SSブログ

電気自動車(EV)(その5)(中国巨大電池メーカー「CATL」の実力を垣間見る テスラしのぐ世界最大の生産能力へ、英ダイソン EVの電池革新でトヨタに挑戦 自動車産業の秩序を壊す新星の登場、テスラは苦境から脱出できるか マスク氏は「名経営者」に非ず) [科学技術]

電気自動車(EV)については、3月1日に取上げた。今日は、(その5)(中国巨大電池メーカー「CATL」の実力を垣間見る テスラしのぐ世界最大の生産能力へ、英ダイソン EVの電池革新でトヨタに挑戦 自動車産業の秩序を壊す新星の登場、テスラは苦境から脱出できるか マスク氏は「名経営者」に非ず)である。

先ずは、日経BP出身でオートインサイト代表の鶴原 吉郎氏が3月13日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「中国巨大電池メーカー「CATL」の実力を垣間見る テスラしのぐ世界最大の生産能力へ」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/264450/031200087/
・『現在、世界最大の自動車用バッテリー工場は、米テスラがパナソニックと共同で米ネバダ州に建設中の「ギガファクトリー」である。一部が完成し、2017年1月からバッテリーの生産が始まったが、その生産能力は最終的に年間35GWhという膨大なものになる予定だ。これがどのくらいの規模かというと、例えば2017年10月に日産自動車が発売した最新のEV(電気自動車)「リーフ」用の電池なら、87万5000台ぶんに当たる・・・2010年に初代が発売されて以来のリーフの累計生産台数は2018年1月に30万台に達したということで、これは世界のEVで最も多い。ギガファクトリーの生産能力は、この累計生産台数の3倍近いリーフ向け電池を1年で造ってしまうことになる・・・小型セダンの「モデル3」の量産を軌道に乗せるのに現在テスラは苦しんでおり、2020年に計画どおりの生産が可能かどうかは、なお流動的だ』、『ところが、CATLが現在進めている生産能力の拡張は、このギガファクトリーを上回るものだ。ロイター報道によれば、2020年のCATLの生産能力は、合計で50GWhに達するという。これまで中国の自動車用バッテリーメーカーで最大だったのは中国BYDだったが、2020年にはCATLがBYDを抜き、現在世界最大の韓国LGも凌いで世界最大の自動車用バッテリーメーカーに躍り出るとBloombergの報道は伝えている』、なるほど(なお、GWhとは100万KWH=10億WH)。
・『中国は断トツのEV大国 このBloomberg報道によると、2020年における自動車バッテリーメーカーの上位10社のうち5社、上位5社に限れば3社を中国メーカーが占めるようになる。世界の自動車用バッテリー生産量の、実に3/4を中国が占めるようになると予測されているのだ。この背景にあるのが、中国における電動車両の急速な増加である。日本ではあまり知られていないことだが、中国はここ数年で世界最大のEV大国にのし上がった。その生産・販売台数は桁違いで、2017年にはEVとPHEVの販売台数の合計が、実に77.7万台に達した。同じ年の欧州での販売台数はEVとPHEV(プラグインハイブリッド車)の合計で27.8万台・・・、米国での販売台数は約20万台で、中国は断トツの世界最大市場である。ちなみに日本国内のEVとPHEVの販売台数の合計は約5万6000台で、中国の1/14程度に過ぎない。 中国は世界最大の自動車市場であり、年間の自動車の販売台数は2017年で2887.9万台(中国汽車工業協会調べ)と、同年の日本の523.4万台の5.5倍もある。それにしても、販売台数全体に占めるEV+PHEVの比率は日本が1%程度なのに対して、中国では2.7%程度と日本の3倍近い。しかも、上海や北京といった都市部での販売台数比率は・・・2016年で7%前後に達している。EVやPHEVといった先進的な環境車両の販売台数比率が日本よりも大幅に高いということに驚く読者も多いのではないだろうか』、私も恥ずかしながら驚かされた口である。
・『その原動力になっているのは中国が推し進める「新エネルギー車(NEV)」政策である。中国はEV、PHEV、FCV(燃料電池車)を新エネルギー車と位置付け、都市部でNEV専用のナンバープレートを割り当てたり、通常のエンジン車だとオークションが必要なナンバープレートをNEVでは無料にしたりして、通常は困難な新車の購入がNEVなら可能になる特典を持たせている。 また、EVやPHEVは中国でも通常のエンジン車より割高だが、NEVに対しては中央政府および地方政府から多額の補助金を支給することによって、購入を後押ししている。その補助金の額は、EVの場合で航続距離により2万~4万4000元(1元=16円換算で32万円~70万4000円)、PHEVの場合で2万4000元(同38万4000円)に上る』、確かに優遇ぶりは突出している。
・『2025年には700万台の新エネルギー車を販売へ こうした措置を講じた結果、NEVの販売台数は2015年以降急速に伸び、それまで世界最大のEV市場だった米国をあっさり抜いて2015年以降は世界最大のEV大国になった。しかし、これはまだ序章に過ぎない・・・中国は2020年には新エネルギー車の販売台数を200万台、2025年には700万台、そして2030年には1000万台に引き上げるという非常に野心的な目標を掲げている』、他にも公共事業など財政圧迫要因があるなかで、多額の補助金政策をいつまで続けてゆけるのだろうか。
・『中国がこのように野心的な目標を掲げている狙いは何か・・・単に大気汚染を解決したいのであれば、工場やトラックから排出される有害物質の規制を強化すればいいはずだ。また乗用車についても、一足飛びにEVに行くのではなく、日本ではすでに広く普及しているHEVを中国でも拡大すれば、排ガスの量は減り、クルマに使われる燃料も少なくて済む。 それでも、HEVを拡大する政策を中国が採らないのは、HEVの土俵で勝負しても、先行する日本には勝てないと悟っているからだ。そこで、日本や欧州でもまだ量産化してから日の浅いEVの土俵であれば日本をはじめ欧米など自動車先進国に勝てる可能性があると踏んでいるのだ。中国がHEVを新エネルギー車の対象としなかったのにはこういう背景がある』、『中国は、2025年までの自動車産業の育成計画として「自動車産業の中長期発展計画」を2017年4月に公表した。この計画では現在の中国を「自動車大国」ではあるがコア技術やブランド力はまだまだ弱いと分析している。これを10年間かけて技術力を向上させ、「自動車強国」に躍進させるとしている。 そして自動車強国になるためのコア技術としてパワートレーン、変速機、カーエレクトロニクスといった従来からの技術に加えて、電池、モーターなどの分野で2020年に世界の先端レベルに達するように世界トップ10の新エネルギー車メーカーを数社育成すると表明している。つまり新エネルギー車政策をテコにして技術力・ブランド力でも世界一流の自動車強国へと発展させることを政策目標として掲げているのだ。EVは、環境問題解決の手段としてよりも、自動車産業を発展させるためのキーテクノロジーとしての意味合いが強い』、さすが計画経済色が残る中国だけあって、やることが極めて戦略的だ。
・『もともとは日本の技術  CATLは、もともとはAmperex Technology(ATL)という香港のリチウムイオン電池メーカーが自動車用電池部門を別会社化したものであり、そのATLは、TDKが2005年に買収して電池生産子会社化したものだ。製造しているリチウムイオン電池も、TDKが開発したリチウムポリマー電池をベースにしている。つまり、CATLの電池技術は元をたどっていくとTDKに行き当たるわけだ。 ただし・・・同社が使っている技術はリチウムポリマー電池ではなく、正極に低ニッケル濃度の低い3元系材料(ニッケル、マンガン、コバルトの酸化物)、負極にグラファイトを用いるという標準的な構成のものだった。もっとも、中国の自動車用電池は、正極にリン酸鉄を使ったものが多いので、そういう意味では日本的な材料といえるかもしれない。 ここから先はやや専門的になって恐縮なのだが、Liang氏の講演のテーマはこれからの電池材料トレンドということで・・・2025年にはマンガン・ニッケルの酸化物にリチウムの酸化物を混合した正極材料と、シリコン+グラファイトの負極を組み合わせることで、現在のリチウムイオン電池が4V程度などを5V程度に高電圧化してエネルギー密度を現在の1.6~1.7倍にまで向上させたい意向だ。電圧を5Vまで高めると現在使われている電解液は分解してしまうので、新たな組成の電解液が必要になるが・・・「どんな材料なのか?」という会場からの質問は「トップシークレットだ、それを言ったらクビになる」とユーモアを交えながらかわしていた。 今回発表した材料系自体は特に目新しいものではなく、例えば先に紹介した5Vのリチウムイオン電池の考え方についても、日本ではすでに5年以上前から開発発表の例がある。トヨタ自動車が2020年代前半の実用化を目指していると言われる全固体電池についても、Liang氏の発表では実用化時期を2030年以降としており、発表を聞いた限りではあるが、日本はまだ5年程度はリードしているという印象を受けた』、リチウムイオン電池はもともとは日本の技術とのことだが、日本はまだリードしているというので、一安心した。
・『ただ中国は先に紹介したNEV政策の中で、中国製の電池を搭載していないNEVは事実上NEVとして認定しないと見られており、内外の完成車メーカーは中国国内の電池メーカーから電池を購入すべく、その選定を急いでいる。CATLは、日欧のメーカーが電池購入を検討する際の有力候補の一つで、大工場の建設も今後の需要増をにらんでのことだ。日欧の完成車メーカーとのやりとりを通して、その技術力は今後急速に高まっていくと考えられる』、中国が国産優先策を採るのであれば、CATLの競争力は市場規模の巨大さと相俟って、日本メーカーを大きく引き離す可能性が強いと思われる。こんな不公正な競争を強いられる日本メーカーはたまったものではないだろう。

次に、3月20日付け日経ビジネスオンライン「英ダイソン、EVの電池革新でトヨタに挑戦 自動車産業の秩序を壊す新星の登場」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/032000807/
・『独創的な掃除機やドライヤーで知られる英ダイソンがEV(電気自動車)に参入することを表明した。切り札は現在のEVで主流のリチウムイオン電池の弱点を克服する画期的な「全固体電池」。だが、全固体電池には実用化に向けた課題があった。電池としての基本性能であるエネルギー密度や出力密度がリチウムイオン電池と比べて低いことだ。EVに搭載した場合に高い性能を発揮できないなら、リチウムイオン電池を置き換えるのは難しい。  そんな全固体電池で先行し、画期的な成果を生み出しているのがトヨタ自動車と東京工業大学だ。共同研究において、一般的なリチウムイオン電池の2倍のエネルギー密度と3倍の出力密度を実現できる全固体電池を試作。試作品は安定性が高く、実用化されている電池並みの高い耐久性を備えているという。この電池をEVに搭載した場合、わずか3分程度で充電できる可能性がある。  さらに東工大は液体の電解質に匹敵する高いイオン伝導率を持つ新たな固体電解質の材料も発見。固体電解質は、高価なゲルマニウムの代わりに、安価で汎用的なスズとケイ素を使って実現できるという。  7月上旬、これらの成果が米科学誌に掲載され、全固体電池への関心が一層高まった。7月下旬には「トヨタが22年にも全固体電池を搭載するEVを発売する」と報じられた。本誌の取材に対し、トヨタ自身も「20年代前半の実用化を目指している」と認める。同電池の開発ではトヨタ自動車が先行するが、ダークホースの登場が業界を揺るがしている。「家電ベンチャーのダイソンがEVへの参入を決めたのには驚いた。とりわけ(同社がEVに搭載する予定の)『全固体電池』に強い関心を持っており、実現できるなら本当にすごいことだ」。こう話すのは日本のある自動車メーカーの経営トップだ。 2020年までにEVを発売する・・・英ダイソンが大胆な計画を明らかにした。同社の16年12月期の売上高25億ポンド(約3750億円)に迫る20億ポンドを投資。自動車業界の出身者を含む400人以上の専門チームを結成して、すでに開発を進めている』、あのダイソンまでが本格参入とは面白くなってきた。
・『同社がEV向けに革新的な電池も開発している・・・全固体電池。現在、世界で販売されているEVの大半が搭載するリチウムイオン電池が抱える様々な課題を解決する「夢の電池」として期待されている。 まず安全性が高い。現在のリチウムイオン電池は、正極から負極の間のイオンの通り道となる電解質に可燃性の液体を使う。このため液漏れが起きると発火しやすく、安全を確保するために厳重な対策を施す必要がある。 これに対して、全固体電池は電解質に固体を使うため液漏れが起きない。揮発成分はほぼないため、発火しにくい。さらに固体電解質は硬いため、短絡(ショート)が起きる可能性も低い。 満充電まで数分程度・・・現状のEVは、日産自動車の「リーフ」を例に取ると、家庭用の200V電源で満充電まで8時間、急速充電器で約80%の充電までに30分程度かかる。これが全固体電池の場合は数分程度に短縮できるとされる。さらに固体であるために設計の自由度が高く、高温や低温で出力が低下しないという利点もある』、なるほどまさに「夢の電池」だ。
・『だが、全固体電池には実用化に向けた課題があった。電池としての基本性能であるエネルギー密度や出力密度がリチウムイオン電池と比べて低いことだ。EVに搭載した場合に高い性能を発揮できないなら、リチウムイオン電池を置き換えるのは難しい。 そんな全固体電池で先行し、画期的な成果を生み出しているのがトヨタ自動車と東京工業大学だ。共同研究において、一般的なリチウムイオン電池の2倍のエネルギー密度と3倍の出力密度を実現できる全固体電池を試作。試作品は安定性が高く、実用化されている電池並みの高い耐久性を備えているという。この電池をEVに搭載した場合、わずか3分程度で充電できる可能性がある。 さらに東工大は液体の電解質に匹敵する高いイオン伝導率を持つ新たな固体電解質の材料も発見。固体電解質は、高価なゲルマニウムの代わりに、安価で汎用的なスズとケイ素を使って実現できるという。 7月上旬、これらの成果が米科学誌に掲載され、全固体電池への関心が一層高まった。7月下旬には「トヨタが22年にも全固体電池を搭載するEVを発売する」と報じられた。本誌の取材に対し、トヨタ自身も「20年代前半の実用化を目指している」と認める』、出力密度の低さの問題をダイソンがどう乗り切るのか、については説明がないが、なんらかの解決策を開発中なのだろう。
・『「リチウムイオン電池は量産技術が確立されており、大規模な投資により生産効率が高まっている。まだ量産が始まっていない全固体電池の生産性を評価するのは難しい」(自動車産業と車載電池に詳しいコンサルタント) 今年1月、米EVメーカーのテスラはパナソニックと共同で巨大なリチウムイオン電池工場「ギガファクトリー」を稼働させた。米ネバダ州にある同工場は、1カ所で15年時点の世界中のリチウムイオン電池の生産量に匹敵する生産能力を実現する。 生産する電池は、EVだけでなく、家庭、オフィス、工場向けの蓄電池にも供給。規模のメリットを追求することで、調達コストを低減し、生産性を向上させる。テスラは同様の巨大な電池工場を世界各地で10~20カ所建設する考えだ。 EVの心臓部の電池を巡り、激化する覇権争い。新興ベンチャーと業界の盟主が火花を散らす構図は過去の常識にとらわれていては競争を勝ち抜けない時代を象徴している』、面白い時代になったものだ。なお、今日に日経新聞は、「パナソニックがギガファクトリーでリチウムイオン電池と並んで生産する予定の太陽電池については、テスラへの独占供給やめ外販へ」と報じた。

第三に、元銀行員で法政大学大学院教授の真壁昭夫氏が7月31日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「テスラは苦境から脱出できるか、マスク氏は「名経営者」に非ず」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/175966
・『テスラの財務内容と マスク氏の言動には問題がある 4月1日、ある経営者のつぶやきが市場参加者を驚かせた。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が、エープリルフールで“テスラが経営破綻した”とツイートしたのである。 昨年末頃から、ニューヨークの株式市場では同社の経営不安が高まっている。背景にあるのは、同社の新型セダン“モデル3”の生産の遅れやモデルSのリコール発生から、同社の財務内容が悪化するとの懸念だ。 7月に入り、テスラの経営不安はさらに高まっている。特に、テスラが部品会社に返金を要請したことは、同社の資金繰り悪化への懸念を高めた。完成品メーカーがサプライヤーに値下げを要請することはある。しかし、すでに支払った代金の返金を求めることは前代未聞だ。 市場参加者の間では、テスラがサプライヤーに“寄付”を求めなければならないほど、経営が行き詰まっているとの見方もある。経営の持続性への懸念は日増しに高まっている状況だ。当面、テスラの資金繰り悪化への懸念は高まりやすいだろう』、今日の日経新聞夕刊では、マスクCEOの株式非公開化についてのツイッター発言で、同氏を米国証券取引委員会(SEC)が召喚したと伝えた。エープリルフール発言は大目にみたとしても、これは許せなかったのだろう。それにしても、部品会社への返金要請とは、資金繰り危機とみられてもいたしかたない。
・『冷静に考えると、テスラには大きな可能性がある。高性能の電気自動車の実用化や、高速地下交通システムの実現に向けた取り組みなど、新しい発想を実現して成長を目指すマスク氏の発想は、多くの注目を集めている。 問題は、同社の財務内容とマスク氏の言動だ。 同氏はアナリストからの質問を「クールじゃない」と一蹴し、不興を買ったことがある。経営に不安を感じる市場参加者に冗談を飛ばすのも、苦し紛れのごまかしに見えてしまう。マスク氏が経営トップの座に居続ける間、同社の経営は一段と厳しさを増すと考える専門家もいる』、その通りだ。
・『科学的な技術などを実用するための方法、手段を用いて、従来にはない、新しいモノやサービスを生み出してきた。この点で、マスク氏は希代のイノベーター・・・といえるだろう。 マスク氏が生み出してきた企業を見れば、同氏がテクノロジーの実用化への“野心”に駆られていることがよくわかる。 1998年、同氏は、オンライン決済大手ペイパルの前身となるX.comを創業した。2002年には、宇宙への輸送を可能にするスペースX社を設立した。翌年には、テスラが創業された。 こうした起業のヒストリーを見ると、同氏は新しい発想を実践してより大きな価値の創造に駆られた人物と評することができる。その発想は成功や成長への野心や血気を意味する“アニマルスピリッツ”を体現している。まさに、マスク氏は起業家だ。 中でも、テスラは社会に大きなインパクトを与えた。 なぜなら、同社の電気自動車が従来の自動車にはない満足感を人々に与えたからだ。初期のモデルである“テスラ・ロードスター”は英ロータス社の車体にバッテリーを搭載した電気自動車だ。その、化石燃料を用いないクリーンさや加速性能が人々に評価され、テスラ・ロードスターはヒットした。 これは、従来の自動車の車体とバッテリーをはじめとするテクノロジーを結合させた“イノベーション”の良い例だ。環境負担の軽減などを理由に、各国で電気自動車の開発が注目されてきたこともあり、パナソニックやトヨタがテスラとの提携に乗り出した。 こうした動きは、マスク氏の発想を抜きにして考えることはできない。同氏が新しい発想を用いて従来にはないモノやコンセプトを実現したいという野心が、テスラの設立につながった。それが、各国の大企業をも巻き込んだバッテリーや電気自動車の開発につながっている。マスク氏の発想こそがテスラの成長を支えてきたのである』、確かにマスク氏は“アニマルスピリッツ”の塊りのような稀有の人物だ。
・『ロードスターに続いてテスラが発表したのがセダン型の“モデルS”だ。同社にとって想定外だったのは、2018年3月に、パワーステアリング系の不具合によって、モデルSのリコールが発生したことだ。その上にモデル3の生産の混乱、遅れが重なり、経営悪化への懸念に拍車がかかっている。 マスク氏はIoTの技術を使い、モデル3の生産を自動化しようとした。しかしこれが思うように進んでいない。テスラは方針を修正して人手を確保し、生産を軌道に乗せようとしているが、これも思うようにいっていない。完成車が作れない以上、収益は確保できない。その状況が続くと、テスラのキャッシュ(およびその同等物)は枯渇するだろう。 資金繰りの悪化が続くと考える市場参加者は増えている。 なぜなら、テスラの技術への不安が残っているからだ。自動運転技術も含め、問題の再発防止策がどのような状況であるかは不透明な状況にある。その中で、新型モデルの生産が混乱をきたしている。この状況では、金融機関も融資などに慎重にならざるを得ないだろう。 特に、22日、米紙報道でテスラが部品メーカーに支払った代金の一部の返還を求めていることが明らかになったことは、テスラの資金繰りが想定以上に悪化しているとの見方を高めた。そのため、多くの市場参加者がテスラ株を格好の空売り銘柄として扱っている。 要は、マスク氏は経営判断を誤った。それがテスラの経営不安の最大の原因だ。同氏の中で、成長を求める気持ちが先走り過ぎたのだ。モデルSのリコールはパワーステアリングのボルト腐食という、基本的かつ致命的な問題だ。それだけに、後続モデルの性能への不安も根強い。生産の混乱も発生する中でモデル3にどれだけの需要があるか、同社の経営に不安を感じる株式の専門家は多い。 見方を変えれば、マスク氏は、問題解明よりも、自らの野心に基づいてモデル3の生産を優先した。マスク氏は生産が進まないことにいら立ち、エンジニアを怒鳴りつけているとの報道もある。テスラの経営に混乱が生じていることは明らかだ。その結果、生産プロセス確立のためのコストが増え、キャッシュフローが圧迫されている』、問題点の指摘は的確だ。
・『イノベーターは名経営者とは同義ではない マスク氏は電気自動車を用いた高速の地下移動システムを考案するなど、新しい取り組みへの野心を燃やしている。それは、付加価値を生み出し、企業と社会の発展には欠かせない要素だ。問題は、実力のあるイノベーターであるマスク氏が、優れた経営者であるとは限らないことだ。ヒット商品を生み出す能力と、経営者に求められる資質は異なる。 一般的には、テスラ株の急落は、資金繰りへの懸念に影響されたとの指摘が多い。  踏み込んで言えば、その状況をもたらした原因は、マスク氏の意思決定、言動だろう。・・・企業は社会の公器だ。経営者には、従業員や消費者、株主など、さまざまなステークホルダーの満足度を高めることが求められる。それは、自分のこだわりや野心に基づいて、新しいテクノロジーの実用化を目指すこととは異なる。大局観を持って、組織全体が進むべき方針を示すことは、経営者に欠かせない資質である。この認識がマスク氏には欠けているように感じる。 マスク氏に求められることは、自らの率直な物言いを改め、ステークホルダーからの信頼感を高めることだ。果たしてそれができるか。長くしみついた自らの行動様式を改めることは、口で言うほど容易なことではない。 これまでの言動を同氏が続けるのであれば、テスラの経営不安は高まるだろう。その結果、同社の信用力が低下し、資金繰りはさらに悪化するかもしれない。組織の士気を高めるためにも、生産管理の専門家の意見などを仰ぎ、モデル3の生産計画を軌道に乗せることが必要だ。 その意思決定を下すことができるか否かが、マスク氏の評価を分けるだろう。突き詰めて言えば、マスク氏は技術などの開発に専念し、マネジメントは経営のプロにゆだねる選択肢もあるだろう。テスラの経営不安を払拭し、経営を安定させるためには、それくらいの決断があって良い』、「マネジメントは経営のプロにゆだねる」ことが出来ればいいが、ワンマンのマスク氏には難しいのではなかろうか。サウジなどからの資金で株式を非公開化(いわゆるマネジメント・バイアウトMBO)しようとの苦肉の策は、市場から注文をつけられなくなるだけに、居心地はよくなるかも知れない。しかし、資金調達はテスラが通常の生産活動にも重大な問題を抱えているだけに、容易ではない可能性がある。米SECの召喚まで出てきては、さらにこじれる懸念もある。当面、目が離せない状況が続くのではなかろうか。
タグ:リチウムイオン電池は量産技術が確立されており、大規模な投資により生産効率が高まっている。まだ量産が始まっていない全固体電池の生産性を評価するのは難しい 真壁昭夫 ダイヤモンド・オンライン エープリルフールで“テスラが経営破綻した”とツイート 「テスラは苦境から脱出できるか、マスク氏は「名経営者」に非ず」 電気自動車 EV (その5)(中国巨大電池メーカー「CATL」の実力を垣間見る テスラしのぐ世界最大の生産能力へ、英ダイソン EVの電池革新でトヨタに挑戦 自動車産業の秩序を壊す新星の登場、テスラは苦境から脱出できるか マスク氏は「名経営者」に非ず) 鶴原 吉郎 日経ビジネスオンライン 「中国巨大電池メーカー「CATL」の実力を垣間見る テスラしのぐ世界最大の生産能力へ」 世界最大の自動車用バッテリー工場は、米テスラがパナソニックと共同で米ネバダ州に建設中の「ギガファクトリー」 年間35GWh 生産能力は、この累計生産台数の3倍近いリーフ向け電池を1年で造ってしまうことになる 「モデル3」の量産を軌道に乗せるのに現在テスラは苦しんでおり CATL 2020年のCATLの生産能力は、合計で50GWhに達するという 中国は断トツのEV大国 2020年における自動車バッテリーメーカーの上位10社のうち5社、上位5社に限れば3社を中国メーカーが占めるようになる。世界の自動車用バッテリー生産量の、実に3/4を中国が占めるようになると予測 2017年にはEVとPHEVの販売台数の合計が、実に77.7万台 欧州 27.8万台 米国での販売台数は約20万台 日本国内 約5万6000台で、中国の1/14程度 その原動力になっているのは中国が推し進める「新エネルギー車(NEV)」政策 EV、PHEV、FCV(燃料電池車)を新エネルギー車と位置付け 「新エネルギー車(NEV)」政策 TDKが2005年に買収して電池生産子会社化 2025年にはマンガン・ニッケルの酸化物にリチウムの酸化物を混合した正極材料と、シリコン+グラファイトの負極を組み合わせることで、現在のリチウムイオン電池が4V程度などを5V程度に高電圧化してエネルギー密度を現在の1.6~1.7倍にまで向上させたい意向 日本はまだ5年程度はリードしているという印象 中国がこのように野心的な目標を掲げている狙いは 日本や欧州でもまだ量産化してから日の浅いEVの土俵であれば日本をはじめ欧米など自動車先進国に勝てる可能性があると踏んでいるのだ 自動車産業の中長期発展計画 10年間かけて技術力を向上させ、「自動車強国」に躍進させるとしている コア技術としてパワートレーン、変速機、カーエレクトロニクスといった従来からの技術に加えて、電池、モーターなどの分野で2020年に世界の先端レベルに達するように世界トップ10の新エネルギー車メーカーを数社育成すると表明 もともとは日本の技術 中国製の電池を搭載していないNEVは事実上NEVとして認定しないと見られており、内外の完成車メーカーは中国国内の電池メーカーから電池を購入すべく、その選定を急いでいる CATLは、日欧のメーカーが電池購入を検討する際の有力候補の一つで、大工場の建設も今後の需要増をにらんでのことだ 「英ダイソン、EVの電池革新でトヨタに挑戦 自動車産業の秩序を壊す新星の登場」 英ダイソンがEV(電気自動車)に参入することを表明 「全固体電池」 実用化に向けた課題があった。電池としての基本性能であるエネルギー密度や出力密度がリチウムイオン電池と比べて低いことだ トヨタ自動車と東京工業大学だ。共同研究において、一般的なリチウムイオン電池の2倍のエネルギー密度と3倍の出力密度を実現できる全固体電池を試作 新型セダン“モデル3”の生産の遅れやモデルSのリコール発生から、同社の財務内容が悪化するとの懸念 テスラが部品会社に返金を要請したことは、同社の資金繰り悪化への懸念を高めた マスクCEOの株式非公開化についてのツイッター発言 同氏を米国証券取引委員会(SEC)が召喚 テスラには大きな可能性 新しい発想を実現して成長を目指すマスク氏の発想は、多くの注目 問題は、同社の財務内容とマスク氏の言動 マスク氏は希代のイノベーター テクノロジーの実用化への“野心”に駆られている スペースX社 同氏は新しい発想を実践してより大きな価値の創造に駆られた人物 テスラは社会に大きなインパクトを与えた テスラ・ロードスター パナソニックやトヨタがテスラとの提携に乗り出した マスク氏の発想こそがテスラの成長を支えてきたのである モデルS” リコールが発生 モデル3の生産の混乱、遅れが重なり、経営悪化への懸念に拍車 資金繰りの悪化が続くと考える市場参加者は増えている テスラが部品メーカーに支払った代金の一部の返還を求めていることが明らかになったことは、テスラの資金繰りが想定以上に悪化しているとの見方を高めた 格好の空売り銘柄 マスク氏は経営判断を誤った 問題解明よりも、自らの野心に基づいてモデル3の生産を優先した マスク氏は生産が進まないことにいら立ち、エンジニアを怒鳴りつけているとの報道もある イノベーターは名経営者とは同義ではない ヒット商品を生み出す能力と、経営者に求められる資質は異なる 企業は社会の公器 マスク氏は技術などの開発に専念し、マネジメントは経営のプロにゆだねる選択肢もあるだろう 株式を非公開化 マネジメント・バイアウトMBO
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

スパコン詐欺(その2)(捜査終結は許されない スパコン詐欺に燻る麻生大臣の疑惑、詐欺ペジー社から28億円戻らず 安倍政権なぜ返還請求せず、助成金詐欺で社長逮捕のスパコン 連続世界一にも疑惑の目) [科学技術]

スパコン詐欺については、昨年12月16日に取上げた。今日は、(その2)(捜査終結は許されない スパコン詐欺に燻る麻生大臣の疑惑、詐欺ペジー社から28億円戻らず 安倍政権なぜ返還請求せず、助成金詐欺で社長逮捕のスパコン 連続世界一にも疑惑の目)である。

先ずは、2月22日付け日刊ゲンダイ「捜査終結は許されない スパコン詐欺に燻る麻生大臣の疑惑」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/223684/1
・『スーパーコンピューター開発会社「ペジーコンピューティング」の脱税、助成金詐欺事件で、東京地検特捜部は13日に社長の斉藤元章容疑者(50)を起訴。一連の捜査は終結した。しかし、疑惑の“本丸”は手つかず状態。幕引きすれば特捜部は“お手盛り捜査”のそしりは免れまい』、随分と早い幕引きだ。まさに“お手盛り捜査”である。
・『特捜部は、経産省所管の「新エネルギー・産業技術総合開発機構」の2012~13年度の助成事業で、総額約6億5000万円を詐取したとして、斉藤容疑者を2度逮捕。法人税計約2億3100万円の脱税容疑で3度目の逮捕をした。しかし、文科省所管の「科学技術振興機構(JST)」がペジー社の関連会社「エクサスケーラー」に交付決定した最大60億円もの巨額の無利子融資については、なぜか触れずじまいだ。 既に52億円が交付された同融資は、開発に失敗しても9割が返済不要になる仕組みである上、上限の50億円を大幅に上回る異例の融資決定だった。しかも、公募期間は16年10月12日からたったの2週間。締め切りに間に合ったのは、エクサ社を含む2社だけだ。JSTは応募条件を緩和していたことまで発覚している』、逮捕起訴の対象金額は少額だが、桁違いに大きい融資については触れずじまいというのは、どうにも解せないし、決定した経緯も疑惑だらけだ。
・『不自然な巨額融資の裏には、“レイプもみ消し”疑惑の元TBS記者・山口敬之氏と、同氏と密接な関係にある麻生財務相の存在がチラつく。 斉藤容疑者は、TBSに在籍していた山口氏と15年秋に知り合ったという。山口氏は退社した16年5月、ペジー社顧問に就任。7月13日には、麻生大臣が理化学研究所のスパコンを視察した際の案内役を斉藤容疑者が務めた。9月30日、斉藤容疑者は内閣府の有識者会議の委員に選出され、約4カ月後の17年1月20日、エクサ社がJSTの融資を獲得しているのだ。トントン拍子で融資が認められたのは、斉藤容疑者が山口氏を通じて文教族の麻生大臣と接点を持ったことが影響したのではないか』、あの悪名高い山口敬之氏、さらには麻生大臣まで出てくるとは、疑惑の舞台としては一流だ。
・『この問題を追及する希望の党の柚木道義衆院議員はこう言う。「エクサ社が異例の融資を獲得した過程を見ると“ペジーありき”だった疑念が浮かびます。補助金適正化法に抵触しかねない案件に、麻生財務相や山口氏が絡んでいたのなら大問題。特捜部が捜査を打ち切った理由は、麻生財務相への“忖度”ではないか。そう疑われても仕方ないでしょう」』、やれやれ、ここでまで特捜部の“忖度”が出てくるとは世も末だ。

