的に解決された」とされ、国交正常化が実現した。韓国内では「植民地支配の補償としては少なすぎる」と反発が強かったが、国交正常化と経済開発を急ぎたい当時の朴正熙政権は戒厳令などによって反対論を抑え、交渉妥結を決断したという経緯がある。 5億ドルは、正確に言えば相互の請求権による相殺金額では必ずしもない。請求権(補償)を言い出すと交渉がまとまらないため、お互い請求権を放棄するような形で「経済協力資金」として政治的・外交的に処理されたのだ。これで韓国側は補償問題の「完全かつ最終的な解決」に同意したが、その裏には膨大な日本資産が韓国に残されていたという事実があるのだ。その後、韓国政府はすでに2回、政府の責任で個人補償も実施している。したがって慰安婦問題や徴用工問題で個人補償が必要なら韓国政府が対応すれば済む話だが、そこを改めて日本を引き込むという外交問題にしているため、問題がこじれている』、「韓国政府はすでに2回、政府の責任で個人補償も実施」、「徴用工」問題も「韓国政府」の責任でやらないのは整合的でない。
・『「敵の財産」を生かし経済成長を遂げた韓国  朝鮮半島に残された日本資産は、まず戦勝国のアメリカ軍によって接収された。「帰属財産」というのはアメリカ軍が名付けた英語の「VESTEDPROPERTY」の訳である。歴史的にはこれが正式名称になる。 しかし韓国では「敵産」と称してきた。「敵の財産」という意味だ。対日戦勝国ではないにもかかわらず、戦勝国つまり連合国の一員になった気分でそう名付けたのだ。評価の分かれる言葉とも言えるが、そう表現することで日本資産を自分のものにする根拠にしたのである。 だから、日本資産は当初は「アメリカに帰属」し韓国のものではなかった。それが1948年、李承晩政権樹立で韓国政府が発足したのを機に韓国に移管、譲渡された。うち電気や鉄道、通信、金融機関など公的資産の多くは国公有化され、企業や商店など民間の資産の多くは民間に払い下げられた。 本書ではその経緯と実情が詳細に紹介されており、結果的にそうした「帰属財産」が韓国の経済発展の基礎になったというのだ。著者によると「歴史的事実を無視、軽視してきた韓国の既成の歴史認識に対する研究者としての疑問」が研究、執筆の動機だという。 現在の韓国企業の多くは「帰属財産」という名の日本資産を受け継ぐかたちで発展した。しかし表向き、韓国の経済界では日本人がよく皮肉る“日本隠し”が広範囲に行われているため「帰属財産」の痕跡を探ることは難しくなっている。時の経過でその事実を知る人も少ない。 一方で、例えば現在の韓国の財閥規模3位にある「SKグループ」はその痕跡がわかる珍しい企業だ。日本統治時代の日本の繊維会社「鮮京織物」を入手し、その名残である「鮮京(ソンキョン)」の頭文字を今も使っている。戦後は「鮮京合繊」として石油化学に手を広げ、やがて移動通信、半導体など先端系まで含む大企業グループになった。 また、学術書である本書にはこうした具体的な企業名が登場するわけでは必ずしもないが、少し調べるとわかるものもある。ビールや焼酎でお馴染みの大手飲料メーカー「ハイト眞露グループ」は自社の来歴として、日本統治時代の大日本麦酒(サッポロ・アサヒ)系の「朝鮮麦酒」を「帰属財産」として受け継いだと明記している。ライバルの「OBビール」もキリンがルーツである。 さらに、ソウル都心にある一流ホテル「朝鮮ホテル」は日本時代の総督府鉄道局経営の「朝鮮ホテル」がルーツで、当初はアメリカ軍が軍政司令部として接収。軍政終了で韓国側に譲渡され民間のホテルになったという経緯がある。また、同じ都心に位置するサムスン・グループの流通部門のシンボル「新世界百貨店」は日本時代の三越百貨店だ。ロッテ・ホテル向かいにあるソウル市庁舎別館は近年までアメリカ政府の文化センターだったが、元は三井物産京城支店でこれも「帰属財産」である。基幹産業の韓国電力はもちろん「帰属財産」が土台になっている。 紹介すればきりがない。とはいえ、「帰属財産」あるいは「敵産」を活用し、企業および経済をここまで発展させてきた韓国の努力は大いに評価されるべきだろう。日本人にとっては「もって瞑すべし」かもしれない。 ところで以上のようなことを現在、日韓の外交的懸案になっている徴用工補償問題に関連させればどうなるか。補償を要求され韓国で資産を差し押さえられている日本製鉄(旧・新日鉄)は、朝鮮半島にあった工場(多くは北朝鮮)などの資産を残している。しかも日韓国交正常化後、韓国で建設された浦項製鉄所(現在のPOSCO)には韓国政府が日本から受け取った経済協力資金(韓国的には請求権資金)が投入され、日本製鉄などが全面的に技術協力した。それなのに、ここに来て資産を差し押さえるというのだから、日本製鉄にとってはまったく腑に落ちない話だろう』、「現在の韓国企業の多くは「帰属財産」という名の日本資産を受け継ぐかたちで発展した。しかし表向き、韓国の経済界では日本人がよく皮肉る“日本隠し”が広範囲に行われているため「帰属財産」の痕跡を探ることは難しくなっている」、「日本資産の総額は当時の金額で52億ドル、約700億円相当といわれる。現在の価値でいえば数千億ドルになるとの非公式試算もある」、ここで例示されたものだけでも相当な額になる筈だ。「浦項製鉄所・・・・日本製鉄などが全面的に技術協力した。それなのに、ここに来て資産を差し押さえるというのだから、日本製鉄にとってはまったく腑に落ちない話だろう」、確かに踏んだり蹴ったりだ、
・『感情的に流される日本研究  「帰属財産」という名の日本資産について、戦後の日本は1952年の対日講和条約で国際的にその請求権を放棄したことになっている。したがって、日本では個人補償の要求の声はない。ところが韓国は1965年の日本との国交正常化条約で「完全かつ最終的に解決した」と約束したのに、「個人請求権は存在する」として改めて日本に補償要求をしているという構図になる。この理屈だと、韓国からの引き揚げ日本人も残してきた個人資産について個人補償を韓国に要求できるということになる。これは国際的約束を守るかどうかの違いである。 以上は李大根教授の著書に対する筆者(黒田)なりの読み方である。しかし経済史学者による学術書としての本書の核心は、日本の統治・支配が朝鮮半島にもたらした経済的効果を正当に評価していることであり、「侵略と収奪」一辺倒で教育されている韓国の公式歴史観に対する正面からの挑戦である。 その意味では、先に日本でもベストセラ―になった李栄薫編著『反日種族主義』(日本語版、文藝春秋刊)とも一脈通じるところがある。それどころか、著者は経歴的には李栄薫氏の先輩格にある。 ただ、こうした主張は「植民地近代化論」といわれ、「日本の歴史的罪」ばかりを主張する韓国の学術界やメディアに対して1980年代から「学問的良心」として奮闘を続けているが、いまだ大勢を変えるには至っていない。「帰属財産」をテーマにした今回の実証研]、究は、韓国に根強い観念的で一方的な反日歴史認識に改めて一石を投じるものだ』、「韓国」にも「日本の統治・支配が朝鮮半島にもたらした経済的効果を正当に評価していることであり、「侵略と収奪」一辺倒で教育されている韓国の公式歴史観に対する正面からの挑戦である」、こういう「学問的良心」として奮闘を続けている学者がいるとは嬉しいことだ。ただ、日本側から研究に援助などすると「韓国」内での立場を悪くしてしまうので、日本側としては静かに見守るしか出来ないのは、実に歯がゆい。
タグ:「韓国に残され韓国経済に貢献した日本資産の行方 「日本から補償はもう必要ない」韓国研究者の大胆な研究成果」 「韓国の次期大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策」 「対北朝鮮政策」が注目されるのは当然だが、「対日政策」も注目されるのは困ったことだ。 「最高の知日派」の「李洛淵氏」が「支持率においてはライバルとなる李在明氏に抜かれている」のは残念だ。 「金大中政権・・・以降は、北朝鮮に対する反共主義は弱まり、日本に対する反日主義が選挙により影響を及ぼすことになった」、ますます困った成り行きだ。 「尹錫悦氏は・・・日本に対しては「対日協力路線」を、そして北朝鮮に対しては文政権の対北朝鮮政策を大きく修正した「強硬路線」を取る可能性が高い」、「今後の3人の動きに注目したい」、さてどうなるのだろう。 金 明中 Newsweek日本版 「現在の韓国企業の多くは「帰属財産」という名の日本資産を受け継ぐかたちで発展した。しかし表向き、韓国の経済界では日本人がよく皮肉る“日本隠し”が広範囲に行われているため「帰属財産」の痕跡を探ることは難しくなっている」、「日本資産の総額は当時の金額で52億ドル、約700億円相当といわれる。現在の価値でいえば数千億ドルになるとの非公式試算もある」、ここで例示されたものだけでも相当な額になる筈だ。「浦項製鉄所・・・・日本製鉄などが全面的に技術協力した。それなのに、ここに来て資産を差し押さえるというのだから、日本 「韓国」にも「日本の統治・支配が朝鮮半島にもたらした経済的効果を正当に評価していることであり、「侵略と収奪」一辺倒で教育されている韓国の公式歴史観に対する正面からの挑戦である」、こういう「学問的良心」として奮闘を続けている学者がいるとは嬉しいことだ。ただ、日本側から研究に援助などすると「韓国」内での立場を悪くしてしまうので、日本側としては静かに見守るしか出来ないのは、実に歯がゆい。 「韓国側の「いや個人補償の権利はある」」との主張は、本当に腹が立つ。 「韓国政府はすでに2回、政府の責任で個人補償も実施」、「徴用工」問題も「韓国政府」の責任でやらないのは整合的でない。 日韓関係 (その15)(帰国に追い込まれた在韓日本公使“妄言"の真相 韓国メディアのどうしようもない反日体質と対韓外交の難しさ、韓国の次期大統領有力候補3人の対日政策と対北朝鮮政策、韓国に残され韓国経済に貢献した日本資産の行方 「日本から補償はもう必要ない」韓国研究者の大胆な研究成果) 東洋経済オンライン 黒田 勝弘 「帰国に追い込まれた在韓日本公使“妄言"の真相 韓国メディアのどうしようもない反日体質と対韓外交の難しさ」 新聞だけでは経緯がよく分からないので、興味深い。 「“コリア・スクール”のエリート外交官・・・これまで韓国語を駆使して対韓情報発信に果敢に取り組んできた。歴代の日本大使館幹部のなかでは韓国メディアと最も積極的に接触してきた外交官」、完全に韓国側の罠にハメられたようだ。 「JTBCはケーブル系有力テレビチャンネルの1つで、先年、朴槿恵大統領追い落としの暴露報道で名を挙げた・・・反日報道にはことのほか熱心」、こんなところのインタビューには殊の外、慎重に対応すべきだが、韓国のことは知り尽くしていると自信過剰になっていたところを突かれるとは、お粗末だ。 「オフレコ破り」は日本でもよくある話で、それがあり得るとの前提で、取材を受けねばならない筈だ。 「女性記者の前でマスターベーションという言葉」は韓国でなく、日本でも問題になる。問題があるマスコミを前に、軽率だった。筆者は「相馬公使」を必死にかばっている。確かに同情できる点もあるとはいえ、「韓国外交省は日本大使を呼びつけて抗議し・・・外交的大問題に仕立て上げてしまった」、深刻な外交問題を引き起こしてしまった以上、「相馬公使」の責任も重大で、更迭は当然だと思う。
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TPP問題(10)(「対中包囲網のはずが逆に乗っ取られる」中国がこのタイミングでTPP加盟を申請した狙い 日本は米国に早期復帰を求めるべき、中国のTPP加盟申請は本気 議長国日本の役割は「門前払い」か) [外交]

TPP問題については、2017年1月15日に取上げたままだった。中国、台湾の加盟申請を受けた今日は、(10)(「対中包囲網のはずが逆に乗っ取られる」中国がこのタイミングでTPP加盟を申請した狙い 日本は米国に早期復帰を求めるべき、中国のTPP加盟申請は本気 議長国日本の役割は「門前払い」か)である。

先ずは、9月27日付けPRESIDENT Onlineが掲載した法政大学大学院 教授の真壁 昭夫氏による「「対中包囲網のはずが逆に乗っ取られる」中国がこのタイミングでTPP加盟を申請した狙い 日本は米国に早期復帰を求めるべき」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/50292
・『中国、台湾が相次いで加盟を申請した背景は  9月16日、中国商務省は“環太平洋経済連携協定(TPP)”への加盟を、現在の事務国であるニュージーランドに正式に申請した。その背景には、中国が、日米豪印や欧州各国がインド太平洋地域での連携を強化する動きに揺さぶりをかける狙いがある。 一方、中国の加盟申請後の22日、台湾も加盟を正式に申請した。台湾は中国と対立している。両国の加盟申請によってTPP交渉は、中国・台湾の対立が持ち込まれ複雑化している。中国の申請によって、TPP加盟国の中に中国との関係を重視する国が増える可能性がある。それは、国際世論における台湾の発言力維持にマイナスだ。台湾はその展開への危機感を一段と強め、申請を急いだとみられる。 本来、米国のバイデン政権はTPPへの復帰を目指して、自由で公正な貿易、投資、競争に関する多国間連携の強化に取り組むべきだった。しかし、トランプ前政権の離脱以降、米国の対TPP姿勢がはっきりしない。中間選挙を控える中、バイデン政権が多国間の経済連携にエネルギーを振り向けることも難しい。 その状況下、本年のTPP議長国であるわが国は、是々非々の姿勢を明確に示してTPPの根本的な目的とルールを加盟国、米欧各国などと共有し、今後の交渉議論の環境を整えなければならない』、「中国」外交は実に巧みだ。
・『もともとは米国による”対中包囲網“だったが…  もともと、TPPの目的は米国を中心にした中国包囲網の形成にあった。時系列で米国の対中姿勢を確認すると、2013年に米オバマ政権(当時)の国家安全保障担当大統領補佐官だったスーザン・ライス氏が米中の“新しい大国関係”を機能させる考えを表明した。それが中国に南シナ海での軍事拠点の建設など対外進出を強化する口実を与えたと考える安全保障などの専門家は多い。その後、フィリピンやベトナムなどが領有権をめぐって中国と対立し始めた。 中国の対外進出に直面したオバマ政権は、対中包囲網の整備に動いた。その象徴がTPPだ。オバマ政権はTPP交渉をより重視し、関税の撤廃、知的財産の保護、国有企業に関する補助金政策などに関して加盟国間でルールを統一し、より効率的、かつ公正な経済面での多国間連携を目指した。政府調達に関する内外企業の差別を原則認めないこともTPPに含められた。 米国にとってTPPは、経済を中心に安全保障面からも対中包囲網を整備し、自国を基軸国家として経済のグローバル化を進め、そのベネフィットを得るための取り組みだったのだ』、「オバマ政権のスーザン・ライス氏が米中の“新しい大国関係”を機能させる考えを表明した。それが中国に南シナ海での軍事拠点の建設など対外進出を強化する口実を与えた」、「中国の対外進出に直面したオバマ政権は、対中包囲網の整備に動いた。その象徴がTPPだ」、「オバマ政権」の対中政策のブレは酷いものだったと改めて思い出した。
・『なぜこのタイミングでの申請だったのか  ところが、2017年1月に事態は一変した。トランプ前大統領がTPP離脱を表明した。それによって米国を基軸とする経済、安全保障面からの対中包囲網というTPPの性格は弱まった。その後、2020年11月に中国の習近平国家主席がTPP加盟を積極的に検討すると表明した。 TPPから離脱した米国は、日豪印との外交・安全保障の枠組みである“クアッド”を整備した。9月15日には、英豪と新しい安全保障の枠組みである“AUKUS(オーカス)”も創設した。 その直後に中国はTPP加盟を正式に申請することによって、安全保障面、外交、経済面で米国との関係を重視するアジア各国などに、自国の巨大な市場を開放する姿勢を示して揺さぶりをかけたい。マレーシアやシンガポールが中国の加盟申請を歓迎したのは、中国の影響力の大きさを示している。その上、9月22日には台湾がTPP加盟を正式に申請した。今、TPPは大きな変化の局面を迎えている』、「中国はTPP加盟を正式に申請することによって、安全保障面、外交、経済面で米国との関係を重視するアジア各国などに、自国の巨大な市場を開放する姿勢を示して揺さぶりをかけたい」、心難いばかりに巧みな外交だ。米国のお粗末な外交と好対照だ。
・『市場開放の姿勢を国際世論に印象付けたい  中国と台湾の対立は深まっている。イメージとしては、緊迫感が高まる台湾海峡のように、TPPは中国と台湾の対立激化の縮図と化している。 経済運営面から考えたTPPの意義は、多国間で競争などのルールを統一し、より効率的な生産要素の再配分を目指すことだ。しかし、中国が最も重視することは違う。それは、共産党政権の体制維持だ。そのために中国はTPP加盟申請によって国際世論を揺さぶりたい。 中国は思慮深く9月16日の申請タイミングを見定めたと考えられる。中国は簡単にTPP加盟が承認されるとは考えていないはずだ。それよりも、中国はTPP陣内に対中批判の考えを持つ国が増える前に申請を行い、切り崩しを図りたかった。 AUKUS創設の翌日である9月16日の申請は、中国が米国に対抗し、市場開放を進める姿勢を、より鮮明に国際世論に印象付けることに役立つだろう。また、その日は台湾の正式な申請前でもあった。米国の同盟国であるわが国の議長国としての任期も残り少ない。2022年には中国を歓迎したシンガポールがTPP議長国につく。国際世論に揺さぶりをかける、その上で2022年以降のTPP交渉環境を追い風にするために、9月16日はベストなタイミングとの判断が習政権にあったはずだ』、確かに「ベストなタイミング」での申請だ。
・『TPPが新たな中台対立の舞台に  その結果、台湾は中国に先を越された。蔡英文政権が対中関係を重視する国が増える展開への不安をいっそう強めたことは容易に想像できる。中国がTPP加盟国を揺さぶり、結果的に切り崩される国が増えれば、国際社会の中で台湾の立場は一段と不安定化する恐れがある。その展開を阻止するために、台湾は急いで申請作業を進めただろう。台湾には、半導体分野などで連携を強化するわが国が議長国であるうちに申請し、今後の加盟交渉を勢いづける狙いもある。 今後、中国は経済面での結びつきが強い国に働きかけ、台湾との交渉に慎重に臨む、あるいは避けるよう求めるだろう。それに台湾は反発するだろう。対立が激化する中国と台湾が国際世論への働きかけを強める結果、TPP加盟国が経済運営ルールの統一と遵守などに論点を集中して加盟交渉に臨むことは難しくなるだろう』、「台湾」が「中国に先を越された」のは、重大な手落ちだ。
・『議長国日本は是々非々の姿勢で臨むべき  中国と台湾の対立が持ち込まれた結果、TPPは複雑化した。複雑化するTPPの論点を経済・安全保障面からの対中包囲網の整備に再度集中させるには、米国のTPP復帰が必要だ。今後のTPPの展開には、米国の復帰の可能性が高まるか否かが決定的な影響をもたらすだろう。 そのために、わが国は議長国としての残り少ない任期を活かすべきだ。わが国は議長国として多様な利害を調整しておかなければならない。ポイントは、TPPの当初の目的に基づき、全加盟国が合意したルールを堅持しなければならないという是々非々の姿勢をわが国が明確に国際世論に示し、賛同を増やすことだ。それは、今後のTPP交渉が議論される大まかな道筋を示すことと言い換えてもよい。台湾はそうした展開を期待しているだろう。 今後、中国は産業補助金など共産党政権の体制維持に関わる項目に関して、例外事項をTPP加盟国に認めさせようとするだろう。コロナ禍によって経済が傷ついたアジアや南米の新興国にとっても、例外措置の導入は魅力的に映る可能性がある』、「わが国は議長国としての残り少ない任期を活かすべきだ。わが国は議長国として多様な利害を調整しておかなければならない。ポイントは、TPPの当初の目的に基づき、全加盟国が合意したルールを堅持しなければならないという是々非々の姿勢をわが国が明確に国際世論に示し、賛同を増やすことだ」、その通りだ。
・『米国の復帰を求め続けなければならない  ただし、TPP加盟交渉は全会一致でなければ正式に開始されない。オーストラリアやわが国の存在を考えると、中国の揺さぶりがすぐにうまくいくとは考えにくい。しかしながら、やや長めの目線で考えると、マレーシア、来年の議長国のシンガポールなどの歓迎姿勢によってTPPのルールや制度が変化、弱体化する恐れはある。 そうした展開を念頭に、わが国は中国が求めるだろう例外事項の設定を受け入れない姿勢を明確に国際世論に示す。その上で、既存の加盟国にとどまらず、世界経済のサプライチェーンと成長面で重要性が増すアジア新興国、米国、欧州各国などとTPPの意義を共有すべく連携を目指す。それはTPPの目的とルールの堅持と、それを尊重する加盟申請国との交渉進行を支える。 それに加えて、わが国はバイデン政権や米国の経済界にTPPの意義を伝え、復帰を求め続けなければならない。それが経済、安全保障面からの対中包囲網や加盟国の競争、雇用などのルール統一というTPP本来の目的の発揮と、中長期的なわが国経済の安定と実力の向上に欠かせない』、「わが国はバイデン政権や米国の経済界にTPPの意義を伝え、復帰を求め続けなければならない。それが経済、安全保障面からの対中包囲網や加盟国の競争、雇用などのルール統一というTPP本来の目的の発揮と、中長期的なわが国経済の安定と実力の向上に欠かせない」、その通りだ。

次に、9月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの山田厚史氏による「中国のTPP加盟申請は本気、議長国日本の役割は「門前払い」か」を紹介しよう。
・『中国、台湾が相次いでTPP加盟を申請  環太平洋経済連携協定(TPP)に中国が正式に加盟を申請した。 音頭とった米国が国内の風向きが変わって離脱。主役不在の間隙を突く中国の動きに議長国・日本はうろたえる。 中国の動きを見て台湾も加盟を申請し一段と対応は難しくなった。 「中国にTPPは無理だ」「米国を牽制する政治的アクションではないか」などと本気度を疑う見方が少なくないが、自ら主導してRCEP(地域的な包括的経済連携協定)とTPPを合体させ、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)へと発展させる大きな戦略があるという。 アジア太平洋を舞台に、自由貿易よりも中国封じ込めを狙った安全保障の枠組み作りが進む中で、地域の安定を考えればTPPで中国を「門前払い」をすることが得策なのかどうか。 国内に目を向ければ、自民党総裁選ではどの候補からも骨太なアジア太平洋戦略は聞こえてこない。米中の間で日本はどう針路を取るのか。新政権には待ったなしの課題のはずだ』、「自民党総裁選ではどの候補からも骨太なアジア太平洋戦略は聞こえてこない」、寂しい限りだ。
・『日本は「真剣に受け止めていない」 政府系の中国研究者が警告  中国が「TPP加盟申請」を発表する直前、日本政府に警鐘を鳴らす論文が発表されていた。 「中国のCPTPP参加意思表明の背景に関する考察」(9月11日)と題して、独立行政法人経済産業研究所(RIETI)の政策レポートに載った40ページの論文だ。 「中国側の本気度とTPP枠組みを主導した日米の受け止め方には落差がある」と冒頭から問題を提起。「TPP枠組みの要求する内容は中国の体制と矛盾する項目が多いと考えられているため、実現の可能性が極めて低いアクションであるという予見があり、真剣に受け止めていない印象がある」と、政府のゆるい姿勢に疑問符を投げかけた。 RIETIは経産省の外郭団体、筆者は中国経済を専門とする渡辺真理子学習院大教授ら4人で、TPP参加へと動く中国の真意や問題点を分析している。 習近平主席が昨年11月、「TPP加盟を積極的に検討する」と表明したとき、政府もメディアも半信半疑だった。 「閉鎖的で統制だらけの中国がTPPに加入するのは難しい」「日米主導で進むアジアでの貿易や投資の枠組み作りに揺さぶりをかけているのだろう」という見方が支配的だった。 RIETI論文は、こうした見方を退け、「オバマ大統領がTPP12の締結に動き始めると、中国は独自のイニシアティブをスタートすると同時に、米国の動きに沿うような調整も行う、二面作戦に出ていた」と指摘。 TPPに対して入念な準備作業を進めてきた中国の取り組みを紹介している』、「TPPに対して入念な準備作業を進めてきた中国の取り組みを紹介」、初めからヘソを曲げていたと思っていたが、「二面作戦」で「入念な準備作業を進めてきた」とは初めて知った。
・『アジア太平洋の自由貿易圏作り 外圧テコに国内改革目指す 「独自のイニシアティブ」とは一帯一路構想だ。中央アジア・中東から欧州へと進む膨張政策である。 そしてもう一つの「米国の動きに沿うような調整」は、自由貿易・開放経済への対応だ。 中国が国内の市場開放に応ずるだけでは受け身になる。外に乗り出してアジア太平洋に自由貿易圏(FTAAP)を作り、共存共栄を図り中国が中核的役割を担う、という戦略だ。 周小川・前中国人民銀行総裁ら経済改革派がこの路線を進めてきた、という。国際ルールを受け入れ、外圧をテコにして旧態依然の国内制度を変革するという狙いもあるようだ。 中国は2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟、国際ルールに沿う開放体制に取り組んできた。2010年代半には、WTO内のルール作りに参画するようになり、主要ポストに人材を送るようになった。今では「WTO改革」を主張する主要国である。 次に狙いを定めたのがRCEPだ。 ASEAN10カ国が2011年に提唱した地域の経済連携で、日本、韓国、中国が乗り出し「ASEAN+3」で協議が始まった。 中国の影響力が強まるのを警戒する日本はオーストラリア、ニュージーランド、インドを招き入れASEAN+6の枠組みに広げた。やがて人口で中国を抜くインドを加えて中国の力を薄めようとしたが、インドは経済自由化を一気に進めれば中国からの輸入や投資が急増することを恐れ途中で離脱。日本の思惑は空転した。 RCEPは昨年11月、最終合意にこぎつけ、15カ国が署名した。人口22億人超、GDPや貿易額で世界の3分の1を占める経済圏が来年1月に発効する。 ここにTPPを重ねればアジア太平洋に広がる巨大な共同市場が生まれる。 中国は、「米国の世界支配」は経済や軍事力だけでなく、国際機関や国境を越えたルール作りで発言権・指導力を持ち、米国に都合のいいルールを世界秩序にしていることにある、とみている。 論文は、TPP加入の狙いを「国際的なルールメイキングへの協力の強化、域外適用法制の整備による防衛体制の構築、という意図があり、2021年から25年にかけて、この動きを本格化しようという意図がうかがえる」(抜粋)と指摘している。 TPP加盟申請は「ちょっかいを出す」といったヤワなものではなく、パラダイムシフトを視野に置いた世界戦略というわけだ』、「TPP加盟申請は「ちょっかいを出す」といったヤワなものではなく、パラダイムシフトを視野に置いた世界戦略」、なるほど。これは手強そうだ。
・『中国が「抱える「3つの課題」 国有企業問題で指導部内に緊張関係  だが一方で、中国には「超えなければならない課題」が内在することは確かだ。 政府補助を受けている国有企業や労働慣行、電子商取引の3部門で「TPP基準をクリアできるか」という問題を抱えている。 中国の急成長を担ってきたのは民間企業だ。国有企業は雇用を吸収し、地域では欠かせない存在だが、非効率で、さまざまな政府支援によって支えられている。 TPPは国有企業への過剰な支援を禁止し、民間と対等な競争条件を求めている。 国有企業改革を巡っては、中国の指導部の中で「企業の公平性」を主張する改革派と、「国家の安定性」を重視する保守派の緊張関係が背後にある。「対等な競争条件」を急ぐと、政権内部の暗闘を招きかねない。 労働を巡る問題はさらに微妙だ。 TPPは、労働者が労働組合を選択できる自由を求めているが、中国では、労組の全てが中華全国総工会に加盟し統制を受けている。「労働組合の結成の自由」は共産党の指導体制とぶつかりかねない。「強制労働」が疑われる新疆ウイグル問題などの難題もある。 電子商取引では、中国はソフトウエアの鍵ともいえるソースコードの開示を求めたり、データの国外持ち出しなどを制限したりしている。TPPは当局による過剰な監視や統制を原則として認めていない。情報やデータは、国家の安全保障と絡むだけに問題は複雑だ』、「TPP基準」は多少弾力的にするべきだが、安易に緩めるべきではない。
・『「門前払い」が日本の役割? 排他性はTPPの価値を落とす  RCEPの場合は、共同経済圏を創るため、例えば日本ならコメのように、各国が抱える国内調整が難しい品目を対象に例外規定を設けているが、TPPはより高いレベルの自由化を求めている。 中国を排除するために「厳しい自由化基準」を盾にすることもできる。 西村康稔経済再生担当相は「中国がTPPの極めて高いレベルのルールを満たす用意があるのか、しっかり見極める必要がある」。梶山弘志経産相も「全てのルールの受け入れを用意できているか、見極めが必要」と語った。 不参加の米国に忖度し日本が門前払いの役割を演ずるつもりのようだが、遠く離れた英国には加盟を認め、近隣の中国を排除すればTPPは経済圏としていうより政治ブロックへと変質するだろう。 中国が加盟するRCEPがまもなく誕生する中で、米国も中国もいないTPPは無用の長物になる恐れがある。排他性は自由な貿易や投資の経済圏をやせ細らせるだけだろう』、「遠く離れた英国には加盟を認め、近隣の中国を排除すればTPPは経済圏としていうより政治ブロックへと変質するだろう」、確かに重要なポイントだ。
・『経済より安全保障重視の危うさ 分断の象徴「QUAD」「AUKUS」  経済連携の時代は終わったのだろうか。 始まりはEU統合だった。国境を越えるヒト・モノ・カネが経済に活気を与え、相互に依存しあう国と国との関係は戦争を回避する平和の土台であることが確認された。 その流れはアジアに及び、アジア共同体構想などが模索され、APEC(アジア太平洋経済協力)ができた。米国が加わり21カ国・地域の大所帯になって、アジア共同体はかすんだ。 そして経済的な同盟として米国中心のTPPと中国を軸とするRCEPがそれぞれ生まれた。この20年、こうした地域の経済連携を軸にアジアは投資が集まり成長した。 流れを変えたのが、米中対立だ。 ビジネスを軸とする地域連携より、安全保障を優先する同盟関係が前面に出た。時代は、統合から分断へと動いている。 米国はアフガニスタンから軍を引き、カネと力を中国との競争へと注ぐ。相互依存を前提としたサプライチェーン(物流網)が見直され、デカップリングと呼ばれる「切り離し」があちこちで起きている。 さらに、日本、インド、オーストラリアを束ねQUAD(日米豪印協力)を立ち上げた。海洋安全保障を掲げ、インド洋で合同海洋演習を行い自衛艦が参加した。 24日、ワシントンで行われたQUAD首脳会議にはバイデン大統領が呼び集めた対面形式の会合に4首脳がそろい、中国とは名指しはしなかったが、対中国に対する連携強化を印象付けた。 もう一つの対中安全保障の枠組みは、「AUKUS」だ。 米英豪による軍事面の協力関係で、米英はオーストラリアに原子力潜水艦の技術を供与し、核を配備して中国牽制に当たらせるという挑発的な構想が明らかにされた。 アングロサクソンの軍事同盟である』、なるほど。
・『薄っぺらい「中国脅威論」 米中双方をいさめる役割を  アジアは平和を前提とする経済連携から、一触即発の緊張をはらむ対中安全保障優先へと変わろうとしている。 そんな中でTPPも変質し、中国をブロックすることが日本に役目となろうとしている。アジア太平洋の経済的繁栄というTPPの大義はどこへ行ったのか。 「こういう時こそ、中国と腰を据えて向かい合い、TPP基準をクリアできる国内改革の後押しをする交渉が必要ではないか」。アジア・中国を見てきた経産省OBはいう。日本の国益は「平和な中で安定したビジネスを続けること」ではないのか。 対立を乗り越え、決裂を回避するのは、交渉相手と「人間としての信頼」が欠かせない。経済交渉でも外交でもそれは同じだ。信頼のパイプをどれだけ持っているか、その厚みが国家の安全保障でもある。 薄っぺらな中国脅威論は誰もが語るが、このままいけば日本は戦争に巻き込まれるかもしれない。世界は「経済連携」から「軍事ブロック」へと動いている。その危うさを感じてか、バイデン大統領や習近平主席も、電話首脳会談やファーウェイ問題の手打ちなど緊張緩和に動いている。 アジアでは来年1月にRCEPが動きだす。これからを遠望すれば、中国も米国も参加するアジア太平洋経済圏が望ましい。中国の加盟申請はチャンスだ。相互依存は平和の原点だ。バイデン大統領を説得して引き寄せる。忖度して「門前払い」が役割と心得るようではスケールが小さい。 日本は米中の間に入って、双方をいさめ説得する。それくらいの構想力のある政治家が現れてほしい。 自民党総裁選の後には総選挙がやってくる』、「中国も米国も参加するアジア太平洋経済圏が望ましい。中国の加盟申請はチャンスだ。相互依存は平和の原点だ。バイデン大統領を説得して引き寄せる。忖度して「門前払い」が役割と心得るようではスケールが小さい。 日本は米中の間に入って、双方をいさめ説得する。それくらいの構想力のある政治家が現れてほしい」、同感である。
タグ:TPP問題 (10)(「対中包囲網のはずが逆に乗っ取られる」中国がこのタイミングでTPP加盟を申請した狙い 日本は米国に早期復帰を求めるべき、中国のTPP加盟申請は本気 議長国日本の役割は「門前払い」か) PRESIDENT ONLINE 真壁 昭夫 「「対中包囲網のはずが逆に乗っ取られる」中国がこのタイミングでTPP加盟を申請した狙い 日本は米国に早期復帰を求めるべき」 「中国」外交は実に巧みだ。 「オバマ政権のスーザン・ライス氏が米中の“新しい大国関係”を機能させる考えを表明した。それが中国に南シナ海での軍事拠点の建設など対外進出を強化する口実を与えた」、「中国の対外進出に直面したオバマ政権は、対中包囲網の整備に動いた。その象徴がTPPだ」、「オバマ政権」の対中政策のブレは酷いものだったと改めて思い出した。 「中国はTPP加盟を正式に申請することによって、安全保障面、外交、経済面で米国との関係を重視するアジア各国などに、自国の巨大な市場を開放する姿勢を示して揺さぶりをかけたい」、心難いばかりに巧みな外交だ。米国のお粗末な外交と好対照だ。 確かに「ベストなタイミング」での申請だ。 「台湾」が「中国に先を越された」のは、重大な手落ちだ。 「わが国は議長国としての残り少ない任期を活かすべきだ。わが国は議長国として多様な利害を調整しておかなければならない。ポイントは、TPPの当初の目的に基づき、全加盟国が合意したルールを堅持しなければならないという是々非々の姿勢をわが国が明確に国際世論に示し、賛同を増やすことだ」、その通りだ。 「わが国はバイデン政権や米国の経済界にTPPの意義を伝え、復帰を求め続けなければならない。それが経済、安全保障面からの対中包囲網や加盟国の競争、雇用などのルール統一というTPP本来の目的の発揮と、中長期的なわが国経済の安定と実力の向上に欠かせない」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 山田厚史 「中国のTPP加盟申請は本気、議長国日本の役割は「門前払い」か」 「自民党総裁選ではどの候補からも骨太なアジア太平洋戦略は聞こえてこない」、寂しい限りだ。 「TPPに対して入念な準備作業を進めてきた中国の取り組みを紹介」、初めからヘソを曲げていたと思っていたが、「二面作戦」で「入念な準備作業を進めてきた」とは初めて知った。 「TPP加盟申請は「ちょっかいを出す」といったヤワなものではなく、パラダイムシフトを視野に置いた世界戦略」、なるほど。これは手強そうだ。 「TPP基準」は多少弾力的にするべきだが、安易に緩めるべきではない。 「遠く離れた英国には加盟を認め、近隣の中国を排除すればTPPは経済圏としていうより政治ブロックへと変質するだろう」、確かに重要なポイントだ。 「中国も米国も参加するアジア太平洋経済圏が望ましい。中国の加盟申請はチャンスだ。相互依存は平和の原点だ。バイデン大統領を説得して引き寄せる。忖度して「門前払い」が役割と心得るようではスケールが小さい。 日本は米中の間に入って、双方をいさめ説得する。それくらいの構想力のある政治家が現れてほしい」、同感である。
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日韓関係(その14)(韓国政府SNSで「衰退する日本」の記述 批判受けてそっと削除 ネット上で「恥さらし」「首脳会談したいと言っていたのに」の声、韓国が「オリンピック精神より反日活動」を重んじる理由 元駐韓大使が解説) [外交]

