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尖閣諸島問題(その7)(中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的、中国「海警法」への過剰反応が かえって武力衝突リスクを高める理由) [外交]

尖閣諸島問題については、昨年12月11日に取上げた。今日は、(その7)(中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的、中国「海警法」への過剰反応が かえって武力衝突リスクを高める理由)である。

先ずは、3月18日付け日経ビジネスオンライン「中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00179/031600044/
・『Q:中国が2月、海警局に「武器使用」を認めたことに耳目が集まる。日本政府は与党に対し、海警局が尖閣諸島への上陸を強行するなら、兇悪犯罪と見なして危害射撃を加える場合があると説明した。「やられたら、やり返す」と聞こえる。これに対して、日本の防衛政策や現場に詳しい香田洋二・元自衛艦隊司令官(海将)は、「国際法をないがしろにしかねない。竹島や北方領土の周辺を航行する海上保安庁の巡視船や、南シナ海で航行の自由作戦を展開する米海軍の艦船を危険にさらす恐れさえある」と指摘する。果たしてそれはなぜか。 中国が海警法を2月1日に施行しました。海上警備に当たる海警局に武器使用を認めたことが注目されています。例えば第22条で「国家の主権、主権及び管轄権が不法に侵害され、または不法に侵害される危険が差し迫っているとき」は「その侵害を停止し、危険を除去するために、武器の使用を含むあらゆる必要な措置を講ずる権利を有する」との趣旨を定めています。 例えば海警船が以下の行動に出る懸念が浮上してきました。 ケース1:尖閣諸島周辺の日本の領海内で操業している漁船に対し、違法操業だとして停船命令を出す。拿捕(だほ)されることを恐れて、網やロープを流し、あるいは船体を破損する強度の装備品などを海警船の進路上に投入するなどして追跡を妨害しながら逃げようとする漁船に対して武器を使用する。 ケース2:日本の海上保安庁の巡視船に対して強制退去を命じる。 海警法第21条は、外国の軍艦もしくは公船が中国の法令に違反した場合、退去させるための必要な措置を取れるとし、さらに、退去を拒否する場合は強制撤去、強制えい航の措置が取れると定めている。「武器使用が可能」と明記してはいない、「強制撤去」は武器使用を含むと解釈できる。この場合、武器使用のための要件解釈と決断をするのは中国であり、海警局が日本側の言い分や都合に合わせて武器使用の判断をすることはない。 香田:私は日本政府やメディアをはじめとする人々の目が武器使用にのみ集まっていることを強く危惧しています。中国海警局による武器使用は海警法の本質ではありません。この本質は、海警局の船が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動を取る可能性が高まったことです。このことを理解し、尖閣諸島をいかにして守るのかをきちんと考えるべきです。 武器については、日本の海上保安庁も一定の条件を満たせば警察官職務執行法を準用して使用することが認められています。言及されたケース1もケース2も、同法が正当防衛、緊急避難のための危害射撃を許しているので、これを適用すれば事足りる話です。武器使用の規定があることをもって海警法を非難したり、恐れたりすることは問題の本質を見失います。武器使用について申し上げれば、その問題は、海警法が定める武器使用の条件と程度が警察官職務執行法のそれと同等か否かです。 (武器の使用)第七条 警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。但し、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条(正当防衛)若しくは同法第三十七条(緊急避難)に該当する場合又は左の各号の一に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。(後略) 関連してお話しすると、「中国海警局の船が軍艦並みの武器を備え始めている」と懸念する声も、現時点においては公平を欠くと思います。76mm速射砲を装備するといわれる海警局の船は最近建造されたタイプです。海上保安庁の発表によく出てくる、尖閣諸島周辺で一団となって行動する4隻からなるグループの多くはそれ以前の無武装タイプであり、武装しているのは1隻というケースがほとんどです。中国はこのグループを3~4セット配備して、尖閣諸島周辺の海域を交代制で24時間365日航行する体勢を取っているものとみられます。 これに対して海上保安庁は沖縄県石垣島に尖閣諸島専従として10隻の巡視船を配備しています。それぞれの性能は世界最高水準でいずれも20~40mmの機関砲を装備しています。将来は分かりませんが、現時点においては、隻数ではやや劣るものの全体として中国にひけを取るものではありません。 よって、中国が海警法を施行したのを奇貨として我々が考えるべきは、武器使用という「木」ではなく尖閣諸島をいかに守るかという「森」なのです』、「中国海警局による武器使用は海警法の本質ではありません。この本質は、海警局の船が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動を取る可能性が高まったことです」、「武器については、日本の海上保安庁も一定の条件を満たせば警察官職務執行法を準用して使用することが認められています」、「中国が海警法を施行したのを奇貨として我々が考えるべきは、武器使用という「木」ではなく尖閣諸島をいかに守るかという「森」なのです」、さすがプロらしい適格な指摘だ。
・『海警局による尖閣諸島への上陸強行も  Q:「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動として、具体的にはどのような行動があり得るのでしょうか。 香田:海警の船が尖閣諸島への「近接」「上陸」「占拠」「奪還」という行為に及ぶ恐れがあります。 中国共産党は海警法の施行のほかにもその布石を打ってきました。例えば海警局はもともと政府の下にある法執行機関でした。海上保安庁と同じ存在だったわけです。しかし2018年の組織改正で政府を離れ、中国共産党中央軍事委員会の指導下に入りました。軍事行動の先兵になり得るということです。 最近でも、中国共産党ナンバー3の栗戦書(リー・ジャンシュー)全国人民代表大会(全人代)常務委員長(日本の国会議長に相当)が海警法の狙いを「習近平(シー・ジンピン)強軍思想を徹底し、新時代の国防と軍隊建設の需要に応える」ことと説明して世界の耳目を集めました』、「「習近平強軍思想を徹底し、新時代の国防と軍隊建設の需要に応える」、穏やかではなさそうだ。
・『「侵略」を「犯罪」とする対処案、対応誤れば国際法違反  香田:これに対して日本政府は、国内の政治事情にとらわれており適切な対応を取れていません。自民党の国防部会・安全保障調査会に対し、外国公船が尖閣諸島への上陸を強行したなら「兇悪犯罪と認定して武器使用により相手の抵抗を抑える『危害射撃』が可能になる場合がある」と説明しました。 政府によるこの説明は2つの大きな問題をはらんでいます。1つは、危害射撃が可能とするその理由です。 先ほど触れた警察官職務執行法第7条には続きがあり、「兇悪な罪」に臨んだときには武器を使用して危害を加えることを容認しています。 一 死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる兇悪な罪を現に犯し、若しくは既に犯したと疑うに足りる充分な理由のある者がその者に対する警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合。 政府の説明はこの条項を使って、海警局の艦船が尖閣諸島への上陸を強行するなら「兇悪な罪」と見なすということです。果たして中国が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行為は、日本の法律で裁くことができる犯罪なのでしょうか。 Q:私も政府の説明を知って、海警局の艦船がどんな行動を取ったら刑法の何条に違反するのだろうと疑問に思っていました。「国家の意志に基づいて中国が主張する自国の領土である尖閣諸島を奪取する」行為は日本の刑法が定める「犯罪」ではなく、日本にとっては「主権(領土)侵害」すなわち「侵略」です。 香田:そうなのです。外国による国家の意志に基づく行動に対して、刑法という日本の国内法を適用することは不適切です。関連していうと、軍艦と公船は治外法権を持つとする国際ルールがあります。外国の法の適用は受けないということです。 であるにもかかわらず、海警局の艦船が取る行動に日本の法律を「適用できる」と強弁すれば、国際法をないがしろにすることになります。中国が南シナ海において「九段線内に中国の主権が及ぶ」と主張するのと同じことになります。今回の説明がそれほど重大な意味を持つことに政府は気づいていないのでしょうか。恐らく専門家が検討したのでしょうが、今ここで述べた点に言及できない背景があったと考えざるを得ません。 加えて、海警船による尖閣諸島への強行上陸を犯罪と見なすということは、政府がこれを「一過性」の事態とみていることを示します。果たして一過性ですむでしょうか。「国家の意志に基づいて中国の領土である尖閣諸島を奪取する」という国家の任務を遂行するのですから、海上保安庁による抵抗が強く計画通りの奪還作戦ができない場合、海警局が後詰めの部隊を連続して投入してくることは戦理の常です。上陸行動を波状的に繰り返すことも考えられるでしょう。 海上保安庁の人員に被害が生じる可能性も覚悟する必要があります。先ほど言及したように、尖閣諸島周辺の海域における海上保安庁の装備は、現時点においては、中国海警局の装備に見劣りするものではありません。しかし、「国家の意志に基づいて中国の領土である尖閣諸島を奪取する」任務行動ですから、当然、海上保安庁の抵抗を排除し得る性能の装備を拡充して臨んでくることを想定しなければなりません。 海警局はこれまでも着々と装備を拡充していますね。2010~20年に大型船を約60隻から130隻以上に拡充したと報じられています。1万トン級の大型船の配備も進んでおり、尖閣諸島周辺の海域に長期間居座ることができるようになりました。海上保安庁の関係者が「中国海警局の艦船がロケットランチャーを装備したら対応できない」と発言したと聞いたことがあります』、「軍艦と公船は治外法権を持つとする国際ルールがあります。外国の法の適用は受けないということです。 であるにもかかわらず、海警局の艦船が取る行動に日本の法律を「適用できる」と強弁すれば、国際法をないがしろにすることになります。中国が南シナ海において「九段線内に中国の主権が及ぶ」と主張するのと同じことになります」、日本政府の現在の解釈は、国際法からみても極めて問題が多いようだ。
・『航行の自由作戦を遂行する米軍が撃たれる  日本政府の説明がはらむもう1つの問題は、第1の問題と密接に関連します。兇悪な罪に関わるとする外国の公船や軍艦を危害射撃の対象としたことです。国際法上、平時には警告しか認められていません。外国公船や軍艦への危害射撃(攻撃)は通常、戦闘行為を意味します。この解釈に至る検討は相当に慎重であるべきでした。結果的に、我が国政府による今回の説明は同盟国である米国の軍事行動にも負の影響を与えかねません。 Q:米国の軍事行動にも影響するのですか。 香田:そうです。例えば米海軍は南シナ海において航行の自由作戦を展開しています。これにはいくつかケースがありますが、米国による航行の自由作戦そのものを認めない中国がこの米艦の活動を国内法違反と強弁することは十分にあり得ます。日本政府の今回の説明を援用すれば、中国は「米海軍の軍艦が中国の法律に違反したので危害射撃を加えてもよい」と主張できることになります。 最悪の場合、中国海警船が米艦のスキを突いて不意の危害射撃をする事態があり得るのです。先にも申しましたように、国内法違反の有無と武器使用の判断をするのは中国なのですから。米国が注意を促しても、あるいは抗議をしても、中国は「米国が最も信頼する同盟国である日本が同様の主張をしている」とさらに反論するでしょう。 結果的であるにせよ、米国の行動の選択肢を狭め、米軍を危機にさらすリスクが増大することは事実です。日本政府がこのような状況をつくるのは賢明ではありません。 航行の自由作戦は、中国が領海と主張する海域を米海軍の艦船が航行することで「中国の主張を認めない」との意志を示す行動ですね。米イージス巡洋艦「ラッセン」が南シナ海にあるスビ礁の周辺12カイリ内を2015年10月に航行したときから注目を集めるようになりました。 中国は同礁を自国の領土と見なしており周辺12カイリを領海と主張しています。もともと低潮高地であった同礁を埋め立てて人工島を形成し、滑走路などの軍事施設を建設しました。しかし、国連海洋法条約は低潮高地に対して領海を認めていません。よって米国はこの海域を中国の領海ではなく公海と見なしラッセンを航行させました。加えて中国はその領海法で「外国の軍艦が中国領海内を航行する場合には事前に許可を得る」と定めていますが、これも無視しました。 香田:よって、ラッセンが取った行為は、中国からすれば領海法という中国の国内法に違反する行為に当たります。米艦船が今後行う同様の行為に対して中国海警船が危害射撃を加えてもかまわないと主張する根拠というか「お墨付き」を、今回の日本政府の主張により中国に与えることになってしまったのです』、「日本政府の今回の説明を援用すれば、中国は「米海軍の軍艦が中国の法律に違反したので危害射撃を加えてもよい」と主張できることになります」、日本政府の法解釈は余りにお粗末だ。
・『竹島や北方領土で海保の巡視船が撃たれかねない  Q:竹島や北方領土の状況にも影響が及びそうですね。 香田:その通りです。例えば、韓国政府が日本政府による今回の説明を援用すればどうなるでしょうか。竹島周辺の排他的経済水域(EEZ)を航行する海上保安庁の巡視船が韓国国内法に違反しているとして、韓国海洋警察庁の船艇が発砲する事態が起こり得るのです。 韓国の国内法にどのような規定があるのか、そのすべてを我々は知っているわけではありません。また、この場合も判断は韓国側が実施することから、日本側には何がどうなっているのか全く分からないまま事態が進行することがあり得るのです。よって、こうした懸念やリスクが存在することは、日本の行動をしばるとともに韓国の行動の選択肢を広げることにつながります。 EEZにおいて何が許されて何が許されないのか、国連海洋法条約がそれを定めています。そして、同条約はどの国も内容を理解している。だからこの条約の範囲内で解決を図るべきなのです。そこに国内法を持ち込めば収拾がつかなくなってしまいます。 海上において海員は、(1)国連海洋法条約、(2)海上衝突予防法、(3)国際信号書さえ知っていればどこでも航行できるというのが現行の国際ルールの大原則です。これらに加えてさらに周辺国の国内法の規定まで知っていなければ安全な航行ができない、という環境を、国の生存を海洋に大きく依存する日本がつくるべきではありません』、「EEZにおいて何が許されて何が許されないのか、国連海洋法条約がそれを定めています。そして、同条約はどの国も内容を理解している。だからこの条約の範囲内で解決を図るべきなのです。そこに国内法を持ち込めば収拾がつかなくなってしまいます」、確かに「国連海洋法条約」「の範囲内で解決を図るべき」。
・『本来なら防衛出動を発令し自衛隊が対処すべきだが…  Q:日本政府はなぜ、ご指摘のような問題をはらむ説明をしたのでしょう。「国家の意志に基づいて中国の領土である尖閣諸島を奪取する」侵略行動に対しては、自衛隊が対処すべきではありませんか。 香田:これが冒頭述べた政府解釈の背景に関連するものです。1つには、憲法9条の解釈をめぐる長年の問題が影響していると考えます。ご指摘のように、主権(領土)侵害行為すなわち侵略に対しては、政府が防衛出動を発令し自衛隊が克服すべきです 。しかし、これまでの経緯から防衛出動の発令には厳しい条件が課されており、発令のハードルは非常に高いのが現状です。 Q:武力行使の新三要件ですね。 (1)わが国に対する武力攻撃が発生したこと、又はわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること(存立危機事態) (2)これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと (3)必要最小限度の実力行使にとどまること  香田:政府は(1)の「武力攻撃」について、「一般に、一国に対する組織的計画的な武力の行使をいう」と国会で答弁しています。政府は、海警船による尖閣諸島への強行上陸をこの武力行使と判断するでしょうか。これまで国会でなされてきた論議に鑑みると、非常に難しい気がします。 加えて、中国が海警法で「海上警察機関」と表現する海警局の艦船に対して、日本が海上自衛隊の護衛艦を出動させれば、中国は「日本が先に武力行使に踏み切った」と言い立てる懸念があります。 Q:政府はこうした材料を中国に与えかねないことも考慮しているようですね。 香田:その通りです。しかし、こうした環境であっても目の前の現実に対処しなければなりません。そこで、今までの政府の立場の延長に立つ理屈として、海警局の行為を兇悪な罪と見なし、海上保安庁に対処させようと考えたのだと思います。 この対応は、先ほどお話ししたように、中国による九段線の主張と変わるところがありません。憲法9条の解釈をめぐる国内事情に気を配るあまり、肝心の尖閣諸島防衛と国際ルールの順守が脇に追いやられているのです。 また、海上自衛隊部隊の投入に対するためらいは、中国の行動の本質が我が国の主権侵害であるという事実を、我が国政府が世界に堂々と発信することにより対処すべきです。自衛隊の投入遅れにより尖閣諸島を奪取されることがあってはなりません。そして、我が国のこの措置は、時宜を得た明確なものであれば、多くの国に理解されると考えます。もちろん、政府の広報戦への備えが必要なことは言うまでもありません』、「憲法9条の解釈をめぐる国内事情に気を配るあまり、肝心の尖閣諸島防衛と国際ルールの順守が脇に追いやられているのです」、困ったことだ。
・『海上保安庁に「防衛」の任務を付与する  Q:政府の今回の説明が適切でないならば、日本はどうしたらよいでしょう。 香田:3つの案があります。これらをすべて実行することが望ましいと考えます。中国が海軍および海警局の装備を急速に拡充している現状に鑑みて、海上保安庁と自衛隊が持つアセット、つまり我が国の海洋力を総合的にフル活用して事に当たる体勢を整える案です。 第1は、防衛出動を発令する要件を緩和すること。その論拠としている国連憲章との関係も考慮すれば「一般に、一国に対する組織的計画的な武力の行使をいう」という表現を変えるのは難しいでしょう。しかし、「組織的」「計画的」をゆるくとらえ、ハードルを下げることは可能ではないでしょうか。 主権侵害に対処する任務を一義的に付与されているのは自衛隊です。自衛隊が事態に遅れることなくその任務を果たせるよう環境を整えるのが、政府の本来あるべき姿であり、施策だと考えます。 国民感情などを踏まえるとこれは容易ではないかもしれません。ただ、我が国政府には今までの政府解釈の墨守だけでなく、我が国を取り巻く安全保障環境の激変に対応した実利的な検討をする責任があることも事実です。これを実施しなかった結果として尖閣諸島を喪失する事態など決して許してはなりません。 といっても、防衛出動を発令する要件の緩和には時間がかかることも事実でしょうから、第2として、海上保安庁法を改正し、防衛出動が発動されるまで現場にいる海上保安庁の巡視船と海上保安官が自衛隊の代わりに主権を守るための防衛行動を取れると明記するのです。) 海上保安庁の現在の任務は、海上保安庁法第2条が以下と定めています。(1)海難救助、(2)海洋汚染等の防止、(3)海上における船舶の航行の秩序の維持、(4)海上における犯罪の予防及び鎮圧、(5)海上における犯人の捜査及び逮捕、(6)海上における船舶交通に関する規制、水路、航路標識に関する事務その他。同庁は「主権等を確保するための領海警備等」に取り組んでいると言いますが、第2条はそれを明示していません。 また海上保安庁法は第25条で「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」と定め、軍隊として行動することを禁じています。この条文は、日本がまだ占領下にあった1948年に海上保安庁が活動を始める際、「大戦中に暴れまくった連合艦隊を再びつくるものではない」という意志を国内外に示すために挿入した条文です。今日ではその役割を既に終えています。 よって、この第2条と第25条を改正し、海警局の船が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動に出たときには例外的に、海上保安庁が防衛組織として領域の警備に当たれるようにすると明記するのです。ただし、海上保安庁の国防組織としての任務がこのような事態に厳格に限られることは当然です。通常の海上法執行機関としての海上保安庁の活動のほとんどは今まで通りとなります。 第3は、海上自衛隊が平時において警戒監視の任務を担えるようにすることです。これを自衛隊法に明記する必要があります。 巡視船をはじめとする海上保安庁の装備は、世界トップの中国海警に次ぐ優秀さを備えています。特に海上保安官は世界一の任務遂行能力を有しているといえます。しかし、パラシュート部隊が空から降下して尖閣諸島に上陸するとか、ダイバーが潜航して尖閣諸島に近づき夜間に上陸するといった行動に対処する装備と能力は保有していません。 現在の特殊パラシュートは機能が高く、西風が強いときに尖閣諸島西方上空で降下すれば数十km飛ぶことができます。仮に50人の特殊要員がこれに取り組めば、到達率50%でも25人が探知されずに上陸・占拠できます。水中のダイバーが、尖閣諸島の10カイリほど沖で潜水艦から水中航行機器を使用して近接する場合、潜ったまま近づいて来れば巡視船は探知することはできません。朝、目が覚めたら、尖閣諸島に中国の国旗である五星紅旗が翻っていたということがあり得るのです。 これは荒唐無稽な話ではありません。去る2月11日に特殊部隊展開能力を有する米海軍原子力潜水艦「オハイオ」が沖縄近海を航行しました。これはその種の訓練を実施したものと推察されます。中国も同等の能力を持ちつつある、あるいは既に保有していると考えるべきなのです。 海上保安庁が尖閣諸島の「主権等を確保するための領海警備等」を現行法と体制で実施可能としているのは、海警船に対して「のみ」ということです。我が国政府がなすべきは、あらゆる種類の尖閣諸島奪還活動への備えです。その意味において、我が国は現在、想定される事態の一部に対する備えしかないのです。 一方、海上自衛隊はこれらに対処する十分な対空・対潜警戒能力を備えています。なので、自衛隊が警戒監視に当たってこうした脅威の兆候をいち早く察知し、海上保安庁の巡視船はもちろん、警察など関係機関に知らせ、必要な行動が迅速に取れるようにする。例えば警察特殊部隊をヘリで尖閣諸島に運び中国海警局の要員による上陸に備えることができるでしょう。現在持っているアセットをフルに生かすのです。自衛隊の投入が可能な場合には陸上自衛隊部隊の緊急空輸もなされるべきです。 現在の自衛隊法には平時の「警戒・監視」が任務として定められていないという瑕疵(かし)があります(関連記事「自衛隊の中東派遣をめぐる議論が示した安保法制の瑕疵」)。これを改めることは、尖閣諸島を守るための必須要件です。情報収集を含む「警戒・監視」はすべての防衛行動の基礎となるものですから』、「自衛隊法には平時の「警戒・監視」が任務として定められていない」のは、警察の任務だからで、あえて「自衛隊」が乗り出す必要はない。
・『法律論では、尖閣を中国の奪還作戦から守れない  警察官もしくは海上保安官、陸上自衛隊の部隊を尖閣諸島に常駐させる案が時々浮上します。実現できれば尖閣諸島防衛の確実度を高めることができますが、その半面、中国を強く刺激する懸念があります。中国が海警法第20条で「外国が中国の管轄区域で承認を得ることなく建築物を建設した場合は撤去を命じることができ、それを拒むときには強制的に撤去できる」との趣旨を定めたのは、日本がこうした措置を取るのを予想してのことだと考えられます。 仮に、我が国が施設を作り、政府職員、警察官あるいは陸上自衛隊の部隊を常駐させるとするなら、予測される中国の熾烈(しれつ)な奪還作戦に対処する防衛出動をいつでも出す覚悟と制度の整備をもって取り組む必要があるでしょう。この体制を採らない、この案は実施時を失してしまったということです。 繰り返しになりますが、中国が“自国の領土”を奪還すべく海警局を先兵として尖閣諸島に侵攻するシナリオは荒唐無稽な話ではありません。そして、いったん着手すれば、その意志を放棄する可能性は極めて小さいでしょう。我々は憲法9条の解釈をめぐる神学論争を脇に置き、国際ルールを順守した尖閣諸島のあるべき防衛態勢を実現すべく今こそ真剣に考えるべきです。 憲法解釈を含む法律論で、尖閣諸島を中国の奪還作戦から守ることはできません。中国の具体的な活動に対処する体制をわが国の総力を挙げて整備する、加えて、政府と国民が確固たる防衛意志を持つことこそ、中国を抑止する原点です。この原点がしっかりしていれば、不幸にして抑止が崩れた場合でも、我が国の力により中国の奪回作戦を排除することができる。そして米国は、我が国のこの取り組みを見て初めて我が国を真の同盟相手と認知し、必要な際に安保条約5条を発動するのです。 この記事はシリーズ「森 永輔の世界の今・日本の将来」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます』、「憲法9条の解釈をめぐる神学論争を脇に置き、国際ルールを順守した尖閣諸島のあるべき防衛態勢を実現すべく今こそ真剣に考えるべき」、その通りだ。

次に、3月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した軍事ジャーナリストの田岡俊次氏による「中国「海警法」への過剰反応が、かえって武力衝突リスクを高める理由」を紹介しよう。
・『尖閣問題で懸念高まる海保の武器使用拡大の声  中国は2月1日、海上警備に当たる海警局を従来の国家海洋局から分離し、中央軍事委員会傘下の武装警察部隊に編入し、既存の国際法にはない中国独自の線引きをした「管轄下の海域(管轄海域)」で、「主権、主権的権利が侵害されれば武器を含めた全ての必要な措置を取る」などの内容の海警法を施行した。 中国は尖閣諸島を自国領と主張しているから、その付近を「管轄海域」とし、そこでの権益を“侵害”する日本の艦船に対して武器使用をする構えを示したと、日本では受け止める向きが多い。 自民党内などで、「海上保安庁の武器使用の要件を拡大すべきだ」との声が出るのはある意味、当然の動きだ。 だがここは冷静に考えたほうがいい。大騒ぎするほど、むしろ本当の武力衝突につながりかねない危険が強まる』、どうすればいいのだろう。
・『海警局の巡視船に武器使用を含む強力な権限  海警法は習近平体制の下で態勢が強化されてきた海警局の役割と権限を改めて明確にしたものだ。 22条では、「国家主権、主権的権利や管轄権が……違法に侵害された場合、または窮迫した違法な侵害に直面した場合、……武器を含む全ての必要な措置をとる」として、海警局の巡視船などに武器使用を含む強力な権限を与えた。 外国軍艦・公船にも退去命令や必要に応じて強制措置が取れるとされ、防衛活動にも参加できる準軍事組織との位置づけだ。 さら「管轄海域」という定義の曖昧な用語で境界を引き支配が及ぶとした。 国連海洋法条約では、海域を「領海」や「接続水域」、「排他的経済水域」などに分類し、沿岸国の権利や航行のルールなどが決められているが、「管轄海域」という曖昧な言い方が多用され、中国に都合のいい恣意的な運用が行われる可能性がある。 尖閣諸島周辺での中国船の領海侵入が繰り返される状況で、日本でも「危機感」が強まるのはやむを得まい。 だが何が本当は危険なのかを考える必要がある』、「何が本当は危険なのか」、どういうことだろう。
・『すでに海上保安庁は自衛隊との共同訓練も  日本ではすでに1954年制定の自衛隊法80条で、自衛隊が防衛出動、治安出動するような有事の際には防衛大臣が海上保安庁を指揮するよう、総理大臣が命じることができるようになっている。 だが他方、48年に制定された海上保安庁法第25条では、「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」と定めている。 海上保安庁が生まれた48年は戦後3年、憲法施行の翌年だった。 当時の米国は日本の「再軍備」を封じようとしていたが、戦争中に米軍が投下した機雷の除去や密輸の阻止、密航者によるコレラの蔓延防止などに海上警備は不可欠だったから、小型で低速の船艇による海上保安庁の設立を認め、それが海軍に発展することがないようこの条文を入れたのだ。 ところが50年に朝鮮戦争が勃発すると、米国は態度を一転、警察予備隊を急ぎ作らせ、それが54年に陸・海・空自衛隊に発展した。 米国の沿岸警備隊が米海軍の補助部隊であるのと同様に、有事の際には海上保安庁を防衛庁長官の指揮下に動員できる条文を自衛隊法に入れたのだ。 米軍は海上保安庁に中古の3インチ(76ミリ)砲を多数供与し、巡視船を武装させた。 こうして、海上保安庁法と自衛隊法には矛盾が生じ、憲法9条と自衛隊との不整合のミニチュア版のような形となった。 それだけではなく、先にできた海上保安庁と、後に生まれて急速に拡大した海上自衛隊の間には感情的な対立も生じた。 だが近年日本近海への朝鮮の工作船の出没や尖閣諸島を巡る中国海軍や海警局の艦船の行動に共同に対処する機会が増えて“和解”が進んだ。 今では海上自衛隊と海上保安庁は密接に情報を交換し、共同訓練をする仲になり「軍隊として訓練されてはならない」という海上保安庁法の第25条は半ば死文と化した感がある』、「海上保安庁」と「海上自衛隊」は「共同に対処する機会が増えて“和解”が進んだ」、結構なことだ。
・『軍隊と区別する「知恵」 過剰な対応は新たな火種に  海警法を警戒する論者からはこの際、「25条を削除すればよい」という声も出てきそうだが、海上保安庁自身がそれには激しく抵抗するだろう。 独自性を失い、事実上、海上自衛隊の補助部隊化することになってしまうからだ。 海上保安庁を管轄する国土交通省も賛成しないだろう。 欧州の大陸諸国は陸軍とは別に軽装備の国境警備隊を設けていることが多い。 国境付近に戦車や砲兵などを備えた陸軍部隊を展開すれば、相手も陸軍を出して対抗し、小さな事案が重大な結果を招きかねないからだ。 国境警備隊や海上警察などを軍隊と区別することが、安全保障上の一つの知恵になっているといってもいい。 課題はあるにしても、すでに海上保安庁と自衛隊との連携体制が相当できているなかで大きな火種を作りかねない過剰な対応は避けるべきだろう』、「国境警備隊や海上警察などを軍隊と区別することが、安全保障上の一つの知恵になっているといってもいい。 課題はあるにしても、すでに海上保安庁と自衛隊との連携体制が相当できているなかで大きな火種を作りかねない過剰な対応は避けるべきだろう」、同感である。
・『一定の武器使用も可能に 北朝鮮工作船事件を機に法改正  武器使用についても、2001年に海上保安庁法20条が改正され、外国船(軍艦、公船を除く)が日本領海内で、無害航行が疑われたり、重大凶悪犯罪を行っている疑いがあったりする場合には、その船を停止させるため武器使用が認められている。 それまでは人に危害を与える武器使用は警察官職務執行法の規定を準用する形で、正当防衛、緊急避難、凶悪犯の抵抗などの場合に限られていた。 だが99年3月、能登半島沖(佐渡島の西方18キロの日本領海内)にいた北朝鮮の工作船2隻を海上自衛隊の護衛艦と海上保安庁の巡視船が追跡、威嚇射撃をしたが、高速の工作船に逃げ切られた事件があり、海上保安庁法を改正し武器使用を定めた。 国連海洋法条約では、どこの国の船舶も他国の「領海」を通過する権利が認められているが、武力による威嚇や武力行使、兵器を使う訓練、沿岸国の防衛・安全を害する情報収集や測量、通関の法令に反する物品や軍事機器の積み降ろし、漁業などの行為は禁じられている。 こうした有害な行為を防止するために沿岸国は自国の「領海」内で必要な措置を取ることができる。 ただし海洋法条約は軍艦が沿岸国の法令を守らず、順守の要請を無視した場合には「沿岸国はその軍艦に対し領海から直ちに退去することを要求できる」と定められているだけだ。 軍艦を拿捕すれば戦争になる公算が高いためだろう。 海上保安庁の武器使用や執行権限もこうした海洋法条約に準じて定められている』、なるほど。
・『「国際法違反」だが中国側に反論の余地なくもない  一方で海警法の場合は、軍艦に対しても「退去の命令」だけでなく必要に応じ「強制措置」をとることができると解釈される。 さらに、中国の「管轄海域」は、「領海」内だけでなく、陸地から200海里の「排他的経済水域」内や、中国(当初は蒋介石治下の中華民国)が管轄権を主張してきた、南シナ海ほぼ全域で、中国国内法で違法となる行為に対して武器使用をする可能性もある。 こうしたことから「中国の海警法は国際法違反」と日本を含めて多くの国では受け止められている。 だが、2001年に起きた九州西方海域での北朝鮮工作船撃沈事件では、海上保安庁も国際法違反と批判されてもおかしくないことをしている。 この時には、北朝鮮の工作船は日本の領海には全く入っておらず、海上保安庁は工作船の発見当初から「漁網を積んでいない。不審船だ」と発表し、巡視船は追跡して射撃し、相手が反撃すると「正当防衛」として、20ミリ機関砲弾187発を撃ち込んだ。工作船は自沈、約20人の乗組員全員が死亡した。 政府は「日本の排他的水域内で漁業をしている漁業法違反の疑いがあるため停船を命じたが、逃走したため船体射撃を行った」と説明した。 だが初めから「漁船ではない」と言いながら、追跡して公海上で射撃、撃沈したのは、国連海洋法条約と海上保安庁法に違反する疑いがある行動だった。 おそらく中国側は、仮に海警法の下で「管轄地域」を航行する日本の船舶を、武器を使用して拿捕しても、「貴国もかつて同じことをし、合法と言ったではないか」と反論するのではないか』、「北朝鮮工作船撃沈事件
」はこの記事で思い出したが、確かに日本側の行動には行き過ぎもあったようだ。「中国側」が正当化の根拠に引用する口実を与えたのは、まずかった。
・『巡視船の「強弱」を論じる無意味 戦いになれば軍隊の出番  2010年9月尖閣諸島海域での中国漁船と海上保安庁の巡視船の衝突は、事件以降、日中関係は悪化し、巡視船の建造競争の様相を呈している。 中国海警局が保有する船艇は大小合わせて523隻で、うち外洋用巡視船は87隻(12隻は海軍から払い下げの中古)、海上保安庁は大小373隻でうち外洋用巡視船は57隻だ。 米国の沿岸警備隊は大小340隻で外洋用の巡視船は25隻しかない。海上自衛隊の護衛艦は48隻だ。中国と日本は他国とは段違いの規模の海上警察隊を持つことになっている状況だ。 建造される巡視船は次々と大型化し、中国の最新型2隻は米海軍の「タイコンデロガ」級巡洋艦(満載1万117トン)をしのぐ1万2500トンの巨大巡視船だ。 日本も6000トンないし7300トン級の新鋭大型巡視船を6隻持ち、さらに3隻を建造中だ。 中国の大型巡視船は射程10キロの3インチ(76ミリ)砲1門を装備している。それを日本では新たな脅威のように言う人もいるが、日本の大型巡視船はそれに匹敵するスウェーデン製の40ミリ機関砲2門と20ミリ機関砲2門を装備している。 40ミリ機関砲の有効射程は10キロで、1分間に330発を発射できる。目標の動きを追って砲が自動的に目標に向かい、命中弾を浴びせ続ける火器管制システムもあるから、76ミリ砲1門の中国の超大型巡視船と優劣はつけがたい。 中国が巡視船を超大型化しても砲1門では東シナ海での戦力バランスを大きく変える実効はありそうにない。 超大型巡視船を建造したのは、大量の燃料などを積んでソマリア沖の海賊対処など遠隔地に派遣して世界に力を誇示するためかと思われる。) そもそも日中が巡視船の増強をしても、万が一、日中の巡視船が交戦する事態になれば、中国側は海軍や空軍が、日本側は海・空自衛隊が出動するだろう。場合によっては日米安保条約(5条)によって米軍が加わる可能性もある。 日本と中国の巡視船だけが戦闘することを想定して強弱を論じるのは無意味だ』、「日本と中国の巡視船だけが戦闘することを想定して強弱を論じるのは無意味だ」、その通りだ。
・『重要なのは日中で紛争拡大を防ぐ取り組み  日中の軍と軍が衝突する事態となれば、日中ともが大きな打撃を受ける。 世界最大の貿易国である中国にとり、太平洋・インド洋の航行の自由はまさに「死活的利益」であり、その確保のためには日本、米国との軍事衝突は避けたいのが本音だろう。 14年11月10日、当時の安倍首相は北京で習近平国家主席と会談した。 その3日前に尖閣諸島を巡って双方が「異なる見解」を持つのを認め合う合意事項を発表、玉虫色の表現で事実上の棚上げをし、「戦略的互恵関係」に戻ることで合意した。 東シナ海で日中の巡視船や艦船の偶発的な衝突が起きるなどの不測の事態に備え「海上連絡メカニズム」の運用開始を進めることも決まった。 だがいまだにそれは完成していない。そうした紛争拡大を防ぐ冷静な取り組みが優先されるべきだ。 中国と日本が巡視船の増強を競い、強硬な法令を制定し合って対立を激化させるのは、お互いの安全保障にも逆行すると案じざるを得ない』、「海上連絡メカニズム」のような「紛争拡大を防ぐ冷静な取り組みが優先されるべきだ」、同感である。
タグ:尖閣諸島問題 (その7)(中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的、中国「海警法」への過剰反応が かえって武力衝突リスクを高める理由) 日経ビジネスオンライン 「中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的」 香田洋二・元自衛艦隊司令官(海将) 「中国海警局による武器使用は海警法の本質ではありません。この本質は、海警局の船が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動を取る可能性が高まったことです」、 「武器については、日本の海上保安庁も一定の条件を満たせば警察官職務執行法を準用して使用することが認められています」、 「中国が海警法を施行したのを奇貨として我々が考えるべきは、武器使用という「木」ではなく尖閣諸島をいかに守るかという「森」なのです」、さすがプロらしい適格な指摘だ 「習近平強軍思想を徹底し、新時代の国防と軍隊建設の需要に応える」、穏やかではなさそうだ。 「軍艦と公船は治外法権を持つとする国際ルールがあります。外国の法の適用は受けないということです。 であるにもかかわらず、海警局の艦船が取る行動に日本の法律を「適用できる」と強弁すれば、国際法をないがしろにすることになります。中国が南シナ海において「九段線内に中国の主権が及ぶ」と主張するのと同じことになります」、日本政府の現在の解釈は、国際法からみても極めて問題が多いようだ 「日本政府の今回の説明を援用すれば、中国は「米海軍の軍艦が中国の法律に違反したので危害射撃を加えてもよい」と主張できることになります」、日本政府の法解釈は余りにお粗末だ 「EEZにおいて何が許されて何が許されないのか、国連海洋法条約がそれを定めています。そして、同条約はどの国も内容を理解している。だからこの条約の範囲内で解決を図るべきなのです。そこに国内法を持ち込めば収拾がつかなくなってしまいます」、確かに「国連海洋法条約」「の範囲内で解決を図るべき」 「憲法9条の解釈をめぐる国内事情に気を配るあまり、肝心の尖閣諸島防衛と国際ルールの順守が脇に追いやられているのです」、困ったことだ 「自衛隊法には平時の「警戒・監視」が任務として定められていない」のは、警察の任務だからで、あえて「自衛隊」が乗り出す必要はない 「憲法9条の解釈をめぐる神学論争を脇に置き、国際ルールを順守した尖閣諸島のあるべき防衛態勢を実現すべく今こそ真剣に考えるべき」、その通りだ ダイヤモンド・オンライン 田岡俊次 「中国「海警法」への過剰反応が、かえって武力衝突リスクを高める理由」 「何が本当は危険なのか」、どういうことだろう。 「海上保安庁」と「海上自衛隊」は「共同に対処する機会が増えて“和解”が進んだ」、結構なことだ。 「国境警備隊や海上警察などを軍隊と区別することが、安全保障上の一つの知恵になっているといってもいい。 課題はあるにしても、すでに海上保安庁と自衛隊との連携体制が相当できているなかで大きな火種を作りかねない過剰な対応は避けるべきだろう」、同感である 「北朝鮮工作船撃沈事件 」はこの記事で思い出したが、確かに日本側の行動には行き過ぎもあったようだ。「中国側」が正当化の根拠に引用する口実を与えたのは、まずかった。 「日本と中国の巡視船だけが戦闘することを想定して強弱を論じるのは無意味だ」、その通りだ。 「海上連絡メカニズム」のような「紛争拡大を防ぐ冷静な取り組みが優先されるべきだ」、同感である。
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韓国(文在寅大統領)(その8)(韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ、韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練 元駐韓大使が解説、レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論) [外交]

