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環境問題(その9)(商船三井はなぜ謝った? 石油流出事故は「SDGs謝罪」の号砲か、菅内閣でついに動き出す「炭素の価格付け」論議 焦点の1つは炭素税 求められる税制グリーン化、三菱UFJと住商が直面する「脱炭素」株主提案 2020年のみずほに続き NGOが定款変更を要求) [経済政策]

環境問題については、昨年12月17日に取上げた。今日は、(その9)(商船三井はなぜ謝った? 石油流出事故は「SDGs謝罪」の号砲か、菅内閣でついに動き出す「炭素の価格付け」論議 焦点の1つは炭素税 求められる税制グリーン化、三菱UFJと住商が直面する「脱炭素」株主提案 2020年のみずほに続き NGOが定款変更を要求)である。

先ずは、昨年12月14日付け日経ビジネスオンライン「商船三井はなぜ謝った? 石油流出事故は「SDGs謝罪」の号砲か」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00212/120900006/
・『これまで、同調圧力や謝罪の流儀の海外比較、SNSでの炎上、「土下座」や「丸刈り」について論じてきた。今回は、謝罪の新しい潮流について考えてみたい。題材にするのは、今年7月に起きた貨物船「WAKASHIO(わかしお)」の事故だ。「法的責任はない」と認識している商船三井は、なぜ謝罪したのか。 「新型コロナでただでさえ国外からの観光客がいなくなっているのに、国内からも来なくなった。二重苦だ」 人口約126万人、面積はほぼ東京都と同じ島国のモーリシャスで、ホテル経営者やエコツーリズム業者らは、こう口をそろえる。 インド洋のモーリシャス沖で7月25日(現地時間)、長鋪汽船(岡山県笠岡市)所有のばら積み船「WAKASHIO(わかしお)」の座礁事故が発生。8月6日に燃料油が流出し始め、約1000トンが海に流れた。モーリシャスの海岸線約30kmに漂着したとされ、多くの海水浴場が閉鎖され、漁も禁止された。 事故現場は湿地の保全を定めるラムサール条約に登録された国立公園にも近い。マングローブやサンゴ礁など生態系への影響が懸念されているほか、そうした自然に魅了されて世界中から人が訪れる観光産業への影響も不安視される。観光業や水産業は同国の基幹産業なだけに、流出した燃料油の与える影響への懸念は強い。 8月下旬には事故を巡って、モーリシャス政府の対応の遅さが被害を拡大したと批判する大規模デモが起きた。市民らは首相や関係閣僚の辞任を求めた。 こうした中、長鋪汽船という一企業の対応を超えて、日本では国を挙げての支援体制が敷かれている。茂木敏充外務相は9月上旬、モーリシャスの首相に環境の回復だけでなく、経済・社会分野でも協力することを伝えた。独立行政法人国際協力機構(JICA)は3度の国際緊急援助隊の派遣に続いて、10月下旬から調査団を派遣。現地住民への聞き取りやマングローブ、サンゴ礁への影響を調べている。 12月上旬の状況について、現地で活動する阪口法明・JICA国際協力専門員は「大規模にサンゴ礁が死滅したり、マングローブ林が枯れたりという状況は見られていない。ただ、サンゴ礁には今も堆積物が蓄積しており、油の漂着が見られたマングローブ林も根や土壌表面の洗浄をまさに続けているところ。引き続きモニタリングが必要だ」と語り、注意を継続する必要性を強調する。 12月には茂木外相がモーリシャスを訪問。日本だけでなく、フランス政府もモーリシャスに専門家を派遣するなどの支援に当たる。 当然、これほどの規模の事故ともなると、加害者は謝罪会見を開くことになる。 WAKASHIOを所有する長鋪汽船は、8月8日にリリースを出し事故が起きた事実を伝え、同9日に記者会見を実施。長鋪慶明社長は「多大なご迷惑とご心配をおかけし、心より深くおわび申し上げる」と陳謝し、油の流出防止や漂着した油の回収に取り組む計画を語った。 ただ、この謝罪会見は、危機管理コンサルタントなど“謝罪のプロ”たちが注目するところとなった。長鋪汽船だけではなく、もう1社、登壇した会社があったからだ。商船三井である。 「これは、新しい会見の流れになるのかもしれない」 ある危機管理コンサルタントは、この会見を見てこう口にした。 商船三井は、長鋪汽船から船を借り、荷物を付けて輸送する指令を出す「定期用船者」に当たる。船を所有し、乗組員を乗船させて運航するのは船主である長鋪汽船。一般的に、船舶事故の場合は船主が責任を負い、事故への賠償責任の費用をカバーするP&I保険(船主責任保険)は船主が加入している。 法的責任を一義的に負うのは長鋪汽船。だが、謝罪会見の開催場所は東京・港区の商船三井本社の会議室。「まるで、商船三井が謝罪会見を開いているかのようだった」(ある危機管理コンサルタント)。 そして、長鋪汽船の社長と共に登壇した商船三井の小野晃彦副社長は、こう謝罪の意を示したのである。 「モーリシャスをはじめ、関係者にご迷惑をお掛けしていることを誠に深くおわび申し上げる」』、この事故については、このブログの昨年10月20日で取上げた。「国際協力機構(JICA)は3度の国際緊急援助隊の派遣に続いて、10月下旬から調査団を派遣」、「茂木外相がモーリシャスを訪問」、など日本政府も異例の対応をしたようだ。
・『商船三井に「法的責任」はあるのか  ここで注意が必要なのは、商船三井が自らに事故の法的責任があると考えて謝罪したわけではないことだ。9月11日、商船三井は改めて会見を開き、商船三井の池田潤一郎社長は、「法的責任は一義的には船主が負うべきものと考えている」と明言している。 それでも、謝罪の意を表明するだけではなく、商船三井は主体的に被害を受けているモーリシャスに対する支援策を矢継ぎ早に打ち出した。 「モーリシャス自然環境回復基金(仮称)」設置などの10億円規模の拠出の計画を公表。資金だけでなく、これまでに社員延べ約20人を現地に派遣している。10月にはモーリシャス現地事務所を設立し、環境保護活動を行うNGO(非政府組織)との連携にも乗り出している。スタートアップのイノカ(東京・港)とも提携し、新技術による原油除去の可能性を探るなど、その支援範囲は幅広い。 池田社長は手厚い支援を実施する背景について、「今回の事故はモーリシャスの自然環境、人々の生活に大きな影響を与えるもの。用船者である我々が社会的責任を背負うことは当然であり、前面に立って対応しなければならない」「法的責任だけで整理できるものではない」(池田社長)と説明する。 もっとも、商船三井にも法的責任があるかどうかは、必ずしも明確ではないという見方もある。『船舶油濁損害賠償・補償責任の構造―海洋汚染防止法との連関―』(成文堂)の著者である信州大学の小林寛教授(環境法)は「商船三井が法的責任を負う可能性は低い」と指摘するが、「そもそも燃料油による汚染損害との関係では、定期用船者の法的責任は、これまであまり議論されてこなかった」(小林教授)と話す。要するに、“グレーゾーン”にあるわけだ。 オイルタンカーの事故では船主に責任があることが明確になっている。一方、WAKASHIOのような貨物船については、バンカー(燃料油)条約が「船舶所有者(所有者、裸用船者、管理人、運航者)は、船舶から流出した燃料油による汚染損害について責任を負う」と規定されている。定期用船者である商船三井の場合、「運航者」に当たるかどうか議論の余地があるというのである』、今回の場合、「船主」が「長鋪汽船」という弱小企業だったこともあり、「定期用船者である商船三井」が乗り出してきたのはさすがだ。「用船者である我々が社会的責任を背負うことは当然であり、前面に立って対応しなければならない」「法的責任だけで整理できるものではない」としているようだ。
・『増加するESG投資、無視できない環境  だが、今回の対応が注目されるのは、池田社長が語ったように、法的責任がなくとも「社会的責任」から謝罪し、行動しているという点だ。小林教授は、「商船三井の対応は(法的責任の所在より)SDGsを意識しているのだろう」とみる。 「SDGs(持続可能な開発目標)」は、言わずと知れた2015年に国連で採択された、国際社会における行動の指針だ。貧困撲滅や気候変動対策など17のゴールからなり、その14番目に海の生態系を守ることが掲げられている。 SDGsは民間企業の参加を促しており、商船三井も経営計画と連動した「サステナビリティ課題」として、SDGsの17の目標と対照させながら海洋・地球環境の保全などに向けた取り組みを表明している。 SDGsの世界的なうねりは、機関投資家による「ESG投資」も加速している。環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の3要素で構成するESG投資は、2006年に国連が責任投資原則(PRI)を公表したことをきっかけに拡大が加速。PRIに署名した金融機関の保有資産残高は2010年の21兆ドルから19年には86兆3000億ドルまで増加している。 『企業と社会―サステナビリティ時代の経営学―』(中央経済社)などの著書を持ち、企業の社会的責任に関する研究をする早稲田大学の谷本寛治教授は「企業に期待される役割は時代とともに変化する。地球環境問題についての世界的な世論の関心の高まりに加え、特にこの10年間はESG投資が増えた。上場企業として、この流れは無視できない」と語る。 日興リサーチセンター社会システム研究所の寺山恵所長もESG投資の流れから「上場企業である商船三井は、投資家から、事故に至った背景や今後のリスク管理だけでなく、今回の事故での社会的責任が問われるのはよく分かっているはず」とし、基金設置などの「商船三井の対応は時節にかなっている。逆に企業がESGについてどう考えているのか見せる良い機会にもなる」と話す。 国際的な環境NGOからの監視の目も厳しい。グリーンピースは8月、「現地住民と積極的に話し合い、誠意をもって解決策を探ることを求めます」などといった公開状を長鋪汽船と商船三井に送付。両社は期限までに「このようなご意見があることも踏まえ、今後本件のような事態が二度と発生しないよう取り組んでまいります」などと社長名の文書で回答している』、「小林教授は、「商船三井の対応は(法的責任の所在より)SDGsを意識しているのだろう」とみる」、「SDGs」がここまで浸透しているとは、驚かされた。
・『「ESG」の原点も原油流出事故による海洋汚染だった  被害を直接的に与えたモーリシャスの国民にとどまらず、今回の事故の利害関係者は多岐にわたる。SDGs時代には、ひとたび大規模な事故や不祥事を起こせば、影響を受ける未来の世代も含めて、謝罪の相手は直接的な被害者だけでは済まされない。 その点で、商船三井と長鋪汽船の対応は及第点と言えそうだ。早稲田大学の谷本教授は「新型コロナの影響で、航空機に乗ってすぐに現地に向かうことが難しいといった制約があった中、特に8月はリリースを頻繁に更新して情報を出そうとする努力の姿勢が見えた」と評する。 ただし、「少なくとも事故前の状態に近づけるところまで、支援を続けることが必要。資金面の支援だけでなく、定期的にどのような活動をしたのか、その効果について開示していくことが今後の課題だ」(谷本教授)と語る。 そもそも、こうした「社会的責任」を重視する世界的な潮流を遡ると、日興リサーチセンター社会システム研究所の寺山所長は「企業のESGへの関心が高まった契機は船舶の座礁事故だった」と解説する。 1989年に米エクソン社のタンカー「バルディーズ号」がアラスカ沖で座礁。大量の原油流出による生態系の破壊は、投資家やNGOからの企業の環境責任を求める声につながった。 「商船三井も含め、グローバルを舞台にする物流船は特にESGへの意識が高いはずだ」との見方をする。 それだけに、今回の商船三井の対応は、SDGs時代の謝罪の流儀として、1つのモデルケースになる可能性がある。 商船三井が連携を表明しているモーリシャスの環境NGO「エコモード・ソサエティー」の代表で、モーリシャス大学の海洋学教授でもあるナディーム・ナズラリ氏は「生態系が壊れ、海岸に行くたびに悲しくなり、涙が出そうになる。漁業ができなくなり貧しい人の生活を直撃している」と窮状を訴える。「商船三井が私たちを助けようとしているのは理解している。ただ、サンゴの保全活動のために早く資金の支援がほしい」と語る。 商船三井は本誌の取材に対し、今回のような対応理由や経緯について「会見で説明した通りで、それ以上の回答は差し控える」とコメントし、明らかにしていない。黙して行動で謝意を示すということなのだろう。多様なステークホルダーが心から許すかどうかは、謝罪の言葉以上に実行力にかかっている。 商船三井は12月11日、社長交代を発表した。21年4月1日付で池田社長は代表権のある会長に就き、新たに橋本剛副社長が社長に昇格する。今後、商船三井は経営体制が変わることになるが、長鋪汽船とともに、事故によって破壊された環境を回復させる長期的な取り組みが求められることになる』、「「ESG」の原点も原油流出事故による海洋汚染だった」、初めて知った。「モーリシャス」の汚染被害が一刻も早く解決することを期待したい。

次に、本年2月1日付け東洋経済オンラインが掲載した 慶應義塾大学 経済学部教授の土居 丈朗氏による「菅内閣でついに動き出す「炭素の価格付け」論議 焦点の1つは炭素税、求められる税制グリーン化」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/408601
・『わが国でも、カーボンプライシング(炭素の価格付け)の議論が本格的に動き出そうとしている。 梶山弘志経済産業相と小泉進次郎環境相は1月26日、それぞれ記者会見で、カーボンプライシングについての検討を進めることを発表した。 梶山経産相は同省内にカーボンプライシングについての研究会を新設し、2月中旬から議論を始めることを表明した。小泉環境相は、2018年7月に設置した中央環境審議会のカーボンプライシングの活用に関する小委員会での議論を、2月1日から再開させることを表明した。両省は互いにオブザーバーとしてそれぞれの会議体に参加する』、これまでは議論すらされてなかったのが、漸く議論が始まるようだ。
・『菅内閣で一変した導入論議  カーボンプライシングの議論で焦点となるのは排出量取引と炭素税だ。 わが国でのカーボンプライシングについては、安倍政権で静かに進む「もう1つの増税計画」の中で、2019年4月段階での議論の進捗状況に触れた。カーボンプライシングに対する経済界の反対も強く、導入の実現可能性は低かった。 その後、中央環境審議会の同小委員会は2019年8月、「カーボンプライシングの活用の可能性に関する議論の中間的な整理」を取りまとめた。当時は安倍内閣で、消費税率も8%だった。同小委員会の中間的な整理も導入ありきではなく、限りなく賛否両論併記に近いものだった。 ただ、排出量取引と炭素税を日本に本格導入する場合、どのような制度設計が必要かについて反対論に配慮した形で具体的に踏み込んだ検討結果が記された。 この状況は、2020年10月26日に菅義偉首相が所信表明演説を行い、2050年にカーボンニュートラル(脱炭素社会の実現)を目指すことを宣言したことにより、一変した。) 欧州連合(EU)は2020年7月の首脳会議で、国際炭素税の導入や、EU域内排出量取引制度で財源を賄う復興基金を設置することで合意した。アメリカも、地球環境問題を重視する民主党のバイデン氏が大統領に就任し、この流れを決定的なものにした。 経済界の意向を反映してカーボンプライシングに消極的とされていた経済産業省も、2020年12月の成長戦略会議で取りまとめられた「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」で一歩踏み込んだ。経産省は「2050年カーボンニュートラル」への挑戦を、経済と環境の好循環につなげるための産業政策と位置づけた』、「菅義偉首相」の「カーボンニュートラル」「宣言」は、米国でのトランプから「バイデン」への政権移行を踏まえたのだろう。
・『成長戦略に資するカーボンプライシング  グリーン成長戦略には、「市場メカニズムを用いる経済的手法(カーボンプライシング等)は、産業の競争力強化やイノベーション、投資促進につながるよう、成長戦略に資するものについて、既存制度の強化や対象の拡充、更には新たな制度を含め、躊躇なく取り組む」「国際的な動向や我が国の事情、産業の国際競争力への影響等を踏まえた専門的・技術的な議論が必要である」などと明記された。 梶山経産相や小泉環境相の表明はこの線に沿ったものである。つまり、今回のカーボンプライシングの検討は「成長戦略に資するもの」という条件が付されているのだ。 急進的な地球環境保護派ならば、カーボンプライシングはCO2の排出に対して懲罰的に炭素税を課したり、排出量取引で温室効果ガス排出量の上限を厳しく設定したりすることに重きを置くべきと主張するだろう。 しかし、欧米の出方が未確定な段階で、日本が先んじてカーボンプライシングに踏み込もうという機運はない。ただでさえ、輸出競争力が低迷している日本企業に対して、あえて不利になるようなカーボンプライシングを課せば、欧米は日本の足元をみて自国企業に有利になるようにしながら、温暖化防止に積極的だと印象付ける政策を講じてくるだろう。 これまで日本は、気候変動問題に消極的だと世界的に批判されてきた。日本企業に過重な負担増を課さないように配慮をし、カーボンプライシングを軽微にしたとしても、逆に地球環境問題に対して不熱心だとレッテルを貼られて負担増以上の不利益を日本企業が被るということにもなりかねない。 この期に及んで、わが国でカーボンプライシングの議論を封印することはできなくなった。いま反対している企業に対しては、成長戦略に資するカーボンプライシングを示すことで、納得してもらうことが得策である。 では、そのような政策はありうるのか。当然ながら、唯一の特効薬のような政策はなく、さまざまな政策の合わせ技となる。その1つになりうるのが、エネルギー諸税についてCO2排出量比例の課税を拡大することと同時に、その税収を脱炭素化を早期に実現するための設備投資や技術革新に用いることである。 わが国で炭素税といえる税は、地球温暖化対策のための税(温対税)である。ただ、温対税の税率はCO2・1トン当たり289円で、主な炭素税導入国の中では低い水準にある。温対税以外に石油石炭税や揮発油税などのエネルギー諸税があって、これらの課税を炭素排出量換算すると、CO2・1トン当たり約4000円になると経済産業省は試算している』、「温対税の税率はCO2・1トン当たり289円」だが、「温対税以外に石油石炭税や揮発油税などのエネルギー諸税があって、これらの課税を炭素排出量換算すると、CO2・1トン当たり約4000円になると経済産業省は試算」、「エネルギー諸税」の重さには驚かされたが、本当だろうか。
・『早期の「税制のグリーン化」実現を  しかし、エネルギー諸税はCO2排出量に比例していない。その背景には、製鉄プロセスで石炭が必要な鉄鋼業や石炭火力発電に依存する電力業、さらには灯油を多用する寒冷地住民への配慮がある。 とはいえ、脱炭素を早期に目指すならば、税制でそうした配慮をいつまでも続けるわけにはいかない。むしろ、税制ではCO2排出量比例の課税を拡大(税制のグリーン化)しつつ、その税収を使って、そうした配慮なしで雇用や生活が成り立つような技術革新や製品開発を促すという政策転換が求められる。早期に脱炭素化が進められるような技術革新の促進や産業振興を行うことで、成長戦略にも資する。 税制のグリーン化を本格的に進めるには、温対税の単純な拡大だけでは不十分で、エネルギー諸税の抜本的な改革も必要だろう。ただ、いきなり過重な負担増を課すわけにはいかない。まずは緩やかに、かつ遅滞なく温対税を拡大する方法もありえよう。 税収を脱炭素化の促進に用いるのはよいとしても、長期にわたり漫然と補助し続けるような支出であってはならない。日本は2050年のカーボンニュートラル実現とともに、温室効果ガス排出量を2030年度に2013年度比でマイナス26%とする目標を掲げている。 2050年までにカーボンニュートラルを実現できればよいわけではない。2030年まであと9年しかなく、脱炭素化の促進を財政的に支援するとしても早期にその成果を求めなければならない。 もちろん、新型コロナウイルス対策が目下の最優先課題である。しかし、その収束後には、遅滞なく政策が講じられるようにスタンバイ状態にしておく必要がある。新型コロナが収束していない段階でも、EUにはカーボンプライシングの強化を断行した国があることを看過してはいけない』、「早期の「税制のグリーン化」実現を」、賛成である。

第三に、4月21日付け東洋経済オンライン「三菱UFJと住商が直面する「脱炭素」株主提案 2020年のみずほに続き、NGOが定款変更を要求」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/423904
・『環境NGOが機関投資家と連携し、大手金融機関や大手エネルギー関連企業に対する脱炭素化の働きかけを世界規模で強めている。 日本では3月26日、環境NGO「気候ネットワーク」のほか、国際的な環境NGOに所属する三菱UFJフィナンシャル・グループの個人株主3人が、気候変動に関するパリ協定の目標に沿った投融資計画を策定・開示するよう求める株主提案を同社に提出した』、IR担当部署が対応する必要があるのは、「環境NGO」にも広がっているようだ。
・『定款に脱炭素化の方針明記を  三菱UFJに株主提案したオーストラリアの環境NGOに所属する個人株主は同日、住友商事にも株主提案を送付。同社の石炭や石油、ガス関連事業資産や事業の規模を減らすべく、パリ協定の目標に沿った新たな事業戦略の策定や情報開示を求めている。三菱UFJ、住商のいずれに対しても、脱炭素化の方針を定款に盛り込むことを求めている。 三菱UFJに株主提案を提出したのは、気候ネットワークのほか、オーストラリアの環境NGO「マーケット・フォース」とアメリカの環境NGO「レインフォレスト・アクション・ネットワーク」(RAN)、「350.org」の日本組織に所属する個人株主ら。住商にはマーケット・フォースの個人株主が株主提案した。 イギリスやアメリカでは、NGOによる気候変動問題に関する株主提案が急増している。そして、機関投資家がその提案に賛同し、株主提案が可決・成立したり、提案をきっかけに会社と新たな合意を結ぶケースも相次いでいる。 イギリスの大手銀行HSBCは3月11日、気候変動問題に関してより踏み込んだ対応策を5月の株主総会で発表すると明らかにした。これを踏まえ、同社に株主提案していた環境NGOが提案を撤回。HSBCの対応策を支持すると表明した。 HSBCは、パリ協定を踏まえた脱炭素化に関する目標に従い、2021年の年次報告書から年度ごとの温室効果ガス削減の進捗状況を開示する。また、EUとOECD加盟国において、石炭火力発電や一般炭採掘向け融資を2030年までにゼロに、それ以外の国についても2040年までにゼロにすると公約した。 アメリカでも2021年初めの数カ月だけで30件を超える株主提案が出されている。JPモルガン・チェースやウェルズ・ファーゴ、バンク・オブ・アメリカなどの大手銀行は、二酸化炭素など温室効果ガス排出量の測定や開示などの要求を受け入れると表明。株主側は提案を取り下げている。 環境NGOによる圧力は日本の大手銀行や大手商社にも及んでいる。気候ネットワークは2020年、みずほフィナンシャルグループに株主提案を行った。2021年は三菱UFJに株主提案を提出し、投融資の脱炭素化に向けて踏み込んだ対応を求めている。大手商社の中では住商が初めてターゲットになった』、「HSBC」や主要米銀が「環境NGO」の「要求を受け入れると表明。株主側は提案を取り下げている」、欧米ではずいぶん影響力を持っているようだ。
・『みずほでは3分の1超の賛同を獲得  三菱UFJと住商に対し、NGO株主はパリ協定に沿った経営戦略を立てるよう定款の変更を求めている。定款変更を求める理由について、マーケット・フォースは「日本の会社法では、株主が提案権を有するのは議決権を行使できる事項に限られる。議決権を行使できるのは、会社法または対象企業の定款に定められた株主総会決議事項に限定されているため」としている。それゆえ、定款を変更しないと要求を実現できない。 2020年の株主総会で定款変更を求められたみずほは、「会社の目的、名称や商号等を定める定款本来の位置づけ等に照らして不適切」などとして株主提案に反対を表明した。しかし、株主提案は34.5%の賛同を獲得。金融界に大きな衝撃が走った。 みずほの株主総会で、カリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)やBNPパリバ・アセットマネジメントのほか、野村アセットマネジメントやニッセイアセットマネジメントなどが株主提案に賛成票を投じた。 今回、三菱UFJに株主提案した理由について、気候ネットワークの平田仁子理事は「(三菱UFJの)化石燃料関連への投融資がパリ協定で必要とされる削減の道筋と整合していない。これまで対話を続けてきたが、三菱UFJが整合した方針を設定する確証を得られなかったため、株主提案という方法を提起した」という。 また、RANの川上豊幸日本代表も、「当団体などが3月24日付で発表した『化石燃料ファイナンス成績表』によれば、パリ協定採択後の化石燃料産業への融資額に関して三菱UFJは世界6位、アジアの金融機関としては最も多い結果になった」という。) 川上氏はさらに、「(三菱UFJは)二酸化炭素排出量が突出して多い北米のオイルサンド産業や、北極圏の石油・ガス産業、シェールオイル・ガス事業への融資額が多く、現在、反対運動が強まっているオイルサンドのライン3パイプライン建設でもアジアの銀行として最も多額の資金提供を行っている」と指摘する。 三菱UFJは熱帯林の破壊や森林火災などの恐れのある東南アジアのパーム油関連事業に最も多くの資金を提供している銀行の1つといわれる。RANは2016年ごろから三菱UFJと対話を続けてきたが、「改善は見られるものの、その進展ははかばかしくない」(川上氏)という』、「環境NGO」が「定款の変更を求めている」理由がこれまでは理解できなかったが、「会社法では、株主が提案権を有するのは議決権を行使できる事項に限られる」ためとの理由で、ようやく理解できた。
・『メガバンクはどこまで本気なのか  同じく株主提案に参加した350.orgの横山隆美・日本代表は「パリ協定に盛り込まれた、平均気温の上昇を1.5度以内に抑える目標に整合的であるためには、OECD諸国では2030年までに石炭の使用をゼロにする必要がある。その実現には3メガバンクの役割は大きいが、各社の統合報告書を見ても、どこまで本気なのか懸念を持っている」と指摘する。 むろん、三菱UFJや住商がこれまで何も対応してこなかったわけではない。三菱UFJはG20の金融安定理事会が創設した「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)に沿った情報開示の拡充や、国連環境計画・金融イニシアティブが定めた「責任銀行原則」に署名している。そして、ESGに関する新たな取り組み方針を近く公表するとしている。 住商も「2050年にカーボンニュートラル化を目指す」方針を2020年に策定。5月には気候変動への取り組みに関する中期目標などを公表する。ただ住商の場合、ベトナムやバングラデシュでの石炭火力発電所建設を継続する方針を示しており、「ほかの大手商社と比べて、脱炭素化への取り組みが遅れている」(マーケット・フォースの福澤恵氏)と指摘されている。 ESG投資に詳しい高崎経済大学の水口剛教授は、「株主提案の増加は気候変動の面からNGOや投資家と金融機関、企業との間での対話がより密接になっていく市場の変化の一環だ」と評価する一方、「日本においては、株主提案の方法として定款変更という選択肢しかないのが実情。そうした状況が議論の幅を狭めてしまっている。株主総会以外でも対話の機会を広げていく必要がある」ともいう。 政権交代を機にアメリカがパリ協定に復帰し、中国も2060年のカーボンニュートラルを打ち出した。EUやイギリスは二酸化炭素削減目標の積み増しで世界をリードしている。日本も遅ればせながら、2050年カーボンニュートラルを表明し、国内の金融機関や企業も安閑としていられなくなっている』、「日本においては、株主提案の方法として定款変更という選択肢しかないのが実情。そうした状況が議論の幅を狭めてしまっている。株主総会以外でも対話の機会を広げていく必要がある」、同感である。
タグ:環境問題 東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン モーリシャス 土居 丈朗 (その9)(商船三井はなぜ謝った? 石油流出事故は「SDGs謝罪」の号砲か、菅内閣でついに動き出す「炭素の価格付け」論議 焦点の1つは炭素税 求められる税制グリーン化、三菱UFJと住商が直面する「脱炭素」株主提案 2020年のみずほに続き NGOが定款変更を要求) 「商船三井はなぜ謝った? 石油流出事故は「SDGs謝罪」の号砲か」 この事故については、このブログの昨年10月20日で取上げた。 「国際協力機構(JICA)は3度の国際緊急援助隊の派遣に続いて、10月下旬から調査団を派遣」、「茂木外相がモーリシャスを訪問」、など日本政府も異例の対応をしたようだ。 今回の場合、「船主」が「長鋪汽船」という弱小企業だったこともあり、「定期用船者である商船三井」が乗り出してきたのはさすがだ。「用船者である我々が社会的責任を背負うことは当然であり、前面に立って対応しなければならない」「法的責任だけで整理できるものではない」としているようだ。 「小林教授は、「商船三井の対応は(法的責任の所在より)SDGsを意識しているのだろう」とみる」、「SDGs」がここまで浸透しているとは、驚かされた。 「「ESG」の原点も原油流出事故による海洋汚染だった」、初めて知った。「モーリシャス」の汚染被害が一刻も早く解決することを期待したい。 「菅内閣でついに動き出す「炭素の価格付け」論議 焦点の1つは炭素税、求められる税制グリーン化」 「菅義偉首相」の「カーボンニュートラル」「宣言」は、米国でのトランプから「バイデン」への政権移行を踏まえたのだろう 「温対税の税率はCO2・1トン当たり289円」だが、「温対税以外に石油石炭税や揮発油税などのエネルギー諸税があって、これらの課税を炭素排出量換算すると、CO2・1トン当たり約4000円になると経済産業省は試算」、「エネルギー諸税」の重さには驚かされたが、本当だろうか。 「早期の「税制のグリーン化」実現を」、賛成である。 「三菱UFJと住商が直面する「脱炭素」株主提案 2020年のみずほに続き、NGOが定款変更を要求」 IR担当部署が対応する必要があるのは、「環境NGO」にも広がっているようだ。 「HSBC」や主要米銀が「環境NGO」の「要求を受け入れると表明。株主側は提案を取り下げている」、欧米ではずいぶん影響力を持っているようだ 「環境NGO」が「定款の変更を求めている」理由がこれまでは理解できなかったが、「会社法では、株主が提案権を有するのは議決権を行使できる事項に限られる」ためとの理由で、ようやく理解できた。 「日本においては、株主提案の方法として定款変更という選択肢しかないのが実情。そうした状況が議論の幅を狭めてしまっている。株主総会以外でも対話の機会を広げていく必要がある」、同感である。
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働き方改革(その32)(28歳男性が東京で「ホームレス」に転落したワケ 寮付き派遣、個人事業主、悪質無低の「負の連鎖」、欧米には日本人の知らない2つの世界がある、外資系管理職が「プレーヤー」を辞めない理由 「ジョブ型」雇用で生き残る管理職の条件とは、「テレワーク続ける」24% 利用率低下は何を意味するか) [経済政策]

働き方改革については、4月7日に取上げた。今日は、(その32)(28歳男性が東京で「ホームレス」に転落したワケ 寮付き派遣、個人事業主、悪質無低の「負の連鎖」、欧米には日本人の知らない2つの世界がある、外資系管理職が「プレーヤー」を辞めない理由 「ジョブ型」雇用で生き残る管理職の条件とは、「テレワーク続ける」24% 利用率低下は何を意味するか)である。

先ずは、4月13日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの藤田 和恵氏による「28歳男性が東京で「ホームレス」に転落したワケ 寮付き派遣、個人事業主、悪質無低の「負の連鎖」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/421240
・『現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく』、底辺を知る意味で取上げた。
・『「どうか助けてください」  ホームレス状態になって2カ月、所持金はついに16円になった。携帯は料金未納で止められている。仕事を探して連日歩きっぱなしだったので、スニーカーの底面には10円玉大の穴が開いてしまった。ここ1週間は公園の水道水で飢えをしのいでいる――。 コロナ禍の中、ここまで追い詰められたレイジさん(仮名、28歳)はようやくSOSを発信した。反貧困ネットワークやつくろい東京ファンド、TENOHASIといった市民団体でつくるネットワーク「新型コロナ災害緊急アクション」に助けを求めるメールを出したのだ。昨年11月、フリーWi-Fiが使えるファストフード店から送ったというメールには次のように書かれていた。 「あちこちさ迷い、仕事を探しながら面接などの前の日だけ漫画喫茶等でシャワーだけ借りて、身だしなみを整えてみたいな生活をしていたのですが、住所無し連絡取れる携帯番号無しなのでどこも雇ってもらえず先週とうとう残金も尽きてしまいました。~中略~就職に必要な履歴書や証明写真を買うお金すら無くなってしまいました。どうか助けてください……」(原文ママ) 20代の若者はなぜここまでの窮地に陥ったのか。なぜもっと早くSOSを発しなかったのか。 レイジさんは神奈川出身。高校卒業後は建設機械メーカーの工場で期間工として働き始めた。期間工を3年満期で雇い止めにされると、系列の派遣会社に登録。今度は派遣労働者として同じ工場で働くことになった。 レイジさんは多くを語ろうとしないが、両親、とくに父親とは不仲だった。派遣になったことをきっかけに1人暮らしをしようと、会社が用意した寮へと引っ越したという。 私が解せないのは、期間工のときには約350万円はあったという年収が派遣労働者になったことで約270万円へと下がったことだ。同じ工場で同じ業務をこなしながら、年収ベースで80万円もの大幅ダウンである。レイジさんは「派遣になってボーナスがなくなったんです」と説明する。しかし、キャリアを積み、スキルを身に付けた労働者を、雇用形態を変えることで安く使い倒すなど、果たして適切な働かせ方といえるのか。 レイジさんはその後も雇い止めになるたびにいくつかの工場で働いた。いずれも寮付き派遣だ。この間フォークリフトやクレーン運転士、有機溶剤を扱うための作業主任者など10近い資格を取ったものの、年収はほぼ横ばい。中には、「ボーナスあり」という約束を反故にされたり、残業代の未払いが常態化していたりといった悪質な職場もあったという。 このまま派遣を続けてもいいのだろうか――。そんなことを考えていた矢先、知り合いから居酒屋の店長をやってみないかと声をかけられた。20代半ば過ぎ、2年前のことだ。 「もともと人と関わる仕事がしてみたかった」と言うレイジさん。二つ返事で転身を決めた。店舗はその知り合いの名義で借りた物件で、厨房などの設備は一通り付いていた。別の友人に声をかけ、2人体制で切り盛りすることにしたという。 住まいのないレイジさんは店舗に住み込み、食事は賄い飯で済ませたので、水道光熱費や食費はゼロ。朝8時から深夜2時まで休みなく働いて週休1日と、体力的には厳しかったものの、売り上げは開店早々、月50万~60万円に達した。家賃など諸経費の支払いに加え、冷蔵庫やフライヤーを買い替えたりしたので、レイジさんが毎月手にすることができた「自由に使えるお金」は5万円ほどだったが、経営は順調だったという』、初めの「高校卒業後は建設機械メーカーの工場で期間工として働き始めた」、高卒は企業が奪い合いといわれる割には、条件が悪いところに行ったものだ。高校の就職指導がお粗末だったのだろうか。
・『コロナ禍で事実上の閉店を告げられた  しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によってすべてがご破算となった。店の売り上げは激減。昨年3月、声をかけてくれた知り合いから「店舗の賃貸契約を解約することにした」と事実上の閉店を告げられた。 レイジさんは「初期投資ゼロで始めさせてもらいましたし、不当に利益を抜かれたわけでもない。知り合いはできるだけのことはしてくれたと思います」と理解を示す。ただ睡眠3、4時間という異常な長時間労働や一方的な閉店通告などを考えると、体のいい“名ばかり個人事業主”だった側面は否定できない。 結局、閉店と同時に住まいを失ったレイジさんはホームレスになった。しばらく「日雇い派遣」で食いつないだ後、ネットで「ホームレス」「支援」などと検索したところ、自立支援をうたう民間施設を見つけた。問い合わせたところ、すぐに施設スタッフが駆けつけ、自治体の生活保護の申請窓口に同行してくれた。申請はすんなりと通り、そのまま施設へと連れていかれたという。 ところが、この施設の住環境がとんでもなく劣悪だった。もともとは1部屋だったものをベニヤ板で仕切っただけの3畳ほどの居室。食事も貧弱。エアコンがないので、毎年夏になると何人かは熱中症で倒れるらしい。さらに毎月の生活保護費10万8000円から、居室費、食費と称して8万4000円をぼったくられた。レイジさんは後になって、この施設が悪質な無料低額宿泊所(無低)であることを知った。 今回のコロナ禍では、住まいを失った生活保護申請者が強制的に悪質な無低に入居させられるケースが、あらためて社会問題となっている。レイジさんは自ら無低に連絡を取ったとはいえ、当事者が貧困ビジネスの食い物にされるのを自治体が黙認するという点で、問題の構図に大差はない。 レイジさんはこの間、10万円の特別定額給付金を受け取るために自治体に何回か問い合わせをした。家族とは音信不通であることも併せて伝えたが、そのたびに担当者は「世帯分離をしないと申請書は送れない」「まずは親御さんと連絡を取って」とけんもほろろの対応。結局10万円を受け取ることはできなかったという。 「無低では自立や就労に向けた支援は一切ありませんでした。高齢者や健康状態の悪い人の中には15年以上、入居している人もいました。ケースワーカーは面談に来ないので、こうした無低の実態は知らないのではないでしょうか」』、「ケースワーカーは面談に来ない」、なぜなのだろう。
・『日雇い派遣で食いつなぐ日々に逆戻り  ここは長くいるところじゃない――。無低入居から数カ月、焦ったレイジさんは再び寮付き派遣に飛びついた。自ら生活保護を廃止し、無低を退去。しかしコロナ禍による影響は依然として大きく、約束していた仕事は派遣会社によってあっけなく反故にされた。レイジさんは再びホームレス状態となり、日雇い派遣で食いつなぐ日々に逆戻りしてしまう。 東京に行けば仕事があるのではと、藤沢や戸塚、横浜といった街に着くたびにフリーWi-Fiを使って日雇い派遣の仕事を探しながら東京に向かってひたすら歩いた。パチンコ店の前を通るたび、店内で無料で配っている飴を食べて空腹を紛らわせたという。 「まさか自分がホームレスや生活保護になるとは思っていなかったので、人目がすごく気になりました。昼間、ベンチでうとうとしていたときに衣類が入った鞄も盗まれてしまって……。知ってました?今公園のベンチって、(座る部分に)手すりやでっぱりがあって横たわることができない作りになっているんです。あれってホームレス対策ですよね。そんなことも自分が路上生活になって初めて知りました」 このままではろくに眠ることもできず、飢え死にしてしまう。でも、生活保護を申請したらまた無低に入れられてしまうのではないか――。迷った末、レイジさんはネットで見つけた新型コロナ災害緊急アクションのメールフォームから助けを求めた。冒頭部分で紹介したメールである。 レイジさんは緊急アクションの担当者とともにあらためて生活保護を申請。担当者が同行したことで、今度は無低ではなく、東京都が一時入居施設として用意したビジネスホテルに入ることができた。 家族の機能不全に寮付き派遣、名ばかり個人事業主、日雇い派遣、無低――。レイジさんはおよそすべての社会の理不尽を経験してきたようにもみえる。ただレイジさん自身はそこまで強い憤りは抱いていないようにもみえた。とくに派遣という働かされ方については「高卒という条件を考えると仕方ないのかなと思います。日雇い派遣って違法なんですか?知りませんでした。でも、そのおかげで食いつなぐことができたわけですし……」と話す』、「無料低額宿泊所」では、「生活保護費10万8000円から、居室費、食費と称して8万4000円をぼったくられた」、確かに悪質だ。しかも、そこへの窓口になっているのが、「新型コロナ災害緊急アクション」である可能性がありそうだ。どうして、きちんとしたNPOがそのように悪用されてしまうのか、謎だ。また、「生活保護」窓口でも、見分けられる筈なのに、つるんでいるのだろうか。 
・『「1カ月くらい長期で働きたい」 それよりも、とレイジさんは言う。「ずるずると生活保護のお世話になるのは申し訳ない。とにかく1日も早く働きたいんです。雇用形態はともかく今度は長期で働けるところを探します」。 長期ってどれくらいですか?と私が尋ねると、レイジさんは「1カ月くらい」と答えた。愕然とした。1カ月は長期とは言わないだろう。しかし、派遣労働をしながら資格を取り、名ばかり店長として働きづめに働いてきたレイジさんにこれ以上、何を言えというのか。 細切れ雇用が当たり前だと思い込ませ、安易な雇い止めで路上に放り出し、生活保護を利用すれば悪質無低にぶち込む。そんな劣悪施設を1日も早く出ようと思ったら、寮付き派遣や日雇い派遣でも働くしかない。でも、不安定雇用だからいつ路上生活に戻ることになるかわからない――。20代の若者にそんな繰り返しを強いて、国や行政は本当にこのままでいいと思っているのだろうか。 新型コロナ災害緊急アクションの担当者と会った日、レイジさんは小口の支援金を受け取り、コンビニでおにぎり3つとサンドイッチ2つを買った。数日後あらためて私と会ったレイジさんが教えてくれた。 「ツナのおにぎり1つしか食べられなかったんですよ。おなかはすごくすいているはずなのに、胸のあたりが苦しくて」 何日も固形物を食べていなかったので、体がのみ込み方を忘れてしまっていたようだと、レイジさんは言うのだ。まぎれもない現代日本を生きる若者の現実である』、貧困者を食い物にする貧困ビジネスは徹底的に取り締まるべきだ。

