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株式・為替相場(その19)(円安がさらなる貿易赤字と円売りを招くカラクリ サービス収支に透ける製造業のグローバル化、日経平均株価 一時3万3853円をつけた戻り高値の「教訓」とは?) [金融]

株式・為替相場については、本年6月19日に取上げた。今日は、(その19)(円安がさらなる貿易赤字と円売りを招くカラクリ サービス収支に透ける製造業のグローバル化、日経平均株価 一時3万3853円をつけた戻り高値の「教訓」とは?)である。

先ずは、10月24日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「円安がさらなる貿易赤字と円売りを招くカラクリ サービス収支に透ける製造業のグローバル化」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/710381
・『長引く円安の理由を理解するうえでは、日米金利差拡大という論点に終始するだけではなく、「円の需給構造があらゆる面で変化を強いられている」という論点も理解する姿勢が重要になっていると筆者は考えている。 円の需給構造変化を象徴するのは、約10年前から確認される貿易黒字の消滅だろう。 その背景は単純ではないが、輸出面では、①日本企業が海外生産移管を進めたことや、②そもそも日本の輸出品が競争力を喪失したこと、輸入面では、③東日本大震災を契機に原子力発電の稼働が停止したこと(≒結果的に一段と鉱物性燃料輸入に依存する電源構成に切り替わったこと)などが挙げられる』、為替動向を見る上で、こうした構造的要因に注目する見方は、参考になる。
・『製造業が消え、円安でも輸出は増えない  とりわけ、③が資源輸入国である日本の貿易収支の脆弱性を高め、円安や資源価格上昇によって需給が崩れやすい(貿易赤字が拡大しやすい)体質につながったという話は広く知られている。2022年以降の貿易赤字拡大も、基本的にはそうした論点に起因するものと理解される。 だが、円安で日本から海外への輸出数量が押し上げられるならば、貿易収支が一方的な悪化を強いられることもなく、2022年のような「悪い円安」論も噴出しにくい側面はあっただろう。 この点、①で指摘されるように、円安を起点として実体経済に好循環をもたらすことが期待される製造業の生産拠点が日本から消えてしまったことが、円の需給構造が円売りに傾斜しやすくなった根本的な原因とも考えられる。) ただし、国際収支統計上、製造業の海外生産移管は貿易収支悪化の一因であると同時に、サービス収支改善の一因になっている部分もある。それが産業財産権等使用料であり、同項目には日本企業が海外子会社等から受け取るロイヤルティーなどが計上される。 日本の「その他サービス収支」において唯一、黒字を記録する知的財産権等使用料も、その実態は産業財産権等使用料の黒字に支えられている。 近年、海外企業から供給される音楽や動画の定額課金サービスを受けて著作権等使用料の赤字が増勢傾向にあるものの、産業財産権等使用料の黒字が多額に上っているため、これら2本から構成される知的財産権等使用料全体では黒字が維持される構図にある。 製造業の海外生産移管は経常収支上、赤字拡大と黒字拡大の二面性を有する』、「①で指摘されるように、円安を起点として実体経済に好循環をもたらすことが期待される製造業の生産拠点が日本から消えてしまったことが、円の需給構造が円売りに傾斜しやすくなった根本的な原因とも考えられる・・・製造業の海外生産移管は貿易収支悪化の一因であると同時に、サービス収支改善の一因になっている部分もある。それが産業財産権等使用料であり、同項目には日本企業が海外子会社等から受け取るロイヤルティーなどが計上される。 日本の「その他サービス収支」において唯一、黒字を記録する知的財産権等使用料も、その実態は産業財産権等使用料の黒字に支えられている。 近年、海外企業から供給される音楽や動画の定額課金サービスを受けて著作権等使用料の赤字が増勢傾向にあるものの、産業財産権等使用料の黒字が多額に上っているため、これら2本から構成される知的財産権等使用料全体では黒字が維持される構図にある。 製造業の海外生産移管は経常収支上、赤字拡大と黒字拡大の二面性を有する」、なるほど。
・『ロイヤルティー収入は増加  2023年8月公表の日銀レビュー『国際収支統計からみたサービス取引のグローバル化』ではサービス収支を軸に日本経済が経験しているさまざまな構造変化を分析しているが、そこでは産業財産権等使用料の黒字が増勢傾向にあることも注目されている。 日本企業が海外生産移管を進めるほど、国内企業が海外から受け取るロイヤルティー(産業財産権等使用料)は増えるので、例えば自動車の海外生産台数の動きなどと安定した関係を見いだすことができる。 ちなみに日本の貿易収支が慢性的な赤字傾向に陥る直前の2010年の貿易収支は約6.6兆円の黒字だった。同じ年、産業財産権の受取は約2.2兆円だった。これが2021年の産業財産権の受取は約4.6兆円と倍以上に膨らんでいる。) 上述した輸入面に関する③電源構成の燃料輸入依存の論点もあって、産業財産権の受取だけで日本の貿易赤字が穴埋めできるような状況ではないが、海外移管された生産拠点や、それにより失われた輸出すべてが「円売り」に直結しているわけではなく、サービス収支上、産業財産権として回帰している部分もあることは円の需給を考察するうえでは知っておきたい事実だ。 単なる親子間取引の結果と言えばそれまでだが、日本経済の重要な構造変化を端的に表している部分と言える』、「海外移管された生産拠点や、それにより失われた輸出すべてが「円売り」に直結しているわけではなく、サービス収支上、産業財産権として回帰している部分もあることは円の需給を考察するうえでは知っておきたい事実だ」、なるほど。
・『海外生産が「海上貨物の支払い増」を招く  なお、自動車のように海外生産が増えれば、当然それを運ぶためのサービス利用も活発化する。これはサービス収支上では輸送収支、その中でも海上貨物を扱う収支を見るとわかる。 受取と支払いを差し引きした収支で見た場合、2010年以降、産業財産権の受取がはっきり超過して黒字が拡大する一方、海上貨物は2017年以降に支払いが顕著に増え始め、2019年以降は赤字に転化し、拡大している。 だが、海上貨物に関する赤字拡大も二面性がある話だ。 日銀レビューでは「本邦製造業における海外生産比率の高まりは、海外海運企業との競争激化と相まって、本邦海運企業が海外子会社を活用して競争力を強化する形などで、グローバル化を促進した可能性も考えられる」と分析している。 日本の海運企業が海外子会社を活用し、そこで収益を積み上げれば、輸送収支(とりわけ海上貨物の収支)上の赤字は拡大しても、当該海外子会社の収益は第一次所得収支に計上される。 それが配当金として日本に帰ってくるのか、再投資収益として海外に滞留するのかという別問題はあるが(近年は海外に滞留する再投資収益が増える傾向にある)、海上貨物サービスへの支払いがすべて円売りになっているわけではない。) いずれにせよ、上述したような、「産業財産権の黒字が増えて、海上貨物の赤字が増えている」という構図からは、日本が単に原材料を輸入し、国内で生産し、海外へ輸出するというシンプルな加工貿易から撤退しつつある状況が読み取れる。 その代わりに、海外で生産した財を海外で販売したり、第三国向けに輸出したりする世界全体を巻き込んだサプライチェーン体制を組成している様子が読み取れる』、「「産業財産権の黒字が増えて、海上貨物の赤字が増えている」という構図からは、日本が単に原材料を輸入し、国内で生産し、海外へ輸出するというシンプルな加工貿易から撤退しつつある状況が読み取れる。 その代わりに、海外で生産した財を海外で販売したり、第三国向けに輸出したりする世界全体を巻き込んだサプライチェーン体制を組成している様子が読み取れる」、昔とはずいぶん変わったものだ。
・『円安による「好循環」は想定すべきではない  こうした実情を踏まえれば、円安が製造業にコストメリットをもたらし、海外への輸出数量を押し上げ、国内経済に生産・所得・消費の好循環をもたらすという伝統的な波及経路をもはや想定すべきでないこともよくわかるだろう。 例えば、上述の議論を踏まえれば、海外生産拠点から受け取るロイヤルティーは円安で膨らみやすいが、海上貨物サービスへの支払いも円安で膨らみやすい状況が推測される。 むしろ、筆者がこれまで議論してきたような国際化されたサービス取引(例えばデジタル取引など)の存在を踏まえると「円安で支払いが増える」という事実から、円売りは増えそうなイメージもある。 伝統的な貿易収支への影響について言えば、円安が輸出を押し上げる構造がもはやない一方、円安で輸入が押し上げられる構造はしっかり存在しているため、やはり円安は赤字拡大に直結しやすい状況が想像されるし、事実、過去2年弱はそうなっている。 サービス収支を詳細に分析することで、近年の日本経済が経験している構造変化を深く理解し、また、為替需給の変遷も把握することができる。 毎月のアメリカ雇用統計やFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の「次の一手」など、日米金利差の拡大・縮小に直結する短期的な材料も当然重要だが、自国通貨の需給環境を包括的に理解する助けになる国際収支は、今も昔も円相場の中長期見通しを分析する立場から最重要の計数と言える』、「毎月のアメリカ雇用統計やFRB・・・の「次の一手」など、日米金利差の拡大・縮小に直結する短期的な材料も当然重要だが、自国通貨の需給環境を包括的に理解する助けになる国際収支は、今も昔も円相場の中長期見通しを分析する立場から最重要の計数と言える」、その通りだ。

次に、11月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家の山崎 元氏による「日経平均株価、一時3万3853円をつけた戻り高値の「教訓」とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/332756
・『日経平均株価が33年ぶりの高値水準を付けた。この「戻り高値」には意外感を持った人が多かったのではないか。そこで、今回の株価上昇の要因を分析するとともに、投資家が学ぶべき「教訓」について考えたい』、どんな「教訓」があるのだろう、興味深そうだ。
・『日経平均株価が33年ぶり高水準 意外な戻り高値  11月20日の日中、いわゆる「ザラ場」の東京証券取引所の取引で、日経平均株価が33年ぶりの高水準まで上昇した。7月3日に付けた終値での戻り高値(バブル崩壊後高値)を一時上回る、3万3853円を付けた。33年間にわたってすっきりと「史上最高値」と言えないのは、わが国がかつて経験したバブルの威力と、その後の異例の経済停滞による泣き所だが、高値の一種には違いない。 もちろん人によって感じ方は違うだろうが、今回の高値には意外感を持つ向きが多いのではないか。 つい少し前、10月の終わりの4取引日にあっては、日経平均の終値はいずれも3万1000円を割っていて、3万円を維持できないのではないかと心配になるような状況だった。 それが、3週間のうちにざっと1割上昇して「戻り高値」なのである。この間、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後にも利上げの可能性があると意外にタカ派的な示唆をしたり、逆に米国のインフレ関連のデータが落ち着きを見せたりといった、いつもあるようなニュースはあった。ところが、日本の株価に影響を与えるような大きなニュースがあったわけではない』、「今回の高値には意外感を持つ向きが多いのではないか。 つい少し前、10月の終わりの4取引日にあっては、日経平均の終値はいずれも3万1000円を割っていて、3万円を維持できないのではないかと心配になるような状況だった。 それが、3週間のうちにざっと1割上昇して「戻り高値」なのである・・・米国のインフレ関連のデータ・・・にも日本の株価に影響を与えるような大きなニュースがあったわけではない」、どうしたのだろう。
