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ミャンマー(その7)(少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺 検問所爆破 戦闘機撃墜も、ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない) [世界情勢]

ミャンマーについては、昨年2月17日に取上げた。今日は、(その7)(少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺 検問所爆破 戦闘機撃墜も、ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない)である。

先ずは、本年3月19日付け現代ビジネスが掲載したPanAsiaNews記者の大塚 智彦氏による「少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107805?imp=0
・『軍政の残虐非道な行動が明らかに  ミン・アウン・フライン司令官率いるミャンマー軍事政権は2022年から2023年にかけて反軍政の抵抗を続ける市民組織「国民防衛軍(PDF)」などへの弾圧を強化しており、その過程で一般市民の殺害も増加している。 そうした中でも特に未成年の若者や女性を虐殺するケースが相次いで報告され、人権侵害がこれまで以上に深刻化しているという。 さらに2023年3月13日にはミャンマーの独立系メディアが仏教寺院に避難していた一般市民と同時に僧侶をも殺害していたことを報じた。 ミャンマーは国民の90%を仏教徒が占める国で、僧侶は国民の尊敬を集める対象となっているだけに、僧侶まで殺害するという軍政の容赦ない姿勢は反軍政を掲げる国民の反感と怒りを高めている。 こうした軍政の残虐非道な行動は、2月2日に戒厳令を7郡区から37郡区に拡大し、同月22日にもさらにサガイン地方域で3郡区を追加するなどして、抵抗勢力との戦闘が激化している地方での軍の権力を強化したことと関係があるとみられている。 2021年2月のクーデター以降すでに2年以上が経過しながらも、国内の治安が一向に安定せず、8月に予定している「民主的な総選挙」の実施も危ぶまれる状況に対する軍政の焦りが背景にあるとの見方が有力視されている。 軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図しているとされ、各地から報告される兵士による残虐行為はその反映とされている』、「ミャンマーは国民の90%を仏教徒が占める国で、僧侶は国民の尊敬を集める対象となっているだけに、僧侶まで殺害するという軍政の容赦ない姿勢は反軍政を掲げる国民の反感と怒りを高めている。 こうした軍政の残虐非道な行動は、2月2日に戒厳令を7郡区から37郡区に拡大し、同月22日にもさらにサガイン地方域で3郡区を追加するなどして、抵抗勢力との戦闘が激化している地方での軍の権力を強化したことと関係があるとみられている。 2021年2月のクーデター以降すでに2年以上が経過しながらも、国内の治安が一向に安定せず、8月に予定している「民主的な総選挙」の実施も危ぶまれる状況に対する軍政の焦りが背景にあるとの見方が有力視されている」、なるほど。
・『寺院の避難民を僧侶と共に殺害  独立メディア「ミャンマー・ナウ」はミャンマー北東部シャン州南部ピンラウン郡区のナンニント村で市民ら29人が殺害されているのを地元抵抗勢力である「カレンニー民族防衛隊(KNDF)」が3月13日の声明で明らかにしたと伝えた。29人の中には仏教僧侶3人が含まれていたとしている。 KNDFなどによると、軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている。 ナンニント村の大半の住民は軍による攻撃激化を恐れて数週間前にすでに村外に避難していたが、僧侶が避難をせずに村に留まったことから20数人の男性村人が共に村に残り、空襲・砲撃を逃れるために寺院に避難していたという。 KNDFはナンニント村の状況を確認するためにドローンで上空から偵察していたところ、寺院で多数の遺体を発見したものの兵士が撤退するのを待ったため現場の寺院には12日までたどり着けなかったとしている。 KNDFのミャンマー語のホームページには殺害現場の生々しい写真が複数アップされ、民族衣装であるロンジーをまとった多数の男性が銃撃を受けて頭部や上半身などから血を流して寺院の外壁周辺に倒れている様子が写っている。 死者の間にはサフラン色の僧衣をまとった仏教僧侶が僧衣の一部を血に染めて横たわっており、寺院の外壁にも多数の弾痕が残されている。住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという。 この寺院襲撃、僧侶殺害に関し、軍政のゾー・ミン・トゥン報道官はメディアに対して武装市民組織と民間人の何人かが死亡したことは確認したものの「地元のPDFメンバーによる殺害である」として兵士の関与を否定した』、「軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている・・・住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという」、自国軍隊がやることとは思えない、酷い話だ。
・『若者を虐殺、斬首で遺体放置  独立系メディアなどによると、2月25日に北西部サガイン地方域ミンム郡区ニャウン・ピンカン村付近で武装市民組織PDFと軍による戦闘が発生した。PDF側が弾薬不足のため退却する際に退路に地雷を埋設していた若者5人が軍に拘束された。 その後若者5人の遺体が発見されたが、うち3人は斬首され、頭部が竹柵や荷車の上に「晒し首」状態で放置されており、中には手足が切断された遺体もあったという。遺体には銃創が一切ないことから、若者らは生きたまま斬首された可能性が高いとみられている。 兵士は殺害した若者の携帯電話を取り上げて犠牲者の親族や友人に電話をかけて「死を祝っている」と述べたうえ、犠牲者を罵倒し続けたという。 斬首されたのは15歳の少年、17歳と19歳の青年で、いずれも地元の武装市民組織を手伝い地雷を設置していたところを軍に拘束され、虐殺されたという。事件を伝える独立メディアのウェブサイトには3人の若者がほほ笑む生前の写真がアップされている。 同村周辺ではさらに2人の若者の殺害遺体も発見されているほか、サガイン地方域カン・タイン村では別の男性2人の斬首遺体が発見され、同地方域ミンム郡区ニャウンイン村では16人が殺害されている。 このように国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている。 このほか10月には北部カチン州ハパカント近郊の村で軍政に抵抗を続ける少数民族武装勢力やその支持者、一般市民が参加して開催中のコンサート会場を軍が空爆して地元の著名女性歌手や男性演奏家、多数の観衆が殺害される事件も起きている』、「PDF側が弾薬不足のため退却する際に退路に地雷を埋設していた若者5人が軍に拘束された。 その後若者5人の遺体が発見されたが、うち3人は斬首され、頭部が竹柵や荷車の上に「晒し首」状態で放置されており、中には手足が切断された遺体もあったという。遺体には銃創が一切ないことから、若者らは生きたまま斬首された可能性が高いとみられている・・・国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している・・・国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている」、本当に国郡の暴虐ぶりは目に余る。
・『レイプして殺害される女性たち  3月2日、サガイン地方域サガイン群区タルタイン村で女性3人を含む住民が軍に拘束されて「人間の盾」として戦闘現場に立たされたことが報じられた。 さらに同じ日、同地方域ミンム群区ニャウンイン村でレイプされた女性の遺体が発見されたほか。同村では計14人の遺体が発見されたが、その中にはレイプされ顔面や頭部を激しく殴打された痕跡の残る女性3人の遺体も含まれていたという。 2022年8月27日には、サガイン地方域カニ郡区タイエットピンブラ村に進入した兵士らが民家に取り残された知的障害のある40代の女性を屋外に連れ出して複数の兵士がレイプした。 また同月11日には同地方域インマビン群区インバウンテン村で10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も明らかになっている』、「同地方域ミンム群区ニャウンイン村でレイプされた女性の遺体が発見されたほか。同村では計14人の遺体が発見されたが、その中にはレイプされ顔面や頭部を激しく殴打された痕跡の残る女性3人の遺体も含まれていたという・・・2022年8月11日には同地方域インマビン群区インバウンテン村で10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も」、よくぞこんなにも「残虐」な「事件」が続発するとは、やはり「ミャンマー」は異常な国だ。
・『激化する人権侵害事件  このように軍は2022年から、各地で抵抗を続ける武装市民組織メンバーに対する掃討作戦を通じて一般市民を巻き込んだ強権的弾圧を強化、女性や若者をも無差別に殺害しているが、国民の尊敬と信仰の対象である仏教僧侶まで容赦なく殺害するという暴挙に対し内外から厳しい批判が高まっている。 戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている。 タイ西部ターク県メーソットに本拠を置くミャンマーの人権団体「ミャンマー政治犯支援協会(AAPP)」によると、3月14日現在、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている』、「軍は2022年から、各地で抵抗を続ける武装市民組織メンバーに対する掃討作戦を通じて一般市民を巻き込んだ強権的弾圧を強化、女性や若者をも無差別に殺害しているが、国民の尊敬と信仰の対象である仏教僧侶まで容赦なく殺害するという暴挙に対し内外から厳しい批判が高まっている。 戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている」、極めて危険な状態だ。日本はODAなどを通じて「ミャンマー」に強い影響力を持っているので、軍政の混乱解決に向け指導力を発揮してもらいたい。

次に、8月8日付け現代ビジネスが掲載したPanAsiaNews記者の大塚 智彦氏による「ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺、検問所爆破、戦闘機撃墜も」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114446?imp=0
・『実質的な内戦状態にあり治安状況が深刻化しているミャンマーで、ミン・アウン・フライン国軍司令官率いる軍政は7月31日に期限を迎えた非常事態宣言を6ヵ月延長することを決めた。これにより軍政が目指す「民政移管の為の民主的選挙」の実施は2024年2月以降にずれ込むことが確定し、軍政の強権弾圧政治が続くことになった。 軍政が非常事態宣言を延長した理由は国軍司令官が「武装した暴力が続いている。選挙は時期尚早で用意周到に準備する必要がある。当面の間我々が責任を負わなければならない」と述べたように、国内の治安が予想に反して一向に安定せず、各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や国境地帯を拠点とする少数民族武装勢力が軍や警察を攻撃し、軍も住民に対して暴力や虐殺を続けるなど、全土で戦闘が激化していることが背景にある』、「軍政が非常事態宣言を延長した理由は・・・国内の治安が予想に反して一向に安定せず、各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や国境地帯を拠点とする少数民族武装勢力が軍や警察を攻撃し、軍も住民に対して暴力や虐殺を続けるなど、全土で戦闘が激化していることが背景にある」、なるほど。
・『PDFによる軍への攻撃  軍政に抵抗する立場から報道を続けているミャンマーの独立系メディア「イラワジ」は7月31日、ミャンマー各地でのPDFと軍の戦闘を詳しく伝えた。 それによると戦闘は北西部のザガイン地方域、チン州、西部のカレン州(カイン州)中部のマンダレー地方域、南部のタニンダーリ地方域、東部のシャン州の各地で発生とミャンマーのほぼ全域に渡り、治安状況が軍政にとって深刻な問題になっていることが裏付けられている。 マンダレー地方域では7月27日、タベイッキン郡区でイラワジ川を航行していた軍の9隻の船団に対し、同地方域やザガイン地方域から集結した37のPDF組織が共同で待ち伏せ攻撃を敢行した。 船団の2隻を破壊したが、別の船から発砲があり川中の船と沿岸8ヵ所との間で激しい銃撃戦が交わされた。その後、船団は現場を逃れたため軍兵士の死傷者数は明らかになっていないが、同船団は食料や武器、弾薬、人員を補充するため輸送中だったとしている。 チン州ミンダット郡区では7月30日、パトロール中の軍の車列を地元のPDFが待ち伏せ攻撃し兵士8人を殺害した。さらに7月28日にはザガイン地方域モンユワ郡区にある軍の北西司令部をPDFが107ミリロケット弾で攻撃し、軍施設に損害を与えたという。 このほかにもタニンダーリ地方域では地元PDF部隊が地雷6つを使って軍を攻撃し、兵士10人を殺害したと報じた。 こうした一連の攻撃で軍側には少なくとも89人の犠牲を強いたと各地のPDFは報告しており、軍側の被害が拡大していることを印象付けた』、「こうした一連の攻撃で軍側には少なくとも89人の犠牲を強いたと各地のPDFは報告しており、軍側の被害が拡大していることを印象付けた」、なるほど。
・『戦闘機を地上から撃墜  軍政は戦闘機や爆撃機、ヘリコプターなどで掌握している制空権を利用して各地のPDF拠点への空からの攻撃を強化しているが、学校や仏教寺院などの被害も拡大しており、「無差別空爆」を行っている可能性もあるという。 そんな中、東部カヤー州パウラケ郡区にある少数民族武装勢力「カレンニ民族人民解放戦線(KNPLF)」の拠点を攻撃するために戦闘機1機が低空飛行で接近した際、地上からの銃撃などで撃墜に成功したとKNPLFが明らかにした。 KNPLFによると、特に対空兵器があった訳ではないが、メンバーによる必死の攻撃で墜落させた、と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させたという。 この戦闘機はイワルティット村近くに墜落したが同村周辺は軍の支配地域のため、墜落した戦闘機の詳しい情報は当初不明だった。軍が急いで機体の残骸を片付けてしまったことも影響しているが、KNPLFは、その後詳細が明らかになったとしている。 それによると同機はK8Wという戦闘機で、空軍の大尉と中尉が乗り込んだ複座で、タウング空軍基地から攻撃のため発進した。その後、空軍は、犠牲となった2人のパイロットをそれぞれ少佐、大尉に昇進させ功績を讃えたという。 さらに7月31日には、カレン州パアン郡区サルウィン橋に設けられていた軍の検問所が地元PDFによって爆破され、民間人1人が死亡、兵士7人を含む10数人が負傷したという。検問所の兵士が近くに駐車していた車両を不審に思って調べようとしたところ爆発したとカレン情報センター(KIC)が情報提供した』、「K8Wという戦闘機で、空軍の大尉と中尉が乗り込んだ複座で、タウング空軍基地から攻撃のため発進した」、「特に対空兵器があった訳ではないが、メンバーによる必死の攻撃で墜落させた、と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、大したものだ。
・『軍が住民14人を虐殺  一方、軍も各地で強力な抵抗を続けるPDFへの攻撃を激化させている。 独立系メディア「ミャンマー・ナウ」が7月31日に伝えたところによると、ザガイン地方域モンユウのチンドウィン川西岸にあるソネチャウン村で住民14人の虐殺があったという。 それによると、雨の降る深夜、ソネチャウン村に約60人の兵士が侵入、民家を訪れては懐中電灯で住民の顔を照らし、地元PDFの幹部を探しだそうとした。犬が大きく吠えて多くの住民が起きたが、当初は軍の接近を住民に連絡する訪問と思って扉を開けた人が多かったという。 軍はミョー・ミン・ウー氏(42)を捜索し、彼を見つけると同じ家にいた兄弟や子供と一緒に拘束した。さらに、PDF関係者とみられる住民を次々と拘束し「武器をどこに隠した」と拷問を加えながら尋問を続けた。拘束された住民はPDFとの関係を否定し、武器の所在も知らないと主張したという。 翌日の明け方には、ミョー・ミン・ウー氏をはじめとする拘束されいた14人の遺体が村のあちこちに放置されているのが見つかった。遺体には拷問の跡や刃物による傷など虐待の痕跡が残され、残虐な手段で虐殺されたことを物語っていた。 兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪するなどの行為を行って村を去ったと報じ、軍の行動を非難した』、「軍はミョー・ミン・ウー氏(42)を捜索し、彼を見つけると同じ家にいた兄弟や子供と一緒に拘束した。さらに、PDF関係者とみられる住民を次々と拘束し「武器をどこに隠した」と拷問を加えながら尋問を続けた。拘束された住民はPDFとの関係を否定し、武器の所在も知らないと主張したという。 翌日の明け方には、ミョー・ミン・ウー氏をはじめとする拘束されいた14人の遺体が村のあちこちに放置されているのが見つかった。遺体には拷問の跡や刃物による傷など虐待の痕跡が残され、残虐な手段で虐殺されたことを物語っていた。 兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪するなどの行為を行って村を去った」、「兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪」、とは実に酷い話だ。
・『柔軟姿勢はあくまで表向き  8月1日、ミン・アウン・フライン国軍司令官は非常事態宣言を延長するとともに、アウン・サン・スー・チーさんを含めた政治犯など約7000人に対する恩赦を発表した。 これにより19のいわれなき罪状で訴追され2022年12月に合計禁固33年の判決を受けて収監されていたスー・チーさんは、5件の刑で計6年の減刑措置を受けた。スー・チーさんの残る刑期は27年となったものの、78歳という年齢を考えると、実質的には終身刑と同じといえる。 軍政は恩赦に先立ち、スー・チーさんをそれまで収容していた首都ネピドー近郊の刑務所内に設けた特別な施設から刑務所外にある政府関係者の民家に移送したという。 さらに7月には、ネピドーを訪問したタイのドーン外相とスー・チーさんとの面会を特別に許可し、両者は直接対面して会談した。スー・チーさんが外国の閣僚と面会するのは2021年2月1日のクーデターで軍によって身柄を拘束されて以来初めてであった。 このように軍政は、スー・チーさんに対し、刑務所外への移送、タイの外相との面会許可、そして恩赦による刑期短縮と「柔軟姿勢」ともとれる措置を相次いで講じているが、これには非常事態宣言の延長という強権政治の継続に対する欧米や東南アジア諸国連合(ASEAN)の批判を交わす狙いがあるとみられている。 しかしこうした「柔軟姿勢」の一方でPDFや少数民族武装勢力など反軍政の抵抗勢力との戦闘を激化させており、武力衝突は依然として内戦状態と言っても過言ではない状況となっている。 この衝突で軍の兵士そして抵抗組織、さらに一般住民の犠牲は増える一方で、軍による人権侵害とともにミャンマー情勢をより深刻かつ複雑なもにしている。 ミャンマー問題の解決の糸口は、一向に見えてこない』、「非常事態宣言の延長という強権政治の継続に対する欧米や東南アジア諸国連合・・・の批判」、日本も批判を「欧米や東南アジア諸国連合」任せにせず、自ら積極的に働きかけてゆくべきだ。

第三に、9月3日付け現代ビジネスが掲載したPanAsiaNews記者の大塚 智彦氏による「ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/115692?imp=0
・『国軍兵士の「寝返り」  軍政と武装抵抗勢力との戦闘が続き実質的な内戦状態にあるミャンマーで、正規軍の中で戦線離脱や部隊離反などによる脱走兵が増加し、その大半が敵対する民主派勢力「国民防衛軍(PDF)」に加わっていることが、ミャンマーの独立系メディアなどの報道で明らかになった。 国軍兵士の「寝返り」ともいえるこの現象は、2021年2月に軍がアウン・サン・スー・チーさん率いる民主政府から実権を奪取したクーデター以来続く傾向というが、2023年になってその数はさらに増加傾向にあると指摘されている。 「ミン・アウン・フライン国軍司令官でさえ実際に国軍兵士の正確な兵力(兵士の数)を把握できていない」と言われるほど、最前線の部隊では定員数と実際の兵士の数に大きなギャップが生じているという。 こうした深刻な事態に軍政は政府職員や自治体職員をリクルートして兵力不足を補おうとしているが、職業軍人ではない「動員された兵士」ほど寝返る傾向が強く、不足が補えない状況が続いている。 一方のPDF側は国軍兵士の投降を呼びかける運動を強め、武器や弾薬、軍用車両などを持参しての寝返りには報奨金を用意するなどと宣伝して国軍兵力の数的弱体化を試みている。 このような国軍の兵力低下は、PDF戦闘員や一般住民に対する空爆、民家放火や拷問、暴力や残虐な殺害行為、人間の盾としての利用などを激化させるという行動のエスカレートを招いているとされ、そこに国軍の焦燥感が如実に現われているといわれている』、「正規軍の中で戦線離脱や部隊離反などによる脱走兵が増加し、その大半が敵対する民主派勢力「国民防衛軍(PDF)」に加わっていることが、ミャンマーの独立系メディアなどの報道で明らかになった。 国軍兵士の「寝返り」ともいえるこの現象は、2021年2月に軍がアウン・サン・スー・チーさん率いる民主政府から実権を奪取したクーデター以来続く傾向というが、2023年になってその数はさらに増加傾向にあると指摘されている」、いよいよ国軍も最終段階に陥った可能性がある。
・『過去4ヵ月で500人が離反  独立系メディア「イラワジ」が8月25日伝えたところによると、最近開催された軍政に対抗する民主派組織「国家統一政府(NUG)」の第28回閣議で、マー・ウィン・カイン・タン首相が「過去4ヵ月の間に約500人の国軍兵士が軍を離脱、脱走した」と報告した。この500人の中には大隊副司令官という軍幹部も含まれているという。 今年8月に入ってからだけでも50人以上が国軍を離れており、軍の兵力低下が深刻な問題となっているとの見方を示した。こうした動きは西部チン州、東部カヤー州、カレン州などでも報告され、兵士の部隊離反が全国的に起きているとNUGではみている。 NUGによると、2021年2月のクーデター以来、少なくとも15000人の兵士と警察官が寝返って民主派の「不服従運動(CDM)」に参加しているという。軍政側は兵士の死傷者や行方不明者、脱走者などの数字を明らかにしていないが、NUG側が指摘した数字はある程度実態を反映しているとの見方が有力だ。 寝返った兵士や警察官は「国民防衛軍(PDF)」に加わって軍との戦闘に参加するほか、単に逃亡して密かに暮らしているかのどちらかであるという。 こうした事態に軍政側は兵士を軍に引き留めるために、休暇の奨励、芸能人らによる部隊慰問、指揮官は兵士と共に食事をとりコミュニケーションを密にするなど、あの手この手の対策を講じているとされる。 これに対しNUG側は兵士や警察官に離脱を勧めており、武器や弾薬、航空機や艦船と共に寝返った兵士らには多額の現金を付与するという報奨金制度を設けている』、「軍政側」「NUG側」とも必死に知恵を絞っているようだ。
・『寝返った元国軍兵士の証言  「イラワジ」は8月26日、同月1日に入手したという軍の文書に基づき各地の部隊で兵員不足が深刻な問題となっていると指摘した。 その文書は北東部シャン州に拠点を置く歩兵114大隊から国軍上層部に報告されたものとみられ、少なくとも857人の大隊要員が必要にもかかわらず実際には132人しか兵士がいないことを訴えている。 また、その132人の兵士のうち基地防衛のために62人を残し、半数以上の70人が基地を出て最前線での戦闘に従事しているという実態も記述されている。 さらに別の文書では、シャン州の国境問題担当の大佐が地区総務部門関係者に対して警察官を除く全ての公務員の名簿を提出するよう要請したことが記されている。このことから兵員不足を緊急に解消するために公務員を民兵または予備軍兵士に転換することを州政府が計画していることが分かるとしている。 同じ26日に「イラワジ」は元国軍兵士であるテット・ミャット元陸軍大尉のインタビュー記事を掲載した。ミャット氏は2021年6月に軍を離反し軍政に抵抗する市民の「不服従運動(CDM)」に参加、以後抵抗勢力側に協力して現役の兵士や将校の離反、逃亡の手助けを続けているという。 ミャット氏によると「イラワジ」が入手し報道した文書は「本物と思われる」とした上で、「各大隊は毎月兵員数などの情報を上部機関に報告する必要がある。大隊は兵士の定員数が約800人なのだが、どこの大隊もその数を満たしていないのが実情だ」と述べて文書の信憑性とともに国軍の兵員数逼迫が事実であるとの見方を示した』、「元国軍兵士であるテット・ミャット元陸軍大尉のインタビュー記事を掲載した。ミャット氏は2021年6月に軍を離反し軍政に抵抗する市民の「不服従運動(CDM)」に参加、以後抵抗勢力側に協力して現役の兵士や将校の離反、逃亡の手助けを続けているという。 ミャット氏によると・・・「各大隊は毎月兵員数などの情報を上部機関に報告する必要がある。大隊は兵士の定員数が約800人なのだが、どこの大隊もその数を満たしていないのが実情だ」、なるほど。
・『公務員を民兵や予備軍に採用  軍政が兵力不足を深刻に考えていることは近年、地方の行政機関などで働く公務員を軍になかば強制的に採用し、民兵や予備軍に編入して部隊に送り込んでいることに現れている、とミャット氏は指摘している。 臨時採用され兵士として前線に送られた公務員出身者などは、戦闘で生命の危機に直面した場合に容易に投降する傾向がみられ、それもまた兵員不足の一因として軍政の悩みの種となっているという。 公務員以外にも、地方の住民で食糧難や滞在場所のない人々を脅迫して採用するというケースも報告されるなど、軍の兵員不足の深刻さが浮き彫りとなっている。 公務員や一般住民からの臨時兵士の他、正規軍兵士の前線からの離脱者も多く、「先見の明がある兵士」や「民主化弾圧に疑問を抱く兵士」らが「抵抗組織からの誘い」などを理由に寝返る傾向があるという。 そしてミャット氏は「イラワジ」に対して、「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要があるとの言葉で結んだ』、「「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要」、その通りだ。
・『一般住民を逮捕し人間の盾に  国軍は最近、抵抗勢力PDFや国境周辺での少数民族武装勢力との戦闘の中で、兵力不足を補う策として、一般住民を逮捕して、人間の盾として利用する作戦を実行しているという。 8月25日、北部カチン州パカント郡にあるナントヤール村、カットマウ村、サインパラ村に約30人の兵士が夜陰に紛れて侵入し、村人ら約100人を逮捕、連行したという。 軍はその後、パカント村に進軍するに際し、逮捕した住民を人間の盾として最前線に立たせたり、地雷が埋設されている可能性のある場所を強制的に歩かせたりして兵士の犠牲を最小限にしようとする作戦をとっている、と抵抗勢力はみている。 こうした作戦は軍による苦肉の策であり、兵員不足を補う根本的な解決策とはなっていないばかりか、一般住民の反感を買って軍の立場を窮地に追い込む結果になっている。 住民を敵に回しても民主化抵抗勢力との戦闘を継続しなければならない軍政の焦りが背景にあるのは間違いない。 2021年2月のクーデター以来、軍政は全土での治安安定という目標を達成できず、今年7月31日に非常事態宣言を半年間延長したことで2023年内に予定していた総選挙も2024年2月以降に延期せざるを得ない状況となっており、ますます苦境に陥っているのが実情だ』、「住民を敵に回しても民主化抵抗勢力との戦闘を継続しなければならない軍政の焦りが背景にあるのは間違いない」、その通りだ。日本政府もミャンマー政府・国軍との関係を見直しておくべき段階にきたのではなかろうか。
タグ:現代ビジネス (その7)(少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺 検問所爆破 戦闘機撃墜も、ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない) ミャンマー 大塚 智彦氏による「少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃」 「ミャンマーは国民の90%を仏教徒が占める国で、僧侶は国民の尊敬を集める対象となっているだけに、僧侶まで殺害するという軍政の容赦ない姿勢は反軍政を掲げる国民の反感と怒りを高めている。 こうした軍政の残虐非道な行動は、2月2日に戒厳令を7郡区から37郡区に拡大し、同月22日にもさらにサガイン地方域で3郡区を追加するなどして、抵抗勢力との戦闘が激化している地方での軍の権力を強化したことと関係があるとみられている。 2021年2月のクーデター以降すでに2年以上が経過しながらも、国内の治安が一向に安定せず、8月に予定している「民主的な総選挙」の実施も危ぶまれる状況に対する軍政の焦りが背景にあるとの見方が有力視されている」、なるほど。 「軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている・・・住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという」、自国軍隊がやることとは思えない、酷い話だ。 「PDF側が弾薬不足のため退却する際に退路に地雷を埋設していた若者5人が軍に拘束された。 その後若者5人の遺体が発見されたが、うち3人は斬首され、頭部が竹柵や荷車の上に「晒し首」状態で放置されており、中には手足が切断された遺体もあったという。遺体には銃創が一切ないことから、若者らは生きたまま斬首された可能性が高いとみられている・・・国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している・・・国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負 負った子供は少なくとも約400人に上っている」、本当に国郡の暴虐ぶりは目に余る。 「同地方域ミンム群区ニャウンイン村でレイプされた女性の遺体が発見されたほか。同村では計14人の遺体が発見されたが、その中にはレイプされ顔面や頭部を激しく殴打された痕跡の残る女性3人の遺体も含まれていたという・・・2022年8月11日には同地方域インマビン群区インバウンテン村で10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も」、よくぞこんなにも「残虐」な「事件」が続発するとは、やはり「ミャンマー」は異常な国だ。 「軍は2022年から、各地で抵抗を続ける武装市民組織メンバーに対する掃討作戦を通じて一般市民を巻き込んだ強権的弾圧を強化、女性や若者をも無差別に殺害しているが、国民の尊敬と信仰の対象である仏教僧侶まで容赦なく殺害するという暴挙に対し内外から厳しい批判が高まっている。 戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの 混乱は収拾不能な状況に陥っている」、極めて危険な状態だ。日本はODAなどを通じて「ミャンマー」に強い影響力を持っているので、軍政の混乱解決に向け指導力を発揮してもらいたい。 大塚 智彦氏による「ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺、検問所爆破、戦闘機撃墜も」 「軍政が非常事態宣言を延長した理由は・・・国内の治安が予想に反して一向に安定せず、各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や国境地帯を拠点とする少数民族武装勢力が軍や警察を攻撃し、軍も住民に対して暴力や虐殺を続けるなど、全土で戦闘が激化していることが背景にある」、なるほど。 「こうした一連の攻撃で軍側には少なくとも89人の犠牲を強いたと各地のPDFは報告しており、軍側の被害が拡大していることを印象付けた」、なるほど。 「K8Wという戦闘機で、空軍の大尉と中尉が乗り込んだ複座で、タウング空軍基地から攻撃のため発進した」、「特に対空兵器があった訳ではないが、メンバーによる必死の攻撃で墜落させた、と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、大したものだ。 「軍はミョー・ミン・ウー氏(42)を捜索し、彼を見つけると同じ家にいた兄弟や子供と一緒に拘束した。さらに、PDF関係者とみられる住民を次々と拘束し「武器をどこに隠した」と拷問を加えながら尋問を続けた。拘束された住民はPDFとの関係を否定し、武器の所在も知らないと主張したという。 翌日の明け方には、ミョー・ミン・ウー氏をはじめとする拘束されいた14人の遺体が村のあちこちに放置されているのが見つかった。 遺体には拷問の跡や刃物による傷など虐待の痕跡が残され、残虐な手段で虐殺されたことを物語っていた。 兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪するなどの行為を行って村を去った」、「兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪」、とは実に酷い話だ。 「非常事態宣言の延長という強権政治の継続に対する欧米や東南アジア諸国連合・・・の批判」、日本も批判を「欧米や東南アジア諸国連合」任せにせず、自ら積極的に働きかけてゆくべきだ。 大塚 智彦氏による「ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない」 「正規軍の中で戦線離脱や部隊離反などによる脱走兵が増加し、その大半が敵対する民主派勢力「国民防衛軍(PDF)」に加わっていることが、ミャンマーの独立系メディアなどの報道で明らかになった。 国軍兵士の「寝返り」ともいえるこの現象は、2021年2月に軍がアウン・サン・スー・チーさん率いる民主政府から実権を奪取したクーデター以来続く傾向というが、2023年になってその数はさらに増加傾向にあると指摘されている」、いよいよ国軍も最終段階に陥った可能性がある。 「軍政側」「NUG側」とも必死に知恵を絞っているようだ。 「元国軍兵士であるテット・ミャット元陸軍大尉のインタビュー記事を掲載した。ミャット氏は2021年6月に軍を離反し軍政に抵抗する市民の「不服従運動(CDM)」に参加、以後抵抗勢力側に協力して現役の兵士や将校の離反、逃亡の手助けを続けているという。 ミャット氏によると・・・「各大隊は毎月兵員数などの情報を上部機関に報告する必要がある。大隊は兵士の定員数が約800人なのだが、どこの大隊もその数を満たしていないのが実情だ」、なるほど。 「「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要」、その通りだ。 「住民を敵に回しても民主化抵抗勢力との戦闘を継続しなければならない軍政の焦りが背景にあるのは間違いない」、その通りだ。日本政府もミャンマー政府・国軍との関係を見直しておくべき段階にきたのではなかろうか。
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イスラエル・パレスチナ(その3)(証拠が薄すぎる「小児病院の地下はハマスの拠点」...国際的支持を失いかねない イスラエルの「苦しい言い訳」の中身とは?、イスラエル軍が戦場支配 対ハマスで技術的優位性 軍の指揮統制センター ドローンや戦車・兵士などから集めた戦場データを活用し戦闘を調整、ガザ戦争でアメリカは信用を失い EUは弱体化 漁夫の利を得るのは「意外なあの国々」「イギリスとフランスが中東紛争の真犯人」は本当か?――悪名高い「サイクス=ピコ協定」の裏に隠された「失敗の本質」) [世界情勢]

イスラエル・パレスチナについては、11月9日に取上げた。今日は、(その3)(証拠が薄すぎる「小児病院の地下はハマスの拠点」...国際的支持を失いかねない イスラエルの「苦しい言い訳」の中身とは?、イスラエル軍が戦場支配 対ハマスで技術的優位性 軍の指揮統制センター ドローンや戦車・兵士などから集めた戦場データを活用し戦闘を調整、ガザ戦争でアメリカは信用を失い EUは弱体化 漁夫の利を得るのは「意外なあの国々」「イギリスとフランスが中東紛争の真犯人」は本当か?――悪名高い「サイクス=ピコ協定」の裏に隠された「失敗の本質」)である。

先ずは、11月14日付けNewsweek日本版「証拠が薄すぎる「小児病院の地下はハマスの拠点」...国際的支持を失いかねない、イスラエルの「苦しい言い訳」の中身とは?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/11/post-103046_1.php
・『<病院への攻撃を世界や国際機関が非難するなか、イスラエルは「証拠」で「正当性」を誇示するが...。イスラエルを支持するバイデン大統領も苦しい立場に> イスラエル国防軍(IDF)は、ガザ市内にある小児病院の地下にハマス司令部が存在していた証拠を発見したと述べている。そこに人質が拘置されていた証拠も発見したという。 パレスチナのガザ地区における戦闘は、同地区を実効支配しているイスラム武装組織ハマスが10月7日に対イスラエル奇襲攻撃を仕かけて以来、激しさを増している。 またイスラエルは、同地区最大のシファ病院を攻撃したとして、厳しい非難を浴びている。今回の戦闘を巡る厄介な問題は、病院に対する攻撃だ。病院の地下にハマス司令部が本当に存在しているのか否かによって、イスラエルは国際的な支持を失いかねない。 また、イスラエルを支持する米大統領ジョー・バイデンは、難しい立場に置かれる可能性がある。 IDF報道官のダニエル・ハガリ少将は11月13日、X(旧ツイッター)に動画を投稿した。ガザ市西部にあるランティシ小児病院の地下部分などを歩いて撮影したという動画だ。 ハガリ少将は動画のなかで、発見したものを示しながら、同病院がハマス司令部として使われていた証拠だと述べている。そうした証拠には、火器や手榴弾、爆弾が固定された自爆用ベルトといった軍装備品なども含まれている。 ハガリ少将は発見された装備品の横に立ちながら、「わかってほしい。こうした武器や装備品は、大がかりな戦闘のためのものだ」と語っている。そして、ハマスが拘束した人質がランティシ小児病院の地下室に収容されていた可能性がある証拠を指摘。 その証拠とは哺乳瓶やおむつ、シャワーやトイレ、また小さなキッチンなど「即席」で置かれており、ソファと椅子、レンガの壁に掛けられたカーテンを含む部屋である。 人質を撮影して動画撮影する目的がなければ、部屋にカーテンをかける理由はないと述べる。また、別の部屋ではアラビア語で書かれたリストも発見された。そこに「任務遂行中」と書かれていると、ハガリ少将は説明している。) 「これは監視者のリストで、テロリストが自分の名前を書くものだ。テロリストはみなシフトを組んで、ここに拘置されていた人々を監視していた」とハガリ少将は説明している。 動画にはさらに、病院の敷地近くで見つかったというトンネルの入り口も映っている。トンネルの深さはおよそ20メートルで、入り口は防弾ドアで守られている。これは、病院とトンネルがつながっている「動かぬ証拠、明らかな証拠に思える」とハガリ少将は話している。 イスラエルは以前から、ハマスが住居や病院、学校を戦闘員の盾として使っていると訴えてきた。そう主張するひとつの理由は、民間人の命が失われていることで、パレスチナ解放運動への同情と国際的な注目が集まることだ。 今回の動画は、イスラエル軍が、ガザ地区最大の医療機関シファ病院の包囲網を狭める中で投稿された』、「イスラム武装組織ハマスが10月7日に対イスラエル奇襲攻撃を仕かけて以来、激しさを増している」、「イスラエル」は自慢の防諜組織が兆候を全く捉えられなかったこともあって、明らかに過剰な「報復作戦」を展開している。
・『【動画】まったく機能していないシファ病院の現在  2023年11月13日映像)を見る イスラエルは、同病院の地下にもハマス司令部があると主張しているが、イスラエル政府はそれを裏づける証拠をほとんど示していない。 また、シファ病院のモハメド・アブ・セルミア院長はイスラエル側の主張を否定し、病院の地下に司令部はないと述べている。) イスラエルは11月13日の動画投稿に先立ち、地下軍事施設と疑われる位置を示した地図を公開している。 「ハマスのテロリストが病院から攻撃を仕かけていることを確認した場合、私たちはやるべきことをやる」。IDF報道官のリチャード・ヘクト中佐はAP通信に対してそう述べていた。 シファ病院内にいるガザ保健省の報道管理官アシュラフ・アル・キドラがロイターに対して述べたところによれば、同病院では電力が絶たれており、新生児を含む患者が死亡したいう。ニューヨーク・タイムズ紙は、多数の人が週末にシファ病院から避難したと報じている。 また、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は11月13日、いまの状況は同病院の入院患者にとって「悲惨であり、非常に危険である」とXに投稿した。 米大統領バイデンは11月13日、大統領執務室で記者に対し、ガザにある病院は「保護されなければならない」とし、「病院に対する侵入的な行為が減ることを私は望んでいるし、そうなると期待している」と述べた』、「イスラエルは、同病院の地下にもハマス司令部があると主張しているが、イスラエル政府はそれを裏づける証拠をほとんど示していない」、これは大きな問題だ。「イスラエル」を全面支持している「バイデン政権」にとっても、頭が痛い問題だろう。

次に、11月16日付け現代ビジネスが転載したThe Wall Street Journal「イスラエル軍が戦場支配、対ハマスで技術的優位性 軍の指揮統制センター、ドローンや戦車・兵士などから集めた戦場データを活用し戦闘を調整」を紹介しよう。
・『ガザ地区に展開するイスラエル歩兵部隊の主勢力・ギバティ旅団の指揮官らは、小さな教室ほどの大きさの平屋の建物数棟の中で、ガザ内のイスラエル軍とパレスチナ勢力の位置をリアルタイムで表示する複数のスクリーンを確認することができる。 指揮官らはこの情報を使い、部隊や兵器の位置、また偵察機をチェスの駒のように移動させている。) ガザとの境界に近いこの場所は、広範に及ぶ軍の技術中枢部でもカギを握る中心であり、ドローンやジェット戦闘機、海軍艦艇、戦車、兵士らが集めた何千もの戦場データが集約されている。これらデータはイスラエル軍が3週間足らずの間に、兵士の死者数を50人未満に抑えながら、イスラム組織ハマスの拠点であるガザ市の大部分を一挙に占領することを可能にした。 イスラエル軍はハマスの広大な地下トンネル網を破壊し、そこに拠点を置く指導者らを打ち破り、ガザにおけるハマスの軍事力と統治力を壊滅させることに重点を置いている。イスラエル政府が戦闘をさらに精密な段階へ移行しようとする中、軍のこの指揮統制センターは今後数週間にわたってこれまでよりも重要な役割を果たすことになる。 イスラエルは戦闘のあらゆる段階で、ハマスに対する技術面および軍事面の圧倒的な優位性を示してきた。軍は数千回の空爆でハマスの能力をそぎ落とし、イスラエル軍の戦車や部隊が進軍できるよう障害物を取り除き、ガザ市での支配力を徐々に強めてきた。 イスラエル軍の指揮統制センターはドローンやジェット戦闘機・軍艦・戦車・兵士などから集めた戦場のデータを活用し、ガザ地区のハマスとの戦闘における調整を行っている ギバティ旅団のこの指揮統制センターでは11日、指揮官らがガザ市内のアルランティシ病院からの退避の様子を監視。地上部隊や上空のドローン、また病院内の人々とのやり取りや交信内容を分析しながら、病院を出る約1000人の中に戦闘員が含まれていないか確認した。 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に提供された退避の際の動画には、銃を肩から提げた数人の戦闘員らが、市民の群れに混じって病院を出ていく様子が映っていた。現場や指揮統制センターの指揮官らの間では、その場で戦闘員らと交戦するべきか、それを回避して逃がすべきか議論が続いたという。また狙撃手がこれら戦闘員らを排除できるとする意見もあったが、パニックを引き起こす懸念もあり、戦闘員らはそのまま病院を去った。 だがその際に病院から逃げた戦闘員の1人は、学校に潜伏中にドローンの空爆を受けて死亡。退避後もその行動が追跡されていたことが明らかになっている。 ギバティ旅団の指揮官らは指揮統制センターの中で、今後展開される地下での戦闘に注力。地上部隊はこれまでにトンネルへの入り口を160カ所確認しており、そのデータを利用してハマスの地下ネットワークをより詳細に把握しようと試みているという。 壁に設置された中型のテレビスクリーンで、指揮官らは市街地にズームインした高画質画像を見られる。また軍全体や戦闘現場にいる部隊から集めた情報や監視活動がスクリーンに映し出され、それは絶えず更新されている。 パレスチナの軍事目標を見つけると、イスラエル軍将校はそばで待機する武器専門家に指示し、適切な攻撃手段を選択する。恐らくは無人機(ドローン)で即座にピンポイント攻撃を行うか、ジェット戦闘機でビルを丸ごと破壊するかだ。彼らは付近の戦闘ヘリコプターを通じて現場の将校と直接連絡を取ることができる。 もし目標ゾーンの近くで民間人の存在を確認したら、情報担当将校は彼らに接触し、その場を離れるよう警告できる。またパレスチナの戦闘員グループが二つの異なる部隊の間を直進しているような状況では、味方への誤射を避けるため、指揮統制センターは両部隊の動きを誘導できる。地上の指揮官が上空の視点を必要とする場合、指揮統制センターの指揮官が最寄りのドローンを見つけて知らせる。 こうした手段があるとはいえ、イスラエルの空爆でパレスチナの民間人は大勢殺害されている。イスラエル当局者は、民間人の犠牲をできる限り少なくするよう努めているが、ハマスが彼らの軍事インフラをガザ地区の民間人インフラに潜り込ませているため、犠牲は避けられないと話している。 ドローンの戦時利用に反対する英NGO(非政府組織)「ドローン・ウォーズUK」のクリス・コール代表は、たとえイスラエル軍が攻撃ごとに合理的な民間人犠牲者数を設定しようとしていたとしても、1カ月足らずで民間人数千人の死亡は、爆撃作戦全体が不均衡な規模であることを示している、と主張した。 「IDF(イスラエル国防軍)は民間人が本来持つべき価値をはるかに低くする決定を下しているように見える」とコール氏は言う。「彼らのやっていることが違法なことに疑いの余地はない」』、「イスラエル軍の指揮統制センターはドローンやジェット戦闘機・軍艦・戦車・兵士などから集めた戦場のデータを活用し、ガザ地区のハマスとの戦闘における調整を行っている」、なるほど。「「ドローン・ウォーズUK」のクリス・コール代表は、たとえイスラエル軍が攻撃ごとに合理的な民間人犠牲者数を設定しようとしていたとしても、1カ月足らずで民間人数千人の死亡は、爆撃作戦全体が不均衡な規模であることを示している、と主張した」、「1カ月足らずで民間人数千人の死亡」との犠牲は確かに大きいようだ。 

