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人民元国際化問題(その3)IMFのSDRへの採用決定後の大混乱 [世界経済]

人民元国際化問題については、昨年12月2日に取上げたが、今日は、 (その3)IMFのSDRへの採用決定後の大混乱 である。

先ずは、ニッセイ基礎研究所専務理事の櫨 浩一氏が、1月17日付け東洋経済オンラインに寄稿した「試練に直面する中国人民元 1914年のドル危機と比べてみる」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・人民元はIMF(国際通貨基金)が創設した国際準備資産であるSDR(特別引出権)に採用されて、主要国際通貨への道を歩み始めた。ところが、いきなり困難な状況に直面している。
・IMFは2015年11月30日に、SDRの価値を決める通貨に人民元を加えることを決定した。SDRの通貨バスケットはユーロが創設されてから、米ドル、ユーロ、円、ポンドの4通貨で構成されてきた。 構成比は5年毎に見直されているが、今回は新しい通貨を加えるため、通常2016年1月に行われる変更を9カ月遅らせて10月から実施することとなった。人民元の構成比は10.92%で、日本円の8.33%を上回り、米ドル、ユーロに次ぐ重要通貨となった。
・人口規模が約13億人と米国(約3億人)の4倍以上もある中国は、将来、経済規模が米国を大きく上回ることが予想され、人民元が米ドルの基軸通貨としての地位を脅かす存在となる可能性もある。
・しかし、今年に入って上海株式市場では株価が再び大きく下落し、人民元の下落傾向が続いていることから、中国経済や人民元の先行きには悲観的な見方も出てきている。
▽1914年のドル危機
・米ドルの基軸通貨としての地位は、第二次世界大戦後に、ドルが金との交換性を維持し、基本的に各国通貨はドルとの交換率を一定に保つという、ブレトンウッズ体制ができたことで確立した。
・ドルの国際的地位は、第一次世界大戦時に米国が対外債務国から対外債権国となったことで著しく高まった。第一次世界大戦と第二次世界大戦の間は、ドルとポンドが同時に基軸通貨として存在していたとされている。第一次世界大戦がきっかけでドルの国際的な地位は一気に高まることになったが、シルバーの「ワシントンがウォール街を閉鎖した日」(※)によると、その過程はそう簡単なものではなかったことが分かる。
・1914年7月末にオーストリアがセルビアに対して宣戦布告して第一次世界大戦がはじまった。この際に筆者は安全資産であるドルに資金が流入したのだと思っていたが、実は逆に米国は通貨危機に襲われている。米国のマカドゥー財務長官の圧力によって、8月1日にニューヨーク証券取引所は閉鎖され、閉鎖はその後4か月も続いた。
・そのころの米国は対外債務国で、欧州、特に英国が大量の米株を保有していた。戦費調達のために欧州各国は、米企業の株を売って得たドルをポンドに交換しようとするので、ドルには著しい下落圧力がかかった。交換できる金の量から計算すると、1ポンド=4.8665ドルのはずだが、8月末頃には1ポンド=5.05ドルを超えるドル安となった。
▽金本位制の問題点
・当時は金本位制であったため、ドルがポンドに対して大きく下落すると、ドルを金と交換して輸送することで大きな利益を得ることができた。米国からは大量の金が流出し、ドルと金の交換性を維持できなくなる危険が高まった。証券取引所の閉鎖は、海外投資家が株を売却して金を米国から流出させないための手段だった。
・もっと深刻なのは、米国がロンドン市場で調達していた資金の返済が、ポンドの調達ができずに返済不能に陥る危険が高まったことだ。特に問題だったのは、米国を代表する都市であるニューヨーク市が発行していたポンド建て債券の償還資金の手当てで、失敗すれば米国の信用が崩壊する恐れがあった。
・金本位制のもとでは、金が海外に流出すると自国通貨と金の交換性を維持することが困難になり、金融を引き締めざるを得なくなって国内の流動性不安が起こってしまった。また、1914年の通貨危機が発生した時点では、米国ではまだ連邦準備制度が稼働していなかった。法律が1913年末にできたばかりだった。
・現在では主要国で金本位制を採用している国は一つもないし、中国も含めて中央銀行が機能している。蛇足ながら、中央銀行の存在ということが問題となるのは、ユーロ圏全体で中央銀行がひとつしかないギリシャやスペイン、ポルトガルといった欧州の債務危機の場合である。
・しかし、金本位制を廃止し中央銀行が整備されても、当時の米国のように外貨が調達できなくなって債務の返済が不能になるというリスクは残っている。中国の外貨準備は2014年6月には3兆9900億ドルに達していたが、2015年12月末には3兆3300億ドルにまで減少したことで、金融市場の不安は高まった。
・1997年のアジア通貨危機の反省として、各国が事実上自国通貨価値をドルに対して固定していたことが原因の一つとしてあげられる。各国が為替レートをコントロールすることを諦めれば問題は生じないという意見もあるが、為替レートの大幅な変動による経済活動の混乱や信認の低下は避けられないだろう。
▽危機対応の出口を用意
・1914年の米国は、ドルの信認を守るために建前上は金との交換性を維持しながら、株式市場を閉鎖してしまうなど、実際には保有している金の流出を抑えた。マカドゥー財務長官は、ポンド不足の抜本的な解決策として、大量の商船を調達して農産物を欧州に輸出することでポンドを入手することを考える。ドイツのUボートによる攻撃で商船の被害が大きかったことから、財務省に戦争危険保険局を設けて民間の輸出をサポートしようとした。
・1ポンドが5ドルを超えるドル安となっていた為替レートは、1914年末には4.85ドル程度にまで上昇して、米国は金本位制を維持するという賭けに勝つ。ニューヨーク株式市場は再開されて、ドルは国際的な信認を得ることに成功した。マカドゥー財務長官の成功は、大胆な危機対応を行ったことだけでなく、出口戦略もちゃんと用意していたことが原因ではないだろうか。
・シルバーは、1914年の通貨危機に際し、マカドゥー財務長官が民間金融機関の協力を得てうまく乗り切ったことで、ドルの国際的信認は著しく高まって、ポンドからドルへの基軸通貨の交代は加速したと評価している。中国が現在の金融市場の混乱をうまく処理できるかどうかは、人民元が主要国際通貨となるために、極めて重要なことである。
・現在人民元が置かれている状況は、第一次世界大戦によって通貨危機に見舞われたドルと比べてどうだろうか。 第一次世界大戦が起こった時点では、既に米国経済が英国から世界一の座を奪ってからかなりの年月が経っていた。一方、現時点では中国の経済規模は米国の3分の2程度にとどまっている。これまでのような高い経済成長は無理でも、先進諸国の所得水準に追いつくまでは先進諸国に比べて高めの成長ができる可能性は高い。
・いずれ中国経済が世界一の規模になるのは自然なことだが、米国を経済規模の面で大きく引き離すことで人民元がドルの地位を脅かすには、まだ時間がかかるだろう。第一次世界大戦や第二次世界大戦のような劇的な事件が原因となって基軸通貨の交代を引き起こすということも予想し難い。
・当時の米国よりも現在の中国のほうが状況がよいこともある。1914年時点では米国はまだ対外債務国だったが、2016年末時点で中国は214兆円(約1.8兆ドル)の対外純資産を保有しており、これは日本の376兆円(約3.1兆ドル)に次ぐ規模だ。2016年末時点で、米国は対外純債務国となっており純債務の規模は844兆円(約7兆ドル)にも上る。
▽経常収支黒字で外貨準備も厚い
・IMFの予測によれば、今後も中国の経常収支は黒字が続く一方、米国は大幅な経常収支赤字が続くとみられている(図表)。中国の経常収支黒字は純資産を増加させ、米国の赤字は純債務の累積に繋がって、中国の純資産と米国の純債務の差は拡大を続けていくことになる。
・昨年来中国の株価は大きく下落しており、海外からの資金流入が止まって人民元が下落するなど、中国経済は1900年代初頭の米国のような困難に直面している。しかし、マカドゥー財務長官が苦心した外貨の獲得(=経常収支の黒字)という出口戦略は、中国の場合には初めから用意されている。
・2016年末時点で、中国の対外純資産が1.8兆ドルだったのに対して外貨準備が4兆ドル近くもあったということは、民間部門はかなりの債務超過のはずだ。これは、海外への資金流出が続き金融市場も不安定だという状態を改善するには、政府が動くしかないということを意味しているだろう。人民元への信認を維持しようとするのであれば、第一次世界大戦に直面したマカドゥー財務長官とは違う意味で、政府の大胆な行動が必要になるだろう。
・一方、人民元が下落すれば経常収支の黒字は拡大しやすく、対外純資産の蓄積が進む。SDRへの採用で手にした元への信認が大きく傷つくことにはなるが、元安を容認することも考えられる。中国が、主要国際通貨への道を急ぐのか、大きく遠回りでも安全な道を選ぶのか、注目される。
http://toyokeizai.net/articles/-/100654

次に、経済産業研究所上席研究員の藤 和彦氏が、 4月8日付けJBPressに寄稿した「人民元の国際化で中国は世界のマネロンセンターに 「野望」を取り下げて資本規制の強化に戻るべき?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「中国からの資本流出は緩和しつつある」3月20日、中国人民銀行の周小川総裁は北京で開催された国際フォーラムで改めて国内外の投資家の不安払拭を図った。 2月の外貨準備高の減少ペース(286億ドル減)は、たしかに1月(995億ドル減)と比べると鈍化していた。また、人民元の対ドルレートが安定を取り戻しつつあるとの観測も出始めていた。
▽危機的状況の中、トービン税導入案を検討
・だが、3月末に人民銀行が商業銀行との間の「先物・先渡し(デリバテイブ)取引」における外国通貨の売り持ち高を公表した(289億ドル相当)ところ、人民銀行の2月の為替介入の規模が市場の予想に比べてはるかに大規模だったことが判明した(4月1日付ブルームバーグ)。
・デリバテイブ取引では、相手先(商業銀行)に米ドルの現金を渡すのが数カ月先の契約満期を迎えてからになる。その間、人民銀行は米ドルを温存し、外貨準備を減らさずに済むというメリットがある。しかし人民銀行が結んだ契約の満期が到来すれば、外貨準備は大幅に減少する。数カ月後にはデリバテイブでごまかした分も上乗せされるため、外貨準備はこれまで以上のペースで減少するだろう。
・国際通貨基金(IMF)の指針によれば、中国の外貨準備の必要水準は2.8兆ドルである(3月31日付日本経済新聞)。2月の外貨準備高は3.2兆ドルであり、このままのペースで減少すれば今年夏までにその水準に達してしまう。
・危機的な状況に追い込まれた人民銀行は、3月に入り外国為替取引に課税する規定の草案をまとめた(3月15日付ブルームバーグ)。 外為取引への課税は、1972年に提唱した米国の経済学者の故ジェームズ・トービン氏にちなんで「トービン税」と呼ばれることが多い。このトービン税の導入は、人民元安を見込んだ投機的取引を防ぐために中国当局がこれまで講じてきた措置の中で、最も強力なものとなる。
・ただし、トービン税の導入には中央政府の承認が必要で、導入時期も明らかではない。世界を見渡してもこの措置が成功した事例はほとんどなく、人民元を国際的な準備通貨にするという周小川総裁自らの計画に大きな妨げとなる可能性が高い。
・国際金融資本の圧力を弱めようとするために編み出された苦肉の策だろうが、「生兵法は怪我の元」になりかねない。
▽あの手この手で資金を国外に
・敵は外ばかりではない。海外との人脈が多い中国人があらゆる手段を使って資金を国外に移す方策を講じている。 2月は香港からの輸入が前年比で89%増加したが、その主な要因は、企業が実際の輸入額を大きく上回る額を海外に支払っていることにあるようだ(3月9日付ブルームバーグ)。人民元下落が続くとの懸念から、貿易インボイス(送り状)の金額を水増しすることにより、中国政府の資本規制を回避し資金を海外に移しているのだ。
・香港の保険商品購入を通して資金を海外に持ち出す動きも活発化している(3月29日付ブルームバーグ)。クレジットカードによる保険商品購入を抑制するため、中国当局は2月以降1回あたりの取引の上限を5000USドルに定めたが、電子送金を介さずに何回も決済端末を通すやり方が早速登場するなど、新規制の有効性が揺らいでいるという。
・マネーロンダリング(マネロン)対策の厳しさから、銀行口座の新規開設が困難な米国で、中国人が「口座開設ツアー」を組んで次々と押しかけるという現象も起きている(4月1日付ニューズウィーク)。 米国ではテロリストや麻薬組織からの資金流入に厳重な監視の目を光らせているため、外国人(非居住者)による新規の銀行口座の開設数は減少傾向にある。このような状況にもかかわらず、「シカゴのチャイナタウンにある複数の華僑系銀行では中国のパスポートさえ持参すれば、その場で簡単に銀行口座を開設できる」と言われ、連日中国からの観光客が殺到しているという。
・また、豪州では、一人っ子政策で登場した「小皇帝」たちが高額な住宅を購入するために中国に住む両親から資金援助を受けるケースが急増しているという(3月31日付ブルームバーグ)。資金を海外へ移す新手の手法だろう。
▽売掛債権の回収遅延が大きな問題に
・マネロンまがいの手法が跋扈する中で、人民銀行は人民元安を阻止するために悪戦苦闘している。だが、そもそも通貨の価値は当該国のファンダメンタルズに依存する。中国経済そのものが駄目になっては、人民銀行が孤軍奮闘しても「焼け石に水」である。
・ここに来て、中国経済に対する懸念はより深刻さを増している。 米経済誌フォーブス(電子版、3月28日付)は、今後1~3年以内に債務危機に陥る確率が最も高い国に中国を選んだ。中国の債務残高は2008年から2015年6月までの7年半で65兆元(約1100兆円)も増加した(国際決済銀行)が、この間にGDPは36兆元しか増加していない。
・かつて日本の銀行貸出残高はバブル期にGDP比で30%増加し、その後約130兆円(当時のGDPの3割)が発生した。中国の銀行貸出残高は2007年からGDP比で30%増加しているため、日本の場合と同様に増加分のほぼ全額(約430兆円)が不良債権化するとの予測がある(富国生命保険株式部参与の市岡繁男氏)。
・不良債権問題の顕在化は、利払い不能などの資金繰りの悪化から生ずることが多い。中国では売掛債権の回収遅延が大きな問題として浮上している(3月21日付ブルームバーグ)ことが気にかかる。  ブルームバーグによると、販売完了から現金回収までの期間を示す売掛債権回転日数は中国では83日となり、1999年以来の長さになっている。国有企業の売掛金残高は「過去2年間で23%増の約5900億ドルに膨らんだ」。この額は台湾のGDPを上回る。売掛金を現金化できない企業は、ネット経由のP2P金融など高コストでリスクの高い貸し手に頼らざるを得ない(3月24日付ロイター)。資金の海外流出の拡大が、事態をより一層悪化させていることは間違いない。
・1999年と言えば、朱鎔基首相(当時)が改革に大ナタを振るい、国有企業数千社が倒産した時代だった。当時中国のGDPは日本の5分の1だったため、世界経済に与える影響は限定的だったが、今や世界第2位の経済規模となった中国が崩壊すれば、世界経済に与える影響は計り知れない。
▽「メイド・イン・チャイナ」はもはや安くない
・安価な労働力という中国経済躍進の神話も今や昔となっている。昨年の中国都市部の就業者数の伸びは2年連続で2.8%にとどまり、過去20年で最低となった。
・英民間研究機関のオックスフォードエコノミクスは3月17日、「中国の製造業のコストが米国と同水準になった」という衝撃的な調査結果を発表した。 それによれば、中国の人件費そのものは日米を下回っているが、中国の生産性が低いために「米国が1ドルで生産できるものが、中国では96セントもかかっている」という。米共和党の大統領候補指名を争うトランプ氏は「中国が為替操作と一方的な貿易政策を通じて米国の中流層を苦境に追いやっている」と非難しているが、トランプ氏が言うほど「メイド・イン・チャイナ」はもはや安くない。
・この調査結果を知った中国メデイアは、中核的な産業である製造業が競争力を失われつつあることに危機感を露わにしている。野放図な拡大政策を長期間にわたり実施したことで、人件費の高騰に加え不動産価格の高騰などが招いた製造コストの急上昇は、朱鎔基の時のように「痛みを伴う」構造改革を断行するしかない。
・だが、構造改革を実施するには、はなはだタイミングが悪い。2009年の世界的な金融危機後に始まった中国の人件費の急激な伸びが、景気減速に伴い鈍り始めたからだ。
・中国当局は、石炭や鉄鋼分野の国有企業を改革する過程で発生する数百万人規模の余剰人員を農業や林業、公共サービス部門へ配置転換しようとしている。だが、配置転換により賃金が下がることは避けられない。これにより労働者の購買力が低下するため、経済を消費主導型へ移行させるという政府の方針にとって猛烈な逆風となる。
・このような状況では果断なる構造改革は極めて困難だ。だが、これを実現しないと「製造業」という金の卵を台無しにしてしまう。
▽「人民元の国際化」という野望は時期尚早?
・フィナンシャルタイムズによれば、今年に入って3月16日までに中国資本が「海外企業狩り」に使った金額は1020億ドルに達し、昨年1年間の金額(1060億ドル)に肉薄している。世界全体のM&A総額が減少する中で中国企業だけが突出している。
・「進撃のチャイナマネー」と言いたいところだが、中国経済の破綻を目の前に「チャイナマネーのエクソダス(脱出)」が起きているととらえた方が実態に近いのではないだろうか。
・人民銀行の周総裁が人民元の国際化が進まない状況に苛立ちを示していることとは裏腹に、中国の資本規制が緩和されるにつれて、「中国は世界の犯罪組織のマネーロンダリングセンター」(3月28日米AP)との評判が急速に高まり、欧米各国がこぞって調査の強化に乗り出している。その状況は皮肉以外のなにものではない。
・中国経済のバブル崩壊を防ぐためにも、世界の治安を改善するためにも、中国政府は「人民元の国際化」という時期尚早の野望を一刻も早く取り下げ、資本規制の強化に戻るべきではないだろうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46533

櫨氏の記事で、米国でも1914に通貨危機があり、「ニューヨーク市が発行していたポンド建て債券の償還資金の手当てで、失敗すれば米国の信用が崩壊する恐れがあった」ところまで追い込まれたとの指摘は、興味深い。通貨の国際化は一本調子にはいかないようだ。中国は、こうした危機的状況で、「トービン税導入案を検討」しているらしいが、この際は、面子を捨てて、「大きく遠回りでも安全な道を選ぶ」方が賢明だろう。
藤氏の記事のなかでは、米経済誌フォーブスが、「今後1~3年以内に債務危機に陥る確率が最も高い国に中国を選んだ」ようだが、「やはりそうか」といった感を強くした。『中国経済の破綻を目の前に「チャイナマネーのエクソダス(脱出)」が起きているととらえた方が実態に近いのではないだろうか』ということであれば、上述の「大きく遠回りでも安全な道」として、「資本規制の強化に戻るべきではないだろうか」はうなずける。さあ、中国の習政権の判断やいかに。
タグ:金本位制 東洋経済オンライン SDR JBPRESS 櫨 浩一 人民元国際化問題 (その3)IMFのSDRへの採用決定後の大混乱 試練に直面する中国人民元 1914年のドル危機と比べてみる 主要国際通貨への道を歩み始めた いきなり困難な状況に直面 1914年のドル危機 米国は通貨危機に襲われている ニューヨーク証券取引所は閉鎖 戦費調達のために欧州各国は、米企業の株を売って得たドルをポンドに交換しようとするので、ドルには著しい下落圧力 米国からは大量の金が流出し、ドルと金の交換性を維持できなくなる危険 ニューヨーク市が発行していたポンド建て債券の償還資金の手当てで、失敗すれば米国の信用が崩壊する恐れ マカドゥー財務長官 ポンド不足の抜本的な解決策として、大量の商船を調達して農産物を欧州に輸出することでポンドを入手することを考える 民間の輸出をサポート 人民元が下落すれば経常収支の黒字は拡大しやすく、対外純資産の蓄積が進む SDRへの採用で手にした元への信認が大きく傷つくことにはなるが、元安を容認することも考えられる 主要国際通貨への道を急ぐのか 遠回りでも安全な道を選ぶのか 藤 和彦 人民元の国際化で中国は世界のマネロンセンターに 「野望」を取り下げて資本規制の強化に戻るべき? トービン税導入案を検討 数カ月後にはデリバテイブでごまかした分も上乗せされるため、外貨準備はこれまで以上のペースで減少 (IMF)の指針 中国の外貨準備の必要水準は2.8兆ドル 2月の外貨準備高は3.2兆ドル このままのペースで減少すれば今年夏までにその水準に達してしまう 外国為替取引に課税する規定の草案 人民元を国際的な準備通貨にするという周小川総裁自らの計画に大きな妨げとなる可能性が高い あの手この手で資金を国外に 売掛債権の回収遅延が大きな問題に 不良債権問題の顕在化 「メイド・イン・チャイナ」はもはや安くない 米経済誌フォーブス(電子版、3月28日付)は、今後1~3年以内に債務危機に陥る確率が最も高い国に中国を選んだ 構造改革を実施するには、はなはだタイミングが悪い 経済を消費主導型へ移行させるという政府の方針にとって猛烈な逆風 「人民元の国際化」という野望は時期尚早? 「人民元の国際化」という時期尚早の野望を一刻も早く取り下げ 資本規制の強化に戻るべき
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ドイツ銀行はどうしたのか?(その2)ドイツ銀シニア債買い戻し、元凶の「AT1債」とは [世界経済]

