ブラック企業(その16)(ダイハツ お前もか…闇落ちするブラック企業には「ヤバいスローガン」がある、従業員の不満投稿が多い“ブラック”企業ランキング2023【トップ30】6位ヨドバシカメラ 3位イオンリテール ビッグモーターも上位!) [企業経営]
ブラック企業については、昨年3月31日に取上げた。今日は、(その16)(ダイハツ お前もか…闇落ちするブラック企業には「ヤバいスローガン」がある、従業員の不満投稿が多い“ブラック”企業ランキング2023【トップ30】6位ヨドバシカメラ 3位イオンリテール ビッグモーターも上位!)である。
先ずは、昨年12月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「ダイハツ、お前もか…闇落ちするブラック企業には「ヤバいスローガン」がある」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336571
・『「員数主義」に走っていたとしてもなぜこれほどダイハツは「堕ちた」のか 不正問題で揺れるダイハツが、「ブラック企業」だと叩かれている。 12月20日に第三者委員会の調査報告書で指摘された社風が、「そりゃ、不正がまん延するよ」「昔、在籍していたブラック企業がまさにこんな感じだった」などと、世間をドン引きさせているのだ。 まず報告書によれば、ダイハツは「極度のプレッシャーに晒されて追い込まれた現場の担当者に問題の解決が委ねられた現場任せの状況になっていた」という。ぶっちゃけ、こういう「現場に丸投げ」はサラリーマンならば一度や二度は経験する「あるある」だが、ダイハツがすさまじいのはここからだ。 現場が「これこれこういう問題でできません」と管理職にSOSを出しても、「『で?』と言われるだけで相談する意味がなく、問題点を報告しても『なんでそんな失敗したの』『どうするんだ』『間に合うのか』と詰問するだけで、親身になって建設的な意見を出してくれるわけではない」(調査報告書より)というのだ。 要するに、「どんな手を使っても結果を出すのがお前の仕事だろ」と言わんばかりに、ノルマと責任をすべて「下」に押し付ける、という威圧的マネジメントがまかり通っていた。「下」は、生きるためにやむなく不正行為に走ったというワケだ。 ちなみに、これは筆者が本連載の中で、日本企業の「不正カルチャー」の原因だと繰り返し指摘してきた「員数主義」の典型的なケースだ。「員数」とは旧日本軍内で使われてた装備品や物資の数を示す言葉だ。 軍隊内ではこの「員数」と帳簿上の数が合わないのは「あり得ない」ので、ダイハツのように「で?」「なんで数が合わないの」「どうするんだ」と詰問された。そこで、とにかく員数を合わせるため、他部隊から装備品を盗んだりする不正行為がまん延、現場レベルでは黙認されていたというのだ。 そんな旧日本軍の「数の帳尻を合わせるためならば多少のインチキには目をつぶる」という「員数主義」が戦後、従軍経験者や軍需工場での勤務経験者を介して、日本の民間企業にも引き継がれて、現在に至るというのが筆者の考えだ。詳しくは、《ビッグモーター前社長の他人事発言が、東京裁判「元陸軍大将の釈明」と重なる理由》をお読みいただきたい。 ただ、仮にダイハツが員数主義にむしばまれていたとしても、ここまで「ベタベタのブラック企業」になってしまったことは説明できない。日本最古の自動車メーカーであり、軽自動車国内新車販売台数17年連続トップの名門がなぜこんな「闇堕ち」してしまったのか』、「これは筆者が本連載の中で、日本企業の「不正カルチャー」の原因だと繰り返し指摘してきた「員数主義」の典型的なケースだ。「員数」とは旧日本軍内で使われてた装備品や物資の数を示す言葉だ。 軍隊内ではこの「員数」と帳簿上の数が合わないのは「あり得ない」ので、ダイハツのように「で?」「なんで数が合わないの」「どうするんだ」と詰問された。そこで、とにかく員数を合わせるため、他部隊から装備品を盗んだりする不正行為がまん延、現場レベルでは黙認されていたというのだ。 そんな旧日本軍の「数の帳尻を合わせるためならば多少のインチキには目をつぶる」という「員数主義」が戦後、従軍経験者や軍需工場での勤務経験者を介して、日本の民間企業にも引き継がれて、現在に至るというのが筆者の考えだ・・・ただ、仮にダイハツが員数主義にむしばまれていたとしても、ここまで「ベタベタのブラック企業」になってしまったことは説明できない。日本最古の自動車メーカーであり、軽自動車国内新車販売台数17年連続トップの名門がなぜこんな「闇堕ち」してしまったのか」、その通りで、興味深そうだ。
・『「ヤバいスローガン」による弊害? 実はビッグモーターも… いろいろなご意見があるだろうが、報道対策アドバイザーとして、世間的に「ブラック企業」のそしりを受けた会社の危機管理も手伝った経験から言わせていただくと、「ヤバいスローガン」の弊害もあると思っている。 社訓、社是、ミッション、パーパスなど呼び方はさまざまだが、企業というのは自分たちの会社が目指すべきこと、社員が心がけることをスローガンとして掲げて、研修や教育で現場に叩き込んでいく。例えば、トヨタの場合、創業以来受け継がれてきた「豊田綱領」がこれにあたる。他にも、トヨタウェイだミッションだと色んな言葉が掲げられているが、「豊田綱領の精神」が最上位にあるという。 「たかがスローガンが企業カルチャーに影響なんてしねーよ。オレなんか自社のスローガンが何かなんてまったく知らないし」と嘲笑する人も多いだろう。しかし、我々はつい最近も「ヤバいスローガン」が「ヤバい会社」を生み出したことを目の当たりにしている。 勘のいい方はお分かりだろう、ビッグモーターだ。 ビッグモーターもダイハツ同様に不正発覚後、ブラック企業ぶりが叩かれた。ノルマ達成できないとLINEグループ内や会議でボロカスに人格否定されて降格や左遷。目標未達だと罰金を自腹で払わされるなどの社風が次々と明らかになっていく中で、注目されたのは、「ヤバい経営計画者」だ ビッグモーターの整備工場前では毎朝、従業員が一堂に会して、創業者である兼重宏行氏のかなりクセのある経営思想が反映された「経営計画書」を読み上げていた。 例えば、「会社と社長の思想は受け入れないが仕事の能力はある」社員について、「今、すぐ辞めてください」とピシャリ。さらには「店長には営業マンの生殺与奪権を与える」などの内容も唱えられていた。 これらのスローガンを毎日叩き込まれた社員が「上の命令にはガタガタ言わずに黙って従う」としつけられることは言うまでもない。つまり、上から課せられたノルマが達成できない場合も、「できません」など言うことはあり得ないということだ。となると、残る道はインチキしかない。 この「ヤバいスローガン」はダイハツにも当てはまる』、「我々はつい最近も「ヤバいスローガン」が「ヤバい会社」を生み出したことを目の当たりにしている。 勘のいい方はお分かりだろう、ビッグモーターだ。 ビッグモーターもダイハツ同様に不正発覚後、ブラック企業ぶりが叩かれた。ノルマ達成できないとLINEグループ内や会議でボロカスに人格否定されて降格や左遷。目標未達だと罰金を自腹で払わされるなどの社風が次々と明らかになっていく中で、注目されたのは、「ヤバい経営計画者」だ ビッグモーターの整備工場前では毎朝、従業員が一堂に会して、創業者である兼重宏行氏のかなりクセのある経営思想が反映された「経営計画書」を読み上げていた。 例えば、「会社と社長の思想は受け入れないが仕事の能力はある」社員について、「今、すぐ辞めてください」とピシャリ。さらには「店長には営業マンの生殺与奪権を与える」などの内容も唱えられていた。 これらのスローガンを毎日叩き込まれた社員が「上の命令にはガタガタ言わずに黙って従う」としつけられることは言うまでもない。つまり、上から課せられたノルマが達成できない場合も、「できません」など言うことはあり得ないということだ。となると、残る道はインチキしかない。 この「ヤバいスローガン」はダイハツにも当てはまる」、なるほど。
・『「1mm、1g、1円、1秒へのこだわり」にはらむ危ない優先度 報道されているように、ダイハツは「数値目標」に対して非常にシビアだ。スローガンとして「1mm、1g、1円、1秒にこだわってお客様に寄り添ったクルマづくり」を掲げて、現場にも叩き込んでいたという。 ものづくり企業として素晴らしい目標じゃないか、どこが問題なのだ」と首を傾げる方もいるかもしれないが、大いに問題がある。ダイハツが寄り添うという「お客様」からすれば、車は「安心安全」がまず何よりも重要で、次に「コスパ」だ。とにかく1円でも安いことが重要で、そのためには多少の危険はガマンする、なんてユーザーは珍しい。 つまり、「1mm、1g、1円、1秒へのこわだり」なんて、ダイハツ側が思っているほど、ユーザーはありがたがっていないのだ。 もちろん、自動車評論家やら自動車を趣味としている人は「コスパ」や「走り」からダイハツ車を選んでいるのだろうから、「1mm、1g、1円、1秒へのこわだり」は重要だ。しかし、一般的な軽自動車ユーザーにとって、ダイハツ車は仕事や生活の足であり、大切な人を載せるモビリティに過ぎない。つまり、「1mm、1g、1円、1秒」はユーザー目線ではなく、作り手目線のこだわりなのだ。 そういうプロダクトアウト的なスローガンを掲げ、それを現場に叩き込んでいる時点で、ダイハツがユーザーメリットより、企業内の論理を優先する「ヤバい会社」だということが伺えるのだ』、「一般的な軽自動車ユーザーにとって、ダイハツ車は仕事や生活の足であり、大切な人を載せるモビリティに過ぎない。つまり、「1mm、1g、1円、1秒」はユーザー目線ではなく、作り手目線のこだわりなのだ。 そういうプロダクトアウト的なスローガンを掲げ、それを現場に叩き込んでいる時点で、ダイハツがユーザーメリットより、企業内の論理を優先する「ヤバい会社」だということが伺えるのだ」、その通りだ。
・『「世界一」を目標にしていたが… 「高すぎる目標」が日本企業のブラック化につながる そんな「内向きなカルチャー」を象徴することがもうひとつある。ダイハツが掲げる「世界一」というスローガンだ。5つのフィロソフィー(グループ理念)の最後にこうある。 「世界一のスモールカーづくりが私たちの挑戦(チャレンジ)です」 実はこれは不正がまん延する企業によく見られるスローガンだ。 筆者は2017年10月に、『神戸製鋼も…名門企業が起こす不正の元凶は「世界一病」だ』という記事を書いた。その際、神戸製鋼、三菱自動車、東芝など「世界一の技術」をスローガンにしていたものづくり企業で相次いで不正が発覚していく事例を紹介して、原因を次のように分析をさせていただいた。ちょっと長いが、今回のダイハツにも当てはまる本質的な問題なので引用しよう。 ================= 「世界一」とは本来、技術力や生産性を高めていくうちに、他者からの評価という形で得られる「結果」に過ぎない。 しかし、東芝の場合はこのように何十年も「世界一」を追い求めてきたことで、いつのまにやら「世界一」になることが何よりも優先すべき「目的」となってしまった恐れがあるのだ。このように「結果」と「目的」をはきちがえた時、企業は「不正」に走る。 (中略) 鉄鋼、自動車、電機というかつて日本の基幹産業と呼ばれた業種を代表する企業たちが、まるで内部からガラガラと崩壊するように、不正が噴出している。 これには競争力に問題があるとか、生産性が下がったからだとか、いろいろなご意見があるだろうが、筆者はこれまで見てきたように、これらの業界がかつて「世界一」というスローガンを掲げて、それをがむしゃらに追い求めてきたことの「重い後遺症」だと思っている。 =================== 戦前の報道を見てもわかるが、日本人は昔から「日本一」「東洋一」「世界一」がやたらと好きだ。「とにかく夢は大きく、目標は高い方がいい」という思想があるからかもしれないが、そんな日本人の「高すぎる目標」が不正や組織のブラック化のトリガーになっている醜悪な現実がある』、「神戸製鋼、三菱自動車、東芝など「世界一の技術」をスローガンにしていたものづくり企業で相次いで不正が発覚していく事例を紹介して、原因を次のように分析」、「「世界一」とは本来、技術力や生産性を高めていくうちに、他者からの評価という形で得られる「結果」に過ぎない。 しかし、東芝の場合はこのように何十年も「世界一」を追い求めてきたことで、いつのまにやら「世界一」になることが何よりも優先すべき「目的」となってしまった恐れがあるのだ。このように「結果」と「目的」をはきちがえた時、企業は「不正」に走る。 (中略) 鉄鋼、自動車、電機というかつて日本の基幹産業と呼ばれた業種を代表する企業たちが、まるで内部からガラガラと崩壊するように、不正が噴出している。 これには競争力に問題があるとか、生産性が下がったからだとか、いろいろなご意見があるだろうが、筆者はこれまで見てきたように、これらの業界がかつて「世界一」というスローガンを掲げて、それをがむしゃらに追い求めてきたことの「重い後遺症」だと思っている」、なるほど。
・『現場に追い討ちをかける「高すぎる目標」 人口減少時代は「無理ゲー」 人口が右肩上がりで増えて、市場も拡大していく時は「高すぎる目標」はプラスに働く。消費者も労働者もたくさんいるので、高めの目標を見上げながら技術や品質を極めることができた。巨大な国内市場でテストマーケティングして、海外市場で戦うことも可能だ。だから、人口増時代のメイド・イン・ジャパンの日本車、白物家電、半導体が世界を席巻したのだ。 しかし、人口減少して労働者も消費者も減るとこの好循環がすべて「逆回転」していく。 まず、市場がシュリンクしていくので、人口増時代の売上規模がキープできない。そこでどうにか「数」で勝負をしようと、薄利多売に傾倒して、ものづくり企業は「安くて高品質」のプレッシャーが強くなる。高度経済成長期の日本でそれができたのは賃金が低いからだが、そういう現実から目を背けてどうにか技術力とコストカットで「安くて高品質」を実現しようとするので、当然、現場は疲弊していく。 そんなボロボロの現場に追い討ちをかけるのが、「高すぎる目標」だ。人口増時代は頑張れば達成できるかもと希望が持てたが、人口減少時代は「無理ゲー」を強いて、メンタルを破壊することにしかならない。しかし、管理職は自分が若い時の成功体験があるので、現場から「こんなスケジュールではできません」「もうコストカットは限界です」と泣きつかれても、「で?」「それを可能性にするためには何をすればいいのか考えるのがお前の仕事だ」など突き放す。 そうなると、追いつめられた現場はどうするか。「やってられない」と辞表を出すか、開き直って左遷・更迭されるか、あるいはインチキをするか、だ。 これがこの30年間ほど「世界一」を掲げてきたものづくり企業の現場でパワハラや不正が次々と明らかになっている根本的な原因だ。無茶なスローガンに耐えきれなくなってきた現場が、これまでのインチキを隠し通せなくなってきたのである』、「ボロボロの現場に追い討ちをかけるのが、「高すぎる目標」だ。人口増時代は頑張れば達成できるかもと希望が持てたが、人口減少時代は「無理ゲー」を強いて、メンタルを破壊することにしかならない。しかし、管理職は自分が若い時の成功体験があるので、現場から「こんなスケジュールではできません」「もうコストカットは限界です」と泣きつかれても、「で?」「それを可能性にするためには何をすればいいのか考えるのがお前の仕事だ」など突き放す。 そうなると、追いつめられた現場はどうするか。「やってられない」と辞表を出すか、開き直って左遷・更迭されるか、あるいはインチキをするか、だ。 これがこの30年間ほど「世界一」を掲げてきたものづくり企業の現場でパワハラや不正が次々と明らかになっている根本的な原因だ。無茶なスローガンに耐えきれなくなってきた現場が、これまでのインチキを隠し通せなくなってきたのである」、なるほど。
・『日本の悲しい過去も… ヤバい会社にはヤバいスローガンがある こんな話をすると決まって「こじつけだ!企業の不正はそれぞれが企業の経営者が悪いのであって、スローガンごときで人間は影響を受けない」という反論があるが、実は我々は「スローガン」というものの恐ろしさを身をもって体験した民族だ。 わかりやすいのが、旧日本軍の「戦陣訓」だ。これは1941年(昭和16年)に、陸軍大臣・東條英機が全陸軍に発した戦場での心得のようなものだ。その中でも有名なのが以下のスローガンである。 ============ 恥を知る者は強し。常に郷党(きょうとう)家門の面目を思ひ、愈々(いよいよ)奮励(ふんれい)してその期待に答ふべし、生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかしめ)を受けず、死して罪過の汚名を残すこと勿(なか)れ — 『戦陣訓』「本訓 其の二」、「第八 名を惜しむ」 ============ 読んでわかるように、「一族の恥にならないように勇ましく戦いなさいよ」くらいの意味だ。現場ではこれを復唱させて、兵士たちの闘争心を高めるという好循環ができた。 しかし、戦局が悪化して敗退に次ぐ敗退となっていくと、「逆回転」していった。圧倒的な戦力差と物資不足で不利になっていくと、「生きて虜囚の辱を受けず」だけが切り取られ、自軍の情報が敵に漏れないよう「投降禁止」のスローガンになった。当時、世界の戦争では「勝ち目がなくなったら白旗をあげて投降、捕虜は人道的に扱わなくてはならぬ」という国際ルールがあったが、日本軍はそれをガン無視するだけではなく、投降してきた米英の捕虜も殺害するという「不正」に走っていく。 それだけではない。敗戦のプレッシャーが強まれば強まるほど、このスローガンは日本全体を「ブラック企業」のようにしてしまう。 《戦陣訓の中の「生きて虜囚(りょしゅう)の辱め(はずかしめ)を受けず」の一節は、将兵に対し捕虜になることを固く戒めたもので、太平洋戦争で戦いが絶望的な状況になっても将兵が投降せずに玉砕や自決する事態が頻発、動けなくなった傷病兵の殺害などが起こることにもつながったと言われる。また、サイパンや沖縄戦で、住民の集団自決がおこったのもこの戦陣訓が背景になったと言われている》(NHK アーカイブズ) たかがスローガンと笑うなかれ、我々はそのスローガンによって、自分自身の首を絞めて、最終的には自らの命を放りだすまで追いつめられてしまった、という悲しい過去があるのだ。 だからこそ、組織人は自分が属する組織の「スローガン」に敏感になるべきだ。「世界一のホニャララ」とか、ひとりよがり的なことが唱えられていないか。現実とかけ離れた精神主義や、過度な組織への忠誠や滅私奉公を求めていないか。 「うちの会社ってもしかしてブラック企業?」と悩むそこのあなた、経営理念やフィロソフィーを確認してみてはどうだろう。 ヤバい会社にはヤバいスローガンがある。不正をやらされたり、「殺されたり」する前に、一刻も早く逃げていただきたい』、「『戦陣訓』「本訓 其の二」は、「現場ではこれを復唱させて、兵士たちの闘争心を高めるという好循環ができた。 しかし、戦局が悪化して敗退に次ぐ敗退となっていくと、「逆回転」していった。圧倒的な戦力差と物資不足で不利になっていくと、「生きて虜囚の辱を受けず」だけが切り取られ、自軍の情報が敵に漏れないよう「投降禁止」のスローガンになった。当時、世界の戦争では「勝ち目がなくなったら白旗をあげて投降、捕虜は人道的に扱わなくてはならぬ」という国際ルールがあったが、日本軍はそれをガン無視するだけではなく、投降してきた米英の捕虜も殺害するという「不正」に走っていく。 それだけではない。敗戦のプレッシャーが強まれば強まるほど、このスローガンは日本全体を「ブラック企業」のようにしてしまう。 《戦陣訓の中の「生きて虜囚(りょしゅう)の辱め(はずかしめ)を受けず」の一節は、将兵に対し捕虜になることを固く戒めたもので、太平洋戦争で戦いが絶望的な状況になっても将兵が投降せずに玉砕や自決する事態が頻発、動けなくなった傷病兵の殺害などが起こることにもつながったと言われる。また、サイパンや沖縄戦で、住民の集団自決がおこったのもこの戦陣訓が背景になったと言われている・・・「うちの会社ってもしかしてブラック企業?」と悩むそこのあなた、経営理念やフィロソフィーを確認してみてはどうだろう。 ヤバい会社にはヤバいスローガンがある。不正をやらされたり、「殺されたり」する前に、一刻も早く逃げていただきたい」、同感である。
次に、本年2月5日付けダイヤモンド・オンライン「従業員の不満投稿が多い“ブラック”企業ランキング2023【トップ30】6位ヨドバシカメラ、3位イオンリテール、ビッグモーターも上位!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338136
・『インターネット上には勤務先の給料や待遇などの不満があふれている。そこでダイヤモンド編集部は、企業の与信管理を支援するベンチャーが集めた大量の口コミデータなどを基に、働き方に関する従業員の不満が多い“ブラック”企業ランキングを作成した。対象期間は2023年1月から12月までの1年間。上位には金融、不動産、自動車、小売り、鉄道などの大手企業が名を連ねた』、興味深そうだ。
・『ネガティブ投稿を収集しランキングを作成 ダイヤモンド編集部は、企業向けに与信管理サービスを提供するベンチャー企業、アラームボックス(東京・新宿区)のデータを基に、ネガティブな口コミを多く集めた企業のランキングを作成した。 期間は2023年1月から12月までの1年間。同期間中に勤務関連の口コミ投稿があったのは、調査対象企業1万6633社のうち3009社だった。今回取り上げる働き方に関するネガティブ情報は9230件で、1社当たりの平均は約3件だったが、ランキング上位に名を連ねた企業は平均をはるかに上回るネガティブ投稿を集めた。 上位には金融、不動産、自動車、小売り、鉄道などの大手企業が名を連ねた。 次ページからは、ランキング上位の具体的な社名と投稿数とともに、具体的な投稿内容も明らかにする。 さっそくランキングを見てみよう。) (働き方”ブラック企業”トップ5 はリンク先参照)』、「ネガティブな口コミを多く集めた企業のランキングを作成・・・期間は2023年1月から12月までの1年間。同期間中に勤務関連の口コミ投稿があったのは、調査対象企業1万6633社のうち3009社だった。今回取り上げる働き方に関するネガティブ情報は9230件で、1社当たりの平均は約3件だったが、ランキング上位に名を連ねた企業は平均をはるかに上回るネガティブ投稿を集めた。 上位には金融、不動産、自動車、小売り、鉄道などの大手企業が名を連ねた」、なるほど。
・『1位はJR東日本 目立つ働き方への不満 23年1~12月に投稿数が最も多かったのはJR東日本で、84件に達した。 投稿で目立つのは働き方に関する不満だ。人手不足による残業の多さや、心身への負担の大きさを指摘する投稿などが目立った。投稿内容は下記の通りだ。 「人出不足なのに、人を減らしているため、現場が回っていない」 「どこも人手が足りなくて休日出勤が常態化している。年間で20日以上休みが減った職場もある」 「人が常に足りないため、休日出勤を月に2~3日やっている人もおり、自転車操業」 「人員が減少し、以前より少ない人数で仕事しなければならず、体力的にも精神的にも限界」 「育児介護制度があっても使えないことが多い。育児や介護について周囲の理解が得られず、定時に帰れない」 また、待遇面では、コロナ禍での賞与の減少に関する不満が目立った。 「基本給が低く、賞与が高く、設定されている。コロナ禍で賞与が減り、年収減となった」 「基本給が安く抑えられていて、ボーナスでとんとんになる。しかしコロナ禍でボーナスがカットされて厳しくなっている」 「マルチタスクを任せられるようになったが、逆に手当が減り、年収が下がった」 さらに、硬直的な組織への不満も多かった。 「現場に挑戦する志を持っている社員はほとんどいない。新しいことをやろうとしても上から抑えられる。年功序列の会社なので風通しも良くない」 「リスクの種類に関わらず、徹底的に回避する傾向があるため、新規事業や構造改革のアイデアを持っていても、それを実現するビジョンが見えない」 「社員の評価は飲み会の参加などでの上司からのお気に入り度合いで決まる。会社の考えが昭和でとまっている」 企業の将来の不安の声も少なくない。 「鉄道だけの収益ではやっていけなくなっているのが現状で、他の事業などで収入を出そうとしているが、施策を見る限りでは不安しかない」』、「1位はJR東日本 目立つ働き方への不満・・・「現場に挑戦する志を持っている社員はほとんどいない。新しいことをやろうとしても上から抑えられる。年功序列の会社なので風通しも良くない」 「リスクの種類に関わらず、徹底的に回避する傾向があるため、新規事業や構造改革のアイデアを持っていても、それを実現するビジョンが見えない」、なるほど。
・『2位は日本生命 営業方法に多くの不満 2位は日本生命保険で、投稿件数は79件。特に保険契約のノルマや営業方法に関する不満の投稿が目立つ。 「締め日前にノルマを達成していないと、強く詰められる」 「最低限の営業ノルマがあり、それができないと容赦なくクビになるため、安定した働き方ではない」 「昔ながらの体育会系の営業方法で、身体を壊す人が散見された」 残業に関する不満や指摘も多かった。 「残業や休日出勤が当たり前で、プライベートの時間の確保ができない」 「残業時間が多すぎ、一人当たりに対する仕事量が半端ない。このまま働き続けたら、心身に影響が出る」 「平日は毎日8時出社に20時退勤で、早く帰る雰囲気が全くない」 「古い体質で残業が当たり前」 さらに組織や社風に関する不満も目立った。 「年功序列の縦社会。上司の言うことは基本的に是。出る杭は打たれる文化」 「社内の全てについて昭和で時が止まっている。改善や変革を謳ってはいるものの、古き良き時代の記憶、過去の栄光にとらわれ、全く変わる気はない」 「新人を入れろと言う割に、今いる社員を大事にしないので、どんどん社員が辞め、お客さんの不信感を増長させている」 「今時ファックスを普通に使用し、会議も紙でやっている。時代と逆行している事が多々ある」』、「2位は日本生命 営業方法に多くの不満」、なるほど。
・『3位はイオンリテール 4位はアウトソーシングテクノロジー 3位はイオンリテールで、投稿件数は54件。 イオンリテールでは労働時間や給与に関する不満が目立った。 「特に食品部門はほぼ強制的にサービス残業をさせられ、心身を壊す人が後を絶たない」 「残業時間削減を謳い、年々締め付けが厳しくなっているが、結局はサービス残業になり、無給で働かされている」 「老朽化した設備など、職場環境は非常に悪い上、無駄で非効率な確認作業に忙殺されサービス残業が発生している」 また、風通しの悪さを指摘する投稿もあった。 「近年トップダウン傾向が強まり、組織の風通しはものすごく悪い」 「特に上の役職の人ほどパワハラ気質な人が多く、人を大事にできない会社」 「上下関係が厳しく、間違ったことでも勤務年数が長い方には逆らえない風習がある」 4位は技術者派遣や開発請負などを行うアウトソーシングテクノロジーで、投稿件数は41件。アウトソーシングテクノロジーについては、派遣先に関する不満投稿が目立った。 「自分の希望はほとんど通らず、スキルが身につかないような仕事内容もあり、とても時間の無駄」 「ITの案件を紹介してくれるということで入社したが、実際に紹介されるのは工場ばかり」 「派遣先の身勝手な理由により、短期間で契約終了となることもある」 給与面での不満も少なくなかった。 「給与水準が低い。営業成績に対するインセンティブもなく、昇給もあまり望めない」 「年収が低く、ボーナスもほぼ出ず、スズメの涙程度」 「派遣業なので徹底的に低賃金で社員を使い潰そうとしてくる」』、「3位はイオンリテール 4位はアウトソーシングテクノロジー」、「イオン」では、「老朽化した設備など、職場環境は非常に悪い上、無駄で非効率な確認作業に忙殺されサービス残業が発生している」 また、風通しの悪さを指摘する投稿もあった。 「近年トップダウン傾向が強まり、組織の風通しはものすごく悪い」 「特に上の役職の人ほどパワハラ気質な人が多く、人を大事にできない会社」、「アウトソーシングテクノロジー」では、「ITの案件を紹介してくれるということで入社したが、実際に紹介されるのは工場ばかり」 「派遣先の身勝手な理由により、短期間で契約終了となることもある」、いずれも深刻な問題を抱えているようだ。
・『5位はトランスコスモス 給与面での不満が多数 5位はコールセンターなどを手掛けるトランスコスモスで、投稿件数は40件だった。 目立ったのは給与面での不満だ。 「給料が低すぎる。昇格しても昇給額が信じられないほど低い」 「優秀な人材が、給料やマネジメント層の対応に不満を抱え、続々と抜けている。まずは給料を見直すべき」 「昇給はほとんどない。いまのご時世、5~10円の振り幅なんて聞いたことがない」 「大学生のアルバイトの時給よりも低い時給で働いている」 そのほか、「上場企業とは思えないほど、コンプライアンス意識が低く驚いた」「残業することが当たり前のような雰囲気」「有給を取る時に理由を求められるため、気軽に取れない」などの投稿もあった。 トップ5に続く企業は以下となる。) (働きか”ブラック”企業6~9位 はリンク先参照)』、「トランスコスモス」では、給与などを別にすれば、「上場企業とは思えないほど、コンプライアンス意識が低く驚いた」「残業することが当たり前のような雰囲気」、などが気になるところだ。
・『ヨドバシカメラの投稿数が昨年下期に急増 6位はヨドバシカメラで、投稿件数は39件。23年1~6月の投稿件数は8件だったが、7~12月は31件と急増した。 目立ったのは残業に関する不満だ。 「残業はマックスまでさせられることが多いため、予定が全く立てられない」 「一日の労働時間が12~13時間と非常に長いため、休日があっても疲れを取るだけで終わる。ワークバランスが全くない」 「サービス残業が多すぎてプライベートはほぼない」 「残業が多く、体力的にきつい。実際体調やメンタルを崩して、休職する人や退職していく人は少なくない」 「残業ありきの人員配置。定時に上がると店が回らなくなる」 「人手が足りておらず、忙しすぎて人が辞めてく」 また、組織や社風に関する不満も少なくない。 「基本トップダウン。下からの意見を吸い上げる気はない。非上場のため、それを直す気もない」 「経営トップや店長の言うことが絶対なので、それが現場にとって合わないこと、非効率なことでもやらなきゃいけない」 「管理職の言い方がキツかったりするので人が結構辞める。昭和のやり方が残ってる」 セクハラ・パワハラ関連の投稿もあった。 「ウォーターサーバーなど『利益が出るもの』に対してノルマを課すことが多く、これが達成できないと、パワハラ一歩手前の叱責を受ける」 「客からのセクハラ等は日常茶飯事」』、「ヨドバシカメラ」では、「「経営トップや店長の言うことが絶対なので、それが現場にとって合わないこと、非効率なことでもやらなきゃいけない」 「管理職の言い方がキツかったりするので人が結構辞める。昭和のやり方が残ってる」 セクハラ・パワハラ関連の投稿もあった」、など深刻な問題を抱えているようだ。
・『三菱電機とJR西日本が7位で投稿件数は33件 7位は三菱電機とJR西日本で、投稿件数は33件。 三菱電機で目立った投稿は残業に関するものと社風に関するものだ。 残業関連は下記などの投稿があった。 「ほとんどの部署で残業が非常に多く、休日出勤もごく普通。心を病む人が多く、新卒も半年たてば目の輝きを失う」 「育休明けの時短勤務を申請している人に仕事を振りまくり、残業させている。最悪だと思う」 「殺人的な長時間残業」 「ワークライフバランスは最悪」 また、社風に関しては下記の投稿などがあった。 「新しいことを始めるための障壁が多いため、時代の変化に対応できていない」 「社内政治が大事な側面もある。旧態依然の会社」 「意思決定が遅く、過去のしがらみが大変強力。非常に保守的で、新しいことへのチャレンジに対してかなりの抵抗を受ける事がある」 「かなり陰湿な体質で、下手な事すると必ず悪口を言われる。出る杭は打たれる」 「入社後、強烈な縦割り文化に驚いた」 さらに役員への不満も多かった。 「役員クラスがひどい。仕事ができるかどうか以前に、自分たちの決断について説明できないレベル」 「問題が発覚した時の対応がその場しのぎ。マネジメント層が根本的な対応をせず、現場に丸投げ」 「マネジメント層のビジョンが不透明、舵取りや判断の遅さに不信感が大きい」 一方、JR西日本で最も目立った投稿は給与に関するものだ。 「基本給が低いので、ボーナスが戻らないと金銭的にしんどい」 「コロナ禍により賞与が大幅カットされた」 「年収に占めるボーナスの割合が高く、コロナ禍で年収が50万円以上減った」 「基本給が安く、ボーナスで補っているため、ここ数年、ボーナスカットで社員はやる気を失っている」 「重労働なのに低月給。お客様の安全を守る人の給料ではない」 働き方への不満投稿は下記などがあった。 「緊急の事故・障害対応などで勤務時間が不規則になりやすく、土日や深夜の呼び出しもままある」 「仕事量が多く超過勤務が多い。休日の呼び出しも多く、さらに休日に組合活動に出ることもありストレスがたまる」 また、パワハラを指摘する投稿もあった。 「一部でパワハラが横行し、精神的に追い込まれ休業を余儀なくされた人は珍しくない」 「昭和体育会系の考え方が根強く残っており、若い人が負担を強いられる。パワハラは当たり前」』、「三菱電機」では「「役員クラスがひどい。仕事ができるかどうか以前に、自分たちの決断について説明できないレベル」 「問題が発覚した時の対応がその場しのぎ。マネジメント層が根本的な対応をせず、現場に丸投げ」 「マネジメント層のビジョンが不透明、舵取りや判断の遅さに不信感が大きい」」、「JR西日本」では「「一部でパワハラが横行し、精神的に追い込まれ休業を余儀なくされた人は珍しくない」 「昭和体育会系の考え方が根強く残っており、若い人が負担を強いられる。パワハラは当たり前」」、などは問題が大きい。
・『日産自動車・みずほ銀行・JR九州が9位で投稿件数は31件 9位は日産自動車、みずほ銀行、JR九州で、投稿件数は31件。 日産自動車では経営への不満や将来への不安などを指摘する投稿が少なからずあった。 「毎月上級管理職が退職している。このような状況は異常ではないか」 「戦術と戦略の区別がついている人が上層部に1人もいない」 「新規事業への活気が感じられない。恐らく衰退し続けると思う」 また、会社の風通しの悪さや組織の硬直さに関する投稿もあった。 「数年に一度会社を揺るがす大きな危機に見舞われ、その時だけは多少団結するが、危機が去ると途端に足を引っ張り合い責任を押し付け合う文化」 「仕事は雑に丸投げされ、結果のみ吸い上げられる。真面目に対応すればするほどに奴隷化させられ、精神をすり減らして脱落していく」 「くだらない根回しが横行して本質的な仕事ができない」 「従業員を大事にしない風土。部長のパワハラで社員数人がメンタル疾患で休職した」 人手不足や業務負担の大きさへの不満もあった。 「設計の部署は人権がほぼない。金曜日夜に会議があり22時に議事録を送る。持ち帰り残業もよくある」 「調整業務が多い。マイクロマネジメントしてくるチームリーダーやパワハラ的な言動をする同僚が周りにいる」 「忙しい時期は頭がおかしくなるぐらい仕事が降ってくるが、それが当たり前と思っている社員が多く、残業時間は月70時間以上ある」 みずほ銀行は23年1~6月の投稿件数は22件だったが、7~12月は9件と減少している。 残業の多さや人手不足への不満が目立つ。 「本部の部署によっては終電まで仕事をするのが当たり前、もしくは、仕事が終わるまで残らざるを得ないケースが多い」 「本部の私の部署では8時40分始業、22時退行が常態化」 「無駄な事務により残業が多い。近年は退職者も多く、慢性的に人が足りていない」 「平日も朝まで飲み会、土日はゴルフや資格試験の勉強で、プライベートはなきに等しい」 「営業職は休日出社する場合もあるので、プライベートはあまりないと思った方がいい」 人材流出に関する懸念や不満も少なくない。 「従業員の士気が低い。優秀な人は若手・中堅を中心に会社を去っている」 「金融業の会社としての将来性は微妙。退職者が後をたたない。若手の退職が増えている」 「行員のモチベーションの低下が著しい。社外向けのブランディングを気にする前に、まずは社内のカルチャーをどうにかしないと、優秀な若手は流出し続ける」 旧態依然の社風への不満もあった。 「とにかく意思決定が遅い。決裁者への説明までに踏むべきプロセスが多すぎる」 「経営のやり方が明らかに間違っている。定性評価をはき違えて、上の好き勝手で評価がきまる」 「年功序列による評価体制を見直すべく取り組んでいるが、超が付くほどの保守的な企業風土ゆえ大きな変化は望めない」 「古い企業文化と無能力なおじさんたちが残っている会社。やる気のある人、できる人はどんどん抜けていく」 一方、JR九州は23年1~6月の投稿件数は9件だったが、7~12月は22件と増加した。 JR東日本、JR西日本と同様、JR九州でも目立ったのが給与に関する不満だ。 「コロナ禍で年収が下がり、業務量と責任に見合った収入が得られていない」 「コロナ禍以降ボーナスをカットされ、給料は減っているのに1人あたりの業務は増えている」 「安い給料と多くない休暇、増加するご意見対応などで現場の社員は疲弊している」 「過度に設備を廃止したり、人件費を削ったりして、利用客にも従業員にも悪い影響が出まくっている」 また、働き方への不満投稿も多い。 「深刻な人材流出により現場は疲弊している。特に現業部門は、休日出勤をしないと回らず、ワークライフバランスなど無いに等しい」 「本社勤務では長時間残業に苦しむ社員も多く、労使協定に抵触しないために闇残業を行う姿も見受けられる」 「休みの日や夜中にも呼び出しがあり、災害時には職場で寝泊まりする必要がある。 一歩間違えば大事故につながる作業でも手当がつかないなど、社員の扱いがひどい」 そのほか、「毎年、お中元とお歳暮のノルマが課せられる」といった投稿もあった。 12位から29位までの19社の中には、数々の不祥事が明らかになった中古車販売大手のビッグモーターのほか、ソフトバンク、三井住友海上、大和ハウスなど、大手企業が多数ランクインしている。次ページからのランキングをぜひチェックしてみてほしい。) (働き方”ブラック”企業12~20位 はリンク先参照)) (働き方”ブラック”企業24~29位 はリンク先参照)』、「日産自動車」では「「毎月上級管理職が退職している。このような状況は異常ではないか」 「戦術と戦略の区別がついている人が上層部に1人もいない」 「新規事業への活気が感じられない。恐らく衰退し続けると思う」 また、会社の風通しの悪さや組織の硬直さに関する投稿もあった」、「みずほ銀行」では「「本部の部署によっては終電まで仕事をするのが当たり前、もしくは、仕事が終わるまで残らざるを得ないケースが多い」 「本部の私の部署では8時40分始業、22時退行が常態化」 「無駄な事務により残業が多い。近年は退職者も多く、慢性的に人が足りていない」」、「JR九州」では「「深刻な人材流出により現場は疲弊している。特に現業部門は、休日出勤をしないと回らず、ワークライフバランスなど無いに等しい」 「本社勤務では長時間残業に苦しむ社員も多く、労使協定に抵触しないために闇残業を行う姿も見受けられる」」、など不満も強いようだ。
先ずは、昨年12月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「ダイハツ、お前もか…闇落ちするブラック企業には「ヤバいスローガン」がある」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336571
・『「員数主義」に走っていたとしてもなぜこれほどダイハツは「堕ちた」のか 不正問題で揺れるダイハツが、「ブラック企業」だと叩かれている。 12月20日に第三者委員会の調査報告書で指摘された社風が、「そりゃ、不正がまん延するよ」「昔、在籍していたブラック企業がまさにこんな感じだった」などと、世間をドン引きさせているのだ。 まず報告書によれば、ダイハツは「極度のプレッシャーに晒されて追い込まれた現場の担当者に問題の解決が委ねられた現場任せの状況になっていた」という。ぶっちゃけ、こういう「現場に丸投げ」はサラリーマンならば一度や二度は経験する「あるある」だが、ダイハツがすさまじいのはここからだ。 現場が「これこれこういう問題でできません」と管理職にSOSを出しても、「『で?』と言われるだけで相談する意味がなく、問題点を報告しても『なんでそんな失敗したの』『どうするんだ』『間に合うのか』と詰問するだけで、親身になって建設的な意見を出してくれるわけではない」(調査報告書より)というのだ。 要するに、「どんな手を使っても結果を出すのがお前の仕事だろ」と言わんばかりに、ノルマと責任をすべて「下」に押し付ける、という威圧的マネジメントがまかり通っていた。「下」は、生きるためにやむなく不正行為に走ったというワケだ。 ちなみに、これは筆者が本連載の中で、日本企業の「不正カルチャー」の原因だと繰り返し指摘してきた「員数主義」の典型的なケースだ。「員数」とは旧日本軍内で使われてた装備品や物資の数を示す言葉だ。 軍隊内ではこの「員数」と帳簿上の数が合わないのは「あり得ない」ので、ダイハツのように「で?」「なんで数が合わないの」「どうするんだ」と詰問された。そこで、とにかく員数を合わせるため、他部隊から装備品を盗んだりする不正行為がまん延、現場レベルでは黙認されていたというのだ。 そんな旧日本軍の「数の帳尻を合わせるためならば多少のインチキには目をつぶる」という「員数主義」が戦後、従軍経験者や軍需工場での勤務経験者を介して、日本の民間企業にも引き継がれて、現在に至るというのが筆者の考えだ。詳しくは、《ビッグモーター前社長の他人事発言が、東京裁判「元陸軍大将の釈明」と重なる理由》をお読みいただきたい。 ただ、仮にダイハツが員数主義にむしばまれていたとしても、ここまで「ベタベタのブラック企業」になってしまったことは説明できない。日本最古の自動車メーカーであり、軽自動車国内新車販売台数17年連続トップの名門がなぜこんな「闇堕ち」してしまったのか』、「これは筆者が本連載の中で、日本企業の「不正カルチャー」の原因だと繰り返し指摘してきた「員数主義」の典型的なケースだ。「員数」とは旧日本軍内で使われてた装備品や物資の数を示す言葉だ。 軍隊内ではこの「員数」と帳簿上の数が合わないのは「あり得ない」ので、ダイハツのように「で?」「なんで数が合わないの」「どうするんだ」と詰問された。そこで、とにかく員数を合わせるため、他部隊から装備品を盗んだりする不正行為がまん延、現場レベルでは黙認されていたというのだ。 そんな旧日本軍の「数の帳尻を合わせるためならば多少のインチキには目をつぶる」という「員数主義」が戦後、従軍経験者や軍需工場での勤務経験者を介して、日本の民間企業にも引き継がれて、現在に至るというのが筆者の考えだ・・・ただ、仮にダイハツが員数主義にむしばまれていたとしても、ここまで「ベタベタのブラック企業」になってしまったことは説明できない。日本最古の自動車メーカーであり、軽自動車国内新車販売台数17年連続トップの名門がなぜこんな「闇堕ち」してしまったのか」、その通りで、興味深そうだ。
・『「ヤバいスローガン」による弊害? 実はビッグモーターも… いろいろなご意見があるだろうが、報道対策アドバイザーとして、世間的に「ブラック企業」のそしりを受けた会社の危機管理も手伝った経験から言わせていただくと、「ヤバいスローガン」の弊害もあると思っている。 社訓、社是、ミッション、パーパスなど呼び方はさまざまだが、企業というのは自分たちの会社が目指すべきこと、社員が心がけることをスローガンとして掲げて、研修や教育で現場に叩き込んでいく。例えば、トヨタの場合、創業以来受け継がれてきた「豊田綱領」がこれにあたる。他にも、トヨタウェイだミッションだと色んな言葉が掲げられているが、「豊田綱領の精神」が最上位にあるという。 「たかがスローガンが企業カルチャーに影響なんてしねーよ。オレなんか自社のスローガンが何かなんてまったく知らないし」と嘲笑する人も多いだろう。しかし、我々はつい最近も「ヤバいスローガン」が「ヤバい会社」を生み出したことを目の当たりにしている。 勘のいい方はお分かりだろう、ビッグモーターだ。 ビッグモーターもダイハツ同様に不正発覚後、ブラック企業ぶりが叩かれた。ノルマ達成できないとLINEグループ内や会議でボロカスに人格否定されて降格や左遷。目標未達だと罰金を自腹で払わされるなどの社風が次々と明らかになっていく中で、注目されたのは、「ヤバい経営計画者」だ ビッグモーターの整備工場前では毎朝、従業員が一堂に会して、創業者である兼重宏行氏のかなりクセのある経営思想が反映された「経営計画書」を読み上げていた。 例えば、「会社と社長の思想は受け入れないが仕事の能力はある」社員について、「今、すぐ辞めてください」とピシャリ。さらには「店長には営業マンの生殺与奪権を与える」などの内容も唱えられていた。 これらのスローガンを毎日叩き込まれた社員が「上の命令にはガタガタ言わずに黙って従う」としつけられることは言うまでもない。つまり、上から課せられたノルマが達成できない場合も、「できません」など言うことはあり得ないということだ。となると、残る道はインチキしかない。 この「ヤバいスローガン」はダイハツにも当てはまる』、「我々はつい最近も「ヤバいスローガン」が「ヤバい会社」を生み出したことを目の当たりにしている。 勘のいい方はお分かりだろう、ビッグモーターだ。 ビッグモーターもダイハツ同様に不正発覚後、ブラック企業ぶりが叩かれた。ノルマ達成できないとLINEグループ内や会議でボロカスに人格否定されて降格や左遷。目標未達だと罰金を自腹で払わされるなどの社風が次々と明らかになっていく中で、注目されたのは、「ヤバい経営計画者」だ ビッグモーターの整備工場前では毎朝、従業員が一堂に会して、創業者である兼重宏行氏のかなりクセのある経営思想が反映された「経営計画書」を読み上げていた。 例えば、「会社と社長の思想は受け入れないが仕事の能力はある」社員について、「今、すぐ辞めてください」とピシャリ。さらには「店長には営業マンの生殺与奪権を与える」などの内容も唱えられていた。 これらのスローガンを毎日叩き込まれた社員が「上の命令にはガタガタ言わずに黙って従う」としつけられることは言うまでもない。つまり、上から課せられたノルマが達成できない場合も、「できません」など言うことはあり得ないということだ。となると、残る道はインチキしかない。 この「ヤバいスローガン」はダイハツにも当てはまる」、なるほど。
・『「1mm、1g、1円、1秒へのこだわり」にはらむ危ない優先度 報道されているように、ダイハツは「数値目標」に対して非常にシビアだ。スローガンとして「1mm、1g、1円、1秒にこだわってお客様に寄り添ったクルマづくり」を掲げて、現場にも叩き込んでいたという。 ものづくり企業として素晴らしい目標じゃないか、どこが問題なのだ」と首を傾げる方もいるかもしれないが、大いに問題がある。ダイハツが寄り添うという「お客様」からすれば、車は「安心安全」がまず何よりも重要で、次に「コスパ」だ。とにかく1円でも安いことが重要で、そのためには多少の危険はガマンする、なんてユーザーは珍しい。 つまり、「1mm、1g、1円、1秒へのこわだり」なんて、ダイハツ側が思っているほど、ユーザーはありがたがっていないのだ。 もちろん、自動車評論家やら自動車を趣味としている人は「コスパ」や「走り」からダイハツ車を選んでいるのだろうから、「1mm、1g、1円、1秒へのこわだり」は重要だ。しかし、一般的な軽自動車ユーザーにとって、ダイハツ車は仕事や生活の足であり、大切な人を載せるモビリティに過ぎない。つまり、「1mm、1g、1円、1秒」はユーザー目線ではなく、作り手目線のこだわりなのだ。 そういうプロダクトアウト的なスローガンを掲げ、それを現場に叩き込んでいる時点で、ダイハツがユーザーメリットより、企業内の論理を優先する「ヤバい会社」だということが伺えるのだ』、「一般的な軽自動車ユーザーにとって、ダイハツ車は仕事や生活の足であり、大切な人を載せるモビリティに過ぎない。つまり、「1mm、1g、1円、1秒」はユーザー目線ではなく、作り手目線のこだわりなのだ。 そういうプロダクトアウト的なスローガンを掲げ、それを現場に叩き込んでいる時点で、ダイハツがユーザーメリットより、企業内の論理を優先する「ヤバい会社」だということが伺えるのだ」、その通りだ。
・『「世界一」を目標にしていたが… 「高すぎる目標」が日本企業のブラック化につながる そんな「内向きなカルチャー」を象徴することがもうひとつある。ダイハツが掲げる「世界一」というスローガンだ。5つのフィロソフィー(グループ理念)の最後にこうある。 「世界一のスモールカーづくりが私たちの挑戦(チャレンジ)です」 実はこれは不正がまん延する企業によく見られるスローガンだ。 筆者は2017年10月に、『神戸製鋼も…名門企業が起こす不正の元凶は「世界一病」だ』という記事を書いた。その際、神戸製鋼、三菱自動車、東芝など「世界一の技術」をスローガンにしていたものづくり企業で相次いで不正が発覚していく事例を紹介して、原因を次のように分析をさせていただいた。ちょっと長いが、今回のダイハツにも当てはまる本質的な問題なので引用しよう。 ================= 「世界一」とは本来、技術力や生産性を高めていくうちに、他者からの評価という形で得られる「結果」に過ぎない。 しかし、東芝の場合はこのように何十年も「世界一」を追い求めてきたことで、いつのまにやら「世界一」になることが何よりも優先すべき「目的」となってしまった恐れがあるのだ。このように「結果」と「目的」をはきちがえた時、企業は「不正」に走る。 (中略) 鉄鋼、自動車、電機というかつて日本の基幹産業と呼ばれた業種を代表する企業たちが、まるで内部からガラガラと崩壊するように、不正が噴出している。 これには競争力に問題があるとか、生産性が下がったからだとか、いろいろなご意見があるだろうが、筆者はこれまで見てきたように、これらの業界がかつて「世界一」というスローガンを掲げて、それをがむしゃらに追い求めてきたことの「重い後遺症」だと思っている。 =================== 戦前の報道を見てもわかるが、日本人は昔から「日本一」「東洋一」「世界一」がやたらと好きだ。「とにかく夢は大きく、目標は高い方がいい」という思想があるからかもしれないが、そんな日本人の「高すぎる目標」が不正や組織のブラック化のトリガーになっている醜悪な現実がある』、「神戸製鋼、三菱自動車、東芝など「世界一の技術」をスローガンにしていたものづくり企業で相次いで不正が発覚していく事例を紹介して、原因を次のように分析」、「「世界一」とは本来、技術力や生産性を高めていくうちに、他者からの評価という形で得られる「結果」に過ぎない。 しかし、東芝の場合はこのように何十年も「世界一」を追い求めてきたことで、いつのまにやら「世界一」になることが何よりも優先すべき「目的」となってしまった恐れがあるのだ。このように「結果」と「目的」をはきちがえた時、企業は「不正」に走る。 (中略) 鉄鋼、自動車、電機というかつて日本の基幹産業と呼ばれた業種を代表する企業たちが、まるで内部からガラガラと崩壊するように、不正が噴出している。 これには競争力に問題があるとか、生産性が下がったからだとか、いろいろなご意見があるだろうが、筆者はこれまで見てきたように、これらの業界がかつて「世界一」というスローガンを掲げて、それをがむしゃらに追い求めてきたことの「重い後遺症」だと思っている」、なるほど。
・『現場に追い討ちをかける「高すぎる目標」 人口減少時代は「無理ゲー」 人口が右肩上がりで増えて、市場も拡大していく時は「高すぎる目標」はプラスに働く。消費者も労働者もたくさんいるので、高めの目標を見上げながら技術や品質を極めることができた。巨大な国内市場でテストマーケティングして、海外市場で戦うことも可能だ。だから、人口増時代のメイド・イン・ジャパンの日本車、白物家電、半導体が世界を席巻したのだ。 しかし、人口減少して労働者も消費者も減るとこの好循環がすべて「逆回転」していく。 まず、市場がシュリンクしていくので、人口増時代の売上規模がキープできない。そこでどうにか「数」で勝負をしようと、薄利多売に傾倒して、ものづくり企業は「安くて高品質」のプレッシャーが強くなる。高度経済成長期の日本でそれができたのは賃金が低いからだが、そういう現実から目を背けてどうにか技術力とコストカットで「安くて高品質」を実現しようとするので、当然、現場は疲弊していく。 そんなボロボロの現場に追い討ちをかけるのが、「高すぎる目標」だ。人口増時代は頑張れば達成できるかもと希望が持てたが、人口減少時代は「無理ゲー」を強いて、メンタルを破壊することにしかならない。しかし、管理職は自分が若い時の成功体験があるので、現場から「こんなスケジュールではできません」「もうコストカットは限界です」と泣きつかれても、「で?」「それを可能性にするためには何をすればいいのか考えるのがお前の仕事だ」など突き放す。 そうなると、追いつめられた現場はどうするか。「やってられない」と辞表を出すか、開き直って左遷・更迭されるか、あるいはインチキをするか、だ。 これがこの30年間ほど「世界一」を掲げてきたものづくり企業の現場でパワハラや不正が次々と明らかになっている根本的な原因だ。無茶なスローガンに耐えきれなくなってきた現場が、これまでのインチキを隠し通せなくなってきたのである』、「ボロボロの現場に追い討ちをかけるのが、「高すぎる目標」だ。人口増時代は頑張れば達成できるかもと希望が持てたが、人口減少時代は「無理ゲー」を強いて、メンタルを破壊することにしかならない。しかし、管理職は自分が若い時の成功体験があるので、現場から「こんなスケジュールではできません」「もうコストカットは限界です」と泣きつかれても、「で?」「それを可能性にするためには何をすればいいのか考えるのがお前の仕事だ」など突き放す。 そうなると、追いつめられた現場はどうするか。「やってられない」と辞表を出すか、開き直って左遷・更迭されるか、あるいはインチキをするか、だ。 これがこの30年間ほど「世界一」を掲げてきたものづくり企業の現場でパワハラや不正が次々と明らかになっている根本的な原因だ。無茶なスローガンに耐えきれなくなってきた現場が、これまでのインチキを隠し通せなくなってきたのである」、なるほど。
・『日本の悲しい過去も… ヤバい会社にはヤバいスローガンがある こんな話をすると決まって「こじつけだ!企業の不正はそれぞれが企業の経営者が悪いのであって、スローガンごときで人間は影響を受けない」という反論があるが、実は我々は「スローガン」というものの恐ろしさを身をもって体験した民族だ。 わかりやすいのが、旧日本軍の「戦陣訓」だ。これは1941年(昭和16年)に、陸軍大臣・東條英機が全陸軍に発した戦場での心得のようなものだ。その中でも有名なのが以下のスローガンである。 ============ 恥を知る者は強し。常に郷党(きょうとう)家門の面目を思ひ、愈々(いよいよ)奮励(ふんれい)してその期待に答ふべし、生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかしめ)を受けず、死して罪過の汚名を残すこと勿(なか)れ — 『戦陣訓』「本訓 其の二」、「第八 名を惜しむ」 ============ 読んでわかるように、「一族の恥にならないように勇ましく戦いなさいよ」くらいの意味だ。現場ではこれを復唱させて、兵士たちの闘争心を高めるという好循環ができた。 しかし、戦局が悪化して敗退に次ぐ敗退となっていくと、「逆回転」していった。圧倒的な戦力差と物資不足で不利になっていくと、「生きて虜囚の辱を受けず」だけが切り取られ、自軍の情報が敵に漏れないよう「投降禁止」のスローガンになった。当時、世界の戦争では「勝ち目がなくなったら白旗をあげて投降、捕虜は人道的に扱わなくてはならぬ」という国際ルールがあったが、日本軍はそれをガン無視するだけではなく、投降してきた米英の捕虜も殺害するという「不正」に走っていく。 それだけではない。敗戦のプレッシャーが強まれば強まるほど、このスローガンは日本全体を「ブラック企業」のようにしてしまう。 《戦陣訓の中の「生きて虜囚(りょしゅう)の辱め(はずかしめ)を受けず」の一節は、将兵に対し捕虜になることを固く戒めたもので、太平洋戦争で戦いが絶望的な状況になっても将兵が投降せずに玉砕や自決する事態が頻発、動けなくなった傷病兵の殺害などが起こることにもつながったと言われる。また、サイパンや沖縄戦で、住民の集団自決がおこったのもこの戦陣訓が背景になったと言われている》(NHK アーカイブズ) たかがスローガンと笑うなかれ、我々はそのスローガンによって、自分自身の首を絞めて、最終的には自らの命を放りだすまで追いつめられてしまった、という悲しい過去があるのだ。 だからこそ、組織人は自分が属する組織の「スローガン」に敏感になるべきだ。「世界一のホニャララ」とか、ひとりよがり的なことが唱えられていないか。現実とかけ離れた精神主義や、過度な組織への忠誠や滅私奉公を求めていないか。 「うちの会社ってもしかしてブラック企業?」と悩むそこのあなた、経営理念やフィロソフィーを確認してみてはどうだろう。 ヤバい会社にはヤバいスローガンがある。不正をやらされたり、「殺されたり」する前に、一刻も早く逃げていただきたい』、「『戦陣訓』「本訓 其の二」は、「現場ではこれを復唱させて、兵士たちの闘争心を高めるという好循環ができた。 しかし、戦局が悪化して敗退に次ぐ敗退となっていくと、「逆回転」していった。圧倒的な戦力差と物資不足で不利になっていくと、「生きて虜囚の辱を受けず」だけが切り取られ、自軍の情報が敵に漏れないよう「投降禁止」のスローガンになった。当時、世界の戦争では「勝ち目がなくなったら白旗をあげて投降、捕虜は人道的に扱わなくてはならぬ」という国際ルールがあったが、日本軍はそれをガン無視するだけではなく、投降してきた米英の捕虜も殺害するという「不正」に走っていく。 それだけではない。敗戦のプレッシャーが強まれば強まるほど、このスローガンは日本全体を「ブラック企業」のようにしてしまう。 《戦陣訓の中の「生きて虜囚(りょしゅう)の辱め(はずかしめ)を受けず」の一節は、将兵に対し捕虜になることを固く戒めたもので、太平洋戦争で戦いが絶望的な状況になっても将兵が投降せずに玉砕や自決する事態が頻発、動けなくなった傷病兵の殺害などが起こることにもつながったと言われる。また、サイパンや沖縄戦で、住民の集団自決がおこったのもこの戦陣訓が背景になったと言われている・・・「うちの会社ってもしかしてブラック企業?」と悩むそこのあなた、経営理念やフィロソフィーを確認してみてはどうだろう。 ヤバい会社にはヤバいスローガンがある。不正をやらされたり、「殺されたり」する前に、一刻も早く逃げていただきたい」、同感である。
次に、本年2月5日付けダイヤモンド・オンライン「従業員の不満投稿が多い“ブラック”企業ランキング2023【トップ30】6位ヨドバシカメラ、3位イオンリテール、ビッグモーターも上位!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338136
・『インターネット上には勤務先の給料や待遇などの不満があふれている。そこでダイヤモンド編集部は、企業の与信管理を支援するベンチャーが集めた大量の口コミデータなどを基に、働き方に関する従業員の不満が多い“ブラック”企業ランキングを作成した。対象期間は2023年1月から12月までの1年間。上位には金融、不動産、自動車、小売り、鉄道などの大手企業が名を連ねた』、興味深そうだ。
・『ネガティブ投稿を収集しランキングを作成 ダイヤモンド編集部は、企業向けに与信管理サービスを提供するベンチャー企業、アラームボックス(東京・新宿区)のデータを基に、ネガティブな口コミを多く集めた企業のランキングを作成した。 期間は2023年1月から12月までの1年間。同期間中に勤務関連の口コミ投稿があったのは、調査対象企業1万6633社のうち3009社だった。今回取り上げる働き方に関するネガティブ情報は9230件で、1社当たりの平均は約3件だったが、ランキング上位に名を連ねた企業は平均をはるかに上回るネガティブ投稿を集めた。 上位には金融、不動産、自動車、小売り、鉄道などの大手企業が名を連ねた。 次ページからは、ランキング上位の具体的な社名と投稿数とともに、具体的な投稿内容も明らかにする。 さっそくランキングを見てみよう。) (働き方”ブラック企業”トップ5 はリンク先参照)』、「ネガティブな口コミを多く集めた企業のランキングを作成・・・期間は2023年1月から12月までの1年間。同期間中に勤務関連の口コミ投稿があったのは、調査対象企業1万6633社のうち3009社だった。今回取り上げる働き方に関するネガティブ情報は9230件で、1社当たりの平均は約3件だったが、ランキング上位に名を連ねた企業は平均をはるかに上回るネガティブ投稿を集めた。 上位には金融、不動産、自動車、小売り、鉄道などの大手企業が名を連ねた」、なるほど。
・『1位はJR東日本 目立つ働き方への不満 23年1~12月に投稿数が最も多かったのはJR東日本で、84件に達した。 投稿で目立つのは働き方に関する不満だ。人手不足による残業の多さや、心身への負担の大きさを指摘する投稿などが目立った。投稿内容は下記の通りだ。 「人出不足なのに、人を減らしているため、現場が回っていない」 「どこも人手が足りなくて休日出勤が常態化している。年間で20日以上休みが減った職場もある」 「人が常に足りないため、休日出勤を月に2~3日やっている人もおり、自転車操業」 「人員が減少し、以前より少ない人数で仕事しなければならず、体力的にも精神的にも限界」 「育児介護制度があっても使えないことが多い。育児や介護について周囲の理解が得られず、定時に帰れない」 また、待遇面では、コロナ禍での賞与の減少に関する不満が目立った。 「基本給が低く、賞与が高く、設定されている。コロナ禍で賞与が減り、年収減となった」 「基本給が安く抑えられていて、ボーナスでとんとんになる。しかしコロナ禍でボーナスがカットされて厳しくなっている」 「マルチタスクを任せられるようになったが、逆に手当が減り、年収が下がった」 さらに、硬直的な組織への不満も多かった。 「現場に挑戦する志を持っている社員はほとんどいない。新しいことをやろうとしても上から抑えられる。年功序列の会社なので風通しも良くない」 「リスクの種類に関わらず、徹底的に回避する傾向があるため、新規事業や構造改革のアイデアを持っていても、それを実現するビジョンが見えない」 「社員の評価は飲み会の参加などでの上司からのお気に入り度合いで決まる。会社の考えが昭和でとまっている」 企業の将来の不安の声も少なくない。 「鉄道だけの収益ではやっていけなくなっているのが現状で、他の事業などで収入を出そうとしているが、施策を見る限りでは不安しかない」』、「1位はJR東日本 目立つ働き方への不満・・・「現場に挑戦する志を持っている社員はほとんどいない。新しいことをやろうとしても上から抑えられる。年功序列の会社なので風通しも良くない」 「リスクの種類に関わらず、徹底的に回避する傾向があるため、新規事業や構造改革のアイデアを持っていても、それを実現するビジョンが見えない」、なるほど。
・『2位は日本生命 営業方法に多くの不満 2位は日本生命保険で、投稿件数は79件。特に保険契約のノルマや営業方法に関する不満の投稿が目立つ。 「締め日前にノルマを達成していないと、強く詰められる」 「最低限の営業ノルマがあり、それができないと容赦なくクビになるため、安定した働き方ではない」 「昔ながらの体育会系の営業方法で、身体を壊す人が散見された」 残業に関する不満や指摘も多かった。 「残業や休日出勤が当たり前で、プライベートの時間の確保ができない」 「残業時間が多すぎ、一人当たりに対する仕事量が半端ない。このまま働き続けたら、心身に影響が出る」 「平日は毎日8時出社に20時退勤で、早く帰る雰囲気が全くない」 「古い体質で残業が当たり前」 さらに組織や社風に関する不満も目立った。 「年功序列の縦社会。上司の言うことは基本的に是。出る杭は打たれる文化」 「社内の全てについて昭和で時が止まっている。改善や変革を謳ってはいるものの、古き良き時代の記憶、過去の栄光にとらわれ、全く変わる気はない」 「新人を入れろと言う割に、今いる社員を大事にしないので、どんどん社員が辞め、お客さんの不信感を増長させている」 「今時ファックスを普通に使用し、会議も紙でやっている。時代と逆行している事が多々ある」』、「2位は日本生命 営業方法に多くの不満」、なるほど。
・『3位はイオンリテール 4位はアウトソーシングテクノロジー 3位はイオンリテールで、投稿件数は54件。 イオンリテールでは労働時間や給与に関する不満が目立った。 「特に食品部門はほぼ強制的にサービス残業をさせられ、心身を壊す人が後を絶たない」 「残業時間削減を謳い、年々締め付けが厳しくなっているが、結局はサービス残業になり、無給で働かされている」 「老朽化した設備など、職場環境は非常に悪い上、無駄で非効率な確認作業に忙殺されサービス残業が発生している」 また、風通しの悪さを指摘する投稿もあった。 「近年トップダウン傾向が強まり、組織の風通しはものすごく悪い」 「特に上の役職の人ほどパワハラ気質な人が多く、人を大事にできない会社」 「上下関係が厳しく、間違ったことでも勤務年数が長い方には逆らえない風習がある」 4位は技術者派遣や開発請負などを行うアウトソーシングテクノロジーで、投稿件数は41件。アウトソーシングテクノロジーについては、派遣先に関する不満投稿が目立った。 「自分の希望はほとんど通らず、スキルが身につかないような仕事内容もあり、とても時間の無駄」 「ITの案件を紹介してくれるということで入社したが、実際に紹介されるのは工場ばかり」 「派遣先の身勝手な理由により、短期間で契約終了となることもある」 給与面での不満も少なくなかった。 「給与水準が低い。営業成績に対するインセンティブもなく、昇給もあまり望めない」 「年収が低く、ボーナスもほぼ出ず、スズメの涙程度」 「派遣業なので徹底的に低賃金で社員を使い潰そうとしてくる」』、「3位はイオンリテール 4位はアウトソーシングテクノロジー」、「イオン」では、「老朽化した設備など、職場環境は非常に悪い上、無駄で非効率な確認作業に忙殺されサービス残業が発生している」 また、風通しの悪さを指摘する投稿もあった。 「近年トップダウン傾向が強まり、組織の風通しはものすごく悪い」 「特に上の役職の人ほどパワハラ気質な人が多く、人を大事にできない会社」、「アウトソーシングテクノロジー」では、「ITの案件を紹介してくれるということで入社したが、実際に紹介されるのは工場ばかり」 「派遣先の身勝手な理由により、短期間で契約終了となることもある」、いずれも深刻な問題を抱えているようだ。
・『5位はトランスコスモス 給与面での不満が多数 5位はコールセンターなどを手掛けるトランスコスモスで、投稿件数は40件だった。 目立ったのは給与面での不満だ。 「給料が低すぎる。昇格しても昇給額が信じられないほど低い」 「優秀な人材が、給料やマネジメント層の対応に不満を抱え、続々と抜けている。まずは給料を見直すべき」 「昇給はほとんどない。いまのご時世、5~10円の振り幅なんて聞いたことがない」 「大学生のアルバイトの時給よりも低い時給で働いている」 そのほか、「上場企業とは思えないほど、コンプライアンス意識が低く驚いた」「残業することが当たり前のような雰囲気」「有給を取る時に理由を求められるため、気軽に取れない」などの投稿もあった。 トップ5に続く企業は以下となる。) (働きか”ブラック”企業6~9位 はリンク先参照)』、「トランスコスモス」では、給与などを別にすれば、「上場企業とは思えないほど、コンプライアンス意識が低く驚いた」「残業することが当たり前のような雰囲気」、などが気になるところだ。
・『ヨドバシカメラの投稿数が昨年下期に急増 6位はヨドバシカメラで、投稿件数は39件。23年1~6月の投稿件数は8件だったが、7~12月は31件と急増した。 目立ったのは残業に関する不満だ。 「残業はマックスまでさせられることが多いため、予定が全く立てられない」 「一日の労働時間が12~13時間と非常に長いため、休日があっても疲れを取るだけで終わる。ワークバランスが全くない」 「サービス残業が多すぎてプライベートはほぼない」 「残業が多く、体力的にきつい。実際体調やメンタルを崩して、休職する人や退職していく人は少なくない」 「残業ありきの人員配置。定時に上がると店が回らなくなる」 「人手が足りておらず、忙しすぎて人が辞めてく」 また、組織や社風に関する不満も少なくない。 「基本トップダウン。下からの意見を吸い上げる気はない。非上場のため、それを直す気もない」 「経営トップや店長の言うことが絶対なので、それが現場にとって合わないこと、非効率なことでもやらなきゃいけない」 「管理職の言い方がキツかったりするので人が結構辞める。昭和のやり方が残ってる」 セクハラ・パワハラ関連の投稿もあった。 「ウォーターサーバーなど『利益が出るもの』に対してノルマを課すことが多く、これが達成できないと、パワハラ一歩手前の叱責を受ける」 「客からのセクハラ等は日常茶飯事」』、「ヨドバシカメラ」では、「「経営トップや店長の言うことが絶対なので、それが現場にとって合わないこと、非効率なことでもやらなきゃいけない」 「管理職の言い方がキツかったりするので人が結構辞める。昭和のやり方が残ってる」 セクハラ・パワハラ関連の投稿もあった」、など深刻な問題を抱えているようだ。
・『三菱電機とJR西日本が7位で投稿件数は33件 7位は三菱電機とJR西日本で、投稿件数は33件。 三菱電機で目立った投稿は残業に関するものと社風に関するものだ。 残業関連は下記などの投稿があった。 「ほとんどの部署で残業が非常に多く、休日出勤もごく普通。心を病む人が多く、新卒も半年たてば目の輝きを失う」 「育休明けの時短勤務を申請している人に仕事を振りまくり、残業させている。最悪だと思う」 「殺人的な長時間残業」 「ワークライフバランスは最悪」 また、社風に関しては下記の投稿などがあった。 「新しいことを始めるための障壁が多いため、時代の変化に対応できていない」 「社内政治が大事な側面もある。旧態依然の会社」 「意思決定が遅く、過去のしがらみが大変強力。非常に保守的で、新しいことへのチャレンジに対してかなりの抵抗を受ける事がある」 「かなり陰湿な体質で、下手な事すると必ず悪口を言われる。出る杭は打たれる」 「入社後、強烈な縦割り文化に驚いた」 さらに役員への不満も多かった。 「役員クラスがひどい。仕事ができるかどうか以前に、自分たちの決断について説明できないレベル」 「問題が発覚した時の対応がその場しのぎ。マネジメント層が根本的な対応をせず、現場に丸投げ」 「マネジメント層のビジョンが不透明、舵取りや判断の遅さに不信感が大きい」 一方、JR西日本で最も目立った投稿は給与に関するものだ。 「基本給が低いので、ボーナスが戻らないと金銭的にしんどい」 「コロナ禍により賞与が大幅カットされた」 「年収に占めるボーナスの割合が高く、コロナ禍で年収が50万円以上減った」 「基本給が安く、ボーナスで補っているため、ここ数年、ボーナスカットで社員はやる気を失っている」 「重労働なのに低月給。お客様の安全を守る人の給料ではない」 働き方への不満投稿は下記などがあった。 「緊急の事故・障害対応などで勤務時間が不規則になりやすく、土日や深夜の呼び出しもままある」 「仕事量が多く超過勤務が多い。休日の呼び出しも多く、さらに休日に組合活動に出ることもありストレスがたまる」 また、パワハラを指摘する投稿もあった。 「一部でパワハラが横行し、精神的に追い込まれ休業を余儀なくされた人は珍しくない」 「昭和体育会系の考え方が根強く残っており、若い人が負担を強いられる。パワハラは当たり前」』、「三菱電機」では「「役員クラスがひどい。仕事ができるかどうか以前に、自分たちの決断について説明できないレベル」 「問題が発覚した時の対応がその場しのぎ。マネジメント層が根本的な対応をせず、現場に丸投げ」 「マネジメント層のビジョンが不透明、舵取りや判断の遅さに不信感が大きい」」、「JR西日本」では「「一部でパワハラが横行し、精神的に追い込まれ休業を余儀なくされた人は珍しくない」 「昭和体育会系の考え方が根強く残っており、若い人が負担を強いられる。パワハラは当たり前」」、などは問題が大きい。
・『日産自動車・みずほ銀行・JR九州が9位で投稿件数は31件 9位は日産自動車、みずほ銀行、JR九州で、投稿件数は31件。 日産自動車では経営への不満や将来への不安などを指摘する投稿が少なからずあった。 「毎月上級管理職が退職している。このような状況は異常ではないか」 「戦術と戦略の区別がついている人が上層部に1人もいない」 「新規事業への活気が感じられない。恐らく衰退し続けると思う」 また、会社の風通しの悪さや組織の硬直さに関する投稿もあった。 「数年に一度会社を揺るがす大きな危機に見舞われ、その時だけは多少団結するが、危機が去ると途端に足を引っ張り合い責任を押し付け合う文化」 「仕事は雑に丸投げされ、結果のみ吸い上げられる。真面目に対応すればするほどに奴隷化させられ、精神をすり減らして脱落していく」 「くだらない根回しが横行して本質的な仕事ができない」 「従業員を大事にしない風土。部長のパワハラで社員数人がメンタル疾患で休職した」 人手不足や業務負担の大きさへの不満もあった。 「設計の部署は人権がほぼない。金曜日夜に会議があり22時に議事録を送る。持ち帰り残業もよくある」 「調整業務が多い。マイクロマネジメントしてくるチームリーダーやパワハラ的な言動をする同僚が周りにいる」 「忙しい時期は頭がおかしくなるぐらい仕事が降ってくるが、それが当たり前と思っている社員が多く、残業時間は月70時間以上ある」 みずほ銀行は23年1~6月の投稿件数は22件だったが、7~12月は9件と減少している。 残業の多さや人手不足への不満が目立つ。 「本部の部署によっては終電まで仕事をするのが当たり前、もしくは、仕事が終わるまで残らざるを得ないケースが多い」 「本部の私の部署では8時40分始業、22時退行が常態化」 「無駄な事務により残業が多い。近年は退職者も多く、慢性的に人が足りていない」 「平日も朝まで飲み会、土日はゴルフや資格試験の勉強で、プライベートはなきに等しい」 「営業職は休日出社する場合もあるので、プライベートはあまりないと思った方がいい」 人材流出に関する懸念や不満も少なくない。 「従業員の士気が低い。優秀な人は若手・中堅を中心に会社を去っている」 「金融業の会社としての将来性は微妙。退職者が後をたたない。若手の退職が増えている」 「行員のモチベーションの低下が著しい。社外向けのブランディングを気にする前に、まずは社内のカルチャーをどうにかしないと、優秀な若手は流出し続ける」 旧態依然の社風への不満もあった。 「とにかく意思決定が遅い。決裁者への説明までに踏むべきプロセスが多すぎる」 「経営のやり方が明らかに間違っている。定性評価をはき違えて、上の好き勝手で評価がきまる」 「年功序列による評価体制を見直すべく取り組んでいるが、超が付くほどの保守的な企業風土ゆえ大きな変化は望めない」 「古い企業文化と無能力なおじさんたちが残っている会社。やる気のある人、できる人はどんどん抜けていく」 一方、JR九州は23年1~6月の投稿件数は9件だったが、7~12月は22件と増加した。 JR東日本、JR西日本と同様、JR九州でも目立ったのが給与に関する不満だ。 「コロナ禍で年収が下がり、業務量と責任に見合った収入が得られていない」 「コロナ禍以降ボーナスをカットされ、給料は減っているのに1人あたりの業務は増えている」 「安い給料と多くない休暇、増加するご意見対応などで現場の社員は疲弊している」 「過度に設備を廃止したり、人件費を削ったりして、利用客にも従業員にも悪い影響が出まくっている」 また、働き方への不満投稿も多い。 「深刻な人材流出により現場は疲弊している。特に現業部門は、休日出勤をしないと回らず、ワークライフバランスなど無いに等しい」 「本社勤務では長時間残業に苦しむ社員も多く、労使協定に抵触しないために闇残業を行う姿も見受けられる」 「休みの日や夜中にも呼び出しがあり、災害時には職場で寝泊まりする必要がある。 一歩間違えば大事故につながる作業でも手当がつかないなど、社員の扱いがひどい」 そのほか、「毎年、お中元とお歳暮のノルマが課せられる」といった投稿もあった。 12位から29位までの19社の中には、数々の不祥事が明らかになった中古車販売大手のビッグモーターのほか、ソフトバンク、三井住友海上、大和ハウスなど、大手企業が多数ランクインしている。次ページからのランキングをぜひチェックしてみてほしい。) (働き方”ブラック”企業12~20位 はリンク先参照)) (働き方”ブラック”企業24~29位 はリンク先参照)』、「日産自動車」では「「毎月上級管理職が退職している。このような状況は異常ではないか」 「戦術と戦略の区別がついている人が上層部に1人もいない」 「新規事業への活気が感じられない。恐らく衰退し続けると思う」 また、会社の風通しの悪さや組織の硬直さに関する投稿もあった」、「みずほ銀行」では「「本部の部署によっては終電まで仕事をするのが当たり前、もしくは、仕事が終わるまで残らざるを得ないケースが多い」 「本部の私の部署では8時40分始業、22時退行が常態化」 「無駄な事務により残業が多い。近年は退職者も多く、慢性的に人が足りていない」」、「JR九州」では「「深刻な人材流出により現場は疲弊している。特に現業部門は、休日出勤をしないと回らず、ワークライフバランスなど無いに等しい」 「本社勤務では長時間残業に苦しむ社員も多く、労使協定に抵触しないために闇残業を行う姿も見受けられる」」、など不満も強いようだ。