第三に、11月16日付けNewsweek日本版が掲載した国際政治学者・ハーバード大学ケネディ行政大学院教授のスティーブン・ウォルト氏による「ガザ戦争でアメリカは信用を失い、EUは弱体化、漁夫の利を得るのは「意外なあの国々」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/11/post-103056_1.php
・『<失われたアメリカの情報・判断力への信頼、民主主義国連合の亀裂。居直った中国とロシアがグローバルサウスを取り込み、世界の多極化を狙う> 今回のガザ戦争、その余波はどこまで広がるのだろう? 私見だが、悪しき地政学的展開が起きても、たいていは逆の好ましい力が働いて均衡を取り戻し、世界地図で見れば点のような場所で起きた出来事の余波が遠くまで広がることはない。危機や戦争が起きても、たいていは頭を冷やしたほうが勝つから、その影響は限定される。 だが例外はあり、今回のガザ戦争はそうした不幸な例外の1つかもしれない。 もちろん、第3次大戦の瀬戸際だと言うつもりはない。これが中東全域を巻き込む紛争に拡大するとも思っていない。 その可能性は排除できないものの、今のところ、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラも、イランやロシア、トルコなどの周辺諸国も、直接的に首を突っ込もうとはしていない。 アメリカ政府も、局地的な紛争に抑え込もうと努力している。戦域が拡大すれば損害が大きくなり、危険も増す。だから私たちは、その努力が実ることを願う。 だが、たとえ戦闘がパレスチナ自治区ガザ地区に限定され、遠からず終結するとしても、その余波は世界中に広がる。 その影響はどんなものか。 答えを探るには、イスラム組織ハマスによる奇襲攻撃が始まる10月7日以前の地政学的状況に立ち戻る必要がある。 まずアメリカとNATO諸国はウクライナで、ロシアを相手に代理戦争を繰り広げていた。 目標はウクライナを支援し、ロシアが2022年2月24日以降に占領した土地を取り戻すこと。ロシアを弱体化し、二度と似たようなまねができないようにすることだ。 だが筋書きどおりにはいかなかった。 今夏の反転攻勢は行き詰まり、軍事面ではロシア側が徐々に勢いを取り戻しているようで、ウクライナ側が領土を取り戻す可能性は遠のいていた。 これに加えて、アメリカは中国とも事実上の経済戦争を繰り広げていた。半導体やAI(人工知能)、量子コンピューターなどの先端技術で、中国が覇権を握るのを阻止する戦いだ』、「アメリカ」は「ウクライナ」では「筋書きどおりにはいかなかった」、「アメリカは中国とも事実上の経済戦争を繰り広げていた」、確かに「アメリカ」を取り巻く環境は厳しい。
・『対中政策の行き詰まり  アメリカ政府は中国を、最大の長期的ライバル(米国防用語では「基準となる脅威」)と見なしている。 ただしジョー・バイデン大統領率いる現政権は対中制裁の対象を絞り、「小さな庭に高い壁」を築くだけだとし、それ以外の分野では協力を維持したい意向を示していた。 だが現実には、小さな庭は大きくなるばかり。いくら高い障壁を設けても、一定の先端技術分野で中国が台頭するのを阻止するのは不可能という見方が強まっていた。) 中東政策はどうか。バイデン政権はサウジアラビアが中国に接近するのを防ぐため、イスラエルとの関係正常化を条件に、サウジアラビアに一定の安全保障を約束し、場合によっては核関連技術へのアクセスも認めようとしていた。 だが、そんな離れ業が決まる保証はなかった。 そもそもパレスチナの問題に目をつぶり、占領地でのイスラエル政府の蛮行に見て見ぬふりをしている限り、いずれ火を噴くのは避けられない。そういう批判があったのも事実だ。 そこへ10.7の奇襲があり、戦争が始まった。その地政学的な意味と、アメリカ外交への影響はいかなるものか。 まず、サウジアラビアとイスラエルの関係正常化に向けたアメリカ政府の努力は水泡に帰した(ある意味、ハマスの狙いどおりだ)。 むろん、これを永遠に阻止するのは無理だろう。関係正常化を促した事情は何も変わっていないからだ。しかし、行く手を阻む障害は増えた。 2点目。最近のアメリカは中東に費やす時間と労力を減らし、アジアに向ける時間とエネルギーを増やそうとしていたが、この戦争でそうはいかなくなった。 なにしろ時間は限られている。バイデン大統領やアントニー・ブリンケン国務長官が毎日のようにイスラエルや中東諸国に飛んでいたら、他の場所に十分な時間と関心を割くことはできない。 アジアの専門家であるカート・キャンベルを国務副長官に起用したことで状況はいくらか改善されるかもしれない。 それでも中東で火の手が上がった以上、アジアに割くことのできる外交的・軍事的能力が中短期的に低下することは間違いない。 しかも国務省内部では、政権の露骨にイスラエル寄りな対応に中堅幹部が反発しており、混乱が生じている。問題の解決は難しくなるばかりだ。 要するに、今回の中東での戦争は台湾や日本、フィリピン、その他中国からの圧力に直面している国々にとって好ましいニュースではない。 今の中国は経済面で苦しい状況にあるが、それでも台湾や南シナ海での軍事的挑発を止める気配はない。最近も南シナ海上空で米軍B52戦略爆撃機に、中国のJ11戦闘機が異常接近する事態があった。 今は米軍の空母2隻が地中海東部に派遣されており、アメリカ政府は中東から目を離せない。だからアジア情勢が一気に暗転した場合、アメリカが効果的に対応できるかどうかは疑わしい。 そして仮にも、ガザでの戦闘がレバノンやイランにまで広がったらどうなるか。アメリカとその同盟国はさらに多くの時間と資源を中東地域に向けざるを得まい』、「今回の中東での戦争は台湾や日本、フィリピン、その他中国からの圧力に直面している国々にとって好ましいニュースではない。 今の中国は経済面で苦しい状況にあるが、それでも台湾や南シナ海での軍事的挑発を止める気配はない。最近も南シナ海上空で米軍B52戦略爆撃機に、中国のJ11戦闘機が異常接近する事態があった・・・仮にも、ガザでの戦闘がレバノンやイランにまで広がったらどうなるか。アメリカとその同盟国はさらに多くの時間と資源を中東地域に向けざるを得まい」、その通りだ。
・『EUトップの深刻な亀裂  3点目。ガザ地区の紛争はウクライナにとって最悪だ。メディアはガザ情勢一色に染まり、ウクライナ支援を支持する世論は後退している。 アメリカでは下院共和党が支援継続に難色を示している。10月4日から16日にかけて行われたギャラップの世論調査でも、アメリカ政府のウクライナ支援は過剰だと考える人が41%に上った(6月時点では29%にすぎなかった)。 もっと面倒な問題もある。ウクライナ戦争は激しい消耗戦となっており、いくら砲弾があっても足りない。 だがアメリカも同盟諸国も、ウクライナのニーズを満たすだけの兵器を生産できない。ウクライナ軍の戦闘能力を維持するため、アメリカは韓国とイスラエルに置いていた武器弾薬を転用せざるを得なかった。 そこへ突然、イスラエルで戦争が始まった。 こうなると、ウクライナに武器弾薬を送る余裕はなくなる。それでウクライナ軍が劣勢に立たされ、万が一ウクライナ軍が崩壊し始めたら、バイデン政権はどうすればいいのか。 EUにとっても頭の痛い問題だ。ロシアのウクライナ侵攻で、多少の軋轢はあったにせよ、欧州の結束は強まった。10月のポーランド総選挙で、極右政党「法と正義」が政権の座を追われたことも好ましい変化だった。 しかしガザ紛争で欧州の亀裂が再び表面化した。今はイスラエルを無条件で支持する国もあれば、パレスチナの大義に共感を示す国もある。 EUの大統領格であるウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長と、外相格のジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表の間にも深刻な亀裂が生じている。 フォンデアライエンはイスラエル支持に偏りすぎている」と批判する書簡に、約800人のEU職員が署名したとも報じられている。 この戦争が長引けば長引くほど、こうした亀裂は広がっていく。 それはまた欧州外交の弱みを浮き彫りにし、世界の民主主義国を一つの強力な連合体にまとめるという壮大な目標に向かう動きを後退させかねない。 西側諸国にとっては最悪な展開だが、ロシアと中国には願ってもない朗報だ。 アメリカの目がウクライナや東アジアからそれるなら大歓迎。しかも中東なら、自分たちは高みの見物を決め込める。 一方で今回のガザ紛争は、アメリカの一極支配よりも多極的な世界秩序のほうが好ましい、という中ロ両国の長年の主張に一定の論拠を与える。) 1993年のオスロ合意以来、アメリカは一貫して中東情勢に大きな発言力を持ってきた。 だが、結果はどうだ。 イラクでは悲惨な戦争を招き、イランの核開発は止められず、イスラム過激派の台頭も許した。 イエメンでは内戦が激化し、リビアは無政府状態に陥った。そしてもちろん、オスロ合意は反故(ほご)になった──彼らはそう主張できる。 10月7日のハマスの奇襲を見ろ、アメリカは最も親密な同盟国すら守れないではないか、という主張もできる。 そういう主張に反論することは容易だが、くみする国も多いだろう。実際、中ロのメディアは今回のガザ紛争を機にアメリカ批判を強め、国際社会での支持を広げている。 今回の戦争とアメリカの対応がこの先も、アメリカ外交にとっては重い足かせとなるだろう。 既にウクライナ危機をめぐる欧米諸国の見解と、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上諸国の姿勢にはかなりの溝が生じている。欧米のダブルスタンダードに対する反発も強まっている。 この溝を一段と深めたのは、ハマスに対するイスラエル軍の桁違いな報復だ。もともとパレスチナの人々への共感は、欧米以外の国々のほうがはるかに強い。 その共感は紛争が長引けば長引くほど、またイスラエル軍に殺されるパレスチナの民間人が増えれば増えるほど強まるだろう。一方で欧米諸国は、歴史的な経緯もあってイスラエル側の肩を持たざるを得ない。 G7に属する某国の外交官が先頃、英紙フィナンシャル・タイムズで嘆いていた。 「これで私たちはグローバルサウスの獲得競争に敗れた。(ウクライナ支援で協力を取り付けようとした)今までの努力は水泡に帰した。......彼らは二度と、私たちの話に耳を傾けないだろう」』、「ウクライナ軍の戦闘能力を維持するため、アメリカは韓国とイスラエルに置いていた武器弾薬を転用せざるを得なかった。 そこへ突然、イスラエルで戦争が始まった。 こうなると、ウクライナに武器弾薬を送る余裕はなくなる。それでウクライナ軍が劣勢に立たされ、万が一ウクライナ軍が崩壊し始めたら、バイデン政権はどうすればいいのか・・・欧米諸国の見解と、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上諸国の姿勢にはかなりの溝が生じている。欧米のダブルスタンダードに対する反発も強まっている。 この溝を一段と深めたのは、ハマスに対するイスラエル軍の桁違いな報復だ」、なるほど。
・『漁夫の利を得る中国  それだけではない。 北大西洋両岸の快適な地域に属さない国々から見れば、欧米の関心はあまりに身勝手で恣意的だ。 中東で新たな戦争が起きた途端に、欧米のメディアはその話で埋め尽くされた。新聞もそうだし、ニュース専門のテレビ局もそうだ。政治家はせっせと自らの見解を述べ、どうすべきかを説く。 だが今回の戦争が始まったのと同じ10月に出た国連の報告書に、コンゴ民主共和国には現時点で約700万の国内避難民がいるとあった事実はほとんど報じられていない。 その数はイスラエルとガザ地区の被害者より桁違いに多いにもかかわらずだ。) もちろん、それでグローバルサウスの国々が一斉に反米に転じるわけではない。欧米の偽善に腹を立てはしても、それぞれの国益を追求するなかではアメリカや欧州諸国との関係は切れない。 だが、今までどおりにいくと思うのは間違いだ。人権だの法の支配だのという私たちの議論に、彼らはますます耳を貸さなくなる。そして中国とアメリカをてんびんにかけて、様子を見る国が今よりも増えることだろう。 付言すれば、今回の不幸な戦争がどう転んでも、アメリカ外交の評判が高まることはない。 10.7の奇襲を防げなかったことで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の評判は地に落ちただろうが、アメリカ政府も同じく予測できなかったし、その後の対応も(少なくとも今までのところは)お粗末すぎる。 そしてもしも、ウクライナの戦争が不幸な結末を迎えたらどうなるか。 アメリカの信用だけでなく、その判断力も問われることになる。 よその国がアメリカ政府の助言に従うのは、アメリカ政府には確かな情報と判断力と行動力があり、人権にも法の支配にも一定の配慮をしてくれると思えばこそだ。 その前提が崩れたら、誰もアメリカの助言など聞かなくなる』、「今回の戦争が始まったのと同じ10月に出た国連の報告書に、コンゴ民主共和国には現時点で約700万の国内避難民がいるとあった事実はほとんど報じられていない。 その数はイスラエルとガザ地区の被害者より桁違いに多いにもかかわらずだ。) もちろん、それでグローバルサウスの国々が一斉に反米に転じるわけではない。欧米の偽善に腹を立てはしても、それぞれの国益を追求するなかではアメリカや欧州諸国との関係は切れない・・・今回の不幸な戦争がどう転んでも、アメリカ外交の評判が高まることはない。 10.7の奇襲を防げなかったことで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の評判は地に落ちただろうが、アメリカ政府も同じく予測できなかったし、その後の対応も(少なくとも今までのところは)お粗末すぎる。 そしてもしも、ウクライナの戦争が不幸な結末を迎えたらどうなるか。 アメリカの信用だけでなく、その判断力も問われることになる」、想像するだけで恐ろしいシナリオだ。

第四に、11月17日付けデイリー新潮「「イギリスとフランスが中東紛争の真犯人」は本当か?――悪名高い「サイクス=ピコ協定」の裏に隠された「失敗の本質」」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/11170609/?all=1
・『10月7日、イスラム組織ハマースの越境攻撃によって始まったイスラエル・パレスチナ紛争。今回のハマースによる攻撃は、1973年10月にエジプト軍がイスラエル軍の防衛体制の隙をついて奇襲を仕掛けて始まった「第4次中東戦争」を想起させる。 まるで時計の針が巻き戻ってしまったかのような事態だが、中東情勢に詳しい向きには、1916年にイギリスとフランスによって結ばれた「サイクス=ピコ協定」が、今日の混乱の原因として思い出されるのではないだろうか。オスマン帝国の崩壊を受け、西洋列強によって地図の上に勝手に国境線が引かれたという、悪名高い協定である』、世界史にちょっと出てきたので、名前だけは記憶にある。
・『サイクス=ピコ協定によるオスマン帝国の分割案  サイクス=ピコ協定によるオスマン帝国の分割案。画像は『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(新潮選書)より (地図製作:アトリエ・プラン)(他の写真を見る) しかし本当に「サイクス=ピコ協定」が問題の本質なのか。そもそも、それはどのような協定だったのか。 中東研究の第一人者である東京大学教授・池内恵氏は著書『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』で、複雑な事情をわかりやすく解きほぐしている。以下、同書から一部を再編集して紹介しよう。 いまや中東の地は、ヨーロッパへ世界へと難民、テロを拡散する「蓋のないパンドラの箱」と化している。列強によって無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では主流だ。しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない  1916年5月16日、イギリスとフランスの間でサイクス=ピコ協定が結ばれた。これにロシアも同意して、西洋列強がオスマン帝国の支配領域を第1次世界大戦の後に分割する取り決めが結ばれた。 サイクス=ピコ協定は、現在のトルコ南東部と、シリアやイラク、パレスチナやヨルダンなどにかけての一帯を切り離し、英・仏の直接統治・支配圏に分けた。 サイクス=ピコ協定は、第1次世界大戦(1914-18)後から現在までの、中東の諸国家と国際秩序の礎となった。サイクス=ピコ協定を基礎にした中東諸国の国境線の中で、政治が行われ、国民社会が形成され、国際関係が取り結ばれた』、「サイクス=ピコ協定によるオスマン帝国の分割案・・・イギリスとフランスの間でサイクス=ピコ協定が結ばれた。これにロシアも同意して、西洋列強がオスマン帝国の支配領域を第1次世界大戦の後に分割する取り決めが結ばれた・・・サイクス=ピコ協定は、第1次世界大戦(1914-18)後から現在までの、中東の諸国家と国際秩序の礎となった。サイクス=ピコ協定を基礎にした中東諸国の国境線の中で、政治が行われ、国民社会が形成され、国際関係が取り結ばれた」、なるほど。
・『蘇る密約  (中東及び周辺諸国の地図はリンク先参照) 混乱の続く中東情勢。画像は『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(新潮選書)より (地図製作:アトリエ・プラン)(他の写真を見る) 百年の時を経て、中東は大変動の時代を迎えている。アラブ世界では多くの国家が崩壊するか、決定的に揺らいだ。政権が自らの国民に発砲し、樽爆弾で市場を無差別に爆撃する。内戦が果てしなく続き、武装集団が各地を支配する。テロが頻発し、過激主義が横行する。宗教的・民族的少数派が住処(すみか)を追われ、殺害され、奴隷化される。大量の難民が流出して彷徨(さまよ)い、その一部が欧州に達しただけで、EU(欧州連合)の結束は瓦解の縁(ふち)に立たされている。 現在の中東の大混乱は、百年前の、まさにサイクス=ピコ協定が結ばれた頃の状況に、次第に近づいてきている。 戦乱と国家の崩壊、武装集団の角逐(かくちく)、難民の流動、少数派の迫害・虐殺と奴隷化、これらはいずれも第1次世界大戦とその直後の中東に、大規模に生じた出来事だった。 現在の中東に生じている事象は、決して最近になって突然に始まったことではない。第1次世界大戦時に噴出した諸問題が、一時は解決したとも思われていながら、実は解決しきれずに、水面下で残っていた。問題を覆い隠すことを可能にしていた中東諸国家の政権や中東地域の国際関係が、イラク戦争から「アラブの春」にかけて揺らいだ。それによって問題が一気に噴出してきたというのが実情である』、「現在の中東に生じている事象は、決して最近になって突然に始まったことではない。第1次世界大戦時に噴出した諸問題が、一時は解決したとも思われていながら、実は解決しきれずに、水面下で残っていた。問題を覆い隠すことを可能にしていた中東諸国家の政権や中東地域の国際関係が、イラク戦争から「アラブの春」にかけて揺らいだ。それによって問題が一気に噴出してきたというのが実情である」、確かに歴史的にみる必要がありそうだ。
・『「イスラーム国」による批判  2014年に「イスラーム国」がイラクとシリアで支配領域を広げた時、その宣伝映像で「サイクス=ピコ協定の終わり」を喧伝(けんでん)した。「イスラーム国」は、サイクス=ピコ協定の秩序に代わる、より妥当な秩序を示してはいない。しかし「イスラーム国」が、サイクス=ピコ協定に基づく枠組みによって維持されてきた中東の国家や国際秩序に挑戦し、そのほころびに付け込んでいることは確かだろう。サイクス=ピコ協定に始まる一連の協定や条約の枠組みによって、中東の国家と社会と国際関係はどうにか維持されてきた。しかしその秩序は矛盾や脆弱性を孕(はら)んだものだった。 「イスラーム国」によるサイクス=ピコ協定の批判は特に目新しいものではない。シリアやイラク、エジプトなどアラブ諸国の民族主義的な政権は、サイクス=ピコ協定を植民地主義による中東の不当な分割を象徴するものとして非難し、その超克を主張してきた。そう主張しながらも、各国の政権はサイクス=ピコ協定の枠組みに依存し、利用し、権力の源としてきた。 アラブの各国の政権が独立運動以来、かくも長くサイクス=ピコ協定の打破を主張してきたにもかかわらず、統一アラブ国家が生まれなかったのは、各国の政治に内在する原因があったのであり、サイクス=ピコ協定という外交文書や、英・仏の帝国主義・植民地主義だけに、現在の中東諸問題の原因を求め、責を帰すのは妥当ではないだろう』、「アラブの各国の政権が独立運動以来、かくも長くサイクス=ピコ協定の打破を主張してきたにもかかわらず、統一アラブ国家が生まれなかったのは、各国の政治に内在する原因があったのであり、サイクス=ピコ協定という外交文書や、英・仏の帝国主義・植民地主義だけに、現在の中東諸問題の原因を求め、責を帰すのは妥当ではないだろう」、その通りだ。
・『「協定」をなくせばいいのか  サイクス=ピコ協定ほど、批判と罵(ののし)りの対象となった外交文書も珍しいだろう。そもそもここまで一般に名前が知られている外交文書というものも、少ないだろう。 サイクス=ピコ協定は、ロシアにおいて革命で権力を掌握したボリシェビキ政権によってその存在が暴露されたことから、「列強の中東への不当な介入と分割」の象徴とされて批判の的となった。 日本では世界史の教科書や資料集で取り上げられ、さまざまな中東関連本でも必ずと言っていいほど言及される。そこから「サイクス=ピコ協定こそ中東問題の元凶」といった決まり文句が、一般向け解説でも、あるいは中東専門家が政治的な発言を行う時にも、しばしば見られるようになった。 しかしこのような批判が、現在の問題の理解と解決のために役立つかというと、疑問である。それではサイクス=ピコ協定をなくしてしまえば中東問題は解決するのか。もちろんそのようなことはない。サイクス=ピコ協定をなくしてそれ以前の状態に戻れるのか。もちろん戻れない。それ以前の状態にもし戻れたとして、そこに住む人々のどれだけが納得するのか。その多くは納得しないだろう。 サイクス=ピコ協定を無効とするならば、むしろ今と同様あるいはそれをも上回るような内戦や戦争が勃発し、少数派の迫害や奴隷化が国際社会の制約なく横行しかねない。難民の規模はさらに拡大するだろう。 サイクス=ピコ協定は、中東の国家と社会が抱えた「病」への処方箋だった。この「病」が根から完治しない限り、紛争は続く。解決策として提示されるものも、どこかサイクス=ピコ協定に似通ったものになるだろう。 言うまでもなく、サイクス=ピコ協定が提示する「処方箋」は完璧にはほど遠いものであり、矛盾や欺瞞や不十分さを多く抱え込んでいた。しかしそれは、中東が抱えている問題の複雑さを反映したものだった。サイクス=ピコ協定は問題を解消する魔法の杖ではなく、問題の根深さ、解決策の不在を表現したものだった。 当時の超大国である列強という「医師」に、中東の国家と社会の「病」への処方箋を書く、その資格と能力があったかというと、それは疑わしい。しかしその当時の中東に、より適切に国家と社会を形成できる主体があったかというと、なかったと言わざるを得ない。それは現在でもなお残る問題である。 ※池内恵『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(新潮選書)から一部を再編集。 いまや中東の地は、ヨーロッパへ世界へと難民、テロを拡散する「蓋のないパンドラの箱」と化している。列強によって無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では主流だ。しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない』、「サイクス=ピコ協定は、中東の国家と社会が抱えた「病」への処方箋だった。この「病」が根から完治しない限り、紛争は続く。解決策として提示されるものも、どこかサイクス=ピコ協定に似通ったものになるだろう・・・列強によって無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では主流だ。しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない」、同感である。絶対的な正解がないのが、国際政治の現実だ。 
タグ:「サイクス=ピコ協定によるオスマン帝国の分割案・・・イギリスとフランスの間でサイクス=ピコ協定が結ばれた。これにロシアも同意して、西洋列強がオスマン帝国の支配領域を第1次世界大戦の後に分割する取り決めが結ばれた・・・サイクス=ピコ協定は、第1次世界大戦(1914-18)後から現在までの、中東の諸国家と国際秩序の礎となった。 「サイクス=ピコ協定は、中東の国家と社会が抱えた「病」への処方箋だった。この「病」が根から完治しない限り、紛争は続く。解決策として提示されるものも、どこかサイクス=ピコ協定に似通ったものになるだろう・・・列強によって無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では主流だ。 サイクス=ピコ協定を基礎にした中東諸国の国境線の中で、政治が行われ、国民社会が形成され、国際関係が取り結ばれた」、なるほど。 「現在の中東に生じている事象は、決して最近になって突然に始まったことではない。第1次世界大戦時に噴出した諸問題が、一時は解決したとも思われていながら、実は解決しきれずに、水面下で残っていた。問題を覆い隠すことを可能にしていた中東諸国家の政権や中東地域の国際関係が、イラク戦争から「アラブの春」にかけて揺らいだ。それによって問題が一気に噴出してきたというのが実情である」、確かに歴史的にみる必要がありそうだ。 ラエル軍の桁違いな報復だ」、なるほど。 「イスラエル軍の指揮統制センターはドローンやジェット戦闘機・軍艦・戦車・兵士などから集めた戦場のデータを活用し、ガザ地区のハマスとの戦闘における調整を行っている」、なるほど。「「ドローン・ウォーズUK」のクリス・コール代表は、たとえイスラエル軍が攻撃ごとに合理的な民間人犠牲者数を設定しようとしていたとしても、1カ月足らずで民間人数千人の死亡は、爆撃作戦全体が不均衡な規模であることを示している、と主張した」、「1カ月足らずで民間人数千人の死亡」との犠牲は確かに大きいようだ。 ・・・今回の不幸な戦争がどう転んでも、アメリカ外交の評判が高まることはない。 10.7の奇襲を防げなかったことで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の評判は地に落ちただろうが、アメリカ政府も同じく予測できなかったし、その後の対応も(少なくとも今までのところは)お粗末すぎる。 そしてもしも、ウクライナの戦争が不幸な結末を迎えたらどうなるか。 アメリカの信用だけでなく、その判断力も問われることになる」、想像するだけで恐ろしいシナリオだ。 「アラブの各国の政権が独立運動以来、かくも長くサイクス=ピコ協定の打破を主張してきたにもかかわらず、統一アラブ国家が生まれなかったのは、各国の政治に内在する原因があったのであり、サイクス=ピコ協定という外交文書や、英・仏の帝国主義・植民地主義だけに、現在の中東諸問題の原因を求め、責を帰すのは妥当ではないだろう」、その通りだ。 「ウクライナ軍の戦闘能力を維持するため、アメリカは韓国とイスラエルに置いていた武器弾薬を転用せざるを得なかった。 そこへ突然、イスラエルで戦争が始まった。 こうなると、ウクライナに武器弾薬を送る余裕はなくなる。それでウクライナ軍が劣勢に立たされ、万が一ウクライナ軍が崩壊し始めたら、バイデン政権はどうすればいいのか・・・欧米諸国の見解と、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上諸国の姿勢にはかなりの溝が生じている。欧米のダブルスタンダードに対する反発も強まっている。 この溝を一段と深めたのは、ハマスに対するイス 「今回の戦争が始まったのと同じ10月に出た国連の報告書に、コンゴ民主共和国には現時点で約700万の国内避難民がいるとあった事実はほとんど報じられていない。 その数はイスラエルとガザ地区の被害者より桁違いに多いにもかかわらずだ。) もちろん、それでグローバルサウスの国々が一斉に反米に転じるわけではない。欧米の偽善に腹を立てはしても、それぞれの国益を追求するなかではアメリカや欧州諸国との関係は切れない 現代ビジネス Newsweek日本版「証拠が薄すぎる「小児病院の地下はハマスの拠点」...国際的支持を失いかねない、イスラエルの「苦しい言い訳」の中身とは?」 「イスラエルは、同病院の地下にもハマス司令部があると主張しているが、イスラエル政府はそれを裏づける証拠をほとんど示していない」、これは大きな問題だ。「イスラエル」を全面支持している「バイデン政権」にとっても、頭が痛い問題だろう。 しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない」、同感である。絶対的な正解がないのが、国際政治の現実だ。 Newsweek日本版 「今回の中東での戦争は台湾や日本、フィリピン、その他中国からの圧力に直面している国々にとって好ましいニュースではない。 今の中国は経済面で苦しい状況にあるが、それでも台湾や南シナ海での軍事的挑発を止める気配はない。最近も南シナ海上空で米軍B52戦略爆撃機に、中国のJ11戦闘機が異常接近する事態があった・・・仮にも、ガザでの戦闘がレバノンやイランにまで広がったらどうなるか。アメリカとその同盟国はさらに多くの時間と資源を中東地域に向けざるを得まい」、その通りだ。 (その3)(証拠が薄すぎる「小児病院の地下はハマスの拠点」...国際的支持を失いかねない イスラエルの「苦しい言い訳」の中身とは?、イスラエル軍が戦場支配 対ハマスで技術的優位性 軍の指揮統制センター ドローンや戦車・兵士などから集めた戦場データを活用し戦闘を調整、ガザ戦争でアメリカは信用を失い EUは弱体化 漁夫の利を得るのは「意外なあの国々」「イギリスとフランスが中東紛争の真犯人」は本当か?――悪名高い「サイクス=ピコ協定」の裏に隠された「失敗の本質」) スティーブン・ウォルト氏による「ガザ戦争でアメリカは信用を失い、EUは弱体化、漁夫の利を得るのは「意外なあの国々」」 、世界史にちょっと出てきたので、名前だけは記憶にある。 The Wall Street Journal「イスラエル軍が戦場支配、対ハマスで技術的優位性 軍の指揮統制センター、ドローンや戦車・兵士などから集めた戦場データを活用し戦闘を調整」 デイリー新潮「「イギリスとフランスが中東紛争の真犯人」は本当か?――悪名高い「サイクス=ピコ協定」の裏に隠された「失敗の本質」」 「アメリカ」は「ウクライナ」では「筋書きどおりにはいかなかった」、「アメリカは中国とも事実上の経済戦争を繰り広げていた」、確かに「アメリカ」を取り巻く環境は厳しい。 「イスラム武装組織ハマスが10月7日に対イスラエル奇襲攻撃を仕かけて以来、激しさを増している」、「イスラエル」は自慢の防諜組織が兆候を全く捉えられなかったこともあって、明らかに過剰な「報復作戦」を展開している。 イスラエル・パレスチナ
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中国での日本人拘束問題 スパイ(?)(その5)(中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 爆弾“証言”で日本の情報機関は大混乱 今こそインテリジェンス体制の整備を、中国で「日本人スパイは至る所に」の報道も…訪中日本人が感じた“不気味な異変”の数々、「匿名座談会」駐在員が語る監視社会中国の恐怖 反スパイ法と"データ3法"で情報統制が強化) [世界情勢]

中国での日本人拘束問題 スパイ(?)については、本年4月7日に取上げた。今日は、(その5)(中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 爆弾“証言”で日本の情報機関は大混乱 今こそインテリジェンス体制の整備を、中国で「日本人スパイは至る所に」の報道も…訪中日本人が感じた“不気味な異変”の数々、「匿名座談会」駐在員が語る監視社会中国の恐怖 反スパイ法と"データ3法"で情報統制が強化)である。

先ずは、4月28日付けJBPressが掲載した国際ジャーナリストの山田 敏弘氏による「中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 爆弾“証言”で日本の情報機関は大混乱、今こそインテリジェンス体制の整備を」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74986
・『実はいま、日本の“スパイ史”に残るような大変な出来事が起きている。 2022年10月、中国と日本の架け橋として活動していた「日中青年交流協会」の元理事長である鈴木英司氏が、中国でスパイ活動の罪で6年間投獄された後に解放され、帰国した。鈴木氏は2016年に逮捕されるまで、200回以上も中国を訪れて日中の交流のために活動していた人物だ。 日中のために尽力していた鈴木氏が実刑判決を受けるのは、親中派の人々にとって衝撃的だったという。その鈴木氏が『中国拘束2279日』(毎日新聞出版社)という本を上梓した。中国当局から「日本の公安調査庁のスパイ」と認定されて有罪判決を受けた鈴木氏は、この本の中で明確に自身は「スパイじゃない」として“ぬれ衣による逮捕・拘束”だったと批判している。 その鈴木氏の帰国とその著書が、いま日本のインテリジェンスに携わる人々の間で大きな波紋を呼んでいるのだ。 例えば、著書で鈴木氏はある「疑惑」を主張している。その疑惑とは、本の帯にも書かれている「公安調査庁に中国のスパイがいる」というものだ。事実であれば日本の情報機関である公安調査庁にとっては一大事であり、その存続すら揺るがしかねない大スキャンダルとなる。 そこで、本稿では次の2点について、筆者の取材からの情報も合わせて考察してみたい』、「鈴木氏は、この本の中で明確に自身は「スパイじゃない」として“ぬれ衣による逮捕・拘束”だったと批判」、これは証拠不足で、何とも言えない。「公安調査庁に中国のスパイがいる」、事実であれば、とんでもないことだ。
・『日中友好活動に長年携わってきたのに  1つ目は、鈴木氏が、日本のために働いたスパイだったのかどうかだ。もう1つは、先に述べた公安調査庁の内部に中国のために働く「二重スパイ」がいるのかどうか、である。 まず簡単に、鈴木氏の来歴を見ていきたい。 著書によれば、鈴木氏は大学卒業後に労働組合職員となる。少年時代から中国に対する関心を持っていたところ、上部団体の日本労働組合総評議会(総評)が中国の労働組合のナショナルセンター・中華全国総工会と交流を開始したことで、その事務局を担当。それを機に度々訪中するようになる。社会党の竹内猛衆議院議員(当時)の秘書を務めた時期もある。また竹内氏の秘書になる前から、社会党の土井たか子衆議院議員(当時)とも親しく、土井事務所が発行した通行証で国会にも通っていたという。) 2016年、日中青年交流協会の理事長として日中交流イベントの打ち合わせのために北京を訪問したところ、帰国直前になって、中国の情報・防諜機関である北京市国家公安局に拘束された。 そして裁判で有罪となり、6年間刑務所で過ごした。中国と日本のために尽力してきた鈴木氏の失望感は計り知れない』、「鈴木氏は2016年に逮捕されるまで、200回以上も中国を訪れて日中の交流のために活動していた人物だ。 日中のために尽力していた鈴木氏が実刑判決を受けるのは、親中派の人々にとって衝撃的だった・・・裁判で有罪となり、6年間刑務所で過ごした。中国と日本のために尽力してきた鈴木氏の失望感は計り知れない」、その通りだ。
・『公安調査庁はスパイ組織か  本から抜粋すると、有罪になった罪状はこうだ。 (1)中国政府が「スパイ組織」と認定する公安調査庁から、鈴木氏が「任務」を請け負い情報を収集し報酬を得ていた (2)2013年12月4日、鈴木氏が北京で湯本淵(タン・ベンヤン)さん(在日中国大使館の元公使参事官で、すでに中国に帰国)と会食した際、湯さんから北朝鮮関係の情報を聞き、その内容を公安調査庁に提供した (3)提供した内容は「情報」であると中華人民共和国国家保密局に認定された  ここからわかるように、中国当局は鈴木氏を「公安調査庁のスパイ」と認定している。念のために公安調査庁について説明すれば、法務省の外局で国内外の情報を収集・分析している“スパイ機関”だ。アメリカのCIA(中央情報局)からは、日本側のカウンターパートの一つと認識されている。事実、公安調査庁の職員はCIAで情報収集研修をするなど関係は近い。 公安調査庁は、基本的には対外情報活動はしていないことになっているが、実際は中国などで情報活動を行ってきた。事実、これまで中国当局に逮捕されてきた邦人の中にも、「公安調査庁のスパイ」だった人物が存在する。 ところが鈴木氏は、公安調査庁をスパイ組織であるとは思っていなかったようだ(少なくとも、そう主張している)。
) 鈴木氏は著書でこう述べている。「『公安調査庁はスパイ組織でもなければ、謀略機関でもない。CIAとはまったく違う』と主張したが、どうやら中国政府は公安調査庁をスパイ機関と認定しているようだった」 残念ながら、この言い分は世界的には通用しない。他国から見れば公安調査庁は、れっきとした日本の情報機関=スパイ機関である。 鈴木氏は、その公安調査庁の職員らと情報交換をしていたことは認めている。しかも、中国での取り調べの際に、公安調査庁の職員たちと見られる20人ほどの顔写真を中国当局から見せられて、そのうち4人は知り合いであると答えている(なぜ中国当局が写真を持っていたのかの疑問はまた後に触れる)。 それだけ公安調査庁の職員と接触があれば、鈴木氏を「公安調査庁のスパイ」とする中国の認識のほうが世界の常識に近いと言わざるを得ないのではないだろうか。筆者は中国の肩を持つ気はないが、いくら鈴木氏が「公安調査庁が情報機関だとは知らなかった」と抗弁しても、それだけでは中国当局を納得させられないだろう』、「鈴木氏は、公安調査庁をスパイ組織であるとは思っていなかったようだ(少なくとも、そう主張している)」、苦しい言い訳だ。「公安調査庁の職員と接触があれば、鈴木氏を「公安調査庁のスパイ」とする中国の認識のほうが世界の常識に近いと言わざるを得ないのではないだろうか」、なるほど。
・『長年にわたって監視されていた鈴木氏  さらに、(2)については、2013年12月に、北京で在日中国大使館にも勤務していた中国人外交官である湯本淵氏と食事をしているときに、鈴木氏は北朝鮮情勢について質問したという。その質問が、スパイ活動の一環で、その情報を公安調査庁に提供したと認定されている。 実はこの会食の場には、毎日新聞の政治部副部長(当時)も同席していたと、鈴木氏は明らかにしている。そういう縁から、今回の本も毎日新聞出版社から出版されたのかも知れない。) この食事の席で湯氏から聞いた内容が公安調査庁に伝わったのか否か、あるいは伝わっていたとしたらどう伝わったのかは明らかになっていない。ただ、もし何かしらの形で伝わっていたのなら言い訳は難しいだろう。ちなみに判決文によれば、中国当局は2010年から鈴木氏を公安調査庁のスパイであるとみて捜査を行っていたという。目をつけられていたということだ』、「中国当局は2010年から鈴木氏を公安調査庁のスパイであるとみて捜査を行っていたという」、10年以上も監視されていたのに、気づかなかったというのも不思議だ。
・『公安調査庁との間で金銭授受は本当になかったのか  筆者は、鈴木氏が解放され帰国してから、政府関係者や公安関係者、警察などに取材を続けてきた。ある公安関係者は、匿名を条件にこう語っている。 「中国に利することになるのであまり言いたくはないですが、鈴木さんは公安調査庁から金銭を受け取っていました。さらに中国で捕まっている間も、鈴木氏側に(政府から)補償がなされていたと認識している」 この“証言”だけでは断定はできないだろうが、事実とすれば鈴木氏は公安調査庁のエージェントとして中国で活動していたことが疑われる。 この点について、鈴木氏はどう答えるのか。筆者はそれを確認すべく、鈴木氏へのインタビュー申請をしたが断られた。 もっとも鈴木氏は著書の中で、「私は公安調査庁から任務を言い渡されたこともなければ、報酬を受け取ったこともない」「もし公安調査庁がスパイ組織だと知っていたら、そもそも私は同庁の職員とは付き合わない。任務ももちろん帯びていない。任務だとすれば、私の旅費、ホテル代を公安調査庁が支払い、何々について調べろと命じられ、私がそれに応え、さらにレポートにして出すだろう」と否定してはいる。) ただ別の公安関係者たちからはこんな声も聞かれる。 「日本政府は、海外で情報活動していることを建前上、認めていないので、政府は鈴木氏の(公安調査庁から依頼を受けたことはないとの)発言を否定することはできません」 もしも公安関係者の金銭提供の話が事実だとすれば、これは情報機関から金銭を受け取っていたことになり、それは「スパイ活動」と指摘されても仕方がない。世界的に見れば、それが普通である。もちろん愛国的に、情報提供に金銭を受け取らない協力者もいるが……。この点についての真偽は、今後も取材していきたい』、「もしも公安関係者の金銭提供の話が事実だとすれば、これは情報機関から金銭を受け取っていたことになり、それは「スパイ活動」と指摘されても仕方がない。世界的に見れば、それが普通である」、なるほど。
・『中国情報当局は公安調査庁関係者の写真を撮りまくっている  本稿で考察する2点目は、鈴木氏が主張する「公安調査庁に中国のスパイがいる」という問題だ。本当にいれば、大変な事態で、公安調査庁の内部情報が筒抜けになっている可能性がある。 ただ鈴木氏がそう主張する根拠は少し弱いと言わざるを得ない。 鈴木氏は、取り調べで公安調査庁の職員たちと見られる20人ほどの顔写真を中国当局から見せられたとし、そんな写真を持っている中国当局は、公安調査庁に協力者がいるのではないかと指摘している。 もちろん、その指摘が事実である可能性がある。 ただこの話を聞いて思い出したのが、筆者が5年ほど前に、公安調査庁職員から聞いた話だ。 その当時、公安調査庁は、中国の関係者が日本国内の公安調査庁の関係施設に出入りする人たちの顔写真を望遠レンズを使ったりしながら撮影していることを把握していると言っていた。それについては、2020年に出版した拙著『世界のスパイから喰いモノにされる日本』にも書いている。であれば、公安調査庁職員の顔写真を豊富に持っていても不思議はない。) さらに、鈴木氏は著書の中で、裁判所に向かう護送車に乗り込んで座ると、なんとその向かい側の席にやはり当局に拘束されて手錠をはめられて座っている湯本淵氏とバッタリ再会したと書いている。そして護送車の中で、スパイ容疑の被告である鈴木氏に、中国人容疑者である湯本淵氏がこう語りかけたという。 「日本の公安調査庁の中にはね、大物のスパイがいますよ。ただのスパイじゃない。相当な大物のスパイですよ。私が公安調査庁に話したことが、中国に筒抜けでしたから。大変なことです」 「日本に帰ったら必ず公表してください」 筆者はこのやり取りにも違和感を抱いている。こんな偶然を、果たして中国当局が許すのだろうか。普通に考えれば、当事者同士で会話をさせれば、口裏を合わせられる可能性もある。結果的に、鈴木氏は湯本淵氏との約束をメディアでの活動や今回の出版で果たしている』、「鈴木氏が主張する「公安調査庁に中国のスパイがいる」という問題だ。本当にいれば、大変な事態で、公安調査庁の内部情報が筒抜けになっている可能性がある。 ただ鈴木氏がそう主張する根拠は少し弱いと言わざるを得ない」、なるほど。
・『これを機に日本のインテリジェンス体制を見直すべき  また鈴木氏の出版やメディアでの活動は、日本の情報機関の活動に大きな影響を及ぼしている。公安調査庁では、まず中国国内の情報活動を停止することになったという。「公安調査庁内部に中国のスパイがいる」と大々的にぶち上げられたのだから致し方あるまい。そして、本当に中国人スパイが紛れ込んでいるかどうかは別として、これが日本のインテリジェンスにとっては大打撃であるのも間違いない。 逆に言えば、鈴木氏が本当に公安調査庁のスパイだったのか否かはともかく、中国当局としては日本の情報活動を強く牽制することができたことになる。 日本は、世界各国が当たり前のようにやっているサイバー攻撃やハッキングによるサイバースパイ工作も他国に対して仕掛けることができないし、海外でのインテリジェンス活動も“表向き”は行っていないことになっている。その上、今回の件で重要なライバルである中国からの情報もこれまで以上に得られなくなる。少し前には、ロシアのウラジオストクでも日本人領事がスパイ容疑で一時拘束されたこともあり、ロシアにおける情報活動の動きも鈍っている。 果たしてこのままで日本の安全保障や経済安保は大丈夫なのだろうか。むしろ、いま日本のインテリジェンス分野は重大な岐路に差し掛かっていると認識すべきなのではないだろうか。 筆者は、日本は最近起きている数々のスパイ関連の問題から目を背けず、正面から日本のインテリジェンス活動をどうしていくのかを協議すべき時に来ていると考えている。今こそ、日本がインテリジェンスの世界でも「普通の国」になるチャンスとも言える。 たとえばこうだ。日本に対外インテリジェンス機関を設立し、反スパイ法を制定する。そうして日本政府が公式に国外での対外スパイ活動をバックアップし、日本のためのインテリジェンス収集や工作活動までできる諜報員を育てていく。国家予算をつけ、活動の範囲や保護規定もはっきりと決めることで、海外でインテリジェンス活動をする邦人の保護活動にも寄与することになるだろう。 いま動かなければ、鈴木氏のように中国でスパイとして拘束されてしまう邦人(もちろん日本の情報機関の協力者ではない人も含む)は今後も後を絶たないだろう』、「筆者は、日本は最近起きている数々のスパイ関連の問題から目を背けず、正面から日本のインテリジェンス活動をどうしていくのかを協議すべき時に来ていると考えている。今こそ、日本がインテリジェンスの世界でも「普通の国」になるチャンスとも言える。 たとえばこうだ。日本に対外インテリジェンス機関を設立し、反スパイ法を制定する。そうして日本政府が公式に国外での対外スパイ活動をバックアップし、日本のためのインテリジェンス収集や工作活動までできる諜報員を育てていく。国家予算をつけ、活動の範囲や保護規定もはっきりと決めることで、海外でインテリジェンス活動をする邦人の保護活動にも寄与することになるだろう」、全面的に同意したい。