ドイツ銀行はどうしたのか?については、2月11日に取上げたが、今日は (その2)ドイツ銀シニア債買い戻し、元凶の「AT1債」とは である。

先ずは、Neil Unmack氏が2月15日付けロイターに寄稿した「コラム:ドイツ銀シニア債買い戻し、投資家が断るべき理由」を紹介しよう。
・ドイツ銀行が投資家に対して、絶対断るべきであるような提案をしている。同行は12日、50億ドル相当の無担保シニア債を公開入札で買い戻すと発表した。買い戻しが大規模になれば、ドイツ銀には自由に使える資本が多くなる。
・しかし同時に同行の存続性に関して投資家が確信を持てないことを示す恐れがある。シニア債の価格が今後反発する可能性を考えれば、投資家は買い戻しに応じずに様子を見た方が得策だろう。
・銀行が債券を買い戻す理由は多々ある。ドイツ銀の場合は強気のメッセージを発信したいという思いと、ちょうど良い機会がめぐってきたことが重なった。世界経済の先行き懸念や、同行が自己資本強化のために発行した債券の一部について利払いを中止するのではないかとの観測から、シニア債は価格が急落した。これに対してクライアン共同最高経営責任者(CEO)は、経営基盤が頑健だと強調した。
・ドイツ銀はこれらのシニア債を買い戻すことで多少の利益を得られる。一部のシニア債の利回りが高水準、つまり価格が額面を下回って推移しているからだ。投資家としても、ドイツ銀が取引実勢に色を付けた買い取り価格を提示したという点で、悪くない話に見えるかもしれない。例えば2021年償還債は11日時点で額面の約92%の価格で推移していたが、提示額は額面の94.4%となっている。
・それでも投資家がここで売ってしまうのは、かなり近視眼的な取引になるだろう。1週間前、同じ債券は額面の97%前後だった。
・今の市場環境では大規模な債券の取引が難しく、一部の資産運用会社が資金流出に苦しんでいることも、投資家にとっては売るべき理由になる。だがもしもドイツ銀への信頼を持っていて、2週間前に比べて経営の存続に疑いを強める根拠はないとするなら、シニア債は同行の買い戻し提示額などすぐに上回る価格になるとみるべきだ。
・ドイツ銀と債券保有者双方にとって最適な結果は、買い戻しが低調な規模にとどまることだろう。 それはつまり、債券保有者は現在の市場価格が示唆しているよりもドイツ銀を信頼している証しとなる。シニア債の買い戻しというのは論理的には妥当な動きだが、今回のケースでは買い戻しが予定額に達しないことこそが好結果と言えるかもしれない。
http://jp.reuters.com/article/deutsche-bank-bonds-breakingviews-idJPKCN0VO02L?pageNumber=1

次に、2月26日付け日経ビジネスオンライン「欧州銀行を襲った信用不安の元凶「AT1債」とは ビジネスモデルを変えられなかったツケ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・2月16日から日本銀行が導入したマイナス金利は、事前の予想を覆すイベントであり、その政策効果を見極めるためには当面の時間が必要だろう。その将来を考える上で参考になりそうな欧州では、マイナス金利の実施からすでに1年以上が経過するが、必ずしも中銀の思惑通りの政策効果が現れている訳ではない。むしろ銀行セクターの減益や赤字決算を契機に、マイナス金利が銀行収益を著しく悪化させたという見方が再び強まっている。
・まず、マイナス金利が欧州金融機関にもたらした影響について振り返っておこう。 ユーロ圏の銀行においてマイナス金利の導入以降、貸出で伸びているのは家計向け貸出の殆どを占める住宅ローンであり、法人向けは伸び悩みを見せているのが現状だ。さらに家計の金融資産に占める有価証券投資比率を確認しても、マイナス金利が導入された2014年6月の前後1年間に大きなポートフォリオリバランスは無く、個人が積極的に預金から投資へシフトする様子は確認されていない(2013年第2Q:29.5%、2014年第2Q:29.8%、2015年第3Q:29.3%)。
・むしろ個人や企業は、マイナス金利導入以降、見通しの不透明さからキャッシュを保持したいというインセンティブが強くなったといわれる。
▽スイスでは法人・富裕層から利子徴収を開始
・マイナス金利導入国の1つであるスイスでは、銀行の資金利ざやの低下に何とか対応するため、大手行を中心に法人預金・富裕層向け預金の利子徴収を開始するケースも散見される。
・その一方、中小規模の銀行は苦しくても他行よりも有利な預金金利を設定し、預金獲得競争を実施せざるを得ない。コストを強いられる分、経営体力が低下していることに違いないが、マイナス金利導入以降も大手行の預金量は減少傾向にある一方、地域金融機関の預金量は逆に増加するなどの状況も確認されている。
・スイスの銀行セクターはもともと住宅ローン貸出の占める割合が大きく、マイナス金利は住宅価格をさらに押し上げた要因になったといわれている。かつては、低金利・ユーロペッグを背景に、スイスフラン建ての住宅ローンが東欧諸国(ハンガリー、ポーランド等)などにおいても広く利用されていたなど、その認知度は自国に留まらない。
・さらに、スイスと同様にデンマークやスウェーデンも住宅ローン貸出が急増しており、マイナス金利継続が住宅価格の過熱化につながる恐れもある。特にスウェーデンでは深刻な住宅バブルに見舞われており、家計部門の債務残高は過去最大を記録している。
・このためスウェーデン中銀が家計部門の過剰債務問題に警告を発している。さらにデンマークでも同様に家計の過剰債務問題に直面しており、マイナス金利の住宅ローンも出現。住宅価格高騰に歯止めが掛からない状態が指摘されている。
▽マイナス金利が増幅させたAT1債の信用不安
・そんな中、2016年2月には、欧州金融機関の信用不安を巡る報道が世界を駆け巡った。その引き金となったのは、「偶発的転換社債(CoCos=ココス)」と呼ばれる債券に対する信用不安。原油価格の再下落や世界経済が景気後退に向かうかもしれないという心理不安とあいまって、世界の株式市場に動揺が広がった。AT1債とも呼ばれるCoCosとは何で、なぜ今回の世界的な動揺につながったのか。その背景にはマイナス金利の影響もあるのだが、順を追って説明していきたい。
・欧州では、国際的な金融機関の自己資本規制「バーゼルIII」実施を契機に2014年から2015年にかけて、CoCos(AT1債)と呼ばれる債券の発行が急増した。当時、英国やドイツ、スイスの大手行がバーゼルIIIのレバレッジ比率規制の強化に伴う基本的項目であるTier1資本の不足への対応を急いでいた。しかしながらバーゼルIIIのルールも分かり辛い上に、過去の劣後債や優先出資証券と同じ利回りでは、投資家への魅力は乏しいと言わざるを得ない。
・そこで、CoCosの利回りは通常の債券よりも相当高い部類に設定されている。当初は銀行の資本調達手法としてはその資本設計思想やリスク評価の難しさから、投資に慎重な姿勢も見られていたが、次第にCoCosは債券の利回り不足に悩む機関投資家からの投資が増えていった。ユーロ圏やその周辺国がマイナス金利や量的緩和を導入して以降はその傾向がさらに強まった。
・加えて、2016年1月からスタートしたEUの銀行再建・破綻処理指令(BRRD)や2015年11月に金融安定理事会(FSB)がその詳細を発表した総損失吸収能力(TLAC)により無担保シニア債も損失吸収債券となることへの不満も、CoCosへの投資を促した。これは損失リスクがある「無担保シニア債」が、AT1債と比較して利回り水準が低すぎるために、AT1債への投資が優先されたことが原因にある。
・結果的に、消去法のような形で増え続けたAT1債への投資だが、懐疑的な見方は従来からあった。AT1債は、普通株式等Tier1比率が5.125%を下回った場合に元本削減や株式転換させる仕組みを内包する必要がある。そのリスクプレミアムに加えて、商品特性を浸透させることを目的に、従来発行された同等の返済順位の資本性証券より高い利率が付いている。このため、本当にこの高利率を支払い続けられるのかという意見は多かった。
・また銀行が実際に(公的資金注入等で)破綻した場合の債務の返済順位についても、懸念材料が指摘されている。普通株式等Tier1比率のフロアー(銀行が最低保持する必要がある資本)である4.5%の前に5.125%の元本削減や株式転換のトリガーが引かれると、発行体が存続するために、本来は返済の優先順位の高いデットの投資家の利払いがエクイティ投資家より先に停止する形になる。
・バーゼルIII規制上の(その他Tier1である)AT1債の設計では、発行銀行が一定の利益を下回ると、まず初めにクーポンの任意停止を判断、その後、普通株Tier1比率が5.125%を下回った場合に元本削減もしくは強制株式転換される仕組みとなっている。
・発行銀行はクーポンの支払い停止判断に関して完全な裁量を保持している一方、支払停止が発行銀行の債務不履行を意味するわけではない。「AT1債のクーポン支払い停止は事実上の債務不履行」という誤解が広がり、今回の欧銀株式急落による市場混乱につながった。
・投資商品としてかなり複雑な上、これを理解している投資家でも、次のステップでは株式に転換され希薄化することへの不安心理が増幅し、欧銀の株式(特に決算が悪いドイツ、英国、スイスの銀行)は大きく売られることとなった。
・さらに、各行が定めたバーゼル規制資本のバッファー(資本保全バッファー、カウンター・シクリカル・バッファー)においても、普通株式等Tier1比率の求められる最低所要水準を下回った場合、AT1債のクーポンや株式配当、変動役員報酬等に対して、支払いに制限が設定されていることも混乱に拍車をかけた。
・ただしバッファー自体、2016年から2019年までの段階的な実施でかつ多くの欧銀がバーゼルⅢ規制資本対応として資本増強を行っていたため、投資家はこの資本不足を懸念した訳ではないといえる。
・むしろ、真の懸念は、AT1債のクーポンは、欧州各国別(の会計基準で)設定されている分配可能額の範囲内から支払わねばならないことであり、利益が一定水準を下回ることでクーポンが停止されることを問題視したことだ。
・この一定水準の利益(分配可能額)は公表されておらず、かねてから透明性の欠如がAT1債の発行に関して指摘されていた。利益水準の多寡によりAT1債がいつクーポン停止になるかが不明であったため、減益、赤字決算を発表した欧銀に対する信用不安が加速することとなった。
▽不安の連鎖は解消しつつあるが…
・今回の一連の騒動を受けて、急遽、欧銀は、今期の分配可能額やAT1債のクーポン可能額等を発表し火消に躍起となった。ただし、欧銀も3月上旬には最終的な決算数値が発表されることで、分配可能としたクーポンが本当に支払われるか分かることとなる。予想外の引当金や追加損失などの状況に注意が必要となるであろう。また4月下旬に発表される第1四半期の収益状況においても、来年度以降支払い可能とされていたAT1債のクーポンの支払が可能か否かも注視する必要がある。
・AT1債は複雑な仕組みで投資家に損失を負わせる可能性もあり、適合性原則の観点から英国では個人向け販売が禁止されている。結果的に欧州のAT1債の主力の投資家は、ロンドンの金融街(シティ)のヘッジファンド等となっている。ただし、結果的に良くわからないから売却するという不安の連鎖は、サブプライムローン問題の二の舞ともいえる。
・当時は、サブプライムローンが全く含まれていない証券化商品の流動性スプレッドが大幅に拡大したことが問題となった。当時の教訓から、AT1債の問題が引き金となる無用な信用不安の連鎖には注意を払う必要があると同時に冷静さも求められるといえよう。
・欧州銀行の株式の売却が加速したのは2度と銀行が公的資金で救済されないのではという不安も一因といえる。公的インフラである銀行を救わないという判断は、金融安定化という意味ではマイナスの側面が強いという意見もシティでは未だ優勢である。
・無論、欧州のマイナス金利が銀行の資金利ざやを低下させ、銀行経営を苦しくさせたという見方に対する異論は少ない。金融危機以降、欧銀は収益性を強化させるために、投資銀行部門のリストラを強化していたが、高額年収のスタッフを多く抱えている点に変わりはなく、想定していた収益を上げられていなかったのが実情である。
・現在の欧州銀行は、ビジネスモデルの改革を図るというよりは、利上げの時期をひたすら待っていたというのが適切な表現であり、FED(米連邦準備委員会)の利上げにECB(欧州中央銀行)や日銀が追随しないことが明らかになると、収益性についての疑問が再度浮上しつつある状態だ。シティでは2015年には再度大規模なリストラが実施されていたが、欧銀は不採算部門から撤退した後に続く収益性の高いビジネスモデルを見つけられてはいない。どの銀行もウェルスマネジメントビジネスの拡大を狙っているが、米銀ほどの成功モデルを確立できていないのが実情であろう。
・今回の欧州銀行株急落の原因は、様々な要素が絡みあった結果といえる。マイナス金利による収益悪化、規制強化による銀行経営の行き詰まり、過去の不正に対する訴訟費用などが重なりAT1債への信用不安が引き起こされたといっても過言ではない。決してCoCosへの理解度不足や偏った報道だけが、その理由とはいえないことに留意する必要がある。
・今回の反応により、金融危機後に資本増強や規制強化を図り金融機関をより堅牢なものにしていたにもかかわらず、欧州銀行セクターは未だ脆弱であるとの懸念が改めて認識された。リーマン・ショック後に初めて銀行システムの健全性に対する不安が浮上し、金融危機の新たな局面に入ったとの見方までも議論されているのは興味深い事実であろう。
・ECBの次回会合(3月10日開催予定)でドラギ総裁は、マイナス金利幅の拡大を含む追加緩和を検討することを示唆している。さらなるマイナス金利幅拡大に伴い、欧銀が新しいビジネスモデルを見つけ危機の連鎖を断ち切れるかに市場は注目している。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/185821/022400002/?P=1

今日はいずれも、かなり専門的な内容になったが、欧州銀行をめぐる市場の混乱を伝えているので、取上げた次第である。シニア債買い戻しは、ドイツ銀行が資金繰り的には余裕があること、銀行が相場水準を割安と判断していることを示すとともに、過度に安値になった社債を買い戻すことで、ドイツ銀行にも利益をもたらすものである。最終的な結果がどうなったかについては、まだ報道はないようだ。
「AT1債」については、前回も触れたが、どうやら規制当局が想定した以上の混乱を市場にもたらしたようだ。機関投資家といえども、極めて複雑な商品性を必ずしも十分に吟味せずに、利回りに惹かれて買っているらしいことに、驚かされた。日本でも「適格機関投資家」のなかには、運用のプロが全くいないお粗末な投資家もいたことが、年金消失のAIJ事件で明らかになった。これと、機関投資家の中心であるロンドンのヘッジファンドを同列に比較することは出来ない。機関投資家である以上、自分たちが理解できない商品には手を出すべきではないというのが建前論だが、むしろ、ヘッジファンドにも理解できないような複雑な商品を認めた規制当局により大きな問題があるのかも知れない。
タグ:ロイター ドイツ銀行 日経ビジネスオンライン マイナス金利 ドイツ銀行はどうしたのか? (その2)ドイツ銀シニア債買い戻し、元凶の「AT1債」とは コラム:ドイツ銀シニア債買い戻し、投資家が断るべき理由 シニア債 公開入札で買い戻す 50億ドル相当 強気のメッセージを発信したいという思い シニア債は価格が急落 多少の利益を得られる 一部の資産運用会社が資金流出に苦しんでいる 最適な結果 買い戻しが低調な規模にとどまることだろう 債券保有者は現在の市場価格が示唆しているよりもドイツ銀を信頼している証しとなる 提示額は額面の94.4% 1週間前 額面の97%前後 最適な結果は、買い戻しが低調な規模にとどまることだろう 欧州銀行を襲った信用不安の元凶「AT1債」とは ビジネスモデルを変えられなかったツケ 欧州金融機関にもたらした影響 貸出で伸びているのは家計向け貸出の殆どを占める住宅ローン 法人向けは伸び悩み スイスでは法人・富裕層から利子徴収を開始 スイスと同様にデンマークやスウェーデンも住宅ローン貸出が急増 マイナス金利が増幅させたAT1債の信用不安 偶発的転換社債(CoCos=ココス) Tier1資本の不足への対応 CoCosは債券の利回り不足に悩む機関投資家からの投資が増えていった 銀行再建・破綻処理指令(BRRD) 金融安定理事会(FSB) 総損失吸収能力(TLAC)により無担保シニア債も損失吸収債券となる 損失リスクがある「無担保シニア債」が、AT1債と比較して利回り水準が低すぎるために、AT1債への投資が優先されたことが原因 そのリスクプレミアムに加えて 商品特性を浸透させることを目的に 従来発行された同等の返済順位の資本性証券より高い利率 本来は返済の優先順位の高いデットの投資家の利払いがエクイティ投資家より先に停止する形になる 投資商品としてかなり複雑 株式に転換され希薄化することへの不安心理が増幅 最低所要水準を下回った場合、AT1債のクーポンや株式配当、変動役員報酬等に対して、支払いに制限が設定 英国では個人向け販売が禁止 主力の投資家は、ロンドンの金融街(シティ)のヘッジファンド等
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世界同時株安(その5)世界的マネー萎縮 [世界経済]