日韓関係については、1月27日に取上げた。今日は、(その14)(韓国政府SNSで「衰退する日本」の記述 批判受けてそっと削除 ネット上で「恥さらし」「首脳会談したいと言っていたのに」の声、韓国が「オリンピック精神より反日活動」を重んじる理由 元駐韓大使が解説)である。

先ずは、7月16日付けJBPressが掲載したジャーナリストの李 正宣氏による「韓国政府SNSで「衰退する日本」の記述、批判受けてそっと削除 ネット上で「恥さらし」「首脳会談したいと言っていたのに」の声」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66103
・『韓国政府が「衰退する日本、先進国格上げの韓国」という広報記事を制作・公開したが、その後に削除したことが分かった。この記事が、インターネット上のコミュニティを中心に急速に広がり、「外交的欠礼」という非難世論が起きた直後、削除したものとみられる』、真相はどうだったのだろう。
・『「外交メディアに報じられれば恥さらしに」  7月14日、韓国の20~30代の若い男性が主に利用するあるインターネットコミュニティに、「韓国政府のアツアツの反日・クッポン(盲目的な愛国主義)売り」という書き込みが掲載された。韓国政府の広報を担当する文化体育観光部の国民疎通室が運営する「韓国政府公式SNS」に日本を露骨に卑下する広報物を掲載したことを批判する内容だった。書き込みに対するコメントも韓国政府を非難する内容が圧倒的に多かった。 「外国メディアが報道すれば国の恥さらしになるだろうが」 「コロナワクチン接種は逆転されてしまったくせに、無理強いをしている」「外交的に問題になるとは思わないのか」「首脳会談したいと言ってなかったけ?」「ワーディングがまるで北朝鮮と同じだね」』、韓国世論が健全なのは救いだ。
・『「政府の公式メディアで特定国を蔑視・嘲笑するのは外交的欠礼にあたる」  この書き込みがインターネット上で大きな話題となると、翌日の15日、韓国メディアはこの記述に関して具体的な状況を次のように伝えた。 韓国政府は7月8日、培材大学校のカン・チョルグ日本学科教授の「素材部品・装備で世界的な技術強国への跳躍」という寄稿文を要約した4枚のカードニュース(イメージと簡略なテキストで構成された記事)を制作、政府公式ツイッターをはじめとするインターネット上に公開した。問題は2ページ目だが、「衰退する日本、先進国格上げの大韓民国」というタイトルで内容は次の通りである。 <日本~コロナ防疫の失敗と景気低迷で国力低下が持続。朝日新聞は「日本政府の無能さ」を指摘(輸出規制は自ら行う・・・愚かな政策の極み(7月4日)> <韓国~飛躍的に国力成長、国連貿易開発機構「韓国を発展途上国から先進国へ地位変更」> 韓国政府公式SNSに掲載されていた「衰退する日本(쇠퇴하는 일본)」と書かれた記事。現在は削除されている。 『朝鮮日報』など複数のメディアによると、問題の2ページはクレームが寄せられ現在は修正されている。あるインターネットコミュニティには請願を受け付けたという人の書き込みが上がっている。 「韓国の顔とも言える国民疎通室で特定国家を蔑視し、嘲弄する表現が使われたカードニュースを制作して配布した行為は、“外交的欠礼”に該当することで、決して望ましくない」 「むしろ韓国の品格が損なわれ、威信が地に落ちる恐れがある」) これに対し、カードニュース制作担当者は「寄稿文を伝える目的で制作したため、原文の内容を反映した」と「朝鮮日報」の取材に答えたという。 だが実際は、カン・チョルグ教授の寄稿文の中に「日本が衰退した」という直接的な表現はなかった。「韓国はコロナ状況の中でも飛躍的な経済成長を成し遂げた反面、日本はコロナ防疫失敗や景気低迷などの国力低下状態が続き、韓日間貿易の相互重要性が次第に衰退していくことがうかがえる」という内容が出ているが、これを要約したものと思われる』、「国民疎通室」が学問的で中立的な「カン・チョルグ教授の寄稿文」を都合良く脚色したとは大いにあり得る話だ。
・『自慢の「K防疫」が破たん寸前だが隣を見たら日本も苦戦、ならば・・・  現在、問題の2ページには、「衰退する日本」が削除され、「大韓民国の国力も2年前に比べ、大きく成長している」となっている。日本政府を批判した言葉をすべて削除し、「今は先進国対先進国、日本と対等な立場が可能だ」という言葉に変わっている。 修正後の記事。日本を批判する箇所は丸ごと消えている。 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権はこれまで、自国民に「コロナ防疫成功」を積極的に広報し、政権の最高業績に掲げてきた。コロナ拡散の初期、米国や欧州など西欧諸国において、政府の統制に慣れない国民性のためにコロナが急速に広がっている状況を「防疫失敗」と大々的に報道することで、「文政権の防疫成功」を際立たせた。これにより韓国民の間には「防疫先進国」という誇りが生まれた。 しかし、「ゲームチェンジャー」となるコロナワクチンの登場で戦況は逆転した。 米国や英国では早期にワクチン接種が始まり、国民生活が日常を取り戻しつつある一方、「K防疫」を掲げてコロナの拡散防止だけに力を入れてきた韓国は、依然として、マスクをつけたままソーシャルディスタンスを保たなければいけない。韓国人の心からは、「防疫先進国」というプライドはいつの間にか消え、「防疫後進国」という恥辱感が押し寄せている状況だ。 それでも、幸いなことに、ライバル・日本の状況も決して韓国より良いと言える状況にはなかった。コロナワクチンの確保には成功したものの、アナログ式行政システムのために接種が円滑に行われておらず、日本の接種率は世界平均を大きく下回っている。しかも、東京オリンピックを控えながら、東京に4度目となる緊急事態宣言が出されている――。ライバルがこんなに混乱する姿を見せているのだから、文在寅政権としては、日本の暗い状況を自国の広報に積極活用しようと思ったのだろう。 だが、その思惑通りにはならなかった。政府の公式チャンネルに外国を卑下する広報物を掲載する行為は、その相手が日本であっても、多くの韓国国民の目には偏狭に映り、政府広報に対するバッシングが起きたのだ』、「政府の公式チャンネルに外国を卑下する広報物を掲載する行為は、その相手が日本であっても、多くの韓国国民の目には偏狭に映り、政府広報に対するバッシングが起きた」、極めて健全な反応なのに驚かされた。
・『韓国の政府公式SNS、つい最近も写真「編集」で物議  文化体育観光部は、6月13日にもG7首脳会談の記念写真を編集して掲載したことで、バッシングを受けた過去もある。G7首脳と招待国の首脳が一堂に会して撮った記念写真で、左端に写っている南アフリカ共和国大統領の部分をカットして、「これが大韓民国の地位」という文とともにSNSに掲載したのだ。 これに対してメディアや世論から「外交欠礼」という非難の声が上がった。左端の南ア大統領をカットすることで、文大統領がいかにも全体の中心にいるような構図にするような編集の意図が感じられたことと同時に、南ア大統領のすぐそばに立っていた菅首相を隅っこに押し込めようとする意図もあるとの指摘もでた。これに対して、当時、文化体育観光部は、単に「担当者のミス」と言い訳してみせた。 しかし、今回の広報物に対しては、失敗という事実すら認めてない。『韓経ドットコム』によると、文化体育観光部の担当者は、カードニュースを修正したことについて、「メッセージ伝達の効率性のため、随時内容を確認して修正しなければならない。最善と思われる地点を探して修正しただけだ」と答え、批判世論を意識したものではないと主張した。どうやら文在寅政権にとって日本は、どこよりも弱腰で、叩きやすい相手に見えているのだろう』、「写真「編集」」というみっともないことをしておきながら、「文化体育観光部」の居直りは酷いものだ。

次に、7月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国が「オリンピック精神より反日活動」を重んじる理由、元駐韓大使が解説」を紹介しよう』、興味深そうだ。
・『韓国選手団の住居棟に反日の英雄を連想させる横断幕  東京オリンピックを巡って日韓間で対立が鮮明化している。 7月14日、オリンピック選手村の韓国選手団住居棟に、「反日の英雄」とされる李舜臣将軍の対日戦勝利を連想させる横断幕が貼り出された。これは日本を打ち負かそうという、スポーツの国際大会にふさわしくない反日文句である。 韓国による東京オリンピックを否定し攻撃する姿勢が続いている。「共に民主党」の議員がオリンピックの競技場が放射能影響圏にあるという地図を公開し、「東京オリンピックをボイコットする」と言ったことが始まりである。) 福島原発処理水の放出に対しては、IAEAや米国に韓国側の懸念を伝え、放出を止めるよう協力を要請した。直近では大韓体育会が選手団に「福島産の食材は口にするな」と指導した。 東京オリンピックのホームページに掲載された聖火リレー地図に、竹島が日本領土と表記されていることの是正を求めた。次期大統領選の候補や与党議員が是正されない場合には東京オリンピックをボイコットするよう主張した。 文化体育観光部が「衰退する日本」というニュース形式の宣伝物を制作した。 日韓対立の原因の多くは、韓国側がオリンピック精神を理解しているのか、国際的儀礼をわきまえているのか、疑わせる内容のように思われる。日韓間が国民感情に左右されず普通の隣国であれば起きない問題であろう。日韓関係の未来を見据えた場合、こうした問題の起きない関係を築いていくことが課題であろう。 韓国側で問題をこじらせているのは一般国民より政府・与党あるいはそれに近い人々である。こうした指導的立場にある人々がもっと冷静になることを促したい』、「オリンピック選手村の韓国選手団住居棟に、「反日の英雄」とされる李舜臣将軍の対日戦勝利を連想させる横断幕が貼り出された」、ここまで馬鹿なことをするとは、韓国政府もいい加減にしてほしいものだ。
・『オリンピックで勝つのではなく日本に勝つのが目的なのか  冒頭で触れた横断幕には、「臣にはまだ5000万国民の応援と支持が残っております」という文言が書かれていた。 この言葉は日本の朝鮮出兵に勝利した李舜臣将軍が朝鮮第14代国王宣祖への報告書に「今臣戦船尚有十二(臣にはまだ船が12隻あります)」と書いた文面から取ったものである。 当時朝鮮軍は豊臣秀吉の軍に劣勢であったが、李将軍は12隻の戦船で日本に連勝して韓国を敗戦の危機から救った。これにあやかった言葉である。 李将軍は、秀吉の朝鮮出兵を打ち破った「反日の英雄」として韓国では神格化されている。 韓国は、今でも日本国内の聖火リレー地図から竹島が除去されないことに反発しており、こうした心情があえて李舜臣を選手村に掲げさせた理由であろう。 さらに、韓国はこれまでの国際大会で、日本より上位にいることにこだわり、対抗意識を燃やしてきた。今回の東京オリンピックのメダル獲得数で日本より下位に甘んじる場合には大韓体育会は国民の批判の矢面に立たされる危険性があった。そうしたことから李舜臣将軍を持ち出して韓国選手の尻をたたこうとしたのだろう』、日本は「韓国」をライバル視してないのに、「韓国」が一方的にライバル視しているのは困ったことだ。
・『横断幕は不適切として大韓体育会が撤去  この横断幕に対して15日の東京スポーツは「韓国選手団が選手村に『反日横断幕』不穏な“戦時メッセージ”掲げる」と題した記事を掲載した。 それを受け大韓体育会は「今回の大会は日本で開催されるだけに特別なメッセージを準備した」「国家の代表選手たちを盛り上げる応援フレーズを考えていたが、ある職員の提案であの横断幕を準備した」「韓国代表団を応援しようという純粋な意図を歪曲(わいきょく)するもので残念だ」とコメントした。 大韓体育会はこの横断幕を撤去した。IOC関係者が韓国選手団の事務室を訪問し、「横断幕の撤去を要請した」という。さらに文書を通じても「横断幕のフレーズは戦闘に参加する将軍を連想させるもので、オリンピック憲章第50条に違反する」と指摘したようである。 韓国側は横断幕の撤去に当たり、競技場内の旭日旗応援に対して強く異義を提示し、IOCは「旭日旗に対しても同じ条項を適用して判断することを約束した」という。 韓国側はそれでもIOCが日本に寄り添っているとの不満を抱いており、横断幕の代わりに「虎の形をした朝鮮半島」の絵が描かれた垂れ幕を出した。これは朝鮮半島出兵時に秀吉が加藤清正に命じた「虎狩り」に関連するものだとの指摘も出ている。これも「克日(日本に勝つの意味)」を連想させる。 韓国メディアは、日本の極右が激怒し、選手村に集まり旭日旗デモをしたと報じた。しかし、これは日本の極右だけが問題としているものでなく、多くの日本人が韓国の行動にあきれ返っているということである。この横断幕は日本人に大韓体育会による「反日行動」と映るだろう。そういうことも理解できない大韓体育会はオリンピック精神を正しく理解しているとは言い難い』、「韓国側は横断幕の撤去」を自主的にではなく、「IOC関係者が・・・「横断幕の撤去を要請」」したためだったようだ。
・『ゴルフ日本代表チームのユニフォームが旭日旗を連想させると問題提起  中央日報は、日本のゴルフ代表チームのユニフォームが「日の昇る国を表す斜めのラインが入っている」「日の丸の赤や白、それに海や桜といった日本の自然をイメージした青や白が採用された」と紹介している。それが旭日旗を連想させるという。 だが、筆者がユニフォームの写真を見る限り、何をもってそういう連想になるのか理解できない。「日本の軍国主義を象徴する旗の旭日旗は広がる太陽を形骸化したもの」だからというが、この韓国側の主張はあまりにも旭日旗のデザインを拡大解釈したものと言わざるを得ない。 そもそも、競技場は無観客であり、旭日旗で応援することは想定し難い。大韓体育会の面子を保つためとはいえ、意味のない問題提起をするものである』、「この韓国側の主張はあまりにも旭日旗のデザインを拡大解釈したものと言わざるを得ない」、やれやれだ。
・『福島産食材を問題視し国食材の弁当を支給  大韓体育会は、オリンピック選手村の食事に使われる福島県産などの食品を食べないよう、自国選手団を指導していることが判明した。放射性物質による汚染の危険があるという。自民党内からは「そこまでいちゃもんをつけるとは本当に不愉快だ」との声が出ている。 韓国は一昨年、「共に民主党」の議員らがオリンピックの競技会場を地図で示し、放射能の影響圏にあるとして放射能オリンピックであると非難して以来、東京オリンピックに対しさまざまな言いがかりをつけてきている。 また、福島原発処理水の問題では「周辺国の安全と海洋環境の危険を招くだけでなく、日本に最も近い隣国である韓国との十分な協議も了解もなく行われた一方的な措置」だと非難し、IAEAや米国に懸念を伝えた。 しかし、IAEA、米国共に処理水の放出に理解を示し、また、韓国政府内の検討でも「処理水の影響はない」との結論が出ていたにもかかわらず、韓国政府がこれをあえて取り上げず、むしろその見解を否定したことも判明した。こうした韓国政府の対応は行き場がなくなり、むしろ感情的な対応になってきたようである。 今回大韓体育会はあらためて福島県産などの農水物を問題にした。しかし、それら農産物は放射性検査を経て、安全なものだけが出荷されており、大会組織委員会は、検査の数値を示して安全性を説明している。韓国側が求める韓国食材の選手村持ち込みを許可しなかったのは当然である。 ちなみに東日本大震災の直後、日中韓首脳会談出席のため訪日した李明博大統領は菅直人首相、温家宝首相(いずれも当時)と共に福島県を訪問、菅首相に続いて福島県産の農産物を試食した(筆者もこれに立ち会った)。大統領が事実を客観的に評価すれば問題はこじれないものである。今の韓国を見て大変残念な思いである。 大韓体育会は韓国産食材を持ち込めなかったことから、選手村の近くのホテルを借りて給食センターを設置し、韓国からキムチなど一部食材を持ち込んで弁当を用意し、選手村や選手らが調整を行う競技場や練習場に運ぶという。 韓国は過去のオリンピックでも栄養管理のためのセンターを設置していたが、今回は「放射性物質対策」も理由に掲げ、韓国から送った食材を使うという。農水省によると、韓国は福島を含む8県の水産物の禁輸を続けている。 今回のオリンピックは、日本にとっては「復興五輪」である。日本はコロナ下にもかかわらず、オリンピック関係者に精いっぱいのおもてなしをしようと最善を尽くす中、こうした行動は日本人の善意を傷つけるものであり、ますます韓国人嫌いを増やすことになりそうである』、「放射能オリンピックであると非難して以来、東京オリンピックに対しさまざまな言いがかりをつけてきている」、いい加減にしてほしい。
・『韓国側は聖火リレー地図に表記された竹島の削除を要求  文化体育観光部と大韓体育会は東京オリンピックホームページ上の聖火リレー地図に竹島が表記されたのを削除するようにIOCに仲介を要請した。聖火リレーコースを紹介する地図には、島根県の上の方に虫眼鏡で探さなければわからないほど小さな点で竹島が表記されているが、これは日本の竹島領有権主張であり、是正を要求するというのである。 2018年の平昌オリンピックの時に韓国名独島(竹島)が表記された韓半島(朝鮮半島)旗の使用に対し日本政府が抗議し、IOCは「政治的事案をスポーツにつなげるのは不適切」だとして朝鮮半島旗に竹島を表記することを削除するよう勧告し、韓国側は「外交的紛争防止と五輪精神順守など」のために勧告を受け入れたことがある。 今回韓国側は「平昌での措置を今回も同一に適用すべき」で「大会組織委員会に竹島を削除すべきと勧告する」ように求めた。 しかし、今回の状況は平昌オリンピックの時とは明らかに異なる。 平昌オリンピックで使用した統一旗は開会式の入場行進に使うものであり、これを見るのは世界の人々だ。しかも、竹島が実体よりもはるかに拡大して表示されている。これでは竹島が韓国の領土だと世界の人々に宣伝する目的と受け止められても仕方がない。 一方、今回の地図は聖火リレーのコースを紹介するものであり、これを見る人の多くは日本人だろう。しかも竹島の大きさについても実体に即している。 こうした違いを踏まえてIOCは「どのような政治的意図もない」と韓国側に回答し、仲介の要求を拒否している。しかし、韓国側はいまだに地図からの竹島の削除を求めている。 ただ、この問題を巡っては韓国の一部政治家が大騒ぎしているものの、オリンピックボイコットを求める青瓦台への国民請願の反響は大きくない。 韓国では竹島の問題は国民感情をたきつけるものであるが、地図上の竹島が虫眼鏡でなければわからないことから、あまり関心が高まらないのかもしれない』、「オリンピックボイコットを求める青瓦台への国民請願の反響は大きくない」、国民が比較的冷静なのが救いだ。
・『文化体育観光部はホームページに「衰退する日本、先進国に格上げされた大韓民国」と掲載  文化体育観光部の国民疎通室は8日、「衰退する日本、先進国に格上げされた大韓民国」というタイトルの宣伝物をホームページに掲載した。これは培材大学日本学科のカン・チョルグ教授の寄稿文を要約したものである。 カン教授は「韓国はコロナの状況下でも飛躍的な経済成長を成し遂げたのに対し、日本はコロナ防疫失敗や景気低迷など国力低下状態が続き、韓日間貿易の相互重要性が次第に衰退していくことがうかがわれる」と主張した。 これに対し、韓国の一部ネットユーザーから「大韓民国の顔ともいえる国民疎通室で特定国家を蔑視し、嘲弄(ちょうろう)する表現が使われたニュースを制作して配布した行為は外交的欠礼に該当し、決して望ましくない」「むしろ大韓民国の品格が毀損(きそん)され、威信が地に落ちる恐れがある」と批判した。これを受け、同部では内容を修正したようである。 今回のオリンピックを巡る騒動は大韓体育会の監督官庁である文化体育観光部の姿勢と共通するものがあろう。日本を批判し、韓国よりも下位に置きたい一部指導者の心情が出ているのではないか。韓国の一般市民の、日本を見る目の方がはるかに健全である』、「日本を批判し、韓国よりも下位に置きたい一部指導者の心情が出ているのではないか。韓国の一般市民の、日本を見る目の方がはるかに健全である」、同感である。 
タグ:日韓関係 (その14)(韓国政府SNSで「衰退する日本」の記述 批判受けてそっと削除 ネット上で「恥さらし」「首脳会談したいと言っていたのに」の声、韓国が「オリンピック精神より反日活動」を重んじる理由 元駐韓大使が解説) JBPRESS 李 正宣 「韓国政府SNSで「衰退する日本」の記述、批判受けてそっと削除 ネット上で「恥さらし」「首脳会談したいと言っていたのに」の声」 韓国世論が健全なのは救いだ 「国民疎通室」が学問的で中立的な「カン・チョルグ教授の寄稿文」を都合良く脚色したとは大いにあり得る話だ。 「政府の公式チャンネルに外国を卑下する広報物を掲載する行為は、その相手が日本であっても、多くの韓国国民の目には偏狭に映り、政府広報に対するバッシングが起きた」、極めて健全な反応なのに驚かされた。 「写真「編集」」というみっともないことをしておきながら、「文化体育観光部」の居直りは酷いものだ。 ダイヤモンド・オンライン 武藤正敏 「韓国が「オリンピック精神より反日活動」を重んじる理由、元駐韓大使が解説」を紹介しよう』 「オリンピック選手村の韓国選手団住居棟に、「反日の英雄」とされる李舜臣将軍の対日戦勝利を連想させる横断幕が貼り出された」、ここまで馬鹿なことをするとは、韓国政府もいい加減にしてほしいものだ。 日本は「韓国」をライバル視してないのに、「韓国」が一方的にライバル視しているのは困ったことだ。 「韓国側は横断幕の撤去」を自主的にではなく、「IOC関係者が・・・「横断幕の撤去を要請」」したためだったようだ。 「この韓国側の主張はあまりにも旭日旗のデザインを拡大解釈したものと言わざるを得ない」、やれやれだ。 「放射能オリンピックであると非難して以来、東京オリンピックに対しさまざまな言いがかりをつけてきている」、いい加減にしてほしい。 「オリンピックボイコットを求める青瓦台への国民請願の反響は大きくない」、国民が比較的冷静なのが救いだ。 「日本を批判し、韓国よりも下位に置きたい一部指導者の心情が出ているのではないか。韓国の一般市民の、日本を見る目の方がはるかに健全である」、同感である。
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ミャンマー(その5)(日本ミャンマー協会会長が国軍司令官と会談へ 混迷する情勢に両国間の対応協議か、「日本ミャンマー協会会長がクーデター軍リーダーと2回会談」 現地メディアが報道、5000億円を踏み倒したミャンマー国軍に「配慮」し続ける日本の政官財トライアングル 日本のODAが市民を苦しめている) [外交]

ミャンマーについては、4月30日に取上げた。今日は、(その5)(日本ミャンマー協会会長が国軍司令官と会談へ 混迷する情勢に両国間の対応協議か、「日本ミャンマー協会会長がクーデター軍リーダーと2回会談」 現地メディアが報道、5000億円を踏み倒したミャンマー国軍に「配慮」し続ける日本の政官財トライアングル 日本のODAが市民を苦しめている)である。

先ずは、5月14日付けNewsweek日本版が日刊ベリタを転載した「日本ミャンマー協会会長が国軍司令官と会談へ 混迷する情勢に両国間の対応協議か」を紹介しよう。ただし、出所を示す注記は省略
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/05/post-96281.php
・『<対ミャンマーODAビジネスの「黒幕」が昨夜、ヤンゴンに飛んだ。ミャンマー国軍の司令官と会う予定だという。出国直後にジャーナリストの北角氏が解放されたのも偶然ではない可能性がある> クーデターの首謀者であるミャンマー国軍のミンアウンフライン総司令官と親密な関係にある、央日本ミャンマー協会の渡邉秀会長が5月13日深夜、ミャンマーに向かった。独立系メディア「民主ビルマの声」(DVB)によると、渡邉氏は首都ネピドーで国軍司令官と会う予定という。「国軍司令官」が誰を指すかは不明だが、同氏はクーデター直前の1月19日にも総司令官と会談している。日本政府のいう「独自のパイプ」の一つと見られる渡邉氏は今回の会談で、混迷を深める同国情勢の中での日本との関係について協議するものとみられる。 目撃者によると、渡邉氏は同日午後11時、成田空港の全日空ヤンゴン直通便の出国カウンターで搭乗手続きをした。 渡邉会長とミャンマーとの関係については、ODA(政府開発援助)ビジネスの黒幕的存在、自衛隊と国軍の将官級交流プログラム、国軍トップとの合弁事業を本サイトでで取り上げてきた。クーデター後、同氏は沈黙を続けてきたが、4月に発行された日本ミャンマー協会の会員向け協会情報誌「MYANMAR FOCUS」第35号では、国営メディアが発表したクーデター後の3月30日のミンアウンフライン国軍司令官の演説内容をそのまま掲載している。今回の訪問は、クーデター後はじめてとなる。 今回の訪問目的は明らかにされていないが、最近の同協会周辺では、いくつかの奇妙な出来事が観測されている』、「渡邉会長」は日本側の有力な黒幕のようだ。
・『前兆はあった?  第一に、協会ホームぺージに載っていた役員や会員企業のリストが削除されたことである。これまで、同協会が政財界とのつながりを積極的にアピールしてきたことをふまえると、非常に不可解な行動であると言わざるを得ない。 第二に、渡邉会長が将官級交流などで協力関係が強い日本財団の笹川陽平会長が、13日のブログで「沈黙の外交」と題する一文を記していることである。笹川氏は昨年11月のミャンマー総選挙で、日本政府が派遣した総選挙監視団の団長として同国を訪問し、「選挙は非常に公正に行われ、国軍も結果を受け入れている」とインタビューに答えていた。ところがその選挙結果を不正として国軍がクーデターを起こしたため、同氏の対応が注目されたが、沈黙を守ってきた。このため、4月22日には在日ミャンマー人らが日本財団前で抗議デモを行っていた。 このブログで笹川氏は、「今回の事態が発生した2月1日以降も人命尊重に向け、懸命の説得工作を重ねた。にもかかわらず極めて残念な事態に発展したミャンマーの現状は、痛恨の極みであり、悶々とした日々を過ごしている」とだけしか記していない。 第三に、13日の渡邉氏の出国直後、ミャンマー国営テレビが、クーデターへの抗議デモなどを取材していて「虚偽のニュースを広めた」としてミャンマー当局に逮捕・起訴されていたフリージャーナリスト北角裕樹氏が解放されたという速報を流したことである。これまで日本の外務省とミャンマー当局の間で、水面下で北角氏の解放交渉が進められてきたが、このタイミングでの発表は、今回の渡邉氏のミャンマー訪問に対する国軍側のサインとしても読み取ることができる。国軍幹部らとの北角氏の解放の見返りとして、何らかの約束が取り交わされる可能性は否定できない。 国営テレビは解放の理由として、ミャンマーと日本との友好関係が考慮されたと伝えた。 北角氏解放の前日12日には、同じようにクーデターへの抗議デモを取材中に逮捕されたDVBの記者に禁固3年の実刑判決が言い渡されている。 一連の動きをふまえると、5月の連休明けに日本政府を含めたミャンマー関係者間で、ミャンマー情勢に関するシナリオが決定されたと見ても不思議ではないだろう。軍事クーデターに関する日本政府の対応は依然としてあいまいなままだが、日本とミャンマーの両国民が知らないところで、事態は明らかに次のフェーズに移行しようとしているとみられる。このため、内外のミャンマー人は今後の協会と渡邉会長の動向に注目している』、「日本ミャンマー協会」は一般社団法人とはいえ、両国の幅広い範囲の交流を図るという準公的な性格も持っていることから、「協会ホームぺージに載っていた役員や会員企業のリストが削除された」というのは余りに不自然だ。「笹川氏は昨年11月のミャンマー総選挙で、日本政府が派遣した総選挙監視団の団長として同国を訪問し、「選挙は非常に公正に行われ、国軍も結果を受け入れている」とインタビューに答えていた」、「笹川氏」の立場は極めて苦しいものとなったが、何故か聞き分けがいいようだ。「日本とミャンマーの両国民が知らないところで、事態は明らかに次のフェーズに移行しようとしているとみられる」、こうした不透明さは、国際的にも日本の恥だ。

次に、その続報である6月4日付け日刊ベリタ「「日本ミャンマー協会会長がクーデター軍リーダーと2回会談」 現地メディアが報道」を紹介しよう。
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202106041105215
・『「日本ミャンマー協会会長がクーデター軍リーダーと2回会談」と、独立系メディア「ビルマ民主の声」(DVB)が5月29日報じた。会長の渡邉秀央氏は、ミンアウンフライン総司令官はじめ国軍との親密な関係で知られる。また息子で協会事務総長の渡邉祐介氏は、「日本は西側の体制変革政策に盲目的に同調するより、タッマドー(国軍)と米国その他の民主主義国の橋渡し役としての姿勢を示さなければならない」との見解を、The Diplomat誌に投稿した』、興味深そうだ。
・『モン州の経済特区予定地を視察か  渡邉会長は5月13日にミャンマーに向かい、DVBは首都ネピドーで国軍司令官と会う予定と報じた。「国軍司令官」が誰を指すかは不明だったが、今回の続報で国軍トップであることが判明した。同氏はクーデター直前の1月19日にも総司令官と会談している。
 DVBは周辺から得た情報として、渡邊氏はミャンマー滞在中の2週間に2度、ミンアウンフライン総司令官と会談したと伝えている。会談の内容は明らかにされていないが、「秀央氏はミャンマーでティラワ経済特区プロジェクトの実現を支援した一人であり、クーデターが起きる数週間前にミャンマーを訪問していた」と指摘、今回の訪問で「モン州内に計画されている経済特区予定地を数日以内に(視察に)行くと聞いている」という。 渡邉氏とミャンマーの関係については、以下のように紹介されている。 「民間団体である日本ミャンマー協会は、最高顧問に現在の副首相麻生太郎氏、日本政府の元官僚ら、そして日本の一流企業の執行役員らと結成された組織である。 日本政府の内閣一員であった元大臣秀央はミャンマー軍と長年の付き合いがあり、現在のクーデター軍リーダーと親子のような関係性をもっている。日本ミャンマー経済界においても名の知れ渡った人間でもある。 日本ミャンマー協会は1988年以降、ミャンマー軍人を日本の防衛大学で高度な軍教育を学ばせることをしてきた組織でもある」』、「渡邊氏はミャンマー滞在中の2週間に2度、ミンアウンフライン総司令官と会談」、ずいぶん親密なようだ。「クーデターが起きる数週間前にミャンマーを訪問」、「クーデター」についても事前に知らされていた可能性がある』、「渡辺秀央」氏は、ビルマ連邦社会主義共和国(現・ミャンマー)の軍事政権の首脳が1987に東京を訪れた際に、内閣官房副長官としてビルマの要人を迎えたときから渡辺と同国との縁が生まれる(Wikipedia)。筋金入りのミャンマー通のようだ。
・『「日本は西側諸国に与するな」と協会事務総長  DVBは、秀央氏のミャンマー訪問とおなじ時期に息子で協会事務総長の渡邉祐介氏がThe Diplomat誌の意見コーナーに寄せた文章も簡単に紹介した。 祐介氏の文章は「ミャンマーに関して日本は率先垂範しなければならない」と題され、欧米の対ミャンマー政策に与することなく、日本は国軍と米国などの民主主義国との橋渡し役を主張する。 氏は、「日本は数十年にわたる経済協力をテコに、いまやタッマドーと直接力を合わせて中国の地理経済的影響をくつがえすことができる」とし、さらにミャンマーへのロシアの影響力増加も警告する。また、「日本はミャンマー軍事政府を導いて、自由で開かれたインド・太平洋に貢献させる歴史的使命を達成しなければならず、たとえその行動が米国その他の民主主義的同盟国の行動と異なろうともたじろいではならない」とされる。 同誌特集ページに載ったこの記事は、ロイター通信も報じ、日本ミャンマー協会と渡邉会長のミャンマーとの関係についてくわしく説明されている。 日本ミャンマー協会は、渡邉祐介の父で政治家の渡邉秀央がミャンマーに日本の投資の波を呼び込むために支持者を結集した民間団体である。協会には元官僚や企業役員、日本の大企業が会員となっている。 元閣僚の渡邉秀央は長年、両国経済関係の東京の先鋒として、ミャンマーの巨大開発事業ティラワ経済特区を後押しし、ミンアウンフラインをふくむ国軍との緊密な関係を築き上げてきた。 ロイター電はクーデター後の日本政府の姿勢にも触れ、日本は主要な援助供与国としてミャンマーと長い結びつきがあるが、米英などの諸国と異なり、ミャンマー軍部にはっきりした制裁は科していないとしている。日本政府はミャンマーへの新規援助の交渉は停止したものの、現行の援助プロジェクトは停止していない。 ロイターは、ミャンマー国軍との急激な関係切断は中国の影響力のさらなる増強をまねく結果になるという、クーデター後の2月に日本政府高官がロイターに語った見解も紹介している』、「日本は西側諸国に与するな」と主張する割には、「ミャンマー軍部」の暴力的な圧制は酷くなる一方だ。
・『免許剥奪でも報道をつづける「ビルマ民主の声」  DVB(Democratic Voice of Burma)は非営利メディア団体で、軍事政権時代にノルウェーのオスロで登録し、活動の本拠地となっていたが、2011年以降の民主化の進展とともにミャンマー国内でも活動可能となった。今年2月1日の国軍クーデター後は、国民の民主化回復運動を積極的に伝えてきたが、軍(情報省)は3月8日付けでDVBの免許を剥奪、他の4メディアも免許剥奪された。現在、免許を剥奪されたメディア機関は8社に上り、80名以上の記者が不当に拘束・逮捕・訴訟されているが、各メディアは軍の監視の目をかいくぐり、拠点を移しながら報道をつづけている』、「ビルマ民主の声」には上手く立ち回ってほしいものだ。

