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税制一般(その3)(「駆け込み生前贈与」の前に!富裕層でなくても要注意の税務調査DX化、法律改正で大増税!?税務署に狙われる「駆け込み生前贈与」の落とし穴) [経済政策]

税制一般については、昨年12月24日に取上げた。今日は、(その3)(「駆け込み生前贈与」の前に!富裕層でなくても要注意の税務調査DX化、法律改正で大増税!?税務署に狙われる「駆け込み生前贈与」の落とし穴)である。

先ずは、本年2月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した税理士・岡野雄志税理士事務所所長の岡野雄志氏による「「駆け込み生前贈与」の前に!富裕層でなくても要注意の税務調査DX化」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295611
・『注目の「相続税と贈与税の一体化」は、政府与党『令和4年度税制改正大綱』においても前年同様、「本格的な検討を進める」との表現にとどまった。2021(令和3)年末に閣議決定され、財務省が公表した『令和4年度税制改正の大綱』にも具体案は見当たらない。しかし、油断は禁物。今後の生前贈与の注意点を挙げてみる』、興味深そうだ。
・『失敗例から学ぶ「駆け込み贈与」の注意点  一昨年末、「暦年課税が廃止に……?」との懸念が広がり、世間をざわつかせた『令和3年度税制改正大綱』の文言は次の通りである。「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す」。 受贈者一人につき年間110万円までの贈与額なら贈与税が非課税になる「暦年贈与」は、生前贈与で相続税対策をしたい富裕層には定番の方法と言える。そのため、「相続税と贈与税の一体化」実施前に暦年贈与をという駆け込みが増加。実際、当税理士事務所にもこの件に関するご相談が増えている。 しかし、暦年贈与にも注意点はある。贈与者が亡くなって相続開始となった場合、その死亡日からさかのぼって3年以内の暦年贈与額は相続財産額に含まれ、相続税の課税対象となるからだ。 以前、『富裕層の節税対策を封じ込める!?「相続税と贈与税の一体化」』の回でも述べたが、贈与者がご高齢、あるいは既往症や持病がある場合、当税理士事務所ではむしろ「都度贈与」をおすすめする。夫婦、親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から受け取った生活費や教育費に充てるための財産には、そもそも贈与税がかからないからだ。 都度贈与は受贈者の口座に振り込んだり、現金で手渡したりせず、なるべく費用を直接払うのもポイントだ。なぜなら、受贈者が本来の目的に使わず、生活や教育に必要と認められないものを購入したり、貯金したりすると、贈与税の対象になるからである。 特に入学金や授業料、手術代や入院費など、比較的高額になる場合は直接支払う。そして、支払先から領収書をもらい、保管しておく。万が一の税務調査への予防策となる。 近年の判例から、富裕層は特に注意したいのが『財産評価基本通達 第1章総則6項(総則6項)』だ。国税局・税務署の「伝家の宝刀」とも呼ばれ、めったに振り回すことはないが、「過剰な節税」とみなされると切り込まれ、裁判で追い込まれるケースも多い。 相続税法では、相続や贈与で得た財産の評価は、その相続・贈与発生時点での時価で行われることになっている。例えば、有価証券の相続なら、相続発生日、発生月、前月、前々月の単価を比較し、最も安い単価で評価する。また、不動産資産の土地評価の計算には、路線価方式や倍率方式が用いられる。 ところが、都内高級住宅地にあるマンションを相続した相続人がローン残債と路線価評価により相続税を0円で申告したところ、税務調査となり追徴課税を求められた。これを不服とした相続人が裁判所に訴えたのだが、総則6項により敗訴してしまった。 総則6項には「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の評価は、国税庁長官の指示を受けて評価する」とある。「著しく不適当」とはかなり曖昧な表現だが、上記の例では路線価と時価の差額が大きく、時価が適用された。 しかも、悪いことに、被相続人がマンション購入の際、融資金融機関と交わした覚書に「節税対策である」と記されていた。生前贈与の場合も、たとえ本心は相続税対策であっても、子や孫の住宅購入費を援助するためなど、合理的理由を用意すべきである』、「都度贈与は受贈者の口座に振り込んだり、現金で手渡したりせず、なるべく費用を直接払うのもポイントだ。なぜなら、受贈者が本来の目的に使わず、生活や教育に必要と認められないものを購入したり、貯金したりすると、贈与税の対象になるから」、なるほど。「被相続人がマンション購入の際、融資金融機関と交わした覚書に「節税対策である」と記されていた」、何とも間の悪いことになったものだ。
・『証券会社の顧客マイナンバー取得がついに法制化  さらに注意すべきは、国税庁による「税務行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)」が、思いのほか急速に進捗していることである。菅前首相肝いりのデジタル化は岸田首相へのトップ交代で行方が注目されたが、コロナ禍が推進を後押ししたようだ。 2019(令和元)年度税制改正を受け、国税通則法等が改正され、証券会社が証券保管振替機構(ほふり)から顧客マイナンバーを取得できるようになった。2021(令和3)年末がマイナンバー登録の猶予期限になっているが、いまだに未登録者が多いためだ。2022(令和4)年から取得可能となった。 もちろん、この背景には税務行政上の都合がある。国税・地方税の税務調査でマイナンバーが付された証券口座情報を効率的に利用できるよう所要の措置を講ずるというのが目的だ。 証券会社は税務当局にマイナンバー付き支払調書を提出し、税務当局は証券会社にマイナンバー付きで加入者情報を照会する。加入者情報をマイナンバーにより検索可能な状態で管理する証券会社は、速やかに税務当局からの照会に応じられる仕組みだ。 2022(令和4)年1月から本格稼働の『pipitLINQ(R)(ピピットリンク)』は、株式会社NTTデータが提供する行政機関から金融機関への預貯金照会業務デジタルサービスである。すでに200余の行政機関、40余の金融機関が導入している。 また、生命保険契約照会制度も、2021(令和3)年7月からすでに開始されている。こちらは、死亡、認知判断能力の低下、災害で行方不明となった人の生命保険契約の有無を家族などが照会できる制度だが、デジタル化が進んでいる一つの証しだ。 いずれ早晩、銀行口座や生命保険もマイナンバーでひも付けされ、国税局や税務署が照会できる時代は来るだろう。そうなれば、税務調査の効率化・迅速化は格段に進む』、「証券会社が証券保管振替機構・・・から顧客マイナンバーを取得できるようになった。2021(令和3)年末がマイナンバー登録の猶予期限になっているが、いまだに未登録者が多いためだ」、確かに、証券会社からしつこくマイナンバーの登録を要請された。
・『国税庁の事務業務センター化で税務調査も効率アップ?  さらに、国税庁では、2021(令和3)年7月から「内部事務のセンター化」を実施している。相談や問い合わせ、調査・徴収などの外務事務と、申告書の入力処理、申告内容等についての照会文書の発送などの内部事務を分け、事務業務の効率化を図るためだ。 税務事務のセンター化に伴い、行政指導の責任者が国税局長となる場合があり、国税局長名で申告内容に関するお尋ねが届くことがある。税務調査の通知と勘違いして慌てる人もいるが、行政指導はあくまで納税者の自発的な見直しを要請するものだ。 ただし、行政指導を侮ってはいけない。自主的に修正申告書を提出しても、延滞税を納付しなければならない場合がある。また、税務調査のように過少申告加算税は課されないものの、当初申告が期限後申告の場合は、無申告加算税が原則5%賦課される。 税務調査は「調査」であることが明らかに伝えられ、「調査通知」→「事前通知」→「実地調査」という手順で行われる。税務代理を委任された税理士にも通知される。2013(平成25)年1月から国税通則法の改正により、行政指導と税務調査の違いが明確化された。 コロナ禍で税務調査も動きが封じられるだろうと高をくくってはいけない。確かに、令和2事務年度〔2020(令和2)年7月~2021(令和3)年6月〕は、相続税も贈与税も実地件数は前年度比約50%減となった。しかし、贈与税の実地調査1件当たり追徴税額は201万円、対前年度比86.7%である。 贈与税の非違(申告漏れなどの違法行為)件数のうち無申告は82.2%。贈与税の無申告や申告漏れは、相続税申告であぶり出されるケースが多い。しかも、贈与税の財産別非違件数は現金・預貯金等がトップで74.2%、次いで有価証券が10.0%。 今後、国税庁のDX化がさらに進み、電話などによる簡易な調査やウェブ会議システムなどを利用したリモート調査も増えるとみられる。マイナンバーひも付けによる金融機関照会がスムーズになれば、今後は調査件数も増え、成果も上がるかもしれない。 近頃は、金融商品のネット取引も増加している。富裕層でなくても、相続発生の際、被相続人のパスワードを知らなくて大変な思いをする相続人も少なくはない。無申告や申告漏れにならないよう、十分注意したい』、「今後、国税庁のDX化がさらに進み、電話などによる簡易な調査やウェブ会議システムなどを利用したリモート調査も増えるとみられる。マイナンバーひも付けによる金融機関照会がスムーズになれば、今後は調査件数も増え、成果も上がるかもしれない」、納税者としては、疑いを持たれないよう万全の備えをしておく必要がありそうだ。

次に、3月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した税理士法人レガシィによる「法律改正で大増税!?税務署に狙われる「駆け込み生前贈与」の落とし穴」を紹介しよう。
・『2020年12月、税制改正大綱が発表されてからというもの、「近い将来、生前贈与がなくなるのではないか」と話題になり、相続を専門とする税理士法人である私たちのところにも、多くの問い合わせや取材が殺到しました。「生前贈与がなくなる」と聞いても、今一つピンと来ないかもしれませんし、または「うちはたいした財産がないから関係ないよ」と思われる人もいるでしょう。しかし多くの人たちにとって、この「生前贈与」改正の影響は大アリなのです。そこで今回は税理士法人レガシィの新刊『「生前贈与」のやってはいけない』(青春出版社)から、税制改正大綱にむけて駆け込み相続を考える時のポイントについて抜粋紹介します』、興味深そうだ。
・『「相続税と贈与税を一体化する」の意味  「相続税や贈与税が大増税になるかもしれない!」 令和2年12月10日、令和3年度(2021年度)税制改正大綱が発表されると、相続を専門とする私たち税理士や会計事務所をはじめ、金融機関、資産家の方々の間に激震が走りました。 相続税と贈与税に関しては大綱の18~19ページで触れられており、そこには次のように書かれていました。 わが国の贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から、高い税率が設定されており、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある。一方で、現在の税率構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある。(中略)諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。(令和3年度税制改正大綱より) ややわかりにくい表現ですが、要するにこういうことです。 「相続税と贈与税が別々にかけられている現状の制度のもと、富裕層は生前贈与によって相続税の負担を減らしている。これは不公平であるから、外国の制度にならって相続税と贈与税を一体化する方針である」 もっとストレートに表現すれば、「生前に子どもや配偶者に財産を贈与しても、今後は相続財産に含めて課税する方向に進めますよ」ということです』、「生前贈与によって相続税の負担を減ら」すことが出来なくなるとは、大変なことだ。
・『なぜ相続に贈与税が関係してくるか  まずは2つの関係性について軽くご説明します。 ご存じのように、相続税というのは亡くなった方の財産を、遺された配偶者や子どもなどに相続するときにかかる税金のこと。贈与税というのは、現金や不動産、株券などの資産を贈ったときにかかる税金のことです。世の中では、相続と贈与をまったく別のもののようにとらえている方が多いかもしれませんが、そうではありません。財産を死んでから譲るのか、生きているうちに譲るかの違いがあるだけです。ですから、そこにかかる相続税と贈与税という2つの税金にも、深い関係があるわけです。 生きているうちに土地を子どもに贈与したり、預貯金も子どもの口座に振り込んでしまえば、亡くなったときにかかる相続税はぐんと減ります。でも、これはちょっとずるいと感じる人が多いでしょう。相続税を逃れるために、家族で資産を移動しているに過ぎないからです。そうした相続税逃れを防ぐためにある贈与税なのですが、その運用をめぐって公平性に欠けるという声が出てきました。課税の特例である基礎控除や非課税制度を利用することで、相続税の節税ができるためです。 基礎控除とは税金を計算する際に、課税対象額から差し引ける金額のこと。贈与税では、年間110万円の基礎控除が設定されています。言い換えれば、受けた贈与が年間110万円以内ならば、原則として贈与税を払わなくていいということです。 これを節税に利用したのが、「暦年贈与」という資産移動の手法です』、「贈与税なのですが、その運用をめぐって公平性に欠けるという声」、「暦年贈与」自体は「公平」だと思うが、どこが不公平なのだろう。
・『知らないと損する暦年贈与の落とし穴  暦年贈与は相続税節税にとって強力な武器となります。ところが、毎年基礎控除110万円の枠内できちんと暦年贈与していたつもりが、税務署に認められずに、相続税をがっぽりとられたという事象も発生しています。 まずは、そんな暦年贈与の落とし穴について、いくつか紹介しましょう。 先にも述べたように、贈与税の基礎控除は1年間110万円です。その範囲内ならば、毎年贈与を受けても贈与税を申告する必要はありません。「だったら、毎年誕生日に孫に100万円ずつ送金してやろう。それなら忘れることはない」。それを10年間続ければ、贈与額は1000万円になり、相続が発生したときに財産を減らすことができる…はずです。 ところが、ここに暦年贈与の第一の落とし穴があります。このように、毎年同じ相手から一定の額を一定の時期に贈与されることを「定期贈与」と呼びますが、税務署はこの定期贈与に対して大きな関心をもってチェックしています。 なぜかというと、「あらかじめ1000万円という大きな財産を、分割して贈与するつもりだった」と判断するためです。そうみなされると、贈与した1000万円に対して贈与税が課されてしまいます。 定期贈与と判断されないためには、贈与のたびに「贈与契約書」を作成しておくのが一番です。贈与するかしないか毎年意思決定を表明するためです。贈与する人と受ける人の名前を記し、金額と方法などを明記したうえで、お互いが1通ずつ保管しておきます。さらに日付をごまかしていないことを証明するために、公証役場で手続きをすれば完璧です』、「定期贈与と判断されないためには、贈与のたびに「贈与契約書」を作成しておくのが一番です。贈与するかしないか毎年意思決定を表明するためです。贈与する人と受ける人の名前を記し、金額と方法などを明記したうえで、お互いが1通ずつ保管しておきます」。なるほど。
・『税務署に狙われる「名義預金」  定期贈与にも増して、税務署の格好のターゲットが「名義預金」です。 名義預金とは、預金の名義は子どもや孫であっても、実際には親や祖父母が管理している預金口座のことです。名義預金は、相続税のチェックにあたって税務署が狙いをつける重要なポイント。税務署から親の財産とみなされやすいため注意が必要です。これが暦年贈与の第二にして最大の落とし穴です。) なぜ、これが問題になるのでしょうか。ここで問題なのは、110万円をどのように子どもに渡すかという点です。もしここで、子どもが普段使っている銀行口座に振り込むのなら問題はありません。でも、そこで親は考えます。 「だまっていてもお金が入ってくるのは、教育的によくないのではないか。じゃあ、子どもには黙って口座をつくってあげて、そこにお金を貯めておこう」 子どものためを思って、そういうことをする気持ちはよくわかります。しかし、そうしてつくった預金口座こそが、まさに名義預金なのです。ハンコも通帳もカードも親が持っていて、子どもには預金口座があることすら知らせていなければ、完全な名義預金です。名義は子どもであっても、実質的に親の預金だと判断されてしまうのです。親が亡くなって相続がはじまると、この預金は親の財産のまま。亡くなった親は子どもに財産を移動したつもりなのに、相続税の課税対象になってしまうのです。これでは節税にはなりません。 しかも、名義預金には時効(専門的には除斥期間といいます)がありません。贈与ならば、亡くなる3年以上前の贈与額が相続財産に合算されることはありませんが、名義預金は贈与ではありません。相続が発生すると、税務署は公平な制度として相続税をとるために、名義預金の存在がないかどうか徹底的に狙ってきます。このことは、ぜひ頭に入れておいてください』、「名義預金には時効・・・がありません」、早目にきちんとチェックして、形式を整えておく必要がありそうだ。
・『暦年贈与を利用して「損して得取れ」!  暦年贈与をする際、名義預金でないことを証明するために、ほぼ間違いない方法を紹介しましょう。それは、「贈与税を申告して納税する」という方法です。ちなみに、贈与税を支払うのは、贈与を受けた側です。 「節税の方法を知りたいのに、なぜ贈与税を払わなくてはならないのか?」 そう疑問に思われるかもしれません。しかし、多額の贈与税を払うわけではありません。最低限の金額でいいのです。具体的には、次のようにします。) 毎年、基礎控除額よりもわずかに多い金額、たとえば120万円を贈与します。すると、非課税の110万円の枠を10万円オーバーします。この10万円に対しては10%の贈与税が課せられるので、もらった子どもは1万円を納税するわけです。 この1万円の納税こそが、「私は贈与されている事実を知っています。そして、この預金口座は私が使っている口座です」ということを証明する強力な証拠となるのです。相続税が確実にかかることがわかっている人は、このように贈与税を払っておくほうが、長い目で見ると得をします。 ただし、贈与を受けた子どもの贈与税も親が肩代わりすると、それも贈与税の対象になるのでご注意を。もちろん、親が払っていることがわかれば、税務署は「やはりこれは名義預金だ」という確証を持つことにもなってしまいます』、「贈与税を申告して納税する」際に、「子どもは・・・納税する」、「子ども」に納税させるということは、「子ども」にとっては、「120万円」-「1万円」=119万円が実質的な手取りになるので、メリットがある。この方法、早速試してみたい。 
タグ:ダイヤモンド・オンライン 税制一般 (その3)(「駆け込み生前贈与」の前に!富裕層でなくても要注意の税務調査DX化、法律改正で大増税!?税務署に狙われる「駆け込み生前贈与」の落とし穴) 岡野雄志氏による「「駆け込み生前贈与」の前に!富裕層でなくても要注意の税務調査DX化」 「都度贈与は受贈者の口座に振り込んだり、現金で手渡したりせず、なるべく費用を直接払うのもポイントだ。なぜなら、受贈者が本来の目的に使わず、生活や教育に必要と認められないものを購入したり、貯金したりすると、贈与税の対象になるから」、なるほど。「被相続人がマンション購入の際、融資金融機関と交わした覚書に「節税対策である」と記されていた」、何とも間の悪いことになったものだ。 「証券会社が証券保管振替機構・・・から顧客マイナンバーを取得できるようになった。2021(令和3)年末がマイナンバー登録の猶予期限になっているが、いまだに未登録者が多いためだ」、確かに、証券会社からしつこくマイナンバーの登録を要請された。 「今後、国税庁のDX化がさらに進み、電話などによる簡易な調査やウェブ会議システムなどを利用したリモート調査も増えるとみられる。マイナンバーひも付けによる金融機関照会がスムーズになれば、今後は調査件数も増え、成果も上がるかもしれない」、納税者としては、疑いを持たれないよう万全の備えをしておく必要がありそうだ。 税理士法人レガシィによる「法律改正で大増税!?税務署に狙われる「駆け込み生前贈与」の落とし穴」 「生前贈与によって相続税の負担を減ら」すことが出来なくなるとは、大変なことだ。 「贈与税なのですが、その運用をめぐって公平性に欠けるという声」、「暦年贈与」自体は「公平」だと思うが、どこが不公平なのだろう。 「定期贈与と判断されないためには、贈与のたびに「贈与契約書」を作成しておくのが一番です。贈与するかしないか毎年意思決定を表明するためです。贈与する人と受ける人の名前を記し、金額と方法などを明記したうえで、お互いが1通ずつ保管しておきます」。なるほど。 「名義預金には時効・・・がありません」、早目にきちんとチェックしておく必要がありそうだ。 「名義預金には時効・・・がありません」、早目にきちんとチェックして、形式を整えておく必要がありそうだ。 「贈与税を申告して納税する」際に、「子どもは・・・納税する」、「子ども」に納税させるということは、「子ども」にとっては、「120万円」-「1万円」=119万円が実質的な手取りになるので、メリットがある。この方法、早速試してみたい。
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環境問題(その12)(原発は「グリーンエネルギー」と言えるか?「脱原発vs原発回帰」でEU分裂、冷蔵庫こそ「フードロスの原因」と断言する理由 「食べ物を保存するための装置」のはずがなぜ?) [経済政策]

環境問題については、1月8日に取上げた。今日は、(その12)(原発は「グリーンエネルギー」と言えるか?「脱原発vs原発回帰」でEU分裂、冷蔵庫こそ「フードロスの原因」と断言する理由 「食べ物を保存するための装置」のはずがなぜ?)である。

先ずは、1月12日付けNewsweek日本版が掲載したゾーエ・ストロズースキ氏による「原発は「グリーンエネルギー」と言えるか?「脱原発vs原発回帰」でEU分裂」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/01/eu-284.php
・『<脱炭素の過程における原子力発電を認めるか否かで、ドイツとフランスなど方針が異なる国同士でEUが割れている> EUの欧州委員会は1月1日、脱炭素化への過程で原発を「グリーンエネルギー」に認定し活用する方針を発表したが、EU内は支持と不支持で割れている。脱原発を掲げるドイツは反対し、2045年までに温室効果ガスの実質排出ゼロを目指すための「つなぎ」の電源としては天然ガスを重視すると強調した。 EU諸国の中ではオーストリアとルクセンブルクも原発に反対しているが、チェコやフィンランド、フランスは化石燃料から脱却するには原発が不可欠だと考えている。ドイツは昨年12月末に国内に残る6基の原発のうち3基を停止。今年末までに残る3基を停止する予定だが、隣国のフランスは既存の原発の改良や新規設営を目指すなど原発回帰路線だ。 原発は二酸化炭素をほとんど出さないが、有害な放射性廃棄物が残り続ける。一方で天然ガスも、燃やせば石炭ほどではないものの二酸化炭素を排出すると、環境保護主義者たちは批判している』、「ドイツ」は「「つなぎ」の電源としては天然ガスを重視」、としたようだが、その後のロシアのウクライナ侵攻により姿勢が変わった可能性がある。「オーストリアとルクセンブルク」も同様である。独電力大手が石炭に回帰 停止している石炭火力発電所の稼働検討しているようだ。

次に、4月17日付け東洋経済オンラインが掲載した元朝日新聞論説委員でフリーランサーの稲垣 えみ子 氏による「冷蔵庫こそ「フードロスの原因」と断言する理由 「食べ物を保存するための装置」のはずがなぜ?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/582213
・『疫病、災害、老後……。これほど便利で豊かな時代なのに、なぜだか未来は不安でいっぱい。そんな中、50歳で早期退職し、コロナ禍で講演収入がほぼゼロとなっても、楽しく我慢なしの「買わない生活」をしているという稲垣えみ子氏。不安の時代の最強のライフスタイルを実践する筆者の徒然日記、連載第53回をお届けします』、興味深そうだ。
・『フードロスが減らない根本理由  先日、おそらくは日本最高レベルなんじゃ……と勝手に自負している、わが7年にわたる「フードロスゼロ生活」の実態を具体的にご紹介させていただいた。机上の空論でも掛け声でもない、まごう事なき貴重な実体験ゆえ、それなりに面白く読んでいただければ体を張った者としてはこれ以上の幸せはないと思うところであります。 稲垣えみ子氏による連載53回目です。 で、それはいいんだが。 改めて冷静に読み返してみると、われながらあまりのレベルの高さ(低さ?)に、「私もやってみたい!」と思う方がどれほどおられるか、なんとも確信が持てなくなってきた。っていうか、正直言って一人でもおられるかどうかすら怪しい気がする。 でもまあいいの。自分でコントロールできないことをいくら思い悩んでも時間のムダですからね。構わずどんどん話を先に進める。 このようにフードロスゼロで暮らすことは現実に可能だし、加えて、多くの人ができるならフードロスなど出したくないと思っていることもまた事実であろう。そう、みんなやる気はちゃんとあるのだ。だがしかし、現実にはほとんどの人がフードロスを出しまくる人生からどうしても縁を切ることができないでいる。 それは一体「なぜ」なのか。 この「なぜ」を解明することなく、いくら「フードロスをなくしましょう」と呼びかけたところで何も変わらないのではなかろうか。 つまりは「なぜ」がいまだに解明されていないからこそ、このように十年一日のごとく「買いすぎないようにしましょう」「作りすぎないようにしましょう」という呼びかけだけがむなしく響いているのではなかろうか。 ってことで、まずはその巨大な謎の解明が急務だと個人的に思っているわけです。 とはいえ、それが簡単にわかるくらいならとっくに問題は解決しているわけで、ってことは、きっと少なからぬ人が解明を試みては跳ね返されてきたに違いなく、それを考えればこれこそは人類に残された三大ミステリーの一つと言っても過言ではなかろう(注:過言です)。 で、不肖私、実はその巨大な謎の答えを知っているのであります! というのは、前も書いたが、私もそもそもはフードロスを普通に出しまくっており、しかし7年前を境にピタッと、フードロスという単語そのものがわが人生から消えたのである。 ってことは、注目すべきは7年前だ。7年前に一体何が起きたのか?その出来事の中に、フードロスをなくすための決定的な要因が含まれていることはどう考えても疑いのないことである』、「現実にはほとんどの人がフードロスを出しまくる人生からどうしても縁を切ることができないでいる。 それは一体「なぜ」なのか。 この「なぜ」を解明することなく、いくら「フードロスをなくしましょう」と呼びかけたところで何も変わらないのではなかろうか」、その通りだ。
・『冷蔵庫の電源を抜いたらフードロスゼロになった  結論から言う。 私は7年前に、冷蔵庫の電源を抜いた。そうしたらいきなり、そうその電源を抜いたその日から、いきなりフードロスがゼロになったのである。 いや……これってどう考えてもおかしいですよね。だって、言うまでもなく冷蔵庫とは食べ物を保存するための装置。つまりは「フードロスを減らすための装置」と言い換えても良いはずである。常識的に考えれば、冷蔵庫をなくしたらフードロスが増えるはずではないか。 でも現実はその真逆だった。一番びっくりしたのは私である。事実は小説より奇なりと言いますが、いやホント、何事もやってみなければわかりませんな。 ってことで、なぜそんな予想だにしなかったことが起きたのか、順を追って書く。 冷蔵庫をやめて起きたことその1:食べ物がうかつに買えなくなる まずは何と言ってもこれである。 ……って言うと、少なからぬ人が「だよねー」「冷蔵庫がないと毎日外食になっちゃうよねー」などとシタリ顔でおっしゃる。イヤイヤそーなんですヨ、そもそも自炊なんてやめちゃえばフードロスとか出さなくて済むわけで……なーんて話じゃありません! 冷蔵庫がないと食べ物がまったく買えなくなるというわけではない。私、野菜も豆腐もちゃんと買っております。つまりは普通に生鮮食品を買い、普通に自炊している。それは冷蔵庫がなくたってちゃんとできたのだった。ただ、そこにはいくつかちょっとしたコツがあるというだけのことだ。 で、その「ちょっとしたコツ」の一丁目一番地が、「食材を買いすぎない」ということである。 え、そんなことなら私もやってるって?うん、そうでしょうそうでしょう。誰だって食材を無駄にしたくないもんね。でもたぶん、あなたがイメージする「買いすぎない」ってことと、冷蔵庫を持っていない私が日々やっている「買いすぎない」ってことは、おそらくそのレベルが月とスッポンほど異なるはずである。 私の食生活の基本は「その日に買ったものはその日に食べる」。これが原則だ。実に単純な発想だが、これならば食材を保管しなくとも済むので、冷蔵庫がなくとも何の問題もなくやっていけるのだ』、「私の食生活の基本は「その日に買ったものはその日に食べる」。これが原則だ。実に単純な発想だが、これならば食材を保管しなくとも済むので、冷蔵庫がなくとも何の問題もなくやっていけるのだ」、なるほど。ただ、通常は安い商品を多目に買って、それを徐々に使えば、節約になる筈だが、それは放棄したようだ。
・『「お金があるのに買えない」人生初の異常事態  ただ唯一の「難点」は、やってみて初めてわかったんだが、このようなことを始めると、どんなにキラキラしたスーパーに行っても、ほとんど何も買うことができないということなのだった。 その「買えなさ」といったら衝撃的なレベルで、仕事帰りにいつものようにスーパーに寄ったはいいものの、結局は一周しただけで何も買えずにがっくりと肩を落として出てくることも少なくなかったのである。 だってですよ、想像してみてください。 例えばある日、ハクサイを買ったとしよう。無論、買いすぎぬよう4分の1カットの小さいやつを選ぶ。それでも1日で食べきるのは100%無理だ。 そうなんです。先ほど「その日に買ったものはその日に食べる」と書いたが、それはあくまで原則というか目標であって、一人暮らしとなれば現実にはどうやっても、つまりは必死にシャクシャク食べたところでどうやってもその日にはなくならないものが多いんである――ってことがやってみて初めてわかった。 4分の1のハクサイだったら最低3日はかかる。となれば、3日間は他の野菜なんぞ買ってる場合じゃない。ってことで、スーパーに行けば特売のキャベツなどに一瞬手が伸びるんだが、いや待て待てそんなことしてる場合かとグッとこらえることになる。買ったものを腐らせぬようにするためには、とにかくそれを必死に食べきってから次を買うしかないのである。 ってなことになると、いったい何が起きるかと言いいますと、何度も言うが、ほぼ何も買えないんである。どう頑張っても一度に数百円しか使うことができない。) なんというか、実に不思議な心持ちであった。お金がないから「買いたくても買えない」ってことはこれまでだって何度も経験した。でも、お金があろうがなかろうがそもそも「買いたくても買えない」なんて、どう考えても人生初の異常事態である。なんというか、これはこれで寂しいというか物足りないような気もして、どうもフクザツである』、「買ったものを腐らせぬようにするためには、とにかくそれを必死に食べきってから次を買うしかないのである」、「「買いたくても買えない」なんて、どう考えても人生初の異常事態である・・・これはこれで寂しいというか物足りないような気もして、どうもフクザツである」、なるほど。
・『「食べもしないもの」を買いまくっていた日々  こんな妙チキリンな日々を過ごすうちに、私はふと気づいた。 いうまでもなく、私という人間は、冷蔵庫を使っていようが使っていまいが同一人物である。つまりは急に少食になったとか、そういうことはまったくない。それなのに、冷蔵庫をやめた途端、食べ物を買う量が激減した。当然、それに使うお金も激減した。 ってことは……結論は一つしかないのであった。 私はこれまで、ずーっと長い間、「食べもしないもの」を、来る日も来る日も貴重なお金を使って、買って買って買いまくっていたんである。 なぜそんなことをしていたのかといえば、それは冷蔵庫があったからだ。「とりあえず冷蔵庫」に入れておいて、いつか食べれば良いと思っていたからだ。だからこそ、カゴいっぱいに食品を詰め込んで、2480円とか当たり前にレジで支払っていたのである。 もちろん「いつか」食べることもあった。でも考えたくないことだが、圧倒的に多くのものは、その「いつか」が来ぬまま冷蔵庫の奥へと追いやられてすっかり忘却の彼方。何かの拍子に発掘された時にはとっくに干からび、かび、あるいは腐ってベトベトになり、顔をしかめて捨てられていたに違いないんである。 だって、こうして冷蔵庫をなくしてあらゆるものをちゃんと「食べきって」みればどう頑張っても数百円程度のものしか買えないってことはですよ、その差額の1000円とか2000円とかで買ったものは、結局ゴミ箱行きになっていた可能性しかないではないか。 いやはやなんということでしょう! その事実も恐ろしいが、もっと恐ろしいのは、もし私が冷蔵庫をやめていなければ、きっと死ぬまでその事実に気づくことはなかったに違いないということだ。) 冷蔵庫を使うことが当たり前になった現代人は、自分が生きていくためにどれほどの食べ物が必要なのかがまったくわからなくなってしまっている。 そもそもほとんどの人は、ものを「食べきってから次を買う」体験などほぼしたことがないんじゃないだろうか?まだ大根を食べきらぬうちにネギやら人参やらピーマンやらトマトやら多種多様な食材を次々買い足していくのはごく普通の行動だ。 結果、いつだって冷蔵庫はあれやこれやの食べ物でいっぱいで、中に一体何が入っているのかを日々把握し続けることすら大事業すぎて絶対無理である。となれば、今日の献立にたまたま大根おろしを添える場合は「ああ大根があってちょうどよかった」と思うけれど、一本の大根ではたして何日生きられるのかを考える機会など決して訪れない。 なので、結局は何がどれだけ買ってあっても「もしかして足りないかも」という不安に苛まれることになる。冷蔵庫がパンパンじゃないと心配というのは、ごく一般的な現代人の感覚であろう』、「冷蔵庫がパンパンじゃないと心配というのは、ごく一般的な現代人の感覚であろう」、その通りだ。
・『人間が食べられる量は驚くほど少ないという事実  でも、大根を一本買って、それを食べてしまってから次の野菜を買うってことを一度でもやってみればわかる。心配なんぞどこにもない。大根一本じゃあさすがに……というのであれば、今冷蔵庫にあるものをまずは食べつくしてから次の買い物に行くということでも良い。 それをやりとげることがどれほど大変なことか!人間が食べられる量など、どれほど欲張りだろうが食いしん坊だろうが驚くほどたいしたことないんである。 ……ってことを知らぬままでいると、「フードロスを出さぬよう無駄なものは買わないで」といくら呼びかけられたところで、一体どこから先が無駄なのかさっぱり想像もつかないので努力したくとも努力のしようがない。だってそもそも無駄なものなんて買っているつもりなどさらさらないのだから。とりあえず冷蔵庫に入れておけばいいんだからね! そうなのだ。この永遠の「とりあえず」を保証してくれる魔法の箱が存在する限り、「今ここ」で本当に必要なものの量などどうしてわかるだろう? ってことで、まずは冷蔵庫とフードロスの切っても切れない深い関係がわかっていただけただろうか? 次回はさらに一歩進んで、冷蔵庫に「食べきれないもの」がどこまでもたまってしまうもう一つの強力な原動力、みんな大好きな「あるもの」についてご紹介したい』、「この永遠の「とりあえず」を保証してくれる魔法の箱が存在する限り、「今ここ」で本当に必要なものの量などどうしてわかるだろう?」、さすが「魔法の箱」を捨て、「フードロス」と無縁になった筆者ならではの言葉だ。
タグ:環境問題 (その12)(原発は「グリーンエネルギー」と言えるか?「脱原発vs原発回帰」でEU分裂、冷蔵庫こそ「フードロスの原因」と断言する理由 「食べ物を保存するための装置」のはずがなぜ?) Newsweek日本版 ゾーエ・ストロズースキ氏による「原発は「グリーンエネルギー」と言えるか?「脱原発vs原発回帰」でEU分裂」 「ドイツ」は「「つなぎ」の電源としては天然ガスを重視」、としたようだが、その後のロシアのウクライナ侵攻により姿勢が変わった可能性がある。「オーストリアとルクセンブルク」も同様である。独電力大手が石炭に回帰 停止している石炭火力発電所の稼働検討しているようだ。 東洋経済オンライン 稲垣 えみ子 氏による「冷蔵庫こそ「フードロスの原因」と断言する理由 「食べ物を保存するための装置」のはずがなぜ?」 「現実にはほとんどの人がフードロスを出しまくる人生からどうしても縁を切ることができないでいる。 それは一体「なぜ」なのか。 この「なぜ」を解明することなく、いくら「フードロスをなくしましょう」と呼びかけたところで何も変わらないのではなかろうか」、その通りだ。 「私の食生活の基本は「その日に買ったものはその日に食べる」。これが原則だ。実に単純な発想だが、これならば食材を保管しなくとも済むので、冷蔵庫がなくとも何の問題もなくやっていけるのだ」、なるほど。ただ、通常は安い商品を多目に買って、それを徐々に使えば、節約になる筈だが、それは放棄したようだ。 「買ったものを腐らせぬようにするためには、とにかくそれを必死に食べきってから次を買うしかないのである」、「「買いたくても買えない」なんて、どう考えても人生初の異常事態である・・・これはこれで寂しいというか物足りないような気もして、どうもフクザツである」、なるほど。 「冷蔵庫がパンパンじゃないと心配というのは、ごく一般的な現代人の感覚であろう」、その通りだ。 「この永遠の「とりあえず」を保証してくれる魔法の箱が存在する限り、「今ここ」で本当に必要なものの量などどうしてわかるだろう?」、さすが「魔法の箱」を捨て、「フードロス」と無縁になった筆者ならではの言葉だ。
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地方創生(その9)(【内部告発】鈴木直道知事が中国系企業へ利益供与疑惑の「夕張リゾート」が破産(前)、同(後)、ENEOS製油所閉鎖に揺れる和歌山・有田の「苦悩」 市内生産の9割消失、「工場閉鎖」が迫る地方危機) [経済政策]

