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日本企業のコーポレート・ガバナンス問題(その9)(コロワイド・蔵人金男会長 外食日本一を目指しМ&Aに邁進、1000社超の上場企業が総会の結果を訂正 株主軽視の総会は通用しない、インタビュー①/マネックスグループ社長 松本大 「総会は穏便に滞りなく。経営者の腰が引けている」、専門家が指摘する議決権“集計外し"の根本原因 株主総会の実務に詳しい中島茂弁護士に聞く) [企業経営]

日本企業のコーポレート・ガバナンス問題については、2016年10月30日に取上げた。久しぶりの今日は、(その9)(コロワイド・蔵人金男会長 外食日本一を目指しМ&Aに邁進、1000社超の上場企業が総会の結果を訂正 株主軽視の総会は通用しない、インタビュー①/マネックスグループ社長 松本大 「総会は穏便に滞りなく。経営者の腰が引けている」、専門家が指摘する議決権“集計外し"の根本原因 株主総会の実務に詳しい中島茂弁護士に聞く)である。

先ずは、本年10月29日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの有森隆氏による「コロワイド・蔵人金男会長 外食日本一を目指しМ&Aに邁進」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/280616
・『蔵人金男・コロワイド代表取締役会長は1947年8月3日生まれの73歳。83年3月に社長に就任して以来、37年間経営トップを続けているワンマンカンパニーだ。 大戸屋に敵対的TOB  9月9日、定食チェーンの大戸屋ホールディングス(以下、大戸屋)に対するTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表した。外食業界で敵対的TOBが成立するのは初めてのことだ。大戸屋株式の保有比率を19%から47%に引き上げた。11月4日に開く臨時株主総会で、現社長の窪田健一を含む10人の取締役の解任と、コロワイドの蔵人賢樹専務ら7人の取締役の選任を求める株主提案をしている。 コロワイドの株主提案だけが議案で可決されれば経営陣が刷新され、大戸屋はコロワイドの連結子会社となる。総会後の取締役会で金男の長男、賢樹が社長に就任する。 2019年10月、大戸屋の創業家から同社株を取得したコロワイドが大戸屋の筆頭株主として突如、登場した。子会社になるよう持ちかけたが、大戸屋の経営陣は断固拒否。壮絶なバトルに突入した。 この過程で、さまざまなハプニングが起こった。 「デイリー新潮」(20年7月15日付)が、〈コロワイドを率いる蔵人金男会長が32億円もの巨額詐欺に遭っていた〉と報じた。 7月30日、福島県郡山市の飲食店「しゃぶしゃぶ温野菜 郡山新さくら通り店」で爆発があり、内装工事の現場責任者が死亡。19人が重軽傷を負う惨事となった。ガス漏れが原因とみられている。郡山市の店は焼き肉の「牛角」などを展開するレインズインターナショナルが運営。レインズはコロワイドの全売り上げの4割強を叩き出している。金男が経営不振に陥ったレインズを買収した。 臨時株主総会に向け、大戸屋の経営陣の首のすげ替えを敢行しようとしているさなか、金男の過去の暴言が暴露された。17年に発行された社内報に「挨拶もできない馬鹿が多すぎる」「生殺与奪権は、私が握っている」などと書かれていた。 「カンパニーとは同じパンを食べる仲間、という意味だ」 金男の口癖である。傘下に収めた企業の本社は横浜ランドマークタワーにあるコロワイド本社内に移転させる。一体感を基礎に、傾いた企業を素早く再建し、軌道に乗せるのが金男のやり方だ。 学歴・経歴に関係なく力があればどんどん登用する半面、実績を示せなくなった役員を更迭するのは日常茶飯事だ。 今年6月の大戸屋の株主総会で完敗した金男は敵対的TOBに打って出た。情に訴えるのをやめて、資本の力でねじ伏せる決断をした』、「〈コロワイドを率いる蔵人金男会長が32億円もの巨額詐欺に遭っていた〉との「デイリー新潮」報道は、結局どうなったのだろう。
・『1977年、金男は神奈川県逗子市にあった父親の中華料理店を引き継ぎ、自分でノコギリと金づちを使って炉端焼き居酒屋「甘太郎」の1号店に模様替えした。 99年、株式を店頭公開。2000年、東証2部(02年1部へ指定替え)への上場を機に、経営不振に陥った外食企業のM&Aを開始した。スタート時点では「北海道」「いろはにほへと」など居酒屋がほとんどだった。 00年代、コロワイドはモンテローザ、ワタミとともに居酒屋の「新ご三家」と呼ばれるようになったが、若者の酒離れが進み、脱居酒屋へと経営のかじを切る。 12年10月、焼き肉店チェーンの「牛角」を運営するレックス・ホールディングス(現レインズインターナショナル)を子会社にした。買収額は137億円。家族連れを取り込むのが狙いだった。グループの店舗数は2倍の約2200に拡大。グループ全体の食材の調達や加工を行うセントラルキッチン方式を導入した。 14年、305億円を投じ、回転寿司チェーン「かっぱ寿司」のカッパ・クリエイトを買収した。「かっぱ寿司」は「安かろう、まずかろう」との悪いイメージに染まってしまっていて、3年の間に社長が4人交代するなど苦戦が続く。 「大戸屋の買収は第2のかっぱ寿司になりかねない」(外食担当のアナリスト)と懸念されている。 金男は外食日本一を目指している。牛丼チェーン「すき家」などを展開するゼンショーホールディングスの6304億円(20年3月期)がトップ。コロワイドは大戸屋の売り上げを単純合算しても2598億円(同期)。ゼンショーの背中は遠い。コロナ不況下、外食株は安値をつけ、「絶好の買い場」(外食産業の動向に詳しい中堅証券会社の役員)となっている。金男の次のターゲットはどこになるのか。 スキャンダルはあまたあったが突破力を評価して成熟度はプラス4点。大戸屋に“再建社長”として送り込む長男、賢樹の経営力は未知数だ。後継者として実績を積ませるための布石だろうが、この人事が吉と出るか。老害度はマイナス3点とした。 =敬称略 ■成熟度 +4 ■老害度 -3 ※筆者が成熟度を+1~+5、老害度を-1~-5で評定)』、「大戸屋」経営陣を「コロワイド」系に入れ替え、手作りを「セントラルキッチン方式」に変更するのだろうが、手作りに親しんだ顧客や中核社員を繋ぎ止められるか、がカギだろう。

次に、11月10日付け東洋経済オンライン「1000社超の上場企業が総会の結果を訂正 株主軽視の総会は通用しない」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/25178
・『9月に大手信託銀行で明らかになった議決権数の不適切な取り扱い。今回の問題は総会の実態に目を向けるいい機会だ。4人の識者のインタビューとともに日本の株主総会が抱える課題を浮き彫りにする。 今年9月、上場企業の株主名簿管理人である信託銀行が、株主総会で数えるべき一部議決権を集計していなかったという、“不都合な真実”が明らかになった。 三井住友信託銀行株式会社(当社の株主名簿管理人)において、一部議決権の未集計が判明したため(中略)本報告書を提出する――。10月5日、東証1部上場で高級フランス料理店を展開するひらまつは訂正臨時報告書を金融庁に提出した。 ひらまつは、6月26日に開催した株主総会の議決権行使結果を6月29日に開示していたが、これを訂正した。結果、社外取締役・楠本正幸氏の18.14ポイントを筆頭に、取締役選任議案の6人と監査役選任議案の1人、7人全員の賛成率が10ポイント以上も引き上がった。 9月末以降、ひらまつのほかにも1000社を超す上場企業が株主総会の議決権行使結果について訂正臨時報告書を提出している。これは9月24日に、三井住友信託銀行とみずほ信託銀行のそれぞれが記者会見を開いて、顧客企業の代理人として郵送で受け取った議決権行使書の一部をカウントしていなかったと明らかにしたことの影響だ。 東洋経済が10月末までに開示された訂正報告書を調べたところ、取締役選任議案と監査役選任議案に関して5ポイント以上の訂正があった会社が4社あることがわかった(下表)。 9月24日の会見で三井住友信託銀行は「再集計により賛成率が約16ポイント下がった(上場企業の)議案が2つあった」と説明したが、当該議案があった企業名などは明かしていない。現時点で、訂正報告書からもそれに該当する企業は発見できていない』、「1000社を超す上場企業が株主総会の議決権行使結果について訂正臨時報告書を提出」、とは影響がずいぶん広がったものだ。ただ、議決やり直しになるものがなかったのは不幸中の幸いだ。
・『議案の可否に影響を及ぼさなければ問題ない?  株主名簿管理人が数えるべき議決権数をカウントしないという前代未聞の事態はなぜ起こったのか。三井住友信託とみずほ信託が集計業務を委託していた折半出資の合弁会社、日本株主データサービス(JaSt)が行っていた特殊な事務処理に起因する。 JaStは総会シーズンに届く膨大な議決権行使書をスムーズに処理するため、株主総会が集中する3月、5月、6月について、郵便局に依頼して翌日に届ける予定の議決権行使書を(本来予定より)1日早く届けてもらう「先付け処理」を行ってきた。 問題を招いたのは株主総会前日に届いた議決権行使書の扱いだ。というのも、JaStは先付け処理で届いた議決権行使書を、その日のうちにOCR(光学文字認識)機で読み取っていたにもかかわらず、手続き上の受領日は本来届くはずだった日付(実際の配送日の翌日)としていたからだ。 一般に事前の議決権行使期限は株主総会前日を最終日と設定している。つまり、先付け処理で総会前日に届いた議決権行使書は、翌日(締め切り後)の受領となるため集計から外れてしまうのだ。もちろん、実際に届いたのは期限内であり、民法でも郵便物が物理的に到着した日を基準に考えることから、「集計結果に算入するべきだった」(西田豊・三井住友信託銀行専務)。 焦点は適正に集計されていれば、結果が異なる議案があったかどうかだ。会見で三井住友信託やみずほ信託は「調査したが、議案の可否に影響を及ぼす事案はなかった」と繰り返した。だが、これは2020年5月以降の株主総会についてのみ。先付け処理は20年近く続けられていた可能性があるが、2020年4月以前については「データはすべて消去した」(西田氏)ため、調べようがないのだ』、「2020年4月以前については「データはすべて消去した」」、とは驚かされた。データ消去は首相官邸だけの特技ではなかったようだ。
・『発覚は偶然の産物  今回、議決権行使書の”集計外し”が発覚したのは、東芝の株主の声がきっかけだった。同社に対し、シンガポールの投資ファンド、3Dオポチュニティー・マスター・ファンド(3D)や、エフィッシモ・キャピタル・マネジメントが、会社提案とは異なる社外取締役の選任を株主提案していた。 結局、東芝の株主総会で会社提案が可決され、株主提案は否決されたが、議決権の集計結果に疑問を持った3Dが東芝に確認を要求。東芝が株主名簿管理人である三井住友信託に調査を要請した結果、JaStの不適切な処理が発覚した。 これにはちょっとした偶然も絡んでいる。東芝の株主総会は7月31日に開催された。本来なら先付け処理の期間外だが、コロナ禍で3月決算会社のいくつかが7月に総会を開いたことで(東芝もその1社)、今年はJaStが7月総会分も先付け処理を行ったのだ。ファンドの指摘がなければこの先も”集計外し”は続いていた可能性が高い。 JaStに業務を委託している三井住友信託、みずほ信託、日本証券代行、東京証券代行の4社は上場企業全体の約58%から議決権の集計を受託している。過去20年近く先付け処理が行われていたとすれば、長年にわたって、数多くの企業が影響を受けたことになる。 もっとも、ほとんどの企業の訂正幅は1%未満で、議案の可否に影響もなかった。誤差の範囲ともいえる訂正だったためか、問題発覚の直後こそ大きく報じられたものの、早々にトーンダウンした。しかし、今回の問題を単に信託銀行の事務処理ミスと片付けていいのか。企業と信託銀行という株主総会の運営側が依然として株主を軽視している、その一端が現れただけではないか。 そうした問題意識から、企業経営者兼アクティビストの松本大氏、外国機関投資家でスチュワードシップ活動の責任者を務める三瓶裕喜氏、コーポレート・ガバナンスや総会実務に詳しい中島茂弁護士、会社法の専門家である田中亘教授の4人に、今回の一件に対する受け止めや株主総会についての問題意識を聞いた』、興味深そうだ。
・『信託銀行の姿勢が”集計外し”を生んだ  4人とも集計すべき議決権を集計しなかったことは論外としつつ、むしろ、その背景にある日本の株主総会に関する諸問題を指摘する。具体的な中身は各インタビューを読んでいただきたいが、ここでは2点補足をしておきたい。 まず問われるべきは、株主名簿管理人としての信託銀行の姿勢だ。 記者の手元に三井住友信託銀行が発行した「株主総会想定問答事例集 2020年3月版」がある(上写真)。これは企業に対して配布している冊子で、合計122項目にわたって、さまざまな質問を想定した回答例が解説付きで載っている。 “お客様”である企業に対して続けている手厚いサービスの一貫だろうが、結果的に企業が総会で「回答事例を読み上げる」ことを助長してきた。こうした株主を軽視するような信託銀行の姿勢が議決権の”集計外し”を生んだのではないか。 2つ目は企業における総会当日の議決権行使の扱いだ。 実は、当日の議決権行使を集計していない企業は多い。全国株懇連合会の2019年の調査によれば、臨時報告書の開示で当日行使を行った株主の一部の議決権のみ集計、または集計しないと答えた企業は全体の約83%に達する。 事前の議決権行使や委任状で賛成が確定している以上、当日の会場では拍手などで意思を確認すれば十分という判例があるからだ。しかし、この事前の議決権行使の集計に漏れがあることが今回明らかになった。2020年5月~7月の3カ月分だけで最大16ポイントも異なる議案があった。となれば、事前の賛成多数が微妙だったケースはあったかもしれない。 冒頭で挙げたひらまつの18ポイントの差異のうち、10ポイント以上がJaStの“集計外し”による影響で、残りの数ポイントは総会当日の議決権行使を集計に加えたことで生じた。大株主に当日の議決権行使について問い合わせ、賛成に加算したという。同社の場合、再集計で賛成率は高くなったが、ほかの上場企業にその逆(反対率の上昇)がなかったとは言い切れない。 JaStの先付け処理問題をきっかけに、日本の株主総会の実態に目を向けるべきだ』、信託銀行のミスがコーポレート・ガバナンスの実務面の問題に波及したようだ。

第三に、11月10日付け東洋経済オンライン「インタビュー①/マネックスグループ社長 松本大 「総会は穏便に滞りなく。経営者の腰が引けている」」を紹介しよう。
・『信託銀行が顧客から受託していた議決権行使書の集計業務で、郵送された議決権書の一部がカウントされていなかった問題を専門家はどう見ているのか。 インタビューの1人目は、創業者として20年以上にわたって企業のトップを務め、直近では「アクティビストファンド」のマネージャーとしても活動するマネックスグループの松本大社長。 今回の一件について「悪意があったとは思わない」とする一方で、「信託銀行の姿勢には問題を感じていた」と切り出した。そして、株主総会運営における大胆な法改正のアイデアも語った(Qは聞き手の質問、Aは松本氏の回答)』、興味深そうだ。
・『私はアドバイスを無視して自由にやっている  Q:三井住友信託銀行やみずほ信託銀行が議決権の一部を集計していなかったということが明らかになりました。この件をどう見ていますか。 A:実際には株主総会の前日に議決権行使書が到着していたのだから、「株主の大切な議決権なんだからちゃんと数えよう」という発想を持ってほしかった。 けれども、私はそこ(総会前日の到着分を集計しなかったこと)に悪意があったとは思わない。信託銀行としては、あくまで総会に間に合わせるためにちゃんとカウントしようとしていたと解釈している。 今回のことで信託銀行への信頼が大きく低下したとは思わない。一方で、株主総会に対する信託銀行の姿勢には問題を感じていた。 Q:どういった問題でしょうか。 A:株主総会へ向けて、信託銀行とリハーサルをやるのだが、彼らからは「質疑応答を早めに切り上げてください」とアドバイスを受ける。 私は創業社長でこれまで20回以上の株主総会をやってきた経験があるので、リハーサルでは「はい、はい」と聞き流して、当日はアドバイスを無視して自由にやっている。 だが、通常の社長はアドバイス通りに総会の質問を早めに切り上げようとしてもおかしくない。 Q:日本の経営者は株主との対話にあまり積極的ではありません。その背景には信託銀行の指導があるということですか。 A:日本の経営者は顧客に会うことはまったく厭わない。強い批判や要望を出されても、「ありがとうございます」と言って話を聞く。 しかし、相手が株主だと「会いたくない」と言う経営者が多い。これは経営者の人格の問題ではなく、「そういうことはやらないものなんです」と(株主対応の)担当社員や信託銀行が言うので、腰が引けているケースが多いように思う。 上場企業の経営者の中には社長就任時に「開かれた株主総会にして、大勢の株主の意見を聞きたい」と思う人は大勢いるはずだ。だが、株主総会はなるべく穏便に、滞りなく運営したほうがいいという担当者や信託銀行の意見に従ってしまう。 Q:それはやはり経営者の問題では? A:総会実務の担当者は長年の経験がある。信託銀行も株主対策の専門家だ。対して、社長は就任したばかりだったりする。社長としてやらなくてはいけないミッションは山積みで、「株主総会のことで戦ってもしょうがない」と思ってしまい、「分かった。今までどおりでいい」とつい言ってしまうのだろう。結局、昔からやってきた総会のやり方を変えられない。 Q:事なかれ主義や前例踏襲主義が実務側に強いという問題意識ですね。どのようにすれば改善できるでしょうか。 A:株懇(株式懇話会)という株式実務担当者の横のつながりは廃止するべきだ。信託銀行が前例踏襲型のアドバイスをするのも見直したほうがいい』、「株主総会」の「リハーサル」に、「信託銀行」が来ているとは初めて知った。「彼らからは「質疑応答を早めに切り上げてください」とアドバイスを受ける」、しかし、「リハーサルでは「はい、はい」と聞き流して、当日はアドバイスを無視して自由にやっている」、「松本」氏はさすがだ。
・『株主番号と名前を言う必要はない  Q:株主総会での前例踏襲とはたとえばどんなことでしょうか。 A:一般的に株主総会で質問する株主に「株主票番号と名前を言ってください」とお願いする。入場時に株主であることを確認しているのに、発言前に株主票番号と名前を言ってもらうのは、壇上から牽制球を投げているようなものだ。私たちはあなたが誰だかわかっていますよ、と。 でも、牽制したうえで発言してもらうというのはおかしい。当社ではこれをやめた。今は「株主票番号も名前も言わないでください」としている。 ほかにも、平日開催が当たり前だということ。当社は2001年6月の上場会社として最初の株主総会から、毎年土曜日に株主総会を開催している。最近では週末開催もずいぶん増えているが、依然として特定日に集中している。株主総会に来て欲しくないのだろう。 株主提案権も制限しようとする。当社はホームページで「何株以上を何日間持っていれば、株主として提案できます」と書いて、むしろ促している。 こうした取り組みを進めようとしたとき、社内の総務部からは「お願いだからやめてください」と言われたし、信託銀行からも「何を考えているんですか?」と言われた。私が「なるべく多くの株主の人に来てもらって、意見を言ってもらうことが大切だから」といって説得した。 Q:アメリカの株主総会は非常に短時間で簡素です。日本はアメリカを見習うべきだという意見もあります。 A:確かにバークシャー・ハサウェイとディズニーを除いたら、アメリカの株主総会の規模は小さい。私はマスターカードの取締役でもあるが、時価総額が世界でも10何番目のマスターカードでも、当日会場に来る株主は7人とかそんなもの。 この事実だけをみて、「アメリカを見習って日本の総会も簡素化すべき」と言う人がいるが、それは違う。 アメリカでは総会当日までに株主と会社の間でいろんな対話が行われている。総会の1日だけではなく、1年間を通して株主と会社の間でコミュニケーションが取られているので、総会の日は簡単でいい。だが、日本では年間を通じた株主と企業のコミュニケーションがない。 Q:日本で株主と企業が年間を通じたコミュニケーションを行うためには、どうすればいいのでしょうか。 A:一番ドラスティック(抜本的)なのは、取締役選任議案を株主にしか提案できないように法律を変えること。会社側は取締役を提案できないことにする。 もちろん株主なら誰でも良いというわけではなくて、何%以上保有とか、何カ月以上保有とか一定の制限は設ける。例えば1%以上を半年保有している株主であるというように。そうすると、次の総会までの1年間にきちんとした対話が行われるようになるだろう。 会社は株主に会いに行って、あるいは株主が会社に対して、「自分が株主として提案しないといけないけど、誰がいいの?」という話になるからだ。もしくは、「どういう社外取締役が欲しいの?」「こんな感じの人です」「だったら、こういう人がいるよ」というふうに、株主と会社の間で建設的な会話がもたれて、取締役会の候補者名簿ができていく。 「株主がおかしな議案をたくさん出してきて手がつけられなくなる」と言う人がいるかもしれないが、それは違う。株主は自分のお金を入れている。自分の財産を守るためにも真剣に考えるはずだ。連続性のないめちゃくちゃな人事案を持ってくる株主なんてほとんどいないだろう。 いいアイデアでしょ?(笑)』、「株主総会で質問する株主に「株主票番号と名前を言ってください」とお願いする」必要はないのに、続いているのは、かつての「総会屋」対策の名残なのかも知れない。「取締役選任議案を株主にしか提案できないように法律を変えること」、面白そうだが、社外取締役の候補を選ぶにはやはり執行側の社長の権威が必要なのではなかろうか。
・『経営者にフレンドリーな提案であるべきか  Q:最近は経営者としてだけでなく、物言う株主、アクティビストとしての活動をされています。その立場から企業の株主への姿勢で感じたことはありますか。 A:アクティビストとして企業との対話をしようとすると、「その提案はフレンドリーな提案なのか、アンフレンドリーな提案なのか」と言われることがある。このフレンドリーかどうかは、あくまで経営者に対する視点で聞いてくる。これはおかしい。 会社は誰のものかという議論が昔からある。株主だと言う人もいれば、従業員だと言う人も、お客さまだと言う人もいる。現代においては普通に考えると株主であり、ステークホルダー(利害関係者)を含めて広めに考えるなら、会社は、株主、従業員、お客さま、そして社会のものだ』、その通りだ。
・『「重要なことは実りのある株主との対話だ」と強調した松本社長  つまり、ステークホルダーの中に経営者は入っていない。経営者はあくまで期間限定のアドミニストレーター(管理者)でしかない。本来問われるべきは、その提案が株主にとって、あるいはお客さまや従業員、社会全体などのステークホルダーにとってフレンドリーかどうかであって、経営者に対してではないはずだ。 なのに、日本で議論されるときは、経営に対してフレンドリーかどうかばかりが問われている。こうしたところから、経営者の都合が優先されていると感じる。 Q:招集通知の発送から株主総会までの期間が短く、株主が議案を検討する時間が十分でないといった指摘や、議決権の電子行使の使い勝手が悪いという批判もあります。 A:そういったことも問題だが、海外と比べて特にひどいかというとそうでもない。招集通知の発送から総会までの期間について、現状の2週間」、から3週間、もしくは4週間にしようというよりも、(株主総会日以外の)残りの50週に何をやるか議論するほうが実利的だ。 今回の信託銀行の集計問題も、それ自体は大したことではない。背景まで考えないと、木を見て森を見ずになってしまう。政府の審議会でも、総会前の4週間ぐらいの話をすごくしたがるが、そこじゃない。 何度も言うが、重要なのは1年間を通して株主と会社が実りのある対話をすること。 そのために私が考えるのは、取締役の選任議案を株主しか提案できないようにすることだ。そうすれば否が応でも、総会が終わったときから(株主と会社の対話が)始まる』、「重要なのは1年間を通して株主と会社が実りのある対話をすること」、同感である。

第四に、11月13日付け東洋経済オンライン「信託銀行の議決権“集計外し"に欠如した視点 会社法に詳しい東京大学の田中亘教授に聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/388066
・『今年9月、上場企業の株主名簿管理人である信託銀行が、株主総会で数えるべき一部議決権を集計していなかったという前代未聞の事態が明らかになった。 問題発覚の直後こそ大きく報じられたものの、早々にトーンダウンした。だが、今回の問題を単に信託銀行の事務処理ミスと片付けていいのか。会社法に詳しい東京大学の田中亘教授に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは田中氏の回答)』、興味深そうだ。
・『信託銀行の取り扱いに衝撃を受けた  Q:株主総会前日に配達された議決権行使書で、実際には届いているにもかかわらず、翌日扱いとして集計から外すことが20年近く続いていました。今回の事態をどう見ていますか。 A:信託銀行がああいった取り扱いをしていたことは知らず、衝撃を受けた。 会社法上、投票期限は会社が決定して、招集通知に記載すればよい。投票期間は招集通知の発送から2週間あればよく、集計が間に合わないのであれば、株主総会前日よりも前に(議決権行使の)期限を設定できる。 しかし、招集通知に株主総会前日が期限と記載している以上、前日に届いた議決権行使書はカウントしなければいけない。 Q:三井住友信託とみずほ信託は、調査した過去3カ月の株主総会に関して「賛否には影響がなかった」と強調しています。 A:結果に影響がなかったから問題ない、ということではない。株主総会決議の方法に法令違反があれば、決議が取り消されるというのが原則だ。 今回のカウントミスは法令違反なので、これ自体が(決議の)取消事由にはなる。ただし、法令違反であっても瑕疵が重大ではなく、決議結果に影響がなければ、裁判所が裁量で棄却する可能性が高い。 Q:重大な瑕疵とは、具体的にはどういうケースですか。 A:株主総会の当日に、決議に「反対」を表明している株主の出席を意図的に拒否したようなケースがあれば、(決議が)取り消される可能性が高い。このような場合、事前に行使された議決権だけで全議決権の過半数の賛成が集まっていて、決議が可決されることが総会前までに確定していたとしても取り消されるだろう。 正当な理由が何もないのに株主を排除していれば、たとえ結果に影響を及ぼす可能性がゼロだったとしても、決議の効力は否定されるというのが原則になる。法律は結果に影響がなければよいという考え方には立っていない』、「今回のカウントミスは法令違反なので、これ自体が(決議の)取消事由にはなる。ただし、法令違反であっても瑕疵が重大ではなく、決議結果に影響がなければ、裁判所が裁量で棄却する可能性が高い」、「法律は結果に影響がなければよいという考え方には立っていない」、「法令違反」とはやはり重大だったようだ。しかし、プロたる「信託銀行」が「法令違反」を長年続けてきたというのには、改めて驚かされた。
タグ:東洋経済オンライン 日刊ゲンダイ デイリー新潮 有森隆 日本企業の コーポレート・ガバナンス問題 (その9)(コロワイド・蔵人金男会長 外食日本一を目指しМ&Aに邁進、1000社超の上場企業が総会の結果を訂正 株主軽視の総会は通用しない、インタビュー①/マネックスグループ社長 松本大 「総会は穏便に滞りなく。経営者の腰が引けている」、専門家が指摘する議決権“集計外し"の根本原因 株主総会の実務に詳しい中島茂弁護士に聞く) 「コロワイド・蔵人金男会長 外食日本一を目指しМ&Aに邁進」 外食業界で敵対的TOBが成立するのは初めて 大戸屋株式の保有比率を19%から47%に引き上げた 金男の過去の暴言が暴露 「挨拶もできない馬鹿が多すぎる」「生殺与奪権は、私が握っている」などと書かれていた。 「カンパニーとは同じパンを食べる仲間、という意味だ」 傘下に収めた企業の本社は横浜ランドマークタワーにあるコロワイド本社内に移転させる。一体感を基礎に、傾いた企業を素早く再建し、軌道に乗せるのが金男のやり方だ コロワイドを率いる蔵人金男会長が32億円もの巨額詐欺に遭っていた コロナ不況下、外食株は安値をつけ、「絶好の買い場」 手作りに親しんだ顧客や中核社員を繋ぎ止められるか、がカギ 「1000社超の上場企業が総会の結果を訂正 株主軽視の総会は通用しない」 信託銀行が、株主総会で数えるべき一部議決権を集計していなかったという、“不都合な真実”が明らかになった ひらまつは訂正臨時報告書を金融庁に提出 議案の可否に影響を及ぼさなければ問題ない? 株主名簿管理人が数えるべき議決権数をカウントしないという前代未聞の事態 三井住友信託とみずほ信託が集計業務を委託していた折半出資の合弁会社、日本株主データサービス 先付け処理は20年近く続けられていた可能性があるが、2020年4月以前については「データはすべて消去した 発覚は偶然の産物 3Dオポチュニティー・マスター・ファンド(3D)や、エフィッシモ・キャピタル・マネジメント 東芝の株主の声 信託銀行の姿勢が”集計外し”を生んだ 三井住友信託銀行が発行した「株主総会想定問答事例集 2020年3月版」 企業が総会で「回答事例を読み上げる」ことを助長 臨時報告書の開示で当日行使を行った株主の一部の議決権のみ集計、または集計しないと答えた企業は全体の約83%に達する 「インタビュー①/マネックスグループ社長 松本大 「総会は穏便に滞りなく。経営者の腰が引けている」」 マネックスグループの松本大社長 私はアドバイスを無視して自由にやっている 「株主総会」の「リハーサル」に、「信託銀行」が来ている 「彼らからは「質疑応答を早めに切り上げてください」とアドバイスを受ける」 「リハーサルでは「はい、はい」と聞き流して、当日はアドバイスを無視して自由にやっている」、「松本」氏はさすがだ 株主番号と名前を言う必要はない かつての「総会屋」対策の名残なのかも知れない 経営者にフレンドリーな提案であるべきか 「重要なことは実りのある株主との対話だ」と強調した松本社長 重要なのは1年間を通して株主と会社が実りのある対話をすること 「信託銀行の議決権“集計外し"に欠如した視点 会社法に詳しい東京大学の田中亘教授に聞く」 信託銀行の取り扱いに衝撃を受けた 今回のカウントミスは法令違反なので、これ自体が(決議の)取消事由にはなる。ただし、法令違反であっても瑕疵が重大ではなく、決議結果に影響がなければ、裁判所が裁量で棄却する可能性が高い 法律は結果に影響がなければよいという考え方には立っていない プロたる「信託銀行」が「法令違反」を長年続けてきたというのには、改めて驚かされた
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レオパレス問題(その2)(レオパレス「30年保証」裏付けた酷いアパートの次なる真相、レオパレス スポンサー決定でも茨の道の理由 賃料減額交渉 資金支援は金利14.5%という重荷、経営危機のレオパレス 500億円超の“救いの手”も…違法建築の補修「1千億円はかかる」の声〈AERA〉) [企業経営]

レオパレス問題については、昨年4月2日に取上げたままだった。一応スポンサーも決まったのを踏まえた今日は、(その2)(レオパレス「30年保証」裏付けた酷いアパートの次なる真相、レオパレス スポンサー決定でも茨の道の理由 賃料減額交渉 資金支援は金利14.5%という重荷、経営危機のレオパレス 500億円超の“救いの手”も…違法建築の補修「1千億円はかかる」の声〈AERA〉)である。

先ずは、本年9月4日付け幻冬舎GOLD ONLINEが掲載したウィステリア・グループ株式会社 会長兼代表取締役社長の藤本 好二氏による「レオパレス「30年保証」裏付けた酷いアパートの次なる真相」を紹介しよう。
https://gentosha-go.com/articles/-/28770?per_page=1
・『賃貸アパートの施工不良発覚から2年。昨年度の補修完了を目指すとしていたが、レオパレス21の改修工事は終わらない。業績も悪化の一途をたどっており、不動産オーナーからは心痛極まった声が上がっている。本件の構造的問題は何だったのか。ウィステリア・グループ株式会社の代表である藤本好二氏が書籍『不動産投資業者のリアル』(幻冬舎MC)で指摘しているのは…』、興味深そうだ。
・『「30年一括借り上げ保証」レオパレスの罪 ■「レオパレス21」訴訟で明らかになった、管理会社の闇  投資家が購入した不動産の管理を請け負う、管理会社。入居者募集や建物のメンテナンスなどの管理業務を、他に仕事を抱えている投資家自らが行うというのは現実的ではありません。ほとんどの場合、管理会社に業務委託することになります。 管理会社の系譜を辿ると、大きく二つに分かれます。一つは、もともと建築を手掛けていた会社が管理部門をつくったケース。もう一つは、内装など装飾を行っていた会社が管理事業を始めたというものです。近年は、管理だけに絞って事業を展開する会社も増えてきましたが、源流としてはこの二つになります。 いわゆる「サブリース」にまつわる問題の中心にいるのも、管理会社です。「かぼちゃの馬車」を運営していたスマートデイズも、もともとはその創業者が荒稼ぎをして引退するためにつくったスキームにおける管理会社部門でした。 管理会社のトラブルとして記憶に新しいのが、レオパレス21に対する訴訟です。 同社は「30年一括借り上げ保証」というサブリース契約を謳い、オーナーは入居者の有無にかかわらず安定した家賃収入が得られるというメリットを全面に押し出して管理を請け負っていました』、「オーナー」にとっては「30年一括借り上げ保証」が魅力的に思えたのだろう。
・『兵庫県、埼玉県…続々と判明したレオパレス21の不備  しかし実際には、早いもので10年も満たないうちに、家賃を減額したり、借り上げ契約を解除したりするようオーナーに強制的に迫った疑いがもたれています。 家賃減額や借り上げ契約解除は、オーナーを直接的に追い詰める非常に重要な事案です。もともとの立地がよく、物件としても魅力的であれば、たとえ契約解除がなされても賃貸経営を続けられるでしょう。しかし「30年保証」の甘い言葉により、そもそも賃貸需要が薄いような地域に物件を建ててしまったような場合には、ローン返済どころか負債ばかり増えていくことになります。 賃貸経営においては、まずはマーケティングを行ってその地域の賃貸需要をリサーチし、単身者向けやファミリー向けなど需要に合わせた建物を採算の取れる範囲内の金額で建設して運営するというのが基本です。建物の劣化により家賃の下落もあらかじめ考慮し、それも込みで経営が成り立つかを、投資する前に判断する必要があります。 ところが、「入居者の有無にかかわらず、30年間は安定した収入がある」というセールストークをそのまま受け入れ、マーケティングなど一切せずに投資を行ってしまったことが、レオパレス21に対する訴訟の前段であると思います』、「レオパレス21」側の「セールストーク」はさぞかし猛烈なものだったのだろう。
・『■「手抜き工事」「手抜き管理」も存在する  もちろん、レオパレス21側にも大きな問題があります。 レオパレス21はもともと仲介会社であり、1973年創業の古参です。その後、1985年から、都市型アパートとして「レオパレス21」を本格展開。バブルの勢いに乗って成長を続け、2018年4月現在では、約57万戸を管理しています。 現在のレオパレス21は、建設から完成後の借り上げ、管理までを一括して行う事業者です。そのビジネスモデルにも、「30年一括借り上げ」へとつながる伏線があります。個人的には、マンションやアパートを建設する時点で、かなりの利益を上げていたと推測します。 2018年5月、レオパレス21が1996年から2009年の間に建てたアパート38棟に関して、欠陥が指摘され、建築基準法の疑いが浮上しました。もともと、「レオパレスのアパートは壁が薄い」という噂が囁かれてきましたが、それが事実であると示されたわけです。具体的には、兵庫県や埼玉県など12都道府県で、天井裏に音漏れや延焼を防ぐための界壁がなかったり、施工が不十分だったりというのを、レオパレス21側が確認しました。 不良物件については、2019年10月までに補修工事を行うとしています※。 ※編集部注・・・補修工事は延期され「2020年6月末を目処」に完了するとの発表があったが、2020年8月末時点で終了していない』、「界壁」がなければ完全に違法である。
・『「30年一括借り上げ」でも利益を上げていたカラクリは  なお、発覚の経緯については、2018年3月29日と4月17日に、オーナー2人から、「行政が発行した確認通知書の内容と実際の建物に相違がある」と指摘を受け、調査を開始したと説明しています。184棟を確認した結果、168棟に違いが見つかったといいます。 そうした手抜き工事が示すのは、利益の水増しです。建設費を少しでも安く抑えれば、それは事業者の利益となります。 レオパレス21ブランドのアパートはどれもほぼ同じ仕様であり、同じ規格で大量に発注することで建設コストを安く抑えることができたはずです。それに加えて手抜き工事を行った上、相場より割高で販売するとしたら、通常で同様のアパートを建設するのに比べ2倍の利益が出てもおかしくありません。 建設時にそれだけ稼げれば、その一部を「30年一括借り上げ」の初期費用に回しても、十分に利益が出るわけです。逆から見れば、オーナーは自分が払ったお金の一部の返金を受けているだけともいえます。そしてそこから断続的に家賃を下げたり、契約解除を行ったりすれば、利益を確定できます(注:主語はレオパレス21)。 また、レオパレス21は自らのアパートの仲介も行っていたわけですから、建設地における賃貸需要も当然、分かっているはずです。それにもかかわらず近隣に何棟もの自社アパートを建設し、それらが競合するのを承知の上で数年で家賃の減額や借り上げ解除を迫るというのは、あらかじめスキームとして計画されたと疑われても仕方ありません。 その他に、管理面のトラブルもあります。2017年8月、静岡、岐阜、愛知などにアパートを所有するオーナー29人が、「レオパレス21が契約通りに修繕を行っていない」として、修繕契約の無効および支払った修繕費計1億4700万円の返却を求める訴訟を起こしています。 このオーナーたちは、レオパレス21と一括借り上げの契約を結んだ上、別途締結した修繕契約に基づいて、月々10万円ほどの修繕費を賃料から差し引くかたちで支払っていました。 訴えによれば、屋根の塗り替えなど一定期間で行うべき修繕がほとんど行われていなかったといいます』、「月々10万円ほどの修繕費」を集めておきながら、「屋根の塗り替えなど一定期間で行うべき修繕がほとんど行われていなかった」とは悪質だ。
・『投資家には管理会社の見極めが求められる  建物の修繕も、その実際の頻度や実施内容を見れば割高と思えるような設定をしている管理会社はいくつもありますが、訴訟にまで発展しているということは、おそらくオーナーからの度重なる修繕要求にもレオパレス21側が応じなかったのでしょう。 もし、これらすべてが真実であるとするなら、レオパレス21は投資家が関わってはいけない悪徳業者の一つであると言わざるを得ません。 そして管理面での訴訟は、他の管理会社でも同様に起こり得ることです・・・』、「投資家には管理会社の見極めが求められる」、とはいっても、見極めができないよう素人にまで客層を広げたことは罪深い。