第三に、6月2日付けPRESIDENT Onlineが掲載した東京外国語大学教授の篠田 英朗氏による「5000億円を踏み倒したミャンマー国軍に「配慮」し続ける日本の政官財トライアングル 日本のODAが市民を苦しめている」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/46504
・『ミャンマー国軍のクーデターを世界中が批判するなか、日本政府は正面からの批判を避け続けている。なぜなのか。東京外国語大学の篠田英朗教授は、ミャンマーの軍事政権に対するODA(政府開発援助)は日本が世界一多く、一度約5000億円の円借款債務を取り消したうえでさらに援助をしてきていると指摘。「過去はともかく、今後もなお、クーデターを起こして市民を虐殺している国軍の誠実を信じて資金を貸し付け続けるのは、不適切すぎる」という――』、事実上の債務免除までしたとは初めて知った。
・『情報封鎖のもとで続く市民への弾圧  ミャンマーの混乱は続いている。国軍が、インターネット回線の遮断を含めて市民の国外への情報発信を妨害しているため、以前ほどの情報は流れてこなくなった。それでもクーデターに反対する職場放棄などの不服従運動やデモはやんでいない。そして、国軍による拘留・拷問を含めた抑圧も続いている。 自由主義諸国による一連のミャンマー国軍非難の共同声明に対して、日本は参加を避け続けている。アメリカの同盟国で加わっていないのは、日本くらいだ。日本が参加したことがあるのは、各国の参謀長による共同声明くらいで、つまり防衛省管轄のときだ。つまり日本の外務省は、一貫して、ミャンマー国軍を非難する国際的な共同声明への参加を拒み続けているわけである』、なるほど。
・『自由主義諸国の協調に背を向ける外務省  なぜ日本の外務省は、唯一の同盟国・アメリカが「民主主義vs専制主義」の世界観で米中対立の時代を多国間主義で乗り切ろうとしている最中において、徹底して自由主義諸国の協調に背を向け、ミャンマー国軍に配慮し続けようとするのか。 「日本独自の外交を進める」といった抽象的な説明は、中身がなく、的を射ない。「国軍に忖度そんたくしないとミャンマーがいっそう中国寄りになる」といった話も流布させているが、自由主義諸国の共同声明に参加したくらいで消滅してしまうような影響力であれば、多少の忖度をしたからといって、中国に対抗できるはずがない。 実質的な問題は、やはり政府開発援助(ODA)であろう。在日のミャンマーの人々や市民社会組織の方々は、国軍の利益につながっているODAの停止を求めている。だが外務省の反応は鈍い』、「自由主義諸国の共同声明に参加したくらいで消滅してしまうような影響力であれば、多少の忖度をしたからといって、中国に対抗できるはずがない」、その通りだ。
・『ODA打ち切りのインパクトは大きいが  巨額のODA案件の全てを打ち切る措置は、非常に大きなインパクトを、日本の企業などに与える。政府の役人のキャリアにも響くだろう。どうしても続けたい、と思う気持ちはわからないではない。だがただ祈り続けているだけでは、袋小路に陥っていくだけだ。 本稿では、あらためて日本のミャンマー向けODAの状況を概観するとともに、何を検討していくべきなのかについて、考察を加えることを試みてみたい』、興味深そうだ。
・『日本のミャンマー向けODAの概観  日本は、毎年1000億円以上のODAをミャンマーに提供し続けている。2019年の経済協力開発機構(OECD)のデータでいうと、日本の拠出金額は6億4690万ドルで、2位の世界銀行2億2080万ドル、3位のアメリカ1億4640万ドルに大きく差をつけて首位である(図表1。ただし統計データを提供していない中国が、実際には日本を大きく上回っていると見られている)。 ミャンマー向けODA拠出額上位10(2018~2019年度)出所=OECD資料を参考に筆者が作成 これだけを見ると、日本の外務省が国内メディアに説明していたように、日本のODA額は圧倒的であり、ミャンマー政府関係者に対する日本の影響力は他のドナーよりも大きいように見える(もっともODA額が大きくて影響力もあるため、日本は他のドナーよりもいっそう慎重に国軍に配慮をしなければならないという説明には説得力がないのだが)。 そこでもう少し日本のODAの内訳を見てみることにしよう。まず気づくのは、圧倒的な円借款の比率の高さである。2019年度を例にとれば、ODA総額の9割以上が円借款である(図表2、3)』、日本の「ODA」はダントツの1位だが、「統計データを提供していない中国が、実際には日本を大きく上回っていると見られている」、やはりそうか。
・『実質5000億円の債務を取り消し  ミャンマーでまだ円借款の返還がなされていない事情を説明するためには、償還期限が来ていない、という技術論的な答えだけでは不十分である。償還期限が来ていないのは、それまで累積していた未返還の貸付金のうち1989億円を、新規貸し付けと抱き合わせで形式的に即時返還させたからである。さらに残りの債務についても、図表2にあるように、2012年には1149億円、2013年に1886億円分の債務の免除を行った。両者を合わせると、総額約5000億円の債務を新規借り換え、および債務免除によって一度帳消しにした格好になる。 1988年の国軍による苛烈な市民弾圧の後、ミャンマーは国際的に孤立した。しかし2010年代に入り、国軍は経済的苦境から逃れるため、民主化の兆しを見せることにした。ミャンマーに食い込みたい日本は、そこで回復する国際援助の潮流に乗るため、新規援助の障害となっていた累積債務を上記のスキームで解消させたのである。 国軍出身のテイン・セイン前大統領と、その後にミンアウンフライン国軍司令官と24回にわたって会談したという、日本ミャンマー協会の渡邊秀央会長が暗躍していたとされるのは、そのときである(永井浩「利権がつなぐ日本とミャンマー『独自のパイプ』 ODAビジネスの黒幕と国軍トップがヤンゴン商業地開発で合弁事業」日刊ベリタ 2021年5月7日)』、「総額約5000億円の債務を新規借り換え、および債務免除によって一度帳消しにした格好になる」、「回復する国際援助の潮流に乗るため」、ということであれば、「ミャンマー」側は有難さをそれほど感じなかった可能性がある。
・『大型事業の発注先は全て日本企業  日本の円借款が、日本企業のアジア進出の足掛かりとしての意味を持つものであったことは、よく知られている。ミャンマー向けの円借款も同じような意味を持たされている。公開されている10億円以上のミャンマー向けの大型案件の契約者は、全て日本企業である』、「円借款」は納入企業などは全て予め決まったヒモ付きのようだ。
・『協会の公式サイトから役員一覧が消えた  なおこの点は前回の記事でもふれたのだが、その際に、私は、「日本ミャンマー協会の役員には、政・財・官界の大物がずらっと並ぶ。(中略)ODA契約企業リストにも登場する財閥系の企業名が目立つ」、と書いた(「日本政府が『ミャンマー軍の市民虐殺』に沈黙を続ける根本的理由」プレジデントオンライン2021年4月27日)。するとその後、日本ミャンマー協会のウェブサイトの役員一覧は空欄になってしまった。もっともちょうど同じときに、「Tansa」の渡辺周氏も記事で同一覧を取り上げていた。(「国軍所有地に年2億円支払い/日本政府系銀行「JBIC」の融資プロジェクト(1)」) 前回の記事が出る前のミャンマー日本協会の役員一覧前回の記事が出る前のミャンマー日本協会の役員一覧 その後空欄になってしまった役員一覧その後空欄になってしまった役員一覧』、本来は開示すべきものを、「ウェブサイト」からこっそり削除するとは、余りの姑息さに驚かされた。
・『顕在化した投資リスクを認めたがらない人々  日本は、返済不能になったというので借金を取り消してあげた相手に、さらに追加的に巨額の借金を貸し出し続けているわけである。常識で考えれば、かなりリスクの高い行動だといわざるを得ない。他のドナーが日本のように貸付金中心の巨額のODAをミャンマーに投入していないのは、投資家の視点で、そのようにリスク計算しているからだともいる。 日本政府は、リスクを承知で、ミャンマーを「アジア最後のフロンティア」と見込んで大規模な円借款を投入し続けたはずであり、それは元大臣が会長を務める協会で政府とつながりながらODA事業に次々と参入した日本企業にとっても同じはずである。 こうした動きに関係した人々が、今年2月のクーデターによってリスクが顕在化したことを認めたくない心理を働かせ、ODAを停止せずに何とか危機が立ち去ってくれないか、と祈るような気持ちになるのも当然かもしれない。だがそれは、無責任な現実逃避以外の何ものでもない』、「現実逃避」は日本の政府・企業のお箱だ。
・『このまま円借款を続けていいのか  この機会に、これまでの日本のミャンマー向けODAのあり方について考え直して見るべきなのは、当然ではないかと思う。その際にポイントとなるのは、円借款の比率、連邦制に向けた少数民族地域向けの配慮。そしてもちろん国軍の蛮行を食い止めるための運用であろう。 第一に、円借款の比率が大きいことについては、すでに見た通りである。これがミャンマーの実情を見て適切だったかどうかは、大きな検討課題である。結果論でいえば、クーデター後の情勢において、円借款の形態がリスク対応には不都合な仕組みであることが日本外交の足かせになっている。 経済的な観点から見て、今のミャンマーは危機に陥っている。市民の不服従運動が拡大して経済活動が停滞し、銀行は引き出し制限をしている。食糧危機も訪れており、世界食糧計画(WFP)は、ミャンマー国内で数百万人が食糧不足に直面すると警告している。それにもかかわらず、必ず回収するといいながら延々と貸付金を流し続けることが、果たして本当に適切だろうか。 国軍報道官は、4月に当局が拘束したジャーナリストの北角祐樹氏を、『笹川陽平ミャンマー国民和解担当日本政府代表の要請』で5月14日に解放した、と明言している。同時期、渡邊秀央会長がミンアウンフライン国軍司令官と極秘会談をしたとも報道された。その同じ5月14日、日本政府がヤンゴン市民への食糧援助を支援するため、WFPに400万ドルの寄付を行うと発表したことは、波紋を呼んだ。 市民への人道支援は良いことだが、「一回限り」「ヤンゴン向け」だけでは、直接ミャンマー当局にではなくWFPへの寄付とはいえ、国軍に配慮したように見えてしまう。日本政府は、国軍管轄下ではない地域のミャンマー市民も対象に含めた「緊急人道援助」を今後も継続的に行っていく道義的義務を負ったと考えるべきだろう』、「経済的な観点から見て、今のミャンマーは危機に陥っている」、経済は破綻状態にあるのに、経済が理解できない「軍部」には危機感が薄いようだ。
・『「借金」の拡大を拒否していたアウンサンスーチー氏  さらに、800人以上の市民を虐殺し、4000人以上を不当に拘束し続けながら、悪いのは全てアウンサンスーチー氏だといった類いのうそを垂れ流している国軍が権力を握っている。この状況でなお、「ミンアウンフライン国軍司令官は、たとえ人殺しをしても日本への借金の返済だけは絶対に行う」と主張する準備のある人は、よほどのお人よしか、さもなくば単なるうそつきだろう。 もともと国家顧問としてのアウンサンスーチー氏は、「借金は嫌だ」という意思表明をし続けていた。NLD政権は、円借款以外の方法での援助を繰り返し要請していた。それに対して、国策として決定していることなので変更できない、とかたくなな態度をとり続けたのは、日本の側であった。 渡辺周氏は前出のTansaの記事の中で、アウンサンスーチー氏は2012年の債務取り消しの際にも「5000億円の帳消しはやめてください。現政権を応援することになります」と迫った、と伝える。それに対して、当時の民主党政権で官房長官を務めていた仙谷由人氏(2012年の日本ミャンマー協会の発足時から副会長・理事長代行として運営に深く関与)は、「喜んで受ければいい話ではないでしょうか」と強く反論したという』、「アウンサンスーチー氏は2012年の債務取り消しの際にも「5000億円の帳消しはやめてください。現政権を応援することになります」と迫った」、「それに対して、当時の民主党政権で官房長官を務めていた仙谷由人氏」「は、「喜んで受ければいい話ではないでしょうか」と強く反論」、なんと民主党政権も1枚噛んでいたとは情けない。
・『無責任を通り越して日本の国益に反する  このように民主化支援を名目にしながら、民主化の旗頭であったアウンサンスーチー氏の反対を押し切り、国軍との協議のうえで、巨額の債務の取り消しと引き続きの巨額の円借款を進めてきたのが、日本である。今、明白な民主化の破綻を目の前にして、「状況が変わったのはミャンマー側のせいだ。国軍が改心しないなら、市民が抵抗をやめればいいじゃないか」と言わんばかりの態度をとっているという印象を国際的に広めるのは、無責任を通り越して、日本の国益に反する。 とはいえ、今債務の帳消しをするわけにはいかない。人をだますことなど何とも思っていない国軍幹部にだまされ続けた後で、国軍の利益になる形で、ただ日本の納税者に全ての泥をかぶせて、また債務帳消しにするしかなくなったら、最悪である。 リスクを承知で民主化の後押しをする貸し付けをしたということ自体を責めるべきではないかもしれない。だがその言い訳は、今はもう通用しないのだ。 過去はともかく、今後もなお、クーデターを起こして市民を虐殺している国軍の誠実を信じて資金を貸し付け続けるのは、不適切すぎる。円借款であっても、リスクに迅速に対応する措置をとる政治判断の是非について真剣に検討すべきだ』、その通りだ。
・『連邦制と民主化の合体こそミャンマーが進むべき道  第二に、ミャンマーの真の民主化の定着を日本のODAが助けてきたのか、検証が必要だろう。 今回の騒乱の中で、昨年の選挙で当選した議員たちが国軍の迫害を逃れながらバーチャル空間に国民統一政府(NUG)を立ち上げた。そして本格的な連邦制を導入する新憲法の設置を目指すことを表明し、市民勢力や少数民族勢力から熱烈な歓迎を受けた。この流れの中で、数多くのビルマ人系の組織等から、ロヒンギャ迫害の際に沈黙していたことを悔いる声明などが相次いで出されたことも注目に値する。 ミャンマーの紛争の構造を考えれば、平和構築の道筋が、この方向性にあることは確かだ。NUGが掲げる連邦制のビジョンは、あらためて必要不可欠な平和構築の方向性を模索する決意表明であるといってよい。「連邦制」の目標が、「民主化」勢力によって掲げられていることの意味は大きい。「連邦制」と「民主化」の強固な合体こそが、ミャンマーが進むべき道である』、その通りなのかも知れない。
・『民主化勢力が描く正しい道筋を支援すべきだ  連邦制の考え方自体は建国時から存在していた。それが「ビルマ建国の父」として敬愛されたアウンサンの暗殺と、その後の国軍による権力掌握によって、立ち消えになってしまっただけなのだ。国軍支配下で、民主化が進んでいたはずの2010年代ですら、中央政府と少数民族勢力との間には不協和音が絶えなかった。NUGは、ミャンマーの未来にとって正しいビジョンを打ち出している。 日本のODAは、こうした正しい道筋を支援するものであるべきだ。ビルマ人が多数派の大都市を結ぶヤンゴン・マンダレー鉄道の建設、ヤンゴン都市圏浄水整備、日本企業が多数参加するヤンゴン郊外のティラワ経済特別区開発・関連インフラ整備などは「民主化と連邦制を合体させた平和構築」のビジョンから見れば、関連度が薄い。初等教育カリキュラム改善事業などについても、「国際的な援助の潮流に合わせて」「ミャンマー政府の主導で」行うことに邁進まいしんするあまり、少数民族地域の教育の底上げという課題を軽視するものになっていなかったかどうか、検証すべきだ』、冷徹な立場で「検証すべきだ」。
・『長期的国益を見据え「標的制裁」に参加せよ  およそ「民主化支援」をうたうのであれば、クーデター後は国軍の利益になる行為を慎むのでなければ、一貫性がない。ただしそれが数千億円規模のODAの全面停止であるのかどうかは、影響をこうむる人々の数の多さを考えれば、悩ましいのは確かである。だが悩ましいからといって、「このことについてはなるべく表で議論しないようにする」、という態度をとるだけで「調整した」ことにするわけにはいかない。 悪いのが国軍である以上、欧米諸国が主導する「標的制裁」に参加し、国軍幹部および国軍系企業に対する狙いを定めた制裁を行うのが、正しい。現在、有志の国会議員が、日本として人権侵害を行った者に対して制裁を加えることを可能にする「日本版マグニツキー法」を制定しようとしている。実効性のある法律制定を目指すと同時に、ODAにも影響が及ぶことを、当然のこととして受け入れて準備をするべきだ。 国会議員らは、「外務省が最大の抵抗勢力」と公言している。「面倒な法律は作らないでほしい、少なくとも私が担当から外れた後にしてほしい」、という官僚機構の態度は、国益を危うくする。そうした怪しい態度のままでは、「ODAを続けるか全面中止か」「北風か太陽か」といった、袋小路が約束されている選択肢だけを迫られるので、逃げ回るしか手がなくなってしまう。 議論すべきは、ODAを全面中止にせずとも実施できる標的制裁の方法である。その研究こそが、長期的にはODAに携わる善良な人々を救っていく。 もちろん立法措置は、JICAの仕事でも、外務省の仕事でもない。不穏な抵抗勢力を排して長期的な国益の確保を見据えた政策を導入する責務を持つ政治家の仕事だ。政治的なリーダーシップが求められている』、「長期的国益を見据え「標的制裁」に参加せよ」、同感である。
タグ:ミャンマー (その5)(日本ミャンマー協会会長が国軍司令官と会談へ 混迷する情勢に両国間の対応協議か、「日本ミャンマー協会会長がクーデター軍リーダーと2回会談」 現地メディアが報道、5000億円を踏み倒したミャンマー国軍に「配慮」し続ける日本の政官財トライアングル 日本のODAが市民を苦しめている) Newsweek日本版 日刊ベリタ 「日本ミャンマー協会会長が国軍司令官と会談へ 混迷する情勢に両国間の対応協議か」 日本ミャンマー協会の渡邉秀会長が5月13日深夜、ミャンマーに向かった 国軍司令官と会う予定 「渡邉会長」は日本側の有力な黒幕のようだ。 「日本ミャンマー協会」は一般社団法人とはいえ、両国の幅広い範囲の交流を図るという準公的な性格も持っていることから、「協会ホームぺージに載っていた役員や会員企業のリストが削除された」というのは余りに不自然だ。 「笹川氏は昨年11月のミャンマー総選挙で、日本政府が派遣した総選挙監視団の団長として同国を訪問し、「選挙は非常に公正に行われ、国軍も結果を受け入れている」とインタビューに答えていた」、「笹川氏」の立場は極めて苦しいものとなったが、何故か聞き分けがいいようだ。「日本とミャンマーの両国民が知らないところで、事態は明らかに次のフェーズに移行しようとしているとみられる」、こうした不透明さは、国際的にも日本の恥だ 「「日本ミャンマー協会会長がクーデター軍リーダーと2回会談」 現地メディアが報道」 「渡邊氏はミャンマー滞在中の2週間に2度、ミンアウンフライン総司令官と会談」、ずいぶん親密なようだ。「クーデターが起きる数週間前にミャンマーを訪問」、「クーデター」についても事前に知らされていた可能性がある』、「渡辺秀央」氏は、ビルマ連邦社会主義共和国(現・ミャンマー)の軍事政権の首脳が1987に東京を訪れた際に、内閣官房副長官としてビルマの要人を迎えたときから渡辺と同国との縁が生まれる(Wikipedia)。筋金入りのミャンマー通のようだ 「日本は西側諸国に与するな」と主張する割には、「ミャンマー軍部」の暴力的な圧制は酷くなる一方だ 「ビルマ民主の声」には上手く立ち回ってほしいものだ。 PRESIDENT ONLINE 篠田 英朗 「5000億円を踏み倒したミャンマー国軍に「配慮」し続ける日本の政官財トライアングル 日本のODAが市民を苦しめている」 事実上の債務免除までしたとは初めて知った。 日本の外務省は、一貫して、ミャンマー国軍を非難する国際的な共同声明への参加を拒み続けているわけである』、なるほど 「自由主義諸国の共同声明に参加したくらいで消滅してしまうような影響力であれば、多少の忖度をしたからといって、中国に対抗できるはずがない」、その通りだ。 日本のミャンマー向けODAの概観 日本の「ODA」はダントツの1位だが、「統計データを提供していない中国が、実際には日本を大きく上回っていると見られている」、やはりそうか 「総額約5000億円の債務を新規借り換え、および債務免除によって一度帳消しにした格好になる」、「回復する国際援助の潮流に乗るため」、ということであれば、「ミャンマー」側は有難さをそれほど感じなかった可能性がある。 「円借款」は納入企業などは全て予め決まったヒモ付きのようだ。 本来は開示すべきものを、「ウェブサイト」からこっそり削除するとは、余りの姑息さに驚かされた。 「現実逃避」は日本の政府・企業のお箱だ。 「経済的な観点から見て、今のミャンマーは危機に陥っている」、経済は破綻状態にあるのに、「軍部」には危機感が薄いようだ。 「アウンサンスーチー氏は2012年の債務取り消しの際にも「5000億円の帳消しはやめてください。現政権を応援することになります」と迫った」、「それに対して、当時の民主党政権で官房長官を務めていた仙谷由人氏」「は、「喜んで受ければいい話ではないでしょうか」と強く反論」、なんと民主党政権も1枚噛んでいたとは情けない。 「連邦制」と「民主化」の強固な合体こそが、ミャンマーが進むべき道である』、その通りなのかも知れない 冷徹な立場で「検証すべきだ」 「長期的国益を見据え「標的制裁」に参加せよ」、同感である。
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日本の外交政策(その9)(出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は 世界に3つだけ」、ミャンマー ウイグル 香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応、「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果) [外交]

日本の外交政策については、昨年10月16日に取上げた。今日は、(その9)(出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は 世界に3つだけ」、ミャンマー ウイグル 香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応、「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果)である。

先ずは、本年3月2日付け日経ビジネスオンラインが掲載した立命館アジア太平洋大学(APU)学長の 出口 治明氏による「出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は、世界に3つだけ」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00087/022500177/
・『「知の巨人」と呼ばれる出口治明さんが、「教養としての地政学」を、分かりやすい言葉で説き起こすシリーズ連載。 第1回の前々回と、第2回の前回は、「地政学」の定義と枠組みを振り返った。 今回からは、日本が今、国際社会のなかで置かれている現実を、出口さんが地政学的に解説する。日本列島の地理的な特殊性に、経済規模などを加味すると、「日本が実効性のある軍事同盟を結べる国は、世界に3つしかない」と喝破する。その3カ国とはどこ? そして、なぜ? 出口さんの新刊『教養としての「地政学」入門』の刊行を記念した企画。 日本は島国です。そのため陸上の国境で接している隣国はありません。海を経て接しているのは、太平洋を挟んで遠い向こう側にあるアメリカとカナダを除けば、ロシア、北朝鮮、韓国、中国、台湾という、四カ国とひとつの地域です。 このうち、北朝鮮とは正式の国交が成立していません。加えて残りすべての国や地域と領土上の懸案を抱えています。ロシアとは北方領土、韓国とは竹島、中国や台湾とは尖閣諸島です。 日本の置かれている現状は、住宅地に家を買ったけれど、向こう三軒両隣との境界線争いを同時に背負い込んでしまった。そういう状況です。これでは落ち着けませんよね。 世界史的に見れば、周囲の国とトラブルを抱えていたら、せめて一カ国か二カ国とは仲良くしようと考えるのが普通です。それが常識的な発想です。 けれど、日本は五軒のお隣さんと角(つの)を突き合わせているのに、平然としているように見えます。 それはなぜなのか? おそらく少し離れてはいるけれど太平洋の向こう側にアメリカという世界最強国家があって、そこと軍事同盟を結んでいるから、そのことが大きな安心材料になっているのでしょう』、「日本」が隣接する北朝鮮を除く三カ国とひとつの地域と「領土上の懸案を抱えています」、確かに不安定だが、海が隔てているのがせめてもの幸いだ。ただ、陸で接している多くの国は、隣の国とは国境問題を抱えるケースは多いのではなかろうか。
・『隣国すべてと火種を抱える日本は、異常である  しかし周囲のすべての国と火種を抱えている現実は、ただならぬ事態だと、まともに受け止める必要があります。アメリカの存在に頼りすぎて、現実のトラブルを軽視するのは危険ですし、そもそもアメリカが永遠に強力な同盟相手であり続けるのかどうかは、神のみぞ知ることですから。 そのことをクールに認識することから、今日の日本における地政学は始まるのだ、と考えざるを得ません。 世界地図を南半球を上にして、ユーラシア大陸と日本列島、そして太平洋との位置関係を眺めてみてください。 ロシアや中国の立場に立ってみると、海路で太平洋に出ようとしたら、日本列島がとてつもなく邪魔な存在になっていることが一目瞭然です。日本列島から沖縄まで続く南西諸島が、連続して太平洋への出口をふさいでいる形となっています。 このような場所に存在することが、日本の地政学的な特徴を形成してきました』、確かにロシアや中国にとっては、「日本」は太平洋に出る際の邪魔な存在なのだろう。
・『日本列島は実に絶妙な位置にある  ロシアや中国を封じ込めようとしたら、日本列島の有する戦略的な位置は絶妙です。 東西対立から冷戦の時代、まさに日本列島が西側の不沈空母の役割を果たしていたのは記憶に新しいところです。日本列島に資源と呼ぶべきものは、ほとんどありません。例えば産業革命の三要素と呼ばれている化石燃料も鉄もゴムもありません。日本の特徴といえるのは、ユーラシア大陸の東側に障害物のように存在する列島である――それがすべてです。 ですから日本という国を、地政学的な現実だけから定義づけると、次のようになるのではないでしょうか。 「周辺の国々のすべてとトラブルの火種を抱えている歴史上稀(まれ)な国で、ロシア、中国という大陸の二大国家が太平洋に出ていく障害となる、絶妙な位置に列島が連なっている島国である」 日本は国内総生産(GDP)で見れば、世界三位もしくは四位の経済大国です。四位というのは購買力平価で計算するとインドに負けているからです。名目では三位です。 このように日本は経済的にはとても大きな国です。ということは、潜在的には軍事大国になる可能性を持っているのですね。自衛隊は高性能の航空機や艦艇をたくさん所有しています。その軍事力は相当に強大です。 ローマ時代の政治家であり哲学者だったキケロ(BC106―BC43)は、「戦争とは金だ」と一言でその本質を喝破しています。総力戦の時代に入った今日では、長い目で見ると経済力に勝る国が戦争に勝ちます。兵士に食べさせる食料も、一丁の小銃も、すべてお金がなければ買えません。 それでは日本が、どこかの国と軍事同盟を結ぶとしたら、可能性のある国はどこでしょうか』、「戦争とは金だ」とは言い得て妙だ。
・『自分より貧しい国に、助けを求めるのか?  経済的にも軍事的にも、日本は小国ではありません。かなり大きい国です。大きい国を守るのですから、同盟相手の国は日本より小さい国では不可能です。日本より貧しい国に「守ってくれ」といったらどうなるか。「じゃあ、お金をくれ」という話になるしかありません。発展途上国や日本より小さい国との同盟で、日本の安全保障を求めることは難しいのです。 そのように考えていくと、実効性のある軍事同盟を結べる国は、世界に三つしかないということがわかります。 アメリカ、中国、欧州連合(EU)です。 EUを構成する国々は小さいのですが、全体としての経済規模は、さほどアメリカに劣りません。また、日本は日英同盟の経験がありますから、ヨーロッパと同盟関係を結ぶことも決して唐突ではありません。 経済力と軍事力において自国と同等以上の水準を有する国をパートナーに選ばないと、安全保障条約を結んでも実効性を欠くことになりがちです。大国になると、理想的なパートナーを探すことはかなり難しくなってくるのです』、小国からみれば贅沢な悩みなのかも知れない。

次に、4月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元外務審議官で日本総合研究所国際戦略研究所理事長の田中 均氏による「ミャンマー、ウイグル、香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応」を紹介しよう。
・『「対話と協力」が基本の日本 「制裁」アプローチには一線画す  ミャンマーでは軍事クーデターに対する抗議デモへの治安当局の発砲などの呵責なき弾圧で数百人が死亡し、新疆ウイグル自治区では、米国が「ジェノサイド(集団殺害)」と呼ぶウイグル族への弾圧に国際社会の批判が高まっている。 香港では「一国二制度」の下で認められてきた高度な自治が損なわれ、自由が抑圧される「香港の中国化」が進んでいる。 米国のバイデン大統領は民主党の伝統的な人権外交を進め、日米首脳会談でも日本に中国の人権問題に対する協調を求めた。 日本はこれまで、欧米諸国の「制裁」アプローチとは一線を画し、ODA(政府開発援助)などを使って「対話と協力」で相手国政府に向き合うことを基本にしてきた。 人権の侵害に対して国家としてどう対処するか、改めて日本社会でも議論を深める必要がある』、「改めて日本社会でも議論を深める必要がある」、今さら「議論を深める」のではなく、行動が求められている筈だ。
・『戦後、対照的な道を歩んだ日独 日本の人権外交の背景にあるもの  人権の侵害にどう対応するかでは、ともに第二次世界大戦の敗戦国であり、人権の侵害で厳しく糾弾されたドイツと日本では対照的な道をたどった。 1990年代後半、ドイツが憲法の解釈を変更し、敗戦後初めて、連邦軍の海外派遣を決定したきっかけは、ユーゴ紛争だった。 コソボでアルバニア系の人々がセルビアにより虐殺された問題で、ドイツは初めてNATOの空爆に参加した。NATOの介入は国連の決議なく行われ、先導した米国のクリントン大統領は「人道的介入」と呼んだ。 ドイツはその後もアフガニスタンなどにNATOの一員として軍の派遣に参加している。 ドイツにとっては、ナチスの非人道的な行為に対する反省に立てば、近隣のコソボで人道に対する犯罪が行われているのに、黙視するわけにはいかないという意識が、長い間、海外で軍事的役割を果たすことに慎重だったドイツの殻を破ったといえる。 一方で日本は、戦闘目的での自衛隊の海外派遣は認められないとの憲法解釈を堅持し、もともと他国の人権問題に口を出すことには相当慎重な態度をとってきた。 特に中国など近隣諸国の人権問題には慎重だ。 これにはいくつかの理由が挙げられる。第一には、やはり戦前の日本軍の行動が中国や韓国、東南アジアの国々に爪痕を残し、日本がこれら諸国の人権問題について声を大に叫ぶことは、日本自身に跳ね返ってくるのではという思いを抱いてしまうことがある。 国際社会が協調して制裁を科す場合には同調することは多いが、制裁が問題を解決するとは考えているわけではないこともある。 従って制裁よりも対話による解決を目指してきた。中国の天安門事件の後、真っ先に制裁解除に踏み切ったのは日本だった。 国際社会でも、著しい人権侵害があり人道上の危機に際してどういう行動をとるべきかについては、これまでもさまざまな議論が行われてきた。 国連では、自国民を保護する責任はその国家が負うべきものだが、その責任を果たせない国家については、国際社会がそれらの人々を「保護する責任」が国連決議でも成立している。 しかし、コソボ紛争やソマリア内戦でも多くの犠牲者を出したように、いかに人道的介入といっても紛争解決をもたらすのは容易なことではない。 むしろ泥沼化する危険性を秘めており、国際社会が「保護する責任」を具体化するのは容易ではない』、「日本がこれら諸国の人権問題について声を大に叫ぶことは、日本自身に跳ね返ってくるのではという思いを抱いてしまうことがある」、言い訳に過ぎないと思う。
・『北朝鮮には圧力と対話 ミャンマーは粘り強く説得を  日本は具体的な人権問題にどう行動するのか。 北朝鮮による日本人拉致事件は、日本の国家主権が侵害され個人の人権が著しく侵害された事例だ。 だがこの問題は対話のみで解決が図れるわけではない。 北朝鮮が拉致を認め謝罪し、被害者を帰国させた背景には米国などの強い圧力があったことも事実だろう。 2001年に発足した米国ブッシュ政権は「ネオコン」と呼ばれた保守勢力の力が強く、イラク・イラン・北朝鮮を「悪の枢軸」と呼び、アフガニスタンのアルカイダ勢力の掃討に乗り出すなど、「ならず者国家は武力で崩壊させる」ことを実践していった。 北朝鮮は自国が攻撃される危機と考え米国の緊密な同盟国である日本との関係改善に利益を見いだしたのだろう。 さらに日朝の交渉で日本との関係正常化に伴う経済援助など、拉致問題解決が北朝鮮にも利益をもたらす「ウィン・ウィン」の絵を描いたことが、北朝鮮を動かしたのだと思う。 対北朝鮮の問題では背後に圧力があるという形が対話で結果を生みやすいといえるかもしれない。 一方でミャンマーで日本が一貫して追求してきたのは、90年の選挙で勝利した国民民主連盟(NLD)と国軍との関係の橋渡しだ。 それが長い時間をかけ、スー・チー国家最高顧問を事実上の長とするNLD政権という民主主義的な手続きによる政権誕生につながった。 日本は民主化を支援する最大の援助国であり、民間直接投資も急増した。今回の軍事政権のクーデターや人権抑圧に対しても、日本は欧米諸国のように正面切った制裁のアプローチをとるのではなく、ODAの新規供与は控えつつ、国軍との対話を模索し民主化の軌道に戻す道筋をつけようとしているのだろう。 ミャンマーを巡っては、関係諸国の思惑は異なり、国際社会が一致して国軍に圧力をかけるという姿にはなりにくい。 米欧にとってミャンマーは地理的だけではなく政治的にも経済的にも遠い国だ。一定の制裁は実施しても自らが主導して問題解決に乗り出すわけではない。 中国はミャンマーを抜けベンガル湾に至る石油ガスパイプラインがマラッカ海峡を通らずに済む戦略的重要性を持つので、このパイプラインを守ることを第一と考えている。 必ずしも国軍の統治が好ましいと思っているわけではないが、NLDを支援することはない。 ASEANも一枚岩ではない。度々軍によるクーデターで政権が作られてきたタイなどはミャンマー情勢に介入しようとは考えないだろう。 日本はASEANの中では民主主義が定着しているインドネシアやミャンマーに多額の投資をしているシンガポールとよく協議しつつ、一刻も早く民主化のプロセスに戻るよう説得を重ねるべきだろう。 ミャンマーの軍事政権も新型コロナ感染問題による経済停滞に加え、海外からの投資の激減による経済停滞に長く耐えられるわけではない』、日本が強い態度に出れば、軍部も聞かざるを得ない筈なのに、「一刻も早く民主化のプロセスに戻るよう説得を重ねるべきだろう」、と極めて慎重だ。
・『新疆ウイグル、香港問題は対中戦略全体の中で解決を模索  新疆ウイグルや香港の人権問題は、急速に国力を高めている中国を相手にするだけに、さらに難しい要素を内包している。 新疆ウイグルは共産党支配の下、漢族を超える人口を持つウイグル族への弾圧が激しい。中国は「核心的利益」として外国の介入は許さないとする。 この問題で、欧米諸国はウイグル族への人権抑圧に責任がある当局者に対し資産凍結などの制裁を科し、中国はそれへの報復として欧米の当局者へ制裁を科した。 制裁という強いアプローチは中国の報復を招き、事態が改善されているわけではない。 同様のことが香港問題についてもいえる。 香港の民主化に対する中国の弾圧に対して、米国は香港優遇措置を停止するとともに、香港政府や国の当局者に対して制裁を科している。 しかし、これらの制裁措置は立場の明確な表明という意味はあるが、実効的な効果を上げているわけではない。 むしろその後、中国は香港に国家安全維持法導入に続いて、選挙法を改定して「愛国者」という概念の下に親中国派を立法会選挙の候補者とするような仕組みを導入しようとしている。高度な自治と自由な資本主義を認める「一国二制度」は崩壊したといえる。 新疆ウイグル問題も香港問題も人権など民主主義的価値が大きく損なわれているが、問題の解決は中国との関係への全般的アプローチの中で考えていかざるを得ない。 中国に対して問題の改善に向けて強い圧力をかけられるとすれば、おそらくG7、さらにはQUAD(日米豪印戦略対話)の枠組みだろう。 しかし中国は安保理の常任理事国であり、また経済の面でも世界の中で巨大な市場を持つ国だ。G7といえども従来持っていたような強力なてこがあるわけではない。 米国は同盟国と連携して中国に圧力をかけていくアプローチをとるが、中国も「一帯一路」やワクチン外交などを通じて特に途上国への影響力は飛躍的に拡大している。 事態が早急に改善する見通しは持ちにくいが、米国はハイテク分野などで中国との市場分離(デカップリング)を進めているし、今は外国企業も中国国内への投資を増やすことを躊躇している状況もある。 このような動きが中国の経済成長に著しい障害となってくれば、中国政府は姿勢を変える可能性はあるのだろう。 政治的自由が制約されている共産党体制では経済成長が人々の不満を吸収している。いわば共産党統治の安定と直結しているので、経済成長が続くのかどうかは、新疆ウイグルや香港の人権問題の今後の動きを左右する大きな要素だ』、「「一国二制度」は崩壊した」、というよりも、中国はその国際公約を破ったという方が、実態に近い。ただ、「中国は安保理の常任理事国であり、また経済の面でも世界の中で巨大な市場を持つ国」、なので、「経済成長に著しい障害となってくれば、中国政府は姿勢を変える可能性はある」、のに僅かに期待するほかないようだ。
・『「ESG」や「SRI」は企業に真剣な検討を求めている  現状ではミャンマーや新疆ウイグル、香港の問題で人権外交が解決に向けて早急に成果を上げられることはなかなか見通せない。 ただその中で、民間企業の間でも、投資の評価基準として「ESG(環境・社会・ガバナンス)」や「SRI(社会的責任投資)」といった概念が強まっていることは注目される。 企業にとっても直接投資や取引の相手が人権問題にどう絡んでいるかは無視できない要素となっているからだ。 今後、企業はESGやSRIの観点からもミャンマーや新疆ウイグル、香港での活動には改めて長短両面から検討をせざるを得ないのだろう。 ミャンマーでの国軍関連企業との取引は企業価値を損ないかねない。香港の民主化支援企業との取引は中国本国で製品購入のボイコットを生みかねないが、一方でSRIを重視する投資家から支持されるだろう。 中国政府がウイグル自治区の少数民族に強制労働で作らせているとされている「新疆綿」の使用している企業は、人権侵害を容認、助長していると批判を受け、企業価値を損ないかねないし、逆に使用を停止すれば中国政府からなんらかの制裁をされる可能性がある。だがそれを覚悟で人権問題を優先するのか。 企業も今後は人権問題に対してどう振る舞うべきか、企業ガバナンスの観点から真剣な検討が必要になるだろう』、「「ESG」や「SRI」」が「企業に真剣な検討を求めている」ようになったのはいいことだ。「真剣」に「検討」してほしいものだ。我々も投資家の立場で、企業を厳しく評価してゆくべきだ。