タグ:「我々はつい最近も「ヤバいスローガン」が「ヤバい会社」を生み出したことを目の当たりにしている。 勘のいい方はお分かりだろう、ビッグモーターだ。 ビッグモーターもダイハツ同様に不正発覚後、ブラック企業ぶりが叩かれた。ノルマ達成できないとLINEグループ内や会議でボロカスに人格否定されて降格や左遷。目標未達だと罰金を自腹で払わされるなどの社風が次々と明らかになっていく中で、注目されたのは、「ヤバい経営計画者」だ 「派遣先の身勝手な理由により、短期間で契約終了となることもある」、いずれも深刻な問題を抱えているようだ。 「3位はイオンリテール 4位はアウトソーシングテクノロジー」、「イオン」では、「老朽化した設備など、職場環境は非常に悪い上、無駄で非効率な確認作業に忙殺されサービス残業が発生している」 また、風通しの悪さを指摘する投稿もあった。 「近年トップダウン傾向が強まり、組織の風通しはものすごく悪い」 「特に上の役職の人ほどパワハラ気質な人が多く、人を大事にできない会社」、「アウトソーシングテクノロジー」では、「ITの案件を紹介してくれるということで入社したが、実際に紹介されるのは工場ばかり」 「2位は日本生命 営業方法に多くの不満」、なるほど。 そんな旧日本軍の「数の帳尻を合わせるためならば多少のインチキには目をつぶる」という「員数主義」が戦後、従軍経験者や軍需工場での勤務経験者を介して、日本の民間企業にも引き継がれて、現在に至るというのが筆者の考えだ・・・ただ、仮にダイハツが員数主義にむしばまれていたとしても、ここまで「ベタベタのブラック企業」になってしまったことは説明できない。日本最古の自動車メーカーであり、軽自動車国内新車販売台数17年連続トップの名門がなぜこんな「闇堕ち」してしまったのか」、その通りで、興味深そうだ。 「ボロボロの現場に追い討ちをかけるのが、「高すぎる目標」だ。人口増時代は頑張れば達成できるかもと希望が持てたが、人口減少時代は「無理ゲー」を強いて、メンタルを破壊することにしかならない。しかし、管理職は自分が若い時の成功体験があるので、現場から「こんなスケジュールではできません」「もうコストカットは限界です」と泣きつかれても、「で?」「それを可能性にするためには何をすればいいのか考えるのがお前の仕事だ」など突き放す。 「1位はJR東日本 目立つ働き方への不満・・・「現場に挑戦する志を持っている社員はほとんどいない。新しいことをやろうとしても上から抑えられる。年功序列の会社なので風通しも良くない」 「リスクの種類に関わらず、徹底的に回避する傾向があるため、新規事業や構造改革のアイデアを持っていても、それを実現するビジョンが見えない」、なるほど。 「みずほ銀行」では「「本部の部署によっては終電まで仕事をするのが当たり前、もしくは、仕事が終わるまで残らざるを得ないケースが多い」 「本部の私の部署では8時40分始業、22時退行が常態化」 「無駄な事務により残業が多い。近年は退職者も多く、慢性的に人が足りていない」」、「JR九州」では「「深刻な人材流出により現場は疲弊している。特に現業部門は、休日出勤をしないと回らず、ワークライフバランスなど無いに等しい」 「本社勤務では長時間残業に苦しむ社員も多く、労使協定に抵触しないために闇残業を行う姿も見受けられる (中略) 鉄鋼、自動車、電機というかつて日本の基幹産業と呼ばれた業種を代表する企業たちが、まるで内部からガラガラと崩壊するように、不正が噴出している。 これには競争力に問題があるとか、生産性が下がったからだとか、いろいろなご意見があるだろうが、筆者はこれまで見てきたように、これらの業界がかつて「世界一」というスローガンを掲げて、それをがむしゃらに追い求めてきたことの「重い後遺症」だと思っている」、なるほど。 「日産自動車」では「「毎月上級管理職が退職している。このような状況は異常ではないか」 「戦術と戦略の区別がついている人が上層部に1人もいない」 「新規事業への活気が感じられない。恐らく衰退し続けると思う」 また、会社の風通しの悪さや組織の硬直さに関する投稿もあった」、 「神戸製鋼、三菱自動車、東芝など「世界一の技術」をスローガンにしていたものづくり企業で相次いで不正が発覚していく事例を紹介して、原因を次のように分析」、「「世界一」とは本来、技術力や生産性を高めていくうちに、他者からの評価という形で得られる「結果」に過ぎない。 しかし、東芝の場合はこのように何十年も「世界一」を追い求めてきたことで、いつのまにやら「世界一」になることが何よりも優先すべき「目的」となってしまった恐れがあるのだ。このように「結果」と「目的」をはきちがえた時、企業は「不正」に走る。 「JR西日本」では「「一部でパワハラが横行し、精神的に追い込まれ休業を余儀なくされた人は珍しくない」 「昭和体育会系の考え方が根強く残っており、若い人が負担を強いられる。パワハラは当たり前」」、などは問題が大きい。 「ネガティブな口コミを多く集めた企業のランキングを作成・・・期間は2023年1月から12月までの1年間。同期間中に勤務関連の口コミ投稿があったのは、調査対象企業1万6633社のうち3009社だった。今回取り上げる働き方に関するネガティブ情報は9230件で、1社当たりの平均は約3件だったが、ランキング上位に名を連ねた企業は平均をはるかに上回るネガティブ投稿を集めた。 上位には金融、不動産、自動車、小売り、鉄道などの大手企業が名を連ねた」、なるほど。 「三菱電機」では「「役員クラスがひどい。仕事ができるかどうか以前に、自分たちの決断について説明できないレベル」 「問題が発覚した時の対応がその場しのぎ。マネジメント層が根本的な対応をせず、現場に丸投げ」 「マネジメント層のビジョンが不透明、舵取りや判断の遅さに不信感が大きい」」、 ダイヤモンド・オンライン「従業員の不満投稿が多い“ブラック”企業ランキング2023【トップ30】6位ヨドバシカメラ、3位イオンリテール、ビッグモーターも上位!」 戦陣訓が背景になったと言われている・・・「うちの会社ってもしかしてブラック企業?」と悩むそこのあなた、経営理念やフィロソフィーを確認してみてはどうだろう。 ヤバい会社にはヤバいスローガンがある。不正をやらされたり、「殺されたり」する前に、一刻も早く逃げていただきたい」、同感である。 「ヨドバシカメラ」では、「「経営トップや店長の言うことが絶対なので、それが現場にとって合わないこと、非効率なことでもやらなきゃいけない」 「管理職の言い方がキツかったりするので人が結構辞める。昭和のやり方が残ってる」 セクハラ・パワハラ関連の投稿もあった」、など深刻な問題を抱えているようだ。 「一般的な軽自動車ユーザーにとって、ダイハツ車は仕事や生活の足であり、大切な人を載せるモビリティに過ぎない。つまり、「1mm、1g、1円、1秒」はユーザー目線ではなく、作り手目線のこだわりなのだ。 そういうプロダクトアウト的なスローガンを掲げ、それを現場に叩き込んでいる時点で、ダイハツがユーザーメリットより、企業内の論理を優先する「ヤバい会社」だということが伺えるのだ」、その通りだ。 「トランスコスモス」では、給与などを別にすれば、「上場企業とは思えないほど、コンプライアンス意識が低く驚いた」「残業することが当たり前のような雰囲気」、などが気になるところだ。 「これは筆者が本連載の中で、日本企業の「不正カルチャー」の原因だと繰り返し指摘してきた「員数主義」の典型的なケースだ。「員数」とは旧日本軍内で使われてた装備品や物資の数を示す言葉だ。 軍隊内ではこの「員数」と帳簿上の数が合わないのは「あり得ない」ので、ダイハツのように「で?」「なんで数が合わないの」「どうするんだ」と詰問された。そこで、とにかく員数を合わせるため、他部隊から装備品を盗んだりする不正行為がまん延、現場レベルでは黙認されていたというのだ。 窪田順生氏による「ダイハツ、お前もか…闇落ちするブラック企業には「ヤバいスローガン」がある」 ダイヤモンド・オンライン 「できません」など言うことはあり得ないということだ。となると、残る道はインチキしかない。 この「ヤバいスローガン」はダイハツにも当てはまる」、なるほど。 米英の捕虜も殺害するという「不正」に走っていく。 それだけではない。敗戦のプレッシャーが強まれば強まるほど、このスローガンは日本全体を「ブラック企業」のようにしてしまう。 《戦陣訓の中の「生きて虜囚(りょしゅう)の辱め(はずかしめ)を受けず」の一節は、将兵に対し捕虜になることを固く戒めたもので、太平洋戦争で戦いが絶望的な状況になっても将兵が投降せずに玉砕や自決する事態が頻発、動けなくなった傷病兵の殺害などが起こることにもつながったと言われる。また、サイパンや沖縄戦で、住民の集団自決がおこったのもこの戦陣訓 「『戦陣訓』「本訓 其の二」は、「現場ではこれを復唱させて、兵士たちの闘争心を高めるという好循環ができた。 しかし、戦局が悪化して敗退に次ぐ敗退となっていくと、「逆回転」していった。圧倒的な戦力差と物資不足で不利になっていくと、「生きて虜囚の辱を受けず」だけが切り取られ、自軍の情報が敵に漏れないよう「投降禁止」のスローガンになった。当時、世界の戦争では「勝ち目がなくなったら白旗をあげて投降、捕虜は人道的に扱わなくてはならぬ」という国際ルールがあったが、日本軍はそれをガン無視するだけではなく、投降してきた米 そうなると、追いつめられた現場はどうするか。「やってられない」と辞表を出すか、開き直って左遷・更迭されるか、あるいはインチキをするか、だ。 これがこの30年間ほど「世界一」を掲げてきたものづくり企業の現場でパワハラや不正が次々と明らかになっている根本的な原因だ。無茶なスローガンに耐えきれなくなってきた現場が、これまでのインチキを隠し通せなくなってきたのである」、なるほど。 (その16)(ダイハツ お前もか…闇落ちするブラック企業には「ヤバいスローガン」がある、従業員の不満投稿が多い“ブラック”企業ランキング2023【トップ30】6位ヨドバシカメラ 3位イオンリテール ビッグモーターも上位!) ビッグモーターの整備工場前では毎朝、従業員が一堂に会して、創業者である兼重宏行氏のかなりクセのある経営思想が反映された「経営計画書」を読み上げていた。 例えば、「会社と社長の思想は受け入れないが仕事の能力はある」社員について、「今、すぐ辞めてください」とピシャリ。さらには「店長には営業マンの生殺与奪権を与える」などの内容も唱えられていた。 これらのスローガンを毎日叩き込まれた社員が「上の命令にはガタガタ言わずに黙って従う」としつけられることは言うまでもない。つまり、上から課せられたノルマが達成できない場合 ブラック企業
ソフトバンクの経営(その17)(ソフトバンクGの“ぱっとしない決算数字”より要注目!投資事業の「不気味な動き」、LINEヤフー 総務省も呆れ果てた「変わらぬ体質」 情報漏洩で行政指導、資本関係見直しの行方は) [企業経営]
ソフトバンクの経営については、2022年2月13日に取上げた。今日は、(その17)(ソフトバンクGの“ぱっとしない決算数字”より要注目!投資事業の「不気味な動き」、LINEヤフー 総務省も呆れ果てた「変わらぬ体質」 情報漏洩で行政指導、資本関係見直しの行方は)である。
先ずは、昨年8月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「ソフトバンクGの“ぱっとしない決算数字”より要注目!投資事業の「不気味な動き」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327572
・『8月8日、ソフトバンクグループが決算を発表しました。3四半期連続の最終赤字と、「ぱっとしない」数字です。それでも、私はソフトバンクグループは11月の決算発表で“驚きの業績”を発表すると予想しています。ただ、その先には「不都合な乱高下」が待っているかもしれません。投資事業で「不気味な動き」が見えるのです』、興味深そうだ。
・『ソフトバンクGの株価 23年後半に「乱高下」の可能性 8月8日、ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンクG)が2023年4~6月期の決算を発表しました。最終損益は4776億円の赤字で、これは3四半期連続の最終赤字です。1年前に3兆円規模の最終赤字だったことと比べれば赤字幅は大幅に縮小しましたが、AIブームが押し上げる直近のGAFAMのきらびやかな決算発表と比較すると、ぱっとしない数字であることも事実です。 一方で、半年前に再度赤字に転落した後低迷していたソフトバンクGの株価は、この3カ月で回復し、現在では7000円近辺に到達しています。投資家は、ソフトバンクGの23年11月の決算発表が「すごい数字」になることをすでに織り込み済みなのです。 とはいえその後は?というと、実はまた乱高下が待っているかもしれません。これが今回の記事のテーマです。 ソフトバンクGは投資を事業の中心に据える大企業なので、このように決算数字だけでは未来が分かりにくいという特徴があります。この先、ソフトバンクGに何が起きるのか、3つのポイントで予測してみたいと思います』、「この先、ソフトバンクGに何が起きるのか」、知りたいものだ。
・『ぱっとしない数字の原因は「為替差損」と「海外投資の評価損」 さて、未来の話に入る前に足元の状況から確認していきましょう。ソフトバンクGはソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下、SVF)とソフトバンク本体が所有する投資部門(以下、本体投資)、二つの大きな投資ビークルを使ってさまざまな企業に投資をしています。 2022年3月期に過去最大の1兆7000億円の最終赤字に転落した際は、このSVFの投資評価額の悪化が大きかったのですが、今回の決算発表の良い兆候としてSVFの利益回復が挙げられました。 SVFの投資損益は今回の四半期でマイナス130億円まで回復、セグメント別税引き前利益は610億円の黒字となり、1年前からの増減では実に2.4兆円近くも利益が改善しています。 実はSVFはこれまで過去5四半期連続して投資損益の下落を続けていて、累計で実に6.5兆円もの利益を失っていました。それが、6四半期ぶりに反転したというのが今回の決算発表における明るいニュースです。 一方で、為替差損と本体投資の赤字計上が全体の決算数字の足を引っ張りました。この投資赤字についてはアリババ、ドイツテレコム、Tモバイルの3社の評価損が大きかったのですが、このうちアリババについてはデリバティブ関連利益で相殺できています。ちなみにこれまでソフトバンクGの“打ち出の小槌(こづち)”だったアリババについては、ほぼ換金化が終わっています。 つまり、今回のぱっとしない決算数字は主にドル建て社債の為替差損と海外の通信2社への投資の評価損で、それ以外の投資については回復基調にあるというのが直近の状況です。 さて、ここからが本題です。ソフトバンクGの未来はこれからどうなるのでしょうか? 3つのポイントで未来を予測しましょう』、「今回のぱっとしない決算数字は主にドル建て社債の為替差損と海外の通信2社への投資の評価損で、それ以外の投資については回復基調にある」、なるほど。
・『傘下・アームの評価額が9月に急騰!ソフトバンクGの決算は好転する 最初のポイントとなるのが、ソフトバンクGが100%株式を保有するイギリスの半導体大手アーム社の上場です。アームは2016年にソフトバンクGが約3兆円で買収し、本体で75%、SVFで25%の株式を保有しています。 このアームに関しては、今AIブームで世界を騒がしている「マグニフィセント7(素晴らしい7社)」の一角であるエヌビディアが2020年に400億ドル、当時の為替レートで約4兆円での買収を申し出ました。ところが、イギリス当局がこの買収について「競争上の深刻な懸念がある」という理由で差し止めを表明し、最終的にソフトバンクGも売却を断念した経緯があります。 ここで重要なことは、エヌビディアがアームを買収しようとした意図です。アームはスマートフォンやIoT機器で利用されるプロセッサーで圧倒的なシェアを持つ会社です。AIで使われるグラフィックボードでも中枢となるプロセッサーにはアームの製品が使われるため、世界の半導体事業会社が重要なプレーヤーだと認識しています。ソフトバンクGの買収後はGPU向け以外にも自動運転の車載向け、データセンター向けなどへの投資を続け、売上高は7割増加しています。 このアームが、今年9月にアメリカのナスダックでの上場を予定しています。 2020年に400億ドルだった評価を考えると、その後の円安分の単純計算だけで価値は5.7兆円。2020年以降に起きたAIブームで半導体各社の株価が急騰したことを考えると、アームの時価総額は、ソフトバンクGの時価総額である約10兆円に匹敵する規模になるでしょう。 +つまり、11月に予定されている次のソフトバンクGの決算では本体投資、SVFどちらも驚愕(きょうがく)すべき評価益を発表することになるはずです』、本年2月9日付けの日経新聞によれば、「ソフトバンクG、黒字転換 10~12月最終 9500億円、AI株高追い風 アーム好調受け株11%高」と好調だったようだ。
・『「アーム以外」の投資では重大な懸念点も 次に2つ目のポイントです。ソフトバンクGにとってアームがアリババに代わる新たな“打ち出の小槌”になることが見えてきたとはいえ、他の投資はどうなのでしょう? 相変わらずの一本足打法でひとつの成功例に依存しながら、他の損失を穴埋めしていく構造が続くのでしょうか? この点で、ソフトバンクGの投資には懸念点があります。 ソフトバンクGはSVFや本体などで2021年度の上期に約29兆円、下期に約15兆円と、合わせて44兆円規模の投資を行ってきました。ところが、2022年度にはSVFの時価が急落したことを受けて、投資額も一年で4兆円と10分の1にまで縮小しました。直近の四半期でも投資は1.8兆円と低水準なのですが、このことについて記者会見で後藤芳光CFOが語った言葉が重要です。 (投資額の推移(SVF1+SVF2+LatAmファンド+SBG他)はリンク先参照) 「22年度は投資を事実上ストップしたが、恐る恐る再開している」という言葉と「(今後)投資の反転攻勢を打ち出す」という言葉です。 なぜ、この言葉が重要なのか? そもそもソフトバンクGが行っているようなレベルの企業投資は、未公開企業が対象です。そのため、お金があるからといって簡単に投資できるものではありません。 つまり、「投資する側(ソフトバンクG)が投資される側にどのようなメリットを与えてくれるか」が投資を実現し成功させるための鍵なのです。 ソフトバンクGが過去に出資に成功してきた背景には、孫正義さんという神話と孫さんをめぐる人脈が大きく寄与してきました。 一方であくまで結果論なのですが、ソフトバンクGには「株の高値づかみをして、その後減損に追い込まれる傾向」という欠点がありました。 そこで懸念点が生まれます。投資の神様であるウォーレン・バフェット氏が教える株の極意を端的に言えば、【市場が浮かれているときは株を売り、誰もが悲観しているときこそ投資をする】というものです。 その観点で眺めると、ソフトバンクGの投資グラフは不気味です』、「ソフトバンクGには「株の高値づかみをして、その後減損に追い込まれる傾向」という欠点がありました」、これは「ソフトバンクGのIT株投資はバフェット氏の“極意”と真逆」だからこそ生じた。
・『ソフトバンクGのIT株投資はバフェット氏の“極意”と真逆 「投資をするタイミングがバフェット氏の極意と真逆」で、不気味なのです。ソフトバンクGは「IT株が急騰している時期」に莫大な投資を行いました。コロナ禍でアメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が緊急措置で量的緩和を打ち出し、リモート勤務など社会が急速にDX化する流れと相まったタイミングにです。 一方で、「IT株が急落した時期」に投資を事実上ストップしています。世界経済がインフレとなり、FRBが利上げに転換したタイミングです。 そしてChatGPTが出現し、新たなAI投資が盛んになったこの半年は、先の後藤CFOの言葉を借りると「恐る恐る」です。合計2.3兆円しか投資していません。 なぜ、この話が気になるのか。私は、「過熱したIT株市場のピークが近い」と予測しているからです。 投資の分野にはなりますが、未来予測専門の経済評論家として理由をお話ししたいと思います。 あくまでこの記事を読む皆さまも株式投資は自己責任で行っていただきたいのですが、私の場合、昨年11月に突如ChatGPTブームが起きるとすぐに、マイクロソフト、エヌビディア、テスラなどに投資資金をシフトしました。 しかし、テスラ株は7月の決算発表直前に全株売却し、その後株価は下がっています。エヌビディアについては8月23日の決算まで持っているつもりですが、決算発表後に売却する戦略を立てています。 ちなみに、私よりもずっと賢い世界のファンドや投資銀行に視線を移すと、利益は十分にとったことで、すでにリスクオフをしている機関投資家が多数います。 このようなタイミングで、ソフトバンクGが全社を挙げて「投資を再開する」と宣言している点自体が懸念点なのです。 具体的に言うと、一番おいしかった2022年3月から2023年6月までの期間に投資を抑制し、今、世界中でIT株が高騰してしまった後に投資を再開することで、ソフトバンクGはアームという打ち出の小槌をまた浪費してしまうのではないかという懸念を感じるのです』、「一番おいしかった2022年3月から2023年6月までの期間に投資を抑制し、今、世界中でIT株が高騰してしまった後に投資を再開」、全く素人の投資戦略そのものだ。
・『ソフトバンクGが投資したIT株はAIブームに乗り切れていない さて、3番目のポイントです。 「AIで世界中の投資家が大儲けをしているタイミングなのに、ソフトバンクGの業績はなぜ、ぱっとしないのか?」という疑問について、ソフトバンクGは決算発表で興味深いグラフを提示してくれています。 (株式市場動向:”Magnificent7” はリンク先参照) これは、2022年3月を100としたときの2023年8月7日の世界の株価の動きについてのグラフです。上記の期間、マグニフィセントセブンと呼ばれるグーグル、アマゾン、アップル、メタ、マイクロソフト、エヌビディア、テスラの7社が世界の株式市場をけん引しました。この7社の時価総額は合計すると、この期間で100から123.1に増えています。 一方でアメリカの株式市場のインデックスであるS&P500の500社からこの7社を除くと、100から105.7までしか増えていない。要するに、この期間にアメリカの株式市場をけん引したのは前述のマグニフィセントセブンであるということです。 (株式市場動向 はリンク先参照) そして、マグニフィセントセブンに続いて株価を上げたのがハイテク企業が多いアメリカのナスダック市場で、全体平均で100から114.5まで伸ばしています。 では、ソフトバンクGが投資をするようなベンチャー市場はどうだったのでしょうか。トムソン・ロイターが発表したベンチャーキャピタルインデックスは100から120.3と、やはり大幅に増加しています。 つまり、S&P500、ナスダック市場、ベンチャー市場が全て好調だったのです。 ここで問題になるのは、この期間にSVFの投資した上場株は、100から108.4にしか増えていないということです。 アメリカのIT株がAIブームに沸く中で、ソフトバンクGの投資はそれほど沸いていないという残念な事実があるのです。 なぜ、そんなことが起きているのでしょうか』、「マグニフィセントセブン」の「時価総額は合計すると、この期間で100から123.1に増え」「ナスダック市場」では「100から114.5まで伸ばしています」、「ベンチャーキャピタルインデックスは100から120.3」、と増加しているのに、「SVFの投資した上場株は、100から108.4にしか増えていない」誠に不振極まる成果だ。
・『ソフトバンクGの未来を左右する「中国市場」に孤立リスクが浮上 ここで、SVFが投資した株の値動きを示した以下のグラフを見てください。 (市場動向SVF1+2の上場株の動き はリンク先参照) よく見ると、SVFが投資した株の値動きと、前ページで見た「株式市場動向」のグラフに描かれている中国のゴールデンドラゴンチャイナのインデックスの動きが、酷似しているのです。 ここから、ソフトバンクGおよび孫正義さんの強みは、やはり中国にあると推測できます。だからこそ、この半年のAIバブルに出遅れたのでしょう。それは仕方がないとして、ここで考慮すべきなのは、「ソフトバンクGのアーム上場後の未来は、中国市場次第かもしれない」ということです。 そのリスクとしてはコロナ後の中国経済が停滞を始めている点や、背景に中国の不動産バブルの崩壊問題が根強くあるという点。そして何よりも気になるのがアメリカと中国の対立に端を発した、中国のIT市場の孤立分断懸念です。 最後に話をまとめてみましょう。 ソフトバンクGはこの9月にアームが上場した直後から、世間の評価ががらりと180度変わり、日本経済の寵児(ちょうじ)の座に再び返り咲くことでしょう。しかしその華やかな未来においては、新規の投資を復活させることで高値づかみのわなに陥る危険性があります。 そして同時に、一番得意とする中国市場での投資が中長期的な未来に影を落とす可能性もあります。 こういったことは、目の前の決算数字ではまったく見えてきません。ソフトバンクGの最終赤字が4776億円だったというニュースだけでは、経済の未来は読めないのです』、「ソフトバンクG」は「新規の投資を復活させることで高値づかみのわなに陥る危険性があります」、「一番得意とする中国市場での投資が中長期的な未来に影を落とす可能性もあります」、深刻な材料が山積で、これは大変だ。
次に、3月15日付け東洋経済オンライン「LINEヤフー、総務省も呆れ果てた「変わらぬ体質」 情報漏洩で行政指導、資本関係見直しの行方は」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/741042
・『「行政指導でここまで踏み込んだ文書は、あまり見たことがない。次こそは許しませんよ、というメッセージだろう」 総務省は3月5日、SNS「LINE」や検索サービス「Yahoo! JAPAN」などを運営するLINEヤフーに行政指導を行った。その指導内容を記した文書を見た通信業界関係者は、驚きの声を上げた。 LINEヤフーは2023年9~10月、LINEの利用者や取引先の情報など約51万9000件を外部に漏洩させていた。総務省はこのうち2万件以上が電気通信事業法上の「通信の秘密」の漏洩に当たると判断した。 具体的な指導項目として、LINEヤフーの親会社に50%出資する韓国のIT大手、NAVERとのシステムの切り離しや、グループ全体のセキュリティガバナンス体制の強化などを要請。その取り組み方針などを4月1日までにとりまとめたうえで、今後少なくとも1年間は、四半期ごとに総務省に対応状況を報告することを求めている』、「今後少なくとも1年間は、四半期ごとに総務省に対応状況を報告することを求めている」、とは厳格だ。
・『指導文書ににじむ総務省の苛立ち 事の発端は、NAVER子会社のNAVER Cloudが、セキュリティに関わる業務を委託していた会社がマルウェアに感染したことだ。 LINEヤフーはNAVER CloudにサーバーやソフトウェアなどのITインフラの運用を委託しており、旧LINE(現LINEヤフー)との間でシステムの認証基盤が共通化されていた。委託企業の感染によってNAVER側が不正アクセスを受けた結果、システムを介してLINEヤフーも被害にあった。 行政指導に当たって総務省がまとめた10ページに及ぶ文書には、苛立ちすら感じ取れるような厳しい言葉が並ぶ。 「旧LINE社に対しては、(中略)アクセス管理の徹底等も含めて行政指導を行っていたにもかかわらず、なおもアクセス管理の不備を一因とする本事案を招いた」 「電気通信事業全体に対する利用者の信頼を大きく損なう結果となったものであり、当省として極めて遺憾である」 さらに、委託先であるNAVER側への適切な管理・監督を機能させるため、親会社も含めたグループ内における経営体制の見直しの検討にまで言及している。) 総務省がここまで厳しい対応を求めたのには、それなりの理由がある。 1億人弱のユーザーを抱えるLINEは、ヤフーを傘下に持つZホールディングス(HD)と2021年3月に経営統合した。さらに2023年10月、持ち株会社のZHDと、傘下の事業会社であるヤフー、LINEが合併して現在の体制へと移った。 旧LINEは経営統合直後の2021年4月にも、総務省から行政指導を受けている。対外的に「データは日本に閉じている」と説明していたにもかかわらず、システム管理を委託していた中国から、利用者の個人情報がアクセス可能となっていたことなどを踏まえたものだった。 その後、親会社であるZHDは、学識経験者や弁護士らによる特別委員会(座長は宍戸常寿・東京大学大学院教授)を設置。データガバナンスの強化に向けて、個々の事業会社による自律的かつ、グループ内での一元的な監督体制を構築するよう提言を受けていた。 個人情報保護法などに詳しい中央大学国際情報学部の石井夏生利教授は「経済安全保障上の意味合いが強かった3年前の問題と性質は異なるが、会社のずさんな体質が背景にある点は共通する。特別委が提言したガバナンス体制も構築できなかったということだろう」と指摘する』、「旧LINEは経営統合直後の2021年4月にも、総務省から行政指導を受けている。対外的に「データは日本に閉じている」と説明していたにもかかわらず、システム管理を委託していた中国から、利用者の個人情報がアクセス可能となっていたことなどを踏まえたものだった・・・会社のずさんな体質が背景にある点は共通する。特別委が提言したガバナンス体制も構築できなかったということだろう」と指摘する」、なるほど。
・『問題の根底にNAVERへの強い依存 今回、総務省がNAVERとの関係見直しにまで言及したのは、同社との強い依存関係が、セキュリティ対策の不全を招いた一因とみているためだ。 LINEヤフーの親会社であるAホールディングス(HD)は、ソフトバンクとNAVERが50%ずつ株式を有している。LINEヤフーにとって、ソフトバンクとNAVERともに実質的な親会社といえる。 (LINEヤフーの資本構成 はリンク先参照) 旧LINEはもともとNAVERの日本法人として誕生した経緯がある。総務省は、こうした上下関係の強さを背景として、「(LINEヤフーから、委託先である)NAVER社側に対して安全管理のための的確な措置を求めることや、適切な委託先管理を実施することが困難であった」と分析している。 行政指導には表向き、法的な強制力はない。しかし総務省は「今後新たな懸念が生じた場合等には、追加的な措置を求める可能性がある」と警告しており、この先の対応次第で、強制力を伴う業務改善命令が発出される可能性もある。 LINEヤフーの出澤剛社長は3月5日、総務省で行政指導の文書を受け取った後、報道陣の取材に「NAVERとは親会社・子会社の関係性の中で、システム共有化などの協業を行ってきた。(セキュリティに対する)リスク認識が甘かったし、優先順位を上げきれなかった」と陳謝した一方、システム分離には最長3年程度かかるとの認識を示した。 ただ、3年でのシステム分離という会社側の説明に、業界からは「そんな悠長なことを言っていたら、その間にまた不祥事が起きる」と危惧する声も上がっている。 資本関係の見直しに踏み込むとなると、焦点はソフトバンク側の対応だ。 総務省は3月5日、ソフトバンクの宮川潤一社長も霞が関の庁舎に呼びつけた。「適切なガバナンスを構築するためにLINEヤフー社から(経営体制見直しなどの)要請があった場合は、親会社のソフトバンクにも協力してほしいと伝えた」(総務省の担当者)という。 これを受け、ソフトバンクは「親会社として実効的なセキュリティガバナンス確保の方策を検討」していくとのコメントを出した。 LINEヤフーの時価総額は約3兆円。ソフトバンクが出資比率を高めるには、NAVERとの交渉に加え、相応の出費が求められる可能性も出てくる。 シティグループ証券の鶴尾充伸シニアアナリストは3月11日付のレポートで、LINEヤフーによる自己株買い、およびソフトバンクによるNAVERの保有株買い取りを組み合わせることで、NAVERのAHDに対する出資比率の引き下げが進められる可能性が高いと予想している。 これら株式の買い取りの原資として、LINEヤフーとソフトバンクの連結子会社であるPayPay株の売り出しがポイントと鶴尾氏はみる。PayPayは株式上場の方針を示しつつも、その時期は長らく未定とされてきたが、「2025年3月期中にも、IPOが進められる可能性は高まる」(鶴尾氏)』、「LINEヤフーによる自己株買い、およびソフトバンクによるNAVERの保有株買い取りを組み合わせることで、NAVERのAHDに対する出資比率の引き下げが進められる可能性が高いと予想している。 これら株式の買い取りの原資として、LINEヤフーとソフトバンクの連結子会社であるPayPay株の売り出しがポイントと鶴尾氏はみる」、そんな先まで待つことは無理だろう。
・『中長期的な拡大戦略にも影 もっとも、NAVERとの資本関係を見直せば、問題が解決されるわけでもない。中央大の石井教授は「LINEヤフーが自社内でセキュリティ措置を講じられるよう、組織体制を現場から変えていくプロセスが必要だ」と説く。 今回の一件はLINEヤフーの拡大戦略にも影を落としかねない。同社の川邊健太郎会長は2023年11月、東洋経済の取材に対して「GAFAMに対抗するため、日本国内の業界再編を仕掛けたいと思っている」と語っていた。 だが、ITプラットフォーマーの根幹をなすユーザーの情報管理でつまずいている現状、大がかりなM&Aなどを仕掛ける余裕はないだろう。ずさんな体質を根本から改めることができなければ、国内最大のITプラットフォーマーの地位も安泰ではない。 総務省が下した鉄槌は、”行政指導”という名以上に、LINEヤフーに重くのしかかっている』、「ITプラットフォーマーの根幹をなすユーザーの情報管理でつまずいている現状、大がかりなM&Aなどを仕掛ける余裕はないだろう。ずさんな体質を根本から改めることができなければ、国内最大のITプラットフォーマーの地位も安泰ではない。 総務省が下した鉄槌は、”行政指導”という名以上に、LINEヤフーに重くのしかかっている」、今後、改善が進まないと、”行政指導”といった生ぬるい措置ではなく、”業務改善命令”という厳格な措置に移行する可能性もありそうだ。
先ずは、昨年8月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「ソフトバンクGの“ぱっとしない決算数字”より要注目!投資事業の「不気味な動き」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327572
・『8月8日、ソフトバンクグループが決算を発表しました。3四半期連続の最終赤字と、「ぱっとしない」数字です。それでも、私はソフトバンクグループは11月の決算発表で“驚きの業績”を発表すると予想しています。ただ、その先には「不都合な乱高下」が待っているかもしれません。投資事業で「不気味な動き」が見えるのです』、興味深そうだ。
・『ソフトバンクGの株価 23年後半に「乱高下」の可能性 8月8日、ソフトバンクグループ(以下、ソフトバンクG)が2023年4~6月期の決算を発表しました。最終損益は4776億円の赤字で、これは3四半期連続の最終赤字です。1年前に3兆円規模の最終赤字だったことと比べれば赤字幅は大幅に縮小しましたが、AIブームが押し上げる直近のGAFAMのきらびやかな決算発表と比較すると、ぱっとしない数字であることも事実です。 一方で、半年前に再度赤字に転落した後低迷していたソフトバンクGの株価は、この3カ月で回復し、現在では7000円近辺に到達しています。投資家は、ソフトバンクGの23年11月の決算発表が「すごい数字」になることをすでに織り込み済みなのです。 とはいえその後は?というと、実はまた乱高下が待っているかもしれません。これが今回の記事のテーマです。 ソフトバンクGは投資を事業の中心に据える大企業なので、このように決算数字だけでは未来が分かりにくいという特徴があります。この先、ソフトバンクGに何が起きるのか、3つのポイントで予測してみたいと思います』、「この先、ソフトバンクGに何が起きるのか」、知りたいものだ。
・『ぱっとしない数字の原因は「為替差損」と「海外投資の評価損」 さて、未来の話に入る前に足元の状況から確認していきましょう。ソフトバンクGはソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下、SVF)とソフトバンク本体が所有する投資部門(以下、本体投資)、二つの大きな投資ビークルを使ってさまざまな企業に投資をしています。 2022年3月期に過去最大の1兆7000億円の最終赤字に転落した際は、このSVFの投資評価額の悪化が大きかったのですが、今回の決算発表の良い兆候としてSVFの利益回復が挙げられました。 SVFの投資損益は今回の四半期でマイナス130億円まで回復、セグメント別税引き前利益は610億円の黒字となり、1年前からの増減では実に2.4兆円近くも利益が改善しています。 実はSVFはこれまで過去5四半期連続して投資損益の下落を続けていて、累計で実に6.5兆円もの利益を失っていました。それが、6四半期ぶりに反転したというのが今回の決算発表における明るいニュースです。 一方で、為替差損と本体投資の赤字計上が全体の決算数字の足を引っ張りました。この投資赤字についてはアリババ、ドイツテレコム、Tモバイルの3社の評価損が大きかったのですが、このうちアリババについてはデリバティブ関連利益で相殺できています。ちなみにこれまでソフトバンクGの“打ち出の小槌(こづち)”だったアリババについては、ほぼ換金化が終わっています。 つまり、今回のぱっとしない決算数字は主にドル建て社債の為替差損と海外の通信2社への投資の評価損で、それ以外の投資については回復基調にあるというのが直近の状況です。 さて、ここからが本題です。ソフトバンクGの未来はこれからどうなるのでしょうか? 3つのポイントで未来を予測しましょう』、「今回のぱっとしない決算数字は主にドル建て社債の為替差損と海外の通信2社への投資の評価損で、それ以外の投資については回復基調にある」、なるほど。
・『傘下・アームの評価額が9月に急騰!ソフトバンクGの決算は好転する 最初のポイントとなるのが、ソフトバンクGが100%株式を保有するイギリスの半導体大手アーム社の上場です。アームは2016年にソフトバンクGが約3兆円で買収し、本体で75%、SVFで25%の株式を保有しています。 このアームに関しては、今AIブームで世界を騒がしている「マグニフィセント7(素晴らしい7社)」の一角であるエヌビディアが2020年に400億ドル、当時の為替レートで約4兆円での買収を申し出ました。ところが、イギリス当局がこの買収について「競争上の深刻な懸念がある」という理由で差し止めを表明し、最終的にソフトバンクGも売却を断念した経緯があります。 ここで重要なことは、エヌビディアがアームを買収しようとした意図です。アームはスマートフォンやIoT機器で利用されるプロセッサーで圧倒的なシェアを持つ会社です。AIで使われるグラフィックボードでも中枢となるプロセッサーにはアームの製品が使われるため、世界の半導体事業会社が重要なプレーヤーだと認識しています。ソフトバンクGの買収後はGPU向け以外にも自動運転の車載向け、データセンター向けなどへの投資を続け、売上高は7割増加しています。 このアームが、今年9月にアメリカのナスダックでの上場を予定しています。 2020年に400億ドルだった評価を考えると、その後の円安分の単純計算だけで価値は5.7兆円。2020年以降に起きたAIブームで半導体各社の株価が急騰したことを考えると、アームの時価総額は、ソフトバンクGの時価総額である約10兆円に匹敵する規模になるでしょう。 +つまり、11月に予定されている次のソフトバンクGの決算では本体投資、SVFどちらも驚愕(きょうがく)すべき評価益を発表することになるはずです』、本年2月9日付けの日経新聞によれば、「ソフトバンクG、黒字転換 10~12月最終 9500億円、AI株高追い風 アーム好調受け株11%高」と好調だったようだ。
・『「アーム以外」の投資では重大な懸念点も 次に2つ目のポイントです。ソフトバンクGにとってアームがアリババに代わる新たな“打ち出の小槌”になることが見えてきたとはいえ、他の投資はどうなのでしょう? 相変わらずの一本足打法でひとつの成功例に依存しながら、他の損失を穴埋めしていく構造が続くのでしょうか? この点で、ソフトバンクGの投資には懸念点があります。 ソフトバンクGはSVFや本体などで2021年度の上期に約29兆円、下期に約15兆円と、合わせて44兆円規模の投資を行ってきました。ところが、2022年度にはSVFの時価が急落したことを受けて、投資額も一年で4兆円と10分の1にまで縮小しました。直近の四半期でも投資は1.8兆円と低水準なのですが、このことについて記者会見で後藤芳光CFOが語った言葉が重要です。 (投資額の推移(SVF1+SVF2+LatAmファンド+SBG他)はリンク先参照) 「22年度は投資を事実上ストップしたが、恐る恐る再開している」という言葉と「(今後)投資の反転攻勢を打ち出す」という言葉です。 なぜ、この言葉が重要なのか? そもそもソフトバンクGが行っているようなレベルの企業投資は、未公開企業が対象です。そのため、お金があるからといって簡単に投資できるものではありません。 つまり、「投資する側(ソフトバンクG)が投資される側にどのようなメリットを与えてくれるか」が投資を実現し成功させるための鍵なのです。 ソフトバンクGが過去に出資に成功してきた背景には、孫正義さんという神話と孫さんをめぐる人脈が大きく寄与してきました。 一方であくまで結果論なのですが、ソフトバンクGには「株の高値づかみをして、その後減損に追い込まれる傾向」という欠点がありました。 そこで懸念点が生まれます。投資の神様であるウォーレン・バフェット氏が教える株の極意を端的に言えば、【市場が浮かれているときは株を売り、誰もが悲観しているときこそ投資をする】というものです。 その観点で眺めると、ソフトバンクGの投資グラフは不気味です』、「ソフトバンクGには「株の高値づかみをして、その後減損に追い込まれる傾向」という欠点がありました」、これは「ソフトバンクGのIT株投資はバフェット氏の“極意”と真逆」だからこそ生じた。
・『ソフトバンクGのIT株投資はバフェット氏の“極意”と真逆 「投資をするタイミングがバフェット氏の極意と真逆」で、不気味なのです。ソフトバンクGは「IT株が急騰している時期」に莫大な投資を行いました。コロナ禍でアメリカの連邦準備制度理事会(FRB)が緊急措置で量的緩和を打ち出し、リモート勤務など社会が急速にDX化する流れと相まったタイミングにです。 一方で、「IT株が急落した時期」に投資を事実上ストップしています。世界経済がインフレとなり、FRBが利上げに転換したタイミングです。 そしてChatGPTが出現し、新たなAI投資が盛んになったこの半年は、先の後藤CFOの言葉を借りると「恐る恐る」です。合計2.3兆円しか投資していません。 なぜ、この話が気になるのか。私は、「過熱したIT株市場のピークが近い」と予測しているからです。 投資の分野にはなりますが、未来予測専門の経済評論家として理由をお話ししたいと思います。 あくまでこの記事を読む皆さまも株式投資は自己責任で行っていただきたいのですが、私の場合、昨年11月に突如ChatGPTブームが起きるとすぐに、マイクロソフト、エヌビディア、テスラなどに投資資金をシフトしました。 しかし、テスラ株は7月の決算発表直前に全株売却し、その後株価は下がっています。エヌビディアについては8月23日の決算まで持っているつもりですが、決算発表後に売却する戦略を立てています。 ちなみに、私よりもずっと賢い世界のファンドや投資銀行に視線を移すと、利益は十分にとったことで、すでにリスクオフをしている機関投資家が多数います。 このようなタイミングで、ソフトバンクGが全社を挙げて「投資を再開する」と宣言している点自体が懸念点なのです。 具体的に言うと、一番おいしかった2022年3月から2023年6月までの期間に投資を抑制し、今、世界中でIT株が高騰してしまった後に投資を再開することで、ソフトバンクGはアームという打ち出の小槌をまた浪費してしまうのではないかという懸念を感じるのです』、「一番おいしかった2022年3月から2023年6月までの期間に投資を抑制し、今、世界中でIT株が高騰してしまった後に投資を再開」、全く素人の投資戦略そのものだ。
・『ソフトバンクGが投資したIT株はAIブームに乗り切れていない さて、3番目のポイントです。 「AIで世界中の投資家が大儲けをしているタイミングなのに、ソフトバンクGの業績はなぜ、ぱっとしないのか?」という疑問について、ソフトバンクGは決算発表で興味深いグラフを提示してくれています。 (株式市場動向:”Magnificent7” はリンク先参照) これは、2022年3月を100としたときの2023年8月7日の世界の株価の動きについてのグラフです。上記の期間、マグニフィセントセブンと呼ばれるグーグル、アマゾン、アップル、メタ、マイクロソフト、エヌビディア、テスラの7社が世界の株式市場をけん引しました。この7社の時価総額は合計すると、この期間で100から123.1に増えています。 一方でアメリカの株式市場のインデックスであるS&P500の500社からこの7社を除くと、100から105.7までしか増えていない。要するに、この期間にアメリカの株式市場をけん引したのは前述のマグニフィセントセブンであるということです。 (株式市場動向 はリンク先参照) そして、マグニフィセントセブンに続いて株価を上げたのがハイテク企業が多いアメリカのナスダック市場で、全体平均で100から114.5まで伸ばしています。 では、ソフトバンクGが投資をするようなベンチャー市場はどうだったのでしょうか。トムソン・ロイターが発表したベンチャーキャピタルインデックスは100から120.3と、やはり大幅に増加しています。 つまり、S&P500、ナスダック市場、ベンチャー市場が全て好調だったのです。 ここで問題になるのは、この期間にSVFの投資した上場株は、100から108.4にしか増えていないということです。 アメリカのIT株がAIブームに沸く中で、ソフトバンクGの投資はそれほど沸いていないという残念な事実があるのです。 なぜ、そんなことが起きているのでしょうか』、「マグニフィセントセブン」の「時価総額は合計すると、この期間で100から123.1に増え」「ナスダック市場」では「100から114.5まで伸ばしています」、「ベンチャーキャピタルインデックスは100から120.3」、と増加しているのに、「SVFの投資した上場株は、100から108.4にしか増えていない」誠に不振極まる成果だ。
・『ソフトバンクGの未来を左右する「中国市場」に孤立リスクが浮上 ここで、SVFが投資した株の値動きを示した以下のグラフを見てください。 (市場動向SVF1+2の上場株の動き はリンク先参照) よく見ると、SVFが投資した株の値動きと、前ページで見た「株式市場動向」のグラフに描かれている中国のゴールデンドラゴンチャイナのインデックスの動きが、酷似しているのです。 ここから、ソフトバンクGおよび孫正義さんの強みは、やはり中国にあると推測できます。だからこそ、この半年のAIバブルに出遅れたのでしょう。それは仕方がないとして、ここで考慮すべきなのは、「ソフトバンクGのアーム上場後の未来は、中国市場次第かもしれない」ということです。 そのリスクとしてはコロナ後の中国経済が停滞を始めている点や、背景に中国の不動産バブルの崩壊問題が根強くあるという点。そして何よりも気になるのがアメリカと中国の対立に端を発した、中国のIT市場の孤立分断懸念です。 最後に話をまとめてみましょう。 ソフトバンクGはこの9月にアームが上場した直後から、世間の評価ががらりと180度変わり、日本経済の寵児(ちょうじ)の座に再び返り咲くことでしょう。しかしその華やかな未来においては、新規の投資を復活させることで高値づかみのわなに陥る危険性があります。 そして同時に、一番得意とする中国市場での投資が中長期的な未来に影を落とす可能性もあります。 こういったことは、目の前の決算数字ではまったく見えてきません。ソフトバンクGの最終赤字が4776億円だったというニュースだけでは、経済の未来は読めないのです』、「ソフトバンクG」は「新規の投資を復活させることで高値づかみのわなに陥る危険性があります」、「一番得意とする中国市場での投資が中長期的な未来に影を落とす可能性もあります」、深刻な材料が山積で、これは大変だ。
次に、3月15日付け東洋経済オンライン「LINEヤフー、総務省も呆れ果てた「変わらぬ体質」 情報漏洩で行政指導、資本関係見直しの行方は」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/741042
・『「行政指導でここまで踏み込んだ文書は、あまり見たことがない。次こそは許しませんよ、というメッセージだろう」 総務省は3月5日、SNS「LINE」や検索サービス「Yahoo! JAPAN」などを運営するLINEヤフーに行政指導を行った。その指導内容を記した文書を見た通信業界関係者は、驚きの声を上げた。 LINEヤフーは2023年9~10月、LINEの利用者や取引先の情報など約51万9000件を外部に漏洩させていた。総務省はこのうち2万件以上が電気通信事業法上の「通信の秘密」の漏洩に当たると判断した。 具体的な指導項目として、LINEヤフーの親会社に50%出資する韓国のIT大手、NAVERとのシステムの切り離しや、グループ全体のセキュリティガバナンス体制の強化などを要請。その取り組み方針などを4月1日までにとりまとめたうえで、今後少なくとも1年間は、四半期ごとに総務省に対応状況を報告することを求めている』、「今後少なくとも1年間は、四半期ごとに総務省に対応状況を報告することを求めている」、とは厳格だ。
・『指導文書ににじむ総務省の苛立ち 事の発端は、NAVER子会社のNAVER Cloudが、セキュリティに関わる業務を委託していた会社がマルウェアに感染したことだ。 LINEヤフーはNAVER CloudにサーバーやソフトウェアなどのITインフラの運用を委託しており、旧LINE(現LINEヤフー)との間でシステムの認証基盤が共通化されていた。委託企業の感染によってNAVER側が不正アクセスを受けた結果、システムを介してLINEヤフーも被害にあった。 行政指導に当たって総務省がまとめた10ページに及ぶ文書には、苛立ちすら感じ取れるような厳しい言葉が並ぶ。 「旧LINE社に対しては、(中略)アクセス管理の徹底等も含めて行政指導を行っていたにもかかわらず、なおもアクセス管理の不備を一因とする本事案を招いた」 「電気通信事業全体に対する利用者の信頼を大きく損なう結果となったものであり、当省として極めて遺憾である」 さらに、委託先であるNAVER側への適切な管理・監督を機能させるため、親会社も含めたグループ内における経営体制の見直しの検討にまで言及している。) 総務省がここまで厳しい対応を求めたのには、それなりの理由がある。 1億人弱のユーザーを抱えるLINEは、ヤフーを傘下に持つZホールディングス(HD)と2021年3月に経営統合した。さらに2023年10月、持ち株会社のZHDと、傘下の事業会社であるヤフー、LINEが合併して現在の体制へと移った。 旧LINEは経営統合直後の2021年4月にも、総務省から行政指導を受けている。対外的に「データは日本に閉じている」と説明していたにもかかわらず、システム管理を委託していた中国から、利用者の個人情報がアクセス可能となっていたことなどを踏まえたものだった。 その後、親会社であるZHDは、学識経験者や弁護士らによる特別委員会(座長は宍戸常寿・東京大学大学院教授)を設置。データガバナンスの強化に向けて、個々の事業会社による自律的かつ、グループ内での一元的な監督体制を構築するよう提言を受けていた。 個人情報保護法などに詳しい中央大学国際情報学部の石井夏生利教授は「経済安全保障上の意味合いが強かった3年前の問題と性質は異なるが、会社のずさんな体質が背景にある点は共通する。特別委が提言したガバナンス体制も構築できなかったということだろう」と指摘する』、「旧LINEは経営統合直後の2021年4月にも、総務省から行政指導を受けている。対外的に「データは日本に閉じている」と説明していたにもかかわらず、システム管理を委託していた中国から、利用者の個人情報がアクセス可能となっていたことなどを踏まえたものだった・・・会社のずさんな体質が背景にある点は共通する。特別委が提言したガバナンス体制も構築できなかったということだろう」と指摘する」、なるほど。
・『問題の根底にNAVERへの強い依存 今回、総務省がNAVERとの関係見直しにまで言及したのは、同社との強い依存関係が、セキュリティ対策の不全を招いた一因とみているためだ。 LINEヤフーの親会社であるAホールディングス(HD)は、ソフトバンクとNAVERが50%ずつ株式を有している。LINEヤフーにとって、ソフトバンクとNAVERともに実質的な親会社といえる。 (LINEヤフーの資本構成 はリンク先参照) 旧LINEはもともとNAVERの日本法人として誕生した経緯がある。総務省は、こうした上下関係の強さを背景として、「(LINEヤフーから、委託先である)NAVER社側に対して安全管理のための的確な措置を求めることや、適切な委託先管理を実施することが困難であった」と分析している。 行政指導には表向き、法的な強制力はない。しかし総務省は「今後新たな懸念が生じた場合等には、追加的な措置を求める可能性がある」と警告しており、この先の対応次第で、強制力を伴う業務改善命令が発出される可能性もある。 LINEヤフーの出澤剛社長は3月5日、総務省で行政指導の文書を受け取った後、報道陣の取材に「NAVERとは親会社・子会社の関係性の中で、システム共有化などの協業を行ってきた。(セキュリティに対する)リスク認識が甘かったし、優先順位を上げきれなかった」と陳謝した一方、システム分離には最長3年程度かかるとの認識を示した。 ただ、3年でのシステム分離という会社側の説明に、業界からは「そんな悠長なことを言っていたら、その間にまた不祥事が起きる」と危惧する声も上がっている。 資本関係の見直しに踏み込むとなると、焦点はソフトバンク側の対応だ。 総務省は3月5日、ソフトバンクの宮川潤一社長も霞が関の庁舎に呼びつけた。「適切なガバナンスを構築するためにLINEヤフー社から(経営体制見直しなどの)要請があった場合は、親会社のソフトバンクにも協力してほしいと伝えた」(総務省の担当者)という。 これを受け、ソフトバンクは「親会社として実効的なセキュリティガバナンス確保の方策を検討」していくとのコメントを出した。 LINEヤフーの時価総額は約3兆円。ソフトバンクが出資比率を高めるには、NAVERとの交渉に加え、相応の出費が求められる可能性も出てくる。 シティグループ証券の鶴尾充伸シニアアナリストは3月11日付のレポートで、LINEヤフーによる自己株買い、およびソフトバンクによるNAVERの保有株買い取りを組み合わせることで、NAVERのAHDに対する出資比率の引き下げが進められる可能性が高いと予想している。 これら株式の買い取りの原資として、LINEヤフーとソフトバンクの連結子会社であるPayPay株の売り出しがポイントと鶴尾氏はみる。PayPayは株式上場の方針を示しつつも、その時期は長らく未定とされてきたが、「2025年3月期中にも、IPOが進められる可能性は高まる」(鶴尾氏)』、「LINEヤフーによる自己株買い、およびソフトバンクによるNAVERの保有株買い取りを組み合わせることで、NAVERのAHDに対する出資比率の引き下げが進められる可能性が高いと予想している。 これら株式の買い取りの原資として、LINEヤフーとソフトバンクの連結子会社であるPayPay株の売り出しがポイントと鶴尾氏はみる」、そんな先まで待つことは無理だろう。
・『中長期的な拡大戦略にも影 もっとも、NAVERとの資本関係を見直せば、問題が解決されるわけでもない。中央大の石井教授は「LINEヤフーが自社内でセキュリティ措置を講じられるよう、組織体制を現場から変えていくプロセスが必要だ」と説く。 今回の一件はLINEヤフーの拡大戦略にも影を落としかねない。同社の川邊健太郎会長は2023年11月、東洋経済の取材に対して「GAFAMに対抗するため、日本国内の業界再編を仕掛けたいと思っている」と語っていた。 だが、ITプラットフォーマーの根幹をなすユーザーの情報管理でつまずいている現状、大がかりなM&Aなどを仕掛ける余裕はないだろう。ずさんな体質を根本から改めることができなければ、国内最大のITプラットフォーマーの地位も安泰ではない。 総務省が下した鉄槌は、”行政指導”という名以上に、LINEヤフーに重くのしかかっている』、「ITプラットフォーマーの根幹をなすユーザーの情報管理でつまずいている現状、大がかりなM&Aなどを仕掛ける余裕はないだろう。ずさんな体質を根本から改めることができなければ、国内最大のITプラットフォーマーの地位も安泰ではない。 総務省が下した鉄槌は、”行政指導”という名以上に、LINEヤフーに重くのしかかっている」、今後、改善が進まないと、”行政指導”といった生ぬるい措置ではなく、”業務改善命令”という厳格な措置に移行する可能性もありそうだ。
タグ:ソフトバンクの経営 (その17)(ソフトバンクGの“ぱっとしない決算数字”より要注目!投資事業の「不気味な動き」、LINEヤフー 総務省も呆れ果てた「変わらぬ体質」 情報漏洩で行政指導、資本関係見直しの行方は) ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「ソフトバンクGの“ぱっとしない決算数字”より要注目!投資事業の「不気味な動き」」 「この先、ソフトバンクGに何が起きるのか」、知りたいものだ。 「今回のぱっとしない決算数字は主にドル建て社債の為替差損と海外の通信2社への投資の評価損で、それ以外の投資については回復基調にある」、なるほど。 本年2月9日付けの日経新聞によれば、「ソフトバンクG、黒字転換 10~12月最終 9500億円、AI株高追い風 アーム好調受け株11%高」と好調だったようだ。 「ソフトバンクGには「株の高値づかみをして、その後減損に追い込まれる傾向」という欠点がありました」、これは「ソフトバンクGのIT株投資はバフェット氏の“極意”と真逆」だからこそ生じた。 「一番おいしかった2022年3月から2023年6月までの期間に投資を抑制し、今、世界中でIT株が高騰してしまった後に投資を再開」、全く素人の投資戦略そのものだ。 「マグニフィセントセブン」の「時価総額は合計すると、この期間で100から123.1に増え」「ナスダック市場」では「100から114.5まで伸ばしています」、「ベンチャーキャピタルインデックスは100から120.3」、と増加しているのに、「SVFの投資した上場株は、100から108.4にしか増えていない」誠に不振極まる成果だ。 「ソフトバンクG」は「新規の投資を復活させることで高値づかみのわなに陥る危険性があります」、「一番得意とする中国市場での投資が中長期的な未来に影を落とす可能性もあります」、深刻な材料が山積で、これは大変だ。 東洋経済オンライン「LINEヤフー、総務省も呆れ果てた「変わらぬ体質」 情報漏洩で行政指導、資本関係見直しの行方は」 「今後少なくとも1年間は、四半期ごとに総務省に対応状況を報告することを求めている」、とは厳格だ。 「旧LINEは経営統合直後の2021年4月にも、総務省から行政指導を受けている。対外的に「データは日本に閉じている」と説明していたにもかかわらず、システム管理を委託していた中国から、利用者の個人情報がアクセス可能となっていたことなどを踏まえたものだった・・・会社のずさんな体質が背景にある点は共通する。特別委が提言したガバナンス体制も構築できなかったということだろう」と指摘する」、なるほど。 「LINEヤフーによる自己株買い、およびソフトバンクによるNAVERの保有株買い取りを組み合わせることで、NAVERのAHDに対する出資比率の引き下げが進められる可能性が高いと予想している。 これら株式の買い取りの原資として、LINEヤフーとソフトバンクの連結子会社であるPayPay株の売り出しがポイントと鶴尾氏はみる」、そんな先まで待つことは無理だろう。 「ITプラットフォーマーの根幹をなすユーザーの情報管理でつまずいている現状、大がかりなM&Aなどを仕掛ける余裕はないだろう。ずさんな体質を根本から改めることができなければ、国内最大のITプラットフォーマーの地位も安泰ではない。 総務省が下した鉄槌は、”行政指導”という名以上に、LINEヤフーに重くのしかかっている」、今後、改善が進まないと、”行政指導”といった生ぬるい措置ではなく、”業務改善命令”という厳格な措置に移行する可能性もありそうだ。
企業金融・企業財務(その1)(じつはいま「地銀と中小企業の関係」が激変中…そのウラに隠された「意外な落とし穴」、ソフトバンクの新金融商品「社債型種類株式」のうま味とリスク、金融庁がリスク警戒!地銀・信金で広がる「仕組み貸出」の深すぎる闇) [企業経営]
今日は、企業金融・企業財務(その1)(じつはいま「地銀と中小企業の関係」が激変中…そのウラに隠された「意外な落とし穴」、ソフトバンクの新金融商品「社債型種類株式」のうま味とリスク、金融庁がリスク警戒!地銀・信金で広がる「仕組み貸出」の深すぎる闇)を取上げよう。
先ずは、昨年5月17日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの加谷 珪一氏による「じつはいま「地銀と中小企業の関係」が激変中…そのウラに隠された「意外な落とし穴」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/110338?imp=0
・『地方銀行を中心に、融資先企業の経営者に個人保証を求めない流れが拡大している。日本の場合、中小零細企業の経営者が融資に際して個人保証を入れることが当然視されており、こうした商慣行が起業の阻害要因になっていると指摘されてきた。 融資慣行の見直しによってスタートアップ育成につながると期待されているが、起業が不活発な原因は必ずしも個人保証だけではない。総合的な環境整備を実施しないまま銀行に個人保証の撤廃だけを求めれば、銀行が中小企業への融資を引き揚げてしまう可能性もあるので注意が必要だ』、「総合的な環境整備を実施しないまま銀行に個人保証の撤廃だけを求めれば、銀行が中小企業への融資を引き揚げてしまう可能性もある」、その通りだ。
・『中小企業の経営者はがんじがらめ 日本では、中小零細企業の経営者はあらゆる場面において個人保証を求められ、無限責任を負う必要がある。銀行からの融資はもちろんのこと、オフィスを借りる際や、コピー機をリースする時ですら個人保証を入れなければならない。 筆者自身、会社をゼロから立ち上げ、経営してきた経験があるのでよく分かるのだが、中小企業の場合、何から何まで個人保証を要求され、がんじがらめにされてしまう。近年はだいぶ環境が良くなってきたが、サラリーマンを辞めてしまうと賃貸住宅を借りられなくなったり、カードを作れなくなるケースも珍しくなかった。 起業したのは20年以上前のことだが、当時もちょっとした起業ブームとなっており、会社を立ち上げたことを聞きつけた知人(多くがいわゆるエリートサラリーマン)が多数、起業について話を聞きにきた。 すべてにおいて個人保証が必要であり、失敗すれば無一文どころか自己破産まで強いられること、家を借りられないケースがあること、カードを作れないケースがあることなどを説明すると、皆、顔面蒼白になり帰っていった。筆者の知る限り、アドバイスを求めにきた知人の中で実際に会社を立ち上げた人は皆無だったと記憶している。) 中小企業経営者の中には、「個人保証を入れることなど大したことではない、というくらいの気概がなければ、企業の経営など無理」と述べ、銀行や取引先が個人保証を求めることはむしろ人材の選別機能になっていると主張する人もいる。確かにそうした面があるのは事実であり、個人保証の話を聞いて青ざめるような人物では、到底、中小企業の経営などおぼつかないだろう。 しかしながら、あまりにも高いハードルが起業の入り口を狭めているのは事実であり、こうした商慣行の見直しが必要なのはその通りである』、「会社を立ち上げたことを聞きつけた知人(多くがいわゆるエリートサラリーマン)が多数、起業について話を聞きにきた。 すべてにおいて個人保証が必要であり、失敗すれば無一文どころか自己破産まで強いられること、家を借りられないケースがあること、カードを作れないケースがあることなどを説明すると、皆、顔面蒼白になり帰っていった。筆者の知る限り、アドバイスを求めにきた知人の中で実際に会社を立ち上げた人は皆無だったと記憶している」、自らの腕だけで勝負するとなれば、相当の覚悟が必要だ。
・『銀行は「リスクを取ってはいけない」 今回、銀行が融資先企業の経営者に個人保証を求めない流れが出てきたのには、政府からの要請という部分も大きい。金融機関は以前から自主的なガイドラインを作成しており、可能な限り個人保証を求めないよう取り組みを進めてきた。だが現時点では、約7割が保証付き融資となっており、効果を発揮しているとは言い難い。 こうした事態を受けて岸田政権は昨年、スタートアップ企業を支援するため、経営者の個人保証を免除する施策について検討を開始した。今年に入って金融庁が、融資先に個人保証を求める場合、その必要性について説明することを金融機関に義務付けるなど、具体的な政策として動き始めている。 個人保証を外すこと自体は正しい方向性であり、筆者も高く評価している。 だが、中小企業の資金調達環境について政府や金融機関には誤った認識があり、単純に個人保証を外しただけでは、日本の起業が活発になるわけではない。それどころか、このまま何も考えずに政策を進めてしまうと、かえって中小零細企業の資金調達が阻害される可能性すらある。その理由は、日本において新規ビジネスが不活発なのは、経営者への個人保証だけが原因ではないからである。) 日本では中小企業の資金調達環境やその認識に大きな歪みがある。 中小企業やベンチャー企業は他の企業と比較してリスクが高い。先進諸外国の場合、こうしたリスクが高いビジネスの資金調達は銀行からの融資ではなく、投資家による直接出資(返済の義務はなく、失敗した場合には投資家が損失を引き受ける)によって賄われるのが通常である。 なぜそうなっているのかというと、銀行というのは預金者の大切な資金を預かり、それが失われることがないよう慎重に運用することが義務付けられた存在だからである。多くの国民にとって銀行預金は命の次に大事なものであり、そうした大事な資金を、いつ倒産するのかも分からない企業に融資してよいわけがないことは、直感的にお分かりいただけるだろう。 このため諸外国では、銀行はほぼ確実に資金が回収できる融資先にのみ融資を行い、リスクが高い事業は投資によって資金を確保するという役割分担が確立した』、日本でも経営者などの出資が資金調達の核になる点は同じだ。
・『創業間もない企業の資金調達は株式で実施すべき ところが日本の場合、直接的な投資によって資金を集めるという環境が整備されず、事業を立ち上げる人にとって銀行融資しか資金を集める手段ないという状況が長く続いた。 銀行はリスクが高いビジネスには融資できないのに、そうしたハイリスクの融資先を開拓しなければならないというジレンマに陥っている。銀行にしてみれば、預金者から預かった大切なお金であり、簡単になくしてしまうことはできず、安易に融資を行えば、預金者に対する背信行為になる危険性もある。その解決策として使われてきたのが、経営者やその家族に個人保証を求めるという、悪しき融資慣行であった。 つまり、創業間もない企業に対して普通に銀行融資が行われている状況にこそ問題があり、融資に頼らない資金調達環境を整備しなければ、本当の意味での起業活性化は難しいのだ。 それどころか、個人保証を外すことだけに邁進した場合、逆効果になる可能性すらある。 先ほど説明したように、銀行は本来、リスクの高い事業には融資できない存在である。政府が過度に個人保証の見直しを要請すると、銀行はリスクの高い企業にまで保証なしで融資を行い、後に大量の不良債権を生み出す可能性がある。逆に銀行として慎重に行動した場合には、融資が極度に減少し、ほとんどの零細企業が資金調達できないという事態に陥る可能性もある。 ではどうすればよいのか。 日本において起業が不活発である理由をしっかりと分析し、全体的な環境整備を同時並行で進めることが重要である。具体的に言えば、大企業と中小企業の取引慣行の見直しや、中小企業のM&A(合併・買収)活性化である』、「創業間もない企業に対して普通に銀行融資が行われている状況にこそ問題があり、融資に頼らない資金調達環境を整備しなければ、本当の意味での起業活性化は難しいのだ」、「創業間もない企業に対して」は融資ではなく、経営者の手金がベースになっている筈だ。
・『大企業の商慣行見直しを進めるべき 諸外国の場合、起業家が事業を始める際には、ゼロから会社を立ち上げるというケースもあるが、そうではないケースもかなり多い。典型的なのは、すでに事業を行っている人が引退する際、若い起業家に事業を売却するなど、既存ビジネスの継承である。 こうした手法であれば、特別な技能や経験がなくても事業をスタートできるし、すでにビジネスとして立ち上がっているので、投資家も安心して資金を提供できる。また当該事業が十分なキャッシュフローを得ている場合には、銀行の融資で資金をカバーすることも可能だろう。こうした形で中小企業のM&Aや、事業継承がもっと活発になれば、資金調達の環境も大きく変わるはずだ。) 加えて言うと、創業間もない企業や、前例がない企業とは取引をしないといった、日本の大企業独特の商習慣も改める必要がある。 中小企業を立ち上げた経営者にとって、もっとも大きな壁として立ちはだかるのは、資金よりも、むしろ取引先の開拓である。日本では、前例がないという理由だけで取引について門前払いを受けることが多く、会社を立ち上げても事業が続かないケースが多い。また、発注元の大企業が、支払い条件に対してムチャな要求を取引先に突きつけることも少なくない。 起業を促進するためには、単純に個人保証をなくすといった解決策だけでなく、事業の売買や商習慣なども含めた総合的な環境整備が必要である』、「創業間もない企業や、前例がない企業とは取引をしないといった、日本の大企業独特の商習慣も改める必要がある」、大企業としても信用リスクが高い企業との取引には慎重というのは、やむを得ないと思う。「発注元の大企業が、支払い条件に対してムチャな要求を取引先に突きつけることも少なくない」、これは独禁法違反になりかねない行為で、当局からの警告が必要だ。
次に、昨年11月26日付け日刊ゲンダイ「ソフトバンクの新金融商品「社債型種類株式」のうま味とリスク」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/332526
・『9月に本欄で紹介した「アクティブETF」に続いて、また日本初の金融商品がデビューした。社債の特性を持った上場株式、その名も「社債型種類株式」である。発行したのはソフトバンクグループの国内通信子会社ソフトバンクで、11月2日に東証プライムに上場し、話題になっている。 聞き慣れないだろうが、「種類株式」とは、普通株式と権利の内容が異なる株式のことである。 発行価格は1株4000円。売買単位は普通株と同じ100株(最少投資単位40万円)。発行株数と発行総額はそれぞれ3000万株、1200億円である。 ソフトバンクにとってのメリットは以下の通り。株式の一種であるため、発行で得た資金は会計上、100%資本となるから、社債や借り入れなど負債調達に比べ財務を悪化させず資金を集められる。また社債型株式には議決権がなく、普通株への転換権もないことから株式の希薄化が起こらない。 では、投資家にはどんなうまみがあるのか。 普通株に先立って優先的に配当が行われることと、社債のように安定した利回り(配当)が期待できることだろう。) 配当率は発行後約5年間は固定で年2.5%。ソフトバンク普通株の配当利回りは足元で4.9%程度で、一方、23年3月に同社が発行した個人投資家向け社債の利率は0.98%なので、社債型株式の利回りは株と社債の中間と考えていい。 上場初日の終値は4025円だった。上場後(11月20日まで)の株価は4000~4040円で値動きは小さい。 投資家が気になるリスクだが、それは「コール(事前償還)条項」だ。発行から5年経てばソフトバンクが発行価格に未払いの配当金などを上乗せした金額で買い戻すことができる。ただしコールは市場慣例で、発行体には買い戻す権利があるだけで、財務悪化などで買い戻しを見送ることもできる。万が一、見送りとなれば、投資の前提が崩れ、売り材料となりかねないが、ソフトバンクの体面があるし、NISAの対象でもあるだけに、それは考えにくい。だから個人投資家の人気が高く、10月末時点の個人の申込比率は92%に上る。 株はリスクがあって怖いが、金利が0.1%程度の定期預金にも満足していないという人は検討してみる価値は十分あるだろう。(丸)』、「ソフトバンクにとってのメリットは以下の通り。株式の一種であるため、発行で得た資金は会計上、100%資本となるから、社債や借り入れなど負債調達に比べ財務を悪化させず資金を集められる。また社債型株式には議決権がなく、普通株への転換権もないことから株式の希薄化が起こらない」、なるほど。 「投資家にはどんなうまみがあるのか。 普通株に先立って優先的に配当が行われることと、社債のように安定した利回り(配当)が期待できることだろう・・・配当率は発行後約5年間は固定で年2.5%。ソフトバンク普通株の配当利回りは足元で4.9%程度で、一方、23年3月に同社が発行した個人投資家向け社債の利率は0.98%なので、社債型株式の利回りは株と社債の中間と考えていい」、これはよく出来た仕組みだ。
第三に、本年2月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した共同通信編集委員の橋本卓典氏による「金融庁がリスク警戒!地銀・信金で広がる「仕組み貸出」の深すぎる闇」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338854
・『一部の地域金融機関の間で、「仕組み貸出」と言われるスキームがはやっている。既に金融庁はリスク管理強化を要請しているというそのスキームとは、一体どのようなものなのか。背景を探ると、業界内ではやるだけの「うまみ」と「闇」があることが分かってきた』、興味深そうだ。
・『金融庁がリスク管理強化を要請 地域金融業界で「仕組み債」ならぬ、「仕組み貸出」が注目を集めている。 金融庁が1月、地方銀行・第二地方銀行との意見交換会で、仕組み貸出に関して、リスク管理を強化するよう求めたのがきっかけだ。 もっとも仕組み貸出自体は昔からあり、目新しい取引ではないが、このところ増加傾向にあるという。なぜ金融庁が今、問題視するのか。次ページでその論点と、業界の構造的課題に迫る』、「仕組み貸出自体は昔からあり、目新しい取引ではないが、このところ増加傾向にある」、「金融庁が今、問題視」した「論点」と「業界の構造的課題」をみてみよう。
・『複雑な仕組み貸出スキーム まず以下のスキーム図を見てほしい。 証券会社などがつくった特別目的会社(SPC)に地銀が貸し出しを行う仕組み。SPCは融資契約に基づいて国債などの債券を取得する。 融資実行の際、債券の利回りの一部に相当するアップフロントフィーが地銀サイドに支払われるところに特徴がある。10年国債の場合、10年分の手数料を一括で地銀が手にする。 SPCから先は、スワップ取引が行われているとされるが、地銀側にはその詳細は明かされず、通常「ブラックボックス」となっている。金融庁によれば「複雑な商品性が多い」という。 (図_「仕組み貸出」のスキーム図 はリンク先参照)』、「SPCから先は、スワップ取引が行われているとされるが、地銀側にはその詳細は明かされず、通常「ブラックボックス」となっている」、というのは問題だ。
・『ブラックボックス では、そのブラックボックスでは一体何が行われているのか。 まず、SB(普通社債)リパッケージ債が類似したスキームだという。 たとえば同一企業が発行する国内債と外債の間に市場関係者の見通しの違いから価格差が生じたとする。仮に外債が国内債より割安の場合、スワップ取引によって、国内債より高い外債のクーポンを活用したリパッケージ債を組成することができる。 また、繰り上げ償還条項(コール条項)付きCB(転換社債)リパッケージ債というスキームも存在する。 発行者(SPC)がいつでもCBを償還(コール)する権利を持ち、権利行使の場合、対象償還額面金額と利子が支払われる。投資家(地銀)は償還までのクーポン・償還金を受け取るだけだ。CB、転換株式の価格上昇の値上がり益は享受できない』、「CB、転換株式の価格上昇の値上がり益」はスキームの管理コストのような形で消えているのだろうか。