地方創生については、2020年8月7日に取上げたままだった。今日は、(その9)(【内部告発】鈴木直道知事が中国系企業へ利益供与疑惑の「夕張リゾート」が破産(前)、同(後)、ENEOS製油所閉鎖に揺れる和歌山・有田の「苦悩」 市内生産の9割消失、「工場閉鎖」が迫る地方危機)である。なお、地方創生から「政策」を削除した。

先ずは、昨年4月5日付けNetIB-Newsが掲載したジャーナリストの横田 一氏による「【内部告発】鈴木直道知事が中国系企業へ利益供与疑惑の「夕張リゾート」が破産(前)」を紹介しよう。
https://www.data-max.co.jp/article/41020
・『「夕張再建」をアピールして2019年4月の北海道知事選で初当選した“菅チルドレン”の鈴木直道知事が “売国(故郷)奴”のような職務怠慢を続けている。夕張市長時代に中国系企業に2億4,000万円で売却した夕張リゾート(マウントレースイスキー場、ホテル)が19年3月に香港系ファンドに15億円で転売された後、昨年12月に廃業・破産申立を発表、歴史のあるスキー場が営業停止に追い込まれてしまったのだ』、このニュースは現在では殆どのニュースサイトには残っておらず、このサイトが数少なく残った。また、一般のマスコミでは、殆ど取上げられておらず。私も初めて知り、驚いた次第だ。
・『鈴木知事が夕張の宝を中国系企業に売却の「売国的」失策  夕張リゾートは地元観光振興の中核的施設であると同時に、市内最大の雇用の受け皿でもあった。だから17年に中国系企業「元大グループ」に売却する際、鈴木市長(当時)は長年の営業継続が前提の話と市議会で説明、固定資産税免除も決めた。しかし、その約束が簡単に反故にされたにもかかわらず、鈴木知事は中国系企業や香港系ファンドに抗議したり、営業再開や買戻しを求める直談判をいまだにしていない。第二の故郷である夕張を踏み台にしただけで、自らの決断が招いた危機的状況の根本的解決(リゾート再開)に乗り出そうとしていないのだ。まさに文字通りの「売国的」失策であるにもかかわらず。 夕張リゾートの利益供与疑惑については本サイトでも19年の北海道知事選当時から問題視してきた(「【スクープ】鈴木直道前夕張市長に中国系元大グループへの利益供与疑惑~10億円購入資金準備の航空会社との面談を拒否」「【北海道知事選2019】鈴木直道・前夕張市長に中国系企業への転売協力疑惑~中国系企業本社と同フロアには指定暴力団有力団体も入居」を参照)』、「長年の営業継続が前提」の約束が、反故にされても、「抗議したり、営業再開や買戻しを求める直談判をいまだにしていない」、とは無責任の極みだ。なかったことにしたいのだろう。
・『「形だけ対応」は菅首相と同様  中国系企業「元大グループ」(呉之平=ご・しへい=社長)が、鈴木市長(当時)との約束を破って得た転売益は推定で10億円以上。転売先の香港系ファンドに営業継続の約束が引き継がれていれば地元への実害は生じなかったが、今回の営業停止で鈴木知事の政治責任が厳しく問われる事態となった。 都庁職員として夕張に派遣された縁で市長選に出馬して初当選、その実績をアピールして道知事となった鈴木氏だが、政治家として産み育ててくれた「第二の故郷」がピンチに陥っても形だけの対応でお茶を濁している。昨年12月28日の会見でも夕張リゾート破綻について「驚きとともに大変残念と思っている」と他人事のように語るだけで自身が売却を決定したことへの謝罪はなかった。 また鈴木知事は「年明け早々に夕張市と国と道と連携したなかで、プロジェクを立ち上げられるように準備をしている」と語ったものの、道庁が1月22日に発表したのは「雇用危機対策推進事業(緊急雇用対策プログラム)」という既存の仕組みだった。リゾート破綻で仕事を失った「離職者等の再就職の促進に向けた活動を支援」するための弥縫策にすぎず、夕張リゾート営業再開に向けた根本的解決策ではなかったのだ。 鈴木知事がやるべきことは明白。市長時代の決定が招いたリゾート営業停止という最悪の事態を元に戻すことだ。約束を破った中国系企業から転売益10億円を違約金として捻出させたり、自らの支持者や関係者らに呼び掛けて15億円を調達すれば、香港系ファンドからの買戻しでスキー場やホテルを再開させることもできる。夕張の“宝”を外資から取り戻す先頭に立って結果を出さない限り、鈴木知事は「夕張リゾートを中国系企業に売って10億円を貢ぎ、約束を破られて破綻を招いた“売国奴”」「市長時代の判断ミスの後始末をしない冷酷非情で無責任な政治家」と後ろ指を指されても仕方がないのだ』、「約束を破った中国系企業から転売益10億円を違約金として捻出させたり、自らの支持者や関係者らに呼び掛けて15億円を調達すれば、香港系ファンドからの買戻しでスキー場やホテルを再開させることもできる」、「約束」は単なる口約束だった可能性もあるが、市や県の稟議に記載されていれば、裁判では主張できる筈だ。「鈴木知事は」、「夕張の“宝”を外資から取り戻す先頭に立って結果を出さない限り、「夕張リゾートを中国系企業に売って10億円を貢ぎ、約束を破られて破綻を招いた“売国奴”」「市長時代の判断ミスの後始末をしない冷酷非情で無責任な政治家」と後ろ指を指されても仕方がない』、その通りだ。
・『香港ファンドとの面談は非公開~鈴木知事も出席せず  市民との対話集会を始めた厚谷司・夕張市長は2月9日、市民から夕張リゾート再開を求める意見が出たのを受けて、香港系ファンドのライ社長(香港在住)と直談判をする考えを明らかにした。「広東語も英語も話せない」と打ち明けたうえで、「同時通訳について道庁の協力も取り付けた」と説明。通訳を介したリモート面談で、リゾート早期再開を求める市民の声をぶつける交渉に臨むことを宣言した。当然、売却時の市長だった鈴木知事も同席すると想定。夕張市役所がリモート面談日程を発表するのを待ち続けたが、翌3月になっても「未決定」との回答が続いた後、3月23日に市役所から次のような連絡があった。 「リモート面談は実施したが、先方の希望で非公開となり、面談日も教えられない。道庁との共催ではなく、鈴木知事は同席しなかった」 具体的協議をする本論部分を非公開にする場合でも、その前の冒頭部分は公開、面談終了後に内容説明をするのが普通だが、「リモート面談について報道関係者に告知をすることはなかった」(夕張市役所)。まさに夕張リゾート再開の先頭に立つべき鈴木知事の姿がまったく見えないまま、もちろん再開時期の見通しすら立たない“ブラックボックス状態”のまま、今年のスキーシーズンを終えようとしているのだ。 リゾート営業停止を招いた“A級戦犯”の鈴木知事と、鈴木市政継承を訴えて初当選した厚谷市長の対応は、あまりに遅くて不十分と言わざるを得ない。(つづく)』、このまま闇に葬るつもりなのだろうが、こんな明白な事件を放置するのでは、北海道のマスコミの名が廃る。

次に、この続きを、昨年4月5日付けNetIB-Newsが掲載したジャーナリストの横田 一氏による「【内部告発】鈴木直道知事が中国系企業へ利益供与疑惑の「夕張リゾート」が破産(後)」を紹介しよう。
https://www.data-max.co.jp/article/41040
・『「夕張再建」をアピールして2019年4月の北海道知事選で初当選した“菅チルドレン”の鈴木直道知事が “売国(故郷)奴”のような職務怠慢を続けている。夕張市長時代に中国系企業に2億4,000万円で売却した夕張リゾート(マウントレースイスキー場、ホテル)が19年3月に香港系ファンドに15億円で転売された後、昨年12月に廃業・破産申立を発表、歴史のあるスキー場が営業停止に追い込まれてしまったのだ。(前)から続く』、「売国・・・奴”のような職務怠慢を続けている」、とは言い得て妙だ。
・『夕張リゾート関係者の内部告発~夕張市と道庁の怠慢明白  しかもリゾート破綻(営業停止)は昨年12月以前に予測可能だったという内部告発が夕張リゾート関係者から寄せられている。破産を前提にした計画倒産であることを物語る12月9日付の内部文書を提示され、こう解説してくれたのだ。「(冬場に)スキー場をオープンするには2,000万円ぐらいかかるのですが、そんなお金がないことはわかっていたのです。スキー場を開けないことをわかってチケットを売っていた。しかも12月になる前に暖房業者も引き上げていたので、ホテルも(冬季に)開けられない状態になっていた。お金を支払わないので暖房設備の修理もできないまま放置されていました」(夕張リゾート関係者) 関係者によると、昨年(2020年)の夏ごろから従業員への給料支払いも滞っていたという。昨年2月に従業員約150人の希望退職を募り、パートや派遣社員が辞めていき、「失業保険がもらえる」「退職金を支払うから」という甘言に乗って辞めた正社員もいたが、退職金も未払い状態にあるという。残った従業員の給料は問答無用で半額にされ、昨秋には従業員約30人まで減っていた。この時点で破産確実の事態に陥っており、弁護士との相談も始めていた可能性もある。 「コロナ対策用でアクリル板を購入、冬季に向けて内装(ペンキ塗り)の準備もしていたが、途中でストップがかかった。昨夏に農協からメロンを買う時も『現金支払いではないと売らない』ということになった。10月頃には、水道代も従業員の住民税も払っていない状態になった。ガソリンスタンドでも現金でないと燃料も売ってくれなくなった」(夕張リゾート関係者) 関係者の証言からも、昨秋の時点で夕張リゾートが破産確実でスキー場のオープンは困難という情報を夕張市役所は容易に得ることができたはずだ。夕張リゾート関係者はこう続けた。 「水道代も住民税も滞納しているわけだから、破産寸前の情報は入っていたと思います。しかも従業員の給与からは住民税を天引きしていた。(夕張市の近くの中核都市)岩見沢市の労働監督基準署の職員は『これは犯罪だ』と言っていました。夕張リゾートの従業員が退職金未払いなどで何人も相談に行っていたようです。ただし退職金や給料未払い分に対して裁判を起こす動きは今のところはない。訴訟費用の工面も大変だし、泣き寝入り状態になっています」(同)』、典型的な「破産を前提にした計画倒産」「だ。水道代も住民税も滞納しているわけだから、破産寸前の情報は入っていたと思います。しかも従業員の給与からは住民税を天引きしていた」、役所は何をしていたのだろう。
・『浮き彫りになる「計画倒産」の実態  以下は、夕張リゾート関係者との一問一答(Qは聞き手の質問)。夕張市と道庁の情報収集不足や職務怠慢ぶりを厳しく批判していた。 Q:12月9日付の内部文書を出した夕張リゾートの米澤僚総支配人はどう考えていたのか。 リゾート関係者 悪い人ではないが、実質的な指揮を取っていたのは米澤総支配人ではなくS部長だった。夕張リゾートを1度辞めた後に戻ってきた、米澤氏と同じ〈出戻り組〉だった。昨年春ごろにS部長は戻ってきて“Sグループ”をつくって、金の動きを含めて夕張リゾートを動かしていた。 Q:香港系ファンドのオーナーの意向はどうだったのか。 リゾート関係者 「オーナーとの連絡がつかない」というのが幹部クラスの口癖で、オーナーとの連絡を取るときに間に入った通訳も昨年夏ごろに辞めてしまった。それで弁護士を間に入れて資金提供を依頼して1回か2回は入れたが、「お金も出すつもりはない」と言ってきたようだ。 Q:夕張市も北海道庁も昨年夏には夕張リゾートの経営悪化に気が付いて、スキー場休業回避に向けて動き始めるべきだったのでは。 リゾート関係者 そうだと思います。破産寸前である予兆は出ていたし、秋口にはスキー場オープンは困難との予測は容易にできた。今シーズンオープンに向けた整備をするお金もなかったし、ブルドーザーなどの重機も動いていなかった。それなのに夕張市も道庁も何も手を打たなかった。情報収集不足、職務怠慢などと行政の責任も追及されて当然です。 もちろん、夕張リゾートの米澤総支配人やS部長ら幹部たちも許されない。つらい思いをして辞めていった従業員や代金を回収できない納入業者ら被害者はたくさんいるのだ。計画倒産の実態が明らかになっていけば、関係者や地元住民の怒りが爆発するような状況になる可能性は十分にある。 やっている感演出で事足りることや初動遅れ(後手対応)は、さすがに“菅チルドレン”の鈴木知事だけあって菅首相と瓜2つ。賭博場開設で第二の故郷・横浜をカジノ業者に売り渡そうとするに等しい菅首相と、第二の故郷・夕張を中国系企業に売却(転売益10億円を献上)した鈴木知事は、ぴったりと重なり合うではないか。鈴木知事が今後「売国奴」と後ろ指を指されないために、夕張の宝ともいうべきリゾート再開に向けてどう動くのか注目される』、「今シーズンオープンに向けた整備をするお金もなかったし、ブルドーザーなどの重機も動いていなかった。それなのに夕張市も道庁も何も手を打たなかった。情報収集不足、職務怠慢などと行政の責任も追及されて当然です」、「計画倒産の実態が明らかになっていけば、関係者や地元住民の怒りが爆発するような状況になる可能性は十分にある」、その通りだ。

第三に、3月22日付け東洋経済オンライン「ENEOS製油所閉鎖に揺れる和歌山・有田の「苦悩」 市内生産の9割消失、「工場閉鎖」が迫る地方危機」を紹介しよう。
・『日本の製造業、とりわけ重厚長大産業を中心に国内製造への逆風が強まる中、地域経済を支える工場閉鎖の発表が相次いでいる。 この1月にENEOS和歌山製油所の閉鎖(2023年10月メド)が発表された和歌山県有田市では、市内の製造品出荷額の9割以上が消失する地域存続の危機に瀕する。 『週刊東洋経済』3月22日発売号は「工場が消える 脱炭素が迫る最後の選択」を特集。脱炭素をきっかけに再加速する日本全国の工場閉鎖の実態と、その構造問題に迫っている。工場が消えていくとき、日本の社会は維持できるのだろうか。 ミカン畑が広がる丘から海沿いを見渡すと、赤茶けた工場が広がる。2.5平方キロメートルほどの広大な敷地を作業員の運転するトラックがひっきりなしに行き来する。 和歌山県有田市、大阪の中心部から南へ70キロメートルほど離れた人口3万人弱の地方都市が揺れている。市を支えてきた基幹産業であるENEOSホールディングスの和歌山製油所が、2023年10月をメドに閉鎖されることが決まったからだ。 和歌山製油所の生産能力は同社の原油処理能力の7%に相当する1日当たり12.8万バレル。 1941年の操業開始から、製油所は80年にわたって「当たり前のようにそこにあった」(地元住民)。市の盛衰はこの産業とともにあったと言っても過言ではない。住民は「釣りなどのレジャーも盛んで、若い人の活気が満ちていた」と、重化学工業が盛んだった昭和の時代を懐かしむ』、「ENEOS和歌山製油所の閉鎖・・・が発表された和歌山県有田市では、市内の製造品出荷額の9割以上が消失する地域存続の危機に瀕する」、「市内の製造品出荷額の9割以上が消失」とは確かに大きなインパクトだ。
・発表翌日、知事がENEOS本社へ直談判   しかし、人口減少による全国的なガソリン需要の縮小や脱炭素化の潮流は容赦なく襲いかかる。 ENEOSをはじめとする石油元売り各社は精製能力の縮小を余儀なくされている。ENEOSはこれまで室蘭(北海道)と知多(愛知)での製造を停止したうえ、根岸(神奈川)でも2022年10月に1ラインを廃止する。 同社の大田勝幸社長は1月25日の記者会見で「サプライチェーンの見直しは続く。ここ(和歌山の停止)で終わりになるかはわからない」と話した。 「私は怒っている。地域に死ねというのと同じではないか」翌26日、東京・大手町のENEOS本社には和歌山県の仁坂吉伸知事の姿があった。閉鎖の一報は、たまたま公務で東京へ向かっている最中に聞かされた。予定を急きょ変更して大田社長への直談判に臨んだ。) 30分ほどの話し合いでは、閉鎖後の雇用維持や新たな産業作りを要求。ENEOS側からは県や有田市、経済産業省などを交えた検討会を設置することを提案された。 だが、会談後、記者たちを前で仁坂知事は「納得できない」と繰り返した。製油所が置かれた苦しい事情はわかっている。仁坂知事は「ほかの製油所を止めて、操業(注:原文はミスのためか、ここで切れている) 大田社長は「和歌山はほかの製油所と比べて能力が著しく低い。残念ながら現在も赤字だ」と説明していた。「採算が合わないのに企業に『造り続けなさい』と言うことはできない」(仁坂知事)。 それでも、仕方がないと簡単に引き下がることはできない。背景にあるのは、石油産業に強く依存する地元経済の構造だ。 和歌山製油所の2020年の製造品出荷額は約4700億円だった。県工業統計によると有田市全体では5178億円だ。つまり、和歌山製油所は有田市の製造品出荷額の実に90%超を占めている』、「和歌山製油所は有田市の製造品出荷額の実に90%超を占めている」、極めて高い依存度だ。
・『製油所が町の経済のすべて  雇用面から見ても、製油所の存在は際立つ。ENEOSによると、製油所構内で働くENEOSと協力会社社員は計1300人。有田市の人口の5%程度だ。 ただ、周辺の公共インフラに従事する人のほか、従業員とその家族が利用する飲食店、スーパーなどを含めるとその経済波及効果は計り知れない。地元関係者は「特産品のみかん栽培などの産業はあるが、実際は製油所がこの町の経済のすべてだ」と語る。 それだけに危機感は強い。地元の紀州有田商工会議所は2月14日、緊急相談窓口を設置し、関係会社の業態転換や公的支援の受け方についての相談を受け付けた。担当者は「一人親方のような形態で働く人もなかにはいる。十分な情報がなく不安な人もいるだろう」と話す。 和歌山県や有田市といった行政にも「今後のことが不安だ」「なんとかしてくれ」という声が多く寄せられているという。仁坂知事は「最悪の場合、町が廃墟になってしまう。地域側からは注文を出すくらいしかできない」と苦しい胸の内を明かす。 深刻なのは、若い世代の流出だ。和歌山に限らず、全国の地方では若者が都会へ移り住み、そのまま戻ってこない問題がある。大きな大学のない和歌山では、県外大学への進学率が82.3%と、全国で3番目に高い数字だ(2020年度、学校基本調査)。 和歌山県によると、高校卒業までに自治体が支出する教育経費は一人当たり1800万円。15~29歳の若年世代で年間3000人ほど流出超過になっており、県の試算では毎年500億円もの教育投資効果が県外に出ているという。 製油所で働く人のうち、とりわけ中高年が製油所閉鎖後に新たな職に就いたり、県外に移住したりできるか。仁坂知事は「おそらく半分くらいは地元に残って貯金を取り崩したり、農業の手伝いをして年金生活を待つのではないか。移住は簡単なものではない」とみる ただ、それでは地域経済の所得は増えず、一方で社会保障の負担は増える。地方は貧しくなるばかりだ』、「製油所で働く人のうち」、「おそらく半分くらいは地元に残って貯金を取り崩したり、農業の手伝いをして年金生活を待つのではないか」、「ただ、それでは地域経済の所得は増えず、一方で社会保障の負担は増える。地方は貧しくなるばかりだ」、「地方」にとっては、踏んだり蹴ったりだ。
・『「跡地検討会」に不満の声も  製油所跡地の活用について、ENEOSが提案した検討会も始まった。2月25日にはENEOS幹部や有田市長らが参加する1回目の会合が開かれた。内容についてENEOSは「差し控える」としている。 だが、関係者によると、「3カ月に1度」としていた検討会の頻度に対する不満が噴出。その結果、実務者による協議を3月中にも開くことが決まった。 ENEOS側の緩慢な動きに地元の焦りは募る。「単に太陽光パネルを敷き詰めるだけでは雇用は生まれない」(仁坂知事)と、跡地利用の内容次第では産業活性化につながらない可能性もある。 日本中には同じように使い道を失った工業用地は多数あり、地方の側はこのまま見捨てられるのではといった危機感は強い。そういった声にENEOSをはじめとした企業側がどう向き合うのかも問われている』、「跡地利用の内容次第では産業活性化につながらない可能性もある」、当然である。ゼロ成長下では、「産業」の役割も変わってこざるを得ない。
タグ:危機感は強い。そういった声にENEOSをはじめとした企業側がどう向き合うのかも問われている』、「跡地利用の内容次第では産業活性化につながらない可能性もある」、当然である。ゼロ成長下では、「産業」の役割も変わってこざるを得ない。 「製油所で働く人のうち」、「おそらく半分くらいは地元に残って貯金を取り崩したり、農業の手伝いをして年金生活を待つのではないか」、「ただ、それでは地域経済の所得は増えず、一方で社会保障の負担は増える。地方は貧しくなるばかりだ」、「地方」にとっては、踏んだり蹴ったりだ。 「和歌山製油所は有田市の製造品出荷額の実に90%超を占めている」、極めて高い依存度だ。 「ENEOS和歌山製油所の閉鎖・・・が発表された和歌山県有田市では、市内の製造品出荷額の9割以上が消失する地域存続の危機に瀕する」、「市内の製造品出荷額の9割以上が消失」とは確かに大きなインパクトだ。 東洋経済オンライン「ENEOS製油所閉鎖に揺れる和歌山・有田の「苦悩」 市内生産の9割消失、「工場閉鎖」が迫る地方危機」 「今シーズンオープンに向けた整備をするお金もなかったし、ブルドーザーなどの重機も動いていなかった。それなのに夕張市も道庁も何も手を打たなかった。情報収集不足、職務怠慢などと行政の責任も追及されて当然です」、「計画倒産の実態が明らかになっていけば、関係者や地元住民の怒りが爆発するような状況になる可能性は十分にある」、その通りだ。 典型的な「破産を前提にした計画倒産」「だ。水道代も住民税も滞納しているわけだから、破産寸前の情報は入っていたと思います。しかも従業員の給与からは住民税を天引きしていた」、役所は何をしていたのだろう。 「売国・・・奴”のような職務怠慢を続けている」、とは言い得て妙だ。 横田 一氏による「【内部告発】鈴木直道知事が中国系企業へ利益供与疑惑の「夕張リゾート」が破産(後)」 このまま闇に葬るつもりなのだろうが、こんな明白な事件を放置するのでは、北海道のマスコミの名が廃る。 「約束を破った中国系企業から転売益10億円を違約金として捻出させたり、自らの支持者や関係者らに呼び掛けて15億円を調達すれば、香港系ファンドからの買戻しでスキー場やホテルを再開させることもできる」、「約束」は単なる口約束だった可能性もあるが、市や県の稟議に記載されていれば、裁判では主張できる筈だ。「鈴木知事は」、「夕張の“宝”を外資から取り戻す先頭に立って結果を出さない限り、「夕張リゾートを中国系企業に売って10億円を貢ぎ、約束を破られて破綻を招いた“売国奴”」「市長時代の判断ミスの後始末をしない冷酷非情 「長年の営業継続が前提」の約束が、反故にされても、「抗議したり、営業再開や買戻しを求める直談判をいまだにしていない」、とは無責任の極みだ。なかったことにしたいのだろう。 地方創生政策 (その9)(【内部告発】鈴木直道知事が中国系企業へ利益供与疑惑の「夕張リゾート」が破産(前)、同(後)、ENEOS製油所閉鎖に揺れる和歌山・有田の「苦悩」 市内生産の9割消失、「工場閉鎖」が迫る地方危機) このニュースは現在では殆どのニュースサイトには残っておらず、このサイトが数少なく残った。また、一般のマスコミでは、殆ど取上げられておらず。私も初めて知り、驚いた次第だ。 横田 一氏による「【内部告発】鈴木直道知事が中国系企業へ利益供与疑惑の「夕張リゾート」が破産(前)」 NetIB-News
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政府財政問題(その7)(日本の問題をはき違えている「財務省」の大きな罪、政界で高まるMMT待望論 自民党内で二派に分裂する財政問題、年金受給者への「臨時給付金5000円案」に隠された、政府の甘くて怖い罠) [経済政策]

政府財政問題については、本年1月12日に取上げた。今日は、(その7)(日本の問題をはき違えている「財務省」の大きな罪、政界で高まるMMT待望論 自民党内で二派に分裂する財政問題、年金受給者への「臨時給付金5000円案」に隠された、政府の甘くて怖い罠)である。