次に、4月13日付け日経ビジネスオンラインが掲載したニッチモ代表取締役で中央大学大学院戦略経営研究科客員教授の海老原 嗣生氏による「欧米には日本人の知らない2つの世界がある」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00271/031900003/
・『日立製作所や富士通など、日本の大手企業が相次いで「ジョブ型」といわれる雇用制度に移行しています。ジョブ型とは、職務内容を明確に定義して人を採用し、仕事の成果で評価し、勤務地やポスト、報酬があらかじめ決まっている雇用形態のこととされます。一方、日本企業はこのジョブ型に対し、新卒一括採用、年功序列、終身雇用で、勤務地やポストは会社が人事権の裁量で決められる雇用形態を取っており、人事の専門家はこれを「メンバーシップ型」と称してきました。 今、日本企業が進めるメンバーシップ型からジョブ型への移行は何をもたらすのでしょうか。そのジョブ型に対する安易な期待に警鐘を鳴らすのが雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏です。同氏は長年展開されてきた「脱・日本型雇用」議論に対し、独自の視点で疑問を投げかけてきました。 本連載8回目では、4月1日に新著『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~』(日経BP)を上梓した海老原氏が、日経BPのHuman Capital Onlineで続けている連載から、特に人気の高かった記事をピックアップしてお届けします。 残業が多く休みが取りにくい日本に比べ、欧米はワークライフバランスに優れ、女性も働きやすい。それというのもジョブ型雇用だから――。まことしやかに伝わるこんな話は大間違い。欧州企業にはジョブ型労働者とエリート層の2つの世界が存在し、働き方は全く異なる。 本論に入る前に、欧米と日本の社会構造の違いを知るために、こんな問題をまず考えていただきます。 Q1.欧州では、高学歴のエリートの卵が、入社早々、一般社員の上司になったりするのですか?』、一般論の誤解を解くとは興味深そうだ。
・『本物のジョブ型社会ではキャリアアップは難しい  連載の初回では、日本型の「無限定な働き方」とは、「易しい仕事から始めて、慣れたらだんだん難しくする」というものであることを説明しました。その結果、知らない間に習熟を重ね、給与も職位も上がっていくことになります。まさに無限階段が作られているわけです。 一方、欧米のジョブ型労働は、ジョブとジョブの間の敷居が高く、企業主導で無限階段を容易には作れません。キャリアアップの方法は、原則として 1、やる気のある人がジョブとジョブの間の敷居をガッツで乗り越える 2、一部のエリートが自分たちのために用意されたテニュアコースを超スピードで駆け上る の2つだけ。その他多くの一般人は、生涯にわたって職務内容も給与もあまり変わりません。 その結果、日本と欧米(とりわけ欧州)では、労働観が大きく異なってしまいます。日本では「誰でも階段を上って当たり前」という考え方が、働く人にも使用者にも常識となり、「給与は上がって当たり前。役職も上がって当たり前」(労働者側)、「入ったときと同じ仕事をしてもらっていては困る。経験相応に難易度は上げる」(使用者側)となるわけです。つまり労使とも、年功カーブを前提としているのですね。 このあたりを、具体的な事例でもう少し詳しく見ていきましょう。 例えば、採用面接に来た若者が、経理事務員として伝票処理や仕訳などの経理実務をこなせるとします。その若者を採用する企業はどんなことを考えるか。日本企業であれば「事務は入り口であり、数年したら決算業務をリードし、その後税務や管理会計も覚え、35歳にもなれば、経営管理業務に携わるように育ってほしい」と考えるでしょう。つまり、「経理事務」はあくまでキャリアの入り口であり、決算→税務→管理会計→経営管理と階段を上り、それに伴ってどんどん昇給し、役職も上がっていくと考えます。 一方欧州では、例外的なケースを除けば、事務で入った人は一生事務をやります。彼らの多くはこちらでいうところの高専や短大にあたるIUT(技術短期大学)やSTS(上級技手養成短期高等教育課程)、もしくは大学の職業課程(普通学科とは異なる)を卒業しています。経営管理に関しては、グランゼコールや大学院などで、それを学んだ人が就き、入社したときから「管理職の卵」としての扱いを受けます』、「欧州」でのコース分けは「入社したときから」明確のようだ。
・『欧米エリートこそスーパージェネラリスト?  このように、学歴と専攻に従って、公的な職業資格が与えられ、その資格で定められた仕事をする。つまり、自分の持っている資格に従って「一生事務のまま」「決算担当のまま」、上にも横にも閉じられた「箱」の中でキャリアを全うする。そのさまを、彼らは「籠の鳥」「箱の中のネズミ」と自嘲気味に語ったりします。年収も硬直的で、20代のころ300万円くらいだったものが、50歳になっても350万円くらいになるのがほとんどです。 同じ仕事を長くしていれば熟練度は上がり、同時に倦怠感も高まるという2つの理由で労働時間は短くなります。だから欧州(とりわけ大陸系国)の労働時間は短く、雇用者の年間労働時間が1500~1600時間程度に抑えられる国が多いのです。日本のフルタイマー雇用者の年間労働時間が2000時間程度であるのと比べると、400~500時間も短くなっています。ドイツやフランスでは残業はほとんどなく(もしくは代休を確実に取得させられ)、有給も完全消化します。この欧州型の「300万~400万円」で働く人こそ、本当の意味でジョブ型労働者といえるでしょう。 それを超えたエリート層(仏でいう「カードル」)たちは、昇進していくためには、「マルチジョブ/マルチファンクション/マルチリージョン」の経験が必要といわれ、重要な職務を数多く経験していきます。異動の際には企業から異動指令が出されます。もちろん日本のように強制ではなく、本人に拒否権はありますが、エリートの彼らは、多くの場合指令に従います。日本型の無限定雇用とそんなに違いはないと言えるでしょう。 重要な職務の階段を上る例として「マルチリージョン」を挙げるとすると、最初はフランス本国、続いて欧州内、さらに米国、その後は言葉も通じ、自国の文化も比較的浸透している旧植民地国、最後にアジア、などといった形で、(この通りでなくとも)難易度を徐々に上げていく仕組みになっているところも日本と似ています。 一方、年収300万~400万円のジョブ型労働者は、例えば今の仕事が機械化などで不要となった場合、職業訓練所に通い、新たな職業資格を取ることになります(その間は有給休暇となる)。フランスの公的職業訓練校の取得免許レベルを見ると、99%が「高卒・短大卒相応」であり、1つの「籠」から出たとしても結局、年収300~400万円の別の籠に移るだけの生活を、一生している人が多くなっています』、「欧米エリートこそスーパージェネラリスト」なのは確かだ。「欧州」の「ジョブ型労働者」は「一生」変わりばえのしない「仕事」をさせられるようだ。
・『ジョブワーカーたちが残業しない理由は「おなかが空くから」  こうしたジョブ型「籠の鳥」労働者の生活とはいかなるものでしょうか? 製造や販売、単純事務、上級ホワイトカラーとの端境領域(中間的職務)などを担当している彼らには、全く残業はないに等しく、17時になるとさっと仕事を終えます。銀行やお役所などでお客さんが列を成していても、「はい、ここまで」と窓口を一方的に閉じるのが当たり前。日本じゃありえませんよね。私が取材を申し込むときも、役所や学校などの公的機関であっても、「金曜はダメ」と平気で断られます。週末はもう働く気分ではないのでしょう。 そんな彼らに、私は取材で以下の質問をしたことがあります。 「夜遅くまでの残業は嫌だろうけど、明るいうちに18時くらいまで1時間超過勤務して、残業手当をもらって一杯やりに行く生活の方が良くはないか?」 と。 彼らの反応はどんなものか、皆さん想像できますか? 多くの日本人は欧州に憧れを抱いています。だから多分、「家に帰ると趣味や教養の時間になる」とか、「地域活動や社会奉仕など別のコミュニティーでの時間が始まる」などと、エクセレントな想像をするのではないですか?彼らの答えは全く違います。 「おなかが空くから家に帰る」 というものなのです。「おなかが空いたら、牛丼でもカレーでも食べて仕事をすればいいじゃないいか」と問い返すと、返答はこうです。 「あのね、朝飯でも10ユーロ(1200円)もかかるんだよ。夕飯なんて外で食べるわけないじゃない。外食ディナーなんて、友人が遠くから来たとか、誕生日とかそんなハレの日しかしないよ」 そう、バカ高い物価と低賃金のはざまで、そんな生活をしているのが実情なのです。それでも残業が全くなければ、夫婦共に正社員を続けることが可能です。そうすれば世帯年収は700万円くらいにはなる。欧州の国の多くは大学も無料に近いから、子育てもできる。だから何とか生活は成り立ちます。 さて、では彼らは長いサマーバケーションなどはどう過ごすでしょうか?フランソワーズ・サガンの小説などを読めば、ニースやトゥーロンなど南仏の避暑地でバカンスしているパリジャンの姿が思い浮かびませんか? 実際は、パリ郊外の公園にブルーシートを張ってキャンピングをしていたりします。この「ブルーシートを張ったキャンプ用地」の提供なども地元のお役所がやっています。 こんな状況をフランス研究の専門家、例えば夏目達也先生(名古屋大学)、五十畑浩平先生(名城大学)、永野仁美先生(上智大学)のような方にお話しすると皆、うなずいた後に「想像以上につましい生活をしている」とおっしゃいます。 スウェーデン研究者の西村純氏(労働政策研究・研修機構)はこんな感じで答えました。 「確かにつましいですね。でも、バーにはそれなりに行っているようですよ。ただし、ハッピーアワ―が終わると潮が引くようにスーッと人影がまばらになりますが(笑)」』、「欧州」の「ジョブ型労働者」は、「バカ高い物価と低賃金」であっても、「つましい生活」と「大学も無料に近い」ので何とかなるようだ。
・『「2つの世界」をごっちゃにしている日本人  結局、欧州は完全にエリートと一般ジョブワーカーの2つの世界に分かれており、米国はそこまできれいに分かれてはいませんが、それに類する社会となっているというのが、私の概観です。 エリートと一般ジョブワーカーとの間には大きな格差があるから、欧州の場合、社会全体が格差を是正するような再分配の制度をきっちり敷いている。でもそれによって、この階級分化がより強固に維持されている感があります。米国は、欧州のような職業資格での分断が起きないので、階級分化は「公的なもの」とは言えません。だからこそなかなか再分配政策が進まないのではないか、などと考えています。 この2つの世界の存在が、日本人にはあまり理解できないところで、人事や雇用、キャリアを語る上で大きな誤解を生んでいます。そこで、問題です。 Q2.欧州ではワークライフバランス(WLB)が充実し、休み放題と聞きます。グローバルエリートたちも短時間労働なのですか? 例えば「フランスなどでは午睡の時間があって、家に帰ってランチを食べた後、寝るような優雅な生活をしている」という話がまことしやかにささやかれます。 一方で「欧米のエリートは若くから精力的に働く。日本人の大卒若手のような雑巾掛けはなく、海外赴任やハードプロジェクトなどをバリバリこなしている」という話も、同じように日本では語られます。 どちらも間違っていませんが、指している対象が異なりますよね。そういうことを知らない日本人、しかも国内には2つに分かれた世界がない日本人は、誤解をしてしまうのです。あたかも欧米では、グローバルエリートまでもが午睡をしていると…(ちなみに「家に帰る」理由も「外で昼食を取ると高いから」です)。 ここまでいかなくとも、「2つの世界をごっちゃにした」似たような誤解は多々起こります。「欧米ではエリートでもWLB充実」とか「欧米なら育休を取って休んでも昇進が遅れることがない」なども、2つの世界の錯綜(さくそう)です。 向こうのエリートは夜討ち朝駆けの生活をしている。それは欧米企業の日本法人で「出世コース」にいる人を見れば分かるでしょう(ただし無駄な仕事はしていませんが)。フランスなどではエリート層にあたるカードルでも、男性がフルに育休を採るケースがあると言います。が、彼らは「家庭を選んだ人」と呼ばれ、昇進トラックからは外れていく。 女性実業家で有名なマリッサ・メイヤーはヤフーのCEO時代にこういう趣旨の発言をしています。出世したいと思うなら、育休は2カ月以上取るな。 つまり、WLB充実な生き方とはすなわち「籠の鳥労働者」の世界の話なのです。 この分断は社会問題にもなっていますね。EUでは多くの国で、ネオナチのような右翼・国粋主義的な政党が支持率を伸ばし、40パーセントもの支持を集めている国もあります。こうした問題に対して、世の識者は「移民や域内移動者に仕事を取られた人の不満だ」と解説します。 ですが移民と競合している人たちはどの国でも1割程度しかいません。そうではなくて「籠の鳥」労働者が、この狭い世界に閉じ込められていることで不満がたまった結果が、極右政党の伸長の陰にあると私は読んでいます。 人事や雇用に携わる人はこのことを絶対忘れずに。「欧米型を取り入れる」といったとき、あなたは、2つの世界のどちらの話をしているのか、しっかり考え、それをごっちゃにしないこと。そして、欧米型はつまるところ、2つの世界を生み出してしまうこと。これらを心していただきたいものです』、「欧米型はつまるところ、2つの世界を生み出してしまうこと」、既に非正規労働者と正規労働者の格差が大きくなっている上に、正規労働者も2つに分かれるのだろうか。

第三に、4月19日付け東洋経済オンラインが掲載した人材活性ビジネスコーチの櫻田 毅氏による「外資系管理職が「プレーヤー」を辞めない理由 「ジョブ型」雇用で生き残る管理職の条件とは」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/421815
・『日本の主要企業が続々と「ジョブ型」雇用への移行を打ち出している。求められる人材はどう変わるのか。とりわけ管理職に必要な資質・能力はどう変わるのか。『管理職3年目の教科書』の著者・櫻田毅氏が、「ジョブ型」雇用でも生き残る管理職の条件について解説する』、興味深そうだ。
・『世界標準の「ジョブ型」雇用  日本企業の雇用システムが、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へと移行する兆しがあります。全体から見るとまだ一部ですが、富士通、日立製作所、KDDI、三菱ケミカルなどがその方針を打ち出しています。 背景には、第4次産業革命と呼ばれる技術革新と社会変化において、専門性の高い人材の確保なしには生き残ることはできないという経営者の危機感があります。 これまでの日本企業は新卒一括採用で事後的に配属を決め、その後も異動やジョブ・ローテーションを通じた幅広い経験によって、包括的な視野と社内人脈を築いていく人事政策、すなわち人に仕事を当てはめるメンバーシップ型雇用を採用してきました。 ただしこれは、終身雇用と年功序列とともに、高度成長期における規模拡大の事業戦略に対応した、人材を丸抱えで確保するための日本特有のシステムです。 欧米をはじめとする日本以外の国では、仕事に人を当てはめるジョブ型雇用が一般的です。職種と役職ごとにジョブ・ディスクリプション(職務記述書)で仕事の内容を定義して、その要件に適した人材を新卒、中途の区別なく採用します。採用後も、同一職種内の昇格はあっても、原則として本人の同意なしに他の職種へ異動することはありません。 そういう意味で、一部の日本企業のジョブ型雇用への移行は、環境変化に適応できなくなってきた古い時代の日本特有のシステムが、世界標準へと修正されていると考えることができます。前出の富士通や日立製作所などのグローバル企業の経営者も、「今回の移行は世界標準に合わせるためでもある」と明確に述べています。 さらに、専門性の高い人材を確保するために、中途採用者の増加や能力に応じた報酬体系の大胆な見直しも行われています。NECは新入社員でも高い専門性があれば1000万円の年俸を支払う制度を、富士通は高度なデジタル人材に対して最高で4000万円を支払う制度を導入しています。 いま日本企業に起きているこのような変化をひと言で表すと「専門能力を基準とした人材価値の再評価」です。ジョブ型雇用はその象徴的な例であり、これからは、スタッフか管理職かにかかわらず、全社員が特定分野の高い専門性を有しているスペシャリストであることが求められているのです。) そこで問題となってくるのが、チーム・マネジメントという役割を担っている管理職のあり方です。優秀なプレーヤーであっても管理職に登用されたことで事務的な仕事に時間をとられ、スペシャリストとしての能力が希薄化していく人や、人事ローテーションで不慣れな部署の管理職になったのを機に、専門的なことは部下に任せて、自分は組織マネジメントや他部門との調整、担当役員とのコミュニケーションなどで役割を果たそうと考える人もいます。いわゆるゼネラリスト・マネジャーです。 しかし、最近、専門的なことがわからない上司とどう付き合えばよいのか、という社員の悩みを耳にする機会が増えてきました。ジョブ型かメンバーシップ型に関係なく、すでに現場はゼネラリスト・マネジャーに対する違和感を訴え始めているのです』、ここで「「ジョブ型」雇用」としているのは、第二の記事での「ジョブ型」ではなく、エリートを指しており、定義が違っているのは要注意だ。
・『生き残るのはスペシャリスト・マネジャー  専門能力を基準に人材価値が再評価される時代に求められる管理職は、高い専門性を有して技術的にもビジネス的にもチームを牽引できるスペシャリスト・マネジャーです。 私が勤めていたアメリカ企業の社員たちは、スタッフのときはもちろんのこと、たとえ管理職になっても決してプレーヤーの座を手放そうとはしません。私は役員の1人として経営に携わっていましたが、そのときでも1人のコンサルタントとしていくつかの顧客企業を担当していました。 調査担当の役員も、チームの誰よりも高い調査能力を発揮して質の高いレポートを出していましたし、法務担当役員も、社内で最も高い専門性を有する法律家として自ら契約交渉の場に臨んでいました。 もちろんその理由は、人材価値の源泉である専門能力を維持・向上させるためですが、それに加えて、そのほうがマネジャーとしての役割を、よりしっかりと果たすことができるということもあります。 すなわち、高い能力を有する自分自身がプレーヤーとして参加することがより大きなチームの成果につながり、プレーヤーとしての自分の姿を間近に見せることがメンバーの育成になると考えているのです。さらに、そもそも実務に精通していない人に、マネジャーとしての重要な判断などできるわけがないとも考えています。 彼らはマネジメントと実務を高い質で両立させるために、徹底的に自分自身の生産性を高める努力をしています。大原則は迅速な意思決定と迅速な行動でPDCAを高速回転させることなのですが、私がアメリカ系企業で実際に経験したことを一例として紹介します。 もし、社内で何か新しいアイデアを形にしようと思ったとき、発案者はとりあえず「すぐに」メモを1枚作成して「すぐに」関係者と議論します。その場で内容の妥当性を確認して必要な修正を施して、「すぐに」行動に移すという仕事のスタイルです。 ポイントは、十分な情報がない中で、この最初の1枚をどれだけ早く出せるかです。「何のために、いつまでに、何をやって、その結果何が変わり、ビジネスにどう影響するのか」。これを、経営戦略や業務方針と整合的な内容で箇条書きにします。 不十分な情報やアイデアでも方向性さえ間違っていなければ、ファーストアウトプットを出すことで、必要な情報やアイデアが磁石のように集まってきます。その結果、1枚のメモが短期間で洗練されたアクションプランに仕上がっていくのです。 優秀だと言われている人たちは、アイデアの提案、問題解決策の策定、新規資料の作成、問い合わせへの回答などのあらゆる場面で、この最初の1枚を圧倒的なスピードで出すことに長けていました。 私の実感でも日本企業の数倍のスピード感があるアメリカ企業には、このような「やるからわかる」という企業文化があります。これに対して「わかってからやる」というのが日本企業の文化です。この違いが両者の生産性の差の一因となっているように思います。 仕事の価値は「スピード」と「質」のかけ算で決まります。荒削りでも構わないからファーストアウトプットを迅速に出し、そこに集まってくる情報を取り込みながら修正を重ねて質を高めていく──このほうが、圧倒的に「スピード×質」を最大化できるのです』、「スペシャリスト・マネジャー」としているのは、より一般的にはプレイング・マネジャーと同義なのではなかろうか。
・『専門性とマネジメントは両立させるべきもの  プレーヤーとしての自分の専門性を高めていくこととチーム・マネジメントは、どちらを優先させるかといったトレードオフの関係ではなく、マネジャーとして成果を出すためにも、ビジネスパーソンとしての自分の価値を高めるためにも、お互いにいい影響を及ぼしながら両立させるべきものです。 アメリカの企業のマネジャーが、どれだけ忙しくても部下との定期的な1on1(ワン・オン・ワン)ミーティングの時間をとっているのも、そのようにして部下の仕事と成長をサポートするマネジメントが、結果的に自分とチームの「スピード×質」を最大化すると信じているからです。 ジョブ型かメンバーシップ型に関係なく、専門能力によって人材価値が再評価されていく流れにおいては、専門性とマネジメントを両立させるスペシャリスト・マネジャーの時代です。ゼネラリストとスペシャリストは役割が違うので両方必要だという日本企業の考え方は、社員を丸抱えしてきた古い時代の会社都合の発想であり、どこでも通用する市場価値の高い人材を育成するものではありません。 日本企業の管理職の皆さんにとってはチャレンジかもしれませんが、いいものを迅速に取り入れて自分たちのものにする日本人の力は、世界的に見ても非凡なものがあります。試行錯誤しながらもその呼吸をつかみさえすれば、単なるプレーヤーとしてではなく、チームとしてより大きな成果を出す力のある人材として、社内に限らず市場での価値も一気に高まっていくことでしょう』、「アメリカの企業のマネジャーが、どれだけ忙しくても部下との定期的な1on1(ワン・オン・ワン)ミーティングの時間をとっている」、のは、忙しい時には部下とのコミュニケーションを疎かにする日本企業も大いに学ぶべきだろう。

第四に、4月26日付け日経ビジネスオンライン「「テレワーク続ける」24%、利用率低下は何を意味するか」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00281/042300009/
・『緊急事態宣言が2020年4月に発令され、多くの企業が在宅勤務を主としたテレワークで対応した。しかし、都市と地方では温度差があるようだ。 オフィス用具大手のアスクルの調査によると、東京都や愛知県など大都市を擁する地域のテレワーク利用率が高い傾向が分かる。一方、東北や北陸、中国・四国などの地方は「テレワーク制度がない」と回答した企業が8割近い。 利用頻度にも変化がみられる。20年5月と21年4月の調査結果を比較すると、昨年は週5日のテレワーク利用が最も多く25.4%だったが、今年は12.6%まで急減している。代わりに週2日や週1日の利用が増えており、利用率の低下が顕著に表れた。 コロナ禍は依然として収束が見えない状況ではあるが、1年前と比べて出社する従業員が増えている状況がうかがえる。実際、企業もテレワークを制度として導入するか迷っているようだ』、「20年5月と21年4月の調査結果を比較すると、昨年は週5日のテレワーク利用が最も多く25.4%だったが、今年は12.6%まで急減している。代わりに週2日や週1日の利用が増えており、利用率の低下が顕著に表れた」、通勤者数も1年前より増えているようだ。
・『テレワーク制度の実施期間については「恒久的な制度になる予定」と回答した企業が24%に達した。20年5月時点では10.9%だったから、テレワーク推進に前向きな企業が増えているのが分かる。 半面、「まだどちらになるか分からない」との回答は昨年の35.4%から今年は42.1%と6.7ポイント増加しており、制度の恒久化についてはまだ時間がかかるものとみられる。 日本の企業がテレワークに慎重な姿勢を見せる理由は、在宅勤務の長期化によってオフィスで働くよりも生産性が低下すると考えているからだ。 パーソル総合研究所上席主任研究員の小林祐児氏は「テレワークの生産性に関する国際的な調査では欧米に比べて日本は消極的な回答が多い。しかし、これは企業が在宅勤務にお金を懸けていないから。コロナ後に在宅勤務用のIT機器などに支出した金額は主要国で日本が最低だ」と指摘する』、「日本の企業がテレワークに慎重な姿勢を見せる理由は、在宅勤務の長期化によってオフィスで働くよりも生産性が低下すると考えている」、「これは企業が在宅勤務にお金を懸けていないから。コロナ後に在宅勤務用のIT機器などに支出した金額は主要国で日本が最低だ」、その通りなのだろう。
・『実際、テレワーク実施での課題を聞くと「作業環境の整備」や「ハードウエア機器のスペック」を挙げる企業が多い。結果、オフィスと同様かそれ以上の生産性を在宅勤務で担保することが難しいようだ。だが、子育て世代にあたる30~40代の従業員にはコロナ後にもテレワークを希望する層が多い。 パーソル総研の調査ではテレワーク実施中の正社員の78.6%が継続を希望している。 小林氏は「コロナ後は恐らくなし崩し的に出社が増えるが、テレワークは労働者の“権利”になってくるだろう。人材の獲得競争に勝つためには、より広い地域から候補者を募れる居住地の境界を越えるテレワークの導入が欠かせない」と分析する』、「子育て世代にあたる30~40代の従業員にはコロナ後にもテレワークを希望する層が多い。 パーソル総研の調査ではテレワーク実施中の正社員の78.6%が継続を希望している」、子供に仕事を邪魔されたりして、こうこりごりとの回答が多いのではと思ったが、全く逆の結果には驚かされた。何故なのだろう。
タグ:東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン 海老原 嗣生 働き方改革 藤田 和恵 (その32)(28歳男性が東京で「ホームレス」に転落したワケ 寮付き派遣、個人事業主、悪質無低の「負の連鎖」、欧米には日本人の知らない2つの世界がある、外資系管理職が「プレーヤー」を辞めない理由 「ジョブ型」雇用で生き残る管理職の条件とは、「テレワーク続ける」24% 利用率低下は何を意味するか) 「28歳男性が東京で「ホームレス」に転落したワケ 寮付き派遣、個人事業主、悪質無低の「負の連鎖」」 初めの「高校卒業後は建設機械メーカーの工場で期間工として働き始めた」、高卒は企業が奪い合いといわれる割には、条件が悪いところに行ったものだ。高校の就職指導がお粗末だったのだろうか 「ケースワーカーは面談に来ない」、なぜなのだろう。 「無料低額宿泊所」では、「生活保護費10万8000円から、居室費、食費と称して8万4000円をぼったくられた」、確かに悪質だ しかも、そこへの窓口になっているのが、「新型コロナ災害緊急アクション」である可能性がありそうだ。どうして、きちんとしたNPOがそのように悪用されてしまうのか、謎だ。また、「生活保護」窓口でも、見分けられる筈なのに、つるんでいるのだろうか 貧困者を食い物にする貧困ビジネスは徹底的に取り締まるべきだ。 「欧米には日本人の知らない2つの世界がある」 『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~』(日経BP) 一般論の誤解を解くとは興味深そうだ。 「欧州」でのコース分けは「入社したときから」明確のようだ。 「欧米エリートこそスーパージェネラリスト」なのは確かだ。「欧州」の「ジョブ型労働者」は「一生」変わりばえのしない「仕事」をさせられるようだ 「欧州」の「ジョブ型労働者」は、「バカ高い物価と低賃金」であっても、「つましい生活」と「大学も無料に近い」ので何とかなるようだ。 「欧米型はつまるところ、2つの世界を生み出してしまうこと」、既に非正規労働者と正規労働者の格差が大きくなっている上に、正規労働者も2つに分かれるのだろうか 櫻田 毅 「外資系管理職が「プレーヤー」を辞めない理由 「ジョブ型」雇用で生き残る管理職の条件とは」 ここで「「ジョブ型」雇用」としているのは、第二の記事での「ジョブ型」ではなく、エリートを指しており、定義が違っているのは要注意だ。 「スペシャリスト・マネジャー」としているのは、より一般的にはプレイング・マネジャーと同義なのではなかろうか 「アメリカの企業のマネジャーが、どれだけ忙しくても部下との定期的な1on1(ワン・オン・ワン)ミーティングの時間をとっている」、のは、忙しい時には部下とのコミュニケーションを疎かにする日本企業も大いに学ぶべきだろう。 「「テレワーク続ける」24%、利用率低下は何を意味するか」 「20年5月と21年4月の調査結果を比較すると、昨年は週5日のテレワーク利用が最も多く25.4%だったが、今年は12.6%まで急減している。代わりに週2日や週1日の利用が増えており、利用率の低下が顕著に表れた」、通勤者数も1年前より増えているようだ 「日本の企業がテレワークに慎重な姿勢を見せる理由は、在宅勤務の長期化によってオフィスで働くよりも生産性が低下すると考えている」、「これは企業が在宅勤務にお金を懸けていないから。コロナ後に在宅勤務用のIT機器などに支出した金額は主要国で日本が最低だ」、その通りなのだろう 「子育て世代にあたる30~40代の従業員にはコロナ後にもテレワークを希望する層が多い。 パーソル総研の調査ではテレワーク実施中の正社員の78.6%が継続を希望している」、子供に仕事を邪魔されたりして、こうこりごりとの回答が多いのではと思ったが、全く逆の結果には驚かされた。何故なのだろう
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電子政府(その3)(ファックスのほうがよかった? 新宿区・吉住区長が明かすコロナ情報共有システム「ハーシス」の問題点、新型コロナの新システム「ハーシス」はなぜ開発に“失敗”したのか、厚生労働省の「デジタル化」はなぜ駄目なのか? その言葉を失う失態体質 数の大小も分からないのか!) [経済政策]

電子政府については、昨年10月23日に取上げた。今日は、(その3)(ファックスのほうがよかった? 新宿区・吉住区長が明かすコロナ情報共有システム「ハーシス」の問題点、新型コロナの新システム「ハーシス」はなぜ開発に“失敗”したのか、厚生労働省の「デジタル化」はなぜ駄目なのか? その言葉を失う失態体質 数の大小も分からないのか!)である。

先ずは、昨年11月16日付け文春オンライン「ファックスのほうがよかった? 新宿区・吉住区長が明かすコロナ情報共有システム「ハーシス」の問題点」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/41507
・『新型コロナの情報を国で一元管理しようと厚生労働省が5月から運用を始めた「HER-SYS(ハーシス)」。各医療機関が感染症法で提出を義務付けられている「発生届」をオンラインで入力し、保健所や自治体、国が即座に共有できるという鳴り物入りのシステムだ。だが利用している医療機関は約4割に過ぎない。「現段階では、医療機関や保健所にとって使い勝手の悪い部分もあります」そう明かすのは新宿区の吉住健一区長(48)だ。 新宿区は日本一の歓楽街・歌舞伎町を抱え、都内で最も感染者数の多い自治体。6月には小池百合子東京都知事から「夜の街」の代表例として名をあげられたことも加わり、今も風評被害に悩まされている。 10月の小池知事との意見交換会で、吉住区長は「感染者増は検査を誠実に行ったから。地元に配慮した情報発信を」とチクリ。そんな“モノ言う区長”がハーシスを懸念する理由は何か。 「入力項目が多く、氏名、症状、基礎疾患の有無、感染経路など100項目程度にも及びます。厚労省は必要最低限の入力でいいと言っていますが、パソコン画面をどんどんスクロールしないといけない。また、プリントアウトしようにも、何枚にも渡ってしまう。患者の対応等で混乱を極める状況の中で、今まで慣れてきたやり方から急に変更するのは負担が大きいと、現場からは聞いています」』、「利用している医療機関は約4割」、というのは昨年9月28日の日経新聞記事だ。「「入力項目が多く、氏名、症状、基礎疾患の有無、感染経路など100項目程度にも及びます」、とは的を絞らず、あれもこれも入力させようとするダメなシステムの典型だ。
・『むしろファックスの方がスピーディー  これまで医療機関は、A4・1枚程度の「発生届」を手書きで記入し、保健所にファックスで報告し、保健所が厚労省などにつながるシステムに入力していた。ハーシスにより脱アナログを目指したが、医療機関にすればむしろファックスの方が、手間がかからずスピーディーだったのだ。 感染者や濃厚接触者自身がスマホを使って、日々の健康状態を入力、医療機関などと共有できるのもハーシスのメリットのはずだが、 「医療機関が閲覧する際も、やはり項目が多く、知りたい情報がわかりにくい。また、患者さんは割り振られた『スマホID』を使ってログインして入力します。セキュリティがしっかりしている分、入力に誤りがあった場合、家族でもIDやパスワードを知らなければ修正できません」(同前) 報告を受ける側の保健所も、あまりメリットを享受できていないようだ。 「結局、病院からの連絡をもとに保健所側がハーシスに入力するケースもあるようです。これまでの運用との乖離があるため、システムの改善も必要だと感じています」(同前) デジタル化の掛け声勇ましい菅政権だが、こうした現場の声は届いているだろうか』、「むしろファックスの方がスピーディー」、とは不名誉なことだ。「医療機関が閲覧する際も、やはり項目が多く、知りたい情報がわかりにくい」、「報告を受ける側の保健所も、あまりメリットを享受できていないようだ」、システム設計の基本が出来てなかったようだ。