・『株価上昇の要因とは? 後から探すとたいてい見つかる  意外ではあっても、株価の動きに理由はある。予測は難しいけれども、後からの説明はできるのが相場業界の強いところである。 今回、大変良い説明を提供している、日本経済新聞の篠崎健太記者の記事「日経平均、一時33年ぶり高値 マネー再び日本株へ」(『日本経済新聞』11月20日電子版)を参考にさせてもらいながら、要因を整理しておこう。 今や、新聞記事のスクラップを行う人は激減しているだろうが、筆者が思うに、この記事はスクラップして、しばらく手元に置いておく価値がある。特に、今後しばらくして株価が低迷するようであれば、読み返してみて「戻り」の要因を再確認するのだ。 さて、株価の説明のためには、企業の業績から見るのがオーソドックスだ。記事はまず、日本の小売企業がコスト増を吸収する値上げを実現できたことと、外需企業の業績が上方修正ラッシュであり、「日本企業のファンダメンタルズの堅調さが確認できた」というヘッジファンドマネージャーの意見を紹介している。 小売価格の上昇は、少し気を付けて街を歩いて生活していたら気が付くだろうし、業績修正はインターネットか新聞でチェックしていれば、投資家なら気付いているはずだ。円安の効果は大きい。ただし、これらは11月に入って3週間の間に目立って生じたものではない。 なお、この後に「日経平均は年内に3万5000円まで上昇余地がある」とするファンドマネージャーの見解が紹介されているが、この部分に情報は含まれていない。「余地」はあるし、勢いはあってもおかしくはない。答える側も記事を書いている人も、いずれも大した意味を感じていないはずだ。 ただ、これに続く、日本株の上昇要因には株価収益率(PER)の拡大に表れた投資家の期待だけではなく、増益の寄与度が欧米を上回っていることが指摘できるとの分析は、記憶にとどめる価値がある。 ある程度の大きさの株価変動を説明できる要因は、後から探すとたいてい見つかるものなのだ』、「今回、大変良い説明を提供している、日本経済新聞の篠崎健太記者の記事「日経平均、一時33年ぶり高値 マネー再び日本株へ」(『日本経済新聞』11月20日電子版)を参考にさせてもらいながら、要因を整理しておこう・・・この記事はスクラップして、しばらく手元に置いておく価値がある。特に、今後しばらくして株価が低迷するようであれば、読み返してみて「戻り」の要因を再確認するのだ。 さて、株価の説明のためには、企業の業績から見るのがオーソドックスだ。記事はまず、日本の小売企業がコスト増を吸収する値上げを実現できたことと、外需企業の業績が上方修正ラッシュであり、「日本企業のファンダメンタルズの堅調さが確認できた」というヘッジファンドマネージャーの意見を紹介している・・・日本株の上昇要因には株価収益率(PER)の拡大に表れた投資家の期待だけではなく、増益の寄与度が欧米を上回っていることが指摘できるとの分析は、記憶にとどめる価値がある」、なるほど。
・『株価を決めるのは「海外勢」と「海外要因」  記事には「相場を押し上げている主体は海外投資家だ」とある。記者はそう思ったのだろうし、多くの市場関係者がそう感じていたはずだ。もちろん、筆者もそう思った。 日本取引所グループによると、8〜9月は現物株を2.4兆円売り越していた海外勢が、10月以降に1.1兆円買い越しているという。市場関係者が注目する主体別売買動向の数字だが、よく考えてみると、海外勢の売り越し・買い越しに対して、国内勢の別の主体が同金額の売買の相手になっているはずだ。なぜ、海外勢の売買の方が株価への影響力があるのだろうか。 直接的・直感的には、海外勢の買い方・売り方が、前者では上値を払い、後者では下値をたたくような、マーケットインパクトに対して積極的なものであることが原因だ。加えて、背後にある大きな資金主体のグローバルな株式投資のリバランスの意図が、売買によって示唆されるような情報上のインパクトがあるのかもしれない。 ただ、原因のいかんにかかわらず、日本の株価は海外の投資家の行動によって大きく影響を受けて形成されている。そして、変動要因の多くは海外にあり、日本市場は一つのローカルマーケットにすぎないという点は常に留意しておく価値がある。 それで別段卑下する必要はないが、趣味として株式投資をするレベルではなく、資産形成のために株式運用を行う多くの投資家にとって、日本株は「世界株の中の(愛すべき)一部」だと割り切って、分散投資の一部に取り入れたら十分なのではないかと考えられるゆえんだ』、「日本の株価は海外の投資家の行動によって大きく影響を受けて形成されている。そして、変動要因の多くは海外にあり、日本市場は一つのローカルマーケットにすぎないという点は常に留意しておく価値がある・・・資産形成のために株式運用を行う多くの投資家にとって、日本株は「世界株の中の(愛すべき)一部」だと割り切って、分散投資の一部に取り入れたら十分なのではないかと考えられるゆえんだ」、なるほど。
・『33年ぶり高値の理由は「3週間」の変化にはない  さて、日経・篠崎記者の記事は、さらに親切に、アベノミクス以降の日本株の利益を指数化して、米国、欧州と比べたグラフを掲げてくれている。この間、日本株の利益成長は両地域の株式を大きく上回っている。 日本株の投資家にとっては心強いデータだ。アベノミクスの株式市場に対する好影響が確認できることもよいことだ。政策パッケージとして不足はあったかもしれないが、株価を下げる政策よりも良かったことは間違いあるまい。) さて、こうして戻り高値の要因を振り返ってみたが、海外勢の売買と、その背後にある海外の株価形成要因を除くと、いずれも、日経平均3万円割れ寸前から約1割高い戻り高値が形成された3週間の中の変化ではないことが分かる。 より正確には、この3週間の変化の中に将来の株価説明要因になるような大きな変化を「示唆」する情報はあったのかもしれないが、それはデータで確認できるようなものではなかった』、「アベノミクス以降の日本株の利益を指数化して、米国、欧州と比べたグラフを掲げてくれている。この間、日本株の利益成長は両地域の株式を大きく上回っている。 日本株の投資家にとっては心強いデータだ。アベノミクスの株式市場に対する好影響が確認できることもよいことだ。政策パッケージとして不足はあったかもしれないが、株価を下げる政策よりも良かったことは間違いあるまい・・・海外勢の売買と、その背後にある海外の株価形成要因を除くと、いずれも、日経平均3万円割れ寸前から約1割高い戻り高値が形成された3週間の中の変化ではないことが分かる。 より正確には、この3週間の変化の中に将来の株価説明要因になるような大きな変化を「示唆」する情報はあったのかもしれないが、それはデータで確認できるようなものではなかった」、なるほど。
・『投資家はうまくやれたか? 今回の戻り高値の「教訓」とは  さて、一連の株価の動きを見て、日本の投資家の行動と心理を推測する。 最もまずいのは、この間に「3万円割れは確実だ」「もっと株価が下がったところで買い直したらいい」などと自分に言い聞かせて、怖くなって持ち株を売ってしまった投資家だろう。仮に、日経平均3万1000円の水準で持ち株を売ったとすると、現水準までに、あるいは現在の水準で株式を買い直すことは心理的に相当ハードルが高そうだ。 次にまずそうなのは、株式の買いチャンスをうかがっており、「3万円を割れたら買おう」と思っていて、買いそびれているうちに買いのタイミングを失した投資家だろうか。今後、株式投資のポジションを作るのが大幅に遅れるかもしれないし、さらに高値が形成されたときに多額にまとめて投資することになるのかもしれない。 今回の展開を見て、「定期的な定額積立投資だったら、安値でも買えていたはずだ」などという結果論を言うつもりはない。 投資家に確認してほしいのは、この3週間の変動の間に、投資方針を変えた方がいいと言えたような根拠となる情報要因がほぼ何もなかったことだ。 根拠がないのに売買を行うと、掛かるのは手数料であり、マーケットインパクトであり、ついでに余計な精神的疲労だ。その状態を、「面倒だったし、徒労だった」と振り返ることができずに、売買が一種の気晴らしになるような心境に陥っているのだとすると、さらにまずい。 合理的な投資家にできることは、余計な売買をせずに自分にとって必要な大きさの投資を維持してじっとしている真の「長期投資」と、これと両立する「分散投資」「低コスト」のポートフォリオの保有である。さらには、自分が合理的であるとの自信を持って精神的なストレスを減らすことだ。 この点を確認するに当たって、今回の一連の株価の動きは、極めて分かりやすい教材であった』、「合理的な投資家にできることは、余計な売買をせずに自分にとって必要な大きさの投資を維持してじっとしている真の「長期投資」と、これと両立する「分散投資」「低コスト」のポートフォリオの保有である。さらには、自分が合理的であるとの自信を持って精神的なストレスを減らすことだ。 この点を確認するに当たって、今回の一連の株価の動きは、極めて分かりやすい教材であった」、どうも「合理的な投資家」である筆者への鎮魂歌にも聞こえる。 