世界同時株安については、1月28日に取上げた。一昨日までの株式市場のフリーフォールも漸く下げ止まったので、(その5)世界的マネー萎縮 としてみてみたい。

先ずは、みずほ証券金融市場調査部チーフマーケットエコノミストの上野 泰也氏が、2月9日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「「リーマンショック2」は来るのか 中国「不信」・原油「底なし」、2つのビッグリスク」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・昨年から今年に持ち越した「3つのリスク」(①中国経済不安、②下げ止まらない原油価格、③米利上げ後の新興国を含むマネーフロー変調)のうち、③は、米国の利上げに打ち止め感が出れば、とりあえず歯止めがかかるリスクと言える。
・だが、残りの2つはかなりの難物だと筆者はみている。年明け以降の市場で大きな不安材料になり続けている①と②をスピーディーに消し去ることができ、しかも現実味のある解決策は、筆者には思い当たらない。
・まず、①中国経済不安は、昨年夏~秋の局面よりもはるかに事態は深刻であり、中央政府が財政政策を用いて景気を刺激すれば市場の不安心理が沈静化する、というような生易しいものではなくなっている。
▽「不安」から「不信」へ
・市場のセンチメントは、「不安」と形容されるレベルから、中国当局による経済政策運営や人民元という通貨そのものに対する「不信」「信頼感の喪失」へと、悪い方向に一段シフトした。最近出てきた中国問題関連の要人発言などをいくつか挙げた上で、筆者のコメントを加えてみたい。
◆マルコ・ルビオ米上院議員(共和党の大統領候補指名争いで3位につけている有望株) 「中国が国内で深刻な危機に面している。バブル経済には、別のバブルで埋め合わせをしてきたが、ついに危機がやってきた」(2016年1月7日)  ~ この見方に筆者も賛同する。「リーマンショック」後の危機局面で大規模な景気刺激策を実施したことが、不動産バブルを膨らませた。これが崩壊したものの、抜本的な政策対応を怠り続けた結果、政策面で手詰まり感が強くなり、市場の不安感のみならず不信感をも招いている。
◆中国の銀行不良債権、2015年の増加幅は前年の倍以上(2016年1月12日 ロイター) 「中国の銀行が抱える不良債権の2015年の増加幅は前年の倍以上となった。匿名の関係者2人がロイターに明らかにした」 「関係者によると、2015年の不良債権の総額は1兆9500億元(2968億ドル)」 「2014年の不良債権は2574億元(391億9000万ドル)増の1兆4300億元であったため、15年の増加幅は5000億元以上とみられる」  「銀行業監督管理委員会はロイターのコメントの求めに応じていない」 ~ 日本の経験からすると、不良債権問題を解消するための切り札は、「徹底したディスクロージャー」と「公的資金の大規模な投入」の2つである。だが、中国の当局はいずれにもまだ取り組んでいない。そうした実情をあらためて確認できる報道である。
◆中国の中央財経指導グループ弁公室の韓俊・副主任(2016年1月11日 ニューヨークの中国領事館で) 「(人民元が対ドルで一段と大幅に下落すると想定するのは)ばかげている」「人民元に対する経済ファンダメンタルズに大きな変動はみられない」「人民元を空売りする試みは成功しないと思う。投資家は人民元を信頼すべきだ」 ~ 人民元の対ドル相場下落(=人民元からドルへの資金流出)の問題で、事態の全体像を人民銀行など中国の政策当局がどこまで把握してコントロールできているのかに、市場は疑念を抱きつつある。
・IMF(国際通貨基金)がSDR(特別引出権)の構成通貨に人民元を新たに採用することを決定した後で、無理に通貨価値を支える必要性はもはや薄れたという考えから人民銀行が元安ドル高に誘導し始めたというような、単純な話ではなさそうである。
・人民元の下落を当局が容認していることへの不信感から、「草の根」レベルで中国から海外への資本逃避(キャピタルフライト)が起こっており、人民銀行は外貨準備を大量に使ってドル売り人民元買い介入などをしてなんとか食い止めようとしているのではないかという見方が浮上している。
・中国の外貨準備高(金やSDRなどを含まないベース)は、昨年12月末時点で3兆3304億ドル(前月比▲1079億ドル)。12月の月間減少幅は過去最大で、このペースが続くと3年もたない計算である<図1>。そして、中国の外貨準備高は1月も995億ドルという巨額の減少になったことが、直近データから明らかになっている。 仮に、中国の外貨準備高の急ピッチの減少が今後も続くようだと、中国は自国通貨の防衛を継続できなくなって人民元はフリーフォール状況に陥るのではないかといった見方が市場で広がりかねない。
▽日本の20年前に似た雰囲気
・また、最近の中国の政府当局者の市場に関する言動を見ていると、「上から目線」を感じることが多い。日本でも少なくとも20年ほど前まではそうした雰囲気が漂っていたと記憶している。だが、内外経済におけるマーケットの影響力の大きさが政治の世界でもよく知られるようになる中で、日本の当局者の姿勢は大きく変わり、マーケットの動向を重視して、参加者の意向を尊重するようになっていった。
・中国でも金融市場は自由化されていく流れにある。当局者の姿勢もまた、いずれ変わらざるを得なくなるだろう。また、市場はいわゆる「大本営発表」を安易に信用しない。情報発信の手法などにおいても、中国でいずれ大きな変化が出てくるのではないか。
・だが、これらはいずれも長いタイムスパンの話である。中国当局による「市場との対話」は今のところ、それが存在しているのかどうかさえ定かではなく、世界の金融市場を不安定化させる原因の1つになっている。
・もう一つの大きなリスク、②原油価格はどうか。原油の価格は崖から落ちるように下落してきており<図2>、この問題は「出口が見えない袋小路」に入った感が強い。サウジアラビアとイランの関係が悪化して外交関係断絶にまで至ったことで、石油輸出国機構(OPEC)が減産に動く可能性はかなり小さくなったというのが、筆者の見方である。
・原油の減産に動くための前提条件として、サウジアラビアは以前から、ロシアなど非OPEC(OPECに加盟していない)産油国との協調減産の必要性を強調している。だが、OPECと非OPECの協調減産が実現するかどうかのカギを握るとみられるロシアのノバク・エネルギー相は、その実現に否定的なコメントをたびたび発している。
・1月15日にテレビ出演したノバク氏は、「OPECの全加盟国が(減産で)合意することさえ見込めない。いわんや非OPECとの協調減産もあり得ない」と指摘。「石油輸入国が世界市場からの輸入を減らしており、現段階では輸入国の影響力が大きい」と述べた。また、同エネルギー相はロシアの石油企業にとって「カギとなる原油価格の水準は、生産コストの水準、すなわち1バレル=5~15ドルだ」と話した。
・仮に、最近報道されているように、経済がかなり苦しくなったベネズエラなど一部加盟国の要請をうけてOPECが2月に緊急会合を開催し、ロシアも参加して協調減産を協議する場合でも、合意までこぎつけるのは至難の業だろう。
・欧米などから経済制裁の解除をうけて原油の増産・輸出増加に動き出しているイランは、このタイミングでは減産合意には乗りにくい。イランの増産を認めつつOPEC全体で減産しようとする場合は、主にサウジアラビアが自国の生産枠について、イランの増産分を上回る規模で引き下げを受け入れるという話にならざるを得ない。
・だが、両国の関係が悪化している中では、サウジアラビアが一方的に損をかぶる形になる生産枠調整は、実現する可能性がきわめて小さい。イスラム教スンニ派の盟主であるサウジアラビアが、シーア派の盟主である国であるイランに対し、いわば敵に塩を送るような形になるからである。
・また、サウジアラビアは市場におけるシェアを重視し続けており、原油価格下落を容認して米国のシェール会社(総じて原油生産のコストが高いとされる)の市場からの退場を促す「持久戦」を、このままさらに続ける意向を示唆している。同国のヌアイミ石油相は1月17日、国際石油市場で供給過剰が続く中、市場安定には「ある程度の時間」がかかると述べた上で、今後について楽観的な見方を示した。
▽リーマンショック2にはつながらない
・株価に話を転じよう。「グローバルな金あまり」状況の継続に鑑みた場合、リスク要因が多い中であっても、内外で株価が一方的に下げ続けることまではないと予想するのが順当だろう。
・米国の利上げが続きにくいこと(当コラム1月26日配信「昨年末の米利上げは2000年の日本そっくり」参照)、各国の規制監督当局が金融システムの安定維持に注力していることも考え合わせると、「バブル崩壊でサヨウナラ」的な一方的な株価暴落や、先進国の金融システムへの甚大なダメージは発生しにくいと、筆者は考えている。その意味で、年初からの市場の大きな混乱が「リーマンショック2」につながるとは予想されない。
・とはいえ、「中国」と「原油」という2つのビッグリスクが早期に払しょくされそうにない状況下、内外の金融市場の動きは今後も不安定なものにならざるを得ない。したがって、株式の押し目買いなど「逆張り」で投資家が動く際には柔軟性が必要で、無理は禁物である。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/248790/020400031/?P=1

次に、頻繁に引用している財務省出身で慶応義塾大学准教授の小幡 績氏が、2月12日東洋経済オンラインに寄稿した「世界金融市場は「崩壊の危機」に直面している 資金の安全な避難場を破壊した日銀の「罪」」を紹介しよう(▽は小見出し)
・静かな暴落の恐怖。恐怖感がないのか最も怖い。乱高下というよりスーと落ちていく。まさに遊園地のフリーフォールのよう。崖から落ちるときはこんな感覚を味わうのだろうか。しかし、この下落の理由は何か。理由がない下落だから怖いという面はあるが、深層、真相はどこにある?
・一つはっきり言えるのは、日銀が最後に崖から突き落とした犯人だということだ。マイナス金利が最後の一押しとなり、世界金融市場はフリーフォールとなった。
・2015年8月の下落と2016年初からの下落、この時の要因は原油だった。原油価格の下落でシェールガスも暴落、関連企業のジャンク債が暴落し、ジャンク債市場全体に暴落が波及し、レバレッジを効かせてハイリスクの投資をしていたファンドが破綻、機関投資家も大きな損失を出し、株式市場にも連鎖した。
▽暴落の主因は原油から銀行セクターに
・チャイナショックと言われたが、厳密に言うと間違いで、上海株式市場がどうなろうと関係なかった。原油、資源の問題だった。ただ、中国実体経済は大きな構造転換期にあり、重厚長大産業による大量生産や大規模投資という部分が行き詰まっていたのは事実。それまで、消費が増え続けていく中国というストーリーで投機を集めていた原油が暴落し、資源も暴落したので、両者は関係していた。
・しかし、1月末からの暴落要因は原油ではない。2月11日に原油は再び1バレル26ドル台を付けたが、もはや原油の側も暴落の連鎖を受ける側になった。1月初めからの下落は、原油1バレル20ドル台の定着が引き金となって世界の金融市場全体を暴落させたが、この流れが一時止まり、30ドル台を回復し、一息ついたかと思われた後の暴落再開だった。下げは加速し、そのとどめを刺したのが日銀のマイナス金利だった。
・現在、原油から銀行セクターに暴落の主因は移った。欧州の銀行株はセクターの指数が年初来30%近く下げている。ドイツ銀行が債券の返済ができなくなるといううわさが駆け巡り、ソシエテジェネラルの決算は予想をはるかに超える利益の減少となり、欧州の銀行はほぼすべて売り込まれた。ドイツ銀行もソシエテジェネラルも訴訟費用が大きな要因だが、最後のとどめは、マイナス金利によるベースの収益の減少だ。
・銀行セクターの行き詰まりは多くの要素が絡み合っているが、元をたどればリーマンショックに行き着く。リーマンショックで完全に崩壊した世界金融バブルが、銀行セクターを肥大化させ、反動による収縮が現在も続いており、いよいよごまかしきれなくなってきたのが現在の姿だ。
・リーマンショック後、世界の金融当局、とりわけ英国、そして米国は、銀行や金融機関への規制を強化してきた。リスクを取らせない方向へ舵を切った。英国では明示的に報酬が過大であることを非難した。その結果、金融機関、銀行は人材も流出し、収益機会も減少していった。もちろん市場が暴落したのだから、それによるダメージも大きく、また上昇が望めないことから、彼らは別の収益確保に走った。それが国債への投資である。
▽量的緩和と称する大量の国債購入
・リーマンショックに対応して、米国も欧州も中央銀行は、量的緩和と称する大量の国債購入政策を実施した。ECB(欧州中央銀行)は量的緩和という言葉をずっと避けていたが、実質的には、ギリシャ国債を始め、リスクの相対的に高い国債の大量購入を行った。一方で、世界中の政府は財政出動を行った。この結果、投資対象となる国債は市場にあふれていた。その国債を金融機関や投資家は買い入れ、中央銀行に売りつけることにより、利ザヤを稼ぐようになった。
・地味な銀行は、利回りだけで満足したかったが、中央銀行の買い入れ額も中央銀行の買い入れに便乗する投機家の買いも激しかったために、利回りが低下しすぎて、リスクの相対的に高いはずのギリシャなど、本来格付けが低いはずの国々の国債を買った。そして、これらの国債のリスクが市場で意識されると、銀行破綻の危機になるから、欧州の中央銀行とEUおよびIMFはこれらの国債を買い入れ、資本注入をし、欧州の銀行システムを維持してきた。
・財政金融を総動員すること、世論も学者も強烈に要求した。1930年代の大恐慌を引き合いに出し、すべてのことを犠牲にしても財政出動するべきだと主張した。大恐慌は、1920年末の株価暴落に対応した金融緩和を1930年代前半に早々に引き締めに転じたこと、すなわち早すぎる引き締めによってもたらされた、という議論を借用し、財政出動をとことん行わせた。実際は大恐慌よりもはるかに失業率は低く、またGDPの落ち込みも小さく、さらに物価の下落もまったく異なっていたにもかかわらず、デフレに落ち込んだら大恐慌の二の舞だ、という半ば脅迫により、財政も金融もフル出動となった。
・そのバブルがいま崩壊しているのである。 欧州の銀行は欧州の国債に資金を待避させたが、それを利用して稼ぎもした。投機家と一緒に、中央銀行や政府を相手に負けないギャンブルをしたのである。しかし、そのツケは欧州危機として実現した。リスク無視で財政危機の国々の国債を買いまくったから、実際にギリシャが財政破綻をすると、連鎖反応で国債は暴落し、銀行は危機になり、再び欧州当局は資本を注入し、国債を買い上げ、金融システム危機を回避した。この過程で、欧州の銀行は一時しのぎをしながら次のビジネスモデルをつくることはなかった。
・金融緩和による世界的な不動産バブルで、再び銀行や金融機関はレバレッジを高め、国債の次は不動産へ資金を移し、欧州危機が一息つくと、懲りずに株式市場に投資家の資金は殺到し、世界の株価は上昇したのである。
▽疲弊した新興国は不況に落ち込んでいった
・しかし、この中で新興国は疲弊していた。米国の大規模な量的緩和により、世界的なバブルが起こり不動産、株式に集中したため、実体経済の本格回復はないまま、投機資金が資産市場に流れ込んだだけだった。実体経済の支えは唯一、中国などの需要に対して輸出をするだけであったし、その輸出の多くは資源など一次産品が含まれ、資源バブルが起きた。世界の資金はここにもなだれ込んだ。新興国はインフレに悩み、金利を引き上げなければならなかった。バブルを抑えるために、国内の実体経済を不況に陥れてしまった。
・こうなると、資金は先進国に向かい、ドルが急上昇し、新興国通貨は大幅に下落し、輸入インフレが激しくなった。これを抑えるためには、金融を引き締めなければならず、実体経済はますます不況に落ち込んでいった。
・こうなると、資源バブルもはじけざるを得ない。新興国の中心である中国が息切れし、中国依存の世界経済を支えきれず、自国を守るために、通常モードに政策をシフトさせてきたからである。この結果、原油は大幅に下落し、これは資源輸出国である新興国、途上国にとどめを刺した。その中には中東を始め世界の産油国が含まれており、ますます原油市場は、財政のつじつまを合わせるための売り(供給)が減少しないことにより、暴落を続けた。ただ、原油価格は高くなりすぎていたのであって、需給で決まるとなれば暴落は当然だった。
・しかし、これは先進国に跳ね返ってきた。これが昨年からの下落である。 だが、昨年からの原油ショックは、世界金融市場の崩壊の序章に過ぎなかった。なぜなら、原油価格の暴落は、資源国にはマイナスだが、消費国にはプラスで、世界全体ではプラスマイナスゼロであるからである。もっとも、世界でもっとも調子の良い、そして大国である米国と日本が恩恵を受け、経済基盤が脆弱な資源国が打撃を受けるのでは、弱いものの打撃の影響の方が大きいため、世界全体でマイナスではある。
・しかし、それよりも致命的なのは、銀行システムが崩れることである。原油暴落で借金国や借金で資源開発をしている企業、国が破綻するので、世界経済トータルでマイナスであるのだが、これもレバレッジが効いているからマイナスなのである。すべての経済危機は銀行危機である。今回は原油暴落からの株式市場の危機、リスク資産市場の危機から、経済全体の危機になったのである。
▽世界中の銀行が追い込まれるという連想ゲーム
・銀行が財務危機に陥れば、リスク資産市場への投機資金も流れなくなるが、実体経済へ流れも細くなる。実体経済の取るべきリスクでさえ取らなくなり、実体経済は不況に陥る。今回の危機は、この始まりの危機なのである。最後のとどめは、繰り返すが日銀のマイナス金利であった。リーマンショック後、欧米の銀行は利益機会を失い、徐々に弱ってきていた。そこへ、規制も強化させ、リーマンショックへの反省から銀行危機を起こさないために、銀行の資本を厚くすることを当局は要求していた。
・その結果、ドイツ銀行は無理な資本調達をしなければならず、そして他の銀行も同じような状況となり、これが、現在の金融危機によりリスクのある債券(資本性のある債券)に対して値付けが厳しくなり、持続不可能になった。さらに、欧州ではマイナス金利が3年続いており、銀行は、ギャンブル的な投資利益、トレーディング収益の機会だけでなく、安定した国債利回りによる収益も失ってきた。さらに、ドイツ銀行などは、リーマン破綻前の違法な業務による課徴金、訴訟関連費用により、急激に追い込まれたのである。
・このような状況があるところへ、日銀がマイナス金利を導入し、世界の金融市場は、マイナス金利の怖さを思い出してしまった。この銀行部門のリスクをさらに意識することとなり、世界中の銀行が追い込まれる、という連想ゲームが始まり、いよいよ終わりの始まりが始まったのである。
・米国の利上げ回避も、通常なら株価にプラスのはずだが、米国債金利の急落で、これは世界の金融機関のもうひとつの収入源を奪うことになり、さらに銀行不安は拡大した。
▽安全資産の市場がギャンブル市場に
・最後に。日銀のマイナス金利はとどめを刺しただけで、本質的な問題ではない、タイミングが悪かっただけだ、という説もあり得るが、タイミングは重要だ。これまで、サプライズで、いわばタイミングだけで市場を弄んできたしっぺ返しを受けているのだ。問題は、それがしっぺ返しでは済まないことだ。株価が下落して元に戻るだけでなく、世界の銀行システムの崩壊の危機に陥れたのだ。
・国内経済を考えると、マイナス金利は為替安にすることだけが短期的なプラス要因だが、黒田緩和第三弾は誤算に見舞われた。週末から米国の金融政策への不透明性が高まり、日本側で為替をコントロールするどころか影響すらも与えられなかったのだ。金融市場は米国次第、とりわけ為替はすべて米ドル次第という基本中の基本を勉強させられただけに終わった。
・そして、本当の日銀の最大の罪は、世界の金融市場から安全な逃避場を消滅させたことにある。
・現在の円高は資金の逃避と説明され、10年国債までもが急騰してマイナス金利になったことも、資金が安全資産へ逃避した、と説明されているが、これは180度どころか、異次元に間違っている。なぜなら、円買いや長期国債買いが起きているのは逃避ではなく、逃避というストーリーで資金が集まるので値上がりする、という短期的な投機的思惑から資金が殺到しているだけだからだ。だから、今後は、円も国債も乱高下を続けるだろう。
・日銀の最大の罪は、国債という安全資産の市場、資金の逃避場の市場を破壊したことにある。これらの市場は乱高下に見まわれ、投機資金のギャンブル市場になってしまったからだ。これは3年前、異次元緩和第一弾が始まったときから起きていることであり、第三弾は最後のとどめにすぎない。異次元緩和が始まったときから、この金融市場の終わり、安全資産市場が世界から消滅するという、終わりの始まりは始まっていたのである。
http://toyokeizai.net/articles/-/104866

上野 泰也氏は、中国経済不安も重視し、市場が中国当局に対し、「不信」を抱くに至ったとして、中国の外貨準備高の急ピッチの減少が今後も続くようだと、「人民元はフリーフォール状況に陥るのではないかといった見方が市場で広がりかねない」と危惧している。原油価格も、イランの増産分をサウジが減産で調整役になることはありえないとする。ただ、米国の利上げが続きにくいことに加え、当局は安定維持に注力しているので、リーマンショック2にはつながらないとみているが、上野氏の「期待」の要素もありそうだ。
小幡 績氏は、「日銀が最後に崖から突き落とした犯人」と痛烈に批判している。マイナス金利政策への最も痛烈な批判である。株式相場の下落局面ごとの主因を整理した上で、現在は「原油から銀行セクターに移った」、「本当の日銀の最大の罪は、世界の金融市場から安全な逃避場を消滅させたことにある」などの指摘は、うなずかされる。
昨日からの市場の下げ止まりは、ドイツ銀行(2月11日参照)が一般社債(資本性のあるAT1債ではない)を買い戻すとして、資金繰りに問題ないことを示したことも影響しているようだが、他方でギリシャの10年もの国債の利回りは11%超を続けており、同国の問題がさらに深刻化すれば、ドイツ銀行などへの評価は再び悪化する懸念も強いことに留意しておく必要があろう。
タグ:東洋経済オンライン 世界同時株安 ドイツ銀行 小幡 績 日経ビジネスオンライン 上野 泰也 (その5)世界的マネー萎縮 「リーマンショック2」は来るのか 中国「不信」・原油「底なし」、2つのビッグリスク 3つのリスク 中国経済不安 下げ止まらない原油価格 米利上げ後の新興国を含むマネーフロー変調 市場のセンチメント 「不安」と形容されるレベルから 中国当局による経済政策運営や人民元という通貨そのものに対する「不信」「信頼感の喪失」へと、悪い方向に一段シフト 人民銀行 外貨準備を大量に使ってドル売り人民元買い介入 中国の外貨準備高の急ピッチの減少が今後も続くようだと 中国は自国通貨の防衛を継続できなくなって人民元はフリーフォール状況に陥るのではないかといった見方が市場で広がりかねない サウジアラビアとイランの関係が悪化 リーマンショック2にはつながらない 各国の規制監督当局が金融システムの安定維持に注力 世界金融市場は「崩壊の危機」に直面している 資金の安全な避難場を破壊した日銀の「罪」 日銀が最後に崖から突き落とした犯人 マイナス金利が最後の一押しとなり、世界金融市場はフリーフォールとなった 暴落の主因は原油から銀行セクターに 1月末からの暴落要因は原油ではない 欧州の銀行株はセクターの指数が年初来30%近く下げている ソシエテジェネラル 訴訟費用が大きな要因 最後のとどめは、マイナス金利によるベースの収益の減少 リーマンショックで完全に崩壊した世界金融バブル 銀行セクターを肥大化させ、反動による収縮が現在も続いており、いよいよごまかしきれなくなってきたのが現在の姿 量的緩和と称する大量の国債購入 財政も金融もフル出動 そのバブルがいま崩壊しているのである 世界的な不動産バブル 再び銀行や金融機関はレバレッジを高め 国債の次は不動産へ資金を移し 欧州危機が一息つくと、懲りずに株式市場に投資家の資金は殺到 世界の株価は上昇 疲弊した新興国は不況に落ち込んでいった 世界中の銀行が追い込まれるという連想ゲーム 銀行の資本を厚くすることを当局は要求 ドイツ銀行は無理な資本調達をしなければならず リスクのある債券(資本性のある債券)に対して値付けが厳しくなり、持続不可能に 、安定した国債利回りによる収益も失ってきた 違法な業務による課徴金、訴訟関連費用 マイナス金利の怖さを思い出してしまった 本当の日銀の最大の罪は、世界の金融市場から安全な逃避場を消滅させたことにある これらの市場は乱高下に見まわれ、投機資金のギャンブル市場になってしまったからだ
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ドイツ銀行はどうしたのか? [世界経済]

今日は、ドイツ銀行はどうしたのか? を取上げたい。

今日の日経新聞は、「ドイツ銀、信用回復に苦慮 巨額赤字で債券利払い不安 市場、リストラ効果注視」と題して、「ドイツ最大の銀行、ドイツ銀行の経営悪化が世界の金融市場を揺さぶっている。2月に入って同行の債券の利払いが滞るとの臆測が金融市場で台頭し、株価も急落。2015年決算で過去最大の赤字を計上したことが背景。「欧州最強の銀行」の突然の信用不安に地元ドイツは困惑」 と伝えた。