次に、2月22日付けWedge「新型コロナの新システム「ハーシス」はなぜ開発に“失敗”したのか」を紹介しよう。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/22205
・『「感染症対策実務も踏まえ、新たな感染症が発生した時に使う新システムはほぼ完成していた。準備をしておいてという連絡も厚生労働省から関係者に来ていた。しかし、結局それは〝お蔵入り〟となり、急に『HER-SYS』(ハーシス)が開発・導入された」(国立病院機構三重病院の谷口清州臨床研究部長) 「ハーシス」とは、新型コロナウイルス患者・疑似症患者の情報を入力するシステムだ。新型コロナは感染症法上の指定感染症に指定されており、基本的にはハーシスを通じて医師が管轄の保健所に「新型コロナウイルス感染症発生届(発生届)」を提出する。 ハーシスが急ピッチで導入されたのは2020年4月、ある医師が「手書き」で発生届を書いていることをツイートし、それを河野太郎防衛大臣(当時)が「拾いあげ」たことが契機だった。1回目の緊急事態宣言の最中に開発が進められ、5月には一部自治体で導入された。 厚労省HPには「保健所等の業務負担軽減および情報共有・把握の迅速化を図るため」とあるが、複数の保健所から「多くの場合、患者の情報は医師の代行で入力することが多く、そのための人員を配置しているほど」「他の保健所が入力してくれた情報のうち、どの患者に早く対応しなければいけないのかが、時系列に並べられているだけで分かりにくい」など、使い勝手の悪さばかりを示す声が聞こえる』、「ある医師が「手書き」で発生届を書いていることをツイートし、それを河野太郎防衛大臣(当時)が「拾いあげ」たことが契機だった」、事情を詳しく知らない「防衛大臣」が乗り出したのが、今回の混乱のきっかけとは、ダメなシステム開発の典型例だ。「ほぼ完成していた」「新システム」は使われないままになったようだが、無駄の典型だ。
・『なぜこうしたシステムが開発されたのか。20年12月15日付の情報処理学会の学会誌に、ある保健所職員がその理由をこう寄稿している。 「開発チームが誰一人として、発生届が出されるのは医療機関の管轄保健所という定義を知らなかった」 つまり、現場がどう業務を行っているのかを理解しないまま開発した結果、感染者等の年齢や検査記録、発症日といった、国が感染症対策に必要な情報に加えて、患者の健康観察情報や、行動歴など、膨大な情報の入力を求めるシステムになってしまった。 谷口臨床研究部長は「濃厚接触者の情報などは中央で一元的に集める必要はなかった。現状では入力必須項目は発生届と同じ項目に絞られたが、いまだに、入力したデータがどのように用いられたのか、のフィードバックすらない」と憤る。なにより「こうした失敗は過去にもあったにもかかわらずその学びが生かされなかった」という。 過去の失敗とは「疑い症例調査支援システム」のことを指す。同システムは、ハーシスと同じように、患者を疑似症例として登録し、検査して確定例になると濃厚接触者を紐づけ、さらにその検査を行い、と情報入力を求めるものだった。こちらも09年の新型インフルエンザが発生した際、入力の手間がかかり、2カ月ほどで中止となった』、「「開発チームが誰一人として、発生届が出されるのは医療機関の管轄保健所という定義を知らなかった」 つまり、現場がどう業務を行っているのかを理解しないまま開発した結果、感染者等の年齢や検査記録、発症日といった、国が感染症対策に必要な情報に加えて、患者の健康観察情報や、行動歴など、膨大な情報の入力を求めるシステムになってしまった」、「「こうした失敗は過去にもあった(「疑い症例調査支援システム」)にもかかわらずその学びが生かされなかった」、いやになるほどお粗末の極みだ。
・『ただIT化しても機能しない  こうした経緯を踏まえて開発していたのが冒頭の〝お蔵入り〟したシステムだ。厚労省新型コロナウイルス感染症対策推進本部の佐藤康弘政策企画官は「使用の検討をしたのは事実だが、全国一律での導入を見据えてハーシスを使うことになった」と説明する。 しかし、事情に詳しい関係者は「現場の職員からすると手書きやFAXの方が素早く情報共有ができるなど使い勝手が良い面もあったのに、それが前時代的な発想として見られ政治家もそれに飛びついてしまった。本当のリーダーなら現場の声を正しく拾いあげて『ただIT化しても機能しない』と国民に毅然と説明してほしかった」と嘆く。 今回の「失敗」を踏まえ、どのようなシステムを開発すべきか。谷口臨床研究部長は「現場において地域の感染症対策に役立つシステムをまず作り、その情報の中から、中央に必要なものを報告できるようにするなど、あくまでボトムアップでシステムを作る発想が大切だ」と指摘する。 IT化=効率化・生産性向上に当てはまらないこともあるのだ』、「ボトムアップでシステムを作る発想が大切だ」、とはいっても、各地方自治体ごとに独自のシステム開発をするというこれまでのやり方も無駄だ。どこか、代表的自治体にプロトタイプを作らせ、それを全国的に展開するのも一案だろう。

第三に、4月18日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「厚生労働省の「デジタル化」はなぜ駄目なのか? その言葉を失う失態体質 数の大小も分からないのか!」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/82275?imp=0
・『コロナの感染情報収集に、まだファックスが使われているようだ。接触確認アプリCOCOAは、委託を見直した結果、委託先企業数が増えてしまった。マイナンバーカード利用拡大の重要な1つである健康保険証への活用は、開始直前の土壇場になって延期になってしまった。 菅政策の最重要課題である「デジタル化」について、なぜもこうも不具合が続くのか?』、興味深そうだ。
・『まだファクス!!  「データドリブン」ということが言われる。新型コロナ対策でも、データこそ重要だ。適切な対策のためには、迅速なデータ収集が必要。そのためには、情報のデジタル化は不可欠だ。 ところが、日本では、2020年 5月末までは、コロナ感染情報の収集にファクスが使われていた 感染者を確認した医療機関が、手書きの「発生届」作成する。それをファクスで管轄の保健所に送信する。保健所が記入漏れなどを確認し、個人情報を黒塗りにするなどして都道府県にファクスで転送する。 感染者が増えてくると、ファクスが混雑してつながらなかったり、ファクスが目詰まりするなどのトラブルが続発した。入力が追いつかず、積み残しが発生した。問い合わせで、保健所の電話が鳴りやまないといった事態になってしまった。 そこで、5月になって、新システムHER-SYS(ハーシス)が稼働した、タブレットなどで必要な情報を入力し、直ちに関係機関で情報を共有できるとされた。 だが、同年7月3日時点で、保健所を設置する155自治体のうち、43自治体(28%)がHER-SYSを利用していなかった。 東京都では、8月30日になっても、1200の医療機関のうち、HER-SYSに入力できる利用登録を済ませたのは、都立病院など7カ所しかなかった。 「HER-SYSの利用が遅れている」というこのニュースを聞いた時、原因は、HER-SYSに対応できない自治体側にあると私は思った。 しかし、責任はHER-SYSの側にあったようだ。入力すべき項目が1人あたり120もあるなど、使い勝手の悪い欠陥システムだから、自治体がそっぽを向いたというのだ。 なぜ120項目も入力しなければならないのか? スピードが要求される時は、項目が多ければよいというわけでない。 ところで、こうした不都合が報道されたのは、2020年の夏頃だった。この経緯は、本欄にも書いた。それから大分時間が経ち、状況は改善されたと思っていた。 ところが、2021年の4月に、「感染者情報 なお手入力」との報道があった(「コロナ、統治の弱点露呈 政治主導・デジタル・国と地方」日本経済新聞、2021年4月7日)。 大阪では、感染者の届け出の3分の1は、いまだに保健所でHER-SYSに代行入力しているというのだ。最初は120あった入力項目を40程度に減らしても、まだ使い勝手が悪いとの不満が残るからだという。 この間にコロナ感染の第3波があり、さらに第4波に襲われた。感染者数は、20年春頃に比べてずっと多くなっている。保健所は、他の業務と並行して、感染者1人あたり40項目もの記入をしなければならないわけだ。その負担は、察するに余りある』、「東京都では、8月30日になっても、1200の医療機関のうち、HER-SYSに入力できる利用登録を済ませたのは、都立病院など7カ所しかなかった」、「入力すべき項目が1人あたり120もあるなど、使い勝手の悪い欠陥システムだから、自治体がそっぽを向いたというのだ」、「大阪では、感染者の届け出の3分の1は、いまだに保健所でHER-SYSに代行入力しているというのだ。最初は120あった入力項目を40程度に減らしても、まだ使い勝手が悪いとの不満が残るからだという」、「HER-SYS」はまだまだ問題のようだ。
・『委託を整理したら、6社が7社になってしまった!?  接触確認アプリCOCOAは、2020年6月19日から運用を開始した。ところが、運用開始初日に不具合が生じて、運用停止になってしまった。 厚生労働省は、不具合を認めて修正を進めた。通知ができるようになったのは7月3日だ。その後再び不具合が見つかり、7月13日から修正版を提供した。 ところがこれで終わったわけではなかった、COCOAの利用者のうち3割にあたる772万人のAndroid版利用者について、陽性者と濃厚接触した場合でも「接触なし」と表示されていたのだ。 しかも、その不具合が4ヵ月間放置されていたことが、2021年2月3日になって明らかになった。ということは、Android版利用者の場合、正常に使えたのは、7月中旬から9月までの2ヵ月半程度でしかなかったということだ。 国民の命に直接かかわる仕組みについて、4ヵ月も不具合が放置されていたというのは、信じられないような大問題だ。これについても本欄に書いた(2021年2月21日公開の「またも厚労省! 接触アプリ不具合が明らかにした日本ITの深い闇」) これで終わったのかと思っていたのだが、この件もまだ続きがあった。欠陥放置問題があったため、政府は委託の見直しを検討していた。そして、21年4月からは、委託先をパーソル社からエムティーアイ社に切り替えた(なお、パーソル社は、HER-SYSの委託先だ。この関係があったために、COCOAの委託先に選ばれたのだそうだ)。 ところが、エムティーアイ社は、これをさらに6社に再委託した。この結果、関係する企業数は、見直し前の6社から、7社に増えてしまった。 不都合放置事件の原因が、関係企業数が多いため責任の所在が曖昧になったことであるのは、衆目の一致する ところだ。厚生労働省も、これまでの不具合の原因を調査した結果、「どの企業の作業がどう影響したのか分からない」としている。それにもかかわらず、見直しの結果、関係企業数が増えるというのは、なぜなのだろうか? 「7は6より大きな数字だから、この見直しでは企業の数が増えてしまったて、改善になっていない」とは、幼稚園生でも分かるのだが、厚生労働省にはこれが分からないのだろうか? 今後、公務員試験では、「7と6のどちらが大きいか?」という問題を出して、不正解者は採用しないようにすべきだ』、「関係する企業数は、見直し前の6社から、7社に増えてしまった」、まるで笑い話だ、「委託」の条件に「再委託」不可とすることも可能なのではなかろうか。
・『マイナンバーカードの健康保険証利用は土壇場で延期  厚生労働省関係デジタル案件の不都合は、まだある。 「マイナンバーカードは、2021年3月から保険証として利用できるようになる」と宣伝されていた。ところが、土壇場になって、10月頃まで延期となった。保険資格の情報が「登録されていない」と表示されたり、保険証に記載された情報と一致しないなどのトラブルが相次いだためだという。 もっとも私は、延期になっても、格別不便になったとは思わない。なぜなら、マイナンバーカードを健康保険証に使えたところで、利用者にとってのメリットがどこにあるのか、分からないからだ。 それだけではない。延期になってほっとした面もある。なぜなら、マイナンバーカードの保険証利用に伴って、これまでの紙の保険証は発行停止になるという報道があったからだ。そうなると、マイナンバーカードなしでは、病院で診療を受けられなくなる。 ところが、マイナンバーカードの電子証明書は5年間しか有効でなく、更新のためには、役所に出向かなければならない。「もし歩くのが不自由になったら、どうしよう」と思っていたのだが、今回の延期措置で、この心配は暫くは遠のいた』、「マイナンバーカードの健康保険証利用」自体が「マイナンバーカード」の苦しまぎれの利用促進策だったので、私も「延期になってほっとした」。
・『「絵に描いた餅」を3回見せられた  厚生労働省関係でマイナンバーカードを使えないという事例は、ほかにもあった。それは、ワクチン接種の管理にマイナンバーカードを活用する構想だ。2021年3月14日公開の「ワクチン接種管理にも使えない『マイナンバー』、一体どこで使えるのか…?」で述べたように、2021年1月に平井卓也デジタル改革相や河野太郎ワクチン担当相が提起した。 ところが、このアイディアは、あっという間に立ち消えになった。地方自治体から「自治体の事務が増えることは非常に困る」との懸念が示されたからだ。 予防接種の実施や接種記録の管理は、市町村が担当している。ただし、その台帳は自治体独自で、入力項目も統一されていない。マイナンバーカードを使うには、行政の現場をそれに対応させる必要がある。 それなしでマイナンバーを使うといっても、現場は混乱する ばかりというのだ。 マイナンバーカードは、定額給付金の申請で使えなかった。そこでの教訓は、「自治体の現場をそれに合わせたものにしない限り使えない」と言うことだ。 それを思い知らされたのに、また同じミスでつまずいた。そしてさらに、保険証への活用でつまずいた 保険証利用は、マイナンバーカードの利用拡大として鳴り物入りで宣伝されてきたものだ。 あまりと言えばあまりの失態続き! 結局のところ、日本国民は、「絵に描いた餅」を3回見せられたことになる。すると、マイナンバーカードは、いったいどこで使えるのだろうか? デジタル化の促進は、菅内閣の看板政策である。中でも、マイナンバーカードの利用拡大は、その中の中心的政策だ。それほど重要なプロジェクトなのに、データのチェックが行われていなかったのだ。 信じられないような初歩的なミスで躓いた。 もっとも、これが延期の真の原因だったのかどうかは、疑わしい。マイナンバーカードの情報を読み込むためには、医療機関に専用の機械の設置が必要だが、3月21日時点で、医療機関からの申し込みは、全体の45%程度しかなかったというのだ』、「医療機関からの」「専用の機械の設置申し込みはまだまだのようだ。
・『このタイトルを3回使うことはないように  今回のこのタイトルは、実はすでに1度使ったタイトルである。2020年9月6日公開の「厚生労働省のITシステムは、なぜ不具合が多いのか?」だ。 そこでは、HER-SYSやCOCOAの他、雇用調整助成金のオンライン申請が2ヵ月半もストップしたままだったことなども述べた。 同じタイトルを何度も使うのは避けたいのだが、止むを得ない。このタイトルを3回使うことは何とかないように、祈りたい。 そう思っていた矢先、厚生労働省老健局の職員23人が、銀座で3月24日に深夜まで宴会をしていたと報道された。そして、4月8日には、職員ら6人が新型コロナウイルスに感染したと発表された。全員が3月末まで老健局に所属していた。 「言葉を失う」とは、こうした事態に対した場合のことだ。あまりのひどさに、コメントする意欲を失う。何も言いたくない。 今回のタイトルをまた使うことは、もうないような気がしてきた』、元大蔵官僚だった筆者が、「あまりのひどさに、コメントする意欲を失う。何も言いたくない」、よほどのことだ。「今回のタイトルをまた使うことは、もうないような気がしてきた」、残念ながら私には意味がよく分からない。
タグ:電子政府 野口 悠紀雄 現代ビジネス WEDGE 文春オンライン (その3)(ファックスのほうがよかった? 新宿区・吉住区長が明かすコロナ情報共有システム「ハーシス」の問題点、新型コロナの新システム「ハーシス」はなぜ開発に“失敗”したのか、厚生労働省の「デジタル化」はなぜ駄目なのか? その言葉を失う失態体質 数の大小も分からないのか!) 「ファックスのほうがよかった? 新宿区・吉住区長が明かすコロナ情報共有システム「ハーシス」の問題点」 「「入力項目が多く、氏名、症状、基礎疾患の有無、感染経路など100項目程度にも及びます」、とは的を絞らず、あれもこれも入力させようとするダメなシステムの典型だ。 「むしろファックスの方がスピーディー」、とは不名誉なことだ。 「医療機関が閲覧する際も、やはり項目が多く、知りたい情報がわかりにくい」、「報告を受ける側の保健所も、あまりメリットを享受できていないようだ」、システム設計の基本が出来てなかったようだ。 「新型コロナの新システム「ハーシス」はなぜ開発に“失敗”したのか」 「ある医師が「手書き」で発生届を書いていることをツイートし、それを河野太郎防衛大臣(当時)が「拾いあげ」たことが契機だった」、事情を詳しく知らない「防衛大臣」が乗り出したのが、今回の混乱のきっかけとは、ダメなシステム開発の典型例だ 「ほぼ完成していた」「新システム」は使われないままになったようだが、無駄の典型だ。 「「開発チームが誰一人として、発生届が出されるのは医療機関の管轄保健所という定義を知らなかった」 つまり、現場がどう業務を行っているのかを理解しないまま開発した結果、感染者等の年齢や検査記録、発症日といった、国が感染症対策に必要な情報に加えて、患者の健康観察情報や、行動歴など、膨大な情報の入力を求めるシステムになってしまった」、 「「こうした失敗は過去にもあった(「疑い症例調査支援システム」)にもかかわらずその学びが生かされなかった」、いやになるほどお粗末の極みだ。 「ボトムアップでシステムを作る発想が大切だ」、とはいっても、各地方自治体ごとに独自のシステム開発をするというこれまでのやり方も無駄だ。どこか、代表的自治体にプロトタイプを作らせ、それを全国的に展開するのも一案だろう。 「厚生労働省の「デジタル化」はなぜ駄目なのか? その言葉を失う失態体質 数の大小も分からないのか!」 「東京都では、8月30日になっても、1200の医療機関のうち、HER-SYSに入力できる利用登録を済ませたのは、都立病院など7カ所しかなかった」、「入力すべき項目が1人あたり120もあるなど、使い勝手の悪い欠陥システムだから、自治体がそっぽを向いたというのだ」 「大阪では、感染者の届け出の3分の1は、いまだに保健所でHER-SYSに代行入力しているというのだ。最初は120あった入力項目を40程度に減らしても、まだ使い勝手が悪いとの不満が残るからだという」、「HER-SYS」はまだまだ問題のようだ。 「関係する企業数は、見直し前の6社から、7社に増えてしまった」、まるで笑い話だ、「委託」の条件に「再委託」不可とすることも可能なのではなかろうか。 「マイナンバーカードの健康保険証利用」自体が「マイナンバーカード」の苦しまぎれの利用促進策だったので、私も「延期になってほっとした」 「医療機関からの」「専用の機械の設置申し込みはまだまだのようだ。 元大蔵官僚だった筆者が、「あまりのひどさに、コメントする意欲を失う。何も言いたくない」、よほどのことだ。「今回のタイトルをまた使うことは、もうないような気がしてきた」、残念ながら私には意味がよく分からない。
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政府財政問題(その4)(「日本はもっと借金しろ」そんなMMT理論の危険な落とし穴 株式バブルが崩壊したらオシマイだ、日本の預金封鎖の“黒歴史” 投資先のリスク分散を考える) [経済政策]

政府財政問題については、昨年8月17日に取上げた。今日は、(その4)(「日本はもっと借金しろ」そんなMMT理論の危険な落とし穴 株式バブルが崩壊したらオシマイだ、日本の預金封鎖の“黒歴史” 投資先のリスク分散を考える)である。

先ずは、昨年12月7日付けPRESIDENT Onlineが掲載した日本総合研究所調査部主席研究員の河村 小百合氏による「「日本はもっと借金しろ」そんなMMT理論の危険な落とし穴 株式バブルが崩壊したらオシマイだ」を紹介しよう。なお、リンク先のP3以降は会員限定(登録無料)である。
https://president.jp/articles/-/41077
・『政府は新型コロナで冷え込む経済対策のため財政支出を急拡大させている。このまま財政拡張路線を取りつづけて大丈夫なのか。日本総研の河村小百合主席研究員は「実体経済が悪いにもかかわらず、株式相場が堅調なのは、行き場のない資金が流入しているからだ。MMT理論の影響で危機感が乏しいが、このままでは日本経済は大変なことになる」と指摘する——。(第1回/全3回)』、興味深そうだ。
・『自国通貨建て政府債務はデフォルトすることはない?  2020年春先以降の新型コロナウィルス感染症の拡大によって、経済と社会の両面で大きな打撃を受けたわが国は、4月に第1次、6月に第2次補正予算を立て続けに組み、2020(令和2)年度一般会計の歳出規模を当初予算から60兆円近く積み増した(図表1)。(図表1はリンク先参照) これほど大規模な予算が組まれたことは、リーマン・ショック後にも東日本大震災後にもなく、わが国にとって極めて異例の事態と言える。その原資の大部分は当座、国債の増発によって手当てされており、そのコストを最終的に、国民の誰がいつどのようにして負担するかという議論には未だに着手すらできていない。 そして足許では、2021(令和3)年度の予算編成と並行して、総額15兆円ないしは30兆円規模などと囁かれている令和2020年度の第3次補正予算の検討が進められている状況にある。 もともと世界最悪の財政事情にあったわが国が、コロナ禍でこれほどまでに財政事情が悪化しているにもかかわらず、国全体として危機感にはおよそ乏しいのが現実だろう。その背景には、近年、巷でもてはやされている“MMT(Modern Monetary Theory)理論”の影響があるように思えてならない。 財政運営はインフレ率に基づいて調整すべきとするMMT理論に立脚する論者は、中央銀行を政府と一体のものとして捉え、「政府債務は自国通貨建てで発行する限りデフォルト(債務不履行)することはないため、デフレ時には財政赤字や債務残高等を考慮せずに財政政策を拡張すべき」、「インフレのリスクが大きくならない限り、財政赤字はどこまでも拡大可能」、「仮にインフレが進行した場合にも、中央銀行に頼らない財政政策面等でのインフレ抑制策があり得る」といった主張をすることが多いようだ。しかしながら、このMMT理論には、大きな問題点と落とし穴がある』、「MMT理論」の「大きな問題点と落とし穴」とは何なのだろう。
・『2つに大別される政府の借金の踏み倒し方  まず、MMT理論の大きな問題点は、その「自国通貨建て政府債務はデフォルトすることはない」という点に関するものだ。 一国の財政運営が行き詰まり、万策尽きた後の最後の手段としては大別して、①外国勢が国債の相当程度を保有している場合に実施される対外債務調整(対外デフォルト)と、②国内の主体が国債の大半を保有している場合に実施される国内債務調整(国内デフォルト)の2通りがある。 ①の対外デフォルトの実態や顛末は、欧州債務危機時の2012年にギリシャの2度にわたる事例等があることもあり、比較的よく知られている。歴史的な事例をみても、それが外国勢に対する“債務の踏み倒し”を含むゆえ、英語で書かれた詳細な資料が、当該国内のみならず外国にも残されていることが多い。 他方、②の国内債務調整とは、もはや外国勢は当該国の国債を保有していないため債務調整の利害関係者とはなり得ず、債務調整の負担のすべてを自国内で、自国民が被らざるを得なくなった場合に行われるものである。これは具体的な手法としては必ずしも内国債の債務不履行(デフォルト)に限られるものではなく、国民に対する極端な増税や、政府が支払いを約束していた歳出を突然カットする等の形で実施されることもある。併せて預金封鎖や通貨交換が実施されることも多い。 これらはまさに「自国通貨建て政府債務のデフォルト事例」に相当し、歴史的には相当な件数が存在するにもかかわらず、各国ともそうした不都合かつ不名誉な事実は対外的に秘匿したがる傾向があるのが現実のようだ。 資料が残されているとしても国内で、自国語で書かれたものに限られ、外国勢には読解し切れない場合も多く、対外的には、詳細があまり明らかにされていないことも多い。米国の学者を中心とするMMT論者が「自国通貨建て政府債務はデフォルトすることはない」と主張する背景にはこうした事情も影響しているものとみられる』、「MMT論者」がよく調べもせずに「「自国通貨建て政府債務はデフォルトすることはない」と主張」したとは、驚くべき不誠実さだ。
・『国民の財産に課税して財政の穴を埋めた終戦直後の日本  第2次世界大戦の敗戦国であったドイツおよびオーストリア、そしてわが国における財政破綻は、まさにこうした国内債務調整の典型例であった(※1)。わが国においては1945年8月の終戦後、戦費で急膨張していた財政運営は完全に行き詰まり(図表2)、翌46年2月にまず、預金封鎖が、国民にとっては突然の形で実施され、財政資金の大幅な不足を埋めるべく、国民の課税資産が先に差し押さえられた。 ((図表2)戦後直後の混乱期すら上回るわが国の債務残高比率は(リンク先参照) 同時に新円切り替えも実施され、いわゆる“タンス預金”による抜け道も完全にふさがれた。そして半年以上が経過した同年11月、政府は国民から幅広く「財産税」を徴収することを決定し、その支払いには封鎖預金も充当された。 簡単に言えば、預金を引き出させなくして国民の資産を把握するとともに差し押さえ、新円しか使えなくなることでお金を自分で保管(タンス預金)しておくことを封じたうえで、平常時なら実施しない預金等の幅広い「財産」に課税したのである。 (※1)その詳細は拙論「財政再建にどう取り組むか-国内外の重債務国の歴史的経験を踏まえたわが国財政の立ち位置と今後の課題-」『JRIレビュー』Vol.8、No.9、2013年8月を参照)  さらに国は、戦争遂行目的で軍が調達した物品等にかかる戦時補償請求権を有していた企業や国民に対して、同額(100%)の「戦時補償特別税」を課す形で戦時補償の支払いを打ち切った。さらには、敗戦まで日銀が多額の国債を引き受けていたゆえ、当時はハイパーインフレも進行しており、これらがすべて相まって、敗戦の痛手を被っていた国民に、さらなる重い負担を強いることになったのである。 当時の政府は、内国債の債務不履行(デフォルト)という手段も選択肢の一つには挙がっていたものの、多額の国債を保有していた金融機関の連鎖的な破綻につながることを恐れ、実際にはこのやり方を選択することはせず、こうした数々の手荒なやり方で、国民の資産を破綻した財政の穴埋めに無理やり充当した。 確かに当時、他になす術はなかったと考えられ、同様の手法はドイツをはじめとする他の国でもとられている。国際的にも、こうした手法による国内債務調整を、財政破綻の1パターンとして理解するのが一般的になっている。 ちなみにわが国の場合、こうした一連の経緯は、当時の財政当局および客観的な第三者である専門家(財政学者)の手による記録(『昭和財政史 終戦から講和まで』シリーズ<東洋経済新報社刊>)が、国民の誰もが読める形で残されているが、米国の学者には読解不能ゆえ、「自国通貨建て政府債務はデフォルトすることはない」などという主張がまかり通っているものと推察される』、「MMT論者」は英語化された文書以外は読んでないようだ。
・『わずか0.2%の金利引き上げで日銀は逆ざやに  そしてMMT理論にはもう一つ、“危険な落とし穴”がある。極端な財政拡張を容認しながら、政府と中央銀行を一体化して捉え、とりわけ国際間での資金移動が完全に自由な今日の“開放経済”下において、極端な財政拡張に伴い多額の国債を買い入れる中央銀行の先行きの金融政策遂行能力が、いかなる影響を受けることになるのかを一切考慮していないのだ。 主要中銀の中でも突出して資産規模を膨らませ、“事実上の財政ファイナンス”を行っている日銀を例にみてみよう。日銀のバランス・シート(以下BS)は、異次元緩和によって大幅に拡大しているが(図表3)、日銀に民間銀行から預けられた当座預金の大きさは、短期金融市場でいかに巨額の資金が“余り金”となっているかを示す。市場で金利が形成されるのは、市場にお金が余っている参加者と足りない参加者がいて、お金の貸し借りの取引が起こるからだ。 ((図表3)異次元金融緩和で急膨張した日銀のバランスシート(2000年末、2005年末と2020年10月末の比較)はリンク先参照) 市場全体に日銀から供給されている資金量が全体としてちょうど必要なくらいに調節されている世界であれば、中央銀行が少額の公開市場オペを実施して資金を吸収しさえすれば、市場全体としてのお金の不足の度合いは強まり、お金の貸し借りの取引につく金利は上昇する。通常、中央銀行はそうやって、市場金利を上げ下げすべく誘導し、金融政策運営を行っている。 ところが、誰もが巨額の“余り金”を抱えている現在、もはや、量的緩和を実施する前(同図表の一番左)のように、少額の公開市場オペで市場から資金を吸収したところで、市場に“お金が足りない人”は生まれず、市場全体としてのお金の不足の度合いが強まることもなく、中央銀行は短期金利の引き上げ誘導をすることはできない。 日銀も米Fed(連邦準備制度)が行ってきたのと同様、異次元緩和を正常化するプロセスでは、BSの負債サイド(右側)にある当座預金に付利し、超カネ余り状態のなかで市場参加者が細々と行う取引につく金利の下限として機能させることを通じて、短期金利の引き上げ誘導を行うよりほかにない。日銀は、そうした説明を積極的に行ってはいないが、国会での参考人質疑等を通じてそれを認めている。 しかも日銀の場合は、欧米の中央銀行とは異なり、大規模に買い入れた国債はすでに超低金利となった時代以降に発行されたものばかりであるうえ、10年国債より低いクーポンしかつかない中・短期国債も多く買い入れている。そえゆえ、日銀が保有する資産(BSの左側)の加重平均利回りは2020年度上半期決算時点でわずか0.2%にも満たない。つまり日銀は今後、短期金利をわずか0.2%に引き上げるだけで“逆ざや”に陥ることになる』、「わずか0.2%の金利引き上げで日銀は逆ざやに」、深刻な事態だ。
・『“逆ざや”幅の1%拡大で年度あたり5兆円弱の損失  日銀の当座預金の規模がすでに489兆円(2020年10月末)にまで拡大している現在、“逆ざや”の幅が1%ポイント拡大するごとに、日銀は年度あたり5兆円弱の損失を被ることになる。日銀の自己資本が、引当金まで合わせても9.7兆円しかないこと(図表4)、また、金利の引き上げが必要な局面の期間が短く済むという保証はなく、長引く可能性もあることを考えてみれば、この“逆ざや”による負担は日銀にとって相当に重いものとなる。 日銀の資産規模がすでに700兆円近くにまで膨張しているにもかかわらず、自己資本が少額しかないことからすれば、日銀がひとたび“逆ざや”となれば、おそらくほどなく債務超過に転落する可能性が高い。その状態が放置されれば、債務超過幅が数十兆円レベルにまで膨張する可能性も否定できない(※2) 。 過去の国会の質疑でこの点を問われた黒田総裁は、日銀が債務超過に転落する可能性もあることを認めている。中央銀行の債務超過は、国が国民の税金を原資に補填しない限り、埋めることはできない。元来、世界最悪の財政事情にあったわが国において、異次元緩和という“事実上の財政ファイナンス”に手を染めた結果、目下のところは一見、平穏が保たれているように見えても、私たち国民は、さらなる重い負担を負わされる潜在リスクを抱えているのである』、「“逆ざや”幅の1%拡大で年度あたり5兆円弱の損失」、「日銀の自己資本が、引当金まで合わせても9.7兆円」を食い潰すのは必至だ。「異次元緩和という“事実上の財政ファイナンス”に手を染めた結果、目下のところは一見、平穏が保たれているように見えても、私たち国民は、さらなる重い負担を負わされる潜在リスクを抱えているのである」、「異次元緩和」の恐ろしさだ。
・『金利を上げられない中央銀行の帰結  では日銀はもう、金利など上げなければよいではないか、そうすれば債務超過に陥ることもなく、国民の税金で負担しなければならなくなることもないはずだ、と思われるかもしれない。 確かに今のような低成長・低インフレ状態、そして円の外国為替相場も安定している状態が永遠に続くのであればそうかもしれない。しかしながら、現実はそれほど甘くはないだろう。2016年6月の国民投票以降、“Brexit”(英国の欧州連合からの離脱)をめぐる混乱に見舞われた英国の経験は、いかに国内経済が弱く、デフレ懸念が強まっているようななかでも、為替相場の動向次第では、輸入物価の上昇を通じて国内物価もあっさりと上昇に転じ得ることを如実に示した(図表5)。 (英消費者物価上昇率(前年比)の要因別推移(2014~19年)の図表5はリンク先参照) 中央銀行のBSの負債サイド(右側)で当座預金が極端に大きく膨張している(前掲・図表3)のは、日銀に限らず、リーマン・ショック以降大規模な資産買い入れに踏み切った欧米の主要中央銀行に共通する事態だ。巨額の当座預金は、それを中央銀行に預けている民間銀行側からすれば“余り金”であり、今でこそ他に持って行き場がないからと自国の中央銀行に預けているが、今後の経済・金融情勢の展開次第では、いつ何時、民間銀行によって引き出されるかもしれない、という筋合いのものである。(※2)実際、これまでにも、そうした試算が日本経済研究センターや東京経済研究センター等から複数示されている』、確かに「英国の経験は、いかに国内経済が弱く、デフレ懸念が強まっているようななかでも、為替相場の動向次第では、輸入物価の上昇を通じて国内物価もあっさりと上昇に転じ得ることを如実に示した」、その通りだ。
・『物価上昇率が政策金利を大きく上回ったら  仮に物価上昇率が、中央銀行の政策金利(当座預金への付利の水準)を大きく上回るような事態になってしまった場合に何が起こるのか、 単純化のために、価格が比較的大きく変動することが多い地価を例に考えてみよう。例えば当座預金への付利が2%でしかないときに、全国の地価の上昇率が前年比10%を超えるようになってしまったと想定する。民間銀行にはおそらく、不動産業者からの借入れの申し込みが殺到するだろう。地価が年率10%で上昇し続けるなかで、不動産業者が民間銀行から仮に3%の金利で借り入れできるのなら、その資金を元手に土地を仕入れておき、1年後に1割増しの価格で売却できれば、不動産業者としては確実に7%相当のサヤが抜け、儲けることができる。 民間銀行としても、そうした貸出しの申し込みが次々と寄せられるのであれば、余り金を中央銀行の当座預金に2%の金利で預けっぱなしにするのはやめて引き出し、それを3%の金利で不動産業者等に貸し出せばもっと儲けられるので、中央銀行に預けていた当座預金は次々と引き出され、市中向けの貸出しを加速することになるであろう。 このように、その時々の経済・金融情勢に応じて適切な金融政策運営ができなければ、本来、物価の中長期的な安定が使命であるはずの中央銀行が先々のインフレを抑制するどころか、逆に“火に油を注ぐ”事態に陥るのである。 ちなみに先述の英国の事例をもう少し詳しくみると、健全財政志向の極めて強い同国は、金融危機の震源国の一つであったにもかかわらず、国民の負担増も辞さない財政再建策を講じてきていた。そしてBOEも一時は0.75%まで政策金利を問題なく引き上げることができていたがゆえに、“Brexit”の国民投票後も国内からの大規模な資金流出は起こらず、為替や物価も何とかオーバーシュートせずに済んだものとみられる。 わが国の場合、今後、もっとも懸念されるのは外国為替相場の動向だ。何よりもまず、財政事情が世界最悪と極端に悪い。加えて日銀が国債やETF等を古今東西他におよそ例がないほどの規模で買い入れ、恐ろしいまでのリスクを抱え込んでいる。この先、何らかの契機でそうした問題点があらわになれば、円があっという間に“通貨の信認”を失い、大幅な円安が進展して、国内債務調整が差し迫っていることを察知した富裕層や企業による国内からの大規模な資金流出が発生しかねない』、「円があっという間に“通貨の信認”を失い、大幅な円安が進展して、国内債務調整が差し迫っていることを察知した富裕層や企業による国内からの大規模な資金流出が発生しかねない」、恐ろしいが、大いにありそうなシナリオだ。
・『株式バブルが崩壊すれば日銀債務超過・円安という悪夢  では何がその契機となり得るのか。目下のところ、わが国では、地価が全国レベルで目立って上昇しているわけではなく、消費者物価も足許は伸びを低めており、インフレが懸念される状態にはおよそない。こうしたなか、懸念されるのは、昨今の株式市場の過熱状態であろう。 コロナ危機でわが国をはじめとする実体経済が相当な打撃を受けているのとは裏腹に、各国の株式市況は高値の更新が続くなど足許は堅調そのものだ。そこにはおそらく、上述のように地価を例に説明したのと同様のメカニズムで、各国の中央銀行の供給した過剰流動性が流入し、相場を押し上げているであろうことは想像に難くない。その株式市場が今後いずれかの時点で変調に見舞われた際、もっとも深刻な打撃を被るのは、主要中銀の中で唯一、リスク性資産であるETFを、しかも巨額な規模で買い入れている日銀であろう。 株式市況の調整の幅と期間次第では、日銀が一気に債務超過に転落し、その状態が長引く可能性も否定できない。それが円の信認の喪失につながったとき、おそらく、大幅な円安が進展し、円安に起因する高インフレが加速することになる。その時、日銀はもはや、政策金利を引き上げて自国通貨を防衛し、インフレを制御する能力を持ち合わせていないことがあからさまになるのだ。 河村小百合『中央銀行の危険な賭け 異次元緩和と日本の行方』(朝陽会)河村小百合『中央銀行の危険な賭け 異次元緩和と日本の行方』(朝陽会) MMT理論の危険な落とし穴は、財政運営の大幅な拡張に伴うこうした中銀の先行きの金融政策運営の遂行能力の問題に正面から向き合わず、何らの解決策も提示してはいない点にある。それはまた、いわゆる“リフレ派”の考え方に共通する問題点でもある。 そして現在の日銀には、金融政策決定会合において、出口戦略やその局面での国民による財政負担の可能性、先行きの金融政策運営の遂行能力の問題を検討している形跡が一切認められない。対外的な説明もおよそ行われていない。にもかかわらず、黒田総裁はじめ日銀関係者がMMT理論を批判する側に回っていることには強い違和感を禁じ得ない。 海外の主要中央銀行は、金融危機後に大規模な資産買い入れを実施してきたなかで、上記に見たような危険な事態に至るようなことが決してないように、様々な工夫を重ね、大規模な金融緩和からの出口も見据えて極めて慎重な政策運営を行ってきた。その詳細は次回、みることにしたい』、「株式市況の調整の幅と期間次第では、日銀が一気に債務超過に転落し、その状態が長引く可能性も否定できない。それが円の信認の喪失につながったとき、おそらく、大幅な円安が進展し、円安に起因する高インフレが加速することになる。その時、日銀はもはや、政策金利を引き上げて自国通貨を防衛し、インフレを制御する能力を持ち合わせていないことがあからさまになるのだ」、まさに悪夢のシナリオだ。異次元緩和に踏み切った黒田総裁、安部前首相の罪は深い。