韓国(文在寅大統領)については、昨年12月26日に取上げた。今日は、(その8)(韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ、韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練 元駐韓大使が解説、レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論)である。

先ずは、本年2月3日付け東洋経済オンラインが転載したソウル新聞「韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/409182
・『1997年3月。韓国海軍が日本と対等な軍事力を持つために野心を持って準備していた「韓国型航空母艦」導入計画は、韓国国防省と合同参謀本部の反対に直面した。当時の金泳三大統領は、韓国の海軍戦力が日本の10%にすぎないため、基準排水量で2万トン級の軽空母と6隻の駆逐艦からなる空母戦団を編成するよう指示していた(日本の海上自衛隊護衛艦「いずも型」の基準排水量は1万9950トン)。 合同参謀本部などが空母建造に反対した表面的な理由は、「周辺国の軍備増強を引き起こし、地域の安全保障を揺るがしかねない」というものだった。ところが、軍首脳部のホンネは、陸軍中心の合同参謀本部は「当面は北朝鮮に対応する方向で軍事力建設を集中すべき」だった。そのため、空母建造に強く反対した。このとき出たのが、「朝鮮半島不沈空母論」だった』、「韓国型航空母艦」導入計画が「1997年」に出ていたとは初めて知った。「朝鮮半島不沈空母論」とは何なのだろう。
・『23年前の「不沈空母論」が開発のネックに  一方、中国と日本は周辺国が反対するにもかかわらず、空母建造計画を進めていた。とくに中国は、「遼寧」(基準排水量5万3000トン)「山東」(同推定5万5000トン)の2隻の空母を建造し、今や3隻目の空母を準備中だ。これまでアメリカが支配していた太平洋において、力の均衡を崩そうというものだ。中国はアメリカと対等な軍事力を確保するため、4つの空母戦団を編成する方針だ。 2020年12月11日、韓国国会の国防委員会予算審査小委員会。韓国型空母の設計費101億ウォン(約9億4500万円)の代わりに、着手金10億ウォン(約9400万円)だけを確保してほしいとする海軍と防衛事業庁の要請に野党側が強く反対した。「高い維持費に見合うだけの北朝鮮に対する抑止力を持たない」「朝鮮半島は不沈空母だ」という論理が出されたのだ。23年前と同じ論理が出されたことになる。 さらには、「韓国を取り巻く安全保障の現実からいえば必要がない」という意見まで出た。これには海軍が衝撃を受けた。与党内でも一部反対の声が出てしまい、結局、2021年の空母関連予算は1億ウォン(約940万円)にまで減額されてしまった。 ところが、状況は一気に反転する。合同参謀本部は2020年12月30日に合同参謀会議を開き、韓国型空母建造事業について研究開発、または購入するという決定を下した。軍首脳部は軽空母を建造するという計画について「安保上のリスクに対応する未来の合同戦力」と評価し、事業推進を決めた。) これにより、2021~2025年の国防中期計画に韓国型空母建造事業が含まれる可能性が高まった。2021年、防衛事業庁はこの事業の妥当性の分析を、海軍は空母建造と艦載機となるF35B導入に対する細部計画を準備する。事業が順調に進めば、来年2022年に基本設計が始められる。 海軍は23年前の経験を踏まえ、合同参謀本部をどのように説得したのだろうか。海軍は予算の大幅削減でショックを受けたものの、歴史的偉人を利用し反論した。一人は儒学者の李珥(イ・イ、1536~1584年)、もう一人は李朝の宰相だった柳成龍(リュ・ソンリョン、1542~1607年)だ。 李は1592年の文禄の役(~1593年)が始まる10年前に、「10万人の兵士を育成すべきだ」と主張した人物だった。しかし、「国がこれだけ平和なのに戦争なんて起きるものか」と大批判を受けた。また柳は豊臣軍に抵抗して戦功をなした人物であり、その史書「懲毖録」(ちょうひろく)で「事前に戦争を防ぐことができなかったことを反省すべきだ」と書いている』、「海軍は予算の大幅削減でショックを受けたものの、歴史的偉人を利用し反論」、歴史sw反論するとは巧みだ。
・『史実を利用して開発計画を承認させた海軍  中国と日本の海軍力は韓国より優位に立つ。海軍首脳部は「周辺大国レベルまで到達するのは難しいが、少なくとも抑止力は保有すべき」と訴えた。20年超の空母建造反対の理由とされていた「朝鮮半島不沈空母論」も、積極的に賛成理由として利用したという。1950年の朝鮮戦争の経験を取り上げたという。 戦争当初、韓国での飛行場運用は事実上不可能な状況であり、空軍戦闘機は日本から出撃していた。しかし、1時間超の時間をかけて対馬海峡を越えてきた戦闘機の作戦時間は、わずか15分だった。一方、アメリカ海軍の空母から出撃した戦闘機は出撃して5~10分で地上軍支援が可能だった。 韓国のF15K戦闘機の作戦時間は、竹島(韓国名・独島)の上空まで30分、中韓で所有権を争う離於(イオ)島(中国名・蘇岩礁)で20分だ。KF16戦闘機の場合、それぞれ10分と5分にすぎない。空中給油機を導入した場合、F15Kであれば竹島上空での作戦時間が90分程度に増え、最新戦闘機となるF35Aの導入も決定されているが、これ以上の空中戦力の追加は限界がある。これを補うことができる未来の戦力が空母なのだと海軍は主張した。 韓国政界では、原子力潜水艦を導入せよとの声が高まっている。しかし、これには韓米原子力協定が先決条件となり、軽空母とは作戦上の性格が違うと海軍は説明する。例えば戦車と自走砲の性格が違うように、原子力潜水艦と空母は目標がまったく違うということだ。とくに空母は、存在自体が戦争抑止力と外交力の確保につながるのだと海軍は説明する。 一方で、韓国の国力に軽空母は浪費と反対する声もある。しかし、韓国より軍事力や経済力が低いとされるイタリアやブラジル、タイなどがすでに軽空母を保有している。海軍は合同参謀本部に「空母建造には10年以上かかる。建造費を分散させれば、国防予算内で十分に支援できる」と積極的に説明しているようだ。(韓国「ソウル新聞」2021年1月29日)』、無駄な装備の典型で、軍人のおもちゃだ。しかし、「イタリアやブラジル、タイなどがすでに軽空母を保有」というのが、保有論への後押しとなるのだろう。「空母」の仮想敵国は、日本なのではあるまいか。自衛隊にはヘリコプター空母であり護衛艦として、ひゅうが型、いずも型があるが、戦闘機搭載可能に改装するのだろうか。日本にとっても、無駄だ。

次に、3月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練、元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/265163
・『約5年ぶりに米韓2+2が実現  米国のトニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官は3月15~17日の日程で訪日した後、17日から1泊2日の日程で韓国を訪問することで日程調整しているという。韓国では鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相、徐旭(ソ・ウク)国防相と「2+2(外務・国防相)会議」が実現する見込みである。米韓による2+2は2016年10月にワシントンで開催されたのが最後であり、約5年ぶりのことである。 中国や北朝鮮などの「レッドチーム」入りを言われている韓国は、これまで日本ばかりでなく米国からもスルーされてきており、日米豪印の4カ国首脳会談にも参加しない見通しである。そうした中で、2+2が開かれる見込みとなったことで、文在寅政権はホッと胸をなで下ろしていることであろう。) 米韓関係では、さらに良いニュースが飛び込んできた。米国務省のプライス報道官は8日の定例会見で「昨日、米国と韓国との交渉団は6年分の新たな防衛費分担金特別協定(SMA)の草案に対して合意に至った」と発表した。同報道官は、米国はトランプ政権の時のような要求はしないのかと問われ、「韓国はわれわれの同盟、過酷な要求はしない」と述べた。 国防総省のカービー報道官も分担金交渉の妥結が「同盟と共同防衛を強化するものと期待する」と述べた。さらに「今回の合意は自由で開かれたインド太平洋地域と北東アジアで、米韓同盟が平和と安保、安定の核心軸(linchpin)であるという事実を再確認するものだ」と述べ、この合意を歓迎した。 しかし、米韓関係が平穏な方向に向かっているように思われる出来事は、むしろ米国が韓国に対し、同盟としての役割を高めることを求める最初のステップだと考えていいのではないか。 それはカービー報道官の「米韓同盟がインド太平洋と北東アジアの平和と安保、安定の核心軸」という言葉に反映されている』、「米韓による2+2は・・・約5年ぶり」、とはずいぶん冷え切っていたようだ。「米国が韓国に対し、同盟としての役割を高めることを求める最初のステップ」、とはさすが深い読みだ。
・『米国の北朝鮮政策の再検討に 文政権はついていけない  米バイデン政権は北朝鮮への対応の再検討を行っている。これまでの対応では北朝鮮の核・ミサイル開発を抑制することはできなかった。これまで手をこまねいている間に北朝鮮の核・ミサイル開発は後戻りできないほどに進んでしまった。そうした北朝鮮に対して、いかに圧力を高めていくか極めて難しい選択になるだろう。 半面、北朝鮮の経済は極めて困難な状況にある。1995年前後に100万人ともいわれる餓死者が出た状況に酷似しているとさえいわれる。北朝鮮経済が正常化するためには核・ミサイル開発を放棄し、劣悪な国内の人道問題を改善することで、国際社会の支援を引き出す以外ない。 北朝鮮のひっ迫した状況は、外部からの圧力に対する抵抗力を弱めているであろう。したがって日米韓はそこに問題解決の可能性を見いだしたい。同時に金正恩総書記は政権の崩壊を恐れ、外部からの圧力の強化にどのような形で反発してくるか、予測が難しく、軍事的衝突に発展する可能性も排除できないかもしれない。こうした命題に対処し、北朝鮮の行動を抑制するためには、日米韓の極めて緊密な連携と協力が必要である。 しかし、韓国は相変わらず、北朝鮮は非核化する意思がある、などと非現実的なことを言い、世界を惑わしている。また、トランプ大統領と金正恩総書記が行ったシンガポール首脳会談の状況に立ち戻り、米朝関係を再構築することを求めている。だが、シンガポール会談は、北朝鮮に核・ミサイル開発の時間稼ぎをさせただけで、失敗であった。 それでも韓国としては、北朝鮮を支援することで、当面の衝突を回避し、あわよくば両国の協力関係を強化することを狙っているようだ。 こうしたデリケートな問題を、今回の米韓2+2でどこまで議論できるか。おそらく韓国には米国の求める方向での議論の用意はできていない可能性が高い。特に文政権は、今年4月のソウル市長選挙はじめ国内の腐敗、土地政策、雇用問題にかかりっきりであり、北朝鮮が強く反発する問題に応じることはできないであろう。 こうした韓国の姿勢に米国はどこまで我慢ができるのだろうか』、「バイデン政権」は「トランプ」よりは忍耐強いだろうが、それでも限界がある筈だ。
・『米韓関係は軍事的にも手詰まり感  米韓連合軍は8日から今年上半期の合同演習を開始した。しかし、今年も実際の兵力や装備を大掛かりに動員する野外演習(FTX)ではなく、コンピューターシミュレーションによる指揮所訓練(CPX)となる。韓国軍は、訓練が始まったことは公表したが、「同盟」などの言葉が含まれた訓練の正式名称を含む具体的な進行状況などについては一切公表せず、関連する写真も配布しなかった。 これとは対照的に米国と日本は大規模機動訓練の頻度を大幅に増やしている。米国のインド太平洋軍によると、米海軍の空母「セオドア・ルーズベルト」を中心とする空母艦隊は、グアム沖合の西太平洋で日本の海上自衛隊と機動訓練を行った。自衛隊は1年で合計38回、延べ日数としては406日間米軍と共同訓練を行った。 韓国軍は訓練規模が縮小した理由としてコロナを挙げているが、日米の訓練を見るとそれはあくまでも口実にすぎないことがよくわかる。韓国統一部は「韓米合同訓練が柔軟かつ最小限の形で行われているだけに、北朝鮮もわれわれのこのような努力に相応する態度を示してほしい」と述べ、これが北朝鮮の顔色をうかがったものであることを明らかにしている。 米韓間で大規模な合同野外演習は2年間行われていない。韓国の徴兵された兵士の任期が1年半であり、在韓米軍の兵士の任期が1年であることから、既に米韓連合軍の実戦能力が低下していることは避けられないだろう。韓国の態度は米国が求める「北東アジアで米韓同盟が平和と安保、安定の核心軸」にはとても及ばない。 米韓は合同訓練を調整する過程では終盤まで隔たりがあり、先週半ばには全体の日程を確定できなかったほどだという。 先述の通り、今年上半期の合同演習が指揮所訓練方式で行われることになり、韓国軍の米韓合同軍の指揮能力に対する評価が今年下半期に延期された。これによって文在寅大統領の任期である来年5月までに戦時作戦統制権の韓国軍への移管手続きを終えることが現実的に不可能になったとして、8日付中央日報は、「文政権での戦時作戦統制権の移管が事実上白紙になった」と報じている』、「韓国の徴兵された兵士の任期が1年半であり、在韓米軍の兵士の任期が1年」、「米韓間で大規模な合同野外演習は2年間行われていない」、とすると、現在の米韓軍は「大規模な合同野外演習」、を全く経験してないことになり、戦力低下したことになる。
・『弱腰の韓国に中国は一層の圧力  バイデン政権はインド太平洋で対中ミサイル網の構築を進めている。これは対中包囲網が軍事分野にも本格的に拡大されることを意味する。専門家は、「中国のけん制のため日米韓協力が強調されており、米国のミサイル包囲網に韓国の参加を公式要請する可能性がある」という見方を示している。この場合、中国の反発は、THAAD(高高度ミサイル防衛システム)を配備した時よりもはるかに強いものになるだろう。 中国は1980年代から太平洋上の島と島を結ぶ「列島線」を引いて段階的に米軍などの活動領域を狭めようとする戦略「接近阻止・領域拒否」を進めてきた。第1列島線は沖縄-フィリピン-マラッカ海峡を、第2列島線はグアム-サイパン-パプアニューギニアを結ぶ線である。 中国は2020年代初頭までに第2列島線までを事実上「自分たちの庭」にしようとしてきた。米軍は第2列島線までの中国の進出を制止するため、第1列島線に沿って中国に対する精密攻撃ネットワークを構築しようとしている。 ブリンケン国務長官は「中国は21世紀最大の地政学上の宿題」と語り、「持ちうるすべての手段の動員」を公言した。2+2の会合時に対中ミサイル網への参加問題に焦点が当たる可能性もある。 文政権は中国から「三不政策」を約束させられている。「米国のミサイル防衛網への参加、THAAD追加配備、日米韓軍事同盟を行わない」というものである。中国とすれば、日米韓が一体となって対中包囲網を構築することは防ぎたい。そのため、最も弱い柱である韓国に集中的に圧力を加えてくる可能性が高い。 これまで、米中の間で方向性の定まらない態度を示した韓国。米国の対中政策の硬化は一層強い難題を突き付けることになった』、「文政権は中国から「三不政策」を約束させられている」、先ずはこの「約束」をホゴにさせることから始める必要がありそうだ。
・『米国は日本に対し日韓関係の改善を要求  米国の国務長官、国防長官が日本に次いで韓国を訪問するのは、日米韓の協力体制を立て直そうとする意図が背景にあるだろう。日韓では茂木敏充外相はいまだに鄭義溶外相と電話会談すら行っておらず、姜昌一(カン・チャンイル)新駐日大使は菅義偉首相ばかりか茂木外相とも面会していない。 こうした状況で一気に日米韓外相会談、国防相会談を行う機は熟していないが、今回米国側は日韓の橋渡し役を果たそうとするであろう。日本は米国と緊密に協力しているのに対し、韓国はふらふらしている。米国はまず日本に関係の立て直しを求めてくるだろう。そしてその返答をもって韓国の説得に当たるだろう。 日本としては、韓国の現在の国際法違反の状況を受け入れることはできず、歴史問題は韓国国内で処理するよう求めていくことを、改めて米国に伝えるべきであろう。ただ、米国の求める日米韓協力に対してゼロ回答もできないのではないか。 その場合、韓国が北朝鮮への無見識な歩み寄り姿勢を改め、日米韓協力に前向きであれば、日本は韓国と歴史問題でも話し合いを行う用意があることを米側に伝えることが一案として考えられるかもしれない。 日本にとって最悪なシナリオは、韓国が困窮極まりない北朝鮮に助け舟を出すことで生き返らせ、核・ミサイル開発を一層進めることである。日本は米国と共に、このような韓国の姿勢を改めさせるべきであり、それこそが国益にかなうと考える。 日本としては、中国、北朝鮮という2大脅威にいかに向き合っていくか、ということが地政学上の最大の課題である。韓国に対して、無意味な譲歩はすべきではないが、日本の置かれた状況を冷静に分析し対応することが求められている。それは日米韓協力に韓国をコミットさせることである』、「韓国」との関係を含め全面的に同意したい。

第三に、3月9日付けJBPressが掲載したフリージャーナリストの金 愛氏による「レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64395
・『文在寅政権後の有力な次期大統領候補の1人である与党「共に民主党」の李洛淵(イ・ナギョン)代表が、3月5日、江原道春川(チュンチョン)市の中央市場で、卵を投げつけられた。このニュースに接した国民はSNSで文政権と李代表を嘲笑い、「ざまを見ろ」「痛快だ」という反応を見せた。 2022年3月に大統領選挙を控える韓国。文大統領は任期最後の年に、国政掌握に失敗した「レームダック(死に体)化」をさらしている。世論調査で文大統領と共に民主党の支持率はかろうじて30%を超える程度で、文大統領を支持してきた30~40代の政権離れが顕著である。 支持率低下に対応するため、文大統領は外に向かって反日を叫び、国内では抗日を掲げて政権を掌握しようとしている。一方、日韓関係改善の「出口戦略」を目指す文大統領は今年になって日本への対話を申し入れると同時に、共に民主党は「親日派の所有する土地を没収する」という手口で「親日派狩り」を続けている。「二枚舌」と「嘘」を直す気は毛頭ないらしい。 李洛淵代表は、3月5日午後4時29分頃、春川市中央路にある中央市場に入った途端、待ち構えていた「春川中島遺跡保護本部」の女性会員Aさん(50代)に卵を投げつけられた。李代表の白いマスクに卵黄がべたりと付き、着ていたスーツにも卵液が飛び散った。李代表は足を止めてハンカチで卵液を拭くと、マスクを替え、上着を着替えた。 李代表に卵を投げたAさんは、「古代遺跡のある土地に観光地を作る」という計画に反対する団体に所属していることが明らかになった。Aさんは李代表が処罰を望まなかったため現行犯逮捕を免れた。韓国メディアがこのニュースを報道すると、国民はSNSで「ダチョウの卵を投げつけてほしかった」「文大統領に当たればよかったのに」「久しぶりに国民の鬱憤が晴れた」などの反応を見せた。おおむね「卵投げつけ事件」を歓迎するムードである』、なるほど。
・『文在寅政権が犯した失政の数々  李代表は韓国国会300議席中180近い議席を有する与党の代表で、有力な次期大統領候補でもある。李代表は元記者で東京特派員を経験し、国会議員時代には長年、日韓議員連盟で活動した。日本語を流暢に話し、日韓議員連盟の副会長を歴任するなど、“知日派”議員として知られている。2019年には文大統領が、李代表を対日特使に任命、悪化の一途をたどる対日関係の改善を直々に頼んでいる。その李代表に対する「卵投げつけ事件」が国民の注目を浴びている理由は何か。 現在、文政権に対する国民の怒りは極限に達していると言っても過言ではない。2021年3月、世論調査機関リアルメーター(Realmeter)は、文大統領の支持率が史上最低の34.1%と発表した。共に民主党の政党支持率も28.7%で最低値を更新。国民の心はすでに冷え、現政権を見限ろうとしているのだ』、「文大統領の支持率が史上最低の34.1%」、とは想像以上に底堅いようだ。
・『文政権が誕生して以降、韓国人の生活はより一層厳しさを増した。文大統領は2017年5月10日の大統領就任の辞で「国らしい国、一度も経験したことのない国を作る」と公約し、さらに「機会は平等、過程は公正、結果は正義の側に寄る」と宣言した。しかし、何ひとつ実現していない。 国民は経済的に貧窮し、公正や正義は高官たちの不正腐敗で跡形もなく消えた。新型コロナウイルスの拡散を防ぐ名目で、小さな店舗にも営業時間の短縮を強制し、自営業者を廃業に追い込んだ。また「積弊」と名付けた、朴槿恵前政権の時に日韓関係の改善を進めた人々に対する厳格な捜査を行った。 現に、徴用工訴訟の判決を引き延ばした容疑などでヤン・スンテ前最高裁判所長官を、慰安婦合意を主導した李丙琪(イ・ビョンギ)元駐日大使等を次々と逮捕した。さらに、釈放を求める世論が勢いを増しているが、反文在寅を掲げる保守党の李明博元大統領と朴槿恵前大統領をいまだ収監したままである。 ほかにも以下の失策が挙げられる。 ▲左派の雇用を無理やり創出、新規採用枠が激減し、20年ぶりに1カ月の失業者数が過去最高の157万人を記録  ▲憲法違反ではないかと批判を浴びている月城(ウォルソン)原子力発電所1号機の早期閉鎖と、産業通商資源部の「北朝鮮地域での原発建設推進方案」ファイルの削除  ▲文政権発足の一翼を担った活動家や左派たちが独占する太陽光事業  ▲所得主導型成長戦略とは真逆の最低水準となった所得分配と、経済二極化の加速  ▲税金増額につながると懸念されている共産主義的な医療政策「健康保険の保障性強化対策」、いわゆる「文在寅ケア」  ▲北朝鮮に過度な「屈辱外交」を行い、次の段階で徹底的に無視される  ▲24回にも及ぶ不動産対策を打ち出して不動産市場の混乱が加速、全国的な不動産価格が高騰』、これでは支持率低下は当然だ。
・『既成事実化しているコリア・パッシング  日韓関係に加えて、米韓同盟も危機に瀕している。外交関係者らの中には、当事者であるはずの韓国が議論から外される「コリア・パッシング(Korea passing)」が既成事実化していると考える人が多いようだ。 文政権は発足後、「2015年の慰安婦問題韓日合意破棄」「2018年韓国大法院(最高裁判所)のいわゆる元徴用工への賠償命令判決」「2019年日本製品不買運動」「2020年ソウル中央地方法院(裁判所)の元慰安婦への賠償命令判決」などで立て続けに日本を挑発し、「親日派のあぶり出し」と「親日派狩り」を続けてきた。菅義偉政権はこうした文政権を徹底的に無視している。 2021年に大統領に就任したジョー・バイデンと米国政府も北朝鮮と中国におもねる韓国を外して、日本との外交や安全保障協力、太平洋戦略の再編に注力している。日本が提唱し、米国が主導した「日米豪印戦略対話(クアッド)」の中国包囲網から韓国を除外した事実もコリア・パッシングを示していると言えるだろう。 韓国では、日米韓同盟関係が悪化の一途を辿れば、駐韓米軍の撤収という最悪のシナリオにつながりかねない懸念が広がっている。米韓同盟をないがしろにし、北朝鮮が望む「終戦協定」と「在韓国連軍の解体」に賛同してきた文政権を米国は無視しているのだ。 日米との関係を回復するため、どれほどの努力をしても足りない状況だが、その文政権の「親日派狩り」はとどまるところを知らない。3月1日には親日派の子孫たちが所有する土地を没収すると脅しをかけた。一方、韓国ではおよそ数万人の公務員が土地投機をした疑惑が持ち上がっているが、これに対するお咎めはない。親日派狩りで反日を煽る一方、身内が私腹を肥やすのは黙認する。ここにも文政権の二面性が垣間見られる』、「親日派の子孫たちが所有する土地を没収」、韓国の法律ではそんあことが可能なのだろうか。
・『文在寅政権は災いそのもの  「一度も経験したことのない国」。今、韓国人は文政権に対する挫折感と憤りで溢れている。ある国民は「文政権は、問題解決策を提案するどころか災いそのものだ」と非難する。 文政権は、大衆を反日に扇動し、北朝鮮や中国にすり寄って韓国を左傾化させながら、国内経済を破綻に導き、経済の二極化を加速させた。そして、これらの結果はすべてコロナのせい、前の保守政権のせい、親日派と日本のせいだと、「人のせい」にし続けている。李洛淵代表への「卵投げつけ事件」を歓迎する韓国人の姿を見ても、いま韓国は、まさに「反日」から「反文在寅」へ流れが変わっているといえそうだ』、「いま韓国は、まさに「反日」から「反文在寅」へ流れが変わっている」、事実であれば、喜ばしいことだ。
タグ:韓国 (文在寅大統領) (その8)(韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ、韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練 元駐韓大使が解説、レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論) 東洋経済オンライン ソウル新聞 「韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ」 「韓国型航空母艦」導入計画 「韓国型航空母艦」導入計画が「1997年」に出ていたとは初めて知った。「朝鮮半島不沈空母論」とは何なのだろう 23年前の「不沈空母論」が開発のネックに 「海軍は予算の大幅削減でショックを受けたものの、歴史的偉人を利用し反論」、歴史sw反論するとは巧みだ 史実を利用して開発計画を承認させた海軍 無駄な装備の典型で、軍人のおもちゃだ。しかし、「イタリアやブラジル、タイなどがすでに軽空母を保有」というのが、保有論への後押しとなるのだろう 「空母」の仮想敵国は、日本なのではあるまいか。自衛隊にはヘリコプター空母であり護衛艦として、ひゅうが型、いずも型があるが、戦闘機搭載可能に改装するのだろうか。日本にとっても、無駄だ ダイヤモンド・オンライン 武藤正敏 「韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練、元駐韓大使が解説」 「米韓による2+2は・・・約5年ぶり」、とはずいぶん冷え切っていたようだ 「米国が韓国に対し、同盟としての役割を高めることを求める最初のステップ」、とはさすが深い読みだ 米国の北朝鮮政策の再検討に 文政権はついていけない 「バイデン政権」は「トランプ」よりは忍耐強いだろうが、それでも限界がある筈だ。 米韓関係は軍事的にも手詰まり感 「韓国の徴兵された兵士の任期が1年半であり、在韓米軍の兵士の任期が1年」、 「米韓間で大規模な合同野外演習は2年間行われていない」、とすると、現在の米韓軍は「大規模な合同野外演習」、を全く経験してないことになり、戦力低下したことになる 弱腰の韓国に中国は一層の圧力 「文政権は中国から「三不政策」を約束させられている」、先ずはこの「約束」をホゴにさせることから始める必要がありそうだ 米国は日本に対し日韓関係の改善を要求 「韓国」との関係を含め全面的に同意したい JBPRESS 金 愛 「レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論」 文在寅政権が犯した失政の数々 「文大統領の支持率が史上最低の34.1%」、とは想像以上に底堅いようだ これでは支持率低下は当然だ 既成事実化しているコリア・パッシング 「親日派の子孫たちが所有する土地を没収」、韓国の法律ではそんあことが可能なのだろうか。 文在寅政権は災いそのもの 「いま韓国は、まさに「反日」から「反文在寅」へ流れが変わっている」、事実であれば、喜ばしいことだ
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日韓関係(その13)(日韓関係「再出発」の時 日本が兄貴分の時代は終わった、菅首相が離任する韓国大使との面会を拒否?後任大使も「外交欠礼」と驚き、文在寅が「慰安婦問題」で大博打へ…!日本からの「報復ブーメラン」で いよいよ万事休すか) [外交]

日韓関係については、昨年11月3日に取上げた。今日は、(その13)(日韓関係「再出発」の時 日本が兄貴分の時代は終わった、菅首相が離任する韓国大使との面会を拒否?後任大使も「外交欠礼」と驚き、文在寅が「慰安婦問題」で大博打へ…!日本からの「報復ブーメラン」で いよいよ万事休すか)である。

先ずは、11月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元外務審議官で日本総合研究所国際戦略研究所理事長の田中 均氏による「日韓関係「再出発」の時、日本が兄貴分の時代は終わった」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/254601
・『新政権の発足は外交関係修復のチャンス  新政権の発足は新しい政策を展開する大きな機会だ。 特に外交では首相交代期は、これまでの外交路線を吟味し、うまくいっていないと思われる政策について修正していく重要な契機になる。 典型が中曽根首相の訪韓だった。1983年1月首相に就任した直後、中曽根首相は電撃的訪韓をし、歴史教科書問題や韓国に対する政府借款供与の問題で悪化していた日韓関係を劇的に改善させた。 日韓関係は1965年の正常化以降最悪だといわれるが、日韓はともに東アジアで民主主義が根付き、米国との安全保障条約で結ばれている。日本にとって、韓国は18年連続で中国・米国に次ぐ第三の貿易相手国であり、また両国間の往来人数は1000万人を超える隣国だ。 最も重要な国の一つであることに疑問の余地はなく、菅政権の発足を日韓関係の再出発とする機会としなければならない』、反韓国の論調が多いなかで、「菅政権の発足を日韓関係の再出発とする機会としなければならない」との提言は貴重で、同感である。
・『文政権と安倍政権の相克 双方に信頼関係が欠落  日韓関係がここまで悪化した原因は何なのか。 最大の要因の一つは、文在寅政権と安倍晋三前政権の基本的な思想の違いだろう。 特に文大統領の支持基盤といわれる「86世代」(80年代の民主化運動に携わった60年代生まれの年代)は、分断された南北朝鮮の統一への思い入れがあり親北朝鮮、反米・反日の傾向が強い。 文政権はこのような世代の支持を受け、支持率が低下しても40%台の支持率を恒常的に確保している。 一方、安倍政権は「戦後体制からの脱却」「美しい国日本」を首相が標榜した保守政権であり、歴史問題などでも日本も主張すべきは主張しようという傾向が強い。 若い人々を中心に支持率は堅固で、選挙で勝ち続けた政権だった。 いつの間にか、日韓ともにお互い、強い主張をぶつけるべき相手となっていた』、確かに「文政権」と「安倍政権」では左派VS右派、と好対照だ。
・『個別案件が不信感に火を注いだ 被害者意識が時に強い反発に  日韓首脳のイデオロギー上の相克はあったものの、日韓の信頼関係が決定的に崩れたのは、2015年以降の慰安婦合意とその事実上の破棄、徴用工問題での韓国大法院判決、そして日本による半導体材料の対韓輸出管理の厳格化、それを受けた韓国側のGSOMIA廃棄問題を巡ってだ。 2015年の慰安婦合意については、日本国内では安倍首相の個人的な心情からすればよく踏み切ったものだという評価がされていたが、これが履行されず、事実上、崩壊することとなったことへの不満は強い。 元徴用工への大法院判決についても、韓国政府が、司法権には介入できないと判決を受け入れるかのような姿勢をとっているだけではなく、これまで一貫して日韓基本条約・請求権協定で「解決済み」としてきた立場を翻したものだという批判が強い。 日本政府内には、政府間の約束を守らずゴールポストを動かして条約の法的基礎を一方的に崩した韓国政府を相手にする必要はないという感情が充満した。 国民世論のベースでも、韓国に「良くない」イメージを持つ国民は2015年以降ほぼ一定で高いレベルに達している。 一方で韓国の対日感情も、もともと良くはなかったものの、2019年からこの1年間では急速に悪化の一途をたどっている。 おそらく同年7月の日本による半導体材料の対韓輸出制限措置が、政府だけでなく国民世論ベースにも大きな影響を与えたということだろう。 歴史的な経緯もあり、韓国では「“強い日本”からいじめられている」という意識があり、時にそれが日本に対する強い反発を生む。 日本政府は韓国の輸出管理が十分でないことを輸出規制の根拠に挙げているが、徴用工問題を巡る日本の報復措置だという印象を多くの韓国国民に植え付けたといってよい』、「半導体材料の対韓輸出制限措置」は経産省の思い付きだろうが、実効性に乏しく、自己満足的だったようだ。
・『「プロフェッショナルな外交」見られず 政権や一部勢力の反発を慮る  外交当局の間でも相互不信は強まっている。 韓国側の対応に起因することだと推察するが、日本の外務省ですらも韓国への嫌悪感を隠していない。 『外交青書』上の韓国に対する表現も、長年にわたり「価値や戦略的利益を共有する重要な隣国」という趣旨が盛られていたものが、ここ数年は単なる「隣国」あるいは「重要な隣国」という表現に留められている。 一方で、韓国側も「それなら我々は態度を改めよう」とはなっていない。むしろ現状では韓国側の日本に対する遺恨の念がますます深まってゆくことは想像に難くない。 プロフェッショナルな外交とは、国内世論が喝采する主張を発することではなく、国益にかなう結果を作り出す作業だ。 しかし残念ながら、今の日韓関係はそれぞれ外交当局が国内の反発などを慮り、いわば国内事情を人質にとられている状況で関係改善の動きがとられていない状況だ。 大統領制の韓国で大統領が持つ権威は大きいが、前述したように86世代を支持基盤にする文政権は日本に歴史問題で少しでも譲歩するような姿を示すことに抵抗が強い。 近年、政策決定プロセスにおける青瓦台(大統領官邸)の力は外交問題でも圧倒的となっており、外交通商部によるプロフェッショナルな意見具申は通りにくく、国内政治的な力学が強く働くと言ってもよいだろう。 議院内閣制の日本でも、近年、官邸の力が強まり、霞が関の幹部人事も差配されるようになっている。 そういう状況である以上、外務省は官邸と異なる意見を具申することには臆病にならざるを得ないということなのだろうか。それだけではなく、官邸の方針を忖度(そんたく)する結果、関係改善のため知恵を出して動くといった姿勢も感じられない』、「政策決定プロセスにおける青瓦台(大統領官邸)の力は外交問題でも圧倒的となっており、外交通商部によるプロフェッショナルな意見具申は通りにくく」、「日本でも、近年、官邸の力が強まり、霞が関の幹部人事も差配されるようになっている。 そういう状況である以上、外務省は・・・官邸の方針を忖度(そんたく)する結果、関係改善のため知恵を出して動くといった姿勢も感じられない」、日韓とも通常の外交チャネルが機能不全となっているようだ。
・『日韓共同世論調査では関係改善を求める声が多数  ところが興味深いのは、2020年の言論NPOと韓国東アジア研究院の共同世論調査では、韓国国民の82%、日本は約48%が「日韓関係は重要だ」としていることだ。 「重要でない」とするのは韓国の13%、日本の21%に過ぎず、関係改善に努力すべきという声が多数を占めている。 このことから思うのは、むしろ青瓦台や首相官邸が関係改善に向けて動くことは国内支持率を下げてしまうという思い込みが強すぎるのでは、ということだ。 あるいは世論全体の雰囲気というより、韓国の左派勢力、日本の保守勢力を慮るゆえに、両国政府が動くのにちゅうちょしているのではないか』、「日韓関係は重要だ」とする「国民はやはり「韓国」の方が多いようだ。
・『等身大で相手を見なければならない協力の可能性を示す「Nizi Project」  私が外務省のアジア大洋州局長だった2002年に韓国はGDP(国内総生産)で日本の7分の1だったが、今はその差が3分の1程度まで縮小し、1人当たり国民所得では肩を並べる存在となった。 企業も、例えばサムスンやLG、現代自動車といった韓国の大手企業は高い競争力を持つ世界のグローバル企業に育っている。従来のように日本がほぼすべての経済指標で優位に立ち、「兄貴分」として振る舞った時代は終わったのだ。 経済で言えば、今、求められる日韓関係とは双方がしのぎを削って競争するという図式ではなく、相互を補完し協力してグローバルに進出していくという図式なのだろう。 実際に日韓の第三国における共同プロジェクトは近年、飛躍的に増え、日本の精緻な素材生産技術と韓国の優れた商品化能力は協力し合い世界的トップの製品を生み出している。 また韓国の大企業はグローバルに展開する際、日本の銀行からも融資を受け日本の信用力を支えにしている。 エンターテインメントの世界でも日韓協力の可能性を示すプロジェクトが始まっている。 韓国の世界的な歌手・ダンサーであるJ.Y. Park氏らが企画した「Nizi Project」は日本各地でおよそ1万人の応募者の中から13人を選抜し、韓国で6カ月間の研修を実施し、最終的に9人のガールズ・グループをデビューさせるというプロジェクトだ。 日本の集団として“和”を重視する傾向と、徹底して“個”を磨こうとする韓国のアプローチが相互に作用し、世界に通用するグループを育成できるというわけだ。 韓国は国内マーケットが必ずしも十分大きいわけではないので、最初から世界に通用する人材を育てようとするし、日本はそれなりに大きな国内マーケットなので、むしろ和を乱さない人材を育成しようとする。 そうした日韓のマーケットや文化性の違いから、これまでのアーティストとは違う二国の良さを取り入れた新グループ“NiziU(ニジュー)”として、12月にメジャーデビューするという。 今後このグループが日韓双方で、また世界でどう評価されるのかは楽しみだ』、「1人当たり国民所得では肩を並べる存在となった」以上、「日本が」「兄貴」風を吹かす訳にはいかなくなった。対等の立場で、お互いの強味を生かして協力してゆくべきだろう。
・『日韓関係を再出発させる時期が来た コロナでの協力や東京五輪開催を契機に  日韓が信頼関係をとり戻すには、まずは相手を等身大で見て、日韓双方が相手の粗探しをするのではなく、優れた点を評価する姿勢を持つことだ。 新型コロナウイルス感染拡大でも韓国は早期の感染防止に成功したといわれ、日本も欧米などに比べれば感染者・死者ともに圧倒的に少ない。両国ともコロナ感染防止をしつつ経済回復を図るという難しい局面に来ているが、もし日韓がこの難しいプロセスを加速化するための協力ができれば、おそらく国際社会からは、その日韓関係を新たな「東アジアの奇跡」と評されることになるのだろう。 コロナだけでなく、2021年夏に開催される東京オリンピック・パラリンピックもそうした日韓の信頼関係回復の機会になり得る。 考えてみれば、1988年ソウル五輪、2018年平昌(ピョンチャン)冬季五輪はいずれも世界史に残る五輪になった。ソウル五輪は韓国を国際社会の中の揺るぎない存在とするきっかけとなったし、平昌冬季五輪は南北首脳会談、米朝首脳会談に道を開いた。 ソウル五輪の時に私は外務省の担当課長として日韓のテロ対策チームを立ち上げ、金大中拉致事件以降関係を断っていた日韓の治安当局の協力が実現したことが思い出される。 来年の東京五輪が、日韓両国政府の協力関係再出発の契機となることを心から期待したい。 年内中の開催がいわれている韓国での日中韓サミットに菅首相は参加するべきだし、首脳レベルでの日韓関係の重要性・将来に向けての揺るぎない協力関係の再確認ができれば、個々の懸案解決は決して難しいことではない。 双方の外交当局もお互いを満足させるような解決策を導き出す知恵を持っているはずだ』、日韓がいがみ合っている様子は欧米諸国には理解し難い筈だ。「東京五輪が、日韓両国政府の協力関係再出発の契機となることを心から期待したい」、同感である。