・『SPCを仲介させる理由とは ブラックボックスの中身は複雑だが、銀行とSPCの関係だけを見ると単純だ。だが奇妙なスキームではある。 そもそも、SPCの運用先が国債であるならば、SPCなど介さずに、銀行が直接国債を満期保有した方が高い利回りを確保できるはずだ。なぜSPCが必要なのか。 このスキームは債券運用ではなく、「貸し出し」であるところがポイントなのだ。 まず、貸し出しには、貸借対照上の時価評価の必要がないという点がある。 有価証券を運用する場合、時価が簿価より50%以上下落した場合、回復可能性がなければ時価評価をして、減損処理を行わなければならない。しかし、貸し出しの場合、この必要がなくなるのである。 仕組み貸出にはさまざまなスキームがあり、SPCは国債以外の外債、社債などを取得する場合もある。銀行が直接、外債や社債を取得した場合、時価評価による減損リスクと向き合わなければならない。 かつては、外債運用で大規模な損失を計上することになった地銀もあり、その反動からこうしたスキームが使われるようになったという』、「銀行が直接、外債や社債を取得した場合、時価評価による減損リスクと向き合わなければならない」、これを回避するために「SPC」を活用したとは上手いやり方だ。
・『貸出残高をかさ増し また、有価証券運用ではないため、地銀は貸出残高を「かさ増し」することができる。 地銀関係者によれば、「SPCを中小企業と見なせば『中小企業向け貸出残高』と外部に見せることもできなくもない」と打ち明ける。 いくつかの地域のトップ地銀関係者に取材したところ、いわゆる“お堅い運用”をしている印象であった。 具体的には、SPCが取得する債券を国債に限定したり、銀行側のリスク統括、審査担当のチェックを受けなければ、仕組み貸出を認めなかったりという管理をしていた。 国債などの安全性の高い債券をSPCが取得する場合、地銀が受け取るリターンは極めて薄利となる。よって、貸出金のボリュームを増やさなければ十分な利ざやは確保できない。中には、100億円を超える「大型融資」もあるという。地域金融機関にとっては、巨額融資だ』、「地銀は貸出残高を「かさ増し」することができる・・・「SPCを中小企業と見なせば『中小企業向け貸出残高』と外部に見せることもできなくもない」、なるほど上手い手だ。
・『リスクは「早期償還事由」か リスクは、やはりSPCから先の「ブラックボックス」にあるとみて間違いない。 証券会社の資料でも「早期償還事由」について以下のような説明がある。 SPCの倒産、支払い不履行などによる期限の利益喪失は当然として、「元本・利子の削減」でも早期償還される。外債の場合、各国の法令、関係当局の権限によって元本が削減されることもある。 また、非常に流動性の低い通貨建て債券の場合、当初予定とは違う通貨で元利金支払いが行われる場合もある。スワップ取引の取引相手が倒産、支払い不履行になった場合も早期償還となる。こうしたリスクを地銀が管理するのは至難だろう。 早期償還の場合、担保証券を市場売却して、スワップ契約を解約し、担保証券の売却金額から弁護士費用など必要経費を差し引き、残余金を地銀に返済することになる。当然、貸出債権が焦げ付くこともあり得るのだ』、「当初予定とは違う通貨で元利金支払いが行われる場合もある。スワップ取引の取引相手が倒産、支払い不履行になった場合も早期償還となる。こうしたリスクを地銀が管理するのは至難だろう。 早期償還の場合、担保証券を市場売却して、スワップ契約を解約し、担保証券の売却金額から弁護士費用など必要経費を差し引き、残余金を地銀に返済することになる。当然、貸出債権が焦げ付くこともあり得るのだ」、地域金融機関には管理困難だろう。
・『神経とがらせる金融庁 金融庁は、地域金融機関が仕組み貸出について、現場部署だけでなく、審査やリスク統括などの関連部署が商品性や内包するリスクを正確に把握して、経営陣に報告して十分なリスク検証を行う態勢整備ができているかどうかに注目している。 「むしろ、地銀に比べて管理態勢が甘い可能性のある信用金庫などの協同組織金融が心配だ」と、金融庁幹部は不安を隠さない。 アップフロントフィーという目先の収益が目的になってしまえば、経営戦略を度外視して仕組み貸出にのめり込んでしまう恐れもあるからだ。経営体力に見合うリスク量となっているのかどうかもポイントとなる。 ちなみに「国債を裏付け担保とするアップフロントフィーは米国では認められていないので、監査法人が嫌がる」(地銀幹部)との声もある。 仕組み貸出の限度額管理だけでは不十分だ。類似商品のコスト、オプション条件を十分に比較できているか。金利リスク・業種集中リスク・カントリーリスクなどのリスク特性への目配りも重要だ。 仕組み貸出を売り込もうとする証券会社・信託銀行の話だけではなく、自ら市場価格、外部格付けをモニタリングしなければならない。 仕組み貸出が金融機関としての経営戦略、重点的取り組み方針と合致しているのかどうかも疑わしい。 また、株主・投資家への説明が不十分だ。金融庁も仕組み貸出について、ステークホルダーへの説明を促している』、「仕組み貸出の限度額管理だけでは不十分だ。類似商品のコスト、オプション条件を十分に比較できているか。金利リスク・業種集中リスク・カントリーリスクなどのリスク特性への目配りも重要だ。 仕組み貸出を売り込もうとする証券会社・信託銀行の話だけではなく、自ら市場価格、外部格付けをモニタリングしなければならない。 仕組み貸出が金融機関としての経営戦略、重点的取り組み方針と合致しているのかどうかも疑わしい。 また、株主・投資家への説明が不十分だ。金融庁も仕組み貸出について、ステークホルダーへの説明を促している」、これは地域金融機関にとっては大変難しい問題だ
・『地域金融の役割とは何か 仕組み貸出は、産業振興や信用創造につながる事業性の融資でもなく、預貸業務以外の真っ当な資金運用でもない。 仮に地銀側が「デフォルトではない」と判断しても、スワップ上のデフォルト定義が異なる場合がある。そのリスク分が金利に上乗せされるわけだが、担当者が十分に理解しているかどうかは怪しい。 そもそも「見せかけの貸出残高維持」や、「国債の利回りの一部をアップフロントフィーで先食い」する効果がある仕組み貸出に、地域金融機関が手を出さなければならないところに、業界が抱える闇がある。 仕組み貸出の増加は、日銀のマイナス金利政策でだぶつき、行き場を失ったマネーが生み出したものだという見方もできる。抜け目ない証券会社が提案する、何の付加価値も生まない仕組み貸出のスキームに地銀がこぞって飛び付いたのも、預貸率改善の必要に迫られて、やむを得ない側面があったのではないだろうか。 本当の問題は、日銀が利上げに踏み切れば、過去30年間近く続いた「金利なき世界」に慣れ切った地域金融機関が、「金利ある世界」に戻っていく危うさにあるのかもしれない。 「金利ある世界」だからこそ、地域金融の役割とは何かを問い直す必要がある。 たとえば、非営利団体として法人税が減免される信金には営業エリアがある。だが、信金の中には少しでも多く利益を獲得すべくメガが組成するシンジケートローンに参加し、実質的に営業エリア外へ貸し出しているところもある。 「金利ある世界」は総じて金融機関にとって追い風となるため、今後、同様の動きが増えるかもしれない。地元経済の金融仲介機能の担い手であるという、地域金融の本質に立ち戻って考える必要もあるのではないか』、「そもそも「見せかけの貸出残高維持」や、「国債の利回りの一部をアップフロントフィーで先食い」する効果がある仕組み貸出に、地域金融機関が手を出さなければならないところに、業界が抱える闇がある・・・抜け目ない証券会社が提案する、何の付加価値も生まない仕組み貸出のスキームに地銀がこぞって飛び付いたのも、預貸率改善の必要に迫られて、やむを得ない側面があったのではないだろうか。 本当の問題は、日銀が利上げに踏み切れば、過去30年間近く続いた「金利なき世界」に慣れ切った地域金融機関が、「金利ある世界」に戻っていく危うさにあるのかもしれない」、「地域金融機関が手を出す」のはやはり極めて問題が大きそうだ。検査などを通じて手を引かせるべきだろう。
先ずは、昨年5月17日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの加谷 珪一氏による「じつはいま「地銀と中小企業の関係」が激変中…そのウラに隠された「意外な落とし穴」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/110338?imp=0
・『地方銀行を中心に、融資先企業の経営者に個人保証を求めない流れが拡大している。日本の場合、中小零細企業の経営者が融資に際して個人保証を入れることが当然視されており、こうした商慣行が起業の阻害要因になっていると指摘されてきた。 融資慣行の見直しによってスタートアップ育成につながると期待されているが、起業が不活発な原因は必ずしも個人保証だけではない。総合的な環境整備を実施しないまま銀行に個人保証の撤廃だけを求めれば、銀行が中小企業への融資を引き揚げてしまう可能性もあるので注意が必要だ』、「総合的な環境整備を実施しないまま銀行に個人保証の撤廃だけを求めれば、銀行が中小企業への融資を引き揚げてしまう可能性もある」、その通りだ。
・『中小企業の経営者はがんじがらめ 日本では、中小零細企業の経営者はあらゆる場面において個人保証を求められ、無限責任を負う必要がある。銀行からの融資はもちろんのこと、オフィスを借りる際や、コピー機をリースする時ですら個人保証を入れなければならない。 筆者自身、会社をゼロから立ち上げ、経営してきた経験があるのでよく分かるのだが、中小企業の場合、何から何まで個人保証を要求され、がんじがらめにされてしまう。近年はだいぶ環境が良くなってきたが、サラリーマンを辞めてしまうと賃貸住宅を借りられなくなったり、カードを作れなくなるケースも珍しくなかった。 起業したのは20年以上前のことだが、当時もちょっとした起業ブームとなっており、会社を立ち上げたことを聞きつけた知人(多くがいわゆるエリートサラリーマン)が多数、起業について話を聞きにきた。 すべてにおいて個人保証が必要であり、失敗すれば無一文どころか自己破産まで強いられること、家を借りられないケースがあること、カードを作れないケースがあることなどを説明すると、皆、顔面蒼白になり帰っていった。筆者の知る限り、アドバイスを求めにきた知人の中で実際に会社を立ち上げた人は皆無だったと記憶している。) 中小企業経営者の中には、「個人保証を入れることなど大したことではない、というくらいの気概がなければ、企業の経営など無理」と述べ、銀行や取引先が個人保証を求めることはむしろ人材の選別機能になっていると主張する人もいる。確かにそうした面があるのは事実であり、個人保証の話を聞いて青ざめるような人物では、到底、中小企業の経営などおぼつかないだろう。 しかしながら、あまりにも高いハードルが起業の入り口を狭めているのは事実であり、こうした商慣行の見直しが必要なのはその通りである』、「会社を立ち上げたことを聞きつけた知人(多くがいわゆるエリートサラリーマン)が多数、起業について話を聞きにきた。 すべてにおいて個人保証が必要であり、失敗すれば無一文どころか自己破産まで強いられること、家を借りられないケースがあること、カードを作れないケースがあることなどを説明すると、皆、顔面蒼白になり帰っていった。筆者の知る限り、アドバイスを求めにきた知人の中で実際に会社を立ち上げた人は皆無だったと記憶している」、自らの腕だけで勝負するとなれば、相当の覚悟が必要だ。
・『銀行は「リスクを取ってはいけない」 今回、銀行が融資先企業の経営者に個人保証を求めない流れが出てきたのには、政府からの要請という部分も大きい。金融機関は以前から自主的なガイドラインを作成しており、可能な限り個人保証を求めないよう取り組みを進めてきた。だが現時点では、約7割が保証付き融資となっており、効果を発揮しているとは言い難い。 こうした事態を受けて岸田政権は昨年、スタートアップ企業を支援するため、経営者の個人保証を免除する施策について検討を開始した。今年に入って金融庁が、融資先に個人保証を求める場合、その必要性について説明することを金融機関に義務付けるなど、具体的な政策として動き始めている。 個人保証を外すこと自体は正しい方向性であり、筆者も高く評価している。 だが、中小企業の資金調達環境について政府や金融機関には誤った認識があり、単純に個人保証を外しただけでは、日本の起業が活発になるわけではない。それどころか、このまま何も考えずに政策を進めてしまうと、かえって中小零細企業の資金調達が阻害される可能性すらある。その理由は、日本において新規ビジネスが不活発なのは、経営者への個人保証だけが原因ではないからである。) 日本では中小企業の資金調達環境やその認識に大きな歪みがある。 中小企業やベンチャー企業は他の企業と比較してリスクが高い。先進諸外国の場合、こうしたリスクが高いビジネスの資金調達は銀行からの融資ではなく、投資家による直接出資(返済の義務はなく、失敗した場合には投資家が損失を引き受ける)によって賄われるのが通常である。 なぜそうなっているのかというと、銀行というのは預金者の大切な資金を預かり、それが失われることがないよう慎重に運用することが義務付けられた存在だからである。多くの国民にとって銀行預金は命の次に大事なものであり、そうした大事な資金を、いつ倒産するのかも分からない企業に融資してよいわけがないことは、直感的にお分かりいただけるだろう。 このため諸外国では、銀行はほぼ確実に資金が回収できる融資先にのみ融資を行い、リスクが高い事業は投資によって資金を確保するという役割分担が確立した』、日本でも経営者などの出資が資金調達の核になる点は同じだ。
・『創業間もない企業の資金調達は株式で実施すべき ところが日本の場合、直接的な投資によって資金を集めるという環境が整備されず、事業を立ち上げる人にとって銀行融資しか資金を集める手段ないという状況が長く続いた。 銀行はリスクが高いビジネスには融資できないのに、そうしたハイリスクの融資先を開拓しなければならないというジレンマに陥っている。銀行にしてみれば、預金者から預かった大切なお金であり、簡単になくしてしまうことはできず、安易に融資を行えば、預金者に対する背信行為になる危険性もある。その解決策として使われてきたのが、経営者やその家族に個人保証を求めるという、悪しき融資慣行であった。 つまり、創業間もない企業に対して普通に銀行融資が行われている状況にこそ問題があり、融資に頼らない資金調達環境を整備しなければ、本当の意味での起業活性化は難しいのだ。 それどころか、個人保証を外すことだけに邁進した場合、逆効果になる可能性すらある。 先ほど説明したように、銀行は本来、リスクの高い事業には融資できない存在である。政府が過度に個人保証の見直しを要請すると、銀行はリスクの高い企業にまで保証なしで融資を行い、後に大量の不良債権を生み出す可能性がある。逆に銀行として慎重に行動した場合には、融資が極度に減少し、ほとんどの零細企業が資金調達できないという事態に陥る可能性もある。 ではどうすればよいのか。 日本において起業が不活発である理由をしっかりと分析し、全体的な環境整備を同時並行で進めることが重要である。具体的に言えば、大企業と中小企業の取引慣行の見直しや、中小企業のM&A(合併・買収)活性化である』、「創業間もない企業に対して普通に銀行融資が行われている状況にこそ問題があり、融資に頼らない資金調達環境を整備しなければ、本当の意味での起業活性化は難しいのだ」、「創業間もない企業に対して」は融資ではなく、経営者の手金がベースになっている筈だ。
・『大企業の商慣行見直しを進めるべき 諸外国の場合、起業家が事業を始める際には、ゼロから会社を立ち上げるというケースもあるが、そうではないケースもかなり多い。典型的なのは、すでに事業を行っている人が引退する際、若い起業家に事業を売却するなど、既存ビジネスの継承である。 こうした手法であれば、特別な技能や経験がなくても事業をスタートできるし、すでにビジネスとして立ち上がっているので、投資家も安心して資金を提供できる。また当該事業が十分なキャッシュフローを得ている場合には、銀行の融資で資金をカバーすることも可能だろう。こうした形で中小企業のM&Aや、事業継承がもっと活発になれば、資金調達の環境も大きく変わるはずだ。) 加えて言うと、創業間もない企業や、前例がない企業とは取引をしないといった、日本の大企業独特の商習慣も改める必要がある。 中小企業を立ち上げた経営者にとって、もっとも大きな壁として立ちはだかるのは、資金よりも、むしろ取引先の開拓である。日本では、前例がないという理由だけで取引について門前払いを受けることが多く、会社を立ち上げても事業が続かないケースが多い。また、発注元の大企業が、支払い条件に対してムチャな要求を取引先に突きつけることも少なくない。 起業を促進するためには、単純に個人保証をなくすといった解決策だけでなく、事業の売買や商習慣なども含めた総合的な環境整備が必要である』、「創業間もない企業や、前例がない企業とは取引をしないといった、日本の大企業独特の商習慣も改める必要がある」、大企業としても信用リスクが高い企業との取引には慎重というのは、やむを得ないと思う。「発注元の大企業が、支払い条件に対してムチャな要求を取引先に突きつけることも少なくない」、これは独禁法違反になりかねない行為で、当局からの警告が必要だ。
次に、昨年11月26日付け日刊ゲンダイ「ソフトバンクの新金融商品「社債型種類株式」のうま味とリスク」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/332526
・『9月に本欄で紹介した「アクティブETF」に続いて、また日本初の金融商品がデビューした。社債の特性を持った上場株式、その名も「社債型種類株式」である。発行したのはソフトバンクグループの国内通信子会社ソフトバンクで、11月2日に東証プライムに上場し、話題になっている。 聞き慣れないだろうが、「種類株式」とは、普通株式と権利の内容が異なる株式のことである。 発行価格は1株4000円。売買単位は普通株と同じ100株(最少投資単位40万円)。発行株数と発行総額はそれぞれ3000万株、1200億円である。 ソフトバンクにとってのメリットは以下の通り。株式の一種であるため、発行で得た資金は会計上、100%資本となるから、社債や借り入れなど負債調達に比べ財務を悪化させず資金を集められる。また社債型株式には議決権がなく、普通株への転換権もないことから株式の希薄化が起こらない。 では、投資家にはどんなうまみがあるのか。 普通株に先立って優先的に配当が行われることと、社債のように安定した利回り(配当)が期待できることだろう。) 配当率は発行後約5年間は固定で年2.5%。ソフトバンク普通株の配当利回りは足元で4.9%程度で、一方、23年3月に同社が発行した個人投資家向け社債の利率は0.98%なので、社債型株式の利回りは株と社債の中間と考えていい。 上場初日の終値は4025円だった。上場後(11月20日まで)の株価は4000~4040円で値動きは小さい。 投資家が気になるリスクだが、それは「コール(事前償還)条項」だ。発行から5年経てばソフトバンクが発行価格に未払いの配当金などを上乗せした金額で買い戻すことができる。ただしコールは市場慣例で、発行体には買い戻す権利があるだけで、財務悪化などで買い戻しを見送ることもできる。万が一、見送りとなれば、投資の前提が崩れ、売り材料となりかねないが、ソフトバンクの体面があるし、NISAの対象でもあるだけに、それは考えにくい。だから個人投資家の人気が高く、10月末時点の個人の申込比率は92%に上る。 株はリスクがあって怖いが、金利が0.1%程度の定期預金にも満足していないという人は検討してみる価値は十分あるだろう。(丸)』、「ソフトバンクにとってのメリットは以下の通り。株式の一種であるため、発行で得た資金は会計上、100%資本となるから、社債や借り入れなど負債調達に比べ財務を悪化させず資金を集められる。また社債型株式には議決権がなく、普通株への転換権もないことから株式の希薄化が起こらない」、なるほど。 「投資家にはどんなうまみがあるのか。 普通株に先立って優先的に配当が行われることと、社債のように安定した利回り(配当)が期待できることだろう・・・配当率は発行後約5年間は固定で年2.5%。ソフトバンク普通株の配当利回りは足元で4.9%程度で、一方、23年3月に同社が発行した個人投資家向け社債の利率は0.98%なので、社債型株式の利回りは株と社債の中間と考えていい」、これはよく出来た仕組みだ。
第三に、本年2月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した共同通信編集委員の橋本卓典氏による「金融庁がリスク警戒!地銀・信金で広がる「仕組み貸出」の深すぎる闇」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338854
・『一部の地域金融機関の間で、「仕組み貸出」と言われるスキームがはやっている。既に金融庁はリスク管理強化を要請しているというそのスキームとは、一体どのようなものなのか。背景を探ると、業界内ではやるだけの「うまみ」と「闇」があることが分かってきた』、興味深そうだ。
・『金融庁がリスク管理強化を要請 地域金融業界で「仕組み債」ならぬ、「仕組み貸出」が注目を集めている。 金融庁が1月、地方銀行・第二地方銀行との意見交換会で、仕組み貸出に関して、リスク管理を強化するよう求めたのがきっかけだ。 もっとも仕組み貸出自体は昔からあり、目新しい取引ではないが、このところ増加傾向にあるという。なぜ金融庁が今、問題視するのか。次ページでその論点と、業界の構造的課題に迫る』、「仕組み貸出自体は昔からあり、目新しい取引ではないが、このところ増加傾向にある」、「金融庁が今、問題視」した「論点」と「業界の構造的課題」をみてみよう。
・『複雑な仕組み貸出スキーム まず以下のスキーム図を見てほしい。 証券会社などがつくった特別目的会社(SPC)に地銀が貸し出しを行う仕組み。SPCは融資契約に基づいて国債などの債券を取得する。 融資実行の際、債券の利回りの一部に相当するアップフロントフィーが地銀サイドに支払われるところに特徴がある。10年国債の場合、10年分の手数料を一括で地銀が手にする。 SPCから先は、スワップ取引が行われているとされるが、地銀側にはその詳細は明かされず、通常「ブラックボックス」となっている。金融庁によれば「複雑な商品性が多い」という。 (図_「仕組み貸出」のスキーム図 はリンク先参照)』、「SPCから先は、スワップ取引が行われているとされるが、地銀側にはその詳細は明かされず、通常「ブラックボックス」となっている」、というのは問題だ。
・『ブラックボックス では、そのブラックボックスでは一体何が行われているのか。 まず、SB(普通社債)リパッケージ債が類似したスキームだという。 たとえば同一企業が発行する国内債と外債の間に市場関係者の見通しの違いから価格差が生じたとする。仮に外債が国内債より割安の場合、スワップ取引によって、国内債より高い外債のクーポンを活用したリパッケージ債を組成することができる。 また、繰り上げ償還条項(コール条項)付きCB(転換社債)リパッケージ債というスキームも存在する。 発行者(SPC)がいつでもCBを償還(コール)する権利を持ち、権利行使の場合、対象償還額面金額と利子が支払われる。投資家(地銀)は償還までのクーポン・償還金を受け取るだけだ。CB、転換株式の価格上昇の値上がり益は享受できない』、「CB、転換株式の価格上昇の値上がり益」はスキームの管理コストのような形で消えているのだろうか。
・『SPCを仲介させる理由とは ブラックボックスの中身は複雑だが、銀行とSPCの関係だけを見ると単純だ。だが奇妙なスキームではある。 そもそも、SPCの運用先が国債であるならば、SPCなど介さずに、銀行が直接国債を満期保有した方が高い利回りを確保できるはずだ。なぜSPCが必要なのか。 このスキームは債券運用ではなく、「貸し出し」であるところがポイントなのだ。 まず、貸し出しには、貸借対照上の時価評価の必要がないという点がある。 有価証券を運用する場合、時価が簿価より50%以上下落した場合、回復可能性がなければ時価評価をして、減損処理を行わなければならない。しかし、貸し出しの場合、この必要がなくなるのである。 仕組み貸出にはさまざまなスキームがあり、SPCは国債以外の外債、社債などを取得する場合もある。銀行が直接、外債や社債を取得した場合、時価評価による減損リスクと向き合わなければならない。 かつては、外債運用で大規模な損失を計上することになった地銀もあり、その反動からこうしたスキームが使われるようになったという』、「銀行が直接、外債や社債を取得した場合、時価評価による減損リスクと向き合わなければならない」、これを回避するために「SPC」を活用したとは上手いやり方だ。
・『貸出残高をかさ増し また、有価証券運用ではないため、地銀は貸出残高を「かさ増し」することができる。 地銀関係者によれば、「SPCを中小企業と見なせば『中小企業向け貸出残高』と外部に見せることもできなくもない」と打ち明ける。 いくつかの地域のトップ地銀関係者に取材したところ、いわゆる“お堅い運用”をしている印象であった。 具体的には、SPCが取得する債券を国債に限定したり、銀行側のリスク統括、審査担当のチェックを受けなければ、仕組み貸出を認めなかったりという管理をしていた。 国債などの安全性の高い債券をSPCが取得する場合、地銀が受け取るリターンは極めて薄利となる。よって、貸出金のボリュームを増やさなければ十分な利ざやは確保できない。中には、100億円を超える「大型融資」もあるという。地域金融機関にとっては、巨額融資だ』、「地銀は貸出残高を「かさ増し」することができる・・・「SPCを中小企業と見なせば『中小企業向け貸出残高』と外部に見せることもできなくもない」、なるほど上手い手だ。
・『リスクは「早期償還事由」か リスクは、やはりSPCから先の「ブラックボックス」にあるとみて間違いない。 証券会社の資料でも「早期償還事由」について以下のような説明がある。 SPCの倒産、支払い不履行などによる期限の利益喪失は当然として、「元本・利子の削減」でも早期償還される。外債の場合、各国の法令、関係当局の権限によって元本が削減されることもある。 また、非常に流動性の低い通貨建て債券の場合、当初予定とは違う通貨で元利金支払いが行われる場合もある。スワップ取引の取引相手が倒産、支払い不履行になった場合も早期償還となる。こうしたリスクを地銀が管理するのは至難だろう。 早期償還の場合、担保証券を市場売却して、スワップ契約を解約し、担保証券の売却金額から弁護士費用など必要経費を差し引き、残余金を地銀に返済することになる。当然、貸出債権が焦げ付くこともあり得るのだ』、「当初予定とは違う通貨で元利金支払いが行われる場合もある。スワップ取引の取引相手が倒産、支払い不履行になった場合も早期償還となる。こうしたリスクを地銀が管理するのは至難だろう。 早期償還の場合、担保証券を市場売却して、スワップ契約を解約し、担保証券の売却金額から弁護士費用など必要経費を差し引き、残余金を地銀に返済することになる。当然、貸出債権が焦げ付くこともあり得るのだ」、地域金融機関には管理困難だろう。
・『神経とがらせる金融庁 金融庁は、地域金融機関が仕組み貸出について、現場部署だけでなく、審査やリスク統括などの関連部署が商品性や内包するリスクを正確に把握して、経営陣に報告して十分なリスク検証を行う態勢整備ができているかどうかに注目している。 「むしろ、地銀に比べて管理態勢が甘い可能性のある信用金庫などの協同組織金融が心配だ」と、金融庁幹部は不安を隠さない。 アップフロントフィーという目先の収益が目的になってしまえば、経営戦略を度外視して仕組み貸出にのめり込んでしまう恐れもあるからだ。経営体力に見合うリスク量となっているのかどうかもポイントとなる。 ちなみに「国債を裏付け担保とするアップフロントフィーは米国では認められていないので、監査法人が嫌がる」(地銀幹部)との声もある。 仕組み貸出の限度額管理だけでは不十分だ。類似商品のコスト、オプション条件を十分に比較できているか。金利リスク・業種集中リスク・カントリーリスクなどのリスク特性への目配りも重要だ。 仕組み貸出を売り込もうとする証券会社・信託銀行の話だけではなく、自ら市場価格、外部格付けをモニタリングしなければならない。 仕組み貸出が金融機関としての経営戦略、重点的取り組み方針と合致しているのかどうかも疑わしい。 また、株主・投資家への説明が不十分だ。金融庁も仕組み貸出について、ステークホルダーへの説明を促している』、「仕組み貸出の限度額管理だけでは不十分だ。類似商品のコスト、オプション条件を十分に比較できているか。金利リスク・業種集中リスク・カントリーリスクなどのリスク特性への目配りも重要だ。 仕組み貸出を売り込もうとする証券会社・信託銀行の話だけではなく、自ら市場価格、外部格付けをモニタリングしなければならない。 仕組み貸出が金融機関としての経営戦略、重点的取り組み方針と合致しているのかどうかも疑わしい。 また、株主・投資家への説明が不十分だ。金融庁も仕組み貸出について、ステークホルダーへの説明を促している」、これは地域金融機関にとっては大変難しい問題だ
・『地域金融の役割とは何か 仕組み貸出は、産業振興や信用創造につながる事業性の融資でもなく、預貸業務以外の真っ当な資金運用でもない。 仮に地銀側が「デフォルトではない」と判断しても、スワップ上のデフォルト定義が異なる場合がある。そのリスク分が金利に上乗せされるわけだが、担当者が十分に理解しているかどうかは怪しい。 そもそも「見せかけの貸出残高維持」や、「国債の利回りの一部をアップフロントフィーで先食い」する効果がある仕組み貸出に、地域金融機関が手を出さなければならないところに、業界が抱える闇がある。 仕組み貸出の増加は、日銀のマイナス金利政策でだぶつき、行き場を失ったマネーが生み出したものだという見方もできる。抜け目ない証券会社が提案する、何の付加価値も生まない仕組み貸出のスキームに地銀がこぞって飛び付いたのも、預貸率改善の必要に迫られて、やむを得ない側面があったのではないだろうか。 本当の問題は、日銀が利上げに踏み切れば、過去30年間近く続いた「金利なき世界」に慣れ切った地域金融機関が、「金利ある世界」に戻っていく危うさにあるのかもしれない。 「金利ある世界」だからこそ、地域金融の役割とは何かを問い直す必要がある。 たとえば、非営利団体として法人税が減免される信金には営業エリアがある。だが、信金の中には少しでも多く利益を獲得すべくメガが組成するシンジケートローンに参加し、実質的に営業エリア外へ貸し出しているところもある。 「金利ある世界」は総じて金融機関にとって追い風となるため、今後、同様の動きが増えるかもしれない。地元経済の金融仲介機能の担い手であるという、地域金融の本質に立ち戻って考える必要もあるのではないか』、「そもそも「見せかけの貸出残高維持」や、「国債の利回りの一部をアップフロントフィーで先食い」する効果がある仕組み貸出に、地域金融機関が手を出さなければならないところに、業界が抱える闇がある・・・抜け目ない証券会社が提案する、何の付加価値も生まない仕組み貸出のスキームに地銀がこぞって飛び付いたのも、預貸率改善の必要に迫られて、やむを得ない側面があったのではないだろうか。 本当の問題は、日銀が利上げに踏み切れば、過去30年間近く続いた「金利なき世界」に慣れ切った地域金融機関が、「金利ある世界」に戻っていく危うさにあるのかもしれない」、「地域金融機関が手を出す」のはやはり極めて問題が大きそうだ。検査などを通じて手を引かせるべきだろう。
タグ:「創業間もない企業に対して普通に銀行融資が行われている状況にこそ問題があり、融資に頼らない資金調達環境を整備しなければ、本当の意味での起業活性化は難しいのだ」、「創業間もない企業に対して」は融資ではなく、経営者の手金がベースになっている筈だ。 日本でも経営者などの出資が資金調達の核になる点は同じだ。 「会社を立ち上げたことを聞きつけた知人(多くがいわゆるエリートサラリーマン)が多数、起業について話を聞きにきた。 すべてにおいて個人保証が必要であり、失敗すれば無一文どころか自己破産まで強いられること、家を借りられないケースがあること、カードを作れないケースがあることなどを説明すると、皆、顔面蒼白になり帰っていった。筆者の知る限り、アドバイスを求めにきた知人の中で実際に会社を立ち上げた人は皆無だったと記憶している」、自らの腕だけで勝負するとなれば、相当の覚悟が必要だ。 「総合的な環境整備を実施しないまま銀行に個人保証の撤廃だけを求めれば、銀行が中小企業への融資を引き揚げてしまう可能性もある」、その通りだ。 加谷 珪一氏による「じつはいま「地銀と中小企業の関係」が激変中…そのウラに隠された「意外な落とし穴」」 現代ビジネス (その1)(じつはいま「地銀と中小企業の関係」が激変中…そのウラに隠された「意外な落とし穴」、ソフトバンクの新金融商品「社債型種類株式」のうま味とリスク、金融庁がリスク警戒!地銀・信金で広がる「仕組み貸出」の深すぎる闇) 企業金融・企業財務 「創業間もない企業や、前例がない企業とは取引をしないといった、日本の大企業独特の商習慣も改める必要がある」、大企業としても信用リスクが高い企業との取引には慎重というのは、やむを得ないと思う。「発注元の大企業が、支払い条件に対してムチャな要求を取引先に突きつけることも少なくない」、これは独禁法違反になりかねない行為で、当局からの警告が必要だ。 日刊ゲンダイ「ソフトバンクの新金融商品「社債型種類株式」のうま味とリスク」 「ソフトバンクにとってのメリットは以下の通り。株式の一種であるため、発行で得た資金は会計上、100%資本となるから、社債や借り入れなど負債調達に比べ財務を悪化させず資金を集められる。また社債型株式には議決権がなく、普通株への転換権もないことから株式の希薄化が起こらない」、なるほど。 「投資家にはどんなうまみがあるのか。 普通株に先立って優先的に配当が行われることと、社債のように安定した利回り(配当)が期待できることだろう・・・配当率は発行後約5年間は固定で年2.5%。ソフトバンク普通株の配当利回りは足元で4.9%程度で、一方、23年3月に同社が発行した個人投資家向け社債の利率は0.98%なので、社債型株式の利回りは株と社債の中間と考えていい」、これはよく出来た仕組みだ。 ダイヤモンド・オンライン 橋本卓典氏による「金融庁がリスク警戒!地銀・信金で広がる「仕組み貸出」の深すぎる闇」 「仕組み貸出自体は昔からあり、目新しい取引ではないが、このところ増加傾向にある」、「金融庁が今、問題視」した「論点」と「業界の構造的課題」をみてみよう。 「SPCから先は、スワップ取引が行われているとされるが、地銀側にはその詳細は明かされず、通常「ブラックボックス」となっている」、というのは問題だ。 「CB、転換株式の価格上昇の値上がり益」はスキームの管理コストのような形で消えているのだろうか。 「銀行が直接、外債や社債を取得した場合、時価評価による減損リスクと向き合わなければならない」、これを回避するために「SPC」を活用したとは上手いやり方だ。 「地銀は貸出残高を「かさ増し」することができる・・・「SPCを中小企業と見なせば『中小企業向け貸出残高』と外部に見せることもできなくもない」、なるほど上手い手だ。 「当初予定とは違う通貨で元利金支払いが行われる場合もある。スワップ取引の取引相手が倒産、支払い不履行になった場合も早期償還となる。こうしたリスクを地銀が管理するのは至難だろう。 早期償還の場合、担保証券を市場売却して、スワップ契約を解約し、担保証券の売却金額から弁護士費用など必要経費を差し引き、残余金を地銀に返済することになる。当然、貸出債権が焦げ付くこともあり得るのだ」、地域金融機関には管理困難だろう。 「そもそも「見せかけの貸出残高維持」や、「国債の利回りの一部をアップフロントフィーで先食い」する効果がある仕組み貸出に、地域金融機関が手を出さなければならないところに、業界が抱える闇がある・・・抜け目ない証券会社が提案する、何の付加価値も生まない仕組み貸出のスキームに地銀がこぞって飛び付いたのも、預貸率改善の必要に迫られて、やむを得ない側面があったのではないだろうか。 本当の問題は、日銀が利上げに踏み切れば、過去30年間近く続いた「金利なき世界」に慣れ切った地域金融機関が、「金利ある世界」に戻っていく危うさにあるのかもしれない」、「地域金融機関が手を出す」のはやはり極めて問題が大きそうだ。検査などを通じて手を引かせるべきだろう。
日本企業の海外M&Aブーム(その6)(日本製鉄、「USスチール2兆円買収」に動いた必然 経営リスクは覚悟で「脱ドメスティック」に進む、日本製鉄「USスチール2兆円買収」の成否が 日本企業の成長志向の鍵を握るワケ、積水ハウスが米国で7000億円買収!住友林業と大和ハウスを逆転するも 「大博打」に潜むリスク) [企業経営]
日本企業の海外M&Aブームについては、2018年5月15日に取上げた。今日は、(その6)(日本製鉄、「USスチール2兆円買収」に動いた必然 経営リスクは覚悟で「脱ドメスティック」に進む、日本製鉄「USスチール2兆円買収」の成否が 日本企業の成長志向の鍵を握るワケ、積水ハウスが米国で7000億円買収!住友林業と大和ハウスを逆転するも 「大博打」に潜むリスク)である。
先ずは、昨年12月20日付け東洋経済オンライン「日本製鉄、「USスチール2兆円買収」に動いた必然 経営リスクは覚悟で「脱ドメスティック」に進む」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/722818
・『「新たな時代におけるグローバルネットワークを構築し、わが国日本の成長力を取り戻す。そのためにチャレンジをいたすことにした」 国内鉄鋼最大手の日本製鉄は12月18日夜、アメリカの老舗、USスチールを約2兆円で買収すると発表した。翌19日の会見で橋本英二社長は、日本製鉄として過去最大となる買収の意義を力を込めて語った』、興味深そうだ。
・『100年以上の歴史と国名を冠する名門同士 USスチールは1901年、銀行家のJPモルガンや鉄鋼王のアンドリュー・カーネギーがかかわる製鉄会社が合併して誕生した、アメリカ産業史を代表する企業。1960年代までは世界最大の鉄鋼会社でもあった。 その後、日本を初めとするアジアメーカーに抜かれて凋落。2022年の粗鋼生産量は世界27位(世界鉄鋼協会)。アメリカの鉄鋼メーカーではニューコア、クリーブランド・クリフス(以下、クリフス)に次ぐ3位である。 一方、日本製鉄の前身である官営八幡製鐵所が操業を開始したのも1901年。ともに100年以上の伝統を持ち、国の名前を冠する企業同士の統合となる。 もっとも19日の株式市場は「ひとまず下げ」の反応だった。 日本製鉄の株価は前日比4.3%の下落で始まり、終値も同2.8%下げた。これにはいくつかの懸念があるからだ。 第1に高値づかみの懸念。 日本製鉄の買収案はUSスチール1株当たり55ドル。発表前の株価39.33ドルに40%のプレミアムを付けた。アメリカ企業の買収で40%のプレミアムはさほど高くはない。 だがUSスチールは、今年8月に身売りを含めた「戦略的選択肢」を検討していると公表。直後、クリフスによる買収提案が公開されたことで株価は上昇した。8月以前の株価は20~30ドルだったこと、クリフスの提案は1兆円前後だったとされることを考えると、プレミアムはかなりのものだ。 第2が買収に伴う財務への影響。 2兆円の買収資金は、国内の主要取引銀行から融資の確約を受けており、いったんは借入金で対応する。このことでDEレシオ(負債資本倍率)は0.5から0.9まで上昇する。 0.9という水準は一般に安全圏とされるが、今後、「経営・財務状況、市場動向などを勘案しながら、必要に応じて、資本構成を評価し最適な資金調達手段を検討する」としており、株式市場が嫌う増資の可能性が残る』、「懸念材料」としては、「高値づかみの懸念」、「買収資金は、国内の主要取引銀行から融資の確約を受けており、いったんは借入金で対応する。このことでDEレシオ(負債資本倍率)は0.5から0.9まで上昇」、なるほど。
・『労働組合が非難の声明 第3がUSスチールが抱える問題。 USスチールは名門ながら業績は長く低迷していた。2021年以降は黒字を保つが、その前の10年のうち7年は最終赤字だ。名門ゆえに高コスト体質で労働組合の経営への関与も強い。 実際、全米鉄鋼労働組合(USW)は労働協約を盾にクリフスによるUSスチール買収を後押ししていた。クリフスの買収提案を拒否したのはUSスチール側だったが、USWは日本製鉄による買収を非難する声明を即座に出した。 記者は8月下旬、日本製鉄の森高弘副社長に、USスチールが売りに出ていることについて見解を尋ねている。森副社長は「買わない」と答えた。水面下で進む買収案件についてメディアに正直に語るはずもないだろう。とはいえ、このときに挙げた買わない理由の中には「組合」もあった。 ただ、こうした懸念は百も承知。そのうえで日本製鉄として過去最大となる2兆円の買収に踏み切ったのは必然性がある。 日本製鉄は、長年の課題だった国内の余剰生産能力を削減、国内大口顧客との「ひも付き価格」の是正や高付加価値化に取り組むことで業績は大幅に改善。2019年度、2020年度の最終赤字から足元では評価損益などを除く実力ベースの事業利益率が2桁パーセント目前になった。 一方、国内生産とほぼ同義の単独粗鋼生産は、2014年度の4823万トンから直近見通しで3500万トンへと縮小してしまった。この先も国内の鉄鋼需要は減少していくとみられており、数量の本格的な反転は期待できない。価格もおよそ適正水準となり、高付加価値化を進めるにしても国内の鉄鋼事業で大きな利益成長は見込めない。 こうした背景から近年、日本製鉄はグローバルでの粗鋼生産能力1億トンの確保を将来ビジョンとして掲げ、海外での成長投資を強化してきた。 2019年には欧州アルセロール・ミタルとの合弁でインド5位の鉄鋼大手を7700億円で買収。2社の合弁会社は2022年にインドに約1兆円の追加投資を敢行し、生産能力や港湾設備を増強している。この年にはタイで電炉メーカーを日本製鉄単独で買収した。このほかミタルとのアメリカ合弁会社で電炉建設にも動いている。 これらによって粗鋼生産能力は足元で6600万トンに達し、USスチールの買収が完了すれば8600万トンになる。さらにインドでの増強、追加の計画まで勘案すれば1億トンを完全に射程圏にとらえている。 規模だけを拡大したところで利益につながるとは限らないが、鉄鋼業は「数量×付加価値」のビジネス。規模の経済が働くことも事実だ』、「日本製鉄はグローバルでの粗鋼生産能力1億トンの確保を将来ビジョンとして掲げ、海外での成長投資を強化してきた・・・USスチールの買収が完了すれば8600万トンになる。さらにインドでの増強、追加の計画まで勘案すれば1億トンを完全に射程圏にとらえている・・・鉄鋼業は「数量×付加価値」のビジネス。規模の経済が働くことも事実だ」、なるほど。
・『成長市場を取り込むには生産能力が必要 力を入れる市場は明確だ。インドは中国に次ぐ世界第2位の市場だが、人口当たり鋼材使用量は日本の約5分の1と成長余力が大きい。日系自動車メーカーの牙城であるタイは、自動車用の高級鋼板の需要が伸びる。 アメリカの需要は先進国で最大となる年間約1億トンあるのに対し、同国内の粗鋼生産量は8000万トン台。トランプ前大統領の時代に鋼材輸入に関税をかけたことでタイトな需給が続く。熱延鋼板を巻き取った「ホットコイル」は、中国経済の落ち込みからアジア市場はトン当たり600ドル台と低迷する中、アメリカ市場では1100ドルをつける。 人口増加も続くうえ、EVシフトを受けて日本製鉄が得意とする電磁鋼板など高付加価値鋼材の需要の伸びが期待できる。こうしたアメリカ市場の成長を享受するには生産能力が必要だ。 「外国の民間企業がグリーンフィールド(草が生えた土地から=イチから)で作るのは難しい。そこに今回の案件が出てきて条件に合った」。橋本社長はそう語る。 USスチールはアメリカ国内だけで高炉を8基(うち2基は休止中)、電炉を3基持っており、さらに2基の電炉を建設中。鋼板や鋼管に加工する下工程の設備も保有している。供給基地としては申し分ない。 加えて自社鉱山で鉄鉱石を100%自給できる点も魅力だ。日本製鉄はこの11月にカナダの鋼材会社へ2000億円、20%出資を決めた。良質な資源権益を囲い込むことは収益安定に加え、脱炭素をにらんでも重要だからだ。) USスチールが2019年に買収した電炉メーカー、ビッグリバースチールの存在も大きい。スクラップや鉄鉱石を天然ガスで還元した「還元鉄」から鉄鋼製品を作る電炉はCO2(二酸化炭素)の排出量が高炉に比べて圧倒的に少ないという利点がある。 反面、電炉では自動車用の高級鋼を作るのが難しいとされる。そうした中、ビッグリバーは「無方向性電磁鋼板」のラインを今年10月に稼働させた。EVで使われる高効率モーターに不可欠な無方向性電磁鋼板では世界で先行する日本製鉄でさえ、電炉での生産は昨年から始めたばかり。 実際、8月に森副社長はUSスチールの魅力としてビッグリバーの存在を挙げていた。ビッグリバーと日本製鉄の技術・設備の相互活用はUSスチール買収のわかりやすいシナジーになるはずだ。 買収の狙いについて橋本社長は、「世界の潮流は新しい経済安全保障。その中でどのように地球規模のニーズに応えるか」とも述べている。 経済安保が重視される時代、アメリカ市場に中国から輸入鋼材が野放図になだれ込むことはない。需給バランスの大崩れがなければ、過去のようにUSスチールが赤字にまみれることはなく、プレミアムを払っても十分にペイするという計算がある。 もちろんリスクは残る。わかりやすいのはUSWの存在だ。ただ、「USスチールが労働組合との間で提携している労働協約を含む……あらゆる約束を守り、引き続き信頼関係の構築に努める」と、日本製鉄はコメントしている。管理可能なリスクと見ているのだろう』、「USW」は「日本製鉄」による買収に反対、バイデン大統領やトランプ氏も反対しているので、かなりハードルは高そうだ。
・『リスクもあるが実入りもある世界へ むしろ最大の課題は日本製鉄自身の経営力のはずだ。 日本製鉄がこれまでに海外で行った大型投資のほとんどはパートナーと組んだものだった。ただ最近のインド合弁は40%出資ながら経営上は対等。さらにタイの買収は単独で行うなど、少しずつ取るリスクを増やしてきた。 「昔は、海外事業はまずリスクをどう減らすかだった。持ち分を減らして利益が少なくなってリスクを減らす。そうではなく、これからはリスクもあるが実入りもある世界に入っていく」。1カ月ほど前の取材で森副社長はこんなことを言っていた。 しかし、USスチールは規模も歴史も異なる。「国の経済、産業を支えてきた。メンタリティも含めて近く、最適なパートナーと感じている」(森副社長)というが、アメリカを背負った伝統とプライドをコントロールできるかはやってみないとわからない。 社名どおり、本質的にはドメスティックで来た日本製鉄がグローバル企業として飛躍できるか。この買収がその分岐点になることは間違いない』、組合や政治家からの反対を如何に乗り切っていくか注目される。
次に、本年1月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「日本製鉄「USスチール2兆円買収」の成否が、日本企業の成長志向の鍵を握るワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336599
・『2024年は日本企業による大型買収がトレンドになるのだろうか? 23年末、日本製鉄が米USスチールを2兆円規模で買収するというビッグニュースが舞い込んだ。台頭する中国勢への対抗策として、米国企業と手をつなぐ意義は非常に大きい。先行きの不透明さはあるものの、買収が実を結び日本製鉄とUSスチールの事業運営の効率性が向上すれば、わが国企業の成長志向にも大きな変化をもたらすはずだ』、「台頭する中国勢への対抗策として、米国企業と手をつなぐ意義は非常に大きい」、その通りだ。
・『買収の成果が日本の成長志向に影響する 2023年12月18日、粗鋼生産量で世界第4位の日本製鉄は、米国の鉄鋼メーカー、ユナイテッド・ステイツ・スチール・コーポレーション(USスチール、世界第27位)の買収を発表した。買収総額は約2兆円、同社にとって最大級の買収案件だ。 日本製鉄の狙いは、粗鋼生産世界トップの中国宝武鋼鉄集団など圧倒的に世界シェアを握る中国鉄鋼メーカーに対抗し、有力鉄鋼メーカーとして生き残ることだろう。買収が実現すれば、日本製鉄の粗鋼生産能力は世界第3位に浮上する。今回の買収は、日本製鉄が鉄鋼メーカーの日米連合を形成し、高付加価値の鋼材分野で世界トップの地位を目指すためにも重要だ。 米当局の承認を得た上で、日本製鉄は24年第2または第3四半期までの買収成立を目指している。成立すれば、新しい鋼材生産のための研究開発などを強化することになるだろう。併せて、国内の高炉休止など事業運営体制の改革を加速することも想定される。 USスチール買収によって日本製鉄は、生き残りを懸け新しい製造技術の確立にチャレンジする決意を内外の利害関係者に明示したともいえる。その成果がどうなるかは、同社の中長期的な事業運営のみならず、わが国産業全体の成長志向にも影響を与えそうだ』、「日本製鉄の狙いは、粗鋼生産世界トップの中国宝武鋼鉄集団など圧倒的に世界シェアを握る中国鉄鋼メーカーに対抗し、有力鉄鋼メーカーとして生き残ることだろう。買収が実現すれば、日本製鉄の粗鋼生産能力は世界第3位に浮上する。今回の買収は、日本製鉄が鉄鋼メーカーの日米連合を形成し、高付加価値の鋼材分野で世界トップの地位を目指すためにも重要だ」、なるほど。
・『日本製鉄がUSスチールを買収する狙い 近年、日本製鉄を取り巻く事業環境は厳しくなっていた。最たる脅威は、中国鉄鋼メーカーの急速なシェア拡大である。USスチールを買収する狙いとしてまず、世界の鉄鋼市場で圧倒的なシェアを持つ中国勢に対抗することが挙げられる。 世界鉄鋼業界のデータによると22年、世界トップ10の鉄鋼メーカーのうち6社が中国勢だった。同年の中国の粗鋼生産量は10億1300万トン。第2位はインドの1億2470万トン、3位が日本製鉄などわが国で8920万トンだ。中国は世界全体の粗鋼生産量(18億3150万トン)の55%を占める。世界最大の鉄鋼メーカーである中国宝武鋼鉄の生産能力は1億3184万トンもある。 基本的に鉄鋼の需要は、GDP(国内総生産)で見た経済成長率に連動する。中国は2000年代以降、工業化の加速を背景に鉄鋼需要が急増。オーストラリアなどから鉄鉱石を大量に輸入し、国内の粗鋼生産能力を拡張してきた。その多くは、中国本土の道路や鉄道などのインフラ整備、マンション建設などの不動産投資に用いられた。 中国政府は、政府系の鉄鋼メーカーの経営統合を進め、世界での地位を盤石なものにした。具体的には、土地の供与や産業補助金政策を強化し、鉄鋼メーカーの価格競争力向上を支えてきた。リーマンショック後に4兆元(当時の為替レートで約57兆円)の経済対策、不動産バブルもあり、中国の粗鋼生産能力は膨張し、過剰になった。 対照的に、1990年初頭、わが国の資産バブルは崩壊した。景気は長期停滞に陥り、鉄鋼需要は減少した。電機産業のようにグローバル化やIT革命などへの対応が遅れ、世界的な競争力を失った業種も多い。 そうした中で、ハイブリッド自動車の誕生のインパクトは大きかった。モーターなどの製造に不可欠な無方向性電磁鋼板の需要が増加したことは、日本製鉄の収益下振れを食い止めた。しかし、中国勢のシェア拡大や国内経済低迷による需要減少の影響は甚大だった。事業環境の悪化に対応するため、日本製鉄は国内の高炉休止を発表し、コスト削減を余儀なくされた』、「1990年初頭、わが国の資産バブルは崩壊した。景気は長期停滞に陥り、鉄鋼需要は減少した・・・ハイブリッド自動車の誕生のインパクトは大きかった。モーターなどの製造に不可欠な無方向性電磁鋼板の需要が増加したことは、日本製鉄の収益下振れを食い止めた」、なるほど。
・『激化する中国鉄鋼メーカーとの競争 最近、中国勢は低価格攻勢を一段と強めてきた。中国の不動産バブル崩壊の影響は大きい。地方政府の財政悪化によって、インフラ投資も停滞気味だ。行き場を失った中国の鉄鋼製品は海外に流出していて、米国や欧州委員会は、中国が鉄鋼の不当廉売(ダンピング)を仕掛けていると警戒を強めていた。 そして、中国勢は製造技術も向上した。特に、EV(電気自動車)のボディーやパーツの製造に必要な熱延鋼板の輸出は増加している。日本製鉄が強みを発揮してきた高付加価値型の鉄鋼製品分野でも、中国勢が追い上げているのだ。中国政府は今後も政府系鉄鋼メーカーへの支援を強化するだろう。 日本製鉄がそうした事業環境の加速度的な変化に対応するためにも、米国企業と手を組む意義は大きい。米バイデン政権は、経済安全保障体制の強化のために産業政策を修正し、EVやそのパーツに中国産の鉱物や部材を使わないよう企業に強く要請している。 また、主要先進国の中でも米国の潜在成長率は相対的に高く、米FRB(連邦準備制度理事会)の推計ではおよそ1.8%。鉄鋼需要も高水準で推移する可能性は高い。日本製鉄にとって、より多くの高付加価値型の鋼材需要を獲得するためにも米国事業を強化することは理にかなっている。 ただし、その際、米国に自力で製鉄所を建設し、生産能力を強化することが最適とは限らない。それよりも、一定の知名度や技術力を持つ海外企業を買収した方が、収益獲得の可能性は高まる。 USスチールは、「鉄鋼王」で知られたアンドリュー・カーネギーが設立に携わり、米国の鉄鋼産業を象徴する企業である。電炉を用いた製鉄体制に強く、鉄鉱石の鉱山も保有する。高炉メーカーとして成長した日本製鉄が、水素を用いて二酸化炭素の排出力の少ない製鉄技法を確立するためにも、USスチールを取り込む意義は大きい』、「USスチールは、「鉄鋼王」で知られたアンドリュー・カーネギーが設立に携わり、米国の鉄鋼産業を象徴する企業である。電炉を用いた製鉄体制に強く、鉄鉱石の鉱山も保有する。高炉メーカーとして成長した日本製鉄が、水素を用いて二酸化炭素の排出力の少ない製鉄技法を確立するためにも、USスチールを取り込む意義は大きい」、なるほど。
・『高付加価値な鋼材の創出力を強化できるか 今後、日本製鉄は持続的に研究開発を強化し、新しい製品を生み出す力を高めなければならない。EVの航続距離を延ばすための高耐久・軽量の薄型鋼板の需要が増えている。電炉を用いて鉄スクラップから高品位な鉄鋼製品を生み出す技術も、世界中が欲している。 そうした需要をどれだけ獲得できるかが、日本製鉄の長期存続を決定づける。USスチール買収を成功に導ければ、さらに他の海外鉄鋼メーカーなどを買収する可能性もある。 それは、粗鋼の生産量もさることながら、付加価値の点で中国勢との差別化を強化することにもつながる。経営陣はそうした展開を念頭に、今回の買収を決断したはずだ。日本製鉄の事業戦略は、国内でのリストラから、海外市場での成長強化へ、転換点を迎えた。 問題は、実行力に尽きる。率直に見て、不確実性は高い。USスチールの買収を発表した後、日本製鉄の株価は下落した。12月下旬、米国の株価は最高値を更新し、今は世界的に株高の傾向である。こうした状況下、買収リスクは大きいと言わざるを得ない。 日本製鉄が2兆円規模の買収負担に耐え、高付加価値の鉄鋼製品の製造技術を磨くことができるかどうか――主要投資家は慎重に考えざるを得ない。米国では、労働組合や一部の議員が買収に反対している。折しも最近は、全米自動車労働組合がストライキを起こしたように、企業経営に対する労働者の影響力が強くなっていることも懸念材料だ。 仮に米国政府の承認を得られたとしても、組織を1つにまとめることが難しければ、日米の鉄鋼メーカーが中国勢に対抗することは難しくなる。そうなると、日本製鉄の業績への懸念も出てきて、買収が事業運営の足かせとなる恐れも増す。 ただ、そうしたリスクも全て覚悟した上で、日本製鉄は買収に踏み切ったはずだ。先行きの不透明さはあるものの、買収が実を結び日本製鉄とUSスチールの事業運営の効率性が向上すれば、わが国企業の成長志向にも大きな変化をもたらすはずだ』、「USスチールの買収を発表した後、日本製鉄の株価は下落した。12月下旬、米国の株価は最高値を更新し、今は世界的に株高の傾向である。こうした状況下、買収リスクは大きいと言わざるを得ない。 日本製鉄が2兆円規模の買収負担に耐え、高付加価値の鉄鋼製品の製造技術を磨くことができるかどうか――主要投資家は慎重に考えざるを得ない・・・企業経営に対する労働者の影響力が強くなっていることも懸念材料だ。 仮に米国政府の承認を得られたとしても、組織を1つにまとめることが難しければ、日米の鉄鋼メーカーが中国勢に対抗することは難しくなる。そうなると、日本製鉄の業績への懸念も出てきて、買収が事業運営の足かせとなる恐れも増す。 ただ、そうしたリスクも全て覚悟した上で、日本製鉄は買収に踏み切ったはずだ。先行きの不透明さはあるものの、買収が実を結び日本製鉄とUSスチールの事業運営の効率性が向上すれば、わが国企業の成長志向にも大きな変化をもたらすはずだ」、バイデン政権、トランプの反対を如何にクリアするか、まだまだヤマ場は見えない。
第三に、本年2月15日付けダイヤモンド・オンライン「積水ハウスが米国で7000億円買収!住友林業と大和ハウスを逆転するも、「大博打」に潜むリスク」を紹介しよう。
・『積水ハウスは7000億円もの巨額を投じて、米国のハウスビルダーを買収する大ばくちに打って出た。巨額買収で、ライバルの住友林業、大和ハウス工業を抜いて全米5位に一挙に躍り出た。特集『住宅メーカー最終決戦!戸建てバブル崩壊秒読み』(全6回)の#5では、大ばくちにリスクの芽は潜んでいないのか、徹底検証した』、興味深そうだ。
・『積水ハウス仲井社長「全米5位」を強調 規模拡大を追った巨額買収の成否 「全米5位」「1万5000戸」。積水ハウスが1月18日に開いた、米国のハウスビルダー、M.D.C.ホールディングス(以下、MDC)の買収発表の記者会見。積水ハウスの仲井嘉浩代表取締役社長は、その二つの言葉を繰り返し、買収のメリットを強調した。 国内の一戸建て市場は、人口減少に伴い縮小が避けられない状況だ。それを見据え日本のハウスメーカーは、今後も人口増加が見込まれ一戸建ての需要が堅調な米国市場に相次ぎ進出している。 先行するのは2003年に進出した住友林業だ。大和ハウス工業は1976年に進出したが、84年に撤退。その後17年に再進出を果たしている。そして、積水ハウスも17年に米市場に参入した。米市場において、積水ハウスは国内ハウスメーカー3強の中では3位だったが、MDC買収によって大逆転。一戸建て供給戸数のランキングで、全米5位にまで一気に躍り出たのだった。 (図表:ハウスメーカー3強の米国での一戸建供給数はリンク先参照) 「明らかに住友林業と大和ハウスを逆転することを意識して規模を追った買収だ。それにしても7000億円という金額には驚いた。思い切って勝負に出たんだろう」。大手ハウスメーカー関係者は、そう話す。 積水ハウスにとって過去最大の巨額買収に対し、株式市場は好感した。MDC買収を発表した翌日1月19日の積水ハウスの終値は、前日比2.8%増の3390円に上昇した。 しかし、積水ハウスの巨額買収に疑問符を付けたのが、米格付け会社のS&Pグローバル・レーティングだ。 S&Pは1月22日、積水ハウスの長期格付けを「A」から格下げ方向で見直す「クレジットウオッチ」に指定したと発表。買収に伴って有利子負債が膨らみ、財務内容が大幅に悪化することをネガティブと判断したのだ。 これを受け、積水ハウスの株価は下落に転じた。2月9日時点の終値は3259円で、MDC買収を発表する前に比べて47円落ち込んだ。 MDC買収で、積水ハウスの有利子負債は、金融機関からの借入金とMDC既存の有利子負債を合わせて8400億円程度にまで膨らむ見込み。買収完了から1年以内に、一部を資本と見なせる「ハイブリッド債」を発行し、財務体質を改善する方針だが、一時的には大幅な財務基盤の悪化は避けられない。 財務基盤を損ねてまで大勝負に出た積水ハウス。果たして、巨額買収は成就するのか。実は、そこには、三つのリスクが潜んでいる。 次ページでは、大ばくちに打って出た積水ハウスがはらむ三つのリスクを解き明かす。海外企業のM&A(企業の合併・買収)に踏み切った数多くの日本企業を苦しめてきた「古くて新しい」難題が、積水ハウスを悩ませるかもしれない』、「S&Pは1月22日、積水ハウスの長期格付けを「A」から格下げ方向で見直す「クレジットウオッチ」に指定したと発表。買収に伴って有利子負債が膨らみ、財務内容が大幅に悪化することをネガティブと判断したのだ。 これを受け、積水ハウスの株価は下落に転じた。2月9日時点の終値は3259円で、MDC買収を発表する前に比べて47円落ち込んだ。 MDC買収で、積水ハウスの有利子負債は、金融機関からの借入金とMDC既存の有利子負債を合わせて8400億円程度にまで膨らむ見込み。買収完了から1年以内に、一部を資本と見なせる「ハイブリッド債」を発行し、財務体質を改善する方針だが、一時的には大幅な財務基盤の悪化は避けられない」、なるほど。
・『積水ハウスより収益性が高いMDCをマネジメントできるのか リスクの一つ目は、収益性の悪化である。 MDCの純資産は23年12月期時点で、1ドル=145円換算で約4900億円(約33億7788万ドル)。積水ハウスは7000億円超でMDCを買収するため、買収額と純資産額の差である「のれん代」は少なくとも2000億円に上るとみられる。 積水ハウスは日本の会計基準を採用しているため、20年以内で規則的にのれん代を償却することになる見通し。のれん代の償却だけで毎年100億円程度に上るとみられ、収益性の悪化は避けられない。 そして、落とし穴になりかねないのが、収益性を改善するために、さまざまな投資や経費支出を抑制することだ。これは、本業へのブレーキにもなりかねず、現場のモチベーション悪化など負の連鎖を招く恐れがある。 二つ目のリスクは、米国の政策金利の動向だ。 日本の中央銀行に当たるFRB(米連邦準備制度理事会)は22年3月から、新型コロナウイルスの感染拡大に端を発したインフレを退治するために急ピッチで利上げを続けてきた。これに伴い、米国の住宅ローン金利も上昇。22年度は需要が冷え込み、米国に進出していた日本のハウスメーカーは、ダメージを被った。 FRBは23年9月から政策金利を据え置き、政策金利も住宅ローン金利も高止まりしている。一時は冷え込んだ一戸建て住宅の需要は回復し、23年12月の米住宅着工許可件数(一戸建て)は前月比1.7%増で、11カ月連続のプラスとなっている。 米国ではインフレが収束しつつあり、FRBが24年後半にも利下げに踏み切るという市場観測が出ている。これは、住宅ローン金利の引き下げにつながり、住宅市場には追い風である。ただし、楽観視はできない。 FRBによる金融引き締めにかかわらず、米国経済は好調を維持している。利下げによって景気が過熱し、インフレが再燃する可能性もある。インフレの再燃は米国経済にブレーキをかける恐れがあり、FRBはまだ利下げについては慎重に検討している。金利が低下したとしても、在庫の増加で、需要が新築住宅から中古住宅に移る可能性もある。 そして、三つ目の最大のリスクは、PMI(買収後の統合)だ。海外企業のM&Aを手掛けてきた日本企業が幾度も苦しんだ「古くて新しい」難題だ。東芝、丸紅、キリンホールディングス、NTTドコモ……。海外企業のM&Aを手掛けた日本企業が返り討ちに遭い、巨額減損に追い込まれた事例は、枚挙にいとまがない。 積水ハウスはMDC買収によって、米国戸建て事業の展開エリアが8州から16州にまで拡大する。ある市場関係者は「1+1=2では、買収の意味が全くない。これほどの巨額買収を経験したことがない積水ハウスが、MDCとのシナジーを早期に実現できるかどうかが最大の焦点」とみる。 (図表:ハウスメーカー3強の米国進出マップはリンク先参照) 仲井社長はMDC買収の記者会見で、これまで買収を手掛けた米国ハウスビルダー3社のPMIの実績を強調し、MDCとのPMIにも自信をのぞかせる。ただし、積水ハウスがこれまで米国で経験を積んだPMIとは規模が異なり、早期にシナジーを発揮できるかどうかは不透明だ。 企業規模でいえば、積水ハウスがMDCよりも格上ではあるものの、企業の収益性指標であるROE(自己資本利益率)、資産価値が割高か割安かを判断する目安のPBR(株価純資産倍率)では、MDCが積水ハウスをいずれも上回るのだ。 (図表:積水ハウスとM.D.C.ホールディングスの比較 はリンク先参照) 仲井社長は米国でのM&A戦略について、「積水ハウステクノロジーの移植」を掲げている。「上から目線」ではなく、丁寧にPMIを進めなければ、巨額の減損リスクを抱えることになる。 国内は安定成長、海外は積極的成長――。二兎を追って大勝負に出た積水ハウスの未知の挑戦が、いよいよ始まろうとしている。 Key Visual:SHIKI DESIGN OFFICE, Kanako Onda, Graphic:Daddy’s Home 【訂正】記事の初出時より以下の通り訂正します。 2ページ目最初の図版:住友林業 15州→住友林業 16州 (2024年2月16日19:08 ダイヤモンド編集部)』、「これほどの巨額買収を経験したことがない積水ハウスが、MDCとのシナジーを早期に実現できるかどうかが最大の焦点・・・これまで買収を手掛けた米国ハウスビルダー3社のPMIの実績を強調し、MDCとのPMIにも自信をのぞかせる。ただし、積水ハウスがこれまで米国で経験を積んだPMIとは規模が異なり、早期にシナジーを発揮できるかどうかは不透明だ・・・国内は安定成長、海外は積極的成長――。二兎を追って大勝負に出た積水ハウスの未知の挑戦が、いよいよ始まろうとしている」、やや乱暴なディールと言う感じが拭えない。
先ずは、昨年12月20日付け東洋経済オンライン「日本製鉄、「USスチール2兆円買収」に動いた必然 経営リスクは覚悟で「脱ドメスティック」に進む」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/722818
・『「新たな時代におけるグローバルネットワークを構築し、わが国日本の成長力を取り戻す。そのためにチャレンジをいたすことにした」 国内鉄鋼最大手の日本製鉄は12月18日夜、アメリカの老舗、USスチールを約2兆円で買収すると発表した。翌19日の会見で橋本英二社長は、日本製鉄として過去最大となる買収の意義を力を込めて語った』、興味深そうだ。
・『100年以上の歴史と国名を冠する名門同士 USスチールは1901年、銀行家のJPモルガンや鉄鋼王のアンドリュー・カーネギーがかかわる製鉄会社が合併して誕生した、アメリカ産業史を代表する企業。1960年代までは世界最大の鉄鋼会社でもあった。 その後、日本を初めとするアジアメーカーに抜かれて凋落。2022年の粗鋼生産量は世界27位(世界鉄鋼協会)。アメリカの鉄鋼メーカーではニューコア、クリーブランド・クリフス(以下、クリフス)に次ぐ3位である。 一方、日本製鉄の前身である官営八幡製鐵所が操業を開始したのも1901年。ともに100年以上の伝統を持ち、国の名前を冠する企業同士の統合となる。 もっとも19日の株式市場は「ひとまず下げ」の反応だった。 日本製鉄の株価は前日比4.3%の下落で始まり、終値も同2.8%下げた。これにはいくつかの懸念があるからだ。 第1に高値づかみの懸念。 日本製鉄の買収案はUSスチール1株当たり55ドル。発表前の株価39.33ドルに40%のプレミアムを付けた。アメリカ企業の買収で40%のプレミアムはさほど高くはない。 だがUSスチールは、今年8月に身売りを含めた「戦略的選択肢」を検討していると公表。直後、クリフスによる買収提案が公開されたことで株価は上昇した。8月以前の株価は20~30ドルだったこと、クリフスの提案は1兆円前後だったとされることを考えると、プレミアムはかなりのものだ。 第2が買収に伴う財務への影響。 2兆円の買収資金は、国内の主要取引銀行から融資の確約を受けており、いったんは借入金で対応する。このことでDEレシオ(負債資本倍率)は0.5から0.9まで上昇する。 0.9という水準は一般に安全圏とされるが、今後、「経営・財務状況、市場動向などを勘案しながら、必要に応じて、資本構成を評価し最適な資金調達手段を検討する」としており、株式市場が嫌う増資の可能性が残る』、「懸念材料」としては、「高値づかみの懸念」、「買収資金は、国内の主要取引銀行から融資の確約を受けており、いったんは借入金で対応する。このことでDEレシオ(負債資本倍率)は0.5から0.9まで上昇」、なるほど。
・『労働組合が非難の声明 第3がUSスチールが抱える問題。 USスチールは名門ながら業績は長く低迷していた。2021年以降は黒字を保つが、その前の10年のうち7年は最終赤字だ。名門ゆえに高コスト体質で労働組合の経営への関与も強い。 実際、全米鉄鋼労働組合(USW)は労働協約を盾にクリフスによるUSスチール買収を後押ししていた。クリフスの買収提案を拒否したのはUSスチール側だったが、USWは日本製鉄による買収を非難する声明を即座に出した。 記者は8月下旬、日本製鉄の森高弘副社長に、USスチールが売りに出ていることについて見解を尋ねている。森副社長は「買わない」と答えた。水面下で進む買収案件についてメディアに正直に語るはずもないだろう。とはいえ、このときに挙げた買わない理由の中には「組合」もあった。 ただ、こうした懸念は百も承知。そのうえで日本製鉄として過去最大となる2兆円の買収に踏み切ったのは必然性がある。 日本製鉄は、長年の課題だった国内の余剰生産能力を削減、国内大口顧客との「ひも付き価格」の是正や高付加価値化に取り組むことで業績は大幅に改善。2019年度、2020年度の最終赤字から足元では評価損益などを除く実力ベースの事業利益率が2桁パーセント目前になった。 一方、国内生産とほぼ同義の単独粗鋼生産は、2014年度の4823万トンから直近見通しで3500万トンへと縮小してしまった。この先も国内の鉄鋼需要は減少していくとみられており、数量の本格的な反転は期待できない。価格もおよそ適正水準となり、高付加価値化を進めるにしても国内の鉄鋼事業で大きな利益成長は見込めない。 こうした背景から近年、日本製鉄はグローバルでの粗鋼生産能力1億トンの確保を将来ビジョンとして掲げ、海外での成長投資を強化してきた。 2019年には欧州アルセロール・ミタルとの合弁でインド5位の鉄鋼大手を7700億円で買収。2社の合弁会社は2022年にインドに約1兆円の追加投資を敢行し、生産能力や港湾設備を増強している。この年にはタイで電炉メーカーを日本製鉄単独で買収した。このほかミタルとのアメリカ合弁会社で電炉建設にも動いている。 これらによって粗鋼生産能力は足元で6600万トンに達し、USスチールの買収が完了すれば8600万トンになる。さらにインドでの増強、追加の計画まで勘案すれば1億トンを完全に射程圏にとらえている。 規模だけを拡大したところで利益につながるとは限らないが、鉄鋼業は「数量×付加価値」のビジネス。規模の経済が働くことも事実だ』、「日本製鉄はグローバルでの粗鋼生産能力1億トンの確保を将来ビジョンとして掲げ、海外での成長投資を強化してきた・・・USスチールの買収が完了すれば8600万トンになる。さらにインドでの増強、追加の計画まで勘案すれば1億トンを完全に射程圏にとらえている・・・鉄鋼業は「数量×付加価値」のビジネス。規模の経済が働くことも事実だ」、なるほど。
・『成長市場を取り込むには生産能力が必要 力を入れる市場は明確だ。インドは中国に次ぐ世界第2位の市場だが、人口当たり鋼材使用量は日本の約5分の1と成長余力が大きい。日系自動車メーカーの牙城であるタイは、自動車用の高級鋼板の需要が伸びる。 アメリカの需要は先進国で最大となる年間約1億トンあるのに対し、同国内の粗鋼生産量は8000万トン台。トランプ前大統領の時代に鋼材輸入に関税をかけたことでタイトな需給が続く。熱延鋼板を巻き取った「ホットコイル」は、中国経済の落ち込みからアジア市場はトン当たり600ドル台と低迷する中、アメリカ市場では1100ドルをつける。 人口増加も続くうえ、EVシフトを受けて日本製鉄が得意とする電磁鋼板など高付加価値鋼材の需要の伸びが期待できる。こうしたアメリカ市場の成長を享受するには生産能力が必要だ。 「外国の民間企業がグリーンフィールド(草が生えた土地から=イチから)で作るのは難しい。そこに今回の案件が出てきて条件に合った」。橋本社長はそう語る。 USスチールはアメリカ国内だけで高炉を8基(うち2基は休止中)、電炉を3基持っており、さらに2基の電炉を建設中。鋼板や鋼管に加工する下工程の設備も保有している。供給基地としては申し分ない。 加えて自社鉱山で鉄鉱石を100%自給できる点も魅力だ。日本製鉄はこの11月にカナダの鋼材会社へ2000億円、20%出資を決めた。良質な資源権益を囲い込むことは収益安定に加え、脱炭素をにらんでも重要だからだ。) USスチールが2019年に買収した電炉メーカー、ビッグリバースチールの存在も大きい。スクラップや鉄鉱石を天然ガスで還元した「還元鉄」から鉄鋼製品を作る電炉はCO2(二酸化炭素)の排出量が高炉に比べて圧倒的に少ないという利点がある。 反面、電炉では自動車用の高級鋼を作るのが難しいとされる。そうした中、ビッグリバーは「無方向性電磁鋼板」のラインを今年10月に稼働させた。EVで使われる高効率モーターに不可欠な無方向性電磁鋼板では世界で先行する日本製鉄でさえ、電炉での生産は昨年から始めたばかり。 実際、8月に森副社長はUSスチールの魅力としてビッグリバーの存在を挙げていた。ビッグリバーと日本製鉄の技術・設備の相互活用はUSスチール買収のわかりやすいシナジーになるはずだ。 買収の狙いについて橋本社長は、「世界の潮流は新しい経済安全保障。その中でどのように地球規模のニーズに応えるか」とも述べている。 経済安保が重視される時代、アメリカ市場に中国から輸入鋼材が野放図になだれ込むことはない。需給バランスの大崩れがなければ、過去のようにUSスチールが赤字にまみれることはなく、プレミアムを払っても十分にペイするという計算がある。 もちろんリスクは残る。わかりやすいのはUSWの存在だ。ただ、「USスチールが労働組合との間で提携している労働協約を含む……あらゆる約束を守り、引き続き信頼関係の構築に努める」と、日本製鉄はコメントしている。管理可能なリスクと見ているのだろう』、「USW」は「日本製鉄」による買収に反対、バイデン大統領やトランプ氏も反対しているので、かなりハードルは高そうだ。
・『リスクもあるが実入りもある世界へ むしろ最大の課題は日本製鉄自身の経営力のはずだ。 日本製鉄がこれまでに海外で行った大型投資のほとんどはパートナーと組んだものだった。ただ最近のインド合弁は40%出資ながら経営上は対等。さらにタイの買収は単独で行うなど、少しずつ取るリスクを増やしてきた。 「昔は、海外事業はまずリスクをどう減らすかだった。持ち分を減らして利益が少なくなってリスクを減らす。そうではなく、これからはリスクもあるが実入りもある世界に入っていく」。1カ月ほど前の取材で森副社長はこんなことを言っていた。 しかし、USスチールは規模も歴史も異なる。「国の経済、産業を支えてきた。メンタリティも含めて近く、最適なパートナーと感じている」(森副社長)というが、アメリカを背負った伝統とプライドをコントロールできるかはやってみないとわからない。 社名どおり、本質的にはドメスティックで来た日本製鉄がグローバル企業として飛躍できるか。この買収がその分岐点になることは間違いない』、組合や政治家からの反対を如何に乗り切っていくか注目される。
次に、本年1月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「日本製鉄「USスチール2兆円買収」の成否が、日本企業の成長志向の鍵を握るワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336599
・『2024年は日本企業による大型買収がトレンドになるのだろうか? 23年末、日本製鉄が米USスチールを2兆円規模で買収するというビッグニュースが舞い込んだ。台頭する中国勢への対抗策として、米国企業と手をつなぐ意義は非常に大きい。先行きの不透明さはあるものの、買収が実を結び日本製鉄とUSスチールの事業運営の効率性が向上すれば、わが国企業の成長志向にも大きな変化をもたらすはずだ』、「台頭する中国勢への対抗策として、米国企業と手をつなぐ意義は非常に大きい」、その通りだ。
・『買収の成果が日本の成長志向に影響する 2023年12月18日、粗鋼生産量で世界第4位の日本製鉄は、米国の鉄鋼メーカー、ユナイテッド・ステイツ・スチール・コーポレーション(USスチール、世界第27位)の買収を発表した。買収総額は約2兆円、同社にとって最大級の買収案件だ。 日本製鉄の狙いは、粗鋼生産世界トップの中国宝武鋼鉄集団など圧倒的に世界シェアを握る中国鉄鋼メーカーに対抗し、有力鉄鋼メーカーとして生き残ることだろう。買収が実現すれば、日本製鉄の粗鋼生産能力は世界第3位に浮上する。今回の買収は、日本製鉄が鉄鋼メーカーの日米連合を形成し、高付加価値の鋼材分野で世界トップの地位を目指すためにも重要だ。 米当局の承認を得た上で、日本製鉄は24年第2または第3四半期までの買収成立を目指している。成立すれば、新しい鋼材生産のための研究開発などを強化することになるだろう。併せて、国内の高炉休止など事業運営体制の改革を加速することも想定される。 USスチール買収によって日本製鉄は、生き残りを懸け新しい製造技術の確立にチャレンジする決意を内外の利害関係者に明示したともいえる。その成果がどうなるかは、同社の中長期的な事業運営のみならず、わが国産業全体の成長志向にも影響を与えそうだ』、「日本製鉄の狙いは、粗鋼生産世界トップの中国宝武鋼鉄集団など圧倒的に世界シェアを握る中国鉄鋼メーカーに対抗し、有力鉄鋼メーカーとして生き残ることだろう。買収が実現すれば、日本製鉄の粗鋼生産能力は世界第3位に浮上する。今回の買収は、日本製鉄が鉄鋼メーカーの日米連合を形成し、高付加価値の鋼材分野で世界トップの地位を目指すためにも重要だ」、なるほど。