次に、6月9日付け日刊ゲンダイ「詐欺ペジー社から28億円戻らず 安倍政権なぜ返還請求せず」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/230784/1
・『先月の初公判で、社長だった斉藤元章被告(50)は助成金詐取を認めている。 斉藤被告が国から引っぱったカネは、総額87億円にもなる。よくも日本政府は詐欺師に87億円もつぎ込んだものだ。 信じがたいのは、交付済みの総額約35億円の助成金の大半が戻っていないばかりか、安倍政権は返還請求すらしていないことだ。なぜ、カネを取り戻そうとしないのか。安倍首相への“忖度”なのか』、なるほど。
・『ペジーへの公的資金の支出約87億円の内訳は、文科省所管のJST(科学技術振興機構)から52億円の無利子融資。さらに、経産省所管のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)から35億2400万円の助成金の交付だ。文科省分の52億円は、4月6日に全額返還を受けている。ところが、経産省分35億円のうち、国庫に戻っているのは、5事業中、2事業の一部でわずか6億5000万円のみ。残りの約28億円はペジーに“あげた”ままなのだ。 なぜか、世耕経産相は回収に積極的ではないのだ。NEDOは「今後、追加的に調査を行い、仮に不正が認められれば返還請求を行う」(広報部)とノンキな様子。しかし、モタモタしていると回収不能になってしまいかねない』、経産省分の残り約28億円はペジーに“あげた”まま、というのは信じられないような話だ。野党やマスコミは何をしているのか。
・『「詐欺師」に大金の税金を“預け中”なんてもってのほか。すぐに返還請求すべきだ』、その通りだ。

第三に、7月31日付けダイヤモンド・オンライン「助成金詐欺で社長逮捕のスパコン、連続世界一にも疑惑の目」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/175945
・『ペジーコンピューティングのスパコンが6月、昨年に続きスパコン省エネランキング「Green500」で世界一となった。 ペジーの技術が社長逮捕後も世界水準にあることを証明したわけだが・・・一部報道などが疑義を呈しているのは、サーバーを特殊な液に浸して冷やす液浸冷却の省エネ性能で、ペジーの“強み”そのもの。実はGreen500は冷却用の消費電力量を評価対象外にしている。そのため、ペジーのスパコンを、現在、非公開になっている冷却を含む消費電力量で評価すると、省エネ性能に劣ることが明らかになるのではと疑われているのだ。 ペジー関連会社で冷却システムを開発するエクサスケーラーは本誌の取材に対し、この疑惑をきっぱりと否定した』、世界的なランキングなので、審査基準はしっかりしている筈だが、「冷却用の消費電力量を評価対象外にしている」、とは信じ難い話だ。最もエネルギーを消費する冷却が評価対象外なんて、本来、あり得ない筈だ。しかし、ペジー関連会社はこの疑惑をきっぱりと否定したとあるが、否定の根拠が示されてないので、何とも判断しようもない。
・『ペジーはグループとして今後もスパコンの研究開発を続ける意向だ。エクサスケーラーの鳥居淳CTOは、「スパコンの開発は数十人の技術陣が担ってきた。齊藤氏が抜けても十分な開発体制がある」と自信を見せる。だが、資金調達については守秘義務を理由にコメントしなかった。 同社は文科省所管の研究機関から受けた融資52億円を返還。ペジーも、詐欺罪に問われた経産省所管の研究機関の助成金の関連で9億4000万円を返納した。 ペジーは増資による資金調達もしてきたが、以前のように資金を集めるのは困難だ。米中との技術開発競争が激化する中、ペジーのつまずきが日本のスパコンの出遅れにつながらないようにするべきだろう』、これだけミソをつければ、増資による資金調達は確かにかなり難しいだろう。記事では、「日本のスパコンの出遅れにつながらないようにするべき」としているが、量子コンピュータが登場した現在、スパコン競争、それもメインではない「省エネ」で競争することに果たしてどれだけの意味があるか、再考すべきなのではなかろうか。
タグ:公募期間は16年10月12日からたったの2週間。締め切りに間に合ったのは、エクサ社を含む2社だけだ 、“レイプもみ消し”疑惑の元TBS記者・山口敬之氏と、同氏と密接な関係にある麻生財務相の存在がチラつく スーパーコンピューター JSTは応募条件を緩和していたことまで発覚 経産省所管の「新エネルギー・産業技術総合開発機構」 「ペジーコンピューティング」 日刊ゲンダイ (その2)(捜査終結は許されない スパコン詐欺に燻る麻生大臣の疑惑、詐欺ペジー社から28億円戻らず 安倍政権なぜ返還請求せず、助成金詐欺で社長逮捕のスパコン 連続世界一にも疑惑の目) 最大60億円もの巨額の無利子融資については、なぜか触れずじまいだ 脱税、助成金詐欺事件で、東京地検特捜部は13日に社長の斉藤元章容疑者(50)を起訴。一連の捜査は終結 文科省所管の「科学技術振興機構(JST)」 疑惑の“本丸”は手つかず状態。幕引きすれば特捜部は“お手盛り捜査”のそしりは免れまい スパコン詐欺 「捜査終結は許されない スパコン詐欺に燻る麻生大臣の疑惑」 助成事業で、総額約6億5000万円を詐取 既に52億円が交付された同融資は、開発に失敗しても9割が返済不要になる仕組み 山口氏は退社した16年5月、ペジー社顧問に就任 斉藤容疑者は内閣府の有識者会議の委員に選出 エクサ社がJSTの融資を獲得 トントン拍子で融資が認められたのは、斉藤容疑者が山口氏を通じて文教族の麻生大臣と接点を持ったことが影響したのではないか エクサ社が異例の融資を獲得した過程を見ると“ペジーありき”だった疑念 特捜部が捜査を打ち切った理由は、麻生財務相への“忖度”ではないか 「詐欺ペジー社から28億円戻らず 安倍政権なぜ返還請求せず」 斉藤被告が国から引っぱったカネは、総額87億円 交付済みの総額約35億円の助成金の大半が戻っていないばかりか、安倍政権は返還請求すらしていないことだ 文科省所管のJST(科学技術振興機構)から52億円の無利子融資 経産省所管のNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)から35億2400万円の助成金の交付 文科省分の52億円は、4月6日に全額返還 経産省分35億円のうち、国庫に戻っているのは、5事業中、2事業の一部でわずか6億5000万円のみ 残りの約28億円はペジーに“あげた”ままなのだ 世耕経産相は回収に積極的ではないのだ 詐欺師」に大金の税金を“預け中”なんてもってのほか。すぐに返還請求すべきだ ダイヤモンド・オンライン 「助成金詐欺で社長逮捕のスパコン、連続世界一にも疑惑の目」 昨年に続きスパコン省エネランキング「Green500」で世界一となった 実はGreen500は冷却用の消費電力量を評価対象外にしている。そのため、ペジーのスパコンを、現在、非公開になっている冷却を含む消費電力量で評価すると、省エネ性能に劣ることが明らかになるのではと疑われているのだ ペジー関連会社で冷却システムを開発するエクサスケーラーは本誌の取材に対し、この疑惑をきっぱりと否定した ペジーはグループとして今後もスパコンの研究開発を続ける意向 スパコンの開発は数十人の技術陣が担ってきた。齊藤氏が抜けても十分な開発体制がある」と自信を見せる。だが、資金調達については守秘義務を理由にコメントしなかった ペジーは増資による資金調達もしてきたが、以前のように資金を集めるのは困難だ 量子コンピュータ スパコン競争、それもメインではない「省エネ」で競争することに果たしてどれだけの意味があるか、再考すべきなのではなかろうか
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

情報セキュリティー・サイバー犯罪(その4)(アップルの従業員が逮捕される理由、麻薬・銃器売買からサイバー攻撃代行まで 「ダークウェブ」の実態、日本人はダークウェブの危難をわかってない いつ日本企業が狙われてもおかしくない) [科学技術]

情報セキュリティー・サイバー犯罪については、1月7日に取上げた。今日は、(その4)(アップルの従業員が逮捕される理由、麻薬・銃器売買からサイバー攻撃代行まで 「ダークウェブ」の実態、日本人はダークウェブの危難をわかってない いつ日本企業が狙われてもおかしくない)である。

先ずは、未来調達研究所取締役の牧野 直哉氏が4月25日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「アップルの従業員が逮捕される理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米アップルが社員に対して情報管理の徹底を呼びかけているブログの内容がリークされた。リークの内容を読むと、29人の社員が情報漏えいをしたことが判明し、12人が逮捕されたとある。逮捕された人の中には、アップルの社員だけではなく、サプライヤーの従業員も含まれているとされる。
・情報管理の重要性は、いまさら強調する話でもない。しかし、アップルがこのタイミングで社員のみならずサプライチェーン上の関係者を含め、厳しく対処する姿勢を明らかにした背景は2つある。社内だけではなく、サプライチェーンに存在するサプライヤーを含めた情報管理の必要性の喚起と、アップルがこれまで徹底活用し効果を生んできた情報管理の重要性を、改めて社員に徹底する狙いが読み取れる。
▽問題の背景
・アップルの製品情報は、世界中の衆目を集めている。そんな市場における類いまれな評価を、アップルは徹底的に活用して自社製品やサービスを拡大してきた。事実、新製品情報を効果的に公開して、注目を浴びてきた。初めて世に「iPhone」を紹介したスティーブ・ジョブズのプレゼンテーションを覚えている方も多いだろう。世界に衝撃を与える発表手法は、アップルの強さの源泉でもある。
・しかし、昨今では新製品に関するさまざまな情報が、正式発表前にリークされている。リーク情報には、新製品の外観やディスプレーの大きさ、搭載される新たな機能まで多岐にわたる内容が含まれている。こういったアップルが意図しない情報リークは、発表会の価値を減少させ、消費者にとって発表会の価値を変節させてしまっている。正式発表会は、事前にリークされた情報の確認の場と化しており、従来の驚きや感動が少なくなってしまったのだ。「えっ?!」と驚くよりも、「やっぱり」と予定調和でうなずく場になってしまったのだ。
・こういった変化は、アップルにとって大きな痛手である。消費者をワクワクさせ新鮮な価値を提供し続けるためには、新製品に関する徹底した情報管理、発表する方法へのこだわりが欠かせない。自社発表の注目度をアップさせ、過去と同じようなワクワクする期待を消費者に抱かせるために今回の処置が必要だったのである。
▽企業における情報管理のポイント
・企業における情報管理のポイントは、情報の「保持」、「公開」そして「共有」。それぞれで狙った効果を創出しなくてはならない。情報によって、公開する方法と範囲、タイミングをコントロールするのだ。
・まず情報の「保持」。自社の競争優位に欠かせない新たな企画や開発に関連する情報は、関係者だけに保って流通させなければならない。公開できない内容は、情報にアクセスできる人間を限定する管理が必要だ。筆者は一度だけアップル本社を訪問した。ドアを入った瞬間、屈強な男性から「用件は?」と声をかけられ、部外者の侵入を許さない厳格な管理を目の当たりにした。この点の管理レベルの高さを示している。
・企画や開発に携わる部門や担当者であれば、情報の秘匿への意識は高いであろう。新たな企画や開発の結果が市場に投入され成功すれば、得られるメリットもあり、情報を流出させる可能性は低い。
・続いて「公開」だ。製品やサービスを投入する市場に驚きや感動を生むために、社内で保持していた情報を広めるのが目的だ。アップルの「公開」方法は、極めて優れていた。消費者に期待を抱かせ、いまかいまかと待ち望む消費者を裏切らない商品を発表してきたのも事実だ。今回の情報漏えい防止の社内喚起は、この効果を再び取り戻したい気持ちの表れと言える。
・最後の「共有」とは、社内の関連部門やサプライヤーが、事業展開の目的を達成するために、足並みをそろえるアクションの「同期」が目的だ。比較的関係者が多く、収益をあげるために欠かせない。このプロセスでは、従来機密扱いだった情報が、関係者に公開される。この段階における情報管理のリスクは、大きく2つに分類される。
▽情報共有時の対処
・まず今回の社内喚起は、公権力による逮捕といった例を引き合いに、従業員やサプライチェーンに関係する人々による「意図した情報流出の防止」を狙っている。解雇され罪を問われる事態になる事実を公開し、情報流失に歯止めをかける狙いだ。機密情報の保持は、アップルにとって永続的な企業利益に直結しており、個人的に伝えたい、知らない人に話したいといった気持ちを思いとどめ、社外からの情報提供に応じない意識の確立を目指している。
・流出した文章には、具体的なSNS名を列挙して、情報提供のアプローチ例が示されている。誰もが知っておりアカウントを持っている可能性が高いSNSばかりだ。こういった具体例によって、他人事ではなく、今回の問題が従業員やサプライチェーンに携わるすべての人に関係する警鐘となっている。
▽意図しない流出の防止
・もう一つ、実はアップルのサプライチェーンに関係する日本企業がもっとも注意しなければならないポイントがある。サイバーセキュリティーの問題だ。サプライチェーン上で効率を追求するためには、サプライチェーンに参加するすべての企業がWebを活用したデータ共有によって高い効率の実現が必要だ。これは同時に、インターネット上のセキュリティー確保を行わなければ、発注企業で高いセキュリティーを実現しても、サプライチェーンのどこかから情報が流出する新たなリスクの可能性を生んでしまう。
・現在、日本では政府主導の「働き方改革」によって、生産性の向上が喫緊の課題だ。特に事務部門の効率化が叫ばれている。事務部門は、情報を受け、内容を理解し、処理・展開するのが仕事だ。これはどんな企業であっても、そう大きくは違わないだろう。事務部門の効率化には、インターネットを活用したデータの送受信や処理が効果的である。国内でも効率化に向けた動きはさらに加速していくだろう。この加速が、新たなリスクを生む要因になるのだ。
・社内やサプライヤーの従業員の口は教育によって閉じられても、情報流通の仕組みに脆弱性が残れば、リスクをぬぐい去ることができない。脆弱性を残したままで電子データのやりとりをWeb上で行えば、意図しない情報流出や漏えいのリスクが高まってしまう。情報流出を防ぐためには、情報を取り扱うハードのセキュリティーレベルの管理が欠かせないのだ。
・現在、世界的にサイバー攻撃によるリスクが高まっているといわれる。IoTによって、あらゆるものがインターネットに接続されれば、それだけ攻撃対象の増加を意味する。しかし、経済的損失の観点から見れば、企業間で流通する情報の方が、より大きな価値を持つはずだ。特に好調な業績を維持してきた、アップルのような企業の情報は価値があるだろう。
・今回のアップルから流出した文書の内容は、サプライチェーンにおける情報流出の可能性の中で、人為的な側面を指摘したにすぎない。しかし、インターネット上を行き交う情報は、人間の意図がなくても脆弱性を突いて情報が流出する可能性は否めない。すでにアップルのような企業では対策が施されているかもしれないが、果たしてサプライヤーはどうだろうか。今回の問題は、ほぼすべての企業が活用している、サプライヤー管理に新たな課題を示しているといってよい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/258308/042400132/?P=1&prvArw

次に、5月23日付けダイヤモンド・オンライン「麻薬・銃器売買からサイバー攻撃代行まで、「ダークウェブ」の実態」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・通常のネット検索ではたどり着くことができないサイバー空間「ダークウェブ」。先のコインチェック不正送金事件を含め、ここ近年でよく耳にするワードだが、この空間では、どんな違法ビジネスが行われているのか。『闇ウェブ』(文藝春秋)の著者で、株式会社スプラウトの代表である高野聖玄氏に聞いた。
▽普段、我々が閲覧しているネット情報はわずか1%
・ダークウェブでは、さまざまな違法取引が横行しています。麻薬や銃、児童ポルノといった違法な商品のみならず、「サイバー攻撃代行」サービスまで売られているダークウェブ。個人情報も安価に取引されている
・「私や家族の情報もすべて漏れた」こう憤ったのは、2015年当時、FBI(アメリカ連邦捜査局)長官だったジェームズ・コミー氏。OPM(アメリカ連邦人事管理局)がハッカーからの攻撃を受け、同国政府職員の個人情報が2000万件も流出した事件での一コマである。
・日本でも同様の事件は後を絶たない。報道によれば、眼鏡チェーン「JINS」やTOKYO MX、Facebookといった大手企業だけでなく、東京都などの自治体までが個人情報流出の被害に遭っており、その数は17年だけで308万件にも上るという。 先進国であるはずの日本やアメリカでさえ、サイバー空間では個人情報すら守れない時代なのだ。そして、これらの盗まれた個人情報は、しばしば「ダークウェブ」で売買される。
・通常、インターネットを使う場合、「Google Chrome」や「Internet Explorer」といったウェブブラウザを起動し、「Yahoo!」や「Google」など検索エンジンを用いる。 しかし、こういった手段で普通にたどり着けるようなサイトは、実はネット空間のわずか1%程度に過ぎず、残る99%は「ディープウェブ」と呼ばれている。個人の「Gmail」ボックスや「Twitter」の非公開ページなど、第三者が勝手にアクセスできないコンテンツがこれに当たる。 そして、このディープウェブのさらに深いところにダークウェブは存在するのだ。
▽犯罪のデパートに国や企業は手だてなし
・「ダークウェブでは、独裁政権下でレジスタンス中の政治家やジャーナリストといった人たちに加え、テロリスト、ハッカー、犯罪者なども活動しています。このサイバー空間は、非常に匿名性と秘匿性が高く、取引も現金ではなく、足が着きにくい仮想通貨で行われることが多いので、世界中の警察や政府も手を焼いている状況です」(高野氏、以下同)
・アクセスする方法は簡単だ。これは一例だが、「Tor Browser」という特殊なブラウザをインストールし、その先のネット空間にアクセスすると、そこにしか表示されないサイトが膨大に存在する。 サイト群の中には、一見、「Amazon」や「2ちゃんねる」と似通ったサービスもあるが、そこで取引されているのは、麻薬、銃、児童ポルノ、個人情報、サイバー攻撃代行など法的に“アウト”なものばかりだ。
・全体的に見ると日本語対応されたサービスはまだ少ないようだが、こうした世界的な流れの一方で15年、日本でもサイバーセキュリティ基本法が施行され、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が発足した。 しかし、その体制は必ずしも十分とはいえないようだ。その理由の1つとして、高野氏はこう指摘する。
・「頻発するサイバー攻撃が、国家的な意思によるものなのか、個人の私欲なのか、判断しづらいこともあり、政府も全方位的にはなかなか対応できていない状況です。ここ近年は着々とサイバーセキュリティー人材も育ってきていますが、それでもまだ足りておらず、政府はどの分野に重点を置くか、難しい判断を迫られているのだと思います」
・NISCは、サイバー犯罪から国家や企業を守る技術者を育成すべく、新たに国家資格を設け、20年までに3万人の有資格者を確保するとしているが、果たして実現できるかは不透明だ。 一方、企業ではセキュリティー会社を使って情報漏洩対策に取り組む大手も増えているが、中小レベルではまだその意識は薄いといえる。
▽たった5ドルでサイバー攻撃を代行
・ダークウェブには、依頼を受けて犯罪行為を代行するサービスも多数存在する。「ある特定のサーバーをダウンさせるようなDDoS攻撃を仕掛けたり、データを盗むとうたうサービスがたくさんあります。昔は技術力のある悪いハッカーでなければできなかったことが、闇市場の拡大によって、今では学生であろうが、多少の知識さえあれば誰でも手軽にできるようになりました」
・ダークウェブ上のあるサイトでは、「1秒間に125GBのDDoS攻撃を600秒間」行うサービスを、たったの5ドル(支払いは仮想通貨)で請け負っている。DDoS攻撃とは、ターゲットのサーバーに大量のデータを送りつけ、機能を低下・麻痺させる手法のことだ。
・また、同様に個人情報の取引額もお手頃だ。「一概には言えませんが、データブローカーが、出会い系サイトの運営者に、氏名、年齢、住所、性別、メールアドレスなどの名簿を売る際、その取引額は1件につき、1~5円程度という話もあります」
・我々の個人情報がそれほどの安価で売られているとは、いささか悲しくなるが、その中で最も危惧すべきは、個人の医療データだという。医療情報があれば、サイバー犯罪者は、よりピンポイントで個人を狙い撃ちできるからだ。
・例えばかかりつけの医師を装ったメールアドレスから「○○さんの体調が心配なので、ご連絡しました」とメッセージが届き、そこに「食事の注意.xls」というExcelファイルが添付されていた場合、うっかり開くとウイルスに感染してしまうようなこともありえるだろう。 また、例えばアメリカなどでは、医療カルテには、髪や目の色、体格まで記載されていることも多いので、身体的特徴やDNAに関する情報まで筒抜けになってしまい、用途によっては「なりすまし」も容易にできてしまうのだ。
▽リアルの金融機関より仮想通貨交換業者が狙われる
・医療機関だけではなく、金融機関や仮想通貨交換業者も狙われている。一昔前は、ネットバンキング口座から現金が不正に引き出される被害が目立ったが、ここ最近、その矛先は仮想通貨に向けられているという。 今年1月、仮想通貨交換業者「コインチェック」から、580億円相当の仮想通貨NEMが流出し、それらはダークウェブ上で洗浄された後、全額が第三者に渡ってしまった。
・「この事件で、一層ダークウェブに注目が集まったと思います。中には摘発されている事例もあるのですが、犯罪者たちには足がつかないイメージを与えてしまったのではないでしょうか。今後もこういった犯罪は増えていくと予測しています」
・日本に限らず、今や世界中が、ダークウェブ上の犯罪に右往左往している。お上の力が及ばない以上、企業はどのような対策を講じればいいのだろうか。「企業がダークウェブ対策まで自前でやるとなると技術的にも費用的にも大変なので、外部のセキュリティー会社を使うのが現実的だと思います。まずは犯罪者たちが、自分たちが持っているどんな情報に興味があるのか、既に情報が外に漏れている可能性はないかといった、自社が置かれている状況を把握するところから始めるのがいいでしょう。あとは、セキュリティ会社と一緒にそういったリスクアセスメントを行うチームを社内に作ることをお勧めしたいですね」
・念のため忠告しておくと、もしネットリテラシーに自信がないのなら、間違っても安易にダークウェブにアクセスしようなどとは思わないほうがいい。会社のパソコンをウイルスに感染させ、上司にどやされた筆者から、僭越ながらの忠告である。
https://diamond.jp/articles/-/170674

第三に、セールスフォース・ドットコム シニアビジネスコンサルタント / エバンジェリスト の熊村 剛輔氏が5月31日付け東洋経済オンラインに寄稿した「日本人はダークウェブの危難をわかってない いつ日本企業が狙われてもおかしくない」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・昨年頃からサイバー犯罪に関係するニュースに「ダークウェブ(闇ウェブ)」という言葉をよく目にするようになった。それだけではなく、今や「相棒」(テレビ朝日系)などテレビドラマにまでダークウェブが登場している。
・最近になって急にダークウェブが語られるようになったのは、仮想通貨の影響が大きい。たとえば今年1月に仮想通貨業者である「コインチェック」から580億円相当の仮想通貨「NEM」が流出したが、この事件に関する報道においてもダークウェブが頻繁に語られていた。その理由は、犯人と思われる人物が盗んだ通貨をダークウェブで別の仮想通貨に交換していたと見られているからだ。
▽「ダークウェブ」とはいったい何か?
・では、このダークウェブとはいったいどういうものだろう。ダークウェブはよく「闇サイト」と混同されるが、まったく別のものである。 闇サイトはインターネットエクスプローラーやクロームのようなブラウザで閲覧可能でヤフーやグーグルといった検索エンジンなどでも参照できる「サーフェスウェブ」や、検索エンジンにはヒットしないが、ブラウザでアクセスできる「ディープウェブ」の中に存在しており、犯罪などの違法性の高い情報が掲載されたサイトを指す。
・一方のダークウェブとは、「匿名性を維持した通信が可能なネットワーク上で、自身を匿名化する特定のブラウザを用いて接続しないかぎり閲覧できないサイトなどが集まったネットワーク空間」のことを指す。これらのサイトは、サーバーの運営元などを特定することが非常に困難で、そもそもブラウザで閲覧することができない。また、検索エンジンで探し出すこともできない。いわばアンダーグラウンドなサイバー空間だ。
・そのためダークウェブは、違法取引やサイバー犯罪の温床となっている。ある調査によれば、ダークウェブ上に存在しているサイトの半数以上で何らかの違法取引が行われているという。たとえば薬物や武器、(盗まれた)クレジットカード番号やパスポートなどの売買だ。つい先日も、日本人の個人情報約2億件が中国語のダークウェブで販売されていたと報道された。こういった取引の決済手段として、(クレジットカードなどから素性が明らかになることを避けるために)仮想通貨が用いられている。
・これだけ見るとダークウェブは非常に閉ざされた空間であり、なかなかアクセスできない世界であるように感じられる。しかし実は、中に足を踏み入れること自体はそれほど難しくはない。利用者の素性と通信経路を隠すことができる「Tor(トーア)」や「I2P(アイツーピー)」と呼ばれるソフトウエアを用いることで、誰でもアクセスは可能になる。
・もともと方法さえわかっていれば、誰でもアクセス可能だったダークウェブ。そこに仮想通貨の認知が徐々に高まってきたことやサイバー犯罪がこれまで以上に大きく報じられるようになったことで、最近では初心者が興味本位でダークウェブの世界に入り始めているとも言われている。つまり、それだけダークウェブというものが多くの人に浸透し始めてきたということだ。
▽企業に与える影響は「情報漏洩」や「風評被害」がメイン
・ダークウェブのインパクトはビジネスの世界においても無視できないものになりつつある。もはやどの企業も「ウチは関係ない」とは言い切れない状況にあると言ってもいい。 昨年、米国のサイバーセキュリティ関連企業が発表したデータによれば、2017年度版の米フォーチュン500にリストされている企業(日本からはトヨタ自動車やホンダ、日本郵政、NTTなどがランクイン)はすべて何らかの形でダークウェブ上で言及がなされていると言われている。特に数多く言及されているのがテクノロジー系企業であるというのは想像に難くないが、金融企業やメディア、航空会社、流通小売企業など、幅広い業界、業種で言及がなされている。
・もちろんダークウェブ上で語られているからといって、それがそのまま何らかの危害に直結するわけではない。だが、ビジネスにインパクトを与える可能性のあるリスク要因であることは間違いない。ダークウェブ上で頻繁に語られているということは、それだけサイバー攻撃の標的にされる危険性も高いと考えられるし、情報漏洩や風評被害などの被害に発展する可能性も大いにある。
・実際、ダークウェブ上では世界規模のサイバー攻撃に用いられるようなマルウェア(不正かつ有害な動作を行うウイルスなど)が非常に多くやり取りされている。こういったマルウェアは世界中のハッカーたちの手によって日々改良が重ねられ、その攻撃力も増している。ダークウェブがハッカーたちの共同の制作環境になっている。
・このようなハッカーたちの活動は、マルウェアの制作や改良だけにとどまらない。今はダークウェブ上でサイバー攻撃の依頼を受け、ダークウェブを通じてメンバーを集め、依頼主から成功報酬を仮想通貨で受け取るようなことも行われているという。これは”HaaS(Hacking as a Serviceの略)”と呼ばれており、いわば制作から攻撃までを請け負う「サイバー攻撃のパッケージサービス」のようなものだ。
▽廃棄したパソコンから情報が漏洩するリスクも
・近年、ダークウェブではその取引でやり取りされるものにも変化が見え始めている。これまでよく取引がなされていた薬物や武器だけではなく、企業に関する機密情報が増えてきた。たとえば社員の個人情報や企業内でやり取りされるメールやファイル類などだ。これらのファイル類には経営幹部の会議に用いられるような機密が満載された資料なども少なくない。場合によっては企業の財務情報や取引先との契約書、さらには資金のやり取り、不正行為の隠蔽工作に関する文書やメールなどもやり取りされるケースがある。
・今や機密データが漏洩する原因はサイバー攻撃だけではない。むしろ最近になってダークウェブ上で多くやり取りされているのは企業が廃棄したパソコンから復旧されたデータだ。たとえば企業が廃棄したはずのパソコンが中古パソコン店などに流れ、それを購入した人が何らかの手でデータを復旧させ、それをダークウェブで販売しているようなケースである。あるいは、小遣い稼ぎや(リストラなどの)意趣返しを目的に意図的に機密データを盗み出し、ダークウェブ上のマーケットで売りさばくようなケースも少なくない。
・もともと特別に高いスキルや設備を要求されることもなく、誰でもアクセスできるうえに、その存在自体が徐々に広く知られるようになってきたことで、ダークウェブ上にこういった新たなマーケットが生まれるようになってきた。今後企業は今まで以上に、オンライン上の“脅威”に対して自衛していくことが必要になってくるだろう。
・自衛とは単にこれまでのように自社のシステムの防御を強固にするということだけではない。社員一人ひとりが情報セキュリティに対するリテラシーを高めることが必要だ。個人が興味本位でダークウェブに足を踏み入れることでリスクが増大している今、企業は、まずダークウェブ上でアンダーグラウンドな取引に手を染めるということ自体が違法であり、処分の対象になるということを周知する必要がある。
・さらにダークウェブからもたらされる脅威に対して“受け身”の対応だけではなく、自発的に動いていくことも求められる。そのためにはダークウェブ上で何が今起こっているかをきちんと把握し、次に自分たちにどういった危機が降り掛かってくるかを予測する仕組みが必要だ。実際にそういったサービスを提供する事業者も昨今拡大するニーズに伴い増えてきている。
・このようなダークウェブ上の(簡単には気づかれない)情報のやり取りを早い段階で察知することで、たとえば“HaaS”を利用したサイバー攻撃だけではなく、爆破予告や殺人予告、あるいは風評被害や名誉毀損を引き起こすような事案の抑止にもつながる。
・ダークウェブで行われていることは、もはや「知らない」では済まされない。企業にとって自分たちを守るためにも、その存在を認識し、きちんとしたアクションを取る必要があるのだ。
https://toyokeizai.net/articles/-/222841

第一の記事は、『世界に衝撃を与える発表手法は、アップルの強さの源泉でもある』、というアップルならではの情報管理の厳しさを背景にしたもので、そんなブランド力やマーケティング力がない殆どの日本企業にとっては、縁遠いことかも知れないが、サプライ・チェーン間での情報共有自体は広がっているので、『今回の問題は、ほぼすべての企業が活用している、サプライヤー管理に新たな課題を示しているといってよい』、というのはその通りだろう。
第二の記事で、『普通にたどり着けるようなサイトは、実はネット空間のわずか1%程度に過ぎず、残る99%は「ディープウェブ」と呼ばれている・・・このディープウェブのさらに深いところにダークウェブは存在するのだ』、とあるが、ディープウェブのうちどの程度がダークウェブなのかまで記してないのが、若干残念だ。 『たった5ドルでサイバー攻撃を代行』、というのはここまできたかと、改めて驚かされた。
第三の記事で、「闇サイト」、「サーフェスウェブ」、「ディープウェブ」、「ダークウェブ」の違いがよく理解できた。ただ、ディープウェブのうちどの程度がダークウェブなのか、についてはここでも触れてない。『最近では初心者が興味本位でダークウェブの世界に入り始めているとも言われている』、ということであれば、そうした初心者を対象にした犯罪も起こる懸念があろう。『”HaaS(Hacking as a Serviceの略)”と呼ばれており、いわば制作から攻撃までを請け負う「サイバー攻撃のパッケージサービス」のようなものだ』、いやはや、こんな商売まで登場したとは、人間とは抜け目ないものだ。『最近になってダークウェブ上で多くやり取りされているのは企業が廃棄したパソコンから復旧されたデータだ』、廃棄する際にかなり厳重なデータの消去を行っても、復元されてしまうということなのだろうか。企業にとって、『“受け身”の対応だけではなく、自発的に動いていくことも求められる』、というのはその通りなのだろう。大変な時代になったものだ。
タグ:過去と同じようなワクワクする期待を消費者に抱かせるために今回の処置が必要だったのである 正式発表会は、事前にリークされた情報の確認の場と化しており、従来の驚きや感動が少なくなってしまったのだ 世界に衝撃を与える発表手法は、アップルの強さの源泉でもある 逮捕された人の中には、アップルの社員だけではなく、サプライヤーの従業員も含まれているとされる 29人の社員が情報漏えいをしたことが判明し、12人が逮捕 「アップルの従業員が逮捕される理由」 日経ビジネスオンライン 牧野 直哉 (その4)(アップルの従業員が逮捕される理由、麻薬・銃器売買からサイバー攻撃代行まで 「ダークウェブ」の実態、日本人はダークウェブの危難をわかってない いつ日本企業が狙われてもおかしくない) サイバー犯罪 情報セキュリティー 脅威に対して“受け身”の対応だけではなく、自発的に動いていくことも求められる 最近になってダークウェブ上で多くやり取りされているのは企業が廃棄したパソコンから復旧されたデータだ 企業に関する機密情報が増えてきた ”HaaS(Hacking as a Serviceの略)”と呼ばれており、いわば制作から攻撃までを請け負う「サイバー攻撃のパッケージサービス」のようなものだ 企業に与える影響は「情報漏洩」や「風評被害」がメイン 最近では初心者が興味本位でダークウェブの世界に入り始めているとも言われている 仮想通貨が用いられている 取引の決済手段として ダークウェブ上に存在しているサイトの半数以上で何らかの違法取引が行われている 違法取引やサイバー犯罪の温床 匿名性を維持した通信が可能なネットワーク上で、自身を匿名化する特定のブラウザを用いて接続しないかぎり閲覧できないサイトなどが集まったネットワーク空間 ダークウェブ 「ディープウェブ」 「サーフェスウェブ」 闇サイト ダークウェブで別の仮想通貨に交換 580億円相当の仮想通貨「NEM」が流出 コインチェック 「相棒」(テレビ朝日系)などテレビドラマ 「日本人はダークウェブの危難をわかってない いつ日本企業が狙われてもおかしくない」 東洋経済オンライン 熊村 剛輔 外部のセキュリティー会社を使うのが現実的 最も危惧すべきは、個人の医療データ たった5ドルでサイバー攻撃を代行 特殊なブラウザをインストールし、その先のネット空間にアクセスすると、そこにしか表示されないサイトが膨大に存在する Tor Browser ディープウェブのさらに深いところにダークウェブは存在 検索エンジンを用いる。 しかし、こういった手段で普通にたどり着けるようなサイトは、実はネット空間のわずか1%程度に過ぎず、残る99%は「ディープウェブ」と呼ばれている 「麻薬・銃器売買からサイバー攻撃代行まで、「ダークウェブ」の実態」 ダイヤモンド・オンライン 今回の問題は、ほぼすべての企業が活用している、サプライヤー管理に新たな課題を示しているといってよい 意図しない流出の防止 情報共有時の対処
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