次に、本年4月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した投資家・自由人の遠藤 洋氏による「日本の預金封鎖の“黒歴史” 投資先のリスク分散を考える」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/264799
・『(冒頭のPRは省略)『日本の預金封鎖と財産没収の過去  歴史を振り返ると、過去にさまざまな国で幾度となく「預金封鎖」が行われてきました。 昨日まで当たり前のように使えていた銀行口座が使えなくなってしまい、銀行預金などの金融資産の引き出しが制限されてしまうのです。 預金封鎖の目的は、銀行に預金している資産に課税することです。 〔これまでの預金封鎖〕
+1933年3月4日 アメリカ ルーズベルト大統領がバンクホリデー(全国銀行の強制休業)を実施  +1946年2月17日 日本 インフレ防止の金融緊急措置令として、預金の一般引き出しを禁止  
+1990年3月15日 ブラジル 一定額を超える銀行預金の封鎖措置
+2001年12月1日 アルゼンチン 銀行業務の停止措置  
+2002年7月30日 ウルグアイ 銀行業務の停止措置  
+2013年3月16日 キプロス 預金への課税処置のため預金封鎖・ネット上の資金移動の制限
 あまり知られていないかもしれませんが、日本でも1946年に預金封鎖が起きているのです。 1946年2月16日夕刻に発令された「金融緊急措置令」とともに、国民は「国家財政の敗戦」を知らされたといいます。 強烈なインフレによって市中に出回った過剰なお金を吸収する「預金封鎖」という荒治療の始まりでした。 2月17日以降、預金の引き出しを制限し、10円以上の日本銀行券(旧円)は3月2日で無効となり、それまでに使うか預金するしか選択肢はなくなりました。 3月3日からは新しく発行した日本銀行券(新円)のみ使用可能となりましたが、1人100円を上限に旧円と新円を1対1で交換する措置もとられました。 生活防衛のため、月給500円までは新円で支給するものの、それ以上は封鎖された預金に振り込まれました。 大卒の初任給が400~500円だった時代、封鎖預金から引き出せるのは、1ヵ月に1人100円(世帯主は300円)までに制限されたのです。 さらに3月3日を基準に預金など金融資産に関する調査を行って、10万円を超える財産に対して、金額に応じて税率25%から最高税率90%の財産税を課しました。 このように、極めて一方的な預金封鎖と事実上の資産没収が、日本政府によって行われた過去があることは知っておくべきです』、「日本」の場合、こうした各種措置の他にも、狂乱インフレが資産価値を大幅に減価させた。
・『最悪の事態を想定して自分の財産を守る  これは戦後の昔話というわけではなく、預金封鎖のリスクは、財政赤字が膨らむ現代の日本でも決して無視できないことなのです。 日本政府の借金である国債の発行残高は約900兆円、地方地自体の借金である地方債の発行残高は約200兆円と、合計約1100兆円にも達します。 新型コロナウイルスの感染拡大にともなう緊急財政出動が、国の財政に追い打ちをかけ、借金がどんどん膨れ上がっています。 日本政府は財政赤字を解消する最終手段として、「預金封鎖=事実上の財産没収」というカードを持っています。 さらに政府は、私たちの税金を使って日本株を買い込んでいます。 もし株価が暴落して大損したり、国の借金が返せなくなったら、最終的には私たち国民に、そのツケが回ってくることになります。 ある日突然やってくるかもしれない預金封鎖から自分の資産を守るためには、日本という国以外に、米国やEU諸国へ投資先(資産)を分散させたり、仮想通貨のような特定の国に依存しない次世代の通貨を持つことかも有効でしょう。 2013年のキプロスでの預金封鎖では、仮想通貨で資産を持っていた人たちは没収を免れたといいます。 いろいろと不安を煽るような話になりましたが、これからの日本では自分の頭でしっかりと考え、資産を守っていく必要があるのです。(P3はPRのため紹介省略)』、「これからの日本では自分の頭でしっかりと考え、資産を守っていく必要がある」、同感だが、私自身はまだ殆どできてないのが実情である。
タグ:ダイヤモンド・オンライン PRESIDENT ONLINE 遠藤 洋 政府財政問題 河村 小百合 (その4)(「日本はもっと借金しろ」そんなMMT理論の危険な落とし穴 株式バブルが崩壊したらオシマイだ、日本の預金封鎖の“黒歴史” 投資先のリスク分散を考える) 「「日本はもっと借金しろ」そんなMMT理論の危険な落とし穴 株式バブルが崩壊したらオシマイだ」 「MMT理論」の「大きな問題点と落とし穴」とは何なのだろう 「MMT論者」がよく調べもせずに「「自国通貨建て政府債務はデフォルトすることはない」と主張」したとは、驚くべき不誠実さだ。 「MMT論者」は英語化された文書以外は読んでないようだ。 「わずか0.2%の金利引き上げで日銀は逆ざやに」、深刻な事態だ。 「日銀の自己資本が、引当金まで合わせても9.7兆円」を食い潰すのは必至だ。「異次元緩和という“事実上の財政ファイナンス”に手を染めた結果、目下のところは一見、平穏が保たれているように見えても、私たち国民は、さらなる重い負担を負わされる潜在リスクを抱えているのである」、「異次元緩和」の恐ろしさだ。 確かに「英国の経験は、いかに国内経済が弱く、デフレ懸念が強まっているようななかでも、為替相場の動向次第では、輸入物価の上昇を通じて国内物価もあっさりと上昇に転じ得ることを如実に示した」、その通りだ 「円があっという間に“通貨の信認”を失い、大幅な円安が進展して、国内債務調整が差し迫っていることを察知した富裕層や企業による国内からの大規模な資金流出が発生しかねない」、恐ろしいが、大いにありそうなシナリオだ 「株式市況の調整の幅と期間次第では、日銀が一気に債務超過に転落し、その状態が長引く可能性も否定できない。それが円の信認の喪失につながったとき、おそらく、大幅な円安が進展し、円安に起因する高インフレが加速することになる。その時、日銀はもはや、政策金利を引き上げて自国通貨を防衛し、インフレを制御する能力を持ち合わせていないことがあからさまになるのだ」、まさに悪夢のシナリオだ。異次元緩和に踏み切った黒田総裁、安部前首相の罪は深い。 「日本の預金封鎖の“黒歴史” 投資先のリスク分散を考える」 これまでの預金封鎖 「日本」の場合、こうした各種措置の他にも、狂乱インフレが資産価値を大幅に減価させた 「これからの日本では自分の頭でしっかりと考え、資産を守っていく必要がある」、同感だが、私自身はまだ殆どできてないのが実情である
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働き方改革(その31)(官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」、官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」、ソニー社員が働きがいを感じる「実力主義」の中身 報酬差は最大240万円も!) [経済政策]

働き方改革については、本年1月12日に取上げた。今日は、(その31)(官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」、官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」、ソニー社員が働きがいを感じる「実力主義」の中身 報酬差は最大240万円も!)である。

先ずは、3月19日付け現代ビジネスが掲載した文筆家・労働団体職員の西口 想氏による「官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81201?imp=0
・『:1月18日から始まっている第204回国会(通常国会)。会期は延長がなければ6月16日までの150日間だ。すでに東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の問題や総務省幹部などの接待問題で紛糾しているが、本来は新型コロナウイルス感染症の拡大防止と国民の生活再建が最優先課題である。 そんな重要な国会の場で、昨年から一冊の本が話題だ。2019年まで厚生労働省に勤めていた元キャリア官僚・千正康裕氏が書いた『ブラック霞が関』(新潮新書)である。周知のとおり、「霞が関」とは国の行政機関(中央省庁)があつまる東京都千代田区の地名。本省の政策立案部門で働く国家公務員の過酷な労働環境について、現場から具体的に解説し、改善にむけた提言をしている書籍である』、『ブラック霞が関』とは言い得て妙だ。
・『朝7時〜午前3時過ぎまでの過酷な労働  『ブラック霞が関』では国会会期中の若手官僚のタイムスケジュールの一例を示している。これが衝撃的だ。一部省略して以下に引用する。 [今の若手官僚の1日の例] 7:00 検討中の政策について報道が出たため、大臣が記者に聞かれた時の応答メモを急遽自宅で作成  上司の決裁を得て大臣秘書官に至急送付 9:00 出勤。政党の会議から帰ってきた局長から議員への説明資料作成指示 9:30 局長指示の議員への説明資料作成開始 10:30 資料作成完了 11:00 審議会の資料作成(政府案の検討) 11:15 国会議員から地元イベントでの挨拶文の作成依頼があり作成 11:35 自治体からの問合せへの対応 12:20 課長の指示を受けた審議会資料の修正 13:00 国会議員依頼の挨拶文を上司に説明、修正指示を受ける 14:05 議員レクのために議員の事務所に向かう 14:30 議員レク開始 15:30 議員レク終了 15:45 職場に戻る 16:00 朝の局長指示で作成した議員説明資料について課内打合せ 16:30 課内打合せを踏まえて修正 16:50 審議会資料について課長に説明・了解 17:00 国会議員から質問主意書が届き答弁書の作成開始 18:35 翌日の大臣の記者会見での質問内容が記者クラブから届き、大臣の回答メモを至急作成 19:30 大臣の記者会見回答メモについて上司の了解を得て秘書官に送付 20:00 質問主意書の答弁について上司の了解 20:30 国会議員の依頼の挨拶文が完成、メールで議員事務所に送付 21:00 秘書官から、大臣記者会見用の回答メモについて確認の電話、修正指示 21:30 大臣記者会見用の回答メモの修正完了、コピーして広報室に持ち込み 22:30 庁舎内のコンビニが閉まる前に夕飯の買い出し、夕食 24:00 局長から資料修正指示のメールが届き、修正作業  修正したものを課長にメールで送付 24:30 質問主意書の答弁書について官房総務課の審査を受ける 26:00 質問主意書の官房総務課審査を受けて修正作業 27:00 質問主意書の官房総務課審査終了 27:15 質問主意書の答弁書と参考資料を内閣法制局にメールで送付(翌日審査) 27:20 退庁 朝7時に自宅で業務が始まり、27時20分、午前3時を過ぎてようやく拘束を解かれる。その間、ろくに休息もとれないまま、20時間働き続けている。明け方にタクシーで家に帰り、翌日も国会があるため仮眠程度に寝て、また朝7~8時頃には仕事が始まるのだろう。千正氏はこのスケジュールを「忙しい部署の若手のよくある1日の例」と書いている。半年続く通常国会の会期中、連日このような働き方を続けていれば、どれほど健康な人でも心身ともに壊れてしまうはずだ』、時間表示が「27:20」と24:00が上限でなく、そのまま増えていくとは、「霞が関」らしい。
・『国家公務員試験の申込者数が20年で約6割減  霞が関での異常な長時間労働はいまに始まった話ではない。公務員、政治家、メディア関係者にとっては長年の常識であり、「不夜城」「タクシー行列」といった報道をつうじて一般市民にもそれなりに知られてきた。その実態がこの20年ほどでさらに深刻化しているのである。政府の定員削減の影響を強く受けた地方出先機関でも残業が増えているが、霞が関(本府省)では先の例のように国会対応業務が重く、いっそう非人間的な働き方になっている。大臣や副大臣ではない与党の一国会議員の地元挨拶まで官僚が書いているらしい。1人で3人分の仕事を同時にこなしているような労働密度だ。 2019年末に内閣人事局が実施した調査では、30歳未満の男性職員の約15%、30歳未満の女性職員の約10%が、3年以内に辞めたいと回答した(本府省・地方出先機関対象)。また、厚生労働省本省に対象を絞ったアンケートでは、「2年後も厚生労働省で働き続けているか」という質問に対して2割の職員が「当てはまらない」と答えたという。実際に若手の退職が急増しており、国家公務員試験の申込者数も20年で約6割減った。若い世代ほど国家公務員として働くことに魅力を感じなくなっている。 近年こうした危機感が広く共有され、若手公務員の有志が政府に対する提言をまとめたり、Twitterの匿名アカウントで官僚自身が労働環境のひどさを訴えたりするようになった。深夜3時過ぎのタクシーの中で、日々をやり過ごすことに手一杯で政策のことを考える余裕がないとつぶやくその内容は、『ブラック霞が関』で紹介されたような1日の最後に振り絞られた言葉だと思う。私はそうしたツイートを読んで、電通の新入社員だった高橋まつりさんが亡くなる前に投稿したツイートを思い出した。 「働き方改革」を掲げ、民間企業には残業規制やワークライフバランス推進などを求める政府の職員が、なぜこのような働き方のままなのか。実は、その問題を解くための一つのカギが、昨年末に政府自身によって示されている。2020年12月25日に公表された内閣人事局の「在庁時間調査」である』、「30歳未満の男性職員の約15%、30歳未満の女性職員の約10%が、3年以内に辞めたいと回答した」、「国家公務員試験の申込者数も20年で約6割減」、さすが『ブラック霞が関』らしい。
・『「自己研鑽」扱いになっている超過勤務  まず、「在庁時間」という聞きなれない言葉を説明したい。 国家公務員にも「残業」の概念はある。国家公務員の場合、勤務時間法と呼ばれる法律で正規の勤務時間を1日7時間45分/週38時間45分と定め、その時間を超えて勤務したときに「超過勤務」(残業)となる。 ただし、民間企業などでは「36協定」を労使で結ぶことによって労働基準法で定められた1日8時間/週40時間の上限を超える時間外労働(残業)や休日労働が認められるのに対し、原則として労働基準法が適用されない国の職場では、「公務のため臨時又は緊急の必要がある場合」という建前で、各省各庁の長の「命令」によって超過勤務が発生する決まりになっている。 さらに、国家公務員の超過勤務手当を含む人件費はすべて国家予算から支出されるため、国民の代表機関である国会の承認が必要だ。税金を使う以上、人件費は計画的に要求され確保される必要があるが、国家公務員は一般職だけで30万人いて、それぞれが好き勝手に残業をしていると予算の見通しがつかない。そのため、国家公務員の残業予算はかなり機械的に一律で枠が決められてきた。 こうした仕組みを逆手にとって、予算枠を超える分の残業は「命令」を出さず、「職員が自己研鑽のために勝手に庁舎に残っている」ということにすれば、実際は働いていても「超過勤務」は発生せず、手当(残業代)も支払わずに済む。その時間を含めた実際の拘束時間を「在庁時間」と呼んでいるのだ。……そう、これは数年前の電通事件と酷似している。高橋まつりさんの悲劇のあと、2017年に電通の違法残業が公訴され、裁判所は「自己研鑽」などとされてきた時間を労働時間として認定、電通が過去2年分の残業代約24億円を支払った。それから3年以上経つのに、国家公務員で同じ問題が繰り返されている』、「予算枠を超える分の残業は「命令」を出さず、「職員が自己研鑽のために勝手に庁舎に残っている」ということにすれば、実際は働いていても「超過勤務」は発生せず、手当(残業代)も支払わずに済む。その時間を含めた実際の拘束時間を「在庁時間」と呼んでいるのだ。……そう、これは数年前の電通事件と酷似」、「国家公務員で同じ問題が繰り返されている」、「予算枠」がある以上、やむを得ないとはいえ、ブラックが常態化しているのはやはり異常だ。
・『年140億円ほどの「不払い残業代」の可能性  残業予算は表に出てこない数字だが、人事院の年次報告書に超過勤務手当(残業代)支給の平均時間が示されている。そこから本府省の数字を拾うと、2018年は月30時間程度、17年は月29時間程度、16年と15年は月32時間程度となる。霞が関では総じてサービス残業が常態化していることを踏まえれば、一人月30時間程度を残業代の予算額として各府省に与えていると推測できる。この予算を、各府省の人事課などが特に忙しい部署に重点的に配分するなどの工夫をしている。 問題は、この月30時間程度の予算で、霞が関の長時間労働に対する支払いが全てカバーされているかどうかだが、実は、政府は今回の「在庁時間調査」である程度の検証が可能になった。 「在庁時間」は、2008年から人事院などによりサンプル調査がなされていたが、わずかな標本数の調査のため実態がつかめていなかった(というより、あえて把握しなかったのだと思われる)。しかし、2020年に政府・内閣人事局が霞が関勤務の国家公務員約51,000人の10~11月の「在庁時間」を全数調査したため、残業予算とどれくらいの差があるのか概算できるようになったのだ。 調査結果では、職員一人当たりの平均在庁時間は10月に40時間20分、11月に38時間38分だった。したがって、月10時間程度は残業予算を超える「在庁」をしていることが分かった。 ここから先は、規模感をつかむための筆者による粗い試算だ。 指定職約900人、管理職約4,700人、専門スタッフ職約150人など、超過勤務手当の支給対象外の約6,000人を除くと、不払いなのは約45,000人。本府省勤務職員の平均給与から平均残業代単価を出すと、1.25倍の割増のみの低めの概算で、約3,000円/時間くらいだ。10時間では約3万円なので、3万円×45,000(人)=13億5千万円。 ただ、月80時間超(およそ一日4時間超)在庁している6,000人前後の職員は夕食休憩30分を挟むと仮定して、1,500円×20(日)×6,000(人)=1億8千万円を差し引いたほうがいいだろう。それでも、霞が関だけで月11億7千万円程度の実質的な「不払い残業」があると私は試算した。年額にして約140億円というスケールになる。) 先の調査を経て、菅内閣で公務員制度を所管する河野太郎大臣は、1月22日の記者会見で「残業時間はテレワークを含めて厳密に全部付け、残業手当を全額支払う」と述べた(日本経済新聞の記事より)。内閣人事局は全府省の平均在庁時間しか公表していないが、全数調査をしている以上、省庁別・部署別の在庁時間もすべて把握している。それを超過勤務手当の支給実態と照らし合わせれば、どの省庁のどの部署にどれくらい超過勤務手当予算が足りないのか一目瞭然であるはずだ。 本来、その内訳まで主権者たる国民に開示するべきだが、何より一刻も早く予算をつけ、過去の不払い分まで遡及して支払ってもらいたい。職場に蔓延した長時間労働を是正するための第一歩は「サービス残業」によって隠されたコストの可視化だからだ。本当のコストが分かってはじめて、霞が関に必要な人員数と予算を導き出せる。 そして長時間労働には、残業代だけで計れないコストも多くある』、「本来、その内訳まで主権者たる国民に開示するべきだが、何より一刻も早く予算をつけ、過去の不払い分まで遡及して支払ってもらいたい」、「予算」がついておらず、払えないのであれば、「長時間労働」の「内訳」を「開示」する訳にはいかないだろう。
・『心身の健康被害とジェンダー不平等を助長  一つはもちろん労働者の健康被害だ。人事院の年次報告書によると、2017年度にいわゆるメンタル疾患で1か月以上の長期病休をとった職員の比率は、一般職の国家公務員で1.39%(男性1.30%、女性1.76%)だった。厚生労働省「労働安全衛生調査」によれば、2017年のメンタルヘルス不調による民間労働者の長期病休者率は0.4%であり、国家公務員のほうが約3.5倍も多い。膨大な数の公務員が過酷な職場で心を病み、療養を余儀なくされ、苦しんでいる。行政を支える人手が失われるだけではない。このような労働環境を放置した国(使用者)による人権侵害だと言えよう。 また、『ブラック霞が関』にはこう書かれている。「霞が関では24時間365日対応できることが『フルスペック人材』になっているので、フルタイム勤務・残業なしは実質的には短時間勤務のような立場になってしまう」。こうした職場では、家庭でケアを抱えることが多い女性労働者は実質的に排除される。長期病休者で女性の割合が高いのも、本府省の管理職の女性比率が1割に遠く及ばないのも、過労死レベルの労働時間を前提とした職場環境がジェンダー平等を阻害しているからだろう』、「メンタルヘルス不調による長期病休者率」が「国家公務員のほうが約3.5倍も多い」、というのはやはり問題だ。
・『「ケアレス・マン」の量産による代償  このような「フルスペック人材」像は、フェミニズム社会学・経済学では「ケアレス・マン」と呼ばれ、「産む性としての身体的負荷がない」「家庭責任不在の男性的働き方」として有徴化されてきた(杉浦浩美『働く女性とマタニティ・ハラスメント』2009年)。さらに労働法学者の浅倉むつ子は、「ケアレス・マン」は誰かのケアをしていないだけでなく、自分のケアを誰かにさせていると指摘した。 生活を維持するケア労働を誰かに委託する手段は、パートナーが専業主婦/主夫になるか、老親を呼び寄せるか、代行サービスなどで部分的に外注するかくらいだ。つまり、長時間労働の本当のコストには、不払いの残業代だけでなく、「ケアレス・マン」が外部化したケア労働、再生産労働のコストも算入されなければいけない。そのため、生活時間を重視する浅倉は、残業は金銭ではなく時間で清算すべきとの立場をとる。 優秀な官僚のパートナーが、同じく高学歴で勤労意欲のある人である可能性は高い。しかしケアレス・マンと結婚したために自らのキャリアを諦めざるを得なかったというケースは数多あるだろう。その場合の生涯賃金や社会にとっての逸失利益も、長時間労働の本当の「コスト」だ。 私たちは東京オリンピック・パラリンピック組織委員会におけるマチズモに怒ったばかりだ。その問題が追及されている国会と行政の場で、このような性差別と一体の働き方が放置されていいわけがない。どのような職場、家族、地域のなかで私たちは生きていきたいのか。長時間労働の大きすぎる代償を計算することは、今よりマシな未来を想像するための第一歩になると私は考えている』、「優秀な官僚のパートナーが、同じく高学歴で勤労意欲のある人である可能性は高い。しかしケアレス・マンと結婚したために自らのキャリアを諦めざるを得なかったというケースは数多あるだろう。その場合の生涯賃金や社会にとっての逸失利益も、長時間労働の本当の「コスト」だ」、確かにこうした広義の概念で捉えるべきというのには同意できる。

次に、3月20日付け日経ビジネスオンライン「官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00271/031900002/
・『日立製作所や富士通など、日本の大手企業が相次いで「ジョブ型」といわれる雇用制度に移行しています。ジョブ型とは、職務内容を明確に定義して人を採用し、仕事の成果で評価し、勤務地やポスト、報酬があらかじめ決まっている雇用形態のこととされます。一方、日本企業はこのジョブ型に対し、新卒一括採用、年功序列、終身雇用で、勤務地やポストは会社が人事権の裁量で決められる雇用形態を取っており、人事の専門家はこれを「メンバーシップ型」と称してきました。 今、日本企業が進めるメンバーシップ型からジョブ型への移行は何をもたらすのでしょうか。そのジョブ型に対する安易な期待に警鐘を鳴らすのが雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏です。本連載の1回目として、4月1日に新著『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~』(日経BP)を上梓する同氏へのインタビュー記事をお届けします(Qは聞き手の質問)・・・本インタビュー記事最後に開催概要を記載しております。 Q:「日本型雇用が行き詰まっている」ということで雇用を巡る改革の動きは長年続いてきました。今いわゆる「ジョブ型」を中心とした議論が盛んになっています。海老原さんはどんなふうにご覧になっているんでしょうか。 海老原嗣生・雇用ジャーナリスト、ニッチモ代表取締役(以下、海老原氏):僕が人材系の仕事に携わるようになったときの初っぱなの議論が「新時代の日本型雇用」でした。今から30年前くらい、日経連(現在の経団連)が主導したプロジェクトだったんですね。あのとき問題になっていたのは、1990年代のバブル崩壊で業績が落ち込んで、会社の中のポストがなくなったこと。定期昇給で給与が上がり続けるという仕組みも終身雇用も難しくなっている中で「日本型でいいのか」という話でした』、確かに歴史的にみれば、繰り返し問題になってきたようだ。
・『問題は同じなのに、次々と変わるソリューション  Q:それほど今とは変わらない議論だ、と。 海老原氏:昔の資料を探すと、これとまったく同じ言葉がその30年前にもありました。2000年代になってからも、僕が知っているだけでも小泉改革のときの多様な働き方勉強会、あれのときもまったく同じ議論をしているんですよ。 要するに「ゼネラリストで、終身雇用で、定期昇給で、年功序列という仕組みは大丈夫なの?」と。今から6~7年前に僕も多少携わったプロジェクトで言えば、政府の規制改革会議と産業競争力会議、日本再興戦略会議、この3つがありました。3つが並走していて、ここでもゼネラリスト、終身雇用、定期昇給、年功序列で大丈夫なのかという話をしているんですよ。 出発点はいつも一緒で、そのたびに言っていることがちょっと変わっただけ。僕が最初に議論を傍観したときはどうだったかというと、「新しい時代の雇用は3層に分ける。まず長く在籍してもらい経営層を目指す人、それから特定のスキルを持ったテクノスペシャリストみたいな人、こういう人は、(労働市場の)市場価値があってどこでも行ける人だと。そして、短期雇用型のアルバイターみたいな人」という話でした。具体策はその後のものとは違うけど、議論の入り口は一緒だったんですよ。 小泉(純一郎)首相と安倍(晋三)首相のあたりの10年ぐらいにどんな話をしていたかというと、ホワイトカラーエグゼンプションとか高度プロフェッショナル制の話。そして最近になって出てきたのがジョブ型なんですよ。結局、出発点は同じなのにソリューションが全部違うということなんですね。 Q:そもそも日本型雇用の是非がなぜ議論になるのか。あらためてお聞かせください。 海老原氏:まず僕が見る限り、日本型の特徴である「無限定」の雇用の仕組みは人を育てる上で、非常にうまくまわってきました』、どういうことだろう。
・『日本型雇用、人を育てるには適した仕組み  ポストを決めて雇用契約を結び、本人の同意がない限り配置転換ができない欧米の「限定」型の雇用に対して、会社が人事権(配置権)を持ち、他の職種、他の地域への異動(転勤)を命じることができる日本は「無限定」型の雇用システムということですね。 海老原氏:新聞記者さんを例に取りましょう。日経ビジネスは雑誌なのでちょっと違うと思いますけど。新聞記者さんだと、入社してまず「サツ回り」をやらせるじゃないですか。県警とか警察を担当するわけですね。 サツ回りで地方に配属すると何がいいかというと、警察を担当していたら記事になるネタが集まります。つまり自分でまだ記事を取りに行く、探すことができない新人記者にとって警察発表を記事にするというのは最初にやりやすい仕事の仕組みなんです。 (警察幹部への)夜回り取材というのもあります。記者としての足腰を鍛えるためでもあるし、うまい聞き方を身につける訓練になる。人にかわいがられるという意味でも夜回りも大切でしょう。それから地方の何がすごいかというと、その土地の政治、経済、スポーツ、産業……、全部を覚えられる。そういう基礎を身につけて、今度は東京とか大都市に異動させて難しい仕事をやれるようになっていく仕組みなんです。 そうやって仕事をちょっとずつ難しくするというのは、無限定雇用だからできるわけです。例えば経済紙に記者として入ったので「僕は経済しかやりません」とかじゃなくて、何でもやらせられるから簡単な仕事から難易度を上げられる。腕が立ってきたら、ひとつ上の仕事をやらせて、だんだん難しいものに対応できるよう成長するわけです。 つまり何も知らない若者が入ってきて、10年で育てるみたいな意味では非常にうまくできた仕組みだと思うんです。最初の給与は安くて、能力アップに応じてちょっとずつ上がっていくけど、まだ修業期間だからあんまり差はつけない。こういうボトムアップ期には日本型雇用は非常に向いているんですよ。ボトムアップ期については、「新卒一括採用しか入り口がない」ととかくいわれる問題がありますが、ただ、若者は昔から3年で3割転職しているので、これもそんなに大きな問題とは思っていません。就職氷河期のようなことが起きない限りは』、「何も知らない若者が入ってきて、10年で育てるみたいな意味では非常にうまくできた仕組みだと思うんです。最初の給与は安くて、能力アップに応じてちょっとずつ上がっていくけど、まだ修業期間だからあんまり差はつけない。こういうボトムアップ期には日本型雇用は非常に向いているんです」、その通りだ。
・『本当のジョブ型なら、本人の同意なく残業や転勤はさせられない  Q:若手を育てるにはいい仕組みだと。 海老原氏:問題は、例えば35歳以降くらいで能力が上がって、課長とか部長になる人と、それ以外の人に分かれてからなんですね。能力がアップして課長、部長になった人は給与が上がる。それは当然です。でも日本型雇用だと、職能主義といって、ポストの数に関係なく昇級・昇給できる仕組みをとっているから、平社員のまま止まっている人も給与が上がるんですよ。これがおかしい。 会社員生活の前半戦のことはあんまり問題じゃなくて、後半戦に右肩上がりの賃金カーブが続いていくので、経済成長が止まると厳しくなる。それで「どうしたらいいの? いろいろな仕組みを入れなきゃね」というのが、ずっと議論のテーマなわけです。 Q:欧米を見習ってジョブ型を導入すれば解決するんでしょうか。 海老原氏:まず言っておきたいのは、ジョブ型にするなら無限定雇用をやめないといけない。 Q:ジョブ型にしたのに会社の都合で仕事の内容が違うポストに異動させたり転勤させたりするのは理屈に合わないというわけですね。では欧米のジョブ型のように限定型の雇用にすると何が起こるんでしょうか。 海老原氏:まず平社員のままだと給与が上がるということはなくなります。ジョブ型ですから。その代わり限定型になるので、本人が同意しない滅私奉公的な残業はなくなります。それから会社が勝手に異動を命じることもできません。つまり人事権を企業から取り上げることになるわけです。給与は上がらないけれども、残業は発生しませんし、異動もない。欧米型、いや、正確には「欧米のノンエリート型」にするというのはそういうことです。 Q:欧米でも将来経営層を目指すようなエリート社員は残業も転勤もいとわず猛烈に働きますが、ノンエリートはジョブ型で限定型の雇用だから、原則として、定時に仕事が終わって、転勤もない。そのやり方を日本の企業に入れて果たしてフィットするのか、ということなんですね。 海老原氏:そうです。でも残業も人事異動もさせられないなんて、日本の企業は嫌なわけじゃないですか。 働く側からするとどうなのかというと、雇用保障が弱くなるんですよ。ジョブ型で1つのポストでしか働かないわけだから、不況とか会社の方針転換などで、そのポストがなくなったら雇用継続する道理はない。そんな先行きまで労働者に提示したら、「クビになるのは嫌だから異動があってもいい」という話になるんですよ』、「日本型雇用だと、職能主義といって、ポストの数に関係なく昇級・昇給できる仕組みをとっているから、平社員のまま止まっている人も給与が上がるんですよ。これがおかしい」、既に職能給的色彩を強め、「平社員のまま止まっている人」は「給与が上が」らないように賃金体系を変えている企業も出てきた。
・『実は労使とも今の方が居心地がいい  結局、企業も働く方も捨てるものを捨てられないからこうなっている. Q:労使とも既得権があるから話が進まない、そういうことなんですか。 海老原氏:まず経営側が分かってない。分かっているのは労務の相当詳しい人間だけ。それ以外の経営側の人は、ジョブ型で必要になるジョブディスクリプション(職務定義書、JD)を書くと欧米型になるみたいに思っているし、職種別採用をすると欧米型になると思い込んでいるだけで、なぜ欧米型のノンエリートなら給与が上がらなくて、なぜ社員が早く帰れるか突き詰めて考えてない。出世も昇進もなくなって、給与が安くなる。一方で、負荷のある仕事がなくなるし、早く帰れることができる。こういう話がセットになっていることを知らないんですよ。 それから、職種別採用をすると、その職種に詳しい人がその仕事しかやらないから早く帰れるんじゃないかとか思っている。でもエンジニアなんて今でもエンジニア採用で入っているわけなんですよ。でも早く帰れてますか? 経理とかITも職種別採用で入社したときからずっと経理をやっている人が多い。でも早く帰れないんですよ。そんなもの、いわゆる職種別採用をやっても解決しない。ここでJDの話になるわけです。欧米だとJDに仕事が明確に書かれているから、あれこれ余計なことは頼まれない、と。 でもね、欧米のジョブディスクリプションを見れば、実際にはもう細かいタスクなんて書いてない。昔はタスクが書いてあって、このタスクをやれば帰れるという仕組みだったけど、今はそうじゃない。周囲の仕事も手伝うとか、規定にない場合は上司の判断に委ねるとか、書いてあるんですよ。で、もう明確に規定などできなくなっている。その結果、何が起きているか。 今度は人事コンサルタントがそれを見て、タスクではなく、責任とか理念とか職責とかが書いてある、いわゆる「グーグル型」に変えようみたいなことを言っているわけです。それって日本の職責グレードとか役割給とあんまり変わらないじゃないと僕は思うんですね』、「実は労使とも今の方が居心地がいい」、同感である。
・『キャリアの後半では昇給しにくくなる  Q:タスクだと具体的な感じがしますけど、職責とか言われると、あいまいな印象がありますね。 海老原氏:「ミッション」とかになるわけなんですよ。ミッションとかコンピテンシーってそんなに変わるものではないし、何より、それを決めても職場に審判員がいて、「あなた職責違反です!」って四六時中ジャッジしない限り霧消します。だから日本じゃ職責も役割も大してうまくいってません。こんなような話をずっとやっているんですよ。 「ジョブ型って本当に何なの?」って考えていけば、これは企業の人事権が弱くなるということ。それが1つ目の結論なんですよ。 2つ目はポストで人を雇うということ。欧米の企業は上から下までポストの数がまず決まっている。それは経営計画で全部決まっているんですよ。「あれ、人が余っちゃった」となったら、「さよなら」になる。ポスト数が先に決まっていて、人が足りなければ採りなさい、余っていたらさよならって、ポストで決まるわけです。つまり上へ行くのも横に行くのも、ポストがなかったら行けない仕組みなんです。ジョブ型というのは、ポストで人を雇う仕組みなので、さっきも言ったように会社が一方的に異動を命じる人事権はなくなります。 労働者側から考えたら、いくら頑張ってもポストが空いていなければ、上に行けなくなるんですよ。例えば入社3年目くらいの若手で、アソシエイトからシニアに上がれる力があっても、シニアの席が空いていなかったら、1個も上がらないわけなんです。 これまで日本企業ではポストが空いていなくても職能等級では上がることができた。いや、下位等級には「ポスト数」なんて定員概念はほぼなかった。3級だったのが4級までは、2年くらいまあまあ頑張ればみんないけて、給与も上がった。そんな制度だったのが、ジョブ型だとポストが空いていなければ上がらなくなっちゃう。 一般企業だと課長になれない人って、今、54%ぐらいいる。その54%のうちほとんどが係長職能等級まではいっているんですよ。係長の職能等級なんていくらでも奮発していいわけ。でもジョブ型だと物理的な「係」の数しか係長のポストはないわけですから、係長にもなれない人がたくさん出る。 だからジョブ型にしたら、キャリアの後半では給与ってなかなか上がらなくなるんですよ。でもそんな人事管理は企業側も面倒くさいし、上がらなくて不平不満を言う人も出る。さらにクビを切らなきゃいけない人も出る。企業側も怖いし、労働者側も嫌だから、立ち入らないんですよ、この議論に。それが一番よく分かっているのはハイレベルの労務の専門家だけなんです。(続く)』、「ジョブ型って本当に何なの?」って考えていけば、これは企業の人事権が弱くなるということ。それが1つ目の結論なんですよ)、結局、日本企業では企業側にも本格導入のインセンティブはなさそうだ。