・『日本製鉄がUSスチールを買収する狙い 近年、日本製鉄を取り巻く事業環境は厳しくなっていた。最たる脅威は、中国鉄鋼メーカーの急速なシェア拡大である。USスチールを買収する狙いとしてまず、世界の鉄鋼市場で圧倒的なシェアを持つ中国勢に対抗することが挙げられる。 世界鉄鋼業界のデータによると22年、世界トップ10の鉄鋼メーカーのうち6社が中国勢だった。同年の中国の粗鋼生産量は10億1300万トン。第2位はインドの1億2470万トン、3位が日本製鉄などわが国で8920万トンだ。中国は世界全体の粗鋼生産量(18億3150万トン)の55%を占める。世界最大の鉄鋼メーカーである中国宝武鋼鉄の生産能力は1億3184万トンもある。 基本的に鉄鋼の需要は、GDP(国内総生産)で見た経済成長率に連動する。中国は2000年代以降、工業化の加速を背景に鉄鋼需要が急増。オーストラリアなどから鉄鉱石を大量に輸入し、国内の粗鋼生産能力を拡張してきた。その多くは、中国本土の道路や鉄道などのインフラ整備、マンション建設などの不動産投資に用いられた。 中国政府は、政府系の鉄鋼メーカーの経営統合を進め、世界での地位を盤石なものにした。具体的には、土地の供与や産業補助金政策を強化し、鉄鋼メーカーの価格競争力向上を支えてきた。リーマンショック後に4兆元(当時の為替レートで約57兆円)の経済対策、不動産バブルもあり、中国の粗鋼生産能力は膨張し、過剰になった。 対照的に、1990年初頭、わが国の資産バブルは崩壊した。景気は長期停滞に陥り、鉄鋼需要は減少した。電機産業のようにグローバル化やIT革命などへの対応が遅れ、世界的な競争力を失った業種も多い。 そうした中で、ハイブリッド自動車の誕生のインパクトは大きかった。モーターなどの製造に不可欠な無方向性電磁鋼板の需要が増加したことは、日本製鉄の収益下振れを食い止めた。しかし、中国勢のシェア拡大や国内経済低迷による需要減少の影響は甚大だった。事業環境の悪化に対応するため、日本製鉄は国内の高炉休止を発表し、コスト削減を余儀なくされた』、「1990年初頭、わが国の資産バブルは崩壊した。景気は長期停滞に陥り、鉄鋼需要は減少した・・・ハイブリッド自動車の誕生のインパクトは大きかった。モーターなどの製造に不可欠な無方向性電磁鋼板の需要が増加したことは、日本製鉄の収益下振れを食い止めた」、なるほど。
・『激化する中国鉄鋼メーカーとの競争 最近、中国勢は低価格攻勢を一段と強めてきた。中国の不動産バブル崩壊の影響は大きい。地方政府の財政悪化によって、インフラ投資も停滞気味だ。行き場を失った中国の鉄鋼製品は海外に流出していて、米国や欧州委員会は、中国が鉄鋼の不当廉売(ダンピング)を仕掛けていると警戒を強めていた。 そして、中国勢は製造技術も向上した。特に、EV(電気自動車)のボディーやパーツの製造に必要な熱延鋼板の輸出は増加している。日本製鉄が強みを発揮してきた高付加価値型の鉄鋼製品分野でも、中国勢が追い上げているのだ。中国政府は今後も政府系鉄鋼メーカーへの支援を強化するだろう。 日本製鉄がそうした事業環境の加速度的な変化に対応するためにも、米国企業と手を組む意義は大きい。米バイデン政権は、経済安全保障体制の強化のために産業政策を修正し、EVやそのパーツに中国産の鉱物や部材を使わないよう企業に強く要請している。 また、主要先進国の中でも米国の潜在成長率は相対的に高く、米FRB(連邦準備制度理事会)の推計ではおよそ1.8%。鉄鋼需要も高水準で推移する可能性は高い。日本製鉄にとって、より多くの高付加価値型の鋼材需要を獲得するためにも米国事業を強化することは理にかなっている。 ただし、その際、米国に自力で製鉄所を建設し、生産能力を強化することが最適とは限らない。それよりも、一定の知名度や技術力を持つ海外企業を買収した方が、収益獲得の可能性は高まる。 USスチールは、「鉄鋼王」で知られたアンドリュー・カーネギーが設立に携わり、米国の鉄鋼産業を象徴する企業である。電炉を用いた製鉄体制に強く、鉄鉱石の鉱山も保有する。高炉メーカーとして成長した日本製鉄が、水素を用いて二酸化炭素の排出力の少ない製鉄技法を確立するためにも、USスチールを取り込む意義は大きい』、「USスチールは、「鉄鋼王」で知られたアンドリュー・カーネギーが設立に携わり、米国の鉄鋼産業を象徴する企業である。電炉を用いた製鉄体制に強く、鉄鉱石の鉱山も保有する。高炉メーカーとして成長した日本製鉄が、水素を用いて二酸化炭素の排出力の少ない製鉄技法を確立するためにも、USスチールを取り込む意義は大きい」、なるほど。
・『高付加価値な鋼材の創出力を強化できるか 今後、日本製鉄は持続的に研究開発を強化し、新しい製品を生み出す力を高めなければならない。EVの航続距離を延ばすための高耐久・軽量の薄型鋼板の需要が増えている。電炉を用いて鉄スクラップから高品位な鉄鋼製品を生み出す技術も、世界中が欲している。 そうした需要をどれだけ獲得できるかが、日本製鉄の長期存続を決定づける。USスチール買収を成功に導ければ、さらに他の海外鉄鋼メーカーなどを買収する可能性もある。 それは、粗鋼の生産量もさることながら、付加価値の点で中国勢との差別化を強化することにもつながる。経営陣はそうした展開を念頭に、今回の買収を決断したはずだ。日本製鉄の事業戦略は、国内でのリストラから、海外市場での成長強化へ、転換点を迎えた。 問題は、実行力に尽きる。率直に見て、不確実性は高い。USスチールの買収を発表した後、日本製鉄の株価は下落した。12月下旬、米国の株価は最高値を更新し、今は世界的に株高の傾向である。こうした状況下、買収リスクは大きいと言わざるを得ない。 日本製鉄が2兆円規模の買収負担に耐え、高付加価値の鉄鋼製品の製造技術を磨くことができるかどうか――主要投資家は慎重に考えざるを得ない。米国では、労働組合や一部の議員が買収に反対している。折しも最近は、全米自動車労働組合がストライキを起こしたように、企業経営に対する労働者の影響力が強くなっていることも懸念材料だ。 仮に米国政府の承認を得られたとしても、組織を1つにまとめることが難しければ、日米の鉄鋼メーカーが中国勢に対抗することは難しくなる。そうなると、日本製鉄の業績への懸念も出てきて、買収が事業運営の足かせとなる恐れも増す。 ただ、そうしたリスクも全て覚悟した上で、日本製鉄は買収に踏み切ったはずだ。先行きの不透明さはあるものの、買収が実を結び日本製鉄とUSスチールの事業運営の効率性が向上すれば、わが国企業の成長志向にも大きな変化をもたらすはずだ』、「USスチールの買収を発表した後、日本製鉄の株価は下落した。12月下旬、米国の株価は最高値を更新し、今は世界的に株高の傾向である。こうした状況下、買収リスクは大きいと言わざるを得ない。 日本製鉄が2兆円規模の買収負担に耐え、高付加価値の鉄鋼製品の製造技術を磨くことができるかどうか――主要投資家は慎重に考えざるを得ない・・・企業経営に対する労働者の影響力が強くなっていることも懸念材料だ。 仮に米国政府の承認を得られたとしても、組織を1つにまとめることが難しければ、日米の鉄鋼メーカーが中国勢に対抗することは難しくなる。そうなると、日本製鉄の業績への懸念も出てきて、買収が事業運営の足かせとなる恐れも増す。 ただ、そうしたリスクも全て覚悟した上で、日本製鉄は買収に踏み切ったはずだ。先行きの不透明さはあるものの、買収が実を結び日本製鉄とUSスチールの事業運営の効率性が向上すれば、わが国企業の成長志向にも大きな変化をもたらすはずだ」、バイデン政権、トランプの反対を如何にクリアするか、まだまだヤマ場は見えない。
第三に、本年2月15日付けダイヤモンド・オンライン「積水ハウスが米国で7000億円買収!住友林業と大和ハウスを逆転するも、「大博打」に潜むリスク」を紹介しよう。
・『積水ハウスは7000億円もの巨額を投じて、米国のハウスビルダーを買収する大ばくちに打って出た。巨額買収で、ライバルの住友林業、大和ハウス工業を抜いて全米5位に一挙に躍り出た。特集『住宅メーカー最終決戦!戸建てバブル崩壊秒読み』(全6回)の#5では、大ばくちにリスクの芽は潜んでいないのか、徹底検証した』、興味深そうだ。
・『積水ハウス仲井社長「全米5位」を強調 規模拡大を追った巨額買収の成否 「全米5位」「1万5000戸」。積水ハウスが1月18日に開いた、米国のハウスビルダー、M.D.C.ホールディングス(以下、MDC)の買収発表の記者会見。積水ハウスの仲井嘉浩代表取締役社長は、その二つの言葉を繰り返し、買収のメリットを強調した。 国内の一戸建て市場は、人口減少に伴い縮小が避けられない状況だ。それを見据え日本のハウスメーカーは、今後も人口増加が見込まれ一戸建ての需要が堅調な米国市場に相次ぎ進出している。 先行するのは2003年に進出した住友林業だ。大和ハウス工業は1976年に進出したが、84年に撤退。その後17年に再進出を果たしている。そして、積水ハウスも17年に米市場に参入した。米市場において、積水ハウスは国内ハウスメーカー3強の中では3位だったが、MDC買収によって大逆転。一戸建て供給戸数のランキングで、全米5位にまで一気に躍り出たのだった。 (図表:ハウスメーカー3強の米国での一戸建供給数はリンク先参照) 「明らかに住友林業と大和ハウスを逆転することを意識して規模を追った買収だ。それにしても7000億円という金額には驚いた。思い切って勝負に出たんだろう」。大手ハウスメーカー関係者は、そう話す。 積水ハウスにとって過去最大の巨額買収に対し、株式市場は好感した。MDC買収を発表した翌日1月19日の積水ハウスの終値は、前日比2.8%増の3390円に上昇した。 しかし、積水ハウスの巨額買収に疑問符を付けたのが、米格付け会社のS&Pグローバル・レーティングだ。 S&Pは1月22日、積水ハウスの長期格付けを「A」から格下げ方向で見直す「クレジットウオッチ」に指定したと発表。買収に伴って有利子負債が膨らみ、財務内容が大幅に悪化することをネガティブと判断したのだ。 これを受け、積水ハウスの株価は下落に転じた。2月9日時点の終値は3259円で、MDC買収を発表する前に比べて47円落ち込んだ。 MDC買収で、積水ハウスの有利子負債は、金融機関からの借入金とMDC既存の有利子負債を合わせて8400億円程度にまで膨らむ見込み。買収完了から1年以内に、一部を資本と見なせる「ハイブリッド債」を発行し、財務体質を改善する方針だが、一時的には大幅な財務基盤の悪化は避けられない。 財務基盤を損ねてまで大勝負に出た積水ハウス。果たして、巨額買収は成就するのか。実は、そこには、三つのリスクが潜んでいる。 次ページでは、大ばくちに打って出た積水ハウスがはらむ三つのリスクを解き明かす。海外企業のM&A(企業の合併・買収)に踏み切った数多くの日本企業を苦しめてきた「古くて新しい」難題が、積水ハウスを悩ませるかもしれない』、「S&Pは1月22日、積水ハウスの長期格付けを「A」から格下げ方向で見直す「クレジットウオッチ」に指定したと発表。買収に伴って有利子負債が膨らみ、財務内容が大幅に悪化することをネガティブと判断したのだ。 これを受け、積水ハウスの株価は下落に転じた。2月9日時点の終値は3259円で、MDC買収を発表する前に比べて47円落ち込んだ。 MDC買収で、積水ハウスの有利子負債は、金融機関からの借入金とMDC既存の有利子負債を合わせて8400億円程度にまで膨らむ見込み。買収完了から1年以内に、一部を資本と見なせる「ハイブリッド債」を発行し、財務体質を改善する方針だが、一時的には大幅な財務基盤の悪化は避けられない」、なるほど。
・『積水ハウスより収益性が高いMDCをマネジメントできるのか リスクの一つ目は、収益性の悪化である。 MDCの純資産は23年12月期時点で、1ドル=145円換算で約4900億円(約33億7788万ドル)。積水ハウスは7000億円超でMDCを買収するため、買収額と純資産額の差である「のれん代」は少なくとも2000億円に上るとみられる。 積水ハウスは日本の会計基準を採用しているため、20年以内で規則的にのれん代を償却することになる見通し。のれん代の償却だけで毎年100億円程度に上るとみられ、収益性の悪化は避けられない。 そして、落とし穴になりかねないのが、収益性を改善するために、さまざまな投資や経費支出を抑制することだ。これは、本業へのブレーキにもなりかねず、現場のモチベーション悪化など負の連鎖を招く恐れがある。 二つ目のリスクは、米国の政策金利の動向だ。 日本の中央銀行に当たるFRB(米連邦準備制度理事会)は22年3月から、新型コロナウイルスの感染拡大に端を発したインフレを退治するために急ピッチで利上げを続けてきた。これに伴い、米国の住宅ローン金利も上昇。22年度は需要が冷え込み、米国に進出していた日本のハウスメーカーは、ダメージを被った。 FRBは23年9月から政策金利を据え置き、政策金利も住宅ローン金利も高止まりしている。一時は冷え込んだ一戸建て住宅の需要は回復し、23年12月の米住宅着工許可件数(一戸建て)は前月比1.7%増で、11カ月連続のプラスとなっている。 米国ではインフレが収束しつつあり、FRBが24年後半にも利下げに踏み切るという市場観測が出ている。これは、住宅ローン金利の引き下げにつながり、住宅市場には追い風である。ただし、楽観視はできない。 FRBによる金融引き締めにかかわらず、米国経済は好調を維持している。利下げによって景気が過熱し、インフレが再燃する可能性もある。インフレの再燃は米国経済にブレーキをかける恐れがあり、FRBはまだ利下げについては慎重に検討している。金利が低下したとしても、在庫の増加で、需要が新築住宅から中古住宅に移る可能性もある。 そして、三つ目の最大のリスクは、PMI(買収後の統合)だ。海外企業のM&Aを手掛けてきた日本企業が幾度も苦しんだ「古くて新しい」難題だ。東芝、丸紅、キリンホールディングス、NTTドコモ……。海外企業のM&Aを手掛けた日本企業が返り討ちに遭い、巨額減損に追い込まれた事例は、枚挙にいとまがない。 積水ハウスはMDC買収によって、米国戸建て事業の展開エリアが8州から16州にまで拡大する。ある市場関係者は「1+1=2では、買収の意味が全くない。これほどの巨額買収を経験したことがない積水ハウスが、MDCとのシナジーを早期に実現できるかどうかが最大の焦点」とみる。 (図表:ハウスメーカー3強の米国進出マップはリンク先参照) 仲井社長はMDC買収の記者会見で、これまで買収を手掛けた米国ハウスビルダー3社のPMIの実績を強調し、MDCとのPMIにも自信をのぞかせる。ただし、積水ハウスがこれまで米国で経験を積んだPMIとは規模が異なり、早期にシナジーを発揮できるかどうかは不透明だ。 企業規模でいえば、積水ハウスがMDCよりも格上ではあるものの、企業の収益性指標であるROE(自己資本利益率)、資産価値が割高か割安かを判断する目安のPBR(株価純資産倍率)では、MDCが積水ハウスをいずれも上回るのだ。 (図表:積水ハウスとM.D.C.ホールディングスの比較 はリンク先参照) 仲井社長は米国でのM&A戦略について、「積水ハウステクノロジーの移植」を掲げている。「上から目線」ではなく、丁寧にPMIを進めなければ、巨額の減損リスクを抱えることになる。 国内は安定成長、海外は積極的成長――。二兎を追って大勝負に出た積水ハウスの未知の挑戦が、いよいよ始まろうとしている。 Key Visual:SHIKI DESIGN OFFICE, Kanako Onda, Graphic:Daddy’s Home 【訂正】記事の初出時より以下の通り訂正します。 2ページ目最初の図版:住友林業 15州→住友林業 16州 (2024年2月16日19:08 ダイヤモンド編集部)』、「これほどの巨額買収を経験したことがない積水ハウスが、MDCとのシナジーを早期に実現できるかどうかが最大の焦点・・・これまで買収を手掛けた米国ハウスビルダー3社のPMIの実績を強調し、MDCとのPMIにも自信をのぞかせる。ただし、積水ハウスがこれまで米国で経験を積んだPMIとは規模が異なり、早期にシナジーを発揮できるかどうかは不透明だ・・・国内は安定成長、海外は積極的成長――。二兎を追って大勝負に出た積水ハウスの未知の挑戦が、いよいよ始まろうとしている」、やや乱暴なディールと言う感じが拭えない。
タグ:日本企業の海外M&Aブーム 東洋経済オンライン「日本製鉄、「USスチール2兆円買収」に動いた必然 経営リスクは覚悟で「脱ドメスティック」に進む」 「懸念材料」としては、「高値づかみの懸念」、「買収資金は、国内の主要取引銀行から融資の確約を受けており、いったんは借入金で対応する。このことでDEレシオ(負債資本倍率)は0.5から0.9まで上昇」、なるほど。 「日本製鉄はグローバルでの粗鋼生産能力1億トンの確保を将来ビジョンとして掲げ、海外での成長投資を強化してきた・・・USスチールの買収が完了すれば8600万トンになる。さらにインドでの増強、追加の計画まで勘案すれば1億トンを完全に射程圏にとらえている・・・鉄鋼業は「数量×付加価値」のビジネス。規模の経済が働くことも事実だ」、なるほど。 「USW」は「日本製鉄」による買収に反対、バイデン大統領やトランプ氏も反対しているので、かなりハードルは高そうだ。 組合や政治家からの反対を如何に乗り切っていくか注目される。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫氏による「日本製鉄「USスチール2兆円買収」の成否が、日本企業の成長志向の鍵を握るワケ」 「台頭する中国勢への対抗策として、米国企業と手をつなぐ意義は非常に大きい」、その通りだ。 「日本製鉄の狙いは、粗鋼生産世界トップの中国宝武鋼鉄集団など圧倒的に世界シェアを握る中国鉄鋼メーカーに対抗し、有力鉄鋼メーカーとして生き残ることだろう。買収が実現すれば、日本製鉄の粗鋼生産能力は世界第3位に浮上する。今回の買収は、日本製鉄が鉄鋼メーカーの日米連合を形成し、高付加価値の鋼材分野で世界トップの地位を目指すためにも重要だ」、なるほど。 「1990年初頭、わが国の資産バブルは崩壊した。景気は長期停滞に陥り、鉄鋼需要は減少した・・・ハイブリッド自動車の誕生のインパクトは大きかった。モーターなどの製造に不可欠な無方向性電磁鋼板の需要が増加したことは、日本製鉄の収益下振れを食い止めた」、なるほど。 「USスチールは、「鉄鋼王」で知られたアンドリュー・カーネギーが設立に携わり、米国の鉄鋼産業を象徴する企業である。電炉を用いた製鉄体制に強く、鉄鉱石の鉱山も保有する。高炉メーカーとして成長した日本製鉄が、水素を用いて二酸化炭素の排出力の少ない製鉄技法を確立するためにも、USスチールを取り込む意義は大きい」、なるほど。 「USスチールの買収を発表した後、日本製鉄の株価は下落した。12月下旬、米国の株価は最高値を更新し、今は世界的に株高の傾向である。こうした状況下、買収リスクは大きいと言わざるを得ない。 日本製鉄が2兆円規模の買収負担に耐え、高付加価値の鉄鋼製品の製造技術を磨くことができるかどうか――主要投資家は慎重に考えざるを得ない・・・企業経営に対する労働者の影響力が強くなっていることも懸念材料だ。 仮に米国政府の承認を得られたとしても、組織を1つにまとめることが難しければ、日米の鉄鋼メーカーが中国勢に対抗することは難しくなる。そうなると、日本製鉄の業績への懸念も出てきて、買収が事業運営の足かせとなる恐れも増す。 ただ、そうしたリスクも全て覚悟した上で、日本製鉄は買収に踏み切ったはずだ。先行きの不透明さはあるものの、買収が実を結び日本製鉄とUSスチールの事業運営の効率性が向上すれば、わが国企業の成長志向にも大きな変化をもたらすはずだ」、バイデン政権、トランプの反対を如何にクリアするか、まだまだヤマ場は 見えない。 ダイヤモンド・オンライン「積水ハウスが米国で7000億円買収!住友林業と大和ハウスを逆転するも、「大博打」に潜むリスク」 「S&Pは1月22日、積水ハウスの長期格付けを「A」から格下げ方向で見直す「クレジットウオッチ」に指定したと発表。買収に伴って有利子負債が膨らみ、財務内容が大幅に悪化することをネガティブと判断したのだ。 これを受け、積水ハウスの株価は下落に転じた。2月9日時点の終値は3259円で、MDC買収を発表する前に比べて47円落ち込んだ。 MDC買収で、積水ハウスの有利子負債は、金融機関からの借入金とMDC既存の有利子負債を合わせて8400億円程度にまで膨らむ見込み。 買収完了から1年以内に、一部を資本と見なせる「ハイブリッド債」を発行し、財務体質を改善する方針だが、一時的には大幅な財務基盤の悪化は避けられない」、なるほど。 「これほどの巨額買収を経験したことがない積水ハウスが、MDCとのシナジーを早期に実現できるかどうかが最大の焦点・・・これまで買収を手掛けた米国ハウスビルダー3社のPMIの実績を強調し、MDCとのPMIにも自信をのぞかせる。ただし、積水ハウスがこれまで米国で経験を積んだPMIとは規模が異なり、早期にシナジーを発揮できるかどうかは不透明だ・・・国内は安定成長、海外は積極的成長――。二兎を追って大勝負に出た積水ハウスの未知の挑戦が、いよいよ始まろうとしている」、やや乱暴なディールと言う感じが拭えない。
富士通が英国で郵便システムの欠陥で史上最大の冤罪事件(その1)(富士通に責任をなすりつけようとしている…「英国史上最大の冤罪」が「とんだとばっちり」と言える理由 英政府は富士通なしではやっていけない、どうして富士通は「闇落ち」したのか 英ポストオフィス大量冤罪の真相 富士通欧州CEO「とんでもない冤罪に関与したことをお詫びしたい」) [企業経営]
今日は、富士通が英国で郵便システムの欠陥で史上最大の冤罪事件(その1)(富士通に責任をなすりつけようとしている…「英国史上最大の冤罪」が「とんだとばっちり」と言える理由 英政府は富士通なしではやっていけない、どうして富士通は「闇落ち」したのか 英ポストオフィス大量冤罪の真相 富士通欧州CEO「とんでもない冤罪に関与したことをお詫びしたい」)を取上げよう。
先ずは、本年1月19日付けPRESIDENT Onlineが掲載した在米ジャーナリストの岩田 太郎氏による「富士通に責任をなすりつけようとしている…「英国史上最大の冤罪」が「とんだとばっちり」と言える理由 英政府は富士通なしではやっていけない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/77803?page=1
・『「英国史上最大の冤罪」をもたらした「富士通の勘定システム」 富士通がいま「英国史上最大の冤罪えんざい事件」の責任を追及されている。 富士通の英子会社が納入し、英国郵政の旧ロイヤルメール(2012年の民営化後にポストオフィスと改称)で2000年より使用されている勘定系システム「ホライズン」に、重大な欠陥があった。 この欠陥により、実際には郵便局の口座に現金があるにもかかわらず、「現金が不足している」と誤って表示されるという重大なシステムトラブルが15年以上も続いていた。 このシステムトラブルに気づかず、民間委託郵便局長ら736人が不足分の現金を横領したなどの疑いをかけられるという、巨大冤罪事件に発展。236人もの元局長が無実の罪で投獄され、少なくとも4人が自殺したという』、「富士通の英子会社が納入し、英国郵政の旧ロイヤルメール・・・で2000年より使用されている勘定系システム「ホライズン」に、重大な欠陥があった・・・重大なシステムトラブルが15年以上も続いていた。 このシステムトラブルに気づかず、民間委託郵便局長ら736人が不足分の現金を横領したなどの疑いをかけられるという、巨大冤罪事件に発展。236人もの元局長が無実の罪で投獄され、少なくとも4人が自殺したという」、信じ難いような驚くべき事件だ。
・『約278億円もの補償金を支払っている 訴追を逃れるために当局と取引を行い、ありもしない罪を認めた人もいる。 一方、有罪判決が取り消されないまま亡くなった元局長は60人に上る。 元局長が不足分の埋め合わせのため借金をして破産したり、結婚生活が破綻、子どもが学校でいじめを受け、収監中に子どもとの面会・連絡を1年半も禁じられる、横領の前科がついて新たな職を得られず、ホームレスに転落する人が出る、など、英国社会に修復不可能なほどの深い傷を残した。 事件が英政府による組織的な人権侵害であるのは間違いなく、英政府は補償金の支払いを進めてきた。 2019年にロンドンの高等法院で、元局長ら555人に5800万ポンド(約107億6100万円)を支払うことで和解が成立した。これをきっかけに、英政府はこれまでに約1億5000万ポンド(約278億円)の補償金を支払っている。 また、これに加え、2024年には新法案を成立させ、元局長らの有罪判決を取り消し、1人当たり60万ポンド(約1億1100万円)の追加補償金を支払う見込みだ』、「事件が英政府による組織的な人権侵害であるのは間違いなく、英政府は補償金の支払いを進めてきた。 2019年にロンドンの高等法院で、元局長ら555人に5800万ポンド(約107億6100万円)を支払うことで和解が成立した。これをきっかけに、英政府はこれまでに約1億5000万ポンド(約278億円)の補償金を支払っている。 また、これに加え、2024年には新法案を成立させ、元局長らの有罪判決を取り消し、1人当たり60万ポンド(約1億1100万円)の追加補償金を支払う見込みだ」、なるほど。
・『責任はあくまで「英政府」にある この騒動の中、欠陥のある会計システムを構築・納入した富士通に対しても、補償金の支払いを求める声が高まっている。 だが、本来この動きはおかしい。この騒動の責任はあくまで英政府にある。 英政府は、富士通のシステムがバグだらけであることを知っていたが、これを承認し、導入・運用していただけでなく、欠陥を修正していなかった。 その上、無実の人から口座の不足金額をむしり取っただけでなく、有罪判決を下して投獄したり、自殺に追い込んでいたのだ。 その一義的な当事者は、旧ロイヤルメール時代から、現在のポストオフィスまでの間、政権を担当していた、「保守党」と「労働党」、および「英自由民主党」・・・にある。 この構図をしっかり押さえておく必要がある』、「英政府は、富士通のシステムがバグだらけであることを知っていたが、これを承認し、導入・運用していただけでなく、欠陥を修正していなかった。 その上、無実の人から口座の不足金額をむしり取っただけでなく、有罪判決を下して投獄したり、自殺に追い込んでいたのだ。 その一義的な当事者は、・・・政権を担当していた、「保守党」と「労働党」、および「英自由民主党」にある」、開発者の富士通の責任も否定できないのではなかろうか。
・『政治家や官僚が逃げ切りを図っている 一方、英国では、富士通に最終責任を転嫁して逃げ切りを図る政治家や官僚が少なくない、とも報じられている。 実際、事件のどこまでが政治家の責任で、富士通の責任はどの程度なのか、検証してみたい。 問題のシステム「ホライズン」は、旧ロイヤルメール時代の1995年に、当時の保守党政権下で立ち上げられた。 従来は手作業であった年金支払いや振り込み業務をデジタル化し、年間1億5000万ポンドにも上っていた年金受給詐欺を防止する、という触れ込みだった』、単なる事務の機械化だけでなく、「年間1億5000万ポンドにも上っていた年金受給詐欺を防止」という狙いもあったようだ。
・『コスト削減でバグだらけの欠陥品を導入してしまった しかし、実際のところは、旧ロイヤルメールの4割を占める年金など公的給付金の支払いが銀行に奪われることを恐れ、あわてて導入したものに過ぎない。 この時に入札を勝ち抜いて選ばれたのが、「ホライズン」を開発した英IT企業のインターナショナル・コンピューターズ・リミテッド(ICL)だ。 1968年創業のICLは1981年から富士通と関係があり、1990年には富士通が株式の80%を取得。1998年に完全子会社化している。 では、なぜICLのホライズンが選ばれたか。 単純に、入札価格が最も低かったからだ。 だが、安かろう悪かろうという言葉の通り、「ホライズン」はバグだらけの欠陥品であった』、「年金など公的給付金の支払いが銀行に奪われることを恐れ、あわてて導入したものに過ぎない・・・ICLのホライズンが選ばれた」のは、「入札価格が最も低かったから」、なるほど。
・『「安物買いの銭失い」が騒動のきっかけ 当時、旧ロイヤルメールの全株式を保有していた英政府は、まさに「安物買いの銭失い(Penny wise and pound foolish)」をしてしまった。 これにより、今に至る騒動の種をまいてしまったのである。 当時の保守党政権の下、社会資本の整備を民間にゆだねる「PFIプロジェクト」として、「ホライズン」はスタートした。 その後「ホライズン」は、1997年から2010年まで政権の座にあった労働党政権に引き継がれる。 そんな中、「ホライズン」がまだ稼働準備期間中だった1998年には、すでにシステムの「重大なリスク」が内部文書で指摘されていた。 英フィナンシャル・タイムズ紙によると、1999年、当時のトニー・ブレア首相に対して、「ホライズン」の欠陥の一覧が届けられていた。にもかかわらず、政権は調査を開始しなかった』、「1998年には、すでにシステムの「重大なリスク」が内部文書で指摘・・・政権は調査を開始しなかった」、政権にとっての重要性が低かったのだろう。
・『組織の目標がコストカットに集中していた この結果、2000年1月に稼働したホライズンは、その当初から本来存在しない「口座の残高不足」を表示する。 そして稼働初年度の2000年には、早くも6人の局長たちに横領有罪判決が言い渡されているのだ。 続く2001年には41人の局長が訴追され、その数は2002年に64人まで増えている。 起訴されなかった局長も含めると、2010年までに、総計2500人もの人が横領の嫌疑をかけられた。 だが、旧ロイヤルメールは十分な予算を計上して「ホライズン」の問題を解決する姿勢を見せなかった。組織の目標がコストカットに集中していたからだ』、「旧ロイヤルメールは十分な予算を計上して「ホライズン」の問題を解決する姿勢を見せなかった。組織の目標がコストカットに集中していたからだ」、なるほど。
・『自分たちの誤りを認めなかった 起訴された局長の多くは、裁判でシステムの欠陥を指摘し、無実を訴えた。 だが、英国の郵政担当者や検察官たちは自分たちの誤りを認めなかった。 英議会にも局長たちの訴えは伝えられたが、労働党政権はシステムに何ら過失はないと主張するばかりで、逆に訴えた局長を解雇した。 実際には旧ロイヤルメールはホライズンの欠陥に気付いており、外部コンサルタントを雇って調査までさせていたことが分かっている。 だが、欠陥の可能性を指摘した会計士たちは、突如契約を打ち切られたという。 英政府による「もみ消し工作」であった可能性もある。 こうして、過ちを早期に正す機会は失われた。 2009年までの間に、労働党政権下で起訴された局長の数は525人にまで増えた』、「欠陥の可能性を指摘した会計士たちは、突如契約を打ち切られた・・・英政府による「もみ消し工作」であった可能性もある」、「英政府」が果たした役割を再検証する必要がる。
・『富士通に責任をなすりつけようとしている こうした英政府の責任をなすりつけられようとしているのが富士通だ。 2024年現在、労働党の「影の内閣(Shadow Cabinet)」でビジネス・エネルギー・産業戦略相を務めるジョナサン・レイノルズ氏は、英議会で、「もし富士通が事態の重大さを認識していたのであれば、事件の理不尽さの度合いに応じた責任を負わされるだろう」と述べている。 しかし、この発言を評して、米ジャーナリストのロバート・スティーブンス氏は、「過去25年に英政府の監督の下で為された極端な不正義を、(富士通への責任転嫁で)覆い隠そうとするものだ」と強く批判している。 富士通が相応の責任を取らされるのは当然としても、一義的には英政府、特に労働党の政治家の下で、元局長たちが訴追・投獄されたのであり、その責任は消えないという見解を述べたと考えられ』、「米ジャーナリストのロバート・スティーブンス氏は、「過去25年に英政府の監督の下で為された極端な不正義を、(富士通への責任転嫁で)覆い隠そうとするものだ」と強く批判している」、注目すべき発言だ。
・『ドラマがなければ政治家は動かなかった 事件の責任は労働党だけが負っているわけではない。2010年から2015年にかけて、連立政権を組んで郵政を担った「自由民主党」や、2015年から現在までの間に政権を担当している「保守党」も、この問題を事実上放置し、元局長やその家族たちを救わなかったからだ。 2024年1月に英民放ITVが事件のドラマ『ミスターベイツvs.ポストオフィス』を放映した。 このドラマがきっかけとなり、スキャンダルに大きな注目が集まる。 世論の高まりに押された政治家たちは、被害者たちに同情を示す必要に迫られた。 逆に言えば、このドラマ放映がなければ、政治は動かなかったと考えられる』、「2024年1月に英民放ITVが事件のドラマ『ミスターベイツvs.ポストオフィス』を放映した。 このドラマがきっかけとなり、スキャンダルに大きな注目が集まる」、なるほど。
・『英政府は富士通なしではやっていけない 英BBCによれば、富士通はポスト・オフィスのほか、税務当局、歳入税関庁、労働・年金省といった政府機関のITインフラに深く浸透している。 過去4年間で101件の契約を獲得し、総額は20億ポンド(約3700億円)に上るという。 それには、原因となった「ホライズン」の延長契約の3600万ポンド(66億6000万円)も含まれている。 英ITジャーナリストのトニー・コリンズ氏は、「政府は富士通なしではやっていけない」「富士通を排除するのは不可能に近い」とBBCに語っている』、「富士通はポスト・オフィスのほか、税務当局、歳入税関庁、労働・年金省といった政府機関のITインフラに深く浸透している。 過去4年間で101件の契約を獲得し、総額は20億ポンド(約3700億円)に上る」、そんなに深く英政府に食い込んでいたとは初めて知った。
・『「富士通の無能さが証明されれば、賠償金は莫大なものになる」 コリンズ氏は、「富士通は、英政府からの要求がなくても、被害者への補償を独自に決定する可能性がある」と予想している。 こうした見解は、英政治家による富士通批判の高まりと連動している。 たとえば、保守党出身で2010年から2016年まで首相を務め、現在は外務大臣デービッド・キャメロン氏の側近である、フランシス・モード氏は、「富士通は少しでも名誉を重んじるのであれば、速やかに元局長たちに相当に大きな金額の補償金を支払うだろう」と語った。 また、保守党のアレックス・チョーク法相兼大法官は、英放送局のITVに対し、「英政府は本件に関する独立調査委員会の取り調べが終了するのを待って、富士通に対する処分を決定する」と断った。 その上で、「富士通の無能さが証明されれば、賠償金は莫大なものになる」との見方を示している』、「無能さ」は「富士通」だけでなく、「英政府」も無縁ではない筈だ。
・『総選挙を見据えた「富士通攻撃」 政府が被害者に支払う補償金は総額で数百億円相当にも上ると思われる。 ただ、政治家の発言を見る限り、英国内では、補償金の一部を富士通が負担するのはもはや既定路線となっているようだ。 英国では2024年後半、あるいは2025年初頭に総選挙が行われる可能性が高い。 そのため、与党の「保守党」、および野党の「労働党」ともに、富士通を攻撃して国民に「正義」をアピールし、選挙に勝利しようとする可能性もある。 無実の人たちを罪に定め、冤罪もみ消しを図った英政治家や官僚の責任を富士通が負わされることになる』、「与党の「保守党」、および野党の「労働党」ともに、富士通を攻撃して国民に「正義」をアピールし、選挙に勝利しようとする可能性もある。 無実の人たちを罪に定め、冤罪もみ消しを図った英政治家や官僚の責任を富士通が負わされることになる」、「富士通」がスケープゴートにされそうだ。
・『世界規模の危機管理に失敗する恐れも 富士通は世界100カ国以上でビジネスを展開するグローバル企業であり、年間売上は2023年3月31日現在で3兆7137億円、従業員は12万4000人を抱えている。 ※富士通の売上高について事実と異なる内容がありましたので修正しました(2024年1月19日14時45分追記)。 英国におけるスキャンダルは世界で報じられており、グローバルなビジネスを守るためにも、経営陣は早く誠意を示した方が得策という判断に傾くかもしれない。 英BBCは東京発の報道で、富士通の時田隆仁社長が被害者たちに対してコメントを出し渋っていることや、英子会社が「捜査に協力している」といった事務的な声明しか出していないことを批判的に伝えていた。 問題を放置すれば、富士通が英国でさらに炎上し、世界的規模の危機管理に失敗する恐れがあった。 こうした状況を受けて時田社長は1月16日にBBCの取材に対し、「弊社は郵便局長の生活とその家族に影響を与えたことを謝罪する」と明言。 また、英下院のビジネス委員会で同日に証言した富士通の英子会社、富士通サービシーズのポール・パターソン最高経営責任者(CEO)も、同社が当局の郵便局長起訴に協力したことを認め、被害者の補償に貢献する「道義的義務」があると述べて謝罪した。 その上で、「旧ロイヤルメールはホライズンにバグやエラーがあることを、早い段階で知っていた」とダメ出しをしている。 コスト削減ばかりを追求して冤罪を作り出した最終的な責任はあくまでも英政府にある。 富士通は英政府の郵便局長訴追に協力しているが、それは自社の責任逃れや罪のなすりつけであった可能性もある。富士通は誠意あるお詫びの表明を被害者に行い、英政府に対して数十億円から数百億円規模の支払いを覚悟した方がよいかもしれない。 いずれにせよ、英政治家や官僚の責任逃れが続く限り、被害者にとっても富士通にとっても、この事件の区切りはつけられることがないだろう』、「コスト削減ばかりを追求して冤罪を作り出した最終的な責任はあくまでも英政府にある。 富士通は英政府の郵便局長訴追に協力しているが、それは自社の責任逃れや罪のなすりつけであった可能性もある。富士通は誠意あるお詫びの表明を被害者に行い、英政府に対して数十億円から数百億円規模の支払いを覚悟した方がよいかもしれない」、その通りだ。
次に、本年1月24日付けJBPressが掲載した在英ジャーナリストの木村 正人氏による「どうして富士通は「闇落ち」したのか、英ポストオフィス大量冤罪の真相 富士通欧州CEO「とんでもない冤罪に関与したことをお詫びしたい」」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/79059
・『「富士通は最初から関与していた」 [ロンドン発]富士通が英ポストオフィスに納入した勘定系システム「ホライズン」の欠陥が原因で民間委託郵便局長(以下、局長)ら736人が冤罪に陥れられた事件で、富士通のポール・パターソン欧州最高経営責任者(CEO)が19日、真相を究明するホライズン公聴会に出席し、「富士通が社会と元局長らを地に落としたのは明らかだ」と改めて謝罪した。 パターソン氏は16日の下院ビジネス・貿易委員会でも「このひどい冤罪に富士通が関与したことをお詫びしたい。富士通は最初から関与していた。システムにバグやエラーがあり、ポストオフィスによる局長らの起訴を手助けした」として被害者救済制度に資する「道義的義務」があると述べた。英国政府は8月までの賠償を目指している。 これまで富士通はポストオフィス(郵便事業の窓口を担当する国営企業)の陰に隠れてダンマリを決め込んできた。次期総選挙を控えるリシ・スナク首相が突然、冤罪に問われた全員の有罪判決を撤回、賠償に応じると表明したため、方針転換を迫られた。賠償総額は推定10億ポンド(約1880億円)。そのうち富士通がいくら負担するかは公聴会の結論次第だ。 富士通にとってはIT(情報技術)システムの公共調達に食い込むため1998年、ホライズンを開発した英国策企業ICLを買収したことが結果的に裏目に出た。国際競争力を失ったICLのホライズンはバグだらけの「クソ袋」(富士通元エンジニアの証言)だった。東芝を地獄に叩き落した米原子力関連企業ウェスティングハウス買収と同じ轍を踏まないか心配だ』、「富士通のポール・パターソン欧州・・・(CEO)が19日、真相を究明するホライズン公聴会に出席し、「富士通が社会と元局長らを地に落としたのは明らかだ」と改めて謝罪した。 パターソン氏は16日の下院ビジネス・貿易委員会でも「このひどい冤罪に富士通が関与したことをお詫びしたい。富士通は最初から関与していた。システムにバグやエラーがあり、ポストオフィスによる局長らの起訴を手助けした」として被害者救済制度に資する「道義的義務」があると述べた」、なるほど。
・『裁判官「バグがなかったと開き直るのは21世紀に地球は平らだと主張するに等しい」 富士通の企業買収とシステム開発力に問題があったのは明らかだ。しかし前代未聞の冤罪事件は英国社会の抱える構造的な問題が複合的に絡み合って起き、システム導入から25年も放置されてきた。400年以上の歴史を誇るポストオフィス・ブランドを守るため、局長らの無実の訴えは踏みにじられた。少し長くなるが、事件をおさらいしておこう。 1999年から2015年にかけホライズンの記録を証拠に900人以上が起訴され、236人が刑務所に放り込まれた。736人が冤罪とみられるが、有罪判決が取り消されたのは95件だけ。救済を待つ間に33人が他界した。うち4人は人生に絶望して自ら命を絶った。スナク首相によると、すでに2500人以上が約1億5000万ポンド(約282億円)の賠償を受けている。 【これまでの経過】 1996年、富士通とICLがホライズン・プロジェクトを受注 1998年、ICLが富士通の完全子会社に 1999年、ポストオフィスの支店にホライズンを順次設置。少ないポストオフィス直営店と、フランチャイズ契約の民間委託郵便局を合わせた支店数は現在計1万1500店 2000年、ホライゾンのデータを証拠に局長らの起訴開始。起訴支援はポストオフィスと富士通の契約に含まれていた 2009年、コンピューター専門誌コンピューター・ウィークリーが、ホライズンで多額の現金不足を指摘されて契約を一方的に打ち切られたアラン・ベイツ氏ら元局長7人の証言を報道。システム開発の仕事に関わった経験を持つベイツ氏はシステム開発の過程でバグやエラーが発生するという知識があった ・ベイツ氏が中心になって「民間委託郵便局長のための正義を実現する同盟」を発足 2012年、保守党下院議員とポストオフィスがホライズンに対する独立調査の実施で合意。法廷監査事務所セカンドサイトが指名され、元局長らと下院議員も承認 2013年、ポストオフィスがホライズン問題の関係書類の処分を命令 2014年、ポストオフィスが局長らの起訴を停止 ・ポストオフィスがセカンドサイトの調査報告書の受け取り拒否)』、「前代未聞の冤罪事件は英国社会の抱える構造的な問題が複合的に絡み合って起き、システム導入から25年も放置されてきた・・・1999年から2015年にかけホライズンの記録を証拠に900人以上が起訴され、236人が刑務所に放り込まれた。736人が冤罪とみられるが、有罪判決が取り消されたのは95件だけ。救済を待つ間に33人が他界した。うち4人は人生に絶望して自ら命を絶った。スナク首相によると、すでに2500人以上が約1億5000万ポンド(約282億円)の賠償を受けている」、「システム導入から25年も放置」、とは酷い話だ。
・『富士通英国の内部告発者がBBCで証言 2015年、英下院企業・イノベーション・技能委員会がホライズンの調査を開始 ・ポストオフィスのポーラ・ヴェネルズCEOが「冤罪の証拠は何一つない」と疑惑を全面否定。元局長らとの調停を中止 ・富士通英国の内部告発者リチャード・ロール氏が英BBC放送で証言 2016年、ベイツ氏らが訴訟費用を前借りしてポストオフィスを相手取りロンドン高等法院に集団訴訟を起こす 2019年、ヴェネルズ氏に「ポストオフィスへの貢献と慈善活動」を理由にエリザベス女王から大英帝国勲章コマンダー(CBE)が授けられる。ヴェネルズ氏は内閣府高官、インペリアル・カレッジ医療NHS(国家医療サービス)トラスト会長に就任 ・ポストオフィスは元局長ら555人に対し5775万ポンド(約109億円)を支払うことで和解が成立。和解金の多くは訴訟費用に充てられ、元局長らが手にしたのはわずか1200万ポンド(約22億6000万円)だけだった ・集団訴訟を担当した裁判官は「ホライズンにバグやエラーがなかったと否定するのは21世紀に地球は平らだと主張するに等しい」との判断を示す。「富士通社員が提出したホライズンの欠陥に関する証拠の信憑性に重大な懸念がある」と検察当局に書類を送付。その後、ロンドン警視庁は偽証の疑いで富士通元社員2人を事情聴取 2020年、ボリス・ジョンソン首相(当時)が独立のホライズン公聴会開始を約束 ・元局長6人の有罪判決が初めて取り消される 2024年、英民間放送ITVのテレビドラマ『ミスター・ベイツ vsポストオフィス』が1月1日から4日連続で放映されたことをきっかけに事態が急展開する』、「ポストオフィスは元局長ら555人に対し5775万ポンド(約109億円)を支払うことで和解が成立。和解金の多くは訴訟費用に充てられ、元局長らが手にしたのはわずか1200万ポンド(約22億6000万円)だけだった」、「訴訟費用」の高さには驚かされる。
・『ポストオフィス「ホライズンは堅牢」 事件の主犯は400年の歴史とブランドを守るため「ホライズンは堅牢」とシラを切り通し、被害者救済を意図的に遅らせてきたポストオフィスとそれを黙認してきた英国政府である。本来、社会的弱者の権利を保護する司法制度が政府や企業の不正を覆い隠すために使われた。英国の訴訟費用はべらぼうに高い。それらの事情を差し引いても富士通の罪は重い。 富士通のパターソン氏は19日の公聴会で「すべてのバグやエラーは何年も前から知られていた。システムの導入が始まった当初からバグやエラー、欠陥は存在し、関係者にとっては周知の事実であった。ポストオフィスにも知らされていた」とホライズンが導入された1999年から2018年まで富士通がバグやエラー、欠陥と格闘し続けてきたことを認めた。 例えば端末操作のやり方でシステムが入金を二重計上し、現金不足が発生するバグがあった。こうしたバグやエラー、欠陥が無実の局長らを起訴するために使われた証拠に影響を与えることを富士通は認識していた。パターソン氏は「起訴のためポストオフィスに送られた富士通の証拠にこうしたバグの記載がなかったことに個人的に驚いている」と証言した。 富士通内部で起訴のためにバグなどの不都合な証拠は削除されていた。パターソン氏は「恥ずべきこと、ぞっとすることだ。英国の法律ではすべての証拠が局長に開示されるべきだった」と臍を噛んだ。被害者救済の道義的義務を認めるのにこれほど長い歳月を要した理由について「何十年も前の過ちだ。私は真実を明らかにするため何でもする」とだけ話した』、「たバグやエラー、欠陥が無実の局長らを起訴するために使われた証拠に影響を与えることを富士通は認識していた。パターソン氏は「起訴のためポストオフィスに送られた富士通の証拠にこうしたバグの記載がなかったことに個人的に驚いている」と証言した。 富士通内部で起訴のためにバグなどの不都合な証拠は削除されていた。パターソン氏は「恥ずべきこと、ぞっとすることだ。英国の法律ではすべての証拠が局長に開示されるべきだった」と臍を噛んだ」、「富士通」の訴訟戦術上の重大なミスだ。
・『富士通元エンジニア「ホライズンがクソ袋だということはみんな知っていた」 大量冤罪を生んだ原点は「ホライズンがクソ袋だということはみんな知っていた。システムを一から書き直す必要があったが、そのようなことは起きなかった。なぜなら、そのための資金もリソースもなかったからだ。このシステムは決して日の目を見るべきではない非常に質の悪いシステムだった」(元富士通エンジニア、ロール氏)ことにある。 富士通は局長らに気付かれないよう英国本社から局長らの端末に遠隔アクセスし、データを変更していた。決済が遅れてポストオフィスに支払う金銭的ペナルティーが発生するのを防ぐためだ。パターソン氏は下院委員会で「富士通の遠隔サポートは文書化され、ポストオフィスも認識していた」と証言した。しかしポストオフィスはこの事実を否定してきた。 二重計上するバグの場合、ホライズンの記録を見れば簡単に気づくはずだが、なぜか悪意の証拠をもとに冤罪が積み上げられた。どこまでポストオフィスと富士通の間に“不当起訴”の共謀があったのかまだ明らかにされていないが、パターソン氏は「バグやエラーがあるという情報を起訴にどう使うかはポストオフィスの責任だ」と法的責任を否定している。 この問題を追及する『ザ・グレート・ポストオフィス・スキャンダル』の著者でジャーナリストのニック・ウォーリス氏は「パターソン氏はなぜ富士通の誰もそれを止めようとしなかったのか、社内外で潜在的な問題として提起しなかったのか語らなかった。司法妨害の陰謀になる可能性のある共謀を認めたのと同じで、富士通を捜査対象にしてしまった」という』、「「パターソン氏はなぜ富士通の誰もそれを止めようとしなかったのか、社内外で潜在的な問題として提起しなかったのか語らなかった。司法妨害の陰謀になる可能性のある共謀を認めたのと同じで、富士通を捜査対象にしてしまった」、本当にお粗末限りない不手際だ。
・『富士通・時田社長「これは大きな問題であり、富士通は非常に深刻に受け止めている」 「シラを切る文化」が蔓延るポストオフィスは裁判所に和解を勧告されるまで真っ赤な嘘をつき続けた。 公共調達分析会社タッセルによると、富士通は歳入関税庁、内務省、警察、国防省といった英国の公共部門から200近い契約を獲得、総額67億8000万ポンド(約1兆2700億円)にのぼる。富士通は公聴会の報告が出るまで政府契約の入札を自主的に辞退した。 全国民間委託郵便局長連盟幹部マイケル・ルドキン氏は2008年8月、富士通英国のオフィスを訪れ、ホライズン担当の技術者が端末から局長の口座を操作するデモンストレーションを目撃した。その翌日、4万4000ポンド(約827万円)の現金不足が見つかったと抜き打ち検査を受けた。妻のスーザンさんは不正会計罪で起訴され、有罪判決を受けた。 1月16日、富士通の時田隆仁社長はスイスのダボスで開かれる世界経済フォーラム年次総会に出席したが、会場近くを歩いているところで英BBC放送の直撃取材を受け、「これは大きな問題であり、富士通は非常に深刻に受け止めている」とこの問題について初めて口を開いた。) また謝罪するかとの質問に「はい、もちろんだ。富士通は元局長らの生活とその家族に影響を与えたことを謝罪する」と述べた。ただこの直撃取材の間、時田社長は足を止めることはなかった。その様子はまるでBBC記者の直撃から一刻も早く逃げたがっているかのようだった』、「シラを切る文化」が蔓延るポストオフィスは裁判所に和解を勧告されるまで真っ赤な嘘をつき続けた。 公共調達分析会社タッセルによると、富士通は歳入関税庁、内務省、警察、国防省といった英国の公共部門から200近い契約を獲得、総額67億8000万ポンド(約1兆2700億円)にのぼる。富士通は公聴会の報告が出るまで政府契約の入札を自主的に辞退した」、入札辞退は当然だ。「富士通の時田隆仁社長はスイスのダボスで開かれる世界経済フォーラム年次総会に出席したが、会場近くを歩いているところで英BBC放送の直撃取材を受け、「これは大きな問題であり、富士通は非常に深刻に受け止めている」とこの問題について初めて口を開いた・・・直撃取材の間、時田社長は足を止めることはなかった。その様子はまるでBBC記者の直撃から一刻も早く逃げたがっているかのようだった」、予め周到に準備した発言ではなく、その場で即時対応した発言をさせられたとは、極めてお粗末で不味い対応だ。
・『収益の悪化、技術力の低下、モラル喪失のスパイラル 最初から元局長らの訴えに耳を傾けていれば、こんな悲劇は起きなかった。元局長らは富士通に対する刑事責任追及を求めているが、司法の独立を無視して政治決着が図られた今、真相は闇に葬り去られる可能性があると筆者はみる。 ダボスでこそこそ逃げ回るような印象を与えた時田社長と、人工知能(AI)の未来を雄弁に語った米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOの差は残酷だ。それが「失われた30年」に開いた日本と世界の差だと痛感した。日本の企業が次々と「闇落ち」していくのは収益の悪化、技術力の低下、モラル喪失の負のスパイラルに陥っているからだ。 各国政府が公共調達で、無実の元局長らを地獄に突き落とした富士通のITシステムより、「私たちは地元のスタートアップや中小企業と提携して公共部門の生産性を高められる。AIによって国内総生産(GDP)に占める医療費と教育費の割合を改善できる」(ナデラCEO)と胸を張るマイクロソフトのAIを買うのは火を見るよりも明らかだ。 (【木村正人】略歴はリンク先参照)』、「元局長らは富士通に対する刑事責任追及を求めているが、司法の独立を無視して政治決着が図られた今、真相は闇に葬り去られる可能性がある・・・各国政府が公共調達で、無実の元局長らを地獄に突き落とした富士通のITシステムより、「私たちは地元のスタートアップや中小企業と提携して公共部門の生産性を高められる。AIによって国内総生産(GDP)に占める医療費と教育費の割合を改善できる」(ナデラCEO)と胸を張るマイクロソフトのAIを買うのは火を見るよりも明らかだ」、その通りだ。自らに不都合なことがあるのであれば、「世界経済フォーラム年次総会」などに出席すべきでない。まさに、恥の上塗りをしたようなものだ。
先ずは、本年1月19日付けPRESIDENT Onlineが掲載した在米ジャーナリストの岩田 太郎氏による「富士通に責任をなすりつけようとしている…「英国史上最大の冤罪」が「とんだとばっちり」と言える理由 英政府は富士通なしではやっていけない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/77803?page=1
・『「英国史上最大の冤罪」をもたらした「富士通の勘定システム」 富士通がいま「英国史上最大の冤罪えんざい事件」の責任を追及されている。 富士通の英子会社が納入し、英国郵政の旧ロイヤルメール(2012年の民営化後にポストオフィスと改称)で2000年より使用されている勘定系システム「ホライズン」に、重大な欠陥があった。 この欠陥により、実際には郵便局の口座に現金があるにもかかわらず、「現金が不足している」と誤って表示されるという重大なシステムトラブルが15年以上も続いていた。 このシステムトラブルに気づかず、民間委託郵便局長ら736人が不足分の現金を横領したなどの疑いをかけられるという、巨大冤罪事件に発展。236人もの元局長が無実の罪で投獄され、少なくとも4人が自殺したという』、「富士通の英子会社が納入し、英国郵政の旧ロイヤルメール・・・で2000年より使用されている勘定系システム「ホライズン」に、重大な欠陥があった・・・重大なシステムトラブルが15年以上も続いていた。 このシステムトラブルに気づかず、民間委託郵便局長ら736人が不足分の現金を横領したなどの疑いをかけられるという、巨大冤罪事件に発展。236人もの元局長が無実の罪で投獄され、少なくとも4人が自殺したという」、信じ難いような驚くべき事件だ。
・『約278億円もの補償金を支払っている 訴追を逃れるために当局と取引を行い、ありもしない罪を認めた人もいる。 一方、有罪判決が取り消されないまま亡くなった元局長は60人に上る。 元局長が不足分の埋め合わせのため借金をして破産したり、結婚生活が破綻、子どもが学校でいじめを受け、収監中に子どもとの面会・連絡を1年半も禁じられる、横領の前科がついて新たな職を得られず、ホームレスに転落する人が出る、など、英国社会に修復不可能なほどの深い傷を残した。 事件が英政府による組織的な人権侵害であるのは間違いなく、英政府は補償金の支払いを進めてきた。 2019年にロンドンの高等法院で、元局長ら555人に5800万ポンド(約107億6100万円)を支払うことで和解が成立した。これをきっかけに、英政府はこれまでに約1億5000万ポンド(約278億円)の補償金を支払っている。 また、これに加え、2024年には新法案を成立させ、元局長らの有罪判決を取り消し、1人当たり60万ポンド(約1億1100万円)の追加補償金を支払う見込みだ』、「事件が英政府による組織的な人権侵害であるのは間違いなく、英政府は補償金の支払いを進めてきた。 2019年にロンドンの高等法院で、元局長ら555人に5800万ポンド(約107億6100万円)を支払うことで和解が成立した。これをきっかけに、英政府はこれまでに約1億5000万ポンド(約278億円)の補償金を支払っている。 また、これに加え、2024年には新法案を成立させ、元局長らの有罪判決を取り消し、1人当たり60万ポンド(約1億1100万円)の追加補償金を支払う見込みだ」、なるほど。
・『責任はあくまで「英政府」にある この騒動の中、欠陥のある会計システムを構築・納入した富士通に対しても、補償金の支払いを求める声が高まっている。 だが、本来この動きはおかしい。この騒動の責任はあくまで英政府にある。 英政府は、富士通のシステムがバグだらけであることを知っていたが、これを承認し、導入・運用していただけでなく、欠陥を修正していなかった。 その上、無実の人から口座の不足金額をむしり取っただけでなく、有罪判決を下して投獄したり、自殺に追い込んでいたのだ。 その一義的な当事者は、旧ロイヤルメール時代から、現在のポストオフィスまでの間、政権を担当していた、「保守党」と「労働党」、および「英自由民主党」・・・にある。 この構図をしっかり押さえておく必要がある』、「英政府は、富士通のシステムがバグだらけであることを知っていたが、これを承認し、導入・運用していただけでなく、欠陥を修正していなかった。 その上、無実の人から口座の不足金額をむしり取っただけでなく、有罪判決を下して投獄したり、自殺に追い込んでいたのだ。 その一義的な当事者は、・・・政権を担当していた、「保守党」と「労働党」、および「英自由民主党」にある」、開発者の富士通の責任も否定できないのではなかろうか。
・『政治家や官僚が逃げ切りを図っている 一方、英国では、富士通に最終責任を転嫁して逃げ切りを図る政治家や官僚が少なくない、とも報じられている。 実際、事件のどこまでが政治家の責任で、富士通の責任はどの程度なのか、検証してみたい。 問題のシステム「ホライズン」は、旧ロイヤルメール時代の1995年に、当時の保守党政権下で立ち上げられた。 従来は手作業であった年金支払いや振り込み業務をデジタル化し、年間1億5000万ポンドにも上っていた年金受給詐欺を防止する、という触れ込みだった』、単なる事務の機械化だけでなく、「年間1億5000万ポンドにも上っていた年金受給詐欺を防止」という狙いもあったようだ。
・『コスト削減でバグだらけの欠陥品を導入してしまった しかし、実際のところは、旧ロイヤルメールの4割を占める年金など公的給付金の支払いが銀行に奪われることを恐れ、あわてて導入したものに過ぎない。 この時に入札を勝ち抜いて選ばれたのが、「ホライズン」を開発した英IT企業のインターナショナル・コンピューターズ・リミテッド(ICL)だ。 1968年創業のICLは1981年から富士通と関係があり、1990年には富士通が株式の80%を取得。1998年に完全子会社化している。 では、なぜICLのホライズンが選ばれたか。 単純に、入札価格が最も低かったからだ。 だが、安かろう悪かろうという言葉の通り、「ホライズン」はバグだらけの欠陥品であった』、「年金など公的給付金の支払いが銀行に奪われることを恐れ、あわてて導入したものに過ぎない・・・ICLのホライズンが選ばれた」のは、「入札価格が最も低かったから」、なるほど。
・『「安物買いの銭失い」が騒動のきっかけ 当時、旧ロイヤルメールの全株式を保有していた英政府は、まさに「安物買いの銭失い(Penny wise and pound foolish)」をしてしまった。 これにより、今に至る騒動の種をまいてしまったのである。 当時の保守党政権の下、社会資本の整備を民間にゆだねる「PFIプロジェクト」として、「ホライズン」はスタートした。 その後「ホライズン」は、1997年から2010年まで政権の座にあった労働党政権に引き継がれる。 そんな中、「ホライズン」がまだ稼働準備期間中だった1998年には、すでにシステムの「重大なリスク」が内部文書で指摘されていた。 英フィナンシャル・タイムズ紙によると、1999年、当時のトニー・ブレア首相に対して、「ホライズン」の欠陥の一覧が届けられていた。にもかかわらず、政権は調査を開始しなかった』、「1998年には、すでにシステムの「重大なリスク」が内部文書で指摘・・・政権は調査を開始しなかった」、政権にとっての重要性が低かったのだろう。
・『組織の目標がコストカットに集中していた この結果、2000年1月に稼働したホライズンは、その当初から本来存在しない「口座の残高不足」を表示する。 そして稼働初年度の2000年には、早くも6人の局長たちに横領有罪判決が言い渡されているのだ。 続く2001年には41人の局長が訴追され、その数は2002年に64人まで増えている。 起訴されなかった局長も含めると、2010年までに、総計2500人もの人が横領の嫌疑をかけられた。 だが、旧ロイヤルメールは十分な予算を計上して「ホライズン」の問題を解決する姿勢を見せなかった。組織の目標がコストカットに集中していたからだ』、「旧ロイヤルメールは十分な予算を計上して「ホライズン」の問題を解決する姿勢を見せなかった。組織の目標がコストカットに集中していたからだ」、なるほど。
・『自分たちの誤りを認めなかった 起訴された局長の多くは、裁判でシステムの欠陥を指摘し、無実を訴えた。 だが、英国の郵政担当者や検察官たちは自分たちの誤りを認めなかった。 英議会にも局長たちの訴えは伝えられたが、労働党政権はシステムに何ら過失はないと主張するばかりで、逆に訴えた局長を解雇した。 実際には旧ロイヤルメールはホライズンの欠陥に気付いており、外部コンサルタントを雇って調査までさせていたことが分かっている。 だが、欠陥の可能性を指摘した会計士たちは、突如契約を打ち切られたという。 英政府による「もみ消し工作」であった可能性もある。 こうして、過ちを早期に正す機会は失われた。 2009年までの間に、労働党政権下で起訴された局長の数は525人にまで増えた』、「欠陥の可能性を指摘した会計士たちは、突如契約を打ち切られた・・・英政府による「もみ消し工作」であった可能性もある」、「英政府」が果たした役割を再検証する必要がる。
・『富士通に責任をなすりつけようとしている こうした英政府の責任をなすりつけられようとしているのが富士通だ。 2024年現在、労働党の「影の内閣(Shadow Cabinet)」でビジネス・エネルギー・産業戦略相を務めるジョナサン・レイノルズ氏は、英議会で、「もし富士通が事態の重大さを認識していたのであれば、事件の理不尽さの度合いに応じた責任を負わされるだろう」と述べている。 しかし、この発言を評して、米ジャーナリストのロバート・スティーブンス氏は、「過去25年に英政府の監督の下で為された極端な不正義を、(富士通への責任転嫁で)覆い隠そうとするものだ」と強く批判している。 富士通が相応の責任を取らされるのは当然としても、一義的には英政府、特に労働党の政治家の下で、元局長たちが訴追・投獄されたのであり、その責任は消えないという見解を述べたと考えられ』、「米ジャーナリストのロバート・スティーブンス氏は、「過去25年に英政府の監督の下で為された極端な不正義を、(富士通への責任転嫁で)覆い隠そうとするものだ」と強く批判している」、注目すべき発言だ。
・『ドラマがなければ政治家は動かなかった 事件の責任は労働党だけが負っているわけではない。2010年から2015年にかけて、連立政権を組んで郵政を担った「自由民主党」や、2015年から現在までの間に政権を担当している「保守党」も、この問題を事実上放置し、元局長やその家族たちを救わなかったからだ。 2024年1月に英民放ITVが事件のドラマ『ミスターベイツvs.ポストオフィス』を放映した。 このドラマがきっかけとなり、スキャンダルに大きな注目が集まる。 世論の高まりに押された政治家たちは、被害者たちに同情を示す必要に迫られた。 逆に言えば、このドラマ放映がなければ、政治は動かなかったと考えられる』、「2024年1月に英民放ITVが事件のドラマ『ミスターベイツvs.ポストオフィス』を放映した。 このドラマがきっかけとなり、スキャンダルに大きな注目が集まる」、なるほど。
・『英政府は富士通なしではやっていけない 英BBCによれば、富士通はポスト・オフィスのほか、税務当局、歳入税関庁、労働・年金省といった政府機関のITインフラに深く浸透している。 過去4年間で101件の契約を獲得し、総額は20億ポンド(約3700億円)に上るという。 それには、原因となった「ホライズン」の延長契約の3600万ポンド(66億6000万円)も含まれている。 英ITジャーナリストのトニー・コリンズ氏は、「政府は富士通なしではやっていけない」「富士通を排除するのは不可能に近い」とBBCに語っている』、「富士通はポスト・オフィスのほか、税務当局、歳入税関庁、労働・年金省といった政府機関のITインフラに深く浸透している。 過去4年間で101件の契約を獲得し、総額は20億ポンド(約3700億円)に上る」、そんなに深く英政府に食い込んでいたとは初めて知った。
・『「富士通の無能さが証明されれば、賠償金は莫大なものになる」 コリンズ氏は、「富士通は、英政府からの要求がなくても、被害者への補償を独自に決定する可能性がある」と予想している。 こうした見解は、英政治家による富士通批判の高まりと連動している。 たとえば、保守党出身で2010年から2016年まで首相を務め、現在は外務大臣デービッド・キャメロン氏の側近である、フランシス・モード氏は、「富士通は少しでも名誉を重んじるのであれば、速やかに元局長たちに相当に大きな金額の補償金を支払うだろう」と語った。 また、保守党のアレックス・チョーク法相兼大法官は、英放送局のITVに対し、「英政府は本件に関する独立調査委員会の取り調べが終了するのを待って、富士通に対する処分を決定する」と断った。 その上で、「富士通の無能さが証明されれば、賠償金は莫大なものになる」との見方を示している』、「無能さ」は「富士通」だけでなく、「英政府」も無縁ではない筈だ。
・『総選挙を見据えた「富士通攻撃」 政府が被害者に支払う補償金は総額で数百億円相当にも上ると思われる。 ただ、政治家の発言を見る限り、英国内では、補償金の一部を富士通が負担するのはもはや既定路線となっているようだ。 英国では2024年後半、あるいは2025年初頭に総選挙が行われる可能性が高い。 そのため、与党の「保守党」、および野党の「労働党」ともに、富士通を攻撃して国民に「正義」をアピールし、選挙に勝利しようとする可能性もある。 無実の人たちを罪に定め、冤罪もみ消しを図った英政治家や官僚の責任を富士通が負わされることになる』、「与党の「保守党」、および野党の「労働党」ともに、富士通を攻撃して国民に「正義」をアピールし、選挙に勝利しようとする可能性もある。 無実の人たちを罪に定め、冤罪もみ消しを図った英政治家や官僚の責任を富士通が負わされることになる」、「富士通」がスケープゴートにされそうだ。
・『世界規模の危機管理に失敗する恐れも 富士通は世界100カ国以上でビジネスを展開するグローバル企業であり、年間売上は2023年3月31日現在で3兆7137億円、従業員は12万4000人を抱えている。 ※富士通の売上高について事実と異なる内容がありましたので修正しました(2024年1月19日14時45分追記)。 英国におけるスキャンダルは世界で報じられており、グローバルなビジネスを守るためにも、経営陣は早く誠意を示した方が得策という判断に傾くかもしれない。 英BBCは東京発の報道で、富士通の時田隆仁社長が被害者たちに対してコメントを出し渋っていることや、英子会社が「捜査に協力している」といった事務的な声明しか出していないことを批判的に伝えていた。 問題を放置すれば、富士通が英国でさらに炎上し、世界的規模の危機管理に失敗する恐れがあった。 こうした状況を受けて時田社長は1月16日にBBCの取材に対し、「弊社は郵便局長の生活とその家族に影響を与えたことを謝罪する」と明言。 また、英下院のビジネス委員会で同日に証言した富士通の英子会社、富士通サービシーズのポール・パターソン最高経営責任者(CEO)も、同社が当局の郵便局長起訴に協力したことを認め、被害者の補償に貢献する「道義的義務」があると述べて謝罪した。 その上で、「旧ロイヤルメールはホライズンにバグやエラーがあることを、早い段階で知っていた」とダメ出しをしている。 コスト削減ばかりを追求して冤罪を作り出した最終的な責任はあくまでも英政府にある。 富士通は英政府の郵便局長訴追に協力しているが、それは自社の責任逃れや罪のなすりつけであった可能性もある。富士通は誠意あるお詫びの表明を被害者に行い、英政府に対して数十億円から数百億円規模の支払いを覚悟した方がよいかもしれない。 いずれにせよ、英政治家や官僚の責任逃れが続く限り、被害者にとっても富士通にとっても、この事件の区切りはつけられることがないだろう』、「コスト削減ばかりを追求して冤罪を作り出した最終的な責任はあくまでも英政府にある。 富士通は英政府の郵便局長訴追に協力しているが、それは自社の責任逃れや罪のなすりつけであった可能性もある。富士通は誠意あるお詫びの表明を被害者に行い、英政府に対して数十億円から数百億円規模の支払いを覚悟した方がよいかもしれない」、その通りだ。
次に、本年1月24日付けJBPressが掲載した在英ジャーナリストの木村 正人氏による「どうして富士通は「闇落ち」したのか、英ポストオフィス大量冤罪の真相 富士通欧州CEO「とんでもない冤罪に関与したことをお詫びしたい」」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/79059
・『「富士通は最初から関与していた」 [ロンドン発]富士通が英ポストオフィスに納入した勘定系システム「ホライズン」の欠陥が原因で民間委託郵便局長(以下、局長)ら736人が冤罪に陥れられた事件で、富士通のポール・パターソン欧州最高経営責任者(CEO)が19日、真相を究明するホライズン公聴会に出席し、「富士通が社会と元局長らを地に落としたのは明らかだ」と改めて謝罪した。 パターソン氏は16日の下院ビジネス・貿易委員会でも「このひどい冤罪に富士通が関与したことをお詫びしたい。富士通は最初から関与していた。システムにバグやエラーがあり、ポストオフィスによる局長らの起訴を手助けした」として被害者救済制度に資する「道義的義務」があると述べた。英国政府は8月までの賠償を目指している。 これまで富士通はポストオフィス(郵便事業の窓口を担当する国営企業)の陰に隠れてダンマリを決め込んできた。次期総選挙を控えるリシ・スナク首相が突然、冤罪に問われた全員の有罪判決を撤回、賠償に応じると表明したため、方針転換を迫られた。賠償総額は推定10億ポンド(約1880億円)。そのうち富士通がいくら負担するかは公聴会の結論次第だ。 富士通にとってはIT(情報技術)システムの公共調達に食い込むため1998年、ホライズンを開発した英国策企業ICLを買収したことが結果的に裏目に出た。国際競争力を失ったICLのホライズンはバグだらけの「クソ袋」(富士通元エンジニアの証言)だった。東芝を地獄に叩き落した米原子力関連企業ウェスティングハウス買収と同じ轍を踏まないか心配だ』、「富士通のポール・パターソン欧州・・・(CEO)が19日、真相を究明するホライズン公聴会に出席し、「富士通が社会と元局長らを地に落としたのは明らかだ」と改めて謝罪した。 パターソン氏は16日の下院ビジネス・貿易委員会でも「このひどい冤罪に富士通が関与したことをお詫びしたい。富士通は最初から関与していた。システムにバグやエラーがあり、ポストオフィスによる局長らの起訴を手助けした」として被害者救済制度に資する「道義的義務」があると述べた」、なるほど。
・『裁判官「バグがなかったと開き直るのは21世紀に地球は平らだと主張するに等しい」 富士通の企業買収とシステム開発力に問題があったのは明らかだ。しかし前代未聞の冤罪事件は英国社会の抱える構造的な問題が複合的に絡み合って起き、システム導入から25年も放置されてきた。400年以上の歴史を誇るポストオフィス・ブランドを守るため、局長らの無実の訴えは踏みにじられた。少し長くなるが、事件をおさらいしておこう。 1999年から2015年にかけホライズンの記録を証拠に900人以上が起訴され、236人が刑務所に放り込まれた。736人が冤罪とみられるが、有罪判決が取り消されたのは95件だけ。救済を待つ間に33人が他界した。うち4人は人生に絶望して自ら命を絶った。スナク首相によると、すでに2500人以上が約1億5000万ポンド(約282億円)の賠償を受けている。 【これまでの経過】 1996年、富士通とICLがホライズン・プロジェクトを受注 1998年、ICLが富士通の完全子会社に 1999年、ポストオフィスの支店にホライズンを順次設置。少ないポストオフィス直営店と、フランチャイズ契約の民間委託郵便局を合わせた支店数は現在計1万1500店 2000年、ホライゾンのデータを証拠に局長らの起訴開始。起訴支援はポストオフィスと富士通の契約に含まれていた 2009年、コンピューター専門誌コンピューター・ウィークリーが、ホライズンで多額の現金不足を指摘されて契約を一方的に打ち切られたアラン・ベイツ氏ら元局長7人の証言を報道。システム開発の仕事に関わった経験を持つベイツ氏はシステム開発の過程でバグやエラーが発生するという知識があった ・ベイツ氏が中心になって「民間委託郵便局長のための正義を実現する同盟」を発足 2012年、保守党下院議員とポストオフィスがホライズンに対する独立調査の実施で合意。法廷監査事務所セカンドサイトが指名され、元局長らと下院議員も承認 2013年、ポストオフィスがホライズン問題の関係書類の処分を命令 2014年、ポストオフィスが局長らの起訴を停止 ・ポストオフィスがセカンドサイトの調査報告書の受け取り拒否)』、「前代未聞の冤罪事件は英国社会の抱える構造的な問題が複合的に絡み合って起き、システム導入から25年も放置されてきた・・・1999年から2015年にかけホライズンの記録を証拠に900人以上が起訴され、236人が刑務所に放り込まれた。736人が冤罪とみられるが、有罪判決が取り消されたのは95件だけ。救済を待つ間に33人が他界した。うち4人は人生に絶望して自ら命を絶った。スナク首相によると、すでに2500人以上が約1億5000万ポンド(約282億円)の賠償を受けている」、「システム導入から25年も放置」、とは酷い話だ。
・『富士通英国の内部告発者がBBCで証言 2015年、英下院企業・イノベーション・技能委員会がホライズンの調査を開始 ・ポストオフィスのポーラ・ヴェネルズCEOが「冤罪の証拠は何一つない」と疑惑を全面否定。元局長らとの調停を中止 ・富士通英国の内部告発者リチャード・ロール氏が英BBC放送で証言 2016年、ベイツ氏らが訴訟費用を前借りしてポストオフィスを相手取りロンドン高等法院に集団訴訟を起こす 2019年、ヴェネルズ氏に「ポストオフィスへの貢献と慈善活動」を理由にエリザベス女王から大英帝国勲章コマンダー(CBE)が授けられる。ヴェネルズ氏は内閣府高官、インペリアル・カレッジ医療NHS(国家医療サービス)トラスト会長に就任 ・ポストオフィスは元局長ら555人に対し5775万ポンド(約109億円)を支払うことで和解が成立。和解金の多くは訴訟費用に充てられ、元局長らが手にしたのはわずか1200万ポンド(約22億6000万円)だけだった ・集団訴訟を担当した裁判官は「ホライズンにバグやエラーがなかったと否定するのは21世紀に地球は平らだと主張するに等しい」との判断を示す。「富士通社員が提出したホライズンの欠陥に関する証拠の信憑性に重大な懸念がある」と検察当局に書類を送付。その後、ロンドン警視庁は偽証の疑いで富士通元社員2人を事情聴取 2020年、ボリス・ジョンソン首相(当時)が独立のホライズン公聴会開始を約束 ・元局長6人の有罪判決が初めて取り消される 2024年、英民間放送ITVのテレビドラマ『ミスター・ベイツ vsポストオフィス』が1月1日から4日連続で放映されたことをきっかけに事態が急展開する』、「ポストオフィスは元局長ら555人に対し5775万ポンド(約109億円)を支払うことで和解が成立。和解金の多くは訴訟費用に充てられ、元局長らが手にしたのはわずか1200万ポンド(約22億6000万円)だけだった」、「訴訟費用」の高さには驚かされる。
・『ポストオフィス「ホライズンは堅牢」 事件の主犯は400年の歴史とブランドを守るため「ホライズンは堅牢」とシラを切り通し、被害者救済を意図的に遅らせてきたポストオフィスとそれを黙認してきた英国政府である。本来、社会的弱者の権利を保護する司法制度が政府や企業の不正を覆い隠すために使われた。英国の訴訟費用はべらぼうに高い。それらの事情を差し引いても富士通の罪は重い。 富士通のパターソン氏は19日の公聴会で「すべてのバグやエラーは何年も前から知られていた。システムの導入が始まった当初からバグやエラー、欠陥は存在し、関係者にとっては周知の事実であった。ポストオフィスにも知らされていた」とホライズンが導入された1999年から2018年まで富士通がバグやエラー、欠陥と格闘し続けてきたことを認めた。 例えば端末操作のやり方でシステムが入金を二重計上し、現金不足が発生するバグがあった。こうしたバグやエラー、欠陥が無実の局長らを起訴するために使われた証拠に影響を与えることを富士通は認識していた。パターソン氏は「起訴のためポストオフィスに送られた富士通の証拠にこうしたバグの記載がなかったことに個人的に驚いている」と証言した。 富士通内部で起訴のためにバグなどの不都合な証拠は削除されていた。パターソン氏は「恥ずべきこと、ぞっとすることだ。英国の法律ではすべての証拠が局長に開示されるべきだった」と臍を噛んだ。被害者救済の道義的義務を認めるのにこれほど長い歳月を要した理由について「何十年も前の過ちだ。私は真実を明らかにするため何でもする」とだけ話した』、「たバグやエラー、欠陥が無実の局長らを起訴するために使われた証拠に影響を与えることを富士通は認識していた。パターソン氏は「起訴のためポストオフィスに送られた富士通の証拠にこうしたバグの記載がなかったことに個人的に驚いている」と証言した。 富士通内部で起訴のためにバグなどの不都合な証拠は削除されていた。パターソン氏は「恥ずべきこと、ぞっとすることだ。英国の法律ではすべての証拠が局長に開示されるべきだった」と臍を噛んだ」、「富士通」の訴訟戦術上の重大なミスだ。