次に、10月13日付け東洋経済オンライン「レオパレス、スポンサー決定でも茨の道の理由 賃料減額交渉、資金支援は金利14.5%という重荷」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/380801
・『建築した賃貸アパートの施工不良が発覚したレオパレス21。9月末にスポンサーが決まったと発表されたが、地に墜ちたブランドイメージ再生の足がかりは、いまだつかめていない。 そのレオパレスは10月9日、注目すべき数字を発表した。9月時点の入居率は78.09%にとどまったのだ』、興味深そうだ。
・『目標入居率の達成は絶望的に  同社のビジネスモデルは、賃貸アパートの貸し主(オーナー)から賃貸物件を一括して借り上げ、入居者に転貸するサブリース業だ。オーナーにまとめて固定賃料を支払っているため、入居者が一定数を下回ると、オーナーに支払う賃料が入居者から受け取る賃料を上回る「逆ザヤ」状態になる。損益分岐点となる入居率は80%で、それを下回ると現金の流出が続くことになる。 2021年3月期は施工不良問題の影響に加えて新型コロナウイルスが直撃。賃貸アパートをまとめて借り上げる法人向け需要がふるわない。頼みの綱の外国人需要も蒸発し、5月に80%を割り込んだ入居率は8月には78.18%と過去最低を更新し、9月はそれをさらに下回った。 同社経営企画部の竹倉慎二部長は「足元では法人契約は戻ってきている」というが、2021年3月期の目標として掲げた平均入居率81.63%(2020年3月期実績は80.78%)の達成は絶望的な状況だ。 資材や人件費の高騰、自治体との工事計画の調整も遅れ、補修工事も遅々として進まない。9月末に公表した2020年4~6月期決算では当期純損失として141億円を計上し、118億円の債務超過に転落した。 レオパレスは1000人規模の希望退職を募ることでコストを削減。保有不動産の売却によって現金の確保を急ぐが、債務超過の解消のためには、とにもかくにもスポンサー支援が不可欠だった』、なるほど。
・『金利14.5%で資金調達  そんな中、4~6月期決算と同時に公表されたのが、アメリカの投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」による合計572億円にのぼる資金支援だった。 具体的には、普通株の割り当てで約120億円を調達し、新株予約権をつけて300億円の融資を受ける。さらに子会社の太陽光発電会社レオパレス・パワーの優先株を発行し、150億円を調達する。調達した資金は、補修工事に340億円、子会社の借り入れ返済に134億円、社債返還に65億円を充てるという 驚くべきはその資金調達コストの高さだ。300億円の新株予約権付き融資の金利は、利息制限法の上限(15%)に近い年率14.5%だ。一定の入居率達成で年率10%に軽減されるとはいうものの、市場金利が0%に張りつく時代にあって法外な金利となっている。 子会社の150億円の優先株も最大7%の配当を支払うことになっており、年間で最大54億円もの収益圧迫要因となる。 そもそも債務超過の解消や子会社の借入金返済は、普通株の発行や子会社による優先株発行で実現できる。 不可思議なのは300億円の融資の必要性だ。借金の押し売りにも見えるが、レオパレスは「資金需要はいろいろなものが想定されるので……」(竹倉経営企画部長)と口を濁す』、「新株予約権付き融資の金利は・・・年率14.5%だ」、「優先株も最大7%の配当を支払うことになっており、年間で最大54億円もの収益圧迫要因」、とは本当に重い負担だ。「300億円の融資」の必要性は確かに不明だ。
・『フォートレスの正体とは  さらに、フォートレスはレオパレス・パワーの優先株を普通株に転換して、同社を手に入れることができる。レオパレス・パワーは賃貸アパートの屋上に太陽光パネルを置く売電事業を手掛けており、2020年3月期は4億4000万円の最終利益をあげている。 SMBC日興証券の田澤淳一シニアアナリストは、「(レオパレス・パワーから)あがってくる利益はファンドがすべて吸い取るということ。それでも(スポンサー候補がレオパレス側に示した)複数の提案の中で、これが唯一成立した条件だった」と解説する。 ある金融関係者も「レオパレスをつぶすわけにはいかなかった。施工不良は他社にもあり、国の監督責任も問われることにもなる。この低金利の中、地銀がレオパレスのオーナーに貸し込んでいるアパートローンは、2兆円ではきかないのではないか」と話す。 レオパレスにこのような過酷な条件を課すフォートレスとはいったいどんな存在なのか。 同社はニューヨークを本拠とする投資ファンドで、世界がリーマンショックにあえいでいた2009年から日本における不動産投資事業を本格化させた。 2017年にはソフトバンクの傘下に入るが、同年、全国10万6000戸にのぼる公営住宅不動産(旧雇用促進住宅)を取得。リフォームして、最低賃料2万円台をうたう「ビレッジハウス」として運用している。そのビレッジハウスの約5万戸で「複雑なリノベーション工事を実施・管理し、稼働率を約2倍にした」という。 法人契約が6割のレオパレスと、中低所得者中心のビレッジハウスでは入居者層が異なり、「賃貸営業を一緒に行うとシナジーも期待できる」(前出の田澤シニアアナリスト)という』、「地銀がレオパレスのオーナーに貸し込んでいるアパートローンは、2兆円ではきかないのではないか」、これでは「レオパレス」が万一、破綻した場合、「2兆円」超が宙に浮くことになり、「地銀」や「オーナー」は地獄に追い込まれることになる。
・『賃料減額要求がやってくる  だが、レオパレスの入居率を改善させるには適正な賃料設定が欠かせない。つまり賃料の減額だ。これは賃貸アパートのオーナーにとっては不利益になる。 レオパレスをはじめとするサブリース会社の多くは、オーナーに対して「10年間賃料固定」などとアピールしてきた。しかし、法的には10年契約の途中でも賃料を減額することが可能で、リーマンショック後、オーナーに賃料の減額や解約を突然通告するケースが続発。全国で賃料減額分の返還を求める訴訟も頻発した。 レオパレスは2011年ごろから契約を10年固定から2年固定に切り替える交渉を進め、その過程でオーナー側とのトラブルも発生した。いまでも数件が係争中だという。 同社は「2021年3月までは施工不良問題を理由に賃料の減額はしない」とオーナーに約束した。逆に言えば、2021年4月以降は、更新時期が到来した契約から「相場にあわせた賃料」(レオパレス)に順次変更されることになる。改定水準は不動産鑑定会社による客観的なものになるというが、賃料の実勢を考えると、大半の物件オーナーは減額を迫られるだろう。 「経年劣化や周辺環境にあわせて賃料が下がるのは当たり前」(都内のオーナー)という声もあるが、説明の過程で再び「サブリース問題」を抱えることは、もはや許されない。一方で、国土交通省は「(スポンサー決定で)局面は変わった。補修工事は早期に完了させるべきだ」(幹部)とする。 多額の金利負担に耐えながら賃料の見直しを進め、入居率を上げる。そして、補修工事を早期に終わらせる。スポンサーの資金支援を得て束の間の安息を得ても、レオパレスは結局「茨の道」を歩むことになる』、まずは、当面の「賃料」「減額」交渉に注目したい。

第三に、10月18日付けYahooニュースがライターの吉松こころ氏によるAERAdot記事を転載した「経営危機のレオパレス、500億円超の“救いの手”も…違法建築の補修「1千億円はかかる」の声〈AERA〉」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1def571bb4c913537fe7d00624d28a8a747b76eb?page=1
・『違法建築問題で経営危機のレオパレスを、ソフトバンク系のファンドが救済する。倒産もささやかれる中でぎりぎりで踏みとどまった形だが、まだまだ予断を許さない状況であることには変わりないようだ。AERA 2020年10月19日号では、レオパレスの現状を取材した。 全国的な違法建築問題をきっかけに経営難に陥っていた賃貸住宅大手のレオパレス21に、救済の手がさしのべられた。同社は9月30日、ソフトバンクグループ子会社の米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」から総額572億円の出資と融資を受けて経営再建を目指すと発表した。 レオパレスは6月5日、2020年3月期決算で802億円の純損失を計上。その後1千人以上の人員整理を公表したほか、自社株を相次ぎ売却したり、保有するホテルや賃貸住宅を簿価の半額程度で「投げ売り」したりと現金をかき集めている様子が明らかとなり、倒産の噂がささやかれる中での支援決定だった。 9月30日に発表した4~6月期決算によると、同社は6月末時点で約118億円の債務超過に陥っていた。だがファンドからの第三者割当増資で約119億円の出資を受け入れ、300億円を借り入れるほか、子会社にもファンドの出資を受け入れるなどして、債務超過を解消できるという。まさに土俵際で踏みとどまった形だ』、「自社株を相次ぎ売却したり、保有するホテルや賃貸住宅を簿価の半額程度で「投げ売り」したりと現金をかき集めている」、そこまでやっていたとは初めて知った。
・『オーナーとの契約標的  レオパレスは今後、ファンド主導で経営改善を進めることになる。不動産とファンドに詳しいコンサルタントの西村明彦さんは、改革は短期決戦とみる。 「ファンドの目的は買った株式の価値を上げ、売って利益を得ること。基本は1~2年、長くても3年で結果を出します」 ファンド側がすぐにでも着手すると考えられるのが、優良物件の選別だ。優良物件とは、入居率がよく安定して家賃が入ってくる物件や、大手法人が社宅にしている物件。そうではない物件は収益性が低い不良物件と見なされることになる。 レオパレスの場合、物件は各地のオーナーが建設・保有し、レオパレスが一定額の家賃収入を保証する「サブリース」という仕組みをとっている。オーナーにとっては入居の有無にかかわらず毎月一定の金額が入ってくるため、ローンを組んで賃貸住宅を建てるケースが多い。 だが今回、ファンド側は不良物件のオーナーに対して家賃保証の大幅な減額を要求するとみられる。応じなければ家賃保証の終了に追い込むこともあり得る。西村さんは「手慣れたファンドマネジャーたちによって、家賃減額交渉は一気に進むでしょう」と語る。 レオパレスの4~6月期の営業損益は68億円の赤字。最大の理由は入居率の低さだ。物件全体の入居率は79.43%。駅から遠い、近くに企業や大学などがないなどそもそも需要が少ない物件も多い上、違法建築問題が追い打ちをかけている。一般的にサブリースで家賃保証を行う側(この場合はレオパレス)が利益を得られる損益分岐点は入居率80%とされる。経営再建へ、入居率引き上げも極めて大きな課題だ』、「手慣れたファンドマネジャーたちによって、家賃減額交渉は一気に進むでしょう」、「オーナー」にとっては大変だ。
・『340億円で物件改修  だが、入居率を改善させるには、レオパレス信用不振のきっかけとなった違法建築問題の解決抜きには語れない。 同社によると、明らかな不備がある賃貸住宅は全国に1万3626棟あり、改修工事が完了しているのはその7.7%にあたる1055棟にすぎないという。上記以外にも1万6457棟で小屋裏の界壁(部屋と部屋を仕切る壁)などに軽微な不備が確認されている。 これらの改修を請け負うはずの施工会社が、レオパレスの信用不安から仕事を受けたがらなかったことも進捗が遅れている理由の一つ。工事が終わらず入居者募集を保留している部屋は、7月末時点で5万室に上る。これはレオパレスが管理する約57万室の8%超にあたる。 ファンドから調達した資金のうち、340億3300万円は「界壁等の施工不備に係る補修工事費用」として使用される。これにより工事が進むことが期待されるが、内部事情に詳しい元幹部からは「補修箇所は一律でなく様々なタイプがあるため、費用は1千億円はかかるだろう」との声も聞かれ、なお予断を許さない状況だ』、「費用は1千億円はかかる」ようなことでもなれば、大変だ。「レオパレス」からはまだまだ目が離せないようだ。
タグ:東洋経済オンライン yahooニュース AERAdot レオパレス問題 (その2)(レオパレス「30年保証」裏付けた酷いアパートの次なる真相、レオパレス スポンサー決定でも茨の道の理由 賃料減額交渉 資金支援は金利14.5%という重荷、経営危機のレオパレス 500億円超の“救いの手”も…違法建築の補修「1千億円はかかる」の声〈AERA〉) 幻冬舎GOLD ONLINE 藤本 好二 「レオパレス「30年保証」裏付けた酷いアパートの次なる真相」 「30年一括借り上げ保証」レオパレスの罪 「レオパレス21」訴訟で明らかになった、管理会社の闇 兵庫県、埼玉県…続々と判明したレオパレス21の不備 「手抜き工事」「手抜き管理」も存在する 「30年一括借り上げ」でも利益を上げていたカラクリは 「月々10万円ほどの修繕費」を集めておきながら、「屋根の塗り替えなど一定期間で行うべき修繕がほとんど行われていなかった」とは悪質だ 投資家には管理会社の見極めが求められる レオパレス、スポンサー決定でも茨の道の理由 賃料減額交渉、資金支援は金利14.5%という重荷」 「レオパレス、スポンサー決定でも茨の道の理由 賃料減額交渉、資金支援は金利14.5%という重荷」 目標入居率の達成は絶望的に 9月時点の入居率は78.09% 金利14.5%で資金調達 フォートレス・インベストメント・グループ 合計572億円にのぼる資金支援 300億円の新株予約権付き融資の金利は 年率14.5%だ 150億円の優先株も最大7%の配当 年間で最大54億円もの収益圧迫要因 フォートレスの正体とは 地銀がレオパレスのオーナーに貸し込んでいるアパートローンは、2兆円ではきかないのではないか 「レオパレス」が万一、破綻した場合、「2兆円」超が宙に浮くことになり、「地銀」や「オーナー」は地獄に追い込まれることになる 賃料減額要求がやってくる 法的には10年契約の途中でも賃料を減額することが可能 リーマンショック後、オーナーに賃料の減額や解約を突然通告するケースが続発。全国で賃料減額分の返還を求める訴訟も頻発 吉松こころ 「経営危機のレオパレス、500億円超の“救いの手”も…違法建築の補修「1千億円はかかる」の声〈AERA〉」 802億円の純損失 1千人以上の人員整理 自社株を相次ぎ売却したり、保有するホテルや賃貸住宅を簿価の半額程度で「投げ売り」したりと現金をかき集めている 6月末時点で約118億円の債務超過 118億円の債務超過 オーナーとの契約標的 手慣れたファンドマネジャーたちによって、家賃減額交渉は一気に進むでしょう 340億円で物件改修 補修箇所は一律でなく様々なタイプがあるため、費用は1千億円はかかるだろう
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日産・三菱自・ルノー問題(その3)((日産が巨額赤字 「大リストラ計画」にみる猛省 生産能力2割減 日米中に経営資源を集中、日産がシャープよりも「悲惨な末路」をたどりかねない根拠、「日産に巨額税金投じる」政府の怪しすぎる挙動 なぜ一企業に1300億円もの政府保証するのか?) [企業経営]

日産・三菱自・ルノー問題については、2018年4月17日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)((日産が巨額赤字 「大リストラ計画」にみる猛省 生産能力2割減 日米中に経営資源を集中、日産がシャープよりも「悲惨な末路」をたどりかねない根拠、「日産に巨額税金投じる」政府の怪しすぎる挙動 なぜ一企業に1300億円もの政府保証するのか?)である。なお、タイトルに、三菱自を加え、「VS仏政府」はカットした。

先ずは、5月30日付け東洋経済オンライン「日産が巨額赤字、「大リストラ計画」にみる猛省 生産能力2割減、日米中に経営資源を集中」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/353597
・『「2年ほど前から拡大路線を修正してきたが、足元の700万台の門構え(生産能力)に対して販売は500万台。この状態で利益を出していくことは困難と言わざるをえない」 5月28日、オンラインでの2019年度決算会見に臨んだ日産自動車の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は苦渋の表情でそう語った』、「日産」は大丈夫なのだろうか。
・『部品メーカーからの「上納」はもう限界  同日発表した2020年3月期(2019年度)の最終損益は、6712億円の赤字(前期は3191億円の黒字)に転落した。固定資産の減損などの構造改革関連費用計6000億円を計上したほか、新型コロナウイルスの感染拡大による販売減少が響いた。赤字額はくしくも、1990年代後半に経営危機に陥った際にカルロス・ゴーン最高執行責任者(COO、当時)の下で経営再建を進めていた2000年3月期(6843億円)とほぼ同水準だ。 ゴーン氏主導の再建計画「日産リバイバルプラン(NRP)」では、国内の完成車工場3拠点を閉鎖するなどの大ナタを振るった。傘下部品メーカーの保有株を売却して「系列解体」を断行。部品の購買コストを3年間で20%削減するため、取引停止も辞さない構えで各部品メーカーに厳しい値引きを強いた。それを原資に、日産はV字回復を実現した。 しかし、今回の危機は当時とは事情が異なる。日産からの値引き要請はほかの自動車メーカーと比べて苛烈であることは業界内では有名だ。それに加えて近年の日産の業績不振によって、取引が多い部品メーカーは疲弊しきっている。 ある部品メーカー幹部は「生産台数が右肩上がりの時代だったら値引きに応じることで、日産も部品メーカーも成長してお互いにメリットがあった。でも、今ではこちらから日産に利益を還元できるだけの力がもう残っていない」と話す。 そのため、かつてのように部品会社への苛烈なコスト削減要求は難しく、日産が再建に向けて取り得る選択肢は限られる。最大の手段は自らの身を切ること。具体的には生産能力と人員削減による固定費カットだ。 今回の構造改革計画「NISSAN NEXT」では、ゴーン時代の拡大路線によって負の遺産となった過剰設備の整理に本格的に取り組む。世界の生産能力は現状から2割削減し、2023年度には年間540万台(600万台まで変動可能)とする。 インドネシア工場(生産能力25万台、調査会社マークラインズ調べ)の閉鎖を決めたほか、スペインのバルセロナ工場(生産能力21万台、同)も閉鎖の方向で現地政府や労働組合などとの協議を始めた。 「人員削減の規模は個別協議が必要なので、今日は公表を控える」(内田社長)としたが、2019年7月に発表した1万2500人削減に大幅に上積みされることは確実だ。車種数を現在の69から55以下に減らすことなどと合わせ、固定費を2023年度に3000億円削減(2018年度比)する』、「ゴーン氏主導の再建計画「日産リバイバルプラン(NRP)」時の赤字と同規模とはいっても、ゴーンの時には、目一杯、リストラ費用を積んだが、今回はどこまで積んだのだろう。
・『「全方位戦略」から決別  「日産のいまの実力値に合わせて、展開地域も開発も切るところは切っていくしか道はない」。ある日産幹部は無理な拡大路線を突き進んだ過去を反省したうえで、そう強調する。 日産は今後、ホームマーケットである日本と、販売シェアが高い北米と中国に経営資源を集中投入する。一方で、欧州や東南アジア、南米など販売が弱い地域では、撤退こそしないものの、事業を大幅に縮小する。小型車や一部の次世代技術の開発は提携パートナーであるフランスのルノーに任せるなど、今後の成長投資も思い切って選別する。 日産はこれまで世界中に広く事業展開し、デパートのように軽自動車から小型商用車まで幅広い車種を自社開発して販売する「フルラインナップメーカー」だった。だが、実力以上のモデル数を抱えるあまり、経営資源が拡散して開発に遅れをとった結果、魅力的な新車を投入できずに販売で苦戦するようになった。 今回、そうした全方位戦略から事実上決別し、身の丈にあった中規模メーカーとして生き残りを目指す道を選んだわけだ。カギを握るのが、ルノーと三菱自動車との3社連合(アライアンス)の徹底活用だ。 決算発表の前日にあたる5月27日に発表されたアライアンス中期計画の肝は、3社間でのかなり踏み込んだ役割分担にある。地域や技術、車種ごとに強みがある1社を「リーダー」、サポート役に回る2社を「フォロワー」と位置づけ、研究開発での重複をなくしたり、生産を集約したりしてコストを削減する枠組みだ。 例えば、中型車と電気自動車(EV)の開発は日産がリーダーとなって担い、開発した新車をほかの2社に「姉妹車」として提供する。一方で、小型車開発はルノー、プラグインハイブリッド(PHV)車開発は三菱自に任せ、日産は得意とする分野に人材と資金を集中させる。 CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる次世代技術の開発でも同様だ。自動運転技術は日産、コネクテッドの主要部分はルノーが担うことになる』、「3社間でのかなり踏み込んだ役割分担」はかなり明確になったようだ。
・『ライバルと同水準の研究開発費を確保  日産の研究開発費は潤沢とはいえない。2020年3月期の開発費は5400億円程度で、トヨタ自動車の1.1兆円、ドイツのフォルクスワーゲンの1.8兆円に比べて大きく見劣りする。 ルノーのジャンドミニク・スナール会長は「アライアンスは数年後には、はるかに効率性を高めて、業界のモデルになれる」と自信を示した(アライアンス記者会見のインターネット動画より引用) 一方、ルノーの研究開発費は4400億円、三菱自は1300億円で、3社合わせれば1.1兆円を超える。単純合算すると、数字上はライバルと同じ水準になる。 加えて、3社は開発のすみ分けや、車体を構成するプラットフォーム(車台)やアッパーボディ(上屋)の共通化の加速などによって、1車種あたりの開発費と設備投資額を最大で40%削減できると試算する。 ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストは「今回、3社が明確に担当を決めたことで主導権争いに時間を取られるリスクを減らせられる。現場の社員もかなり動きやすくなるはずだ」と評価する。 振り返れば、日産側にはルノーとの協業を巡って苦い記憶がある。 それはゴーン体制で2014年から始まった、開発や生産、人事、購買などの主要な機能を両社で一体化する取り組みだ。日産社内では「機能統合」と呼ばれた施策で、意思決定を統一してアライアンスの効率性を高めることが表向きの狙いだったが、責任の所在が曖昧だった結果、新型車の投入や技術の採用などを巡って両社間で主導権争いが頻発。日産の開発現場にもルノーからの横やりが入るようになった。 さらに、当時はルノーの筆頭株主であるフランス政府が両社の経営統合を要求し始め、それが両社間の火種として燻り始めていた時期だった。「機能統合は将来的な経営統合への布石だった」(当時の日産幹部)ため、経営の独立を守りたい日産の日本人幹部を中心にルノーとゴーン氏に対する不信感が募っていった。 2018年11月にゴーン氏が逮捕されて以降、ルノーが日産に経営統合を公然と要求し、それを拒否する日産との間で応酬が続いた。一時は提携解消が取りざたされる程にまで関係が悪化した』、「「今回、3社が明確に担当を決めたことで主導権争いに時間を取られるリスクを減らせられる。現場の社員もかなり動きやすくなるはずだ」との評価が、その通りにいくことを期待したい。
・『呉越同舟の中で、エゴをどう抑えるか  そうした経緯がある両社が「経営統合の議論は当面棚上げ」(日産幹部)して、再び手を取り合った。その日産幹部は「両社とも切羽詰まっていて、統合の議論にエネルギーを割くわけにはいかない。立て直しにはアライアンスを活用するのが早道で、少なくとも現時点では思惑が一致している」と言う。 ルノーのジャンドミニク・スナール会長も5月27日のアライアンス記者会見で、「経営統合の計画はない。統合しなくても効率化を追求できる」と言い切った。 それほど各社の経営状況は危機的だ。コロナ危機以前から3社の業績は悪化しており、ルノーは2019年12月期に10年ぶりの最終赤字に転落。三菱自動車も2020年3月期に258億円の最終赤字を計上した。一時は世界トップだった3社合計の販売台数も下降線をたどる。2019年は前年比60万台減の1015万台となり、世界3位に転落した。 アライアンスの中で争いがあっても、絶対的な君主として有無を言わせずに差配してきたゴーン氏はもういない。3社の経営の一体化がさらに進むことになる今回の協業策を機に、ルノー側がいずれ経営統合の話を持ち出し、対立が再燃する可能性もある。日産も含めて瀬戸際に立たされている3社が、「呉越同舟」の中でどうエゴを抑えてアライアンスを機能させるのかが問われている』、「瀬戸際に立たされている3社」の状況がお互いの争いを抑えているとはいえ、やはり薄氷の上にあるようだ。

次に、9月7日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの井上学氏による「日産がシャープよりも「悲惨な末路」をたどりかねない根拠」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/278338
・『経済産業省がホンダと経営危機に陥っている日産自動車の経営統合を両社に働きかけたことが話題になった。結局は両社が取締役会にかける前の段階で断り、御破算になったという。経産省が仕掛けた両社の経営統合案に、関係者からは「あまりに不見識。よくもこんな提案を出したものだ」と驚きの声があがっている。 そもそも日産に提案したところで、親会社の仏ルノーが「うん」と言わなければ話は1ミリも進まない。日産があっさり断ったことから、経産省によるルノーへの根回しはなかった可能性が極めて高い。それだけに「まるで子供のおつかいレベルの交渉」とも揶揄されている』、経産省も焼きが回ったようだ。
・『ホンダと経営統合すれば共倒れの恐れも  ホンダ関係者も「巨額の赤字を抱える日産を受け入れる体力など、ホンダにはない。共倒れになれというようなものだ」と突き放す。救済する側のホンダはともかく、される側の日産にすら「門前払い」で断られた経産省。なぜ、そこまで無理筋の経営統合を働きかけたのか。そこにはルノーの深刻な業績悪化があった。 ルノーが2020年7月30日に発表した1-6月期の純損益は72億9000万ユーロ(約9000億円)と過去最高の巨額赤字に。元凶は連結子会社である日産の業績不振だ。ルノーが計上した巨額赤字のおよそ3分の2に当たる48億ユーロ(約5950億円)が日産の赤字によるものだ。 新型コロナの感染拡大は収まるどころか勢いを増し、少なくとも年内は現在の苦境が続くだろう。そうなればルノーの2020年12月期決算は推定で150億ユーロ(約1兆8000億円)もの純損失に陥る。日産よりも規模が小さいルノーにとっては、経営破綻レベルの巨額赤字だ。 同社の筆頭株主であるフランス政府は、6月に50億ユーロ(約6200億円)の融資枠を保証した。ルノーの経営危機を回避するための措置だが、日産の赤字で融資枠分の支援が吹っ飛んだ格好だ。カルロス・ゴーン前会長時代に日産との経営統合を執拗に求めてきたフランス政府だが、今はルノー最大の経営懸念となっている日産の切り捨てを真剣に検討しているはずだ。 日産との経営統合推進の急先鋒だったジャン・ドミニク・スナール会長も、今年に入ってその言葉を「封印」している。5月に発表した仏ルノー、日産、三菱自動車の新たなアライアンス戦略では、従来の商品計画や開発の一体化が見直され、各社が開発した技術を相互供与する「業務提携」レベルにまで後退した。 グループで一本化して開発に取り組むべき次世代エネルギー車の本命である電気自動車(EV)も、ルノーと日産がそれぞれ担当することになった。すでにルノー・日産グループの「解体」に向けた動きは始まっている。ルノーが日産との共倒れを回避するには、早急に日産を切り離す必要がある。早い話が43.4%を保有する日産株の売却だ』、「日産の切り捨てを真剣に検討しているはずだ」とあるが、3社間の役割分担はどうなるのだろう。「ルノー」も単独での生き残りは可能なのだろうか。
・『日産を買いたがる会社はあるのか  問題は売却先。今、どん底の日産を買いたがる会社があるとすれば、その筆頭は中国の自動車メーカーだろう。日産が持つ中国と米国の自動車工場と生産技術は、中国車メーカーにとっては台数ベースで世界最大の自国市場を押さえる上でも、金額ベースで世界最大の米国市場で展開する上でも有用なリソース(経営資源)だからだ。) 当然、米中市場が「生命線」となっている日本車メーカーにとっては、日産が中国車メーカーに買収されれば強力なライバルが登場することになる。経産省が日産とホンダに経営統合を働きかけたのも、ルノーが日産を中国企業へ売却するのを警戒しているからだ。 いずれ日産も、シャープが台湾の鴻海精密工業(フォックスコングループ)に買収されたのと同じ道をたどるだろう。シャープはまだ自社で身売り先を選ぶことができた。一方、日産の売却先を決めるのはルノーだ。ルノーと同社筆頭株主のフランス政府は、最高額を提示した企業に売却するだろう。たとえ望まない会社であったとしても、日産には拒否する権利はないのだ。「その日」は、着実に近づいている』、「ルノーと・・・フランス政府」はそこまで考えているのかはともかく、予断を許さない状況のようだ。