第三に、3月22日付けダイヤモンド・オンライン「ソニー社員が働きがいを感じる「実力主義」の中身、報酬差は最大240万円も!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/265502
・『近年、ようやく日本企業でも進みはじめた働き方改革。しかしソニーでは、30年前からフレックスタイム制を始め、2015年からは年次によらず現在の役割に応じて等級や報酬が決まるジョブグレード制を導入するなど、働き方改革の面でも先端企業だった! 今回は、OpenWorkが行った『社員が選ぶ「働きがいのある企業ランキング2021」』でも5位にランクインしたソニーに話を聞いた』、興味深そうだ。
・『創業時からの理念は「実力本位」「自由闊達」  「形式的職階制を避け、一切の秩序を実力本位、人格主義の上に置き、個人の技能を最大限に発揮せしむ」「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」 これらはいずれも、ソニーの前身である東京通信工業の『設立趣意書』に書かれた創業者の言葉だ。同社のエレクトロニクス人事部門・人事企画部・報酬Gpの陰山雄平統括課長は、「ソニーの企業理念や文化、人事制度の原点は、創業者の言葉にある」と語る。 とはいっても、ソニー社員がイメージする同社の企業理念や文化は一つではなく、十人十色なのだという。なぜなら「多様性」こそが、ソニーらしさだからだ。 ソニーでは人材戦略を考える上で、人材を「群」ではなく「個」と捉えて、個を生かす機会の提供と支援を行ってきた。つまり、意欲あふれる社員の成長が会社の成長につながると考える「選び合い、応え合う関係性」が基本的な人事理念だという。 実際にOpenWorkに寄せられている同社の社員クチコミにも、「若いうちからわりと任せてもらえたので、たくさん勉強と経験を積むことができ、働きがいは常に感じて楽しく働くことができました」(マーケティング、女性)という声があり、若手社員の成長を積極的に支援していることが分かる。 では、多様な社員が成長を実感しながら働けるという同社では、具体的にどんな制度で社員の働きがいを支えているのか。今回は、3つのポイントを厳選して、ソニー社員が働きがいを感じる秘密を紹介していきたい。 <働きがいのある企業のポイント(ソニー編)> (1)現在の役割で等級、報酬が決まる「ジョブグレード制度」 (2)1992年から開始!柔軟な働き方ができる勤務制度 (3)50年以上前から当たり前「社内募集制度」』、「創業時からの理念は「実力本位」「自由闊達」」、伝統的な日本的経営とは元々違うようだ。
・『年功序列は一切なし! 現在の役割と成果で等級・報酬が決定  近年は徐々に崩れつつあるものの、日本企業に根深く残る年功序列制度。「なぜあの全く働かない上司が、自分より高い給料をもらっているのか」といった不満を、いまだ多くの日本企業で働く社員が持っていることだろう。 それに対してソニーでは、2015年度から年次によらず、「現在の役割(ジョブ)」に応じて等級が定義される「ジョブグレード制度」を開始した。 等級は、基本の等級群にあたる「インディビジュアルコントリビューター等級群(I)」と「マネジメント等級群(M)」に分かれている。I等級群は1から9まで設定されており、グレードは数字が大きいほど上位になる。 I6からは高度専門家やプロジェクトマネジャー、I9は業界レベルの専門家や社内技術リーダーというグレードに相当する。同社はエンジニア中心の会社でもあるため、マネジメントの道だけでなく、高度な専門性を生かしたキャリアを構築することも可能だ。 また、その時の役割が変動すればグレードも変わり、I等級群とM等級群を行き来することもできるという。 「実際に、20代でM等級群の『統括課長』という立場になっている社員もおり、年上の部下がいるのもよくあること。新入社員については一般的には入社2年目の7月にI等級群3の『担当者』というグレードが付くが、優秀な人材は配属先での研修が一段落する入社3カ月でそのグレードが付くケースもある」(陰山統括課長) では、報酬についてはどのように決められるのか。これも、個人の成果に応じて支給額がダイナミックに変動する仕組みになっている。まずベース給については、等級によって異なり、その水準は、大企業50社を調査することで適正な水準を決めている。 年2回支払われるボーナスのうち、12月支給分はジョブグレードごとに金額が決まっている固定給的なもの。その一方で、大きな差が生まれるのが6月支給分ボーナスの算定だ。これは、個人の実績とソニーの業績、事業会社の業績によって変動するものだという。 この個人の実績を反映すると、賞与額は2020年度のジョブグレードがI4(上級担当者)のケースで、最高が330万円、最低は93万円となり、約240万円の差が生まれる形になったという。 働きがいを感じる上でも「報酬の適正感」は重要だが、同社では役割や実績に応じた給与が支払われるため、常に成果を出さなければならないプレッシャーはあるものの、納得感のある報酬体系といえるだろう』、「年功序列は一切なし! 現在の役割と成果で等級・報酬が決定」、これならまさに「納得感のある報酬体系」だ。
・『30年前からフレックスタイム制! 先駆者ぶりが分かる勤務制度の歴史  働き方改革やコロナ禍によって、いよいよ多くの日本企業が受け入れ始めた多様な働き方だが、実はソニーは30年ほど前からすでにさまざまな勤務制度を導入して、社員が柔軟な働き方ができる環境を整えてきた。 まず1992年に導入されたのが、「月間フレックスタイム制度」だ。月間所定労働時間とコアタイムが設定されている勤務スタイルで、始業・終業時刻を選択可能。そのため、その日の業務内容に応じて労働時間を調整できる。今ではこうした制度を導入する企業も増えているが、30年前から導入されていたというから驚きだ。 94年には「育児・介護短時間勤務制度」、95年には時間より成果を重視する「裁量労働制」を導入。2008年には「在宅勤務制度(場所は自宅、回数は週1回、時間単位は週2回)」、16年には「テレワーク制度(場所にサテライトオフィスを追加)」、18年には全社員が場所を選ばずにテレワークを利用可能とする「フレキシブルワーク制度(回数は月10回)」が始まった。コロナ禍の現在では、回数制限なく、個々人が業務内容に応じて出社するかどうかを選択できており、約8割が在宅などテレワークでの業務を行っているという。 「こうした柔軟な働き方のできる勤務制度は、企業理念や文化にも紐づいており、自律して働くソニーの社員には合っていた。そのため、コロナ下でのテレワークについても受け入れやすい素地があったと考えている」(陰山統括課長)』、「30年前からフレックスタイム制」とは驚いた。さすが先進的だ。
・『1966年に導入された社内募集制度 「キャリアは自分で築く」のが当たり前  もう一つ、同社で先端的に導入されていたのが、上司の許可なく、社員自らが手を挙げて希望する部署やポストに応募できる「社内募集制度」だ。今でこそ多くの企業が導入しているが、同社では1966年と50年以上前から始まっている。 年間700人以上が応募しており、200人弱が異動。そのため決して特異な例ではなく、人事異動の一つの手段として機能している制度なのだという。人事異動をただ待つのではなく、自分でキャリアを切り開けるチャンスになっている。) 「当社で働いていれば、部署に1人や2人は社内募集制度で異動してきた人がいる。それくらい当たり前の制度だ。社員個人が成長するにあたってのキャリアの選択肢を広げるもので、『選び合い、応え合う関係性』という人事理念にも沿っている制度だと考えている」(陰山統括課長) また同社は、社員の成長ややりたいことを促進する場も設けている。いくつも場はあるが、一つの例がソニーミュージックグループの新規事業創出プログラム「Enter Lab.」だ。社員が将来の目標としている夢やひそかに練っているビジネスアイデアを会社がサポートしてビジネス化するもので、なんとあの大ヒットしている2人組の音楽ユニット「YOASOBI」はここから誕生したという。 社員同士が交流し、学び合える場も設けられている。「PORT(ポート)」と呼ばれる場で、多様な社員が主体的に参加型セミナーを企画し、主催するというものだ。これまでは品川本社にあるPORTで行われてきたが、コロナ禍で集まることが難しいため、今ではオンラインで開催されている。例えば、「2050年のキャリア」についてや、話題の書籍「シン・ニホン」を取り上げた講座など、多岐にわたるそうだ。 仕事もある中でどんな社員がセミナーを企画するのかを陰山統括課長に尋ねると、「人事が募集を始めると、やりたいという人が殺到する」ほど、さまざまな社員が応募してくるという。積極的な人が多いのも同社の魅力なのだろう』、「社内募集制度 「キャリアは自分で築く」のが当たり前」、素晴らしいことだ。
・『オープンなコミュニケーションと手触り感のある成果がカギ?  ここまで制度面を中心に紹介してきたが、ソニー社員が働きがいを感じる理由について陰山統括課長は「『オープンなコミュニケーション』と『手触り感のある成果』があるからではないか」と表現する。 多様な社員が多様性を認め合いながら働けるオープンな環境で、実力によって適正に評価され、報酬に跳ね返る。ソニーという大企業で働く中で、自らが関わる製品が世に出ることで感じられる働きがいもあるだろうが、やはり企業理念や文化、それに基づく人事制度や働く環境は、社員の働きがいに欠かせない要素といえそうだ』、「創業時からの理念は「実力本位」「自由闊達」」、やはり「ソニー」は普通の日本企業とは全く違うエクセレントさを生まれながらに備えているようだ。
タグ:日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス 働き方改革 (その31)(官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」、官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」、ソニー社員が働きがいを感じる「実力主義」の中身 報酬差は最大240万円も!) 西口 想 「官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」」 『ブラック霞が関』 時間表示が「27:20」と24:00が上限でなく、そのまま増えていくとは、「霞が関」らしい。 「30歳未満の男性職員の約15%、30歳未満の女性職員の約10%が、3年以内に辞めたいと回答した」、「国家公務員試験の申込者数も20年で約6割減」、さすが『ブラック霞が関』らしい。 「予算枠を超える分の残業は「命令」を出さず、「職員が自己研鑽のために勝手に庁舎に残っている」ということにすれば、実際は働いていても「超過勤務」は発生せず、手当(残業代)も支払わずに済む。その時間を含めた実際の拘束時間を「在庁時間」と呼んでいるのだ。……そう、これは数年前の電通事件と酷似」、「国家公務員で同じ問題が繰り返されている」、「予算枠」がある以上、やむを得ないとはいえ、ブラックが常態化しているのはやはり異常だ 「本来、その内訳まで主権者たる国民に開示するべきだが、何より一刻も早く予算をつけ、過去の不払い分まで遡及して支払ってもらいたい」、「予算」がついておらず、払えないのであれば、「長時間労働」の「内訳」を「開示」する訳にはいかないだろう 「メンタルヘルス不調による長期病休者率」が「国家公務員のほうが約3.5倍も多い」、というのはやはり問題だ 「優秀な官僚のパートナーが、同じく高学歴で勤労意欲のある人である可能性は高い。しかしケアレス・マンと結婚したために自らのキャリアを諦めざるを得なかったというケースは数多あるだろう。その場合の生涯賃金や社会にとっての逸失利益も、長時間労働の本当の「コスト」だ」、確かにこうした広義の概念で捉えるべきというのには同意できる 確かに歴史的にみれば、繰り返し問題になってきたようだ 「何も知らない若者が入ってきて、10年で育てるみたいな意味では非常にうまくできた仕組みだと思うんです。最初の給与は安くて、能力アップに応じてちょっとずつ上がっていくけど、まだ修業期間だからあんまり差はつけない。こういうボトムアップ期には日本型雇用は非常に向いているんです」、その通りだ 「日本型雇用だと、職能主義といって、ポストの数に関係なく昇級・昇給できる仕組みをとっているから、平社員のまま止まっている人も給与が上がるんですよ。これがおかしい」、既に職能給的色彩を強め、「平社員のまま止まっている人」は「給与が上が」らないように賃金体系を変えている企業も出てきた 「ジョブ型って本当に何なの?」って考えていけば、これは企業の人事権が弱くなるということ。それが1つ目の結論なんですよ)、結局、日本企業では企業側にも本格導入のインセンティブはなさそうだ。 「ソニー社員が働きがいを感じる「実力主義」の中身、報酬差は最大240万円も!」 「創業時からの理念は「実力本位」「自由闊達」」、伝統的な日本的経営とは元々違うようだ。 「年功序列は一切なし! 現在の役割と成果で等級・報酬が決定」、これならまさに「納得感のある報酬体系」だ 「30年前からフレックスタイム制」とは驚いた。さすが先進的だ 「社内募集制度 「キャリアは自分で築く」のが当たり前」、素晴らしいことだ 「創業時からの理念は「実力本位」「自由闊達」」、やはり「ソニー」は普通の日本企業とは全く違うエクセレントさを生まれながらに備えているようだ
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ベーシックインカム(その2)(ベーシックインカムはクリエイティブな脳を活性化させる=茂木健一郎、竹中流ベーシックインカムはどこが問題なのか だまされるな、本質は新種の「リバース年金」だ、崩壊都市の再生をかけたNY市長選 「ベーシックインカム」か「ガーディアン・エンジェルス」か) [経済政策]

ベーシックインカムについては、昨年1月17日に取上げた。今日は、(その2)(ベーシックインカムはクリエイティブな脳を活性化させる=茂木健一郎、竹中流ベーシックインカムはどこが問題なのか だまされるな、本質は新種の「リバース年金」だ、崩壊都市の再生をかけたNY市長選 「ベーシックインカム」か「ガーディアン・エンジェルス」か)である。

先ずは、昨年8月2日付けエコノミストOnline「ベーシックインカムはクリエイティブな脳を活性化させる=茂木健一郎」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200721/se1/00m/020/022000c
・『<インタビュー「私が考えるベーシックインカム」> ベーシックインカムを支持する人の間でも、その目的や手法についての考え方はさまざまだ。財政や社会運動などの分野で幅広く活躍する4人の論者に聞いた。(Qは聞き手=市川明代/桑子かつ代・編集部の質問)』、「4人の論者に聞いた」とあるが、どう考えても、「茂木」氏がこれらの「論者」の見方を紹介するといった形式のようだ。
・『Q:ベーシックインカム(BI)を提唱する一番の理由は。 ■英国の心理学者、ジョン・ボウルビィが提唱した「セキュア・ベース(安全基地)」という概念がある。IQ(知能指数)は遺伝要因が半分で、後は後天的に育まれる。子どもが学んだり、挑戦したりするためには、心の安全基地が必要だが、親にも個性があって、全ての親が必ずしも子どもに安全基地を提供できるとは限らないので、社会的に保障する必要がある。 BIはこれによく似ている。大人でも子どもでも、明日どうなるかも分からず生活に追われていると、ゆっくり自分の将来を考えたり、スキルや知識を身につけたりすることができない。BIは脳の発育や脳の創造的な働きへの「投資」と捉えられる』、「大人でも子どもでも、明日どうなるかも分からず生活に追われていると、ゆっくり自分の将来を考えたり、スキルや知識を身につけたりすることができない。BIは脳の発育や脳の創造的な働きへの「投資」と捉えられる」、確かにその通りだろう。
・『Q:BIによって働くモチベーションがなくなるとも言われる。 ■『種の起源』を執筆したダーウィンは、お金に困ったことがなく、生涯一度も仕事に就いていない。それでも進化について考えるクリエーティブな仕事をやめなかった。僕は英国に留学していたし、仕事で米国や欧州へよく行くが、何らかの経済的な裏付けがあって、何もしなくても1~2年は大丈夫、という研究者たちがいた。そういうところから文化やイノベーションが生まれるという実感がある。日本は日銭を稼がないと家賃も払えないような状況が当たり前になってしまっている』、「BIによって働くモチベーションがなくなる」ことはなさそうだ。
・『出発点を再定義  Q:お金のあげっぱなしになってしまい、国全体の発展につながるのか、という懸念も指摘される』、■ジャック・マー氏が中国アリババグループを起業して中国の経済はすごく伸びたし、米テスラなどの創業者イーロン・マスク氏によって米国の宇宙開発もぐっと進歩した。でも、そういう人材が出てくるまでに何年かかるのかは誰にも分からない。とても息の長い話だ。国としてもある程度、覚悟を決める必要がある』、なるほど。。
・『Q:イメージしているのは、BIがあればそれだけで生きていける社会か。 ■BIは「ゼロ」を定義し直すということなのではないか。つまり、収入もなにもないところをゼロとするのではなく、月10万円もらうところが出発点になる。そこからどれだけ稼げるかはその人の才覚や努力次第、ということだ。 現代はお金だけじゃなく、いろいろなものが生きていくうえで必要になっている。例えば、スマートフォンなどインターネットにアクセスできる環境がないと就職活動もできず、その環境があるかないかでその後の人生が大きく左右される。これからは、個人がインターネットにアクセスする環境も国が給付する時代になっていくのではないか。(茂木健一郎・脳科学者)』、「これからは、個人がインターネットにアクセスする環境も国が給付する時代になっていくのではないか」、というのは興味深い見方だ。

次に、10月11日付け東洋経済オンラインが掲載した早稲田大学大学院経営管理研究科教授の岩村 充氏による「竹中流ベーシックインカムはどこが問題なのか だまされるな、本質は新種の「リバース年金」だ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/380921
・『ベーシックインカムの議論が盛り上がっている。きっかけは、2001年からの小泉純一郎内閣で経済財政政策担当大臣・金融担当大臣に就任、日本の金融システム建て直しに力を振るったとされる竹中平蔵氏の最近の発言にあるようだ。まずは氏の発言を伝えるインタビュー記事を読んでみよう。 「これまでの現金給付は、消費刺激効果がなかったと言われるが間違いだ。これは景気刺激策ではなく、生活救済策だ。10万円の給付はうれしいが、1回では将来への不安も残るだろう。例えば、月に5万円を国民全員に差し上げたらどうか。その代わりマイナンバー取得を義務付け、所得が一定以上の人には後で返してもらう。これはベーシックインカム(最低所得保障)といえる。実現すれば、生活保護や年金給付が必要なくなる。年金を今まで積み立てた人はどうなるのかという問題が残るが、後で考えればいい」(週刊エコノミスト誌6月2日号『コロナ危機の経済学』より) 追記しておくと、この発言のうち「月に5万円」の部分は、9月のテレビ番組(BS-TBS)出演では「月に7万円」に増額されているようだが、さすがに元経済財政政策担当大臣の発言である。彼の一声で、これまではやや理念的に議論されてきただけの感があったベーシックインカム論、にわかにコロナ後の社会におけるセーフティネットのあり方として舞台中央に進出してきた感もある。 ちなみに「月に7万円」とはずいぶん塩辛い数字だが、日本の生活保護の平均月額支給額約15万円の半分は医療費支給という現状などから見ると、この金額辺りが「生活」というよりは「生存」のための最低ラインとは言えるかもしれない。 どうだろう、読者は竹中提案に賛成だろうか』、「月に7万円」、「この金額辺りが「生活」というよりは「生存」のための最低ラインとは言えるかもしれない」、確かに「塩辛い数字だ」。
・『コロナ禍で注目されたベーシックインカム  まずは、ベーシックインカムそのものについて簡単に解説しておこう。すべての国民あるいは市民や住民に一定の金額を、他の条件とかかわりなく、つまりお金持ちにも貧乏人にも、元気に働ける人にもそうでない人にも、政府が一定の金額を一律に給付する、というものだ。 この考え方の歴史は古い。ものの本によると、発想の源は米国独立戦争当時の思想家トマス・ペインにまでさかのぼるとされている。近年は、グローバリズムがもたらした格差拡大や経済成長の陰での貧困深刻化に対する問題意識もあって注目度が高まっている。2017年には、フィンランドやカナダのオンタリオ州で、一種の「社会実験」としてではあるが、一定地域に一律の現金支給を行うなどの試みなどがあった。 それを加速させたのが今回のコロナ禍である。本年5月のスペインでは、ベーシックインカムの名の下に、200万人を超える生活困窮者を対象とする現金支給政策が開始されている。スペインの政策には受給に生活困窮などの条件が付いているので、こんなものはベーシックインカムでないという批判もあるようだ。それはさておき、たとえばドイツやスコットランドなどでも導入を求める動きが起こっている。日本の全国民一律10万円給付も、ベーシックインカムという旗印こそ掲げていないが、実質的にはスペインの例よりはベーシックインカムに近いといえる。 とはいえ、「毎月7万円をベーシックインカムとして全国民に支給」などと言われると、心配になる向きも少なくあるまい。心配の種は、こうした政策が「働かないこと」への報奨になるのではないかという点、そして「財源」をどうするのかという点、大きくはこの2点だろう。 もっとも、前者つまりベーシックインカムが働かないことへの報奨になるという点については、そうでもないはずという議論もできる』、「日本の全国民一律10万円給付も、ベーシックインカムという旗印こそ掲げていないが、実質的にはスペインの例よりはベーシックインカムに近いといえる」、確かにその通りだ。
・『「効率的な生活支援策」とはいえる  理屈が好きな経済学者の間でこそ通用するような話なのだが、「人頭税の効率性」とでも呼べそうな命題がある。個々の人の資産や所得の状況にかかわりなく一律同額の税金を取り立てるのが人頭税だが、そうした税金のほうが、たとえば労働することで得られる報酬の多寡に応じて課税する所得税より、労働市場での取引に対する介入の度合いが小さく、したがって市場メカニズムの効率性が最大限発揮されるなどと論ずるのである。 ところで、この議論とパラレルに考えると、ベーシックインカム推進派の主張もあながちナンセンスではなくなる面がある。なぜなら、人頭税が最も効率的な税ならば、マイナスの人頭税とも言えるベーシックインカムは最も効率的な生活支援策ということになるからだ。この辺り、その資産効果は、というようなことまで考え始めるとあまり単純でない面もありそうなのだが、その種の面倒な話はほどほどにしよう。 海外で行われた「ベーシックインカム実験」の結果などをみると、一律現金支給で人々が働かなくなるという現象は、少なくとも短期的には観察されていないようだ。だから、今のコロナ禍という現実に対してベーシックインカムに答を見いだそうとすること、それ自体はナンセンスではない。 では、竹中提案に問題はないのか。そんなことはない。その第1は、彼の提案がそもそもベーシックインカムにすらなっていないところにある。 もう一度、彼の発言を伝える記事を読んでみよう。彼は、自身の提案をベーシックインカムだと言いながら、他方で「所得が一定以上の人には後で返してもらう」と付け加えている。しかし、いったん給付しながら後で返してもらうというのでは、政府による生活資金貸付と同じことだ。単純な貸付と違うのは「所得が一定以上の人には」という条件が付いていることだが、そんな条件を付けても、彼の提案がベーシックインカムになっていないことに変わりはない。 住宅資金を借りて後で返済する住宅ローン(モーゲージ)の順番を逆にして、住宅を担保に生活資金を借りて後で住宅を売って返済するローン商品を、「リバースモーゲージ」と呼ぶ。その用語法を借りれば、竹中提案は要するに「リバース年金保険」であって、ベーシックインカムなどではないことになる。彼の提案の本質は、ベーシックインカムつまり全国民対象の無償現金給付ではなく、全国民を網に掛ける強制的国営金融プランの一種なのである』、「全国民を網に掛ける強制的国営金融プランの一種」、言い得て妙だ。
・『「後で返してもらう」ことの問題点  そして、ベーシックインカムを金融プランにすり替えてしまうことは別の問題を生む。それが金融関係者ならおなじみの「モラルハザード問題」である。ベーシックインカムで給付を得た人が「所得が一定以上なら返してもらう」などと言われたらどうだろう。カネをもらうのはうれしいが、もらったカネを返すのは嫌だ、だから、後で働くのはほどほどにしておこうという気分も生じそうだ。 これがモラルハザードでなくて何だろうか。もちろん、かつての金融危機でモラルハザード問題と格闘した実績のある竹中元大臣のことだ。きっとここには深い考えがあるのだろう。できたら、それを聞かせていただきたいものである。 そして、もう1つ。ここでの竹中氏、給付の財源についてどう考えているのだろうか。そこもわからない点である。必要になる資金は軽く見過ごせるような規模ではない。日本の人口は1億2000万人超だから、生活ではなく生存ぎりぎりラインのはずの1人当たり月額7万円給付でも、総費用は何と年額100兆円を超える。これは現在の一般会計規模にも匹敵する大きさである。それを論じないままで「全国民に一律定額給付」などと言ってほしくない。 この点、竹中氏へのインタビュー記事には生活保護と年金をまとめて縮小あるいは廃止して財源とすることを考えているような節がある。だが、これまた気になる点である。生活保護をベーシックインカムに吸収するという話なら聞いたことがあるが、年金保険をベーシックインカムに吸収などというのはありえない筋と言うほかはない。 厚生年金であれ国民年金であれ、そこに積み立てられている資産は年金制度に参加していた人々が過去に積み立てた汗の結晶であり、国家が人々に贈与を行うための準備資産などではない。生活保護と年金は別のものなのだ。それを混同して「年金を今まで積み立てた人はどうなるのかという問題が残るが、後で考えればいい」などと片付けてしまっては、日本という「国のかたち」が変わってしまう。 ベーシックインカムを政策メニューに入れるのなら、私自身の前回寄稿『菅義偉は安倍晋三のような悪代官になれるのか』(9月30日付)でも書いたように、消費税と法人税あるいは個人所得税との関係整理など、税制全体の全面的な再デザインが必要になるはずなのである』、「生活保護と年金は別のものなのだ。それを混同して「年金を今まで積み立てた人はどうなるのかという問題が残るが、後で考えればいい」などと片付けてしまっては、日本という「国のかたち」が変わってしまう」、その通りだ。
・『財源と税制改革の議論なしに語れない  私がベーシックインカムに関する議論を聞くときいつも思うのは、それを唱えるのなら、財源つまり税の問題とセットで議論すべきだということである。 ベーシックインカムとは直接的対価なき政府による給付であり、税とは直接的対価なき政府による賦課である。ベーシックインカムと税とは、どちらも政府と家計との間での市場外における経済価値の強制移転であり、向きが反対になっているだけのコインの表裏なのだ。 繰り返しになるが、ベーシックインカムを唱えるのなら、提唱者が財源をどう確保しようと思っているのか、年金をいじるのではなく税制全体をどう変えようと思っているのか、それを明らかにして世に問うてほしいものである。 ベーシックインカムにおけるさまざまな問題については、私も拙著『国家・企業・通貨』(2020年2月・新潮選書)で今後の国家のあり方とも絡めてやや懐疑的な見方から、他の観点も含めて議論をしているので、ご関心のある方は読んでいただきたい』、「ベーシックインカムを唱えるのなら、提唱者が財源をどう確保しようと思っているのか、年金をいじるのではなく税制全体をどう変えようと思っているのか、それを明らかにして世に問うてほしいものである」、同感である。

第三に、2月11日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家の冷泉彰彦氏による「崩壊都市の再生をかけたNY市長選、「ベーシックインカム」か「ガーディアン・エンジェルス」か」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2021/02/ny_1.php
・『新型コロナウイルスによる社会的影響ということでは、ニューヨーク市の状況は非常に厳しいものがあります。人口8400万人の都市において、現在までの陽性者が累計で64万7000人(人口比7.7%)、死者2万7856人(人口比0.03%)というのは、今ではアメリカの平均値よりは「まし」な数字となっています。 ですが、都市機能ということでは瀕死の状態が続いています。まず国際観光都市としての機能は停止、そしてミュージカルや演劇、音楽の拠点都市という機能もほぼ停止、そして知的労働がほぼ100%テレワークに移行したアメリカでは、オフィス関連の経済も低迷しています。その結果として、レストラン業界では現時点で全体の50%近くが閉店に追い込まれており、最終的にはコロナ禍前の3分の1が生き残るかどうかという予測もあります。 経済の低迷、雇用の崩壊が進む一方で、治安の悪化が恒常化しています。治安ということでは、まずコロナ禍の第1波が猛威を振るった昨年春には、24時間営業を中止して閉店している夜間の店舗などを狙った侵入盗が増加しました。また、感染拡大防止のために、刑務所から臨時に釈放された受刑者がホームレス化したことも問題となりました。 また夏場以降は、ランダムなターゲットを狙った乱射事件が散発的に起きています。また、乗客の減った地下鉄や郊外鉄道の車内でも、まるで80年代に戻ったかのような治安の悪化が見られます。そんな中で、市内の富裕層の人口は過半数がすでに市外に流出していると言われています。昨年秋にはこうした状況を受けて、ニューヨーク市内で家具の中古市場が異常に活性化するという現象も起こりました』、「ニューヨーク」はコロナ禍までは治安が改善したといわれていたが、コロナ禍ですっかり以前の状態に逆戻りしたようだ。
・『BI導入を訴えるヤング  こうした中で注目されているのが、今年2021年11月に予定されている市長選挙です。2008年に法改正がされ、市長には3選が禁じられたため、現職のビル・デブラシオ市長は退任となり、新人が争うことになります。 民主党、共和党ともに候補者を決定する予備選は6月に予定されています。ですから、最終的な選挙の構図はそれまでに二転三転するかもしれません。そうではあるのですが、現時点では非常に興味深い対立構図が生まれています。 まず民主党では、10名以上が名乗りを上げていますが、その中から一歩抜け出しているのはアンドリュー・ヤング氏です。台湾系でテック関連の企業家であったヤング氏は、「BI(ベーシックインカム)」の導入を主張して、2020年大統領選挙の予備選に出馬、最終的には撤退しましたが、貧困問題解決の切り札としてBIの施行をブレずに説き続けた姿勢は、若者を中心に大きな反響がありました。 そのヤング氏が、今度はNY市長選に出馬しています。そして、今回の公約もBIが柱です。崩壊したNYの都市機能の中で、貧困問題を解決するにはとにかく給付を一刻も早く届けることだ、ヤング氏は激しくそう問い掛けています。市の財政が破綻寸前である中で、年収がキャッシュベースで2000ドル(21万円)前後という貧困層をまず救済し、そこからBIを拡大してゆく、その一方で「尊厳のある労働」を大原則にNYの雇用と経済を再生するというのです。 その一方で、共和党の側は勢いが出ていません。タクシー業界の利害代表であるフェルナンド・マテオ候補、ウォール街を代表した形のサラ・ティルシュウェル候補などが名乗りを上げていますが、支持は低迷しています。その一方で、共和党の看板ではNY市長選には勝てないので共和党支持者が民主党にくら替えして、民主党内でビジネスにフレンドリーな穏健派を推そうという動きもあります。 共和党候補の中で、興味深い存在がカーティス・スリワ氏です。スリワ氏は、1979年にNYの治安維持を担うボランティア組織「ガーディアン・エンジェルス」を立ち上げて40年にわたって活動してきた人物です。コロナ禍の中での、深刻な治安悪化に対しても「完全非武装」でパトロール活動を続ける姿には共感する人も多い中で、今回の市長選への出馬を表明しているのです。 そんなわけで、とりあえず現時点では「BIを掲げての貧困対策」か、「完全非武装の治安維持活動」かという、興味深い対立構図になっています。どんなに追い詰められても、生活に根差した部分に理念的な筋を通して行く動きが出てくるのが、この街の強みとすれば、今回の市長選がその契機となるかもしれません。 関連記事:NY在住の大江千里が明かす、不思議な感覚を生むコロナワクチン接種体験>』、「市の財政が破綻寸前である中で、年収がキャッシュベースで2000ドル(21万円)前後という貧困層をまず救済し、そこからBIを拡大してゆく、その一方で「尊厳のある労働」を大原則にNYの雇用と経済を再生するというのです」、選挙はかなり先だが、果たしてどうなるのだろう。
タグ:東洋経済オンライン ベーシックインカム 冷泉彰彦 Newsweek日本版 エコノミストOnline 岩村 充 (その2)(ベーシックインカムはクリエイティブな脳を活性化させる=茂木健一郎、竹中流ベーシックインカムはどこが問題なのか だまされるな、本質は新種の「リバース年金」だ、崩壊都市の再生をかけたNY市長選 「ベーシックインカム」か「ガーディアン・エンジェルス」か) 「ベーシックインカムはクリエイティブな脳を活性化させる=茂木健一郎」 「4人の論者に聞いた」とあるが、どう考えても、「茂木」氏がこれらの「論者」の見方を紹介するといった形式のようだ 「大人でも子どもでも、明日どうなるかも分からず生活に追われていると、ゆっくり自分の将来を考えたり、スキルや知識を身につけたりすることができない。BIは脳の発育や脳の創造的な働きへの「投資」と捉えられる」 「BIによって働くモチベーションがなくなる」ことはなさそうだ。 出発点を再定義 「これからは、個人がインターネットにアクセスする環境も国が給付する時代になっていくのではないか」、というのは興味深い見方だ。 「竹中流ベーシックインカムはどこが問題なのか だまされるな、本質は新種の「リバース年金」だ」 週刊エコノミスト誌6月2日号『コロナ危機の経済学』 「月に7万円」、「この金額辺りが「生活」というよりは「生存」のための最低ラインとは言えるかもしれない」、確かに「塩辛い数字だ」 コロナ禍で注目されたベーシックインカム 「日本の全国民一律10万円給付も、ベーシックインカムという旗印こそ掲げていないが、実質的にはスペインの例よりはベーシックインカムに近いといえる」 「効率的な生活支援策」とはいえる いったん給付しながら後で返してもらうというのでは、政府による生活資金貸付と同じことだ 「リバース年金保険」 ベーシックインカムつまり全国民対象の無償現金給付ではなく、全国民を網に掛ける強制的国営金融プランの一種なのである 「後で返してもらう」ことの問題点 「モラルハザード問題」 もらったカネを返すのは嫌だ、だから、後で働くのはほどほどにしておこうという気分も生じそうだ 「生活保護と年金は別のものなのだ。それを混同して「年金を今まで積み立てた人はどうなるのかという問題が残るが、後で考えればいい」などと片付けてしまっては、日本という「国のかたち」が変わってしまう」、その通りだ 財源と税制改革の議論なしに語れない 「ベーシックインカムを唱えるのなら、提唱者が財源をどう確保しようと思っているのか、年金をいじるのではなく税制全体をどう変えようと思っているのか、それを明らかにして世に問うてほしいものである」、同感である 「崩壊都市の再生をかけたNY市長選、「ベーシックインカム」か「ガーディアン・エンジェルス」か」 「ニューヨーク」はコロナ禍までは治安が改善したといわれていたが、コロナ禍ですっかり以前の状態に逆戻りしたようだ BI導入を訴えるヤング 市の財政が破綻寸前である中で、年収がキャッシュベースで2000ドル(21万円)前後という貧困層をまず救済し、そこからBIを拡大してゆく、その一方で「尊厳のある労働」を大原則にNYの雇用と経済を再生するというのです」、選挙はかなり先だが、果たしてどうなるのだろう
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異次元緩和政策(その35)(大幅な税収不足なのに財政支出を増やしているのは日本だけである 米英欧日の「量的緩和」を比較する、40兆円の日銀ETF 「個人に直接譲渡」案が急浮上 香港では事例あり 日本で実施するリスクは?、インフレ期待2%到達でアメリカFRBはどう動く 金利とドルの相互連関的な下落はいったん収束) [経済政策]

異次元緩和政策については、昨年10月3日に取上げた。今日は、(その35)(大幅な税収不足なのに財政支出を増やしているのは日本だけである 米英欧日の「量的緩和」を比較する、40兆円の日銀ETF 「個人に直接譲渡」案が急浮上 香港では事例あり 日本で実施するリスクは?、インフレ期待2%到達でアメリカFRBはどう動く 金利とドルの相互連関的な下落はいったん収束)である。