先ずは、1月11日付け東洋経済オンラインが掲載した 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)のリチャード・カッツ 氏による「日本の問題をはき違えている「財務省」の大きな罪」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/500817
・『日本の財政赤字は「氷山に向かうタイタニック号」のようなものだという矢野康治財務事務次官の発言で唯一新鮮だったのは、選挙で選ばれた政府の政策を、水面下での会話ではなく、影響力のある『文藝春秋』誌上で厳しく批判したことだ。 約半世紀前、1978年から財務省は政府が抜本的な歳出削減と増税をしない限り「日本は崩壊ししかねない」と、首相を脅し続けて自分たちのいいなりにしようとしてきた。最近は国債市場の暴落を”ネタ”にしている。財務官僚たちは影で、首相を次々と「犠牲」にすることで消費増税を繰り返せると影でジョークを言っているほどだ』、「財務官僚たち」の思い上がった姿勢には腹が立つ。
・『かたくなに主張を改めようとしなかった  仮に財務省の警告が正しければ、それは国益のためだったと言えるだろう。しかし現実には、財務省は何度も間違ってきたし、かたくなに主張を改めようとしなかった。公平のために言うと、確かに財務省の見解は多くの高名なエコノミストの間でも共有されている。2012年にはエコノミスト2人が、財政緊縮策を実施しなければ、2020年から2023年までの間に国債の暴落が起こると予測していた。 1990年代半ば、財務省は橋本龍太郎首相を説得して消費税を3%から5%に引き上げさせた。引き上げ幅は健全な経済状態では問題にならないほど小さかったが、不良債権の肥大化により日本の体力が低下しているというアメリカ政府の指摘が無視されていた。 案の定、1997年4月の増税により、日本経済は深刻な不況に陥り、銀行危機はさらに拡大し、不況はさらに深刻化した。1998年3月、ロバート・ルービン財務長官が宮沢喜一蔵相との私的な会談で3%への引き下げを求めたところ、加藤紘一自民党幹事長が怒りを露わにした。「消費税導入のためにどれだけの首相が犠牲になったか……この発言は非常に不愉快だ」。 その数カ月後、参議院選挙で自民党が予想外の敗北を喫し、橋本首相は辞任せざるをえなくなり、犠牲者に名を連ねた。財務省もまた、予算と銀行債務に関する失敗で罰せられた。野党が参議院を制していたため、政府は野党の銀行救済への同意を得るために、銀行問題に関する財務省の介入を廃止することを黙認しなければならなかったのである。 そして、2010年には菅直人首相率いる民主党政権が誕生した。民主党政権を揺るぎないものにするには、夏の参議院選挙に勝てばよかった。しかし、財務省は菅首相に対し、消費税の再増税を実施しなければ、当時のヨーロッパのような債務危機に陥る可能性があると説得していた。 実際には、ヨーロッパで資本逃避に見舞われたのは、国内の政府債務と多額の対外債務を併せ持つ「双子の赤字」の国だけだった。日本のように、国内債務は多いが対外債務は少なく、むしろ黒字の国には、危機は訪れなかったのである。 それにもかかわらず、財務省の脅し文句に乗せられて、菅首相は増税を選挙の目玉にしてしまった。これでは民主党が負けるのも無理はない。そして2012年、衆議院選挙の数カ月前に、菅氏の民主党の後継者は、2015年までに消費税を10%に倍増させる法律を可決した。 当然のことながら、民主党は大敗し、自民党が政権に返り咲いたのである。2014年の第1段階の増税後に経済が落ち込むと、安倍晋三首相は財務省に反抗して第2段階の増税を数年遅らせた』、「1998年3月、ロバート・ルービン財務長官が宮沢喜一蔵相との私的な会談で3%への引き下げを求めたところ、加藤紘一自民党幹事長が怒りを露わにした」、初めて知ったが、「ルービン」の方が日本経済を的確に分析していたようだ。「財務省の脅し文句に乗せられて、菅首相は増税を選挙の目玉にしてしまった。これでは民主党が負けるのも無理はない」、「菅首相」の増税派への突然の変心には驚かされると同時に、失望した。
・『元首相以外の財務省の「犠牲者」  財務省の間違ったアドバイスによる他の犠牲者は、日本国債の価格暴落に何度も賭けて、何度も大きな損失を出した投資家たちである。大損をする投資は「ウィドウ・メーカー」と呼ばれるが、日本国債の暴落に"賭ける"ことは、この時代の最大のウィドウ・メーカーの1つである。 景気後退を避けるために繰り返される財政出動に経済が過度に依存するようになると、財務省は思うような財政緊縮ができなくなった。それでも、多くの人が思っている以上に歳出削減は特に高齢者にとって厳しいものだった。 財務省は、今のままでは高齢化が進むにつれ、社会保障費や医療費などの支出がGDPに占める割合が大きくなっていくと主張している。しかし、数字のうえではそうではない。高齢者への支出はたしかに増加し、2013年には対GDP比12.5%でピークに達した。だがその後、これは横ばいになり、2019年には12.4%になっている。) これはどのようにして起こったのか。プリンストン大学経済学部のマーク・バンバ教授と、コロンビア大学経済学部のデビッド・ワインスタイン教授による指摘どおり、高齢者の数が増えたにもかかわらず、財務省は高齢者1人当たりの支出を大幅に削減することを推し進めた。結果、高齢者1人当たりの社会保障費は、1996年のピーク時には192万円だったのが、2019年には149万円と約20%減少している。 【追記:13時52分】初出時に翻訳上の間違いがあったため、表記の通り訂正いたします。 医療費はどうか。1999年のピーク時には高齢者1人当たり52万円だったのが、2019年には44万円とこちらも、15%削減された。 これらの削減は、65歳以上の1人暮らしの女性の貧困率が50%近くにまで上昇した理由の1つだ。また、2018年には、主に3000円相当の万引きの疑いで4万5000人の高齢者が逮捕されており(1989年は7000人だった)、多くは収監されないが、刑務所に入る人の3分の1以上は60歳以上が占めている(1960年には全体の5%だった)。多くは1年ほど刑務所で過ごした後、解放されるが、その後同じ罪で再び刑務所に戻る。刑務所には温かいご飯、ベッド、医療があって、仲間がいるからだ』、「2018年には、主に3000円相当の万引きの疑いで4万5000人の高齢者が逮捕されており(1989年は7000人だった)・・・刑務所に入る人の3分の1以上は60歳以上が占めている(1960年には全体の5%だった)」、「高齢者」の収監者増加は深刻だ。
・『教育や保育への支出が削減される  こうした削減が続くと、GDPに占める高齢者向け支出の割合が実際には減少する可能性がある。それは、高齢者の増加が横ばいになっているからだ。 1994年から2019年にかけて、高齢者の数は1760万人から3550万人へと倍増している。が、公式予測では、今後は非常に緩やかなペースで増加する見通しで、2030年には3720万人にとどまり、2043年には3940万人でピークに達した後、再び減少に転じるという。さらに、バンバ教授とワインスタイン教授が指摘するように、高齢者の増加は若年層の大幅な減少によって相殺され、これは教育や保育への支出減につながる。 だが、こうした事実があってもなお、財務省は同じ主張を繰り返している。財務省は2021年度版『日本の財政関係資料』の中で、IMFの調査結果を援用しているが、その内容は次のようなものだった。 「マクロ財政見通しに高齢化に伴う歳出増を織り込み、継続的に評価することは重要。スタッフによるシナリオは、高齢化に伴う歳出増を賄うためには、消費税率を段階的に2030年までに15%、2050年までに20%に引き上げる必要があると示唆(OECD平均の19%と比較して)。(中略)年金、医療、介護支出の主たる変化がなければ、財政の持続可能性は手の届かないものであり続ける可能性」) こうした状況に対し、財務省はシンプルで、一見もっともらしい答えを出している。肥大化を続ける債務残高(対GDP比)を見よ。これが永遠に続くはずがない。強力な対策を講じなければ、ある日突然、投資家が一斉に日本国債を売却するのは避けられないだろう、と。 問題は、財務省が言及しているのは「総」債務残高であり、確かに1990年にはGDPの70%だったものが、2020年には237%にまで増加している(主に日本国債)。しかし、この数字には、ある政府機関が別の政府機関に対して負っている債務が含まれているため、意味がない。日本銀行のような政府機関が日本国債を捨てる兆しもない。 重要なのは「純」債務残高、つまり民間投資家に対して負っている債務であり、2013年に黒田東彦氏が日銀総裁に就任して以来、実際には縮小している。デフレ対策の名目で、日銀は日本国債を大量に購入した。 デフレ脱却の音頭のもと、日銀は国債の約半分、GDPの94%に相当する額を購入した。これは、2012年から18%の増加だ。一方で、個人投資家などを中心とする日銀以外の者が保有する日本国債は、2012年にはGDPの145%だったのが、現在は103%にまで落ち込んでいる。 加えて、国債危機の真の引き金となるのは、債務残高そのものではない。政府が利子を払えなくなったときに起こるのだ。日本にはそのような問題はない。2021年には、日銀がマイナス金利政策を実施したため、利払いはGDPのわずか0.4%にまで減少した。個人投資家への負債額と利払い額の両方が今よりはるかに大きかったときには日本は危機に陥らなかったのに、なぜ今になって危機に陥るというのか』、それは「日銀」が国債購入の形で膨大な財政ファイナンスをしているからだ。それが続く限りは大丈夫だが・・・。
・『「低金利は永遠に続かない」は本当か  財務省の答えはこうだ。低金利は永遠には続かない。危機が訪れるのは、必然的に金利が上昇したときである、と。これももっともらしく聞こえるが、日本の過去に即していない。日銀は自由にインフレを起こせないことを証明したが、これまで四半世紀以上にわたって行ってきたように、超低金利を維持することはできる。 日本は世界から借金する必要がないので、金利をコントロールすることができる。はたして、日銀は、必要に応じて市中に資金を流し続ける代わりに、わざわざ金融の大混乱を招くだろうか?) もちろん、日本の慢性的な赤字は悪影響を及ぼす。しかし、その所産は日本国債の暴落ではなく、経済のゆっくりとした腐食が続くことである。診断が違えば、処方箋も大きく異なってくる。 第1に、財政赤字そのものは日本経済の不調の原因ではなく、むしろ民間需要の弱さを示す症状である。そのため、第一に優先すべきは、実質賃金の低迷や企業の資金繰りなど、需要低迷の根本原因を解決することだ。 第2に、課税ベースを拡大するために、税や支出などの政策の足並みを成長とそろえる必要がある。国によっては消費税課税が適切だが、日本はそのような国ではない。なぜなら、ただでさえ弱い消費者の需要をさらに弱めてしまうからだ。 ほかにより適した税目がある。支出面では、河川敷を舗装したり、ゾンビ企業に信用保証を提供したりすることは、成長を阻害するだけでなく、税金が無駄遣いされるだけだと国民にあらゆる増税に対する不信感を抱かせる』、「日銀は自由にインフレを起こせないことを証明したが、これまで四半世紀以上にわたって行ってきたように、超低金利を維持することはできる」、国債利回りは海外の影響も受けるので、日銀は最後の手段として購入価格を指定する「指値オペ」という異常な手段で管理するようになった。
・『超金利が長引く意味  最後に、慢性的な赤字は、日銀に超低金利政策を維持するよう、さらなる圧力をかける。今は必要があるが、際限なく長引かせれば経済基盤を弱体化させる。例えば現在、銀行融資の36%が0.5%未満、17%が0.25%未満の金利である。このような無視できるほどわずかな金利が、ゾンビ企業の事業を継続し、他の健全な企業に打撃を与え、結果としてGDP成長率の足を引っ張ることになるのだ。 かつて、高齢者における収入の大部分は預金金利が占めていた。今は違う。1000万円を1~2年の定期預金に預けると、利息はわずか1000円で、チェーン店でカプチーノを2杯飲むのがやっとだ。退職者の家計支出の40%が貯蓄の取り崩しによるものだというのもうなずける。多くの人は、寿命を迎える前に貯金を使い果たしてしまうだろう。 成長率の向上だけで政府債務の対GDP比が安定するわけではないが、問題ははるかに管理しやすくなる。一方で、構造改革を伴わない増税や歳出削減は、成長を妨げることになるだけた』、欧米の長短金利が上昇、これを日本では日銀が強引にゼロに抑えようとしても、長期金利の抑制には苦労する筈だ。

次に、3月12日付け日刊ゲンダイが掲載した金融ジャーナリストの小林佳樹氏による「政界で高まるMMT待望論 自民党内で二派に分裂する財政問題」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/302420
・『岸田文雄首相は昨年10月の参院本会議で、日銀保有国債の一部永久国債化や教育国債の発行について、安定財源や財政の信認確保の観点から「慎重に検討する必要がある」と距離を置いた発言を行った。国民民主党の大塚耕平氏の質問に答えたもので、同党は日銀保有国債の一部永久国債化や教育国債の発行を公約としている。 永久国債化は名称の通り、国債を永久に償還せずに利払いのみにとどめるもので、天文学的な残高に達した日本国債の値崩れを回避しつつ発行を続けられる有効な方策との見方がある。しかし、その一方で「国債を無制限に発行するための禁じ手」(市場関係者)と批判する声は根強い。 そうした国債を無制限に発行しても大丈夫だとする理論の基本になっているのがMMT(現代貨幣理論)だ。そのMMT待望論がいま、政界で急速に高まっている。) MMTは「自国通貨を発行している国では財政赤字を拡大しても、インフレを招かない限りいくらでも発行でき、デフォルトは起きない」という考え方で、安倍晋三元首相や高市早苗政調会長らが参加する自民党の「財政政策検討本部」はその急先鋒だ。本部長には西田昌司参議院議員が就いている』、「MMT」については、前回、1月12日付けブログで詳細に取上げた。
・『分裂する自民  一方で自民党内には額賀福志郎氏が本部長を務める「財政健全化推進本部」も立ち上がっている。「財政健全化推進本部のバックには国債の際限なき発行に危機感を強める財務省がいる。次期財務次官と目されている茶谷栄治主計局長が自民党の有力議員に働きかけて設置してもらったと聞いている」(中央官庁幹部)という。設立会合には、岸田首相も駆け付けている。自民党内には2つの財政問題に対する検討会が併存しているわけだ。) 自民党内で二派に分かれた財政問題だが、財政健全化路線を堅持したい財務省と、自民党有力議員を中心に高まるMMT待望論がどういった折り合いをつけるのか。 いずれにしてもコロナ禍で大盤振る舞いした財政の穴埋めをはじめ、危機的な状況に立たされている日本の財政赤字への対応は避けて通れない問題だ』、「MMT派」には、「安倍晋三元首相や高市早苗政調会長ら」がいるだけに強力だが、「財政健全化派」には「財務省」、「岸田首相」も支援するなど、これに劣らず強力だ。

第三に、3月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「年金受給者への「臨時給付金5000円案」に隠された、政府の甘くて怖い罠」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/299419
・『年金受給者への臨時給付金の思惑は 「選挙前の人気取り」とは言い切れない  2022年3月15日、自民・公明の与党幹部は約4000万人の年金受給者らを対象に臨時給付金を配る案をまとめ、岸田文雄首相に実施を提言しました。一人あたり5000円の給付案が浮上しているといいます。 新型コロナの影響で、我が国全体の賃金が低下しました。公的年金の支給額は賃金と連動して下がるために、22年度は引き下げが決まっています。5000円はそれを補うための支援策ですが、生活に困っているのは賃金をもらう現役世代の労働者も同じはずです。 今年6月には参議院選挙が公示される中で、高齢者全員に給付金をばらまくのは露骨な選挙対策だという批判も上がっています。確かに、年代別に与党の支持率を確認すると、50〜60代と比べて70代は若干高いので一見、そう見えるのはその通りなのですが、実はこの話、それだけの単純な話ではありません。ちょっと怖い話です。 “朝三暮四(ちょうさんぼし)”という言葉をご存じでしょうか。中国の春秋戦国時代、諸子百家の一人「列士」が伝える寓話(ぐうわ)です。ちなみに、この話のように人をサルにたとえるのは現在のコンプライアンス上はいささか問題があるのですが、ここは故事成語の語源ということでご容赦いただきたい。それはこういう話です。 宋に狙公(そこう)という人がおりました。彼は近所のサルにエサとしてドングリを与えていたのですが、だんだん生活が困窮してきたため、エサの数を減らすことを決めました。 サルたちに「ドングリを与えるのを、朝に三つ夕方に四つへ減らそうと思う」と伝えると、サルたちは立ち上がって怒ります。そこで考えた狙公は、「それではドングリを、朝に四つ夕方に三つ与えるとしよう」と伝えると、サルたちは喜んだという寓話です。 これが“朝三暮四”です。結局総数で見ると同じ七つなのに、「朝に四つもらえる」というような目先の利益にだまされる人間の愚かさを戒めた寓話です。実は、この“朝三暮四”、行動経済学的にはなぜか意外と有効であることが知られています』、「今年6月には参議院選挙が公示される中で、高齢者全員に給付金をばらまくのは露骨な選挙対策だという批判」、「この“朝三暮四”、行動経済学的にはなぜか意外と有効であることが知られています」、どういうことなのだろう。
・『身近に潜む「朝三暮四」の甘いワナ 行動経済学でも説明がつく  身内で最近こんなことがありました。高齢の家族が、携帯電話の料金を見直してほしいというのです。以前聞いていた話では月3500円ぐらいのプランだと言っていたのですが、実際に見てみたら毎月5800円払っています。 それで一緒に販売店に行って、格安プランの携帯会社に転入することにしました。帰り道に、 「ずいぶん安くなったねえ。月990円だなんて」と喜んでいるので、 「違うよ。初年度はそうだけど、来年からは毎月2090円だからね」 と教えておきました。同じ説明を聞いていても最初に説明してもらった初年度割引の数字しか頭に入っていなかったようです。 以前のプランもどうやら初年度3500円、2年目が4500円で3年目以降が5800円になる契約で、高くなった携帯料金をもう何年も支払っていた。まさに“朝三暮四”の仕組みなのですが、初年度割引に消費者は弱いのです』、「初年度割引に消費者は弱いのです」、確かにその通りだ。
・『ガソリン価格高騰による家計圧迫も政府の「朝三暮四」と関連あり  政府の政策にも、このような“朝三暮四”の仕組みがあります。今、ガソリン価格の高騰で話題になっている「トリガー条項凍結」もその一つです。 もともとガソリン税には、原油価格が高騰したときにはガソリン税の上乗せ分を取らないというトリガー条項が存在していました。これを、東日本大震災をきっかけに凍結したのが「トリガー条項凍結」です。 当時決めた仕組みは、こういうことです。 「震災復旧・復興のために、これからたくさんお金を使います。その代わりの財源として、将来ガソリン代が上がったときに取らない予定だったガソリン税は取りますからね」 国会でそう決めたところ、当時の国民は喜んで賛成したのです。ところが、コロナ禍やウクライナ情勢の影響で原油高が進んでもガソリン税を支払わなければならなくなった。つまり、今になってガソリン代が下がらないことがと、立ち上がって怒り出すわけです。 そして、ここからが怖い話なのですが、国民が受け取る年金にも“朝三暮四”の仕組みがインストールされています』、「国民が受け取る年金にも“朝三暮四”の仕組みがインストールされています」、どういうことだろう。
・日本の年金制度にインストールされている“朝三暮四”の怖い仕組みとは  それが、年金の「マクロ経済スライド条項」というものです。 年金の受給額は、賃金が下がると連動して減少します。これが冒頭にお話ししたことで、コロナ禍で賃金が下がっていることを踏まえて、2022年度は2年連続で年金受給額は下がることが決まっています。 ところが、年金の「マクロ経済スライド条項」ではインフレ時は物価が上がっても、受給額は物価と同じように上がるわけではないことが決められています。これを「スライド調整率」といいます。 つまり、仮に物価が2%上がったとしても、年金受給額が同様に2%上がることはない。年金受給額は、物価の上昇率(2%)から、「スライド調整率」を差し引いた分しか上がらないことが法律で決まっているのです。 もともとこの条項は、将来インフレになったときに社会保障財政が破綻しないように決められました。これまでは、日本経済はデフレが続いていたので問題になることはありませんでした。ところが、2023年はインフレが進み、年金受給額に対して、いよいよこの「スライド調整率」が発動されそうなのです。 なにしろ生産者物価指数は、昨年12月、今年の1月と2カ月続けて約8%も上昇しています。小麦、トウモロコシの国際価格上昇で、パスタやパン、サラダオイルなど食料品の値上げラッシュが予定されています。原油価格が上昇し、ガソリンだけでなくプラスチック製品の価格も高くなっているのに加えて、足元では1ドル=118円と大幅な円安が進行しています。海外から輸入した商品で成り立つのが我が国の経済ですから、今年の消費者物価指数は大幅なインフレになることが確定的です。 物価が上昇することで、年金生活者は今年後半ぐらいから生活が苦しくなるでしょう。来年度になると、ようやくそこから年金受給額が引き上げられるのですが、「その引き上げ幅は、物価上昇よりも低い」と決められている。つまり、“朝三暮四”でいう“暮四”が“暮三”に減ることが既に法律で決められているのですが、多くの年金受給者はそれを知りません。 そこで、冒頭のニュースです。年金受給者の生活が困窮するといけないので選挙前に5000円を支給すべきだと言う政策が浮上した。これはあえてざっくり言うのであれば、「“朝三”を“朝四”に増やそう」という政策提言です。 有権者はこの政策に対して喜んで選挙に臨むのでしょうか、それとも怒りに立ち上がって選挙に臨むのでしょうか? 行動経済学によれば人類はだいたい前者だといわれていますが、日本人はどうでしょう』、やはり「行動経済学」の勝利になるのではなかろうか。
タグ:政府財政問題 (その7)(日本の問題をはき違えている「財務省」の大きな罪、政界で高まるMMT待望論 自民党内で二派に分裂する財政問題、年金受給者への「臨時給付金5000円案」に隠された、政府の甘くて怖い罠) 東洋経済オンライン リチャード・カッツ 氏による「日本の問題をはき違えている「財務省」の大きな罪」 「財務官僚たち」の思い上がった姿勢には腹が立つ。 「1998年3月、ロバート・ルービン財務長官が宮沢喜一蔵相との私的な会談で3%への引き下げを求めたところ、加藤紘一自民党幹事長が怒りを露わにした」、初めて知ったが、「ルービン」の方が日本経済を的確に分析していたようだ。 「財務省の脅し文句に乗せられて、菅首相は増税を選挙の目玉にしてしまった。これでは民主党が負けるのも無理はない」、「菅首相」の増税派への突然の変心には驚かされると同時に、失望した。 「2018年には、主に3000円相当の万引きの疑いで4万5000人の高齢者が逮捕されており(1989年は7000人だった)・・・刑務所に入る人の3分の1以上は60歳以上が占めている(1960年には全体の5%だった)」、「高齢者」の収監者増加は深刻だ。 それは「日銀」が国債購入の形で膨大な財政ファイナンスをしているからだ。それが続く限りは大丈夫だが・・・。 「日銀は自由にインフレを起こせないことを証明したが、これまで四半世紀以上にわたって行ってきたように、超低金利を維持することはできる」、国債利回りは海外の影響も受けるので、日銀は最後の手段として購入価格を指定する「指値オペ」という異常な手段で管理するようになった。 欧米の長短金利が上昇、これを日本では日銀が強引にゼロに抑えようとしても、長期金利の抑制には苦労する筈だ。 日刊ゲンダイ 小林佳樹氏による「政界で高まるMMT待望論 自民党内で二派に分裂する財政問題」 「MMT」については、前回、1月12日付けブログで詳細に取上げた。 「MMT派」には、「安倍晋三元首相や高市早苗政調会長ら」がいるだけに強力だが、「財政健全化派」には「財務省」、「岸田首相」も支援するなど、これに劣らず強力だ。 ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「年金受給者への「臨時給付金5000円案」に隠された、政府の甘くて怖い罠」 「今年6月には参議院選挙が公示される中で、高齢者全員に給付金をばらまくのは露骨な選挙対策だという批判」、「この“朝三暮四”、行動経済学的にはなぜか意外と有効であることが知られています」、どういうことなのだろう。 「初年度割引に消費者は弱いのです」、確かにその通りだ。 「国民が受け取る年金にも“朝三暮四”の仕組みがインストールされています」、どういうことだろう。 やはり「行動経済学」の勝利になるのではなかろうか。
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働き方改革(その37)(「竹中平蔵氏のせいなのか」ボーナスも退職金もダダ下がり…正社員の待遇悪化"真の黒幕" 良くも悪くもトヨタ自動車の影響大、ジョブ型雇用になれば 社員は「3つの階級」に分断される、日本企業の給与が安い原因は 昔ながらの日本型雇用にあり) [経済政策]

働き方改革については、2月5日に取上げた。今日は、(その37)(「竹中平蔵氏のせいなのか」ボーナスも退職金もダダ下がり…正社員の待遇悪化"真の黒幕" 良くも悪くもトヨタ自動車の影響大、ジョブ型雇用になれば 社員は「3つの階級」に分断される、日本企業の給与が安い原因は 昔ながらの日本型雇用にあり)である。

先ずは、2月16日付けPRESIDENT Onlineが掲載した人事ジャーナリストの溝上 憲文氏による「「竹中平蔵氏のせいなのか」ボーナスも退職金もダダ下がり…正社員の待遇悪化"真の黒幕" 良くも悪くもトヨタ自動車の影響大」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/54703
・『正社員の待遇が悪化の一途だ。なぜ“特権”が消えつつあるのか。人事ジャーナリストの溝上憲文さんは「元凶はバブル経済崩壊後の経済不況で多くの経営者が社員を“人材(財)”ではなく“コスト”と見なしたこと。会社が生き残るためになりふり構わず社員や人件費の削減に踏みきった」という――』、興味深そうだ。
・『正社員の既得権を剝ぎ取ったのは竹中平蔵氏なのか  正社員の待遇が悪化の一途をたどっている。 前回(※)の記事では正社員の特権ともいえる扶養手当、住宅手当などの諸手当がなくなりつつあることに触れた。 ※「正社員の特権がどんどん消えていく」扶養手当、住宅手当…諸手当が“全廃止”される日  正社員の特権はそれだけではない。過去にはさまざまな特権があったが、今では風前のともしびの状態にある。 ところで、そうした正社員の既得権を剝ぎ取ったのは元経済財政政策担当大臣の竹中平蔵氏(慶應義塾大学名誉教授)であるといった意見がネット上で飛び交っている。筆者の前出記事に対してもそのようなコメントがあった。 確かに竹中氏は「日本の正社員は世界一守られている」という主旨の発言をしている。正社員を既得権益者と指弾し、解雇規制緩和論者としても知られるが、実際のところはどうなのか。 そもそも正社員の特権とは何か。非正社員にはなく、正社員の特権ともいえるのは諸手当以外にも次のようなものがある。 ① 終身雇用(60歳定年までの雇用保障) ② 年功的賃金(年齢給、定期昇給等) ③ ボーナス(給与の5カ月分相当) ④ 交際費 ⑤ 退職金 正社員になればこうした待遇を受けられることで誰もが後顧の憂いなく仕事に邁進することができた時代もあった。ところが時代の流れととともに徐々に剝がれ落ちていった。 なぜそうなってしまったのか、そしていつから始まり、その源流は誰(どこ)にあるのかを探ってみたい』、幅広い角度から探る意味は大きい。
・『終身雇用・年功賃金は消え、賞与も退職金もダダ下がり…減給の30年史  1980年代後半からサラリーマンの現場を取材してきたが、①終身雇用という仕組みが揺らぎ始めたのはバブル経済崩壊以降だ。とくに現在のリストラの常套手段である「希望退職者募集」が本格的に始まったのもこの頃だ。経済の停滞や経営環境の深刻化に伴い、企業は固定費の削減を収益改善策の緊急避難的な手段としてリストラを実行する。 その源流は1993年のパイオニアの解雇だ。対象となったのは35人の中高年管理職。当時の松本誠也社長直々に社員を社長室に呼んで個別に面談し、涙ながらに会社の苦境を伝え、引導を渡すというやり方を取った。今から見れば牧歌的な雰囲気すら漂うが、当時は事実上の指名解雇であるとしてマスコミの指弾を浴びた。 その結果、以降は労務に長けた人事担当者が辞めてほしい社員と水面下で接触し、退職勧奨して辞めさせる手法が主流になる。 とはいえ、こうしたやり方では数百人、1000人単位の大量の人員削減は難しい。そこで登場したのが退職金の割増しを条件に全社的にオープンに「希望退職者」を募集する方法だった。 ただし、それは表向きで、実際は退職勧奨によって辞めてほしい社員に応募を勧め、残ってほしい社員を慰留するものであり、パイオニア以降の個別の退職勧奨を隠蔽いんぺいする手法に変わりはなかった。 そして1990年代後半から2000年初頭にかけて大量の希望退職者募集によるリストラが吹き荒れる。それを後押ししたのが株主優先主義の風潮である。企業のROE(株主資本利益率)重視の傾向が強まり、リストラすれば市場が評価し、株価が上がるという現象が発生し、経営者にリストラの免罪符を与えた。 大手化学メーカーの人事担当者は経営内部の雰囲気についてこう語っていた。 「自社の株価や株主対策をどうするかということに役員たちは腐心している。財務体質を強化しないと格付けが下がるとか、きちんとした姿勢を見せないと市場は評価しないという点を社員に強調し、説得材料にしている。たとえば特別損失で何千人削減すれば、どれだけ削減効果が見込めるかといった計算をするようになっている」 そうした風潮に対して90年代後半にトヨタ自動車の奥田碩会長が「従業員の雇用を守れない経営者は腹を切れ」と発言。経営者の姿勢に釘を刺したが、リストラが恒常化していく。この頃から終身雇用の崩壊が叫ばれるようになった。 では、②年功的賃金はどうやって崩れたのか』、「奥田碩」氏の発言も「リストラが恒常化」していく流れを止めることはできなかったようだ。
・『サラリーマン正社員の待遇は良くも悪くも“トヨタ自動車の影響大”  給与が上がらなくなった起点は1997年だ。実質賃金は1997年をピークに長期低落傾向にあり、97年を100とした個別賃金指数は2020年も95にとどまっている。当時、何が起きたのか。リストラと並んで実施されたのはあの手この手の賃金抑制策である。そのターゲットとなったのが年功的賃金だった。 短期的には賃金カットが相次ぎ、当時“賃金リストラ”と呼ばれた。そして中・長期の方策として打ち出されたのが年齢給や定期昇給など年功賃金に代わる成果主義賃金や年俸制だった。そうした動きに拍車をかける元凶となったのが、くしくも前出のトヨタ自動車会長の奥田碩氏だった。トヨタは2002年3月期決算の連結決算で過去最高の経常利益1兆円だったが、同社の春闘での賃上げ回答は「ベアゼロ」だった。 当時、日本経団連会長だった奥田氏は賃上げについて「高コスト体質の是正を図るうえで、ベアはなくてもよい。業績がよければ一時金で報いればよい」との見解を発表している。ベア=ベースアップとは、定期昇給以外の賃金の上乗せであり、なくなると過去の先輩の給与より実質給与は目減りする。定昇がない企業は据え置きとなる。 「ベアはなくてもよい」との発言に対し、当時、大手電機メーカーの人事担当執行役員は「春闘の賃上げのリーダーであるトヨタが史上最高益を出しながら、ベアゼロに踏み切ったことで、無理して賃上げする必要もないという安心感を他の企業にも与えた」と語っていた。 奥田発言はその後も経団連の方針として受け継がれていくことになる。 そして中期的な賃金抑制策である成果主義賃金は、従来の年齢給や、社員の潜在的能力に付与する「能力給」を剝ぎ取っていく。仕事の成果で支払う成果給と単に年齢の積み重ねによって支払う年齢給は矛盾するからである。同時にこの頃から成果とは無縁の扶養手当や住宅手当などの諸手当を廃止する企業が出始めた。 また、日産自動車の再建役としてフランスから”コストカッター”の異名を持つカルロス・ゴーンCEOが来日。学歴重視の年功序列型賃金制度の典型的企業だった日産に完全年俸制を導入したことで話題を呼び、他の企業の給与制度改革を後押しした。 さらにキヤノンは2001年に現在のジョブ型の原型ともいえる賃金制度を導入し、諸手当だけではなく、定期昇給制度廃止も打ち出した。他の企業で、定昇抑制や廃止の動きも加速した。 ただし、成果主義ブームといっても、何をもって成果するのかという定義や評価基準の不明確さが露呈。評価する上司のやり方の稚拙さもあいまって現場が混乱し、相次いで成果主義の修正が発生し、当時は“成果主義”の失敗と呼ばれた。それでも「能力給」は残ったが、一度廃止した年齢給や定昇が復活することは少なかった』、「奥田」氏は「リストラ」では労働者寄りの発言をしたが、「ベア」では正反対の立場を取った。「春闘の賃上げのリーダーであるトヨタが史上最高益を出しながら、ベアゼロに踏み切ったことで、無理して賃上げする必要もないという安心感を他の企業にも与えた」。
・『住宅ローンや教育ローンのボーナス払いが許されなくなった  実はこの頃に③のボーナスの考え方も大きく変わった。以前はボーナスといえば給与の5カ月分が相場であり、サラリーマンの年収は月給の17カ月分と言われた。外国人がボーナスを「13カ月目の給与」と呼ぶほど固定されていた。ところが、前出の奥田氏の「業績がよければ一時金で報いればよい」という発言に象徴されるように、ボーナスが部門業績や会社業績に左右される不安定な存在になっていく。 その典型が鉄鋼業界の労使で締結した会社の業績でボーナスが変動する「業績連動型賞与」だった。電機業界など他の業界にも広まるようになり、多くのサラリーマンにとってはボーナスを当てにした住宅ローンや教育ローンを組むことが許されなくなった。 実はこうした給与・ボーナス改革は目先の業績不振を回避するだけではなく、すでに今日に至る社員の高齢化も視野に入っていた。2002年から始まった「いざなぎ超え」と呼ばれる景気回復期に賃金制度を改革した大手エンジニアリング会社の人事部長はこう語っていた。 「社員は高齢化していくので、年功賃金制度の下では確実に人件費が増えていく。まずは年功賃金をなくし、ボーナスも業績に連動した形にすれば、将来的に人件費を抑えることができる。社員や労働組合には言えないが、賃金制度設計段階で5年後に1割、10年後に2割の人件費削減効果があることを経営トップに報告し、了承を得たうえで導入している」 賃金制度改革によって人件費が削られていけば、当然、給与が上がるはずもない。また給与以前に④の交際費・接待費は真っ先に削られ、現在でもかつてのように飲み食いに使える交際費は復活していない。 食品会社の人事部長は昔の交際費についてこう振り返る。 「かつての交際費は目的外利用の社内消費が相当の比率を占めていた。部下をちょっと高い店に飲みに連れて行き、翌朝、社員から『部長、昨日はありがとうございました』とお礼を言われたものだが、部長自身も会社のカネでただ酒を飲んでいた。今は交際費が減って、部下との打ち上げも割り勘に上乗せする程度で管理職としてのうま味も威厳もなくなった」 交際費を自由に使えることがなくなって久しく、今では少ない交際費をどう使えばよいのかおカネの使い方も知らない管理職もいるという』、「ボーナスが部門業績や会社業績に左右される不安定な存在になっていく」、これにより「住宅ローンや教育ローンのボーナス払い」が出来なくなった変化も大きい。
・『竹中平蔵氏は非正規社員を増やす手助けをしたのか  そして今、正社員の最後の砦とされる退職金の廃止も現実味を帯びている。そもそも退職金制度は社員を長期に囲い込む目的でつくられたもの。勤続年数が長い人ほど金額も増える仕組みであり、終身雇用と一対をなしていた。 しかし、その終身雇用が揺らぎ、会社も必ずしも定年までいてもらいたいと思わなくなれば、制度の根拠を失う。2000年前後から、ついに⑤の退職金の減額に踏み切る企業が続出した。 厚生労働省の定年退職時退職金の調査(就労条件総合調査)によると、2003年の退職金は2499万円(大学卒)だったが、08年に2280万円、12年に1911万円と年々下がり続けている。 大手広告業の人事部長はこう語る。 「2008年のリーマンショック後の役員会議で退職金制度の廃止が議論になったことがある。一時は廃止して、今まで会社が積み立てた分を毎月の給与に上乗せしたほうが社員も喜ぶのではないかという意見が優勢になった。しかし顧問弁護士がそんなことをして社員から訴えられたら責任は持てないと反対され、結果的に退職金を減額することになった。しかし今でも社内では廃止論がくすぶっている」 正社員の特権がなぜ消えつつあるのか。 その元凶はマクロ的にはバブル経済崩壊後の経済不況で多くの経営者が社員を「人材(財)」ではなく「コスト」と見なすようになったことだ。 そして会社が生き残るために社員や人件費の削減に踏み込み、正社員の待遇を少しずつ削っていったのである。 ちなみに冒頭の竹中氏は小泉純一郎政権下の閣僚の一人として製造業の派遣労働を認める規制緩和も担ったとされる。 正社員の特権を剝奪するというより、非正規社員を増やす手助けをしたといえるかもしれないが、実は非正規を増大させた元凶は日経連(現経団連)にある。 日経連が1995年に提唱した「新時代の『日本的経営』」で非正規社員の活用を提唱して以来、正社員を人件費の安い非正規に置き換える動きが急速に拡大した。 小泉政権もそれを援護すべく労働者派遣法の対象業務を次々と拡大し、1999年には原則自由化に踏み切り、03年には製造業派遣を解禁した経緯がある。 竹中氏に責任があるとすれば、正社員の特権の剝奪ではなく、非正規社員の増大とそれに伴う格差の発生ということになるだろう』、「非正規社員の増大」をもたらした「規制緩和」の罪は深い。