・『富士通元エンジニア「ホライズンがクソ袋だということはみんな知っていた」 大量冤罪を生んだ原点は「ホライズンがクソ袋だということはみんな知っていた。システムを一から書き直す必要があったが、そのようなことは起きなかった。なぜなら、そのための資金もリソースもなかったからだ。このシステムは決して日の目を見るべきではない非常に質の悪いシステムだった」(元富士通エンジニア、ロール氏)ことにある。 富士通は局長らに気付かれないよう英国本社から局長らの端末に遠隔アクセスし、データを変更していた。決済が遅れてポストオフィスに支払う金銭的ペナルティーが発生するのを防ぐためだ。パターソン氏は下院委員会で「富士通の遠隔サポートは文書化され、ポストオフィスも認識していた」と証言した。しかしポストオフィスはこの事実を否定してきた。 二重計上するバグの場合、ホライズンの記録を見れば簡単に気づくはずだが、なぜか悪意の証拠をもとに冤罪が積み上げられた。どこまでポストオフィスと富士通の間に“不当起訴”の共謀があったのかまだ明らかにされていないが、パターソン氏は「バグやエラーがあるという情報を起訴にどう使うかはポストオフィスの責任だ」と法的責任を否定している。 この問題を追及する『ザ・グレート・ポストオフィス・スキャンダル』の著者でジャーナリストのニック・ウォーリス氏は「パターソン氏はなぜ富士通の誰もそれを止めようとしなかったのか、社内外で潜在的な問題として提起しなかったのか語らなかった。司法妨害の陰謀になる可能性のある共謀を認めたのと同じで、富士通を捜査対象にしてしまった」という』、「「パターソン氏はなぜ富士通の誰もそれを止めようとしなかったのか、社内外で潜在的な問題として提起しなかったのか語らなかった。司法妨害の陰謀になる可能性のある共謀を認めたのと同じで、富士通を捜査対象にしてしまった」、本当にお粗末限りない不手際だ。
・『富士通・時田社長「これは大きな問題であり、富士通は非常に深刻に受け止めている」 「シラを切る文化」が蔓延るポストオフィスは裁判所に和解を勧告されるまで真っ赤な嘘をつき続けた。 公共調達分析会社タッセルによると、富士通は歳入関税庁、内務省、警察、国防省といった英国の公共部門から200近い契約を獲得、総額67億8000万ポンド(約1兆2700億円)にのぼる。富士通は公聴会の報告が出るまで政府契約の入札を自主的に辞退した。 全国民間委託郵便局長連盟幹部マイケル・ルドキン氏は2008年8月、富士通英国のオフィスを訪れ、ホライズン担当の技術者が端末から局長の口座を操作するデモンストレーションを目撃した。その翌日、4万4000ポンド(約827万円)の現金不足が見つかったと抜き打ち検査を受けた。妻のスーザンさんは不正会計罪で起訴され、有罪判決を受けた。 1月16日、富士通の時田隆仁社長はスイスのダボスで開かれる世界経済フォーラム年次総会に出席したが、会場近くを歩いているところで英BBC放送の直撃取材を受け、「これは大きな問題であり、富士通は非常に深刻に受け止めている」とこの問題について初めて口を開いた。) また謝罪するかとの質問に「はい、もちろんだ。富士通は元局長らの生活とその家族に影響を与えたことを謝罪する」と述べた。ただこの直撃取材の間、時田社長は足を止めることはなかった。その様子はまるでBBC記者の直撃から一刻も早く逃げたがっているかのようだった』、「シラを切る文化」が蔓延るポストオフィスは裁判所に和解を勧告されるまで真っ赤な嘘をつき続けた。 公共調達分析会社タッセルによると、富士通は歳入関税庁、内務省、警察、国防省といった英国の公共部門から200近い契約を獲得、総額67億8000万ポンド(約1兆2700億円)にのぼる。富士通は公聴会の報告が出るまで政府契約の入札を自主的に辞退した」、入札辞退は当然だ。「富士通の時田隆仁社長はスイスのダボスで開かれる世界経済フォーラム年次総会に出席したが、会場近くを歩いているところで英BBC放送の直撃取材を受け、「これは大きな問題であり、富士通は非常に深刻に受け止めている」とこの問題について初めて口を開いた・・・直撃取材の間、時田社長は足を止めることはなかった。その様子はまるでBBC記者の直撃から一刻も早く逃げたがっているかのようだった」、予め周到に準備した発言ではなく、その場で即時対応した発言をさせられたとは、極めてお粗末で不味い対応だ。
・『収益の悪化、技術力の低下、モラル喪失のスパイラル 最初から元局長らの訴えに耳を傾けていれば、こんな悲劇は起きなかった。元局長らは富士通に対する刑事責任追及を求めているが、司法の独立を無視して政治決着が図られた今、真相は闇に葬り去られる可能性があると筆者はみる。 ダボスでこそこそ逃げ回るような印象を与えた時田社長と、人工知能(AI)の未来を雄弁に語った米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOの差は残酷だ。それが「失われた30年」に開いた日本と世界の差だと痛感した。日本の企業が次々と「闇落ち」していくのは収益の悪化、技術力の低下、モラル喪失の負のスパイラルに陥っているからだ。 各国政府が公共調達で、無実の元局長らを地獄に突き落とした富士通のITシステムより、「私たちは地元のスタートアップや中小企業と提携して公共部門の生産性を高められる。AIによって国内総生産(GDP)に占める医療費と教育費の割合を改善できる」(ナデラCEO)と胸を張るマイクロソフトのAIを買うのは火を見るよりも明らかだ。 (【木村正人】略歴はリンク先参照)』、「元局長らは富士通に対する刑事責任追及を求めているが、司法の独立を無視して政治決着が図られた今、真相は闇に葬り去られる可能性がある・・・各国政府が公共調達で、無実の元局長らを地獄に突き落とした富士通のITシステムより、「私たちは地元のスタートアップや中小企業と提携して公共部門の生産性を高められる。AIによって国内総生産(GDP)に占める医療費と教育費の割合を改善できる」(ナデラCEO)と胸を張るマイクロソフトのAIを買うのは火を見るよりも明らかだ」、その通りだ。自らに不都合なことがあるのであれば、「世界経済フォーラム年次総会」などに出席すべきでない。まさに、恥の上塗りをしたようなものだ。
タグ:富士通が英国で郵便システムの欠陥で史上最大の冤罪事件 (その1)(富士通に責任をなすりつけようとしている…「英国史上最大の冤罪」が「とんだとばっちり」と言える理由 英政府は富士通なしではやっていけない、どうして富士通は「闇落ち」したのか 英ポストオフィス大量冤罪の真相 富士通欧州CEO「とんでもない冤罪に関与したことをお詫びしたい」) PRESIDENT ONLINE 岩田 太郎氏による「富士通に責任をなすりつけようとしている…「英国史上最大の冤罪」が「とんだとばっちり」と言える理由 英政府は富士通なしではやっていけない」 「富士通の英子会社が納入し、英国郵政の旧ロイヤルメール・・・で2000年より使用されている勘定系システム「ホライズン」に、重大な欠陥があった・・・重大なシステムトラブルが15年以上も続いていた。 このシステムトラブルに気づかず、民間委託郵便局長ら736人が不足分の現金を横領したなどの疑いをかけられるという、巨大冤罪事件に発展。 236人もの元局長が無実の罪で投獄され、少なくとも4人が自殺したという」、信じ難いような驚くべき事件だ。 「事件が英政府による組織的な人権侵害であるのは間違いなく、英政府は補償金の支払いを進めてきた。 2019年にロンドンの高等法院で、元局長ら555人に5800万ポンド(約107億6100万円)を支払うことで和解が成立した。これをきっかけに、英政府はこれまでに約1億5000万ポンド(約278億円)の補償金を支払っている。 また、これに加え、2024年には新法案を成立させ、元局長らの有罪判決を取り消し、1人当たり60万ポンド(約1億1100万円)の追加補償金を支払う見込みだ」、なるほど。 「英政府は、富士通のシステムがバグだらけであることを知っていたが、これを承認し、導入・運用していただけでなく、欠陥を修正していなかった。 その上、無実の人から口座の不足金額をむしり取っただけでなく、有罪判決を下して投獄したり、自殺に追い込んでいたのだ。 その一義的な当事者は、・・・政権を担当していた、「保守党」と「労働党」、および「英自由民主党」にある」、開発者の富士通の責任も否定できないのではなかろうか。 単なる事務の機械化だけでなく、「年間1億5000万ポンドにも上っていた年金受給詐欺を防止」という狙いもあったようだ。 「年金など公的給付金の支払いが銀行に奪われることを恐れ、あわてて導入したものに過ぎない・・・ICLのホライズンが選ばれた」のは、「入札価格が最も低かったから」、なるほど。 「1998年には、すでにシステムの「重大なリスク」が内部文書で指摘・・・政権は調査を開始しなかった」、政権にとっての重要性が低かったのだろう。 「旧ロイヤルメールは十分な予算を計上して「ホライズン」の問題を解決する姿勢を見せなかった。組織の目標がコストカットに集中していたからだ」、なるほど。 「欠陥の可能性を指摘した会計士たちは、突如契約を打ち切られた・・・英政府による「もみ消し工作」であった可能性もある」、「英政府」が果たした役割を再検証する必要がる。 「米ジャーナリストのロバート・スティーブンス氏は、「過去25年に英政府の監督の下で為された極端な不正義を、(富士通への責任転嫁で)覆い隠そうとするものだ」と強く批判している」、注目すべき発言だ。 「2024年1月に英民放ITVが事件のドラマ『ミスターベイツvs.ポストオフィス』を放映した。 このドラマがきっかけとなり、スキャンダルに大きな注目が集まる」、なるほど。 「富士通はポスト・オフィスのほか、税務当局、歳入税関庁、労働・年金省といった政府機関のITインフラに深く浸透している。 過去4年間で101件の契約を獲得し、総額は20億ポンド(約3700億円)に上る」、そんなに深く英政府に食い込んでいたとは初めて知った。 「無能さ」は「富士通」だけでなく、「英政府」も無縁ではない筈だ。 「与党の「保守党」、および野党の「労働党」ともに、富士通を攻撃して国民に「正義」をアピールし、選挙に勝利しようとする可能性もある。 無実の人たちを罪に定め、冤罪もみ消しを図った英政治家や官僚の責任を富士通が負わされることになる」、「富士通」がスケープゴートにされそうだ。 「コスト削減ばかりを追求して冤罪を作り出した最終的な責任はあくまでも英政府にある。 富士通は英政府の郵便局長訴追に協力しているが、それは自社の責任逃れや罪のなすりつけであった可能性もある。富士通は誠意あるお詫びの表明を被害者に行い、英政府に対して数十億円から数百億円規模の支払いを覚悟した方がよいかもしれない」、その通りだ。 JBPRESS 木村 正人氏による「どうして富士通は「闇落ち」したのか、英ポストオフィス大量冤罪の真相 富士通欧州CEO「とんでもない冤罪に関与したことをお詫びしたい」」 「富士通のポール・パターソン欧州・・・(CEO)が19日、真相を究明するホライズン公聴会に出席し、「富士通が社会と元局長らを地に落としたのは明らかだ」と改めて謝罪した。 パターソン氏は16日の下院ビジネス・貿易委員会でも「このひどい冤罪に富士通が関与したことをお詫びしたい。富士通は最初から関与していた。 システムにバグやエラーがあり、ポストオフィスによる局長らの起訴を手助けした」として被害者救済制度に資する「道義的義務」があると述べた」、なるほど。 「前代未聞の冤罪事件は英国社会の抱える構造的な問題が複合的に絡み合って起き、システム導入から25年も放置されてきた・・・1999年から2015年にかけホライズンの記録を証拠に900人以上が起訴され、236人が刑務所に放り込まれた。736人が冤罪とみられるが、有罪判決が取り消されたのは95件だけ。救済を待つ間に33人が他界した。うち4人は人生に絶望して自ら命を絶った。 スナク首相によると、すでに2500人以上が約1億5000万ポンド(約282億円)の賠償を受けている」、「システム導入から25年も放置」、とは酷い話だ。 「ポストオフィスは元局長ら555人に対し5775万ポンド(約109億円)を支払うことで和解が成立。和解金の多くは訴訟費用に充てられ、元局長らが手にしたのはわずか1200万ポンド(約22億6000万円)だけだった」、「訴訟費用」の高さには驚かされる。 「たバグやエラー、欠陥が無実の局長らを起訴するために使われた証拠に影響を与えることを富士通は認識していた。パターソン氏は「起訴のためポストオフィスに送られた富士通の証拠にこうしたバグの記載がなかったことに個人的に驚いている」と証言した。 富士通内部で起訴のためにバグなどの不都合な証拠は削除されていた。 パターソン氏は「恥ずべきこと、ぞっとすることだ。英国の法律ではすべての証拠が局長に開示されるべきだった」と臍を噛んだ」、「富士通」の訴訟戦術上の重大なミスだ。 「「パターソン氏はなぜ富士通の誰もそれを止めようとしなかったのか、社内外で潜在的な問題として提起しなかったのか語らなかった。司法妨害の陰謀になる可能性のある共謀を認めたのと同じで、富士通を捜査対象にしてしまった」、本当にお粗末限りない不手際だ。 「シラを切る文化」が蔓延るポストオフィスは裁判所に和解を勧告されるまで真っ赤な嘘をつき続けた。 公共調達分析会社タッセルによると、富士通は歳入関税庁、内務省、警察、国防省といった英国の公共部門から200近い契約を獲得、総額67億8000万ポンド(約1兆2700億円)にのぼる。富士通は公聴会の報告が出るまで政府契約の入札を自主的に辞退した」、入札辞退は当然だ。 「富士通の時田隆仁社長はスイスのダボスで開かれる世界経済フォーラム年次総会に出席したが、会場近くを歩いているところで英BBC放送の直撃取材を受け、「これは大きな問題であり、富士通は非常に深刻に受け止めている」とこの問題について初めて口を開いた・・・直撃取材の間、時田社長は足を止めることはなかった。その様子はまるでBBC記者の直撃から一刻も早く逃げたがっているかのようだった」、予め周到に準備した発言ではなく、その場で即時対応した発言をさせられたとは、極めてお粗末で不味い対応だ。 「元局長らは富士通に対する刑事責任追及を求めているが、司法の独立を無視して政治決着が図られた今、真相は闇に葬り去られる可能性がある・・・各国政府が公共調達で、無実の元局長らを地獄に突き落とした富士通のITシステムより、「私たちは地元のスタートアップや中小企業と提携して公共部門の生産性を高められる。AIによって国内総生産(GDP)に占める医療費と教育費の割合を改善できる」(ナデラCEO)と胸を張るマイクロソフトのAIを買うのは火を見るよりも明らかだ」、 その通りだ。自らに不都合なことがあるのであれば、「世界経済フォーラム年次総会」などに出席すべきでない。まさに、恥の上塗りをしたようなものだ。
倒産・経営破綻(その3)(脱毛サロン「銀座カラー」倒産に利用者激怒! “先払いビジネス”への法規制はできるのか? 専門家の見解は、脱毛サロン「銀座カラー」破産に追い込まれた裏側 美容関連の「前金ビジネス」の倒産が相次ぐ) [企業経営]
倒産・経営破綻については、昨年12月15日に取上げた。今日は、(その3)(脱毛サロン「銀座カラー」倒産に利用者激怒! “先払いビジネス”への法規制はできるのか? 専門家の見解は、脱毛サロン「銀座カラー」破産に追い込まれた裏側 美容関連の「前金ビジネス」の倒産が相次ぐ)である。
先ずは、昨年12月19日付け日刊ゲンダイ「脱毛サロン「銀座カラー」倒産に利用者激怒! “先払いビジネス”への法規制はできるのか? 専門家の見解は」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/333589
・『美容脱毛サロン「銀座カラー」を運営するエム・シーネットワークスジャパン(東京都港区)が15日、東京地裁から破産手続き開始決定を受け、SNSでは利用者らが怒りの声をあげている。 東京商工リサーチによると、負債総額は債権者約10万人に対して約58億円。同社は、2022年3月時点で全国に約50店舗を展開し、20年4月期には売上高125億6130万円をあげていた。しかし、「新型コロナウイルス」感染拡大による利用客の減少などから21年4月期には11億7533万円の最終赤字を計上、債務超過となっていたという。 すでに全店舗が閉店され、予約済みのカウンセリングや施術はすべてキャンセル扱いになった。 これには、返金を求める声は当然ながら、現在問題になっているホストクラブの売掛金問題と比較し、エステサロンの「先払い」を疑問視する投稿が散見される。 《先にお金を払わせるシステムのビジネスはこういうのが怖い》 《ホストクラブにはまった女の子より脱毛サロンに倒産されてお金戻ってこない女の子救済してくれや》 《脱毛サロン破産し過ぎやろ ホスト規制するのもいいけど脱毛サロンも何とかした方がいいやろ 30万50万とか払って飛ばれて返ってこんとか ホストよりタチ悪いやろ》 ホストクラブの売掛金問題は被害額が大きい分深刻だが、脱毛をはじめとするエステサロンは近年倒産が相次ぐ。サロンの場合、1人当たりの被害額の相場は数十万円ほどだが、ホストクラブに比べて多くの学生や若い会社員の女性たちが利用し、被害者数は桁違いだ。 しかも、「初回1980円」などの低価格、人気タレントを起用したCMで10~20代の若い世代を呼び込んでいる。割安をエサに先払いさせて、サービスを受ける前に倒産してしまうリスクがあるのも「悪質ではないか」と指摘が相次いでいる。実際、帝国データバンクによれば、エステ脱毛を中心とする「脱毛サロン」の倒産は、2023年1~9月に9件。既に年間で過去最多件数を更新していたという。同業他社では、9月には女性専用の脱毛サロン・シースリーを展開していた「ビューティースリー」、男性専用の脱毛サロン「ウルフクリニック」の運営に関与していた「TBI」などが相次いで倒産した』、「割安をエサに先払いさせて、サービスを受ける前に倒産してしまうリスクがあるのも「悪質ではないか」と指摘が相次いでいる・・・エステ脱毛を中心とする「脱毛サロン」の倒産は、2023年1~9月に9件。既に年間で過去最多件数を更新していたという」、なるほど。
・『「先払い」より「都度払い」を 脱毛サロンなどの「先払い」はサービスを受けていなくても返金されないのか。民事訴訟に詳しい弁護士の山口宏氏が言う。 「エステサロンとの契約時に『先払い』を申し込んでも、クレジットカードからのサロンへの支払いを毎月の分割払いにしていた場合、サロンの事情でサービスが受けられなくなった時点で支払いを拒否できます(割賦販売法第30条の4)。ただし、カードでエステサロンに一括払いしてしまっていたら、サービスが受けられなくなってもカード会社への支払いは拒否できません。もともと、エステサロンに限らず『先払い』は、1回の値段を原価に比べてかなり高額に設定し、複数回まとめて払うと安く見えるように販売するケースが多い。つまり、まとめ払いの値段がお得なわけではないことが多い。商品のないサービスを受けるなら、やはりリスクのない『都度払い』がいいでしょう」 SNSで指摘される「先払い」への法整備は現実的ではないという。 「『先払い』を導入している業界は脱毛サロンに限りません。多くの業界に影響を及ぼすので、リスクをカバーするための担保を取る方法を法制化するのは難しい。たとえば、不動産業界は業界団体が集めた資金から、トラブルがあった際の賠償ができる制度を設けています。エステ業界などの業界団体が、同様の制度を設けられるかは簡単なことではないでしょう」(山口宏弁護士) 消費者が厳しい業界を見極めて、サービスを受けるなら自身でリスクヘッジするほかない』、「まとめ払いの値段がお得なわけではないことが多い。商品のないサービスを受けるなら、やはりリスクのない『都度払い』がいいでしょう・・・「『先払い』を導入している業界は脱毛サロンに限りません。多くの業界に影響を及ぼすので、リスクをカバーするための担保を取る方法を法制化するのは難しい」、なるほど。
次に、昨年12月23日付け東洋経済オンラインが掲載した東京商工リサーチ情報本部情報部長の原田 三寛氏による「脱毛サロン「銀座カラー」破産に追い込まれた裏側 美容関連の「前金ビジネス」の倒産が相次ぐ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/723561
・『12月15日の夜、衝撃のニュースが駆け巡った。脱毛サロン「銀座カラー」を展開するエム・シーネットワークスジャパン(東京都港区)が、ホームページに「破産手続開始決定のお知らせ」を掲示したのだ。負債総額は約58億円、債権者(被害者)が約10万人にのぼる大型倒産はSNSなどを通じて瞬く間に広がった。 多くの被害者を生み出した同社の倒産劇の背景を東京商工リサーチ(TSR)が追った』、「負債総額は約58億円、債権者(被害者)が約10万人にのぼる大型倒産」、「債権者(被害者)が約10万人」とは本当に大規模だ。
・『積極的な広告宣伝と出店攻勢 エム・シーネットワークスジャパンは1993年に脱毛専門のエステサロン経営を目的に設立された。当初は銀座店のみを運営していたが、2010年代から「銀座カラー」の屋号で積極的に全国出店に打って出た。 脱毛専門サロンの分野では、銀座に置いた本店や業界の中では長い業歴もあって一定の信頼を得ていた。さらに、通い放題プランなどを全面に押し出し、若年女性を中心に顧客を獲得していた。また、知名度の高い女優や俳優を起用したCMなど大々的なメディア広告で新規集客を募った。 ただ、会員が増えると「予約が取りにくくなる」のが脱毛サロンの常だ。エム・シーネットワークスジャパンは、「予約が取りにくい」というマイナスイメージを払拭し、新規契約を増やすため、多店舗展開を図っていた。銀座や渋谷、横浜など、首都圏の一等地を中心に、各地の主要都市に進出し、店舗網を拡大。ピーク時は全国に約50店舗を構え、顧客数は80万人以上と自称していた。) こうした拡大策が功を奏し、売上高は2020年4月期には125億6130万円と10年前の6倍以上に急拡大。知名度もアップし、脱毛サロン大手の一角を担うまでに急成長した』、「会員が増えると「予約が取りにくくなる」のが脱毛サロンの常だ。エム・シーネットワークスジャパンは、「予約が取りにくい」というマイナスイメージを払拭し、新規契約を増やすため、多店舗展開を図っていた。銀座や渋谷、横浜など、首都圏の一等地を中心に、各地の主要都市に進出し、店舗網を拡大。ピーク時は全国に約50店舗を構え、顧客数は80万人以上と自称」、なるほど。
・『コロナ禍で事業環境が激変 ところが、新型コロナウイルス感染拡大で事業環境が暗転する。コロナ禍で多くの店舗が一時的に休業や営業制限を迫られ、外出自粛などの浸透も利用者の急減に拍車をかけた。コロナ禍の2021年4月期の売上高は約100億円にダウンし、11億753万円の最終赤字を計上して債務超過に転落した。 長引くコロナ禍で新規集客が遅れる一方、医療脱毛の低価格化が進み、競争はさらに激しさを増していた。厳しい環境が続き、生き残りをかけて店舗の統廃合を進めたが、事態は悪化の一途をたどった。 最後の決算となった2023年4月期の業績は、売上高が45億1932万円にとどまり、14億7750万円の営業赤字に沈んだ。店舗の閉鎖費用が主体とみられる特別損失は10億円を超え、最終赤字は23億1130万円に膨らんだ。期末の債務超過額は65億円に達し、社会保険料の滞納額は8億円を超えた。 こうした状況下で、経営者一族による私財提供などで資金繰りを繋ぎつつ、M&Aによる事業譲渡を模索した。しかし、2023年10月頃には承継候補先から謝絶され、11月下旬には私財の提供も困難になった。ついに12月に入り、運転資金が枯渇して破産に追い込まれた。) TSRの調査では、担保となる資産の乏しいエム・シーネットワークスジャパンは従来から銀行借入(=有利子負債)は少なく、2022年4月期末ではゼロだった。過去の出店攻勢や同期末で41億9889万円の債務超過にあることを考えると、バランスシートに有利子負債が計上されていないのは奇異に映る。 では出店費用や赤字補填資金の主な出所はどこか。エム・シーネットワークスジャパンのバランスシートを見直すと、目を引く項目がもう一カ所ある。前受金だ。負債合計91億2373万円のうち、前受金が70億168万円に及ぶ。「負債前受金比率」は76.7%にのぼる。ただ、この比率はあまり耳馴染みがなく、定型化された財務分析フォームにはほぼ採用されていない。 与信管理の現場では、財務リスク把握の観点から「有利子負債構成比率」が頻繁に活用される。エム・シーネットワークスジャパンの場合、2022年4月期末は有利子負債がないため、同比率は0.0%で、一見すると優良企業に映る。ただ、前受金を他人資本と捉えて算出し直すと、142.1%と異常値をたたき出す。 TSRが保有する財務データから2022年に倒産した企業を分析すると、倒産直前期の有利子負債構成比率(平均)は69.3%だった。生存企業の平均は29.8%だ。同社の資金繰りの異常性がはっきりする。 この会社の成長は、顧客からの前受金が支えていた。前金方式では、顧客が右肩上がりに増え続ける間は、集めた前金を人件費や出店費用などの設備投資に充てることができる。だが、ひとたび顧客が減少に転じると、一気に資金繰りに狂いが生じる。今回の結末は、ビジネスモデルを選択して拡大路線を採った段階で、運命づけられていたともいえる』、「最後の決算となった2023年4月期の業績は、売上高が45億1932万円にとどまり、14億7750万円の営業赤字に沈んだ。店舗の閉鎖費用が主体とみられる特別損失は10億円を超え、最終赤字は23億1130万円に膨らんだ。期末の債務超過額は65億円に達し、社会保険料の滞納額は8億円を超えた」、「ピークの売上高は2020年4月期には125億6130万円」に比べ36%も縮小。「期末の債務超過額は65億円に達し、社会保険料の滞納額は8億円を超えた」、さんざんな実績だ。
・『「銀座カラー」の信用調査報告書 こうした点を踏まえ、エム・シーネットワークスジャパンのTSR REPORT(信用調査報告書)には何が書かれていたのかを検証したい。 今年9月に作成されたTSR REPORTによると、「企業診断(評点)」は44点と格付けされ、与信の目安とされる50点を大きく下回っている。「評点推移」は2021年9月以降、7回に渡って評点が更新されている。評点は信用調査ごとに更新されるが、通常は年に1回、決算確定後に見直されるケースが多い。TSRへの頻繁な調査依頼は取引先の警戒感の高さを物語る。) 「所見」には、「2022年4月期末時点で50店舗あったが、2023年4月期末時点で31店舗まで減少」と、直近1年間の大幅な店舗リストラを指摘している。 また、2022年4月期以降の財務諸表は取材で入手されておらず、TSR REPORTに添付されていない。東京商工リサーチ(TSR)への取材対応を含めて公開性が大幅に低下し、意図的な忌避も伺える。 こうしたことからエム・シーネットワークスジャパンの信用力が大きく毀損していることは与信業界では広く認識されていた。ただ、信用情報は一般には公開されない。公開を求める声もあるが、信用調査は会員向けの有料サービスで、また機微情報の安易な公開は事業価値の毀損に繋がりかねず扱いは慎重さが求められる』、「信用情報は一般には公開されない・・・信用調査は会員向けの有料サービスで、また機微情報の安易な公開は事業価値の毀損に繋がりかねず扱いは慎重さが求められる」、なるほど。
・『繰り返される前金ビジネスの倒産劇 過度に前金に依存した資金繰りが破たんし、顧客を巻き込み社会問題化したケースはこれまでも後を絶たない。 2023年は特に同様のケースが目立つ。エム・シーネットワークスジャパンと同じ大手脱毛サロンとして知られた「C3」の運営会社であるビューティースリー(江東区)や、男性専門脱毛サロン「ウルフクリニック」の経営に携わっていたTBI(東京都港区)、「東京プラス歯科矯正歯科」のクリニック名でマウスピース矯正を手掛けていた友伸會(豊島区)など、美容関連の「前金ビジネス」の倒産が相次いでいる。 これら倒産劇には、コロナ禍という特殊要因が少なからず関係している。だが、サービスの利用者確保には自ずと限度があり、コロナ禍でなくてもいずれは拡大策に限界が訪れるのは自明の理だったはずだ。 前金ビジネスは美容関連だけにとどまらないが、美容業界では特に、若者を中心に多数の被害者を生む悲劇が幾度となく繰り返されてきた。それでもなくならないのは、あくなき美への追求という永遠の憧れがある。 消費者心理に便乗した前金ビジネスに危うさがあることは否めない。消費者保護の観点から、一般個人を対象として長期の前受金を前提とするサービスや製品の場合は、企業側の決算公告義務を厳格化するなどの対応も必要だ』、「消費者保護の観点から、一般個人を対象として長期の前受金を前提とするサービスや製品の場合は、企業側の決算公告義務を厳格化するなどの対応も必要」、正論であり、同意したい。
先ずは、昨年12月19日付け日刊ゲンダイ「脱毛サロン「銀座カラー」倒産に利用者激怒! “先払いビジネス”への法規制はできるのか? 専門家の見解は」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/333589
・『美容脱毛サロン「銀座カラー」を運営するエム・シーネットワークスジャパン(東京都港区)が15日、東京地裁から破産手続き開始決定を受け、SNSでは利用者らが怒りの声をあげている。 東京商工リサーチによると、負債総額は債権者約10万人に対して約58億円。同社は、2022年3月時点で全国に約50店舗を展開し、20年4月期には売上高125億6130万円をあげていた。しかし、「新型コロナウイルス」感染拡大による利用客の減少などから21年4月期には11億7533万円の最終赤字を計上、債務超過となっていたという。 すでに全店舗が閉店され、予約済みのカウンセリングや施術はすべてキャンセル扱いになった。 これには、返金を求める声は当然ながら、現在問題になっているホストクラブの売掛金問題と比較し、エステサロンの「先払い」を疑問視する投稿が散見される。 《先にお金を払わせるシステムのビジネスはこういうのが怖い》 《ホストクラブにはまった女の子より脱毛サロンに倒産されてお金戻ってこない女の子救済してくれや》 《脱毛サロン破産し過ぎやろ ホスト規制するのもいいけど脱毛サロンも何とかした方がいいやろ 30万50万とか払って飛ばれて返ってこんとか ホストよりタチ悪いやろ》 ホストクラブの売掛金問題は被害額が大きい分深刻だが、脱毛をはじめとするエステサロンは近年倒産が相次ぐ。サロンの場合、1人当たりの被害額の相場は数十万円ほどだが、ホストクラブに比べて多くの学生や若い会社員の女性たちが利用し、被害者数は桁違いだ。 しかも、「初回1980円」などの低価格、人気タレントを起用したCMで10~20代の若い世代を呼び込んでいる。割安をエサに先払いさせて、サービスを受ける前に倒産してしまうリスクがあるのも「悪質ではないか」と指摘が相次いでいる。実際、帝国データバンクによれば、エステ脱毛を中心とする「脱毛サロン」の倒産は、2023年1~9月に9件。既に年間で過去最多件数を更新していたという。同業他社では、9月には女性専用の脱毛サロン・シースリーを展開していた「ビューティースリー」、男性専用の脱毛サロン「ウルフクリニック」の運営に関与していた「TBI」などが相次いで倒産した』、「割安をエサに先払いさせて、サービスを受ける前に倒産してしまうリスクがあるのも「悪質ではないか」と指摘が相次いでいる・・・エステ脱毛を中心とする「脱毛サロン」の倒産は、2023年1~9月に9件。既に年間で過去最多件数を更新していたという」、なるほど。
・『「先払い」より「都度払い」を 脱毛サロンなどの「先払い」はサービスを受けていなくても返金されないのか。民事訴訟に詳しい弁護士の山口宏氏が言う。 「エステサロンとの契約時に『先払い』を申し込んでも、クレジットカードからのサロンへの支払いを毎月の分割払いにしていた場合、サロンの事情でサービスが受けられなくなった時点で支払いを拒否できます(割賦販売法第30条の4)。ただし、カードでエステサロンに一括払いしてしまっていたら、サービスが受けられなくなってもカード会社への支払いは拒否できません。もともと、エステサロンに限らず『先払い』は、1回の値段を原価に比べてかなり高額に設定し、複数回まとめて払うと安く見えるように販売するケースが多い。つまり、まとめ払いの値段がお得なわけではないことが多い。商品のないサービスを受けるなら、やはりリスクのない『都度払い』がいいでしょう」 SNSで指摘される「先払い」への法整備は現実的ではないという。 「『先払い』を導入している業界は脱毛サロンに限りません。多くの業界に影響を及ぼすので、リスクをカバーするための担保を取る方法を法制化するのは難しい。たとえば、不動産業界は業界団体が集めた資金から、トラブルがあった際の賠償ができる制度を設けています。エステ業界などの業界団体が、同様の制度を設けられるかは簡単なことではないでしょう」(山口宏弁護士) 消費者が厳しい業界を見極めて、サービスを受けるなら自身でリスクヘッジするほかない』、「まとめ払いの値段がお得なわけではないことが多い。商品のないサービスを受けるなら、やはりリスクのない『都度払い』がいいでしょう・・・「『先払い』を導入している業界は脱毛サロンに限りません。多くの業界に影響を及ぼすので、リスクをカバーするための担保を取る方法を法制化するのは難しい」、なるほど。
次に、昨年12月23日付け東洋経済オンラインが掲載した東京商工リサーチ情報本部情報部長の原田 三寛氏による「脱毛サロン「銀座カラー」破産に追い込まれた裏側 美容関連の「前金ビジネス」の倒産が相次ぐ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/723561
・『12月15日の夜、衝撃のニュースが駆け巡った。脱毛サロン「銀座カラー」を展開するエム・シーネットワークスジャパン(東京都港区)が、ホームページに「破産手続開始決定のお知らせ」を掲示したのだ。負債総額は約58億円、債権者(被害者)が約10万人にのぼる大型倒産はSNSなどを通じて瞬く間に広がった。 多くの被害者を生み出した同社の倒産劇の背景を東京商工リサーチ(TSR)が追った』、「負債総額は約58億円、債権者(被害者)が約10万人にのぼる大型倒産」、「債権者(被害者)が約10万人」とは本当に大規模だ。
・『積極的な広告宣伝と出店攻勢 エム・シーネットワークスジャパンは1993年に脱毛専門のエステサロン経営を目的に設立された。当初は銀座店のみを運営していたが、2010年代から「銀座カラー」の屋号で積極的に全国出店に打って出た。 脱毛専門サロンの分野では、銀座に置いた本店や業界の中では長い業歴もあって一定の信頼を得ていた。さらに、通い放題プランなどを全面に押し出し、若年女性を中心に顧客を獲得していた。また、知名度の高い女優や俳優を起用したCMなど大々的なメディア広告で新規集客を募った。 ただ、会員が増えると「予約が取りにくくなる」のが脱毛サロンの常だ。エム・シーネットワークスジャパンは、「予約が取りにくい」というマイナスイメージを払拭し、新規契約を増やすため、多店舗展開を図っていた。銀座や渋谷、横浜など、首都圏の一等地を中心に、各地の主要都市に進出し、店舗網を拡大。ピーク時は全国に約50店舗を構え、顧客数は80万人以上と自称していた。) こうした拡大策が功を奏し、売上高は2020年4月期には125億6130万円と10年前の6倍以上に急拡大。知名度もアップし、脱毛サロン大手の一角を担うまでに急成長した』、「会員が増えると「予約が取りにくくなる」のが脱毛サロンの常だ。エム・シーネットワークスジャパンは、「予約が取りにくい」というマイナスイメージを払拭し、新規契約を増やすため、多店舗展開を図っていた。銀座や渋谷、横浜など、首都圏の一等地を中心に、各地の主要都市に進出し、店舗網を拡大。ピーク時は全国に約50店舗を構え、顧客数は80万人以上と自称」、なるほど。
・『コロナ禍で事業環境が激変 ところが、新型コロナウイルス感染拡大で事業環境が暗転する。コロナ禍で多くの店舗が一時的に休業や営業制限を迫られ、外出自粛などの浸透も利用者の急減に拍車をかけた。コロナ禍の2021年4月期の売上高は約100億円にダウンし、11億753万円の最終赤字を計上して債務超過に転落した。 長引くコロナ禍で新規集客が遅れる一方、医療脱毛の低価格化が進み、競争はさらに激しさを増していた。厳しい環境が続き、生き残りをかけて店舗の統廃合を進めたが、事態は悪化の一途をたどった。 最後の決算となった2023年4月期の業績は、売上高が45億1932万円にとどまり、14億7750万円の営業赤字に沈んだ。店舗の閉鎖費用が主体とみられる特別損失は10億円を超え、最終赤字は23億1130万円に膨らんだ。期末の債務超過額は65億円に達し、社会保険料の滞納額は8億円を超えた。 こうした状況下で、経営者一族による私財提供などで資金繰りを繋ぎつつ、M&Aによる事業譲渡を模索した。しかし、2023年10月頃には承継候補先から謝絶され、11月下旬には私財の提供も困難になった。ついに12月に入り、運転資金が枯渇して破産に追い込まれた。) TSRの調査では、担保となる資産の乏しいエム・シーネットワークスジャパンは従来から銀行借入(=有利子負債)は少なく、2022年4月期末ではゼロだった。過去の出店攻勢や同期末で41億9889万円の債務超過にあることを考えると、バランスシートに有利子負債が計上されていないのは奇異に映る。 では出店費用や赤字補填資金の主な出所はどこか。エム・シーネットワークスジャパンのバランスシートを見直すと、目を引く項目がもう一カ所ある。前受金だ。負債合計91億2373万円のうち、前受金が70億168万円に及ぶ。「負債前受金比率」は76.7%にのぼる。ただ、この比率はあまり耳馴染みがなく、定型化された財務分析フォームにはほぼ採用されていない。 与信管理の現場では、財務リスク把握の観点から「有利子負債構成比率」が頻繁に活用される。エム・シーネットワークスジャパンの場合、2022年4月期末は有利子負債がないため、同比率は0.0%で、一見すると優良企業に映る。ただ、前受金を他人資本と捉えて算出し直すと、142.1%と異常値をたたき出す。 TSRが保有する財務データから2022年に倒産した企業を分析すると、倒産直前期の有利子負債構成比率(平均)は69.3%だった。生存企業の平均は29.8%だ。同社の資金繰りの異常性がはっきりする。 この会社の成長は、顧客からの前受金が支えていた。前金方式では、顧客が右肩上がりに増え続ける間は、集めた前金を人件費や出店費用などの設備投資に充てることができる。だが、ひとたび顧客が減少に転じると、一気に資金繰りに狂いが生じる。今回の結末は、ビジネスモデルを選択して拡大路線を採った段階で、運命づけられていたともいえる』、「最後の決算となった2023年4月期の業績は、売上高が45億1932万円にとどまり、14億7750万円の営業赤字に沈んだ。店舗の閉鎖費用が主体とみられる特別損失は10億円を超え、最終赤字は23億1130万円に膨らんだ。期末の債務超過額は65億円に達し、社会保険料の滞納額は8億円を超えた」、「ピークの売上高は2020年4月期には125億6130万円」に比べ36%も縮小。「期末の債務超過額は65億円に達し、社会保険料の滞納額は8億円を超えた」、さんざんな実績だ。
・『「銀座カラー」の信用調査報告書 こうした点を踏まえ、エム・シーネットワークスジャパンのTSR REPORT(信用調査報告書)には何が書かれていたのかを検証したい。 今年9月に作成されたTSR REPORTによると、「企業診断(評点)」は44点と格付けされ、与信の目安とされる50点を大きく下回っている。「評点推移」は2021年9月以降、7回に渡って評点が更新されている。評点は信用調査ごとに更新されるが、通常は年に1回、決算確定後に見直されるケースが多い。TSRへの頻繁な調査依頼は取引先の警戒感の高さを物語る。) 「所見」には、「2022年4月期末時点で50店舗あったが、2023年4月期末時点で31店舗まで減少」と、直近1年間の大幅な店舗リストラを指摘している。 また、2022年4月期以降の財務諸表は取材で入手されておらず、TSR REPORTに添付されていない。東京商工リサーチ(TSR)への取材対応を含めて公開性が大幅に低下し、意図的な忌避も伺える。 こうしたことからエム・シーネットワークスジャパンの信用力が大きく毀損していることは与信業界では広く認識されていた。ただ、信用情報は一般には公開されない。公開を求める声もあるが、信用調査は会員向けの有料サービスで、また機微情報の安易な公開は事業価値の毀損に繋がりかねず扱いは慎重さが求められる』、「信用情報は一般には公開されない・・・信用調査は会員向けの有料サービスで、また機微情報の安易な公開は事業価値の毀損に繋がりかねず扱いは慎重さが求められる」、なるほど。
・『繰り返される前金ビジネスの倒産劇 過度に前金に依存した資金繰りが破たんし、顧客を巻き込み社会問題化したケースはこれまでも後を絶たない。 2023年は特に同様のケースが目立つ。エム・シーネットワークスジャパンと同じ大手脱毛サロンとして知られた「C3」の運営会社であるビューティースリー(江東区)や、男性専門脱毛サロン「ウルフクリニック」の経営に携わっていたTBI(東京都港区)、「東京プラス歯科矯正歯科」のクリニック名でマウスピース矯正を手掛けていた友伸會(豊島区)など、美容関連の「前金ビジネス」の倒産が相次いでいる。 これら倒産劇には、コロナ禍という特殊要因が少なからず関係している。だが、サービスの利用者確保には自ずと限度があり、コロナ禍でなくてもいずれは拡大策に限界が訪れるのは自明の理だったはずだ。 前金ビジネスは美容関連だけにとどまらないが、美容業界では特に、若者を中心に多数の被害者を生む悲劇が幾度となく繰り返されてきた。それでもなくならないのは、あくなき美への追求という永遠の憧れがある。 消費者心理に便乗した前金ビジネスに危うさがあることは否めない。消費者保護の観点から、一般個人を対象として長期の前受金を前提とするサービスや製品の場合は、企業側の決算公告義務を厳格化するなどの対応も必要だ』、「消費者保護の観点から、一般個人を対象として長期の前受金を前提とするサービスや製品の場合は、企業側の決算公告義務を厳格化するなどの対応も必要」、正論であり、同意したい。
タグ:(その3)(脱毛サロン「銀座カラー」倒産に利用者激怒! “先払いビジネス”への法規制はできるのか? 専門家の見解は、脱毛サロン「銀座カラー」破産に追い込まれた裏側 美容関連の「前金ビジネス」の倒産が相次ぐ) 倒産・経営破綻 日刊ゲンダイ「脱毛サロン「銀座カラー」倒産に利用者激怒! “先払いビジネス”への法規制はできるのか? 専門家の見解は」 「割安をエサに先払いさせて、サービスを受ける前に倒産してしまうリスクがあるのも「悪質ではないか」と指摘が相次いでいる・・・エステ脱毛を中心とする「脱毛サロン」の倒産は、2023年1~9月に9件。既に年間で過去最多件数を更新していたという」、なるほど。 「まとめ払いの値段がお得なわけではないことが多い。商品のないサービスを受けるなら、やはりリスクのない『都度払い』がいいでしょう・・・「『先払い』を導入している業界は脱毛サロンに限りません。多くの業界に影響を及ぼすので、リスクをカバーするための担保を取る方法を法制化するのは難しい」、なるほど。 東洋経済オンライン 原田 三寛氏による「脱毛サロン「銀座カラー」破産に追い込まれた裏側 美容関連の「前金ビジネス」の倒産が相次ぐ」 「負債総額は約58億円、債権者(被害者)が約10万人にのぼる大型倒産」、「債権者(被害者)が約10万人」とは本当に大規模だ。 「会員が増えると「予約が取りにくくなる」のが脱毛サロンの常だ。エム・シーネットワークスジャパンは、「予約が取りにくい」というマイナスイメージを払拭し、新規契約を増やすため、多店舗展開を図っていた。銀座や渋谷、横浜など、首都圏の一等地を中心に、各地の主要都市に進出し、店舗網を拡大。ピーク時は全国に約50店舗を構え、顧客数は80万人以上と自称」、なるほど。 「最後の決算となった2023年4月期の業績は、売上高が45億1932万円にとどまり、14億7750万円の営業赤字に沈んだ。店舗の閉鎖費用が主体とみられる特別損失は10億円を超え、最終赤字は23億1130万円に膨らんだ。期末の債務超過額は65億円に達し、社会保険料の滞納額は8億円を超えた」、「ピークの売上高は2020年4月期には125億6130万円」に比べ36%も縮小。 「期末の債務超過額は65億円に達し、社会保険料の滞納額は8億円を超えた」、さんざんな実績だ。 「信用情報は一般には公開されない・・・信用調査は会員向けの有料サービスで、また機微情報の安易な公開は事業価値の毀損に繋がりかねず扱いは慎重さが求められる」、なるほど。 「消費者保護の観点から、一般個人を対象として長期の前受金を前提とするサービスや製品の場合は、企業側の決算公告義務を厳格化するなどの対応も必要」、正論であり、同意したい。
コーポレート・ガバナンス問題(その11)(トヨタ会長「再任賛成率の急落」にみる株主の変容 総会での賛成率が2022年から11ポイント低下、三菱ケミカルグループ 突然の社長交代劇の背景 社外出身外国人から社内出身日本人へ逆戻り) [企業経営]
コーポレート・ガバナンス問題については、2021年7月14日に取上げた。今日は、(その11)(トヨタ会長「再任賛成率の急落」にみる株主の変容 総会での賛成率が2022年から11ポイント低下、三菱ケミカルグループ 突然の社長交代劇の背景 社外出身外国人から社内出身日本人へ逆戻り)である。
先ずは、本年6月16日付け東洋経済オンライン「トヨタ会長「再任賛成率の急落」にみる株主の変容 総会での賛成率が2022年から11ポイント低下」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/679400
・『「私が大きな流れに逆らいながらも前に進むことができたのは、中長期的な視点でずっとトヨタを支えてくれた株主さまのおかげだったと思う」「(新体制では)うまくいかないことのほうが多いと思うが、どうか挑戦を長い目で見ていただき、支援をいただきますようお願い申し上げます」 6月14日に開かれたトヨタ自動車の定時株主総会。豊田章男会長が社長を務めた14年を涙ながらに振り返り、佐藤恒治社長率いる新体制への支援を求めると、株主からひときわ大きな拍手が送られた。 今年のトヨタの総会は、例年にないほど注目された。理由の1つは、アメリカの議決権行使助言会社のグラスルイスが、豊田会長の取締役再任に反対するよう機関投資家などの株主に推奨したことにある。 翌15日に開示された臨時報告書によると、豊田会長の取締役再任への賛成率は84.57%。再任が危うくなるような賛成率ではないが、95.58%だった2022年からは11ポイント低下した。 (豊田会長の取締役再任に対する賛成率はリンク先参照) 議決権行使結果の開示が始まった2010年以降、賛成率は93%を下回ったことがなかっただけに「反対推奨」は一定の影響があったと思われる』、「豊田会長の取締役再任への賛成率は84.57%・・・95.58%だった2022年からは11ポイント低下した・・・議決権行使結果の開示が始まった2010年以降、賛成率は93%を下回ったことがなかっただけに「反対推奨」は一定の影響があった」、なるほど。
・独立社外取締役がポイントに 焦点となったのは独立社外取締役の〝独立性〟だった。 独立社外取締役の候補としてトヨタが選任・提案したのは4人。その中の1人である大島眞彦氏が副会長を務める三井住友銀行は、トヨタの主要取引銀行の1つだ。 大島氏を新任の社外取締役とすることには反対しない。だが、「独立していると言えない」とグラスルイスは判断した。) 大島氏を独立社外取締役にカウントしない場合、トヨタの取締役会は東証がプライム上場企業に求める「独立社外役員が3分の1以上」の基準を満たさなくなる。 「十分な数の独立した社外取締役がおらず、客観性や独立性、適切な監督を行う能力に深刻な懸念を抱く」。グラスルイスはそう指摘し、取締役会議長として責任を負う豊田会長の再任に反対すべきとした。 総会前には、アメリカ最大の公的年金基金であるカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)が、取締役候補10人のうち豊田会長や佐藤社長ら8人に反対票を投じたと公表していた。問題視したのは、やはり取締役会の独立性だ。 カルパースは2000年代前半、企業統治の不備などでアメリカのウォルト・ディズニーに圧力をかけ、経営トップを追い詰めた経験を持つ「物言う機関投資家」として知られる。一方、その姿勢を「ドグマチック(独断的・独善的)」と評する市場関係者も少なくない。 実は、カルパースは昨年も豊田会長をはじめトヨタの取締役候補9人のうち7人に反対票を投じていた。それを踏まえると、今年の賛成率低下は、グラスルイスによる反対推奨の影響が大きく出たと言えそうだ』、「今年の賛成率低下は、グラスルイスによる反対推奨の影響が大きく出たと言えそうだ」、なるほど。
・『運用会社が気候変動関連で株主提案 今年のトヨタの総会でのもう1つの注目点は、欧州の機関投資家が行った株主提案だった。デンマークの年金基金AP、ノルウェーのストアブランド・アセット・マネジメント、オランダのAPGアセットマネジメントが共同提案していた。 定款を変更し、「気候変動関連の渉外活動が及ぼす当社(トヨタ)への影響とパリ協定の目標との整合性に関する評価及び年次報告書の作成」などを規定に追加することを求めたのだ。 この提案にグラスルイスは反対を推奨したのに対し、グラスルイスと並ぶ議決権行使助言会社のISSは賛成を推奨。カルパースも賛成票を投じていた。 会社側は「このような課題に対し、(中略)柔軟かつ多様な経営判断を行い、(中略)速やかに実行していくことが求められます」「定款には(中略)規定せず、現行の定款を維持したい」と、株主提案への反対を表明していた。) 結局、株主提案への賛成率は15.06%にとどまり、否決された。 定款変更には、出席株主の3分の2以上の賛成が必要となる。取締役選任など過半数で成立する議案よりハードルは高い。提案することで環境問題への注目を集めることが目的だったと思われる。 トヨタは総会を無事に乗り切ったが、多くの上場企業で株主総会が本格化するのはこれからだ。6月29日には東証上場(3月期決算)全体の26%に当たる595社で総会が開かれる。株主提案を受けた企業は90社にのぼり、過去最高だった昨年の77社を上回る。 取締役会や社外取締役の独立性が厳しく問われるのは、もちろんトヨタだけではない。 これまではメインバンク出身の社外取締役には独立性がないと判断されてきた。今は主幹事証券会社や株式の持ち合い先の出身者も同様に独立性がないとみなす機関投資家が出てきている。株主側の判断基準は年々厳しくなっている」。大和総研の鈴木裕・主席研究員はそう指摘する』、「これまではメインバンク出身の社外取締役には独立性がないと判断されてきた。今は主幹事証券会社や株式の持ち合い先の出身者も同様に独立性がないとみなす機関投資家が出てきている。株主側の判断基準は年々厳しくなっている」、なるほど。
・『気候変動問題への姿勢が一般に問われる時代 また気候変動に関するトヨタへの株主提案は、機関投資家が一般企業に対しても気候変動への取り組みをシビアに判断する時代が到来したことを示している。 株主提案を行う主体は、これまで非政府組織(NGO)や環境団体が中心だった。電力卸のJ-POWER(電源開発)に対しては昨年、今年と2年連続でフランスのアムンディなど資産運用会社が株主提案を行っているが、同社はエネルギー関連企業だ。 株主提案がされていないからといって安心はできない。グラスルイスは「取締役会レベルで気候変動に対する取り組みを監督する体制が整っていない」として、日産自動車の内田誠社長の取締役再任に反対を推奨している。 株価や業績の向上は当然。ガバナンス体制の整備や環境問題への取り組みも怠ってはならない。加えて、株主といかに対話していくか。経営に求められるものは増える一方だ』、「株価や業績の向上は当然。ガバナンス体制の整備や環境問題への取り組みも怠ってはならない。加えて、株主といかに対話していくか。経営に求められるものは増える一方だ」、その通りだ。
次に、12月28日付け東洋経済オンライン「三菱ケミカルグループ、突然の社長交代劇の背景 社外出身外国人から社内出身日本人へ逆戻り」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/724378
・『唐突感のある社長交代劇になった。 総合化学大手の三菱ケミカルグループ(以下、三菱ケミカルG)は2023年12月22日、ジョンマーク・ギルソン社長が退任し、副社長の筑本学氏が新社長に昇格する2024年4月1日付人事を発表した。 同社では、社長を含む執行役の任期は1年間。指名委員会が10月頃から成果や事業状況を議論して、翌年度(4月1日以降)の体制を決める。 指名委委員長で社外取締役の橋本孝之氏は、「この先数年間の業界の変化や当社の変革を考えたときに、新たなリーダーが必要であるという結論になった」と説明。ギルソン氏には12月18日に伝えたといい、「(ギルソン氏が)落胆の色を見せなかったと言えばウソになる」と様子も語った。 社長交代の発表会見にもかかわらず、ギルソン氏の姿はなかった』、「総合化学大手の三菱ケミカルグループ・・・は2023年12月22日、ジョンマーク・ギルソン社長が退任し、副社長の筑本学氏が新社長に昇格する2024年4月1日付人事を発表・・・確かに「唐突感のある社長交代劇」だ。
・『大胆な改革を期待し社外から外国人を起用 ベルギー出身でフランスの化学メーカーCEO職にあったギルソン氏が、三菱ケミカルGの社長に就くことが発表されたのは2020年10月のこと。外国人経営者ならではの大胆な改革を期待しての起用だった。 2021年4月の就任後は、高付加価値事業に集中する筋肉質な企業への脱皮を目指してきた。2021年12月には、石油化学(以下、石化)事業などの切り離しの方針を発表。2023年度(2024年3月期)から3年間の中期経営計画内で改革を実行している最中でもあった。 だが、石化事業の分離は思うように進んでいなかったようだ。) そもそも石化事業は汎用品が多く低採算で、三菱ケミカルGが志向する高付加価値路線とはそぐわない。二酸化炭素の排出量も多く、脱炭素への対応の負担も大きい。 業界全体で見ても、石化事業の再編は共通課題だ。国内にあるエチレンプラント12基は、需要に対して多すぎることはコンセンサスになっている。どこかが縮小や撤退するか、統合するかして、国内の供給力のサイズダウンを進める必要がある。 そこで、石化事業からは手を引き、ヘルスケアや半導体関連、モビリティー関連など高付加価値事業に経営資源を集中する――。ギルソン社長のもと、三菱ケミカルGは思い切ったリストラ策を描いていた。 本来の予定では、2023年内に石化事業を他社との合弁会社にし、そこから3年以内に新規株式公開(IPO)することを目指してきた。しかし、年の瀬を迎えても何の発表もなかった』、「石化事業」だけを取り出すと赤字になってしまうのであれば、分離は不可能だ。
・『事業環境の悪化が誤算? 石化事業の切り離しが思うように進んでいない裏には、方針を発表した当初よりも事業環境が悪化しているという事情がある。 2021年4~9月期、三菱ケミカルGの石化事業は265億円の事業利益を稼いでいた。それが、2023年4~9月期は25億円の事業赤字に沈んでいる。 低迷の理由には景気の悪化もあるが、ほかに根本的な問題もある。 近年、中国企業が相次いで石化製品の生産設備への投資を実施。過剰な供給力によって中国市場からあふれた製品が、日本企業の主力販売先であるアジア市場の需給バランスを大きく悪化させている。今後、多少景気が回復しても、こうした需給構造は変わらない。) そうした中、三菱ケミカルGが当初考えていたような取引条件による事業の切り離しは難しくなったようだ。ギルソン体制で石化事業を所管してきた筑本氏は、「われわれがフェアと思うことが相手にとってフェアではないこともある」とも述べ、交渉の難しさをにじませた。 キャリアのほとんどで石化事業に携わってきた筑本氏。石化事業の今後については、「(必ずしも)切り離すという発想ではない。強い会社として独立させることしか考えていない」とコメントし、構想の仕切り直しを示唆した。 決着の時期については「相手があることなのでいつまでにというのは難しい」と話す。2024年秋までには石化を含む今後の事業戦略を公表したいという』、「2021年4~9月期、三菱ケミカルGの石化事業は265億円の事業利益を稼いでいた。それが、2023年4~9月期は25億円の事業赤字に沈んでいる。 低迷の理由には景気の悪化もあるが、ほかに根本的な問題もある。 近年、中国企業が相次いで石化製品の生産設備への投資を実施。過剰な供給力によって中国市場からあふれた製品が、日本企業の主力販売先であるアジア市場の需給バランスを大きく悪化させている。今後、多少景気が回復しても、こうした需給構造は変わらない」、なるほど。
・『人材流出に危機感も 筑本氏は「(ギルソン氏の就任以降)多くの優秀な人材が流出したことは間違いない」とも明かし、「もう一度、(社内外から)サポートしてもらえるような求心力が必要だ」と語った。 ギルソン社長が進めてきた事業構造改革に対する軋轢も少なからずあったようだ。) 指名委が2020年10月にギルソン氏を次期社長に決めたとき、最終候補者は7人、うち4人が社外の外国人だった。当時も指名委の委員長だった橋本氏は、思い切った改革の必要性を念頭に「社内よりも社外、日本人よりもしがらみのない外国人と考えた」と選考のポイントを説明していた。 それが一転して社内の日本人に交代することについて、橋本氏は「3年前とはだいぶ状況が変わり、厳しい事業環境になった。知見があり、人脈がある人が動かしていくほうがいいだろうという判断になった」と述べた』、「一転して社内の日本人に交代することについて」「3年前とはだいぶ状況が変わり、厳しい事業環境になった。知見があり、人脈がある人が動かしていくほうがいいだろうという判断になった」、なるほど。
・『発表後に株価は急落 三菱ケミカルGの株価は、12月22日に社長人事を発表した午後1時半時点で937円だったが直後から急落。27日の終値は発表直前から7.7%安の864.5円まで下がっている。石化事業などの再編の先行きに不安が広がったことに加え、市場から不信感を買った可能性もありそうだ。 というのも、10月20日に開いた投資家向け説明会では石化事業などの切り離しの進捗について懸念する質問が出たが、「計画通りに進んでいる」「遠くない将来に実現させる」などと、順調であるかのようにアピールしていたからだ。 また、事業構造改革を進める中でも従業員エンゲージメントのスコアは上がっているとも説明していた。今回の社長交代会見で語られたトーンとはかなり乖離がある。 新社長に就く筑本氏には、石化事業再編の道筋をつけることと同時に、市場からの信頼を取り戻すことが求められる』、「新社長に就く筑本氏には、石化事業再編の道筋をつけることと同時に、市場からの信頼を取り戻すことが求められる」、市場と接触するに際しては、正直に接触する必要がある。
先ずは、本年6月16日付け東洋経済オンライン「トヨタ会長「再任賛成率の急落」にみる株主の変容 総会での賛成率が2022年から11ポイント低下」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/679400
・『「私が大きな流れに逆らいながらも前に進むことができたのは、中長期的な視点でずっとトヨタを支えてくれた株主さまのおかげだったと思う」「(新体制では)うまくいかないことのほうが多いと思うが、どうか挑戦を長い目で見ていただき、支援をいただきますようお願い申し上げます」 6月14日に開かれたトヨタ自動車の定時株主総会。豊田章男会長が社長を務めた14年を涙ながらに振り返り、佐藤恒治社長率いる新体制への支援を求めると、株主からひときわ大きな拍手が送られた。 今年のトヨタの総会は、例年にないほど注目された。理由の1つは、アメリカの議決権行使助言会社のグラスルイスが、豊田会長の取締役再任に反対するよう機関投資家などの株主に推奨したことにある。 翌15日に開示された臨時報告書によると、豊田会長の取締役再任への賛成率は84.57%。再任が危うくなるような賛成率ではないが、95.58%だった2022年からは11ポイント低下した。 (豊田会長の取締役再任に対する賛成率はリンク先参照) 議決権行使結果の開示が始まった2010年以降、賛成率は93%を下回ったことがなかっただけに「反対推奨」は一定の影響があったと思われる』、「豊田会長の取締役再任への賛成率は84.57%・・・95.58%だった2022年からは11ポイント低下した・・・議決権行使結果の開示が始まった2010年以降、賛成率は93%を下回ったことがなかっただけに「反対推奨」は一定の影響があった」、なるほど。
・独立社外取締役がポイントに 焦点となったのは独立社外取締役の〝独立性〟だった。 独立社外取締役の候補としてトヨタが選任・提案したのは4人。その中の1人である大島眞彦氏が副会長を務める三井住友銀行は、トヨタの主要取引銀行の1つだ。 大島氏を新任の社外取締役とすることには反対しない。だが、「独立していると言えない」とグラスルイスは判断した。) 大島氏を独立社外取締役にカウントしない場合、トヨタの取締役会は東証がプライム上場企業に求める「独立社外役員が3分の1以上」の基準を満たさなくなる。 「十分な数の独立した社外取締役がおらず、客観性や独立性、適切な監督を行う能力に深刻な懸念を抱く」。グラスルイスはそう指摘し、取締役会議長として責任を負う豊田会長の再任に反対すべきとした。 総会前には、アメリカ最大の公的年金基金であるカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)が、取締役候補10人のうち豊田会長や佐藤社長ら8人に反対票を投じたと公表していた。問題視したのは、やはり取締役会の独立性だ。 カルパースは2000年代前半、企業統治の不備などでアメリカのウォルト・ディズニーに圧力をかけ、経営トップを追い詰めた経験を持つ「物言う機関投資家」として知られる。一方、その姿勢を「ドグマチック(独断的・独善的)」と評する市場関係者も少なくない。 実は、カルパースは昨年も豊田会長をはじめトヨタの取締役候補9人のうち7人に反対票を投じていた。それを踏まえると、今年の賛成率低下は、グラスルイスによる反対推奨の影響が大きく出たと言えそうだ』、「今年の賛成率低下は、グラスルイスによる反対推奨の影響が大きく出たと言えそうだ」、なるほど。
・『運用会社が気候変動関連で株主提案 今年のトヨタの総会でのもう1つの注目点は、欧州の機関投資家が行った株主提案だった。デンマークの年金基金AP、ノルウェーのストアブランド・アセット・マネジメント、オランダのAPGアセットマネジメントが共同提案していた。 定款を変更し、「気候変動関連の渉外活動が及ぼす当社(トヨタ)への影響とパリ協定の目標との整合性に関する評価及び年次報告書の作成」などを規定に追加することを求めたのだ。 この提案にグラスルイスは反対を推奨したのに対し、グラスルイスと並ぶ議決権行使助言会社のISSは賛成を推奨。カルパースも賛成票を投じていた。 会社側は「このような課題に対し、(中略)柔軟かつ多様な経営判断を行い、(中略)速やかに実行していくことが求められます」「定款には(中略)規定せず、現行の定款を維持したい」と、株主提案への反対を表明していた。) 結局、株主提案への賛成率は15.06%にとどまり、否決された。 定款変更には、出席株主の3分の2以上の賛成が必要となる。取締役選任など過半数で成立する議案よりハードルは高い。提案することで環境問題への注目を集めることが目的だったと思われる。 トヨタは総会を無事に乗り切ったが、多くの上場企業で株主総会が本格化するのはこれからだ。6月29日には東証上場(3月期決算)全体の26%に当たる595社で総会が開かれる。株主提案を受けた企業は90社にのぼり、過去最高だった昨年の77社を上回る。 取締役会や社外取締役の独立性が厳しく問われるのは、もちろんトヨタだけではない。 これまではメインバンク出身の社外取締役には独立性がないと判断されてきた。今は主幹事証券会社や株式の持ち合い先の出身者も同様に独立性がないとみなす機関投資家が出てきている。株主側の判断基準は年々厳しくなっている」。大和総研の鈴木裕・主席研究員はそう指摘する』、「これまではメインバンク出身の社外取締役には独立性がないと判断されてきた。今は主幹事証券会社や株式の持ち合い先の出身者も同様に独立性がないとみなす機関投資家が出てきている。株主側の判断基準は年々厳しくなっている」、なるほど。
・『気候変動問題への姿勢が一般に問われる時代 また気候変動に関するトヨタへの株主提案は、機関投資家が一般企業に対しても気候変動への取り組みをシビアに判断する時代が到来したことを示している。 株主提案を行う主体は、これまで非政府組織(NGO)や環境団体が中心だった。電力卸のJ-POWER(電源開発)に対しては昨年、今年と2年連続でフランスのアムンディなど資産運用会社が株主提案を行っているが、同社はエネルギー関連企業だ。 株主提案がされていないからといって安心はできない。グラスルイスは「取締役会レベルで気候変動に対する取り組みを監督する体制が整っていない」として、日産自動車の内田誠社長の取締役再任に反対を推奨している。 株価や業績の向上は当然。ガバナンス体制の整備や環境問題への取り組みも怠ってはならない。加えて、株主といかに対話していくか。経営に求められるものは増える一方だ』、「株価や業績の向上は当然。ガバナンス体制の整備や環境問題への取り組みも怠ってはならない。加えて、株主といかに対話していくか。経営に求められるものは増える一方だ」、その通りだ。
次に、12月28日付け東洋経済オンライン「三菱ケミカルグループ、突然の社長交代劇の背景 社外出身外国人から社内出身日本人へ逆戻り」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/724378
・『唐突感のある社長交代劇になった。 総合化学大手の三菱ケミカルグループ(以下、三菱ケミカルG)は2023年12月22日、ジョンマーク・ギルソン社長が退任し、副社長の筑本学氏が新社長に昇格する2024年4月1日付人事を発表した。 同社では、社長を含む執行役の任期は1年間。指名委員会が10月頃から成果や事業状況を議論して、翌年度(4月1日以降)の体制を決める。 指名委委員長で社外取締役の橋本孝之氏は、「この先数年間の業界の変化や当社の変革を考えたときに、新たなリーダーが必要であるという結論になった」と説明。ギルソン氏には12月18日に伝えたといい、「(ギルソン氏が)落胆の色を見せなかったと言えばウソになる」と様子も語った。 社長交代の発表会見にもかかわらず、ギルソン氏の姿はなかった』、「総合化学大手の三菱ケミカルグループ・・・は2023年12月22日、ジョンマーク・ギルソン社長が退任し、副社長の筑本学氏が新社長に昇格する2024年4月1日付人事を発表・・・確かに「唐突感のある社長交代劇」だ。
・『大胆な改革を期待し社外から外国人を起用 ベルギー出身でフランスの化学メーカーCEO職にあったギルソン氏が、三菱ケミカルGの社長に就くことが発表されたのは2020年10月のこと。外国人経営者ならではの大胆な改革を期待しての起用だった。 2021年4月の就任後は、高付加価値事業に集中する筋肉質な企業への脱皮を目指してきた。2021年12月には、石油化学(以下、石化)事業などの切り離しの方針を発表。2023年度(2024年3月期)から3年間の中期経営計画内で改革を実行している最中でもあった。 だが、石化事業の分離は思うように進んでいなかったようだ。) そもそも石化事業は汎用品が多く低採算で、三菱ケミカルGが志向する高付加価値路線とはそぐわない。二酸化炭素の排出量も多く、脱炭素への対応の負担も大きい。 業界全体で見ても、石化事業の再編は共通課題だ。国内にあるエチレンプラント12基は、需要に対して多すぎることはコンセンサスになっている。どこかが縮小や撤退するか、統合するかして、国内の供給力のサイズダウンを進める必要がある。 そこで、石化事業からは手を引き、ヘルスケアや半導体関連、モビリティー関連など高付加価値事業に経営資源を集中する――。ギルソン社長のもと、三菱ケミカルGは思い切ったリストラ策を描いていた。 本来の予定では、2023年内に石化事業を他社との合弁会社にし、そこから3年以内に新規株式公開(IPO)することを目指してきた。しかし、年の瀬を迎えても何の発表もなかった』、「石化事業」だけを取り出すと赤字になってしまうのであれば、分離は不可能だ。
・『事業環境の悪化が誤算? 石化事業の切り離しが思うように進んでいない裏には、方針を発表した当初よりも事業環境が悪化しているという事情がある。 2021年4~9月期、三菱ケミカルGの石化事業は265億円の事業利益を稼いでいた。それが、2023年4~9月期は25億円の事業赤字に沈んでいる。 低迷の理由には景気の悪化もあるが、ほかに根本的な問題もある。 近年、中国企業が相次いで石化製品の生産設備への投資を実施。過剰な供給力によって中国市場からあふれた製品が、日本企業の主力販売先であるアジア市場の需給バランスを大きく悪化させている。今後、多少景気が回復しても、こうした需給構造は変わらない。) そうした中、三菱ケミカルGが当初考えていたような取引条件による事業の切り離しは難しくなったようだ。ギルソン体制で石化事業を所管してきた筑本氏は、「われわれがフェアと思うことが相手にとってフェアではないこともある」とも述べ、交渉の難しさをにじませた。 キャリアのほとんどで石化事業に携わってきた筑本氏。石化事業の今後については、「(必ずしも)切り離すという発想ではない。強い会社として独立させることしか考えていない」とコメントし、構想の仕切り直しを示唆した。 決着の時期については「相手があることなのでいつまでにというのは難しい」と話す。2024年秋までには石化を含む今後の事業戦略を公表したいという』、「2021年4~9月期、三菱ケミカルGの石化事業は265億円の事業利益を稼いでいた。それが、2023年4~9月期は25億円の事業赤字に沈んでいる。 低迷の理由には景気の悪化もあるが、ほかに根本的な問題もある。 近年、中国企業が相次いで石化製品の生産設備への投資を実施。過剰な供給力によって中国市場からあふれた製品が、日本企業の主力販売先であるアジア市場の需給バランスを大きく悪化させている。今後、多少景気が回復しても、こうした需給構造は変わらない」、なるほど。
・『人材流出に危機感も 筑本氏は「(ギルソン氏の就任以降)多くの優秀な人材が流出したことは間違いない」とも明かし、「もう一度、(社内外から)サポートしてもらえるような求心力が必要だ」と語った。 ギルソン社長が進めてきた事業構造改革に対する軋轢も少なからずあったようだ。) 指名委が2020年10月にギルソン氏を次期社長に決めたとき、最終候補者は7人、うち4人が社外の外国人だった。当時も指名委の委員長だった橋本氏は、思い切った改革の必要性を念頭に「社内よりも社外、日本人よりもしがらみのない外国人と考えた」と選考のポイントを説明していた。 それが一転して社内の日本人に交代することについて、橋本氏は「3年前とはだいぶ状況が変わり、厳しい事業環境になった。知見があり、人脈がある人が動かしていくほうがいいだろうという判断になった」と述べた』、「一転して社内の日本人に交代することについて」「3年前とはだいぶ状況が変わり、厳しい事業環境になった。知見があり、人脈がある人が動かしていくほうがいいだろうという判断になった」、なるほど。
・『発表後に株価は急落 三菱ケミカルGの株価は、12月22日に社長人事を発表した午後1時半時点で937円だったが直後から急落。27日の終値は発表直前から7.7%安の864.5円まで下がっている。石化事業などの再編の先行きに不安が広がったことに加え、市場から不信感を買った可能性もありそうだ。 というのも、10月20日に開いた投資家向け説明会では石化事業などの切り離しの進捗について懸念する質問が出たが、「計画通りに進んでいる」「遠くない将来に実現させる」などと、順調であるかのようにアピールしていたからだ。 また、事業構造改革を進める中でも従業員エンゲージメントのスコアは上がっているとも説明していた。今回の社長交代会見で語られたトーンとはかなり乖離がある。 新社長に就く筑本氏には、石化事業再編の道筋をつけることと同時に、市場からの信頼を取り戻すことが求められる』、「新社長に就く筑本氏には、石化事業再編の道筋をつけることと同時に、市場からの信頼を取り戻すことが求められる」、市場と接触するに際しては、正直に接触する必要がある。
タグ:「新社長に就く筑本氏には、石化事業再編の道筋をつけることと同時に、市場からの信頼を取り戻すことが求められる」、市場と接触するに際しては、正直に接触する必要がある。 「一転して社内の日本人に交代することについて」「3年前とはだいぶ状況が変わり、厳しい事業環境になった。知見があり、人脈がある人が動かしていくほうがいいだろうという判断になった」、なるほど。 「2021年4~9月期、三菱ケミカルGの石化事業は265億円の事業利益を稼いでいた。それが、2023年4~9月期は25億円の事業赤字に沈んでいる。 低迷の理由には景気の悪化もあるが、ほかに根本的な問題もある。 近年、中国企業が相次いで石化製品の生産設備への投資を実施。過剰な供給力によって中国市場からあふれた製品が、日本企業の主力販売先であるアジア市場の需給バランスを大きく悪化させている。今後、多少景気が回復しても、こうした需給構造は変わらない」、なるほど。 「石化事業」だけを取り出すと赤字になってしまうのであれば、分離は不可能だ。 「総合化学大手の三菱ケミカルグループ・・・は2023年12月22日、ジョンマーク・ギルソン社長が退任し、副社長の筑本学氏が新社長に昇格する2024年4月1日付人事を発表・・・確かに「唐突感のある社長交代劇」だ。 東洋経済オンライン「三菱ケミカルグループ、突然の社長交代劇の背景 社外出身外国人から社内出身日本人へ逆戻り」 「株価や業績の向上は当然。ガバナンス体制の整備や環境問題への取り組みも怠ってはならない。加えて、株主といかに対話していくか。経営に求められるものは増える一方だ」、その通りだ。 「これまではメインバンク出身の社外取締役には独立性がないと判断されてきた。今は主幹事証券会社や株式の持ち合い先の出身者も同様に独立性がないとみなす機関投資家が出てきている。株主側の判断基準は年々厳しくなっている」、なるほど。 「今年の賛成率低下は、グラスルイスによる反対推奨の影響が大きく出たと言えそうだ」、なるほど。 「豊田会長の取締役再任への賛成率は84.57%・・・95.58%だった2022年からは11ポイント低下した・・・議決権行使結果の開示が始まった2010年以降、賛成率は93%を下回ったことがなかっただけに「反対推奨」は一定の影響があった」、なるほど。 東洋経済オンライン「トヨタ会長「再任賛成率の急落」にみる株主の変容 総会での賛成率が2022年から11ポイント低下」 (その11)(トヨタ会長「再任賛成率の急落」にみる株主の変容 総会での賛成率が2022年から11ポイント低下、三菱ケミカルグループ 突然の社長交代劇の背景 社外出身外国人から社内出身日本人へ逆戻り) コーポレート・ガバナンス問題
商社問題(その4)(三菱商事が純利益1兆円突破!バフェットが見初めた「日本独自」の強みとは、伊藤忠がCTCに「3800億円の巨額投資」をする事情 アクセンチュア台頭でIT業界の競争環境が激変、「三方よし資本主義」を標榜 伊藤忠を変えた現場視点の経営哲学) [企業経営]
商社問題については、2021年1月24日に取上げた。今日は(その4)(三菱商事が純利益1兆円突破!バフェットが見初めた「日本独自」の強みとは、伊藤忠がCTCに「3800億円の巨額投資」をする事情 アクセンチュア台頭でIT業界の競争環境が激変、「三方よし資本主義」を標榜 伊藤忠を変えた現場視点の経営哲学)である。
先ずは、本年5月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「三菱商事が純利益1兆円突破!バフェットが見初めた「日本独自」の強みとは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323295
・『三菱商事の2023年3月期連結決算は、初めて純利益が1兆円を超えた。実は海外には、日本の総合商社に相当する企業の形態は見当たらない。「ラーメンから航空機まで」と称されるように総合商社の事業領域は幅広く、資源や穀物を輸入に頼る日本ならではのビジネスモデルだ。一方で株価には割安感があり、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が三菱商事など総合商社株を買い増してもいる』、興味深そうだ。