第三に、9月16日付け東洋経済オンラインが掲載した経営コンサルタントの日沖 健氏による「 「日産に巨額税金投じる」政府の怪しすぎる挙動 なぜ一企業に1300億円もの政府保証するのか?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/374852
・『今月、日本政策投資銀行が5月に決めた日産自動車への融資1800億円のうち、1300億円に政府保証をつけていたことが明らかになりました。これは将来、もし日産からの返済が滞れば8割を国が補塡し、実質的に国民が負担することを意味します。 大企業への融資に対する政府保証は、今回が初めてではありません。リーマン・ショック後の2009年、経営再建中の日本航空にも行われました。そのときは、同じく日本政策投資銀行が約670億円を政府保証つきで融資しましたが、翌年日本航空が経営破綻し、約470億円の国民負担が生じています。 今回の日産への政府保証の額は、日航を大きく上回り、史上最大の規模。もし返済が滞れば、国民負担が生じるとともに、16日に発足される菅政権を揺るがす事態に発展することも考えられます。 日産への政府保証の影響について考えてみましょう』、「1300億円に政府保証をつけていた」、初耳で驚いた。
・『日産と日航の「最大の違い」  今回の日産への政府保証は、2009年の日航と対比されます。政府が大企業を救済するという点では共通していますが、大きな違いがあります。最大の違いは、国民目線で見た「納得感」です。 まず、政府が公的資金を投入して民間企業を支援するというとき、事業の公益性が問題になります。破綻前の日航は、戦後長くナショナルフラッグとして運輸省(現・国土交通省)と一体となって、日本の航空行政を担ってきました。良い悪いは別にして、半官半民というより準国営の企業でした。 一方、日産は、トヨタ・ホンダなど多数のメーカーがひしめく自動車業界の1プレイヤーにすぎません。車離れで自動車は供給過剰ですし、日産にしか作れないという特別な車も存在しません。日産は、14万人近い従業員が働いているものの、日航のような「なくなっては困る」という企業ではないのです。 次に、国民感情として、純然たる日本企業なのかどうかも問題になります。日航は、政府が出資する日本企業でした。 一方、日産の筆頭株主はフランスのルノーで、出資比率は43.4%。その親会社のルノーの筆頭株主はフランス政府です。日産はフランス資本の外資系企業で、日本政府よりもフランス政府の影響を強く受けています。日本国民が納めた税金を使って外資系企業を支援することに、国民は強い抵抗感を覚えます。 また、経営姿勢も問われます。以前の日航は、組合が強かったこともあって、破綻前に大規模なリストラは行われませんでした。 対する日産は、1999年にカルロス・ゴーンがトップに就任した後、リバイバルプランで国内工場の閉鎖や系列破壊などリストラを断行しました。企業としては復活しましたが、多くの国内雇用が失われました。これまで雇用維持にも税収増にも貢献してこなかった日産に、「もっと雇用が減ったら困るから」という理由で税金を投入するのは、合理的ではありません。 経営姿勢ではもう一点、カルロス・ゴーン元CEOの逮捕・国外逃亡や日本側の経営陣の姿勢に厳しい視線が注がれています。周知の通りカルロス・ゴーンは、日産を食い物にして蓄財に励み、揚げ句の果てには日本の司法の手を逃れてレバノンに逃亡しました。 こうしてみると、同じように政府保証を受けたといっても、国民の「まあ致し方ないかな」という納得感は、日航と日産では雲泥の差があるのです』、「納得感は、日航と日産では雲泥の差がある」、同感である。
・『「日産の債務保証」を政府が引き受ける理由  今回、政府が日産の債務保証を引き受けたのは、コロナショックに直面し、日産の倒産、部品メーカーなどの連鎖倒産、それらによる大量の失業発生、という危機的な事態を懸念してのことでしょう。日本政策投資銀行が融資に応じないと日産の資金繰りが厳しくなる恐れがあり、日本政策投資銀行の判断で融資を決めたようです。 菅政権とすれば、資金援助で日産が立ち直り、融資が無事に返済され、数年後に「何事もありませんでした」という結末を迎えたいところ。 しかし、日産は本当に立ち直るのでしょうか。日産は、コロナの影響が2月、3月の実質2カ月しかなかった2020年3月期決算で大赤字を計上している通り、近年、そもそも危機的な経営状態に陥っています。 自動車業界はいまCASE(Connected(コネクテッド)・Autonomous(自動運転)・Shared & Services(シェアリングとサービス)・Electric(電動化))という100年に一度の大変革期を迎えています。 CASEの流れに乗った米テスラが大躍進し、この8月に株式時価総額でトヨタを上回りました。一方、流れに乗り遅れた自動車メーカーは、淘汰されつつあります。現在販売台数世界一のトヨタですら、安泰ではないと言われます。 かつて「技術の日産」と自他共に認めた日産ですが、ゴーン政権以降では短期の収益改善のためにコストダウンを優先し、研究開発など先行投資を怠りました。その結果、CASEへの対応で後手に回り、一部報道では親会社ルノーとともに、自動車業界で完全に「負け組」、淘汰される側とみなされています。 今回の資金援助で、日産はしばらく延命することができるでしょう。コロナが終息すれば、販売が上向くかもしれません。ただ、CASEに対応して抜本的な経営改革を進めないと、グローバル競争に敗れ、数年後に1998年のような経営危機を再び迎える可能性があります』、「抜本的な経営改革」は生き残りの必須の条件だ。
・『もし日産が破綻したらどうなる?  もしも日産が破綻したらどういう影響があるでしょうか。雇用・地域社会・金融市場に悪影響が及ぶことが想定されますが、それだけではありません。菅新首相の政権運営、ひいては政治生命を脅かすことも考えられます。 菅義偉氏は、安倍内閣の官房長官として今回の政府保証に一定の関与をしたと思われます(2018年にゴーンが逮捕されたときは、なぜか日産の川口均専務執行役員が菅氏に陳謝に訪れました)。 国民負担が発生したら、結果責任を問われます。もちろん、そうならないように菅氏は、あらゆる手を打つはずです。日産の本社は横浜市西区で、菅首相の神奈川2区のお膝元。菅氏は何としても破綻を回避しようと、追加で資金援助をするでしょう。すると、ますますこの問題が巨大化し、泥沼化していきます。 仮に追加の資金援助によって日産が破綻を免れても、国民から総スカンの日産を救済すると、国民の猛反発を招き、選挙を戦えなくなります。つまり、日産問題で、菅氏の政治生命が脅かされる可能性があるのです。 また、日産が経営改革に成功して立ち直っても、問題は終わりません。他の大企業が経営危機に陥ったらどう対応するか、という大きな問題があります。 コロナの影響が長引いていることから、今後、中小・零細企業だけでなく、大企業でも経営難に陥ることが考えられます。日産を助けた手前、他の大企業から支援を要請されたら、政府は拒否しにくいことでしょう。経営が厳しくなると国に助けを求めるというのが当たり前になり、収拾がつかなくなります。「なぜ大企業だけ助けるんだ」という国民の反発も増します。 1998年の経営危機、ゴーン改革による復活、ゴーン逮捕と逃亡とこの20年以上、経済界にとどまらず社会の注目を集めた日産。2度目の復活劇を果たすのか、民主党政権を揺るがした日航のように、菅新政権を揺るがす「第2のJAL」になるのか、ますます目が離せません』、「日産の本社は横浜市西区で、菅首相の神奈川2区のお膝元」、「日産問題で、菅氏の政治生命が脅かされる可能性がある」、今後の展開が大いに注目される。
なお、三菱自動車では、益子修前会長が8月7日に突然退任、8月27日直後に心不全で死亡した。三菱グループが後任を送るのかも注目点だ、
タグ:死亡 東洋経済オンライン 三菱自動車 日刊ゲンダイ 益子修会長 日沖 健 日産・三菱自・ルノー問題 (その3)((日産が巨額赤字 「大リストラ計画」にみる猛省 生産能力2割減 日米中に経営資源を集中、日産がシャープよりも「悲惨な末路」をたどりかねない根拠、「日産に巨額税金投じる」政府の怪しすぎる挙動 なぜ一企業に1300億円もの政府保証するのか?) 「日産が巨額赤字、「大リストラ計画」にみる猛省 生産能力2割減、日米中に経営資源を集中」 部品メーカーからの「上納」はもう限界 「全方位戦略」から決別 3社間でのかなり踏み込んだ役割分担 ライバルと同水準の研究開発費を確保 今回、3社が明確に担当を決めたことで主導権争いに時間を取られるリスクを減らせられる。現場の社員もかなり動きやすくなるはずだ 呉越同舟の中で、エゴをどう抑えるか 井上学 「日産がシャープよりも「悲惨な末路」をたどりかねない根拠」 経済産業省がホンダと経営危機に陥っている日産自動車の経営統合を両社に働きかけた まるで子供のおつかいレベルの交渉 ホンダと経営統合すれば共倒れの恐れも 日産の切り捨てを真剣に検討しているはずだ 日産を買いたがる会社はあるのか 筆頭は中国の自動車メーカー 「 「日産に巨額税金投じる」政府の怪しすぎる挙動 なぜ一企業に1300億円もの政府保証するのか?」 日本政策投資銀行が5月に決めた日産自動車への融資1800億円のうち、1300億円に政府保証をつけていた 日産と日航の「最大の違い」 納得感は、日航と日産では雲泥の差がある 「日産の債務保証」を政府が引き受ける理由 CASEに対応して抜本的な経営改革を進めないと、グローバル競争に敗れ、数年後に1998年のような経営危機を再び迎える可能性があります もし日産が破綻したらどうなる? 日産の本社は横浜市西区で、菅首相の神奈川2区のお膝元 日産問題で、菅氏の政治生命が脅かされる可能性がある 三菱グループが後任を送るのかも注目点
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ソフトバンクの経営(その15)(過去最大の大赤字…ソフトバンクショックの「ヤバさ」を分析する 営業損失1兆円超えの衝撃、ソフトバンクG 巨額の上場株投資に見えぬ戦略 孫正義氏は膨らむ「軍資金」を何に使うのか、ソフトバンクGに株式非公開化が浮上 孫氏投資戦略の布石か) [企業経営]

ソフトバンクの経営については、4月3日に取上げた。今日は、(その15)(過去最大の大赤字…ソフトバンクショックの「ヤバさ」を分析する 営業損失1兆円超えの衝撃、ソフトバンクG 巨額の上場株投資に見えぬ戦略 孫正義氏は膨らむ「軍資金」を何に使うのか、ソフトバンクGに株式非公開化が浮上 孫氏投資戦略の布石か)である。

先ずは、6月10日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「過去最大の大赤字…ソフトバンクショックの「ヤバさ」を分析する 営業損失1兆円超えの衝撃」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73204?imp=0
・『ソフトバンクグループが過去最大となる1兆3646億円の巨額赤字を計上した。同社は資産売却などを進め、財務体質の改善を進めるとしている。一部からは今後を不安視する声も聞こえてくるが、経営が破綻する可能性は極めて低い。 その理由は、同社はすでに事業会社ではなく投資会社に近い事業形態になっているからである。投資会社は良くも悪くもコアとなる事業がないため、投資に失敗すれば、ポートフォリオが歯抜けになっていくだけである。 幸い、同社には通信というコア事業が残っており、一定のキャッシュフローを確保できている。資産売却などによって得た資金と、通信子会社が稼ぐ資金を使って、どこまでポートフォリオの解体を止められるのかが今後の焦点となるだろう』、興味深そうだ。
・『ソフトバンクはもはや投資会社  ソフトバンクグループは2020年5月18日、2020年3月期の決算を発表した。売上高は前期比1.5%増の6兆1850億円だったが、営業損益は1兆3646億円の赤字、最終損益も9615億円の赤字に転落した。2兆円の営業利益だった前期から一転し、過去最大の赤字決算である。 冒頭で説明したように、同社には通信事業というコア事業が存在しているものの、限りなく投資ファンドに近い事業形態となっている。今回、計上した損失についてもほとんどが投資事業の評価損といってよい。具体的にはソフトバンク・ビジョン・ファンド(いわゆる10兆円ファンド)が保有する、ウーバー(ライドシェア)、ウィーワーク(シェアオフィス)といった企業である。 一方で、同社は年間約1.1兆円の営業キャッシュフローを確保しているが、この大半は通信子会社であるソフトバンクが稼ぎ出したものである。投資先の評価損というのはキャッシュが流出したものではないので、同社がすぐに資金繰りに窮することはない。 一般的な事業会社の業績が悪化する時には、本業の事業がダメになり、赤字が発生してキャッシュが流出。資金を手当てできない場合には、資金繰りに詰まって倒産に至る。赤字そのもので倒産することはなく、企業が倒産する理由のほとんどが資金繰りである。 ところが投資事業が主体の場合、事業の構造がまるで異なっている。 コロナ危機のような事態が発生し、投資した企業の業績が悪化すると、投資先企業の資金繰りは厳しくなるが、投資した側は株価が下落して評価損が発生するだけで、資金面における直接的な影響はない。投資した企業の株式を担保に借入れを行い、さらに追加投資を行っている場合にのみ、一定水準以下に株価が下落すると破綻に至る。 ソフトバンクグループも多額の借入れを行っているが、利益を出している通信事業やアリババ集団といった優良な資産を保有しているので、これらの事業には十分な担保価値がある。2019年12月末時点において、同社が保有している株式の価値は29兆円となっており、純有利子負債は6兆円なので、すべての企業が一斉にダメにならない限り、同社が破綻するといった事態は考えにくい』、確かに「投資会社」で、本業でキャッシュフローを稼ぎ出しているので、抵抗力はありそうだ。
・『株を売って資金を捻出  だが、破綻する可能性が極めて低いからといって、今回の事態が、同社にとって軽微なのかというとそうではない。投資先企業の時価総額が減った分、他の投資先など価値が残っている資産を売却し、財務上、その穴埋めをしなければならない。 実際、同社は今回の巨額赤字を受けて、虎の子であるアリババ集団の一部株式を売却し(実際には先渡し契約)、1兆2500億円の現金を確保したほか、通信子会社であるソフトバンクの株式5%を売却し3300億円を調達している。 孫正義社長は、投資先企業について「15社が倒産し、15社がコロナの谷を飛んでいって成功する。残りの60社弱はまあまあの状況になるのではないか」と説明している。筆者はかつてベンチャーキャピタル・ファンドの運用に従事したことがあるが、孫氏の見通しはベンチャー投資としてはごく平均的な水準であり、取り立てて大きな問題があるわけではない。 だが、孫氏の見立てを現実が大きく下回り、投資先企業の破綻が増加すれば、そのたびに財務上の穴埋めが求められる。最悪のシナリオとしては、投資ポートフォリオが解体されてしまう可能性はゼロではない。すでに投資してしまった企業については、今からは対策の打ちようがないので、市場の推移を見守るしかないだろう。 冒頭でソフトバンクグループは限りなく投資会社に近づいていると述べたが、それでも同社には国内通信会社であるソフトバンクというキャッシュを稼げるコア事業が残っている。また、2020年4月には長年の懸案事項だった米通信会社スプリントとTモバイルUSの合併が完了し、いよいよ上位2社であるベライゾン、AT&Tと互角に戦える環境が整った。 スプリントとTモバイルUSは通信会社なので、日米という市場の違いはあるものの、国内通信会社であるソフトバンクと同業ということになる。両者を単なる投資先と見るか、ソフトバンクのコア事業のひとつとして見るのかについては見解が分かれるだろうが、少なくともソフトバンク・ビジョンファンドが投資しているシェアリング・エコノミー企業とは性格が異なるのは間違いないだろう。 最悪、投資ファンドの事業がうまくいかなくなっても、コア事業である通信事業を守ることができれば、事業会社としての存続が可能である』、「スプリントとTモバイルUS」の合併後の会社への保有比率は24%に低下、連結対象から外れた。
・『ジャック・マー氏退任の意味  孫氏は当初、通信事業を核に資金調達を進め、ビジョンファンドなどを通じて、シェアリング・エコノミー企業への投資を加速させ、次世代のネット・ビジネスにおける覇権を握るというシナリオを描いていた。 こうした次世代ネット・ビジネスの中核となる企業は、ウーバーとアリババだったが、アリババについては今後、どれほどのシナジー効果を得られるのか微妙な状況となってきた。その理由はアリババの創業者であるジャック・マー氏がソフトバンクグループの社外取締役から退くからである。 マー氏はアリババの創業者であり、同社が創業間もない時から孫氏が目をかけ、資金を投じて育成してきた。アリババが中国を代表するネット企業に成長したことで、ソフトバンクグループには巨額の含み益が転がり込み、これが同社の投資事業を支えてきた。つまりマーと孫氏は戦友ということになる。 だがマー氏は昨年、55歳の誕生日を期に第一線から退くことを表明した。教師出身のマー氏は「教育事業を手がけたい」と引退の理由を語っているが、額面通りに受け取る人はいない。中国共産党の権力闘争に巻き込まれたとの見方が有力であり、アリババが今後、どのような事業展開を見せるのか不透明な状況になっている。 またアリババも広範囲な投資を行っており、一部の事業ではソフトバンクグループと競合していることから、両社がタッグを組んで、共同でネット・ビジネスを展開するという状況にはなっていない。マー氏が引退宣言を行い、事業における利益相反も発生しているという現状を考えると、マー氏が社外役員を退くのは自然な流れといってよいだろう。 結果としてアリババは、ソフトバンクグループにとって単なる投資先であり、事業のパートナーではなくなることを意味している。今後はウーバーを核に、次世代のネット戦略をどう描くのかが注目される』、「アリババは、ソフトバンクグループにとって単なる投資先」になったのであれば、「次世代のネット戦略をどう描くのかが注目される」、その通りなのだろう。

次に、9月13日付け東洋経済オンライン「ソフトバンクG、巨額の上場株投資に見えぬ戦略 孫正義氏は膨らむ「軍資金」を何に使うのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/374927
・『たった3日で1兆円近い時価総額が吹き飛んだ。ソフトバンクグループ(SBG)の株価は9月9日までに前週末から10%あまり下落し、終値は5677円をつけ、2カ月ぶりの安値に落ち込んだ。 きっかけは9月4日、海外メディアが相次いでSBGによるアメリカIT企業株の巨額取引を報じたことだった。イギリスの大手紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によれば、SBGは株価上昇を見込み、過去数カ月でIT企業株の「コールオプション」(あらかじめ決められた価格で購入する権利)を40億ドル買い入れた。その目算は当たり、すでに約40億ドルの含み益が出ているという。これについてSBGの広報担当者は「個別の取引についてはコメントしない」としている』、「すでに約40億ドルの含み益が出ている」とはいえ、「上場株」に「投資」するとは奇策で、株価下落も頷ける。
・『8月に巨額の米国株投資が判明  コールオプションの買い手は、売り手に対し「プレミアム」と呼ばれる権利料を支払う。株価が値上がりすれば少ない投資額で多くの利益を生むことができる分、値下がりを受けて権利を放棄すれば、支払った権利料はすべて損失となる。ハイリスク・ハイリターンの取引手法だ。 IT企業が多くを占めるアメリカのナスダック総合指数は3月以降一貫して上昇を続けたが、9月3日からの3日間で約10%下落するなど調整局面に入った。先述の報道の通りに9月初旬までに40億ドルの含み益があったとすれば、大きく縮小している可能性がある。SBGの株が売られたのは、巨額の株取引に対し、アメリカ株市場の下落が影響するとみたからだろう。市場はSBGの投資スタンスに対して「NO」を突きつけた形だ。 SBGは2020年3月、過去最大規模となる最大2兆円の自社株買いや負債削減のため、最大4.5兆円に上る保有資産の売却・資金化(資産売却プログラム)を発表。その後、株主還元や財務改善が好感されて上昇を続けた。資産売却プログラムは当初、1年をかけて実行する予定だったが、中国アリババ集団株の先渡売買契約やアメリカのTモバイルUS株の売却などにより、8月までに4.3兆円分のメドを付けた。 こうして得た余剰資金の運用や資産の多様化を目的として、SBGは現在、アメリカの上場株への投資を強めている。すでに2020年4~6月にはSBG本体が1兆円超を上場株に投資し、約650億円の売却益を得ている。8月17日に規制当局へ提出された文書では、6月末時点でアマゾンやアルファベット(グーグルの親会社)、マイクロソフトなどアメリカ市場に上場するIT企業の25銘柄を保有(総保有額約36億ドル)していることが明らかになった。 アメリカ株に詳しいマネックス証券の岡元兵八郎チーフ・外国株コンサルタントは、「保有銘柄は王道な”ライトストック(正しい株)”が多い。さすが孫さんといったところ。単なるはやりではなく、今後5年、10年と上がっていく銘柄ばかりだ」と分析する。 現物株の投資に加えて、今回報じられたデリバティブ(オプション取引も含む金融派生商品)を駆使してさらなる利益を狙う様については「まるでヘッジファンドのようだ」と複数の市場関係者が口にする。 そこで関係してくるのが新たな投資子会社設立の動きだ。上場株の運用をSBGの主要事業とすべく、孫正義会長兼社長は8月の決算会見で投資運用子会社を設立することを発表した。会社側によれば、登記上の本社はアメリカで、運用業務はアブダビの拠点が担う。だが、誰がこの新会社のトップを務め、どれくらいの陣容で運用を行うかなど詳細は非開示だ。この新会社に対し、SBGは現金や保有資産を委託する』、「資産売却プログラム」により生じた「余剰資金の運用」や資産の多様化を目的として直ぐに「上場株」に投資するとは、「孫」氏らしいやり方だ。「投資運用子会社を設立」とは本腰が入っているようだ。
・『過去にもデリバティブ取引で多額の利益  孫氏はこの新会社の設立にあたり、「運用手法としては直接投資のほか、リスクを抑えるためにデリバティブも積極的に活用していきたい」と語っている。 実は、SBGによるオプション取引は今に始まったことではない。孫氏は8月の決算会見で、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが2019年1月に全株を売却したアメリカの半導体大手エヌビディア株の取引を例に、「プット(オプション)の買い」「コール(オプション)の売り」といったデリバティブ用語を交えて「結果的に数千億円の実現益を出せた」と胸を張った。 エヌビディアの株価は2018年9月末に281ドルだったが、仮想通貨のマイニング向けの半導体需要が急減したことなどにより、3カ月後の12月末には134ドルと半分以下に急落した。だが、SBGは「カラー取引」と呼ばれるデリバティブ取引で下落リスクを保全していた。これは株価の値下がりを見越して「プットオプション」(あらかじめ決められた価格で株を売却できる権利)を買い、値上がり益を放棄してコールオプションを売ることでプレミアム(権利料)収入を確保するというものだ。 今回の報道で明らかになったコールオプションの買いは、株価の値上がりを見込んで含み益を一段と増やそうとする投資行動だ。ただ、別の海外メディアの続報によると、SBGはコールオプションの売りも組み合わせ、株価下落時のリスクについても一定の保全しているもようだ。いずれにしても、デリバティブを組み合わせて推し進める巨額の上場株投資の先に孫氏が何を描いているかは見えてこない。 投資運用の新会社が設けた12年というファンド期間は、未上場株投資の「10兆円ファンド」であるビジョンファンドと同じ。SBGは「ビジョンファンドに並ぶ主要なエンティティ(事業主体)として位置づけている」としている。 SMBC日興證券の菊池悟アナリストは、「上場株投資の規模が大きくなれば、ナスダック指数と連動するファンドを買うのと変わらなくなり、投資家にとってSBG株を買う意義がわかりづらくなる」と指摘する。孫氏の目利きによる世界中のベンチャーへの投資を担うビジョンファンドと異なり、上場株投資は「なぜSBGがやるのか」という疑問が浮かぶ』、「疑問」には同感だ。
・『膨らむ投資の原資  そうした中、投資の原資となる現金は膨らむばかりだ。4.5兆円の資産売却プログラムにほぼメドをつけたうえ、8月28日には通信子会社ソフトバンク株約1.4兆円分の売却を発表した。さらに孫氏は傘下のイギリスの半導体企業、アームの株式(保有価値は約2.7兆円)の売却を検討し始めたことも認めている。 ビジョンファンドの投資損益は1年前に200億ドルあったが、直近では20億ドルと10分の1の水準まで減少した。2号ファンドも外部投資家を集められず、SBGの自己資金で運用している。ファンドを通じた海外ベンチャーの投資にかつての勢いは見られない。「もはや投資会社だ」(孫氏)というSBGは、上場株投資をさらに増やすのか、それとも別のターゲットに照準を合わせているのか。少なくとも巨額の軍資金を金庫に寝かすようなことはないだろう』、「アーム」は米国の画像処理用半導体メーカーのエヌビディアが最大400億ドルで買収、対価は現金と株式で、「SBG」が大株主になる予定だ。膨らむ「現金」をどのように使うのだろうか。

第三に、9月17日付け日刊ゲンダイ「ソフトバンクGに株式非公開化が浮上 孫氏投資戦略の布石か」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/278846
・『ソフトバンクグループ(SBG)は、傘下の英半導体設計大手アームについて、米半導体大手エヌビディアへの売却で合意した。売却額は最大400億ドル(約4・2兆円)。IT事業戦略の中核企業を手放し、膨らむ手元資金で次の一手を模索。ただ、新型コロナウイルスの影響で事業環境は激変しており、金融市場ではSBGが潤沢な資金で株式非公開化を検討するとの観測が出てきた。 SBGは10兆円規模を運用する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」が低迷しており、今年に入り負債圧縮と自社株買いに向けた資産売却を加速させた。8月末時点で6兆円規模の調達にめどを付けており、今回アーム売却の対価として取得するエヌビディア株式を除いても、最大2兆円規模の現金が上積みされる見通しだ。 しかし、新型コロナの終息は見通せず、米国と中国の経済分離も加速する中、中国・字節跳動(バイトダンス)などSVF既存投資企業の先行きにも不透明感が漂う。 SBGは今年半ばごろから、米ハイテク上場株の取得などに向かったが、株式市場から十分な評価を得られていない。株式評価額が保有資産(時価)の半値程度にとどまっており、英メディアなどは「SBGが経営陣による自社買収(MBO)を検討している」と報じた。 孫正義会長兼社長(写真)にとって株式を非公開化すれば、市場の短期評価に影響されない思い切った投資戦略が可能となるだけに、「一連の資産売却はその布石」(投資銀行幹部)との見方も根強い』、「株式評価額が保有資産(時価)の半値程度」と安値になっているのであれば、MBOによる「株式非公開化」も確かに考え得るが、銀行団は抵抗するだろうし、社債の扱いも問題になるだろう。
タグ:ソフトバンク 東洋経済オンライン 日刊ゲンダイ 現代ビジネス の経営 加谷 珪一 (その15)(過去最大の大赤字…ソフトバンクショックの「ヤバさ」を分析する 営業損失1兆円超えの衝撃、ソフトバンクG 巨額の上場株投資に見えぬ戦略 孫正義氏は膨らむ「軍資金」を何に使うのか、ソフトバンクGに株式非公開化が浮上 孫氏投資戦略の布石か) 「過去最大の大赤字…ソフトバンクショックの「ヤバさ」を分析する 営業損失1兆円超えの衝撃」 投資会社は良くも悪くもコアとなる事業がないため、投資に失敗すれば、ポートフォリオが歯抜けになっていくだけ 同社には通信というコア事業が残っており、一定のキャッシュフローを確保できている ソフトバンクはもはや投資会社 株を売って資金を捻出 ジャック・マー氏退任の意味 「アリババは、ソフトバンクグループにとって単なる投資先」になったのであれば、「次世代のネット戦略をどう描くのかが注目される」 「ソフトバンクG、巨額の上場株投資に見えぬ戦略 孫正義氏は膨らむ「軍資金」を何に使うのか」 海外メディアが相次いでSBGによるアメリカIT企業株の巨額取引を報じたこと 「上場株」に「投資」するとは奇策で、株価下落も頷ける 8月に巨額の米国株投資が判明 SBGの株が売られたのは、巨額の株取引に対し、アメリカ株市場の下落が影響するとみたからだろう。市場はSBGの投資スタンスに対して「NO」を突きつけた形だ 最大2兆円の自社株買いや負債削減のため、最大4.5兆円に上る保有資産の売却・資金化(資産売却プログラム) 4.3兆円分のメドを付けた。 こうして得た余剰資金の運用や資産の多様化を目的として、SBGは現在、アメリカの上場株への投資を強めている デリバティブ(オプション取引も含む金融派生商品)を駆使してさらなる利益を狙う まるでヘッジファンドのようだ」 まるでヘッジファンドのようだ 投資運用子会社を設立 過去にもデリバティブ取引で多額の利益 上場株投資は「なぜSBGがやるのか」という疑問が浮かぶ 膨らむ投資の原資 「アーム」は米国の画像処理用半導体メーカーのエヌビディアが最大400億ドルで買収、対価は現金と株式で、「SBG」が大株主になる予定 「ソフトバンクGに株式非公開化が浮上 孫氏投資戦略の布石か」 株式評価額が保有資産(時価)の半値程度 英メディアなどは「SBGが経営陣による自社買収(MBO)を検討している」と報じた MBOによる「株式非公開化」も確かに考え得るが、銀行団は抵抗するだろうし、社債の扱いも問題になるだろう
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働き方改革(その28)(コスト削減のいつか来た道「ジョブ型」雇用の危うさ、安易にリモートワーク導入する企業を襲う悲劇 過去にはたくさんの企業が取りやめている、なぜ「原則出社」に戻ってしまったのか テレワークを阻む5つの壁) [企業経営]

働き方改革については、6月9日に取上げた。今日は、(その28)(コスト削減のいつか来た道「ジョブ型」雇用の危うさ、安易にリモートワーク導入する企業を襲う悲劇 過去にはたくさんの企業が取りやめている、なぜ「原則出社」に戻ってしまったのか テレワークを阻む5つの壁)である。

先ずは、7月14日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏による「コスト削減のいつか来た道「ジョブ型」雇用の危うさ」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00082/?P=1
・『新型コロナ感染防止策で、いつも以上に“勝手にひとり在宅勤務”が4月以降続いていたのだが、少しずつ外の方たちとリアルにお会いする仕事が入るようになった。 社長さんとの対談や鼎談(ていだん)、リモート講演会やセミナー、会社の役員さんたちとの意見交換会などなど、年齢や職種、企業規模はバラバラだが、久しぶりに会う皆さまの関心は、もっぱらこれからの働き方、働かせ方だった。 今風の言い方をすると、“アフターコロナ”における“ニューノーマル”といったところだろうか。 が、何か以前と違う。 なぜかこの数日間お会いした方たちから紡がれる言葉には、生臭さがなかった。これまで現場の人たちの言葉には、独特の温度があり、あまりのドロドロした粘っこさに、「人間って……大変」とため息をついたものだった。ところが、今回はどの会合でもそれが全くといっていいほど無い。 アフターコロナという、いつの、どこの、どういう手触りかも分からない世界の話をしているからなのか。ニューノーマルという電車に「乗り遅れないようにしなくちゃ!」という焦りからなのか。とにもかくにも、耳を傾ければ傾けるほど、話の論点があさっての方向にずれ始めていくのだ』、「耳を傾ければ傾けるほど、話の論点があさっての方向にずれ始めていくのだ」、どういうことなのだろう。
・『大企業に広がる「ジョブ型」志向  特に、「ジョブ型」の話題になると(これはどの会合でも出た)、かなり微妙だった。いや、微妙とは失礼、私が皆さんのお話を聞きながら、「なんか……微妙」と思っただけなので、お許しください。 要は、ジョブ型とセットで語られる、生産性だの、優秀な人材だの、評価だの、解雇規制だのという言葉のオンパレードに、私の脳内のサルやトラが大暴れし、「これってバブル崩壊後のあの時と一緒じゃん」「要は成果主義だろ!」「ホワイトカラーなんちゃらというのもあったよね!」と、ジョブ型という言葉の片隅に、デジャブ感、を抱いている。 ……いきなり辛口だが、仕方がない。トップの“あさって思考”は、決まって現場に強い副作用をもたらすものだ。結果として、その痛みは立場の弱い人ほど深刻になる。 というわけで、今回は「覚悟なきジョブ型の末路」について、あれこれ考えてみる。まずは簡単に「ジョブ型」のおさらいから。 ジョブ型雇用は仕事内容を詳細に記述したジョブディスクリプション(JD、職務記述書)に基づいて働く雇用制度のこと。新型コロナウイルス禍を機に、多くの企業で関心が高まっていて、すでに、日立製作所、資生堂、富士通、KDDIなどが、ジョブ型の導入や拡大を発表している。 日立製作所では10年前からジョブ型を取り入れていたが、今後は在宅勤務とジョブ型を同時に拡大し、「職能型」で雇用している国内の一般社員約3万人を対象にJDを作成、21年3月までに完了させる予定。 資生堂は、来年1月から一般社員3800人をジョブ型の人事制度に移行する。魚谷雅彦社長によれば、ジョブ型はあくまでも「究極の適材適所」であり、成果主義とは異なるとのこと。「この仕事は何が必要か」を細かく説明し、性別、年齢、国籍などにかかわらず、一番ぴったり合う人を配置するという。 富士通では、すでに4月から管理職1万5000人にジョブ型の人事制度を導入したが、今後は一般社員全員に拡大する予定だ。テレワークを基本とし、雇用をジョブ型に転換する想定の中で、社員に自律的な成長を促す狙いがあるという。 KDDIは、2020年度入社向け新卒採用で実施していたジョブ型採用枠を約4割に拡大し、あわせて2021年度入社向けの新卒採用から、選考期間の決まった一括採用から通年採用に変更すると2019年末に公表している。 こうした企業は、長い年月をかけて、社員一人ひとりの力を引き出すための様々な「機会」がある環境づくりに取り組んできた経緯がある。世間では「ジョブ型雇用」のことばかりに目が行ってしまいがちだが、あくまでもジョブ型は「社員一人ひとりの力を引き出す取り組みのプロセスの“1つ”」にすぎないと、個人的には理解している。 そんな中、コロナ禍でテレワークを経験した企業が、「ジョブ型に変えるなら今でしょ!」と言わんばかりに、ジョブ型の導入を考えてはじめた。今回、お会いした人たちからも、 「テレワークやってみてはっきりしたけど、ジョブ型にしないとダメだね。何やっていいか分からない社員が多いんだもん」「在宅勤務になると時間管理できないからね。ジョブ型に変えないと無理」「若い人たちは就社じゃなくて、就職の意識が強い。ジョブ型にしないと相手にされないよ」「そうそう。いい人材をゲットするには、ジョブ型を導入しないとね」「ただ、ジョブ型に転換するには、雇用規制の緩和も進めないと」「そのとおり!やらせてはみたが期待通りにできない。能力がないからって、解雇できないしね」といった意見が相次いだ。 ふむ。確かに言いたいことは分かる。 私自身、これまで書いてきた通り、今後は今まで以上に成果主義が重視されることになるに違いないと予想している。だが、なぜ、ジョブ型=良い人材をゲットするため、とか、ジョブ型→解雇規制の緩和といった議論になってしまうのか、まったく腑(ふ)に落ちない。 念のため断っておくが、私は何も「ジョブ型」に反対してるわけじゃない。しかしながら、なんのためのジョブ型なのか。ジョブ型を導入すれば、「今ある問題」はホントに解決するのだろうか』、当然の疑問だ。
・『「ジョブ型」にバブル後の成果主義の臭い  ジョブ型の議論に耳を傾ければ傾けるほど、「あの……そんな都合のいい人材、どこにいるんでしょうか?」と素朴な疑問が湧き、ジョブ型という言葉だけが先行しすぎじゃないのか、と思えてならないのである。 思い出してほしい。バブル崩壊後に「ムダをなくせ!」を合言葉に、多くの企業がリストラと成果主義でコスト削減したことを。文化も習慣も企業の成り立ちも違うのに、米国型経営=成果主義を中途半端に導入したことを、だ。 どんなに先行研究を探しても「終身雇用が会社の生産性を下げる」というエビデンスは見当たらないし、成果主義を導入したからといって生産性が向上するというエビデンスがあるわけでもない。ところが、「今ある問題を解決する最良の手段が成果主義」といわんばかりに、あちこちの企業が中途半端な成果主義に走った。「人」ではなく「カネ」、人件費を減らす手段として、こぞって「成果主義」を輸入したのだ』、「「ジョブ型」にバブル後の成果主義の臭い」、「どんなに先行研究を探しても「終身雇用が会社の生産性を下げる」というエビデンスは見当たらないし、成果主義を導入したからといって生産性が向上するというエビデンスがあるわけでもない」、その通りだろう。
・『その結果、何が起きたか?  上司が部下を育てるというそれまでの企業文化の美徳が失われ、手柄の奪い合いが起こり人間関係が悪化することもあった。中には上司との折り合いの悪さが、成果にマイナスに響いた人たちもいた。 「たまたま異動が評価の時期をまたぐことになった。前の部署で上司と折り合いが悪く飛ばされたんです。新しい部署の上司は僕の働きぶりを知らないので、前の部署の業績で評価するわけです。その結果、僕の評価は3段階も下がり、月10万も賃金を減らされました。年間120万の減額は苦しいです」 この話をしてくれた男性の経験は、まれかもしれない。だが、こんな不合理な事態が成果主義との末路に存在しているとしたら、それはお粗末としかいいようがない。 先行きが見えない「今」大切なのは、「どうやって働く人の能力を最大限に引き出すか?」を徹底的に考えることではないのか。 「いや、だからさ、そのためにはジョブ型が必要なんだってば」と、おそらくこう反論する人は多いことだろう。 だが、ジョブ型導入の先に企業が見ているのは、「生産性の向上」であろう。言葉や法律さえ変われば、企業の生産性が向上するわけじゃないことくらい、誰だって分かるはずだ。なのに、手を替え品を替え、生産性向上をうたう“流行りの言葉”を盾に法律を変えてきた。 たとえば、高度プロフェッショナル制度、いわゆる「高プロ」は今から2年前、連日、新聞紙面に取り上げられて日本中の注目を集めた。当時、裁量労働制で働いている人たちの過労死が問題になっていたにもかかわらず、政府は「問題ない」という認識を一向に変えず、「労働者のニーズに応えるために、待ったなしの課題」と政府は豪語し、法案は成立した』、その結果はどうなったのだろう。
・『あんなに話題になった裁量労働制はどこへ?  ところが、ふたを開けてみると「高プロ」が適用されたのは、法施行から1カ月でたったの1人。あれだけすったもんだの末に導入されたのに、全国でたった1人にしか適用されなかった。 その理由が実にシュールで、報道によれば企業は高プロを適用した社員には「過労防止策の実施状況」を報告する義務があったために企業側がこの制度を適用したがらなかったからだという。 企業側に求めた条件は、 +「4週4日以上、年104日以上の休日確保」の義務、 +「労働時間の上限設定」「2週間連続の休日」「勤務間インターバル導入」「臨時の健康診断」から1つ以上の対策を労使間で選ぶ、の2点だった。 これらは労働者の健康を確保するための最低限の基準だと思うのだが、それさえ嫌だった、あるいは、労基省に監視されることを嫌ったのか。 現在では、この制度の適用者は414人にまで増えたが、もともと対象が少ない「高プロ」を導入したのはここから広く普及させるためのアリの一穴を狙った。が、どういうわけか、あれっきり「裁量労働制」という言葉は聞かれなくなった。 成果主義、ホワイトカラーエグゼンプション、高プロ、そして、「ジョブ型」。言葉を変えているだけで、その先に期待しているのは「コスト削減」による「生産性の向上」なんじゃあるまいか。 「欧米ではジョブ型は当たり前で、日本のメンバーシップ型では、生産性の向上は期待できない」という声も聞こえてくるけど、ジョブ型を適用するには、ジョブ型を適用するためのかなり手間のかかる前段階がある。 欧米では「ジョブ型」に耐えられるだけの人材育成に、国と企業と大学とで取り組んでいる。人に投資することで、人材を育て、その結果として「ジョブ型」は存在しているのだ。 たとえば、ご承知の通り、多くの企業が即戦力を求める米国では、徹底して専門的な知識と実務経験を重視している。 大学で何をどれだけ勉強してきたかが非常に重要とされ、就職においても大学の成績が重視される。早い学生は高校から、一般的には大学在学中から企業の長期インターンシップに参加し、大学で学んだことを生かした実践的な経験をすることで、在学中に求められるキャリア・レディネスをしっかりと高めていく。卒業後に即戦力として働けるように企業と大学が投資する。 頭だけでもダメ、経験だけでもダメ。即戦力にはその両方のトレーニングが必要だという認識が社会に共有されている。学生に「ひとつよろしく!」と丸投げしてるわけじゃない。きちんと育つために「投資」しているのだ』、「「高プロ」が適用されたのは、法施行から1カ月でたったの1人・・・現在では、この制度の適用者は414人にまで増えた・・・あれっきり「裁量労働制」という言葉は聞かれなくなった」、大騒ぎした割に、少ない実態を初めて知った。日本では「大学で何をどれだけ勉強してきたか」は無視され、「学生に「ひとつよろしく!」と丸投げしてる」、全く無責任そのものだ。
・『人材は理論と実践で育ててこそ  デュアルシステムとして知られるドイツの職業教育訓練制度(Vocational Education and Training: VET)も、企業内OJTと公立の職業学校における座学を組み合わせた制度で、企業と国が一緒に「ジョブ型」に耐えられる人材を育成している。この点は米国と同じだ。 デュアルシステムは、従来、9年間の全日制就学義務を終えた若者が職場で職業訓練を受けながら、訓練先企業周辺の職業学校で学ぶことができる初期職業教育訓練制度の最も一般的な仕組みで、商工会議所、労働組合、連邦政府、州政府、職業学校などの産官学のソーシャルパートナーによる連携によって成り立っている。 近年の経済構造の変化や、技術や技能の専門化や高度化に、デュアルシステムも様々な変革を余儀なくされているけど、「個人の能力を最大限生かすための教育を行う」という視点は、1969年の職業教育法の成立時から、全くぶれていない。 特に最近は、グローバルな高学歴化に伴い、大学卒業者でもデュアルシステムによる職業資格を持っていたり、訓練先の企業に就職したりする割合も増えている。 どれもこれも付け焼き刃的に「人材」を見分けるのではなく、育てる努力をしたうえで人材を雇用しているのだ。 「私はね、この会社でずっと働いてきてやりたいことを色々と考えてきたんです。それを社長になって一つひとつ実践しています。テレワークをやって、自分には見えてなかった問題があることも分かった。でもね、ジョブ型だの、中途採用しかしないだの、即戦力だのというけど、じゃあ、誰が人を育てるんですか。会社が育てることを放棄して、生産性だ、働き方改革だ、ダイバーシティーだって、何を言ってるのかと思いますよ」 この数日間お会いした中で、ただ一人こう嘆いた社長さんがいらっしゃった。 まったくもってその通りだと思う。繰り返すが、ジョブ型雇用の導入を進めることに異論はない。だが、ジョブ型は人に投資することで成果を上げる制度であり、コスト削減のためのものではない。ジョブ型は魅力というけど、経営者にそれを使いこなす力量がなければ、その魅力は現場への暴力に変わっていくのだ』、「ジョブ型は魅力というけど、経営者にそれを使いこなす力量がなければ、その魅力は現場への暴力に変わっていくのだ」、大いに注目してみていきたい。