次に、1月18日付けRecord China「菅首相が離任する韓国大使との面会を拒否?後任大使も「外交欠礼」と驚き」を紹介しよう。
https://www.recordchina.co.jp/b868067-s0-c10-d0058.html
・『2021年1月18日、韓国・世界日報は、菅義偉首相が離任する南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使との面会を「事実上拒否した」とし、「外交欠礼問題が浮上している」と伝えた。 記事によると、南大使は16日に韓国に帰国。菅首相が南大使の離任前に調整していた面会は見送られた。日本政府関係者は「慰安婦問題をめぐる韓国裁判所の賠償判決などを考慮し、面会が保留された」と説明したという。 一方、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は14日、離任する冨田浩司駐韓日本大使と面会し、日韓関係改善への意思を明らかにしていた。記事はこれについて「対照的な対応だ」と指摘している。安倍晋三前首相も2019年4月、離任する李洙勲(イ・スフン)韓国大使と面会した。南大使の後任に内定している姜昌一(カン・チャンイル)氏は17日にソウルで行われたオンライン記者懇談会で、「菅首相が南大使と面会しないことは外交欠礼だ」との指摘に対し「私もそう思う」とし、「なぜあいさつができなかったのか、面会できなかったの分からない」と述べたという。 これに韓国のネットユーザーからは「日本は器が小さい」「いくら嫌いでも外交の慣例なのに。本当に失礼」「こんな日本とはしばらく距離を置いた方がいい」など日本への批判の声が続出している。 一方で「『韓国とは親しくしたくない』という意思表示。これが現実だ」「日韓関係が最悪なのだから会ってくれなくて当然」「この程度で外交欠礼?。中国では文大統領が滞在中ずっと1人で食事をさせられたこともあった」「文政権が『未来志向的』と言うのは矛盾では?」などと指摘する声も寄せられている』、「菅義偉首相が離任する南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使との面会を「事実上拒否した」」、「一方、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は14日、離任する冨田浩司駐韓日本大使と面会し」、いくら「「慰安婦問題をめぐる韓国裁判所の賠償判決」などがあったとしても、明らかに「外交欠礼」だ。「菅首相」に外交プロトコルの基本をレクチャーする勇気がある 外務官僚はいないのだろうか。

第三に、1月27日付け現代ビジネスが掲載した元駐韓国特命全権大使で外交評論家の武藤 正敏氏による「文在寅が「慰安婦問題」で大博打へ…!日本からの「報復ブーメラン」で、いよいよ万事休すか」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/79631?imp=0
・『追い詰められた文在寅  韓国大統領の文在寅氏が日韓関係修復に乗り出した。その発端が昨年の国家情報院長訪日と韓日議連会長訪日時に関係改善の意思を伝えてきたことである。 その意思をさらに明確に示したのが、1月18日の年頭記者会見における慰安婦問題判決に関する判決に「困惑している」とする一連のコメントである。 文在寅氏が日韓関係改善の意向を固める最大の要因となったのが、バイデン氏の大統領当選とこれに続く新政権の成立である。バイデン氏への政権移行が進む中、明らかになったことは、バイデン氏はトランプ氏と異なり、非核化への展望なく金正恩氏とのトップ会談に応じることは考え難く、これを支えるスタッフは実務経験を積んで北朝鮮に対しては厳しい見方を持っているということである。 そうした中で文在寅氏は、短期間に朝鮮半島問題で成果を出すには米国の要求に応じ、米国と協力する姿勢を取るほかないとの状況認識を持つに至ったのであろう。 米国はアジア外交で最も重視する中国封鎖戦略にあたって日米韓の連携強化が必要と考えている。そのため文在寅氏としては、日本との関係修復は不可欠と考えたのであろう。米国のこうした戦略に乗り、米韓関係を強化する中で米朝関係にも取り組んでもらおうとしているのである』、「文在寅氏が日韓関係改善の意向を固める最大の要因となったのが、バイデン氏の大統領当選とこれに続く新政権の成立である」、日本にとっても、いいチャンスだったのに、見逃したのは残念だ。
・『文在寅に正義連を捨てる「覚悟」はあるのか  文在寅大統領は1月21日、自らが主宰した安全保障会議(NSC)で「朝鮮半島を含めたインド太平洋地域の秩序が急激な転換期に入りつつある」と述べた。米中に対して中立的な姿勢で臨んできたこれまでの姿勢の転換を示唆しているのかも知れない。 文在寅氏が日韓関係改善のシグナルを送っても、日本政府の姿勢は冷ややかである。文在寅氏はそれでも日本と慰安婦問題を外交的に解決しようとするであろう。ただ、その最大の障害が正義連・挺対協であることをいまだ認識していない。 これまで慰安婦問題解決の最大の妨げとなってきたのが正義連・挺対協である。文在寅氏が日本と妥協を図ろうとしても抵抗し、再び妨害するであろう。正義連・挺対協と手を切る覚悟ができた時に、問題の外交的解決の道も見えてくるであろう。 文在寅氏は1月18日の年頭記者会見で、慰安婦問題の判決に対して「正直困惑している」と述べ、2015年の合意についても政府間の公式合意であったことを認めて「(合意を土台にして)おばあさんたちも同意できる解決方法を探していけるよう韓日間で協議している」と述べた。 この発言は、文在寅氏の側から見れば、同合意を「真実と正義の原則に背き、内容と手続きも共に誤り」としていた見解からの大転換であり、韓国側の大幅な譲歩に応え、日本側も歩み寄ってほしいと考えていたのではないだろうか。 しかし、日本側は従来の姿勢を変えなかった』、「正義連・挺対協と手を切る覚悟ができた時に、問題の外交的解決の道も見えてくるであろう」、これは明確なメッセージとして伝えておくべきだろう。
・『日本からの「報復」  日本側は文在寅氏が2015年の合意を公式合意としたことは一歩前進と評価しつつも「問題解決に向けた具体策は示さなかった」「解決案を注視する」といった従来の主張を繰り返し、「具体的行動がなければ日韓関係の改善はない」と強調した。 日本の茂木外相は1月23日、慰安婦判決が確定した時点で「外務大臣談話」を発表して、「国際法上、国家主権を有し、互いに対等な存在であることから、原則として、外国の裁判権に服することはない」「(この判決は)極めて遺憾であり、断じて受け入れることはない。韓国に対し、国家として自らの責任で直ちに国際法違反の状態を是正するために適切な措置を講ずることを改めて求める」との日本政府の立場を明らかにした。 そのため韓国政府は、1月23日さらに一歩進んで「政府レベルでは日本に追加請求しない方針」と表明した。 その一方で日本に対しては、外交的論争が避けられない法的賠償の代わりに「自ら表明した責任痛感と謝罪反省の精神に立脚して被害者らの名誉・尊厳回復と心の傷の治癒に向けた真の努力を見せるべきだろう」と要請した。 日本政府がこの判決に基づき、元慰安婦に「賠償金」を支払うことはあり得ず、韓国が日本政府の資産を強制執行すれば、それ相応の報復をするはずである。韓国政府が「日本に追加請求しない」とするのは当然のことである』、なるほど。
・『中央日報に書かれた「問題の核心」  韓国政府が日本に改めて「謝罪や反省を求める」とする点についても、謝罪や反省はすでに何度も行ってきていることである。ただ、それが元慰安婦の人々に正確に伝わっていないのは、正義連・挺対協が間に入り、これを否定してきたからである。それを改めて日本側に求めてくるのは筋違いだろう。 中央日報は、アンチフェミニストとして『フェミニズムはどのようにして怪物になったのか』という本の共著者であるオ・セラビ氏(女性)のインタビュー記事を掲載している。 この本では、政治権力と結託したフェミニズムを批判している。具体的には、「586運動圏(現在50代、80年代の民主化運動にかかわった、60年代生まれの世代)権力と女性団体運動は出発が同じだ。上層部の女性運動家のほとんどが『韓国女性団体連合』から活動を始めた。これは民主化運動がはじまった87年だ。今までこの団体出身の首相、閣僚、国会議員が11人いる」という。 そして、「エリート女性運動家は大きな志を抱いて活動する一般の女性運動家と女性たちを道具として使い、名声を築いた。彼らを政治権力を得るためのルートとして利用する」と批判している。 さらにインタビューでは「韓国女性運動と、正義連・挺対協の運動は同じ幹だ」とし、「正義連は慰安婦問題が本当に解決したら、正義連の存在価値は消えるから、慰安婦問題を本当に解決するつもりがあるのか疑問を感じるのだ。慰安婦問題を一日でも早く解決するためには、正義連のような市民団体に任せるのではなく、最初から最後まで政府が直接責任を取ってやらなくてはならない」と痛烈に語っている。 このオさんの発言は、まさに問題の核心をついている。慰安婦問題はこれまで何度も解決する機会があったが、これをことごとく妨害してきたのが、正義連とその前身である挺対協なのである』、「正義連」は確かに困った存在だ。
・『日韓合意を「妨害」する人たち  日韓の最初の取り組みは、日本側が設立した「アジア女性基金」を通じた解決であった。 7人の韓国人元慰安婦が同基金からのおカネを受け取ると、当時の挺対協のトップは「アジア女性基金からおカネをもらう人は、自ら進んで出かけた娼婦であることを認めるのと同様だ」と元慰安婦を最も傷つける言葉でののしった。 しかし、後でわかったことは、アジア女性基金の代わりに韓国政府からおカネを受け取った人のうち54人がアジア女性基金からもおカネを受け取っていたということである。当時の挺対協が邪魔しなければ、より多くの元慰安婦がアジア女性基金からおカネと総理の謝罪を記した書簡を受け取り、この問題は解決していたということである。 2015年の慰安婦合意の際には、当時韓国政府が設立した和解・癒し財団の理事長がすべての元慰安婦にこの合意を説明し、理解を求めたところ、当時存命であった、46人の元慰安婦のうち36人(78%)が受け入れに同意した。しかし、挺対協の反対を受け、文在寅氏は国民的理解が得られないと同財団を解散させてしまった。 その正義連・挺対協がこれまで何をしてきたかというと、元慰安婦のための寄付金や政府補助金の一部しか元慰安婦のためには使わず、その多くを私的にあるいはその他不適切な形で使ってきたことが、元慰安婦李容洙(イ・ヨンス)氏の告発で明らかになった。ここから明らかなことは、正義連としても寄付金を集め続けるため、慰安婦運動の存続を望んでいたということである。 それでも文在寅政権は、「慰安婦問題の大義を失うことがあってはいけない」と正義連を庇っている。正義連の尹美香(ユ・ミヒャン)前理事長は国会議員を続け、最近では、コロナ禍にもかかわらず、元慰安婦の誕生日を口実にワインパーティを行うなど反省の色を見せていない』、「正義連」の活動の実態を一般の韓国国民はどの程度知っているのだろうか。
・『文在寅の「卑屈」な姿勢  正義連は、1月18日に文在寅大統領が記者会見で2015年の日韓合意が公式合意であったことを認めた際にも、理事長が「日本政府に卑屈に移るほど守勢的に対応したり完全な沈黙で一貫したりする理由は何か」と失望感を表明した。 文在寅政権のむしろ正義連に対する「卑屈」な姿勢を見ると、文氏の日韓関係改善の努力はまたしても正義連の妨害を受けるのではないだろうか。 慰安婦問題を解決したければ、このような正義連とはたもとを分かち、正義連の着服し、横領した金銭を回収して元慰安婦の人々が安らかな老後を送れるような環境を整備することである。正義連のいうことを聞いていてはいつまでたっても堂々巡りである。 韓国政府が関係の改善の姿勢を示しても、日本として原則を守る以外ない。韓国内に請求権協定に対する不満があろうとも、慰安婦合意に対し正義連が反対しようとも、それを無効にし、再度交渉するなどということはできない。 また、日本がこれまで歴史問題で再三、謝罪と反省の意を表明してきたことも事実である。正義連がこれを認めず、これは真の謝罪ではないというのは言いがかりである。日本が改めて謝罪することはこの原則に背くことになる。 今後日本ができることと言えば、これまで日本政府として誠意をもって反省し、謝罪してきたことを再度確認することであろう。それは正義連が言ってきたことが真実でないことを明らかにすることになるが、それによって元慰安婦が日本政府の反省と謝罪を受け入れることになれば意味がある。 わたくしは大使時代、必要であれば、自分が一人一人の元慰安婦にあってこれを伝えてもいいと考えていた。その機会はなかったが、元慰安婦の人々に日本政府の思いを正確に伝えるためには大使が出ていくのは良いのではないかと今でも考えている』、「韓国政府」が「正義連」に厳しい姿勢を取れないのは何故なのだろう。「武藤」氏がやや反韓国的なのは、在韓国大使時代に苦労させられたためかも知れないが、私はむしろ冒頭の田中氏の考え方に同意する。 
タグ:日韓関係 (その13)(日韓関係「再出発」の時 日本が兄貴分の時代は終わった、菅首相が離任する韓国大使との面会を拒否?後任大使も「外交欠礼」と驚き、文在寅が「慰安婦問題」で大博打へ…!日本からの「報復ブーメラン」で いよいよ万事休すか) ダイヤモンド・オンライン 田中 均 「日韓関係「再出発」の時、日本が兄貴分の時代は終わった」 新政権の発足は外交関係修復のチャンス 反韓国の論調が多いなかで、「菅政権の発足を日韓関係の再出発とする機会としなければならない」との提言は貴重で、同感である 文政権と安倍政権の相克 双方に信頼関係が欠落 個別案件が不信感に火を注いだ 被害者意識が時に強い反発に 「半導体材料の対韓輸出制限措置」は経産省の思い付きだろうが、実効性に乏しく、自己満足的だったようだ 「プロフェッショナルな外交」見られず 政権や一部勢力の反発を慮る 「政策決定プロセスにおける青瓦台(大統領官邸)の力は外交問題でも圧倒的となっており、外交通商部によるプロフェッショナルな意見具申は通りにくく」 日本でも、近年、官邸の力が強まり、霞が関の幹部人事も差配されるようになっている。 そういう状況である以上、外務省は 官邸の方針を忖度(そんたく)する結果、関係改善のため知恵を出して動くといった姿勢も感じられない 日韓とも通常の外交チャネルが機能不全となっているようだ 日韓共同世論調査では関係改善を求める声が多数 等身大で相手を見なければならない協力の可能性を示す「Nizi Project」 「1人当たり国民所得では肩を並べる存在となった」以上、「日本が」「兄貴」風を吹かす訳にはいかなくなった。対等の立場で、お互いの強味を生かして協力してゆくべきだろう 日韓関係を再出発させる時期が来た コロナでの協力や東京五輪開催を契機に 「東京五輪が、日韓両国政府の協力関係再出発の契機となることを心から期待したい」、同感である。 Record China 「菅首相が離任する韓国大使との面会を拒否?後任大使も「外交欠礼」と驚き」 菅義偉首相が離任する南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使との面会を「事実上拒否 「外交欠礼問題が浮上 「慰安婦問題をめぐる韓国裁判所の賠償判決などを考慮し、面会が保留された 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は14日、離任する冨田浩司駐韓日本大使と面会し、日韓関係改善への意思を明らかにしていた 「菅首相」に外交プロトコルの基本をレクチャーする勇気がある 外務官僚はいないのだろうか 現代ビジネス 武藤 正敏 「文在寅が「慰安婦問題」で大博打へ…!日本からの「報復ブーメラン」で、いよいよ万事休すか」 追い詰められた文在寅 文在寅氏が日韓関係改善の意向を固める最大の要因となったのが、バイデン氏の大統領当選とこれに続く新政権の成立である」、日本にとっても、いいチャンスだったのに、見逃したのは残念だ 文在寅に正義連を捨てる「覚悟」はあるのか 「正義連・挺対協と手を切る覚悟ができた時に、問題の外交的解決の道も見えてくるであろう」、これは明確なメッセージとして伝えておくべきだろう 日本からの「報復」 中央日報に書かれた「問題の核心」 慰安婦問題はこれまで何度も解決する機会があったが、これをことごとく妨害してきたのが、正義連とその前身である挺対協なのである』、「正義連」は確かに困った存在だ 日韓合意を「妨害」する人たち 「正義連」の活動の実態を韓国民はどの程度知っているのだろうか 文在寅の「卑屈」な姿勢 「韓国政府」が「正義連」に厳しい姿勢を取れないのは何故なのだろう 「武藤」氏がやや反韓国的なのは、在韓国大使時代に苦労させられたためかも知れないが、私はむしろ冒頭の田中氏の考え方に同意する
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RCEP(東アジア地域包括的経済連携)(その1)(RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破 米国に対抗する「次の一手」とは、中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」 日本はどう振る舞うべきか、RCEPが日韓の関係改善を後押し 日韓貿易の83%で関税撤廃へ) [外交]

今日は、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)(その1)(RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破 米国に対抗する「次の一手」とは、中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」 日本はどう振る舞うべきか、RCEPが日韓の関係改善を後押し 日韓貿易の83%で関税撤廃へ)を取上げよう。

先ずは、11月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家・ジャーナリストぼ莫 邦富氏による「RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破、米国に対抗する「次の一手」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/254732
・『世界最大規模の自由貿易経済圏の誕生、中国はどう見たか  先日、「東アジア地域包括的経済連携(=RCEP)」の首脳会議が開かれ、日本や中国をはじめ15カ国がこの「RCEP」の協定に署名した。新型コロナウイルスによって世界経済が大きな打撃を受けて四苦八苦している2020年で、最も素晴らしい経済関連のニュースと言っていいと思う。 世界の人口やGDPのおよそ3割もカバーするこの協定は、世界最大規模の自由貿易経済圏の誕生として受け止められ、大きく注目されているが、中国での評価は一味も二味も違う。 まず、李克強首相は「RCEPの署名は多国間主義と自由貿易の勝利であり(中略)、人々に曇りの中で光明と希望を見いださせた」と評価した。「勝利」「光明」「希望」という3つの言葉は中国側の興奮と喜びを余すことなく表している。 中国国内では、「ある意味では、他の14カ国と一緒にRCEPに署名することは、中国にとってWTOに加盟した出来事に相当する大きな事件だ」と受け止める専門家が多い』、「中国にとってWTOに加盟した出来事に相当する大きな事件だ」、とは大げさな感じもするが、正直な感想なのだろう。
・『脅威だったTPP包囲網を突破できた中国  オバマ政権が推し進めていたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、米国の12カ国間を束ねた経済連携協定だが、このグループの最大の特徴は、環太平洋地域国なら、中国以外のどの国でも参加できるとしていることだ。 このTPPが実現すれば、経済規模は世界の40%を占め、アメリカ合衆国とヨーロッパ連合を結ばせた北大西洋版TPPともいえるTTIP(大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定)を加えると、2つのグループが世界経済の60%以上を占めるほどの勢力圏を誇ることになる。 つまりTPPが実現すれば、中国を残りの40%という世界経済圏の中に孤立させることに成功することを意味していた。 このTPPは明らかに中国を包囲するための経済協定だと、中国は警戒していた。しかし、蚊帳の外に置かれた中国には、その包囲網を打ち破る方法はない。予想外なことにトランプ政権時代の2017年1月、アメリカ合衆国は自らの意思でTPPを離脱した。オバマ政権時代、アメリカがあれだけ苦労して敷いた中国包囲網は、こうしてトランプ政権に軽々と破って捨てられたのだ。 しかし、バイデン政権が誕生したら、米国が再びTPPを担ぎ出す恐れがある。そのバイデン政権が誕生する直前に、米国を蚊帳の外に置くことに成功したRCEP協定の成立は、中国にとっては中国包囲網を突破した一大勝利だけではなく、米国に対抗するには欠かせないツールの一つでもあると見ていい』、「オバマ政権時代、アメリカがあれだけ苦労して敷いた中国包囲網は、こうしてトランプ政権に軽々と破って捨てられたのだ。 しかし、バイデン政権が誕生したら、米国が再びTPPを担ぎ出す恐れがある」、「トランプ」は何でも「オバマ」の成果を否定することを優先するの余り、「中国」を結果的に利したとはお粗末だ。
・『中国が次に目指すのは「日中韓自由貿易圏」  中国の世論では、将来、米国が主導するTPPに対抗するには、RCEP1つだけでは不十分との声もある。RCEPは15カ国の集合体なので、中国のような人口大国もあれば、ブルネイのような小国もあり、日本のような先進国もあれば、カンボジアのような貧しい国もある。これらの国々を束ねるには、言うまでもなくさまざまな妥協と譲歩が必要だ。 その意味では、日中韓自由貿易圏の成立はより大きな実益につながる。日本と韓国にとって、中国は最大の貿易国である。そして中国にとって、日本と韓国はそれぞれ第2位と第3位の貿易パートナーであり、第1位と第2位の輸入相手国でもある。 また3カ国間の貿易往来も頻繁だ。日本は豊富な資本と先端科学技術を有しており、韓国は半導体分野で優位性をもっている。一方、中国は製造大国だ。その3カ国の産業と経済は相互補完関係にあり、産業融合度も高い。自由貿易圏を構築することで、互いにウィンウィンの関係を実現することができる。日中韓自由貿易圏が形成されると、この3カ国も世界の他の大国との交渉により多くのカードを使えることになり、その意義は計り知れない。 だから、日中韓自由貿易圏、ヨーロッパと中国の自由貿易圏も早急に成立しなければならないと中国国内の世論は推しているのだ』、「日中韓自由貿易圏」はどうなっているのだろう。
・『米国とのバランスをどう取るか  2002年に、すでに日中韓自由貿易圏構想が出来上がり、当事者3カ国もその成立を期待している。しかし、これまで16回の交渉が行われてきたが、まだ着地できていない。いつも協定の機運が高まったところで、何らかの国際紛争が発生し、その協議が一時停止に追いやられてしまう。尖閣諸島(中国名は釣魚島)国有化事件、地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)配備事件、日韓貿易戦争などがその典型例だ。3カ国の異なる国益が3者協議の決着を阻んでいる。 今回のRCEPの締結は、アジア太平洋自由貿易圏の枠組みの形成に大きな一歩を踏み出したと評価していいだろうが、もう一つ、強調しなければならないポイントがある。日本、中国、韓国にとっては東アジアで初の自由貿易協定(FTA)となるため、3カ国間をまたいで事業展開する企業にとってのインパクトはもちろん大きいとみられるが、日中韓自由貿易圏の成立にも重要な推進力になるだろう。特に日中韓自由貿易圏が成立すれば、山東省や遼寧省などが最大の受益者となり、経済成長が困難に陥っている東北地域には大きな励ましになる。東北地域と山東省が寄せる関心は並々ならぬものがある。 米国と日本は最近、しきりに「インド太平洋時代」をアピールしている。中国は表向きには、それに対して反対または批判の声を上げていないが、内心は穏やかでない。しかし、今回のRCEPに対して、インドは自ら参加を断った。中国国内からは「正直に言うと、むしろほっとした。これで中国がリーダーシップをより取りやすいアジア太平洋時代を迎えられる」という声が聞こえてきている。 ニューズウィーク誌は、次のように報道している。「アジア太平洋圏でのアメリカの立場は、TPPがアメリカ抜きで批准された時点で既に打撃を受けている。(中略)トランプ政権はアメリカと中国の経済を切り離し、製造業の多国籍企業を中国から撤退させようとしている。だがRCEPはアジア域内の経済統合を促進し、アジアを経済的にも戦略的にも今まで以上にアメリカから隔絶するものになりそうだ」(「アジア版自由貿易協定『RCEP』の長所と短所」より) RCEPを見る米国の複雑な心境を語ったこの記事の指摘のように、米国とのバランスをどう取るべきかというのは、RCEPの参加国、特に中国と日本にとっては大きな課題だ』、「日中韓自由貿易圏構想」については、「日中韓FTA交渉は、RCEPを上回る付加価値をどれだけ付与できるかが焦点」(外務省)のようだ。バイデン次期大統領がどう出てくるか、注目したい。

次に、11月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」、日本はどう振る舞うべきか」を紹介しよう。
・『わが国を含め15カ国がRCEP協定に署名  11月15日、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、およびアセアン10カ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)の計15カ国が「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定」に署名した。 インドは国内事情から参加しなかったものの、世界のGDPの約30%を占める大貿易圏構想が形になったことの意義は大きい。特に、わが国にとって最大の輸出先である中国、第3位の韓国を含む大型の自由貿易協定(FTA)が合意に至ったことは重要だ。 今回のRCEP形成の陰には中国の思惑が強く影響している。国際社会において孤立が目立つ中国は、RCEPを一つのきっかけにアジア地域での存在感を高め、米国に対抗する力をつけたいと考えているはずだ。中国にとってRCEPは自国経済の成長を目指し、共産党政権の体制を強化する有力な手段だ。 また、経済面で中国を重視してきた文在寅(ムン・ジェイン)大統領にとって、中国が関税撤廃を重視することは都合がよい。韓国はTPPには参加せず、中国が重視するRCEPには参加する。RCEP署名によって文政権は、米中に対してうまく振る舞い、より有利なポジション取りを華南が得ているのだろう。韓国にはRCEPを通してわが国に接近する意図もあるだろう。 今後、わが国に求められることは、RCEPを足掛かりにして世界経済の成長の源泉として重要性高まるアジア新興国との関係を強化することだ。それは、わが国が、RCEP参加を見送ったEUや米国、インドとの経済連携を強化するために欠かせない。中長期的に考えた場合、わが国が自力で親日国を増やし経済連携の強化を目指すことが国益に合致する』、その通りだ。
・『RCEPの全体像と署名成立の重要性  わが国をはじめ中韓など15カ国が参加するRCEPの意義は、アジア地域に世界最大規模の自由貿易経済圏が誕生することだ。まず、その全体像を把握しよう。RCEPはGDPだけでなく、貿易総額や人口の約3割、わが国の貿易総額のうち約5割を占める地域をカバーする。その規模は世界のGDPの約13%をカバーする「TPP11」を上回る。わが国の工業製品の輸出に関して、14カ国で約92%の品目の関税が段階的に撤廃される。 米国とEUはRCEP参加を見送った。その一方、わが国は米国とはFTAを、EUとはEPA(経済連携協定)を結んでいる。RCEP署名によって、わが国には世界の自由貿易を促進する“ハブ”としての機能を発揮することへの期待が高まったといってよい。英国の経済学者であったリカードは比較優位の理論を提唱して自由貿易の促進が経済成長に資すると説いた。その理論に基づいて世界経済は成長してきた。わが国はより多くの国・地域を巻き込んだFTAおよびEPAを目指すべきだ。 足元の世界経済の環境を踏まえると、米中対立が激化し、米国の大統領選挙が終了したタイミングでRCEP署名が行われたインパクトは大きい。 そう考える要因の一つとして、米国のトランプ政権の政策がある。2017年1月20日にドナルド・トランプ氏が米国の大統領に就任した後、米国は対中制裁関税などを発動し、世界のサプライチェーンは混乱し、貿易量は減少した。また、トランプ大統領は点数稼ぎ(トランプ・ファーストの政策)のために中東政策を重視し、アジア地域を軽視したといえる。 2020年11月の米大統領選挙で国際協調を重視する民主党のジョー・バイデン氏が当選を確実とした直後のタイミングでのRCEP署名は、今後の米国の通商政策に無視できない影響を与えるだろう。バイデン氏はインド太平洋地域の安定を重視し、アジア政策を強化するとみられる。そして制裁関税とは異なる方策(人権問題や知的財産と技術の保護強化)などによって、対中強硬姿勢を強めるだろう。安全保障や経済運営面で、米国にとってアジア地域の重要性は高まる。バイデン氏がTPP復帰に言及していない中、RCEPが米国の外交・通商政策とどのような化学反応を起こすかが注目される』、同感である。
・『RCEPに込められた中国と韓国の思惑  また、わが国とFTAを締結してこなかった中国と韓国がRCEPに参加することも重要だ。これまで、中国は貿易の自由化に積極的ではなかった。本来であれば中国は、関税引き下げが伴う自由貿易よりも、補助金政策などの強化によって自国産業を保護し、その競争力の向上を優先しなければならない。 しかし、足元の中国は、米中対立に加えて、インド、台湾、オーストラリア、EUなどとの関係の冷え込みに直面し、国際社会から孤立している。中国は関税引き下げを受け入れることでRCEP参加国にある意味で譲歩し、孤立を食い止め、アジア地域での存在感を高めたい。中国のRCEP参加は、共産党指導部の焦りの裏返しといえる。 中国のメガFTA参加は、国際通商体制が大きな転換点を迎えたことを意味する。RCEPによって、わが国の工業製品の対中輸出にかかる関税の86%が撤廃される見込みだ。アジア地域における中国経済の重要性は一段と高まるだろう。 それと引き換えに、中国は様々な要求を参加国に突き付け、アジア地域での足場を固めようとするはずだ。長めの目線で考えると、RCEP加盟国の一部において中国の“デジタル人民元”を用いた資金の決済が行われるなどし、米ドルの信認に支えられた国際通貨体制に揺らぎが生じる展開は排除できない。国家資本主義体制を強化して一党支配体制をつづけるために、共産党政権がRCEPをどう活用するかは重要な論点だ。対中輸出の増加は重要な一方で、RCEP参加国における中国の影響力拡大のリスクをどう防ぐか、わが国は方策を各国と練らなければならない。 経済面で中国との関係を重視してきた、韓国の文在寅大統領にとってRCEPの意義は大きい。それによって文大統領は、中小企業などに対中輸出増加の活路を提供したいだろう。また、韓国はわが国との貿易に関しては産業への打撃を警戒し、自動車や機械の関税撤廃は見送った。その一方で、韓国にはRCEPによってわが国の高純度素材などを輸入しやすくなるとの目論見もあるだろう。そう考えると、RCEPは韓国が経済面での中国への依存を一段と高めるとともに、わが国に近づく重要な契機になる可能性がある。わが国は韓国に対して引き続き毅然とした態度で臨めばよい』、「RCEP参加国における中国の影響力拡大のリスクをどう防ぐか、わが国は方策を各国と練らなければならない」、その通りだ。
・『自由貿易推進に向けたわが国の役割期待  ワクチンの国際供給体制の確立を含めコロナショックから世界経済が立ち直るために、FTAやEPA推進の重要性は高まっている。それによって各国は自国の得意な分野を伸ばし、雇用の創出などを目指すことができる。 わが国はTPP11、日米貿易協定、日・EU、日印のEPA、さらにはRCEPなどを通して、直接的、間接的に各国と国際貿易体制の強化に取り組んでいる。自由貿易の推進によって経済の安定と成長を目指すという点において、国際社会の中でわが国の立場は相対的に良いといえる。RCEPが署名された今、自由貿易推進の旗手としてのわが国の役割、期待は高まっていると考えるべきだ。 今後、わが国に求められるのは、中国の進出に直面するアジア新興国との連携強化だ。公衆衛生や環境、安全な上水道の整備といったインフラ整備支援などをわが国は迅速に実行し、アジア新興国の信頼を獲得しなければならない。そのためには、着実な実行力が欠かせない。インドとの関係強化も重要だ。経済成長の限界を迎え労働コストが上昇する中国からインドなどに生産拠点を移す各国企業は増えている。 このように、世界経済のダイナミズムの源泉として、アジア新興国地域の重要性は一段と高まっている。わが国がアジア新興国との関係を強化することは、わが国と欧州各国との関係強化に不可欠だ。それができれば、わが国が米国のバイデン次期政権にTPP復帰を促すことも可能だろう。 つまり、わが国は自力で国際世論を味方につけ、自由資本主義の考えに則った、より高次元の(競争やデータ管理などのルールの統一化を伴った)経済連携を目指し、それに米国を巻き込むべきだ。突き詰めて考えれば、それが、わが国が自力で自国経済の安定を目指し、国家資本主義体制の強化のために海外進出を目指す中国への包囲網を形成することにつながる。 わが国政府は国内企業の強み(精密な製造技術や高品位の素材開発力)の向上をより積極的にサポートし、アジア新興国や米中から必要とされる存在を目指すべきだ。政府がRCEP署名成立をアジア新興国向けの経済外交の推進に生かすことを期待したい』、「わが国は自力で国際世論を味方につけ、自由資本主義の考えに則った、より高次元の(競争やデータ管理などのルールの統一化を伴った)経済連携を目指し、それに米国を巻き込むべきだ」、同感である。

第三に、11月30日付けNewsweek日本版が掲載した韓国経済研究所学術研究部長のカイル・フェリア氏による「RCEPが日韓の関係改善を後押し、日韓貿易の83%で関税撤廃へ」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/11/post-95098_1.php
・<東アジア地域包括的経済連携への加盟で特に大きな恩恵を受けるのは、歴史問題が経済交渉に影を落とす日韓両国だ> 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉が成功したことは、日本と韓国にとって大きな前進となった。日韓関係が歴史問題で膠着している最中に、両国が初めて同じ自由貿易協定(FTA)に参加することは、少なくともこれ以上の関係悪化を防ぐ手助けになるかもしれない。 この数十年、日本と韓国は歴史問題をめぐり見解の衝突を繰り返してきた。それでもいわゆる徴用工問題がこじれるまでは、政治的緊張が高まっても経済活動や消費者の行動に大きな影響はなかったと、メーン大学のクリスティン・ベカシとデラウェア大学のジウォン・ナムは指摘する。 しかし、近年の政治的緊張は、2003年末に始まった日韓FTAの交渉が膠着状態に陥っている理由の1つであり、2015年に日韓通貨スワップ協定が終了し、再開に向けた協議も打ち切られた直接の原因でもある。 RCEPが多国間の枠組みであることは、日韓双方にとって、同じ貿易協定に参加する上で重要な要素になったと思われる。この経済統合がさらに拡大する可能性は、日韓双方が政治的緊張に懲罰的な貿易措置で対応することをためらわせるきっかけになるだろう。 世界のGDPの約30%を占めるRCEP加盟15カ国の中でも、日本と韓国は特に恩恵を受けるとみられる。その大きな理由は、互いの経済へのアクセス拡大だ。 経済学者のピーター・ペトリとマイケル・プラマーの予測によると、RCEPの影響として、日本と韓国の実質所得は2030年までに1%増加する。これは他の全ての加盟国より大きな数字だ。さらに、日韓貿易の83%で関税が撤廃されることになる。 2017年1月にアメリカがTPP(環太平洋経済連携協定)から離脱した後、日本はより野心的な貿易や投資のルールを盛り込もうと取り組んだ。さらには包括的かつ先進的TPP協定(CPTPP、いわゆるTPP11)を実質的に先導してきた。韓国はCPTPPに加盟していないが、日本がアメリカ抜きでも協定を推進してきた理由と同じ視点から、加盟に関心を示している。より安定した日韓関係は、日中韓FTAの今後の可能性と同様に、CPTPPへの加盟についても韓国を後押しするはずだ』、「RCEPの影響として、日本と韓国の実質所得は2030年までに1%増加する。これは他の全ての加盟国より大きな数字だ。さらに、日韓貿易の83%で関税が撤廃されることになる」、「2030年までに1%増加」とは意外に少ないようだ。
・『中国との交渉で協調も  中国はRCEPの締結が、近年停滞している日中韓FTAの交渉を結実させる機運になると期待している。ただし、日本と韓国は、それぞれ中国との交渉で同じ懸念を抱いている可能性が高い。 韓国は既に中国と貿易協定を結んでいるが、貿易の自由化に対する中国の遅々とした漸進的なアプローチのせいで、その範囲はかなり限定的だ。同じ問題が日中の貿易交渉の進展も阻んでいる。 知的財産権の保護や、中国の巨大国有企業の輸出を規制するルールなど、中国経済へのアクセスを可能な限り確保することは日韓共通の利益になる。これらの問題について両国が緊密に協力できれば、より大きな成果につながるだろう。 もっとも、貿易における日韓のさらなる協力が、歴史問題に対処するための効果的な手段になるわけではない。それでも双方の指導者にとって、貿易の相互依存を交渉の武器にしないことを含め、関係悪化の悪循環を回避しようというインセンティブになるかもしれない。 大した前進には思えないかもしれない。しかし、日韓関係の緊張が続く今、ほんの少しでも役に立つのではないだろうか』、「知的財産権の保護や、中国の巨大国有企業の輸出を規制するルールなど、中国経済へのアクセスを可能な限り確保することは日韓共通の利益になる。これらの問題について両国が緊密に協力できれば、より大きな成果につながるだろう」、「もっとも、貿易における日韓のさらなる協力が、歴史問題に対処するための効果的な手段になるわけではない。それでも双方の指導者にとって、貿易の相互依存を交渉の武器にしないことを含め、関係悪化の悪循環を回避しようというインセンティブになるかもしれない」、現実的な見方だ。
タグ:RCEP ダイヤモンド・オンライン もっとも、貿易における日韓のさらなる協力が、歴史問題に対処するための効果的な手段になるわけではない。それでも双方の指導者にとって、貿易の相互依存を交渉の武器にしないことを含め、関係悪化の悪循環を回避しようというインセンティブになるかもしれない 中国との交渉で協調も 「2030年までに1%増加」とは意外に少ないようだ RCEPの影響として、日本と韓国の実質所得は2030年までに1%増加する。これは他の全ての加盟国より大きな数字だ。さらに、日韓貿易の83%で関税が撤廃されることになる 東アジア地域包括的経済連携への加盟で特に大きな恩恵を受けるのは、歴史問題が経済交渉に影を落とす日韓両国だ 「RCEPが日韓の関係改善を後押し、日韓貿易の83%で関税撤廃へ」 カイル・フェリア Newsweek日本版 わが国は自力で国際世論を味方につけ、自由資本主義の考えに則った、より高次元の(競争やデータ管理などのルールの統一化を伴った)経済連携を目指し、それに米国を巻き込むべきだ 自由貿易推進に向けたわが国の役割期待 RCEP参加国における中国の影響力拡大のリスクをどう防ぐか、わが国は方策を各国と練らなければならない RCEPに込められた中国と韓国の思惑 バイデン氏がTPP復帰に言及していない中、RCEPが米国の外交・通商政策とどのような化学反応を起こすかが注目される RCEPの全体像と署名成立の重要性 中長期的に考えた場合、わが国が自力で親日国を増やし経済連携の強化を目指すことが国益に合致する わが国を含め15カ国がRCEP協定に署名 「中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」、日本はどう振る舞うべきか」 真壁昭夫 バイデン次期大統領がどう出てくるか、注目したい 日中韓FTA交渉は、RCEPを上回る付加価値をどれだけ付与できるかが焦点」(外務省) 日中韓自由貿易圏構想 米国とのバランスをどう取るか 中国が次に目指すのは「日中韓自由貿易圏」 「トランプ」は何でも「オバマ」の成果を否定することを優先するの余り、「中国」を結果的に利したとはお粗末だ 脅威だったTPP包囲網を突破できた中国 中国にとってWTOに加盟した出来事に相当する大きな事件だ 世界最大規模の自由貿易経済圏の誕生、中国はどう見たか 「RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破、米国に対抗する「次の一手」とは」 莫 邦富 (東アジア地域包括的経済連携) (その1)(RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破 米国に対抗する「次の一手」とは、中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」 日本はどう振る舞うべきか、RCEPが日韓の関係改善を後押し 日韓貿易の83%で関税撤廃へ)
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尖閣諸島問題(その6)(米軍は「尖閣を守る根拠なし」 日米安保条約を巡る初歩的な勘違いと危うさ、「尖閣」陥落は秒読み? とっくに“レッドゾーン”に突入している「日本の安全保障」) [外交]

