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自動運転(その2)(これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国 VWの不正に懲りて法整備を進める欧州、 ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転 業界は足元を見つめ直せ) [科学技術]

自動運転については、昨年8月7日に取上げた。今日は、(その2)(これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国 VWの不正に懲りて法整備を進める欧州、 ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転 業界は足元を見つめ直せ)である。

先ずは、作曲家=指揮者 ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督で東大助教授の伊東 乾氏が3月23日付けJBPressに寄稿した「これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国、VWの不正に懲りて法整備を進める欧州」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・懸念されていた事態が現実のものとなってしまいました。 米国アリゾナ州で、ウーバーが実施していた自動運転実験で事故が発生し、犠牲者が出たのです。 報道によると、現地時間の3月18日午後、アリゾナ州テンピ近郊で実施されていたウーバーの試験運転走行中、横断歩道ではない場所を自転車を押して渡っていた女性が車に接触してしまいました。 ウーバーの試験車は完全自動運転モード中で、減速した形跡は全くなく、時速約65キロで進行、歩行者をはねてしまったという経緯であるようです。
・自動運転モードとはいえ、当然ながら試験車には同乗者がありました。しかし、危機回避の適切な行動は取られなかった。 ウーバーはただちに、カリフォルニア州サンフランシスコやアリゾナ州フェニックス、またカナダのトロントなどで実施していた自動運転車の試験走行をすべて中止しました。
・米国ではカリフォルニア州など、すでに規制緩和が進んで自動運転車の公道走行が部分的に許可され始めたエリアもあり、今回の事態は大きな波紋を投げかけています。 非常に大まかに言って、現状の「自動運転」は自動車が勝手に走行するという水準にあり、これはモノレールその他の軌道交通機関では、すでに当の昔に実現されていることで、実は取り立てて問題にするようなことではありません。
・日本国内でも、博覧会会場などとして設定された「未来交通」の路線を、駅から駅へ、自動的に運転する路線が運行されています。 これらの特徴は、軌道上に歩行者やほかの車などがいないこと、ホームドアなどで厳密に乗客と軌道とは仕切られ、十分な安全が確保されているということでしょう。
・逆に言えば、既存のモノレールなどの路線では、センサーによって危険を感知し、自動的に停車する装置などは取りつけられているはずです。 これはJR線などでもときおり経験することでしょう。線路内に人が進入した可能性がある危険信号を感知しましたので列車は急ブレーキをかけました、という車内アナウンスを耳にしたことがある人は少なくないはずです。
・この場合、JR線でも新都市交通でも、極めて限られたエリア、決まった軌道上の特定のチェックポイントで危険信号が感知されたとき「急停止」その他の安全アクションが取られることになります。 逆に言うと「想定外」のリスク、突然横方向から歩行者や自転車が飛び込んで来るといった事態は、モノレールなどの場合はまず発生しないので、そのようなセンサーもリスク対策も一切取られていません。 対策や考慮の対象外ということになります。
・今回のウーバー事故は、報道される状況証拠から、自動運転車が全く歩行者やリスクを感知しないまま自動的に進行したものと思われます。何も考えずに猪突猛進すれば、前方の物体に衝突するのが当然で、事故は必然的に起きたと言うしかありません。 
・すでに発生しているテスラの自動運転車事故も、今回のウーバー事故もそうですが、商品化を焦ったり、実験成功の情報発信で企業資産価値を上げたり、という拙速と言うか姑息とさえ言える経営判断によって事故が起きてしまっている。 危険回避センサー技術という観点では、いまだモノレール程度の自動運転と大差ない代物を、広い国土を利用してあちこちの公道で走らせ始めているわけです。
・かつ「物議をかもす」程度の報道からも明らかなとおり、米国やカナダでは、自動運転に伴う事故リスクや、そこでの保険商品のあり方、法規制その他の落ち着いた制度設計の議論がほとんどなされていません。  何かと米国に右向け右のどこかの国でも、そんな話はついぞ耳にしないでしょう。
・すなわち、自動運転車が何らかの事故を引き起こしたとき、どのような責任が問われるか。リスクに備えてどのような法制度や、新たな保険商品を準備すればよいか・・・。 一部省庁の専従には意識の高い人がありますが、国全体として議論の期が熟しているとは到底言えません。 これを強調するのは、本連載でも今まで幾度も記してきたように、ドイツを中心にEUでは自動運転に関する法制度、もっと言えば、AI駆動されるシステムが、何らかの被害を人に与えた場合の責任の所在を問う「ロボット法」が、大枠すでに確立されているからにほかなりません。
▽責任主体としての「ロボット法人」
・EUでは「ロボット法人格」を認める法制度整備が急速に進んでいます。 まるで手塚治虫のマンガ「鉄腕アトム」のような話と言っても、すでにいまの若い世代には通じないのかもしれません。 人間の心を持つロボット少年アトムの悲劇を描いた原作マンガは、テレビアニメーションとしては軽い冒険活劇としてヒットしました。
・しかし、もはや漫画の中の世界ではなく、もっと落ち着いてリアルに考えるべき対象です。 例えば、福島第一原子力発電所事故が発生し、責任主体として東京電力という「法人格」が、重い司法上の責任を問われている。これは全く普通です。 しかし、東京電力さんという人がいるわけではなく、切れば血が出る生身の体があるわけではない。 でも東京電力には資産があり、損害賠償の必要が発生すれば、会社がその主体として責任を負うことになる。もちろん、並行して企業の経営に責任をもった生身の個人が訴追される場合もあり得る。
・全く同様のことを、一定以上自立的に作動するシステムに関しても、それ自体を「ロボット法人」として責任の主体とみなす必要があるという、手堅い判断をEU~ドイツはすでに下しています。  自動運転車はその典型として分かりやすいですが、ほぼ自動的に動くという意味では、産業用ロボットなどの自動システムの方が、2018年時点ですでによほど多く、実用化されています。
・今回の事故は、ウーバーの試験走行ですから、責任は全面的に会社にあると判断される可能性が高いでしょう。 しかし、自動運転中とはいえ、その車に乗っていた運転しない運転者、手動モードに切り替えたなら、自分でハンドルを操作して危険を回避できた可能性のある人には、どのような責任がかかるのでしょうか? ここで言う「責任」は、哲学的な抽象論ではなく、損害賠償であればもっとリアルな「過失割合」であり、行政上、司法上の責任であれば処分の対象と認められるか、という値引きのない話にほかなりません。
・さらに、これが一般の路上交通で発生したものとすれば、どうなるでしょう? 例えばT社の自動運転車は、基本すべてT社のAIシステムが運転しているものとしましょう。それで発生した事故は、すべてT社の責任になるのか? そんな制度設計にしたら、経営が成り立たないのは火を見るより明らかでしょう。 どこかで適切に責任の主体を切り離し、その範囲でリスクを分散させ、また損害賠償などの必要が出た場合には、そこに責任の主体を限局する必要がある。そのような意味で、「EUロボット法」は議論されています。
・分かりやすく言えば、原発で事故が起きれば、裁判の結果、電力会社という「法人」の資産で賠償が行われるように、自動運転車やスマートファクトリーの産業用ロボットが事故を起こした場合、「自動運転車法人」や「産業用ロボット法人」が自分自身の資産をもって責任を負う。 具体的には保険制度などが活用され、従来とは違うAI社会のエコシステムを円滑に動かしていく、そういう議論が、早くから進んでいます。
・たまたま私は大学の公務で、ミュンヘン工科大学などを中心とする、こうした「自動運転倫理委員会」メンバーと年来の共同プロジェクトを進めており、関連の状況は一通り承知しています。 例えばドイツでは、自動運転車の安全システムで、「あらかじめ、特定の人を犠牲にするようなプログラム」を組んだ人がいた場合、「そのシステムを組み上げたシステムエンジニア個人を含め刑事責任が問われる」という、著しく重い判断がすでに下されています。
・通常の路上交通では、リスクは常に複数存在します。対向車であったり、後続車であったり、前後左右複数方向からの歩行者であり自転車でありバイクであり、また運転者自身や同乗者であり・・・。 今回の例では、何のセキュリティも施されていない拙劣な車で事故が起きました。2つ以上のリスクが重なる場合、そのどれか1つ、あるいは複数でも、必ず犠牲になるものが決まっているというソフトウエアを組んだ人があれば、それに起因して発生した事故について、民事刑事の責任を負うという判断です。
・現場の運転と何ら関係しない、ウーバーで期間開発に関わったシステムエンジニアにも法的な責任が問われるという重い社会ルールが、ドイツ・欧州ではすでに準備されています。 どうしてそんなことになってしまったかと言うと、1つの原因はフォルクスワーゲンの排気ガス安全基準ごまかしの大型犯罪で、国際社会にドイツ産業界が面目を丸潰しにした経緯が関係しています。
・あの時点では、誰が見ても不正にしか使えないあのシステムを作ったボッシュにも、そこで請け負ってシステムを作ったエンジニアにも、限られた責任しか問うことができなかった。 でも、犯罪以外に使いようがないことは、関連した人がすべて知り、それこそ忖度し合いながら、企業秘密として伏せられていた。 二度とこれを繰り返してはならないという決意をもって「システム開発者も牢屋に入れられ得る」という厳しい法制度準備が進んでいるわけです。
・ 翻って、米国にはそういう制度はおよそ存在していません。 欧州では、重い責任とともに、慎重な自動運転の実用化が一歩一歩検討され、致命的な事故はいまだ発生していませんし、米国では気軽に自動運転車の実用化が叫ばれ、今回の事態を含め、かなりの高頻度でアクシデントが発生しています。
・別段「規制緩和はよろしくなく、重い規制がすばらしい」などと一面的に言うつもりはおよそありません。 しかし、この件に関する限り実用化・商品化を焦る米国企業の拙劣さは隠しようもなく、またそうした拙速な開発を煽るベンチャーキャピタルなど、経営主体より後方の加速圧にも、間違いなく道義的な責任はあると言わねばならないでしょう。
・AIだ 自動運転だ 夢の未来社会だ といったばら色の絵図を描くのは結構なのですが、それに見合うだけの守りと足腰を備え、責任をもって国家百年の計として自動運転を位置づける欧州と、何もそうしたことは考えず「神の手」に任せたことにしやすい米国のコントラストが非常に際立っているように思います。 関連の推移に注意しつつ、日本での自動システム、その導入と保険商品などを含む制度設計、真剣に考えてみてはいかがでしょうか。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52645

次に、ジャーナリストの井元康一郎氏が4月11日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転、業界は足元を見つめ直せ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米国でのウーバーによる自動運転実験車両の死亡事故は、自動運転技術の開発競争に大きな衝撃を与えた。今後、開発競争の行方はどうなるのか、あるいはどうすべきなのか。そのポイントを整理してみた。
▽自動運転の開発競争に“冷や水” ウーバーによる実験車の死亡事故
・このところ激化の一途をたどる自動運転の開発競争に“冷や水”をぶっかけるような事態となったアメリカ・アリゾナ州でのUber(ウーバー)自動運転実験車の死亡事故。 捜査の結果、事故自体は人為的なミス、技術パッケージの“見立ての甘さ”などによるところが大きいことが判明しつつある。とはいえ、自動運転の技術開発のペース自体がこの事故によって鈍ることはないであろう。
・一方で、この事故は自動運転車をどう実用化するか、また社会にどうインストールしていくか、といった課題を浮き彫りにした。 「クルマの自律走行技術の開発は、もともとは安全技術の発展形だったのですが、最近は新ビジネスの創出が主なモチベーションになっている観が強かった。自動車メーカー側にとっては他社に先んじて技術を確立して先行者利益を得ることが第一目的なのですが、交通弱者の救済、商業ドライバー不足の解消など、社会的意義を口にしやすい分野だったので、自動運転の開発が正義という風潮が余計に強まった。今回の事故を、自動車業界が『今後何をやっていけばいいのか』ということを、頭を冷やして考えるきっかけにしなければ、犠牲が報われない」 自動運転開発に関わる情報通信系エンジニアはこう語る。
・実際、近年の自動運転に関し、自動車メーカーやITプラットホーム企業が繰り出すアジェンダは急進的なものが多かった。
▽フォードやGMが相次いで将来の完全自動運転車発売を宣言
・アメリカのフォードは2016年に、「2021年までにタクシー向けを想定したステアリングレスの完全自動運転車をリリースする」と宣言。するとGMは、ウチは2019年に発売すると応酬。しかもその自動運転車はシボレー「クルーズ」がベース。シティコミュータなどではなく、本格乗用車で出すというのだ。
・限定エリアでなく、公道であればどこでも走行可能なクルマが実現できればとてつもなくすごい話だ。カーシェアを無人でユーザーのところに送り届けたり、トラックを無人で走らせたり、免許を持たない人がクルマで自由に移動することを可能にしたりといった新ビジネスはすべて、自動運転の「レベル5」、すなわち完全な自動運転車が完成しなければ実現しないものだ。
・安全が担保され、しかも低コストなレベル5カーが出てくれば、それはモビリティにおける壮大なパラダイムシフトになるだろう。 しかし、業界ではウーバーの事故の前からフォードやGMが打ち出したビジョンの実現性については懐疑的な見方が少なくなかった。日系メーカーの技術系幹部は欧米企業が次々に楽観的なアジェンダを発表するのを見て、次のように語っていた。 「不確定要素の多い道路上で完全自動運転を実現するには、オンロードでのデータ収集が不可欠なのですが、その状況は刻々変わる。たとえば季節によって街路樹の枝が伸び、葉をつけたりといった風景の変化ひとつ取っても、それが何なのかをAIが自分で知ることができるわけではありません。そして、その変化が思わぬ事態を引き起こす可能性もある。データを教え込み、それをもとにAIが深層学習で応用範囲を広げたとしても、次に待ち受けている何かを察知できないうちは、自動運転車は社会の中でコンフリクトの火種にしかならない」(前出のITエンジニア)
▽自動運転の開発ブームの中で あおりを食った日本企業
・アメリカでは10年ほど前から自動運転が「未来の高付加価値分野になる」という期待が盛り上がっており、それを実現するための「規制緩和こそ正義」という風潮が強まっていた。リスクについては「機械が時に間違いを犯すとしても、人間よりはずっと着実だ。それに異を唱えるのは馬鹿者」といった物言いで封じ込んできた。 多くのメディアもこのムーブメントに乗った。
・AIの深層学習技術が長足の進化を遂げていることを根拠に「完全自動運転はすぐにでも実用化できる」という論説があふれ、それが実現したときの“バラ色の物語”を流した。 こういったトレンドの中で、あおりを食ったのは日本企業である。 日本陣営は自動運転技術に関する特許保有が世界で最も分厚いトヨタ自動車、早い段階から自律走行の実走行データを鋭意収集していた日産自動車、ロボティクス技術や機械と人間のコミュニケーションに関する研究で先んじていたホンダ――と、ことクルマの制御に関しては世界最先端だった。
・日本メーカーが長い間「自動運転技術は事故ゼロを目指すためのもので、技術的な障壁を無視して完全自動が自己目的化するのはよくない」というスタンスを取ってきたのは、技術でリードするがゆえにその難しさ、リスクを死ぬほど知っていたからにほかならない。 最近になってトヨタをはじめ主要メーカーが自動運転に次々と参戦したが、「技術の飛躍への対応を誤らないようにということもあるが、何よりも遅れているというイメージをこれ以上持たれてはかなわないという意味合いが強い」(トヨタ関係者)という。決して宗旨替えしたわけではないのだ。
▽ウーバーのことは「なかったことにしたい」
・日本陣営のなかで自律走行に最も前向きだったのは日産自動車だ。 DeNAと自動運転技術やコネクテッド技術を使った新サービスの開発で提携したりと、基本戦略は今も大きくは変わっていない。だが、日産のBMI(ブレイン・マシン・インターフェース。脳と機械の間でコミュニケーションを取る技術)開発の中核人物のひとりであるルチアン・ギョルゲ氏は「我々はハンドルのないクルマを作るつもりはない」と断言する。
・「クルマをただ人や荷物が運ばれるためのものにはしない。人間の思考は脳波から読み取ることが可能だと思っている。それができれば人の認知から操作までのタイムラグをなくすることができ、クルマはもっと安全でファンなものになる」(ギョルゲ氏))
・機械が100パーセント、自動的に人間の意思や願いを叶えてくれるということはなく、あくまで人間が主役であるべき、また人間には人間の長所があり、機械と人間が調和することでより高い安全、楽しさを実現させられるという思想だ。人が運転者のいない箱にただ運ばれていくという今日の自動運転の考え方に対するアンチテーゼとも言える。
・日産以外の日本メーカーも、基本的には人間と機械の調和を高めていくべきで、理想的な自動運転はその延長線上にあるという考え方をしている。そのほうが安全で、かつパーソナルモビリティならではの価値を提供できると考えているからだ。その知見に一定の理とバリューがあったことを、ウーバーの事故は“最悪の形”で証明した格好だ。
・記者をやっているアメリカの知人によれば、アメリカではウーバーの事故を境に、自動運転の実用化という名目を唱えれば何でもありという風潮に危惧を抱きながら、これまで抑圧されてきた人たちからの異論が“ここぞ”とばかりに噴出し、業界はほとぼりが冷めるのをじっと待っている状況だという。
・「できればウーバーのことは『なかったことにしたい』という気運を強く感じる。ウーバーがルーズだったから事故が起こったので、本来は起こり得なかったことなのだ、と。だが、できるだけ簡単なシステムで最高のパフォーマンスを実現するというウーバーのアプローチは、技術開発の考え方としては全然間違ってはいない。それだけ難しいことをやっているという自覚が、業界全体として欠如していたのが浮き彫りになっただけだ。なかったことにすれば彼らは一安心だろうが、そのうちもっと大きな問題が起きる。自動運転の技術開発自体は止まらないとしてもね」
▽自動運転はどうあるべきか ポリシーを見直すべき
・テストカーとはいえ、死亡事故が起こってしまった今、自動運転はどうあるべきかというポリシーを今一度しっかり見直すべきだ。 まずは技術的な側面。完全自動運転は人間のほうが得意なことまで全部機械任せにするものだが、人間がリスクに気がついてもハンドルやブレーキがなく操作不能というのは、やはりまずい。
・突発的な事態に対処できる物理的な余裕の有無についてはともかく、少なくともリスクの認知の段階で機械が100%、リスクを察知できないうちは、人間と機械が互いに助け合うことでフェイルセーフを図るのが最も安全だろう。 また、自動運転をどういうところから導入するかについても再考が必要だ。トヨタのエンジニアは「まずは高速道路や決められたエリアなど、リスクが限定された環境で導入すべき」と言う。
・前述のように完全自動運転車の実用化について、自動車業界は交通弱者の救済や物流の無人化といった社会的意義を強調しているが、開発に前がかりになっていた最大の動機は技術の囲い込みや新ビジネス創出といったそろばん勘定だ。不可能へのチャレンジは技術進化に欠かせないが、本音と建前が乖離しすぎると往々にしてトラブルが起こる。投資家へのアピールのために無理なアジェンダを提示するのは少し控えたほうがよかろう。
▽自動運転技術はこれで終わったりはしない
・自動運転の“進化のさせ方”についても決着した観がある。 システムが対処できなくなったらアラートを出してドライバーに操作を渡す自動運転レベル3はやはり危ない。ドライバーがとっさに対応できるとは限らないし、システムがリスクを見逃していた日には目も当てられない。少なくとも一定条件下では無条件にシステム側が事故の責任を負う、いわゆるレベル4が自動運転のマストと考えたほうがいいだろう。
・素晴らしい新技術が萌芽的に出てきたとき、社会は当然その技術の進展に期待を寄せる。モノづくりに矜持を抱くメーカーがその期待に応えようとするのは、国によらず本能のようなものである。が、それがいつの間にか投資家におもねることにすり替わってしまい、無茶なアジェンダの提示合戦を繰り広げてしまうパターンに陥るとまずい。
・数年前の欧州におけるディーゼルの排出ガス不正もそうだったが、正義を振りかざしながら“無理筋”を通そうとしているときに限って、何らかの問題をワンパンチ食らっただけで腰砕けになってしまうものだ。ウーバーの事故でいきなり自動運転関連企業が静かになってしまったのもその類である。
・しかし、自動運転技術はこれで終わったりはしない。 ニーズは確実にあるし、場合によってはまったく新しい交通の景色を見せてくれるようになるかもしれない。そういう技術の開発であるからこそ、プレーヤーは広げた“風呂敷”が実情に沿ったものか、それとも“虚栄心”が勝っているかどうかを常に自省し、本筋を踏み外さないようにする理性を大事にすべきだ。
http://diamond.jp/articles/-/166660

第一の記事で、 『自動運転モードとはいえ、当然ながら試験車には同乗者がありました。しかし、危機回避の適切な行動は取られなかった・・・今回のウーバー事故は、報道される状況証拠から、自動運転車が全く歩行者やリスクを感知しないまま自動的に進行したものと思われます。何も考えずに猪突猛進すれば、前方の物体に衝突するのが当然で、事故は必然的に起きたと言うしかありません』、どう考えてもお粗末過ぎる事故だ。 『テスラの自動運転車事故も、今回のウーバー事故もそうですが、商品化を焦ったり、実験成功の情報発信で企業資産価値を上げたり、という拙速と言うか姑息とさえ言える経営判断によって事故が起きてしまっている』、というのはさもありなんだ。 『自動運転中とはいえ、その車に乗っていた運転しない運転者、手動モードに切り替えたなら、自分でハンドルを操作して危険を回避できた可能性のある人には、どのような責任がかかるのでしょうか?』、無論、運転者にも責任はあるが、自動運転ということで、気が緩んでしまいがちになるのは、人間の性ともいえる。 『AIだ 自動運転だ 夢の未来社会だ といったばら色の絵図を描くのは結構なのですが、それに見合うだけの守りと足腰を備え、責任をもって国家百年の計として自動運転を位置づける欧州と、何もそうしたことは考えず「神の手」に任せたことにしやすい米国のコントラストが非常に際立っているように思います』、日本としては堅実な欧州スタイルでいくべきだろう。
第二の記事で、 『今回の事故を、自動車業界が『今後何をやっていけばいいのか』ということを、頭を冷やして考えるきっかけにしなければ、犠牲が報われない」』、というのは正論だ。 『日本メーカーが長い間「自動運転技術は事故ゼロを目指すためのもので、技術的な障壁を無視して完全自動が自己目的化するのはよくない」というスタンスを取ってきたのは、技術でリードするがゆえにその難しさ、リスクを死ぬほど知っていたからにほかならない。 最近になってトヨタをはじめ主要メーカーが自動運転に次々と参戦したが、「技術の飛躍への対応を誤らないようにということもあるが、何よりも遅れているというイメージをこれ以上持たれてはかなわないという意味合いが強い」(トヨタ関係者)という。決して宗旨替えしたわけではないのだ』、というのいで、必ずしも日本メーカーが立ち遅れている訳ではないことを知って、一安心した。 『システムが対処できなくなったらアラートを出してドライバーに操作を渡す自動運転レベル3はやはり危ない。ドライバーがとっさに対応できるとは限らないし、システムがリスクを見逃していた日には目も当てられない。少なくとも一定条件下では無条件にシステム側が事故の責任を負う、いわゆるレベル4が自動運転のマストと考えたほうがいいだろう』、 『モノづくりに矜持を抱くメーカーがその期待に応えようとするのは、国によらず本能のようなものである。が、それがいつの間にか投資家におもねることにすり替わってしまい、無茶なアジェンダの提示合戦を繰り広げてしまうパターンに陥るとまずい』、などは説得力がある。
タグ:自動運転 ダイヤモンド・オンライン ウーバー 伊東 乾 井元康一郎 BPress (その2)(これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国 VWの不正に懲りて法整備を進める欧州、 ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転 業界は足元を見つめ直せ) 「これからも頻発しかねない自動運転車の死亡事故 対策が後手に回る米国、VWの不正に懲りて法整備を進める欧州」 自動運転実験で事故が発生し、犠牲者が出たのです テスラの自動運転車事故 商品化を焦ったり、実験成功の情報発信で企業資産価値を上げたり、という拙速と言うか姑息とさえ言える経営判断によって事故が起きてしまっている 危険回避センサー技術という観点では、いまだモノレール程度の自動運転と大差ない代物を、広い国土を利用してあちこちの公道で走らせ始めているわけです EUでは「ロボット法人格」を認める法制度整備が急速に進んでいます AIだ 自動運転だ 夢の未来社会だ といったばら色の絵図を描くのは結構なのですが、それに見合うだけの守りと足腰を備え、責任をもって国家百年の計として自動運転を位置づける欧州と、何もそうしたことは考えず「神の手」に任せたことにしやすい米国のコントラストが非常に際立っているように思います 「ウーバー死亡事故で腰砕けの自動運転、業界は足元を見つめ直せ」 日本メーカーが長い間「自動運転技術は事故ゼロを目指すためのもので、技術的な障壁を無視して完全自動が自己目的化するのはよくない」というスタンスを取ってきたのは、技術でリードするがゆえにその難しさ、リスクを死ぬほど知っていたからにほかならない 近になってトヨタをはじめ主要メーカーが自動運転に次々と参戦したが、「技術の飛躍への対応を誤らないようにということもあるが、何よりも遅れているというイメージをこれ以上持たれてはかなわないという意味合いが強い」(トヨタ関係者)という。決して宗旨替えしたわけではないのだ
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電気自動車(EV)(その4)(テスラが明かした「モデル3」生産地獄の実態、窮地のテスラに立ちはだかる自動車トップ 2018年から本格化する熾烈なEV競争の先は?、ベンツ・BMW・VWも本音では「EV本格普及はいまだ不透明」と見る) [科学技術]

電気自動車(EV)については、1月17日に取上げたが、今日は、(その4)(テスラが明かした「モデル3」生産地獄の実態、窮地のテスラに立ちはだかる自動車トップ 2018年から本格化する熾烈なEV競争の先は?、ベンツ・BMW・VWも本音では「EV本格普及はいまだ不透明」と見る)である。

先ずは、2月10日付け東洋経済オンライン「テスラが明かした「モデル3」生産地獄の実態 ロケットのようにうまく軌道に乗らない」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・世界最大の輸送能力を持つ大型ロケットが現地時間の2月6日、米フロリダ州のケネディ宇宙センターから発射された。 成功させたのは、イーロン・マスク氏が設立した宇宙輸送関連会社スペースXだ。ロケットの先端にはマスク氏がやはりCEOを務めるテスラのEV(電気自動車)「ロードスター」が乗せられ、火星の軌道に投入された。現在は同車に搭載されたカメラがとらえた宇宙の様子がネットに配信され、大きな話題になっている。 一方、なかなか軌道に乗らないのは、マスク氏の本業、EV生産だ。
▽2017年度は約2150億円の赤字
・翌7日に発表されたテスラの2017年度通期決算は、最終損益がマイナス19億6140万ドル(約2150億円、前年同期比で約13億ドルの悪化)と、過去最大の赤字となった。高級車の「モデルS」や「モデルX」は好調だったが、昨年7月からスタートしたEV「モデル3」の量産立ち上げに今なお苦戦し、先行投資がかさんでいる。
・モデル3はテスラ初の量産型EVで価格は3.5万ドルから。2017年7月に出荷を始めたが、納入台数は7~9月期がわずか260台、10~12月も1500台にとどまった。週5000台の生産目標は、当初2017年末までに達成する計画だったが、今年6月末までに延期された。延期は今回で2度目になる。
・ボトルネックは大きく2つある。電池パックと車体の組み立て工程だ。 モデル3の電池生産は2017年1月、米ネバダ州に開所した世界最大の電池工場、ギガファクトリーで行われている。作られているのは、パナソニック製の円筒型リチウムイオン電池「2170」だ。パナソニックが作った電池のセルを、テスラがモジュール化(組み立て)する。
・この組み立ては、ロボットを活用した完全自動化ラインで行う予定。しかしこの4つの工程のうち2つの立ち上げを委託していた業者が機能せず、結局テスラ自らが行うことになった。 そのため、当面は手作業での組み立てを余儀なくされた。これには自信家のマスク氏も「われわれがいささか自信過剰になりすぎていた」と肩を落とす。車体組み立ての行程においても、同じく部品の自動組み立てのスピードが上がらない。
・そこでテスラは、2016年に買収したドイツの自動生産設備大手グローマンのチームを動員して、自動化工程に人を配置する半自動化ラインを導入。完全自動化が可能になるまでの「つなぎ」として活用することにした。 決算発表の当日に行われた電話会見でマスク氏は、「モデル3の苦戦はあくまで時間の問題。全体計画の中で現在の誤差は極めて些末なことだ」と強気の姿勢を崩さなかった。だが一方で、自ら「生産地獄」と表現する現状について、「こんな経験は二度としたくない。(11月の)感謝祭の日ですら、ほかのテスラ社員と一緒にギガファクトリーにいた。週7日、みんながバケーションを楽しんでいるときもだ」とも漏らした。
▽パナソニックに「テスラリスク」
・モデル3を巡る想定外の苦戦は、テスラに電池を独占供給するパナソニックにも影を落とす。5日に発表した2017年4~12月期(第3四半期)決算において、同社はこの生産遅延の影響で売上高で約900億円、営業損益で約240億円のマイナス影響を受けたと公表した。この結果、2次電池事業は54億円の営業赤字に沈んでいる。
・業績全体は増収増益で通期計画を上方修正しており、いたって好調。だが、成長事業と位置づける自動車電池事業の最大顧客はテスラだ。その先行きには一抹の不安がよぎる。2017年12月には、トヨタ自動車からの呼びかけで車載電池事業における協業検討を発表したが、それが結果的に「テスラリスク」をやわらげることとなった。
・パナソニックの津賀一宏社長は、1月上旬にラスベガスで開かれた家電見本市への参加後にギガファクトリーを訪問し、「現状を見てテスラ社との打ち合わせをする」と語った。打ち合わせの結果、どのような方針で合意したのかが気になるところだ。
・最終赤字が続く中で、テスラの財務リスクは膨らんでいる。2017年度のフリーキャッシュフロー(企業活動から生み出される余剰資金)は約34億ドルの赤字と、前年の倍以上に拡大。自己資本比率も15%を下回る。  これまでは新モデルの購入予約金と、増資と社債といった市場からの資金調達により「錬金術」のごとく資金を生み出してきたテスラ。期末時点の保有現金も、約33億ドルと前期からほとんど変わっていない。さらに1月末には、モデルXとSのリース債権を流動化し、5億4600万ドルを調達したことを発表した。
▽ツイッターはロケットの話題一色
・ただ同社は、今後もモデル3のための設備投資を拡大する必要がある。さらに今回、現在市場が盛り上がるSUV(スポーツ用多目的車)型の「モデルY」を投入するために、2018年末までに新たな投資を行うことも発表している。その程度によっては、資金繰りが苦しくなる可能性もある。決算発表翌日の株価は、市場が全面安だったこともあるが、2割減と大きく値を下げた。
・マスク氏は、モデル3の週次生産5000台実現を前提に、2018年度中の営業黒字化を宣言する。ただ、市場関係者の中には「生産台数はその半分程度になるのでは」という見方もある。 テスラは長期計画を掲げたうえで、そこから逆算して具体的な計画を立てる。モデル3の量産は、マスク氏が2006年に描いたマスタープランの最終ステップになる。だが、同氏がいうところの「誤差」に消費者や投資家、そしてサプライヤーがどこまで付き合えるかは別の問題だ。
・生産設備の不具合が露呈した10月頃には、ギガファクトリーの立ち上げで工場に泊まり込んだ様子などをツイッターで投稿していたマスク氏。だが、現在の同氏のツイッターはロケットの話題一色。足元における量産化への進捗は、うかがい知ることができない。
http://toyokeizai.net/articles/-/201504