次に、2月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した弁護士の植田 統氏による「ジョブ型雇用になれば、社員は「3つの階級」に分断される」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295911
・『日本の昔ながらの雇用制度は崩壊し、アメリカ型のジョブ型雇用がついに日本でも始まる。弁護士で国際経営コンサルタントの植田統氏の新著『2040年「仕事とキャリア」年表』からの抜粋で、日本でも今後浸透していくであろうジョブ型雇用とはどういったシステムかを解説していく。今回は、アメリカで採用されているジョブ型雇用の実際の仕組みについて』、興味深そうだ。
・『ついに日本でも始まるアメリカの「ジョブ型雇用」とは?  今後の日本を占ううえで、大きな指針となるのが、アメリカの「ジョブ型雇用」です。アメリカでは、日本のように新卒一括採用はありません。通年で、ポストに空きがあれば、一般公募か社内公募によって労働者を採用します。 ジョブ型雇用で重視されるのは、雇用主が請け負ってほしいジョブに見合うだけの「経験、スキル」です。 企業から不要と見なされれば容赦なく解雇されるため、労働者は自分の力でキャリアを形成することが求められます。「転職は当たり前」の世界です。 能力がある人は、転職を繰り返して、給与やスキルをどんどん上げていきます。 「富める者」と「富めない者」の差が明確になる雇用制度、それがジョブ型雇用と言えるかもしれません。) では、アメリカのジョブ型雇用とはどういう制度であるのか、そして、それを支える社会の仕組みはどのようになっているのかを見ていきたいと思います。 今後の「仕事とキャリア」を考えるうえで、大いに参考になるに違いありません』、「「富める者」と「富めない者」の差が明確になる雇用制度」、格差がますます大きくなるとは困ったことだ。
・『ジョブ型雇用では社員は「3つの階級」に分けられる  アメリカの「ジョブ型雇用」の説明をしていく前に、まず、アメリカの雇用がどのような構造になっているかを見ていきましょう。 アメリカの雇用は、ピラミッド型の3層構造でできています。 一番上は、上級職員です。経営、企画、管理等の職につき、二番目に位置する中級職員に命令を下す人たちです。アメリカでは、上級職員は「エグゼンプト」と呼ばれています。 彼らが行なう仕事は、時間を掛ければ成果が出るというものではないので、労働時間で管理されることはなく、残業代も出ません。彼らの給与は月給制や年俸制で、雇用契約を結ぶ時に、上司と上級職員が交渉して決まることになります。 アメリカでは、事務系ならMBA、技術系なら工学修士の肩書を持った人が応募資格を持つ職位となっています。 この上級職員レベルの人達は、将来の幹部候補生たちです。上昇志向が強く、大変よく働きます。 彼らは、数年おきに多様な職務を経験しながら昇進していきます。財務部門の幹部候補生なら、本社で会計業務をやり、次は税務を学んで、最後に海外法人のCFO(最高財務責任者)もやって、本社に戻ってきてマネジャーやダイレクターのレベルに昇進していくというイメージです。) ある程度分野は限られていますが、後で述べる中級職員や現場労働者のように、会計業務の入力作業だけとかのジョブに縛りつけられているものではありません。いろいろな部署を経験するのですから、ジェネラリストに近いところがあります。 上級職員は、会社から高いパフォーマンスが求められます。彼らはその要求を満たすために昼夜を問わず必死で働き、うまく行かなければ、あるいは、自分の思うように出世できなければ、サッサと転職していくというイメージです。 私もアメリカのコンサルティング会社に勤めていましたが、同僚のアメリカ人は、深夜まで必死に働いていました。早くマネジャーになりたい、早くパートナー(役員)になりたいという強い願望を持っていました。しかし、いくら働いても、エグゼンプトですから、残業代は出ません。 上級職員は、自らの創意工夫で仕事を進めていきますので、会社に対する貢献度に大きな差が出てきます。査定においても、大きな差がついてきます』、「日本の社員」は入社時点では、皆が建前上平等だが、どのような職務につくのかは会社任せ、何が期待されているかも不明確である。 「残業代」は出ても、申告は自主規制の枠内に納めるよう期待されている。
・『中級職員、ブルーカラーは査定も少なく仕事も定型的  二番目が、中級職員です。アメリカでは、「ノンエグゼンプト」と言われており、事務職員や中級技術者等の実務的な職務を行なう人々を指します。 彼らは、3層目の現場労働者とは違い、肉体労働をすることはないのですが、上級職員から命じられた定型的な職務をこなします。給与は残業代込の月給制が多く、命じられた仕事を済ませて定時に退社するのが普通です。 決まりきった仕事を黙々とこなしているので、査定で大きな差をつけられることはありません。 学歴的には、かつては2年制カレッジや専門学校の卒業生が多かったのですが、近時では4年制大学卒業生が増えてきています。 三番目がブルーカラー労働者です。彼らは、時間制で働き、給与は、その担当するジョブによって決まっている日給や週給をもらいます。アメリカ映画を見ていると、工場労働者がペイデイと言われる給与が支払われる日を楽しみにしているシーンが出てきますが、それがまさにこのことです。 義務教育卒、高校卒の者が多く、中級職員への昇進のチャンスは限られています。時間制で働いていますので、残業をすれば残業代が時間単位で支払われます。しかし、中級職員同様、査定で大きな差をつけられることはありません』、「中級職員、ブルーカラー」は「日本」より楽そうだ。
・『中級職員が同じ社内で上級職員に上がるのは難しい  アメリカでは、こうした3層構造がハッキリとあるお陰で、各レベルの職務がかなりの程度標準化しています。 たとえば、製薬会社に勤める財務専門の上級職員は、自動車や菓子を製造する会社の財務ポストに転職していけます。中級職員であっても同じで、他社の中級職員の同じようなポストに転職していくことは容易です。 しかし、中級職員が同じ会社の中で上級職員に上がるのは容易ではありません。 私の経験してきたことを振り返ってみると、欧米の企業の人とビジネスをしていると、中級職員の中で夜間MBAコースに通っているという人、大学を出た後に中級職員として2、3年勤務した後に退職して大学院に通い直す人に出くわすことがありました。これは職位の高いポジションを手に入れるために、上級職員へのパスポートである学歴を手に入れるためのものでした。 こうしたピラミッド型の3層構造が、雇用の基本形であり、欧米では、今もそれが残っています。日本のように、上級職員と中級職員の垣根が消えてしまった世界とは違っています』、「日本」で「上級職員と中級職員の垣根が消えてしまった」ように見え、全社員が平等との幻想があるが、実際にはエリートと非エリートの格差は大きいのが実情である。欧米のように、初めから「上級職員」と「中級職員」、「現場労働者」を明確に分け、役割も明確化していく方がスッキリすると思う。無論、現場発の改善などがやり難くなるというデメリットもあるが、それは工夫次第で乗り越えることも可能だ。

第三に、この続きを、3月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した弁護士の植田 統氏による「日本企業の給与が安い原因は、昔ながらの日本型雇用にあり」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/298246
・『日本の昔ながらの雇用制度は崩壊し、アメリカ型のジョブ型雇用がついに日本でも始まる。弁護士で国際経営コンサルタントの植田統氏の新著『2040年「仕事とキャリア」年表』からの抜粋で、日本でも今後浸透していくであろうジョブ型雇用について解説していく。今回は、欧米とは異なる日本企業のメンバーシップ型雇用が日本人の給与をいかに安く抑えているか、その理由について』、興味深そうだ。
・『専門性が育たないような人事を行う日本企業  メンバーシップ型雇用とは、企業の「メンバー」となりうる人物を雇い、一旦「メンバー」の資格を得た人を大事にするシステムです。欧米が「はじめに職務、ジョブありき」なら、日本は「はじめに人ありき」の仕組みであるということができます。 ですから、日本企業の採用は欧米のような欠員補充のための専門スキルを持った人の中途採用がメインではありません。企業における採用は、「メンバー」として迎え入れるにふさわしい地頭の良さと潜在能力の高さを持った新卒学生を中心としています。 彼らは特定のスキルを持っているわけではないので、OJTで時間をかけて育てていく必要があります。4月に一括で採用し、同期入社全員を一括で研修し、企業のメンバーとしてイロハをたたきこみます。なかには6ヵ月とか1年を研修に割いている企業もあります。 さらに、入社してからは、定期人事異動があり、様々な職務を経験し、ジェネラリストとして育てられていきます。専門性が育たないように人事が行なわれます。 これが、○○会社の○○部長に、「あなたは何ができるのですか」と転職エージェントが聞くと、「部長ならできるのですが」という笑い話が生まれる原因です』、「定期人事異動があり、様々な職務を経験し、ジェネラリストとして育てられていきます。専門性が育たないように人事が行なわれます」、無論、例外的に専門性をそだてるところもある。
・『職務の成果ではなくメンバーとしての協調性で評価  こうした人事慣行が、オフィス・レイアウト、給与や人事評価に反映されています。未経験の職務に配置される人は、個室やコンパートメントに入れられてしまうと、何もわからず何もできない状態に陥ってしまうので、オフィスのレイアウトは大部屋形式となります。 給与についても、職務による給与を与えることはできません。どんなに優秀な人でも、人事異動があった直後はずぶの素人で仕事がうまくできないのですから、職務の成果で評価することはできないのです。 会社内での経験値が重視され、「メンバー」として経験年数が同じ同期入社社員には、基本同じような給与が支払われます。昇進、昇給も年次とともに徐々に上がっていくということになります。 それでも、数年すると同期の間でも人事評価で差がついていくことになりますが、それはどの程度会社のために頑張っているかで判定されます。そして、その頑張りは、どれぐらいの時間を会社にコミットメントしているのか、他の会社の「メンバー」と協調して仕事を進めているのかなどの会社のメンバーらしさで判断されています。 職務の成果ではありません。これが、長時間労働(必ずしも労働しているわけではないので長時間会社内滞在というべきだと思いますが)と忖度文化を生んでいるのです。 最近では、重要性が落ちてきているものと思いますが、出身大学による評価の差も残っています。「あの人は東京大学出身だから仕事ができる」というものです。 人事評価が社内の頑張りという極めて定性的なものですので、「東大出」という学歴のハロー効果(目立つ特徴に引きずられて、人物の評価がゆがめられること)が、入社後何年かたっても人事評価に影響を与え続けます』、「頑張りは、どれぐらいの時間を会社にコミットメントしているのか、他の会社の「メンバー」と協調して仕事を進めているのかなどの会社のメンバーらしさで判断されています」、「これが、長時間労働・・・と忖度文化を生んでいるのです」、日本的な非効率さを生んでいる重要な要素だ。
・『専門スキルよりも多くの部署を経験した人が有利  メンバーシップ雇用の会社では、元々専門スキルを重視しているわけではなく、他部署の人と調整して波風立てずに話をまとめていくことが評価されています。それには、多くの部署を経験し、多くの人と一緒に仕事をしてきたキャリアの長い人が有利になります。 この結果、生まれたのが「年功序列」です。会社内での経験を積めば積むほど、地位も給与も上がっていくという制度です。 ですから、高校卒の社員の5年目の給与が、大学卒の社員の1年目となり、大学卒の社員の3年目の給与が、修士号取得者の1年目の給与となっています。 もちろん、その後の昇進のスピードは、学歴によって違ってきますが、入社時には、こうして年功に基づく給与設定が行なわれています。 年代別の賃金を調べてみると、賃金は50歳前後でほぼピークに達し、その後下がっていく傾向にあります。 これは、日本企業における賃金が、年功序列という枠組みの中で、生活給という点を重視したため、子どもの教育費がピークに達する50歳前後に賃金が高くなるように設計されたからです。 そして、退社は年齢で決められています。) 今日でも60歳定年制を取る企業がほとんどですが、同期社員が、多少の遅れはあっても、ほぼ同じように昇進昇格を繰り返していき、最後は取締役や執行役員に選ばれた者を除き、一斉に60歳で退職させられています』、「メンバーシップ雇用の会社では、元々専門スキルを重視しているわけではなく、他部署の人と調整して波風立てずに話をまとめていくことが評価されています。それには、多くの部署を経験し、多くの人と一緒に仕事をしてきたキャリアの長い人が有利になります。 この結果、生まれたのが「年功序列」です」、「生活給という点を重視したため、子どもの教育費がピークに達する50歳前後に賃金が高くなるように設計されたから」、なるほど、一定の合理性があるようだ。
・『日本企業の給与が安いのは転職できる専門スキルがないから  ここまで見てくれば、なぜ日本企業の給与が安いかは、明らかです。 そこで働く労働者に専門的スキルがないからです。 専門的スキルがなければ転職も難しいので、今いる会社にい続けるしかありません。社員は、会社から出ていくことができず、給与が上がらなくても我慢せざるを得ないのです。 それでも、転職を試みる人がいますが、よほど特殊なスキル、経験を持っていない限り、移った先の会社で冷遇されます。なぜかと言えば、それは、転職した人が前の会社で15年選手であっても、転職した会社では1年選手ですから、下手をすると、1年選手と同じように扱われてしまうからです。 メンバーシップ雇用の世界では、何といっても、その会社での社歴が重要です。社歴が長ければ、社内のいろいろな人と人脈があるから、多少の無理が言えます。定期異動でいろいろな部署を経験しているので、仕事を進める時に、どこの部署の誰に話を通したら、スムーズに行くのかを知っています。 転職してきた1年選手には、こうした能力が欠如しているのです。 そのうえ、日本企業から日本企業に移っても、給与は上がりません。どこの会社も年功序列賃金を取っているのですから、15年選手が転職すると、転職先の会社の15年選手のテーブルに入れられるからです。 転職先の会社の年功序列賃金体系が、転職前の会社の賃金体系を大幅に上回っていれば話は別ですが、そうでない限り、給与はあまり変わらないのです』、「日本企業の給与が安いのは転職できる専門スキルがないから」、確かにその通りなのかも知れない。
・『専門スキルで評価されるには外資系に転職するしかない  転職では、有名会社から無名会社へと移っていくことのほうが多いのですから、現実には、転職をすると給与は下がっていくというケースのほうが多くなります。 唯一の例外は、オーナー企業への転職です。オーナー企業なら、オーナーが気に入れば、どんなに高い給与でも支払えるので、それが可能となるのです。 しかし、入ってみればわかるのですが、周りの人と比べて、倍の給与をもらっていれば、猛烈な嫉妬の対象になります。何か仕事を進めようとしても、周りの人に協力してもらえません。 そのうえ、オーナーは気まぐれですから、オーナーの機嫌を損ねれば、あっという間に降格になったり、最悪の場合、クビになります。 これが現実ですから、日本企業間を転職して成功できる人は非常に限られます。 ですから、私は転職の相談を受けた時には、外資系に行くことを勧めます。なぜ外資系かと言えば、そこでは社内人脈は重要でなく、本人が持った専門スキルが評価されるからです。また、日本のオーナー企業と違い、実力主義の人事制度が会社の中に整備されていますので、突然降格やクビということはありません。 外資系企業なら転職者を受け入れる時には、その企業の本国で行なわれているように、前職プラス10~20%の報酬を提示してくれます。自分の専門スキルが活かせる、給与も上がるとなれば、外資系に行くしかないでしょう』、「オーナー企業」には特有のリスクがあるので、「専門スキルで評価されるには外資系に転職するしかない」、同感である。
タグ:働き方改革 (その37)(「竹中平蔵氏のせいなのか」ボーナスも退職金もダダ下がり…正社員の待遇悪化"真の黒幕" 良くも悪くもトヨタ自動車の影響大、ジョブ型雇用になれば 社員は「3つの階級」に分断される、日本企業の給与が安い原因は 昔ながらの日本型雇用にあり) PRESIDENT ONLINE 溝上 憲文氏による「「竹中平蔵氏のせいなのか」ボーナスも退職金もダダ下がり…正社員の待遇悪化"真の黒幕" 良くも悪くもトヨタ自動車の影響大」 幅広い角度から探る意味は大きい。 「奥田碩」氏の発言も「リストラが恒常化」していく流れを止めることはできなかったようだ。 「奥田」氏は「リストラ」では労働者寄りの発言をしたが、「ベア」では正反対の立場を取った。「春闘の賃上げのリーダーであるトヨタが史上最高益を出しながら、ベアゼロに踏み切ったことで、無理して賃上げする必要もないという安心感を他の企業にも与えた」。 「ボーナスが部門業績や会社業績に左右される不安定な存在になっていく」、これにより「住宅ローンや教育ローンのボーナス払い」が出来なくなった変化も大きい。 「非正規社員の増大」をもたらした「規制緩和」の罪は深い。 ダイヤモンド・オンライン 植田 統氏による「ジョブ型雇用になれば、社員は「3つの階級」に分断される」 「「富める者」と「富めない者」の差が明確になる雇用制度」、格差がますます大きくなるとは困ったことだ。 「日本の社員」は入社時点では、皆が建前上平等だが、どのような職務につくのかは会社任せ、何が期待されているかも不明確である。 「残業代」は出ても、申告は自主規制の枠内に納めるよう期待されている。 「中級職員、ブルーカラー」は「日本」より楽そうだ。 「日本」で「上級職員と中級職員の垣根が消えてしまった」ように見え、全社員が平等との幻想があるが、実際にはエリートと非エリートの格差は大きいのが実情である。欧米のように、初めから「上級職員」と「中級職員」、「現場労働者」を明確に分け、役割も明確化していく方がスッキリすると思う。無論、現場発の改善などがやり難くなるというデメリットもあるが、それは工夫次第で乗り越えることも可能だ。 植田 統氏による「日本企業の給与が安い原因は、昔ながらの日本型雇用にあり」 「定期人事異動があり、様々な職務を経験し、ジェネラリストとして育てられていきます。専門性が育たないように人事が行なわれます」、無論、例外的に専門性をそだてるところもある。 「頑張りは、どれぐらいの時間を会社にコミットメントしているのか、他の会社の「メンバー」と協調して仕事を進めているのかなどの会社のメンバーらしさで判断されています」、「これが、長時間労働・・・と忖度文化を生んでいるのです」、日本的な非効率さを生んでいる重要な要素だ。 「メンバーシップ雇用の会社では、元々専門スキルを重視しているわけではなく、他部署の人と調整して波風立てずに話をまとめていくことが評価されています。それには、多くの部署を経験し、多くの人と一緒に仕事をしてきたキャリアの長い人が有利になります。 この結果、生まれたのが「年功序列」です」、「生活給という点を重視したため、子どもの教育費がピークに達する50歳前後に賃金が高くなるように設計されたから」、なるほど、一定の合理性があるようだ。 「日本企業の給与が安いのは転職できる専門スキルがないから」、確かにその通りなのかも知れない。 「オーナー企業」には特有のリスクがあるので、「専門スキルで評価されるには外資系に転職するしかない」、同感である。
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異次元緩和政策(その40)(日銀に忍び寄る黒田総裁更迭の足音…誰が首に鈴をつけるのか、黒田日銀総裁の「絶対矛盾」がもたらす歯切れのよさに失笑を禁じえない、今のマクロ経済学は間違っている=吉川洋) [経済政策]

異次元緩和政策については、2月3日に取上げた。今日は、(その40)(日銀に忍び寄る黒田総裁更迭の足音…誰が首に鈴をつけるのか、黒田日銀総裁の「絶対矛盾」がもたらす歯切れのよさに失笑を禁じえない、異次元緩和を問う① 今のマクロ経済学は間違っている=吉川洋)である。

先ずは、2月9日付け日刊ゲンダイ「 日銀に忍び寄る黒田総裁更迭の足音…誰が首に鈴をつけるのか」を紹介しよう。「政界」、「官界」、「財界」担当記者の対談と思われる。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/301072
・『官界通(以下=官) 日本銀行の黒田東彦総裁(77)の任期は来年4月までだが、満了を待たずに交代させる話が、首相官邸で出ているのか?  政界通(同=政) 早耳だな。確かに、くすぶっている。  財界通(同=財) それは、岸田文雄首相が進めている「脱・安倍カラー」の一環か?  政 それだけではない。在任9年になっても目標とした物価上昇率2%が実現しない一方、悪い物価上昇と景気低迷が重なる「スタグフレーション」に陥る懸念が出てきたからだ。  財 原油など資源や穀物の相場が上がり、企業のコストが膨らみ、生活用品にも値上げが続く。でも、2%目標を実現できていない黒田日銀が、米欧の中央銀行のように物価抑制のための利上げ策は取れない。そんな局面を乗り切るには、総裁を代えて、閉塞感に包まれている金融市場の雰囲気を一新したい、というわけか。  官 でも、不祥事もなく、本人が「辞めたい」と言い出さない限り、更迭は難しいぞ。 政 問題は、そこだ。中学校からエリート学歴で大事にされてきた黒田氏に、自ら退く発想はないだろう。では、誰が「そろそろ退任されては」と首に鈴をつけるか。普通なら監督官庁で人事案を決める鈴木俊一財務相の仕事だが、人柄がいい鈴木氏には向かない。  財 鈴木氏は、麻生太郎・前財務相の義弟だ。安倍政権で9年も財務相を続けた麻生氏が交代したのも、脱・安倍カラーの象徴。しかも、麻生氏は自民党の副総裁になり、岸田政権を支えている。その役を引き受けても、おかしくない。  政 その通り。ただ、麻生氏は、異次元緩和で地方銀行などの経営が悪化した副作用を追及される黒田氏を擁護してきた。強硬姿勢へ変わるには、理由が必要だ。  官 黒田氏が2月2日の衆院予算委員会で副作用について「異次元緩和の影響を認めるか」と追及されたとき、「認めません」と語気を強めた。この答弁に、与野党から失笑が漏れた。「もう辞めたら」という雰囲気だったな』、「副作用について「異次元緩和の影響を認めるか」と追及されたとき、「認めません」と語気を強めた」、苦笑せざるを得ない。確かに「任期は来年4月」を待たずに交代させるには相当な力業が必要だろう。

次に、2月11日付け日刊ゲンダイが掲載した同志社大学教授の 浜矩子氏による「黒田日銀総裁の「絶対矛盾」がもたらす歯切れのよさに失笑を禁じえない」を紹介しよう。
・『日銀の黒田東彦総裁の話はいつも「このボタンを押すと、このセンテンスが出てくる」という感じで、同じ言葉が繰り返されることが多いのですが、1月17、18日の金融政策決定会合の直後に行われた記者会見は、いつにも増して「ボタン」が押され、“面白い”発見がありました。 輸入価格の上昇により、ガソリンや食料品などの値段が上がっています。会見では記者から「日銀の目標である物価上昇率2%にずいぶん近づいてきています」と、何度も質問されたのですが、黒田総裁は「決定会合の見通しは2023年度末でもまだ1%程度」「金融政策を変える必要は全くありません」と繰り返しました。 この発言は、ものすごくおかしい。2%という、自分たちが9年間達成できなかった目標に、ようやく近づいてきているのだから、まともな金融政策責任者なら喜ぶはずです。異常な金融政策を解除し、いよいよ正常な道に戻れるのですからね。自分たちの力ではなく、供給サイドのリスクが物価上昇をもたらしている、という予期せぬ力学が働いていることを踏まえつつ、ここを正常化への足がかりにする。そう考えるのが、まともな政策責任者の発想でしょう』、「何度も質問されたのですが、黒田総裁は「決定会合の見通しは2023年度末でもまだ1%程度」「金融政策を変える必要は全くありません」と繰り返しました」、「供給サイドのリスクが物価上昇をもたらしている」のを無視して、「決定会合の見通し」にだけこだわるのは確かに異常だ。
・『記者会見で露呈した苦し紛れの構図  ところが黒田総裁は、正常化や出口について「全く考えておりません」「全く変わっておりません」「利上げの議論など全くしておりません」の一辺倒。一体、何回「全く」という言葉を使ったことか。その底流にあるのは、2%になっては絶対に困る、2%になりそうだという雰囲気すら広がっては困るということ。 なぜそうなるかというと、2%を達成して異次元緩和の世界から帰還しなければならなくなると、国債の買い支えという政府の指令に従えなくなってしまうからです。それで「全く」という言葉を繰り返す。いかに金融と財政が一体運営になっているか、最初から「財政ファイナンス」が狙いだったのかが分かります。そうした事実が、総裁自らの口からどんどんこぼれ出てくる会見でした。 2%の目標をセットした人たちが、2%に絶対ならすまじと踏ん張る。だから、やたら大見えを切って「全く考えていない」と歯切れよく言ってしまう。この「絶対矛盾がもたらす歯切れよさ」という苦し紛れの構図には失笑を禁じえません。 さらに黒田総裁は、物価と賃金がスパイラル状に押し上げ合っていくことを期待する発言もしていましたが、一方で、物価上昇率は2%にならない、と断じた。アホダノミクスの目指す「物価と賃金の好循環」を狙うとしながら、その実、財政ファイナンスをやめなきゃいけなくなる物価上昇は困るわけです。全くつじつまが合っていませんよね。これも矛盾。まさに、ダブルの矛盾が露呈した黒田会見でした。 いまの日本の現状は、中央銀行が政策を柔軟に動かさないがゆえに、弱者がより弱い立場に追い込まれ、生活が行き詰まっている。金融政策が弱い者イジメなどというナンセンスは、世界広しといえど、そうあることではありません。決定的に矛盾した政策をやっているからであり、アホダノミクス男はそこをどう解決するのか。これは大問題です』、「絶対矛盾がもたらす歯切れよさ」よは言い得て妙だ。「アホダノミクスの目指す「物価と賃金の好循環」を狙うとしながら、その実、財政ファイナンスをやめなきゃいけなくなる物価上昇は困るわけです。全くつじつまが合っていませんよね」、同感である。

第三に、3月7日付けエコノミストOnlineが掲載した東大名誉教授で立正大学学長の吉川洋氏による「異次元緩和を問う① 今のマクロ経済学は間違っている=吉川洋」を紹介しよう。
・『2013年4月に日本銀行が始めた“異次元”金融緩和は、2%インフレ目標が未達成のまま、9年が経過しようとする今もなお続いている。連載「異次元緩和を問う」では、この実験的政策の帰結から何をくみ取るべきなのか、経済学者やエコノミストに問うてゆく。 著書『デフレーション』(日本経済新聞出版)を滞在中のパリで書き上げたのは2012年11月。マイルドなデフレ(物価下落)に対し金融政策の効果は限られると論じた。日銀に大胆な金融緩和を求める安倍政権が、衆院選の勝利を受けて誕生する直前のことだ。 当時なされていた議論は明快だった。「デフレは“貨幣的現象”だから、貨幣の量を増やせば止まる。量的緩和をやらない日銀が悪い」と。私は「それは違う」と述べた。根底にあるマクロ経済学のモデルが間違っているからだ。 モデルでは、長期的な均衡としてマネーの量と物価が比例する「貨幣数量説」が成り立つとし、将来への期待が絶大な役割を果たす。いま中央銀行がマネーを出し続けると言えば、合理的な消費者は物価が上がるに違いないと思い、そう思ったとたんに物価が上がる──と結論づける。ポール・クルーグマンはじめ、米国の著名な経済学者が1990年代後半から盛んに繰り広げていた議論だ。 確かに期待は、株価や地価、為替など資産市場では非常に大きな役割を果たす。「市場参加者が株価は上がると思っている」と市場参加者が思えば株を買い、実際に株価が上がる。 だが、消費者物価は株価とは違う。人々も価格をつける企業もマネーの量など意識していない。逆に、誰もが頭に入れている政策変数といえば消費税率だ。だから増税前に駆け込み需要が発生する。 そもそも、日銀自身、四半期ごとに行う世論調査で「2%のインフレ目標を知っているか」と聞いているが、「よく知らない」「見聞きしたことがない」との回答が半分以上を占め続けている(図)。 この9年を振り返ると「だから言っただろう」という気分になる。異次元緩和に効果はなかったことは、事実を確認すれば明らかだ。 「日銀がマネーを出せばデフレが止まり、実体経済も回復する」という論理だったが、まず物価に影響を与えられなかったことははっきりしている。肝心の実体経済を見てみると、13~19年度を平均した実質GDP(国内総生産)成長率は欧米より低い0・9%。一番ひどいのは実質消費で0・1%とほとんど伸びていない。だから閉塞(へいそく)感が強いままなのだ。 『デフレーション』では、先進国で日本だけがデフレに陥った要因を、名目賃金の下落だと指摘していた。皮肉なことに、異次元緩和への注目度が薄れる段になって賃上げが重要課題として浮上している』、「先進国で日本だけがデフレに陥った要因を、名目賃金の下落だと指摘」、その通りだ。「ポール・クルーグマン」は最近になって、かつての自分の主張が間違っていたと認めた。
・『デフレの要因は賃金下落  名目賃金には下方硬直性がある。ところが、賃金を通し物価を下がりにくくする「デフレストッパー」が日本だけ雇用形態の変化などにより外れてしまった。 米国や欧州の物価の推移をみると、95年以降モノの値段は日本と同様に下がる一方、サービスは上がっている。サービスは労働集約的で、価格は名目賃金と連動するが、欧米で名目賃金は上がっているからだ。モノとサービスを合わせた消費者物価は、サービスの価格が上がっているため下がらなかった。 20年に「研究生活をしめくくる『卒業論文』のようなもの」と記した著書『マクロ経済学の再構築』(岩波書店)を刊行。主流マクロ経済学を、都合のいい非現実的な仮定に基づいた「砂上の楼閣」と断じた。 今のマクロ経済学は、合理的・代表的な消費者を想定したミクロのモデルを相似拡大して全体を理解しようとする。そこに中央銀行というプレーヤーが登場し、期待に働きかける。難しい理論モデルが作られ、どんどん洗練されてきたが、モデルには何の根拠もなく、むしろ害悪をもたらしている。 足元を見ても、資源価格の上昇を発端とした米国のインフレは賃金上昇とのスパイラルに陥りつつあり、FRB(米連邦準備制度理事会)の対応は後手に回っている。FRBはインフレ5%の段階でも「一時的」だとしきりに言っていた。それは金融緩和で物価上昇を目指す時、2%のインフレ目標を一時的に超えること(オーバーシュート)が正しいとするモデルが念頭にあったからだ。 日銀も今後、インフレ2%が近づいた時にモデル通りオーバーシュートさせるのか、緩和基調を手じまいするのか。難しい局面を迎える。 『マクロ経済学の再構築』では、再構築の柱にケインズの有効需要の理論を置き、ミクロの裏付けとして統計物理学の手法を用いた。一方で、ケインズ経済学において不況の際に有効需要を補う方策とされる財政支出を処方箋とはしない』、「主流マクロ経済学を、都合のいい非現実的な仮定に基づいた「砂上の楼閣」と断じた」、「今のマクロ経済学は、合理的・代表的な消費者を想定したミクロのモデルを相似拡大して全体を理解しようとする。そこに中央銀行というプレーヤーが登場し、期待に働きかける。難しい理論モデルが作られ、どんどん洗練されてきたが、モデルには何の根拠もなく、むしろ害悪をもたらしている」、「FRB・・・の対応は後手に回っている。FRBはインフレ5%の段階でも「一時的」だとしきりに言っていた。それは金融緩和で物価上昇を目指す時、2%のインフレ目標を一時的に超えること・・・が正しいとするモデルが念頭にあったからだ」、手厳しい批判だ。
・『財政支出を勧めない理由  短期の実体経済の動きが有効需要で決まるのは確かだ。といっても目先の数字だけではない経済成長を目指す視点に立てば、持続性のある需要かどうかが問われる。だから、需要を創出するようなイノベーションこそが重要だ。 たとえば財政支出で大仏を作れば、GDPは増える。だが、大仏を作ってメリットはあるのか。今の日本では、日銀が国債を無制限に買う方針を掲げているため財政規律が緩み、意味のある財政支出なのか疑わしいものが混じってきている。それこそが、異次元緩和の副作用だ。 対照的に米国の主流派経済学者は、金融政策の限界が認識された2010年代後半から、低金利下で長期停滞から脱するための経済政策として財政支出を論じ始めた。 低金利環境は借り手にとって有利だから、意味のある財政支出であれば財政負荷が小さい今、国債で行えばいいという論は半分正しい。だが、「政策」は常に総合的な判断だ。低金利はいつまで続くのか。世界的に長期金利は上がり始めており、日本だけが日銀が国債を買うことで抑え続けられるだろうか。 財政の持続性では、名目成長率と長期金利の関係が重要となる。成長率が金利を上回る現状はあくまで一時的だ。そのなかで財政支出を拡大することはギャンブルに等しい。 金利は資源配分に対して手旗信号的な役割を果たす。3%の金利とは、企業が融資を受けて設備投資する時、リターンが3%を超えるものしかできないということだ。 0%の金利が意味するところは「なんでもあり」。資源配分機能が失われ、異常な状態だ。それこそ大仏でもいいとなる。国民は納得できるのか。私は納得しない』、「名目成長率」は2021年1-3月期-1.9%、4-6月期+6.1%、7-9月期-0.1%、10-12月期-0.9%、長期金利は10年物長期国債の利回りが昨日で0.185%だ。「金利は資源配分、に対して手旗信号的な役割を果たす」のがも本来の姿だが、現在のような「指し値オペ」では日銀の誘導値そのものだ。結局、「「なんでもあり」。資源配分機能が失われ、異常な状態だ」、「吉川洋氏」のみならず私も到底「納得」できない。
タグ:(その40)(日銀に忍び寄る黒田総裁更迭の足音…誰が首に鈴をつけるのか、黒田日銀総裁の「絶対矛盾」がもたらす歯切れのよさに失笑を禁じえない、今のマクロ経済学は間違っている=吉川洋) 異次元緩和政策 浜矩子氏による「黒田日銀総裁の「絶対矛盾」がもたらす歯切れのよさに失笑を禁じえない」 「副作用について「異次元緩和の影響を認めるか」と追及されたとき、「認めません」と語気を強めた」、苦笑せざるを得ない。確かに「任期は来年4月」を待たずに交代させるには相当な力業が必要だろう。 エコノミストOnline 日刊ゲンダイ「 日銀に忍び寄る黒田総裁更迭の足音…誰が首に鈴をつけるのか」 日刊ゲンダイ 「絶対矛盾がもたらす歯切れよさ」よは言い得て妙だ。「アホダノミクスの目指す「物価と賃金の好循環」を狙うとしながら、その実、財政ファイナンスをやめなきゃいけなくなる物価上昇は困るわけです。全くつじつまが合っていませんよね」、同感である。 「名目成長率」は2021年1-3月期-1.9%、4-6月期+6.1%、7-9月期-0.1%、10-12月期-0.9%、長期金利は10年物長期国債の利回りが昨日で0.185%だ。「金利は資源配分、に対して手旗信号的な役割を果たす」のがも本来の姿だが、現在のような「指し値オペ」では日銀の誘導値そのものだ。結局、「「なんでもあり」。資源配分機能が失われ、異常な状態だ」、「吉川洋氏」のみならず私も到底「納得」できない。 「主流マクロ経済学を、都合のいい非現実的な仮定に基づいた「砂上の楼閣」と断じた」、「今のマクロ経済学は、合理的・代表的な消費者を想定したミクロのモデルを相似拡大して全体を理解しようとする。そこに中央銀行というプレーヤーが登場し、期待に働きかける。難しい理論モデルが作られ、どんどん洗練されてきたが、モデルには何の根拠もなく、むしろ害悪をもたらしている」、「FRB・・・の対応は後手に回っている。FRBはインフレ5%の段階でも「一時的」だとしきりに言っていた。それは金融緩和で物価上昇を目指す時、2%のインフレ目 『マクロ経済学の再構築』(岩波書店) 「先進国で日本だけがデフレに陥った要因を、名目賃金の下落だと指摘」、その通りだ。「ポール・クルーグマン」は最近になって、かつての自分の主張が間違っていたと認めた。 吉川洋氏による「異次元緩和を問う① 今のマクロ経済学は間違っている=吉川洋」 何度も質問されたのですが、黒田総裁は「決定会合の見通しは2023年度末でもまだ1%程度」「金融政策を変える必要は全くありません」と繰り返しました」、「供給サイドのリスクが物価上昇をもたらしている」のを無視して、「決定会合の見通し」にだけこだわるのは確かに異常だ。
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働き方改革(その36)(ヤフー「飛行機通勤OK」に隠れた覚悟 日本人の働き方はどう変わる?、「派遣する側」「派遣される側」経験した男性の主張 「派遣はいつまでも続けるべき仕事じゃない」、「45歳定年説」が捨てたもんじゃない理由 第2の人生設計には絶好の時期) [経済政策]