タグ:山崎 元氏による「日経平均株価、一時3万3853円をつけた戻り高値の「教訓」とは?」 さて、株価の説明のためには、企業の業績から見るのがオーソドックスだ。記事はまず、日本の小売企業がコスト増を吸収する値上げを実現できたことと、外需企業の業績が上方修正ラッシュであり、「日本企業のファンダメンタルズの堅調さが確認できた」というヘッジファンドマネージャーの意見を紹介している・・・日本株の上昇要因には株価収益率(PER)の拡大に表れた投資家の期待だけではなく、増益の寄与度が欧米を上回っていることが指摘できるとの分析は、記憶にとどめる価値がある」、なるほど。 「①で指摘されるように、円安を起点として実体経済に好循環をもたらすことが期待される製造業の生産拠点が日本から消えてしまったことが、円の需給構造が円売りに傾斜しやすくなった根本的な原因とも考えられる・・・製造業の海外生産移管は貿易収支悪化の一因であると同時に、サービス収支改善の一因になっている部分もある。それが産業財産権等使用料であり、同項目には日本企業が海外子会社等から受け取るロイヤルティーなどが計上される。 ダイヤモンド・オンライン この点を確認するに当たって、今回の一連の株価の動きは、極めて分かりやすい教材であった」、どうも「合理的な投資家」である筆者への鎮魂歌にも聞こえる。 「今回、大変良い説明を提供している、日本経済新聞の篠崎健太記者の記事「日経平均、一時33年ぶり高値 マネー再び日本株へ」(『日本経済新聞』11月20日電子版)を参考にさせてもらいながら、要因を整理しておこう・・・この記事はスクラップして、しばらく手元に置いておく価値がある。特に、今後しばらくして株価が低迷するようであれば、読み返してみて「戻り」の要因を再確認するのだ。 にも日本の株価に影響を与えるような大きなニュースがあったわけではない」、どうしたのだろう。 「毎月のアメリカ雇用統計やFRB・・・の「次の一手」など、日米金利差の拡大・縮小に直結する短期的な材料も当然重要だが、自国通貨の需給環境を包括的に理解する助けになる国際収支は、今も昔も円相場の中長期見通しを分析する立場から最重要の計数と言える」、その通りだ。 「「産業財産権の黒字が増えて、海上貨物の赤字が増えている」という構図からは、日本が単に原材料を輸入し、国内で生産し、海外へ輸出するというシンプルな加工貿易から撤退しつつある状況が読み取れる。 その代わりに、海外で生産した財を海外で販売したり、第三国向けに輸出したりする世界全体を巻き込んだサプライチェーン体制を組成している様子が読み取れる」、昔とはずいぶん変わったものだ。 為替動向を見る上で、こうした構造的要因に注目する見方は、参考になる。 東洋経済オンライン 「日本の株価は海外の投資家の行動によって大きく影響を受けて形成されている。そして、変動要因の多くは海外にあり、日本市場は一つのローカルマーケットにすぎないという点は常に留意しておく価値がある・・・資産形成のために株式運用を行う多くの投資家にとって、日本株は「世界株の中の(愛すべき)一部」だと割り切って、分散投資の一部に取り入れたら十分なのではないかと考えられるゆえんだ」、なるほど。 海外勢の売買と、その背後にある海外の株価形成要因を除くと、いずれも、日経平均3万円割れ寸前から約1割高い戻り高値が形成された3週間の中の変化ではないことが分かる。 より正確には、この3週間の変化の中に将来の株価説明要因になるような大きな変化を「示唆」する情報はあったのかもしれないが、それはデータで確認できるようなものではなかった」、なるほど。 「アベノミクス以降の日本株の利益を指数化して、米国、欧州と比べたグラフを掲げてくれている。この間、日本株の利益成長は両地域の株式を大きく上回っている。 日本株の投資家にとっては心強いデータだ。アベノミクスの株式市場に対する好影響が確認できることもよいことだ。政策パッケージとして不足はあったかもしれないが、株価を下げる政策よりも良かったことは間違いあるまい・・・ 日本の「その他サービス収支」において唯一、黒字を記録する知的財産権等使用料も、その実態は産業財産権等使用料の黒字に支えられている。 近年、海外企業から供給される音楽や動画の定額課金サービスを受けて著作権等使用料の赤字が増勢傾向にあるものの、産業財産権等使用料の黒字が多額に上っているため、これら2本から構成される知的財産権等使用料全体では黒字が維持される構図にある。 製造業の海外生産移管は経常収支上、赤字拡大と黒字拡大の二面性を有する」、なるほど。 「海外移管された生産拠点や、それにより失われた輸出すべてが「円売り」に直結しているわけではなく、サービス収支上、産業財産権として回帰している部分もあることは円の需給を考察するうえでは知っておきたい事実だ」、なるほど。 唐鎌 大輔氏による「円安がさらなる貿易赤字と円売りを招くカラクリ サービス収支に透ける製造業のグローバル化」 「今回の高値には意外感を持つ向きが多いのではないか。 つい少し前、10月の終わりの4取引日にあっては、日経平均の終値はいずれも3万1000円を割っていて、3万円を維持できないのではないかと心配になるような状況だった。 それが、3週間のうちにざっと1割上昇して「戻り高値」なのである・・・米国のインフレ関連のデータ・・・ どんな「教訓」があるのだろう、興味深そうだ。 「合理的な投資家にできることは、余計な売買をせずに自分にとって必要な大きさの投資を維持してじっとしている真の「長期投資」と、これと両立する「分散投資」「低コスト」のポートフォリオの保有である。さらには、自分が合理的であるとの自信を持って精神的なストレスを減らすことだ。
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保険(その8)(【ビッグモーター不正】損保業界関係者は「損保ジャパンは別 報酬返上では済まされない 逮捕されますよね」、ビッグモーターに経営指導したのは“沈没事故”知床遊覧船と同じコンサル会社 無理な指導なかった?、ビッグモーター不正事件で平均年収1100万円 最高5000万円の「超高待遇」社員たちはどうなるのか?、伊藤忠がビッグモーター買収!?火中の栗拾う理由 「創業家の切り離し条件」24年春までに買収判断) [金融]

保険については、本年5月15日に取上げた。今日は、(その8)(【ビッグモーター不正】損保業界関係者は「損保ジャパンは別 報酬返上では済まされない 逮捕されますよね」、ビッグモーターに経営指導したのは“沈没事故”知床遊覧船と同じコンサル会社 無理な指導なかった?、ビッグモーター不正事件で平均年収1100万円 最高5000万円の「超高待遇」社員たちはどうなるのか?、伊藤忠がビッグモーター買収!?火中の栗拾う理由 「創業家の切り離し条件」24年春までに買収判断)である。

先ずは、7月20日付けデイリー新潮が掲載した「【ビッグモーター不正】損保業界関係者は「損保ジャパンは別。報酬返上では済まされない。逮捕されますよね」」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/07201047/?all=1
・「『♪くーるまを売るな~らビッグモーター!の歌声も虚しい。7月18日、中古車販売大手ビッグモーターの兼重宏行社長(71)が、報酬の全額を1年間返上とする方針を固めた。車の修理代を損害保険各社に水増し請求していたことが特別調査委員会によって認定されてからおよそ2週間、社長をはじめ役員たちの報酬返上では済まないという声が……。 ビッグモーターは中古車の買取・販売のみならず、大半の店舗に隣接された整備工場をウリにしていた。そして“最先端設備でどこよりもキレイに素早く修理!”を謳っていたのだ。 ところが整備工場内では、ゴルフボールを入れた靴下を振り回してぶつけて車体を損傷、不必要な部品の交換、1台あたりの修理工賃が14万円前後のノルマ……とても修理とは呼べない工賃が上乗せされて、損保会社に請求されていたのだ。報告書には「コンプライアンス(法令遵守)意識の鈍麻」「経営陣に忖度するいびつな企業風土」といった批判も入っていた。大手損保の関係者は言う。 「ビッグモーターの良くない評判は今に始まったことではありません。この会社は保険の代理店業務も行っていて、社員たちは保険契約にノルマがありました。それが達成できないと罰金が課せられていたのです」 2017年2月に産経新聞がこう報じている。 同社では全国約80の販売店で、前月の保険販売実績に応じて目標を達成できなかった店の店長個人から10万円を上限に現金を集め、達成した店の店長へ分配していた。産経新聞の取材に同社は昨年12月、「会社と関係なく店長間で慣習的に行われていた。一切強制していない」と説明した。/しかし、昨年6月に全社員宛てに送られた兼重社長名での社内メールでは、「保険選手権大会に関して」とのタイトルで「罰金を払うということは、店長としての仕事をしてないということだ!」「罰金を払い続けて、店長として(中略)恥ずかしくないか!」などと記載されていた》(産経新聞:17年2月26日)』、「整備工場内では、ゴルフボールを入れた靴下を振り回してぶつけて車体を損傷、不必要な部品の交換」、よくマスコミで取り上げられたニュースだ。 「保険の代理店業務も行っていて、社員たちは保険契約にノルマがありました。それが達成できないと罰金が課せられていたのです」 2017年2月に産経新聞がこう報じている。 同社では全国約80の販売店で、前月の保険販売実績に応じて目標を達成できなかった店の店長個人から10万円を上限に現金を集め、達成した店の店長へ分配していた」、なるほど。
・『一代で全国300店  「もともとビッグモーターは、76年に山口県岩国市に開店した兼重オートセンターが母体です。そこから兼重社長が一代で、本社を東京の六本木ヒルズに置き、北海道から沖縄まで全国300店舗に迫る出店をし、“買取台数6年連続日本一”を謳う会社に成長したんです。もちろんそこには、関西の中古車販売会社ハナテンを傘下に収めたことが大きいのですが、兼重社長は自衛隊出身と聞いたこともありますし、かなり無理をしてきたのでしょう」 今回の損保への不正請求問題は、昨年はじめの内部告発が発端だった。同社と取引のある損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上の3社がサンプル調査を実施し、全国にある整備工場の大半から水増し請求の疑いが発覚した。 「そこで3社で、ビッグモーターに自主調査を要請したわけです。ところが、返ってきたのは、修理作業員の技術不足、社内の手続き上のミスが原因だったという回答でした。これに納得できない東京海上と三井住友海上が独自に調査を始めると、ようやくビッグモーターも第三者による特別調査チームを立ち上げたのです」 損保ジャパンは加わらなかったのか。 「損保ジャパンだけはビッグモーターの回答を鵜呑みにして、一度は辞めていた事故車両の紹介を復活させたそうですから」 なぜ損保ジャパンは取引を復活させたのか』、「今回の損保への不正請求問題は、昨年はじめの内部告発が発端だった。同社と取引のある損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上の3社がサンプル調査を実施し、全国にある整備工場の大半から水増し請求の疑いが発覚した。 「そこで3社で、ビッグモーターに自主調査を要請したわけです。ところが、返ってきたのは、修理作業員の技術不足、社内の手続き上のミスが原因だったという回答でした。これに納得できない東京海上と三井住友海上が独自に調査を始めると、ようやくビッグモーターも第三者による特別調査チームを立ち上げたのです」、「損保ジャパンだけはビッグモーターの回答を鵜呑みにして、一度は辞めていた事故車両の紹介を復活させた」、「損保ジャパン」は共同正犯といえるほど悪質だ。
・『強く出られなかった部分も  「太いパイプがあるのでしょうね。損保ジャパンはビッグモーターに社員を出向させていたそうです。これは勝手な想像ですが、損保ジャパンは旧安田火災の頃から大手損保に追いつけ追い越せで、ゆるい契約を結ぶ社風がありました。実際、損保ジャパンとなってからも、業務が営業偏重だと業務停止処分が下ったことがありました。ビッグモーターものし上がってきた会社ですから、似た部分があるのではないかと思います」 それにしても、損保に修理代を水増し請求したところで、それほど儲かるのだろうか。 「修理代は損保から支払われますから確実ですし、修理の工賃などの見積もりを増やせば余計に儲かります」 タイヤにネジを打ち込んで、わざとパンクさせていたという報道もあった。 「通常のパンクだけなら保険の対象外です。事故によるパンクや、タイヤだけでなくボディも傷つけられたのであれば、車両保険の対象となる可能性があります。いわば修理の水増しをしていたということでしょう」 そうした不正請求が損保にバレなかったということか。