第三に、3月11日付け東洋経済オンラインが掲載した東京大学名誉教授の北岡 伸一氏による「「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/413415
・『第2次安倍内閣は2012年12月に成立し、2020年9月まで2822日、7年8カ月あまり続いた。これは1964年から1972年にかけての佐藤榮作内閣の2798日を超える憲政史上最長記録であり、また第1次と合わせて通算3188日(8年8カ月あまり)というのは、明治大正期における桂太郎の三度の内閣を超える最長記録である。 この安倍政権の成果を、外交安保政策について振り返り、評価することが、本稿の課題である。経済、社会などの政策や、政治運営の手法などは対象としない。 あらかじめ述べておけば、私は、安倍政権の最大の成果は、2015年の平和安全保障法制と戦後70年談話、および2016年における自由で開かれたインド太平洋構想の提唱であって、それは近年の日本外交の中でも特筆すべきものだと考える。 筆者は、このうちとくに最初の2つに深く関与していたので、十分客観的な評価が可能かどうか、疑問がないわけではない。しかし、関与したゆえに知りえたこともあり、それを差し支えない範囲で明らかにすることは、義務でもあろうと思う』、確かに当事者だったのであれば、客観性は期待できない。
・『NSCから安保法制へ 特定秘密保護法  安倍内閣は、特定秘密保護法を2013年10月の国会に提出し、12月、これを成立させた。日本は秘密漏洩に対する処罰が緩く、かつてスパイ天国と言われたものであった。同盟国、友好国との安全保障上の提携を強化するためには、こうした法律が必要だった。 しかし、野党とメディアの多くは、この法案を民衆の権利を弾圧するものとして批判した。そのため安倍内閣の支持率は10ポイントほど下がり、50%を切ったが、安倍首相は、ためらうことなく立法を進めた。のちに、内閣に対する支持は回復した』、私もこれらの法制には反対した。
・NSCとNSS  また、この2013年には、国家安全保障会議(NSC)とその事務局(NSS:National Security Secretariat)が作られた。NSCは、2007年、第1次安倍内閣で着手され、首相の辞職によって中断されていた。安倍内閣はあらためて立法に着手し、NSC/NSSを成立させたのである。それまでは、国防会議という名目的な会議体しかなかったのが、ようやく外交と防衛を総合的に担当する組織が成立したのである。 このNSCについては、それくらいでは日本の縦割り行政は解消されないとか、情報収集機関が不十分なので役に立たないなどというシニカルな批判が、専門家の間にも見られたが、成立以後、肯定的な評価が定着している。 他方で、これが十分だというわけではない。日本独自の情報機関という課題は残っているし、近年の米中貿易紛争を見ても、経済安全保障についての役割がさらに期待されている。) 国家安全保障戦略:National Security Strategy(また2013年12月には、国家安全保障戦略の策定がなされた。日本の基本的な安全保障戦略を策定することは、対外的な安定性の点でも、国内の啓蒙、政策的統一のために、きわめて必要なものであるが、日本にはそれがなかった。 わずかに、1957年5月、岸内閣策定にかかる国防の基本方針があったが、かなり古く、また極めて簡潔なもので、政策指針としては十分ではなかった。戦前の日本でも、外交と軍部の対立は根深く、陸軍と海軍の対立も深刻だった。その意味で、外交と防衛をカバーする国家安全保障戦略の制定は、日本にとって画期的なものだった。 その中心は、自由で安定した国際秩序の維持が日本の基本的な国益であり、その維持強化のために、日本は積極的な役割を果たすべきだということであり、これを積極的平和主義と呼んだ。具体的には、自衛力の強化、日米安保の強化のみならず、国際平和活動、ODA(政府開発援助)、外交による平和構築にも、より積極的に取り組むべきだという内容だった。 これに対しても、一部から、政府は世界中に自衛隊を進出させようとしているという批判があったが、これらは、まったく事実無根であって、以下に述べるとおり、安倍内閣はPKOなどについてはきわめて慎重で、むしろ臆病なほどであった』、確かに「国家安全保障戦略の制定」は画期的だった。
・『防衛装備品輸出三原則  2014年4月、国家安全保障戦略に基づいて、防衛装備品輸出三原則が定められた。元来、日本は武器の輸出を極めて厳格に制限していた。1970年代半ばまでは、共産主義国、国連で制裁を受けている国、紛争当事国には武器を輸出しないという方針だったが、1974年、三木内閣において、原則として武器は輸出しないという方針に転じた。 のち、1983年、中曽根内閣は方針を転換し、同盟国アメリカへの武器技術輸出は可能だとしたが、それ以外は依然として原則的に禁止だった。 もちろん、他国を侵略したり、国内で国民を弾圧したりするような国には、武器を輸出すべきではない。しかし世界には他国の脅威にさらされて防衛力を強化しようとしている国もある。そういう国々に対しては、日本は資金等の援助などをすることがある。) それゆえ、そうした国々に対しては、武器の輸出は一切禁止とするのではなく、一定の範囲で防衛装備品の輸出は可能とすべきだとして、新しい原則が立てられたのである。 これまで、武器輸出三原則(事実上の禁止)の結果、日本の防衛産業は海外に市場を持たず、国内の自衛隊だけを顧客とせざるをえなかった。 その結果、日本の武器産業は高価で競争力を持たなくなった。また、現代の武器はきわめて高価で、国際共同生産となることが多いが、この原則により、国際共同生産に参加することもできなかった。そうした禁止をなくしたことは、より柔軟な防衛政策が可能となることを意味した。 ただ、すぐにこれが効果をあげたわけではない。オーストラリアに対する潜水艦の売り込みに、日本は失敗したが、経験不足は否めなかった。しかし、日本の武器が求められ、それが防衛用に使われ、日本の防衛産業が一息つけるなら、今後とも進められるだろう』、「オーストラリアに対する潜水艦の売り込みに、日本は失敗」、失敗したのは残念だが、コストが高目だったのではなかろうか。
・『開発協力大綱改定と「国益」 開発協力大綱(2015年2月には開発協力大綱が改定された。 そこで大きな話題となったのは、まず、国益という言葉が登場したことである。これは確かにODAの世界ではあまり見かけない言葉である。 しかし、途上国の発展に貢献する中で、援助国の側の利益をも目指すことは、これまでも普通に行われていた。この開発協力大綱に言う国益は、国家安全保障戦略が、日本にとって、平和的国際環境の維持が最も重要な国益であると述べていることを踏まえたものである。 このように国益を定義すれば、国税を使って支援をする以上、開発協力が日本の利益を目指すのは自然なことである。 また、この大綱において、軍に対する協力も、非軍事的なものならば可能となった。例えば、軍人の留学生を受け入れることが可能となった。戦前の日本では、軍人に対する教育が偏狭なものであったことが致命的だった。 それゆえ現在の防衛大学校では、幅広い見識と視野を持つ人材育成を目指している。外国の軍人に対しても、こうした教育を提供することは、国際協力の範囲で考えて構わないだろう。) 安保法制懇談会報告と平和安全法制(こうした政策の延長上に行われたのが、2014年5月の安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)の再開と報告書の提出、この報告書に基づく7月の閣議決定、そして2015年9月の平和安保法制の成立である。 まず、安保法制懇は、第1次安倍内閣において活動していた懇談会(2007年5月設立)を、ほぼ同一のメンバーで再度立ち上げた。座長は柳井俊二国際海洋裁判所判事が、座長代理は私が務めた。 その提言は、日本国憲法9条2項は必要最小限度の自衛力までも禁止はしていないという1954年解釈と、これを支持した1959年最高裁判所の判決に基づき、現代においては集団的自衛権の部分的行使は必要最小限度のうちに入ると考えるべきであって、集団的自衛権行使を不可とした1972年法制局解釈を修正すべきだとした。 それ以外に9条1項の「武力の行使による国際紛争解決の禁止」は、日本を当事者にする国際紛争に関するものであって、日本が当事者でないPKOなどにおいて、武力の行使ならぬ「武器の使用」まで禁止されているという従前の解釈は国際常識に反するとして、改めるように提言した』、なるほど。
・『2015年安保法制の成立と海外の反応  これに対し政府は、日本周辺における米軍などとの共同活動について、集団的自衛権の行使は可能と判断したが、憲法9条1項に関する懇談会の提言については受け入れず、これを7月の閣議決定とした。 これを盛り込んだ法律は2015年に提出され、異例の長い審議を経て、成立した。日本の憲法学者の多くは反対し、国会審議に際しては、多くのデモが国会を取り囲んだ。 しかし、日本の憲法学者の多数派の議論はきわめて特異なものであることには留意が必要である。そもそも憲法は国家の運用のルールであり、国家が国際競争の中で活動することを前提としているのにもかかわらず、日本の憲法学者は国際法や国際政治にほとんど関心を持たず、ただ成文憲法に合致しているかどうかだけを判断するのである。 2015年安保法制の成立は、海外の多くの国々によって歓迎された。かつて日本が安全保障政策を強化すると、野党やメディアの一部はこれに反対し、アジア諸国は不安を覚えると言うことが普通だった。しかし、今回は、中国、韓国、北朝鮮からも強い反対はなく、東南アジア諸国は安保法制の成立を歓迎した。彼らは中国の脅威にさらされているのであって、当然の反応だった。) さらに興味深いことに、安保法制成立から5年を経た今、反対論は著しく後退している。反対論の拠点であった朝日新聞の2020年12月18日の記事によれば、安保法制を支持する人は反対論を明白に上回っている。 ここで想起したいのは、トランプ大統領が繰り返し、「米兵が日本を守るために血を流して戦い、日本人はそれをソニーのテレビで見る。アンフェアーだ」と言っていたことである。このトランプ発言は、現在では誤りであって、日本の防衛のために行動している米軍が危険に遭遇したときは、日本はともに戦うことになっている。しかし、安保法制が成立するまでは、トランプ発言のとおりの状態だったのである。 事実として、安保法制成立以後、日本とアメリカの間では飛躍的に情報の共有が進んでいる。ともに危険を負担する間でなければ機微な情報を共有しないのは当然のことであって、安保法制はその意味でも大きかったのである』、「飛躍的に情報の共有が進んでいる」、のは確かにプラスの効果だ。
・』PKOの現状とその他の課題  PKOの現状(しかし、憲法9条1項に関する懇談会提言を受け入れなかったように、安倍内閣の国際平和協力に対する姿勢は十分ではなかった。2016年、南スーダンのジュバで内戦が起こったあと、政府は、PKOに参加している他国の部隊や一般市民が襲撃を受けたときは、自衛隊が助けに行けるよう、「駆け付け警護」という世界に例のない法律を作った。 国連平和維持活動においては、そうした友軍支援や市民保護は、明文に規定していなくても、当然の義務であるが、自衛隊は法的根拠を必要とした。しかし、それから間もなく、南スーダンの自衛隊は引き上げてしまったのである。 その他の課題(ともあれ、PKOを別として、安倍内閣のもとで安全保障政策は強化された。それでも、中国の軍事的膨張は急速であり、尖閣諸島周辺での行動も一段と活発化しており、海上警察の組織や役割も変更して強化している。日本の安全保障がこれで十分であるとは到底言えない状況である。 その1つは、ミサイル防衛の不備である。2019年、陸上イージスの配備が中止されることとなった。それは、ミサイルからの落下物の安全が保障されていないという理由であったが、ミサイル防衛の限界を示したものだった。 中国はもとより、北朝鮮のミサイルが著しく発展した今、ミサイル防衛によって本当に日本の安全を守れるか、疑問である。しかも、性能や価格を十分吟味しないで購入を決定していた疑いが濃い。) いずれにせよ、ミサイル防衛を中心とする防衛政策や、その基底にある専守防衛という原則自体が、不可能になりつつあるが、まだ有効な対処はなされていない。 2020年には新型コロナが世界を直撃した。日本の感染者は相対的に少なかったが、検査の数にせよ、病院の準備にせよ、ワクチンの開発にせよ、資金の給付にせよ、多くの欠陥が明らかになった。パンデミックは、いわゆる非伝統的安全保障と呼ばれるものの1つであるが、これにおいて日本の対応は失敗だった。有事において政府が強い権限を行使し、国民の安全と福祉を守るという仕組みが、根付いていないことが明らかになったのである』、「陸上イージス・・・性能や価格を十分吟味しないで購入を決定していた疑いが濃い」、お粗末な騒動だった。「中国はもとより、北朝鮮のミサイルが著しく発展した今、ミサイル防衛によって本当に日本の安全を守れるか、疑問である:、その通りだ。
・『歴史認識問題  次に、いわゆる歴史認識の問題に移りたい。これも、外交の大きな制約要因になりうるので、外交安全保障政策の一環だと考えるべきである。 安倍首相が2013年12月末に靖国神社を訪問すると、中国、韓国は激しくこれを批判し、同盟国のアメリカまで、失望したというコメントを発表した。 これは、同盟国としては、やや行きすぎた反応だったと思う。なぜなら、歴代の首相は、日本は侵略したことを認め、A級戦犯には責任があると述べ、しかし祖国のために生命をささげた一般兵士のために参拝すると言ってきた。今回も同様だった。これに対して中国や韓国が批判するのはそれなりの意図があってのことであり、ある程度は理解できるが、アメリカが批判するのは行きすぎだと私は考える。 しかし安倍は右翼だとする論調が欧米、とくにアメリカのリベラル系の学者に多かったことは事実である。 2014年にはマグロウヒル社の教科書に、「日本軍は14〜20歳の女性を、20万人も強制的に徴用し、……『慰安所』……で働かせた」と記されていることが判明し、日本の外務省が訂正を求めたところ、2015年5月、アメリカの学者グループはこれを歴史に対する検閲であるとして抗議書簡を発出した。) しかし、今日明らかになっているところでは、「慰安婦」のほとんどは成人であり、その中には日本人が多く、朝鮮人が多数ではなかった。また朝鮮では新聞広告や業者の勧誘によって応募した女性が多く、強制的に徴用した証拠は見つかっていない(強制的に慰安婦にされた人は、旧オランダ領インド〈現在のインドネシア〉における少数のオランダ人女性などがあった。しかし、朝鮮半島においては、強制連行されたという証拠は見つかっておらず、大部分は新聞記事を見たり、ブローカーの紹介によって応募した成人女性だった。かつて朝鮮半島で強制連行があったと報道した朝日新聞は、2014年8月、誤りであったとして取り消し、謝罪した。なお、上記オランダ人元慰安婦に対しては、日本政府は謝罪補償を行っている)。 また慰安婦の総数についても、日本の中で最も韓国側に近い立場の研究者でも4万5000人という数字をあげており、20万人というのが甚だ誇張されたものであることは明らかである。さらに、日本の外務省はアメリカの学者や出版社に対して何らの権力を有しておらず、事実に反するとの指摘や訂正の要求が検閲というのは、これまた荒唐無稽な話であった。 日本ではこの問題に対し、慰安婦問題を専門とする学者を代表して、2名の有力教授が共同で記者会見をした。その1人、左派と目されている大沼教授すら、アメリカの学者の動きを批判して、自分がそういう指摘を受け取ったら、自分の誤りを気づかせてくれたかもしれないので、まずお礼の手紙を書くと述べた。 しかし、アメリカの世論はそのようなものではなく、事実に即さない感情的なものだった。ちなみに、こうした行きすぎたリベラルに対するアメリカ国内の反感が、2016年におけるトランプ候補の大統領当選の大きな背景だったように思われる。 70年談話の焦点(安倍首相はこうした背景に、アメリカの理解を得ることが最も重要だと考え、2014年、オーストラリアのキャンベラにおけるスピーチで、率直に戦争について謝罪して、歓迎を受けた。それから、2015年4月、ワシントンにおいて、連邦上下両院議員合同会議で演説を行い、大喝采を浴びた。 国内では、20世紀における日本のあり方を考え、21世紀の世界と日本を考える懇談会(21世紀構想懇談会)を組織した。座長が西室泰三東芝相談役、私が座長代理を務めた。世間の関心は侵略という言葉を使うかどうかに収斂していた。) 懇談会報告は、20世紀初頭の世界から説き起こし、世界が植民地主義に覆われていて、日本もその一員であったこと、しかし第1次大戦後、国際協調体制が成立していたのにもかかわらず、それに最初に大きな打撃を与えたのは満州事変であって、日本の責任はとくに重いとして、その責任を改めて想起し、戦後の日本は国際協調体制の推進に力を入れてきたことを述べている。 また、日本は戦争と植民地統治について何度も謝罪し、相当の補償も行っているのであり、これ以上、国民が謝り続ける必要はない、ただ、こういう歴史があったことを忘れないという責任のみが残っている、という趣旨を述べた。 安倍首相の談話は基本的にこの線で書かれた。その結果、侵略という言葉を使うことに反対していた右派(例えば渡部昇一上智大学名誉教授)もこれを支持し、侵略という言葉を使うことを強く求めていた左派の知識人およびメディアも、一部の例外を除いて、おおむね賛成ないし黙認するに至った。 これで、ともあれ、長く続いた歴史認識問題は一応の決着となった。懇談会は当然の事実を述べたにすぎない。しかしこれを70年談話という注目度の高いところで述べたことが、広く納得を得たのである』、「長く続いた歴史認識問題は一応の決着となった」、のはいいことだ。
・『日韓慰安婦に関する合意が成立したが  そして、その延長線上に、12月、日韓慰安婦に関する最終合意が成立した。 そもそも、慰安婦問題については、1995年に村山首相当時、政府と民間の合同でアジア女性基金が作られ、首相の謝罪の手紙と償い金を渡した。朝鮮以外の元慰安婦はこれを受け取り、韓国で認定されていた200名あまりの元慰安婦のうち、61名は、これを受け取った。 それ以上に、2015年12月には、日本の拠出によって韓国に新たな基金を作り、これを持って慰安婦問題は終わりとするという合意が、両国の間に成立したのである。生存している元慰安婦のうち46人のうち36人がこれを承認し、資金を受け取った。 ところが、朴槿恵大統領のあとに大統領となった文大統領は、この合意は元慰安婦の声を十分反映していないとして、問題を蒸し返した。) あわせて、戦時中のいわゆる徴用工に対する補償問題が蒸し返され、韓国の裁判所は請求権を認める判決を下している。 しかし、徴用工の請求権は1965年の日韓基本条約において、明示的に、解決されている。韓国の政策は、従来の基本的合意を一方的に変更するもので、日本としては受け入れることができない。これは日本では、野党もメディアも一致するところである。外交安全保障上、隣国との関係が順調でないのは遺憾なことであるが、すべては韓国の責任である。 その後、慰安婦問題で影響力を持っていた団体が、資金の不正使用をしてきたことが明らかになっており、また事実に即した研究も少しずつ増えてきていて、いわゆる慰安婦問題はやや下火になっている。しかし、韓国でまた火が付く可能性はないとは言えない。中国とアメリカとの関係が厳しくなっている現在、なお懸念の残る問題である』、「韓国」が反日を政権浮揚の手段にしているのは、困ったことだ。
・自由で開かれたインド太平洋(FOIP)  TPP11(TPPは2005年に結ばれたシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドによる環太平洋戦略的経済連携協定に始まる。 これに2008年、日米などが協議に参加し、2015年10月、上記4カ国に、オーストラリア、カナダ、日本、マレーシア、メキシコ、ペルー、アメリカ、ベトナムが加わった12カ国が、環太平洋パートナーシップ(TPP)の締結について、大筋合意に至り、翌2016年2月、署名するに至った。これは高い水準の野心的、包括的な経済連携協定で、事実上は中国に対抗する意味を持つものと思われていた。 2017年1月、トランプ大統領は、政権発足と同時にTPPからの脱退を宣言した。しかし残り11カ国は内容を修正して新たな協定(TPP11)を締結し、2018年末、協定は発効した。このTPP11を実現するにあたって、安倍首相のリーダーシップは大きかった。 FOIPの提唱(2016年8月には、安倍首相はケニアのナイロビで開かれたTICADⅥ(第6回アフリカ開発会議)において、自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP、のちに自由で開かれたインド太平洋「構想」と言い換えている)を提唱した。) FOIPは、2013年に中国が提唱した一帯一路と対抗するもののように言う人がいる。しかし、むしろ逆である。日本の戦後の復興と発展は、東南アジアからインドに及び、また日本は1970年代からODAなどで中東にも関与するようになっていた。そして1993年からTICADを開催している。つまり、日本の発展が自由で開かれたインド太平洋の成立を促してきたのであって、むしろ、そこに挑戦してきたのが中国の一帯一路だったのである。 FOIPは、それは単に経済連携の構想ではなく、法の支配や航海の自由という普遍的原則と不可分であり、民主主義という価値とも結び付いている。 FOIPの不可欠の一部が、例えば集団的自衛権の部分的行使容認を含む日米関係の強化だった。また、安倍首相はインドのモディ首相ととくに親しい関係を結び、これがFOIPの骨格となっていることはあらためていうまでもない』、「FOIP」は中国が覇権主義的性格を強めているなかで、1つの対抗手段だ。TPPに米国を復帰させるのも重要な課題だ。
・『大阪G20で合意されたインフラ投資原則  2017年6月5日、しかし安倍首相は日経新聞の会議で講演し、中国の一帯一路とむやみに対立するのではなく、事業に開放性、透明性、経済性があり、また対象国の債務健全性に配慮するものならば、協力が可能だと述べた。 これは、2018年大阪におけるG20の成果文書に取り入れられた。やや異なった表現ではあるが、インフラ建設において以上の4原則、それに環境配慮などの原則を守ることが合意された。中国はG20の一員であるから、この原則にコミットすることになったのである。 FOIPという言葉は、その後、アメリカも使うようになった。トランプ政権の間に日米印豪の間の安全保障協力(QUAD)が進むようになったが、これもFOIPの一部をなすと考えられる。中国の南シナ海支配に抗議する航海の自由作戦も、その一部である。) FOIPの内容に、日米の間で完全な合意があるわけではない。バイデン政権のコミットについても、まだ不明なことも多い。しかし、安倍政権が自由で開かれたインド太平洋構想を打ち出し、広めていったことには、誰も異論のないところであろう』、「大阪G20で合意されたインフラ投資原則」は、中国への一定の歯止めになる可能性もあり、確かに成果だ。
・『安倍内閣の外交安保における成果  広く外交安保に関係するもので、安倍首相が重要政策として挙げたもののうち、憲法改正には手が届かなかったし、日露領土問題でも拉致問題でも前進はなかった。 しかし、憲法改正について言えば、安倍首相の打ち出した現行の9条を維持して第3項を付け加えるというやり方は、戦力不保持を定めた第2項を維持するということであり、どれほど日本の安全に寄与しうるかは、やや疑問の残るところである。日本の安全にただちに役に立つという点では、安保法制のほうが、明らかに意味があった。 また、拉致問題が解決しなかったことは遺憾だったが、もし解決しても北朝鮮の核とミサイルの脅威まで除去はできなかっただろう。ロシア問題については、交渉の内実が明らかになっていないので、コメントは控えておきたい。 安倍首相の外交安保における成果は、本稿冒頭で在任期間を比較した佐藤榮作の沖縄返還や、桂太郎の日露戦争などとは、比べられるようなものではない。 しかし、中国の経済的・軍事的膨張と、強圧的な対外政策を前に、日本に根深い原理主義的な平和主義を考えるとき、相当の成果を挙げたと言って過言ではないだろう。 同盟国のアメリカでは、オバマ政権からトランプ政権へと大きな転換があった。その中で安倍首相はワシントンの連邦議会で演説(2015年4月)し、オバマ大統領の広島訪問(2016年5月)を実現させ、さらに真珠湾を訪問(2016年12月)し、かつ、トランプ大統領との間で信頼関係を築いた。これは、重要な成果であったと言ってよいだろう。 ただ、安倍内閣の成果が本当に実のあるものとして定着するには、これからの歴代政府の努力にかかっていると言ってよいであろう』、「北岡」氏安部外交への評価は、当事者だっただけに、予想通り異常に高い。それでも、安部外交を締めくくる意味でも、取上げた次第である。
タグ:日本の外交政策(その9)(出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は 世界に3つだけ」、ミャンマー ウイグル 香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応、「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果) 日経ビジネスオンライン 出口 治明 「出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は、世界に3つだけ」 『教養としての「地政学」入門』 確かにロシアや中国にとっては、「日本」は太平洋に出る際の邪魔な存在なのだろう。 「戦争とは金だ」とは言い得て妙だ。 小国からみれば贅沢な悩みなのかも知れない。 ダイヤモンド・オンライン 田中 均 「ミャンマー、ウイグル、香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応」 「改めて日本社会でも議論を深める必要がある」、今さら「議論を深める」のではなく、行動が求められている筈だ。 「日本がこれら諸国の人権問題について声を大に叫ぶことは、日本自身に跳ね返ってくるのではという思いを抱いてしまうことがある」、言い訳に過ぎないと思う。 日本が強い態度に出れば、軍部も聞かざるを得ない筈なのに、「一刻も早く民主化のプロセスに戻るよう説得を重ねるべきだろう」、と極めて慎重だ。 「「一国二制度」は崩壊した」、というよりも、中国はその国際公約を破ったという方が、実態に近い。ただ、「中国は安保理の常任理事国であり、また経済の面でも世界の中で巨大な市場を持つ国」、なので、「経済成長に著しい障害となってくれば、中国政府は姿勢を変える可能性はある」、のに僅かに期待するほかないようだ。 「「ESG」や「SRI」」が「企業に真剣な検討を求めている」ようになったのはいいことだ。「真剣」に「検討」してほしいものだ。我々も投資家の立場で、企業を厳しく評価してゆくべきだ。 東洋経済オンライン 北岡 伸一 「「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果」 確かに当事者だったのであれば、客観性は期待できない。 私もこれらの法制には反対した 確かに「国家安全保障戦略の制定」は画期的だった 「オーストラリアに対する潜水艦の売り込みに、日本は失敗」、失敗したのは残念だが、コストが高目だったのではなかろうか。 「飛躍的に情報の共有が進んでいる」、のは確かにプラスの効果だ。 「陸上イージス・・・性能や価格を十分吟味しないで購入を決定していた疑いが濃い」、お粗末な騒動だった 「中国はもとより、北朝鮮のミサイルが著しく発展した今、ミサイル防衛によって本当に日本の安全を守れるか、疑問である:、その通りだ。 「長く続いた歴史認識問題は一応の決着となった」、のはいいことだ。 「韓国」が反日を政権浮揚の手段にしているのは、困ったことだ 「FOIP」は中国が覇権主義的性格を強めているなかで、1つの対抗手段だ。TPPに米国を復帰させるのも重要な課題だ 「大阪G20で合意されたインフラ投資原則」は確かに大きな成果だ。 「大阪G20で合意されたインフラ投資原則」は、中国への一定の歯止めになる可能性もあり、確かに成果だ 「北岡」氏安部外交への評価は、当事者だっただけに、予想通り異常に高い。それでも、安部外交を締めくくる意味でも、取上げた次第である。
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ミャンマー(その4)(繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇、市民を虐殺するミャンマー国軍 日本政府・企業は軍と国民 どちらに立つのか?、ミャンマー市民が頼るのは 迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望、日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠) [外交]

ミャンマーについては、3月24日に取上げた。今日は、(その4)(繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇、市民を虐殺するミャンマー国軍 日本政府・企業は軍と国民 どちらに立つのか?、ミャンマー市民が頼るのは 迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望、日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠)である。