自動運転(その2)(これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国 VWの不正に懲りて法整備を進める欧州、 ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転 業界は足元を見つめ直せ) [科学技術]

自動運転については、昨年8月7日に取上げた。今日は、(その2)(これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国 VWの不正に懲りて法整備を進める欧州、 ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転 業界は足元を見つめ直せ)である。

先ずは、作曲家=指揮者 ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督で東大助教授の伊東 乾氏が3月23日付けJBPressに寄稿した「これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国、VWの不正に懲りて法整備を進める欧州」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・懸念されていた事態が現実のものとなってしまいました。 米国アリゾナ州で、ウーバーが実施していた自動運転実験で事故が発生し、犠牲者が出たのです。 報道によると、現地時間の3月18日午後、アリゾナ州テンピ近郊で実施されていたウーバーの試験運転走行中、横断歩道ではない場所を自転車を押して渡っていた女性が車に接触してしまいました。 ウーバーの試験車は完全自動運転モード中で、減速した形跡は全くなく、時速約65キロで進行、歩行者をはねてしまったという経緯であるようです。
・自動運転モードとはいえ、当然ながら試験車には同乗者がありました。しかし、危機回避の適切な行動は取られなかった。 ウーバーはただちに、カリフォルニア州サンフランシスコやアリゾナ州フェニックス、またカナダのトロントなどで実施していた自動運転車の試験走行をすべて中止しました。
・米国ではカリフォルニア州など、すでに規制緩和が進んで自動運転車の公道走行が部分的に許可され始めたエリアもあり、今回の事態は大きな波紋を投げかけています。 非常に大まかに言って、現状の「自動運転」は自動車が勝手に走行するという水準にあり、これはモノレールその他の軌道交通機関では、すでに当の昔に実現されていることで、実は取り立てて問題にするようなことではありません。
・日本国内でも、博覧会会場などとして設定された「未来交通」の路線を、駅から駅へ、自動的に運転する路線が運行されています。 これらの特徴は、軌道上に歩行者やほかの車などがいないこと、ホームドアなどで厳密に乗客と軌道とは仕切られ、十分な安全が確保されているということでしょう。
・逆に言えば、既存のモノレールなどの路線では、センサーによって危険を感知し、自動的に停車する装置などは取りつけられているはずです。 これはJR線などでもときおり経験することでしょう。線路内に人が進入した可能性がある危険信号を感知しましたので列車は急ブレーキをかけました、という車内アナウンスを耳にしたことがある人は少なくないはずです。
・この場合、JR線でも新都市交通でも、極めて限られたエリア、決まった軌道上の特定のチェックポイントで危険信号が感知されたとき「急停止」その他の安全アクションが取られることになります。 逆に言うと「想定外」のリスク、突然横方向から歩行者や自転車が飛び込んで来るといった事態は、モノレールなどの場合はまず発生しないので、そのようなセンサーもリスク対策も一切取られていません。 対策や考慮の対象外ということになります。
・今回のウーバー事故は、報道される状況証拠から、自動運転車が全く歩行者やリスクを感知しないまま自動的に進行したものと思われます。何も考えずに猪突猛進すれば、前方の物体に衝突するのが当然で、事故は必然的に起きたと言うしかありません。 
・すでに発生しているテスラの自動運転車事故も、今回のウーバー事故もそうですが、商品化を焦ったり、実験成功の情報発信で企業資産価値を上げたり、という拙速と言うか姑息とさえ言える経営判断によって事故が起きてしまっている。 危険回避センサー技術という観点では、いまだモノレール程度の自動運転と大差ない代物を、広い国土を利用してあちこちの公道で走らせ始めているわけです。
・かつ「物議をかもす」程度の報道からも明らかなとおり、米国やカナダでは、自動運転に伴う事故リスクや、そこでの保険商品のあり方、法規制その他の落ち着いた制度設計の議論がほとんどなされていません。  何かと米国に右向け右のどこかの国でも、そんな話はついぞ耳にしないでしょう。
・すなわち、自動運転車が何らかの事故を引き起こしたとき、どのような責任が問われるか。リスクに備えてどのような法制度や、新たな保険商品を準備すればよいか・・・。 一部省庁の専従には意識の高い人がありますが、国全体として議論の期が熟しているとは到底言えません。 これを強調するのは、本連載でも今まで幾度も記してきたように、ドイツを中心にEUでは自動運転に関する法制度、もっと言えば、AI駆動されるシステムが、何らかの被害を人に与えた場合の責任の所在を問う「ロボット法」が、大枠すでに確立されているからにほかなりません。
▽責任主体としての「ロボット法人」
・EUでは「ロボット法人格」を認める法制度整備が急速に進んでいます。 まるで手塚治虫のマンガ「鉄腕アトム」のような話と言っても、すでにいまの若い世代には通じないのかもしれません。 人間の心を持つロボット少年アトムの悲劇を描いた原作マンガは、テレビアニメーションとしては軽い冒険活劇としてヒットしました。
・しかし、もはや漫画の中の世界ではなく、もっと落ち着いてリアルに考えるべき対象です。 例えば、福島第一原子力発電所事故が発生し、責任主体として東京電力という「法人格」が、重い司法上の責任を問われている。これは全く普通です。 しかし、東京電力さんという人がいるわけではなく、切れば血が出る生身の体があるわけではない。 でも東京電力には資産があり、損害賠償の必要が発生すれば、会社がその主体として責任を負うことになる。もちろん、並行して企業の経営に責任をもった生身の個人が訴追される場合もあり得る。
・全く同様のことを、一定以上自立的に作動するシステムに関しても、それ自体を「ロボット法人」として責任の主体とみなす必要があるという、手堅い判断をEU~ドイツはすでに下しています。  自動運転車はその典型として分かりやすいですが、ほぼ自動的に動くという意味では、産業用ロボットなどの自動システムの方が、2018年時点ですでによほど多く、実用化されています。
・今回の事故は、ウーバーの試験走行ですから、責任は全面的に会社にあると判断される可能性が高いでしょう。 しかし、自動運転中とはいえ、その車に乗っていた運転しない運転者、手動モードに切り替えたなら、自分でハンドルを操作して危険を回避できた可能性のある人には、どのような責任がかかるのでしょうか? ここで言う「責任」は、哲学的な抽象論ではなく、損害賠償であればもっとリアルな「過失割合」であり、行政上、司法上の責任であれば処分の対象と認められるか、という値引きのない話にほかなりません。
・さらに、これが一般の路上交通で発生したものとすれば、どうなるでしょう? 例えばT社の自動運転車は、基本すべてT社のAIシステムが運転しているものとしましょう。それで発生した事故は、すべてT社の責任になるのか? そんな制度設計にしたら、経営が成り立たないのは火を見るより明らかでしょう。 どこかで適切に責任の主体を切り離し、その範囲でリスクを分散させ、また損害賠償などの必要が出た場合には、そこに責任の主体を限局する必要がある。そのような意味で、「EUロボット法」は議論されています。
・分かりやすく言えば、原発で事故が起きれば、裁判の結果、電力会社という「法人」の資産で賠償が行われるように、自動運転車やスマートファクトリーの産業用ロボットが事故を起こした場合、「自動運転車法人」や「産業用ロボット法人」が自分自身の資産をもって責任を負う。 具体的には保険制度などが活用され、従来とは違うAI社会のエコシステムを円滑に動かしていく、そういう議論が、早くから進んでいます。
・たまたま私は大学の公務で、ミュンヘン工科大学などを中心とする、こうした「自動運転倫理委員会」メンバーと年来の共同プロジェクトを進めており、関連の状況は一通り承知しています。 例えばドイツでは、自動運転車の安全システムで、「あらかじめ、特定の人を犠牲にするようなプログラム」を組んだ人がいた場合、「そのシステムを組み上げたシステムエンジニア個人を含め刑事責任が問われる」という、著しく重い判断がすでに下されています。
・通常の路上交通では、リスクは常に複数存在します。対向車であったり、後続車であったり、前後左右複数方向からの歩行者であり自転車でありバイクであり、また運転者自身や同乗者であり・・・。 今回の例では、何のセキュリティも施されていない拙劣な車で事故が起きました。2つ以上のリスクが重なる場合、そのどれか1つ、あるいは複数でも、必ず犠牲になるものが決まっているというソフトウエアを組んだ人があれば、それに起因して発生した事故について、民事刑事の責任を負うという判断です。
・現場の運転と何ら関係しない、ウーバーで期間開発に関わったシステムエンジニアにも法的な責任が問われるという重い社会ルールが、ドイツ・欧州ではすでに準備されています。 どうしてそんなことになってしまったかと言うと、1つの原因はフォルクスワーゲンの排気ガス安全基準ごまかしの大型犯罪で、国際社会にドイツ産業界が面目を丸潰しにした経緯が関係しています。
・あの時点では、誰が見ても不正にしか使えないあのシステムを作ったボッシュにも、そこで請け負ってシステムを作ったエンジニアにも、限られた責任しか問うことができなかった。 でも、犯罪以外に使いようがないことは、関連した人がすべて知り、それこそ忖度し合いながら、企業秘密として伏せられていた。 二度とこれを繰り返してはならないという決意をもって「システム開発者も牢屋に入れられ得る」という厳しい法制度準備が進んでいるわけです。
・ 翻って、米国にはそういう制度はおよそ存在していません。 欧州では、重い責任とともに、慎重な自動運転の実用化が一歩一歩検討され、致命的な事故はいまだ発生していませんし、米国では気軽に自動運転車の実用化が叫ばれ、今回の事態を含め、かなりの高頻度でアクシデントが発生しています。
・別段「規制緩和はよろしくなく、重い規制がすばらしい」などと一面的に言うつもりはおよそありません。 しかし、この件に関する限り実用化・商品化を焦る米国企業の拙劣さは隠しようもなく、またそうした拙速な開発を煽るベンチャーキャピタルなど、経営主体より後方の加速圧にも、間違いなく道義的な責任はあると言わねばならないでしょう。
・AIだ 自動運転だ 夢の未来社会だ といったばら色の絵図を描くのは結構なのですが、それに見合うだけの守りと足腰を備え、責任をもって国家百年の計として自動運転を位置づける欧州と、何もそうしたことは考えず「神の手」に任せたことにしやすい米国のコントラストが非常に際立っているように思います。 関連の推移に注意しつつ、日本での自動システム、その導入と保険商品などを含む制度設計、真剣に考えてみてはいかがでしょうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52645

次に、ジャーナリストの井元康一郎氏が4月11日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転、業界は足元を見つめ直せ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米国でのウーバーによる自動運転実験車両の死亡事故は、自動運転技術の開発競争に大きな衝撃を与えた。今後、開発競争の行方はどうなるのか、あるいはどうすべきなのか。そのポイントを整理してみた。
▽自動運転の開発競争に“冷や水” ウーバーによる実験車の死亡事故
・このところ激化の一途をたどる自動運転の開発競争に“冷や水”をぶっかけるような事態となったアメリカ・アリゾナ州でのUber(ウーバー)自動運転実験車の死亡事故。 捜査の結果、事故自体は人為的なミス、技術パッケージの“見立ての甘さ”などによるところが大きいことが判明しつつある。とはいえ、自動運転の技術開発のペース自体がこの事故によって鈍ることはないであろう。
・一方で、この事故は自動運転車をどう実用化するか、また社会にどうインストールしていくか、といった課題を浮き彫りにした。 「クルマの自律走行技術の開発は、もともとは安全技術の発展形だったのですが、最近は新ビジネスの創出が主なモチベーションになっている観が強かった。自動車メーカー側にとっては他社に先んじて技術を確立して先行者利益を得ることが第一目的なのですが、交通弱者の救済、商業ドライバー不足の解消など、社会的意義を口にしやすい分野だったので、自動運転の開発が正義という風潮が余計に強まった。今回の事故を、自動車業界が『今後何をやっていけばいいのか』ということを、頭を冷やして考えるきっかけにしなければ、犠牲が報われない」 自動運転開発に関わる情報通信系エンジニアはこう語る。
・実際、近年の自動運転に関し、自動車メーカーやITプラットホーム企業が繰り出すアジェンダは急進的なものが多かった。
▽フォードやGMが相次いで将来の完全自動運転車発売を宣言
・アメリカのフォードは2016年に、「2021年までにタクシー向けを想定したステアリングレスの完全自動運転車をリリースする」と宣言。するとGMは、ウチは2019年に発売すると応酬。しかもその自動運転車はシボレー「クルーズ」がベース。シティコミュータなどではなく、本格乗用車で出すというのだ。
・限定エリアでなく、公道であればどこでも走行可能なクルマが実現できればとてつもなくすごい話だ。カーシェアを無人でユーザーのところに送り届けたり、トラックを無人で走らせたり、免許を持たない人がクルマで自由に移動することを可能にしたりといった新ビジネスはすべて、自動運転の「レベル5」、すなわち完全な自動運転車が完成しなければ実現しないものだ。
・安全が担保され、しかも低コストなレベル5カーが出てくれば、それはモビリティにおける壮大なパラダイムシフトになるだろう。 しかし、業界ではウーバーの事故の前からフォードやGMが打ち出したビジョンの実現性については懐疑的な見方が少なくなかった。日系メーカーの技術系幹部は欧米企業が次々に楽観的なアジェンダを発表するのを見て、次のように語っていた。 「不確定要素の多い道路上で完全自動運転を実現するには、オンロードでのデータ収集が不可欠なのですが、その状況は刻々変わる。たとえば季節によって街路樹の枝が伸び、葉をつけたりといった風景の変化ひとつ取っても、それが何なのかをAIが自分で知ることができるわけではありません。そして、その変化が思わぬ事態を引き起こす可能性もある。データを教え込み、それをもとにAIが深層学習で応用範囲を広げたとしても、次に待ち受けている何かを察知できないうちは、自動運転車は社会の中でコンフリクトの火種にしかならない」(前出のITエンジニア)
▽自動運転の開発ブームの中で あおりを食った日本企業
・アメリカでは10年ほど前から自動運転が「未来の高付加価値分野になる」という期待が盛り上がっており、それを実現するための「規制緩和こそ正義」という風潮が強まっていた。リスクについては「機械が時に間違いを犯すとしても、人間よりはずっと着実だ。それに異を唱えるのは馬鹿者」といった物言いで封じ込んできた。 多くのメディアもこのムーブメントに乗った。
・AIの深層学習技術が長足の進化を遂げていることを根拠に「完全自動運転はすぐにでも実用化できる」という論説があふれ、それが実現したときの“バラ色の物語”を流した。 こういったトレンドの中で、あおりを食ったのは日本企業である。 日本陣営は自動運転技術に関する特許保有が世界で最も分厚いトヨタ自動車、早い段階から自律走行の実走行データを鋭意収集していた日産自動車、ロボティクス技術や機械と人間のコミュニケーションに関する研究で先んじていたホンダ――と、ことクルマの制御に関しては世界最先端だった。
・日本メーカーが長い間「自動運転技術は事故ゼロを目指すためのもので、技術的な障壁を無視して完全自動が自己目的化するのはよくない」というスタンスを取ってきたのは、技術でリードするがゆえにその難しさ、リスクを死ぬほど知っていたからにほかならない。 最近になってトヨタをはじめ主要メーカーが自動運転に次々と参戦したが、「技術の飛躍への対応を誤らないようにということもあるが、何よりも遅れているというイメージをこれ以上持たれてはかなわないという意味合いが強い」(トヨタ関係者)という。決して宗旨替えしたわけではないのだ。
▽ウーバーのことは「なかったことにしたい」
・日本陣営のなかで自律走行に最も前向きだったのは日産自動車だ。 DeNAと自動運転技術やコネクテッド技術を使った新サービスの開発で提携したりと、基本戦略は今も大きくは変わっていない。だが、日産のBMI(ブレイン・マシン・インターフェース。脳と機械の間でコミュニケーションを取る技術)開発の中核人物のひとりであるルチアン・ギョルゲ氏は「我々はハンドルのないクルマを作るつもりはない」と断言する。
・「クルマをただ人や荷物が運ばれるためのものにはしない。人間の思考は脳波から読み取ることが可能だと思っている。それができれば人の認知から操作までのタイムラグをなくすることができ、クルマはもっと安全でファンなものになる」(ギョルゲ氏))
・機械が100パーセント、自動的に人間の意思や願いを叶えてくれるということはなく、あくまで人間が主役であるべき、また人間には人間の長所があり、機械と人間が調和することでより高い安全、楽しさを実現させられるという思想だ。人が運転者のいない箱にただ運ばれていくという今日の自動運転の考え方に対するアンチテーゼとも言える。
・日産以外の日本メーカーも、基本的には人間と機械の調和を高めていくべきで、理想的な自動運転はその延長線上にあるという考え方をしている。そのほうが安全で、かつパーソナルモビリティならではの価値を提供できると考えているからだ。その知見に一定の理とバリューがあったことを、ウーバーの事故は“最悪の形”で証明した格好だ。
・記者をやっているアメリカの知人によれば、アメリカではウーバーの事故を境に、自動運転の実用化という名目を唱えれば何でもありという風潮に危惧を抱きながら、これまで抑圧されてきた人たちからの異論が“ここぞ”とばかりに噴出し、業界はほとぼりが冷めるのをじっと待っている状況だという。
・「できればウーバーのことは『なかったことにしたい』という気運を強く感じる。ウーバーがルーズだったから事故が起こったので、本来は起こり得なかったことなのだ、と。だが、できるだけ簡単なシステムで最高のパフォーマンスを実現するというウーバーのアプローチは、技術開発の考え方としては全然間違ってはいない。それだけ難しいことをやっているという自覚が、業界全体として欠如していたのが浮き彫りになっただけだ。なかったことにすれば彼らは一安心だろうが、そのうちもっと大きな問題が起きる。自動運転の技術開発自体は止まらないとしてもね」
▽自動運転はどうあるべきか ポリシーを見直すべき
・テストカーとはいえ、死亡事故が起こってしまった今、自動運転はどうあるべきかというポリシーを今一度しっかり見直すべきだ。 まずは技術的な側面。完全自動運転は人間のほうが得意なことまで全部機械任せにするものだが、人間がリスクに気がついてもハンドルやブレーキがなく操作不能というのは、やはりまずい。
・突発的な事態に対処できる物理的な余裕の有無についてはともかく、少なくともリスクの認知の段階で機械が100%、リスクを察知できないうちは、人間と機械が互いに助け合うことでフェイルセーフを図るのが最も安全だろう。 また、自動運転をどういうところから導入するかについても再考が必要だ。トヨタのエンジニアは「まずは高速道路や決められたエリアなど、リスクが限定された環境で導入すべき」と言う。
・前述のように完全自動運転車の実用化について、自動車業界は交通弱者の救済や物流の無人化といった社会的意義を強調しているが、開発に前がかりになっていた最大の動機は技術の囲い込みや新ビジネス創出といったそろばん勘定だ。不可能へのチャレンジは技術進化に欠かせないが、本音と建前が乖離しすぎると往々にしてトラブルが起こる。投資家へのアピールのために無理なアジェンダを提示するのは少し控えたほうがよかろう。
▽自動運転技術はこれで終わったりはしない
・自動運転の“進化のさせ方”についても決着した観がある。 システムが対処できなくなったらアラートを出してドライバーに操作を渡す自動運転レベル3はやはり危ない。ドライバーがとっさに対応できるとは限らないし、システムがリスクを見逃していた日には目も当てられない。少なくとも一定条件下では無条件にシステム側が事故の責任を負う、いわゆるレベル4が自動運転のマストと考えたほうがいいだろう。
・素晴らしい新技術が萌芽的に出てきたとき、社会は当然その技術の進展に期待を寄せる。モノづくりに矜持を抱くメーカーがその期待に応えようとするのは、国によらず本能のようなものである。が、それがいつの間にか投資家におもねることにすり替わってしまい、無茶なアジェンダの提示合戦を繰り広げてしまうパターンに陥るとまずい。
・数年前の欧州におけるディーゼルの排出ガス不正もそうだったが、正義を振りかざしながら“無理筋”を通そうとしているときに限って、何らかの問題をワンパンチ食らっただけで腰砕けになってしまうものだ。ウーバーの事故でいきなり自動運転関連企業が静かになってしまったのもその類である。
・しかし、自動運転技術はこれで終わったりはしない。 ニーズは確実にあるし、場合によってはまったく新しい交通の景色を見せてくれるようになるかもしれない。そういう技術の開発であるからこそ、プレーヤーは広げた“風呂敷”が実情に沿ったものか、それとも“虚栄心”が勝っているかどうかを常に自省し、本筋を踏み外さないようにする理性を大事にすべきだ。
http://diamond.jp/articles/-/166660

第一の記事で、 『自動運転モードとはいえ、当然ながら試験車には同乗者がありました。しかし、危機回避の適切な行動は取られなかった・・・今回のウーバー事故は、報道される状況証拠から、自動運転車が全く歩行者やリスクを感知しないまま自動的に進行したものと思われます。何も考えずに猪突猛進すれば、前方の物体に衝突するのが当然で、事故は必然的に起きたと言うしかありません』、どう考えてもお粗末過ぎる事故だ。 『テスラの自動運転車事故も、今回のウーバー事故もそうですが、商品化を焦ったり、実験成功の情報発信で企業資産価値を上げたり、という拙速と言うか姑息とさえ言える経営判断によって事故が起きてしまっている』、というのはさもありなんだ。 『自動運転中とはいえ、その車に乗っていた運転しない運転者、手動モードに切り替えたなら、自分でハンドルを操作して危険を回避できた可能性のある人には、どのような責任がかかるのでしょうか?』、無論、運転者にも責任はあるが、自動運転ということで、気が緩んでしまいがちになるのは、人間の性ともいえる。 『AIだ 自動運転だ 夢の未来社会だ といったばら色の絵図を描くのは結構なのですが、それに見合うだけの守りと足腰を備え、責任をもって国家百年の計として自動運転を位置づける欧州と、何もそうしたことは考えず「神の手」に任せたことにしやすい米国のコントラストが非常に際立っているように思います』、日本としては堅実な欧州スタイルでいくべきだろう。
第二の記事で、 『今回の事故を、自動車業界が『今後何をやっていけばいいのか』ということを、頭を冷やして考えるきっかけにしなければ、犠牲が報われない」』、というのは正論だ。 『日本メーカーが長い間「自動運転技術は事故ゼロを目指すためのもので、技術的な障壁を無視して完全自動が自己目的化するのはよくない」というスタンスを取ってきたのは、技術でリードするがゆえにその難しさ、リスクを死ぬほど知っていたからにほかならない。 最近になってトヨタをはじめ主要メーカーが自動運転に次々と参戦したが、「技術の飛躍への対応を誤らないようにということもあるが、何よりも遅れているというイメージをこれ以上持たれてはかなわないという意味合いが強い」(トヨタ関係者)という。決して宗旨替えしたわけではないのだ』、というのいで、必ずしも日本メーカーが立ち遅れている訳ではないことを知って、一安心した。 『システムが対処できなくなったらアラートを出してドライバーに操作を渡す自動運転レベル3はやはり危ない。ドライバーがとっさに対応できるとは限らないし、システムがリスクを見逃していた日には目も当てられない。少なくとも一定条件下では無条件にシステム側が事故の責任を負う、いわゆるレベル4が自動運転のマストと考えたほうがいいだろう』、 『モノづくりに矜持を抱くメーカーがその期待に応えようとするのは、国によらず本能のようなものである。が、それがいつの間にか投資家におもねることにすり替わってしまい、無茶なアジェンダの提示合戦を繰り広げてしまうパターンに陥るとまずい』、などは説得力がある。
タグ:自動運転 (その2)(これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国 VWの不正に懲りて法整備を進める欧州、 ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転 業界は足元を見つめ直せ) 伊東 乾 BPress 「これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国、VWの不正に懲りて法整備を進める欧州」 ウーバー 自動運転実験で事故が発生し、犠牲者が出たのです テスラの自動運転車事故 商品化を焦ったり、実験成功の情報発信で企業資産価値を上げたり、という拙速と言うか姑息とさえ言える経営判断によって事故が起きてしまっている 危険回避センサー技術という観点では、いまだモノレール程度の自動運転と大差ない代物を、広い国土を利用してあちこちの公道で走らせ始めているわけです EUでは「ロボット法人格」を認める法制度整備が急速に進んでいます AIだ 自動運転だ 夢の未来社会だ といったばら色の絵図を描くのは結構なのですが、それに見合うだけの守りと足腰を備え、責任をもって国家百年の計として自動運転を位置づける欧州と、何もそうしたことは考えず「神の手」に任せたことにしやすい米国のコントラストが非常に際立っているように思います 井元康一郎 ダイヤモンド・オンライン 「ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転、業界は足元を見つめ直せ」 日本メーカーが長い間「自動運転技術は事故ゼロを目指すためのもので、技術的な障壁を無視して完全自動が自己目的化するのはよくない」というスタンスを取ってきたのは、技術でリードするがゆえにその難しさ、リスクを死ぬほど知っていたからにほかならない 近になってトヨタをはじめ主要メーカーが自動運転に次々と参戦したが、「技術の飛躍への対応を誤らないようにということもあるが、何よりも遅れているというイメージをこれ以上持たれてはかなわないという意味合いが強い」(トヨタ関係者)という。決して宗旨替えしたわけではないのだ
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

電気自動車(EV)(その4)(テスラが明かした「モデル3」生産地獄の実態、窮地のテスラに立ちはだかる自動車トップ 2018年から本格化する熾烈なEV競争の先は?、ベンツ・BMW・VWも本音では「EV本格普及はいまだ不透明」と見る) [科学技術]

電気自動車(EV)については、1月17日に取上げたが、今日は、(その4)(テスラが明かした「モデル3」生産地獄の実態、窮地のテスラに立ちはだかる自動車トップ 2018年から本格化する熾烈なEV競争の先は?、ベンツ・BMW・VWも本音では「EV本格普及はいまだ不透明」と見る)である。

先ずは、2月10日付け東洋経済オンライン「テスラが明かした「モデル3」生産地獄の実態 ロケットのようにうまく軌道に乗らない」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・世界最大の輸送能力を持つ大型ロケットが現地時間の2月6日、米フロリダ州のケネディ宇宙センターから発射された。 成功させたのは、イーロン・マスク氏が設立した宇宙輸送関連会社スペースXだ。ロケットの先端にはマスク氏がやはりCEOを務めるテスラのEV(電気自動車)「ロードスター」が乗せられ、火星の軌道に投入された。現在は同車に搭載されたカメラがとらえた宇宙の様子がネットに配信され、大きな話題になっている。 一方、なかなか軌道に乗らないのは、マスク氏の本業、EV生産だ。
▽2017年度は約2150億円の赤字
・翌7日に発表されたテスラの2017年度通期決算は、最終損益がマイナス19億6140万ドル(約2150億円、前年同期比で約13億ドルの悪化)と、過去最大の赤字となった。高級車の「モデルS」や「モデルX」は好調だったが、昨年7月からスタートしたEV「モデル3」の量産立ち上げに今なお苦戦し、先行投資がかさんでいる。
・モデル3はテスラ初の量産型EVで価格は3.5万ドルから。2017年7月に出荷を始めたが、納入台数は7~9月期がわずか260台、10~12月も1500台にとどまった。週5000台の生産目標は、当初2017年末までに達成する計画だったが、今年6月末までに延期された。延期は今回で2度目になる。
・ボトルネックは大きく2つある。電池パックと車体の組み立て工程だ。 モデル3の電池生産は2017年1月、米ネバダ州に開所した世界最大の電池工場、ギガファクトリーで行われている。作られているのは、パナソニック製の円筒型リチウムイオン電池「2170」だ。パナソニックが作った電池のセルを、テスラがモジュール化(組み立て)する。
・この組み立ては、ロボットを活用した完全自動化ラインで行う予定。しかしこの4つの工程のうち2つの立ち上げを委託していた業者が機能せず、結局テスラ自らが行うことになった。 そのため、当面は手作業での組み立てを余儀なくされた。これには自信家のマスク氏も「われわれがいささか自信過剰になりすぎていた」と肩を落とす。車体組み立ての行程においても、同じく部品の自動組み立てのスピードが上がらない。
・そこでテスラは、2016年に買収したドイツの自動生産設備大手グローマンのチームを動員して、自動化工程に人を配置する半自動化ラインを導入。完全自動化が可能になるまでの「つなぎ」として活用することにした。 決算発表の当日に行われた電話会見でマスク氏は、「モデル3の苦戦はあくまで時間の問題。全体計画の中で現在の誤差は極めて些末なことだ」と強気の姿勢を崩さなかった。だが一方で、自ら「生産地獄」と表現する現状について、「こんな経験は二度としたくない。(11月の)感謝祭の日ですら、ほかのテスラ社員と一緒にギガファクトリーにいた。週7日、みんながバケーションを楽しんでいるときもだ」とも漏らした。
▽パナソニックに「テスラリスク」
・モデル3を巡る想定外の苦戦は、テスラに電池を独占供給するパナソニックにも影を落とす。5日に発表した2017年4~12月期(第3四半期)決算において、同社はこの生産遅延の影響で売上高で約900億円、営業損益で約240億円のマイナス影響を受けたと公表した。この結果、2次電池事業は54億円の営業赤字に沈んでいる。
・業績全体は増収増益で通期計画を上方修正しており、いたって好調。だが、成長事業と位置づける自動車電池事業の最大顧客はテスラだ。その先行きには一抹の不安がよぎる。2017年12月には、トヨタ自動車からの呼びかけで車載電池事業における協業検討を発表したが、それが結果的に「テスラリスク」をやわらげることとなった。
・パナソニックの津賀一宏社長は、1月上旬にラスベガスで開かれた家電見本市への参加後にギガファクトリーを訪問し、「現状を見てテスラ社との打ち合わせをする」と語った。打ち合わせの結果、どのような方針で合意したのかが気になるところだ。
・最終赤字が続く中で、テスラの財務リスクは膨らんでいる。2017年度のフリーキャッシュフロー(企業活動から生み出される余剰資金)は約34億ドルの赤字と、前年の倍以上に拡大。自己資本比率も15%を下回る。  これまでは新モデルの購入予約金と、増資と社債といった市場からの資金調達により「錬金術」のごとく資金を生み出してきたテスラ。期末時点の保有現金も、約33億ドルと前期からほとんど変わっていない。さらに1月末には、モデルXとSのリース債権を流動化し、5億4600万ドルを調達したことを発表した。
▽ツイッターはロケットの話題一色
・ただ同社は、今後もモデル3のための設備投資を拡大する必要がある。さらに今回、現在市場が盛り上がるSUV(スポーツ用多目的車)型の「モデルY」を投入するために、2018年末までに新たな投資を行うことも発表している。その程度によっては、資金繰りが苦しくなる可能性もある。決算発表翌日の株価は、市場が全面安だったこともあるが、2割減と大きく値を下げた。
・マスク氏は、モデル3の週次生産5000台実現を前提に、2018年度中の営業黒字化を宣言する。ただ、市場関係者の中には「生産台数はその半分程度になるのでは」という見方もある。 テスラは長期計画を掲げたうえで、そこから逆算して具体的な計画を立てる。モデル3の量産は、マスク氏が2006年に描いたマスタープランの最終ステップになる。だが、同氏がいうところの「誤差」に消費者や投資家、そしてサプライヤーがどこまで付き合えるかは別の問題だ。
・生産設備の不具合が露呈した10月頃には、ギガファクトリーの立ち上げで工場に泊まり込んだ様子などをツイッターで投稿していたマスク氏。だが、現在の同氏のツイッターはロケットの話題一色。足元における量産化への進捗は、うかがい知ることができない。
http://toyokeizai.net/articles/-/201504