次に、本田技術出身で名古屋大学客員教授/エスペック上席顧問の佐藤 登氏が2月8日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「窮地のテスラに立ちはだかる自動車トップ 2018年から本格化する熾烈なEV競争の先は?」を紹介しよう(▽は小見出し、+は①、②などの中での段落)。
・昨年後半から、米テスラの「モデル3」が生産地獄に陥っている状態、すなわち当初の量産計画通りの生産台数には全く届かず四苦八苦している状態が報道されてきた。その中には、自動車業界の競争意識、電池業界のビジネス戦略、そして大きな投資を要求されてきた部材メーカーの悲喜こもごもが盛り込まれている。
・遡れば2017年6月に、テスラは中国の上海市に電気自動車(EV)の生産工場を建設する方向であることを報じた。その場合の条件としては現地企業との合弁が前提とされていたが、果たして順調に進んでいるのか。現在の米国における状況を考慮すれば現実性があまり感じられない。
・CEOのイーロン・マスク氏は、電動車、とりわけEVの最大市場となる中国で巨大工場を建設すると述べていた。2018年の生産キャパは中国巨大工場の稼働分も含め 全世界で年産台数50万台の計画を掲げた。現在の生産台数との乖離が大きいだけでなく、そもそもこのような大量のEVを本当に量産できるのか、根本的な問題があるのではないだろうか。
・テスラは17年3月に中国ネット大手のテンセントから5%の出資を受けている。そして、同年4月にマスク氏が訪中した際には汪洋副首相と会談したとされている。もともとテスラは14年に中国市場に参入した。その後の16年には15年の3倍以上の売上高を記録した。米国からの輸出のため、関税と輸送費が課せられる格好であったが一大ブームを巻き起こしたことになる。だが、一定数が市場に出回った後には飽和感が漂い、頭打ちになったことも記憶に新しい。
・そのような中で、米国からの輸出よりも中国での現地生産に踏み切れば相応のメリットが出ると言う試算は正しい。だが、そこには想定外の誤算があったようだ。それは、35万台のバックオーダーを抱えていると言いながらも、それに見合った量産技術と生産体制の整備が進んでいないままでの生産をしているような実態だ。すなわち、本格的な生産技術が伴っていないという欠陥である。
・米国ネバダ工場だけでの量産台数としては週5000台ペースの生産を計画してスタートしたのだが、生産地獄に至ったことで17年7月に発売開始した直後には、その生産計画を17年末までと一旦延期した。さらに1月に入ると達成時期を18年4~6月期までと2度目の延期をアナウンスした。
▽テスラが陥っている罠
・2017年の第3四半期こそ売上高は前年同期比で8%増加したと言うが、1~9月間の営業損失は売上高の11.5%に達したとのこと。象徴するように、17年12月上旬の日本経済新聞の夕刊には、「テスラ暗雲、冷める投資家」というタイトルの記事が掲載された。 それによれば、17年7月に出荷を開始した量産型EV「モデル3」の生産が計画を大幅に下回っていることが株価に大きく影響したという。17年7月から9月期までの「モデル3」の生産台数は当初計画であった1300台の2割に留まり、260台しか生産できなかったとのこと。しかも納車先は社員または会社関係者にのみだったという。
・17年9月18日に上場来最高値の389ドルを付けた株価は、そういう状況が影響して後に下降を続け、12月8日には最高値から20%を下げた。「モデル3」発表と同時にバックオーダーが35万台に達したと話題になったテスラだが、明らかに量産体制の脆弱さが露呈している。17年10月から販売が開始された日産の新型EV「リーフ」が現在抱える1万6千台、そして仏ルノーのEV「ZOE」が抱える3万台規模(ルノーの知人談)に比べれば、テスラへの期待感がいかに大きかったかは想像に難くない。
・先の日経新聞によれば、テスラの財務は火の車とのこと。時価総額で米ゼネラルモーターズ(GM)やフォード・モーターを超えたと話題になったものの、実態とは大きな乖離があるようだ。17年7月から9月まで1年間のキャッシュフローは約5500億円の赤字、しかも16年12月通期の3倍にまで膨らんだというから火の車と言う比喩が妥当だ。
・決算における巨額の赤字体質に対する補填と設備投資に対する資金は、増資と社債でやりくりしている模様である。17年9月時点での手元資金は4000億円規模であるようだが、一方、負債額は1兆1000億円程度を抱えていると見られている。返済に追われる現状での打開策は、そう簡単ではないように映る。
・現在抱えているバックオーダーは、いつになったら全車納車になり得るのか、現状を踏まえると数年はかかる計算になる。一方、本年から米国ゼロエミッション自動車(ZEV)規制が急激に強化され、19年からは中国の新エネルギー自動車(NEV)規制が待ち構える。そして21年からは欧州におけるCO2規制が発効することで、世界の自動車各社は否が応でも電動化シフトを実行しなければならない。
▽日米欧の電動化戦略
・これを議論すると、ますますテスラは窮地に追い込まれると筆者は予測するが、同じ意見を有す読者の方々も少なくないのではと察したい。 先週の1月29日から2月1日までの4日間、ドイツ・マインツで自動車の電動化と車載用電池に関する国際会議「AABC(Advanced Automotive Battery Conference) Europe 2017」が開催され、筆者も参加した。予想はしていたというものの驚いたことはまず、昨年の700人規模の参加者が一気に1000人を超えたこと。欧州で開催された本会議の参加者急増加が、欧州自動車業界を始めとする電動化シフトが現実的なものとなってきたことの証しでもある。
・これまでも欧州勢、特にドイツ勢のダイムラー、BMW、そしてフォルクスワーゲン(VW)が数兆円規模の投資を図り電動化へのかじ取りを行っていることは報道されてきたが、その気迫を実感できる良い機会であった。そこにはドイツ勢のみならず、ルノーの電動化に対する積極的な戦略も発信され、まさに欧州で進んでいるEVシフトは言葉だけではない実態が伴う本格的なムーブメントである。
①欧州勢の電動化へのかじ取り
+2015年に発覚したVWのディーゼル燃費スキャンダルが引き金となり、加えてドイツのメルケル首相が発信した将来的なディーゼル車の排除が重なり、ドイツの自動車各社はリベンジの意味も込めつつ電動化には極めて積極的である。リップサービスで建前論的と、周囲には疑問視する意見もあるようだが、現在の各社の取り組み姿勢を考えれば、決して一時凌ぎの発言とは思えない。 ドイツ勢各社による開発投資計画、車種数の具体的発信、日本人エキスパートの積極的人材活用、電池各社に対する求心力の増大――これを裏付ける事例は山ほどある。
+ドイツ勢もフランス勢も昨今、車載電池に対する考え方を大幅に変えてきた。従来、電池は調達部品の1つとしてしか考えていなかった各社は、電池パックシステムをボッシュのようなTier1に委ねる戦略を推進してきたが、それでは競争力や差別化を図れないと漸く気付いた。電池セル単体は調達戦略のもとで受け入れるが、それ以降のモジュール化から制御システムまで包含した電池パックシステムを自社内での自前化にシフトさせている戦略に方向転換した。
+更なる裏付けの1つは、韓国トップ3の欧州拠点構築の動きだ。ポーランドでいち早くリチウムイオン電池(LIB)の生産拠点を構えた韓国LG化学は、第一次の400億円規模投資を終え2017年後半から生産を開始した。今後、さらなる第二次投資計画を進めようとしている。サムスンSDIはハンガリーに400億円規模の投資にてLIB生産拠点を作り、本年中の稼働を目標にしている。
+そして韓国の第3勢力であるSKイノベーションはハンガリーに、850億円を投資し生産拠点を構え、2020年の稼働を目指すと言う。韓国のトップ3の電池メーカーが欧州に拠点を構え、しかも巨額投資を行うという同じベクトル化にあるということをどう考えるべきか。 筆者がサムスンSDIに在籍していた経験から類推するに、マーケティング活動が日本勢より数倍積極的な韓国勢が、当てもなく巨額投資するはずはない。それには電池各社の十分な算段があるはずで、供給契約と言わずとも、それなりの可能性にかけている節がある。
②米国勢の電動化へのかじ取り
+GMもフォードも、ZEV規制、そして中国市場での展開もしたたかな戦略を進めている。欧州勢ほど大々的なEVシフトをしてこなかったのは、欧州勢がディーゼルスキャンダルの解決策で大々的に発信したスタンスとは異なり、じっくり練った戦略を打ち出しているためである。テスラのEV事業とは一線を画し、むしろ自動車の歴史を牽引してきた米国トップ企業の余裕すら感じる。両社にとって、テスラは気にはなるが大きな脅威とは感じていないようだ。
③日本勢の電動化へのかじ取り
+日本勢はまた特有の戦略を有している。特にトヨタとホンダには強力なハイブリッド車(HEV)があるからだ。日本ではもちろん、最近では欧州でも、そして中国でもHEVの販売が伸びていることが象徴している。  ZEV規制、NEV規制においてHEVはクレジットにカウントされるカテゴリーから排除されている。しかし、そのHEVが日本ではもちろん、欧州、そして中国で販売を拡大している事実は何であろうか?
+取りも直さず、消費者にとってHEVが魅力ある製品であることに違いはないからである。ZEV規制もNEV規制でも、トヨタとホンダのみが勝ち組であるHEVであるからこそ、各規制でのHEV排除が行われたこと。一方では、HEVが燃料節減や充電器設備投資が不要なる商品であることから使い勝手の良い電動車として認知を得ていることに他ならない。そういう日本のトップ2でも、いざEVの商品化を実現する段階では、トヨタもホンダもEVは個社のプライドをかけて発信して来るはずだ。
▽テスラの行方は?
・以上のように、量産技術を得意とする日米欧の自動車各社の姿勢は、現在テスラが抱える病とは無縁な状況下にある。 前述した世界のトップブランドメーカーがEVシフトに立ち向かうことで、テスラの行方にも大きな影響を及ぼすことは間違いないだろう。今回のAABC国際会議に参加していた日本人、部材メーカー、電池メーカー、調査会社、コンサル会社の知人達と筆者を含む8人は、会食会の場で今後のテスラの行方を占った。
・そもそも大量生産をしたことがないテスラが、一気に50万台規模の量産を具現化するのは困難で、数年の時間はかかるはず。「モデルS」のような尖った高級路線での存在感はそれなりにあるが、「モデル3」のような普及車カテゴリーでは、真っ向から世界の名だたる自動車各社のEVと直接比較される。そこではテスラの選択肢や存在感は大きなものではなく、むしろトップブランドのEVの方が安全性や信頼性で消費者の関心を惹くだろうと。
・そして、現在の生産地獄が長引けば長引くほどキャッシュフローの改善は見込めず、経営はもっと窮地に陥るはず。シナリオとしてありうるのは、17年春にGMの時価総額を超えたテスラだけに、それを武器に中国企業に売却することだ。生産地獄から逃れる短絡的な解決方法の手段のひとつのような気がする。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/246040/020600068/?P=1

第三に、ジャーナリストの桃田健史氏が2月15日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿しら「ベンツ・BMW・VWも本音では「EV本格普及はいまだ不透明」と見る」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽7年ぶりに再びEVバブル到来 再度注目が集まるAABC
・EVシフトについて、ブームの仕掛け人であるジャーマン3(ダイムラー・BMW・フォルクスワーゲングループ〈以下VW〉)の関係者すら「EV本格普及についてはいまだに不透明」という見解を示したことに、日本人関係者の多くが驚いた。 EV用の車載電池の国際カンファレンス、AABCヨーロッパ(2017年1月29日~2月1日、 於・独マインツ)での出来事だ。
・AABCとは、アドバンスド・オートモービル・バッテリー・カンファレンスの略称で、自動車メーカー、自動車部品メーカー、化学メーカー、コンサルティング企業、そして学術関係者など、自動車に搭載する次世代電池に関する研究や市場調査について発表を行う場だ。AABCはもともとアメリカで始まり、欧州やアジアでも開催されており、この分野の世界の最新情報が収集できる場として、産業界で高い評価を得ている。
・筆者は2000年代中盤から世界各地で開催されるAABCを定常的に取材しており、2010年前後の第四次EVブームの際、AABC自体の参加者数もスポンサー数も急増するという「EVバブル」を実体験した。 そんなAABCに再び、脚光が当たっている。 背景にあるのは、VWがディーゼル不正によって世間から食らったネガティブな企業イメージから、V字回復を狙って策定した新規事業計画から派生した、世界各地での「EVシフト」というトレンドである。
▽欧州委員会の新発表あるも…欧州でのEV普及はいまだに不透明
・欧州のEVシフトの構図について筆者の見立ては、VWが仕掛けて、そこにダイムラーがすぐに相乗りし、その流れをBMWが追い、独自動車部品大手のボッシュとコンチネンタルがサイドサポートに回った、というもの。 そうした独企業のマーケティング戦略とほぼ同時に、英国とフランス両国の国内政治の案件として、環境問題の観点から自動車に焦点が当たり、「2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売禁止を目指す」といった「目標値」を公表した。
・さらに、インドでも「2030年までに国内販売車のすべてをEVとする」との野心的な草案が公表された。本件についてはその後、政権内での意見の相違から事態は変化している。詳細については2月中にインド国内での取材を進め、本連載でも情報公開する予定だ。
・こうした、2016~2017年中盤までのEVシフトの流れに、新たなる動きが加わった。EC(欧州委員会)が2017年11月8日、域内で販売される車両に対するCO2規制値を、2030年に2021年比で30%減とする案を示したのだ。
・自動車メーカー各社の技術開発者は、これまで「世界で最も厳しい排気ガス規制は欧州だ」と口を揃えてきた。具体的には、2021年までにCO2レベルが1kmあたり95gだ。これをクリアするためには、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車など、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンにモーターを加えた電動化が必然だと考えられている。ただし、モーターのみで走行するEVについては「EVがなくても、95g規制は乗り切れる」と見る自動車メーカーがほとんどだった。
・それが今回、2030年までに2021年比の30%減という数字がECから出てきたため、「EVの強化の可能性も考慮するべきか?」という空気に変わってきている。 繰り返すが、あくまでも「考慮するべきか?」という段階だ。 なぜならば、ECは今のところ、中国のNEV法(新エネルギー車規制法)や米カリフォルニア州のZEV法(ゼロエミッション車規制法)のように、事実上のEV販売台数規制を考えてはいないからだ。
▽当面の主戦場は中国市場 政策主導で動き、消費者は不在
・そのため、今回のAABCヨーロッパでも、話題がEVに限定されると「中国ありき」という議論になった。 台湾の工業技術研究院の発表によると、2017年の中国EV販売総数は、前年比53.5%増の77万7338台となった。これは2017年の世界EV市場140万台の半数以上を占める。また、2018年には中国EV販売総数は100万台に達する可能性が高く、さらに中国政府は2020年に500万台を目標として掲げている。
・NEV法では、2019年に市場のうち10%、2020年には12%との規制値を設けており、NEVが起爆剤となってEV販売台数における「中国ひとり勝ち」がほぼ確定している状況だ。 もう一方のEV販売台数規制であるZEV法については、ホンダのアメリカ法人の発表にあったように、トランプ政権になってからEVを含む次世代車の普及について、連邦政府とカリフォルニア州が今後どのように擦りあわせをしていくのか「不透明な情勢」である。
・このように、EVについては、政策主導型での普及がいまだに“主役”であり、そこに自動車メーカーが「様子を見ながら、お付き合いする」といった格好だ。 つまり、「消費者不在」の状況が続く。 AABCヨーロッパでの4日間にわたる発表と議論、そしてアメリカ、ドイツ、フランス、ベルギー、スウェーデン、フィンランド、日本、インド、中国、韓国、台湾などからの参加者たちと個別に意見交換する中で、筆者は一抹の不安を感じた。  もし、中国がNEV法実施に失敗したら、再び世界EVバブルは崩壊するのかもしれない。 中国は2010年前後に実施した、公共交通機関を主体とした壮大なEV施策「十城千両」も、当初の普及台数目標に未達の地方都市が続出したことなどを理由に、なんの前触れもなく打ち切った過去がある。
・ジャーマン3が提唱するEVシフト。その動向、日本としてはしっかりと見守っていかなかればならない。
http://diamond.jp/articles/-/159754

第一の記事で、 マスク氏が、『自ら「生産地獄」と表現する現状について、「こんな経験は二度としたくない。(11月の)感謝祭の日ですら、ほかのテスラ社員と一緒にギガファクトリーにいた。週7日、みんながバケーションを楽しんでいるときもだ」とも漏らした』、というのは、いくらマスク氏といえども、量産の世界は思う通りにはいかないようだ。
第二の記事で、 『納車先は社員または会社関係者にのみだったという』、というのは、まだ品質に自信がないためなのかも知れない。  『そもそも大量生産をしたことがないテスラが、一気に50万台規模の量産を具現化するのは困難で、数年の時間はかかるはず』、と量産の壁は予想以上に高いようだ。 『シナリオとしてありうるのは、17年春にGMの時価総額を超えたテスラだけに、それを武器に中国企業に売却することだ。生産地獄から逃れる短絡的な解決方法の手段のひとつのような気がする』、とのアドバイスは、いざ売ろうとしたら、GMの時価総額を超えたことなど吹き飛んで、厳しく買い叩かれることになるので、そう簡単ではなさそうだ。
第三の記事で、 『当面の主戦場は中国市場 政策主導で動き、消費者は不在』、しかし、 『中国は2010年前後に実施した、公共交通機関を主体とした壮大なEV施策「十城千両」も、当初の普及台数目標に未達の地方都市が続出したことなどを理由に、なんの前触れもなく打ち切った過去がある』、というのでは、 『自動車メーカーが「様子を見ながら、お付き合いする」といった格好』、なのも無理からぬところだ。
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人工知能(AI)(その4)(AIの発達をこのまま市場に任せてよいのか 人類にとって「憂鬱な未来」か「豊かな未来」か、静かに広がる「アンチ深層学習」「アンチAI」 ブラックボックス化を警戒、フェイスブックのAIがぶち当たった「限界」 最先端でも子どもの学習能力には勝てない) [科学技術]

人工知能(AI)については、昨年7月1日に取上げた。今日は、(その4)(AIの発達をこのまま市場に任せてよいのか 人類にとって「憂鬱な未来」か「豊かな未来」か、静かに広がる「アンチ深層学習」「アンチAI」 ブラックボックス化を警戒、フェイスブックのAIがぶち当たった「限界」 最先端でも子どもの学習能力には勝てない)である。

先ずは、ニッセイ基礎研究所 専務理事の櫨 浩一氏が昨年11月29日付け東洋経済オンラインに寄稿した「AIの発達をこのまま市場に任せてよいのか 人類にとって「憂鬱な未来」か「豊かな未来」か」を紹介しゆ(▽は小見出し)。
・日本経済は人手不足の様相を強めている。失業率は2017年9月には2.8%に低下し、特に有効求人倍率は1.52倍と、バブル期のピークだった1990年7月の1.46倍をも超える高さだ。団塊世代が65歳を超えた2012〜2014年以降も、毎年150万人を超える人が65歳を迎えて年金生活に入っていくのに対して、15歳を迎える人口は120万人に満たず、毎年30万人以上ずつ生産年齢人口が減少していく。今後も高齢化による労働力の減少が続き、高齢者や女性の労働参加を考慮しても、しばらくの間は労働需給がさらにひっ迫するだろう。
・しかしもっと先を考えると、AI(人工知能)の進歩で機械が人間の行ってきた仕事を担うようになるという動きが加速し、人間の仕事はなくなっていき、世界的に労働力過剰という事態が出現する可能性がある。 『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか~労働力余剰と人類の富』(東洋経済新報社、2017)で、著者のライアン・エイヴェントは、コンピュータは蒸気機関や電気と同様の汎用技術でとてつもない力を持ったものであることや、デジタル革命は人類に多大な恩恵をもたらすので後戻りできない流れであることを指摘し、社会が直面する課題を論じている。以下ではこの議論を参考に影響を考えてみたい。
▽AIの発達で拡大していく格差
・AIが発達していけば、最終的には人間がまったく働かなくても社会全体としては有り余るほど豊富な生産物が供給できるというSF小説に出てくるような世界が実現する可能性がある。 どんなものでも価格は需給で決まるというのが経済学の「キホンのき」であり、空気のように必要不可欠であっても希少性のないものの価格はゼロか極めて低価格だ。英国の経済学者ライオネル・ロビンズは、経済学を希少資源の最適な使用についての学問だと定義したが、誰もが欲しいものを欲しいだけ入手できるようになる世界では経済学は無用になるのだろう。
・しかし、MIT教授の物理学者であるテグマークの "Life 3.0: Being Human in the Age of Artificial Intelligence"(Max Tegmark, Knopf Doubleday Publishing Group, 2017)によれば、そもそもこの夢のような状況が実現可能かどうかや、それまでにどれくらいの時間がかかるのかについては、専門家の間でもコンセンサスはないという。
・少なくとも短期間で実現するとは考えにくく、まだ何十年かの間は、生活を支えるすべてのものは、価格が低下していくものの有料である。必要なものを手に入れるためには、人々は何とかして所得を得る必要があるという状態が続くとの前提で将来を考えるのが無難だ。ところが、AIが発達していくことで機械に仕事を奪われ、所得が得られなくなる人が多数生まれてしまうおそれがある。
・デジタル革命は、社会に非常に大きな利益をもたらすが、プラスの面ばかりではない。 たとえば、シェアリング・エコノミーの拡大によって、多くの人がフリーランスとして、あちこちから単発の仕事を請け負って生計を立てるという選択肢を持つようになったことだ。 会社に所属して規則に縛られて働かなくても、自分が働きたいときだけ働くということが可能になったが、その反面、米国ではこれまでのフルタイムの仕事では、普通の生活をするために十分な仕事量と収入が得られないケースが増えてきている。
・Uberの登場でお客を奪われたタクシー運転手の所得は大きく下がったはずだ。所得の減少を補うためにやむを得ず副業に従事する人が増えており、必ずしも積極的にフリーランスの仕事を選んでいるわけではない。そもそも遠からず自動運転の技術は確立すると見られており、Uberで運転手として自分の都合に合わせて働いて収入を得ている多くの人も、仕事と収入の道を失うことになるだろう。
▽「高等教育で高所得が得られる」は楽観的すぎる
・18世紀半ばに産業革命が起こったときには、織物の職人などが仕事を失ったが、こうした人たちは数のうえでは全体からみればごく一部に過ぎず、農業を離れて工場で機械を操作する職を得て所得が高まった人のほうがはるかに多かった。生産物の供給が増えて価格が低下し、多くの人が購入できるようになったこともあって、社会の平均的な生活水準は大きく高まった。
・近年では、製造業で自動化が進むことで中程度のスキルの仕事が消えたため、職を失って低所得のサービス業の仕事しか見つからない人が増えた。一方で、ITを活用できる人たちの生産性は大きく上昇した。コンピューターや専門・技術的職業を持つ人たちの収入が上昇して所得格差が拡大しているため、高等教育への進学率を高めることが問題の解決策として提言されることが多い。
・しかし、米国では既に大学卒の給与水準は頭打ちとなっていて、高い賃金が得られるのはさらに高度な教育を受けた大学院卒で、修士号や博士号を持つ人たちに限られている。日本では高等教育機関(大学以上)への進学率は50%を超えているが、必ずしもそれに相応しい能力を身に付けていないということが問題とされることがある。誰でも一定の努力をすれば、高度な知識・能力を活用できるようになり、高い所得が得られると考えるのは楽観的に過ぎるのではないか。
・AIが進化して行けば、現在はAIで代替することは難しいとされている仕事に就いている人たちも安泰ではなくなる。少し昔にはコンピューターが囲碁で人間に勝つようになるのはまだ先のことだと考えられていたが、今や世界最強といわれる棋士でもコンピュータにはまったく歯が立たない。人間が必要な分野はどんどん縮小していくだろう。
・AIによる自動化が図られるのは、それが容易な分野だけでなく経済的な利益が大きい分野も、である。企業にとっては、高賃金の仕事ほど機械で置き換えるメリットが大きい。低賃金で機械化の利益が小さいところや、雑多な作業で対応が難しいものが人間が行う仕事として残され、生活を支えるために多くの人がこうした仕事を得ようとして争うことになる恐れが大きい。
▽ベーシックインカムは解決策にならない
・デジタルエコノミーの拡大で生まれる失業者を救済するために、「すべての国民に、生活に必要な最低限の所得を給付する」というベーシックインカムの制度を設けるべきだという人もいある。これについて、エイヴェントは最低賃金の引き上げよりは有望だとしている。しかし、職を失っても生活が保障されるという意味では朗報だが、あくまで最低限度のセイフティーネットに過ぎない。一部の人が現在は想像できないような豊かさを享受する一方で、多くの人の生活水準は大幅に低下してしまうという著しい格差が生まれることを防ぐことはできないのである。
・AIを活用した研究開発が一部の人たちの生活水準を高めることに集中すれば、一部の人だけが豊かになり、多くの人たちの生活水準は大して向上しないということも起こるだろう。老化や癌などを克服するための研究にAIやさまざまな資源を集中的に投じれば、人間の寿命を大きくを延ばすことができ、今の時点では信じられないほど長寿となる可能性もある。
・しかし、こうして開発された先進的な医療技術は著しく高額で、ベーシックインカムに依存して生活する多くの人たちはまったく手が届かないに違いない。例えば、現在免疫細胞を遺伝的に加工して癌に対する攻撃力を高めるという治療方法は驚異的な治療成績を収めているが、1回の治療に5000万円以上もかかると日経新聞は報じている(日本経済新聞夕刊、11月14日付)。
・そもそも資源・エネルギーの制約があるので、誰でも欲しいものが何でも欲しいだけタダで手に入るという世界は永久に実現しないのかも知れない。ピケティの『21世紀の資本』(みすず書房、2014)が警鐘を鳴らしたように、AIやこれを使った生産設備を保有している人たちとそれ以外の人たちという資産格差が、所得や寿命などの格差を拡大再生産していってしまうおそれもある。
・長期停滞の背景には富の一極集中があるとエイヴェントは指摘する。確かに、20世紀半ばに工業化が進む中で格差が縮小したのは、経済的な必然の結果ではなくソ連などの計画経済国家という脅威の存在や、大恐慌の影響でさまざまな制度の変革が行われたことも大きな要因だったと考えられる。
▽「神の見えざる手」に任せておけば?
・AIが人間の能力を超えていけば、生産を行うためにはどうしても人間が必要だという前提が崩れ、労働者は生産性(厳密には限界生産性)に等しい賃金を得るとか、生産の中から労働者が受け取る割合である労働分配率はほぼ一定であるとかいう世界ではなくなってしまうはずだ。「正統派経済学の終焉」という主張が、現実のものとなるかも知れない。
・ノースウエスタン大のゴードン教授など技術進歩の速度低下を指摘する声は多いが、むしろ社会変化の速度は速くなっているように見える。親の経験は子供たちが将来を考えるにはまったく役に立たず、制度や人々の生活スタイルや考え方、行動が社会変化について行けないほどだ。
・テグマークの言うように、AIの発展を未来の社会にとって良いものにするためには、これをどう受け止めるのかという議論が必要だ。デジタルエコノミーの発展は人類に想像できないような豊かさをもたらすことができるはずだが、それは神の見えざる手に任せておけば自然に実現するというものではないだろう。
http://toyokeizai.net/articles/-/199055

次に、昨年12月25日付け日経ビジネスオンライン「静かに広がる「アンチ深層学習」「アンチAI」 ブラックボックス化を警戒」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・「うちのシステムにAI(人工知能)という言い方は使っていません。書き方に気をつけてくださいね」 記者は最近、感情の分析、翻訳、セキュリティーなどの課題に挑むAIに関して取材に当たっていた。その際時折、このような注意を広報担当者から受けたのだ。
・過去にはAIの研究者が冷遇される時代があり、自身ではAIを研究しているつもりでも、研究費を得るために「ロボット」などに看板を架け替えていたことがあった。しかし、空前のAIブームに沸く現在において、同じ現象が起き始めているのだ。
▽バズワードになったAIと深層学習
・その理由のひとつは、AIという言葉が、意味が不明瞭のまま使われる「バズワード」と化し、猫も杓子もなんにでも使われていることへの反感ではなかろうかと思う。自省をこめていえば、これは我々報道機関に責任がある。
・AIの定義は学術的にはっきりとは決まっていないそうだ。手元にある辞書の説明では、ヒトの知的機能を代行できるシステムを指す。では、たとえば1人プレイモードがある将棋や麻雀のゲームアプリはAIだろうか。これはAIでないという意見を持つ人でも、米グーグル持ち株会社、アルファベット傘下の英ディープマインドが手掛ける「アルファ碁」ならAIと呼ぶことに違和感がないかもしれない。両者の大きな違いは、システムが賢くなるための学習機能を備えているかどうかだ。あるいは、アルファ碁ですらAIではなく、すべての機能においてヒトと変わらない能力を持って初めてAIと呼ぶにふさわしいと思う人もいるかもしれない。
・最近の報道はこんな定義を気にもせず、AIと一口に書くだけでその技術的背景や企業間の違いも詳述しない。AIという見出しだけが躍る。そんな報道ばかりでは、開発側も嫌気が差すのではなかろうか。グーグルがAIのフレームワークを公開していることで、簡単なAIならだれもかれもつくれる時代だ。ただただAIと表現されるだけでは、製品の特徴が分からず陳腐にさえ見えることもある。
・そして、推測しうるもうひとつの理由が、「ディープラーニング(深層学習)」への反感。正確に言えば、同じくバズワードと化した「深層学習」という言葉への反感だ。ヒトの脳神経の機能を模した深層学習技術は、アルファ碁をプロ棋士を超える強さに育て上げたことで、報道に頻出するようになった。昨今のAIといえば、深層学習を使うのがスタンダードになっている。しかし、現在のAIブームを巻き起こしたこの深層学習を、ある点ではネガティブな意味に一部の企業は捉えているのだ。ゆえに、深層学習を連想させるAIというバズワードも使いたがらないのではないだろうか。
・深層学習以前のAIは、AIが正解を導くための判断材料の見つけ方や、材料をもとにした判断プロセスを、ある程度ヒトがプログラミングしていた。深層学習は判断材料を探すところからすべてAIに任せている。 たとえば動物の画像をみて、それが猫かどうか判断する課題にAIが挑んだ場合、旧来のAIはあらかじめヒトが「ヒゲに注目しろ」「目に注目しろ」「耳に注目しろ」などとプログラミングをしておく。深層学習AIの場合は、あらかじめ猫の画像を大量に読み込んでおけば、注目するべきポイントを自ら見つけてくるのだ。
・しかし、これは裏を返せば、開発者がAIの判断を検証することが難しいということでもある。翻訳向けに深層学習AIを開発しているある技術者は「変な訳が出てきても、なぜそうなったのかがわからない。微調整ができないのが最大の課題だ」と語る。
・実際、今の深層学習AIの導入事例を見渡してみても、間違えを出しても説明責任を求められない課題ばかりだ。そうなると、例えばセキュリティーの課題に導入するのはハードルがある。 
▽深層学習はブラックボックス
・例えば、深層学習AIを積んだ手荷物チェック用のX線検査機を開発した日立製作所も、用途は旧来得意としていた空港向けではなく、チェック効率がより重視されるイベント向けだという。また、このAIは危険な手荷物に対して警告を鳴らす仕組みではない。「絶対安全」と判断できるものにだけOKを出し、ちょっとでも不審な点があれば、検査員にチェックを促す。検査の効率は40%ほど向上するが、安全を追及するためにはヒトが最終関門を担わなければいけない。
・警備用カメラをチェックして自動で不審者を捜し出すAIの実用化に挑んでいるセコムは、よりはっきり深層学習への懸念を示している。セコムIS研究所の目崎祐史所長は「深層学習にすべて任せると、ブラックボックスになってしまう」と語る。
・深層学習も利用はしている。しかし、画像からヒトの顔の部分を抜き出すなど、一般的に用いられていて信頼性が確立された課題のみに使う。つまり、深層学習AIは不審者を割り出すための判断材料を映像から抜き出すためのパーツに過ぎない。その材料からどう正解を導くかの判断プロセスは、ベテラン警備員の経験知をコンピューター言語にすることでAIに組み込んでいる。敢えて旧来型の手法でAIの判断プロセスを構築しているのだ。
・また、深層学習だけに頼れば、AIの成長に使うデータ量の競争に陥りがちだ。多くのデータ量を読み込むほど深層学習AIは賢くなるからだ。しかし、データの扱いを一つ誤ると、ICカードのデータを外部提供して批判を浴びたJR東日本のように、手痛いしっぺ返しをくらう。
・セコムの場合、AIの成長に使うデータは、エキストラが不審者のふりなどをする映像だけだ。実際の監視カメラの映像は含まれていない。国内では監視カメラ映像のような機微な情報を集めるのが難しい以上、ヒトが判断プロセスを書き込む旧来の方式と深層学習をハイブリッドで使う方法は有用だと記者は考える。
・もちろん深層学習そのものは非常に有効な技術だ。先に挙げた弱点を補い、深層学習AIを進化させようという研究も盛んだ。 富士通やNECが開発しているのが「ホワイトボックス化」と呼ばれる技術。深層学習AIの判断材料や判断プロセスを解析して可視化しようという試みだ。
・もう一つが「GAN(ガン=敵対的生成ネットワーク)」。2つのAIを競い合わせることで成長させる技術だ。片方のAIは、相手のAIがいかにも間違えそうな「意地悪問題」を出して成長を促す。AIがAIを成長させるためのデータを自動で生成するので、データ量を追い求める競争から脱却できる可能性を秘めている。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/221102/122100550/?P=1

第三に、1月24日付け東洋経済オンライン「フェイスブックのAIがぶち当たった「限界」 最先端でも子どもの学習能力には勝てない」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aはルブリュン氏の回答、+は回答内の段落)。
・各国の大企業がこぞって独自開発し、活用に乗り出すAI(人工知能)。日々、膨大な量の写真や動画が投稿されるフェイスブックも、プラットフォーム全体の健全性を維持するのにAIをフル活用しているほか、すぐにはビジネスに結び付かないような先端研究にも力を注ぐ。
・今のAIには何ができて、何ができないのか。AIはこの先、どう進化するのか。同社の学術的研究を担うチーム「Facebook AI Research(フェイスブック人工知能研究所)」のエンジニアリング・マネージャー、アレクサンドル・ルブリュン氏に最前線の研究について聞いた。
▽100億枚から不適切な写真をAIが監視
Q:フェイスブックのサービス上では、AIはどのように使われていますか。
A:フェイスブックには、1日約100億枚の写真が投稿されている。そのすべてを人間の目でチェックするのは不可能なので、ここでAIが活躍する。具体的には、タイムラインやメッセンジャーに写真が投稿されると、これは一般に見せていいものか、たとえば暴力的だったり、性的だったりしないかを瞬時に判断する。好ましくない写真をアップしようとしている人は絶えず存在しているので、まずはそれをはじくのがAIの重要な仕事だ。
+もう一つの役割は、AIで写真の内容をより深く理解し、誰が「いいね!」するかを判断すること。たとえばネコ好きの人には、ネコが写っているとAIが認識したものを優先的に見せようとする。一方で友人の赤ちゃんの写真を見飽きている人には、赤ちゃんの写真を見せる頻度を下げようとする。コンテンツの中身を理解して、それを楽しめる人とのマッチングを図っているわけだ。
+写真だけでなく、テキスト、動画、VR(仮想現実)でも何でも、コンテンツの内容をより深く理解しなければ、ユーザーにとってよいセレクションをするのは難しい。特に写真や動画に関しては、テキストと違った難しさがある。どのユーザーに見せるべきか、誰に好まれるコンテンツか、という判断を的確にできるよう、研究を進めている。 それ以外にも、視覚障害がある人のためにAIで写真の内容を把握して音声で説明したり、テロ行為や自殺願望をほのめかすような写真・動画投稿を検知して迅速に対応したりと、あらゆる面でAIを活用している。
Q:さまざまなITサービスの中でも、フェイスブックのようなSNSはAIと親和性が高い分野ですか。
A:フェイスブックに限らず、今日のSNSはどれもAIなしでは存在しえない。なぜなら表示するコンテンツを高度に選択しないと、ノイズが多すぎるからだ。いかがわしいもの、不適切なものを機械的にフィルターにかける機能がない状態では、あっという間に危険なプラットフォームになってしまう。今のソーシャルメディアの規模を考えればなおさらだ。
+残念なことに、悪いことをしようとする人々も、AIの目をどうにかすり抜けようと頭を使って新しい手法を編み出している。10年前には、(テキストの)キーワードを含むものを抽出して不適切性を判断していればよかったが、今はそれだけではまったく不十分。ソーシャルメディアの未来は、質のよい、高精度なAIなくしてはありえないといえる。
▽AIはまだまだ”インテリ”ではない
Q:今のAIの改善点、限界はどこにあるのでしょう?
A:アーティフィシャルインテリジェント(AI)と言われる割に、まだそんなに“インテリ”ではない点だ。今、機械学習は「教師あり学習」という手法が主流だが、膨大な量の例をAIに見せて学ばせる必要がある。たとえば、AIが温度のセ氏からカ氏への変換をできるようにするには、200~300の事例を読み込ませる。AIが「これはネコの写真だ」と認識するには、少なくとも1万枚程度のネコの写真を見せる必要がある。
+人間の子どもならどうか。たとえば、ネコという動物を認識させたい場合、せいぜい5回くらいネコに遭遇すれば、「これがネコだ」という認識が生まれる。熱湯に指を突っ込んでやけどをしてしまったら、一度だけでその先ずっと覚えていると思う。AIは、最先端のものでも何千回と同じ経験をしなければうまく認識できない。
+実はAIの教師あり学習という手法は、1980年代から30年くらい行われている。その間、裏側のアルゴリズムはほとんど変わっていなくて、やっと(収集できる)データの量とPCの計算能力が十分な水準に達し、機能し始めたのがここ5年だ。それと同時に専門家の間では、教師ありの機械学習は数年内に一定のポイントに到達できるという自信が生まれている。限界地点が見えてきた、ともいえる。
+アウトプットの種類を考えても、教師あり学習には限界がある。不適切な写真をはじく、英語から日本語に翻訳する、交通規制通りに自動運転をする、チェスの試合をする、といった、ある程度シンプルなタスクの場合はうまく機能する。でも、感情豊かに人と対話したり、もっと深い推論を行ったりする能力は、今の教師あり学習の延長上にはないまったく新しい分野になる。
Q:「教師なし」の機械学習はどのくらい研究が進んできたのでしょうか。
A:まだ始まったばかりで、最適な解決策の糸口を探している段階だ。その中で一つ、私たちが進めているのが、子ども、乳幼児を生物学的に深く研究し、そこからインスピレーションを得ようという試み。彼らの学び方を観察して、それを機械の学び方に生かせないかという考え方だ。
+子どもは本当にすごい。1日10時間起きているとすれば、そのうち95%は「教師なし学習」の時間。つまり、「これはペンだよ」「これはリンゴだよ」と教え込む作業をしていないにもかかわらず、自分で見て、聞いて、遊んで、探検して、学んでいる。ほんの少量のデータで、一気に賢くなる。われわれの最先端のAIよりはるかに頭がいい。
▽会社が違っても研究コミュニティは一緒
Q:子どもの学び方にヒントを得ようとするのは、AI研究の共通的なアプローチなのでしょうか。
A:研究者のコミュニティはある種の”家族”のようなもので、所属がフェイスブックだろうがグーグルだろうがIBMだろうが、あまり関係がない。皆が同じカンファレンスに出て、とてもオープンな環境で研究しており、この会社だからこの方向性、というものもない。自由度の高い、ボトムアップの世界だ。
+私自身が所属しているAI研究チームも、もっぱら学術的な研究開発を行い、すべての活動をオープンにしている。私たちの第一の目的はフェイスブックの事業を助けることではなく、あくまで最先端のAI技術を追い求めることだ。もちろん、それが時としてフェイスブックのビジネスに直接役立つことはあるが。
+特に教師なし学習の研究は、これから非常に長期戦になるだろう。10年間研究し続けても結果が出るかわからないというレベル。そういう類の研究に投資し続けられる企業はあまり多くないが、長期的かつ抽象的な研究が科学の発展のためには重要だ。
Q:最近では音声アシスタントやスマートスピーカーが盛り上がっていますが、非ディスプレー型製品が普及した先に、フェイスブックはどのような姿になっているでしょう?
A:構図として、(テキストや写真などの)ビジュアルに相対する概念としての音声、という形にはならず、相互補完的になっていくのではないか。たとえば、オープンスペースで仕事をしているときや、すごく複雑で体系的な情報を取得しようとしているときには、テキストや写真、表などのほうが適している。でも運転中や料理の途中にちょっとしたニュースを聞くときなら、音声のほうがいい。どちらか一方ではなく、組み合わせて使うことで便利さが増していく。
+その流れの中で、フェイスブックをはじめとするSNSの使い方に何らか変化が生じてくるのは明らか。スクリーンを見て使う、というだけではなく、聴覚的な情報や付加価値がより重要度を増す可能性はある。一方で、友達と楽しい出来事をシェアしたり、一緒に何かを体感したりといったコンセプトは変わらないはずだ
http://toyokeizai.net/articles/-/205816