「そういうことになります。ビッグモーターは保険を売ってくれるので、損保にとってはお客様でもある。自賠責保険など1台では大した金額ではありませんが、販売大手となればかなりの額になる。そのため、修理にちょっと高い見積もりが来ても強く出られない部分もあったと思います。損保ジャパンについては、社員まで出向させていたのですから、うちは知らなかったでは済まないと思いますけど、いずれにしても最終的には保険に加入いただいたお客様が最大の被害者です。修理代を損保が支払う分、等級が下がって保険料は割り増しとなったわけですから」 歴とした詐欺事件のように思われるが、 「正直言って、こんなことをやっていたら逮捕されます。少なくとも報酬を1年返上すれば責任を取ったことになるなんていう話ではありません」』、「ビッグモーターは保険を売ってくれるので、損保にとってはお客様でもある。自賠責保険など1台では大した金額ではありませんが、販売大手となればかなりの額になる。そのため、修理にちょっと高い見積もりが来ても強く出られない部分もあったと思います。損保ジャパンについては、社員まで出向させていたのですから、うちは知らなかったでは済まないと思いますけど、いずれにしても最終的には保険に加入いただいたお客様が最大の被害者です」、「損保ジャパン」への金融庁の処分はまだ検討中のようだが、悪質性からみて相当重いものになるだろう。

次に、7月26日付け日刊ゲンダイ「ビッグモーターに経営指導したのは“沈没事故”知床遊覧船と同じコンサル会社 無理な指導なかった?」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/326532
・『「天地神明に誓って知らなかった」 25日、保険金の不正請求問題で揺れる中古車販売大手「ビッグモーター」の兼重宏行社長が記者会見を行い、26日付で自身と会見に姿を見せなかった息子の宏一副社長の辞任を発表した。 同社は客が持ち込んだ故障車両に「ドライバーで傷つける」「ゴルフボールを入れた靴下を振り回して叩く」「サンドペーパーで塗装をはがす」「ヘッドライトのカバーを割る」などの不正行為を行い、修理費用を水増ししたうえで保険金を請求していたことが明らかになっている。 兼重社長は会見で「個々の工場長が指示してやったんじゃないか。事実確認が取れていませんけれども、それでないとこういうことは起きない」と、不正への組織ぐるみの関与を否定。 外部専門家からなる特別調査委員会の調査報告書によると、同社は修理車両1台あたり14万円前後の粗利をノルマとして設定していたという。 本来、車両の損傷状況に応じて施される修理に収益目標を設定するなど、売り上げ至上主義が現場に無理を強いていた可能性が高いが、兼重社長は不正の原因について、「不合理な目標設定。それが目標ではなく、ノルマになって、(板金塗装の幹部が)達成させるために強くプレッシャーをかけた。それが原因で今回の不正が起きたと考えられますので、組織的と思われてもこれは致し方ないんですけども、決してそんなことはありません」と述べている。 「同社は業界でもトップクラスの給与水準を謳っていて、実際に幹部クラスになると2000~4000万円台の年収を得ている社員もいます。その一方で上層部からのプレッシャーはものすごく、ノルマが達成できないと降格や左遷、減給というペナルティがあったため、現場は不正に手を染めざるをえない状況にあったといいます。 ほかにも“環境整備点検”といって、幹部が月一で店舗を巡回し、掃除や整理整頓がきちんと行われているかなどを厳しくチェックする作業を深夜や朝方まで強いられていたようです。こうした会社のブラックな体質を嫌い、離職者が多いことでも知られていました」(中古車業界関係者) 特別調査委員会の調査報告書は、ビッグモーターの「環境整備点検」についてこう厳しく批判している。 “環境整備点検は、スーツを着たお偉方が上から目線で難癖をつけるだけのイベントになっていたのであり、そのような状況下で経営陣に現場の声が上がってくるはずがない』、歩道の植木への除草剤散布で枯らせてしまった問題は、この「環境整備点検」に備えたものだった〟「「同社は業界でもトップクラスの給与水準を謳っていて、実際に幹部クラスになると2000~4000万円台の年収を得ている社員もいます。その一方で上層部からのプレッシャーはものすごく、ノルマが達成できないと降格や左遷、減給というペナルティがあったため、現場は不正に手を染めざるをえない状況にあったといいます」、なるほど。
・『■「儲かる仕組み」を会員企業に指導  この環境整備点検を指導したとされるのが、経営コンサルタントの小山昇氏(75)が率いる株式会社武蔵野で、ダスキンのフランチャイズ事業のほか、中小企業への経営コンサルティング事業で知られている。 同社は18年連続増収を謳い、小山氏が編み出したとされる「儲かる仕組み」を会員企業に指南。武蔵野から経営指導を受けた750社のうち、400社以上が過去最高益を達成しているという。その会員企業の一つが、今回の不正が発覚したビッグモーターだ。 小山氏は、2014年9月12日配信のダイヤモンドオンラインの記事「【第1回】日本初「日本経営品質賞」2度受賞の秘密!「朝一番の掃除」7つのメリットとは?」で、ビッグモーターについてこう記している。 《山口県岩国市に本社がある自動車販売会社、株式会社ビッグモーター(兼重宏行社長)は、記録的台風(2005年9月6~7日)の影響により、展示車両が全滅。一瞬にして2億円の損害を受けてしまいます。 ところが「ビッグモーター」は、3日後には営業再開し、いまや中古車販売台数で「業界日本一」になりました》 小山氏によると、ビッグモーターが壊滅的状況から這い上がれた唯一の解が、掃除をはじめとする「環境整備」にあるという。 《人材を鍛え、組織を改善し、高収益体質をつくるうえで、「環境整備」ほど効果的なしくみはありません》 ほかにも、毎年社員に配る「経営計画書」なるものがビッグモーターには存在する。 「3.強烈な願望を心に抱く」「4.誰にも負けない努力をする」「5.売り上げを最大限に、経費は最小限に」「8.燃える闘魂」といった自己啓発書顔負けの項目が並び、社員は毎朝唱和させられていたという』、安物の「自己啓発書顔負けの項目」だ。
・『「幹部には目標達成に必要な部下の生殺与奪権を与える」  「組織や人事に関して、『社長の意図が素早く実行されるフラットな組織にする』『会社と社長の思想は受け入れないが、仕事の能力はある。今、すぐ辞めてください』『経営方針の執行責任を持つ幹部には、目標達成に必要な部下の生殺与奪権を与える』といった文言が並び、これらビッグモーターの経営計画書も小山氏が指導したといわれています」(経済誌記者) 小山氏といえば、昨年4月23日、北海道知床半島の沖合で沈没した遊覧船「KAZUⅠ(カズワン)」の運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長に経営指導していたことでも知られている。 同社は乗員・乗客合わせて26名全員が死亡・行方不明となる大惨事を起こしているが、事故発生後、ベテラン船長や従業員の解雇のほか、船の整備不良や悪天候での無理な出航など、ずさんな経営実態が明らかになった。遊覧船買収の際、桂田社長は小山氏に相談したとされている。 偶然とはいえ、武蔵野は不祥事を起こした2社のコンサルに関わっていたことになる。企業にとって清掃や整理整頓、従業員の士気向上は必要ではあるものの、現場に不正行為をさせるような行き過ぎた経営指導はなかったのか。 武蔵野に質問を送ったところ、次のような回答があった(qは質問、Aは回答)。 Q:貴社がビッグモーターに経営指導していたのは事実ですか? A:「弊社の経営サポート会員企業様であり、弊社主催の研修・セミナーにご参加頂いたことはございます」 Q:「環境整備点検」「経営計画書」などの仕組みは、貴社の経営指導の一環ですか? A:「そのような仕組みの導入を推奨していたのは事実ですが、過度な経費削減、無理な努力目標や自己啓発を強いるよう指導する事はございません。ましてや、パワハラまがいの行為を誘発するようなことは、あってはならないものと考えております」 Q:ビッグモーターへの経営指導はいつから開始されましたか? 現在も継続中でしょうか? A:「個別の顧客情報に関しましては、お答えいたしかねます」 Q:特別調査委員会の報告書にも、無理な努力目標や自己啓発を強いられ、パワハラまがいの行為があったと指摘されていますが、このあたりも貴社が指導してきたということで間違いないでしょうか? 見解を聞かせてください。 A:「前述のように全くの間違いであります。そのような指導はしておりません」 ビッグモーターの経営指導には関わっていたものの、不正行為に至る無理な指導は決して行っていないという。 ホームページに掲載されている武蔵野の60期経営計画についての、小山氏による次のような記述がある。 《この経営計画書は家族の期待と責任を一身に背負っている社員が、安定した生活を築くため、昨年の過ちを正し、お客様に愛され支持される会社を実現するために、数字による目標と方針を明確にし、何をしなければならないか、又、何をしてはいけないかを、全身全霊、精魂を込めて書き上げたものです》 ビッグモーターは社長、副社長の辞任で創業家が全役職から退任したことになるが、大株主として引き続き同社への関与、影響力が指摘されている。ビッグモーターは不正という“過ち”を正し、客を裏切らない企業として再出発できるのか』、「ビッグモーターの経営計画書も小山氏が指導したといわれています」・・・小山氏といえば、昨年4月23日、北海道知床半島の沖合で沈没した遊覧船「KAZUⅠ(カズワン)」の運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長に経営指導していたことでも知られている。 同社は乗員・乗客合わせて26名全員が死亡・行方不明となる大惨事を起こしているが、事故発生後、ベテラン船長や従業員の解雇のほか、船の整備不良や悪天候での無理な出航など、ずさんな経営実態が明らかになった。遊覧船買収の際、桂田社長は小山氏に相談したとされている。 偶然とはいえ、武蔵野は不祥事を起こした2社のコンサルに関わっていたことになる」、「武蔵野」の「小山氏」の化けの皮は完全に剥がれたことになる。

第三に、7月28日付けダイヤモンド・オンラインが記載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「ビッグモーター不正事件で平均年収1100万円、最高5000万円の「超高待遇」社員たちはどうなるのか?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/326768
・『連日報じられるビッグモーターの不正事件。これは「ビッグモーター1社の凋落(ちょうらく)」だけでは終わらないでしょう。私は、中古車業界・他業界まで波及する影響があると予測します。今後、何が起こるのか? 平均年収1100万円、最高5000万円の「超高待遇」社員たちも、このままではいられないかもしれません』、興味深そうだ。