次に、本田技術出身で名古屋大学客員教授/エスペック上席顧問の佐藤 登氏が2月8日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「窮地のテスラに立ちはだかる自動車トップ 2018年から本格化する熾烈なEV競争の先は?」を紹介しよう(▽は小見出し、+は①、②などの中での段落)。
・昨年後半から、米テスラの「モデル3」が生産地獄に陥っている状態、すなわち当初の量産計画通りの生産台数には全く届かず四苦八苦している状態が報道されてきた。その中には、自動車業界の競争意識、電池業界のビジネス戦略、そして大きな投資を要求されてきた部材メーカーの悲喜こもごもが盛り込まれている。
・遡れば2017年6月に、テスラは中国の上海市に電気自動車(EV)の生産工場を建設する方向であることを報じた。その場合の条件としては現地企業との合弁が前提とされていたが、果たして順調に進んでいるのか。現在の米国における状況を考慮すれば現実性があまり感じられない。
・CEOのイーロン・マスク氏は、電動車、とりわけEVの最大市場となる中国で巨大工場を建設すると述べていた。2018年の生産キャパは中国巨大工場の稼働分も含め 全世界で年産台数50万台の計画を掲げた。現在の生産台数との乖離が大きいだけでなく、そもそもこのような大量のEVを本当に量産できるのか、根本的な問題があるのではないだろうか。
・テスラは17年3月に中国ネット大手のテンセントから5%の出資を受けている。そして、同年4月にマスク氏が訪中した際には汪洋副首相と会談したとされている。もともとテスラは14年に中国市場に参入した。その後の16年には15年の3倍以上の売上高を記録した。米国からの輸出のため、関税と輸送費が課せられる格好であったが一大ブームを巻き起こしたことになる。だが、一定数が市場に出回った後には飽和感が漂い、頭打ちになったことも記憶に新しい。
・そのような中で、米国からの輸出よりも中国での現地生産に踏み切れば相応のメリットが出ると言う試算は正しい。だが、そこには想定外の誤算があったようだ。それは、35万台のバックオーダーを抱えていると言いながらも、それに見合った量産技術と生産体制の整備が進んでいないままでの生産をしているような実態だ。すなわち、本格的な生産技術が伴っていないという欠陥である。
・米国ネバダ工場だけでの量産台数としては週5000台ペースの生産を計画してスタートしたのだが、生産地獄に至ったことで17年7月に発売開始した直後には、その生産計画を17年末までと一旦延期した。さらに1月に入ると達成時期を18年4~6月期までと2度目の延期をアナウンスした。
▽テスラが陥っている罠
・2017年の第3四半期こそ売上高は前年同期比で8%増加したと言うが、1~9月間の営業損失は売上高の11.5%に達したとのこと。象徴するように、17年12月上旬の日本経済新聞の夕刊には、「テスラ暗雲、冷める投資家」というタイトルの記事が掲載された。 それによれば、17年7月に出荷を開始した量産型EV「モデル3」の生産が計画を大幅に下回っていることが株価に大きく影響したという。17年7月から9月期までの「モデル3」の生産台数は当初計画であった1300台の2割に留まり、260台しか生産できなかったとのこと。しかも納車先は社員または会社関係者にのみだったという。
・17年9月18日に上場来最高値の389ドルを付けた株価は、そういう状況が影響して後に下降を続け、12月8日には最高値から20%を下げた。「モデル3」発表と同時にバックオーダーが35万台に達したと話題になったテスラだが、明らかに量産体制の脆弱さが露呈している。17年10月から販売が開始された日産の新型EV「リーフ」が現在抱える1万6千台、そして仏ルノーのEV「ZOE」が抱える3万台規模(ルノーの知人談)に比べれば、テスラへの期待感がいかに大きかったかは想像に難くない。
・先の日経新聞によれば、テスラの財務は火の車とのこと。時価総額で米ゼネラルモーターズ(GM)やフォード・モーターを超えたと話題になったものの、実態とは大きな乖離があるようだ。17年7月から9月まで1年間のキャッシュフローは約5500億円の赤字、しかも16年12月通期の3倍にまで膨らんだというから火の車と言う比喩が妥当だ。
・決算における巨額の赤字体質に対する補填と設備投資に対する資金は、増資と社債でやりくりしている模様である。17年9月時点での手元資金は4000億円規模であるようだが、一方、負債額は1兆1000億円程度を抱えていると見られている。返済に追われる現状での打開策は、そう簡単ではないように映る。
・現在抱えているバックオーダーは、いつになったら全車納車になり得るのか、現状を踏まえると数年はかかる計算になる。一方、本年から米国ゼロエミッション自動車(ZEV)規制が急激に強化され、19年からは中国の新エネルギー自動車(NEV)規制が待ち構える。そして21年からは欧州におけるCO2規制が発効することで、世界の自動車各社は否が応でも電動化シフトを実行しなければならない。
▽日米欧の電動化戦略
・これを議論すると、ますますテスラは窮地に追い込まれると筆者は予測するが、同じ意見を有す読者の方々も少なくないのではと察したい。 先週の1月29日から2月1日までの4日間、ドイツ・マインツで自動車の電動化と車載用電池に関する国際会議「AABC(Advanced Automotive Battery Conference) Europe 2017」が開催され、筆者も参加した。予想はしていたというものの驚いたことはまず、昨年の700人規模の参加者が一気に1000人を超えたこと。欧州で開催された本会議の参加者急増加が、欧州自動車業界を始めとする電動化シフトが現実的なものとなってきたことの証しでもある。
・これまでも欧州勢、特にドイツ勢のダイムラー、BMW、そしてフォルクスワーゲン(VW)が数兆円規模の投資を図り電動化へのかじ取りを行っていることは報道されてきたが、その気迫を実感できる良い機会であった。そこにはドイツ勢のみならず、ルノーの電動化に対する積極的な戦略も発信され、まさに欧州で進んでいるEVシフトは言葉だけではない実態が伴う本格的なムーブメントである。
①欧州勢の電動化へのかじ取り
+2015年に発覚したVWのディーゼル燃費スキャンダルが引き金となり、加えてドイツのメルケル首相が発信した将来的なディーゼル車の排除が重なり、ドイツの自動車各社はリベンジの意味も込めつつ電動化には極めて積極的である。リップサービスで建前論的と、周囲には疑問視する意見もあるようだが、現在の各社の取り組み姿勢を考えれば、決して一時凌ぎの発言とは思えない。 ドイツ勢各社による開発投資計画、車種数の具体的発信、日本人エキスパートの積極的人材活用、電池各社に対する求心力の増大――これを裏付ける事例は山ほどある。
+ドイツ勢もフランス勢も昨今、車載電池に対する考え方を大幅に変えてきた。従来、電池は調達部品の1つとしてしか考えていなかった各社は、電池パックシステムをボッシュのようなTier1に委ねる戦略を推進してきたが、それでは競争力や差別化を図れないと漸く気付いた。電池セル単体は調達戦略のもとで受け入れるが、それ以降のモジュール化から制御システムまで包含した電池パックシステムを自社内での自前化にシフトさせている戦略に方向転換した。
+更なる裏付けの1つは、韓国トップ3の欧州拠点構築の動きだ。ポーランドでいち早くリチウムイオン電池(LIB)の生産拠点を構えた韓国LG化学は、第一次の400億円規模投資を終え2017年後半から生産を開始した。今後、さらなる第二次投資計画を進めようとしている。サムスンSDIはハンガリーに400億円規模の投資にてLIB生産拠点を作り、本年中の稼働を目標にしている。
+そして韓国の第3勢力であるSKイノベーションはハンガリーに、850億円を投資し生産拠点を構え、2020年の稼働を目指すと言う。韓国のトップ3の電池メーカーが欧州に拠点を構え、しかも巨額投資を行うという同じベクトル化にあるということをどう考えるべきか。 筆者がサムスンSDIに在籍していた経験から類推するに、マーケティング活動が日本勢より数倍積極的な韓国勢が、当てもなく巨額投資するはずはない。それには電池各社の十分な算段があるはずで、供給契約と言わずとも、それなりの可能性にかけている節がある。
②米国勢の電動化へのかじ取り
+GMもフォードも、ZEV規制、そして中国市場での展開もしたたかな戦略を進めている。欧州勢ほど大々的なEVシフトをしてこなかったのは、欧州勢がディーゼルスキャンダルの解決策で大々的に発信したスタンスとは異なり、じっくり練った戦略を打ち出しているためである。テスラのEV事業とは一線を画し、むしろ自動車の歴史を牽引してきた米国トップ企業の余裕すら感じる。両社にとって、テスラは気にはなるが大きな脅威とは感じていないようだ。
③日本勢の電動化へのかじ取り
+日本勢はまた特有の戦略を有している。特にトヨタとホンダには強力なハイブリッド車(HEV)があるからだ。日本ではもちろん、最近では欧州でも、そして中国でもHEVの販売が伸びていることが象徴している。  ZEV規制、NEV規制においてHEVはクレジットにカウントされるカテゴリーから排除されている。しかし、そのHEVが日本ではもちろん、欧州、そして中国で販売を拡大している事実は何であろうか?
+取りも直さず、消費者にとってHEVが魅力ある製品であることに違いはないからである。ZEV規制もNEV規制でも、トヨタとホンダのみが勝ち組であるHEVであるからこそ、各規制でのHEV排除が行われたこと。一方では、HEVが燃料節減や充電器設備投資が不要なる商品であることから使い勝手の良い電動車として認知を得ていることに他ならない。そういう日本のトップ2でも、いざEVの商品化を実現する段階では、トヨタもホンダもEVは個社のプライドをかけて発信して来るはずだ。
▽テスラの行方は?
・以上のように、量産技術を得意とする日米欧の自動車各社の姿勢は、現在テスラが抱える病とは無縁な状況下にある。 前述した世界のトップブランドメーカーがEVシフトに立ち向かうことで、テスラの行方にも大きな影響を及ぼすことは間違いないだろう。今回のAABC国際会議に参加していた日本人、部材メーカー、電池メーカー、調査会社、コンサル会社の知人達と筆者を含む8人は、会食会の場で今後のテスラの行方を占った。
・そもそも大量生産をしたことがないテスラが、一気に50万台規模の量産を具現化するのは困難で、数年の時間はかかるはず。「モデルS」のような尖った高級路線での存在感はそれなりにあるが、「モデル3」のような普及車カテゴリーでは、真っ向から世界の名だたる自動車各社のEVと直接比較される。そこではテスラの選択肢や存在感は大きなものではなく、むしろトップブランドのEVの方が安全性や信頼性で消費者の関心を惹くだろうと。
・そして、現在の生産地獄が長引けば長引くほどキャッシュフローの改善は見込めず、経営はもっと窮地に陥るはず。シナリオとしてありうるのは、17年春にGMの時価総額を超えたテスラだけに、それを武器に中国企業に売却することだ。生産地獄から逃れる短絡的な解決方法の手段のひとつのような気がする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/246040/020600068/?P=1

第三に、ジャーナリストの桃田健史氏が2月15日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿しら「ベンツ・BMW・VWも本音では「EV本格普及はいまだ不透明」と見る」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽7年ぶりに再びEVバブル到来 再度注目が集まるAABC
・EVシフトについて、ブームの仕掛け人であるジャーマン3(ダイムラー・BMW・フォルクスワーゲングループ〈以下VW〉)の関係者すら「EV本格普及についてはいまだに不透明」という見解を示したことに、日本人関係者の多くが驚いた。 EV用の車載電池の国際カンファレンス、AABCヨーロッパ(2017年1月29日~2月1日、 於・独マインツ)での出来事だ。
・AABCとは、アドバンスド・オートモービル・バッテリー・カンファレンスの略称で、自動車メーカー、自動車部品メーカー、化学メーカー、コンサルティング企業、そして学術関係者など、自動車に搭載する次世代電池に関する研究や市場調査について発表を行う場だ。AABCはもともとアメリカで始まり、欧州やアジアでも開催されており、この分野の世界の最新情報が収集できる場として、産業界で高い評価を得ている。
・筆者は2000年代中盤から世界各地で開催されるAABCを定常的に取材しており、2010年前後の第四次EVブームの際、AABC自体の参加者数もスポンサー数も急増するという「EVバブル」を実体験した。 そんなAABCに再び、脚光が当たっている。 背景にあるのは、VWがディーゼル不正によって世間から食らったネガティブな企業イメージから、V字回復を狙って策定した新規事業計画から派生した、世界各地での「EVシフト」というトレンドである。
▽欧州委員会の新発表あるも…欧州でのEV普及はいまだに不透明
・欧州のEVシフトの構図について筆者の見立ては、VWが仕掛けて、そこにダイムラーがすぐに相乗りし、その流れをBMWが追い、独自動車部品大手のボッシュとコンチネンタルがサイドサポートに回った、というもの。 そうした独企業のマーケティング戦略とほぼ同時に、英国とフランス両国の国内政治の案件として、環境問題の観点から自動車に焦点が当たり、「2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売禁止を目指す」といった「目標値」を公表した。
・さらに、インドでも「2030年までに国内販売車のすべてをEVとする」との野心的な草案が公表された。本件についてはその後、政権内での意見の相違から事態は変化している。詳細については2月中にインド国内での取材を進め、本連載でも情報公開する予定だ。
・こうした、2016~2017年中盤までのEVシフトの流れに、新たなる動きが加わった。EC(欧州委員会)が2017年11月8日、域内で販売される車両に対するCO2規制値を、2030年に2021年比で30%減とする案を示したのだ。
・自動車メーカー各社の技術開発者は、これまで「世界で最も厳しい排気ガス規制は欧州だ」と口を揃えてきた。具体的には、2021年までにCO2レベルが1kmあたり95gだ。これをクリアするためには、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車など、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンにモーターを加えた電動化が必然だと考えられている。ただし、モーターのみで走行するEVについては「EVがなくても、95g規制は乗り切れる」と見る自動車メーカーがほとんどだった。
・それが今回、2030年までに2021年比の30%減という数字がECから出てきたため、「EVの強化の可能性も考慮するべきか?」という空気に変わってきている。 繰り返すが、あくまでも「考慮するべきか?」という段階だ。 なぜならば、ECは今のところ、中国のNEV法(新エネルギー車規制法)や米カリフォルニア州のZEV法(ゼロエミッション車規制法)のように、事実上のEV販売台数規制を考えてはいないからだ。
▽当面の主戦場は中国市場 政策主導で動き、消費者は不在
・そのため、今回のAABCヨーロッパでも、話題がEVに限定されると「中国ありき」という議論になった。 台湾の工業技術研究院の発表によると、2017年の中国EV販売総数は、前年比53.5%増の77万7338台となった。これは2017年の世界EV市場140万台の半数以上を占める。また、2018年には中国EV販売総数は100万台に達する可能性が高く、さらに中国政府は2020年に500万台を目標として掲げている。
・NEV法では、2019年に市場のうち10%、2020年には12%との規制値を設けており、NEVが起爆剤となってEV販売台数における「中国ひとり勝ち」がほぼ確定している状況だ。 もう一方のEV販売台数規制であるZEV法については、ホンダのアメリカ法人の発表にあったように、トランプ政権になってからEVを含む次世代車の普及について、連邦政府とカリフォルニア州が今後どのように擦りあわせをしていくのか「不透明な情勢」である。
・このように、EVについては、政策主導型での普及がいまだに“主役”であり、そこに自動車メーカーが「様子を見ながら、お付き合いする」といった格好だ。 つまり、「消費者不在」の状況が続く。 AABCヨーロッパでの4日間にわたる発表と議論、そしてアメリカ、ドイツ、フランス、ベルギー、スウェーデン、フィンランド、日本、インド、中国、韓国、台湾などからの参加者たちと個別に意見交換する中で、筆者は一抹の不安を感じた。  もし、中国がNEV法実施に失敗したら、再び世界EVバブルは崩壊するのかもしれない。 中国は2010年前後に実施した、公共交通機関を主体とした壮大なEV施策「十城千両」も、当初の普及台数目標に未達の地方都市が続出したことなどを理由に、なんの前触れもなく打ち切った過去がある。
・ジャーマン3が提唱するEVシフト。その動向、日本としてはしっかりと見守っていかなかればならない。
http://diamond.jp/articles/-/159754

第一の記事で、 マスク氏が、『自ら「生産地獄」と表現する現状について、「こんな経験は二度としたくない。(11月の)感謝祭の日ですら、ほかのテスラ社員と一緒にギガファクトリーにいた。週7日、みんながバケーションを楽しんでいるときもだ」とも漏らした』、というのは、いくらマスク氏といえども、量産の世界は思う通りにはいかないようだ。
第二の記事で、 『納車先は社員または会社関係者にのみだったという』、というのは、まだ品質に自信がないためなのかも知れない。  『そもそも大量生産をしたことがないテスラが、一気に50万台規模の量産を具現化するのは困難で、数年の時間はかかるはず』、と量産の壁は予想以上に高いようだ。 『シナリオとしてありうるのは、17年春にGMの時価総額を超えたテスラだけに、それを武器に中国企業に売却することだ。生産地獄から逃れる短絡的な解決方法の手段のひとつのような気がする』、とのアドバイスは、いざ売ろうとしたら、GMの時価総額を超えたことなど吹き飛んで、厳しく買い叩かれることになるので、そう簡単ではなさそうだ。
第三の記事で、 『当面の主戦場は中国市場 政策主導で動き、消費者は不在』、しかし、 『中国は2010年前後に実施した、公共交通機関を主体とした壮大なEV施策「十城千両」も、当初の普及台数目標に未達の地方都市が続出したことなどを理由に、なんの前触れもなく打ち切った過去がある』、というのでは、 『自動車メーカーが「様子を見ながら、お付き合いする」といった格好』、なのも無理からぬところだ。
タグ:電気自動車 桃田健史 (EV) 「テスラが明かした「モデル3」生産地獄の実態 ロケットのようにうまく軌道に乗らない」 ダイヤモンド・オンライン 「ベンツ・BMW・VWも本音では「EV本格普及はいまだ不透明」と見る」 シナリオとしてありうるのは、17年春にGMの時価総額を超えたテスラだけに、それを武器に中国企業に売却することだ 中国は2010年前後に実施した、公共交通機関を主体とした壮大なEV施策「十城千両」も、当初の普及台数目標に未達の地方都市が続出したことなどを理由に、なんの前触れもなく打ち切った過去がある 当面の主戦場は中国市場 政策主導で動き、消費者は不在 欧州委員会の新発表あるも…欧州でのEV普及はいまだに不透明 納車先は社員または会社関係者にのみだったという 現在の生産地獄が長引けば長引くほどキャッシュフローの改善は見込めず、経営はもっと窮地に陥るはず ますますテスラは窮地に追い込まれると筆者は予測 テスラの財務は火の車 本格的な生産技術が伴っていないという欠陥 パナソニックに「テスラリスク」 テンセントから5%の出資 「窮地のテスラに立ちはだかる自動車トップ 2018年から本格化する熾烈なEV競争の先は?」 量産立ち上げに今なお苦戦 日経ビジネスオンライン 佐藤 登 自ら「生産地獄」と表現する現状について、「こんな経験は二度としたくない。(11月の)感謝祭の日ですら、ほかのテスラ社員と一緒にギガファクトリーにいた。週7日、みんながバケーションを楽しんでいるときもだ」とも漏らした モデル3 東洋経済オンライン (その4)(テスラが明かした「モデル3」生産地獄の実態、窮地のテスラに立ちはだかる自動車トップ 2018年から本格化する熾烈なEV競争の先は?、ベンツ・BMW・VWも本音では「EV本格普及はいまだ不透明」と見る)
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

人工知能(AI)(その4)(AIの発達をこのまま市場に任せてよいのか 人類にとって「憂鬱な未来」か「豊かな未来」か、静かに広がる「アンチ深層学習」「アンチAI」 ブラックボックス化を警戒、フェイスブックのAIがぶち当たった「限界」 最先端でも子どもの学習能力には勝てない) [科学技術]

人工知能(AI)については、昨年7月1日に取上げた。今日は、(その4)(AIの発達をこのまま市場に任せてよいのか 人類にとって「憂鬱な未来」か「豊かな未来」か、静かに広がる「アンチ深層学習」「アンチAI」 ブラックボックス化を警戒、フェイスブックのAIがぶち当たった「限界」 最先端でも子どもの学習能力には勝てない)である。

先ずは、ニッセイ基礎研究所 専務理事の櫨 浩一氏が昨年11月29日付け東洋経済オンラインに寄稿した「AIの発達をこのまま市場に任せてよいのか 人類にとって「憂鬱な未来」か「豊かな未来」か」を紹介しゆ(▽は小見出し)。
・日本経済は人手不足の様相を強めている。失業率は2017年9月には2.8%に低下し、特に有効求人倍率は1.52倍と、バブル期のピークだった1990年7月の1.46倍をも超える高さだ。団塊世代が65歳を超えた2012〜2014年以降も、毎年150万人を超える人が65歳を迎えて年金生活に入っていくのに対して、15歳を迎える人口は120万人に満たず、毎年30万人以上ずつ生産年齢人口が減少していく。今後も高齢化による労働力の減少が続き、高齢者や女性の労働参加を考慮しても、しばらくの間は労働需給がさらにひっ迫するだろう。
・しかしもっと先を考えると、AI(人工知能)の進歩で機械が人間の行ってきた仕事を担うようになるという動きが加速し、人間の仕事はなくなっていき、世界的に労働力過剰という事態が出現する可能性がある。 『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか~労働力余剰と人類の富』(東洋経済新報社、2017)で、著者のライアン・エイヴェントは、コンピュータは蒸気機関や電気と同様の汎用技術でとてつもない力を持ったものであることや、デジタル革命は人類に多大な恩恵をもたらすので後戻りできない流れであることを指摘し、社会が直面する課題を論じている。以下ではこの議論を参考に影響を考えてみたい。
▽AIの発達で拡大していく格差
・AIが発達していけば、最終的には人間がまったく働かなくても社会全体としては有り余るほど豊富な生産物が供給できるというSF小説に出てくるような世界が実現する可能性がある。 どんなものでも価格は需給で決まるというのが経済学の「キホンのき」であり、空気のように必要不可欠であっても希少性のないものの価格はゼロか極めて低価格だ。英国の経済学者ライオネル・ロビンズは、経済学を希少資源の最適な使用についての学問だと定義したが、誰もが欲しいものを欲しいだけ入手できるようになる世界では経済学は無用になるのだろう。
・しかし、MIT教授の物理学者であるテグマークの "Life 3.0: Being Human in the Age of Artificial Intelligence"(Max Tegmark, Knopf Doubleday Publishing Group, 2017)によれば、そもそもこの夢のような状況が実現可能かどうかや、それまでにどれくらいの時間がかかるのかについては、専門家の間でもコンセンサスはないという。
・少なくとも短期間で実現するとは考えにくく、まだ何十年かの間は、生活を支えるすべてのものは、価格が低下していくものの有料である。必要なものを手に入れるためには、人々は何とかして所得を得る必要があるという状態が続くとの前提で将来を考えるのが無難だ。ところが、AIが発達していくことで機械に仕事を奪われ、所得が得られなくなる人が多数生まれてしまうおそれがある。
・デジタル革命は、社会に非常に大きな利益をもたらすが、プラスの面ばかりではない。 たとえば、シェアリング・エコノミーの拡大によって、多くの人がフリーランスとして、あちこちから単発の仕事を請け負って生計を立てるという選択肢を持つようになったことだ。 会社に所属して規則に縛られて働かなくても、自分が働きたいときだけ働くということが可能になったが、その反面、米国ではこれまでのフルタイムの仕事では、普通の生活をするために十分な仕事量と収入が得られないケースが増えてきている。
・Uberの登場でお客を奪われたタクシー運転手の所得は大きく下がったはずだ。所得の減少を補うためにやむを得ず副業に従事する人が増えており、必ずしも積極的にフリーランスの仕事を選んでいるわけではない。そもそも遠からず自動運転の技術は確立すると見られており、Uberで運転手として自分の都合に合わせて働いて収入を得ている多くの人も、仕事と収入の道を失うことになるだろう。
▽「高等教育で高所得が得られる」は楽観的すぎる
・18世紀半ばに産業革命が起こったときには、織物の職人などが仕事を失ったが、こうした人たちは数のうえでは全体からみればごく一部に過ぎず、農業を離れて工場で機械を操作する職を得て所得が高まった人のほうがはるかに多かった。生産物の供給が増えて価格が低下し、多くの人が購入できるようになったこともあって、社会の平均的な生活水準は大きく高まった。
・近年では、製造業で自動化が進むことで中程度のスキルの仕事が消えたため、職を失って低所得のサービス業の仕事しか見つからない人が増えた。一方で、ITを活用できる人たちの生産性は大きく上昇した。コンピューターや専門・技術的職業を持つ人たちの収入が上昇して所得格差が拡大しているため、高等教育への進学率を高めることが問題の解決策として提言されることが多い。
・しかし、米国では既に大学卒の給与水準は頭打ちとなっていて、高い賃金が得られるのはさらに高度な教育を受けた大学院卒で、修士号や博士号を持つ人たちに限られている。日本では高等教育機関(大学以上)への進学率は50%を超えているが、必ずしもそれに相応しい能力を身に付けていないということが問題とされることがある。誰でも一定の努力をすれば、高度な知識・能力を活用できるようになり、高い所得が得られると考えるのは楽観的に過ぎるのではないか。
・AIが進化して行けば、現在はAIで代替することは難しいとされている仕事に就いている人たちも安泰ではなくなる。少し昔にはコンピューターが囲碁で人間に勝つようになるのはまだ先のことだと考えられていたが、今や世界最強といわれる棋士でもコンピュータにはまったく歯が立たない。人間が必要な分野はどんどん縮小していくだろう。
・AIによる自動化が図られるのは、それが容易な分野だけでなく経済的な利益が大きい分野も、である。企業にとっては、高賃金の仕事ほど機械で置き換えるメリットが大きい。低賃金で機械化の利益が小さいところや、雑多な作業で対応が難しいものが人間が行う仕事として残され、生活を支えるために多くの人がこうした仕事を得ようとして争うことになる恐れが大きい。
▽ベーシックインカムは解決策にならない
・デジタルエコノミーの拡大で生まれる失業者を救済するために、「すべての国民に、生活に必要な最低限の所得を給付する」というベーシックインカムの制度を設けるべきだという人もいある。これについて、エイヴェントは最低賃金の引き上げよりは有望だとしている。しかし、職を失っても生活が保障されるという意味では朗報だが、あくまで最低限度のセイフティーネットに過ぎない。一部の人が現在は想像できないような豊かさを享受する一方で、多くの人の生活水準は大幅に低下してしまうという著しい格差が生まれることを防ぐことはできないのである。
・AIを活用した研究開発が一部の人たちの生活水準を高めることに集中すれば、一部の人だけが豊かになり、多くの人たちの生活水準は大して向上しないということも起こるだろう。老化や癌などを克服するための研究にAIやさまざまな資源を集中的に投じれば、人間の寿命を大きくを延ばすことができ、今の時点では信じられないほど長寿となる可能性もある。
・しかし、こうして開発された先進的な医療技術は著しく高額で、ベーシックインカムに依存して生活する多くの人たちはまったく手が届かないに違いない。例えば、現在免疫細胞を遺伝的に加工して癌に対する攻撃力を高めるという治療方法は驚異的な治療成績を収めているが、1回の治療に5000万円以上もかかると日経新聞は報じている(日本経済新聞夕刊、11月14日付)。
・そもそも資源・エネルギーの制約があるので、誰でも欲しいものが何でも欲しいだけタダで手に入るという世界は永久に実現しないのかも知れない。ピケティの『21世紀の資本』(みすず書房、2014)が警鐘を鳴らしたように、AIやこれを使った生産設備を保有している人たちとそれ以外の人たちという資産格差が、所得や寿命などの格差を拡大再生産していってしまうおそれもある。
・長期停滞の背景には富の一極集中があるとエイヴェントは指摘する。確かに、20世紀半ばに工業化が進む中で格差が縮小したのは、経済的な必然の結果ではなくソ連などの計画経済国家という脅威の存在や、大恐慌の影響でさまざまな制度の変革が行われたことも大きな要因だったと考えられる。
▽「神の見えざる手」に任せておけば?
・AIが人間の能力を超えていけば、生産を行うためにはどうしても人間が必要だという前提が崩れ、労働者は生産性(厳密には限界生産性)に等しい賃金を得るとか、生産の中から労働者が受け取る割合である労働分配率はほぼ一定であるとかいう世界ではなくなってしまうはずだ。「正統派経済学の終焉」という主張が、現実のものとなるかも知れない。
・ノースウエスタン大のゴードン教授など技術進歩の速度低下を指摘する声は多いが、むしろ社会変化の速度は速くなっているように見える。親の経験は子供たちが将来を考えるにはまったく役に立たず、制度や人々の生活スタイルや考え方、行動が社会変化について行けないほどだ。
・テグマークの言うように、AIの発展を未来の社会にとって良いものにするためには、これをどう受け止めるのかという議論が必要だ。デジタルエコノミーの発展は人類に想像できないような豊かさをもたらすことができるはずだが、それは神の見えざる手に任せておけば自然に実現するというものではないだろう。
http://toyokeizai.net/articles/-/199055