先ず、問題の債券については、2月10日付けロイター「コラム:問題児に転落したドイツ銀のハイブリッド債」を紹介しよう。
・ドイツ銀行の利払いをめぐる騒ぎを機に、金融規制の看板娘だったはずの新型ハイブリッド債が、一転して問題児に姿を変えようとしている。
・ドイツ銀は8日、「CoCo債(偶発転換社債)」の一種であるAT1債(その他Tier1債)の利払いが遅れるという懸念の火消しに努めた。同行がこうしたハイブリッド債の利払いを中止したとしても、本来なら一大事ではないはずだ。同行は昨年秋、普通株の配当支払いを2年間中止すると発表しているし、AT1債はそもそも、同行が健全性を保ちながら損失を吸収するために設計されたものだ。2008年に世を騒がせたようなハイブリット証券との違いはここにある。ところが、新型ハイブリッド債の損失吸収機能が発動(トリガー)される可能性があると知って、市場のボラティリティは抑えられるどころか、かえって高まっているのだ。
・銀行株は経済成長への懸念を背景に下落し続けてきた。その波がついに、AT1債にまで及び始めた格好だ。ドイツ銀は収益率が低く、資本が比較的薄い上、ドイツのAT1債会計の特殊性がもたらす不透明感も加わり、とりわけ売られやすい状態にある。
・ドイツ銀の永久債(AT1債)は表面利率が6%だ。1月初め、同債の予想償還期限は2022年で、利回りは7%前後だった。しかし株価が下がると、投資家はAT1債に株式並みの利回りを要求するようになり、価格は下がった。利回りが上がると、ドイツ銀が2022年にこの債券を償還(コール)しない可能性が高まるので、予想償還期限は伸び、投資家の損失は大きくなった。そして最後に利払い停止の懸念が再燃し、短期的なキャッシュフローが減っているのではないかとの懸念が広がった。最初は比較的短期の債券であるかに見えた証券が、長期のゼロクーポン商品に変化する恐れが出てきたわけだ。年初に額面の93%だった価格は、8日には72%まで下がった。
・規制当局、投資家の双方にとって問題なのは、こうした一切合財が無限ループを生み出していることだ。AT1債の価格が下がったとき、投資家は売る先がほとんど見つからない。銀行は、仲間の銀行が発行した低落した債券のマーケットメークなど行いたくないし、ハイブリッド債の大口の買い手であるアジアのプライベートバンクは、8日は春節で休みに入っていた。投資家は仕方なくクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を取引した。この結果ドイツ銀のシニアCDSスプレッドは270ベーシスポイント(bp)超と、ユーロ圏債務危機以来の水準に上昇した。とはいえ、ドイツ銀が破綻する可能性はまず考えられない。同行の有形資産の簿価は530億ユーロと、2011年に比べて40%も増えている。
・AT1債の死のスパイラルは、現在の市場の激動に鑑みれば小さな構成要素に過ぎない。しかしこの一件は、株式を債券であるかのように装うことのリスクを浮き彫りにした。規制当局は、新顔のハイブリッド証券が危機前のそれよりも損失吸収に役立つと期待した。確かに証券自体の損失吸収能力は高まったが、市場はそうではない。
http://jp.reuters.com/article/column-deutsche-bank-hybrids-idJPKCN0VJ04M?pageNumber=1

次に、もともとのドイツ銀行の問題については、昨年7月7日付けZAKZAKに、ジャーナリストのベンジャミン・フルフォード氏が寄稿した「ドイツ銀行、ギリシャと共倒れ危機 衝撃的な格下げ 欧州崩壊待ったなし」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽CEO辞任と衝撃の格下げ!ドイツ銀行破綻で欧州崩壊
・EUの優等生であるドイツ最大の同行は、ドイツのGDPの20倍に及ぶ54.7兆ユーロものデリバティブ(金融派生商品)取引をしており、その経営は実にハイリスク。そのなかには、ギリシャの債務支払いを債権者に担保するような内容のものがかなり含まれている。
・ギリシャの経済危機以降、同国はゴールドマン・サックスをはじめとする世界の金融機関から融資を受け、借金によって借金を返済する自転車操業を続けてきた。そしてドイツ銀行はデリバティブ取引により、ギリシャの借金の事実上の保証人となってきた。そのため、ギリシャがデフォルトに陥った場合、同行は無限の損失を被ることになる。
・こうした状況を前に、6月9日、米格付会社S&Pは、同行の格付けを2段階引き下げ、「BBB+」に。破綻直前のリーマン・ブラザーズですら「AA-」だったことを考えても、これはかなり衝撃的な評価だ。格下げ発表の直前、同行の共同CEOの2人は、沈みゆく船の船長よろしく、辞任を表明。
▽旧約聖書にある通り、バベルの塔は崩壊する
・ドイツの検察当局が、同行のフランクフルト市内にある複数の拠点を家宅捜索。個人顧客の脱税に関与した容疑といわれているが、辞任した2人のCEOをはじめ、危険な運用を続けた経営陣の責任を問うための捜査と見る向きも。総資産約2兆ユーロのドイツ銀行が破綻すれば、同行を後ろ盾にしていたEU内の複数の銀行も、ドミノ式に潰れていくだろう。
・就任以降、頻繁に中国詣でを行ってきた独メルケル首相だが、危機に備えるための資金の提供を中国に頼み込んだところ、断られたという情報も。また、ドイツはユーロ崩壊を見据え、数百億ユーロ分のマルク紙幣を印刷しているという話も。国際金融市場も世界恐慌を覚悟しはじめている。米個人投資調査協会によると、個人投資家の資産に占める株式の割合は、5月に67・9%から57・8%に下落。ストラスブールにあるEUの本会議場は、以前からその外観がバベルの塔に似ていると言われてきたが、皮肉なことに旧約聖書に記されたとおりの結末を迎えようとしているようだ。)
▽ギリシャ経済破綻危機のなか独銀CEO辞任(6月7日、脱税疑惑や顧客との訴訟合戦などのスキャンダルの責任を取り、辞任を発表した2人の共同CEO。アンシュー・ジェイン氏とユルゲン・フィッチェン氏。事実上のギリシャの“保証人”である同行の異変に注目が集まる。)
http://www.zakzak.co.jp/zakspa/news/20150707/zsp1507071130001-n1.htm

第三に、同行の惨状について、選択2015年9月号「名門「ドイツ銀行」がまさかの経営危機 「第二のリーマンか」との憶測も」のポイントを紹介しよう(▽は小見出し)。
▽投資部門が逆噴射
・1998にデリバティブに強いバンカーズ・トラストを買収してから、デリバを買いまくり、最盛期には純益の7割をたたき出した。旧バントラ部隊は「向う傷を恐れぬ」ことで悪評が高く、リーマン・ショック直前の強引な取引で訴訟が続出。
・4月にはLIBOR不正操作で大手行中最大の25億€の制裁金。48歳でCEOになったインド出身のアンシュ・ジェインは退任。和解金・制裁金は合計90億€超(1.2兆円)。4月にはECBからTier1を13億€増やすよう求められた。S&PはAAからBBB+に格下げ。後任CEOは、UBSを立て直した英国人ジョン・クライン。
▽「どこかが倒産することになる」
・マーク・プリス米ブラウン大教授は、フォーリン・アフェアーズ8月号「なぜ危機の責任はギリシャにないのか」で、危機のルーツは欧州の金融システムにあった。ユーロ導入後の10年で、欧州銀行資産は急拡大。ギリシャがデフォルトに陥れば大損失が発生するので、トロイカ(EU、IMF、ECB)で支援。ギリシャ救済資金2300億€の90%が、ギリシャを経由して、主にドイツ、フランスの大手銀行の支払いや資本増強に使われた。
・ドイツ銀行の火遊びは、この他にギリシャ関連のCDS。ギリシャ国債残高3173億$、CDSはその5倍の1.5兆$、デフォルトし債務削減60%とすれば、9000億$もの保険を支払う必要。どこかが倒産することに。

昨年9月段階での報道は、他からの報道があまりなかったので、「まさか」と思い静観してきたが、これが、今年に入ってからの世界の金融市場大波乱の要因の1つにまでなるとは、と正直、驚いた次第である。
ドイツ銀行は、ドイツではダントツのトップバンクで、「欧州最強の銀行」として長いこと君臨してきた。それが、ギリシャへ巨額の融資をしただけでなく、他行がギリシャ向け融資で焦げ付けば、保険を支払うCDS取引まで行った結果、ギリシャ向けのエクスポージャー(リスクにさらされる金額)が巨大となっていたとは、信じられないようなリスク管理、経営管理の失敗である。
こうしてみると、ギリシャ支援で、IMFは債務減免が必要と主張したが、ドイツの意向を受けたEUがこれに応じず、トロイカ体制が崩れ、EUによる通常の救済融資だけで済ませた背景がようやく分かった気がする。ドイツとしては、債務減免に応じることは、ドイツ銀行に巨額の損失を被らせることになるだけに、何としてでも回避したかった訳だ。メルケル首相の厳しい姿勢の裏にこんな事情が隠されていたとは・・・(なお、ギリシャ問題そのものについては、昨年7月25日のブログ参照)
AT1債も、規制当局が考えもしない副作用をもたらしたようだ。これは、金融危機の反省を踏まえて、システム上重要な金融機関(G-SIFIs)が経営危機に陥った際に、まずは債権者(投資家)にも損失を負担してもらうという「ベイルイン」手法を持ち込んだものだ。これにより、公的資金投入を不要としたいとの考えがあった。つまり、破綻に陥る手前で、一定の条件で発動(トリガー)され、普通株などに強制的に転換することで、健全性を回復させようとするのが、本来の狙いであった。しかし、「先読み」をしがちな市場は、発動が近いと予想しただけで、これは一大事とばかりに「暴走」したのが、今回の出来事だったのではなかろうか。こうしてみると、金融監督手法の設計に当たっては、市場心理のアヤまで織り込む必要がありそうだ。
ギリシャでは、EUの指示通りに年金支払を削減しようとするチプラス政権に対する抗議運動が高まり、国債の10年もの利回りは、現在11.35%と年初来の最高値を更新。今後の行方は予断を許さない。
今回は、かなり専門的な内容になってしまったが、事態の重大性に鑑みてお許し頂きたい。
タグ:ギリシャ ロイター 日経新聞 ECB ベンジャミン・フルフォード 自転車操業 S&P ドイツ銀行 ZAKZAK coco債 選択2015年9月号 ドイツ銀行はどうしたのか? ドイツ銀、信用回復に苦慮 巨額赤字で債券利払い不安 市場、リストラ効果注視 欧州最強の銀行 突然の信用不安 コラム:問題児に転落したドイツ銀のハイブリッド債 AT1債 利払いが遅れるという懸念 普通株の配当支払いを2年間中止 AT1債はそもそも、同行が健全性を保ちながら損失を吸収するために設計 損失吸収機能が発動(トリガー)される可能性があると知って、市場のボラティリティは抑えられるどころか、かえって高まっているのだ 年初に額面の93%だった価格は、8日には72% ドイツ銀のシニアCDSスプレッド 270ベーシスポイント(bp)超 ドイツ銀が破綻する可能性はまず考えられない ドイツ銀行、ギリシャと共倒れ危機 衝撃的な格下げ 欧州崩壊待ったなし 54.7兆ユーロものデリバティブ 経営は実にハイリスク ギリシャの債務支払いを債権者に担保するような内容のものがかなり含まれている ドイツ銀行はデリバティブ取引により、ギリシャの借金の事実上の保証人となってきた 同行の格付けを2段階引き下げ、「BBB+」に 共同CEOの2人は、沈みゆく船の船長よろしく、辞任 バベルの塔は崩壊する 名門「ドイツ銀行」がまさかの経営危機 「第二のリーマンか」との憶測も 投資部門が逆噴射 バンカーズ・トラストを買収 「向う傷を恐れぬ」ことで悪評が高く 訴訟が続出 LIBOR不正操作 大手行中最大の25億€の制裁金 和解金・制裁金は合計90億€超(1.2兆円) Tier1を13億€増やすよう求められた ギリシャ救済資金2300億€の90%が、ギリシャを経由して、主にドイツ、フランスの大手銀行の支払いや資本増強に使われた ギリシャ関連のCDS デフォルトし債務削減60%とすれば、9000億$もの保険を支払う必要 国債の10年もの利回りは 11.35% 年初来の最高値を更新
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世界同時株安(その4)「株式市場の終わり」説、「原油価格下落の影響」 [世界経済]

昨日に続いて、世界同時株安(その4)「株式市場の終わり」説、「原油価格下落の影響」 を取上げよう。

先ずは、財務省出身で慶応義塾大学准教授の小幡績氏が、1月22日付け東洋経済オンラインに寄稿した「静かな暴落が意味する「株式市場の終わり」 「セリングクライマックス」なき反発の怖さ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・今回は、セリングクライマックス(みなが悲観的になり大量の売り注文が出て、相場がアク抜けする状態)なしの反発は何を意味するのかがテーマだ。それは「恐怖と安堵」の両方であり、だからこそ危険なのだ。
▽ドラギ発言にすがった投資家たち
・1月21日のニューヨークの株式市場は、セリングクライマックスはなかったが反発した。まず欧州がECB(欧州中央銀行)ドラギ総裁の3月の追加緩和示唆で反発し、米国は原油在庫が予想を大きく上回って減少し反発。NY原油は4%とこの3カ月で最大の上昇となった。ただし、水準が下がっているので上昇と言っても29ドル台で30ドルを割ったまま。しかし、さらに大きく下げるかと思われたところでの反発だったので、センチメントに対して大きく安堵させる効果があった。
・ドラギ総裁の記者会見の発言は、いつものリップサービス過ぎない。それをわかっていながら、どんな材料にもすがりたい投資家たちが飛びつき、買い戻しの流れとなった。
・ただし、3月にはまた失望することは目に見えている。今日上がった分は下がるだろう。もともと、今年の3月は危険な月。原油関連、シェールガス関連への銀行融資のロールオーバーが難しくなるのが3月末と言われており鬼門となる。警戒が必要だ。
・一方、日本の株式市場だ。1月21日、セリングクライマックスではなかったが、極端な乱高下が起きた。日経平均は、18日19日と今年初めて2日連続の陽線が出現。20日の朝は300円を超える上昇で1万7000円台回復まであったが、その後一気に下落。終わってみれば632円安で、1日で1000円近い値動きとなった。
・21日は大きく反発して始まり、一瞬の安堵があったのも午前高、午後からは一本調子の急落で日経平均先物は1万6000円ちょうどで取引を終えた。最後の乱高下は16時半以降の夜間相場で、先物は開始と同時のさらなる急落で1万5800円割れ、一転急騰し6200円へ。その後も乱高下し、米国の反発を受けて1万6400円水準に上昇して終えた。乱高下は仕掛けそのものだが、米国を受けての回復はウソでもいいから信じたい、というのが翻弄されている投資家側の心理だろう。
・もう少し長いスパンで見ると、ここで一連の下げが終了し、乱高下をしながら戻っていくという可能性もある。セリングクライマックスのないまま暴落が終了するというのは、何を意味するのだろうか。
・「暴落は2回来る」が私のバブル理論で、このセオリーでいうと、2015年8月と2016年1月が1回目と2回目となるのか、それとも、2回目の下落のこれは前半に過ぎないのか、見極めが難しい。欲張ると逃げるのが難しくなる。2回目の可能性があれば、逃げておくのが安全策だ。
・さて、ポイントを整理しよう。今回の下落はパニック売りを伴わず淡々と直線的に下がってきている。これは、仕掛けても誰も反応しない、仕掛け側の自作自演の割合が高すぎて、売り仕掛けではそれほど儲けられず、盛り上がらない、だから、このままあっさりと仕掛け側が手仕舞う、という解釈がひとつ。
・もうひとつの解釈は、200ドルの下げを400ドルにしているのは仕掛けだが、200ドルの下げは実需の下げで、オイルマネーが売り、ジャンク債で行き詰まったファンドが売り、資源関連通貨、関連株でやられた投資家が売れば、彼らが静かに売ったとしても下がってしまう、というものだ。
▽下落の大きさに比して市場が静かすぎる理由
・静かな暴落継続は恐怖感を伴う。なぜなら、本当の売りだからだ。個人的には、こちらのシナリオだと考えているし、多くの黙っているマーケット筋もこれを恐れているが、意外と、派手で下手な仕掛けの部分も多いと思っている。下落の大きさに比してマーケットは静かすぎるのだ。恐怖に凍り付いた市場を表しているのか、リーマンショック以後、上場株投資などばかばかしくてまともな投資家はやらなくなったからなのか、どちらかなのだが、真実は両方であると考える。
・上場株市場というのは大分前に終わっていたという指摘があり、学問的にも裏付けられている。この15年、とりわけリーマンショック後は、乱高下というリスクはトレーダーにとってはチャンスを意味し、価格変動リスクを狙って、変動の大きい株ほど割高となり、大手の投資家(トレーダー)はそれを好んで買っているという分析がある。
・リーマンショック前と違い、投資家層は薄くなっている。そのため、取引も一方的、トレーダー的な売買の仕掛けに脆弱と言うよりは、その流れに流されるままになっており、むしろ仕掛け側としても儲ける機会が減っていることを意味する。そう考えると、今後、株式市場が反転したとしても、長期的にみて上場株市場は期待できない。私はそう考えている。
http://toyokeizai.net/articles/-/101727

次に、元銀行のマーケットエコノミストで信州大学教授の真壁昭夫氏が、1月26日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「原油価格下落は世界と日本にとって吉か凶か」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽“逆オイルショック”はリスクオフを加速させ 世界経済の足を引っ張る悪循環をもたらす
・ガソリン価格や生産コストの低下は、消費の下支えにつながるはずだが…  原油価格が不安定な展開を続けている。1月15日には、代表的な指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物価格が、約12年ぶりに1バレル当たり30ドルを下回って取引を終え、20日にはさらに26ドル台となった。
・足元では反発しているものの、2014年前半、100ドル台だったことを振り返ると、原油価格はまさに地すべりのような勢いで下落した。それは“逆オイルショック”と呼ぶべき動きだ。
・この背景には、世界的な原油需給の悪化がある。中国など新興国の景気が減速し需要が低迷しているにもかかわらず、サウジアラビアなど主要産油国は減産を見送ってきた。足元では、イランの原油輸出観測が供給圧力への懸念を追加的に高めている。主要需要国であった中国などの景気減速で、原油だけでなく、鉄鉱石や銅など多くの商品も下落している。まさに“資源バブル”の崩壊という表現が適切な状況だ。
・最近の原油価格の下落と不安定な株価の相関関係を見ると、これは世界経済のリスク要因の一つと考えた方がよい。これまで世界経済を牽引してきた米国でも、原油価格の下落がエネルギー関連企業の業績、財務体力への懸念を高め始めている。
・原油価格の下落は、エネルギー資源を輸入する国にはプラスに作用する。しかし、原油を売る側の産油国にとっては大きなマイナス要因だ。中東の産油国の中には、保有している投資ファンドを現金化する動きも出ている。
・それに伴い、欧米やわが国の株式市場には、中東筋からの売りが出ているようだ。株価の下落は投資家のリスク許容量を減少させ、金融市場を不安定化させる。それは投資家のリスクオフの動きを加速させ、金融市場の下落で世界経済の足を引っ張る悪循環ができる可能性が高い。
▽サウジの思惑とイラン制裁解除で供給過剰 中国と世界の景気減速で需要は低迷
・原油価格の下落の背景には、世界的に原油が過剰気味になっていることがある。供給サイドでは、シェールオイルブームによって米国などで産油量が大きく上昇した。それに加えて、サウジアラビアをはじめとする主要産油国が減産を見送ったことが大きく影響している。
・2014年、米国の原油生産量は、サウジアラビアを抜いて世界第1位となった。米国の生産増加は、世界の原油市場をコントロールしてきたサウジアラビアにとって、影響力の低下を危惧させたはずだ。
・かつて、サウジアラビアはOPEC(石油輸出国機構)内の減産合意に基づいて、産油量を減らし市場シェアを落としてしまった。その時の経験もあり、同国などOPEC諸国は減産を見送り、結果として原油の供給圧力が高まった。
・また、1月16日、欧米諸国がイランに対する経済制裁を解除すると発表した。すでに、イランは原油輸出量を一日当たり50万バレル増やす用意があるという。イランの追加的な供給圧力は、原油価格の下押し圧力として働く。
・一方、原油に対する需要は低迷している。基本的に、原油への需要は世界の経済状況に大きく左右される。経済状況が上向きになると、生産活動の活発化等のためにより多くのエネルギーが必要になる。経済状況が悪化すると、原油への需要も弱まりやすい。
・世界経済の下落を招いた最大の要因は中国の景気減速だ。リーマンショック後、中国政府は約4兆円(約57兆円)の景気刺激策を打ち出した。それは、リーマンショック後の景気を一時的に支えた。 しかし、景気対策の賞味期限はほとんどが3年程度だ。中国の景気拡大は続かず、2014年以降、減速は鮮明化した。積極的な景気対策の結果、国内では鉄鋼や石炭などの過剰な生産能力が蓄積された。それが中国での不良債権への懸念を高めてきた。
・こうして中国経済の成長期待は低下し、世界的に原油など資源に対する需要が低迷した。中国経済の減速は、ブラジルなど他の新興国やオーストラリアなどの資源国の景気減速にもつながった。
▽原油下落は米国経済への懸念を高める わが国にとっても大きなリスク
・原油価格は、昨年末から1月中旬までの期間だけを見ても、20%程度下落した。ただ、価格下落が顕著なのは原油だけにとどまらない。鉄鉱石や銅をはじめ、多くの天然資源や農産物の価格が下落している。こうした急落は、“資源バブル”崩壊との表現がふさわしい。
・資源価格が軒並み大きく下落すると、世界経済にも大きな影響が及ぶことは避けられない。
・インドやわが国など、エネルギー資源を輸入に頼っている国では、ガソリン価格の低下や生産コストの低下を通して消費の下支えにつながる。
・しかし、冷静に考えると、逆オイルショックのマイナス面も大きい。原油価格が下落すればエネルギー関連企業の業績、財務内容に対する懸念が高まりやすい。それは株式や社債の価格を下落させる。 すでに米国では、シェールガス開発のブームに乗って発行された非投資適格級の社債(ジャンク債)の価格が大きく下落している。投資家のリスクオフの動きを通して、同国経済に対する懸念を高めるマイナス要因だ。
・米国景気に対する懸念が高まると、それが牽引する世界経済の先行きに黄色信号が灯ることになる。特に、米国には大手エネルギー関連企業も多く、原油価格の下落は米国株式市場の足を引っ張る要因になる。
・そのため、原油価格の下落が、世界の金融市場に急速なリスクオフの動きもたらす可能性は高い。その場合、為替市場ではドル高の巻き戻しによる円高が進むことが想定される。円安がこれまでの企業業績、株価の上昇を支えてきたことを考えると、逆オイルショックは、わが国にとっても大きなリスクになり得ると考えるべきだ。
▽相場の反発はあっても一時的 投機的な売りが出やすい状況
・世界経済を原油価格の動向と併せて考えると、ディスインフレ環境下での金融政策、新興国の景気に与える影響には注意が必要だ。
・原油価格の下落は物価上昇率を抑制し、世界的にディスインフレ圧力を高める。そのため、金利は上がりづらい。利上げに踏み切った米FRB(連邦準備制度理事会)も、今後、慎重な政策スタンスを示すことになるはずだ。
・昨年の年末にかけて米国の製造業の景況感が悪化し、それに加えて、12月の小売売上高がマイナスに落ち込んだ状況を考えると、同国経済の状況にも少しずつ不透明要因が目立ち始めている。今後の米国経済の展開次第では、FRBは利上げの実施に踏み切れない可能性もある。
・その場合、わが国やユーロ圏などでは追加的な金融緩和が期待されることになるだろう。政策効果への期待が、一時的に原油価格や株価を反発させるかもしれない。ただ、世界経済が抱える不透明要因を考えると、そうした状況が長く続くとは考えにくい。
・投資家にとって、一時的な相場の反発は株式などのリスク資産を売却するいいタイミングかもしれない。  資源価格の下落の引き金となった中国では、これからゾンビ企業の淘汰など構造改革を進めようとしている。大胆な改革は失業者の増加など、社会の不満を高めやすい。政府は社会の混乱を避けたいはずで、改革は進まず今後も中国の景気はずるずると低迷する恐れがある。
・現在、中国政府は市場安定のために、株式の売却制限や為替相場への介入を実施している。今のところ市場は小康状態を取り戻しつつあるように見える。しかし、ひとたび投資家が大挙して中国の本土株や人民元を売り始めれば、政府の力で売り圧力を食い止めることには限界があるだろう。
・すでに、アジアの新興国通貨の中には、1997年の通貨危機以来の安値まで落ち込んだ通貨もある。産油国等でのドルペッグの維持など通貨制度に対する懸念も強くなっている。そうした市場の綻びを狙って、投機的な売りが出やすい状況になっている。
・下落のペースが速かっただけに、一時的に原油価格が反発することはあるかもしれない。しかし、世界的な資源に対する需給の悪化という問題は、短期間での解決が難しい。原油をはじめとする資源価格の不安定な展開は、これからも世界経済や金融市場を動揺させることになるはずだ。
http://diamond.jp/articles/-/85176