・『ビッグモーターの不正事件は「1社の凋落」では終わらない  ビッグモーターの不正事件が大きく動き出しました。不正は2021年秋から断続的にメディアに報道されてきたのですが、ビッグモーターという大企業の特殊性から、これまで2年にわたってそれほど大きな事件とはなっていなかったのです。 ビッグモーターは未上場企業であるために情報の開示義務がないことが、この事件の特異な状況を作り出していました。さらに内部告発やリークから不正を疑う報道が出るたびに会社がそれを黙殺したことで、後追い報道も出づらかったのです。 今月、事態が大きく動いたのは第三者委員会の報告書が明らかになったからなのですが、実はこの報告書自体、当初は開示されていませんでした。あくまで被害者の立場にある損保3社に宛てた報告書だったという事情からです。この対応に業を煮やしたいずれかの関係者が多数のメディアに内容をリークしたことから、ようやく大事件に発展しました。 今回の記事では未来予測の専門家の立場から「これから何が起きるのか」にフォーカスして、ビッグモーターを取り巻く今後について予測していきます。) 上記の事情から、記事中の記述はメディアがこれまで報道してきた内容に依拠している点をご容赦ください。 これから起きると予測されることは、以下の三つです。 (1)中古車相場の暴落 (2)損保ジャパンへの飛び火 (3)ビッグモーター自体の凋落(ちょうらく) それぞれ、これから起きることを整理していきましょう』、「報告書自体、当初は開示されていませんでした。あくまで被害者の立場にある損保3社に宛てた報告書だったという事情からです。この対応に業を煮やしたいずれかの関係者が多数のメディアに内容をリークしたことから、ようやく大事件に発展」、こんな経緯があったとは初めて知った。
・『(1)中古車価格は確実に暴落する  今回の報道で「これから間違いなく起きる」と断言できることは、ビッグモーターから車を買う人がいなくなり、ビッグモーターで自分の車を修理をする人がいなくなることです。過去の不祥事から類推するに、売り上げは8割から9割減少するでしょう。 ビッグモーターは情報非開示企業ですが、従業員数6000人、全国300店舗以上を展開していて「買取台数6年連続日本一」をうたう、まさに中古車販売業界のリーダー企業といえる存在です。 その会社が修理の際に、「ヘッドライトのカバーを割る」「ドライバーで車体に傷をつける」「ゴルフボールを靴下に入れたもので車をたたいて、傷を拡大させる」といった修理代金の水増しを行っていたことが分かりました。 そのことがこれだけの規模で、ワイドショーなどで報道され続けたわけですから、ビッグモーターを使おうという消費者は、事件を知らない人以外いなくなると考えるのが普通です。 それで何が起きるかというと、売り上げが9割減っても6000人の従業員がいて300店舗が営業している以上、現金が枯渇します。銀行からは追加の借り入れができるどころか、むしろ借入金の返済を求められることになります。 そこで経営陣ができることは、在庫の中古車を投げ売りすることです。店頭では大幅な値引きセールが行われるでしょうけれども、問題は中古車の品質を消費者がどう考えるかです。 「きちんとメンテナンスされていないのでは?」「不具合が隠されているんじゃないだろうか?」 そう考えて、大幅な値引きをされた中古車をビッグモーターから買うことも消費者は躊躇(ちゅうちょ)することになるでしょう。 そうなると、経営としては中古車在庫をオークションで換金売りするようになります。 実は、昨年の夏までは中古車市場は空前の高値をつけていました。コロナ禍や上海ロックダウンのあおりを受けた部品の供給遅れや半導体不足で新車の納車が1年待ちといった状況となり、人気車種の中古価格が新車価格を上回っていたのです。 その半導体不足が解消され始めたことや、大きな買い手であるロシアに対する輸出規制の強化などから、中古車相場はこれから徐々に下がり始めることが予想されていました。 その「徐々に」という観測に対して、急速に暗雲が垂れ込めてきたわけです。これまで供給不足から高値になっていた中古自動車が、今回の事件によりビッグモーターが在庫を放出すれば、逆に供給過多に転じてしまう。そのため、中古車価格の暴落が起きる可能性が高まってきたのです。 業界にとってはとんだとばっちりになりますが、この先、中古車市場は大いに冷え込むことになるでしょう』、「ロシアに対する輸出規制の強化などから、中古車相場はこれから徐々に下がり始めることが予想されていました。 その「徐々に」という観測に対して、急速に暗雲が垂れ込めてきた」、最悪のタイミングだ。
・『(2)損保ジャパンは説明責任を強く問われるだろう  さて、7月25日のビッグモーターの記者会見で非常に興味深いやり取りがありました。 同社の兼重宏行前社長が途中まで不正に関与した社員について「刑事告発する」と主張していたのですが、会見の最後に「先ほど刑事告発の話をしましたが、質問を受けて考えてみると、その責任も私にあるなと。そこまでする必要はないなと考え直しましたので、訂正します」と発言を修正したのです。 刑事告発をすれば当然社内に捜査の手が入りますし、裁判を通じて事実関係が明らかになります。刑事告発をしないことにすればそれがなくなります。 これは私の視点ですが、現在被害者の立場にある損保ジャパンがビッグモーターを刑事告発をするかしないかが、この事件の試金石になるでしょう。予測としてはこの先、損保ジャパンは今回の事件についての説明責任を強く求められるようになります。 被害者である損保ジャパンの白川儀一社長は今回の事件について、「会社全体としてビッグモーターの不正行為を見抜けなかった」と陳謝しています。一方で、この謝罪について疑念を向ける報道があります。) 前述の通り、ビッグモーターは未公開会社です。しかし、2015年に中古車売買を行っていた公開会社のハナテンを買収した際に、株主構成が公開されています。その時点では、損保ジャパンが持ち株比率6.88%で兼重前社長に次ぐ第2位の株主になっていることが判明しています。 他の保険会社2社の出向者がそれぞれ3名のレベルであるのとは違い、損保ジャパンが37人という突出した出向者を出していることはこの資本関係から説明がつきます。 2021年秋に内部告発で水増し請求が表面化して、翌2月には損保3社がサンプル調査を行い多数の工場で水増し請求が起きていたことが発覚しました。結果を受けて3社ともビッグモーターとの取引を停止したのですが、損保ジャパンだけは22年7月に「組織的な不正の指示がなかったことを確認できたため」という理由で、受け入れを一時再開します。 一方で、損保ジャパンの白川社長によれば、同社の経営陣が今回の不正の内部告発の情報を知ったのは2022年の夏だといいます。損保ジャパンが弁護士を含めた調査委員会を立ち上げることを表明するのはそのずっと後の2023年7月、つまり事件が完全に表面化するまでの10カ月以上なぜか調査を始めていないのです。 ビッグモーターの記者会見で現場のことは知らないとしていた兼重前社長が、損保ジャパンの出向社員は関与していないことだけは知っていると強調していたのも印象的でした。 実は損保ジャパンは2019年に、ビッグモーターに関して「完全査定レス」の仕組みを導入しています。それまではビッグモーターが修理の見積もりを作成したら、損保ジャパンの損害査定人(アジャスター)がその見積もりをチェックしてから修理に着手していました。これは保険の一般的なワークフローです。 しかし、ビッグモーターではそのチェック工程を完全に省略して保険金を支払う形に変えたのです。 損保ジャパンの出向者は不正の現場に立ち会っていないということですが、工場長会議には出ていたという報道がありますし、ビッグモーターが修理1件当たりの工賃にノルマを設定していたことも知っていたという報道もあります。 そもそも、修理1件当たりの工賃にノルマがあるということ自体がいろいろと不可解です。工賃は一定ではなく車の状態によって変動するため、修理の程度が軽微であれば、ノルマを達成できないことだってあるはずです。 そしてよく考えてみると、損保ジャパンはそれほど大きな被害は受けていないかもしれません。 ビッグモーターは損保ジャパンにとって、年間100億円台の保険料収入をもたらしてくれる大手保険代理店です。被害額が水増しされた車の保険契約者は翌年からの保険料が上がりますから、後々元がとれます。 そしてビッグモーターについてはアジャスターレスだったので、損保ジャパンのアジャスターは他の事故に専念できます。実は業界では損保ジャパンのアジャスターはすご腕だと評判で、事故の相手が損保ジャパンに入っていると厳しい金額の賠償金しか受け取れないと嘆く人も多くいます。 邪推すれば、全体での収支は維持できている可能性があるのです。 いずれにしてもこれから起きることとしては、損保ジャパンがこれらの事柄について、対外的に厳しく説明責任を求められるようになるということだけは間違いないでしょう』、「ビッグモーターは損保ジャパンにとって、年間100億円台の保険料収入をもたらしてくれる大手保険代理店です。被害額が水増しされた車の保険契約者は翌年からの保険料が上がりますから、後々元がとれます。 そしてビッグモーターについてはアジャスターレスだったので、損保ジャパンのアジャスターは他の事故に専念できます。実は業界では損保ジャパンのアジャスターはすご腕だと評判で、事故の相手が損保ジャパンに入っていると厳しい金額の賠償金しか受け取れないと嘆く人も多くいます」、「損保ジャパン」が「ビッグモーターについてはアジャスターレスだった」とは初めて知った。「これから起きることとしては、損保ジャパンがこれらの事柄について、対外的に厳しく説明責任を求められるようになる」、「説明責任」を果たすのはどうみても困難だろう。
・『(3)ビッグモーターが救済されるとしたらそれはM&Aではない  さて、飛ぶ鳥を落とす勢いで発展してきたビッグモーターという会社自体は間違いなく衰退に向かうでしょう。企業のブランドというものは、本業でここまでの不祥事が起きてしまうと、回復不可能なほどの傷がついてしまうものです。 これまでは、このような不祥事が起きた企業がたどる道は二通りでした。業績が極端に低迷したのちに破綻を表明して、廃業ないしは民事再生に向かうのが一つの道。そしてもう一つは、ファンドないしは同業他社に買収される道です。 では、同業他社にとってビッグモーターは有用でしょうか? 私は、ビッグモーターについては企業やファンドによる買収(M&A)は起きないと予測しています。代わりに営業権が譲渡されることになるというのが私の予測です。 中古車業界の他社から見れば、ビッグモーターのブランドは「絶対に要らないブランド」でしょう。 しかし、店舗と工場、在庫車が安く手に入るなら、そこには非常に大きな経済価値があります。人手不足が企業成長のボトルネックになっている昨今ですから、若くて技術のある従業員がまとめて確保できることも魅力です。 ただ、M&Aできない最大の理由も人材にあります。なにしろサンプル調査によれば、4人に1人が不正に関与しているほどの企業です。管理職のパワハラ体質に関する報道もあります。人気ドラマになぞらえて言えば「腐ったミカン」が心配です。)不正体質と表裏の関係にあるのが、ビッグモーターの給料の高さです。大手求人サイトではビッグモーターの正社員の募集で「残業ほぼなし、平均年収1109万円」となっています。 すでに閉鎖されて読めなくなっていますが、ビッグモーターのホームページでも「営業職の約半数が年収1000万円超えの実績」とされていて、募集要項では2021年12月〜2022年11月実績として「年収462万円〜5040万円」と表示されています。 業界水準を超えて異常に高い報酬部分は業績連動のインセンティブであり、ノルマを達成したことによる手当です。ですから、今後はビッグモーターの社員の給与水準は急速に年収462万円に近づいていくと思われます。 とはいえ、業界常識とはかけ離れた給与に慣れている人材をごっそりそのまま受け入れるかどうかというと、業界他社は躊躇するはずです。 管理職は不要だが若手中心に社員は欲しいとなると、スキームとしてはM&Aではなく営業権を譲渡してもらう形で店舗や工場の設備と在庫の車を入手して、人材については一人一人面接して、個別採用する形を取るのがベストです。 救済する側から見れば、「業界水準と比較して異常に給与が高い人材を採らなければいい」と考えることでしょう。むしろ、給与の低い人ほど正直に仕事をしてくれる人だと感じるはずです。 諸般の事情から、ビッグモーターを救済しようとする企業はしばらくのところ出現しない可能性の方が高いと私は予測します。待っているのはいばらの道です』、「業界水準を超えて異常に高い報酬部分は業績連動のインセンティブであり、ノルマを達成したことによる手当です。ですから、今後はビッグモーターの社員の給与水準は急速に年収462万円に近づいていくと思われます。 とはいえ、業界常識とはかけ離れた給与に慣れている人材をごっそりそのまま受け入れるかどうかというと、業界他社は躊躇するはずです」、次の記事にあるように伊藤忠が買収に名乗りを挙げたようだ。これは次の記事でみてみたい。