・『バフェットも見初めた日本の5大総合商社 三菱商事の2023年3月期の連結決算は、初めて純利益が1兆円台を上回り、2年連続で過去最高益を更新した。同社は2月に公表していた株主への価値還元も強化するという。 今年4月、著名な投資家ウォーレン・バフェット氏(バークシャー・ハサウェイCEO)は、三菱商事をはじめとした日本の5大総合商社への追加投資を表明した。バフェット氏は、5大総合商社の株価の割安さ、独自のビジネスモデルに支えられた中長期的な成長性を評価している。 三菱商事に関する今後の注目点の一つは、世界経済の環境変化にいかに対応するかだ。地政学リスクは、台湾問題の緊迫感や、ウクライナ紛争の今後の展開など見通しづらい要素が山積している。 また、脱炭素の動きも加速するだろう。洋上風力発電など、再生可能エネルギー由来の電力供給体制はいっそう強化されるはずだ。三菱商事はエネルギー分野での強みを発揮することで、収益獲得のさらなる機会につなげることができるかもしれない。大手商社の業務展開には、大いに期待を持って注視したい』、「著名な投資家ウォーレン・バフェット氏・・・は、三菱商事をはじめとした日本の5大総合商社への追加投資を表明した。バフェット氏は、5大総合商社の株価の割安さ、独自のビジネスモデルに支えられた中長期的な成長性を評価」、なるほど。
・『三菱商事はいかに純利益1兆円を突破したか 23年3月期の三菱商事の連結純利益は、前年度比25.9%増の1兆1807億円だった。従来の自社予想(1兆1500億円)も上回った。 純利益の増加によって、同社は1株当たりの配当金を前年度実績の150円から180円に増やした。自社株取得の上限金額も同700億円から3700億円へ拡充された。 現在、同社の事業ポートフォリオは10分野から構成されている。具体的に、天然ガス、総合素材、石油・化学ソリューション、金属資源、産業インフラ、自動車・モビリティ、食品産業、コンビニのローソンなどコンシューマー産業、電力ソリューション、複合都市開発だ。 セグメントごとに決算内容を確認すると、9分野で純利益は増加した。増えなかった1分野は食品産業で、海外事業における固定資産からの減損の発生などが減少要因だ。 純利益1兆円突破の背景にはいくつかの要因がある。まず、円がドルなど主要な通貨に対して減価した(円安の進行)。22年5月時点、同社予想の年度末ドル円レートは1ドル=120.00円だった。対して実際に着地した為替レートは1ドル=135.50円だった。 同社は、1円の円安/円高が、年間50億円の増減益の要因になるとしている。日米の金融政策の違いなどによって円安が進んだ結果、同社の収益は上振れた。また、原油など世界的な資源価格の上昇も大きい。 そうした外的要因だけでなく、事業ポートフォリオの見直しと入れ替えの加速も好影響を与えた。具体的には、不動産運用会社や海外での発電事業の一部を売却し、投資資金を回収した。資金が再配分されている分野の一つが、脱炭素関連分野である。 異常気象や大気汚染などの問題に対応するために、脱炭素は急務と化している。主要先進国では、石炭などの火力発電を減らし、再生エネルギーを用いた発電が強化されている。世界的な「エネルギー・トランスフォーメーション(EX)」に対応しようと、事業分野を拡大した結果、純利益1兆円を突破したのだ』、「22年5月時点、同社予想の年度末ドル円レートは1ドル=120.00円だった。対して実際に着地した為替レートは1ドル=135.50円だった。 同社は、1円の円安/円高が、年間50億円の増減益の要因になるとしている」、とすると750億円の増益要因になる。
・『強みを見せつけた三菱商事の洋上風力発電コンペ EXの中でも注目を集めているのが洋上風力発電だ。三菱商事は、日本の電力関係者を驚かせる象徴的な出来事を成し遂げた。 さかのぼること20年11月、政府は秋田県沖と千葉県沖において、三つの洋上風力案件を公募した。原子力発電所の稼働が遅れるわが国にとって、再成可能エネルギーをいかに増やすかは、産業競争力、経済安全保障体制にかなりの影響を与える。 台湾海峡の緊迫感の高まりやウクライナ紛争の長期化懸念などを背景に、わが国に直接投資を増やす企業も増えている。台湾積体電路製造(TSMC)や韓国のサムスン電子は良い例だ。そうした海外企業が安心して長期に事業を運営するためにも、洋上風力を用いた発電体制の強化は、わが国のEXの切り札といっても過言ではない。 公募の結果、3区域のすべてで三菱商事を中心とする企業連合が事業者に選定された。日本には、洋上風力に必要な大型風車を生産するメーカーがない。だから三菱商事は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や米Amazonなどの協力を取り付けた。 GEなどが製造する機器や設備を用いて洋上発電を行い、その電力をAmazonなどの顧客が消費する。川上から川下までをつなぐ事業体制を早期に確立できる計画に加えて、三菱商事は競合相手を引き離す低料金などを提示したのだった。 総合商社の強みは、世界中に情報網を張り巡らせていることだ。それをベースに、収益増加が見込まれる分野に経営資源を再配分して需給のマッチングを図れば、新しい技術や理論を導入して収益性を高めることができる。三菱商事はそうした強みを、資源や機械、素材などの分野で発揮してきた。そして今は、洋上風力発電や鉱山での再エネ電力の利用増などに結びつけているというわけだ』、「三菱商事はそうした強みを、資源や機械、素材などの分野で発揮してきた。そして今は、洋上風力発電や鉱山での再エネ電力の利用増などに結びつけている」、なるほど。
・『世界でまれなビジネスモデルと株価の割安感 三菱商事の24年3月期の業績見通しは、一転して、純利益は9200億円に減少すると予想している。市況の反落などが要因だという。ただそれでも、過去の純利益の推移で見れば、9000億円台は相応に高い水準だ。資産の売却、得られた資金の再配分によるデジタル化や脱炭素関連分野での事業運営体制の強化といった成長戦略に支えられ、業績は底堅く推移しそうだ。 世界各国の主要企業のビジネスモデルを比較すると、三菱商事など日本の総合商社に相当する企業の形態は見当たらない。「ラーメンから航空機まで」と称されるように、総合商社は経済活動の川上から川下までを広くカバーする。エネルギー資源や穀物などを輸入に頼るわが国経済が生み出した、独自性の高いビジネスモデルであるともいえる。 一方で株価には割安感がある。1990年代初頭にバブル経済が崩壊して以降、わが国経済の成長率は停滞した。ごく最近でこそ日経平均株価は好調なものの、世界的に見て、日本株は長らく割安感が強かった。 総合商社は複合的な事業ポートフォリオを持つため、これまで、ともすれば事業内容が分りにくいといった投資家の見方(コングロマリット・ディスカウント)が多かった。そうした事情もあり、総合商社株は割安に推移してきた。 5月15日時点で、三菱商事の株価純資産倍率(PBR)は0.95倍である。理論上、今すぐに企業が解散する場合、株主が受け取れる純資産の価値を下回る水準で株価は放置されている。他国にはない独自性の高いビジネスモデルや株価の割安感こそ、バフェット氏が三菱商事など総合商社株を買い増した理由だ。 中期的に、脱炭素やデジタル化の加速を背景に、わが国の素材、精密機械、発電装置などへの需要は増えるだろう。米国との関係を基礎に安全保障体制を整備してきた日本で、事業運営体制を強化する海外企業も増えている。 三菱商事がいっそう事業環境の変化に対応し、収益性を向上する展開を期待したい。それは、わが国経済の活力向上に大きく影響するはずだ。 【訂正】記事初出時より以下の通り訂正します。 11段落目:「1円の円安/円高が、年間40億円の増減益の要因」→「1円の円安/円高が、年間50億円の増減益の要因」 (2023年5月29日16:10 ダイヤモンド編集部)』、「他国にはない独自性の高いビジネスモデルや株価の割安感こそ、バフェット氏が三菱商事など総合商社株を買い増した理由だ。 中期的に、脱炭素やデジタル化の加速を背景に、わが国の素材、精密機械、発電装置などへの需要は増えるだろう。米国との関係を基礎に安全保障体制を整備してきた日本で、事業運営体制を強化する海外企業も増えている。 三菱商事がいっそう事業環境の変化に対応し、収益性を向上する展開を期待したい」、なるほど。
次に、8月8日付け東洋経済オンライン「伊藤忠がCTCに「3800億円の巨額投資」をする事情 アクセンチュア台頭でIT業界の競争環境が激変」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/692943
・『伊藤忠商事が巨額投資に打って出る。 8月2日、連結子会社の伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)に対してTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表したのだ。公開買い付け期間は9月14日まで。現在の出資比率は61.24%で、TOBが成立すればCTCは上場廃止となり完全子会社化される。 投じる資金は3876億円。中国政府系コングロマリットのCITIC(中国中信集団)への6000億円の出資(2015年)、5800億円を投じたファミリーマート完全子会社化(2020年)以来の規模となる』、投下資本は過去3番目の大きさだ。
・『記者会見は30分で打ち切られた CTCの非公開化で企業改革に向けたさらなる経営資源投入、機動的な施策の実行が可能となり、当社およびCTCの収益拡大を実現できる」。会見で石井敬太社長は、CTC完全子会社化の意義をそう語った。 だが、これだけの大型案件にもかかわらず、記者会見は慌ただしくオンラインで開かれ、30分ほどで打ち切られた。 CTCへのTOBを巡っては、8月4日に開かれた第1四半期(4~6月期)決算説明会でも質問が集中した。冒頭、鉢村剛最高財務責任者(CFO)は「安いかどうかは別として、適正な価格で買えたと思っている」と言葉を濁した。) CTC株の買い付け価格は1株4325円。公表資料によれば、7月7日に伊藤忠が提示した買い付け価格は3800円(6日の終値比6.77%のプレミアム)だ。その後の交渉で、価格は4000円、4080円、4090円とじりじりと引き上げられ、7月31日には4200円(前営業日の終値比19.69%のプレミアム)を提案した。 それでも首を縦に振らないCTC側に対して、伊藤忠側は「これ以上引き上げるのは困難」といったん通知したものの、翌8月1日には4325円(7月31日終値から20.07%のプレミアム)を提示して「応諾」となった。 伊藤忠による子会社のTOBを巡っては現在、係争中の案件がある。2020年のファミリーマートへのTOBでは当初1株2600円を提示したものの、その後、コロナ禍による環境変化を理由に2000円まで引き下げ(特別委員会は2800円が適正価格と主張)、結局、2300円に引き上げた。 今年3月、元株主のファンドから買い取り価格決定の申し立てを受けた東京地方裁判所は1株2600円が妥当などとする判断を下し、ファミリーマートが東京高等裁判所に抗告している(「安すぎた」ファミマTOB、伊藤忠との攻防の全内幕)』、「伊藤忠」は総じて「買い取り価格」の引上げには慎重なようだ。
・『「考え方の開きはずいぶんあった」 今回、「引き上げ困難」の通知からわずか1日でCTCの買い付け価格が引き上げられた背景について伊藤忠は「交渉上の判断」(広報部)とだけ回答。鉢村CFOは説明会で、「CTCとわれわれのCAGR(年平均成長率)に対する考え方の開きはずいぶんあった」と明かしたうえで、「最終的に合意した4325円は、今後の(CTCの)成長と合致する計算にはなっている」と述べた。 買い付け価格については伊藤忠側が折れた形となったが、ではなぜ、そこまでして伊藤忠はCTCの非公開化にこだわったのか。 鉢村CFOは「情報産業分野の大きな成長率、市場の評価、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)の高さを伊藤忠に取り込んでいく」と話した。CTCの完全子会社化は、5~6年前から議論を続けてきた案件だったが、「IT分野は2024~2027年にかけて成長率が大きく伸びる」(鉢村氏)という見通しが背中を押したようだ。) だが、CTCの企業価値最大化のために伊藤忠から資金や人材を投入しても、出資比率が現状の6割程度では利益が少数株主に外部流出していく。 「こうした外部流出を考えると意思決定のスピードが遅くなる」(情報・金融カンパニープレジデントの新宮達史氏)という課題を抱えていた。完全子会社化で、迅速な意思決定が可能になり、思い切った経営資源の投入が可能になるというわけだ。 CTCを取り巻く競争環境の変化もTOBを後押しした大きな要因と言える。 CTCの歴史は1958年、伊藤忠などが設立した東京電子計算サービスにさかのぼる。当時ではまだ珍しかったコンピュータの輸入販売、計算機センターの運営事業を始めた。その後、事業再編を続けながら電子機器の販売、保守点検を収益柱に成長し、1999年に東証一部に上場(当時は伊藤忠テクノサイエンス)。初日は買いが殺到して値がつかない人気ぶりで、気配値による時価総額は親会社の伊藤忠を抜いていた』、「初日は買いが殺到して値がつかない人気ぶりで、気配値による時価総額は親会社の伊藤忠を抜いていた」、異常な買い人気だったようだ。
・『クラウド化が進むにつれ強力なライバル登場 当時の佐武広夫社長は、日刊工業新聞のインタビューに、「一部上場による知名度の向上で人材確保の幅が広がる。日本はこれから本格的なウェブ活用時代に突入するので、これに対応する商品の先行開発が必要だ」と語っていた。 インターネット時代をリードし、伊藤忠グループのIT部門の中核として機能し続けたCTCだったが、クラウド化が進むにつれ、最新機器を販売する「プロダクトアウト」の発想から、顧客が求めるサービスを提供する「マーケットイン」への転換を迫られている。 IT業界では、川上の戦略コンサルから川下のシステム運用や業務受託まで請け負うアクセンチュアなど強力なライバルが現れ、「CTCが気づいた時にはもう案件を取られているケースが多発している」(伊藤忠の情報・通信部門幹部)。しかも、アクセンチュアは川上から川下まで自前でそろえ、一気通貫でサービスを提供する。) これに対抗する形で伊藤忠は2019年以降、電子帳票システムに強いウイングアーク1stのほか、コンサルやデータ分析の「川上」を得意とするシグマクシスやブレインパッドへ3~25%出資し、「緩やかな群戦略」で顧客の要望に応える体制をつくってきた。川上企業が戦略コンサルに入り、最終的にはCTCでシステム販売・運用を担うイメージだ。 しかし、新宮氏は「従来のビジネスモデルとサービス範囲で持続的に成長していくことは難しい。伊藤忠グループの海外ネットワーク、ビジネスノウハウ、経営資源をこれまで以上に活用した事業投資、ビジネスモデルの変革、事業領域、提供機能の大幅な拡充が必要」と危機感をあらわにする』、「アクセンチュアは川上から川下まで自前でそろえ、一気通貫でサービスを提供する。) これに対抗する形で伊藤忠は2019年以降、電子帳票システムに強いウイングアーク1stのほか、コンサルやデータ分析の「川上」を得意とするシグマクシスやブレインパッドへ3~25%出資し、「緩やかな群戦略」で顧客の要望に応える体制をつくってきた。川上企業が戦略コンサルに入り、最終的にはCTCでシステム販売・運用を担うイメージだ」、なるほど。
・『修正を迫られる伊藤忠の「群戦略」 今後、CTC自体も海外展開を積極化し、コンサルやデータ分析機能を強化して素早く顧客ニーズに応えていく必要がある。「CTCにお金を突っ込んで、今の状況よりさらに企業価値を上げていかなければ乗り遅れてしまう」(鉢村氏)。「緩やかな群戦略」は、修正を迫られている。 CTCと並び、伊藤忠のIT企業群の中核となるコールセンター最大手「ベルシステム24」へのテコ入れも必須だろう。最下流のBPO(業務委託)の分野でカギとなる企業で、伊藤忠は40%超を出資している。 コールセンター業界では今年9月、三井物産持ち分法適用会社のりらいあコミュニケーションズとKDDI完全子会社のエボルバが経営統合し、従業員5万8000人規模の「アルティウスリンク」が発足する。ベルシステム24と並ぶ規模となり、コールセンターを含むBPO事業の競争が激化することは必至だ。 今回のTOBは伊藤忠の「群戦略」が変貌していく起点となるのか。IT業界は固唾をのんで注視している』、「コールセンター業界では今年9月、三井物産持ち分法適用会社のりらいあコミュニケーションズとKDDI完全子会社のエボルバが経営統合し、従業員5万8000人規模の「アルティウスリンク」が発足する。ベルシステム24と並ぶ規模となり、コールセンターを含むBPO事業の競争が激化することは必至だ。 今回のTOBは伊藤忠の「群戦略」が変貌していく起点となるのか。IT業界は固唾をのんで注視している」、「伊藤忠」の出方が要注目だ。
第三に、12月9日付けForbes「「三方よし資本主義」を標榜。伊藤忠を変えた現場視点の経営哲学」を紹介しよう。
https://forbesjapan.com/articles/detail/67762
・『ステークホルダー資本主義ランキング2位、自然資本ランキングでは1位を獲得した伊藤忠商事。「万年4位」から脱却、時価総額を約5倍に引き上げた会長 CEO・岡藤正広に見る「三方よし」の経営戦略。 伊藤忠商事には「社友会」というOB・OG組織がある。会長CEOの岡藤正広は、社友会メンバーからの手紙を楽しみにしている。これまでに多数の人から、「いい会社にしてくれてありがとう」という感謝がつづられていたことがあったからだ。 「大学時代の友人でほかの商社で働いていた人から『伊藤忠は変わった』と褒められて、自分は鼻が高いという話でした。これはうれしいわな。業績を良くしたり時価総額で上を目指すのも、“ええ会社”と言われたくてやってますから」 岡藤がいい会社と評価されて喜ぶのは、かつてはそうではなかったことの裏返しでもある。社長就任は2010年。当時は商社の中で万年4位。ある取引先に社長就任のあいさつに行くと、待たされたあげく、相手の社長は腰を下ろすことなく立ち話で済ませて帰っていったという。 あれから13年。伊藤忠は21年3月期決算で、株価、時価総額、純利益の3つで五大商社トップとなる「3冠」を初めて達成した。資源高の影響で、非資源の割合が大きい伊藤忠はその後2年は首位を明け渡しているが、それぞれの指標は3冠達成時より伸びている。投資の神様ウォーレン・バフェットが日本の五大商社の株を取得して話題になったが、23年4月の来日時、真っ先に会ったのが岡藤だった。堂々の“ええ会社”である。 ただし、株価などの指標は、いい会社の一面に過ぎない。岡藤は、いい会社について次のように語る。 「もちろん稼がなければダメですよ。でも、稼ぐだけでもダメ。定量・定性の両面でいい会社を目指さなければいけません。最近はステークホルダー資本主義というらしいけど、横文字でわかりにくい。ひらたく言えば、”三方よし”でしょう」 三方よしのひとつが「世間よし」だ。岡藤は社会貢献についてこう話す。 「当然のことながら意識しています。社会主義の国と違って、資本主義の国では企業単位でやっていく。ですからSDGsの問題は、まず企業がサステナブルでないとダメ。企業にも規模や得手不得手がありますから、それに応じてできることをやっていくことになると思います」 商社だからできることのひとつがエネルギーシフトだ。伊藤忠は脱炭素を進めるため、21年4月、コロンビアのドラモンド炭鉱の権益を売却した。 「石炭はものすごく値段が上がりましたから、継続保有していたら1年で数百億円は儲かった可能性はあります。でも、大きな出血を伴ってもやるんだと伊藤忠の真剣度を示すことが大事。小さなものをコツコツやるより、コアになってるものを大きく変えれば、自分たちも追い込まれて変わらざるをえない」 実際、ビジネスは変わりつつある。今年6月、伊藤忠は北米の再生可能エネルギー資産に投資する国内最大級のファンドを三井住友信託銀行と共同で立ち上げた。社会貢献につながる新しいビジネスを模索する様からは、「稼がなければダメだが稼ぐだけではダメ」という、岡藤のいい会社像が見えてくる』、「岡藤は、いい会社について次のように語る。 「もちろん稼がなければダメですよ。でも、稼ぐだけでもダメ。定量・定性の両面でいい会社を目指さなければいけません。最近はステークホルダー資本主義というらしいけど、横文字でわかりにくい。ひらたく言えば、”三方よし”でしょう」 三方よしのひとつが「世間よし」だ。岡藤は社会貢献についてこう話す。 「当然のことながら意識しています。社会主義の国と違って、資本主義の国では企業単位でやっていく。ですからSDGsの問題は、まず企業がサステナブルでないとダメ。企業にも規模や得手不得手がありますから、それに応じてできることをやっていくことになると思います」 商社だからできることのひとつがエネルギーシフトだ。伊藤忠は脱炭素を進めるため、21年4月、コロンビアのドラモンド炭鉱の権益を売却した。 「石炭はものすごく値段が上がりましたから、継続保有していたら1年で数百億円は儲かった可能性はあります。でも、大きな出血を伴ってもやるんだと伊藤忠の真剣度を示すことが大事。小さなものをコツコツやるより、コアになってるものを大きく変えれば、自分たちも追い込まれて変わらざるをえない・・・今年6月、伊藤忠は北米の再生可能エネルギー資産に投資する国内最大級のファンドを三井住友信託銀行と共同で立ち上げた。社会貢献につながる新しいビジネスを模索する様からは、「稼がなければダメだが稼ぐだけではダメ」という、岡藤のいい会社像が見えてくる」。なるほど。
・『「ロイヤルティをもて」は通用しない 岡藤が考えるいい会社をさらに掘り下げてみよう。人的資本経営が注目を集めているが、岡藤は「社員がロイヤルティをもってくれる会社がいい会社」と言う。 「もちろん会社が一方的に社員に『ロイヤルティをもて』と言うだけでは愛情をもってくれません。まずは会社が社員に対して、ほかの会社よりうちがいいと思われるような動きをしないといけない」 社員にロイヤルティをもってもらうために力を入れてきた施策がふたつある。ひとつは健康経営。がんで闘病していた社員の死をきっかけに、がんの特別検診や、がんと仕事の両立支援制度を導入した。 もうひとつは、朝型勤務だ。昔はモーレツに働くことが商社の誇りだったが、今は長時間勤務が忌避される。ただ、単に時短にするだけでは稼げなくなる。生産性を高めるために13年に導入したのが朝型勤務だった。 「最初は不評でしたよ。フレックスで10時に来て、新聞を30分読んで、『そろそろランチか。食堂行こ』と言うとる社員もおったから。文句たらたらの匿名メールもたくさん来ました。朝だと食事の準備が大変だし、残業代で生活してたから困るというわけです。だから朝来たら残業代は1.5倍にして、食事の提供も始めた。すると、早ければ3時に『お先に』と帰れる。今はもう、元には戻れないという社員ばかりです」 早く帰れば家族と過ごしたり自己研さんに充てたりと、一人ひとりが自分の人生を充実させるために時間を使える。朝型勤務は多様な働き方が求められる時代にふさわしい制度だ。 一方で、リモートワークに懐疑的なのは岡藤らしい。コロナ禍ではリモートワークを導入したが、感染が収束するといち早く原則出社の方針を打ち出した。「在宅は生産効率が落ちまっせ。画面の下はみんなパジャマでしょ。なかには画面切った途端に横になって、横に子どもがいたら遊んでしまうこともありますわな。そうなると効率は7掛けくらいですわ。そもそも商社は人に会わないとダメ。スクリーン越しだと肌感覚がいまひとつわからへん」 副業に対する考え方も独特だ。伊藤忠は22年10月からバーチャルオフィス制度をトライアル導入した。希望する社員はオンラインで週5時間、本業以外の案件に従事できる社内兼業制度で、トライアル時には40人、23年4月の本格導入後は約80人が制度を利用している。フェムテックビジネスの取り組みが始まるなど、バーチャルオフィスからの新規事業創出に期待がかかる。 「副業はどっちつかずで中途半端でしょう。本当にその人間が成長できるかどうか疑問です。かといって、新規事業開発室みたいに組織ありきなのもダメ。うまくいかなかったときに元に戻られへんからね。バーチャルオフィスはダメだったら戻れるし、うまくいきだしたら本人の希望でそっちにいってもいい。社員からすると、組織のなかで違う領域に挑戦するほうが思い切ってやれると思う」 働き方改革といっても、単に楽をしたり楽しいことをやるのは改革ではない。大切なのは生産性向上や本人の成長につながるかどうか。その軸に共感する社員には、伊藤忠は居心地のいい会社だろう』、「「副業はどっちつかずで中途半端でしょう。本当にその人間が成長できるかどうか疑問です。かといって、新規事業開発室みたいに組織ありきなのもダメ。うまくいかなかったときに元に戻られへんからね。バーチャルオフィスはダメだったら戻れるし、うまくいきだしたら本人の希望でそっちにいってもいい。社員からすると、組織のなかで違う領域に挑戦するほうが思い切ってやれると思う」 働き方改革といっても、単に楽をしたり楽しいことをやるのは改革ではない。大切なのは生産性向上や本人の成長につながるかどうか。その軸に共感する社員には、伊藤忠は居心地のいい会社だろう」、「バーチャルオフィス」がお勧めのようだ。
・『あるべき論は誰でも言える いい会社には業績や社会貢献、社員のロイヤルティなどさまざまな要素があるが、岡藤は「たくさん言いすぎるとピンとこない。簡潔に言うと、親、兄弟、親戚が『誰々ちゃんがあそこに入ったよ』と誇りに思える会社がいい会社。それを目指せばいい」と説明する。 その意味で特に気にしている指標がある。学生の就職人気企業ランキングだ。) 「学生さんは会社や社会のことを知らないなかで真剣に就職先を選びます。となると、親、友達、先生などまわりの人の評価を参考にするしかない。就職ランキングは、いい会社かどうかの世間の評価がそのまま投影されていると思えばいい」 実際に、伊藤忠のランキングはどうか。さまざまなメディアが人気ランキングを発表しているが、今年は7媒体で伊藤忠が商社部門1位だった。4年連続の快挙だが、その結果に満足はしていない。「ある調査では全業種で3位でした。これを1位にせいと人事・総務部に目標設定しました。人事・総務部だけじゃない。これまで目標は営業カンパニーにしか設定してなかったのですが、いい会社になるには職能の人間にも目標を設定したほうがいいと考え、この4月からやってます。例えば統合報告書の評価を上げるとか、広告なら大きな賞を取るとか。具体的な目標ができると集中してやれる」 岡藤は社長を退いた今も会長CEOとして全権を掌握する。後任のリーダー像についてはどう考えているのか。 「社長になったら本当に毎日細かい判断をせなあかん。そのときトンチンカンな答えをしていたら会社は大変なことになる。商社はまず稼がなあかんから、営業感覚のない人はダメでしょうね」 リーダーの役割は大局観をもって方向性を指し示すことだと考える人も多いが、そうした見方を一蹴する。 「伊藤忠は、こうあるべきだということをやって失敗してきた歴史があります。66年には、織維商社からの総合化を進めるには石油だと言って東亜石油を買収。当時、伊藤忠は20億〜30億円の利益しかなかったのに1800億円の損を出した。石油を扱うのはいいんです。しかし、経験がないからタンカーを10年間の長期契約して失敗した。それから、バブルのときの不動産もそう。国土が限られているから絶対上がると、現地も見ないで地図だけで買った。あるべき論は誰でも言える。それを実現するために必要なものが備わっているかどうかのほうが大事です」 ビジョナリーなリーダーがもてはやされるなか、現場感覚を重視する岡藤のスタイルはひときわ目立つ。 原点は大阪の繊維部門で生地売りをしていたころだ。当時から、会社でみんなが話していることと客先で聞く話にズレがあることが気になっていた。東京出張のとき、代理店の人に「明日、帝国ホテルで展示会がある」と誘われた。もともとの予定にはなく、着替えももってきていない。しかし、現場に答えがあると気づき始めていた岡藤は大阪に帰らずに展示会に行った。 「ここがターニングポイントでした。展示会に行くと、旦那さんは営業と話していて、実際に生地を選んでるのは奥さんか娘さんでした。それを見て、英国のお堅いブランドじゃなく、女性が知ってるブランドにしたら目立つんとちゃうかと。それでイブ・サンローランと交渉して名前をつけたら、ものすごく売れた。あのとき大阪に帰っていたら今の僕はない」 経営者が「いい会社像」を語ると、どうもきれいごとに響くことがある。だが、岡藤の語る“ええ会社”に建前がもつ空虚さはない。そこには常に足元から考える岡藤の哲学が反映されているに違いない。 (岡藤正広氏の略歴、伊藤忠商事の概要はリンク先参照)』、「伊藤忠のランキングはどうか。さまざまなメディアが人気ランキングを発表しているが、今年は7媒体で伊藤忠が商社部門1位だった。4年連続の快挙だが、その結果に満足はしていない。「ある調査では全業種で3位でした。これを1位にせいと人事・総務部に目標設定しました。人事・総務部だけじゃない。これまで目標は営業カンパニーにしか設定してなかったのですが、いい会社になるには職能の人間にも目標を設定したほうがいいと考え、この4月からやってます。例えば統合報告書の評価を上げるとか、広告なら大きな賞を取るとか。具体的な目標ができると集中してやれる」 岡藤は社長を退いた今も会長CEOとして全権を掌握・・・伊藤忠は、こうあるべきだということをやって失敗してきた歴史があります。66年には、織維商社からの総合化を進めるには石油だと言って東亜石油を買収。当時、伊藤忠は20億〜30億円の利益しかなかったのに1800億円の損を出した。石油を扱うのはいいんです。しかし、経験がないからタンカーを10年間の長期契約して失敗した。それから、バブルのときの不動産もそう。国土が限られているから絶対上がると、現地も見ないで地図だけで買った。あるべき論は誰でも言える。それを実現するために必要なものが備わっているかどうかのほうが大事です」 ビジョナリーなリーダーがもてはやされるなか、現場感覚を重視する岡藤のスタイルはひときわ目立つ」、「伊藤忠」の2つの「失敗」については、初めて知った。「現場感覚を重視する岡藤のスタイル」は手堅そうだ。
先ずは、本年5月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「三菱商事が純利益1兆円突破!バフェットが見初めた「日本独自」の強みとは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323295
・『三菱商事の2023年3月期連結決算は、初めて純利益が1兆円を超えた。実は海外には、日本の総合商社に相当する企業の形態は見当たらない。「ラーメンから航空機まで」と称されるように総合商社の事業領域は幅広く、資源や穀物を輸入に頼る日本ならではのビジネスモデルだ。一方で株価には割安感があり、著名投資家のウォーレン・バフェット氏が三菱商事など総合商社株を買い増してもいる』、興味深そうだ。
・『バフェットも見初めた日本の5大総合商社 三菱商事の2023年3月期の連結決算は、初めて純利益が1兆円台を上回り、2年連続で過去最高益を更新した。同社は2月に公表していた株主への価値還元も強化するという。 今年4月、著名な投資家ウォーレン・バフェット氏(バークシャー・ハサウェイCEO)は、三菱商事をはじめとした日本の5大総合商社への追加投資を表明した。バフェット氏は、5大総合商社の株価の割安さ、独自のビジネスモデルに支えられた中長期的な成長性を評価している。 三菱商事に関する今後の注目点の一つは、世界経済の環境変化にいかに対応するかだ。地政学リスクは、台湾問題の緊迫感や、ウクライナ紛争の今後の展開など見通しづらい要素が山積している。 また、脱炭素の動きも加速するだろう。洋上風力発電など、再生可能エネルギー由来の電力供給体制はいっそう強化されるはずだ。三菱商事はエネルギー分野での強みを発揮することで、収益獲得のさらなる機会につなげることができるかもしれない。大手商社の業務展開には、大いに期待を持って注視したい』、「著名な投資家ウォーレン・バフェット氏・・・は、三菱商事をはじめとした日本の5大総合商社への追加投資を表明した。バフェット氏は、5大総合商社の株価の割安さ、独自のビジネスモデルに支えられた中長期的な成長性を評価」、なるほど。
・『三菱商事はいかに純利益1兆円を突破したか 23年3月期の三菱商事の連結純利益は、前年度比25.9%増の1兆1807億円だった。従来の自社予想(1兆1500億円)も上回った。 純利益の増加によって、同社は1株当たりの配当金を前年度実績の150円から180円に増やした。自社株取得の上限金額も同700億円から3700億円へ拡充された。 現在、同社の事業ポートフォリオは10分野から構成されている。具体的に、天然ガス、総合素材、石油・化学ソリューション、金属資源、産業インフラ、自動車・モビリティ、食品産業、コンビニのローソンなどコンシューマー産業、電力ソリューション、複合都市開発だ。 セグメントごとに決算内容を確認すると、9分野で純利益は増加した。増えなかった1分野は食品産業で、海外事業における固定資産からの減損の発生などが減少要因だ。 純利益1兆円突破の背景にはいくつかの要因がある。まず、円がドルなど主要な通貨に対して減価した(円安の進行)。22年5月時点、同社予想の年度末ドル円レートは1ドル=120.00円だった。対して実際に着地した為替レートは1ドル=135.50円だった。 同社は、1円の円安/円高が、年間50億円の増減益の要因になるとしている。日米の金融政策の違いなどによって円安が進んだ結果、同社の収益は上振れた。また、原油など世界的な資源価格の上昇も大きい。 そうした外的要因だけでなく、事業ポートフォリオの見直しと入れ替えの加速も好影響を与えた。具体的には、不動産運用会社や海外での発電事業の一部を売却し、投資資金を回収した。資金が再配分されている分野の一つが、脱炭素関連分野である。 異常気象や大気汚染などの問題に対応するために、脱炭素は急務と化している。主要先進国では、石炭などの火力発電を減らし、再生エネルギーを用いた発電が強化されている。世界的な「エネルギー・トランスフォーメーション(EX)」に対応しようと、事業分野を拡大した結果、純利益1兆円を突破したのだ』、「22年5月時点、同社予想の年度末ドル円レートは1ドル=120.00円だった。対して実際に着地した為替レートは1ドル=135.50円だった。 同社は、1円の円安/円高が、年間50億円の増減益の要因になるとしている」、とすると750億円の増益要因になる。
・『強みを見せつけた三菱商事の洋上風力発電コンペ EXの中でも注目を集めているのが洋上風力発電だ。三菱商事は、日本の電力関係者を驚かせる象徴的な出来事を成し遂げた。 さかのぼること20年11月、政府は秋田県沖と千葉県沖において、三つの洋上風力案件を公募した。原子力発電所の稼働が遅れるわが国にとって、再成可能エネルギーをいかに増やすかは、産業競争力、経済安全保障体制にかなりの影響を与える。 台湾海峡の緊迫感の高まりやウクライナ紛争の長期化懸念などを背景に、わが国に直接投資を増やす企業も増えている。台湾積体電路製造(TSMC)や韓国のサムスン電子は良い例だ。そうした海外企業が安心して長期に事業を運営するためにも、洋上風力を用いた発電体制の強化は、わが国のEXの切り札といっても過言ではない。 公募の結果、3区域のすべてで三菱商事を中心とする企業連合が事業者に選定された。日本には、洋上風力に必要な大型風車を生産するメーカーがない。だから三菱商事は、米ゼネラル・エレクトリック(GE)や米Amazonなどの協力を取り付けた。 GEなどが製造する機器や設備を用いて洋上発電を行い、その電力をAmazonなどの顧客が消費する。川上から川下までをつなぐ事業体制を早期に確立できる計画に加えて、三菱商事は競合相手を引き離す低料金などを提示したのだった。 総合商社の強みは、世界中に情報網を張り巡らせていることだ。それをベースに、収益増加が見込まれる分野に経営資源を再配分して需給のマッチングを図れば、新しい技術や理論を導入して収益性を高めることができる。三菱商事はそうした強みを、資源や機械、素材などの分野で発揮してきた。そして今は、洋上風力発電や鉱山での再エネ電力の利用増などに結びつけているというわけだ』、「三菱商事はそうした強みを、資源や機械、素材などの分野で発揮してきた。そして今は、洋上風力発電や鉱山での再エネ電力の利用増などに結びつけている」、なるほど。
・『世界でまれなビジネスモデルと株価の割安感 三菱商事の24年3月期の業績見通しは、一転して、純利益は9200億円に減少すると予想している。市況の反落などが要因だという。ただそれでも、過去の純利益の推移で見れば、9000億円台は相応に高い水準だ。資産の売却、得られた資金の再配分によるデジタル化や脱炭素関連分野での事業運営体制の強化といった成長戦略に支えられ、業績は底堅く推移しそうだ。 世界各国の主要企業のビジネスモデルを比較すると、三菱商事など日本の総合商社に相当する企業の形態は見当たらない。「ラーメンから航空機まで」と称されるように、総合商社は経済活動の川上から川下までを広くカバーする。エネルギー資源や穀物などを輸入に頼るわが国経済が生み出した、独自性の高いビジネスモデルであるともいえる。 一方で株価には割安感がある。1990年代初頭にバブル経済が崩壊して以降、わが国経済の成長率は停滞した。ごく最近でこそ日経平均株価は好調なものの、世界的に見て、日本株は長らく割安感が強かった。 総合商社は複合的な事業ポートフォリオを持つため、これまで、ともすれば事業内容が分りにくいといった投資家の見方(コングロマリット・ディスカウント)が多かった。そうした事情もあり、総合商社株は割安に推移してきた。 5月15日時点で、三菱商事の株価純資産倍率(PBR)は0.95倍である。理論上、今すぐに企業が解散する場合、株主が受け取れる純資産の価値を下回る水準で株価は放置されている。他国にはない独自性の高いビジネスモデルや株価の割安感こそ、バフェット氏が三菱商事など総合商社株を買い増した理由だ。 中期的に、脱炭素やデジタル化の加速を背景に、わが国の素材、精密機械、発電装置などへの需要は増えるだろう。米国との関係を基礎に安全保障体制を整備してきた日本で、事業運営体制を強化する海外企業も増えている。 三菱商事がいっそう事業環境の変化に対応し、収益性を向上する展開を期待したい。それは、わが国経済の活力向上に大きく影響するはずだ。 【訂正】記事初出時より以下の通り訂正します。 11段落目:「1円の円安/円高が、年間40億円の増減益の要因」→「1円の円安/円高が、年間50億円の増減益の要因」 (2023年5月29日16:10 ダイヤモンド編集部)』、「他国にはない独自性の高いビジネスモデルや株価の割安感こそ、バフェット氏が三菱商事など総合商社株を買い増した理由だ。 中期的に、脱炭素やデジタル化の加速を背景に、わが国の素材、精密機械、発電装置などへの需要は増えるだろう。米国との関係を基礎に安全保障体制を整備してきた日本で、事業運営体制を強化する海外企業も増えている。 三菱商事がいっそう事業環境の変化に対応し、収益性を向上する展開を期待したい」、なるほど。
次に、8月8日付け東洋経済オンライン「伊藤忠がCTCに「3800億円の巨額投資」をする事情 アクセンチュア台頭でIT業界の競争環境が激変」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/692943
・『伊藤忠商事が巨額投資に打って出る。 8月2日、連結子会社の伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)に対してTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表したのだ。公開買い付け期間は9月14日まで。現在の出資比率は61.24%で、TOBが成立すればCTCは上場廃止となり完全子会社化される。 投じる資金は3876億円。中国政府系コングロマリットのCITIC(中国中信集団)への6000億円の出資(2015年)、5800億円を投じたファミリーマート完全子会社化(2020年)以来の規模となる』、投下資本は過去3番目の大きさだ。
・『記者会見は30分で打ち切られた CTCの非公開化で企業改革に向けたさらなる経営資源投入、機動的な施策の実行が可能となり、当社およびCTCの収益拡大を実現できる」。会見で石井敬太社長は、CTC完全子会社化の意義をそう語った。 だが、これだけの大型案件にもかかわらず、記者会見は慌ただしくオンラインで開かれ、30分ほどで打ち切られた。 CTCへのTOBを巡っては、8月4日に開かれた第1四半期(4~6月期)決算説明会でも質問が集中した。冒頭、鉢村剛最高財務責任者(CFO)は「安いかどうかは別として、適正な価格で買えたと思っている」と言葉を濁した。) CTC株の買い付け価格は1株4325円。公表資料によれば、7月7日に伊藤忠が提示した買い付け価格は3800円(6日の終値比6.77%のプレミアム)だ。その後の交渉で、価格は4000円、4080円、4090円とじりじりと引き上げられ、7月31日には4200円(前営業日の終値比19.69%のプレミアム)を提案した。 それでも首を縦に振らないCTC側に対して、伊藤忠側は「これ以上引き上げるのは困難」といったん通知したものの、翌8月1日には4325円(7月31日終値から20.07%のプレミアム)を提示して「応諾」となった。 伊藤忠による子会社のTOBを巡っては現在、係争中の案件がある。2020年のファミリーマートへのTOBでは当初1株2600円を提示したものの、その後、コロナ禍による環境変化を理由に2000円まで引き下げ(特別委員会は2800円が適正価格と主張)、結局、2300円に引き上げた。 今年3月、元株主のファンドから買い取り価格決定の申し立てを受けた東京地方裁判所は1株2600円が妥当などとする判断を下し、ファミリーマートが東京高等裁判所に抗告している(「安すぎた」ファミマTOB、伊藤忠との攻防の全内幕)』、「伊藤忠」は総じて「買い取り価格」の引上げには慎重なようだ。
・『「考え方の開きはずいぶんあった」 今回、「引き上げ困難」の通知からわずか1日でCTCの買い付け価格が引き上げられた背景について伊藤忠は「交渉上の判断」(広報部)とだけ回答。鉢村CFOは説明会で、「CTCとわれわれのCAGR(年平均成長率)に対する考え方の開きはずいぶんあった」と明かしたうえで、「最終的に合意した4325円は、今後の(CTCの)成長と合致する計算にはなっている」と述べた。 買い付け価格については伊藤忠側が折れた形となったが、ではなぜ、そこまでして伊藤忠はCTCの非公開化にこだわったのか。 鉢村CFOは「情報産業分野の大きな成長率、市場の評価、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)の高さを伊藤忠に取り込んでいく」と話した。CTCの完全子会社化は、5~6年前から議論を続けてきた案件だったが、「IT分野は2024~2027年にかけて成長率が大きく伸びる」(鉢村氏)という見通しが背中を押したようだ。) だが、CTCの企業価値最大化のために伊藤忠から資金や人材を投入しても、出資比率が現状の6割程度では利益が少数株主に外部流出していく。 「こうした外部流出を考えると意思決定のスピードが遅くなる」(情報・金融カンパニープレジデントの新宮達史氏)という課題を抱えていた。完全子会社化で、迅速な意思決定が可能になり、思い切った経営資源の投入が可能になるというわけだ。 CTCを取り巻く競争環境の変化もTOBを後押しした大きな要因と言える。 CTCの歴史は1958年、伊藤忠などが設立した東京電子計算サービスにさかのぼる。当時ではまだ珍しかったコンピュータの輸入販売、計算機センターの運営事業を始めた。その後、事業再編を続けながら電子機器の販売、保守点検を収益柱に成長し、1999年に東証一部に上場(当時は伊藤忠テクノサイエンス)。初日は買いが殺到して値がつかない人気ぶりで、気配値による時価総額は親会社の伊藤忠を抜いていた』、「初日は買いが殺到して値がつかない人気ぶりで、気配値による時価総額は親会社の伊藤忠を抜いていた」、異常な買い人気だったようだ。
・『クラウド化が進むにつれ強力なライバル登場 当時の佐武広夫社長は、日刊工業新聞のインタビューに、「一部上場による知名度の向上で人材確保の幅が広がる。日本はこれから本格的なウェブ活用時代に突入するので、これに対応する商品の先行開発が必要だ」と語っていた。 インターネット時代をリードし、伊藤忠グループのIT部門の中核として機能し続けたCTCだったが、クラウド化が進むにつれ、最新機器を販売する「プロダクトアウト」の発想から、顧客が求めるサービスを提供する「マーケットイン」への転換を迫られている。 IT業界では、川上の戦略コンサルから川下のシステム運用や業務受託まで請け負うアクセンチュアなど強力なライバルが現れ、「CTCが気づいた時にはもう案件を取られているケースが多発している」(伊藤忠の情報・通信部門幹部)。しかも、アクセンチュアは川上から川下まで自前でそろえ、一気通貫でサービスを提供する。) これに対抗する形で伊藤忠は2019年以降、電子帳票システムに強いウイングアーク1stのほか、コンサルやデータ分析の「川上」を得意とするシグマクシスやブレインパッドへ3~25%出資し、「緩やかな群戦略」で顧客の要望に応える体制をつくってきた。川上企業が戦略コンサルに入り、最終的にはCTCでシステム販売・運用を担うイメージだ。 しかし、新宮氏は「従来のビジネスモデルとサービス範囲で持続的に成長していくことは難しい。伊藤忠グループの海外ネットワーク、ビジネスノウハウ、経営資源をこれまで以上に活用した事業投資、ビジネスモデルの変革、事業領域、提供機能の大幅な拡充が必要」と危機感をあらわにする』、「アクセンチュアは川上から川下まで自前でそろえ、一気通貫でサービスを提供する。) これに対抗する形で伊藤忠は2019年以降、電子帳票システムに強いウイングアーク1stのほか、コンサルやデータ分析の「川上」を得意とするシグマクシスやブレインパッドへ3~25%出資し、「緩やかな群戦略」で顧客の要望に応える体制をつくってきた。川上企業が戦略コンサルに入り、最終的にはCTCでシステム販売・運用を担うイメージだ」、なるほど。
・『修正を迫られる伊藤忠の「群戦略」 今後、CTC自体も海外展開を積極化し、コンサルやデータ分析機能を強化して素早く顧客ニーズに応えていく必要がある。「CTCにお金を突っ込んで、今の状況よりさらに企業価値を上げていかなければ乗り遅れてしまう」(鉢村氏)。「緩やかな群戦略」は、修正を迫られている。 CTCと並び、伊藤忠のIT企業群の中核となるコールセンター最大手「ベルシステム24」へのテコ入れも必須だろう。最下流のBPO(業務委託)の分野でカギとなる企業で、伊藤忠は40%超を出資している。 コールセンター業界では今年9月、三井物産持ち分法適用会社のりらいあコミュニケーションズとKDDI完全子会社のエボルバが経営統合し、従業員5万8000人規模の「アルティウスリンク」が発足する。ベルシステム24と並ぶ規模となり、コールセンターを含むBPO事業の競争が激化することは必至だ。 今回のTOBは伊藤忠の「群戦略」が変貌していく起点となるのか。IT業界は固唾をのんで注視している』、「コールセンター業界では今年9月、三井物産持ち分法適用会社のりらいあコミュニケーションズとKDDI完全子会社のエボルバが経営統合し、従業員5万8000人規模の「アルティウスリンク」が発足する。ベルシステム24と並ぶ規模となり、コールセンターを含むBPO事業の競争が激化することは必至だ。 今回のTOBは伊藤忠の「群戦略」が変貌していく起点となるのか。IT業界は固唾をのんで注視している」、「伊藤忠」の出方が要注目だ。
第三に、12月9日付けForbes「「三方よし資本主義」を標榜。伊藤忠を変えた現場視点の経営哲学」を紹介しよう。
https://forbesjapan.com/articles/detail/67762
・『ステークホルダー資本主義ランキング2位、自然資本ランキングでは1位を獲得した伊藤忠商事。「万年4位」から脱却、時価総額を約5倍に引き上げた会長 CEO・岡藤正広に見る「三方よし」の経営戦略。 伊藤忠商事には「社友会」というOB・OG組織がある。会長CEOの岡藤正広は、社友会メンバーからの手紙を楽しみにしている。これまでに多数の人から、「いい会社にしてくれてありがとう」という感謝がつづられていたことがあったからだ。 「大学時代の友人でほかの商社で働いていた人から『伊藤忠は変わった』と褒められて、自分は鼻が高いという話でした。これはうれしいわな。業績を良くしたり時価総額で上を目指すのも、“ええ会社”と言われたくてやってますから」 岡藤がいい会社と評価されて喜ぶのは、かつてはそうではなかったことの裏返しでもある。社長就任は2010年。当時は商社の中で万年4位。ある取引先に社長就任のあいさつに行くと、待たされたあげく、相手の社長は腰を下ろすことなく立ち話で済ませて帰っていったという。 あれから13年。伊藤忠は21年3月期決算で、株価、時価総額、純利益の3つで五大商社トップとなる「3冠」を初めて達成した。資源高の影響で、非資源の割合が大きい伊藤忠はその後2年は首位を明け渡しているが、それぞれの指標は3冠達成時より伸びている。投資の神様ウォーレン・バフェットが日本の五大商社の株を取得して話題になったが、23年4月の来日時、真っ先に会ったのが岡藤だった。堂々の“ええ会社”である。 ただし、株価などの指標は、いい会社の一面に過ぎない。岡藤は、いい会社について次のように語る。 「もちろん稼がなければダメですよ。でも、稼ぐだけでもダメ。定量・定性の両面でいい会社を目指さなければいけません。最近はステークホルダー資本主義というらしいけど、横文字でわかりにくい。ひらたく言えば、”三方よし”でしょう」 三方よしのひとつが「世間よし」だ。岡藤は社会貢献についてこう話す。 「当然のことながら意識しています。社会主義の国と違って、資本主義の国では企業単位でやっていく。ですからSDGsの問題は、まず企業がサステナブルでないとダメ。企業にも規模や得手不得手がありますから、それに応じてできることをやっていくことになると思います」 商社だからできることのひとつがエネルギーシフトだ。伊藤忠は脱炭素を進めるため、21年4月、コロンビアのドラモンド炭鉱の権益を売却した。 「石炭はものすごく値段が上がりましたから、継続保有していたら1年で数百億円は儲かった可能性はあります。でも、大きな出血を伴ってもやるんだと伊藤忠の真剣度を示すことが大事。小さなものをコツコツやるより、コアになってるものを大きく変えれば、自分たちも追い込まれて変わらざるをえない」 実際、ビジネスは変わりつつある。今年6月、伊藤忠は北米の再生可能エネルギー資産に投資する国内最大級のファンドを三井住友信託銀行と共同で立ち上げた。社会貢献につながる新しいビジネスを模索する様からは、「稼がなければダメだが稼ぐだけではダメ」という、岡藤のいい会社像が見えてくる』、「岡藤は、いい会社について次のように語る。 「もちろん稼がなければダメですよ。でも、稼ぐだけでもダメ。定量・定性の両面でいい会社を目指さなければいけません。最近はステークホルダー資本主義というらしいけど、横文字でわかりにくい。ひらたく言えば、”三方よし”でしょう」 三方よしのひとつが「世間よし」だ。岡藤は社会貢献についてこう話す。 「当然のことながら意識しています。社会主義の国と違って、資本主義の国では企業単位でやっていく。ですからSDGsの問題は、まず企業がサステナブルでないとダメ。企業にも規模や得手不得手がありますから、それに応じてできることをやっていくことになると思います」 商社だからできることのひとつがエネルギーシフトだ。伊藤忠は脱炭素を進めるため、21年4月、コロンビアのドラモンド炭鉱の権益を売却した。 「石炭はものすごく値段が上がりましたから、継続保有していたら1年で数百億円は儲かった可能性はあります。でも、大きな出血を伴ってもやるんだと伊藤忠の真剣度を示すことが大事。小さなものをコツコツやるより、コアになってるものを大きく変えれば、自分たちも追い込まれて変わらざるをえない・・・今年6月、伊藤忠は北米の再生可能エネルギー資産に投資する国内最大級のファンドを三井住友信託銀行と共同で立ち上げた。社会貢献につながる新しいビジネスを模索する様からは、「稼がなければダメだが稼ぐだけではダメ」という、岡藤のいい会社像が見えてくる」。なるほど。
・『「ロイヤルティをもて」は通用しない 岡藤が考えるいい会社をさらに掘り下げてみよう。人的資本経営が注目を集めているが、岡藤は「社員がロイヤルティをもってくれる会社がいい会社」と言う。 「もちろん会社が一方的に社員に『ロイヤルティをもて』と言うだけでは愛情をもってくれません。まずは会社が社員に対して、ほかの会社よりうちがいいと思われるような動きをしないといけない」 社員にロイヤルティをもってもらうために力を入れてきた施策がふたつある。ひとつは健康経営。がんで闘病していた社員の死をきっかけに、がんの特別検診や、がんと仕事の両立支援制度を導入した。 もうひとつは、朝型勤務だ。昔はモーレツに働くことが商社の誇りだったが、今は長時間勤務が忌避される。ただ、単に時短にするだけでは稼げなくなる。生産性を高めるために13年に導入したのが朝型勤務だった。 「最初は不評でしたよ。フレックスで10時に来て、新聞を30分読んで、『そろそろランチか。食堂行こ』と言うとる社員もおったから。文句たらたらの匿名メールもたくさん来ました。朝だと食事の準備が大変だし、残業代で生活してたから困るというわけです。だから朝来たら残業代は1.5倍にして、食事の提供も始めた。すると、早ければ3時に『お先に』と帰れる。今はもう、元には戻れないという社員ばかりです」 早く帰れば家族と過ごしたり自己研さんに充てたりと、一人ひとりが自分の人生を充実させるために時間を使える。朝型勤務は多様な働き方が求められる時代にふさわしい制度だ。 一方で、リモートワークに懐疑的なのは岡藤らしい。コロナ禍ではリモートワークを導入したが、感染が収束するといち早く原則出社の方針を打ち出した。「在宅は生産効率が落ちまっせ。画面の下はみんなパジャマでしょ。なかには画面切った途端に横になって、横に子どもがいたら遊んでしまうこともありますわな。そうなると効率は7掛けくらいですわ。そもそも商社は人に会わないとダメ。スクリーン越しだと肌感覚がいまひとつわからへん」 副業に対する考え方も独特だ。伊藤忠は22年10月からバーチャルオフィス制度をトライアル導入した。希望する社員はオンラインで週5時間、本業以外の案件に従事できる社内兼業制度で、トライアル時には40人、23年4月の本格導入後は約80人が制度を利用している。フェムテックビジネスの取り組みが始まるなど、バーチャルオフィスからの新規事業創出に期待がかかる。 「副業はどっちつかずで中途半端でしょう。本当にその人間が成長できるかどうか疑問です。かといって、新規事業開発室みたいに組織ありきなのもダメ。うまくいかなかったときに元に戻られへんからね。バーチャルオフィスはダメだったら戻れるし、うまくいきだしたら本人の希望でそっちにいってもいい。社員からすると、組織のなかで違う領域に挑戦するほうが思い切ってやれると思う」 働き方改革といっても、単に楽をしたり楽しいことをやるのは改革ではない。大切なのは生産性向上や本人の成長につながるかどうか。その軸に共感する社員には、伊藤忠は居心地のいい会社だろう』、「「副業はどっちつかずで中途半端でしょう。本当にその人間が成長できるかどうか疑問です。かといって、新規事業開発室みたいに組織ありきなのもダメ。うまくいかなかったときに元に戻られへんからね。バーチャルオフィスはダメだったら戻れるし、うまくいきだしたら本人の希望でそっちにいってもいい。社員からすると、組織のなかで違う領域に挑戦するほうが思い切ってやれると思う」 働き方改革といっても、単に楽をしたり楽しいことをやるのは改革ではない。大切なのは生産性向上や本人の成長につながるかどうか。その軸に共感する社員には、伊藤忠は居心地のいい会社だろう」、「バーチャルオフィス」がお勧めのようだ。
・『あるべき論は誰でも言える いい会社には業績や社会貢献、社員のロイヤルティなどさまざまな要素があるが、岡藤は「たくさん言いすぎるとピンとこない。簡潔に言うと、親、兄弟、親戚が『誰々ちゃんがあそこに入ったよ』と誇りに思える会社がいい会社。それを目指せばいい」と説明する。 その意味で特に気にしている指標がある。学生の就職人気企業ランキングだ。) 「学生さんは会社や社会のことを知らないなかで真剣に就職先を選びます。となると、親、友達、先生などまわりの人の評価を参考にするしかない。就職ランキングは、いい会社かどうかの世間の評価がそのまま投影されていると思えばいい」 実際に、伊藤忠のランキングはどうか。さまざまなメディアが人気ランキングを発表しているが、今年は7媒体で伊藤忠が商社部門1位だった。4年連続の快挙だが、その結果に満足はしていない。「ある調査では全業種で3位でした。これを1位にせいと人事・総務部に目標設定しました。人事・総務部だけじゃない。これまで目標は営業カンパニーにしか設定してなかったのですが、いい会社になるには職能の人間にも目標を設定したほうがいいと考え、この4月からやってます。例えば統合報告書の評価を上げるとか、広告なら大きな賞を取るとか。具体的な目標ができると集中してやれる」 岡藤は社長を退いた今も会長CEOとして全権を掌握する。後任のリーダー像についてはどう考えているのか。 「社長になったら本当に毎日細かい判断をせなあかん。そのときトンチンカンな答えをしていたら会社は大変なことになる。商社はまず稼がなあかんから、営業感覚のない人はダメでしょうね」 リーダーの役割は大局観をもって方向性を指し示すことだと考える人も多いが、そうした見方を一蹴する。 「伊藤忠は、こうあるべきだということをやって失敗してきた歴史があります。66年には、織維商社からの総合化を進めるには石油だと言って東亜石油を買収。当時、伊藤忠は20億〜30億円の利益しかなかったのに1800億円の損を出した。石油を扱うのはいいんです。しかし、経験がないからタンカーを10年間の長期契約して失敗した。それから、バブルのときの不動産もそう。国土が限られているから絶対上がると、現地も見ないで地図だけで買った。あるべき論は誰でも言える。それを実現するために必要なものが備わっているかどうかのほうが大事です」 ビジョナリーなリーダーがもてはやされるなか、現場感覚を重視する岡藤のスタイルはひときわ目立つ。 原点は大阪の繊維部門で生地売りをしていたころだ。当時から、会社でみんなが話していることと客先で聞く話にズレがあることが気になっていた。東京出張のとき、代理店の人に「明日、帝国ホテルで展示会がある」と誘われた。もともとの予定にはなく、着替えももってきていない。しかし、現場に答えがあると気づき始めていた岡藤は大阪に帰らずに展示会に行った。 「ここがターニングポイントでした。展示会に行くと、旦那さんは営業と話していて、実際に生地を選んでるのは奥さんか娘さんでした。それを見て、英国のお堅いブランドじゃなく、女性が知ってるブランドにしたら目立つんとちゃうかと。それでイブ・サンローランと交渉して名前をつけたら、ものすごく売れた。あのとき大阪に帰っていたら今の僕はない」 経営者が「いい会社像」を語ると、どうもきれいごとに響くことがある。だが、岡藤の語る“ええ会社”に建前がもつ空虚さはない。そこには常に足元から考える岡藤の哲学が反映されているに違いない。 (岡藤正広氏の略歴、伊藤忠商事の概要はリンク先参照)』、「伊藤忠のランキングはどうか。さまざまなメディアが人気ランキングを発表しているが、今年は7媒体で伊藤忠が商社部門1位だった。4年連続の快挙だが、その結果に満足はしていない。「ある調査では全業種で3位でした。これを1位にせいと人事・総務部に目標設定しました。人事・総務部だけじゃない。これまで目標は営業カンパニーにしか設定してなかったのですが、いい会社になるには職能の人間にも目標を設定したほうがいいと考え、この4月からやってます。例えば統合報告書の評価を上げるとか、広告なら大きな賞を取るとか。具体的な目標ができると集中してやれる」 岡藤は社長を退いた今も会長CEOとして全権を掌握・・・伊藤忠は、こうあるべきだということをやって失敗してきた歴史があります。66年には、織維商社からの総合化を進めるには石油だと言って東亜石油を買収。当時、伊藤忠は20億〜30億円の利益しかなかったのに1800億円の損を出した。石油を扱うのはいいんです。しかし、経験がないからタンカーを10年間の長期契約して失敗した。それから、バブルのときの不動産もそう。国土が限られているから絶対上がると、現地も見ないで地図だけで買った。あるべき論は誰でも言える。それを実現するために必要なものが備わっているかどうかのほうが大事です」 ビジョナリーなリーダーがもてはやされるなか、現場感覚を重視する岡藤のスタイルはひときわ目立つ」、「伊藤忠」の2つの「失敗」については、初めて知った。「現場感覚を重視する岡藤のスタイル」は手堅そうだ。
タグ:真壁昭夫氏による「三菱商事が純利益1兆円突破!バフェットが見初めた「日本独自」の強みとは」 ダイヤモンド・オンライン 「初日は買いが殺到して値がつかない人気ぶりで、気配値による時価総額は親会社の伊藤忠を抜いていた」、異常な買い人気だったようだ。 「伊藤忠」は総じて「買い取り価格」の引上げには慎重なようだ。 商社問題 (その4)(三菱商事が純利益1兆円突破!バフェットが見初めた「日本独自」の強みとは、伊藤忠がCTCに「3800億円の巨額投資」をする事情 アクセンチュア台頭でIT業界の競争環境が激変、「三方よし資本主義」を標榜 伊藤忠を変えた現場視点の経営哲学) Forbes「「三方よし資本主義」を標榜。伊藤忠を変えた現場視点の経営哲学」 「コールセンター業界では今年9月、三井物産持ち分法適用会社のりらいあコミュニケーションズとKDDI完全子会社のエボルバが経営統合し、従業員5万8000人規模の「アルティウスリンク」が発足する。ベルシステム24と並ぶ規模となり、コールセンターを含むBPO事業の競争が激化することは必至だ。 今回のTOBは伊藤忠の「群戦略」が変貌していく起点となるのか。IT業界は固唾をのんで注視している」、「伊藤忠」の出方が要注目だ。 「アクセンチュアは川上から川下まで自前でそろえ、一気通貫でサービスを提供する。) これに対抗する形で伊藤忠は2019年以降、電子帳票システムに強いウイングアーク1stのほか、コンサルやデータ分析の「川上」を得意とするシグマクシスやブレインパッドへ3~25%出資し、「緩やかな群戦略」で顧客の要望に応える体制をつくってきた。川上企業が戦略コンサルに入り、最終的にはCTCでシステム販売・運用を担うイメージだ」、なるほど。 投下資本は過去3番目の大きさだ。 東洋経済オンライン「伊藤忠がCTCに「3800億円の巨額投資」をする事情 アクセンチュア台頭でIT業界の競争環境が激変」 「他国にはない独自性の高いビジネスモデルや株価の割安感こそ、バフェット氏が三菱商事など総合商社株を買い増した理由だ。 中期的に、脱炭素やデジタル化の加速を背景に、わが国の素材、精密機械、発電装置などへの需要は増えるだろう。米国との関係を基礎に安全保障体制を整備してきた日本で、事業運営体制を強化する海外企業も増えている。 三菱商事がいっそう事業環境の変化に対応し、収益性を向上する展開を期待したい」、なるほど。 「三菱商事はそうした強みを、資源や機械、素材などの分野で発揮してきた。そして今は、洋上風力発電や鉱山での再エネ電力の利用増などに結びつけている」、なるほど。 「22年5月時点、同社予想の年度末ドル円レートは1ドル=120.00円だった。対して実際に着地した為替レートは1ドル=135.50円だった。 同社は、1円の円安/円高が、年間50億円の増減益の要因になるとしている」、とすると750億円の増益要因になる。 「著名な投資家ウォーレン・バフェット氏・・・は、三菱商事をはじめとした日本の5大総合商社への追加投資を表明した。バフェット氏は、5大総合商社の株価の割安さ、独自のビジネスモデルに支えられた中長期的な成長性を評価」、なるほど。 「岡藤は、いい会社について次のように語る。 「もちろん稼がなければダメですよ。でも、稼ぐだけでもダメ。定量・定性の両面でいい会社を目指さなければいけません。最近はステークホルダー資本主義というらしいけど、横文字でわかりにくい。ひらたく言えば、”三方よし”でしょう」 三方よしのひとつが「世間よし」だ。岡藤は社会貢献についてこう話す。 「当然のことながら意識しています。社会主義の国と違って、資本主義の国では企業単位でやっていく。ですからSDGsの問題は、まず企業がサステナブルでないとダメ。企業にも規模や得手不 得手がありますから、それに応じてできることをやっていくことになると思います」 商社だからできることのひとつがエネルギーシフトだ。伊藤忠は脱炭素を進めるため、21年4月、コロンビアのドラモンド炭鉱の権益を売却した。 「石炭はものすごく値段が上がりましたから、継続保有していたら1年で数百億円は儲かった可能性はあります。でも、大きな出血を伴ってもやるんだと伊藤忠の真剣度を示すことが大事。小さなものをコツコツやるより、コアになってるものを大きく変えれば、自分たちも追い込まれて変わらざるをえない・・・ 今年6月、伊藤忠は北米の再生可能エネルギー資産に投資する国内最大級のファンドを三井住友信託銀行と共同で立ち上げた。社会貢献につながる新しいビジネスを模索する様からは、「稼がなければダメだが稼ぐだけではダメ」という、岡藤のいい会社像が見えてくる」。なるほど。 「「副業はどっちつかずで中途半端でしょう。本当にその人間が成長できるかどうか疑問です。かといって、新規事業開発室みたいに組織ありきなのもダメ。うまくいかなかったときに元に戻られへんからね。バーチャルオフィスはダメだったら戻れるし、うまくいきだしたら本人の希望でそっちにいってもいい。社員からすると、組織のなかで違う領域に挑戦するほうが思い切ってやれると思う」 働き方改革といっても、単に楽をしたり楽しいことをやるのは改革ではない。大切なのは生産性向上や本人の成長につながるかどうか。その軸に共感する社員には、伊 藤忠は居心地のいい会社だろう」、「バーチャルオフィス」がお勧めのようだ。 「伊藤忠のランキングはどうか。さまざまなメディアが人気ランキングを発表しているが、今年は7媒体で伊藤忠が商社部門1位だった。4年連続の快挙だが、その結果に満足はしていない。「ある調査では全業種で3位でした。これを1位にせいと人事・総務部に目標設定しました。人事・総務部だけじゃない。これまで目標は営業カンパニーにしか設定してなかったのですが、いい会社になるには職能の人間にも目標を設定したほうがいいと考え、この4月からやってます。例えば統合報告書の評価を上げるとか、広告なら大きな賞を取るとか。具体的な目標がで できると集中してやれる」 岡藤は社長を退いた今も会長CEOとして全権を掌握・・・伊藤忠は、こうあるべきだということをやって失敗してきた歴史があります。66年には、織維商社からの総合化を進めるには石油だと言って東亜石油を買収。当時、伊藤忠は20億〜30億円の利益しかなかったのに1800億円の損を出した。石油を扱うのはいいんです。しかし、経験がないからタンカーを10年間の長期契約して失敗した。それから、バブルのときの不動産もそう。 国土が限られているから絶対上がると、現地も見ないで地図だけで買った。あるべき論は誰でも言える。それを実現するために必要なものが備わっているかどうかのほうが大事です」 ビジョナリーなリーダーがもてはやされるなか、現場感覚を重視する岡藤のスタイルはひときわ目立つ」、「伊藤忠」の2つの「失敗」については、初めて知った。「現場感覚を重視する岡藤のスタイル」は手堅そうだ。
倒産・経営破綻(その2)(一目散に逃げ出した社長に怒り…帝国データバンク調査員が見た 衝撃の倒産現場、経済活動が正常化でも増える倒産 飲食業は「過去最多」の可能性 背景に何があるのか、給食が突然ストップ…高校6校 提供業者へ違約金を請求 広島、「世紀の大粉飾」「巨額詐欺事件だ」銀行関係者が憤る倒産企業の実名) [企業経営]
倒産・経営破綻については、昨年5月24日に取上げた。今日は、(その2)(一目散に逃げ出した社長に怒り…帝国データバンク調査員が見た 衝撃の倒産現場、経済活動が正常化でも増える倒産 飲食業は「過去最多」の可能性 背景に何があるのか、給食が突然ストップ…高校6校 提供業者へ違約金を請求 広島、「世紀の大粉飾」「巨額詐欺事件だ」銀行関係者が憤る倒産企業の実名)である。
先ずは、昨年7月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した帝国データバンク情報部の藤坂 亘氏による「一目散に逃げ出した社長に怒り…帝国データバンク調査員が見た、衝撃の倒産現場」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/325775
・『2022年度の倒産件数は3年ぶりの増加となった。倒産企業は企業規模もさまざまだが、それぞれに「企業の最期」という非日常のドラマがある。倒産現場ではどのようなことが起きているのか。そのリアルな実態として、2つの事例を紹介する』、興味深そうだ。
・『業界環境が悪化する中でゼロゼロ融資も断られたO社 2022年度は全国で6799件の倒産が発生し、倒産件数は3年ぶりの増加となった。コロナ禍で落ち込んだ業績や、その間に抱えた債務、昨今のエネルギー価格高騰、物価高、円安など、企業を取り巻く環境はめまぐるしく変化しており、今までのビジネスモデルでは対応できない企業も数多く出てきている。 企業倒産の増減は、景気を表す一つの経済指標として捉えられることが多い。そのこと自体は経済全体を見通すために必要なことだろう。しかし、倒産したそれぞれの企業には多くの人が関わり、多くの人生が詰まっていることも忘れてはならない事実だ。 帝国データバンクの情報記者は、企業倒産を取材する過程で、その人間模様を目の当たりにすることがある。1年に6799件発生する倒産のうちの一つでしかなく、負債も決して大きくない企業であっても、そこには「企業の最期」という非日常のドラマがある。 これが倒産現場のリアルだ。 以下、一つ目として紹介するのが、新聞の折り込みチラシを扱っていたO社の事例である。 大阪メトロ中央線の長田駅の改札を抜けると、既に午後7時を回っていた。駅前のショッピングセンターの横を通り過ぎると広がる紙文具団地。人けもなく、だだっ広い上に、トラックの往来でひどくひずんだ道路が続く。「関係先に倒産の通知が届いているようだ」という問い合わせがあったその会社は、そんな企業団地を抜けた先にあった。 受任通知が出ているなら張り紙があるはずと考えていたが、会社に到着するとシャッターが開いていた。前には1台のハイエースが止まっている。予想外の展開に、一度会社の前を通り過ぎ、念のため、問い合わせ元に社名と状況を再確認する。万が一にも間違いは許されない。間違いのないことを確認し、意を決して会社へ向かった。 ガランとした倉庫内には、パイプ椅子に腰掛け、携帯を見つめる男性が一人。取材に来た経緯を説明すると、取締役を名乗るその男性は小さくうなずき、倒産の事実を認めた。そして、倒産に至った経緯を訥々(とつとつ)と話し始めた。 「新聞の発行部数も減ったし、ネット広告が普及したし、折り込みチラシが少なくなったからなぁ。そんなときにコロナ。うちはパチンコ店や不動産関係のチラシが多かったから。コロナの感染が拡大した当初、『パチンコ店などが感染源』って相当たたかれたましたよね? だからチラシ広告を出すパチンコ店なんてどこもありませんよ」 新聞折り込みチラシを扱っていた同社は、業界環境の悪化とコロナ禍での急激な受注減に苦しめられていた。 「ゼロゼロ融資は受けたんですか?」 「二度、申し込みました。そして二度、断られました。『融資を受けられなければ、うちは倒産します』と言っても駄目でした」 取締役は口惜しそうな様子で続ける。 「でも、政治家による違法な融資仲介がニュースになってましたよね。不正をした企業は生き残っていいんですか。うちだってそうすれば良かったんですかね」 私は言葉に詰まった。「ゾンビ企業を救った」「甘い審査」「金融モラルハザードを生んだ」といった、ゼロゼロ融資に対する世間の追及。だが、どんな企業でも融資を受けられたかのような前提に立った批判も、融資を受けられなかった企業を目の前にすると、あっけなく崩れ落ちるだろう。 「実は弁護士には『絶対にシャッターを開けないように』と念を押されてたんです……。でも、最後の片付けですから(シャッターを開けていました)。これも何かの偶然ですね。世間に現実を伝えてください」 取締役との立ち話は30分以上に及んだ。O社を出たときは既に午後8時を回っていた。 一層寂しさが増した企業団地。開かれたシャッターは、救いの手から零れ落ちてしまったこの企業の「生きた証を遺したい」という取締役の思いを表しているようだった』、「新聞折り込みチラシを扱っていた同社は、業界環境の悪化とコロナ禍での急激な受注減に苦しめられていた・・・ゼロゼロ融資は・・・二度、申し込みました。そして二度、断られました」、「ゼロゼロ融資」を断られるほどなので、余程業況が厳しかったのでろう。
・『債権者が事務所に来るや社長が逃げ出したM社 私は倒産の問い合わせのあった運送会社のM社へ向かった。県道を曲がると異様な光景が目に入った。稼働せず、敷地内に停められたままの多数のトラックと、会社を囲うように停められた多数の乗用車だ。 会社の敷地には背の高い男性が一人。声をかけたが、彼は無言でプレハブの2階を指さした。私は事務所1階の自己破産を告げる張り紙を確認し、急な階段を静かに上った。 「はい」 香水とタバコのにおいが混じった事務所に入るなり、書類一式を渡された。解雇通知書だ。 「従業員じゃないです。帝国データバンクです。社長はいらっしゃいますか?」 10人ほどの視線が一気に集まり、事務所は静まり返る。 「自分ですけど、なんですか?」。奥でしゃがむ男性が答えた。 「張り紙を見ました。少しお話……」 「帝国さんに話すことなんかありません」 社長は私の言葉を遮り、吐き捨てるようにそう言った。 現場で取材を拒否されることはよくあることだ。ただ、会社の前にいるトラックドライバーたちの不満げな表情と、ある一台のトラック(詳しくは後述)に違和感を覚え、現場に残って取材を続けることにした。 しばらくすると、乗用車が二台、目の前に止まった。降りてきたのは、いかにもベテランドライバーという感じのいかつい男性2人。しかし、こういう人たちこそ話が通じるというのが世の常。予想通り、世間話をしているうちに心を開いてくれた。 「社長と何人かの役員待遇の社員は良い生活しているのに、おれらは給料すら払われてないんだよ」 「いつからですか……。トラブルとかありました?」 給与未払いの情報は、既に数カ月前からつかんでいたが、あえて聞かずにはいられなかった。) 「最初は、(取材時の約5カ月前となる)6月に集められて、『数%カット』と言われた。確かあのとき、トラックの事故があった後かな。幹線道路をふさいで大変だった。あそこにあるぐちゃぐちゃの、それ」 そう言って指さす先には、窓ガラスが割れ、左フロントから荷台側面がひしゃげたトラックが、痛々しい姿のまま放置されていた。私が違和感を覚えたトラックだ。 「でも、ずっと前からひどかった。社長が代わってから。大口のお客さんもあきれてた。社長に意見できた唯一のベテラン社員も辞めてしまったしな」 帰り際、社長と役員であろう男性が事務所から出てきたので、しばらく様子をうかがっていた。そこに、白色の営業車に乗ったスーツ姿の男性が訪ねてきた。おそらく債権者だ。彼が事務所へ向かうのを見るや、社長らは急いで車に乗り込み、逃げるように会社を去っていった。 その瞬間、私は怒りが込み上げた。 これまで、数多くの倒産現場で経営者を見てきた。全ての取引先に謝罪して回っていた社長、私財をなげうって従業員を守った社長、そこには最後まで責任を全うしようとした経営者の姿があった。その人たちに比べて……。 その後も何人かの従業員が訪ねてきたが、社長がいないことに皆困った様子で会社を後にした。その中には、3カ月前に入社したばかりという20代の男性もいた。 M社の事務所から最寄り駅までの約1.5キロメートル。帰り道、取材に応じてくれた従業員らの顔が浮かぶ。従業員の人生を背負う覚悟のない経営者の下で働くのは不幸だ。そんなことを考えているうちに、大通りに出た。突然解雇通知書を受け取ったドライバーたちは、どんな思いで家路に就くのだろうか。 こうした一つ一つの倒産が積み上がり、年間の倒産件数が算出される。景気動向、技術革新、業界環境の変化、法律の規制といった外部環境と照らし合わせて分析される倒産件数の増減。しかし、倒産する全ての企業が、そんな一般論で語られるようなことだけが原因で倒産するわけではない。 関係者もしくは現場でしかわからないそれぞれの企業の内部環境こそが、本当の倒産要因といっても過言ではないだろう。今まで見届けてきた数々の企業と従業員のためにも、それぞれの倒産を机上の空論で片付けるべきではない。倒産は現場で起きているのだから』、「運送会社のM社・・・社長と何人かの役員待遇の社員は良い生活しているのに、おれらは給料すら払われてないんだよ・・・取材時の約5カ月前となる)6月に集められて、『数%カット』と言われた。確かあのとき、トラックの事故があった後かな。幹線道路をふさいで大変だった。あそこにあるぐちゃぐちゃの、それ・・・でも、ずっと前からひどかった。社長が代わってから。大口のお客さんもあきれてた。社長に意見できた唯一のベテラン社員も辞めてしまったしな」、確かに酷そうだ。
次に、本年8月1日付けAERAdot.が掲載した経済ジャーナリストの大西洋平氏による「経済活動が正常化でも増える倒産、飲食業は「過去最多」の可能性、背景に何があるのか」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/articles/-/197438?page=1