小幡績氏は、「株式市場が反転したとしても、長期的にみて上場株市場は期待できない」と、市場力学的観点から悲観的な見方を述べている。特に「今年の3月は危険な月。原油関連、シェールガス関連への銀行融資のロールオーバーが難しくなるのが3月末と言われており鬼門となる。警戒が必要」とのことだ。
真壁昭夫氏も、日本のような原油輸入国にとって一見、「恩恵」に思える原油価格下落が、金融市場に急速なリスクオフの動きもたらすことを通じて、大きなリスクになり得ると警告する。
明日、金曜日は更新を休むので、土曜日にご期待を!
タグ:東洋経済オンライン 世界同時株安 ダイヤモンド・オンライン 小幡績 真壁昭夫 原油価格の下落 日本の株式市場 (その4)「株式市場の終わり」説、「原油価格下落の影響」 静かな暴落が意味する「株式市場の終わり」 「セリングクライマックス」なき反発の怖さ ドラギ発言にすがった投資家たち 3月にはまた失望することは目に見えている 今年の3月は危険な月。原油関連、シェールガス関連への銀行融資のロールオーバーが難しくなるのが3月末と言われており鬼門となる。警戒が必要だ 極端な乱高下 「暴落は2回来る」が私のバブル理論 下落の大きさに比して市場が静かすぎる理由 上場株市場というのは大分前に終わっていたという指摘 今後、株式市場が反転したとしても、長期的にみて上場株市場は期待できない 原油価格下落は世界と日本にとって吉か凶か 逆オイルショック リスクオフを加速 世界経済の足を引っ張る悪循環をもたらす イランの原油輸出観測 “資源バブル”の崩壊 エネルギー資源を輸入する国にはプラスに作用 産油国にとっては大きなマイナス要因 投資ファンドを現金化 欧米やわが国の株式市場には、中東筋からの売りが出ているようだ 投資家のリスク許容量を減少させ 融市場を不安定化 投資家のリスクオフの動きを加速 世界経済の足を引っ張る悪循環 サウジの思惑とイラン制裁解除で供給過剰 中国と世界の景気減速で需要は低迷 原油下落は米国経済への懸念を高める わが国にとっても大きなリスク 相場の反発はあっても一時的 投機的な売りが出やすい状況
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世界同時株安(その3)人民元問題を中心に [世界経済]

世界同時株安については、昨年9月9日に取上げたが、今日は (その3)人民元問題を中心に である。

先ずは、闇株新聞が1月16日付けダイヤモンド・オンラインに投稿した「世界経済を混乱に陥れる中国経済の闇!中国株は底打ちするか、日本への影響は! 緊急予測2016年 シリーズ第1回[全3回]」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・混迷極める波乱の経済。震源の中国経済は底打ちするか、アメリカ経済と大統領選の行方、参院選までの日本株はどうなるか!? 「闇株新聞プレミアム」が2016年を大胆予測する全3回の緊急特集。今回は第1回、中国経済&中国株は底打ちするのか?そして日本への影響について、鋭く切り込みます!
▽あまりにも稚拙な中国の為替・株式市場対策 サーキットブレイカー制度は4営業日で撤回
・いまどき中国経済が本当に7%近い成長を続けていると信じる人はいないはずですが、そうは言っても一党独裁の中国共産党が強引にでも取り繕うだろうと考えられていました。ところが中国政府の対策を見ていると、どうもそうではないようです。言うなれば「見ていられないほど稚拙な対応」で市場の混乱をさらに増幅しています。
・例えば1月7日早朝、中国人民銀行は人民元の基準値を1ドル=6.5646人民元に設定しました。中国人民銀行は人民元の基準値を昨年8月10~13日に1ドル=6.1162元から6.4010元まで「急激に」引き下げて上海株式の急落を招いたのですが、今度は昨年12月初めの1ドル=6.4元前後から「連日ゆるやかに」引き下げたのです。
・「急激」だと弊害が大きかったため「ゆるやか」に引き下げているようですが、どちらにしても「人民元は毎日確実に目減りする」と宣言しているようなものです。当然、為替市場では人民元売り・外貨買いが際限なく出ることになります。これでは海外からの投資など増えようはずもありません。
・ご丁寧に中国人民銀行は昨年「人民元の基準値は前日午後遅くの市場取引(基準値の上下2%以内)を参考に決める」としたため、市場では常に先行して人民元売りが出ることになり下落が止まらなくなりました。いかにも稚拙な為替対策です。
・人民元の下落は中国からの資金流出を意味し、上海株式も大きく下落しました。奇しくも本年1月4日から株価指数が7%下落すると取引が打ち切られる「サーキットブレーカー制度」が導入されていましたが、4営業日で2度も発動される事態に早くも撤回が決まりました。
・だいたい7%下落すると取引が打ち切られるなら、相場環境が悪いときは誰もが「我先に」持株を売却しようとするため、ますます株価下落を加速させることになることがわからなかったのでしょうか。いかにも稚拙な株価対策です。
▽8604億ドルの外貨準備はどこへ消えた!? 外貨流入が続かないと拡大できない中国経済
・そして1月7日の夕刻、予定より大幅に遅れて昨年12月末時点の中国外貨準備高が発表されました。数字は昨年11月末比で1079億ドル減の3兆3304億ドルと、単月では過去最大の減少となり、この1年間でも5126億ドルもの減少となっていました。発表が遅れたはずです。
・ところがIMFの推計では2015年の中国経常収支は3478億ドルの黒字で、外貨は中国人民銀行が一元的に買い入れることになっているため、2015年1年間では差引き8604億ドルもの外貨準備が消えてしまったことになります。
・中国は外貨準備の通貨別内訳を発表していませんが、全てがドルということはなく3割程度がユーロなど多通貨のはずで、2015年はドルがすべての通貨に対して値上がりしていたためドル建てに換算すると中国の外貨準備は2000億ドルほど目減りしたはずです。
・それでも2015年には6500億ドルほどの外貨が消えていることになり、その内訳は外国人の投資引揚げ(減っていますが実際はまだ投資超過のはずです)、中国政府による公式の対外投資、為替管理を潜り抜けた中国人による不正な海外送金でしかなく、圧倒的に最後の不正送金が大きいはずです。
・中国経済は貿易黒字と外国からの投資で流入する外貨を中国人民銀行が一元的に買い入れて中国国内の信用創造の準備資産としている実質的には「ドル本位制経済」です。つまりどういう形でも外貨(主にドル)が流入し続けなければ(外貨準備が増加していなければ)経済は拡大できず、外貨準備を増加させるためには人民元が外貨に対して上昇を続けていなければなりません。
・人民元が1ドル=6.04元で上昇を止めたのが2014年1月、外貨準備が3兆9932億ドルのピークをつけたのが2014年6月、外貨準備の減少が加速したのが人民元を急落させた2015年8月から、そして中国経済の減速が大きな問題となったのもその頃からと、きっちり符号しています。
・確かに人民元安で中国の貿易黒字は増大していますが、これは中国経済の低迷と原油価格の低迷で輸入が前年比で20%も減少しているからで、人民元安の効果ではありません。はっきり言っておきましょう。人民元安は中国経済に壊滅的な弊害をもたらすはずです。そして、現在の中国政府はまさにその人民元安を強行しています。
▽中国経済の抱える闇の根っこは政治体制にある 日本は政府も企業も「脱中国」を急げ!
・繰り返しですが中国経済は外貨が流入していなければ拡大しない構造になっています。ここ2年間(とくにここ半年)は外貨が逆に流出しており、昨年12月から本年初めにかけて人民元をさらに下落させているため、ますます外貨流出が加速していることになります。その大半が国内資金の不正な対外流出であると考えます。
・つまり中国経済は少なくとも人民元を下落させているここ半年間はマイナス成長の可能性があります。中国の抱える経済の闇は、経済構造の問題というよりもむしろ稚拙すぎる経済政策の問題、ひいては共産党一党独裁体制が招いている政治問題に他なりません。
・そして、この政治体制が劇的に変化しない限り、中国経済の闇が明けることはありません。本来的には景気は季節のように循環するもので、相場格言に「夜明け前がいちばん暗い」というように最悪の状況を耐え抜けばいずれは改善に向かいます。しかし、こと中国経済の闇は耐えていれば何とかなるものではありません。
・すでに企業の中には「脱中国」を図り、拠点を周辺国に移したり国内に回帰しているところもありますが、耐えていればなんとかなると思っているのか何ら手を打たずにいたり、逆に中国依存を高めてしまっているところも少なからずあります。投資家としてはそのような企業は将来深刻な事態に陥ることをはっきり認識しておくべきでしょう。
・それでは中国の経済規模は本当はどれくらいなのか、また中国の外貨準備に隠れているはずの巨額含み損はいかほどなのか、中国のバランスシートから見る中国経済の「本当の姿」はどういったものなのか、そして何よりも共産党独裁体制の中国が仮に経済危機に陥ってしまった場合、資本主義ルールに従った対応を取ることができるのか……etc. 
・中国の国家体制と経済の巨大な闇についての話は、来週から「闇株新聞プレミアム」で引き続き徹底的に掘り下げてまいります。本連載「週刊 闇株新聞」がお伝えできるのは、深くて大きな闇の“ほんの入り口”までに過ぎません。
http://diamond.jp/articles/-/84731

次に、元銀行員で経済学博士・エコノミストの宿輪純一氏が、1月20日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「中国上海株大暴落は人民元が基軸通貨になるための“洗礼”」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・中国の金融市場、特に上海株が大きく荒れています。上海株は今年に入り2割弱も下落し、大暴落といった様相を呈しています。中国はこうした金融の混乱に慣れていないため、金融当局もサーキットブレーカー(市場に冷静さを取戻させるために一時的に取引を停止する制度)の運用を停止するなど混乱しています。残念ながら、市場が安定する気配は感じられません。
・実は、中国金融市場大暴落のカギとなっているのが、国際通貨、そして基軸通貨への道を歩み始めた「人民元」です。今回の混乱は、世界の投機筋にまたとない好機を与えているのです。
・現在、中国は“100年”と“30年”の2つの大きな長期的経済計画を進めています。1つは国家創設100年の2059年に「世界一の経済大国」になるという“100年計画”です。中国は、経済規模(GDP)ではすでに日本を抜いて世界第2位になっています。そして、もう1つは「人民元を基軸通貨」にする“30年計画”です。実体経済のみならず、金融経済においても世界一になろうということです。しかし、この人民元の基軸通貨化が、今回の中国の金融混乱を拡大させている可能性が高いのです。
▽人民元安になると上海株は下落する
・人民元と上海株の関係の特徴は、日本円と日本株の関係とは違います。日本円と違い、人民元安になっても上海株は上がりません。それどころかさらに下がります。資本が流出しているということで、さらに上海株が下落するという相乗作用が起こるのです。それに加えて、中国の大企業には外貨建て借金(債権)が多く、人民元安になると負担が増え経営が悪化します。
・そのため、当局は上海株市場よりも、まずは人民元の為替市場の対応に注力していますが、今回は以前のように大量の介入等はできなくなっています。それは、人民元を基軸通貨にしようとしているからです。
・中国は人民元を基軸通貨にする中間目標として、IMF(International Monetary Fund:国際通貨基金)のバスケット通貨SDR(Special Drawing Right:特別引出権)の構成通貨になることを実現しました。構成通貨になる条件は、通貨が使われている規模と、自由な国際通貨であることです。規模の面は問題なかったのですが、国際通貨の条件を満たしているかどうかということが問題になりました。
・その国際通貨の条件とは、具体的には、金融市場の自由化、資本移動の自由化、市場実態への合致化等であり、いわゆる「自由化」です。
・まず、金融市場を自由化させるということは、金利の自由化も入るわけで、これによって銀行収益は落ちていきます。しかも、上海株の時価は十数行の銀行株の株価で約半分を占めています。この連載の第14回で書いたように、金利が自由化すれば、銀行の収益は落ちて、必然的に上海株が下がることは分かっていたことなのです。
・さらに、自由な資本移動を認めると投機筋の動きが激しくなります。激しくなっても以前のようには規制できません。市場実勢に合わせるために、以前のような十分な為替介入もできなくなる。為替介入については、IMFから注意も受けてしまっているだけに、なおさらです。
・つまり、中国は固定的な通貨制度(管理変動相場制)の中で、昨年来、中国経済が減速し、固定的な為替レベルと経済の実態レベルにギャップがあるという「アジア通貨危機」と同様の状況になっているのです。しかも、基軸通貨(国際通貨)になる目標のために、資本移動を自由化し、介入もできないという、いうなれば”抵抗力”が低下している状況です。投機筋とすれば、まさに狙い目の状況なのです。
・昨年8月の人民元の引下げ「チャイナショック」の時と比べると、さらに一段と抵抗力は低下しています。チャイナショック以降に、人民元がIMFのSDRの構成通貨に内定したからです。
▽投機筋が仕掛ける中国金融市場へのゆさぶり
・投機筋とは、ホットマネーとも言われ、中国では熱銭ともいわれています。自由に動き回る資金(資本)のことです。最近の欧州通貨危機やアジア通貨危機でもその主人公になりました。しかも、世界の先進国の量的金融緩和によって倍増しています。
・中国経済は、製造業と不動産・建築業の過剰の調整=ミニバブル崩壊の途中です。そもそも急激な少子高齢化が進んでいることから、経済成長率も落ちてくるなど、通貨のファンダメンタルズが崩れています。管理している為替レベルと経済の実態レベルとのギャップが拡大しています。つまり、固定的な為替制度を維持するのが困難になってきています。変動相場制であれば、大幅に下落している状況ですが、無理して高値で支えてきたのです。
・常に様々に動いている経済、それも国際金融の世界では「固定」ということは「リスクがある」ということと同義語です。投機筋は、無理して“高値”で抑えている為替レートを崩しにかかるのです。実は、投機筋にとってみると、固定的な通貨制度との戦いは、リスクが少なく楽なのです。
・その仕組みはこうです。固定的な通貨制度を採用していて、通貨のファンダメンタルズが弱くなっている通貨があるとします。その通貨を売り浴びせるわけですが、そのまま通貨を切り上げればそれで投機筋は収益が出ます。その通貨が介入などで為替のレベルを守り切った時には、固定的な為替レートのままで残ります。しかし、その時でも投機筋には損は出ない。つまり、固定的な通貨制度と投機筋との抗争は、投機筋に取ってみれば「勝ちか、引き分けの楽な勝負」ということです。
▽中国は国際金融のトリレンマ問題に対応できるか?
・中国の100年計画である世界一の経済大国になるという点で言えば、まず、GDPを上げなければなりません。国内政策でもGDP至上主義で運営していました。しかも、GDPはドル建てで世界に示されるのが通例です。日本を抜き、米国に迫るという目的の時には、人民元レートは高いほうが良かったのです。
・そのような背景もあって、習近平政権では、3年半で約2割人民元レートを上昇させました。そして、国内経済が悪化してきた昨年8月に耐えられなくなり2%の切り下げを行ったのです。これが、習近平は「人民元高好き」と揶揄された所以です。
・人民元高の修正が入り、投機筋が売り浴びせる中、全面的な為替介入はできない。なぜならば国際通貨では人為的に相場を誘導してはいけないのです。逆に、ここで全面的な介入をするならば、国際通貨ではない、とSDRの内定が取り消されるかもしれないのです。そのため、十分な介入ができず、ましてや以前の様に固定相場制に戻せません。
・通貨危機の時でもそうでしたが、固定的な為替レベルと経済の実態レベルとのギャップがあるときには、本当の解決策は、実態レベルに合わせるしかない。これが国際通貨の宿命なのです。まさに、自由な金融政策、資本移動の自由化、固定的な通貨制度は成り立たないという「国際金融のトリレンマ」問題なのです。
・さらに言うと中国の金融市場や通貨制度は「混乱」に慣れていません。過去、変動幅を広げて自由化しようとすると、偶然にも、アジア通貨危機やリーマンショックなどの金融危機が発生し、そのたびに固定相場制に戻してきました。今回、それは絶対にできません。
・そのため、今回のような混乱に慣れていないのです。十分な介入もできないなど動きを封じられたままで、国際通貨になるための「洗礼」を受けているようなものです。
http://diamond.jp/articles/-/84861

闇株新聞の指摘「「見ていられないほど稚拙な対応」で市場の混乱をさらに増幅」、とは主要国市場まで混乱の渦に巻き込んでいるだけに、本当に困ったことだ。「中国経済の闇は耐えていれば何とかなるものではありません」、「日本は政府も企業も「脱中国」を急げ!」との指摘を重く受け止める必要があろう。
宿輪純一氏はより理論的角度から出口のない中国政府の状況を、「国際金融のトリレンマ」として、「国際通貨になるための「洗礼」を受けているようなもの」と指摘している。ただ、本来であれば、「洗礼」を受けた後は、新たな人生が待っている筈だが、今回の場合は「洗礼」が終わらずにいつまでも続いてしまう懸念もある。
唯一の「出口」は、IMFや国際社会に謝罪した上で、人民元の基軸通貨化をあきらめ、SDRから外し、固定相場制に戻すことなのではなかろうか。それにしても、中国には国際金融のことを十分に理解している人材も豊富な筈だが、合理的判断よりも政治的判断が優先した結果が、今回の混乱の背景にあるのかも知れない。
明日は、世界同時株安をより一般的な角度から取上げる予定である。
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中国経済(その2) [世界経済]