次に、昨年12月25日付け日経ビジネスオンライン「静かに広がる「アンチ深層学習」「アンチAI」 ブラックボックス化を警戒」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「うちのシステムにAI(人工知能)という言い方は使っていません。書き方に気をつけてくださいね」 記者は最近、感情の分析、翻訳、セキュリティーなどの課題に挑むAIに関して取材に当たっていた。その際時折、このような注意を広報担当者から受けたのだ。
・過去にはAIの研究者が冷遇される時代があり、自身ではAIを研究しているつもりでも、研究費を得るために「ロボット」などに看板を架け替えていたことがあった。しかし、空前のAIブームに沸く現在において、同じ現象が起き始めているのだ。
▽バズワードになったAIと深層学習
・その理由のひとつは、AIという言葉が、意味が不明瞭のまま使われる「バズワード」と化し、猫も杓子もなんにでも使われていることへの反感ではなかろうかと思う。自省をこめていえば、これは我々報道機関に責任がある。
・AIの定義は学術的にはっきりとは決まっていないそうだ。手元にある辞書の説明では、ヒトの知的機能を代行できるシステムを指す。では、たとえば1人プレイモードがある将棋や麻雀のゲームアプリはAIだろうか。これはAIでないという意見を持つ人でも、米グーグル持ち株会社、アルファベット傘下の英ディープマインドが手掛ける「アルファ碁」ならAIと呼ぶことに違和感がないかもしれない。両者の大きな違いは、システムが賢くなるための学習機能を備えているかどうかだ。あるいは、アルファ碁ですらAIではなく、すべての機能においてヒトと変わらない能力を持って初めてAIと呼ぶにふさわしいと思う人もいるかもしれない。
・最近の報道はこんな定義を気にもせず、AIと一口に書くだけでその技術的背景や企業間の違いも詳述しない。AIという見出しだけが躍る。そんな報道ばかりでは、開発側も嫌気が差すのではなかろうか。グーグルがAIのフレームワークを公開していることで、簡単なAIならだれもかれもつくれる時代だ。ただただAIと表現されるだけでは、製品の特徴が分からず陳腐にさえ見えることもある。
・そして、推測しうるもうひとつの理由が、「ディープラーニング(深層学習)」への反感。正確に言えば、同じくバズワードと化した「深層学習」という言葉への反感だ。ヒトの脳神経の機能を模した深層学習技術は、アルファ碁をプロ棋士を超える強さに育て上げたことで、報道に頻出するようになった。昨今のAIといえば、深層学習を使うのがスタンダードになっている。しかし、現在のAIブームを巻き起こしたこの深層学習を、ある点ではネガティブな意味に一部の企業は捉えているのだ。ゆえに、深層学習を連想させるAIというバズワードも使いたがらないのではないだろうか。
・深層学習以前のAIは、AIが正解を導くための判断材料の見つけ方や、材料をもとにした判断プロセスを、ある程度ヒトがプログラミングしていた。深層学習は判断材料を探すところからすべてAIに任せている。 たとえば動物の画像をみて、それが猫かどうか判断する課題にAIが挑んだ場合、旧来のAIはあらかじめヒトが「ヒゲに注目しろ」「目に注目しろ」「耳に注目しろ」などとプログラミングをしておく。深層学習AIの場合は、あらかじめ猫の画像を大量に読み込んでおけば、注目するべきポイントを自ら見つけてくるのだ。
・しかし、これは裏を返せば、開発者がAIの判断を検証することが難しいということでもある。翻訳向けに深層学習AIを開発しているある技術者は「変な訳が出てきても、なぜそうなったのかがわからない。微調整ができないのが最大の課題だ」と語る。
・実際、今の深層学習AIの導入事例を見渡してみても、間違えを出しても説明責任を求められない課題ばかりだ。そうなると、例えばセキュリティーの課題に導入するのはハードルがある。 
▽深層学習はブラックボックス
・例えば、深層学習AIを積んだ手荷物チェック用のX線検査機を開発した日立製作所も、用途は旧来得意としていた空港向けではなく、チェック効率がより重視されるイベント向けだという。また、このAIは危険な手荷物に対して警告を鳴らす仕組みではない。「絶対安全」と判断できるものにだけOKを出し、ちょっとでも不審な点があれば、検査員にチェックを促す。検査の効率は40%ほど向上するが、安全を追及するためにはヒトが最終関門を担わなければいけない。
・警備用カメラをチェックして自動で不審者を捜し出すAIの実用化に挑んでいるセコムは、よりはっきり深層学習への懸念を示している。セコムIS研究所の目崎祐史所長は「深層学習にすべて任せると、ブラックボックスになってしまう」と語る。
・深層学習も利用はしている。しかし、画像からヒトの顔の部分を抜き出すなど、一般的に用いられていて信頼性が確立された課題のみに使う。つまり、深層学習AIは不審者を割り出すための判断材料を映像から抜き出すためのパーツに過ぎない。その材料からどう正解を導くかの判断プロセスは、ベテラン警備員の経験知をコンピューター言語にすることでAIに組み込んでいる。敢えて旧来型の手法でAIの判断プロセスを構築しているのだ。
・また、深層学習だけに頼れば、AIの成長に使うデータ量の競争に陥りがちだ。多くのデータ量を読み込むほど深層学習AIは賢くなるからだ。しかし、データの扱いを一つ誤ると、ICカードのデータを外部提供して批判を浴びたJR東日本のように、手痛いしっぺ返しをくらう。
・セコムの場合、AIの成長に使うデータは、エキストラが不審者のふりなどをする映像だけだ。実際の監視カメラの映像は含まれていない。国内では監視カメラ映像のような機微な情報を集めるのが難しい以上、ヒトが判断プロセスを書き込む旧来の方式と深層学習をハイブリッドで使う方法は有用だと記者は考える。
・もちろん深層学習そのものは非常に有効な技術だ。先に挙げた弱点を補い、深層学習AIを進化させようという研究も盛んだ。 富士通やNECが開発しているのが「ホワイトボックス化」と呼ばれる技術。深層学習AIの判断材料や判断プロセスを解析して可視化しようという試みだ。
・もう一つが「GAN(ガン=敵対的生成ネットワーク)」。2つのAIを競い合わせることで成長させる技術だ。片方のAIは、相手のAIがいかにも間違えそうな「意地悪問題」を出して成長を促す。AIがAIを成長させるためのデータを自動で生成するので、データ量を追い求める競争から脱却できる可能性を秘めている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/122100550/?P=1

第三に、1月24日付け東洋経済オンライン「フェイスブックのAIがぶち当たった「限界」 最先端でも子どもの学習能力には勝てない」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aはルブリュン氏の回答、+は回答内の段落)。
・各国の大企業がこぞって独自開発し、活用に乗り出すAI(人工知能)。日々、膨大な量の写真や動画が投稿されるフェイスブックも、プラットフォーム全体の健全性を維持するのにAIをフル活用しているほか、すぐにはビジネスに結び付かないような先端研究にも力を注ぐ。
・今のAIには何ができて、何ができないのか。AIはこの先、どう進化するのか。同社の学術的研究を担うチーム「Facebook AI Research(フェイスブック人工知能研究所)」のエンジニアリング・マネージャー、アレクサンドル・ルブリュン氏に最前線の研究について聞いた。
▽100億枚から不適切な写真をAIが監視
Q:フェイスブックのサービス上では、AIはどのように使われていますか。
A:フェイスブックには、1日約100億枚の写真が投稿されている。そのすべてを人間の目でチェックするのは不可能なので、ここでAIが活躍する。具体的には、タイムラインやメッセンジャーに写真が投稿されると、これは一般に見せていいものか、たとえば暴力的だったり、性的だったりしないかを瞬時に判断する。好ましくない写真をアップしようとしている人は絶えず存在しているので、まずはそれをはじくのがAIの重要な仕事だ。
+もう一つの役割は、AIで写真の内容をより深く理解し、誰が「いいね!」するかを判断すること。たとえばネコ好きの人には、ネコが写っているとAIが認識したものを優先的に見せようとする。一方で友人の赤ちゃんの写真を見飽きている人には、赤ちゃんの写真を見せる頻度を下げようとする。コンテンツの中身を理解して、それを楽しめる人とのマッチングを図っているわけだ。
+写真だけでなく、テキスト、動画、VR(仮想現実)でも何でも、コンテンツの内容をより深く理解しなければ、ユーザーにとってよいセレクションをするのは難しい。特に写真や動画に関しては、テキストと違った難しさがある。どのユーザーに見せるべきか、誰に好まれるコンテンツか、という判断を的確にできるよう、研究を進めている。 それ以外にも、視覚障害がある人のためにAIで写真の内容を把握して音声で説明したり、テロ行為や自殺願望をほのめかすような写真・動画投稿を検知して迅速に対応したりと、あらゆる面でAIを活用している。
Q:さまざまなITサービスの中でも、フェイスブックのようなSNSはAIと親和性が高い分野ですか。
A:フェイスブックに限らず、今日のSNSはどれもAIなしでは存在しえない。なぜなら表示するコンテンツを高度に選択しないと、ノイズが多すぎるからだ。いかがわしいもの、不適切なものを機械的にフィルターにかける機能がない状態では、あっという間に危険なプラットフォームになってしまう。今のソーシャルメディアの規模を考えればなおさらだ。
+残念なことに、悪いことをしようとする人々も、AIの目をどうにかすり抜けようと頭を使って新しい手法を編み出している。10年前には、(テキストの)キーワードを含むものを抽出して不適切性を判断していればよかったが、今はそれだけではまったく不十分。ソーシャルメディアの未来は、質のよい、高精度なAIなくしてはありえないといえる。
▽AIはまだまだ”インテリ”ではない
Q:今のAIの改善点、限界はどこにあるのでしょう?
A:アーティフィシャルインテリジェント(AI)と言われる割に、まだそんなに“インテリ”ではない点だ。今、機械学習は「教師あり学習」という手法が主流だが、膨大な量の例をAIに見せて学ばせる必要がある。たとえば、AIが温度のセ氏からカ氏への変換をできるようにするには、200~300の事例を読み込ませる。AIが「これはネコの写真だ」と認識するには、少なくとも1万枚程度のネコの写真を見せる必要がある。
+人間の子どもならどうか。たとえば、ネコという動物を認識させたい場合、せいぜい5回くらいネコに遭遇すれば、「これがネコだ」という認識が生まれる。熱湯に指を突っ込んでやけどをしてしまったら、一度だけでその先ずっと覚えていると思う。AIは、最先端のものでも何千回と同じ経験をしなければうまく認識できない。
+実はAIの教師あり学習という手法は、1980年代から30年くらい行われている。その間、裏側のアルゴリズムはほとんど変わっていなくて、やっと(収集できる)データの量とPCの計算能力が十分な水準に達し、機能し始めたのがここ5年だ。それと同時に専門家の間では、教師ありの機械学習は数年内に一定のポイントに到達できるという自信が生まれている。限界地点が見えてきた、ともいえる。
+アウトプットの種類を考えても、教師あり学習には限界がある。不適切な写真をはじく、英語から日本語に翻訳する、交通規制通りに自動運転をする、チェスの試合をする、といった、ある程度シンプルなタスクの場合はうまく機能する。でも、感情豊かに人と対話したり、もっと深い推論を行ったりする能力は、今の教師あり学習の延長上にはないまったく新しい分野になる。
Q:「教師なし」の機械学習はどのくらい研究が進んできたのでしょうか。
A:まだ始まったばかりで、最適な解決策の糸口を探している段階だ。その中で一つ、私たちが進めているのが、子ども、乳幼児を生物学的に深く研究し、そこからインスピレーションを得ようという試み。彼らの学び方を観察して、それを機械の学び方に生かせないかという考え方だ。
+子どもは本当にすごい。1日10時間起きているとすれば、そのうち95%は「教師なし学習」の時間。つまり、「これはペンだよ」「これはリンゴだよ」と教え込む作業をしていないにもかかわらず、自分で見て、聞いて、遊んで、探検して、学んでいる。ほんの少量のデータで、一気に賢くなる。われわれの最先端のAIよりはるかに頭がいい。
▽会社が違っても研究コミュニティは一緒
Q:子どもの学び方にヒントを得ようとするのは、AI研究の共通的なアプローチなのでしょうか。
A:研究者のコミュニティはある種の”家族”のようなもので、所属がフェイスブックだろうがグーグルだろうがIBMだろうが、あまり関係がない。皆が同じカンファレンスに出て、とてもオープンな環境で研究しており、この会社だからこの方向性、というものもない。自由度の高い、ボトムアップの世界だ。
+私自身が所属しているAI研究チームも、もっぱら学術的な研究開発を行い、すべての活動をオープンにしている。私たちの第一の目的はフェイスブックの事業を助けることではなく、あくまで最先端のAI技術を追い求めることだ。もちろん、それが時としてフェイスブックのビジネスに直接役立つことはあるが。
+特に教師なし学習の研究は、これから非常に長期戦になるだろう。10年間研究し続けても結果が出るかわからないというレベル。そういう類の研究に投資し続けられる企業はあまり多くないが、長期的かつ抽象的な研究が科学の発展のためには重要だ。
Q:最近では音声アシスタントやスマートスピーカーが盛り上がっていますが、非ディスプレー型製品が普及した先に、フェイスブックはどのような姿になっているでしょう?
A:構図として、(テキストや写真などの)ビジュアルに相対する概念としての音声、という形にはならず、相互補完的になっていくのではないか。たとえば、オープンスペースで仕事をしているときや、すごく複雑で体系的な情報を取得しようとしているときには、テキストや写真、表などのほうが適している。でも運転中や料理の途中にちょっとしたニュースを聞くときなら、音声のほうがいい。どちらか一方ではなく、組み合わせて使うことで便利さが増していく。
+その流れの中で、フェイスブックをはじめとするSNSの使い方に何らか変化が生じてくるのは明らか。スクリーンを見て使う、というだけではなく、聴覚的な情報や付加価値がより重要度を増す可能性はある。一方で、友達と楽しい出来事をシェアしたり、一緒に何かを体感したりといったコンセプトは変わらないはずだ
http://toyokeizai.net/articles/-/205816

第一の記事で、 『AIによる自動化が図られるのは、それが容易な分野だけでなく経済的な利益が大きい分野も、である。企業にとっては、高賃金の仕事ほど機械で置き換えるメリットが大きい。低賃金で機械化の利益が小さいところや、雑多な作業で対応が難しいものが人間が行う仕事として残され、生活を支えるために多くの人がこうした仕事を得ようとして争うことになる恐れが大きい』、他方で 対応策として検討されている 『ベーシックインカムの制度・・・職を失っても生活が保障されるという意味では朗報だが、あくまで最低限度のセイフティーネットに過ぎない。一部の人が現在は想像できないような豊かさを享受する一方で、多くの人の生活水準は大幅に低下してしまうという著しい格差が生まれることを防ぐことはできないのである』、 『デジタルエコノミーの発展は人類に想像できないような豊かさをもたらすことができるはずだが、それは神の見えざる手に任せておけば自然に実現するというものではないだろう』、市場原理に委ねないとしたら、一体どういうことになるのだろうか。
第二の記事で、 『「深層学習にすべて任せると、ブラックボックスになってしまう」』、この弱点をカバーするため、 『「ホワイトボックス化」と呼ばれる技術。深層学習AIの判断材料や判断プロセスを解析して可視化しようという試みだ』、 『もう一つが「GAN(ガン=敵対的生成ネットワーク)」。2つのAIを競い合わせることで成長させる技術だ』、第一の記事でみた社会的影響を度外視して純粋に技術面だけでみれば、大いに楽しみな技術だ。
第三の記事で、 『アーティフィシャルインテリジェント(AI)と言われる割に、まだそんなに“インテリ”ではない・・・AIが「これはネコの写真だ」と認識するには、少なくとも1万枚程度のネコの写真を見せる必要がある』、機械学習といってもやはり限界もあるようだ。 『子どもは本当にすごい。1日10時間起きているとすれば、そのうち95%は「教師なし学習」の時間。つまり、「これはペンだよ」「これはリンゴだよ」と教え込む作業をしていないにもかかわらず、自分で見て、聞いて、遊んで、探検して、学んでいる。ほんの少量のデータで、一気に賢くなる。われわれの最先端のAIよりはるかに頭がいい』、ということは、AIを過度に恐れる必要はないのかも知れない。
タグ:AIはまだまだ”インテリ”ではない アレクサンドル・ルブリュン 「フェイスブックのAIがぶち当たった「限界」 最先端でも子どもの学習能力には勝てない」 GAN(ガン=敵対的生成ネットワーク ホワイトボックス化 深層学習はブラックボックス バズワードになったAIと深層学習 「静かに広がる「アンチ深層学習」「アンチAI」 ブラックボックス化を警戒」 日経ビジネスオンライン デジタルエコノミーの発展は人類に想像できないような豊かさをもたらすことができるはずだが、それは神の見えざる手に任せておけば自然に実現するというものではないだろう ベーシックインカムは解決策にならない AIの発達で拡大していく格差 ライアン・エイヴェント 『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか~労働力余剰と人類の富』 「AIの発達をこのまま市場に任せてよいのか 人類にとって「憂鬱な未来」か「豊かな未来」か」 東洋経済オンライン 櫨 浩一 その4)(AIの発達をこのまま市場に任せてよいのか 人類にとって「憂鬱な未来」か「豊かな未来」か、静かに広がる「アンチ深層学習」「アンチAI」 ブラックボックス化を警戒、フェイスブックのAIがぶち当たった「限界」 最先端でも子どもの学習能力には勝てない) (AI) 人工知能
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

鉄道(小田急線火災、「踏切非常ボタン」に潜むワナ、「豪華観光列車」料金があまりにも高額なワケ、鉄道「高速化競争」から欧州が離脱した理由) [科学技術]

今日は、鉄道(小田急線火災、「踏切非常ボタン」に潜むワナ、「豪華観光列車」料金があまりにも高額なワケ、鉄道「高速化競争」から欧州が離脱した理由)を取上げよう。

先ずは、作家の冷泉 彰彦氏が昨年9月13日付け東洋経済オンラインに寄稿した「小田急線火災、「踏切非常ボタン」に潜むワナ 検証が必要なのは鉄道側の対応だけではない」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・小田急小田原線の代々木八幡ー参宮橋間で9月10日、線路脇の建物で火災が起きているにも関わらず、現場の横に電車が8分間も停車した結果、車両に延焼し屋根が炎上したという事故が問題になっている。車両の一部が炎に晒されている状態で、約300名の乗客が線路に降りて避難するという事態になった。
▽消火活動には問題なかったか
・初期の報道は二転三転したが、だいぶ落ち着いてきたので整理してみよう。まず、なぜ延焼するような場所に停車したのかという最大の問題についてだ。小田急が把握している情報によれば、消防の依頼で警察が踏切の緊急警報ボタンを押し、電車が停止したという。
・消防が緊急停止を要請したのは、当初は電車が火災現場に接近するのを止めるための機転という見方もあったものの、後に出てきた現場証言に基づく報道によれば「線路方面から消火活動をしたいので、電車を止める必要があった」という理由だったようだ。 また、一旦動き始めた電車が火災現場の前に一部の車両が残っている時点で再度停止した問題については、消防がその場で停止して乗客を避難させるよう指示したということが、その指示の音声と共に報じられている。
・消防による消火活動は、一刻を争う中で瞬時の判断が必要な仕事だ。消防士自身が危険と隣り合わせというケースもある。それだけに、何から何まで規則に縛られるのではなく、消防士が臨機応変に判断し、場合によってはリスクを取ってでも消火、もしくは人命救助を行う必要がある職務である。
・それゆえ、消防の一挙手一投足を規則で縛ってしまい、人命救助のために必要な柔軟な判断が萎縮するようではいけない。だが、今回のケースは違うと思う。今回の事例を踏まえて、今後の事例に活かしていただきたい。
・今回の事故では小田急電鉄の対応にもっぱら注目が集まっているが、消防と警察の判断についても問題点の検証が必要だ。想定外といえるさまざまな原因が重なって起きた事故だが、いくつか問題がある。 まず、消防の依頼で警察が押したという踏切の緊急警報ボタンは、あくまで踏切内の危険を知らせるためのものである。たとえ警察や消防であっても「電車を止めるため」という目的以外での使用はやめるべきだ。
・なぜなら、現在のATS(自動列車停止装置)やATC(自動列車制御装置)、運転司令所による中央からの運行管理の体制は、「緊急警報ボタン」が押されると「押された踏切に障害があり、その手前で列車を停止されるべき」であるとして強制力を持つようになっているケースが多いからである。小田急によると、同社の場合はボタンが押された踏切に接近している上下線の電車が自動で停まるという。その結果、火災現場の横で電車が緊急停止するという事態が発生したわけだ。
▽消火のネックは「架線」
・また、本来は電車が停止したからといって即座に線路近くでの消火作業を行えるわけではない。線路のすぐ近くで消火活動を行うには、架線からの漏電や感電の事故を防止するための措置が行われるべきだからだ。 消火活動を行う前に小田急側に何らかの連絡があったかは、同社によると今のところ情報が入っていない。
・架線には、今回の区間であれば直流1500V、交流電化区間なら在来線でも2万Vという高圧電流が送電されている。万が一、通電した架線などの近くで消火活動をすることがあれば大変危険だ。もしも今回、送電の停止などについて鉄道側との連絡や確認を取る前に、電車を止めて線路付近で消火活動が始まっていたのであれば、危険な行為と言わざるを得ないだろう。
・さらに、一旦電車が動き出してから再度電車を停車させ、乗客を線路に下ろして避難させた経緯についても検証が必要だ。今回は運転士・車掌が車両への延焼に気づいておらず、消防隊の指摘を受けてから避難させている。 乗客を線路に下ろして避難させるというのは、鉄道事業者の判断事項である。もし架線が切れて垂れ下がっているようなことがあれば感電の危険があることはもちろん、乗客が線路を避難する区間について、反対方向の電車が走っていないかなどの安全確認が必要だからだ。
・小田急は、線路に乗客を降ろす場合は反対方向の電車が停まっていることなどの安全性を確認するため、司令と車掌などが連絡を取り合ってから行うという。乗客が線路に下りる際の安全が確保されていたかどうか、重ねての検証を求めたい。
・消防の消火活動、人命救助活動を規則で縛ることには、メリットとデメリットがあり、基本的には瞬時の柔軟な判断を尊重したい。だが今回の非常ボタンによる電車の停止から避難に至るまでの経緯については、鉄道の安全を維持するための大原則に照らして問題がある部分がなかったか、鉄道側だけでなく警察・消防側の行動についても検証が必要だと思う。
▽沿線火災対応の原則見直しを
・小田急電鉄の対応にも注文をつけたい。今回の事故では、運転士や車掌が車両への延焼を認識していなかった。たとえばカメラ映像などで周辺の状況を運転士が確認できる仕組みなどがあればすぐに状況把握ができたかもしれない。火災の状況がわかっていれば、現場の横で緊急停止した後も速やかに発車し、延焼を防げた可能性もある。司令所との交信体制が適切だったかといった点も含め、危機管理の面で鉄道側にも改善の必要な点は多数ある。 
・また、車両についても検証が必要だろう。今回の事故で燃えたのは、屋根に電気的な絶縁のために塗られているウレタン樹脂で、難燃剤を含む素材で燃えにくくなっているというが、不燃ではない。屋根の難燃性に関しては総合的な検討が必要だ。
・今回の事故は幸いにも大事には至らなかったが、これを教訓に、鉄道が絡んだ火災における消防の行動原理について原則の見直しをしてもらいたいと思う。同じ日にはJR中央緩行線の大久保駅付近でも線路際での火災が発生している。できるだけ速やかにガイドラインを整備するなどし、周知徹底を図っていただきたいと思う。
http://toyokeizai.net/articles/-/188384

次に、江戸川大学 社会学部現代社会学科 准教授の崎本 武志氏が昨年11月24日付け東洋経済オンラインに寄稿した「「豪華観光列車」料金があまりにも高額なワケ クルーズトレイン料金は「運賃」ではなかった」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・鉄道は主要交通機関の1つとして、旅客・貨物両面の輸送を担う大動脈としてのインフラ機能を有しているが、観光面でも重要な位置づけを担っている。特に近年は鉄道が注目されていることもあり、鉄道に乗車する行為そのものが目的化する、いわば「鉄道乗車そのものを観光行為とする」という利用が一般的にも認知されるようになっている。
・このように、鉄道に乗車する行為を目的とする「本源需要」としての鉄道利用のあり方は、これまでは鉄道ファンなど一部の層のみが味わう楽しみ方であったが、現在はれっきとした観光目的として確立されつつある。また、こうした観光客を目的とした列車である「観光列車」「観光車両」が各地で数多く登場し、人気を博している。
▽最近は「クルーズトレイン」が大人気
・もちろん、これらの観光列車や観光車両には近年登場したものばかりでなく、長い間活躍しているものも多く存在する。新型車両やリニューアルされた車両、レストラン列車やイベント列車、自然を楽しむトロッコ列車やかつて活躍した車両を復活させたSLなどのレトロ列車は各地で運転され、休日を中心に行楽客の人気の的となっている。
・中でも現在注目を集めているのが、「クルーズトレイン」と呼ばれる豪華列車である。クルーズトレインとは観光に目的を特化させた周遊型の豪華列車の総称だ。船舶でも数多くの寄港地での観光を楽しみながら船内での豪華な設備を誇るクルーズ船が高付加価値の観光旅行のジャンルとして確立され、日本でも定着している。海外ではヨーロッパで運行されている「オリエント急行」など数多くのクルーズトレインが存在するが、日本では2013年にJR九州で「ななつ星in九州」が運行されたのが最初だ。今年はJR東日本で「トランスイート四季島」、JR西日本で「トワイライトエクスプレス瑞風」が運行を開始し、国内外から申し込みが相次いでいる。
・ななつ星、四季島、瑞風は、どれも鉄道車両内において豪奢(ごうしゃ)なひとときを味わうことを目的としており、沿線観光地や有名ホテル・旅館にも立ち寄り、宿泊や食事を楽しむことができる「周遊型ツアー」として確立されている。しかし、その額は最も安価なものでも1泊2日で25万円と、かなり高額なものとなっている。
・ななつ星と四季島の3泊4日コースは、それぞれ1泊は沿線地域の豪華旅館の宿泊が加わっているのも大きな特徴だ。ななつ星では由布院温泉の「玉の湯」「亀の井別荘」、「四季島」では、登別温泉「滝乃家」といった、当代一流の旅館である(現在ななつ星は台風18号の影響で久大本線の一部区間不通のため、コース・宿泊地など内容が変更となっている)。瑞風では外部での宿泊はないものの、「菊乃井」村田吉弘氏の日本料理や「ハジメ」米田肇氏の西洋料理を堪能することができる。
・ここで、単純な疑問がある。クルーズトレインは、なぜこれだけ高価なのだろうか。本来の運賃・料金であれば、特別車両であったとしても、ここまでの値段設定は考えられない。
▽クルーズトレインは「募集型企画旅行」だった
・その理由は、豪華さはもちろんだが、クルーズトレインは、従来JRにおいて設定されている特急列車などの運賃・料金体系とはまったく別種類のものだからだ。つまりこの列車に乗車するための条件が「乗車券」「特急券」「寝台券」を購入することではなく、これらの運行そのものが不特定多数の旅行者の募集を行う旅行商品であり、乗車を希望する場合はこの旅行商品に申し込みを行う形をとる、ということなのだ。
・申込先としてそれぞれツアーデスクが開設されているが、ななつ星は「JR九州企画」、四季島は「びゅうトラベルサービス」、瑞風は「日本旅行」といったグループ内の旅行会社がツアーデスクを運営しているのだ。旅行業法では、このように、旅行会社があらかじめ旅行の行程・計画を作成し、パンフレットや広告などで参加者を募集して実施する旅行のことを「募集型企画旅行」と規定している。いわゆる、「パッケージツアー」と称されているものだ。
・旅行業には第1種・第2種・第3種の3つの種別があり、第1種旅行業は海外・国内の、第2種旅行業は国内の募集型企画旅行を企画・実施を行うことが可能であり(第3種は旅行業者が所属する市町村の近隣を対象とする募集型企画旅行の企画・実施のみ可能)、日本のクルーズトレインの場合は鉄道会社に第1種・第2種の旅行業登録があれば列車による旅行商品の企画・実施が可能となる。
・これらクルーズトレイン乗車の申込時は、旅行業約款である旅行条件書が交わされ、旅行業法に基づき募集型企画旅行に参加した、という形がとられる。行程の中で提供される各食事、各観光案内、各宿泊についても、すべて料金に含まれている。
▽単なる移動ではなく、旅程に従う
・このように、クルーズトレインは高付加価値旅行商品として販売されている。目的の有無にかかわらず列車に単純に乗車するのではなく、旅程に従って旅行商品としての企画に参加することが必要となる。 しかし、クルーズトレインが登場する前にも鉄道を使った旅行商品は存在した。新幹線や、かつてのブルートレインなどの寝台列車、各地の観光列車を活用した旅行商品が多数、造成・販売されてきた。
・こうしたクルーズトレインが日本に誕生するまでは、「ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス」や「氷河特急」など海外のクルーズトレインに乗車するパッケージツアーに参加するしかなかった。しかし、日本にもスイスに勝るとも劣らない車窓風景がある。
・これらを生かしたクルーズトレインは貴重な観光資源としての無限の可能性がある。世界各国から鉄道乗車を目的とした観光客を迎え入れることは重要だが、単に人数だけを追求するのではなく、文化的な価値の高いインバウンド振興を果たすべきだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/196908

第三に、 欧州鉄道フォトライター の橋爪 智之氏が昨年12月22日付け東洋経済オンラインに寄稿した「鉄道「高速化競争」から欧州が離脱した理由 「世界最速」の中国とは異なる事情がある」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・10月にイタリアのミラノで開催されたExpo Ferroviaria 2017(鉄道見本市)。2年に1回、ドイツのベルリンで開催される「イノトランス」と比較すればそれほど規模が大きいわけではないが、会場に隣接する車庫スペースを使って、ささやかながら実物の車両展示も行われるなど、主にイタリアの業界関係者へ向けた商談、および宣伝活動の場となっていた。
・今回、その見本市での車両展示で開催前から最も注目を集めていたのは、イタリアの民間高速列車会社NTV社の新型車両ETR675形、通称「イタロEVO」だ。もちろん、同社の看板列車である「イタロ」用の最新型で、初代車両ETR575形と同じフランスのアルストム社製だ。
▽初代よりも遅い新型車両
・しかし、この初代車両と2代目車両、同じ製造会社ながら車体構造が全く異なる。ETR575形は小田急ロマンスカー50000形VSEなどと同様、中間車は1つの台車で両側の車体を支える連接構造を採用しているのに対し、最新型のETR675形は、2つの台車で1つの車体を支える、通常のボギー構造を採用している。 そして、外見上よりさらに大きな違いは、最高速度が異なることだ。初代のETR575形は最高速度が時速300kmなのに対し、ETR675形は250km。なんと50kmも遅いのだ。そういえば、ドイツの最新型高速列車ICE4も、1世代前のICE3が最高速度320kmだったのに対して250kmへと抑えられている。
・鉄道先進国の最新型高速車両が、旧型より速度の面で劣っているとは、一体どういうことなのだろうか。  日本に新幹線が誕生してからすでに50年以上。この間に、世界各国では鉄道の最高速度向上のための研究が絶えず行われ、その技術は日進月歩で進化していった。特に、1990年にフランスの高速新線、LGV大西洋線が完成すると最高速度は時速300kmの時代へ突入し、欧州大陸を中心に高速新線の建設ラッシュとなった。
・21世紀に入ると、中国が高速鉄道建設を本格的にスタート。欧州や日本のメーカーから車両を輸入し、それを基にして多種多様な高速列車を次々と生み出してきた。事故が発生したことで一時は勢いを失っていたが、その後も建設の手を緩めることなく次々と路線を延長し、2017年現在で世界一となる、2万2000kmの高速新線網を有する高速列車大国へと成長した。現在は、世界最速の時速350km運転を実現している。
▽「技術力」の問題ではない
・一方、鉄道先進国であるはずの欧州や日本は2017年現在、最高速度は時速320km止まりで、あとから追いかけてきた中国の後塵を拝している。だが、これは技術的に欧州や日本が中国に追い越された、という意味と必ずしもイコールではない、という点に注意しなければならない。
・日本ではJR東海の新幹線955形試験車両が1996年に時速443kmを達成しており、技術的に新幹線のさらなる高速化ができない理由はないが、現在はリニア開発へ注力しているため、これ以上の速度向上は行わないと考えられる。欧州では、フランスのTGV試験車両V150が2007年に時速574.8kmという前人未到の世界記録を達成しており、現在もこの記録は破られていない。
・これらの速度試験は、日本では記録目的ではなく、高速運転時における安定性や耐久性など、総合的な性能向上を目的として行われている。一方のフランスは、表向きは速度記録への挑戦というスタンスだが、広義的にはその高速走行試験から得られる技術的データを営業列車へフィードバックすることを目的としている。
・だが、営業運転における恒常的なスピードアップとは、試験車両で記録を達成したらすぐに可能という単純な話ではなく、信号システムの変更や軌道強化といった地上設備の更新や騒音対策など、インフラの整備も行わなければならない。 そのためには多額の費用が必要となるが、仮に最高速度を300kmから350kmへ引き上げたとしても、350kmで走行できる区間が短ければ時間短縮効果はわずかとなり、費用対効果で考えれば無理に設備投資をしてスピードアップをする必要はないという結論に至る。
・JR東日本は2012年に発表した中長期経営計画の中で、東北新幹線における将来的な時速360km運転の実現を掲げていたが、すぐには実現へ向けて進まず、まずはE5系新幹線による320km運転からスタート。2017年7月になって、北海道新幹線が全線開業する2030年度までに車両開発や設備改良を進め、360kmでの運転を実現するとしている。
・日本と同様に比較的国土が狭く起伏のある欧州でも、時速300km以上の高速運転には意外と消極的だ。現在、欧州で最速の列車は、フランスの高速新線LGV東ヨーロッパ線で、東北新幹線と同じ最高時速320kmで運行されている。それ以上の速度に関して具体的な計画として挙がっているのは、イタリアの高速列車フレッチャロッサの360km運転があるだけで、欧州における高速列車のパイオニアであるフランスやドイツなどでは、その具体的な計画すらない。
▽「高速化より定時性が重要」
・その唯一の計画を掲げるイタリアは、最新型車両フレッチャロッサ・ミッレ(ETR400形)で速度向上試験を重ね、2016年2月にはイタリア国内最高速度記録の時速393.8kmを記録した。営業認可の取得には、試験走行で営業最高速度+10%の安定した走行が求められるため、営業速度360㎞を実現するためには、少なくとも396㎞を達成することが条件となる。しかし、393.8㎞を記録したところで走行試験は終了した。
・その後、イタリア鉄道(FS)のCEOマツォンチーニ氏は地元紙に対し、時速360km運転については最優先事項ではなく、当面は保留すると述べている。その理由は、利用客が求めるものは、最高速度向上によるわずかな時間短縮より、ダイヤ通りに走る定時性であるため、との見解を示している。
・イタリア国内は、トリノ―ミラノ―ボローニャ―フィレンツェ―ローマ―ナポリと、主要都市を南北に結ぶルートに高速新線が建設されているが、このうち時速360km運転を考慮して線路間隔や曲線が設計されている区間はトリノ―ミラノ間のみで、ほかの区間は線路の改良が必要となる。比較的新しいミラノ―ボローニャ間も、規格としては走行可能だが、土地収用問題があったモデナ付近に制限速度240㎞の急なカーブが存在し、現在もすべての列車がここでの減速を余儀なくされている。
・つまり、現状の設備では全区間で時速360km運転が可能なのはトリノ―ミラノ間だけということになる。同区間の距離はわずか142kmで、所要時間は現時点でも1時間を切っており、例え360km運転を実現したとしてもその短縮効果は数分程度。この区間だけでは費用対効果は薄いというわけだ。
▽なぜ「イタロ」新型は遅くなったか
・さて、かなり前置きが長くなったが、最初の話に戻ろう。フランスのアルストム社は、中~高速向け車両として、タイプの異なる3車種を用意している。有名なTGV、その派生形のAGV、そして「ペンドリーノ」だ。TGVは今さら説明するまでもなく、フランスの高速列車として、今も改良を重ねながら増備が進められている。
・AGVは、両端に機関車を配置した動力集中方式のTGVに対し、日本の電車と同じような動力分散方式を採用した車両で、最高時速300km以上の列車に使用するために開発された。これがイタロの初代車両、ETR575形のベースとなっている車両だ。「ペンドリーノ」は主に250㎞までの中速列車に使用するための車両で、元をたどればイタリアのフィアット社が開発した振り子式特急車両。同社がアルストム社に吸収されてからは、同社の製品ラインナップに加えられた。
・NTV社が今回発注した「イタロEVO」と呼ばれるETR675形はペンドリーノをベースにした車両だが、最高速度は時速250kmで振り子装置もない。「廉価バージョン」というとやや語弊があるが、つまり振り子装置が必要なほどの曲線区間もなく、最高速度で初代車両に多少劣っても、トータルの所要時間にさほど影響がないとNTV社が判断した、ということだ。
・契約価格については、初代のETR575形は25編成で6億5000万ユーロ、1編成当たり2600万ユーロであるのに対し、2代目のETR675形は8編成で4億3000万ユーロ、1編成当たりでは5750万ユーロ。一見すると新型は契約価格が倍以上にハネ上がっているが、これは20年間のメンテナンス費用を含んだ契約となっているためだ。ETR575形の契約にはメンテナンス費用が含まれていない。
・この数字だけではどちらがより経済的かは算出できないが、高速運転を続けていれば、各パーツの摩耗や耐久性の低下はより早く訪れる。ETR575形のメンテナンス費用がその都度発生すると仮定すると、十数年使い続けていけば莫大な金額としてのしかかってくる。
▽「高速化」から適切な速さへ
・NTV社とアルストム社の共通認識として、現在のイタリア都市間路線網においては、最高速度を50km程度落としたところで、所要時間の差は10分以内で収まるという試算がある。実際、イタロが運行されている区間のうち、フィレンツェ―ベネチア間やミラノ―ベネチア間はほとんどが最高速度200km程度の在来線を走るし、高速新線の開業年が古いフィレンツェ―ローマ間など、もともとの路線設計が最高速度250kmの区間もある。
・これらの区間を走る場合、ETR575形ではスペックを持て余すのは間違いない。新型車両を在来線が混在する区間などへ集中的に投入することで、所要時間を大幅にロスさせることなく、かつランニングコストも抑制することが可能となる。今回のイタロEVOの投入には、そんな意図が見え隠れしており、実際に同社は早くも11編成の追加発注を決定している。
・高速列車に夜行列車があるほど、圧倒的に国土が広大な中国は高速鉄道を建設するのに最適な環境が整っており、それが世界最速の時速350km運転へと繋がっている。他方で、高速列車のパイオニアである日本や欧州各国は、国土そのものが中国よりだいぶ狭く、決して環境が整っているとはいえない。現在の欧州各国鉄道の潮流は、さらなる高速化ではなく、より適切な速度による運行へと変化していっているのだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/200848