・『ようやくコロナ禍を抜け出し、経済活動も正常化したというムードが強まっている。ところが、足元では経営に行き詰まって力尽きる企業が急増中だ。AERA 2023年8月7日号の記事を紹介する。 東京商工リサーチによれば、今年上半期(1~6月)における全国の企業倒産件数(負債額1千万円以上)は、2年連続で前年同期を超えたという。 上半期の数としては、2020年の同期以来3年ぶりに4千件を突破し、前年同期比で32%の増加となった。 負債総額については、昨年上半期に大手自動車部品メーカーの大型倒産があったため、前年同期比で約45%減に。ただ、負債100億円以上が8件、1億円以上5億円未満が824件、5億円以上10億円未満が115件と、中堅規模の企業倒産が目立った。 東京商工リサーチ情報本部の坂田芳博さんはこう説明する。 「株式を上場する大手企業の間では、好業績のところが増えています。一方、中小・零細企業の業績回復は遅れ気味です。コロナ禍で実施された支援策の効果が時間の経過とともに薄れ、すでに昨春ごろから倒産件数の増勢が強まりつつありました」 同調査では産業別の倒産件数にもスポットを当てているが、10分類のすべてが前年同期を上回っていた。これは1998年上半期以来、25年ぶりのことだという。ちなみに、当時は大手金融機関が次々と経営破綻し、日本は深刻な金融危機に見舞われていた。 地域別の倒産件数に目を向けても、けっして予断を許さない情勢にあると言えそうだ。 同調査では全国を9地区に分類しているが、そのすべてにおいて前年同期を上回っていた。こちらは、ITバブルが崩壊した2000年上半期以来(23年ぶり)の現象とか。無論、突出しているのは企業数自体が多い関東や近畿だが、コロナ感染は全国に広がっただけに、地方企業の多くも苦しい情勢のようだ』、「上半期の数としては、2020年の同期以来3年ぶりに4千件を突破し、前年同期比で32%の増加となった・・・東京商工リサーチ情報本部の坂田芳博さんはこう説明する。 「株式を上場する大手企業の間では、好業績のところが増えています。一方、中小・零細企業の業績回復は遅れ気味です。コロナ禍で実施された支援策の効果が時間の経過とともに薄れ、すでに昨春ごろから倒産件数の増勢が強まりつつありました」、「コロナ禍で実施された支援策の効果が時間の経過とともに薄れた」のが大きな原因のようだ。
・『飲食業が特に深刻 10分類中で最も倒産が多かったのは「サービス業他」の1351件(前年同期比36%増)で、全体の33.4%を占めていた。それに次ぐのが建設業の785件(同36.2%増)で、資材価格の高騰が経営の足を引っ張った一因と見られている。) サービス業の中でも、特に深刻なのは飲食業だ。今年上半期における倒産件数(負債1千万円以上)は424件で、前年同期比78.9%もの大幅増となった。上半期ベースで見ると、過去30年間における最多記録を更新。今後も同じようなペースで推移すると、8月にも昨年年間倒産件数(522件)を突破する可能性が考えられる。 「コロナ禍で飲食業は、休業・時短協力金や各種支援金などの手厚い支援に支えられてきました。しかし、売り上げが十分に戻りきらない状態で支援策が終了したうえ、物価高で光熱費や仕入れコストが急騰して追い打ちをかけました。さらにせっかく客足が戻ってきても十分な人手を確保できず、機会損失が発生しているケースも少なくないものと思われます」(坂田さん)』、「売り上げが十分に戻りきらない状態で支援策が終了したうえ、物価高で光熱費や仕入れコストが急騰して追い打ちをかけました。さらにせっかく客足が戻ってきても十分な人手を確保できず、機会損失が発生しているケースも少なくないものと思われます」、なるほど。
・『ゼロゼロ融資も影響 コロナ禍初年となった2020年、緊急事態宣言などのあおりで飲食業の倒産が急増したことは広く知られている。 東京商工リサーチの調べでは、年間件数が過去最多となる842件に上ったという。2021年以降は様々な支援策によって抑制されてきたが、そういった後ろ盾がなくなって再び悪化している。 坂田さんによれば、今回の調査で皮肉な結果が浮き彫りになったという。コロナ禍における営業自粛に伴い、やむなく人員削減を実施したすべての飲食店が人手不足に陥っていたのだ。慌てて確保しようとする動きが活発化すれば、おのずと人件費には上昇圧力がかかる。 しかも、タイミングが悪いことに「ゼロゼロ融資」の返済も始まった。 「ゼロゼロ融資」とは、コロナ禍で売り上げが激減した企業や個人事業主を対象に行われた実質無利子・無担保の貸し出しだ。今年上半期にコロナ関連で倒産に陥った飲食業は288件で、前年同期比104.2%増まで膨らんでいる。そのうち、「ゼロゼロ融資」を利用後に倒産したのは52件。延々と返済が続くだけに、今後は「ゼロゼロ融資」に起因する倒産がさらに増えていくのは必至だろう。 「コロナ禍以前から融資を受けていたケースも考えられますし、そうなると返済の原資を工面するのは大変でしょう。年間を通じた飲食業の倒産件数は、過去最多記録を更新する可能性があります」(坂田さん)』、「コロナ禍における営業自粛に伴い、やむなく人員削減を実施したすべての飲食店が人手不足に陥っていたのだ。慌てて確保しようとする動きが活発化すれば、おのずと人件費には上昇圧力がかかる。 しかも、タイミングが悪いことに「ゼロゼロ融資」の返済も始まった。 「ゼロゼロ融資」とは、コロナ禍で売り上げが激減した企業や個人事業主を対象に行われた実質無利子・無担保の貸し出しだ。今年上半期にコロナ関連で倒産に陥った飲食業は288件で、前年同期比104.2%増まで膨らんでいる。そのうち、「ゼロゼロ融資」を利用後に倒産したのは52件。延々と返済が続くだけに、今後は「ゼロゼロ融資」に起因する倒産がさらに増えていくのは必至だろう』、「飲食業」の業況は厳しそうだ。
第三に、9月8日付けYahooニュースが転載した広島ホームテレビ「給食が突然ストップ…高校6校 提供業者へ違約金を請求 広島」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/44460600ba9ce2e6f6e2a22f59a996c8784688df
・『高校の寮などで食事の提供が止まっている問題で、影響を受けている6つの高校が違約金を請求したことが分かりました。 三次高校など県内7つの高校がホーユーに給食業務を委託しており、その中の6校は2025年3月末までの契約でしたが6日、この契約を解除しています。 県教育委員会によりますと契約書には「履行期間中に業務を完了できない場合、違約金を支払わなければならない」という旨の記載があるため、契約解除にあたり会社側に数百万円の違約金を請求したということです。会社側には再来週までに支払いを求めています。 また県教育委員会などは、早急に寮での食事を再開できるよう随意契約もふくめて調整を進めているということです』、続報がないので、詳細は不明だが、「県内7つの高校がホーユーに給食業務を委託」、するからには、「ホーユー」の事業基盤や財務基盤はそれなりに強固な筈だが、「履行期間中に業務を完了できない」事態に陥った原因は何なのだろう。再発防止のためにも、掘り下げた分析が必要だと思う。
第四に、12月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した帝国データバンク情報統括部情報編集課長の阿部成伸氏による「「世紀の大粉飾」「巨額詐欺事件だ」銀行関係者が憤る倒産企業の実名」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/335283
・『帝国データバンクが12月8日に発表した2023年11月の全国企業倒産(負債1000万円以上の法的整理が対象)は773件、負債総額は881億5000万円となった。件数は2022年5月以降19カ月連続で前年同月を上回り、今年1月~11月の累計件数は7691件で前年同期(5784件)を33.0%上回っている。このままのペースで推移すると、2023年(通年)の倒産件数は約8500件となる見通しだ。今回は倒産取材から見えてくる近時の倒産の特徴を解説するとともに、今年下半期で最も印象的だった倒産を一つ選んで振り返る』、興味深そうだ。
・『足元で増えている「三つの倒産」 倒産件数推移の年別推移を見ても分かる通り、コロナ関連融資(ゼロゼロ融資)をはじめとする中小企業支援策によって倒産が抑制されていた2021年、2022年とは大きく状況が変わり、2023年は倒産が急増。その数はコロナ前の水準に戻っていることが分かる。 (図_全国企業倒産の件数推移(2014年~2023年)はリンク先参照) 東京23区の企業倒産の取材を行う帝国データバンク情報統括部には、毎日のようにさまざまな業種の企業から「月末の入金がない」「電話がつながらない」といった取引先の照会が寄せられ、12人の取材記者が現地確認や情報収集で飛び回っている。 そうした取材の報告や金融機関の審査担当者へのヒアリングをまとめると、近時の倒産について大きな特徴が三つ見えてくる』、なるほど。
・(1)ゼロゼロ融資返済倒産 一つ目はコロナ関連融資(ゼロゼロ融資)の返済開始に伴う倒産の増加だ。2020年に始まったゼロゼロ融資は、同年5月~7月頃に集中的に実行され、1回目の毎月返済を最長で5年後に設定できる「据置期間」が設けられた。この据置期間については、同融資を受けた企業の6割程度が3年未満、2割超が「3年」で設定したとみられる。 「3年」という長い期間で設定した企業が一定数あった背景としては、ゼロゼロ融資が「当初3年間無利息」であったことや当時の業況が極めて厳しい企業が多かったことが挙げられる。 「3年もたてば、今より良くなっているだろう…」。当時、そうした気持ちで融資を申し込んだが、その後の原材料・電気代高騰や為替変動の影響を受けるなどして、結局、業況は変わらないままの企業は少なくなく、「返済が始まれば限界だ…」と返済開始のタイミングで事業継続を断念する経営者が増えている』、「「3年もたてば、今より良くなっているだろう…」。当時、そうした気持ちで融資を申し込んだが、その後の原材料・電気代高騰や為替変動の影響を受けるなどして、結局、業況は変わらないままの企業は少なくなく、「返済が始まれば限界だ…」と返済開始のタイミングで事業継続を断念する経営者が増えている」、なんのことはなくただ3年延長しただけだ。
・『(2)公租公課滞納倒産 二つ目は消費税や固定資産税などの各種税金や厚生年金保険、健康保険などの社会保険料の納付ができない、または滞納が続いたことで会社の資産(預金口座や土地など)を差し押さえられて事業継続が困難となる、公租公課滞納倒産の増加だ。 2023年の公租公課倒産は11月までに111件確認され、2022年(通年で74件)、2021年(同52件)を大きく上回っている。 公租公課のうち、企業にとって特に負担が大きい社会保険料については、コロナ禍で最長3年の納付猶予措置が設けられたが、企業活動が正常化に向かうなかで特例措置は順次縮小される一方、2022年度の年金事務所による厚生年金保険料などの差し押さえ件数は、前年度の4倍となる2万7784事業所にまで増加した。 こうした現状を踏まえると、公租公課滞納倒産は今後さらに増加していく可能性が高い。 各種税金や社会保険料の納付は、社会保障制度を維持・継続させるために企業が公平に負う義務であり、滞納などに伴う差し押さえで倒産が増えていることについて、年金事務所等の責めに帰すことはできない。見方を変えれば、淘汰されるべき企業が淘汰され、健全な経済成長を促すための変化ととらえることもできるだろう』、確かに「淘汰されるべき企業が淘汰され、健全な経済成長を促すための変化」と捉えられる。
・『(3)粉飾倒産 三つ目は粉飾倒産の増加だ。これについては、民間、政府系を問わず金融機関の審査担当者が口をそろえる。 コロナ禍では各金融機関は中小企業向けのゼロゼロ融資の受け付け・実行や既存融資のリスケジュール対応などに追われ、融資先の情報収集や定点管理に手が回らず、粉飾決算が発見されにくい状況が続いていた。しかし、アフターコロナで支援策がなくなり、自主再生フェーズに入ってくると、自力での事業継続が困難となる企業が出始める。その過程で粉飾決算が表面化している。 その現状について都内・民間金融機関の担当者は「倒産前に粉飾が発覚するケースと倒産後に粉飾が発覚するパターンがある。前者の場合、経営悪化に伴う再建計画作成の過程で決算書の矛盾点が指摘され、結果として予定していた計画・支援が実現せず、倒産に至るケースが多い」と話す』、「倒産前に粉飾が発覚するケース」では、「経営悪化に伴う再建計画作成の過程で決算書の矛盾点が指摘され、結果として予定していた計画・支援が実現せず、倒産に至るケースが多い」、結果的には傷がつかずに済むようだ。
・『今年7月に発生した「世紀の大粉飾」倒産 2023年7月~11月に発生した全国企業倒産は、計3685件。そのなかにはパチンコホール大手の「ガイア」や突如、事業を停止して社会問題にもなった学校給食事業の「ホーユー」なども含まれ、12月に入ると1年4カ月ぶりに上場企業(プロルート丸光・東証スタンダード)の倒産も発生した。そうしたなかでも筆者にとって下半期で最もインパクトが大きかったのは「世紀の大粉飾」の果てに倒産した堀正工業だ。 優良企業とみられてきた昭和8年創業のベアリング商社・堀正工業(株)(東京都品川区)が倒産したのは今年7月。同月24日に東京地裁へ自己破産を申請し、同日破産手続き開始決定を受けた。そして同時に発覚した大粉飾は、銀行や審査業界に極めて大きな衝撃を与えた。 筆者は2000年以降、倒産を取材する記者として、さまざまな粉飾事例を見てきたが、これほどまでに会社の説明(書類)と実態が乖離(かいり)し、数多くの銀行が巻き込まれたケースを見たことがない。それが「世紀の大粉飾」とも言われるゆえんだ。 堀正工業に融資していた各銀行は、融資取引銀行の総数について、自行を含めて5行と説明を受けていたが、実際はその10倍以上の54行から融資を受けていた。 また、銀行借り入れの総額について各銀行は40億~50億円程度(各行で異なる)と認識していたが、実際は約347億円(2022年9月時点)。2022年9月期の年売上高は68億600万円、当期純利益は4億7700万円と公表していたが、実際の年売上高は45億1600万円、当期純利益は3億4200万円の赤字だった。 「単なる粉飾ではなく、巨額詐欺事件だ」(銀行関係者)と憤るのも当然だ。 粉飾決算は遅くとも、現社長の堀雅晴氏が社長に就任した2003年頃からはじまったとされる。かつて利益が出ていないことを理由に銀行から融資を断られた経験から、融資を受けるためには利益が出ていることが必須であると考えたことがきっかけだった。以後、堀社長などによって長年にわたり粉飾決算は続けられ、取引先や銀行をだまし続けた。 破産申立書に添付された会社資産の実態を示す清算貸借対照表に計上された現金・預貯金の合計はわずか6億7500万円。これまで受けてきた数百億円規模の融資金は何に使われどこに消えたのか。 また、申立書には取引金融機関が増大していった理由について「堀雅晴個人への貸付け、堀雅晴が100%株主ないしは大株主である会社への貸付け等のため」などと記載され、怪しさ満載だ。 11月27日に開催された財産状況報告集会では、これまで明かされることのなかった資金の流れの説明もあったとされ、堀社長への責任追及や事件化へ向けた銀行の動きなどが注目されている』、「各銀行は、融資取引銀行の総数について、自行を含めて5行と説明を受けていたが、実際はその10倍以上の54行から融資を受けていた。 また、銀行借り入れの総額について各銀行は40億~50億円程度(各行で異なる)と認識していたが、実際は約347億円(2022年9月時点)。2022年9月期の年売上高は68億600万円、当期純利益は4億7700万円と公表していたが、実際の年売上高は45億1600万円、当期純利益は3億4200万円の赤字だった。 「単なる粉飾ではなく、巨額詐欺事件だ」(銀行関係者)と憤るのも当然だ。 粉飾決算は遅くとも、現社長の堀雅晴氏が社長に就任した2003年頃からはじまったとされる・・・清算貸借対照表に計上された現金・預貯金の合計はわずか6億7500万円。これまで受けてきた数百億円規模の融資金は何に使われどこに消えたのか」、確かに桁外れの「粉飾」だ。こんな巨額の「粉飾」であれば、経理部長の「粉飾」維持のための経理操作は膨大な負担になっていただろう。
先ずは、昨年7月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した帝国データバンク情報部の藤坂 亘氏による「一目散に逃げ出した社長に怒り…帝国データバンク調査員が見た、衝撃の倒産現場」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/325775
・『2022年度の倒産件数は3年ぶりの増加となった。倒産企業は企業規模もさまざまだが、それぞれに「企業の最期」という非日常のドラマがある。倒産現場ではどのようなことが起きているのか。そのリアルな実態として、2つの事例を紹介する』、興味深そうだ。
・『業界環境が悪化する中でゼロゼロ融資も断られたO社 2022年度は全国で6799件の倒産が発生し、倒産件数は3年ぶりの増加となった。コロナ禍で落ち込んだ業績や、その間に抱えた債務、昨今のエネルギー価格高騰、物価高、円安など、企業を取り巻く環境はめまぐるしく変化しており、今までのビジネスモデルでは対応できない企業も数多く出てきている。 企業倒産の増減は、景気を表す一つの経済指標として捉えられることが多い。そのこと自体は経済全体を見通すために必要なことだろう。しかし、倒産したそれぞれの企業には多くの人が関わり、多くの人生が詰まっていることも忘れてはならない事実だ。 帝国データバンクの情報記者は、企業倒産を取材する過程で、その人間模様を目の当たりにすることがある。1年に6799件発生する倒産のうちの一つでしかなく、負債も決して大きくない企業であっても、そこには「企業の最期」という非日常のドラマがある。 これが倒産現場のリアルだ。 以下、一つ目として紹介するのが、新聞の折り込みチラシを扱っていたO社の事例である。 大阪メトロ中央線の長田駅の改札を抜けると、既に午後7時を回っていた。駅前のショッピングセンターの横を通り過ぎると広がる紙文具団地。人けもなく、だだっ広い上に、トラックの往来でひどくひずんだ道路が続く。「関係先に倒産の通知が届いているようだ」という問い合わせがあったその会社は、そんな企業団地を抜けた先にあった。 受任通知が出ているなら張り紙があるはずと考えていたが、会社に到着するとシャッターが開いていた。前には1台のハイエースが止まっている。予想外の展開に、一度会社の前を通り過ぎ、念のため、問い合わせ元に社名と状況を再確認する。万が一にも間違いは許されない。間違いのないことを確認し、意を決して会社へ向かった。 ガランとした倉庫内には、パイプ椅子に腰掛け、携帯を見つめる男性が一人。取材に来た経緯を説明すると、取締役を名乗るその男性は小さくうなずき、倒産の事実を認めた。そして、倒産に至った経緯を訥々(とつとつ)と話し始めた。 「新聞の発行部数も減ったし、ネット広告が普及したし、折り込みチラシが少なくなったからなぁ。そんなときにコロナ。うちはパチンコ店や不動産関係のチラシが多かったから。コロナの感染が拡大した当初、『パチンコ店などが感染源』って相当たたかれたましたよね? だからチラシ広告を出すパチンコ店なんてどこもありませんよ」 新聞折り込みチラシを扱っていた同社は、業界環境の悪化とコロナ禍での急激な受注減に苦しめられていた。 「ゼロゼロ融資は受けたんですか?」 「二度、申し込みました。そして二度、断られました。『融資を受けられなければ、うちは倒産します』と言っても駄目でした」 取締役は口惜しそうな様子で続ける。 「でも、政治家による違法な融資仲介がニュースになってましたよね。不正をした企業は生き残っていいんですか。うちだってそうすれば良かったんですかね」 私は言葉に詰まった。「ゾンビ企業を救った」「甘い審査」「金融モラルハザードを生んだ」といった、ゼロゼロ融資に対する世間の追及。だが、どんな企業でも融資を受けられたかのような前提に立った批判も、融資を受けられなかった企業を目の前にすると、あっけなく崩れ落ちるだろう。 「実は弁護士には『絶対にシャッターを開けないように』と念を押されてたんです……。でも、最後の片付けですから(シャッターを開けていました)。これも何かの偶然ですね。世間に現実を伝えてください」 取締役との立ち話は30分以上に及んだ。O社を出たときは既に午後8時を回っていた。 一層寂しさが増した企業団地。開かれたシャッターは、救いの手から零れ落ちてしまったこの企業の「生きた証を遺したい」という取締役の思いを表しているようだった』、「新聞折り込みチラシを扱っていた同社は、業界環境の悪化とコロナ禍での急激な受注減に苦しめられていた・・・ゼロゼロ融資は・・・二度、申し込みました。そして二度、断られました」、「ゼロゼロ融資」を断られるほどなので、余程業況が厳しかったのでろう。
・『債権者が事務所に来るや社長が逃げ出したM社 私は倒産の問い合わせのあった運送会社のM社へ向かった。県道を曲がると異様な光景が目に入った。稼働せず、敷地内に停められたままの多数のトラックと、会社を囲うように停められた多数の乗用車だ。 会社の敷地には背の高い男性が一人。声をかけたが、彼は無言でプレハブの2階を指さした。私は事務所1階の自己破産を告げる張り紙を確認し、急な階段を静かに上った。 「はい」 香水とタバコのにおいが混じった事務所に入るなり、書類一式を渡された。解雇通知書だ。 「従業員じゃないです。帝国データバンクです。社長はいらっしゃいますか?」 10人ほどの視線が一気に集まり、事務所は静まり返る。 「自分ですけど、なんですか?」。奥でしゃがむ男性が答えた。 「張り紙を見ました。少しお話……」 「帝国さんに話すことなんかありません」 社長は私の言葉を遮り、吐き捨てるようにそう言った。 現場で取材を拒否されることはよくあることだ。ただ、会社の前にいるトラックドライバーたちの不満げな表情と、ある一台のトラック(詳しくは後述)に違和感を覚え、現場に残って取材を続けることにした。 しばらくすると、乗用車が二台、目の前に止まった。降りてきたのは、いかにもベテランドライバーという感じのいかつい男性2人。しかし、こういう人たちこそ話が通じるというのが世の常。予想通り、世間話をしているうちに心を開いてくれた。 「社長と何人かの役員待遇の社員は良い生活しているのに、おれらは給料すら払われてないんだよ」 「いつからですか……。トラブルとかありました?」 給与未払いの情報は、既に数カ月前からつかんでいたが、あえて聞かずにはいられなかった。) 「最初は、(取材時の約5カ月前となる)6月に集められて、『数%カット』と言われた。確かあのとき、トラックの事故があった後かな。幹線道路をふさいで大変だった。あそこにあるぐちゃぐちゃの、それ」 そう言って指さす先には、窓ガラスが割れ、左フロントから荷台側面がひしゃげたトラックが、痛々しい姿のまま放置されていた。私が違和感を覚えたトラックだ。 「でも、ずっと前からひどかった。社長が代わってから。大口のお客さんもあきれてた。社長に意見できた唯一のベテラン社員も辞めてしまったしな」 帰り際、社長と役員であろう男性が事務所から出てきたので、しばらく様子をうかがっていた。そこに、白色の営業車に乗ったスーツ姿の男性が訪ねてきた。おそらく債権者だ。彼が事務所へ向かうのを見るや、社長らは急いで車に乗り込み、逃げるように会社を去っていった。 その瞬間、私は怒りが込み上げた。 これまで、数多くの倒産現場で経営者を見てきた。全ての取引先に謝罪して回っていた社長、私財をなげうって従業員を守った社長、そこには最後まで責任を全うしようとした経営者の姿があった。その人たちに比べて……。 その後も何人かの従業員が訪ねてきたが、社長がいないことに皆困った様子で会社を後にした。その中には、3カ月前に入社したばかりという20代の男性もいた。 M社の事務所から最寄り駅までの約1.5キロメートル。帰り道、取材に応じてくれた従業員らの顔が浮かぶ。従業員の人生を背負う覚悟のない経営者の下で働くのは不幸だ。そんなことを考えているうちに、大通りに出た。突然解雇通知書を受け取ったドライバーたちは、どんな思いで家路に就くのだろうか。 こうした一つ一つの倒産が積み上がり、年間の倒産件数が算出される。景気動向、技術革新、業界環境の変化、法律の規制といった外部環境と照らし合わせて分析される倒産件数の増減。しかし、倒産する全ての企業が、そんな一般論で語られるようなことだけが原因で倒産するわけではない。 関係者もしくは現場でしかわからないそれぞれの企業の内部環境こそが、本当の倒産要因といっても過言ではないだろう。今まで見届けてきた数々の企業と従業員のためにも、それぞれの倒産を机上の空論で片付けるべきではない。倒産は現場で起きているのだから』、「運送会社のM社・・・社長と何人かの役員待遇の社員は良い生活しているのに、おれらは給料すら払われてないんだよ・・・取材時の約5カ月前となる)6月に集められて、『数%カット』と言われた。確かあのとき、トラックの事故があった後かな。幹線道路をふさいで大変だった。あそこにあるぐちゃぐちゃの、それ・・・でも、ずっと前からひどかった。社長が代わってから。大口のお客さんもあきれてた。社長に意見できた唯一のベテラン社員も辞めてしまったしな」、確かに酷そうだ。
次に、本年8月1日付けAERAdot.が掲載した経済ジャーナリストの大西洋平氏による「経済活動が正常化でも増える倒産、飲食業は「過去最多」の可能性、背景に何があるのか」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/articles/-/197438?page=1
・『ようやくコロナ禍を抜け出し、経済活動も正常化したというムードが強まっている。ところが、足元では経営に行き詰まって力尽きる企業が急増中だ。AERA 2023年8月7日号の記事を紹介する。 東京商工リサーチによれば、今年上半期(1~6月)における全国の企業倒産件数(負債額1千万円以上)は、2年連続で前年同期を超えたという。 上半期の数としては、2020年の同期以来3年ぶりに4千件を突破し、前年同期比で32%の増加となった。 負債総額については、昨年上半期に大手自動車部品メーカーの大型倒産があったため、前年同期比で約45%減に。ただ、負債100億円以上が8件、1億円以上5億円未満が824件、5億円以上10億円未満が115件と、中堅規模の企業倒産が目立った。 東京商工リサーチ情報本部の坂田芳博さんはこう説明する。 「株式を上場する大手企業の間では、好業績のところが増えています。一方、中小・零細企業の業績回復は遅れ気味です。コロナ禍で実施された支援策の効果が時間の経過とともに薄れ、すでに昨春ごろから倒産件数の増勢が強まりつつありました」 同調査では産業別の倒産件数にもスポットを当てているが、10分類のすべてが前年同期を上回っていた。これは1998年上半期以来、25年ぶりのことだという。ちなみに、当時は大手金融機関が次々と経営破綻し、日本は深刻な金融危機に見舞われていた。 地域別の倒産件数に目を向けても、けっして予断を許さない情勢にあると言えそうだ。 同調査では全国を9地区に分類しているが、そのすべてにおいて前年同期を上回っていた。こちらは、ITバブルが崩壊した2000年上半期以来(23年ぶり)の現象とか。無論、突出しているのは企業数自体が多い関東や近畿だが、コロナ感染は全国に広がっただけに、地方企業の多くも苦しい情勢のようだ』、「上半期の数としては、2020年の同期以来3年ぶりに4千件を突破し、前年同期比で32%の増加となった・・・東京商工リサーチ情報本部の坂田芳博さんはこう説明する。 「株式を上場する大手企業の間では、好業績のところが増えています。一方、中小・零細企業の業績回復は遅れ気味です。コロナ禍で実施された支援策の効果が時間の経過とともに薄れ、すでに昨春ごろから倒産件数の増勢が強まりつつありました」、「コロナ禍で実施された支援策の効果が時間の経過とともに薄れた」のが大きな原因のようだ。
・『飲食業が特に深刻 10分類中で最も倒産が多かったのは「サービス業他」の1351件(前年同期比36%増)で、全体の33.4%を占めていた。それに次ぐのが建設業の785件(同36.2%増)で、資材価格の高騰が経営の足を引っ張った一因と見られている。) サービス業の中でも、特に深刻なのは飲食業だ。今年上半期における倒産件数(負債1千万円以上)は424件で、前年同期比78.9%もの大幅増となった。上半期ベースで見ると、過去30年間における最多記録を更新。今後も同じようなペースで推移すると、8月にも昨年年間倒産件数(522件)を突破する可能性が考えられる。 「コロナ禍で飲食業は、休業・時短協力金や各種支援金などの手厚い支援に支えられてきました。しかし、売り上げが十分に戻りきらない状態で支援策が終了したうえ、物価高で光熱費や仕入れコストが急騰して追い打ちをかけました。さらにせっかく客足が戻ってきても十分な人手を確保できず、機会損失が発生しているケースも少なくないものと思われます」(坂田さん)』、「売り上げが十分に戻りきらない状態で支援策が終了したうえ、物価高で光熱費や仕入れコストが急騰して追い打ちをかけました。さらにせっかく客足が戻ってきても十分な人手を確保できず、機会損失が発生しているケースも少なくないものと思われます」、なるほど。
・『ゼロゼロ融資も影響 コロナ禍初年となった2020年、緊急事態宣言などのあおりで飲食業の倒産が急増したことは広く知られている。 東京商工リサーチの調べでは、年間件数が過去最多となる842件に上ったという。2021年以降は様々な支援策によって抑制されてきたが、そういった後ろ盾がなくなって再び悪化している。 坂田さんによれば、今回の調査で皮肉な結果が浮き彫りになったという。コロナ禍における営業自粛に伴い、やむなく人員削減を実施したすべての飲食店が人手不足に陥っていたのだ。慌てて確保しようとする動きが活発化すれば、おのずと人件費には上昇圧力がかかる。 しかも、タイミングが悪いことに「ゼロゼロ融資」の返済も始まった。 「ゼロゼロ融資」とは、コロナ禍で売り上げが激減した企業や個人事業主を対象に行われた実質無利子・無担保の貸し出しだ。今年上半期にコロナ関連で倒産に陥った飲食業は288件で、前年同期比104.2%増まで膨らんでいる。そのうち、「ゼロゼロ融資」を利用後に倒産したのは52件。延々と返済が続くだけに、今後は「ゼロゼロ融資」に起因する倒産がさらに増えていくのは必至だろう。 「コロナ禍以前から融資を受けていたケースも考えられますし、そうなると返済の原資を工面するのは大変でしょう。年間を通じた飲食業の倒産件数は、過去最多記録を更新する可能性があります」(坂田さん)』、「コロナ禍における営業自粛に伴い、やむなく人員削減を実施したすべての飲食店が人手不足に陥っていたのだ。慌てて確保しようとする動きが活発化すれば、おのずと人件費には上昇圧力がかかる。 しかも、タイミングが悪いことに「ゼロゼロ融資」の返済も始まった。 「ゼロゼロ融資」とは、コロナ禍で売り上げが激減した企業や個人事業主を対象に行われた実質無利子・無担保の貸し出しだ。今年上半期にコロナ関連で倒産に陥った飲食業は288件で、前年同期比104.2%増まで膨らんでいる。そのうち、「ゼロゼロ融資」を利用後に倒産したのは52件。延々と返済が続くだけに、今後は「ゼロゼロ融資」に起因する倒産がさらに増えていくのは必至だろう』、「飲食業」の業況は厳しそうだ。
第三に、9月8日付けYahooニュースが転載した広島ホームテレビ「給食が突然ストップ…高校6校 提供業者へ違約金を請求 広島」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/44460600ba9ce2e6f6e2a22f59a996c8784688df
・『高校の寮などで食事の提供が止まっている問題で、影響を受けている6つの高校が違約金を請求したことが分かりました。 三次高校など県内7つの高校がホーユーに給食業務を委託しており、その中の6校は2025年3月末までの契約でしたが6日、この契約を解除しています。 県教育委員会によりますと契約書には「履行期間中に業務を完了できない場合、違約金を支払わなければならない」という旨の記載があるため、契約解除にあたり会社側に数百万円の違約金を請求したということです。会社側には再来週までに支払いを求めています。 また県教育委員会などは、早急に寮での食事を再開できるよう随意契約もふくめて調整を進めているということです』、続報がないので、詳細は不明だが、「県内7つの高校がホーユーに給食業務を委託」、するからには、「ホーユー」の事業基盤や財務基盤はそれなりに強固な筈だが、「履行期間中に業務を完了できない」事態に陥った原因は何なのだろう。再発防止のためにも、掘り下げた分析が必要だと思う。
第四に、12月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した帝国データバンク情報統括部情報編集課長の阿部成伸氏による「「世紀の大粉飾」「巨額詐欺事件だ」銀行関係者が憤る倒産企業の実名」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/335283
・『帝国データバンクが12月8日に発表した2023年11月の全国企業倒産(負債1000万円以上の法的整理が対象)は773件、負債総額は881億5000万円となった。件数は2022年5月以降19カ月連続で前年同月を上回り、今年1月~11月の累計件数は7691件で前年同期(5784件)を33.0%上回っている。このままのペースで推移すると、2023年(通年)の倒産件数は約8500件となる見通しだ。今回は倒産取材から見えてくる近時の倒産の特徴を解説するとともに、今年下半期で最も印象的だった倒産を一つ選んで振り返る』、興味深そうだ。
・『足元で増えている「三つの倒産」 倒産件数推移の年別推移を見ても分かる通り、コロナ関連融資(ゼロゼロ融資)をはじめとする中小企業支援策によって倒産が抑制されていた2021年、2022年とは大きく状況が変わり、2023年は倒産が急増。その数はコロナ前の水準に戻っていることが分かる。 (図_全国企業倒産の件数推移(2014年~2023年)はリンク先参照) 東京23区の企業倒産の取材を行う帝国データバンク情報統括部には、毎日のようにさまざまな業種の企業から「月末の入金がない」「電話がつながらない」といった取引先の照会が寄せられ、12人の取材記者が現地確認や情報収集で飛び回っている。 そうした取材の報告や金融機関の審査担当者へのヒアリングをまとめると、近時の倒産について大きな特徴が三つ見えてくる』、なるほど。
・(1)ゼロゼロ融資返済倒産 一つ目はコロナ関連融資(ゼロゼロ融資)の返済開始に伴う倒産の増加だ。2020年に始まったゼロゼロ融資は、同年5月~7月頃に集中的に実行され、1回目の毎月返済を最長で5年後に設定できる「据置期間」が設けられた。この据置期間については、同融資を受けた企業の6割程度が3年未満、2割超が「3年」で設定したとみられる。 「3年」という長い期間で設定した企業が一定数あった背景としては、ゼロゼロ融資が「当初3年間無利息」であったことや当時の業況が極めて厳しい企業が多かったことが挙げられる。 「3年もたてば、今より良くなっているだろう…」。当時、そうした気持ちで融資を申し込んだが、その後の原材料・電気代高騰や為替変動の影響を受けるなどして、結局、業況は変わらないままの企業は少なくなく、「返済が始まれば限界だ…」と返済開始のタイミングで事業継続を断念する経営者が増えている』、「「3年もたてば、今より良くなっているだろう…」。当時、そうした気持ちで融資を申し込んだが、その後の原材料・電気代高騰や為替変動の影響を受けるなどして、結局、業況は変わらないままの企業は少なくなく、「返済が始まれば限界だ…」と返済開始のタイミングで事業継続を断念する経営者が増えている」、なんのことはなくただ3年延長しただけだ。
・『(2)公租公課滞納倒産 二つ目は消費税や固定資産税などの各種税金や厚生年金保険、健康保険などの社会保険料の納付ができない、または滞納が続いたことで会社の資産(預金口座や土地など)を差し押さえられて事業継続が困難となる、公租公課滞納倒産の増加だ。 2023年の公租公課倒産は11月までに111件確認され、2022年(通年で74件)、2021年(同52件)を大きく上回っている。 公租公課のうち、企業にとって特に負担が大きい社会保険料については、コロナ禍で最長3年の納付猶予措置が設けられたが、企業活動が正常化に向かうなかで特例措置は順次縮小される一方、2022年度の年金事務所による厚生年金保険料などの差し押さえ件数は、前年度の4倍となる2万7784事業所にまで増加した。 こうした現状を踏まえると、公租公課滞納倒産は今後さらに増加していく可能性が高い。 各種税金や社会保険料の納付は、社会保障制度を維持・継続させるために企業が公平に負う義務であり、滞納などに伴う差し押さえで倒産が増えていることについて、年金事務所等の責めに帰すことはできない。見方を変えれば、淘汰されるべき企業が淘汰され、健全な経済成長を促すための変化ととらえることもできるだろう』、確かに「淘汰されるべき企業が淘汰され、健全な経済成長を促すための変化」と捉えられる。
・『(3)粉飾倒産 三つ目は粉飾倒産の増加だ。これについては、民間、政府系を問わず金融機関の審査担当者が口をそろえる。 コロナ禍では各金融機関は中小企業向けのゼロゼロ融資の受け付け・実行や既存融資のリスケジュール対応などに追われ、融資先の情報収集や定点管理に手が回らず、粉飾決算が発見されにくい状況が続いていた。しかし、アフターコロナで支援策がなくなり、自主再生フェーズに入ってくると、自力での事業継続が困難となる企業が出始める。その過程で粉飾決算が表面化している。 その現状について都内・民間金融機関の担当者は「倒産前に粉飾が発覚するケースと倒産後に粉飾が発覚するパターンがある。前者の場合、経営悪化に伴う再建計画作成の過程で決算書の矛盾点が指摘され、結果として予定していた計画・支援が実現せず、倒産に至るケースが多い」と話す』、「倒産前に粉飾が発覚するケース」では、「経営悪化に伴う再建計画作成の過程で決算書の矛盾点が指摘され、結果として予定していた計画・支援が実現せず、倒産に至るケースが多い」、結果的には傷がつかずに済むようだ。
・『今年7月に発生した「世紀の大粉飾」倒産 2023年7月~11月に発生した全国企業倒産は、計3685件。そのなかにはパチンコホール大手の「ガイア」や突如、事業を停止して社会問題にもなった学校給食事業の「ホーユー」なども含まれ、12月に入ると1年4カ月ぶりに上場企業(プロルート丸光・東証スタンダード)の倒産も発生した。そうしたなかでも筆者にとって下半期で最もインパクトが大きかったのは「世紀の大粉飾」の果てに倒産した堀正工業だ。 優良企業とみられてきた昭和8年創業のベアリング商社・堀正工業(株)(東京都品川区)が倒産したのは今年7月。同月24日に東京地裁へ自己破産を申請し、同日破産手続き開始決定を受けた。そして同時に発覚した大粉飾は、銀行や審査業界に極めて大きな衝撃を与えた。 筆者は2000年以降、倒産を取材する記者として、さまざまな粉飾事例を見てきたが、これほどまでに会社の説明(書類)と実態が乖離(かいり)し、数多くの銀行が巻き込まれたケースを見たことがない。それが「世紀の大粉飾」とも言われるゆえんだ。 堀正工業に融資していた各銀行は、融資取引銀行の総数について、自行を含めて5行と説明を受けていたが、実際はその10倍以上の54行から融資を受けていた。 また、銀行借り入れの総額について各銀行は40億~50億円程度(各行で異なる)と認識していたが、実際は約347億円(2022年9月時点)。2022年9月期の年売上高は68億600万円、当期純利益は4億7700万円と公表していたが、実際の年売上高は45億1600万円、当期純利益は3億4200万円の赤字だった。 「単なる粉飾ではなく、巨額詐欺事件だ」(銀行関係者)と憤るのも当然だ。 粉飾決算は遅くとも、現社長の堀雅晴氏が社長に就任した2003年頃からはじまったとされる。かつて利益が出ていないことを理由に銀行から融資を断られた経験から、融資を受けるためには利益が出ていることが必須であると考えたことがきっかけだった。以後、堀社長などによって長年にわたり粉飾決算は続けられ、取引先や銀行をだまし続けた。 破産申立書に添付された会社資産の実態を示す清算貸借対照表に計上された現金・預貯金の合計はわずか6億7500万円。これまで受けてきた数百億円規模の融資金は何に使われどこに消えたのか。 また、申立書には取引金融機関が増大していった理由について「堀雅晴個人への貸付け、堀雅晴が100%株主ないしは大株主である会社への貸付け等のため」などと記載され、怪しさ満載だ。 11月27日に開催された財産状況報告集会では、これまで明かされることのなかった資金の流れの説明もあったとされ、堀社長への責任追及や事件化へ向けた銀行の動きなどが注目されている』、「各銀行は、融資取引銀行の総数について、自行を含めて5行と説明を受けていたが、実際はその10倍以上の54行から融資を受けていた。 また、銀行借り入れの総額について各銀行は40億~50億円程度(各行で異なる)と認識していたが、実際は約347億円(2022年9月時点)。2022年9月期の年売上高は68億600万円、当期純利益は4億7700万円と公表していたが、実際の年売上高は45億1600万円、当期純利益は3億4200万円の赤字だった。 「単なる粉飾ではなく、巨額詐欺事件だ」(銀行関係者)と憤るのも当然だ。 粉飾決算は遅くとも、現社長の堀雅晴氏が社長に就任した2003年頃からはじまったとされる・・・清算貸借対照表に計上された現金・預貯金の合計はわずか6億7500万円。これまで受けてきた数百億円規模の融資金は何に使われどこに消えたのか」、確かに桁外れの「粉飾」だ。こんな巨額の「粉飾」であれば、経理部長の「粉飾」維持のための経理操作は膨大な負担になっていただろう。
タグ:倒産・経営破綻 (その2)(一目散に逃げ出した社長に怒り…帝国データバンク調査員が見た 衝撃の倒産現場、経済活動が正常化でも増える倒産 飲食業は「過去最多」の可能性 背景に何があるのか、給食が突然ストップ…高校6校 提供業者へ違約金を請求 広島、「世紀の大粉飾」「巨額詐欺事件だ」銀行関係者が憤る倒産企業の実名) ダイヤモンド・オンライン 藤坂 亘氏による「一目散に逃げ出した社長に怒り…帝国データバンク調査員が見た、衝撃の倒産現場」 「新聞折り込みチラシを扱っていた同社は、業界環境の悪化とコロナ禍での急激な受注減に苦しめられていた・・・ゼロゼロ融資は・・・二度、申し込みました。そして二度、断られました」、「ゼロゼロ融資」を断られるほどなので、余程業況が厳しかったのでろう。 「運送会社のM社・・・社長と何人かの役員待遇の社員は良い生活しているのに、おれらは給料すら払われてないんだよ・・・取材時の約5カ月前となる)6月に集められて、『数%カット』と言われた。確かあのとき、トラックの事故があった後かな。幹線道路をふさいで大変だった。あそこにあるぐちゃぐちゃの、それ・・・でも、ずっと前からひどかった。 社長が代わってから。大口のお客さんもあきれてた。社長に意見できた唯一のベテラン社員も辞めてしまったしな」、確かに酷そうだ。 AERAdot. 大西洋平氏による「経済活動が正常化でも増える倒産、飲食業は「過去最多」の可能性、背景に何があるのか」 「上半期の数としては、2020年の同期以来3年ぶりに4千件を突破し、前年同期比で32%の増加となった・・・東京商工リサーチ情報本部の坂田芳博さんはこう説明する。 「株式を上場する大手企業の間では、好業績のところが増えています。一方、中小・零細企業の業績回復は遅れ気味です。コロナ禍で実施された支援策の効果が時間の経過とともに薄れ、すでに昨春ごろから倒産件数の増勢が強まりつつありました」、 「コロナ禍で実施された支援策の効果が時間の経過とともに薄れた」のが大きな原因のようだ。 「売り上げが十分に戻りきらない状態で支援策が終了したうえ、物価高で光熱費や仕入れコストが急騰して追い打ちをかけました。さらにせっかく客足が戻ってきても十分な人手を確保できず、機会損失が発生しているケースも少なくないものと思われます」、なるほど。 「飲食業」の業況は厳しそうだ。 yahooニュース 広島ホームテレビ「給食が突然ストップ…高校6校 提供業者へ違約金を請求 広島」 続報がないので、詳細は不明だが、「県内7つの高校がホーユーに給食業務を委託」、するからには、「ホーユー」の事業基盤や財務基盤はそれなりに強固な筈だが、「履行期間中に業務を完了できない」事態に陥った原因は何なのだろう。再発防止のためにも、掘り下げた分析が必要だと思う。 阿部成伸氏による「「世紀の大粉飾」「巨額詐欺事件だ」銀行関係者が憤る倒産企業の実名」 (1)ゼロゼロ融資返済倒産 「「3年もたてば、今より良くなっているだろう…」。当時、そうした気持ちで融資を申し込んだが、その後の原材料・電気代高騰や為替変動の影響を受けるなどして、結局、業況は変わらないままの企業は少なくなく、「返済が始まれば限界だ…」と返済開始のタイミングで事業継続を断念する経営者が増えている」、なんのことはなくただ3年延長しただけだ。 (2)公租公課滞納倒産 確かに「淘汰されるべき企業が淘汰され、健全な経済成長を促すための変化」と捉えられる。 (3)粉飾倒産 「倒産前に粉飾が発覚するケース」では、「経営悪化に伴う再建計画作成の過程で決算書の矛盾点が指摘され、結果として予定していた計画・支援が実現せず、倒産に至るケースが多い」、結果的には傷がつかずに済むようだ。 「各銀行は、融資取引銀行の総数について、自行を含めて5行と説明を受けていたが、実際はその10倍以上の54行から融資を受けていた。 また、銀行借り入れの総額について各銀行は40億~50億円程度(各行で異なる)と認識していたが、実際は約347億円(2022年9月時点)。2022年9月期の年売上高は68億600万円、当期純利益は4億7700万円と公表していたが、実際の年売上高は45億1600万円、当期純利益は3億4200万円の赤字だった。
ビッグモーター(その1)(《「やってもーたー」と嗤っている場合でもない》BMを中心とする中古車と損保の問題はどう着地させるべきか、まさかの生き残り計画も…四面楚歌BMに数百億円貸している"メガバンク"が悶絶する大人の事情 生殺与奪の権を持つ三井住友 広島 三菱UFJ みずほ 中国は融資するのか、《ルールや方針が「BM化」》中古車販売業界第2位「ネクステージ」の不正を現役社員、元社員が続々告発!「BMよりエグい」「わざとタイヤをパンクさせて…」、BM買収に伊藤忠が意欲「最高年収5000万円」超高待遇社員はど [企業経営]
ビッグモーター(以下BM)については、ある程度、記事が出てきたので、取上げることにした。今日は、(その1)(《「やってもーたー」と嗤っている場合でもない》BMを中心とする中古車と損保の問題はどう着地させるべきか、まさかの生き残り計画も…四面楚歌BMに数百億円貸している"メガバンク"が悶絶する大人の事情 生殺与奪の権を持つ三井住友 広島 三菱UFJ みずほ 中国は融資するのか、《ルールや方針が「BM化」》中古車販売業界第2位「ネクステージ」の不正を現役社員、元社員が続々告発!「BMよりエグい」「わざとタイヤをパンクさせて…」、BM買収に伊藤忠が意欲「最高年収5000万円」超高待遇社員はどうなる?大損もあり得る5大リスクとは)である。
先ずは、本年7月28日付け文春オンライン「《「やってもーたー」と嗤っている場合でもない》BMを中心とする中古車と損保の問題はどう着地させるべきか」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/64656
・『街路樹も枯れる勢いで急成長した俺たちのBM社が、ついに公式の記者会見に追い込まれてしまいました。創業者で代表取締役社長であった兼重宏行さんが、一連の騒動の責任を取って辞任。新たに就任した経営者が国土交通省の聞き取り調査にようやく応じたという流れになったようです。 また損保大手3社のうち、出向者を出しBM社経由の大口保険獲得をしたと見られる損保ジャパンも金融庁に本件絡みで虚偽の報告をしていたことが判明したことで、こりゃもう業務改善命令ではなく業務停止命令待ったなしだよねという流れになっていますね。謹慎ではなく切腹でお願いします』、興味深そうだ。
・『中古車流通大手が民間車検制度を悪用することの影響 事件の経緯は、いままでさんざんBM社からの広告で潤ってきたマスコミが盛大に手のひら返しをしている実況生中継が行われておりますので、皆さん各自、その辺を見ておいていただければと存じます。 大変な大騒ぎになり収まる気配もないわけですけれども、それもそのはず、国民にとって自動車は文字通り移動の足であり、その中古車流通大手のBM社が事故車両に関して保険金の不正請求をしたり、民間車検制度を悪用したりすれば、自動車(モビリティ)行政の根幹の信頼が揺らぐことを意味します。騒いで騒ぎ足りないってことは本件については無いのかなとすら思います。ええじゃないか』、不祥事のオンパレードなので、「騒いで騒ぎ足りないってことは・・・無い」。
・『「遅刻で1000円」「殺すぞ」BM“地獄職場” どんなに慎重で上手なドライバーでも車を運転していれば事故ることは確率的には必ず発生する以上、何事が起きても自身の支払い能力を超えて賠償しなければならなくなる危険を考えて損害保険の一種である自動車保険に入ることは各都道府県で義務化が進んでいます。最近では、チャリも自転車保険加入を義務付けする県も出るぐらい、事故に対する被害者への弁済・補償はマストの世界になってきています』、任意保険の付保も広がっている。
・『みんな癒着があったとは知らずに損保会社の入庫誘導に従っていた ただ、万が一事故を起こした際に、自分の自動車も含めて発生する事故対応や損害の弁済・補償に対し、損害保険の事故査定はドライバーが誰であれプロに任せざるを得ません。そこへ、今回は事故評価をする保険会社から強く斡旋(入庫誘導)されるBM社の板金部門や工場・営業所と内々で癒着があれば、事故を起こした当人がそれが妥当な事故査定なのかは分からないことになります。 つまり、損保ジャパンなど損保会社とBM社など事業者との間には、そもそも明確な利益相反の関係があるはずなのです。うっかり多額の保険金を被保険者に払いたくない損保会社と、本来は職業倫理に基づいてシビアかつ公正に事故車の査定を行う、麗しいプロ同士の緊張感ある本番勝負があると信じるから、みんな癒着があったとは知らずに損保会社の入庫誘導に従っていたわけですよ。まさにプロの世界、秘密の花園、サンクチュアリ(聖域)であります。) しかし、何でお前らつるんでるのと言われれば、損保会社は新たな契約をBM社経由で獲得するために自社の事故案件では事故査定などをBM社で行うよう事故を起こした本人に強く要望し、その本人の車には「ここ壊れてたっス」とわざと傷をつけたりパンクさせたりするなどの鬼ヤバ査定を行い、さらにその本人に新たに「損保ジャパンの自動車保険どうスか」とお薦めするなどの癒着具合があったのだとするならば最悪です。事故を起こしたって、日々の生活をするのに車は必要ですから、どうせ車を使わないといけない契約者からすればしぶしぶでも従わざるを得ません。 こうなってしまうと、素人はただただシャブられる話ですよね』、「損保ジャパンなど損保会社とBM社など事業者との間には、そもそも明確な利益相反の関係があるはずなのです・・・麗しいプロ同士の緊張感ある本番勝負があると信じるから、みんな癒着があったとは知らずに損保会社の入庫誘導に従っていたわけですよ・・・損保会社は新たな契約をBM社経由で獲得するために自社の事故案件では事故査定などをBM社で行うよう事故を起こした本人に強く要望し、その本人の車には「ここ壊れてたっス」とわざと傷をつけたりパンクさせたりするなどの鬼ヤバ査定を行い、さらにその本人に新たに「損保ジャパンの自動車保険どうスか」とお薦めするなどの癒着具合があったのだとするならば最悪です」、なるほど。
・『過去に車検不正で行政処分を受けたことも さらには、事故を起こしているわけですから、その本人は保険等級が上がってしまい、毎月の保険料は高額になってしまいます。美味しい商売になっておったわけですよ。そりゃ急成長もしますって。 実に踏んだり蹴ったりですが、そんなBM社は保険金の不正請求と並んで民間車検制度でも問題を起こしていました。全国各地に自動車整備士を多数抱えており、23年3月には熊本県で、同6月には栃木県で不正車検が行われていたことが発覚したのです。 BMなど自動車販売店における車検は、公道を走る車両の安全性を確保する目的で国が行うべき業務を民間企業が委託を請け代行するものであって、販売店には「指定工場」として、また自動車整備士には「自動車検査員」の資格が国から与えられています。今回の不正請求事件で大騒動になる前に、車検不正の舞台となったBM南宇都宮店は関東運輸局により、指定自動車整備事業指定取り消しの行政処分をしめやかに受けています。 これらは、自動車やバスなどを扱うモビリティ関連行政そのものの根幹を担う民間車検制度をも大きく揺るがす問題の入り口だったのであって、これらの監督官庁である国土交通省からすれば、まさに一丁目一番地、やるべき行政対応の本丸とも言える大事な分野で起きた大変な事態であると言えます』、「BM社は保険金の不正請求と並んで民間車検制度でも問題を起こしていました。全国各地に自動車整備士を多数抱えており、23年3月には熊本県で、同6月には栃木県で不正車検が行われていたことが発覚した・・・民間車検制度をも大きく揺るがす問題の入り口だったのであって、これらの監督官庁である国土交通省からすれば、まさに一丁目一番地、やるべき行政対応の本丸とも言える大事な分野で起きた大変な事態である」、なるほど。
・『他の会社でも類似の不正が芋づる式に発覚 そこへ、同じく便利な自動車には残念ながら付き物の事故対応において、前述の通り損害保険(自動車保険)においても完全な利益相反による癒着が発生し、国民の足である自動車が割と雑な感じで業界大手の食い物にされていたというのはかなりの衝撃となっておるわけです。 そればかりか、一連のBM問題が世間的に着火すると、BM社だけでなく、ほかの中古車販売大手でもほぼ類似の不正請求や書類偽造、さらには不正車検を懸念させる公益通報が急増。似たようなことはどこでもしているのよという中森明菜少女A状態となっております。ネタが古くて申し訳ございません。 言うなれば、中古車販売や民間車検、車両整備にいたるまで、かなり広範囲に、業界全体で、適法とは言えない方法で素人を食い物にする仕組みがあったのではないかと懸念される事態であると言えます。まあ、業界大手同士に資本関係があったり、不正も含めて仕事の仕方を覚えて独立する人もいたりで、儲けるノウハウは違法性含め共通なのも仕方がないのかもしれませんが、やられた側はたまったものではありませんね。) この記事を読んでいるあなた。そう、あなた、あなたが過去に「変だな」と思う車両整備や車検、保険取り扱いがあるようであれば、いますぐこちらの窓口に書式揃えて「変だったぞ」と通報してみてください。 指定自動車整備事業者における不正車検通報窓口のご案内https://www.mlit.go.jp/jidosha/fuseishaken_tsuho.html』、「一連のBM問題が世間的に着火すると、BM社だけでなく、ほかの中古車販売大手でもほぼ類似の不正請求や書類偽造、さらには不正車検を懸念させる公益通報が急増。似たようなことはどこでもしているのよという中森明菜少女A状態となっております」、なるほど。
・『通報窓口などからの不正取引の相談は5年間で4万件以上 あまりにも不正の種類や件数が多くてめまいがする状態なのですが、それもそのはず、BM社の悪しき業界慣行が産経新聞により報じられたのは2016年であり、しかもこれらの問題はその5年前の2011年からBM社内で行われていたと指摘されています。 折しも、BM社が2012年7店舗だったものが2016年には97店舗と急拡大している時期に行われていたものであることは間違いなく、中古車販売を本業とする上場企業も買収して拡大基調にありました。これらの猛烈なノルマ主義によって支えられた成長路線は、結果的に、ヤバいことでも除草剤散布でもなんでもやって、客を食い物にしないと達成できない目標を背負わされた現場によって実現されてきた面もあります。 そして、国会が開けば議員から質問も多数飛び出すでしょうが、国土交通省でもこれらの問題は一部把握されており、通報窓口などからの不正取引の相談は5年間で4万件以上にも上ると見られます(証拠が揃わず調査に着手できないなど、窓口が正式に受理できた件数は少数であるとも言われていますが)。言うなれば、10年以上前からBM社の適切とは言えない取引は業界の中でも知るところとなっていたが、なんとなく行政対応するべき機運が生まれずそのまま15年ぐらい経過しちゃった、ということになります。 国土交通省の人たちも「疑わしいけど確証はなく、いずれ爆発するものという認識はあった」ようなので、人事のたびに申し送りされる赤ひげ危機一発のようなものだったのでしょう』、「通報窓口などからの不正取引の相談は5年間で4万件以上にも上ると見られます(証拠が揃わず調査に着手できないなど、窓口が正式に受理できた件数は少数であるとも言われていますが)。言うなれば、10年以上前からBM社の適切とは言えない取引は業界の中でも知るところとなっていたが、なんとなく行政対応するべき機運が生まれずそのまま15年ぐらい経過しちゃった、ということになります」、とんでもない話だ。
・『23年1月に第三者委員会が設置されるが… 最初にBM社に関するタレコミなどから日本損害保険協会の知るところとなったのは2021年9月ごろからで、翌22年に損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上3社がおのおの抜き取り調査を実施した結果クロ判定。さすがにマズかろうということで、一斉にBM社への事故車両などの入庫誘導・紹介を停止しています。そりゃそうですね。 しかし、BM社が「(保険金の不正請求などの)疑いとなる事案は(担当した工場の)スキル不足や連携ミスによるもので、組織的な不正ではない」と回答し、それをうっかり信じた損保ジャパンが報告を受けた翌月22年7月には疑いは晴れたとばかりに入庫誘導を再開。あ、保険加入の件数を増やして売り上げが欲しかったんすね』、「BM社が「(保険金の不正請求などの)疑いとなる事案は(担当した工場の)スキル不足や連携ミスによるもので、組織的な不正ではない」と回答し、それをうっかり信じた損保ジャパンが報告を受けた翌月22年7月には疑いは晴れたとばかりに入庫誘導を再開」、「損保ジャパン」は保険契約欲しさに不正請求をまともに調べなかったようだ。
・『BM「調査報告書」その内容は? ・・・ただ、なにぶんBM社はBM社ですので、翌々月の9月には再び派手にやらかして工場長ら(当時)による会社ぐるみの組織的関与が告発され、これが発覚すると、損保ジャパンがまた入庫誘導を取りやめ。さすがにアカンやろということで、23年1月にBM社の中で第三者委員会が設置されるも、その報告書は一部が隠蔽された形でひっそりとBM社のサイトの中に掲載され、何事もなかったかのように騒ぎを黙殺し、スルーするタマホーム作戦に打って出ます』、「報告書は一部が隠蔽された形でひっそりとBM社のサイトの中に掲載され、何事もなかったかのように騒ぎを黙殺」、悪どいやり方だ。
・『どういう着地とするべき 不正請求問題にあたっては、東洋経済オンラインが22年8月から年末にかけて、BM社と損保ジャパンほかの問題について中村正毅さんが記事にしておりましたが、そこから約10か月かけて、ようやく代表取締役の辞任も含めた事後対応を軸とした記者会見と、国土交通省や金融庁からの怒られに発展することになります。 さらには、BM社が車両用部品や修繕において下請けで使っていた会社からの告発(下請法違反)や、本来取り扱う顧客の個人情報は自動車修理など特定業務を実施するためだけに使われるべきところ、不正に名簿屋などに売却されていた疑いなども取り沙汰され、内部通報制度に不備があったとの指摘も出たため、公正取引委員会や個人情報保護委員会、消費者庁マターの事案も出てきています。何というか、いまごろ出てきたオールスターな感じすらします。 もちろん、刑法詐欺罪での告訴が結成される被害弁護団から出されるとなれば、警察庁や法務省の話にもなり、本社のある六本木ヒルズに東京地検特捜部が段ボールもってやってくることもあり得ます。そのぐらい、熱量の高い事件となり大炎上前の焦げ臭さを強く感じます。 問題は、BM社に限って言うならば、本件はどう着地させるべきかになってきます』、「BM社が車両用部品や修繕において下請けで使っていた会社からの告発(下請法違反)や、本来取り扱う顧客の個人情報は自動車修理など特定業務を実施するためだけに使われるべきところ、不正に名簿屋などに売却されていた疑いなども取り沙汰され、内部通報制度に不備があったとの指摘も出たため、公正取引委員会や個人情報保護委員会、消費者庁マターの事案も出てきています。何というか、いまごろ出てきたオールスターな感じすらします」、なるほど。
・『少なくとも、2011年から現在まで26万台以上の再検査と補償が必要に かつて、大変な問題となった耐震偽装問題(2005年)では姉歯建築設計事務所とヒューザー社が断罪され、広く耐震偽装に関わったとされる一級建築士や建築事務所、建設会社の問題は不問とされ、その代わり、建築基準法が改正されて、実質的に問題に蓋がされましたが、こちらも建設と設計というプロが関わる仕事で起きた、利益優先の民間が適当にやった仕事の結果、業界全体が不信感に見舞われるという一件となりました。 この耐震偽装問題の根幹は、99年に建築確認申請制度において、建築設計における確認検査処分を民間確認検査機関に委譲できるようになったことです。これまで地方自治体に置かれた「建築主事」が携わる業務を、民間でもおこなえるように開放したため、本来なら疑われることがない前提で運用されていた 国土交通大臣認定の構造計算プログラムの改竄を行い、その改竄された計算結果で建築確認申請が承認されるという、民間委託あるあるが勃発した結果、4万棟以上とも言われる耐震偽装の疑いがある建築物があるのではないかと大きな騒動となったのです。) 同様に、今回のBM社の民間車検制度が実質的に悪用され、国土交通省が顔真っ赤になるのも当然です。また俺のお膝元で派手にやらかしやがって。車検なんてその辺で走ってる車全部が対象ですから、そこらじゅうで適当な感じで車検やっちったオンボロが走ってる可能性は否定できず、車検制度全体に対する不信感にならないように手当てをし、過去に遡及して、車検をやり直さなければならないかもしれません。 21年には車検制度の指定工場であったトヨタ系列の販売会社が不正車検を派手にやらかして、18年から21年までの違反行為の対象5,158台すべてが再検査の対象となったことを鑑みると、行政の公平性の観点から、BM社の不正車検が問題だとするならば少なくとも2011年から現在に至るまで年間26万台以上(もちろん廃車となった車両も含め)の再検査と補償が必要になります。 最後まで、BM社や創業家で当時経営者だった兼重宏行さん、宏一さん父子が今後民事刑事両面から責任を問われて最後まで再検査や補償を行うのかが見ものです。 やっちゃえ再検査。 これに関わった自動車整備士も、悪質なものは全員資格剥奪になってしまいます。大変なことだよねと思うんですが、そもそも車検できた車両を見てもいなかったレベルから意図的に部品を外すなどして不正に車検費用を請求したレベルまであらゆる犯罪のデパートになっていたことを考えれば、ケツ毛抜かれるまで追い込まれても仕方がないことなのかなと思います』、「21年には車検制度の指定工場であったトヨタ系列の販売会社が不正車検を派手にやらかして、18年から21年までの違反行為の対象5,158台すべてが再検査の対象となったことを鑑みると、行政の公平性の観点から、BM社の不正車検が問題だとするならば少なくとも2011年から現在に至るまで年間26万台以上(もちろん廃車となった車両も含め)の再検査と補償が必要になります」、大変だ。
・『今回一番損をしたのは… さらに、損害保険の保険金の不正請求に関しては、過去の事例では武富士事件(99年)やグッドウィル事件(07年)、商工ファンド事件(14年)と同様に、事件発生からの営業停止処分、そこから会社更生法申請後に、被害者への補償を充分にすることなく大金を持った創業者が資産を逃避させ、民事裁判で長く争われるも逃げ切られるという事案も想起されます。単に長年の悪事を暴くというだけでは駄目で、これらの悪質な経営を行った立役者から、過去やらかした分の責任を取らせて私財を吐き出させるまでが遠足ですよとも言えるのです。 BM社についても、豪邸がどうだとか、豪邸に生えている樹木に除草剤を撒けなどと中傷の対象になってしまっていますが、個人的には組織的関与を認めないまま経営から退いた創業者が、業界の信頼だけでなく行政の有りようまでも崩壊させた責任を取らず、被害者とも言える被保険者・普通の国民への賠償責任もきちんと担うことなく逃げ切られないようにするためにどうするべきか、というのは、強く問われなければならないと思うのです。 日頃あれだけ検査業務で銀行マンを奔走させている金融庁なのだから、さぞかしきちんと指導してくださるのは間違いないだろうと思うのですが、同様に、今回組織的関与が無かった、経営陣も知らなかったとぬけぬけと公言した損保ジャパンの詰め腹もきっちり取らせる必要があるのではないでしょうか。客観的に見て、お前ら嘘ばっかりついとるやろ。 今回の不正請求に関しては、実際のところ一番損をしたのは損保ジャパンではなく、損保ジャパンに加入していて問題を起こしていない一般契約者ということになるからです。まともな契約者・被保険者が、行政の怠慢とも言える損保会社のやらかしの犠牲者となることに他ならず、鎌倉幕府の伝統に基づいて族滅の処分を下して欲しいと願うところです。) 中古車市場については、前述の通り今回のBM社だけでなく他の大手2社でも程度の差はあれ同じようなことを繰り返していた疑いは強くあります。今回の問題が非常に厄介なのは、起きている事件それもこれも、自動車業界全体が大変革の真っただ中にあるからです。 今後EV自動車が増えていき、車がすべてコネクテッドになっていく将来の日本の自動車移動(モビリティ)環境において、シェアライドからスマートシティまで「どのようにして、国民が安心して自動車に乗り、できる限り少ない事故で安全に、少ないエネルギー消費にしていくのか」という業界全体のグランドデザインをどう国土交通省が描くつもりなのかという長期的なビジョンが求められています。 ぶっちゃけ、中国製EVバスが大量に市中に走ったり、軽自動車がすべてガソリンから電池に置き換わり、自動運転技術が確立してすべての車がネットに繋がるぞといったとき、自動車業界、モビリティ行政はどうなるのか。依存する電力インフラからネットへの接続、自動車の所有に関する問題にいたるまで、さまざまな問題が予見不能な状態で議論が重ねられているのがいまです。 この自動車整備や車検制度もさることながら、耐用年数が過ぎたらゴミ同然となる電池を乗せたEVが無価値になって中古車市場に流れてくるところでどうやって環境整備をするつもりなのかという話になるわけですよ』、「組織的関与を認めないまま経営から退いた創業者が、業界の信頼だけでなく行政の有りようまでも崩壊させた責任を取らず、被害者とも言える被保険者・普通の国民への賠償責任もきちんと担うことなく逃げ切られないようにするためにどうするべきか、というのは、強く問われなければならないと思うのです・・・今回組織的関与が無かった、経営陣も知らなかったとぬけぬけと公言した損保ジャパンの詰め腹もきっちり取らせる必要があるのではないでしょうか・・・耐用年数が過ぎたらゴミ同然となる電池を乗せたEVが無価値になって中古車市場に流れてくるところでどうやって環境整備をするつもりなのかという話になるわけですよ」、その通りだ。
・『支持率回復のチャンスカード到来? 一昨年、日本自動車整備振興会連合会が提出した資料などを見ていても、たぶん過渡的な環境で法的整備や人材育成をどうしていきましょうかという手探りの状態ですので、BM事件を機に、政府主導でも国交省でも構わないのでどーんと未来を見せて欲しいんですよね。 これらの課題は、いま何故か静かですが本来ならば岸田文雄政権が中心となって捌かなければならない問題のはずです。 本件こそ、国民生活の基盤に関わる問題であることは間違いございませんので、支持率回復のチャンスカード到来という発想で、どうか前のめりで岸田文雄さんにはご対応賜りたいと願う次第です』、いまや岸田政権にはそんな余裕はなくなっており、残念ながら殆ど期待できない。
第三に、8月15日付けPRESIDENT Onlineが掲載した小宮コンサルタンツ会長CEOの小宮 一慶氏による「まさかの生き残り計画も…四面楚歌BMに数百億円貸している"メガバンク"が悶絶する大人の事情 生殺与奪の権を持つ三井住友、広島、三菱UFJ、みずほ、中国は融資するのか」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/72803
・『自動車保険の保険金を不正に水増し請求していたBM。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「同社の純利益は年150億~200億円と推測されるが、今後の業績悪化は必至。命運を握っているのは3メガバンクを含む銀行団の融資動向だ」という――』、興味深そうだ。
・『四面楚歌のBMの現状 ビッグモーター(以下、BM)の問題が大きく取り上げられています。修理に預けられた車を故意に傷つけ保険金を多く請求するという詐欺的行為や、店舗前の歩道にある街路樹を枯らせるなど言語道断と言っていい行為を繰り返していたわけで、経営コンサルタントとしてももちろん許せる話ではありません。そして、世間の大きな関心のひとつは、この後、BMの命運はどうなるのかということでしょう。今回は、財務状況などを勘案しながら、今後を占っていきたいと思います。 BMは上場していないため、正確な財務状況は分かりません。ここで説明するのは、あくまでも新聞やテレビで報道されている内容がベースで、その報道内容も推測の域を出ないことをあらかじめご了承ください。 まず、売上高ですが、昨年度で5800億円程度といわれています。そのうちの大半が中古車の販売です。記者会見で兼重宏行社長(当時)が修理部門を「2%程度」という話をしていましたが、売り上げの大部分(9割程度)が中古車販売で、残りが修理や保険販売などと考えられます。 中古車販売の利益率は車によって大きな差があると考えられますが、競争の激しい業界でもあり、おおむね15%から20%前後であると見られます。粗利率がその程度だと仮定すると、ざっくり1000億円程度を全事業から得ていると考えられます。 一方の経費ですが、従業員が正社員5000人、非正規従業員が1000人の合計6000人と同社ホームページにはあります。給料は比較的高いと言われており、正社員の年収が平均800万円、非正規社員の年収が500万円と仮定すれば、450億円程度の人件費がかかっていることになります。 また、よく見かけたテレビCMなど広告宣伝費も膨大な額、おそらく年間で数百億円程度に達するはずです。他に、店の維持費や賃借料、店舗設備などの減価償却費などを考えると、あくまで推測ですが、全体で700億から800億円程度の経費がかかっており、営業利益で200億から300億円程度と推測できます。税金を30%程度と考えると、純利益でざっくり150億円から、200億円程度と考えられ、営業キャッシュフローも同程度だと推測できます。つまり、1年でそれくらいのキャッシュフローは通常の営業活動で稼いでいたということです』、売上は「1000億円程度を全事業から得ている」、「営業利益で200億から300億円程度と推測」、「純利益でざっくり150億円から、200億円程度と考えられ、営業キャッシュフローも同程度」、まずまずだ。
・『急拡大のため3メガバンクなどから数百億円借り入れ BMは膨大な広告宣伝費を投じるとともに、店舗を急拡大することで業容を拡大していました。300店舗を超える店舗を擁しています。 店舗拡大には、土地の取得とともに、店舗建設の費用が必要となります。土地は賃借物件が多いと考えられますが、店舗は自前で立てる必要があります。また、拡大にともなう人件費の増加もあり、いずれにしても多額の資金が必要なことは言うまでもありません。 店舗展開で事業を拡張するビジネスモデルの場合には、店舗建設のためや中古車の在庫確保のために、先に資金が必要なことが多いのです。BMのホームページには、取引銀行として、三井住友、広島、三菱UFJ、みずほ、中国の各銀行名が取引銀行として記載されています。他にもあると記されています。通常は関係の深い順に記載することが多いので、これが融資順位に近いと考えられます。 山口県岩国市がスタートのBMですが、当初は地元の取引銀行で資金を賄っていたのが、業容拡大によりメガバンクなどと取引を拡大していったと考えられます。 融資残高を推測するのは難しいですが、3メガバンクを含むこれだけの銀行と取引があることを考えれば、数百億円規模の借り入れがあると考えて間違いはないでしょう。8月11日付けの日経朝刊では昨年9月末で600億円規模の借入れがあったとされています。 先にも述べましたが、店舗拡大をともなう業容の拡大を行う場合には、多額の設備投資資金が必要になるとともに、在庫の維持や人件費などの資金も必要となるため、数百億円規模の借り入れを今でも長短合わせてしていると推測できます。 つまり、のちに詳しく述べますが、同社の命運を握っているのは、各銀行の融資姿勢だと言えます』、「昨年9月末で600億円規模の借入れ」、「同社の命運を握っているのは、各銀行の融資姿勢」、なるほど。
・『生き残りをかけて中古車の買い取りに活路 評判の急激な悪化により、業績が大きく落ちていることは間違いありません。 具体的には、この状況でBMに修理や車検を出す人はいないでしょう。私の知り合いも、同社に車検に出したら、法外な費用を請求され、さんざん交渉しても一切それには応じず泣く泣く支払ったと言っていましたが、もともと評判が悪い同社に、今後修理や車検を持ち込む人はまずいないと考えられます。 さらに、損保各社も、深い関係を取りざたされている損保ジャパンはじめ、代理店契約の継続は難しいと考えられます。金融庁が調査に入っていますが、金融庁としてもある意味メンツがつぶされたわけですから、別に起こっている損保各社の談合問題も影響し、今後はBMと関わりを持たない方向で進むものと考えられます。 注目は、中古車の買い入れ、販売の事業です。このうち、この状況で中古車をBMから買う人も減少する、少なくとも当面は激減すると予想できます。さらに、中古車にローンをつけるリース会社も、BMとの関係を見直す動きが進んでおり、また、広告掲載も手控えの動きが出ていることともあいまって、中古車販売も当面は苦境に立たされることは間違いないでしょう。 中古車の買い取りはどうでしょうか。こちらも取り扱いは減ると考えられますが、ある程度はビジネスを維持できるかもしれません。買った後で値引かれるなどの苦情は出ているようですが、とにかく他社よりも数万円高い値段を提示すれば、車を売る人は一定数いると考えられます。 中古車市場はクレームの多い業界ですが、消費者からのクレームのうち約2割はビッグモーターに対するものだと言われています。違う見方をすれば、残りの8割は他社だということで、ある意味クレームが絶えないマーケットだと言えます。その点を考えれば、他社に持ち込んでも似たり寄ったりで、そうなると買い取り価格が大きな決定要素です。 この状況でBMは、生き残りをかけて中古車の買い取りに活路を見いだそうとするでしょう。その際には、買取り後の値引きなどクレームの極力回避とともに、他社より少し高い値段での買い取りを行う可能性もあり、そうであれば、業容は縮小するものの中古車買い取りの事業はある程度は継続できると考えます。 もちろん、買い取った中古車を自社店舗で売却することは難しくなっているので、オークションに出品することで売却を行うものと考えられます』、「他社より少し高い値段での買い取りを行う可能性もあり、そうであれば、業容は縮小するものの中古車買い取りの事業はある程度は継続できると考えます。 もちろん、買い取った中古車を自社店舗で売却することは難しくなっているので、オークションに出品することで売却を行う」、なるほど。
・『銀行の態度いかんで「生きるか死ぬか」が決まる こうした状況の中で、利益、そしてキャッシュフローの確保ができるかというのが最大の焦点ですが、業容が大きく落ちている中での利益確保はかなり難しいと考えます。先に説明したように、中古車の買い取りおよびそのオークションへの販売である程度のビジネスはやれると思いますが、これまでのような利益確保は到底望むべくもありません。 また、従業員の給与のかなりの部分は歩合だったらしく、その引き留めのために、今後は給与の補塡ほてんを行うとBMは言っています。辞めた従業員が同社のことを非難することも多く、それを避けたい意味合いもあると考えられますが、これも資金負担がかかります。 こういう点を考えれば、今後、銀行が融資を継続するかが焦点です。金融庁の保険を担当する部門と銀行を担当する部門はもちろん違いますが、金融庁は各取引行のBMに対する融資姿勢を厳しくチェックする可能性もあります。ただ、銀行としてはビッグモーターが破綻した場合には、十分な担保も取れていないでしょうから大きな損失が出るという問題があります。 こうした状況でBMの命運は取引銀行の融資姿勢にかかっていると言えますが、BMにとっては簡単な話ではないことは容易に想像がつきます。 8月10日にBMは都内で取り引きのある銀行団と会合を開き、8月半ばに期限を迎える借入金90億円の借り換えを要請したものの、銀行団はこれに応じない方針を伝えたとの報道がありました。 これを受けて、「犯罪行為をしたことが濃厚な会社にお金を貸さないでほしい」「反社的企業は救済しない、という判断を下すべき」といった声も上がっています。銀行も難しい選択を迫られています』、「銀行としてはビッグモーターが破綻した場合には、十分な担保も取れていないでしょうから大きな損失が出るという問題があります。 こうした状況でBMの命運は取引銀行の融資姿勢にかかっている・・・8月10日にBMは都内で取り引きのある銀行団と会合を開き、8月半ばに期限を迎える借入金90億円の借り換えを要請したものの、銀行団はこれに応じない方針を伝えたとの報道がありました」、なるほど。