次に、7月15日付け東洋経済オンラインがThe New York Times記事を転載した「安易にリモートワーク導入する企業を襲う悲劇 過去にはたくさんの企業が取りやめている」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/362285
・『新型コロナウイルスの世界的感染拡大でオフィスが閉鎖されて3カ月、アメリカ企業は「自宅勤務はうまく機能している」との結論に達しつつある。従業員の多くはこの先も「ズーム」のビデオ会議や「スラック」のチャットにつながれ、通勤はものの数秒で完了するようになるとみられている。 だが、リモートワークに突進するすべての企業に対し、PR会社RLMパブリック・リレーションズのリチャード・ラーマーCEO(最高経営責任者)はこうクギを刺す。馬鹿なことはよせ、と』、「アメリカ」でも「リモートワーク」に警鐘が鳴ったとは驚かされた。
・『リモート導入で業績悪化  ラーマー氏は数年前、毎週金曜日に従業員を自宅勤務させることにした。完全な在宅勤務に向けた第一歩として、だ。ところが、この小さな一歩は大失敗に終わる。必要なときに必要な人に連絡がつかず、プロジェクトが停滞したのだ。 「毎週末が3連休になっただけ。みんなが物理的に同じ空間にいた方が人ははるかによく働く、ということがわかった」(ラーマー氏) IBMも似たような結論に至っている。IBMでは2009年に173カ国38万6000人の従業員の40%がリモートで働いていた。しかし業績は落ち込み、経営陣は17年、何千人もの従業員をオフィスに呼び戻す決断を下した。 現在、フェイスブック、ツイッター、ネット通販プラットフォーム企業のショッピファイ、不動産データベース企業のジロー(Zillow)など多数の企業が今後も在宅勤務を続ける計画を練っている。しかしラーマー氏やIBMの経験が示すように、リモートワークの歴史は失敗だらけだ。今、猛スピードでリモート街道を突っ走っている企業は、同じ失敗を繰り返す危険を冒している。 「在宅勤務は戦略的な経営判断であって、単なる経費節減とは違う」と語るのは、職場のトレンド調査を手がけるグローバル・ワークプレイス・アナリティクスのケイト・リスター社長だ。「その成否は結局のところ、信頼関係があるかどうかにかかっている。あなたは従業員を信頼していますか?」。 これまでも大小さまざまな企業が在宅勤務を進めてきた。1985年には「在宅勤務が加速」といった見出しが大手メディアに現れるようになっている。経営論の大御所、ピーター・ドラッカー氏が「オフィスに出社して仕事をするのは時代遅れ」と宣言したのは1989年のことだ。 在宅勤務はテクノロジー主導型のイノベーションであり、従業員と経営者の双方に恩恵をもたらすと思われた。まず従業員にとっては、通勤が不要となり、個々の事情に最も適した時間に働ける可能性が出てくる。次に経営側にとっては、オフィスなど高額の不動産費用を削減できるだけでなく、オフィスの所在地に左右されることなく、幅広い地域から優秀な人材を採用できるようになる』、「リモートワークの歴史は失敗だらけだ」、今回は上手くいくのだろうか。
・『在宅勤務の試みの多くは縮小、または撤回  ところが、在宅勤務の試みの多くは結果的に縮小または撤回を余儀なくされてきた。先述のIBMの他にも、この10年間で在宅勤務の巻き戻しを公表した会社には、医療保険会社のエトナ、家電量販大手のベストバイ、バンク・オブ・アメリカ、ヤフー、AT&T、ソーシャルメディア企業のレディットなどがある。 在宅で働く従業員は傍流に追いやられていると感じることが多く、愛社精神の低下をもたらした。それが新たなアイデアやイノベーションなどに悪影響を与えたと考えられたのである。 ヤフーのマリッサ・メイヤーCEO(当時)は2013年に従業員を強引にオフィス勤務に引き戻そうとして激しい怒りを買ったが、ある社内メモにはこう記されていた。「最善の決断や洞察は廊下やカフェテリアの雑談、人々の新たな出会い、即興のチーム会議から生まれることもある」。 テック企業は、従業員が永遠に滞在し続けられる贅沢なコーポレートキャンパスに巨額の資金を注ぎ込んできた。フェイスブックが2018年に発表したのは、要するに寮のような施設をつくるという計画にほかならなかった。アマゾンはシアトル近郊を丸ごと再開発した。 グーグルでCFO(最高財務責任者)を務めていたパトリック・ピシェット氏は「グーグルでは在宅勤務の従業員は何人いるのか」と問われると、好んでこう答えたと話す。「限りなく少ない」。 トレンドの変化は急だった。フェイスブックは今や2025年までには最大で半数の従業員が在宅勤務になると予想する。5000人の従業員を抱えるカナダのショッピファイでは、CEOが5月にこうツイートした。従業員の「大半が永久にリモートワークになるだろう。オフィス中心の時代は終わった」。ウォルマートのCTO(最高技術責任者)も従業員に次のようなメッセージを伝えている。「バーチャルな働き方が新しい日常になる」。 リモートワークの撤回で世間を賑わせたのは、ミネアポリスに本社を置くベストバイだ。在宅勤務プログラムは2004年に始まったもので、当初は全米から注目された。その目的は、従業員を働いた時間や場所ではなく、成果で評価することにあった。 しかし、ベストバイは従業員に自由を与え過ぎたとして2013年に、このプログラムを打ち切った。当時CEOだったヒューバート・ジョリー氏は、このとき、こう語っている。「チームを率いた経験のある者なら誰でも知っていることだが、権限の委譲が最も効果的な統率スタイルとは限らない」』、「ベストバイ」で上手くいかなかった理由は、あと1つ釈然としない。
・『会社はリモートワークを信用していない  業績が思わしくなかったことから会社はパニックに陥ったのだ、と同プログラムの共同立案者で、2007年にベストバイを去ってコンサルタントになったジョディ・トンプソン氏は語る。「『見えるところにいる従業員は働いているに違いない』という発想に逆戻りした」。 新型コロナに伴い、ベストバイでは現在、本部従業員の95%がリモートワークとなっている。これは同社の考え方に再考を促すことになるかもしれない。ベストバイの広報担当者は「柔軟な働き方という選択肢は、今後とも何らかの形で維持していくことになる」とコメントしている。 柔軟な働き方によって従業員はスケジュールの自由度が高まる。しかし、だからといって管理手法が劇的に変わるわけではない。管理手法の変革こそ、トンプソン氏が目指していたものだ。「今こそ働き方を良い方向に変えるチャンスだ」とトンプソン氏は語る。「働き方について新しい文化を創り出す必要がある。完全に透明で、完全に自律した文化、人ではなく仕事だけを管理する文化だ」 しかしトンプソン氏は、こうした状況だからこそ働き方が悪い方向に変化する危険もある、と指摘する。 「世の中は今、普通の状況にはない。部下の姿が見えなくなれば、もっと管理を厳しくしたくなるのが管理職というものだ。従業員の監視ツールに注目する管理職は増えている」(トンプソン氏) リモートワークの従業員は通勤から解放されるかもしれないが、在宅勤務者の立場はもともと弱い。ロサンゼルスで投資会社ダブルライン・キャピタルを経営するジェフリー・ガンドラック氏は、毎月配信している自身のウェブキャストで、新しくリモートワークを始めた従業員について、ある現実が見えてきたと話している。 「本当に仕事をしているのは誰か、見かけほど働いていないのは誰かといったことがある程度わかるようになってきた」。このように述べた上でガンドラック氏はこう付け加えた。「監督する側の人間、中間管理職の中には、本当に必要なのか疑問に感じるような者もいる」。 サンフランシスコ州立大学のジョン・サリバン教授(経営学)によると、在宅勤務に関する「ここ3カ月のデータはとても力強い。驚きの結果だ。生産性に落ち込みは見られず、むしろ生産性が上がったケースも多い。人々は過去1000年にわたって仕事に出かける生活を送ってきたが、それが終わろうとしている。すべての人々の生活が変わろうとしている」』、有力な積極論もあるようだ。
・『2017年と変わったこと  ただ、RLMパブリック・リレーションズのラーマー氏は慎重な姿勢を崩していない。3月にオフィスを閉鎖したとき同氏は、在宅勤務は大失敗に終わると考えていた。2017年に毎週金曜日を在宅勤務の日としたときの5倍はひどい状況になる、と。 現実は違った。今のところ在宅勤務はかなりうまくいっている。ズームを使って会ったこともない人を何人か採用したほどだ。「彼らの働きぶりはすばらしい」。 何が変わったのだろうか。1つには、ズームなどのテクノロジーが進歩したことがある。さらに「当社ではルールづくりも進んだ」とラーマー氏は話す。「午前9時〜午後5時半はいつでも連絡がとれるようしておかなければならない。この時間には子どもの世話はできない」。 だが、ラーマー氏は借りているオフィスを解約するつもりはないという。 「多くの企業は、在宅勤務はすごくうまくいっている、この先もずっと在宅勤務を続けると言っているが、体のいいPRだ。空想ばかり先走って、地に足がまったくついていない。うちの会社ではワクチンが開発されしだい、オフィス勤務を復活させる」』、「ズームなどのテクノロジーが進歩したことがある。さらに「当社ではルールづくりも進んだ」、確かにこれらは積極論を後押しする材料だ。しかし、「うちの会社ではワクチンが開発されしだい、オフィス勤務を復活させる」、と「ラーマー氏」はやはり慎重なようだ。

第三に、7月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したリクルートマネジメントソリューションズ シニアコンサルタントの武藤久美子氏による「なぜ「原則出社」に戻ってしまったのか、テレワークを阻む5つの壁」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/243603
・『新型コロナウイルス感染が再び拡大する今、「原則テレワーク」あるいは「出社とテレワークのブレンド」という企業がある一方で、「原則出社」に戻ってしまった企業も少なくありません。こうした対応の違いは、緊急事態宣言中あるいはその前に、テレワーク下で起こる「5つの壁」を乗り越え、テレワークに適した組織になっていたかどうかで生まれているように思います。では、テレワークの定着を阻む「5つの壁」とは一体、何でしょうか』、興味深そうだ。
・『「急激」「一斉」「大規模」な実施が懸念や不安を置き去りにした  テレワークの特徴の一つは、「懸念や不安を抱きやすい施策であるため、導入までの壁は高い」が、「一旦導入すれば、意外と何とかなり、当初の懸念や不安は杞憂であったとわかることが多い」施策であるということです。 つまり、テレワークは実際に実施してみるとメリットが多い施策である一方で、導入前の懸念や不安が解消できないと導入に至りにくい施策だといえます。 しかし、そんなテレワークは今回、コロナの感染拡大を機に「急激に」「一斉に」「大規模に」行われました。よって、企業ごとの対面とリモートの良いバランスは十分に検討されず、社内関係者が抱いていた懸念や不安をいったん脇に置いた状態で導入することとなりました。 緊急事態宣言が明けてから原則出社に戻っているような企業では、未解決だったテレワークへの懸念や不安が顕在化していたのではないでしょうか。特に、テレワーク定着の大きな「壁」として立ちふさがりやすい懸念や不安が、以下の5つです』、「緊急事態宣言が明けてから原則出社に戻っているような企業では、未解決だったテレワークへの懸念や不安が顕在化していたのではないでしょうか」、大いにありそうな話だ。
・『【テレワーク定着を阻む壁(1)】経営層が「メリットがない」と考えている  1つ目は、「メリット不在の壁」です。これは主として経営層や事業責任者など、役職が高く、影響力の強い人物が、テレワークに懸念や不安を持ち、メリットを感じていないために立ちはだかる壁です。このような企業において、緊急事態宣言の下で行われたテレワークはあくまで“非常時の時限的な対応”です。よって、状況が変わればテレワークを推奨していた状況にも揺り戻しが起きます。 それに対して、テレワークの推進を図りたい部門は、しばしば経営層から「テレワークのメリットは何か」「メリットが感じられない」という発言を投げかけられおり、テレワークのメリットを説明する資料を作り、何度も説明を強いられています。しかし、経営層や事業責任者には響いていないことがほとんどです。 なぜなら、彼らの心の中にあるのは、「テレワークはなんだか嫌だ」「当社の良さが失われるのではないか」「業績に悪影響があるのではないか」という漠然とした不安だからです。テレワークの推進を図りたいならば、経営層などのこうした気持ちを踏まえて対応することが大事になります。 解決策として望ましいのは、言葉での説得ではなく「実際にテレワークでも組織運営が可能だと示す」ことです。経営層や事業責任者が抱いている懸念や不安を想像し、小さくても良いので自社でトライアルを行い、それらが杞憂であること、解決可能であることを示すのです。 今回の緊急事態宣言下のテレワークは文字通り「本番」となりましたが、一方で恒久的な実施への「トライアル」という側面も持っていました。しかし、急激に、一斉に、大規模に実施されたため、テレワークの難しさが極端に表れたのも事実です。これをもってそのまま恒久的な対応とするのは難しい企業も多いでしょう。 いったん原則出社となった企業では、今回の緊急事態下でのテレワークで見えてきた課題と解決策と副産物を、定量、定性情報で示し、「このような極端なテレワークでも組織運営できた」ことを示しましょう。そのうえで、仕事内容や状況に合わせて最大週何日までといった、今後の出社とリモートの良いバランスを議論し、改めてトライアルするのが大事になります』、さすが「コンサルタント」らしいアドバイスだ。
・『【テレワーク定着を阻む壁(2)】「業務を切り分けられない」という思い込み 2つ目は、「業務切り分けの壁」です。テレワークが進まない理由の一つとしてよく挙げられるのが、「当社は個人情報や機密情報を扱っている」「当社のお客様は対面でのアポイントを期待している」「私の仕事はリモートでできるような仕事ではない」から無理、というものです。確かにそういう面もあるかもしれません。しかし、このような理由でテレワークが進まない企業は共通して、テレワークの実施を「0か100か」で考えがちです。 まずは、「この業務はテレワークでも可能ではないか?」「この業務をリモートで実施するには、何を解決したらいいだろうか?」と業務の性格を知り、それぞれを切り分けて分解してみてはいかがでしょうか。すると、ある業務のこの部分はテレワークでも対応可能だとわかり、テレワーク定着のきっかけになるかもしれません』、これも前向きなアドバイスだ。
・『【テレワーク定着を阻む壁(3)】上司と部下のコミュニケーションに負荷 3つ目は、「コミュニケーションの壁」です。ここでいうコミュニケーションの壁とは、主としてマネジメント(管理職)の負荷が増えることへの懸念を指します。実際に、テレワークへの懸念や不安が大きい組織では、管理職がテレワーク下におけるマネジメントのあり方と自社のやり方に乖離を感じていることが多い気がします。 これまで目の前に部下がいた状況で行っていたマネジメント方法は、テレワークによって転換を迫られています。当社が2020年3月に行った調査でも、直接支援型マネジメント(部下の業務の進捗に細かく指導するような関わり方)において、テレワーク下での管理職の業務負荷が高いという結果が出ました。一方で、自律支援型マネジメント(部下が自律的に業務を進められるよう、必要な情報提供、リソースの取り付け、部下の心のケアなどで行う関わり方)では、業務負荷の関係性は見られませんでした。 テレワークが拡大・定着すると部下自身が自律的に業務遂行できることが求められるようになります。テレワークをソロワークとせず、会社や組織の方向性に共感しながら、自律的に業務遂行する部下を増やすための管理職の関わりが、今後はさらに求められるでしょう』、「自律支援型マネジメント」が通用するのは、ベテランの部下の場合で、新人やそれに近い部下には「直接支援型マネジメント」も必要なのではなかろうか。
・『【テレワーク定着を阻む壁(4)】IT化、モバイルツールの未整備 4つ目は、「IT化の壁」です。仕事を「テレワーク」で行う準備がツール面で十分でないことが原因です。2点目の壁「業務切り分けの壁」の中でも記載した「個人情報、機密情報が多いのでテレワークできない」という声は、IT化の壁でもあります。この壁は、主としてペーパーレス化とIT環境・モバイルツールの展開によって解消が可能です。 前者のペーパーレス化は、単に紙を電子化すればいいというものではありません。ペーパーレス化に至るには、業務内容や業務フローの見直し、電子化した書類の整理などを行う必要があるため、多くの部署の協力が不可欠です。多くの部署の協力が必要な改革に着手するくらいなら、今のまま業務遂行した方が良いという気持ちもわからなくもありません。 とはいえ、個人情報の多さや機密情報の多さは、もはやペーパーレス化ができない理由にはならなくなってきています。個人情報の宝庫のような業界でもテレワークが進んでいるのはその証左でしょう。また、ITツールの進化が、さまざまな業務プロセスを電子化することを可能としました。元も子もないのですが、ペーパーレス化は「やると決めるか」が大きいテーマです。ぜひ、これを機に着手していただきたいと思います。 後者のIT環境・モバイルツールの展開ですが、緊急事態宣言下では実際にモバイルPCの台数が足りないといったハード面でのツールの問題が中心でした。こうした問題が解消されつつある今、より重要であるのは、コスト面や業務遂行面を両立するリモート環境の整備です。 たとえば、私がお手伝いした企業のある部署では、オフィスでは、20インチ前後のPCモニターを1人2台使って仕事をしていました。テレワークのトライアルをする際に、部署の全メンバーの自宅にオフィスと同じ環境を整備しようとしましたが、コストが膨大にかかることがわかりました。 そこで、トライアル期間に、いくつかの大きさのモニターを用意したり、タブレットでも業務運営可能か、1台でも大丈夫かといった実験を行ったりし、コスト面でも業務運営上も可能である方法を探りました。こうしたIT環境やモバイルツールの整備が、テレワークの推進を後押しするでしょう』、確かに「トライアル期間に」「実験を行ったりし、コスト面でも業務運営上も可能である方法を探りました」、有効そうだ。
・『【テレワーク定着を阻む壁(5)】社員を一人の大人として扱っていない 5つ目は、「社員を一人の大人として扱わないという壁」です。緊急事態宣言下では、人事部門や管理職から、「部下が働き過ぎないか心配」「部下がさぼっていないか気になる」という声を多く聞きました。前者は部下を心配する良い企業、後者はそれとは異なるように見えますが、根っこはあまり変わりません。なぜなら、背景には部下が「心身の健康を保ちながら、自律的に業務遂行できる人だとは思えない」という管理職の気持ちがあるからです。 「人はさぼる生き物だ」というステレオタイプでの見立てか、「Aさんは任せて安心だけれど、Bさんは細かく見ていないと心配だ」と人によって違う見方をするのかは、管理職ごとに異なります。 しかし、3つ目の壁でも少し触れましたが、「部下に業務の進め方を細かく指示して、毎日進捗状況を確認しよう」という管理職よりも、「必要な支援は行いつつ、できるだけ本人の自律的な業務遂行に任せよう」という管理職の方が、部下からすると「自分は信頼されている。頑張ろう」と思えるのではないでしょうか。 ちなみに、部下を信じて任せてほしいと一口にいっても、業務の習熟度などからして、テレワークでの仕事を認めるには早過ぎる、という社員が一定数いる会社もあるでしょう。その場合は、テレワークを利用可能な社員を、自律的な業務遂行可能と判断される等級以上に絞って制度を開始し、会社としてテレワークに慣れてきたらその範囲を拡大するのも一考です。 これからの時代、テレワークを部下の成長への良い機会と考え、自律的な業務遂行を適切な距離で見守り、寄り添うことが、管理職にはより求められるようになるでしょう。 以上、テレワーク定着を阻む5つの壁を紹介しました。企業も社員も、テレワークを体験することでさまざまなメリットを感じました。それぞれの企業が、対面とリモートの良いバランスを探りながら、テレワークという働き方を武器にできることを願っています』、「それぞれの企業が、対面とリモートの良いバランスを探りながら・・・」、確かに「バランス」は「企業」ごと、さらには習熟度に応じて変わるのだろう。
タグ:東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 河合 薫 働き方改革 (その28)(コスト削減のいつか来た道「ジョブ型」雇用の危うさ、安易にリモートワーク導入する企業を襲う悲劇 過去にはたくさんの企業が取りやめている、なぜ「原則出社」に戻ってしまったのか テレワークを阻む5つの壁) 「コスト削減のいつか来た道「ジョブ型」雇用の危うさ」 大企業に広がる「ジョブ型」志向 「覚悟なきジョブ型の末路」 なんのためのジョブ型なのか。ジョブ型を導入すれば、「今ある問題」はホントに解決するのだろうか 「ジョブ型」にバブル後の成果主義の臭い どんなに先行研究を探しても「終身雇用が会社の生産性を下げる」というエビデンスは見当たらないし、成果主義を導入したからといって生産性が向上するというエビデンスがあるわけでもない その結果、何が起きたか? あんなに話題になった裁量労働制はどこへ? 「高プロ」が適用されたのは、法施行から1カ月でたったの1人 現在では、この制度の適用者は414人 あれっきり「裁量労働制」という言葉は聞かれなくなった 日本では「大学で何をどれだけ勉強してきたか」は無視され、「学生に「ひとつよろしく!」と丸投げしてる 人材は理論と実践で育ててこそ ジョブ型は魅力というけど、経営者にそれを使いこなす力量がなければ、その魅力は現場への暴力に変わっていくのだ he New York Times 「安易にリモートワーク導入する企業を襲う悲劇 過去にはたくさんの企業が取りやめている」 オフィスが閉鎖されて3カ月、アメリカ企業は「自宅勤務はうまく機能している」との結論に達しつつある PR会社RLM ラーマーCEO 馬鹿なことはよせ リモート導入で業績悪化 IBMでは2009年に173カ国38万6000人の従業員の40%がリモートで働いていた。しかし業績は落ち込み、経営陣は17年、何千人もの従業員をオフィスに呼び戻す決断 フェイスブック、ツイッター、ネット通販プラットフォーム企業のショッピファイ、不動産データベース企業のジロー(Zillow)など多数の企業が今後も在宅勤務を続ける計画を練っている リモートワークの歴史は失敗だらけ 在宅勤務の試みの多くは縮小、または撤回 リモートワークの撤回で世間を賑わせたのは、ミネアポリスに本社を置くベストバイだ。在宅勤務プログラムは2004年に始まったもので、当初は全米から注目 ベストバイは従業員に自由を与え過ぎたとして2013年に、このプログラムを打ち切った 会社はリモートワークを信用していない 部下の姿が見えなくなれば、もっと管理を厳しくしたくなるのが管理職というものだ。従業員の監視ツールに注目する管理職は増えている 2017年と変わったこと ズームなどのテクノロジーが進歩 「当社ではルールづくりも進んだ」 うちの会社ではワクチンが開発されしだい、オフィス勤務を復活させる 武藤久美子 「なぜ「原則出社」に戻ってしまったのか、テレワークを阻む5つの壁」 「急激」「一斉」「大規模」な実施が懸念や不安を置き去りにした 【テレワーク定着を阻む壁(1)】(経営層が「メリットがない」と考えている 【テレワーク定着を阻む壁(2)】「業務を切り分けられない」という思い込み 【テレワーク定着を阻む壁(3)】上司と部下のコミュニケーションに負荷 【テレワーク定着を阻む壁(4)】IT化、モバイルツールの未整備 【テレワーク定着を阻む壁(5)】社員を一人の大人として扱っていない それぞれの企業が、対面とリモートの良いバランスを探りながら、テレワークという働き方を武器にできることを願っています
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ソニーの経営問題(その7)(ソニーが自動車業界から人を続々引き抜く理由 10年後を見据える「仕込み作業」の実態、ソニーがコロナ禍でも強さを見せる理由 元副会長に聞く「創業精神への回帰」 盛田・井深を間近に見てきた元副会長が語る、ソニーが金融事業を完全子会社化 真の狙いは「脱エレキ」の加速) [企業経営]

ソニーの経営問題については、2016年6月16日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その7)(ソニーが自動車業界から人を続々引き抜く理由 10年後を見据える「仕込み作業」の実態、ソニーがコロナ禍でも強さを見せる理由 元副会長に聞く「創業精神への回帰」 盛田・井深を間近に見てきた元副会長が語る、ソニーが金融事業を完全子会社化 真の狙いは「脱エレキ」の加速)である。

先ずは、昨年7月1日付け東洋経済オンライン「ソニーが自動車業界から人を続々引き抜く理由 10年後を見据える「仕込み作業」の実態」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/289791
・『ソニーが今、完成車メーカーやティア1(自動車部品の1次下請け)など、自動車業界からの人材採用に力を入れている。「たとえばホンダのような大手自動車メーカーであったら、大人数のプロジェクトで歯車の1つであっても、ソニーに行けば自分が牽引できる立場になり、研究開発環境もよい。そこで普通の半導体メーカーには行かない完成車メーカーの人材も、ソニーならと転職を決めている」(ソニー関係者)。 彼らを引き寄せているのが、半導体子会社のソニーセミコンダクターソリューションズだ。 「これから事業参入しようという新しい部署なので、何事にも意欲的に、自分で考えて行動できるようなポジティブな方を歓迎します」――。 こんな触れ込みで、ソニーのホームページの中途採用の欄には半導体関連の求人が複数掲載されている。募集している職種は、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転車向けセンサーのソフトウェアエンジニア、自動車の安全規格に準拠した開発体制を構築するための品質担当エンジニアなど。なぜ自動車業界の人材が必要なのか』、「自動車業界」の「自動運転」分野の技術者には、「ソニー」は確かに有力な転職先だろう。
・『次の成長軸の一つが車載半導体  7月1日発売の『週刊東洋経済』は、「ソニーに学べ!」を特集した。2008~2014年度の7年間で6度の最終赤字に陥り、一度は「もう終わった会社」の烙印を押されたソニーだが、今や高収益企業に変貌している。足元はゲーム事業の収益拡大などで好調ながら、中長期での成長軸が見えないという指摘もある。そこで2018年に社長に就任した吉田憲一郎社長は、2018~20年度までの中期経営計画の期間を「仕込み期間」と位置づけ、高い業績目標は設けずに次の成長軸作りを優先している。 その1つが、この車載半導体である。ソニーは、光を電子信号に変える撮像素子、CMOSイメージセンサーの世界シェア5割を握る。現在は売上高の8割が、アメリカのアップルや中国ファーウェイなどに向けたスマートフォンのカメラ用だが、市場は「2022年頃には頭打ちになると見られる」(IHSマークイットの李根秀主席アナリスト)。 そこで、この技術を用いて、自動運転車の「目」として周辺環境の認知に用いる車載センシングの事業化を進めている。2020年代半ばには市場が本格的に立ち上がるといわれる自動運転市場にあわせ、「人の命に関わることはやらない」という創業以来の不文律を破り、これまでほぼ手がけたことがなかった車載市場を狙う。そもそも半導体事業自体、車載向けに限らないものの、2020年度入社の技術系新卒の4割をここに振り分けるという力の入れようだ。) 2015年から専門部署が発足したという新しい事業であるため、ソニーの車載センサーのシェアは5%ほどとまだ低いが、品質面では夜間や逆光下などでも高画質の映像を撮影できる点で評価は高い。5割超のシェアを占めるアメリカのオン・セミコンダクターから「当社の最大のライバルはソニー」(同社副社長のデビッド・ソモ氏)と恐れられる存在だ。ソニーはすでにトヨタの高級車レクサス「LS」や、普及価格帯のクラウン、カローラ向けなどをデンソーに出荷しているほか、独ボッシュなどとも取引が始まっている。 ただ、ティア1以上のセンサーの技術を持つソニーも、自動車業界特有の、すりあわせ型開発や、温度や振動への耐性など、厳しい品質水準への対応は十分ではない。だからこそノウハウを吸収すべく、自動車業界出身の人材の獲得が必要なのだ』、「「人の命に関わることはやらない」という創業以来の不文律を破り」、初めて知ったが、分野を選んで慎重に進出するのであればやむを得ないだろう。
・『ルネサスの車載半導体トップが電撃移籍  昨年9月には、ルネサスエレクトロニクス(注)で車載半導体部門トップだった大村隆司氏が同社退社直後にソニーに移籍するという電撃人事もあった。ソニーでの役職は、半導体事業トップの清水照士に次ぐナンバー2、常務補佐(現半導体子会社副社長)だ。この移籍は、「大村氏がルネサスを辞めることがわかって数日での出来事。しかも、この引き抜きを知っていたのは、吉田社長、清水氏、(JPモルガン出身で半導体事業の財務企画を務める)染宮秀樹氏くらい。ソニーが車載向けにかける本気度が伝わってくる」(人材業界関係者)。 大村氏に引っ張られる形で、ルネサスで車載事業のCTO(最高技術責任者)室技師長を務め、大村氏の信頼が厚い板垣克彦氏もソニーへ移籍。彼らが持つ自動車業界の人脈を使って、マネジメント層の移籍も増えている。 半導体事業部門には、7月1日に「システムソリューション事業部」という新部署もできた。半導体事業において実質的に経営戦略のトップを務める、前出の染宮氏が事業部長に就き、これまでスマホ向け、車載向けなどに分散していたソリューション領域の企画開発を統合、センサーにAIを実装することで、収集したデータを活用するなど、一部品の販売に留まらない展開を目論んでいる。 同部署では「車の『目』だけでなく、現在、アメリカのエヌビディアなどが手がける自動運転車において、人間の「脳」のような推論機能を担う部分へ入るための準備も着々と進めている」(ソニー関係者)という。大規模な事業買収こそない半導体事業だが、中途採用で新しい血を入れることで、着実に新領域への進出を進めているのだ。 人材獲得に力を入れるのは、中途採用だけではない。今年ソニーは、新入社員の給与体系を改定し、AI開発ができるエンジニアなど一部の優秀な人材を中心に、1年目の年収を最高で730万円と、従来から3割程度引き上げることにした。従来は、入社2年目の7月までは人事評価で一律に「等級なし」をつけていたところを、1年目の7月段階で、主任、上級担当者に与えられる全5等級のうち、上から2番目の「4」の等級をつけることが可能になる。 採用コンサルタントの谷出正直氏はソニーのこの動きについて「現在、AIなどのデータサイエンス領域は国際的に見て圧倒的な売り手市場。日本国内でも高度な専門性やスキルを身につけた一部の学生は、大学卒業後、アメリカのグーグルなど海外IT企業にそのまま就職することも増えている。こうした層に振り向いてもらいたいというのがソニーの狙いだろう。もっとも、いきなり年収2000万円台も夢ではない米国IT企業に比べると給与格差はまだ大きい」と分析する。 グローバル採用も強化する。コンピュータサイエンスのトップ校である、アメリカのカーネギーメロン大学やインド工科大学、中国の北京大学、清華大学などに狙いを定め「今後ソニーが技術的な競争力を維持するうえで、GAFAなども含めた国際的な人材獲得競争に対して危機感をもって対応していきたい」(ソニー)』、「ルネサス」から車載半導体トップを含め多数が「移籍」、「AI開発ができるエンジニアなど一部の優秀な人材を中心に、1年目の年収を最高で730万円と、従来から3割程度引き上げる」、などソニーのてこ入れは本物だ。
(注)ルネサスエレクトロニクス:三菱電機、日立製作所の半導体部門が統合、その後、NECエレクトロニクスが合流してできた大手半導体メーカー。
・『採用した人材は研究開発にも振り向け  将来に向けた「仕込み」を重視するという現在の経営姿勢を明確に反映しているのは、事業に必ずしも直結しないR&D(研究開発)領域での新卒採用を強化していること。2020年度入社の新卒採用では、R&D人材の数を前年度と比べて2割増やす予定だとしている。 2018年7月に立ち上げ、中長期的な技術開発を担うR&Dセンターでは、エンジニアが自由に実機まで開発できる環境も整えた。「こうした『雇用特区』的な取り組みは最近ほかの大手家電メーカーなども始めている。5~10年後における事業の柱を作っていくためには、多くの企業が導入すべき取り組みだ」と、リクルートキャリアHR統括編集長の藤井薫氏は指摘する。ソニーで人事部門を担当する安部和志執行役常務は2月に行われた採用戦略説明会の場で、「自分の専門分野に限らず、さまざまなことに好奇心を持つやんちゃなエンジニアが欲しい」と語った。 競争力のある領域で優秀な人材をどれほど獲得できるか。10年後のソニーが成長し続けられるかどうかは、ここにかかっている』、「さまざまなことに好奇心を持つやんちゃなエンジニア」がどれだけ育つか注目したい。