次に、10月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「中国で「日本人スパイは至る所に」の報道も…訪中日本人が感じた“不気味な異変”の数々」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330547
・『日本と中国は政治的な溝だけでなく、ビジネス間の溝も深まっている。「政治、外交がダメでもせめてビジネスでは」――と期待する日本のビジネスパーソンも中国の現状に落胆する。この状況に、追い打ちをかけるのが中国の改正「反スパイ法」だ。今年7月の導入から3カ月あまりがたつが、互いを疑心暗鬼にさせる同法は、日中の経済交流にますます深刻な影響を及ぼしそうだ。(「China Report」著者 ジャーナリスト 姫田小夏」、「日本のビジネスパーソンも中国の現状に落胆する。この状況に、追い打ちをかけるのが中国の改正「反スパイ法」だ」、なるほど。
・『中国の社会システムからはじき出される日本人  この夏中国へ渡航した日本からの出張者が続々と帰国した。現地事情についての情報交換が行われる中、長年にわたり日中間を往来する出張者が異口同音に語るのは「中国の現状は想像を超えていた」ということだ。 北京に出張した人は、北京五輪当時、急ピッチで新設された北京首都国際空港のターミナルについて「ほこりまみれで劣化が激しい」と驚いた。また、上海に出張した人は、宿泊先の老舗ホテルについて「コロナ禍の消毒液の影響で壁やエレベーターのボタンがボロボロ」と、痛ましい変化に眉をひそめる。今や住人がいなくなった「幽霊マンション」はどこにでもあり、企業倒産も珍しくない。 出張した日本のビジネスパーソンたちが問題にしたのは、景気の悪化だけでなかった。 2010年代に上海の現地法人で総経理を務めた経験のあるA氏は、「中国はもう外国人が生活できる場所ではありません。現地に信頼できる中国人がいなければ、外国人は“行き倒れ”になるリスクさえあります」と、中国出張を振り返る。 「コロナ前まで、私は中国の決済アプリでキャッシュレス決済を行っていましたが、今回の渡航では銀行認証が厳格化されて使えませんでした。訪問先の中国東北部でも現金はほとんど使えず、必要なものは友人の中国人のスマホで立て替えて買ってもらいました」 買い物先や観光地、タクシーや鉄道で――中国社会で成熟する決済システムや予約システムからすっかりはじき出された出張ベースの外国人は、現地に家族や親類、友人がいる場合を除いて、相当の不便を強いられるという。 「外国人が強いられる不便さ」はすでにビザ申請の時点から始まっていた。福岡県在住のB氏は「ビザ申請書には昔の職場の上司の連絡先どころか、他界した親の情報まで記入させられ、申請書を提出してからは3回も修正させられました」とあきれる。複雑な申請は外国人を遠ざけるには効果的だ』、「買い物先や観光地、タクシーや鉄道で――中国社会で成熟する決済システムや予約システムからすっかりはじき出された出張ベースの外国人は、現地に家族や親類、友人がいる場合を除いて、相当の不便を強いられるという」、なるほど。
・『「反スパイ法」の裏に“外国人アレルギー”  19世紀の半植民地化を経験し、20世紀の東西冷戦では「竹のカーテン」で閉ざされた中国だが、ここに来て“外国人アレルギー”はますます高まっている。 そのきっかけの一つが、今年7月に施行された中国の改正反スパイ法だ。同法はスパイ行為の定義を拡大したもので、「国家機密または国家情報、そのほかの国家の安全と利益に関する文書、データ、情報および物品の窃取、偵察、買収、または不法に提供する活動等」といった文言などが盛り込まれた。 中国では国家安全部による「怪しい活動をしている人物がいればただちに当局に通報せよ」とする文書がネット上に掲載され、7月以降、国民を動員しての“スパイ封じ込め”が一段と強化されるようになった。 浮き彫りになるのは外国人への警戒だ。中国政府は「外国には、中国の社会主義制度を転覆し、台頭を阻止したい勢力が存在する」という認識を持ち、スパイは外国から送られてくることを想定している。 実際、近年中国では、全く知らない外国人がメールやSNSを使って中国人に接触し、中国の軍事機密を調べさせる「スパイ行為」が後を絶たないと中国メディアが報じている。 “外国のスパイ”が狙うのは、政治、経済、国防、最先端技術などを専門にする大学生が多いといい、9月の新学期には中国の各大学で、スパイを見つけた場合の通報方法、国家の安全を脅かす行為を特定する方法などを教える特別講座が設けられた。 大学生は「金欲しさ」に機密を売り渡してしまう傾向があるというが、最近の就職難や経済難を思えば、報酬目当ての情報売却の増加は容易に想像がつく。 国家安全保障に詳しい中国人専門家の投稿記事によると「中国人に対する外国のスパイの要求は、最初は『市内の風景を撮影してほしい』という簡単なものから始まり、次第に港や造船所を撮影してほしいとエスカレートを見せ、与える報酬も多額なものになる」という。 中国当局による取り締まりは強化されている。今年8月、国家安全部は、中国で軍事機密プロジェクトに従事していた女性を、海外でスパイ活動を行っていた容疑で逮捕した。女性は渡航先のイタリアで米国の駐イタリア大使館員と食事などを通して緊密になり、米国移住と引き換えに軍事機密情報を売り渡したという。大使館員はCIAの職員だった。 3月には日本の製薬会社の中国駐在員が反スパイ法違反で拘束され、4月には中国共産党系の新聞「光明日報」の幹部が、北京で日本大使館の職員と面会した直後に中国当局に拘束されるなど、物騒な事件は中国の日本人社会の身近なところに及んでいる』、「物騒な事件は中国の日本人社会の身近なところに及んでいる」、恐ろしいことだ。
・『会社員を装って中国で情報収集…?日本人に向けられる疑心暗鬼  中国のネット記事に「日本人は戦前から会社員を装って中国に入国し情報を収集しており、いまなお日本人のスパイは中国社会のあらゆる領域に深く浸透している」とするくだりがあった。 まさに先頃話題になったテレビドラマ「VIVANT」に登場する「別班(べっぱん)」を想起させるが、これは先述した詳細な記述を要求するビザ申請と符合する。とりわけ「過去の職歴と当時の上司」を詳細にわたり書かせるのは、「公務員職を一時的に離れ、民間企業の職員となり中国に入国する日本人がいるからではないか」と推測する向きもある。 もっともスパイを疑われているのは会社員だけではない。中国当局は駐在員の身分で滞在する会社員の活動のみならず、研究者などの学術交流についても警戒している。 現代中国を研究する私大教授C氏は、「日常のメールのやりとりでさえも中国側の相手は警戒し、余計な描写は避け、非常に短い一文しか戻ってこなくなりました」と変化を物語るが、こうしたコメントからも中国側の関係者がかなり用心深くなっていることがうかがえる。 「車の中からは風景の撮影をしないようにお願いします。これから港を見学しますが、カメラやスマホは持参しないでください」――中国を視察で訪れた日本人のD氏は、現地のガイド役の中国人からこう指示されたという。D氏にとって4年ぶりの中国訪問は緊張の連続だった。 前出のA氏もいくつかの異変を感じ取っている。山東省青島市を訪れた印象について、「あれほど外国人でにぎわっていた青島でしたが、その数は激減し、欧米人に至ってはほとんど姿を見ることはありませんでした」と率直な印象を述べている。 そのA氏が国際線で羽田空港に向かう帰途に就いたときのことだ。離陸直前の機内で、乗客はすべての窓のシェードを閉めるようアナウンスが流れた。「中国往来は15年近くなりますが、こんなことは初めてです。滑走路には外国人に見せたくないものがあるのでしょうか。不気味さを感じました」と漏らす。 E氏にも長い中国歴があるが、今夏出張の際に中国の銀行口座と携帯番号を解約した。中国との往来を持つ日本人はE氏のように現地の銀行口座と携帯番号を持つのが通例だが、筆者の周辺では中国から距離を置くためのこのような選択が散見されるようになった。 「スパイはどこにでもいる」と中国当局が警戒を強める中、この「反スパイ法」は間違いなく日中間の交流の分断を招くだろう。互いに「あの人はスパイかもしれない」と疑心暗鬼になり、痛くもない腹を探り合う、そんな嫌な世の中の到来を予感させる。 山崎豊子氏の小説「大地の子」では、主人公の残留日本人・陸一心が文革中に「日本人である」という理由で無実の罪を着せられ、文化大革命の嵐の中、僻地の労働改造所に送り込まれるシーンがある。 何がどう災いするかわからない、あの混沌とした社会への逆戻りは止まらないのだろうか。少なくとも、私たち外国人が「容易に足を踏み入れることができなくなった国」という意味で、今の中国は文化大革命が始まる前夜をほうふつとさせている』、「少なくとも、私たち外国人が「容易に足を踏み入れることができなくなった国」という意味で、今の中国は文化大革命が始まる前夜をほうふつとさせている」、「今の中国は文化大革命が始まる前夜をほうふつとさせている」、こんなことでは、日本人の「中国」観光旅行者は激減だろう。

第三に、11月13日付け東洋経済オンライン「「匿名座談会」駐在員が語る監視社会中国の恐怖 反スパイ法と"データ3法"で情報統制が強化」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/714009
・『李克強前首相の突然の死、日本人駐在員の逮捕など不吉なニュースが続く中国。経済成長が鈍化し、直接投資が初のマイナスになった「世界の市場」から企業が逃げ始めた。 『週刊東洋経済』11月18日号の第1特集は「絶望の中国ビジネス」。共産党が経済よりも大事にしている「国家安全」は中国をどう変えていくのか?日本企業のビジネスへの影響は?匿名座談会や特別対談など、豊富な記事でその答えをお届けする。 反スパイ法や電子データの移動に制限を課すデータ3法など、中国では情報統制が強化されている。現地駐在員や中国ビジネスに関わる会社員に監視社会のリアルや中国ビジネスの現状を聞いた(Qは聞き手の質問)。 [参加者PROFILE] Aさん40代男性・IT営業職 Bさん50代男性・企画部門 Cさん30代男性・営業職 Dさん40代男性・営業職』、興味深そうだ。 
・『Q:反スパイ法やデータ3法はビジネスに影響はありますか。 Aデータ3法関連の仕事が増えていたが、9月末に新たなパブリックコメント案(編集部注:1年間で国外へ提供する個人情報が少ない場合、手続きが簡素化される)が発表され、対象企業が大幅に減った。危機感をあおって仕事を取っていた競合企業は、契約解除などの話が増えるだろう。われわれとしては獲得する案件は選別している。機密情報が含まれるデータ分析や日本企業へのデータ提供などは危険なので控えている』、「われわれとしては獲得する案件は選別している。機密情報が含まれるデータ分析や日本企業へのデータ提供などは危険なので控えている」、日本企業が商売をし難くなったことは確かだ。
・『もはや読む意味はない  B以前、リポートをウィーチャットで送信したところ、相手先に届かないことがあった。おそらく政府要人の名前などが入っていたためブロックされたのだろう。スパイと疑われる可能性があるため、政府関係者とのコンタクトも難しくなった。だから中国発のリポートは機微に触れる情報がなくなり、もはや読む意味はないだろう。 情報をやり取りする仕事は政府から監視されており、気苦労が多い。中国政府が厳しくなったのは、2013年のスノーデン事件(米国のスノーデン氏によって世界各国の機密情報などが暴露された)がきっかけだと思う。あれで米国の諜報活動の実態がよくわかり、中国は防諜の必要性を改めて認識したのではないか。 C直接的な影響はないが、ある日本企業では現地法人の部署の名前を変えたと聞いた。「調査」を「研究」にしたそうだ。調査だと機密情報を探る部署との誤解を与えかねないからだそうだ。また本社(日本)の投資意欲が下がっているため、新規事業の提案などをしても反応が鈍い。現在の日中関係を考えると、投資がかさむ事業は難しい。撤退がすぐできるよう資産を抱え込まない事業のほうが現実的だろう。 D私の見方は3人と違う。サイバーセキュリティー法など、政府の情報管理は以前から厳しかった。年々、内容が厳しくなっているだけで、予想はできたはずだ。日本企業が中国撤退をする言い訳にこれらを使っているだけだと思う。消費財の技術はすでに中国企業に追いつかれており、マーケティングにおいても日本企業は太刀打ちできない状態になっている』、「ある日本企業では現地法人の部署の名前を変えたと聞いた。「調査」を「研究」にしたそうだ。調査だと機密情報を探る部署との誤解を与えかねないからだそうだ。また本社(日本)の投資意欲が下がっているため、新規事業の提案などをしても反応が鈍い。現在の日中関係を考えると、投資がかさむ事業は難しい。撤退がすぐできるよう資産を抱え込まない事業のほうが現実的だろう・・・私の見方は3人と違う。サイバーセキュリティー法など、政府の情報管理は以前から厳しかった。年々、内容が厳しくなっているだけで、予想はできたはずだ。日本企業が中国撤退をする言い訳にこれらを使っているだけだと思う。消費財の技術はすでに中国企業に追いつかれており、マーケティングにおいても日本企業は太刀打ちできない状態になっている」、なるほど。
・『原発処理水の問題は注意  Q:10月には中国で日本人がスパイ容疑で逮捕されました。 Aアステラス製薬社員が拘束された直後は、駐在している日本人の間での緊張が高まった。医療分野や半導体など中国政府が注力をしている業界の関係者は注意が必要だと思う。ただ地域によっても受け止め方の違いはあるようで、北京の駐在員はピリピリしていても、上海ではそうでもない。もっと南の広東省になると全然気にしていない人もいるようだ。 Cわれわれのような、若手・中堅はあまり関係のない話だと思っている。だが、原発処理水の問題は注意が必要だ。日本の報道を引用し処理水は科学的に問題ないというような発信をすると、当局から目をつけられると聞いた。) B拘束されやすい人には特徴がある。中国駐在歴が長い人、そして語学力が高く、中国人と突っ込んだやり取りができる人だ。まあ、現実にはそんな人材はごく少数だから、普通の駐在員は心配しなくていいともいえる。これまでに捕まった人の多くは日本の公安調査庁と接点があったといわれている。そういう背景がなければ、過度に心配する必要はないだろう。 中国の役人との接点がリスクになることは認識しておく必要はある。役人たちとの以前はセーフだった交流が、今は違法と判断されかねない。講演をすると、中国の役人たちから「ぜひ話を聞かせてほしい」と言われて会食をすることがあったが、最近は気をつけている。また中国政府関係者も外国人との会食に応じる機会が減っており、交流自体が減ったと思う。 D消費財は政府にとって位置づけが低く、拘束されることはないと思っている。一方でブランドを潰される可能性はあるだろう。有名消費財ブランドの担当者でハニートラップに引っかかっている人がいる。いかがわしい接待を受けていることがSNSで拡散されれば、ブランドのイメージは崩壊し、不買運動につながりかねない。業界を見渡すと、もう少し考えて行動したほうがいい人がいる』、「地域によっても受け止め方の違いはあるようで、北京の駐在員はピリピリしていても、上海ではそうでもない。もっと南の広東省になると全然気にしていない人もいるようだ・・・中国の役人との接点がリスクになることは認識しておく必要はある。役人たちとの以前はセーフだった交流が、今は違法と判断されかねない。講演をすると、中国の役人たちから「ぜひ話を聞かせてほしい」と言われて会食をすることがあったが、最近は気をつけている。また中国政府関係者も外国人との会食に応じる機会が減っており、交流自体が減ったと思う」、なるほど。日本企業の機密を保護する「スパイ罪」を制定し、違反する中国人を逮捕すれば、逮捕された日本人との交換も可能になるので、早急に検討すべきだ。
・『中国企業のアプリは使わない  Q:情報流出について気をつけていることはありますか。 C中国政府にとって敏感な内容はウィーチャットで連絡を取らない。例えば10月に李克強前首相が亡くなったが、そのときはLINE(ライン)を使った。 A業務の情報交換はできるだけ、中国企業のアプリは使わないようにしている。日本側との情報のやり取りは取引先が指定したVPN(=仮想専用線。通信を暗号化でき安全性が高い)を使っている。ただ、現地スタッフはウィーチャットで仕事をしていると思う。すべて徹底するのは難しい。) D基本的に情報はすべて流出していると考えている。信頼できる取引先であれば情報はすべて開示している。隠すより中国企業に追いつくことのほうが大事だ。 B中国当局はスマホを勝手に起動して盗聴器に仕立てる技術を持っているという噂がある。正しいかどうかわからないが、用心のために重要な会議のときはスマホを持ち込まないようにしている駐在員がいる。スマホの位置情報をつかまれたくないときは、電波遮断の袋に入れるとよいと聞いた』、「業務の情報交換はできるだけ、中国企業のアプリは使わないようにしている。日本側との情報のやり取りは取引先が指定したVPN・・・を使っている・・・用心のために重要な会議のときはスマホを持ち込まないようにしている駐在員がいる。スマホの位置情報をつかまれたくないときは、電波遮断の袋に入れるとよいと聞いた」、ずいぶん大変なようだ。
・『日本が貧しくなった  Q:明るい話がないですね。 B円安や物価高で飲みに行く機会もめっきり減った。接待で使うような中国式のカラオケなんて、今は1人3000元(約6万円)程度する。そもそも日本人は中国人と比べて金払いが悪いと思われていて、店に行っても相手にされない。日本が貧しくなったと感じる。 A明るい話といえば、新型コロナがひどかった時期と比べると徐々に日本人が増えてきたと思う。子どもが日本人学校に通っているが、生徒数は徐々に増えてきていると聞く。ただ、ビザの関係などで本格回復には程遠い。往来が戻ってくれないと商機が増えないので、日中関係が改善して出張や駐在が活発になってほしい。 C最近は大手企業の中国撤退などもあったが、日本勢が戦える分野もまだある。例えば自動車では東北部にはEVは定着しないと思う。冬は寒いのでつねにヒーターをつける必要がある。消費電力の観点などを考えるとエンジン車に優位性がある。市場シェアを取っていくのではなく、特定の分野を見極めて競争をすること。それが日本企業の生き残る道だと思っている』、「接待で使うような中国式のカラオケなんて、今は1人3000元(約6万円)程度する。そもそも日本人は中国人と比べて金払いが悪いと思われていて、店に行っても相手にされない。日本が貧しくなったと感じる」、寂しい限りだ・・・子どもが日本人学校に通っているが、生徒数は徐々に増えてきていると聞く。「消費電力の観点などを考えるとエンジン車に優位性がある。市場シェアを取っていくのではなく、特定の分野を見極めて競争をすること。それが日本企業の生き残る道だと思っている」、「スパイ」の嫌疑をかけられるリスクを負いながら、「生き残る道」を探っている「日本企業」の努力には頭が下がる。
タグ:私の見方は3人と違う。サイバーセキュリティー法など、政府の情報管理は以前から厳しかった。年々、内容が厳しくなっているだけで、予想はできたはずだ。日本企業が中国撤退をする言い訳にこれらを使っているだけだと思う。消費財の技術はすでに中国企業に追いつかれており、マーケティングにおいても日本企業は太刀打ちできない状態になっている」、なるほど。 中国での日本人拘束問題 スパイ(?) 「ある日本企業では現地法人の部署の名前を変えたと聞いた。「調査」を「研究」にしたそうだ。調査だと機密情報を探る部署との誤解を与えかねないからだそうだ。また本社(日本)の投資意欲が下がっているため、新規事業の提案などをしても反応が鈍い。現在の日中関係を考えると、投資がかさむ事業は難しい。撤退がすぐできるよう資産を抱え込まない事業のほうが現実的だろう・・・ 「スパイ」の嫌疑をかけられるリスクを負いながら、「生き残る道」を探っている「日本企業」の努力には頭が下がる。 「接待で使うような中国式のカラオケなんて、今は1人3000元(約6万円)程度する。そもそも日本人は中国人と比べて金払いが悪いと思われていて、店に行っても相手にされない。日本が貧しくなったと感じる」、寂しい限りだ・・・子どもが日本人学校に通っているが、生徒数は徐々に増えてきていると聞く。「消費電力の観点などを考えるとエンジン車に優位性がある。市場シェアを取っていくのではなく、特定の分野を見極めて競争をすること。それが日本企業の生き残る道だと思っている」、 「業務の情報交換はできるだけ、中国企業のアプリは使わないようにしている。日本側との情報のやり取りは取引先が指定したVPN・・・を使っている・・・用心のために重要な会議のときはスマホを持ち込まないようにしている駐在員がいる。スマホの位置情報をつかまれたくないときは、電波遮断の袋に入れるとよいと聞いた」、ずいぶん大変なようだ。 日本企業の機密を保護する「スパイ罪」を制定し、違反する中国人を逮捕すれば、逮捕された日本人との交換も可能になるので、早急に検討すべきだ。 「地域によっても受け止め方の違いはあるようで、北京の駐在員はピリピリしていても、上海ではそうでもない。もっと南の広東省になると全然気にしていない人もいるようだ・・・中国の役人との接点がリスクになることは認識しておく必要はある。役人たちとの以前はセーフだった交流が、今は違法と判断されかねない。講演をすると、中国の役人たちから「ぜひ話を聞かせてほしい」と言われて会食をすることがあったが、最近は気をつけている。また中国政府関係者も外国人との会食に応じる機会が減っており、交流自体が減ったと思う」、なるほど。 「少なくとも、私たち外国人が「容易に足を踏み入れることができなくなった国」という意味で、今の中国は文化大革命が始まる前夜をほうふつとさせている」、「今の中国は文化大革命が始まる前夜をほうふつとさせている」、こんなことでは、日本人の「中国」観光旅行者は激減だろう。 「われわれとしては獲得する案件は選別している。機密情報が含まれるデータ分析や日本企業へのデータ提供などは危険なので控えている」、日本企業が商売をし難くなったことは確かだ。 東洋経済オンライン「「匿名座談会」駐在員が語る監視社会中国の恐怖 反スパイ法と"データ3法"で情報統制が強化」 「物騒な事件は中国の日本人社会の身近なところに及んでいる」、恐ろしいことだ。 「買い物先や観光地、タクシーや鉄道で――中国社会で成熟する決済システムや予約システムからすっかりはじき出された出張ベースの外国人は、現地に家族や親類、友人がいる場合を除いて、相当の不便を強いられるという」、なるほど。 「日本のビジネスパーソンも中国の現状に落胆する。この状況に、追い打ちをかけるのが中国の改正「反スパイ法」だ」、なるほど。 姫田小夏氏による「中国で「日本人スパイは至る所に」の報道も…訪中日本人が感じた“不気味な異変”の数々」 ダイヤモンド・オンライン で、海外でインテリジェンス活動をする邦人の保護活動にも寄与することになるだろう」、全面的に同意したい。 「筆者は、日本は最近起きている数々のスパイ関連の問題から目を背けず、正面から日本のインテリジェンス活動をどうしていくのかを協議すべき時に来ていると考えている。今こそ、日本がインテリジェンスの世界でも「普通の国」になるチャンスとも言える。 たとえばこうだ。日本に対外インテリジェンス機関を設立し、反スパイ法を制定する。そうして日本政府が公式に国外での対外スパイ活動をバックアップし、日本のためのインテリジェンス収集や工作活動までできる諜報員を育てていく。国家予算をつけ、活動の範囲や保護規定もはっきりと決めること 「鈴木氏が主張する「公安調査庁に中国のスパイがいる」という問題だ。本当にいれば、大変な事態で、公安調査庁の内部情報が筒抜けになっている可能性がある。 ただ鈴木氏がそう主張する根拠は少し弱いと言わざるを得ない」、なるほど。 「もしも公安関係者の金銭提供の話が事実だとすれば、これは情報機関から金銭を受け取っていたことになり、それは「スパイ活動」と指摘されても仕方がない。世界的に見れば、それが普通である」、なるほど。 「中国当局は2010年から鈴木氏を公安調査庁のスパイであるとみて捜査を行っていたという」、10年以上も監視されていたのに、気づかなかったというのも不思議だ。 「鈴木氏は、公安調査庁をスパイ組織であるとは思っていなかったようだ(少なくとも、そう主張している)」、苦しい言い訳だ。「公安調査庁の職員と接触があれば、鈴木氏を「公安調査庁のスパイ」とする中国の認識のほうが世界の常識に近いと言わざるを得ないのではないだろうか」、なるほど。 「鈴木氏は2016年に逮捕されるまで、200回以上も中国を訪れて日中の交流のために活動していた人物だ。 日中のために尽力していた鈴木氏が実刑判決を受けるのは、親中派の人々にとって衝撃的だった・・・裁判で有罪となり、6年間刑務所で過ごした。中国と日本のために尽力してきた鈴木氏の失望感は計り知れない」、その通りだ。 「鈴木氏は、この本の中で明確に自身は「スパイじゃない」として“ぬれ衣による逮捕・拘束”だったと批判」、これは証拠不足で、何とも言えない。「公安調査庁に中国のスパイがいる」、事実であれば、とんでもないことだ。 山田 敏弘氏による「中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 爆弾“証言”で日本の情報機関は大混乱、今こそインテリジェンス体制の整備を」 JBPRESS (その5)(中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 爆弾“証言”で日本の情報機関は大混乱 今こそインテリジェンス体制の整備を、中国で「日本人スパイは至る所に」の報道も…訪中日本人が感じた“不気味な異変”の数々、「匿名座談会」駐在員が語る監視社会中国の恐怖 反スパイ法と"データ3法"で情報統制が強化)
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イスラエル・パレスチナ(その2)(イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか、中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?、イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング) [世界情勢]

イスラエル・パレスチナについては、本年10月22日に取上げた。今日は、(その2)(イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか、中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?、イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング)である。

先ずは、10月25日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/710395
・『イスラエルはよく知られているように、欧米先進国並みの民主主義国であるとともに、世界に離散したユダヤ人が集まったユダヤ人の国である。1人当たりのGDPは5.4万ドルで世界14位。日本の3.3万ドル、32位を上回っている(2022年、IMF統計)。数字の上では堂々たる先進国である。 ところが、この「民主主義国」であると同時に「ユダヤ人の国家」であることは、イスラエルの場合、乗り越えがたい深刻な矛盾をはらんでいる。そして、それが今回のハマスによるイスラエル侵攻の最大の原因の1つになっているにじゅう』、「1人当たりのGDPは5.4万ドルで世界14位。日本の3.3万ドル、32位を上回っている」、ずいぶん日本より多いようだ。
・『2022年12月に発足した「最右翼」の連立政権  現在のイスラエルのネタニヤフ政権はイスラエル史上、最右翼の政権と言われている。首相のネタニヤフ氏は右派政党「リクード」の党首で、すでに合計16年余りも首相を務める右派政治家で知られる。 そのネタニヤフ氏が2022年12月に発足した第6次政権で選んだ連立相手は、イスラエルが紀元前1000年ごろのヘブライ王国のダビデ王の時代のように運営されることを掲げ、極右の宗教政党と言われる「宗教シオニスト党」や、やはり極右政党で超民族主義や反アラブ主義を掲げる「ユダヤの力」などだ。 タカ派で知られるネタニヤフ氏が最も左派に見えると揶揄されるような連立政権だ。 しかもこうした極右、宗教政党の党首が、占領地であるヨルダン川西岸やガザ地区の民生を担当する第2国防相、あるいはヨルダン川西岸の警察業務担当の国家安全保障相という重要な閣僚に就任し、パレスチナ人に対して厳しい政策を実施し始めたのである。) ネタニヤフ連立政権が最も力を入れたのが司法制度改革だった。最高裁判所の決定を国会が過半数の賛成で覆すことができるよう改めるほか、最高裁判事の任命などで政府の権限を強めることなどが改革の柱となっている。 最高裁判所は過去に、入植地でのパレスチナ人の土地所有権を認める判決を出して政府が推し進める入植地拡大政策にブレーキをかけたり、ユダヤ教の超正統派が通う宗教学校生が兵役を免除されている慣例を無効とする判決を出している。 これらは極右や宗教政党から見れば「リベラル過ぎる判決」であり、容認できない』、「首相のネタニヤフ氏は右派政党「リクード」の党首で、すでに合計16年余りも首相を務める右派政治家で知られる。 そのネタニヤフ氏が2022年12月に発足した第6次政権で選んだ連立相手は、イスラエルが紀元前1000年ごろのヘブライ王国のダビデ王の時代のように運営されることを掲げ、極右の宗教政党と言われる「宗教シオニスト党」や、やはり極右政党で超民族主義や反アラブ主義を掲げる「ユダヤの力」などだ。 タカ派で知られるネタニヤフ氏が最も左派に見えると揶揄されるような連立政権だ・・・ネタニヤフ連立政権が最も力を入れたのが司法制度改革だった。最高裁判所の決定を国会が過半数の賛成で覆すことができるよう改めるほか、最高裁判事の任命などで政府の権限を強めることなどが改革の柱となっている。 最高裁判所は過去に、入植地でのパレスチナ人の土地所有権を認める判決を出して政府が推し進める入植地拡大政策にブレーキをかけたり、ユダヤ教の超正統派が通う宗教学校生が兵役を免除されている慣例を無効とする判決を出している。 これらは極右や宗教政党から見れば「リベラル過ぎる判決」であり、容認できない」、なるほど。
・『司法制度改革が招いた政権批判がかき消えた  当然のことながら、政権の司法制度改革案に対しては「三権分立を弱体化させる」「民主主義の根幹が崩壊する」などの批判が、イスラエル国内だけでなく欧米諸国からも相次いだ。 さらにネタニヤフ首相自身が汚職で起訴されている身でもあったため、「有罪判決を逃れるための改革だ」などという批判も出た。国内では10万人規模のデモが行われ、反対の動きは政府内から軍の内部にまで広がった。しかし、司法制度改革法は7月に可決された。 司法制度改革への批判がそのまま政権批判の拡大につながる可能性もあったが、10月7日のハマスによる大規模テロによってイスラエル国内のムードは一変した。ネタニヤフ首相は野党も加わる「戦時内閣」を発足させ、国民の意識はハマスに対する報復に集中し、政権批判は消えてしまった。) ネタニヤフ首相自身のタカ派ぶりを象徴するのは、第6次政権に先立つ2018年に成立させた「基本法:ユダヤ国家法」だ。成文憲法のないイスラエルでは、憲法に相当する基本法を重要な項目ごとに制定している。「ユダヤ国家法」もその1つだが、問題はその内容だ。 まずイスラエルという国を「ユダヤ人の民族国家」と規定し「イスラエル国における民族自決権の行使はユダヤ人のみによっておこなわれる」とした。そしてヘブライ語を唯一の公用語とし、それまでヘブライ語とともに公用語だったアラビア語を公用語から外した。 そしてイスラエル国民でもあるパレスチナ人の権利や地位については何も触れられていない』、「司法制度改革案に対しては「三権分立を弱体化させる」「民主主義の根幹が崩壊する」などの批判が、イスラエル国内だけでなく欧米諸国からも相次いだ。 さらにネタニヤフ首相自身が汚職で起訴されている身でもあったため、「有罪判決を逃れるための改革だ」などという批判も出た。国内では10万人規模のデモが行われ、反対の動きは政府内から軍の内部にまで広がった。しかし、司法制度改革法は7月に可決された。 司法制度改革への批判がそのまま政権批判の拡大につながる可能性もあったが、10月7日のハマスによる大規模テロによってイスラエル国内のムードは一変した・・・ネタニヤフ首相は野党も加わる「戦時内閣」を発足させ、国民の意識はハマスに対する報復に集中し、政権批判は消えてしまった。 ネタニヤフ首相自身のタカ派ぶりを象徴するのは、第6次政権に先立つ2018年に成立させた「基本法:ユダヤ国家法」だ。成文憲法のないイスラエルでは、憲法に相当する基本法を重要な項目ごとに制定している。「ユダヤ国家法」もその1つだが、問題はその内容だ。 まずイスラエルという国を「ユダヤ人の民族国家」と規定し「イスラエル国における民族自決権の行使はユダヤ人のみによっておこなわれる」とした。そしてヘブライ語を唯一の公用語とし、それまでヘブライ語とともに公用語だったアラビア語を公用語から外した。 そしてイスラエル国民でもあるパレスチナ人の権利や地位については何も触れられていない」、なるほど。
・『民主国家から「ユダヤ人民族国家」に変質  イスラエルの「建国宣言」(1948年)や基本法の「人間の尊厳と自由」(1992年)には、すべての国民に開かれた「民主国家」「人間の尊厳と自由を守る」などと書かれている。それと比較すると、ネタニヤフ首相が進めた「ユダヤ国家法」、そして司法制度改革は、イスラエルが民主国家という色彩を薄め、ユダヤ人を中心とする民族国家に変質していることを示している。 ネタニヤフ首相のもとでのイスラエル国家の変質は、当然、パレスチナ側との緊張を高める。 ここ数年、大きな武力衝突がないことから、アメリカ国務省関係者らからは「こんなに静かな中東は久しぶりだ」などという声が出ていたが、一方で少なからぬ専門家が「大規模な軍事衝突はいつあってもおかしくない状況だ」と論じていた。 残念なことにその予想が当たり、10月7日に悲劇が起きてしまった。) ダニエル・ソカッチ著の『イスラエル』(NHK出版)が興味深い話を紹介している。イスラエルの初代首相のダヴィド・ベン=グリオン氏はイスラエルのナショナル・アイデンティティーについて、3つの要素があると指摘している。 イスラエルはユダヤ人が多数を占める国家である。 イスラエルは民主主義国家である。 イスラエルは新しい占領地(ヨルダン川西岸とガザ地区)をすべて保有する。 そしてイスラエルはこのうち2つを選ぶことはできるが、3つ全部は選べないというのだ。 この指摘こそが、冒頭に紹介した、イスラエルがユダヤ人国家と民主主義国を同時に標榜することの矛盾を示している』、「ネタニヤフ首相が進めた「ユダヤ国家法」、そして司法制度改革は、イスラエルが民主国家という色彩を薄め、ユダヤ人を中心とする民族国家に変質していることを示している。 ネタニヤフ首相のもとでのイスラエル国家の変質は、当然、パレスチナ側との緊張を高める・・・初代首相のダヴィド・ベン=グリオン氏はイスラエルのナショナル・アイデンティティーについて、3つの要素があると指摘している。 イスラエルはユダヤ人が多数を占める国家である。 イスラエルは民主主義国家である。 イスラエルは新しい占領地・・・をすべて保有する。 そしてイスラエルはこのうち2つを選ぶことはできるが、3つ全部は選べないというのだ。 この指摘こそが、冒頭に紹介した、イスラエルがユダヤ人国家と民主主義国を同時に標榜することの矛盾を示している」、なるほど。
・『占領地を併合すれば、ユダヤ人とパレスチナ人が半々に  イスラエルの人口は約950万人だが、このうち約2割はアラブ人ら非ユダヤ人だ。つまりイスラエルの現実は、ユダヤ人の単一民族国家ではないということだ。実際、アラブ人を代表する政党が存在し、国会に議席も得ている。 連立与党の極右・宗教政党は、実質占領状態にあるヨルダン川西岸とガザも元はユダヤ人の土地であるとして併合を主張している。両地域のパレスチナ人の人口は500万人を超えることから、併合が実現した場合、この地域に住む住民も当然、イスラエル国民となる。 その結果、ユダヤ人とパレスチナ人の人口は約700万人ずつで拮抗することになる。 民主国家は、国民に等しく参政権などの権利を与える。当然、国会の議員構成も大きく変わり、これまでのようにパレスチナ人を差別的に扱う法律は通りにくくなる。逆に併合後もあくまでも「ユダヤ人国家」にこだわるのであれば、ユダヤ人以外の民族の権利を奪う、つまりは人種差別思想に基づく「アパルトヘイト」的政策を取り入れざるを得なくなる。 建国当初からイスラエルの指導者らは、民主国家と民族国家の持つ矛盾を知っていた。 建国から約30年間、政権を維持してきた左派の労働党は、矛盾が顕在化することを避けるため和平合意の道を探り、ラビン首相が1993年にヨルダン川西岸とガザに暫定自治政府を置くことなどを柱とする「オスロ合意」にこぎつけた。 最終的ゴールが、ユダヤ人国家とパレスチナ人国家が並立する「二国家解決案」だった。) ところが「オスロ合意」をピークに和平に向けた動きは失速していった。 ラビン首相の暗殺以後、テロや武力衝突が繰り返され、市民の不安、不満が強まり寛容性は消えてしまった。それを受けてパレスチナに対する強硬論を訴える右派、タカ派が支持を増やす。 一方で、和平交渉を進めてきた左派勢力が衰退していく。その先に出現したのがネタニヤフ氏の時代である。支持基盤を右派政党からさらに宗教政党まで幅を広げていき、今日に至っている。 彼らは、イスラエルが発足時から抱えている矛盾などまったく意に介していないかのようである。重視しているのは民主国家であることを犠牲にした民族主義であり、領土の拡張である。それを実現するための法律が「ユダヤ国家法」であり「司法制度改革」だ』、「イスラエルの人口は約950万人だが、このうち約2割はアラブ人ら非ユダヤ人だ。つまりイスラエルの現実は、ユダヤ人の単一民族国家ではないということだ。実際、アラブ人を代表する政党が存在し、国会に議席も得ている・・・極右・宗教政党は、実質占領状態にあるヨルダン川西岸とガザも元はユダヤ人の土地であるとして併合を主張している。両地域のパレスチナ人の人口は500万人を超えることから、併合が実現した場合、この地域に住む住民も当然、イスラエル国民となる。 その結果、ユダヤ人とパレスチナ人の人口は約700万人ずつで拮抗することになる。 民主国家は、国民に等しく参政権などの権利を与える。当然、国会の議員構成も大きく変わり、これまでのようにパレスチナ人を差別的に扱う法律は通りにくくなる。逆に併合後もあくまでも「ユダヤ人国家」にこだわるのであれば、ユダヤ人以外の民族の権利を奪う、つまりは人種差別思想に基づく「アパルトヘイト」的政策を取り入れざるを得なくなる。 建国当初からイスラエルの指導者らは、民主国家と民族国家の持つ矛盾を知っていた。 建国から約30年間、政権を維持してきた左派の労働党は、矛盾が顕在化することを避けるため和平合意の道を探り、ラビン首相が1993年にヨルダン川西岸とガザに暫定自治政府を置くことなどを柱とする「オスロ合意」にこぎつけた。 最終的ゴールが、ユダヤ人国家とパレスチナ人国家が並立する「二国家解決案」だった・・・ネタニヤフ氏の時代である。支持基盤を右派政党からさらに宗教政党まで幅を広げていき、今日に至っている。 彼らは、イスラエルが発足時から抱えている矛盾などまったく意に介していないかのようである。重視しているのは民主国家であることを犠牲にした民族主義であり、領土の拡張である。それを実現するための法律が「ユダヤ国家法」であり「司法制度改革」だ」、なるほど。
・『占領地の抑圧支配は続けられるのか  前述の『イスラエル』によると、ベン=グリオン氏は、「ヨルダン川西岸とガザという占領地は返還すべきである」ということを言いたかったのだ。そうしなければイスラエルは、民主主義国家でもユダヤ人の国家でもなくなってしまうというのである。 国際的に人権意識が高まっている21世紀の今日、百万人単位の1つの民族を、別の民族が抑圧的に支配しながら安定的な国家運営などできるはずもない。しかし、ネタニヤフ政権を支える極右・宗教政党は、ベン=グリオン氏らの苦悩など想像もできないようである。 むろん今回の大規模テロの責任は、一義的にテロ組織ハマスにある。特に戦闘員でもない一般市民を対象とした大量無差別殺人は徹底的に追及されるべきだ。ガザに住む200万人の命を、イスラエルに向けたロケット弾で守ることはできない。ハマスにはもはや統治者としての責任感は感じられない。 2023年は「オスロ合意」の実現から30年という年だ。当時もイスラエルとパレスチナのPLO(パレスチナ解放機構)は相手を激しく否定していたが、にもかかわらずクリントン米大統領の前でラビン首相とアラファトPLO議長が握手した。 時がたち、兵器は近代化し破壊力が増した。破壊し尽くされたガザの映像は、長く続くネタニヤフ政権のもとで、「二国家解決策」が完全に葬り去られてしまったことを示している』、「ベン=グリオン氏は、「ヨルダン川西岸とガザという占領地は返還すべきである」ということを言いたかったのだ。そうしなければイスラエルは、民主主義国家でもユダヤ人の国家でもなくなってしまうというのである。 国際的に人権意識が高まっている21世紀の今日、百万人単位の1つの民族を、別の民族が抑圧的に支配しながら安定的な国家運営などできるはずもない」、まともな考え方だ。「しかし、ネタニヤフ政権を支える極右・宗教政党は、ベン=グリオン氏らの苦悩など想像もできないようである。 むろん今回の大規模テロの責任は、一義的にテロ組織ハマスにある・・・2023年は「オスロ合意」の実現から30年という年だ。当時もイスラエルとパレスチナのPLO(パレスチナ解放機構)は相手を激しく否定していたが、にもかかわらずクリントン米大統領の前でラビン首相とアラファトPLO議長が握手した。 時がたち、兵器は近代化し破壊力が増した。破壊し尽くされたガザの映像は、長く続くネタニヤフ政権のもとで、「二国家解決策」が完全に葬り去られてしまったことを示している」、「ネタニヤフ政権」も全く困ったものだ。

次に、11月1日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家の冷泉彰彦氏による「中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2023/11/post-1331_1.php
・『<日本外交は歴史的に「宗教対立には関与しない」基本方針を貫いてきた> 現地時間10月7日に発生した、武装集団ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃と、これを受けたイスラエルのハマスに対する宣戦布告により、両者は戦闘状態に入っています。米バイデン政権は、直ちにイスラエルへの強力な支持を表明、G7の中でイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダもほぼこれに同調しています。 その一方で、日本はG7諸国の中では唯一この問題に関しては冷静な立場を取っています。勿論、ハマスの人道を無視した乱射、殺人や誘拐などに対する非難は行っていますが、その一方でガザ地区への援助は継続しています。また、国連における決議等での行動も、イスラエルを全面的に支持するアメリカの投票行動とは少し異なった動きをしています。 今回は、上川外相がイスラエルを訪問しますが、前後してヨルダンを訪問、そして可能であればパレスチナ側要人とも会談して、双方に対する敬意を払う姿勢を見せています。つまり、この問題に関して、そして広い意味での中東情勢に関しては、日本は中立の立場なのです。 理由としては3つ挙げられると思います』、興味深そうだ。
・『中東産原油への依存  1つは、非常に現実的な理由として、日本が石油の一方的な輸入国だからです。日本は資源がないだけでなく、先進国型のエネルギー消費をする人口が1億3000万と多く、また衰退したとは言え製造業もあります。そんな中で、原子力の平和利用については技術力があるものの、政財界が世論を説得する努力が不足しているために、どうしても化石燃料への依存が止められません。 歴史的にも、1970年代に中東戦争による第一次石油ショック、イラン革命による第二次石油ショックという2度の原油高により日本経済は大きく揺さぶられました。そして現在は、ロシアのウクライナ侵攻による原油高と円安に深く苦しんでいます。そんな中では、中東の産油国と良好な関係を保つことは、国益の生命線です。そのためには、パレスチナの人々の権利というアラブの大義に理解を示すことは避けて通れません。 2番目は、製造業の拠点として、資源の購入先として、また人口減に苦しむ中での人材供給元として、日本はアジア、南アジアの国々に大きく依存しています。その中で、インドネシア、マレーシア、パキスタン、バングラデシュといったイスラム圏の国々との関係は極めて重要です。彼らとの信頼関係を維持するためにも、中東における中立ということは必要です。 3つ目の理由としては、日本の外交が江戸時代以来、そして明治から現在に至るまで、徹底的に「非宗教的」であったということがあります。国際社会には様々な利害関係が渦巻いています。その中で宗教を軸とした対立というのは無視できない問題です。ですが、日本は歴史的に「宗教による対立には関わらない」ということ、裏返せば「宗教の対立には全方位で臨む」という姿勢を堅持してきました。これは、例えば戦後における度重なる安保理非常任理事国での貢献などで結果を出したことも加わって、日本の国際的信頼の基盤となっています。今回の中立政策も、その日本外交の「非宗教性」という国是に即したものと言えます。) では現在の情勢下、G7の中で、日本だけがこうした姿勢を取ることには問題があるのかというと、それは「ない」と考えられます。 何よりも、上記の3点は求められれば胸を張って説明できるし、アメリカを含むG7諸国はそれぞれに理解を示すと考えられるからです。特にアメリカに関しては、今回の事態を受けて「イスラエル支持で団結」という状況にはなっていません。アラブ系の市民運動による「ガザ人道危機への告発」だけでなく、今は、穏健ユダヤ系による「ユダヤ系の名で攻撃するな」という反戦運動が高まっているなど、アメリカ世論は「一枚岩」ではないということもあります。多くのイスラム系市民を抱えたイギリス、フランスなど、他のG7諸国にも似たような状況があると考えて良いと思います。 日本の特に保守派の中には、日米同盟の堅持が安全保障の根幹だという認識から、軍事外交においては、アメリカに100%同調すべきという考え方が昔からありました。例えば湾岸戦争、あるいは21世紀初頭の反テロ戦争においては、可能な限りアメリカを支持する姿勢を見せることが、日本の安全を確保する上では「必要不可欠」だと思い詰めていたのです。ですが、現在の世界情勢は当時とは状況が違っており、現在の日本は「中立」を保っていいし、また条件的にもそれは可能であると考えられます』、「中東情勢に関しては、日本は中立の立場なのです。 理由と1つは、非常に現実的な理由として、日本が石油の一方的な輸入国だからです・・・2番目は、製造業の拠点として、資源の購入先として、また人口減に苦しむ中での人材供給元として、日本はアジア、南アジアの国々に大きく依存しています。その中で、インドネシア、マレーシア、パキスタン、バングラデシュといったイスラム圏の国々との関係は極めて重要・・・3つ目の理由としては、日本の外交が江戸時代以来、そして明治から現在に至るまで、徹底的に「非宗教的」であった・・・アメリカに関しては、今回の事態を受けて「イスラエル支持で団結」という状況にはなっていません。アラブ系の市民運動による「ガザ人道危機への告発」だけでなく、今は、穏健ユダヤ系による「ユダヤ系の名で攻撃するな」という反戦運動が高まっているなど、アメリカ世論は「一枚岩」ではないということもあります。多くのイスラム系市民を抱えたイギリス、フランスなど、他のG7諸国にも似たような状況があると考えて良いと思います・・・現在の日本は「中立」を保っていいし、また条件的にもそれは可能であると考えられます」、その通りだ。