第一の記事で、 『小田急線火災』、については、 『今回の事故では小田急電鉄の対応にもっぱら注目が集まっているが、消防と警察の判断についても問題点の検証が必要』、というのは確かにその通りだ。そのためには、これらを全て包摂するような第三者委員会を設置すべきだが、そうした報道はまだない。国土交通省が音戸を取るべきだろう。
第二の記事で、 『クルーズトレインは「募集型企画旅行」だった』 というので、料金があまりにも高額なのは、 料金は「運賃」ではなく、参加代金、というので納得できた。それにしても、これだけ高額なのに、かなり先まで予約が詰まっているというのは、バブルというより、新たな旅行スタイルが受け入れられつつあるということなのだろう。
第三の記事で、 『鉄道先進国であるはずの欧州や日本は2017年現在、最高速度は時速320km止まりで、あとから追いかけてきた中国の後塵を拝している』、『 営業運転における恒常的なスピードアップとは、試験車両で記録を達成したらすぐに可能という単純な話ではなく、信号システムの変更や軌道強化といった地上設備の更新や騒音対策など、インフラの整備も行わなければならない。 そのためには多額の費用が必要となるが、仮に最高速度を300kmから350kmへ引き上げたとしても、350kmで走行できる区間が短ければ時間短縮効果はわずかとなり、費用対効果で考えれば無理に設備投資をしてスピードアップをする必要はないという結論に至る』、という欧州の判断は極めて合理的だ。記事を離れるが、東海道・山陽新幹線で博多発東京行きののぞみ34号の台車があと3センチで破断の恐れがあったのに、名古屋駅まで運行を続けたという初の重大インシデントは、重大事故と紙一重だっただけに、JR西日本などの気の緩みが深刻な段階にあることを物語っている。これも、本来は第三者委員会で徹底的な原因究明に当たってもらいたいものだ。
タグ:東洋経済オンライン 鉄道 (小田急線火災、「踏切非常ボタン」に潜むワナ、「豪華観光列車」料金があまりにも高額なワケ、鉄道「高速化競争」から欧州が離脱した理由) 冷泉 彰彦 「小田急線火災、「踏切非常ボタン」に潜むワナ 検証が必要なのは鉄道側の対応だけではない」 消火活動には問題なかったか 崎本 武志 消火のネックは「架線」 「「豪華観光列車」料金があまりにも高額なワケ クルーズトレイン料金は「運賃」ではなかった」 沿線火災対応の原則見直しを 最近は「クルーズトレイン」が大人気 最も安価なものでも1泊2日で25万円と、かなり高額 四季島 瑞風 ななつ星 クルーズトレインは「募集型企画旅行」だった 単なる移動ではなく、旅程に従う インバウンド振興 氷河特急 ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス 橋爪 智之 イタリアの民間高速列車会社NTV社の新型車両ETR675形、通称「イタロEVO」 「鉄道「高速化競争」から欧州が離脱した理由 「世界最速」の中国とは異なる事情がある」 初代よりも遅い新型車両 営業運転における恒常的なスピードアップとは、試験車両で記録を達成したらすぐに可能という単純な話ではなく、信号システムの変更や軌道強化といった地上設備の更新や騒音対策など、インフラの整備も行わなければならない。 そのためには多額の費用が必要となるが、仮に最高速度を300kmから350kmへ引き上げたとしても、350kmで走行できる区間が短ければ時間短縮効果はわずかとなり、費用対効果で考えれば無理に設備投資をしてスピードアップをする必要はないという結論に至る 鉄道先進国であるはずの欧州や日本は2017年現在、最高速度は時速320km止まりで、あとから追いかけてきた中国の後塵を拝している 高速化より定時性が重要」 高速化」から適切な速さへ
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

電気自動車(EV)(その3)(中国発のEV化で日本の自動車産業は電機の二の舞にならないか、クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する 独白ジェームズ・ダイソン、全固体電池の菅野教授が語る EVはこう進化する 次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか) [科学技術]

電気自動車(EV)については、昨年11月29日に取上げた。今日は、(その3)(中国発のEV化で日本の自動車産業は電機の二の舞にならないか、クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する 独白ジェームズ・ダイソン、全固体電池の菅野教授が語る EVはこう進化する 次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか)である。

先ずは、法政大学大学院教授の真壁昭夫氏が昨年12月12日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「中国発のEV化で日本の自動車産業は電機の二の舞にならないか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽世界でEVへの移行が進めば日本自動車メーカーの競争力はどうなる!?
・世界の自動車市場で、今後の“命運”を握る競争が進んでいる。それが、EV(電気自動車)の開発競争だ。その背景には、世界最大の自動車生産・販売国である中国や欧米諸国で、重要な環境対策としてEVを重視することが明確に打ち出されたことがある。 中国や欧米諸国、その他新興国でもEV化に向けた政策が議論され、自動車業界に参入する企業も増えている。この流れは、今後も続くだろう。
・一般的に、内燃機関を搭載した自動車に比べ、EVに使われる部品数は少ない。部品点数が減ると、自動車メーカーの競争力を支えてきた技術力が差別化の要因とはなりづらくなる。 また、EVへの移行のスピードもかなり速い。大規模にEV開発が進めば、供給圧力が高まり、価格に下落圧力がかかる可能性がある。また、IoT(モノのインターネット化)などに伴い、自動車は多くのセンサーを搭載し様々なデータを収集する“デバイス”としての役割を強くするだろう。
・これまで、多数の部品を微妙に“すりあわせ”しながら組み立てる技術で優位性を保ってきた、日本の自動車メーカーにとって、これまでと違った競争を強いられることが想定される。少数のユニット型部品を合わせるだけで完成品ができるデジタル家電の二の舞になることも懸念される。“日の丸”自動車メーカーにとって、EVは一種の鬼門になるかもしれない。
▽EVが主流になることで“すりあわせ”からユニット部品の組み立てへ
・一般的に、レシプロエンジン(燃料が生むエネルギーでピストンを動かす原動機)を搭載した自動車には、3~5万点の部品が必要だ。部品数が多いため、自動車産業のすそ野は広い。トヨタなどの完成車のメーカーをトップに、下請け、孫請けというように、業界内で重層的な取引関係が蓄積されてきた。
・部品が多い分、各パーツの調整が完成車の性能を左右する。走行時の振動、エンジンルームから車内に伝わるノイズなどをコントロールするためには、「経験と知識」の蓄積が欠かせない。高級車ともなればなおさらだ。それらの高い技術が参入障壁にもなった。
・ドイツ、日本の完成車メーカーが競争力を高めてきた理由は、一国内で高品質の自動車部品を生産し、それを“すりあわせ”して完成車を生産することに長けてきたからだ。それは、トヨタがハイブリッドシステムを開発、実用化するためにも不可欠だった。
・EV化は、この産業構造を一変させてしまうだろう。 なぜなら、EVに使われる部品は、内燃機関を搭載した自動車の6割程度で済むからだ。その分、すりあわせ技術への依存度は低下する。言い換えれば、自動車の生産は、“部品のすりあわせ”から、フレーム、バッテリーなどの“ユニット(部品の集合体)の組み立て”にシフトする可能性が高い。
・例えばスマートフォンの生産は、ユニットの組み立てによって成り立っている。アップルのiPhoneには日本製の部品が多く使われているが、それが組み立てられるのは中国にあるフォックスコンの工場だ。 同じことが自動車でも進もうとしている。
・見方を変えれば、部品ごとのバランスなどを調整し、付加価値を生み出すという既存の自動車メーカーが担ってきた役割は、さまざまな業界に溶け出していく可能性が高まっている。状況によっては、完成車メーカーは単なる“車体組み立て業”に変化することも考えられる。
▽異業態の新規参入とこれまでと違った競争の激化
・もっとも、世界の自動車メーカーがこの動きに対応しようとしている。 同時に、中国、インドなどでのEV需要を取り込もうと、他業種からの参入も増えている。EVの開発競争は激化するだろう。決断が遅れると「挽回が難しくなる」と、危機感を募らせる経営者は多い。
・それを印象づけた動きの一つが、日本電産がEVの駆動用モーターへの参入を決定したことだ。 同社は、フランスのPSAと組み量産を目指す。合弁を足掛かりにして、日本電産がEVの生産に取り組む可能性もある。世界最大の電子機器の受託製造サービス(EMS)企業である台湾のホンハイも、EV事業の強化を重視している。
・その他にも、自動車業界に参入する企業は増えている。英国ではダイソン、国内ではヤマダ電機が参入を決めた。鉱山業界からは、BHPビリトンがバッテリー向けの素材供給能力を増強しようとするなど、EV需要を取り込もうとする企業は急速に増えている。
・こうした動きをもとに将来の展開を考えると、かなりダイナミックに自動車業界の構図は書き換えられていくだろう。特に、アマゾンやグーグルが自社ブランドのEVを市場に投入すれば、かなりの社会的なインパクトがあるはずだ。 自動車は、交通状況や部品の稼働状況など、ありとあらゆるデータを収集するデバイスとしての性格を強くしている。オンラインのネットワークと自動車がつながる“コネクテッドカー”が実用化されれば、自動車の運転が自動化されるだけでなく、移動や物流などの仕組みも大きく変わるだろう。
・そう考えると、ハイテク企業と自動車の関係は接近するはずだ。中国ではバイドゥ(百度)がインテルやダイムラーをはじめとする有力企業とともに、自動運転化技術の実用化に向けた実験を開始した。こうした動きが自動車とネットワーク技術の融合を促す。自動車メーカーが自動車をつくるという常識で、今後の自動車業界を論じることは難しくなっている。
▽重要性高まる、EV化の先を見据えた経営戦略
・現時点でわが国の行政と自動車業界は、EV化に出遅れている。 特に、トヨタにとってはハイブリッドカーの生産ラインを維持しつつ、EVの生産能力を整備するのは容易ではない。このままの状況が続けば、国内自動車メーカーの競争力は低下するだろう。 中長期的な目線で考えると、中国での需要を見込んでEVの供給能力は増えるだろう。一方、需要が右肩上がりで増え続けるとは考えづらい。10年単位で考えると、世界経済が減速に向かうことも考えられる。どこかで需給バランスは崩れ、EVの価格に下落圧力がかかる可能性がある。
・EVではバッテリーの性能が問われる。その他のユニットに関しては差別化が難しいといわれている。ブランド(メーカー)や外見が違うが、中身は同じという流れに行き着くことも考えられる。その見方が正しければ、EVにはコモディティー化しやすい要素がある。生産面では先進国よりも新興国の方が有利だ。
・1990年代、アジア新興国が台頭する中で、半導体などの電機業界では同様の展開が進んだ。わが国の企業は、各社独自の規格に従って完成品を作ることに固執し、結果的に競争力を失った。その教訓を生かすべきだ。
・重要なことは、製品の設計やコンセプトを“オープン(公開)”かつ“コモン(共通)”にすることだ。バイドゥにはその意図がある。トヨタもマツダ、デンソーと組み、他社の参画を呼び掛けながらEVの開発を急いでいる。同時に、トヨタは人工知能やネットワーク技術のための研究所も開設し、ブロックチェーンなどの研究に力を入れている。同社が11月28日に発表した経営陣の刷新にも、EV化の先を見据えた戦略的な視点が反映されている。
・将来的には、日常生活の中で自動車が家電と同じような位置づけになることも考えられる。その中で国内企業が競争力を発揮するためには、環境が大きく変わることへの危機感を各企業で共有し、新しいモノやサービスの創造に注力することが欠かせない。それが、世界規模でモビリティとネットワークの融合が進むことへの対応につながるだろう。
http://diamond.jp/articles/-/152413

次に、1月12日付け日経ビジネスデジタル「クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する 独白ジェームズ・ダイソン」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・世界に驚きを与えたダイソンのEV参入。ファンは沸き立つ一方、自動車業界は実現性を疑問視する。 「本当に成功するのか」─。創業者、ジェームズ・ダイソン氏が決断の背景を打ち明ける。
・「A Dyson EV」。2017年9月26日、英ダイソン創業者のジェームズ・ダイソン氏は全社員宛てにこう題したメールを送り、EV(電気自動車)事業への参入を表明した。サイクロン掃除機、羽根のない扇風機など、ユニークな機能とデザインを兼ね備えた家電を開発し、消費者の支持を獲得してきたダイソン氏。「次はなぜ、EVなのか」。そう問うと、話は自動車メーカーに対する痛烈な批判から始まった。
▽VWの排ガス不正問題で決断
・なぜダイソンがEVを手掛けるのか。皆さんには多少の驚きを与えたかもしれませんが、決して思い付きで始めたわけではありません。むしろ長い間、考え続けてきた構想でした。 ダイソンがEVを開発する理由。一言で言えば、世界で広がる環境汚染に対して行動を起こしたいという切実な思いです。とりわけ自動車の排気ガスによる大気汚染は深刻です。この惨状を変えたい。
・英国の大学キングス・カレッジ・ロンドンによると、大気汚染を理由に命を落とす人は、ロンドン市内だけで毎年9500人近くに上ります。世界で見ると犠牲者の数はさらに増え、世界保健機関(WHO)は、2012年に世界中で約700万人が死亡したと報告しました。大気汚染は、今では世界最大の環境リスクと言って過言ではありません。ここに解決策を示すことが、今のダイソンの使命だと考えています。
・私自身、この問題には30年近く取り組んできました。1990年、まだダイソンを創業する前ですが、自動車の排気システムに取り付ける、粒子状物質を捕集するサイクロンフィルターの開発に着手しました。サイクロンの原理は、掃除機に利用したものとほぼ同じです。きっかけは、偶然に目にした米国立労働安全衛生研究所の論文でした。ディーゼルエンジンの排気ガスが含む有害物質と、実験用のマウスやラットが早期に死亡することを関連付ける内容でした。後で分かったことですが、ガソリンエンジンも、同様の問題を抱えています。
・日々、何気なく自動車を利用することが、我々を死に至らしめる可能性がある。とても深刻な問題のはずですが、自動車メーカーを含め社会の関心はとても低かった。そこで、自分自身でその解決策を考えることにしたのです。 サイクロンフィルターはその後、試作と検証を繰り返しながら、93年までには実用に耐え得るレベルになりました。当時、BBC(英国営放送)で試作品が紹介されて、それなりに話題にもなったのです。
・しかし、自動車業界の反応はとても薄いものでした。ディーゼルの排気ガスは環境にも人体にも大きな問題はないとし、我々が開発したフィルターの重要性について、どこも真剣にとりあってはくれませんでした。それでも諦めず、2000年まで開発を続けました。 そうしている間に、欧州連合(EU)当局が「クリーンディーゼル」エンジンの採用を奨励するようになりました。ディーゼルが環境に与える影響は問題のないレベルであり、EUとしてクリーンディーゼルの普及に力を入れると。英国もEUの考えをそのまま取り入れ、ディーゼルエンジンは環境に優しいものとのイメージが広がりました。さすがに、プロジェクトを中断せざるを得ないという結論に至りました。
・ところがです。大気汚染の問題は一向に収束していません。先進国、途上国に関係なく、大都市は空気が汚染され、人々が苦しんでいます。問題を放置してきた大手自動車メーカーは、その責任を免れることはできません。 決定的だったのは、15年に発覚した独フォルクスワーゲン(VW)のディーゼルスキャンダルです。自動車メーカーは、大気汚染問題に正面から取り組むことなく、規制を巧みに回避してきたことが明らかになりました。信じられない背信行為を続けていたのです。
・幸いなことに、今のダイソンには当時のフィルター開発とは別の方法でこの問題に対処する技術があります。長年開発を続けてきたモーターと電池、そしてAI(人工知能)などのソフトウエア。(15年に米スタートアップを買収して手に入れた)全固体電池は誰もが開発したがっている技術です。ファンヒーターや空気清浄機能などの空調家電で培ったノウハウなども組み合わせれば、ダイソン流のアプローチで大気汚染問題に立ち向かえます。それが、ダイソンがEVに乗り出す理由です。
・ですから、米テスラの成功に我々も追随しようというわけではありません(笑)。私には、長い間、世界的な社会課題を解決したいという、燃えるような強い思い(desire)があったのです。 今、自動車メーカーがせきを切ったようにEV開発に乗り出しています。多くは「環境への配慮」をうたっていますが、私から見れば、規制によって無理に強制されているようにしか見えません。我々の動機とは明らかに違います。
▽外部の懸念、気にしない
・創業前からの強い思いが自身をEV開発へ突き動かしたと繰り返したダイソン氏。一方で、EV開発はこれまで成功を収めてきた家電開発とは複雑さも投資規模も異なる。「本当に成功できるのか」と疑問を呈する声も少なくない。ダイソンは、テスラに転職した元社員や前CEO(最高経営責任者)のマックス・コンツ氏を情報漏洩の疑いで訴えるほど、徹底した秘密主義を貫く。そのため謎が多い。
・EV開発は既に約3年前から開始しています。私自身も多くの時間をこのプロジェクトに割いていますが、現時点では内容についてのコメントはしません。我々は従来も秘密主義でやってきましたし、自動車開発の競争は激しく、秘密保持は鉄壁にする必要があります。
・本当にできるのかという疑問の声がある? 声の主が我々の何を知っているかは分かりませんが、今は「できる」とだけ答えておきましょう。20年までにモーターと電池という我々のコア技術を活用したEVを開発し、21年から量産を始めます。投資額も現在表明している20億ポンド(約3000億円)で足ります。評価は、ぜひ完成した製品を見てからにしてほしいですね。
・ダイソンはもはや家電メーカーではなく、テクノロジー企業です。15年に発売したロボット掃除機「360アイ」には、360度の視界を持つパノラマレンズのカメラを搭載して“自動運転”を実現しています。リアルタイムに部屋の特徴を認識し、室内の位置関係を計算して地図を作製します。英インペリアル・カレッジとは画像処理技術について研究していますが、これらは全てEVに活用していきます。
・AIや機械学習の研究にも資源を注いでいます。ダイソンのデジタルモーターの回転速度を調整するためには、従来は機械的に回転数を設定しておく必要がありました。しかし、今は全てソフトウエアで制御しています。スマートフォンで家電を操作するといった目に見える部分から、モーターの制御といった裏側まで、ソフトの研究開発は急ピッチで拡大中です。社内のエンジニアもソフトに精通する人材が今や多数を占めます。
・EVを開発している他社の動向は気にしていません。自動車メーカーも、EVで本当に成功しようと思うなら、エンジンを搭載した自動車の開発を引きずらず、開発体制をリセットする必要があります。EVの中核となるモーターと電池の開発も同様です。彼らにアドバンテージがあるとは思いません。
▽「デザイン」が革新を生む
・ダイソンは、掃除機や扇風機など、一般には技術革新が乏しく「コモディティー(汎用品)」と呼ばれる成熟市場に飛び込み、イノベーションを起こしてきた。ここ数年の業績は急拡大しており、16年12月期の売上高は前の期比45%増の25億ポンド(約3625億円)と、5年前に比べ2倍以上の規模になっている。そんなダイソンが次に照準を定めたのがEV。クルマもコモディティーになったことを意味するのか。
・自動車がコモディティーになったのか? 私は全くそう思いません。むしろ、自動車は最もコモディティーから遠い製品の一つだと考えています。とても複雑で、感情的な製品です。付け加えれば、我々が手掛けた製品はいずれもコモディティーだとは考えていません。消費者には、掃除機もドライヤーも日々の生活を送る上でとても価値のある製品です。コモディティーかどうかを決めるのは、むしろ、開発した側の情熱や思いがどれだけ注がれているかによります。
・なぜ、ダイソンは他社と違う製品を開発できるのか。それは我々が「デザイン」という概念を一般よりも、より包含的に捉えているからです。デザインとは、単に製品の見た目を指すだけではありません。製品がどう機能するかであり、使われ方を徹底的に考え抜く行為も含みます。突き詰めれば、製品によって消費者が抱える課題や不満をどう解消するかを考えることなのです。 これを実践するには、デザインとエンジニアリングは分けない方がいい。ダイソンのエンジニアは全員、デザイナーでもあります。製品とは、機能とデザインが密接に関わり合いながら生まれていくとの哲学があるからです。
・歴史を振り返れば、デザイナーという職業は存在しませんでした。エンジニアがその役割を担っていたのです。これが分離するきっかけを作ったのが、自動車産業です。大量生産・大量販売を志向した自動車メーカーは、エンジニアリングからデザインを切り離し、マーケティングに活用するようになったのです。デザインという役割は自動車を売るために分離され、流れは一般製品を売る企業にも広がっていきました。
・もう一つ、他社とダイソンが違うように見えるのは、エンジニアである私が会社を率いているからでしょう。昔も今も、エンジニアが経営のトップに存在する企業は稀有なケースでした。 その昔、私が商談相手に製品を持っていくと、「エンジニアではなくビジネスマンはいないのか?」とバカにされたものでした。しかし、製品の可能性は誰よりもエンジニアが理解しています。仮にあなたが、新製品のアイデアを持ち込んできたら、その試作機を見て、製品として成功しそうかどうかを即決できます。ビジネスやマーケティングといった話は、その後についてくるものです。日本の企業だって、ソニーやホンダの創業期はそのような哲学を持った会社だったと思います。 もちろん、私の経営が唯一の正しい方法だとは言いません。しかし、私自身はこのやり方が素晴らしい製品を生むものだと信じています。
▽破壊の先に未来がある
・ダイソン氏は現在70歳。EV開発の陣頭指揮を執り、現在も世界を飛び回る日々を続ける。その一方で、後継者に指名した長男のジェイク・ダイソン氏が15年から経営に参画し、世代交代に向けた準備も進めている。EV参入の先には、どのようなビジョンを描いているのだろうか。
・EVの先、ですか。もちろん、24時間365日、常に考えていますよ。詳しくは言えませんが、30年後にダイソンがどうあるべきか、ビジョンも明確に持っています。それに向かって、ダイソンの企業文化は日々進化していくことになるでしょう。 技術の変化はかつてなく激しくなりました。昨日の成功体験が明日も役立つとは限らない時代です。過去の経験は価値になるどころか、むしろ障害となる可能性もある。ダイソンもこれまでの成功体験は捨て、未来に向けて変わり続ける必要があります。我々が新卒の学生を積極的に採用するのは、彼らが社会人として成功体験を積んでいないからです。こうした人材の重要性は、今後さらに高まっていくでしょう。
・これから参入するEVは比較的長い時間をかけて準備をしてきましたが、10年後、20年後は全く違うものを手掛けているかもしれません。私は元来、技術による既存業界の破壊(disruption)が好きなのです。それ自体は不安定ですが、その先には常に新しい機会が広がっているのですから。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/special/010900888/?ST=pc(このリンクにアクセスするには、日経ビジネスオンラインでのポイントが必要)

第三に、1月17日付け日経ビジネスオンライン「全固体電池の菅野教授が語る、EVはこう進化する 次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか」を紹介しよう(▽は小見出し、――は聞き手の質問、+は回答内の段落)。
・英ダイソンのEV(電気自動車)参入表明で注目を集めるのが「全固体電池」だ。現在主流のリチウムイオン電池が抱える走行距離などの限界を突破する電池として期待されている。ダイソンのみならず、トヨタ自動車など多くの会社が開発に力を注ぎ始めている。第一人者、東京工業大学の菅野了次教授に、全固体電池がEVを変える可能性について聞いた。
――全固体電池は、現在主流のリチウムイオン電池と比べて、どんな点が優れているのでしょうか。
・菅野了次・東京工業大学物質理工学院副学院長・教授(以下、菅野氏):まず、今のリチウムイオン電池というのはすごくいい電池です。鉛蓄電池やニッケルカドミウム電池などに比べてはるかにエネルギー密度が高く、充放電の特性も素晴らしい。これよりもいい電池を作るというのは、なかなか難しい。
+この素晴らしいリチウムイオン電池の電解液を固体にしたらどうなるか、というのが、そもそもの全固体電池の発想です。まだ実用段階の製品としては世の中に出てきてはいませんが、電解液を固体にした際に発揮されるであろう、優れた特性が明らかになるにつれて注目が高まってきました。
+例えば、現在のリチウムイオン電池は、電解液を充てんした独立したセル(電池の構成単位、単電池)を直列につないで使用します。一方、電解質を固体にすると、正極と固体電解質、負極を重ねて1枚のシート状にして、そのシートを順番に積み上げていくことでパッケージにできます。液体を使わないために構造が簡単になり、容量を上げやすくなるだろうと期待されています。
▽出力を大きくできるのが最大の利点
――全固体電池の開発が加速しているのは、菅野先生などが新しい物質を発見したからと言われていますね。
・菅野氏:電解質の中でイオンが活発に動くほど、電池の出力は大きくできるのですが、かつては、固体の中をリチウムのイオンが動くという現象を起こさせること、そのものが難しいとされていました。しかし、我々(東工大とトヨタ自動車)は2011年に、固体の中でもイオンがよく動く材料を見つけました。
+電解液を使う今の電池の欠点は、大電流を流すと電解質の中をイオンが動きにくくなるということです。それを、大変高度に設計することで、大きなパワーを取れる電池に仕上げているのが現状です。 一方、我々はさらに16年に、固体材料に塩素を添加するとイオンがさらによく動くことを発見しました。イオンの動きが速いと出力を大きくできると先ほどお話ししましたが、(これによって従来のリチウムイオン電池よりも)全固体電池の出力を大きくできる可能性が出てきました。それが、全固体電池の最大のメリットとして、注目されている理由だと思います。
――リチウムイオン電池を使う今のEVは、充電に時間がかかることも欠点の1つだと言われています。全固体電池を使うと、充電速度も速くなるのでしょうか。
・菅野氏:電流をたくさん取れるようになると、充電も速くなると期待できます。ただし、電池自体の電圧の限界といった問題もありますので、電流がたくさん取れるということがすなわち、充電が速くできるというわけではありません。それでも、工夫次第で速くなる可能性はあると考えています。
▽心臓のペースメーカーに使われるほど信頼性が高い
――現在のリチウムイオン電池は、自動車事故などの際に爆発したり、炎上したりすることが懸念されています。全固体電池になると、安全性は増しますか。
・菅野氏:固体材料の場合、液体が蒸発して引火することはないので、液体の電池より燃えにくいと言っていいと思います。 実は、これまで全固体電池は、固体の中でイオンが動くことが難しいために、大きな電流が取れず用途が非常に限定されていました。その1つが、心臓のペースメーカーです。微弱の電流でも十分だからですが、心臓のペースメーカーに利用されていたのは、信頼性が高いからです。
・ただし、我々が今開発している材料は、多少空気中で分解しても、とにかくイオンが動くことを重視していますので、実際の電池に使ったときの安全性は、大きな電池にしてみなければ分からないところはあります。
▽全固体電池でクルマの設計の自由度が増す
――そもそも、全固体電池の用途として、なぜEVが有望視されているのでしょうか。
・菅野氏:これまでの全固体電池は、実用化されたのが心臓のペースメーカーくらいで、ほとんど電池として認められていなかったような状況でした。信頼性はあるけれど、パワーは取れない。「使い道はあるのか」と問われれば、「ない」と答えるしかありませんでした。
+しかも、リチウムイオン電池という非常に優れた電池があり、それを全固体電池に置き換える必要はないと考えられてきました。 実際、電池という分野はこれまで、既存の電池を新たな電池が置き換えたという事例はないんですよね。新しい電池が登場した時には、必ずと言ってよいほど、その電池を必要とする新たな用途、新たな製品が世の中に誕生しています。例えば、リチウムイオン電池が登場したのは、ノートパソコンや携帯電話が誕生したのと、ちょうどタイミングが一緒でした。
+だから、もし全固体電池がうまい成長ストーリーを描けるとするならば、やはり新たな用途や製品に使われるということだと思います。
――全固体電池によって、クルマ全体の設計の自由度は増すでしょうか。
・菅野氏:例えば、固体電解質は100℃でもマイナス30℃でも動くので、リチウムイオン電池に比べて、(安定して動く)温度範囲が広がります。つまり、それほど厳しい温度管理をしなくても良くなるという点で、設計の自由度は増す可能性があります。リチウムイオン電池は60℃以上になると劣化が進むので、現在のEVは冷却装置などで温度管理をきちんとする必要があります。
+もちろん、容量の大きな電池にした場合に、様々なややこしい問題が出てくるかもしれません。それでも、固体電解質は低温から高温までたぶん大丈夫なので、設計の自由度が増す可能性はあると思います。
――英ダイソンは全固体電池のベンチャーを買収し、開発を加速しています。ダイソンがどのような電池を出してくるか、研究者の間で噂になっていませんか。
・菅野氏:全然分かりません。あまり情報は聞こえてきませんね。
――やはり、先頭を走っているのはトヨタですか。
・菅野氏:トヨタでしょうね。
――菅野先生などの基礎研究のおかげで、素材開発は進んできました。一方、製品化に向けた各社の生産プロセスの開発はどんな状況と見ていますか。
・菅野氏:電池が実用化されるまでには、我々のような基礎研究から応用研究、そして実際のデバイスの生産というように、それぞれの段階でギャップがあります。メーカーが実際のデバイスとして製品化するのが一番の課題ですが、いつまでに製品化するという宣言もしているところを見ると、それは多分、乗り越えたんだろうなと思います。
+。競争はなかなか激しいですよ。固体電解質の素材は日本よりも海外で研究が活発ですね。例えば、中国やドイツ。米国も、我々が発表したすぐ後に、コンピューターで材料の組み合わせを計算する計算科学という手法で、実際のモノを作らずに知財だけを先に押えてしまうといったことまでやっています
――全固体電池を使えば、EVの走行距離がガソリン車を超えてしまうということも起こり得るのでしょうか。
・菅野氏:全固体電池がEVでどういう使われ方をするのか、あまり分からないですけれども、(電池の)パッケージを小型化できたり、エネルギー密度を上げられたり、長く走れたりといったメリットは、多分あると思います。 可能ならば、やはり充電速度を上げたいですけれども、たぶんそれは次のステップでしょうね。  クルマが道を走ったら充電できたりとか、ボタンを押したらクルマが迎えに来たりとか、そういう将来が見えてきていますよね。全固体電池によって電池の実力がもっと上がれば、そういった未来もたぶん一気に近づくでしょう。
――全固体電池が、EVのあり方を変えるということですか。
・菅野氏:今はまさに、全固体電池がものになるかどうかという瀬戸際のようなところでもあります。これまでの電池とはそもそもの発想が違うので、うまくいくならば、たぶん行き着く先も違うものになるだろうと期待しています。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/011100194/011100003/?P=1