尖閣諸島問題については、10月4日に取上げた。今日は、(その6)(米軍は「尖閣を守る根拠なし」 日米安保条約を巡る初歩的な勘違いと危うさ、「尖閣」陥落は秒読み? とっくに“レッドゾーン”に突入している「日本の安全保障」)である。

先ずは、11月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏による「米軍は「尖閣を守る根拠なし」、日米安保条約を巡る初歩的な勘違いと危うさ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/254873
・『菅義偉首相は11月12日、バイデン次期大統領と電話会談を行い、「バイデン次期大統領からは、日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明があった」とコメントしている。そもそも「5条」の意味するところは何か、それで尖閣が守られるのか』、興味深そうだ。
・『安倍政権や菅政権がこだわる日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用(米国大統領選挙の結果、民主党候補であるバイデン前副大統領が次期大統領に選出されたとされている。「されている」というのは、共和党候補であるトランプ現大統領がバイデン候補の勝利を認めず、「不正があった」として選挙の無効を主張するとともに、法廷闘争に持ち込む可能性を示唆していることによる。 そうした中、菅義偉首相は、11月12日にバイデン次期大統領(便宜上そう記載する)と電話会談を行っている。その詳細な中身は明らかではないが、首相官邸のサイトに掲載された情報によると、以下のとおりとのことである(※カッコ内は筆者追記)。) 「私(菅総理)から、日米同盟は、厳しさを増すわが国周辺地域、そして国際社会の平和と繁栄にとって不可欠であり、一層の強化が必要である。その旨、また、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、日米で共に連携していきたい、こうした趣旨を申し上げました。 バイデン次期大統領からは、日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明があり、日米同盟の強化、また、インド太平洋地域の平和と安定に向けて協力していくことを楽しみにしている旨の発言がありました。 また、コロナ対策や気候変動問題といった国際社会共通の課題についても、日米で共に連携していくことで一致しました。 拉致問題への協力も、私から要請いたしました」 いつまで「日米同盟」という意味不明の呼称を使い続けるのかという点や、その強化とは何を意味するのかこの人は理解できているのだろうか、といった点は脇に置いておくとして、本稿で取り上げたいのは、「日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明があり」という部分。 安倍政権においても米国大統領の訪日の際に確認が行われ、それを言ってもらうために貿易協定等において大幅譲歩(というより献上と表現した方がいいか)が行われたようであるが、いずれにせよ、安倍、菅両政権ともこの点を相当重要視しているようである。 加えて、野党からも、例えば国民民主党の玉木雄一郎代表も、この点が確認されたことを積極的に評価している』、「「日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明・・・安倍政権においても米国大統領の訪日の際に確認が行われ、それを言ってもらうために貿易協定等において大幅譲歩・・・が行われた」、これしきの発言を引き出すため、「貿易協定等において大幅譲歩」、とは正気の沙汰とは思えない。「国民民主党の玉木雄一郎代表も、この点が確認されたことを積極的に評価」、情けない話だ。
・『日米安全保障条約第5条の意味するところは?  本件のポイントは、日米安全保障条約第5条の意味するところ、そしてその適用範囲如何である。 まず第5条の意味についてであるが、同条前段は以下のとおり規定されている。 「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」 この条文のこの部分をもって、アメリカに日本防衛義務があるなどと言われることがあり、そのように説明するメディアや政治家は少なくない。 しかし、この条文をよく読めば、「防衛義務」という言葉もなければ、その根拠となりうる記載も見当たらない。あくまでも日米それぞれが、それぞれの国の憲法の規定及び手続きに従って対処するよう行動すると書いてあるだけであり、その中身が米国にあっては日本を防衛する軍事行動、物理的力の行使であることが一義的に明らかなわけでもない。従って単に非難するだけかもしれない。 あくまでもそれを「宣言」しているだけである。 本条約は日英両語で作成されたものがそれぞれ正文(正式な文書)であるので、英文の同じ箇所を抜き出せば以下のとおりである。 「Each Party recognizes that an armed attack against either Party in the territories under the administration of Japan would be dangerous to its own peace and safety and declares that it would act to meet the common danger in accordance with its constitutional provisions and processes.」  「would」が使われていることからしても、いかなる義務も導き出すことは困難である。 つまり、あくまでも各国の国内手続きに従って、「各国の判断で対処するとされているだけである」ということである。それを「日本防衛義務がある」などとするとは、拡大解釈も甚だしく、「妄想幻想の世界」もいいところである』、「「日本防衛義務がある」などとするとは、拡大解釈も甚だしく、「妄想幻想の世界」もいいところである」、というのは確かだ。
・『日米安全保障条約第5条は尖閣諸島に関する限り「空文」と化すことも  次に、適用範囲如何について、焦眉の課題は尖閣諸島への適用如何ということのようであるが、日米安全保障条約では「日本国の施政の下にある領域における」とされている。尖閣諸島については日本の領土である旨、政府はかねてから主張してきており、少なくとも日本の実効支配下にある。従って、当然に日米安全保障条約第5条の適用範囲に含まれると考えるのが適当である。 ただし、曲者なのは「施政下にある」という表現。「領土」や「領海」という表現は使われていない。この点については11月12日午前6時25分公開のBloombergの記事においても次のとおり指摘されている。 「The U.S. recognizes the disputed islands as administered by Japan, rather than saying they are part of the country.」 つまり、米国からすれば、尖閣諸島は日中両国による「係争地」であり、いずれの領土であるとも認識せずに、ただ単に日本の施政下にあるということだけを認識しているということであり、日米安全保障条約第5条における規定もそうした考え方に基づくか、そうした考え方を反映したものであるということである。 ということは、仮に中国軍の艦船なり、中国の海上保安庁に当たる海警の船舶が、間隙を突いて尖閣諸島に接岸し、上陸して実効支配を始めた場合は、日本の施政下からは外れたことになりえるので、日米安全保障条約第5条の適用範囲から外れることにもなりかねない。 そうなった場合、日米安全保障条約第5条は、尖閣諸島に関する限り「空文」と化すことになる。 「そんなことをさせない、そうならないためにも日米安全保障条約第5条の確認なのだ」といった反論が返ってきそうだが、米国に日本防衛義務がない以上、そして「米国の国益」にとってプラスとならないのであれば、米国軍は尖閣諸島防衛のために何ら行動することはないだろう』、「仮に中国軍の艦船なり、中国の海上保安庁に当たる海警の船舶が、間隙を突いて尖閣諸島に接岸し、上陸して実効支配を始めた場合は、日本の施政下からは外れたことになりえるので、日米安全保障条約第5条の適用範囲から外れることにもなりかねない。 そうなった場合、日米安全保障条約第5条は、尖閣諸島に関する限り「空文」と化すことになる」、驚くべきことだが、確かに米国がそのように解釈しても文句は言えないようだ。。
・『「脱ハンコ」や「携帯料金の引き下げ」の方が安全保障よりも優先すべき課題なのか  要するに日本が「自ら何とかするしかない」「自力で守るしかない」ということなのだが、日米安全保障条約の尖閣諸島への適用について確認することに執心する一方で、中国の海警による尖閣諸島海域への侵入が繰り返されているにもかかわらず、何ら具体的かつ積極的な行動を起こしていないのが実態である。 その背景には、緊縮財政で海上保安庁が十分な人員や艦船などの装備が保有できていないことと、その積極的活動を担保する法制が不十分であることがある(本稿の目的は問題点の指摘にあるので、こうした点についての詳細な解説は別稿に譲ろう)。 いつ「絵に描いた餅」に化するか分からない空文に、後生大事にしがみついている暇があったら、海上保安庁の体制強化のための歳出の拡大と、領域警備法等の関連法性の整備を急ぐべきである。 それよりも「脱ハンコ」や「携帯料金の引き下げ」、「インバウンド」に「カジノ」が優先と言うのであれば、菅首相は具体的かつ物理的にわが国の領土を失った戦後最初の首相として、歴史にその名を刻むことになるだろう』、「日米安全保障条約」の重要部分の解釈で国民に嘘をついているとは罪が深い。「海上保安庁の体制強化のための歳出の拡大と、領域警備法等の関連法性の整備を急ぐべき」、同感である。

次に、12月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経産省出身の評論家の中野剛志氏による「「尖閣」陥落は秒読み? とっくに“レッドゾーン”に突入している「日本の安全保障」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256426
・『11月24日の日中外相共同記者会見における王毅外相の「尖閣諸島」に関する発言と、その場で反論しなかった茂木外相に対する強い批判が巻き起こったのは当然のことだった。しかし、問題の本質はそこにはない。直視しなければならないのは、中国が爆発的に軍事力を強化した結果、東アジアにおける軍事バランスが完全に崩壊したことだ。アメリカが、東アジアにおける軍事的プレゼンスを維持する「能力」と「意志」を失いつつある今、この10年を無策のまま過ごしてきた日本の「地政学リスク」は、明らかにレッドゾーンに突入した。日本は、あまりに過酷な現実に直面している』、「王毅外相」の発言は、「日本の漁船が絶えず釣魚島(尖閣諸島の中国名)周辺の敏感な水域に入っている」と述べた。日本側が「事態を複雑にする行動」を避けるべきだとも主張」、「先に発言した茂木氏は「中国側の前向きな行動を強く求めた」と強調。「外務省は「ルールとして反論するような場ではなかった」と説明」(日経新聞11月26日)。「中国が爆発的に軍事力を強化した結果、東アジアにおける軍事バランスが完全に崩壊したことだ。「アメリカが、東アジアにおける軍事的プレゼンスを維持する「能力」と「意志」を失いつつある今、この10年を無策のまま過ごしてきた日本の「地政学リスク」は、明らかにレッドゾーンに突入した」、厳しい現状認識だ。
・『すでに絶望的なまでに広がった、日本と中国の「軍事力の差」  2020年は、パンデミックにばかり注目が集まっている。しかし、後世の歴史家は、この年を、東アジアにおける国際秩序の転換点として記録することだろう。 2020年5月、東アジアの軍事情勢研究の権威であるトシ・ヨシハラが、「過去十年間で、中国海軍は、艦隊の規模、総トン数、火力等で、海上自衛隊を凌駕した」とする重要な分析を公表した。 その中で、ヨシハラは、「今日の中国の海軍力は十年前とは比較にならない。中国海軍に対する従来の楽観的仮定はもはや維持不可能である」と指摘した。 ヨシハラは、日中の戦力を詳細に比較しているが、一例をあげると、図のように、中国の軍事費は日本の5倍にもなっている。この結果、中国の政治家や軍の指導者は、自国の軍事的優位に自信をもつに至った。今後、中国は、尖閣諸島など局地的な紛争において攻勢的な戦略を採用するであろうとヨシハラは論じた。 要するに、東アジアの国際秩序を支えてきた軍事バランスが崩壊しつつあるというのだ。 どうして、こうなってしまったのか。先ほどの図を見れば一目瞭然であろう。中国はこの20年間、軍事費を急増させてきたが、日本の防衛費はほぼ横ばいである。これでは、軍事バランスが崩れるのも当然である』、「中国はこの20年間、軍事費を急増させてきたが、日本の防衛費はほぼ横ばいである。これでは、軍事バランスが崩れるのも当然である」、やむを得ないが、日本としての対応はますます難しくなる。
・『この10年の「日本」の過ごし方が、「致命的」であった理由  特に、ヨシハラも言うように、過去10年間が決定的であった。 ちょうど10年前、ヨシハラは、ジェームズ・ホームズ海軍大学教授とともに『太平洋の赤い星』(バジリコ刊)という著作を発表した。 その中で、二人は、中国の戦略研究家たちが鄧小平の「改革開放」以降、海洋戦略家アルフレッド・T・マハンへの関心を強めてきたことに着目した。マハンに学んだ中国の戦略研究家たちは、国際貿易や経済発展のためには海洋進出が必要であり、そのためにはシーレーンの支配が必要だと考え、強力な海軍の建設を目指しているというのである。 冷戦終結後の世界では、グローバル化が進展することで国家は後退し、領土をめぐる国家間の紛争は無意味になるという楽観論が支配していた。日本もこの楽観論を信じた。ところが、中国は、グローバル化が進むからこそ海軍力が必要になるという、日本とはまったく逆の戦略的思考に立っていたのである。 ヨシハラとホームズは、警告を発した。 「今日の西側の研究者たちは、地政学に注意を払わず、グローバル化と相互依存の時代には、絶望的に時代遅れで無関係なものとみなしている。彼らは、国際政治における地理の役割を軽視し、その過程で、自分たちの世界観を他の大国にも当てはめる。しかし、中国の学界の大多数は、まさに正反対の方向に向かっているのは、文献から明らかだ。」 なお、ホームズは、2012年、日中間で尖閣諸島をめぐる軍事衝突が起きた場合のシミュレーションを考察し、日本は、米軍の支援が得られれば、苦戦しつつも勝利するだろうと結論した。つまり、当時はまだ、日本はぎりぎり領土を守れたのだ。 しかし、それから今日までに、中国は軍事費を1.5倍以上にしたというのに、日本の防衛費は微増に過ぎなかった。 この決定的な10年間、日本はいったい何をやってきたのか。 安倍前政権は、TPP(環太平洋経済連携協定)など自由貿易を推進し、集団的自衛権の行使を認める法整備を推進してきた。要するに、グローバル化と日米同盟の強化が、外交戦略の柱だったのだ。 しかし、ヨシハラとホームズが警告したように、中国はグローバル化と共に海軍力を強化していた。したがって、グローバル化は、中国の軍事的な脅威の増大を招くものと認識すべきだった。ところが、日本はその認識を欠き、防衛力の強化を怠った』、「中国はグローバル化と共に海軍力を強化していた。したがって、グローバル化は、中国の軍事的な脅威の増大を招くものと認識すべきだった。ところが、日本はその認識を欠き、防衛力の強化を怠った」、中国に対抗して「防衛力の強化」をするには、膨大な防衛費が必要になるので、「防衛力の強化を怠った」のはやむを得ない。
・『米国に「守ってもらえる」時代は終焉を迎えた  他方で、日本は日米同盟の強化に努めてはきた。しかし、問題は、肝心の米国の軍事的優位が、この10年間で失われたことにある。 10年前、米国の軍事費は中国の5倍あった。それが、今では3倍程度しかないのだ。「3倍もあるではないか」と楽観するのは間違っている。中国は自国の周辺に戦力を展開しさえすればいいが、米国は太平洋を越え、あるいはグアムや沖縄など点在する基地から戦力を投射しなければならない。この地政学的不利を考慮すると、米中の軍事バランスはもはや崩れたと言うべきだ。 実際、2018年、米議会の諮問による米国防戦略委員会の報告書は、もし米国が台湾を巡って中国と交戦状態になったら敗北するだろうと述べている。また、2020年の米国防省の年次報告書は、中国の軍事力がいくつかの点で米国を凌駕したと認め、その一例として、中国が、すでに米国より多くの戦艦等を有する世界最大の海軍国家であると指摘している。 米国は、中国の侵略を抑止する能力だけでなく、その意志も失いつつある。昨年のある調査によると、「近年の中国のパワーと国際的な影響力の著しい増大に対して、米国の対中政策はどうあるべきか」という問いに対して、米国民の57.6%が「アジアの軍事プレゼンスを削減すべき」と回答している。 しかも、2020年は大統領選で国が分断され、政権移行で混乱し、さらにコロナ禍によって現時点で27万人以上もの死者を出している。こんな状態の米国が、尖閣諸島をめぐる日中の軍事衝突が起きた場合に、日本を支援する能力そして意志がどれだけあるというのか。 菅義偉首相は、11月12日、バイデン次期米大統領との電話会談で、日米安保条約が尖閣諸島に適用されることを確認した。しかし、バイデン政権移行チームからの発表には、「尖閣」の文字はなかった。 2020年――。 それは、日本が米国に守ってもらえた時代の終わりが始まった年なのである』、「米国民の57.6%が「アジアの軍事プレゼンスを削減すべき」と回答」、しているような状況では、「日米安保条約」で尖閣奪還してもらおうと期待するのは無理なようだ。日本として、核保有国の中国に如何に対抗すべきかについては、極めて難しい問題なので、今日のところは回答を留保したい。
タグ:日本として、どうすべきかについては、極めて難しい問題なので、今日のところは回答を留保したい 「日米安保条約」で尖閣奪還してもらおうと期待するのは無理なようだ 仮に中国軍の艦船なり、中国の海上保安庁に当たる海警の船舶が、間隙を突いて尖閣諸島に接岸し、上陸して実効支配を始めた場合は、日本の施政下からは外れたことになりえるので、日米安全保障条約第5条の適用範囲から外れることにもなりかねない。 そうなった場合、日米安全保障条約第5条は、尖閣諸島に関する限り「空文」と化すことになる 日米安全保障条約第5条は尖閣諸島に関する限り「空文」と化すことも 「「日本防衛義務がある」などとするとは、拡大解釈も甚だしく、「妄想幻想の世界」もいいところである」 あくまでも日米それぞれが、それぞれの国の憲法の規定及び手続きに従って対処するよう行動すると書いてあるだけであり、その中身が米国にあっては日本を防衛する軍事行動、物理的力の行使であることが一義的に明らかなわけでもない。従って単に非難するだけかもしれない。 あくまでもそれを「宣言」しているだけである 日米安全保障条約第5条の意味するところは? 国民民主党の玉木雄一郎代表も、この点が確認されたことを積極的に評価している それを言ってもらうために貿易協定等において大幅譲歩 日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明があり 日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用 「米軍は「尖閣を守る根拠なし」、日米安保条約を巡る初歩的な勘違いと危うさ」 室伏謙一 ダイヤモンド・オンライン 米国民の57.6%が「アジアの軍事プレゼンスを削減すべき」と回答 (その6)(米軍は「尖閣を守る根拠なし」 日米安保条約を巡る初歩的な勘違いと危うさ、「尖閣」陥落は秒読み? とっくに“レッドゾーン”に突入している「日本の安全保障」) 尖閣諸島問題 米国に「守ってもらえる」時代は終焉を迎えた 中国に対抗して「防衛力の強化」をするには、膨大な防衛費が必要になるので、「防衛力の強化を怠った」のはやむを得ない 中国はグローバル化と共に海軍力を強化していた。したがって、グローバル化は、中国の軍事的な脅威の増大を招くものと認識すべきだった。ところが、日本はその認識を欠き、防衛力の強化を怠った この10年の「日本」の過ごし方が、「致命的」であった理由 中国はこの20年間、軍事費を急増させてきたが、日本の防衛費はほぼ横ばいである。これでは、軍事バランスが崩れるのも当然である 今後、中国は、尖閣諸島など局地的な紛争において攻勢的な戦略を採用するであろうとヨシハラは論じた 「今日の中国の海軍力は十年前とは比較にならない。中国海軍に対する従来の楽観的仮定はもはや維持不可能である」 トシ・ヨシハラ すでに絶望的なまでに広がった、日本と中国の「軍事力の差」 アメリカが、東アジアにおける軍事的プレゼンスを維持する「能力」と「意志」を失いつつある今、この10年を無策のまま過ごしてきた日本の「地政学リスク」は、明らかにレッドゾーンに突入した 「「尖閣」陥落は秒読み? とっくに“レッドゾーン”に突入している「日本の安全保障」」 中野剛志 海上保安庁の体制強化のための歳出の拡大と、領域警備法等の関連法性の整備を急ぐべき 「脱ハンコ」や「携帯料金の引き下げ」の方が安全保障よりも優先すべき課題なのか
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日韓関係(その12)(日韓が「歴史問題」でわかり合えない根本理由 議論すべきは「歴史の実証」か「歴史認識」か、韓国の大統領・首相からの書簡を「菅義偉首相」が“スルー”した理由、日韓歴史問題解決の切り札は在韓米軍撤退 米有力シンクタンク 国務省見解を代弁する提言) [外交]

日韓関係については、8月14日に取上げた。今日は、(その12)(日韓が「歴史問題」でわかり合えない根本理由 議論すべきは「歴史の実証」か「歴史認識」か、韓国の大統領・首相からの書簡を「菅義偉首相」が“スルー”した理由、日韓歴史問題解決の切り札は在韓米軍撤退 米有力シンクタンク 国務省見解を代弁する提言)である。

先ずは、8月19日付け東洋経済オンラインが掲載した立命館大学グローバル教養学部教授の前川 一郎氏ら4人の気鋭の研究者による座談会「日韓が「歴史問題」でわかり合えない根本理由 議論すべきは「歴史の実証」か「歴史認識」か」を紹介しよう。
・『慰安婦問題や徴用工問題など、日韓間で幾度も繰り返される歴史認識問題。さらには自国に都合よく歴史を捉える歴史修正主義も蔓延している。 これらの歴史問題が炎上する背景には何があるのか。また、アカデミズム、メディア、そして社会は、歴史問題にどう向き合えばよいのか。このたび『教養としての歴史問題』を上梓した、前川一郎、倉橋耕平、呉座勇一、辻田真佐憲の4人の気鋭の研究者による同書の座談会部分を抜粋してお届けする』、興味深そうだ。
・『歴史修正主義が台頭した背景  前川:まず、歴史修正主義の台頭について、あらためて皆さんの認識を伺わせてください。『教養としての歴史問題』ではそれぞれ異なる角度で論じているわけですが、議論の前提には、1990年代以降に歴史修正主義が社会への影響力を強めてきたことに対する危機感がありました。 倉橋:これは歴史学だけの問題ではないと認識しています。歴史修正主義の問題は、歴史学のなかでのイデオロギーの左右対立の問題と捉えられるのが一般的ですが、そもそも左右というラベル自体がわかりづらくなっているという現状があります。 歴史修正主義には、日本人の誇りに関心があるから史実はあまり重視しないという特徴があります。それが社会に一定の影響力を持っているのは、社会に対する不安や不満を持つ人々の心情と親和性があるからだとも考えられます。 つまり、対立軸は左右のイデオロギーだけが問題なのではなく、階層対立だという可能性です。現状を認識するには、左右の対立に覆い隠されてしまっている、本当の対立軸をすくい取るといった視点が必要だと思います。 呉座:同感です。左右では分けられない問題も多いと思います。倉橋さんの論考で、右派とスピリチュアル系の親和性が指摘されていましたが、一方で左派であるエコロジー・環境問題の運動家のなかにもスピリチュアル系と結び付く人がいますよね。 辻田:右左は、ほとんど「これは右」「これは左」と分類するラベルになっていると思います。対立軸のもと整理することで、複雑な現実をすっきりと見えた気にさせてくれるわけです。 ただ、日々の生活に忙しい人々に社会の問題をわかりやすく発信することは必要ですけれども、やりすぎると互いに相手にラベルを貼り合い、敵と味方を作って終わりという不健全な振る舞いになってしまいます。ですから、社会の捉え方をバージョンアップしていくという意識をつねに持たなければいけません。そうすることで、硬直した左右の対立図式を乗り越える道も見えてくるのではないでしょうか。 前川:そもそも左とは何か、右とは何かが曖昧になってきていますね。私が書いた植民地主義や「歴史認識」の問題に関して言うと、植民地主義の歴史を持つ国々では、それを否定すると現体制の正当性まで問われることになりかねないため、国として「歴史認識」を考え直そうということにはなかなかならないわけですが、もしかしたらそうした国の姿勢に対する距離感で左右が分かれるかもしれません。あえて言うならば、国にべったり寄っているのが右派で、批判的な立場が左という感じです。 辻田:前川さんはイギリスがご専門ですが、イギリスにも左右の対立はあるのですか』、「歴史修正主義には、日本人の誇りに関心があるから史実はあまり重視しないという特徴があります。それが社会に一定の影響力を持っているのは、社会に対する不安や不満を持つ人々の心情と親和性があるからだとも考えられます」、「植民地主義の歴史を持つ国々では、それを否定すると現体制の正当性まで問われることになりかねないため、国として「歴史認識」を考え直そうということにはなかなかならないわけですが、もしかしたらそうした国の姿勢に対する距離感で左右が分かれるかもしれません」、なるほど。
・『イギリスの論壇の基本は中道  前川:政治に関しては曖昧ですね。保守党と労働党の二大政党制ですから、保革の対立のような印象があるかもしれませんが、明らかに右を標榜する国民党などを除けば、保守党も労働党も、左右というよりは基本は中道なんです。あえて言えば、保守党は中道右派、労働党は中道左派といったところでしょうか。ですが、保守党のなかにも左寄りの人はいるし、労働党のなかにも右派的な人はいる。ですから、明確な左右の対立は見えにくい。 (前川一郎氏の略歴はリンク先参照) 政治の対立軸は、左右というより、サッチャー改革の是非として表れています。要するに、新自由主義に対する姿勢です。 最近も、「新自由主義の申し子」と言われたボリス・ジョンソンが、自分が新型コロナウイルスに感染して、国民保健サービス(NHS)をサポートする気になったのか、あるいは何かのパフォーマンスか知りませんが、「社会というものがまさに存在する(there really is such a thing as society)」と発言しましたね。これは、知ってのとおり、サッチャーの「社会なんてものはない(there is no such thing as society)」という言葉、つまりは新自由主義哲学の否定になります。ジョンソンの口からそんな言葉が出てきたのは驚きだと、世間の注目を集めたわけです。その真意はつかみかねますが. 一方、イギリスでは、論壇と言っていいかわかりませんが、例えばタブロイドと言われる大衆紙には右の新聞が見られますし、高級紙は『ガーディアン』紙のような左やリベラルを標榜する新聞があります。でも、私の印象では、左右双方に論壇誌があって鋭角に対峙しているという感じではない。政治の話ではないですが、やはり中道なんですよね。 そこで、倉橋さんに伺いたいのですが、社会学的な視点でいうと、そもそも日本では右と左の概念はどのように受け止められているのでしょうか。 倉橋:一般的な定義として知られるものは、右とか右翼と言われるのは、基本的には国家を中心に考える人たちだと言っていいと思います。日本だと天皇を中心に国家を考えます。さらに非常に復古的なイデオロギーです。保守と言うときには、変革には慎重で、過去から現在へと続いてきた秩序を支持する人たちだと言えます。 一方、左派はドラスティックな改革を進め、社会主義や共産主義を標榜する人たちのことをいう場合が多く、リベラルは革新的で社会を変革しながらいい方向を目指す人々と語られます。ですが、もちろん、左右は相対的な概念で、(いま前川さんがイギリスの状況を説明してくださったように)時代や社会によって概念のなかに入れられる要素は異なります。 辻田さんのご指摘どおり、ラベリングに使われることも多く、例えば、歴史修正主義者は、それに反対する人たちをひとくくりにして、共産主義者だとかリベラル勢力だと批判します。フェミニズムに対しても、マルクス主義だ、コミンテルンだ、とレッテルを貼ります。しかし、実際は、歴史修正主義に反対する人たちにも、左翼や共産主義ではない人も大勢いるわけです。こうしたラベリング的な要素がある以上、反対のことは左派による右派批判にも起こりえます。) 辻田:よく指摘されるように、ソ連が崩壊した後、右左の違いがわかりづらくなったという状況があります。日本の論壇には、右左を分かつ思想的な根拠は見いだしにくく、主張のパッケージというか、何か束のようなものがあって、それが“右”“左”と呼ばれている印象です。 例えば、原発は推進で、基本的に自民党を支持し、女性の社会進出や夫婦別姓、ジェンダー問題などには消極的でといった束が右派や保守で、その反対が左派やリベラルであるというような感じになっている。けれど、例えば、原発に関して、右派であるから賛成なのだという思想的な根拠がかならずしもあるわけではない。もっと言えば、右翼とは「反左翼」で、左翼は「反右翼」でしかなくなっているとさえ思います』、「ジョンソン首相」が、NHSを再評価するような発言をしたとは初めて知った。コロナに感染したことが影響したのだろうか。
・『左派が権威、右が挑戦者という嘘の構図  呉座:左右の対立について、〈左派が日本の歴史認識や社会規範を支配しており、右派は庶民に寄り添ってその権威に対抗しているのだ〉という言説が、右派によってしきりに喧伝されています。つまり、左派は押しつけがましい権威主義的なインテリであって、右派は大衆を代表して左派の知的権威に挑戦しているのだ、という構図です。右派が一定の共感と支持を獲得しているのは、この戦略に拠るところが大きい。 (呉座勇一の略歴はリンク先参照) けれど、左派が権威で右派が挑戦者という構図はかならずしも実態に即しておらず、レッテル貼りのようなところがあります。戦後のほとんどの時期において保守勢力が政権を担ってきましたし、現在も保守派の代表と言える人が長期にわたり首相を務めています。霞が関の官僚や一流企業の社員など社会の上層にも右寄りの考え方の人は多い。 にもかかわらず、左が体制側で右が改革者という図式は信じられてしまっています。辻田さんが指摘されている右派が提示する「物語」とも関連すると思いますが、この辺りも、右派は非常に巧妙だと思います。 辻田:いまの日本では、いかに刺激的な記号を配置して、人々の注目を集め、動員や利益につなげるかというゲームがあちこちで展開されています。歴史修正主義の運動も、そういう時代の流れのなかで捉えたほうがわかりやすいかもしれません。 前川:私も歴史修正主義の問題を右派だの左派だのといった次元で捉えることには違和感があります。歴史修正主義者はいろいろと言っていますが、その動機はさまざまであるにせよ、要するに彼らが口にするのは、戦争や植民地主義などが刻印した過去の「不正」について、「モノ言う弱者」と彼らが思い込んでいる人たちからとやかく責め立てられることへの反発やいら立ちです。「本当の対立軸」ということであれば、その1つは「過去の克服」に向き合うか否かということであって、もとより右とか左とかという話ではありません。) 前川:さて、ここからは視点を変えて、「事実と物語」に関する議論に移らせてください。実証主義に基づく歴史学の視点で見れば笑止としか言いようのない歴史修正主義が、これほど社会に浸透してしまったのはなぜか。これを、「歴史学の敗北」という観点から言うとどうなるか。もっとも、このフレーズ、歴史研究者から見ればちょっとショッキングなわけですが……。 それでも、「歴史学の敗北」と言うとき、そこには、歴史修正主義者の問題提起に対して、歴史学の側が自陣に閉じこもってきたという問題があるんだと思います。呉座さんが指摘されたとおりです。この辺りの問題について、皆さんのご意見を伺いたいと思います。 辻田:歴史修正主義の蔓延を無視していると、最終的に、アカデミズムにも悪い影響を与えてしまいます。例えば、「歴史学会は反日勢力に支配されている」という暴論が売れて、与党の政治家などに支持されてしまうと、人文系学部の予算削減などにつながりかねないわけですよね。実際、そうなっている部分もあるのではないでしょうか。 歴史学者が自分たちは社会とは関係ないと思っていても、そう簡単にはいきません。研究をほっぽり出して社会運動をしてくれと言いたいわけではありませんが、そういう認識は必要だと思いますね』、「左派が権威、右が挑戦者という嘘の構図」、よくぞこんな見えすいた「嘘」が通用するものだ。「歴史修正主義の蔓延を無視していると、最終的に、アカデミズムにも悪い影響を与えてしまいます」、その通りだ。
・『日韓歴史共同研究が挫折する理由  倉橋:前川さんが、歴史修正主義の“物語”が社会に広く受け入れられているという現実は、裏を返すと、国民の歴史や物語の意味を問い直しているのだというようなことを指摘されていますが、それは重要な視点だと思います。 (倉橋耕平氏の略歴はリンク先参照) 歴史学は当然のこととして、歴史で何が、なぜ起こったかを実証的に解明しようとしますが、一方で、その歴史をどのように認識するかという評価も大切なはずです。そこの部分を、学問としては非常にずさんな歴史修正主義にうまくかすめ取られてしまっているという感覚があります。 そこで思い出したのは日韓歴史共同研究です。2002年に日韓で共通の歴史教科書を作ることを目指した日韓歴史共同研究が開始されましたが、結局挫折しました。政治学者の木村幹さんによると、その原因は議論すべき事柄について共通認識が得られなかったからだそうです。つまり、議論すべきは、歴史の実証なのか、歴史認識かという違いです。 歴史認識問題は、戦後私たちが「過去」をどのように議論したり、理解したりしてきたか、に関わる問題であって、歴史学は日韓双方でこの向き合い方が異なったわけです。他方、歴史修正主義は「過去」をどのように議論するかという点に「国民の物語」をすっぽり入れられた。それは実証主義でなくてもよいわけですね、向き合い方なので。ここにも同じ構造がありました。 呉座:よく指摘されていることですけど、ソ連の崩壊によって、マルクス主義の権威が失墜したことで、歴史学は「世界史の基本法則」というグランドセオリーを失ってしまいました。そのため、歴史学は実証主義にアイデンティティーを求めるようになったという問題があります。 日韓歴史共同研究がかみ合わなかったことには、そうした背景があるのだと思います。韓国側に植民地主義を清算するという歴史認識問題が軸にあるのに対し、日本側にはとくに軸はないので実証的に研究するという意識が前面に出る。目的意識が違うので議論がすれ違ってしまう。 一例を挙げますと、日韓併合は韓国側から見れば一片の正当性もない侵略ですが、日本側は道義的には問題があったけれども当時の国際法では合法でした、という論理を組み立てるわけです。韓国側には詭弁に聞こえるのでしょうが、実証主義に立脚した場合は間違っているとは言えない。植民地統治にしても、日本側はイデオロギー的評価を脇に置いて実態を見ていこうというスタンスなので、収奪一色ではなく近代化が進んだ面もある、と指摘したりする。植民地支配を肯定しているわけではありませんが、韓国側にはそう映ることもある。 そういう意味で、日本の歴史学は、物語というか、歴史を概観する大きな見取り図を描けなくなって、日本の歴史はこうだったと、積極的に市民や社会に示すものがなくなってしまったために、どんどん内向きになって、実証主義の職人として学会でアピールするしかなくなっているという問題があると思います。かと言って、実証主義を軽視してしまっては、歴史修正主義と差別化できなくなるので、なかなか悩ましい』、「日韓歴史共同研究」、は始める前から私は失敗すると予想していたが、その通りになったのは当然である。「日本の歴史学は、物語というか、歴史を概観する大きな見取り図を描けなくなって、日本の歴史はこうだったと、積極的に市民や社会に示すものがなくなってしまったために、どんどん内向きになって、実証主義の職人として学会でアピールするしかなくなっているという問題がある」、その通りなのだろう。
・『なぜ「新しい物語」が必要なのか  前川:辻田さんは「新しい物語」が必要だと指摘されていますが、いかがですか。 辻田:市場では歴史に強い需要があって、本も売れますし、テレビ番組もよく見られます。 (辻田真佐憲氏の略歴はリンク先参照) とはいえ、そこで求められているのはかならずしも学知そのものではないわけです。そのため、ある種の「翻訳」をしなければいけないのですが、呉座さんがおっしゃったような事情もあり、それがうまく機能していませんでした。 歴史修正主義者は、その虚をついたところもあったのではないでしょうか。学知だけではなく、それをベースにしたより「まともな」物語が必要だと述べた理由もここにあります。 前川:市場や商業主義に関しては倉橋さんが社会の問題として議論されています。 いきなり大きな質問からになりますが、結局のところ、社会は学知に何を求めているのでしょうか。つまり、社会における知とは何なのでしょうか。そもそも、社会は専門知を必要としているのでしょうか。 倉橋:非常に難しい問題ですけど、もちろん、専門知は社会にとって必要不可欠だと思います。けれど、専門知に対する評価は非常に低くなり、信頼されなくなっているという現状があるのも事実です。その辺りは、トム・ニコルズというアメリカの研究者が深く分析し、一般向けの著書を出版し、専門知が軽んじられる状況を「反知性主義」という言葉で説明しています。彼の分析はかなり悲観的ですが、世界的な災害や危機が生じたとき、その状況はひっくり返る可能性があるとも指摘していました。 その邦訳(『専門知は、もういらないのか』)が日本で発売された半年後にコロナの問題が起こりました。政府が「専門家会議」を作って助言を求める姿が繰り返し報道されています。それで信頼がどの程度回復するかはわかりませんが、「専門知」が見直されるきっかけとはなったのではないでしょうか。歴史学の問題に関しては、呉座さんが「権威」という言葉を使われましたが、それに対する反発が社会には広がっていて、それが専門知を揺るがしているのではないかと考えています。 反知性主義の背景には「平等観」があるのだと思います。すなわち、専門知という権威を引き下げ、俗説を引き上げるというトレンドがあり、知は専門家だけのものではなく、もっとフラットなものなのだという感覚でしょうか。そういう感覚が社会に広がっている。とくにネットのやり取りを見ているとそんな感じがします』、安部・菅政権は「反知性主義」的色彩がみられる。コロナ対応の「専門家会議」も政治家の責任逃れのためという感じが濃厚だ。
・『現代社会の真の対立軸  辻田:現代美術家の村上隆さんが、かつて「スーパーフラット」という言葉を使いました。すべてが真っ平らだというポストモダンの価値観をよく言い表したものだと思いますが、学校だと、教える側も教えられる側もフラットで平等なのだという感覚なのでしょう。 最初に右左の対立軸の話がありましたけども、もし今、本当に対立軸があるとすれば、それは、すべてがフラットだというポストモダン的な価値観の人たちと、社会にはある種の階層や秩序があると考える(近代的な?)価値観の人たちとの間にあるような気がします。これはどちらが一概にいいとは言いにくいのですが……。 倉橋:その点については、私も同感で、危惧していると言ってもいい。実際に現実にも発せられる言語にも権力勾配や権力格差はつねに付きまとい、それがなくなったことなど歴史上一度もないのに、もはや解消したもののように扱われるという知的現象は数多く見られます。 「男性差別」「在日特権」「日本人ヘイト」といったマジョリティーこそ被害者であるといった言説は、平等あるいは立場のフラットをベースにしたところから語られる権力勾配無視の発想があると思います。歴史修正主義者がそうしたフラットな状況を作り出すために「ディベート」のような言論ゲームを持ち出したのもその延長線上にあると思います』、「歴史修正主義者がそうしたフラットな状況を作り出すために「ディベート」のような言論ゲームを持ち出したのもその延長線上にあると思います」、これからの議論をみていく上で、参考になりそうだ。ただ、肝心の日韓関係とはたいぶ離れてしまったようだ。なお、この座談会の第2回、第3回は、9月29日付け「歴史問題13」で既に取上げた。