第三に、11月7日付けNewsweek日本版が掲載した英ブラッドフォード大学教授〔平和学〕のポール・ロジャーズ氏による「イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/11/post-102984.php
・『<イスラエル軍がとった過去の軍事行動のパターンから見えてくるネタニヤフ首相の戦略的誤算がもたらす地上侵攻の末路とは?> 過去40年間、イスラエルは武装組織との戦いで苦杯をなめてきた。 1982年、イスラエルがレバノンに侵攻し南部を制圧したのをきっかけに、イスラム過激派組織ヒズボラが台頭した。イスラエル軍は敗北を重ね、2000年にレバノンから完全に撤退した。 06年、ヒズボラのロケット攻撃に反撃するため再びレバノンを攻めるも退却。空爆の手段に訴え、レバノンのインフラに甚大な被害を与えた。 そして今度は07年からイスラム過激派組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザだ。イスラエルはハマスのロケット攻撃と地下トンネル網の拡大を抑えることを主な目的に、08〜21年にかけてガザに4度攻め込んだ。 14年の「境界防衛作戦」では地上侵攻で苦戦を強いられ、精鋭部隊ゴラン旅団の戦闘員も大勢犠牲となった。 このときもイスラエルは空爆を行い、最も犠牲を払ったのは民間人だった。4回の戦いでイスラエルは約300人の死者を出し、ガザの犠牲者は5300人を超えた。 今後を占うには歴史が参考になる。9.11同時多発テロの後で、アメリカは国際社会の強い支持を得た。アフガニスタンに侵攻すれば泥沼に陥ると警告する専門家もいたが、タリバンとの戦いは避けられないと国際社会は見なした。 だが、アメリカを含む連合軍はその20年後、混乱の中でアフガンから撤退した』、「過去40年間、イスラエルは武装組織との戦いで苦杯をなめてきた。 1982年、イスラエルがレバノンに侵攻し南部を制圧したのをきっかけに、イスラム過激派組織ヒズボラが台頭した。イスラエル軍は敗北を重ね、2000年にレバノンから完全に撤退した。 06年、ヒズボラのロケット攻撃に反撃するため再びレバノンを攻めるも退却。空爆の手段に訴え、レバノンのインフラに甚大な被害を与えた・・・今度は07年からイスラム過激派組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザだ。イスラエルはハマスのロケット攻撃と地下トンネル網の拡大を抑えることを主な目的に、08〜21年にかけてガザに4度攻め込んだ。 14年の「境界防衛作戦」では地上侵攻で苦戦を強いられ、精鋭部隊ゴラン旅団の戦闘員も大勢犠牲となった。 このときもイスラエルは空爆を行い、最も犠牲を払ったのは民間人だった。4回の戦いでイスラエルは約300人の死者を出し、ガザの犠牲者は5300人を超えた」、これまで苦戦を強いられてきたというのは意外だ。
・『国連での孤立が鮮明に  地上戦の拡大に関して、イスラエルでは懸念の声が上がっている。軍部でもベンヤミン・ネタニヤフ政権内でも国民の間でも、今後の動向については意見が分かれる。 ロシア軍に包囲された東部マリウポリでウクライナ軍がアゾフスターリ製鉄所に籠城し、全長24キロの地下トンネルを駆使して3カ月近く持ちこたえたのはつい昨年のこと。ガザのトンネル網ははるかに広大で、ハマスが数カ月の戦闘に備えているのは確実だ。 10月7日にハマスの奇襲で大勢の市民が命を落とすと、イスラエルには強い支持が寄せられた。しかしそうした支持は既に薄れかけている。 ネタニヤフ政権は地上侵攻の意味するところを全く理解できていないが、必要なことは死者の数を見れば分かる。08年からの衝突でイスラエル側は約1700人を失った。 一方ガザの犠牲者は1万4000人を超え、この数は毎日数百人単位で増えている。 ネタニヤフ政権を今のところ国民は支持している。だがハマスに拘束された人々の家族は戦闘より人質救出を優先してほしいと訴え、その声が世論を変えつつある。 変化は国際世論にも見られ、これにはイスラエルだけでなくアメリカのバイデン政権も戦々恐々としている。 10月27日の国連総会で「人道的休戦」を求める決議案が採択された際、イスラエルとアメリカを支持し反対に回ったのはわずか14カ国。賛成した121カ国のうち8カ国がEU加盟国で、棄権した44カ国にはイギリスも含まれた。 過去のイスラエルによる軍事行動は、国際的な支持を失うと同時に終結を迎えた。奇襲の衝撃が冷めないうちに地上侵攻を開始しハマスを壊滅させていれば、ネタニヤフは勝利を宣言できたただろう。 だがそうはならず、今後そうなる見込みもない』、「10月7日にハマスの奇襲で大勢の市民が命を落とすと、イスラエルには強い支持が寄せられた。しかしそうした支持は既に薄れかけている。 ネタニヤフ政権は地上侵攻の意味するところを全く理解できていないが、必要なことは死者の数を見れば分かる。08年からの衝突でイスラエル側は約1700人を失った。 一方ガザの犠牲者は1万4000人を超え、この数は毎日数百人単位で増えている。 ネタニヤフ政権を今のところ国民は支持している。だがハマスに拘束された人々の家族は戦闘より人質救出を優先してほしいと訴え、その声が世論を変えつつある。 変化は国際世論にも見られ、これにはイスラエルだけでなくアメリカのバイデン政権も戦々恐々としている。 10月27日の国連総会で「人道的休戦」を求める決議案が採択された際、イスラエルとアメリカを支持し反対に回ったのはわずか14カ国。賛成した121カ国のうち8カ国がEU加盟国で、棄権した44カ国にはイギリスも含まれた・・・」、「奇襲の衝撃が冷めないうちに地上侵攻を開始しハマスを壊滅させていれば、ネタニヤフは勝利を宣言できたただろう。 だがそうはならず、今後そうなる見込みもない」、「ハマス」に拘束された「人質」がネックの1つの原因なのかも知れないが、現在、「人質」解放交渉が進んでいるとの報道もある。「ネタニヤフ政権」による「ガザ」支援活動への厳しい規制が、人道危機を悪化させているのは確かだ。「イスラエル」は、虎の子の情報機関モサドの情報収集が機能しなかったことあって、「ハマス」への懲罰に血道を挙げているようだが、もっと冷静になってほしいものだ。
タグ:イスラエル・パレスチナ (その2)(イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか、中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?、イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング) 東洋経済オンライン 薬師寺 克行氏による「イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか」 「1人当たりのGDPは5.4万ドルで世界14位。日本の3.3万ドル、32位を上回っている」、ずいぶん日本より多いようだ。 「首相のネタニヤフ氏は右派政党「リクード」の党首で、すでに合計16年余りも首相を務める右派政治家で知られる。 そのネタニヤフ氏が2022年12月に発足した第6次政権で選んだ連立相手は、イスラエルが紀元前1000年ごろのヘブライ王国のダビデ王の時代のように運営されることを掲げ、極右の宗教政党と言われる「宗教シオニスト党」や、やはり極右政党で超民族主義や反アラブ主義を掲げる「ユダヤの力」などだ。 タカ派で知られるネタニヤフ氏が最も左派に見えると揶揄されるような連立政権だ ・・・ネタニヤフ連立政権が最も力を入れたのが司法制度改革だった。最高裁判所の決定を国会が過半数の賛成で覆すことができるよう改めるほか、最高裁判事の任命などで政府の権限を強めることなどが改革の柱となっている。 最高裁判所は過去に、入植地でのパレスチナ人の土地所有権を認める判決を出して政府が推し進める入植地拡大政策にブレーキをかけたり、ユダヤ教の超正統派が通う宗教学校生が兵役を免除されている慣例を無効とする判決を出している。 これらは極右や宗教政党から見れば「リベラル過ぎる判決」であり、容認できない」、なるほ ど。 「司法制度改革案に対しては「三権分立を弱体化させる」「民主主義の根幹が崩壊する」などの批判が、イスラエル国内だけでなく欧米諸国からも相次いだ。 さらにネタニヤフ首相自身が汚職で起訴されている身でもあったため、「有罪判決を逃れるための改革だ」などという批判も出た。国内では10万人規模のデモが行われ、反対の動きは政府内から軍の内部にまで広がった。しかし、司法制度改革法は7月に可決された。 司法制度改革への批判がそのまま政権批判の拡大につながる可能性もあったが、10月7日のハマスによる大規模テロによってイスラエ ル国内のムードは一変した・・・ネタニヤフ首相は野党も加わる「戦時内閣」を発足させ、国民の意識はハマスに対する報復に集中し、政権批判は消えてしまった。 ネタニヤフ首相自身のタカ派ぶりを象徴するのは、第6次政権に先立つ2018年に成立させた「基本法:ユダヤ国家法」だ。成文憲法のないイスラエルでは、憲法に相当する基本法を重要な項目ごとに制定している。「ユダヤ国家法」もその1つだが、問題はその内容だ。 まずイスラエルという国を「ユダヤ人の民族国家」と規定し「イスラエル国における民族自決権の行使はユダヤ人のみによっておこなわれる」とした。そしてヘブライ語を唯一の公用語とし、それまでヘブライ語とともに公用語だったアラビア語を公用語から外した。 そしてイスラエル国民でもあるパレスチナ人の権利や地位については何も触れられていない」、なるほど。 ダニエル・ソカッチ著の『イスラエル』(NHK出版) 「ネタニヤフ首相が進めた「ユダヤ国家法」、そして司法制度改革は、イスラエルが民主国家という色彩を薄め、ユダヤ人を中心とする民族国家に変質していることを示している。 ネタニヤフ首相のもとでのイスラエル国家の変質は、当然、パレスチナ側との緊張を高める・・・初代首相のダヴィド・ベン=グリオン氏はイスラエルのナショナル・アイデンティティーについて、3つの要素があると指摘している。 イスラエルはユダヤ人が多数を占める国家である。 イスラエルは民主主義国家である。 イスラエルは新しい占領地・・・をすべて保有する。 そしてイスラエルはこのうち2つを選ぶことはできるが、3つ全部は選べないというのだ。 この指摘こそが、冒頭に紹介した、イスラエルがユダヤ人国家と民主主義国を同時に標榜することの矛盾を示している」、なるほど。 「イスラエルの人口は約950万人だが、このうち約2割はアラブ人ら非ユダヤ人だ。つまりイスラエルの現実は、ユダヤ人の単一民族国家ではないということだ。実際、アラブ人を代表する政党が存在し、国会に議席も得ている・・・ 極右・宗教政党は、実質占領状態にあるヨルダン川西岸とガザも元はユダヤ人の土地であるとして併合を主張している。両地域のパレスチナ人の人口は500万人を超えることから、併合が実現した場合、この地域に住む住民も当然、イスラエル国民となる。 その結果、ユダヤ人とパレスチナ人の人口は約700万人ずつで拮抗することになる。 民主国家は、国民に等しく参政権などの権利を与える。当然、国会の議員構成も大きく変わり、これまでのようにパレスチナ人を差別的に扱う法律は通りにくくなる。 逆に併合後もあくまでも「ユダヤ人国家」にこだわるのであれば、ユダヤ人以外の民族の権利を奪う、つまりは人種差別思想に基づく「アパルトヘイト」的政策を取り入れざるを得なくなる。 建国当初からイスラエルの指導者らは、民主国家と民族国家の持つ矛盾を知っていた。 建国から約30年間、政権を維持してきた左派の労働党は、矛盾が顕在化することを避けるため和平合意の道を探り、ラビン首相が1993年にヨルダン川西岸とガザに暫定自治政府を置くことなどを柱とする「オスロ合意」にこぎつけた。 最終的ゴールが、ユダヤ人国家とパレスチ ナ人国家が並立する「二国家解決案」だった・・・ネタニヤフ氏の時代である。支持基盤を右派政党からさらに宗教政党まで幅を広げていき、今日に至っている。 彼らは、イスラエルが発足時から抱えている矛盾などまったく意に介していないかのようである。重視しているのは民主国家であることを犠牲にした民族主義であり、領土の拡張である。それを実現するための法律が「ユダヤ国家法」であり「司法制度改革」だ」、なるほど。 「ベン=グリオン氏は、「ヨルダン川西岸とガザという占領地は返還すべきである」ということを言いたかったのだ。そうしなければイスラエルは、民主主義国家でもユダヤ人の国家でもなくなってしまうというのである。 国際的に人権意識が高まっている21世紀の今日、百万人単位の1つの民族を、別の民族が抑圧的に支配しながら安定的な国家運営などできるはずもない」、まともな考え方だ。「しかし、ネタニヤフ政権を支える極右・宗教政党は、ベン=グリオン氏らの苦悩など想像もできないようである。 むろん今回の大規模テロの責任は、一義的にテ ロ組織ハマスにある・・・2023年は「オスロ合意」の実現から30年という年だ。当時もイスラエルとパレスチナのPLO(パレスチナ解放機構)は相手を激しく否定していたが、にもかかわらずクリントン米大統領の前でラビン首相とアラファトPLO議長が握手した。 時がたち、兵器は近代化し破壊力が増した。破壊し尽くされたガザの映像は、長く続くネタニヤフ政権のもとで、「二国家解決策」が完全に葬り去られてしまったことを示している」、「ネタニヤフ政権」も全く困ったものだ。 Newsweek日本版 冷泉彰彦氏による「中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?」 「中東情勢に関しては、日本は中立の立場なのです。 理由と1つは、非常に現実的な理由として、日本が石油の一方的な輸入国だからです・・・2番目は、製造業の拠点として、資源の購入先として、また人口減に苦しむ中での人材供給元として、日本はアジア、南アジアの国々に大きく依存しています。その中で、インドネシア、マレーシア、パキスタン、バングラデシュといったイスラム圏の国々との関係は極めて重要・・・3つ目の理由としては、日本の外交が江戸時代以来、そして明治から現在に至るまで、徹底的に「非宗教的」であった ・・・アメリカに関しては、今回の事態を受けて「イスラエル支持で団結」という状況にはなっていません。アラブ系の市民運動による「ガザ人道危機への告発」だけでなく、今は、穏健ユダヤ系による「ユダヤ系の名で攻撃するな」という反戦運動が高まっているなど、アメリカ世論は「一枚岩」ではないということもあります。多くのイスラム系市民を抱えたイギリス、フランスなど、他のG7諸国にも似たような状況があると考えて良いと思います・・・現在の日本は「中立」を保っていいし、また条件的にもそれは可能であると考えられます」、その通りだ。 ポール・ロジャーズ氏による「イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング」 「過去40年間、イスラエルは武装組織との戦いで苦杯をなめてきた。 1982年、イスラエルがレバノンに侵攻し南部を制圧したのをきっかけに、イスラム過激派組織ヒズボラが台頭した。イスラエル軍は敗北を重ね、2000年にレバノンから完全に撤退した。 06年、ヒズボラのロケット攻撃に反撃するため再びレバノンを攻めるも退却。空爆の手段に訴え、レバノンのインフラに甚大な被害を与えた ・・・今度は07年からイスラム過激派組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザだ。イスラエルはハマスのロケット攻撃と地下トンネル網の拡大を抑えることを主な目的に、08〜21年にかけてガザに4度攻め込んだ。 14年の「境界防衛作戦」では地上侵攻で苦戦を強いられ、精鋭部隊ゴラン旅団の戦闘員も大勢犠牲となった。 このときもイスラエルは空爆を行い、最も犠牲を払ったのは民間人だった。4回の戦いでイスラエルは約300人の死者を出し、ガザの犠牲者は5300人を超えた」、これまで苦戦を強いられてきたというのは意外だ。 「10月7日にハマスの奇襲で大勢の市民が命を落とすと、イスラエルには強い支持が寄せられた。しかしそうした支持は既に薄れかけている。 ネタニヤフ政権は地上侵攻の意味するところを全く理解できていないが、必要なことは死者の数を見れば分かる。08年からの衝突でイスラエル側は約1700人を失った。 一方ガザの犠牲者は1万4000人を超え、この数は毎日数百人単位で増えている。 ネタニヤフ政権を今のところ国民は支持している。だがハマスに拘束された人々の家族は戦闘より人質救出を優先してほしいと訴え、その声が世論を変えつつある。 変化は国際世論にも見られ、これにはイスラエルだけでなくアメリカのバイデン政権も戦々恐々としている。 10月27日の国連総会で「人道的休戦」を求める決議案が採択された際、イスラエルとアメリカを支持し反対に回ったのはわずか14カ国。賛成した121カ国のうち8カ国がEU加盟国で、棄権した44カ国にはイギリスも含まれた・・・」 「奇襲の衝撃が冷めないうちに地上侵攻を開始しハマスを壊滅させていれば、ネタニヤフは勝利を宣言できたただろう。 だがそうはならず、今後そうなる見込みもない」、「ハマス」に拘束された「人質」がネックの1つの原因なのかも知れないが、現在、「人質」解放交渉が進んでいるとの報道もある。「ネタニヤフ政権」による「ガザ」支援活動への厳しい規制が、人道危機を悪化させているのは確かだ。「イスラエル」は、虎の子の情報機関モサドの情報収集が機能しなかったことあって、「ハマス」への懲罰に血道を挙げているようだが、もっと冷静になっ てほしいものだ。
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中国国内政治(その15)(中国「李克強」前首相死去で完成した習近平「独裁体制」 死から発表まで「空白の8時間」に話し合われた謀議の中身、「李克強前首相の急死」報道に警戒態勢が敷かれる理由 中国政府が恐れることとは?) [世界情勢]

中国国内政治については、本年8月12日に取上げた。今日は、(その15)(中国「李克強」前首相死去で完成した習近平「独裁体制」 死から発表まで「空白の8時間」に話し合われた謀議の中身、「李克強前首相の急死」報道に警戒態勢が敷かれる理由 中国政府が恐れることとは?)である。

先ずは、10月28日付けデイリー新潮「中国「李克強」前首相死去で完成した習近平「独裁体制」 死から発表まで「空白の8時間」に話し合われた謀議の中身」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/10281200/?all=1
・『10月27日、中国の李克強・前首相が68歳の若さで死去した。2013年に首相に就任後、今年3月に退任するまで10年にわたり中国の経済政策を牽引してきた“功労者”に対し、中国の国営メディアは当初、その訃報を淡白に伝えるのみだった。その裏には「ライバルの死」によって独裁体制の完成を目指す、習近平・国家主席の企みがあるという。 【写真を見る】「えっ、これだけ!?」中国メディアのあっさり訃報と、故・安倍晋三元総理との貴重ツーショット 中国共産党機関紙「人民日報」によると、李前首相が死去したのは27日午前0時10分(中国時間)。上海で療養中だったが、突然の心臓発作に見舞われたという。しかし同紙が死去の一報を流したのは8時間以上経った、午前8時25分だった。 中国事情に詳しい、インフィニティ・チーフエコノミストの田代秀敏氏が言う。 「李氏の死去から一報まで時間がかかったのはその間、発表の仕方について習氏を筆頭に党の最高幹部が集まって検討が重ねられたからではないかといわれています。中国では党幹部や重鎮の訃報は政治的に非常にセンシティブな問題として扱われ、訃報のタイミングや内容について党中枢の意向が反映されても何ら不思議ではありません。たとえば22年11月、江沢民・元総書記が96歳で亡くなった時、習氏はその日に自身がトップとなる葬儀委員会を立ち上げ、天安門や人民大会堂で半旗を掲げただけでなく、官庁のホームページや検索サイトも白黒表示にするなどして追悼ムードを演出。結果的に当時、各地で盛り上がりを見せ始めていたゼロコロナ政策への抗議活動は一気に沈静化しました」 安徽省出身の李氏が繋がりのない上海で療養生活を送っていたことに驚きの声も上がっている。「北京には党幹部専用の病院が完備されているため、本人が北京にいるのを嫌がったか、上海の病院でなければ治療できない持病を抱えていた」(全国紙外信部記者)可能性などが取り沙汰されているという』、「「李氏の死去から一報まで時間がかかったのはその間、発表の仕方について習氏を筆頭に党の最高幹部が集まって検討が重ねられたからではないかといわれています。中国では党幹部や重鎮の訃報は政治的に非常にセンシティブな問題として扱われ、訃報のタイミングや内容について党中枢の意向が反映されても何ら不思議ではありません・・・安徽省出身の李氏が繋がりのない上海で療養生活を送っていたことに驚きの声も上がっている。「北京には党幹部専用の病院が完備されているため、本人が北京にいるのを嫌がったか、上海の病院でなければ治療できない持病を抱えていた」・・・可能性などが取り沙汰されている」、なるほど。
・『天安門事件も誘発  「他にも1989年、中国の改革開放の象徴で民主化にも理解を示していた胡耀邦・元総書記が急死した際、葬儀が元最高指導者に不釣り合いで簡素なものだと感じた学生らが抗議する事態に発展。のちの天安門事件を誘発するキッカケになったともいわれています。今回も、国民から人気の高かった李氏の死をないがしろにすると反発を招く可能性がある一方、持ち上げすぎると自身の影が薄まるというジレンマのなか、習氏を中心に淡々とした訃報にとどめるという折衷案に落ち着いたのではないかと見られています」(田代氏) 人民日報など官製メディアが伝えた初報は短いものだったが、なかに「全力で救命に努めた」との一文が挿し込まれており、政権側の“配慮”の痕跡も窺えるという。 もともと李氏は習近平の「最大のライバル」であり、自身の地位を脅かしかねない「目の上のタンコブ」でもあったとされる。北京大学法学部卒の李氏は「共産党エリートの頂点」に位置し、その優秀さから習氏も“切るに切れない”存在だったと伝えられる。 「李氏は首相時代、睡眠時間は長くて4~5時間、日本でいう官庁の課長クラスの官僚にまで直接詳細な指示を出し、また災害が起これば直ちに視察と慰問のため現地へと飛んだ。そうした生活を10年間、毎日続けてきました。現地の報道などを見る限り、今回の死が突然だったのは本当のようで、激務の日々を長く過ごした“代償”と指摘する声もあります」(田代氏)』、「胡耀邦・元総書記が急死した際、葬儀が元最高指導者に不釣り合いで簡素なものだと感じた学生らが抗議する事態に発展。のちの天安門事件を誘発するキッカケになったともいわれています。今回も、国民から人気の高かった李氏の死をないがしろにすると反発を招く可能性がある一方、持ち上げすぎると自身の影が薄まるというジレンマのなか、習氏を中心に淡々とした訃報にとどめるという折衷案に落ち着いたのではないかと見られています」、なるほど。
・『そして「イエスマン」だけが残った  中国では7月に秦剛・外相が、10月24日には李尚福・国防相が突如解任されるなど、不可解な更迭劇が続く。解任理由について政権側から正式な発表はないものの、習氏が「不要」と判断した部下を容赦なく切り、「独裁体制の強化が進んでいる」との声は絶えない。 「それだけでなく、昨年10月の中国共産党大会で一時期は“次の首相の大本命”と目されていた胡春華・副首相(当時)がヒラの中央委員に降格されました。胡氏は李氏と同じく、党員養成機関である共産主義青年団の幹部に選ばれてから輝かしい経歴を重ねたエリート中のエリートでした。李氏の退任や胡氏の降格によって、そうした党エリートが最高指導部から消え、代わって習氏が浙江省トップを務めていた時代の側近たちが脇を固めるようになりました。新しい指導体制のもと、中国が現在の難局をどう乗り切っていくのか――世界が固唾を飲んで注視しています」(田代氏) 優秀な人材を排除し、“イエスマン”ばかりで周りを固め「政権基盤」は安定したかもしれないが、デフォルト(債務不履行)に陥った不動産大手「碧桂園」や米ニューヨークで連邦破産法を申請した恒大集団の例など、不動産バブルの崩壊を阻止する手立ても見失っているように見える現在の習近平政権。権力維持と引き換えに国力を低下させたとしたら、皮肉というほかない』、「優秀な人材を排除し、“イエスマン”ばかりで周りを固め「政権基盤」は安定したかもしれないが、デフォルト・・・に陥った不動産大手「碧桂園」や米ニューヨークで連邦破産法を申請した恒大集団の例など、不動産バブルの崩壊を阻止する手立ても見失っているように見える現在の習近平政権。権力維持と引き換えに国力を低下させたとしたら、皮肉というほかない」、その通りだ。

次に、11月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーランスライターのふるまいよしこ氏による「「李克強前首相の急死」報道に警戒態勢が敷かれる理由、中国政府が恐れることとは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/331579
・『10月27日、中国の李克強前総理(以下、敬称略)が亡くなった。今年の3月まで中国政治のトップで活躍していた大物の突然の死に、中国国内もザワついている。自宅から遠い上海のプールで倒れたこともあり、まことしやかに毒殺説がささやかれているほどだ。政治のトップにいた10年間、李克強は何をしたのか。そして彼の死は中国の人たちにどのような意味をもたらしたのか?』、興味深そうだ。
・『3月の中国共産党大会で政治から引退した李克強 しかし胡錦濤退場“事件”のおかげでほぼ話題にならず  今年3月の政治大会で10年間務めた国務院(内閣に相当)総理を辞し、引退生活に入っていた、李克強が27日未明に急逝した。 さっさと憲法を改正して任期を延長し第3期に突入した習近平・国家主席とは対象的に、李克強は前任者の温家宝・元総理と同じようにすべての権力を手放し、それ以降完全に政治の表舞台から姿を消した。引退当時の年齢はまだ67歳で、政府トップの暗黙の了解となってきた「68歳定年」に届かないまま権力の座を去ったことも、2歳年上の習近平と比較された。 李のきっぱりとした引退の裏には体調不良があると伝えたメディアもあったが、これまで彼がどんな病気を抱えているかは明らかにされていなかった。 特に3月の政府トップ交代の場では、久しぶりに公開の場に姿を現した胡錦濤の髪が真っ白になってめっきり老けており、さらに最も注目される採決の直前に職員によって議場から担ぎ出されるという、前代未聞の“事件”が起きた(参考:中国共産党大会「胡錦濤氏の強制退場」の衝撃、現地の大混乱に見る不穏な予感)。あまりに衝撃的な映像だったため、人々の関心は完全にこの件に集まり、同じ場で「裸退」(すべての権力を手放して退任すること)する李克強のことはあまり話題にならなかった。付け加えると、胡錦濤は実はアルツハイマーを患っており、担ぎ出されたのはそれが原因だったという。そのとき両脇を警備員に抱えられた胡錦濤が李の後ろを通りざまにその肩を叩き、李がそれになんとも言えない表情で応えている写真も、彼の死後ネットに流れている』、「引退当時の年齢はまだ67歳で、政府トップの暗黙の了解となってきた「68歳定年」に届かないまま権力の座を去ったことも、2歳年上の習近平と比較された」、本当に潔い引き際だった。
・『なぜ上海のプールで? 早すぎる死に「毒殺説」まで流れる事態に  それにしても、まだ68歳での死はさすがに若すぎる。数年前には、国家指導者たちに毎年巨額をかけての健康診断が行われていることを証明する内部資料が暴露されたばかりだ。そのような中でなぜ李が急死したのか、それも通常の居住地ではなく、上海のプールで……と、人々のさまざまな懐疑心を呼び起こし、ネットではまことしやかに「李克強毒殺」手段まで分析されていた。 もし殺害となれば、その容疑は当然今の権力者に向けられることになる。だが、すでにきっぱりと「裸退」した李に今の権力者たちが手をかける必要があるかどうか、そしてなぜそれが今なのか……と考えると、その疑惑もまた度を越したものだと言わざるを得ないだろう。 しかし、日常の健康状態に触れないまま「心臓発作」という死因しか明らかにされなかったこと、また運び込まれたのが上海の心臓疾患治療で著名な病院ではなく、「近いから」という理由で中医(漢方医)病院が選ばれたなどという説もあり、人々の疑心のネタになっている。死亡を伝える正式報道も詳細が一切省かれているため、「殺害」を信じたい人たちの気持ちはしばらく落ち着かないはずだ』、「運び込まれたのが上海の心臓疾患治療で著名な病院ではなく、「近いから」という理由で中医(漢方医)病院が選ばれたなどという説もあり、人々の疑心のネタになっている」、まさか「中医(漢方医)病院」ということはないのではなかろうか。
・『胡錦濤と温家宝の二人に次期国家主席候補とみなされていた人物  李はもともと、前政権の胡錦濤と温家宝によって次期国家主席候補とみなされていた。そこに「紅二代」(中国共産党創設メンバーの子女)である習近平の存在が次期指導者として急浮上したが、それでも胡と温は李を国家主席に据えるつもりだった。だが、習にとってもう一人の「紅二代」次期指導者候補のライバルとみなされていた薄煕来が、家族による外国人殺害容疑や資産隠しなどが暴露されるという前代未聞の事件で失脚した結果、党内で激しい主導権争いが起き、習が国家主席、李が国務院総理となる案に落ち着いたとされる。このあたりは、すでに日本でも多くの分析書籍が出ているのでそちらをご覧いただきたい。 ただ、李は出世街道を上る前に大学で経済学を収めていた。歴代中国指導者として初めて正式な博士号を持つ人物であり、実務に携わる総理職への就任はふさわしいといえた(なお、他の指導者たちの経歴にも「博士」「修士」が並ぶが、それらはすべて李のように論文を書いて取得したわけではなく、「名誉」的な後付けばかりである)。その結果、就任当時にはすでに「世界第2の経済大国」となり、また「世界工場」の異名を取っていた中国の経済発展に注目する人たちに、その手腕を大きく期待された。李の発言は「克強経済学」(リコノミクス)などともてはやされた。 訃報の後にも、その当時を懐かしむ書き込みや切り取り動画がネットに多く流れた。たとえば、「中国はもう後戻りしない。開放の門は大きく開かれても閉じられることはない」と述べたニュース映像、就任直後に流れた「中国の統計数字は人工的に操作されている」、また昨年の「中国人の年間収入は平均にすると3万元(約63万円)だが、実際には6億の人口が毎月1000元(約2万円)の収入で暮らしている」という発言などが広くシェアされた。 これらはどれも発表当時、中国のトップリーダーによる思い切った発言だとして国際社会でも大きく取り沙汰されたものだ。もちろん、中国社会には自分たちの気持ちを代弁してくれたという思いが広がり、そのたびごとに「新しい政治」への期待が溢れた。人々が李の死に際して、あえてこれらの発言を発掘して流しているのは、当時の気持ちを思い出したからだろう。 李が目指した経済政策は、1990年代末のWTO加盟直前に大胆な経済改革を進めた朱鎔基のそれに近いとされる。朱鎔基こそいまだに中国経済人の中で人気の政治家だが、実際に李が総理を務めた10年間、中国では何が起きたか』、「胡と温は李を国家主席に据えるつもりだった。だが、習にとってもう一人の「紅二代」次期指導者候補のライバルとみなされていた薄煕来が、家族による外国人殺害容疑や資産隠しなどが暴露されるという前代未聞の事件で失脚した結果、党内で激しい主導権争いが起き、習が国家主席、李が国務院総理となる案に落ち着いたとされる・・・歴代中国指導者として初めて正式な博士号を持つ人物であり、実務に携わる総理職への就任はふさわしいといえた・・・李が目指した経済政策は、1990年代末のWTO加盟直前に大胆な経済改革を進めた朱鎔基のそれに近いとされる」、なるほど。
・『李克強が総理を務めた10年間 IT業界や予備校業界への締め付け、不動産業界の不調……  まず、「国進民退」が誰の目にも明らかとなった。これは「国有経済が成長し、民営経済がやせ細る」という意味だ。WTO加盟を受けて大きく民営企業が成長した2000年代に比べ、2010年代はそうやって成長した新たな経済が「国のシステム」に取り込まれる時代となり、「新たな制度作り」が急速に進んだ。 記憶に新しいところでは、IT業界の巨人「阿里巴巴 Alibaba」(以下、アリババ)の馬雲(ジャック・マー)会長(当時)による経済政策批判をきっかけに、大掛かりなIT業界の締め付けが始まり、さらに「子供と家族の負担を減らす」という理由で当時成長産業だった校外教育産業が潰された。これにより、高学歴の失業者が大量に出現。さらに新型コロナウイルスによる肺炎の大流行と行き過ぎた感染防止政策によって民間経済は停滞を余儀なくされ、10年どころか過去20年間に培われた新たな民間経済パワーは大きく挫折した。 コロナ対策解消後の今になって、中国政府はあわてて民営経済の育成や支援を口にするようになったが、当時見捨てられ、切り捨てられて痛い目に遭った民間の士気はまだまだ低い。特に、高学歴者や若い世代には面従腹背がまん延し、政府が求めるような「一致団結」には至らないままだ。 もちろん、そうした政策に李克強がどれほど主体的な役割を演じたかは分からない。習近平の一存によるものなのかもしれない。それでも李は間違いなくこの3月まで政府のトップ指導者の一人だったのである。特に、今やデフォルト騒ぎが続いている不動産業界が野放しだったこと、そして新たな時代の成長の柱だったIT産業や民間経済に対するあまりにも厳しい措置の数々において、李にその責任はないとは言い切れないはずだ』、「今やデフォルト騒ぎが続いている不動産業界が野放しだったこと、そして新たな時代の成長の柱だったIT産業や民間経済に対するあまりにも厳しい措置の数々において、李にその責任はないとは言い切れないはずだ」、その通りだ。
・『李の訃報を中国メディアはどう伝えたか 警戒態勢も、その理由は「偉大だったから」ではない  李の訃報後、日本を含めた海外メディアは、そのニュースを中国メディアがどう伝えるかに注目した。これは中国報道あるあるで、その取り扱われ方が現政権による旧指導者への評価とみなされるからだ。 ネットユーザーに日頃から「真理部」と呼ばれて皮肉られている共産党中央宣伝部は、27日のうちにメディアやネットプラットホーム運営各社に向けて、訃報を娯楽情報や商業活動と同じページや欄には載せないこと、さらに秋のイベントやカンフー映画などに関するすべての活動を中止するよう通達した。加えて「新華社、中央電視台、人民日報記事のみを転載すること」「ネットプラットホームのコメント欄をきちんと管理し、高すぎる評価を受けた言論には特に注意すること」などとする報道制限令を通知したことが分かっている。 またネットユーザーによると、台湾人歌手の梁静茹さんの「可惜不是你」(残念ながらあなたじゃなかった)という歌が再生できなくなっているという報告もあった(なお、この曲は昨年安倍首相が殺害された際にも、再生不能になっている)。 さらに、大学などにも、訃報についての学生たちの発言やネット書き込みに注目し、不当な発言は禁止、さらには集団で哀悼活動を行うなどの組織化、そうした活動への参加も制限するよう求める指令が下ったとされる。 ただ、こうした警戒体制が取られるのは李が「偉大だったから」ではない。 というのも、前述したように李が中国共産党の指導者の一人であったことは疑いなく、ここ10年間の失策の責任を負うべき立場にあることは間違いない。またそれ以前の1990年代終わりに李が河南省で党委員会書記を務めていた頃、同省で広がっていた、集団売血や輸血によるエイズ広域感染の実態を調べるように省の担当機関に命じた一方で、その事態を公にした研究者らを拘束した責任を問う声もある。 つまり、中国初の博士宰相であった李もまた間違いなく、中国共産党のシステムに従い、その中のルールを守って一歩一歩権力への道を登ってきた人間の一人だったのだから。 中国政府が今恐れているのは、李の訃報によってかつてのその前例のない発言や行動が切り取られ、称賛され、持ち上げられることだ。そして庶民が現状への不満から、それを持ち上げることで現政権、現政府に当てつけるムードが拡散していくことなのである。 李克強の突然の死が今の中国政治に与える影響はそれほどないだろう。だが、我々はこの事件を通じて、コロナゼロ対策以降の庶民の不満は決して収まっていないことを目の当たりにした』、「中国政府が今恐れているのは、李の訃報によってかつてのその前例のない発言や行動が切り取られ、称賛され、持ち上げられることだ。そして庶民が現状への不満から、それを持ち上げることで現政権、現政府に当てつけるムードが拡散していくことなのである」、大きな混乱なしに収まってほしいものだ。
タグ:中国国内政治(その15)(中国「李克強」前首相死去で完成した習近平「独裁体制」 死から発表まで「空白の8時間」に話し合われた謀議の中身、「李克強前首相の急死」報道に警戒態勢が敷かれる理由 中国政府が恐れることとは?) デイリー新潮「中国「李克強」前首相死去で完成した習近平「独裁体制」 死から発表まで「空白の8時間」に話し合われた謀議の中身」 「「李氏の死去から一報まで時間がかかったのはその間、発表の仕方について習氏を筆頭に党の最高幹部が集まって検討が重ねられたからではないかといわれています。中国では党幹部や重鎮の訃報は政治的に非常にセンシティブな問題として扱われ、訃報のタイミングや内容について党中枢の意向が反映されても何ら不思議ではありません・・・安徽省出身の李氏が繋がりのない上海で療養生活を送っていたことに驚きの声も上がっている。 「北京には党幹部専用の病院が完備されているため、本人が北京にいるのを嫌がったか、上海の病院でなければ治療できない持病を抱えていた」・・・可能性などが取り沙汰されている」、なるほど。 「胡耀邦・元総書記が急死した際、葬儀が元最高指導者に不釣り合いで簡素なものだと感じた学生らが抗議する事態に発展。のちの天安門事件を誘発するキッカケになったともいわれています。今回も、国民から人気の高かった李氏の死をないがしろにすると反発を招く可能性がある一方、持ち上げすぎると自身の影が薄まるというジレンマのなか、習氏を中心に淡々とした訃報にとどめるという折衷案に落ち着いたのではないかと見られています」、なるほど。 「優秀な人材を排除し、“イエスマン”ばかりで周りを固め「政権基盤」は安定したかもしれないが、デフォルト・・・に陥った不動産大手「碧桂園」や米ニューヨークで連邦破産法を申請した恒大集団の例など、不動産バブルの崩壊を阻止する手立ても見失っているように見える現在の習近平政権。権力維持と引き換えに国力を低下させたとしたら、皮肉というほかない」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン ふるまいよしこ氏による「「李克強前首相の急死」報道に警戒態勢が敷かれる理由、中国政府が恐れることとは?」 「引退当時の年齢はまだ67歳で、政府トップの暗黙の了解となってきた「68歳定年」に届かないまま権力の座を去ったことも、2歳年上の習近平と比較された」、本当に潔い引き際だった。 「運び込まれたのが上海の心臓疾患治療で著名な病院ではなく、「近いから」という理由で中医(漢方医)病院が選ばれたなどという説もあり、人々の疑心のネタになっている」、まさか「中医(漢方医)病院」ということはないのではなかろうか。 「胡と温は李を国家主席に据えるつもりだった。だが、習にとってもう一人の「紅二代」次期指導者候補のライバルとみなされていた薄煕来が、家族による外国人殺害容疑や資産隠しなどが暴露されるという前代未聞の事件で失脚した結果、党内で激しい主導権争いが起き、習が国家主席、李が国務院総理となる案に落ち着いたとされる・・・歴代中国指導者として初めて正式な博士号を持つ人物であり、実務に携わる総理職への就任はふさわしいといえた ・・・李が目指した経済政策は、1990年代末のWTO加盟直前に大胆な経済改革を進めた朱鎔基のそれに近いとされる」、なるほど。 「今やデフォルト騒ぎが続いている不動産業界が野放しだったこと、そして新たな時代の成長の柱だったIT産業や民間経済に対するあまりにも厳しい措置の数々において、李にその責任はないとは言い切れないはずだ」、その通りだ。 「中国政府が今恐れているのは、李の訃報によってかつてのその前例のない発言や行動が切り取られ、称賛され、持ち上げられることだ。そして庶民が現状への不満から、それを持ち上げることで現政権、現政府に当てつけるムードが拡散していくことなのである」、大きな混乱なしに収まってほしいものだ。
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インド(その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、シーク教徒指導者殺害で激しく対立するインドとカナダがこだわるカリスタン運動とは、「食えない国」インドは日米豪と中ロどちらの味方なのか?防衛大教授が解説) [世界情勢]

インドについては、本年6月13日に取上げた。今日は、(その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、シーク教徒指導者殺害で激しく対立するインドとカナダがこだわるカリスタン運動とは、「食えない国」インドは日米豪と中ロどちらの味方なのか?防衛大教授が解説)である。