先ずは、4月5日付けNewsweek日本版が掲載した毎日新聞記者の永井浩氏による「繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/04/post-95986_1.php
・『ミャンマー軍に対する厳しい制裁に踏み切れない日本政府は軍政の「共犯者」だ> ミャンマーの国軍クーデターから2ヶ月。この政変が起きた2月1日の本サイトで、私は「日本政府は今度こそ民主化支援を惜しむな」と書いた。政府はこれまで、同国の民主化を支援するという空念仏を唱えるだけで、事実上軍政の延命に手を貸してきた事実を知っていたからである。だが、私の期待は裏切られたようだ。民主化運動への国軍の弾圧は残虐化するいっぽうなのに、「民主国家」日本の政権担当者は国軍「非難」の談話などを出すだけで、欧米諸国のような制裁には踏み切れない。なぜなのかを理解するために、私は古い取材メモなどをあらためて引っ張り出してみようと思った』、「日本政府は軍政の「共犯者」、とは手厳しいが、具体的なポイントをみてみよう。
・『スーチー氏「解放」の実態  私がミャンマーの民主化について取材をはじめたのは、民主化運動指導者のアウンサンスーチー氏が6年間におよぶ自宅軟禁から解放された1995年7月から間もなくしてからだった。彼女の解放を喜ぶとともに、依然として軍政がつづく同国の現状と今後の見通しについていろいろ聞きたいジャーナリストが、世界各地から最大都市ヤンゴンのスーチー邸に殺到した。毎日新聞記者の私もその一人だった。 日本政府は彼女の解放を民主化への前進と評価し、欧米諸国にさきがけて、軟禁下で凍結されていた経済援助の再開を表明した。では「解放」の実態とはどのようなものだったのか。多くのジャーナリストの取材申し込みのウエイティングリストの後ろのほうに載っていた私が、やっとスーチー邸の門をくぐったのは9月2日だった。 まだ雨季なので、足元はぬかるんでいた。訪問客は、邸内に設けられた受付で姓名、所属団体、外国人ならパスポート番号を書くようにもとめられる。これは、軍事政権「国家法秩序回復評議会」(SLORC)がスーチー氏の「警護」のために取っている措置とされるが、彼女の側からの自発的要請にもとづくものではない。外国人には、公安当局がカメラのフラッシュを浴びせる。 解放直後は、祝福のお土産をかかえて国内各地から駆けつけた、彼女の率いる「国民民主連盟」(NLD)の支持者たちがひきもきらなかった邸内は、だいぶ落ち着きを取りもどした。軟禁中は手入れができず、「まるでジャングルみたいだった」と彼女が述懐する庭もこざっぱりした。 しかし、日常の活動はいまだに大きな制約を受けている。電話は通話可能になったものの、側近によれば「盗聴されている疑いが強い」。コピー機とファックスの設置には政府の許可が必要だが、申請してもいまだに許可が下りていない。共産主義政権が倒れるまでのソ連・東欧諸国のような言論統制だ。私信はまず届かないとみた方が確実だ。私もインタビュー掲載紙と書留を日本から送ったが、二通とも届いていないことがその後わかった。 スーチー氏以外の多くの党員や支持者は投獄されたままだ。5人以上の集会は事実上禁じられているために、彼女は自宅前に集まった市民に話しかける「対話フォーラム」をはじめた。軍事政権は記者会見を自由に開き、国営の新聞・テレビで自分たちの意見や宣伝を流すことができるが、NLDには自分たちの活動を伝える印刷物さえ許されない。 これが「解放」の実態なのだが、日本政府はそれを民主化進展のあかしととらえた。ヤンゴンの日本大使館関係者は、軍事政権による表現の自由の抑圧ではなく、スーチー氏がNLD書記長に復帰したことを「予想外の強硬な態度」と評した。彼らにとっては、日本のODA(政府開発援助)大綱に定められた基本的人権や自由の保障とは、この程度の意味しかもっていないようだった』、クーデター前でも「スーチー氏」の状態は、事実上の自宅軟禁だったようだ。「日本大使館関係者」の「基本的人権や自由の保障」の認識の浅さには改めて驚かされた。
・『「経済発展に民主化は不可欠」  スーチー氏が私のインタビューで最も強調したのは、「経済発展には民主化が不可欠」という点だった。軍事政権が進める市場経済化政策に応じて日本など外国からの対ミャンマー投資が増えていることについて、「国民の政治に対する信頼がなければ長期的に安定した経済発展は望めません」として、民主化運動のために闘いつづける決意をあらたにした。それなしには、経済開発は軍人を頂点とする一握りの特権層のふところを富ませるだけで、貧富の格差をさらに広げることになってしまうからだ。 彼女はまた、日本人ジャーナリストの私に問いかけるように言った。「日本人は、戦後の繁栄と平和がどうして達成されたかを忘れないでほしい。それは、軍国主義から解放されて民主主義を手に入れたおかげではないでしょうか」。そのような歴史認識が日本の政府と国民に定着しているなら、私たちの民主化運動を正しく理解してくれるはずではないか、という意味であろう。 彼女はそれ以上言わなかったが、その日本軍国主義は第二次大戦中にビルマ(ミャンマー)を侵略し、この国の人びとの命と土地、財産、文化を踏みにじったことをミャンマー国民は忘れていない。彼女の父アウンサンは、英国からの独立をかちとるためにはじめは日本軍の支援を受けながら、日本の敗色が濃くなった戦争末期に抗日蜂起に立ち上がった「独立の英雄」である。 スーチー氏はさらに、「ビルマも1960年代に軍部が実権を握るまでは、民主政治の下で、アジアで最も発展の早い国でした」と指摘した。 私は日本のODA再開決定をどう思うかとたずねた。 「日本政府はビルマの民主化の進展に応じて、という条件をつけているというが、私は真の民主化の進展を条件にしてほしい。私一人の釈放だけでは不十分です。経済援助や投資を個人のためにではなく、国民全体の利益にむすびつくかたちで進めてほしい」 こう答えた彼女は、欧米とは異なる日本の対ミャンマー援助をやんわり批判した。欧米諸国は人権と経済援助をからめる「北風」路線をとっているのに対して、日本は経済援助を段階的に増やしながら軍政に民主化の促進をうながしていく「太陽」路線の優位を主張していたが、スーチー氏は「太陽は暑すぎて快適ではありません。これ以上太陽が暑くなると着ているものすべて脱がされてしまいます」というのだ。 日本のODA再開が彼女の軟禁からの解放に貢献したかのような見方にも、スーチー氏は反発した。「だれが私の解放をもっとも助けてくれたかは、歴史が明らかにすることです。その歴史を、本当の民主化を進めていくなかで、私たちはつくっていきたい」』、「日本政府はビルマの民主化の進展に応じて、という条件をつけているというが、私は真の民主化の進展を条件にしてほしい。私一人の釈放だけでは不十分です」、「日本政府」への痛烈な批判だ。
・『なぜ『ビルマからの手紙』なのか  初対面の私がスーチー氏に対していだいた印象は、東南アジア各地の沼などでよく見かけるハスの花のイメージである。花は、凛として気品と優しさをたたえている。私はそのような美しい花を浮かべる水面の下がどうなっているのかを知りたくなった。 軍事政権や一部の日本人からは、欧米生活の長かった彼女には、自国の現実がよくわかっていないという批判が投げかけられていた。そのいっぽうで、欧米的な民主主義や人権の概念をあてはめ、彼女をミャンマー民主化の旗手にまつりあげる西側世論がある。だがそのような外部の一面的な見方だけでは、国民の圧倒的なアウンサンスーチー人気の秘密はわからない。でもかぎられたインタビューの時間では、その土壌がわからない。そこで私は、彼女に頼んでみた。 「ビルマの民主化を本当に理解するには、この国の歴史、文化、社会への多面的なアプローチが必要だと思う。それを毎日新聞にお書きいただけないだろうか」。彼女は「私もぜひ書いてみたい」と端正な顔をほころばせながら快諾してくれ、「ただ、いまはとても忙しいし、NLDの承認も受けなければなりませんので、正式の返事は2,3日待っていただけませんでしょうか」とのことだった。もちろん党のOKもでた。 こうして、スーチー氏の連載エッセイ『ビルマからの手紙』が11月末から週一回、毎日新聞の紙面を飾りはじめた。 私は、ミャンマー民主化運動の同時進行ドキュメントであるこの文章を日本の読者が読むことで、彼女たちの闘いを支援せよ、などと主張するつもりはなかった。また冷戦後の民主主義と人権の普遍性が強調される風潮のなかで、アウンサンスーチー=天使、軍事政権=悪魔といった安易な図式をあてはめて、アジアの隣人たちの闘いを論じることを避けたかった。「歴史の正しい証人」であることがジャーナリストの使命であるなら、まず言論の自由を奪われた国の人びとの声をできるだけ広く国際社会に伝えなければならない。民主主義の国の一員として享受している言論の自由を、その基本的権利を奪われた国の自由のために行使しなければならいだろう。その情報をどう判断するかは、読者にまかせればよいことである。 毎日新聞は日本語の新聞だが、スーチー氏の原文は英語なので、英語版のザ・デイリー・マイニチに掲載された"Letters From Burma"が目にとまれば、国際的な情報ネットワークをつうじてなんらかの形で世界にも流れる可能性があるだろう。連載開始後、まずAPなどの西側通信社が連載のなかからニュース性の高い情報をとりだして<東京発>で世界に配信しはじめた。ミャンマーの民主化運動を支援している日本の市民グループがザ・デイリー・マイニチの英文をインターネットで世界の市民ネットワークに流しはじめた。米国最大の独立系ニュース・シンジケート「ユニバーサル・プレス・シンジケート」がアジア、欧州、米国、中南米の新聞、雑誌に同時掲載する契約を申し出て、世界15か国で同時掲載されるようになった。 『手紙』のミャンマー国内への持ち込みは難しかったが、在日ミャンマー人の民主化支援グループがビルマ語に翻訳し、自分たちの発行する週刊紙に載せて、1988年のクーデター後に世界に逃れた同胞や、軍事政権に追われてタイ国境の難民キャンプで暮らすビルマ人やカレン人に送った。米国の「自由アジア放送」は、毎日1時間のビルマ語番組で『手紙』を流しはじめた。英国のBBCが『手紙』の一部を放送する計画との知らせも入った。タイの英字紙、タイ語週刊誌からの転載申し入れもつづいた』、「スーチー氏の連載エッセイ『ビルマからの手紙』については、初めて知ったが、毎日新聞としては大ヒットだったろう。
・『日本政府は軍政の「共犯者」  ところが、『ビルマからの手紙』に対する日本政府の反応は驚くべきものだった。池田行彦外相は「スーチーさんは外国ばかりでなく自国民にももっと直接話しかけたらどうか」と、彼女の国の現実を無視した、民主主義国の外相としての見識を疑わせるような発言をした。この拙文の冒頭にあげた「日本政府は今度こそ民主化支援を惜しむな」ですでにあきらかにしたように、外務省は「日本・ミャンマー関係がこじれる。ひいては日中関係にも悪影響を及ぼす」と、再三にわたって毎日新聞に連載の中止を要請してきた。木戸湊編集局長は「『毎日』は民主主義を大切にする新聞である」と言って、彼らの要求を突っぱねた。駐日中国大使館員もパーティーなどで木戸と顔を合わせると、『手紙』に難癖をつけてきたという。ミャンマー大使館はザ・デイリー・マイニチに例年出していた広告の引き下げを通告してきた。軍事政権はしばらくして、「アウンサンスーチーは米国のCIAと日本の毎日新聞から資金提供をうけている」と発表した。 日本政府のミャンマーとの関係とは、軍事政権とのものでしかなく、国民は視野に入っていなかった。外務省は、民主主義の否定という点では軍政と「共犯者」といっても過言ではなかった。そしてこの体質は、現在にいたるまで基本的に変わらなかった。 軍政が国際社会からどのような批判を浴びる仕打ちを自国民に繰り返そうと、日本政府はつねに民主化運動を弾圧する側に寄りそいつづけた。1988年の民主化運動を今回のクーデター後とおなじように市民への無差別銃撃によって血の海に沈めたあと、90年の総選挙の結果を尊重する公約しながら、ふたを開けてみるとNLDの圧勝という結果になると、公約を反故にして権力の座に居座りつづけた非合法政権に対して、である。そして、2020年11月の総選挙でまたNLDが圧勝すると、国軍はクーデターで国民の圧倒的支持を得た合法政権を葬ろうとした。クーデターに反対する「市民不服従運動」が全国的な高まりを見せると、国軍はなりふり構わず子どもたちにまで発砲をつづける。 ミャンマーの悲劇に一刻も早く終止符を打たねばならないとする国際世論をうけて、米国、EUなどの政府は国軍への制裁措置をつぎつぎに打ち出している。日本政府は同盟国米国の顔色をうかがいつつ、国軍とのしがらみを断ち切れないまま、「われわれは民主化をもとめるミャンマー国民の側に立つ」との明確な意思を打ち出せず右往左往するだけである。 「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」とは、マルクスの有名な言葉である。ミャンマーの国軍は、自国民を悲劇に陥れる蛮行を繰り返そうとして、「王様は裸である」と叫ぶ圧倒的多数の国民の声に耳をふさぐ喜劇の主人公を演じている。王様の親友であることで「民主主義国」という自らの看板を汚す悲喜劇を演じてきた日本政府は、いつまで国際社会の物笑いとなるような役回りをつづければ気がすむのだろうか。 *この記事は、日刊ベリタからの転載です』、「池田行彦外相」や「外務省」が毎日新聞に圧力をかけるとはとんでもないことだ。「日本政府のミャンマーとの関係とは、軍事政権とのものでしかなく、国民は視野に入っていなかった。外務省は、民主主義の否定という点では軍政と「共犯者」といっても過言ではなかった。そしてこの体質は、現在にいたるまで基本的に変わらなかった」、情けなく、国際的にも恥ずかしいことだ。

次に、4月12日付けYahooニュースが掲載した弁護士で国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子氏による「市民を虐殺するミャンマー国軍。日本政府・企業は軍と国民、どちらに立つのか?」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/itokazuko/20210412-00232215/
・『エスカレートする国軍(ミャンマーのクーデター後、国軍の暴力がエスカレートしています。 国軍の虐殺で、すでに子どもや若者を含む700人以上が犠牲になっていると報じられています。 国軍はこれまで少数民族であるロヒンギャやカチンにも残虐行為の限りを尽くしてきましたが、今や抵抗するすべての者を標的にしています。 10日にはバゴーで、軍が80人を超える住民を虐殺したと報じられています。 (ミャンマーメディアの「ミャンマー・ナウ」は10日、中部の古都バゴーで9日に治安部隊がデモ隊を攻撃し、市民82人が死亡したと報じた。治安部隊は機関銃や迫撃砲など戦闘用の武器を使用したという。現地では夜間の電力供給が遮断された。多数が行方不明との情報もある。死者数がさらに膨らむ恐れもある。日経)  そもそも軍のクーデターは合法性が認められず、権力行使はいかなる正当性もありません。 そして、あろうことか市民に対し、機関銃や迫撃砲など戦闘用の武器を使用するなど、「治安維持」によって正当化される範疇ではありません。 民間人に対する軍の攻撃は、国内の事態であっても「戦争犯罪」に該当するのであり、国軍の行為は国際法上いかなる観点からも擁護できるものではありません。 軍は、抗議活動を行う市民らを念頭に「木を育てるためには、殺虫剤をまいてでも雑草を根絶やしにしなければならない」と述べたとされ、さらに強権的な弾圧で人々を犠牲にする可能性が高いと言えるでしょう。事態は甚大です。 なぜそれでも戦うのか。 こうしたなかでも、驚くべきことに市民は屈することなく、抗議行動を続けています。殺されるかもしれないのに、なぜ、巨大な敵に挑むのか。 2016年の「民主化」まで、ミャンマーは軍事独裁政権下で、人々は自由のない暗黒の時代を耐え忍んでいました。ようやく民主化と自由を手に入れたいま、絶対に暗黒時代に後戻りしないという固い決意があるのです。特に、Z世代と言われる若者が強い意志で立ち上がっています。 しかし、象とアリのようなミャンマーの市民の戦いで市民が勝利するには、国際的な支援が必要です』、「9日に治安部隊がデモ隊を攻撃し、市民82人が死亡したと報じた。治安部隊は機関銃や迫撃砲など戦闘用の武器を使用したという」、国民に「戦闘用の武器を使用」、国軍が国民に対し残虐行為をするとは信じ難い。市民の側は「ようやく民主化と自由を手に入れたいま、絶対に暗黒時代に後戻りしないという固い決意があるのです。特に、Z世代と言われる若者が強い意志で立ち上がっています」、よくぞやるものだと頭が下がる。
・『曖昧 問われ、失望される日本  特に、ミャンマーに影響力の強い日本の行動は問われています。 「日本政府は国軍と国民どちらの立場に立つのか?」 4月2日に議員会館で開催された院内集会で、在日ミャンマー人の若者は日本政府に強く迫りました。 外務省は、クーデター後、以下のような声明を公表して国軍を批判しています。 平和的に行われるデモ活動に対して実弾が用いられることは断じて許されません。日本政府は、ミャンマー国軍が、市民に対する暴力を直ちに停止し、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問を始めとする被拘束者を速やかに解放し、民主的な政体を早期に回復することを改めて強く求めます。 しかし、日本の態度は、「口だけ」と批判されています。具体的には何をしているのか、しようとしているのか。 在日ビルマ人とヒューマンライツ・ナウは3月、連名で、日本政府に対し公開質問状を出し、4月2日にその回答が示されました。 しかし、その内容は極めてあいまいなもので、在日ミャンマー人を絶望させるものでした。 例えば、 質問4.日本政府は2020年総選挙によって国民に選ばれていた国会議員らによって構成される連邦議会代表委員会(CRPH)を、ミャンマー国の正式な国家機関として認めているか。認めないとするならその理由は何か。 回答: 〇我が国としては、ミャンマー国軍に対して、①民間人に対する暴力の即時停止、②拘束された関係者の解放、③民主的な政治体制の早期回復、の3点を強く求めてきている。 〇ミャンマー側とは、様々な主体とやり取りを行い、また、働きかけをしてきているが、その具体的内容については、現地の情勢が緊迫する中で、今後の対応や関係者の安全に影響を与え得るためお答えを差し控えたい。 この点は、質問に対する答えになっていません。ミャンマー側とは、様々な主体とやり取りを行い、また、働きかけをしてきている、などとしていますが、違法なクーデターをしている軍を正式な交渉相手として認めることは一切あってはならないはずです。 アウンサンスーチー氏が率いる与党NLDの議員らは、クーデター後、「連邦議会代表委員会(CRPH)」を結成しました。市民の支持を得て活動しており、正当な政府としての承認を求めています。 日本はクーデターを認めない証として、CRPHを正式な代表と認め、交渉をすべきです。 では、今後具体的に何をするか、についても質問に答えません。 質問10.ミャンマー国内では市民の反中感情が高まっており、不買運動も展開されるなど、国軍が中国に頼れば更なる反発を受ける状況にあるとされる。日本政府が国軍に対して、非武装の市民への実力行使について、経済制裁を含む強く非難するメッセージを送ることで、国軍が中国を頼ることになるとの根拠は何か。国軍との「独自のパイプ」があり、一定の信頼関係があるのであればこそ、日本政府が、国軍の過ちを正し、民主主義の回復に向けた変化を促す強いメッセージを発信するべきではないか。 回答:〇我が国は事案発生当日から、ミャンマー国軍に対して、①民間人に対する暴力の即時停止、➁拘束された関係者の解放及び③民主的な政治体制の早期回復を強く求めてきている。3月28日にも、外務大臣談話においてミャンマーで多数の死傷者が発生し続けている状況を強く非難した。 〇その上で、制裁を含む今後の対応については、事態の推移や関係国の対応を注視し、何が効果的かという観点から検討していく。 すでにクーデターから2か月が経過し、700人も貴重な命が奪われたのに、いまだに「制裁を含む今後の対応については、事態の推移や関係国の対応を注視し、何が効果的かという観点から検討していく」 つまりまだ検討中だというのは怠慢ではないでしょうか?口だけだと言われても仕方がないでしょう。 さらに、あまりに誠意がないのがこの回答です。 質問11.国際協力機構(JICA)が現在実施している対ミャンマー政府開発援助(ODA)事業や、国際協力銀行(JBIC)や海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)がミャンマー関連で現在融資・出資している事業について、国軍の資金調達の支援に繋がっているとの指摘がある。このような指摘に対し、日本政府は、人道目的のものを除く全ての支援・事業をいったん停止した上で、国軍と関連する企業が事業に関与していないか、または、事業の実施が国軍に経済的利益をもたらしていないかという点について事実調査を実施しているか。実施しているとすればその調査結果を公表するか。実施・公表しないとすればその理由は何か。 回答:〇日本政府は、事業の円滑な実施のため、必要に応じ、各関係機関等と連携しつつ、御指摘の点について適切に確認をしている。 「適切に確認をしている」とはいったい何を意味するのでしょうか? 国軍の資金源となるプロジェクトを継続することは、人権弾圧や虐殺を助長するものです。国軍や関連企業に関わるODA事業はすべて凍結するべきであり、漫然と資金供与を続けることは、共犯になることにほかなりません。 ところが、このように重要なことに対し、イエスともノーとも答えない、これではミャンマーの人たちが愕然とするのも当然です』、「国軍の資金源となるプロジェクトを継続することは、人権弾圧や虐殺を助長するものです。国軍や関連企業に関わるODA事業はすべて凍結するべき」、その通りだ。
● 日本政府がいますべきこと  在日ミャンマー人の若者は、「国民が毎日殺され、放火されている。どうかミャンマー国民を助けてほしい」と切実に訴えました。 違法なクーデターに基づき権限行使する軍の行動はそもそも合法性がないうえ、住民虐殺という戦争犯罪に該当する行為を行っている軍の行為が明らかにレッドラインを超えていることは明らかです。CRPHが国軍を「テロ団体」とみなすことを国際社会に訴えており、これはうなづけます。こうしたなか、日本は「軍とのパイプ」を理由に軍と話し合って解決する宥和路線を取るべきではありません。 日本政府には、 1 CRPHを正式なミャンマーの代表と認め、軍による政権掌握を一切承認しないこと、2 軍に利益をもたらす経済援助を一切やめること  がいまこそ求められています。さらに、3 欧米諸国とともに、ミャンマー国軍関係者や国軍系企業(米国の制裁対象はミャンマー・エコノミック・ホールディングス・リミテッド(MEHL)と、ミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)など)に対し、ターゲット制裁を発動したり、軍の資金源となっている主要な産品の取引を制限するなどの措置を真剣に検討すべきでしょう』、同感である。
● 企業も軍系企業との取引を断つべき  政府だけではありません。ミャンマーに進出し、ミャンマー国軍系企業と深い取引関係にある日本の著名企業が存在します。クーデター前から国軍がカチン、ロヒンギャなどの少数民族への人権侵害を尽くしていたため、その軍とつながりの深い日本企業は国際的にも問題視されてきました。 しかし、いまや軍の暴力が可視化され、犠牲が増え続けるなか、これ以上取引関係を続けることは人権侵害に資金提供しているようなものです。血塗られたビジネスをこれ以上続け、軍の資金源となり続けるかが問われます。 ヒューマンライツ・ナウは4月5日付で調査報告書を公表、特に深刻な影響のあるミャンマーでの事業とこれに関連している日本企業を公表しました。 関連している企業は、東芝、小松製作所、キリンホールディングス、TASAKI、KDDI、住友商事、Yコンプレックス事業(東京建物 、 オークラ、みずほ銀行 、三井住友銀行、 JOIN 、フジタ) です。 これら企業も、を貫くのでなく、説明責任を果たし、軍に資金を提供し、軍を利するような事業は一切手を引くべきです』、「キリン」が態度表明したが、他は「沈黙」を続けており、態度を明確化すべきだ。
● 市民を応援するために  ミャンマーで起きていること、それは日本と無縁ではありません。もし、日本が欧米その他、ミャンマーの市民を応援する側に加わり共同歩調を取れば、クーデターを失敗に終わらせることができるかもしれません。 日本政府や日本企業の行動次第で事態は変わり得ます。 表面だけ軍を非難しても何ら行動しなければ、それは、命懸けで戦うミャンマー市民を見殺しにすることにほかなりません。 政府と企業には、言葉だけでない明確な態度、クーデターに抵抗する市民の側に立つ覚悟と明確な行動が求められます。 私たちも心を痛めてニュースを見守るだけでなく、政府と企業に責任ある行動をとるよう声を上げることができます。ミャンマーの人たちは私たちのそうした行動を切望し、注視しています。(了)』、同感である。

第三に、4月13日付けNewsweek日本版「ミャンマー市民が頼るのは、迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/04/post-96059_1.php
・『<国際社会に幻滅した市民らが一縷の望みを託す「少数民族連合軍vs国軍」の構図。当事者たちが語るその可能性> 国軍による弾圧が激しさを増すミャンマー(ビルマ)で抵抗手段を奪われた国民たちは今、少数民族の軍隊と国軍との全面戦争を求め始めている。かつては敵視すらしていた少数民族を救世主扱いするほど期待は高いが、どれくらい現実味がある戦略なのか。ミャンマーのエリート軍家系出身で民主活動家のモンザルニ、少数民族であるカチン民族機構(KNO)ロンドン本部のクントイラヤン事務局長、在日ビルマ・ロヒンギャ協会のゾーミントゥット副代表の3人に、本誌・前川祐補が聞いた。 Q:少数民族軍連合vs国軍という対立構図が浮上した経緯を教えてほしい。 モンザルニ:デモを行っていた市民らは当初、諸外国からの外圧を期待していた。軍事的圧力でなくとも、国軍が弾圧から手を引くような効果的な懲罰を求めていた。だが(アメリカなどが部分的に制裁を発動したものの)ミャンマー国民を満足させるような動きは起きていない。国軍への制裁を決議できなかった国連安全保障理事会も含めて国民は外圧に幻滅し、よりどころを少数民族の軍隊にシフトさせた。国民の中には少数民族軍を救世主と呼ぶ者もいる。 クントイラヤン:われわれカチン族は都市部でのデモ弾圧とは別に国軍から攻撃を受け、彼らを返り討ちにした「実績」もあった。 Q:少数民族軍の連合はどのように形成されるのか。 モンザルニ:1つは、「統一政府」の樹立を目指す民主派議員らで構成する連邦議会代表委員会(CRPH)が、少数民族の軍隊を「連邦軍」として取りまとめる方法だ。だが、少数民族側はCRPHの中心にアウンサンスーチーや彼女が率いる国民民主連盟(NLD)を据えることに対して非常に否定的だ。彼らはクーデターを防ぐこともできず、その後の対応でも失敗したからだ。CRPHは国民の支持を得ているが、将来的な政府組織においてスーチーとNLDの影響力をどれだけ排除できるかがカギになる。 クントイラヤン:少数民族の間では、CRPH憲章は現在の憲法から国軍の議会枠(国会議員定数の4分の1は軍人)を定めた条項を取り除いただけ(つまりNLDの影響力が色濃く残る)との批判が多い。私たちはこれまで少数民族に差別的だった「ビルマ人愛国主義者」たちへの警戒を解いておらず、NLDに対する不信感も根強い』、主要な「少数民族」「代表者」の見解とは興味深い。「私たちはこれまで少数民族に差別的だった「ビルマ人愛国主義者」たちへの警戒を解いておらず、NLDに対する不信感も根強い」、確かにこれまでの経緯も無視できないだろう。
・『Q:統一政府の将来像は時間のかかりそうな議論だ。CRPHと少数民族の交渉がまとまらなければ全面戦争のシナリオは消える? モンザルニ:そうでもない。既にCRPHを抜きにした少数民族による「連合軍」構想が持ち上がっている。実際、シャン州軍の創設者であるヨートスックが、ワ州連合軍などと共に独自の連合軍の立ち上げを呼び掛けている。 クントイラヤン:CRPHが少数民族の要求を断ったところで軍事的には空っぽの政府組織が生まれるだけだ。連邦軍は構想段階だが、カチン族だけでなくカレン族の居住地域を含めて局地的には既に戦いが始まっている。 ゾーミントゥット:国民は、これまでさげすんできたアラカン・ロヒンギャ救世軍ですら歓迎している。CRPHがどう判断するかは分からないが、何らかの形で内戦が始まるのは不可避だと思う。 Q:「連邦軍」であれ「連合軍」であれ、国軍と対峙する軍事力はあるのか? モンザルニ: 少数民族の武装勢力は最大で14ほどが参加し得るが、それでも「通常の戦闘」を想定するなら国軍を打ち破ることは難しいだろう。兵力の差は数字以上に大きい。 だが少数民族軍の戦略はいわゆるpositional war(陣地戦)ではなく都市型ゲリラ戦だ。例えばヤンゴンには軍事訓練を受けた「見た目は普通の人」が数千人もいるとされる。彼らは特定の日時に集まり、標的とする軍事施設に攻撃を加える準備ができている。連合軍の戦いは内戦と言うよりは革命抗争だ。革命軍はたいてい武器に乏しく兵士の数も少ない。キューバ革命の時、フィデル・カストロはわずか82人の同志を率いて革命抗争を始めた。数の比較で戦闘を考えると展望を見誤る。 クントイラヤン:ミャンマーの内戦にアメリカが軍隊を派遣することはないだろうが、資金提供やロジスティクスなどの側面支援は交渉可能なはずだ。それができれば、カチンやカレンの軍隊は地上戦で国軍をしのぐことができる。「統一政府」の議論がまとまらないにせよ、国軍による虐殺を止めるためにCRPHの国連大使に選ばれたササは早急に欧米諸国へ支援要請をするべきだ』、「少数民族軍の戦略はいわゆるpositional war(陣地戦)ではなく都市型ゲリラ戦だ。例えばヤンゴンには軍事訓練を受けた「見た目は普通の人」が数千人もいるとされる」、それでも「キューバ革命」を引き合いに出すのは無理がある。「「統一政府」の議論」がまとまってほしいものだ。
・『Q:少数民族はこれまで差別や迫害を受けてきた。少数民族の軍隊に期待する国民は今だけ軍事力にすがり、後で裏切るという懸念はないのか? ゾーミントゥット:今回のクーデターに対して抵抗を続ける中心はZ世代と呼ばれる若者世代だ。彼らは1988年のクーデターを戦った当時の若者世代とは違い、教育水準も高く多様性に対して寛容だ。実際、クーデターが勃発してからこんなことがあった。ある商業系と医科系の大学の学生自治会が、過去のロヒンギャ弾圧に対して公に謝罪声明を発表したのだ。虐殺を知りながら声を上げなかったことへの謝罪だ。自らも軍の弾圧の犠牲者となって初めてロヒンギャの置かれた状況を知ったからなのかどうか経緯は分からないが、彼らの謝罪は誠実なものと受け止めている。 (編集部注:CRPHで広報担当も務めるササはCRPHの国家構想でロヒンギャを国民として認めると4月9日の記者会見で断言した) クントイラヤン:同じ思いだ。繰り返すが、われわれ少数民族はこの状況下でも愛国主義的ビルマ人への警戒心は強い。それでもZ世代への期待は大きい。弾圧を受け行き場を失った若者世代は今、少数民族軍を支持するだけでなく自ら参加しようとしている。実際、カチン軍は彼らに対する軍事訓練を行っており、(カチン)軍幹部の話によれば訓練し切れないほどの若者たちが集まっている。 Q:周辺国は内戦に対してどう反応するだろうか? モンザルニ:中国、インド、タイがその中心だが、彼らは基本的にミャンマー国軍を支持しているので懸念するだろう。だが彼らはあくまで勝ち馬に乗るはずだ。今のところ国軍に賭けているが、「革命抗争」で少数民族軍連合やCRPHが優位な立場になれば、考えを変える可能性はある。周辺国とミャンマー国軍の関係に定まった「方程式」は存在せず、流動的だ。 クントイラヤン:カチン族の主な居住地域は中国と国境を接しているが、今回の騒乱はカチン族が引き起こしたのではない。中国がミャンマーで安定した経済活動を行いたいのなら、彼らが国軍を支援し続けるのは得策でないはずだ。 モンザルニ:CRPHは「連邦軍」構想を進めると同時に、国軍に影響を及ぼす中国に対して立場を表明するべきだ。つまり、CRPHは中国を重要な国家として認めると。その上で、現在の国軍に対する無条件の支援をやめるよう求めるのだ。中国が応じなければ、世論の圧倒的支持を受けるCRPHが実質的な政権を取ったときに、ミャンマーはアメリカや日米豪印らで構成するクアッドに強く傾倒し、中国がこれまでミャンマーで進めていた石油のパイプライン事業をはじめとする経済活動が思うようにいかなくなるという「警告」も忘れずにだ』、「CRPHは中国を重要な国家として認めると。その上で、現在の国軍に対する無条件の支援をやめるよう求めるのだ」、なかなか面白そうな戦略だ。
・『Q:内戦や革命抗争はミャンマーにとって本当に望ましいシナリオなのだろうか? モンザルニ:望ましいシナリオでもなければ、最も前向きな目標でもない。だが今のミャンマーには連邦軍(やその他の連合軍)構想以外にいいシナリオがない。国民はデモに参加しようが家でおとなしくしていようが殺されている。5400万人の国民が人質になっているというのが現実で、「向こう側」を殺すしかないという機運が高まっている。 クントイラヤン:今の状況を変えるためには、国民は国軍に対して強いメッセージを出す必要がある。軍幹部らに対して弾圧から手を引くことを促すような、強固な心理戦を展開する必要がある。少数民族連合軍による「宣戦布告」はその意味で強いメッセージになる。軍幹部が動じずとも、兵士らを可能な限り多く投降させることができれば弾圧を弱める効果は期待できる。 モンザルニ:投降した兵士らを受け入れる新しい軍組織がなければ、ミャンマーはサダム・フセイン亡き後のイラクになり、兵士らは過激派イスラム組織「イスラム国」(IS)のようになってしまう。その意味でも連邦軍は必要だ。 ゾーミントゥット:革命抗争は起きた後の状況が懸念されるが、不可避だと思う。そのなかで望むとすれば、CRPHはできるだけ構成民族に共通認識を持たせてほしい。 Q:非常に複雑な思いだ。 モンザルニ:それは私たちも同じだ。残念ながら、どんな道を選んでもミャンマーを待つのは血まみれの未来だ。 【関連記事】スー・チー拘束でも国際社会がミャンマー政変を「クーデター」と認めたくない理由  ジェノサイドで結ばれる中国とミャンマーの血塗られた同盟』、「投降した兵士らを受け入れる新しい軍組織がなければ、ミャンマーはサダム・フセイン亡き後のイラクになり、兵士らは過激派イスラム組織「イスラム国」(IS)のようになってしまう。その意味でも連邦軍は必要だ」、同感である。