第一の記事で、 『AIによる自動化が図られるのは、それが容易な分野だけでなく経済的な利益が大きい分野も、である。企業にとっては、高賃金の仕事ほど機械で置き換えるメリットが大きい。低賃金で機械化の利益が小さいところや、雑多な作業で対応が難しいものが人間が行う仕事として残され、生活を支えるために多くの人がこうした仕事を得ようとして争うことになる恐れが大きい』、他方で 対応策として検討されている 『ベーシックインカムの制度・・・職を失っても生活が保障されるという意味では朗報だが、あくまで最低限度のセイフティーネットに過ぎない。一部の人が現在は想像できないような豊かさを享受する一方で、多くの人の生活水準は大幅に低下してしまうという著しい格差が生まれることを防ぐことはできないのである』、 『デジタルエコノミーの発展は人類に想像できないような豊かさをもたらすことができるはずだが、それは神の見えざる手に任せておけば自然に実現するというものではないだろう』、市場原理に委ねないとしたら、一体どういうことになるのだろうか。
第二の記事で、 『「深層学習にすべて任せると、ブラックボックスになってしまう」』、この弱点をカバーするため、 『「ホワイトボックス化」と呼ばれる技術。深層学習AIの判断材料や判断プロセスを解析して可視化しようという試みだ』、 『もう一つが「GAN(ガン=敵対的生成ネットワーク)」。2つのAIを競い合わせることで成長させる技術だ』、第一の記事でみた社会的影響を度外視して純粋に技術面だけでみれば、大いに楽しみな技術だ。
第三の記事で、 『アーティフィシャルインテリジェント(AI)と言われる割に、まだそんなに“インテリ”ではない・・・AIが「これはネコの写真だ」と認識するには、少なくとも1万枚程度のネコの写真を見せる必要がある』、機械学習といってもやはり限界もあるようだ。 『子どもは本当にすごい。1日10時間起きているとすれば、そのうち95%は「教師なし学習」の時間。つまり、「これはペンだよ」「これはリンゴだよ」と教え込む作業をしていないにもかかわらず、自分で見て、聞いて、遊んで、探検して、学んでいる。ほんの少量のデータで、一気に賢くなる。われわれの最先端のAIよりはるかに頭がいい』、ということは、AIを過度に恐れる必要はないのかも知れない。
タグ:人工知能 東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン 櫨 浩一 (AI) その4)(AIの発達をこのまま市場に任せてよいのか 人類にとって「憂鬱な未来」か「豊かな未来」か、静かに広がる「アンチ深層学習」「アンチAI」 ブラックボックス化を警戒、フェイスブックのAIがぶち当たった「限界」 最先端でも子どもの学習能力には勝てない) 「AIの発達をこのまま市場に任せてよいのか 人類にとって「憂鬱な未来」か「豊かな未来」か」 『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか~労働力余剰と人類の富』 ライアン・エイヴェント AIの発達で拡大していく格差 ベーシックインカムは解決策にならない デジタルエコノミーの発展は人類に想像できないような豊かさをもたらすことができるはずだが、それは神の見えざる手に任せておけば自然に実現するというものではないだろう 「静かに広がる「アンチ深層学習」「アンチAI」 ブラックボックス化を警戒」 バズワードになったAIと深層学習 深層学習はブラックボックス ホワイトボックス化 GAN(ガン=敵対的生成ネットワーク 「フェイスブックのAIがぶち当たった「限界」 最先端でも子どもの学習能力には勝てない」 アレクサンドル・ルブリュン AIはまだまだ”インテリ”ではない
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鉄道(小田急線火災、「踏切非常ボタン」に潜むワナ、「豪華観光列車」料金があまりにも高額なワケ、鉄道「高速化競争」から欧州が離脱した理由) [科学技術]

今日は、鉄道(小田急線火災、「踏切非常ボタン」に潜むワナ、「豪華観光列車」料金があまりにも高額なワケ、鉄道「高速化競争」から欧州が離脱した理由)を取上げよう。

先ずは、作家の冷泉 彰彦氏が昨年9月13日付け東洋経済オンラインに寄稿した「小田急線火災、「踏切非常ボタン」に潜むワナ 検証が必要なのは鉄道側の対応だけではない」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・小田急小田原線の代々木八幡ー参宮橋間で9月10日、線路脇の建物で火災が起きているにも関わらず、現場の横に電車が8分間も停車した結果、車両に延焼し屋根が炎上したという事故が問題になっている。車両の一部が炎に晒されている状態で、約300名の乗客が線路に降りて避難するという事態になった。
▽消火活動には問題なかったか
・初期の報道は二転三転したが、だいぶ落ち着いてきたので整理してみよう。まず、なぜ延焼するような場所に停車したのかという最大の問題についてだ。小田急が把握している情報によれば、消防の依頼で警察が踏切の緊急警報ボタンを押し、電車が停止したという。
・消防が緊急停止を要請したのは、当初は電車が火災現場に接近するのを止めるための機転という見方もあったものの、後に出てきた現場証言に基づく報道によれば「線路方面から消火活動をしたいので、電車を止める必要があった」という理由だったようだ。 また、一旦動き始めた電車が火災現場の前に一部の車両が残っている時点で再度停止した問題については、消防がその場で停止して乗客を避難させるよう指示したということが、その指示の音声と共に報じられている。
・消防による消火活動は、一刻を争う中で瞬時の判断が必要な仕事だ。消防士自身が危険と隣り合わせというケースもある。それだけに、何から何まで規則に縛られるのではなく、消防士が臨機応変に判断し、場合によってはリスクを取ってでも消火、もしくは人命救助を行う必要がある職務である。
・それゆえ、消防の一挙手一投足を規則で縛ってしまい、人命救助のために必要な柔軟な判断が萎縮するようではいけない。だが、今回のケースは違うと思う。今回の事例を踏まえて、今後の事例に活かしていただきたい。
・今回の事故では小田急電鉄の対応にもっぱら注目が集まっているが、消防と警察の判断についても問題点の検証が必要だ。想定外といえるさまざまな原因が重なって起きた事故だが、いくつか問題がある。 まず、消防の依頼で警察が押したという踏切の緊急警報ボタンは、あくまで踏切内の危険を知らせるためのものである。たとえ警察や消防であっても「電車を止めるため」という目的以外での使用はやめるべきだ。
・なぜなら、現在のATS(自動列車停止装置)やATC(自動列車制御装置)、運転司令所による中央からの運行管理の体制は、「緊急警報ボタン」が押されると「押された踏切に障害があり、その手前で列車を停止されるべき」であるとして強制力を持つようになっているケースが多いからである。小田急によると、同社の場合はボタンが押された踏切に接近している上下線の電車が自動で停まるという。その結果、火災現場の横で電車が緊急停止するという事態が発生したわけだ。
▽消火のネックは「架線」
・また、本来は電車が停止したからといって即座に線路近くでの消火作業を行えるわけではない。線路のすぐ近くで消火活動を行うには、架線からの漏電や感電の事故を防止するための措置が行われるべきだからだ。 消火活動を行う前に小田急側に何らかの連絡があったかは、同社によると今のところ情報が入っていない。
・架線には、今回の区間であれば直流1500V、交流電化区間なら在来線でも2万Vという高圧電流が送電されている。万が一、通電した架線などの近くで消火活動をすることがあれば大変危険だ。もしも今回、送電の停止などについて鉄道側との連絡や確認を取る前に、電車を止めて線路付近で消火活動が始まっていたのであれば、危険な行為と言わざるを得ないだろう。
・さらに、一旦電車が動き出してから再度電車を停車させ、乗客を線路に下ろして避難させた経緯についても検証が必要だ。今回は運転士・車掌が車両への延焼に気づいておらず、消防隊の指摘を受けてから避難させている。 乗客を線路に下ろして避難させるというのは、鉄道事業者の判断事項である。もし架線が切れて垂れ下がっているようなことがあれば感電の危険があることはもちろん、乗客が線路を避難する区間について、反対方向の電車が走っていないかなどの安全確認が必要だからだ。
・小田急は、線路に乗客を降ろす場合は反対方向の電車が停まっていることなどの安全性を確認するため、司令と車掌などが連絡を取り合ってから行うという。乗客が線路に下りる際の安全が確保されていたかどうか、重ねての検証を求めたい。
・消防の消火活動、人命救助活動を規則で縛ることには、メリットとデメリットがあり、基本的には瞬時の柔軟な判断を尊重したい。だが今回の非常ボタンによる電車の停止から避難に至るまでの経緯については、鉄道の安全を維持するための大原則に照らして問題がある部分がなかったか、鉄道側だけでなく警察・消防側の行動についても検証が必要だと思う。
▽沿線火災対応の原則見直しを
・小田急電鉄の対応にも注文をつけたい。今回の事故では、運転士や車掌が車両への延焼を認識していなかった。たとえばカメラ映像などで周辺の状況を運転士が確認できる仕組みなどがあればすぐに状況把握ができたかもしれない。火災の状況がわかっていれば、現場の横で緊急停止した後も速やかに発車し、延焼を防げた可能性もある。司令所との交信体制が適切だったかといった点も含め、危機管理の面で鉄道側にも改善の必要な点は多数ある。 
・また、車両についても検証が必要だろう。今回の事故で燃えたのは、屋根に電気的な絶縁のために塗られているウレタン樹脂で、難燃剤を含む素材で燃えにくくなっているというが、不燃ではない。屋根の難燃性に関しては総合的な検討が必要だ。
・今回の事故は幸いにも大事には至らなかったが、これを教訓に、鉄道が絡んだ火災における消防の行動原理について原則の見直しをしてもらいたいと思う。同じ日にはJR中央緩行線の大久保駅付近でも線路際での火災が発生している。できるだけ速やかにガイドラインを整備するなどし、周知徹底を図っていただきたいと思う。
http://toyokeizai.net/articles/-/188384

次に、江戸川大学 社会学部現代社会学科 准教授の崎本 武志氏が昨年11月24日付け東洋経済オンラインに寄稿した「「豪華観光列車」料金があまりにも高額なワケ クルーズトレイン料金は「運賃」ではなかった」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・鉄道は主要交通機関の1つとして、旅客・貨物両面の輸送を担う大動脈としてのインフラ機能を有しているが、観光面でも重要な位置づけを担っている。特に近年は鉄道が注目されていることもあり、鉄道に乗車する行為そのものが目的化する、いわば「鉄道乗車そのものを観光行為とする」という利用が一般的にも認知されるようになっている。
・このように、鉄道に乗車する行為を目的とする「本源需要」としての鉄道利用のあり方は、これまでは鉄道ファンなど一部の層のみが味わう楽しみ方であったが、現在はれっきとした観光目的として確立されつつある。また、こうした観光客を目的とした列車である「観光列車」「観光車両」が各地で数多く登場し、人気を博している。
▽最近は「クルーズトレイン」が大人気
・もちろん、これらの観光列車や観光車両には近年登場したものばかりでなく、長い間活躍しているものも多く存在する。新型車両やリニューアルされた車両、レストラン列車やイベント列車、自然を楽しむトロッコ列車やかつて活躍した車両を復活させたSLなどのレトロ列車は各地で運転され、休日を中心に行楽客の人気の的となっている。
・中でも現在注目を集めているのが、「クルーズトレイン」と呼ばれる豪華列車である。クルーズトレインとは観光に目的を特化させた周遊型の豪華列車の総称だ。船舶でも数多くの寄港地での観光を楽しみながら船内での豪華な設備を誇るクルーズ船が高付加価値の観光旅行のジャンルとして確立され、日本でも定着している。海外ではヨーロッパで運行されている「オリエント急行」など数多くのクルーズトレインが存在するが、日本では2013年にJR九州で「ななつ星in九州」が運行されたのが最初だ。今年はJR東日本で「トランスイート四季島」、JR西日本で「トワイライトエクスプレス瑞風」が運行を開始し、国内外から申し込みが相次いでいる。
・ななつ星、四季島、瑞風は、どれも鉄道車両内において豪奢(ごうしゃ)なひとときを味わうことを目的としており、沿線観光地や有名ホテル・旅館にも立ち寄り、宿泊や食事を楽しむことができる「周遊型ツアー」として確立されている。しかし、その額は最も安価なものでも1泊2日で25万円と、かなり高額なものとなっている。
・ななつ星と四季島の3泊4日コースは、それぞれ1泊は沿線地域の豪華旅館の宿泊が加わっているのも大きな特徴だ。ななつ星では由布院温泉の「玉の湯」「亀の井別荘」、「四季島」では、登別温泉「滝乃家」といった、当代一流の旅館である(現在ななつ星は台風18号の影響で久大本線の一部区間不通のため、コース・宿泊地など内容が変更となっている)。瑞風では外部での宿泊はないものの、「菊乃井」村田吉弘氏の日本料理や「ハジメ」米田肇氏の西洋料理を堪能することができる。
・ここで、単純な疑問がある。クルーズトレインは、なぜこれだけ高価なのだろうか。本来の運賃・料金であれば、特別車両であったとしても、ここまでの値段設定は考えられない。
▽クルーズトレインは「募集型企画旅行」だった
・その理由は、豪華さはもちろんだが、クルーズトレインは、従来JRにおいて設定されている特急列車などの運賃・料金体系とはまったく別種類のものだからだ。つまりこの列車に乗車するための条件が「乗車券」「特急券」「寝台券」を購入することではなく、これらの運行そのものが不特定多数の旅行者の募集を行う旅行商品であり、乗車を希望する場合はこの旅行商品に申し込みを行う形をとる、ということなのだ。
・申込先としてそれぞれツアーデスクが開設されているが、ななつ星は「JR九州企画」、四季島は「びゅうトラベルサービス」、瑞風は「日本旅行」といったグループ内の旅行会社がツアーデスクを運営しているのだ。旅行業法では、このように、旅行会社があらかじめ旅行の行程・計画を作成し、パンフレットや広告などで参加者を募集して実施する旅行のことを「募集型企画旅行」と規定している。いわゆる、「パッケージツアー」と称されているものだ。
・旅行業には第1種・第2種・第3種の3つの種別があり、第1種旅行業は海外・国内の、第2種旅行業は国内の募集型企画旅行を企画・実施を行うことが可能であり(第3種は旅行業者が所属する市町村の近隣を対象とする募集型企画旅行の企画・実施のみ可能)、日本のクルーズトレインの場合は鉄道会社に第1種・第2種の旅行業登録があれば列車による旅行商品の企画・実施が可能となる。
・これらクルーズトレイン乗車の申込時は、旅行業約款である旅行条件書が交わされ、旅行業法に基づき募集型企画旅行に参加した、という形がとられる。行程の中で提供される各食事、各観光案内、各宿泊についても、すべて料金に含まれている。
▽単なる移動ではなく、旅程に従う
・このように、クルーズトレインは高付加価値旅行商品として販売されている。目的の有無にかかわらず列車に単純に乗車するのではなく、旅程に従って旅行商品としての企画に参加することが必要となる。 しかし、クルーズトレインが登場する前にも鉄道を使った旅行商品は存在した。新幹線や、かつてのブルートレインなどの寝台列車、各地の観光列車を活用した旅行商品が多数、造成・販売されてきた。
・こうしたクルーズトレインが日本に誕生するまでは、「ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス」や「氷河特急」など海外のクルーズトレインに乗車するパッケージツアーに参加するしかなかった。しかし、日本にもスイスに勝るとも劣らない車窓風景がある。
・これらを生かしたクルーズトレインは貴重な観光資源としての無限の可能性がある。世界各国から鉄道乗車を目的とした観光客を迎え入れることは重要だが、単に人数だけを追求するのではなく、文化的な価値の高いインバウンド振興を果たすべきだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/196908

第三に、 欧州鉄道フォトライター の橋爪 智之氏が昨年12月22日付け東洋経済オンラインに寄稿した「鉄道「高速化競争」から欧州が離脱した理由 「世界最速」の中国とは異なる事情がある」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・10月にイタリアのミラノで開催されたExpo Ferroviaria 2017(鉄道見本市)。2年に1回、ドイツのベルリンで開催される「イノトランス」と比較すればそれほど規模が大きいわけではないが、会場に隣接する車庫スペースを使って、ささやかながら実物の車両展示も行われるなど、主にイタリアの業界関係者へ向けた商談、および宣伝活動の場となっていた。
・今回、その見本市での車両展示で開催前から最も注目を集めていたのは、イタリアの民間高速列車会社NTV社の新型車両ETR675形、通称「イタロEVO」だ。もちろん、同社の看板列車である「イタロ」用の最新型で、初代車両ETR575形と同じフランスのアルストム社製だ。
▽初代よりも遅い新型車両
・しかし、この初代車両と2代目車両、同じ製造会社ながら車体構造が全く異なる。ETR575形は小田急ロマンスカー50000形VSEなどと同様、中間車は1つの台車で両側の車体を支える連接構造を採用しているのに対し、最新型のETR675形は、2つの台車で1つの車体を支える、通常のボギー構造を採用している。 そして、外見上よりさらに大きな違いは、最高速度が異なることだ。初代のETR575形は最高速度が時速300kmなのに対し、ETR675形は250km。なんと50kmも遅いのだ。そういえば、ドイツの最新型高速列車ICE4も、1世代前のICE3が最高速度320kmだったのに対して250kmへと抑えられている。
・鉄道先進国の最新型高速車両が、旧型より速度の面で劣っているとは、一体どういうことなのだろうか。  日本に新幹線が誕生してからすでに50年以上。この間に、世界各国では鉄道の最高速度向上のための研究が絶えず行われ、その技術は日進月歩で進化していった。特に、1990年にフランスの高速新線、LGV大西洋線が完成すると最高速度は時速300kmの時代へ突入し、欧州大陸を中心に高速新線の建設ラッシュとなった。
・21世紀に入ると、中国が高速鉄道建設を本格的にスタート。欧州や日本のメーカーから車両を輸入し、それを基にして多種多様な高速列車を次々と生み出してきた。事故が発生したことで一時は勢いを失っていたが、その後も建設の手を緩めることなく次々と路線を延長し、2017年現在で世界一となる、2万2000kmの高速新線網を有する高速列車大国へと成長した。現在は、世界最速の時速350km運転を実現している。
▽「技術力」の問題ではない
・一方、鉄道先進国であるはずの欧州や日本は2017年現在、最高速度は時速320km止まりで、あとから追いかけてきた中国の後塵を拝している。だが、これは技術的に欧州や日本が中国に追い越された、という意味と必ずしもイコールではない、という点に注意しなければならない。
・日本ではJR東海の新幹線955形試験車両が1996年に時速443kmを達成しており、技術的に新幹線のさらなる高速化ができない理由はないが、現在はリニア開発へ注力しているため、これ以上の速度向上は行わないと考えられる。欧州では、フランスのTGV試験車両V150が2007年に時速574.8kmという前人未到の世界記録を達成しており、現在もこの記録は破られていない。
・これらの速度試験は、日本では記録目的ではなく、高速運転時における安定性や耐久性など、総合的な性能向上を目的として行われている。一方のフランスは、表向きは速度記録への挑戦というスタンスだが、広義的にはその高速走行試験から得られる技術的データを営業列車へフィードバックすることを目的としている。
・だが、営業運転における恒常的なスピードアップとは、試験車両で記録を達成したらすぐに可能という単純な話ではなく、信号システムの変更や軌道強化といった地上設備の更新や騒音対策など、インフラの整備も行わなければならない。 そのためには多額の費用が必要となるが、仮に最高速度を300kmから350kmへ引き上げたとしても、350kmで走行できる区間が短ければ時間短縮効果はわずかとなり、費用対効果で考えれば無理に設備投資をしてスピードアップをする必要はないという結論に至る。
・JR東日本は2012年に発表した中長期経営計画の中で、東北新幹線における将来的な時速360km運転の実現を掲げていたが、すぐには実現へ向けて進まず、まずはE5系新幹線による320km運転からスタート。2017年7月になって、北海道新幹線が全線開業する2030年度までに車両開発や設備改良を進め、360kmでの運転を実現するとしている。
・日本と同様に比較的国土が狭く起伏のある欧州でも、時速300km以上の高速運転には意外と消極的だ。現在、欧州で最速の列車は、フランスの高速新線LGV東ヨーロッパ線で、東北新幹線と同じ最高時速320kmで運行されている。それ以上の速度に関して具体的な計画として挙がっているのは、イタリアの高速列車フレッチャロッサの360km運転があるだけで、欧州における高速列車のパイオニアであるフランスやドイツなどでは、その具体的な計画すらない。
▽「高速化より定時性が重要」
・その唯一の計画を掲げるイタリアは、最新型車両フレッチャロッサ・ミッレ(ETR400形)で速度向上試験を重ね、2016年2月にはイタリア国内最高速度記録の時速393.8kmを記録した。営業認可の取得には、試験走行で営業最高速度+10%の安定した走行が求められるため、営業速度360㎞を実現するためには、少なくとも396㎞を達成することが条件となる。しかし、393.8㎞を記録したところで走行試験は終了した。
・その後、イタリア鉄道(FS)のCEOマツォンチーニ氏は地元紙に対し、時速360km運転については最優先事項ではなく、当面は保留すると述べている。その理由は、利用客が求めるものは、最高速度向上によるわずかな時間短縮より、ダイヤ通りに走る定時性であるため、との見解を示している。
・イタリア国内は、トリノ―ミラノ―ボローニャ―フィレンツェ―ローマ―ナポリと、主要都市を南北に結ぶルートに高速新線が建設されているが、このうち時速360km運転を考慮して線路間隔や曲線が設計されている区間はトリノ―ミラノ間のみで、ほかの区間は線路の改良が必要となる。比較的新しいミラノ―ボローニャ間も、規格としては走行可能だが、土地収用問題があったモデナ付近に制限速度240㎞の急なカーブが存在し、現在もすべての列車がここでの減速を余儀なくされている。
・つまり、現状の設備では全区間で時速360km運転が可能なのはトリノ―ミラノ間だけということになる。同区間の距離はわずか142kmで、所要時間は現時点でも1時間を切っており、例え360km運転を実現したとしてもその短縮効果は数分程度。この区間だけでは費用対効果は薄いというわけだ。
▽なぜ「イタロ」新型は遅くなったか
・さて、かなり前置きが長くなったが、最初の話に戻ろう。フランスのアルストム社は、中~高速向け車両として、タイプの異なる3車種を用意している。有名なTGV、その派生形のAGV、そして「ペンドリーノ」だ。TGVは今さら説明するまでもなく、フランスの高速列車として、今も改良を重ねながら増備が進められている。
・AGVは、両端に機関車を配置した動力集中方式のTGVに対し、日本の電車と同じような動力分散方式を採用した車両で、最高時速300km以上の列車に使用するために開発された。これがイタロの初代車両、ETR575形のベースとなっている車両だ。「ペンドリーノ」は主に250㎞までの中速列車に使用するための車両で、元をたどればイタリアのフィアット社が開発した振り子式特急車両。同社がアルストム社に吸収されてからは、同社の製品ラインナップに加えられた。
・NTV社が今回発注した「イタロEVO」と呼ばれるETR675形はペンドリーノをベースにした車両だが、最高速度は時速250kmで振り子装置もない。「廉価バージョン」というとやや語弊があるが、つまり振り子装置が必要なほどの曲線区間もなく、最高速度で初代車両に多少劣っても、トータルの所要時間にさほど影響がないとNTV社が判断した、ということだ。
・契約価格については、初代のETR575形は25編成で6億5000万ユーロ、1編成当たり2600万ユーロであるのに対し、2代目のETR675形は8編成で4億3000万ユーロ、1編成当たりでは5750万ユーロ。一見すると新型は契約価格が倍以上にハネ上がっているが、これは20年間のメンテナンス費用を含んだ契約となっているためだ。ETR575形の契約にはメンテナンス費用が含まれていない。
・この数字だけではどちらがより経済的かは算出できないが、高速運転を続けていれば、各パーツの摩耗や耐久性の低下はより早く訪れる。ETR575形のメンテナンス費用がその都度発生すると仮定すると、十数年使い続けていけば莫大な金額としてのしかかってくる。
▽「高速化」から適切な速さへ
・NTV社とアルストム社の共通認識として、現在のイタリア都市間路線網においては、最高速度を50km程度落としたところで、所要時間の差は10分以内で収まるという試算がある。実際、イタロが運行されている区間のうち、フィレンツェ―ベネチア間やミラノ―ベネチア間はほとんどが最高速度200km程度の在来線を走るし、高速新線の開業年が古いフィレンツェ―ローマ間など、もともとの路線設計が最高速度250kmの区間もある。
・これらの区間を走る場合、ETR575形ではスペックを持て余すのは間違いない。新型車両を在来線が混在する区間などへ集中的に投入することで、所要時間を大幅にロスさせることなく、かつランニングコストも抑制することが可能となる。今回のイタロEVOの投入には、そんな意図が見え隠れしており、実際に同社は早くも11編成の追加発注を決定している。
・高速列車に夜行列車があるほど、圧倒的に国土が広大な中国は高速鉄道を建設するのに最適な環境が整っており、それが世界最速の時速350km運転へと繋がっている。他方で、高速列車のパイオニアである日本や欧州各国は、国土そのものが中国よりだいぶ狭く、決して環境が整っているとはいえない。現在の欧州各国鉄道の潮流は、さらなる高速化ではなく、より適切な速度による運行へと変化していっているのだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/200848

第一の記事で、 『小田急線火災』、については、 『今回の事故では小田急電鉄の対応にもっぱら注目が集まっているが、消防と警察の判断についても問題点の検証が必要』、というのは確かにその通りだ。そのためには、これらを全て包摂するような第三者委員会を設置すべきだが、そうした報道はまだない。国土交通省が音戸を取るべきだろう。
第二の記事で、 『クルーズトレインは「募集型企画旅行」だった』 というので、料金があまりにも高額なのは、 料金は「運賃」ではなく、参加代金、というので納得できた。それにしても、これだけ高額なのに、かなり先まで予約が詰まっているというのは、バブルというより、新たな旅行スタイルが受け入れられつつあるということなのだろう。
第三の記事で、 『鉄道先進国であるはずの欧州や日本は2017年現在、最高速度は時速320km止まりで、あとから追いかけてきた中国の後塵を拝している』、『 営業運転における恒常的なスピードアップとは、試験車両で記録を達成したらすぐに可能という単純な話ではなく、信号システムの変更や軌道強化といった地上設備の更新や騒音対策など、インフラの整備も行わなければならない。 そのためには多額の費用が必要となるが、仮に最高速度を300kmから350kmへ引き上げたとしても、350kmで走行できる区間が短ければ時間短縮効果はわずかとなり、費用対効果で考えれば無理に設備投資をしてスピードアップをする必要はないという結論に至る』、という欧州の判断は極めて合理的だ。記事を離れるが、東海道・山陽新幹線で博多発東京行きののぞみ34号の台車があと3センチで破断の恐れがあったのに、名古屋駅まで運行を続けたという初の重大インシデントは、重大事故と紙一重だっただけに、JR西日本などの気の緩みが深刻な段階にあることを物語っている。これも、本来は第三者委員会で徹底的な原因究明に当たってもらいたいものだ。
タグ:鉄道 東洋経済オンライン 氷河特急 ななつ星 瑞風 四季島 (小田急線火災、「踏切非常ボタン」に潜むワナ、「豪華観光列車」料金があまりにも高額なワケ、鉄道「高速化競争」から欧州が離脱した理由) 冷泉 彰彦 「小田急線火災、「踏切非常ボタン」に潜むワナ 検証が必要なのは鉄道側の対応だけではない」 消火活動には問題なかったか 消火のネックは「架線」 沿線火災対応の原則見直しを 崎本 武志 「「豪華観光列車」料金があまりにも高額なワケ クルーズトレイン料金は「運賃」ではなかった」 最近は「クルーズトレイン」が大人気 最も安価なものでも1泊2日で25万円と、かなり高額 クルーズトレインは「募集型企画旅行」だった 単なる移動ではなく、旅程に従う ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス インバウンド振興 橋爪 智之 「鉄道「高速化競争」から欧州が離脱した理由 「世界最速」の中国とは異なる事情がある」 イタリアの民間高速列車会社NTV社の新型車両ETR675形、通称「イタロEVO」 初代よりも遅い新型車両 鉄道先進国であるはずの欧州や日本は2017年現在、最高速度は時速320km止まりで、あとから追いかけてきた中国の後塵を拝している 営業運転における恒常的なスピードアップとは、試験車両で記録を達成したらすぐに可能という単純な話ではなく、信号システムの変更や軌道強化といった地上設備の更新や騒音対策など、インフラの整備も行わなければならない。 そのためには多額の費用が必要となるが、仮に最高速度を300kmから350kmへ引き上げたとしても、350kmで走行できる区間が短ければ時間短縮効果はわずかとなり、費用対効果で考えれば無理に設備投資をしてスピードアップをする必要はないという結論に至る 高速化より定時性が重要」 高速化」から適切な速さへ
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電気自動車(EV)(その3)(中国発のEV化で日本の自動車産業は電機の二の舞にならないか、クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する 独白ジェームズ・ダイソン、全固体電池の菅野教授が語る EVはこう進化する 次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか) [科学技術]

電気自動車(EV)については、昨年11月29日に取上げた。今日は、(その3)(中国発のEV化で日本の自動車産業は電機の二の舞にならないか、クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する 独白ジェームズ・ダイソン、全固体電池の菅野教授が語る EVはこう進化する 次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか)である。

先ずは、法政大学大学院教授の真壁昭夫氏が昨年12月12日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「中国発のEV化で日本の自動車産業は電機の二の舞にならないか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽世界でEVへの移行が進めば日本自動車メーカーの競争力はどうなる!?
・世界の自動車市場で、今後の“命運”を握る競争が進んでいる。それが、EV(電気自動車)の開発競争だ。その背景には、世界最大の自動車生産・販売国である中国や欧米諸国で、重要な環境対策としてEVを重視することが明確に打ち出されたことがある。 中国や欧米諸国、その他新興国でもEV化に向けた政策が議論され、自動車業界に参入する企業も増えている。この流れは、今後も続くだろう。
・一般的に、内燃機関を搭載した自動車に比べ、EVに使われる部品数は少ない。部品点数が減ると、自動車メーカーの競争力を支えてきた技術力が差別化の要因とはなりづらくなる。 また、EVへの移行のスピードもかなり速い。大規模にEV開発が進めば、供給圧力が高まり、価格に下落圧力がかかる可能性がある。また、IoT(モノのインターネット化)などに伴い、自動車は多くのセンサーを搭載し様々なデータを収集する“デバイス”としての役割を強くするだろう。
・これまで、多数の部品を微妙に“すりあわせ”しながら組み立てる技術で優位性を保ってきた、日本の自動車メーカーにとって、これまでと違った競争を強いられることが想定される。少数のユニット型部品を合わせるだけで完成品ができるデジタル家電の二の舞になることも懸念される。“日の丸”自動車メーカーにとって、EVは一種の鬼門になるかもしれない。
▽EVが主流になることで“すりあわせ”からユニット部品の組み立てへ
・一般的に、レシプロエンジン(燃料が生むエネルギーでピストンを動かす原動機)を搭載した自動車には、3~5万点の部品が必要だ。部品数が多いため、自動車産業のすそ野は広い。トヨタなどの完成車のメーカーをトップに、下請け、孫請けというように、業界内で重層的な取引関係が蓄積されてきた。
・部品が多い分、各パーツの調整が完成車の性能を左右する。走行時の振動、エンジンルームから車内に伝わるノイズなどをコントロールするためには、「経験と知識」の蓄積が欠かせない。高級車ともなればなおさらだ。それらの高い技術が参入障壁にもなった。
・ドイツ、日本の完成車メーカーが競争力を高めてきた理由は、一国内で高品質の自動車部品を生産し、それを“すりあわせ”して完成車を生産することに長けてきたからだ。それは、トヨタがハイブリッドシステムを開発、実用化するためにも不可欠だった。
・EV化は、この産業構造を一変させてしまうだろう。 なぜなら、EVに使われる部品は、内燃機関を搭載した自動車の6割程度で済むからだ。その分、すりあわせ技術への依存度は低下する。言い換えれば、自動車の生産は、“部品のすりあわせ”から、フレーム、バッテリーなどの“ユニット(部品の集合体)の組み立て”にシフトする可能性が高い。
・例えばスマートフォンの生産は、ユニットの組み立てによって成り立っている。アップルのiPhoneには日本製の部品が多く使われているが、それが組み立てられるのは中国にあるフォックスコンの工場だ。 同じことが自動車でも進もうとしている。
・見方を変えれば、部品ごとのバランスなどを調整し、付加価値を生み出すという既存の自動車メーカーが担ってきた役割は、さまざまな業界に溶け出していく可能性が高まっている。状況によっては、完成車メーカーは単なる“車体組み立て業”に変化することも考えられる。
▽異業態の新規参入とこれまでと違った競争の激化
・もっとも、世界の自動車メーカーがこの動きに対応しようとしている。 同時に、中国、インドなどでのEV需要を取り込もうと、他業種からの参入も増えている。EVの開発競争は激化するだろう。決断が遅れると「挽回が難しくなる」と、危機感を募らせる経営者は多い。
・それを印象づけた動きの一つが、日本電産がEVの駆動用モーターへの参入を決定したことだ。 同社は、フランスのPSAと組み量産を目指す。合弁を足掛かりにして、日本電産がEVの生産に取り組む可能性もある。世界最大の電子機器の受託製造サービス(EMS)企業である台湾のホンハイも、EV事業の強化を重視している。
・その他にも、自動車業界に参入する企業は増えている。英国ではダイソン、国内ではヤマダ電機が参入を決めた。鉱山業界からは、BHPビリトンがバッテリー向けの素材供給能力を増強しようとするなど、EV需要を取り込もうとする企業は急速に増えている。
・こうした動きをもとに将来の展開を考えると、かなりダイナミックに自動車業界の構図は書き換えられていくだろう。特に、アマゾンやグーグルが自社ブランドのEVを市場に投入すれば、かなりの社会的なインパクトがあるはずだ。 自動車は、交通状況や部品の稼働状況など、ありとあらゆるデータを収集するデバイスとしての性格を強くしている。オンラインのネットワークと自動車がつながる“コネクテッドカー”が実用化されれば、自動車の運転が自動化されるだけでなく、移動や物流などの仕組みも大きく変わるだろう。
・そう考えると、ハイテク企業と自動車の関係は接近するはずだ。中国ではバイドゥ(百度)がインテルやダイムラーをはじめとする有力企業とともに、自動運転化技術の実用化に向けた実験を開始した。こうした動きが自動車とネットワーク技術の融合を促す。自動車メーカーが自動車をつくるという常識で、今後の自動車業界を論じることは難しくなっている。
▽重要性高まる、EV化の先を見据えた経営戦略
・現時点でわが国の行政と自動車業界は、EV化に出遅れている。 特に、トヨタにとってはハイブリッドカーの生産ラインを維持しつつ、EVの生産能力を整備するのは容易ではない。このままの状況が続けば、国内自動車メーカーの競争力は低下するだろう。 中長期的な目線で考えると、中国での需要を見込んでEVの供給能力は増えるだろう。一方、需要が右肩上がりで増え続けるとは考えづらい。10年単位で考えると、世界経済が減速に向かうことも考えられる。どこかで需給バランスは崩れ、EVの価格に下落圧力がかかる可能性がある。
・EVではバッテリーの性能が問われる。その他のユニットに関しては差別化が難しいといわれている。ブランド(メーカー)や外見が違うが、中身は同じという流れに行き着くことも考えられる。その見方が正しければ、EVにはコモディティー化しやすい要素がある。生産面では先進国よりも新興国の方が有利だ。
・1990年代、アジア新興国が台頭する中で、半導体などの電機業界では同様の展開が進んだ。わが国の企業は、各社独自の規格に従って完成品を作ることに固執し、結果的に競争力を失った。その教訓を生かすべきだ。
・重要なことは、製品の設計やコンセプトを“オープン(公開)”かつ“コモン(共通)”にすることだ。バイドゥにはその意図がある。トヨタもマツダ、デンソーと組み、他社の参画を呼び掛けながらEVの開発を急いでいる。同時に、トヨタは人工知能やネットワーク技術のための研究所も開設し、ブロックチェーンなどの研究に力を入れている。同社が11月28日に発表した経営陣の刷新にも、EV化の先を見据えた戦略的な視点が反映されている。
・将来的には、日常生活の中で自動車が家電と同じような位置づけになることも考えられる。その中で国内企業が競争力を発揮するためには、環境が大きく変わることへの危機感を各企業で共有し、新しいモノやサービスの創造に注力することが欠かせない。それが、世界規模でモビリティとネットワークの融合が進むことへの対応につながるだろう。
http://diamond.jp/articles/-/152413