第四に、11月17日付け東洋経済オンライン「伊藤忠がビッグモーター買収!?火中の栗拾う理由 「創業家の切り離し条件」24年春までに買収判断」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/716001
・『自動車保険金の不正請求問題をきっかけに経営難に陥った中古車販売大手ビッグモーターに思わぬ援軍候補が現れた。 大手総合商社の伊藤忠商事は11月17日午後、「ビッグモーター社が運営する事業について再建の可能性を検証するために、これよりデューデリジェンスを開始する」と発表した。 伊藤忠商事のほか、子会社の伊藤忠エネクス、投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)の3社がビッグモーターと資産査定(デューデリジェンス)の独占契約を結び、来春までに買収の可否を判断する。 現在、ビッグモーター株の100%を握る兼重宏行・前社長ら創業家が経営に一切関与しないことが条件になる』、興味深そうだ。
・『市場は買収検討を「買い」と判断  ビッグモーター側も同時にリリースを発表し、伊藤忠商事について「自動車関連事業におけるハンズオン経営の実績も有し、オペレーション効率化、成長戦略の立案等にも強みを持っている」と評価した。 17日、午前中から上昇基調だった伊藤忠商事の株価は、午後1時に日本経済新聞が「買収検討」の速報を流した後も上がり続け、終値は前日比2.3%高い6132円をつけた。市場は買収検討を「買い」と判断した。) 一連の不正を受け、国土交通省は10月、ビッグモーターの34事業所を道路運送車両法に基づいて事業停止とした。さらに金融庁は保険業法に基づき、同社の保険代理店登録を11月30日付で取り消す方針だ。 伊藤忠商事はなぜ、そんな火中の栗を拾おうとするのだろうか』、大商社のやっているキレイな商売とは、完全に異質な気もする。
・『「見送る可能性も十分ある」(同社関係者は、「今回の買収検討は創業家支援ではない。厳格なデューデリの結果、案件を見送る可能性も十分ある」と強調する。 JWPとの意見交換の中で今回の案件が浮上し、ビッグモーターのファイナンシャルアドバイザーを務めるデロイトトーマツから開示された資料を基に検証した。その結果、より詳しいデューデリを行う価値があると判断したようだ。 伊藤忠商事とビッグモーターには、これまで取引関係はない。だが、伊藤忠グループでは、中古車販売のほか、自動車整備、保険やローンの販売も行うなど、自動車ビジネスとの関係は深い。 イギリス最大手のタイヤ小売りであるクイックフィットも傘下に持つ。2023年8月には全国の整備工場1万1500カ所の自動車整備工場とネットワークを持つリース車両整備受託会社「ナルネットコミュニケーションズ」への出資参画を表明したばかりだった。 「商社が中古車業界に興味を持っているという話は以前からあった。伊藤忠グループは子会社のヤナセをはじめもともと自動車、中古車に強い。(今回の基本合意に)違和感はない」と中古車業界の関係者は話す。) 一方、ビッグモーターはほぼ全国に店舗を持ち顧客との接点も多い。整備工場の設備も比較的新しい。ビッグモーターの事業と伊藤忠グループの自動車関連事業は親和性が高く、シナジー(相乗効果)がそれなりに見込めると伊藤忠側は判断したようだ。 伊藤忠商事をはじめとする総合商社は資源市況の高止まりや円安効果により業績は好調、2024年3月期の業績予想も上方修正が相次いでいた。伊藤忠商事も11月6日に通期純利益予想を7800億円から8000億円に引き上げたばかりだった。潤沢な資金を背景に、各社は有望な成長投資先を模索している。 ただ、伊藤忠には厳しい投資基準があり、投資額に見合う成長が厳格に求められる。今年8月に発表した、子会社・伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の完全子会社化案件ですら「浮かんでは消え、消えては浮かんだ案件」(鉢村剛CFO)だったという』、「伊藤忠グループは子会社のヤナセをはじめもともと自動車、中古車に強い」、のであれば確かに違和感はなさそうだ。
・『買収価格は極めて厳しいものになる  急転直下で浮上した今回の案件は相乗効果がわかりやすい一方、伊藤忠商事から提示される買収価格はビッグモーターにとって、極めて厳しいものになるだろう。 前述のように伊藤忠側は、創業家からの経営切り離しを支援の条件としており、創業家がビッグモーター株の100%を握る資本構成も今後、大きな論点になる。会社分割でビッグモーターを解体し、創業家から切り離された優良資産だけ伊藤忠が買い取っていく可能性もある。 ビッグモーター再建の道筋は、新たな局面に入った』、「伊藤忠」がどのように料理していくのか、見守りたい。 
タグ:(その8)(【ビッグモーター不正】損保業界関係者は「損保ジャパンは別 報酬返上では済まされない 逮捕されますよね」、ビッグモーターに経営指導したのは“沈没事故”知床遊覧船と同じコンサル会社 無理な指導なかった?、ビッグモーター不正事件で平均年収1100万円 最高5000万円の「超高待遇」社員たちはどうなるのか?、伊藤忠がビッグモーター買収!?火中の栗拾う理由 「創業家の切り離し条件」24年春までに買収判断) 保険 「ビッグモーターの経営計画書も小山氏が指導したといわれています」・・・小山氏といえば、昨年4月23日、北海道知床半島の沖合で沈没した遊覧船「KAZUⅠ(カズワン)」の運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長に経営指導していたことでも知られている。 同社は乗員・乗客合わせて26名全員が死亡・行方不明となる大惨事を起こしているが、事故発生後、ベテラン船長や従業員の解雇のほか、船の整備不良や悪天候での無理な出航など、ずさんな経営実態が明らかになった。 安物の「自己啓発書顔負けの項目」だ。 「整備工場内では、ゴルフボールを入れた靴下を振り回してぶつけて車体を損傷、不必要な部品の交換」、よくマスコミで取り上げられたニュースだ。 「保険の代理店業務も行っていて、社員たちは保険契約にノルマがありました。それが達成できないと罰金が課せられていたのです」 2017年2月に産経新聞がこう報じている。 同社では全国約80の販売店で、前月の保険販売実績に応じて目標を達成できなかった店の店長個人から10万円を上限に現金を集め、達成した店の店長へ分配していた」、なるほど。 歩道の植木への除草剤散布で枯らせてしまった問題は、この「環境整備点検」に備えたものだった〟「「同社は業界でもトップクラスの給与水準を謳っていて、実際に幹部クラスになると2000~4000万円台の年収を得ている社員もいます。その一方で上層部からのプレッシャーはものすごく、ノルマが達成できないと降格や左遷、減給というペナルティがあったため、現場は不正に手を染めざるをえない状況にあったといいます」、なるほど。 日刊ゲンダイ「ビッグモーターに経営指導したのは“沈没事故”知床遊覧船と同じコンサル会社 無理な指導なかった?」 「ビッグモーターは保険を売ってくれるので、損保にとってはお客様でもある。自賠責保険など1台では大した金額ではありませんが、販売大手となればかなりの額になる。そのため、修理にちょっと高い見積もりが来ても強く出られない部分もあったと思います。損保ジャパンについては、社員まで出向させていたのですから、うちは知らなかったでは済まないと思いますけど、いずれにしても最終的には保険に加入いただいたお客様が最大の被害者です」、「損保ジャパン」への金融庁の処分はまだ検討中のようだが、悪質性からみて相当重いものになるだろう。 「損保ジャパンだけはビッグモーターの回答を鵜呑みにして、一度は辞めていた事故車両の紹介を復活させた」、「損保ジャパン」は共同正犯といえるほど悪質だ。 「今回の損保への不正請求問題は、昨年はじめの内部告発が発端だった。同社と取引のある損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上の3社がサンプル調査を実施し、全国にある整備工場の大半から水増し請求の疑いが発覚した。 「そこで3社で、ビッグモーターに自主調査を要請したわけです。ところが、返ってきたのは、修理作業員の技術不足、社内の手続き上のミスが原因だったという回答でした。これに納得できない東京海上と三井住友海上が独自に調査を始めると、ようやくビッグモーターも第三者による特別調査チームを立ち上げたのです」 「損保ジャパン」が「ビッグモーターについてはアジャスターレスだった」とは初めて知った。「これから起きることとしては、損保ジャパンがこれらの事柄について、対外的に厳しく説明責任を求められるようになる」、「説明責任」を果たすのはどうみても困難だろう。 ・『(3)ビッグモーターが救済されるとしたらそれはM&Aではない  さて、飛ぶ鳥を落とす勢いで発展してきたビッグモーターという会社自体は間違いなく衰退に向かうでしょう。企業のブランドというものは、本業でここまでの不祥事が起きてしまうと、回復不可能なほどの傷がつい 「ビッグモーターは損保ジャパンにとって、年間100億円台の保険料収入をもたらしてくれる大手保険代理店です。被害額が水増しされた車の保険契約者は翌年からの保険料が上がりますから、後々元がとれます。 そしてビッグモーターについてはアジャスターレスだったので、損保ジャパンのアジャスターは他の事故に専念できます。実は業界では損保ジャパンのアジャスターはすご腕だと評判で、事故の相手が損保ジャパンに入っていると厳しい金額の賠償金しか受け取れないと嘆く人も多くいます」、 「ロシアに対する輸出規制の強化などから、中古車相場はこれから徐々に下がり始めることが予想されていました。 その「徐々に」という観測に対して、急速に暗雲が垂れ込めてきた」、最悪のタイミングだ。 「報告書自体、当初は開示されていませんでした。あくまで被害者の立場にある損保3社に宛てた報告書だったという事情からです。この対応に業を煮やしたいずれかの関係者が多数のメディアに内容をリークしたことから、ようやく大事件に発展」、こんな経緯があったとは初めて知った。 