第四に、4月27日付けPRESIDENT Onlineが掲載した東京外国語大学教授の篠田 英朗氏による「日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/45524
・『ミャンマー情勢が緊迫している。欧米諸国が経済制裁などに動く一方、日本政府の動きは鈍い。東京外国語大学の篠田英朗教授は「ミャンマー問題は、さまざまな日本の外交問題を照らし出している。日本の外交スタイルは世界標準からかけ離れている」と指摘する――』、「日本の外交スタイルは世界標準からかけ離れている」とは痛烈な批判だ。
・『強調される「独自のパイプ」とは何なのか  緊迫するミャンマー情勢に直面し、歯切れの悪い日本外交の姿が露呈している。「日本はミャンマーに独自のパイプがある」といった、言語明瞭・意味不明の言説が頻繁に語られている。しかし2月1日のクーデター勃発から3カ月がたち、これらの言説に実行が伴っていないことは明らかになってきている。そもそもこれらの言説は、具体的にはいったい何を意味しているのか。 4月9日に、駐ミャンマーの15大使が共同声明の形で公表したミャンマー軍を非難する共同声明に、日本は加わらなかった。アメリカの同盟国で加わらなかったのは、日本と、エルドアン大統領のトルコやドゥテルテ大統領のフィリピンくらいであった。 「日本は軍の利益になる援助を止めろ」、といった国内外からの声に対して、日本の外交当局が「対応は検討中です」とだけ述べて、あとはじっと無言で耐え続ける、という図式が続いている。茂木外相が「北風がいいか、太陽がいいか」といったナゾナゾのようなことを国会答弁で述べたことは、日本の奇妙な外交スタイルとして国際的にも広く報じられた。 こうしたすっきりしないやり取りの中で頻繁に語られているのが、「パイプ」という謎の概念だ。日本の外交当局が「パイプ」なるものに異様なまでのこだわりを見せている。しかしそれが何なのかは、一切語ろうとはしない。 いったい「パイプ」とは何なのか。 ここでは「金」の面から、日本が持つ「パイプ」について考えてみたい』、「何なの」だろう。
・『「援助」と言いつつ実態は「投資」  日本のメディアは、同じ情報源から聞いてきたことをそのまま各社が引用しているかのように、「日本はミャンマーに巨額の援助をしているので影響力がある」、と伝え続けている。残念ながら、そのような報道は海外メディアでは見ることがない。日本の存在は、上述の「北風か太陽か」自問自答のように茶化されたりする文脈で報道されることはあっても、真面目にミャンマー軍に影響力を行使できるパワーとしては扱われない。 実際に、日本がミャンマー軍に影響力を行使しているような様子は全く見られない。それでは、どれだけ日本のメディアが日本において日本語で日本人向けに「日本は影響力がある」と主張してみたところで、海外では全く相手にされていないのは仕方がない。 (図表1 ミャンマー向け有償資金協力例はリンク先参照) なぜなのか。その理由は、援助の中身を見れば、推察できる。日本は毎年1000億円を超える額のODAをミャンマーに投入し続けているが、そのほとんどは円借款である。これはつまり投資である。これは0.01%の40年償還という好待遇であるとはいえ、貸付金である。他の東南アジア諸国のように経済発展が進むと、円借款の金額は返還されてきて、むしろ日本は利息分の利潤すら得ることになる』、「毎年1000億円を超える額のODAをミャンマーに投入し続けている」、こんなにも「投入」しているとは、初めて知った。
・『「アジア最後のフロンティア」の夢  日本はミャンマーを「アジア最後のフロンティア」と見込んで、官民一体になったいわば旧来型の護送船団方式の経済進出を行ってきている。円借款を実施するプロジェクトを日本企業に受注させ、それを梃子にして日本が抱え込んでいる経済特区に集中的に日本企業を進出させる、といった具合である。それがミャンマーに対する戦略的計算だけでなく、他の東南アジア諸国における成功モデルの再現を期待する経済的願望による行動でもあることは当然だろう。 果たしてこの護送船団方式のODAを媒介にした経済進出は成功したのか。実情としては、まだ成果が出ていない。日本が集中的に進出した「ティラワ経済特区」を例に取れば、多数の企業の進出に耐えられるインフラの不足が解決されておらず、電力網の整備などを日本のODAを通じて実施している段階だ。当然ながら、数千億円にのぼる貸付金は、まだ全く返還されてきていない』、「護送船団方式のODAを媒介にした経済進出は成功したのか。実情としては、まだ成果が出ていない」、今回のクーデターも踏まえると、返済は難しくなりそうだ。
・『2013年には4000億円の債務を帳消しに  実は日本ほどではないとはいえ、他の諸国も、2011年の民主化プロセスの開始後、ミャンマーに対する援助額を増加させてはいた。他国と同様に、軍政期には援助額を停滞気味にさせていた日本は、他を圧倒するようなODAの増額を果たすために、それまで累積していたミャンマー向けの貸付金を一気に帳消しにするという作戦に出た。多額の未払金が残ったままでは、新規の援助の大幅増額が困難だったからだ。 そこで2013年に、約2000億円の債権放棄を行った。さらに手続き上の理由から債権放棄ができなかった約2000億円について、同額の融資を一気に行い、それを原資にして即座の名目的な返還を果たさせるという離れ技まで行った。 つまり日本政府は、ミャンマーで焦げ付いていた約4000億円の貸付金を、日本の納税者に負担させる形で一気に帳消しにして、さらなる融資の工面に乗り出した。それもこれも全て、ミャンマーを「アジア最後のフロンティア」と見込んだ経済的願望があればこそであった』、「ミャンマーで焦げ付いていた約4000億円の貸付金を、日本の納税者に負担させる形で一気に帳消しにして、さらなる融資の工面に乗り出した」、初耳だが、「日本政府」も説明責任をきちんと果たすべきだ。
・『軍部を擁護してきたかいはあったのか  その後もODAという名目でミャンマーに貸し付けた資金は回収されていない。むしろ今回の事件で回収が困難になってきたという印象は否めない。そもそも市民を殺戮してまで権力にしがみつくミャンマー軍幹部が、日本から借りたお金をコツコツと返却するために努力するような人物であるようには見えない。借金は返還できなければ、以前のように踏み倒すだけだろう。 国家と国家の間の貸し借りで、返還がなかったからといって、差し押さえなどの措置を取ることはできない。日本ができるのは、市民に銃を向けて殺戮している虐殺者たちに、ただただひたすら返金をお願いする陳情をすることだけだ。それどころか、以前にように、新たな融資でとりあえず名目的に補塡ほてんさせるしか手がないなどといったことになれば、再び日本の納税者を借金地獄に引き込むしか手がなくなるだろう。 現在、ミャンマー軍幹部に標的制裁をかけている欧米諸国に対して、日本では「欧米はミャンマーと付き合いが浅いから簡単にそういうことができる」といった言い方をする方が多い。しかしこれは見方を変えれば、ミャンマー軍が権力を握り続けた民主化プロセスに懐疑的だった欧米諸国に対して、事あるごとにミャンマーを擁護する立場をとり続けてきた日本のリスク管理の甘さが問われている事態だとも言えるわけである。 このような事情を持つ「金」で成立している「パイプ」を、いかに日本人が日本国内で日本語で日本人向けに誇示しようとも、国際的には同じようには認められないのは、致し方のないところもある』、日本のマスコミや野党が外務省の説明を鵜呑みにしているのも、情けない。もっと実態を明らかにすべきだ。
・『在日ミャンマー人が「日本ミャンマー協会」前でデモをする意味  現在、日本にいるミャンマーの人たちを含む人々が、「日本ミャンマー協会」の前でデモを行ったりしている。市民を虐殺している軍を利する「パイプを断て」、と要請している(*1)。 「日本ミャンマー協会」とは何か。同協会の会長である渡邉秀央氏は、ミャンマー軍との間に特に「太いパイプ」を持ち、軍司令官であるミン・アウン・フライン氏とも過去に24回会っているという緊密な関係を続けている。渡邉氏がキーパーソンなのは、日本のODA業界にミャンマー向け巨額円借款の恒常化を実現した人物だからだ(*2)。 元郵政大臣である渡邊氏は、当然ながら日本のエスタブリシュメント層に「太いパイプ」を持ち、日本ミャンマー協会の役員には、政・財・官界の大物がずらっと並ぶ。「最高顧問」の麻生太郎副総理をはじめとする大物政治家のみならず、ODA契約企業リストにも登場する財閥系の企業名が目立つ(*3)。 仮にミャンマー向けの円借款が焦げ付いて日本の納税者が負担を強いられるとしても、契約企業が損失を受けるわけではない。これに対して、ミャンマー軍が市民を虐殺しているからといって実施中のODAまで止めてしまっては、これらの迷惑をかけてはいけないところに多大な迷惑がかかってしまう。日本の外交当局が「対応策を慎重に検討する」のも無理もないということは、こうしたリストを見るだけでも容易に推察できるだろう』、「ODA]が「契約企業」の既得権になってしまい、「ミャンマー」との交渉材料に使えないのも逆立ちした話だ。
・『「選挙は公正だった」となぜ言えないのか  なお在日のミャンマーの方々を含む人々は、日本財団ビルの前でもデモを行ったりする。「ミャンマー国民和解担当日本政府代表」の肩書も持つ笹川陽平氏が、同財団の会長を務めているからだ。笹川氏は、日本政府代表として、日本政府の予算で、昨年11月のミャンマー選挙の監視団を率いた。選挙直後こそ、選挙は公正に行われた、と発言していた。しかしミャンマー軍が「選挙には不正があった」と主張してクーデターを起こしてからは、沈黙を保っている。 デモをしている人々は、「せめて選挙は公正だったので、クーデターは認められないと発言してほしい」と懇願しているのだが、笹川氏は反応していない。言うまでもなく、笹川氏も、ミャンマーに深く関わる日本社会の大物だ』、「笹川氏は、日本政府代表として、日本政府の予算で、昨年11月のミャンマー選挙の監視団を率いた」、のであれば、「クーデターを起こしてからは、沈黙を保っている」というのは卑怯で、責任の放棄だ。
・『「パイプ」の論理にだけ身を委ねていいのか  日本は、ミャンマー軍幹部らと「パイプ」を持つ。ただそれを、外交官が秘密の外交術で特殊技能を発揮して海外で作り出したパイプ、といったふうに勝手にロマン主義的に捉えるとすると、状況を見間違えるかもしれない。「パイプ」は、個々の外務省職員のような存在を超えて、日本国内各所に「金」とともに太く縦横無尽に伸びている。「パイプ」とは、個々の外交官が、個人的意見で論じていい政策論を超えたものなのである。 だが果たして、だからといって「パイプ」の論理にだけ身を委ねていれば、日本は絶対に安泰だろうか。日本の納税者が不当に損をする事態は絶対発生しない、と保証している人物がどこかにいるだろうか。 ミャンマー問題は、さまざまな日本の外交問題を照らし出している。旧来型の護送船団方式のODAの「パイプ」のあり方も、その問題の一つであろう。 (*1)東洋経済ONLINE「沈黙する『日本ミャンマー協会』が抗議浴びる訳」(尾崎孝史、2021年4月22日) (*2)ロイター「特別リポート:急接近する日本とミャンマー、投資加速の舞台裏」(2012年10月5日) (*3)「日本ミャンマー協会 役員名簿」』、いい加減な「パイプの論理」などに惑わされないよう、「ODA]のあり方を原点から見直すべきだ。
タグ:ミャンマー (その4)(繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇、市民を虐殺するミャンマー国軍 日本政府・企業は軍と国民 どちらに立つのか?、ミャンマー市民が頼るのは 迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望、日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠) Newsweek日本版 永井浩 「繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇」 ミャンマー軍に対する厳しい制裁に踏み切れない日本政府は軍政の「共犯者」だ クーデター前でも「スーチー氏」の状態は、事実上の自宅軟禁だったようだ。「日本大使館関係者」の「基本的人権や自由の保障」の認識の浅さには改めて驚かされた。 「日本政府はビルマの民主化の進展に応じて、という条件をつけているというが、私は真の民主化の進展を条件にしてほしい。私一人の釈放だけでは不十分です」、「日本政府」への痛烈な批判だ スーチー氏の連載エッセイ『ビルマからの手紙』については、初めて知ったが、毎日新聞としては大ヒットだったろう 「池田行彦外相」や「外務省」が毎日新聞に圧力をかけるとはとんでもないことだ。 外務省は、民主主義の否定という点では軍政と「共犯者」といっても過言ではなかった。そしてこの体質は、現在にいたるまで基本的に変わらなかった」、情けなく、国際的にも恥ずかしいことだ。 yahooニュース 伊藤和子 「市民を虐殺するミャンマー国軍。日本政府・企業は軍と国民、どちらに立つのか?」 「9日に治安部隊がデモ隊を攻撃し、市民82人が死亡したと報じた。治安部隊は機関銃や迫撃砲など戦闘用の武器を使用したという」、国民に「戦闘用の武器を使用」、国軍が国民に対し残虐行為をするとは信じ難い。 市民の側は「ようやく民主化と自由を手に入れたいま、絶対に暗黒時代に後戻りしないという固い決意があるのです。特に、Z世代と言われる若者が強い意志で立ち上がっています」、よくぞやるものだと頭が下がる 「国軍の資金源となるプロジェクトを継続することは、人権弾圧や虐殺を助長するものです。国軍や関連企業に関わるODA事業はすべて凍結するべき」、その通りだ。 日本政府がいますべきこと 欧米諸国とともに、ミャンマー国軍関係者や国軍系企業 に対し、ターゲット制裁を発動したり、軍の資金源となっている主要な産品の取引を制限するなどの措置を真剣に検討すべき 「キリン」が態度表明したが、他は「沈黙」を続けており、態度を明確化すべきだ。 私たちも心を痛めてニュースを見守るだけでなく、政府と企業に責任ある行動をとるよう声を上げることができます 「ミャンマー市民が頼るのは、迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望」 国際社会に幻滅した市民らが一縷の望みを託す「少数民族連合軍vs国軍」の構図。当事者たちが語るその可能性 主要な「少数民族」「代表者」の見解とは興味深い 「私たちはこれまで少数民族に差別的だった「ビルマ人愛国主義者」たちへの警戒を解いておらず、NLDに対する不信感も根強い」、確かにこれまでの経緯も無視できないだろう 少数民族軍の戦略はいわゆるpositional war(陣地戦)ではなく都市型ゲリラ戦だ。例えばヤンゴンには軍事訓練を受けた「見た目は普通の人」が数千人もいるとされる」、それでも「キューバ革命」を引き合いに出すのは無理がある。「「統一政府」の議論」がまとまってほしいものだ 「CRPHは中国を重要な国家として認めると。その上で、現在の国軍に対する無条件の支援をやめるよう求めるのだ」、なかなか面白そうな戦略だ。 「投降した兵士らを受け入れる新しい軍組織がなければ、ミャンマーはサダム・フセイン亡き後のイラクになり、兵士らは過激派イスラム組織「イスラム国」(IS)のようになってしまう。その意味でも連邦軍は必要だ」、同感である PRESIDENT ONLINE 篠田 英朗 「日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠」 「日本の外交スタイルは世界標準からかけ離れている」とは痛烈な批判だ 「何なの」だろう。 「毎年1000億円を超える額のODAをミャンマーに投入し続けている」、こんなにも「投入」しているとは、初めて知った。 「護送船団方式のODAを媒介にした経済進出は成功したのか。実情としては、まだ成果が出ていない」、今回のクーデターも踏まえると、返済は難しくなりそうだ。 「ミャンマーで焦げ付いていた約4000億円の貸付金を、日本の納税者に負担させる形で一気に帳消しにして、さらなる融資の工面に乗り出した」、初耳だが、「日本政府」も説明責任をきちんと果たすべきだ 日本のマスコミや野党が外務省の説明を鵜呑みにしているのも、情けない。もっと実態を明らかにすべきだ。 「ODA]が「契約企業」の既得権になってしまい、「ミャンマー」との交渉材料に使えないのも逆立ちした話だ 「笹川氏は、日本政府代表として、日本政府の予算で、昨年11月のミャンマー選挙の監視団を率いた」、のであれば、「クーデターを起こしてからは、沈黙を保っている」というのは卑怯で、責任の放棄だ。 いい加減な「パイプの論理」などに惑わされないよう、「ODA]のあり方を原点から見直すべきだ。
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バイデンと日米関係(その1)(周到準備の日米首脳会談で菅政権が背負う「重い宿題」、日米首脳会談に強烈な不満の中国こそ 戦前日本の失敗を学ぶ時、「中国激怒」の日米共同声明、それでも台湾を守る理由とは) [外交]

今日は、バイデンと日米関係(その1)(周到準備の日米首脳会談で菅政権が背負う「重い宿題」、日米首脳会談に強烈な不満の中国こそ 戦前日本の失敗を学ぶ時、「中国激怒」の日米共同声明、それでも台湾を守る理由とは)を取上げよう。

先ずは、4月19日付け日経ビジネスオンラインが掲載した明星大学経営学部教授(元経済産業省通商政策局米州課長)の細川昌彦氏による「周到準備の日米首脳会談で菅政権が背負う「重い宿題」」を紹介しよう。
・『菅義偉首相とバイデン米大統領による初の対面での日米首脳会談は“成功”で終わった。両首脳ともに外交当局同士による事前のよく練られたシナリオ通りに、地味ながら堅実に対応したようだ。まさに「周到準備の首脳会談」だった。予測可能性のないトランプ前大統領の際の「出たとこ勝負の首脳会談」とは予想通り様変わりだ。 日米ともに「トップダウン」から「ボトムアップ」に変わった。事前に見通した前稿「日米首脳会談へ、『人権』対『グリーン』の駆け引き」で首脳会談の全体像を指摘したが、大方は予想通りの展開だった。 ポイントはこうだ。(1)米国は対中国で日本に腰を入れた対応を求めて、日米首脳会談を対中戦略の重要な場と位置付けている。(2)3月の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)はその前哨戦だった。(3)「台湾」と「人権」が菅政権の対中姿勢を問う“踏み絵”としてメインテーマとなる。 そしてさらに付け加えたのが、「米国から難題が投げかけられたとき、日本は様々な分野で日米の協力案件を用意して、そこだけに焦点が当たるのを避けてきた。それがこれまでの対米外交の常とう手段だ」ということだ。 今回の場合、日本が二の足を踏む「台湾」と「人権」にばかり焦点が当たるのを避けて、日本側で周到に用意されたのが、「気候パートナーシップ」と「競争力・強靭(きょうじん)性パートナーシップ」だ。米国側も受け入れそうなものを仕立てたものだ。その詳細は省くが、この書きぶりを見ると、その原案、たたき台は日本側が詳細に書き込んで用意したことが私の経験から一見して分かる。 日本のメディアの事前報道でも、これらが報じられていたが、必ずしも米国の関心のプライオリティと合致しているわけではない。日本では、バイデン政権が気候変動問題を重視していることから、あたかもこれが日米のメインテーマの一つであるかのように報道されるが、そうではない。米国の報道を見ても米国の世論の関心は気候変動には向けられていないことがわかる』、「「周到準備の首脳会談」だった。予測可能性のないトランプ前大統領の際の「出たとこ勝負の首脳会談」とは予想通り様変わりだ。 日米ともに「トップダウン」から「ボトムアップ」に変わった」、的確な表現だ。
・『本丸は「台湾」と「人権」  あくまでも今のバイデン政権にとっての「本丸」は台湾と人権であった。米国にとって今回の首脳会談は「中国対抗のための首脳会談」だ。その対中政策の中核であるにもかかわらず、日本側の腰が引けているからこそ、よく言えば「すり合わせする」、悪く言えば「追い込む」。そこに今回の首脳会談の目的があった。 3月の2プラス2から周到に仕掛けていくシナリオは、さすがに実務重視のバイデン政権の真骨頂だ。米国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官に任命されたカート・キャンベル氏が仕切ったようだ。 仕上がった共同声明だけを表面的に読んでも、そうした本質は見えてこない。当然のことながら、事前準備で最後まで共同声明の文言づくりで難航したのが、この2つの本丸案件だった。 台湾問題では、米国は2プラス2の共同文書で日本に飲ませた「台湾海峡の平和と安定の重要性」という文言をさらに一歩踏み込んで強めようとした。他方、日本は中国の反発を恐れて2プラス2どまりの表現で踏みとどまろうとした。そうした綱引きの妥協の産物が最終の文言になった。 人権もそうだ。2プラス2の共同文書の「深刻な懸念の共有」の文言もさらに踏み込むことを米国は要求したが、日本は抵抗し切ったようだ。欧米諸国が制裁に踏み出しているのとは一線を画して、伝統的な“対話路線”にこだわった。 今回の共同声明の文言では米国は妥協したが、これで終わりではない。忘れてはならないのが人権重視の欧州の存在だ。6月の英国での主要7カ国首脳会議(G7サミット)において日本は孤立しかねない』、外交交渉の経験が長い「細川」氏ならではの深い分析だ。確かに「6月の・・・G7サミット)において日本は孤立しかねない」、ことも要注目だ。
・『重い宿題にどう対応するか  とりあえず共同声明の文言は合意したが、問題はこれからだ。ある意味、首脳会談はキックオフだ。菅首相はこの2つの問題で大きな宿題を背負って日本に帰国した。 台湾問題では日本が日米での抑止力強化のために主体的に何ができるかが問われる。具体論として、中距離ミサイルの配備問題を巡る議論は避けて通れないだろう。さらにもっと大事なのは、台湾有事において後方支援だけにとどまらず、限定的な集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」に当たるのかどうかといった議論も不可避の重いテーマだ。 人権では共同声明は「深刻な懸念」で済ませても、何らかの“行動”あるいは“行動の用意”も必要になってこよう。国内では親中派の反対で国会決議もできない状況だ。国会決議は日米首脳会談で米国に押し込まれてから行う予定のようだ。 制裁の根拠となる法律がないことを理由にしているが、欧米からは言い逃れにすぎないと見られている。発動するかどうかは別にして、せめて“行動の用意”ぐらいはあるべきではないか。「人権侵害制裁法」の制定を目指した超党派の議員連盟も本気度が問われる』、「制裁の根拠となる法律がないことを理由にしているが、欧米からは言い逃れにすぎないと見られている。発動するかどうかは別にして、せめて“行動の用意”ぐらいはあるべきではないか」、その通りだ。
・『日本企業も他人事では済まされない  さらにもう一つの深刻な問題は企業の行動も問われようとしていることだ。米国は強制労働で作られた製品の排除を目指した通商政策を考えている。欧州も企業に人権問題を厳しくチェックすることを義務付けようとしている。 米欧が共鳴する中で、日本企業も他人事では済まされない。他方でこうした動きに危機感を抱いた中国は反発して、企業に対して不買運動などでけん制している。日本企業にとってまさに「前門の虎、後門の狼(おおかみ)」の状況だ。 中国は早速、「強烈な不満と断固反対を表明する」との談話を出して反発した。台湾問題も香港・新疆ウイグル自治区の人権問題も中国にとって核心的利益としているので、ある意味当然だろう。しかし中国の反発は織り込み済みだ。3月の2プラス2の共同文書に盛り込んだ段階で、中国の反発の瀬踏みはされている。むしろ、今の中国に対しては反発がないような共同声明では意味がない。 今後、中国は日本に対して、硬軟織り交ぜて揺さぶりをかけてくるだろう。中国からは日本は揺さぶりやすい相手と見られていても仕方がない。中国ビジネスを人質にとられた産業界や親中派の政治家への働きかけも強まろう。逆にいくつか見せしめ的にターゲットとされる企業が出てくる可能性さえある。 そうした揺さぶりに腰が定まった対応ができるかどうかだ。ここまで対中姿勢を鮮明にさせられたことがなかっただけに、これから菅政権は正念場を迎えことになる。 追記:前稿の追記でこう指摘した 「日米首脳会談が直前になって1週間延期という異例の事態となった。表向きは「コロナ対応など準備に万全を期するため」と日本政府は説明するが、額面通りに受け取る者はいない。(中略)ワシントンの事情通の間では、ケリー米大統領特使(気候変動問題担当)の外遊日程との関係がささやかれている。米国主催の気候変動問題サミットの根回しに奔走しているケリー特使の訪中説も浮上している」 これも推測通りだった。恐らく共同声明に対する中国の反発が当然予想されるので、ケリー特使の訪中前に共同声明が出ることを避けるように米側でスケジュール調整された結果だろう』、「中国ビジネスを人質にとられた産業界や親中派の政治家への働きかけも強まろう。逆にいくつか見せしめ的にターゲットとされる企業が出てくる可能性さえある」、ただ、「中国」としては「日本」を完全に「米国の側」に追いやらない範囲で、今後圧力をかけてくる懸念がありそうだ。

次に、4月20日付け日経ビジネスオンラインが掲載した元外務省官房参事官でキヤノングローバル戦略研究所 研究主幹の宮家 邦彦氏による「日米首脳会談に強烈な不満の中国こそ、戦前日本の失敗を学ぶ時」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/042000252/
・『バイデン米政権が発足して初の日米首脳会談。事前の推測記事はさまざまだったが、終わってみれば、「まずまず合格点」ではなかろうか。ジョー・バイデン大統領が初めて対面で会う外国首脳として、アジアの同盟国・日本の菅義偉首相を選んだこと自体、今後の米外交の方向性を暗示する重要な動きである。アジアはもちろん、欧州や中東の各国も注目したに違いない。今回の首脳会談は新たな時代の外交の始まりを予感させるものだった。 一方、批判がないわけではない。本邦の一部有力紙には、「日本の受け身外交」「米国に踏み絵を踏まされる」「対中戦略は主体的に」といった論調が散見された。昭和30年代ならいざ知らず、2021年の成熟した日米関係に対し、旧態依然の「対米追随論」を繰り返すのはいかがなものか。これでは「日本は米国の戦略的属国で、対中関係の破壊をもくろんでいる」とする中国外交部のプロパガンダと大差ない。論ずべき問題の本質は別にあると見るべきだ。 一連の行事が終了した後、ワシントンの中国大使館ウェブサイトは次のような報道官声明を掲載した。 ●台湾、香港及び新疆の問題は中国の内政であり、東シナ海及び南シナ海は中国の領土主権と海洋権益に関わる。これらの問題は、中国の根本的利益に関わるものであり、干渉は受け入れられない。我々は、日米首脳による共同声明と関連する表明に強烈な不満と断固たる反対を表明する。 ほぼ同時期に、東京の中国大使館ウェブサイトも次のメッセージを掲載した。 ●日米双方が首脳会談および共同声明において、中国に対し、言われ無き指摘をし、中国の内政に乱暴に干渉し、中国の領土主権を侵犯したことに対し、中国側は強い不満と断固たる反対を表す。 中国側の「不満」と「反対」は、常に「強烈」で「断固」たるものだから、こうした反応自体に驚きはない。むしろ、中国がかかる立場を表明せざるを得ない背景を分析することで、今回、日米共同声明が言及した「中国との率直な対話」や「中国との協働」の可能性を模索できるのではないか。筆者の問題意識はここにある。日米から見た首脳会談の意義に関する論評はほぼ出尽くした感がある。されば、本稿では中国から見た日米共同声明の問題点を書こう』、「中国から見た日米共同声明の問題点を書こう」、とは興味深そうだ。
・『中国を「名指し」批判し、台湾・人権にも言及  今回の日米共同声明は中国を厳しく批判している。改めて該当部分をここに紹介しよう。 ●菅総理とバイデン大統領は、インド太平洋地域及び世界の平和と繁栄に対する中国の行動の影響について意見交換するとともに、経済的なもの及び他の方法による威圧の行使を含む、ルールに基づく国際秩序に合致しない中国の行動について懸念を共有した。 ●日米両国は、東シナ海におけるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対する。 ●日米両国は、南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明するとともに、国際法により律せられ、国連海洋法条約に合致した形で航行及び上空飛行の自由が保証される、自由で開かれた南シナ海における強固な共通の利益を再確認した。 対中批判はこれだけではない。今回の共同声明は、従来言及したことのない「台湾」や中国国内の「人権問題」にも、以下の通り、あえて触れている。 ●日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。(中略)日米両国は、中国との率直な対話の重要性を認識するとともに、直接懸念を伝達していく意図を改めて表明し、共通の利益を有する分野に関し、中国と協働する必要性を認識した。 ●日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する。 当然、誇り高き中国は今回の日米共同声明に怒り心頭だろう。「国際秩序に合致しない中国の行動」「南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張」などと中国が「公然」かつ「名指し」で批判されたからだ。では、中国は今回、不意打ちを食らったのだろうか。そう問われれば、答えは「ノー」だ。こうした対中「名指し」批判を含む表現は、本年3月に東京で開かれた日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)の共同文書にたっぷりと書き込まれていたではないか。 「もしかしたら、バイデン・菅の首脳レベルでは、表現ぶりで中国に配慮するのではないか」。中国側がこうしたいちるの望みを抱いた可能性はあるだろう。ところが、日米首脳会談の結果は予想通り、中国にとって最悪となった。されば、今さら日米に再び秋波を送っても効果は見込めないと踏んだのだろう。これが、中国側が今回「強烈な不満と断固たる反対を表明」した理由だと筆者は考える。少なくとも、当たらずといえども遠からず、だろう』、「日米首脳会談の結果は予想通り、中国にとって最悪となった」ので、「強烈な不満と断固たる反対を表明」せざるを得なくなったようだ。
・『かなり前から練られたとみられる中国側の反応  そもそも、日米2プラス2の共同文書の内容を首脳レベルの共同声明で踏襲しなければ、それ自体が間違ったメッセージになる。中国側も当然、今回の日米共同声明が同様の対中批判を繰り返すことぐらいは事前に覚悟していただろう。案の定、先ほどご紹介した東京の中国大使館ウェブサイトは、次のような表現で中国側の「強烈な不満と断固たる反対」を正当化した。それなりに練られた文章であり、かなり前から準備したものだろうと推察する。 ●日米は冷戦思考にしがみつき、排他的な小さいサークルを作り上げ、政治的対立を煽(あお)り立てて完全に時代の流れに逆走する動きをしており、地域諸国が平和を求め、発展を図り、協力を推し進める期待に背き、その企みは必ず成り立たない。 ●中国は関連国家が陳腐で、時代遅れのゼロサムゲーム思考を放棄し、中国への言われ無き指摘、そして中国への内政干渉を止め、実際の行動で二国関係および地域の平和と安定の大局を維持することを求める。 ●最近、日本側は中国関連の問題において、たびたび消極的な行動をとり、双方の政治的相互信頼を深刻に損ない、双方が関係を発展させる努力を妨害している。日本側が中日間の四つの政治文書の原則および関連の約束を厳守し、中日関係がごたつかず、滞らず、後退せず、大国対抗に巻き込まれないことを確保するよう忠告する。 申し訳ないが、日米には「冷戦思考」などない。目指すは「排他的な小サークル」どころか、開かれた大グループである。また、香港やウイグルへの関心は、内政干渉というより、人道的要素が大きい。さらに、日中関係が最近悪化したのは、日米の「妨害」が理由ではなく、むしろ従来とは異なるレベルの中国の対外強硬姿勢が原因である。これらすべてに共通するのは、力を使うこともいとわない中国の「現状変更志向」だ』、「日米には「冷戦思考」などない。目指すは「排他的な小サークル」どころか、開かれた大グループである。また、香港やウイグルへの関心は、内政干渉というより、人道的要素が大きい」、「さらに、日中関係が最近悪化したのは、日米の「妨害」が理由ではなく、むしろ従来とは異なるレベルの中国の対外強硬姿勢が原因である。これらすべてに共通するのは、力を使うこともいとわない中国の「現状変更志向」だ」、スッキリする反論だ。
・『中国はどこまで報復するか  さて、日米首脳会談が終わった今、日本側、特に経済界が懸念するのは、中国側が報復する可能性だろう。日米首脳会談が開催される前、4月16日の中国外交部定例記者会見で同部報道官は次の通り述べているからだ。 ●現在の米中関係、日中関係は、いずれも重要な分岐点にあり、国際社会は(菅総理による)今次の訪問において対外的に何を発信するかについて高い関心を持っている。 ●日米は、中国側の懸念と要求を真剣に受け止めるべきであり、中国の内政に干渉したり、中国の利益を損なうような言動をとったり、中国に狙いを定めた小グループをつくってはならない。中国側は状況に応じて、必要な対応をとるだろう。 さらに、4月17日付の環球時報ネット版社説は、「日米同盟はアジア太平洋の平和を危うくする枢軸国になりつつある」との見出しで次の通り主張した。日本が台湾問題に介入した場合の報復までほのめかしているようにみえる。関連部分をここに紹介しよう。 ●中国の強大な発展のエネルギーに対する羨望と嫉妬こそが、対中問題における日米両国の最大の「共通の価値」である。 ●日本は近代以降、中国に何度も危害を加えてきたことを忘れてしまったのだろうか。 ●日米同盟は、かつてのドイツ、イタリア、日本の枢軸国と同様に、アジア太平洋の平和に致命的な破壊をもたらす枢軸国に変わっていく可能性が高い。 ●数年前、日本は一度中国に向き合って距離を縮め、日中関係を緩やかに正しい軌道に戻そうとしていた。現在、日本は再び路線を変え、米国の中国抑止戦略に加わり、日中関係改善の機運を断ち切った。 ●我々は日本に台湾問題から少し離れるようにと忠告する。他(の問題)では、外交手腕を弄んだり、策を用いて連合や分裂を図ったりも可能だが、もし台湾問題に関われば、最後は自ら身を滅ぼすだろう。その関与の度合いが深いほど、支払うべき代償も大きくなる。 日米同盟を日独伊三国同盟と比較するこの歴史観は滑稽ですらある。それを言うなら、今の中国を1930年代の日本と比較すべきだろう。「東アジアの新興国」が「シビリアンコントロール」を失い、「不健全なナショナリズム」の下で、「力による現状変更」を目指し、西太平洋で「海洋権益を拡大」し、「国際社会に挑戦」している。中国の外交部も戦前の日本の外務省に似ているのだろうか。「歴史は繰り返さないが、時に韻を踏む」(注)という言葉を思い出す。 普通なら、外交部報道官レベルの発言や環球時報の社説に一喜一憂する必要はないのだが、今回はもう少し分析が必要だ。中国指導者のDNAには古(いにしえ)の大帝国の感覚が刷り込まれているのか、彼らの外交には「大国」と「小国」を厳然と区別する傾向がある。「大国」には一定の配慮をするが、「小国」となれば、明確に差別し、見下し、公然と脅しをかけるのだ。その典型例が、オーストラリアに対して中国が最近発動した「言われ無き」制裁だろう。 中国はオーストラリアに対し貿易制限措置を相次いで発動した。豪州産の牛肉、大麦、石炭、ロブスター、ワイン、木材を対象とした輸入制限をさまざまな形態で導入している。理由は、豪州首相が昨年4月、新型コロナウイルスの発生源や感染拡大に関する中国国内での調査を国際社会に訴え始めたためだ、といわれる。これ以外にも、中国がこの種の報復措置を他の「小国」に発動した例は枚挙に暇(いとま)がない。 それでは、日本に対する報復はあるのだろうか。その可能性がゼロとは言えない。実際に、2012年には中国で日本製品不買運動が起きている。ただし、その実態は中国民衆の対日不満というより、尖閣問題をめぐって中国政府が日本政府に対してかけた圧力であった。されば今後、中国政府がその種の圧力を再び仕掛けてくる可能性は否定できない。当然、日本政府もそうした懸念は織り込み済みと思われる。 されば、中国側の言う「必要な対応」「支払うべき代償」とは何を意味するのか。仮に日本企業に対し制裁を発動すれば、短期的には脅しとしてある程度有効だとしても、中長期的には逆効果だろう。2021年の今、日本企業に報復措置をとれば、日本企業による中国離れの連鎖が始まるだろう。日米が現在進めている「中国デカップリング」「サプライチェーン見直し」「ハイテク製品の国産化」という流れを中国が自ら促進することにもなりかねない。 それが中国にとって真の国益なのか。そんなことをすれば、日本企業の中国デカップリングが加速し、日本からの対中投資や技術移転も縮小し、中国経済自体が孤立して、最悪の場合、縮小再生産に陥る可能性が高まるだけだ。それが中国にとっての長期的利益とは到底思えない。いくら巨大な人口を抱える大市場とはいえ、現在の中国経済が、投資や技術開発などの面で自立可能となるにはまだ相当の時間がかかるだろう。 中国側の発言の揚げ足を取るならば、「重要な分岐点」にあり「対外的に何を発信するかについて国際社会が高い関心を持っている」のは日米ではなく、むしろ中国である。今後数カ月のうちに中国側が日米に対し取る措置次第では、今後数十年間のインド太平洋地域の安定と繁栄に重大な影響が及ぶだろう。中国の賢明な指導者たちにはぜひとも、1930年代の日本の失敗とその教訓を正確に学んでいただきたいものである』、「日米同盟を日独伊三国同盟と比較するこの歴史観は滑稽ですらある。それを言うなら、今の中国を1930年代の日本と比較すべきだろう。「東アジアの新興国」が「シビリアンコントロール」を失い、「不健全なナショナリズム」の下で、「力による現状変更」を目指し、西太平洋で「海洋権益を拡大」し、「国際社会に挑戦」している。中国の外交部も戦前の日本の外務省に似ているのだろうか」、「今の中国を1930年代の日本と比較すべき」とは痛烈な批判だ。「仮に日本企業に対し制裁を発動すれば、短期的には脅しとしてある程度有効だとしても、中長期的には逆効果だろう。2021年の今、日本企業に報復措置をとれば、日本企業による中国離れの連鎖が始まるだろう。日米が現在進めている「中国デカップリング」「サプライチェーン見直し」「ハイテク製品の国産化」という流れを中国が自ら促進することにもなりかねない」、同感である。
(注)「歴史は繰り返さないが、時に韻を踏む」:米国作家マーク・トウェインの言葉(Wikiquote)