次に、9月20日付けデイリー新潮「韓国の大統領・首相からの書簡を「菅義偉首相」が“スルー”した理由」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/09201700/?all=1
・『戦後最悪とされる日韓関係。その原因は従軍慰安婦や徴用工などに関する歴史認識問題だ。なぜ歴史認識が日韓で乖離し、対立を生んだのか。その軌跡を、歴史家が丹念に追う。『歴史認識はどう語られてきたか』を書いた神戸大学大学院の木村幹教授に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは木村氏の回答)』、興味深そうだ。
・『「河野談話」もすでに歴史  Q:解決不可能と思えるほど、日韓関係は悪いままです。 A:解決をいう前に、われわれが双方の現代史をきちんと把握し、理解しているのかどうか。歴史認識とは、過去の歴史的事実そのものをめぐる問題というよりも、過去の歴史的事実をそれぞれの時代に生きる人々がどのように考え、どの部分にどのような重要性を見いだすかという問題です。この点が、きちんと理解されていません。 Q:確かに「そうだろう」「そうだったはずだ」といった思い込みで語られがちですね。 A:太平洋戦争中の問題である慰安婦問題を、「当時の人は慰安婦なんて知らなかった」として語る人がいます。戦後75年といいますが、その時間幅は奈良時代(710〜94年)とほぼ変わらず、明治維新(1867年)から太平洋戦争終結(1945年)までに匹敵する「一時代」なのです。でも、現代史なので自分たちから遠くないとの感覚があり、「知ってるよ」と安易に判断して語りがちです。 Q:慰安婦への日本軍の関与を認めた1993年の「河野談話」の是非が問題になることがありますが、その実、河野談話で何が語られたのかは知られていません。 A:27年前のことですが、きちんと理解されているかどうか。河野談話もすでに歴史であり、だからこそきちんと確認して議論する必要があるのですが、多くの人はそうは考えません。1982年の教科書問題や1980〜90年代から広がった慰安婦・徴用工問題は、それぞれの時代でどのように、どういった状況で語られ、あるいは認識されていたのか。そういった歴史の変化を追い、それを残せるか。歴史家は、歴史に振り切られないようにすべきです。 Q:韓国ではとくに、1987年の民主化をはじめ1980年代に激動の時代を迎えました。 (木村 幹氏の略歴はリンク先参照) 日本は海外から「安定した国でいいですね」と言われます。生活が安定し平和であるのはいいことですが、そのぶん対外的な変化に鈍感です。日本の外には激しい変化の生じている国があり、韓国はその1つです。外国とのギャップに、もっと留意すべきでしょう。 例えば安倍晋三前首相は、2015年の慰安婦合意など韓国に対して積極的でした。祖父・岸信介元首相から彼の時代の韓国の話を聞き、それが安倍氏の対韓認識を形成したゆえかもしれません。 しかし、岸氏が在任した1950年代末からはもちろん、安倍氏の在任期間中にも朴槿恵(パククネ)、文在寅(ムンジェイン)政権下で韓国は大きく変化しました。その変化を安倍氏はきちんと読み取れていたでしょうか。もちろん、これは韓国の政権も同じで、この10年間の日本の対韓国世論の急速な悪化は、彼らにとってもついていくのが大変な現象でしたからね』、「戦後75年といいますが、その時間幅は奈良時代(710〜94年)とほぼ変わらず、明治維新(1867年)から太平洋戦争終結(1945年)までに匹敵する「一時代」なのです」、その重みを再認識した。「河野談話で何が語られたのかは知られていません」、「それぞれの時代でどのように、どういった状況で語られ、あるいは認識されていたのか。そういった歴史の変化を追い、それを残せるか」、は歴史家もさることながら、ジャーナリストにも責任があると思う。
・『80年代の変化に日本は気がつかなかった  Q:歴史認識が大きな外交懸案となったのは1980〜90年代以降です。これには、韓国の歴史研究者の世代交代も影響したのですか。 A:植民地時代の歴史研究は、朝鮮半島では日本人研究者が主導しました。韓国人の研究者が本格的に養成されるようになったのは、植民地支配の末期からです。だから、日本支配が終わった当時の歴史研究者の大半はまだ20代で、彼らがそのまま教授として主要大学のポストに就いた。それから約30年間、彼らは退職するまで学界の要職を占め続けました。 1980年代に入り、韓国の経済成長と国際環境の変化などを背景に、従来の研究とは一線を画す歴史研究を主張する研究者が出現しました。日本語で教育を受けた世代が徐々に退場し、「民族史観」が打ち立てられるなど歴史研究の大きなパラダイムシフトが生じました。この変化が、その後の歴史認識問題の下地となるのですが、この大きな変化に当時の日本人は気づきませんでした。 Q:2018〜19年には旭日旗への韓国世論の反発や韓国艦艇による自衛隊機レーダー照射、日本の輸出規制管理強化などの問題が発生して日韓対立がさらに深まりました。 A:慰安婦・徴用工問題とは明らかに違う、韓国発の新たなイシューが頻発しています。とくに旭日旗問題は、従来の慰安婦や徴用工といった問題とは、具体的な当事者がいない点で、性質が異なります。 問題が大きくなったのは、2018年に韓国で予定されていた国際観艦式を前に、参加を予定していた海上自衛隊に対し韓国海軍が旭日旗の使用自粛を実質的に要請したことに海自が反発、参加を取りやめたからでした。背景には、旭日旗は日本軍国主義の象徴であり「戦犯旗」だとの認識がすでに確立していたことがありました』、こうしたことは、第一義的には外務省の韓国担当部署やジャーナリストの責任の筈だ。
・『日本のプレゼンスは韓国で低くなった  この認識が韓国で急速に影響力を持ったのは、人々が歴史の具体的な事実に関心を失い、植民地支配=悪であり違法、とする単純な理解に頼るようになったからです。この植民地支配=悪であり違法、とする考え方は、大韓民国建国上の「建前」でもあり、韓国では誰も抵抗できない。だから例えばインターネットで、他人を批判する際にはものすごく便利だったりします。そして、これに対して大統領など政府要人らもわざわざ火消しに動こうとしない。 かつて、日本との関係が強い時代には国内の対日反発は要人らが必ず抑えようとしました。しかしこの20年間、韓国での日本の政治的・経済的プレゼンスが低下し、相対的に重要性が低くなりました。ゆえに、無理に火消しに走ろうというインセンティブが要人らに生じない。となれば、旭日旗問題のような「建前」に関わる問題が今後も簡単に起こるようになります。 Q:文政権は日本に関心がないとの指摘もよく聞きます。 A:重要性が低いので関心も低くなる。日韓関係での「イデオロギーガバナンス」、国家としての建前に関わるナショナリズムを統制するシステムが利かなくなっています。建前を抑え、関係改善のために「火中の栗を拾う」エリート層がいなくなれば、現場での日本への対応に配慮がなくなります。レーダー照射のような緊張感のない事態が発生しやすくなるでしょう』、日本にとって「日韓関係」はやはり重要なので、日本側から能動的に如何に働きかけてゆくか、真剣に戦略を練り直すべきだろう。

第三に、10月5日付けJBPressが掲載した在米ジャーナリストの高濱 賛氏による「日韓歴史問題解決の切り札は在韓米軍撤退 米有力シンクタンク、国務省見解を代弁する提言」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62365
・『文大統領にとり最高裁判断は「盾と矛」  菅義偉首相は9月29日、韓国の文在寅大統領と首相就任後初めて電話会談した。韓国側の申し入れで行われた。 日韓の最大の懸案になっている元徴用工問題について首相が「このまま放置してはならない」と述べたのに対し、文大統領は従来通りの主張を繰り返した。 「両政府とすべての当事者が受け入れ可能で最適な解決策を共に模索することを望む」 そんな解決策はない。 しかもそうした解決策を自分から率先して模索するのではなく、誰か(つまり日本側が)が模索することを「望む」と、どこまでも第三者的スタンスに終始している。 日韓関係がここまで冷え込んでしまった「元凶」は、2018年、韓国の最高裁が元徴用工訴訟で新日鉄住金(現日本製鉄)に賠償を命じたことにある。 日本政府は、元徴用工問題は1965年の日韓請求権協定(これは国際法だ)で「完全かつ最終的に解決済み」と主張、一歩も引かない。 文在寅大統領は、この最高裁の司法判断を金科玉条のように尊重する姿勢を崩そうとしていない。 長年にわたり、日韓関係を定点観測してきた米シンクタンクの上級研究員N氏は、ずばり言い切っている。 「その背景には文在寅大統領を選び、支えてきた朝鮮民族第一主義(コリアン・ナショナリズム)があり、それに逆らえば政権が吹っ飛んでしまうからだろう」 「最高裁の判断は、韓国では国際法よりも重要であり、バイブルよりも権威ある存在になってしまっている」 「文大統領にとっては司法判断は自分を守ってくれる盾であり、矛になってしまった」) (韓国から見れば)強硬派の安倍晋三氏が首相の座を降り、「実用主義者」の菅首相が登場したことで「日本側の出方も変化しうる」(李元徳・国民大学教授)と楽観視する向きもあるようだ。 しかし、冒頭の電話会談のやり取りをみる限り、こうした見方は的外れだった。菅政権でも膠着状態は続きそうだ。 しかも日韓関係改善には唯一の「仲介役」になり得るドナルド・トランプ米大統領がついに新型コロナウイルスに感染し、米政治は暗転してしまった。 1か月を切った大統領選がどうなるのか。誰も予測すらできなくなってきた。 米国にとって日韓関係などはレーダーサイトから消えてしまいそうだ。 そうした中、マイク・ポンペオ国務長官が10月4日から6日まで訪日する。対中包囲網構築に向けた日本、オーストラリア、インドとの4か国外相会合に出席するのが主目的だが、菅首相とも就任後初会談する。 当初は韓国、モンゴルも歴訪する予定だったが、トランプ大統領の容体が予断を許さないためキャンセルされた。 新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大してから、日本を訪問するのは初めて。 実務外遊というよりも「国家の危機」に際しても、米国が太平洋地域の盟主であることを中ロに見せつけるシンボリックな歴訪と言えそうだ。 むろん北朝鮮に睨みを利かせる狙いもある。 菅首相との会談では、元徴用工問題がアジェンダとして取り上げられるのは必至だ。 トランプ大統領夫妻の感染が公表されて以降、大統領に同行したり、濃厚接触していた側近や政治家が次々陽性反応を示している。 最側近のポンペオ国務長官は一応陰性反応が出たようだが、まだ予断は許さない。 ▽新進気鋭の女性国際政治学者の予見(コロナウイルス感染が拡大する中で、日韓関係に関する注目すべきメモランダムが公になっている。 (https://www.nbr.org/publication/the-next-steps-for-u-s-rok-japan-trilateralism/) 東アジア専門に調査研究する米有力研究機関、「ナショナル・ビュロー・オブ・アジアン・リサーチ」(NBR)が公表した安倍首相退陣後の日韓関係を予測したメモランダムだ。 その予測とは一言で言うとこうだ。 「対韓強硬派の安倍首相が辞任しても日韓関係は好転はしない」「米国の長期的な軍事コミットメントに対する日韓両国の疑念が強まらない限り、歴史認識をめぐる双方の溝を埋めることはできないだろう」 このメモランダムは、東アジア問題研究で脚光を浴びているダートマス大学のジェニファー・リンド准教授とのインタビューを編集者がまとめたもの。 同准教授は、カリフォルリア大学バークレー校、同サンディエゴ校を経て、MIT(マサチューセッツ工科大学)で博士号を取得。 現在ハーバード大学ライシャワー日本研究所、英チャタムハウスにも特別研究員として籍を置く一方、米国防長官室、国防総省系シンクタンク「ランド研究所」のコンサルタントも兼務している。) 近年、早稲田大学やロンドン大学東洋アフリカ・スクール(SOAS)にも客員研究員として留学、東アジア情勢に関する最新情報を入手している。 高度のアカデミック研究に現実外交の実態分析を加味した同准教授の論文は、外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」、「ナショナル・インタレスト」にしばしば掲載され、外交専門家、特に米政府の外交政策立案者の間では高い評価を受けている。 2008年には戦争の記憶がその後の当事国同士の和解に与えるインパクトを分析した『Sorry States:Apologies in the International Politics』を上梓している。 (https://www.amazon.com/Sorry-States-Apologies-International-Politics/dp/0801476283)』、「米国の長期的な軍事コミットメントに対する日韓両国の疑念が強まらない限り、歴史認識をめぐる双方の溝を埋めることはできないだろう」、との「リンド准教授」の見解は興味深い。
・『反日は韓国人のアイデンティティ  今回取り上げたメモランダムで同准教授が指摘したのは以下の点だ。 一、韓国のアンチ・ジャパニズム(反日主義)は、韓国のナショナリズムの重要な要素で日本に対する怒りと屈辱は韓国人のアイデンティティの根幹になっている。 二、日本サイドのリベラル派は歴史認識問題については柔軟性を見せているが、保守派には根強い愛国主義が定着している。従って日本政府が韓国の主張に歩み寄る空気は希薄だ。 三、(米国内の)一部専門家は歴史認識問題を解決したうえで日韓は安保、経済的協力関係を改善するべきだと指摘している。だが私はこうした指摘には同意できない。 四、日韓関係改善に米国が仲介役を果たすべきだという指摘がある。だが米国が仲介するのは困難だ。関係改善するには日韓両国の官民各層が本気で取り組む以外にない。 五、現実的な予測をすれば、日韓関係の現状を打破するには、米国が在韓米軍撤収などで長期的な軍事コミットメントを変更させる以外にないかもしれない。 六、日韓両政府が米国の両国に対する軍事コミットメントを反故にするという疑念を深めた時、共通の脅威に対応するには歴史認識問題をめぐる対立を脇に置いて協力せねばならないという判断をせざるを得なくなるだろう。 リンド准教授の見解はワシントンではどう受け止められているか。 日韓とここ30年付き合ってきた米国務省関係者B氏は筆者にこうコメントしている。 「正直言って、リンド准教授の分析は妥当だ。私も同意する」「国務省はじめ外交国防政策に携わっているエリート官僚のコンセンサスを代弁している。同准教授の東アジア情勢分析は政府部内でも高い評価を受けている」』、「米国が仲介するのは困難」、なのは確かなようだ。やはり、「六、日韓両政府が米国の両国に対する軍事コミットメントを反故にするという疑念を深めた時、共通の脅威に対応するには歴史認識問題をめぐる対立を脇に置いて協力せねばならないという判断をせざるを得なくなるだろう」、が現実的なのだろう。
タグ:「河野談話」もすでに歴史 なぜ「新しい物語」が必要なのか 歴史修正主義が台頭した背景 左派が権威、右が挑戦者という嘘の構図」、よくぞこんな見えすいた「嘘」が通用するものだ。「歴史修正主義の蔓延を無視していると、最終的に、アカデミズムにも悪い影響を与えてしまいます 河野談話で何が語られたのかは知られていません」、「それぞれの時代でどのように、どういった状況で語られ、あるいは認識されていたのか。そういった歴史の変化を追い、それを残せるか 日韓両政府が米国の両国に対する軍事コミットメントを反故にするという疑念を深めた時、共通の脅威に対応するには歴史認識問題をめぐる対立を脇に置いて協力せねばならないという判断をせざるを得なくなるだろう 日本の歴史学は、物語というか、歴史を概観する大きな見取り図を描けなくなって、日本の歴史はこうだったと、積極的に市民や社会に示すものがなくなってしまったために、どんどん内向きになって、実証主義の職人として学会でアピールするしかなくなっているという問題がある 米国が仲介するのは困難 反日は韓国人のアイデンティティ 左派が権威、右が挑戦者という嘘の構図 米国の長期的な軍事コミットメントに対する日韓両国の疑念が強まらない限り、歴史認識をめぐる双方の溝を埋めることはできないだろう 文大統領にとり最高裁判断は「盾と矛」 「日韓歴史問題解決の切り札は在韓米軍撤退 米有力シンクタンク、国務省見解を代弁する提言」 JBPRESS 日本にとって「日韓関係」はやはり重要なので、日本側から能動的に如何に働きかけてゆくか、真剣に戦略を練り直すべきだろう 80年代の変化に日本は気がつかなかった NHSを再評価 ジョンソン首相 「韓国の大統領・首相からの書簡を「菅義偉首相」が“スルー”した理由」 歴史修正主義には、日本人の誇りに関心があるから史実はあまり重視しないという特徴があります。それが社会に一定の影響力を持っているのは、社会に対する不安や不満を持つ人々の心情と親和性があるからだとも考えられます 日韓歴史共同研究が挫折する理由 デイリー新潮 イギリスの論壇の基本は中道 (その12)(日韓が「歴史問題」でわかり合えない根本理由 議論すべきは「歴史の実証」か「歴史認識」か、韓国の大統領・首相からの書簡を「菅義偉首相」が“スルー”した理由、日韓歴史問題解決の切り札は在韓米軍撤退 米有力シンクタンク 国務省見解を代弁する提言) 植民地主義の歴史を持つ国々では、それを否定すると現体制の正当性まで問われることになりかねないため、国として「歴史認識」を考え直そうということにはなかなかならないわけですが、もしかしたらそうした国の姿勢に対する距離感で左右が分かれるかもしれません 東洋経済オンライン 前川 一郎 戦後75年といいますが、その時間幅は奈良時代(710〜94年)とほぼ変わらず、明治維新(1867年)から太平洋戦争終結(1945年)までに匹敵する「一時代」なのです 日韓関係 現代社会の真の対立軸 歴史問題13 木村幹教授 「日韓が「歴史問題」でわかり合えない根本理由 議論すべきは「歴史の実証」か「歴史認識」か」 4人の気鋭の研究者による座談会 ジャーナリストにも責任
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日本の外交政策(その8)(「最後は身動き取れなくなった」安倍政権の外交 「トップダウン」が裏目に〈AERA〉、菅外交が早々に迫られるいくつかの「重要な選択」、「外交初心者」の菅首相次第という日本外交の不透明 菅新政権の課題) [外交]

安倍外交については、8月27日に取上げた。今日は、タイトルを変更して、日本の外交政策(その8)(「最後は身動き取れなくなった」安倍政権の外交 「トップダウン」が裏目に〈AERA〉、菅外交が早々に迫られるいくつかの「重要な選択」、「外交初心者」の菅首相次第という日本外交の不透明 菅新政権の課題)である。なお、番号は旧来のものと連続させた。

先ずは、9月9日付けAERAdot「「最後は身動き取れなくなった」安倍政権の外交 「トップダウン」が裏目に〈AERA〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/aera/2020090800017.html?page=1
・『思わぬ形で終わりを迎えることとなった安倍政権。韓国・北朝鮮関係では当初、「トップダウン外交」を武器に大胆な対応をみせたが、結果は振るわなかった。AERA 2020年9月14日号では、朝日新聞編集委員の牧野愛博さんがその外交手腕を振り返った。 「外交の安倍」を自任した安倍晋三首相の得意技は「トップダウン外交」だった。首相官邸が戦略を決め、首脳外交で合意を演出する。大胆な外交が可能になる半面、しばしば世論に流される結果を招く。韓国や北朝鮮との関係でも、当初は成果を出したが、最後は身動きが取れなくなった。 安倍首相は当初、日韓関係の改善に積極的だった。慰安婦問題の解決にこだわった朴槿恵(パククネ)政権に対し、2015年12月に日韓慰安婦合意を実現させた。合意当日、首相官邸前に右翼の街宣車が押しかけて抗議するなど、本来の支持層の反発を浴びてまでの決断だった。 安倍首相の決断の決め手は「世論」だった。当時、首相周辺は「慰安婦合意を実現すれば、右派に加えて中道左派までの支持を得られ、歴史に名を残す指導者になれます」と言いながら、安倍首相に決断を促したという』、「トップダウン外交」は世界の潮流でもあるようだ。「日韓慰安婦合意」は右派の「安倍首相」にとっては、確かに思い切った決断だったようだ。
・『慰安婦合意がやり玉に  だが、この思い切った外交は、17年5月に登場した文在寅(ムンジェイン)政権によって破壊される。文大統領は日本に強い関心があるわけではないが、韓国内の政治闘争の延長で朴槿恵前政権の政策を全面否定することに奔走した。そのやり玉に挙がったのが、日韓慰安婦合意だった。 文政権は18年11月、合意に基づく日本政府の拠出金でつくられた財団の解散を発表し、合意は崩壊した。 加えて18年10月、韓国大法院(最高裁)が日本企業に対し、元徴用工らへの損害賠償を命じた判決が、安倍首相の日韓関係改善への熱意を完全に消し去った。首相は判決前から、繰り返し、文大統領との首脳会談で、「賠償を命じる判決が出れば、関係の決定的な悪化を招く」と警告し、文氏も「重大な問題だと理解している」と語っていた。 安倍首相は当初、文氏に好感を抱いていたが、判決後には周囲に「文氏は言う事とやる事が全く違う」と漏らすなど、不信感を強めた。トップがやる気を失ったため、日韓外交は動かなくなった。 文政権の度重なる日本に配慮しない政策で、韓国に対する日本世論が極度に悪化したことも影響した。 同じ現象は、北朝鮮との関係でも見られた。 日本人拉致問題の解決を最重要課題に据えた安倍首相は、北朝鮮に接近し、14年に、北朝鮮が日本人拉致被害者らの再調査を行うなどとしたストックホルム合意を実現した。 ただ、北朝鮮に対する厳しい世論を意識した首相官邸は、北朝鮮が不十分な中間報告を提出することを警戒し、再調査は停滞。結局、日本政府は16年2月、再び独自制裁を決定。北朝鮮は再調査の中止と、拉致問題に関する特別調査委員会の解体を発表するに至った。 安倍首相は、18年に実現した南北や米朝の各首脳会談を受け、得意の「トップダウン外交」を目指したが、不信感を持った北朝鮮側が応じることはなかった。 次期首相が有力とされる菅義偉官房長官は、安倍政権の政策継承を唱える。自民党のベテラン議員の一人は「外交は恋愛とは違う。朝鮮半島に厳しい世論をみて、有権者の支持を得たいという誘惑に駆られる限り、次期政権でも朝鮮半島外交は何も変わらないだろう」と語った』、「次期政権でも朝鮮半島外交は何も変わらないだろう」、というの残念だ。「世論」に迎合的になりすぎるのも問題なのではなかろうか。

次に、9月16日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元外務審議官で日本総合研究所国際戦略研究所理事長の田中 均氏による「菅外交が早々に迫られるいくつかの「重要な選択」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/248724
・『菅新政権が16日、発足するが、向き合っていかなければならない外交課題も数多い。 コロナ危機により国際構造の変化は加速され、また、11月の米国大統領選挙ではトランプ大統領の再選可能性が低くなってきている。 単純に「安倍外交を継承する」では済まされない重要な選択を、早々に迫られることになる。 日本の国益を守るには大局観に基づく判断と精緻な戦略が必要だ』、興味深そうだ。
・『対米アプローチは見直し必要 「是々非々」でものを言う関係に  安倍外交に対する高い評価の一つはトランプ政権と盤石の関係を築いたことだ。 もちろん、そのためにトランプ大統領を喜ばせる行動に出たことも事実だろう。 ステルス戦闘機F-35の大量購入や、断念することにはなったが新型迎撃ミサイルシステム・イージス・アショアの配備などの膨大な武器の購入、米国がTPPから撤退した後、迅速に日米で貿易合意を締結したことなどについて、米国は安倍首相の努力と配慮を高く評価した。 しかしトランプ政権の対外政策の多くが日本の利益に合致していたわけではない。 TPPだけではなく、気候変動に関するパリ合意やイラン核合意など多国間協力からの撤退や「アメリカ・ファースト」を掲げる一方的行動は決して日本を利するものではない。 現在の情勢から見れば11月の大統領選挙でトランプ大統領が再選される可能性は低い。 コロナ対応に対する国民の一般的評価は低く、経済の急速な回復も望めない。人種差別反対より治安維持に重点を置いたような言動も批判を受けている。 2016年選挙でトランプ氏が勝利した要因の一つは、既成の政治とは縁のない未知の人物に対する期待票だったが、今回の選挙では知り尽くされた人物に対する批判票に直面することになる。 米国内では、コロナ禍での郵便投票の拡大で開票が混乱する恐れのほか、トランプ大統領は郵便投票には不正が伴うとして選挙結果を容易には認めないのではないかとの懸念も強い。 米国が大統領選挙結果を巡り混乱に陥ることは不可避かもしれない』、「大統領選挙結果を巡り混乱に陥ることは不可避かもしれない」、困ったことだ。
・『米国中心の求心力は低下 米国の政策を修正する努力を  トランプ大統領が再選されれば、これまでの日米蜜月的な雰囲気は継続されるだろうが、米国はさらに国際協調主義から遠のいていくだろうし、それは日本にとっても好ましいことではない。 バイデン大統領が選出されれば、伝統的に民主党政権は共和党政権ほど同盟国を重視することはないが、トランプ氏とは異なり、国際協力の道に立ち返るということになるのだろうか。 トランプ氏であれバイデン氏であれ、コロナ後の世界は米国を中心とした西側世界の求心力が低下していく難しい世界となる。 日本の米国への向き合い方も、対米配慮一辺倒というわけにはいかず、コロナ後の新たな情勢の展開に合わせて見直していく必要がある。 その基本は、日米同盟の中で安全保障面を含め日本の役割を増やしつつ、是々非々で米国にものを言い、米国の政策を修正する努力をするといったアプローチになるのではないか。 中でも対中関係が最も重要だ』、「日米同盟の中で安全保障面を含め日本の役割を増やしつつ、是々非々で米国にものを言い、米国の政策を修正する努力をするといったアプローチ」、なかなか難しそうだ。
・『米中対立には精緻な戦略で 守るべき「3つの基本的国益」  中国が新型コロナウイルスの最初の発生地でありながら感染防止にほぼ成功したと伝えられ、ほとんどの国で2020年は10%を超えるようなGDP(国内総生産)の落ち込みがある中で、唯一プラス成長を実現する可能性が高い。 急速に縮まってきた米中の国力の差は一層、縮まることになり、米中間の対立はさらに激化する。 米国の強硬な態度はトランプ再選戦略のための外交だと見る人も多いが、米中の対立は異なる体制間の覇権争いともいうべき構造的問題であり、対立は長く続く。 このまま推移すると、おそらく習近平国家主席が「中国の夢」として世界で突出する強国の実現を目標とする2049年(中華人民共和国創設100周年)に向けて、厳しい米中対峙は続くことになる。 バイデン民主党政権になればトランプ政権がとってきたハイテク分野での中国排除や中国との各種交流に対する制限をいったんは見直しするのだろうが、香港やウイグルでの人権問題に対する意識は高く、総じて対中姿勢が大きく変わることにはならないだろう。 日本にとっての守るべき基本的国益は次の三つだろう。 (1)自由民主主義体制を守るために、米国との同盟関係を通じ中国の覇権的行動を抑止する。 (2)貿易・投資・人の交流など中国との深い経済相互依存関係、並びに中国と密接な経済依存関係があるアジア諸国との経済相互依存体制は日本の繁栄のために失うことができない。 (3)この地域での米中軍事的衝突は日本に波及することは必至であり避けなければならない。軍事衝突の蓋然性が最も高いのは台湾を巡る問題だろう。 これら三つの基本的な国益が相互に矛盾しないよう緻密な戦略がなければならない。 まず必要なことは日本が米、中両国との間断なき戦略対話を行うことだ。 中国は米国との厳しい対立の継続を予想し日本との関係改善を望んでおり、例えば、香港問題では日本が静かに問題提起をし、中国の行動を変えさせていく余地はある。 第二に米中に共通の戦略的利益を見出すことだ。 米ソ冷戦時代に西側諸国と中国との関係が比較的、良好だったのはなぜか。 中国はソ連と国境紛争などを巡り関係が悪化しており、対ソ包囲網を作るうえで中国の存在は西側を利した。 だが現在では米中間には香港、台湾、南シナ海を含め共通の戦略的利益が存在しないことが対立激化の一つの理由だ。 その中で「北朝鮮非核化」は米中だけでなく日・韓・ロの共通利益であり、北朝鮮非核化問題を前進させることが米中対立を緩和させることにもなる』、「北朝鮮非核化」は中国、ロシアにとっては、米国などと「共通利益」と
するが、果たしてそうだろうか。両国が「北朝鮮」をコントロールできるのであれば、自陣営の対西側への対抗力は保持したい筈なのではなかろうか。
・『戦略的なパートナーシップづくりで「中国を変える」ことをめざす  第三に、パートナーシップづくりだ。 日本はASEAN諸国、豪、印、EU諸国などとの戦略的パートナーシップを強化すべきとともに、東アジアサミットやASEANプラス3などの中国を巻き込んだ地域協力を活性化するべきだろう。 もっともトランプ再選となれば米国は東アジアでの地域協力にも消極的な姿勢をとると思われる。 このように日本の戦略はやはり「中国を変える」ことを主目的にすることだ。 中国の成長率は、経済の成熟化や高齢化で今後、低下していかざるを得ず、国際社会との相互依存関係が希薄となっていけば、ますます低下していくことは自明だ。 そこに中国を変えていく鍵があるような気がする。 そのことを考えても、関係国との間断なき協議とパートナーシップづくりを続けることが重要だ』、天安門事件以降、「日本」は「中国を変える」ために、欧米よりソフトに接してきたが、反日教育の開始などで見事に裏切られてきた。同じ過ちを繰り返すのは愚の骨頂だ。少なくとも「中国を変える」などと思い上がった政策は採るべきではない。
・『拉致問題は包括的アプローチで 北朝鮮非核化と「一括解決」  安倍首相が辞任会見で、解決できず「痛恨の極み」と述べた北朝鮮拉致問題や、「断腸の思い」と語ったロシアとの平和条約については改めて考え方を整理する必要がある。 拉致問題については、安倍首相が初期の段階から強い想いを持ち続けた政治家の一人だし、政権のプライオリティとして取り組んできたのは間違いがない。 しかし北朝鮮は諸外国との懸案を自国の生存と関連付けて考えており、日本が拉致問題を核やミサイルという他の重要問題と切り離して解決しようとしても難しい。 一方で北朝鮮が望む経済協力や国交正常化も核やミサイル問題の解決なくしては実現できない。 従って拉致問題に必要なのは「包括的アプローチ」であり、北朝鮮の非核化の過程の中で一括解決するというアプローチをとらざるを得ない。 北朝鮮と恒常的な対話を行い包括的解決の糸口を見つけていかねばならないし、核問題解決のため日本は行動すべきだ。 また北朝鮮との問題を解決していくうえでも、韓国との関係は菅新政権のもとで「新たな出発」をしてもらいたいと思う。 韓国内の革新と保守の分断の激しさや「歴史を巡る反日」が文在寅大統領ほかの革新派の原点的な意味合いを持つが故に、徴用工や慰安婦問題の解決を困難にしている。 また文在寅政権は対北朝鮮融和に走り、日米韓の協力に熱心でない、あるいは中国との連携に走るという傾向がないわけではない。 しかしながら朝鮮半島の安定は日本の死活的利益であり、そのためには韓国との協力を捨象できるものではない』、「拉致問題は包括的アプローチで」、従来の姿勢を継続しろとのことだが、余りに硬直的過ぎて、これでは一歩も進まない。問題を分解して、妥協点を見出していく通常の「アプローチ」に変えることを検討すべきだ。
・『ロシアとは距離をとる必要 領土問題では進展見込めず  ロシアについては少し距離をとるアプローチが必要だ。 ここ数年、日ロの緊密な首脳同士の関係とは裏腹に領土問題についてのロシアの態度は硬化していく一方であり、ロシア側から前向きの姿勢が示されない限り、従来同様のアプローチを続けていくことは再考すべきと思う。 ロシアと欧米についてはサイバーによる選挙介入、ウクライナやベラルーシ問題、プーチン大統領政敵の暗殺を意図したといわれる事件などを通じ、関係は悪化する一方であり、国際社会における立場からいってもロシアにあまり寛容な態度をとるべきではない。 菅新政権はコロナ感染防止と経済回復、中長期的な経済財政構造、そして東京オリンピック・パラリンピック開催問題など山積する多様な国内課題に取り組まなければならないが、対外関係についてもコロナ後の新しい政治経済構造の中で幾つかの重要な選択を行わなければならない。 大局観をもって取り組んでもらいたいと思う』、同感である。