鈴木貴博氏による「ビッグモーター不正事件で平均年収1100万円、最高5000万円の「超高待遇」社員たちはどうなるのか?」 ダイヤモンド・オンライン 遊覧船買収の際、桂田社長は小山氏に相談したとされている。 偶然とはいえ、武蔵野は不祥事を起こした2社のコンサルに関わっていたことになる」、「武蔵野」の「小山氏」の化けの皮は完全に剥がれたことになる。 「伊藤忠」がどのように料理していくのか、見守りたい。 「伊藤忠グループは子会社のヤナセをはじめもともと自動車、中古車に強い」、のであれば確かに違和感はなさそうだ。 大商社のやっているキレイな商売とは、完全に異質な気もする。 東洋経済オンライン「伊藤忠がビッグモーター買収!?火中の栗拾う理由 「創業家の切り離し条件」24年春までに買収判断」 思われます。 とはいえ、業界常識とはかけ離れた給与に慣れている人材をごっそりそのまま受け入れるかどうかというと、業界他社は躊躇するはずです」、次の記事にあるように伊藤忠が買収に名乗りを挙げたようだ。これは次の記事でみてみたい。 救済する側から見れば、「業界水準と比較して異常に給与が高い人材を採らなければいい」と考えることでしょう。むしろ、給与の低い人ほど正直に仕事をしてくれる人だと感じるはずです。 諸般の事情から、ビッグモーターを救済しようとする企業はしばらくのところ出現しない可能性の方が高いと私は予測します。待っているのはいばらの道です』、「業界水準を超えて異常に高い報酬部分は業績連動のインセンティブであり、ノルマを達成したことによる手当です。ですから、今後はビッグモーターの社員の給与水準は急速に年収462万円に近づいていくと です。ですから、今後はビッグモーターの社員の給与水準は急速に年収462万円に近づいていくと思われます。 とはいえ、業界常識とはかけ離れた給与に慣れている人材をごっそりそのまま受け入れるかどうかというと、業界他社は躊躇するはずです。 管理職は不要だが若手中心に社員は欲しいとなると、スキームとしてはM&Aではなく営業権を譲渡してもらう形で店舗や工場の設備と在庫の車を入手して、人材については一人一人面接して、個別採用する形を取るのがベストです。 )不正体質と表裏の関係にあるのが、ビッグモーターの給料の高さです。大手求人サイトではビッグモーターの正社員の募集で「残業ほぼなし、平均年収1109万円」となっています。 すでに閉鎖されて読めなくなっていますが、ビッグモーターのホームページでも「営業職の約半数が年収1000万円超えの実績」とされていて、募集要項では2021年12月〜2022年11月実績として「年収462万円〜5040万円」と表示されています。 業界水準を超えて異常に高い報酬部分は業績連動のインセンティブであり、ノルマを達成したことによる手当 しかし、店舗と工場、在庫車が安く手に入るなら、そこには非常に大きな経済価値があります。人手不足が企業成長のボトルネックになっている昨今ですから、若くて技術のある従業員がまとめて確保できることも魅力です。 ただ、M&Aできない最大の理由も人材にあります。なにしろサンプル調査によれば、4人に1人が不正に関与しているほどの企業です。管理職のパワハラ体質に関する報道もあります。人気ドラマになぞらえて言えば「腐ったミカン」が心配です。 てしまうものです。 これまでは、このような不祥事が起きた企業がたどる道は二通りでした。業績が極端に低迷したのちに破綻を表明して、廃業ないしは民事再生に向かうのが一つの道。そしてもう一つは、ファンドないしは同業他社に買収される道です。 では、同業他社にとってビッグモーターは有用でしょうか? 私は、ビッグモーターについては企業やファンドによる買収(M&A)は起きないと予測しています。代わりに営業権が譲渡されることになるというのが私の予測です。 デイリー新潮が掲載した「【ビッグモーター不正】損保業界関係者は「損保ジャパンは別。報酬返上では済まされない。逮捕されますよね」」
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資本市場(その11)(SBIvs.楽天で開幕!「国内株売買手数料ゼロ」競争 楽天証券は上場控える時期に収益減を自ら選択、80代高齢者から荒稼ぎ、三木証券のあきれた実態 口座数減で業績低迷の小規模証券会社が暴走、高齢者にリスク 十分説明せず外国株式販売 三木証券に過怠金、企業財務の論客が激論【前編】「PBR1倍割れ」の真因と解決策を示す) [金融]

資本市場については、本年8月17日に取上げた。今日は、(その11)(SBIvs.楽天で開幕!「国内株売買手数料ゼロ」競争 楽天証券は上場控える時期に収益減を自ら選択、80代高齢者から荒稼ぎ、三木証券のあきれた実態 口座数減で業績低迷の小規模証券会社が暴走、高齢者にリスク 十分説明せず外国株式販売 三木証券に過怠金、企業財務の論客が激論【前編】「PBR1倍割れ」の真因と解決策を示す)である。

先ずは、9月4日付け東洋経済オンライン「SBIvs.楽天で開幕!「国内株売買手数料ゼロ」競争 楽天証券は上場控える時期に収益減を自ら選択」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/699113
・『「いよいよ来たか」。あるネット証券関係者は業界大手2社の発表を聞きつぶやいた。それはネット証券の地殻変動の号砲となるものだった。 最大手のSBI証券は8月31日、オンラインでの国内株式売買の手数料を9月30日発注分から無料にすると発表した。取引報告書などの各種交付書面を電子交付にすることが条件だが、ほとんどの利用者が手数料ゼロで日本株取引をできるようになる。 対抗するように同日、2位の楽天証券も10月2日約定分から国内株式の取引手数料無料コースを新設すると発表した。ネット証券の上位2社がそろって手数料無料化に踏み込んだことで、顧客の囲い込み競争は一層熱をおびることは間違いない』、「最大手のSBI証券」が仕掛けた「オンラインでの国内株式売買の手数料」「無料化」に、「2位の楽天証券も」やむなく追随せざるを得なかったのだろう。
・『楽天証券の追随には驚き  SBI証券の親会社であるSBIホールディングス(HD)の北尾吉孝会長兼社長は、2022年11月の決算説明会で「来年度(2023年度)の上半期にはオンラインの国内株式取引の売買手数料無料化を図る」と、発言していた。 それ以来、予定通りの無料化は可能なのか、関係者は固唾をのんで見守っていた。結局、公約通りの時期に無料化を実施することになった。 1年前の段階で、無料化方針を打ち出したにもかかわらず、具体的なプランの発表は実施1カ月前にずれ込んだ。その理由を広報担当は、「大量の顧客増が見込まれ、システム対応などを万全にするよう準備した結果」と説明する。 衝撃を与えたのは、ライバルである楽天証券も同じタイミングで無料化に踏み込んだことだ。楽天グループの傘下にあり、楽天証券や楽天投信投資顧問などを抱える楽天証券HDは7月に東証へ上場申請をしている。) 「この時期に無料化という大きな方針転換はできないのではないか」(大手証券幹部)という見方もあった。楠雄治社長は直前まで「検討はしているが、決まったことは何もない」と説明していたが、内部では着々と準備に動いていた。 個人の株取引において、2社の存在感は圧倒的だ。東証における個人の売買代金のうち、2022年度でSBI証券が占める割合は43.7%、楽天証券も33.5%ある(ETFやREIT含む)。この売買にかかる手数料が無料になれば日本市場の活性化にもつながる可能性がある。 折しも岸田政権が「資産運用立国」を掲げ、2024年1月からは新NISA(少額投資非課税制度)が始まるなど、個人の株式投資活発化に対する期待は高い。 SBI証券は8月31日のリリースで「『ゼロ革命』(国内株式売買手数料無料化)の意義は、『証券投資の大衆化』にあります」と説明。「『貯蓄から投資へ』の流れを加速し、広く国民一般の証券市場への積極的な参加を促進できるものと期待」すると謳った』、「東証における個人の売買代金のうち、2022年度でSBI証券が占める割合は43.7%、楽天証券も33.5%ある」、2社のシェアは本当に圧倒的だ。
・『路線修正を迫られた松井証券  こうした動きに対し、ほかのネット証券各社もすぐさま反応した。ある関係者は「黙って指をくわえて見ているわけにはいかない」と話す。 SBI証券、楽天証券に次ぐ規模を誇る松井証券は来年始まる新NISAでの日本株、米国株、投資信託の売買手数料を無料化すると発表した。 和里田聰社長はかねて「無料化には追随しない」と宣言。独自の情報提供やサポート体制を充実することで顧客をつなぎ止めることに注力してきた。しかし、路線の修正を迫られた。 松井証券は営業収益に占める株式委託手数料の割合が46%(2023年4~6月期)と高い。すべての手数料を無料にはできないものの、SBIの動きを看過できないという姿勢をにじませた。 マネックス証券もNISA対象の国内株売買手数料の無料化など現在行っている施策を今後も継続することや、米国株取引のサービス強化などをアピールするリリースを発表。現時点で手数料無料化に追随するとはしなかったものの、今後の検討課題になっている。 手数料無料化が経営に与える影響は重大だ。株取引の委託手数料は証券会社の収益にとって最も重要な柱のひとつでもある。) SBI証券の場合、2023年4~6月期の国内株式取引委託手数料は64億円だった。1年間同じ成績だったとすると250億円程度の収益だ。この分の収益がなくなる一方、システム維持コストなどは引き続きかかるため、減収分がそのまま利益の押し下げ圧力になる。 こうした衝撃を和らげるため、投資信託や外国株、FXなど収益源の多様化を進めてきた。さらには親会社であるSBIHDが銀行や資産運用など多くの事業を抱えている。 こうしたことから、本来ならば痛手となる「無料化」に踏み切れた。実際、SBIHDの年間利益予想は非開示だが、無料化を前提にしても少なくとも2024年3月期は前期並みの税前利益(IFRS)を確保できる見通しだ』、「SBI証券の場合、2023年4~6月期の国内株式取引委託手数料は64億円だった。1年間同じ成績だったとすると250億円程度の収益だ。この分の収益がなくなる一方、システム維持コストなどは引き続きかかるため、減収分がそのまま利益の押し下げ圧力になる。 こうした衝撃を和らげるため、投資信託や外国株、FXなど収益源の多様化を進めてきた・・・SBIHDの年間利益予想は非開示だが、無料化を前提にしても少なくとも2024年3月期は前期並みの税前利益(IFRS)を確保できる見通しだ」、なるほど。