先ずは、本年6月7日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリストのさかい もとみ氏による「「今世紀最悪」の列車事故、インドの鉄道安全事情 近年は件数減少、だが新安全装置整備は進まず」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/677456#:~:text=%E6%9C%80%E5%89%8D%E7%B7%9A%20%3E%E6%B5%B7%E5%A4%96-,%EF%BD%A2%E4%BB%8A%E4%B8%96%E7%B4%80%E6%9C%80%E6%82%AA%EF%BD%A3%E3%81%AE%E5%88%97%E8%BB%8A%E4%BA%8B%E6%95%85%EF%BD%A4%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E3%81%AE%E9%89%84%E9%81%93%E5%AE%89%E5%85%A8,%E8%A3%85%E7%BD%AE%E6%95%B4%E5%82%99%E3%81%AF%E9%80%B2%E3%81%BE%E3%81%9A&text=%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E6%9D%B1%E9%83%A8%E3%81%AE%E3%82%AA%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B7%E3%83%A3%E5%B7%9E,%E3%81%AE%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E3%81%8C%E7%B6%9A%E3%81%8F%E3%81%8C%E3%80%81%E2%80%A6
・『死者が300人近くに及ぶ今回の事故は、インドで今世紀に入ってから最大の列車事故とされる。これだけの規模の事故が起きれば、誰でもインドの鉄道の安全性に疑問を感じるに違いない。 英国の公共放送BBCは、インドにおける鉄道事故について、過去最悪の例は1981年6月、サイクロンの時に橋を渡っていた列車が川に転落し800人弱が亡くなったものだとしている。その後100人以上の死者を出した事故は3度起きており、直近では2016年11月に「インドール―パトナ・エクスプレス」という優等列車が脱線、150人近くが死亡する悲劇が起きている。 しかし、データによると事故は減少傾向にあり、2016年以降はこのような大事故は起きていなかった。安全性の指標となる100万列車キロ当たりの事故件数は、2013年度の0.10件から2021年度には0.03件に減少。2017年度から5年間の安全基金(総額1兆ルピー=約1兆6990億円)を設けたことが安全指標の改善につながったため、5年間延長のうえさらに4500億ルピー(約7645億円)の資金が投入されている』、「安全性の指標となる100万列車キロ当たりの事故件数は、2013年度の0.10件から2021年度には0.03件に減少」、今回の事故を除いた長期的現減少向はなかなか立派なものだ。
・『路線延長世界4位の「国民の足」  国連人口基金(UNFPA)の推計によると、インドの人口は今年14億2860万人となり、中国を抜いて世界一になる見通しだ。人々の重要な足として鉄道のシェアは大きい。 約6万8000kmに及ぶ路線の総延長はアメリカ・中国・ロシアに次いで世界第4位。そのうち、5万9000km余りが交流25kV・50Hzで電化されている。2020年の旅客輸送実績は80億8600万人。長距離列車と近郊列車を加えた旅客列車は1日当たり1万3000本が運行されている。国内の駅数は7325カ所に及ぶ。 歴史的にみると、インドはアジアで最初に鉄道が導入された国だ。イギリスで旅客輸送が始まった1825年から間もない1830年代には、すでに道路やダムの建設に使う資材運搬用の鉄道が敷設されていた歴史もある。 軌間(線路の幅)は長らく複数が混在していたが、現在はほとんどが1676mmの広軌に統一されている。これは新幹線などの標準軌(1435mm)よりもさらに200mm余り広い。当時、インド総督の任にあったダルハウジー卿が「広いほうが望ましい」と言ったことから広軌で敷かれたという。) 経済発展著しいインドでは、人々の往来需要も年々拡大している。そんな中、主要都市を結ぶ昼行電車特急「バンデバラト(Vande Bharat)・エクスプレス」が2019年に登場した。普通車と1等車からなる16両編成で、車内にはUSB電源やWi-Fiも装備している。これまでに18区間に導入されており、テスト中に最高時速180kmまで出した記録もある。 だが、線路の許容速度と運行上の制約から、デリー―ボパール間のみは時速160kmで走れるものの、その他の区間は時速110~130km運行に制限されている。さらなる高速化が期待されるが、従来型の優等列車(エクスプレスまたはメール)の平均時速は50.6km、近郊電車は同37.5km、普通列車は同33.5kmだという。インドの既存客車列車の速度からすれば、圧倒的に速いと言っていいだろう。 インドでは現在、高速鉄道のプロジェクトも進んでいる。最も先行しているのは、西部の商業都市ムンバイ(旧ボンベイ)とその北にあるアーメダバードとを結ぶ路線で、日本の新幹線システムが導入される予定だ』、「日本の新幹線システムが導入される予定」、日本製の機器を揃えるだけでは不十分で、定時運行を守ろうとする従業員の姿勢も不可欠だが、これはどうするのだろう。
・『保安装置の導入前倒しなるか  そのような発展が進む一方で発生した今回の大惨事を受け、インドでは鉄道の安全対策についての議論が高まっている。 インドの鉄道では、運行本数の多い区間に欧州の信号保安システムETCSレベル2水準とされる「Kavach」と称する安全システムの導入を進めている。これはインド国鉄が産業界と共同で開発した”最先端のシステム”とされ、運転士が速度制限を守らなかった場合、自動的にブレーキをかけたり、列車が接近しすぎた場合に衝突を防止したりするものだ。 ただ整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる。Kavachシステムの整備はモディ政権が掲げた「自立したインド」の一環として行われているが、今回事故が起きた路線には「Kavachシステムはない」(鉄道省広報官)という。大事故を教訓に導入計画が前倒しで進められる可能性も高まっているが、はたしてどうなるだろうか。 安全設備の整備はまだ発展途上にあるようだが、事故件数は減少傾向にあっただけに、1000人を超える死傷者を出す事故が起きてしまったのは残念だ。 ある日本人駐在者は「事故翌日に開催された現地団体の集まりで犠牲者に対して黙祷を捧げた」といい、「事故に関する報道は盛んだが、原因分析に関する報道姿勢は思った以上に慎重。第一報ではコロマンデル・エクスプレスの脱線原因は不明とした上で、考えられる仮説を取り上げており、インドメディアは信頼できるかも、と改めて感じた」と話していた。 モディ首相は事故発生翌日の3日、現場へ急行。直ちに「責任のある者に厳罰を与える」と強く述べた。再発防止のための原因究明は欠かせない。これ以上の悲劇を起こさぬために、最善の対応を望みたいものだ』、「責任のある者に厳罰を与える」との「モディ首相」発言は、システムなどの問題を単に人的過失として断罪するだけの責任転嫁になる恐れがある。

次に、9月26日付けNewsweek日本版「シーク教徒指導者殺害で激しく対立するインドとカナダがこだわるカリスタン運動とは」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/09/post-102711_1.php
・『<カナダ在住のシーク教独立運動指導者が殺害された事件で、インド政府の関与を疑うカナダ政府に対し、インドが猛反発。怒りの背景には、積年の恨みがあった> カナダ在住のシーク教指導者ハーディープ・シン・ニジェールが殺害された事件について、インド政府が関与した可能性があるとカナダのジャスティン・トルドー首相が発言したことで、インドとカナダの関係は外交的危機の瀬戸際に立たされている。背景にはこの事件や発言だけでなく、インドのシーク教徒の分離主義運動をカナダ政府が支援しているのではないか、という長年の疑心暗鬼が大きな流れとしてある。 この衝突を世界が注視するなか、インドは断固として暗殺との関わりを否定。カナダの特定の政治家や当局者が、独立国家カリスタンの創設を目指すシーク教徒の分離主義グループを間接的に支援している可能性を指摘して、それが両国関係を緊張させていると主張した。 カリスタン運動はインドのパンジャブ地方にシーク教徒の独立国家創設をめざす運動で、インド政府としては到底容認できない反政府分子だ。ニジェールはその過激派とつながっていたとしてインドで有罪判決を受けた「テロリスト」なのに、カナダ政府はその身柄を拘束しようともしなかった、というのだ。 トルドー首相は2023年7月、記者団に対し、カナダは「表現の自由」を支持しているに過ぎないと述べた。「この国は多様性が非常に豊かな国であり、われわれには表現の自由がある」 トルドーはこの危機について公然とインドを非難し、議会下院で、ニジェールの死についてインド政府のいかなる関与も「容認できない」と述べた。カナダのメラニー・ジョリー外相も、インドが関与しているという主張が事実であれば、それは「わが国の主権に対する重大な侵害」になると述べた』、「カリスタン運動はインドのパンジャブ地方にシーク教徒の独立国家創設をめざす運動で、インド政府としては到底容認できない反政府分子だ。 ニジェールはその過激派とつながっていたとしてインドで有罪判決を受けた「テロリスト」なのに、カナダ政府はその身柄を拘束しようともしなかった」、「ニジェール」が「「テロリスト」との判断があくまで「インド」裁判所の判断で、「カナダ」では「表現の自由がある」と、全く嚙み合わない。
・『カナダ野党も「造反」  この騒動で、カナダに駐在するインドの高官らは国外退去となった。インド政府も対抗してカナダの高等弁務官を召喚し、インドに駐在するカナダの外交官を国外追放すると伝えた。 インド外務省の声明によれば、「今回の決定は、カナダ外交官の内政干渉や反インド活動への関与に対するインド政府の懸念の高まりを反映したものである」。 トルドーにとってさらに事態を悪化させたのは、カナダ野党・保守党のアンドリュー・シーア党首の発言だった。ニジェールの死はインドによる陰謀だというカナダ政府の説は「根拠がなく、受け入れがたい」と彼は述べた。 「首相の無能さは、世界最大の民主主義国家であり、アジアの新興大国であるインドとカナダの関係に深刻なダメージを与えている。首相は最終的に正しい振る舞いを選び、自分の陰謀説を証明する何らかの証拠を出せるのだろうか」 インド政府もシーク教徒の分離主義運動を取り締まらないカナダの姿勢を批判した。 「この問題に対するカナダ政府の不作為は、長年の懸念だった。カナダの政治家がこのような勢力に公然と同調を表明していることは、非常に重要な問題だ」 「カナダでは以前から、殺人、人身売買、組織犯罪など、さまざまな違法行為が容認されている。われわれは、インド政府とこのような動きを結びつけるいかなる試みも拒否する。われわれは、カナダ政府に対し、自国内で活動するすべての反インド勢力に対し、迅速かつ効果的な法的措置をとるよう求める」) その後、インドは正式な通達を出すことなく、突然カナダ市民へのビザ発行を中止した。カナダのビザ申請センターを運営するBLSインターナショナルは、カナダのウェブサイトに理由をあいまいにぼかした次のような告知を掲載した。「インド代表部からの重要なお知らせ。運営上の理由により、2023年9月21日より、インド・ビザサービスは追って通知するまで停止します」 インド外務省のアリンダム・バグチ報道官は、この措置の理由として、「カナダにあるインドの高等弁務官事務所や領事館の安全を脅かす事態が生じているため、通常の機能が停止している」と記者団に語った。 一方、ニューデリーの在インドのカナダ高等弁務団は、インド国内にいるカナダの外交スタッフがソーシャルメディア上で脅迫を受けたとして、すでに現地インド人職員に建物から避難するよう促している』、「カナダ野党・保守党のアンドリュー・シーア党首の発言だった。ニジェールの死はインドによる陰謀だというカナダ政府の説は「根拠がなく、受け入れがたい」と彼は述べた。 「首相の無能さは、世界最大の民主主義国家であり、アジアの新興大国であるインドとカナダの関係に深刻なダメージを与えている。首相は最終的に正しい振る舞いを選び、自分の陰謀説を証明する何らかの証拠を出せるのだろうか」、いくら「野党」とはいえ、外交問題では、「政府」を批判するというのは、本来、避けるべきことだ。
・『カナダで活動する過激派  ニジェールが殺されたのは、今年6月。ブリティッシュコロンビア州サレーにあるシーク教寺院の駐車場で射殺された。 インドの法執行機関によれば、1977年にパンジャブ州で生まれたニジェールは、武装組織カリスタン・タイガー・フォース(KTF)とつながりがあった。1990年代にインドで逮捕されたが、1997年には地下に潜り、身分を偽って逃亡した。 インド政府によれば、ニジェールが過激派組織とつながっている証拠は時間の経過とともに濃厚になっていった。その結果、彼の名前は、2018年に当時のパンジャブ州のアマリンダー・シン知事からトルドーに渡された最重要指名手配リストに含まれることになった。 過激派組織に対するカナダの姿勢は、カナダのインド人コミュニティーでも物議をかもしている。インド政府によれば、世界シーク組織(WSO)、KTF、シーク・フォー・ジャスティス(SFJ)、ババル・カルサ・インターナショナル(BKI)といった分離運動組織が、カナダ国内では自由に活動している、というのだ』、「インド政府によれば、世界シーク組織(WSO)、KTF、シーク・フォー・ジャスティス(SFJ)、ババル・カルサ・インターナショナル(BKI)といった分離運動組織が、カナダ国内では自由に活動している」、「カナダ政府」にとっては、これら「組織」が「カナダ」の法律で合法的に活動している限り、規制するわけにはいかない。「インド政府」の要求は無理難題なのではなかろうか。

第三に、10月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した防衛大学校人文社会科学群国際関係学科教授の伊藤 融氏による「「食えない国」インドは日米豪と中ロどちらの味方なのか?防衛大教授が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/329764
・『安倍晋三元総理は、民主主義国家である日米豪印(クアッド)の連携を念頭に、「自由で開かれたインド太平洋」戦略を提唱した。膨張の度を強める中国への牽制として、岸田総理も継承している国策だが、肝心のインドの態度が煮えきらない。「ヨガとカレーの国」から「グローバルサウスを牽引する新興大国」へと変貌したインドは、民主主義陣営からも専制国家陣営からも、何としても取り込みたい存在だが、「これほど食えない国はない」という声も多い。わが道を行く大国の実情とは?本稿は、伊藤融『インドの正体 「未来の大国」の虚と実』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『日米豪印によるクアッドは「アジア版NATO」か?  これからのインド太平洋秩序はどうなっていくのか?もちろん、われわれ自由民主主義陣営が望むのは、「自由で開かれた」インド太平洋秩序を維持することだろう。 2030~50年のインド太平洋地域の勢力図では、米中の、また日米豪自由民主主義陣営と中ロの権威主義陣営の力の差が、かぎりなく縮小し、ひょっとすると逆転してしまっているかもしれない。そうなると、そのとき、いまよりも大きな力をもっていると予測されるインドは、なんとしても取り込みたい、ということになる。 安倍晋三が2012年末に第2期政権を樹立する際に披歴した「セキュリティダイヤモンド構想」にはそうした思惑があった。安倍は国際NPOのプロジェクト・シンジケートに発表した英語論文のなかで、オーストラリア、インド、日本、米ハワイ州で四角形をつくり、中国の進出によって危機に晒されている海洋のコモンズ(共有地)を守らなければならない、と主張した。 しかし問題は、インドという国が、アメリカや日本、オーストラリアに、現状よりも接近するということがありうるのか、である。日米、米豪間にみられるような同盟を、自由民主主義陣営と結ぶようなことはあるのだろうか? 現時点で、インドはどの国とも同盟関係にはなく、アメリカとであれ、日本とであれ、オーストラリアとであれ、その他ヨーロッパ諸国とであれ、すべて、同盟国未満の「戦略的パートナーシップ」関係にとどめている。クアッドについても、同盟ではないという立場だ。 インドのジャイシャンカル外相は、クアッドを「数多くあるグループのひとつにすぎない」とし、「(インドは)柔軟性のない同盟は回避する」と主張してきた。この姿勢は、2020年の中国との軍事衝突を受けても変わることはなかった。「民主主義国同盟」を呼びかけるアメリカに対し、同外相は、アメリカは同盟思考を「乗り越える」必要がある、とはねつけた。相当、頑なである。 ということは、現状のままでは、インドがクアッドの同盟化を受け入れるはずはない。少なくともインドを取り巻く環境になにか劇的な変化がないかぎりは、インドが日米豪など西側に、よりいっそう傾斜を強めるというシナリオは起こりえない。 それでは、インドの態度を変えうる環境変化とはなんだろうか?それは、普通に考えれば、現状のままでは、インドの存立が成り立たないとインドが判断した場合ということになる。) 想定されるのは、なんといっても、中国の軍事的攻勢が、2020年のガルワン衝突(編集部注:印中がせめぎあうガルワン渓谷で、パトロール中のインドの部隊を中国側が石やこん棒で突然襲撃。インド兵はつぎつぎと谷底に突き落とされ、20名が殺された)レベル以上に本格化し、それにインドが耐えられなくなる事態だろう。要するに、このままでは、中国に侵略されてしまう、と本気で恐れるようになった時だ。 2050年までには、中国も、総合的な国力でインドからの猛追を受けている可能性が高い。だとすれば、中国としてはそれまでのうちに、インドをたたいてねじ伏せておきたいところだ。中国共産党指導部が、インドとの未解決の国境問題を武力で解決し、中国の秩序をインドに強制しようとしたとしても不思議ではない。 かつてインドは、中国の脅威に対して、自国の軍事力を増強するとともに、ソ連との連携を強化することで対処しようとした。将来も、同じ手法は通じないだろうか? まずは、自前の軍事力増強がどこまで可能かについてだ。CEBR(編集部注:イギリスを本拠とするシンクタンク、「ビジネス経済研究センター」)の予測によると、少なくとも2030年代までは、中国とインドのGDPの差はほとんど縮まらない。そうであれば当然、軍事費の差も、それほど縮小しないだろう。 それに、たとえそれ以降のGDPの伸びとともに、軍事費が増えたとしても、その成果が装備等を含めた軍事力として反映されるには時間を要する。つまり、中国の軍事力増強にインドだけで対抗しようとしたとしても、実際に軍事侵攻されるときまでに間に合う保証はない。もちろん、中国もそんなことはわかっているから、インドの準備が整うまでに行動を起こす可能性が高い』、「中国の軍事力増強にインドだけで対抗しようとしたとしても、実際に軍事侵攻されるときまでに間に合う保証はない。もちろん、中国もそんなことはわかっているから、インドの準備が整うまでに行動を起こす可能性が高い」、なるほど。
・『ロシアを頼れず中国とは緊張関係 それでもインドはアメリカ陣営を避ける  それでは、ソ連の後継国、ロシアというインドの伝統的パートナーとの関係は使えないのか? こちらのほうは、もっと心もとない。冷戦後のロシアの力は、かつて超大国としてアメリカと張り合ったソ連のものには遠く及ばない。 もともと、インドにとってのロシアの重要性は、相対的に低下傾向にあった。2022年にプーチン大統領がはじめたウクライナとの戦争のなかで、インドがロシアを非難せず、原油やガスの輸入を増やしたのはたしかだが、中長期的には、インドにとってのロシアの価値の低下に拍車がかかることになるだろう。) というのも、戦争の長期化と泥沼化によって、ロシアの国力低下と中国依存が加速することは避けられないと考えられるからだ。インドが、中国の脅威に対処するためにロシアを頼ろうとしたとしても、肝心のロシアが中国に依存するようになってしまっていては、まったく話にならない。 このようにみると、インドが、今後、日米豪の側に、より傾斜するということも、まったくありえないシナリオというわけではない。インド人研究者のなかにも、その可能性を指摘する者も、とくに若手のあいだに出てきている。戦略家として活躍するハルシュ・パントは、インドは民主主義陣営の側につくべきだと明言する。また、中国専門家で、対中警戒論者の筆頭ともいえるジャガンナート・パンダは、2022年の論文で、インドが、「アジア版NATO」を受け入れる可能性もあると期待感をもって論じた。しかしそうした見解はインドの外交・安全保障サークルの主流にはなっていない。インド国家安全保障顧問を務めた経験をもつM・K・ナラヤナン、シヴシャンカル・メノンらは、インドが西側につくことは得策ではなく、安易に中国叩きに乗るべきではないと警鐘を鳴らす。「けっして同盟化させないクアッド」というジャイシャンカル外相の路線のほうが、ひろく受け入れられているのだ。 ジャイシャンカル外相は、自著『インド外交の流儀』のなかでつぎのように述べる。 各国はイシューごとに関係を構築していかなければならなくなり、そうした状況下では、自国の進む道が一定ではなくなるという事態もよく起こるだろう。さまざまな選択肢を検討し、複数のパートナーに対するコミットメントを調和させていくには、高度なスキルが必要になってくる。 多くの国と利益が重なることはあるだろうが、どの国とも考えが一致することはないだろう。力の結集地の多くといかに共通点を見出すかが、外交を特徴づけていくことになる。それをもっともうまくやってのける国が、同等のメンバーからなるグループのなかでもっとも問題が少ない存在になれる。 インドは可能な限り多くの方面と接触し、それによって得られる利益を最大化していく必要がある。 このことからもわかるように、インドとしては、「どちらか」の陣営に属するという道ではなく、「どちらにも」関与する、という現状がつづくことが望ましいと考えている。どちらとも、うまく渡り合って「いいとこ取り」をしたいのだ。こうしたインド外交の特質に鑑みると、インドがアメリカを中心とした西側と同盟を構築するシナリオの蓋然性は、きわめて低いと推定される。) それでは、つぎに正反対の、おそらく、われわれにとっては最も望ましくないシナリオについて考えてみよう。インドが中国やロシアの側に傾斜し、印中ロのユーラシア連合、ないし同盟が形成される可能性だ。 じつはインドにとって、中ロとの連携は、日米豪とのそれよりも古くからのものだ。日米豪印によるクアッドの枠組みは、2007年に試みられたものの、その後しばらく立ち消えとなり、ふたたび現れたのは2017年のことだった。 クアッドに対し、ロシア、インド、中国の頭文字をとったRICと呼ばれる3カ国の枠組みは、もともと1998年にロシアのプリマコフ首相が訪印した際に提示したものといわれる。多くのロシア専門家は、ロシアには、対米牽制とともに、台頭する中国の影響力を薄めるために、ユーラシアのもうひとつの大国、インドを取り込みたいという思惑があることを指摘する。RICの枠組みは、2002年から非公式の外相会合として動き出し、2005年からは、3カ国が順番にホストを務めるかたちの会合が定例化された。定例化されてはいないが、最初の首脳会合も2006年には行われている。 この経緯をみれば、インドがどういう場合に、中国、ロシアとの連携に傾斜する可能性が出てくるのかがわかる。RICの本格化は、アメリカでブッシュJr.政権が、イラク戦争など、いわゆる単独行動主義的な傾向を強めた時期と符合する。このころのRIC外相会合後の共同声明文をみると、国際関係の民主化や公正な国際秩序の必要性、多極化を推進し、国連が役割を果たすことの重要性などが強調されている。 要するに、超大国アメリカが、国連を経ず、国際協調を無視して他国に武力介入し、みずからの意志を押し付ける一極支配の世界を築くような動きに、インドは中ロとともにノーを突き付けたのである。 その後もトランプ政権がイラン核合意を一方的に破棄すると、インドはRICの枠組みで、多国間外交の成果を無駄にしないよう求めた。今後も、アメリカで単独行動主義、一極支配のような動きが出てくれば、インドがロシア、中国と歩調を合わせて反対する、という場面があるかもしれない』、「「けっして同盟化させないクアッド」というジャイシャンカル外相の路線のほうが、ひろく受け入れられているのだ。 ジャイシャンカル外相は、自著『インド外交の流儀』のなかでつぎのように述べる。 各国はイシューごとに関係を構築していかなければならなくなり、そうした状況下では、自国の進む道が一定ではなくなるという事態もよく起こるだろう。さまざまな選択肢を検討し、複数のパートナーに対するコミットメントを調和させていくには、高度なスキルが必要になってくる。 多くの国と利益が重なることはあるだろうが、どの国とも考えが一致することはないだろう。力の結集地の多くといかに共通点を見出すかが、外交を特徴づけていくことになる。それをもっともうまくやってのける国が、同等のメンバーからなるグループのなかでもっとも問題が少ない存在になれる。 インドは可能な限り多くの方面と接触し、それによって得られる利益を最大化していく必要がある・・・超大国アメリカが、国連を経ず、国際協調を無視して他国に武力介入し、みずからの意志を押し付ける一極支配の世界を築くような動きに、インドは中ロとともにノーを突き付けたのである。 その後もトランプ政権がイラン核合意を一方的に破棄すると、インドはRICの枠組みで、多国間外交の成果を無駄にしないよう求めた。今後も、アメリカで単独行動主義、一極支配のような動きが出てくれば、インドがロシア、中国と歩調を合わせて反対する、という場面があるかもしれない」、「インド」をクアッドに取り入れて「アジア版NATO」を目指そうというのが、如何に夢物語であるかがよく理解できた。 
タグ:インド (その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、シーク教徒指導者殺害で激しく対立するインドとカナダがこだわるカリスタン運動とは、「食えない国」インドは日米豪と中ロどちらの味方なのか?防衛大教授が解説) 東洋経済オンライン さかい もとみ氏による「「今世紀最悪」の列車事故、インドの鉄道安全事情 近年は件数減少、だが新安全装置整備は進まず」 「安全性の指標となる100万列車キロ当たりの事故件数は、2013年度の0.10件から2021年度には0.03件に減少」、今回の事故を除いた長期的現減少向はなかなか立派なものだ。 「日本の新幹線システムが導入される予定」、日本製の機器を揃えるだけでは不十分で、定時運行を守ろうとする従業員の姿勢も不可欠だが、これはどうするのだろう。 「責任のある者に厳罰を与える」との「モディ首相」発言は、システムなどの問題を単に人的過失として断罪するだけの責任転嫁になる恐れがある。 Newsweek日本版「シーク教徒指導者殺害で激しく対立するインドとカナダがこだわるカリスタン運動とは」 「カリスタン運動はインドのパンジャブ地方にシーク教徒の独立国家創設をめざす運動で、インド政府としては到底容認できない反政府分子だ。 ニジェールはその過激派とつながっていたとしてインドで有罪判決を受けた「テロリスト」なのに、カナダ政府はその身柄を拘束しようともしなかった」、「ニジェール」が「「テロリスト」との判断があくまで「インド」裁判所の判断で、「カナダ」では「表現の自由がある」と、全く嚙み合わない。 「カナダ野党・保守党のアンドリュー・シーア党首の発言だった。ニジェールの死はインドによる陰謀だというカナダ政府の説は「根拠がなく、受け入れがたい」と彼は述べた。 「首相の無能さは、世界最大の民主主義国家であり、アジアの新興大国であるインドとカナダの関係に深刻なダメージを与えている。首相は最終的に正しい振る舞いを選び、自分の陰謀説を証明する何らかの証拠を出せるのだろうか」、いくら「野党」とはいえ、外交問題では、「政府」を批判するというのは、本来、避けるべきことだ。 「インド政府によれば、世界シーク組織(WSO)、KTF、シーク・フォー・ジャスティス(SFJ)、ババル・カルサ・インターナショナル(BKI)といった分離運動組織が、カナダ国内では自由に活動している」、「カナダ政府」にとっては、これら「組織」が「カナダ」の法律で合法的に活動している限り、規制するわけにはいかない。「インド政府」の要求は無理難題なのではなかろうか。 ダイヤモンド・オンライン 伊藤 融氏による「「食えない国」インドは日米豪と中ロどちらの味方なのか?防衛大教授が解説」 伊藤融『インドの正体 「未来の大国」の虚と実』(中央公論新社) 「中国の軍事力増強にインドだけで対抗しようとしたとしても、実際に軍事侵攻されるときまでに間に合う保証はない。もちろん、中国もそんなことはわかっているから、インドの準備が整うまでに行動を起こす可能性が高い」、なるほど。 「「けっして同盟化させないクアッド」というジャイシャンカル外相の路線のほうが、ひろく受け入れられているのだ。 ジャイシャンカル外相は、自著『インド外交の流儀』のなかでつぎのように述べる。 各国はイシューごとに関係を構築していかなければならなくなり、そうした状況下では、自国の進む道が一定ではなくなるという事態もよく起こるだろう。 さまざまな選択肢を検討し、複数のパートナーに対するコミットメントを調和させていくには、高度なスキルが必要になってくる。 多くの国と利益が重なることはあるだろうが、どの国とも考えが一致することはないだろう。力の結集地の多くといかに共通点を見出すかが、外交を特徴づけていくことになる。それをもっともうまくやってのける国が、同等のメンバーからなるグループのなかでもっとも問題が少ない存在になれる。 インドは可能な限り多くの方面と接触し、それによって得られる利益を最大化していく必要がある・・・超大国アメリカが、国連を経ず、国際協調を無視して他国に武力介入し、みずからの意志を押し付ける一極支配の世界を築くような動きに、インドは中ロとともにノーを突き付けたのである。 その後もトランプ政権がイラン核合意を一方的に破棄すると、インドはRICの枠組みで、多国間外交の成果を無駄にしないよう求めた。今後も、アメリカで単独行動主義、一極支配のような動きが出てくれば、インドがロシア、中国と歩調を合わせて反対する、という 「インド」をクアッドに取り入れて「アジア版NATO」を目指そうというのが、如何に夢物語であるかがよく理解できた。
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イスラエル・パレスチナ(その1)(ハマス襲撃を許したイスラエル「4つの大失敗」 中東随一の「セキュリティ網」なぜ突破された?、イスラエル支援のアメリカが最も恐れるシナリオ 楽観から一転 望めなくなった中東の安定、イスラエルの歴史家が予見「ハマス紛争」次の展開 1948年以降で最大の危機 和平の機会はあるか?) [世界情勢]

今日は、イスラエル・パレスチナ(その1)(ハマス襲撃を許したイスラエル「4つの大失敗」 中東随一の「セキュリティ網」なぜ突破された?、イスラエル支援のアメリカが最も恐れるシナリオ 楽観から一転 望めなくなった中東の安定、イスラエルの歴史家が予見「ハマス紛争」次の展開 1948年以降で最大の危機 和平の機会はあるか?)を取上げよう。

先ずは、10月12日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「ハマス襲撃を許したイスラエル「4つの大失敗」 中東随一の「セキュリティ網」なぜ突破された?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/707835
・『10月7日の夜明けにイスラエルへの奇襲攻撃が行われる前、イスラエル情報部は、監視しているパレスチナ自治区の武装勢力のネットワークの一部で活動が急増しているのを察知していた。イスラエルの治安当局の高官2人によれば、異変を察知した彼らは、ガザ地区国境を警備するイスラエル軍兵士に警告を送った。 ところが、兵士がそれを受け取らなかったか、兵士がそれを読まなかったために、警告は実行されなかった』、「イスラエル軍兵士」はもっとピリピリしていると思っていたが、そうでもないようだ。
・『遠隔操作を「阻止」  その直後、ガザ地区を支配するイスラム勢力の1つ、ハマスが無人偵察機を送り込み、イスラエル軍の携帯通信局と国境沿いの監視塔のいくつかを機能停止させ、当直将校がビデオカメラで遠隔監視するのを妨げた。ドローンはまた、イスラエルが国境の要塞に設置した遠隔操作の機関銃を破壊し、地上攻撃に対抗する重要な手段を取り除いた。 そのため、ハマスの戦闘員が国境フェンスに近づき、その一部を爆破したり、数カ所で驚くほど簡単にブルドーザーで破壊したりすることが容易になり、何千人ものパレスチナ人がその隙間を通り抜けることができるようになった。 センシティブな案件であり、現段階での評価しかできないとの理由で匿名を条件に取材に応じたイスラエル安全保障当局の4人の高官によれば、当局による後方支援や情報面でのさまざまな不手際は、ガザからイスラエル南部への侵入を容易にした。) イスラエルの20以上の町と軍基地への大胆な侵入は、過去50年間で最悪のイスラエル防衛網の破壊であり、国民の安全意識を打ち砕いた。何時間にもわたって、中東最強の軍隊は、自軍よりはるかに戦力的に劣る敵を反撃する力を失い、下着姿の兵士を含む900人以上のイスラエル人を殺害し、少なくとも150人を拉致、4つの軍事キャンプを制圧し、イスラエル領土の30平方マイル以上にわたって拡散した攻撃者集団に対してほとんど無防備のままだった』、「ハマス」側の作戦は見事で、「イスラエル側」の対応はお粗末だったようだ。
・『安全保障上4つの致命的失敗  この4人の当局者は、初期の評価に基づくと、ハマスによる攻撃の成功は、イスラエルの情報機関や軍による以下のような安全保障上の失敗に根ざしているとしている。 ・パレスチナの攻撃者が使用する主要な通信チャネルを監視する情報将校の怠慢 ・国境監視装置に過度に依存し、攻撃者が簡単にシャットダウンできたため、攻撃者が軍事基地を襲撃し、兵士を寝床で殺害することができた ・侵攻の初期段階で制圧された単一の国境基地に司令官を集中させ、他の軍隊との連絡を妨げたこと ・そして、パレスチナ人がイスラエルに監視されていることを知りながら民間チャネルで行った、ガザ地区の軍事指導者たちによる「戦闘の準備はしていない」という主張を額面通りに受け入れる姿勢 「われわれはハマスの情報収集に何十億も何百億も費やしている」とイスラエル国家安全保障会議の元高官ヨエル・グザンスキーは語る。「そして一瞬にして、ドミノ倒しのようにすべてが崩壊した」。) 最初の失敗は攻撃の数カ月前に起こった。イスラエルの安全保障担当者が、ハマスがガザからイスラエルにもたらす脅威の程度について誤った推測をしたためだ。 ハマスが過去1年間に2度の戦闘に参加しなかったことで、ガザの小規模武装組織であるパレスチナ・イスラム聖戦が単独でイスラエルに対抗できるようになった。先月、ハマス指導部はまた、カタールの仲介による合意で、国境沿いの暴動を終結させ、エスカレートは考えていないとの印象を与えた』、「「われわれはハマスの情報収集に何十億も何百億も費やしている」とイスラエル国家安全保障会議の元高官ヨエル・グザンスキーは語る。「そして一瞬にして、ドミノ倒しのようにすべてが崩壊した」、「最初の失敗は攻撃の数カ月前に起こった。イスラエルの安全保障担当者が、ハマスがガザからイスラエルにもたらす脅威の程度について誤った推測をしたためだ。 ハマスが過去1年間に2度の戦闘に参加しなかったことで、ガザの小規模武装組織であるパレスチナ・イスラム聖戦が単独でイスラエルに対抗できるようになった。先月、ハマス指導部はまた、カタールの仲介による合意で、国境沿いの暴動を終結させ、エスカレートは考えていないとの印象を与えた」、なるほど。
・『ハマス側の「演出」にだまされた?  イスラエルの国家安全保障顧問であるツァチ・ハネグビは、襲撃の6日前にラジオのインタビューで、「ハマスがこれ以上反抗することの意味を理解している」と語った。 イスラエル情報当局が先週、国の防衛に対する最も差し迫った脅威について上級安全保障責任者に説明した際、彼らはイスラエル北部の国境沿いのレバノン過激派がもたらす危険に焦点を当てた。ハマスによる活動についてはほとんど触れられなかった。情報筋によると、イスラエル当局は、ハマス自体が抑止力になっていると伝えたという。 イスラエル諜報機関によって盗聴されたハマスの工作員たちによる通話では、2021年5月に起こった2週間にわたる衝突の後、すぐにイスラエルとの再戦を避けようとしているように感じたと、イスラエル政府高官の2人は語る。イスラエル諜報機関は現在、これらの通話が本物か演出かを調べているという。 次の失敗は作戦上のものだった。 2人の高官によれば、イスラエルの国境監視システムは、遠隔操作可能なカメラ、センサー、機関銃にほぼ全面的に依存していたという。 イスラエルの司令官たちは、このシステムが難攻不落だと過信していた。司令官らは遠隔監視と武器、地上のバリア、ハマスがイスラエルにトンネルを掘るのを阻止する地下の壁などがあれば、ガザからの大量侵入の可能性が低くなり、国境線に沿って物理的に駐留する兵士の数を減らすことができると考えていた。) 長年、イスラエル南部の地上部隊を指揮し、2003年から2005年までイスラエル国防軍の作戦部長を務め、最近、戦争のために再び予備役として採用されたイスラエル・ジブ退役少将によれば、この体制が整ったことで、軍はヨルダン川西岸を含む他の懸念地域に兵士を移動させ、部隊の数を減らし始めたという。 「部隊の間引きは、フェンスの建設と、あたかもフェンスが無敵で何者も通過できないかのようなオーラを醸し出していたため、合理的に思えた」とジブは話す』、「イスラエル諜報機関によって盗聴されたハマスの工作員たちによる通話では、2021年5月に起こった2週間にわたる衝突の後、すぐにイスラエルとの再戦を避けようとしているように感じたと、イスラエル政府高官の2人は語る。イスラエル諜報機関は現在、これらの通話が本物か演出かを調べているという」、偽のオトリ情報を信じ込むとは。 初歩的な失敗だ。「次の失敗は作戦上のものだった。 2人の高官によれば、イスラエルの国境監視システムは、遠隔操作可能なカメラ、センサー、機関銃にほぼ全面的に依存していたという。 イスラエルの司令官たちは、このシステムが難攻不落だと過信していた。司令官らは遠隔監視と武器、地上のバリア、ハマスがイスラエルにトンネルを掘るのを阻止する地下の壁などがあれば、ガザからの大量侵入の可能性が低くなり、国境線に沿って物理的に駐留する兵士の数を減らすことができると考えていた・・・イスラエル・ジブ退役少将によれば、この体制が整ったことで、軍はヨルダン川西岸を含む他の懸念地域に兵士を移動させ、部隊の数を減らし始めたという。 「部隊の間引きは、フェンスの建設と、あたかもフェンスが無敵で何者も通過できないかのようなオーラを醸し出していたため、合理的に思えた」、監視システムへの過信が原因になったようだ。
・『遠隔操作システムの「脆弱性」  しかし、遠隔操作システムには脆弱性があった。遠隔操作で破壊することも可能だったのだ。ハマスがその弱点を利用し、監視システムとの間で信号を送受信する携帯電話の電波塔を攻撃するためにドローンを飛ばしたと、関係者や、7日にハマスによって利用され、ニューヨーク・タイムズによって分析されたドローンの映像は示している。 携帯電話の信号がなければ、システムは役に立たない。前線後方の司令室に配置された兵士たちは、ガザとイスラエルを隔てるフェンスが破られたという警報を受け取れず、ハマスの攻撃者がバリケードをブルドーザーで壊している場所を映したビデオを見ることもできなかった。さらに、バリアはイスラエル当局が予想していたよりも簡単に突破できることが判明した。 そのため、1500人以上のハマスの戦闘員が国境沿いの30近い地点を突破し、そのうちの何人かはハングライダーでバリケードの上を飛び、少なくとも4つのイスラエル軍基地に到達した。 イスラエル政府関係者の1人が公開した写真によれば、多数のイスラエル軍兵士が宿舎で寝ているところを銃撃された。中には下着姿の兵士もいた。 第2の作戦上の失敗は、陸軍ガザ師団の指導者たちが国境沿いの1カ所に集まっていたことだ。イスラエル政府関係者2人によれば、基地が制圧されると、幹部のほとんどが殺されるか、負傷するか、人質に取られた。) この状況は、無人機による空爆によって引き起こされたコミュニケーションの問題と相まって、協調的な対応を妨げていた。このため、イスラエルのほかの地域から反撃に駆けつけた司令官を含め、国境沿いの誰もが攻撃の全容を把握することができなかった。 反撃の指揮を執ったイスラエル軍司令官のダン・ゴールドファス准将は、「さまざまなテロ攻撃の全体像を把握するのは非常に困難だった」と語る。 ある地点で、同氏は偶然、別隊の司令官と出会った。その場で2人は、それぞれの部隊が奪還を試みる村をその場その場で決めた。「自分たちだけで決めた」とゴールドファスは語る。「そうやって村から村へと移動していった」』、「遠隔操作システムには脆弱性があった。遠隔操作で破壊することも可能だったのだ。ハマスがその弱点を利用し、監視システムとの間で信号を送受信する携帯電話の電波塔を攻撃するためにドローンを飛ばした・・・携帯電話の信号がなければ、システムは役に立たない。前線後方の司令室に配置された兵士たちは、ガザとイスラエルを隔てるフェンスが破られたという警報を受け取れず、ハマスの攻撃者がバリケードをブルドーザーで壊している場所を映したビデオを見ることもできなかった。さらに、バリアはイスラエル当局が予想していたよりも簡単に突破できることが判明した。 そのため、1500人以上のハマスの戦闘員が国境沿いの30近い地点を突破し、そのうちの何人かはハングライダーでバリケードの上を飛び、少なくとも4つのイスラエル軍基地に到達した」、なんということだろう。
・『数分で着くところに数時間かかった  こうしたことから、特に初期の段階では、テルアビブの軍最高司令部に事態の深刻さを伝えるのは困難だった。 その結果、多くのコミュニティで攻撃の報告がソーシャルメディアに上がっても、大規模で迅速な航空援護が直ちに必要だとは誰も感じなかった。イスラエル政府関係者と奇襲の生存者の2人によれば、空軍は飛行時間にしてわずか数分の距離に基地があるにもかかわらず、この地域の上空に到着するまでに数時間を要したという。 この事態はイスラエルの安全保障に壊滅的な打撃を与え、信頼できる軍事パートナーとしてのイスラエルの地域的評判を損なう可能性もある。 7日以前は、「イスラエルは安全保障問題において、この地域の多くの国にとって資産だった」とグザンスキーは言う。「今のイメージは、イスラエルは資産ではないというものだ」。 イスラエル安全保障局は、最初の失敗の規模に異論はない。しかし、戦争が終わってからしか本格的な調査はできないとしている。 「まずはこれを終わらせる」と、軍のスポークスパーソンであるリチャード・ヘクト中佐は、軍がこの地域における支配権を取り戻そうとする準備をする中でこう語った。また、失敗についても「調査されるはずだ」と語っている』、「空軍は飛行時間にしてわずか数分の距離に基地があるにもかかわらず、この地域の上空に到着するまでに数時間を要したという。 この事態はイスラエルの安全保障に壊滅的な打撃を与え、信頼できる軍事パートナーとしてのイスラエルの地域的評判を損なう可能性もある。 7日以前は、「イスラエルは安全保障問題において、この地域の多くの国にとって資産だった」とグザンスキーは言う。「今のイメージは、イスラエルは資産ではないというものだ」。 「資産」ではなくなったとすれば、さしずめマイナスの効果を持つ負債なのかも知れない。