第三に、4月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した評論家・翻訳家の白川 司氏による「「中国激怒」の日米共同声明、それでも台湾を守る理由とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/269162
・『日米両政府は首脳会談の共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」を明記した。中国の猛反発が必至の台湾問題を盛り込んだ背景には何があったのか』、なんだろう。
・『アメリカのメディアでは注目されなかった首脳会談  日本ではかなり注目されてメディアでも大きく日米首脳会談だが、アメリカでの報道は驚くほど少なかった。それはこの会談がアメリカの内政に与える影響がほとんどなかったからだ。 実際、主要テーマである「自由で開かれたインド太平洋」における日米連携はすでに進んでいる。ほかの課題についても、新型コロナウイルス対策、気候変動対策、サプライチェーンにおける脱中国連携などもすでに進行中であり、ミャンマー制裁についても確認程度で、いずれの課題もすでに合意ができているか方向性が決まっているものばかりである。 また、尖閣諸島に安保条約第5条を適用することもオバマ政権から繰り返し確認されてきた。さらに、「バイデン大統領が東京オリンピックを支持」という報道がされたが、「実現を支持」ではなく、「努力を支持」という文言にとどまっている。日本側はアメリカからはほとんど果実を引き出せなかったというべきだろう。  今回の首脳会談を切実に求めていたのはアメリカ側であり、その意図は日本を米中貿易戦争においてアメリカ側に引き入れることにあった。ただし、そのことをおくびにも出さずに、日本側に妥協しない点がアメリカ外交のしたたかさである』、「首脳会談」が「アメリカのメディアでは注目されなかった」、大いにありそうな話だ。「今回の首脳会談を切実に求めていたのはアメリカ側」にも拘わらず、「日本側に妥協しない点がアメリカ外交のしたたかさである」、その通りだ。
・『日米首脳の共同声明に台湾が盛り込まれた意義  一連の課題の中で、意外な結果だったことが一つだけある。それは、半導体製造や次世代通信技術(6G)開発において日米共同を確かめる流れで、52年ぶりに「台湾」の項目が作られたことだ。 これは、アメリカ側が日本に求めたものと考えるが、日本は「アメリカか中国か」の選択ですでに立場を明確にすべき時期にさしかかっている。だが、日本国内はまだまだ親中派の力が強く、「台湾」を明記して立場を明確にしたのは、「外圧を利用した政策決定」だと言っていいだろう。 アメリカやオーストラリアなどが対中強硬姿勢を続ける中、日本はアメリカに寄り添いながらも中国とも明確に対抗しないというスタンスを取り続けてきており、それは中国などが「右翼的」と見ていた安倍政権でも根本的には変わっていなかった。実現こそしなかったものの、安倍政権は習近平主席を国賓で迎えるつもりであったわけであるし、本気で対抗する気がなかったのは明らかだろう。 「アメリカか中国か」の選択肢は、最終的に台湾を中国の一部だと認めるかどうかにかかっており、「台湾の独立を守る」と明言すれば、それは中国に政治的に対抗すると宣言することと同意である。 ただし、日本側は台湾問題を「両岸問題」と表現しており、中国側の主張する「1つの中国」に対して最低限の配慮は示している。それでも、共同声明に台湾海峡について言及したことは、日本外交の転換点だと見るべきだろう』、「日本側は台湾問題を「両岸問題」と表現」、初めて知った。苦肉の策なのだろうが、「日本側の自己満足」といった印象も拭えない。
・『日本とアメリカの対中姿勢の違い  アメリカの対中強硬姿勢は、2016年に蔡英文氏が台湾総統選に圧勝したとき、トランプ大統領が蔡氏を「台湾のプレジデント(大統領)」と表現して祝辞を送り、電話会談まで実施したことから始まっている。トランプ政権は「一つの中国」をあからさまに否定していないものの、それを無視するような行動を繰り返してきた。言い換えると、トランプ政権はオバマ政権のスタンスを変更して、中国に対抗する姿勢を明確に見せたと言っていいだろう。 だが、台湾は中国にあまりに近く、経済力・軍事力で圧倒的に劣勢に立たされている。また、経済において中国と密接に関係しているだけでなく、台湾内での親中派の力はかなり強い。中国の強い軍事的圧力を受けながらも、あからさまに中国と敵対できない立場にある。 トランプ大統領はこうした台湾の立場を尊重しながらも、2018年に事実上の領事館である米国在台協会の新庁舎を完成、同年にアメリカ政治当局の台湾での会談を可能にする台湾旅行法が成立する一方で、地対空ミサイルなど先端兵器の売却を決めるなど、米台関係を着実に強めてきた。バイデン政権の外交の要であるブリンケン国務長官もその点は評価しており、東アジアにおいてはトランプ外交を継承している。 それに対して、前述したように、日本は安倍政権になっても台湾へのスタンスは根本的には変わらなかった。それは政権中枢に親中派の二階俊博幹事長が、大きな影響力を持ち続けていることからも明らかだ。日本企業も中国経済に大きく依存していることから、中国との太いパイプがある二階氏が必要とされており、いきおい二階氏をはじめとする親中派の影響力は大きかったのである。 日本はアメリカの意向を酌みながらも、台湾同様、中国とまともに敵対はできない立場にあった。その難しい状況を安倍晋三首相は対中包囲網であるTPPやインド太平洋構想を実現させる一方で、あからさまに中国とは敵対しないで巧妙に乗り切った。 菅首相は「安倍政権の継承」をうたっていたものの、中国に対してどういう方針で臨むつもりなのかは明確ではなかった。二階氏は引き続き中枢に残っていることから、従来と同じようなベクトルで臨むというのが、最も考えられるシナリオだった』、「台湾は中国にあまりに近く、経済力・軍事力で圧倒的に劣勢に立たされている。また、経済において中国と密接に関係しているだけでなく、台湾内での親中派の力はかなり強い。中国の強い軍事的圧力を受けながらも、あからさまに中国と敵対できない立場にある」、共産党革命時に大陸から逃げてきた外省人が国民党の基盤となった。
・『菅首相の決断により対中姿勢は次の段階に  ところが、今回の日米首脳による共同声明に台湾問題が明記されたことで、中国に対抗することが明確になった。これまで中国の立場を守ってきた二階氏も、今回は了承せざるを得なかったということになる。 その予兆はあった。二階氏は4月15日に収録されたCS番組内で、東京五輪について「これ以上とても無理だということだったらこれはもうスパッとやめなきゃいけない」と述べて、「オリンピックでたくさんまん延させたということになったら、何のためのオリンピックかわからない」と新型コロナウイルス感染拡大による五輪中止の可能性に言及したのである。 これは大きなニュースとなり、海外メディアの一部も「日本の有力政治家が五輪中止の可能性を示唆」と大きく扱っている。 それもそのはず、二階氏はこれまで一貫して五輪の実行を明言してきた政権の姿勢に異を唱えて、わざわざ「政府・与党間の不一致」を演出したわけである。 これは菅政権内で、親中派の二階幹事長が「気にくわないこと」が行われたことの表れではないだろうか。あくまで筆者の考えにすぎないが、今回の共同声明に先立ち、台湾問題の明記を認めざるを得なかったことへの「腹いせ」のように思われる。実際、二階氏は過去においても不満があると表に出すことが多かったからである。 あるいは、東京五輪をいったん否定することは、中国に太いパイプがあることを自負する二階氏にとって、中国への何らかのサインを送ることになるのかもしれない。 ただし、二階氏も「何が何でも開催するのかと問われれば、それは違うという意味で申し上げた。安全・安心な大会の開催に向け、しっかり支えていくことに変わりはありません」と文書で述べて、CS番組内の発言は本意ではなかったと釈明している。) だが、この発言の余波は小さくはなかった。これまで五輪開催への機運を作ろうと連立与党で一致団結してきたのに、水を差す形になったからである。当然、政権内でも反発があるはずで、二階氏の影響力低下に拍車がかかる可能性もある。 そのような不協和音はありながらも、菅首相がアメリカと連携して台湾を守る姿勢を見せたことで、これまで曖昧だった日本の対中姿勢を一段階進めることとなった』、「二階幹事長」の「新型コロナウイルス感染拡大による五輪中止の可能性に言及」は、「「気にくわないこと」が行われたことの表れではないだろうか」、穿った見方だが、当たっている可能性もありそうだ。
・『中国にとって台湾が決定的に重要な理由  中国における台湾は、地政学的な要地、あるいは「一つの中国」という象徴をはるかに超える重要な存在になりつつある。それは、米中貿易戦争は、煎じ詰めると半導体の争いに行きつくからである。 半導体ファウンドリ(受託生産)として世界的企業である台湾のTSMCは、韓国のサムスンやアメリカのインテルと技術力で大きく水をあけており、世界の半導体生産受注の分野ではすでに圧倒的な存在となっている。 中国は一連のトランプ制裁で先端半導体を入手しづらくなっており、南京にTSMCの工場は有するものの、TSMCの大型工場のある台湾は、文字どおり喉から手が出るほど欲しいはずだ。台湾有事の可能性がこれまでとは比較にならないほど高まっているのは、まさに台湾が半導体生産の中心になってしまったからにほかならない。 私たちは台湾有事の可能性を、「近未来」から「いつでもありうること」に変更して、その時に備える必要がある。日本は今回の日米首脳会談で中国政策を大きく転換して、これからは尖閣のみならず、台湾防衛についてもコミットしなければならなくなったと考えるべきだろう。 ただし、この問題は言うほど簡単ではない。というのは、台湾自体も日本依存から徐々に中国シフトを始めており、また、台湾政府は尖閣の領有権を主張していることから、日米側に簡単に荷担できる立場ではないからだ。 そもそもTSMCをこのまま日米側にとどめておけるかどうかも決定しているわけではないだろう。 確かにトランプ政権ではアメリカに大型投資をして、大幅にアメリカシフトを見せたが、そもそもアメリカという国は、工場投資に向いているとはいえないのである。台湾や中国と比べると人件費は圧倒的に高い割に生産性が高いわけでもない。投資効率の悪さを知った上での投資であり、TSMCにとっては妥協にすぎない。 また、TSMCとしても、経済成長を続ける中国市場を簡単に捨てられるはずもない。TSMCがアメリカを切って中国側に行くことはないにしても、なんとか両てんびんにかけられないかと考えるのは当然である。 それでもTSMCが完全に中国を切ってアメリカを取れば、半導体技術が欲しい中国による台湾併合のモチベーションは決定的に高まっていくだろう。アメリカが貿易戦争に勝つためには、TSMCをアメリカ側にとどめると同時に、台湾を中国に併合されないことが必須になってしまったわけである。 日米首脳会談のアメリカ側の目的は、台湾防衛に日本を巻き込むことであったと考えるべきだろう。もちろん、日本としても、対中姿勢に覚悟を決めるべき時期にきており、その点でも共同声明に「台湾」という項目を入れて、スタンスを明確にした意義は大きい。それは、日本に経済面だけでなく、安全保障面でも強い覚悟が求められていることを意味している』、「台湾自体も日本依存から徐々に中国シフトを始めており、また、台湾政府は尖閣の領有権を主張していることから、日米側に簡単に荷担できる立場ではない・・・TSMCをこのまま日米側にとどめておけるかどうかも決定しているわけではない」、難しい問題のようだ。
タグ:バイデンと日米関係 (その1)(周到準備の日米首脳会談で菅政権が背負う「重い宿題」、日米首脳会談に強烈な不満の中国こそ 戦前日本の失敗を学ぶ時、「中国激怒」の日米共同声明、それでも台湾を守る理由とは) 日経ビジネスオンライン 細川昌彦 「周到準備の日米首脳会談で菅政権が背負う「重い宿題」」 「「周到準備の首脳会談」だった。予測可能性のないトランプ前大統領の際の「出たとこ勝負の首脳会談」とは予想通り様変わりだ。 日米ともに「トップダウン」から「ボトムアップ」に変わった」、的確な表現だ。 外交交渉の経験が長い「細川」氏ならではの深い分析だ。確かに「6月の G7サミット)において日本は孤立しかねない」、ことも要注目だ。 「制裁の根拠となる法律がないことを理由にしているが、欧米からは言い逃れにすぎないと見られている。発動するかどうかは別にして、せめて“行動の用意”ぐらいはあるべきではないか」、その通りだ。 「中国ビジネスを人質にとられた産業界や親中派の政治家への働きかけも強まろう。逆にいくつか見せしめ的にターゲットとされる企業が出てくる可能性さえある」、ただ、「中国」としては「日本」を完全に「米国の側」に追いやらない範囲で、今後圧力をかけてくる懸念がありそうだ。 宮家 邦彦 「日米首脳会談に強烈な不満の中国こそ、戦前日本の失敗を学ぶ時」 「中国から見た日米共同声明の問題点を書こう」、とは興味深そうだ 「日米首脳会談の結果は予想通り、中国にとって最悪となった」ので、「強烈な不満と断固たる反対を表明」せざるを得なくなったようだ。 「日米には「冷戦思考」などない。目指すは「排他的な小サークル」どころか、開かれた大グループである。また、香港やウイグルへの関心は、内政干渉というより、人道的要素が大きい」 「さらに、日中関係が最近悪化したのは、日米の「妨害」が理由ではなく、むしろ従来とは異なるレベルの中国の対外強硬姿勢が原因である。これらすべてに共通するのは、力を使うこともいとわない中国の「現状変更志向」だ」、スッキリする反論だ 「日米同盟を日独伊三国同盟と比較するこの歴史観は滑稽ですらある。それを言うなら、今の中国を1930年代の日本と比較すべきだろう。「東アジアの新興国」が「シビリアンコントロール」を失い、「不健全なナショナリズム」の下で、「力による現状変更」を目指し、西太平洋で「海洋権益を拡大」し、「国際社会に挑戦」している。中国の外交部も戦前の日本の外務省に似ているのだろうか」、 「今の中国を1930年代の日本と比較すべき」とは痛烈な批判だ。「仮に日本企業に対し制裁を発動すれば、短期的には脅しとしてある程度有効だとしても、中長期的には逆効果だろう。2021年の今、日本企業に報復措置をとれば、日本企業による中国離れの連鎖が始まるだろう。日米が現在進めている「中国デカップリング」「サプライチェーン見直し」「ハイテク製品の国産化」という流れを中国が自ら促進することにもなりかねない」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 白川 司 「「中国激怒」の日米共同声明、それでも台湾を守る理由とは」 「首脳会談」が「アメリカのメディアでは注目されなかった」、大いにありそうな話だ。「今回の首脳会談を切実に求めていたのはアメリカ側」にも拘わらず、「日本側に妥協しない点がアメリカ外交のしたたかさである」、その通りだ 「日本側は台湾問題を「両岸問題」と表現」、初めて知った。苦肉の策なのだろうが、「日本側の自己満足」といった印象も拭えない 「台湾は中国にあまりに近く、経済力・軍事力で圧倒的に劣勢に立たされている。また、経済において中国と密接に関係しているだけでなく、台湾内での親中派の力はかなり強い。中国の強い軍事的圧力を受けながらも、あからさまに中国と敵対できない立場にある」、共産党革命時に大陸から逃げてきた外省人が国民党の基盤となった 「二階幹事長」の「新型コロナウイルス感染拡大による五輪中止の可能性に言及」は、「「気にくわないこと」が行われたことの表れではないだろうか」、穿った見方だが、当たっている可能性もありそうだ 「台湾自体も日本依存から徐々に中国シフトを始めており、また、台湾政府は尖閣の領有権を主張していることから、日米側に簡単に荷担できる立場ではない TSMCをこのまま日米側にとどめておけるかどうかも決定しているわけではない」、難しい問題のようだ
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米中経済戦争(その15)(もし米中戦争起きたら…米国は地上戦で大損害必至?日本も中国市場失い致命的打撃、「米中半導体戦争」が本格化 日本が急速な構造変化を生き残る道、「過去に例を見ないほどの怒り」米中・新冷戦の狭間で日本がとるべき行動とは) [外交]

米中経済戦争については、昨年12月12日に取上げた。今日は、(その15)(もし米中戦争起きたら…米国は地上戦で大損害必至?日本も中国市場失い致命的打撃、「米中半導体戦争」が本格化 日本が急速な構造変化を生き残る道、「過去に例を見ないほどの怒り」米中・新冷戦の狭間で日本がとるべき行動とは)である。

先ずは、本年1月9日付けAERAdot.が掲載した軍事ジャーナリストの田岡俊次氏による「もし米中戦争起きたら…米国は地上戦で大損害必至?日本も中国市場失い致命的打撃」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/aera/2020122300006.html?page=1
・『日本と豪州が、他国の攻撃から相手国の艦船などを守るといった内容で合意した。事実上の同盟関係と言えるが、対中紛争のリスクなどの議論は置き去りだ。AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号では、そのリスクについて取り上げた。 安倍晋三前首相は中国との友好関係を望む一方で「自由で開かれたインド・太平洋」を旗印とし、対中包囲網に事実上参加した。 海上自衛隊は07年から米国、インドの海軍共同演習「マラバール」に参加したほか、米、豪海軍との演習も行ってきた。今年11月、インド東方のベンガル湾とアラビア海で行われた「マラバール2020」には豪州海軍が参加。初めて米印日豪4カ国の合同演習となり、中国に対抗する「アジア版NATO」結成の様相を示した。 この4カ国は、中国が「一帯一路」の要所としてスリランカのハンバントタ港、パキスタンのグワーダル港の拡張、整備を援助しているのは軍事的拠点にするためと警戒している。 だが米海軍は中国海軍に対し質、数ともに圧倒的優勢なため、もし米中で武力紛争が起きれば、遠隔地の港にいる中国軍艦は出港すれば撃沈される。日露戦争で旅順港を基地としていたロシア太平洋艦隊が「引き籠もり状態」になったのと同様だ。従って、中国は軍事よりは経済上の目的で港の建設を援助していると見る方が自然だろう』、「中国は軍事よりは経済上の目的で港の建設を援助していると見る方が自然」、説得力ある見方だ。
・『もし米中関係がさらに険悪化すれば、米海軍は海上自衛隊、豪州海軍を伴って中国沿岸の封鎖をすることは可能だ。だが中国の食料自給率はほぼ100%で輸入しているのは大豆だけ。石炭が豊富だからエネルギーの自給率も80%に近く、ロシアからのパイプラインもあり、中国が封鎖に屈する公算は低い。 核を使うと共倒れになるから通常弾頭のミサイルや、航空攻撃で都市や軍事拠点の破壊はできても、支配するには地上部隊による占領が必要だ。 黄海最奥部の天津付近から北京へは約180キロ。大損害を覚悟すれば米軍が北京に到達することは可能だろう。だが日中戦争では、首都南京を失った蒋介石は重慶に籠って抗戦を続け、日本軍は最大140万人を投入したが点と線しか確保できなかった。米軍が9年間苦戦して敗退したベトナムは、南北合わせて面積は中国の28分の1、人口は15分の1だった。 米中が戦争となれば日本は輸出の19.1%(香港を合わせると約24%)を占める中国市場を失い、致命的打撃となる。さらに中国が米軍の攻撃に対抗し、その拠点である在日米軍、自衛隊の基地や都市をミサイルで攻撃してくることも当然あり得る。 日本の安全保障にとり、米中の対立を激化させず、戦争を阻止することは必須だ。オーストラリアと同盟して中国包囲網に加わり、米国の背中を押してドロ沼に落とすようなことは、菅氏が討論会で言った通り「戦略的に正しくない」だろう』、親中派の二階幹事長までいるとなれば、「日本」が「米国の背中を押」す可能性が低そうなのが救いだ。

次に、1月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「「米中半導体戦争」が本格化、日本が急速な構造変化を生き残る道」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/259402
・『台湾TSMCはかつてのインテル? 様変わりする世界の半導体産業  日本企業は半導体関連の部材分野で世界的なシェアを持つ。しかし今、世界の半導体産業が、急速な構造変化の局面を迎えているのである。 構造変化の大きな特徴の一つが、半導体の「設計・開発」と「生産」を分離する傾向が鮮明化していることだ。 例えば、米国の大手半導体企業は「設計・開発」を担い、実際の「生産」をファウンドリー(受託製造)である台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)などに委託するケースが多くなっている。半導体の開発・設計と生産の分離(垂直分業)が加速しているのである。 その結果、ファウンダリーの地位が高まり、TSMCは最先端の5ナノ(10億分の1)メートルの生産ラインを確立するなど、製造面での優位性を発揮している。かつて、米インテルが果たしていたマーケットリーダーの役割を、今やTSMCが担っているともいえるだろう。それほど、世界の半導体産業の様相は様変わりしている。 こうした変化は、米中対立にも非常に重要な影響を与えているのである』、確かに「ファウンダリーの地位が高まり」は、目ざましい。
・『半導体産業で優位性を高めたい中国と制裁でそれを阻止する米国  中国は「中国製造2025」によって、先端の半導体産業でさらに優位性を高めたいと考えている。一方、世界の基軸国家である米国は、何とかしてそれを阻止すべく手を打っている。具体的には、米国は中国の通信機器大手であるファーウェイに続いて、大手ファウンドリーであるSMIC(中芯国際集成電路製造)を事実上の禁輸対象に指定した。 これによって一時的に、中国半導体産業の成長は遅れるだろう。ただ、米国が制裁によってIT先端分野での中国の台頭を抑えることは容易ではない。やや長めの視点で考えると、中国は徐々に半導体の製造関連の技術を習得し、米国を追い上げる可能性が高い。 今後、半導体関連の部材分野で世界的なシェアを持つわが国企業は、そうした構造変化からより多くのメリットを享受できるよう、戦略を巡らせることが求められる。そのためには、各企業の技術力向上などに加えて、政府のきめ細かい産業政策が必要だ。政府の対応を期待したい』、「米国が制裁によってIT先端分野での中国の台頭を抑えることは容易ではない」、確かにその通りだろう。
・『米国が世界の覇権を維持するため存在感が高まるTSMC  半導体の「設計・開発」と「生産」の分離の重要性が高まっていることは、2020年の世界の主要な半導体企業の業績を分析すると確認できる。このような変化の中で、有力企業は「設計・開発」に特化するか、「生産」も併せて行うかの選択を迫られているようだ。 生産工場を持たないファブレス化が重視される要因として、半導体の回路線幅を小さくする「微細化」がある。 どういうことかというと、回路線幅が細くなるほど、半導体の面積当たりの処理能力は高まるが、一方で、製造技術の開発や設備投資の負担は増す。一つの半導体企業が「設計・開発」→「生産」までを貫徹することは難しくなっているのだ。 2020年7月23日、インテルのボブ・スワンCEOが、7ナノメートルのCPU生産ライン立ち上げの遅れを公表したことは、それを確認する良い機会だった。微細化のつまずきへの解決策として、インテルは外部のファウンドリーの活用も視野に入れると表明した。その後、昨年12月には、自社で製造を行う体制を見直すよう、米国のアクティビスト投資家がインテルに求めた。 世界の半導体関連テクノロジーのロードマップを描いてきたインテルだが、彼らが重視した垂直統合のビジネスモデルは大きな転換点を迎えているのである』、「インテル」ですら「外部のファウンドリーの活用も視野に入れる」とは、時代も変わったものだ。
・『TSMCに生産を委託することで変化への対応力を高めた米IT先端企業  インテルと対照的に、「設計・開発」に注力してきた米NVIDIAは、TSMCとの関係を重視し、微細かつ高機能なチップを生み出した。昨年7月にNVIDIAの時価総額がインテルを上回った理由は、両社の成長期待の差が拡大したからだ。NVIDIAは英Armの買収によって設計・開発力にさらなる磨きをかけようとしている。また、グーグルやアップル、マイクロソフトが、自社での半導体の設計や開発を強化している。 TSMCは、最先端から既存分野まで総合的な生産ラインを確立し、各企業のニーズに的確に応える生産体制を整えた。TSMCに生産を委託することによって、米IT先端企業は知識集約的な半導体の設計・開発体制を強化し、変化への対応力を高めることができる。そうした発想がファブレス化を勢いづけた。 なお、韓国のサムスン電子は、どちらかといえば「設計・開発」から受託事業を含む「生産」までの統合を重視しているようだ。 いずれにせよ、世界経済が「データの世紀」を迎える中、米国が世界の覇権を維持するために、TSMCの重要性は高まっている』、その通りのようだ。
・『中国の半導体製造技術は米国依存 SMICは米国の制裁にどう対応するか?  一方で中国のSMICの製造能力は、台湾のTSMCに比べて3世代ほど遅れているといわれている。 半導体の自給率向上を目指す中国共産党政権にとって、SMICは欠かせない企業だ。しかし、中国の半導体の製造技術というのは、米国に依存している現状がある。 昨年9月のファーウェイへの制裁に加えて、12月に米国がSMICを事実上の禁輸対象に指定したのは、製造技術面での中国の弱みをたたき、IT先端分野を中心とする覇権強化を阻止するためだ。 一部では米商務省のSMIC制裁には抜け穴があるとの指摘があるが、主要先進国の企業は制裁違反を避けるために、中国向けの半導体および関連部材などの輸出に慎重にならざるを得ない。短期的に、中国の半導体自給率向上への取り組みは鈍化するだろう。  注目されるのが、SMICが米国の制裁にどう対応するかである。米国が制裁を強化する中にあっても、SMICは政府系ファンドと連携して工場の新設に取り組んでいる。また、SMICは4人からなる経営陣のうち3人をTSMCなどの台湾半導体産業出身のプロで固め、微細化をはじめとする生産能力の向上に取り組む意向だ。 中長期的に考えた場合、共産党政権は多種多様な方法を用いてSMICの総合的な生産能力の向上に取り組むはずだ。事実、共産党政権は、企業への補助金や土地の提供、海外企業からの技術移転、人材獲得などによって、半導体の開発力を高めた。それが、フィンテックやドローン、軍事関連技術の高度化など中国の覇権強化を支えた。時間がかかったとしても、中国はSMICの生産能力向上をあきらめないだろう。 現時点で、製造技術で米国に一日の長があることは確かだ。しかし、中国経済のダイナミズムを支える「アニマルスピリッツ」や、テクノクラート(技術官僚)の政策運営力を基に考えると、米国が半導体分野における中国の技術革新を食い止めることは容易ではない。短期的に厳しい状況に直面したとしても、中長期的には、世界経済における中国の半導体産業の重要性は高まる可能性がある』、「中長期的には、世界経済における中国の半導体産業の重要性は高まる可能性がある」、異論はない。
・『日本の半導体関連部材の技術は日本経済の宝  わが国の半導体部材関連の企業にとって、中国市場の重要性は高まるだろう。半導体関連部材の市場において、信越化学工業のシリコンウエハーや、村田製作所のセラミックコンデンサなど、わが国企業のシェアは高い。 その理由は、分解できず、簡単にまねができないからだ。各企業は、原材料のレベルから高純度かつ微細な素材(製品)を生み出すことに取り組み、世界各国の企業から必要とされる立場を確立してきた。半導体関連部材の企業の実力は、わが国経済の宝といえる。 半導体部材関連の企業が、米国からも中国からも必要とされ、より多くの収益を獲得するためには、わが国政府の能動的な取り組みが必要だ。なぜならわが国企業を取り巻く事業環境は、米中の覇権争いをはじめ、各国政府の利害に大きく影響される側面が強まっているからである』、異論はないが、「政府の能動的な取り組み」とは何なのだろう。
・『米中の激突が先鋭化する中、日本はどうすべきか?  今後、米国は、中国の半導体自給率の向上を食い止めるために、制裁を強化する可能性がある。米国の圧力を跳ね返すために、中国はSMICなどへの支援を強化し、国家資本主義体制を強化するはずだ。また、中国は国際社会における孤立を防ぐためにEU(欧州連合)との包括的投資協定を結ぶなど、既成事実をつくろうとしている。 米国の自由資本主義体制と、中国の国家資本主義体制の激突が先鋭化していく中で、わが国はどうすべきか。まずは、安全保障体制の確立のために、米国との信頼関係を強化し、その上で、アジア新興国やEUとの関係を重視しなければならない。 経済面では、多国間の連携を強化することが長期の社会と経済の安定に必要、との見解を共有すべきだ。特に、わが国が過度な補助金や、技術の強制移転の禁止をはじめ、TPPの考えをより多くの国と共有することは、経済面からの「対中包囲網」を整備することにつながるだろう。 新型コロナウイルスの感染再拡大によって、国内外の社会と経済はかなり厳しい状況を迎えている。わが国政府は集中した感染対策によって国民の安全を守り、さらにはワクチンの供給体制を整えることで、感染の克服と景気回復を目指さなければならない。 その状況下、口で言うほど容易なことではないが、わが国政府が相応のスピード感をもって国際世論との連携強化を目指すことができるか否かが、半導体関連部材の需要取り込みをはじめ、わが国の社会と経済の先行きに無視できない影響を与えるだろう』、同感である。

第三に、3月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した上記と同じ真壁昭夫氏による「「過去に例を見ないほどの怒り」米中・新冷戦の狭間で日本がとるべき行動とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/266873
・『3月18〜19日、米アラスカ州のアンカレッジで開催された米中外交トップ協議では、両国の対立が鮮明だった。外交の専門家が「中国側は過去に例を見ないほど怒りを示した」と指摘するほどだ。「新しい冷戦」とも呼ばれる米中対立は激化の一途をたどっている。両国のはざまで日本が取るべき行動とは?』、わざわざ小雪が降る「アンカレッジ」を選んだとは、バイデン政権もなかなかやるものだ。
・『米中対立は激化の一途 中国は「国家資本主義体制」を強化  米バイデン政権の本格的な活動開始に伴い、米国と中国の対立が一段と鮮明化している。 3月18日に米アラスカ州で行われた、米中の外交高官による協議(以下、米中外交トップ協議)でも、両国はいずれも強硬なスタンスで一歩も譲る気配は見えなかった。今後も両国の対立はより先鋭化するだろう。世界の政治・経済・安全保障といったさまざまな面であつれきが顕在化するとみられる。 コロナショックの前までは、人々の自由な発想と活動を重視する米国の体制は、国家主導での経済成長を目指す中国の体制よりも、優れていると考えられていた。 しかし、コロナ禍の中で、中国のこうした「国家資本主義体制」は、予想外の強い一面を見せている。そのことは、昨年(2020年)4月以降の中国経済の回復が示しており、その結果、中国市場を重視する主要先進国企業は増加している。 基軸国家として世界経済の成長を支え、そのベネフィットを得てきた米国にとって、その状況は容認できない。米国は、人権問題や領土問題などの側面から中国への圧力を強めている。 今後、バイデン政権は、欧州各国や日・豪・印など、国際社会との連携を強化し、対中包囲網の整備を目指す。一方、中国共産党政権は、求心力を維持するためにより一層、米国に対抗することになるだろう。 両国の狭間でわが国が取るべき行動は2つだ』、何なのだろう。
・『米ソの冷戦とは異質の「新しい冷戦」へ突入した  3月18〜19日、米アラスカ州のアンカレッジで開催された米中外交トップ協議では、両国の対立が鮮明だった。 中国は、米国が主張した国際社会のルールに従うことに強く反発。外交の専門家が「中国側は過去に例を見ないほど怒りを示した」と指摘するほどだ。「新しい冷戦」とも呼ばれる米中対立は激化の一途をたどっている。 米ソの冷戦では、両国が関係を絶った。しかし、米中の対立はそれとは異質だ。経済面で米中の関係は深まっているのである。その一方で、米国は人権、領土、知財などの面から中国に圧力をかけ、自国が整備してきた国際社会のルールに従うよう、中国に求めている。それは米国の覇権維持に欠かせない。そのためにバイデン政権は、国際連携に基づいた対中包囲網の整備に取り組んでいる。EU、米国、英国、カナダが足並みをそろえ、ウイグル人権問題で対中制裁を発表したのはその象徴だ。 ただし、バイデン政権の対中政策が短期間で効果を表すとは考えづらい。なぜなら、コロナショックを境に世界経済にとっての中国経済の重要性、相対的な強さが一段と高まったからだ。日米欧などで中国での収益獲得をより重視する企業は多い。 逆に言えば、バイデン大統領に求められるのは、経済面で中国に対する米国の優位性を世界に示し、国際世論の支持を得ることだ。そのために同氏は、インフラ投資など経済対策を強化して米国の雇用環境を回復させ、社会の分断の修復を目指している。その上で、多様性を尊重し、イノベーションが発揮されやすい経済環境を実現しなければならない。 足元、懸念すべき「変異株」の出現など、新型コロナウイルス感染の影響はまだまだ軽視できない。雇用を中心に米国経済には弱さが残るし、アジア系住民などへの差別も深刻だ。 バイデン政権がスピード感を持って、実効性の高い政策を進めることができるか否かは、対中政策に無視できない影響を与える』、なるほど。
・『「国家資本主義体制」の強化で米国に対抗する中国  中国の共産党政権は、米国からの批判や圧力に対して弱腰になることはできない。共産党指導部が恐れるのは、国内の社会心理の悪化だ。 1989年に天安門事件が発生した時、西側の経済の専門家の多くが「これで中国は民主主義に向かい、自由資本主義陣営への仲間入りを目指す」と考えた。 しかし、そうはならなかった。中国共産党指導部は経済運営の指針を定め、海外からの技術移転や金融市場の育成によって工業化、および先端分野への生産要素の再配分を進めて経済成長を実現した。 つまり、中国共産党政権は「党に従えば豊かになれる」というイデオロギーを社会心理に根付かせることによって、求心力を発揮したのである。コロナショック後の中国経済の回復スピードの早さは、こうした国家主導による経済運営体制の強さを世界に示したといえる。 ただ、景気回復の一方で、中国では人口減少と雇用への不安が高まっている。 共産党政権は、中長期的な経済運営への不安、あるいは焦りを強めているだろう。長期の支配体制を目指す習近平国家主席は、より強固に米国に対抗し、強さを誇示しなければならない。フィリピン海域への約220隻の中国船籍の集結や、人権問題をめぐるEUへの対抗措置はその一例だ。 経済運営に関して、求心力維持のために、共産党政権は経済成長を実現しなければならない。 そのため共産党政権は、国内では高速鉄道や道路の延伸などのインフラ投資に加え、産業補助金や海外企業からの技術の強制移転を進める。インフラ投資の結果として、債務問題は深刻化するだろう。 対外的には、「一帯一路」や「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」に基づき、アジア・アフリカ新興国各国との関係を強化し、需要の取り込みを目指す。それは中国にとって、経済成長だけでなく、国際社会における孤立回避にも重要なのである』、「インフラ投資の結果として、債務問題は深刻化するだろう」、過剰な「インフラ投資」は工事完成後の運営コストを押し上げるので、毎年の膨大な赤字が、建設費に加わってくる。そのため、「債務問題」はさらに「深刻化」する可能性がある。
・『米中の対立が激化する中 日本が取るべき2つの対応  今後、米中の対立は激化するだろう。短期的に、中国経済は成長を実現し、その恩恵に浴したい国や企業は増えていくだろう。ただし、長期の視点で考えると、中国経済の不安定感は高まる可能性がある。特に債務問題は軽視できない。 米国はそうした長期の展開を念頭に、対中政策を進めようとしているようにみえる。中国の最先端の製造技術は十分ではない。そのような中国の弱みをたたくため、まずはジーナ・レモンド米商務長官とキャサリン・タイ米通商代表部(USTR)代表は、トランプ前政権の対中禁輸措置や制裁関税などを継続する。半導体関連に加えて、気候問題への対応に必要な水素や脱炭素関連の分野でも、米国は同盟国と連携し、中国に対する関税・非関税障壁を強化する可能性がある。 次に米国政府は、補助金などを用いて自国企業の競争力を高めたい。3月23日には米インテルが200億ドル(約2.2兆円)を投じて、アリゾナ州に工場を建設すると発表。同社は、半導体の受託製造(ファウンドリー)事業にも参入する。それは、バイデン政権が目指す、米国の半導体生産能力強化への取り組みに従ったものだ。アリゾナ州には台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company/台湾積体電路製造)も工場を建設する。それがインテルの競争力にどう影響するかが注目される。 ポイントは、中国の国家資本主義との覇権争いの長期化に備え、米国経済における「政府の役割」が増すことだ。先端分野を中心に、米国の自由資本主義体制には変化が生じているといえる。 米中の対立が激化し、その影響が長期にわたって続く展開が予想される中、わが国が取るべき対応は2つだ。 一つ目は、安全保障面で米国との関係を強固にすること。ニつ目は、先端分野での技術開発をスピード感を持って進めて、米中双方から必要とされる立場を目指すこと。こうした対応が、わが国が中国に是々非々の姿勢で臨むことを支え、国際世論からの信頼を獲得することにつながるだろう』、「わが国が取るべき対応は2つ」、の中身は同感である。
タグ:米中経済戦争 (その15)(もし米中戦争起きたら…米国は地上戦で大損害必至?日本も中国市場失い致命的打撃、「米中半導体戦争」が本格化 日本が急速な構造変化を生き残る道、「過去に例を見ないほどの怒り」米中・新冷戦の狭間で日本がとるべき行動とは) AERAdot 田岡俊次 「もし米中戦争起きたら…米国は地上戦で大損害必至?日本も中国市場失い致命的打撃」 「中国は軍事よりは経済上の目的で港の建設を援助していると見る方が自然」、説得力ある見方だ。 親中派の二階幹事長までいるとなれば、「日本」が「米国の背中を押」す可能性が低そうなのが救いだ。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 「「米中半導体戦争」が本格化、日本が急速な構造変化を生き残る道」 確かに「ファウンダリーの地位が高まり」は、目ざましい 「中国製造2025」 「米国が制裁によってIT先端分野での中国の台頭を抑えることは容易ではない」、確かにその通りだろう 「インテル」ですら「外部のファウンドリーの活用も視野に入れる」とは、時代も変わったものだ。 「中長期的には、世界経済における中国の半導体産業の重要性は高まる可能性がある」、異論はない。 異論はないが、「政府の能動的な取り組み」とは何なのだろう わが国政府が相応のスピード感をもって国際世論との連携強化を目指すことができるか否かが、半導体関連部材の需要取り込みをはじめ、わが国の社会と経済の先行きに無視できない影響を与えるだろう 「「過去に例を見ないほどの怒り」米中・新冷戦の狭間で日本がとるべき行動とは」 わざわざ小雪が降る「アンカレッジ」を選んだとは、バイデン政権もなかなかやるものだ。 「インフラ投資の結果として、債務問題は深刻化するだろう」、過剰な「インフラ投資」は工事完成後の運営コストを押し上げるので、毎年の膨大な赤字が、建設費に加わってくる。そのため、「債務問題」はさらに「深刻化」する可能性がある。 「わが国が取るべき対応は2つ」、の中身は同感である。
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ミャンマー(その3)(抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」、「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由、ミャンマー政変 にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”) [外交]