先ずは、12月14日付けPRESIDENT Onlineが掲載した日銀出身で日本総合研究所調査部主席研究員の河村 小百合氏による「大幅な税収不足なのに財政支出を増やしているのは日本だけである 米英欧日の「量的緩和」を比較する」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/41313
・『政府は新型コロナで冷え込む経済対策のため財政支出を急拡大させている。このまま財政拡張路線を取りつづけて大丈夫なのか。日本総研の河村小百合主席研究員は「日本だけでなく、アメリカ、イギリス、欧州の中央銀行も資産買い入れ政策を実施したが、その中身はまったく異なる」と指摘する——。(第2回/全3回) ※本稿は、河村小百合『中央銀行の危険な賭け 異次元緩和と日本の行方』(朝陽会)の一部に加筆・再編集したものです』、興味深そうだ。。
・『米英欧日を「量的緩和」と一括りにする日本メディアのお粗末  米連邦準備制度(Fed)やイングランド銀行(BOE)といった海外の主要中央銀行は、2008年秋のリーマン・ショックの直後の2008年末ないし2009年初の時点で軒並み、従前の金融政策運営上の手段であった政策金利をほぼゼロ%近傍まで引き下げてしまった(図表1)。 国際金融市場はマヒ状態に陥り、各国は多くの国民が職を失って失業率が急上昇するなど1930年代の「大恐慌」(The Great Depression)以来の「大不況」(The Great Recession)に直面していた。“暗黒のトンネル”が果たしていつまで続くのか、全く見通しの立たない初期段階で、彼らは従前からの金融緩和手段であった「政策金利の引き下げ」を、早くも使い尽くしてしまっていた。こうした状況はしばしば“ゼロ金利制約(※1)”と呼ばれる。 ではそのとき、これらの主要中銀の首脳陣は何を考え、自らの金融政策運営を行っていったのか。各国政府は必要に応じてどのように対応したのか。とりわけわが国のメディアでは、リーマン・ショック以降の彼らの金融政策運営を、「量的緩和」と安易に一括りにして報道することが多かった。 しかしながら実のところは、黒田総裁率いる日銀の「量的・質的金融緩和」とは様々な側面でかなり異なっている。今回は彼らの黒田日銀とは“似て非なる”金融政策運営の内容を概観してみよう。 ※1:中央銀行が通常の金融調節を通じて引き下げ誘導できる名目金利の範囲はゼロ%までであることをいう』、欧米の金融政策運営を詳しく見ていこう。
・『【米国】新手段は慎重に試し、出口問題も誠実に説明  Fedは、バーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長の下で、リーマン・ショックに遭遇した。経済学者でもある同議長はFRB理事だった2000年代前半、海の向こうでわが国がバブル崩壊による銀行危機に直面し、日銀が結果的には欧米各国よりも約10年先行する形で“ゼロ金利制約”に直面し、苦慮している様子を注視していた。 2004年には共著で論文を執筆し、“ゼロ金利制約”のもとで考えられる金融政策運営の3つのオプション(新たな手段)を提言していた。 ①政策金利を将来にわたって超低水準で据え置くことをあらかじめ約束する「フォワード・ガイダンス(以下FG)」 ②中央銀行のバランス・シート(以下BS)上で資産構成(短期債と長期債)を入れ替える「オペレーション・ツイスト」) ③中央銀行の資産買い入れによって、マネタリーベース(中銀が民間銀行経由で供給する総資金供給量)の規模を拡大させる「量的緩和」 これらは、Fedが金融危機以降に自らも“ゼロ金利制約”の当事者となって、新たな金融政策運営を展開していくうえでの理論的なバックボーンとなった。 もっとも、バーナンキ議長率いるFedは、議長自らが考案した理論を現実の効果のほどを無視して強行するようなことは決してしなかった。経済学や金融論は社会科学であるゆえ、机上で構築した理論が、現実の世界でも通用するかどうかをあらかじめ実験室内で実験して、その妥当性を確認することができる自然科学とは異なる筋合いのものである。新たな理論に基づく政策手段の効果のほどは、いずれかの中銀が先行して実際に導入した結果から判断するよりほかにない。 Fedは“ゼロ金利制約”に初めて直面した2008年末、この点に忠実に、バーナンキ議長が論文で提唱した3つの新たな手段のうち、唯一の先行例として日銀が2001~06年に実施していた「量的緩和」の効果を徹底的に検証した。「量的緩和」政策導入当初、日銀自身やFRB理事時代のバーナンキ氏は実体経済へのプラス効果を期待していたが、それは認められなかった、という事実を素直に受け止めたうえで、「量的緩和」の部分を根本から見直した。 そして、日銀のようにマネタリーベースの増加を金融政策の目標に据えることは決してせず、長期金利の上昇抑制による実体経済の下支えを企図する「大規模な資産買い入れ(LSAP)」にその名称も改め、Fed自身が「量的緩和」と称することは決してなかった。他の「FG」や「オペレーション・ツイスト」とともに、効果が未知の新たな金融政策手段として期限を区切って試行し、そのつど効果を確認してから次の政策展開を虚心坦懐に考える、という形で危機後の政策運営を展開していったのである。 この点は、黒田総裁が2013年春の日銀総裁就任前に国会において、「白川総裁時代までは、日銀の金融政策が不十分だったから、わが国は長年、デフレから脱却できなかった」と述べ(※2)、日銀自身の2000年代の量的緩和について、日銀自身による分析を含めてすでに明らかになっていた結果を謙虚に受け止めようとせず、マネタリーベースの拡大を目標に据える金融政策運営を強行したのとは、極めて対照的な政策運営であった、と言えるだろう』、「Fed」の「政策運営」は、「効果が未知の新たな金融政策手段として期限を区切って試行し、そのつど効果を確認してから次の政策展開を虚心坦懐に考える」、という着実で誠実な運営だ。これに対し、「黒田総裁」の「政策運営」は、「謙虚さ」「誠実さ」を欠いているようだ。
・『バーナンキ議長が先頭に立って説明を行う  そしてFedの場合、金融危機後にLSAPに取り組んだ初期から、出口問題を内部で検討し、その概要を2010年初という早期の段階から、バーナンキ議長が先頭に立ち、その効果ばかりでなく、後々起こりかねない“都合の悪いこと”も含めて、異例の政策の「出口」をどのような手段で切り抜けるのか、今後どのような金融政策運営を行っていくつもりなのか、といった点に関して、議会や記者会見等の場を通じ、丁寧な説明を行っていった。 LSAPは長期金利の上昇を抑制するうえで、一定の効果があることを確認できつつあったが、いつまでも続けられるわけではないこと、株式市場等の過熱といったリスクを惹起しかねないこと、先行きの金融情勢次第ではFedの財務が傷み、最悪の場合には連邦政府へのFedの納付金が枯渇する期間が続きかねないこと、といった点を、具体的な試算結果も合わせて公表し、米国民や市場関係者に誠実に、正直に説明していったのである。 そしてFedはその後、“2%の物価目標”に過度にこだわることなく、金融政策の正常化を断行していった(図表2)。米国の消費者物価前年比が安定的に2%を超えているとは言えず、かつ失業率も7%近い状態にあった2014年1月から、Fedは資産買い入れの減額を開始し、わずか10カ月後には新規買い入れを一切停止した。2015年入り後は、原油安の影響等もあって、世界的にも物価指標の下振れが長引いていた時期であったが、Fedは同年末に危機後初の利上げに踏み切り、2016年末からはほぼ3カ月に一度のペースで断続的に利上げを継続していった。 (米連邦準備制度の政策金利(FFレート・ターゲット)と米国の雇用・物価指標等の推移のグラフはリンク先参照) これらはすべて、米国の実体経済の回復度合いのみならず、Fed自身が先行きに抱えかねないリスクの大きさを慎重に判断したうえでの金融政策運営だった。さらに2017年10月以降、コロナ危機到来前までの期間においては、Fedは最大で月当たり500億ドル(≒邦貨換算1$=105円として、5兆2,500億円相当)もの巡航速度で、米国債およびMBSを満期落ちさせる形で、売却損を被ることなく手放し、資産規模を縮小させる正常化プロセスを進めていた。 コロナ危機前に正常化が最も進展していた2019年8月末時点において、Fedは総資産をピーク時(2017年9月末)の約4.5兆ドルから約3.8兆ドルにまで縮減させていた。先行きの金融政策運営上の支障となり得る、民間銀行がFedに預ける当座預金は、同じく約2.2兆ドルから約1.5兆ドルにまで、この期間中に実に3割以上縮減させていたのである。 Fedを凌駕する規模で資産を膨張させている今の日銀に、市場金利の上昇を怖れず「月当たり5兆円」もの規模で国債を手放していくという正常化のプロセスを、自らの手で実施する覚悟が果たしてあるのかどうか。 その覚悟もないのに、「2%の物価目標」の未達を“大義名分”に、政権の顔色を窺い、漫然と国債等の買い入れを続けて自らが抱え込むリスクを恐ろしいほどまでに膨張させ、「導入した当事者である自分たちの任期中には正常化を実施する気などさらさらありません」とでもいわんばかりの中央銀行には、そもそも、セントラル・バンカーとして、金融政策運営の一環としての「量的緩和」などに取り組む資格などないといえよう』、極めて厳しい日銀批判だ。「2010年初という早期の段階から、バーナンキ議長が先頭に立ち、その効果ばかりでなく、後々起こりかねない“都合の悪いこと”も含めて、異例の政策の「出口」をどのような手段で切り抜けるのか、今後どのような金融政策運営を行っていくつもりなのか、といった点に関して、議会や記者会見等の場を通じ、丁寧な説明を行っていった」、日銀とは大違いだ。
・『【英国】量的緩和のコストは政府が負担すると明確化  英国においてもリーマン・ショック後の2009年春、米Fedとほぼ同じ時期にBOEが“ゼロ金利制約”に直面し、まずは社債等の民間債券を、ほどなく英国債を大量に買い入れる量的緩和に踏み切らざるを得なくなった。 ただし、英国の場合特筆すべきは、こうした新たな金融政策手段を採用する時点においてリスクが明確に認識されていたことだ。それは以下の3点に整理できる。 ①BOEが多額の債券を買い入れるという金融政策運営は永続させることはできず、時が経てばいずれ正常化させざるを得ないこと ②その局面では、実体経済の回復に伴って良い意味での市場金利の上昇が見込まれ、それは同時に債券価格の下落を意味するため、正常化の局面でBOEが買い入れた債券等を売却すれば、多額の売却損を被りかねないこと ③それは中央銀行であるBOEの信用に重大な悪影響を及ぼしかねないこと BOEは1999年に政府からの独立性を獲得したが、それは金融政策運営の“手段の独立性”の側面にとどまり、米Fedや欧州中央銀行(ECB)のような“目標設定の独立性”までは得られず、その権限は政府(財務省)の側が握っているという関係にある。 しかしながらこうした危機の局面では、政府と中央銀行とのいわば“二人三脚”で金融政策運営に当たるような関係が奏功し、未知の新たな金融政策手段を導入するBOEに過度な負担を負わせず、将来的に起こり得べきコストは、すべて国(財務省)の側が負担する、という政策上の枠組みを新たに構築したうえで、量的緩和への着手が行われたのである』、日本ではこうした点は曖昧なままである。
・『BOEが量的緩和のための子会社を作り損益を明確にする  具体的には、いずれ出口の局面で損失がかさむことを見越し、量的緩和はBOE本体のBS上ではなく、BOEの子会社である資産買い入れファシリティ(APF)を設立し、その勘定で実施されることになった。こうした明確な区分経理により、量的緩和に伴う損益は毎期、明確に把握されて対外公表され、将来的にあり得る損失は全額英政府が負担することとされた。英政府が負担できる金額にはそのつど、上限を設け、それが折をみて引き上げられる形(図表3)で、その枠内でBOEは量的緩和を実施していったのである。 (資料)英財務大臣・BOE総裁間のAPF関連での各年の公開書簡(Exchange of letters between HM Treasury and the Bank of England)等を基に日本総合研究所作成。 (資料)英財務大臣・BOE総裁間のAPF関連での各年の公開書簡(Exchange of letters between HM Treasury and the Bank of England)等を基に日本総合研究所作成。 そしてBOEは、ひとたび量的緩和が出口の局面に入れば、それまで利益を計上していたAPFがどのような形で損失を計上することになるのかという問題に関する試算結果を対外公表して明確に国民に示した(図表4)。それによって英国民は、BOEの量的緩和によって長期金利が低下するというメリットが得られるばかりでなく、いずれは自分たちに負担が回ってくることになりかねないことを明確に認識できるようになったのである。そしてその損失の規模は、先行きの金利情勢次第で大幅に変化する。BOEはさらに、APF、ひいてはBOEの損失額を簡単に試算できるスプレッドシートをHP上で提供している』、「量的緩和はBOE本体のBS上ではなく、BOEの子会社である資産買い入れファシリティ(APF)を設立し、その勘定で実施されることになった。こうした明確な区分経理により、量的緩和に伴う損益は毎期、明確に把握されて対外公表され、将来的にあり得る損失は全額英政府が負担することとされた」、ここまで明確に区分経理するとはさすがだ。日銀も爪の垢で煎じて飲むべきだろう。
・『【欧州】国債買い入れよりも財政再建が先  2008年のリーマン・ショックに続いて、2009年秋以降欧州債務危機に見舞われたECBは、主要な中央銀行のなかでも、最も厳しい金融政策運営を迫られた中央銀行であるといえよう。 今となって振り返れば、最も厳しかったのは、ドラギ氏がECB総裁に就任した2011年秋から、ギリシャが1年間に二度にわたる財政破綻を引き起こした2012年にかけての時期であった。しかしながら、そうした厳しい局面に際しても、ECBは安易に各国債を買い入れる危機対応策は採らず、あくまで、民間銀行への資金供給(リファイナンシング・オペ)を、危機対応として長期化、大規模化させることを通じて、民間銀行が保有している各国債を手放さなくて済むようにする、という間接的な支援にとどめた(図表5)。これが奏功して、債務危機が一服した後、大きく膨張していたECBのBSは急速に元の規模へと縮小することとなった。 (ユーロシステムの資産/負債の主な内訳別推移(2007~19年)のグラフはリンク先参照) ギリシャのユーロ離脱が取り沙汰され、債務危機の緊張がピークにあった2012年7月、ドラギ総裁は「ユーロを守るためにやれることはなんでもする」と発言した。続く9月のECBの政策委員会で導入された、債務危機対応のための新たな方策は「短・中期国債の買い切りオペ(※3)」であったが、これには申請国があくまで、ユーロ圏が定める厳しい財政再建プログラムを自ら断行することを条件に、ECBが当該国の短・中期国債の買い切りオペに応じる、というものであった。 ※3:買い切りオペレーションの略。金融調節の一環として、中央銀行は金融機関から国債などを買い入れている。その際、売り戻しの条件がついていない「買い切り」の取引をこう呼ぶ。 要するに、「財政再建が先、中央銀行による国債の買い入れは後」というもので、この枠組みが設けられたこと自体は、危機的事態の沈静化に大きな効力を発揮したものの、実際に適用を申請する国はなかったのである。そして欧州では債務危機が一段落した後、わが国では考えられない迅速なペースで財政再建が進められ、それが結果的には現下のコロナ危機下での財政面での対応余力を生み出すことになった』、「「財政再建が先、中央銀行による国債の買い入れは後」というもので、この枠組みが設けられたこと自体は、危機的事態の沈静化に大きな効力を発揮」、原則がキチンと守られているのは、ドイツの影響もあるのだろう。
・『日銀の「量的・質的金融緩和」がもたらした財政の弛緩  「やれることは何でもやる」。これはわが国でもかつて耳にしたことがあるフレーズだ。2013年3月衆議院議院運営委員会における所信表明のなかで、黒田総裁は「もし私が総裁に選任されたら、市場とのコミュニケーションを通じて、デフレ脱却に向けやれることは何でもやるという姿勢を明確に打ち出していきたいと思う」と述べた。そして就任直後の同年4月から「量的・質的金融緩和」を実施し、今日に至っている。 その考え方はまさに、「デフレ脱却、ないしは2%の物価目標の達成が先」=「中央銀行による国債買い入れが先、財政再建は後」というものだ。そして、その後の日本の財政規律の弛緩ぶりは今まさにみてのとおりの状況になっている。 以上は、海外の主要中銀がこれまで展開してきた金融政策運営のごく一部のエピソードにすぎない。日銀を含む主要中銀が、これまでどれほどのリスクをとる金融政策運営を行っているかは、最も端的にはその資産規模の推移に表れる(図表6)。 (主要中央銀行の資産規模の推移(名目GDP比)のグラフはリンク先参照) コロナ危機下にある現時点に至るまで、日銀がいかに他の主要中銀とはかけ離れた過剰なリスク・テイクを行っているのかは、このグラフから一目瞭然だろう。次回は、わが国がこのまま突き進んでいったとき、その先で待ち受ける事態はいかなるものなのかについて考えることとしたい』、「名目GDP比でみた資産規模」、で日銀の異常な「リスク・テイク」ぶりが明らかである。「出口戦略」を考えておくべきだろう。

次に、12月19日付け東洋経済オンラインが掲載した経済ジャーナリストの森岡 英樹氏による「40兆円の日銀ETF、「個人に直接譲渡」案が急浮上 香港では事例あり、日本で実施するリスクは?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/397007
・『「はたして出口はあるのだろうか」 日本銀行内部で頭の痛い問題になっているのが、2010年12月の金融緩和以降、営々と買い続けてきたETF(上場投資信託)の出口戦略だ。「ETF買い入れは、主要中央銀行では日銀しか行っていない奇策。それだけに出口戦略も難題と言わざるをえない」(市場関係者)。 日銀が11月26日に発表した2020年4~9月期決算によると、保有するETFは9月末時点(時価ベース)で40兆4733億円まで膨張している。20年3月末の31兆2203億円から約30%増加した格好だ』、「出口戦略も難題」なのは確かだ。
・『GPIFを抜いて日本最大の株主になった日銀  「株高により含み益が前年度末の3081億円から半年間で5兆8469億円へ大幅に増加したことが大きく寄与した」(機関投資家)とされる。結果、最終損益に当たる当期剰余金は9288億円と、過去最高の水準を記録した。 日銀の足元の保有株式残高は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を抜き、いまや日本最大の株主だ。 「3月末時点ではGPIFの国内株式の保有残高は、日銀を約1兆円上回っていたが、GPIFは株式の持ち分が基本ポートフォリオの資産配分の上限を超えたことから10月以降、残高を落とす一方、日銀は買い入れを継続していることから時価ベースの残高は逆転している」(機関投資家)とされる。日銀のETF保有残高は東証1部時価総額の7%程度まで膨らんでいると見られている。 コロナ禍にもかかわらず株価が上昇を続けており、日経平均株価はバブル崩壊後、29年ぶりの最高値を更新した。日本最大の株主となった日銀は、自作自演の「官製相場」を演出し、その恩恵を最も受けているわけだ。 しかし、この「官製相場」は一度舞台に上がると降りるに降りられない、「ネバーエンディングストーリー」になりかねない危うさを秘めている。 2013年春に黒田東彦氏が日銀総裁に就いて、間髪を入れずに断行した量的・質的緩和、いわゆる異次元緩和は、バズーカ砲に例えられたように、デフレにあえぐ日本経済を下支えする効果は絶大だった。 消費者物価指数(CPI)はお世辞にも目標とされた2%には到達できていないが、マネタリーベースの拡大および長期国債、ETFなどの買い取りは市場に安心感を醸成した。 とりわけ株式市場は円安効果も手伝い、大きく上げに転じた。異次元緩和を契機に株式市場はリスクオフからリスクオンに転換したように思える。「買い本尊として日銀が控えていることは何よりの安心材料」(市場関係者)というわけだ』、「この「官製相場」は一度舞台に上がると降りるに降りられない、「ネバーエンディングストーリー」になりかねない危うさを秘めている」、同感である。
・『時間とともに大きくなった副作用  しかし、時間の経過とともに異次元緩和の効果が薄れる中、日銀は順次追加の緩和策に踏み込んだ。マイナス金利の導入はその代表だ。よりカンフル剤的な施策に踏み込むにつれ、副作用も大きくなっていった。金融機関の収益圧迫はその象徴的な事象だ。そこにコロナ禍が追い討ちをかけた。 日銀は今年3月、3年半ぶりに追加緩和に踏み切った。直前にFRB(連邦準備制度理事会)が緊急の追加利下げに踏み切り、政策金利をゼロ%にすることを決めたことを受けた措置でもあったが、柱は以下のとおりだ。 ① 年間6兆円をメドに買い上げているETF(上場投資信託)を2倍の12兆円に増やす。 ② REIT(不動産投資信託)の買い入れ額を年間900億円から2倍の年間1800億円に増額する。 ③ 企業への直接的な資金繰り対策として社債やCP(コマーシャルペーパー)の購入について、9月末までに2兆円増す。 ④ 民間金融機関が融資を増やすよう資金供給の枠組み(8兆円規模)を創設し、9月末までゼロ%で貸し出す。 コロナ禍を受けて日銀がETFの買い入れを増額するなど、追加緩和策に踏み出したことで、これまでマグマのようにたまり続けてきたある疑念が頭をもたげた。日銀のバランスシート悪化への懸念だ。 日銀の買い入れたETFはこの時点で30兆円を超えており、「日経平均株価が1万9500円を割り込むと含み損になる」と黒田総裁が参議院の予算委員会で発言したことも不安をあおった。 株価も下落基調で、このままで推移すれば、いずれ日銀は一般企業でいう総資産を自己資本等(資本金、引当金勘定、準備金)で割った自己資本比率がマイナスに転じ、債務超過に陥るのではないかと危惧された。 もちろん、日銀は日銀券を発行する発券銀行であり、自己資本を銀行券で割った自己資本比率は8%超を維持している。いずれにしても、こうしたリスクを冒してでも日銀が追加緩和に踏み込まざるをえないところに新型コロナウイルスの影響の深刻さが見て取れる。) さいわい、日銀をはじめとする主要国中央銀行の一斉金融緩和が効を奏し、コロナ禍にもかかわらず、金融システムは揺らぐことなく、株式市場はむしろ暴騰している。根底にあるのは、中央銀行が市中にばら撒いた過剰なマネーにほかならない。 しかし、追加緩和の副作用は日銀そのものに逆流し始めている。 3月の追加緩和に伴い日銀の資産残高は9月末で、前年同期比21.1%増の690兆0269億円に膨らんだ。内訳は国債が前年同期比10.5%増の529兆9563億円、J-REIT(不動産投資信託)が同19.9%増の6420億円、そしてETFが同24.5%増の34兆1861億円などだ。いずれの保有残高も過去最高額となっている。 残高が増えるにつれ、その出口戦略は難しくなる。「最大の保有者である日銀が売りに出れば、それだけで価格が下落し、日銀は損失を抱えるというジレンマに直面する」(市場関係者)ためだ。 とくに株式は国債のように満期まで持ち切るという対応ができない。どこかの局面で売る行為が必要になる。いったい、どうするのか。まさに日銀が頭を抱えるゆえんだ』、「確かにETFの「出口戦略」は難しそうだ。
・『ETFの買い入れ決めた元幹部が戦略提案  そこで浮上している案の1つにETFを個人に直接譲渡して保有してもらうという構想がある。提案しているのは、元日銀理事で、日銀のETF買い入れ政策を決めた当時の企画局長、櫛田誠希氏(現・日本証券金融社長)だ。 個人の購入希望者を募って、日銀が保有するETFを譲渡するという案で、「一定期間、相応のインセンティブ付与を前提に売却制限を付して譲渡する」ことなどが考えられている。 つまり、ETFを割引価格で個人に譲渡する。譲渡後は一定期間保有を義務付けるというスキームである。日銀が保有するETFは株価上昇で含み益があり、相応の割引価格でも日銀に損失は生じない。かつ、売却制限を課すことで市場インパクトを減殺できるというわけだ。 同時に、この個人への譲渡案は、「貯蓄から投資(資産形成)」を推し進める金融庁にとっても渡りに船となる。「預貯金を中心に積み上がる個人金融資産を投資に振り向けたい金融庁にとって、日銀のETFを個人に割引譲渡することはまさに一石二鳥の妙案といえる」(市場関係者)。 実は1990年代後半のアジア通貨危機時に、香港政府が市場から株式を買い上げ、その出口戦略として買い上げた株式でETFを組成し、価格を割り引いて個人に譲渡したことがある。この施策はその後の個人投資家の育成に資することになったと評価されている。 だが、はたして同様のことが日銀でも可能なのか。日銀のETF保有額は香港の事例と比べようもないほど巨額であり、「割引価格で譲渡しても、その後の株価下落で個人投資家が損失を被るリスクは消えない」(市場関係者)ことは確かだ。日銀の悩みは深い』、「個人への譲渡案」はなかなかいいアイデアだ。

第三に、1月7日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「インフレ期待2%到達でアメリカFRBはどう動く 金利とドルの相互連関的な下落はいったん収束」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/401891
・『1月4日の金融市場ではアメリカの期待インフレ率を示す10年物ブレークイーブンインフレ率(以下10年BEI)がついに2%を突破するという動きが見られた。その傍らで10年債利回りは0.90%付近、ドルインデックスもおおむね90付近で横ばいとなっていたので、期待が先行して高進している構図が鮮明である。 10年BEIの2%突破は2018年11月16日以来、約2年2カ月ぶりであり、FRB(連邦準備制度理事会)が2019年に利下げ路線に転換する以前の水準に回帰したことになる。2018年11月といえば、すでにFRBが年3回の利上げを済ませ、翌月には4回目の利上げを敢行するタイミングである。今とは対照的だ。感染拡大が深刻度を増すたびに裁量的なマクロ経済政策の発動が期待され、10年BEIが上がるが、実体経済はついてこない、という構図が続いて、そろそろ1年になる』、「アメリカ」には「10年BEI」など重要な経済指標がある。
・『「アメリカ」には「10年BEI」など重要な経済指標がある  こうしたインフレ期待の高まりと、インフレ耐性に優れるとされる株価の上昇は一応の整合性が取れる。だが、理論的には人々の期待するインフレ率が上昇すると、名目金利も相応に上昇すると考えられる。いわゆる「名目金利=実質金利+インフレ期待」で定義されるフィッシャー効果の議論だ。 昨年来の株価上昇は、インフレ期待上昇に伴う実質金利の低下によるもの、という解説が目立つ。その説が正しいとすれば、名目金利上昇に伴う実質金利上昇は株価下落を招く可能性が高い。利上げや量的緩和の縮小といった具体的な正常化プロセスが始まらなくても、経済・金融情勢が正常化に向かう過程で名目金利が上昇するというのは「普通のこと」だ。その「普通のこと」、すなわちフィッシャー効果の発現を、FRBがどれくらい抑制しようとするかが2021年には問われるだろう。 真っ当に考えれば、FRBの責務は株価の高値維持ではなく「雇用の最大化」と「物価の安定」の2つなのだから、明らかに先走っている株価の騰勢にブレーキをかけること自体は、さほど不思議なことではない。しかし、コロナ禍からの立ち上がりを図ろうとしている最中、あえてそうした株価潰しをやることについては相応の勇気が必要なのは間違いない。 したがって、「どれくらい抑制するのか」というさじ加減が重要になる。まず、名目金利の行方について、さまざまな見方がありうる。現状から横ばいでまったく変わらないという見方もあれば、大きく上がる、小さく上がる、もしくは逆に、感染再拡大に応じて下がっていくという見方もあるかもしれない』、「なるほど。
・『名目金利はつれて上昇するのか  筆者は、有効なワクチン接種も順次始まっている以上、2021年のアメリカの金利が「横ばいでまったく変わらない」という想定には無理があるという立場だ。実際、10年BEIの上昇スピードが速いので実質金利低下ばかりに目が行くが、昨年10~11月を境に名目金利も少しずつ上昇している。 アメリカ10年金利は、1~3月期に1.0%台に乗せ、年央までに1.2%、年末までに1.5%程度までの範囲ならば上昇余地があり、ドル相場の一方的な下落もこれに応じて止まると考えている。 逆に、ここからアメリカの金利が下がる展開があるのだろうか。ないとは言えない。コロナ変異種の強毒化やそれに伴うワクチンの無効化など、コロナ絡みでは何が起きるかわからない。実情はどうあれ、2021年はメディアを中心として副作用の存在をことさら喧伝する時間帯が必ずあると筆者は考えている。その際、思惑主導でアメリカの金利が低下する可能性はリスクシナリオとして十分想定されるものだ。金利は上昇に賭けておくほうが無難だとは考えるが、逆サイドのリスクがゼロというわけではない。 話をアメリカの金利上昇に戻す。金利が上昇すれば株価の調整だけでなく、ドル建て債務を積み上げた途上国への影響も懸念されるだろう。リーマンショック後、金融市場ではドルを安価で調達できるようになり、とりわけ新興国では民間部門を中心としてドル建て債務が急速に積み上がったという経緯がある。 こうした、いわば「ドル化した世界」の危うさは過去に本コラムへの寄稿『「ドル化した世界」がFRBの利上げ路線を阻む』でも議論したことがあるので今回は詳しく議論しないが、まだ多くの途上国がドル建て債務を抱えたままの状態が放置されている。かかる状況下、アメリカの金利が上昇する過程では株価の動揺に加え、新興国通貨の価値下落が当該国の債務負担を増すという展開も十分懸念されるものだろう』、「金利が上昇すれば株価の調整だけでなく、ドル建て債務を積み上げた途上国への影響も懸念」、その通りだ。
・『2021年はタカ派とハト派のバランスに腐心  一方的に緩和方向への政策運営に尽くせばよかった2020年とは異なり、2021年以降のFRBは国内外への影響に鑑み、タカ派とハト派のバランスを取ることに腐心する難しい局面に入る。必然的に、アメリカの金利の低下とこれに伴うドル安だけを既定路線として見ておけば済んだ2020年とは違った相場観が求められる。 筆者はドル高局面への転換とまでは言わないが、アメリカの金利とドルの相互連関的な下落がいったん収束し、次の潮流に向かう「踊り場」のような年に2021年は位置づけられるのではないかと考えている』、「アメリカの金利とドルの相互連関的な下落がいったん収束し、次の潮流に向かう「踊り場」のような年に2021年は位置づけられるのではないか」、「踊り場」とは上手く表現したものだ。
タグ:東洋経済オンライン PRESIDENT ONLINE 異次元緩和政策 唐鎌 大輔 森岡 英樹 (その35)(大幅な税収不足なのに財政支出を増やしているのは日本だけである 米英欧日の「量的緩和」を比較する、40兆円の日銀ETF 「個人に直接譲渡」案が急浮上 香港では事例あり 日本で実施するリスクは?、インフレ期待2%到達でアメリカFRBはどう動く 金利とドルの相互連関的な下落はいったん収束) 河村 小百合 「大幅な税収不足なのに財政支出を増やしているのは日本だけである 米英欧日の「量的緩和」を比較する」 『中央銀行の危険な賭け 異次元緩和と日本の行方』(朝陽会) 米英欧日を「量的緩和」と一括りにする日本メディアのお粗末 【米国】新手段は慎重に試し、出口問題も誠実に説明 「Fed」の「政策運営」は、「効果が未知の新たな金融政策手段として期限を区切って試行し、そのつど効果を確認してから次の政策展開を虚心坦懐に考える」、という着実で誠実な運営だ バーナンキ議長が先頭に立って説明を行う 2010年初という早期の段階から、バーナンキ議長が先頭に立ち、その効果ばかりでなく、後々起こりかねない“都合の悪いこと”も含めて、異例の政策の「出口」をどのような手段で切り抜けるのか、今後どのような金融政策運営を行っていくつもりなのか、といった点に関して、議会や記者会見等の場を通じ、丁寧な説明を行っていった」、日銀とは大違いだ 【英国】量的緩和のコストは政府が負担すると明確化 政策上の枠組みを新たに構築したうえで、量的緩和への着手が行われたのである 日本ではこうした点は曖昧なまま BOEが量的緩和のための子会社を作り損益を明確にする こうした明確な区分経理により、量的緩和に伴う損益は毎期、明確に把握されて対外公表され、将来的にあり得る損失は全額英政府が負担することとされた」、ここまで明確に区分経理するとはさすがだ。日銀も爪の垢で煎じて飲むべきだろう 【欧州】国債買い入れよりも財政再建が先 「「財政再建が先、中央銀行による国債の買い入れは後」というもので、この枠組みが設けられたこと自体は、危機的事態の沈静化に大きな効力を発揮」、原則がキチンと守られているのは、ドイツの影響もあるのだろう 日銀の「量的・質的金融緩和」がもたらした財政の弛緩 「名目GDP比でみた資産規模」、で日銀の異常な「リスク・テイク」ぶりが明らかである。「出口戦略」を考えておくべきだろう 「40兆円の日銀ETF、「個人に直接譲渡」案が急浮上 香港では事例あり、日本で実施するリスクは?」 出口戦略も難題 GPIFを抜いて日本最大の株主になった日銀 「この「官製相場」は一度舞台に上がると降りるに降りられない、「ネバーエンディングストーリー」になりかねない危うさを秘めている」、同感である 時間とともに大きくなった副作用 「確かにETFの「出口戦略」は難しそうだ ETFの買い入れ決めた元幹部が戦略提案 櫛田誠希氏 個人の購入希望者を募って、日銀が保有するETFを譲渡するという案で、「一定期間、相応のインセンティブ付与を前提に売却制限を付して譲渡する」ことなどが考えられている 「インフレ期待2%到達でアメリカFRBはどう動く 金利とドルの相互連関的な下落はいったん収束」 「アメリカ」には「10年BEI」など重要な経済指標がある 名目金利はつれて上昇するのか 金利が上昇すれば株価の調整だけでなく、ドル建て債務を積み上げた途上国への影響も懸念」、その通りだ 2021年はタカ派とハト派のバランスに腐心 アメリカの金利とドルの相互連関的な下落がいったん収束し、次の潮流に向かう「踊り場」のような年に2021年は位置づけられるのではないか」、「踊り場」とは上手く表現したものだ
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働き方改革(その30)(コロナ禍で広まる「テレワークは歓迎すべき働き方」のウソとホント、パソナグループ<上>都心一等地から淡路島へ本部移転を実行、パソナグループ<下>BPOサービス“コロナ特需”で業績急拡大) [経済政策]

働き方改革については、昨年9月3日に取上げた。今日は、(その30)(コロナ禍で広まる「テレワークは歓迎すべき働き方」のウソとホント、パソナグループ<上>都心一等地から淡路島へ本部移転を実行、パソナグループ<下>BPOサービス“コロナ特需”で業績急拡大)である。

先ずは、12月24日付け日経ビジネスオンラインが掲載したJX通信社も松本 健太郎氏による「コロナ禍で広まる「テレワークは歓迎すべき働き方」のウソとホント」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00067/122100044/?P=1
・『公的統計データなどを基に語られる“事実”は、うのみにしてよいのか? 一般に“常識”と思われていることは、本当に正しいのか? 気鋭のデータサイエンティストがそうした視点で統計データを分析・検証する。結論として示される数字だけではなく、その数字がどのように算出されたかに目を向けて、真実を明らかにしていく。 *文中にある各種資料へのリンクは外部のサイトへ移動します 2020年を振り返って「もっとも大きな変化は何だったか?」を自らに問えば、新型コロナウイルス感染予防のために行動を制限されたことであり、その代表例としてのテレワークを挙げたいと思います。以前からIT業界ではテレワークが浸透していましたが、「withコロナ時代の働き方」として様々な業種に広がりをみせました。 私の場合、緊急事態宣言が発令中の4~5月は毎日がテレワークでしたが、感染がいったん収束するにつれて出社の回数が増えました。第3波を迎えて、再び出社回数は減少したものの、それでも週のうち数日は出勤しています。 出勤している理由として、①飼っている犬がうるさい、②自宅で長時間仕事ができる環境が整っていない、③通勤で切り替えていたメンタルのON/OFFができなくなり、24時間仕事をしている気分で常に緊張状態となる、④日中誰とも会話しないと気分がめいる、⑤会議ラッシュなので、自宅で座り続けて会議をこなすのは身体的につらいなど、挙げればキリがありません。 出勤する際は感染防止対策として、もちろんマスクを着用し、ラッシュ時間は避け、ガラガラの電車の中では換気対策として開いた窓の前に立つなど密は避けるようにしています。ただ、このまま東京で新規感染者数が増え続けるようならば、再び毎日がリモートワークにならざるをえないでしょう。仕方ないですが、そうなると、正直言って憂鬱です。 そもそも、リモートワークは「個人の生産性が上がる」という触れ込みだったはずです。しかし私は一向にそうは感じません。このギャップはどこにあるのでしょうか?』、①、②が該当するのであれば、「生産性が」上がらないのも理解できる。
・『テレワークで生産性、QOL、仕事満足度は上がった?  内閣府の平成30年度年次経済財政報告の第2章「人生100年時代の人材と働き方」や、総務省の令和元年版情報通信白書「テレワークの導入やその効果に関する調査結果」において、テレワーク導入のメリットが語られています。 1つ目のメリットは「生産性向上」です。テレワーク単体、テレワークと長時間労働是正の組み合わせ、テレワークとフレックス勤務の組み合わせで、労働生産性が有意に向上しているというのです。ちなみに、ここでいう労働生産性とは「付加価値額÷正社員数(常用雇用者数)」で求めたものです。 (柔軟な働き方・ワークライフバランスの取り組みが生産性に与える効果のグラフ リンク先参照))  経済財政報告では「テレワークを積極的に取り入れている企業は労働時間が減少している」と労働時間に注目しており、労働生産性の向上の理由は、生産量の増大ではなく、時間削減効果によるもののようです。 もっとも、労働時間削減により、プライベートの活動時間が充実し、生活の質の向上につながる可能性もあるでしょう。労働時間が1%減少した場合、正社員が平日、育児、自己啓発、趣味、買い物に費やす時間がどの程度変化するのかも調べられています。これを見ると、特に、育児をする時間が増えるようです。これこそ2つ目のメリットである「QOL(クオリティー・オブ・ライフ)向上」です。 (ワークライフバランスの促進は育児、買い物、趣味、自己啓発につながる可能性のグラフはリンク先参照) 3つ目のメリットは「仕事満足度の向上」です。独立行政法人経済産業研究所の森川正之氏による「長時間通勤とテレワーク」によると、日本人約1万人を対象としたサーベイの結果、テレワークを行っている人は仕事満足度が高いとされました。つまり、労働者から見ればテレワークの導入は「歓迎される働き方」だと言えるでしょう。 ただし、これの先行研究においても、いくつかの懸念点が指摘されていました』、「テレワーク」がバラ色でないのは当然としても、どんな「懸念点」があるのだろう。
・『「テレワークは歓迎される働き方」への懸念  1つ目はそもそも当時の調査の対象となった「テレワーカー」自体がそもそも生産性の高い人で、最初から一貫して仕事満足度も高かったという可能性です。つまりテレワークが仕事満足度を高めるのではなく、仕事満足度が高い人がテレワークをしていたという見方です。 2つ目はそもそもテレワークは余力のある企業が実践できるものであり、導入していない企業と生産性を比べても意味がない可能性です。つまりテレワークが生産性を高めるのではなく、生産性の高い企業がテレワークを導入する傾向にあるという見方です。 3つ目は過去の連載で指摘したように、こうした統計で語られる“労働生産性”が「個人のアウトプット(成果)とインプット(かかった時間)のバランスの評価」ではないことにあります。 一般に、労働生産性の向上というと1人当たりの生産能力が向上しているように聞こえますが、実際には労働時間が減っても労働生産性は高まります。その場合、アウトプットが高まらなくても“労働生産性”は向上します。もっとも、労働時間の削減で、「あってもなくても成果につながらない仕事」をする余裕がなくなれば、無駄の削減(=労働生産性の向上)になると言えるかもしれませんが……』、「1つ目」、「2つ目」は大いにありそうだ。
・『新型コロナウイルス後のテレワークは、生産性が上がりにくい?  では現実ではどうなのでしょう。日経BP総合研究所イノベーションICTラボが、20年10月に「職場(派遣・常駐先を含む)で仕事に取り組む場合を100とした場合、テレワークでの生産性はどれくらいですか」という調査をしたところ、年代によって傾向は違いますが、「生産性が上がった」と回答しているのは20~45%程度だったと分かりました。
 テレワークで生産性は上がったのか  生産性が上がった 生産性が下がった
         39歳以下       45.7%      37.1%
         40歳代       24.1%       42.6% 
         50歳代       19.4%       53.7% 
 日経BP総合研究所イノベーションICTラボ  年齢層が高まるほど「生産性が下がった」とする割合が増え、50代で53.7%となっています。「だから年寄りはダメなんだ」と言いたくなるでしょうが、39歳以下でも3人に1人以上は生産性が下がったと回答しています。ZoomやSlackなどのテクノロジーを活用すれば、職場で仕事するのと同等のアウトプットがあって当たり前、というわけにはいかないようです。 前出の森川氏がまとめた「コロナ危機下の在宅勤務の生産性:就労者へのサーベイによる分析」によると、「あなたがふだん職場で行う仕事の生産性を 100 とすると、在宅勤務の生産性はどのぐらいですか」という質問を20年6月にしたところ、平均値60.6、中央値70という結果でした(n=3324)。 ただし、この数字は以前からテレワークをしていたか否かで大きく変わります。「以前から行っていた人」の平均値は76.8なのに対して、「新型コロナ後に始めた人」の平均値は58.1でした。以下はその分布図です。前者の山は90台にあるのに対して、後者の山は70程度にとどまっています。分布図による差は歴然としています。 (在宅勤務開始時期別の生産性分布のグラフはリンク先参照) Experienced”は新型コロナ前から在宅勤務を行っていた人、“Unexperienced”は新型コロナ後に在宅勤務を始めた人を意味している  ちなみにこの調査で、生産性を低くする要因と、高くする要因を調べたところ、設備の問題、環境の問題、加えてコミュニケーションの問題が影響していると分かりました。普段からテレワークに慣れている人は、こうした問題をクリアした上でテレワークに従事していると考えるべきでしょう。 (在宅勤務の生産性を低くする/高くする要因の表 リンク先参照) つまり、従前からいわれていたテレワークによる生産性向上やQOL向上とは、テレワークを実施すれば「即向上」するのではなく、こうした阻害要因を除去できた上で実現できるのではないかと思うのです。例えば、自宅に設備投資をして、通信設備や環境を職場のように整えられるか否かとなると、万人にはなかなか難しいでしょう。 これまでの「テレワークによる生産性向上」をめぐる議論は、それができる環境にある人しか見ていなかった可能性があるのかもしれません。 ロンドンを本拠とするシンクタンク、経済政策研究センター(CEPR)が発表した「The large and unequal impact of COVID-19 on workers」(Adamsら)では、米国と英国において、自宅で実行できるタスク(仕事)が占める割合を年収別に調査した結果をまとめています。図を見ると年収が高まるほどその割合が高まっていると分かります。すなわち高賃金であるほど、テレワークがしやすい業務であり、またテレワークのための投資ができると見てもよいかもしれません。 (在宅でできるタスクの割合(年収別)のグラフはリンク先参照) この図を見る限り、米国の年収1万ドル以下の層の例外を除き、低賃金であるほど、出社しなければ仕事ができない傾向にあることが分かります。これに対し、高賃金になればなるほど自宅でできるタスクの割合は高まります。収入が高いほど、テレワークに向いた環境にあることが分かります。ただし、これまで述べてきたように、「在宅で仕事ができる」と「職場と同じ生産性で仕事ができる」は全く違う意味であることは理解しておく必要があるでしょう。 テレワークの導入は「さっさとやれ」と圧力をかけるのではなく、玉ねぎの皮をめくるように、デメリットが出る原因を探り、1つ1つ問題を除去しつつ進めることが大事だと思います』、「米国と英国において」、「高賃金であるほど、テレワークがしやすい業務であり、またテレワークのための投資ができると見てもよいかもしれません」、というのは頷ける結果だ。「テレワークの導入は「さっさとやれ」と圧力をかけるのではなく、玉ねぎの皮をめくるように、デメリットが出る原因を探り、1つ1つ問題を除去しつつ進めることが大事だと思います」、その通りだ。
・『テレワークが引き起こすメンタル問題  テレワーク環境において生産性を下げる要因の中でも、筆者が注目しているのはコミュニケーション量です。テレワークになってペットを飼う人が増えたと聞きますが、テレワークがメンタルヘルスに極めて重大な影響を与える可能性があると思っています。 本来なら、政府や自治体がメンタルヘルスに対しても、今までを上回る予算を用意すべきですが、今のところ、そこまで手が回っていないのが現状でしょう。 そうした事態を憂慮して、20年5月13日、アントニオ・グテーレス国連事務総長はCOVID-19とメンタルヘルスへの対応の必要性に関する政策概要の発表に寄せて、「このパンデミックがもつメンタルヘルスへの悪影響の側面に緊急に取り組むべく、私は各国政府、市民社会、保健当局が協力するよう促します。特に政府に対しては、きたる世界保健総会でメンタルヘルスへの意欲的な取り組みを表明するよう求めます」と緊急のビデオメッセージを流したほどです。 この場を借りて強く言いたいのは、無理をしないこと、我慢しないことです。テレワークで期待されるアウトプットが出ないからといって、それは個人だけの問題ではありません。テレワークによって生産性が低下した人をわらう社会こそ間違っています。これまでの説明の通り、テレワークはいろいろな環境を含め、向き不向きの問題であり、従来のテレワークによる生産性向上論は「向いている人だけを調査していたから」にすぎません。ある意味、恵まれた環境にある層を対象にしていたとも言えるでしょう。 無理して心労を来すぐらいなら、出社した方がよいと筆者は考えます。ちなみに筆者自身もテレワークで心労を来たし、万全の感染予防を施して出社している1人です』、「テレワークで期待されるアウトプットが出ないからといって、それは個人だけの問題ではありません。テレワークによって生産性が低下した人をわらう社会こそ間違っています」、同感である。「筆者自身もテレワークで心労を来たし、万全の感染予防を施して出社している1人です」、説得力の根源が理解できた。