次に、本年5月25日付けダイヤモンド・オンライン「ソニーがコロナ禍でも強さを見せる理由、元副会長に聞く「創業精神への回帰」 盛田・井深を間近に見てきた元副会長が語る」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/238002
・『コロナ禍であらゆる日本企業が難局を迎える中、ソニーの動きが力強い。金融子会社の株式公開買い付け(TOB)、AI搭載半導体の発表、新型ゲーム機・プレイステーション5の開発……。その相次ぐ布石の根底にあるのは、創業精神への回帰だ。吉田憲一郎社長は19日の経営方針説明会の冒頭で、「ファウンダーである盛田昭夫からの学びに、長期視点に基づく経営がある。新型コロナウイルスが世界を変えたいま、改めてその重要性を感じている」と語った。ソニーの精神とは何なのか?創業者を間近に見てきたソニー元副会長の森尾稔氏に聞いた』、「吉田憲一郎社長」はCFO出身の実務家なので、求心力を得る狙いもあって、「創業精神への回帰」を打ち出したのだろう。
・『「企業経営はマラソンだ」 盛田昭夫氏はそう言った  しばらく前、高木一郎君(ソニー専務、エレクトロニクス事業を担当)とお酒を飲みました。「テレビってずっと赤字だっただろう。最近やっと、利益が出るようになってよかったね」って僕が言ったら、高木君は「森尾さん、8年や9年の赤字ぐらいで諦めてどうするんですか」と返してくるんです。さらには、「サントリーのビール事業は46年間も赤字でした。それでもサントリーが諦めなかったから、今ここにプレミアムモルツがあるのですよ」と。ソニーの人からビールの話を聞かされるとは思わなかったけれどね(笑)(Qは聞き手の質問、A」は森尾氏の回答)。 Q:今の企業経営には短期的な成果が求められがちです。創業から5年で上場し、時価総額はユニコーン(約1000億円)で……といった具合に。株主が求めるし、社会も求めてしまう。でも実はもっと長い目線で経営すべき? A:(略歴はリンク先参照)僕はそうだと思います。そういうふうに僕らは育った、と言ったほうがいいかな。盛田さん(共同創業者の盛田昭夫氏)は常々、「企業経営はマラソンだ」と言っていました。隣の選手を気にして走っているようではいかん、自分のペースで走ればいい、と。だから四半期ごとの決算開示なんて、本当はやめたほうがいい。僕個人はそう思っています。株主には情報が必要ではありますから、もっと簡略な開示内容にすればよいと思っています。 Q:マラソン経営をするなら、経営者にはこらえ性が必要になりそうです。 A:そうそう。偉い人ほど短気な人が多いものですからね。 ただ、僕は、井深さん(共同創業者の井深大氏)や盛田さんの怒った顔を見たことがありません。井深さんの面白い話を1つしましょう。僕はずっと、開発部門にいたでしょう。部門では次に何を開発するかという事業計画をつくる会議が毎年あるのですが、その会議をしていると、井深さんがふらっと入って来る。そしてじっと20分ぐらい話を聞いて、ふらっと出ていくのです。その時に言い残していくのですよ。「君らがみんなで相談してあれかこれか、なんて言ったところで、イノベーションは起こせないよ」って』、「井深」氏の言葉は含蓄がある。
・『「全員の意見が一致するものはやってもしょうがない」  Q:みんなで相談するのがだめなら、どうしたらいいのでしょうか。 A:井深さんは「みんなが一致するようなテーマをやってもしょうがない」と言っているんです。井深さん自身、この考えに徹していました。 その最たるものが、撮像素子半導体だと思います。岩間さん(岩間和夫氏、1976年~82年の社長)がCCD(電荷結合素子)撮像素子を手掛けたのが元々ですが、実は井深さん自身は、CCDをやることに反対だった。しかし岩間さんは「社長の道楽としてやらせてもらいます」と貫いて、それを井深さんも盛田さんも許した。普通だったら、創業者が反対したらなかなかできませんよね。これがソニーのいいところだったと思います。 その岩間さん自身ですら、CCDの開発に苦戦していた1970年代には、「20世紀中には元を取れない(投資回収できない)と思う」と言っていました。それでも長期的にやっていくために、社長の道楽という言葉を使ったんですね。しかし結果として、今世紀中どころか80年代のうちに、ビデオカメラに搭載されて稼ぐようになりました。 Q:そして21世紀の今、CCDの流れを組んだCMOS(相補型金属酸化膜半導体)がソニーの稼ぎ頭となっています。 A:これはソニーの撮像素子技術の「S字カーブ」がまだ成立しているということだと思います。S字カーブってご存じですか? 縦軸が性能や価値、横軸が時間と考えてください。どんな技術も開発当初はなかなか性能が上がらなくて、ある時点からドーッと進歩するものです。それがS字の急カーブの局面です。ところがある時点で進歩は飽和状態を迎え、そこから後は開発当初と同様、目覚ましい進歩というのが難しくなる。技術による差別化が難しくなって、生産規模やコストの低さの競争に突入します。 たとえば液晶パネルだと、日本はコストが高いから、中国のような低コストかつ大規模生産ができる国にはなかなかかなわない。こういう局面になる前に、今の技術から下りて、次世代技術のS字に乗り移らないといけない。でも、次の技術が本当に可能性があるのかどうか分からないし、今ある技術のほうが性能が出るもんだから、乗り移るのはなかなか判断できないものです』、「井深さん自身は、CCDをやることに反対だった」、「しかし岩間さんは「社長の道楽としてやらせてもらいます」と貫いて、それを井深さんも盛田さんも許した」、初めて知った。「CCDの流れを組んだCMOS(相補型金属酸化膜半導体)がソニーの稼ぎ頭」、とは本当に分からないものだが、「井深さんも盛田さんも許した」というのはソニーの懐の深さなのだろう。
・『やる意味があるかどうか経営理念で決まる  ソニーの撮像素子については、いまだに技術の差別化ができているのだと思います。S字がものすごく長いのです。 ソニーしか作れないわけではなくて、最近だと韓国サムスン電子が1億画素を超える撮像素子を作ったそうです。原理で言うと、画素数が増えると解像度が上がる代わりに、感度が下がるというトレードオフの関係があります。 ところがソニーのCMOSは裏面照射のような技術で、競合企業と同じ画素数でもソニーの方が感度がいい、という他社にない特徴を出せている。これがソニーであれどこであれ、みんな同じトレードオフのルールに縛られるのなら、後は規模やコストの競争だけ。それではソニーがやる意味はありません。 Q:やる意味があるかどうか、というのは、ソニーの経営ではよく議論されたことですか。 A:ソニーがやって特徴を出せるのかどうか、ということですが、やる意味があるのかどうかの判断は最終的には、企業理念に基づくものです。そして理念は、すべての企業の経営において、非常に重要なものです。 ソニーで言うと井深さんが設立趣意書で、「技術者の技能を発揮する自由闊達な理想工場の建設」だとか「最先端の技術で文化の向上に資すること」を企業理念としました。 この設立趣意書は創業当時(46年制定)のもので、古くなるとみんな読まなくなるので、盛田さんが80年代に「ソニー・スピリッツ」としてまとめ直した。新しい技術を使って、これまでにないものを創って世の中に貢献するといった内容です。そして今の経営陣は、パーパス(存在意義、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」としている)とバリュー(価値観、夢と好奇心・多様性・高潔さと誠実さ・持続可能性の4つを定めている)という言葉で経営理念を定めています。 Q:経営理念こそが重要だと指摘する経営者は他にもいます。たとえばコマツの坂根正弘元会長(現在は顧問)は、自身がもっとも会社に貢献したこととして、コマツウェイを明文化したことを挙げていました。利益を出す、株価を上げるといった数値目標に比べ、どこかきれいごとに聞こえなくもありませんが、実はとても重要? A:重要ですよ。なぜか分かりますか? 例えばソニーの場合、事業本部長のような立場になるとかなりの権限を与えられます。上に相談はしますが、経営トップはいちいち細かいことは判断しない。だから自分で考えなきゃいけない。自分で考えるとき基本になるのが、経営理念です。 近年はいろんな会社が、コーポレートガバナンス・コード(2015年6月に上場企業に適用)には経営理念を作るべきだと書いてあるから作ろう、と言って作るようになりました。でも作った後は実際には神棚に飾っておいたまま、みたいな状況も少なくありません。それじゃだめで、経営陣から社員まで、上から下まで一気通貫で共有している価値観にならないといけません。 その意味ではソニーでは、世の中に対する技術による貢献と、従業員に対して働きがいのある職場を提供するという2点が、時代を越えて経営の大きな目標と位置づけられ続けています』、「ソニーでは、世の中に対する技術による貢献と、従業員に対して働きがいのある職場を提供するという2点が、時代を越えて経営の大きな目標と位置づけられ続けています」、さすが「ソニー」だ。
・『そんなのできっこない! 絵に描いた餅プロジェクト  Q:昨年、旭化成フェローの吉野彰氏がリチウムイオン電池の技術でノーベル化学賞を受賞しました。受賞直後の編集部によるインタビューの中で、電池技術の開発が進んだ要因の一つとして「ソニーに森尾さんがいたから」と言及していました。 A:吉野さんは確か89年ぐらいに、ソニーに「共同開発をしましょう」と言ってこられた。うちはリチウムイオン電池については、西美緒さんという技術者が中心になって取り組んでいたから、共同開発はお断りしたんです。でも「性能の評価だけでもしてもらえませんか」とおっしゃるので、それはお受けしました。ユーザーの視点で、いろんな条件で性能を試しましたね。 89年は、パスポートサイズのハンディカムが大ヒットした年です。私はこの事業の開発技術部長だったのですが、ヒット後の最大の課題が「次のヒット商品をどう作るか」でした。通常の商品設計は1年ごとにするものですが、1年サイクルでは思い切ったものは生まれません。 Q:当時のソニーの勢いなら、目先を少し変えたぐらいでも製品は売れたでしょうね。 A:売れたと思いますよ。でも他社も同じことをやるから、圧倒するものはできない。だから新しい技術を盛り込んだ、画期的な製品を3年ぐらいかけてやろうと考えました。EMプロジェクトというのを立ち上げて、軽くて強力なリチウムイオン電池や非球面レンズといった技術を搭載しようと。電池は重要だったんです。 Q:EMってどういう意味ですか。 A:本当は何かの略で、エクストリームなんとか……。ところが現場の連中が「そんなこと実現できっこない、絵に描いた餅だ」と言ったものだから、「絵に描いた餅プロジェクト」って呼ばれました。 Q:なぜ飛び抜けたものをやろうと考えたのですか。会社がそう求めたのですか。 A:いやいや。ある部下が僕にそう進言したの。星飛雄馬(『巨人の星』の主人公)はいざというとき、隠し球で相手の三振を取ると言って、「森尾さん、僕らも絶対に隠し球がなきゃいけませんよ。毎年みんなと同じような競争をしていちゃだめだ」と言う。そして僕もそのとおりだと思った。 なぜなら、ターゲット設定こそが重要だからです。ターゲットを設定してしまうと、それ以上のものはできません。上司が低いターゲットを与えると、本来ならもっと能力を発揮できる部下も、ターゲットを上回るものをやらなくなる。それはもったいないし、部下という人材に対しても失礼。やる気の芽を摘んでしまいます。だからできるだけ背伸びをしたターゲットが必要なんです』、「EMプロジェクト」には微笑んでしまった。「ターゲットを設定してしまうと、それ以上のものはできません・・・できるだけ背伸びをしたターゲットが必要なんです」、さすが超優良企業だ。
・『台数や利益よりも若いファンを作ることが大事  Q:森尾さんがソニーの経営に関わっていた時代に比べ、今のソニーは厳しい企業間競争にさらされ、技術の差別化も難しくなっています。 A:僕らの時代より、今の経営者は難しいと思います。その点でひとつ言えるのは、僕らの世代の「最大の貢献」が何だったか、ということです。 ソニー最大のヒット商品としてウォークマンを指して、何億台も売れて利益を生み出した、と言う人があります。しかし本当に大事なのは、ウォークマンによって若い世代のソニーファンが生まれたことです。中学生なんかが競って、ウォークマンを買いたいと思ってくれたでしょう? その人たちは大きくなってからも、ファンで居続けてくれました。 今のソニーは、かつてとはビジネス構成が大きく変わっています。ゲームソフトだったり、映画だったり音楽だったり。こういった事業で今の経営陣が力を入れているのは、リカーリング・ビジネス。つまり、製品を売っておしまいではなく、お客さんとずっと続くつながりを大切にしています。僕は、これはすごくいいことだと思います。 ソニーというブランドには、若いファンを引きつけられるビジネスが常に必要です。ゲームのような若い世代が関心を持つ事業は、絶対に続けないといけない。現役の後輩たちと会うと、よくそういう話をしています』、「ゲーム」については馬鹿にしていたが、「若い世代が関心を持つ事業は、絶対に続けないといけない」、納得させられた。

第三に、5月28日付けダイヤモンド・オンライン「ソニーが金融事業を完全子会社化、真の狙いは「脱エレキ」の加速」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/238607
・『コロナショックをものともせず、ソニーが攻め続けている。来春63年ぶりに商号を変更し、ソニーグループとなる。また金融持ち株会社を完全子会社化する。業績堅調なソニーは電機業界で勝ち続けられるのか』、「商号」や組織変更の狙いは何なのだろう。
・『新生ソニーへ3つの組織変更 すでに現れていた予兆  「ファウンダーの盛田からの学びの一つに、『長期視点に基づく経営』があります。新型コロナウイルスが世界を変えた今、私は改めてその重要性を感じています」 5月19日に開かれた、ソニーの吉田憲一郎社長兼CEO(最高経営責任者)による経営方針説明会。冒頭に創業者の一人、盛田昭夫氏を持ち出す辺りが、吉田社長の生真面目さ、あるいは強かさの表れなのだろう。 吉田社長が長期視点に基づく経営感覚から導いたという、この日のビッグニュースは3点あった。 1点目に、グループ本社機能とエレクトロニクス(家電)事業の間接機能が混在していた「ソニー」を再定義。ソニーの社名を2021年4月から「ソニーグループ」に変更し、ソニーグループは本社機能に特化した組織にする。1946年創業の東京通信工業を58年にソニーと改称して以来、実に63年ぶりの社名変更となる。 2点目に、ソニーの商号は祖業のエレキ事業が継承する。吉田社長は「創業以来、ソニーというブランドを築き上げてきた主役」「ソニーの商号を受け継ぎ、価値向上を目指す」とエレキ事業を持ち上げて説明した。 3点目として金融持ち株会社の「ソニーフィナンシャルホールディングス(HD)」(持ち株比率65%)を完全子会社化する。吉田社長はコロナ危機で地政学リスクが高まる中、日本に安定した事業基盤を持つ会社の取り込みは、「経営の安定につながる」と説明。少数株主に帰属する利益として流出していた配当を取り込み、さらに税務上のメリットもあり、連結で年400~500億円の純利益増が見込めるという。 すでに組織変更の予兆はあった。 今春、エレキ事業を束ねる中間持ち株会社「ソニーエレクトロニクス」を設立。表向きの理由は「事業間の一体運営をさらに推進する」などと発表されたが、これまでも事業内連携は強めており、敢えて新組織を作ることに説得力がなかった。だが、今回ソニーを継承する受け皿としての位置付けが示され、外部から見ればようやく合点がいった。 他にも、ソニー関係者によると、ゲーム子会社の「ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)」に出向中だったソニー社員たちが今春、SIEへ転籍したという。この関係者は意図を測りかねていたが、「ソニー本体の先行整理」という意味合いがあったとすれば納得がいく。 ソニーの歴史と照らし合わせると、おもしろいのはやはり、エレキ事業がソニーの商号を継承することだ。 これまでの流れはむしろ逆で、ソニーからエレキ事業を外出ししていた。テレビ部門など次々と分社化を進め、各部門の経営責任を明確にした。パソコン(バイオ)、バッテリーなどは部門ごと売却した。 そんな厳しさはあっても、前社長兼CEOの平井一夫時代は、「エレキ復活」を掲げていた。ウォークマンなど輝かしいエレキ全盛時代の復興を望む、ソニーOBやソニーファンからの根強い声もあったからだろう。 吉田社長に代わってからは、たとえ看板倒れであったとしてもエレキ偏重の発言は少なく、今回の組織改編に当たっても、「多様性は経営の安定性」などと、グループ経営の重要性が強調された。 エレキ事業にソニーの“のれん”は譲って、祖業のプライドは傷つけない。されど本社からは切り分けて、グループの一事業としてこれまで以上に冷徹にコントロールする。今回の組織改編からはそんなソニーの意思が垣間見える。 奇しくもコロナショックにより事業別で最大のダメージを受けそうなのはエレキ事業だ。ソニーは21年3月期の営業利益で、20年3月期比50%以上減という悲惨な予想を立てている。吉田社長は経営方針説明会で「環境変化に応じた体質の強化にも取り組んで参ります」と意味深な説明をしており、リストラの四文字がちらつく』、「エレキ事業にソニーの“のれん”は譲って、祖業のプライドは傷つけない。されど本社からは切り分けて、グループの一事業としてこれまで以上に冷徹にコントロールする。今回の組織改編からはそんなソニーの意思が垣間見える。 奇しくもコロナショックにより事業別で最大のダメージを受けそうなのはエレキ事業だ・・・リストラの四文字がちらつく」、なるほど高度な戦略だ。
・『金融の完全子会社化の是非 米GEはリーマンで大痛手  前述のように、ソニーは金融持ち株会社のソニーフィナンシャルHD(傘下にソニー生命、ソニー損保、ソニー銀行)を完全子会社化する方針を示した。ゲーム事業、半導体事業、エレキ事業と肩を並べ、バランスよく利益貢献させるイメージだ。 吉田社長は、「コア事業であるからこそ、ここ数年で複数回にわたり持ち分比率を引き上げた」と説明した。だが、2代前のCEO、ハワード・ストリンガー時代は非コア事業と位置付けられ、だからこそ07年に上場子会社となった経緯がある。ソニーフィナンシャルHDにしてみれば一連の扱いはソニーの“ご都合主義”以外の何物でもないだろう。 それはさておき、金融事業への注力で思い起こされるのは米GE(ゼネラル・エレクトリック)の失敗だ。 周知の通り、GEは08年のリーマンショックで、当時収益の柱になっていた金融事業が大ダメージを受け、その後、「メーカー回帰」に向かった。 ソニーフィナンシャルHDの主力事業は個人向けの生命保険(ソニー生命)であり、中小企業向け融資やクレジットカードが主力だったGEの金融事業とはかなり異なるのは確かだ。金融事業とソニーが持つテクノロジーとのシナジーなど、吉田社長の説明にも一定の説得力はある。 ただし、GEは金融事業の大ダメージから大構造改革を進め、数年後には創業以来続いた家電事業を売却した。 「多様性による経営の安定性」を強調する吉田社長によもやそのようなことはないだろうが、メーカーが金融事業に深入りすると足下をすくわれることを、歴史は教えている』、「金融事業」といっても、「ソニーフィナンシャルHDの主力事業は個人向けの生命保険(ソニー生命)」であれば、リスクは小さく、「GE」の二の舞は避けられるのではなかろうか。
タグ:東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン ソニーの経営問題 (その7)(ソニーが自動車業界から人を続々引き抜く理由 10年後を見据える「仕込み作業」の実態、ソニーがコロナ禍でも強さを見せる理由 元副会長に聞く「創業精神への回帰」 盛田・井深を間近に見てきた元副会長が語る、ソニーが金融事業を完全子会社化 真の狙いは「脱エレキ」の加速) 「ソニーが自動車業界から人を続々引き抜く理由 10年後を見据える「仕込み作業」の実態」 自動車業界からの人材採用に力を入れている 次の成長軸の一つが車載半導体 「人の命に関わることはやらない」という創業以来の不文律を破り ルネサスの車載半導体トップが電撃移籍 AI開発ができるエンジニアなど一部の優秀な人材を中心に、1年目の年収を最高で730万円と、従来から3割程度引き上げる 採用した人材は研究開発にも振り向け さまざまなことに好奇心を持つやんちゃなエンジニア 「ソニーがコロナ禍でも強さを見せる理由、元副会長に聞く「創業精神への回帰」 盛田・井深を間近に見てきた元副会長が語る」 創業精神への回帰 「企業経営はマラソンだ」 盛田昭夫氏はそう言った 井深さん 「君らがみんなで相談してあれかこれか、なんて言ったところで、イノベーションは起こせないよ」 「全員の意見が一致するものはやってもしょうがない」 井深さん自身は、CCDをやることに反対だった しかし岩間さんは「社長の道楽としてやらせてもらいます」と貫いて、それを井深さんも盛田さんも許した CCDの流れを組んだCMOS(相補型金属酸化膜半導体)がソニーの稼ぎ頭 やる意味があるかどうか経営理念で決まる ソニーでは、世の中に対する技術による貢献と、従業員に対して働きがいのある職場を提供するという2点が、時代を越えて経営の大きな目標と位置づけられ続けています そんなのできっこない! 絵に描いた餅プロジェクト ターゲット設定こそが重要だからです。ターゲットを設定してしまうと、それ以上のものはできません できるだけ背伸びをしたターゲットが必要なんです 台数や利益よりも若いファンを作ることが大事 ソニーというブランドには、若いファンを引きつけられるビジネスが常に必要です。ゲームのような若い世代が関心を持つ事業は、絶対に続けないといけない 「ソニーが金融事業を完全子会社化、真の狙いは「脱エレキ」の加速」 新生ソニーへ3つの組織変更 すでに現れていた予兆 ソニーの社名を2021年4月から「ソニーグループ」に変更し、ソニーグループは本社機能に特化した組織にする ソニーの商号は祖業のエレキ事業が継承 金融持ち株会社の「ソニーフィナンシャルホールディングス(HD)」(持ち株比率65%)を完全子会社化 エレキ事業にソニーの“のれん”は譲って、祖業のプライドは傷つけない。されど本社からは切り分けて、グループの一事業としてこれまで以上に冷徹にコントロールする。今回の組織改編からはそんなソニーの意思が垣間見える。 奇しくもコロナショックにより事業別で最大のダメージを受けそうなのはエレキ事業 リストラの四文字がちらつく 金融の完全子会社化の是非 米GEはリーマンで大痛手 ソニーフィナンシャルHDの主力事業は個人向けの生命保険(ソニー生命) 「GE」の二の舞は避けられるのではなかろうか
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働き方改革(その27)(テレワークでも常に社員を「監視」したがる上司…日本企業のヤバい実態 テクノロジーで「昭和」が復活する絶望、「テレビ会議だと結論が出ない!」対面での妥協をEUは模索、「俺の時代は終わった」新型コロナで揺れる管理職たち) [企業経営]

働き方改革については、5月15日に取上げた。今日は、(その27)(テレワークでも常に社員を「監視」したがる上司…日本企業のヤバい実態 テクノロジーで「昭和」が復活する絶望、「テレビ会議だと結論が出ない!」対面での妥協をEUは模索、「俺の時代は終わった」新型コロナで揺れる管理職たち)である。

先ずは、5月27日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「テレワークでも常に社員を「監視」したがる上司…日本企業のヤバい実態 テクノロジーで「昭和」が復活する絶望」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/72864
・『コロナ危機によって一部の企業はテレワークに移行したが、社員がパソコンの前に座っているのか上司が監視したり、オンラインで会議や飲み会を行った際に、上司が家庭の事情にまで介入するという事態が頻発した。テレワークは働き方改革を実現する有力な手段のひとつであり、コロナ危機によって多くの会社がテレワークを実現したことは、日本の会社組織を変える大きなきっかけとなるはずだった。 言うまでもないことだが、テレワークというのは、従来の社内習慣を家庭内に延長するためのツールではない。物事の本質を的確に捉えなければ、テレワークのメリットを享受できないどころが逆効果になってしまう』、興味深そうだ。
・『テレビ会議がマウンティングの場に  テレワークを実施した場合、一定の頻度でオンライン会議が開かれることになる。当然、画面には背景が映り込むことになるが、場合によっては自宅の様子がある程度、相手にも分かる。一部の社員は「よくそんな家に住めるね」などと、ここぞとばかりにマウンティングに走っているという。異性の上司から、部屋の様子をもっと見せるよう要求されたというケースもSNSで散見された。 会議をしていなくてもずっとオンラインにするよう求められるなど、事実上、上司による監視も行われており、一部の企業では社員がパソコンの前にいるのかチェックできるソフトウェアの導入も検討しているという。 テレワークに移行したにもかかわらず、こうした行為に走ってしまうのは、全員が同じ場所で顔を合わせ、濃密な人間関係を構築するという従来型ムラ社会の習慣から脱却できていないからである。だが、物理的に場所が離れている以上、オフィスという空間を共有している時とまったく同じ環境にはならない。 場を共有するという、従来型価値観から抜け出せないままテレワークを実施すれば、弊害の方が多くなり、緊急事態宣言の解除をきっかけにすべてを元の状態に戻そうとする動きを招きかねない。こうした事態を回避するためには、テレワークが持つ本質的な意味について再確認しておく必要があるだろう。 テレワークの実践は、今回のコロナ危機よりも前から推奨されていたことだが、その前提となっていたのは、先ほども述べたように「働き方改革」である。 働き方改革というのは単に残業時間を減らすための措置ではない。業務のムダを見直し、生産性を向上させることで、収益を落とさずに労働時間を削減することが真の目的である。業務のムダの中には、社員全員が夜遅くまで残業しているのをいいことに、各人の仕事の範囲や責任の所在を曖昧にしてきたという慣習も含まれている。 個人の責任を明確にし、合理的に仕事を進めることに意味があり、これが実現できて初めてテレワークや時差出勤といった措置が可能となる』、「一部の企業では社員がパソコンの前にいるのかチェックできるソフトウェアの導入も検討している」、未だに全く「テレワークのことを理解してない企業もあることに、改めて驚かされた。
・『テレワークと働き方改革はセットになっている  つまり、多様性の発揮やテレワークというのは、働き方改革とセットになっており、単体では機能しないものである。その証拠に、今回のコロナ危機でスムーズにテレワークに移行できた企業の多くは、コロナ危機の前から働き方改革が進んでおり、社員が互いに顔を合わせなくても業務を進められる体制ができあがっていた。 こうした改革を進められなかった企業が、形だけテレワークを導入すると冒頭で示したようなケースが多発してしまう。社員がパソコンの前に座っているのか監視するというのは、成果ではなく、同じ空間を共有した時間でしか社員を評価できないという現状を如実に物語っている。 全社員が遅くまで会社に残っていると、各人がいつまでにどの作業を終えたのかというタスク管理は曖昧になる。結果として社員の評価基準は成果ではなく、何時間残業したのか、皆と同じ時間を共有したのか、という部分に絞られてしまう。 ある企業では、マクロを駆使してエクセルの作業を合理化し、いつも定時前に仕事を終えていた優秀な派遣社員を評価できず、「暇そうにしている」という理由で派遣を継続しなかったという。入力や計算の作業に時間がかかり、残業を繰り返していた生産性の低い社員を有能と見なし、生産性の高い社員を解雇するという喜劇のような話だが、この話を本当に笑える企業はどのくらいあるだろうか。 はからずも今回のコロナ危機は、テレワークへの移行を通じて、働き方改革の達成レベルを可視化する結果となってしまったようだ』、「テレワークと働き方改革はセットになっている」、その通りだ。「マクロを駆使してエクセルの作業を合理化し、いつも定時前に仕事を終えていた優秀な派遣社員を評価できず、「暇そうにしている」という理由で派遣を継続しなかった」、ここまで見る目のない企業では、働きがいもないだろう。
・『テクノロジーの進歩で昭和が復活するという絶望  働き方改革が実現できていない組織では、仕事が終わってオンライン飲み会に移行しても、やはり、従来と同じカルチャーが貫徹されてしまう。 オンライン飲み会とは、テレビ会議システムを使って、それぞれの自宅でお酒を用意して、飲み会を行うというものである。実際にお店に行かなくてもよいので、感染防止になるのはもちろんのこと、ムダに体力を使わず、退出も自由というのが本来のメリットであった。 ところが、従来型カルチャーの組織がオンライン飲み会を実施すると、飲食店での飲み会よりもさらにひどい状況になる。お店での飲み会であれば、あくまでお店での会話だけが話題の対象となるが、オンラインの場合、冒頭で紹介したケースのように自宅の状況も「いじり」の対象になる。 家が整理できていないといった話から始まり、上司のくだらない説教が続き、挙げ句の果てには結婚などプライベートな部分にまで干渉する。昭和の時代には社員の私生活に過度に干渉する上司は珍しくなかったが、いくら日本の企業組織が前近代的とは言え、平成以降はこうした風潮はかなり後退したかに見えた。だがコロナをきっかけとした業務のIT化によって、昭和的な風習が復活したのだとすると、まさに絶望的としかいいようがない』、「コロナをきっかけとした業務のIT化によって、昭和的な風習が復活」、こんな事例まであるとは心底驚かされた。
・『マネジメントの原理原則に立ち返ることが重要  繰り返しになるが、本来、企業の業務というのは、リーダーがメンバーに対してタスクを与え、いつまでに何を成果として提出するのか管理することで回っていく。あうんの呼吸で業務を進める従来型の手法はある意味でマネジメントの放棄であるといってもよい。 こうした近代的組織の基礎がしっかり出来ていれば、テレワークへの移行や、時差出勤も容易に実現できる。実際、ITがここまで普及するずっと前から、グローバルに展開する優良企業では、既存の通信手段を使って、遠隔での業務をこなしてきた。 ITは以前から行われている遠隔での業務をより便利にする効果を持つだけであり、IT化によって業務の本質が変わったわけではない。逆に言えば、業務の分担と責任の明確化という基本が出来ていなければ、どれだけテクノロジーが発達しても、遠隔での業務には移行できないだろう。 今年の冬には再び感染が拡大すると予想する専門家は多く、テレワークを業務の一部として位置付けられなければ長期的な業績にも影響する。テレワークへの移行は、働き方改革と不可分であるという原理原則について再確認する必要があるだろう』、全く同感である。