ミャンマーについては、本年2月28日に取上げた。今日は、(その3)(抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」、「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由、ミャンマー政変 にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”)である。

先ずは、3月17日付け日経ビジネスオンライン「抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00118/031700044/
・『2月1日の国軍によるクーデターはミャンマーを窮地に追いやった。多くの市民が国軍の支配に不服従を貫き、毎日休みなく全国各地で厳しい抗議デモが起きている。ゼネストも広がり、経済は立ち行かなくなりつつある。だが国軍による弾圧は苛烈になる一方だ。報道によれば、3月16日までに少なくとも180人を超える犠牲者が出ている。なぜ国軍はクーデターを起こしたのか。先行きが不透明な状況はいつまで続くのか。ミャンマー政府と少数民族武装勢力との和平に貢献し、ミャンマーの政治・軍関係者とのつながりも深い日本経済大学の井本勝幸・特命教授に話を聞いた(Qは聞き手の質問)。 Q:国軍による弾圧がエスカレートしており、状況は悪化する一方です。 日本経済大学の井本勝幸・特命教授(以下、井本氏):わずか1カ月でミャンマーという国はボロボロになってしまいました。国軍は人々に銃口を向け、通信は断続的に遮断され、夜陰に紛れた誘拐まがいの拘束が横行している。刑務所でもひどい事態が起きていると聞いています。 治安部隊はデモで負傷した人を手当てする医療ボランティアにまで暴行を加えている。弾圧は厳しくなる一方で、もう尋常ではありません。私は国軍とも長い付き合いがありますが、ここまでバカな連中だとは思わなかったというのが正直な思いです。 このままではもっと悲惨なことになります。ですから私はCRPH(注:「連邦議会代表委員会」、国軍に対抗するためアウン・サン・スーチー氏率いる国民民主連盟のメンバーが中心となって設立した組織。事実上の臨時政府)のメンバーに「(国軍との)戦い方を変えたほうがいいのではないか」と伝えました。 人々の国軍を許さないという思いは十分に分かる。ただ路上に出てデモ活動をすれば命を失います。これ以上、犠牲者を増やさないためにも、今後はゼネストなどを中心に対抗していくべきだと考えています。CRPHのメンバーも危ない。今、国軍は関係者を血眼になって探しています。彼らは今、捕まったら最後という状況で活動しているのです。 クーデターの数週間後に元国軍関係者と話をしたところ、彼は「国軍はルーズ・オア・ウィン・タクティクスに入っている」と言いました。勝つか負けるか、どちらかしかないということですね。もちろん相手は民衆です。武装勢力ならまだしも、丸腰の民衆相手に、何が「ルーズ・オア・ウィン」だと個人的には思います。国軍はここまで民衆の反発が強いとは想定していなかったのです。文句を言いつつもクーデターや国軍の支配を結局は受け入れるだろうと浅読みしていたのです。現実が想定と大きく違っていたものだから、追い詰められて強硬な姿勢を取らざるを得なくなってしまった。 Q:人々は治安当局の弾圧に屈することなく抗議を続けています。現状では着地点が見えません。 井本氏:民衆は今のところ国軍に一歩も引く気はありません。国軍側は国民民主連盟(NLD)が大勝した2020年11月の総選挙で大規模な不正があったとし、選挙をやり直す方針を示していますが、一方で多くの人々はクーデター以前の状況に戻せという。 国軍に対する反発は本当に根強いものがあります。ミャンマーの民政化はまだ途上で、これまで約半世紀にわたって軍事政権が続いてきました。ここでクーデターを認めてしまっては、また暗黒の時代に逆戻りする。ミャンマーの人々はこう考えています。彼らからすれば、今回は国軍との最後の戦いなのです。だからたとえ命を落としても、経済が立ち行かなくなり生活ができなくなったとしても、絶対に軍政を認めないという姿勢を示しています』、「国軍はここまで民衆の反発が強いとは想定していなかったのです。文句を言いつつもクーデターや国軍の支配を結局は受け入れるだろうと浅読みしていたのです。現実が想定と大きく違っていたものだから、追い詰められて強硬な姿勢を取らざるを得なくなってしまった」、それにしても、国民に銃を向けるとは酷いものだ。
・『難民が発生する恐れ  対立は深まるばかりです。国軍による弾圧が激化すれば、生活できなくなる人が大量に出て難民化します。1988年に起きた民主化運動でも多くの難民が発生し、タイに逃れました。国内外の難民を誰が救うのか。国際社会は軍政を動かしてでも彼らを守らなければなりません。 もっとも、抗議運動にしても、いつまでも続けられるわけではありません。後述するように国際社会からの介入がない限り、どこかに落としどころを見つける必要はあります。一方で、反軍政を貫こうとする人々は活動を先鋭化させていくでしょう。彼らが行き着く先は少数民族武装勢力です。これもまた88年の民主化運動で見られた動きです。 例えば当時の軍事政権に武力闘争を挑んだ全ビルマ学生民主戦線(ABSDF)は国軍に追い詰められ、少数民族武装勢力のカレン民族同盟(KNU)を頼りました。それしか道がなかったのです。そして今回もまた同じような動きが出ると思います。本当に残念なことですが、国軍は同じ歴史を繰り返そうとしているのです。 Q:なぜ国軍はそもそもクーデターに踏み切ったのか。またスー・チー氏やNLD側に防ぐ手立てはなかったのでしょうか。 井本氏:国軍は軍政時代の2003年に民主化へのロードマップを公表し、これに従って民政移管を進めてきました。国軍は「民主化の主役はあくまで自分たち」であると思っていましたし、これを主導することで国民から尊敬されたかったのです。 ただ現実は異なりました。「愛される国軍」になりたかったのに、国民からはそっぽを向かれてしまった。象徴的なのが2015年の総選挙です。この選挙で国軍出身のテイン・セイン大統領率いる軍系政党(連邦団結発展党、USDP)は、スー・チー氏率いるNLDに大敗を喫しました。 テイン・セイン氏は軍出身ながら民主化を積極的に推し進め、少数民族武装勢力との停戦も実現し、さらに経済的にも多くの改革に着手してきた。国軍内部で「テイン・セイン氏は(民主化に)前のめりになりすぎている。やりすぎだ」という声が出ていたほどです。それなのに、国民の支持はスー・チー氏に集中した。結局、民主化の主役は国軍ではなくスー・チー氏であることを、まざまざと見せつけられたのです。「スー・チー氏さえいなければ」という思いが、国軍にはくすぶり続けました。 さらに2020年の総選挙ではスー・チー氏率いるNLDは前回を上回る勝利を収め、USDPは前回よりもひどい大敗を喫しました。「スー・チー氏さえいなければ」という思いはより強くなり、自らの存在が脅かされるとの危機感が国軍をクーデターに駆り立ててしまった。 クーデターで全権を握ったのは国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官です。ただ関係者の間では、今回のクーデターを主導したのは彼だけではないという見方があります。たとえばCRPHの関係者は「日本が交渉に乗り出すとすれば、相手はタン・シュエ氏だ」と話しています(注:タン・シュエ氏は旧軍政トップとして独裁体制を敷いた人物。2011年、後継としてテイン・セイン氏を政治トップに、ミン・アウン・フライン氏を国軍トップに指名し一線から退いたといわれている)。ミン・アウン・フライン氏はどちらかといえば穏健派として知られていましたが、その周囲にいる国軍幹部はタン・シュエ氏子飼いの強硬派が多いと聞いています。 タン・シュエ氏はミン・アウン・フライン氏にその地位を譲る際、「必要とされる場合は再び軍が実権を握る」と予言していました。そのタイミングが今だったということでしょう。ただ国軍の一部関係者からは、現状について戸惑いの声が上がっているのも事実で、(民衆への弾圧について)やりすぎていると冷静に見る向きもあります。でも軍の命令には怖くて逆らえません。私はかつて国軍の兵舎を訪ねたことがありますが、そこではいじめが横行しており、上官はやりたい放題でした。あそこにいたら誰だって恐怖心でいっぱいになり、上官の命令には逆らえなくなります。知り合いの国軍関係者に対しては「このままでは国軍は国民からも国際社会からも相手にされなくなる。再革命が必要なんじゃないか」と話していますが、今のところ、その可能性はありません。 一方のスー・チー氏やNLD側も今回は国軍の動きを見誤りました。国軍は2020年11月の総選挙について検証するよう再三迫っていましたが、NLDは聞き入れなかった。しかもNLD側はぎりぎりまで、国軍によるクーデターの動きを把握できていなかった。最初から対応しておけば、ここまで国がボロボロになるような事態にはならなかったかもしれません』、「国軍トップ」の「ミン・アウン・フライン氏はどちらかといえば穏健派として知られていましたが、その周囲にいる国軍幹部はタン・シュエ氏子飼いの強硬派が多い」、なるほど。
・『主要な少数民族武装勢力は反軍政に  今、課題になっているのはNLDやCRPHのリーダーの不在です(注:国軍はクーデター以来、スー・チー氏を拘束している)。国軍と対等に話ができる人がいないのです。CRPHの関係者とも話していますが、結局、これまで何もかもスー・チー氏頼みだったのは問題でした。NLD政権内ではスー・チー氏の顔色をうかがいながら仕事をするような雰囲気ができてしまい、彼女の耳に入る前に案件が握りつぶされてしまうこともありました。もっとも、スー・チー氏は75歳になっています。現実的に考えれば次の5年が(国のトップとして仕事をする)最後のタイミングだったでしょう。こんな事態になる前から、新しいリーダーを育てておく必要はあったと思います。 Q:ミャンマーの少数民族武装勢力は今回のクーデターにどう反応しているでしょうか。 井本氏:ミャンマー政府との停戦協定に署名していた10の少数民族武装勢力は国軍の弾圧を非難し、軍との和平交渉を打ち切りCRPH支持を表明しています。さらに、停戦に応じていなかったカチン独立軍(KIA)も 市民の抗議運動を保護する姿勢を示し、国軍と衝突しました。 当初、CRPHは一部の少数民族武装勢力としか接触していなかったため、それではだめだと私は伝えました。結果、CRPHは各民族との交渉に乗り出しました。高度な自治を約束し、さらに民主主義に基づいて国軍を解体し、武装勢力と統合して新たに連邦軍を作ると明言しています。これは画期的な動きだったと思います。少数民族武装勢力との和平を進めるという点では、国軍は一度解体されることが避けられないのです(注:一方で国軍はNLD政権がテロリスト団体に指定していた少数民族武装勢力アラカン軍のテロ団体指定を解除した)。 関係者によれば国軍は「ここで自分たちが倒れたら、ミャンマーはシリアのようになる」と本気で考えているそうです。ただ、現状ではCRPH・少数民族武装勢力と国軍とが内戦状態になることは考えにくいと思っています。CRPHは武器を持ちませんし、少数民族武装勢力は自分たちの支配が及ぶエリアを守ることが第一で、エリアを出て戦闘することは基本的にはないからです。また今回の問題について、あくまでビルマ族内の主導権争いだと冷めた目で見る向きもあります。Q国際社会は、日本はどう対応すべきでしょうか。 井本氏:国際社会がミャンマーの人々を「保護する責任(R2P、Responsibility to Protect )」はあると思います。国に人々を守る意思がないのですから。本来であれば、国際社会がPKO(国連平和維持活動)のような形を取って介入すべきでしょう。そうすれば少なくとも弾圧はなくなるでしょうし、対立する双方が対話する機会ができます。ただ国連などの介入は現状では望めません。国連安全保障理事会では中国やロシアが慎重な見方を崩さず、結局、議長声明しか出すことができませんでした。米国などは経済制裁を打ち出していますが、経済制裁で問題が解決した例を私は知りません。 ミャンマー国内では、「中国が国軍を支援している」との見方が強まっており、反中デモも行われています。ただ状況はもっと複雑だと思います。中国とべったりだったのは、むしろスー・チー政権でした。国軍は中国の影響力の増大には危機感を強めていたのです。中国は一部の少数民族武装勢力の後ろ盾にもなっていましたから。そこで国軍は近年、中国ではなくロシアから兵器を購入していました。しかもクーデターの数日前にはロシアの国防相がミン・アウン・フライン総司令官と会談しています。国軍は中国とロシア、そして中国の進出に神経をとがらせる隣国、インドとのバランスをうまく取りながら、難局を乗り越えていこうという腹ではないかと思います。 有効な手が打てない国際社会ですが、それでも手をこまぬいている場合ではないでしょう。国軍は前回の総選挙で大規模な不正があったと主張しています。ならば国際社会が調査団を入れて、改めて票の数え直しをするとか、選挙をするにしても軍政の都合のいいものにするのではなくて、国際社会が責任を持って11月と同じ顔ぶれで実施させるなど、やれることはあるはずです。 日本は国軍とのチャンネルがあります。それを生かし、改めて民主化を促していくという立場でいいと思います。国際社会からは批判を受けるかもしれませんが、独自のカードを用意して交渉していくのです。例えば人道支援は止めないけれども、弾圧が続く限り大きなプロジェクトは支援しないといったように、是々非々でやっていくしかない。かつての軍政時代から日本はミャンマーへの支援を続けてきました。投資も多く、日本人もたくさん住んでいます。今ここで関係を断ち切ってしまっては、もう二度とミャンマーに入れないでしょう。今、国軍は日本の声に耳を貸そうとしませんが、粘り強く働きかけていくしかないと思います。 この記事はシリーズ「東南アジアの現場を歩く」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます』、「日本は国軍とのチャンネルがあります。それを生かし、改めて民主化を促していくという立場でいいと思います」、手ぬる過ぎる。毎日、大勢が殺されているなかで、もう悠長なことを言っているヒマはない筈だ。

次に、3月23日付けWedge「「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由」を紹介しよう。
・『我々日本人自ら「親日国」と形容することも多いミャンマ――。ミャンマーのクーデターから1カ月が経過するなか、俄かにその風向きに微かな異変が起きつつある』、「微かな異変」とは何なのだろう。
・『丸山大使の「外相」発言に猛反発  政府をはじめとした日本側の対応に不満を抱えているミャンマー国民の声が、ソーシャルメディア上を中心に急速に目立つようになってきている。事の発端は今月8日、国軍と太いパイプを持つと言われている丸山市郎・駐ミャンマー大使が、国軍が「外相」に指名したワナ・マウン・ルウィン氏と首都ネピドーで会談した際のこと。 丸山大使は、クーデター後の状況に対して「重大な懸念」を表明すると同時に、ミャンマー市民への一切の暴力停止、アウン・サン・スー・チー氏らの早期解放、民主的な体制の速やかなる回復といった3点を要求した。独自に築いてきた軍政とのパイプを生かしながらの外交が行われた形だが、その夜に在ミャンマー日本大使館がフェイスブック上で、ワナ・マウン・ルウィン氏について「外相」と表記した上で、上記事項を申し入れたとビルマ語、英語、日本語で投稿。 すると、瞬く間にミャンマー市民から非難の声が殺到。「日本政府の弱気な態度に失望しています」、「日本はミャンマー国民の声を聞かず、軍人を認めるつもりなのか?」、「ワナ・マウン・ルウィン氏は、外務大臣ではありません。誰も認めてはいけませんし、このような言葉使いをやめて頂きたい。ミャンマー国民としては強く非難します」など、痛烈なコメントが怒涛のような勢いで相次いでしまったのだ。 これを受けて、加藤勝信官房長官は10日に行われた記者会見で、ミャンマー国軍が任命したワナ・マウン・ルウィン氏を日本政府が「外相」と呼んだことについて、「〝外相〟と呼称はしているが、呼称によって国軍によるクーデターの正当性やデモ隊への暴力を認めることは一切ない」と強調。その上で、「ミャンマー側の具体的な行動を求めていくうえで、国軍と意思疎通を継続することは不可欠で、これまで培ってきたチャンネルをしっかり活用して働きかけを続けることが重要だ」と日本政府の姿勢を説明する対応に追われた。 茂木敏充外相も、丸山大使が会談した翌日9日の記者会見では、ワナ・マウン・ルウィン氏を「外相」と呼んでいたものの、10日の衆院外務委員会の途中から、ミャンマー市民の心情や国際世論への配慮からか「当局によって指名されている外相と言われる人」との表現を使い、軌道修正した。 2日に開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)の非公式外相会議では、内政不干渉を原則として加盟国の国内政治事情などに対し介入を避けてきたなかで、各国から批判の声が相次ぐなど異例とも言える事態となり、インドネシアとシンガポールの外相がワナ・マウン・ルウィン氏に対して「外相」という呼称を使わなかったことが報じられた経緯もある。こうしたなかで、最大のODA支援国である日本が「外相」という言葉を堂々と使用したことにミャンマー市民は強く反応したというわけだ』、呼称は極めて重要な問題なのに、「日本」の外務省がここまでセンスがないとは驚かされた。
・『「治安部隊」の呼称を使い続ける日本メディアに非難  さらに、日本の各メディアへの非難も高まる事態となっている。主たる引き金は「治安部隊」という表現だ。今、スーチー氏の解放と民主化を掲げて声を上げているミャンマー市民らは、国軍を「テロリスト」と呼び始めている。事実、武器を持たずに「非暴力」で立ち向かおうとする市民に対して発砲して多くの犠牲者を出したり、不服従運動に参加する公務員やメディア関係者らを夜中に逮捕・拘束、さらには戒厳令下での死刑もちらつかせるなど、次第にその手口は過激化している。 国軍に対しては、国内外から急速に批判が高まっており、もはや「治安」を守る部隊ではなく暴力を煽り人を殺す「テロリスト」なのだ、というのがミャンマー市民の理屈だ。ソーシャルメディア上ではもはや、ミャンマー市民らによる「国軍テロリスト」という呼称は定着しているような状況だ。 「治安部隊」という表現に対して、ミャンマー市民からの反発に火がついた一つのきっかけが、第2の都市マンダレーでデモ隊への銃撃によって犠牲となった19歳のチェ・シンさんの死だ。歌と踊りが趣味で「エンゼル」(天使)という愛称で親しまれ、銃撃される前の姿を捉えた写真やイラストは抗議運動で掲げられるなど、象徴的な存在となったチェ・シンさん。 しかし、ミャンマーの国営テレビでは、警察がマンダレー郊外の墓から遺体を掘り起こして検視を行った結果、チェ・シンさんの頭から摘出された銃弾は警察のものではなく、さらに警察がいた方向からは撃たれていないなどと報じた。ソーシャルメディア上では「遺体を掘り起こすなどなんておぞましい行為だ」「こんな虚偽報告を信じるものなどいない」などの書き込みが相次ぐ事態となったわけだが、日本のメディアでは、ミャンマー国営テレビが「警察が裁判所の許可を得て遺体を掘り起こし検視を行なった」と伝えたことを報道。 すると、テレビのタイトル字幕を撮影した画面がソーシャルメディア上で一気に拡散されていき、「日本のメディアは捏造報道ばかりでフェイクを垂れ流している」「なぜ軍事独裁政権の嘘ばかりを配信するミャンマーの国営テレビを信じるの? 人殺しであるミャンマー軍事政権と同じだ」「テロリスト集団を応援するような報道しか出来ないのですか」などとあっという間に非難の声が広がってしまった。 きちんと放送全体を見れば決して国軍の肩を持つような内容にはなっておらず、あくまで国営テレビではこう報じられたものの市民からは反発が上がっている、として右上のサイドタイトルには「犠牲者の遺体掘り起こし ミャンマー当局に非難の声」とも書かれている。 さらに、ソーシャルメディア上での「誰がこのような(当局の)うその報告を信じるだろうか」という市民の言葉も併せて紹介されており、放送全体のニュアンスからすればむしろ市民による当局への非難を伝えている内容になっている。しかし、ミャンマーの国営テレビで伝えられた内容を引用で報じたことに対して「国軍の言うことを信じて肩を担ぐのか」とあたかも肩棒を担いでしまったかのように怒りを買う結果となった。 今や、日本メディアへのミャンマー市民の目線は非常に厳しいものとなり、あらゆるニュースについての文言が取り沙汰され、様々な非難が止まない状況だ。 このようにミャンマー市民の不信感が募る背景には、欧米諸国が先んじて国軍関係者らを対象にした強硬な制裁措置などを打ち出してきたなか、日本政府は協調路線を取っておらず、独自の外交を行なっていることが挙げられる。軍政時代からの「独自の国軍とのパイプ」を生かした外交が謳われ、これまで民主化を後押ししてきた経緯があるが、これほどまでに市民の犠牲が出て国際社会からも制裁を求める声が強まるなか、果たして国軍側との「対話と協力」を維持して慎重に対応する姿勢が依然として通用する事態なのか――既に多数の犠牲者が出ている緊迫した情勢下、ミャンマー市民にとっては「及び腰」「口だけで行動が伴わない」などと捉えられる結果を招いている』、「欧米諸国が先んじて国軍関係者らを対象にした強硬な制裁措置などを打ち出してきたなか、日本政府は協調路線を取っておらず、独自の外交を行なっていることが挙げられる・・・これほどまでに市民の犠牲が出て国際社会からも制裁を求める声が強まるなか、果たして国軍側との「対話と協力」を維持して慎重に対応する姿勢が依然として通用する事態なのか」、少なくとも「国軍側」にもっと強い姿勢で取っていることが「ミャンマー市民」にも分かる程度までは、圧力を強めるべきだ。
・『日本政府が表明した「ロヒンギャ支援」にも反発  さらに、日本政府による人道支援も、非難の的となった。政府は9日、ミャンマー国内やバングラデシュに流入したイスラム教徒少数民族ロヒンギャ難民らへの医療用品や食糧支援などの名目で1900万ドル(約20億9000万円)の緊急無償資金協力を行うことを決定した。クーデターが起きた2月以降、日本政府が発表した初めてのミャンマー関連の支援で、赤十字国際委員会(ICRC)や国連世界食糧計画(WFP)などの国際機関を通じて、約60万人に対する食料支援やシェルターの改修、医療用品の提供などが実施されるとされた。 国軍との交換公文の署名などは行わず、茂木敏充外相は会見で「ミャンマーの国民が困るような事態については人道上の問題で支援を続けねばならない」と、あくまで経済支援は行わない構えだが、人道支援の継続を表明した形だ。 しかし、このロヒンギャへの支援が報じられると、再びミャンマー市民からの不満、非難が続出。ソーシャルメディア上では、「日本政府には呆れます」「この支援金が誰に手渡されるのかが気になります。軍に渡したところで、難民支援に使うと約束したとしても口約束で行かない。大半は軍の懐にいくでしょう」などの非難が相次いだ。なかには、「間違えないでください、国軍に支援金が渡るのではなく、赤十字などを通してロヒンギャに支援されるのです」と冷静に支援の意図を正す投稿も見られたが、それに対しても「国軍に渡る可能性がないと言い切れるのか」などと強い反発の声が散見される。 ソーシャルメディア上に溢れる、ミャンマー市民たちの声は、国際社会が制裁に舵を切るなか、期待していた日本政府の対応への失望感への表れでもある。 独自の外交を貫いてきた日本政府は今、厳しい舵取りを迫られている』、「ミャンマー市民たちの声は、国際社会が制裁に舵を切るなか、期待していた日本政府の対応への失望感への表れでもある」、「日本政府としても、前述の通り、「国軍側」に圧力を強めるべきだ。

第三に、3月23日付けデイリー新潮が掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤和彦氏による「ミャンマー政変、にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/03230602/?all=1
・『2月1日にクーデターが起きたミャンマー情勢はますます混迷の度を深めている。 クーデターを起こした国軍が、デモ制圧を続ける姿勢を示し、全権掌握の既成事実づくりを頑なに進める一方、民主化勢力は「臨時政府」を立ち上げ、統治の正統性を主張する。 混乱状態が長期化しつつある中で、ミャンマーではこのところ「国軍を支援している」として中国に対する批判の声が高まりつつある。 中国側は否定しているが、3月11日、ヤンゴンで国軍のクーデターに抗議する数百人のデモ隊が中国大使館に対する抗議活動を行った。中国製品の不買運動を呼びかける声も上がっていたが、その矢先の14日、ヤンゴンにある複数の中国系の工場が何者かの襲撃を受け、多くの中国人従業員が怪我をするという事案も発生した。 ミャンマーにおける中国のプレゼンスは大きい。中国にとってミャンマーは手放すことが出来ない要衝の地である。中国はミャンマーが民主化プロセスを進める中、同国のインフラ整備などに巨額の資金を投じてきた(総額1000億ドル)。「一帯一路」の旗頭の下でミャンマーとの物流ルート「中国・ミャンマー経済回廊」の建設を進めており、完成すれば中国は内陸部からインド洋に抜ける大動脈と海洋進出の足がかりを得ることになる。原油・天然ガス輸送におけるマラッカ海峡の依存度を低下させるため、ミャンマーのチャウピュー港から中国雲南省につながる原油・天然ガスパイプラインも整備してきたが、クーデターによる政情不安が、中国の「虎の子」である資産にとって脅威になるとの懸念を強めている(3月10日付日本経済新聞)。 中国はアウンサンスーチー国家顧問率いる国民民主連盟(NLD)政権との関係は良好だったが、国軍は「NLDが中国と近すぎる」として警戒感を強めた。このことが今回のクーデターの一因であるとされている。 中国は国軍に対しても軍事協力を提案してきたが、国軍は中国と協力しながらもその影響力拡大に対する警戒を怠ることはなかった。中国は海洋輸送路確保に向けた「真珠の首飾り戦略」の一環として、ミャンマーの主要な港湾に海軍の駐留を望んできたが、ミャンマー軍は外国軍の駐留を禁止した憲法を盾にこれを拒否してきた経緯がある』、「国軍は「NLDが中国と近すぎる」として警戒感を強めた」「中国は海洋輸送路確保に向けた「真珠の首飾り戦略」の一環として、ミャンマーの主要な港湾に海軍の駐留を望んできたが、ミャンマー軍は外国軍の駐留を禁止した憲法を盾にこれを拒否してきた」、「中国」は「クーデター」の黒幕ではないようだ。
・『インド・中国両国間の代理戦争の場に  その背景には根深い反中感情がある。1990年代の軍事独裁時代に中国資本がミャンマーに流入、これにより凶悪犯罪が多発したという苦い思いがある。「中国系少数民族の武装解除がうまくいっていないのは中国の支援があるからだ」との苛立ちもある。 「中国との関係を取り仕切るのが自分たちの役割だ」と考える国軍だが、2月下旬に中国との間で非公開で行った会議内容が外部に流出した(3月13日付産経新聞)。地元メデイアによれば、国軍との会議で中国側は、雲南省とミャンマー西部のチャウピューを結ぶ内陸部の天然ガス・原油パイプラインの戦略的重要性を強調し、警備の強化を求めてきた。デモ隊が中国に資源を送るパイプラインへの攻撃を主張していたからである。中国側はさらにミャンマーでの反中感情を抑えるため、国内メデイアに圧力をかけることも要求したという。中国側の要求に対する国軍の回答は明らかになっていないが、国軍の後ろ盾は中国だけではない。近年インドとの関係を強化している。2019年のミャンマーのインドからの武器購入額は1億ドルとなり、中国からの武器購入額(4700万ドル)を凌駕している。インドは昨年ミャンマー軍に潜水艦を贈与した。 インドにとってもミャンマー軍は欠かせない存在になりつつある。インドの北東部の国境地帯では中国の支援を受けているとされる少数民族武装勢力が活動しており、インドの要請でミャンマー軍は過去2年間、武装勢力を排除する作戦を行ってきた。 「中国問題」のウエイトが高まるミャンマーでは、「少数民族の取り込み」も大きな争点になりつつある。135の少数民族が住んでいるとされるミャンマーでは1948年の独立以来、人口の約7割を占めるビルマ族による支配に不満を抱く少数民族が活動を続けてきた。国軍は少数民族の平定を担う役割を有していることを根拠に連邦議会の議席の4分の1を無条件で割り振られる特権を正当化してきた。 クーデターで実権を握った国軍は少数民族の取り込みを進めている(2月8日付産経新聞)。新設された最高意志決定機関「行政評議会」メンバーの一人に西部ラカイン州の少数民族「アラカン族」出身者を起用した。背景にはNLDが実現できなかった和平を推進したい思惑があるが、NLDも3月に入り、南東部のカイン州で自治拡大を求めて国軍と衝突してきたカレン族の武装組織などに接近し始めた(3月12日付日本経済新聞)。 そのせいだろうか、南部のタニンダーリ地域の町ミッタでは8日、この地域に影響力がある少数民族武装勢力が銃を携え、約2000人のデモ隊の警護に当たった(3月9日付NHK)。当該地域の少数民族はカレン族と中国南部の貴州省や雲南省などの山岳地帯に住むミャオ族の支系とされるモン族である。 これを契機に中国系武装勢力と国軍が衝突する事態になれば、ミャンマー情勢を憂慮してきた中国が「自国民保護」を名目に実力行使に出る可能性が出てくるだろう。そうなれば中国と同様、ミャンマー情勢を静観していたインドも黙っていない。北東部のアルナチャルプラデシュ州を巡り中国との領土問題を抱えるインドにとって、北東部と国境を接するミャンマーが中国の勢力下に入ることはなんとしてでも阻止しなければならない。 国軍はこれまで「対応を誤れば、同国がインド・中国両国間の代理戦争の場になる」ことを恐れてきたが、自らが起こしたクーデターによりその懸念がにわかに現実味を帯びてきた。なんとも皮肉な話である』、「国軍はこれまで「対応を誤れば、同国がインド・中国両国間の代理戦争の場になる」ことを恐れてきたが、自らが起こしたクーデターによりその懸念がにわかに現実味を帯びてきた。なんとも皮肉な話である」、インドまでは「国軍」の背後にあるとは、何とも複雑な構図だ。いずれにしても、日本政府は国軍にもっと影響力を行使して、平和的解決に努めるべきだ。
タグ:ミャンマー (その3)(抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」、「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由、ミャンマー政変 にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”) 日経ビジネスオンライン 「抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」」 日本経済大学の井本勝幸・特命教授 「国軍はここまで民衆の反発が強いとは想定していなかったのです。文句を言いつつもクーデターや国軍の支配を結局は受け入れるだろうと浅読みしていたのです。現実が想定と大きく違っていたものだから、追い詰められて強硬な姿勢を取らざるを得なくなってしまった」、それにしても、国民に銃を向けるとは酷いものだ 「国軍トップ」の「ミン・アウン・フライン氏はどちらかといえば穏健派として知られていましたが、その周囲にいる国軍幹部はタン・シュエ氏子飼いの強硬派が多い」、なるほど 「日本は国軍とのチャンネルがあります。それを生かし、改めて民主化を促していくという立場でいいと思います」、手ぬる過ぎる。毎日、大勢が殺されているなかで、もう悠長なことを言っているヒマはない筈だ WEDGE 「「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由」 丸山大使の「外相」発言に猛反発 呼称は極めて重要な問題なのに、「日本」の外務省がここまでセンスがないとは驚かされた。 「欧米諸国が先んじて国軍関係者らを対象にした強硬な制裁措置などを打ち出してきたなか、日本政府は協調路線を取っておらず、独自の外交を行なっていることが挙げられる・・・これほどまでに市民の犠牲が出て国際社会からも制裁を求める声が強まるなか、果たして国軍側との「対話と協力」を維持して慎重に対応する姿勢が依然として通用する事態なのか」、少なくとも「国軍側」にもっと強い姿勢で取っていることが「ミャンマー市民」にも分かる程度までは、圧力を強めるべきだ 「ミャンマー市民たちの声は、国際社会が制裁に舵を切るなか、期待していた日本政府の対応への失望感への表れでもある」、「日本政府としても、前述の通り、「国軍側」に圧力を強めるべきだ デイリー新潮 藤和彦 「ミャンマー政変、にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”」 「国軍は「NLDが中国と近すぎる」として警戒感を強めた」「中国は海洋輸送路確保に向けた「真珠の首飾り戦略」の一環として、ミャンマーの主要な港湾に海軍の駐留を望んできたが、ミャンマー軍は外国軍の駐留を禁止した憲法を盾にこれを拒否してきた」、「中国」は「クーデター」の黒幕ではないようだ インド・中国両国間の代理戦争の場に 「国軍はこれまで「対応を誤れば、同国がインド・中国両国間の代理戦争の場になる」ことを恐れてきたが、自らが起こしたクーデターによりその懸念がにわかに現実味を帯びてきた。なんとも皮肉な話である」、インドまでは「国軍」の背後にあるとは、何とも複雑な構図だ。いずれにしても、日本政府は国軍にもっと影響力を行使して、平和的解決に努めるべきだ。
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