次に、1月12日付け日経ビジネスデジタル「クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する 独白ジェームズ・ダイソン」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・世界に驚きを与えたダイソンのEV参入。ファンは沸き立つ一方、自動車業界は実現性を疑問視する。 「本当に成功するのか」─。創業者、ジェームズ・ダイソン氏が決断の背景を打ち明ける。
・「A Dyson EV」。2017年9月26日、英ダイソン創業者のジェームズ・ダイソン氏は全社員宛てにこう題したメールを送り、EV(電気自動車)事業への参入を表明した。サイクロン掃除機、羽根のない扇風機など、ユニークな機能とデザインを兼ね備えた家電を開発し、消費者の支持を獲得してきたダイソン氏。「次はなぜ、EVなのか」。そう問うと、話は自動車メーカーに対する痛烈な批判から始まった。
▽VWの排ガス不正問題で決断
・なぜダイソンがEVを手掛けるのか。皆さんには多少の驚きを与えたかもしれませんが、決して思い付きで始めたわけではありません。むしろ長い間、考え続けてきた構想でした。 ダイソンがEVを開発する理由。一言で言えば、世界で広がる環境汚染に対して行動を起こしたいという切実な思いです。とりわけ自動車の排気ガスによる大気汚染は深刻です。この惨状を変えたい。
・英国の大学キングス・カレッジ・ロンドンによると、大気汚染を理由に命を落とす人は、ロンドン市内だけで毎年9500人近くに上ります。世界で見ると犠牲者の数はさらに増え、世界保健機関(WHO)は、2012年に世界中で約700万人が死亡したと報告しました。大気汚染は、今では世界最大の環境リスクと言って過言ではありません。ここに解決策を示すことが、今のダイソンの使命だと考えています。
・私自身、この問題には30年近く取り組んできました。1990年、まだダイソンを創業する前ですが、自動車の排気システムに取り付ける、粒子状物質を捕集するサイクロンフィルターの開発に着手しました。サイクロンの原理は、掃除機に利用したものとほぼ同じです。きっかけは、偶然に目にした米国立労働安全衛生研究所の論文でした。ディーゼルエンジンの排気ガスが含む有害物質と、実験用のマウスやラットが早期に死亡することを関連付ける内容でした。後で分かったことですが、ガソリンエンジンも、同様の問題を抱えています。
・日々、何気なく自動車を利用することが、我々を死に至らしめる可能性がある。とても深刻な問題のはずですが、自動車メーカーを含め社会の関心はとても低かった。そこで、自分自身でその解決策を考えることにしたのです。 サイクロンフィルターはその後、試作と検証を繰り返しながら、93年までには実用に耐え得るレベルになりました。当時、BBC(英国営放送)で試作品が紹介されて、それなりに話題にもなったのです。
・しかし、自動車業界の反応はとても薄いものでした。ディーゼルの排気ガスは環境にも人体にも大きな問題はないとし、我々が開発したフィルターの重要性について、どこも真剣にとりあってはくれませんでした。それでも諦めず、2000年まで開発を続けました。 そうしている間に、欧州連合(EU)当局が「クリーンディーゼル」エンジンの採用を奨励するようになりました。ディーゼルが環境に与える影響は問題のないレベルであり、EUとしてクリーンディーゼルの普及に力を入れると。英国もEUの考えをそのまま取り入れ、ディーゼルエンジンは環境に優しいものとのイメージが広がりました。さすがに、プロジェクトを中断せざるを得ないという結論に至りました。
・ところがです。大気汚染の問題は一向に収束していません。先進国、途上国に関係なく、大都市は空気が汚染され、人々が苦しんでいます。問題を放置してきた大手自動車メーカーは、その責任を免れることはできません。 決定的だったのは、15年に発覚した独フォルクスワーゲン(VW)のディーゼルスキャンダルです。自動車メーカーは、大気汚染問題に正面から取り組むことなく、規制を巧みに回避してきたことが明らかになりました。信じられない背信行為を続けていたのです。
・幸いなことに、今のダイソンには当時のフィルター開発とは別の方法でこの問題に対処する技術があります。長年開発を続けてきたモーターと電池、そしてAI(人工知能)などのソフトウエア。(15年に米スタートアップを買収して手に入れた)全固体電池は誰もが開発したがっている技術です。ファンヒーターや空気清浄機能などの空調家電で培ったノウハウなども組み合わせれば、ダイソン流のアプローチで大気汚染問題に立ち向かえます。それが、ダイソンがEVに乗り出す理由です。
・ですから、米テスラの成功に我々も追随しようというわけではありません(笑)。私には、長い間、世界的な社会課題を解決したいという、燃えるような強い思い(desire)があったのです。 今、自動車メーカーがせきを切ったようにEV開発に乗り出しています。多くは「環境への配慮」をうたっていますが、私から見れば、規制によって無理に強制されているようにしか見えません。我々の動機とは明らかに違います。
▽外部の懸念、気にしない
・創業前からの強い思いが自身をEV開発へ突き動かしたと繰り返したダイソン氏。一方で、EV開発はこれまで成功を収めてきた家電開発とは複雑さも投資規模も異なる。「本当に成功できるのか」と疑問を呈する声も少なくない。ダイソンは、テスラに転職した元社員や前CEO(最高経営責任者)のマックス・コンツ氏を情報漏洩の疑いで訴えるほど、徹底した秘密主義を貫く。そのため謎が多い。
・EV開発は既に約3年前から開始しています。私自身も多くの時間をこのプロジェクトに割いていますが、現時点では内容についてのコメントはしません。我々は従来も秘密主義でやってきましたし、自動車開発の競争は激しく、秘密保持は鉄壁にする必要があります。
・本当にできるのかという疑問の声がある? 声の主が我々の何を知っているかは分かりませんが、今は「できる」とだけ答えておきましょう。20年までにモーターと電池という我々のコア技術を活用したEVを開発し、21年から量産を始めます。投資額も現在表明している20億ポンド(約3000億円)で足ります。評価は、ぜひ完成した製品を見てからにしてほしいですね。
・ダイソンはもはや家電メーカーではなく、テクノロジー企業です。15年に発売したロボット掃除機「360アイ」には、360度の視界を持つパノラマレンズのカメラを搭載して“自動運転”を実現しています。リアルタイムに部屋の特徴を認識し、室内の位置関係を計算して地図を作製します。英インペリアル・カレッジとは画像処理技術について研究していますが、これらは全てEVに活用していきます。
・AIや機械学習の研究にも資源を注いでいます。ダイソンのデジタルモーターの回転速度を調整するためには、従来は機械的に回転数を設定しておく必要がありました。しかし、今は全てソフトウエアで制御しています。スマートフォンで家電を操作するといった目に見える部分から、モーターの制御といった裏側まで、ソフトの研究開発は急ピッチで拡大中です。社内のエンジニアもソフトに精通する人材が今や多数を占めます。
・EVを開発している他社の動向は気にしていません。自動車メーカーも、EVで本当に成功しようと思うなら、エンジンを搭載した自動車の開発を引きずらず、開発体制をリセットする必要があります。EVの中核となるモーターと電池の開発も同様です。彼らにアドバンテージがあるとは思いません。
▽「デザイン」が革新を生む
・ダイソンは、掃除機や扇風機など、一般には技術革新が乏しく「コモディティー(汎用品)」と呼ばれる成熟市場に飛び込み、イノベーションを起こしてきた。ここ数年の業績は急拡大しており、16年12月期の売上高は前の期比45%増の25億ポンド(約3625億円)と、5年前に比べ2倍以上の規模になっている。そんなダイソンが次に照準を定めたのがEV。クルマもコモディティーになったことを意味するのか。
・自動車がコモディティーになったのか? 私は全くそう思いません。むしろ、自動車は最もコモディティーから遠い製品の一つだと考えています。とても複雑で、感情的な製品です。付け加えれば、我々が手掛けた製品はいずれもコモディティーだとは考えていません。消費者には、掃除機もドライヤーも日々の生活を送る上でとても価値のある製品です。コモディティーかどうかを決めるのは、むしろ、開発した側の情熱や思いがどれだけ注がれているかによります。
・なぜ、ダイソンは他社と違う製品を開発できるのか。それは我々が「デザイン」という概念を一般よりも、より包含的に捉えているからです。デザインとは、単に製品の見た目を指すだけではありません。製品がどう機能するかであり、使われ方を徹底的に考え抜く行為も含みます。突き詰めれば、製品によって消費者が抱える課題や不満をどう解消するかを考えることなのです。 これを実践するには、デザインとエンジニアリングは分けない方がいい。ダイソンのエンジニアは全員、デザイナーでもあります。製品とは、機能とデザインが密接に関わり合いながら生まれていくとの哲学があるからです。
・歴史を振り返れば、デザイナーという職業は存在しませんでした。エンジニアがその役割を担っていたのです。これが分離するきっかけを作ったのが、自動車産業です。大量生産・大量販売を志向した自動車メーカーは、エンジニアリングからデザインを切り離し、マーケティングに活用するようになったのです。デザインという役割は自動車を売るために分離され、流れは一般製品を売る企業にも広がっていきました。
・もう一つ、他社とダイソンが違うように見えるのは、エンジニアである私が会社を率いているからでしょう。昔も今も、エンジニアが経営のトップに存在する企業は稀有なケースでした。 その昔、私が商談相手に製品を持っていくと、「エンジニアではなくビジネスマンはいないのか?」とバカにされたものでした。しかし、製品の可能性は誰よりもエンジニアが理解しています。仮にあなたが、新製品のアイデアを持ち込んできたら、その試作機を見て、製品として成功しそうかどうかを即決できます。ビジネスやマーケティングといった話は、その後についてくるものです。日本の企業だって、ソニーやホンダの創業期はそのような哲学を持った会社だったと思います。 もちろん、私の経営が唯一の正しい方法だとは言いません。しかし、私自身はこのやり方が素晴らしい製品を生むものだと信じています。
▽破壊の先に未来がある
・ダイソン氏は現在70歳。EV開発の陣頭指揮を執り、現在も世界を飛び回る日々を続ける。その一方で、後継者に指名した長男のジェイク・ダイソン氏が15年から経営に参画し、世代交代に向けた準備も進めている。EV参入の先には、どのようなビジョンを描いているのだろうか。
・EVの先、ですか。もちろん、24時間365日、常に考えていますよ。詳しくは言えませんが、30年後にダイソンがどうあるべきか、ビジョンも明確に持っています。それに向かって、ダイソンの企業文化は日々進化していくことになるでしょう。 技術の変化はかつてなく激しくなりました。昨日の成功体験が明日も役立つとは限らない時代です。過去の経験は価値になるどころか、むしろ障害となる可能性もある。ダイソンもこれまでの成功体験は捨て、未来に向けて変わり続ける必要があります。我々が新卒の学生を積極的に採用するのは、彼らが社会人として成功体験を積んでいないからです。こうした人材の重要性は、今後さらに高まっていくでしょう。
・これから参入するEVは比較的長い時間をかけて準備をしてきましたが、10年後、20年後は全く違うものを手掛けているかもしれません。私は元来、技術による既存業界の破壊(disruption)が好きなのです。それ自体は不安定ですが、その先には常に新しい機会が広がっているのですから。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/special/010900888/?ST=pc(このリンクにアクセスするには、日経ビジネスオンラインでのポイントが必要)

第三に、1月17日付け日経ビジネスオンライン「全固体電池の菅野教授が語る、EVはこう進化する 次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか」を紹介しよう(▽は小見出し、――は聞き手の質問、+は回答内の段落)。
・英ダイソンのEV(電気自動車)参入表明で注目を集めるのが「全固体電池」だ。現在主流のリチウムイオン電池が抱える走行距離などの限界を突破する電池として期待されている。ダイソンのみならず、トヨタ自動車など多くの会社が開発に力を注ぎ始めている。第一人者、東京工業大学の菅野了次教授に、全固体電池がEVを変える可能性について聞いた。
――全固体電池は、現在主流のリチウムイオン電池と比べて、どんな点が優れているのでしょうか。
・菅野了次・東京工業大学物質理工学院副学院長・教授(以下、菅野氏):まず、今のリチウムイオン電池というのはすごくいい電池です。鉛蓄電池やニッケルカドミウム電池などに比べてはるかにエネルギー密度が高く、充放電の特性も素晴らしい。これよりもいい電池を作るというのは、なかなか難しい。
+この素晴らしいリチウムイオン電池の電解液を固体にしたらどうなるか、というのが、そもそもの全固体電池の発想です。まだ実用段階の製品としては世の中に出てきてはいませんが、電解液を固体にした際に発揮されるであろう、優れた特性が明らかになるにつれて注目が高まってきました。
+例えば、現在のリチウムイオン電池は、電解液を充てんした独立したセル(電池の構成単位、単電池)を直列につないで使用します。一方、電解質を固体にすると、正極と固体電解質、負極を重ねて1枚のシート状にして、そのシートを順番に積み上げていくことでパッケージにできます。液体を使わないために構造が簡単になり、容量を上げやすくなるだろうと期待されています。
▽出力を大きくできるのが最大の利点
――全固体電池の開発が加速しているのは、菅野先生などが新しい物質を発見したからと言われていますね。
・菅野氏:電解質の中でイオンが活発に動くほど、電池の出力は大きくできるのですが、かつては、固体の中をリチウムのイオンが動くという現象を起こさせること、そのものが難しいとされていました。しかし、我々(東工大とトヨタ自動車)は2011年に、固体の中でもイオンがよく動く材料を見つけました。
+電解液を使う今の電池の欠点は、大電流を流すと電解質の中をイオンが動きにくくなるということです。それを、大変高度に設計することで、大きなパワーを取れる電池に仕上げているのが現状です。 一方、我々はさらに16年に、固体材料に塩素を添加するとイオンがさらによく動くことを発見しました。イオンの動きが速いと出力を大きくできると先ほどお話ししましたが、(これによって従来のリチウムイオン電池よりも)全固体電池の出力を大きくできる可能性が出てきました。それが、全固体電池の最大のメリットとして、注目されている理由だと思います。
――リチウムイオン電池を使う今のEVは、充電に時間がかかることも欠点の1つだと言われています。全固体電池を使うと、充電速度も速くなるのでしょうか。
・菅野氏:電流をたくさん取れるようになると、充電も速くなると期待できます。ただし、電池自体の電圧の限界といった問題もありますので、電流がたくさん取れるということがすなわち、充電が速くできるというわけではありません。それでも、工夫次第で速くなる可能性はあると考えています。
▽心臓のペースメーカーに使われるほど信頼性が高い
――現在のリチウムイオン電池は、自動車事故などの際に爆発したり、炎上したりすることが懸念されています。全固体電池になると、安全性は増しますか。
・菅野氏:固体材料の場合、液体が蒸発して引火することはないので、液体の電池より燃えにくいと言っていいと思います。 実は、これまで全固体電池は、固体の中でイオンが動くことが難しいために、大きな電流が取れず用途が非常に限定されていました。その1つが、心臓のペースメーカーです。微弱の電流でも十分だからですが、心臓のペースメーカーに利用されていたのは、信頼性が高いからです。
・ただし、我々が今開発している材料は、多少空気中で分解しても、とにかくイオンが動くことを重視していますので、実際の電池に使ったときの安全性は、大きな電池にしてみなければ分からないところはあります。
▽全固体電池でクルマの設計の自由度が増す
――そもそも、全固体電池の用途として、なぜEVが有望視されているのでしょうか。
・菅野氏:これまでの全固体電池は、実用化されたのが心臓のペースメーカーくらいで、ほとんど電池として認められていなかったような状況でした。信頼性はあるけれど、パワーは取れない。「使い道はあるのか」と問われれば、「ない」と答えるしかありませんでした。
+しかも、リチウムイオン電池という非常に優れた電池があり、それを全固体電池に置き換える必要はないと考えられてきました。 実際、電池という分野はこれまで、既存の電池を新たな電池が置き換えたという事例はないんですよね。新しい電池が登場した時には、必ずと言ってよいほど、その電池を必要とする新たな用途、新たな製品が世の中に誕生しています。例えば、リチウムイオン電池が登場したのは、ノートパソコンや携帯電話が誕生したのと、ちょうどタイミングが一緒でした。
+だから、もし全固体電池がうまい成長ストーリーを描けるとするならば、やはり新たな用途や製品に使われるということだと思います。
――全固体電池によって、クルマ全体の設計の自由度は増すでしょうか。
・菅野氏:例えば、固体電解質は100℃でもマイナス30℃でも動くので、リチウムイオン電池に比べて、(安定して動く)温度範囲が広がります。つまり、それほど厳しい温度管理をしなくても良くなるという点で、設計の自由度は増す可能性があります。リチウムイオン電池は60℃以上になると劣化が進むので、現在のEVは冷却装置などで温度管理をきちんとする必要があります。
+もちろん、容量の大きな電池にした場合に、様々なややこしい問題が出てくるかもしれません。それでも、固体電解質は低温から高温までたぶん大丈夫なので、設計の自由度が増す可能性はあると思います。
――英ダイソンは全固体電池のベンチャーを買収し、開発を加速しています。ダイソンがどのような電池を出してくるか、研究者の間で噂になっていませんか。
・菅野氏:全然分かりません。あまり情報は聞こえてきませんね。
――やはり、先頭を走っているのはトヨタですか。
・菅野氏:トヨタでしょうね。
――菅野先生などの基礎研究のおかげで、素材開発は進んできました。一方、製品化に向けた各社の生産プロセスの開発はどんな状況と見ていますか。
・菅野氏:電池が実用化されるまでには、我々のような基礎研究から応用研究、そして実際のデバイスの生産というように、それぞれの段階でギャップがあります。メーカーが実際のデバイスとして製品化するのが一番の課題ですが、いつまでに製品化するという宣言もしているところを見ると、それは多分、乗り越えたんだろうなと思います。
+。競争はなかなか激しいですよ。固体電解質の素材は日本よりも海外で研究が活発ですね。例えば、中国やドイツ。米国も、我々が発表したすぐ後に、コンピューターで材料の組み合わせを計算する計算科学という手法で、実際のモノを作らずに知財だけを先に押えてしまうといったことまでやっています
――全固体電池を使えば、EVの走行距離がガソリン車を超えてしまうということも起こり得るのでしょうか。
・菅野氏:全固体電池がEVでどういう使われ方をするのか、あまり分からないですけれども、(電池の)パッケージを小型化できたり、エネルギー密度を上げられたり、長く走れたりといったメリットは、多分あると思います。 可能ならば、やはり充電速度を上げたいですけれども、たぶんそれは次のステップでしょうね。  クルマが道を走ったら充電できたりとか、ボタンを押したらクルマが迎えに来たりとか、そういう将来が見えてきていますよね。全固体電池によって電池の実力がもっと上がれば、そういった未来もたぶん一気に近づくでしょう。
――全固体電池が、EVのあり方を変えるということですか。
・菅野氏:今はまさに、全固体電池がものになるかどうかという瀬戸際のようなところでもあります。これまでの電池とはそもそもの発想が違うので、うまくいくならば、たぶん行き着く先も違うものになるだろうと期待しています。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/011100194/011100003/?P=1

第一の記事で、 『これまで、多数の部品を微妙に“すりあわせ”しながら組み立てる技術で優位性を保ってきた、日本の自動車メーカーにとって、これまでと違った競争を強いられることが想定される。少数のユニット型部品を合わせるだけで完成品ができるデジタル家電の二の舞になることも懸念される。“日の丸”自動車メーカーにとって、EVは一種の鬼門になるかもしれない』、というので、改めて深刻さを再認識させられた。 『異業態の新規参入とこれまでと違った競争の激化』、 『重要なことは、製品の設計やコンセプトを“オープン(公開)”かつ“コモン(共通)”にすることだ』、などはその通りなのかも知れない。
第二の記事で、 『EVを手掛けるのか。皆さんには多少の驚きを与えたかもしれませんが、決して思い付きで始めたわけではありません。むしろ長い間、考え続けてきた構想』、 事実、ダイソン氏が、創業前の1990からサイクロンフィルターを開発していたというのは、初耳だが、なるほどと納得した。 『コモディティーかどうかを決めるのは、むしろ、開発した側の情熱や思いがどれだけ注がれているかによります』、というのは、興味深い指摘だ。 『「デザイン」が革新を生む』、というのも、あのユニークなデザインを考えると説得的だ。 『我々が新卒の学生を積極的に採用するのは、彼らが社会人として成功体験を積んでいないからです。こうした人材の重要性は、今後さらに高まっていくでしょう』、との考え方もユニークだ。やはりダイソン氏は、イノベーションのスーパースターだ。
第三の記事では、全固体電池の開発がどんな段階にあるか、についてはハッキリしてないが、完成すれば素晴らしいものらしい。 『固体電解質の素材は日本よりも海外で研究が活発ですね。例えば、中国やドイツ。米国も、我々が発表したすぐ後に、コンピューターで材料の組み合わせを計算する計算科学という手法で、実際のモノを作らずに知財だけを先に押えてしまうといったことまでやっています』、とは驚きだ。計算科学で特許を取ってしまうとは、時代もずいぶん進んだものだ。いずれにしろ、全固体電池が実用化されると、我々の生活もますます便利になりそうだ。
タグ:電気自動車 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 全固体電池 (EV) )(その3)(中国発のEV化で日本の自動車産業は電機の二の舞にならないか、クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する 独白ジェームズ・ダイソン、全固体電池の菅野教授が語る EVはこう進化する 次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか) 「中国発のEV化で日本の自動車産業は電機の二の舞にならないか」 、EVに使われる部品数は少ない。部品点数が減ると、自動車メーカーの競争力を支えてきた技術力が差別化の要因とはなりづらくなる これまで、多数の部品を微妙に“すりあわせ”しながら組み立てる技術で優位性を保ってきた、日本の自動車メーカーにとって、これまでと違った競争を強いられることが想定される 少数のユニット型部品を合わせるだけで完成品ができるデジタル家電の二の舞になることも懸念される。“日の丸”自動車メーカーにとって、EVは一種の鬼門になるかもしれない EVが主流になることで“すりあわせ”からユニット部品の組み立てへ 自動車の生産は、“部品のすりあわせ”から、フレーム、バッテリーなどの“ユニット(部品の集合体)の組み立て”にシフトする可能性が高い 、部品ごとのバランスなどを調整し、付加価値を生み出すという既存の自動車メーカーが担ってきた役割は、さまざまな業界に溶け出していく可能性が高まっている 異業態の新規参入とこれまでと違った競争の激化 自動車の運転が自動化されるだけでなく、移動や物流などの仕組みも大きく変わるだろう 重要性高まる、EV化の先を見据えた経営戦略 現時点でわが国の行政と自動車業界は、EV化に出遅れている 重要なことは、製品の設計やコンセプトを“オープン(公開)”かつ“コモン(共通)”にすることだ 日経ビジネスデジタル 「クルマは人命を奪ってきた 我々のEVが常識を“破壊”する 独白ジェームズ・ダイソン」 創業者、ジェームズ・ダイソン 決して思い付きで始めたわけではありません。むしろ長い間、考え続けてきた構想でした ダイソンがEVを開発する理由。一言で言えば、世界で広がる環境汚染に対して行動を起こしたいという切実な思いです。とりわけ自動車の排気ガスによる大気汚染は深刻です。この惨状を変えたい この問題には30年近く取り組んできました。1990年、まだダイソンを創業する前ですが、自動車の排気システムに取り付ける、粒子状物質を捕集するサイクロンフィルターの開発に着手 EUとしてクリーンディーゼルの普及に力を入れると。英国もEUの考えをそのまま取り入れ、ディーゼルエンジンは環境に優しいものとのイメージが広がりました。さすがに、プロジェクトを中断せざるを得ないという結論に至りました 今のダイソンには当時のフィルター開発とは別の方法でこの問題に対処する技術があります。長年開発を続けてきたモーターと電池、そしてAI(人工知能)などのソフトウエア。(15年に米スタートアップを買収して手に入れた)全固体電池は誰もが開発したがっている技術です。ファンヒーターや空気清浄機能などの空調家電で培ったノウハウなども組み合わせれば、ダイソン流のアプローチで大気汚染問題に立ち向かえます。それが、ダイソンがEVに乗り出す理由です。 20年までにモーターと電池という我々のコア技術を活用したEVを開発し、21年から量産を始めます。投資額も現在表明している20億ポンド(約3000億円)で足ります ・ダイソンはもはや家電メーカーではなく、テクノロジー企業です デザイン」が革新を生む コモディティーかどうかを決めるのは、むしろ、開発した側の情熱や思いがどれだけ注がれているかによります 我々が「デザイン」という概念を一般よりも、より包含的に捉えているからです。デザインとは、単に製品の見た目を指すだけではありません。製品がどう機能するかであり、使われ方を徹底的に考え抜く行為も含みます。突き詰めれば、製品によって消費者が抱える課題や不満をどう解消するかを考えることなのです これを実践するには、デザインとエンジニアリングは分けない方がいい。ダイソンのエンジニアは全員、デザイナーでもあります 製品とは、機能とデザインが密接に関わり合いながら生まれていくとの哲学 エンジニアである私が会社を率いている 破壊の先に未来がある 「全固体電池の菅野教授が語る、EVはこう進化する 次世代電池の“本命”はリチウムイオン電池の限界を超えるか」 東京工業大学の菅野了次教授 電解液を固体にした際に発揮されるであろう、優れた特性が明らかになるにつれて注目 液体を使わないために構造が簡単になり、容量を上げやすくなるだろうと期待されています 出力を大きくできるのが最大の利点 充電も速くなると期待できます 液体の電池より燃えにくい 全固体電池でクルマの設計の自由度が増す 固体電解質の素材は日本よりも海外で研究が活発ですね。例えば、中国やドイツ。米国も、我々が発表したすぐ後に、コンピューターで材料の組み合わせを計算する計算科学という手法で、実際のモノを作らずに知財だけを先に押えてしまうといったことまでやっています
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情報セキュリティー・サイバー犯罪(その3)(増殖続けるダークウェブ、サイバー攻撃の温床に、日本の「サイバー攻撃対策」に募る大きな不安 イスラエル発イベントが東京で開かれた意味、インテルを突如襲った「致命的なバグ」の実態 この問題はいったいどれだけ深刻なのか) [科学技術]

情報セキュリティー・サイバー犯罪については、昨年10月16日(その3)(増殖続けるダークウェブ、サイバー攻撃の温床に、日本の「サイバー攻撃対策」に募る大きな不安 イスラエル発イベントが東京で開かれた意味、インテルを突如襲った「致命的なバグ」の実態 この問題はいったいどれだけ深刻なのか)

先ずは、昨年11月21日付け日経ビジネスオンライン「増殖続けるダークウェブ、サイバー攻撃の温床に 企業や官公庁の幹部のメールも筒抜け」を紹介しよう(▽は小見出し、Qは聞き手の質問、Aは回答、+は回答内の段落)。
・5月に発生した世界同時多発サイバー攻撃の震源地となった「ダークウェブ」。銃や麻薬、サイバー攻撃用の「兵器」も売り買いされ、日本企業も標的になりつつある。拡大する脅威に対抗するためには、闇市場を監視してリスクを察知する必要がある。(日経ビジネス2017年9月18日号より転載)
・7月12日、タイ警察の拘置所で、拘留されていた20代のカナダ人男性が自殺した。男の名はアレクサンドル・カゼス。世界最大の“闇市場”として悪名をはせていたEC(電子商取引)サイト、「アルファベイ」の運営者として逮捕されていた。 その8日後、アルファベイのトップページが突如として書き換えられた。「THIS HIDDEN SITE HAS BEEN SEIZED(この闇サイトは制圧された)」。こんな文字が米司法当局や欧州警察機構のロゴとともに躍っていた。
・アルファベイには4万人の出品者が集い、拳銃や違法薬物、クレジットカードや決済サービスの暗証番号、マルウエア(ウイルスなど悪意のあるソフトウエアの総称)などを販売していた。通常のECサイトと同様に出品者を評価するシステムを備え、仮想通貨のビットコインで決済をしていた。カゼスは2014年からアルファベイを運営して富を蓄積。タイに3軒の家を構え、伊ランボルギーニの高級車など20億円以上の資産を保有していた。
・インターネットでは通信者の身元は記録され、追跡が可能だ。ではなぜ、4万人もの悪人が3年にわたって取引を続けられたのか。それを理解するにはアルファベイが存在していた、「ダークウェブ」と呼ばれる世界を知る必要がある。
▽公開されるウェブサイトは「氷山の一角」
Q:なぜ「ダークウェブ」と呼ばれる?
A:インターネット空間は氷山に例えられる。米グーグルなどの検索サイトからたどり着けるのが、表面にある「サーフェスウェブ」。一説には、インターネット空間の1%にも満たないともいわれている。 水面下に存在するのが、一般には公開されていない「ディープウェブ」。IDとパスワードでログインするECサイトや、それを支えるデータベースなどが該当する。我々が多くの時間を過ごしている、米フェイスブックなどのSNSの個人ページも含まれる。
+ディープウェブの最下層には、通常のウェブブラウザーにアドレスを入力してもアクセスできない領域が存在する。これが「ダークウェブ」だ。下の年表に示すように、違法物の売買や、サイバー攻撃のための情報交換、窃取した機密情報の暴露などの犯罪行為に多く利用されている。
Q:どうやってアクセスするのか?
A:最も広く利用されているのが「Tor(トーア)」という匿名化ツールだ。複数のサーバーを経由して、利用者の素性と通信経路を隠すのが特徴だ。Torはもともと、弾圧政権下の民主活動家らを支援するために開発された。米海軍もそのプロジェクトに参加している。 日本では、Torを使って他者のパソコンを乗っ取り、ネット上で犯罪予告をする「パソコン遠隔操作事件」が2012年に発生。警察はTorで隠された乗っ取り行為を見落とし、誤認逮捕が相次いだ。
Q:どんなサイトがある?
A:違法な薬物やウイルスを売るEC(電子商取引)サイトや、ハッカーらが情報交換をするフォーラム、殺人やサイバー攻撃の請負サイトなど、犯罪行為に関わるサイトが多いのが実情だ。 一方で、弾圧や検閲を回避する目的のSNSも存在する。フェイスブックはダークウェブ上で、サーフェスウェブと同様のサービスを提供している。インターネット掲示板「2ちゃんねる」を模したものなど日本語サイトも存在するが、英語やロシア語と比べて数は多くない。
・ダークウェブに絡んだ事件(リンク先に表)
▽闇の商人と捜査当局の攻防
・ダークウェブは通常の検索サイト経由ではたどり着けない、ネット空間でも特に隔絶した領域だ。アクセスするには、通信者の身元を隠す「Tor(トーア)」などの匿名化ソフトを利用する。複数のサーバーを経由するなどして通信経路を偽装するため、捜査当局は闇の取引を解明できずにいた。
・世界最大の闇市場の称号はもともと、13年に摘発された「シルクロード」のものだった。このサイトには当時、約1万4000点の違法物が出品されていた。その後4年間でダークウェブの脅威が急拡大したことは、アルファベイにドラッグなどが25万点以上、漏洩した個人情報などが10万点以上出品されていたことからも明らかだ。
・歩調を合わせるように、この間、サイバー攻撃が急増した。ドイツの研究機関によると、16年に発見された新種のマルウエアは1億2700万種類。毎秒4件の新種が誕生し、12年の4倍に膨れ上がった。闇市場を通じて攻撃ツールが様々なハッカーに行き渡り、改良をされてまた売買される。サイバー攻撃を請け負うサイトもあり、企業のリスクを闇市場が大きく増幅させている。
・アルファベイの閉鎖は闇市場の終焉ではない。あるセキュリティー企業関係者は「また次のシルクロード、アルファベイは生まれてくる」 と予想する。米当局はアルファベイの出品者の名前を一部公表したが「ドラッグや銃を扱う『マフィア』が中心で、高度なサイバー犯罪者まで追跡の手は及んでいない」(同)からだ。別の闇市場では、捜査当局をあざ笑うかのように、アルファベイと同じIDを再利用して出品を再開した事例もある。
・5月に発生した世界同時多発サイバー攻撃。米政府によると、150カ国で30万台規模のパソコンが「WannaCry(ワナクライ)」と呼ばれるウイルスに感染した。感染したパソコンのデータは暗号化され、解除のために「身代金」を支払うよう求められた。英国では病院での手術が中止され、ドイツの鉄道では発券機が故障した。
・過去最大規模のサイバー事件の震源地も、またダークウェブだった。ワナクライのもとになったのは、米国の諜報機関、国家安全保障局(NSA)が極秘裏に開発していたハッキングソフトだとされる。NSAからこのソフトを盗み出し、売りさばいたのがダークウェブ上で活動するハッカー集団「シャドー・ブローカーズ」だった。
・世界トップクラスの諜報機関を出し抜くハッカー集団は、「フォーラム」と呼ばれるダークウェブの交流サイトを使い、ハッキングの技術などについて情報を交換している。
▽免許証の値段は「900円」
・国内でも日立製作所やホンダなど複数の企業がワナクライに感染した。悪意ある攻撃者が日本企業を標的にし始めたのは明らかだ。デロイトトーマツリスクサービスの協力を得て、記者は7月、ダークウェブを閲覧した。 アルファベイ閉鎖後に利用者が増えているという闇サイトで、「Japan」をキーワードにして検索してみた。すると、米決済サービス「ペイパル」のアカウントが2000円、日本の免許証のコピーが900円程度で売られていた。出品者の評価は5つ星で、どうやら闇市場での「信頼性」が高いようだ。
・日本関連の出品で特に目立つのが、クレジットカード情報。値段は数百~2000円程度とまちまちだが、「FRESH CARDS!」と強調し、停止措置が取られていないカードを販売しているケースもある。
・企業の機密情報はどうか。デロイトトーマツリスクサービスの岩井博樹シニアマネジャーは「フォーラムやダークウェブ上のメッセージサービスを通じて取引先を見つけ、相対で売買する例が増えてきた」と指摘する。
・「これはやばすぎる。すぐに当該企業に通報しろ」。ダークウェブの監視を手掛けるセキュリティーベンチャー、スプラウト(東京・港)の高野聖玄社長は、闇サイトの出品者からメールで届いた情報に目を見張った。買い取りを持ちかけられたのは、ある中堅企業の財務書類の一式だ。社員の給与明細や各取引先との契約書など、「会社の資金の流れを丸裸にする内容だった」と高野社長は打ち明ける。
・出品者のメールは「ご関心ありましたらご連絡ください」と、いんぎんな言葉遣いで締めくくられていた。自動翻訳などを使わずに、日本人が書いたメールであることがうかがえる。一般には英語やロシア語のサイトが多いダークウェブだが、日本企業を狙う日本人の闇の商人も確かに存在する。
・メールに書かれていた販売価格はわずか10万円。闇市場というインフラができたことで「小遣い稼ぎに機密情報を狙う犯罪が増えている」(高野社長)。スプラウトが今春からダークウェブの監視サービスを本格開始して以降、上場企業の幹部会議の資料や、建物の設計図が相次いで見つかったという。
▽企業幹部のメールも筒抜け
・航空自衛隊でセキュリティー担当を務めたサイバーディフェンス研究所の名和利男上級分析官は、「企業や官公庁の幹部のメールボックスの内容が、まるごと数十万~数百万円で売られている事例もある」と指摘する。中には、内部不正のもみ消しを指示するメールまで含まれていたという。 こうした機密情報はサイバー攻撃により漏洩したものだけではない。廃棄したはずの社内のパソコンが中古店で再販され、購入者がデータを復旧させて売りさばいた事例もあるという。
・名和氏によると、特に秘匿度の高い機密情報は、多くても数十人程度のハッカーらのコミュニティーで限定的に取引される。ダークウェブ上に一時的に売買サイトが開設され、コミュニティーのメンバーには開始時間と出品の内容が共有される。数日間で商品を売り抜けた後で、サイトは閉鎖する。アルファベイなどの闇市場よりも察知するのは難しい。
・だが、リスクを目前にして手をこまぬいてはいられない。ダークウェブの脅威から身を守るため、企業の防衛手法も次のステージに進む必要がある。 サイバー攻撃の最も基本的な防衛方法は、ウイルス対策ソフトやファイアウオールなどを設置し、攻撃を入り口で防ぐこと。企業を城に例えるなら、第1段階は「城壁」だ。ほころびが出ないよう、常に最新の状態に更新しておくことが求められる。
・ただし、こうした防御をかいくぐるため、ダークウェブを舞台に攻撃側が知恵を絞っているのはこれまで見てきた通り。社内のシステムへ侵入された時の備えも必要だ。仮にパソコンがウイルスに感染した場合、放置したままでは被害を封じ込められない。一刻も早く対策を取る必要がある。
・そこで注目を集めているのが、「火消し」の役割を担う「CSIRT(シーサート)」。セキュリティー関連のトラブルを素早く検知し、即応する社内組織の総称だ。設置する企業が近年急増し、日本シーサート協議会の加盟数は8月末時点で242団体と、3年間で4倍になった。今年に入ってからも電源開発や東京証券取引所などが加わった。
・先進的な日本企業はようやく、「城壁」に「火消し」を加える段階にある。しかし、ダークウェブに対応するには更なる進化が必要だ。 ダークウェブなどからリスク情報を得て、先回りして対策する「脅威インテリジェンス」。 企業という城を守るために、あえて敵の懐に入り込み攻めに出る。「忍者」のような役割だ。 機密情報の漏洩にいち早く気づけるだけではない。ダークウェブのコミュニティーでは、次の攻撃対象となる企業に関して、システムに使われているOS(基本ソフト)の情報などがやり取りされている。事前に察知できれば、十分な対策を練ることも可能だ。
・日本企業でも実例がある。15年、大手工業機器メーカーが手掛ける社会インフラ向け監視ソフトに侵入するツールが、ダークウェブ上で売られていたのだ。その企業は事態を察知し、監視ソフトのアップデートをすぐさま行った。 国内の自動車メーカーも、自社製品の違法改造について語り合うフォーラムをあえて放置し、クルマの情報通信システムに介入する方法が書き込まれないかチェックしているという。
・米シマンテックも7月、脅威インテリジェンスを手掛ける東京セキュリティオペレーションセンターを拡張。日産自動車など顧客の増加に対応した。 脅威インテリジェンスの中でも、コミュニティーに入り込む活動を「脅威ハンティング」と呼ぶ。前出の名和氏によると、攻撃を仕掛ける側から企業を守る側に転じた「ホワイトハッカー」が手引き役となる。優秀なホワイトハッカーを慕う現役ハッカーを通じてコミュニティーに入れれば、より生々しい脅威情報が得られる。
▽イスラエル企業が台頭
・脅威ハンティングの分野で台頭しているのが、諜報機関の発達したイスラエルだ。イスラエルのセキュリティー企業関係者は「犯罪集団に潜入して情報を得るのは我々の得意技だ」と話す。 ネットの炎上対策サービスを手掛けるエルテス(東京・千代田)は、昨年よりダークウェブの監視サービスを開始した。マーケットなどを自動巡回するシステムを用いた自社サービスを月額50万円程度で提供。脅威ハンティングにまで踏み込む場合は、月額200万~300万円でイスラエルの提携企業に外注する。
・エルテスの担当者は「インフラ系企業や海外展開する大手製造業など、売上高5000億円を超える企業は背負うリスクも大きく、脅威インテリジェンスを導入する価値はある」と強調する。 もっとも、脅威インテリジェンスに深く踏み込み過ぎるのも危険だ。身元が割れれば報復行為を受けるし、コミュニティーで信頼を得るために犯罪行為への加担を求められることもある。経済産業省のサイバーセキュリティ・情報化審議官、伊東寛氏は「深いレベルのインテリジェンスを民間が担うのは限界がある。公安機関含め官民が連携することが重要だ」と指摘する。
・ダークウェブの闇は日本を確実に侵食し始めた。次代のセキュリティーにどれだけ投資をかけるか。この見極めは極めて難しい。対策を部下に丸投げするような社長は、経営責任を問われかねない。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278202/112000079/?P=1