中国経済については、前回は9月2日に取上げたが、今日は(その2)である。

先ずは、11月27日付け日経ビジネスオンライン「年114兆円を国外に流す中国「闇金融」の実態 3350拠点12万人で国家予算の4割相当を動かす」を紹介しよう(▽は小見出し)
・9月30日、中国“公安部”は、8月末から全国で展開中の「“地下銭荘(ヤミ金融)”撲滅のための集中統一行動」の初歩的成果を公表した。それは最初の1カ月間で、地下銭荘の営業拠点37カ所を摘発し、犯罪容疑者75人を逮捕し、関連する地下銭荘の扱い総額が2400億元(約4兆5600億円)余りであることを確認したというものだった。
▽「地下銭荘」撲滅のための集中統一行動
・今年4月、公安部、中央銀行である“中国人民銀行”、“国家外滙管理局(外貨管理局)”などが連合して、全国で“離岸公司(オフショア企業)”と地下銭荘を利用した不正資金の海外移転を撲滅する特別行動を展開するための配備を行った。
・これは“反腐敗協調小組(腐敗撲滅協調チーム)”が実施する“天網”<注1>行動を支える重要な一部分で、その重点対象は(1)オフショア企業や非居住者の口座を利用し、地下銭荘の協力を受けて、汚職による賄賂などの犯罪に関連する不正資金を海外へ移転する犯罪活動と、(2)他人に協力してクロスボーダー取引、違法な外貨売買、資金の支払清算業務などに従事する地下銭荘の違法犯罪活動であった。<注1>“天網”は成語の「天網恢恢,疎而不漏(疎にして漏らさず)」から採った言葉で、「悪人や悪事を逃すことはない」という決意を示している。
・過去数カ月間における中国株式市場の大幅変動は、民衆に外資による中国株式の空売りを憂慮せしめたのに加えて、人民元為替レートの変動は地下銭荘を経由した外貨の海外流出圧力を高めた。こうした状況を踏まえて、8月24日、公安部は全国の公安機関に対して8月下旬から11月末までを期間とする地下銭荘撲滅のための集中統一行動を実施するように指示したのだった。
・中国の地下銭荘による違法犯罪活動は日一日と激化し複雑化しているのが実情である。地下銭荘は汚職腐敗、賭博、麻薬、脅迫、脱税などの各種犯罪に関わる不正資金を海外へ持ち出すための重要な通路であると同時に、その営業活動が地下に隠れ、出所不明な大量のクロスボーダー資金が国家の金融管理体系から遊離する形で存在することで、金融資本市場の秩序や国家のマクロコントロール政策の実施を阻害するのみならず、国家金融そのものの安全性を脅かしている。
・香港誌「動向」9月号は、中国国務院が9月2日に第3回「地下銭荘による非合法・違法な“洗銭(マネーロンダリング)活動撲滅会議」を招集したと報じた。会議には中国人民銀行、財政部、外貨管理局、“銀行監督管理委員会”、“国有資産監督管理委員会”、“証券監督管理委員会”、公安部および4大商業銀行(“中国工商銀行”、“中国農業銀行”、“中国銀行”、“中国建設銀行”)の責任者が出席した。
・この会議に出席していた“国務院”総理の“李克強”は、「地下銭荘は金融部門に所属する下部機関であり、金融部門と政府機関が腐敗堕落していることの確固たる証拠だ」と怒りを込めて指摘すると同時に、1999年から現在に至るまで16年間にわたり地下銭荘が白日の下で違法な犯罪を何ら阻害されることなく営んで来たとは何事かと問いただした。
▽国家予算の4割相当が「地下」経由で国外へ
・地下銭荘について中国メディアが報じた内容を取りまとめると以下の通り:
(1)中国の21の一級行政区(省・自治区・直轄市)および香港と“澳門(マカオ)”では地下銭荘が非常に活発であり、中国国内の120都市には約3350カ所以上もの営業拠点があり、密かに人民元や外貨を国外へ送り出す活動を展開している。地下銭荘の活動とその所在地区にある国有商業銀行、“発展銀行(開発銀行)”、都市銀行、さらには国境外にある国営企業、中国資本企業、中外合資企業は隷属関係にある。現在地下銭荘の従業員は12万~15万人規模に達しており、その非合法・違法な営業利益は4~15%に達している。
(2)地下銭荘の運営規模は、2000年から2004年までは4500億~8000億元(約8兆5500万~15兆2000万円)で推移していたが、2007年から2012年までには年3兆元(約57兆円)の水準に達し、2013年と2014年は年6兆元(約114兆円)の水準に達した。一方、今年7月24日から8月14日までの3週間に中国国内から国外へ流出した人民元は8240億元(約15兆6560億円)を上回ったが、そのうちの70%は地下銭荘を通じて国境を越えた。
・2015年の中国国家予算は15兆4300億元であるから、上記の運営規模が正しいとすれば、2013年と2014年の年6兆元の規模は国家予算の約39%に相当する。それだけ巨大な金額が地下銭荘によって動かされて国外へ流出しているとなると、中国経済を脅かし、国家の安定を揺るがしかねず、事は極めて重大である。
・地下銭荘がいくら強大な組織と強力な「後ろ盾」を持っていると言っても、6兆元もの巨額な資金を動かすのに地下銭荘単独で事を運ぶことは不可能であることは言わずもがなである。それは、李克強がいみじくも指摘したように、中国の金融部門に連なる各種銀行と香港やマカオを含む国境外に所在する中国資本の企業が協力連携しているからこそ成せる業と言えるのである。
・11月20日付の北京紙「京華時報」は、「金華警察当局が全国最大の地下銭荘事件を摘発、4100億元(約7兆7900億円)が国境の外へ送られる」と題する記事を掲載した。浙江省中部の中心都市である“金華市”は、475万人の人口を抱える中都市で、交通の要衝としても知られている。日本でも「百円ショップ製品の故郷」として知られる中国最大の日用品雑貨市場が所在する”義烏(ぎう)市“は、金華市の管轄下にある“県級市(県レベルの市)”である。その金華市で全国最大規模の地下銭荘が摘発されたというのだが、その概要は以下の通り。
▽百円ショップの故郷から7.8兆円が流出
・【1】2014年9月、中国人民銀行の“反洗銭(マネーロンダリング防止)”部門は中央政府「公安部」の経済犯罪捜査局に対して一つの手がかりをもたらした。初歩的な捜査を経て、浙江省義烏市に所在する“宇富物流有限公司”(以下「宇富物流」)などの銀行口座が多額の資金を国境外へ移しており、しかもその資金規模が数千億元(約6~8兆円)に上っていることから、地下銭荘の特徴に符合していることが判明した。このため、公安部ではこの事案を特定案件に定め、コード名を“9・16専案(重大事件)”と命名した上で、浙江省の“金華市公安局”に捜査を移管した。
・【2】金華市公安局は9・16重大事件の専従チームを組織して2か月間にわたる捜査を行った結果、当該地下銭荘の“蛛絲馬跡(かすかな手がかり)”を発見した。それは、宇富物流が“趙○宜”という人物によって香港で設立登記された会社で、同時期に設立された会社が他に数十社あり、それらの会社は全て実体のない“空殻公司(ペーパーカンパニー)”だった。そればかりではなく、これらのペーパーカンパニーは全てNRA(Non-Resident Account:非居住者口座)<注2>を開設していた。  <注2>NRAとは国境外の機構が中国国内の銀行に開設した国内外貨口座。
・【3】専従チームは、趙○宜が2013年1月以来NRAを利用して数千億元を国境外へ移したことを突き止めた。専従チームの捜査結果によれば、地下銭荘の顧客は1万4000か所以上に及び、それらの所在地は北京市、広東省、寧夏省、江西省などの各地に分布していた。そのうち、取引額が10億元(約190億円)以上の顧客は21人、1億元(約19億円)以上は610人、5000万元(約9億5000万円)以上は1128人であった。その後、趙○宜と共謀していた仲間の“施●飛”、“季△輝”、“楊▲翔”、“李◇朋”、“林◆湖”の存在が次々と明らかになり、これら6人に対する従チームの捜査が密かに進められた。
・【4】2014年12月15日、公安部、外貨管理局および中国人民銀行の三者による共同指揮の下で、浙江省、広東省など7省の公安機関連携による地下銭荘拠点の一斉急襲を命じた。銀行部門は全国にある91銀行の口座3000以上を凍結したし、公安部門は58人の容疑者を逮捕すると同時に、大量の銀行カード、パソコンなどを押収した。この日、浙江省で金華市公安局が主体となって摘発したのが、趙○宜を主犯とする史上最大の地下銭荘であり、彼らが行った外貨の違法売買によって国境外へ持ち出された金額の総額は4100億元(約7兆7900億円)に達し、370人以上が検挙されて刑事罰や行政処罰を受けたのだった。
・【5】この種の地下銭荘が扱う資金量は大きく、そこからもたらされる収益は莫大である。金華市公安局の専従チームがある容疑者のパソコンから取り出した電子帳簿には、毎日の収益が通常は5万元(約95万円)以上、最も多い日には135万元(約2565万円)、毎月の平均利潤は200万元(約3800万円)と記載されていた。まさに地下銭荘は違法な暴利ビジネスであり、一度やったら止められないぼろもうけ商売なのである。
▽他人名義の大量口座でロンダリング
・上述した浙江省の例からも分かるように、顧客の需要があるから、地下銭荘の存在は可能となる。「取引額が10億元(約190億円)以上の顧客は21人」とあったが、彼らがそれだけの資金を国境外へ持ち出す目的は何なのか。それは、国内に資金を置いておけない理由があるからである。資金の出所が収賄や横領などの腐敗である場合もあるだろう。また、合法的に稼いだ資金かもしれないが、海外移民するために違法な外貨送金を行う場合もあるだろう。その1つの例が2015年4月に福建省“福清市”で摘発された地下銭荘事件から見て取れる。
・(1)2015年4月、公安部経済犯罪捜査局と中国人民銀行マネーロンダリング防止部門は、福建省福清市の“余□和”名義の口座が疑わしい取引を行っていることを発見した。当該口座は2万8678個の口座と取引を行い、その取引銀額の合計は162億元(約3078億円)に上っていた。同口座は取引の資金規模が巨大であるだけでなく、その取引相手が多数の中国国内および国境外の個人であることから、地下銭荘の特徴と符合していた。
・(2)公安当局によれば、余□和という人物は身障者で、学歴も低く、その家族および友人の多くは農民であり、どう考えても違法な外貨売買に従事できるはずがない。そればかりか、余□和の銀行口座を開設する際に記載されている連絡先の電話も失効していることから、当該口座は典型的な“人頭帳戸(他人名義で開設された口座)”<注3>であると判定された。  <注3>“人頭帳戸”は、マネーロンダリングの手段として使われる。
・(3)公安当局の調査結果、余□和の口座を実際に運用しているのは“林■蘭”であり、林■蘭をトップとする犯罪集団は友人知人の名義で地元の福清市や外地にある多数の銀行に大量の口座を開設し、それらの口座を使って違法な外貨と人民元の両替を行っていたことが判明した。公安当局が同犯罪集団の一員である“周■”を取り調べて判明したのは、周■が顧客のために300万ドルをサウジアラビアから国内に移したという事実だった。当該資金はある大型“中央企業”<注4>の上級管理職が汚職を行って稼いだ不正資金だった。事件に関与した“王▼乃”は某国有企業のサウジアラビア支店の副支店長だったが、王▼乃は周▽に協力して国外にある不正資金300万ドルを地下銭荘経由で中国国内にある周▽が指定した口座へ送ったのだった。これは氷山の一角に過ぎず、地下銭荘を通過する不正資金は莫大な金額に達している。なお、上述した上級管理職はすでに“中央規律検査委員会”による取り調べを受けたという。  <注4>“中央企業”とは中国政府の監督管理を受ける国有企業。
▽国を揺るがす終わりなきモグラ叩き
・中国関連のメディアは、中国共産党総書記の“習近平”と“中央政治局常務委員”で中央規律検査委員会書記の“王岐山”が主導する“天網”行動は、地下銭荘を摘発すると同時に、政敵の江沢民”グループに属する“曽慶紅”、“劉雲山”、“戴相龍”の3家族を引きずり出す手段だと報じている。紙面の関係でその詳細は省くが、彼ら3人の子弟は地下銭荘を開設してマネーロンダリングを行ったり、株価操作やインサイダー取引などを行って、不正な利益を獲得したと言われている。
・3家族の問題はさておき、上述したように、巨額の資金を秘密裏に国境を越えて動かす地下銭荘の存在は国家経済にも多大な影響を及ぼす危険な存在である。昨今、莫大な外貨流出に苦悩する中国にとって、地下銭荘の撲滅は必要不可欠であるが、それが暴利を生むビジネスである限り、モグラ叩きの図式で、叩かれれば息を吹き返し、その壊滅は不可能と言えるのではなかろうか。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/101059/112500027/?P=1

次に、12月11日付けZAKZAK「【お金は知っている】中国が抱える“巨大債務爆弾” たった1年で600兆円も膨れ上がっていた」を紹介しよう。
・米連邦準備制度理事会(FRB)が今月16、17日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の利上げを決定する。昨年秋の量的緩和打ち止めに続き、2008年9月のリーマン・ショック後から7年間続けてきた事実上のゼロ金利政策を終了する。その対外的衝撃はどうか。
・日本の株式市場は「織り込み済み」との見方が強いが、新興国市場のほうでは不安がくすぶっている。特に、あおりを大きく受けそうなのが中国である。
・中国の株式市場は6月下旬の大暴落以降、当局による強権によって相場の底抜けを何とか食い止めてきた。FRBは9月にも利上げする予定だったが、中国など新興国市場の動揺を考慮して決定を先送りしたが、米景気の堅調ぶりからみてゼロ金利を続けるわけにいかなくなった。
・中国のほうは、習近平国家主席が執念を燃やしてきた人民元の国際通貨基金(IMF)特別引き出し権(SDR)構成通貨入りが実現した。その条件は元の変動幅拡大や株式など金融市場の自由化だが、外国為替制度は当面、元をドルに連動させる管理変動相場制を続ける。これだと米利上げとともに試練に直面する。  米利上げでドル高に向かう。ドル高はすなわち元高となり、中国にはデフレ圧力が加わる。それを避けるためには、元を切り下げる必要があるが、するとワシントンから制裁を受ける恐れが高まる。
・共和党の大統領有力候補、ドナルド・トランプ氏は「中国は為替操作国」だとすでに非難しているし、大統領選と同時に行われる議会総選挙を控え、議員の多くが反発しよう。
・北京のほうも、元切り下げをためらわざるをえない事情を抱えている。元安となると、巨額の資本逃避が起きる恐れがあるからだ。現に、8月に中国人民銀行が人民元切り下げに踏み切ると、大量の資金が流出した。
・グラフ(リンク先参照)は、中国企業(金融機関を除く)の債務と、企業向け平均貸し出し金利から製品出荷価格の増減率を差し引いた実質金利負担の対比である。最近では、名目の貸し出し金利は4%台半ばで、1年前の6%に比べて下がったものの、製品値下がりのために実質的な金利負担は急上昇してきた。今の平均実質金利は11~12%にも及ぶ。鉄鉱、家電、自動車、建設関連など中国の過剰生産能力はすさまじく、製品価格は12年4月以降、前年比マイナスが続き、しかも減少幅は拡大する一途である。
・支払いが困難になっている企業は、金融機関に債務返済を繰り延べてもらうほか、追加融資を受けている。さらに社債など債務証券を発行して資金調達している。
・この結果、債務は雪だるま式に膨れ上がっている。日本円換算でみると、14年3月に約1500兆円だった債務残高は15年3月には600兆円以上増えた。外貨建て借り入れも増えており、元を切り下げると、その分債務負担がかさむ。
・まさに巨大な債務爆弾である。「国際通貨元」は中身ぼろぼろの「悪貨」なのである。 (産経新聞特別記者・田村秀男) 
http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20151211/ecn1512111550002-n1.htm

「地下銭荘」がここまで大規模だったとは驚きである。「李克強がいみじくも指摘したように、中国の金融部門に連なる各種銀行と香港やマカオを含む国境外に所在する中国資本の企業が協力連携」しているというのでは、撲滅が「モグラ叩き」に終わってしまうというのもうなずける。
二番目の記事にある「巨大債務爆弾」も深刻だ。米連邦準備制度理事会(FRB)は、9年半ぶりの利上げに踏み切った。人民元は対ドル、対円とも下落を続けたが、上海株は、主要国株式市場と同様に上昇した。株式市場の反応は、既に利上げを織り込んでいた上に、「当面の悪材料出尽くし」という相場力学が働いたためかも知れない。ただ、人民元の動向は記事にあるように要注意だ。
いずれにしても、中国経済には「軟着陸」をしてもらいたいが、実態は闇の部分がここまで大きいとすれば、「軟着陸」ははかない希望的観測に過ぎないのかも知れない。
明日、金曜日は更新を休むので、土曜日にご期待を!
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人民元国際化問題(その2)IMFのSDRへの採用決定 [世界経済]

人民元国際化問題については、10月24日に取上げたが、IMFが人民元を2016年10月1日からSDR(特別引出権に加えると決定したことで、今日は(その2)IMFのSDRへの採用決定 を取上げたい。

先ずは、信州大学教授の真壁昭夫氏が11月3日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「人民元に国際通貨となる資格はあるのか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽人民元が採用される見込みのSDRとはそもそも何か
・国際通貨基金(IMF)は、中国の人民元をIMFの特別引き出し権(SDR=Special Drawing Rights)に採用する見込みと報道されている
・実際に、11月のIMFの会議で採用が決まると、人民元は名実ともに国際通貨としての地位を確立できる。中国にとって、人民元が有力な国際通貨としてのお墨付きを受ける意味は小さくはない
・元々、IMFは、国際金融や為替の安定性を維持するために、外貨事情が悪化した国に対して、必要な資金を貸し付けて救済することを目的に創設された国際機関だ。 それぞれの加盟国はあらかじめIMFに資金を拠出し、その出資比率に応じて必要なときに資金を借りる権利を持つ。SDRは借り入れを受ける権利のことであり、また、借り入れを受けるときの資金の単位でもある
・現在、SDRの価値を算出するときに採用されている通貨は、ドル・ユーロ・ポンド・円の4通貨であり、これらの通貨を加重平均する=バスケット方式によってSDRの価値を算定する仕組みになっている
・バスケット方式で算定する意味は、4つの主要通貨を加重平均することでSDRの価値をより安定させるためだ。そのバスケットの中に、世界第2位の経済大国である中国の人民元を入れることで、さらに安定性を強化することが期待できる
・一方、日米両国は今まで、人民元が中国政府の厳しい管理下にあり、自由な売買が担保できないとして慎重なスタンスを取ってきた
・しかし、中国経済の台頭と、英国やドイツなどの欧州諸国が親中国政策を取り始めていることもあり、人民元のSDR採用を容認せざるを得なくなった背景がある
▽IMFからの融資に使われるSDR 2015年は“バスケットの見直し”の年
・IMFは、1944年に米国のブレトンウッズで国際連合の専門機関として創設された。現在の加盟国は180ヵ国を超えている
・IMFの主な役割は、加盟国が経常収支の悪化などで外貨繰りに窮する場合、必要な資金を融資することで当該国を救済することであり、最終的に国際貿易の促進を図ると同時に為替の安定を目的とする。IMFが行う融資の原資は、基本的には加盟国から受ける出資によって賄われている
・実際にIMFから融資を受ける場合、直接IMFからの借り入れを行うこともできるが、1969年に創設されたSDRを使って他の加盟国から外貨を借り入れることが可能になった。 具体的には、外貨の借り入れが必要な国は、保有するSDRを他の加盟国に渡し、それをドルなど必要な通貨に交換してもらうことになる。SDRを受け取った国は、それを外貨準備に計上することができる
・SDRは、金やドルなどの外貨準備資産を補完することを目的に考案された。SDRは、IMFに対する出資比率に応じて各国に割り当てられるが、その金利水準は、バスケットを構成する通貨の市場金利の加重平均によって算出される
・当初、SDRの価値は金を基準にしていたが、74年からは主要16通貨の加重平均によるバスケット方式に改定され、現在は、ドルなど主要4通貨のバスケットになっている。バスケットの中身は5年毎に見直しされる
・2015年が見直しの年に当たることもあり、英独など欧州諸国の強い支持を受けて人民元をバスケットに入れることが議論されることになった
▽IMFの基準に当てはまるのか? 特殊な通貨である人民元
・IMFは、バスケット通貨の算定について二つの基準を設定している。一つは、加盟国が発行する通貨の中で、過去5年間で財・サービスの輸出額が最も多いこと。もう一つは、自由に売買が可能な「自由利用可能通貨」であることだ
・二つの基準に照らして人民元を考えると、まず一つ目については何も問題はない。近年の中国の輸出額を見ると、その基準をクリアしていることは明らかだ
・問題は二つ目の基準だ。人民元は、必ずしも自由に取引が可能とは言えない。現在の人民元の取引は、中国本土内の取引=オンショア人民元(CNY)市場と、香港中心の本土外の取引=オフショア人民元(CNH)市場とに分かれている。本土内での取引は、中国人民銀行の強い管理体制の下で行なわれており、実際の為替レートは事実上、人民銀行が決める水準に限られる
・現在では、人民元のレートは、基本的にドルとほぼ連動している。ただしドルと厳格に固定されているわけではないため、緩やかなドル連動制=ソフトドルペッグ制と呼ばれている
・一方、香港を中心とした本土外での人民元の取引は、中国政府の厳しい規制が及ばない。そのため、国境を跨いだクロスボーダーの決済や、為替レートの変動の制限などはなく比較的自由に取引が可能だ
・そうした状況を考えると、人民元はドルやユーロ、円などに比べて取引の自由度はかなり制限されている。米国やわが国はそうした点を考慮して、今まで人民元のバスケット入りに慎重なスタンスを取ってきた
・それに対して中国政府は、今後、一段と人民元の国際化を促進すると表明しており、今年8月11日に、事実上の人民元切り下げを行ったときにも、当該措置は国際化への一環と説明していた。11月2日、中国人民銀行は2005年の人民元改革着手以降で最大となる大幅な人民元切り上げを行ったが、これもSDR入りを意識したものとみられている
▽中国に接近する欧州諸国が後押し 日本はどう対応すべきか
・中国政府はこれまでにも、人民元をSDRのバスケットに組み入れて、主要国際通貨の一つとの認識を受けることを積極的に働きかけてきた
・近年、そうした動きに対する強力な援軍が出てきた。英国やドイツなどを中心とする欧州諸国が、中国政府の要請を明確に支持するスタンスを取り始めた。そのため、中国をめぐっては、同国に接近する欧州諸国vs.距離を置く日米の構図が鮮明化しつつある
・一部の欧州諸国が親中国のスタンスを明確にし始めた背景には、人口減少などの問題を抱えて安定成長期にある欧州経済にとって、13億人の人口を抱える中国が巨大消費地としての重要性を増していることがある
・特に、強力な輸出産業を持つドイツは、中国市場への積極的な進出によって世界市場でのマーケットシェアを拡大しており、今後もそうした展開を進めることが最大課題の一つになっている
・スコットランドの独立や、EUからの脱退などの問題を抱える英国にとっても中国の存在は大きい。10月の習近平主席の訪英時には最大限の歓待の意図を示し、原子力発電所建設に係るプロジェクトにも中国からの支援を受ける意向を示した。 また、金融の都=ロンドンを抱える英国にとって、人民元の決済口座をロンドンが確保し、今後、拡大が見込まれる人民元取引を集中させたいとの意図は明確だ。そうした英国政府の姿勢については、同国内から「やり過ぎ」との批判が出ているものの、当面、親中国のスタンスは変わらないだろう
・世界の覇権国であり、長年にわたって主要欧州諸国と強力な同盟関係を維持してきた米国にとって、英国やドイツなどが露骨に中国になびきつつあることは予想外の展開だったかもしれない。 特に、南シナ海での強引な人工島建設に伴う問題が顕在化している現在、米国の意図を軽視する欧州諸国の態度には困惑を感じざるを得ないはずだ。中国との領土問題を抱えるわが国にとっても、そのスタンスは好ましいものではない
・ただ、わが国にとって、欧州諸国と正面から対立する構図は得策ではない。今後の主要国の態度を注視すると同時に、冷静な大人の態度が必要だ
・足元で中国経済の減速は明確化している。かつてのような高成長を望むことはできないだろう。中国経済のエネルギーが低下すると、したたかな欧州諸国は新中国一辺倒の政策運営はできなくなるはずだ。そうした変化を敏感に掴み、上手く使うことを考えればよい
http://diamond.jp/articles/-/80999