・『兼重親子が保有する住宅などの財産を担保にするか こうした中、前社長と前副社長の兼重親子は、BMの経営から退きました。責任を取った形にはなっていますが、経営責任は法的には追及できないということです。兼重前社長が保有するビッグアセットという資産管理会社がBMの全株式を保有しており、議決権を確保したまま経営責任から逃れた形となっています。 ちろん、BM株の価値が落ちた場合には、かれらの資産価値は減りますが、それだけで終わりということになりかねません。現場で器物損壊などの刑法犯が大量に出る可能性があるにもかかわらずです。 銀行は、BMの資金繰りを助けるのに際して、ビッグアセットが保有する(つまり兼重親子が実質的に保有する)住宅などの財産を担保に入れることを要求するかもしれませんが、法的にはその義務はありません。 いずれにしても、今後の銀行のスタンスとBMの命運に注目です』、あとの記事にある「伊藤忠」がBMへのTOB検討」が最大の注目点だ。
第四に、9月6日付け文春オンライン「《ルールや方針が「BM化」》中古車販売業界第2位「ネクステージ」の不正を現役社員、元社員が続々告発!「BMよりエグい」「わざとタイヤをパンクさせて…」」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/65587
・『BMによる保険金の不正請求問題が明るみに出て、中古車販売業者に注目が集まる中、BMに次ぐ業界第2位「ネクステージ」でも同様の不正が横行している疑いがあることが「週刊文春」の取材でわかった。複数の現役社員、元社員が告発した。 ネクステージは中古車販売でBMに次ぐ業界第2位の大手企業だ。東証プライムに上場しており、売上高は2022年に4100億円を突破。この10年で10倍の成長を遂げている。車だけではなく、車両保険、タイヤ・ガラス保証、塗装など、さまざまな付帯サービスを販売している。 BM内で横行していた保険金の不正請求が大きな騒ぎになっていた先月、ネクステージは率先して社内調査を実施。「不正な案件は確認されなかった」と公表している。 ところが、同社の元社員はこう語る。 「不正がないなんてありえませんよ。なんならBMよりエグいことをしていましたから」 一体、どのような不正が行われているのか。代表的な事例の1つが“パンク不正”だ。現役の営業社員が明かす。 「保証サービスのひとつであるタイヤの無料交換はパンクしていることが条件。ですが中古車を買うとき、保証への加入を渋る客がいたら、保証を売るために『タイヤが古くなったら、パンクさせればいいんですよ』と客に“悪知恵”を吹き込む営業マンは非常に多かった。小さなことかもしれませんが、これは詐欺行為です」 タイヤを無料で交換する時でも整備の工賃代は別途かかり、それも売り上げとして計上できる。そのため、わざとタイヤをパンクさせたり、パンクしたように見せかける不正も横行していたという。 「太めのネジの頭だけを残してタイヤの上に載せれば、釘が刺さっているように見える。客には『パンクしていました』と写真を見せて報告し、新品のタイヤに交換する。これで工賃分数字が稼げる。無傷の古いタイヤは自分の懐に入れて、オークションで横流しするんです」』、「ネクステージは中古車販売でBMに次ぐ業界第2位の大手企業だ。東証プライムに上場しており、売上高は2022年に4100億円を突破。この10年で10倍の成長を遂げている。車だけではなく、車両保険、タイヤ・ガラス保証、塗装など、さまざまな付帯サービスを販売している・・・ネクステージは率先して社内調査を実施。「不正な案件は確認されなかった」と公表している。 ところが、同社の元社員はこう語る。 「不正がないなんてありえませんよ。なんならBMよりエグいことをしていましたから」 一体、どのような不正が行われているのか。代表的な事例の1つが“パンク不正”だ・・・タイヤが古くなったら、パンクさせればいいんですよ』と客に“悪知恵”を吹き込む営業マンは非常に多かった。小さなことかもしれませんが、これは詐欺行為・・・無傷の古いタイヤは自分の懐に入れて、オークションで横流しするんです」、BM同様に悪辣だ。
・『不正が蔓延する理由は「ビッグモーター化」? ネクステージでも不正が蔓延する理由について、10年以上勤める別の社員は「当たり前ですよ」と呆れて笑う。 「今の社長の浜脇浩次さんはBMで常務取締役まで務めた後にウチにヘッドハンティングされた。浜脇さんが入ってきた2016年頃からルールや方針が『ビッグモーター化』していった。そして、数字が全てだというおかしな社風になっていったんです」 現社長の浜脇氏は1993年にBMに入社。子会社の取締役を歴任した後、2016年に副社長としてネクステージに迎え入れられた。「BM仕込み」の経営手法で同社の右肩上がりの成長を牽引し、2022年には社長に就任している。 「週刊文春」に寄せられた現役社員らによる不正の告発。ネクステージの広報にひとつひとつ事実関係の確認を求めたところ、公式サイトに質問とそれに対する回答の全文を公表した』、「「今の社長の浜脇浩次さんはBMで常務取締役まで務めた後にウチにヘッドハンティングされた」、これではBM同様になるのは当然だ。
・『ネクステージが公開した「週刊文春」の“質問状” タイヤの交換については、「タイヤが古くなれば、パンクさせれば無料で新品に交換できます」というセールストークをしていたのは事実かという問いに対しては〈当該案件は(中略)当社内で把握しており、当時はこのようなセールストークを想定していなかったため、厳重注意のみで対応致しました〉〈以降は社内文書にて懲罰基準を明記、(中略)詐欺行為となる旨記載しております〉と回答した。 業界第2位のネクステージの内部で何が起こっているのか。 現在配信中の「週刊文春電子版」では、“パンク不正”に加え、社員の間で行われていた保険契約数の“売買”、不正の温床を作っている「あまりにきつい」ノルマ、元BM社員の評判と社内での言動、元BM社員が起こした“パワハラ騒動”など現役社員と元社員の告発を詳しく報じている』、問題はBMと同根のようだ。
第五に、12月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「BM買収に伊藤忠が意欲「最高年収5000万円」超高待遇社員はどうなる?大損もあり得る5大リスクとは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/335169
・『伊藤忠の岡藤会長が、「BM買収」に前向きなコメントをしたことが話題です。しかし、BMの買収には伊藤忠が大損を引き起こすかもしれない「5大リスク」があります。さらに「最高年収5000万円」の超高待遇社員にも変化が訪れるかもしれません』、興味深そうだ。
・『伊藤忠のBM買収は「5大リスク」を伴うもの 12月5日、伊藤忠商事の岡藤正広会長がメディアの前でBM買収について前向きなコメントを話したことが話題になっています。 「中古車市場のナンバーワン」「(BMの)5500人の人たちの雇用も守ってあげたいという気持ちもある」「リスクはあるがやりたい」といった言葉です。しかしその一方で、「買収のリスクもある」とも語っています。 BMについては、伊藤忠と子会社の伊藤忠エネクス、投資ファンドのJWPの3社が資産査定を行っていて、来年春までには何らかの判断が下る予定です。 会長が前向きだからといって買収の判断になるかどうかはわかりませんが、一般論としてあれだけの悪評判を広めてしまった会社を買収することで、伊藤忠が大損をすることはないのでしょうか? 実は、伊藤忠のBM買収には大損を招きかねない「5大リスク」があるのです』、「伊藤忠」は中国の政府系企業CITICと深い関係があるので、中国経済低迷の影響も受ける筈だが、そんなことはものともせずに、BMに色気を示すとは、さすが大商社だ。
・『伊藤忠が最初に直面するのは「訴訟問題」 5大リスクとは、(1)訴訟問題、(2)事業継続リスク、(3)レピュテーションリスク、(4)人と風土の問題、そして(5)買収価格です。それぞれ順番に検討していきたいと思います。 まずは、(1)の訴訟問題から。 これは、買収条件の問題です。ビッグモーターの創業家が訴訟問題も一緒に引き受けない限りは売却しないスタンスにあるのです。 伊藤忠が乗り出す前も、ガリバーとオリックスが買収を検討したのですが、買収条件が合わずに断念しました。その際には事業だけ、つまり営業権と人員、店舗・工場などの資産のみを買い取り、損害賠償の支払いなどの簿外債務の整理は既存のBMに残したままにする営業譲渡方式を求めたのですが、それが通らなかったというのが断念の理由です。 買収する側としては営業権だけ手に入れば都合がいいためそのような条件を提示したのですが、創業家としては破産リスクを抱えたくないわけです。 伊藤忠が「訴訟問題を引き受ける」という条件までのむかどうかが、注目点です。ただこの事件、アメリカなら訴訟リスクがどれだけ膨らむかわからないぐらいの事件ですが、日本国内の事件なので賠償額は過去の事例などからある程度概算できます。 さらに、伊藤忠の強力な弁護士軍団が相手になるとなれば、多少なりとも後ろ暗い気持ちのある損保ジャパンがきちんとは訴えづらくなるなど減額要素もありえます。 そう考えると、訴訟の問題はむしろ大幅な減額の交渉材料として考えてもよいのかもしれません。 仮に伊藤忠がこの条件をのみ、買収を成功させたとしましょう。すると、(2)の事業継続と(3)のレピュテーションリスクも一緒に抱えることになります。 この二つの点で誤算が生まれた場合、今回の買収で伊藤忠が大損をする可能性が高まります』、「伊藤忠が乗り出す前も、ガリバーとオリックスが買収を検討したのですが、買収条件が合わずに断念しました。その際には事業だけ、つまり営業権と人員、店舗・工場などの資産のみを買い取り、損害賠償の支払いなどの簿外債務の整理は既存のBMに残したままにする営業譲渡方式を求めたのですが、それが通らなかったというのが断念の理由です」、「ガリバーとオリックスが買収を検討したのですが、買収条件が合わずに断念」とは初めて知った。「仮に伊藤忠がこの条件をのみ、買収を成功させたとしましょう。すると、(2)の事業継続と(3)のレピュテーションリスクも一緒に抱えることになります。 この二つの点で誤算が生まれた場合、今回の買収で伊藤忠が大損をする可能性が高まります」、なるほど。
・『「事業継続」を成功させるスキームを再建する必要も あくまで頭の体操として、こんなスキームを考えてみましょう。伊藤忠がBMを買い取り、そのまま営業権だけを伊藤忠エネクスに売却したらどうなるでしょう。 これはジャニーズ問題のときと同じで、BMは訴訟や賠償を担当する会社として存続させ、営業権を譲渡された伊藤忠エネクスが中古車販売事業を担当する会社になるというスキームです。 店舗の看板はすべて「伊藤忠」に書き換えて営業を再開したら、中古車市場のシェアナンバーワンとしてのビジネスをその日から開始できるのではないかという考え方がベースになるのですが、もしそこに落とし穴があったとしたら…? BMは金融庁から保険代理店の資格を剥奪されていますし、国交省から34の整備工場に事業停止の行政処分が下されています。伊藤忠としては「営業権は買い取ったが別の会社だ」という主張が通らなければ、そもそも事業が再開できない可能性があるわけです。 ですから、国や損保各社と再建計画についてすり合わせをしておく必要があり、その感触次第ではゴーサインというわけにはいかないかもしれません』、「BMは金融庁から保険代理店の資格を剥奪されていますし、国交省から34の整備工場に事業停止の行政処分が下されています。伊藤忠としては「営業権は買い取ったが別の会社だ」という主張が通らなければ、そもそも事業が再開できない可能性があるわけです。 ですから、国や損保各社と再建計画についてすり合わせをしておく必要があり、その感触次第ではゴーサインというわけにはいかないかもしれません」、なるほど。
・『中身が変わったことを世間に示せなければ巨額の損失が生まれる大失敗に 仮にそれらの処分は伊藤忠の買収後に解消されるめどがたったとしても、顧客から見た評判を回復できるかどうかが、3番目のレピュテーションリスクでの課題です。 「あれは結局のところBMだろう」 と言われて顧客が戻ってこなければ、手に入れた人員、店舗・工場などがすべて負の資産へと形を変えてしまいます。 つまり、ただ看板を書き換えただけではなく、伊藤忠の買収によって中身も変わったことを世間に知らしめることができなければ、巨額の損失が生まれてしまうことになりかねないということです。 このレピュテーションリスクを回避するために重要なことは「変わった」ことを象徴する変化を起こすこと、そのわかりやすい例が著名なプロ経営者を招聘(しょうへい)することです。 伊藤忠では過去に、傘下のファミリーマートの経営を、元ファーストリテイリング副社長だったプロ経営者の澤田貴司氏に託したことがあります。それと同じぐらいのビッグネームを見つけてこなければ、BMの悪評判を覆すのは難しいかもしれません』、「「あれは結局のところBMだろう」 と言われて顧客が戻ってこなければ、手に入れた人員、店舗・工場などがすべて負の資産へと形を変えてしまいます。 つまり、ただ看板を書き換えただけではなく、伊藤忠の買収によって中身も変わったことを世間に知らしめることができなければ、巨額の損失が生まれてしまうことになりかねないということです。 このレピュテーションリスクを回避するために重要なことは「変わった」ことを象徴する変化を起こすこと、そのわかりやすい例が著名なプロ経営者を招聘することです」、なるほど。
・『平均年収1100万円、最高5000万円「超高待遇」社員たちをどうするか? そして伊藤忠にとって4番目の問題が、人と風土の問題です。BM事件のニュースで多くの人を驚かせたことが、社員の平均年収が1100万円、最高年収が5000万円と、今の日本経済の中では異常ともいえる高水準だったことです。 社員がまじめに頑張って業界首位の業績を上げた結果の高報酬であれば何の問題もないのですが、事実としては不正を行った結果の高業績や、パワハラを行ったことで昇進した人たちがいたわけで、そのような社員が全体でどれだけいるのかが外部からは計り知れないという問題があります。 それが幹部社員なのか、一般の社員なのかわかりませんが、新会社に移行させてはいけない人材も買収の過程で一部を伊藤忠は抱えることになる。ここを切り離すことができるかどうかが、新会社の課題です。 ここを失敗すると、新会社も風土としては不正やパワハラが横行する組織になってしまい、いかにカリスマプロ経営者を起用としたとしても、事業を崩壊させてしまう結果になりかねません。 このように3番目のレピュテーションリスクと4番目の人や風土の問題は表裏の問題で、ここを解決できる自信がなければ伊藤忠は買収に進むべきではないという判断を下すことになるでしょう』、「不正を行った結果の高業績や、パワハラを行ったことで昇進した人たちがいたわけで、そのような社員が全体でどれだけいるのかが外部からは計り知れないという問題があります・・・新会社に移行させてはいけない人材も買収の過程で一部を伊藤忠は抱えることになる。ここを切り離すことができるかどうかが、新会社の課題です。 ここを失敗すると、新会社も風土としては不正やパワハラが横行する組織になってしまい、いかにカリスマプロ経営者を起用としたとしても、事業を崩壊させてしまう結果になりかねません」、確かにその通りだ。
・『買収価格の折り合いをいかにつけるかが最大の関門 そして5番目の問題ですが、これだけ問題が多い、言い換えると難易度が高いM&A(企業の合併・買収)案件ですから、買収価格はある程度低く抑えなければ経済的に採算が合わない可能性があります。 この買収案件は、すべてがうまくいけば伊藤忠商事がモビリティー事業の川上であるガソリンなどのエネルギー事業から、川下の自動車販売へと進出するチャンスとなります。同時に最初から業界最大規模の営業資産を手に入れて、結果としてモビリティー事業のバリューチェーンを一気に拡大できる可能性のある案件です。成功すれば当然、大きなリターンがあります。 一方で、もし問題がクリアできなければ伊藤忠は今後長期間にわたって負の資産と向き合って、だらだらと損失を垂れ流し続けることになる。そのリスクを勘案すれば、買収価格は企業価値よりもかなり低く抑える必要があるはずです。 そのためには創業家側の苦境を測ったうえで、売りたくなるタイミングを見極める作戦が必要かもしれません。 オリックスが直面したように、ビッグモーターの創業家側には「売らない」という切り札があります。さらに「BMの事業自体には、伊藤忠以外の候補にとってもそれを欲しいという魅力がある」ことも創業家は知っているのです。 このように五つの問題を整理してみると、伊藤忠にとってはこの買収案件、容易ならざる案件になりそうです。 とはいえこのままで進んでいけば、BMの企業価値は徐々に失われていくことも確かな話。どこかで折り合いがつくのかどうか、ディール(取引)はこの先数カ月かけて出口を模索することになりそうです』、「BMの創業家側には「売らない」という切り札があります。さらに「BMの事業自体には、伊藤忠以外の候補にとってもそれを欲しいという魅力がある」ことも創業家は知っているのです。 このように五つの問題を整理してみると、伊藤忠にとってはこの買収案件、容易ならざる案件になりそうです。 とはいえこのままで進んでいけば、BMの企業価値は徐々に失われていくことも確かな話。どこかで折り合いがつくのかどうか、ディール(取引)はこの先数カ月かけて出口を模索することになりそうです」、確かに「この先数カ月かけて出口を模索」が要注目だ。
先ずは、本年7月28日付け文春オンライン「《「やってもーたー」と嗤っている場合でもない》BMを中心とする中古車と損保の問題はどう着地させるべきか」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/64656
・『街路樹も枯れる勢いで急成長した俺たちのBM社が、ついに公式の記者会見に追い込まれてしまいました。創業者で代表取締役社長であった兼重宏行さんが、一連の騒動の責任を取って辞任。新たに就任した経営者が国土交通省の聞き取り調査にようやく応じたという流れになったようです。 また損保大手3社のうち、出向者を出しBM社経由の大口保険獲得をしたと見られる損保ジャパンも金融庁に本件絡みで虚偽の報告をしていたことが判明したことで、こりゃもう業務改善命令ではなく業務停止命令待ったなしだよねという流れになっていますね。謹慎ではなく切腹でお願いします』、興味深そうだ。
・『中古車流通大手が民間車検制度を悪用することの影響 事件の経緯は、いままでさんざんBM社からの広告で潤ってきたマスコミが盛大に手のひら返しをしている実況生中継が行われておりますので、皆さん各自、その辺を見ておいていただければと存じます。 大変な大騒ぎになり収まる気配もないわけですけれども、それもそのはず、国民にとって自動車は文字通り移動の足であり、その中古車流通大手のBM社が事故車両に関して保険金の不正請求をしたり、民間車検制度を悪用したりすれば、自動車(モビリティ)行政の根幹の信頼が揺らぐことを意味します。騒いで騒ぎ足りないってことは本件については無いのかなとすら思います。ええじゃないか』、不祥事のオンパレードなので、「騒いで騒ぎ足りないってことは・・・無い」。
・『「遅刻で1000円」「殺すぞ」BM“地獄職場” どんなに慎重で上手なドライバーでも車を運転していれば事故ることは確率的には必ず発生する以上、何事が起きても自身の支払い能力を超えて賠償しなければならなくなる危険を考えて損害保険の一種である自動車保険に入ることは各都道府県で義務化が進んでいます。最近では、チャリも自転車保険加入を義務付けする県も出るぐらい、事故に対する被害者への弁済・補償はマストの世界になってきています』、任意保険の付保も広がっている。
・『みんな癒着があったとは知らずに損保会社の入庫誘導に従っていた ただ、万が一事故を起こした際に、自分の自動車も含めて発生する事故対応や損害の弁済・補償に対し、損害保険の事故査定はドライバーが誰であれプロに任せざるを得ません。そこへ、今回は事故評価をする保険会社から強く斡旋(入庫誘導)されるBM社の板金部門や工場・営業所と内々で癒着があれば、事故を起こした当人がそれが妥当な事故査定なのかは分からないことになります。 つまり、損保ジャパンなど損保会社とBM社など事業者との間には、そもそも明確な利益相反の関係があるはずなのです。うっかり多額の保険金を被保険者に払いたくない損保会社と、本来は職業倫理に基づいてシビアかつ公正に事故車の査定を行う、麗しいプロ同士の緊張感ある本番勝負があると信じるから、みんな癒着があったとは知らずに損保会社の入庫誘導に従っていたわけですよ。まさにプロの世界、秘密の花園、サンクチュアリ(聖域)であります。) しかし、何でお前らつるんでるのと言われれば、損保会社は新たな契約をBM社経由で獲得するために自社の事故案件では事故査定などをBM社で行うよう事故を起こした本人に強く要望し、その本人の車には「ここ壊れてたっス」とわざと傷をつけたりパンクさせたりするなどの鬼ヤバ査定を行い、さらにその本人に新たに「損保ジャパンの自動車保険どうスか」とお薦めするなどの癒着具合があったのだとするならば最悪です。事故を起こしたって、日々の生活をするのに車は必要ですから、どうせ車を使わないといけない契約者からすればしぶしぶでも従わざるを得ません。 こうなってしまうと、素人はただただシャブられる話ですよね』、「損保ジャパンなど損保会社とBM社など事業者との間には、そもそも明確な利益相反の関係があるはずなのです・・・麗しいプロ同士の緊張感ある本番勝負があると信じるから、みんな癒着があったとは知らずに損保会社の入庫誘導に従っていたわけですよ・・・損保会社は新たな契約をBM社経由で獲得するために自社の事故案件では事故査定などをBM社で行うよう事故を起こした本人に強く要望し、その本人の車には「ここ壊れてたっス」とわざと傷をつけたりパンクさせたりするなどの鬼ヤバ査定を行い、さらにその本人に新たに「損保ジャパンの自動車保険どうスか」とお薦めするなどの癒着具合があったのだとするならば最悪です」、なるほど。
・『過去に車検不正で行政処分を受けたことも さらには、事故を起こしているわけですから、その本人は保険等級が上がってしまい、毎月の保険料は高額になってしまいます。美味しい商売になっておったわけですよ。そりゃ急成長もしますって。 実に踏んだり蹴ったりですが、そんなBM社は保険金の不正請求と並んで民間車検制度でも問題を起こしていました。全国各地に自動車整備士を多数抱えており、23年3月には熊本県で、同6月には栃木県で不正車検が行われていたことが発覚したのです。 BMなど自動車販売店における車検は、公道を走る車両の安全性を確保する目的で国が行うべき業務を民間企業が委託を請け代行するものであって、販売店には「指定工場」として、また自動車整備士には「自動車検査員」の資格が国から与えられています。今回の不正請求事件で大騒動になる前に、車検不正の舞台となったBM南宇都宮店は関東運輸局により、指定自動車整備事業指定取り消しの行政処分をしめやかに受けています。 これらは、自動車やバスなどを扱うモビリティ関連行政そのものの根幹を担う民間車検制度をも大きく揺るがす問題の入り口だったのであって、これらの監督官庁である国土交通省からすれば、まさに一丁目一番地、やるべき行政対応の本丸とも言える大事な分野で起きた大変な事態であると言えます』、「BM社は保険金の不正請求と並んで民間車検制度でも問題を起こしていました。全国各地に自動車整備士を多数抱えており、23年3月には熊本県で、同6月には栃木県で不正車検が行われていたことが発覚した・・・民間車検制度をも大きく揺るがす問題の入り口だったのであって、これらの監督官庁である国土交通省からすれば、まさに一丁目一番地、やるべき行政対応の本丸とも言える大事な分野で起きた大変な事態である」、なるほど。
・『他の会社でも類似の不正が芋づる式に発覚 そこへ、同じく便利な自動車には残念ながら付き物の事故対応において、前述の通り損害保険(自動車保険)においても完全な利益相反による癒着が発生し、国民の足である自動車が割と雑な感じで業界大手の食い物にされていたというのはかなりの衝撃となっておるわけです。 そればかりか、一連のBM問題が世間的に着火すると、BM社だけでなく、ほかの中古車販売大手でもほぼ類似の不正請求や書類偽造、さらには不正車検を懸念させる公益通報が急増。似たようなことはどこでもしているのよという中森明菜少女A状態となっております。ネタが古くて申し訳ございません。 言うなれば、中古車販売や民間車検、車両整備にいたるまで、かなり広範囲に、業界全体で、適法とは言えない方法で素人を食い物にする仕組みがあったのではないかと懸念される事態であると言えます。まあ、業界大手同士に資本関係があったり、不正も含めて仕事の仕方を覚えて独立する人もいたりで、儲けるノウハウは違法性含め共通なのも仕方がないのかもしれませんが、やられた側はたまったものではありませんね。) この記事を読んでいるあなた。そう、あなた、あなたが過去に「変だな」と思う車両整備や車検、保険取り扱いがあるようであれば、いますぐこちらの窓口に書式揃えて「変だったぞ」と通報してみてください。 指定自動車整備事業者における不正車検通報窓口のご案内https://www.mlit.go.jp/jidosha/fuseishaken_tsuho.html』、「一連のBM問題が世間的に着火すると、BM社だけでなく、ほかの中古車販売大手でもほぼ類似の不正請求や書類偽造、さらには不正車検を懸念させる公益通報が急増。似たようなことはどこでもしているのよという中森明菜少女A状態となっております」、なるほど。
・『通報窓口などからの不正取引の相談は5年間で4万件以上 あまりにも不正の種類や件数が多くてめまいがする状態なのですが、それもそのはず、BM社の悪しき業界慣行が産経新聞により報じられたのは2016年であり、しかもこれらの問題はその5年前の2011年からBM社内で行われていたと指摘されています。 折しも、BM社が2012年7店舗だったものが2016年には97店舗と急拡大している時期に行われていたものであることは間違いなく、中古車販売を本業とする上場企業も買収して拡大基調にありました。これらの猛烈なノルマ主義によって支えられた成長路線は、結果的に、ヤバいことでも除草剤散布でもなんでもやって、客を食い物にしないと達成できない目標を背負わされた現場によって実現されてきた面もあります。 そして、国会が開けば議員から質問も多数飛び出すでしょうが、国土交通省でもこれらの問題は一部把握されており、通報窓口などからの不正取引の相談は5年間で4万件以上にも上ると見られます(証拠が揃わず調査に着手できないなど、窓口が正式に受理できた件数は少数であるとも言われていますが)。言うなれば、10年以上前からBM社の適切とは言えない取引は業界の中でも知るところとなっていたが、なんとなく行政対応するべき機運が生まれずそのまま15年ぐらい経過しちゃった、ということになります。 国土交通省の人たちも「疑わしいけど確証はなく、いずれ爆発するものという認識はあった」ようなので、人事のたびに申し送りされる赤ひげ危機一発のようなものだったのでしょう』、「通報窓口などからの不正取引の相談は5年間で4万件以上にも上ると見られます(証拠が揃わず調査に着手できないなど、窓口が正式に受理できた件数は少数であるとも言われていますが)。言うなれば、10年以上前からBM社の適切とは言えない取引は業界の中でも知るところとなっていたが、なんとなく行政対応するべき機運が生まれずそのまま15年ぐらい経過しちゃった、ということになります」、とんでもない話だ。
・『23年1月に第三者委員会が設置されるが… 最初にBM社に関するタレコミなどから日本損害保険協会の知るところとなったのは2021年9月ごろからで、翌22年に損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上3社がおのおの抜き取り調査を実施した結果クロ判定。さすがにマズかろうということで、一斉にBM社への事故車両などの入庫誘導・紹介を停止しています。そりゃそうですね。 しかし、BM社が「(保険金の不正請求などの)疑いとなる事案は(担当した工場の)スキル不足や連携ミスによるもので、組織的な不正ではない」と回答し、それをうっかり信じた損保ジャパンが報告を受けた翌月22年7月には疑いは晴れたとばかりに入庫誘導を再開。あ、保険加入の件数を増やして売り上げが欲しかったんすね』、「BM社が「(保険金の不正請求などの)疑いとなる事案は(担当した工場の)スキル不足や連携ミスによるもので、組織的な不正ではない」と回答し、それをうっかり信じた損保ジャパンが報告を受けた翌月22年7月には疑いは晴れたとばかりに入庫誘導を再開」、「損保ジャパン」は保険契約欲しさに不正請求をまともに調べなかったようだ。
・『BM「調査報告書」その内容は? ・・・ただ、なにぶんBM社はBM社ですので、翌々月の9月には再び派手にやらかして工場長ら(当時)による会社ぐるみの組織的関与が告発され、これが発覚すると、損保ジャパンがまた入庫誘導を取りやめ。さすがにアカンやろということで、23年1月にBM社の中で第三者委員会が設置されるも、その報告書は一部が隠蔽された形でひっそりとBM社のサイトの中に掲載され、何事もなかったかのように騒ぎを黙殺し、スルーするタマホーム作戦に打って出ます』、「報告書は一部が隠蔽された形でひっそりとBM社のサイトの中に掲載され、何事もなかったかのように騒ぎを黙殺」、悪どいやり方だ。
・『どういう着地とするべき 不正請求問題にあたっては、東洋経済オンラインが22年8月から年末にかけて、BM社と損保ジャパンほかの問題について中村正毅さんが記事にしておりましたが、そこから約10か月かけて、ようやく代表取締役の辞任も含めた事後対応を軸とした記者会見と、国土交通省や金融庁からの怒られに発展することになります。 さらには、BM社が車両用部品や修繕において下請けで使っていた会社からの告発(下請法違反)や、本来取り扱う顧客の個人情報は自動車修理など特定業務を実施するためだけに使われるべきところ、不正に名簿屋などに売却されていた疑いなども取り沙汰され、内部通報制度に不備があったとの指摘も出たため、公正取引委員会や個人情報保護委員会、消費者庁マターの事案も出てきています。何というか、いまごろ出てきたオールスターな感じすらします。 もちろん、刑法詐欺罪での告訴が結成される被害弁護団から出されるとなれば、警察庁や法務省の話にもなり、本社のある六本木ヒルズに東京地検特捜部が段ボールもってやってくることもあり得ます。そのぐらい、熱量の高い事件となり大炎上前の焦げ臭さを強く感じます。 問題は、BM社に限って言うならば、本件はどう着地させるべきかになってきます』、「BM社が車両用部品や修繕において下請けで使っていた会社からの告発(下請法違反)や、本来取り扱う顧客の個人情報は自動車修理など特定業務を実施するためだけに使われるべきところ、不正に名簿屋などに売却されていた疑いなども取り沙汰され、内部通報制度に不備があったとの指摘も出たため、公正取引委員会や個人情報保護委員会、消費者庁マターの事案も出てきています。何というか、いまごろ出てきたオールスターな感じすらします」、なるほど。
・『少なくとも、2011年から現在まで26万台以上の再検査と補償が必要に かつて、大変な問題となった耐震偽装問題(2005年)では姉歯建築設計事務所とヒューザー社が断罪され、広く耐震偽装に関わったとされる一級建築士や建築事務所、建設会社の問題は不問とされ、その代わり、建築基準法が改正されて、実質的に問題に蓋がされましたが、こちらも建設と設計というプロが関わる仕事で起きた、利益優先の民間が適当にやった仕事の結果、業界全体が不信感に見舞われるという一件となりました。 この耐震偽装問題の根幹は、99年に建築確認申請制度において、建築設計における確認検査処分を民間確認検査機関に委譲できるようになったことです。これまで地方自治体に置かれた「建築主事」が携わる業務を、民間でもおこなえるように開放したため、本来なら疑われることがない前提で運用されていた 国土交通大臣認定の構造計算プログラムの改竄を行い、その改竄された計算結果で建築確認申請が承認されるという、民間委託あるあるが勃発した結果、4万棟以上とも言われる耐震偽装の疑いがある建築物があるのではないかと大きな騒動となったのです。) 同様に、今回のBM社の民間車検制度が実質的に悪用され、国土交通省が顔真っ赤になるのも当然です。また俺のお膝元で派手にやらかしやがって。車検なんてその辺で走ってる車全部が対象ですから、そこらじゅうで適当な感じで車検やっちったオンボロが走ってる可能性は否定できず、車検制度全体に対する不信感にならないように手当てをし、過去に遡及して、車検をやり直さなければならないかもしれません。 21年には車検制度の指定工場であったトヨタ系列の販売会社が不正車検を派手にやらかして、18年から21年までの違反行為の対象5,158台すべてが再検査の対象となったことを鑑みると、行政の公平性の観点から、BM社の不正車検が問題だとするならば少なくとも2011年から現在に至るまで年間26万台以上(もちろん廃車となった車両も含め)の再検査と補償が必要になります。 最後まで、BM社や創業家で当時経営者だった兼重宏行さん、宏一さん父子が今後民事刑事両面から責任を問われて最後まで再検査や補償を行うのかが見ものです。 やっちゃえ再検査。 これに関わった自動車整備士も、悪質なものは全員資格剥奪になってしまいます。大変なことだよねと思うんですが、そもそも車検できた車両を見てもいなかったレベルから意図的に部品を外すなどして不正に車検費用を請求したレベルまであらゆる犯罪のデパートになっていたことを考えれば、ケツ毛抜かれるまで追い込まれても仕方がないことなのかなと思います』、「21年には車検制度の指定工場であったトヨタ系列の販売会社が不正車検を派手にやらかして、18年から21年までの違反行為の対象5,158台すべてが再検査の対象となったことを鑑みると、行政の公平性の観点から、BM社の不正車検が問題だとするならば少なくとも2011年から現在に至るまで年間26万台以上(もちろん廃車となった車両も含め)の再検査と補償が必要になります」、大変だ。
・『今回一番損をしたのは… さらに、損害保険の保険金の不正請求に関しては、過去の事例では武富士事件(99年)やグッドウィル事件(07年)、商工ファンド事件(14年)と同様に、事件発生からの営業停止処分、そこから会社更生法申請後に、被害者への補償を充分にすることなく大金を持った創業者が資産を逃避させ、民事裁判で長く争われるも逃げ切られるという事案も想起されます。単に長年の悪事を暴くというだけでは駄目で、これらの悪質な経営を行った立役者から、過去やらかした分の責任を取らせて私財を吐き出させるまでが遠足ですよとも言えるのです。 BM社についても、豪邸がどうだとか、豪邸に生えている樹木に除草剤を撒けなどと中傷の対象になってしまっていますが、個人的には組織的関与を認めないまま経営から退いた創業者が、業界の信頼だけでなく行政の有りようまでも崩壊させた責任を取らず、被害者とも言える被保険者・普通の国民への賠償責任もきちんと担うことなく逃げ切られないようにするためにどうするべきか、というのは、強く問われなければならないと思うのです。 日頃あれだけ検査業務で銀行マンを奔走させている金融庁なのだから、さぞかしきちんと指導してくださるのは間違いないだろうと思うのですが、同様に、今回組織的関与が無かった、経営陣も知らなかったとぬけぬけと公言した損保ジャパンの詰め腹もきっちり取らせる必要があるのではないでしょうか。客観的に見て、お前ら嘘ばっかりついとるやろ。 今回の不正請求に関しては、実際のところ一番損をしたのは損保ジャパンではなく、損保ジャパンに加入していて問題を起こしていない一般契約者ということになるからです。まともな契約者・被保険者が、行政の怠慢とも言える損保会社のやらかしの犠牲者となることに他ならず、鎌倉幕府の伝統に基づいて族滅の処分を下して欲しいと願うところです。) 中古車市場については、前述の通り今回のBM社だけでなく他の大手2社でも程度の差はあれ同じようなことを繰り返していた疑いは強くあります。今回の問題が非常に厄介なのは、起きている事件それもこれも、自動車業界全体が大変革の真っただ中にあるからです。 今後EV自動車が増えていき、車がすべてコネクテッドになっていく将来の日本の自動車移動(モビリティ)環境において、シェアライドからスマートシティまで「どのようにして、国民が安心して自動車に乗り、できる限り少ない事故で安全に、少ないエネルギー消費にしていくのか」という業界全体のグランドデザインをどう国土交通省が描くつもりなのかという長期的なビジョンが求められています。 ぶっちゃけ、中国製EVバスが大量に市中に走ったり、軽自動車がすべてガソリンから電池に置き換わり、自動運転技術が確立してすべての車がネットに繋がるぞといったとき、自動車業界、モビリティ行政はどうなるのか。依存する電力インフラからネットへの接続、自動車の所有に関する問題にいたるまで、さまざまな問題が予見不能な状態で議論が重ねられているのがいまです。 この自動車整備や車検制度もさることながら、耐用年数が過ぎたらゴミ同然となる電池を乗せたEVが無価値になって中古車市場に流れてくるところでどうやって環境整備をするつもりなのかという話になるわけですよ』、「組織的関与を認めないまま経営から退いた創業者が、業界の信頼だけでなく行政の有りようまでも崩壊させた責任を取らず、被害者とも言える被保険者・普通の国民への賠償責任もきちんと担うことなく逃げ切られないようにするためにどうするべきか、というのは、強く問われなければならないと思うのです・・・今回組織的関与が無かった、経営陣も知らなかったとぬけぬけと公言した損保ジャパンの詰め腹もきっちり取らせる必要があるのではないでしょうか・・・耐用年数が過ぎたらゴミ同然となる電池を乗せたEVが無価値になって中古車市場に流れてくるところでどうやって環境整備をするつもりなのかという話になるわけですよ」、その通りだ。
・『支持率回復のチャンスカード到来? 一昨年、日本自動車整備振興会連合会が提出した資料などを見ていても、たぶん過渡的な環境で法的整備や人材育成をどうしていきましょうかという手探りの状態ですので、BM事件を機に、政府主導でも国交省でも構わないのでどーんと未来を見せて欲しいんですよね。 これらの課題は、いま何故か静かですが本来ならば岸田文雄政権が中心となって捌かなければならない問題のはずです。 本件こそ、国民生活の基盤に関わる問題であることは間違いございませんので、支持率回復のチャンスカード到来という発想で、どうか前のめりで岸田文雄さんにはご対応賜りたいと願う次第です』、いまや岸田政権にはそんな余裕はなくなっており、残念ながら殆ど期待できない。
第三に、8月15日付けPRESIDENT Onlineが掲載した小宮コンサルタンツ会長CEOの小宮 一慶氏による「まさかの生き残り計画も…四面楚歌BMに数百億円貸している"メガバンク"が悶絶する大人の事情 生殺与奪の権を持つ三井住友、広島、三菱UFJ、みずほ、中国は融資するのか」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/72803
・『自動車保険の保険金を不正に水増し請求していたBM。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「同社の純利益は年150億~200億円と推測されるが、今後の業績悪化は必至。命運を握っているのは3メガバンクを含む銀行団の融資動向だ」という――』、興味深そうだ。
・『四面楚歌のBMの現状 ビッグモーター(以下、BM)の問題が大きく取り上げられています。修理に預けられた車を故意に傷つけ保険金を多く請求するという詐欺的行為や、店舗前の歩道にある街路樹を枯らせるなど言語道断と言っていい行為を繰り返していたわけで、経営コンサルタントとしてももちろん許せる話ではありません。そして、世間の大きな関心のひとつは、この後、BMの命運はどうなるのかということでしょう。今回は、財務状況などを勘案しながら、今後を占っていきたいと思います。 BMは上場していないため、正確な財務状況は分かりません。ここで説明するのは、あくまでも新聞やテレビで報道されている内容がベースで、その報道内容も推測の域を出ないことをあらかじめご了承ください。 まず、売上高ですが、昨年度で5800億円程度といわれています。そのうちの大半が中古車の販売です。記者会見で兼重宏行社長(当時)が修理部門を「2%程度」という話をしていましたが、売り上げの大部分(9割程度)が中古車販売で、残りが修理や保険販売などと考えられます。 中古車販売の利益率は車によって大きな差があると考えられますが、競争の激しい業界でもあり、おおむね15%から20%前後であると見られます。粗利率がその程度だと仮定すると、ざっくり1000億円程度を全事業から得ていると考えられます。 一方の経費ですが、従業員が正社員5000人、非正規従業員が1000人の合計6000人と同社ホームページにはあります。給料は比較的高いと言われており、正社員の年収が平均800万円、非正規社員の年収が500万円と仮定すれば、450億円程度の人件費がかかっていることになります。 また、よく見かけたテレビCMなど広告宣伝費も膨大な額、おそらく年間で数百億円程度に達するはずです。他に、店の維持費や賃借料、店舗設備などの減価償却費などを考えると、あくまで推測ですが、全体で700億から800億円程度の経費がかかっており、営業利益で200億から300億円程度と推測できます。税金を30%程度と考えると、純利益でざっくり150億円から、200億円程度と考えられ、営業キャッシュフローも同程度だと推測できます。つまり、1年でそれくらいのキャッシュフローは通常の営業活動で稼いでいたということです』、売上は「1000億円程度を全事業から得ている」、「営業利益で200億から300億円程度と推測」、「純利益でざっくり150億円から、200億円程度と考えられ、営業キャッシュフローも同程度」、まずまずだ。
・『急拡大のため3メガバンクなどから数百億円借り入れ BMは膨大な広告宣伝費を投じるとともに、店舗を急拡大することで業容を拡大していました。300店舗を超える店舗を擁しています。 店舗拡大には、土地の取得とともに、店舗建設の費用が必要となります。土地は賃借物件が多いと考えられますが、店舗は自前で立てる必要があります。また、拡大にともなう人件費の増加もあり、いずれにしても多額の資金が必要なことは言うまでもありません。 店舗展開で事業を拡張するビジネスモデルの場合には、店舗建設のためや中古車の在庫確保のために、先に資金が必要なことが多いのです。BMのホームページには、取引銀行として、三井住友、広島、三菱UFJ、みずほ、中国の各銀行名が取引銀行として記載されています。他にもあると記されています。通常は関係の深い順に記載することが多いので、これが融資順位に近いと考えられます。 山口県岩国市がスタートのBMですが、当初は地元の取引銀行で資金を賄っていたのが、業容拡大によりメガバンクなどと取引を拡大していったと考えられます。 融資残高を推測するのは難しいですが、3メガバンクを含むこれだけの銀行と取引があることを考えれば、数百億円規模の借り入れがあると考えて間違いはないでしょう。8月11日付けの日経朝刊では昨年9月末で600億円規模の借入れがあったとされています。 先にも述べましたが、店舗拡大をともなう業容の拡大を行う場合には、多額の設備投資資金が必要になるとともに、在庫の維持や人件費などの資金も必要となるため、数百億円規模の借り入れを今でも長短合わせてしていると推測できます。 つまり、のちに詳しく述べますが、同社の命運を握っているのは、各銀行の融資姿勢だと言えます』、「昨年9月末で600億円規模の借入れ」、「同社の命運を握っているのは、各銀行の融資姿勢」、なるほど。
・『生き残りをかけて中古車の買い取りに活路 評判の急激な悪化により、業績が大きく落ちていることは間違いありません。 具体的には、この状況でBMに修理や車検を出す人はいないでしょう。私の知り合いも、同社に車検に出したら、法外な費用を請求され、さんざん交渉しても一切それには応じず泣く泣く支払ったと言っていましたが、もともと評判が悪い同社に、今後修理や車検を持ち込む人はまずいないと考えられます。 さらに、損保各社も、深い関係を取りざたされている損保ジャパンはじめ、代理店契約の継続は難しいと考えられます。金融庁が調査に入っていますが、金融庁としてもある意味メンツがつぶされたわけですから、別に起こっている損保各社の談合問題も影響し、今後はBMと関わりを持たない方向で進むものと考えられます。 注目は、中古車の買い入れ、販売の事業です。このうち、この状況で中古車をBMから買う人も減少する、少なくとも当面は激減すると予想できます。さらに、中古車にローンをつけるリース会社も、BMとの関係を見直す動きが進んでおり、また、広告掲載も手控えの動きが出ていることともあいまって、中古車販売も当面は苦境に立たされることは間違いないでしょう。 中古車の買い取りはどうでしょうか。こちらも取り扱いは減ると考えられますが、ある程度はビジネスを維持できるかもしれません。買った後で値引かれるなどの苦情は出ているようですが、とにかく他社よりも数万円高い値段を提示すれば、車を売る人は一定数いると考えられます。 中古車市場はクレームの多い業界ですが、消費者からのクレームのうち約2割はビッグモーターに対するものだと言われています。違う見方をすれば、残りの8割は他社だということで、ある意味クレームが絶えないマーケットだと言えます。その点を考えれば、他社に持ち込んでも似たり寄ったりで、そうなると買い取り価格が大きな決定要素です。 この状況でBMは、生き残りをかけて中古車の買い取りに活路を見いだそうとするでしょう。その際には、買取り後の値引きなどクレームの極力回避とともに、他社より少し高い値段での買い取りを行う可能性もあり、そうであれば、業容は縮小するものの中古車買い取りの事業はある程度は継続できると考えます。 もちろん、買い取った中古車を自社店舗で売却することは難しくなっているので、オークションに出品することで売却を行うものと考えられます』、「他社より少し高い値段での買い取りを行う可能性もあり、そうであれば、業容は縮小するものの中古車買い取りの事業はある程度は継続できると考えます。 もちろん、買い取った中古車を自社店舗で売却することは難しくなっているので、オークションに出品することで売却を行う」、なるほど。
・『銀行の態度いかんで「生きるか死ぬか」が決まる こうした状況の中で、利益、そしてキャッシュフローの確保ができるかというのが最大の焦点ですが、業容が大きく落ちている中での利益確保はかなり難しいと考えます。先に説明したように、中古車の買い取りおよびそのオークションへの販売である程度のビジネスはやれると思いますが、これまでのような利益確保は到底望むべくもありません。 また、従業員の給与のかなりの部分は歩合だったらしく、その引き留めのために、今後は給与の補塡ほてんを行うとBMは言っています。辞めた従業員が同社のことを非難することも多く、それを避けたい意味合いもあると考えられますが、これも資金負担がかかります。 こういう点を考えれば、今後、銀行が融資を継続するかが焦点です。金融庁の保険を担当する部門と銀行を担当する部門はもちろん違いますが、金融庁は各取引行のBMに対する融資姿勢を厳しくチェックする可能性もあります。ただ、銀行としてはビッグモーターが破綻した場合には、十分な担保も取れていないでしょうから大きな損失が出るという問題があります。 こうした状況でBMの命運は取引銀行の融資姿勢にかかっていると言えますが、BMにとっては簡単な話ではないことは容易に想像がつきます。 8月10日にBMは都内で取り引きのある銀行団と会合を開き、8月半ばに期限を迎える借入金90億円の借り換えを要請したものの、銀行団はこれに応じない方針を伝えたとの報道がありました。 これを受けて、「犯罪行為をしたことが濃厚な会社にお金を貸さないでほしい」「反社的企業は救済しない、という判断を下すべき」といった声も上がっています。銀行も難しい選択を迫られています』、「銀行としてはビッグモーターが破綻した場合には、十分な担保も取れていないでしょうから大きな損失が出るという問題があります。 こうした状況でBMの命運は取引銀行の融資姿勢にかかっている・・・8月10日にBMは都内で取り引きのある銀行団と会合を開き、8月半ばに期限を迎える借入金90億円の借り換えを要請したものの、銀行団はこれに応じない方針を伝えたとの報道がありました」、なるほど。
・『兼重親子が保有する住宅などの財産を担保にするか こうした中、前社長と前副社長の兼重親子は、BMの経営から退きました。責任を取った形にはなっていますが、経営責任は法的には追及できないということです。兼重前社長が保有するビッグアセットという資産管理会社がBMの全株式を保有しており、議決権を確保したまま経営責任から逃れた形となっています。 ちろん、BM株の価値が落ちた場合には、かれらの資産価値は減りますが、それだけで終わりということになりかねません。現場で器物損壊などの刑法犯が大量に出る可能性があるにもかかわらずです。 銀行は、BMの資金繰りを助けるのに際して、ビッグアセットが保有する(つまり兼重親子が実質的に保有する)住宅などの財産を担保に入れることを要求するかもしれませんが、法的にはその義務はありません。 いずれにしても、今後の銀行のスタンスとBMの命運に注目です』、あとの記事にある「伊藤忠」がBMへのTOB検討」が最大の注目点だ。
第四に、9月6日付け文春オンライン「《ルールや方針が「BM化」》中古車販売業界第2位「ネクステージ」の不正を現役社員、元社員が続々告発!「BMよりエグい」「わざとタイヤをパンクさせて…」」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/65587
・『BMによる保険金の不正請求問題が明るみに出て、中古車販売業者に注目が集まる中、BMに次ぐ業界第2位「ネクステージ」でも同様の不正が横行している疑いがあることが「週刊文春」の取材でわかった。複数の現役社員、元社員が告発した。 ネクステージは中古車販売でBMに次ぐ業界第2位の大手企業だ。東証プライムに上場しており、売上高は2022年に4100億円を突破。この10年で10倍の成長を遂げている。車だけではなく、車両保険、タイヤ・ガラス保証、塗装など、さまざまな付帯サービスを販売している。 BM内で横行していた保険金の不正請求が大きな騒ぎになっていた先月、ネクステージは率先して社内調査を実施。「不正な案件は確認されなかった」と公表している。 ところが、同社の元社員はこう語る。 「不正がないなんてありえませんよ。なんならBMよりエグいことをしていましたから」 一体、どのような不正が行われているのか。代表的な事例の1つが“パンク不正”だ。現役の営業社員が明かす。 「保証サービスのひとつであるタイヤの無料交換はパンクしていることが条件。ですが中古車を買うとき、保証への加入を渋る客がいたら、保証を売るために『タイヤが古くなったら、パンクさせればいいんですよ』と客に“悪知恵”を吹き込む営業マンは非常に多かった。小さなことかもしれませんが、これは詐欺行為です」 タイヤを無料で交換する時でも整備の工賃代は別途かかり、それも売り上げとして計上できる。そのため、わざとタイヤをパンクさせたり、パンクしたように見せかける不正も横行していたという。 「太めのネジの頭だけを残してタイヤの上に載せれば、釘が刺さっているように見える。客には『パンクしていました』と写真を見せて報告し、新品のタイヤに交換する。これで工賃分数字が稼げる。無傷の古いタイヤは自分の懐に入れて、オークションで横流しするんです」』、「ネクステージは中古車販売でBMに次ぐ業界第2位の大手企業だ。東証プライムに上場しており、売上高は2022年に4100億円を突破。この10年で10倍の成長を遂げている。車だけではなく、車両保険、タイヤ・ガラス保証、塗装など、さまざまな付帯サービスを販売している・・・ネクステージは率先して社内調査を実施。「不正な案件は確認されなかった」と公表している。 ところが、同社の元社員はこう語る。 「不正がないなんてありえませんよ。なんならBMよりエグいことをしていましたから」 一体、どのような不正が行われているのか。代表的な事例の1つが“パンク不正”だ・・・タイヤが古くなったら、パンクさせればいいんですよ』と客に“悪知恵”を吹き込む営業マンは非常に多かった。小さなことかもしれませんが、これは詐欺行為・・・無傷の古いタイヤは自分の懐に入れて、オークションで横流しするんです」、BM同様に悪辣だ。
・『不正が蔓延する理由は「ビッグモーター化」? ネクステージでも不正が蔓延する理由について、10年以上勤める別の社員は「当たり前ですよ」と呆れて笑う。 「今の社長の浜脇浩次さんはBMで常務取締役まで務めた後にウチにヘッドハンティングされた。浜脇さんが入ってきた2016年頃からルールや方針が『ビッグモーター化』していった。そして、数字が全てだというおかしな社風になっていったんです」 現社長の浜脇氏は1993年にBMに入社。子会社の取締役を歴任した後、2016年に副社長としてネクステージに迎え入れられた。「BM仕込み」の経営手法で同社の右肩上がりの成長を牽引し、2022年には社長に就任している。 「週刊文春」に寄せられた現役社員らによる不正の告発。ネクステージの広報にひとつひとつ事実関係の確認を求めたところ、公式サイトに質問とそれに対する回答の全文を公表した』、「「今の社長の浜脇浩次さんはBMで常務取締役まで務めた後にウチにヘッドハンティングされた」、これではBM同様になるのは当然だ。
・『ネクステージが公開した「週刊文春」の“質問状” タイヤの交換については、「タイヤが古くなれば、パンクさせれば無料で新品に交換できます」というセールストークをしていたのは事実かという問いに対しては〈当該案件は(中略)当社内で把握しており、当時はこのようなセールストークを想定していなかったため、厳重注意のみで対応致しました〉〈以降は社内文書にて懲罰基準を明記、(中略)詐欺行為となる旨記載しております〉と回答した。 業界第2位のネクステージの内部で何が起こっているのか。 現在配信中の「週刊文春電子版」では、“パンク不正”に加え、社員の間で行われていた保険契約数の“売買”、不正の温床を作っている「あまりにきつい」ノルマ、元BM社員の評判と社内での言動、元BM社員が起こした“パワハラ騒動”など現役社員と元社員の告発を詳しく報じている』、問題はBMと同根のようだ。
第五に、12月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「BM買収に伊藤忠が意欲「最高年収5000万円」超高待遇社員はどうなる?大損もあり得る5大リスクとは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/335169
・『伊藤忠の岡藤会長が、「BM買収」に前向きなコメントをしたことが話題です。しかし、BMの買収には伊藤忠が大損を引き起こすかもしれない「5大リスク」があります。さらに「最高年収5000万円」の超高待遇社員にも変化が訪れるかもしれません』、興味深そうだ。
・『伊藤忠のBM買収は「5大リスク」を伴うもの 12月5日、伊藤忠商事の岡藤正広会長がメディアの前でBM買収について前向きなコメントを話したことが話題になっています。 「中古車市場のナンバーワン」「(BMの)5500人の人たちの雇用も守ってあげたいという気持ちもある」「リスクはあるがやりたい」といった言葉です。しかしその一方で、「買収のリスクもある」とも語っています。 BMについては、伊藤忠と子会社の伊藤忠エネクス、投資ファンドのJWPの3社が資産査定を行っていて、来年春までには何らかの判断が下る予定です。 会長が前向きだからといって買収の判断になるかどうかはわかりませんが、一般論としてあれだけの悪評判を広めてしまった会社を買収することで、伊藤忠が大損をすることはないのでしょうか? 実は、伊藤忠のBM買収には大損を招きかねない「5大リスク」があるのです』、「伊藤忠」は中国の政府系企業CITICと深い関係があるので、中国経済低迷の影響も受ける筈だが、そんなことはものともせずに、BMに色気を示すとは、さすが大商社だ。
・『伊藤忠が最初に直面するのは「訴訟問題」 5大リスクとは、(1)訴訟問題、(2)事業継続リスク、(3)レピュテーションリスク、(4)人と風土の問題、そして(5)買収価格です。それぞれ順番に検討していきたいと思います。 まずは、(1)の訴訟問題から。 これは、買収条件の問題です。ビッグモーターの創業家が訴訟問題も一緒に引き受けない限りは売却しないスタンスにあるのです。 伊藤忠が乗り出す前も、ガリバーとオリックスが買収を検討したのですが、買収条件が合わずに断念しました。その際には事業だけ、つまり営業権と人員、店舗・工場などの資産のみを買い取り、損害賠償の支払いなどの簿外債務の整理は既存のBMに残したままにする営業譲渡方式を求めたのですが、それが通らなかったというのが断念の理由です。 買収する側としては営業権だけ手に入れば都合がいいためそのような条件を提示したのですが、創業家としては破産リスクを抱えたくないわけです。 伊藤忠が「訴訟問題を引き受ける」という条件までのむかどうかが、注目点です。ただこの事件、アメリカなら訴訟リスクがどれだけ膨らむかわからないぐらいの事件ですが、日本国内の事件なので賠償額は過去の事例などからある程度概算できます。 さらに、伊藤忠の強力な弁護士軍団が相手になるとなれば、多少なりとも後ろ暗い気持ちのある損保ジャパンがきちんとは訴えづらくなるなど減額要素もありえます。 そう考えると、訴訟の問題はむしろ大幅な減額の交渉材料として考えてもよいのかもしれません。 仮に伊藤忠がこの条件をのみ、買収を成功させたとしましょう。すると、(2)の事業継続と(3)のレピュテーションリスクも一緒に抱えることになります。 この二つの点で誤算が生まれた場合、今回の買収で伊藤忠が大損をする可能性が高まります』、「伊藤忠が乗り出す前も、ガリバーとオリックスが買収を検討したのですが、買収条件が合わずに断念しました。その際には事業だけ、つまり営業権と人員、店舗・工場などの資産のみを買い取り、損害賠償の支払いなどの簿外債務の整理は既存のBMに残したままにする営業譲渡方式を求めたのですが、それが通らなかったというのが断念の理由です」、「ガリバーとオリックスが買収を検討したのですが、買収条件が合わずに断念」とは初めて知った。「仮に伊藤忠がこの条件をのみ、買収を成功させたとしましょう。すると、(2)の事業継続と(3)のレピュテーションリスクも一緒に抱えることになります。 この二つの点で誤算が生まれた場合、今回の買収で伊藤忠が大損をする可能性が高まります」、なるほど。
・『「事業継続」を成功させるスキームを再建する必要も あくまで頭の体操として、こんなスキームを考えてみましょう。伊藤忠がBMを買い取り、そのまま営業権だけを伊藤忠エネクスに売却したらどうなるでしょう。 これはジャニーズ問題のときと同じで、BMは訴訟や賠償を担当する会社として存続させ、営業権を譲渡された伊藤忠エネクスが中古車販売事業を担当する会社になるというスキームです。 店舗の看板はすべて「伊藤忠」に書き換えて営業を再開したら、中古車市場のシェアナンバーワンとしてのビジネスをその日から開始できるのではないかという考え方がベースになるのですが、もしそこに落とし穴があったとしたら…? BMは金融庁から保険代理店の資格を剥奪されていますし、国交省から34の整備工場に事業停止の行政処分が下されています。伊藤忠としては「営業権は買い取ったが別の会社だ」という主張が通らなければ、そもそも事業が再開できない可能性があるわけです。 ですから、国や損保各社と再建計画についてすり合わせをしておく必要があり、その感触次第ではゴーサインというわけにはいかないかもしれません』、「BMは金融庁から保険代理店の資格を剥奪されていますし、国交省から34の整備工場に事業停止の行政処分が下されています。伊藤忠としては「営業権は買い取ったが別の会社だ」という主張が通らなければ、そもそも事業が再開できない可能性があるわけです。 ですから、国や損保各社と再建計画についてすり合わせをしておく必要があり、その感触次第ではゴーサインというわけにはいかないかもしれません」、なるほど。
・『中身が変わったことを世間に示せなければ巨額の損失が生まれる大失敗に 仮にそれらの処分は伊藤忠の買収後に解消されるめどがたったとしても、顧客から見た評判を回復できるかどうかが、3番目のレピュテーションリスクでの課題です。 「あれは結局のところBMだろう」 と言われて顧客が戻ってこなければ、手に入れた人員、店舗・工場などがすべて負の資産へと形を変えてしまいます。 つまり、ただ看板を書き換えただけではなく、伊藤忠の買収によって中身も変わったことを世間に知らしめることができなければ、巨額の損失が生まれてしまうことになりかねないということです。 このレピュテーションリスクを回避するために重要なことは「変わった」ことを象徴する変化を起こすこと、そのわかりやすい例が著名なプロ経営者を招聘(しょうへい)することです。 伊藤忠では過去に、傘下のファミリーマートの経営を、元ファーストリテイリング副社長だったプロ経営者の澤田貴司氏に託したことがあります。それと同じぐらいのビッグネームを見つけてこなければ、BMの悪評判を覆すのは難しいかもしれません』、「「あれは結局のところBMだろう」 と言われて顧客が戻ってこなければ、手に入れた人員、店舗・工場などがすべて負の資産へと形を変えてしまいます。 つまり、ただ看板を書き換えただけではなく、伊藤忠の買収によって中身も変わったことを世間に知らしめることができなければ、巨額の損失が生まれてしまうことになりかねないということです。 このレピュテーションリスクを回避するために重要なことは「変わった」ことを象徴する変化を起こすこと、そのわかりやすい例が著名なプロ経営者を招聘することです」、なるほど。
・『平均年収1100万円、最高5000万円「超高待遇」社員たちをどうするか? そして伊藤忠にとって4番目の問題が、人と風土の問題です。BM事件のニュースで多くの人を驚かせたことが、社員の平均年収が1100万円、最高年収が5000万円と、今の日本経済の中では異常ともいえる高水準だったことです。 社員がまじめに頑張って業界首位の業績を上げた結果の高報酬であれば何の問題もないのですが、事実としては不正を行った結果の高業績や、パワハラを行ったことで昇進した人たちがいたわけで、そのような社員が全体でどれだけいるのかが外部からは計り知れないという問題があります。 それが幹部社員なのか、一般の社員なのかわかりませんが、新会社に移行させてはいけない人材も買収の過程で一部を伊藤忠は抱えることになる。ここを切り離すことができるかどうかが、新会社の課題です。 ここを失敗すると、新会社も風土としては不正やパワハラが横行する組織になってしまい、いかにカリスマプロ経営者を起用としたとしても、事業を崩壊させてしまう結果になりかねません。 このように3番目のレピュテーションリスクと4番目の人や風土の問題は表裏の問題で、ここを解決できる自信がなければ伊藤忠は買収に進むべきではないという判断を下すことになるでしょう』、「不正を行った結果の高業績や、パワハラを行ったことで昇進した人たちがいたわけで、そのような社員が全体でどれだけいるのかが外部からは計り知れないという問題があります・・・新会社に移行させてはいけない人材も買収の過程で一部を伊藤忠は抱えることになる。ここを切り離すことができるかどうかが、新会社の課題です。 ここを失敗すると、新会社も風土としては不正やパワハラが横行する組織になってしまい、いかにカリスマプロ経営者を起用としたとしても、事業を崩壊させてしまう結果になりかねません」、確かにその通りだ。
・『買収価格の折り合いをいかにつけるかが最大の関門 そして5番目の問題ですが、これだけ問題が多い、言い換えると難易度が高いM&A(企業の合併・買収)案件ですから、買収価格はある程度低く抑えなければ経済的に採算が合わない可能性があります。 この買収案件は、すべてがうまくいけば伊藤忠商事がモビリティー事業の川上であるガソリンなどのエネルギー事業から、川下の自動車販売へと進出するチャンスとなります。同時に最初から業界最大規模の営業資産を手に入れて、結果としてモビリティー事業のバリューチェーンを一気に拡大できる可能性のある案件です。成功すれば当然、大きなリターンがあります。 一方で、もし問題がクリアできなければ伊藤忠は今後長期間にわたって負の資産と向き合って、だらだらと損失を垂れ流し続けることになる。そのリスクを勘案すれば、買収価格は企業価値よりもかなり低く抑える必要があるはずです。 そのためには創業家側の苦境を測ったうえで、売りたくなるタイミングを見極める作戦が必要かもしれません。 オリックスが直面したように、ビッグモーターの創業家側には「売らない」という切り札があります。さらに「BMの事業自体には、伊藤忠以外の候補にとってもそれを欲しいという魅力がある」ことも創業家は知っているのです。 このように五つの問題を整理してみると、伊藤忠にとってはこの買収案件、容易ならざる案件になりそうです。 とはいえこのままで進んでいけば、BMの企業価値は徐々に失われていくことも確かな話。どこかで折り合いがつくのかどうか、ディール(取引)はこの先数カ月かけて出口を模索することになりそうです』、「BMの創業家側には「売らない」という切り札があります。さらに「BMの事業自体には、伊藤忠以外の候補にとってもそれを欲しいという魅力がある」ことも創業家は知っているのです。 このように五つの問題を整理してみると、伊藤忠にとってはこの買収案件、容易ならざる案件になりそうです。 とはいえこのままで進んでいけば、BMの企業価値は徐々に失われていくことも確かな話。どこかで折り合いがつくのかどうか、ディール(取引)はこの先数カ月かけて出口を模索することになりそうです」、確かに「この先数カ月かけて出口を模索」が要注目だ。
タグ:文春オンライン「《「やってもーたー」と嗤っている場合でもない》BMを中心とする中古車と損保の問題はどう着地させるべきか」 (その1)(《「やってもーたー」と嗤っている場合でもない》BMを中心とする中古車と損保の問題はどう着地させるべきか、まさかの生き残り計画も…四面楚歌BMに数百億円貸している"メガバンク"が悶絶する大人の事情 生殺与奪の権を持つ三井住友 広島 三菱UFJ みずほ 中国は融資するのか、《ルールや方針が「BM化」》中古車販売業界第2位「ネクステージ」の不正を現役社員、元社員が続々告発!「BMよりエグい」「わざとタイヤをパンクさせて…」、BM買収に伊藤忠が意欲「最高年収5000万円」超高待遇社員はど ビッグモーター 不祥事のオンパレードなので、「騒いで騒ぎ足りないってことは・・・無い」。 任意保険の付保も広がっている。 「損保ジャパンなど損保会社とBM社など事業者との間には、そもそも明確な利益相反の関係があるはずなのです・・・麗しいプロ同士の緊張感ある本番勝負があると信じるから、みんな癒着があったとは知らずに損保会社の入庫誘導に従っていたわけですよ・・・ 損保会社は新たな契約をBM社経由で獲得するために自社の事故案件では事故査定などをBM社で行うよう事故を起こした本人に強く要望し、その本人の車には「ここ壊れてたっス」とわざと傷をつけたりパンクさせたりするなどの鬼ヤバ査定を行い、さらにその本人に新たに「損保ジャパンの自動車保険どうスか」とお薦めするなどの癒着具合があったのだとするならば最悪です」、なるほど。 「BM社は保険金の不正請求と並んで民間車検制度でも問題を起こしていました。全国各地に自動車整備士を多数抱えており、23年3月には熊本県で、同6月には栃木県で不正車検が行われていたことが発覚した・・・民間車検制度をも大きく揺るがす問題の入り口だったのであって、これらの監督官庁である国土交通省からすれば、まさに一丁目一番地、やるべき行政対応の本丸とも言える大事な分野で起きた大変な事態である」、なるほど。 「一連のBM問題が世間的に着火すると、BM社だけでなく、ほかの中古車販売大手でもほぼ類似の不正請求や書類偽造、さらには不正車検を懸念させる公益通報が急増。似たようなことはどこでもしているのよという中森明菜少女A状態となっております」、なるほど。 「通報窓口などからの不正取引の相談は5年間で4万件以上にも上ると見られます(証拠が揃わず調査に着手できないなど、窓口が正式に受理できた件数は少数であるとも言われていますが)。言うなれば、10年以上前からBM社の適切とは言えない取引は業界の中でも知るところとなっていたが、なんとなく行政対応するべき機運が生まれずそのまま15年ぐらい経過しちゃった、ということになります」、とんでもない話だ。 「BM社が「(保険金の不正請求などの)疑いとなる事案は(担当した工場の)スキル不足や連携ミスによるもので、組織的な不正ではない」と回答し、それをうっかり信じた損保ジャパンが報告を受けた翌月22年7月には疑いは晴れたとばかりに入庫誘導を再開」、「損保ジャパン」は保険契約欲しさに不正請求をまともに調べなかったようだ。 「報告書は一部が隠蔽された形でひっそりとBM社のサイトの中に掲載され、何事もなかったかのように騒ぎを黙殺」、悪どいやり方だ。 「BM社が車両用部品や修繕において下請けで使っていた会社からの告発(下請法違反)や、本来取り扱う顧客の個人情報は自動車修理など特定業務を実施するためだけに使われるべきところ、不正に名簿屋などに売却されていた疑いなども取り沙汰され、内部通報制度に不備があったとの指摘も出たため、公正取引委員会や個人情報保護委員会、消費者庁マターの事案も出てきています。何というか、いまごろ出てきたオールスターな感じすらします」、なるほど。 「21年には車検制度の指定工場であったトヨタ系列の販売会社が不正車検を派手にやらかして、18年から21年までの違反行為の対象5,158台すべてが再検査の対象となったことを鑑みると、行政の公平性の観点から、BM社の不正車検が問題だとするならば少なくとも2011年から現在に至るまで年間26万台以上(もちろん廃車となった車両も含め)の再検査と補償が必要になります」、大変だ。 「組織的関与を認めないまま経営から退いた創業者が、業界の信頼だけでなく行政の有りようまでも崩壊させた責任を取らず、被害者とも言える被保険者・普通の国民への賠償責任もきちんと担うことなく逃げ切られないようにするためにどうするべきか、というのは、強く問われなければならないと思うのです・・・今回組織的関与が無かった、経営陣も知らなかったとぬけぬけと公言した損保ジャパンの詰め腹もきっちり取らせる必要があるのではないでしょうか・・・ 耐用年数が過ぎたらゴミ同然となる電池を乗せたEVが無価値になって中古車市場に流れてくるところでどうやって環境整備をするつもりなのかという話になるわけですよ」、その通りだ。 いまや岸田政権にはそんな余裕はなくなっており、残念ながら殆ど期待できない。 PRESIDENT ONLINE 小宮 一慶氏による「まさかの生き残り計画も…四面楚歌BMに数百億円貸している"メガバンク"が悶絶する大人の事情 生殺与奪の権を持つ三井住友、広島、三菱UFJ、みずほ、中国は融資するのか」 売上は「1000億円程度を全事業から得ている」、「営業利益で200億から300億円程度と推測」、「純利益でざっくり150億円から、200億円程度と考えられ、営業キャッシュフローも同程度」、まずまずだ。 「昨年9月末で600億円規模の借入れ」、「同社の命運を握っているのは、各銀行の融資姿勢」、なるほど。 「他社より少し高い値段での買い取りを行う可能性もあり、そうであれば、業容は縮小するものの中古車買い取りの事業はある程度は継続できると考えます。 もちろん、買い取った中古車を自社店舗で売却することは難しくなっているので、オークションに出品することで売却を行う」、なるほど。 「銀行としてはビッグモーターが破綻した場合には、十分な担保も取れていないでしょうから大きな損失が出るという問題があります。 こうした状況でBMの命運は取引銀行の融資姿勢にかかっている・・・8月10日にBMは都内で取り引きのある銀行団と会合を開き、8月半ばに期限を迎える借入金90億円の借り換えを要請したものの、銀行団はこれに応じない方針を伝えたとの報道がありました」、なるほど。 あとの記事にある「伊藤忠」がBMへのTOB検討」が最大の注目点だ。 文春オンライン「《ルールや方針が「BM化」》中古車販売業界第2位「ネクステージ」の不正を現役社員、元社員が続々告発!「BMよりエグい」「わざとタイヤをパンクさせて…」」 「ネクステージは中古車販売でBMに次ぐ業界第2位の大手企業だ。東証プライムに上場しており、売上高は2022年に4100億円を突破。この10年で10倍の成長を遂げている。車だけではなく、車両保険、タイヤ・ガラス保証、塗装など、さまざまな付帯サービスを販売している・・・ネクステージは率先して社内調査を実施。「不正な案件は確認されなかった」と公表している。 ところが、同社の元社員はこう語る。 「不正がないなんてありえませんよ。なんならBMよりエグいことをしていましたから」 一体、どのような不正が行われているのか。代表的な事例の1つが“パンク不正”だ・・・タイヤが古くなったら、パンクさせればいいんですよ』と客に“悪知恵”を吹き込む営業マンは非常に多かった。小さなことかもしれませんが、これは詐欺行為・・・無傷の古いタイヤは自分の懐に入れて、オークションで横流しするんです」、BM同様に悪辣だ。 「「今の社長の浜脇浩次さんはBMで常務取締役まで務めた後にウチにヘッドハンティングされた」、これではBM同様になるのは当然だ。 問題はBMと同根のようだ。 ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「BM買収に伊藤忠が意欲「最高年収5000万円」超高待遇社員はどうなる?大損もあり得る5大リスクとは」 「伊藤忠」は中国の政府系企業CITICと深い関係があるので、中国経済低迷の影響も受ける筈だが、そんなことはものともせずに、BMに色気を示すとは、さすが大商社だ。 「伊藤忠が乗り出す前も、ガリバーとオリックスが買収を検討したのですが、買収条件が合わずに断念しました。その際には事業だけ、つまり営業権と人員、店舗・工場などの資産のみを買い取り、損害賠償の支払いなどの簿外債務の整理は既存のBMに残したままにする営業譲渡方式を求めたのですが、それが通らなかったというのが断念の理由です」、 「ガリバーとオリックスが買収を検討したのですが、買収条件が合わずに断念」とは初めて知った。「仮に伊藤忠がこの条件をのみ、買収を成功させたとしましょう。すると、(2)の事業継続と(3)のレピュテーションリスクも一緒に抱えることになります。 この二つの点で誤算が生まれた場合、今回の買収で伊藤忠が大損をする可能性が高まります」、なるほど。 「BMは金融庁から保険代理店の資格を剥奪されていますし、国交省から34の整備工場に事業停止の行政処分が下されています。伊藤忠としては「営業権は買い取ったが別の会社だ」という主張が通らなければ、そもそも事業が再開できない可能性があるわけです。 ですから、国や損保各社と再建計画についてすり合わせをしておく必要があり、その感触次第ではゴーサインというわけにはいかないかもしれません」、なるほど。 「「あれは結局のところBMだろう」 と言われて顧客が戻ってこなければ、手に入れた人員、店舗・工場などがすべて負の資産へと形を変えてしまいます。 つまり、ただ看板を書き換えただけではなく、伊藤忠の買収によって中身も変わったことを世間に知らしめることができなければ、巨額の損失が生まれてしまうことになりかねないということです。 このレピュテーションリスクを回避するために重要なことは「変わった」ことを象徴する変化を起こすこと、そのわかりやすい例が著名なプロ経営者を招聘することです」、なるほど。 「不正を行った結果の高業績や、パワハラを行ったことで昇進した人たちがいたわけで、そのような社員が全体でどれだけいるのかが外部からは計り知れないという問題があります・・・新会社に移行させてはいけない人材も買収の過程で一部を伊藤忠は抱えることになる。ここを切り離すことができるかどうかが、新会社の課題です。 ここを失敗すると、新会社も風土としては不正やパワハラが横行する組織になってしまい、いかにカリスマプロ経営者を起用としたとしても、事業を崩壊させてしまう結果になりかねません」、確かにその通りだ。 「BMの創業家側には「売らない」という切り札があります。さらに「BMの事業自体には、伊藤忠以外の候補にとってもそれを欲しいという魅力がある」ことも創業家は知っているのです。 このように五つの問題を整理してみると、伊藤忠にとってはこの買収案件、容易ならざる案件になりそうです。 とはいえこのままで進んでいけば、BMの企業価値は徐々に失われていくことも確かな話。どこかで折り合いがつくのかどうか、ディール(取引)はこの先数カ月かけて出口を模索することになりそうです」、確かに「この先数カ月かけて出口を模索」が要注目