次に、フリージャーナリストの海野 麻実氏が昨年12月18日付け東洋経済オンラインに寄稿した「日本の「サイバー攻撃対策」に募る大きな不安 イスラエル発イベントが東京で開かれた意味」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・11月30日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで「サイバーテック東京2017」が開かれた。毎年イスラエルのテルアビブで開かれるサイバーセキュリティの国際イベントで、日本開催は初めてとなる。
▽サイバーセキュリティ技術で世界最先端のイスラエル
・サイバーセキュリティ技術において、世界最先端とも言われるイスラエル。喫緊の情勢では、ドナルド・トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定し、米大使館のエルサレムへの移転を決めたことで、にわかに緊迫している。 もともとアラブ諸国に囲まれ、つねに軍事的な緊張にさらされてきたこともあり、イスラエルにおける軍事・防衛、サイバーセキュリティ分野は、国を挙げて取り組んできた最重要課題である。
・イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「サイバーセキュリティは国家安全保障に不可欠であり、経済成長をも牽引する」と豪語。同分野における世界のリーダーを目指してきた。 現に、世界中から集まる投資をもとに、イスラエルにおけるサイバーセキュリティ産業は急激な成長を遂げている。イスラエル政府によると、軍や諜報機関の出身者が立ち上げたセキュリティ関連の企業は約400社に及び、昨年は83社のサイバーセキュリティスタートアップが新たに設立された。人口約860万人の小国ながら、すでにアメリカに次ぐ規模を誇っているのだ。
・今回の「サイバーテック東京2017」はイスラエルと日本政府の協力によって実現した。開催前日の11月29日には「日本・イスラエル・イノベーション・ネットワーク」の第1回が東京で行われた。日本側からは世耕弘成経済産業相、イスラエル側からはエリ・コーヘン経済産業相が出席し、サイバーセキュリティ分野での協力体制や、BtoB連携の加速化などについて合意された。
・来日したイスラエルのエリ・コーヘン経済産業大臣も「サイバーテック東京」で講演をした  こうした官民挙げての交流を活発化させようという動きが強まるなか、満を持して開かれた「サイバーテック」日本版には、約2000人の両国政府や企業関係者が来場し、イスラエルで生まれた技術と日本企業とのマッチングなどが行われた。会場では、危機が急速に高まるサイバー攻撃から、さまざまなモノがインターネットでつながる「IoT」を守る方法として、機器同士をつなぐ無線通信の安全性を高める技術などが紹介されていた。
・イスラエル軍で諜報活動などを少数精鋭で遂行するインテリジェンス部隊出身(=8200部隊と呼ばれる少数精鋭のエリート集団)の3人が創業したサイバーセキュリティ会社「サイバーリーズン」も会場中央に大きなブースを出展。標的型サイバー攻撃やランサムウェアなどを即座に検知し、対処することが可能な画期的な製品が主力で、AIによる独自の分析ノウハウを用いた解析でサイバー攻撃の兆候をリアルタイムに探知する技術をアピールした。
・サイバーリーズンは、組織が抱えるサイバー攻撃対策の課題を解決するクラウドベースのセキュリティソリューションを開発する企業。通信大手のソフトバンクグループが、6月に約110億円を出資して筆頭株主になったことで、日本では大きなニュースとなった。日本国内での知名度も高まっていることもあって多くの企業関係者が集まり、熱心に製品の説明を聞く姿が目立った。
▽セキュリティ人材の不足が深刻な日本
・「サイバーテック東京」に参加していた日本の大手メーカー社員は、「恥ずかしながら、数年前まで『イスラエルは中東の危ない国』というイメージが強かった。最近は認識が急速に変わってきている」としたうえで、職場内で感じる変化も非常に大きいと話す。
・「正直、自分の会社でもサイバーセキュリティ分野は、事前に把握できる危機の度合いと、それに対する効果などが測りづらいこともあって、現場レベルではスピーディに対応したいことでも上層部の決裁がなかなか下りないということが多々あった。ただ最近は、サイバーセキュリティ分野への大きな投資も理解を得やすくなって、そこにきちんとおカネをかける感覚が高まっているのを肌で感じる」とし、社内で今後、サイバーセキュリティ分野に資金や人材が投入されることに期待を寄せていた。
・実際、日本ではサイバーセキュリティ分野における人材不足が指摘されている。経済産業省が昨年実施した調査によると、日本の情報セキュリティ人材は2016年時点で28万870人である。一方、潜在的に求められる人材は41万2930人に及ぶため、実に約13万人もが不足している状態だという。
・東京オリンピックが開催される2020年には、セキュリティ人材への潜在需要がさらに増え続けると予測され、今後その不足数は約19万人まで拡大していくとの見通しが示されている。全体的な情報セキュリティ対策の統括者などについて、5割弱の企業が「不足を感じている」と回答。「必要人数は確保できている」と回答した企業は4分の1にとどまっている。
・これまでサイバー攻撃の被害では、個人情報の漏洩などが報道されるケースが多かったが、今後は「IoT」の普及により、工場の生産ラインなど製造業や、国家の重要なインフラなど生活に密接するあらゆる現場に深刻な影響を及ぼしかねない危険性を孕んでいる。たとえば、発電所や鉄道会社などが攻撃を受けた場合、国民の日々の生活が混乱しかねない喫緊の課題だ。
▽イスラエルが日本に熱視線を向ける理由
・すでに、2020年の東京オリンピックに向けて、イスラエル企業の日本でのビジネス拡大を視野に入れた動きが目立ち始めている。彼らに話を聞くと、その多くが日本側のサイバーセキュリティ分野での遅れを指摘する。
・「日本企業がサイバーセキュリティにコストをかけるという意識が高まってきたのは、最近のことだ。しかし、攻撃側の成功率は100%で、完全に防御することは難しいと言われているなかで、いまだにサイバー攻撃を仕掛けられてから対応を始めるという受け身の姿勢が根強い。ハッカー側がどのような攻撃を仕掛けてくるか、軍での経験などを生かした優秀なホワイトハッカーを有するイスラエル側と協業する意義は非常に大きい」(イスラエル企業関係者)
・イスラエルのサイバーセキュリティに関わる企業は、受け身ではなく攻撃する側のハンターをみずから見つけ出し、彼らのマインドを読み解き、攻撃を逆に「仕掛ける」ような能力をつねに鍛錬しているという。 インテルセキュリティが米国のシンクタンクと協力して日本を含む世界8カ国を対象に実施した国際調査リポートによると、組織幹部がサイバーセキュリティに関するスキルを重視しているかという質問に対し、「非常に重視している」「重視している」と回答した割合は、8カ国の平均76%に対して、日本は最も低い56%だった。
・サイバーセキュリティの人材育成と確保は、今後脅威が高まる中で喫緊の課題であることは言うまでもない。 すでに、イスラエルのサイバーセキュリティ関連企業とプロジェクトを共にし、頻繁にイスラエルにも出向き、交渉を密にする企業担当者はこう話した。 「日本政府としてもサイバーセキュリティ対策向上のために、イスラエルとのサイバーセキュリティ分野での覚書締結等を実施していますが、実情は政府レベルの付き合いにとどまっていて、民間での連携はこれからという感じ。税制優遇する等のインセンティブが必要ではないでしょうか。まずは、政府主導で日本全体のサイバーセキュリティの感度を高めていく必要があると思います」
▽すでに先陣を切っている中国の存在
・一方で、ここ最近存在感を強めているのが、中国だ。早くからイスラエルに目を付けたシリコンバレーの大手企業と同様に、イスラエルと中国双方の投資は、数年前から熱を帯びている。電子商取引最大手のアリババ集団がイスラエルのベンチャーキャピタルなどに相次いで投資したり、インターネット検索大手のバイドゥなどがイスラエルにおける研究開発拠点の開設へ本腰を入れ始めたりしている。
・中国家電大手のハイアールは、2010年の時点から中国本土で高品質の飲料水や浄水器を販売するイスラエルメーカーと合弁企業を設立。今年10月には、初の「イノベーション・ハブ」をテルアビブに設立し、両国のメディアでも大きく取り上げられた。家電など身の回りのあらゆるものをネットにつないで遠隔操作などを可能にするIoTなどに対応した製品の開発に、イスラエルのアイデアや技術を活用していく方針だ。
・ハイアールの担当者はイスラエルの地元紙の取材に対し、鼻息荒くこう語っている。「われわれはこれまで5年間にもわたって、イスラエルのイノベーションと共に歩んできた。そして今、イスラエルのエコシステムにおいて、さらに密に関わっていくことを決定した。これは長期的な視点で見た重要な投資だ」 
・ほかにも、イスラエルの運転支援ベンチャー「モービルアイ」は、中国のテンセントやバイドゥが出資する電気自動車スタートアップと提携して中国進出を加速させるなど、中国企業によるイスラエルへの投資は枚挙にいとまがない。
・あるイスラエルの起業家は「アメリカや中国と比べると日本企業がイスラエルに進出するのは数年遅れている。中国はすでにイスラエルにある種の地盤を築いていると言っても過言ではないだろう。だがわれわれは、製造業に強く技術力も世界一と信じる日本とのコラボをこれから楽しみにしている」と日本への期待を寄せる。
・イスラエルの大規模なサイバーセキュリティの祭典が、今回日本で開催された意味。それは、2020年の東京オリンピックに向けた急務の対策の必要性もさることながら、北朝鮮情勢など脅威が高まっていると言われるアジア全体へのサイバー攻撃の危機に、日本政府が本格的に立ち向かう意欲を示し始めたことが最大の要因だろう。
・政府は、AIでサイバー攻撃を検知するなどの研究開発の推進や、高度な技術を持ち合わせた若手セキュリティ人材の育成などにようやく本腰を入れ始めている。 アメリカや中国などが先陣を切って“地ならし”をしてきたイスラエルの地で、日本政府が今後、企業や大学などと連携して、いかにこの迫りくる課題にスピーディに対応していくのか――虎視眈々と日々攻撃を仕掛けるハッカー側の視線は強まることこそあれ、弱まることはない。
http://toyokeizai.net/articles/-/201317

第三に、ITジャーナリストの本田 雅一氏が1月5日付け東洋経済オンラインに寄稿した「インテルを突如襲った「致命的なバグ」の実態 この問題は、いったいどれだけ深刻なのか」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・米国時間の1月3日、コンピュータ系情報サイト「The Register」が「インテル製プロセッサのバグを原因とする深刻なセキュリティホールが発見された」と報道。その対策にはハードウェアそのものの変更が必要であり、ソフトウエアで対策を行った場合には大幅な性能低下を引き起こすとの内容を含む記事を発表した。
・バグはインテル製プロセッサのみで発生し、パスワード、ログインキー、キャッシュファイルなどを、カーネルメモリ(基本ソフトの核となる部分で読み書きするメモリ)から盗めてしまう、という内容。本当であれば、インテルにとって致命的ともいえる失態だ。 この情報は直後のインテルの株価にも少なからぬ影響を与えた。いったい、その実態とはどのようなものなのだろうか。
▽このバグはインテルだけの問題ではない
・実はこのバグはインテルだけの問題ではないし、またパソコンだけの問題でもない。極めて広い範囲の影響があるバグであり、すでに2017年11月から業界を挙げて対策が進められていた問題だ。またこのセキュリティ問題は、プロセッサ(=ハードウエア)ではなく、OS(=ソフトウエア)の基本的な構造に関するものであり、各種OS(Windows、macOS、iOS、Linux、Androidなど)に対策が施される予定だ。 また筆者が得ている情報によれば、システムの動作パフォーマンスに対する影響は軽微で、とりわけ一般的なコンピュータ利用者にとっては無視できるレベルのものだという。
・インテルはニュースリリース「Intel Responds to Security Research Findings」で、今回のバグに関する報道を不正確な情報であると反論し、AMD、ARMといった他の主要なプロセッサを開発する企業や、コンピュータ用基本ソフトを開発する複数の企業とともにすでに対策が準備されていることを示唆している。
・The Registerの記事には、もうひとつ不正確な点がある。今回の問題が発生する条件は、「インテルのプロセッサであること」ではない。「ユニファイドキャッシュ」と「投機的実行」という、高速プロセッサを設計する上で使われるふたつのテクニックが揃っていれば、問題は起こり得るということだ。そして現代的な設計のプロセッサは大多数が、このふたつの条件を備えている。
・ARM、AMDもすでに同様の問題への対策を行っていることをステートメントとして発表している。もっと範囲を広げるならば、PowerPCやMIPSといった組み込み系プロセッサへの影響も懸念される。 グーグルも同問題に言及しており、「AMD、ARM、インテルなど、多くのプロセッサ上で動作する基本ソフトで問題が起きる」としている。このことから、ほぼすべてのコンピュータシステムが影響を受けると考えるべきだろう。
▽一般のコンピュータユーザーへの影響は小さい
・対策は太平洋時間の1月9日、各社より発表される見込みだ。しかし、11月末から対策が始まっていることから想像できるとおり、各プロセッサベンダー、基本ソフトベンダーの対応プログラムは開発を終えている。パソコンユーザーには、各メーカーを通じてマイクロコード(CPU内部の動作などを決めるソフトウエアコード)のアップデートが提供される見込みだ。
・具体的には、マイクロコードを更新することで、問題が発生する可能性のある構成をもつプロセッサにはマークを付けておく。基本ソフト側はキャッシュメモリ内が覗き見される可能性を、このマークから判別し、マークが付いているプロセッサの場合は覗き見の可能性が起きない動作へと切り替える、というものだ。その際のオーバーヘッド(本来の処理に加えて、余分にかかる負荷)はシステム全体の負荷に比例して変動するものの、一般的なコンピューティング環境においてはほとんど影響がないというのが関係者の主張だ。
・この問題が指摘されてから、Linuxの開発者コミュニティで問題を避ける実装に変更したところ、パフォーマンスが大幅に低下したとのテスト結果が出たことから、一時は悲観論も広がっていた。しかし、パフォーマンス低下のリポートは、実際の対策を行っているエンジニアが出したものではないことに留意する必要があるだろう。
・このように、当初のセンセーショナルな報道とは裏腹に、一般のコンピュータユーザーへの影響は想像よりも小さくなりそうだ。具体的な性能への影響は1月9日に正式な対応策が各社から発表されて以降に具体的な数字が出てくるが、一方で影響の範囲は広がる。
・パソコンへの対策は一気に進むだろうが、ATMやPOSシステムなどの業務用機器にまで対策が広がるには時間がかかるかもしれない。その間、関係するシステム担当者は注意が必要といえるだろう。
http://toyokeizai.net/articles/-/203505

第一の記事で、 『アルファベイには4万人の出品者が集い、拳銃や違法薬物、クレジットカードや決済サービスの暗証番号、マルウエア(ウイルスなど悪意のあるソフトウエアの総称)などを販売していた。通常のECサイトと同様に出品者を評価するシステムを備え』、『インターネット空間は氷山に例えられる。米グーグルなどの検索サイトからたどり着けるのが、表面にある「サーフェスウェブ」。一説には、インターネット空間の1%にも満たないともいわれているという大規模ぶりには驚貸される』、などその規模の大きさには驚かされる。  『16年に発見された新種のマルウエアは1億2700万種類。毎秒4件の新種が誕生し、12年の4倍に膨れ上がった。闇市場を通じて攻撃ツールが様々なハッカーに行き渡り、改良をされてまた売買される』、というのは恐ろしい話だ。 『過去最大規模のサイバー事件の震源地も、またダークウェブだった。ワナクライのもとになったのは、米国の諜報機関、国家安全保障局(NSA)が極秘裏に開発していたハッキングソフトだとされる。NSAからこのソフトを盗み出し、売りさばいたのがダークウェブ上で活動するハッカー集団「シャドー・ブローカーズ」だった』、NSAも罪作りな管理ミスをしたものだ。 『「火消し」の役割を担う「CSIRT(シーサート)」。セキュリティー関連のトラブルを素早く検知し、即応する社内組織の総称だ。設置する企業が近年急増し、日本シーサート協議会の加盟数は8月末時点で242団体と、3年間で4倍になった・・・ダークウェブに対応するには更なる進化が必要だ。 ダークウェブなどからリスク情報を得て、先回りして対策する「脅威インテリジェンス」。 企業という城を守るために、あえて敵の懐に入り込み攻めに出る。「忍者」のような役割だ』、とはいやはや大変な時代になったものだ。
第二の記事で、 『イスラエル政府によると、軍や諜報機関の出身者が立ち上げたセキュリティ関連の企業は約400社に及び、昨年は83社のサイバーセキュリティスタートアップが新たに設立された。人口約860万人の小国ながら、すでにアメリカに次ぐ規模を誇っているのだ』、というのは、やはり凄い国だ。 『ハッカー側がどのような攻撃を仕掛けてくるか、軍での経験などを生かした優秀なホワイトハッカーを有するイスラエル側と協業する意義は非常に大きい』、頼もしい存在のようだ。日本企業も大いにその力を活用して、情報セキュリティーのレベルを上げてもらいたいものだ。
第三の記事で、 『「AMD、ARM、インテルなど、多くのプロセッサ上で動作する基本ソフトで問題が起きる」としている。このことから、ほぼすべてのコンピュータシステムが影響を受けると考えるべきだろう』、というのは深刻な事態だが、 『対策は太平洋時間の1月9日、各社より発表される見込みだ』、 『一般のコンピュータユーザーへの影響は小さい』、ということで、一安心してよさそうだ。
タグ:東洋経済オンライン スプラウト 日経ビジネスオンライン 本田 雅一 パソコン遠隔操作事件 WannaCry 海野 麻実 情報セキュリティー・サイバー犯罪 (その3)(増殖続けるダークウェブ、サイバー攻撃の温床に、日本の「サイバー攻撃対策」に募る大きな不安 イスラエル発イベントが東京で開かれた意味、インテルを突如襲った「致命的なバグ」の実態 この問題はいったいどれだけ深刻なのか) 「増殖続けるダークウェブ、サイバー攻撃の温床に 企業や官公庁の幹部のメールも筒抜け」 世界同時多発サイバー攻撃の震源地となった「ダークウェブ」 アルファベイ 4万人の出品者が集い、拳銃や違法薬物、クレジットカードや決済サービスの暗証番号、マルウエア(ウイルスなど悪意のあるソフトウエアの総称)などを販売していた 通常のECサイトと同様に出品者を評価するシステムを備え インターネット空間は氷山に例えられる。米グーグルなどの検索サイトからたどり着けるのが、表面にある「サーフェスウェブ」。一説には、インターネット空間の1%にも満たないともいわれている 水面下に存在するのが、一般には公開されていない「ディープウェブ」 ディープウェブの最下層には、通常のウェブブラウザーにアドレスを入力してもアクセスできない領域が存在する。これが「ダークウェブ」だ Tor(トーア)」という匿名化ツール 13年に摘発された「シルクロード」 16年に発見された新種のマルウエアは1億2700万種類。毎秒4件の新種が誕生し、12年の4倍に膨れ上がった 闇市場を通じて攻撃ツールが様々なハッカーに行き渡り、改良をされてまた売買される。サイバー攻撃を請け負うサイトもあり、企業のリスクを闇市場が大きく増幅させている 「身代金」を支払うよう求められた ワナクライのもとになったのは、米国の諜報機関、国家安全保障局(NSA)が極秘裏に開発していたハッキングソフトだとされる NSAからこのソフトを盗み出し、売りさばいたのがダークウェブ上で活動するハッカー集団「シャドー・ブローカーズ」だった 免許証の値段は「900円」 日本関連の出品で特に目立つのが、クレジットカード情報。値段は数百~2000円程度とまちまちだが、「FRESH CARDS!」と強調し、停止措置が取られていないカードを販売しているケースもある 今春からダークウェブの監視サービスを本格開始 企業幹部のメールも筒抜け サイバー攻撃の最も基本的な防衛方法は、ウイルス対策ソフトやファイアウオールなどを設置し、攻撃を入り口で防ぐこと 第1段階は「城壁」 火消し」の役割を担う「CSIRT(シーサート)」。セキュリティー関連のトラブルを素早く検知し、即応する社内組織の総称だ。設置する企業が近年急増 日本シーサート協議会の加盟数は8月末時点で242団体と、3年間で4倍になった 先進的な日本企業はようやく、「城壁」に「火消し」を加える段階 ダークウェブに対応するには更なる進化が必要だ。 ダークウェブなどからリスク情報を得て、先回りして対策する「脅威インテリジェンス」。 企業という城を守るために、あえて敵の懐に入り込み攻めに出る。「忍者」のような役割だ 脅威ハンティングの分野で台頭しているのが、諜報機関の発達したイスラエル 深いレベルのインテリジェンスを民間が担うのは限界がある。公安機関含め官民が連携することが重要だ 「日本の「サイバー攻撃対策」に募る大きな不安 イスラエル発イベントが東京で開かれた意味」 サイバーテック東京2017 ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「サイバーセキュリティは国家安全保障に不可欠であり、経済成長をも牽引する」と豪語。同分野における世界のリーダーを目指してきた 軍や諜報機関の出身者が立ち上げたセキュリティ関連の企業は約400社に及び、昨年は83社のサイバーセキュリティスタートアップが新たに設立された 人口約860万人の小国ながら、すでにアメリカに次ぐ規模を誇っているのだ サイバーリーズン すでに先陣を切っている中国の存在 「インテルを突如襲った「致命的なバグ」の実態 この問題は、いったいどれだけ深刻なのか」 The Register インテル製プロセッサのバグを原因とする深刻なセキュリティホールが発見された」と報道 実はこのバグはインテルだけの問題ではないし、またパソコンだけの問題でもない。極めて広い範囲の影響があるバグであり、すでに2017年11月から業界を挙げて対策が進められていた問題 AMD、ARM、インテルなど、多くのプロセッサ上で動作する基本ソフトで問題が起きる」 対策は太平洋時間の1月9日、各社より発表される見込みだ 一般のコンピュータユーザーへの影響は小さい
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スパコン詐欺(アベ友スパコン詐欺 3年13回の怪しい増資と金満生活の闇、「異例の捜査」で検察は誰を追い詰めたいのか 政界関係者の関与は?、安倍政権の命取りになりかねないスパコン詐欺疑惑) [科学技術]

今日は、驚きの スパコン詐欺(アベ友スパコン詐欺 3年13回の怪しい増資と金満生活の闇、「異例の捜査」で検察は誰を追い詰めたいのか 政界関係者の関与は?、安倍政権の命取りになりかねないスパコン詐欺疑惑)を取上げよう。

先ずは、12月9日付け日刊ゲンダイ「アベ友スパコン詐欺 3年13回の怪しい増資と金満生活の闇」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・スーパーコンピューター開発の「ペジーコンピューティング」による助成金詐欺事件。元取締役が東京地検の調べに対し、不正は「社長の指示だった」と供述、社長の斉藤元章容疑者(49)も不正を認める供述を始めたという。
・「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)からの助成金は、ペジー社への35億円だけでなく、斉藤容疑者が役員を務める関連会社にも渡っていたようだが、やはり“永田町人脈”がモノを言ったのか? 斉藤容疑者は少なくとも別の3社で代表を務めているが、巨額投資が必要なスパコン開発で資金繰りに四苦八苦していたようだ。
・民間の信用調査機関などによると、関連会社で尋常ではない増資が繰り返されていた実態が見受けられるのだ。これらの増資に助成金が充てられていた疑いもあり、特捜部が資金の流れを調べているという。 ペジー社のスパコンの“核”である高効率液浸冷却装置の製造をする「エクサスケーラー」社は、2014年4月に資本金5000万円で設立されたが、その後、今年6月までの3年間で、実に13回もの増資を行い、現在資本金は27億円にまで膨らんでいる。
・「メディアなどで技術力は評価を受けていましたが、売り上げや利益を思うように計上できず、財務状態は追いついていなかったと推測されます。資金は助成金や投資としての直接調達がメインだったようです」(調査機関関係者)
▽会社はカツカツも……
・ペジー社の事業が国の認定を受けるだけでなく、斉藤容疑者が内閣府の有識者会議で委員を務めていることも、投資を受けるための“信用力”につながっていたとみられる。 そして驚くのは、会社はカツカツのはずなのに、斉藤容疑者が住んでいたのが、御茶ノ水の高台にある高級賃貸レジデンスだということ。17階建てのビルは下はオフィス、上層部の4フロアが住宅で、1戸の広さはナント126平方メートル。「外国人エグゼクティブにもお薦めのゆったりとした間取り」と不動産情報サイトで紹介されるようなゴージャス物件だ。
・斉藤容疑者は、安倍首相と親しい元TBS記者の山口敬之氏が事務所にしていた高級賃貸レジデンスの費用も負担していたと「週刊新潮」に報じられているが、そうした費用はどこから出ていたのか。また、自転車操業の財務力にもかかわらず山口氏に便宜を図っていたとしたら、そこまでしたのはどうしてなのか。闇は深そうだ。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/219141/1

次に、ライターの河野 正一郎氏が12月8日付け現代ビジネスに寄稿した「スパコン詐欺事件「異例の捜査」で検察は誰を追い詰めたいのか 政界関係者の関与は?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽「彼とは深く付き合わない方がいいと…」
・東京地検特捜部が12月5日、スパコン開発会社「PEZY computing」(以下P社)の社長、斉藤元章容疑者らを逮捕した。経済産業省が所管する国立研究開発法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)から約4億円の助成金を詐取した容疑が持たれている。
・メディアにも多数出演・登場し、「スパコン開発の第一人者」といわれた斉藤容疑者が、「安倍首相に最も近いジャーナリスト」と呼ばれる元TBSワシントン支局長だった山口敬之氏と昵懇であったと報じられていることもあって、ネットでは「P社に多額の助成金が渡ったのは、森友学園や加計学園と同じく、”忖度”によって便宜が図られた、という構図なのではないか」などと憶測を呼んでいる。
・助成金が認められる経緯に「忖度」があったのか、なかったのか−−。スパコンの「スパ」にひっかけて、「もりかけスパ」などと書き込む人もいるように、この事件は、逮捕容疑(=事件の本筋)とは別の「事件の背景」に注目が集まっている。 NHKの早朝の特ダネで事件が明るみに出た12月5日午前、私は、斉藤容疑者が米国で起業した頃に出会ったという知人X氏に「話を聞きたい」とメールを送った。すると、即座に折り返しの電話がかかってきた。X氏は早口でまくし立てた後、私にこう言った。
・「“彼”とは深く付き合わないほうがいい、と何度も言っておいたのに…」 “彼”とは、山口敬之氏のことだった。 斉藤容疑者と山口敬之氏との関係を最初に報じたのは週刊新潮(2017年6月15日号)だった。山口氏がP社の顧問のような役割を務め、東京・永田町のホテル内の部屋(賃料月額が約130万円)を斉藤容疑者の資金提供を受けて使っていることを報じた。(https://www.dailyshincho.jp/article/2017/06071659/?all=1
・X氏によると、斉藤容疑者はスパコンを研究機関などに売り込むとき、山口氏を同行させ、研究機関などの担当者に、「安倍総理の信頼が厚い方で、当社の顧問です」と紹介していたという。X氏も何度か山口氏と会ったことがあるが、話題は政治のことばかりで、「スパコンについては知識がない人なのだろう」という印象を受けたという。
・斉藤容疑者は最近、X氏に「金が足りない。本当はコンピューターの製作をしたいが、このところは金集めが仕事の大半になってしまっている」と話していた。NEDOからの助成金で得られるのは開発資金の3分の2にすぎない。少なくとも3分の1は自前で調達しなければならなかったからだ。
・X氏は、「斉藤(容疑者)は開発資金を提供してくれる企業経営者らを探せばよかったのに、大手企業からの出資を受けることには消極的だった」と話したうえで、こう付け加えた。「その結果、国からの補助金を口利きしてくれる期待がもてる人と仲良くなったのだろう」
・この発言はあくまでX氏の見立てだ。実際に山口氏がP社顧問としてどんな役割を果たしていたかはわからない。詐取した助成金の使いみちを調べていけば、わかることもあるかもしれない。 だが、別の人物もX氏と同じような感想を抱いていた。P社が開発したスパコンを導入予定だった研究者Y氏だ。
▽研究者たちの悲鳴
・Y氏は斉藤容疑者とこれまで3回ほど会ったことがある。斉藤容疑者は山口氏を紹介したあと、「弊社はベンチャーですが、官邸との関係もあるので、信頼していただいて大丈夫です」と言い、隣りにいた山口氏は自著の『総理』をY氏に手渡したという。 Y氏は山口氏のことを知らなかったが、自宅に戻って渡された本を読み、P社を信頼したという。
・Y氏に事件の影響を聞くと、途端に早口になった。「たいへんなことになった。研究に大きな支障が出る。スパコンは納入されるのか。知っている情報があれば教えてくれませんか」 Y氏の素性を明らかにできないため、あいまいな表現になることをご了承いただきたいが、話を要約するとP社のスパコンには以下のような特徴がある。
 +計算性能が高い。
 +装置が小型(小さい体積)なので、装置を置く敷地が必要ない。
 +従来のスパコンに比べ、維持費や電気代がケタ違いに安い。
 +AI研究に勝った国が「次の産業革命の主役」と言われているなか、世界各国がいまAI研究に血道を上げている。P社のスパコンは日本が唯一リードする技術で、今後の研究に欠かせないものだった。
・Y氏はこうも言った。「2020年までにP社のスパコンを導入することを検討しており、どう活用するか研究者同士で話し合っていた矢先に事件が発覚した。P社が不正をしていたのなら、それは罰せられないといけない。だが、せめてスパコンが納入された後にしてほしかった……」
・法治国家において刑法犯と疑われる人物を野放しにすることが許されるはずはないし、スパコンの納入が済めば、詐欺容疑が持たれているP社に利益が生じることになる。その点で、Y氏の悲鳴はお門違いの指摘にも見える。
・一方で、次の世界的な産業革命の主役の座を射止めるか否かは、日本の“国益”をかけたテクノロジー開発競争といえる。今回、特捜部が事件に着手したことで、日本のAI研究スピードは世界各国に遅れをとることになるかもしれない。 刑法犯罪と“国益”を天秤にかけたとき、私はあえて批判されるのを覚悟したうえで、「Y氏の訴えは理解できないわけでもない」と思ってしまった。
▽検察の本当の狙い
・捜査する側の東京地検特捜部も、そのような影響は検討したうえで事件に着手したと思う。それでも特捜部が強制捜査に及んだ背景に、「この事件を端緒に政治家を巻き込んだ汚職事件に発展するのではないか」という見方がある。
・証拠資料のフロッピーを改ざんした事件が明るみに出た2010年以降、東京地検特捜部は政治家を逮捕する事件に着手していない。「最強の捜査機関」の復権をかけて、強制捜査に及んだのではないかというものだ。
・だが、関係者の話を総合すると、その見方は早計のようだ。ある検察関係者は私にこう話した。「検察が越年捜査するのは異例のことで、可能性は限りなくゼロに近いでしょう。特捜部は斉藤容疑者を年末に起訴して捜査を終了すると考えるのが自然です」
・そもそも、国会議員には不逮捕特権があるため、国会が開かれている間に逮捕するには、国会での議決が必要になる。いま開会中の特別国会は12月9日に閉会する予定で、年明けの通常国会の召集日は2018年1月19日とも目されている。特捜部が国会議員逮捕を視野に入れているとすれば、かなりタイトな日程だ。
・ある検察関係者は私に、今後の捜査の行方についてこう漏らした。「捜査が進んで、仮に山口氏に違法な金が流れていたことがわかったとしても、大臣でもない山口氏には職務権限はないので収賄罪にはならず、問える罪は所得税法違反ぐらい。政治家ならさらに逮捕のハードルが上がる。そうなると、今回の捜査の結果は、世界でも高性能なスパコン開発が頓挫する可能性が高まるだけということになる。今回の事件着手には道理がないんです」
・事件が着手された12月5日は、奇しくも山口氏から強姦されたとして、ジャーナリストの伊藤詩織さんが慰謝料を求めた民事訴訟の第1回口頭弁論が開かれた日だった。
・これについてある政界関係者は「特捜部の案件だから、官邸の了承を受けたうえで捜査に踏み切っているはず。山口氏が立件されるとは思えないが、事件との関連でいろいろと報道される。最近の山口氏の言動などを快く思わない官邸が、山口氏と関係を断つために事件を利用した、とみることもできるのではないでしょうか」と言い、こう付け加えた。「仮に、今回の事件に政府が関与した疑いが出てきたとしても、特別国会が閉会すれば政府は追及される機会もないし、クリスマスと正月を過ぎれば、多くの人が事件のことを忘れ去っているでしょう。事件に着手するには最高のタイミングだったのかもしれません」
・山口氏に今回の事件について、SNSと携帯電話のメールを通じ、斉藤氏との関係など尋ねたい項目を送った。返信がないため、直接電話すると、山口氏は「いま電話に出られないので、すみません」と言って電話を切った。混乱している様子はうかがえるが、元気そうな声だった。それ以後も携帯電話で接触を試みたが、今回の事件について詳細な取材をすることはできなかった。(回答があり次第、追記したい)
・斉藤氏が事業について説明する場に同席していたとして、それで「山口氏の深い関与があった」とみるのも短絡的だろう。この事件にはどんな「背景」があるのか。今後、P社のスパコン開発は誰が担うのか、いや、そもそも開発自体が中止されるのか。誰かの「思惑」や「忖度」で国益が失われる結果になれば、被害者は私たちになる。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53767