第三に、10月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した朝日新聞編集委員の牧野愛博氏による「「外交初心者」の菅首相次第という日本外交の不透明 菅新政権の課題」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/250435
・『菅義偉政権が発足、7年8カ月ぶりの首相交代で、注目が集まっているのが日本外交の行方だ。 「トップダウン外交」を売り物にした安倍政権下では、外務省の影響力は薄れ、結果的に中国やロシアとの外交が迷走する結果になった。 9月21日の米・トランプ大統領との電話会談を皮切りに、中国・習近平国家主席、韓国・文在寅大統領と電話協議などが相次いで行われたが、首相自身の外交ビジョンも含め、米中「新冷戦」や戦後最悪の日韓関係などの状況で菅政権の外交はどうなっていくのか、見えないところが多い』、興味深そうだ。
・『「安倍外交」の残滓が色濃く対中関係は二階氏が影響力?  菅氏は官房長官時代、外交そのものに強い関心を示したことはほとんどなかった。 典型がロシア外交で、安倍政権が北方領土問題の解決に向けてさまざま政策を打ち出しても、菅氏が口を出すことはなかった。 ただ、国内政治との関係から外交政策に意見することがしばしばあったという。 例えば日中関係では、菅氏は安倍政権が進めた日中関係改善の流れをおおむね支持していたという。 政府関係者の1人は「おそらく、企業と二階さんが原因だろう」と語る。 官房長官を務めていた菅氏の元には、多数の日本企業から「日中関係が冷え込んで商売にならない」という陳情が多数届いていたという。一方、二階俊博自民党幹事長は、自他共に認める「親中派」だ。 二階氏は17日、石破派のパーティーで「中国とは長い冬の時代もあったが、今や誰が考えても春」と語り、日本政府が保留している習近平中国国家主席の訪日への期待感を示した』、「二階氏」はやはり「習近平中国国家主席の訪日」を実現させたいようだ。
・『訪中で託した親書 「官邸官僚」が書き換え  もともと、日中接近の道筋は、安倍政権の「トップダウン外交」が描いた作品だった。 2017年5月、安倍首相が、訪中する二階幹事長に習近平主席宛ての親書を託した。外務省は親書を作成するにあたり、中国が推進する「一帯一路」構想について、「自由と民主主義に貢献する一帯一路を支持する」といった「厳格な条件付き賛成」論を展開した。 谷内正太郎国家安全保障局長の決裁を受けたうえで、首相官邸に提出したが、二階氏に親書を託す直前になって、今井尚哉首相秘書官が「総理の思いを十分伝えていない」と、「条件」の部分を大幅に削減してしまった。 外務省が再び案を練る時間もなく、怒った谷内氏と今井氏が激しく論争する場面もあったという。 こうした、官邸官僚の「忖度政治」は、7年8カ月の首相在任中に秘書官をほとんど代えなかった安倍前首相の政治手法の副産物だった。 霞が関の各省庁幹部が安倍氏にブリーフィングを行う場合、今井氏やその政策を担当する首相秘書官らが、横から「それは総理の考えではない」などと口を差し挟み、最後は安倍氏も苦笑するという光景が日常的に繰り返されていたという。 菅氏の場合、官房長官の時は、官邸官僚が忖度をし横からあれこれ口を出したという話はほとんど聞かない。 ただ、菅氏は内閣人事局を通じた各省庁の幹部人事をもとに、霞が関を巧みにコントロールしてきた。総務相時代も、自らが進めていたふるさと納税制度に異論を唱えた局長を外すなどのこわもてぶりは官僚の間で伝わっている。 安倍政権の場合は、官邸官僚が強制的に首相の応答要領や国会答弁などを書き換えることもしていたが、菅政権になると、霞が関の官僚が菅首相の考えを自ら忖度しようとするかもしれない』、「外務省は親書を作成するにあたり、中国が推進する「一帯一路」構想について・・・「厳格な条件付き賛成」論を展開した。 谷内正太郎国家安全保障局長の決裁を受けたうえで、首相官邸に提出したが、二階氏に親書を託す直前になって、今井尚哉首相秘書官が「総理の思いを十分伝えていない」と、「条件」の部分を大幅に削減」、「今井尚哉首相秘書官」は凄い権勢を振るっていたようだ。
・『米中対立のはざまでバランス外交を踏襲か  それに中国に関する外交では、菅氏の政治的な志向は外務省と相通じる点もある。 中国を巡る国際情勢は今、トランプ米政権が11月の大統領選を前に、過激な対中政策を展開している。 従来、日本や欧州諸国など自由主義陣営は「南シナ海などで力による現状変更を迫る中国に反対する」という姿勢で結束してきた。 日本が唱える「自由で開かれたインド太平洋構想」はその象徴だ。だが同時に、経済分野で中国を完全に排除することは、日本も欧州の企業も望んでいない。 このため、外交当局が反対するのは「中国による現状変更」であり、中国共産党の支配や、中国が唱える「一つの中国」政策には異を唱えていない。 ところが、米国の場合、ポンペオ国務長官が7月にカリフォルニアで行った演説で「自由世界が共産主義の中国を変えなければ、中国が私たちを変えるだろう」と語るなど、中国共産党支配を許さないという姿勢を強めている。 9月には米国務省のクラック次官が台湾を訪問し、蔡英文総統と会談した。中国は激しく反発し、台湾海峡で軍事演習を行うなど、対立はエスカレートし続けている。 こうしてみると、米国の過激な政策をなだめ、日本や欧州などが唱える「穏健な中国との対立路線」に引き戻したい外務省の思惑は、もともと、米中の間でうまく立ち回りたい菅首相の考えと一致するところも多いようにみえる。 10月6日には来日したポンぺオ米国務長官が菅首相を表敬、夕方からは日米豪印四カ国による安全保障対話(QUAD)が行われた。こうした外交舞台を皮切りに、菅政権は米中対立のはざまでうまく立ち回る政策を追求していくことになりそうだ。 ただ、近年の日本外交は安全保障政策に大きく左右されるようになった。 日本周辺の安全保障が安定していた時代は、外務省が日本の国際貢献の一つとして、自衛隊の海外派遣を提案し、主導していた。 ところが、第2次安倍政権の時代、中国が大きく台頭し、尖閣諸島を含む東シナ海や台湾海峡、南シナ海などでの軍事的影響力を強めている。 日本も、中国との外交摩擦は覚悟のうえで、2017年から護衛艦を南シナ海に長期派遣するなど、安全保障を優先的に考えざるを得ない状況になっている。 菅政権も、日本の安全保障を守るため、米国により比重を置いた政策を展開せざるを得ないだろう』、その通りなのだろう。
・『対韓関係は厳しい展開に もともとは融和路線だった  一方、厳しい展開が予想されるのが日韓関係だ。 菅氏は当初、韓国に融和的な姿勢を見せており、2015年12月の日韓慰安婦合意についても、安倍首相の政治決断を促す役割を担っていた。 政府関係者によれば、これは当時の李丙琪駐日韓国大使やその後任の柳興洙大使との親交が大きく影響していた。菅氏は李氏や柳氏としばしば食事を共にし、意見を交換していた。 李丙琪氏は駐日大使時代、菅氏に「慰安婦問題を解決しないと日韓関係が改善できない。日韓局長協議をやりたい」と提案し、菅氏も喜んで応じた。 ただ、局長級協議では、安倍首相と朴槿恵大統領の顔色をうかがって原則論を展開する場面が続き、進展が見られなかった。 李氏は国家情報院長に就任した後の2014年秋、韓国の国家安全保障会議(NSC)で「局長級協議では限界がある。高位級に格上げすべきだ」と提案した。 朴大統領はこの提案を受け入れ、菅官房長官と親交があり、国家情報院長のカウンターパートである谷内正太郎国家安全保障局長とも親しい李氏を対日交渉の責任者に指名した。 当時は日韓双方に信頼関係があったため、「日本の法的責任」という言葉を単なる「責任」と置き換えた。 逆に、日本側が元慰安婦1人あたりの事業費を積み上げた総額は10億円に届かない額だったが、李氏が「自分がポケットマネーを出してもいいから、世論に訴えやすい10円にしてほしい’(注:「億」が抜けている)」と訴えたことで、10億円になったという。 こうした外交当局のやり取りを、菅氏は側面から支えていたという』、なるほど。
・『「李・元駐日大使逮捕」で冷淡に 文政権との関係好転の兆し見えず  菅氏の韓国に対する姿勢が変わったのは、2017年11月。韓国のソウル中央地方検察庁が李丙琪氏を、李氏の院長時代に国家情報院が大統領府に秘密資金を提供した疑いで緊急逮捕した事件がきっかけだった。 この時から菅氏の韓国に対する姿勢は明らかに冷淡になった。 外務省が日韓関係に関するブリーフィングをするときも、「韓国案件は聞きたくない」と言い放ったこともあった。 政府関係者の1人は「あれだけ日韓関係に心を砕いた李丙琪氏を逮捕して、刑務所に送った文在寅政権を許せなかったようだ」と語る。 菅氏は、文在寅政権下で2人目の駐日大使となる、南官杓大使とは2019年5月の着任以来、1度しか会食していない。唯一の会食の際も、2人はぎこちない態度に終始し、和気あいあいだった李丙琪氏や柳興洙氏との関係に比べて極めて冷ややかな空気が漂っていたという。 菅氏は自民党総裁選中に日韓関係についての考えを問われ、「1965年に締結された日韓請求権協定が日韓関係の基本だ」と語り、日本企業に元徴用工らへの損害賠償を命じた韓国大法院(最高裁)判決が、請求権協定を破壊することになるという安倍政権からの日本政府の主張を繰り返した。 24日に韓国側の求めで行われたという両首脳の電話協議でも、菅首相は協議後、「このまま放置してならない旨を伝えた」と語っただけだ。 外務省はこの会談結果について「韓国側において日韓関係を健全な関係に戻すきっかけを作ることを求めた」と説明し、「関係改善は韓国の対応次第」とする安倍政権の姿勢を引き継いだ。日韓関係が好転する兆しは見えない。 日本政府関係者の1人は「日本企業の韓国資産を現金化する動きが止まらない限り、菅首相の訪韓はないだろう」と話す。 韓国が議長国となって、年内の実現を目指す日中韓首脳会議の開催は難しいとの認識を示した』、「菅氏の韓国に対する姿勢は明らかに冷淡になった」契機が、「あれだけ日韓関係に心を砕いた李丙琪氏を逮捕して、刑務所に送った文在寅政権を許せなかったようだ」、案外、「菅氏」は情に厚いところがあるようだが、本来、外交には情は禁物な筈だ。
・『影を落とす外務省の凋落 政治にあわせ強硬論台頭  こうしたなか、永田町・霞が関で懸念する声が出ているのが、外務省の凋落だ。 外務省は「官邸トップダウン外交」を標榜した安倍政権下で、存在感を大幅に低下させてきた。 総合外交政策局は本来、日本政府の外交・安全保障政策のとりまとめ役だったが、今では2014年に内閣官房に設置された国家安全保障局の「ご用伺い機関」(政府関係者の1人)になってしまっている。 国家安全保障局が関係省庁から吸い上げた情報をまとめた後、各省庁に問題のない範囲で提供するため、関係省庁による情報共有は進んだが、外務省主導で政策を仕切る場面は格段に減った。 そして、トップダウン外交を掲げた安倍首相と官僚の統率に力を入れた菅官房長官が仕切った安倍政権時代、外務省内にはより政治家の顔色をうかがう風潮が強くなった。 外務省では過去、「我々の仕事は外国との友好関係を維持すること。外国を攻撃するのが仕事ではない」という意識が強かった。 冷戦時代は、この職業倫理の唯一の例外はソ連課だけだといわれた。当時を知る外務省OBは「ソ連課の連中だけは、ソ連をあからさまに嫌っていた。でも他の地域担当課はそんなことはなかった」と語る。 しかし、冷戦後、中国が新たに台頭するなかで政治家の間で「外務省のチャイナスクール(中国語研修を受けた官僚)は、日中友好に傾きすぎる」という声が強まり、チャイナスクール出身者以外を中国課長やアジア大洋州局長に起用するケースが相次いだ。 この傾向が最近は、韓国を担当する北東アジア1課にも及んでいるという。 北東アジア1課内には「文政権とは何を話しても意味がない」という意見がしばしば飛び交うという。 外務省内では定期的に、在外公館に出る幹部らに対して、韓国の市民団体が世界各地に建立している慰安婦を象徴する少女像の問題を含む歴史認識問題についてブリーフィングを行っているが、最近の研修では、韓国を一方的に糾弾する雰囲気が目立つという』、「外務」官僚には特定の国に肩入れすることなく、冷静で客観的な判断が求められる筈だ。
・『道を踏み外しても助言者のいない危うさ  こうした状況からも、菅政権外交の行方は一にも二にも、外交にはそれほど関心がないとされてきた菅首相その人の器量にかかっているといえそうだ。 もし、道を踏み外しても、それを忠告する勇気のある外交官はもはやほとんど残っていない』、「菅氏」がふるさと納税制度に異論を述べた総務省高官を更迭したように、異論を唱える官僚を切り捨て、忖度して言うことをきく官僚を重用するという狭い「器量」のやり方を続ける限り、「道を踏み外しても助言者のいない危うさ」が大いにつきまとうだろう。
タグ:道を踏み外しても助言者のいない危うさ 影を落とす外務省の凋落 政治にあわせ強硬論台頭 「李・元駐日大使逮捕」で冷淡に 対韓関係は厳しい展開に もともとは融和路線だった 米中対立のはざまでバランス外交を踏襲か 今井尚哉首相秘書官が「総理の思いを十分伝えていない」と、「条件」の部分を大幅に削減 「一帯一路」構想について、「自由と民主主義に貢献する一帯一路を支持する」といった「厳格な条件付き賛成」論を展開 訪中で託した親書 「官邸官僚」が書き換え 「安倍外交」の残滓が色濃く対中関係は二階氏が影響力? 「「外交初心者」の菅首相次第という日本外交の不透明 菅新政権の課題」 牧野愛博 ロシアとは距離をとる必要 領土問題では進展見込めず 余りに硬直的過ぎて、これでは一歩も進まない。問題を分解して、妥協点を見出していく通常の「アプローチ」に変えることを検討すべきだ 拉致問題は包括的アプローチで 北朝鮮非核化と「一括解決」 天安門事件以降、「日本」は「中国を変える」ために、欧米よりソフトに接してきたが、反日教育の開始などで見事に裏切られてきた。同じ過ちを繰り返すのは愚の骨頂だ。少なくとも「中国を変える」などと思い上がった政策は採るべきではない 戦略的なパートナーシップづくりで「中国を変える」ことをめざす 米中対立には精緻な戦略で 守るべき「3つの基本的国益」 日米同盟の中で安全保障面を含め日本の役割を増やしつつ、是々非々で米国にものを言い、米国の政策を修正する努力をするといったアプローチ 米国中心の求心力は低下 米国の政策を修正する努力を 対米アプローチは見直し必要 「是々非々」でものを言う関係に 「菅外交が早々に迫られるいくつかの「重要な選択」」 田中 均 ダイヤモンド・オンライン 次期政権でも朝鮮半島外交は何も変わらないだろう 慰安婦合意がやり玉に 「「最後は身動き取れなくなった」安倍政権の外交 「トップダウン」が裏目に〈AERA〉」 AERAdot (その8)(「最後は身動き取れなくなった」安倍政権の外交 「トップダウン」が裏目に〈AERA〉、菅外交が早々に迫られるいくつかの「重要な選択」、「外交初心者」の菅首相次第という日本外交の不透明 菅新政権の課題) 日本の外交政策
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日中関係(その5)(日本が中国の影響工作に警戒せねばならない訳 嫌中感に頼らない耐性を確立することが重要だ、強大高圧中国は天安門事件で日本が育てた―外交文書公開 無残な中身、「親中」政権なら短命に 菅氏が偉大な首相になるための条件とは何か) [外交]

日中関係については、6月30日に取上げた。今日は、(その5)(日本が中国の影響工作に警戒せねばならない訳 嫌中感に頼らない耐性を確立することが重要だ、強大高圧中国は天安門事件で日本が育てた―外交文書公開 無残な中身、「親中」政権なら短命に 菅氏が偉大な首相になるための条件とは何か)である。

先ずは、6月20日付け東洋経済オンラインが掲載したAPI地経学ブリーフィング 上席研究員の大矢伸氏による「日本が中国の影響工作に警戒せねばならない訳 嫌中感に頼らない耐性を確立することが重要だ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/371385
・『米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。 独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく』、なるほど。
・『中国の影響工作の広がり  中国の影響工作(Influence Operation)に関心が高まっている。オーストラリアにおける中国の影響に関しては、クライブ・ハミルトン氏が2018年2月に『目に見えぬ侵略』(“Silent Invasion”)を執筆。ブックセミナーでワシントンDCに来た際には、約束していた出版社が中国の圧力で断りを入れてきた話を披露、オーストラリアにおける「侵略」の深刻さを語った。 アメリカに関しては、2018年10月末に、フーバー研究所が『中国の影響とアメリカの国益―建設的警戒の促進―』(“Chinese Influence & American Interests ― Promoting Constructive Vigilance ―”)を発表。議会、メディアから教育、研究機関、シンクタンクまでアメリカ内で広範に中国の影響工作が浸透していると警鐘を鳴らした。 先月末(7月23日)、アメリカの戦略国際問題研究所(CSIS)が『日本における中国の影響』(China's Influence in Japan)という報告書を発表した。著者はニューヨークのカーネギー・カウンシル所属のデヴィン・スチュワート氏。 影響工作には、広報文化外交(public diplomacy)のような「正当な影響」(benign influence)と、隠密(covert)、威圧(coercive)、腐敗(corrupt)の3Cを特徴とする「不適切な影響」(malign influence)の2つがあるが、スチュワート氏はこの両方を分析の対象としている。 結論としては、中国との長い歴史的・文化的関係にもかかわらず、日本における中国の影響はほかの民主主義国に比べて限定的というもの。 日本で中国の影響が限定的である要因としてスチュワート氏は、日本固有の事由と他国も模倣できる事由と2つに分けられる。日本固有の事由については、それを「閉ざされた民主主義」(closed democracy)と総称しつつ、 ①中国との長い紛争(5回の戦争)の歴史で培われた警戒 ②日本の経済・文化的な孤立 ③国民の政治的無関心と実質的な単独政党制 ④厳しく統制されたメディア を挙げる。 後者の他国も模倣できる事由としては (1) 権力の行政府・官邸への集中 (2) 日本自身による対外PR攻勢 (3) 戦略分野への投資規制や外国人の政治献金の禁止といった法整備 を挙げている』、「CSIS」が「日本における中国の影響はほかの民主主義国に比べて限定的」、そうであればいいが、違和感も残る。
・『変動する日本の対中親近感  スチュワート氏の報告書は、多くのインタビューを行い多数の事例を紹介した価値のある報告書だが、分析に疑問を感じる部分もある。とくに、中国の影響が限定的である日本に固有な事由の総称として「閉ざされた民主主義」と指摘するが、日本の民主主義が閉ざされたものとの評価には議論の余地があろう。 また固有な事由の1つとして、長い対立の歴史に基づく中国への警戒を挙げるが、対中警戒感はつねに高かったわけではない。日本の対中世論について言えば、日中国交正常化後は長期にわたり良好だった。しかし、それは天安門事件、尖閣問題を含む対日強硬策の中で大きく悪化した。 世論調査で確認しよう。総理府(現・内閣府)の「外交に関する世論調査」の第1回目が行われた1978年は、日中平和友好条約が締結された年だが、日本人の中で「中国に親しみを感じる」は62.1%と高かった。その後1980年代には、日中友好の雰囲気の中で「親しみを感じる」はさらに高まり70%前後で推移。しかし、1989年6月の天安門事件の影響を受け、同年10月の調査では、「親しみを感じる」は前年度の68.5%から51.6%に急減した。 その後はこの比率はさらに減少、2000年代中頃は40%弱で推移した。1990年代から2000年代にかけての低迷は、中国における愛国主義運動と、それに対応する日本における謝罪疲れの中で「歴史問題」が繰り返されたことも要因であろう。 さらに、尖閣問題での中国の攻撃的姿勢が目立った2010年の調査では「中国への親しみ」は20.0%まで大きく低下(同年の「親しみを感じない」は77.8%に上昇)。その後「中国への親しみ」は現在まで低迷が続いている。 以上を踏まえれば、日本の対中警戒感は天智2年(西暦663年)の「白村江の戦い」以来の歴史に規定された不変のものではなく、時代や状況により変化しうる。したがって、「嫌中感」に頼らないシステムとしての「中国の影響力への耐性」を確立することが重要であろう。 また、日本は貿易や直接投資を通じた中国との経済的結びつきが強く、経済的視点から見た「中国の影響」への脆弱性にも留意が必要である。 2019年の日本の貿易総額に占める中国の構成比は21.3%と第1位で、第2位のアメリカの15.4%を大きく上回る。対中貿易構成比の20.7%(2010年)から21.3%(2019年)への上昇は、対ASEAN構成比の14.6%(2010年)から15.0%(2019年)への上昇よりも高い伸びであった。 また、日本から中国への直接投資は、フローで見れば、2009年69億ドル、2010年73億ドル、2011年126憶ドル、直近の2019年は144憶ドルとむしろ増加してきている。中国の経済規模の拡大を考えれば自然だが、前述のとおり2010年以降の日本の中国に対する親近感が低位にとどまることを考えれば、この「国民世論」と「経済的つながり」の乖離(デカップル)は興味深い。 「経済的つながり」は中国に影響工作の機会を与える。例えば、香港国家安全維持法に対するドイツ政府の反応が慎重な背景には、ドイツの自動車業界にとり中国が最重要市場であることが関係しているとみる識者は多い。日本にとっても日本企業のビジネス機会を考えれば、中国との経済的なつながりを断ち切ることは容易ではなく、また望ましくもない』、その通りだが、それ故の悩ましさもある。
・『自立的な政治・外交判断を制約するリスクも  さらに、「経済的つながり」には戦争抑止というプラスの効果があるとの指摘も以前よりある(ノーマン・エンジェル)。しかし、同時に「経済的つながり」の深さが、理念や価値観に基づく自立的な政治・外交判断を制約するリスクがある点には、つねに自覚的である必要があろう。 コロナウイルスをきっかけに、中国への依存度が高い日本のサプライ・チェーンに関して見直しが必要ではないかとの議論が盛んになった。 日本政府も2020年度補正予算で、中国からと限定はしていないものの、生産拠点が集中する国からの国内回帰や第3国移転を支援するために2435億円を計上した。医療関連品や重要物資など一定の分野で中国からの立地の移転が見込まれるが、日本の製造業全体が中国市場から撤退するという状況は想像しがたい。 とくに、中国市場を狙うために中国に工場を設立している場合には、こうした工場の多くが中国の外に移転する状況とはならないだろう。したがって、「経済的つながり」が残ることを前提としつつ影響工作への耐性を高める工夫が重要となる。 さらに、日本では中国による企業や大学における知財窃取・スパイ活動の検挙がアメリカのように頻繁ではない。この点は、スチュワート氏の指摘のように、「日本の閉鎖性」が中国の影響を防いだ可能性を否定するものではないが、情報管理や防諜体制が不十分で、単に中国の影響工作を探知・発見できていない可能性もある。 とくに、サイバー攻撃の探知・把握に関しては、わが国として早急にその能力強化を図る必要があろう。また、仮に現在の日本への影響工作が限定的に見えたとしても、それは中国が日本で影響工作を行う能力が不十分であることを意味しない、とのグローバル台湾研究所(Global Taiwan Institute)のラッセル・シャオ(Russel Hsiao)氏の指摘は重要であろう』、「日本」での「情報管理や防諜体制が不十分で、単に中国の影響工作を探知・発見できていない可能性もある」、大いにあり得る。
・『今こそ建設的警戒を  中国の影響工作に対しては欧州も警戒を強め、今年6月にEUとしての報告書をまとめた。アメリカにおいても司法省がチャイナ・イニシアチブという名前のもとで産業スパイや研究機関への違法行為への警戒を高めている。ポンペオ国務長官がニクソン大統領図書館で7月23日に行った対中演説でも、少し乱暴な言葉使いではあったが、中国人学生等による情報窃取に言及した。 アメリカでは大学や研究所の研究者を「非伝統的情報収集者」(non-traditional collectors)と位置づけて国益に反する技術情報の流出を防ぐ取り組みを強化している。 コロナウイルスや香港国家安全維持法等による中国への警戒感の世界的な高まりは、短期的には中国の影響工作への逆風となろう。しかし、そうした環境であればこそ、より戦略的で洗練された影響工作が展開される可能性もある。 幸い、日本においては政治指導者等が中国の言いなりとなるような「エリートの虜」(elite capture)現象は限定的と見受けられる。しかしながら、それは中国の影響工作に対して何らの対応も不要ということは意味しない。スチュワート氏も指摘しているが、基地や重要インフラの近接地の土地買収に関する安全保障上のスクリーニングについて、アメリカは法制整備済みだが、わが国ではまだ法制化されていない。 有志国との緊密な情報共有のためにも、政府職員に限定しない民間人もカバーするようなセキュリティー・クリアランス制度の導入も喫緊の課題である。また、秘密特許制度の導入や、防諜能力強化のための議論も必要であろう。中国との互恵的な交流を安定的に続けるためにも、今、建設的警戒(constructive vigilance)とそれに基づく仕組み作りが求められている』、「エリートの虜」はネット検索したが、適切なものは見つからなかった。「建設的警戒とそれに基づく仕組み作り」は確かに必要なのだろう。

次に、10月8日付け現代ビジネス「強大高圧中国は天安門事件で日本が育てた―外交文書公開、無残な中身」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/76185?imp=0
・『「わが国の有する価値観」より重視するもの  外務省はこのほど、中国共産党・政府が学生らの民主化運動を武力弾圧した天安門事件(1989年6月4日)に関係した外交文書ファイル9冊(計3123枚)の秘密指定を解除した。 このうち事件直後の極秘扱い文書「わが国の今後の対中政策」には、「わが国の有する価値観(民主・人権)」より「長期的、大局的見地」を重視するとはっきりと明記。 別の極秘文書には日本として中国を「息長く温かい目で見守っていく」と記し、流血の惨事の中、人民解放軍の発砲で死傷した市民の人権より、共産党政権に手を差し伸べる外交を優先したことが外交文書で裏付けられた。 事件から31年がたち、共産党は強権指導者・習近平国家主席の体制下で、中国国内の人権派弁護士らへの一斉弾圧のほか、香港市民、ウイグル人の人権問題もより深刻さを増す。 トランプ米政権による対中制裁強化だけでなく、欧州諸国の中国離れも進む中、日本政府は新型コロナウイルス感染で延期となった習氏の国賓訪日に向け再び動き出している。 中国強大化の原点は、皮肉なことに天安門事件にある。日本政府は、対中制裁を強めた欧米西側諸国を説得し、中国の国際的孤立回避に走り、率先して対中政府開発援助(ODA)を再開させた。 そして中国は日本を突破口に国際的孤立から抜け出そうと92年10月には天皇訪中まで実現させた。一方で天安門事件以降、中国の国防費はほぼ毎年2桁の伸び率を続けたが、日本をはじめ西側の開発資金が、軍事拡張路線を続ける中国の高度経済成長を支えた側面が強い。 習氏の国賓訪日を目指す対中外交を突き進む日本政府は、31年前の外交文書から教訓を汲み取る必要があるのではないだろうか』、「中国強大化の原点は、皮肉なことに天安門事件にある。日本政府は、対中制裁を強めた欧米西側諸国を説得し、中国の国際的孤立回避に走り、率先して対中政府開発援助(ODA)を再開させた」、もう少しこの経緯を詳しくみてみよう。
・『流血当日に対中非難は「限界」  外交文書を読んで分かるのは、外務省は流血の惨事を受け、中国情勢の分析や在留邦人の保護とともに、早くも翌月(89年7月)中旬に迫った仏アルシュ・サミット(先進7カ国首脳会議)対応を急いだことだ。事件当日の6月4日、「中国情勢に対する我が国の立場(主に西側向け)」という文書を作成した。こう明記された。 「今次事態は、基本的に我々とは政治社会体制及び価値観を異にする中国の国内問題。従って、我々の対中国非難にも自ら限界あり」「西側先進諸国が、一致して中国を弾劾するような印象を与えることは、中国を孤立化へ追いやり長期的、大局的見地から得策でない。まして、中国に対し、制裁措置等を共同して採ることには、日本は反対」 日本政府内では西側諸国が対中制裁を進める中、前年(88年)8月に訪中した竹下登首相が表明した第3次円借款(90~95年に8100億円)の扱いが焦点となった。外務省は6月21日付の「今後の対中経協(経済協力)政策について」で、第3次円借款を含め対中新規ODAを「当面は延期の姿勢」と決めた。 しかし文書には「政治公約であり、約束違反になるようなことはしない」「慎重対応につき『凍結』『中止』『根本的見直し』等の表現は使わぬように注意」「当面(少なくとも7月中旬のサミットまで)は“wait and see”の状況を維持」と記し、対中配慮の方針を明確にした。 対中ODA政策の基本的考え方として「軍による鎮圧行動、現在進行中の『反体制勢力』の逮捕など人道、人権上の問題を我が国の対中経協政策の基本政策そのものにこれを反映させることは、長期的な対中関係の見地から行き過ぎ」と明記しており、人権問題とODAを切り離した』、「人道、人権上の問題を我が国の対中経協政策の基本政策」と切り離したのは、1つの考え方だ。
・『「性善説」か「性悪説」か  外務省はアルシュ・サミットに向けて「中国問題に対する総理発言案」(7月11日)を作成した。宇野宗佑首相がサミットで米欧諸国をどう納得させるかを記した発言案だ。 「心に留めておくべきは、今の中国は、『弱い中国』であるということである。歴史的に中国は、弱い時には常に強い排外的な姿勢をとって来た。(中略)排外的な中国が、アジア・太平洋地域の平和と安定にとっていかに有害な存在であるかということも、我々はよく知っている」。 対中政策を記載した外交文書にはこのほか、「脆弱な政権故に対外的には強硬な姿勢に出てくる可能性もある」(6月28日)、「中国を冒険主義的対外政策に走らせる可能性すらないではない」(8月10日)という分析が相次いだ。 民主化運動の対応をめぐり中国共産党指導部は2分し、人権問題で国際的批判を受け、共産党は弱体化した。これ以上の圧力や国際的孤立は逆効果であり、このままでは、毛沢東時代の文化大革命以前の中国に戻ってしまう、という懸念が日本政府にはあった。 文革が終わり、1978年から改革・開放政策が始まり、日本のODAが資金面で下支えし、鄧小平や彼の下にいた胡耀邦、趙紫陽両総書記は日本を近代化のモデルにした。両総書記は経済だけでなく政治体制の改革に向けた青写真も描いた。 天安門事件は中国が政治的にも自由かつ民主的な雰囲気の中で起こった悲劇であり、国際社会は、中国という国が、武力弾圧があっても経済成長を果たせば、自由化・民主化に向かうのか、市民に銃口を向けることをためらわない強権国家が本性なのか、難しい判断を迫られた。いわば中国を「性善説」で見るか、それとも「性悪説」でとらえるか、という論争だった』、現時点でみると、「性悪説」が正解だったようだ。
・『米欧説得の裏にある「中国利権」  「孤立化という点では北朝鮮が良い例であり、金日成の下で今や世界で最も過激な国として19世紀のマルクス主義をそのまま信奉している国だが、中国を語るにあたってはこうした点をもにらみつつ中国の開放の動きをサポートすることが重要である」 アルシュ・サミットに臨む三塚博外相が、英外相ジェフリー・ハウに対してこう言って説得する場面が外相宛て電報に記されている。 このまま中国を孤立させれば、中国は北朝鮮になってしまう、と半ば脅すような文言で欧米諸国に迫り、中国の国際的孤立を回避させた。いわば日本は中国を国際社会に取り込むことでその変化を促すという「関与政策」で先行し、欧米諸国もそれに従った。 外交文書を分析して筆者は、果たして日本政府の狙いは、本当に外交文書に書かれていることだけなのか、という疑問を持っている。 つまり、中国は国際的に孤立すれば、排外的な「冒険主義的対外政策」に走り、日本やアジア、国際社会にとってマイナスになるから、サミットの宣言文言に中国を刺激する文言を入れないでおこう、ということなのか、という点である。 これに対して筆者は、日本政府には「中国利権」を守り、拡大したいという思惑があったのではないかと観察している。 天安門事件当時の栗山尚一外務審議官(政務)は生前、筆者のインタビューに対し、中国を追い詰めるアプローチを取らなかった「裏には日本の狭い意味での国益があった」と明かしたが、真意は何なのか。 事件当時に外交の第一線にいたチャイナスクール外交官は、当時を振り返った。 「改革・開放をサポートしてきたのは日本なんだ、という自負があった。その裏にはかつての戦争の贖罪意識や改革・開放路線を壊してはいけないという気持ちもあり、中国を支えていく、支えることが中国にとってもいいし、日本にとっても世界にとってもプラスであるという認識があった。(隣国である)日本は中国のことを最もよく知っているし、まだまだ中国をリードできるのは日本なんだという自信、責任感、気概みたいなものが…」。 外交文書にも日本は中国のことを世界で最もよく知っている、という自負の強さが表れている。さらに1980年代の中国で、日本の存在感は圧倒的で、中国は日本を頼りとし、日本もそれに応えた。 89年9月14日に、北京の日本大使館が外相宛てに発信した「わが国の対中経済協力(意見具申)」という極秘至急の電報の秘密指定も解除された。ここに記された内容は非常に興味深い。 「アルシュ・サミット以降もわが国の対中経済協力の再開が欧米諸国と比べて遅々として進まないことに対して中国側の一部には、わが国が実質的には厳しい経済制裁を実施しているのではないかとの不満がこうじつつあり、(中略)右をこのまま放置すれば、わが国に対するぬきがたい不信感を生じ、動乱後原則問題についてはせっかく適切なる態度をとってきたにもかかわらず、その対中効果をいちじるしく減さつし、対中外交全般に長期的悪影響を及ぼすおそれがある」 現場の日本大使館が東京の本省に対して、早く対中ODAを再開させなければ、欧米諸国に先を越されると危機感を抱いている。ぐずぐずしてすると対日不信が高まり、中国は日本からの経済協力を受け入れなくなると暗に示唆したような書き振りである。 日本大使館は同電報で「本省において対米欧関係を考慮」していることに苦言を呈し、米欧から「日本のODA再開」に批判が強まれば、実は米欧の方が「新規大型借款の如きのものは除き、ほぼ平常通り実施しているのが実情」だと指摘し、誤解を解くべきだと意見具申している。 この極秘電報からは、中国の改革・開放政策をリードするのは日本だけであり、米欧諸国が中国市場に進出し、「中国利権」に首を突っ込むことへの危機意識が読み取れる』、「天安門事件当時」、「980年代の中国で、日本の存在感は圧倒的で、中国は日本を頼りとし、日本もそれに応えた」、現在とは隔世の感がある、いい時代だったようだ。
・『「冒険対外政策」現実に  しかしながら中国が1枚上手だったようである。 当時中国外交を統括した元副首相・銭其琛が回顧したように92年10月の天皇訪中を利用して西側諸国の制裁包囲網を打ち破ると、90年代半ばからは「愛国」「反日」の足音が聞こえてきた。 江沢民国家主席は、天安門事件やソ連・東欧の崩壊で求心力を失った共産主義に代わって人民を団結させるため「愛国教育」を強化した。抗日戦争での日本軍の野蛮さを強調し、屈辱の歴史を前面に、「日本」を利用して被害者ナショナリズムを高揚させた。 このほかにも高度経済成長とともに90年代半ばには地下核実験や台湾海峡へのミサイル演習など、軍事面でも「大国」としての振る舞いが顕著となった。 外務省が天安門事件直後に外交文書で指摘した「冒険主義的対外政策」という懸念が現実のものとなり、事件後に中国を「温かい目」で見守ったチャイナスクール外交官らは、「裏切り」と感じた。 歴史問題をぶちまけた江沢民国家主席の国賓来日(1998年)や小泉純一郎首相の靖国神社参拝(2001~06年)で、日中関係が歴史問題でがんじがらめとなる中、親日指導者・胡耀邦氏のDNAを引き継ぐ胡錦濤国家主席も、インターネット上で膨れ上がる反日のうねりを抑えることはできなかった。 10年の尖閣諸島周辺での漁船衝突事件や12年の尖閣国有化を受け、共産党内部で勢いを増す対日強硬派に揚げ足を取られないよう、逆に民の声を利用して対日圧力を強めた。これが2005年と12年の大規模反日デモに発展した。 日中関係が緊張した12年にトップに就く習近平氏について、当時北京で駐在した筆者は、共産党内部の情報源から「江も胡も過渡期の指導者。革命世代を父に持ち血を引き継ぐ習こそ、毛沢東、鄧小平に次ぐ本格指導者だ」と聞いた。 習氏の真骨頂は、アヘン戦争(1840~42年)以来100年続いた屈辱の近代史を深く頭と心に刻み、「中華民族の偉大な復興」を実現するという強国路線にあり、14年春の欧州歴訪で習氏は「今や中国という獅子は目覚めたのだ」と踏み込んだ。 尖閣諸島を盗み取られたものと主張する共産党の歴史観では日本はターゲットになり、15年頃まで日中関係は緊張を続けた』、「92年10月の天皇訪中を利用して西側諸国の制裁包囲網を打ち破ると、90年代半ばからは「愛国」「反日」の足音が聞こえてきた。 江沢民国家主席は・・・求心力を失った共産主義に代わって人民を団結させるため「愛国教育」を強化した」、日本もなんとお人好しなのだろう。
・『チャイナスクールの中国観変  外務省の伝統的なチャイナスクール外交官の基本的な対中認識は、「日中関係を爆発させず、大局の中で日中間の火種を処理する」ことが重要であり、中国共産党を過度に刺激しない、という発想だ。 天安門事件外交文書で筆者が驚いたのは、武力弾圧直前の89年5月31日に学生らの民主化要求のうねりを目の当たりにした日本大使館の外交官が外相宛て文書でこう報告していたことだ。「わが国としては、或は国民の一部には反感するさえ存在することが明らかになった政府を相手とすることになるかもしれないという意味で、戦後の日中関係上殆ど経験したことのない局面を迎えたということができよう。極論すれば、現政府への支持・協力表明が一部国民からは反感をもって迎えられるという要素も十分考慮に入れつつ進める必要が出てきつつあると言えよう」 1972年の国交正常化以来、日本政府は中国共産党・政府だけを相手とした日中関係をつくりあげたが、政府に不満を持ち民主化を求める市民や学生も相手にしなければならないという発想転換である。 しかし事件後、東京の外務省は「中国における民主化要求の力を過大評価することは誤り」と指摘し、それ以降、共産党・政府だけを相手とし続けた。日中外交は、共産党の嫌がる人権や政治体制の問題を脇に置き、お互いに経済的な実利を追求することで両国関係の安定を維持する構造が固まった。 伝統的チャイナスクール外交官に対し、近年では中国ネット社会において影響力を増す改革派知識人と交流を深め、間接的に中国の民主化や改革を後押しようとするチャイナスクール外交官が登場している。 日中国交正常化から改革・開放、天安門事件世代までの外交官は、戦争への贖罪意識や、共産党体制の「民主化」という期待もあり、中国へのシンパシーや日中友好というウエットな関係が色濃かったが、最近では法の支配を無視した中国の海洋政策には米国など同盟諸国と連携して対抗するという意識を持つ外交官が大勢だ』、「最近では法の支配を無視した中国の海洋政策には米国など同盟諸国と連携して対抗するという意識を持つ外交官が大勢だ」、当然だろう。
・『価値観外交から経済関係重視へ  2012年に発足した第2次安倍晋三政権は当初、民主党前政権下の尖閣国有化の影響で日中が険悪な状態の中で、自由や民主主義、法の支配などを重視する価値観外交を展開し、中国に対して「言うべきことは言う」という姿勢を続けた。 しかし転機が2015~16年にやってくる。日中政治関係は冷え切ったままだったが、大量の中国人が観光で訪日し、インバウンド消費で地方も含めて日本の経済が活性化したことを好機ととらえ、官邸は対中経済関係重視に舵を切った。 17年5月、二階俊博自民党幹事長は北京で広域経済圏戦略「一帯一路」に関する国際会議に出席し、習近平国家主席と会談した。これで関係改善に向けた確固たる流れができた、と中国外務省幹部も認めている。 経済的な結びつけに加え、「米中新冷戦」が日中接近をもたらした状況は、天安門事件後と似ている。 対中経済協力と人権・海洋など懸案のバランスをどう取るか。最近、対中政策を管轄する複数の外務省幹部が口を合わせたかのように同じフレーズを口にする。 「10年後、20年後、30年後の日中関係、中国を考えなければならない」。幹部に共通する認識は、このまま放っておけば10年後、20年後に中国はどうなってしまうか分からない、という危機意識だ。東シナ海や南シナ海での野心的な攻勢だけでなく、一帯一路の下で北極海まで視野に入れ、宇宙戦略も強化している。 外務省幹部は、「中国に言うべきことは言い、コントロールしていかなければならない。是々非々で対応する」と語る』、「価値観外交から経済関係重視へ」への転換には「二階幹事長」の「訪中」「習近平国家主席と会談」がきっかけになった、忘れていた重要事実を思い出すことができた。
・『「利用価値」ある日本  安倍前首相は比較的、対中経済と懸案のバランスを取りながら日中関係を改善させたと評価できるだろう。2019年12月23日、安倍氏は北京の人民大会堂で習主席と笑顔で向き合った。 日本政府関係者によると、会談で安倍氏は、反政府活動が続いた香港情勢を提起し、「大変憂慮している」と述べ、「一国二制度の下で、自由で開かれた香港の繁栄が重要だ」と続けると、習氏は紙を見ながら「中国の内政問題だ」などと冷静に対応したが、安倍氏が次にウイグル問題を取り上げ「透明性をもった説明」を求めると、習氏は緊張した表情に変わった。そして紙も見ず、「テロとの闘いだ」などと反論したという。 習氏は周辺にとってよりセンシティブなのはウイグル問題であり、対外的に公表されることに神経を尖らせたのだ。 さらに中国全国人民代表大会(全人代)が今年5月末、香港統制を強化する国家安全法制導入を決定した際も、秋葉剛男外務事務次官が孔鉉佑駐日大使を外務省に呼び、「深い憂慮」を伝達した。「内政問題」と主張し続ける中国に異例の強い対応に出た。 果たして菅義偉・新首相はどういう対中関係を構築するのか。 日本の政界も世論も、習氏の国賓来日には反対論が強いが、あえて実現させようと突き進むようだ。習近平という強大な指導者を招待し、尖閣への中国公船進入や邦人拘束問題など日中間に横たわる懸案について習氏から直接、責任ある対応を引き出す「チャンス」と判断している。 いわば、ポンペオ米国務長官が、7月末に「失敗」と宣言した対中関与政策を継続するという選択肢だ。 コロナ問題や香港・ウイグルの人権問題、対外的に強硬な「戦狼外交」などで中国は米国との対立が激化するだけでなく、欧州とも溝が深まっている。 こうした中で日本が再び中国共産党に手を差し伸べる習氏の国賓訪日が、31年前の対中外交とだぶって見える。 中国共産党は戦後、一貫して日本には「利用価値」があると認識し、実際に利用してきたという歴史的事実を忘れてはならない』、その通りだ。「習氏の国賓訪日」は延期するべきだろう。