次に、10/14東洋経済オンラインが掲載した米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長の渡辺 亮司氏による「イスラエル支援のアメリカが最も恐れるシナリオ 楽観から一転、望めなくなった中東の安定」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/708324
・『「9.11(アメリカ同時多発テロ事件)の10倍に値する」。 10月12日、イスラエルを訪問したアントニー・ブリンケン米国務長官は、パレスチナ・ガザ地区を実効支配する武装組織ハマスによるイスラエル攻撃の被害の大きさを、アメリカ国民も理解できるよう国の人口に対する被害者数の比率の大きさで語った。 ハマスの攻撃後、バイデン政権はイスラエル支援を表明し、イスラエル軍のガザ地区への地上侵攻も事実上支持。イスラエル・ハマス紛争を契機に、アメリカは泥沼化する中東情勢に再び深く関与せざるをえない様相を呈している』、興味深そうだ。
・『アメリカ社会で影響力を持つユダヤ系  欧州などの迫害を逃れたユダヤ系がアメリカに移住した長い歴史から、アメリカとイスラエルの関係は近い。ハマスのイスラエル侵攻以降、ワシントン近郊在住のユダヤ系アメリカ人から、イスラエルに住む親戚や友人を心配する声を聞くようになった。 長年、アメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)など圧力団体のロビー活動もあり、アメリカ政治では、イスラエル寄りの見方が支配的だ。産業界やメディアでも同じだ。この背景にはアメリカ社会におけるユダヤ系の大きな影響力がある。 ピュー研究所によるとアメリカ在住のユダヤ系は2020年時点で計750万人、全国民の約2.4%に過ぎない。とはいえ、その人口はイスラエルに住むユダヤ人に匹敵する。アメリカ在住のユダヤ系は都市部に集中し、金融をはじめとする産業界や大手メディア、シンクタンク、学界、政界などアメリカ社会の中枢で活躍している。) バイデン政権は2021年8月にアメリカ軍のアフガニスタン撤退を完了し、同年末にイラク駐留軍の戦闘任務を終了させた。2022年に発表した国家安全保障戦略(NSS)からも、バイデン政権は対テロ戦争から「唯一の競争相手」として位置付ける中国との覇権争いに焦点をシフトしたことが明確であった。 そのため、バイデン政権は中東の安定を望んできた。 バイデン政権の外交政策の中核を担うジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は9月末、「中東地域は、過去20年で最も安定している」と語り、楽観的な見方を示したばかりであった。 しかし、イスラエル・ハマス紛争は今後、ますます中東地域の不安定化をもたらし、アメリカの中東に対する関与の拡大は必至だ。アジアに焦点をシフトしていたバイデン政権だが、少なくとも当面は中東情勢に対処しなければならなくなった』、「アメリカ在住のユダヤ系は2020年時点で計750万人、全国民の約2.4%に過ぎない。とはいえ、その人口はイスラエルに住むユダヤ人に匹敵する。アメリカ在住のユダヤ系は都市部に集中し、金融をはじめとする産業界や大手メディア、シンクタンク、学界、政界などアメリカ社会の中枢で活躍している」、「アメリカ在住のユダヤ系は2020年時点で計750万人」と「イスラエルに住むユダヤ人に匹敵する」、とは初めて知った。
・『最大のリスクは中東全域への飛び火  今日、バイデン政権が最も恐れるのが、中東地域で戦火が拡大することだ。イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザに侵攻すれば、レバノンを拠点とするシーア派組織ヒズボラが、イスラエルを北部から本格的に攻撃する可能性が高まる。ヒズボラはイスラエル全域を射程範囲とするミサイルを保有することからも、アメリカ政府はとくに警戒している。 イスラエルがヒズボラに応戦することで、ヒズボラの背後にいるイランも応戦するリスクがある。さらには、親イラン武装勢力のフーシ派などが、サウジアラビアをはじめとするペルシャ湾岸諸国・周辺国を攻撃するリスクなども懸念されている。 つまり、戦火はガザ・イスラエルに止まらず、中東全域に拡大するリスクを秘めている。 そのため、ワシントンでは今のうちに念のため、中東各国の駐在員などの国外退避計画を準備しておくべきといった議論も出てきている。仮に戦火が拡大した場合、フライト手配などがより困難となるリスクがあるというのだ。) 10月13日、首都ワシントンの南バージニア州ノーフォーク海軍基地より、ドワイト・アイゼンハワー航空母艦がイスラエル沖の東地中海に向け出航。イタリア海軍との軍事訓練を終えたばかりのジェラルド・フォード航空母艦とともにイスラエル沖に配備され、アメリカは戦火拡大を抑止することを狙っている。 しかし、ヒズボラなどがアメリカの意図を正確に把握するかどうか、あるいは把握していてもロジカルに行動するかは不明だ。ガザ地区にイスラエル軍が侵攻した後、事態がエスカレートすれば、航空母艦のプレゼンスなどによる抑止がどこまで効果を発揮するかは不透明だ』、「イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザに侵攻すれば、レバノンを拠点とするシーア派組織ヒズボラが、イスラエルを北部から本格的に攻撃する可能性が高まる。ヒズボラはイスラエル全域を射程範囲とするミサイルを保有することからも、アメリカ政府はとくに警戒している。 イスラエルがヒズボラに応戦することで、ヒズボラの背後にいるイランも応戦するリスクがある。さらには、親イラン武装勢力のフーシ派などが、サウジアラビアをはじめとするペルシャ湾岸諸国・周辺国を攻撃するリスクなども懸念されている。 つまり、戦火はガザ・イスラエルに止まらず、中東全域に拡大するリスクを秘めている」、「事態がエスカレートすれば、航空母艦のプレゼンスなどによる抑止がどこまで効果を発揮するかは不透明だ」、なるほど。
・『原油価格の上昇でインフレ再燃も  仮にヒズボラが参戦すれば、バイデン政権はイランに対する原油制裁の取り締まりを厳格化し、イラン産原油の輸入国にも圧力を強めるであろう。またイラン政府によるホルムズ海峡封鎖の懸念の声もある。原油増産などでサウジアラビアの協力を得るのも、イスラエル軍を支援するアメリカはより困難となるであろう。 中東での戦火拡大は原油価格上昇、ガソリン価格上昇をもたらす公算が大きい。 9月、アメリカの消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.7%上昇と、2022年ピーク時の9.1%上昇からは大幅に下落。だが、中東情勢悪化を契機にインフレ懸念が再燃し、バイデン政権の経済政策に対する不満が高まるかもしれない。今後、大方の予想通り紛争が長引けば、2024年11月大統領選でバイデン再選に向かい風が吹くことが予想される。) 共和党の一部は、バイデン政権の対イラン弱腰外交がハマスのイスラエル攻撃の原因とも訴えている。バイデン政権のアメリカ軍アフガニスタン撤退の失態を発端に、ロシアのウクライナ侵攻、そしてイスラエル・ハマス紛争など連鎖が起きているとの指摘もある。 上院外交委員長や副大統領など経験が豊富なバイデン氏は、政権発足当初、外交政策が強みと見られていた。だが、今やその外交政策が同氏の信頼喪失を招き、支持回復の足を引っ張っている』、「上院外交委員長や副大統領など経験が豊富なバイデン氏は、政権発足当初、外交政策が強みと見られていた。だが、今やその外交政策が同氏の信頼喪失を招き、支持回復の足を引っ張っている」、確かに最近の「バイデン」は見ていられない。
・『国内でデモ拡大にテロリスクも  なお、イスラエル・ハマス紛争で、アメリカ国内のテロリスクも懸念され始めている。ここ数日、ワシントン近郊のユダヤ系の建物、教会などでは警備が強化されている。 アメリカ国内ではイスラエル支持が強い。だが、イスラエル政府によるパレスチナ人迫害が、ハマスのイスラエル攻撃を招いたとの主張も一部に存在する。全米の大学のキャンパスでは、イスラエル支持派とパレスチナ支持派で意見の対立が浮き彫りとなっている。筆者も、卒業生の間で非難の応酬を目の当たりにした。 今後、国内でのデモ活動拡大やテロなど社会不安リスクは懸念材料だ。 9.11から約2年後の2003年10月、ドナルド・ラムズフェルド国防長官(当時)は、国防総省幹部に送付した書簡で「神学校と過激な聖職者がアメリカに対抗する人物をリクルート、育成、派遣するよりも多く、われわれはテロリストを毎日、捕獲、殺害、抑止、説得しているだろうか」と記述。自らが指揮を執っていたアメリカの対テロ戦争の成果について疑問を投げかけた。 ハマス破滅を狙うイスラエルに強力な支援を表明しているアメリカ政府だが、中東での戦火が拡大し、人道危機が長期化すれば、国民から同様の疑問の声が出てくるかもしれない。その際、アメリカ社会の中枢にいるユダヤ系の政権への影響力が試される。 いずれにせよ、バイデン政権は再び中東情勢に深入りすることとなり、当面は同地域がアメリカの頭痛の種となること必至だ』、「ハマス破滅を狙うイスラエルに強力な支援を表明しているアメリカ政府だが、中東での戦火が拡大し、人道危機が長期化すれば、国民から同様の疑問の声が出てくるかもしれない。その際、アメリカ社会の中枢にいるユダヤ系の政権への影響力が試される。 いずれにせよ、バイデン政権は再び中東情勢に深入りすることとなり、当面は同地域がアメリカの頭痛の種となること必至だ」、ユダヤ系の政権への影響力がいくら強いとはいえ、「アメリカ」が「イスラエル」全面支持というは頂けない。アラブ諸国を再び敵に回すのはいかにも不味い。トランプだったら、どうするだろうか。

第三に、10月20日付け東洋経済オンラインが掲載した 歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏による「イスラエルの歴史家が予見「ハマス紛争」次の展開 1948年以降で最大の危機、和平の機会はあるか?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/709887
・『パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織「ハマス」は10月7日、イスラエルへの大規模な奇襲攻撃を仕掛けて以来、激しい軍事衝突が続いている。はたして和平は可能なのか。『サピエンス全史』著者でイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏(ヘブライ大学教授)の寄稿文を掲載する』、興味深そうだ。
・『政治はしばしば科学実験のように行われる  イスラエルはつい先日、建国以来最悪の日を経験した。1956年のシナイ作戦(訳注:第2次中東戦争)と1967年の6日間戦争(訳注:第3次中東戦争)と2006年の第2次レバノン戦争で失った民間人と兵士の合計を上回る数のイスラエルの一般市民が、たった1日で虐殺されたのだ。イスラム原理主義組織ハマスに占領された地域からのニュースと画像には身の毛がよだつ。私自身の友人や親族の多くも、言語に絶する残虐行為の被害に遭った。これは、今やパレスティナの人々もまた、計り知れぬ危険に直面していることを意味する。中東で最強の国であるイスラエルが、痛みと恐れと怒りで青ざめているのだから。パレスティナの人々の目に現状がどう映っているか、私にはわからないし、それについて語る道徳的権限もない。だが、イスラエルがこの上ない痛みを覚えている今、フェンスのイスラエル側からは、状況がどのように見えるかに関して、警告を発したい。 政治はしばしば、科学実験のように行われる。膨大な数の人を対象にし、倫理的な限度もほとんどない。福祉予算を増やしたり、ポピュリズム(大衆迎合主義)の大統領を選出したり、和平を申し入れたりするなど、何かを試し、結果を見届け、さらにその路線で進むことにしたり、あるいは方針を変え、何か別のことを試したりする。イスラエルとパレスティナの紛争も、そのように試行錯誤を重ねながら、数十年にわたって展開してきた。) イスラエルは、1990年代にオスロでの交渉で和平の機会を作った。パレスティナ人や一部の外部オブザーバーの視点からは、イスラエルの和平の申し出が不十分で傲慢なものだったことは私も承知しているが、それでも、イスラエルがそこまで譲歩したことは後にも先にもない。この交渉の最中に、イスラエルはパレスティナの自治政府にガザ地区の支配権を部分的に譲り渡した。その結果、どうなったか? イスラエルは、それまで経験したなかで最悪のテロ活動にさらされた。イスラエル人は、バスやレストランが毎日のように爆破された2000年代前半の日常生活の記憶に、今なおつきまとわれている。このテロ活動のせいで、何百人ものイスラエルの一般市民が亡くなったばかりでなく、和平のプロセスとイスラエルの左派も葬り去られた。イスラエルの和平の申し出は、譲歩が足りなかったのかもしれない。だが、それにテロ行為で応じるしかなかったのだろうか?』、「イスラエルはつい先日、建国以来最悪の日を経験した。1956年のシナイ作戦(訳注:第2次中東戦争)と1967年の6日間戦争(訳注:第3次中東戦争)と2006年の第2次レバノン戦争で失った民間人と兵士の合計を上回る数のイスラエルの一般市民が、たった1日で虐殺されたのだ」、犠牲者数がそこまで多かったとは初めて知った。「イスラエルはパレスティナの自治政府にガザ地区の支配権を部分的に譲り渡した。その結果、どうなったか? イスラエルは、それまで経験したなかで最悪のテロ活動にさらされた」、いイスラエル」側の見方であるにしても、やはりやり切れない思いがありそうだ。
・『目指したのは「中東のシンガポール」  和平プロセスが頓挫した後、イスラエルは次の実験として、ガザから撤退した。2000年代半ば、イスラエルはガザ地区全域から一方的に撤兵し、地区内のすべての入植地から引き揚げ、国際的に認められた1967年以前の国境線まで退いた。たしかにイスラエルは、ガザ地区の部分的封鎖とヨルダン川西岸地区の占領を続けた。それでもイスラエルにとって、ガザ地区からの撤退は依然として重大な一歩だったので、この実験の結果がどうなるかを、イスラエルの人々は固唾(かたず)をのんで見守った。そして、パレスティナ人がガザを、中東のシンガポールとでも呼ぶべき、繁栄する平和な都市国家に変えようと真摯に努力し、自治の機会を与えられれば何ができるかを世界やイスラエルの右派に示すことを、左派の残党は願った』、「パレスティナ人がガザを、中東のシンガポールとでも呼ぶべき、繁栄する平和な都市国家に変えようと真摯に努力し、自治の機会を与えられれば何ができるかを世界やイスラエルの右派に示すことを、左派の残党は願った」、しかし、そうした実験は失敗し、右派のネタニヤフ政権が「ガザ」を締め上げるに至ったようだ。
・『避難民用のテント  もちろん、部分的封鎖の下でシンガポールのような国を築くのは難しい。それでもなお、誠実な試みはできたはずだ。そうしていれば、イスラエル政府は外国勢力と国民から、ガザ地区の封鎖を解除し、ヨルダン川西岸地区についても公正な合意に達するようにという、もっと大きな圧力がかかったことだろう。ところが、ハマスがガザ地区を武力制圧してテロ基地に変え、そこからイスラエルの一般市民に対する攻撃を繰り返した。こうして、この実験も失敗に終わった。 イスラエルの左派の残党は、これで完全に信用を失い、ベンヤミン・ネタニヤフが権力の座に就き、彼のタカ派の政権が成立した。そして、ネタニヤフが先頭に立って新たな実験を始めた。平和共存が失敗に終わったので、彼は暴力的共存政策を採用した。イスラエルとハマスは毎週のように攻撃し合い、ほぼ毎年大規模な軍事作戦を展開したが、それでもイスラエルの一般市民は15年にわたり、フェンスを挟んでハマスの基地から数百メートル以内で暮らし続けることができた。イスラエルの熱狂的なメシア(救世主)信仰者たちでさえ、ガザ地区の再占領にはほとんど熱意を示さなかったし、右派さえ、ハマスも200万を超える人々を統治する責任を負えば、徐々に過激でなくなるだろうと期待した。) 実際、イスラエルの右派には、ハマスのほうがパレスティナ自治政府よりも与(くみ)しやすいと見る人が多かった。イスラエルのタカ派は、ヨルダン川西岸地区の支配の継続を願っており、平和協定の締結を恐れていたからだ。ハマスはイスラエルの右派に、願ってもない状況をもたらしてくれるように見えた。すなわち、ガザ地区を治める義務からイスラエルを解放し、しかも、ヨルダン川西岸地区のイスラエル支配を放棄させかねない和平の申し出をせずに済むという状況だ。だが、イスラエルが経験したばかりの恐怖の1日は、暴力的な共存というネタニヤフの実験の終わりを告げた』、「ハマスはイスラエルの右派に、願ってもない状況をもたらしてくれるように見えた。すなわち、ガザ地区を治める義務からイスラエルを解放し、しかも、ヨルダン川西岸地区のイスラエル支配を放棄させかねない和平の申し出をせずに済むという状況だ。だが、イスラエルが経験したばかりの恐怖の1日は、暴力的な共存というネタニヤフの実験の終わりを告げた」、なるほど。
・『和平プロセスにとどめを刺す可能性が高い  では、次はどうなるのか? 確かなことは誰にもわからないが、イスラエルでは、ガザ地区の再征服、あるいは砲爆撃による粉砕に傾く声も一部で上がっている。そのような政策をとれば、この地域に1948年以降最悪の人道的危機を招きうる。イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラとヨルダン川西岸地区のパレスティナ人の勢力がこの争いに加わればなおさらで、死者の数は何千人にも達し、それに加えて何百万もの人が住まいを追われることになりかねない。フェンスの両側には、神の約束と1948年の戦争(訳注:第1次中東戦争)に固執する宗教的狂信者がいる。パレスティナ人は、あの戦争の結果を覆すことを夢見る。ベザレル・スモトリッチ財務相のようなユダヤ教の熱狂的信者は、イスラエルのアラブ系市民に対してさえ、「諸君は手違いによってここにいるのだ。なぜならベン=グリオン[イスラエルの初代首相]が48年にけりをつけそこなって、諸君を追い出さなかったからだ」と警告した。2023年は、両陣営の狂信者たちが自らの宗教的幻想を追い求め、1948年の戦争を徹底的に再現することを許しうる。 たとえ事態がそこまで極端な局面を迎えることがなかったとしても、今回の争いは、イスラエルとパレスティナの和平プロセスにとどめを刺す可能性が高い。ガザ地区との境界に沿ったキブツはみな、これまでずっと社会主義のコミューンであり、イスラエルの左派のとりわけ頑強な砦だった。ガザ地区からの何年にもわたるほぼ連日のロケット弾攻撃の後でさえ、カルト宗教にしがみつくように、依然として和平の希望に執着していたそれらのキブツの住民を、私は知っている。だが、そうしたキブツは、今や跡形もなくなった。そして、最後まで残っていた平和運動家たちの一部は、殺害されたか、愛する者たちを埋葬しているか、ガザ地区に連れ去られて人質にされているかのいずれかだ。たとえば、長年ガザ地区の病人をイスラエルの病院に搬送してきた、キブツ・ベエリの平和活動家ヴィヴィアン・シルヴァーは行方不明になっており、人質としてガザ地区に拘束されているらしい。) すでに起こったことは、取り消しにはできない。死者を生き返らせることは不可能だし、個人的なトラウマも完全に癒えることはけっしてないだろう。だが、これ以上の事態の悪化は防がなければならない。現在この地域の勢力の多くは、無責任な宗教的狂信者が率いている。したがって、外部の勢力が介入して、この紛争を鎮静化させる必要がある。和平を望む人は誰であれ、ハマスの残虐行為を断固非難し、人質全員をただちに無条件解放するようハマスに圧力をかけ、ヒズボラとイランが介入するのを思いとどまらせるのに協力しなければならない。そうすれば、イスラエルの人々は一息ついて考え、かすかな希望を抱く余裕を得られるだろう』、「依然として和平の希望に執着していたそれらのキブツの住民を、私は知っている。だが、そうしたキブツは、今や跡形もなくなった。そして、最後まで残っていた平和運動家たちの一部は、殺害されたか、愛する者たちを埋葬しているか、ガザ地区に連れ去られて人質にされているかのいずれかだ。たとえば、長年ガザ地区の病人をイスラエルの病院に搬送してきた、キブツ・ベエリの平和活動家ヴィヴィアン・シルヴァーは行方不明になっており、人質としてガザ地区に拘束されているらしい」、イスラエルの左派が「キブツ」を中心に活動していたとは、初めて知った。
・『ガザ地区を非武装化すべき  さらに、アメリカ合衆国とEU(欧州連合)からサウジアラビアとパレスティナ自治政府に及ぶ有志連合を結成して、ガザ地区の支配権をハマスから取り去り、この地区を再建すると同時に、ハマスを完全に武装解除し、ガザ地区を非武装化するべきだ。 こうした措置が実行される可能性はわずかしかない。だが、今回の戦慄の事態の後、イスラエル人のほとんどは、それが実現しないかぎり、とうてい生きていけないと考えているのだ。 (訳・柴田裕之氏) ユヴァル・ノア・ハラリイスラエルの歴史学者、哲学者。ヘブライ大学教授。著書『サピエンス全史』『ホモ・デウス』、近著に『人類の物語 Unstoppable Us』シリーズなど(いずれも河出書房新社刊)。 *本寄稿文の英語版は、2023年10月12日、英ガーディアン紙に掲載された』、「ガザ地区を非武装化すべき」というのは、いいアイデアのようだが、「実行される可能性はわずかしかない」ようだ。ただ、それに向けた努力が必要だ。ただ、そのためには、ガザ地区へのイスラエル軍の侵攻は、極めて自制したものである必要がある。
タグ:「ハマス」側の作戦は見事で、「イスラエル側」の対応はお粗末だったようだ。 「イスラエル軍兵士」はもっとピリピリしていると思っていたが、そうでもないようだ。 「ガザ地区を非武装化すべき」というのは、いいアイデアのようだが、「実行される可能性はわずかしかない」ようだ。ただ、それに向けた努力が必要だ。ただ、そのためには、ガザ地区へのイスラエル軍の侵攻は、極めて自制したものである必要がある。 キブツ・ベエリの平和活動家ヴィヴィアン・シルヴァーは行方不明になっており、人質としてガザ地区に拘束されているらしい」、イスラエルの左派が「キブツ」を中心に活動していたとは、初めて知った。 The New York Times「ハマス襲撃を許したイスラエル「4つの大失敗」 中東随一の「セキュリティ網」なぜ突破された?」 「依然として和平の希望に執着していたそれらのキブツの住民を、私は知っている。だが、そうしたキブツは、今や跡形もなくなった。そして、最後まで残っていた平和運動家たちの一部は、殺害されたか、愛する者たちを埋葬しているか、ガザ地区に連れ去られて人質にされているかのいずれかだ。たとえば、長年ガザ地区の病人をイスラエルの病院に搬送してきた、 東洋経済オンラインが転載 「ハマスはイスラエルの右派に、願ってもない状況をもたらしてくれるように見えた。すなわち、ガザ地区を治める義務からイスラエルを解放し、しかも、ヨルダン川西岸地区のイスラエル支配を放棄させかねない和平の申し出をせずに済むという状況だ。だが、イスラエルが経験したばかりの恐怖の1日は、暴力的な共存というネタニヤフの実験の終わりを告げた」、なるほど。 「パレスティナ人がガザを、中東のシンガポールとでも呼ぶべき、繁栄する平和な都市国家に変えようと真摯に努力し、自治の機会を与えられれば何ができるかを世界やイスラエルの右派に示すことを、左派の残党は願った」、しかし、右派のネタニヤフ政権が「ガザ」を締め上げた点に触れてないのは、余りに「イスラエル色」が強いようだ。 「イスラエルはパレスティナの自治政府にガザ地区の支配権を部分的に譲り渡した。その結果、どうなったか? イスラエルは、それまで経験したなかで最悪のテロ活動にさらされた」、いイスラエル」側の見方であるにしても、やはりやり切れない思いがありそうだ。 「イスラエルはつい先日、建国以来最悪の日を経験した。1956年のシナイ作戦(訳注:第2次中東戦争)と1967年の6日間戦争(訳注:第3次中東戦争)と2006年の第2次レバノン戦争で失った民間人と兵士の合計を上回る数のイスラエルの一般市民が、たった1日で虐殺されたのだ」、犠牲者数がそこまで多かったとは初めて知った。 ユヴァル・ノア・ハラリ氏による「イスラエルの歴史家が予見「ハマス紛争」次の展開 1948年以降で最大の危機、和平の機会はあるか?」 ユダヤ系の政権への影響力がいくら強いとはいえ、「アメリカ」が「イスラエル」全面支持というは頂けない。アラブ諸国を再び敵に回すのはいかにも不味い。トランプだったら、どうするだろうか。 「ハマス破滅を狙うイスラエルに強力な支援を表明しているアメリカ政府だが、中東での戦火が拡大し、人道危機が長期化すれば、国民から同様の疑問の声が出てくるかもしれない。その際、アメリカ社会の中枢にいるユダヤ系の政権への影響力が試される。 いずれにせよ、バイデン政権は再び中東情勢に深入りすることとなり、当面は同地域がアメリカの頭痛の種となること必至だ」、 「上院外交委員長や副大統領など経験が豊富なバイデン氏は、政権発足当初、外交政策が強みと見られていた。だが、今やその外交政策が同氏の信頼喪失を招き、支持回復の足を引っ張っている」、確かに最近の「バイデン」は見ていられない。 つまり、戦火はガザ・イスラエルに止まらず、中東全域に拡大するリスクを秘めている」、「事態がエスカレートすれば、航空母艦のプレゼンスなどによる抑止がどこまで効果を発揮するかは不透明だ」、なるほど。 「イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザに侵攻すれば、レバノンを拠点とするシーア派組織ヒズボラが、イスラエルを北部から本格的に攻撃する可能性が高まる。ヒズボラはイスラエル全域を射程範囲とするミサイルを保有することからも、アメリカ政府はとくに警戒している。 イスラエルがヒズボラに応戦することで、ヒズボラの背後にいるイランも応戦するリスクがある。さらには、親イラン武装勢力のフーシ派などが、サウジアラビアをはじめとするペルシャ湾岸諸国・周辺国を攻撃するリスクなども懸念されている。 「アメリカ在住のユダヤ系は2020年時点で計750万人、全国民の約2.4%に過ぎない。とはいえ、その人口はイスラエルに住むユダヤ人に匹敵する。アメリカ在住のユダヤ系は都市部に集中し、金融をはじめとする産業界や大手メディア、シンクタンク、学界、政界などアメリカ社会の中枢で活躍している」、「アメリカ在住のユダヤ系は2020年時点で計750万人」と「イスラエルに住むユダヤ人に匹敵する」、とは初めて知った。 渡辺 亮司氏による「イスラエル支援のアメリカが最も恐れるシナリオ 楽観から一転、望めなくなった中東の安定」 東洋経済オンライン 「空軍は飛行時間にしてわずか数分の距離に基地があるにもかかわらず、この地域の上空に到着するまでに数時間を要したという。 この事態はイスラエルの安全保障に壊滅的な打撃を与え、信頼できる軍事パートナーとしてのイスラエルの地域的評判を損なう可能性もある。 7日以前は、「イスラエルは安全保障問題において、この地域の多くの国にとって資産だった」とグザンスキーは言う。「今のイメージは、イスラエルは資産ではないというものだ」。 「資産」ではなくなったとすれば、さしずめマイナスの効果を持つ負債なのかも知れない。 さらに、バリアはイスラエル当局が予想していたよりも簡単に突破できることが判明した。 そのため、1500人以上のハマスの戦闘員が国境沿いの30近い地点を突破し、そのうちの何人かはハングライダーでバリケードの上を飛び、少なくとも4つのイスラエル軍基地に到達した」、なんということだろう。 「遠隔操作システムには脆弱性があった。遠隔操作で破壊することも可能だったのだ。ハマスがその弱点を利用し、監視システムとの間で信号を送受信する携帯電話の電波塔を攻撃するためにドローンを飛ばした・・・携帯電話の信号がなければ、システムは役に立たない。前線後方の司令室に配置された兵士たちは、ガザとイスラエルを隔てるフェンスが破られたという警報を受け取れず、ハマスの攻撃者がバリケードをブルドーザーで壊している場所を映したビデオを見ることもできなかった。 ヨルダン川西岸を含む他の懸念地域に兵士を移動させ、部隊の数を減らし始めたという。 「部隊の間引きは、フェンスの建設と、あたかもフェンスが無敵で何者も通過できないかのようなオーラを醸し出していたため、合理的に思えた」、監視システムへの過信が原因になったようだ。 「次の失敗は作戦上のものだった。 2人の高官によれば、イスラエルの国境監視システムは、遠隔操作可能なカメラ、センサー、機関銃にほぼ全面的に依存していたという。 イスラエルの司令官たちは、このシステムが難攻不落だと過信していた。司令官らは遠隔監視と武器、地上のバリア、ハマスがイスラエルにトンネルを掘るのを阻止する地下の壁などがあれば、ガザからの大量侵入の可能性が低くなり、国境線に沿って物理的に駐留する兵士の数を減らすことができると考えていた・・・イスラエル・ジブ退役少将によれば、この体制が整ったことで、軍は (その1)(ハマス襲撃を許したイスラエル「4つの大失敗」 中東随一の「セキュリティ網」なぜ突破された?、イスラエル支援のアメリカが最も恐れるシナリオ 楽観から一転 望めなくなった中東の安定、イスラエルの歴史家が予見「ハマス紛争」次の展開 1948年以降で最大の危機 和平の機会はあるか?) イスラエル・パレスチナ 「イスラエル諜報機関によって盗聴されたハマスの工作員たちによる通話では、2021年5月に起こった2週間にわたる衝突の後、すぐにイスラエルとの再戦を避けようとしているように感じたと、イスラエル政府高官の2人は語る。イスラエル諜報機関は現在、これらの通話が本物か演出かを調べているという」、偽のオトリ情報を信じ込むとは。 初歩的な失敗だ。 ハマスが過去1年間に2度の戦闘に参加しなかったことで、ガザの小規模武装組織であるパレスチナ・イスラム聖戦が単独でイスラエルに対抗できるようになった。先月、ハマス指導部はまた、カタールの仲介による合意で、国境沿いの暴動を終結させ、エスカレートは考えていないとの印象を与えた」、なるほど。 「「われわれはハマスの情報収集に何十億も何百億も費やしている」とイスラエル国家安全保障会議の元高官ヨエル・グザンスキーは語る。「そして一瞬にして、ドミノ倒しのようにすべてが崩壊した」、「最初の失敗は攻撃の数カ月前に起こった。イスラエルの安全保障担当者が、ハマスがガザからイスラエルにもたらす脅威の程度について誤った推測をしたためだ。
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ロシア(その3)(元外交官が語る ロシアが西ヨーロッパから「アジア」だと見做される理由、ロシア・プーチン政権の威信は失墜 ナゴルノ・カラバフでアルメニア降伏) [世界情勢]

ロシアについては、2018年7月28日に取上げた。久しぶりの今日は、(その3)(元外交官が語る ロシアが西ヨーロッパから「アジア」だと見做される理由、ロシア・プーチン政権の威信は失墜 ナゴルノ・カラバフでアルメニア降伏)である。なお、ウクライナ問題は別途、取上げている。

先ずは、昨年2月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した著述家・芸術文化観光専門職大学教授の山中俊之氏による「元外交官が語る、ロシアが西ヨーロッパから「アジア」だと見做される理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295482
・『「人種・民族に関する問題は根深い…」。コロナ禍で起こった人種差別反対デモを見てそう感じた人が多かっただろう。差別や戦争、政治、経済など、実は世界で起こっている問題の”根っこ”には民族問題があることが多い。芸術や文化にも”民族”を扱ったものは非常に多く、もはやビジネスパーソンの必須教養と言ってもいいだろう。本連載では、世界96カ国で学んだ元外交官・山中俊之氏による著書、『ビジネスエリートの必須教養「世界の民族」超入門』(ダイヤモンド社)の内容から、多様性・SDGs時代の世界の常識をお伝えしていく』、興味深そうだ。
・『リーダーシップがある人材はロシアで活躍できない?  アメリカで行われた、ある国際会議に参加した時のことです。リーダーシップの専門家が集まるなかで、ロシア人参加者と雑談する機会があり、私は尋ねてみました。 「ロシアにおけるリーダーシップは、アメリカと違うのでしょうか?」 すると、彼は「ロシアは政治が専制的なところがあるので、『私はリーダーシップを取ります』という発言は良しとされませんよ。出すぎる釘は大統領に打たれる」。 笑みを浮かべた顔つきからして、明らかに冗談まじりの発言でしたが、私は「意外と本音なのかもしれない」と思いました。 アメリカは自主性を重んじる国で、「リーダーであれ」という教育は小学校からなされます。多くのヨーロッパも然りで、「古代ギリシャの時代から我々は自由を尊重してきた。市民の意見によって政治的決断をしてきた」という自負があります。 市民には奴隷や階級が低い人は含まれていないので異論はあるところですが、「民主的な我々に比べてアジアは専制的だ」というのがヨーロッパに一定数見られる意見で、その場合のアジアにはロシアも含まれていることがあります。 「中東、ペルシャ、中国、ロシアなど東は専制国家だ」という考え方は西ヨーロッパの東に対する偏見だと思いつつ、また例外は多数あるものの、うなずける部分もあります。 なぜなら、専制にはグラデーションがあります。「独裁者による絶対的な支配」という専制にはみんなノーといいますが、国のトップが責任を持って物事を決定する、やや緩やかな支配であれば、案外受け入れられています。 常に責任を持って自分の意見をいい、時には対立しても納得がいくまで話しあい、人に指示されて行動するより我が道をいく――これはリーダーシップを取る上で欠かせない姿勢ですが、「そんなの大変すぎる。しんどくて無理」という人たちもいるのは、日本の組織でも見られる現象ではないでしょうか。 「いちいち考えて意見をいったり、議論して対立したりするより、リーダーが決めたことに従うほうがいい」と考える。カリスマ的リーダーに引っ張られ、できれば褒められながら頑張りたい……。東にはそんな傾向が自然にあると感じられます。それが西ヨーロッパ人の目には、「専制的」と映るのかもしれません。 さらにロシアについていえば、絶対的に強いリーダーを求める歴史的な傾向があります。領主が農民を所有する農奴制やそれに近い仕組みは、封建社会の時代には世界中にありましたが、ロシアでは19世紀まで続きました。 農奴は領主の所有物であり、移動も結婚も領主の許可なくしては行えず、長い間奴隷のように売買された記録もあります。農民による反乱は何度もありましたが、鎮圧されるたびに締めつけは過酷になっていきました。 自由を奪われ、従うことに慣れ、自立を諦めた時、人は何を望むでしょう? 支配者に全部お任せして、「どうか暮らしを良くしてください。困ったら面倒を見てください」と願うようになるというわけです。それならリーダーは、強ければ強いほど「頼り甲斐があって良い」となります(全員ではないでしょうが)。 現在のロシアは14の国と陸地で国境を接しています。巨大な国土と多くの国々と接する国境線の存在は、他国との安全保障上の問題が生じやすくなります。北極海に面していますが、氷が多く自由な航海が長くできませんでした。 長い国境線と北極海に囲まれているこの閉塞感がロシアの対外的な恐怖感につながり、対外的に強いリーダーを求める要因になっていると私は考えています。 第一次世界大戦後ロシア革命が起こり、ロマノフ朝は終わりを迎えます。知識層と市民が手を携えて立ち上がった点は多くの国が民主化した流れと同じですが、ロシアの場合、革命の後は世界で初めての共産主義国家ソビエトになります。 レーニン率いるソビエトは、「兵士と労働者のための国家」のはずでしたが、実際は共産党が権力を持ち、秘密警察が跋扈する、厳しい統制が強いられた一党独裁でした。 皇帝から共産党政府へと支配者が変わっただけで、「人々には自由がない」という構造は変わらなかったのですから、個人のリーダーシップなど育みようがなかったのかもしれません。 中国にしてもロシアにしても、それぞれの国の専門家の意見などを総合すると、大きすぎる国はまとめることが難しく、ある程度強権的にせざるを得ない部分もあるのだと思います。 「大きい国=国土が広く人口が多い国」とすれば、専制的でないインドやアメリカも大きな国なので一概にはいえませんが、インドは多民族ながら文化として融和的な傾向があります。 また、アメリカは建国の経緯からして独立心旺盛なので、農奴として生きるしかなかったロシア人とは文化的・歴史的な背景が異なります。 プーチン大統領の絶大な権力を見れば、現在のロシアもまた専制的であるといわざるを得ませんが、政府の汚職やプーチン政権を批判するアレクセイ・ナワリヌイのような若い政治家も登場しています。 毒殺されかかっても収監されても怯まず、「プーチンは国民を奴隷にしている裸の王様だ」と主張するナワリヌイに続く人物も、今後出てくるかもしれません。 そうした人々によって、これからのロシアは転換期を迎える可能性もあります』、「「プーチンは国民を奴隷にしている裸の王様だ」と主張するナワリヌイに続く人物も、今後出てくるかもしれません。 そうした人々によって、これからのロシアは転換期を迎える可能性もあります」、なるほど。
・『なぜいま、「民族」を学ぶべきなのか?  ダイバーシティが重要」「世界の多様な価値観を理解すべき」……。このような声を聞くことが最近増えましたが、ダイバーシティやその前提となる多様な文化・価値観を理解するためには、民族について知っていることが重要です。 しかしながら、世界96カ国を巡り、様々な国や民族の人たちと仕事をしてきた私からすると、日本人の民族への理解――いわば「民族偏差値」は、世界最低レベルだと思います。 日本人は単一民族ではないものの、限りなく単一民族的です。みんな似ているし、争いはあまりないし、言葉もそう違わず、結婚・就職の差別も世界的に見ればとても少ない。 ただし、多様性がないから無知になり、発想が貧しくなります。多様であることが新たな文化を育み、イノベーションのもとになるのです』、「日本人の民族への理解――いわば「民族偏差値」は、世界最低レベルだと思います。 日本人は単一民族ではないものの、限りなく単一民族的です。みんな似ているし、争いはあまりないし、言葉もそう違わず、結婚・就職の差別も世界的に見ればとても少ない。 ただし、多様性がないから無知になり、発想が貧しくなります。多様であることが新たな文化を育み、イノベーションのもとになるのです」、「日本人の民族への理解――いわば「民族偏差値」は、世界最低レベル」、なので。意図的に勉強して理解を深めるべきだ。

次に、本年9月24日付けJBPressが掲載した著作家の宇山 卓栄氏による「ロシア・プーチン政権の威信は失墜、ナゴルノ・カラバフでアルメニア降伏」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/77090
・『9月19日から20日にかけて、アゼルバイジャンは隣国アルメニアとの係争地ナゴルノ・カラバフで軍事作戦を展開し、アルメニア人勢力を降伏させました。今回の軍事作戦はウクライナ戦争の動きとも連動しており、アルメニアを支援してきたロシアの威信失墜にもつながります。プーチン政権にとっては外交上の痛手となるわけですが、今回はこのナゴルノ・カラバフ紛争や、アゼルバイジャンとアルメニアについて歴史を振り返りながら解説します』、興味深そうだ。
・『これまで2回の紛争が発生  これまで、アゼルバイジャンとアルメニアの間で、2回のナゴルノ・カラバフ紛争が起こっています。 1922年以降、両国はソ連に編入されていましたが、1991年、ソ連の解体によって、独立します。しかし、それまで、ソ連の存在によって抑えられていた両国の民族対立が表面化し、アルメニアとアゼルバイジャンの間で、ナゴルノ・カラバフ地域の帰属問題が発生します。 軍事的な衝突が起き、第1次ナゴルノ・カラバフ紛争となります。この紛争では、アルメニアが優勢のまま、周辺地域を含めて実効支配します。もともと、ナゴルノ・カラバフ地域では、アルメニア人が多数派を占めていました。 2020年、両国の間で紛争が再燃し、第2次ナゴルノ・カラバフ紛争が起こります。双方が相手国を空爆し、多くの犠牲者が出ました。ナゴルノ・カラバフ地域はアゼルバイジャンに奪い返されました。アルメニアは停戦に合意しています。 それまでの十数年、アゼルバイジャンはバクー油田などを持つ産油国として、急激に経済成長を遂げました。アゼルバイジャンは豊かな財政で軍備を増強するなど、アルメニアに大きな差を付けます。 一方、アルメニアでは、2018年、民主化で自由主義的な政権が誕生し、新政権は従来の親ロシア路線を修正し、欧米に接近しました。アルメニアとロシアの不和を見越したアゼルバイジャンがトルコの支援を得て、強硬路線に踏み切り、第2次ナゴルノ・カラバフ紛争に勝利したのです。 2020年の第2次ナゴルノ・カラバフ紛争で、既に、アゼルバイジャンの優勢と同地域の実効支配が固まっていましたが、その後も同地域のアルメニア人武装勢力は抵抗を続けていました。 それが今回、アゼルバイジャンは最終的にアルメニア人武装勢力の排除に成功したのです』、「それまで、ソ連の存在によって抑えられていた両国の民族対立が表面化し、アルメニアとアゼルバイジャンの間で、ナゴルノ・カラバフ地域の帰属問題が発生します。 軍事的な衝突が起き、第1次ナゴルノ・カラバフ紛争となります。この紛争では、アルメニアが優勢のまま、周辺地域を含めて実効支配します・・・それまでの十数年、アゼルバイジャンはバクー油田などを持つ産油国として、急激に経済成長を遂げました。アゼルバイジャンは豊かな財政で軍備を増強するなど、アルメニアに大きな差を付けます。 一方、アルメニアでは、2018年、民主化で自由主義的な政権が誕生し、新政権は従来の親ロシア路線を修正し、欧米に接近しました・・・2020年、両国の間で紛争が再燃し、第2次ナゴルノ・カラバフ紛争が起こります。双方が相手国を空爆し、多くの犠牲者が出ました。ナゴルノ・カラバフ地域はアゼルバイジャンに奪い返されました・・・今回、アゼルバイジャンは最終的にアルメニア人武装勢力の排除に成功したのです」、歴史的な流れが一応理解できた。
・『ウクライナ戦争で訪れた軍事作戦の好機  ウクライナ戦争に忙殺されるロシアには、ナゴルノ・カラバフに介入する余裕はないことは明らかであり、アゼルバイジャンにとっては、今が電撃的な軍事作戦を展開する好機だったのです。 メディアでは、「ロシアの平和維持部隊の提案を受けて、アルメニア人武装勢力が停戦を決めた」ということが報道されていますが、実際には、ロシアがさじを投げた格好です。 ウクライナ戦争はナゴルノ・カラバフ紛争の最終決着という、思わぬ副産物を生んだのです。同地域におけるロシアの影響力もまた、完全に排除されたと言えます』、「実際には、ロシアがさじを投げた格好です。 ウクライナ戦争はナゴルノ・カラバフ紛争の最終決着という、思わぬ副産物を生んだのです。同地域におけるロシアの影響力もまた、完全に排除されたと言えます」、なるほど。
・『民族系統はどうなっているのか  「コーカサス三国」という言い方がありますが、これはコーカサス山脈の南部のジョージア(旧名グルジア)、そして、アルメニアとアゼルバイジャンの3つの国を指します。 コーカサス三国は旧ソ連から独立した共和国です。コーカサス山脈の北側地域はロシア連邦領となっています。コーカサス地方はコーカサス山脈周辺の国や地域一帯のエリアで、黒海とカスピ海の間に挟まれたアジアとヨーロッパを結ぶ回廊を成す地域です。 北にロシア、南にトルコとイランが隣接しています。「コーカサス」は「カフカス」とも発音されます。ヨーロッパ、アジア、中東の結節点であり、地球上で最も多様な民族が集まる「人種のるつぼ」として、様々な民族の混血が存在しています。 コーカサス三国の人々はロシア白人に近いのでしょうか、それとも、トルコ人やイラン人に近いのでしょうか。 はっきりしているのはアゼルバイジャン人です。アゼルバイジャン人の多くはトルコ人です。「アゼルバイジャン・トルコ人」と呼ばれることもあり、カスピ海を挟んで対岸のトルクメニスタン人とほとんど同じです。) ただし、かつてロシア領(帝政時代)、ソ連領だったこともあるため、ロシア人とも混血しています。容貌は中央アジア人とほとんど同じです。 言語であるアゼルバイジャン語はトルコ語に属し、トルコ共和国語やトルクメニスタン語(トルクメン語)に近似しています。主な宗教はイスラム教です』、「コーカサス三国の人々」のうち、「アゼルバイジャン人の多くはトルコ人です・・・かつてロシア領(帝政時代)、ソ連領だったこともあるため、ロシア人とも混血しています。容貌は中央アジア人とほとんど同じです。 言語であるアゼルバイジャン語はトルコ語に属し・・・主な宗教はイスラム教です」、なるほど。
・『「多重多層民族」であるアルメニア人  一方、アルメニア人はコーカサス人、トルコ人、ロシア人、イラン人などの容貌の全ての要素を含みます。アルメニア人がどの民族に最も近いかを言うのは困難です。アルメニア人は「コーカサス三国」の民族の中で、最も混血が複雑多様化している民族です。各民族の行き交う十字路にあって、様々な民族の血を複合的に取り込んだ「多重多層民族」であり、それだけに、美しい容貌を持つ人が多いとされます。 アルメニア語はインド・ヨーロッパ語族に属します。アルメニア文字はギリシア文字から創案され、ペルシア語の影響も強く受けています。彼らの言語もまた、ヨーロッパ語に近いのか、ペルシア語に近いのかを言うのは困難です。 主な宗教はキリスト教(アルメニア正教)です。かつて、アルメニア人がロシア人と連携して、アゼルバイジャンに対抗していたのは同じキリスト教正教を奉じているからです。一方、イスラムのアゼルバイジャンはロシアとの関係は良好ではありません。 アルメニア人は自らの国家を持ちませんでした。セルジューク朝やオスマン帝国のトルコ人に支配されたり、イラン人に支配されたり、ロシア帝国に支配されたり、その時代における強者に従属し続けました。従属を嫌ったアルメニア人は故郷を離れ、世界中に離散します。こうしたことから、ユダヤ人のディアスポラ(離散)にたとえられることもあります。 世界各地のアルメニア人はアルメニア正教会を中核とした連帯意識を強く持ちながら、交易を活発に行い、富を蓄えました。アルメニアは301年、世界で最初にキリスト教を国教としています』、「アルメニア人はコーカサス人、トルコ人、ロシア人、イラン人などの容貌の全ての要素を含みます。アルメニア人がどの民族に最も近いかを言うのは困難です。アルメニア人は「コーカサス三国」の民族の中で、最も混血が複雑多様化している民族です。各民族の行き交う十字路にあって、様々な民族の血を複合的に取り込んだ「多重多層民族」であり、それだけに、美しい容貌を持つ人が多いとされます。 アルメニア語はインド・ヨーロッパ語族に属します。アルメニア文字はギリシア文字から創案され、ペルシア語の影響も強く受けています・・・主な宗教はキリスト教(アルメニア正教)です・・・アルメニア人は自らの国家を持ちませんでした。セルジューク朝やオスマン帝国のトルコ人に支配されたり、イラン人に支配されたり、ロシア帝国に支配されたり、その時代における強者に従属し続けました。従属を嫌ったアルメニア人は故郷を離れ、世界中に離散します。こうしたことから、ユダヤ人のディアスポラ(離散)にたとえられることもあります。 世界各地のアルメニア人はアルメニア正教会を中核とした連帯意識を強く持ちながら、交易を活発に行い、富を蓄えました。アルメニアは301年、世界で最初にキリスト教を国教としています』、なるほど。
・『コーカサス地域でトルコが優位に  第1次世界大戦がはじまると、オスマン帝国は領土内の多数のアルメニア人をロシアに協力する敵性民族として、迫害します。1915年、アルメニア人虐殺がはじまります。 現在、アルメニア政府はこの事件を、民族根絶を狙った「ジェノサイド(集団虐殺)」であると主張し、その犠牲者は150万人以上になるとしています。研究機関によっては、数十万人ともされており、はっきりとした犠牲者の数はわかっていません。この事件を巡って、今日でも、アルメニアとトルコとの間で、論争が続いています。 こうした背景からも、トルコはアルメニアと敵対し、アゼルバイジャンを支援しています。19世紀、コーカサス地域の支配権を巡り、ロシア帝国とオスマン帝国が対立してきましたが、今日、この地域への影響力では、ロシアに対するトルコの優位が定まったと言えます』、「第1次世界大戦がはじまると、オスマン帝国は領土内の多数のアルメニア人をロシアに協力する敵性民族として、迫害します。1915年、アルメニア人虐殺がはじまります。 現在、アルメニア政府はこの事件を、民族根絶を狙った「ジェノサイド(集団虐殺)」であると主張し、その犠牲者は150万人以上になるとしています。研究機関によっては、数十万人ともされており、はっきりとした犠牲者の数はわかっていません。この事件を巡って、今日でも、アルメニアとトルコとの間で、論争が続いています。 こうした背景からも、トルコはアルメニアと敵対し、アゼルバイジャンを支援しています。19世紀、コーカサス地域の支配権を巡り、ロシア帝国とオスマン帝国が対立してきましたが、今日、この地域への影響力では、ロシアに対するトルコの優位が定まったと言えます」、「コーカサス三国」の複雑な歴史の一端が理解できた。
タグ:世界各地のアルメニア人はアルメニア正教会を中核とした連帯意識を強く持ちながら、交易を活発に行い、富を蓄えました。アルメニアは301年、世界で最初にキリスト教を国教としています』、なるほど。 ロシア この事件を巡って、今日でも、アルメニアとトルコとの間で、論争が続いています。 こうした背景からも、トルコはアルメニアと敵対し、アゼルバイジャンを支援しています。19世紀、コーカサス地域の支配権を巡り、ロシア帝国とオスマン帝国が対立してきましたが、今日、この地域への影響力では、ロシアに対するトルコの優位が定まったと言えます」、「コーカサス三国」の複雑な歴史の一端が理解できた。 「第1次世界大戦がはじまると、オスマン帝国は領土内の多数のアルメニア人をロシアに協力する敵性民族として、迫害します。1915年、アルメニア人虐殺がはじまります。 現在、アルメニア政府はこの事件を、民族根絶を狙った「ジェノサイド(集団虐殺)」であると主張し、その犠牲者は150万人以上になるとしています。研究機関によっては、数十万人ともされており、はっきりとした犠牲者の数はわかっていません。 ダイヤモンド・オンライン (その3)(元外交官が語る ロシアが西ヨーロッパから「アジア」だと見做される理由、ロシア・プーチン政権の威信は失墜 ナゴルノ・カラバフでアルメニア降伏) 「「プーチンは国民を奴隷にしている裸の王様だ」と主張するナワリヌイに続く人物も、今後出てくるかもしれません。 そうした人々によって、これからのロシアは転換期を迎える可能性もあります」、なるほど。 山中俊之氏による著書、『ビジネスエリートの必須教養「世界の民族」超入門』(ダイヤモンド社) 山中俊之氏による「元外交官が語る、ロシアが西ヨーロッパから「アジア」だと見做される理由」 「それまで、ソ連の存在によって抑えられていた両国の民族対立が表面化し、アルメニアとアゼルバイジャンの間で、ナゴルノ・カラバフ地域の帰属問題が発生します。 軍事的な衝突が起き、第1次ナゴルノ・カラバフ紛争となります。この紛争では、アルメニアが優勢のまま、周辺地域を含めて実効支配します・・・ 宇山 卓栄氏による「ロシア・プーチン政権の威信は失墜、ナゴルノ・カラバフでアルメニア降伏」 JBPRESS 「日本人の民族への理解――いわば「民族偏差値」は、世界最低レベル」、なので。意図的に勉強して理解を深めるべきだ。 「日本人の民族への理解――いわば「民族偏差値」は、世界最低レベルだと思います。 日本人は単一民族ではないものの、限りなく単一民族的です。みんな似ているし、争いはあまりないし、言葉もそう違わず、結婚・就職の差別も世界的に見ればとても少ない。 ただし、多様性がないから無知になり、発想が貧しくなります。多様であることが新たな文化を育み、イノベーションのもとになるのです」、 「コーカサス三国の人々」のうち、「アゼルバイジャン人の多くはトルコ人です・・・かつてロシア領(帝政時代)、ソ連領だったこともあるため、ロシア人とも混血しています。容貌は中央アジア人とほとんど同じです。 言語であるアゼルバイジャン語はトルコ語に属し・・・主な宗教はイスラム教です」、なるほど。 「実際には、ロシアがさじを投げた格好です。 ウクライナ戦争はナゴルノ・カラバフ紛争の最終決着という、思わぬ副産物を生んだのです。同地域におけるロシアの影響力もまた、完全に排除されたと言えます」、なるほど。 ・・・2020年、両国の間で紛争が再燃し、第2次ナゴルノ・カラバフ紛争が起こります。双方が相手国を空爆し、多くの犠牲者が出ました。ナゴルノ・カラバフ地域はアゼルバイジャンに奪い返されました・・・今回、アゼルバイジャンは最終的にアルメニア人武装勢力の排除に成功したのです」、歴史的な流れが一応理解できた。 それまでの十数年、アゼルバイジャンはバクー油田などを持つ産油国として、急激に経済成長を遂げました。アゼルバイジャンは豊かな財政で軍備を増強するなど、アルメニアに大きな差を付けます。 一方、アルメニアでは、2018年、民主化で自由主義的な政権が誕生し、新政権は従来の親ロシア路線を修正し、欧米に接近しました アルメニア語はインド・ヨーロッパ語族に属します。アルメニア文字はギリシア文字から創案され、ペルシア語の影響も強く受けています・・・主な宗教はキリスト教(アルメニア正教)です・・・アルメニア人は自らの国家を持ちませんでした。セルジューク朝やオスマン帝国のトルコ人に支配されたり、イラン人に支配されたり、ロシア帝国に支配されたり、その時代における強者に従属し続けました。従属を嫌ったアルメニア人は故郷を離れ、世界中に離散します。こうしたことから、ユダヤ人のディアスポラ(離散)にたとえられることもあります。 「アルメニア人はコーカサス人、トルコ人、ロシア人、イラン人などの容貌の全ての要素を含みます。アルメニア人がどの民族に最も近いかを言うのは困難です。アルメニア人は「コーカサス三国」の民族の中で、最も混血が複雑多様化している民族です。各民族の行き交う十字路にあって、様々な民族の血を複合的に取り込んだ「多重多層民族」であり、それだけに、美しい容貌を持つ人が多いとされます。
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ミャンマー(その7)(少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺 検問所爆破 戦闘機撃墜も、ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない) [世界情勢]