働き方改革については、昨年12月18日に取上げた。今日は、(その36)(ヤフー「飛行機通勤OK」に隠れた覚悟 日本人の働き方はどう変わる?、「派遣する側」「派遣される側」経験した男性の主張 「派遣はいつまでも続けるべき仕事じゃない」、「45歳定年説」が捨てたもんじゃない理由 第2の人生設計には絶好の時期)である。

先ずは、本年1月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「ヤフー「飛行機通勤OK」に隠れた覚悟、日本人の働き方はどう変わる?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/293193
・『ヤフーが居住地制限撤廃を発表 ついに飛行機通勤もOKに  ヤフーが12日、社員の居住地制限を撤廃する新しい人事制度を発表しました。同社はこれまでも、リモートワークが進んだ企業として知られていました。しかし、それでも居住地については「出社指示があった場合には午前11時までに出社できる範囲」と定められていました。これが、2022年4月1日から、日本国内であればどこでも居住できるように変更になります。 この新制度がニュースとして新しい点は、居住地制限以外に通勤手段の制限も撤廃したことです。具体的には、特急電車や飛行機での出社もOKになるということです。とはいえ、「飛行機で出勤するって、いったいどういう状況なの?」と疑問が湧くと思います。 そこで、今回の記事では、この制度はどのような働き方の人にメリットがあるのか? そして、この制度がヤフー以外にも広がりそうなのかどうか、について考えてみたいと思います』、私もこのニュースをどう咀嚼したらいいのか分からなかったので、大助かりだ。
・『「居住地制限の撤廃」で得をするのはこんな人  まず、最初の手掛かりとして、居住地制限の撤廃についてはヤフー以外にもメルカリ、LINE、GMOペパポなどが導入しています。ひとことでまとめると、IT企業に導入事例が多く、背景としては優秀なIT人材を採用する際の魅力として、居住地撤廃がアピールできるという事情があるようです。 つまり、(1)会社全体としてリモートワークが成立する働き方インフラが整っている (2)会社の競争力を維持するためには、優秀な社員が入社・定着することが重要だという競争環境がある (3)社員が優秀なITエンジニアの場合など、スキル面でも業務面でもリモートワークが当然という認識がある (4)そのような社員の中で「本社とは遠距離にあたる場所に住みたい」という個人的な事情がある という前提条件がそろう場合に、会社にとっても社員にとってもこの制度が大きな意味を持ちそうです。 その「個人的な事情」については、さまざまなケースが考えられます。アフターファイブや週末は自然に囲まれて過ごしたいから、北海道で勤務したいという人もいるでしょう。配偶者が地方都市に転勤することになったので、同じ場所で同居しながら仕事をしたいという人もいるかもしれません。副業規程に反しない形で、実家など高齢の家族の稼業を一部手伝いながら、リモートで本業の仕事をするという場合も考えられるでしょう。 今回のヤフーの新人事制度なら、どの事情の場合でも新しい制度を適用して遠距離居住での仕事ができそうです。 さて、軽井沢や札幌に居住している社員でも今回のルールの場合、会社から出社指示が出たら東京まで出勤しなければいけないという点は変わりありません。 ここから先は、あくまで「想定」での話となります。業務として週3日はリモートワークで大丈夫でも、週2日は本社に出社して何らかの業務をこなさなければならない仕事をしている人の場合、現実的な居住地は軽井沢のように新幹線通勤ができる場所ということになるのではないでしょうか。 一方で、基本はリモートワークで仕事がこなせて、月数回だけ本社に来なければならないという業務なら、札幌勤務で飛行機通勤というのが現実的にも可能になりそうです。 これまでのヤフーでは、飛行機・特急での通勤はNGでかつ、交通費の片道上限は6500円に設定されていました。通勤ルートとして新幹線通勤は認められていたようです。特急NGの意味は、通常の電車の利用であれば乗車券代は会社負担だが、特急料金は自腹という考えになります。つまり、軽井沢からヤフーの本社がある赤坂見附に出社する人は、乗車券分の2808円は会社支給ですが、特急指定席3380円は自腹ということになっていたはずです。 一方で、これからを考えると、軽井沢-赤坂見附間の1カ月の新幹線通勤定期券代13万4140円は、新ルール上では月額上限の15万円内に収まるため、全額会社負担でカバーしてもらえることになりそうです。) では、札幌居住の人はどうかというと、実質的な交通手段は飛行機一択になるはずです。LCCの場合往復1万円ちょっとの料金が出ることもあるのですが、ビジネスで使える航空券ということでいえば大手キャリアの割引航空券利用で、相場としては往復2万5000円前後を覚悟すべきでしょう。 ヤフーの交通費支給の月15万円という上限は実は税法上の控除額の上限と同じで、これを超える交通費の支給は税法上は給与とみなされることになります。 そうなると、会社支給の交通費内で往復できるのは月6回程度。それでもITエンジニアであれば遠隔地に住みながらも、制度の中で会社の仕事をこなすことはできそうです。 ひとつだけ注意点を挙げておきますと、ヤフーの社員で上限の月15万円が交通費として会社から支給されたとしても、あくまでそれは所得税の計算上得をするというだけの話です。厚生年金や健康保険料は会社から支払われた標準報酬月額をもとに算出するのですが、それには交通費が含まれます。 ですから、月15万円交通費支給の人は、社会保険料は年収が180万円増えたのと同じ計算になります。給与から控除される社会保険料は結構大きいですから、遠隔地居住を目指す方は、一応そのことも念頭においておいたほうがいいとは思います。 今回のヤフーの新制度のメリットをこのように分析してみると、この制度を活用して恩恵を受けられそうな社員は、一つは新幹線通勤をする人、もう一つが遠隔地居住のリモートワークが主で月数回の出勤が発生する社員、という二つのパターンでまとめることができそうです』、「IT企業に導入事例が多く、背景としては優秀なIT人材を採用する際の魅力として、居住地撤廃がアピールできるという事情があるようです」、「この制度を活用して恩恵を受けられそうな社員は、一つは新幹線通勤をする人、もう一つが遠隔地居住のリモートワークが主で月数回の出勤が発生する社員、という二つのパターンでまとめることができそう」、なるほど。
・『飛行機通勤は今後一般企業にも広がるのか?  さて、この動きですが、IT企業がきっかけとなって、他の多くの会社にも広がることになるのでしょうか? コロナ禍をきっかけに大企業を中心にDXが広まり、リモートワークが急速に普及しました。同時に、持続的社会をつくるための目標の一つとして、働き方改革が重要視される世の中になってきていることもあります。 それらを考慮すれば、今回のヤフーの新制度は、今は一部のIT企業で広まる程度の動きだったとしても、5年後あたりにはIT業種以外の一般大手企業でも導入が始まる可能性はあるかもしれません。 では、そのような企業で働く社員として期待できること、期待できないことはそれぞれどんなことがあるのでしょうか? 期待できることとしては、会社の制度としてはともかく、自分の仕事の中でリモートワークが増加して、会社に出社する回数が激減するようであれば、自分が住みたい遠くの場所に居住地を定める自由度は増えそうです。 ただ、それを多くの会社が容認はしてくれても、交通費の補助までしてくれるかどうかはわかりません。 以下に説明する事情を考慮したら、あまり過剰な期待はしないほうがいいかもしれません。あくまで自分の意思で本社から遠くはなれた場所にマイホームを構え、週に数回、新幹線で出勤することはできるような仕事環境にはなると思いますが、その新幹線代を皆さんが勤務する会社が払ってくれるかどうかは別だということです。 そもそも大前提の話として、交通費を支給するかどうかは、会社が自由にルールを決められるのが我が国の制度です。ヤフーの場合は、2022年4月1日から居住地自由で1カ月の交通費支給の上限が15万円となるわけですが、この上限の線引きもそれぞれの企業が自由に決められるということです。 つまり、「ヤフーが新幹線定期を認めてくれているんだから、それを交通費に認めないうちの会社はおかしい」と主張することはできないというか、通用もしない。自分の会社には自分の会社の交通費ルールが存在するのは、当たり前だということです』、「今回のヤフーの新制度は、今は一部のIT企業で広まる程度の動きだったとしても、5年後あたりにはIT業種以外の一般大手企業でも導入が始まる可能性はあるかもしれません」、「「ヤフーが新幹線定期を認めてくれているんだから、それを交通費に認めないうちの会社はおかしい」と主張することはできないというか、通用もしない。自分の会社には自分の会社の交通費ルールが存在するのは、当たり前だということです」、当然だ。
・『一般のビジネスパーソンが「居住地の自由」を獲得するための手段は?  現実問題として国家公務員の交通費上限は1カ月5万5000円。民間企業の場合もそれに準じるか、それよりも低い上限3万円以下の企業も多いという実態があります。 つまり、交通費支給枠は多くの会社ではそれほど大きくはなく、どのような規程を設けるかは、あくまで社員に対する会社の福利厚生的な要素の一つであって、それを緩和するかどうかは、会社ごとの人事政策判断なのです。 その観点で言えば、そもそも企業から見れば長い通勤時間がかかる遠隔地居住の社員を雇用するのはムダだともいえます。毎日往復3時間のいわゆる「痛勤列車」で会社とマイホームを往復する社員は、お疲れ様といえばお疲れ様ですが、疲労が蓄積すればそもそも戦力としての消耗が激しい。 会社のためにも本人のためにも、近いところに住む社員を採用したほうがお互いにメリットがあるはずです。 だとすれば、居住地の自由を享受できるのは、経済メリットの観点で考えればITエンジニアのように採用が難しい希少人材か、ないしは非常に優秀で会社が手放したくない人材に限られるのではないでしょうか。 そして一般企業の場合は「そうではない一般社員の方が人数が多い」のであれば、会社は交通費の上限を上げるメリットは総合的観点でいえば「ない」でしょう。その代わりに失いたくない優秀な社員の報酬レベルを上げればいいだけの話です。 ですから、一般のビジネスパーソンの場合、何らかの事情から居住地の自由を獲得したければ、自腹で通勤するのが未来においても有力な解決策だと考えたほうがよさそうです。 マイホームを大自然の中に建てるとか、生まれ育った街で両親と一緒に暮らすとか、人生を充実させる目的での自腹遠隔地居住者はそれでも増えていくことでしょう。 ちなみに「自腹の交通費って税金で取り戻せないの?」と疑問を持つ方のためにお話ししておくと、確定申告の際に特定支出控除という制度があって、自腹の交通費の一部を所得から控除してもらえる可能性はあります。 会社が支給してくれない新幹線の特急券部分とか、在来線のグリーン車とか、駅からのタクシー代、それに単身赴任者が実家に頻繁に戻る場合など、自腹になった部分が大きければその一部は税金で取り戻せるかもしれません。 ただし、この特定支出控除は金額のハードルが高くて、年収500万円の人なら自腹が月6.4万円を超えてから、年収1000万円なら自腹が9.2万円を超えた分でないとだめなのです。つまり現実的には、自腹救済についてはそれほど大きな税のメリットは期待できないでしょう。 そう考えると、今回のヤフーの新しい人事制度、未来の多くの日本企業の社員から見ても「あそこの会社はうらやましいな」という先端的な話になるのではないでしょうか』、「居住地の自由を享受できるのは、経済メリットの観点で考えればITエンジニアのように採用が難しい希少人材か、ないしは非常に優秀で会社が手放したくない人材に限られるのではないでしょうか。 そして一般企業の場合は「そうではない一般社員の方が人数が多い」のであれば、会社は交通費の上限を上げるメリットは総合的観点でいえば「ない」でしょう。その代わりに失いたくない優秀な社員の報酬レベルを上げればいいだけの話です」、夢のない話に落着したようだ。

次に、1月19日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの藤田 和恵氏による「「派遣する側」「派遣される側」経験した男性の主張 「派遣はいつまでも続けるべき仕事じゃない」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/502077
・『現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。 今回紹介するのは「現在、派遣会社の営業をしています。かつては典型的なワーキングプアの生活をしていました」と編集部にメールをくれた、45歳の男性だ』、「「派遣する側」「派遣される側」経験した男性の主張」、とは興味深そうだ。
・『派遣でキャリアを積めるのか?  「派遣は基本的にいつまでも続けるべき仕事じゃない。工場や倉庫で毎日同じ作業を繰り返しても、キャリアアップにはなりません」 都内にある派遣会社の営業担当で、コーディネーターも務めるタツヒサさん(仮名、45歳)はきっぱりと言い切る。しかし、それでは働き手を派遣先に送り込むという自身の仕事を否定することにならないか。これに対し、タツヒサさんはこう答えた。 「ちゃんとした仕事を見つけるまでのつなぎとして、製造や物流系の工場で働くのはいいと思います。あるいは建築や設計、通訳、編集といった専門的な技術を求められる業種なら派遣を続けるのもいいでしょう。(技術・専門職の派遣なら)経験を積めば、将来のキャリアにもなります」 タツヒサさんが所属する会社では主に建築関係の専門スキルを持った人材を派遣している。数年働いた後で正社員になったり、フリーランスとして独立したりする人もいる。一方でタツヒサさんにいわせると、製造や物流系の派遣は毎日同じ作業を繰り返すので確かに効率やスピードは上がる。ただそうしたスキルはその工場内でしか通用しないことが多く、つぶしが利かないという。 また、私が取材する中でも、製造や物流系の派遣労働者がフォークリフトやクレーンの運転資格を取っても、細切れ雇用のため、それらが給与に反映されることはめったにない。コロナ禍においても、雇い止めに遭って仕事も住まいも失うのは、自動車や精密機器メーカー系列の工場で働く派遣労働者が多かった。スキルアップどころか、なんらセーフティーネットもない働き方であることがあらためて浮き彫りになったといえる。 派遣はいつまでも続けるべき仕事ではないというタツヒサさんの考えにはおおいに同意するところだ。 一方、現在派遣会社で正社員として働くタツヒサさんの年収は約400万円。貧困層とはいえない。なぜ本連載の取材に応じようと思ったのか。 タツヒサさんは「私もかつては典型的なワーキングプアでした。日雇い派遣で働いたこともあります。派遣で働くときのコツや、派遣で搾取されないための方法、自分がどうやって貧困から抜け出したのか。その経験をお話ししたいと思ったんです」と説明する。 タツヒサさん自身は就職氷河期世代。4年制大学を卒業したものの、連戦連敗の就職活動や勤め先の倒産、失業と転職、同居する両親との衝突など一通りのことを経験した。20代のころ、どこかに再就職しなくてはと、たまたま飛び込んだ先が派遣会社だったことから、その後は転職先として複数の派遣会社で営業担当やコーディネーターを経験してきたという。 「『ちゃんとした仕事がしたい』という理由で派遣会社を辞めたこともありました」とタツヒサさん。当時は今ほど派遣という働き方は一般的ではなかった。人間を労働力として右から左へ流すだけのようにもみえる仕事に対し、“虚業”なのではという思いがぬぐえなかったという』、「ちゃんとした仕事を見つけるまでのつなぎとして、製造や物流系の工場で働くのはいいと思います。あるいは建築や設計、通訳、編集といった専門的な技術を求められる業種なら派遣を続けるのもいいでしょう」、「製造や物流系の派遣は毎日同じ作業を繰り返すので確かに効率やスピードは上がる。ただそうしたスキルはその工場内でしか通用しないことが多く、つぶしが利かない」、「派遣は基本的にいつまでも続けるべき仕事じゃない」、その通りだ。
・『企業が派遣を導入する目的は「人件費の削減」  自分が担当した人が最終的に正社員として就職したという話を聞くと、やりがいを感じることもあった。一方で従業員を派遣に切り替えた会社の工場では、不良品の返品率が上がったり、手指などを負傷する事故が増えたりといった変化を目の当たりにすることも少なくなかったという。 「企業が派遣を導入する目的は人件費の削減に尽きます」とタツヒサさんは言う。派遣労働者の能力の問題ではなく、不安定雇用という構造からくる問題だとしたうえで「日本製品のブランド価値が下がり始めた原因はこのあたりにあるのではないかと感じます」と振り返る。 海外での競争に勝つためという名目で労働者派遣法の規制緩和に踏み切ったものの、そのことが日本製品の品質劣化につながった、というのがタツヒサさんの実感である。 しかし、本人の希望とは裏腹に採用が決まるのは派遣会社ばかり。ある会社では、実態は労働者派遣にもかかわらず、業務請負を装う「偽装請負」が常態化していた。ほかにも技術職と偽って人材を集めながら工場に派遣したり、病気休暇を取得した派遣社員を強引にクビにしたりといった不適切な行為が横行していたという。タツヒサさんも雇用形態こそ正社員だったが、先輩社員からたびたび「やめちまえ」「ムダ飯食らい」とののしられた。 私が派遣会社の名前を尋ねると、2000年代にさまざまな違法行為を繰り返し、社会問題にもなった企業であることがわかった。結局半年ほどで退職。しかし、次に採用されたのも派遣会社だった。 複雑な思いはあったものの、ここまで縁があるなら、派遣労働者のキャリアアップを支え、最終的には安定した仕事に就いてもらうことを目的にしようと気持ちを切り替えた。 新しい勤務先は主に建築関係の人材派遣を手がけていたが、タツヒサさん自らの判断で比較的専門性の低い内装・建材といった周辺業務にもウイングを広げた。派遣先の開拓には苦労したものの、自らの営業成績アップにもなるし、何より最初の職場で経験を積んだ働き手がより専門性の高い業務へとステップアップするのを手伝うことができると考えたからだ。売り上げ増にも貢献できたという。一石二鳥にも思えたが、タツヒサさんの試みを快く思わない上司もおり、人間関係のもつれから4年ほどで退職を余儀なくされた。 不運だったのは、退職した時期がリーマンショックと重なったこと。毎日ハローワークに通ったが、求人情報を検索するパソコンの前には長い列ができ、2、3時間待ちはざらだった。 職種はともかく、一定以上の待遇にこだわったためか、面接にこぎつけられるのは月1回ほど。派遣会社に登録し、面接のない日はチラシ配りや繁華街での看板持ちといった日雇い派遣やアルバイトで食いつないだ。日給7000円につられ、デリヘルで働く女性を送迎するドライバーをしたこともあったという。) このころは関係が悪かった両親のもとを離れて1人暮らしをしていたので、家賃滞納でアパートを追い出されたこともあった。当時付き合っていた女性からは「仕事が見つけられないのは、あなたが不真面目だから」と三くだり半を突きつけられた。1日1食でしのぐ日もあったのに、安価な炭水化物中心の食事に偏ったせいで60キロ台だった体重は90キロを超えた。八方ふさがりの中、「落ちるところまで落ちたな」と感じたという。 タツヒサさんが貧困状態から抜け出すことができたきっかけは実にあっけなかった。数年前、リーマンショックの前まで勤めていた派遣会社の元上司から戻ってこないかと声をかけられたのだ。元上司はタツヒサさんの仕事ぶりを認めてくれた、社内でも数少ない人だったという。 この会社で、タツヒサさんは自らの意思を貫いた結果、社内で浮いてしまった。一方で巡り巡って当時の努力とこだわりが復職につながったともいえる』、「「企業が派遣を導入する目的は人件費の削減に尽きます」とタツヒサさんは言う。派遣労働者の能力の問題ではなく、不安定雇用という構造からくる問題」、その通りなのだろう。
・『「自分の努力が3割、運が7割」  タツヒサさんは再び安定した仕事に就けたことを「自分の努力が3割、運が7割」と受け止めている。「私の働きを覚えてくれている人がいたのは運がよかったとしかいいようがありません。でも、3割の努力がなければ、その運もめぐってこなかったと思うんです」。 タツヒサさんなりの“成功の秘訣”である。それは現在、派遣で働いている人たちにも通用するのだろうか。 「工場や倉庫での仕事は単純作業かもしれませんが、その間に在庫管理や倉庫整理、受注・発注処理の仕組みまで関心を持って、できれば経験もさせてもらってみてはどうでしょうか。派遣先は大手企業の系列であることも多い。きっと次の仕事探しに生かせるはずです。そして与えられた仕事が終わったら、自分から『何か手伝うことはありませんか?』と聞いてみてください。そういう努力はいつか誰かの目に留まると思います」 一理あるようにもみえる。しかし、派遣はあくまでも労働力の提供である。持論にはなるが、不安定雇用というデメリットをそのままに、本来業務以外のことまで進んでこなしていては、ただの使い勝手のよい人になってしまうのではないか。人間らしい暮らしができない一部の派遣労働の枠組みがおかしいのであり、派遣の優等生になる必要はない。個人的には劣悪な雇用には、もうそろそろ働き手の側からボイコットを仕掛けるべきだと思っているくらいだ。 これに対し、タツヒサさんは「私も、派遣は『ネガティブリスト』から『ポジティブリスト』に戻すべきだと思います。でも、現実には与えられた環境の中で努力をしなければチャンスもつかめないと思うんです」と言う。 長引く不況の中で、労働者派遣法が規制緩和され、派遣可能な業務だけを指定した「ポジティブリスト方式」から、禁止業務だけを指定した「ネガティブリスト方式」に転換、原則自由化されたのは1999年のことだ。制度改正が一朝一夕には望めない以上、タツヒサさんの提案は現実的ではあるのかもしれない。 「踏み台にするつもりで派遣会社を利用してほしい」 派遣する側も、派遣される側も経験したタツヒサさんからのエールである。 本連載「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。』、「踏み台にするつもりで派遣会社を利用してほしい」とは言うものの、現実の利用者にはそんな能力を持った人間はいないのではなかろうか。

第三に、2月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「「45歳定年説」が捨てたもんじゃない理由、第2の人生設計には絶好の時期」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/294988
・『サントリーホールディングスの新浪剛史社長が唱えた「45歳定年説」は炎上めいた騒ぎとなったが、「45歳」は60歳以降のセカンドキャリアを考えるにはピッタリの時期だ。「45歳定年説」にも、45歳くらいで全く新しい仕事に取り組めるようにビジネスパーソンは自分を磨いて準備をしておくべきだ、という高い水準に真意があったのではないか』、興味深そうだ。
・『鎮火した「45歳定年説」だが45歳は人生設計の適齢期  一時「炎上」めいた話題となった、サントリーホールディングス社長の新浪剛史氏の「45歳定年説」は、ご本人が、「会社が45歳で社員のクビを切るという意図ではない」と補足説明したこともあって、無事「鎮火」したようだ。 せっかく鎮火したのに、再び取り上げるのもいかがなものかと思わなくもないのだが、「45歳」は職業人生のプランニングを考える上で目処とするに適切な年齢だ。 例えば「45歳で人生を考えろ」という指針は、「人生100年時代」といった空念仏よりも、はるかに具体的で役に立つのではないだろうか。) もっとも、「人生100年時代」をうたう金融商品の広告はだいたいが警戒を要するものだとしても(近年は、金融機関がマーケティングで好む怪しい言葉にもなっている)、多くの人にとって人生が長いのは確かだ。一つの会社に一生を託すには、いささか長すぎる。会社にとっても長いし、本人にとっても長すぎる。 政府は、企業に社員を65歳まで雇用することを求めていて、これを70歳まで延長することが望ましいとしている。 しかし、現状の定年延長型の雇用プランは、会社と社員本人の双方にとってあまり楽しくないことが多いように見える。 典型的には、50歳なり55歳なりで「役職定年」となって収入が下がり、60歳で「定年」となる。希望すれば65歳までかなり低い収入と責任のない役職で「再雇用」されるパターンになるのだが、いかにも先細りで「会社に置いてもらっている」感じの会社最後の10年間が寂しい。しかも、その後の人生が長いので、張り合いの上でも経済的な点でも、会社任せの人生は心もとない。 筆者は、職業人生のプランニングを「ファースト・キャリア」と「セカンド・キャリア」の2ステップで考えることをお勧めしたい。たぶん、現在及び近い将来の日本人サラリーマンには、2ステップのキャリア・プランニングが合っていると思う』、「現状の定年延長型の雇用プランは、会社と社員本人の双方にとってあまり楽しくないことが多いように見える・・・いかにも先細りで「会社に置いてもらっている」感じの会社最後の10年間が寂しい。しかも、その後の人生が長いので、張り合いの上でも経済的な点でも、会社任せの人生は心もとない」、「職業人生のプランニングを「ファースト・キャリア」と「セカンド・キャリア」の2ステップで考えることをお勧めしたい」、「2ステップで考える」とはどういうことだろう。
・『2ステップのキャリア・プランニング 3パターンを図解  会社員、公務員などのサラリーマンを前提とするが、2ステップのキャリア・プランニングは三つのパターンに分かれる。人それぞれの適性の違いや、現在勤めている会社の違い、目指すところの違いなどによって、戦略を変える方がいい。) 三つのパターンを簡単に図解すると、下図のようなイメージだ。 2ステップのキャリア・プランニングの3パターン の図はリンク先参照) それぞれのパターンが「45歳」の時点で典型的にはどうしているか。 タイプ1の「組織人型」では、今後も会社に勤めるとしつつも、定年前後から自分のセカンド・キャリアをどうするのかについて考えていて、必要があれば準備を始めている状態だ。 タイプ2の「起業人型」は、45歳前後の時点で新しい事業を自分で始めるような、ファースト・キャリアで勤めた会社とは異なる仕事に乗り出している。 タイプ3の「ハイブリッド型」は、45歳くらいの時点から副業を始めたり、複数の会社に勤めたりして、セカンド・キャリアにつながるような仕事に一部着手しつつ、サラリーマンも続けている。 近未来時点の人数比は順に8:1:1くらいのイメージだろうか。 個人的には、後の二つのパターンの比率をもう少し上げる方が、世の中は楽しそうに思える。 あくまでも筆者の印象なのだが、集団の「1割」では「この人たちは少数の例外なのだ」という感じが少々残る。「2割」までいなくてもいいのだが、「6人に1人」くらいいると、「ある種の集団なのだ」という感じが出てくる。日本人は「孤立」を避けたがるので、仲間がいる方が選択に当たって安心だろう』、「近未来時点の人数比は」、「組織人型」、「起業人型」、「ハイブリッド型」8:1:1くらいのイメージだろうか」、圧倒的に「組織人型」が多いようだ。
・『タイプ1「組織人型」が考えるべきこととは?  会社に定年前後までとどまるのは、多くのサラリーマンにとって自然な選択だ。だが、「その後」のことを考える必要がある。 「60歳くらいから後に、自分は何をして、いつまで働いて、いくらぐらい稼いでいるだろうか?」という問いに対して具体的な答えを考え始めて、必要なら準備に取り掛かるのが45歳だ。 65歳以降すっかり引退して全く働かないという状態は、生活に張り合いを欠くだろうし、経済的にも心配なことが多いだろう。そして、何よりも「もったいない」。 もちろん計画的に資産を作っておくことが望ましいのだが、十分なお金を貯めていなくとも、自分にとって好ましい仕事で働く機会を得ることができて、健康なら、機嫌良く生きていくことが可能だろう。豊かな高齢期を過ごすには、お金を貯める以上に、将来も「稼げる自分」を作ることが重要だ。 セカンド・キャリアとして何を選ぶかは人それぞれだが、「稼げる自分」であるためには、仕事の「能力」と、その能力を買ってくれる「顧客」の二つを用意しなければならない。 士業やコンサルタントなどで独立して稼ぐためには、資格を取得したり知識を仕入れたりすることが必要だろう。技術者の場合も、将来長く稼ぎ続けるためには知識を意識的にアップデートする時間が必要だろう。飲食店や商店、ペンションなどを開業するにも、調理などのスキルを身に付けたり、それぞれの業務における経営に必要な知識を獲得したりすることが必要だ。 加えて、十分な能力があっても独立する場合は顧客が必要だし、事務職や技術職で働くなら雇ってくれる会社の目処をつけることが必要だろう。 「能力」と「顧客」はいずれも獲得に時間を要する。早く準備を始めるのでないと、自分が将来できることの選択肢がどんどん狭まって、貧相なものになってしまいかねない。 60歳まで15年ある「45歳」を、セカンド・キャリアへの準備開始の時期に位置付けることが、多くのサラリーマンにとって適切なのではないかと思う次第だ』、「「能力」と「顧客」はいずれも獲得に時間を要する。早く準備を始めるのでないと、自分が将来できることの選択肢がどんどん狭まって、貧相なものになってしまいかねない。 60歳まで15年ある「45歳」を、セカンド・キャリアへの準備開始の時期に位置付けることが、多くのサラリーマンにとって適切なのではないかと思う次第だ」、なるほど。
・『タイプ2「起業人型」が実現に向けてすべきことは?  全く新しい仕事を始めて、それを大きく育てるためには、大きなエネルギーと長い時間が必要だ。独立して「自分が食べていける」だけでなく、大きな仕事をしようと思うなら、スタートは早い方がいい。 「45歳」くらいまでにスタートすると心に決めて、そのための準備をしておくべきだろう。 冒頭で触れた新浪氏の「45歳定年説」は、「45歳くらいで全く新しい仕事に取り組めるようにビジネスパーソンは自分を磨いて準備をしておくべきだ」という、かなり意欲的でハードルの高い水準に真意があったのではないか。 起業ではなかったが、総合商社(三菱商事)からコンビニエンスストア(ローソン)の社長に転じた新浪氏は、この「起業人型」に属するだろう。会社がチャンスを与えたこともあったが、彼自身も大いに準備をしていた(筆者は、共に新入社員として入社した三菱商事時代の「同期」である)。 新入社員時代の英語の特訓(早朝出社して仲間とトレーニングしていた)にはじまって、社費留学で米ハーバード大学ビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得した。帰国してからも、他社の人材も含めて優秀なビジネスパーソンを集めて勉強会を主宰し、勉強に努めるのとともに人脈を拡げていた。加えて、若い時期に出向した給食の会社(ソデックスコーポレーション〈現LEOC〉)で経営の経験を積めたことが大きかった。 新浪氏が会社から多くのチャンスを得ていることも間違いないのだが、公平に見て、ローソンの社長に指名された時、彼には準備ができていた。 「新浪さんのようになりたい」と思う若いサラリーマンが少なからずいると思うが、日頃からの準備が大事であることを強調しておく。 もっとも、言われなければ準備に取りかかっていないような人は、そもそも「起業人型」ではないのだろう』、「新浪さんのようになりたい」と思う若いサラリーマンが少なからずいると思うが、日頃からの準備が大事であることを強調しておく」、「筆者は、共に新入社員として入社した三菱商事時代の「同期」」だけに説得力がある。
・『タイプ3「ハイブリッド型」の勧め 副業・複業を目指す  「ハイブリッド型」は、いわゆる副業や複数の会社・仕事から収入を得る形を通じながら、60歳以降も自分のペースで働くことができる仕事の機会を作っていくキャリア・プランだ。 いきなりサラリーマンを辞めて、独立したり起業したりするよりはリスクが小さい点で、起業人型よりも多くの人にとって目指しやすいのではないか。 勤め先の会社で仕事を減らすかどうかは人にもよるし、副業あるいは複業として手掛けたい仕事の内容にもよるが、うまくいくと、この形は本人にも会社にもメリットがある。 筆者のキャリア・プランはこのタイプだった。42歳の時点で、それまで転職を繰り返して勤めてきた金融系の仕事を離れ、「時間自由かつ副業自由」を条件として交渉してシンクタンクに入って(給与水準は前の半分以下に下げた)、おおっぴらに複数の仕事を始めた。 知り合いの会社にも勤めてみたり、ベンチャー企業に関わってみたり…。試行錯誤があったが、原稿を書いたり、講演やテレビ出演をしたりといった仕事が増えて、「経済評論家」が仕事として軌道に乗った。 その後、サラリーマンとしての勤務先をシンクタンクからインターネット証券に変えて現在(63歳である)に至っている。 筆者は、特段成功者でもないし、幸い失敗しなかっただけなのだが、凡庸なビジネスパーソンのリスクの取り方として、悪い選択肢ではなかったと思っている。 金融マン時代から、筆者はどちらかというと調査系の「知識を売る」種類の仕事をしてきた。こうした仕事では、会社は「時々」役に立つアイデアを必要とするのであって、月曜日から金曜日までフルタイムで社員たる筆者が会社にいることを必要としない。 もし勤務日を減らすこととともに給料を下げることができれば、会社にとってもメリットがある。もちろん、必ずしも給料を下げる必要はなく、複業で社員本人の生産性が上がる場合もあるので、会社の側でもメリットが発生する場合は少なくないはずだ。 例えば、シンクタンクのような業種なら、研究員が副業的な対外活動で有名になることは、会社の知名度や評判にもプラスになる場合がある。別の業種でも同様のことがあるのではないだろうか』、「必ずしも給料を下げる必要はなく、複業で社員本人の生産性が上がる場合もあるので、会社の側でもメリットが発生する場合は少なくないはずだ」、同感である。
・『筆者がキャリア・プランニングで参考にした2人の人物  実は、筆者のキャリア・プランニングには参考にしたモデルが2人いる。 一人は、現在ある大学の教授であるHさんだ。彼は30代の頃に金融系の会社に勤めている際に「給料を6掛けにする代わりに勤務日を週3日にする」という交渉を成立させた。そして大学院に通い学位を得て、大学教授に転身した。 なるほど、そういう条件交渉があり得るのかと大いに感心したことを覚えている。考えてみると、両者にメリットがあり得るなら、前例がなくても交渉はやってみる価値がある。 もう一人は、マルチ・ジョブの草分け的な先輩で、主に外資系の金融機関をわたり歩いたNさんだ。彼は、「人脈の達人」とも呼ぶべき人で、丁寧にメンテナンスされた幅広い人脈を武器に、次々と請われて職場を変えつつ(60代後半になって外資系金融に転職したこともある)、自分の会社のビジネスを発展させていた。 何らかの「強み」を持っていたら、年齢を重ねても職を得ることができることが分かったし、「強み」は複数の仕事で生かすことができる。 筆者にはN氏の人脈のような突出した強みはないが、金融資産の運用に長年関わってきたことが役に立った。 「ハイブリッド型」でも、行動を開始する目処は「45歳」くらいが適当な場合が多いのではないだろうか。 3パターンの中では、「組織人型」を選択する人が多いのだろう。しかし今後、働き方の多様性が広がって、「ハイブリッド型」が増えるのではないかと期待している。 いずれのタイプを選択するとしても、合い言葉は、「45歳を、機嫌良く通過しよう!」だ』、私の「45歳」当時の記憶はもはやないが、もっと若い頃にこれを読んでおけばよかった。
タグ:働き方改革 (その36)(ヤフー「飛行機通勤OK」に隠れた覚悟 日本人の働き方はどう変わる?、「派遣する側」「派遣される側」経験した男性の主張 「派遣はいつまでも続けるべき仕事じゃない」、「45歳定年説」が捨てたもんじゃない理由 第2の人生設計には絶好の時期) ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「ヤフー「飛行機通勤OK」に隠れた覚悟、日本人の働き方はどう変わる?」 私もこのニュースをどう咀嚼したらいいのか分からなかったので、大助かりだ。 「IT企業に導入事例が多く、背景としては優秀なIT人材を採用する際の魅力として、居住地撤廃がアピールできるという事情があるようです」、「この制度を活用して恩恵を受けられそうな社員は、一つは新幹線通勤をする人、もう一つが遠隔地居住のリモートワークが主で月数回の出勤が発生する社員、という二つのパターンでまとめることができそう」、なるほど。 「今回のヤフーの新制度は、今は一部のIT企業で広まる程度の動きだったとしても、5年後あたりにはIT業種以外の一般大手企業でも導入が始まる可能性はあるかもしれません」、「「ヤフーが新幹線定期を認めてくれているんだから、それを交通費に認めないうちの会社はおかしい」と主張することはできないというか、通用もしない。自分の会社には自分の会社の交通費ルールが存在するのは、当たり前だということです」、当然だ。 「居住地の自由を享受できるのは、経済メリットの観点で考えればITエンジニアのように採用が難しい希少人材か、ないしは非常に優秀で会社が手放したくない人材に限られるのではないでしょうか。 そして一般企業の場合は「そうではない一般社員の方が人数が多い」のであれば、会社は交通費の上限を上げるメリットは総合的観点でいえば「ない」でしょう。その代わりに失いたくない優秀な社員の報酬レベルを上げればいいだけの話です」、夢のない話に落着したようだ。 東洋経済オンライン 藤田 和恵氏による「「派遣する側」「派遣される側」経験した男性の主張 「派遣はいつまでも続けるべき仕事じゃない」」 「「派遣する側」「派遣される側」経験した男性の主張」、とは興味深そうだ。 「ちゃんとした仕事を見つけるまでのつなぎとして、製造や物流系の工場で働くのはいいと思います。あるいは建築や設計、通訳、編集といった専門的な技術を求められる業種なら派遣を続けるのもいいでしょう」、「製造や物流系の派遣は毎日同じ作業を繰り返すので確かに効率やスピードは上がる。ただそうしたスキルはその工場内でしか通用しないことが多く、つぶしが利かない」、「派遣は基本的にいつまでも続けるべき仕事じゃない」、その通りだ。 「「企業が派遣を導入する目的は人件費の削減に尽きます」とタツヒサさんは言う。派遣労働者の能力の問題ではなく、不安定雇用という構造からくる問題」、その通りなのだろう。 「踏み台にするつもりで派遣会社を利用してほしい」とは言うものの、現実の利用者にはそんな能力を持った人間はいないのではなかろうか。 山崎 元氏による「「45歳定年説」が捨てたもんじゃない理由、第2の人生設計には絶好の時期」 「現状の定年延長型の雇用プランは、会社と社員本人の双方にとってあまり楽しくないことが多いように見える・・・いかにも先細りで「会社に置いてもらっている」感じの会社最後の10年間が寂しい。しかも、その後の人生が長いので、張り合いの上でも経済的な点でも、会社任せの人生は心もとない」、「職業人生のプランニングを「ファースト・キャリア」と「セカンド・キャリア」の2ステップで考えることをお勧めしたい」、「2ステップで考える」とはどういうことだろう。 「近未来時点の人数比は」、「組織人型」、「起業人型」、「ハイブリッド型」8:1:1くらいのイメージだろうか」、圧倒的に「組織人型」が多いようだ。 「「能力」と「顧客」はいずれも獲得に時間を要する。早く準備を始めるのでないと、自分が将来できることの選択肢がどんどん狭まって、貧相なものになってしまいかねない。 60歳まで15年ある「45歳」を、セカンド・キャリアへの準備開始の時期に位置付けることが、多くのサラリーマンにとって適切なのではないかと思う次第だ」、なるほど。 「新浪さんのようになりたい」と思う若いサラリーマンが少なからずいると思うが、日頃からの準備が大事であることを強調しておく」、「筆者は、共に新入社員として入社した三菱商事時代の「同期」」だけに説得力がある。 「必ずしも給料を下げる必要はなく、複業で社員本人の生産性が上がる場合もあるので、会社の側でもメリットが発生する場合は少なくないはずだ」、同感である。 私の「45歳」当時の記憶はもはやないが、もっと若い頃にこれを読んでおけばよかった。
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異次元緩和政策(その39)(2022年の視点:コロナ後の懸念はデフレよりインフレ 政府・日銀にやっかいな課題=鈴木明彦氏、FRBはゼロ成長下で利上げに着手することになる 経済のオーバーキル懸念が強まり後半は修正か、元日銀審議委員の白井さゆり慶大教授に聞く アメリカの歴史的な金融引き締めで何が起こるか) [経済政策]