次に、6月9日付け日経ビジネスオンラインが掲載したみずほ証券チーフMエコノミストの上野 泰也氏による「「テレビ会議だと結論が出ない!」対面での妥協をEUは模索」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00122/00074/?P=1
・『政府が「新しい生活様式」を促していることもあり、会社員などが働くスタイルとして、在宅勤務(テレワーク)が定着する方向である。会社側からすれば、高い賃借料を支払っているオフィススペースを徐々に減らすことが可能になるし、地方出張が減ればその関連の経費も少なくて済む。 もっとも、各人への通勤費支給を定期券代のままとするかどうかは、やや難しい問題ではある。一方、働く側からすれば、会社への行き帰りの通勤時間がなくなるので、その時間の有効活用が可能になる。自宅にいることで、自分のペースで落ち着いて仕事ができるから効率が上がるという人もいるだろう。 とはいえ、仲間どうしがふだんなかなか対面しない分、会社組織の一体感が薄れるのではという懸念もあろう。 通信インフラの問題もある。サーバーへの負荷が過大になることでパソコンの反応速度が落ちると、作業効率は格段に低下する。小型カメラの映像などで姿を確認できない場合、仕事をせずに、どこかに行ってしまっている可能性もある。街中でよくみかけるウーバーなど、自転車による外食配達サービス。配っている人の中には、会社に無断で昼間に副業している人もいるのではないかと、筆者はにらんでいる』、「ウーバーなど」はよく見かけるようになったが、「会社に無断で昼間に副業している人もいるのではないか」、その通りなのかも知れない。
・『腹の探り合いができない  そうした中で、論点を1つ提供しているのが、オンラインによる映像と音声の伝達を用いた会議方式、いわゆるテレビ会議の善しあしである。 限られたスペースしか画面に映らないのでワイシャツの下は実は短パンの男性がいるとか、米国ではパソコンの小型カメラへ下向きに顔を映すと二重あごに映りやすいことが問題になっており、整形手術をする、テープを貼ってあごの肉を持ち上げる(!)といったさまざまな対処がなされているという記事が米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載されたとか、話題はいろいろある。 ここでは、テレビ会議方式のおそらく最大の難点と考えられる、会議の部屋をちょっと離れての参加者どうしの腹の探り合いといったテクニックが使えないデメリットを、欧州の実例から考えてみたい。欧州の場合は「プレーヤーの数が多すぎる」という難点が初めからあり、意見がなかなかまとまらないことがよくあるのだが、テレビ会議という方式の問題点もまた、このところの経緯から浮き彫りになっているように思う。 EU(欧州連合)によるヨーロッパの経済統合は、共通通貨ユーロの流通・ECB(欧州中央銀行)による単一の金融政策運営が通貨統合に参加した国では確立する一方で、各国の主権問題(ポピュリスト政党は自国の独自性・権利を主張しがちである)などから財政の面では統合がなかなか進まないという、バランスが悪い状態のままである。 ギリシャやスペインなどが中心になった欧州の債務危機は、そうしたユーロ圏の弱点を直撃した出来事だった。そして今度は新型コロナウイルスという、知られていなかった新しい「敵」が現れており、ユーロ圏の結束力の強さが再び試されている。だが、新型コロナウイルス感染拡大に起因する経済的な悪影響に結束して対処する方策を話し合うはずのEU・ユーロ圏の会議が難航し、結論を先送りする場面が目立っている。 3月26日にテレビ会議方式で開催されたEU首脳会議は、新型コロナウイルス感染封じ込め策の解除に向けた「出口戦略」や経済再建計画の策定に着手するといった基本線では一致した。だが、最大の焦点になっていた各国の財政へのEU共通の支援策に関しては合意できず、結論を先送り。2週間以内に具体案をまとめるよう財務相らに指示するにとどまった。 イタリアやスペインなど9カ国が、「コロナ債」と呼ばれるユーロ圏共同債の発行によって安定した資金調達をすべきだと主張した。これに対し、南欧諸国の財政規律のさらなる緩みを招きかねず、健全財政を守ってきたことに由来する自国の低金利での資金調達メリットも失いかねないと警戒する「北」のオランダやドイツなどが反対姿勢をとった。ESM(欧州安定メカニズム)の与信枠活用でも対立があり、利用の際の条件の厳格化を求めるオランダが妥協を拒んだ』、一時は南北に分裂する瀬戸際だったようだ。
・『テレビ会議を続けるうちに……  上記を受けて、ユーロ圏財務相会合が、4月7日にテレビ会議方式で開催された。ちなみに議長のセンテーノ氏は「南」に属するポルトガルの財務相である。7日午後に始まったこの会議は翌8日の朝まで延々16時間も続けられた。だが、このマラソン協議でも上記の対立点は解消されず、いったん水入り。9日に再協議することになった。 そして9日に、やはりテレビ会議形式で開かれたユーロ圏財務相会合は、総額5400億ユーロ(約64兆円)の経済対策で合意にこぎつけた。最大2400億ユーロ相当のESMの与信枠活用、中小企業などへの融資に公的保証を付与する2000億ユーロ規模の資金繰り支援策、そして1000億ユーロ規模の基金を創設しての雇用維持策が柱である。 もっとも、危機対応の財源として「コロナ債」を発行するかどうかについての対立は、この会議でも解消されず、首脳レベルで結論を出すことになった。根本的対立点について、今度は各国首脳にボールが投げ返された形である。 4月23日、EUはテレビ会議方式で首脳会議を開催した。だが、ここでも「コロナ債」問題を軸とする対立は解消されなかった。コロナウイルスに由来する経済的悪影響が甚大なイタリアなどを支援するために基金を創設し、EUの次期中期予算(2021~27年)と組み合わせて対応する方向では一致したものの、基金の規模や財源など具体案の検討は欧州委員会に委ねられることになった。この時点では、具体案は5月6日までに提示されると報じられていたが、実際にはそうはならなかった。 だが5月19日になり、画期的な動きがあった。フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相がテレビ会議で話し合った末、5000億ユーロ規模の復興基金の創設案を打ち出したのである。共通の債券をEUが発行して資金を調達する。国別の分配額(返済の必要がない補助金の供与となる)は、必要に応じて、すなわちコロナウイルスがもたらした損害の大きさに応じてイタリアなどに多く支払われる方向で決まる。 だが、返済額はEUの中期予算の枠内で固定されている負担割合に応じたものになる。要するに、「南」が必要な額を「北」が払ってあげることが十分可能なスキームである。 そうしたことには否定的だったドイツの姿勢がここにきて変化したことを、市場は驚きをもって受け止め、そして歓迎した。EUの多くの国がこの案に賛成した』、最後は「フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相がテレビ会議で話し合った」ので一応は解決の方向が示せたのだろう。
・『「倹約4カ国」の離反  しかし、「倹約4カ国(frugal four)」と呼ばれるオランダ、オーストリア、スウェーデン、デンマークは、補助金の供与ではなく融資の形で基金は活用すべきだとして、反対を表明した。その後、フィンランドが6月4日になって欧州委員会の現行案を拒否する方針を打ち出し、これら4カ国に加わった。 新型コロナウイルスによる危機で経済がひどく疲弊した「南」のイタリアやスペインなどを円滑に支援するためには、妥協点はできるだけ早く見つけるのが望ましい。そうした中で、テレビ会議方式ではなく「対面型」の普通の会議形式で話し合う必要があるのではないかという声がEU内で出てきていると、5月25日(現地時間)にロイター通信が報じた』、「妥協点はできるだけ早く見つけるのが望ましい」、「テレビ会議方式ではなく「対面型」の普通の会議形式で話し合う必要があるのではないか」、その通りだろう。
・『「テレビ会議方式で合意が得られると考える人は誰もいない」  この報道によると、共通予算および復興基金について協議するため、テレビ会議方式ではなく実際に顔を合わせての首脳会議を、EUが向こう数週間のうちに開催する可能性があると、外交筋や当局筋が明らかにした。 EU内では、激しい論議が予想される予算協議をテレビ会議方式で実施するのは難しいとの見方が出ているほか、通訳などの問題も指摘されており、「予算案と復興基金を巡っては、実際に顔を合わせての会議を開催しないと合意できない。テレビ会議方式で合意が得られると考える人は今のところ誰もいない」とまで、EUの外交官は述べたという。 5月27日に欧州委員会は、独仏による提案と「倹約4カ国」案の双方を包含する形で、7500億ユーロ(約89兆円)規模の復興基金創設案を提示した。5000億ユーロの補助金供与と2500億ユーロの融資が内訳である。EUが共通の債券を発行して財源を調達する。全会一致の原則があるので、EUの全加盟国の賛成が得られなければ、この案は実行に移されない。 ミシェルEU大統領は同日、この基金案を6月19日に開催される定例のEU首脳会議で検討する方針を表明した。この首脳会議が対面方式になるというアナウンスは本稿執筆時点ではまだないのだが、果たしてどのような結果になるだろうか。 日本が絡んだ事例も、最後に1つだけ紹介しておきたい。3月16日に初めてテレビ会議方式で行われたG7サミット(主要7カ国首脳会議)である。 このサミットについて日本政府関係者は、2国間の首脳会談や夕食会などが開催されないため「首脳どうしが趣味などで意気投合し、個人的な信頼関係を深める良い機会が失われた」と残念がったという。 また、テレビ会議が約50分間と短かったため、「直接会って、時間をかけて話すのとは内容が全然違う」と外務省幹部は振り返っていたという(3月19日付時事通信)。踏み込んだ議論がさっぱりできなかったというわけである。 コロナ後の「新常態」ではオンラインでの会議が徐々に主流になるだろうという見方が一般的であり、筆者もそのように見ている。だが、微妙な問題で国どうしが妥協点を模索する際などの、相手の表情などもうかがいながらのバックルームでの探り合いや駆け引きといった交渉上のテクニックは、対面方式でなければ用いるのはなかなか難しいだろう。 会議の性質や難易度に応じて会議を開く方式を使い分け、必要に応じて対面での会議も設定するというのが、結局は落としどころになるように思われる』、「会議の性質や難易度に応じて会議を開く方式を使い分け、必要に応じて対面での会議も設定する」、微妙な問題についての大人の対応のようだ。

第三に、6月9日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏による「「俺の時代は終わった」新型コロナで揺れる管理職たち」を紹介しよう。
・『「何なんですかね、この感覚。今のうち早期退職した方がいいのかなぁって。管理職とか……よく分からなくなってしまって。私みたいな人、結構、いるんじゃないですか?」 こうボヤくのは某大手企業に勤める50代の男性管理職だ。彼も、新型コロナ感染拡大防止策で広まった“新しい働き方”に戸惑う管理職の1人だ。「も」だの「1人」だのとしているのは、似たような話を、同じような立場の人たちが、口にしていたからにほかならない。 「俺って、なんだっけ?」というぼやけた感情と、「次に行くべし」という前向きな感情と、少々言葉は悪いが「カネの損得」とで、「この先ど~しよっかなぁ」と身の振り方を、管理職たちが考え始めた。 というわけで、とにもかくにも「悩める管理職」代表として、彼の至極曖昧な胸の内からお聞きください』、確かに「新型コロナ感染拡大防止策で広まった“新しい働き方”に戸惑う管理職」、は多そうだ。
・『テレワーク自体は歓迎しているが……  「テレワークもZoom会議も、別に反対してるわけじゃないんです。むしろどんどんやった方がいい。家で仕事した方がはかどることもある。その半面、在宅勤務を続ける中、たまに会社に来ると、不思議と開放感があって効率が上がる。いっそのこと週休3日にしてもいいんじゃないか、と思ってるくらいです。 まぁ、これはあくまでも個人的な意見で、会社的には取りあえず『基本は出社』の方向です。流れ的にはテレワークが増えてくるんだろうけど、周りの会社の動向を見てるんでしょうね。日本人らしいですよ。 ただね、こういう話をすると、メディアってすぐに『おじさんたちが出社派で、若い人は在宅派』って世代間の意識の違いにしがちでしょ? あれって、ちょっと待て!って感じなんですよ。若い人の中にも、テレワーク反対派、結構います。 書斎もない、通信費もかかる、家にいると家事を手伝わされる、奥さんに怒られる(笑)。妙なもんですよね。コロナ前には散々『テレワークさせろ!』って言ってたのに、いざやってみると、『在宅だと効率が下がる』だのなんだの言って、会社に来たがるんですからね。 あ、いやね、問題はそこじゃない。……私自身です。 私には、部下が50人ほどいます。 部下を育てるのって、結構面白くてね。新しい仕事やちょっと難しい仕事を任せると、思いも寄らないやり方でチャンレジするなど、だんだんと成長するのが楽しかった。 いつも頭の片隅に仕事のことがありました。部下をどう采配しようかと考えたり、自分もプレイングマネジャーなので結果を出さなきゃならなかったり。仕事の問題は尽きません。ぐっすり眠れる日なんてあんまりなかった」 「ところが今回のコロナで、テレワークとかZoom会議やるうちに、部下とか上司とか、管理職とか、なんだったのかなぁと思うようになってしまったんです。何なんですかね、この感覚。 当然、今までの評価方法ではテレワークにはまらないので、完全な成果主義にならざるを得ないでしょう。そうなれば、部下自身に自ら動いてもらわないと困る。今までのように周りがサポートして、どうという話じゃなくなるわけです」 「一方で、管理職も、今までとは違う形になるでしょう。 本来なら、そこに自分も率先して加わっていくべきなのかもしれません。 でも、もういいな、と。自分たちの出る幕じゃないのかなぁ、と思っちゃうわけですよ。 意識の高い人たちは、『いくつになっても学び続けなきゃダメだ』と言いますよね。その通りなんです。でもね、学ぶ努力にも、動機が必要ですよね? その動機が湧いてこない。会社の中でどうなるとか、もうどうでもよくて、会社の外でどう生きるかに自分の意識が移ってることに気がついちゃったんです。 おそらく会社の状況からいって、希望退職を募ると思います。なので、会社が払えるうちに早期退職した方がいいのかなぁと思い始めています。ただね、これも悩ましくて。息子がまだ大学生なので、正直、踏ん切りがつかない。なんかこの年になると、機動力ってホント落ちますね。私みたいな人、結構、いるんじゃないですかね?」 ……さて、いかがだろうか』、「自分たちの出る幕じゃないのかなぁ」、「学ぶ努力にも、動機が必要ですよね? その動機が湧いてこない。会社の中でどうなるとか、もうどうでもよくて、会社の外でどう生きるかに自分の意識が移ってることに気がついちゃったんです」、「管理職」の正直な気持ちは理解できる。
・『新しい働き方になじめない管理職も  「何を甘えたこと言ってんだ!」だの、「何が言いたいんだ、コイツは?」だの、「50過ぎてこれって、どうよ?」だのと、あきれている人もいるかもしれない。だが、これって、ごくごく普通の感覚。実に人間らしい。少なくとも私には「自分たちの出る幕じゃないのかなぁ」という気持ち、とてもとてもよく分かる。 例えば、新型コロナ感染拡大の防止策では、地方自治体の知事が発するコメント力、判断力、行動力が完全に見える化したが、圧倒的に若い知事の方が柔軟だった。説得力があった。しかも、市民と近い。一方で、申し訳ないけど、「あの~、その歯切れの悪さは~何のしがらみから~~」と。いや、これ以上やぼなことを言うのは、やめておこう。 いずれにせよ、この2カ月の変化のスピードは、生身の人間が耐えることができる限界を完全に超えている。わけが分からなくなって当たり前だ。そして、これ以上はこの速さについていくのは無理だ!となったとき、人は止まる。運転してるときと同じだ。いったんブレーキを踏んで、側道に寄る。自分が壊れないために、だ。で、ものすごいスピードで通り過ぎていく車を、ただただ見つめ、「もう、いいかな」と戦線離脱するのだ。 そして、おそらくこの男性が指摘する通り、確実にテレワークは「新しい働き方」として定着する。「横並び意識」が強い日本社会だ。「○○社はテレワークを始めた」だの「△△団体はみなやっている」といった状況になれば、重たい腰を上げる会社が雨後のたけのこのように出てくるにちがいない。 となれば、テレワークや在宅勤務によって、間違いなく求められる能力や評価方法も大きく変わる。「会社に来る」ことで評価されていた時代は終わり、“Face to Face”で物を売るスタイルは過去の遺物となり、人の機微をつかむコミュニケーションよりSNSなどを使った無駄のない発信のうまさが求められるようになる。 当然、上司と部下の関係も大きく変わるだろう。 Zoomなどを使ったWeb会議が主流になれば、相手の顔をじかに見ずに発言することが可能なので、今まで遠慮していた部下たちが、意見を主張するようになるかもしれない。“上司の顔色”も分からないから、「いいね、それ!」などと、同様の意見を持つ人たちが一斉に声を上げ、上司の圧が全くかからない方向に議論も進んでいくことだろう。 一方で、アナログ世代は、ただでさえデジタル世代に気後れしているので、「違うんだよなぁ」と心の中で思っても、流す。というか、流れていく。“Face to Face”より圧倒的に受け取る情報量が少ないぶんストッパーが利かず、そのときの“空気”がよどむことなく流れていってしまうのだ。 「忖度(そんたく)する人」も消える。今までなら会議が終わった後に、「課長、あれってやっぱり難しいですよね」などと寄り添ってくれる人がいたけど、モニター越しにはいない。今までなら、こっそりと「ちょっとキミ、あれはどうかなあ……」などと呼び止めることもできたけど、それもできない。部下が画面から「退出」すれば、ジ・エンドだ。 ふむ。実に健全だ。妙な上司部下関係が消え、正論が横行する。 が、その健全さがあだとなることもあるだろうし、正論が横行するコミュニティーでは、「自分の立ち位置」が微妙になったりもする。 だいたい会社で見えていた景色(=部下たちがいる)と、パソコン越しに見える景色が違いすぎるのだ。スーツを着て、満員電車に揺られて、駅ナカで立ち食いそばを食べて、出社して、部下が報告やら相談やらを言ってくるという、今まで自分を形づくっていたさまざまなモノや行動が、この2カ月で変わってしまったのだ』、「今まで自分を形づくっていたさまざまなモノや行動が、この2カ月で変わってしまった」、変化についていく気を失ってしまう「管理職」も出てくるだろう。
・『働き方の変化は早期退職を加速させるか  しかも、すでに報じられているように、40代、50代をターゲットにした希望退職攻撃が加速する気配が出てきたので、「俺も……」という気持ちになっても不思議じゃない。 東京商工リサーチは、2020年1~5月に上場企業33社が早期・希望退職を募集したと発表。これは前年同期の約2倍の数字で、19年の年間の件数(35社)に迫るという。 昨年来、“流行”していた「もうかっているうちに、切っちまえ!」型から、「もう、無理!」型へ。「黒字リストラ」から、「赤字リストラ」が今後は増えてくるのは、容易に想像できる。今回の新型コロナを機に「人が関わる仕事」を減らす動きも加速するだろうから、企業側が退職希望者を募る人数も増えていくにちがいない。 となれば、件の男性が言う通り、今のうちに辞めた方が得だ。上乗せされる退職金も多いかもしれないし。 ちなみに、2000年以降で早期・希望退職の人数が最も多かったのはITバブルの崩壊が影響した02年(約4万人)、リーマン・ショック後の09年は2万人超。また、同リサーチによると新型コロナによる倒産は、6月1日までに約200社に達し、20年に1万社が倒産、5万社が休廃業や解散になると見込んでいるという。 個人的には「こんなときこそ人員削減じゃない、新たな戦略を立てるべきだ!」と思うが、今回のテーマからずれるので、それはまたの機会に取り上げる。 話を元に戻す。結局、今回取り上げた男性のように、「管理職」という立場に疑念を抱いてしまう原因は、そもそも「管理職」というポジションの曖昧さにある。 テレワークが始まってから、あちこちで「監視型の管理職は終わり」だの「名ばかり管理職は要らない」だのと、管理職への批判が相次いでいるが、それって違うでしょ、と。 ヒラ社員と役員とをつなぐ、出世の階段の途中に、「管理職」という摩訶不思議な存在を組み込み、実際は、管理職=マネジャーになる教育も、裁量権も、人事権も与えていない。いったい、どこがマネジャーなのか? しかも、日本型組織では、裁量権が拡大すればするほど、「決める自由を自ら放棄する」という意味不明の行動が起きがちだ。 ヒラのときは、従順なことは「言われたことしかできない」と批判されるが、課長や部長になると、その従順さこそが評価される。いわゆる忖度(そんたく)だ。裁量権が広がれば広がるほど、「上の言う通りにすることが有能」と見なされるなんて、まったくもってわけが分からないが、上の意図とは異なるカタチで裁量権を使うことは「自分たちの掟(おきて)」への反逆であり、「階層社会を崩壊」させる行為だとされてしまうのだ』、「管理職」のおかれたジレンマを的確に指摘している。「働き方の変化は早期退職を加速させる」のは確かだろう。
・『大きな時代の転換点に企業は投資すべきだ  それにしょせん、数値目標なんてものは、経営サイドが勝手に割り振った「数字」でしかない。なので、たとえ数値目標を達成できなくても、定性と定量による分析を使い分けて、メンバーがどこまで自己肯定できるかをマネジメントするのがマネジャーの仕事だ。 必要とあらば、新しい人を採用、報酬などを決める権利もあってしかるべき。が、その能力も欠けているし、決定権も持たされていない。 日本では「プレイングマネジャー」が当たり前になっているが、私が知る限り、欧米企業にプレイングマネジャーは基本的にいない。また、日本ではいろいろな部署の管理職を経験して上にいくことがあるが、例えば米国の場合、それぞれ専門知識がある人しか雇わないので、部署をまたいで異動することはほぼない。部門によっては、専門外の人がマネジャーになることもあるが、その場合、関係性は「上下」ではない。管理職はプロのマネジャーとして、現場のスタッフは現場を知るプロとして、それぞれ必要な知識と経験を融合させ、互いに尊重しあう。 これらを実行するために、企業はマネジャーが必要なリソースに自由にアクセスする権利を与えなければならない。 ところが、多くの日本企業では「上」の承諾がないとそれが許されない。「名ばかり管理職」ならぬ、「名ばかりマネジャー」。つまり、「監視型の管理職は終わり」「名ばかり管理職は要らない」のではなく、企業は、管理職=マネジャーが、真のマネジャー(マネジメントする人)となるための投資をする必要があるのではないか。 そう、投資だ。長期的な目線でカネと時間を投資する。やるなら今だ!混沌としているときこそ「人」への投資が必要なのだ。 さもなければ、「会社」という組織自体が持たなくなってしまう、と私は思う。 では、最後に「この先どうしようかなぁ~」と、身の振り方を考え始めた管理職の方へ。 大抵、人に話したり、意見を求めたり、相談したりするときは、胸の内は決まっている。 人の意見を聞いた方がリスクが軽減すると思い込んでいるだけなので、とっとと、心が引かれる方向に進んだ方がいい。私はこれまで何人もの「次に踏み出した人」を見てきたけど、いばらの道を歩きながらも、みなイキイキとしていた。 人は自分で選びたいのだ。そして、自分で選ぶと腹が決まる。開き直り、と言い換えてもいい。 「迷っていたら、GO!」です』、「企業は、管理職=マネジャーが、真のマネジャー(マネジメントする人)となるための投資をする必要があるのではないか」、正論だが、現実にはそのような余裕のある企業は少なそうだ。
タグ:テレビ会議 日経ビジネスオンライン 現代ビジネス 河合 薫 上野 泰也 働き方改革 加谷 珪一 (その27)(テレワークでも常に社員を「監視」したがる上司…日本企業のヤバい実態 テクノロジーで「昭和」が復活する絶望、「テレビ会議だと結論が出ない!」対面での妥協をEUは模索、「俺の時代は終わった」新型コロナで揺れる管理職たち) 「テレワークでも常に社員を「監視」したがる上司…日本企業のヤバい実態 テクノロジーで「昭和」が復活する絶望」 テレビ会議がマウンティングの場に 一部の企業では社員がパソコンの前にいるのかチェックできるソフトウェアの導入も検討している テレワークと働き方改革はセットになっている テクノロジーの進歩で昭和が復活するという絶望 コロナをきっかけとした業務のIT化によって、昭和的な風習が復活したのだとすると、まさに絶望的としかいいようがない マネジメントの原理原則に立ち返ることが重要 「「テレビ会議だと結論が出ない!」対面での妥協をEUは模索」 ウーバーなど 会社に無断で昼間に副業している人もいるのではないか 腹の探り合いができない テレビ会議方式のおそらく最大の難点と考えられる、会議の部屋をちょっと離れての参加者どうしの腹の探り合いといったテクニックが使えないデメリット テレビ会議を続けるうちに… 「倹約4カ国」の離反 テレビ会議方式で合意が得られると考える人は誰もいない 会議の性質や難易度に応じて会議を開く方式を使い分け、必要に応じて対面での会議も設定する 「「俺の時代は終わった」新型コロナで揺れる管理職たち」 新型コロナ感染拡大防止策で広まった“新しい働き方”に戸惑う管理職 テレワーク自体は歓迎しているが…… 自分たちの出る幕じゃないのかなぁ 学ぶ努力にも、動機が必要ですよね? その動機が湧いてこない。会社の中でどうなるとか、もうどうでもよくて、会社の外でどう生きるかに自分の意識が移ってることに気がついちゃったんです 新しい働き方になじめない管理職も 今まで自分を形づくっていたさまざまなモノや行動が、この2カ月で変わってしまった 働き方の変化は早期退職を加速させるか 大きな時代の転換点に企業は投資すべきだ 企業は、管理職=マネジャーが、真のマネジャー(マネジメントする人)となるための投資をする必要があるのではないか
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働き方改革(その26)(テレワーク拡大を妨げる同調圧力 2万人緊急調査から見えてきた課題、テレワークできるのにやらない…日本での普及を阻む「3つの壁」 ポスト・コロナの働き方を考える、小田嶋氏:Zoomに心を許さない理由) [企業経営]

働き方改革については、4月13日に取上げた。今日は、(その26)(テレワーク拡大を妨げる同調圧力 2万人緊急調査から見えてきた課題、テレワークできるのにやらない…日本での普及を阻む「3つの壁」 ポスト・コロナの働き方を考える、小田嶋氏:Zoomに心を許さない理由)である。

先ずは、4月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した株式会社パーソル総合研究所 主任研究員の小林祐児氏による「テレワーク拡大を妨げる同調圧力、2万人緊急調査から見えてきた課題」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/235942
・『緊急事態宣言の対象地域が全国に広がってから10日が過ぎた。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、テレワーク実施に踏み切る企業も少なくないが、実際のところ、出社抑制にはまだまだ課題も多い。どうすれば、テレワークを拡大できるのか。パーソル総合研究所の緊急調査データを基に解説する』、「緊急調査」とは興味深そうだ。
・『テレワーク実施率は1カ月で約2倍に 全国2万人超への調査で判明  連日報道されている通り、一斉休校、外出自粛要請、そして緊急事態宣言などを契機として、テレワークが一気に広がりだした。こうした状況を見て、パーソル総合研究所では、テレワークの実態について2万人を超える規模の緊急調査を3月、4月と2回にわたって実施した。 果たして、日本においてテレワークのこれ以上の拡大はあり得るのだろうか。少しでもエビデンスに基づいた議論を行うために、ここでは全国の20~59歳、2万人超を対象にした本調査のデータを用いながら検討したい。 まず、4月調査時の従業員のテレワーク実施率は27.9%と、約1カ月前の3月調査時(13.2%)と比べて、2.1倍に伸びた。急速なテレワーク拡大が進んでいる。簡易的に推計すれば、全国でおよそ761万人がテレワークを実施していることになる。 従業員のテレワーク実施率(グラフはリンク先参照) また、4月の調査(4月10日~12日)直前の4月7日には、7都府県に対して緊急事態宣言が発令された。その後、4月16日には、宣言対象地域が全国へと拡大された。では、この緊急事態宣言により、テレワークは進むだろうか。 そもそも「テレワークを実施していること」と、「完全に出社しないこと」は異なる。接触を防ぐ目的に照らせば、一部の業務がテレワークで行えても、出社してしまえば、必然的に人との接触頻度は増えてしまう。調査データから、先に対象となった東京・大阪など7都府県における「出社」率を見ることで、緊急事態宣言の効果を見てみよう。 緊急事態宣言後の出社率の推移(グラフはリンク先参照) 7日夜に7都府県に対して緊急事態宣言が出された翌日、8日水曜日の出社率がマイナス6.2ポイントと最も大きい減少幅だった。それ以降はマイナス2.8ポイント、マイナス0.5ポイントと、あまり減少していない。つまり、出社率で見れば、それほど大きな変化がない、という実態が明らかになる。要因はいくつも考えられるが、すでに東京などでは緊急事態宣言が予想されており、テレワークを行う気がある企業はすでにテレワークに移行していたということがあるだろう。 次ページでは、テレワーク実施率を都道府県別に見てみよう。このデータを見ると、緊急事態宣言が最初に発出された都府県は、他地域と比較してテレワーク実施率が高い。また、これらの都府県では、3月調査時と比較してもその実施率が増加している。厳密に見るにはサンプル数に限界はあるが、最上位になった東京都と最下位となった山口県は10倍以上の差が開いている』、「テレワーク実施率は1カ月で約2倍に」、とはいえ、「4月調査時の従業員のテレワーク実施率は27.9%」、と水準は依然低い。出社率も58.5%と高水準のようだ。
・『テレワーク拡大を阻む「心の足かせ」とは?  緊急事態宣言が全国に広がった今、特に平日の感染拡大を防ぐには、より広くテレワークを推進するほかない。では、どうすればテレワーク実施がさらに拡大できるのか。 テレワーク拡大を阻む要因を探るため、まずは「テレワークを実施できていない理由」を見てみよう。調査結果では、「テレワークで行える業務ではない」が47.3%、「テレワーク制度が整備されていない」が38.9%となった。これだけ見れば、テレワーク実施には業務や制度上の現実的なハードルが高いことが要因のように見えるし、現在世間でも多く議論されている。しかし、もう少しデータを読み解けば、違う見方ができる。 テレワークが実施できていない理由(グラフはリンク先参照)  結論を端的に言えば、現段階におけるテレワーク拡大の最も高いハードルは、人々の「危機感の濃淡」にある。 先ほどの都道府県別のテレワーク実施率と、その当時(4月10日)におけるその都道府県の新型コロナウイルス感染者数の相関係数は0.79と、かなり強い相関関係にある。つまり、「テレワークが実施できない」という現実的制約よりも、まだ周囲に感染者が少なく、「大丈夫だろう」と感じている企業・従業員が多くいることのほうが、テレワーク実施率に影響しているということだ。 ほとんどの企業活動、従業員の業務は、「他者」との相互行為を含んでいる。多くの仕事は、同僚、上司などの職場関係や、クライアントや同業他社、取引先などと関係しながら進んでいく。つまり、以下の図の左で示したような単純なモデルのように、「危機感の強い企業・個人から徐々にテレワークしていく」ということは、現実的には難しい。実際には図の右のように、周囲の関係する他者との相互作用によって、危機感が強い人がいるとしても、理想よりもテレワークを実施できない。つまり、「足かせ」をはめられているような状況になる。 完全テレワークは「ひとり」「1社」単位ではできない(グラフはリンク先参照)  調査においても多数を占めた「テレワークではできない業務がある」の「できない」の中には、例えばクライアント先の設定した納期に間に合わないだとか、他社が電子取引に対応していないだとか、会社全体の業務指示だとか、個人や個社にとっては「どうしようもない」ようにみえる制約が多数含まれているだろう。「同僚が出ているから」という同調圧力に打ち勝てない個人などもたくさんいるはずだ』、「調査においても多数を占めた「テレワークではできない業務がある」の「できない」の中には・・・個人や個社にとっては「どうしようもない」ようにみえる制約が多数含まれているだろう。「同僚が出ているから」という同調圧力に打ち勝てない個人などもたくさんいるはずだ」、なるほど。
・『政府やメディアの啓蒙施策だけではテレワークの「足かせ」を断てない  なぜこうした当たり前のことをわざわざ整理したのかというと、それがテレワーク推進の「次の一手」に関わるからだ。政府の呼びかけやメディアを通じた情報拡散など、現在行われている啓蒙施策は、「多数」を相手に「面」で展開するがゆえに、個人や個社に対しての「危機感の底上げ」の効果を持つ。これはもちろん前提として必要なのだが、残念ながら先ほどのような相互作用を断ち切る機能を直接的に有していない。現状、自分はテレワークをしたくても、「足かせ」が付いた状態でできない事情を抱える個人や会社にとっては、「そう簡単に言うな」と反発心を覚えかねない。テレワークを推進するという真の目的を達成するためにも、そうした反発心を蓄積していくのは極めてまずい。 これ以上のテレワーク拡大を狙うフェーズでは、「足かせを断つ」、つまり互いにテレワークできなくさせるような会社間・個人間の相互作用をなくしていく施策を押し進めることが必要だ。 具体的には、「会社間」の問題については、業界団体を通じた納期緩和や電子取引の依頼、呼びかけや、大企業からの同様の通達などが考えられる。中小企業は相対的に弱い立場にある。集団的な交渉を行うことや、強い立場の企業から救済に乗り出すことが有効ではないか。個人の問題については、企業トップからのメッセージングや、「出勤承認制」によって、テレワークをすることを社内のデファクトスタンダード(事実上の標準)にすることも有効だろう。こうした呼びかけによって、自社や自身“だけ”でなく、「みんながテレワークをするはずだ」「テレワークすることが当たり前だとみんなも感じているはずだ」という集団レベルの意識を形成する必要がある』、「これ以上のテレワーク拡大を狙うフェーズでは、「足かせを断つ」、つまり互いにテレワークできなくさせるような会社間・個人間の相互作用をなくしていく施策を押し進めることが必要だ」、実際には時間もかかり、なかなか難しそうだ。
・『テレワーク拡大には「みんなやってる」状態を広げること  テレワークの現状を、ノーベル経済学賞を受賞したトーマス・シェリングの「臨界質量critical mass」の考え方を借りて整理してみよう。 (臨界質量のグラフはリンク先参照) 図のように、「自分自身がテレワークをするかどうか」を縦軸に、「他者がどのくらいテレワークをしているか」を横軸にしたとき、それぞれの数値の比例関係は一定ではない。企業活動には先ほどのような相互作用が常にあるので、他社や他人が「まだテレワークをしていない」ということを認識し続け、それに影響をうける。実施率が伸びていき、図の中の臨界値を超えたあたりで、「みんなやっているから自分もやらないとまずい」という右上の赤いゾーンに入り、一気に伸びていく。 全国規模のテレワークという初めての事態で、この臨界値に参照できる基準などないが、実施率の差を見ると、おそらく東京の企業や、大企業では、この右上のゾーンにすでに入っているが、地方の中小企業では、左下のゾーンにとどまっている。まさに今求められているのは、この臨界値をできるだけ左下に寄せていくこと、つまり「みんなやっている」ゾーンを広げていくことに他ならない。そのためには政府・行政による戦略的なコミュニケーションや、個社を超えたレベルの企業の動きが必要になる。 そうした集団的な判断や呼びかけに参照してもらえるよう、パーソル総合研究所では、テレワーク実施率のデータを職種別・業界別に細かい粒度で公開している。一研究者としても、人々が少しでも接触頻度を減らし、ウイルス感染の抑制につながることを願ってやまない。 【訂正】記事初出時より以下のように修正しました。3ページ目図版:都道府県別テレワーク実施率ランキング 37位富山県、38位岡山県、39位広島県→すべて37位、44位岩手県、45位秋田県、46位長崎県→すべて44位(2020年5月8日18:00 ダイヤモンド編集部)』、「トーマス・シェリングの「臨界質量critical mass」の考え方」を使って、「「テレワーク拡大には「みんなやってる」状態を広げる」べく、「政府・行政による戦略的なコミュニケーションや、個社を超えたレベルの企業の動きが必要」、と結論付けたのはさすがだ。