ミャンマーについては、昨年2月17日に取上げた。今日は、(その7)(少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺 検問所爆破 戦闘機撃墜も、ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない)である。

先ずは、本年3月19日付け現代ビジネス「少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107805?imp=0
・『軍政の残虐非道な行動が明らかに(ミン・アウン・フライン司令官率いるミャンマー軍事政権は2022年から2023年にかけて反軍政の抵抗を続ける市民組織「国民防衛軍(PDF)」などへの弾圧を強化しており、その過程で一般市民の殺害も増加している。 そうした中でも特に未成年の若者や女性を虐殺するケースが相次いで報告され、人権侵害がこれまで以上に深刻化しているという。 さらに2023年3月13日にはミャンマーの独立系メディアが仏教寺院に避難していた一般市民と同時に僧侶をも殺害していたことを報じた。 ミャンマーは国民の90%を仏教徒が占める国で、僧侶は国民の尊敬を集める対象となっているだけに、僧侶まで殺害するという軍政の容赦ない姿勢は反軍政を掲げる国民の反感と怒りを高めている。 こうした軍政の残虐非道な行動は、2月2日に戒厳令を7郡区から37郡区に拡大し、同月22日にもさらにサガイン地方域で3郡区を追加するなどして、抵抗勢力との戦闘が激化している地方での軍の権力を強化したことと関係があるとみられている。 2021年2月のクーデター以降すでに2年以上が経過しながらも、国内の治安が一向に安定せず、8月に予定している「民主的な総選挙」の実施も危ぶまれる状況に対する軍政の焦りが背景にあるとの見方が有力視されている。 軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図しているとされ、各地から報告される兵士による残虐行為はその反映とされている』、「軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図している」、なるほど。
・『寺院の避難民を僧侶と共に殺害  独立メディア「ミャンマー・ナウ」はミャンマー北東部シャン州南部ピンラウン郡区のナンニント村で市民ら29人が殺害されているのを地元抵抗勢力である「カレンニー民族防衛隊(KNDF)」が3月13日の声明で明らかにしたと伝えた。29人の中には仏教僧侶3人が含まれていたとしている。 KNDFなどによると、軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている。 ナンニント村の大半の住民は軍による攻撃激化を恐れて数週間前にすでに村外に避難していたが、僧侶が避難をせずに村に留まったことから20数人の男性村人が共に村に残り、空襲・砲撃を逃れるために寺院に避難していたという。 KNDFはナンニント村の状況を確認するためにドローンで上空から偵察していたところ、寺院で多数の遺体を発見したものの兵士が撤退するのを待ったため現場の寺院には12日までたどり着けなかったとしている。 KNDFのミャンマー語のホームページには殺害現場の生々しい写真が複数アップされ、民族衣装であるロンジーをまとった多数の男性が銃撃を受けて頭部や上半身などから血を流して寺院の外壁周辺に倒れている様子が写っている。 死者の間にはサフラン色の僧衣をまとった仏教僧侶が僧衣の一部を血に染めて横たわっており、寺院の外壁にも多数の弾痕が残されている。住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという。 この寺院襲撃、僧侶殺害に関し、軍政のゾー・ミン・トゥン報道官はメディアに対して武装市民組織と民間人の何人かが死亡したことは確認したものの「地元のPDFメンバーによる殺害である」として兵士の関与を否定した』、「軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている」、「住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという」、酷いものだ。
・『若者を虐殺、斬首で遺体放置  独立系メディアなどによると、2月25日に北西部サガイン地方域ミンム郡区ニャウン・ピンカン村付近で武装市民組織PDFと軍による戦闘が発生した。PDF側が弾薬不足のため退却する際に退路に地雷を埋設していた若者5人が軍に拘束された。 その後若者5人の遺体が発見されたが、うち3人は斬首され、頭部が竹柵や荷車の上に「晒し首」状態で放置されており、中には手足が切断された遺体もあったという。遺体には銃創が一切ないことから、若者らは生きたまま斬首された可能性が高いとみられている。 兵士は殺害した若者の携帯電話を取り上げて犠牲者の親族や友人に電話をかけて「死を祝っている」と述べたうえ、犠牲者を罵倒し続けたという。 斬首されたのは15歳の少年、17歳と19歳の青年で、いずれも地元の武装市民組織を手伝い地雷を設置していたところを軍に拘束され、虐殺されたという。事件を伝える独立メディアのウェブサイトには3人の若者がほほ笑む生前の写真がアップされている。 同村周辺ではさらに2人の若者の殺害遺体も発見されているほか、サガイン地方域カン・タイン村では別の男性2人の斬首遺体が発見され、同地方域ミンム郡区ニャウンイン村では16人が殺害されている。 このように国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている。 このほか10月には北部カチン州ハパカント近郊の村で軍政に抵抗を続ける少数民族武装勢力やその支持者、一般市民が参加して開催中のコンサート会場を軍が空爆して地元の著名女性歌手や男性演奏家、多数の観衆が殺害される事件も起きている』、「国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている」、なるほど。
・『レイプして殺害される女性たち  3月2日、サガイン地方域サガイン群区タルタイン村で女性3人を含む住民が軍に拘束されて「人間の盾」として戦闘現場に立たされたことが報じられた。 さらに同じ日、同地方域ミンム群区ニャウンイン村でレイプされた女性の遺体が発見されたほか。同村では計14人の遺体が発見されたが、その中にはレイプされ顔面や頭部を激しく殴打された痕跡の残る女性3人の遺体も含まれていたという。 2022年8月27日には、サガイン地方域カニ郡区タイエットピンブラ村に進入した兵士らが民家に取り残された知的障害のある40代の女性を屋外に連れ出して複数の兵士がレイプした。 また同月11日には同地方域インマビン群区インバウンテン村で10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も明らかになっている』、「10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も明らかに」、自国民に対する残虐行為も度を越している。
・『激化する人権侵害事件  このように軍は2022年から、各地で抵抗を続ける武装市民組織メンバーに対する掃討作戦を通じて一般市民を巻き込んだ強権的弾圧を強化、女性や若者をも無差別に殺害しているが、国民の尊敬と信仰の対象である仏教僧侶まで容赦なく殺害するという暴挙に対し内外から厳しい批判が高まっている。 戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている。 タイ西部ターク県メーソットに本拠を置くミャンマーの人権団体「ミャンマー政治犯支援協会(AAPP)」によると、3月14日現在、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている』、「戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている・・・ミャンマーの人権団体「ミャンマー政治犯支援協会(AAPP)」によると、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている」、「人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている」、その通りだ。

次に、8月8日付け現代ビジネスが掲載したPanAsiaNews記者の大塚 智彦氏による「ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺、検問所爆破、戦闘機撃墜も」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114446?imp=0
・『実質的な内戦状態にあり治安状況が深刻化しているミャンマーで、ミン・アウン・フライン国軍司令官率いる軍政は7月31日に期限を迎えた非常事態宣言を6ヵ月延長することを決めた。これにより軍政が目指す「民政移管の為の民主的選挙」の実施は2024年2月以降にずれ込むことが確定し、軍政の強権弾圧政治が続くことになった。 軍政が非常事態宣言を延長した理由は国軍司令官が「武装した暴力が続いている。選挙は時期尚早で用意周到に準備する必要がある。当面の間我々が責任を負わなければならない」と述べたように、国内の治安が予想に反して一向に安定せず、各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や国境地帯を拠点とする少数民族武装勢力が軍や警察を攻撃し、軍も住民に対して暴力や虐殺を続けるなど、全土で戦闘が激化していることが背景にある』、「国内の治安が予想に反して一向に安定せず、各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や国境地帯を拠点とする少数民族武装勢力が軍や警察を攻撃し、軍も住民に対して暴力や虐殺を続けるなど、全土で戦闘が激化している」、ような状況では、「選挙」の延期は当然だ。
・『PDFによる軍への攻撃  軍政に抵抗する立場から報道を続けているミャンマーの独立系メディア「イラワジ」は7月31日、ミャンマー各地でのPDFと軍の戦闘を詳しく伝えた。 それによると戦闘は北西部のザガイン地方域、チン州、西部のカレン州(カイン州)中部のマンダレー地方域、南部のタニンダーリ地方域、東部のシャン州の各地で発生とミャンマーのほぼ全域に渡り、治安状況が軍政にとって深刻な問題になっていることが裏付けられている。 マンダレー地方域では7月27日、タベイッキン郡区でイラワジ川を航行していた軍の9隻の船団に対し、同地方域やザガイン地方域から集結した37のPDF組織が共同で待ち伏せ攻撃を敢行した。 船団の2隻を破壊したが、別の船から発砲があり川中の船と沿岸8ヵ所との間で激しい銃撃戦が交わされた。その後、船団は現場を逃れたため軍兵士の死傷者数は明らかになっていないが、同船団は食料や武器、弾薬、人員を補充するため輸送中だったとしている。 チン州ミンダット郡区では7月30日、パトロール中の軍の車列を地元のPDFが待ち伏せ攻撃し兵士8人を殺害した。さらに7月28日にはザガイン地方域モンユワ郡区にある軍の北西司令部をPDFが107ミリロケット弾で攻撃し、軍施設に損害を与えたという。 このほかにもタニンダーリ地方域では地元PDF部隊が地雷6つを使って軍を攻撃し、兵士10人を殺害したと報じた。 こうした一連の攻撃で軍側には少なくとも89人の犠牲を強いたと各地のPDFは報告しており、軍側の被害が拡大していることを印象付けた』、「戦闘は北西部のザガイン地方域、チン州、西部のカレン州(カイン州)中部のマンダレー地方域、南部のタニンダーリ地方域、東部のシャン州の各地で発生とミャンマーのほぼ全域に渡り、治安状況が軍政にとって深刻な問題になっていることが裏付けられている」、「こうした一連の攻撃で軍側には少なくとも89人の犠牲を強いたと各地のPDFは報告しており、軍側の被害が拡大していることを印象付けた」、なるほど。
・『戦闘機を地上から撃墜  軍政は戦闘機や爆撃機、ヘリコプターなどで掌握している制空権を利用して各地のPDF拠点への空からの攻撃を強化しているが、学校や仏教寺院などの被害も拡大しており、「無差別空爆」を行っている可能性もあるという。 そんな中、東部カヤー州パウラケ郡区にある少数民族武装勢力「カレンニ民族人民解放戦線(KNPLF)」の拠点を攻撃するために戦闘機1機が低空飛行で接近した際、地上からの銃撃などで撃墜に成功したとKNPLFが明らかにした。 KNPLFによると、特に対空兵器があった訳ではないが、メンバーによる必死の攻撃で墜落させた、と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させたという。 この戦闘機はイワルティット村近くに墜落したが同村周辺は軍の支配地域のため、墜落した戦闘機の詳しい情報は当初不明だった。軍が急いで機体の残骸を片付けてしまったことも影響しているが、KNPLFは、その後詳細が明らかになったとしている。 それによると同機はK8Wという戦闘機で、空軍の大尉と中尉が乗り込んだ複座で、タウング空軍基地から攻撃のため発進した。その後、空軍は、犠牲となった2人のパイロットをそれぞれ少佐、大尉に昇進させ功績を讃えたという。 さらに7月31日には、カレン州パアン郡区サルウィン橋に設けられていた軍の検問所が地元PDFによって爆破され、民間人1人が死亡、兵士7人を含む10数人が負傷したという。検問所の兵士が近くに駐車していた車両を不審に思って調べようとしたところ爆発したとカレン情報センター(KIC)が情報提供した』、「戦闘機1機が低空飛行で接近した際、地上からの銃撃などで撃墜に成功したとKNPLFが明らかにした。 KNPLFによると、特に対空兵器があった訳ではないが、メンバーによる必死の攻撃で墜落させた、と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、「特に対空兵器があった訳ではないが・・・と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、大したものだ。
・『軍が住民14人を虐殺  一方、軍も各地で強力な抵抗を続けるPDFへの攻撃を激化させている。 独立系メディア「ミャンマー・ナウ」が7月31日に伝えたところによると、ザガイン地方域モンユウのチンドウィン川西岸にあるソネチャウン村で住民14人の虐殺があったという。 それによると、雨の降る深夜、ソネチャウン村に約60人の兵士が侵入、民家を訪れては懐中電灯で住民の顔を照らし、地元PDFの幹部を探しだそうとした。犬が大きく吠えて多くの住民が起きたが、当初は軍の接近を住民に連絡する訪問と思って扉を開けた人が多かったという。 軍はミョー・ミン・ウー氏(42)を捜索し、彼を見つけると同じ家にいた兄弟や子供と一緒に拘束した。さらに、PDF関係者とみられる住民を次々と拘束し「武器をどこに隠した」と拷問を加えながら尋問を続けた。拘束された住民はPDFとの関係を否定し、武器の所在も知らないと主張したという。 翌日の明け方には、ミョー・ミン・ウー氏をはじめとする拘束されいた14人の遺体が村のあちこちに放置されているのが見つかった。遺体には拷問の跡や刃物による傷など虐待の痕跡が残され、残虐な手段で虐殺されたことを物語っていた。 兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪するなどの行為を行って村を去ったと報じ、軍の行動を非難した』、「ミョー・ミン・ウー氏をはじめとする拘束されいた14人の遺体が村のあちこちに放置されているのが見つかった。遺体には拷問の跡や刃物による傷など虐待の痕跡が残され、残虐な手段で虐殺されたことを物語っていた。 兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪するなどの行為を行って村を去ったと報じ、軍の行動を非難」、酷いものだ。
・『柔軟姿勢はあくまで表向き(8月1日、ミン・アウン・フライン国軍司令官は非常事態宣言を延長するとともに、アウン・サン・スー・チーさんを含めた政治犯など約7000人に対する恩赦を発表した。 これにより19のいわれなき罪状で訴追され2022年12月に合計禁固33年の判決を受けて収監されていたスー・チーさんは、5件の刑で計6年の減刑措置を受けた。スー・チーさんの残る刑期は27年となったものの、78歳という年齢を考えると、実質的には終身刑と同じといえる。 軍政は恩赦に先立ち、スー・チーさんをそれまで収容していた首都ネピドー近郊の刑務所内に設けた特別な施設から刑務所外にある政府関係者の民家に移送したという。 さらに7月には、ネピドーを訪問したタイのドーン外相とスー・チーさんとの面会を特別に許可し、両者は直接対面して会談した。スー・チーさんが外国の閣僚と面会するのは2021年2月1日のクーデターで軍によって身柄を拘束されて以来初めてであった。 このように軍政は、スー・チーさんに対し、刑務所外への移送、タイの外相との面会許可、そして恩赦による刑期短縮と「柔軟姿勢」ともとれる措置を相次いで講じているが、これには非常事態宣言の延長という強権政治の継続に対する欧米や東南アジア諸国連合(ASEAN)の批判を交わす狙いがあるとみられている。 しかしこうした「柔軟姿勢」の一方でPDFや少数民族武装勢力など反軍政の抵抗勢力との戦闘を激化させており、武力衝突は依然として内戦状態と言っても過言ではない状況となっている。 この衝突で軍の兵士そして抵抗組織、さらに一般住民の犠牲は増える一方で、軍による人権侵害とともにミャンマー情勢をより深刻かつ複雑なもにしている。 ミャンマー問題の解決の糸口は、一向に見えてこない。・・・・・ さらに連載記事『少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃』では、“もうひとつの現実”について詳報しています』、「合計禁固33年の判決を受けて収監されていたスー・チーさんは、5件の刑で計6年の減刑措置を受けた。スー・チーさんの残る刑期は27年となったものの、78歳という年齢を考えると、実質的には終身刑と同じといえる」、「タイのドーン外相とスー・チーさんとの面会を特別に許可」、これは「欧米や東南アジア諸国連合(ASEAN)の批判を交わす狙い」、「一方でPDFや少数民族武装勢力など反軍政の抵抗勢力との戦闘を激化させており、武力衝突は依然として内戦状態と言っても過言ではない状況となっている」、なるほど。

第三に、9月3日付け現代ビジネスが掲載したPanAsiaNews記者の大塚 智彦氏による「ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/115692?imp=0
・『国軍兵士の「寝返り」  軍政と武装抵抗勢力との戦闘が続き実質的な内戦状態にあるミャンマーで、正規軍の中で戦線離脱や部隊離反などによる脱走兵が増加し、その大半が敵対する民主派勢力「国民防衛軍(PDF)」に加わっていることが、ミャンマーの独立系メディアなどの報道で明らかになった。 国軍兵士の「寝返り」ともいえるこの現象は、2021年2月に軍がアウン・サン・スー・チーさん率いる民主政府から実権を奪取したクーデター以来続く傾向というが、2023年になってその数はさらに増加傾向にあると指摘されている。 「ミン・アウン・フライン国軍司令官でさえ実際に国軍兵士の正確な兵力(兵士の数)を把握できていない」と言われるほど、最前線の部隊では定員数と実際の兵士の数に大きなギャップが生じているという。 こうした深刻な事態に軍政は政府職員や自治体職員をリクルートして兵力不足を補おうとしているが、職業軍人ではない「動員された兵士」ほど寝返る傾向が強く、不足が補えない状況が続いている。 一方のPDF側は国軍兵士の投降を呼びかける運動を強め、武器や弾薬、軍用車両などを持参しての寝返りには報奨金を用意するなどと宣伝して国軍兵力の数的弱体化を試みている。 このような国軍の兵力低下は、PDF戦闘員や一般住民に対する空爆、民家放火や拷問、暴力や残虐な殺害行為、人間の盾としての利用などを激化させるという行動のエスカレートを招いているとされ、そこに国軍の焦燥感が如実に現われているといわれている』、「最前線の部隊では定員数と実際の兵士の数に大きなギャップが生じているという。 こうした深刻な事態に軍政は政府職員や自治体職員をリクルートして兵力不足を補おうとしているが、職業軍人ではない「動員された兵士」ほど寝返る傾向が強く、不足が補えない状況が続いている。 一方のPDF側は国軍兵士の投降を呼びかける運動を強め、武器や弾薬、軍用車両などを持参しての寝返りには報奨金を用意するなどと宣伝して国軍兵力の数的弱体化を試みている」、なるほど。
・『過去4ヵ月で500人が離反  独立系メディア「イラワジ」が8月25日伝えたところによると、最近開催された軍政に対抗する民主派組織「国家統一政府(NUG)」の第28回閣議で、マー・ウィン・カイン・タン首相が「過去4ヵ月の間に約500人の国軍兵士が軍を離脱、脱走した」と報告した。この500人の中には大隊副司令官という軍幹部も含まれているという。 今年8月に入ってからだけでも50人以上が国軍を離れており、軍の兵力低下が深刻な問題となっているとの見方を示した。こうした動きは西部チン州、東部カヤー州、カレン州などでも報告され、兵士の部隊離反が全国的に起きているとNUGではみている。 NUGによると、2021年2月のクーデター以来、少なくとも15000人の兵士と警察官が寝返って民主派の「不服従運動(CDM)」に参加しているという。軍政側は兵士の死傷者や行方不明者、脱走者などの数字を明らかにしていないが、NUG側が指摘した数字はある程度実態を反映しているとの見方が有力だ。 寝返った兵士や警察官は「国民防衛軍(PDF)」に加わって軍との戦闘に参加するほか、単に逃亡して密かに暮らしているかのどちらかであるという。 こうした事態に軍政側は兵士を軍に引き留めるために、休暇の奨励、芸能人らによる部隊慰問、指揮官は兵士と共に食事をとりコミュニケーションを密にするなど、あの手この手の対策を講じているとされる。 これに対しNUG側は兵士や警察官に離脱を勧めており、武器や弾薬、航空機や艦船と共に寝返った兵士らには多額の現金を付与するという報奨金制度を設けている』、「「過去4ヵ月の間に約500人の国軍兵士が軍を離脱、脱走した」と報告した。この500人の中には大隊副司令官という軍幹部も含まれているという。 今年8月に入ってからだけでも50人以上が国軍を離れており、軍の兵力低下が深刻な問題となっている」、「NUGによると、2021年2月のクーデター以来、少なくとも15000人の兵士と警察官が寝返って民主派の「不服従運動(CDM)」に参加しているという・・・寝返った兵士や警察官は「国民防衛軍(PDF)」に加わって軍との戦闘に参加するほか、単に逃亡して密かに暮らしているかのどちらかであるという」、「NUG側は兵士や警察官に離脱を勧めており、武器や弾薬、航空機や艦船と共に寝返った兵士らには多額の現金を付与するという報奨金制度を設けている」、なるほど。
・『寝返った元国軍兵士の証言  「イラワジ」は8月26日、同月1日に入手したという軍の文書に基づき各地の部隊で兵員不足が深刻な問題となっていると指摘した。 その文書は北東部シャン州に拠点を置く歩兵114大隊から国軍上層部に報告されたものとみられ、少なくとも857人の大隊要員が必要にもかかわらず実際には132人しか兵士がいないことを訴えている。 また、その132人の兵士のうち基地防衛のために62人を残し、半数以上の70人が基地を出て最前線での戦闘に従事しているという実態も記述されている。 さらに別の文書では、シャン州の国境問題担当の大佐が地区総務部門関係者に対して警察官を除く全ての公務員の名簿を提出するよう要請したことが記されている。このことから兵員不足を緊急に解消するために公務員を民兵または予備軍兵士に転換することを州政府が計画していることが分かるとしている。 同じ26日に「イラワジ」は元国軍兵士であるテット・ミャット元陸軍大尉のインタビュー記事を掲載した。ミャット氏は2021年6月に軍を離反し軍政に抵抗する市民の「不服従運動(CDM)」に参加、以後抵抗勢力側に協力して現役の兵士や将校の離反、逃亡の手助けを続けているという。 ミャット氏によると「イラワジ」が入手し報道した文書は「本物と思われる」とした上で、「各大隊は毎月兵員数などの情報を上部機関に報告する必要がある。大隊は兵士の定員数が約800人なのだが、どこの大隊もその数を満たしていないのが実情だ」と述べて文書の信憑性とともに国軍の兵員数逼迫が事実であるとの見方を示した』、「歩兵114大隊から国軍上層部に報告されたものとみられ、少なくとも857人の大隊要員が必要にもかかわらず実際には132人しか兵士がいないことを訴えている。 また、その132人の兵士のうち基地防衛のために62人を残し、半数以上の70人が基地を出て最前線での戦闘に従事しているという実態も記述されている」、驚くほどの欠員ぶりだ。
・『公務員を民兵や予備軍に採用  軍政が兵力不足を深刻に考えていることは近年、地方の行政機関などで働く公務員を軍になかば強制的に採用し、民兵や予備軍に編入して部隊に送り込んでいることに現れている、とミャット氏は指摘している。 The Irrawaddy より 臨時採用され兵士として前線に送られた公務員出身者などは、戦闘で生命の危機に直面した場合に容易に投降する傾向がみられ、それもまた兵員不足の一因として軍政の悩みの種となっているという。 公務員以外にも、地方の住民で食糧難や滞在場所のない人々を脅迫して採用するというケースも報告されるなど、軍の兵員不足の深刻さが浮き彫りとなっている。公務員や一般住民からの臨時兵士の他、正規軍兵士の前線からの離脱者も多く、「先見の明がある兵士」や「民主化弾圧に疑問を抱く兵士」らが「抵抗組織からの誘い」などを理由に寝返る傾向があるという。 そしてミャット氏は「イラワジ」に対して、「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要があるとの言葉で結んだ』、「公務員以外にも、地方の住民で食糧難や滞在場所のない人々を脅迫して採用するというケースも報告されるなど、軍の兵員不足の深刻さが浮き彫りとなっている。公務員や一般住民からの臨時兵士の他、正規軍兵士の前線からの離脱者も多く、「先見の明がある兵士」や「民主化弾圧に疑問を抱く兵士」らが「抵抗組織からの誘い」などを理由に寝返る傾向があるという。 そしてミャット氏は「イラワジ」に対して、「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要」、なるほど。
・『一般住民を逮捕し人間の盾に  国軍は最近、抵抗勢力PDFや国境周辺での少数民族武装勢力との戦闘の中で、兵力不足を補う策として、一般住民を逮捕して、人間の盾として利用する作戦を実行しているという。 8月25日、北部カチン州パカント郡にあるナントヤール村、カットマウ村、サインパラ村に約30人の兵士が夜陰に紛れて侵入し、村人ら約100人を逮捕、連行したという。 軍はその後、パカント村に進軍するに際し、逮捕した住民を人間の盾として最前線に立たせたり、地雷が埋設されている可能性のある場所を強制的に歩かせたりして兵士の犠牲を最小限にしようとする作戦をとっている、と抵抗勢力はみている。 こうした作戦は軍による苦肉の策であり、兵員不足を補う根本的な解決策とはなっていないばかりか、一般住民の反感を買って軍の立場を窮地に追い込む結果になっている。 住民を敵に回しても民主化抵抗勢力との戦闘を継続しなければならない軍政の焦りが背景にあるのは間違いない。 2021年2月のクーデター以来、軍政は全土での治安安定という目標を達成できず、今年7月31日に非常事態宣言を半年間延長したことで2023年内に予定していた総選挙も2024年2月以降に延期せざるを得ない状況となっており、ますます苦境に陥っているのが実情だ』、「軍はその後、パカント村に進軍するに際し、逮捕した住民を人間の盾として最前線に立たせたり、地雷が埋設されている可能性のある場所を強制的に歩かせたりして兵士の犠牲を最小限にしようとする作戦をとっている、と抵抗勢力はみている。 こうした作戦は軍による苦肉の策であり、兵員不足を補う根本的な解決策とはなっていないばかりか、一般住民の反感を買って軍の立場を窮地に追い込む結果になっている」、これではどうしようもないようだ。しかし、国民の無駄な犠牲は続くが、これを止められるのは、中国と日本だが、日本は何故か腰が重いようだ。
タグ:(その7)(少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺 検問所爆破 戦闘機撃墜も、ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない) ミャンマー 現代ビジネス「少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃」 「軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図している」、なるほど。 「軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている」、「住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという」、酷いものだ。 「国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている」、なるほど。 「10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も明らかに」、自国民に対する残虐行為も度を越している。 「戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている・・・ミャンマーの人権団体「ミャンマー政治犯支援協会(AAPP)」によると、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている」、 「人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている」、その通りだ。 現代ビジネス 大塚 智彦氏による「ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺、検問所爆破、戦闘機撃墜も」 「国内の治安が予想に反して一向に安定せず、各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や国境地帯を拠点とする少数民族武装勢力が軍や警察を攻撃し、軍も住民に対して暴力や虐殺を続けるなど、全土で戦闘が激化している」、ような状況では、「選挙」の延期は当然だ。 「戦闘は北西部のザガイン地方域、チン州、西部のカレン州(カイン州)中部のマンダレー地方域、南部のタニンダーリ地方域、東部のシャン州の各地で発生とミャンマーのほぼ全域に渡り、治安状況が軍政にとって深刻な問題になっていることが裏付けられている」、「こうした一連の攻撃で軍側には少なくとも89人の犠牲を強いたと各地のPDFは報告しており、軍側の被害が拡大していることを印象付けた」、なるほど。 「戦闘機1機が低空飛行で接近した際、地上からの銃撃などで撃墜に成功したとKNPLFが明らかにした。 KNPLFによると、特に対空兵器があった訳ではないが、メンバーによる必死の攻撃で墜落させた、と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、「特に対空兵器があった訳ではないが・・・と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、大したものだ。 「ミョー・ミン・ウー氏をはじめとする拘束されいた14人の遺体が村のあちこちに放置されているのが見つかった。遺体には拷問の跡や刃物による傷など虐待の痕跡が残され、残虐な手段で虐殺されたことを物語っていた。 兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪するなどの行為を行って村を去ったと報じ、軍の行動を非難」、酷いものだ。 「合計禁固33年の判決を受けて収監されていたスー・チーさんは、5件の刑で計6年の減刑措置を受けた。スー・チーさんの残る刑期は27年となったものの、78歳という年齢を考えると、実質的には終身刑と同じといえる」、「タイのドーン外相とスー・チーさんとの面会を特別に許可」、これは「欧米や東南アジア諸国連合(ASEAN)の批判を交わす狙い」、 「一方でPDFや少数民族武装勢力など反軍政の抵抗勢力との戦闘を激化させており、武力衝突は依然として内戦状態と言っても過言ではない状況となっている」、なるほど。 大塚 智彦氏による「ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない」 「最前線の部隊では定員数と実際の兵士の数に大きなギャップが生じているという。 こうした深刻な事態に軍政は政府職員や自治体職員をリクルートして兵力不足を補おうとしているが、職業軍人ではない「動員された兵士」ほど寝返る傾向が強く、不足が補えない状況が続いている。 一方のPDF側は国軍兵士の投降を呼びかける運動を強め、武器や弾薬、軍用車両などを持参しての寝返りには報奨金を用意するなどと宣伝して国軍兵力の数的弱体化を試みている」、なるほど。 「「過去4ヵ月の間に約500人の国軍兵士が軍を離脱、脱走した」と報告した。この500人の中には大隊副司令官という軍幹部も含まれているという。 今年8月に入ってからだけでも50人以上が国軍を離れており、軍の兵力低下が深刻な問題となっている」、 「NUGによると、2021年2月のクーデター以来、少なくとも15000人の兵士と警察官が寝返って民主派の「不服従運動(CDM)」に参加しているという・・・寝返った兵士や警察官は「国民防衛軍(PDF)」に加わって軍との戦闘に参加するほか、単に逃亡して密かに暮らしているかのどちらかであるという」、「NUG側は兵士や警察官に離脱を勧めており、武器や弾薬、航空機や艦船と共に寝返った兵士らには多額の現金を付与するという報奨金制度を設けている」、なるほど。 「歩兵114大隊から国軍上層部に報告されたものとみられ、少なくとも857人の大隊要員が必要にもかかわらず実際には132人しか兵士がいないことを訴えている。 また、その132人の兵士のうち基地防衛のために62人を残し、半数以上の70人が基地を出て最前線での戦闘に従事しているという実態も記述されている」、驚くほどの欠員ぶりだ。 「公務員以外にも、地方の住民で食糧難や滞在場所のない人々を脅迫して採用するというケースも報告されるなど、軍の兵員不足の深刻さが浮き彫りとなっている。公務員や一般住民からの臨時兵士の他、正規軍兵士の前線からの離脱者も多く、「先見の明がある兵士」や「民主化弾圧に疑問を抱く兵士」らが「抵抗組織からの誘い」などを理由に寝返る傾向があるという。 そしてミャット氏は「イラワジ」に対して、「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要」、なるほど。 「軍はその後、パカント村に進軍するに際し、逮捕した住民を人間の盾として最前線に立たせたり、地雷が埋設されている可能性のある場所を強制的に歩かせたりして兵士の犠牲を最小限にしようとする作戦をとっている、と抵抗勢力はみている。 こうした作戦は軍による苦肉の策であり、兵員不足を補う根本的な解決策とはなっていないばかりか、一般住民の反感を買って軍の立場を窮地に追い込む結果になっている」、 これではどうしようもないようだ。しかし、国民の無駄な犠牲は続くが、これを止められるのは、中国と日本だが、日本は何故か腰が重いようだ。
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台湾(その5)(いきなり数千発のミサイルが沖縄に…米国の大学教授が予想した「中国の台湾進攻」の絶望的シナリオ アメリカの選択肢は軍事的後退と核使用の2択、自衛隊員2500人 米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション 開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅、迫り来る「台湾有事」に無防備すぎる日本企業 中国の在留邦人10万人は取り残されるのか) [世界情勢]

台湾については、本年2月13日に取上げた。今日は、(その5)(いきなり数千発のミサイルが沖縄に…米国の大学教授が予想した「中国の台湾進攻」の絶望的シナリオ アメリカの選択肢は軍事的後退と核使用の2択、自衛隊員2500人 米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション 開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅、迫り来る「台湾有事」に無防備すぎる日本企業 中国の在留邦人10万人は取り残されるのか)である。