異次元緩和政策については、昨年11月24日に取上げた。今日は、(その39)(2022年の視点:コロナ後の懸念はデフレよりインフレ 政府・日銀にやっかいな課題=鈴木明彦氏、FRBはゼロ成長下で利上げに着手することになる 経済のオーバーキル懸念が強まり後半は修正か、元日銀審議委員の白井さゆり慶大教授に聞く アメリカの歴史的な金融引き締めで何が起こるか)である。

先ずは、本年1月3日付けロイターが掲載した三菱UFJリサーチ&コンサルティング研究主幹の鈴木明彦氏による「2022年の視点:コロナ後の懸念はデフレよりインフレ、政府・日銀にやっかいな課題=鈴木明彦氏」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/column-akihiko-suzuki-idJPKBN2J60CD
・『世界的には新型コロナウイルスのオミクロン株感染が拡大し、新型コロナとの戦いが続いているものの、日本の新規感染者数は落ち着いている。もちろん、再び感染が拡大することは想定すべきだが、遅ればせながらワクチン接種が進んだことで、感染抑制に効果があったことは間違いない。 新型コロナ感染をゼロにするというのは現実的ではないが、3度目のワクチン接種を円滑に進め、水際対策によって海外からの感染拡大を抑え、国内でも「Go Toトラベル」など感染拡大のリスクがある施策の再開には十分注意を払い、感染対策をしっかりと取っていけば、2020年春のような大混乱は回避できるのではないか。 アフターコロナとまではいかないが、ウイズコロナでも経済社会が混乱しないような「新たな日常」の構築ができてきていると期待したい』、コロナの方は第六波到来で「新たな日常」とは程遠いが、金融政策の方はどうなのだろう。
・『<日銀の新型コロナ対応も縮小>  日銀の新型コロナ対応策も、感染拡大による金融市場や経済への影響が落ち着くにつれて、縮小方向にかじが切られている。新型コロナ対応金融支援特別オペの影響で急増していたマネタリーベースは、2021年3月末をピークに前年比増加額が縮小に転じている。 2021年12月の金融政策決定会合では、国内の金融環境は全体として改善しており、特に大企業金融については、CP・社債市場の発行環境は良好になっているとした上で、新型コロナ対応のCP・社債の買い入れ額の増額措置を2022年3月末で終了することが決まった。 一方、中小企業の資金繰りは、改善傾向にあるものの一部に厳しさが残っているとして、新型コロナ対応特別オペについては、カテゴリーⅠのプロパー融資分については、カテゴリーを変えずにプラス0.2%の付利を維持し、マクロ加算残高への2倍加算も維持したまま、2022年9月末まで延長されることになった。 しかし、プラス0.1%の利息が付くカテゴリーⅡのうち、大企業向けや住宅ローンなど民間債務担保分は、延長されずに2022年3月末で終了することになった。 また、新型コロナ対応の中小企業向けの制度融資分(緊急経済対策における無利子・無担保融資や新型コロナ対応として信用保証協会の保証の認定を受けて実行した融資)については、カテゴリーⅢに移行し付利金利がゼロ%となり、マクロ加算残高への2倍加算をやめて同額加算とした上で、2022年9月末まで延長されることになった。 2022年4月以降は、CP・社債の買い入れや新型コロナ対応オペの利用が縮小していく見込みであり、マネタリーベースの増加ペースもさらに低下してくるだろう』、「CP・社債の買い入れや新型コロナ対応オペの利用が縮小」する程度では、正常化には程遠い。
・『<デフレとの戦いが再開するのか>  日銀の新型コロナ対応が縮小してくれば、しばらく休戦状態だったデフレとの戦いが再開するのが自然な流れだ。しかし、デフレ脱却の機運は盛り上がりそうにもない。 想定以上の消費者物価の上昇に直面してテーパリング(資産購入の削減)を加速している米国に限らず、世界的に今やインフレ警戒モードに入っている。日本の物価上昇率は相変わらず低いが、それでもエネルギーはじめ資源価格が高騰するなか、日本だけがインフレと無縁というわけには行かない。 11月の全国消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)は、前年同月比プラス0.5%とエネルギー価格を中心にやや上昇してきた。さらに「Go Toトラベル」が中断していることにより消費者物価が0.3%ポイント強押し上げられる一方で、携帯通信料金の引き下げによって1.5%ポイント弱押し下げられていることを考えると、政策等の要因を除いた消費者物価の実勢は同1.6─1.7%になりそうだ。2%の物価安定目標には届かないものの、日本としてはかなりの上昇率だ。少なくともデフレではない。 さらに2022年2月、3月とエネルギー関連以外でも価格の引き上げが見込まれる。コスト上昇を吸収して販売価格に転嫁しないという日本的企業行動もいよいよ限界にきている可能性がある。4月には携帯電話料金の引き下げ効果が、7─8割程度はく落する。公表ベースでも消費者物価上昇率が2%を超えてきて、世の中ではデフレ脱却ムードが高まるかもしれない』、「4月には携帯電話料金の引き下げ効果が、7─8割程度はく落する。公表ベースでも消費者物価上昇率が2%を超えてきて、世の中ではデフレ脱却ムードが高まるかもしれない」、その場合、長期金利の上昇が懸念材料だ。
・『<デフレより怖いインフレ>  もっとも、デフレ脱却を歓迎するムードは広がらないだろう。今や日銀の懸念は、デフレよりもインフレではないか。今年の賃上げ交渉である程度の賃上げは続くであろうが、消費者物価が2%も上がっていたら、実質所得はまず増えそうもない。 2022年はデフレではなく、インフレが経済に及ぼす悪影響に注意しなければならない。物価上昇は一時的かもしれない。しかし、一時的と思ってのん気に構えていた米連邦準備理事会(FRB)は、今や一時的ではなかったと誤りを認めて、テーパリングの前倒し、さらにその後の利上げを模索している。 地球温暖化防止、長引く米中の対立という環境変化を考えると、これまでのように効率性を追求してコストを抑えるというビジネスモデルを続けることは難しくなっており、脱炭素社会の構築や経済安全保障のためのコスト拡大は、避けられなくなっている。 日本の物価が、米国と同じように上がってくるということはないとしても、1985年のプラザ合意以降続いていた円高の流れも終わり、物価を取り巻く環境がデフレをもたらすものから、インフレをもたらすものに、構造的に変わってきている可能性は否定できない。 少なくとも、所得があまり増えていない日本では、米国よりマイルドなインフレでも経済に与えるダメージが大きくなる。デフレ脱却を推進してきた黒田東彦日銀総裁も、円安が物価上昇を通じて家計所得に及ぼすマイナスの影響については、心配するようになっている』、「物価を取り巻く環境がデフレをもたらすものから、インフレをもたらすものに、構造的に変わってきている可能性は否定できない。 少なくとも、所得があまり増えていない日本では、米国よりマイルドなインフレでも経済に与えるダメージが大きくなる。デフレ脱却を推進してきた黒田東彦日銀総裁も、円安が物価上昇を通じて家計所得に及ぼすマイナスの影響については、心配するようになっている」、なるほど。
・『<見直しが必要となる政府・日銀の共同声明>  2022年はデフレでも円高でもないが、相変わらず日本経済は元気がないという年になるかもしれない。あれだけデフレ脱却が重要と言い聞かせられてきたのに、いざ物価が上がりそうになると「これは悪いインフレです」では、はしごを外されたようなものだ。川上の原材料価格が上がった物価上昇が経済にとってマイナス効果があるのは当然だとしても、そうであれば、何が何でも物価を2%上げることが大事という主張に矛盾があった。 2013年1月の政府・日銀の共同声明もいよいよ10年目に入る。この声明で日銀が約束した2%の物価安定目標はいまだに達成できず、デフレ脱却宣言も出せないままだ。もっとも、共同声明自体は、何が何でも2%の物価目標を達成すればいいという考え方に立っていない。 共同声明には、2%の物価安定目標に関して「日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している」という一文が付されている。 この考え方に立てば、円安や原材料高による物価上昇は、たとえ2%を超える上昇をもたらしたとしても「偽りのデフレ脱却」である。しかし、それでも、2022年は久々の物価上昇に合わせて、デフレ脱却宣言や共同声明の見直しが議論されるようになるのではないか。 *本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載された内容です。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。)(鈴木明彦氏の略歴はリンク先参照)』、確かに「デフレ脱却宣言や共同声明」は「見直す」べきだ。

次に、2月3日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「FRBはゼロ成長下で利上げに着手することになる 経済のオーバーキル懸念が強まり後半は修正か」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/508614
・『金融市場のテーマは依然としてアメリカのFRB(連邦準備制度理事会)の正常化プロセスの現状および展望に集中している。「資産価格の影響はどうあれ、手を緩めることはなさそう」という見方が正しそうだが、本当にこれを貫けるかどうかはいまだ予断を許さない。 1月28日にニューヨーク連邦準備銀行(以下NY連銀)のブログ「Liberty Street Economics」が『The Global Supply Side of Inflationary Pressures』と題した論考を掲載している。ここでは同行エコノミストが開発した定量分析の手法を用いてアメリカ、ユーロ圏そしてOECD加盟国で発生している生産者物価指数(PPI)や消費者物価指数(CPI)の上昇に関し、どの程度が供給制約に起因しているのかが明らかにされている。 分析手法を厳密に解説することは避けるが、結論は「サプライチェーンの崩壊やエネルギー市場動向などにといったグローバルな供給要因が先進国で最近見られる主要物価指数の動向と関わっている」という至極意外性のないものである。 だが、定量分析を通じてインフレ高進が供給制約という国際的な要因に根差していることを理解したうえで、「国内の金融政策ではそうしたインフレ圧力の源泉に対して限定的な効果しかもたらさないだろう(domestic monetary policy actions would have only a limited effect on these sources of inflationary pressures)」と論じていることは興味深い』、「国内の金融政策ではそうしたインフレ圧力の源泉に対して限定的な効果しかもたらさないだろう」、というので拍子抜けだ。
・『金融政策は供給能力に合わせて需要を減らすもの  そもそもサプライチェーン崩壊という「供給」不足に起因する物価高に対して、FRBがやろうとしていることは引き締めを通じて「需要」超過を軽減しようとする行為である。減少した供給量に合わせて需要量も減少させようという縮小均衡の発想なので、当然、景気は減速する。しかし、需要は徐々にしか減らないのでインフレ圧力も徐々にしか後退しない。「患部と処方箋が若干ずれている」というのが今のFRBの金融政策姿勢に対して抱かれる違和感の正体である。 現下で著しくなるアメリカの実体経済の減速に関し、最も重要な地区連銀であるNY連銀からこうした分析が見られていることは興味深い。NY連銀は金融政策に関連する諸取引を管理するシステム公開市場勘定(SOMA)の管理者であり、NY連銀総裁はFOMC(連邦公開市場委員会)の常任メンバーかつ副議長である。 今後、アメリカ経済が失速することはある程度見えた未来でもある。上述のNY連銀ブログと同日28日に公表された2021年10~12月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前期比年率6.9%と非常に高かった。39年ぶりの高成長率だが、これはもはや過去の数字である。 足元の経済・金融情勢の悪化を踏まえ、市場参加者における2022年1~3月期予想は引き下げが進んでおり、アトランタ連銀のリアルタイムGDP予想「GDPNow」は先週28日時点の推計で前期比年率0.1%のほぼゼロ成長と試算している。こうした状況を踏まえて3月にテーパリングが完了し、利上げに着手されるわけで、オーバーキル懸念を企図してイールドカーブのフラットニングが進むのは至極当然といえる。 ちなみに高成長を実現した10~12月期も6.9%のうち4.9%ポイントが在庫投資の寄与であり、モノ不足に対応するための予備的な企業部門の行動を反映していそうである。真っ当に考えれば、2022年1~3月期以降、これが取り崩される公算は大きく、アトランタ連銀推計の示すゼロ成長推計に大きな違和感はない。もっとも、縮小均衡によるインフレ抑制を覚悟しているのならば、こうした景気減速もインフレ抑制のための予定調和の動きではある。 ちなみに、上述したNY連銀ブログの最後には「供給要因はいずれ財の物価よりもサービスの物価に反映されてくる」とあり、そうした影響がラグを伴って顕現化する可能性こそが「われわれの分析における重要な警告(An important caveat of our analysis)」だと記されている。サービス物価とは要するに賃金であり、パウエルFRB議長も会見で繰り返し賃金上昇の危うさを指摘したことが思い返される。 しかし、雇用・賃金情勢は景気の代表的な遅行系列であり、金融政策の効果が半年~1年程度のラグを伴って表れるという標準的な考え方を取るならば、その過熱を見計らって引き締めるとやはりオーバーキルに至りやすいと考えられる』、現在、主要中央銀行は、こうしたラグなどを織り込んで、フォワードルッキングな金融政策運営を謳っているが、まだ願望の段階に止まっており、その成功例はまだ出ていない。
・『秋には政策が逆方向へ旋回するのではないか  そのような懸念もあり、筆者は4回以上の利上げを現時点で当然視する姿勢には賛同できない。最大でも3月・6月・9月の利上げを経て、株価を筆頭とする経済・金融情勢をなだめすかす方向に旋回する公算は大きいと考えている。中間選挙直前ともなれば、インフレ情勢もさることながら、実体経済に寄り添う姿勢が世論の好意的な評価を受けやすくなっている可能性もあるだろう。 なお、現状のタカ派姿勢が長く続かないことについて、市場も理解している節がある。前回の本欄への寄稿『FRBの金融正常化で市場に漂うオーバーキル懸念』でも議論したように、正常化プロセスにとって「最後のテーマ」である中立金利(利上げの終点)の水準イメージをOIS(Overnight Index Swap、固定金利と変動金利翌日物レートを交換するスワップ取引)で見れば1.75%、30年金利で見れば2.20%などが示されており、いずれもドットチャート(FOMCメンバーの予想)の示す2.50%よりも低い。 年内の利上げ回数を増やしたところで最終的に行き着く利上げの終点は変わらないというのが市場の見立てである。「最終的に行き着く水準は同じ」と考えられている事実は、短期的に数多くの利上げを押し込む政策運営は持続性がないと思われている証左でもある。 景気の腰折れ(オーバーキル)を回避するという観点からすれば、供給能力の復調を待ちつつ、今後3年間で年2~3回の利上げを実施するといった姿勢が、物価と成長率の安定を両立させるうえでは無難な選択肢となってくるように思える』、「景気の腰折れ・・・を回避するという観点からすれば、供給能力の復調を待ちつつ、今後3年間で年2~3回の利上げを実施するといった姿勢が、物価と成長率の安定を両立させるうえでは無難な選択肢となってくる」、あくまで「アメリカ」での話であることを念のため付け加えておきたい。

第三に、2月3日付け東洋経済Plus「元日銀審議委員の白井さゆり慶大教授に聞く アメリカの歴史的な金融引き締めで何が起こるか」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29664/?utm_campaign=EDtkprem_2201&utm_source=edTKO&utm_medium=article&utm_content=508697&login=Y&_ga=2.71531539.1051327066.1643071219-441898887.1641535678#tkol-cont
・『FRBの金融引き締めへの大転換はどう進められるのか。元日本銀行審議委員で国際経済に詳しい白井さゆり慶応義塾大学教授に聞いた。 アメリカのインフレと金融政策の行方に世界の関心が集まっている。約40年ぶりの伸びとなったインフレに直面し、米連邦準備制度理事会(FRB)はコロナ危機初期に復活したゼロ金利と大規模量的緩和(QE)を今年3月に終える構えだ。その後の量的引き締め(QT)開始も視野に入れている。 FRBの金融引き締めへの大転換はどう進められるのか。世界の市場や日欧の金融政策にどのような影響を与えるのか。元日本銀行審議委員で国際経済に詳しい白井さゆり慶応義塾大学教授に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは白井氏の回答)』、興味深そうだ。
・『賃金と物価のスパイラルが発生  Q:FRBがタカ派的(金融引き締めに前向き)な姿勢を強めています。 A:FRBのインフレに対する見方がガラッと変わったのは2021年11月下旬だった。テーパリング(量的緩和の規模縮小)を開始した11月初めのFOMC(連邦公開市場委員会)開催の時点では、パウエルFRB議長はインフレを「一時的」だと言っていた。 ところが、11月下旬にパウエル氏が再任され、バイデン大統領と会見を行ったときから、インフレが重大な懸念だと強調するようになった。おそらく大統領からパウエル氏に対し、インフレに対する懸念が伝えられたのではないか。インフレは大統領支持率低下の主因になっているからだ。それもあって12月のFOMCでテーパリングを加速して2022年3月に終えることを決めた。 Q:アメリカのインフレは実際にも歴史的高水準となっています。 A:インフレ圧力はほかの先進国と比べてはるかに強い。直近の消費者物価指数は前年同月比7%、(食品とエネルギーを除く)コアで5.5%上がっているが、インフレ基調を示すあらゆる指標が上昇している。 インフレ期待も5年、10年といった長期ですべて上がっている。市場の期待インフレ率を示す10年のブレークイーブンインフレ率(BEI)も最近は2.5%程度と、2%程度だったここ5年間より一段上の水準にある。 もう1つ注目されているのが労働需給の逼迫による賃金上昇だ。 Q:平均時給は前年同月比で5%近く上昇しています。 A:高インフレで実質賃金が低下しているため国民の不満は大きいが、人手不足で賃金が上がり、そのコストを販売価格に転嫁するという「賃金と物価のスパイラル」が起きつつある。先進国ではアメリカだけだ。労働市場のタイト感が非常に強い。金融政策の正常化を急ぐ必要があるのは事実で、インフレ重視の方向に転換せざるをえない。 Q:1月26日のFOMCでは3月半ばの次回FOMCでの利上げ開始決定が強く示唆されました。 A:ただ、パウエル氏は利上げの回数やペースに関する具体的言及は避け、“humble and nimble”(慎重かつ機敏)に対応していくと言った。これはインフレの両方向の動きに対応するということだ。 Q:といいますと。 A:アメリカのインフレの背景には、世界的なコロナ禍によるサプライチェーン毀損の影響に加え、コロナ禍でのパソコンやゲーム、家具といったモノ(財)への需要増大、エネルギー価格の高騰といった要因がある。そのため、インフレはいずれ必ず下がっていくが、いつどの程度までかというと不確実性が高い。 FRBとしては、インフレが年末にかけ目標の2%近くまで下がっていけばそれほど利上げしない。それが“humble”。一方、インフレが2%を大きく超えて高止まりすれば利上げを加速する。それが“nimble”という意味だ。 「毎回のFOMCでの連続利上げ(年7回)はあるか」という記者の質問に対し、パウエル氏が明確に否定しなかったので非常にタカ派と受け止められたが、議長の発言自体は両方の可能性を考えたものだった』、「パウエル氏が再任され、バイデン大統領と会見を行ったときから、インフレが重大な懸念だと強調するようになった。おそらく大統領からパウエル氏に対し、インフレに対する懸念が伝えられたのではないか」、「パウエル氏」がインフレに対抗する姿勢が弱いのには、失望させられた。
・『QTは早ければ5~6月開始も  Q:利上げは今年何回程度が予想されますか。 A:市場は年内5回(計1.25%)の利上げを織り込みつつあるが、私は4回実施され、あとはインフレ動向次第でもう1回程度増やすと見ている。今年前半に一度に0.5%の利上げを行う可能性もある。コンテナ船の滞留などの供給制約が今なお続いている状況を見ると、インフレ率が年内に2%台まで下がるのは難しいかもしれない。 Q:FRBは利上げ開始後に、バランスシート(総資産)を縮小するQTにも着手する構えです。(白井さゆり氏の略歴はリンク先参照) A:QTの開始時期やペースについてパウエル氏は今後2回程度のFOMCで議論すると言っており、早ければ5月か6月にもありうる。 利上げは短期金利を引き上げるものだが、QTはFRBの保有資産の減額を通じて長期金利の引き上げにつながる。現在は過去の利上げ局面に比べてイールドカーブがフラット(平坦)化しており、さらにフラット化すれば金融機関にとっては苦しい状況になる。大幅なフラット化を防ぐためには、FRBは利上げ後にQTを急ぐ必要がある。 一方、QTには利上げの引き締め効果を一段と強める働きがある。「シャドーレート(影のFFレート)」と言われるように、FFレートがゼロでも、量的緩和によって実質的なFFレートはマイナスの領域(今回はマイナス2%程度)まで低下した。QTはそれと逆で、シャドーレートが上がっていく。それだけ景気を下押しする影響は大きくなる。 Q:前回の引き締め局面では利上げを2015年12月に開始し、QTは2017年10月に開始と長い時間をかけましたが、今回は急です。 A:前回の利上げ開始時のインフレ率は2%未満で、失業率は5%程度だった。インフレ圧力が弱かったので、引き締めを急ぐ必要がなかった。 しかし、パウエル氏も話していたように、今回は状況がまったく違う。引き締めを急ぐ必要があるので、市場に及ぼす影響は大きい。パウエル氏は今のFRBの資産規模(約9兆ドル)は非常に大きいので、相当減らす必要があると言った。ただ、あくまでFFレートが主要な政策調整手段だと言い、QTの具体的な規模や引き締め効果についてはいっさい語らなかった。話を複雑にして市場が混乱するのを避けようとしたのだろう。 Q:QTの基本方針では、FRBは保有債券の売却ではなく、主に元本償還分の再投資額を減らすこと(ロールオフ)を通じて行うとしています。 A:前回のQTのときと違い、FRBの保有債券には満期の比較的短いものが多いので、資産を減らそうと思えばかなり早く減らせる。また、前回はすべてロールオフによる減額だったが、今回は「主に」ロールオフと言っている。資産規模が巨大なので、場合によっては売却を通じた減額もありうる。 いずれにせよ、前回は毎月500億ドル程度の減額ペースだったが、今回はそれより減額幅を大きく増やすことになるだろう。増やすにしても、最初は市場への影響を考えて少なめにし、徐々に増やしていくのか。それによって長期金利など市場への影響も変わるため、大きな注目点となる』、「主に元本償還分の再投資額を減らすこと(ロールオフ)を通じて行うとしています・・・前回のQTのときと違い、FRBの保有債券には満期の比較的短いものが多いので、資産を減らそうと思えばかなり早く減らせる」、「前回は毎月500億ドル程度の減額ペースだったが、今回はそれより減額幅を大きく増やすことになるだろう」、なるほど。
・『流動性の逆転で資産バブル修正へ  Q:FRBはインフレに対して「ビハインド・ザ・カーブ(後手に回っている)」という批判もあります。 A:今のインフレは国内の要因よりも、サプライチェーン混乱などの国際的な要因のほうが大きいので、FRBが「一時的」と言っていたのは理解できる。アメリカ国内の需給ギャップも依然マイナスだ。ただ、思った以上に状況が改善しないので、FRBは慌てて考え方を変えた。 このことは、今のインフレがいかにわかりにくく予測しにくいものであるかを示しており、あまりFRBを責められないのではないか。 Q:この先、FRBは景気後退や市場の大混乱を避けながら金融政策の正常化を進めていくことができるでしょうか。 A:各国が未曾有のコロナ危機に直面し、金融財政政策を思い切ってやったことは正しかったと思う。ただ、その規模は莫大だった。特にアメリカの場合、中央銀行のバランスシート拡大(4.2兆ドルから2倍強の約9兆ドルへ)のほとんどが資産買い入れによるものだった。 その結果、大量の流動性が供給され、あらゆるリスク資産が値上がりした。ただでさえ高い不動産価格がさらに上昇し、ハイイールド債や暗号資産(仮想通貨)も上がった。本来なら逆に動くものも連動して一緒に動いた。 今後、そうした大量の流動性がQTで減っていけば、影響は避けられない。どれだけ円滑にやっていくかが課題だが、かなりの難路となろう』、「中央銀行のバランスシート拡大・・・のほとんどが資産買い入れによるものだった。 その結果、大量の流動性が供給され、あらゆるリスク資産が値上がりした。ただでさえ高い不動産価格がさらに上昇し、ハイイールド債や暗号資産(仮想通貨)も上がった。本来なら逆に動くものも連動して一緒に動いた。 今後、そうした大量の流動性がQTで減っていけば、影響は避けられない。どれだけ円滑にやっていくかが課題だが、かなりの難路となろう」、今後「リスク資産」の「値下がり」はどこまでいくのか、確かに注目点だ。
・『長期金利高騰なら景気や市場への打撃大  Q:リスクシナリオをどう考えますか。 A:最大のリスクはインフレが高止まりし、11月の中間選挙に向けてアメリカ国民の不満が高まって、FRBが想定以上の急激な引き締めに追い込まれることだ。金融市場の安定よりもインフレの抑制のほうが重要との見方が高まりつつあるため、株式などの市場はショックを受けやすくなっている。そのショックが世界全体に波及するというのが最悪シナリオだ。 長期金利が高騰すれば、アメリカ景気を牽引してきた好調な住宅市場が崩れ、資産価値下落で個人消費にも打撃が大きい。足元のアメリカの長期金利(10年物国債利回り)は1.8%前後で、インフレ収束期待や景気の不確実性からさほど上がっていないが、もし2018年のように3%を超えてくれば影響は大きくなるだろう。 Q:これまでのアメリカの資産インフレは「バブル」と言えますか。 A:バブルは発生している。普通の人の手が届かない不動産価格になっているのは事実だし、株価もコロナ禍前から歴史的に高すぎる水準にあった。とくに一部のテック系成長株は非常に高くなっていたので、反動があっても仕方がない。今後は業績などで銘柄をしっかり選別する必要がある。 Q:ビットコインなどの仮想通貨はどう見ていますか。 A:仮想通貨を通じたイノベーションに関心が高まっているのは事実であり、世界的に一定の需要はあり続けるだろう。ただ、価格の変動が非常に激しく、株価との相関が非常に強まっている。株と同様に下落しやすくなったという意味で気をつけたほうがいい。 Q:アメリカの利上げに伴い、ドル建ての対外債務を抱える発展途上国や新興国などへの影響も懸念されます。 A:世界的に国家の借金が増え、企業もコロナ下で運転資金のための借り入れを増やしており、債務は全体的に増大している。アメリカの金利上昇につれ、世界の資本はアメリカに回帰するため、途上国や新興国では外国資本が入りにくくなって金利が上昇している。経常赤字の国ほど影響を受けやすい。一部の低所得国では債務の返済が難しくなるだろう。 問題はアメリカの金利がどこまで上がるかだが、過去ほどには上がらないはずだ。リーマンショック前のFF金利は5%以上だったが、FRBがいま予想している長期的なFF金利は2.5%だ。経済が成熟化し、高齢化するにつれ、(景気に中立的な)自然利子率が低下傾向にあるためで、それほど利上げをしなくても済む状況にある。 そのため、過去にはアメリカが利上げしたことでアジア通貨危機や中南米の債務危機などが起こったが、今回はそこまでの金利の上昇はないだろう。その意味では比較的安心できる。 Q:今回のアメリカの金融政策の歴史的意味をどう考えますか。 A:コロナ禍での財政出動は近代史ではかつてない規模だが、金融緩和もはるかに大規模で迅速なものだった。しかし、今年はそれほど財政出動ができないし、記録的なインフレで金融緩和も予想以上の速さで修正する必要が高まっている。本当に歴史に残る状況だ。 ただ、アメリカは日欧に先んじて金融政策の正常化に舵を切ることができたことも事実だ。市場がFRBのタカ派的スタンスを織り込んだことで、今後の政策運営がやりやすくなった面もある。市場の想定以上に政策がうまくいき、あまり利上げをしないですめば、グッドサプライズとなるだろう』、「FRBがいま予想している長期的なFF金利は2.5%だ。経済が成熟化し、高齢化するにつれ、・・・自然利子率が低下傾向にあるためで、それほど利上げをしなくても済む状況にある。 そのため、過去にはアメリカが利上げしたことでアジア通貨危機や中南米の債務危機などが起こったが、今回はそこまでの金利の上昇はないだろう。その意味では比較的安心できる」、韓国も安心できるようだ。
・『イギリスは追加利上げと早期QTへ  Q:欧州や日本の金融政策に与える影響はどう見ていますか。 A:ECB(欧州中央銀行)は2月3日に理事会を開く。利上げ(マイナス金利政策の修正)は見込まれないが、最近はトーンを変えてきており、昨年12月の理事会ではPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)を今年3月で終了することを決定した。ユーロ圏における足元の高いインフレ率についても「一時的」という言葉を使わなくなっている。 ただ、ECBは2022年末にはインフレ率が目標の2%を下回るとの見方を維持している。2021年12月のインフレ率は5%に達したが、コアでは2.6%とアメリカより大幅に低いうえ、ドイツが2020年に引き下げた付加価値税率を翌年に元へ戻した一時的影響が大きいためだ。景気の基調も強くない。 そのため、ECBはおそらく2022年に利上げはしないが、インフレ次第では年末ぐらいに対応を急ぐ可能性はある。3日の理事会でインフレにどう言及するかが注目される。 2月3日にはイングランド銀行も金融政策委員会を開く。2021年12月に(日米欧の主要中銀で初めて)利上げを行ったが、インフレを警戒して追加利上げが予想される。政策金利が0.5%になれば、ロールオフをすると言っており、アメリカより早く3月にもQTを開始する可能性が高い。 Q:日本でもエネルギー価格の上昇など物価上昇圧力は高まっていますが、日銀に何らかの動きがありうるでしょうか。 A:年内利上げという噂が1月にあったが、それはありえない。確かに、携帯通信料の値下げの影響がなくなる春以降はインフレ率が一時的に2%を超える可能性はある。ただ、コモディティー価格の上昇要因を含めて年後半には再び低下していくと予想される。 一方、今年は貸出支援基金やコロナオペが前半に終わり、社債やCP(コマーシャルペーパー)の保有も減らすので、日銀のバランスシートは確実に縮小していく。それは、「インフレ率の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大を続ける」という2016年からのフォワードガイダンス(FG)を非常にわかりにくいものにする。IMF(国際通貨基金)はそのFGを撤廃すべきだと勧告している』、「FG」が今や政策の邪魔になりつつあるのであれば、「IMF」の「勧告」通り、「撤廃」すべきだ。
・『引き締めではなく市場機能を強化すべき また、アメリカの金利上昇につれて、日本の長期金利も上がりやすくなっている。であれば、YCC(イールドカーブコントロール)でプラスマイナス0.25%に設定している10年国債金利の変動幅を0.3%程度に上げるのに最もいい時期だと思う。 それは利上げではなく、変動幅を拡大して市場の機能を高めることになる。長期金利の操作対象年限を10年から5年に短縮するという案は明らかな引き締めであり、黒田(東彦)総裁が採用することはないと思うが、採りうるのはYCCの柔軟性を高めることだろう』、「YCCで「プラスマイナス0.25%に設定している10年国債金利の変動幅を0.3%程度に上げるのに最もいい時期だと思う」、「市場機能を強化すべき」、同感である。
タグ:「CP・社債の買い入れや新型コロナ対応オペの利用が縮小」する程度では、正常化には程遠い。 (その39)(2022年の視点:コロナ後の懸念はデフレよりインフレ 政府・日銀にやっかいな課題=鈴木明彦氏、FRBはゼロ成長下で利上げに着手することになる 経済のオーバーキル懸念が強まり後半は修正か、元日銀審議委員の白井さゆり慶大教授に聞く アメリカの歴史的な金融引き締めで何が起こるか) 異次元緩和政策 コロナの方は第六波到来で「新たな日常」とは程遠いが、金融政策の方はどうなのだろう。 洋経済オンライン 確かに「デフレ脱却宣言や共同声明」は「見直す」べきだ。 「物価を取り巻く環境がデフレをもたらすものから、インフレをもたらすものに、構造的に変わってきている可能性は否定できない。 少なくとも、所得があまり増えていない日本では、米国よりマイルドなインフレでも経済に与えるダメージが大きくなる。デフレ脱却を推進してきた黒田東彦日銀総裁も、円安が物価上昇を通じて家計所得に及ぼすマイナスの影響については、心配するようになっている」、なるほど。 「4月には携帯電話料金の引き下げ効果が、7─8割程度はく落する。公表ベースでも消費者物価上昇率が2%を超えてきて、世の中ではデフレ脱却ムードが高まるかもしれない」、その場合、長期金利の上昇が懸念材料だ。 鈴木明彦氏による「2022年の視点:コロナ後の懸念はデフレよりインフレ、政府・日銀にやっかいな課題=鈴木明彦氏」 ロイター 唐鎌 大輔氏による「FRBはゼロ成長下で利上げに着手することになる 経済のオーバーキル懸念が強まり後半は修正か」 「国内の金融政策ではそうしたインフレ圧力の源泉に対して限定的な効果しかもたらさないだろう」、というので拍子抜けだ。 現在、主要中央銀行は、こうしたラグなどを織り込んで、フォワードルッキングな金融政策運営を謳っているが、その成功例はまだ出ていない。 現在、主要中央銀行は、こうしたラグなどを織り込んで、フォワードルッキングな金融政策運営を謳っているが、まだ願望の段階に止まっており、その成功例はまだ出ていない。 「景気の腰折れ・・・を回避するという観点からすれば、供給能力の復調を待ちつつ、今後3年間で年2~3回の利上げを実施するといった姿勢が、物価と成長率の安定を両立させるうえでは無難な選択肢となってくる」、あくまで「アメリカ」での話であることを念のため付け加えておきたい。 東洋経済Plus「元日銀審議委員の白井さゆり慶大教授に聞く アメリカの歴史的な金融引き締めで何が起こるか」 「パウエル氏が再任され、バイデン大統領と会見を行ったときから、インフレが重大な懸念だと強調するようになった。おそらく大統領からパウエル氏に対し、インフレに対する懸念が伝えられたのではないか」、「パウエル氏」がインフレに対抗する姿勢が弱いのには、失望させられた。 「主に元本償還分の再投資額を減らすこと(ロールオフ)を通じて行うとしています・・・前回のQTのときと違い、FRBの保有債券には満期の比較的短いものが多いので、資産を減らそうと思えばかなり早く減らせる」、「前回は毎月500億ドル程度の減額ペースだったが、今回はそれより減額幅を大きく増やすことになるだろう」、なるほど。 「中央銀行のバランスシート拡大・・・のほとんどが資産買い入れによるものだった。 その結果、大量の流動性が供給され、あらゆるリスク資産が値上がりした。ただでさえ高い不動産価格がさらに上昇し、ハイイールド債や暗号資産(仮想通貨)も上がった。本来なら逆に動くものも連動して一緒に動いた。 今後、そうした大量の流動性がQTで減っていけば、影響は避けられない。どれだけ円滑にやっていくかが課題だが、かなりの難路となろう」、今後「リスク資産」の「値下がり」はどこまでいくのか、確かに注目点だ。 「FRBがいま予想している長期的なFF金利は2.5%だ。経済が成熟化し、高齢化するにつれ、・・・自然利子率が低下傾向にあるためで、それほど利上げをしなくても済む状況にある。 そのため、過去にはアメリカが利上げしたことでアジア通貨危機や中南米の債務危機などが起こったが、今回はそこまでの金利の上昇はないだろう。その意味では比較的安心できる」、韓国も安心できるようだ。 「FG」が今や政策の邪魔になりつつあるのであれば、「IMF」の「勧告」通り、「撤廃」すべきだ。 「YCCで「プラスマイナス0.25%に設定している10年国債金利の変動幅を0.3%程度に上げるのに最もいい時期だと思う」、「市場機能を強化すべき」、同感である。
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政府財政問題(その6)(このまま行けば日本の財政破綻は避けられない 「MMT理論」「自国通貨持つ国は安心」は大間違い、日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か) [経済政策]