第三に、10月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際関係アナリストの北野幸伯氏による「「親中」政権なら短命に、菅氏が偉大な首相になるための条件とは何か」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/250935
・『総裁選に圧勝し、首相に就任した菅義偉氏。秋田県のイチゴ農家に生まれ、自力で大出世を果たした。菅氏は、これからどうなっていくのだろうか? 正しい方向に進めば、長期政権を実現できるだけでなく、偉大な首相になる可能性もある』、「正しい方向」とはどういうことだろう。
・『歴代首相で見えてくる長期政権の法則  まず「長期政権の法則」について話そう。 歴代首相の「連続在任期間ランキング」を見ると、1位が安倍晋三氏、2位が佐藤栄作氏、3位が吉田茂氏、4位が小泉純一郎氏、そして、5位が中曽根康弘氏、となっている。 彼らに共通点はあるだろうか? そう、「親米政権だった」(太字筆者、以下同じ)ということだ。 1位の安倍晋三氏は、タイプがまったく違うオバマ、トランプ両大統領の親友だった。 2位の佐藤栄作氏は、安倍氏の大叔父で、沖縄返還を実現している。 3位の吉田茂氏は、麻生太郎副総理の祖父で、代表的な親米政治家だ。 4位の小泉純一郎氏は、中国、ロシアとの関係を悪化させ、米国一辺倒の外交を展開した。 5位の中曽根康弘氏は、レーガン大統領の親友だった。「日本は不沈空母」発言はあまりに有名だ。 これらの顔ぶれを見ると、「親米首相は長期政権になりやすい」といえそうだ』、確かにその通りだ。
・『「悲惨な末路」になることが多い歴代の「親中首相」  では、逆に「親中首相」はどうだろうか 歴史を見ると、「親中首相」は「悲惨な末路」になることが多い。 いくつか例を挙げてみよう。 代表的なのが田中角栄氏だ。田中氏は、日中国交正常化を果たしたことで知られる。 彼は1972年7月、首相に就任した。 わずか2カ月後の72年9月には、日中国交正常化を成し遂げてしまった。 同じころ、米国のニクソン大統領とキッシンジャー大統領補佐官も、中国との国交正常化交渉を急いでいた。 結果的に田中氏は、米国を「出し抜いた」形になった(ちなみに、米国と中国の国交正常化は、1979年)。 田中氏の“フライング”にキッシンジャー氏は激怒し、「ジャップは最悪の裏切り者!」と叫んだといわれる。 そんな親中・田中氏は、1974年に辞任。1976年には、ロッキード事件で逮捕されてしまった。 田中派から出た竹下登氏は1987年、首相に就任。1989年、リクルート事件で辞任した。 竹下氏が立ち上げた経世会を引き継いだ橋本龍太郎氏は1996年に首相になり、98年に辞任している。 2004年に日歯連闇献金事件が発覚。政治家を引退せざるを得なくなった。その2年後の2006年、多臓器不全で亡くなっている』、「「悲惨な末路」になることが多い歴代の「親中首相」」、不思議な符合だ。
・『親米政権は長期化しやすく 親中政権は短期で終わりやすい  近年、際立った親中派政治家といえば、小沢一郎氏だろう。09年9月、民主党政権が誕生。この政権は、はっきりとした反米親中で、鳩山首相時代の日米関係は最悪になった。 鳩山政権で黒幕的存在だったのが小沢氏(当時幹事長)だ。 彼は2009年12月、大訪中団を率いて北京に行き、「私は人民解放軍の野戦軍司令官だ」と宣言した。 そのわずか1カ月後の2010年1月、政治資金規正法違反の容疑で、小沢氏の元秘書・石川知裕氏が逮捕される。 そして、同年6月、小沢氏は幹事長を辞めざるを得ない状況になった。同月、鳩山首相も辞任することになった。 これらの事実から、「親米政権は長期化しやすく、親中政権は短期で終わりやすい」という傾向がはっきり見える。 なぜ、そうなのか? 元外務省国際情報局長の孫崎享氏によると、米国からの自立を目指す政治家は米国に潰されるのだという。 同氏は、田中角栄、竹下登、橋本龍太郎、鳩山由紀夫、小沢一郎各氏などを「自主自立を目指した政治家」としているが、筆者は「親中派」だと思う。 米国に潰されるかどうか、その真偽はともかく、親米政権は長期化しやすく、親中政権は短期で終わりやすいのは事実だろう。 もし、菅氏が長期政権を目指すなら、中国に接近しすぎないよう、用心し続けるべきだ。 後述するが、現状「親米」であることは、日本の国益に合致してもいる』、「孫崎享氏」は「戦後史の正体」のなかで、「自主自立を目指した政治家」が米国の情報機関を通じた陰謀で潰されるの様子を描き、説得的だった。
・『菅氏が、「親中首相」という懸念は後退  菅氏が総裁選への出馬を決めた時、筆者は、「菅氏は親中首相になるのではないか」と懸念していた。 親中派のボス、二階幹事長の説得で出馬を決意したと報じられていたからだ。 しかし、その後の動向を見ると、二階氏が菅内閣に「圧倒的影響力を持っているわけではない」ことがわかってきた。 例えば、閣僚の顔ぶれを見ると、親米の細田派が5人で最も多い。 次いで、これも親米の麻生派が3人。 親中派では、竹下派、二階派、共に2人ずつにすぎない。 他に、無派閥4人、岸田派2人、石破派1人、石原派1人、公明1人。 二階氏の影響力は、限定的であることがわかる。 さらに、菅首相の就任後の振る舞いを見ても、希望が持てる。 菅氏が首相に就任すると、習近平・中国国家主席は、真っ先に祝電を送った。 そもそも、国家主席が日本の新首相に祝電を送るのは珍しい(中国の感覚では、元首である国家主席は、日本の天皇と同じ立場。日本の菅首相と同じ立場なのは、中国の李首相である)。 つまり、習近平氏は、菅氏を例外的に優遇したのだ。 ところが、菅氏は、この好意を完全にスルーした。 新首相は9月20日以降、次々と電話首脳会談をこなしていった。 順番は、9月20日、トランプ米大統領、モリソン豪首相。 9月22日、メルケル独首相、ミシェルEU大統領。 9月23日、ジョンソン英首相。 9月24日、文在寅・韓国大統領。 9月25日、モディ印首相、習近平・中国国家主席) 菅首相は、習近平氏の順番を、韓国の文在寅氏の後にしている(ちなみに、ロシアのプーチン大統領との会談はさらに遅く、9月29日だった)。 菅氏は、おそらく意図的に、習近平氏を“冷遇”したのだろう。 これにより、菅氏が、親中派のボス二階氏の“操り人形”ではないこと、習近平氏に忖度する意思はないこと、が見えてきた』、なるほど。
・『安倍政権からの「自由で開かれたインド太平洋」戦略を継承  「日本の首相には戦略がない」と、しばしば言われる。 しかし、安倍氏は、珍しく「戦略のある首相」だった。同氏は2012年12月、「セキュリティーダイヤモンド構想」を発表している。 これは、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4カ国で、インド、太平洋の貿易ルートと法の支配を守るという構想だ。 要するに、「中国の海洋侵略を日米豪印で阻止しよう」という戦略なのだ。 さらに、安倍氏は2016年8月、アフリカ開発会議で、「自由で開かれたインド太平洋戦略」を提唱した。 この「インド太平洋」という言葉をトランプ米大統領が気に入り、米国政府に採用された。 つまり、日本が提唱した大戦略を、米国政府が採用したのだ。 菅氏は、この戦略を継承しているのだろうか? 継承しているだけでなく、現状を見る限り、むしろ安倍前首相よりも、熱心に取り組んでいるようだ。 既述の電話会談。 菅氏は、トランプ米大統領、モリソン豪首相、メルケル独首相、ミシェルEU大統領、ジョンソン英首相、モディ印首相と、「自由で開かれたインド太平洋戦略」について協議している。 そして、菅首相による初めての「対面外交」は、ポンペオ米国務長官との10月6日の会談だった。 ここでも「自由で開かれたインド太平洋戦略」が話し合われた。 さらに、日本、米国、オーストラリア、インドの外相会議が開かれ、4カ国が「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進していくことが確認された。 日本政府は、この4カ国グループに、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国を引き入れ、中国包囲網を強化拡大していく方針だ』、反安部だった私にとって「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、唯一支持できる政策だった。「菅首相」もこれを継承するのは結構なことだ。
・『ポンペオ国務長官による歴史的演説の意味  世界は現在、「米中覇権戦争」を軸に回っている。 ポンペオ国務長官は7月23日、歴史的演説を行った。 いわく、<21世紀を自由な世紀にすることを望み、習近平氏が夢見る中国の世紀にしたくないなら、中国にやみくもに関与していく従来の方法を続けてはならない。このままではいけないし、後戻りしてもいけない。トランプ大統領が明確にしたように、米国の経済、何よりも生活を守る戦略が必要だ。自由世界は、独裁体制に勝利しなければならない。> これは、自然に読めば、「中国共産党打倒宣言」といえるだろう。 <自由世界が変わらなければ、共産中国が私たちを変える。快適だから、便利だからという理由で、これまでのやり方に戻ることはできない。中国共産党から自由を確実に手に入れることは、この時代の使命であり、米国は、それを主導する用意が完全にできている。> これは、米国が「反中国共産党同盟」を率いる決意を示している。 「中国共産党打倒」の方針は、超党派で支持されていて、すでに国論になっている。 例えば、香港問題やウイグル問題の対中国制裁に反対する議員はまったくいない。 つまり、米中覇権戦争は、親中派といわれるバイデン氏が大統領になっても続いていく可能性が高い(例えば、トランプ氏は一貫して親プーチン、親ロシアである。しかし議会に阻まれて米ロ関係は一向に改善しない。世界最強の権力を持つ米大統領にも、できないことはあるのだ。バイデン氏が、中国との関係を改善しようとしても成功しないだろう)』、「米国」では「「中国共産党打倒」の方針は、超党派で支持されていて、すでに国論になっている」、結構なことだ。
・『中国は国際的に孤立すると日本を利用して危機脱出を計る  こういう状況下で、日本が絶対にしてはならないことは、中国側につくことだ。 中国は、「新型コロナウイルスのパンデミックを引き起こした」「香港の自由を圧殺している」「ウイグル人100万人を強制収容している」などで、極めて評判が悪く、世界的に孤立している。 当然中国は、平和ボケでナイーブな日本を自陣営に引き入れようとするだろう。 1989年、天安門事件で中国が孤立した際、この国は日本を利用して危機を乗り切った。 具体的にいうと、1992年、天皇陛下の訪中を実現させたのだ。 これを見た欧米は、「狡猾な日本が、中国の巨大市場を独占しようとしている」と解釈した。 そして、翌1993年、欧米諸国と中国の関係は改善に向かった。 問題はそこからだ。 中国政府は1994年から、国内では徹底した反日教育、欧米では強力な反日プロパガンダを開始した。 「利用済み」の日本は中国に切られ、今度は「悪魔化」の対象にされた。 当時のクリントン米大統領は、中国のプロパガンダに乗せられ、激しいジャパン・バッシングをしていた。 中国は、日本の恩を仇で返したのだ。 われわれは、歴史から教訓を得なければならない。 教訓は、「中国は国際的に孤立すると、日本を利用して危機脱出を図る」「だが、危機を抜けると、今度は日本を悪魔化してバッシングする」だ』、同感である。
・『菅氏が、「偉大な首相」になる方法  菅首相は現状、正しい方向に進んでいるように見える。 だが中国の工作力、親中派の影響は強力なので油断は禁物だ。 このまま、米豪印と共に「自由で開かれたインド太平洋戦略」を貫徹し、「偉大な首相」として歴史に名を刻んでいただきたい』、私は「菅首相」は評価しないが、「「自由で開かれたインド太平洋戦略」だけは大いに支持したい。
タグ:菅氏が、「偉大な首相」になる方法 教訓は、「中国は国際的に孤立すると、日本を利用して危機脱出を図る」「だが、危機を抜けると、今度は日本を悪魔化してバッシングする」だ 中国は国際的に孤立すると日本を利用して危機脱出を計る 「米国」では「「中国共産党打倒」の方針は、超党派で支持されていて、すでに国論になっている」 ポンペオ国務長官による歴史的演説の意味 安倍政権からの「自由で開かれたインド太平洋」戦略を継承 「戦後史の正体」 孫崎享氏 菅氏が、「親中首相」という懸念は後退 親米政権は長期化しやすく 親中政権は短期で終わりやすい 「悲惨な末路」になることが多い歴代の「親中首相」 親米首相は長期政権になりやすい 歴代首相で見えてくる長期政権の法則 「「親中」政権なら短命に、菅氏が偉大な首相になるための条件とは何か」 北野幸伯 ダイヤモンド・オンライン 「利用価値」ある日本 価値観外交から経済関係重視へ チャイナスクールの中国観変 92年10月の天皇訪中を利用して西側諸国の制裁包囲網を打ち破ると、90年代半ばからは「愛国」「反日」の足音が聞こえてきた。 江沢民国家主席は・・・求心力を失った共産主義に代わって人民を団結させるため「愛国教育」を強化した 「冒険対外政策」現実に 「天安門事件当時」、「980年代の中国で、日本の存在感は圧倒的で、中国は日本を頼りとし、日本もそれに応えた」、現在とは隔世の感がある 米欧説得の裏にある「中国利権」 現時点でみると、「性悪説」が正解だったようだ 「性善説」か「性悪説」か 流血当日に対中非難は「限界」 中国強大化の原点は、皮肉なことに天安門事件にある。日本政府は、対中制裁を強めた欧米西側諸国を説得し、中国の国際的孤立回避に走り、率先して対中政府開発援助(ODA)を再開させた 「わが国の有する価値観」より重視するもの 「強大高圧中国は天安門事件で日本が育てた―外交文書公開、無残な中身」 現代ビジネス 今こそ建設的警戒を 「日本」での「情報管理や防諜体制が不十分で、単に中国の影響工作を探知・発見できていない可能性もある」 自立的な政治・外交判断を制約するリスクも 「経済的つながり」は中国に影響工作の機会を与える。例えば、香港国家安全維持法に対するドイツ政府の反応が慎重な背景には、ドイツの自動車業界にとり中国が最重要市場であることが関係 変動する日本の対中親近感 日本における中国の影響はほかの民主主義国に比べて限定的 アメリカの戦略国際問題研究所(CSIS) 中国の影響工作の広がり 「日本が中国の影響工作に警戒せねばならない訳 嫌中感に頼らない耐性を確立することが重要だ」 API地経学ブリーフィング 大矢伸 東洋経済オンライン (その5)(日本が中国の影響工作に警戒せねばならない訳 嫌中感に頼らない耐性を確立することが重要だ、強大高圧中国は天安門事件で日本が育てた―外交文書公開 無残な中身、「親中」政権なら短命に 菅氏が偉大な首相になるための条件とは何か) 日中関係
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尖閣諸島問題(その5)(習近平が日米の動きに焦り…中国が尖閣侵入を続ける「本当の理由」、中国が「尖閣諸島」にここまでこだわり続ける理由がついに明らかに…! 不可解な"居丈高"の行動原理は、田岡俊次氏「もし尖閣戦闘」勃発したら敗戦濃厚」 制空権握れず「水陸機動団は海上で全滅も」〈AERA〉) [外交]

尖閣諸島問題については、2016年6月26日に取上げたままだった。今日は、(その5)(習近平が日米の動きに焦り…中国が尖閣侵入を続ける「本当の理由」、中国が「尖閣諸島」にここまでこだわり続ける理由がついに明らかに…! 不可解な"居丈高"の行動原理は、田岡俊次氏「もし尖閣戦闘」勃発したら敗戦濃厚」 制空権握れず「水陸機動団は海上で全滅も」〈AERA〉)である。

先ずは、本年8月20日付け現代ビジネス「習近平が日米の動きに焦り…中国が尖閣侵入を続ける「本当の理由」」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/74979
・『南シナ海で起きていること  7月下旬、日本のメディアは久しぶりに尖閣諸島の話題で盛り上がった。原因は、中国海警局の船が尖閣諸島付近の接続水域を連続して100日以上航行したことだ。 連続航行は4月14日から8月1日まで続き110日を超えたが、その同じ期間には、中国海軍のミサイル艇も巡視船に連動して台湾付近に展開していたことを産経新聞が報じた。 この少し前には、やはり中国海警局の船が尖閣諸島付近の海域で日本の漁船を追いかけ回したという報道もあった。直後には中国が「周辺海域での日本漁船の操業は『領海侵入』だ」として「立ち入らせないよう」、外交ルートを通じて要求していたという。日本人にしてみれば、日本の領海や接続水域に侵入しておいて何を言っているのかと言いたくなるような、呆れた言い分だ。 一連の報道を見れば、中国がコロナ禍のなか、尖閣諸島へのプレッシャーを強めてきたとの印象は否めない。これは当節流行の「戦狼外交」のイメージ――これはこれで誤解を与える言葉なのだが――とも重なる。 だが、現実はそれほど単純な話ではない。 その説明のために目線を中国の対外強硬姿勢、とりわけ「戦狼外交」の根拠とされる南シナ海問題に移してみたい。ここは中国と東南アジア諸国・地域で領有権争いが続く海であり、日本での注目度も高い。米中衝突を象徴する海でもある。 南シナ海における中国の振る舞いについて日本人が抱くイメージは、「横暴」の一語に尽きるはずだ。自国の領有権を主張するために、「龍の舌」と呼ばれる「九段線」(9つの線)を引き、そのすべてに領有権を主張し、他の小国を圧迫。ハーグの国際常設裁判所が九段線の法的根拠を否定する裁定を出しても従わない、といったニュースを目にすれば、そうしたイメージを抱くのも当然のことだろう。 その南シナ海でも中国は最近、活動を「活発化」させている、というのが「戦狼外交」の根拠されている。 だが、ここには決定的な一つの情報が抜け落ちている。それは、なぜ中国が活動を活発化させたのか、についての情報だ』、「戦狼外交」「活発化」の背景を知りたいものだ。
・『半年で2000回以上の活動  7月28日、中国外交部の定例記者会で汪文斌報道官は、「今年上半期、南シナ海において米軍機が2000回以上の活動を行った」ことを明らかにした。数字は、中国独自のもの――であっても虚偽の数字であれば米側が反発する――ではなく、米国も認める公開情報だ。 上半期で2000回以上といえば、毎日10回以上の活動を行なっている計算になる。凄まじい頻度だ。中国が活動を「活発化」させるのも当然だ。注意すべきは、われわれが日常的に接する情報が中国の行動のみに焦点をあて、そこから米軍の動きがすっぽり抜け落ちていること、にもかかわらず、そこに何の違和感も抱かないことだ。 同じ疑問は、尖閣諸島の問題にもあてはめられるのである。 冒頭で触れた漁船のケースで考えてみたいのだが、もし当該の日本の漁船が、単に漁のために尖閣諸島に近づき海警の船に追い回されたなら、それこそ一大事だ。だが、同漁船はただの漁船ではない。政治的目的をもって尖閣諸島に近づいた活動家の船だ。 万が一、彼らに上陸でも許せば、習近平政権の面子は丸つぶれとなる。中国の海警局の動きはこの点から説明できる。それに続いて中国が日本側に「(漁船を)管理しろ」と要求したことも同じ文脈だ。根拠は、2008年の日中共同声明で、そこには〈共に努力して、東シナ海を平和・協力・友好の海とする〉との文言がある。 尖閣諸島は日本固有の領土であり、かつ国際法上も編入の手続きに瑕疵はない。だが、そのことと、海で起きた問題を正しく伝えないこととは次元の違う話だ。無用な憎しみを煽れば、最後にそれを制御できなくなり、しなくてもよい争いへとつながるからだ。 領土問題には相手があり、一筋縄では行かない。中国には中国の理屈があり、それをまとめれば分厚い一冊の本にもなり、その中身も一笑に付せるレベルではない。そして多くの中国人が自国の領有権を信じている』、「同漁船はただの漁船ではない。政治的目的をもって尖閣諸島に近づいた活動家の船だ。 万が一、彼らに上陸でも許せば、習近平政権の面子は丸つぶれとなる。中国の海警局の動きはこの点から説明できる」、初めて知った。日本のマスコミも日本政府の発表に沿った対立を煽るような報道は避け、全体像を正しく伝えるべきだ。
・『領土問題は「誰でも火がつけられる」  尖閣諸島周辺はいま、日中の間で合意のないグレーな均衡の上で、なんとか安定を保っている。そしておそらく中国にとってもそれは都合の良いバランスなのだろう。 しかし、バランスが曖昧であるがゆえに崩れやすい状態だ。互いに国民の熱狂を背負っているだけに、両者の緊張は一気に制御の効かないレベルにヒートアップする可能性さえ秘めているのだ。 つまり今回の日本の漁船の動きは、揮発性物質に火種を近づけるような行動だ。領土問題の難しさは、誰でも簡単に火がつけられることにあるのだが、一旦燃え広がった炎を消す術は誰にもないのだ。さらにやっかいなことは、かりに日本が火をつけたとして、現状では、火をつけた日本にとって有利な状況が生まれるとも考えにくいこともある。 思い出されるのは2012年、民主党政権下で行われた尖閣諸島の“国有化”である。発端は当時の石原慎太郎東京都知事が「国が守らないなら尖閣は東京都が守る」と島の買い取りに動いたことだ。 だが、結果は周知の通り。「東京都が守る」どころか、かえって中国公船の頻繁な侵入を常態化させてしまった。石原都知事は一時的に大衆人気を得ることに成功したが、代わりに日本の国益は大きく損なわれた』、「石原都知事」のスタンドプレーが火をつけたおかげで、「日本の国益は大きく損なわれた」、のは確かだ。
・『日本がそう出るなら…  漁船の話に戻せば、中国は8月5日、禁漁期が明けた16日以後「中国漁船が大量に領海に侵入する」と予告してきた。こちらは曲がりなりにも自国の漁船が尖閣諸島付近に近づかないように管理してきたが、日本がそう出るならこちらも放置する、というメッセージがうかがえる。 どうやら漁船の件は共産党が制御したようだが、もし本当に中国が大量の漁船を放置した場合はどうなるだろうか。日本にはそれを押し返すだけの物理的能力はあるだろうか。もし覚悟と戦略がないまま挑発したのだとすれば、結果として、相手に付け入るスキを提供したことになるだろう。 私はかつて、中国が北京オリンピック後に海洋進出を本格化させることを警告し、それを月刊誌『諸君!』で連載。その後『平成海防論』(新潮社)としてまとめて世に問うた。 当時から状況は悪化の一途をたどっているのだが、その原因の一つには、この(たとえば石原氏のような)「個人の利益」と「国益」が相反する問題があると考えられるのだ。 さらに尖閣の問題について、より根本的な問題として指摘されるべきは、日本の「建前と現実のギャップ」である。 尖閣諸島に関する日本の立場は「領土問題はない」というものだ。この立場は、ゆえに「尖閣諸島問題を話し合う」こと自体が矛盾となり、中国との対話の可能性を断ってしまっている。いまや、この戦線を後退させることは政治的にも難しくなっている。 ここで問題は、話し合いを拒絶していれば日本側に有利な状況が広がるのかといえば、決してそうではないことだ。中国の経済的台頭の勢いは当面衰えが見えず、資金力を背景とした中国からの圧力は日々強まるばかりだからだ。現場の海上保安庁は、中国海警局の船が年々大型化するプレッシャーとずっと対峙してきた。今後、人口減少と経済規模の縮小が予測される日本がこれに対抗できるとは考えにくいのである。 時間が経てば経つほど中国に有利な環境が整うとすれば、日本の選択肢は概ね二つ。一つは、中国と話し合うことで、もう一つは覚悟を決めて問題を激化させることだが、そもそも第一の選択肢は難しい。では、激化させるべきなのだろうか。 その選択は残念ながらアメリカの出方次第である。同盟につきものの「みはなされ」が起きれば万事休すだ。他方、日中の戦いを米軍がサポートする事態となれば、中国を押し返せるかもしれない。 だが、その場合にもリスクはつきまとう。第一に、アメリカ国民に認知されていない無名の島のためにアメリカの青年の血が流れたとしたら、その代償がどれほどのものになるのか、という視点は忘れてはならないだろう』、「尖閣諸島に関する日本の立場は「領土問題はない」というものだ」、とはいえ、「時間が経てば経つほど中国に有利な環境が整う」のであれば、頼りにならない「アメリカ」頼みにせず、「中国と話し合うこと」に切り替えるべきだ。
・『“出口”はどこなのか  一方、中国が仮に尖閣諸島へのプレッシャーを収めたとしても、それが恒久的な解決を意味しないという問題もある。いつか中国がアメリカに対抗できる力をつければ問題は再燃するからだ。 本来であれば両者が話し合い解決の道をさぐるのが一番だが、前述のように日本側にはその選択肢はない。海上での安全装置を持とうとする両国の取り組みも完全ではない。 そんななかコロナの影響で一段と強まる中国への不信感が日本にも広がり、政界には国民から「弱腰」とみられないための動きが目立ち始めた。いまのところ打ち出された対抗策は新味に欠けるが、気なるのは彼らの背中を押しているのが「いまならトランプ政権は本気で動いてくれる」との観測だという点だ。 日本はその先にどんな事態を想定し、“出口”をどこに設定しているのか――。慎重の上に慎重を重ねて行動することは、決して「弱腰」などではない』、「「いまならトランプ政権は本気で動いてくれる」との観測」は、大統領選挙は別としても、余りに他力本願だ。やはり、日本側も姿勢を転換して、「両者が話し合い解決の道をさぐる」、べきなのではなかろうか。

次に、8月31日付けプレジデント Digital「中国が「尖閣諸島」にここまでこだわり続ける理由がついに明らかに…! 不可解な"居丈高"の行動原理は」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/38364
・『日中間の諍いが絶えぬ尖閣諸島とその周辺海域。いつ、何をし出すかわからない中国の意図と行動を読む手掛かりは何か』、興味深そうだ。
・『1993年から石油輸入国に転じる  世界各地での中国の傲岸ともとれる行動が止まらない。尖閣諸島周辺に、8月2日までに111日連続で中国公船を送り込み、「中国の領海であり、日本の船は入ってくるな」と日本の実効支配を脅かし続けている。習近平国家主席の国賓来日の協議と同じ時期であったために、多くの日本国民の怒りと戸惑いを呼び、来日は無期限延期となった。 それだけではない。南シナ海のサンゴ礁を埋め立てての軍事基地化、「一帯一路」構想においては、格下の国々を相手に現地プロジェクトへの巨額融資→焦げ付き→借金のカタに港湾などを専有化……という高利貸のような手法を繰り返す。新型コロナウイルスの感染拡大に際し、他国が切望したマスクや検査キット提供をちらつかせて外交を展開する……さながら100年遅れてきた帝国主義国という体である。 そもそも尖閣諸島を含む南西諸島は日本領であり、「領土問題は存在しない」というのが日本の立場だ。1945年の敗戦とともに米軍の管理下に置かれていたが、中国が同諸島を意識し始めたのは1968年、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の海洋調査で、周辺の海底にイラクに匹敵する埋蔵量の石油資源が眠っている可能性を指摘されてから。70年12月、中国が尖閣諸島とセットで「南シナ海の大陸棚に主権を擁する」という主張を開始した。 1993年から石油純輸入国に転じている中国。14億人弱の人口を抱える今、他国の領土内とはいえ目の前にある豊かな資源に、半世紀にわたってこだわり続けるのも無理はない』、「中国が同諸島を意識し始めたのは1968年、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の海洋調査で、周辺の海底にイラクに匹敵する埋蔵量の石油資源が眠っている可能性を指摘されてから。70年12月、中国が尖閣諸島とセットで「南シナ海の大陸棚に主権を擁する」という主張を開始した」、全く一方的主張ではあるが、それなりに時間が経ったことも事実だ。
・『台湾国民を目覚めさせた「同胞に告げる書」  19世紀以降、欧米や日本の帝国主義国群に食い荒らされた被害国。その屈辱のリベンジという側面もあろうが、こうした直情的な行動パターンは、かえって周辺国のみならず世界各国の脅威・反発・警戒心を呼び覚まし、中国自身にマイナスの効果を及ぼしているように見える。それらを圧倒する国力があれば別だが、米国の存在を考えればそうとも言えまい。 なのに彼らの強面外交は、将棋の基本に例えれば「3手の読み」——こう指す、相手がこう来る、そこでこう指す——の3手のうち2手目すら想定していないようにも見えてしまう。 最上の「核心的利益」として最も細心のケアが必要だったはずの台湾に対しては、2019年1月に「一国二制度が望ましい」等を含む恫喝まがいの「台湾同胞に告げる書」を発表したことと、香港への強圧的な介入が台湾人の恐怖心・警戒心を急上昇させ、今年1月の総統選で独立派の蔡英文総統の圧勝・再選を後押ししてしまった』、慎重であるべき中国外交は、一体、どうなってしまったのだろう。
・『世界中で摩擦を引き起こした自業自得  対米関係も同様だ。中国と懇ろに付き合ってきた米国内勢力にトランプ大統領が取って代わり、貿易摩擦の範疇にとどまらぬ大国どうしの覇権争いが勃発した。そこへ今年、新型コロナウイルスのパンデミックが発生。発生初期の隠ぺい疑惑が濃厚な中で、中国のスポークスマンがなんと「米国の軍人がウイルスを持ち込んだ」可能性を示唆した。 これでトランプ大統領がさらなる対中強硬路線を進める契機をつくってしまい、今や自由主義諸国陣営と共産主義的全体主義国との「価値観の争い」という巨大な構図が出来上がりつつある。必然の流れだったといえなくもないが、米国を中心とする中国包囲網の形成は、少なくともあちこちで摩擦を頻発させた中国の自業自得ともといえる。 またオーストラリアにおける中国のスパイ活動の実態が元スパイ? によって告発され、メディアやネットの世論操作、政界・学術界への工作、台湾での世論誘導工作が白日の下にさらされたのも、オーストラリアに反中路線への明確な転換を促し、かつ他の国々にとってもわが身を振り返るタイムリーな契機となったと思われる』、「一帯一路」国の一角、チェコのNO.2の国会議長による台湾公式訪問も、「中国外交」に手痛い一撃だろう。これらは、「世界中で摩擦を引き起こした自業自得」であることは確かだ。
・『大きな契機は10年前の「中国漁船衝突事件」  国外からの干渉には極めつきに鈍感な日本でも、与党の一部議員や野党議員、左派の大手メディアが、中国に利する方向にしばしば足並みをそろえていることが、一般市民レベルでも公然と語られるようになってきた。 その大きな契機となったのはやはり10年前、2010年の尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件だったと思われる。 事件そのもののインパクトもさることながら、中国漁船船長の釈放という不可解な政治介入や海上保安官(その後辞職)がYoutube上に掲載した衝突時の動画とで、日本の世論は完全に反中モードへ。さらに2012年9月の尖閣国有化とそれを契機に中国で起きた大規模な反日デモを経て、今に至るまで日本人のマジョリティの対中感情は変わっていない。中国が尖閣諸島を、台湾、チベット、南シナ海などと同等の妥協の余地のない「核心的利益」の1つとして公式に位置づけたのは、その翌年の2013年だった。 しかし居丈高でありながら、それとは裏腹な「本当は何がやりたいんだ?」と頭をひねりたくなるちぐはぐさが、中国の言動には常につきまとう。彼らの行動原理をうまく説明できないものだろうか』、どういうことなのだろう。
・『中国の一省庁の出過ぎた振る舞い  意外にも、中国の海洋進出時の振る舞いは、2000年代前半にはさほど傍若無人ではなかった。南シナ海の近隣諸国との協力関係を進め、ベトナム・フィリピンとは資源の共同開発まで合議しており、ASEAN諸国の“中国脅威論”は一時沈静化されていたという。ところが、2000年代後半になって中国は南シナ海で実効統治を拡大し始めた。スプラトリー諸島で大規模な埋め立てを開始したのも、やはり2013年末からだ。 なぜ、中国は行動をガラリと変えたのか。共産党中枢の心変わりや気まぐれとは言えぬ部分がありそうだ。 昨年11月刊の益尾知佐子著『中国の行動原理』(中公新書刊)によれば、中国の海洋部門の主管部門となってきた「国家海洋局」が、日本でいえば省庁の「庁」レベルの存在ながら政治的な地位を急上昇させ、それが2007年ごろからの海をめぐる緊張を高めた原因となったとしている。要は、国内政治の矛盾や停滞を利用して権益を拡大させた一省庁の出過ぎた振る舞いが、かえって海をめぐる中国一国の外部環境を悪化させた、というわけだ』、「国家海洋局」の「出過ぎた振る舞いが、かえって海をめぐる中国一国の外部環境を悪化させた」、にわかには信じ難い説だ。
・『党中央の承認得ぬまま尖閣に侵入  「毛沢東時代と同様、海洋をめぐる混乱の過程では、党中央が相矛盾ずる二つの対外方針を採用していた。国内の実務担当者は、どちらを優先すべきかという問題で混乱した。穏健派であった胡錦濤と党中央が、国内的批判を受けて判断に行き詰まり、凝集力を低下させたため、実務部隊は独自行動を強め、自己利益拡大のために海上行動を過激化させた。それが国家海洋局であり、胡錦濤政権(2002~2012年)末期にはかなりの注目を集めた」(同書より) 2008年12月、国家海洋局傘下の中国海警局の海洋調査船2隻が初めて尖閣諸島の領海に侵入。5月に来日したばかりの胡錦濤総書記(当時)はじめ党中央の承認を得ぬままの行動だったという。「弱い指導者と認識されていた胡錦濤政権は、(中略)国際的な係争の存在に目をつぶり、これらの海域は自国の者という前提に立って、実務部隊が力によって海域の実効支配の拡大を図るのを容認した」(同書)。“第2の海軍”ともいわれる中国海警局の船は、2012年の尖閣国有化の後も、たびたび尖閣諸島への領海侵入を行うようになった』、確かに始めのうちは、「国家海洋局」の暴走といった面はあったのかも知れないが、「尖閣国有化の後」の反日大キャンペーンは、「党中央」の決定の筈だ。
・『「行動がちぐはぐで指導者の意図が推し量りにくい」  こうしたいわば“頭”と“身体”の不一致は、中国という大国ではしばしば起こってきたようだ。前出書によれば、「これまで中国の組織については、組織間の連携、特に国家系統と軍系統のそれがきわめて弱く、行動がちぐはぐで指導者の意図が推し量りにくい、という弱点が指摘されていた」という。 2013年に国家主席の座に就いた習近平は、海上行動の統率権を強引に党中央に引き戻し、国家海洋局から中国海警局を取り上げ、大幅な組織改編で国家海洋局を実質的に解体したという。ただ、ガバナンスの強化を推し進めてきた習近平体制が、こうしたちぐはぐさを克服できたとは言い切れないのは、昨今の振る舞いからも推測できる。 尖閣諸島の海域において、軍事上のバランスが中国側に傾いたとの米国のシンクタンクの報告すらなされている今、最大限の警戒と準備は怠れない。が、中国の傲岸な振る舞いに相対するには、見えざる内部の力学を常に念頭に置き、「それ、ほんとに習近平や党中央の本心なのか?」を的確に探り当てられる人材が、政府内、在野を問わず必須であろう』、「習近平は、海上行動の統率権を強引に党中央に引き戻し、国家海洋局から中国海警局を取り上げ、大幅な組織改編で国家海洋局を実質的に解体」、しかし、その後も「海洋局」の警備艇が我がもの顔で振舞っており、引き続き緊張状態にある。