次に、5月6日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの治部 れんげ氏による「テレワークできるのにやらない…日本での普及を阻む「3つの壁」 ポスト・コロナの働き方を考える」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/72315
・『緊急事態宣言が当初の期限である5月6日から31日まで延長になった。政府は「人と人との接触を8割減らす」ことを目標にしてきたが、感染者の減少がまだ十分ではなく、医療崩壊の可能性が懸念されるためだ。 「8割減」に向け、テレトワークの導入や不要不急の外出自粛が要請されてきたが、日本におけるテレワークの利用率の低さが問題視されている。 いったい何が「テレワークの壁」になっているのか。原因を3つに分類し、それぞれの実状や問題点、個人にできることを考えてみたい』、「「テレワークの」「3つの壁」、とは面白そうだ。
・『テレワークの壁1:できるのにやらない  最初の壁は、テレワークが可能な職種なのに、やらないという問題だ。総務省の調べによると、テレワークの進み具合を3段階(低・中・高)で分けた場合、日本は低と中の間に位置する。IPSOS社の2011年調査をもとに、最も進んだ地域は中近東・アフリカやラテンアメリカ(共に普及率27%)だとしている。欧米は日本より進んでいる。 やらない/やれない理由のひとつは、端末や通信環境が未整備ということだ。中には資金に余裕がない、という声も聞く。また、環境以上に問題なのは意識だ。特に管理職で、部下が目の前にいないと仕事をしているか分からない、評価できないという人が少なくない。 私は自営業で取引先は官公庁から民間企業まで多様である。公的機関より民間企業の方が、古くて大きな組織より、新しくて小さな組織の方が、そして日本の組織より欧米本社の組織にテレワークが根づいている。 緊急事態宣言に先立ち、2月中旬頃から外資系コンサルティング会社や、技術力の高い日本のベンチャー企業はテレワークに切り替えていた。通勤や密集したオフィスでの感染を心配せず、自宅で仕事に集中できてよかった、という話を直に聞いた。 これから就職・転職する人には「コロナ対応」を軸に勤務先を選ぶことをお勧めしたい。「書類にハンコが必要」といった商慣習を今なお変えようとしない組織は、できれば避けた方がいい。古いルールに縛られて、従業員の健康を後回しにしているからだ。 私自身は、社員数300名ほどのベンチャー企業で働いた経験がある。創業経営者は日本の巨大企業出身だった。大企業の問題点を反面教師としてハンコを使わずに、上司の決裁を得て仕事を進め経費精算ができる仕組みがあり、働きやすかった』、「テレワークが可能な職種なのに、やらないという問題」で、「環境以上に問題なのは意識だ。特に管理職で、部下が目の前にいないと仕事をしているか分からない、評価できないという人が少なくない」、「管理職」がいまだにそんなことをうそぶいていられるのも、トップがそれを放置しているからなのだろう。
・『テレワークの壁2:コミュニケーションが難しい  実際にテレワークをしている人には、この2つ目の壁が最も気になるのではないだろうか。特に「対面でコミュニケーションする」ことが重要な職種では困難を感じるだろう。 私は今、ZoomやTeams、Facebookメッセンジャーの電話機能や通常の音声通話を使って多くの人とやり取りしている。もともとメールのやり取りが多く、対面せずに物事を進めることに慣れていたため、ポスト・コロナの働き方は、これまでの延長線上にある。 その大きな要因として、取引先のほぼ全員と「コロナ前」に会っている、というのがある。これまで対面で話を重ね、信頼関係ができているから「話をする場」をリアルからオンラインに移行できたわけだ。逆にいえば、全く顔を合わせたことがない人とオンラインでやり取りを始めて仕事を進めることは、それほど簡単ではない。 4月27日、一般社団法人営業部女子課の会が公表した「コロナ時代のモノの売り方~営業職のテレワーク」調査には、非対面の課題がよく表れている。315名の回答者中、62%が女性であり、全体の71%が法人営業に携わっている。そしておよそ6割の人が「リモート営業で困っている」と回答している。 困っている理由としては、「顧客との信頼関係の強化について」「顧客側の環境が進んでいない」「顧客とのアポイントが取りにくい(オンライン商談等)」が挙がった。 具体的には次の通りだ。 「訪問すれば、いろんな情報を収集できる。リモートでは余計な話をして長引かせてはいけないと思い、関係が希薄になるのではないかという懸念がある」 「微妙な顔色や反応を感じとることが難しい。また名刺交換ができないため、その後のフォローがしにくい(メルアドや電話が不明)。会社の電話番号を前から知っていたとしても、先方もリモートのため電話がつながらない」「商品に触れてもらえないので素材の良さを伝えるのが難しい。興味が薄くても触ってもらうことで興味を引き出していたので。印象に残るようなコンタクトが難しい」 実際に相手のオフィスを訪問すれば、話の内容だけでなく、従業員の様子や会議室のインテリア等からも先方の価値観や好みを感じ取ることができる。リモートでは、話をする相手の上半身しか見えない上、背景すら分からないことがある。 また、「テレワークの壁1」で指摘した課題を相手が抱えている場合は、より困難になる。 「相手側の環境、リテラシーがないと、こちら側はいくら環境が整っていても無理。そもそも営業先(飲食店や百貨店など)が休業しているので営業どころではない」「ITリテラシーが低い世代(特に部課長クラス)は、リモート営業に懐疑的」 こうした現場の声を裏付けるのが政府の統計だ。2018年版の情報通信白書によれば、日本企業におけるテレワークの普及率は14%程度であり、若い世代ほど利用希望者が多いが、中高年以上は敬遠していて世代間ギャップが見て取れる。 営業部女子課は、もともとリクルートの営業を経験した太田彩子さんが、女性の営業職を増やすことを目指して作った全国の女性営業職をつなぐネットワークだ。太田さんは、営業職が女性の経済的自立につながる職種という実体験に基づく信念がある。リモート営業の難しさだけでなく、克服方法や工夫についても情報収集している。今回の調査に加えて、営業部女子課で開催したZoom会議では、こんな意見も出たそうだ。 「声のトーンや画像の遅れなどを考慮しゆっくり話す、ポイントをかいつまんで話す」「新規顧客との商談前には『自分の自己紹介(プライベート含め)』ページを表示して、相手との距離を縮めている」「商談の冒頭は自ら自己開示し、積極的に話した。顔を画面にかなり近づけて(笑)、オーバーリアクションが大事」 ここで共有されている工夫は、営業職以外の人がウェブ会議などをする時も参考になりそうだ。ゆっくり、ポイントをまとめて話すこと、相手との距離を縮めるための自己開示の工夫、そして分かりやすい反応を示すこと――今日の仕事から使ってみたい』、「「コロナ時代のモノの売り方~営業職のテレワーク」調査」、で「「訪問すれば、いろんな情報を収集できる。リモートでは余計な話をして長引かせてはいけないと思い、関係が希薄になるのではないかという懸念がある」 「微妙な顔色や反応を感じとることが難しい。また名刺交換ができないため、その後のフォローがしにくい」、などさすがよくポイントを突いているようだ。
・『テレワークの壁3:エッセンシャル・ワーク  最後に、仕事の性質からテレワークができない職種について考える。医療、介護、保育など人の直接的なケアをする職業や、郵便、宅配便など物理的にものを運ぶ職業、食料品販売業や清掃業、運輸業などが該当する。特徴は、サービス提供と消費が同じ場所であることだ。 海外で都市封鎖を実施している国でも、こうした職種「Essential work(エッセンシャル・ワーク/必要不可欠な仕事)」に従事する人は出勤を認められている。これは労働者にとっては良い面と悪い面がある。良い面はコロナ対応で需要が減らず(むしろ増えることもある)、雇用と収入が維持できること。悪い面は通勤しなくてはいけないことと、対人接触を減らせず感染リスクがあることだ。 私たちは皆、エッセンシャル・ワークに依存して生活している。それに従事する人たちがいなくては生活が成り立たないから、まさにエッセンシャルな仕事だ。「重要な仕事を担う人たちが公衆衛生上のリスクを負うのは不公平なことだ」ともし思うなら、この分野において行動を変えるべきは労働者ではなく消費者だろう。エッセンシャル・ワークの中には、重要度やリスクに見合わない、低賃金の仕事もある。この問題は私たち消費者の意識を変えないと解決できないものだ。 最後に2つ提案したい。第一に、消費者はエッセンシャルワーカー達に過剰なサービスを要求しないこと。第二に料金の値上げがあった場合、それが働き手の賃金に回るなら、受け入れることだ。ポスト・コロナの働き方を考える時は、同時に消費者の期待のありようも変える必要がある』、「提案」の「第一」はいいとしても、「第二に料金の値上げがあった場合、それが働き手の賃金に回るなら、受け入れること」は、「働き手の賃金に回る」か否かは、消費者には判断しようがなく違和感がある。

第三に、5月1日付け日経ビジネスオンラインが掲載したコラムニストの小田嶋 隆氏による「Zoomに心を許さない理由」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00068/?P=1
・『緊急事態宣言が出てからこっち、世の中の設定が、すっかり変わってしまったように見える。 にもかかわらず、先週も書いたことだが、私の生活はたいして変わっていない。 あるいは、私はずっと以前から緊急事態を生きていたのかもしれない……というのは、はいそうです、格好をつけただけです。本当のところを申し上げるに、私の生活は、緊急性とはほぼ無縁だ。それゆえ、このたびの事態にも影響を受けていない。それだけの話だ。 ブルース・スプリングスティーンの歌(1973年に発売されたアルバム「アズベリー・パークからの挨拶“Greetings from Asbury Park, N.J.”」に収録されている“For You”という歌です)の中に 「おい、人生ってのはひとつの長い非常事態だぞ」(Your life was one long emergency)という素敵滅法な一節がある。 私は、残念なことに、そういうロケンロールな生き方をしていない。 いたって暢気に暮らしている。 とはいえ、こんなにも蟄居して暮らすのは、たぶん大学に入学した最初の年の夏に軽い虚脱状態に陥って以来のことだ。 そこで、今回は、人間が部屋に引きこもることの意味について考えてみたい。 このことは、同時に、われわれが他人と会うことの意味を考える機会にもなるはずだ。 このたびの蟄居生活の中で、いくつかのテレワークでの会議仕事を経験した。 アプリの名前を挙げるなら、Zoom、Skype、Lineのグループ通話(アプリによっては「会議」と呼び習わしたりする。実態は同じ。つまり、「離れた場所にいる複数の人間が、ひとつの画面上で同時通話をする」ことだ)を使って会議をしたことになる。この原稿を書いている3日後には、マイクロソフトのTeamsという会議ソフトを使ったインタビュー取材を受けることが決まっている』、小田嶋氏はIT機器には詳しいので、既に多くの「テレワーク」「アプリ」を使いこなしているようだ。
・『これまで、Skypeなどを使ったテレビ電話の経験をまるで持っていなかったわけではないのだが、ありていに言えば、私は、一度か二度ためしてみた上で、それ(テレビ電話)を見限っていた。理由は、 「相手の顔が見える必要は感じないし、自分の顔を相手に見せる理由なんかもっとないぞ」と思ったからだ。実際、通話の間、自分がどんな顔をしていれば良いのやら、見当がつかない。なのでとても疲れる。 3人以上でのグループ通話も、2年ほど前にやってみたことはあるのだが、なんだか学生演劇の稽古風景みたいで、ひたすらに照れくさく思えた。なので、以来、封印していた。 それが、今回、インタビュー取材(被取材)、編集会議、配信コンテンツ収録、ネット麻雀(ウェブアプリ+Lineグループ通話)という、いくつかの違った枠組みで、次々と新しい遠隔ミーティングを経験する運びになった。 世の中の進歩は、われわれを放っておいてくれない。こっちが二の足を踏んでいても、先端技術のほうが末端の人間を取り込みにくる。 他方、週に一度のペースで出演しているラジオ番組では、コロナ感染の危機を回避すべく、この4回ほど、電話(に加えてSkypeを使うこともあります)による出演が続いていたりする。 冒頭で自分の暮らしぶりが変わっていない旨をお伝えしたばかりなのだが、あらためて振り返るに、私の情報環境は、どうやら、かなり劇的に変貌しつつある。ただ、私自身がテレワークの環境にうまく適応できていないというだけのことなのだろう。 総体として言えるのは、電話出演やグループ通話やテレビ会議でのオダジマは、空回りをしているということだ。 なんというのか、画面上の人間を相手にしゃべっている時の自分は、口数が多い一方で、くだらないことばかり言っている気がするのだ。 理由はある程度わかっている。 画面(あるいはインターネット回線)を間にはさんだ対話に参加している人間たちは、リアルで対面している時に比べて、「空白」「沈黙」「間」を恐れる傾向がより顕著になる。このことが、会話を散漫な方向に導くのだ。 実際、テレビやラジオの出演に慣れていない出演者は、「空白」を過剰にこわがると言われている』、「(テレビ電話)を見限っていた。理由は、「相手の顔が見える必要は感じないし、自分の顔を相手に見せる理由なんかもっとないぞ」と思ったからだ」、確かにその通りだ。「テレビやラジオの出演に慣れていない出演者は、「空白」を過剰にこわがると言われている」、あり得る話だ。
・『こっちが視聴者なりリスナーなりの立場で放送コンテンツを鑑賞している時には、多少の間があっても不自然には感じない。むしろ、昼間のラジオ番組などでは、対話のアタマと尻尾に適当に沈黙がはさまっているほうが、落ち着きがあって聴きやすかったりする。 ところが、出演する立場になると、0.5秒の返事の遅れや、「えーと」と言ってからの1秒の間が、放送事故に思えてしまう。それで、あわててしまってつまらないことを口走ったり、さらに致命的な沈黙に沈み込んでしまったりするわけなのだが、パソコンを介した多人数同時対話のメンバーが味わうことになる焦りも、これに似ている。 であるから、テレビ会議参加者は、無意識のうちに沈黙を消しにかかる。 と、言わずもがなの凡庸な感想や、生煮えの見解をあえて口に出して墓穴を掘ることになる。 私自身、この10日ほどの間に経験したいくつかのテレビ会議で、毎回バカな空回りをした自覚を抱いている。 野球で言えば、ボール球に手を出してボテボテの内野ゴロを打った感じだ。 どうしてそんなことが起こるのか。 たぶん、平常心を失っているからだ。 では、どうして平常心を失うに至るのか。 それは、テレビ会議に集うメンバーがその枠組みに慣れていないからでもあるのだが、それ以上に、社会的動物たる人間が、「孤独な環境の中で親和的に振る舞う」ことにうまく対処できないからなのではあるまいか。 やや難しい話をしている。 冒頭のところで、大学一年生の時に虚脱状態に陥ってしばらく引きこもりの暮らしをした話をした。 この話題(つまり「孤独」と「親和性」の話)は、その時点にさかのぼって書き起こしにかからないといけない。でないと、真意が伝わらない。 大学に入学した最初の年の夏まで、私は、本格的な孤独を経験したことがなかった。 「孤独」という大げさな言葉を使っていることに失笑している読者もいらっしゃると思うのだが、大学に進んだ最初の年の大学生にとって、孤独は、いまも昔も、致死的に重大なテーマなのである。 最近の学生は、あらかじめスマホを握って生まれてきているので、真正の孤独に陥ることは少ない(←いつだったか、ある若い人から「スマホを持っていながら対話する相手を持っていない孤独こそが本当のガチな孤独ですよ」という見解を伝えられたことがある。たしかに、多くの人々の孤独を癒やすツールは、本当に孤独な人間の孤独を増幅するツールでもあるのかもしれない)と思うのだが、私の世代の学生は、大学に進学した時点ではじめて、 「クラスルームが存在しない学校」に直面したものだった。 クラスルームが無いということは、クラスメート(級友)がいないということでもある。それまでの学校生活を通じて、私は、常に大勢の友人たちの中心にいた。教室には常に級友たちがいて、放課後といわず昼休みといわず、われわれは、いつもじゃれあったりふざけあったりして過ごしていた。 それが、突然、何万人もの見知らぬ薄汚い学生が行ったり来たりしているキャンパスに放り込まれたのだから、調子を狂わせないほうがおかしい。 私は、これまで、19歳の時に、自分が軽い引きこもりになった事態について、 「受験勉強の圧力から解放されたことによる虚脱」であるとか 「すべての時間を自分で管理できる生活への不適応」みたいな言葉で説明していたのだが、実際には、19歳時点のオダジマは、誰も知り合いのいないキャンパスで授業を受けることの寂しさや、一人で昼飯を食うことのキツさに単に参ってしまっていたのだ。そう考えるほうがスジが通っている。実際、どうにも意気地のない話ではあるし、自分ながらなさけないなりゆきだとも思うのだが、そっちの解釈のほうがずっと本当らしいのだから仕方がない。要するに、オダジマは孤独に負けたのである。 で、苦しんだ結果、私は、なぜなのか、不思議な考え方を身につけるに至る』、「テレビ会議参加者は、無意識のうちに沈黙を消しにかかる。 と、言わずもがなの凡庸な感想や、生煮えの見解をあえて口に出して墓穴を掘ることになる」、「社会的動物たる人間が、「孤独な環境の中で親和的に振る舞う」ことにうまく対処できないからなのではあるまいか」、確かに「無意識のうちに沈黙を消しにかかる」、のは思い当たる節がある。
・『具体的に申し上げるなら、オダジマは、その時以降、 「大人になるということは、一人で過ごす時間に適応することだ」「孤独を愛せない人間は自分自身を愛することができない」「ツルんでる連中は要するにアタマが悪いのだ」「ちいちいぱっぱは20歳前に卒業しないといけない」 てな調子で、孤独を武器に生きていく決意を固めたわけなのだ。 まあ、若い人間にはありがちなことだ。 しかも、私は、その時に強く心に刻み込んだその決意からいまだに自由になっていない。 いまでも時々顔を出すチームスピリットや集団性への敵意は、たぶん、この時に身につけたものだと思っている。 自分ながら、半分ほどは、やっかいな病気だと思っているのだが、残りの半分では、この孤独を失ったら自分が自分でなくなると感じていたりもする。 この感覚は、恐怖心に近いものだ。 なので、私は、一人で自分の部屋にいる時の自分と、公共の場所で他人とともに過ごしている時の自分が、ひとつながりの同じ人間であるという実感を、明確に抱くことができない。だからこそ、自室からテレビ電話経由で他人と対話をしていることに、なかなかうまく適応できないのだと思っている。 これ(様々な場面で、自分自身の身の置きどころを見つけられないこと)は、しかし、私に限ったことではない。 誰であれ、一人で過ごしている時と、他人と共存している時では、多かれ少なかれ人格を変容させている。とすれば、テレワークの会議で自分自身を見失ってしまうことは、むしろ自然な反応であるはずだ。 ずっと昔に読んだ心理学だったか社会学だったか社会心理学だったかの本に、こんなことが書いてあった。きちんと出典を探し出して、原著を手に入れて正確に引用した上で話ができればそれはそれでこのテキストも、もう少し学問的に信頼の置ける文章になるかもしれないのだが、当稿はそういう原稿ではない。 私が読んだのは、ドイツ軍のある将校が、ナチスの制服を着ることで自身の人格を「区画化」しているというお話だった。つまり、制服を脱いで自宅でくつろぐA氏は良き夫であり優しい父であり、温厚なご近所さんでもある。ところが、ひとたび制服を着用するや、A将校は、冷酷無比な死刑執行人として、顔色ひとつ変えずに職務に従事したのである。 ナチスの将校でなくても、われわれは、公的な人間として振る舞う時、社会に対峙するための服装と肩書と場と決意の助けを借りている。もっと言えば、当たり前の人間に見えるビジネスパーソンとて、その一人ひとりは、背広という社会的外骨格を装着し、通勤という社畜生成過程の通過儀礼をくぐりぬけることではじめてそれらしい機能を果たし得ているのである。 とすれば、猫の毛がふわふわしている自室で、息子が食べ残したクッキーなんかを食べつつ、GU謹製のルームウェア上下1980円也を身にまとった状態でテレワークの会議に出ている営業部長53歳が、チームを率いるリーダーとして十全な役割を果たせる道理は皆無なわけで、実に、裸に剥いた孤独な人間は、社会的には役立たずなのである』、「誰であれ、一人で過ごしている時と、他人と共存している時では、多かれ少なかれ人格を変容させている。とすれば、テレワークの会議で自分自身を見失ってしまうことは、むしろ自然な反応であるはずだ」、「裸に剥いた孤独な人間は、社会的には役立たずなのである」、さすが鋭い指摘だ。
・『私の場合は、テレワーク不適応の意味合いが少し違う。 というのも、私自身、コラムニストとしての独自の視点を防衛するためには、孤独であることから逃避してはいけない、と、強くそう思い込んでいたりするからだ。 してみると、テレワークは、その私自身のかけがえのない孤独を決壊させる何かであるかもしれないわけで、それをオダジマは警戒してやまないわけだ。 いずれにせよ、テレワークの会議は、一個の人間が自分の中に持っている孤独と社会性のいずれか(あるいは両方)をゆさぶりにかかる。そういう意味で、なかなか油断のできない相手なのである。 コロナ蟄居下での経験を生かして、テレワークや大学のオンライン授業を日常化しようと画策している人々がいる。 私は彼らの考えを支持しない。 学生であれ会社員であれ、自室にこもっている時の自分と、他人とツルんでいる時の自分はきちんと区画化しないといけない。 テレワークを介して、自室に会社員の自分を召喚したり、逆にオフィスにプライベートの自分を派遣したりしたら、あるタイプの人間は破滅する。 私は間違いなく破滅するタイプだ。 なのでZoomには心を許さない。絶対にだ』、「テレワークの会議は、一個の人間が自分の中に持っている孤独と社会性のいずれか(あるいは両方)をゆさぶりにかかる。そういう意味で、なかなか油断のできない相手なのである」、「テレワークを介して、自室に会社員の自分を召喚したり、逆にオフィスにプライベートの自分を派遣したりしたら、あるタイプの人間は破滅する」、「テレワーク」に対する小田嶋氏んお違和感を、ここまでかみ砕いて、一般化するとは、完全に脱帽だ。
タグ:日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス 働き方改革 小田嶋 隆 小林祐児 治部 れんげ (その26)(テレワーク拡大を妨げる同調圧力 2万人緊急調査から見えてきた課題、テレワークできるのにやらない…日本での普及を阻む「3つの壁」 ポスト・コロナの働き方を考える、小田嶋氏:Zoomに心を許さない理由) 「テレワーク拡大を妨げる同調圧力、2万人緊急調査から見えてきた課題」 緊急調査データ テレワーク実施率は1カ月で約2倍に 全国2万人超への調査で判明 4月調査時の従業員のテレワーク実施率は27.9%と、約1カ月前の3月調査時(13.2%)と比べて、2.1倍に 出社率 テレワーク拡大を阻む「心の足かせ」とは? 現段階におけるテレワーク拡大の最も高いハードルは、人々の「危機感の濃淡」にある。 「テレワークが実施できない」という現実的制約よりも、まだ周囲に感染者が少なく、「大丈夫だろう」と感じている企業・従業員が多くいることのほうが、テレワーク実施率に影響 個人や個社にとっては「どうしようもない」ようにみえる制約が多数含まれているだろう。「同僚が出ているから」という同調圧力に打ち勝てない個人などもたくさんいるはずだ 政府やメディアの啓蒙施策だけではテレワークの「足かせ」を断てない これ以上のテレワーク拡大を狙うフェーズでは、「足かせを断つ」、つまり互いにテレワークできなくさせるような会社間・個人間の相互作用をなくしていく施策を押し進めることが必要だ テレワーク拡大には「みんなやってる」状態を広げること 「臨界質量critical mass」の考え方 他社や他人が「まだテレワークをしていない」ということを認識し続け、それに影響をうける。実施率が伸びていき、図の中の臨界値を超えたあたりで、「みんなやっているから自分もやらないとまずい」という右上の赤いゾーンに入り、一気に伸びていく 「テレワークできるのにやらない…日本での普及を阻む「3つの壁」 ポスト・コロナの働き方を考える」 テレワークの 3つの壁 テレワークの壁1:できるのにやらない テレワークの壁2:コミュニケーションが難しい テレワークの壁3:エッセンシャル・ワーク 「Zoomに心を許さない理由」 蟄居生活の中で、いくつかのテレワークでの会議仕事を経験 アプリの名前を挙げるなら、Zoom、Skype、Lineのグループ通話 (テレビ電話)を見限っていた。理由は、 「相手の顔が見える必要は感じないし、自分の顔を相手に見せる理由なんかもっとないぞ」と思ったからだ テレビやラジオの出演に慣れていない出演者は、「空白」を過剰にこわがると言われている テレビ会議参加者は、無意識のうちに沈黙を消しにかかる。 と、言わずもがなの凡庸な感想や、生煮えの見解をあえて口に出して墓穴を掘ることになる 社会的動物たる人間が、「孤独な環境の中で親和的に振る舞う」ことにうまく対処できないからなのではあるまいか 誰であれ、一人で過ごしている時と、他人と共存している時では、多かれ少なかれ人格を変容させている。とすれば、テレワークの会議で自分自身を見失ってしまうことは、むしろ自然な反応であるはずだ 裸に剥いた孤独な人間は、社会的には役立たずなのである テレワークの会議は、一個の人間が自分の中に持っている孤独と社会性のいずれか(あるいは両方)をゆさぶりにかかる。そういう意味で、なかなか油断のできない相手なのである テレワークを介して、自室に会社員の自分を召喚したり、逆にオフィスにプライベートの自分を派遣したりしたら、あるタイプの人間は破滅する
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積水ハウス事件(その4)(リクシル 積水ハウスで露わになった「第三者委員会」の限界 会社依頼では中立な調査はできない、積水ハウスのドンの座をめぐる会長と前会長の壮絶バトル~新型コロナの緊急事態宣言下 「三密」総会を強行した会社側が勝利(前)、~新型コロナの緊急事態宣言下 「三密」総会を強行した会社側が勝利(後)) [企業経営]

積水ハウス事件については、3月13日に取上げた。今日は、(その4)(リクシル 積水ハウスで露わになった「第三者委員会」の限界 会社依頼では中立な調査はできない、積水ハウスのドンの座をめぐる会長と前会長の壮絶バトル~新型コロナの緊急事態宣言下 「三密」総会を強行した会社側が勝利(前)、~新型コロナの緊急事態宣言下 「三密」総会を強行した会社側が勝利(後))である。

先ずは、3月17日付けBUSINESS INSIDER「リクシル、積水ハウスで露わになった「第三者委員会」の限界。会社依頼では中立な調査はできない」を紹介しよう。
https://www.businessinsider.jp/post-209074
・『「Save Sekisui House」というサイトがある。 2019年、LIXILグループの株主総会で会社提案の取締役候補と株主提案の取締役候補が共に選任を争った際に、株主提案側が「savelixil」というサイトを立ち上げて(現在は閉鎖)、ステークホルダーに取締役候補の考えや会社側主張の矛盾などを指摘したが、「Save Sekisui House」は、それと似たような建て付けだ。 その主要コンテンツは調査報告書である』、興味深そうだ。
・『会社側が公表しなかった調査委員会報告書  積水ハウスは2017年に東京・西五反田の土地売買で、いわゆる地面師に55億円を騙し取られた。その地面師集団のリーダーと目されているカミンスカス操被告の公判が進行中だから、「そんな事件もあったなあ」と思い出す人も多いだろう。 「Save Sekisui House」サイトで公開されているのは、この事件に絡み、積水ハウスが立ち上げ、社外監査役と社外取締役で構成された調査委員会がまとめた結果の報告書である。 サイトで調査報告書が主要コンテンツとなっているのは、この内容を会社側が公表していないからだ。 地面師事件を巡って株主が起こしている株主代表訴訟で、大阪地裁は調査報告書の提出を求めたが、積水ハウスはこれを拒否。積水ハウス側は即時抗告したものの大阪高裁に棄却され、渋々提出したという代物である。 個人名などが黒塗りとなっている「ノリ弁報告書」の見どころは、騙し取られた過程が生々しく記されていること。詳細はサイトを見てもらうとして、まず思うのは、これが架空取引であることに気づくタイミングはいくらでもあったということだ』、「株主代表訴訟で、大阪地裁は調査報告書の提出を求めたが、積水ハウスはこれを拒否。積水ハウス側は即時抗告したものの大阪高裁に棄却され、渋々提出したという代物」、とはさぞかし会社側には不都合な内容なのだろう。
・『「気づくタイミングは10回以上あった」  報告書によると、問題の土地は海老澤佐妃子という人が所有するもので、その知人と称する人物が土地売買を積水ハウスに持ちかけたとされる。ところが同社に現れた海老澤は偽物で(報告書では偽海老澤と記されている)、本物の海老澤からは会社に「真の所有者は自分であり、売買予約をしたり、仮登記を行ったことはないので、仮登記の抹消を要求する」という内容証明郵便が複数届いている。 このため弁護士などは、「会社に現れた海老澤が本人なのか、海老澤の知人などによる確認が必要」と指摘したものの、実行されなかった。積水ハウスは手付金以外の残余金支払いをなぜか約2カ月前倒しし、詐欺師集団に巨額のお金を支払った。 あまり細々と書いても仕方がないので、この程度にしておくが、当時の社内を知る積水ハウス関係者に言わせれば「おかしな取引と気づくタイミングは10回以上あった」という』、「会社に現れた海老澤が本人なのか・・・確認が必要」との「弁護士など」の指摘を無視したばかりか、「手付金以外の残余金支払いをなぜか約2カ月前倒し」、とは不自然極まりない。
・『「なぜ」に答えていない報告書  調査報告書は生々しい。しかし、それ以上に思うことがある。 おかしな取引がなぜ結果的に見過ごされてしまったのか、その原因を調査していないことだ。 海老澤の本人確認が必要とされたのに、それを実施しなかったのはなぜか。残余金の支払いを前倒ししたのはなぜか。そこに踏み込んでいない。だからどうにも腹落ちしない。 誰もが思う「なぜ」が書かれていないのは「会社が調査を打ち切ったからだ」と積水ハウス関係者は言う。 地面師事件をきっかけに、当時、積水ハウスの会長だった和田勇氏は当時社長だった阿部俊則氏(現会長)を解任しようとした。しかし返り討ちに会い、会長ポストを追われた。 一方、調査報告書では問題の取引に和田氏の直接関与はなく、阿部氏が関わっていることが記されている。 これらを考え合わせると、誰もが抱く「なぜ」が書かれていないのは、和田氏を追い出した現経営陣が調査担当者に「調査に及ばず」と言ったか、それとも調査担当者が現経営陣に忖度したかだろうと推察される』、「誰もが思う「なぜ」が書かれていないのは「会社が調査を打ち切ったからだ」」、裁判所に命じられてしぶしぶ出したのは、単なるポーズだったようだ。
・『中立性・独立性疑われる第三者委員会  無理もない。不祥事が起きると大概、弁護士などで構成される第三者委員会が立ち上げられ、事実関係を調査、その上で再発防止策などを提案する。しかし調査を誰に依頼するのか、依頼した人にどれだけ報酬を出すのかを決めるのは会社。その時点で「中立性」や「独立性」は怪しいものとなる。 似たようなことが、「Save Sekisui House」のモデルであろう「savelixil」が立ち上がった過程でもあった。 LIXILグループでオーナーのように振る舞っていた、母体企業の1つである旧トステム創業家の潮田洋一郎氏が当時、社長兼CEOだった瀬戸欣哉氏を辞任に追い込んだのは2018年10月だった。 そのプロセスがコーポレートガバナンス上、極めて問題ありとした機関投資家は会社側に調査を要求。第三者委員会が立ち上がり、報告書はまとまったが、当初、公表されたものが会社にとって都合の良い部分を抜き出した要約版だった。 これを問題視した機関投資家が完全版の開示を要求すると、辞任プロセスにさまざまな問題があったことが公になった。そこまでは良かったが、辞任そのものを覆す必要はないという結論は変わらず。株主提案側は「結論ありきの調査報告書だ」と批判した。 LIXILグループの株主総会では株主提案が事実上の勝利を収めた。 社外取締役に就任した鬼丸かおる元最高裁判所判事はその後、株主提案の取締役候補に名前を連ねた理由について、こう語ったとされる。 「杜撰な調査報告書を読んで憤りすら感じたから」』、「LIXILグループの株主総会では株主提案が事実上の勝利を収めた」、結果オーライとはいえ、「第三者委員会」のあり方には疑問符が投げかけられた。
・『忖度必要のない独立機関の必要性  不祥事のたびに登場する第三者委員会は本当に中立なのか。法曹界からも疑問の声が上がっているのである。 「会社の依頼を受けた第三者委員会では真相究明は無理。会社に忖度する必要のない『独立委員会』が調査をするようにしないと、コーポレートガバナンスは健全化しない」 日本のコーポレートガバナンス研究の草分けでもある若杉敬明東京大学名誉教授はそう指摘する。 4月下旬に開かれるであろう積水ハウスの株主総会を前に、現会長の阿部氏らに返り討ちにあった和田氏らが取締役候補として名前を連ねる株主提案が2月17日に発表された。和田氏らは発表の席で、「Save Sekisui House」では閲覧できる調査報告書を、自ら公表しない会社側の姿勢を強く批判した。 株主提案に対して会社側は今のところダンマリを決め込んでいるが、株主総会を乗り切るため、隠蔽体質批判をかわす一手として調査報告書を公表する可能性がある。だが、その内容は生々しくとも肝心なことが書かれていないこと、そもそも調査委員会報告書というものに中立性が担保されていないことは留意していおいた方が良い』、「積水ハウス」の「株主代表訴訟」の今後の展開が注目される。

次に、4月27日付けNet IB News「積水ハウスのドンの座をめぐる会長と前会長の壮絶バトル~新型コロナの緊急事態宣言下、「三密」総会を強行した会社側が勝利(前)」を紹介しよう。
https://www.data-max.co.jp/article/35451
・『会長か前会長か――。経営対立に揺れる積水ハウスは4月23日、大阪市で定時株主総会を開いた。会社提案の阿部俊則会長らの取締役選任が可決、和田勇前会長らによる経営陣刷新の株主提案は否決された。新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言下で、株主総会を強行した会社側が勝利し、和田前会長が完敗した』、「会社側が勝利」、とは残念だ。
・『和田前会長の賛成率はわずか6.13%  積水ハウスは4月24日、定時株主総会の臨時報告書を開示した。 最大の注目は取締役の選任議案だ。会社提案(第3号議案)は、阿部俊則会長や仲井嘉浩社長らの再任など12人の取締役選任の件。株主提案(第8号議案)は、和田優前会長ら11人の取締役選任の件。 臨時報告書によると、阿部俊則会長の取締役再任への賛成比率は69.27%だった。前回の改選期だった2018年の総会と同様に約3割の株主が反対した。経営陣の刷新を求め、取締役への復帰を提案した和田勇会長への賛成は6.13%にとどまった。阿部氏の完全勝利とはいえないが、和田氏は完敗である。 和田氏は総会前、メディアのインタビューに応じ、「勝算は十分にあり」と語っていたが、百戦錬磨の経営者である和田氏がなぜ、票読みを誤ったのか。勝負を分けた要因は、新型コロナウイルスの感染拡大である。 ■第3号議案(会社提案):取締役12名選任の件(個人別賛成票の表はリンク先参照) ■第8号議案(株主提案):取締役11名選任の件(個人別賛成票の表はリンク先参照)』、「新型コロナウイルスの感染拡大」、がこんなところにまで影響を及ぼしたとは意外だ。
・『株主総会は三密(密集・密閉・密接)の最たるもの  新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府は4月7日、 東京、大阪、福岡など全国7都市に「緊急事態宣言」を出した。8割の接触減を達成するために、「三密」(密集・密閉・密接)を避けることを求めた。 株主総会は「三密」の最たるものだ。金融庁や経団連は、株主総会について、延期を含めた柔軟の運用を求める指針を示した。 積水ハウスは4月15日、こんなリリースを出した。 〈4月23日開催予定の当社第69回定時株主総会の開催場所として「ウェスティンホテル大阪ローズルーム」を予定していましたが、今般、当該ホテルより、同場所の提供が困難であるとの通知を受けました。(中略)できる限りの感染防止策を実施させていただくことを前提として、開催場所・開催時刻を変更し、本株主総会を開催させていただく所存です〉 「三密総会」はクラスター(感染者集団)が発生する恐れがある。ホテルは株主総会の会場使用を断った。そのため、会場を変更して株主総会を開催する。変更の場所は、積水ハウスの本社も入る梅田スカイビルの35階。その際、感染リスクを低減するために参加株主の人数制限もあり得るとしたことから、和田氏側は緊急声明を出した。 〈現経営陣は、密閉されたエレベーターに乗らなければたどり着けない35階の、しかも当初のホテル会場よりも天井が低く狭い会場に変更しています。このような会場変更は、株主の感染リスクを高めるものです〉 和田氏側は4月17日、積水ハウスが23日に予定する定時株主総会を、同日に開催しないよう求める仮処分を大阪地裁に申し立てた。新型コロナウイルスの感染拡大を理由としており、開催延期も可能だと主張した。 総会の開催の中止や延期を法律で強制できるものではない。地裁は4月21日に却下。積水ハウスは4月23日、株主総会を開催した。(つづく)』、裁判所もここまでは介入できないのだろう。