先ずは、本年2月17日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究院(SAIS)特別教授 ハル・ブランズ氏とタフツ大学政治学部准教授のマイケル・ベックリー氏による「いきなり数千発のミサイルが沖縄に…米国の大学教授が予想した「中国の台湾進攻」の絶望的シナリオ アメリカの選択肢は軍事的後退と核使用の2択」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/66598?page=1
・『中国の台湾進攻はあり得るのか。起きるのであればいつなのか。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のハル・ブランズ教授とタフツ大学マイケル・ベックリー准教授による共著『デンジャー・ゾーン』(訳:奥山真司、飛鳥新社)より、一部を紹介しよう――』、「いきなり数千発のミサイルが沖縄に」とタイトルはセンセーショナルだ。
・『中国の台湾への軍事攻撃は成功するのか  2020年9月、人民解放軍は台湾海峡で、この25年間で最も攻撃的な軍事力の誇示を開始した。台湾の防空識別圏への侵入は急増している。中国軍の任務部隊の中には、30機以上の戦闘機と6隻の艦艇を従えて、ほぼ一日おきに海峡を徘徊しているものもある。その多くは、台湾と中国の双方が何十年間にもわたって尊重してきた境界線である「中間線」を突破している。 これらの部隊の中には、パトロール中にフィリピンと台湾の間を航行するアメリカの空母や駆逐艦への攻撃をシミュレートする動きをしたものもある。また、中国は2020年に香港の民主化運動を鎮圧することで、台湾を平和的に説得できる時代が終わったことを示唆したのだ』、「中国は2020年に香港の民主化運動を鎮圧することで、台湾を平和的に説得できる時代が終わったことを示唆した」、確かにこれは重い意味を持つようだ。
・『アメリカ・台湾と中国の圧倒的な差  軍事攻撃は成功するだろうか? その答えは、つい最近まで「ノー」であった。 1990年代には台湾は中国に対して地理的・技術的に有利であったため、実質的に征服不可能だった。台湾海峡は台風や高波のおかげで危険な海域で、島そのものが自然の要塞となっている。東海岸は険しい断崖絶壁、西海岸は沖合数キロに広がる干潟で、激しい潮流もある。台湾には侵略してくる軍隊が上陸できるような砂浜さえ十数カ所しかない。アメリカと台湾の戦闘機と海軍の艦隊は、中国軍を決して近寄らせない状態を維持できていたのだ。 ところがそれ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊できると言われている。 中国のサイバーおよび対衛星能力は、アメリカ軍の重要なセンサーや人工衛それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊星を機能不全に陥れることで、同軍の耳と目と口をきけなくしてしまう恐れがある。中国の対艦ミサイルは、西太平洋を航行するアメリカの大型水上艦にとって、非常に危険になる。ここ25年間にわたり、人民解放軍は台湾征服のために執拗しつように準備してきた』、「1990年代には台湾は中国に対して地理的・技術的に有利であったため、実質的に征服不可能だった。台湾海峡は台風や高波のおかげで危険な海域で、島そのものが自然の要塞となっている」、「それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊できると言われている。 中国のサイバーおよび対衛星能力は、アメリカ軍の重要なセンサーや人工衛それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊星を機能不全に陥れることで、同軍の耳と目と口をきけなくしてしまう恐れがある。中国の対艦ミサイルは、西太平洋を航行するアメリカの大型水上艦にとって、非常に危険になる。ここ25年間にわたり、人民解放軍は台湾征服のために執拗しつように準備してきた」、かつてとは比べようもないほど「中国軍」が増強されたようだ。
・『「グアムキラー」の恐るべき実力  一方のアメリカは、この期間を通じて中東のテロリストとの戦いに明け暮れていた。最近ではNATOの東側の陣地を強化するために、ヨーロッパに部隊と武器を投入している。オバマ、トランプ、バイデンの各政権は、中国に対抗するため、アジアに軸足移動(ピボット)することを望んでいた。 だがこのような計画は、ISISの台頭やロシアのウクライナ侵攻など、他の地域で発生した案件によって覆されてきた。グローバルな勢力であるアメリカは、単一の不測の軍事案件に備える余裕もない。その結果、中国の軍事近代化に空軍と海軍が追いつけていない。 アジアにおけるアメリカの軍隊は、依然として少数の大型の軍艦と、露出した基地から運用される短距離戦闘機が主体で、これらはまさに、中国が奇襲ミサイル攻撃で破壊しうるものだ。アメリカは台湾から500マイル以内(無給油の戦闘機がガス欠になる前に帰還できる最大飛行距離)にたった2つの空軍基地しか持っていない。中国がこれらの基地を使えなくすれば、アメリカ軍は空母や、台湾から1800マイル離れたグアムから行動しなければならなくなる。 この距離と空中給油の必要性のために、アメリカ軍の出撃回数は半減させられ、そのせいで中国に台湾上空を支配するチャンスを与えてしまうことになる。 さらに悪いことに、中国は現在、グアムを攻撃できる爆撃機と弾道ミサイルを保有しており、本土から1000マイル以上離れて移動中の空母を攻撃できる可能性もある。これらの「グアムキラー」と「空母キラー」のミサイルが宣伝通り機能すれば、中国は東アジアにおけるアメリカの軍事力に損害を与えることができる』、「オバマ、トランプ、バイデンの各政権は、中国に対抗するため、アジアに軸足移動(ピボット)することを望んでいた。 だがこのような計画は、ISISの台頭やロシアのウクライナ侵攻など、他の地域で発生した案件によって覆されてきた。グローバルな勢力であるアメリカは、単一の不測の軍事案件に備える余裕もない。その結果、中国の軍事近代化に空軍と海軍が追いつけていない。 アジアにおけるアメリカの軍隊は、依然として少数の大型の軍艦と、露出した基地から運用される短距離戦闘機が主体で、これらはまさに、中国が奇襲ミサイル攻撃で破壊しうるものだ。アメリカは台湾から500マイル以内・・・にたった2つの空軍基地しか持っていない。中国がこれらの基地を使えなくすれば、アメリカ軍は空母や、台湾から1800マイル離れたグアムから行動しなければならなくなる。 この距離と空中給油の必要性のために、アメリカ軍の出撃回数は半減させられ、そのせいで中国に台湾上空を支配するチャンスを与えてしまうことになる」、なるほど。
・『台湾の圧倒的に不利な状況  台湾には、その遅れを取り戻す準備ができていない。徴兵制からプロフェッショナルによる志願制への移行の一環として、台湾は現役兵力を27万5000人から17万5000人に削減し、徴兵期間を1年間から4カ月へと短縮した。新兵は数週間の基礎訓練しか受けず、予備役の訓練は頻度が少なく内容も不十分だ。 また、台湾は兵站部隊を削減しており、これによって戦闘部隊への補給や基本的な整備を日常的に怠っている状態だ。そのため兵士は事故や貴重な弾薬の浪費を恐れて武器を使った訓練を避けている。 台湾のパイロットの飛行時間は、月に10時間未満である。また、戦車や攻撃ヘリの半数以上が使用不可能な状態で、多くの台湾人兵士が士気の低下に苦しんでいる。 要するに、中国は1914年のドイツや、1941年の日本のように、軍事面では有利だが有限のチャンスの窓を持っているということだ。台湾政府自身が認めているように、中国は台湾の守りを「麻痺」させることができそうだ』、「台湾は兵站部隊を削減しており、これによって戦闘部隊への補給や基本的な整備を日常的に怠っている状態だ。そのため兵士は事故や貴重な弾薬の浪費を恐れて武器を使った訓練を避けている。 台湾のパイロットの飛行時間は、月に10時間未満である。また、戦車や攻撃ヘリの半数以上が使用不可能な状態で、多くの台湾人兵士が士気の低下に苦しんでいる・・・台湾政府自身が認めているように、中国は台湾の守りを「麻痺」させることができそうだ」、「台湾」が自ら「守り」を弱めた理由は何なのだろう。ただ、いずれにしても、ちょっとやそっとの増強では到底追いつけないだろう。
・『2030年初頭までが中国のチャンスといえるワケ  台湾とアメリカはこの脅威を本格的に自覚しており、解決しなければならない重要な問題を特定し、それに応じた軍備の再編を始めている。だがアメリカと台湾の国防改革が大きな影響を与え始める現在から2030年代初頭までの間には、中国にもまだチャンスは残されている。 実際のところ、アメリカの巡洋艦、誘導弾を装備した潜水艦、長距離爆撃機の多くが退役する2020年代半ばには、両岸の軍事バランスは一時的に中国にかなり有利になると思われる。 アメリカ軍は実に多くの点で、まだロナルド・レーガンが築いた軍隊なのだ。とりわけアメリカ海軍と空軍の近代化は何十年にもわたって先送りにされてきた。現在その問題は深刻なものとなっている。 ペンタゴンが所有する主力艦や戦闘機の多くは、文字通りバラバラになっているか、燃え尽きようとしている。老朽化した船体や機体は新たなアップグレードだけでなく、中国の新軍と競争するために必要な最新のエンジン、センサー、弾薬を搭載することにも耐えられない状態だ。これらのアメリカの戦力は退役させなければならない。 だがそれらが退役すれば、アメリカ軍は東アジアに配備される、近代的な海軍火力の基本である垂直発射型ミサイルの発射管の数を数百本も減らすことになる。 一方で、中国はさらに数百の対艦・対地攻撃ミサイル、数十機の長距離爆撃機と水陸両用艦、そして中国本土から台湾の大半または全域を攻撃できるロケット発射システムを稼働させるだろう。 これはいわば「地政学的な時限爆弾」である。2020年代半ばから後半にかけての時期は、敵を倒して修正主義的な欲望を満たす上で、中国にとってこれほどの好機はない。あるペンタゴンの元高官が言ったように、アメリカはこの時期に台湾との戦いで「尻を蹴り上げられる」リスクを負うことになる』、「2020年代半ばから後半にかけての時期は・・・中国にとってこれほどの好機はない。あるペンタゴンの元高官が言ったように、アメリカはこの時期に台湾との戦いで「尻を蹴り上げられる」リスクを負うことになる」、やれやれ。
・『台湾進攻は2027年までのどこか   このような動きを見て、中国の退役軍人や国営放送の報道機関では中国共産党に直ちに台湾に侵攻するよう促す声が上がっている。中国国民もそれに同意しているようだ。 国営の『環球時報』の2020年の調査によれば、本土の70%の人々が台湾の本土への統一のために武力行使することを強く支持しており、37%が「もし戦争が起こるなら、2025年までがベストだ」と考えているという。 中国政府高官たちは、プライベートな場では西側の専門家たちに向かって、中国共産党内で侵略を求める声が高まっており、習近平は「人民解放軍はそれをやり遂げることができる」と主張するタカ派や「イエスマン」たちに囲まれていると語っている。 おそらくそのためかもしれないが、習近平は「台湾の解放」に自分の正統性(レジティマシー)を賭けている。2017年に彼は台湾の統一が「中華民族の偉大な若返りを実現するための必然的な要件」であると発表した。そして2020年には中国共産党が「近代化された」軍隊を投入する予定の時期を、2034年から2027年に早めている。 2021年3月、当時インド太平洋軍司令官であったフィリップ・デービッドソン提督は、中国が今後6年以内に台湾を侵略する可能性があると警告した』、「国営の『環球時報』の2020年の調査によれば、本土の70%の人々が台湾の本土への統一のために武力行使することを強く支持しており、37%が「もし戦争が起こるなら、2025年までがベストだ」と考えているという。 中国政府高官たちは、プライベートな場では西側の専門家たちに向かって、中国共産党内で侵略を求める声が高まっており、習近平は「人民解放軍はそれをやり遂げることができる」と主張するタカ派や「イエスマン」たちに囲まれていると語っている」、「アメリカ海軍と空軍の近代化は何十年にもわたって先送りにされてきた。現在その問題は深刻なものとなっている。 ペンタゴンが所有する主力艦や戦闘機の多くは、文字通りバラバラになっているか、燃え尽きようとしている。老朽化した船体や機体は新たなアップグレードだけでなく、中国の新軍と競争するために必要な最新のエンジン、センサー、弾薬を搭載することにも耐えられない状態だ。これらのアメリカの戦力は退役させなければならない」、「おそらくそのためかもしれないが、習近平は「台湾の解放」に自分の正統性・・・を賭けている。2017年に彼は台湾の統一が「中華民族の偉大な若返りを実現するための必然的な要件」であると発表した。そして2020年には中国共産党が「近代化された」軍隊を投入する予定の時期を、2034年から2027年に早めている。 2021年3月、当時インド太平洋軍司令官であったフィリップ・デービッドソン提督は、中国が今後6年以内に台湾を侵略する可能性があると警告した」、「今後6年以内に台湾を侵略する可能性」とは大変だ。
・『「真珠湾攻撃」が中国の手本になる  中国は、台湾を圧迫して降伏させる選択肢をいくつか持っている。たとえば台北が支配しているが中国本土の海岸からわずか数キロしか離れていない沖合の露出した島の一つを奪取することや、海・空の封鎖を行う、あるいは単に誘導ミサイルで台湾を爆撃することなどだ。 だが、これらのオプションはアメリカと台湾に対処するための時間的余裕を与えることになるし、中国側もわざわざそれを与えるつもりはない。 彼らは1990年から91年のペルシャ湾戦争で、サダム・フセインの軍隊がいかに虐殺されたかを目の当たりにした。しかもこの時はペンタゴンが周辺に膨大な数の兵器を数週間で集め、しかも巨大な国際的な同盟を結集させている。 彼らは早い段階、つまり台湾とアメリカ軍が反撃してくる前に、激しく攻撃することが勝利への一番の近道であることを知っている。だからこそ中国の軍事ドクトリンでは、真珠湾攻撃のような形で相手を素早く武装解除することを目指しているのだ。そのためわれわれは本当に悲惨なシナリオを心配しなければならない』、「台湾とアメリカ軍が反撃してくる前に、激しく攻撃することが勝利への一番の近道であることを知っている。だからこそ中国の軍事ドクトリンでは、真珠湾攻撃のような形で相手を素早く武装解除することを目指しているのだ」、恐ろしいことだ。
・『沖縄に数千発のミサイルが降り注ぐ  最も可能性の高い戦争開始の形は、台湾、沖縄やグアムのアメリカ軍基地、日本を母港とするアメリカの空母打撃群の上に、陸上・空中から発射された中国のミサイル数千発が降り注いで始まる、というものだ。 台湾各地に潜んでいた中国の特殊部隊や諜報員たちが工作を開始し、軍事施設で爆弾を爆発させ、台湾の指導者を暗殺する。中国のサイバー攻撃は、台湾の重要なインフラを麻痺させるだろう。 また、人民解放軍はサイバー攻撃と、場合によっては地上発射型ミサイルを使って、アメリカ軍同士やワシントンとの通信手段となっている衛星を破壊し、数日から数週間にわたってアメリカ側の対応を不可能にしたり、そもそも何が起こっているのかをわからないようにするだろう。 人民解放軍のサイバー部隊は、それと並行してアメリカ本国でもトラブルを起こし、混乱を招いてアメリカ国内の政治紛争を悪化させるために、偽情報キャンペーンを展開することになるだろう。 その一方で、台湾海峡で軍事演習を行っていた中国艦艇の船団が、台湾の浜辺に向かって猛進し、その合間にも大陸にいる数十万の中国軍が、本格攻撃に備えて艦船やヘリコプターに乗り込み始めるだろう。小型の強襲揚陸艦が台湾海峡の民間フェリーの間から現れ、台湾軍が対応する前に重要な港や海岸を奪取しようとする可能性もある』、「台湾各地に潜んでいた中国の特殊部隊や諜報員たちが工作を開始し、軍事施設で爆弾を爆発させ、台湾の指導者を暗殺する。中国のサイバー攻撃は、台湾の重要なインフラを麻痺させるだろう。 また、人民解放軍はサイバー攻撃と、場合によっては地上発射型ミサイルを使って、アメリカ軍同士やワシントンとの通信手段となっている衛星を破壊し、数日から数週間にわたってアメリカ側の対応を不可能にしたり、そもそも何が起こっているのかをわからないようにするだろう」、中国側の初期戦術はその通りなのだろ。
・『勝利のためには核の可能性も  中国の奇襲攻撃で前方展開部隊の多くを失ったアメリカ軍が再び台湾に近づくには、数千マイル離れた場所から航空機と軍艦を投入し、ミサイル、スマート機雷、電磁波妨害などをかき分けながら戦わなければならないだろう。 さらにそのような兵力を集結させるには、攻撃的なロシアからNATOの東方側面を守るために配備されているような、他の重要な地域のアセットを引き離してくる必要があるかもしれない。そしてアメリカは一つの大国にしか対処できない軍備だけで二つの核武装した大国に対処するという、実に厳しい安全保障上の課題に直面するかもしれないのだ。 アメリカはグローバルなトレードオフに直面し、太平洋のアメリカ軍は、ベトナム戦争や第二次世界大戦以来の規模となる損失を被るだろう。アメリカの指導者たちはひどいジレンマに直面することになるかもしれない。つまり屈辱的な軍事的後退を受け入れるか、中国が後退しなければ核兵器を使うと脅すかだ。 2018年、国防専門家によるある有識者委員会は、核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性がある、と結論付けている。地政学的にこれ以上危険なことはない。 「恐ろしい2020年代」は厄介な10年間となりそうだ。なぜなら中国が厄介な地政学的な分岐点――衰退を避けるために大胆に行動することが可能であり、またそうすべき時点――に差しかかっているからだ』、「アメリカはグローバルなトレードオフに直面し、太平洋のアメリカ軍は、ベトナム戦争や第二次世界大戦以来の規模となる損失を被るだろう。アメリカの指導者たちはひどいジレンマに直面することになるかもしれない。つまり屈辱的な軍事的後退を受け入れるか、中国が後退しなければ核兵器を使うと脅すかだ。 2018年、国防専門家によるある有識者委員会は、核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性がある、と結論付けている。地政学的にこれ以上危険なことはない」、「核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性」、「アメリカ」が「核の黙示録」に頼れば、中国側も「核」で応戦するという悲劇的シナリオに追い込まれる可能性もある。或いは「アメリカ」が「「決定的な軍事的敗北」を被る」方を選択した場合には、「中国の天下」が続くという嫌な時代になる可能性も覚悟する必要がありそうだ。

次に、3月29日付けPRESIDENT Onlineが掲載したフリーライター・翻訳者の青葉 やまと氏による「自衛隊員2500人、米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション 開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67914?page=1
・『中国軍は結局のところ「日米の応戦に圧倒される」  台湾有事をめぐる緊張が高まっている。中国の習近平国家主席は台湾統一への意欲を明言しており、武力攻撃の現実味は増している。 仮に有事に発展した場合、台湾は中国の人民解放軍に対抗し、主権を維持することが可能なのだろうか。また、近隣国である日本にどのような影響が及び得るのだろうか。 日本のシンクタンクである笹川平和財団が実施し、日経アジアが報じた戦闘シミュレーションによると、仮に中国が武力行使に及んだ際にも、台湾の主権を奪う試みは失敗に終わるとの予測が示された。米シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)が1月に示した机上戦闘シミュレーションも、同様の傾向を示した。 ただし、どちらのシミュレーションも、その陰には日米の多大な代償が伴うおそれがあると物語っている。前者では、日米は合わせて500機以上の戦闘機を失うとの試算結果が出た。 その内容は海外のニュースメディアにも報じられるところとなった。米軍事分析サイトのソフリプは、CSISの分析を報じ、中国軍は結局のところ「日米の応戦に圧倒される」と述べている。 一方で同記事は、「言うまでもなく、中国は数十発の中距離および中距離・準中距離弾道ミサイルを保有しており、その気になれば日本を簡単に攻撃することができる」とも述べ、改めて中国の脅威を警告している』、「笹川平和財団」の「戦闘シミュレーション」によれば、「仮に中国が武力行使に及んだ際にも、台湾の主権を奪う試みは失敗に終わるとの予測」、「米シンクタンク・戦略国際問題研究所」も「同様の傾向」を示した。しかし、「どちらのシミュレーションも、その陰には日米の多大な代償が伴うおそれがあると物語っている。前者では、日米は合わせて500機以上の戦闘機を失うとの試算結果」、なるほど。
・『日本は144機の戦闘機を失い、自衛隊員2500人が死傷する  笹川平和財団は1月下旬、4日間を投じ、中国が台湾侵攻を行ったと仮定した机上の戦闘シミュレーションを実施した。元自衛官や日米の学者・研究者など、識者約30名が参加した。シナリオでは2026年、中国が水陸両軍を投じ、台湾に武力攻撃を仕掛けた状況を想定している。 日経アジアは2月下旬、この内容を詳しく報じた。台湾占領という中国の目論見もくろみを阻止することは可能であるとの結論だ。同時に、日米は「軍事的な人員と装備に大きな犠牲が伴う」とも報じられている。 財団によるシミュレーションでは、日本は144機の戦闘機を失い、自衛隊の死傷者は2500人に達するとの結果が得られたという。一方でアメリカの被害もこれ以上に甚大で、最大400機の戦闘機を失い、1万人以上の兵士が死傷するおそれがあるとの結果が示された。 シミュレーションでは核兵器の使用は想定していない。また、米が軍事的関与を強めているフィリピンを含め、ASEAN諸国の対応は検証の対象外とした』、「日米」の「犠牲」は甚大で、「日本は144機の戦闘機を失い、自衛隊の死傷者は2500人に達する」(財団)、「アメリカの被害もこれ以上に甚大で、最大400機の戦闘機を失い、1万人以上の兵士が死傷するおそれがある」、なるほど。
・『日本は米軍の行動に巻き込まれる  シミュレーションでは中国軍が侵略にあたり司令部を設置するとし、これにアメリカ軍が直ちに対応する状況を描いた。米軍は原子力空母を中核とする空母打撃群およびステルス戦闘機を直ちに出撃させ、台湾周辺に配備する展開が想定された。 これに伴い、軍事基地や民間空港の利用を米軍に認めている日本は、米軍の行動に巻き込まれる展開になるとシミュレーションは想定している。中国は日本の米軍基地に対してミサイル攻撃を実施し、これを受けて日本の首相は国家非常事態を宣言する流れとなる。 国家に存続の危機が生じたと判断されることで、日本はアメリカ軍に対し、沖縄や九州の自衛隊基地や民間空港の使用を許可する展開になるとの想定だ。 さらに日本側は、海上自衛隊の軍艦および航空自衛隊のF-35戦闘機を出撃させ、中国からの攻撃に対抗措置を講じる。シミュレーションでは、米軍と自衛隊が中国軍の補給線を断ち、台湾上空の制空権を握ったあと、中国軍に決定打となる攻撃を仕掛けたことで紛争の終結に至っている。 ソフリプは、大なり小なり日本が巻き添えを食う展開は避けられないとみる。「中国が日本の基地を直接攻撃しない場合であっても、日本の基地は人員を動員し、介入を試みるアメリカに協調することを決断するだろう」と同誌は解説している』、「シミュレーションでは、米軍と自衛隊が中国軍の補給線を断ち、台湾上空の制空権を握ったあと、中国軍に決定打となる攻撃を仕掛けたことで紛争の終結に至っている」、「ソフリプは、大なり小なり日本が巻き添えを食う展開は避けられないとみる。「中国が日本の基地を直接攻撃しない場合であっても、日本の基地は人員を動員し、介入を試みるアメリカに協調することを決断するだろう」と同誌は解説している』、なるほど。
・『日米の応戦で、紛争は2週間で終結する  シミュレーションの結末について日経アジアは、「結局のところ中国は、日米の応戦に圧倒されるところとなり、紛争は2週間あまりで終結した」と報じている。 紛争の過程で中国は、相当な犠牲を被るようだ。空母2隻を含む156隻の軍艦、および168機の戦闘機、そして48機の軍用輸送機を中国側は失うとされている。兵士の死傷は4万人以上に及ぶ。 一方で台湾は、18隻の軍艦と200機の軍用機を喪失する。また、兵士1万3000人が死傷する計算となっている。日米軍も前述のように、合計1万2500人以上の兵士が死傷し、500機超の戦闘機を失うという結果が示された。 米ソフリプはシミュレーションの結果に触れ、「台湾の主権維持と引き換えに、日米同盟は高い代償を払うおそれがある」と報じている。 日経アジアによると、笹川平和財団・安全保障研究グループの渡部恒雄上席研究員は「まだ可能なうちに、重大な損失に対する可能な限りの備えを実施すべきである」と警鐘を鳴らす。「中国は情報戦、宇宙開発、サイバー戦争や他の側面でも(シミュレーションの前提より)進歩している可能性がある」との指摘だ』、「中国は・・・空母2隻を含む156隻の軍艦、および168機の戦闘機、そして48機の軍用輸送機を中国側は失うとされている。兵士の死傷は4万人以上」、「台湾は、18隻の軍艦と200機の軍用機を喪失する。また、兵士1万3000人が死傷」、「日米軍も・・・合計1万2500人以上の兵士が死傷し、500機超の戦闘機を失うという結果」、「日米軍」の損失も馬鹿にならないようだ。
・『台湾の国防相「中国による初期の攻撃を撃退できる」  軍事ニュースメディアのユーラシアン・タイムズは「中国による台湾の併合を防ぐことに成功する」とのシミュレーション結果を報じたうえで、ソフリプと同様、「(日米)両国は、兵士と装備の面で高い代償を払うことになる」と指摘している。) 同記事はまた、台湾軍の機能について、「台湾軍の主な目的の一つは、アメリカなどの同盟国が台湾を支援できるよう、中国人民解放軍を2週間食い止めることである」と指摘し、台湾軍単独での防衛に疑問を示した。 一方で台湾の邱国正国防相は、台湾の軍隊の準備態勢が十分に高ければという条件の下、中国による初期の攻撃を撃退できるとの見解を示している。同氏は、中国軍が紛争を起こす実力を持っているとの認識を示したうえで、1~2週間で台湾占領を達成するだけの力はないと語った。 台湾の台北時報タイペイ・タイムズ紙はシミュレーション結果を基に、「机上演習で『身の毛もよだつ』損失、中国が敗北の見込み」と報じた。4万人が死傷する中国側に対し、台湾軍も2万6000人以上の死傷者が出る厳しい結果を伝えている』、「中国軍が紛争を起こす実力を持っているとの認識を示したうえで、1~2週間で台湾占領を達成するだけの力はないと語った。 台湾の台北時報タイペイ・タイムズ紙はシミュレーション結果を基に、「机上演習で『身の毛もよだつ』損失、中国が敗北の見込み」と報じた。4万人が死傷する中国側に対し、台湾軍も2万6000人以上の死傷者が出る厳しい結果を伝えている」、なるほど。
・『24のシナリオを分析した米シンクタンク  財団によるシミュレーションはあくまで机上の議論ではあるが、決して絵空事とも言っていられないようだ。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が1月に示した戦闘シミュレーション結果も、この結果とほぼ一致する内容になっている。 CSISはシミュレーションのモデルを構築するにあたり、過去の歴史的な軍事作戦の事例を参考にしたという。例えば中国が台湾上陸を仕掛ける際に用いるであろう上陸艇の立ち回りについては、ノルマンディー上陸作戦や沖縄での戦闘など、歴史上の実際の軍事衝突での事例をデータ化した。 こうしたデータの下、部隊同士が衝突した場合の双方の損失を予測するモデルをあらかじめ構築し、机上で摸擬戦闘ゲームを実施した。政府高官や軍経験者などの経歴を持つプレーヤーが各軍をプレーし、個々の戦闘結果は前述のモデルに基づき、一定のランダム性を交えながらコンピューターが算出した。 24種のシナリオにしたがってシミュレーションを実施した結果、大半のシナリオでは、日米の助力によって台湾側が中国の上陸作戦の阻止に成功し、自治を維持する結果に至ったという』、「24種のシナリオにしたがってシミュレーションを実施した結果、大半のシナリオでは、日米の助力によって台湾側が中国の上陸作戦の阻止に成功し、自治を維持する結果に至った」、まずまずだ。
・『開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅  各シミュレーションの詳細を見ると、侵攻序盤の展開については、どのシナリオもほぼ同じ動きとなるようだ。台湾にとって悲報となるが、開戦直後のわずか数時間で、台湾の海軍と空軍はほぼ壊滅的な打撃を受けるという。 中国軍は強力なロケット部隊を展開して島国である台湾を包囲し、日米が軍艦やジェット機を島内に配備することを拒む作戦に出る。 こうして時間を稼いだうえで中国側は、数万人規模の中国兵を軍用および民間の上陸艇に乗せて海峡を渡り、海岸堡かいがんほと呼ばれる一時的な上陸拠点を海岸に設置する。安全を確保したこの拠点の後方に、空挺くうてい部隊が次々と舞い降りるという』、それにしても「開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅」との「侵攻序盤の展開」はショッキングだ。
・『中国共産党を待ち受ける紛争後の余波  だがその後、最も起きうる可能性が高いと判断された「基本シナリオ」においては、中国の侵攻はすぐに失敗に終わる。台湾の地上部隊が海岸堡を急襲し、中国側は補給線の確保と内陸部への進軍に苦戦する展開が見られた。 その間にも、日本の自衛隊の援護を受け、米軍の潜水艦・爆撃機・戦闘機が戦闘区域に到達。中国の上陸艦隊を「急速に機能不全に陥れる」という。 CSISはリポートを通じ、紛争後の余波にも触れている。それによると中国国内では、中国共産党の支持が揺らぐことが予見されるという。リポートは「中国も大きな損失を被っており、台湾の占領に失敗したことで、中国共産党による統治が不安定になる可能性がある」としている。 他方、防衛側の損害も計り知れない。台湾の経済は甚大な打撃を受けるほか、米軍の人的および物質的損失により、国際社会におけるアメリカの地位が揺らぐおそれがあるとリポートは指摘している』、「「基本シナリオ」においては、中国の侵攻はすぐに失敗に終わる。台湾の地上部隊が海岸堡を急襲し、中国側は補給線の確保と内陸部への進軍に苦戦する展開が見られた。 その間にも、日本の自衛隊の援護を受け、米軍の潜水艦・爆撃機・戦闘機が戦闘区域に到達。中国の上陸艦隊を「急速に機能不全に陥れる」という。 CSISはリポートを通じ、紛争後の余波にも触れている。それによると中国国内では、中国共産党の支持が揺らぐことが予見されるという。リポートは「中国も大きな損失を被っており、台湾の占領に失敗したことで、中国共産党による統治が不安定になる可能性がある」としている」、「中国共産党による統治が不安定になる可能性」確かにその通りだ。
・『日本は、台湾有事と無関係ではいられない  本稿では2つのシミュレーション結果を取り上げたが、互いに独立したシンクタンクが実施したこれらの解析結果は、同一の傾向を示すこととなった。台湾海峡の有事に日米が厳しい態度で臨むことにより、中国は2週間で撤退し、台湾の主権は守られることを示唆している。 同時に、これら2つのシミュレーションは共通して、中国軍の脅威が日米にも多大な損害をもたらすおそれがあることを物語っている。 また、例えば前者のシミュレーションはあくまで、各陣営の現在の兵力、および2026年時点で配備が予想される兵器に基づいている。しかし中国は、西太平洋地域における軍事プレゼンスの拡大を図っており、核戦力の増強も図っている。財団は、投入可能な兵器の状況によっては、中国軍がより有利に戦闘を進めるおそれもあると警告している。 日本にとって、こうしたシミュレーションの結果は、中国軍の脅威を強調するものであり、警鐘に他ならない。アジア太平洋地域の安全保障を維持するため、日本は引き続きアメリカと緊密な協力関係を築く必要があるだろう。 まずは有事に発展しないことを願うばかりだが、シミュレーションのシナリオのように日本へのミサイル攻撃が行われるのであれば、台湾情勢は無関係と見ることも難しくなってくる。中国軍の脅威に適正に対処するため、戦略的な準備が求められよう』、「財団は、投入可能な兵器の状況によっては、中国軍がより有利に戦闘を進めるおそれもあると警告している。 日本にとって、こうしたシミュレーションの結果は、中国軍の脅威を強調するものであり、警鐘に他ならない。アジア太平洋地域の安全保障を維持するため、日本は引き続きアメリカと緊密な協力関係を築く必要があるだろう。 まずは有事に発展しないことを願うばかりだが、シミュレーションのシナリオのように日本へのミサイル攻撃が行われるのであれば、台湾情勢は無関係と見ることも難しくなってくる。中国軍の脅威に適正に対処するため、戦略的な準備が求められよう」、その通りだ。

第三に、7月31日付け東洋経済オンライン「迫り来る「台湾有事」に無防備すぎる日本企業 中国の在留邦人10万人は取り残されるのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/690050
・『台湾海峡の緊張が高まっている。中国が台湾統一(併合)に向けて武力侵攻する日がくるのか。7月31日発売『週刊東洋経済』の特集「台湾リスク」では、日本企業に迫り来る台湾有事の全シナリオを示した。 7月なかばの3連休。東京・市谷の防衛省近くにあるホテルの一室は、戦時さながらの緊張感に包まれた。「台湾有事」への対応シミュレーションが行われていたのだ。民間シンクタンク「日本戦略研究フォーラム(JFSS)」が主催し2021年から毎年1回行われている取り組みで、3回目の今年は米国や台湾からも有識者が多数参加した。 今回のシミュレーションでは27年を想定して、中国と台湾の間で発生しうる軍事衝突のシナリオを3つ用意。刻々と変化する事態に、参加した国会議員が「大臣」として判断を下していく設定だ。事務次官クラスの元官僚や将官級の自衛隊OBが補佐役を務める』、興味深そうだ。
・『「事態認定」の難しさ  今年のシミュレーションの想定時期が27年とされたのは、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有など防衛3文書に盛り込まれた防衛力整備が実現するタイミングだからだ。同時に中国人民解放軍の創立100年の節目、かつ中国の習近平国家主席が3期目を終える直前でもある。さらなる任期延長を目指す習主席が、レガシーづくりのために台湾統一を急ぐ、という予測は米軍関係者からしきりに発信されている。 シミュレーションで首相役を務めた小野寺五典・衆議院議員(元防衛相)が最も頭を悩ませたのが、「事態認定」の難しさだ。自衛隊が防衛出動するには、政府が「武力攻撃事態(日本への武力攻撃に対して個別的自衛権を行使)」「存立危機事態(密接な関係にある他国、つまり米国への武力攻撃に対して集団的自衛権を行使)」のいずれかに認定する必要がある。) 中国からのサイバー攻撃により日本国内に大規模停電と通信障害が発生し、沖縄県・先島諸島への海底ケーブルが切断されたという想定に際し、防衛省サイドは「武力攻撃予測事態」の認定を要請した。これは「武力攻撃事態」の一歩手前の準備期間で、認定されれば自衛隊による空港・港湾・道路の優先利用や住民避難が可能になる。日本側が有事に備えていることを中国側に示す抑止効果もある。 しかし小野寺「首相」は認定を見送った。 理由の1つは、日本が先に事態をエスカレートさせたと国際社会でみられるのを避けるため。もう1つは、中国にいる日本人に退避の時間をつくるためだ。小野寺氏は昨年も同様の判断を下している。 中国には約10万人の日本人が住んでいる。事態認定はいわば中国を敵国と見なす行為であり、そうなれば中国にいる日本人が危険にさらされるおそれがある。中国の外に脱出するための時間を確保する必要があるというのが小野寺氏の考えだった』、「中国にいる日本人に退避の時間をつくるため」、これでは時間がかかり過ぎて、タイミングを失うだけだ。「在留邦人」の問題は別途考えるようにすべきだ。
・『この判断には異議もある。事態が動く中で自衛隊の展開が遅れるからだ。また、多少時間ができたところで、実際に10万人もの在留邦人が逃げ切れる保証はない。 JFSSのシミュレーションに第1回から参加し続けている尾上定正・元空将は「米国のバイデン大統領はロシアのウクライナ侵攻に際して、ロシアやウクライナにいる米国人の救出作戦は行わないと明言した。有事の際に、在外邦人保護のため政府のできる役割は限られているのが現実だ」と話す』、「米国のバイデン大統領はロシアのウクライナ侵攻に際して、ロシアやウクライナにいる米国人の救出作戦は行わないと明言した」、日本も見習うべきだ。
・『中国脱出は現実的に無理  台湾有事に備え台湾駐在員の退避計画を作成した企業はあっても、中国駐在員のそれを用意している日本企業はまずない。「退避計画を作成していることが中国人社員に知られた瞬間に組織が回らなくなるし、中国当局からのバッシングも必至だ」(中国ビジネスに詳しい商社関係者)。) 多くの企業では、いったんは検討してもすぐ「現実的に無理」という結論に至る。せいぜい「駐在員に1年間有効なオープン航空券を渡しておく」という程度のことでお茶を濁しているようだ。 「世界の工場」中国は日本企業にとって重要な生産基盤だ。現在も高水準の投資が続いているが、その位置づけは下がりつつある。国際協力銀行が製造業企業に「今後3年程度の有望な事業展開先国・地域」を聞くアンケート調査では、中国の得票率が長期低落傾向だ。 米中対立に続いて台湾有事という異次元のリスクが浮上した今、中国ビジネスの将来像を描くのは以前よりずっと難しくなってきた。 本当に武力衝突が始まれば、そのダメージは東アジアにとどまらない。半導体産業において、台湾積体電路製造(TSMC)をはじめとする台湾企業の存在は圧倒的で台湾勢のシェアは先端品では9割に及ぶ。米国のヘインズ国家情報長官は5月に上院軍事委員会で、「台湾の半導体供給が止まれば、世界経済は年間6000億〜1兆ドル以上の打撃を受ける可能性がある」と証言した。 日本にとって台湾有事は、絶対に発生を避けたい事態だ。中国を含む東アジア全域に張り巡らせてきたサプライチェーンが破壊されることの打撃は計り知れない』、「日本にとって台湾有事は、絶対に発生を避けたい事態だ」、しかし、極秘にシミュレーションしておく必要はありそうだ。
・『米軍が緊張感を演出している面も  米国発の議論をそのまま受け取る必要はない。装備体系の更新を急ぎたい米軍が、「台湾有事が27年に迫っている」という緊張感を演出している面もあるからだ。 前防衛大学校長で6月まで米スタンフォード大学に滞在していた国分良成・慶応大学名誉教授は、最近の講演会で「米国で台湾有事の議論を主導しているのは、ワシントンにいる安全保障系の戦略家たちばかりだ。中国や台湾の内情を踏まえた分析はあまり見られない」と話した。 確率論や常識では考えにくいが、ひとたび実現すれば壊滅的な被害をもたらすリスクを「ブラックスワン」と呼ぶ。日本にとって台湾有事はまさにこれだ。最悪の事態を想定しておくのが安全保障の要諦だが、その論理だけでは社会は回らない。まして企業には個別の判断があって当然だ。自分のビジネスにとっての最適解を見つけるために、バランスよく情報を集め台湾をめぐるファクトを正確に理解しておきたい』、「ブラックスワン」となれば、高度な大人の判断が求められるようだ。 
タグ:台湾 (その5)(いきなり数千発のミサイルが沖縄に…米国の大学教授が予想した「中国の台湾進攻」の絶望的シナリオ アメリカの選択肢は軍事的後退と核使用の2択、自衛隊員2500人 米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション 開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅、迫り来る「台湾有事」に無防備すぎる日本企業 中国の在留邦人10万人は取り残されるのか) PRESIDENT ONLINE ハル・ブランズ マイケル・ベックリー氏 「いきなり数千発のミサイルが沖縄に…米国の大学教授が予想した「中国の台湾進攻」の絶望的シナリオ アメリカの選択肢は軍事的後退と核使用の2択」 共著『デンジャー・ゾーン』(訳:奥山真司、飛鳥新社) 「いきなり数千発のミサイルが沖縄に」とタイトルはセンセーショナルだ。 「中国は2020年に香港の民主化運動を鎮圧することで、台湾を平和的に説得できる時代が終わったことを示唆した」、確かにこれは重い意味を持つようだ。 「1990年代には台湾は中国に対して地理的・技術的に有利であったため、実質的に征服不可能だった。台湾海峡は台風や高波のおかげで危険な海域で、島そのものが自然の要塞となっている」、「それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊できると言われている。 中国のサイバーおよび対衛星能力は、アメリカ軍の重要なセンサーや人工衛それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊星を機能不全に陥れることで、同軍の耳と目と口をきけなくしてしまう恐れがある。中国の対艦ミサイルは、西太平洋を航行するアメリカの大型水上艦にとって、非常に危険になる。ここ25年間にわたり、人民解放軍は台湾征服のために執拗しつように準備してきた」、かつてとは比べようもないほど「中国軍」が増強されたようだ。 「オバマ、トランプ、バイデンの各政権は、中国に対抗するため、アジアに軸足移動(ピボット)することを望んでいた。 だがこのような計画は、ISISの台頭やロシアのウクライナ侵攻など、他の地域で発生した案件によって覆されてきた。グローバルな勢力であるアメリカは、単一の不測の軍事案件に備える余裕もない。その結果、中国の軍事近代化に空軍と海軍が追いつけていない。 アジアにおけるアメリカの軍隊は、依然として少数の大型の軍艦と、露出した基地から運用される短距離戦闘機が主体で、これらはまさに、中国が奇襲ミサイル攻撃で破壊しうるものだ。アメリカは台湾から500マイル以内・・・にたった2つの空軍基地しか持っていない。中国がこれらの基地を使えなくすれば、アメリカ軍は空母や、台湾から1800マイル離れたグアムから行動しなければならなくなる。 この距離と空中給油の必要性のために、アメリカ軍の出撃回数は半減させられ、そのせいで中国に台湾上空を支配するチャンスを与えてしまうことになる 「台湾は兵站部隊を削減しており、これによって戦闘部隊への補給や基本的な整備を日常的に怠っている状態だ。そのため兵士は事故や貴重な弾薬の浪費を恐れて武器を使った訓練を避けている。 台湾のパイロットの飛行時間は、月に10時間未満である。また、戦車や攻撃ヘリの半数以上が使用不可能な状態で、多くの台湾人兵士が士気の低下に苦しんでいる・・・台湾政府自身が認めているように、中国は台湾の守りを「麻痺」させることができそうだ」、「台湾」が自ら「守り」を弱めた理由は何なのだろう。ただ、いずれにしても、ちょっとやそっとの増強 では到底追いつけないだろう。 「2020年代半ばから後半にかけての時期は・・・中国にとってこれほどの好機はない。あるペンタゴンの元高官が言ったように、アメリカはこの時期に台湾との戦いで「尻を蹴り上げられる」リスクを負うことになる」、やれやれ。 「国営の『環球時報』の2020年の調査によれば、本土の70%の人々が台湾の本土への統一のために武力行使することを強く支持しており、37%が「もし戦争が起こるなら、2025年までがベストだ」と考えているという。 中国政府高官たちは、プライベートな場では西側の専門家たちに向かって、中国共産党内で侵略を求める声が高まっており、習近平は「人民解放軍はそれをやり遂げることができる」と主張するタカ派や「イエスマン」たちに囲まれていると語っている」、 「アメリカ海軍と空軍の近代化は何十年にもわたって先送りにされてきた。現在その問題は深刻なものとなっている。 ペンタゴンが所有する主力艦や戦闘機の多くは、文字通りバラバラになっているか、燃え尽きようとしている。老朽化した船体や機体は新たなアップグレードだけでなく、中国の新軍と競争するために必要な最新のエンジン、センサー、弾薬を搭載することにも耐えられない状態だ。これらのアメリカの戦力は退役させなければならない」、「おそらくそのためかもしれないが、習近平は「台湾の解放」に自分の正統性・・・を賭けている。201 7年に彼は台湾の統一が「中華民族の偉大な若返りを実現するための必然的な要件」であると発表した。そして2020年には中国共産党が「近代化された」軍隊を投入する予定の時期を、2034年から2027年に早めている。 2021年3月、当時インド太平洋軍司令官であったフィリップ・デービッドソン提督は、中国が今後6年以内に台湾を侵略する可能性があると警告した」、「今後6年以内に台湾を侵略する可能性」とは大変だ。 「台湾とアメリカ軍が反撃してくる前に、激しく攻撃することが勝利への一番の近道であることを知っている。だからこそ中国の軍事ドクトリンでは、真珠湾攻撃のような形で相手を素早く武装解除することを目指しているのだ」、恐ろしいことだ。 「台湾各地に潜んでいた中国の特殊部隊や諜報員たちが工作を開始し、軍事施設で爆弾を爆発させ、台湾の指導者を暗殺する。中国のサイバー攻撃は、台湾の重要なインフラを麻痺させるだろう。 また、人民解放軍はサイバー攻撃と、場合によっては地上発射型ミサイルを使って、アメリカ軍同士やワシントンとの通信手段となっている衛星を破壊し、数日から数週間にわたってアメリカ側の対応を不可能にしたり、そもそも何が起こっているのかをわからないようにするだろう」、中国側の初期戦術はその通りなのだろ。 「アメリカはグローバルなトレードオフに直面し、太平洋のアメリカ軍は、ベトナム戦争や第二次世界大戦以来の規模となる損失を被るだろう。アメリカの指導者たちはひどいジレンマに直面することになるかもしれない。つまり屈辱的な軍事的後退を受け入れるか、中国が後退しなければ核兵器を使うと脅すかだ。 2018年、国防専門家によるある有識者委員会は、核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性がある、と結論付けている。地政学的にこれ以上危険なことはない」、 「核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性」、「アメリカ」が「核の黙示録」に頼れば、中国側も「核」で応戦するという悲劇的シナリオに追い込まれる可能性もある。或いは「アメリカ」が「「決定的な軍事的敗北」を被る」方を選択した場合には、「中国の天下」が続くという嫌な時代になる可能性も覚悟する必要がありそうだ。 青葉 やまと 「自衛隊員2500人、米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション 開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅」 「笹川平和財団」の「戦闘シミュレーション」によれば、「仮に中国が武力行使に及んだ際にも、台湾の主権を奪う試みは失敗に終わるとの予測」、「米シンクタンク・戦略国際問題研究所」も「同様の傾向」を示した。しかし、「どちらのシミュレーションも、その陰には日米の多大な代償が伴うおそれがあると物語っている。前者では、日米は合わせて500機以上の戦闘機を失うとの試算結果」、なるほど。 「日米」の「犠牲」は甚大で、「日本は144機の戦闘機を失い、自衛隊の死傷者は2500人に達する」(財団)、「アメリカの被害もこれ以上に甚大で、最大400機の戦闘機を失い、1万人以上の兵士が死傷するおそれがある」、なるほど。 「シミュレーションでは、米軍と自衛隊が中国軍の補給線を断ち、台湾上空の制空権を握ったあと、中国軍に決定打となる攻撃を仕掛けたことで紛争の終結に至っている」、「ソフリプは、大なり小なり日本が巻き添えを食う展開は避けられないとみる。「中国が日本の基地を直接攻撃しない場合であっても、日本の基地は人員を動員し、介入を試みるアメリカに協調することを決断するだろう」と同誌は解説している』、なるほど。 「中国は・・・空母2隻を含む156隻の軍艦、および168機の戦闘機、そして48機の軍用輸送機を中国側は失うとされている。兵士の死傷は4万人以上」、「台湾は、18隻の軍艦と200機の軍用機を喪失する。また、兵士1万3000人が死傷」、「日米軍も・・・合計1万2500人以上の兵士が死傷し、500機超の戦闘機を失うという結果」、「日米軍」の損失も馬鹿にならないようだ。 「中国軍が紛争を起こす実力を持っているとの認識を示したうえで、1~2週間で台湾占領を達成するだけの力はないと語った。 台湾の台北時報タイペイ・タイムズ紙はシミュレーション結果を基に、「机上演習で『身の毛もよだつ』損失、中国が敗北の見込み」と報じた。4万人が死傷する中国側に対し、台湾軍も2万6000人以上の死傷者が出る厳しい結果を伝えている」、なるほど。 「24種のシナリオにしたがってシミュレーションを実施した結果、大半のシナリオでは、日米の助力によって台湾側が中国の上陸作戦の阻止に成功し、自治を維持する結果に至った」、まずまずだ。 それにしても「開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅」との「侵攻序盤の展開」はショッキングだ。 「「基本シナリオ」においては、中国の侵攻はすぐに失敗に終わる。台湾の地上部隊が海岸堡を急襲し、中国側は補給線の確保と内陸部への進軍に苦戦する展開が見られた。 その間にも、日本の自衛隊の援護を受け、米軍の潜水艦・爆撃機・戦闘機が戦闘区域に到達。中国の上陸艦隊を「急速に機能不全に陥れる」という。 CSISはリポートを通じ、紛争後の余波にも触れている。それによると中国国内では、中国共産党の支持が揺らぐことが予見されるという。リポートは「中国も大きな損失を被っており、台湾の占領に失敗したことで、中国共産党による統治が不安定になる可能性がある」としている」、「中国共産党による統治が不安定になる可能性」確かにその通りだ。 「財団は、投入可能な兵器の状況によっては、中国軍がより有利に戦闘を進めるおそれもあると警告している。 日本にとって、こうしたシミュレーションの結果は、中国軍の脅威を強調するものであり、警鐘に他ならない。アジア太平洋地域の安全保障を維持するため、日本は引き続きアメリカと緊密な協力関係を築く必要があるだろう。 まずは有事に発展しないことを願うばかりだが、シミュレーションのシナリオのように日本へのミサイル攻撃が行われるのであれば、台湾情勢は無関係と見ることも難しくなってくる。中国軍の脅威に適正に対処するため、戦 略的な準備が求められよう」、その通りだ。 東洋経済オンライン「迫り来る「台湾有事」に無防備すぎる日本企業 中国の在留邦人10万人は取り残されるのか」 興味深そうだ。 「中国にいる日本人に退避の時間をつくるため」、これでは時間がかかり過ぎて、タイミングを失うだけだ。「在留邦人」の問題は別途考えるようにすべきだ。 「米国のバイデン大統領はロシアのウクライナ侵攻に際して、ロシアやウクライナにいる米国人の救出作戦は行わないと明言した」、日本も見習うべきだ。 「日本にとって台湾有事は、絶対に発生を避けたい事態だ」、しかし、極秘にシミュレーションしておく必要はありそうだ。 「ブラックスワン」となれば、高度な大人の判断が求められるようだ。
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