政府財政問題については、昨年11月25日に取上げた。今日は、(その6)(このまま行けば日本の財政破綻は避けられない 「MMT理論」「自国通貨持つ国は安心」は大間違い、日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か)である。

先ずは、11月28日付け東洋経済オンラインが掲載した財務省出身で慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績 氏による「このまま行けば日本の財政破綻は避けられない 「MMT理論」「自国通貨持つ国は安心」は大間違い」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/471734
・『今回は「財政破綻は日本では起きない」という主張は、完全に誤りであることを説明しよう。 10月16日配信のコラム「『このままでは国家財政破綻』論は1%だけ間違いだ」では、「日銀が国債を買えば大丈夫だ」「国全体のバランスシートは問題ない」」「MMT(現代貨幣理論)は有効だ」「インフレが起きてないから大丈夫」などと完全に誤った主張をする、エコノミスト、有識者たち、いや有害な言説を撒き散らす人々を論破することが、唯一の日本を救う道だと書いた。今回は、その仕事に取りかかりたい』、「小幡」氏は数少ない論争型の学者で、興味深そうだ。
・『「国全体では貯蓄があるから大丈夫」は大間違い  この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら まず「日本全体では対外債権があり、国全体では貯蓄があるから、日本が破綻することは絶対にない」というのは、単純な誤りだ。なぜなら、国全体でお金があっても、政府が倒産するからである。 これは、企業の例を考えてみれば、すぐにわかる。「日本全体で金余りだ」「銀行は貸す先がない」、と言われていても、資金繰り倒産する企業は必ずある。それは、金が余っていても、その企業には貸さないからだ。なぜ、貸さないかといえば、返ってくる見込みがないからである。 借金を積み上げ、一度も借金を減らしたことのない政府、そして、毎年の赤字額は年々増えていく。毎年新しく借り入れる額が増えていく政府。貸しても返ってこない、と考えるのが普通で、誰も貸さなくなるだろう。つまり、政府が借金をしたいと、新しく国債を発行しても、それを買う人がいなくなるのである。銀行も投資家も金はあるが、買わないのである。 それは、地方政府と違って、日本政府には日本銀行がついており、日本銀行が買うから問題ない、ということらしい。これこそ誤りだ。 「日銀が国債を買い続けるから問題ない」という議論は、100%間違っているのである。なぜなら、日銀が国債を買い続けることは、現実にはできないからである。 なぜ日銀が国債を買い続けることは難しいのか? また「自国通貨建ての国は、理論的に絶対財政破綻しない」という議論は、元日銀の著名エコノミストですら書いているが、それは、机上の理屈であり、現実には実現不可能なシナリオである。それは、日本銀行が国債を引き受け続けるとインフレになるからではない。その場合は、インフレまで時間稼ぎができるが、インフレになる前に、即時に財政破綻してしまうからである。 日本銀行は、すでに発行されている国債を、市場で買うことはできる。だから、理論的には、日本国内に存在するすべての国債を買い尽くすことはできる。しかし、財政破綻回避のために買う必要があるのは、既存の国債ではない。新発債、つまり、日本政府が借金をするために新たに発行する国債である。そして、これを日本銀行が直接買うこと、直接引き受けは、法律で禁止されている。だからできない。 これを回避する方法は2つである。 1つは、民間金融機関に買わせて、それを日本銀行が市場で買うことである。これは、現在すでに行われている。民間主体から見れば、いわゆる「日銀トレード」で、日銀が確実に買ってくれるから、政府から新規に発行された国債を引き受け、それに利ざやを乗せて、日銀に売りつけるのである。 この結果、日本国債のほぼ半分は日銀が保有することになってしまった。 問題は、これがいつまで継続できるか、ということである。日銀は、継続性、持続性が危ういとみて、イールドカーブコントロールという前代未聞の、中央銀行としてはもっともやりたくない金融政策手段に踏み切り、国債の買い入れ量を減少させることに成功した。 逆に言えば、これ以上買うことの困難は現実に始まっており、無限に市場経由で、日銀に引き受けさせることはできないのである。それでも、政府が国債を発行し続けたらどうなるか。民間金融機関は、これを引き受けるのを躊躇し、少なくとも一時的には中止するだろう。 このとき、政府がどうするかが問題である。政府の道は2つである。1つは、危機をようやく認識し、国債発行を減らすことを決意し、遅まきながら財政再建に取り組む、という道である。しかし、これまでの政府の財政再建の取り組みからして、この道はとらない可能性が高い。 そうなると、もう1つの道しかなく、日銀に直接引き受けをさせるように、法律改正をすることになる。理論的に日本では財政破綻は起きないと主張している人々は、この手段があるから、自国通貨建ての国債を発行している限り、財政破綻しないと言っているのである』、「日銀」が「国債」を「これ以上買うことの困難は現実に始まっており、無限に市場経由で、日銀に引き受けさせることはできない」、「それでも、政府が国債を発行し続けたらどうなるか。民間金融機関は、これを引き受けるのを躊躇し、少なくとも一時的には中止するだろう。 このとき、政府がどうするかが問題である。政府の道は2つである。1つは、危機をようやく認識し、国債発行を減らすことを決意し、遅まきながら財政再建に取り組む、という道である。しかし、これまでの政府の財政再建の取り組みからして、この道はとらない可能性が高い。 そうなると、もう1つの道しかなく、日銀に直接引き受けをさせるように、法律改正をする」、なるほど。
・『直接引き受けの話が出れば「日本は秒殺」される  残念ながら、この手段は現実には不可能である。 なぜなら「中央銀行に国債を直接引き受けさせる」という法律を成立させれば、いや国会に提出されたら、いや、それを政府が自ら検討している、と報じられた時点で、政府財政よりも先に、日本が破綻するからである。 日銀、国債直接引き受けへ、という報道が出た瞬間、世界中のトレーダーが日本売りを仕掛け、世界中の投資家もそれに追随して投げ売りをする。 まず、円が大暴落し、その結果、円建ての国債も投げ売りされ、円建ての日本株も投げ売られる。混乱が収まった後には、株だけは少し買い戻されるだろうが、当初は大暴落する。 つまり、為替主導の、円安、債券安、株安のトリプル安であり、生易しいトリプル安ではなく、1998年の金融危機ですら比較にならないぐらいの大暴落である。1997年から1998年の1年間で、1ドル=112円から147円まで暴落したが、「日銀直接引き受け報道」が出て、政府が放置すれば、その時のドル円が110円程度であれば、1週間以内に150円を割る大暴落となり、状況によっては、200円を突破する可能性もある。 ただし、これも現実には起きない。なぜなら、日銀国債直接引き受け報道が出れば、直ちに為替取引も債券取引も株式取引もまったく成り立たなくなり、金融市場は全面取引停止に追い込まれるからだ。 メディアも政治家も、やっと大騒ぎを始め、日銀の直接引き受け報道を政府は否定することになるからだ。しかし、否定しても、いったん火のついた疑念は燃え盛り、取引は再開できないか、再開すれば、さらなる暴落となる。よって、これを収めるには、日銀直接引き受けなど絶対にありえない、という政府の強力で具体的な行動が必要となる。実質的で実効的でかつ大規模な財政再建策とその強い意志を示さざるを得ないだろう。こうなって初めて、暴落は止まる。 つまり、禁じ手といわれている、日銀の直接引き受けは、タブーを犯せば理論的には可能だ。だが現実にはタブーを犯した政府と中央銀行は国際金融市場に打ちのめされるため、結局、禁じ手はやはり禁じ手のままとなる。「自国通貨建ての政府債務なら、いくらでも借金できる」というのは幻想で、為替取引が国際的に行われている限り、それは、自国通貨建てであろうとも、金融市場から攻撃を受ける。 そして、為替の暴落を許容しても、結局国債が暴落してしまい、借金はできなくなり、すべてを日銀に依存することになる、同時に、株式も短期的には大暴落となるから、政治的に持ちようがなく、政権は株式市場により転覆されるだろう。その結果、その政権あるいは次の政権は、財政再建をせざるを得ず、日銀引き受けは結局実現することはない。 日銀直接引き受けがあり得ない、となれば「財政破綻はしない」という論者の議論はほぼすべて破綻する。だから、これ以上議論することもないが、この際、すべての点において彼らを打ちのめしておこう。 まず、政府と日銀を一体で考える、連結政府という議論は、前述したように無意味だ。連結政府という考えで借金しようとすれば、即金融市場暴落だから、一体で考えることは、打ち出の小槌どころか、反対に地獄への道である。 その次に、借金という負債と対になる資産も考えろというバランスシート議論も無意味だ。日本は負債も多いが資産も多いので大丈夫というのは、現実的には、まったく間違いである。 政府が不足しているのは現金である。キャッシュがなければ、国民にも配れないし、公共事業もできないし、国民の医療費の肩代わりもできない。資産があっても現金がなければ、政府の資金調達には使えないので、現金資産あるいはすぐに現金化できる資産しか意味がない。 したがって、特別会計の剰余金は使えるが、それ以外はほとんど使えないのである。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の厚生年金の積立金の運用資産の株式、債券などを売却すれば、確かに100兆円以上現金は入ってくる。 だが、たとえその資産が200兆円で売れたとしても、1000兆円を超える負債を相殺するには遠く及ばないし、もちろん、将来の年金支払い原資が不足するから、将来200兆円不足額が増えるだけのことである さらに、道路や森林などは問題外である。買い手がいない。道路に価値があっても、買う人がいなければ売却はできない。価値があっても価格がつかないというのは、金融市場でなくとも普通のことである。高速道路だけでなくすべての道路に課金すれば、というような議論は意味がない。なぜなら、消費税も政治的に上げられない政府が、すべての道路に課金するなどということを実行するはずはないからだ。万が一、それをするとすれば、財政破綻後であろう。 こう追い詰められれば「財政破綻あり得ない派」の論者たちは、今度は「そもそも借金を返す必要などない。個人や企業と違って、国は返さなくていいんだ」と言うだろう。それならば、バランスシートで考えること自体に意味がない。バランスシートで考えろという議論はそもそも無意味なのである。 前述した金融市場による財政破綻のプロセスで見たように、財政破綻が起こるかどうかは、政府がそのとき必要な現金を調達できるかどうかにかかっているのであって、バランスシートも借金残高も直接は関係ないのである。 しかし、現金化できる資産をすべて売りさばいても、せいぜい1年ちょっとで、2年も持たないだろう。なぜなら、新しい国債が発行できなければ、借り換えもできない。現在、日本政府は、毎年借り換えも含めて国債を170兆円以上新規発行しており、今後は200兆円を超えてくると思われるので、現金化できる資産をすべて売り払っても1年しか持たず、2年は無理なのである』、「現金化できる資産をすべて売り払っても1年しか持たず、2年は無理なのである」、意外に額は少ないようだ。
・『借金残高が大きいとどうなる?  では、借金残高の大きさはまったく関係ないのか?500兆円でも1200兆円でも関係ないのか? 借金の大きさには、2つの大きな影響がある。まず第1に、借金残高が大きいと「こいつ返せるのか、返す気あるのか」という疑念を持たれ、新たに貸してもらえなくなる。その意味では、GDP比で250%でも財政破綻しないのだから、300%でも400%でも大丈夫、60%程度で破綻したギリシャなどとは日本は根本的に違う、という議論は間違いだ。 つまり、日本がこれまで破綻しなかったのは、政府に金を貸してくれる人がいたからで、いまやそれが日銀しかいなくなりつつある、というのが問題であり、250%で破綻しないことは、今後破綻しないことを意味しない。何より、日銀に半分を買わせないといけないという現実は、まもなく破綻することを示している。 第2に、破綻した後の再生の困難さに大きく影響する。日本にとってはこれが最大の問題だ。 ギリシャと違って「自国通貨建てで、国内で借金をしているから大丈夫だ」というのは、厳しい国際金融市場ではない、馴れ合いのそして政府の影響力のある金融機関それと中央銀行が保有しているから、破綻がすぐには起こりにくい、という意味では正しい。 だが、それは逆に言えば、市場が鈍感であり、鈍感な投資家が保有している(鈍感に振舞うことを強制されているとも言えるが)ことを示しているのであり、破綻危機が近づいても、金利が上昇しない(国債価格が下落しない)という市場の警告機能がマヒしていることを意味する。だから、日本政府の破綻は突然起こるのである。 そして、破綻後、政府の財政再建が非常に困難になる。国内の資金は使いつくしている。個人の金融資産は銀行に預けられ、地域金融機関やあるいは半公的な金融機関、ゆうちょ銀行などに預けられている多くの部分は国債になっているから、返ってこない。国民の金融資産の実質価値は激減してしまうのであり、国債の返済は先送り(リスケ)されていつかは返済されるとしても、長期にわたり、インフレ分は目減りするし、何より、すでに老後を迎えている多くの国民は貯金が今必要なのに使えなくなってしまう。 開き直って、財政破綻、デフォルトした場合、過去の借金は水に流してもらって再建するのが政府破綻の場合が多い(実質ベースで半分程度返済される、つまり半分は棒引き)』、「破綻危機が近づいても、金利が上昇しない(国債価格が下落しない)という市場の警告機能がマヒしていることを意味する。だから、日本政府の破綻は突然起こる」、「国民の金融資産の実質価値は激減してしまう」、「財政破綻、デフォルトした場合、過去の借金は水に流してもらって再建するのが政府破綻の場合が多い(実質ベースで半分程度返済される、つまり半分は棒引き」、恐ろしいことだ。
・『国内保有が多いほど、破綻したら大変な事態に  この場合、海外投資家が保有していれば、破綻の負担は海外に転嫁できるが、国内保有の場合は、すべて国内で負担しなければならない。つまり、夜逃げすらできないのである。自分の処理はすべて自分でしなければならないのである。これが、国債が国内保有だから大丈夫、という議論の最大のウソである。 むしろ、国内保有だからこそ、破綻したら本当に終わりであり、再起がほぼ不能になってしまうのである。そして、その額が莫大であれば、1200兆円であれば、1200兆円の負担を国内で負うことになり、2000兆円になってから破綻すれば、そのときの日本国民が2000兆円負担することになるのである。 だから、政府の借金の大きさは致命的に重要なのであり、ほぼ国内から借金をしていることは、日本政府の財政破綻リスクにおいて、もっとも致命的なリスクなのである。 MMT理論の誤り、インフレにならないことの誤り、これについては長くなったので、次回にしよう(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「海外投資家が保有していれば、破綻の負担は海外に転嫁できるが、国内保有の場合は、すべて国内で負担しなければならない」、これが「国債が国内保有だから大丈夫、という議論の最大のウソ」、なるほど。

次に、この続き、12月14日付け東洋経済オンライン「日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/473925
・『「MMT(現代貨幣理論)」が、いまだに日本では言及されているようだ。 改めてひとことで言えば、これは「独自通貨を持つ国であれば、債務返済のための通貨発行に制約を受けないため、いくら借金をしても財政破綻は起きない」という理論である。 だが、結論から言えば、これは理論的に誤りであるうえに、現実に採用されれば、経済を破壊する「最も害悪の大きな理論」になる。以下、理由を説明しよう』、「現実に採用されれば、経済を破壊する「最も害悪の大きな理論」になる」、恐ろしいことだ。
・『MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは?  理論的には、以下の4つの大きな誤りがある。 第1に、価格メカニズムをまったく無視している。  第2に、リスクという概念が存在していない。  第3に、その結果、金融市場をまったく無視している。  第4に、その結果、マネー自体を無視している。 つまり、現代貨幣理論とは「現代ではマネーを無視していいのだ」という理論である。 だから、貨幣理論なのに財政がすべてを決めるのである。その結果出てくる政策提言は、インフレ水準がターゲットよりも低ければ、財政支出をとことん行い、インフレがターゲットを超えたらとことん財政支出を縮小し、とことん増税する、というものとなる。 これは、誰が見ても、経済を破壊する理論であり、政策であることがわかる。しかし、MMT論者はそれが理解できないようなので、現実の大きな問題点も指摘しよう。 現実の政策としては、3つの害悪がある。 第1に、財政支出の中身がどうであっても、気にしない。  第2に、金融市場が大混乱しても、気にしない。  第3に、インフレが起きにくい経済においては、その破壊的被害を極限まで大きくする。 理論と現実の政策としての問題点の説明は、現実的に日本経済が破壊されることを何よりも防止するために、政策の害悪を先に説明しよう。 日本においてはとりわけ、2013年、2014年と需給ギャップが解消されてもインフレが起きず、インフレ率は景気の指標としても有効でないことが示されているから、日本こそ、MMTをいちばんやってはいけない国なのである。これは第3の点のところで詳しく議論しよう』、「インフレ水準がターゲットよりも低ければ、財政支出をとことん行い、インフレがターゲットを超えたらとことん財政支出を縮小し、とことん増税する、というものとなる。 これは、誰が見ても、経済を破壊する理論であり、政策」、その通りだ。
・『政府が大規模な財政支出を続ければどうなるのか?  第2の害悪として挙げた「金融市場がどうなってもよい」という考え方は、財政支出の適切な規模をMMTでは判断できないこと以上に、経済を壊滅的に破壊する可能性がある。 例えば「財政出動をとことん行って金利が大幅に上昇しても、インフレがターゲットを超えない限り、財政支出を続ける」ということが起こりうる。これは、大規模な財政支出により、民間投資が大幅に縮小する、という典型的なクラウディングアウト(英語の元は「押し出す」の意味)を起こすということである。その結果、民間経済の活力、経済成長力は大幅に低下し、経済は長期的な大不況に陥ることになる。 これに対する彼らの反応は「理論的にはそのとおりだが、現在、世界経済は低金利で困っている。とりわけ日本はその最たるものだ。したがって、金利が上がらない現代でそのような心配をするのは杞憂だ」というものである。 これも、明らかに間違いで、金利が低いのは世界各国の中央銀行が無理やり低金利に押さえ込む、大規模な金融緩和を行っているからである。もし、低金利を維持したまま、大規模財政支出を継続すれば、民間の投資は、干上がってしまう。 投資資金は限られており、金利という価格による需給調節が効かなくても、政府セクターに取られてしまえば、リスク資金は民間へ回ってこない。さらに、人手が不足する。労働力は限られており、とりわけ優秀な人材はすぐに枯渇する。すると、民間投資として適切で利益の上がる投資を行える人材が不足する。彼らは、大規模財政支出に乗じて、その分野で稼ぐために活動しているからである。 中央銀行が資金を供給したところで、それを受け取る民間経済主体はいない。将来の経済見通し、リスクが不透明のため、投資も控えるし、儲かるかわからない投資のための資金も利子率ゼロでも借りない。 ただで資金をくれるのであれば、それはもらうだろうが、それは中央銀行が行うのではなく、政府財政で行うことになるから、これは財政政策であり、民間投資ではない。この財政支出がうまくいくかどうかが、保証されていない以上、この財政出動は意味がない。これは第1の、ワイズスペンディングの議論にも関係する。 この結果、自らリスクをとって金融機関も貸し出しを行うことはせず、企業も個人も借り入れで投資は行わなくなる。 中央銀行が異常な量的緩和を行っていなければ、つまり、国債の実質直接引き受けをせずに、通常の範囲での金融緩和を行っていれば、資金はほとんど国債に吸収されてしまい、民間に回る資金が枯渇し、民間経済主体の資金調達の金利は急騰することになる。民間投資は、大規模財政出動が行われる前から実行されていたものですら、干上がっていくことになるだろう。 そして、金融(株式や債券)市場は、暴落することになるだろう。金利が上がるし、中央銀行が金利を押さえ込んだとしても、そうなると経済も将来の市場の不透明性が増大し、リスクが高まる。ましてや、インフレになるリスク、そしてそのときに大増税、財政支出の急減による大不況のリスクがあるから、誰も投資しなくなるだろう。 つまり、リスクという現在と将来のバランスをとる機能を果たす価格、金融市場の最大の機能を殺すことにより、金融市場は大暴落、実体経済も大混乱となるだろう』、「資金はほとんど国債に吸収されてしまい、民間に回る資金が枯渇し、民間経済主体の資金調達の金利は急騰することになる。民間投資は、大規模財政出動が行われる前から実行されていたものですら、干上がっていくことになるだろう」、典型的な「クラウディングアウト」だ。「リスクという現在と将来のバランスをとる機能を果たす価格、金融市場の最大の機能を殺すことにより、金融市場は大暴落、実体経済も大混乱となるだろう」、弊害は甚大だ。
・『日本でMMTを絶対にやってはいけないワケ  MMT理論を現実の政策として実行することにより、金融市場が混乱にとどまらず、崩壊してしまう危機に追い込まれる可能性は、世界で日本が最も大きい。日本こそ、MMTを絶対に実行してはいけない国なのである。 なぜなら、これが政策としての第3の問題点であるが、インフレが起こりにくい経済においては、財政支出の歯止めが効かないからである。その結果、とことん、経済が破滅的におかしくなるまで、財政支出は拡大され続けるのである。 インフレがなぜ起きにくいのかは、また改めて詳しく議論したいが、大まかにいって理由は3つある。第1に、企業の価格設定行動の結果の合計がマクロ的な物価水準であるから、企業が値上げをできるだけしないようにする日本ではインフレが起きにくい。 企業が値上げをできるだけしない理由は、消費者が値上げに過度に敏感であり、値上げで失う売り上げがあまりに大きいため、日本では商品提供者はできるだけ値上げしないのである。だから、卸売物価は変動しても消費者物価にはあまり反映されないのである。) 第2に、これは世界的な現象でもあるが、過熱した実体経済において生み出された利益や所得は、実物財に回らず、現代ではその多くが資産市場に投資される。だから、モノの値段は上がらず、株式や不動産だけが上がるのである。そして、物価で上がっているのは不動産、つまり家賃が最も大きなものの1つなのである。 第3に、モノの供給が世界中からなされるために、一国内の経済が過熱しても、その国の物価が上がるとは限らない、という普通のこともある。 これら3つの影響で、インフレ率は、現代においては、景気、需給ギャップの指標の役割を果たさなくなっているのである。 だから、金融緩和が過大になって資産市場がバブルになることが21世紀になって頻繁になっているのである。しかし、中央銀行は物価だけでなく資産市場にも目配りをしているから(少なくとも多少は)、MMT論者よりはましなのである。 経済や社会における、過大な財政支出の悪影響、コストはインフレだけではない。労働力や設備など経済資源の無駄遣い、民間経済と公共部門とのバランスの喪失、成長力の低下などがあることは前述したとおりだ』、「日本こそ、MMTを絶対に実行してはいけない国なのである。 なぜなら・・・インフレが起こりにくい経済においては、財政支出の歯止めが効かないからである。その結果、とことん、経済が破滅的におかしくなるまで、財政支出は拡大され続けるのである」、なるほど。
・『MMTは資本市場の機能や国の長期成長力を破壊  これらは、経済における資本の配分、誰が資本をどの程度利用するのが経済にとって望ましいか、ということを行う資本市場の機能をMMTが破壊することによっておこる。価格メカニズムが資本市場において機能しなくなり、しかも、その代わりに配分を行う主体を考えないことにより、資本の利用の非効率性が計画経済よりもひどいものになってしまうのである。 そして、それは、現在において「誰に資本を配分するか」という問題を無視するだけではない。現在と未来において「どれだけ資本を使うか、資源を今投入するか、消費するか、それとも長期的な投資に回すか、さらには、すべての金融資本を今使い切るのではなく、将来に金融資本を実物資本に転換することのほうが効率的か、それをどのくらいのペースで、現在から10年後、20年後、100年後の未来に配分していくか」など、それらを一切考慮しないことにより、経済の長期成長力を徹底的に破壊する。 資本市場は、資本を今、誰に配分するかという問題と、どの時点に配分するか、という現在と将来の資源配分、資本配分という経済成長において、最も重要な機能を果たしているのである。 このようにMMTは、この2つの機能を無視して会計的な現在のバランスだけを強調することにより、市場、価格メカニズム、リスク配分、利子率という現在と未来との相対的な重要性、これらの要素をすべて無視しているのである。 これらの機能を果たすための媒介手段が貨幣、マネーである。MMTは、これらの機能を無視し、貨幣を、政府の手段、そして納税の手段とだけとらえ、経済、市場を無視しているのである。この結果、MMT理論を政策として実行すれば、経済は壊滅するのである。 理論的な4つの誤りのほうも、ここに明確になっただろう。したがって、これ以上、MMT理論を批判する必要はない。もうたくさんだ』、「MMT]が「資本を今、誰に配分するかという問題と、どの時点に配分するか、という現在と将来の資源配分、資本配分という経済成長において、最も重要な機能」を「無視して会計的な現在のバランスだけを強調することにより、市場、価格メカニズム、リスク配分、利子率という現在と未来との相対的な重要性、これらの要素をすべて無視している」、「この結果、MMT理論を政策として実行すれば、経済は壊滅する」、極めて明確な「MMT理論」「批判」である。アメリカの主導学者たちの見解が知りたいところだ。
タグ:政府財政問題 (その6)(このまま行けば日本の財政破綻は避けられない 「MMT理論」「自国通貨持つ国は安心」は大間違い、日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か) 東洋経済オンライン 小幡 績 「このまま行けば日本の財政破綻は避けられない 「MMT理論」「自国通貨持つ国は安心」は大間違い」 「『このままでは国家財政破綻』論は1%だけ間違いだ」 「小幡」氏は数少ない論争型の学者で、興味深そうだ。 「日銀」が「国債」を「これ以上買うことの困難は現実に始まっており、無限に市場経由で、日銀に引き受けさせることはできない」、「それでも、政府が国債を発行し続けたらどうなるか。民間金融機関は、これを引き受けるのを躊躇し、少なくとも一時的には中止するだろう。 このとき、政府がどうするかが問題である。政府の道は2つである。1つは、危機をようやく認識し、国債発行を減らすことを決意し、遅まきながら財政再建に取り組む、という道である。しかし、これまでの政府の財政再建の取り組みからして、この道はとらない可能性が高い。 そ 日銀国債直接引き受け報道が出れば、直ちに為替取引も債券取引も株式取引もまったく成り立たなくなり、金融市場は全面取引停止に追い込まれる 日銀の直接引き受けは、タブーを犯せば理論的には可能だ。だが現実にはタブーを犯した政府と中央銀行は国際金融市場に打ちのめされるため、結局、禁じ手はやはり禁じ手のままとなる。 「現金化できる資産をすべて売り払っても1年しか持たず、2年は無理なのである」、意外に額は少ないようだ。 「破綻危機が近づいても、金利が上昇しない(国債価格が下落しない)という市場の警告機能がマヒしていることを意味する。だから、日本政府の破綻は突然起こる」、「国民の金融資産の実質価値は激減してしまう」、「財政破綻、デフォルトした場合、過去の借金は水に流してもらって再建するのが政府破綻の場合が多い(実質ベースで半分程度返済される、つまり半分は棒引き」、恐ろしいことだ。 「海外投資家が保有していれば、破綻の負担は海外に転嫁できるが、国内保有の場合は、すべて国内で負担しなければならない」、これが「国債が国内保有だから大丈夫、という議論の最大のウソ」、なるほど。 「日本では絶対に危険な「MMT」をやってはいけない MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは何か」 「現実に採用されれば、経済を破壊する「最も害悪の大きな理論」になる」、恐ろしいことだ。 MMTの「4つの誤り」と「3つの害悪」とは? 「インフレ水準がターゲットよりも低ければ、財政支出をとことん行い、インフレがターゲットを超えたらとことん財政支出を縮小し、とことん増税する、というものとなる。 これは、誰が見ても、経済を破壊する理論であり、政策」、その通りだ。 「資金はほとんど国債に吸収されてしまい、民間に回る資金が枯渇し、民間経済主体の資金調達の金利は急騰することになる。民間投資は、大規模財政出動が行われる前から実行されていたものですら、干上がっていくことになるだろう」、典型的な「クラウディングアウト」だ。「リスクという現在と将来のバランスをとる機能を果たす価格、金融市場の最大の機能を殺すことにより、金融市場は大暴落、実体経済も大混乱となるだろう」、弊害は甚大だ。 「日本こそ、MMTを絶対に実行してはいけない国なのである。 なぜなら・・・インフレが起こりにくい経済においては、財政支出の歯止めが効かないからである。その結果、とことん、経済が破滅的におかしくなるまで、財政支出は拡大され続けるのである」、なるほど。 「MMT]が「資本を今、誰に配分するかという問題と、どの時点に配分するか、という現在と将来の資源配分、資本配分という経済成長において、最も重要な機能」を「無視して会計的な現在のバランスだけを強調することにより、市場、価格メカニズム、リスク配分、利子率という現在と未来との相対的な重要性、これらの要素をすべて無視している」、「この結果、MMT理論を政策として実行すれば、経済は壊滅する」、極めて明確な「MMT理論」「批判」である。アメリカの主導学者たちの見解が知りたいところだ。
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環境問題(その11)(50兆円争奪戦に取り残される日本 脱炭素市場で影薄く グリーン覇権の衝撃【1】、「脱炭素」太陽光・風力ではどうにもならない現実 今までの経済活動を根底から見直す必要がある、まるでバブルなカーボン・クレジット市場 国際ルール統一に岸田政権は動くのか) [経済政策]