第三に、9月10日付けAERAdotが掲載したフリーの軍事ジャーナリストの田岡俊次氏による「「もし尖閣戦闘」勃発したら敗戦濃厚」 制空権握れず「水陸機動団は海上で全滅も」〈AERA〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/aera/2020090900028.html?page=1
・『最長政権が終わりを迎える。親米のイメージが強い安倍政権だったが、実は中国との関係も重視していたという。AERA 2020年9月14日号では、軍事ジャーナリストの田岡俊次さんが安倍政権の防衛・安保政策を振り返った。 退陣表明した安倍晋三首相は憲法改正への執着や集団的自衛権行使に関する憲法解釈の強引な変更、トランプ米大統領への露骨な機嫌取りなどから「対米追従一筋のタカ派」とのイメージが強いが、実は中国との関係を重視し、次々と行動してきた。 2006年9月26日に最初に首相に就任した直後、10月8日にまず北京に飛び、胡錦濤主席らと会談し「戦略的互恵関係」の構築で合意。日中の経済関係は急速に拡大したが、翌07年9月に持病のため辞任。民主党の野田佳彦内閣が尖閣諸島を国有地化したことなどで日中関係は一挙に険悪化したものの、12年12月に首相に返り咲くと中国要人と親交の厚い福田康夫元首相らを頼りに日中関係修復をはかり、14年11月10日、北京で習近平主席と約3年ぶりの日中首脳会談にこぎつけた。 合意文書では「双方は尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していることを認識」し、戦略的互恵関係の発展を目指すとした。両方のメンツを保つためのあやふやな言辞だが、「問題は棚上げにして和解をはかる」という外交政策の一致は明白だ。 その後安倍首相は中国の「一帯一路」構想への賛同を何度も表明し、今年には習近平主席を国賓として招いて日中関係が完全に軌道に乗ったことを示す計画だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で頓挫した』、「安部首相」が「実は中国との関係を重視し、次々と行動してきた」、「「一帯一路」構想への賛同を何度も表明」、確かに言われてみればその通りなのだろう。
・『「尖閣戦闘」は敗北濃厚  その半面、両国は競って巡視船を増強し、日本は陸上自衛隊「水陸機動団」を18年に創設。垂直離着陸輸送機「オスプレイ」や水陸両用装甲車、軽空母、地対艦ミサイルなどを配備して日中戦争に備えようとしている。首尾一貫しないようにもみえるが、近隣諸国との友好を深めて紛争を避けつつ、防衛力を示して他国による安易な攻撃を防止するのは安全保障対策の定石とも言える。 この場合、もし武力衝突になればどうするか、も考えておく必要がある。尖閣諸島で戦闘になれば日本の勝算は低い。航空自衛隊の戦闘機約300機に対し中国空軍は戦闘機・攻撃機約1700機。操縦士の飛行訓練は年間約150時間で、航空自衛隊と等しい。中国にとって最重要の東シナ海を担当する東部戦区には、台湾空軍(約400機)と同等以上の航空戦力が配備され、米国のF15などに匹敵し戦闘の主力となる「第4世代機」は約300機と思われる。 日本は那覇基地にF15を約40機配備しており、九州の基地から空中給油によってさらに20機ほど、計約60機が出せそうだ。早期警戒機の能力や電子技術では日本側が優位としても、5対1の劣勢を補えるかは疑問だ。航空優勢(制空権)が相手にあれば、輸送艦やオスプレイなどは容易な標的となり、水陸機動団は海上で全滅しかねない。仮に自衛隊が尖閣に上陸できても、補給が遮断されれば餓死か降伏だ。もし自衛隊が勝ったとしても、それは真珠湾攻撃で対米戦争が始まったと同様、日中戦争の第一幕にすぎない。 米中の対立は今後も続くとしても、98基のICBMを持つ中国と米国が全面戦争になれば米中は共倒れ、日本も惨禍を免れない。安倍首相の後任者は、前首相が唱えた「戦略的互恵関係」の継承につとめることが得策と思われる』、「早期警戒機の能力や電子技術では日本側が優位としても、5対1の劣勢を補えるかは疑問だ」、これでは、「「戦略的互恵関係」の継承につとめることが得策」、全く同感である。
タグ:今回の日本の漁船の動きは、揮発性物質に火種を近づけるような行動 大きな契機は10年前の「中国漁船衝突事件」 チェコのNO.2の国会議長による台湾公式訪問 (その5)(習近平が日米の動きに焦り…中国が尖閣侵入を続ける「本当の理由」、中国が「尖閣諸島」にここまでこだわり続ける理由がついに明らかに…! 不可解な"居丈高"の行動原理は、田岡俊次氏「もし尖閣戦闘」勃発したら敗戦濃厚」 制空権握れず「水陸機動団は海上で全滅も」〈AERA〉) 自国の領有権を主張するために、「龍の舌」と呼ばれる「九段線」(9つの線)を引き、そのすべてに領有権を主張し、他の小国を圧迫。ハーグの国際常設裁判所が九段線の法的根拠を否定する裁定を出しても従わない 「戦略的互恵関係」の継承につとめることが得策 早期警戒機の能力や電子技術では日本側が優位としても、5対1の劣勢を補えるかは疑問だ 「一帯一路」構想への賛同を何度も表明 「もし尖閣戦闘」勃発したら敗戦濃厚」 制空権握れず「水陸機動団は海上で全滅も」〈AERA〉 田岡俊次 その後も「海洋局」の警備艇が我がもの顔で振舞っており、引き続き緊張状態 「行動がちぐはぐで指導者の意図が推し量りにくい」 習近平は、海上行動の統率権を強引に党中央に引き戻し、国家海洋局から中国海警局を取り上げ、大幅な組織改編で国家海洋局を実質的に解体 確かに始めのうちは、「国家海洋局」の暴走といった面はあったのかも知れないが、「尖閣国有化の後」の反日大キャンペーンは、「党中央」の決定の筈 党中央の承認得ぬまま尖閣に侵入 出過ぎた振る舞いが、かえって海をめぐる中国一国の外部環境を悪化させた 中国の一省庁の出過ぎた振る舞い 台湾国民を目覚めさせた「同胞に告げる書」 1993年から石油輸入国に転じる 「中国が「尖閣諸島」にここまでこだわり続ける理由がついに明らかに…! 不可解な"居丈高"の行動原理は」 プレジデント Digital 日本側も姿勢を転換して、「両者が話し合い解決の道をさぐる」、べき 余りに他力本願 「いまならトランプ政権は本気で動いてくれる」との観測 “出口”はどこなのか 世界中で摩擦を引き起こした自業自得 半年で2000回以上の活動 結果は周知の通り。「東京都が守る」どころか、かえって中国公船の頻繁な侵入を常態化させてしまった。石原都知事は一時的に大衆人気を得ることに成功したが、代わりに日本の国益は大きく損なわれた 石原慎太郎東京都知事が「国が守らないなら尖閣は東京都が守る」と島の買い取りに動いた 領土問題は「誰でも火がつけられる」 同漁船はただの漁船ではない。政治的目的をもって尖閣諸島に近づいた活動家の船だ 戦狼外交 中国が「周辺海域での日本漁船の操業は『領海侵入』だ」として「立ち入らせないよう」、外交ルートを通じて要求 中国海警局の船が尖閣諸島付近の接続水域を連続して100日以上航行 南シナ海で起きていること 国家海洋局 「習近平が日米の動きに焦り…中国が尖閣侵入を続ける「本当の理由」」 2008年の日中共同声明で、そこには〈共に努力して、東シナ海を平和・協力・友好の海とする〉との文言 万が一、彼らに上陸でも許せば、習近平政権の面子は丸つぶれとなる。中国の海警局の動きはこの点から説明できる。それに続いて中国が日本側に「(漁船を)管理しろ」と要求したことも同じ文脈だ AERAdot 頼りにならない「アメリカ」頼みにせず、「中国と話し合うこと」に切り替えるべきだ 日本がそう出るなら… 「尖閣戦闘」は敗北濃厚 時間が経てば経つほど中国に有利な環境が整う 「安部首相」が「実は中国との関係を重視し、次々と行動してきた 現代ビジネス 尖閣諸島に関する日本の立場は「領土問題はない」というものだ 尖閣諸島問題
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安倍外交(その7)(ボルトンが回顧録で暴露 トランプと“外交のアベ”の嘘八百、日本がインドネシアに500億円の支援を決定 高速鉄道とコロナの裏切りで募る不信感、日本に外交戦略見直しを迫る 香港の中国化・韓国の朝鮮化・ロシアのロシア化) [外交]

安倍外交については、昨年9月17日に取上げた。久しぶりの今日は、(その7)(ボルトンが回顧録で暴露 トランプと“外交のアベ”の嘘八百、日本がインドネシアに500億円の支援を決定 高速鉄道とコロナの裏切りで募る不信感、日本に外交戦略見直しを迫る 香港の中国化・韓国の朝鮮化・ロシアのロシア化)である。

先ずは、本年6月26日付け日刊ゲンダイ「ボルトンが回顧録で暴露 トランプと“外交のアベ”の嘘八百」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/275113
・『昨年9月にトランプ米大統領に解任されたボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)の回顧録「それが起きた部屋」が、安倍政権を直撃している。“外交のアベ”のお粗末な実態を次々に暴露しているのだ。 ボルトンが「トランプと最も個人的な関係を築いている」と評する安倍首相は、本の中に100回以上も登場。米朝首脳会談を巡るやりとりにはア然だ。昨年2月のハノイ会談は物別れに終わり、「内閣の最重要課題」に掲げる拉致問題でトランプに支援を求める安倍首相にとっても、気が気でない状況だったはずだが、4月末に訪米した安倍首相はトランプをベタ褒めしていた。 安倍は文在寅とはほぼ正反対の見解をトランプに示した。トランプが「ハノイで席を蹴った評価は高いんだ」と言うと、安倍は「結果は前向きなもの。席を蹴ることができるのはアナタだけ」と同意。「制裁を維持し、安易に譲歩しないことが大切です」と繰り返し強調した。安倍が「時間はわれわれの味方」と言うと、トランプも「その通り」と応じた> 直後の会見で安倍首相は「次は私自身が、金正恩委員長と向き合い、解決する」とお決まりのセリフ。本当に2人は似た者同士。政権浮揚しか頭にないのがよく分かる』、拉致被害者横田めぐみさんの父親が、拉致解放を眼にすることなく亡くなったのは、「時間はわれわれの味方」との認識の誤りを示している。「次は私自身が、金正恩委員長と向き合い、解決する」はまたも空証文だったようだ。
・『1カ月後の5月、令和初の国賓として再来日したトランプは安倍首相に緊張が続くイランとの“橋渡し”を依頼。ボルトンは当時をこう振り返る。 <失敗に終わる可能性が高い役割を安倍に押し付けたのは明らかなように思えた。安倍は注目を高めるため、イラン訪問を大阪G20サミット前の6月中旬と考えていた。トランプ訪日前、一足先に日本で会った安倍は「トランプの頼みでイランに行く。役に立てる見込みがある」と強調した。私はこのアイデア自体がひどいと思っていたが、とても口にできなかった> G20の2週間前、安倍首相は勇んで「41年ぶりの首相訪問」に臨み、最高指導者のハメネイ師と会談したが、「トランプ氏は意見交換するにふさわしい相手ではない」と突っぱねられる大失敗だった』、「私はこのアイデア自体がひどいと思っていたが、とても口にできなかった」、との「ボルトン」発言は、当然としても、外務省は「安倍首相」の積極姿勢を忖度して、「“橋渡し”」成功の可能性について事前レクチャーしてなかったのだろうか。
・『「特攻隊の生き残り」が大好物  トランプは安倍首相の父親の安倍晋太郎元外相が「特攻隊の生き残り」というエピソードを好み、支持者向け集会でもなぜか話題にしている。 ボルトンは<日本人がいかにタフか、とりわけ安倍がタフかを説明するのに使っていた>とし、こう書いていた。 <トランプはある時、「安倍の父親は天皇のための任務を遂行できなくてガッカリしていたんだぞ」と言った。父親がカミカゼ特攻を成功させていたら、安倍がこの世に存在しないことに気が付いていないようだった> なんだか切ない……』、やはり「トランプ」はこの程度の人物のようだ。それに乗せられていた「安部」も同類だろう。

次に、8月25日付けデイリー新潮が掲載した産経新聞出身でマレーシア在住ジャーナリストの末永恵氏による「日本がインドネシアに500億円の支援を決定 高速鉄道とコロナの裏切りで募る不信感」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/08250558/?all=1&page=1
・『7月20日、日本政府はインドネシア政府の要請を受ける形で、20億円の無償資金協力と最大500億円の円借款を決定した。名目は新型コロナウイルスの感染症対策および医療体制支援で、円借款は金利0・01%で償還期間は15年だ。東南アジア情勢に詳しいジャーナリストの末永恵氏は、この“思いやりODA”に疑問を呈する。 8月23日現在、人口およそ2億7000万人のインドネシアのコロナ感染者数は15万1498人、死者数は6594人(新規感染者2037人)。発表値をそのまま信用できないとはいえ、5倍以上の人口を抱える中国の感染者数が8万9645人、死者数4711人であることを鑑みると、アジア地域で最悪レベルを更新中だといえよう。しかもインドネシアのこの公表値は少なく見積もられている指摘もあり、現地有力誌『テンポ』は「(実際の)死者数は約5倍」と報じている。 8月に入っても1500人から2000人を超える勢いで連日右肩上がりで増え続けるコロナの感染者と犠牲者数は、ジョコ・ウィドド大統領(以下、ジョコウィ大統領)政権の最大かつ最も困難な政治課題となっている。現地紙『コンパス』が先月発表した国民アンケートでも、約90%が「政府や閣僚のコロナ対策に不満を抱いている」と答えていた。だからコロナ支援を目的とした日本からの巨額ODAは、政府にとって願ったり叶ったりだろう。対東アジアや東南アジアなどへのODAを審査・担当する外務省国別開発協力第一課の渡邊滋課長は、インドネシアへの支援の意義を次のように筆者に語った。 「感染拡大防止への援助は、インドネシアの社会、経済回復を助けるとともに、日本への感染輸入予防や緩和においても重要だ。今回のコロナの緊急支援による同国への資金協力は、ODAの利率も最低レベルで、ほぼ無償と言っていい。2000社を超える日系企業が展開する同国の経済を下支えすることは、日本経済にとっても有益だ」 今回のODAに関しては、日本が最大出資国であるアジア開発銀行(ADB)との協調融資で、同銀行からもさらに15億ドルが拠出されることになっている。同銀はコロナ支援で、アジア10ケ国への融資を計画しており、インドネシアは正式決定した最初の国になる。 だが、日本とインドネシアの間にはこんな因縁もある』、「“思いやりODA”に疑問」、どういうことだろう。
・『コロナ、鉄道でのしっぺ返し  詳しくは3月30日配信の拙稿「新型コロナの感染源は日本人――インドネシア政府がついた姑息過ぎるウソの顛末」記事を参照いただきたいが、今年3月、ジョコウィ大統領は「国内初のコロナ感染者の感染源が日本人である」との発表を行った。後でまったくのデマであることが判明したわけだが、この政府の嘘により、子供を含めた在インドネシア邦人の多くが、現地でいわれのない差別やハラスメントを受ける被害にあったのだ。 この問題では、在インドネシア日本大使館の石井正文大使が声明を発表したほか、茂木敏充外相が「インドネシア政府に在留法人の安全確保と差別やハラスメントの再発防止を要請した」と衆院外務委員会で発言するなど、外交問題に発展してもいる(なお、インドネシア政府のウソを暴いた私の記事に対して、在日インドネシア大使館から記事の撤回を求める抗議をいただいた)。 因縁はコロナだけではない。日本と中国が受注合戦を繰り広げたジャワ島の高速鉄道建設計画では、「土壇場でちゃぶ台をひっくり返された」(現地の日系企業幹部)形で、2015年に中国案が採用された。しかも「日本がODAの公的資金を投じて行った地質などの調査結果を、インドネシア政府が中国政府に漏洩したという疑惑もある」(先の企業幹部)。 こうしたインドネシアの“親中反日”の動きについてくわしくは、拙稿「『コロナ第一号患者の感染源は日本人』 インドネシアが流したウソの裏に“反日・親中”」(3月31日配信)に譲るとして、高速鉄道計画は中国が受注するも、遅々として進んでいない。今年5月末には地元メディアが「(ジョコウィ大統領が)中国主導の高速鉄道計画に日本を参加させたい意向を表明」と報じている。あれから3か月、日本政府関係者に取材すると「現地の報道後、一度、打診のようなものはあったが、それ以来、要請も何も一切、来ていない」という。 実は“日本へのラブコール”が報じられたと同時に、中国と分担する工事費のインドネシア分の予算が超過されたことも取り沙汰された。日本への要請表明は、日中の二国を天秤にかけることで、中国からさらによい条件を引き出すための「漁夫の利」の画策などではないかと、私は見ている。 もし仮に中国主導の計画に日本が参画すれば、コスト負担だけでなく、日本の技術やテクノロジーが盗まれてしまう懸念もある。また、ジャワ島の高速鉄道は、中国から南シナ海を通り、マラッカ海峡を経てインド洋から欧州大陸へ抜ける一帯一路の「六廊六路多国多港」といわれる重要ルートの一つで、言い換えれば、「一帯一路」の生命線ともいえる重要なプロジェクトだ。中国から中央アジア、さらに欧州に至る陸路の「一帯」と、中国、東南アジア、スリランカ、中東、欧州、東アフリカに至る海路の「一路」からなる世界を中華圏が支配する――習近平主席が掲げるそんな政治的戦略構想に、結果的に日本が協力してしまう恐れもあるのだ。。 いずれにせよ、高速鉄道をめぐる一件は、日本人にインドネシアに対する“猜疑心”を植え付けさせた。“あれだけ巨額の支援をして裏切るのか”というものである。一帯一路の支持を早々に表明し、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)にも東南アジア諸国で先陣を切って参加を表明したインドネシアを「日中のライバル意識を利用し、最終的に自国に有利な展開にもっていく」(日本政府高官)と評する声もある』、「ジョコウィ大統領は「国内初のコロナ感染者の感染源が日本人である」との発表を行った。後でまったくのデマであることが判明したわけだが、この政府の嘘により、子供を含めた在インドネシア邦人の多くが、現地でいわれのない差別やハラスメントを受ける被害にあった」、酷い話だ。「ジャワ島の高速鉄道建設計画では、「土壇場でちゃぶ台をひっくり返された」・・・形で、2015年に中国案が採用された。しかも「日本がODAの公的資金を投じて行った地質などの調査結果を、インドネシア政府が中国政府に漏洩したという疑惑もある」、こんな中国寄りの「ジョコウィ大統領」に「「“思いやりODA”」を供与するとは、安部政権のお人好しぶりもここに極まれりだ。
・『日本からの資金がもたらした腐敗政治  外務省によると、日本が1958年から実施しているインドネシアへのODAは、累計5兆7134億円におよぶ(2018年度)。内訳は有償資金協力として累計5兆685億円、無償資金協力として2821億円、技術支援協力が3628億円だ。これは日本のODA供与先としては、第2位の巨額援助国となっている(2016年度まではインドネシアが最大援助国だった。現在の1位はインドで、累計6兆150億円)。 たとえ無償を謳う支援であっても、それに見合う見返りがなくては、税金を投じる意味がない。実際、日本のインドネシアに対するODAは、これまで開発援助に参画した日系企業に巨額の利益をもたらした。その一方で、日本からの資金が、1960年代から30年に亘り長期独裁政権を敷いていたスハルト政権の汚職と腐敗を巨大化させる要因の一つにもなった。 スハルト体制は俗に、インドネシア語から由来する「KKN体制(汚職:Korupsi、癒着:Kolusi、縁故主義: Nepotisme)」と呼ばれる。これは、国の富の半分を1%の超富裕層が牛耳る、腐敗政治の象徴的な呼称である。スハルト政権末期の97年時点で、日本のODA供与額は3兆3302億円で、中国の2兆383億円を抜いて、世界一だった(ODA白書)。 KKN体制を日本のODAがいかに支えたかは、たとえばスハルト大統領の長女で社会相を務めた実業家、シティ・ハルディヤンティ・ルクマナ(通称トゥトゥット)氏の生活に見て取れる。彼女は日本のODAで建設されたジャカルタ市内の有料高速道路を管理する民間企業の筆頭株主に就き、長年にわたり、巨額の蓄財を得たとされている。諸外国からの援助資金を独り占めして食い物にしたあげく、インドネシア経済を破綻に導いた「スハルト・チルドレン」の中心的人物の一人だ。 かつては中国も日本からの巨額ODAを受け、今日の世界第2位の経済大国の礎を築いた(日本国民の血税が中国に投じられたわけだが、中国はその資金を“中国からの”ODAとして、アフリカ諸国などに使っていたことは有名だ)。約40年間にわたる中国への供与は18年に終了したが、拠出額も累計で3兆6500億円ほどだったことを鑑みると、これまでいかに日本がインドネシアに手厚い支援を行ってきたか、わかるだろう。そしてそれだけの資金が、腐敗政治の一助となっただけではなく、高速鉄道やコロナの時のような“恩をあだで返す”仕打ちを、インドネシアは行ってきたといえる。インドネシアへこれ以上の支援が必要か、再考の余地は本当にないだろうか』、巨額の「資金が、腐敗政治の一助となっただけではなく、高速鉄道やコロナの時のような“恩をあだで返す”仕打ちを、インドネシアは行ってきた」、日本政府のODA政策は全くのザルだ。
・『既存の支援にも疑問符が  すでに計画が進行している日本の公的支援についても必要性を疑う声がある。 たとえば、西ジャワ州チレボン県で進められている石炭火力発電所拡張計画。過去に丸紅などの出資で建設された発電所の近くに、新たに出力100万キロワットの大型発電所を新規建設するという計画で、インドネシアや韓国の現代建設といった大手企業とともに、最大出資者として丸紅、さらには東京電力グループや中部電力らが参画している。こちらは国際協力銀行(JBIC、財務省が管轄)が資金援助を行っているが、昨年末、地元の知事や現代建設のゼネラル・マネージャーらが、4700万円の贈収賄容疑で逮捕された。ほかに約15億円の用途不明資金疑惑もあり、検察の捜査が進んでいる。 さらに、ODA事業で行われている同州インドラマユ県での石炭火力発電所拡張計画。こちらもやはり、中国資本で建設された既存施設の隣に新たな発電所を計画しているもので、現在、日本の国際協力機構(JICA)を通じ、すでにコンサルなど含む専門的基礎調査などにおよそ7億円(エンジニアリング・サービス借款)が貸与されている。これに加え、計画全体への円借款申請が待たれている状況だ。 オランダのアムステルダムにも拠点を構え、日本のODA開発事業に詳しい国際環境NGO「FoE Japan」の委託研究員・波多江秀枝氏は、こんな懸念を表明する。 「中国主導で進められたインドラマユ県の計画でも、地元の知事が汚職で逮捕されました。海外の援助を受けたプロジェクトがインドネシアで進められるとき、もたらされる資金が現地の汚職の源になりがちです」 スハルト時代の汚職の構造は今日でも健在――ということか。この点、先に登場いただいた外務省国別開発協力第一課の渡辺課長は、 「公的資金が汚職や腐敗に流用されないよう厳選な審査をする。審査次第では、ODA供与は見送る可能性がある」としている。もっとも波多江研究員は、「インドネシア国有電力会社(PLN)は、電力不足に陥ると主張していますが、現在すでに電力過剰の状態であり、また同社の資料を基に分析すると、逆に今後10年ほどは30%から45%の供給過剰になります」と、先の2つの拡張計画が、そもそも不要であるとも指摘。実際、世界的に「脱炭素化」が進む中、大量のC02を排出する火力発電所の建設支援を行うことで日本が世界から批判されており、支援には負の側面もある。またインドラマユ県では、発電所が出す粉塵によって周辺住民の健康被害への懸念が報告され、現地では裁判沙汰になっている。 こうしたODAに“上乗せ”する形で、今回、日本はインドネシアにコロナ支援を行うわけである。が、同時にインドネシアの国営製薬会社ビオ・ファルマは、中国のシノパック・バイオテック社とコロナワクチンの共同開発を進めてもいる。8月4日には、量産体制に入る準備を進めていると、インドネシアの国営企業相が発表した。ここでも日中を手玉にとろうという魂胆が透けて見えないだろうか。 日本がインドネシアにODAを始めて62年。今年7月には世界銀行がインドネシアを上位中所得国として認定した。日本がODA対象の基準にしている一人当たりの国民総所得(GNI)も大幅に上昇しており、そろそろ独り立ちできる頃ではないだろうか。それでも支援するのであれば、高速鉄道の同じ轍を踏まないよう、そしてわれわれの血税をドブに捨てないよう、さらには日中関係の“足元”を見透かされないよう、日本政府や関係各省には肝に銘じてほしい、と願うばかりだ』、同感である。

第三に、7月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元外交官で日本総合研究所国際戦略研究所理事長の田中 均氏による「日本に外交戦略見直しを迫る、香港の中国化・韓国の朝鮮化・ロシアのロシア化」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/243088
・『日本を取り巻く環境の激変 東アジアの安全保障を左右  昨今、日本を取り巻く環境が大きく変わったことに認識があるだろうか。 激変は新型コロナの感染問題はすでに起こりつつあった地殻変動を加速化し、東アジアの安全保障に大きな影響をもたらしている。 日本ではイージス・アショアの配備を断念したことに伴い日本への攻撃に対する「敵基地攻撃能力」の保有問題が議論されているが、あまりに唐突で矮小化された反応だ。 まず日本に必要なことは外交安保戦略の抜本的見直しであり、その前提としての日本を取り巻く安全保障環境が大きく変わり悪化していることを認識する必要がある。 具体的には「香港の中国化」と米中対立、韓国の「朝鮮化」、ロシアの「ロシア化」、「アメリカ・ファースト」への対応をどうするかだ』、「日本を取り巻く安全保障環境が大きく変わり悪化」、その通りだ。
・『香港「中国化」で米中対立決定的 国安法はゲームチェンジャー  中国による香港への国家安全維持法の直接導入は、ゲームチェンジャーだと思う。 今後、「一国二制度」の下、高度な自治と自由な資本主義を認められていた香港が急速に中国化していくことが懸念される。 中国政府は相当な覚悟を持ってこの行動に出たのだろう。 昨年、続いた香港民主化を求める大規模デモは強権の介入なく収まらず、また9月に予定される香港立法会の選挙を、民主派が圧勝した昨年の区議会選挙の二の舞とすることはできない、と考え、新型コロナ感染拡大でデモが規制されている今の状況に乗じて一気呵成に国安法導入を進めたと考えられる。 今後、もし国安法が中国国内と同じように運用されれば、国際的にも約束された「一国二制度」は崩壊するだけではなく、法の支配という民主主義の根幹を犯すことともなりかねない。 そして、自由な市場として外国の投資を集め国際金融センターである香港は徐々にその利点を失うことになる。 こうした懸念を持つのは、国安法がコモン・ローに基づく香港の法的枠組みを超え、法解釈の最終権限は中国全人代常務委員会にあることや、法の運用・実施に中国治安機関が関っているからだ。 香港が中国と同じような監視社会となり、法の厳密な手続きによらないで拘束・逮捕が行われるとすれば、自由な資本主義の基盤が損なわれることになる。 こうした香港の「中国化」に米国が強く反応するのは十分理解できる。 多くの人が、トランプ大統領の対中強硬策は自らの再選を助けることになるからではないかとみる。もちろんそういう面はあるが、それ以上に、米国が危機感を強めているのは、ここで民主主義諸国が明確で強力な対抗措置を取らないのであれば、中国の行動を認知してしまうばかりか、今後の中国のさらなる強硬な行動を許してしまうことになりかねないと認識しているからだ。 米国は、今後、どの程度強硬に中国に対峙していくつもりなのか。 7月14日に大統領の署名によって成立した香港自治法で、香港の自治の侵害に関わった中国、香港当局者を特定し、これらの人物と取引をする金融機関にも制裁を科することが可能となった。また大統領令により関税や査証などの面での香港への優遇措置も撤回された。 いずれにせよ今後の展開は、中国が国家安全維持法の運用をどのようにしていくかが鍵となる』、米国の「対中強硬策」は「トランプ大統領」だけでなく、米国議会も含めた全米規模のものなので、「大統領選挙」の結果如何を問わず、当面続くだろう。
・『米国は「中国排除」強める 日本の対中戦略は?  中国の現実の行動次第で米国の制裁の程度は変わってくるだろう。 米国の制裁も一定の準備期間を経て発動され、制裁の程度は香港の立法会の選挙に当局の強権的な介入がどう行われるかにもよるのだろう。 そして、米国の制裁措置に対して中国はさらなる対抗措置を取ろうとするのだろう。 この問題は台湾にも波及する。 台湾は香港への国家安全維持法の導入を「一国二制度」の終焉とみて、ますます独立傾向を強めていくのではないか。 台湾の香港人を受け入れようとする動きに対し、中国は戦闘機を台湾海峡に飛ばし牽制をしている。蔡英文総統は事あるたびに米国との連携の強化を図っていくだろう。 一方で中国は台湾に対しては軍事的な脅しを行うことを躊躇しないだろうし、中台問題は軍事的緊張の拡大に容易につながる。 香港問題や台湾問題は米中関係のホットスポットだが、それを離れても米中対立は今後、一層激化するだろう。 米国は中国の南シナ海での行動は「不法」であると断じ、米国艦隊の活動を強化している。ファーウェイをはじめとする中国ハイテク企業の米国政府調達からの排除に動いており、こうした中国企業と取引を持つ企業も調達から外す措置を取るという。 米国の「中国排除」の動きは中国の対抗措置を招くだろうし、米中間の経済相互依存関係は大きく崩れていく可能性がある。 安全保障を米国に依存し、一方で中国とは経済的な相互依存関係が大きい日本がどのような対中戦略を持つのか。それは日本の将来を左右する。習近平国家主席の国賓訪問を論じる前に考えなければいけない課題だ』、日本の産業界への影響も大きいだけに、難問だ。
・『韓国の「朝鮮化」「反日」噴出、強まる可能性  北朝鮮による開城の南北連絡事務所の爆破は、韓国に対する揺さぶりだったと考えられる。 昨年のハノイで行われた米朝首脳会談での非核化交渉の頓挫以降、制裁緩和などを期待する北朝鮮は米朝交渉の道筋に戻ることを望んだと思われるが、米国は当然のことながら非核化に向けた実務的な詰めなくして進展は図り得ないという従来の方針を変えず、事態は停滞した。 そして北朝鮮では今年初旬から新型コロナウイルスの感染が拡大したと考えられており、中朝国境が閉鎖され物資の流入が途絶えたことで北朝鮮への経済的ダメージは相当なものだったのだろう。 現状打開を目指して打った手が、南北交流の象徴である南北連絡事務所の爆破だった。 北朝鮮の「瀬戸際政策」の常だが、こうした行動に出れば韓国は焦り、米国をとりなす行動に出るとの思惑が北朝鮮にはあったのではないか。 韓国の文在寅政権にとって「南北共存」は一丁目一番地の基本政策だ。文政権の特色は、「86世代」と呼ばれる60年代に生まれ、80年代の民主化運動に関わった左派色の強い進歩派の人々が政権中枢を構成していることだ。 対外関係についても、朝鮮半島は常に大国により脅かされてきたとして「自立」を望む意識が強く、このため潜在的には「反米」「反日」であり、「親北」といえるだろう。 韓国はこれまで北朝鮮との関係が緊迫すると、安全保障を担保する必要性から日米との連携を重視し、米韓同盟を維持する必要性を認識する動きを見せたが、歴史問題を抱える日本に対しては、「反日」の意識が時に過剰に噴出する。 一方で中国については、歴史的にも圧倒的な存在だったことから反中とは言い切れない微妙な意識がある。また、韓国経済にとっての中国の圧倒的重要性からしても中国を阻害するわけにはいかないという意識も強い。 過去、廬武鉉政権が「米中をブリッジする」と提唱し、また文政権の一部高官が「米国か中国かを選ぶことができる」と発言したことからも分かるように、米国と自由民主主義という価値を共有する同盟国でありながら、この点を重視することなく、米国と中国を同列で論じることを躊躇しない。 このような韓国進歩派の考え方は保守派とは相いれず、韓国内の保革分断が、対北朝鮮政策も含めさまざま局面で対外政策の揺らぎをもたらしてきた。 だが総選挙では進歩派が圧勝したこともあって、文政権の対北融和政策は変わっていない。文政権の民族自立の意識は北朝鮮とも相通じるものがある。極論すれば韓国も「朝鮮化」しているということもできよう。 だが「朝鮮化」した韓国は日本にとって扱いにくい存在だ。 北朝鮮との間の拉致問題も日本と北朝鮮の関係をどうしていくのかという大きな絵柄の中で考え、機会をとらえていかないと解決が難しい。拉致問題の解決が最重要である位置付けは変わらないにしても、「重要だ」と叫んで一向に前に進んでいかないのはあまりに空しい』、「米国と自由民主主義という価値を共有する同盟国でありながら、この点を重視することなく、米国と中国を同列で論じることを躊躇しない。 このような韓国進歩派の考え方」、我々には理解し難い点だ。「「朝鮮化」した韓国は日本にとって扱いにくい存在」、困ったことだ。
・『ロシアの「ロシア化」 領土問題解決は遠のく  ロシアは7月初旬に憲法改正を行い、事実上、プーチン大統領が2036年まで大統領の座にとどまることを可能にした。 プーチン大統領は2000年から2期8年大統領職にあり、その後、首相に転じたが、2008年の憲法改正後、1期6年に延びた大統領に2012年に再登板し、2024年までが任期になっていた。 今回の憲法改正で大統領の任期がリセットされ、2024年から最大2期12年、大統領にとどまれることになった。 プーチン大統領にしてみれば首相だった時期に自らへの反対勢力が強くなったことが念頭にあり、そのため今度は“終身大統領”であることをあらかじめ明らかにした上で独裁色を強めるということだろう。 さらに憲法改正では、ロシア領の割譲を禁じることや同性婚を認めないなどの保守色が強い項目が盛り込まれた。ロシアの大国主義が色濃く反映された憲法改正だ。 日本政府はこの動きに対して単に関心の表明にとどめているが、果たしてロシア憲法にある「領土の割譲の禁止」と、日本が求める北方領土の返還が相いれるのかどうかは、はなはだ疑問だ。 ロシアはサイバーでの選挙介入などで欧米諸国との関係は極めて悪化しているし、逆に中国との関係の緊密化は着々と進んでいる。 日本は北方領土問題に何の成果もなく、むしろ交渉に対するロシアの立場が後退しているようにみえる状況でロシアとひたすらに首脳会談を積み重ねていくことがよいのか。 その前に対ロ戦略を見直すべきなのではないか』、同感である。
・『「アメリカ・ファースト」の行方 “トランプ後”に備える必要  こうして東アジアをめぐる状況が一段と変わり始めているなかで、トランプ大統領が掲げる「アメリカ・ファースト」は日本にとっても、東アジア地域にとっても問題が多い。 トランプ大統領にとって「アメリカ・ファースト」を具現するものは、中国との競争に勝利することに加え、輸出を伸ばして貿易拡大の利益を確保すること、また米国からの武器調達を含め防衛負担の増大を同盟国に求めることであり、これを実現していくために地域多国間の枠組みを離れて二国間の取引に持ち込むことだろう。 トランプ大統領は、これまで中国や日本、韓国との貿易合意、米軍駐留経費について韓国の負担の飛躍的拡大や日本からの巨額の武器調達に成功し、またTPPからの撤退にとどまらずAPEC、東アジアサミットなど地域協力を軽視してきた。 トランプ大統領が再選に成功した場合、このような政策がさらに深掘りされていくことになる。だが、現在の米国国内の状況を見る限り、トランプ再選の可能性は高くない。 日本は民主党のバイデン候補が勝利する場合に備えて対米戦略の練り直しを行うべきだろう。 その際にはこの地域の安全保障環境が大幅に変化している一方で、少子高齢化で大きな成長を望めず中国という巨大マーケットとの相互依存関係が必要なことなどを総合的に勘案することが重要になる。 新型コロナウイルス感染が一刻も早く収束することを願いたいが、コロナ後の日本を待つ情勢は決して容易なものではない。 この4つの要因以外にも日本を脅かす要因はいろいろある。当面は経済回復が最大の課題になるのだろうが、経済の回復を迅速に進める上でも周辺環境の安定は必須になる。 そのための包括的な戦略が重要である』、「日本は民主党のバイデン候補が勝利する場合に備えて対米戦略の練り直しを行うべき」、その通りだ。もはや「安部外交」で浮かれている段階ではない。
タグ:「朝鮮化」した韓国は日本にとって扱いにくい存在」 後でまったくのデマであることが判明したわけだが、この政府の嘘により、子供を含めた在インドネシア邦人の多くが、現地でいわれのない差別やハラスメントを受ける被害にあった 「時間はわれわれの味方」との認識の誤り 日本を取り巻く環境の激変 東アジアの安全保障を左右 日本からの資金がもたらした腐敗政治 香港「中国化」で米中対立決定的 国安法はゲームチェンジャー 米国は「中国排除」強める 日本の対中戦略は? コロナ、鉄道でのしっぺ返し 「特攻隊の生き残り」が大好物 “思いやりODA”に疑問 安全保障を米国に依存し、一方で中国とは経済的な相互依存関係が大きい日本がどのような対中戦略を持つのか。それは日本の将来を左右する。習近平国家主席の国賓訪問を論じる前に考えなければいけない課題だ 私はこのアイデア自体がひどいと思っていたが、とても口にできなかった ダイヤモンド・オンライン 「ボルトンが回顧録で暴露 トランプと“外交のアベ”の嘘八百」 日本政府はインドネシア政府の要請を受ける形で、20億円の無償資金協力と最大500億円の円借款を決定 外務省は「安倍首相」の積極姿勢を忖度して、「“橋渡し”」成功の可能性について事前レクチャーしてなかったのだろうか 日刊ゲンダイ (その7)(ボルトンが回顧録で暴露 トランプと“外交のアベ”の嘘八百、日本がインドネシアに500億円の支援を決定 高速鉄道とコロナの裏切りで募る不信感、日本に外交戦略見直しを迫る 香港の中国化・韓国の朝鮮化・ロシアのロシア化) 安倍外交 末永恵 ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)の回顧録「それが起きた部屋」 2015年に中国案が採用された。しかも「日本がODAの公的資金を投じて行った地質などの調査結果を、インドネシア政府が中国政府に漏洩したという疑惑もある 資金が、腐敗政治の一助となっただけではなく、高速鉄道やコロナの時のような“恩をあだで返す”仕打ちを、インドネシアは行ってきた 「次は私自身が、金正恩委員長と向き合い、解決する」 日本は民主党のバイデン候補が勝利する場合に備えて対米戦略の練り直しを行うべき 韓国の「朝鮮化」「反日」噴出、強まる可能性 「アメリカ・ファースト」の行方 “トランプ後”に備える必要 「香港の中国化」と米中対立、韓国の「朝鮮化」、ロシアの「ロシア化」、「アメリカ・ファースト」への対応をどうするかだ デイリー新潮 米国と自由民主主義という価値を共有する同盟国でありながら、この点を重視することなく、米国と中国を同列で論じることを躊躇しない。 このような韓国進歩派の考え方 日本は北方領土問題に何の成果もなく、むしろ交渉に対するロシアの立場が後退しているようにみえる状況でロシアとひたすらに首脳会談を積み重ねていくことがよいのか。 その前に対ロ戦略を見直すべきなのではないか ロシアの「ロシア化」 領土問題解決は遠のく ジャワ島の高速鉄道建設計画では、「土壇場でちゃぶ台をひっくり返された」 「日本に外交戦略見直しを迫る、香港の中国化・韓国の朝鮮化・ロシアのロシア化」 日本が1958年から実施しているインドネシアへのODAは、累計5兆7134億円 既存の支援にも疑問符が 田中 均 「日本がインドネシアに500億円の支援を決定 高速鉄道とコロナの裏切りで募る不信感」 ジョコウィ大統領は「国内初のコロナ感染者の感染源が日本人である」との発表
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