次に、1月6日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの真保紀一郎氏による「パソナグループ<上>都心一等地から淡路島へ本部移転を実行」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/283461
・『新型コロナウイルスは、日本人の働き方を大きく変えた。昨年の緊急事態宣言下でテレワークに移行した企業の中には、その後も在宅勤務を継続しているところも多い。 これまで多くの人が「顔を合わせることで社内も社外もコミュニケーションが取れる」と信じて疑わなかった。しかし、いざ導入してみると、それほど業務に支障がないことに気づいた。しかも、コストも抑えられる。 コロナ前までは、都心の一等地にオフィスを構えるのが企業のステータスだった。しかしテレワークなら必要ないし、仮にオフィスを置くとしても、借りる面積は今までよりはるかに小さくてすむのだから、今後、本社オフィスを縮小する動きは間違いなく加速する。 その中でも際立つのは、兵庫・淡路島に本部を移転する人材派遣大手のパソナグループだ。2023年度末までに、現在は東京・大手町に勤務する人事、財務経理、経営企画、新規事業開発、グローバル、IT・DXなどに従事する本部機能社員約1800人のうち、約1200人を淡路島勤務にする。パソナの本部は東京駅前の日本ビルヂングにある。このビルはかつて東洋一といわれた巨大ビルだが、間もなく解体され、跡地に日本一の超高層ビルが建つことが決まっている。つまり、どのみち本部を移転しなければならないのなら、一部を淡路島に持っていき、自然との共生を図ろうというわけだ。 この計画が発表されると「本部移転にかこつけた人減らしだ」という批判が起きた。地方勤務を嫌う社員の退職を当て込んでいるという見方だ。しかし、これは正しくない。なぜなら、社員の誰もが「ついにその時が来た」と受け止めているからだ』、「パソナ」は竹中平蔵を会長にして政府にも食い込んでいるいやらしい面もあるが、新しいものに飛びつく機動性はさすがだ。
・『コロナ襲来が後押しか  実は、すでに淡路島には多くのパソナ社員が働いている。パソナは20年ほど前から農業への転職を支援しているが、人材育成のため08年に、創業者であり現在も代表を務める南部靖之氏の故郷・神戸市に近い淡路島に農場を開いた。 その後、パソナは淡路島でさまざまなレストランなど多くの施設をつくり、事業を拡大していく。17年にはアニメパーク「ニジゲンノモリ」をオープンさせた。南部氏自身、今では大半の時間を島で過ごしており、数年前から「いつか本部を淡路島に移す」と言い続けてきた。そこにコロナが襲来した。 コロナは日本経済に大きなダメージを与え続けているが、その一方で社会のデジタル化を一気に促進した。それが冒頭に記した新しい働き方だ。今なら、本部を地方に移転しても社会の理解が得られるだけでなく、むしろ先進的企業としての評価も得られる。 南部氏は一番に手を挙げるのが大好きだ。人材派遣業そのものだけでなく、内外価格差是正や日本版401kにいち早く目をつけ、ビジネスにしてきた。本部の地方移転も、今後の社会のトレンドを読み、いち早く手を挙げたというわけだ。 その意味で、言葉は悪いがパソナはコロナを利用した。そして業績面でもパソナはコロナをうまく利用している。今期(21年5月期)の第1四半期決算からもそれは明らかで、営業利益は前年同期比で約5倍に増えている。 そのからくりを、次回で解説する』、早く「からくり」を知りたい。

第三に、上記の続きを、1月7日付け日刊ゲンダイ「パソナグループ<下>BPOサービス“コロナ特需”で業績急拡大」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/283526
・『新型コロナウイルスは、日本経済を大きく傷つけた。中でもエンタメ、旅行、外食の各業界は、致命的ともいえるダメージを受けた。 しかしその一方で、その恩恵を受ける業界もある。巣ごもり消費を受けて、食品スーパーの業績は好調だし、「あつ森」が大ヒットした任天堂は、昨年3月には3万円台だった株価が、半年後には6万円を超えた。 パソナグループもその一社だ。同社が昨年10月に発表した今期(21年5月期)の第1四半期(20年6~8月)では、本業の儲けを示す営業利益が72億円となり、昨年の同時期より60億円も増えた。 パソナに対する一般的なイメージは、人材派遣大手だろう。利益が伸びたということは、それだけ派遣業務が順調だったのかというとそうではない。決算資料を見ても、派遣部門の売り上げは前年よりわずかだが減っている。それに代わって大きく売り上げを伸ばしているのがBPOサービスという事業だ。 BPOとは「ビジネス・プロセス・アウトソーシング」の略で、外部の業務をパソナが請け負うことを意味している。では何を請け負ったのかというと、コロナ禍で売り上げを落とした企業・個人事業主に対して政府が支給した「持続化給付金」事業である。 この事業は、まずサービスデザイン推進協議会が769億円で受託、そこから電通に749億円で再委託されたが、ほとんど何の業務もやっていないにもかかわらず、推進協議会が20億円を「中抜き」したと批判された。 それはともかく、再委託された電通はそれをさらに子会社などに再委託、そのうちの約170億円をパソナが受託した。 その結果、パソナの第1四半期にBPOサービスの売り上げは、前年より83億円も増えた。この事業単独の利益は公表されていないが、他事業の売り上げなどから推測すると、50億円以上の利益が出ている。つまり全営業利益の7割が、持続化給付金事業によってもたらされたと思われる』、「BPOサービス」で「50億円以上の利益」とは、元々の「「持続化給付金」事業」の見積もりに問題があったとみるべきだ。「電通」もいいかげんなことをするものだ。
・『株価は600円台から2000円台へ  パソナはそれほど利益率の高い会社ではない。前期(20年5月期)決算の営業利益率は3・3%にすぎない。 人材派遣業自体、それほど利益率が高いわけではないが、パソナの場合、不採算事業を抱えているため、さらに利益率を押し下げる。 その不採算事業とは地方創生事業。パソナでは、南部靖之代表の号令一下、地方創生に力を注いでいる。今度、本部機能を移転する淡路島の事業もそのひとつ。それ以外にも京丹後や東北の被災地など、日本各地で事業を行っているが、その多くが赤字事業で、その額は年間18億円にも上る。 それでも南部代表は、「地方創生は日本の重要テーマ」と旗を降ろそうとはしないが、現段階ではトップの道楽事業といっていい。 そんなパソナにとって、持続化給付金事業の受託というコロナ特需が起きた。そのため、コロナの感染拡大初期には600円台にまで落ちた株価は現在、2000円台をつけている。 神風は吹いた。今後は赤字の地方創生事業を黒転させることがパソナにとって最大のテーマだ。淡路島への本部移転はその決意表明ともいえるのだ』、「600円台にまで落ちた株価は現在、2000円台」、とは、ずいぶん乱高下したものだ。それにしても、「赤字の地方創生事業を黒転」まで織り込んでいるのだろうヵ。
タグ:日刊ゲンダイ 日経ビジネスオンライン 働き方改革 松本 健太郎 (その30)(コロナ禍で広まる「テレワークは歓迎すべき働き方」のウソとホント、パソナグループ<上>都心一等地から淡路島へ本部移転を実行、パソナグループ<下>BPOサービス“コロナ特需”で業績急拡大) 「コロナ禍で広まる「テレワークは歓迎すべき働き方」のウソとホント」 ①、②が該当するのであれば、「生産性が」上がらないのも理解できる テレワークで生産性、QOL、仕事満足度は上がった? 「テレワーク」がバラ色でないのは当然としても、どんな「懸念点」があるのだろう。 「テレワークは歓迎される働き方」への懸念 新型コロナウイルス後のテレワークは、生産性が上がりにくい? 「米国と英国において」、「高賃金であるほど、テレワークがしやすい業務であり、またテレワークのための投資ができると見てもよいかもしれません」、というのは頷ける結果だ 「テレワークの導入は「さっさとやれ」と圧力をかけるのではなく、玉ねぎの皮をめくるように、デメリットが出る原因を探り、1つ1つ問題を除去しつつ進めることが大事だと思います」、その通りだ テレワークが引き起こすメンタル問題 テレワークで期待されるアウトプットが出ないからといって、それは個人だけの問題ではありません。テレワークによって生産性が低下した人をわらう社会こそ間違っています」、同感である 「筆者自身もテレワークで心労を来たし、万全の感染予防を施して出社している1人です」、説得力の根源が理解できた 真保紀一郎 「パソナグループ<上>都心一等地から淡路島へ本部移転を実行」 「パソナ」は竹中平蔵を会長にして政府にも食い込んでいるが、新しいものに飛びつく機動性はさすがだ コロナ襲来が後押しか 営業利益は前年同期比で約5倍に増えている 「パソナグループ<下>BPOサービス“コロナ特需”で業績急拡大」 「BPOサービス」で「50億円以上の利益」とは、元々の「「持続化給付金」事業」の見積もりに問題があったとみるべきだ。「電通」もいいかげんなことをするものだ 株価は600円台から2000円台へ
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中小企業(その1)(中小企業を減らそうというのは時代錯誤 山口義行氏が指摘、成長戦略会議での日商発言に感じる 「低賃金国家」日本の遠い夜明け、菅内閣は「中小企業つぶし」という日本経済つぶしを押し進めている) [経済政策]

今日は、中小企業(その1)(中小企業を減らそうというのは時代錯誤 山口義行氏が指摘、成長戦略会議での日商発言に感じる 「低賃金国家」日本の遠い夜明け、菅内閣は「中小企業つぶし」という日本経済つぶしを押し進めている)を取上げよう。日本で中小企業政策は、聖域化され、新銀行東京、日本振興銀行、東京都証券化、中小企業金融円滑化法など、失敗の連続だった。

最近のところでは、先ずは、11月22日付け日刊ゲンダイ「中小企業を減らそうというのは時代錯誤 山口義行氏が指摘」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/281302
・『山口義行氏(立教大学名誉教授)インタビュー  菅政権は中小企業再編を主張するデービッド・アトキンソン氏やかつて不良債権処理を手掛けた竹中平蔵氏を成長戦略会議の民間議員に起用した。地方銀行再編ももくろむスガノミクスは時代に逆行していると、長年、中小企業支援をしてきたプロである山口義行氏(立教大学名誉教授)は指摘する。 中小企業と言っても業種も大きさも違いますが、全体としてコロナの影響で経営が厳しいことは間違いない。今年前半の政策もあって資金的には非常に緩い状況にありますが、売り上げが伸びないので依然として経営は厳しいままです。 経済の現状を、私は「8割経済」と表現しています。売り上げが8割まで戻ってきているが、そこで止まってしまっている。中小企業は売り上げが14%減ると赤字になると言われています(大企業は30%)。多くの中小企業が赤字です。それでもやっていられるのは今のところは銀行借り入れを増やした結果、資金的には余裕があるからです』、「多くの中小企業が赤字です。それでもやっていられるのは今のところは銀行借り入れを増やした結果、資金的には余裕があるから」、その通りだろう。
・『厳しい飲食と製造業  中小企業でもとくに飲食や小売りが厳しいのはみなさんご存じでしょうが、地方都市の、地域密着型の店は前年比プラスのお店が多いんです。リモートワークになり、また人混みが嫌気され、都心ではなく地元で消費することが増えたからです。他方、都心型のお店はガタガタです。売り上げが落ちてくるとテナント料が払えないということで、渋谷などでも前年比2倍くらいのテナント募集があるくらいです。 たとえば地域密着でやってきた老舗の和菓子屋さんなどはいいのですが、全国販売を目指して都心の百貨店などに入ってきたお菓子屋さんはガタガタです。消費の構造に大きな変化が起きて、向かい風のお店と追い風のお店で二極化している。ただ、全体としては非常に景況が悪い。 あと製造業が悪くて、雇用をどんどん減らしています。輸出が伸びないからです。自動車産業も8月くらいから生産調整を戻したと言っていますが、いいのはトヨタ自動車くらい。トヨタ以外の下請けは依然として前年比3割減くらいが続いている。欧州も悪くなっているし、米国も個人消費が伸びていないため再び生産調整が来るという不安もある。先行きを警戒している状態です』、「製造業が悪くて、雇用をどんどん減らしています。輸出が伸びないからです」、厳しそうだ。
・『地銀再編論は的外れ  その中で菅政権では地方銀行の再編、中小企業の再編を促す動きがあります。地方の金融機関の経営が厳しいことは事実です。それをなんとかするのに、金融機関の数を減らすという発想なのですが、これは単純な需給均衡論で、現実にまったくそぐわない発想です。 第一に、金融機関の数を減らしても需給は均衡しません。たとえばレストランが3つあるがどうも多すぎるというので、2つに減らしたとする。この場合には、供給が減りますから、確かに需給バランスがよくなる。しかし金融機関の場合、3行を2行にするとどうなるか。預金の切り捨てはできませんから、吸収された金融機関の預金を残りの金融機関が引き受けることになる。ですから資金の供給過多、カネ余り状態は変わらないわけです。結果として、金融機関の苦しい経営状態も変わりません。 もうひとつはバンカー機能が低下します。資金需給のバランス回復には資金需要を増やすことが必要です。そのためには金融機関は率先して企業の事業創造のお手伝いをしなければなりません。ところが金融機関を減らせば結果的には支店を減らし、行員の数を減らすことになります。すると行員1人当たりが受け持つ企業の数が増え、行員は企業の面倒をますます見られなくなる。いわゆるバンカー機能はむしろ低下するわけです。こうなった場合に地銀はどうするか。金が余っていますから、外国の債券などを買うことで利益を得る方向に走る。そんなことをしていても地域経済は強くなりません。政府はまったくナンセンスな議論をしています』、「支店を減らし、行員の数を減らす」結果、企業向けの貸出が減って、「外国の債券などを買う」、というのは確かに「地域経済」にはマイナスだ。
・『大企業こそが行き詰まっている  バンカー機能復活のための議論を  確かに金融機関は全体的に資金需要が少ない中で稼げなくなっています。これまで国債運用でなんとかやっていたが、国債がゼロ金利になりマイナス金利になり、国債を買っても運用差益が出ない。金融機関が利益を稼ぐ場面がなくなってしまった。そこで地域企業の事業を大きく育てようという方向にいけばいいのだけど、なかなかできていない。これを変えるためには、たとえば人事の評価のあり方を変える必要があります。貸し出しを増やしたから給料を上げるのではなく、事業創造や企業の面倒を見るのにどれだけがんばったのか、そういう種まきの機能をきちんと評価する制度にする必要があります。今のやり方だと懸命に企業の面倒を見て、2、3年経ってなんとか資金需要が生まれるくらいに事業が育ったところで担当者が異動となり、すべての努力が後任者の評価になってしまう。そうした金融機関の運営上の問題をもっと議論しなければいけないはずです。ところがそうではなく金融機関の数を減らせばいい、と。そういうバカバカしい議論にくみしているところに菅さんの限界が出ています。 さらに中小企業自体も生産性が低いからと減らし、再編して大きくすべきだと言っています。中小企業の利益率が低いのは小規模な中小企業が多いからだという発想です。しかし企業規模と利益率は必ずしも相関しない。たとえば大手自動車メーカーの下請けは非常に低い利益率で経営しています。利益が出ても親会社から設備投資をしろなどと言われ借り入れをすることになる。断れば下請けの仕事がなくなるためやらざるを得ない。そういうカツカツの利益で中小企業がやっているから日本の大企業はもっている。こういう構造を問題にしないで中小企業の数を減らせばいいと言うのは、これもまた単純な議論です。 愛知県の社員50人くらいのある会社がトヨタの下請けをやめたんです。自動車関係の仕事をやめると仕事の量が確保できないため社員が10人ほどに減りましたが、いまは宇宙産業や医療関係の仕事をやっていて利益率は以前よりはるかに高い。結局、従業員をたくさん抱えていると利益よりも仕事の量を確保しなければならなくなり、親会社の言いなりになってしまう。そこから脱却したのが良かったんです。規模はむしろ小さくなった。 コロナ禍でリモートワークも広がって今後は消費が地方に分散していく傾向にある。結果として、市場が細分化していきます。大企業が細分化した市場を相手にすると、コストがかかりすぎます。ずうたいの小さい中小企業の方が適している。 たとえばイタリアの小規模な時計屋の時計はたくさん売れないけど、1個数十万円、数百万円でも売れる。ところが、日本の大企業の時計は性能が良くても値段はソコソコ。そのかわり大量に売ることができる。会社の規模の大きさに応じてビジネスモデルが違うわけです。これからの日本は、高付加価値な商品を提供できる中小企業をたくさん輩出することが重要なんです。 規模を大きくして生産性を高めるというのは、効率的な生産をして同じモノを同じ時間でより大量に作れるようにすることです。しかし大量に作っても今の時代売れません。マーケットが急拡大していれば別ですが、経済が成熟期にありますから、そんなにマーケットも伸びないわけです。その意味で、いま行き詰まっているのは実は大企業の方です。それなのに中小企業を整理して大きくしようという発想は理解できません』、「人事の評価のあり方を変える必要・・・貸し出しを増やしたから給料を上げるのではなく、事業創造や企業の面倒を見るのにどれだけがんばったのか、そういう種まきの機能をきちんと評価する制度にする必要」、そうした項目を基盤項目として評価する動きはだいぶ以前からある。「高付加価値な商品を提供できる中小企業をたくさん輩出することが重要」、その通りだが、極めて難しい課題だ。
・『財務省の狙い  政府は中小企業を今まで守りすぎたという議論を持ち出すことで、財政支出を伴う中小企業支援策を縮小することを正当化したいのではないでしょうか。 民主党連立政権時代には緊縮財政と言っていた財務省が、(第2次安倍政権後)ころっと変わってバラマキを容認し始めましたよね。ある時、財務官僚に「これでいいのか」と聞いたら、「これは消費税を上げるための戦略だ」と言いました。消費税はもう10%に上がってしまった。さらにコロナで大量にお金を使ってしまった。財務省はこれからは財政支出を抑えるしかないと考えている。 この考え自体は国を心配してのことなんでしょうが、正直に「国はこれ以上お金を出せない。勘弁してくれ」とは言わない。これまで中小企業を守りすぎた。これからは数を減らして再編すべきなんだという理屈を持ち出す。しかしこれは現実にそぐわない理屈です。 中小企業は政府の再編誘導策に乗せられないで、むしろ「小さいこと」に誇りをもち、その優位性を発揮していくべきです』、「中小企業は政府の再編誘導策に乗せられないで、むしろ「小さいこと」に誇りをもち、その優位性を発揮していくべきです」、同感である。
・『中小企業を救う永久劣後ローンとは  三井住友信託銀行名誉顧問の高橋温氏が今年4月、全国186万社の中小企業の売り上げが3分の2になれば23兆円の損失が生じるから5兆円の劣後ローンを実施せよと日経新聞紙上で提案した。劣後ローンは毎月の返済、返済期限がなく、ほかの融資に劣後する。山口義行氏も4月に永久劣後ローンを緊急提言した。詳細はスモールサンのHPで』、「永久劣後ローン」は株式に近いもので、自己資本比率を算出する際には自己資本と見做される。取引金融機関が同意してくれるのであれば、大いに発行すべきだ。

次に、11月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「成長戦略会議での日商発言に感じる、「低賃金国家」日本の遠い夜明け」を紹介しよう。
・『日商会頭の口から飛び出した「珍説」の信憑性とは  先日、政府の成長戦略会議の中で、日本商工会議所(以下、日商)の三村明夫会頭の口から、耳を疑うようなダイナミックな「珍説」が飛び出した。 「小規模企業の減少は都市への雇用流出に繋がり、地方の衰退を加速させている」(成長戦略会議ご参考資料 中小企業政策の考え方について 2020年11月19日 日本商工会議所) 「小規模事業者」とは、国の定義では、製造業で従業員20人以下、商業・サービス業では5人以下だが、小規模事業者の平均従業員は3.4人ということなので、家族経営で「社長1人、社員2人」のようないわゆる零細企業をイメージしていただくといいかもしれない。 近年、そのような零細企業の数と、そこで働く従業員の数が減っている。特に地方では顕著で、三村会頭が会議に提出した資料にも、2012年から16年にかけて地方の大企業の従業員は5万人増え、中規模企業は58.8万人増しているに対して、小規模事業者は109.2万人減っているという表が掲載されていた。 この零細企業の衰退が、地方衰退の背中を押している――。驚くことに、日商は資料の中でそのように「断定」している。地方の雇用の受け皿となっている零細企業が消え、いたしかたなく故郷を離れて東京などの大都市で就職する人が増え、それが結果として地方を衰退させているというわけだが、これはかなりユニークな「珍説」だと言わざるを得ない。 と聞くと、「何が珍説だ!ド正論じゃないか」と日商にエールを送りたくなる小規模事業者の皆さんも多いだろうが、これが通るのなら日本の経済政策を根本から見直さなくてはいけない。これまでの「常識」では、地方の労働力流出に関係しているのは、「賃金」という結論になっているからだ。 わかりやすいのが、内閣府の「平成27年度年次経済財政報告」の中に、「人口流出入と賃金格差」という図と共にある以下のような記述だ。 「地方ほど人手不足感の高まりが大きくなっているが、地方への労働力の移動はどうなっているだろうか。地方の経済成長にとっても、人手不足が供給面の制約とならないためには、労働力の確保がより重要な課題である。しかしながら、むしろ地方からの人口の流出が続いている。この点に関して、賃金と人口の流出率の関係をみると、賃金水準が低い地域ほど人口の流出率が高くなるという、はっきりとした関係がみられている」』、「賃金水準が低い地域ほど人口の流出率が高くなるという、はっきりとした関係がみられている」、経済合理性に沿った動きだ。
・『地方から人が出て行くのは都会よりも賃金が低いため  地方からどんどん若者や労働者が出ていっているのは、「都会よりも賃金が低い」という要因が大きいというのである。つまり、零細企業が減ったので労働者が東京に流れたと日商は主張するが、順番が逆で、都市部との賃金格差で労働者が東京に流れたことにより、零細企業が減っている可能性もあるのだ。 これは、何も政府だけが主張をしているような話ではなく、かなり一般的な分析である。たとえば、秋田県の人口が100万人を割った2017年、同県の雇用流出の深刻度を取材した日本経済新聞の記事を引用しよう。 『県内の高校を卒業した生徒の半数以上が進学や就職のために秋田を離れ、多くはそのまま県外で就職する。「若者の県内定着」の旗を振る行政や企業の幹部の子供が、首都圏に出たまま戻らないケースも少なくない。大きな要因が賃金を含めて魅力的な仕事を提示できないこと。厚生労働省の都道府県別現金給与総額によると、秋田県の2015年の平均給与は25万9,800円。全国で下から4番目に低く、東京の6割の水準だった。16年度の最低賃金も716円で全国最低ラインだ』(日本経済新聞 2017年5月15日) この記事に限らず、地方衰退の文脈で出てくるのは「都市部との賃金格差」というのがお約束で、「零細企業が減ったから」という解釈が出てくることは極めて稀だ。海外の話でもほとんど聞いたことがない。 もちろん、世の中は広いので、どうしても子供の頃から働きたかった地元の零細企業が潰れてしまったので、泣く泣く故郷を離れたという人もいらっしゃるかもしれない。そのような意味では百歩譲って、「零細企業の減少だって、地方衰退の要因の1つという可能性もある!」という主張ならば、わからないでもない。 しかし、日商に違和感を覚えるのは、地方の小規模事業者で働く従業員が4年間で109.2万人減少しているというデータの一本足打法で、「小規模企業の減少が地方の衰退を加速させている」という結論に結びつけている点だ。「都市部との賃金格差が地方衰退を加速させている」という数多の言説がある中で、この荒技は経済団体としての信用を失墜しかねないのではないか。 何やら日商や三村会頭を批判しているように聞こえるかもしれないが、そんなつもりはまったくない。むしろ、日商の立場としてはこのような方向性の主張をしたいという気持ちは痛いほどよくわかる。 ただ、「中小企業経営者の利益を守らねば」という気持ちが前面に出すぎているのが、気にかかるのだ。特に、政府の成長戦略会議という国益を考える場において、地方の活性化や労働者の利益があまりにも頭からスコーンと抜けてしまっているのが、「ちょっと露骨すぎやしませんか?」と言いたいだけである』、その通りだ。
・『中小企業経営者の利益を最優先して社会や労働者は二の次、三の次  というと、「おかしな言いがかりをつけるな!日商は地方経済や、零細企業で働く人たちの利益などを総合的に考えて、零細企業保護を訴えているのだ!」と、唇をワナワナと震わせて反論してくる方も多いかもしれないが、それはさすがに建前がすぎる。 日商というのは、全国の商工会議所の会員124万人を束ねている、中小企業経営者の団体だ。もちろん、公共法人なので、社会課題など公共性を持って取り組まなくてはいけないということになってはいるが、どうしても「中小企業経営者の利益」を最優先して、社会や労働者は二の次、三の次になってしまいがちなのだ。 このような会社が増えれば都市部との賃金格差も埋まるので、地方の衰退も食い止められるかもしれない。 しかし一方で、この統合劇によって滅茶苦茶不利益を被る人たちも、どうしても出てきてしまう。それは中小企業の経営者と日商だ。 零細企業10社が中堅企業1社になってしまうということは、零細企業経営者9名がその立場を失うということだ。このようなことが全国で起きれば、商工会議所の会員は激減する。会員数が減れば、日商の活動資金はもちろん、政治的影響力も低下するというのは自明の理だ。 つまり、日商が菅総理肝煎りの中小企業改革に反対する際に、「地方が」「雇用が」といろいろな理由が飛び出してくるが、何よりも自分たちの団体と会員である経営者の既得権益を死守するということが、最大の目的なのだ』、国民経済よりも「自分たちの団体と会員である経営者の既得権益を死守する」のを優先するのは、「日商」にとってはやむを得ないことだ。
・『中小企業政策で経営者団体の主張がそのまま通ってしまう理由  繰り返しになるが、それが悪いと言っているわけではない。自分の業界に利益を誘導しない業界団体など存在意義がない。ただ、1つの問題は、このような政府の会議に参加する際に「ブレーキ役」がいないということだ。 大企業経営者の団体である経団連(日本経済団体連合会)が、成長戦略会議などに招かれる場合、連合(日本労働組合総連合会)も対で招かれることが多い。経団連は大企業経営者の立場で政策提言し、連合は大企業労働者の立場で政策提言する。立場が真逆の人たちにそれぞれ意見を言わせて、バランスをとっているのだ。 しかし中小企業政策では、日商のような中小企業経営者の団体のみしか招かれない。全国の中小企業で働く人たちの立場を代弁できるような、大きな労働系の団体がないため、日商などの「経営者団体」の主張が、そのまま国の中小企業政策として通ってしまうのだ。 これは、中小企業経営者の皆さんにとってはとてもハッピーなことだが、それが日本社会全体のハッピーではないということは、今さら説明の必要はないだろう。 「最低賃金を引き上げたら、中小企業がバタバタ倒れて日本はおしまいだ!」という声に従うまま、日本政府は半世紀、中小企業保護を続けてきた。結果、日本人の7割は中小企業で働くという中小企業大国になったが、一方でその産業構造を支えるため、中小企業労働者の利益は極限まで削られた。 気が付けば、日本は先進国の中で最低ラインの低賃金重労働国家になった。 また、零細企業が多くて労働者が東京に流れているという、今の日本の地方の現状というのは、厳しい言い方をすれば、零細企業が賃金もそれなりで魅力のある中堅企業に成長できなかったから、労働者にそっぽを向かれてしまっているということでもある。 だから、菅総理は地方に賃金もそれなりで魅力のある中堅企業を増やすため、中小企業の統合や再編を促し、これに日商は反対をしている。果たして、それで本当に地方の労働者がハッピーになれるのかというのは甚だ疑問だ。 しかし、そんな日商の「改革潰し」は何となくそのまま通ってしまいそうだ。前述のように、成長戦略会議で日商のブレーキ役になる団体はいないからだ。 唯一、中小企業再編を主張し続け、菅総理の政策にも影響を与えたというデービッド・アトキンソン氏がいるが、「元ゴールドマン・サックス」「菅総理のブレーン」というイメージもあって、新自由主義の権化のように勘違いされている。 アトキンソン氏が主張しているような「全国一律賃金」や「最低賃金の引き上げ」などということは、労働組合や赤旗が主張することで、そんなことを新自由主義者が唱えたら仲間から袋叩きとなる。 にもかかわらず日本のマスコミは、アトキンソン氏を新自由主義者扱いし、主張が対立している日商側を労働者の味方のように勘違いしている。このあたりの誤解は、日本医師会に対する誤解を見ればわかりやすい』、「「最低賃金を引き上げたら、中小企業がバタバタ倒れて日本はおしまいだ!」という声に従うまま、日本政府は半世紀、中小企業保護を続けてきた。結果、日本人の7割は中小企業で働くという中小企業大国になったが、一方でその産業構造を支えるため、中小企業労働者の利益は極限まで削られた。 気が付けば、日本は先進国の中で最低ラインの低賃金重労働国家になった」、「また、零細企業が多くて労働者が東京に流れているという、今の日本の地方の現状というのは、厳しい言い方をすれば、零細企業が賃金もそれなりで魅力のある中堅企業に成長できなかったから、労働者にそっぽを向かれてしまっているということでもある」、「成長戦略会議で日商のブレーキ役になる団体はいない」ことが、日本に大きな歪みをもたらしたようだ。
・『「経営者の天国、労働者の地獄」という状況は終わりそうにない  マスコミは日本医師会の主張を「医療現場の声を代弁している」と持ち上げるが、この団体は開業医が中心となっている。つまり日商と同じで、「経営者の団体」なのだ。今、コロナ禍の医療現場で必死に戦っている公立病院、日赤、地域の急性期病院などで働いている「勤務医」の皆さんも、「B会員」として入会できなくはないが、その数は開業医に比べて圧倒的に少ないので、影響力は非常に小さい。 私の友人で、救急医療を担当する勤務医も、「日本医師会は開業医の利益を守る団体だから、我々のことなど二の次、三の次ですよ」と語っていた。この構図は、日商と中小企業で働く従業員にもそのままあてはまるが、世間では日医は「医師の団体」、日商は「中小企業で働く人々の団体」だと勘違いされている。 こういう誤解が広まっているからか、この国では、反権力を掲げるマスコミが、低賃金で労働者を働かせる経営者の応援をする、という極めて珍しい現象が起きている。 感染者の急増に伴って、マスコミはああだこうだと政権批判を始め、「とにかく雇用を守れ」という声も強まってきた。ということは、「地方の雇用を守っているのは我々だ」という日商の主張が、すんなりと受け入れられやすい土壌は整いつつあるということだ。 菅政権がいつまで続くのかは不透明だが、「経営者の天国、労働者の地獄」という日本の状況は、まだまだ終わることはなさそうだ』、「こういう誤解が広まっているからか、この国では、反権力を掲げるマスコミが、低賃金で労働者を働かせる経営者の応援をする、という極めて珍しい現象が起きている」、確かに奇妙な現象だ。そろそろ、「マスコミ」には矛盾に気付いて、姿勢を変えてもらいたいところだ。