第三に、元レバノン大使の天木直人氏が12月15日付け同氏のブログに掲載した「安倍政権の命取りになりかねないスパコン詐欺疑惑」を紹介しよう。
・いま安倍政権が一番恐れている事は、リニア新幹線談合疑惑とスパコン詐欺疑惑の真相が国民の前に白日にさらされる事だろう。 だからこそ、どちらもその報道が自粛されている。 リニア新幹線談合疑惑については機会を改めて書いてみたい。 ここではスパコン疑惑についてその深刻性について書くことにする。
・この問題を最初に詳しく取り上げたのは、先週の週刊新潮(12月14日号)だった。 その後、日刊ゲンダイやいくつかの週刊誌が書き、直近ではきのう発売の週刊実話(12月28日号)が取り上げた。 ネット上の書き込みは言わずもがなである。 ところが、大手新聞やテレビの政治娯楽番組で取り上げられることはない。
・まさしく安倍首相にとって、もっとも都合の悪い疑惑なのだ。 どこが都合が悪いのか。 もちろん、詐欺容疑で逮捕された斎藤元章というスパコンベンチャー会社の社長が、経産省管轄の国立研究開発法人から助成金を不正に受け取って流用していた疑いがあるからだ。 公金横領に準ずる疑惑であるから、安倍政権の監督責任は免れない。
・しかし、より深刻なのは、この斎藤容疑者が安倍人脈につながっているということだ。 その中でも、斎藤氏が、あの沙織さん準強姦疑惑の山口敬之元TBS政治部記者のスポンサー(山口氏が使用してきたキャピタル東急ホテル代の肩代わりなど)だったという事実だ。
・いうまでもなく山口氏は安倍首相側近の御用記者であり、それを忖度した警察、検察官僚が山口氏を無罪放免したという、とんでもない疑惑が取りざたされている。 そんな中で、今度は山口氏のホテル代肩代わり疑惑だ。 これが事実なら脱税疑惑に発展する。
・しかも、この斎藤氏は安倍首相よりも麻生副総理に近いという。 麻生副総理の口利きで助成金を手にし、麻生副総理の口利きで斎藤氏が山口氏のスポンサーになったという疑惑までささやかれている。
・まさしく究極の安倍人脈犯罪疑惑だ。国家権力犯罪疑惑だ。 もし特捜や国税が本気で追及したら安倍政権が吹っ飛ぶ疑惑に発展する可可能性がある。 もし国民がこのスパコン詐欺疑惑の本当の深刻さを知れば、今度こそ世論は安倍政権を許さないだろう。
・パソコン詐欺疑惑について、テレビや大手紙がスルーするはずだ。 テレビや大手紙がスルーすれば大多数の国民は知らないままだ。 かくてこのパソコン疑惑は、その深刻性にもかかわらず、いや深刻であるがゆえに、なかったことにされて終わるに違いない(了)
http://kenpo9.com/archives/2989

第一の記事で、 『会社はカツカツのはずなのに、斉藤容疑者が住んでいたのが、御茶ノ水の高台にある高級賃貸レジデンスだということ。17階建てのビルは下はオフィス、上層部の4フロアが住宅で、1戸の広さはナント126平方メートル』、と私生活は優雅そうだ。
第二の記事で、『週刊新潮(2017年6月15日号)・・・山口氏がP社の顧問のような役割を務め、東京・永田町のホテル内の部屋(賃料月額が約130万円)を斉藤容疑者の資金提供を受けて使っていることを報じた』、山口氏については、昨日のこのブログでも紹介した「アベ友」の1人である。賃料月額約130万円を負担してでも、斉藤容疑者には利用する価値があったらしい。 『大手企業からの出資を受けることには消極的だった』というのは、支配権を握られるのを警戒し、公的助成に走ったのかも知れない。 『「捜査が進んで、仮に山口氏に違法な金が流れていたことがわかったとしても、大臣でもない山口氏には職務権限はないので収賄罪にはならず、問える罪は所得税法違反ぐらい。政治家ならさらに逮捕のハードルが上がる。そうなると、今回の捜査の結果は、世界でも高性能なスパコン開発が頓挫する可能性が高まるだけということになる。今回の事件着手には道理がないんです」』、と特捜部の意図はいまだはっきりしない。
第三の記事で、『斎藤氏は安倍首相よりも麻生副総理に近いという。麻生副総理の口利きで助成金を手にし、麻生副総理の口利きで斎藤氏が山口氏のスポンサーになったという疑惑までささやかれている。
まさしく究極の安倍人脈犯罪疑惑だ』、というのはその通りだ。ただ、『テレビや大手紙がスルーすれば』、とあるが、日経新聞は12月5日夕刊で「スパコン助成金4.3億円詐取疑い 東京地検、「暁光」開発のベンチャー社長ら逮捕」と第一報を報じている。
上記の記事からは、肝心のスーパーコンピューター開発がどんな状況にあるのか、さっぱり分らない。本件の捜査が、今後どのように展開するか、注目していきたい。
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電気自動車(EV)(その2)(トヨタとホンダが「EVシフト」に乗らず全方位体制を貫く理由、EVシフトで明暗分かれる 自動車部品メーカーの末路、トヨタ連合がEVで反撃 基盤技術を標準化 未来の勢力図見えず、EVを軽視する日本の自動車産業は「ゆでガエル死」する) [科学技術]

電気自動車(EV)については、9月20日に取上げたが、今日は、(その2)(トヨタとホンダが「EVシフト」に乗らず全方位体制を貫く理由、EVシフトで明暗分かれる 自動車部品メーカーの末路、トヨタ連合がEVで反撃 基盤技術を標準化 未来の勢力図見えず、EVを軽視する日本の自動車産業は「ゆでガエル死」する) である。

先ずは、10月31日付けダイヤモンド・オンライン「トヨタとホンダが「EVシフト」に乗らず全方位体制を貫く理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・11月5日まで東京・有明の東京ビッグサイトで開かれている東京モーターショーでは、各社が電気自動車(EV)シフトを打ち出している。その一方で、ハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)などを含めた全方位体制を貫く姿勢を示したメーカーもある。トヨタ自動車とホンダだ。
・流線形で漆黒のボディは、まるで黒豹のようだ。その姿をカメラに収めようと、周りを何重にも囲む来場客がシャッターを切る。スポットライトとカメラのフラッシュを浴び、その車は恍惚としているようにさえ見えた。 東京モーターショーの一般公開で初の日曜日を迎えた10月29日。トヨタが世界初公開したコンセプトカー「GR HV SPORTS concept」の周囲には多くの人だかりがあった。GRとは、トヨタが世界ラリー選手権などに参戦するモータースポーツ活動「GAZOO(ガズー)レーシング」の頭文字から名付けられたスポーツカーブランドだ。
・電気自動車(EV)シフトが加速するこの時代、他の自動車メーカーならEVタイプのスポーツカーを展示しそうなものだが、GR HV SPORTS conceptは「スポーツカーと環境技術を融合した新たなクルマの楽しさを提案する」狙いの下に開発されたハイブリッド車(HV)だ。
・その隣に展示されているのは、これまた漆黒のボディの新型「センチュリー」だ。センチュリーといえば、皇室や政治家、財界トップ御用達として知られるトヨタの最高級車。2018年半ばの発売を前に、20年ぶりにフルモデルチェンジされた3代目となる。このセンチュリーもまたHVだ。
・トヨタが「究極のエコカー」と位置付け、莫大な開発資金を注ぐ燃料電池車(FCV)のバスも展示されている。この燃料電池バスは、燃料となる水素を車載の高圧タンクから燃料電池に供給し、そこで空気中の酸素と化学反応させて作った電気でモーターを駆動させ走行する。世界初の量産FCV「MIRAI」向けに開発したものと同じシステムで、外部への電力供給能力を備えているため、災害などの停電時に避難所や家電の電源としての利用も可能だ。
・すでに今年、トヨタは東京都交通局へ2台の燃料電池バスを納車しており、今年3月から東京駅丸の内南口~東京ビッグサイト間を運行。さらに2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、100台以上導入予定といい、トヨタの開発担当者は「東京都だけでなく、多くの自治体から引き合いがある」と話す。
・一方、トヨタは今回、EVコンセプトカーも出展している。それが「TOYOTA Concept-愛i」だ。今年1月に米国ラスベガスで初公開した4輪モデルに加え、今回のモーターショーで小型モビリティ「Concept-愛i RIDE」と、セグウェイ風の3輪電動スクーター「Concept-愛i WALK」を新たに追加した。
・実は、このシリーズの開発を進めているのは、EV開発部隊として昨年12月にトヨタが発足させたEV事業企画室だ。だが、開発の主眼を置いているのはEV技術そのものというよりも、人工知能(AI)技術にある。 車がドライバーの表情や動作、疲労度や覚醒状態などを分析し、感情や好みを理解する。状況次第で自動運転モードに切り替わったり、話し掛けたりする。コンセプトは「人を理解し、共に成長するパートナー」を目指すことにある。
・こうしたトヨタの出展車両から見える戦略は、決してEVに傾斜することはなく、HVやFCVなどにウイングを広げ、市場がどう振れても対応できる全方位体制を築き上げることだ。EVの領域はあくまで近距離コミューターなどで、HVとプラグインハイブリッド車(PHV)が乗用車、FCVは路線バスや宅配トラックに棲み分ける。その方針にブレがないことを、東京モーターショーで改めて示した形だ。
・こうした全方位戦略を貫く自動車メーカーは何もトヨタだけではない。 ホンダも今回、EVコンセプトカー「Honda Urban EV Concept」を日本初披露し、このモデルをベースとしたEVの市販化を2019年に欧州で、2020年には日本で開始する方針を明らかにした。ホンダは2030年までに販売総数の3分の2を電動化することをすでに発表しており、EVの発売はその戦略の一貫だ。
・だが、ホンダもHVを90年代から市販化し、累計販売台数は200万台を超える。八郷隆弘社長が「電動化の中心はあくまでHVとPHV」と明言している通り、EVが収益の主力になるとは考えていない。事実、モーターショーでは「CR-V」や「ステップワゴン」などHVのラインナップ拡充のPRも怠っていない。
・トヨタとホンダに共通するのは、他社の追随を許さないHVの高い技術を持つがゆえに、その先行者利益を長く享受したい思惑だ。ゆえにEVへの本気度は相対的に低くなる。 今、自動車産業は100年に一度の大変革の時代を迎える。欧州や中国は一気にEVへシフトし、HV技術で先行するトヨタやホンダの追撃にかかる。全方位戦略はその攻勢に耐えられるのか。勝負の趨勢はそう遠くない未来に見えてくる。
http://diamond.jp/articles/-/147800

次に、11月2日付けダイヤモンド・オンライン「EVシフトで明暗分かれる、自動車部品メーカーの末路」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・電動化、自動運転、コネクテッド。11月5日まで東京・有明の東京ビッグサイトで開かれている東京モーターショーの見どころの一つは、この3分野への各社の対応だ。これらに強みを持つ自動車部品メーカーの存在感は今、急速に高まりつつある。モーターショーでも、業界の垣根を超えてしのぎを削る開発競争の一端が垣間見える。
・「得意とする電子・電動化技術を生かし、これから大きな成長分野となる電動化や自動運転の波に対応する事業を力強く推進していく」 日立オートモーティブシステムズの関秀明社長は東京モーターショーでそう話し、電動化システムの3大基幹部品であるモーター、インバーター、リチウムイオンバッテリーなどの事業拡大に注力する方針を示した。 日立オートモーティブシステムズは、総合電機メーカーである日立製作所の100%子会社で、車の中身を支えるメカトロニクス技術やソフト制御技術に強みを持つ。今年7月にはホンダと電動車両用モーターの開発、製造、販売を行う合弁会社を設立し、電動化シフトへの足場固めを進めている。
・車の自動運転に欠かせない基幹部品の開発にも注力する。今回の東京モーターショーでは、車が走行中に障害物をリアルタイムで検知する、世界最小クラスの遠距離レーダーを展示。これまで困難だった遠距離のミリ波を効率よく送受信できるようにし、車の前方200メートル、左右18度の検知性能を確保したという。2020年の製品化を目指す。
・三菱電機も電動化や自動運転、コネクテッドなどの事業強化を鮮明にする。これら三菱電機の最新技術を搭載したコンセプトカーが「EMIRAI4」だ。1999年の「OMNI1」から数えて14台目のコンセプトモデルとなるEMIRAI4は、ヘッドアップディスプレイ(HUD)上に車が進むべき道路や車線をAR(拡張現実)で表示する機能や、ドライバーの顔の向きや視線から脇見・居眠りを検知し自動運転から手動への切り替えを支援する機能などが盛り込まれ、まさに未来のモビリティを体現する。
・今回の東京モーターショーに出展する各メーカーのトップが口をそろえるのは「自動車産業がこれまでにない大きな変革期にある」という認識だ。従来型のエンジン車がEVに置き換われば、約4割の部品が不要になるとされる。特にエンジン周りに関わる部品メーカーには「生き残りをかけた戦いがこれから始まる」との危機感が強い。
・一方で電動化技術や半導体、人工知能(AI)などの強みを持つメーカーにとっては商圏を拡大するチャンスだ。国内外の電機メーカーやIT企業などは一気呵成に攻勢を強める。 日本の製造品出荷額は2000年代以降、電機機械が韓国や台湾の台頭で衰退したこともあり自動車部品産業への依存度が大幅に増加した。素材を含めた就業人口は130万人に上り、日本の製造業は自動車部品産業の“一本足打法”というのが現状だ。その大黒柱が倒壊するような事態となれば、日本経済への打撃は計り知れない。
・100年に一度の大変革期に自動車産業は果敢に立ち向かうことができるのか。生き残りをかけた新時代の覇権争いが始まろうとしている。
http://diamond.jp/articles/-/147929

第三に、11月9日付けロイター「トヨタ連合がEVで反撃、基盤技術を標準化 未来の勢力図見えず」を紹介しよう(▽は小見出し、社名のあとの証券コードは省略)。
・電気自動車(EV)で出遅れるトヨタ自動車を中心とした企業連合が、ようやく「反撃」の動きに出始めた。EV基盤技術の標準化だ。部品のモジュール化が一段と進むEVは、日本のものづくり技術の優位性が失われるリスクも高まる「両刃の剣」でもある。相次ぐベンチャーなどの参入も自動車業界の勢力図を変える可能性を秘める。世界的なEVへのうねりの先にどのような未来像があるのか。各社の手探りが続きそうだ。
▽グループで開発・コスト削減
・「未来の車を決してコモディティ(汎用品)にしたくない」――。トヨタの豊田章男社長が抱いた思いはマツダとの提携、そして10月にデンソーも加わりEVの基盤技術開発会社設立へとまず結実した。 複数企業が、軽自動車からトラックまで幅広く展開できる同じプラットフォーム(車台)、駆動モーター、電池などを開発・共有すればコストを下げられる。その上で、個性を出しにくいEVで「いかにブランドの味を出すかが挑戦だ」と豊田社長は話す。
・永田理・トヨタ副社長は7日の決算会見で、この新会社で「みなで力を合わせ、コストダウンを図りながら、よりよい電動化戦略を進めたい。いろいろな会社の参画を期待したい」と呼びかけた。傘下の日野自動車やダイハツ工業はもとより、今のところ出資先のスバル、提携協議中のスズキが参画に前向きだ。
・「チーム・ジャパン」としてやれることを考えないと欧米・中国勢などと対抗するのは難しいと、スズキの鈴木俊宏社長も2日の決算会見で指摘。好業績をけん引したインドでEV化が「一気に進めば、足元をすくわれるのではと非常に心配」と危惧する。
・独フォルクスワーゲンは、すでに欧米で投入しているEV「e―ゴルフ」の受注を10月から始めた。同社の日本でのEV販売は初めて。2020年に専用車台「MEB」ベースのEVを発売予定で、25年にはグループで新車の4分の1に相当する300万台のEV販売を目指し、同年までにEV50車種を投入する計画だ。
・EVで先行してきた日産自動車、仏ルノー、三菱自動車の連合も20年までにEV専用車台を開発し、モーターと電池も共有。22年までに3社で計12車種のEVを投入する方針。
▽技術の優位性維持「楽観できない」
・日産の新型EV「リーフ」開発責任者の磯部博樹氏は、ガソリン車よりも静かなEVでは「人は細かい振動、モーターや風の音などがもっと気になり出す」と話す。ガソリン車以上に求められるEVの静粛性や振動抑制などに、日本車大手が長年磨いてきたすり合わせの技術こそ「今後も生きる」と強調する。 米テスラ(TSLA.O)、掃除機で知られる英ダイソンが20年までに開発を目指すなど、EVではベンチャーや異業種からの参入も相次ぐ。
・トヨタ系部品会社の幹部は「車は人の命を運ぶ。ベンチャーなどがいきなり安全な車を作るのは難しい」と冷ややかだ。しかし、何年か経って経験を積めば、新規参入組に技術も追いつかれる恐れがあり、自社のものづくりの力が優位であり続けるかは「楽観できない」という。 EVは一般的な自家用車から富裕層向け、移動弱者用など各社用途が異なり、必ずしも同じ土俵で直接戦うわけではない。
・だが、車の保有から利用への動きが強まるなど消費者の価値観は多様化している。日本車が売りにする高品質だけでは勝てなくなるかもしれず、シェアリングサービスが拡充すれば、保有需要を侵食する可能性がある。
▽ベンチャーは水平分業
・政策の後押しでEVの普及が進むインドや中国の市場をにらみ、ベンチャーは動き始めている。  慶応義塾大学の清水浩名誉教授は、インドで100万円以下で買えるEVの普及を目指し、同国で多く利用されるタクシーを開発中だ。清水氏は早くからEV開発に従事し、04年にEV「エリーカ」を開発したことで知られる。
・同氏は、インドのタクシーは軽自動車ベースのマルチ・スズキ「800」が多く、年間20万台の市場規模があるが、まだ足りないとみている。 開発中の車は床を低く、車内や荷室を広くし、航続距離は350キロ超と1日の平均走行距離(約150キロ)に十分な性能にする。
・NPO法人インドセンターのヴィバウ・カント・ウパデアーエ代表は「マルチ・スズキもそうだったが、普及させるには政治の力」が必要として、清水氏の活動を全面支援する。3年後には現地で生産を始め、タクシーから自家用車への展開も見込む。「来年にはEV会社がインドで5社ほど生まれるだろう」といい、車台や部品を他社に提供することも検討している。
・ベンチャーのGLM(京都市)も「水平分業型ビジネスモデルによる新しいものづくり」(小間裕康社長)を進める。 トヨタ出身の技術者らを採用し、EVのスポーツ車を15年から量産。19年には4000万円の高級EVを日本や欧州、中国、中東などで売り、販売1000台を目指す。7月には香港の投資会社傘下入りを発表し、資金力もつけた。
・部品最大手の独ボッシュなど多くの企業が、すでにGLMと組む。同社は中国企業などにEVの車台やモーター、電池をセット販売することも事業の柱にする。GLMと清水氏の会社は米アップルなどと同様で自社工場を持たない。
・トヨタなどの日本車大手がEVでも勝つためには何をすべきか――。 世界の車大手に計測機器などを提供する堀場製作所の堀場厚会長は、ガソリン車などで長年培った技術、「付加価値の高いノウハウ」を磨き続けることだと指摘。デジタル家電で日本勢の衰退を招いた敗因の1つは、技術者の「敵陣流出」だったことにも触れ、すぐには収益にならない研究開発でも技術者を逃がさず「長く育てる」ことだと強調する。
・欧米の車メーカーや新規参入企業などはこれまでの「車を作って売る」だけでなく、車台や部品、サービスの提供など新たな収益源も得ようとしている。 コンサルティング会社ローランド・ベルガーの貝瀬斉パートナーは、日本車大手は戦場の広がりを念頭に置いて「どこでどういう価値を提供し、利益を上げるのか」をしっかり考えることが重要、と話している。
https://jp.reuters.com/article/toyota-ev-idJPKBN1D80EI

第四に、ITジャーナリスト・ライターの中尾真二氏が11月27日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「EVを軽視する日本の自動車産業は「ゆでガエル死」する」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・このところ自動車業界が騒がしい。タカタ、神戸製鋼、三菱自動車、日産、スバルのスキャンダルを見るに、自動車業界の劣化が止まらない、と言われても反論できない状態だ。自動車業界を中心とする製造業は、日本の産業の根幹を支える。この状況に暗澹たる気持ちになる。 別に憂国の士を気取るつもりはないが、このままでは本当に日本の産業はダメになりかねないと思っている。
・これにはメディアの責任が大きい。テレビなどでは「日本人すごい!」という切り口で、日本の文化や産業の良さをことさらに強調している。日本人の自己満足を満たすように作るメディアの「自己満足バイアス」は、衰退の裏返しではないのか。
▽EVよりハイブリッドがいい、と安心しきっている場合か
・どのような点で危機感不足を感じるのか。国内自動車産業に根付くマスコミやジャーナリストの危機感不足である。筆者も足元はこのメディア業界に属しているため、その空気感は肌で感じる。 記事などで目立つ論調は、ざっくり言えば「EVは普及しないのでハイブリッドで十分」という意見だ。 正直なところ、界隈で取材を重ねる筆者も近い考えを持った時期もあった。
・しかし、日本や欧州においてEV(EVはFCV含むZero Emission Vehicle)の普及には時間がかかるものの、この流れは止められないことは誰もが認めるはずだ。グローバルでは中国のNEV法が施行される2019年がひとつのターニングポイントになるだろう。結果、筆者の意見としては「慌てる必要はないが、静観している場合ではない」というものだ。
・この現状で自動車業界の関係者やアナリストには、日本の自動車業界を良くも悪くも信頼しきっている論調が強い。 曰く、「EVはトータルでエコではない(Well to Wheel:油田から車輪まで。ちなみにWell to WheelでCO2排出量はEVの方が内燃機関よりも低いと言われている)」「製造から廃棄までの排出CO2を考慮せよ」「モーター、バッテリー技術はコモディティ化しているので日本メーカーが本気を出せばすぐに追いつける」「走行距離、充電時間、コストなどからEVは市場のメインストリームにはならない」といった声だ。
・このような論調にあえて警鐘を鳴らしたい。そこには理由がある。 というのは、この状況が出版や家電といった衰退産業における、かつての論調に通じるものを感じるからだ。
▽自動車も、出版や家電と同じ道を歩むのか
・状況変化に対して楽観視した結果、「ゆでガエル」になった日本の産業をいくつか知っている。念のため、ゆでガエルとは、水から火にかけられたカエルは徐々に温められるため茹でられていることを知らず、気がつくころには茹で上がっているという状態だ。
・出版業界がわかりやすい。筆者はエンジニアを経て紙の時代から出版業界に入り、技術系の書籍や雑誌に20年以上携わってきた。出版業界もいまや構造不況業種といってよい。あちこちで制度疲労を起こしている。出版業界は、独占禁止法の例外規定による価格維持制度と、取次という特殊なサプライチェーンの成功事例から脱却しきれず、デジタル対応を始めとする事業転換のタイミングを逃した。従来型の流通を軸とした既得権の範囲にとどまるビジネスが多く、投資機会も逸している。結果として衰退は現在進行系である。
・取材先としてウォッチしてきた家電や電子機器業界も然り。独自技術と品質へのこだわり(自体は悪くはないのだが)が、結果的に変革を阻害し、後発国に出し抜かれた。往年の日本ブランドがいくつも中国資本となり、残っている企業はほぼ国内市場でしかプレゼンスを発揮できていないのは周知である。 どちらの業界も既存ビジネスの成功体験から抜け出せず、環境変化を否定的かつ楽観的にとらえ、「まだいける」という判断ミスと、機会損失を生んだ。これらの蓄積が構造不況につながり、産業衰退を引き起こしたと言っては言い過ぎだろうか。
・筆者には、前述のような自動車業界におけるメディアの楽観的かつ現状肯定的な論調が、かつての出版業界や家電・電子機器業界の声と、どうしてもかぶって聞こえてしまう。
▽業界が思っているほど参入障壁は高くない
・ならば、ゆでられたカエル側の視点で、なにか教訓はあぶりだせないだろうか。 クルマづくりは無数の部品と多数のコンポーネントの組み合わせだ。単に組み立てるだけでなく完成品としてのバランスと協調は、モーターやバッテリーを調達できる程度では、難しいという意見がある。つまり、大手自動車メーカーにだけクルマ作りの素地があるという見解だ。
・これに対しての反論はテスラの例がいちばんわかりやすい。テスラは生産体制や品質にトラブルは見られるものの、着実に課題に対応している。 自動車業界が思っているほど、すでに自動車という製品は特殊なものではないのかもしれない。日本ではGLM、クロアチアのリマック・アウトモビリといったEVメーカーの例もある。スーパーカーばかりではない。小型モビリティのEVメーカーは国内外に無数に存在する。その中には大手メーカーをスピンオフしたエンジニアがかかわっていることもある。
・確かにメルセデスやトヨタのようなクルマは作れないかもしれないが、大手完成車メーカーもすべて独自技術で成立しているわけではない。関連する無数のサプライヤーやパートナーの分散したノウハウは無視できないものだ。 したがって現在、世界の主要メーカー以外はクルマが作れない、というのは驕り以外のなにものでもない。
・日本の家電メーカーは、この驕りによって韓国や中国のメーカーに負けた。いまでも日本製品のブランドは残っているが、グローバルのコンシューマ向け市場はサムスン、LGに押さえられ、通信機器やPCでは、HUAWEI、レノボ、ASUSに勝てないでいる。日本市場だけ見ていると実感がわかないかもしれないが、海外では「日本製品は品質が高い」という神話だけが生き残っており、市場では日本製品はほとんど見かけない。品質だけでは勝てないグローバル市場の現実だ。
▽EVは当面普及しないという楽観はガラパゴス携帯の失敗と同じ
・EVは当面実用化されない、という論調は最近は収まりつつあるが、充電スポットの整備や充電時間を考えて、EVの普及は相当な時間がかかるため、じっくり腰を据えてかかればいいという意見は根強い。これは総論としては間違っていない。たとえば、明日から世界中の内燃機関自動車の製造をストップしたとして、街中のクルマがEVに置き換わるには十年単位の年月が必要だ。
・しかし、現実にZEV規制(新車生産のゼロエミッションビークル比率)が始まれば、状況は変わってくるだろう。もちろんそれでも市場や産業界が追従せず、普及しない可能性もある。現在の基準で判断するのは危険だ。
・これと本質的に似た状況で、結果失敗をしたのが通信事業者と携帯電話メーカー。いわゆるガラパゴスと言われた現象だ。 ガラパゴスについて改めて説明するまでもないと思う。 グローバルで進む通信事業の分社化、オープン化を否定し、独自の機能品質にこだわったガラケーエコシステムとその崩壊に至る一連である。NTTなど通信キャリアの解体(分社化)ができないため、メーカーは端末ビジネスを放棄せざるを得ず、キャリアはARPUビジネス(ユーザー当たりの利益)から抜け出すことができず、直営店舗でさえあやしげな抱き合わせ契約と、高価な端末の分割払いでユーザーの囲い込みに腐心している。しかも売れている端末は海外製品ばかりだ。
・思えばかつて、通信事業者や端末メーカーも「スマートフォンは時期尚早」「端末と回線を切り離すと品質が維持できない」「iPhoneや中国製品に脅威となる新技術はない」などと豪語していた。どれも当時の市場環境からすると間違いではなかった。しかし気がつけばこの有様だ。日本は、世界有数の通信インフラと関連要素技術を持ちながら、国際競争力を発揮できないどころか、国内でも凡庸な商用環境しか提供できていない。
▽スマホやITではなく日本経済はクルマが売れてナンボ
・自動車業界に話を戻す。 内燃機関を捨ててすべてをEVにしろとまでは言わない(独自路線を行くなら、それもひとつの戦略ではある)。 「事が動いてからで間に合う」といった認識が最も危険なのだ。 「焦らないでいい」と「なにもしないほうがいい」ということは決してイコールではない。 結果としてなにもしなかったり、既存のビジネスにもたれたままだと、国内自動車産業は、ここまで述べたようないくつかの「ゆでガエル」産業と似たような末路を辿ってしまうかもしれない。
・バッテリーやモーターについて、先端を行く技術を持っているにもかかわらず、後ろ向きにも見えるガソリン車にこだわるのはなぜだろうか。FCVを800万円で市販できるなら、なぜもっと現実的なEVの市場投入に躊躇するのか(大手メーカーが考えていないわけはないだろうが)。世界で戦う自動車メーカーを複数擁する日本の自動車業界であればこそ、もっと強く先進性を押し出すべきだろう。ガソリンもEVも両方やればいい。現にダイムラーもBMWもGMもそうしている。
・すでに通信機器、PC、スマートフォン、ソフトウェア、Webサービスといった領域で、日本企業はグローバル市場で総崩れ状態である。自動車産業もそうなってしまったらと考えると、いたたまれない。 スマートフォンが売れても喜ぶのは海外メーカーばかりかもしれない。政府や自治体の公募でNECや富士通が巨大プロジェクトを落札しても購入されるPCはすべて中国資本になろうとしている。
・日本のソフトウェア産業は、特殊なSIゼネコン構造により海外でのプレゼンスはほぼゼロだ。ソフトウェアサービスやインターネットビジネスにおいては、Google、Amazon、Facebookといったプラットフォームに依存せざるをえない。
・あえて極論すれば、国内で新興IT業界がいくら儲かっても日本全体の景気は良くならない。せいぜい、イロモノIT社長が六本木ヒルズで女子アナ合コンを開くくらいの経済効果しか期待できない。シャンパングラスタワー効果は、リアルにシャンパングラスタワーをやれということではない。
・日本の基幹産業である自動車および製造業は、日本経済そのものに与えるインパクトが大きい。10万円のスマホが10台売れるより、クルマ1台売れたほうが多くの国内産業を救えるかもしれない。クルマの所有が進まないのであれば、クルマの利用が世界トップレベルの市場づくりを目指すなど、強い打ち出しがあってもいい。EVや自動運転、次世代モビリティによって、業界の再編やプレーヤーの交代といった痛みも伴うだろう。が、それを避けるようでは、成長はない。
http://diamond.jp/articles/-/150451

第一の記事で、 『トヨタとホンダに共通するのは、他社の追随を許さないHVの高い技術を持つがゆえに、その先行者利益を長く享受したい思惑だ。ゆえにEVへの本気度は相対的に低くなる。 今、自動車産業は100年に一度の大変革の時代を迎える。欧州や中国は一気にEVへシフトし、HV技術で先行するトヨタやホンダの追撃にかかる。全方位戦略はその攻勢に耐えられるのか。勝負の趨勢はそう遠くない未来に見えてくる』、というのはトヨタとホンダにかなり遠慮した表現だが、本音では疑問符を投げかけているようにも思える。
第二の記事では、 『EVシフトで明暗分かれる』、としながら、機械部品など「暗」の業界が何を考えているのかの説明がないのは、やや物足りない印象だ。
第三の記事で、 『車の保有から利用への動きが強まるなど消費者の価値観は多様化している。日本車が売りにする高品質だけでは勝てなくなるかもしれず、シェアリングサービスが拡充すれば、保有需要を侵食する可能性がある』、というのは、確かにその通りだろう。 『堀場厚会長は、ガソリン車などで長年培った技術、「付加価値の高いノウハウ」を磨き続けることだと指摘。デジタル家電で日本勢の衰退を招いた敗因の1つは、技術者の「敵陣流出」だったことにも触れ、すぐには収益にならない研究開発でも技術者を逃がさず「長く育てる」ことだと強調する』、というのはややキレイ事過ぎる印象を受けた。
第四の記事で、『これにはメディアの責任が大きい。テレビなどでは「日本人すごい!」という切り口で、日本の文化や産業の良さをことさらに強調している。日本人の自己満足を満たすように作るメディアの「自己満足バイアス」は、衰退の裏返しではないのか』、『自動車業界におけるメディアの楽観的かつ現状肯定的な論調が、かつての出版業界や家電・電子機器業界の声と、どうしてもかぶって聞こえてしまう』、『業界が思っているほど参入障壁は高くない』、『EVは当面普及しないという楽観はガラパゴス携帯の失敗と同じ』、などの指摘は同感だ。筆者の経験の裏付けられた強い危機感が伝わってきて、参考になる記事だ。
タグ:トヨタ 三菱電機 ロイター 電気自動車 出版業界 ダイヤモンド・オンライン 中尾真二 日立オートモーティブシステムズ (EV) (その2)(トヨタとホンダが「EVシフト」に乗らず全方位体制を貫く理由、EVシフトで明暗分かれる 自動車部品メーカーの末路、トヨタ連合がEVで反撃 基盤技術を標準化 未来の勢力図見えず、EVを軽視する日本の自動車産業は「ゆでガエル死」する) 「トヨタとホンダが「EVシフト」に乗らず全方位体制を貫く理由」 ハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)などを含めた全方位体制を貫く姿勢を示したメーカーもある。トヨタ自動車とホンダ EVコンセプトカーも出展 「TOYOTA Concept-愛i」 EV事業企画室 開発の主眼を置いているのはEV技術そのものというよりも、人工知能(AI)技術にある 決してEVに傾斜することはなく、HVやFCVなどにウイングを広げ、市場がどう振れても対応できる全方位体制を築き上げることだ トヨタとホンダに共通するのは、他社の追随を許さないHVの高い技術を持つがゆえに、その先行者利益を長く享受したい思惑だ。ゆえにEVへの本気度は相対的に低くなる 「EVシフトで明暗分かれる、自動車部品メーカーの末路」 従来型のエンジン車がEVに置き換われば、約4割の部品が不要になるとされる 日本の製造業は自動車部品産業の“一本足打法”というのが現状だ。その大黒柱が倒壊するような事態となれば、日本経済への打撃は計り知れない 「トヨタ連合がEVで反撃、基盤技術を標準化 未来の勢力図見えず」 部品のモジュール化が一段と進むEVは、日本のものづくり技術の優位性が失われるリスクも高まる「両刃の剣」でもある グループで開発・コスト削減 日産自動車、仏ルノー、三菱自動車の連合も20年までにEV専用車台を開発し、モーターと電池も共有。22年までに3社で計12車種のEVを投入する方針 技術の優位性維持「楽観できない」 何年か経って経験を積めば、新規参入組に技術も追いつかれる恐れがあり、自社のものづくりの力が優位であり続けるかは「楽観できない」という 車の保有から利用への動きが強まるなど消費者の価値観は多様化している。日本車が売りにする高品質だけでは勝てなくなるかもしれず、シェアリングサービスが拡充すれば、保有需要を侵食する可能性がある ベンチャーは水平分業 「EVを軽視する日本の自動車産業は「ゆでガエル死」する」 これにはメディアの責任が大きい。テレビなどでは「日本人すごい!」という切り口で、日本の文化や産業の良さをことさらに強調している。日本人の自己満足を満たすように作るメディアの「自己満足バイアス」は、衰退の裏返しではないのか この現状で自動車業界の関係者やアナリストには、日本の自動車業界を良くも悪くも信頼しきっている論調が強い この状況が出版や家電といった衰退産業における、かつての論調に通じるものを感じるからだ 状況変化に対して楽観視した結果、「ゆでガエル」になった日本の産業をいくつか知っている 家電や電子機器業界も然り 独自技術と品質へのこだわり(自体は悪くはないのだが)が、結果的に変革を阻害し、後発国に出し抜かれた どちらの業界も既存ビジネスの成功体験から抜け出せず、環境変化を否定的かつ楽観的にとらえ、「まだいける」という判断ミスと、機会損失を生んだ。これらの蓄積が構造不況につながり、産業衰退を引き起こしたと言っては言い過ぎだろうか 業界が思っているほど参入障壁は高くない テスラの例 海外では「日本製品は品質が高い」という神話だけが生き残っており、市場では日本製品はほとんど見かけない。品質だけでは勝てないグローバル市場の現実だ EVは当面普及しないという楽観はガラパゴス携帯の失敗と同じ
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情報セキュリティー・サイバー犯罪(その2)(GDPR(EU一般データ保護規則)が遠い国の話で済まない理由、あなたのパソコンが危ない 追跡!謎の新型ウイルス) [科学技術]