環境問題については、昨年8月27日に取上げた。今日は、(その11)(50兆円争奪戦に取り残される日本 脱炭素市場で影薄く グリーン覇権の衝撃【1】、「脱炭素」太陽光・風力ではどうにもならない現実 今までの経済活動を根底から見直す必要がある、まるでバブルなカーボン・クレジット市場 国際ルール統一に岸田政権は動くのか)である。

先ずは、昨年10月21日付け日経ビジネスオンラインが掲載したロンドン支局長の大西 孝弘氏による「450兆円争奪戦に取り残される日本、脱炭素市場で影薄く グリーン覇権の衝撃【1】」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00332/101900013/
・『脱炭素市場。それは成長が約束された市場である。世界各国は温暖化ガス排出量の削減義務を負い、再生可能エネルギーやEV(電気自動車)の産業振興を成長の起爆剤にする。変化を先取りした欧州企業は、「脱炭素の巨人」に生まれ変わった。かつて省エネや環境関連の市場を席巻した日本勢は復活できるのか。COP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)開幕直前。このシリーズでは、脱炭素市場における勝者の条件を探る。第1回は「450兆円争奪戦に取り残される日本」。 年間4兆ドル(約450兆円)の投資が必要だ――。 国際エネルギー機関(IEA)は10月13日に公表した世界エネルギー見通しで、脱炭素に必要な投資額として衝撃的な数字を示した。同時に世界のクリーンエネルギーに対する移行が、「あまりに遅い」と糾弾した。 各国政府に厳しい指摘となる一方、沸き立ったのは市場関係者だ。IEAは1970年代の石油ショックを機に経済協力開発機構(OECD)加盟国によって設立された組織で、もともと再エネ導入に積極的である。とはいえ、年間に必要な投資額を従来見通しの3倍と見積もった。今後の市場拡大を期待し、風力発電や再生燃料を手掛ける会社の株価は、IEAの発表以降に急上昇した。 IEAがこのタイミングで、衝撃的な見通しを示したのは理由がある。10月31日から英グラスゴーでCOP26が開催されるからだ。厳しい削減義務を負うことを避けたい政府にくぎを刺し、CO2削減の実効性を高めようとしている。自ら今回の世界エネルギー見通しを「COP26のガイドブック」と位置付けた。 95年の第1回から毎年開催されていたCOPだが、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、初めて延期された。それだけにホスト国である英国は並々ならぬ意欲を燃やしており、オンラインではなくリアルでの開催を推進。ジョンソン英首相は、歴史的な内容での合意に意欲を見せている』、最終的には、石炭火力廃止、46カ国賛同 COP27議長国・英が声明 日米中印は未同意となった(11月5日日経)。
・『グリーンボンド活況  COPは政治だけの舞台ではない。経済界にとっても重要なイベントだ。なぜならCOPは、何度も脱炭素関連の市場拡大の号砲になってきたからだ。特に2015年に仏パリで開催されたCOP21のインパクトは大きかった。50年までに気温上昇を産業革命前から1.5度以内に抑える目標で合意し、温暖化ガス排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にすることが既定路線となった。世界各国が目標達成のために様々な政策を導入しているため、着実に需要が見込める市場となり、投資額は増え続けている。 米調査会社のブルームバーグNEFによると、20年の脱炭素関連の投資額は約5000億ドル(約56兆円)に上り、13年のおよそ2倍の規模となった。中心は再生可能エネルギーであり、この数年はEVの市場が急拡大している。多くの分野で新興国が世界経済をけん引しているが、脱炭素市場の特徴は、成熟社会である欧米で成長率が高い点である。 こうした動向を受け、多くの資金が環境関連に流れ込んでいる。資金使途を環境に配慮した事業に限定したグリーンボンド(環境債)の発行は右肩上がりだ。金融情報会社リフィニティブの調査によると、世界における20年のグリーンボンドの発行額は前年に比べ26%増の2226億ドル(約25兆円)に達した。 国際通貨基金(IMF)トップであるゲオルギエワ専務理事は、10月5日の講演で世界経済の見通しについて、「再エネの導入や自動車の低炭素化などで、世界の国内総生産(GDP)は20年代に約2%押し上げられ、3000万人の新規雇用が創出される可能性がある」と述べた』、「脱炭素関連の投資」などは力強い動きだ。
・『世界上位から消えた日本勢  この市場急拡大の波に、日本勢は乗り切れていない。かつては新エネルギー開発の国家プロジェクト「サンシャイン計画」などの後押しがあり、2000年代前半には太陽光パネル市場で、シャープや京セラなどの日本勢が世界シェアの上位を独占した。 だが、日本政府と電力会社が再エネ普及に対して消極的な姿勢を取り続け、日本メーカーも事業構造改革や投資をためらった結果、世界市場の中で急速に存在感を失った。かつて環境先進国と言われた国の姿は今はない。 逆に、欧州や中国の企業は、この巨大市場を貪欲に狙ってきた。汎用品になった太陽光パネルは、中国メーカーが積極投資で急成長。東日本大震災以降の太陽光発電バブルにおいて、日本のメガソーラーに導入されたパネルの多くは中国製だった。 単価が高く技術の差異化がしやすい製品群でも、日本勢は太刀打ちできていない。風力発電機の市場が拡大する中で、デンマークのヴェスタスや独シーメンスはリスクを取った投資で着実に成長した。三菱重工業はヴェスタスと14年に洋上風力発電機の合弁会社を設立し、世界シェア上位の常連だったが、経営の主導権を握れず20年に撤退した。 劣勢は続く。日本はノーベル化学賞を受賞した吉野彰・旭化成名誉フェローが開発したリチウムイオン電池など電池産業に強みを持つ。10年代前半には車載用蓄電池でパナソニックなど日本勢で世界シェア5割以上を占めていた。しかし、韓国勢や中国勢の技術開発力の向上や大規模投資により、日本勢のシェアは急落した』、「日本勢のシェアは急落」は確かに残念だ。
・『欧州や中国は官民一体となってEVシフト  そして、日本の基幹産業にもこの波は押し寄せている。自動車のEVシフトだ。トヨタ自動車がハイブリッド車で圧倒的なシェアを獲得したが、欧州や中国は官民一体となってEVシフトを進めている。 2020年にEV販売が急増し、市場が急拡大。世界シェア上位は、米テスラや独フォルクスワーゲン、中国の上海汽車集団が占める。日産自動車がいち早くEVに力を入れ、2014年は世界シェアのトップだったものの、この数年は日本勢の存在感が急速に薄れている。 こうした脱炭素市場の世界シェア上位企業の顔ぶれは、同じく市場が拡大するデジタル産業のそれとは特徴が異なる。デジタル産業は米国のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)や、中国のBAT(百度、アリババ集団、テンセント)など新興企業が多い。一方の脱炭素関連事業では、重厚長大の伝統的な企業が事業構造転換を果たし、新たな市場をつかみ取っている。その点ではオールドインダストリーの厚みがある日本勢に、まだ復活のチャンスがある』、「オールドインダストリーの厚みがある日本勢に」、大いに頑張ってもらいたいものだ。

次に、11月16日付け東洋経済オンラインが掲載した独立したグローバルなシンクタンクのAPI地経学ブリーフィングによる「「脱炭素」太陽光・風力ではどうにもならない現実 今までの経済活動を根底から見直す必要がある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/467028
・『米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。 独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく』、興味深そうだ。
・『日本のカーボンニュートラルへの意識変革の遅れ  「2050年のカーボンニュートラル実現」は、2020年末に菅義偉首相(当時)が声を上げたことで一気に注目を浴びるようになった。それを受けて、多くの日本企業が右往左往を始めるという状況にもなっている。 しかし、すでに日本はパリ協定に2016年4月には署名していたのである。55カ国以上、55%以上の排出量をカバーする国の参加が協定発効の条件だったため、まだ先と踏んでいたようだが、予想を超える多数の国々があっという間に署名し、何と同年11月に発効に至った。 つまり、条約遵守が前提なら、日本は4年前からカーボンニュートラルに取り組んでおくべきだったのだ』、多くの「多くの日本企業」にとっては、尻に火がつかない限り動き出さないようだ。
・『電力分野のカーボンニュートラル  カーボンニュートラル実現が最もやりやすいのは電力分野である。しかしその実現には、太陽光や風力だけではまったく届かない目標であることを認識しなければならない。バイオ発電もコストと量の両面で残念ながら強いオプションにならない。 実は、電力分野の問題の本質はコストよりも「量」にある。日本の平地の狭さと、遠浅の海の少なさがこの問題を深刻にしている。2018年現在、日本の発電の化石燃料が占める割合は77%。再エネを死に物狂いで入れるなら、太陽光を最大25%、未知数の洋上風力も含めた風力発電を最大20%、水力を最大10%と仮に置くと55%まで行くが、それでもまだ22%足らない。人口減で電力需要は減るという意見もあるが、EV(電気自動車)化やオール電化による電力シフトで相殺されてしまう。 だからこそ、原子力発電にも真剣に向き合う必要があるし、それでも足りないのでアンモニアや水素発電といった非化石の火力発電に注目が集まる。例えば水素発電は、LNG発電所という既存インフラが活用できる。コストの問題が難しいと言われるが、そんなことを言っている場合ではない、水素FITでも炭素税でもあらゆる政策手法を導入して水素活用を進めなければならない状況だ。 ちなみに水素発電を電力全体の10%に導入するには約600万トンの水素が必要だが、現状日本で生産される水素は99%が自家消費であり、流通する水素は1万トン程度。そのため、川崎重工やENEOSなどが進める海外での水素生産+輸入といった方策が必要になる。投資の巨大さと実現までの時間軸を考えると、そのための政策設計はこの2~3年が勝負だ』、国内生産は限られているので、「川崎重工やENEOSなどが進める海外での水素生産+輸入といった方策が必要になる」、なるほど。
・『再エネ拡大で必要となる電力インフラ側への対策  一方、再エネが5割になると何が起こるのかも考えないといけない。すでに九州では、増えすぎた太陽光による発電量を九州電力が受け切れなくなっている。太陽光や風力といった自然エネルギーは、発電できる時間帯に大きなムラがあるからだ。 現在の発電の主力を担う火力発電は、需要に応じた発電量の調節が可能である。そのため、再エネのようなボラティリティの高い電源や原子力のようなつねに同量で発電し続けるような発電側のムラを調整する役目を果たしてきた。 したがって、火力発電を減らすと、発電側で吸収できなくなる分のボラティリティが電力系統に大きな負担を強いることになる。発電の自由化と小売りの自由化という両側の「自由化」に挟まれた「規制側の」送配電インフラの調整力のキャパシティを超えることが、すでに経産省・エネ庁でも大きな問題となっている。 これを従来型の電力インフラ増強のみで対応すると、10兆円を超える資金が必要になるため、エネルギーマネジメント技術の高度化や蓄電池の活用の制度設計の検討が急ピッチで進められている。しかしこの分野は、政策が先行しビジネスモデルが後回しになりがちなため、誰も使わない制度にならないよう民間との連携が極めて大事である』、「発電の自由化と小売りの自由化という両側の「自由化」に挟まれた「規制側の」送配電インフラの調整力のキャパシティを超えることが、すでに経産省・エネ庁でも大きな問題となっている。 これを従来型の電力インフラ増強のみで対応すると、10兆円を超える資金が必要になるため、エネルギーマネジメント技術の高度化や蓄電池の活用の制度設計の検討が急ピッチで進められている」、「政策が先行しビジネスモデルが後回しになりがちなため、誰も使わない制度にならないよう民間との連携が極めて大事」、その通りだ。
・『電力以外の分野が求められる対策レベルの高さ  電力以外の分野が求められる措置はもっと厳しい。例えば産業分野でいちばんCO2を出す鉄鋼業界では、鉄の還元剤に使うコークスを別のものに転換させる必要に迫られている。まだ技術的にも確立していないが、水素還元による方法が有力とされている。 その場合、700万トンという先ほどの水素発電用以上の水素量が必要になるが、求められるコストレベルはさらに問題だ。現在、2050年の水素の価格はCIFベースで20円/N立方メートルにするという政府目標が示されている。チャレンジングではあるがこれが達成できると水素発電は実現化が見えてくる。ところが、鉄鋼で求められる水素の価格は約8円/N立方メートルという厳しいレベルなのである。 その他、産業分野で2番目に炭素排出量が多い化学業界では、完全なるリサイクルが必要だという議論になるだろうし、3番目に排出量の多いセメント業界では、CO2を吸着するセメントでカーボンニュートラルに近づけるという取り組みが発表されている。いずれも技術的にもコスト的にも大変な打ち手であり、各産業の厳しい状況がうかがえる。 運輸分野は、ガソリン車をすべてEVやFCVにすることが求められるだろう。電力側でのカーボンニュートラルが実現しているなら、走行時のカーボンニュートラルは達成できることになる。しかしながら、EVの製造時に出てくる炭素排出についてはまた別問題。家庭分野もオール電化。石油会社やガス会社にとっては前代未聞の深刻さだ』、「カーボンニュートラル」は実際には困難な課題だ。
・『「森林吸収源」への期待と木材需要の拡大  このように、個別対策を少し掘り下げただけでも、今までの経済活動を根底から見直す対策が必要になることがわかる。しかも、全分野でどんなに頑張っても、恐らく炭素排出量をゼロにすることはできない。だからこそ、(カーボンゼロではなく)カーボンニュートラルという言葉に意味が出てくる。ここで注目したいのが「吸収源」という考え方だ。 吸収源確保には、森林吸収対策、土壌改良による吸収強化、先ほど述べたセメント吸着などさまざまなやり方がある。ここでも量的な意味から考えると、圧倒的に森林吸収対策が重要である。木は成長するときに光合成をすることで、CO2を吸って有機物である木として炭素を貯め込んでくれるという、極めて優秀な吸収源なのだ。 ただし、日本の木は、もう成長し切った壮年の木が多い。森林面積がすでに相当多い日本でこれ以上森林自体を増やすことは難しいため、いったん木を切って、若木を植えて再度成長させることが必要だ。これで国内の森林の吸収力を最大限発揮できれば、全炭素排出量の20%分程度に相当する可能性がある。 木を切るなら、その木を使う需要が必要になる。もちろん、切った木を野原に積んでおく手もあるが、コストを賄うビジネスが回っていないとサステナブルにならない。そこで注目されるのが木造ビルだ。 建築着工統計によると、いわゆる戸建て住宅はすでにほとんどが木造だが、4階建て以上の建築物は逆に多くが鉄・コンクリートである。高層になると強度の問題があるが、10階建て未満の中層なら、住宅にせよ非住宅にせよ建築基準を満たせる技術が確立してきている。あとは耐火工法も踏まえたうえでのコストの問題をどうクリアするか。ここは民間だけでなく、政策とも連動した市場創造の工夫のしどころだ。 吸収源の扱いの国際的な枠組みはまだこれからだが、徐々に動きも出てきた。一方で日本の関係省庁は、すでに吸収源の重要さに気づき、国内政策の準備を始めつつある。国際的枠組みとも連動させ、実績でも世界をリードしたいところだ』、「吸収源の扱いの国際的な枠組みはまだこれから」、日本から積極的に提案してゆくべきだ。
・『カーボンニュートラルを日本にとってのチャンスに  カーボンニュートラルに向けた取り組みは、これまでに例がないほどの努力を要する。しかし、こういうときこそイノベーションのチャンス。ビジネスの世界で失速しつつあった日本企業の逆転のフィールドにできる可能性がある。 そのためにも、技術のイノベーションだけで考えるのは絶対にやめたい。ビジネスモデルを作り込み、政策が有機的に組み合わされることが必須だ。民間側は、意識を高くもち、制度や規制ができるのを待つのではなく自分たちでリードしていく気概で臨み、政府側は、リアルなビジネスを作っていくという心意気で相互に共闘していくことで道が開ける』、「民間側は、意識を高くもち、制度や規制ができるのを待つのではなく自分たちでリードしていく気概で臨み、政府側は、リアルなビジネスを作っていくという心意気で相互に共闘していくことで道が開ける」、同感である。

第三に、12月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「まるでバブルなカーボン・クレジット市場、国際ルール統一に岸田政権は動くのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/291646
・『カーボン・クレジットの取引が盛り上がり、既にバブルの様相を呈している。一例が航空業界だ。二酸化炭素1トン当たりのクレジット価格は、21年1月4日の80セントから11月10日には8.35ドルに上昇した。価格高騰の原因の一つは、世界で統一されたルールがないことだ。わが国は、エネルギー政策の転換と脱炭素に関する国際ルール策定に、より真剣に取り組まなければならない』、「カーボン・クレジットの取引」には「世界で統一されたルールがない」、とは初めて知った。
・『国際統一ルールがなく短期的にはゆがんだ状況が続く  世界的に脱炭素の潮流が注目される中、カーボン・クレジットの取引が盛り上がっている。市場参加者の“準備不足”もあり、既にバブルの様相を呈している。 カーボン・クレジット取引とは、炭素税や排出量取引制度に代表される「カーボン・プライシング」(二酸化炭素の価格付け手法)の一つだ。具体的には、森林保護など温室効果ガスの排出削減事業を第三者が認証し、認証された削減量(クレジット)を民間企業が購入する。 航空や鉄鋼、石油など温室効果ガスの排出量が多く、なおかつ削減も難しい企業は、脱炭素が加速する環境下での事業運営に危機感を強めている。企業は社会の公器として利害関係者に脱炭素に取り組む姿勢を示し、理解と賛同を得なければならない。そのためカーボン・クレジット市場がバブルとなっている。最大の原因は国際統一ルールがないことだ。短期的にはゆがんだ状況が続くだろう。 その状況は是正されなければならず、国際統一ルールの策定は急務である。わが国は米国やアジア新興国との連携を強化してカーボン・プライシングなどに関する見解を共有し、脱炭素で国際世論をリードしようとする欧州委員会に「待った」をかけなければならない。脱炭素に関する国際ルール統一に岸田政権がどう取り組むかは、わが国経済の展開に決定的な影響を与える』、「脱炭素で国際世論をリードしようとする欧州委員会に「待った」をかけなければならない」、「欧州委員会」は欧州の利害を反映した案を出しがちなのだろうか。
・『1月の80セントから11月には8.35ドルに上昇  各国企業が脱炭素に取り組む姿勢を示すために、カーボン・クレジットの購入を増やしている。一部では投機的な取引が増えている。 その一例が航空業界のクレジット取引だ。2016年に国際民間航空機関(ICAO)は「国際航空のためのカーボンオフセット及び削減スキーム」(CORSIA)を採択し、21年からカーボン・クレジット取引が始まった。S&Pグローバル・プラッツによると、二酸化炭素1トン当たりのクレジット価格は、21年1月4日の80セントから11月10日には8.35ドルに上昇した。 また、森林保護に基づいたクレジット取引では、一部で本来の削減効果を上回るクレジット需要が発生している。これは行き過ぎだ。 価格高騰の原因の一つは、世界で統一されたルールがないことだ。 カーボン・クレジット取引の仕組みは、企業などが脱炭素(再生エネルギー利用や森林保護など)に取り組んで二酸化炭素排出量を削減し、削減分を第三者機関(政府やNGOなど)に認証してもらう。その上で、脱炭素に取り組む姿勢をアピールしたい(排出削減が難しい)企業に売る。 民間認証機関としては米国のベラやNGOのゴールドスタンダードが知られている。なお、カーボン・クレジット取引は、EUなどが定めた基準に従って運営される排出量取引制度(当局が規制対象の企業に排出の上限を割り当て、超過した企業が、上限に達していない企業の余剰分を公的な市場で買う制度)とは異なる。 認証基準について、政府や自治体が認証機関である場合は基準が厳しく、民間は甘い傾向にある。そのため、民間認証のカーボン・クレジット取引を活用する航空、石油などの企業が増えた。その結果、買うから上がる、上がるから買うという心理が強まり、カーボン・クレジット市場はバブルの様相を呈し始めた』、「カーボン・クレジット市場はバブルの様相」、とは困ったことだ。
・『航空業界や鉄鋼業界は「苦肉の策」として重視  航空業界などがカーボン・クレジット取引を増やす背景には、世界的な脱炭素の加速がある。ある国が脱炭素に取り組む姿勢を強めると、他の国や地域はその上をいく姿勢で脱炭素を進め、国際世論を主導しようとする。加速度的な脱炭素の進行に危機感や焦りを強め、民間認証のカーボン・クレジットを買わざるを得ない企業が増えている。 21年4月、わが国は30年度の温室効果ガス排出量を13年度比で46%削減し、50年のネットゼロを目指すと表明した。その後、アジアでは、韓国が50年までに石炭火力発電を廃止し、30年までに温室効果ガス排出量を18年比で40%削減すると発表した(従来目標は26.3%削減)。中国も海外での新しい石炭火力発電建設を行わないと表明した。 それに対抗するかのように、欧州委員会は脱炭素の取り組みを一段と強化し、新興国の脱炭素を支援することによって石炭火力発電所の廃止を前倒しで実現しようとしている。さらに欧州委員会は49年までに天然ガスの長期契約を原則として終了することも目指している。 その一方で、企業が脱炭素に取り組むには時間とコストがかかる。脱炭素によって、既存のビジネスモデルの維持が困難になるのではないかとの懸念が高まる業種も出始めた。その一つが鉄鋼業界だ。世界的に、鉄スクラップを溶解して鋼材を生産する「電炉法」を重視する鉄鋼メーカーが増えている。なぜなら、石炭を用いる高炉法では大量の二酸化炭素が排出されるからだ。 ただし、電炉法では不純物が混入し、超ハイテン鋼材など高付加価値型の鋼材生産に課題が残るといわれている。水素製鋼を目指すにしても、わが国や新興国にとって水素の製造や調達のコストは高い。脱炭素が加速する中で化石燃料を用いた事業運営に対する批判をかわすために、「苦肉の策」としてカーボン・クレジット取引を重視せざるを得ない企業は増えるだろう』、「脱炭素が加速する中で化石燃料を用いた事業運営に対する批判をかわすために、「苦肉の策」としてカーボン・クレジット取引を重視せざるを得ない企業は増えるだろう」、いわば恰好付けのためのようだ。
・『必要な国際ルールの策定 岸田政権はエネルギー転換を急げ  カーボン・クレジット市場のゆがみは是正されなければならない。必要なのは、国際ルールの統一だ。 航空業界のクレジット取引の場合、本来なら第25回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP25)がルールを定めるはずだった。だが、参加国の意見対立によって実現せず、結果的に、多種多様な認証基準に基づくカーボン・クレジット取引が急増した。その後、環境政策を重視する欧州委員会は脱炭素関連のルール策定を加速して国際世論の主導を狙っているが、COP26でもカーボン・プライシングや途上国支援をめぐり各国意見は食い違った。 わが国は、エネルギー政策の転換と脱炭素に関する国際ルール策定に、より真剣に取り組まなければならない。エネルギー政策転換に関しては、太陽光と風力を用いた発電を増やすことが必要だ。足もとでは総合商社が再生エネルギー関連事業を強化しており、そうした取り組みを支援する意義は大きい。 国際ルール策定に関しては、米国との連携強化と並行して、東南アジア各国に効率性の高い火力発電や、二酸化炭素の回収・再利用などの技術供与を増やすべきだ。それはわが国の脱炭素関連技術を支持し、見解に賛同する国が増加することにつながる。 そうした取り組みを進めることができないと、わが国は脱炭素に遅れる。その結果として、他の国や地域が主導したルールに受動的に対応せざるを得なくなる。国際ルール策定で主導権を取れなければ、本邦企業の競争力は低下し、経済にはマイナスの影響が及ぶだろう。 国際世論の意思決定は多数決のロジックに基づく。わが国は国際的に支持を得られ、なおかつ地球温暖化問題の改善に資する脱炭素の技術規格、カーボン・プライシングのルールなどを世界に明示し、より多くの賛同を得る必要がある。そのために岸田政権はエネルギー政策の転換を急ぎ、を世界に示さなければならない』、「東南アジア各国に効率性の高い火力発電や、二酸化炭素の回収・再利用などの技術供与を増やすべき」、それは日本側のPR材料に過ぎず、「火力発電」の扱いがどうなるかは不明だ。「わが国の脱炭素技術などの優位性」、があるのであれば、この際、大いに売り込むべきだ。
タグ:環境問題 (その11)(50兆円争奪戦に取り残される日本 脱炭素市場で影薄く グリーン覇権の衝撃【1】、「脱炭素」太陽光・風力ではどうにもならない現実 今までの経済活動を根底から見直す必要がある、まるでバブルなカーボン・クレジット市場 国際ルール統一に岸田政権は動くのか) 日経ビジネスオンライン 大西 孝弘 「450兆円争奪戦に取り残される日本、脱炭素市場で影薄く グリーン覇権の衝撃【1】」 最終的には、石炭火力廃止、46カ国賛同 COP27議長国・英が声明 日米中印は未同意となった(11月5日日経) 「脱炭素関連の投資」などは力強い動きだ。 「日本勢のシェアは急落」は確かに残念だ。 「オールドインダストリーの厚みがある日本勢に」、大いに頑張ってもらいたいものだ。 東洋経済オンライン API地経学ブリーフィング 「「脱炭素」太陽光・風力ではどうにもならない現実 今までの経済活動を根底から見直す必要がある」 多くの「多くの日本企業」にとっては、尻に火がつかない限り動き出さないようだ。 、国内生産は限られているので、「川崎重工やENEOSなどが進める海外での水素生産+輸入といった方策が必要になる」、なるほど。 「発電の自由化と小売りの自由化という両側の「自由化」に挟まれた「規制側の」送配電インフラの調整力のキャパシティを超えることが、すでに経産省・エネ庁でも大きな問題となっている。 これを従来型の電力インフラ増強のみで対応すると、10兆円を超える資金が必要になるため、エネルギーマネジメント技術の高度化や蓄電池の活用の制度設計の検討が急ピッチで進められている」、「政策が先行しビジネスモデルが後回しになりがちなため、誰も使わない制度にならないよう民間との連携が極めて大事」、その通りだ。 「カーボンニュートラル」は実際には困難な課題だ。 「吸収源の扱いの国際的な枠組みはまだこれから」、日本から積極的に提案してゆくべきだ。 「民間側は、意識を高くもち、制度や規制ができるのを待つのではなく自分たちでリードしていく気概で臨み、政府側は、リアルなビジネスを作っていくという心意気で相互に共闘していくことで道が開ける」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 「まるでバブルなカーボン・クレジット市場、国際ルール統一に岸田政権は動くのか」 「カーボン・クレジットの取引」には「世界で統一されたルールがない」、とは初めて知った。 「脱炭素で国際世論をリードしようとする欧州委員会に「待った」をかけなければならない」、「欧州委員会」は欧州の利害を反映した案を出しがちなのだろうか。 「カーボン・クレジット市場はバブルの様相」、とは困ったことだ。 「脱炭素が加速する中で化石燃料を用いた事業運営に対する批判をかわすために、「苦肉の策」としてカーボン・クレジット取引を重視せざるを得ない企業は増えるだろう」、いわば恰好付けのためのようだ。 「東南アジア各国に効率性の高い火力発電や、二酸化炭素の回収・再利用などの技術供与を増やすべき」、それは日本側のPR材料に過ぎず、「火力発電」の扱いがどうなるかは不明だ。「わが国の脱炭素技術などの優位性」、があるのであれば、この際、大いに売り込むべきだ。
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