第三に、12月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏による「菅内閣は「中小企業つぶし」という日本経済つぶしを押し進めている」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256479
・『菅内閣は経済・産業対策で中小企業再編策を着々と進めている。しかし、この内容をよくよく見れば、「再編」の名のもとに、中小企業を「淘汰」するもので、「中小企業つぶし」に他ならない。中小企業再編策の理由として「中小企業は過保護だ」とも言われているが、それは「根拠なきイメージ」に過ぎない』、興味深そうだ。
・『初の国会での論戦に臨んだ菅首相 内容は「お粗末なもの」  10月26日、第203回国会(臨時会)が招集され、12月5日までの41日間、開かれた。9月16日に発足した菅内閣としては、初めての国会となった。 初めての国会での論戦に臨んだ菅首相、その中身はと言えば…実に「お粗末なもの」であった。答弁のお粗末さについては、既に報道などを通じてご承知のことと思う。 そもそもの所信表明演説が、日本の社会経済の実像、新型コロナウイルスの感染拡大の前から変化しつつあったものが、その世界的感染拡大をきっかけに、加速化した世界情勢などを全く無視したものである。それだけでなく、「特定の利権、利益が儲(もう)けられるようにします」と宣言したような内容で、この国はどこぞの開発途上国、開発独裁国家に変質してしまったのではないかと思わざるをえない内容だ。 本稿ではそれらを細かく見ていくことはしないが、「自助、共助、公助」や「行政の縦割り、既得権益、そして、悪しき前例主義を打破し、規制改革を全力で進めます」とともに、自民党総裁選においては、あれだけ「中小企業の数が多すぎる」「生産性向上のために中小企業再編」「賃上げのために中小企業再編」と繰り返していたのに、肝心な所信表明演説では「中小企業」という言葉ができたのは3カ所のみで、中小企業の再編に真正面からは触れずに、以下のとおり述べている。 「新型コロナウイルスとの闘いの中で、地方の良さが見直される一方で、産業や企業をめぐる環境は激変しております。こうした状況を踏まえ、都会から地方へ、また、ほかの会社との間で、さらには中小企業やベンチャーへの新たな人の流れをつくり、次なる成長の突破口を開きます。 大企業にも中小企業にも、それぞれの会社に素晴らしい人材がいます。大企業で経験を積んだ方々を、政府のファンドを通じて、地域の中堅・中小企業の経営人材として紹介する取り組みを、まずは銀行を対象に年内にスタートします」 要は「中小企業再編への地ならし」ということだろう』、「大企業」の余剰人員を「政府のファンドを通じて、地域の中堅・中小企業の経営人材として紹介する」、給与の違いはどうするのだろう。こんな安易な案が上手くいく筈はない。
・『中小企業の再編による「基盤の強化」はまさに中小企業淘汰  菅首相がぶち上げた中小企業再編に対する中小企業者、専門家などからの反発が強く、表向きはトーンダウンしたように見せたのかもしれないが、実態としては着々と進められているようで、中小企業政策を所管する梶山経済産業大臣に対しては、以下のとおり指示があったと、9月18日の閣議後記者会見において梶山大臣は述べている。 「ポストコロナを見据えて、中小企業の再編促進など、中小企業の生産性を向上させ、足腰を強くする仕組みを検討することなどについて(菅総理から)御指示がありました」(カッコ内は筆者追記) 「中小企業の再編促進」に関し菅首相から指示があったことを明確に認めているわけであるが、それにもかかわらず、所信表明では一言もそれに触れないとはなんと姑息なことか。 本件に関連して11月18日の衆院経産委員会で質疑に立った、立憲民主党の落合議員の質問に対しては、次のように答弁している(いずれも筆者が衆議院インターネット中継動画より関係部分を書き起こし。各文末は読みやすさの観点から常体に修正。その他の部分も含めた詳細な質疑の内容については、同中継動画を参照されたい)。) 落合議員:(消費税増税、キャッシュレス対応、働き方改革、新型コロナ等による影響を踏まえ)こんな大変な時に「中小企業淘汰論」というものが出てきた。(中略)菅総理のブレインの方の雑誌のインタビュー記事の見出しが「中小企業は数は半分でいい」「中小企業の半数は消えていい」と、そんなことが見出しになるようなインタビューもされている。これを機に財務省も中小企業支援の支出を絞りたいというような声があがっていると聞く。これだけ厳しい状況で、わざわざ淘汰論のような積極的な声が出てくるというのは非常に危険な状況である。中小企業淘汰論などというのは特にこのような状況であってはならないし、政府の方針にしてはならない、大臣そうはっきりおっしゃっていただきたい。 梶山大臣:政府でそういったテーマで議論されている事実はない。中小企業の基盤強化をしっかりしていくのだ、そして中小企業は多種多様であり、それぞれに地域によって役割の在り方も違うので、しっかりと中小企業をこれまで以上に支えていく、そうしたことが中小企業対策の柱になっていくはずである。私自身も気になったので総理に問うてみたところ、総理は中小企業の基盤強化をしていくのだ、そして小さな企業が中堅企業になっていく、場合によっては大きな企業になっていく、そして海外でも太刀打ちできるような企業になっていく支援をしてほしいということであったので、そういう方向でしっかりと対応して参りたい。  この答弁からは、一瞬梶山大臣は反対しているように見えたかもしれないが、繰り返し使われている「基盤の強化」とは、とりもなおさず中小企業の再編による「基盤の強化」であり、まさに中小企業淘汰に他ならない。 従って、「小さな企業が中堅企業に~」というのは中小企業の再編によって実現することが想定されているということである。しかし、政府としては「中小企業淘汰」という表現を用いていないことから、答弁においてははぐらかされる結果となったが、要は手を替え品を替え、そして表現を変えて是が非でも進めようとしているということだろう。そのことは最近の経済財政諮問会議において、中小企業基盤強化の美名の下の再編、つまりは淘汰政策が議論されていることからも明らかである』、「中小企業基盤強化の美名の下の再編、つまりは淘汰政策が議論されている」、このような欺瞞がまかり通っているのは、マスコミの不作為のためだ。
・『「中小企業再編」という名のもとに行われる「選択と集中」の問題点  さて、そもそもこの中小企業再編、もとい「中小企業淘汰」政策は、中小企業の賃金が上がらないのは中小企業の生産性が低いからであり、賃上げのためには生産性を上げること、そのためには中小企業の再編が必要であるというものであり、中小企業基本法を改正して国の支援の対象となる中小企業を絞り再編を通じた体力強化、基盤強化を図ることを目指すというものであったが、中小企業の賃金が低いこと、わが国全体として実質賃金が下がり続けている理由・背景は何であろうか? 中小企業のみならずわが国の賃金が上がらない、実質賃金が下がり続けている理由は、1にデフレ、2にコーポレートガバナンス改革に代表される構造改革、そして3に過剰なグローバル化である。従って、中小企業の規模や数の問題ではない。 これらの問題を解決しなければ賃金は上がらないわけであるが、もし中小企業を再編の大義名分の下で潰していけば雇用は奪われ、地域経済は衰退の一途をたどることになる。雇用が奪われればその地域でモノを買う購買力が著しく低下することになる。 つまり、需要が大幅に収縮していくので、 「作ってもモノは売れない」→「買ってもらうためには価格を下げる」→「そのためにはコストを下げる」→「コストの大きな部分を占める人件費、すなわち賃金を下げる」→「購買力が落ちる」 という悪循環に陥ることになる。 また、中小企業、特に下請け企業を苦しめているのは消費税であり、これをなくせば大幅な負担軽減につながり賃金増も可能となる。 「中小企業再編」という名のもとに行われるであろう「選択と集中」は、株主資本主義、株主配当重視主義、人件費や設備投資・研究開発投資を減らしてでも株主配当を増やす慣行、それらの下では、短期主義に基づくものであることが容易に想定される(現状で実際にそうなっているし、菅首相が所信表明で述べた「大企業で経験を積んだ方々を、政府のファンドを通じて、地域の中堅・中小企業の経営人材として紹介する取り組み」とはまさにそのためのものであろう)。 日本企業が持つ優良な技術や事業が失われるか、二束三文で外資に奪われることになりかねない。つまり、イノベーションの芽を摘み取ることになりかねないということである』、「中小企業を再編の大義名分の下で潰していけば雇用は奪われ、地域経済は衰退の一途をたどる」、現在のような需要不足のなかで、こうしたハードランディング路線を採ることには反対だ、「特に下請け企業を苦しめているのは消費税であり、これをなくせば大幅な負担軽減につながり賃金増も可能となる」、これには異論がある。
・『「生産性の向上」という大義名分 そもそも中小企業の生産性が低い原因は何か  「生産性の向上」も大義名分として使われているが、中小企業の生産性が低い原因は、コーポレートガバナンス改革、そして需要が減少していることである。つまり、デフレ状態では生産性向上のための投資は行われない傾向があるのである。 そもそも、作っても売れない中で「生産性向上」をしても意味がなく、投資が回収できないのであるから当然である。よって、生産性を向上させたいのなら、一にも二にもデフレからの脱却が急務であり、それには、まず国の財政支出を拡大させること、それによって有効需要を創出することである。 中小企業は日本企業の99%を占める地域経済の担い手であり、雇用の担い手であり、技術革新、イノベーション、ものづくりの担い手であり、日本経済を支えているのは彼らであると言っても過言ではない。 また彼らが元気に操業を続けてきたからこそ、地域の伝統や文化は支えられ、維持されてきた。その数が減れば、地域の衰退につながり、ひいては日本のさらなる衰退につながるであろうことぐらい、容易に想像がついてしかるべきである。一方で地方創生、地方における仕事の創出や確保を言いながら、他方でその担い手を潰すことになる政策を推進しようとは大いなる本末転倒であり、支離滅裂そのものである。 そして、菅政権の中小企業再編、もとい「淘汰」政策に関しては、「中小企業は過保護だ」ということも、その理由として挙げられているが、それは「根拠なきイメージ」に過ぎない。地域経済の担い手であり雇用創出の担い手である中小企業を保護するのは当たり前であり、「過保護」言説に便乗して批判するのはただの「鬱憤(うっぷん)ばらし」、ressentiment(ルサンチマン)に過ぎない(そんなことをしても、批判者自らが抱える問題の解決にはならない)。 本気で中小企業を含めた賃金の引上げや生産性の向上を目指すのであれば、なすべきことは脱構造改革、脱新自由主義、消費税ゼロを含めた脱緊縮財政、脱グローバルである。 すなわち、菅政権が目指す方向性と「真逆のこと」をやるべきということである』、私は「過保護」論に立つが、現在の需要不足下では、「保護策」をいきなり外すべきではなく、徐々に外してゆくべきだと思う。
タグ:中小企業 日刊ゲンダイ ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 室伏謙一 (その1)(中小企業を減らそうというのは時代錯誤 山口義行氏が指摘、成長戦略会議での日商発言に感じる 「低賃金国家」日本の遠い夜明け、菅内閣は「中小企業つぶし」という日本経済つぶしを押し進めている) 「中小企業を減らそうというのは時代錯誤 山口義行氏が指摘」 山口義行氏(立教大学名誉教授)インタビュー 多くの中小企業が赤字です。それでもやっていられるのは今のところは銀行借り入れを増やした結果、資金的には余裕があるから 厳しい飲食と製造業 製造業が悪くて、雇用をどんどん減らしています。輸出が伸びないからです 地銀再編論は的外れ 「支店を減らし、行員の数を減らす」結果、企業向けの貸出が減って、「外国の債券などを買う」、というのは確かに「地域経済」にはマイナスだ 大企業こそが行き詰まっている 人事の評価のあり方を変える必要 貸し出しを増やしたから給料を上げるのではなく、事業創造や企業の面倒を見るのにどれだけがんばったのか、そういう種まきの機能をきちんと評価する制度にする必要 そうした項目を基盤項目として評価する動きはだいぶ以前からある 高付加価値な商品を提供できる中小企業をたくさん輩出することが重要」、その通りだが、極めて難しい課題だ 財務省の狙い 中小企業は政府の再編誘導策に乗せられないで、むしろ「小さいこと」に誇りをもち、その優位性を発揮していくべきです 中小企業を救う永久劣後ローンとは 永久劣後ローン」は株式に近いもので、自己資本比率を算出する際には自己資本と見做される。取引金融機関が同意してくれるのであれば、大いに発行すべきだ 「成長戦略会議での日商発言に感じる、「低賃金国家」日本の遠い夜明け」 日商会頭の口から飛び出した「珍説」の信憑性とは 「賃金水準が低い地域ほど人口の流出率が高くなるという、はっきりとした関係がみられている」、経済合理性に沿った動きだ 地方から人が出て行くのは都会よりも賃金が低いため 政府の成長戦略会議という国益を考える場において、地方の活性化や労働者の利益があまりにも頭からスコーンと抜けてしまっているのが、「ちょっと露骨すぎやしませんか?」と言いたいだけである 中小企業経営者の利益を最優先して社会や労働者は二の次、三の次 中小企業政策で経営者団体の主張がそのまま通ってしまう理由 「最低賃金を引き上げたら、中小企業がバタバタ倒れて日本はおしまいだ!」という声に従うまま、日本政府は半世紀、中小企業保護を続けてきた。結果、日本人の7割は中小企業で働くという中小企業大国になったが、一方でその産業構造を支えるため、中小企業労働者の利益は極限まで削られた。 気が付けば、日本は先進国の中で最低ラインの低賃金重労働国家になった また、零細企業が多くて労働者が東京に流れているという、今の日本の地方の現状というのは、厳しい言い方をすれば、零細企業が賃金もそれなりで魅力のある中堅企業に成長できなかったから、労働者にそっぽを向かれてしまっているということでもある 成長戦略会議で日商のブレーキ役になる団体はいない 日本に大きな歪みをもたらしたようだ 「経営者の天国、労働者の地獄」という状況は終わりそうにない こういう誤解が広まっているからか、この国では、反権力を掲げるマスコミが、低賃金で労働者を働かせる経営者の応援をする、という極めて珍しい現象が起きている」、確かに奇妙な現象だ。そろそろ、「マスコミ」には矛盾に気付いて、姿勢を変えてもらいたいところだ 「菅内閣は「中小企業つぶし」という日本経済つぶしを押し進めている」 初の国会での論戦に臨んだ菅首相 内容は「お粗末なもの」 「大企業」の余剰人員を「政府のファンドを通じて、地域の中堅・中小企業の経営人材として紹介する」、給与の違いはどうするのだろう。こんな安易な案が上手くいく筈はない 中小企業の再編による「基盤の強化」はまさに中小企業淘汰 中小企業基盤強化の美名の下の再編、つまりは淘汰政策が議論されている」、このような欺瞞がまかり通っているのは、マスコミの不作為のためだ 中小企業再編」という名のもとに行われる「選択と集中」の問題点 「特に下請け企業を苦しめているのは消費税であり、これをなくせば大幅な負担軽減につながり賃金増も可能となる」、これには異論がある 「生産性の向上」という大義名分 そもそも中小企業の生産性が低い原因は何か 私は「過保護」論に立つが、現在の需要不足下では、「保護策」をいきなり外すべきではなく、徐々に外してゆくべきだと思う
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国家主義的経済政策:携帯料金引下げ問題(その3)(日本人はドコモの高い携帯料金に甘んじている 菅首相が圧力をかけるのは間違っている?、菅政権 携帯料金値下げの先にある「強権的国家」の可能性、携帯料金引き下げ 側近が語る菅政権の真意 坂井学・官房副長官「健全な競争環境が必要だ」) [経済政策]

国家主義的経済政策:携帯料金引下げ問題については、2016年1月6日に取上げたままだった。今日は、(その3)(日本人はドコモの高い携帯料金に甘んじている 菅首相が圧力をかけるのは間違っている?、菅政権 携帯料金値下げの先にある「強権的国家」の可能性、携帯料金引き下げ 側近が語る菅政権の真意 坂井学・官房副長官「健全な競争環境が必要だ」)である。なお、これまで「安倍首相の携帯料金引下げ検討指示」は、「携帯料金引下げ問題」に変更した。

先ずは、本年10月4日付け東洋経済オンラインが掲載した財務省出身で慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績氏による「日本人はドコモの高い携帯料金に甘んじている 菅首相が圧力をかけるのは間違っている?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/379409
・『アメリカ大統領選挙戦は、9月29日に注目の第1回大統領候補者討論会が行われ、子供に見せられないような「子供の喧嘩以下の痴態」が世界中に放映された。 この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。 これから大統領選挙までかんべえ氏(双日総研チーフストラテジスト吉崎達彦氏)が毎週書いて、私は2021年にバブルが崩壊してから毎週書く方がよい、などと思ったりもする。 それはさておき、今回は大統領選挙に比べたらまったく重要でないのに、日本の国民と菅義偉首相が重大な関心を持っている、携帯電話料金の引き下げ問題の話をしよう』、「小幡 績氏」の切れ味鋭い分析が楽しみだ。
・『携帯キャリア大手3社に問題はあるのか?  菅首相や武田良太総務相などが携帯電話料金の引き下げについて各社に圧力をかけるのは、憲法違反ではないか。 「自主的に料金を下げるよう努力を促しているに過ぎない」といった異論があるかもしれないが、私に言わせれば財産権の侵害であり、民間企業のビジネスの自由を奪う行為である。携帯キャリア大手3社は訴訟を起こし、最高裁判所まで争ったらよい。 そもそも、日本の携帯電話料金の何が問題なのか?結局のところ 1)価格が高すぎる 2)事実上、3社の寡占で独占的な立場を利用して価格を高く釣り上げている3)その結果、3社の利益水準が異常に膨らんでいる ということらしい。しかし、間違いだ。すべて問題はない。 3から逆順に見ていこう。儲け過ぎることで、社会的に制裁を受ける必要があるのであれば、資本主義は成り立たない。利益の最大化を使命として成立している企業が存在することは不可能になる。共産主義になるしかない。 しかし、実は、これが日本企業の利益率が低い理由の1つである。 投資家からも、メディアからも「日本企業は欧米企業に比べて利益率が低すぎる。儲ける力が弱すぎる」と攻撃されてきた。 あたかも、日本企業がサボっているような攻撃のされ方だったが、本当の理由は、儲けると叩かれるから、目立たない程度に利益を抑える癖がついてしまっていたのだ。出る杭は打たれる。儲ける企業も打たれる。みんなで儲けが少なければ、みんなで少しだけ批判を受ければ済む。それなら、後者に甘んじる。合理的だ。 そもそも、日本の携帯キャリアが儲け過ぎなら、アメリカのアップルはどうなるんだ?フェイスブックもグーグル(アルファベット)も、だ。それならば、彼らに対してこそ、菅首相は攻撃すべきではないか。しかも、彼らは、本国アメリカでは一定の法人税を納めるが、自国以外ではとことん租税回避行動をとり、法人税をほとんど払っていない、という批判が日本以外の世界中でなされている。そちらが先ではないか?』、「儲けると叩かれるから、目立たない程度に利益を抑える癖がついてしまっていた」、というのは儲け過ぎ批判の矢面に立ったかつての銀行界でも見られたが、いまや「儲け」を小さくみせるなど夢のまた夢だ。
・『独禁法違反と言えるのか?  2の「独占的な地位を利用して価格を高く釣り上げている」は、問題の本質だ。これが事実なら、こうした事態は放置できない。 しかし、これはまさに法律違反の問題である。首相が批判するのではなく、公約にするのではなく、有罪であることを立証すればよいのであり、それをしないのは、行政府の怠慢であり、政権の不作為である。政権が自慢することでなく、むしろ政権を攻撃する材料となるはずだ。 担当は、独立した組織としての公正取引委員会であり、独占禁止法違反で排除措置命令などの強い措置を取ればいいだけのことだ。違反状態でそれをしないのならば、それは公正取引委員会の大失策であり、政権の大失策である。 では、なぜこれまで問題にならなかったのか?それは、独占禁止法違反ではなかったからである。 3社に独占力はない。確かに3社の寡占状態ではあるが、ついこの前までは、NTTドコモ、au の2強をソフトバンクが追い上げる、という状態だった。ソフトバンクは「つながりにくい」などといったサービスの品質の批判を受けながらも、2社よりも安い価格で攻撃を仕掛け、3強の一角まで浮上してきたのである。そして、「3強」のポジションを獲得するや否や、利益率優先に切り替え、価格戦争は事実上やめてしまったに等しいのである。したがって、そもそも、断然1位のドコモが独占力を発揮して、価格を支配している、という状況ではなかったのである。 では、今は、3社が共謀をして、あるいは実は実質的なカルテル(協定などによって価格や数量などを相互に取り決める行為)などを行っているのだろうか? もちろん、その可能性はゼロではない。しかし、それならば首相が政治的な公約をする問題ではなく、法律にのっとり、正々堂々と、公正取引委員会が前出のように「排除措置命令」を出し、その行為をやめさせ、かつ課徴金を課せばよいことである。繰り返しになるが、それをする義務が公取にはある。それを「公取に行わせる使命」が政権にはある。だから、それは、政権公約にはなりようがなく、法律を公正にしっかりと運用するということに過ぎない』、同感である。
・『「価格が高すぎる問題」は存在しない  実際、日本ではいわゆる格安スマホがあふれている。なかには質の悪いものもあるが、質のよいものもある。実際、私も10年近く格安スマホを使っているがサービスには満足しており、携帯電話代が高いとは一度も思ったことがない。むしろ、過去、アメリカなどの携帯電話代のほうが非常に高く、回線を保有することができなかったという記憶しかない。 つまり、1の「価格は高すぎる」という問題は存在しないのである。日本の携帯電話代は国際的には高くない。むしろどちらかというと安い方なのだ。それなのに、世間だけでなく首相あるいは総務省などが「日本の携帯電話料金が世界的にもっとも高い」と主張し、それを示すグラフなどをメディアにあふれさせているのは、なぜなのだろうか? それは、このデータやグラフが、意図的にミスリードするように作られているからである。あるいはミスリードするために、ひとつのカテゴリーの数字をことさら取り上げているからである。 端的には、スマートフォンのデータ容量「月20ギガバイト」の価格比較の数字である。しかも、それはメインブランド、すなわち最もユーザシェアの高い事業者の料金プランでの比較だ。それによると、ロンドン、パリ、デュッセルドルフの約2倍、ソウルの約1.3倍、値段が高くて有名なニューヨークよりも(わずかに)高いのが東京、ということになっている。 これは、どういう意味か。) 気づかれた方も多いと思うが、要は「ドコモのこの料金プランが高い」ということに過ぎないのである。 東京中心なら、格安スマホを選んでも十分に使えるし、私の使っているIIJのサービスならドコモ(またはau)の設備を使っているから、品質はドコモと変わらないといってもいいが価格は半分以下だ。音声通話をほとんど使わなければ、3分の1以下である。 つまり、日本のスマホ通信料金が高いのは、日本の消費者が「ドコモが大好きだから」なのである。 高いのがいやなら、乗り換えればよい。しかし、それをしない。なぜか。いろいろな理由があると思うが、最大の理由は、ドコモのサービスが「良すぎる」からである。どこにでもドコモショップがあり、何か困ったら何でも助けてくれる。SIMカードを入れたり、新しいスマホの操作を教えてくれたり、至れり尽くせりだ』、「ドコモのサービスが「良すぎる」から」、やや違和感がある。むしろ、「ドコモ」が自分に都合がいい「サービス」に取り込もうとしているから」と考えるべきではないか。
・『日本の価格が高いのは消費者が望んでいるから  これほどのサービスを考えれば、価格が高いとはまったく言えない。実際、総務省の委託調査でも詳細をよく読めば、ドコモに限らずシェア上位のキャリアの平均値を見ても、要は「通信の質は世界有数であり、世界的にも通信の質と価格は比例するので高品質を考えれば日本の携帯通信費は高いとは言えない」、というものになっている。 しかも、通信の品質以外のサービスにおいては、ドコモは間違いなく世界一のサービスであり、私に言わせれば、世界一の過剰なサービス、無駄なサービスを提供しているのである。 だが私は無駄だと思っても、スマホユーザーの大多数はそれを好み、あるいは他社に変えるほど悪くはないなどの消極的な理由から、それを選んでいる。結局、日本の携帯通信価格が高いのは「消費者が望んでいるから」という結論になるのである。 しかし、唯一残された謎は、人々が「望んだ結果」になっているのに、それを首相が「高すぎる」に等しい発言をしたら、人々はそれを絶賛していることである。本当に、日本はミステリー、エキゾチックジャパンだ(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)』、「スマホユーザーの大多数はそれ(世界一の過剰なサービス、無駄なサービス)を好み、あるいは他社に変えるほど悪くはないなどの消極的な理由から、それを選んでいる。結局、日本の携帯通信価格が高いのは「消費者が望んでいるから」という結論になるのである」、「ユーザー」に個々の選択肢を詳しく説明した上で、選択させているのではなく、よさそうに見えるサービスのパッケージを押し付けているのが実態とすれば、「「消費者が望んでいるから」という結論」には若干の無理がありそうだ。

次に、10月6日付けNEWSポストセブン「菅政権 携帯料金値下げの先にある「強権的国家」の可能性」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20201006_1600677.html?DETAIL
・『2019年4月1日、当時の菅義偉官房長官(71才)は、首相官邸で新しい元号を発表した。あれから1年半、「令和おじさん」は国のトップに立った──。 安倍晋三前首相の突然の退任表明を受けて行われた自民党総裁選で、岸田文雄前政調会長と石破茂元幹事長を大差で退け、9月16日に晴れて第99代内閣総理大臣に就任し菅義偉氏。目玉政策であるかのように打ち出しているものの中には、数々の問題点が見え隠れする。『総理の影 菅義偉の正体』(小学館)の著者でジャーナリストの森功さんはこう言う。 「菅首相は『デジタル庁の創設』や『行政の縦割り打破』、『規制改革』を掲げています。いずれも謳い文句としては上々ですが、実際に何をやりたいかが見えてこない。 コロナの給付金が遅れたのはマイナンバーが普及していなかったからだといいますが、それなら、マイナンバーを銀行口座とひもづけて普及させる法律をつくればいいだけ。河野太郎行革相の『縦割り110番』が話題ですが、あれも昔からある陳情システムをキャッチーにしただけで、“自分たちだけでは何をやるべきかわからないから110番で募集しているのではないか”とも勘ぐれる。 縦割りや規制にはそれなりの意味があるのでむやみに壊すべきではないし、加計学園問題のように、規制改革が特定の関係者の利益につながるリスクもある」 こうした“国民ウケする”政策のせいで、いま以上に「弱者に優しくない社会」が訪れる可能性は高い。菅首相の「天敵」とさえ呼ばれる東京新聞記者の望月衣塑子さんはこう指摘する。 「菅さんは中小企業や地銀の再編を掲げていますが、それらが弱体化しているいま、強引に再編を進めれば、下位3割の中小企業が切り捨てられるともいわれています。しかも、菅さんが週1度は一緒に食事をするほど心酔しているといわれる竹中平蔵さんは、最近、“年金をやめて生活保護費を大幅に下げ、全国民に一律7万円支給しろ”と言い出しました。もし菅さんがこれに従ってしまったら、低所得者の負担は増すばかりです。 少子化対策として新婚世帯に60万円給付や不妊治療の保険適用検討を打ち出しているものの、LGBTQなどのジェンダー格差を埋めることに関心があるわけではまったくなく、“労働力”としての子供を求めているところが薄っぺらい。菅さんの政策は、“本当の弱者”に対する優しさがありません」(望月さん) 富国強兵の時代のごとく「産めよ増やせよ」では、多様化が進むいまの時代にそぐわない。中途半端なお金をバラまくよりも、非正規雇用をなくして賃金を上げる方が有効ではないか。 このままでは、国民の多くが、自分たちが支持した首相にあっさり裏切られる可能性もある。 経済評論家の浜矩子さんは、「そもそも私たちの生活にどう影響するかを考えるのがムダ」と断じる。つまり、それほど菅首相の掲げる政策は、国民の実生活にそぐうものではないというのだ。 「菅さんが縦割り行政の打破や規制改革をするのは、強いものがより強くなる社会をつくりたいからです。そのためのイメージ戦略に過ぎません。携帯電話の料金が4割下がる代償として、菅さんの思い通りに動く強権的な国家に引きずり込まれるかもしれない。かわいらしい令和おじさんの顔をして、パンケーキをもぐもぐする裏には怖い顔が隠れていると思った方がいい」(浜さん)』、「菅さんが縦割り行政の打破や規制改革をするのは、強いものがより強くなる社会をつくりたいからです。そのためのイメージ戦略に過ぎません」、との浜氏の指摘は本質を突いている。
・『安倍政権の継承を明言しただけに、残された課題も多い。 安倍前首相は「スガちゃんは外交できるのかな?」とこぼしたというが、痛いところを突かれた感じがしたのは菅首相自身だろう。いま、必死に米国のトランプ大統領や中国の習近平国家主席など、次々に世界の首脳と電話会談をしているのは、「おれにも外交はできる」と懸命にアピールしているようにとれる。 「安倍さんが隠蔽してきたモリ・カケ・サクラも心配です。菅さんは官房長官だったので、知らないではすまされない。今後の政権運営の大きな不安材料」(菅首相を知る関係者) 10月下旬には臨時国会が開かれる予定で、まず不妊治療やデジタル庁など、国民ウケする施策を進めるだろう。実績をつくった先に、来年の東京五輪が見えているはずだ。そこまで持ちこたえれば、明るい話題で切り抜けられると考えているのだろう。 「菅さんは政治信念に基づいて権力をつかみ、邪魔になるものを徹底的に排除します。だから長く政権を取ると独裁化が進む恐れがある。スピード感ある仕事人で、猪突猛進に目の前の壁を壊す強さは認めますが、その先にどういう日本を描いているかが見えてこない。弱肉強食の社会が進む、そこがいちばんの怖さです」(望月さん) 叩き上げの苦労人なのか、トップに立ってはいけない強権のナンバー2なのか。 いまはまだ、自分を総理にしてくれた二階俊博幹事長らから言われたことを、顔色を見ながら粛々とやっているだけかもしれない。 スイーツ好きを公言し、なんとなく憎めない苦労人の「令和おじさん」は、本当に支持し続けるに値する人物か否か、国民は目をそらさずに追っていく必要があるだろう』、目下、学術会議が指名した人物のうち6名の委員任命拒否問題で予想以上に手こずっているようだ。やはり「トップに立ってはいけない強権のナンバー2」のようだ。

第三に、11月4日付け東洋経済オンライン「携帯料金引き下げ、側近が語る菅政権の真意 坂井学・官房副長官「健全な競争環境が必要だ」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/386130
・『9月に発足した菅政権が目玉政策の1つとして打ち出しているのが、携帯電話料金の値下げだ。 だが、政府が民間サービスの価格に直接介入することは原則許されないはずだ。では、菅政権はどういう形で携帯電話料金を値下げするのか。また、菅首相はなぜ、携帯料金の値下げにこだわるのか。 菅首相の側近で、通信分野に詳しい坂井学内閣官房副長官に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは坂井氏の回答』、この問題の表裏を知り尽くした坂井氏は最適任のようだ。
・『家族4人なら月1万円の値下げ  Q:総務省は10月27日、モバイル市場の適正化に向けたアクションプランを発表し、翌28日にはKDDIとソフトバンクがそれぞれのサブブランド(UQモバイルとワイモバイル)において、「20GBで4000円前後」という新プランを発表しました。こうした動きをどうみますか? A:基本的には評価したい。20GBという、今までプランがなかった容量のところに新しいプランがつくられて、これまでの大容量の料金と比べると45%前後値段が下がっている。 新しい値段でサービスが提供されたことは、ユーザーにとっても選択肢が広がることになる。 Q:今回はサブブランドに新プランが加わっただけで、値下げとは言えないとの声もあります。新プランで提示された料金水準に納得しているのでしょうか。 A:2~3GBではなく、20GBの大容量で5000円を切る金額は、私は値下げだと思っている。50GB使う人の値段は下がらないが、これまで20GBしか使わない人はプランがないために50GBで契約していた。20GBのプランで十分なわけで、家族4人分であれば1万円を超える月々の値下げになる。かなり値が下がった実感はあると思う。 (新プランが出てきた背景には)楽天の存在もある。楽天はいま5Gで月額2980円というプランなので、そこも大きいだろう。いずれにせよ、(国の方針に)何も反応しないよりは、政府の「お願い」に配慮していただいた対応なので、(菅)総理も評価していると思う。 Q:携帯料金を国際比較する際に引き合いに出されるのはNTTドコモの料金ですが、ドコモにはサブブランドがありません。 ワイモバイルとUQモバイルが同じようなプラン、サービスで4000円前後の価格帯を示している。そのあたりでドコモも(何らかの形での料金引き下げを)お考えなのではないのかなと、私は思っている。 Q:NTTとNTTドコモの統合でドコモに値下げ余地も生まれるということですが、統合の背景に「官邸の意向」があったのではないかとの臆測もあります。 A:おっしゃる意味がわからない。NTTに「統合しろ」なんて考えもないし、言ってもいない。 結果として、いままでより4割ほど安い値段で20GBという大容量を利用できるプランを出していただければ、十分値下げとみなしうるし、評価できるとの思いは(政府内に)あったとは思う。ただ、政府にはどのような手段、どのような形でという意向はまったくない』、ガードが堅いのは役人の典型のようだ。
・『携帯料金はもっと安くできる  Q:2018年に菅官房長官(当時)は、「携帯料金は4割安くなる」と発言しました。背景には何があるのでしょうか。 A:菅総理は総務大臣の前に、テレコム系の副大臣をやっていて、その頃からずっと(携帯料金を)追いかけてきた。総務大臣の頃も「携帯料金が高い」ということを発言している。 2年前の発言は、ぽっと誰かに言われて出たものではない。あのタイミングで確信をもったので話をした。発言を聞いたとき、私は「これは本気だ」と思った。総理は誰よりも情熱をもって、(携帯市場を)健全なマーケットにしたいと思っている。 情報通信網は生活のインフラになっていて、公共財のような意味を持つ。一方で、(NTTやKDDIなどの)キャリアは、電波という国民の財産を独占してビジネスを行っている。料金はもっと安くできるのに、努力しないのはけしからんというのがまずあった。 さらに、3社が3社とも同じような利益率をあげている。構造をみていくと、キャリアと端末メーカーに「ウィンウィン」の関係がある。しかし、消費者はその関係に入っていない。(携帯)ショップでも、販売員が売りたくない売り方、勧めたくない勧め方を消費者にしているケースがある。総理にはキャリアや端末メーカーなどが消費者を向かず、のけ者にしているのはおかしいという意識がある。 民間企業がいくらの値段をつけるか、行政には強制力がない。お願いベースでこういうことが望ましいと言ってきたが、どこまで値下げしろと強制的に言うことはない。料金は適正利潤をのせて決まるし、のせてもらうのはかまわない。ただ、それが適正かどうかだ。 競争原理が働かない中で、その上乗せ(幅)が適切ではなかったりする。健全な競争環境の中で競争原理が働くのが何より大事なことで、その環境を整えることが何よりも必要だ。健全な環境で競争原理が働けば、自然に適切な値段に収斂していく。 Q:坂井副長官は7月、携帯料金値下げに向けた提言書を自民党有志としてまとめ、菅官房長官(当時)に提出しました。報告書のポイントはどこにありますか。 A:いくつかあるが、一番真剣に考えてもらいたいのは、国内外の各キャリアのサービスを比較する指標や数字がないということだ。それでは、ユーザーがどのサービスが優れているのか、適切に評価できない。 ユーザーごとに、「通話が切れにくい」「データの通信速度が速い」など(キャリアに)求めるものが違う。単純な値段は海外が安いが、サービスの優劣は単純に値段だけでは決められないところがある。料金プランも複雑になりすぎていて、どれが得なのかわからない。 自分がどんな使い方をしているのかわからない人も多い。そうした人にもわかりやすい指標ができないかと考えている。そうした指標をつくるための情報をキャリアが出したがらない。企業秘密もあるが、役所に工夫してもらって何とか実現させたい』、「ユーザーがどのサービスが優れているのか、適切に評価」できるような「わかりやすい指標」は、確かにいいアイデアだ。実現に向け努力してもらいたい。
・『eSIMやSIMフリーが今後の課題に  Q:携帯電話市場の競争環境の整備について、今後課題になることは何ですか。 A:キャリア間の流動性は課題の一つだ。提言書で求めている「eSIM」(内蔵SIM=料金の安い事業者に乗り換える手間が簡略化できる)は、アクションプランでずいぶん取り上げてもらった。このあたりも3大キャリアは乗り気ではない。キャリアにしてみると、ユーザーにはなるべく動いてもらわないほうがいい。 SIMフリーも課題だ。端末を購入するとき、ローンを組むとロックがかかったままとなり、100日後に(SIMロックを)解除するための手続きをしなければならない。これを100日後に自動でできるようにするべきだという話をしている。端末の中古市場を整備していく必要もあるだろう。 公正取引委員会は携帯市場で競争原理が公正に働いているか、調査を始めたと発表した。公取委の判断も横目で見ながら、競争環境の整備についてしっかりフォローしていかなければならない。 (政権では)総理の強い意思が共有されている。総理は武田良太総務大臣、通信政策トップの谷脇康彦総務審議官に指示を出して、施策はよく進んでいる。私もお手伝いできるところはしていきたい』、「公取委」による監視は、やはり本筋なので、しっかりやってもらいたい。
タグ:東洋経済オンライン 小幡 績 Newsポストセブン 国家主義的経済政策 携帯料金引下げ問題 (その3)(日本人はドコモの高い携帯料金に甘んじている 菅首相が圧力をかけるのは間違っている?、菅政権 携帯料金値下げの先にある「強権的国家」の可能性、携帯料金引き下げ 側近が語る菅政権の真意 坂井学・官房副長官「健全な競争環境が必要だ」) 「日本人はドコモの高い携帯料金に甘んじている 菅首相が圧力をかけるのは間違っている?」 携帯キャリア大手3社に問題はあるのか? 1)価格が高すぎる 2)事実上、3社の寡占で独占的な立場を利用して価格を高く釣り上げている 3)その結果、3社の利益水準が異常に膨らんでいる 儲けると叩かれるから、目立たない程度に利益を抑える癖がついてしまっていた 独禁法違反と言えるのか? 「価格が高すぎる問題」は存在しない 「ドコモのサービスが「良すぎる」から」、やや違和感がある。むしろ、「ドコモ」が自分に都合がいい「サービス」に取り込もうとしているから」と考えるべきではないか 日本の価格が高いのは消費者が望んでいるから よさそうに見えるサービスのパッケージを押し付けているのが実態とすれば、「「消費者が望んでいるから」という結論」には若干の無理がありそうだ 「菅政権 携帯料金値下げの先にある「強権的国家」の可能性」 菅さんが縦割り行政の打破や規制改革をするのは、強いものがより強くなる社会をつくりたいからです。そのためのイメージ戦略に過ぎません 学術会議が指名した人物のうち6名の委員任命拒否問題で予想以上に手こずっている 「携帯料金引き下げ、側近が語る菅政権の真意 坂井学・官房副長官「健全な競争環境が必要だ」」 携帯料金はもっと安くできる ユーザーがどのサービスが優れているのか、適切に評価」できるような「わかりやすい指標」 eSIMやSIMフリーが今後の課題に 「公取委」による監視は、やはり本筋なので、しっかりやってもらいたい
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