情報セキュリティー・サイバー犯罪については、昨年11月1日に取上げた。今日は、(その2)(GDPR(EU一般データ保護規則)が遠い国の話で済まない理由、あなたのパソコンが危ない 追跡!謎の新型ウイルス) である。

先ずは、PwCコンサルティング パートナー サイバーセキュリティ・アンド・プライバシー・リーダー 山本 直樹氏が5月18日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「GDPR(EU一般データ保護規則)が遠い国の話で済まない理由――デジタル時代におけるプライバシー規制の潮流」を紹介しよう(▽は小見出し)。
▽GDPRがやってくる
・昨年春に欧州委員会にて採択されて以来、国内でもじわじわと注目を集めるGDPR(EU一般データ保護規則)。遠いヨーロッパのことだから日本の本社には関係ないという誤解もいまだに散見されるが、違反時には年間売上の4%または2000万ユーロのいずれか高い方という高額な制裁金が課される可能性があり、財務的なインパクトや評判リスクの大きさは計り知れない。また、ライバル企業の訴訟戦略に巻き込まれるリスクもあり、対応の遅れは命取りになる。
・GDPRの特徴の一つに「域外適用」という考え方がある。GDPRは、EUで成立したEUの法律であるにもかかわらず、日本を含むEU域外の企業にも適用されてしまうのだ。日本企業の中には、「ヨーロッパに拠点があり現地に従業員がいる」「ヨーロッパの消費者向けにサービスを提供している」「世界中の従業員情報をクラウドベースの人事システムで一元管理している」「ヨーロッパのデータセンターにある個人情報データベースに日本からアクセスしている」「もともと日本国内向けのサービスだったが、今ではヨーロッパからの訪日客も頻繁に活用している」等、さまざまな観点でGDPRの適用対象となる企業が多く存在するはずだ。
▽GDPRが生まれた背景
・ヨーロッパでは従来からプライバシーに対する意識が強かった。例えば、社員が業務時間中に会社のPCを使ってどのようなWebサイトにアクセスしているのか、システム上のログを取って会社が監視しようとする。これが日本であれば、社員側も、業務に関係ないことをすべきでないという意識が強く、予めルールさえ決めておけば大きな問題に発展することはない。
・ところが、ヨーロッパでは、会社から監視を受けること自体に大きな抵抗があるようだ。歴史を紐解けば、特定の宗教や民族が迫害を受けた暗い過去もあり、政府や企業等の強大な権力から、弱者である個人が監視を受けることに対して、過敏に反応する人が多いのは自然なことなのかもしれない。
・GDPRは、長年の議論の末、昨年ついに採択され、2018年5月施行という明確な期限が設けられた。これを機に、日本でもにわかに大きな話題となっているのだが、GDPRの前身である「一般個人データ保護指令」は、1995年の時点で採択されており、今から20年以上前には、GDPRの骨格はできあがっていたことになる。しかし、その規制をさらに強化しなければならなくなった昨今の事情を理解する必要がある。
▽プライバシー以上に保護すべきもの
・昨今、ヨーロッパにおいて保護すべきものは、プライバシーだけではなくなってきた。それは産業そのものだ。インターネットを最大限に活用したアメリカ型のビジネスが、国境を越えてユニバーサルなサービスを提供するようになった。現代のコンピューティングパワーを持ってすれば、企業のやりたいことは、大概何でも実現できてしまい、技術的な制約は存在しない。アイデア次第では、業界の勢力図が一夜にして塗り替えられ、場合によっては既存のオールドプレイヤーが一掃されてしまうという事態も起こりかねない。
・しかも、他国からやってきた新しいプレーヤーがヨーロッパ向けにサービスを提供する場合であっても、極端なケースでは、ヨーロッパに物理的な事務所を構えることなく、サービスだけが提供されてしまうこともある。利用者から見れば、もはや企業の国籍や国境など意識することなく、自らのライフスタイルにあった便利なサービスを選ぶだけである。しかし、既存の枠組みのままでは、これらの新プレーヤーに法人税を課すルールが不明瞭であったり、ヨーロッパでは雇用が創出されなかったりと、さまざまな問題が残る。
・欧州委員会がGDPRの成立を加速させた背景には、このような危機感があると見るのが自然だろう。EU居住者の個人情報を域外に移転することを規制し、重い制裁金を課すことによって、域外企業には好き勝手させないという意思が透けて見える。
▽日本企業は本当に デジタル化への舵を切れるのか
・日本企業にも目を向けてみたい。最近では、さまざまな業種の企業において、将来のデジタル戦略を検討する社内ワーキンググループが作られ、新しいビジネスモデルの模索が始まっている。しかし、これまでのところ、残念ながら、「IoT」や「AI(人工知能)」といったキーワードだけが先行し、世の中を一変させてしまうほどの破壊的な勢力は出てきていない。 
・今後、いくつかの企業において順調にデジタル化が進むとすれば、その企業はサービス産業に生まれ変わるだろう。 分かりやすい例として自動車を挙げてみよう。自動車産業は日本が世界に誇る産業であり、製造業の代表格だ。これまでのビジネスモデルは、簡単に言うと、自動車という製品を設計・製造し、販売店を通して市場に流通させるというものだ。この流れにおいては、製造元と顧客との直接的なコンタクトは、製品保証に関するやり取り程度に限られており、大半の顧客情報は販売店が独自に管理していた。
・しかし、コネクティッド・カー(つながるクルマ)と称される新しいサービス形態では、自動車を常時ネットワークに接続し、カーライフに関わる情報提供や安全走行に資するサービス等を提供し、製造者が製品の販売後も、引き続き顧客とつながりつづけるというサービスモデルにシフトしていく。 
・実はここでもGDPRを考えなければならない。GDPRにおける個人情報の定義は、日本の個人情報保護法のそれよりも広く、例えば、自動車の車両識別番号やGPSで取得した地理的位置情報等も該当する。万が一、企業がプライバシー対応を軽視してしまったら、デジタル化戦略も頓挫しかねない。
▽セキュリティがコストだった時代は過去の話
・今でもセキュリティ投資に後ろ向きな経営者はいる。口ではセキュリティが重要だと言っていても、本心では、単なるコストとしか見ておらず、そこから生み出される価値などないと感じているからだ。しかし、経営者がそのような感覚だと、残念ながらその企業はデジタル化の波に乗り遅れるだろう。先進的な企業では、セキュリティを戦略的な投資領域と位置付けている。GDPR対応は、企業のデジタル化に対する本気度合を計る試金石だとも言えよう。
・最近では、「セキュア・バイ・デザイン」あるいは「データプロテクション・バイ・デザイン」という言葉もよく耳にするようになった。新しいビジネスモデルやサービスを開発する際には、後からセキュリティの要素を付け加えるのではなく、企画段階から検討すべき重要な要素の一つとして、セキュリティを捉えるべきなのだ。
・事実、PwCがコンサルタントとして支援しているクライアントのGDPRプロジェクトの中には、全社的なコンプライアンス対応だけでなく、特定のデジタルサービスを対象とした事業部単位の取組みも多く含まれる。今後1~2年の期間でサービス提供を開始する新しいビジネスにとって、GDPRの要求事項が大きな影響を及ぼすため、そのためのコンプライアンス対応をすると同時に、セキュリティを差別化要素として位置づけてサービス開発を進めているのだ。
・GDPRを論じる際、域外適用という特殊性や重い制裁金等に注目が集まりがちである。もちろん、法律を適切に遵守するための取り組みは重要なことであるが、単なるコンプライアンス対応だと高を括って、文書策定等の形式的な対応に終始してしまうのは得策ではない。世界で起きているビジネスやテクノロジーの潮目を読み、自社のビジネス戦略を見つめ直す格好の機会を逃すべきではない。
・次回、2回目の寄稿では、『施行まで1年、秒読み段階に入ったGDPR(EU一般データ保護規則)に対して今からできること』と題し、企業におけるGDPR対応のポイントを解説する(細か過ぎるきらいがあるので、紹介は省略(リンク先は下記の2行目)
http://diamond.jp/articles/-/127360
http://diamond.jp/articles/-/134763

次に、8月3日付けNHKクローズアップ現代+「あなたのパソコンが危ない 追跡!謎の新型ウイルス」を紹介しよう(▽は小見出し、──は番組の進行役、+は発言内の段落)。
・今年5月の大量感染以来、世界中を断続的に襲う新型PCウイルスのサイバー攻撃。イギリスの病院、チェルノブイリの原発、日本の自動車工場や水道局も攻撃された。こうした社会インフラへの“無差別テロ”に対し、世界中で対策が始まっている。
・ホワイトハッカー(善良なハッカー)の手を借りてOSやソフトの膨大なプログラムから“脆弱性”を見つけ出す取り組みや、サイバー攻撃が行われても絶対に解けない“次世代暗号”を開発する動きも加速。明日自分を襲うかもしれない攻撃に、どう向きあえばよいのか?徹底取材で迫る。
▽あなたのパソコンが危ない 追跡!謎の新型ウイルス
── またもや、新手のコンピューターウイルスが、私たちの生活の基盤を揺るがしています。あなたのパソコンは大丈夫ですか?
・田中(キャスター):3月にこの番組で取り上げた「身代金ウイルス」によるサイバー攻撃。ある日突然、パソコンに感染して大切なデータや個人情報をロック。「元の戻して欲しければ金を払え」と脅してきます。そして今、世界中で被害が拡大し続けているのが、新型の身代金ウイルス「ワナクライ」です。
・日本では、自動車メーカーや鉄道会社などが攻撃を受け、操業停止に追い込まれる事態も起きました。被害は、ほかにも。チェルノブイリの原発事故現場では、放射線量の測定器が制御不能になり、手動で計測する事態に陥りました。また、インドでは、港で積み荷を管理するコンピューターが停止。船が出航できず、荷物を運んできたトラックが大渋滞。物流システムが大打撃を受けました。ワナクライの爆発的感染から見えてきたのは、私たちの生活を支えるパソコンにひそむ意外なもろさです。
── このウイルスの新たな脅威は、メールの添付ファイルを開くなどしなくても、インターネットにつながっているだけで感染の恐れがあることです。
▽あなたのパソコンが危ない 追跡!謎の新型ウイルス
・身代金ウイルスに感染した自治体の1つが、匿名を条件に取材に応じました。  「こちらのパソコンですね。」 5月、海外との連絡用に使っていたパソコン1台が、突然、ワナクライに感染。
・被害を受けた自治体の職員 「(朝の)8時くらいに電源を立ち上げたら、動かなくなってる。(ウイルスの画面が)出たときには非常に驚きました。」
・幸いこの1台は自治体内のほかのパソコンにはつながっていませんでした。もし、ライフラインなどを管理する1,000台のパソコンとつながっていれば、市民生活がマヒしかねなかったといいます。 被害を受けた自治体の職員 「インフラ系のサーバー等が、もしやられていたら、(市民生活の)すべての機能が止まるのではないか。その時は本当に肝を冷やしました。」
・一方、感染が組織全体に広がってしまった例もあります。全国に展開するこの書店では、100万円を超える被害が出ました。 被害を受けた書店の店員 「突然に大きなカギのマークが出て。」 
・最初に感染したと見られるのは、都内の店舗の1台のパソコン。英語の画面が表示されましたが、夜遅かったため、店員は仕事を切り上げてしまいました。3日後、店員は同僚からかかってきた電話に耳を疑いました。社内ネットワーク上にあった全国のパソコンがネットにつながっていたというだけで感染したというのです。
・被害を受けた書店の店員 「添付ファイルを開くとか、偽サイトに導くようなおかしなメールは一切やってない。なぜやられたんだろうと、不思議に思いましたね。」
・添付ファイルも偽サイトも開いていないのに、なぜ感染が広がったのか。分析の結果、ワナクライが持つ、従来のウイルスと全く異なる特徴が分かってきました。
・トレンドマイクロ社 岡本勝之さん「『ポート445』を使っているということが、今だいぶ分かってきました。」  ワナクライは、世界15億台のパソコンに搭載されている基本ソフト、ウィンドウズのぜい弱性を突くウイルスだったのです。ぜい弱性とは、プログラムの中にあるバグのこと。誤って書かれた、いわば壊れた部分です。今回狙われたぜい弱性は、ウィンドウズの中で通信のやり取りを担う部分でした。ウイルスはここを標的としてパソコンに侵入。さまざまなソフトを機能不全に陥れました。さらに、ネットワーク上にある、ほかのパソコンのぜい弱性も自動的に探し出して侵入。次々に感染を拡大させたのです。
・トレンドマイクロ社 岡本勝之さん「ワナクライはウィンドウズのぜい弱性(弱点)を使うことによって、同じネットワークにある他のパソコンにどんどん感染を広げることが出来る。侵入したところだけでなく、どんどん被害が広がってしまう。」
・この新たなウイルスは、世界各地に広がり、深い爪痕を残しています。 イギリス BBC(2017年5月12日) 「国の医療機関がサイバーテロの標的になりました。」 イギリスでは5月、国が運営する医療グループがワナクライに襲われ、47の医療機関で検査機器や救急システムがダウン。予定されていた手術や診察は中止に追い込まれ、20万人もの患者に影響が及びました。
・心臓の手術を中止された患者 「『手術中に血液が不足したら輸血できない、命は保証できない』と言われました。医師の言葉にショックで、頭が真っ白になりました。」 病院では、データベースがマヒし、今も手作業でカルテなどの復旧に当たっています。 
・ウイルス被害を受けた医師 「100%コンピューターに依存していたため、我々はなすすべがありませんでした。2か月以上たちますが、元に戻っていません。サイバー攻撃(の影響)は、今もまだ終わっていないのです。」
・驚異の感染力を持つこの新型ウイルスは、一体どこから来たのか。その謎の解明も急がれています。 セキュリティ会社 マーシン・クレチェンスキーさん「私たちは新型ウイルスの感染をリアルタイムで追いました。数千の都市に、瞬く間に感染が広がっていました。世界中どの国も、この攻撃から逃れられませんでした。」
・さまざまな説が飛び交う中、有力視されているのが、実は世界に名がとどろく、あの諜報機関が関わっているという説。 それは、アメリカのNSAです。NSAは、世界中の市民のパソコンに忍び込み、その活動を監視していたとされます。 “誰を監視しているんだ?”(映画『スノーデン』より) “世界中さ。”(映画『スノーデン』より))
・NSAは、ウィンドウズのぜい弱性を発見し、パソコンに忍び込む攻撃ツールを秘密裏に開発。しかし、この攻撃ツールがハッカー集団に盗み出され、それをもとにワナクライが作られたというのです。マイクロソフト社は、ワナクライの感染の直後、NSAを非難する声明を出しました。 ”米軍がトマホーク(巡航ミサイル)を盗まれたに等しい失態だ。” 今回のウイルス攻撃は、情報社会を支えるインフラとなったウィンドウズの穴を狙ったものでした。
・マイクロソフト社 澤円さん「ぜい弱性の情報は、常に出しています。」  実はマイクロソフトは、ワナクライの最初の攻撃が始まる2か月前に、このぜい弱性を把握。ウイルス感染を防ぐ更新プログラムを緊急で出していました。しかし、その対策を済ませていないパソコンは、いまだ世界中に数多く残されています。ここからウイルスによる新たな感染が広がり、被害が拡大し続けていることに危機感を募らせています。
・マイクロソフト社 澤円さん「今、世の中で起きている非常に大規模な攻撃は、サイバー犯罪に対する備えをしていない、修正プログラムをあてていないコンピューターが、実は攻撃の道具として大量に使われている。その人が被害にあっているというのは第一段階。第二段階としては、その人たちが攻撃者として使われてしまうというのも非常に多く見られる。」
▽あなたのパソコンが危ない 追跡!謎の新型ウイルス
・ゲスト 蔵本雄一さん(ホワイトモーション CEO/元マイクロソフト)
 ゲスト 高木剛さん(東京大学大学院 教授)
── 元マイクロソフトの技術者で、サイバーセキュリティーが専門の蔵本雄一さん。 感染したらどうすればいい?
・蔵本さん:まずは、皆さん、ウイルス対策のソフトをインストールされていると思うんですけど、まずはインストールされている対策のメーカーさんに相談していただくというのが、まず一番初めかなと。そういったメーカーさんとか、あとインターネットに暗号化されてしまったファイルを戻すようなツールを提供しているようなところもあるので、例えば、そういうのを使ってもらうとかというのは非常に大事ですね。
+(この身代金というのは、払わないほうがいい?)  払って戻るものとか、払っても戻らないものとか、いろいろありまして、やっぱり一番大事なのは、暗号化されて読めなくなっても困らないように、複製ですね、データの複製、バックアップを取っておいて、やられたとしても、それを戻すと。そうすることで、ビジネスも正常復旧するというのが大事かなと思います。
── 今回、多くの公共インフラが被害に遭っているわけだが、なぜウイルス対策をしていなかったのか?
・蔵本さん:対策を考える時に、新しいOSを使うとか、新しいOSを最新の状態にするというのは非常に大事なんですが、なかなか制御している、何かシステムを制御しているシステムとか、新しくしたくてもできない理由があるものもあるので、なかなか一概に、簡単に新しくすればいいというのは結構難しい。 (これまで使っていたソフトや機器が使えなくなることもある?) その可能性もあったりもしますね。
── ネットセキュリティーの暗号技術に詳しい、数学者の高木剛さん。ソフトウェアのぜい弱性をなくすことはできない?
・高木さん:現在、プログラムは複雑化、さらに高度化しているために、このぜい弱性をなくすということは、不可能と言われております。 (なかなか自分では見つけられない?)  実際、プログラムにあるぜい弱性を使って、新しいウイルスを発見されることによって、ぜい弱性があるのだということが見つかっている現状となっています。
── 仮に、バグが全くないプログラムを作ることができてもということは、全く安全ではない?
・高木さん:想定している利用方法ですと問題ないんですが、想定外の利用方法をすることによって、そのプログラムが予想以外の動きをすることによって、新しいバグが見つかるということもあります。
── 想定の範囲で動かしていればいいが、違う動かし方をすると、生じる矛盾を狙ってくるということなんですね。
・田中:プログラムのぜい弱性があるのは、ウィンドウズだけに限りません。スマホの基本ソフトやSNSアプリでも、個人情報の漏えいなどにつながるバグが毎日のように見つかっています。ぜい弱性を発見しようと、IT企業では、新たな対策が始まっています。
▽スマホアプリを守れ! ホワイトハッカーの闘い
・向かったのは、世界2億人が利用するLINE。 去年(2016年)、プログラムのぜい弱性を見つけ出すための新たな制度を導入しました。
・セキュリティ担当社員 「投稿機能において不備があった問題ですね。ぜい弱性として認定すべきじゃないかと。」 「報奨金は?」  セキュリティ担当社員 「500ドルですね。」
・それは、ホワイトハッカーの力を借りること。ぜい弱性を見つけ、バグの修正に協力するIT技術者に報奨金を支払うことにしたのです。背景には、ぜい弱性チェックにかかる手間が膨大で、自社だけではカバーしきれないという事情があります。
・田中:ぜい弱性というのは、どのようにして見つけるのですか?
・LINE株式会社 セキュリティ担当社 「ソースコードと呼ばれるプログラムのコードを、実際に目視で確認したり。」
・田中:目で確認?何行くらいあるんですか?
・LINE株式会社 セキュリティ担当社員 「LINE本体(のプログラム)でも数十万行。」
・田中:数十万行。
・ぜい弱性探しは、目視が基本。数十万行のプログラムから1、2語のバグを見つけ出す作業です。セキュリティー担当も、この2年で2倍に増やしました。それでも、個人情報の漏えいにつながりかねないバグが見つかるなど、危機的な状況に直面してきました。
・LINE株式会社 セキュリティ担当社員 「人間が書くものなので、プログラムというのは、やはりバグはどうしても生んでしまう。それをチェックするのも、やはり私たち人間ですし、どうしてもミスは生じてしまう。」 
・IT企業に勤めるこの男性は、ホワイトハッカーとしてLINEのバグ探しに協力。 これまで、2つの大きなバグを報告。合計100万円を手にしました。開発者でない第三者の視点が有効だといいます。
・IT企業社員 汐見友規さん「世の中で非常に重要とされるアプリケーションやソフトウェアに関して、自分が探したときに、何かあるのか確認したいという気持ちはあります。インターネットの世界を安全にするのに寄与できているのは、やりがいになる。」
▽PCもスマホも車も! ウイルスとの攻防
・田中:今、VTRでも出てきたような、正義のハッカーと呼ばれる「ホワイトハッカー」の需要が高まっています。総務省所管の情報通信機構は今年(2017年)4月、25歳以下の若手を対象に、ホワイトハッカー育成プログラムを始めました。これは、1年間かけて、情報セキュリティー技術を指導する世界に類を見ない試みなんです。背景にあるのは、情報セキュリティー分野の人材不足です。国の調査では、去年の時点で13万人が不足。サイバー攻撃の激化が予想される中、2020年には20万人足りなくなると見られています。ホワイトハッカーをはじめとするセキュリティー人材の養成は待ったなしです。
── そこまで人材が不足している状況というのは驚きだが、それだけ、今後もサイバー攻撃が拡大していく可能性があるということ? 
・蔵本さん:例えば今回、お話が出ているようなワナクライとかだと、いわゆるパソコンのファイルがターゲットなっているわけですけれども、それ以外にも、家電とか自動車とかも含めて、いろんなものを見回ってもコンピューターが組み込まれているので、攻撃者のターゲットがどんどん増えているというような状況ですね。
── 例えば、自動車が狙われると、どういうことが起きる?
・蔵本さん:自動車が狙われると、例えば、自動運転だとか、いろいろ出てきていますけど、そういったものに対しての攻撃というのが予測されてきます。なので、自動車メーカーは、そういったことがされないような対策というのが求められるということですね。 (単にパソコンが使えなくなるというだけではなく、まさに、この命を預かる車など、そういった身近なところが危機にさらされる可能性があるということ?) より身近なところの危機を気にする必要が出てきますね。
── ウイルスの攻撃対象が、車や家電にまで広がるということになりますと、その驚異は計り知れません。ぜい弱性を巡る攻防が続く一方で、新たな方法で、究極の安全を目指そうという動きが世界で始まっています。
▽ハッカーを撃退せよ! 究極の技術 暗号
・6月、オランダでサイバー攻撃への対策を話し合う国際会議が開かれました。会場を訪ねると…。  「ちょっとあなたたち、撮影を拒否する人たちが多いので、取材は慎重にしてくださいね。」  会場に集まっていたのはNSAなど、世界各国の諜報機関で働く人たちでした。参加者が熱心に耳を傾けているのは、もしや数学の講義? 実は、この会議の目的は、最先端の数学の理論を駆使して絶対に解読できない暗号を開発することなんだとか。それにしても、なぜ新たな暗号開発に世界が注目するのでしょうか。
・現在、インターネット上の重要な情報はウイルス攻撃などで盗み見られても読めないように暗号で守られています。その暗号は、数学の素数を、いわばパズルのように複雑に組み合わせたもの。しかしこの暗号が、解読の危機にあるというのです。その理由は、次世代コンピューターの開発競争で、計算能力が急速に向上しているからです。もしハッカーがこのコンピューターを悪用し、国家の情報機関などに侵入すれば、機密情報が読み取られてしまう。そうした事態を防ぐ、究極の技術が次世代の暗号なのです。
・アメリカ国立標準技術研究室 ダスティン・ムーディーさん「次世代コンピューターは、現在の暗号を破る能力があります。ですから、世界各国の研究機関や政府、企業が話し合い、今から協力して準備しなければなりません。」
・この次世代の暗号開発で世界から注目を集める日本人がいます。今日のゲスト数学者の高木剛さんです。 高木さんは、全く新しい暗号「格子暗号」の研究者です。ベクトルという数学の概念を使って、簡単には解けない暗号を編み出そうとしています。
・東京大学大学院 教授 高木剛さん「数字というのは一次元の方向しかないんですが、ベクトルになりますと、二次元以上の空間でいろいろな向きがあります。次元が上がると、その向きがいろいろな方向になるために、より高速な計算機でも簡単には解けない。」 何だか難しそうですが、スタジオでご本人に解説していただきます。
▽あなたのパソコンが危ない 追跡!謎の新型ウイルス
── というわけで、高木さん、これは、どういうものなんでしょうか?
・高木さん:現在普及している暗号は、素数といわれている数字を使って、それを組み合わせて安全性を保っています。例えば、15という数字は。
── これが暗号?
+これが暗号です。3と5という2つの素数をかけたものです。この桁数がずっと素数を大きくしていくと、現在の計算機では計算が追いつかず、安全といわれていたのですが。 (今までは、このxとyが分からなかったわけですね。) ところが、新しい計算機が出てくると、これが安全ではない可能性が出てきたということで、数字に代わり、今はベクトルという概念を使った暗号が作られています。
+こちらの02に当たるものが、15の暗号文に当たりまして、この隠れている2つのベクトル、aとbを探しなさいという問題になります。 (そのaの座標であるxとy、bの座標であるxダッシュとyダッシュ、これを編み出しなさいと。)  2次元の場合は、それほど難しくはないんですが、次元を上げていくと、桁違いに組み合わせの数が増えて、解読計算量が非常に高くなります。そのため、次世代の暗号でもっても解読が難しいと言われています。
── 今回、アメリカの諜報機関から盗み出された情報が、ウイルスのもとになっているとも言われているが、こうした暗号が出来れば、そうした事態を防ぐことにもつながる?
・高木さん:サイバーセキュリティーが高度化して、増え続ける漏えい問題が今、問題となっていますが、重要な情報にアクセスしたとしても、攻撃者は解読できない暗号技術が求められています。
── 今後、ますます高度化、巧妙化するサイバー攻撃に対して、どのように対応すればいい?
・蔵本さん:まずは、やっぱり何を守るかというのをはっきりさせる。これは、実際のパソコンとか、モノを使う使い手だけではなくて、作る方も、どういったものを守れば、何が一番大事なのかというのをしっかり定義して、それを守るようなものを作って、使っていくというのが非常に大事かと。例えば、自動車だと、ちゃんと走って、止まって、曲がれるというところをしっかり守る。これって非常に大事なことですけれども、そういうところをしっかりとやっていく。
+あとは、やっぱり攻撃する側が、どういう攻撃をしてくるのかとか、しっかり分析をして、相手が何を狙っているのか、どういうことをやるのかということを考えて、正しく怖がってもらう、正しく恐れるというのが、非常に大事なことかなと思います。 (今、さまざまなコンピューターを使ったシステム、ナビゲーションであるとか、自動運転であるとか、そういった部分と、基本的な走る、曲がる、止まるという部分を切り離せるようにしていくということが大事?) 仮に、そういう部分が侵害されたとしても、ちゃんと走って、止まって、曲がれるという機能を確保する。こういう設計のコンセプトとか、作りというのが、やはり非常に大事かなと。
── 高度な次の世代の技術と、それから、そういった考え方、整備していく必要があるということですね。
・ 企業の生産活動、行政サービス、医療、今やあらゆる分野を支えるコンピューターシステムへのサイバー攻撃、社会の基盤を揺るがす大きな脅威です。人材の育成、次の世代のセキュリティー技術の開発、対策は待ったなし
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4019/

第一の記事は、いかにもコンサルタントらしく、大きく振りかぶった割には、肝心なことは言わないので、読む方には、隔靴掻痒の感じを与える。それをあえて紹介したのは、 『GDPR(EU一般データ保護規則)・・・違反時には年間売上の4%または2000万ユーロのいずれか高い方という高額な制裁金が課される可能性があり・・・「域外適用」という考え方がある・・・2018年5月施行』、と決して他人事ではないためである。EUのみならず、米国でも制裁金や罰金が高額化しているだけに、要注意だ。
第二の記事は、 『新型の身代金ウイルス「ワナクライ」』、は、 『新たな脅威は、メールの添付ファイルを開くなどしなくても、インターネットにつながっているだけで感染の恐れがあることです』、というのは恐ろしいことだ。しかも、それが、NSA(アメリカ国家安全保障局が 『秘密裏に開発。しかし、この攻撃ツールがハッカー集団に盗み出され、それをもとにワナクライが作られた』、というのには、NSAの機密管理のズサンさに驚く他ない。更新プログラムは、個人のパソコンでは自動的にやるのが普通だが、企業などの大きな組織でLANサーバーがある場合には、 『何かシステムを制御しているシステムとか、新しくしたくてもできない理由があるものもあるので、なかなか一概に、簡単に新しくすればいいというのは結構難しい』、のが実情のようだ。 次世代の暗号については、 『2次元の場合は、それほど難しくはないんですが、次元を上げていくと、桁違いに組み合わせの数が増えて、解読計算量が非常に高くなります。そのため、次世代の暗号でもっても解読が難しいと言われています』、とのことらしい。ハッキングの「技術革新」とのイタチゴッコにならないよう祈るしかないようだ。
タグ:情報セキュリティー サイバー犯罪 ダイヤモンド・オンライン NHKクローズアップ現代+ (その2)(GDPR(EU一般データ保護規則)が遠い国の話で済まない理由、あなたのパソコンが危ない 追跡!謎の新型ウイルス) 山本 直樹 PwCコンサルティング GDPR(EU一般データ保護規則)が遠い国の話で済まない理由――デジタル時代におけるプライバシー規制の潮流 昨年春に欧州委員会にて採択 違反時には年間売上の4%または2000万ユーロのいずれか高い方という高額な制裁金が課される可能性 「域外適用」という考え方がある ヨーロッパでは、会社から監視を受けること自体に大きな抵抗があるようだ 2018年5月施行 保護すべきものは、プライバシーだけではなくなってきた。それは産業そのものだ EU居住者の個人情報を域外に移転することを規制 域外企業には好き勝手させないという意思 日本企業は本当に デジタル化への舵を切れるのか GDPRにおける個人情報の定義は、日本の個人情報保護法のそれよりも広く 単なるコンプライアンス対応だと高を括って、文書策定等の形式的な対応に終始してしまうのは得策ではない あなたのパソコンが危ない 追跡!謎の新型ウイルス イギリスの病院、チェルノブイリの原発、日本の自動車工場や水道局も攻撃された 新型の身代金ウイルス「ワナクライ」 自動車メーカーや鉄道会社などが攻撃を受け、操業停止に追い込まれる事態も チェルノブイリの原発事故現場では、放射線量の測定器が制御不能になり、手動で計測する事態に 新たな脅威は、メールの添付ファイルを開くなどしなくても、インターネットにつながっているだけで感染の恐れがあることです ウィンドウズのぜい弱性を突くウイルスだった 世界各地に広がり、深い爪痕 イギリスでは5月、国が運営する医療グループがワナクライに襲われ、47の医療機関で検査機器や救急システムがダウン 2か月以上たちますが、元に戻っていません。サイバー攻撃(の影響)は、今もまだ終わっていないのです NSAは、ウィンドウズのぜい弱性を発見し、パソコンに忍び込む攻撃ツールを秘密裏に開発 しかし、この攻撃ツールがハッカー集団に盗み出され、それをもとにワナクライが作られたというのです ・マイクロソフト社 最初の攻撃が始まる2か月前に、このぜい弱性を把握。ウイルス感染を防ぐ更新プログラムを緊急で出していました その対策を済ませていないパソコンは、いまだ世界中に数多く残されています データの複製、バックアップを取っておいて、やられたとしても、それを戻すと。そうすることで、ビジネスも正常復旧するというのが大事 何かシステムを制御しているシステムとか、新しくしたくてもできない理由があるものもあるので、なかなか一概に、簡単に新しくすればいいというのは結構難しい 正義のハッカーと呼ばれる「ホワイトハッカー」の需要が高まっています 自動運転だとか、いろいろ出てきていますけど、そういったものに対しての攻撃というのが予測 次世代の暗号開発 ベクトルという数学の概念を使って、簡単には解けない暗号を編み出そうとしています 2次元の場合は、それほど難しくはないんですが、次元を上げていくと、桁違いに組み合わせの数が増えて、解読計算量が非常に高くなります。そのため、次世代の暗号でもっても解読が難しいと言われています
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電気自動車(EV)(その1)(ガソリン・ディーゼル車全廃が欧州で急に宣言された真の事情、急加速のEVシフトに潜む5つの課題、日本の自動車メーカーはEV化「出遅れ組」と見なされている) [科学技術]

今日は、電気自動車(EV)(その1)(ガソリン・ディーゼル車全廃が欧州で急に宣言された真の事情、急加速のEVシフトに潜む5つの課題、日本の自動車メーカーはEV化「出遅れ組」と見なされている) を取上げよう。