第一の記事で、 『これまで、多数の部品を微妙に“すりあわせ”しながら組み立てる技術で優位性を保ってきた、日本の自動車メーカーにとって、これまでと違った競争を強いられることが想定される。少数のユニット型部品を合わせるだけで完成品ができるデジタル家電の二の舞になることも懸念される。“日の丸”自動車メーカーにとって、EVは一種の鬼門になるかもしれない』、というので、改めて深刻さを再認識させられた。 『異業態の新規参入とこれまでと違った競争の激化』、 『重要なことは、製品の設計やコンセプトを“オープン(公開)”かつ“コモン(共通)”にすることだ』、などはその通りなのかも知れない。
第二の記事で、 『EVを手掛けるのか。皆さんには多少の驚きを与えたかもしれませんが、決して思い付きで始めたわけではありません。むしろ長い間、考え続けてきた構想』、 事実、ダイソン氏が、創業前の1990からサイクロンフィルターを開発していたというのは、初耳だが、なるほどと納得した。 『コモディティーかどうかを決めるのは、むしろ、開発した側の情熱や思いがどれだけ注がれているかによります』、というのは、興味深い指摘だ。 『「デザイン」が革新を生む』、というのも、あのユニークなデザインを考えると説得的だ。 『我々が新卒の学生を積極的に採用するのは、彼らが社会人として成功体験を積んでいないからです。こうした人材の重要性は、今後さらに高まっていくでしょう』、との考え方もユニークだ。やはりダイソン氏は、イノベーションのスーパースターだ。
第三の記事では、全固体電池の開発がどんな段階にあるか、についてはハッキリしてないが、完成すれば素晴らしいものらしい。 『固体電解質の素材は日本よりも海外で研究が活発ですね。例えば、中国やドイツ。米国も、我々が発表したすぐ後に、コンピューターで材料の組み合わせを計算する計算科学という手法で、実際のモノを作らずに知財だけを先に押えてしまうといったことまでやっています』、とは驚きだ。計算科学で特許を取ってしまうとは、時代もずいぶん進んだものだ。いずれにしろ、全固体電池が実用化されると、我々の生活もますます便利になりそうだ。
タグ:、EVに使われる部品数は少ない。部品点数が減ると、自動車メーカーの競争力を支えてきた技術力が差別化の要因とはなりづらくなる これまで、多数の部品を微妙に“すりあわせ”しながら組み立てる技術で優位性を保ってきた、日本の自動車メーカーにとって、これまでと違った競争を強いられることが想定される (EV) )(その3)(中国発のEV化で日本の自動車産業は電機の二の舞にならないか、クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する 独白ジェームズ・ダイソン、全固体電池の菅野教授が語る EVはこう進化する 次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか) 「中国発のEV化で日本の自動車産業は電機の二の舞にならないか」 真壁昭夫 ダイヤモンド・オンライン 電気自動車 少数のユニット型部品を合わせるだけで完成品ができるデジタル家電の二の舞になることも懸念される。“日の丸”自動車メーカーにとって、EVは一種の鬼門になるかもしれない EVが主流になることで“すりあわせ”からユニット部品の組み立てへ 自動車の生産は、“部品のすりあわせ”から、フレーム、バッテリーなどの“ユニット(部品の集合体)の組み立て”にシフトする可能性が高い 、部品ごとのバランスなどを調整し、付加価値を生み出すという既存の自動車メーカーが担ってきた役割は、さまざまな業界に溶け出していく可能性が高まっている 異業態の新規参入とこれまでと違った競争の激化 自動車の運転が自動化されるだけでなく、移動や物流などの仕組みも大きく変わるだろう 重要性高まる、EV化の先を見据えた経営戦略 現時点でわが国の行政と自動車業界は、EV化に出遅れている 重要なことは、製品の設計やコンセプトを“オープン(公開)”かつ“コモン(共通)”にすることだ 日経ビジネスデジタル 「クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する 独白ジェームズ・ダイソン」 創業者、ジェームズ・ダイソン 決して思い付きで始めたわけではありません。むしろ長い間、考え続けてきた構想でした ダイソンがEVを開発する理由。一言で言えば、世界で広がる環境汚染に対して行動を起こしたいという切実な思いです。とりわけ自動車の排気ガスによる大気汚染は深刻です。この惨状を変えたい この問題には30年近く取り組んできました。1990年、まだダイソンを創業する前ですが、自動車の排気システムに取り付ける、粒子状物質を捕集するサイクロンフィルターの開発に着手 EUとしてクリーンディーゼルの普及に力を入れると。英国もEUの考えをそのまま取り入れ、ディーゼルエンジンは環境に優しいものとのイメージが広がりました。さすがに、プロジェクトを中断せざるを得ないという結論に至りました 今のダイソンには当時のフィルター開発とは別の方法でこの問題に対処する技術があります。長年開発を続けてきたモーターと電池、そしてAI(人工知能)などのソフトウエア。(15年に米スタートアップを買収して手に入れた)全固体電池は誰もが開発したがっている技術です。ファンヒーターや空気清浄機能などの空調家電で培ったノウハウなども組み合わせれば、ダイソン流のアプローチで大気汚染問題に立ち向かえます。それが、ダイソンがEVに乗り出す理由です。 20年までにモーターと電池という我々のコア技術を活用したEVを開発し、21年から量産を始めます。投資額も現在表明している20億ポンド(約3000億円)で足ります ・ダイソンはもはや家電メーカーではなく、テクノロジー企業です デザイン」が革新を生む コモディティーかどうかを決めるのは、むしろ、開発した側の情熱や思いがどれだけ注がれているかによります 我々が「デザイン」という概念を一般よりも、より包含的に捉えているからです。デザインとは、単に製品の見た目を指すだけではありません。製品がどう機能するかであり、使われ方を徹底的に考え抜く行為も含みます。突き詰めれば、製品によって消費者が抱える課題や不満をどう解消するかを考えることなのです これを実践するには、デザインとエンジニアリングは分けない方がいい。ダイソンのエンジニアは全員、デザイナーでもあります 製品とは、機能とデザインが密接に関わり合いながら生まれていくとの哲学 エンジニアである私が会社を率いている 破壊の先に未来がある 日経ビジネスオンライン 「全固体電池の菅野教授が語る、EVはこう進化する 次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか」 全固体電池 東京工業大学の菅野了次教授 電解液を固体にした際に発揮されるであろう、優れた特性が明らかになるにつれて注目 液体を使わないために構造が簡単になり、容量を上げやすくなるだろうと期待されています 出力を大きくできるのが最大の利点 充電も速くなると期待できます 液体の電池より燃えにくい 全固体電池でクルマの設計の自由度が増す 固体電解質の素材は日本よりも海外で研究が活発ですね。例えば、中国やドイツ。米国も、我々が発表したすぐ後に、コンピューターで材料の組み合わせを計算する計算科学という手法で、実際のモノを作らずに知財だけを先に押えてしまうといったことまでやっています
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

情報セキュリティー・サイバー犯罪(その3)(増殖続けるダークウェブ、サイバー攻撃の温床に、日本の「サイバー攻撃対策」に募る大きな不安 イスラエル発イベントが東京で開かれた意味、インテルを突如襲った「致命的なバグ」の実態 この問題はいったいどれだけ深刻なのか) [科学技術]

情報セキュリティー・サイバー犯罪については、昨年10月16日(その3)(増殖続けるダークウェブ、サイバー攻撃の温床に、日本の「サイバー攻撃対策」に募る大きな不安 イスラエル発イベントが東京で開かれた意味、インテルを突如襲った「致命的なバグ」の実態 この問題はいったいどれだけ深刻なのか)

先ずは、昨年11月21日付け日経ビジネスオンライン「増殖続けるダークウェブ、サイバー攻撃の温床に 企業や官公庁の幹部のメールも筒抜け」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは回答、+は回答内の段落)。
・5月に発生した世界同時多発サイバー攻撃の震源地となった「ダークウェブ」。銃や麻薬、サイバー攻撃用の「兵器」も売り買いされ、日本企業も標的になりつつある。拡大する脅威に対抗するためには、闇市場を監視してリスクを察知する必要がある。(日経ビジネス2017年9月18日号より転載)
・7月12日、タイ警察の拘置所で、拘留されていた20代のカナダ人男性が自殺した。男の名はアレクサンドル・カゼス。世界最大の“闇市場”として悪名をはせていたEC(電子商取引)サイト、「アルファベイ」の運営者として逮捕されていた。 その8日後、アルファベイのトップページが突如として書き換えられた。「THIS HIDDEN SITE HAS BEEN SEIZED(この闇サイトは制圧された)」。こんな文字が米司法当局や欧州警察機構のロゴとともに躍っていた。
・アルファベイには4万人の出品者が集い、拳銃や違法薬物、クレジットカードや決済サービスの暗証番号、マルウエア(ウイルスなど悪意のあるソフトウエアの総称)などを販売していた。通常のECサイトと同様に出品者を評価するシステムを備え、仮想通貨のビットコインで決済をしていた。カゼスは2014年からアルファベイを運営して富を蓄積。タイに3軒の家を構え、伊ランボルギーニの高級車など20億円以上の資産を保有していた。
・インターネットでは通信者の身元は記録され、追跡が可能だ。ではなぜ、4万人もの悪人が3年にわたって取引を続けられたのか。それを理解するにはアルファベイが存在していた、「ダークウェブ」と呼ばれる世界を知る必要がある。
▽公開されるウェブサイトは「氷山の一角」
Q:なぜ「ダークウェブ」と呼ばれる?
A:インターネット空間は氷山に例えられる。米グーグルなどの検索サイトからたどり着けるのが、表面にある「サーフェスウェブ」。一説には、インターネット空間の1%にも満たないともいわれている。 水面下に存在するのが、一般には公開されていない「ディープウェブ」。IDとパスワードでログインするECサイトや、それを支えるデータベースなどが該当する。我々が多くの時間を過ごしている、米フェイスブックなどのSNSの個人ページも含まれる。
+ディープウェブの最下層には、通常のウェブブラウザーにアドレスを入力してもアクセスできない領域が存在する。これが「ダークウェブ」だ。下の年表に示すように、違法物の売買や、サイバー攻撃のための情報交換、窃取した機密情報の暴露などの犯罪行為に多く利用されている。
Q:どうやってアクセスするのか?
A:最も広く利用されているのが「Tor(トーア)」という匿名化ツールだ。複数のサーバーを経由して、利用者の素性と通信経路を隠すのが特徴だ。Torはもともと、弾圧政権下の民主活動家らを支援するために開発された。米海軍もそのプロジェクトに参加している。 日本では、Torを使って他者のパソコンを乗っ取り、ネット上で犯罪予告をする「パソコン遠隔操作事件」が2012年に発生。警察はTorで隠された乗っ取り行為を見落とし、誤認逮捕が相次いだ。
Q:どんなサイトがある?
A:違法な薬物やウイルスを売るEC(電子商取引)サイトや、ハッカーらが情報交換をするフォーラム、殺人やサイバー攻撃の請負サイトなど、犯罪行為に関わるサイトが多いのが実情だ。 一方で、弾圧や検閲を回避する目的のSNSも存在する。フェイスブックはダークウェブ上で、サーフェスウェブと同様のサービスを提供している。インターネット掲示板「2ちゃんねる」を模したものなど日本語サイトも存在するが、英語やロシア語と比べて数は多くない。
・ダークウェブに絡んだ事件(リンク先に表)
▽闇の商人と捜査当局の攻防
・ダークウェブは通常の検索サイト経由ではたどり着けない、ネット空間でも特に隔絶した領域だ。アクセスするには、通信者の身元を隠す「Tor(トーア)」などの匿名化ソフトを利用する。複数のサーバーを経由するなどして通信経路を偽装するため、捜査当局は闇の取引を解明できずにいた。
・世界最大の闇市場の称号はもともと、13年に摘発された「シルクロード」のものだった。このサイトには当時、約1万4000点の違法物が出品されていた。その後4年間でダークウェブの脅威が急拡大したことは、アルファベイにドラッグなどが25万点以上、漏洩した個人情報などが10万点以上出品されていたことからも明らかだ。
・歩調を合わせるように、この間、サイバー攻撃が急増した。ドイツの研究機関によると、16年に発見された新種のマルウエアは1億2700万種類。毎秒4件の新種が誕生し、12年の4倍に膨れ上がった。闇市場を通じて攻撃ツールが様々なハッカーに行き渡り、改良をされてまた売買される。サイバー攻撃を請け負うサイトもあり、企業のリスクを闇市場が大きく増幅させている。
・アルファベイの閉鎖は闇市場の終焉ではない。あるセキュリティー企業関係者は「また次のシルクロード、アルファベイは生まれてくる」 と予想する。米当局はアルファベイの出品者の名前を一部公表したが「ドラッグや銃を扱う『マフィア』が中心で、高度なサイバー犯罪者まで追跡の手は及んでいない」(同)からだ。別の闇市場では、捜査当局をあざ笑うかのように、アルファベイと同じIDを再利用して出品を再開した事例もある。
・5月に発生した世界同時多発サイバー攻撃。米政府によると、150カ国で30万台規模のパソコンが「WannaCry(ワナクライ)」と呼ばれるウイルスに感染した。感染したパソコンのデータは暗号化され、解除のために「身代金」を支払うよう求められた。英国では病院での手術が中止され、ドイツの鉄道では発券機が故障した。
・過去最大規模のサイバー事件の震源地も、またダークウェブだった。ワナクライのもとになったのは、米国の諜報機関、国家安全保障局(NSA)が極秘裏に開発していたハッキングソフトだとされる。NSAからこのソフトを盗み出し、売りさばいたのがダークウェブ上で活動するハッカー集団「シャドー・ブローカーズ」だった。
・世界トップクラスの諜報機関を出し抜くハッカー集団は、「フォーラム」と呼ばれるダークウェブの交流サイトを使い、ハッキングの技術などについて情報を交換している。
▽免許証の値段は「900円」
・国内でも日立製作所やホンダなど複数の企業がワナクライに感染した。悪意ある攻撃者が日本企業を標的にし始めたのは明らかだ。デロイトトーマツリスクサービスの協力を得て、記者は7月、ダークウェブを閲覧した。 アルファベイ閉鎖後に利用者が増えているという闇サイトで、「Japan」をキーワードにして検索してみた。すると、米決済サービス「ペイパル」のアカウントが2000円、日本の免許証のコピーが900円程度で売られていた。出品者の評価は5つ星で、どうやら闇市場での「信頼性」が高いようだ。
・日本関連の出品で特に目立つのが、クレジットカード情報。値段は数百~2000円程度とまちまちだが、「FRESH CARDS!」と強調し、停止措置が取られていないカードを販売しているケースもある。
・企業の機密情報はどうか。デロイトトーマツリスクサービスの岩井博樹シニアマネジャーは「フォーラムやダークウェブ上のメッセージサービスを通じて取引先を見つけ、相対で売買する例が増えてきた」と指摘する。
・「これはやばすぎる。すぐに当該企業に通報しろ」。ダークウェブの監視を手掛けるセキュリティーベンチャー、スプラウト(東京・港)の高野聖玄社長は、闇サイトの出品者からメールで届いた情報に目を見張った。買い取りを持ちかけられたのは、ある中堅企業の財務書類の一式だ。社員の給与明細や各取引先との契約書など、「会社の資金の流れを丸裸にする内容だった」と高野社長は打ち明ける。
・出品者のメールは「ご関心ありましたらご連絡ください」と、いんぎんな言葉遣いで締めくくられていた。自動翻訳などを使わずに、日本人が書いたメールであることがうかがえる。一般には英語やロシア語のサイトが多いダークウェブだが、日本企業を狙う日本人の闇の商人も確かに存在する。
・メールに書かれていた販売価格はわずか10万円。闇市場というインフラができたことで「小遣い稼ぎに機密情報を狙う犯罪が増えている」(高野社長)。スプラウトが今春からダークウェブの監視サービスを本格開始して以降、上場企業の幹部会議の資料や、建物の設計図が相次いで見つかったという。
▽企業幹部のメールも筒抜け
・航空自衛隊でセキュリティー担当を務めたサイバーディフェンス研究所の名和利男上級分析官は、「企業や官公庁の幹部のメールボックスの内容が、まるごと数十万~数百万円で売られている事例もある」と指摘する。中には、内部不正のもみ消しを指示するメールまで含まれていたという。 こうした機密情報はサイバー攻撃により漏洩したものだけではない。廃棄したはずの社内のパソコンが中古店で再販され、購入者がデータを復旧させて売りさばいた事例もあるという。
・名和氏によると、特に秘匿度の高い機密情報は、多くても数十人程度のハッカーらのコミュニティーで限定的に取引される。ダークウェブ上に一時的に売買サイトが開設され、コミュニティーのメンバーには開始時間と出品の内容が共有される。数日間で商品を売り抜けた後で、サイトは閉鎖する。アルファベイなどの闇市場よりも察知するのは難しい。
・だが、リスクを目前にして手をこまぬいてはいられない。ダークウェブの脅威から身を守るため、企業の防衛手法も次のステージに進む必要がある。 サイバー攻撃の最も基本的な防衛方法は、ウイルス対策ソフトやファイアウオールなどを設置し、攻撃を入り口で防ぐこと。企業を城に例えるなら、第1段階は「城壁」だ。ほころびが出ないよう、常に最新の状態に更新しておくことが求められる。
・ただし、こうした防御をかいくぐるため、ダークウェブを舞台に攻撃側が知恵を絞っているのはこれまで見てきた通り。社内のシステムへ侵入された時の備えも必要だ。仮にパソコンがウイルスに感染した場合、放置したままでは被害を封じ込められない。一刻も早く対策を取る必要がある。
・そこで注目を集めているのが、「火消し」の役割を担う「CSIRT(シーサート)」。セキュリティー関連のトラブルを素早く検知し、即応する社内組織の総称だ。設置する企業が近年急増し、日本シーサート協議会の加盟数は8月末時点で242団体と、3年間で4倍になった。今年に入ってからも電源開発や東京証券取引所などが加わった。
・先進的な日本企業はようやく、「城壁」に「火消し」を加える段階にある。しかし、ダークウェブに対応するには更なる進化が必要だ。 ダークウェブなどからリスク情報を得て、先回りして対策する「脅威インテリジェンス」。 企業という城を守るために、あえて敵の懐に入り込み攻めに出る。「忍者」のような役割だ。 機密情報の漏洩にいち早く気づけるだけではない。ダークウェブのコミュニティーでは、次の攻撃対象となる企業に関して、システムに使われているOS(基本ソフト)の情報などがやり取りされている。事前に察知できれば、十分な対策を練ることも可能だ。
・日本企業でも実例がある。15年、大手工業機器メーカーが手掛ける社会インフラ向け監視ソフトに侵入するツールが、ダークウェブ上で売られていたのだ。その企業は事態を察知し、監視ソフトのアップデートをすぐさま行った。 国内の自動車メーカーも、自社製品の違法改造について語り合うフォーラムをあえて放置し、クルマの情報通信システムに介入する方法が書き込まれないかチェックしているという。
・米シマンテックも7月、脅威インテリジェンスを手掛ける東京セキュリティオペレーションセンターを拡張。日産自動車など顧客の増加に対応した。 脅威インテリジェンスの中でも、コミュニティーに入り込む活動を「脅威ハンティング」と呼ぶ。前出の名和氏によると、攻撃を仕掛ける側から企業を守る側に転じた「ホワイトハッカー」が手引き役となる。優秀なホワイトハッカーを慕う現役ハッカーを通じてコミュニティーに入れれば、より生々しい脅威情報が得られる。
▽イスラエル企業が台頭
・脅威ハンティングの分野で台頭しているのが、諜報機関の発達したイスラエルだ。イスラエルのセキュリティー企業関係者は「犯罪集団に潜入して情報を得るのは我々の得意技だ」と話す。 ネットの炎上対策サービスを手掛けるエルテス(東京・千代田)は、昨年よりダークウェブの監視サービスを開始した。マーケットなどを自動巡回するシステムを用いた自社サービスを月額50万円程度で提供。脅威ハンティングにまで踏み込む場合は、月額200万~300万円でイスラエルの提携企業に外注する。
・エルテスの担当者は「インフラ系企業や海外展開する大手製造業など、売上高5000億円を超える企業は背負うリスクも大きく、脅威インテリジェンスを導入する価値はある」と強調する。 もっとも、脅威インテリジェンスに深く踏み込み過ぎるのも危険だ。身元が割れれば報復行為を受けるし、コミュニティーで信頼を得るために犯罪行為への加担を求められることもある。経済産業省のサイバーセキュリティ・情報化審議官、伊東寛氏は「深いレベルのインテリジェンスを民間が担うのは限界がある。公安機関含め官民が連携することが重要だ」と指摘する。
・ダークウェブの闇は日本を確実に侵食し始めた。次代のセキュリティーにどれだけ投資をかけるか。この見極めは極めて難しい。対策を部下に丸投げするような社長は、経営責任を問われかねない。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278202/112000079/?P=1

次に、フリージャーナリストの海野 麻実氏が昨年12月18日付け東洋経済オンラインに寄稿した「日本の「サイバー攻撃対策」に募る大きな不安 イスラエル発イベントが東京で開かれた意味」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・11月30日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで「サイバーテック東京2017」が開かれた。毎年イスラエルのテルアビブで開かれるサイバーセキュリティの国際イベントで、日本開催は初めてとなる。
▽サイバーセキュリティ技術で世界最先端のイスラエル
・サイバーセキュリティ技術において、世界最先端とも言われるイスラエル。喫緊の情勢では、ドナルド・トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定し、米大使館のエルサレムへの移転を決めたことで、にわかに緊迫している。 もともとアラブ諸国に囲まれ、つねに軍事的な緊張にさらされてきたこともあり、イスラエルにおける軍事・防衛、サイバーセキュリティ分野は、国を挙げて取り組んできた最重要課題である。
・イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「サイバーセキュリティは国家安全保障に不可欠であり、経済成長をも牽引する」と豪語。同分野における世界のリーダーを目指してきた。 現に、世界中から集まる投資をもとに、イスラエルにおけるサイバーセキュリティ産業は急激な成長を遂げている。イスラエル政府によると、軍や諜報機関の出身者が立ち上げたセキュリティ関連の企業は約400社に及び、昨年は83社のサイバーセキュリティスタートアップが新たに設立された。人口約860万人の小国ながら、すでにアメリカに次ぐ規模を誇っているのだ。
・今回の「サイバーテック東京2017」はイスラエルと日本政府の協力によって実現した。開催前日の11月29日には「日本・イスラエル・イノベーション・ネットワーク」の第1回が東京で行われた。日本側からは世耕弘成経済産業相、イスラエル側からはエリ・コーヘン経済産業相が出席し、サイバーセキュリティ分野での協力体制や、BtoB連携の加速化などについて合意された。
・来日したイスラエルのエリ・コーヘン経済産業大臣も「サイバーテック東京」で講演をした  こうした官民挙げての交流を活発化させようという動きが強まるなか、満を持して開かれた「サイバーテック」日本版には、約2000人の両国政府や企業関係者が来場し、イスラエルで生まれた技術と日本企業とのマッチングなどが行われた。会場では、危機が急速に高まるサイバー攻撃から、さまざまなモノがインターネットでつながる「IoT」を守る方法として、機器同士をつなぐ無線通信の安全性を高める技術などが紹介されていた。
・イスラエル軍で諜報活動などを少数精鋭で遂行するインテリジェンス部隊出身(=8200部隊と呼ばれる少数精鋭のエリート集団)の3人が創業したサイバーセキュリティ会社「サイバーリーズン」も会場中央に大きなブースを出展。標的型サイバー攻撃やランサムウェアなどを即座に検知し、対処することが可能な画期的な製品が主力で、AIによる独自の分析ノウハウを用いた解析でサイバー攻撃の兆候をリアルタイムに探知する技術をアピールした。
・サイバーリーズンは、組織が抱えるサイバー攻撃対策の課題を解決するクラウドベースのセキュリティソリューションを開発する企業。通信大手のソフトバンクグループが、6月に約110億円を出資して筆頭株主になったことで、日本では大きなニュースとなった。日本国内での知名度も高まっていることもあって多くの企業関係者が集まり、熱心に製品の説明を聞く姿が目立った。
▽セキュリティ人材の不足が深刻な日本
・「サイバーテック東京」に参加していた日本の大手メーカー社員は、「恥ずかしながら、数年前まで『イスラエルは中東の危ない国』というイメージが強かった。最近は認識が急速に変わってきている」としたうえで、職場内で感じる変化も非常に大きいと話す。
・「正直、自分の会社でもサイバーセキュリティ分野は、事前に把握できる危機の度合いと、それに対する効果などが測りづらいこともあって、現場レベルではスピーディに対応したいことでも上層部の決裁がなかなか下りないということが多々あった。ただ最近は、サイバーセキュリティ分野への大きな投資も理解を得やすくなって、そこにきちんとおカネをかける感覚が高まっているのを肌で感じる」とし、社内で今後、サイバーセキュリティ分野に資金や人材が投入されることに期待を寄せていた。
・実際、日本ではサイバーセキュリティ分野における人材不足が指摘されている。経済産業省が昨年実施した調査によると、日本の情報セキュリティ人材は2016年時点で28万870人である。一方、潜在的に求められる人材は41万2930人に及ぶため、実に約13万人もが不足している状態だという。
・東京オリンピックが開催される2020年には、セキュリティ人材への潜在需要がさらに増え続けると予測され、今後その不足数は約19万人まで拡大していくとの見通しが示されている。全体的な情報セキュリティ対策の統括者などについて、5割弱の企業が「不足を感じている」と回答。「必要人数は確保できている」と回答した企業は4分の1にとどまっている。
・これまでサイバー攻撃の被害では、個人情報の漏洩などが報道されるケースが多かったが、今後は「IoT」の普及により、工場の生産ラインなど製造業や、国家の重要なインフラなど生活に密接するあらゆる現場に深刻な影響を及ぼしかねない危険性を孕んでいる。たとえば、発電所や鉄道会社などが攻撃を受けた場合、国民の日々の生活が混乱しかねない喫緊の課題だ。
▽イスラエルが日本に熱視線を向ける理由
・すでに、2020年の東京オリンピックに向けて、イスラエル企業の日本でのビジネス拡大を視野に入れた動きが目立ち始めている。彼らに話を聞くと、その多くが日本側のサイバーセキュリティ分野での遅れを指摘する。
・「日本企業がサイバーセキュリティにコストをかけるという意識が高まってきたのは、最近のことだ。しかし、攻撃側の成功率は100%で、完全に防御することは難しいと言われているなかで、いまだにサイバー攻撃を仕掛けられてから対応を始めるという受け身の姿勢が根強い。ハッカー側がどのような攻撃を仕掛けてくるか、軍での経験などを生かした優秀なホワイトハッカーを有するイスラエル側と協業する意義は非常に大きい」(イスラエル企業関係者)
・イスラエルのサイバーセキュリティに関わる企業は、受け身ではなく攻撃する側のハンターをみずから見つけ出し、彼らのマインドを読み解き、攻撃を逆に「仕掛ける」ような能力をつねに鍛錬しているという。 インテルセキュリティが米国のシンクタンクと協力して日本を含む世界8カ国を対象に実施した国際調査リポートによると、組織幹部がサイバーセキュリティに関するスキルを重視しているかという質問に対し、「非常に重視している」「重視している」と回答した割合は、8カ国の平均76%に対して、日本は最も低い56%だった。
・サイバーセキュリティの人材育成と確保は、今後脅威が高まる中で喫緊の課題であることは言うまでもない。 すでに、イスラエルのサイバーセキュリティ関連企業とプロジェクトを共にし、頻繁にイスラエルにも出向き、交渉を密にする企業担当者はこう話した。 「日本政府としてもサイバーセキュリティ対策向上のために、イスラエルとのサイバーセキュリティ分野での覚書締結等を実施していますが、実情は政府レベルの付き合いにとどまっていて、民間での連携はこれからという感じ。税制優遇する等のインセンティブが必要ではないでしょうか。まずは、政府主導で日本全体のサイバーセキュリティの感度を高めていく必要があると思います」
▽すでに先陣を切っている中国の存在
・一方で、ここ最近存在感を強めているのが、中国だ。早くからイスラエルに目を付けたシリコンバレーの大手企業と同様に、イスラエルと中国双方の投資は、数年前から熱を帯びている。電子商取引最大手のアリババ集団がイスラエルのベンチャーキャピタルなどに相次いで投資したり、インターネット検索大手のバイドゥなどがイスラエルにおける研究開発拠点の開設へ本腰を入れ始めたりしている。
・中国家電大手のハイアールは、2010年の時点から中国本土で高品質の飲料水や浄水器を販売するイスラエルメーカーと合弁企業を設立。今年10月には、初の「イノベーション・ハブ」をテルアビブに設立し、両国のメディアでも大きく取り上げられた。家電など身の回りのあらゆるものをネットにつないで遠隔操作などを可能にするIoTなどに対応した製品の開発に、イスラエルのアイデアや技術を活用していく方針だ。
・ハイアールの担当者はイスラエルの地元紙の取材に対し、鼻息荒くこう語っている。「われわれはこれまで5年間にもわたって、イスラエルのイノベーションと共に歩んできた。そして今、イスラエルのエコシステムにおいて、さらに密に関わっていくことを決定した。これは長期的な視点で見た重要な投資だ」 
・ほかにも、イスラエルの運転支援ベンチャー「モービルアイ」は、中国のテンセントやバイドゥが出資する電気自動車スタートアップと提携して中国進出を加速させるなど、中国企業によるイスラエルへの投資は枚挙にいとまがない。
・あるイスラエルの起業家は「アメリカや中国と比べると日本企業がイスラエルに進出するのは数年遅れている。中国はすでにイスラエルにある種の地盤を築いていると言っても過言ではないだろう。だがわれわれは、製造業に強く技術力も世界一と信じる日本とのコラボをこれから楽しみにしている」と日本への期待を寄せる。
・イスラエルの大規模なサイバーセキュリティの祭典が、今回日本で開催された意味。それは、2020年の東京オリンピックに向けた急務の対策の必要性もさることながら、北朝鮮情勢など脅威が高まっていると言われるアジア全体へのサイバー攻撃の危機に、日本政府が本格的に立ち向かう意欲を示し始めたことが最大の要因だろう。
・政府は、AIでサイバー攻撃を検知するなどの研究開発の推進や、高度な技術を持ち合わせた若手セキュリティ人材の育成などにようやく本腰を入れ始めている。 アメリカや中国などが先陣を切って“地ならし”をしてきたイスラエルの地で、日本政府が今後、企業や大学などと連携して、いかにこの迫りくる課題にスピーディに対応していくのか――虎視眈々と日々攻撃を仕掛けるハッカー側の視線は強まることこそあれ、弱まることはない。
http://toyokeizai.net/articles/-/201317