次に、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ為替ストラテジストの植野大作氏が、12月1日付けロイターに寄稿した「コラム:人民元SDR採用は日本の国益か国患か=植野大作氏」を紹介しよう(▽は小見出し)
・11月30日、国際通貨基金(IMF)は理事会を開き、特別引き出し権(SDR)の構成通貨として人民元を採用することを決めた。来年10月以降、人民元には10.92%の構成比が与えられ、ドル(41.73%)、ユーロ(30.93%)に次ぐ序列第3位の国際通貨としてデビューする。日本円には8.33%、英国ポンドには8.09%の構成比が割り振られ、人民元の後塵を拝することになる
・SDR採用決定により、今後の人民元相場や我々の日常生活にどのような影響が及ぶのだろうか。正式参入まであと1年程度あるが、あらかじめ頭の体操を行っておく必要があるだろう
・SDRへの参入がその後の人民元相場に与える影響については、短期と長期に分けて考える必要がある
・まず短期的にみると、人民元の国際化に伴って進められる為替取引の自由化により、当面は人民元に対する下落圧力が意識されやすい局面が続くだろう。中国経済は現在減速中で、中国人民銀行(PBOC)が断続的な金融緩和を実施している最中だからだ
・翻って米国では12月15―16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが決定されそうであり、教科書通りに考えれば、ドル高・元安圧力が高まりやすい。実際、ドル人民元相場の12カ月先物をみると、現在は1ドル=6.65元台と、現物の同6.40元前後よりも若干ドル高・元安水準で取引されている
・ただ、今のところ、中国政府は極端な元安を容認しない姿勢を鮮明にしている。習近平・国家主席や李克強・首相ら超ハイレベルの要人から元安をけん制する発言が相次いでいるほか、9月下旬以降には中国当局がオンショア市場での元買い介入だけでなく、オフショア市場でも国有銀行を通じて同様の為替介入を行った模様だ
・中国景気の減速懸念がささやかれる中、自国通貨安による輸出振興には捨て難い魅力があるものの、人民元の先安観が強まり過ぎると海外への資本逃避観測が強まって国内金融市場が著しく不安定化するリスクを抱えるほか、中国企業によるドル建て債務の返済負担が増大することで、かえって景気下押し圧力を発生させかねない
・中国当局による最近の介入実績などを踏まえると、8月上旬の「人民元切り下げショック」直後につけた1ドル=6.45元界隈が、当面のドル人民元相場の「PBOCシーリング(天井)」になりそうだ。人民元の国際通貨デビューに際し、より多くの国々の人や企業に保有と利用を促さないといけない初期段階で、あまり極端な元安期待が台頭するのは望ましくない。人民元の国際化を円滑に踏み出そうとする中国当局の方針から、大幅な元安は是認されいのではなかろうか
▽「人民元はまだ割安」、米政府の言い分に一理あり
・一方、長期的にみた場合には、人民元の国際化と自由化の進展に伴って、構造的な元高圧力が強まりやすいだろう。理由として、以下の2点を挙げておきたい
・第1に、人民元の国際化が進む過程では、官民の準備資産としての保有動機が強まる可能性がある。世界の外貨準備をみると、中国以外の国が保有する金額が9兆ドル程度ある。現在、人民元は外貨準備としてほとんど保有されていないが、SDRに採用されていない豪ドルや加ドルでも数%程度のシェアがある。人民元がSDRの一角を担うようになれば、最低でも豪ドルや加ドルは抜きそうであり、長期的には日本円の3.8%や英ポンドの4.7%を超える可能性もあるだろう
・中国以外の国が持つ外貨準備のうち、例えば5―10%が人民元になったと仮定した場合、公的準備だけで4500―9000億ドル程度の元買い需要が発生する。中国と関係の深い民間企業などでも元建て流動性資産の保有動機が強まる可能性を考慮すると、官民合わせた元買い需要が1兆ドルを超えるとの見方もあるようだ。官民における元建て準備の保有残高がある一定のレベルに到達するまで、相場環境にあまり左右されない元需要が染み出てくる可能性がある
・第2に、米国と中国の2国間貿易収支の動きをみると、過去約30年間にわたって一方的に米国の貿易赤字(=中国の貿易黒字)が拡大、今年上半期分の年率換算では赤字が約3700億ドルと空前の規模に達している。2国間の貿易不均衡としては、恐らく世界の経済史上、最大の金額に膨張しているだろう
・両国の景気循環とほぼ無関係に、一次関数のような形状で貿易不均衡が膨張し続けている点に鑑みると、「人民元はまだ割安」という米国政府の言い分は恐らく正しいのではないか。この先、自然体の為替需給が人民元の価格形成に反映される自由化改革が進むにつれ、日々のマーケットに染み出てくる「実需の元買い・ドル売り」を通じた元の割安修正がジワジワ進む可能性が高い
・人民元の割安修正が一巡する水準を特定するのは難しいが、今から四半世紀以上前の1980年代末期には、人民元はもともと1ドル=4元台で取引されており、米中間の貿易収支もほぼ均衡していた。90年代半ばの「関税及び貿易に関する一般協定(GATT)」加盟直前に中国政府はこれを約半値の8元台に切り下げたが、今から思えばこの掟破りの通貨半値政策が米中間の一方的な貿易不均衡拡大の一因となった疑いが濃厚だ
・この先、中国政府が公言する「自然体の需給」を反映させた為替変動メカニズムが強化されるなら、将来的には1ドル=5元台への突入は十分にあり、超長期的には4元台への里帰りもあり得るのではなかろうか
▽パワーアップする爆買い、日本への影響は
・こうした筆者の見立てが正しかった場合、人民元は対円でも一段高の可能性がある。現在の元円相場は1ドル=122円台を6.3元台で割るので19円台で取引されているが、ドル円相場を割る計数が1ドル=5元台や4元台になったら対円相場には大幅な上昇圧力がかかるからだ。その時のドル円相場の水準にもよるが、仮に1ドル=110円と今より円高だったとしても、5で割れば22円、4で割れば28円と今の19円台より何割も高い値がつくことになる
・その際、日本人の暮らしには、悲喜こもごもの影響が錯綜することになるだろう。良い面から言うと、日本の地方の観光地や都市部のショッピング街などでの中国人旅行者による爆買いはさらにパワーアップする可能性がある。人民元が強くなれば、中国製の工業製品や農産物の値段も上がるので、中国産品と競争している日本の町工場や農家にとっては少しだけ競争条件が緩和するかもしれない
・ただ、中国人の購買力が強くなり過ぎると、日本の土地や不動産がとてつもない高値で買い占められたり、高級な海産物や希少金属などの入札で日本人が買い負けしたりするリスクもある。中国と日本の経済規模の格差が一段と開けば、国際会議やビジネスの現場における中国と日本の影響力の差も一層開く可能性もあり、我々にとって良いことずくめではなさそうだ
・いずれにせよ、今後想定される人民元の国際化に伴い、元相場の変動はこれまで以上に上下双方向に促されるようになりそうだ。上下どちらに動いた場合でも、メリットとデメリットは錯綜するはずであり、今のうちからプラス面を生かしてマイナス面を抑える工夫を、国や企業、個人のレベルで考えておく必要がある。ドル円相場に負けないぐらいの緊張感をもって、今後は人民元円相場に対しても接しなくてはいけない時代が到来しそうだ
http://jp.reuters.com/article/2015/12/01/column-daisakuueno-idJPKBN0TK32E20151201?pageNumber=1

人民元は「自由利用可能通貨」の要件を満たしていないが、IMFにすれば、SDRへの採用決定により中国での自由化を促す狙いもあるとされる。植野大作氏が指摘するように、「中国人旅行者による爆買いはさらにパワーアップする可能性」があるようだが、「中国人の購買力が強くなり過ぎると、日本の土地や不動産がとてつもない高値で買い占められたり」といったデメリットがある点には注意が必要だ。
これを書いている際にNHKの「クローズアップ現代」では、「東京を買う中国マネー ~不動産爆買いと”“投資移民”」を報じていた。そのポイントは、
・外資による不動産売買額が過去最大となった。とりわけ存在感を増しているのが中国圏からの投資マネーだ。個人投資家たちが利回り目当てで都心の高級マンションを次々と即買いし、なかには不動産の購入を通して日本のビザを取得し永住権獲得を目指す富裕層も現れている(賃貸収入などで10年間居住すると永住権が獲得できると報じていた)
・こうした動きから見えてくるのは「投資移民」という新たな潮流だ。中国経済や政治体制の先行きに不安を抱く富裕層の間で、先進国へ資産を逃がしたり外国籍を取得したりする動きが水面下で広がっているのだ。変調する中国から押し寄せる投資マネー。利を見て瞬く間に物件を獲得すると思えば、潮目が変われば逃げ足も速い。その動きに日本の不動産市場は翻弄され始めている
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3742.html
現実はここまで中国発の動きが押し寄せているようだ。水源地の買い占めには、行政も動き出したようだが、こうした「投資移民」は一概に「好ましくない」とは言えないだけに、注視して見ていく必要がありそうだ。
タグ:NHK クローズアップ現代 ロイター 人民元 下落圧力 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 国際通貨基金(IMF) 国際化問題 IMFのSDRへの採用決定 人民元に国際通貨となる資格はあるのか 特別引き出し権(SDR=Special Drawing Rights) 名実ともに国際通貨としての地位を確立 SDRは借り入れを受ける権利 借り入れを受けるときの資金の単位 これらの通貨を加重平均する=バスケット方式 SDRの価値を算定 日米両国 人民元が中国政府の厳しい管理下 自由な売買が担保できないとして慎重なスタンス 中国経済の台頭 英国やドイツなどの欧州諸国が親中国政策 SDR採用を容認せざるを得なくなった 2015年は“バスケットの見直し”の年 二つの基準 加盟国が発行する通貨の中で、過去5年間で財・サービスの輸出額が最も多いこと 自由に売買が可能な「自由利用可能通貨」であること 問題は二つ目の基準 中国本土内の取引=オンショア人民元(CNY)市場 香港中心の本土外の取引=オフショア人民元(CNH)市場 本土内での取引は、中国人民銀行の強い管理体制の下 中国政府は、今後、一段と人民元の国際化を促進すると表明 中国に接近する欧州諸国が後押し 冷静な大人の態度が必要 植野大作 コラム:人民元SDR採用は日本の国益か国患か=植野大作氏 短期的にみると 為替取引の自由化 長期的にみた場合 構造的な元高圧力が強まりやすい 日本人の暮らしには、悲喜こもごもの影響が錯綜 爆買いはさらにパワーアップ 中国人の購買力が強くなり過ぎると 日本の土地や不動産がとてつもない高値で買い占められたり 高級な海産物や希少金属などの入札で日本人が買い負けしたりするリスク 国際会議やビジネスの現場における中国と日本の影響力の差も一層開く可能性 東京を買う中国マネー ~不動産爆買いと”“投資移民” 投資移民
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世界同時株安(その2) [世界経済]

世界同時株安については、8月25日に取上げた。今日の日経平均株価は1343円高と21年7か月ぶりの上げ幅で、18770.51円となった。欧米や上海市場でも持ち直したので、タイトルを変えようかとも思ったが、乱高下基調下での、「空売りの買戻し」といった一時的側面も強いと考え、そのまま(その2)とした。

今日紹介するのは、やや長い目でみたレポートである。
先ずは、信州大学教授の真壁昭夫氏が9月1日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「次の金融恐慌は2017年か!?“10年周期説”の信憑性」である。そのポイントは以下の通り(▽は小見出し)。
▽金融市場は安定を取り戻すが、いずれ中国の問題表面化は避けられない
・中国政府が矢継ぎ早に対応策を打ち出したが、世界の金融市場では依然として不安定な動きが続いている。ただ今後、リスク回避のために株式や原油などの先物を売っていた投資家の買い戻しが入ると見られ、早晩、金融市場は安定した展開を取り戻すだろう
・しかし、長い目で見ると、中国経済が抱える問題が片付いたわけではない。今後、数年というスパンでは、同国の経済や政治体制などの問題点が表面化する可能性は高い。というよりも、それは避けることのできない必然と見る
・今回の金融市場の混乱の中で、最も顕著になったのは中国政府の慌てぶりだった。なりふり構わぬ強引な株価押し上げ策や、突然の為替レートの実質的な切り下げなどは、明らかに政策当局のコントロールの限界を露呈していた
・市場関係者から、「経済や金融市場の動向に関して、中国政府が制御できる範囲はかなり限定的だったことが分かった」との指摘は多い。今まで、何ごとも力づくで抑え込むことが可能と考えられてきた、一党独裁の政治体制にも限界が見えたとも言える
・今後、何かのきっかけで中国の問題が顕在化した場合、今回の世界同時株安を上回る混乱が発生することも想定される。世界第2位の経済大国が抱えるリスクを過小評価することは適切ではない
・中国の経済問題と欧米経済の減速などが運悪くタイミングが重なると、主要国の経済政策ののりしろが限られていることもあり、世界経済はかつての世界恐慌のような厳しい状況に追い込まれることも考えられる。そのリスクシナリオは、頭の中に入れておくべきだ
▽中国経済が抱える本源的な問題点 このままでは世界にも影響不可避
・元々、中国経済では個人消費の割合が低く、輸出と設備投資が経済を牽引するエンジン役を担ってきた。ところがリーマンショック後、世界経済の大きな落ち込みに対し、当時の胡錦濤政権は、4兆元(現在の邦貨換算約80兆円)に上る大規模な景気対策で景気を浮揚させた
・しかし、その景気対策は、結果的に国内の供給能力を一段と拡大することになり、足元の中国経済は大きな過剰供給能力を持つことになった
・そうした中国経済の体質を変えるためには、個人消費を拡大させて、輸出・設備投資依存型の構造をモデルチェンジすることが必要だ。それには中間層を育成することが重要になる。高級品を志向しやすい一部の富裕層と、低価格商品への需要の大きい低所得層だけでは、国全体の有効需要を大きく拡大することは難しい。しっかりした購買力を持った中間層を拡大することは、中国経済の体質を変え、経済全体を安定させるためには必要不可欠だ。それは習政権も十分に理解しているはずだ
・しかし、現在の中国で、中間層を育成することは容易ではない。共産党一党独裁体制の下で、一部の政府関連機関や国有企業などが経済活動の中心を担っている状況を見ると、経済活動全般の効率化が遅れており、生み出した経済的な富を公平に分配する仕組みがワークしていない
・今後、中国政府は国営企業や金融市場の改革を断行すると同時に、社会保障制度などの改革を進め、国内の中間層を育成し経済構造のモデルチェンジを図ることが必要だ。それができないと、今回と同じように“チャイナリスク”の顕在化によって、世界の経済・金融に大きなマイナスの影響を及ぼすことは避けられない
▽“10年周期説”を無視できない理由 世界経済で続くデフレ傾向
・金融市場には“10年周期説”という見方がある。1987年、1997年、2007年と末尾に7が付く10年毎の年に、世界の株式市場が大きく下落するイベントが発生した。87年にはブラックマンデーがあり、97年にはアジア通貨危機、2007年にはサブプライム問題が発生した。この周期を適用すると、今から2年後の2017年に世界の株式市場が変調を来すとの見方だ
・この周期説を鵜呑みにするつもりはないが、足元の経済状況や米国の金融の金融政策変更の可能性などを考えると、2017年に世界的に株式市場が急落する事態が発生することも、あながち荒唐無稽と片づけられない部分がある
・そう考える理由の一つは、足元で世界経済のデフレ傾向が続いていることだ。大規模な過剰供給能力を抱える中国の卸売物価指数は41ヵ月連続マイナスで、明らかにモノを売りたい人が買いたい人を上回っている
・わが国では、日銀が異次元の金融緩和策を取ってデフレ脱却を目指しているが、原油価格の下落もあり、なかなかデフレ状況から明確に足を抜くことができない。また、相対的に期待インフレが高い欧米諸国でも物価水準は落ち着いたままだ
・そうした状況が続いている間は、世界経済全体が力強く回復に向かうことは難しい。ということは、企業業績の伸び率に限界があり、株価が大きく上昇することは難しいと見るべきだ
・逆に、そうした状況下で、“バブル”のように株価が急速に上昇するようだと、必ず大幅に下落する局面を迎えることは避けられない。特に、昨年夏場以降、景気減速が鮮明化しているにも拘わらず、株価が1年間余りで2倍以上に上昇した中国株がピークを打って、下落局面に入ることは時間の問題だったと言える
▽中国と米欧の変調が重なり、政策対応もできないという最悪のリスク
・もう一つの理由は米国の金融政策だ。同国の金融政策が緩和から引き締めに転換されたことは、“10年周期説”における株価急落のきっかけの一つになった。 基軸通貨であるドルを司る米FRBの金融政策が、お金を潤沢に供給する緩和基調から、金利を引き上げ、市中に出回っているお金の一部を吸収する引き締めに転換することは、米国のみならず、世界の金融市場に大きな変化をもたらす
・米国の金利が上昇することによって、同国の株式市場から投資資金が流出し、市場が不安定化することが懸念される。また、新興国の金融市場に回っていた資金は、米国に回帰する=リパトリエーションの可能性が高まる。それが実現されると、新興国の株式市場が不安定な展開になりやすくなる
・今回の世界同時株安の前まで、FRBは9月に金利の引き上げを実施するとの見方が有力だった。仮に今年中にFRBが金利引き上げを実施すると、かつて10年毎に発生した株価急落の引き金になることも懸念される
・重要なポイントは、今後数年の間に、“チャイナリスク”が顕在化し、それに米国やユーロ圏経済の落ち込みが重なると、そのインパクトはかなり大きくなる可能性が高いことだ。市場関係者の一部には、「中国・欧米の経済が一度に下落すると、世界恐慌のような最悪のシナリオの可能性も否定できない」との悲観的な見方もある
・2008年のリーマンショックの時には、世界的な不動産バブルの後だったこともあり、多くの主要国経済はそれなりにパワーが残っていた。金融・財政政策にも一定の発動余地があった
・ところが足元の状況を見ると、わが国や欧米諸国に関しては、金融・財政政策にほとんどのりしろが残っていない。言ってみれば、主要国の政策当局は、政策発動の余地が限られた、ほとんど丸腰の状態で景気の落ち込みに対峙しなければならない。それは容易なことではない
・残念だが、その最悪のリスクシナリオが実現する可能性を完全に払拭することはできない
http://diamond.jp/articles/-/77643