先ずは、8月9日付けダイヤモンド・オンライン「ガソリン・ディーゼル車全廃が欧州で急に宣言された真の事情」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・イギリスやフランスが2040年までにガソリンエンジン、ディーゼルエンジンのクルマの販売を終了させるプランを発表するなど、欧州各国で内燃機関に代わるクルマの電動化を推進しようとしている。なぜ、最近になって欧州各国でガソリン車やディーゼル車の全廃宣言が相次いでいるのか、本当に2040年までに全廃できるのか。その背景や理由を検証してみた。(ジャーナリスト 井元康一郎)
▽欧州で相次ぐEV化の話題
・欧州がいきなりクルマの電動化に前がかりになっていることが今、大変な話題となっている。マクロン政権下のフランスの二コラ・ユロ環境大臣が2040年にガソリンエンジン、ディーゼルエンジンを搭載したクルマの販売を終了させるというプランを7月6日に発表し、世界を驚かせた。それに呼応するかのように同月、イギリス政府もまったく同様のコミットメントを打ち出した。
・人口の少ない国ではもっとラディカルなプランもある。例えば、ノルウェーは内燃機関全廃ではないが、2025年までに販売車両のすべてを純EVもしくは充電可能なPHEV(プラグインハイブリッドカー)にするとし、オランダもそれに似た政策を推進している。
・政府ばかりではない。民間でもスウェーデンのボルボが傘下のスポーツカーファクトリーであるポールスターをEV(電気自動車)専門ブランドにすると宣言した。ドイツのスポーツカーメーカー、ポルシェは2023年までに販売車両の半分をEVにするという「ミッションE」計画を発表。それ以降もEV化の話題が欧州から毎日のように伝わってくる。
・事実、EU圏でのPHEVを含むEVの販売は伸びている。今年上半期のEV、PHEVの販売台数は13万3000台。前年同期の9万8000台から、35%も伸びたことになる。新車販売台数の総数は850万台であったことを考えると、比率は微々たるものではあるが、普及初期の段階に差しかかっているのは確かだろう。  ただし、これらのセールスは他の市場におけるEV、PHEVの販売と同様、手厚い補助金の支給、高額な新車登録費用の免除、公営駐車場を無料で使えるなどの各種恩典あってのもので、実際のEVのセールスパワーはそれよりもずっと低いのが実情だ。果たして、本当にEVへのパラダイムシフトを急激に推し進めることができるのだろうか。また、なぜ急にそういうムーブメントが先鋭化したのか。
▽EV推進の背景には蓄電池の性能・コストへの期待感
・まず、2040年にガソリン、ディーゼル車の販売を禁止し、電動車両一本でパーソナルモビリティや物流をまかなえるようになるかどうかだが、これはきわめて困難ではあるが、本気でやれば技術、インフラ整備の両面でやってやれないことはないというところだ。
・今日、欧州のEV推進論者たちが「EVで行ける」と主張する背景にあるのは、EVの足かせとなっている蓄電池が技術革新によって性能、コストの両面で改善されることへの期待感だ。すでに日本、韓国、アメリカ、ドイツ、フランスなど電気化学を得意としている国を中心に、現行の液体電解質リチウムイオン電池の数倍の性能と高い安全性を両立させた固体電解質リチウム電池の試作品が続々と登場している。
・そのコストも、マッキンゼーとブルームバーグ新エネルギーファイナンスは2030年に1kWhあたり100ドルに下落するという予測を発表している。その先さらにバッテリー技術が進化し、十分な航続距離を持つEVが補助金なしでも今日のエンジン車に対してコストメリットが出るようになれば、消費者は自ずとEVを選ぶようになるだろう。
・クルマ以上に課題が大きいのはインフラ側。現状では日米欧、また中国でもそうなのだが、自宅外の急速充電器の運用はどこも大赤字だ。機器の性能が低く、価格が高いこともあるが、それ以上に、エンドユーザーに数十kWhという大電力量を短時間でデリバリーするように社会ができていないのだ。インフラ整備といえば急速充電器の設置がまず語られるが、それより重要なのは、急速充電器を設置する際に巨額の工事費をかけないでも済むような電力供給の方法を考案し、社会のインフラを整備し直すことだ。これには巨額の費用がかかるが、道路を造るようなものだと考えれば不可能な投資ではないだろう。
・もちろん短時間で大電力量を充電可能な充電器や、それを受け入れる側のクルマ側の技術革新も必要だ。今日、800V充電をはじめ急速充電に関する新技術の提案がなされているが、実際にEVが多数派になったあかつきには、そんなものでは到底追いつかない。1000アンペアクラスという、電車を走らせるような電流を自在に使いこなせる技術が必要だ。2040年にはまだ23年ある。いい方法を考える頭の良い人も出てくるだろう。
・ただ、人口が少なく、再生可能エネルギー比率の高い小国はともかく、フランスやイギリスが打ち出したエンジン車全廃計画は、そういう技術展望を踏まえた合理的な判断だけで出されたものではない、という指摘も少なからず出てきている。
▽急進的なEV推進策は トランプ大統領のパリ協定離脱への牽制!?
・日本に駐在した経験を持つフランス文部省のある上級幹部は、急進的なEV推進策が出てきたのは、今の国際政治情勢と深く関わっているという見方を示す。 「まずはトランプ大統領がCO2規制の枠組みである『パリ協定』からの離脱を宣言したこと。世界最大排出国のアメリカに抜けられては、世界の環境政策を主導するのは欧州という地位が崩れてしまいますし、低迷しているCO2排出権相場に悪影響が出かねません。大気汚染防止が理由なら、排出ガス処理の技術革新の将来性を無視した話ではありますが、ディーゼル車を段階的に排除すればいいだけ。 ガソリン車まで2040年に全廃すると宣言した動機は、化石エネルギー依存からの脱却というのが世界の流れなんですよというメッセージを発することでしょう。不確実な未来の夢を語る時によく使われるのは2050年なんですが、よりアグレッシブに響かせたいということで2040年にしたのでしょう」
・資源・エネルギー問題を取材するフランス人ジャーナリストは、欧州内の情勢も政策に影響を及ぼしている可能性が高いと言う。 「欧州は今、EU離脱を決めたイギリスを含め、現実主義と理想主義の両極端に分断されている状態です。リーマンショック以降はとくにEU統合、多文化共生主義のリベラル派が勢力を伸ばしてきましたが、テロや移民問題で彼らの旗色が急に悪くなった。求心力を回復させる材料が欲しい彼らにとって、環境は格好の材料に映ったのでしょう。フランスもマクロン大統領が右寄りのルペン候補に勝利したものの、支持基盤は非常に弱い。そこで急進的環境活動家で左派に人気があり、環境派のパリ市長、アンヌ・イダルゴ氏との折り合いも良いユロ氏を環境大臣に登用した。
・今回のエンジン車廃止プランは、マクロン大統領というよりは、一時は大統領の座を夢見たこともあるユロ氏にとっての目玉政策という側面が強いと思います。イギリスのメイ首相も人気がなく、歴史的な経緯から大気汚染に敏感な国民に受けのよさそうな政策ということで追随した可能性が高い」 2040年にガソリン車、ディーゼル車を廃止するという目標は前述のようにラディカルなもので、その背後には少なからず政治的な思惑も横たわっているのだが、EV化が絵に描いた餅に終わるとは限らない。
▽電動化に一番合理的で冷静なのは日本の自動車メーカー
・前述のように、電気駆動関連の技術革新のスピードは速い。コスト吸収力の高い高級車の世界では、ユーザーが高性能化には電気駆動の導入が最適という認識を持てばメーカー側はたちどころにそれに対応するであろう。また、大衆車でもエンジン車とトータルコストが完全に逆転するところまで行けば、長距離ドライブを伴うバカンスに不向きだという、ライフスタイル上のネガティブ要素を乗り越えてEVに飛びつく層が増えるだろう。
・だが、今回の政治的発言のようにエンジン車が今世紀後半を待たずして欧州から消えることになるかどうかとなると、また話が違ってくる。欧州の大手自動車メーカー幹部は言う。 「電動化について一番合理的で冷静なのは、日本の自動車メーカーだと私は思っています。『電気が一番素晴らしいんだ』とヒステリックに叫ぶのではなく、エンジン車を含め、全部の技術についていいところと悪いところをきちんと見て、何をどう良くできるのかを考えながら少しずつ変わろうとしている。技術もちゃんと蓄積している。あくまでこれは私個人の考えなのですが、EVは間違いなく増えていくものの、自動車用の内燃機関は2040年になってもなくせないと思う。
・もちろん、環境や資源のことは考えなければいけないのですが、許される範囲内であればクルマの使い方は顧客の自由。できるだけ安いクルマで済ませたい人もいるでしょうし、遠くまでバカンスに出かけたい人もいるでしょう。そういう人間の気持ちを無視した地球至上主義は、少し感情的なのではないかと思います」  欧州からいきなり火の手が上がった空前の“EVムーブメント”とエンジン車終結宣言。それが本物になるのか、アドバルーンに終わるのかは、技術革新と顧客の心次第と言えそうだ。
http://diamond.jp/articles/-/138011

第二に、本田技研からサムスンSDI常務を経て名古屋大学客員教授/エスペック上席顧問の佐藤 登氏が9月14日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「急加速のEVシフトに潜む5つの課題 日欧米韓中の鍔迫り合いとビジネスリスク」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・9月6日、日産自動車は7年ぶりに全面改良した電気自動車(EV)「リーフ」を発表した。実際の国内販売は10月2日からとのこと。新規開発したリチウムイオン電池(LIB)は、従来の30kWhから40kWhに容量アップしたことで航続距離はJC08燃費モード表示で400kmに達したと言う。急速充電するとLIB容量の80%まで充電が可能。LIBの保証は8年または16万kmとしている。
・一方、EVブームをつくったとも言える立役者のひとつ、米テスラも従来の高級EV「モデルS」に加え、価格を3万5千ドルに抑えた普及型「モデル3」の販売を7月末に開始した。富裕層のみだけではなく、一般顧客を取り込む戦略に出たことで受注は50万台に達したと言われている。
・また、米国ゼロエミッション自動車(ZEV)規制、中国新エネルギー自動車(NEV)規制を受けて、日米欧韓中の自動車各社がEVシフトを鮮明に打ち出している。中でも、2015年にディーゼル自動車の燃費不正事件を起こした独フォルクスワーゲン(VW)は、グループ全体で25年までに30種以上のEVとプラグインハイブリッド車(PHV)を発売することを既に明言した。世界販売の20~25%に相当する200万~300万台規模と言うから、極めて大規模かつチャレンジングな目標である。これはVWのみにとどまらず、独ダイムラーや独BMWも同様な目標を掲げている。
・そのような折、9月12日の日本経済新聞夕刊に、VWが2030年までにEVに200億ユーロ(約2兆6千億円)を投資するとの記事が掲載された。同時に、25年までに30車種としていた上記の計画を、EVで50車種以上、PHVが30車種以上の計80車種以上に上方修正した。車載用電池に対しては2兆6千億円とは別に、約6兆5千億円分を調達するとも報道されている。
・9月12日に開幕した「フランクフルト国際自動車ショー」での主役は電動車、中でもEVのオンパレードと各メディアが報じている。EVに対して腰の重かったホンダも、量産型EV「アーバンEVコンセプト」を世界初公開し、このモデルをベースにしたEVを19年に欧州で発売すると言う。
・米国ZEV規制はカリフォルニア州に端を発しているものだが、他にマサチューセッツ州、ニューヨーク州、コネチカット州、メイン州、ニュージャージー州、オレゴン州、ロードアイランド州、バーモント州、メリーランド州が追随している。18年から強化されるZEV規制は、トヨタとホンダが主導してきたハイブリッド車(HV)が対象から外れることで、EVやPHVの開発に拍車がかかる。
・同様に、中国NEV規制もZEV規制の基本的な考えを踏襲し、EVやPHVを主体に規制をかける内容である。中国政策はHVを除外した理由を公言している。それは、「内燃機関エンジンでは、いかに立ち向かっても日本には勝てない。EVならばエンジンは不要、部品点数も少なく、参入障壁が低い」という消去法的選択でEVを重点化している。PHVはエンジンを搭載するのでHVと同様に難度が高いが、EV走行ができることでNEV規制枠に取り込んでいる。しかし、中国ローカル自動車メーカーでPHVを販売しているのはBYDのみで、他はすべてEVに集中している。
・これも9月12日の日経新聞の一面に紹介されたが、英仏が宣言した2040年までのガソリン車・ディーゼル車の販売禁止政策に追随し、中国もガソリン車・ディーゼル車の製造・販売禁止に関する導入時期の検討に入ったとのこと。
・このように、グローバルにEV化が急速に進んでいる。こんな中、業界が抱える課題も徐々に明らかになってきたる。以下、5つの観点からまとめる。
▽①EVを購入する顧客層はどれだけいるか?
・上記のように自動車各社が2025年まで拡大させようとしているEVであるが、NEV規制はともかく、ZEV規制では販売された台数で初めて自動車各社の実績としてカウントされることになる。このためEVを生産しても販売までに至らなければ意味をなさない。それを決定するのは自動車各社ではなく、消費者側である。  1998年、ZEV規制(日米各ビッグ3が対象で、98年に販売台数の2%をEV化することを求めた)をクリアするために、97年にはトヨタもホンダも400台規模のEVをカリフォルニア州に供給した。しかし、市場の反応は冷めていた。当時の両社が搭載したニッケル水素電池容量は27kWhで、モード走行は215km、充電時間は約8時間。リース販売としたのだが、航続距離の短さ、家庭への充電器の導入と長い充電時間、電池価格と車両価格の高さ(当時は搭載電池が1台分約500万円、車両価格はまともに販売すると約2500万円、そのためリース対応を実施)などがネックとなり、EVはその後、カリフォルニア市場から姿を消した。
・それから20年経過した現在、モード走行が400kmにも及ぶEVが出現している。しかし、夏冬場のエアコンの使用前提で市街地走行した場合には、モード燃費よりは明らかに低下するため、実際での走行はおおよそ300km前後となろう。とすれば、EVの中では高性能商品に入るであろうが、従来のガソリン車やHVに比べれば、まだまだハンディを背負った自動車である。
・急速充電のインフラは徐々に整備されつつあるとしても、充電器の導入と充電時間は20年前と同様な状況だ。LIB価格や他のコンポーネントのコスト低減が進み、車両価格という視点では相当な進化が実現された。車両価格は300万~400万円程度、電池も20年前の約20万円/kWhから2万円/kWh程度まで、すなわち10分の1までのコスト低減が実現されている。今後も、LIBのコストは更に1.5万円/kWhを標榜しつつ、30%程度のコストダウンが期待されている。
・このように20年間の進化は大きいとしても、ガソリン車やHVに比べてはまだ劣勢のEVであることに変わりはない。全世界の自動車各社が、そして新興の中国新規参入組も入って商品を市場に供給することになるが、そこに消費者がどれだけの価値を見出し、そして購買意欲を示すかが大きな関心事項となる。
・言い換えれば、世界のEV消費者層のパイは暫くの間は限られていると考えるべきであろう。世界各国の自動車各社がEVを市場に供給する今後を考えれば、選ばれるEVはどのようなものか?そしてどのEVが消費者から支持されるのか? EVシフトの裏にはこのような過激な競争が待ち構える。それはテスラも例外ではなく、今後は同社の真価が問われることにもなるだろう。
▽②中古車市場で見劣りするEV
・ガソリン燃料より安く走行できるEVの電気代ランニングコストは、消費者にとっては魅力の1つである。しかし一方では、同一年式、同一車両価格帯のガソリン車やHVに比べれば、中古車市場でのEVは大きな下落を強いられているという面も見過ごせない。年数が経過したEVの価値が低ければ、それだけ新製品に寄せる想いは高まらない。
・ガソリン車やHVの中でも中古車市場価格が高めに維持される商品は、新車市場でも人気車に位置付けられている。筆者自身も、自動車購入に当たっての1つの条件としており、中古車市場での価格は重要な指標と位置付けている。同様な考えをもつ消費者は少なくないはずだ。 実際に購入して使用した消費者の意見は最も大きな影響を及ぼす1つであろうが、電池の劣化と共に進む航続距離の低下に対する消費者の不満は、これまでの最多のものではなかっただろうか。それだけに、電池劣化を制御する素材や電池マネジメントは今後も大きな課題である。
・ともかく自動車各社は新車EVの新規開発と同様に、いかに中古車市場でも力を持つ魅力あるEVの製品開発を考えるべき段階に突入したのではないだろうか。今後、各社のブランドでEVが市場に出回ることで、中古車市場で相対的に優位な価格を提示できるEVこそが選ばれるEVと言う指標になるはずだ。
▽③電池メーカー、部材メーカーの投資チャンスとリスク
・ここは上記①と関連する部分であり、選ばれるEVと連結される電池メーカー、そしてそこにつながる部材メーカーにとってビジネスチャンスになるだろう。一方、選ばれないEVにつながる電池メーカーや部材メーカーにとっては、ビジネスリスクと化すことも考慮すべきであろう。  2009年に発売された三菱自動車のEV「i-MiEV」、そして10年に市販された日産の「リーフ」が市場供給される前段階で、そこに連結する電池メーカーや部材メーカーは大きな投資に打って出た。
・と言うのも、自動車各社のEV販売目標が高かったことで、それをそのまま受けて投資に踏み切ったからだ。例えば、11年に日産自動車が掲げた16年度までの目標は、仏ルノーとの累計販売で150万台と設定された。ところが実際の累計販売は目標の30%程度の42万台にとどまった。目標比で30%という実績は目標自体の設定根拠に誤りがあったか、あるいは非常に過度な期待があったからに他ならない。このような高すぎる目標に対峙するために、電池メーカーや部材メーカーも大きな投資を決断した。しかし、市場と言う蓋を開けてみたら、EVの存在感は非常に小さく、結果として過剰投資をしてしまった過去の事例は記憶に新しい。
・現在、自動車各社は電池メーカーへの投資促進、電池各社は部材メーカーへの投資促進を働きかけている。電池メーカーでは韓国のサムスンSDIとLG化学が中国の西安市と南京市に、いち早く車載用LIB生産工場を建設したものの、中国政府のホワイトリスト(バッテリー模範基準)に登録されないまま当てが外れ、中国でのビジネスに苦慮している。
・その両社は、新たに欧州に拠点を構えることで、欧州自動車メーカーを中心にした顧客開拓を進める。LG化学はポーランドにLIB工場を建設し、今後も増産体制を構築すべく拡大する。サムスンSDIはハンガリーに約400億円規模の投資でLIB工場を建設し、顧客開拓を進める。
・また、韓国で3番目の地位を築こうとするSKイノベーションも潤沢な資金を背景に欧州拠点を構えようとしている。同社のLIB生産キャパは1.1GWhであったが、18年下半期には3.9GWhまで拡大する計画と言う。韓国の瑞山工場を中心にグローバル拠点の設立を着々と進めようとしている。さらには、中国のCATLも同様に欧州拠点の構築に積極的である。
・LIB事業も、現時点では日韓中の競争のまっただ中にあり、投資競争と顧客開拓で熾烈な展開が繰り広げられている。電池各社、部材各社も広い視野と高い視点から自社の事業戦略を描かないと、大きな過ちを犯すリスクにもつながる。
▽④安全性・信頼性に関する徹底した取り組みの必要性
・さて、EVやPHVに関する安全性についてはまだ解決されていないのが実態である。すべての製品に共通した問題ではないが、EVではいまだに火災事故が発生している。
・三菱自動車の「i-MiEV」と日産自動車の「リーフ」は、火災事故に関しては1件も報道されていない。リーフは市販から7年になり、累積販売は30万台になろうとしている。走行距離では35億kmを超えたとされる。安全性に関しては誇れる根拠であろう。
・一方、テスラの「モデルS」は2013年に米国市場で立て続けに5台の火災事故が起こり、大きく報道された。16年には、フランスでの試乗会での火災事故、他にもノルウェーや中国等でも少なからずの火災事故を起こしていると聞く。
・中国もLIBを搭載したタクシーや乗用車、EVバスで、2010年以降から火災が多発し、現在も大きな課題となっている。それが背景にあり、安全性・信頼性に高いエコカーを実現するためのエコカーライセンスの発行、およびLIBの安全性を担保するためのホワイトリストの政策実施により、危険なLIBを排除しようとする中国政府筋の計らいが見られる。
・車載用電池ではドイツが主導してきた国連規則、ECE R-100.02 Part2が2016年7月に発効した。電池パックまでに及ぶ9項目の評価試験が課せられる認証制度が導入された。試験項目には電池パックの圧壊試験、外部短絡試験、耐火試験などの相当危険な試験法が導入されている。 筆者が在籍するエスペックでは、2013年に宇都宮事業所に「バッテリー受託試験センター」を開設した。そして国連規則導入計画を勘案し、いち早く15年9月には同事業所に「バッテリー安全認証センター」も開設した。
・上の左の写真は認証センター内の電池圧壊試験室とその装置であるが、開設を祝う開所式の時の写真であり、未使用状態を示したものである。以降、ちょうど2年が経過したが、国内外から多くの電池が持ち込まれる中、試験室内は試験に供されたLIBの爆発や火災等で発生した煤により、常時清掃しているものの、現在は右写真のように相当黒ずんでいる。
・もっとも、そういう過激な結果事象を想定した堅牢な建屋と試験装置設計を具現化した当センターは、国内外からも非常に注目され高い評価を受けており、国内はもとより海外からの委託試験ニーズも日に日に高まっている。
・認証試験を義務教育と例えれば、自動車メーカー個社単位で構築している独自試験項目や限界試験項目は高等教育に値する。筆者がサムスンSDIに在籍していた際には、日米欧韓の自動車各社を訪問し、安全性・信頼性に対する考え方、評価試験法、そして判定基準について多くの議論を交わしてきた。高等教育領域での内容、すなわち各社の独自試験や限界試験、そして判定基準は、他国に比べて日本勢が圧倒的に厳しい評価試験と判定基準を構築している。だからこそ、HV、PHV、EV、そして燃料電池車(FCV)のいずれにおいても火災事故を起こしていないと言う実績につながっているのであろう。
・ここに紹介した後方支援としてのエスペックの役割は、第三者的な客観性をもって安全性確保の担保につなげることはもちろんのこと、認証試験以外でも各社の高度な独自試験に柔軟に対応してLIBに対する不安感を一掃していくこと、自動車業界と電池業界の発展に寄与することにほかならない。 まだ完全に担保されていない海外勢のLIBについても、エスペックはオープンスタンスでのビジネスを提供している。高度な対応が可能な当社のセンターを国内外関連企業が最大限活用いただくことで、EV等のエコカーの火災事故を市場からなくしていくことを可能にする重要な機能となっている。
・拡大するEVシフトの中で火災事故が多発していくような状況が生じれば、全世界でのEV事業にブレーキがかかり急降下する。その結果、各業界への甚大な影響を招くことになる。それだけに、現時点から着実な評価試験を通じた安全性確保のための開発が重要な意味をもつことになり、後方支援の担う役割は一層拡大する。
▽⑤中国市場でのビジネスのリスク
・中国政策が国策優先として進めているNEV規制におけるエコカーライセンス制度では、ようやく外資系合弁企業のVW-JACがライセンスを取得するに至った。独中のトップ外交が功を奏した結果と受け止めるが、トヨタ、ホンダ、日産、および韓・現代自動車はライセンス未取得のままである。
・現代自動車に至っては、エコカーどころか既存事業にも大きな影響が出ている。中国市場での自動車販売では、2017年1月から8月までの前年同期比で45%減になったとのこと。また、合弁を組んでいる北京自動車との関係も悪化の一途をたどり、一説では合弁解消のような状況も今後あり得るとのこと。エコカーライセンス取得には程遠く、中国市場でのビジネスチャンスは遠のくばかりのようである。勘案すれば、終末高高度防衛ミサイル(THAAD:Terminal High Altitude Area Defense Missile)を設置した韓国に対する産業分野での報復と見る向きが大きい。
・日本勢の自動車各社も、エコカーライセンスは未取得であるが、ここは時間の問題と映る。日系大手自動車各社は個々のロビー活動を推し進め、一方では来年からのNEV規制に適合するEVやPHVを中国市場に供給する戦略に打って出た。逆に、中国市場が日本勢を排除するようなことになるなら、中国のエコカー技術開発にブレーキがかかることになり、中国の産業界にとっては大きなマイナスになるだろう。
▽まとめ
・今後、世界市場に出現することになる数多くのEVであるが、消費者の需要が同時に比例して拡大するとは思えない。すなわち市場に出てくる各社のEV群が、まんべんなく売れるとは思えないのである。選ばれるEVのみが勝ち組となっていく一方で、選ばれないEV製品も出現するだろう。
・そのためにも自動車各社、電池各社、および部材各社の世界戦略は、今後の各社の命運を決める。一方で、どちらに主流が動こうとも、後方支援のような普遍的ビジネスにはかなりの追い風である。 しかし部材業界も試験機器業界も、中国のような価格重視の市場においては、そこに適合する部材や評価装置などを持ち合わせないと市場開拓にはつながらない。その理由は、価格の安い中国ローカル製品に対して、自動車業界や電池業界は特段の不満はなく適用したり使用したりしている実態があるからだ。
・従来の先進諸国を対象主体に開発してきた製品だけでは立ち行かなくなる状況に陥る。新興国をも攻略できる事業戦略が、日本企業に改めて問われているのではないだろうか。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/246040/091200057/?P=1

第三に、元大手銀行のマーケット・エコノミストで法政大学大学院教授の真壁昭夫氏が9月19日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「日本の自動車メーカーはEV化「出遅れ組」と見なされている」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ここへ来て急速な勢いで、電気自動車(EV)に注目が集まっている。その背景には、欧州の主要国や中国が、一斉にガソリンエンジン車の禁止、電気自動車への転換を発表していることがある。 その動きは、今後、さらに大きな“大波”になることが考えられる。自動車業界はすそ野の広い産業分野であり、これから主要国の関連分野が“大波”にいかに対応していくかが注目される。仮にこの“大波”に乗り遅れると、世界の自動車市場から取り残されることも懸念される。
・9月12日、“フランクフルトモーターショー2017”のプレスデーが始まった。ディーゼルエンジンのデータ不正で世界を震撼させたフォルクスワーゲンは、グループ全体でのEV戦略を示した。EV化の動きには、自動車業界の勢力図を根本から覆すほどのマグニチュードがある。まさに“大波”と呼ぶべき構造変化が進もうとしている。
・フランクフルトを訪れたある自動車メーカーの知人は、「今後の競争が電気自動車を軸に進むことがはっきりした」と危機感をあらわにしていた。EV化の波は先進国だけではなく新興国にも押し寄せている。そのスピードはかなり速い。競争に与えるインパクトも計り知れない。新興国メーカーが、先進国メーカーの座を奪う可能性を評価する投資家も増えている。
▽EV化という自動車業界を襲う厳しい構造変化
・世界的な自動車のEV化の動きは、ディーゼルエンジン不信の震源地となった欧州からスタートした。 もともと、欧州各国はガソリン車が排出する温室効果ガスの削減を狙い、ディーゼル車の普及に力を入れてきた。しかし、2015年に独フォルクスワーゲンが、ディーゼルエンジンの排ガスデータを不正に改ざんしていたことが発覚した。 フォルクスワーゲン以外の不正疑惑も続き、世界中にディーゼルエンジン不信が広がった。この結果、一時はガソリン車よりもクリーンともてはやされたディーゼルエンジン離れが加速し、窒素酸化物(NOx)による健康被害への懸念も増幅された。
・この事態を受けた欧州各国の対応はかなり迅速だった。各国政府は、すぐに新しい技術を政府主導で導入しようと計画をまとめ始めた。昨年9月末、ドイツの連邦参議院は2030年までに内燃機関(ガソリン、ディーゼルを燃料とするエンジン)を搭載した新車の販売禁止を求める決議を採択した。本年7月には仏英の両政府が2040年までに内燃機関を搭載した新車の販売を禁止する方針を示した。
・このように、欧州では政府主導で自動車の脱化石燃料化の動きが加速している。とりあえずは各国が、ハイブリッド車など環境負担の少ない自動車にかかる税率を引き下げるなどして、環境に配慮した車種への乗り換えを促していくだろう。しかし、長い目で見た本命は電気自動車であることは間違いない。
・今後、電気自動車の充電スタンドなどインフラを整備することで、社会全体でEV化の動きがスピードアップしていくことが予想される。言い換えれば、政府がトップダウンで社会全体のイノベーションを進め、新しい需要を生み出そうとしている。こうした取り組みは、将来の潜在成長率にも影響するだろう。 環境問題に頭を悩ます中国も、脱化石燃料を重視している。電気自動車の開発競争がし烈化することは間違いない。自動車業界全体が、EV化という大きな潮流という構造変化を迎えようとしている。
▽世界的にし烈化を極める電気自動車の開発競争
・構造変化に対応するためには、いち早く新しい技術を開発し、その実用化を進めてシェアを獲得することが必須だ。その時、これまでの発想に固執してしまうと、初動動作が遅れてしまう。 1990年代以降、わが国の電機メーカーは完成品を自社内で生産し、それを輸出して稼ぐビジネスモデルを刷新することができなかった。そうした教訓をもとに、今後の競争戦略を練るべきだ。一言でいえば、これまでの成功体験を捨て、虚心坦懐にゼロから新しい技術・モノを生み出す姿勢が求められる。
・特に、日本の自動車メーカーは、幸か不幸か、ハイブリッドという優秀な技術を持っている。わが国のハイブリッド技術は、ドイツのメーカーにとって大きな脅威だったはずだ。それがディーゼルエンジンのデータ不正問題の一因となった可能性もある。
・EV化の動きが進み、近い将来に脱内燃機関の社会が実現するかを考えると、それは口で言うほど容易なことではないだろう。まだ紆余曲折があるはずだ。ただ、フォルクスワーゲン問題を受けて、ドイツはディーゼルエンジンとの決別を余儀なくされた。ある意味、EV化の流れはドイツメーカーが過去の負の記憶を払しょくし、生まれ変わりを目指すための“渡りに船”かもしれない。
・また、ガソリン車の生産実績が乏しい新興国のメーカーにとっても、EV化の動きは世界の市場に打って出るチャンスになるかもしれない。これは、ベンチャー企業にも当てはまる。それは、自動車業界の勢力図を大きく塗り替えることになる可能性がある。
・特に、中国は国を挙げてEV分野の強化に力を入れている。中国政府はガソリン車などの販売停止に向けた工程表を作成し始め、今後は比亜迪(BYD)などを支援することが見込まれる。 この動きが加速すると、中国企業の動向が世界の自動車業界での競争を左右する展開も考えられる。これは、中国との関係を強化してきたドイツのメーカーにとって追い風となるだろう。
・わが国の自動車メーカーがこうした状況に対応するためには、技術開発を急ぐだけでなく、中国の政府・メーカーとの関係を強化するなど、これまでの経営戦略の見直しと方針転換が必要だろう。
▽EVシフトを織り込み始めた株式市場
・世界的な内燃機関からEVへのシフトの動きを見越して、株式市場でも変化が表れている。国内では、トヨタ自動車をはじめガソリン車を生産してきたメーカーの株価は、足元でやや不安定化している。一方、パナソニックやGSユアサなどバッテリー関連の製品・部材を供給する企業の株価は上昇基調にある。
・9月12日には、アップルが“iPhone X”などの新型スマートフォンを発表したが、株価は期待されたほど堅調ではなかった。一方、同日、プレスデーが開かれたフランクフルトモーターショーで今後の戦略を示した、フォルクスワーゲンをはじめダイムラー、ルノーなどの欧州自動車メーカーの株価は堅調だ。それに加え、中国ではBYDの株価が上昇している。米国のテスラの株価はハイテク株を凌駕する上昇率を遂げてきた。
・明らかに、自動車業界における構造変化をマーケットは認識し始めている。これまで世界のトップシェアを占めてきた企業が、中長期的にその座を維持し続けるとは限らない。競争が激化する中でシェアを維持するためには、他社に先駆けてEVの開発を進めるだけでなく、ネットワーク技術の普及を見越した自動運転技術の導入など、従来にはなかったコンセプトを実用化しなければならない。
・こうした取り組みを進めるためには、国=政府の関与も欠かせない。社会全体でEV化を進めるためのコンセプトをまとめ、規制の緩和、EV自動車の普及を加速させるためのインフラ投資を、欧州各国以上のスピードで進めなければならない。
・すでに、世界のファンドマネージャーらの間では、EV化競争の先頭を走る企業、出遅れた企業の選別が進んでいる。株価を見る限り、わが国の自動車メーカーは出遅れ組と見なされているようだ。従来の発想を続けている以上、テスラや新興国メーカーの台頭に対抗することは難しいかもしれない。 かつてハイブリッドシステムで世界を席巻したように、EVでも世界の先頭を走る取り組みを進められるか否かが、中長期的な企業の競争力を左右するだろう。
http://diamond.jp/articles/-/142349

第一の記事で、 『急進的なEV推進策は トランプ大統領のパリ協定離脱への牽制』、とのフランス文部省の上級幹部の見方は、トランプ大統領に対するフランス側の怒りについては理解できるとしても、「穿ち過ぎ」との感を受けた。 『欧州からいきなり火の手が上がった空前の“EVムーブメント”とエンジン車終結宣言。それが本物になるのか、アドバルーンに終わるのかは、技術革新と顧客の心次第と言えそうだ』、というのはその通りだろう。
第二の記事で、 『米国ZEV規制はカリフォルニア州に端を発しているものだが、他にマサチューセッツ州、ニューヨーク州、・・・が追随している。18年から強化されるZEV規制は、トヨタとホンダが主導してきたハイブリッド車(HV)が対象から外れることで、EVやPHVの開発に拍車がかかる』、環境規制は州の権限が強いので、トランプ大統領といえども手出しできないのだろうか。 『従来の先進諸国を対象主体に開発してきた製品だけでは立ち行かなくなる状況に陥る。新興国をも攻略できる事業戦略が、日本企業に改めて問われているのではないだろうか』、というのは正論だ。
第三の記事で、 『欧州では政府主導で自動車の脱化石燃料化の動きが加速している。とりあえずは各国が、ハイブリッド車など環境負担の少ない自動車にかかる税率を引き下げるなどして、環境に配慮した車種への乗り換えを促していくだろう』、との指摘は、欧州はハイブリッド車など無視していると思っていた私にとっては、違和感がある。日本車を大きく利するようなことはしないのではなかろうか。 『これまでの成功体験を捨て、虚心坦懐にゼロから新しい技術・モノを生み出す姿勢が求められる』、と正しく指摘しながら、 『日本の自動車メーカーは、幸か不幸か、ハイブリッドという優秀な技術を持っている。わが国のハイブリッド技術は、ドイツのメーカーにとって大きな脅威だったはずだ』、とハイブリッドの栄光を捨て切れてないようだ。ただ、 『株価を見る限り、わが国の自動車メーカーは出遅れ組と見なされているようだ。従来の発想を続けている以上、テスラや新興国メーカーの台頭に対抗することは難しいかもしれない』との指摘はその通りだ。
タグ:電気自動車 EV 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 フランクフルト国際自動車ショー 佐藤 登 (その1)(ガソリン・ディーゼル車全廃が欧州で急に宣言された真の事情、急加速のEVシフトに潜む5つの課題、日本の自動車メーカーはEV化「出遅れ組」と見なされている) ガソリン・ディーゼル車全廃が欧州で急に宣言された真の事情 ・イギリスやフランスが2040年までにガソリンエンジン、ディーゼルエンジンのクルマの販売を終了させるプランを発表 欧州がいきなりクルマの電動化に前がかりになっている ノルウェーは内燃機関全廃ではないが、2025年までに販売車両のすべてを純EVもしくは充電可能なPHEV(プラグインハイブリッドカー)にするとし、オランダもそれに似た政策を推進 EU圏でのPHEVを含むEVの販売は伸びている 、手厚い補助金の支給、高額な新車登録費用の免除、公営駐車場を無料で使えるなどの各種恩典あってのもので 実際のEVのセールスパワーはそれよりもずっと低いのが実情 EV推進の背景には蓄電池の性能・コストへの期待感 、自宅外の急速充電器の運用はどこも大赤字だ エンドユーザーに数十kWhという大電力量を短時間でデリバリーするように社会ができていないのだ 短時間で大電力量を充電可能な充電器や、それを受け入れる側のクルマ側の技術革新も必要 急進的なEV推進策は トランプ大統領のパリ協定離脱への牽制!? リーマンショック以降はとくにEU統合、多文化共生主義のリベラル派が勢力を伸ばしてきましたが、テロや移民問題で彼らの旗色が急に悪くなった 求心力を回復させる材料が欲しい彼らにとって、環境は格好の材料に映ったのでしょう 電動化に一番合理的で冷静なのは日本の自動車メーカー 欧州からいきなり火の手が上がった空前の“EVムーブメント”とエンジン車終結宣言。それが本物になるのか、アドバルーンに終わるのかは、技術革新と顧客の心次第と言えそうだ 急加速のEVシフトに潜む5つの課題 日欧米韓中の鍔迫り合いとビジネスリスク 米テスラ 価格を3万5千ドルに抑えた普及型「モデル3」の販売を7月末に開始した 一般顧客を取り込む戦略に出たことで受注は50万台に達した 米国ゼロエミッション自動車(ZEV)規 中国新エネルギー自動車(NEV)規制 EVのオンパレード 米国ZEV規制 18年から強化されるZEV規制は、トヨタとホンダが主導してきたハイブリッド車(HV)が対象から外れることで、EVやPHVの開発に拍車がかかる 中国NEV規制もZEV規制の基本的な考えを踏襲し、EVやPHVを主体に規制をかける内容 業界が抱える課題 EVを購入する顧客層はどれだけいるか? 中古車市場で見劣りするEV 電池メーカー、部材メーカーの投資チャンスとリスク 安全性・信頼性に関する徹底した取り組みの必要性 EVではいまだに火災事故が発生 テスラの「モデルS」は2013年に米国市場で立て続けに5台の火災事故 中国市場でのビジネスのリスク 日本の自動車メーカーはEV化「出遅れ組」と見なされている 今後の競争が電気自動車を軸に進むことがはっきりした EV化という自動車業界を襲う厳しい構造変化 欧州では政府主導で自動車の脱化石燃料化の動きが加速 とりあえずは各国が、ハイブリッド車など環境負担の少ない自動車にかかる税率を引き下げるなどして、環境に配慮した車種への乗り換えを促していくだろう。しかし、長い目で見た本命は電気自動車であることは間違いない これまでの成功体験を捨て、虚心坦懐にゼロから新しい技術・モノを生み出す姿勢が求められる 日本の自動車メーカーは、幸か不幸か、ハイブリッドという優秀な技術を持っている 中国政府はガソリン車などの販売停止に向けた工程表を作成し始め、今後は比亜迪(BYD)などを支援することが見込まれる EVシフトを織り込み始めた株式市場 トヨタ自動車をはじめガソリン車を生産してきたメーカーの株価は、足元でやや不安定化 株価を見る限り、わが国の自動車メーカーは出遅れ組と見なされているようだ。従来の発想を続けている以上、テスラや新興国メーカーの台頭に対抗することは難しいかもしれない
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