第三に、この続き、4月28日付けNet IB News「積水ハウスのドンの座をめぐる会長と前会長の壮絶バトル~新型コロナの緊急事態宣言下、「三密」総会を強行した会社側が勝利(後)」を紹介しよう。
https://www.data-max.co.jp/article/35452
・・・出席株主は昨年の10分の1に激減  緊急事態宣言を受け、株主総会や決算発表の延期といった対策が求められるなか、積水ハウスは直前に会場を変更して、総会を強行した。なぜか。 会社側は総会を断行する理由について、前出のリリースでこう述べている。 〈株主の皆様への期末配当金の支払(剰余金の処分)や取締役・監査役の任期満了にともなう選任等は法令に基づき本株主総会での決議が必要であり、本株主総会を延期した場合、株主の皆様及び当社の経営に重大な影響が生じるおそれがあります〉 結果を見れば、意図は明白だ。出席株主は約160人と昨年の10分の1に減った。高齢者など個人株主はコロナ感染を恐れて、総会には出てこない。従業員持ち株会の社員株主を集めて、会社提案への支持、株主提案の反対をとりつけたということだ。 和田氏とその側近たちに対する支持率の低さは、出席株主が激減したことによる。緊急事態宣言にもかかわらず、「三密」総会を強行した会社側の作戦勝ちといえる』、場所をホテルからの申し出で小さなところへ変更したのも、ホテルへ上手く根回しした可能性もあろう。
・『2年前、解任を仕掛けた和田氏が、逆に解任された怨念  内紛のきっかけは2017年に積水ハウスが、東京・五反田の土地取引をめぐって「地面師」グループに約55億円をだまし取られた事件だ。当時会長だった和田氏と社長・阿部氏(現・会長)との間で土地取引の責任の所在をめぐって権力闘争が勃発。2018年1月の取締役会で、和田氏が阿部氏の解任を仕掛けたが失敗。逆に、解任に追い込まれた。 それから2年。内紛が再燃した。なぜ2年後かというと、積水ハウスの取締役任期は2年だから。任期満了を迎える今年の株主総会が勝負の場だ。もっとも、取締役任期について今回、1年に短縮することを第2号議案に盛り込み、99.65%の賛成で可決した。 今年2月、和田前会長と現職の勝呂文康専務らは経営陣を総入れ替えする取締役選任議案を株主提案した。勝呂氏は勝利すれば、社長に就くとされる人物だ。 和田氏は、多額な損害が発生した土地取引は単なる地面師詐欺事件ではなく、阿部会長らが主導した不正取引だと主張し、これに関連して重要情報の隠蔽、ガバナンス(企業統治)不全があったことをあげた。 だが、そんな正論ではなく、和田氏は、自分を追い落としたかつての腹心の部下だった阿部俊則会長と稲垣士郎副会長に復讐するという怨念に突き動かされていると見る向きがほとんどだった』、「和田氏」の提案が個人的な「怨念に突き動かされていると見る向きがほとんどだった」、のは「和田氏」側の作戦もお粗末だったのだろう。
・『議決権助言会社2社は阿部会長の再任に反対を推奨  積水ハウスの2020年1月期の売上高は11.8%増の2兆4,150億円、営業利益8.5%増の2,052億円と過去最高の業績を達成した。業績は申し分ない。 海外株主に大きな影響力を持つ議決権行使助言会社の賛否はどうだったか。米ISS(インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ)は阿部会長と稲垣副会長の取締役再任に反対する意見を出した。マンション用地の詐欺事件をめぐって、ガバナンス(企業統治)や情報開示姿勢への懸念など責任があることを理由にあげた。株主提案の和田前会長、勝呂取締役へも反対を推奨した。喧嘩両成敗だ。 米グラスルイスは阿部会長、仲井嘉浩社長ら4人の再任に反対を推奨。和田氏と勝呂氏ら4人選任には賛成を推奨した。 積水ハウスの株主構成は外国人が約30%を占め、個人株主は14%程度。残りは機関投資家、金融機関などの法人筋。委任状はどちらの陣営に流れたか。助言会社2社が阿部会長の再任の反対を推奨したことから、株主提案側が思いのほか善戦中と伝えられた。 ふたを開けてみると、和田前会長の完敗。こんなに賛成票が少ないとは、思ってもいなかったのではないだろうか。一方、阿部会長の3割の反対は想定内にとどまった。勝負を左右したのは出席株主が10分の1に激減したこと。少数株主が総会に出席していれば、阿部会長への反対票がもっと増えた可能性がある。薄氷を踏む勝利だったといえる』、「ISS]が「株主提案の和田前会長、勝呂取締役へも反対を推奨した。喧嘩両成敗だ」、というのは「和田前会長」にとっても誤算だったのではなかろうか。
・『マネーロンダリング疑惑でFBIが内定(注:正しくは内偵)(総会を乗り切った阿部会長が安泰かというと、そうとばかりいえない。和田前会長は、メディアとのインタビューで、地面師詐欺事件への経営陣の関与に米国の連邦捜査局(FBI)が関心をもって、内定を続けていると明かした。 〈3月19日、FBIから私のところへ電話がありました。内容については詳しく喋れませんが、弁護士と通訳を交えて1時間くらい話しまして、聞かれたことには正直に答えました。FBIは、この事件について相当興味をもっていると感じましたね。今回の事件はお金の流れが非常に不鮮明ですから、アメリカの捜査機関は”これは間違いなく資金洗浄、マネーロンダリングに使われている”と言っておりました〉(『週刊新潮』20年4月23日号) 積水ハウスの経営者がマネロンに関わっているとFBIが認定したら、積水ハウスは米国で事業ができなくなる。「一難去ってまた一難」だ。(了)』、「一難去ってまた一難」とは言い得て妙だ。FBI内偵の行方が当面の注目点だ。
タグ:LIXILグループ 積水ハウス事件 (その4)(リクシル 積水ハウスで露わになった「第三者委員会」の限界 会社依頼では中立な調査はできない、積水ハウスのドンの座をめぐる会長と前会長の壮絶バトル~新型コロナの緊急事態宣言下 「三密」総会を強行した会社側が勝利(前)、~新型コロナの緊急事態宣言下 「三密」総会を強行した会社側が勝利(後)) BUSINESS INSIDER 「リクシル、積水ハウスで露わになった「第三者委員会」の限界。会社依頼では中立な調査はできない」 Save Sekisui House 会社側が公表しなかった調査委員会報告書 社外監査役と社外取締役で構成された調査委員会がまとめた結果の報告書 株主代表訴訟で、大阪地裁は調査報告書の提出を求めたが、積水ハウスはこれを拒否。積水ハウス側は即時抗告したものの大阪高裁に棄却され、渋々提出したという代物 「気づくタイミングは10回以上あった」 手付金以外の残余金支払いをなぜか約2カ月前倒し 「なぜ」に答えていない報告書 誰もが思う「なぜ」が書かれていないのは「会社が調査を打ち切ったからだ」 中立性・独立性疑われる第三者委員会 当初、公表されたものが会社にとって都合の良い部分を抜き出した要約版 これを問題視した機関投資家が完全版の開示を要求すると、辞任プロセスにさまざまな問題があったことが公になった 忖度必要のない独立機関の必要性 Net IB News 「積水ハウスのドンの座をめぐる会長と前会長の壮絶バトル~新型コロナの緊急事態宣言下、「三密」総会を強行した会社側が勝利(前)」 和田前会長の賛成率はわずか6.13% 勝負を分けた要因は、新型コロナウイルスの感染拡大 株主総会は三密(密集・密閉・密接)の最たるもの ウェスティンホテル大阪ローズルーム 当該ホテルより、同場所の提供が困難であるとの通知 更の場所は、積水ハウスの本社も入る梅田スカイビルの35階。その際、感染リスクを低減するために参加株主の人数制限もあり得るとした 和田氏側 定時株主総会を、同日に開催しないよう求める仮処分を大阪地裁に申し立てた 地裁は4月21日に却下 「積水ハウスのドンの座をめぐる会長と前会長の壮絶バトル~新型コロナの緊急事態宣言下、「三密」総会を強行した会社側が勝利(後)」 出席株主は昨年の10分の1に激減 2年前、解任を仕掛けた和田氏が、逆に解任された怨念 怨念に突き動かされていると見る向きがほとんどだった 議決権助言会社2社は阿部会長の再任に反対を推奨 マネーロンダリング疑惑でFBIが内定(注:正しくは内偵) 「一難去ってまた一難」
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企業不祥事(その21)(メード・イン・ジャパン神話崩壊<上>神戸製鋼所、メード・イン・ジャパン神話崩壊<下>三菱マテリアル、レオパレスや大和ハウスの不祥事 元凶は時代錯誤の「体育会ノリ」だ、日立グループ、「金属」「化成」で不正相次ぐ事情 日立金属で10年以上の検査データ不正が発覚) [企業経営]

企業不祥事については、昨年1月19日に取上げたままだった。今日は、(その8)(メード・イン・ジャパン神話崩壊<上>神戸製鋼所、メード・イン・ジャパン神話崩壊<下>三菱マテリアル、レオパレスや大和ハウスの不祥事 元凶は時代錯誤の「体育会ノリ」だ、日立グループ、「金属」「化成」で不正相次ぐ事情 日立金属で10年以上の検査データ不正が発覚)である。なお、タイトルから(一般)を削除した。

先ずは、昨年4月24日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの有森隆氏による「メード・イン・ジャパン神話崩壊<上>神戸製鋼所」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/252525
・『アルミ・銅製品の品質データを改ざんしたとして、不正競争防止法違反(虚偽表示)の罪に問われた神戸製鋼所は2019年3月13日、立川簡裁で罰金1億円の判決を言い渡された。 17年10月8日、品質データの改ざんを公表した。この問題を受け、松井巌弁護士(元福岡高等検察庁検事長)を委員長とする外部委員会を設置。18年3月6日、最終報告が公にされた。 問題の製品は688社に出荷されていた。アルミ製品は国産初のジェット旅客機MRJやH2Aロケットにも使われていた。グループの23拠点で不正が行われ、アルミ・銅事業部門の真岡製造所(栃木県)では40年以上前の1970年代から不正に手を染めていた。強度が顧客の要望を満たさない場合に数値を書き換えたり、そもそも検査自体を実施せずに数値を偽ったりしていた。5人の役員経験者や社員ら計40人以上が不正を認識したり、これに関与していた。 18年4月1日付で川崎博也会長兼社長とアルミ・銅事業の責任者だった金子明副社長が引責辞任。4月1日付で、山口貢副社長が社長に昇格した。 警視庁は18年7月17日、法人としての神鋼と、改ざんのあった本体3工場の担当者4人を不正競争防止法違反(虚偽表示)容疑で書類送検した。 合同で捜査を進めてきた東京地検特捜部は法人を起訴した。組織的な改ざんを長年放置し、日本のものづくりの信頼を損ねた企業責任を重くとらえた』、「神戸製鋼」の問題は、このブログの2018年4月21日にも取上げた。裁判では、法人も罰金刑となったようだ。
・『内紛劇の後遺症  神鋼はメーカーでありながら、ものづくり出身者はトップになれなかった。こうした特異な企業体質が形成されたのは、1969~70年代に起きた内紛劇の後遺症である。 神鋼は尼崎製鉄(尼鉄)を吸収合併したが、神鋼社長の外島健吉と尼鉄社長の曽我野秀雄が対立。曽我野は右翼の巨魁・児玉誉士夫のもとに駆け込んだ。児玉は、外島追い落としに力を貸すことを約束したが、途中で外島側に寝返った。児玉は神鋼の揉め事の処理係として木島力也を送りこんだ。 神鋼は、児玉側が持つ福島県西白河郡の5億円の土地を32億円で買い上げた。これ以降、児玉配下の総会屋が経営に介入してきたことから、総会屋対策が重要な経営課題となる。 「児玉と握手して、社長の座を手に入れた」といわれた鈴木博章(11代社長)以来、亀高素吉(15代)、熊本昌弘(16代)、水越浩士(17代)の歴代社長は、総会屋の窓口である総務部長や総務担当役員を経てトップの椅子に座った。 90年4月28日、東京・港区のホテルオークラ別館「曙の間」で神鋼の若手社員だった木島力也の長男の結婚披露宴が行われた。 神鋼からは牧冬彦会長、亀高社長、その後社長になる熊本が出席した。第一勧業銀行は宮崎邦次頭取以下、7人が顔を揃えた。ヒラ社員の結婚式に歴代社長が出席したのである。 児玉、木島らに食いちぎられる原因をつくった経営陣の内紛は、まるでがん細胞のように組織をむしばんでいった』、「児玉誉士夫」が「内紛劇」に登場、「児玉と握手して、社長の座を手に入れた」「社長」が3人もいたとは、完全に食い物にされていたようだ。「児玉」が「神鋼の揉め事の処理係」として送り込んだ社員の「長男の結婚披露宴」に「歴代社長」のみならず、「第一勧業銀行」も「頭取以下、7人が顔を揃えた」、とは「総会屋」華やかなりし時代だったとはいえ、驚かされた。
・『木島は現代評論社をつくり「現代の眼」の発行人となった。 彼は神鋼所有の牧場を手に入れ、名馬ハイセイコーの馬主として知られるようになる。ハイセイコーの「セイコー」は神戸製鋼の「製鋼」から採ったものだと信じられている。 99年、総会屋・奧田一男への利益供与事件で、総会屋対策を仕切っていた相談役の亀高素吉が辞任。09年には地方議員に対する選挙資金肩代わりで会長の水越浩士と、社長の犬伏泰夫(18代)が引責辞任した。 これで文系社長の時代が終わり、理系に移る。研究開発部門出身の佐藤廣士(19代)を経て、製鉄所に長く勤務した生産技術者の川崎博也(20代)が社長に就いた。 品質改ざん問題で川崎は引責辞任。山口貢(21代)は7つの事業の中で収益性が低く売り上げ規模も小さい機械部門の出身だった。 神鋼で機械出身の社長は初めて。品質データ改ざんで失墜した名門企業の再生を担うことになった。鉄鋼、アルミ・銅、建設機械の主力3事業の規模がどれも中途半端だ。鉄鋼は万年3位。 「2位のJFEホールディングスは神鋼のアルミ複合材事業を欲しがっている」(素材担当のアナリスト) 神鋼が令和の時代の新たな企業再編のカギを握っている。(敬称略)』、「名馬ハイセイコー」まで登場するとは、驚いた。せっかく「理系」「社長」になったのに、「品質改ざん問題で・・・引責辞任」とは、自ら招いた問題とはいえ、皮肉だ。「主力3事業の規模がどれも中途半端」で「神鋼が令和の時代の新たな企業再編のカギを握っている」、ということであれば、「神鋼」の今後に注目したい。

次に、昨年4月25日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの有森隆氏による「メード・イン・ジャパン神話崩壊<下>三菱マテリアル」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/252602
・『東京簡易裁判所は2019年2月、三菱マテリアルグループの製品データ改ざん事件で、不正競争防止法違反(虚偽表示)の罪に問われた法人と個人に判決を言い渡した。 三菱電線工業に罰金3000万円。村田博昭前社長に罰金200万円。同じく子会社のダイヤメットに同5000万円。安竹睦実前社長に同200万円。三菱アルミニウムは同3000万円だった。 非鉄金属大手の三菱マテリアルの竹内章社長は17年11月24日、記者会見を開き、子会社が17年2月に製品データの改ざんを把握しながら、10月下旬まで問題の製品の出荷を続けていたとして陳謝した。 データの不正は神戸製鋼所と同じ構図だが、少なくとも神鋼は経営陣が把握した段階で、当該製品の出荷は停止した。三菱マテは経営陣が不具合を知りながら出荷を続けていた。 コーポレートガバナンス(企業統治)の面で、神鋼より悪質と批判された。神鋼が大騒ぎにならなければ、公表するつもりはなかったということだろう』、この問題も、このブログの2018年4月21日で取上げた。「経営陣が不具合を知りながら出荷を続けていた」、確かに「神鋼より悪質」だ。
・『最初に問題が発覚したのは子会社の三菱電線工業(出荷先223社)。17年2月、箕島製作所(和歌山県)で配管などのパッキングに使うゴム製品のデータ改ざんが明らかになった。社長の村田は結局、辞任に追い込まれた。 三菱伸銅(同30社)は16年10月から17年10月にかけて、若松製作所(福島県)で自動車に使われる銅合金製品などでデータを書き換え、役員3人が辞任した。 三菱アルミニウム(同120社)でも、富士製作所(静岡県)でアルミの伸び率などの検査で数値を偽っていた。 18年2月9日、自動車部品のダイヤメット(同113社)の本社工場(新潟県)で「検査特採」と言い繕って不適格な商品を流通させていた。隠蔽を指示していた安竹前社長は辞めさせられた。 三菱アルミの子会社、立花金属工業(同339社)の養老工場(岐阜県)でも不良品を「社内特採」と容認して流通させていた。) 不正に手を染めたのはダイヤメットが1977年ごろ。三菱電線、三菱アルミ、三菱伸銅は90年代、立花金属は98年前後とされている。 東京地検特捜部は18年9月12日、不正競争防止法違反(虚偽表示)で、三菱電線工業の村田とダイヤメットの安竹を在宅起訴し、法人としての両社と三菱アルミニウムを起訴した。 国内の製造業のデータ改ざんで個人が起訴されるのは初めてのことだ。2人は不正を認識しながら顧客や三菱マテに報告せず放置しただけではなく、資料の隠蔽を指示するなど、悪質性が高いと判断された。 三菱マテは18年6月11日、竹内社長が辞任。小野直樹副社長が社長に昇格した。6月8日、本体の直島精錬所(香川県)で品質問題が発覚したことが交代の決め手となった。 しかし、現在の経営陣は、肩書こそ変わったものの、前社長の竹内が会長として残り、経営責任は不問のままだ。竹内が会長職にとどまることに、三菱グループからも「経営トップとして責任をきちんと取るべきだ」との厳しい指摘がある』、「現在の経営陣は、肩書こそ変わったものの、前社長の竹内が会長として残り、経営責任は不問のままだ」、上場企業として、「三菱グループ」の中核会社としても、信じられないような居直りだ。
・『三菱マテは90年、三菱鉱業セメントと三菱金属が合併して誕生した。三菱鉱業セメントの前身は三菱鉱業。三菱財閥の創始者である岩崎弥太郎が1871(明治4)年に進出した鉱山事業がルーツだ。 1989年に閉鎖した旧三菱金属大阪製錬所の跡地で、三菱マテと三菱地所が共同で行った再開発事業、大阪アメニティパーク(OAP)の土壌汚染で三菱マテは隠蔽体質をさらけ出した。基準値の20倍のヒ素や地下水からセレンなどの重金属を検出したのに、マンション2棟(518戸)の購入者には、この事実を告げなかった。 大阪府警は05年、宅地建物取引業法違反(重要事項の不告知)で、当時の役員らを書類送検。事業主がマンションの購入額の最低25%、総額75億円を解決金として住民に支払うことで和解。三菱地所社長の高木茂、三菱マテ会長の西川章、社長の井手明彦が引責辞任したことを勘案して大阪地検は不起訴処分とした。 三菱マテにとって隠蔽の授業料は高かったはずだが、この教訓が生かされず、再び検査データに手を伸ばした。 隠蔽の2文字が名門、三菱マテの遺伝子(DNA)として刷り込まれている、といったら酷か。(敬称略)』、「酷」というより「実態」だろう。

第三に、昨年6月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「レオパレスや大和ハウスの不祥事、元凶は時代錯誤の「体育会ノリ」だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/206195
・『会社を揺るがすほどの不祥事に発展したレオパレス問題に次いで大和ハウス工業も、と不祥事が続発している。強引な営業が問題になっている大東建託もそうだが、人口減少という抗えない時代の変化に対して、「根性」と「頑張り」で立ち向かおうとする、時代錯誤の経営哲学が背景にあるのではないだろうか』、「時代錯誤の経営哲学が背景にある」とは興味深そうだ。
・『大和ハウスや大東建託も 住宅業界の不祥事が続々発覚  “外壁なしの違法プラモデル建築”が発覚したレオパレスの二の舞になってしまうのだろうか。 4月に防火基準を満たしていない不適切な物件2000棟超があると公表していた大和ハウス工業が、再調査をしたところ、国から認定されていない基礎を使った不適切住宅が、新たに約1900棟も見つかったのだ。 実は今、同社は不祥事のフィーバー状態となっている。 今年1月には元営業所長が、取引先の太陽光発電関連会社から約4000万円のリベートを受け取っていたことが発覚。3月には中国・大連市の関連会社から、約234億円の会社資金が不正に引き出されたと発表。つい先日にも、施工したマンションの貯水槽で協力会社作業員が泳ぐというバカ動画を世界に発信したことで謝罪したばかりなのだ。 ただ、この傾向は大和ハウスだけではない。「被害者の会」まで立ち上がったレオパレスはご存じの通りで、同じく賃貸アパート大手で、“いい部屋ネット”で知られる大東建託もオーナートラブルや職場のブラックぶりが一部で指摘されており、不動産業界では「大東建託の内幕 “アパート経営商法”の闇を追う」(同時代社)なんて本も注目を集めている。 では、なぜ賃貸住宅建設に関わる大手プレイヤーから、次々と「問題」が噴出しているのだろうか。 ひとつには、住宅着工件数の減少が影響していることは間違いない。 日本は今、急速に人口が減っている。総務省統計局「総人口の推移」によれば、2017年から18年の1年間で日本の人口は約40万人減っている。これは、岐阜市レベルの都市が毎年、「消滅」しているとイメージしていただければわかりやすい』、「大和ハウス」が「不祥事のフィーバー状態」、とはみっともない話だ。タガが外れてしまったのだろうか。
・『人口減少時代にがむしゃらに頑張ることの副作用とは  人が減れば当然、住宅の需要も減っていく。事実、1970年代には185万戸もあった新設住宅着工戸数は、2017年度には94.6万戸にまで縮小している。 もちろん、この「逆風」の中でも、大手は新たな事業の柱などをつくり出して成長を続けている。例えば、大和ハウスは新設住宅着工戸数が鈍ってきたことを受け、商業施設や物流施設など事業建設に力を入れはじめ、2005年には売上高の28.6%だった事業建設は、現在は38.4%まで増加。競合を大きく引き離した3兆7956億円の売り上げを叩き出している。(大和ハウスグループ「統合報告書2018」より) ただ、人口減少という大逆風の中で、これだけ右肩上がりの成長を実現するというのは普通に考えれば、かなりの無茶ぶりである。 「チャレンジ」という名目で、現場に利益のかさ上げを要求した東芝を例に出すまでもなく、無茶な目標設定はモラルハザードを招く。今回の「4000棟の不適合建築」問題も、その可能性は否めないのだ。 そのような意味では、この業界でさまざまな問題が噴出していることも、「人口減少」という不治の病を無理やり何とかしようと試みた結果の、強烈な副作用とみてもいいのではないだろうか。 そこに加えて、この副作用をさらに重篤化させているのが、この世界に蔓延している「体育会のノリ」だと思っている。 賃貸住宅建設業界にお勤めの方ならばよくわかると思うが、この世界はかなり体育会で、罵声が飛び交うのは当然で、とにかく靴底減らして仕事を取ってこいみたいなカルチャーが現在まで続いている。 例えば、有名なのは大東建託の「飛び込み営業」だ。「大東建託現役社員が指摘『ひたすら飛び込む』営業戦略の弱点」には、そのあまりのハードな体育会のノリから、営業マンが「辛いなあ。死んだ方がマシかなあ」と悲痛な声を上げていることが紹介されている』、「とにかく靴底減らして仕事を取ってこいみたいなカルチャーが現在まで続いている」、ブラック企業と紙一重のようだ。
・『不祥事企業に共通するのは「体育会のノリ」である  ということを言うと、確かに度の過ぎた「体育会のノリ」も問題だが、企業が成長するうえには、ある程度は必要ではないかと思う人もいるだろうが、それは大きな勘違いだ。 「人口減少社会」における体育会のノリは百害あって一利なし。体罰指導で急に強くなる部活と一緒で、瞬間風速的に業績は上がるかもしれないが、中長期的に見ると、パワハラや不正が溢れ変えるブラック組織をつくることにしかならないのだ。 確かに、現場に体育会のノリで発破をかけてうまくいった時代もあった。が、現在は先ほども触れたように事業環境が激変しているので、ほとんどワークしない。そこでさらに「気合だ」「根性だ」「やる気を見せろ」と叱責すると逆効果で、パワハラにしかならないのだ。 また、そのような結果に繋がらない精神的プレッシャーが増えると、現場の人間はちゃんとした仕事をすることよりも、「どうすれば叱責されないようになるか」という方向でものを考えがちになっていく。インチキをして上司や客がのぞむような結果をつくりあげる。「真面目な社員」たちが「会社のため」という名目で、データ改ざんや利益のかさ上げ、法令軽視に手を染めるのは、こういう組織内の力学が影響しているのだ。 筆者は、この10年あまり、報道対策アドバイザーとして、不祥事などが発覚した問題企業を間近に見てきた。業種も多岐に渡っているし、業績の良い企業もあれば、悪い企業もある。不祥事のパターンもバラエティに富んでいる。 だが、ひとつだけ共通しているのが、どの組織にも何かしらの「体育会のノリ」があるということだ。トップが苦労人でゴリゴリの根性論を振りかざすとか、製造部門が軍隊のような階級社会で「上」には誰も文句が言えないとか。 5月に代表権を返上してCEOを退任した「大和ハウス中興の祖」である樋口武男氏は、創業者・石橋信夫氏に託された「10兆円企業」という目標を、創業100周年の2055年に目指しており、このようにインタビューでおっしゃっている。 《社長には20年前倒しして10兆円を目指せと発破をかけている。これはと思う幹部には特にしんどい仕事をさせて、能力を見極めている》(2016年07月28日 日刊工業新聞) これぞ経営者だと思う一方で、そのように樋口氏から強いプレッシャーをかけられた幹部は、そのしんどい仕事を誰へ振っていくのかが気になる』、「この10年あまり、報道対策アドバイザーとして、不祥事などが発覚した問題企業を間近に見てきた」「筆者」が「不祥事企業に共通するのは「体育会のノリ」である」、「「真面目な社員」たちが「会社のため」という名目で、データ改ざんや利益のかさ上げ、法令軽視に手を染めるのは、こういう組織内の力学が影響」、などの指摘には説得力がある。
・『高度経済成長は「根性」で成し得たのではない  アマチュアスポーツの体罰問題で指摘されたように、選手時代に体罰を受けて一人前になった人は、コーチになってからも当たり前のように選手を殴る。自分がそうやって強い人間になったからだ。 このハラスメントの連鎖を踏まえれば、樋口氏から厳しい指導を受けた管理職は、部下を厳しく育てるはずだ。では、そのような部下たちは、工事業者や協力会社という「現場」をどのように指導するのか。とにかく結果を出せ、もっと努力しろ、と厳しく迫るのではないか。 このような人口減少社会にそぐわぬ「体育会のノリ」の押し付けが、現場のモラルハザードを引き起こし、「4000棟の不適合建設」につながった可能性はないだろうか。 高度経済成長期、日本の人口は右肩上がりで内需は自然に拡大していたので、やるべきことをしっかりやっていれば、企業は成長ができた。 しかし、そんな幸せな時代、ひとつの不幸が生まれてしまう。「日本は人口増によって成長した」という分析をする人が皆無だったため、自分たちの会社が大きくなったのは、「社員みんなが頑張ったからだ」と信じ込んでしまったのだ。これによって、人口増で黙っていても自然に経済成長ができているのに、あたかも「根性で成長ができた」という錯覚に陥る日本人が多く現れた。 この大きな誤解が、バブル崩壊を経て「失われた20年」でさまざまな問題を引き起こしている。 日本の人口は減少に転じて、かつてのように内需は拡大しない。論理的に考えれば、高度経済成長期に雨後のタケノコのように生まれた企業は、事業の縮小や見直し、他社との合併などを検討しなくてはいけないのは明らかだが、多くの経営者はそういう判断ができない。 成長とは「従業員の根性」で成し得るものだという思い込みがあるからだ』、「人口増で黙っていても自然に経済成長ができているのに、あたかも「根性で成長ができた」という錯覚に陥る日本人が多く現れた。 この大きな誤解が、バブル崩壊を経て「失われた20年」でさまざまな問題を引き起こしている」、その通りだ。
・『「頑張れば成長できる」 偽りの神話を捨てるべき時期だ  成長ができていないのは、頑張りが足りないから。頑張りが足りないのは、最近の若者は自分たちのように試練を乗り越えていないからに違いない。ということは、会社のためにも、ぬるま湯で育った若者のためにも、ちょっとくらい心と体を痛めつけてやる必要がある。そんな支離滅裂な三段論法で、「正義のパワハラ」に走っていく。 現在の日本で、人口が減れば減るほどブラック企業やパワハラが活況していく、という皮肉な現象が起きているのは、全てはこの「頑張れば成長できる」という強迫観念が元凶になっている。 賃貸住宅建設に関わる大手メーカーに不祥事が多発しているのも、根っこにはこの構造があるとしか思えない。 前向きに考えれば、業界でさまざまな問題が噴出しているということは、大きく変わっていくチャンスでもあるはずだ。 人口が激減する社会で、新しい住宅や施設をバカバカつくっていく方法は、やはりどう考えても、無理がある。その無理は頑張りや努力で乗り越えることはできない。「頑張って成長をする」という昭和の経営者の根性論から脱却する時期にさしかかっているという事実に、経営者は気づく必要がある。 この不祥事多発を受け、大和ハウスをはじめ、賃貸住宅建設業界のみなさんがどのような新しいビジネスモデルにたどり着くのか、注目したい』、「人口が減れば減るほどブラック企業やパワハラが活況していく、という皮肉な現象が起きているのは、全てはこの「頑張れば成長できる」という強迫観念が元凶になっている」、「「頑張って成長をする」という昭和の経営者の根性論から脱却する時期にさしかかっているという事実に、経営者は気づく必要がある」、全面的に同意する。

第四に、本年4月30日付け東洋経済オンライン「日立グループ、「金属」「化成」で不正相次ぐ事情 日立金属で10年以上の検査データ不正が発覚」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/347453
・『日立グループで検査不正がまた発覚した。 日立金属は4月27日、主力の特殊鋼製品とフェライト磁石などの磁性材料で、検査データを偽造するなどの検査不正があったと発表した。いずれの部品も自動車や家電、産業機器などで幅広く使われており、不正を通じて製品を納入した顧客は延べ約170社に上る』、「磁性材料」での「検査不正」で「顧客」側からのクレームは表立ってはないようだが、本当のところはどうなのだろう。
・『検査データを書き換え、顧客に提出  不正があったのは特殊鋼、フェライト磁石、希土類磁石の3種類の素材だ。特殊鋼はクロムやニッケルなどを特殊配合して耐久性を強くした鋼で、主に加工治具や自動車部材に使われている。 またフェライト磁石は、主にワイパーやパワーウィンドウなど自動車用やエアコン等家電用の各モーターに用いられ、希土類磁石はネオジム等のレアアースを主原料とする強力な磁石で、自動車の電動パワーステアリングやFA(ファクトリー・オートメーション)、ロボット用モーターに使われている。 いずれも顧客と契約していた品質基準に合うように検査データを書き換えたものを「検査成績書」として顧客に提出。特殊鋼では14品種、約30社、フェライト磁石は約580品番、約70社に、希土類磁石は約370品番、約70社の顧客にそれぞれ納入されていた。 不正には特殊鋼を作っている安来工場(島根県安来市)や、磁石を作っている熊谷磁材工場(埼玉県熊谷市)などの国内拠点のほか、韓国、フィリピン、インドネシア、アメリカの海外拠点も関与していた。3品目の2019年度の売上高は合計3105億円で、そのうち実際に不正が一部でも認められた製品は245億円分に上る。 日立金属の西山光秋会長兼CEOは4月27日に電話会見を開き、「現時点では安全性、性能に問題があるものは確認されていない」と説明したうえで、「顧客にご相談申し上げて、合意のもと出荷を継続している」と話した。業績に与える影響は現時点で不明という。 不正が発覚したきっかけは2020年1月下旬、安来工場で不正が行われているとの情報提供だった。社内調査を進めた結果、フェライト磁石と希土類磁石でも同様の不正が判明した。 西山会長は「不正は少なくとも10年以上前から継続していた」と説明。上層部も関わっていた可能性があるため、今後歴代幹部から聞き取り調査を行う方針とみられる。4月27日付で長島・大野・常松法律事務所の弁護士らからなる特別調査委員会を設置し、原因究明を急ぐ考えだ』、「現時点では安全性、性能に問題があるものは確認されていない」、その理由は「顧客」が要求する「品質基準」自体に余裕がある(?)ためなのだろうか。
・『日立の中核子会社で相次ぐ不正  日立グループをめぐっては、中核子会社の日立化成でも2018年に産業用鉛蓄電池などで大規模な品質データ不正が発覚している。このとき、日立グループでは全社に総点検するように指示していたが、今回の不正を防げなかったことになる。 くしくも日立金属の西山会長は4月に親会社である日立製作所の専務兼CFOから転じたばかり。西山氏は「今回の不正と人事は関係ない」としたうえで、「(日立グループの総点検で)不正が把握できなかったのは私としても悔しい」と話した。 一方、日立化成に続く中核子会社での相次ぐ不正は日立グループ全体の問題ではないかとの指摘には反論。西山氏は「日立グループの問題というよりも、日立金属は(独立した)上場会社だ。責任を持って調査して説明責任を果たさなければならない」と強調した。 原因究明はこれからだが、コストを意識していた可能性もある。今回顧客との契約とは違う工程を未申請のまま変更したケースでは、自社材料から外部購入に変更していた。 その理由について、西山会長は「おそらくはコスト。外部購入の方がコストが安いから変更したと推測できる」と認める。もっとも顧客は日立金属の材料を使用した製品と理解して購入しているため、契約が不成立になる恐れもある』、「外部購入の方がコストが安いから変更したと推測」、「日立化成」ともなると、「社内」購入時の価格交渉は甘くなるのだろうか。
・『試される「名門」のガバナンス力  日立金属は日立化成とともに日立グループ御三家の一角を占め、売上高は1兆円規模を誇る。だが、磁石事業などの不振で業績低迷が続いている。2019年4~12月期は本業の儲けを示す調整後営業利益が前期比72%減の118億円に下落。前期まで3期連続で減益のうえ、2020年3月期は磁性材料で減損を計上し、470億円の最終赤字に転落する見込みだ。足元では新型コロナウイルスの感染拡大もあり、さらに下振れする可能性が高まっている。 日立金属幹部はここ数年の業績不振について、「構造改革を怠り、全方位で積極投資した結果、固定費が大幅に増えてしまった」と分析する。西山氏は「一刻も早い業績の回復、事業再編に取り組んでいきたい」と抱負を述べたばかりだった。 日立金属はもともと独立心が旺盛で、日立製作所との取引も少ない。ただ、2010年に日立金属社長を日立製作所の副社長に就けるなど、グループの一体感を高める動きもあった。その後、2013年に日立電線と経営統合し、日立化成との統合も模索していたが、日立化成は昭和電工への売却が決まった。そうしたこともあって、日立金属も業績が回復すればグループ外へ売却されるのではないかとの観測が強まっていた。 ただ新たな問題が浮上したことで、売却の行方は不透明になってきた。原因究明には少なくとも数カ月かかるとみられるが、日立化成の不正問題のように、調査の過程でまた追加の不正が出る可能性も残る。名門で相次いだ不正をどう食い止めるか。日立のガバナンス力が試されている』、いまや「日立」は経団連会長会社、このような「不正」発覚は、今回限りにしてもらいたいものだ。)
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