第三に、ITジャーナリストの本田 雅一氏が1月5日付け東洋経済オンラインに寄稿した「インテルを突如襲った「致命的なバグ」の実態 この問題は、いったいどれだけ深刻なのか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米国時間の1月3日、コンピュータ系情報サイト「The Register」が「インテル製プロセッサのバグを原因とする深刻なセキュリティホールが発見された」と報道。その対策にはハードウェアそのものの変更が必要であり、ソフトウエアで対策を行った場合には大幅な性能低下を引き起こすとの内容を含む記事を発表した。
・バグはインテル製プロセッサのみで発生し、パスワード、ログインキー、キャッシュファイルなどを、カーネルメモリ(基本ソフトの核となる部分で読み書きするメモリ)から盗めてしまう、という内容。本当であれば、インテルにとって致命的ともいえる失態だ。 この情報は直後のインテルの株価にも少なからぬ影響を与えた。いったい、その実態とはどのようなものなのだろうか。
▽このバグはインテルだけの問題ではない
・実はこのバグはインテルだけの問題ではないし、またパソコンだけの問題でもない。極めて広い範囲の影響があるバグであり、すでに2017年11月から業界を挙げて対策が進められていた問題だ。またこのセキュリティ問題は、プロセッサ(=ハードウエア)ではなく、OS(=ソフトウエア)の基本的な構造に関するものであり、各種OS(Windows、macOS、iOS、Linux、Androidなど)に対策が施される予定だ。 また筆者が得ている情報によれば、システムの動作パフォーマンスに対する影響は軽微で、とりわけ一般的なコンピュータ利用者にとっては無視できるレベルのものだという。
・インテルはニュースリリース「Intel Responds to Security Research Findings」で、今回のバグに関する報道を不正確な情報であると反論し、AMD、ARMといった他の主要なプロセッサを開発する企業や、コンピュータ用基本ソフトを開発する複数の企業とともにすでに対策が準備されていることを示唆している。
・The Registerの記事には、もうひとつ不正確な点がある。今回の問題が発生する条件は、「インテルのプロセッサであること」ではない。「ユニファイドキャッシュ」と「投機的実行」という、高速プロセッサを設計する上で使われるふたつのテクニックが揃っていれば、問題は起こり得るということだ。そして現代的な設計のプロセッサは大多数が、このふたつの条件を備えている。
・ARM、AMDもすでに同様の問題への対策を行っていることをステートメントとして発表している。もっと範囲を広げるならば、PowerPCやMIPSといった組み込み系プロセッサへの影響も懸念される。 グーグルも同問題に言及しており、「AMD、ARM、インテルなど、多くのプロセッサ上で動作する基本ソフトで問題が起きる」としている。このことから、ほぼすべてのコンピュータシステムが影響を受けると考えるべきだろう。
▽一般のコンピュータユーザーへの影響は小さい
・対策は太平洋時間の1月9日、各社より発表される見込みだ。しかし、11月末から対策が始まっていることから想像できるとおり、各プロセッサベンダー、基本ソフトベンダーの対応プログラムは開発を終えている。パソコンユーザーには、各メーカーを通じてマイクロコード(CPU内部の動作などを決めるソフトウエアコード)のアップデートが提供される見込みだ。
・具体的には、マイクロコードを更新することで、問題が発生する可能性のある構成をもつプロセッサにはマークを付けておく。基本ソフト側はキャッシュメモリ内が覗き見される可能性を、このマークから判別し、マークが付いているプロセッサの場合は覗き見の可能性が起きない動作へと切り替える、というものだ。その際のオーバーヘッド(本来の処理に加えて、余分にかかる負荷)はシステム全体の負荷に比例して変動するものの、一般的なコンピューティング環境においてはほとんど影響がないというのが関係者の主張だ。
・この問題が指摘されてから、Linuxの開発者コミュニティで問題を避ける実装に変更したところ、パフォーマンスが大幅に低下したとのテスト結果が出たことから、一時は悲観論も広がっていた。しかし、パフォーマンス低下のリポートは、実際の対策を行っているエンジニアが出したものではないことに留意する必要があるだろう。
・このように、当初のセンセーショナルな報道とは裏腹に、一般のコンピュータユーザーへの影響は想像よりも小さくなりそうだ。具体的な性能への影響は1月9日に正式な対応策が各社から発表されて以降に具体的な数字が出てくるが、一方で影響の範囲は広がる。
・パソコンへの対策は一気に進むだろうが、ATMやPOSシステムなどの業務用機器にまで対策が広がるには時間がかかるかもしれない。その間、関係するシステム担当者は注意が必要といえるだろう。
http://toyokeizai.net/articles/-/203505

第一の記事で、 『アルファベイには4万人の出品者が集い、拳銃や違法薬物、クレジットカードや決済サービスの暗証番号、マルウエア(ウイルスなど悪意のあるソフトウエアの総称)などを販売していた。通常のECサイトと同様に出品者を評価するシステムを備え』、『インターネット空間は氷山に例えられる。米グーグルなどの検索サイトからたどり着けるのが、表面にある「サーフェスウェブ」。一説には、インターネット空間の1%にも満たないともいわれているという大規模ぶりには驚貸される』、などその規模の大きさには驚かされる。  『16年に発見された新種のマルウエアは1億2700万種類。毎秒4件の新種が誕生し、12年の4倍に膨れ上がった。闇市場を通じて攻撃ツールが様々なハッカーに行き渡り、改良をされてまた売買される』、というのは恐ろしい話だ。 『過去最大規模のサイバー事件の震源地も、またダークウェブだった。ワナクライのもとになったのは、米国の諜報機関、国家安全保障局(NSA)が極秘裏に開発していたハッキングソフトだとされる。NSAからこのソフトを盗み出し、売りさばいたのがダークウェブ上で活動するハッカー集団「シャドー・ブローカーズ」だった』、NSAも罪作りな管理ミスをしたものだ。 『「火消し」の役割を担う「CSIRT(シーサート)」。セキュリティー関連のトラブルを素早く検知し、即応する社内組織の総称だ。設置する企業が近年急増し、日本シーサート協議会の加盟数は8月末時点で242団体と、3年間で4倍になった・・・ダークウェブに対応するには更なる進化が必要だ。 ダークウェブなどからリスク情報を得て、先回りして対策する「脅威インテリジェンス」。 企業という城を守るために、あえて敵の懐に入り込み攻めに出る。「忍者」のような役割だ』、とはいやはや大変な時代になったものだ。
第二の記事で、 『イスラエル政府によると、軍や諜報機関の出身者が立ち上げたセキュリティ関連の企業は約400社に及び、昨年は83社のサイバーセキュリティスタートアップが新たに設立された。人口約860万人の小国ながら、すでにアメリカに次ぐ規模を誇っているのだ』、というのは、やはり凄い国だ。 『ハッカー側がどのような攻撃を仕掛けてくるか、軍での経験などを生かした優秀なホワイトハッカーを有するイスラエル側と協業する意義は非常に大きい』、頼もしい存在のようだ。日本企業も大いにその力を活用して、情報セキュリティーのレベルを上げてもらいたいものだ。
第三の記事で、 『「AMD、ARM、インテルなど、多くのプロセッサ上で動作する基本ソフトで問題が起きる」としている。このことから、ほぼすべてのコンピュータシステムが影響を受けると考えるべきだろう』、というのは深刻な事態だが、 『対策は太平洋時間の1月9日、各社より発表される見込みだ』、 『一般のコンピュータユーザーへの影響は小さい』、ということで、一安心してよさそうだ。
タグ:先進的な日本企業はようやく、「城壁」に「火消し」を加える段階 通常のECサイトと同様に出品者を評価するシステムを備え 世界同時多発サイバー攻撃の震源地となった「ダークウェブ」 ディープウェブの最下層には、通常のウェブブラウザーにアドレスを入力してもアクセスできない領域が存在する。これが「ダークウェブ」だ アルファベイ Tor(トーア)」という匿名化ツール ダークウェブに対応するには更なる進化が必要だ。 ダークウェブなどからリスク情報を得て、先回りして対策する「脅威インテリジェンス」。 日経ビジネスオンライン サイバーリーズン 「増殖続けるダークウェブ、サイバー攻撃の温床に 企業や官公庁の幹部のメールも筒抜け」 情報セキュリティー・サイバー犯罪 4万人の出品者が集い、拳銃や違法薬物、クレジットカードや決済サービスの暗証番号、マルウエア(ウイルスなど悪意のあるソフトウエアの総称)などを販売していた (その3)(増殖続けるダークウェブ、サイバー攻撃の温床に、日本の「サイバー攻撃対策」に募る大きな不安 イスラエル発イベントが東京で開かれた意味、インテルを突如襲った「致命的なバグ」の実態 この問題はいったいどれだけ深刻なのか) 「インテルを突如襲った「致命的なバグ」の実態 この問題は、いったいどれだけ深刻なのか」 本田 雅一 パソコン遠隔操作事件 水面下に存在するのが、一般には公開されていない「ディープウェブ」 人口約860万人の小国ながら、すでにアメリカに次ぐ規模を誇っているのだ インターネット空間は氷山に例えられる。米グーグルなどの検索サイトからたどり着けるのが、表面にある「サーフェスウェブ」。一説には、インターネット空間の1%にも満たないともいわれている The Register 一般のコンピュータユーザーへの影響は小さい 対策は太平洋時間の1月9日、各社より発表される見込みだ AMD、ARM、インテルなど、多くのプロセッサ上で動作する基本ソフトで問題が起きる」 実はこのバグはインテルだけの問題ではないし、またパソコンだけの問題でもない。極めて広い範囲の影響があるバグであり、すでに2017年11月から業界を挙げて対策が進められていた問題 インテル製プロセッサのバグを原因とする深刻なセキュリティホールが発見された」と報道 すでに先陣を切っている中国の存在 軍や諜報機関の出身者が立ち上げたセキュリティ関連の企業は約400社に及び、昨年は83社のサイバーセキュリティスタートアップが新たに設立された ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「サイバーセキュリティは国家安全保障に不可欠であり、経済成長をも牽引する」と豪語。同分野における世界のリーダーを目指してきた サイバーテック東京2017 「日本の「サイバー攻撃対策」に募る大きな不安 イスラエル発イベントが東京で開かれた意味」 東洋経済オンライン 企業という城を守るために、あえて敵の懐に入り込み攻めに出る。「忍者」のような役割だ 海野 麻実 深いレベルのインテリジェンスを民間が担うのは限界がある。公安機関含め官民が連携することが重要だ 脅威ハンティングの分野で台頭しているのが、諜報機関の発達したイスラエル 火消し」の役割を担う「CSIRT(シーサート)」。セキュリティー関連のトラブルを素早く検知し、即応する社内組織の総称だ。設置する企業が近年急増 日本シーサート協議会の加盟数は8月末時点で242団体と、3年間で4倍になった 第1段階は「城壁」 サイバー攻撃の最も基本的な防衛方法は、ウイルス対策ソフトやファイアウオールなどを設置し、攻撃を入り口で防ぐこと 企業幹部のメールも筒抜け 今春からダークウェブの監視サービスを本格開始 スプラウト 日本関連の出品で特に目立つのが、クレジットカード情報。値段は数百~2000円程度とまちまちだが、「FRESH CARDS!」と強調し、停止措置が取られていないカードを販売しているケースもある 13年に摘発された「シルクロード」 免許証の値段は「900円」 NSAからこのソフトを盗み出し、売りさばいたのがダークウェブ上で活動するハッカー集団「シャドー・ブローカーズ」だった ワナクライのもとになったのは、米国の諜報機関、国家安全保障局(NSA)が極秘裏に開発していたハッキングソフトだとされる 16年に発見された新種のマルウエアは1億2700万種類。毎秒4件の新種が誕生し、12年の4倍に膨れ上がった 闇市場を通じて攻撃ツールが様々なハッカーに行き渡り、改良をされてまた売買される。サイバー攻撃を請け負うサイトもあり、企業のリスクを闇市場が大きく増幅させている 「身代金」を支払うよう求められた WannaCry
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

スパコン詐欺(アベ友スパコン詐欺 3年13回の怪しい増資と金満生活の闇、「異例の捜査」で検察は誰を追い詰めたいのか 政界関係者の関与は?、安倍政権の命取りになりかねないスパコン詐欺疑惑) [科学技術]

今日は、驚きの スパコン詐欺(アベ友スパコン詐欺 3年13回の怪しい増資と金満生活の闇、「異例の捜査」で検察は誰を追い詰めたいのか 政界関係者の関与は?、安倍政権の命取りになりかねないスパコン詐欺疑惑)を取上げよう。

先ずは、12月9日付け日刊ゲンダイ「アベ友スパコン詐欺 3年13回の怪しい増資と金満生活の闇」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・スーパーコンピューター開発の「ペジーコンピューティング」による助成金詐欺事件。元取締役が東京地検の調べに対し、不正は「社長の指示だった」と供述、社長の斉藤元章容疑者(49)も不正を認める供述を始めたという。
・「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)からの助成金は、ペジー社への35億円だけでなく、斉藤容疑者が役員を務める関連会社にも渡っていたようだが、やはり“永田町人脈”がモノを言ったのか? 斉藤容疑者は少なくとも別の3社で代表を務めているが、巨額投資が必要なスパコン開発で資金繰りに四苦八苦していたようだ。
・民間の信用調査機関などによると、関連会社で尋常ではない増資が繰り返されていた実態が見受けられるのだ。これらの増資に助成金が充てられていた疑いもあり、特捜部が資金の流れを調べているという。 ペジー社のスパコンの“核”である高効率液浸冷却装置の製造をする「エクサスケーラー」社は、2014年4月に資本金5000万円で設立されたが、その後、今年6月までの3年間で、実に13回もの増資を行い、現在資本金は27億円にまで膨らんでいる。
・「メディアなどで技術力は評価を受けていましたが、売り上げや利益を思うように計上できず、財務状態は追いついていなかったと推測されます。資金は助成金や投資としての直接調達がメインだったようです」(調査機関関係者)
▽会社はカツカツも……
・ペジー社の事業が国の認定を受けるだけでなく、斉藤容疑者が内閣府の有識者会議で委員を務めていることも、投資を受けるための“信用力”につながっていたとみられる。 そして驚くのは、会社はカツカツのはずなのに、斉藤容疑者が住んでいたのが、御茶ノ水の高台にある高級賃貸レジデンスだということ。17階建てのビルは下はオフィス、上層部の4フロアが住宅で、1戸の広さはナント126平方メートル。「外国人エグゼクティブにもお薦めのゆったりとした間取り」と不動産情報サイトで紹介されるようなゴージャス物件だ。
・斉藤容疑者は、安倍首相と親しい元TBS記者の山口敬之氏が事務所にしていた高級賃貸レジデンスの費用も負担していたと「週刊新潮」に報じられているが、そうした費用はどこから出ていたのか。また、自転車操業の財務力にもかかわらず山口氏に便宜を図っていたとしたら、そこまでしたのはどうしてなのか。闇は深そうだ。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/219141/1

次に、ライターの河野 正一郎氏が12月8日付け現代ビジネスに寄稿した「スパコン詐欺事件「異例の捜査」で検察は誰を追い詰めたいのか 政界関係者の関与は?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽「彼とは深く付き合わない方がいいと…」
・東京地検特捜部が12月5日、スパコン開発会社「PEZY computing」(以下P社)の社長、斉藤元章容疑者らを逮捕した。経済産業省が所管する国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)から約4億円の助成金を詐取した容疑が持たれている。
・メディアにも多数出演・登場し、「スパコン開発の第一人者」といわれた斉藤容疑者が、「安倍首相に最も近いジャーナリスト」と呼ばれる元TBSワシントン支局長だった山口敬之氏と昵懇であったと報じられていることもあって、ネットでは「P社に多額の助成金が渡ったのは、森友学園や加計学園と同じく、”忖度”によって便宜が図られた、という構図なのではないか」などと憶測を呼んでいる。
・助成金が認められる経緯に「忖度」があったのか、なかったのか−−。スパコンの「スパ」にひっかけて、「もりかけスパ」などと書き込む人もいるように、この事件は、逮捕容疑(=事件の本筋)とは別の「事件の背景」に注目が集まっている。 NHKの早朝の特ダネで事件が明るみに出た12月5日午前、私は、斉藤容疑者が米国で起業した頃に出会ったという知人X氏に「話を聞きたい」とメールを送った。すると、即座に折り返しの電話がかかってきた。X氏は早口でまくし立てた後、私にこう言った。
・「“彼”とは深く付き合わないほうがいい、と何度も言っておいたのに…」 “彼”とは、山口敬之氏のことだった。 斉藤容疑者と山口敬之氏との関係を最初に報じたのは週刊新潮(2017年6月15日号)だった。山口氏がP社の顧問のような役割を務め、東京・永田町のホテル内の部屋(賃料月額が約130万円)を斉藤容疑者の資金提供を受けて使っていることを報じた。(https://www.dailyshincho.jp/article/2017/06071659/?all=1
・X氏によると、斉藤容疑者はスパコンを研究機関などに売り込むとき、山口氏を同行させ、研究機関などの担当者に、「安倍総理の信頼が厚い方で、当社の顧問です」と紹介していたという。X氏も何度か山口氏と会ったことがあるが、話題は政治のことばかりで、「スパコンについては知識がない人なのだろう」という印象を受けたという。
・斉藤容疑者は最近、X氏に「金が足りない。本当はコンピューターの製作をしたいが、このところは金集めが仕事の大半になってしまっている」と話していた。NEDOからの助成金で得られるのは開発資金の3分の2にすぎない。少なくとも3分の1は自前で調達しなければならなかったからだ。
・X氏は、「斉藤(容疑者)は開発資金を提供してくれる企業経営者らを探せばよかったのに、大手企業からの出資を受けることには消極的だった」と話したうえで、こう付け加えた。「その結果、国からの補助金を口利きしてくれる期待がもてる人と仲良くなったのだろう」
・この発言はあくまでX氏の見立てだ。実際に山口氏がP社顧問としてどんな役割を果たしていたかはわからない。詐取した助成金の使いみちを調べていけば、わかることもあるかもしれない。 だが、別の人物もX氏と同じような感想を抱いていた。P社が開発したスパコンを導入予定だった研究者Y氏だ。
▽研究者たちの悲鳴
・Y氏は斉藤容疑者とこれまで3回ほど会ったことがある。斉藤容疑者は山口氏を紹介したあと、「弊社はベンチャーですが、官邸との関係もあるので、信頼していただいて大丈夫です」と言い、隣りにいた山口氏は自著の『総理』をY氏に手渡したという。 Y氏は山口氏のことを知らなかったが、自宅に戻って渡された本を読み、P社を信頼したという。
・Y氏に事件の影響を聞くと、途端に早口になった。「たいへんなことになった。研究に大きな支障が出る。スパコンは納入されるのか。知っている情報があれば教えてくれませんか」 Y氏の素性を明らかにできないため、あいまいな表現になることをご了承いただきたいが、話を要約するとP社のスパコンには以下のような特徴がある。
 +計算性能が高い。
 +装置が小型(小さい体積)なので、装置を置く敷地が必要ない。
 +従来のスパコンに比べ、維持費や電気代がケタ違いに安い。
 +AI研究に勝った国が「次の産業革命の主役」と言われているなか、世界各国がいまAI研究に血道を上げている。P社のスパコンは日本が唯一リードする技術で、今後の研究に欠かせないものだった。
・Y氏はこうも言った。「2020年までにP社のスパコンを導入することを検討しており、どう活用するか研究者同士で話し合っていた矢先に事件が発覚した。P社が不正をしていたのなら、それは罰せられないといけない。だが、せめてスパコンが納入された後にしてほしかった……」
・法治国家において刑法犯と疑われる人物を野放しにすることが許されるはずはないし、スパコンの納入が済めば、詐欺容疑が持たれているP社に利益が生じることになる。その点で、Y氏の悲鳴はお門違いの指摘にも見える。
・一方で、次の世界的な産業革命の主役の座を射止めるか否かは、日本の“国益”をかけたテクノロジー開発競争といえる。今回、特捜部が事件に着手したことで、日本のAI研究スピードは世界各国に遅れをとることになるかもしれない。 刑法犯罪と“国益”を天秤にかけたとき、私はあえて批判されるのを覚悟したうえで、「Y氏の訴えは理解できないわけでもない」と思ってしまった。
▽検察の本当の狙い
・捜査する側の東京地検特捜部も、そのような影響は検討したうえで事件に着手したと思う。それでも特捜部が強制捜査に及んだ背景に、「この事件を端緒に政治家を巻き込んだ汚職事件に発展するのではないか」という見方がある。
・証拠資料のフロッピーを改ざんした事件が明るみに出た2010年以降、東京地検特捜部は政治家を逮捕する事件に着手していない。「最強の捜査機関」の復権をかけて、強制捜査に及んだのではないかというものだ。
・だが、関係者の話を総合すると、その見方は早計のようだ。ある検察関係者は私にこう話した。「検察が越年捜査するのは異例のことで、可能性は限りなくゼロに近いでしょう。特捜部は斉藤容疑者を年末に起訴して捜査を終了すると考えるのが自然です」
・そもそも、国会議員には不逮捕特権があるため、国会が開かれている間に逮捕するには、国会での議決が必要になる。いま開会中の特別国会は12月9日に閉会する予定で、年明けの通常国会の召集日は2018年1月19日とも目されている。特捜部が国会議員逮捕を視野に入れているとすれば、かなりタイトな日程だ。
・ある検察関係者は私に、今後の捜査の行方についてこう漏らした。「捜査が進んで、仮に山口氏に違法な金が流れていたことがわかったとしても、大臣でもない山口氏には職務権限はないので収賄罪にはならず、問える罪は所得税法違反ぐらい。政治家ならさらに逮捕のハードルが上がる。そうなると、今回の捜査の結果は、世界でも高性能なスパコン開発が頓挫する可能性が高まるだけということになる。今回の事件着手には道理がないんです」
・事件が着手された12月5日は、奇しくも山口氏から強姦されたとして、ジャーナリストの伊藤詩織さんが慰謝料を求めた民事訴訟の第1回口頭弁論が開かれた日だった。
・これについてある政界関係者は「特捜部の案件だから、官邸の了承を受けたうえで捜査に踏み切っているはず。山口氏が立件されるとは思えないが、事件との関連でいろいろと報道される。最近の山口氏の言動などを快く思わない官邸が、山口氏と関係を断つために事件を利用した、とみることもできるのではないでしょうか」と言い、こう付け加えた。「仮に、今回の事件に政府が関与した疑いが出てきたとしても、特別国会が閉会すれば政府は追及される機会もないし、クリスマスと正月を過ぎれば、多くの人が事件のことを忘れ去っているでしょう。事件に着手するには最高のタイミングだったのかもしれません」
・山口氏に今回の事件について、SNSと携帯電話のメールを通じ、斉藤氏との関係など尋ねたい項目を送った。返信がないため、直接電話すると、山口氏は「いま電話に出られないので、すみません」と言って電話を切った。混乱している様子はうかがえるが、元気そうな声だった。それ以後も携帯電話で接触を試みたが、今回の事件について詳細な取材をすることはできなかった。(回答があり次第、追記したい)
・斉藤氏が事業について説明する場に同席していたとして、それで「山口氏の深い関与があった」とみるのも短絡的だろう。この事件にはどんな「背景」があるのか。今後、P社のスパコン開発は誰が担うのか、いや、そもそも開発自体が中止されるのか。誰かの「思惑」や「忖度」で国益が失われる結果になれば、被害者は私たちになる。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53767

第三に、元レバノン大使の天木直人氏が12月15日付け同氏のブログに掲載した「安倍政権の命取りになりかねないスパコン詐欺疑惑」を紹介しよう。
・いま安倍政権が一番恐れている事は、リニア新幹線談合疑惑とスパコン詐欺疑惑の真相が国民の前に白日にさらされる事だろう。 だからこそ、どちらもその報道が自粛されている。 リニア新幹線談合疑惑については機会を改めて書いてみたい。 ここではスパコン疑惑についてその深刻性について書くことにする。
・この問題を最初に詳しく取り上げたのは、先週の週刊新潮(12月14日号)だった。 その後、日刊ゲンダイやいくつかの週刊誌が書き、直近ではきのう発売の週刊実話(12月28日号)が取り上げた。 ネット上の書き込みは言わずもがなである。 ところが、大手新聞やテレビの政治娯楽番組で取り上げられることはない。
・まさしく安倍首相にとって、もっとも都合の悪い疑惑なのだ。 どこが都合が悪いのか。 もちろん、詐欺容疑で逮捕された斎藤元章というスパコンベンチャー会社の社長が、経産省管轄の国立研究開発法人から助成金を不正に受け取って流用していた疑いがあるからだ。 公金横領に準ずる疑惑であるから、安倍政権の監督責任は免れない。
・しかし、より深刻なのは、この斎藤容疑者が安倍人脈につながっているということだ。 その中でも、斎藤氏が、あの沙織さん準強姦疑惑の山口敬之元TBS政治部記者のスポンサー(山口氏が使用してきたキャピタル東急ホテル代の肩代わりなど)だったという事実だ。
・いうまでもなく山口氏は安倍首相側近の御用記者であり、それを忖度した警察、検察官僚が山口氏を無罪放免したという、とんでもない疑惑が取りざたされている。 そんな中で、今度は山口氏のホテル代肩代わり疑惑だ。 これが事実なら脱税疑惑に発展する。
・しかも、この斎藤氏は安倍首相よりも麻生副総理に近いという。 麻生副総理の口利きで助成金を手にし、麻生副総理の口利きで斎藤氏が山口氏のスポンサーになったという疑惑までささやかれている。
・まさしく究極の安倍人脈犯罪疑惑だ。国家権力犯罪疑惑だ。 もし特捜や国税が本気で追及したら安倍政権が吹っ飛ぶ疑惑に発展する可可能性がある。 もし国民がこのスパコン詐欺疑惑の本当の深刻さを知れば、今度こそ世論は安倍政権を許さないだろう。
・パソコン詐欺疑惑について、テレビや大手紙がスルーするはずだ。 テレビや大手紙がスルーすれば大多数の国民は知らないままだ。 かくてこのパソコン疑惑は、その深刻性にもかかわらず、いや深刻であるがゆえに、なかったことにされて終わるに違いない(了)
http://kenpo9.com/archives/2989

第一の記事で、 『会社はカツカツのはずなのに、斉藤容疑者が住んでいたのが、御茶ノ水の高台にある高級賃貸レジデンスだということ。17階建てのビルは下はオフィス、上層部の4フロアが住宅で、1戸の広さはナント126平方メートル』、と私生活は優雅そうだ。
第二の記事で、『週刊新潮(2017年6月15日号)・・・山口氏がP社の顧問のような役割を務め、東京・永田町のホテル内の部屋(賃料月額が約130万円)を斉藤容疑者の資金提供を受けて使っていることを報じた』、山口氏については、昨日のこのブログでも紹介した「アベ友」の1人である。賃料月額約130万円を負担してでも、斉藤容疑者には利用する価値があったらしい。 『大手企業からの出資を受けることには消極的だった』というのは、支配権を握られるのを警戒し、公的助成に走ったのかも知れない。 『「捜査が進んで、仮に山口氏に違法な金が流れていたことがわかったとしても、大臣でもない山口氏には職務権限はないので収賄罪にはならず、問える罪は所得税法違反ぐらい。政治家ならさらに逮捕のハードルが上がる。そうなると、今回の捜査の結果は、世界でも高性能なスパコン開発が頓挫する可能性が高まるだけということになる。今回の事件着手には道理がないんです」』、と特捜部の意図はいまだはっきりしない。
第三の記事で、『斎藤氏は安倍首相よりも麻生副総理に近いという。麻生副総理の口利きで助成金を手にし、麻生副総理の口利きで斎藤氏が山口氏のスポンサーになったという疑惑までささやかれている。
まさしく究極の安倍人脈犯罪疑惑だ』、というのはその通りだ。ただ、『テレビや大手紙がスルーすれば』、とあるが、日経新聞は12月5日夕刊で「スパコン助成金4.3億円詐取疑い 東京地検、「暁光」開発のベンチャー社長ら逮捕」と第一報を報じている。
上記の記事からは、肝心のスーパーコンピューター開発がどんな状況にあるのか、さっぱり分らない。本件の捜査が、今後どのように展開するか、注目していきたい。
タグ:究極の安倍人脈犯罪疑惑だ。国家権力犯罪疑惑だ この斎藤氏は安倍首相よりも麻生副総理に近いという 山口氏は安倍首相側近の御用記者であり、それを忖度した警察、検察官僚が山口氏を無罪放免したという、とんでもない疑惑が取りざたされている より深刻なのは、この斎藤容疑者が安倍人脈につながっているということだ。 その中でも、斎藤氏が、あの沙織さん準強姦疑惑の山口敬之元TBS政治部記者のスポンサー(山口氏が使用してきたキャピタル東急ホテル代の肩代わりなど)だったという事実 安倍政権の監督責任は免れない 安倍首相にとって、もっとも都合の悪い疑惑 「安倍政権の命取りになりかねないスパコン詐欺疑惑」 同氏のブログ 天木直人 最近の山口氏の言動などを快く思わない官邸が、山口氏と関係を断つために事件を利用した、とみることもできるのではないでしょうか 「捜査が進んで、仮に山口氏に違法な金が流れていたことがわかったとしても、大臣でもない山口氏には職務権限はないので収賄罪にはならず、問える罪は所得税法違反ぐらい。政治家ならさらに逮捕のハードルが上がる。そうなると、今回の捜査の結果は、世界でも高性能なスパコン開発が頓挫する可能性が高まるだけということになる。今回の事件着手には道理がないんです」 「検察が越年捜査するのは異例のことで、可能性は限りなくゼロに近いでしょう。特捜部は斉藤容疑者を年末に起訴して捜査を終了すると考えるのが自然です」 検察の本当の狙い 今回、特捜部が事件に着手したことで、日本のAI研究スピードは世界各国に遅れをとることになるかもしれない 従来のスパコンに比べ、維持費や電気代がケタ違いに安い 装置が小型(小さい体積)なので、装置を置く敷地が必要ない 計算性能が高い NEDOからの助成金で得られるのは開発資金の3分の2にすぎない 山口氏がP社の顧問のような役割を務め、東京・永田町のホテル内の部屋(賃料月額が約130万円)を斉藤容疑者の資金提供を受けて使っていることを報じた もりかけスパ 元TBSワシントン支局長だった山口敬之 スパコン開発の第一人者 「スパコン詐欺事件「異例の捜査」で検察は誰を追い詰めたいのか 政界関係者の関与は?」 現代ビジネス 河野 正一郎 会社はカツカツのはずなのに、斉藤容疑者が住んでいたのが、御茶ノ水の高台にある高級賃貸レジデンスだということ 投資を受けるための“信用力”につながっていた 斉藤容疑者が内閣府の有識者会議で委員 売り上げや利益を思うように計上できず、財務状態は追いついていなかったと推測 メディアなどで技術力は評価を受けていましたが ペジー社への35億円 NEDO 新エネルギー・産業技術総合開発機構 社長の斉藤元章容疑者 助成金詐欺事件 ペジーコンピューティング スーパーコンピューター開発 「アベ友スパコン詐欺 3年13回の怪しい増資と金満生活の闇」 日刊ゲンダイ (アベ友スパコン詐欺 3年13回の怪しい増資と金満生活の闇、「異例の捜査」で検察は誰を追い詰めたいのか 政界関係者の関与は?、安倍政権の命取りになりかねないスパコン詐欺疑惑) スパコン詐欺
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感