次に、9月4日付けロイター「コラム:世界株安の教訓、次の過大評価は何か=熊野英生氏」のポイントを紹介しよう。
・8月上旬から始まった世界連鎖株安は、まだ楽観してはいけない段階にある。過去、株価が下落したときには、背後に実体面での変化が隠れていて、株価はそれを先取りするかたちで反応していることが多かった
・背後にある悪材料は、株価下落の局面ごとにその素顔が異なっていて、一様ではない。そのため、「今回は過去とは違ってみえるから、大丈夫」という楽観のバイアスに常に流されてしまう
・上記の議論は実例を示した方が、話が早い。代表的な株価下落は2008年のリーマンショックである。このときは、手前にサブプライムローン問題があって、時間をおいて同年9月にリーマン・ブラザーズの破綻があった。隠れたレバレッジと証券化商品の損失拡大がこれほど広範囲に隠れていたとは、その6カ月前のベアー・スターンズ救済時には十分に認識されていなかった
・直近では2013年5月のバーナンキショックがある。あのときは、金融緩和の終了を示唆しただけで、新興国通貨の下落が誘発された。事前に、ドルの過剰流動性がそこまで新興国通貨の買われ過ぎを生じさせていたことが認識されていなかった
・2000年のITバブルの崩壊は、米国の新興企業の株価上昇が行き過ぎていることが十分理解されていなかった
・1997年のアジア通貨危機は、アジアの新興国の経済成長力を見誤っていた
・それぞれの局面における株価・通貨下落に共通するのは、実体面で何らかの過大評価が起こっていたという点である。局面ごとに材料視される対象は変わるが、共通点は、その対象を事前には過大評価していて、それが何かの弾みで暗転することだ
・過大評価が是正されるときには、金融市場の予想が悲観に大きく振れて、マーケットにおける売られ過ぎを引き起こす。実体の変化に対して、期待形成の振れが大きくなるから株価などの振れがより大きくなるわけだ
・とはいえ、何が過大評価だったのかは、後講釈で語るのは易しい。反対に、現在や未来に対して、何が過大評価であり、何が将来の過大評価になるのかを特定することは甚だしく困難である。問題の核心はまさにそこにあるにもかかわらず、である
・今、株価下落の背後にあるものは何に対する過大評価なのだろうか。上海株の下落と、日米欧の株価下落が連鎖することは、資金移動では説明できない。人によっては、上海株の下落は、本当は関係ないとみえるかもしれない。筆者は、上海株の下落は、中国経済への楽観や中国政府の管理能力への過度の期待がはがれ落ちたものだとみている
・今、考えると、「新常態(ニューノーマル)」は、景気悪化を安定成長と読み替えるレトリックだった。新常態という言葉が、評価を偽装するものだったように思える。すると、個別企業の中国関連ビジネスの採算性もどうなるかわからない。中国関連ビジネスの悪化は、これから先進国企業の収益に表れてくるだろう
・もしかすると、筆者自身でさえ、まだまだ中国の経済成長に楽観している部分があるかもしれない。今後、中国経済に対する不都合な事実が判明すると、現時点の楽観が修正されて、金融市場の波乱を生じさせる可能性がある
▽日米にもある過大評価の芽
・思考実験として、中国経済以外に、何が過大評価されているかを問いたい。まず卑近な例では、来日する中国人観光客の旺盛な消費、いわゆる「爆買い」だろう。その勢いが継続するという期待感は、やや過大評価されている代表例ではないか。「爆買いがなくなる」というのは明らかに言葉の誤用だが、訪日外国人の消費ペースが普通の需要ペースに落ちることは十分に考えられる
・ほかには、日本企業の収益力への期待感である。今年は「株主資本利益率(ROE)を高める」というのが合言葉のようになっていた。上場企業のROEは8%で、今後も高まっていくとみられているが、世界経済が不安定化すれば、グローバル化している日本企業も無傷ではいられないはずだ
・さらに、米国経済の成長力である。米連邦準備理事会(FRB)の利上げ予想は、基本的に米経済の強さに依拠している。筆者自身も現時点では、中国発の景気下押し圧力が働いても、米経済のけん引力が勝って、世界経済が先行きは浮揚していくとみている。こうした見方は、現在は疑われにくいが、そこに過大評価が潜んでいるリスクがあるかもしれない
・最後に、もっと先々の過大評価にも言及しておきたい。日本においては、2020年の東京五輪は、政治的テーマとして人々の楽観を生み出しやすい。筆者は、新国立競技場の費用が高すぎるのではないかという批判があることや、「東京五輪は最後の宴」と揶揄する庶民の声があることは、むしろ健全なことだと考える。そうした冷ややかな見方が小さくなって、東京五輪で日本経済が飛躍するという見解が大勢を占めるとき、危惧される過大評価が生じていることになろう
・現在のように株価が下落して、きな臭い状態が予感される局面だからこそ、甘い将来展望に注意を払い、現時点で隠れているリスクに気を配ることが有意義になる
http://jp.reuters.com/article/2015/09/04/column-hideokumano-idJPKCN0R40AF20150904?pageNumber=1

“10年周期説”は興味深い考え方で、これだと次は確かに2017となるが、私には今回は既に調整が始まっているようにも思える。今後、2017にかけさらに調整が深刻化するという「悲観的シナリオ」も否定できない。特に、「金融・財政政策にほとんどのりしろが残っていない」状況下では、考えるだけでも恐ろしい事態である。真壁氏のいうこういう「最悪シナリオ」もあり得ることを頭の片隅に置き、熊野氏のいう「現時点で隠れているリスクに気を配り」つつ、日々の生活は楽観的に送りたいものだ。
タグ:ロイター リーマンショック 世界同時株安 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 今日の日経平均株価 空売りの買戻し 爆買い アジア通貨危機 バーナンキショック 新常態(ニューノーマル) 1343円高 21年7か月ぶりの上げ幅 一時的側面も強い 長い目でみたレポート 次の金融恐慌は2017年か!?“10年周期説”の信憑性 投資家の買い戻し 金融市場は安定した展開を取り戻すだろう 長い目で見ると 中国経済が抱える問題 経済や政治体制などの問題点が表面化する可能性は高い 中国政府の慌てぶり 強引な株価押し上げ策 突然の為替レートの実質的な切り下げ 政策当局のコントロールの限界 中国政府が制御できる範囲はかなり限定的 中国の問題が顕在化した場合 今回の世界同時株安を上回る混乱が発生 中国の経済問題と欧米経済の減速などが運悪くタイミングが重なると 主要国の経済政策ののりしろが限られている 世界恐慌のような厳しい状況 コラム:世界株安の教訓、次の過大評価は何か=熊野英生氏 背後に実体面での変化が隠れていて、株価はそれを先取りするかたちで反応 今回は過去とは違ってみえるから、大丈夫 楽観のバイアスに常に流されてしまう 手前にサブプライムローン問題 隠れたレバレッジと証券化商品の損失拡大 金融緩和の終了を示唆 新興国通貨の下落が誘発 ドルの過剰流動性がそこまで新興国通貨の買われ過ぎを生じさせていた ITバブルの崩壊 アジアの新興国の経済成長力を見誤っていた 実体面で何らかの過大評価が起こっていた 過大評価が是正 金融市場の予想が悲観に大きく振れて マーケットにおける売られ過ぎ 何が過大評価であり、何が将来の過大評価になるのかを特定することは甚だしく困難 上海株の下落 中国経済への楽観や中国政府の管理能力への過度の期待がはがれ落ちたもの 景気悪化を安定成長と読み替えるレトリック 中国経済に対する不都合な事実が判明 現時点の楽観が修正 金融市場の波乱 日米にもある過大評価の芽 その勢いが継続するという期待感は、やや過大評価されている代表例 世界経済が不安定化すれば、グローバル化している日本企業も無傷ではいられないはずだ 米経済の強さ 過大評価が潜んでいるリスク もっと先々の過大評価 2020年の東京五輪 東京五輪は最後の宴
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中国経済 [世界経済]

今日も日経平均株価は3日連続の下げとなったが、株安の主因とされる中国経済を取上げよう。なお、人民元切り下げ騒動については、8月19日に取上げたので、参照されたい。

先ずは、8月27日付けJBPress(FinancalTimes)「中国について心配することが妥当な理由 問題は中国株の下落そのものではなく、それが示唆すること」のポイントを紹介したい。
・中国の株式市場の下落は心配する価値がある。それは、単なる株式バブルの破裂にもうまく対処できていないように見える中国政府当局が直面している難問の大きさだ
・中国主導で調整局面に入った株式市場:株式市場は確かに、中国がリードする形で調整局面に入っている。上海総合指数は6月につけた高値から今週火曜日(8月25日)にかけて43%下落。だが、それでも2014年初めの水準に比べれば50%高い。ここ10年で2度目となる中国株バブルの崩壊はまだ終わっていないと思われる
・中国の株式市場は普通の市場ではない。「自分よりも愚かなプレーヤー」に割高なチップを手遅れになる前に渡してしまおうと全員が願っているカジノのような面が、この世界のほとんどの市場よりも強い。そういう市場はボラティリティー(変動性)が極端に高くなるのが常だ。だが、この気まぐれな動きは、中国経済全体についてほとんど何も物語らない
・それでも、中国市場でいま起こっていることは、関連し合う2つの点で非常に重要な意味を持っている
・第1の点は、中国政府当局がバブル崩壊を阻止する取り組み(意外なことではないが、成功していない)にかなりの量の資源と、さらには政治の威信まで賭ける決断を下したこと
・第2の点は、当局は経済が心配だったからこそそこまでやったに違いないということだ。成功する望みのない行動に出るほど当局が心配しているのであれば、我々も心配すべきだろう
・中国当局の行動が懸念される理由はこれだけではない。8月11日に行われた人民元切り下げの決断も懸念すべき材料だ。米ドルに対する切り下げ率は今のところ2.8%に過ぎず、切り下げ自体はさして重要ではない
・しかし、この行動には重要な意味が隠されている。第1に、中国当局は、25日に行ったような金利引き下げの余地を欲しがっている。そのこと自体、当局が経済の状態を懸念していることを表している
・もう1つ考えられる意味合いは、中国当局が輸出主導の経済成長を復活させようとしている可能性がある、ということだ。もしそんなことになれば世界経済に破滅的な影響が及ぶため、筆者自身は信じがたいことだと考えているが、少なくとも、不安定性をもたらすそのような可能性について心配すること自体は妥当だろう
・考えられる最後の意味合いは、中国当局は資本逃避の容認に備えているということだ。もしその通りなら、米国は自分で仕掛けた罠にかかってしまうことになる。米国政府は以前から、中国に資本勘定の自由化を求めてきた。それゆえ、人民元の下落という短期的な不安定要因を容認せざるを得ないかもしれない
・最近の出来事は、より深刻な懸念という文脈で見ていかねばならない。問題は、中国を投資主導の経済から消費主体の経済にシフトするという仕事を、総需要の水準を維持しながら成し遂げる能力と意志が中国政府当局にあるか否か、である
・もしその能力があるのなら、中国経済は6~7%の経済成長も維持するだろう。その能力がないのであれば、経済と政治が不安定化することになる
・中国の景気はすでに減速している。「新常態(ニューノーマル)」の話はこの現実を認識。しかし、アナリストらが独自に予想した経済成長率を調査会社コンセンサス・エコノミクスが集計したところ、2015年第4四半期の予想成長率(前年比)の平均はわずか5.3%になった
・このような数字が正しいと仮定してみよう。 政府の公式統計によれば、2014年の総固定資本形成は国内総生産(GDP)の44%を占めていた。 しかし、GDPの44%を投資に回していながら5%しか成長しないというのは、経済にとって理にかなった行動なのだろうか。 答えはノーだ。このデータは、投資の限界収益率がマイナスとは言わないまでもかなり低い値であることを示唆している。もしその通りであれば、投資は急減する恐れがある
・総需要の不足への懸念は今に始まったことではないが・・・:ムダな投資が真っ先にカットされるのであれば、投資が急減しても中国の潜在成長率は低下しないかもしれない。しかし、需要は急減するだろう。中国当局がこれまでやってきていることはすべて、需要の急減こそが当局の心配の種であることを示唆
・総需要が不足するという心配は目新しいものではない。西側諸国で金融危機が起こり、中国の輸出への需要が大幅に落ち込んだ時からずっと強く懸念されていることだ。この輸出の急減を受けて、中国は独自の、借り入れを燃料とする投資ブームに乗り出したのだ
・目覚ましいことに(そして心配なことに)、GDPに占める投資の割合は高まり、それにつれて潜在的産出量の伸び率は低下した。長期的に見れば、これは持続可能な組み合わせではなかった
・中国政府当局は経済の面で頭の痛い課題を3つ抱えた。 第1の課題は、金融危機を回避しながら、過去の金融行動の行き過ぎによる遺物を片付けること。
・第2の課題は、官民の消費への依存度を高めつつ、異常な水準にある投資への依存度を低くできるように経済を作り直すことだ
・そして第3の問題は、総需要のダイナミックな拡大を持続させながらこれらの課題をすべて達成することである
・昨今の出来事が重要なのは、中国当局がこの3つの課題を解決する方法をまだ見いだせていないことを示唆しているからだ。さらに悪いことに、当局がこの7年間に講じてきた弥縫策により、状況はさらに悪化してしまっている
・ひょっとしたら、今後の情勢が厳しいこと、そして当局が実際に選ぶかもしれない方策の中には不安定さを高めるものも混じっていることを、株式市場はすでに把握しているのかもしれない。具体的には、人民元の切り下げ、超低金利、さらには金融の量的緩和などだ
・もしこの見方が正しいのであれば、市場の心配はばかげたものではないかもしれないことになる。世界の貯蓄過剰はさらにひどくなる恐れがある。もし本当にひどくなったら、全員が影響を受けることになるだろう
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44641

次に、8月31日付け東洋経済オンライン「中国の金融緩和は、なぜ不発に終わったのか そして忍び寄る深刻な「債務デフレ」」のポイントを紹介しよう。
・年明けからバブル的に上昇してきた中国の株価は完全に振り出しに戻った。上海総合指数は8月24日、25日と2日連続で大幅に下落し、2014年12月以来の3000ポイント割れとなった
・中国メディアは8月25日、証券大手である、中信証券の徐剛総経理(社長)が公安当局の取り調べを受けていると報じた。違法取引がらみとされているが、具体的な内容は明らかではない
・有力経済誌『財経』の記者もこの日に連行された。この記者が7月20日に報じた「当局が株価下支え策の縮小を検討中」という趣旨の記事が問題視されたもよう。とにかくスケープゴートを作ろうとしている印象だ
・同日夜に中国人民銀行(中央銀行)は、追加金融緩和策を発表。政策金利は26日から0.25ポイント引き下げられて4.6%とされた。銀行に義務づけられている預金準備率についても、9月6日から0.5ポイント引き下げられることになった
・メディアに強権をちらつかせて服従を迫りながら、切り札である金融緩和を素早く実行。が、翌26日の上海総合指数は1.3%安の2927ポイントとなり、その後も当局の思うようには戻っていない
・6月以降の大幅な株価下落局面で、当局は買い支えのために大手証券会社を動員し、警察が「悪意あるカラ売り」を取り締まるなど、さまざまな手立てを講じて大台とされる4000ポイント台に回復させた。 結果、中国の株式市場は当局が極端な手段で介入する市場であることが、世界中に知られるようになった。ところが今回、テコ入れがまるで効かないことは、「よほど経済のファンダメンタルズが悪いのではないか」という疑念を抱かせる
・実際、景気の低迷は明らかだ。中国製造業PMI(購買担当者景気指数)の8月速報値は47.1と、7月の47.8を下回り6年半ぶりの低水準。同指数は50を切ると景気後退を示唆するといわれており、8月まで6カ月連続で50を割り込んでいる
・デフレ圧力も高まっている。7月の卸売物価指数は前年同月比5.4%と大きく落ち込み、41カ月連続のマイナス。ここに企業活動の停滞ぶりがはっきり表れている
・中国は8月11日に人民元の基準値設定のあり方を見直し、対ドルレートは元安の方向に振れた。介入で元安を止めるという従来の政策を転換した背景には、元買いが金融引き締め効果をもたらし、デフレ阻止のための金融緩和と矛盾するという、構造問題がある。その交通整理を行うことで、さらなる緩和の地ならしができていた
・預金準備率の引き下げと利下げを同時に発表した8月25日、人民銀行の発表文には、「企業の資金調達コストを下げるため」と記された
・中国の非金融企業(地方政府の資金調達機関である、地方融資プラットフォームを含む)の債務残高は、2014年末時点で99.7兆元(約2000兆円)だ。GDPに対する比率は156.7%にも達する。これは日本のバブル期(1989年に132.2%)をも上回る水準である
・日本総合研究所の関辰一・副主任研究員は「金利を6%、返済期間を10年と仮定すれば、毎年の元利支払い負担は16兆元(約320兆円)に及ぶ。金融緩和があっても、企業は設備投資より、バランスシート調整を優先する可能性が高い」と見る。実際、人民銀行が発表している企業の資金需要を表す指数は、金融緩和が始まった14年冬以降も、低下の一途をたどっている
・日本ではポストバブル期の91年に金融緩和に転じたものの、企業の設備投資の回復にはつながらず、「バランスシート不況」が長期化した。現在の中国も、そのとば口に立っている可能性がある
・行き場のない資金が不動産へ?:潜在成長力が落ちている中で金融緩和を継続すれば、資産バブルをいっそう膨らませるおそれがある
・2014年半ばからすでに総崩れの様相を呈していた不動産市況は、今年の春から回復傾向だ。内陸部の都市で低迷が続く一方、深センなど沿海部では突出した上昇が見られる。株式市場の低迷を受けて、行き場のない資金が実勢以上に価格を押し上げている、という懸念はぬぐえない
・こうした状況で景気を刺激する最終手段は、中央財政によるインフラ投資の拡大だろう。9月には、G20(主要20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議や、習近平国家主席の訪米が控えている。世界経済の中での存在感を示すという意味合いからも、中国が財政出動に打って出る可能性が高まっている
・だがそれは、08年のリーマンショック後に中国が総額4兆元もの景気対策を打ち、地方政府の財政を悪化させた失敗の二の舞いになりかねない。財政頼みで景気刺激を繰り返すようになれば、日本がたどった道に重なる
・結局のところ、国有企業改革など生産性向上のための地道な取り組みしか、活路はない。そのために残された時間は決して多くない
http://toyokeizai.net/articles/-/82220

リーマンショック後の総額4兆元もの景気対策は、世界経済にも大きな救いになったことは事実だが、その裏で地方政府の財政や、企業の債務大幅増加があった。これを繰り返して、現在の苦境を凌ごうとすれば、目先は何とかなっても、必要な調整を先送りするだけでなく、必要な調整をますます大きくしているに過ぎず、長期的には調整が深く、長くなるようだ。中国経済の軟着陸させるには、神業が必要らしい。
タグ:東洋経済オンライン 卸売物価指数 金融危機 超低金利 中国経済 上海総合指数 追加金融緩和策 中国人民銀行 日本では 中国の株式市場 株安の主因 JBPress(FinancalTimes) 中国について心配することが妥当な理由 問題は中国株の下落そのものではなく、それが示唆すること 単なる株式バブルの破裂にもうまく対処できていない 中国政府当局が直面している難問の大きさ 43%下落 2014年初めの水準に比べれば50%高い 中国株バブルの崩壊はまだ終わっていない カジノのような面 中国政府当局がバブル崩壊を阻止する取り組み にかなりの量の資源と、さらには政治の威信まで賭ける決断を下したこと 当局は経済が心配だったからこそそこまでやったに違いない 人民元切り下げの決断 金利引き下げの余地を欲しがっている 当局が経済の状態を懸念 輸出主導の経済成長を復活させようとしている可能性 世界経済に破滅的な影響 資本逃避の容認に備えている 米国は自分で仕掛けた罠にかかってしまうことになる 投資主導の経済から消費主体の経済にシフト 総需要の水準を維持しながら成し遂げる能力と意志 新常態(ニューノーマル) 総固定資本形成は国内総生産(GDP)の44% 投資の限界収益率がマイナスとは言わないまでもかなり低い値であることを示唆 投資は急減する恐れ 需要は急減するだろう 中国は独自の、借り入れを燃料とする投資ブームに乗り出した GDPに占める投資の割合は高まり 潜在的産出量の伸び率は低下 持続可能な組み合わせではなかった 頭の痛い課題を3つ抱えた 金融危機を回避しながら、過去の金融行動の行き過ぎによる遺物を片付けること 官民の消費への依存度を高めつつ、異常な水準にある投資への依存度を低くできるように経済を作り直すこと 総需要のダイナミックな拡大を持続させながらこれらの課題をすべて達成すること 中国当局がこの3つの課題を解決する方法をまだ見いだせていない がこの7年間に講じてきた弥縫策により、状況はさらに悪化 人民元の切り下げ 金融の量的緩和 世界の貯蓄過剰はさらにひどくなる恐れ 中国の金融緩和は、なぜ不発に終わったのか そして忍び寄る深刻な「債務デフレ」 中信証券の徐剛総経理(社長)が公安当局の取り調べ 有力経済誌『財経』の記者もこの日に連行 翌26日の上海総合指数は1.3%安の2927ポイントとなり、その後も当局の思うようには戻っていない 買い支えのために大手証券会社を動員 察が「悪意あるカラ売り」を取り締まる 大台とされる4000ポイント台に回復させた 当局が極端な手段で介入する市場 今回、テコ入れがまるで効かない よほど経済のファンダメンタルズが悪いのではないか 景気の低迷は明らかだ 製造業PMI(購買担当者景気指数) 8月まで6カ月連続で50を割り込んでいる ・デフレ圧力も高まっている 41カ月連続のマイナス 人民元の基準値設定のあり方を見直し 中国の非金融企業 債務残高は、2014年末時点で99.7兆元(約2000兆円) GDPに対する比率は156.7% 日本のバブル期(1989年に132.2%)をも上回る水準 企業は設備投資より、バランスシート調整を優先する可能性が高い 、「バランスシート不況」が長期化 現在の中国も、そのとば口に立っている可能性 資産バブルをいっそう膨らませるおそれ 不動産市況は、今年の春から回復傾向 行き場のない資金が実勢以上に価格を押し上げている 景気を刺激する最終手段は、中央財政によるインフラ投資の拡大 9月には、G20(主要20カ国・地域)財務相・中央銀行総裁会議や、習近平国家主席の訪米 中国が財政出動に打って出る可能性が高まっている 総額4兆元もの景気対策を打ち、地方政府の財政を悪化させた失敗の二の舞いになりかねない 国有企業改革 地道な取り組みしか、活路はない
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