・『楽天証券HDの公開価格に影響懸念  一方の楽天証券。同様に収益源の多様化を進めており、2023年1~6月期の収益に占める国内株式委託手数料は17.4%。 具体的な金額は非開示だが、この間の営業収益が540億円なので約94億円程度、年間の手数料収入は190億円程度になる計算だ。プラン選択により、一部手数料収入が残るが、その多くが無料化でゼロになる。 (SBI証券の委託手数料収入の比率、楽天証券の委託手数料収入の比率はリンク先参照) さらに楽天証券は悩ましい固有の事情を抱えている。先述したように、楽天証券HDが東証への上場手続きの真っ最中である点だ。「楽天証券として大きな減収が避けられない中、思うような株価で上場できないのではないか」。ある業界関係者はそう分析する。 親会社の楽天グループは、上場にあたって 放出する楽天証券HD株に一定水準の株価がつくことを期待している。楽天証券の手数料無料化による業績影響を織り込んで、株価が期待より低くなれば、楽天グループが手にする資金はその分だけ減る。 「モバイル事業に是が非でも資金を手にしたい楽天グループにとっては痛手になるはずだ」。前出の関係者はそう語る。 また、楽天証券にはみずほ証券が2022年11月、800億円で約20%出資している。楽天証券の収益が大きく下がれば、みずほ証券の出資分の価値が損なわれることになる。 それらの懸念を払拭するためには、楽天証券が単独かつ短期で収益を上向かせる「秘策」を練り上げなくてはならない。ただでさえ、ポイント制度の改正などの影響で新規口座数の伸びが鈍化している。2023年1~6月の新規口座数は60.9万口座。前年同期比で33.6%マイナスの状況だ。 手数料無料化で最も追い込まれたのは楽天証券かもしれない』、「楽天証券の収益が大きく下がれば、みずほ証券の出資分の価値が損なわれることになる。 それらの懸念を払拭するためには、楽天証券が単独かつ短期で収益を上向かせる「秘策」を練り上げなくてはならない。ただでさえ、ポイント制度の改正などの影響で新規口座数の伸びが鈍化している。2023年1~6月の新規口座数は60.9万口座。前年同期比で33.6%マイナスの状況だ。 手数料無料化で最も追い込まれたのは楽天証券かもしれない」、確かに「楽天証券」の今後は大変だ。

次に、9月24日付け東洋経済オンライン「80代高齢者から荒稼ぎ、三木証券のあきれた実態 口座数減で業績低迷の小規模証券会社が暴走」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/703707
・『営業員と話した内容を覚えていないととれる発言を繰り返す。勧誘内容とはまったく関係のない話を繰り返す。過去の担当者のことを突然話し始める。直前の会話を覚えていないために何度も同じ問答を繰り返す――。 そのような会話の成立しない高齢者に外国株の取引を行わせ、取引手数料を稼いでいた証券会社があった。 証券取引等監視委員会は9月15日、関東を地盤に活動する三木証券が不適切な営業を行っていたとして行政処分するよう金融庁に勧告した。勧告を受けて金融庁は、業務改善命令などの行政処分を検討する』、「行政処分」は次の記事で紹介する。
・『80歳~90歳代の客に不適切営業  監視委によると、三木証券は2020年4月以降、80歳~90歳代の顧客18人に、リスクを十分に理解させることなくアメリカのIT銘柄など外国株の取引を行わせていた。 ある顧客は8カ月で33回の売り買いをしていた。支払った手数料は、最も多い人で1460万円程度。数百万円を払った顧客も複数いた。ほかにも、新興国のテクノロジー関連企業に投資する投資信託の勧誘でも不適切な取り扱いがあった。 認知能力の衰えた高齢者に向けて、このような営業活動を行うよう、三木証券内部で組織的な指示があったわけではないという。一方で、多くの営業員が関わっており、事態の深刻さを物語っている。) 証券業界全体で顧客本位の業務運営が叫ばれている。それに逆行する三木証券の営業姿勢に驚きが広がった。 金融商品取引法は、顧客の知識や経験に照らして不適切な勧誘を行い、投資者の保護に欠けるおそれのある業務を行ってはならないとしている。これを「適合性の原則」という。 今回はこの適合性の原則に反した営業活動だったと、監視委は認定した。適合性原則違反での勧告は、今年6月のちばぎん証券に対するものに続く。 相次ぐ証券営業での不祥事に対し、日本証券業協会(日証協)の森田敏夫会長は、9月20日の会見で「非常に残念。報告書を見てきちんと対応を考えたい」とコメントした』、いまだに「適合性の原則に反した営業活動」が行われていたとは驚かされた。
・『「極端な収益至上主義」  ただ、こうした姿勢を改めるには一筋縄ではいかなさそうだ。 監視委は、無理な営業が横行した背景として「経営陣による極端な収益至上主義への転換」を挙げる。 顧客の高齢化により口座数が減少傾向にあったことなどで、三木証券は2016年度から4期連続の営業赤字に陥った。経営改善が喫緊の課題になっていた。そこで2020年4月以降、経営陣主導の下、主にアメリカ株への販売に注力した。 (三木証券の業績推移のグラフはリンク先参照) 経営資源が限られている中、販売商品を絞り込むことはほかの会社でもよくあることだ。アメリカ株販売の強化で三木証券は2020年度に営業黒字化を果たす。ところがこの黒字は、経営陣が率先してコンプライアンスを軽視したことにより実現したものだった。) 2019年6月に営業員評価制度を見直し、手数料収入実績を評価に直接反映するようにした。2022年1月には法令違反行為などを行った営業員の評価を下げる仕組みを撤廃。手数料収入に偏った不適切な営業を助長するような評価体制に移行していった。 こうした制度変更に批判的な社員に対するパワハラまがいの行為も横行していたという。営業車の使用を禁じ営業成績が下がったところで、降格処分をしていた。 外部からの指摘にも耳を傾けなかった。2018年には自主規制機関である日証協の検査で、コンプライアンス部門の人員不足を指摘されていた。 それにもかかわらず、赤字体質からの脱却と継続的な黒字化を図るため、社長自らが主導してコンプライアンス部門の担当社員を削減。2018年9月に14人いた監査部の社員が2022年9月には6人になっていた。 結果、日証協の高齢顧客ガイドラインで定められた確認事項も十分に確かめることなく「承認手続きは形骸化していた」(監視委勧告)』、「2018年には自主規制機関である日証協の検査で、コンプライアンス部門の人員不足を指摘されていた。 それにもかかわらず、赤字体質からの脱却と継続的な黒字化を図るため、社長自らが主導してコンプライアンス部門の担当社員を削減。2018年9月に14人いた監査部の社員が2022年9月には6人になっていた」、これは「社長」の確信犯だ。
・『顧客説明は正式処分後に  こうした状況に、日証協幹部もため息をつく。「顧客からの信頼がすべての地場証券でこんな営業をしていると広まったら、顧客はすぐに逃げていく。なぜここまでひどいことになったんだ」。 裏を返せば、背に腹を変えられないほど追い詰められていたのだろうか。 三木証券は、監視委が勧告を出した9月15日に「厳粛に受け止め、深く反省し、根本的な原因分析とその改善を図り、(中略)再発防止に努めてまいります」とのコメントを発表した。 ただ、コンプライアンス体制の見直しや顧客への説明といった具体的な対応は、金融庁からの処分を待ってから行う予定だ。 過度に手数料収益を追う施策をやめた後、経営を安定させられるかは未知数だ。顧客層の高齢化や契約口座数の減少は、避けがたい現状として立ちはだかっている。道を誤った中小証券会社の更生はあまりにも厳しい』、「過度に手数料収益を追う施策をやめた後、経営を安定させられるかは未知数だ。顧客層の高齢化や契約口座数の減少は、避けがたい現状として立ちはだかっている。道を誤った中小証券会社の更生はあまりにも厳しい」、その通りだ。

第三に、行政処分について、11月15日付けNHK「高齢者にリスク 十分説明せず外国株式販売 三木証券に過怠金」を紹介しよう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231115/k10014258721000.html
・『リスクを判断する能力がない高齢者に対して、十分な説明をせずに外国の株式を販売したとして行政処分を受けた東京の証券会社「三木証券」に対し、日本証券業協会は、15日、8000万円の過怠金の支払いなどを命じる処分を出しました。 東京 中央区に本店がある三木証券は、数分前の会話を覚えていないといった顧客の様子からリスクを判断する能力がないと認識していながら、少なくとも18人の高齢者に対しリスクを十分に説明せずに外国の株式を販売したとして先月、関東財務局から一部の業務の停止を命じられるなどの行政処分を受けました。 これについて日本証券業協会は、この会社が手数料収入に偏った不適切な勧誘行為を助長する評価や報酬の仕組みを導入していたほか、顧客の利益を軽視した極端な営業優先の企業風土が形成されていたなどと指摘しました。 その上で、顧客の知識や経験、財産の状況などに照らして不適当と認められる勧誘を行ったことは投資家の保護に欠け、金融商品取引法に反するとして、三木証券に対し、8000万円の過怠金を支払うよう命じました。 さらに再発防止策などを盛り込んだ業務改善計画を実施し、その状況を書面で報告するよう勧告しました』、「8000万円の過怠金を支払うよう命じました」、さらに「顧客の知識や経験、財産の状況などに照らして不適当と認められる勧誘」した結果の取引が無効とされ、その分の損失も負担する必要がありそうだ。

第四に、11月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経営戦略デザインラボによる「企業財務の論客が激論【前編】「PBR1倍割れ」の真因と解決策を示す」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/331654
・『上場企業の「PBR1倍割れ」が取り沙汰されて久しい。企業価値向上が経営者の努めであることは論をまたず、1を超えて事足れりではむろんない。では、何が問題か。どう対処すべきか。早稲田大学経営管理研究科の西山茂教授、デュポン元CFOの橋本勝則氏、オムロン元執行役員グローバル理財本部長の大上高充氏と、当代きっての企業財務の論客が、CFO協会シニア・エグゼクティブの日置圭介氏のモデレートのもと、PBR1倍割れ問題を起点に、日本企業の構造的な経営課題、成長性を阻害する要因について語り合った。2回に分けてレポートする前編では、成長手段としての新規事業創出やM&A活用における桎梏、IR(投資家向け広報)での課題を分析し、それぞれの経験を踏まえた解決策を提示する。明日公開の後編では、コングロマリット・ディスカウントをどう考え、事業整理はどうすべきかの具体論から、日本全体としての経済成長論へと広がった議論の詳細をお伝えする』、興味深そうだ。
・『PBR1倍割れ問題の本質は何か  日置 東京証券取引所が今年3月、PBR(時価総額÷自己資本)1倍割れ等に関して上場企業への対応を要請して以来、この問題が投資家や経営者の間でよく取り沙汰されます。「1倍割れ=悪」との論調が大勢です。確かにコーポレートファイナンスの観点では、1倍割れは企業価値を毀損しているのでよくないことではあります。ただ、だからといって数値を上げるためだけに配当を上げるとか、自社株買いをするというのはあまりにも短絡的です。根本には、日本企業や産業の構造的な問題があると考えますが、いかがでしょうか。 西山 PBR1倍割れは企業価値を毀損していると言えますが、テクニカルにレバレッジを利かせればいいとか、配当を多くして株主還元すればいい、という話ではありません。これをひとつのきっかけとして、ROE(純利益÷自己資本)とPER(時価総額÷純利益)の問題として捉え(PBR=ROE×PER)、それぞれを上げていく、成長性も考えながら、事業の収益性や投資効率をしっかりレベルアップしていくことが肝要だと思います。 (西山 茂 教授の略歴はリンク先参照) 橋本 対症療法として1倍以上にするのではなく、実質的な成長が伴うように体質改善すべきです。また、株価形成に際しては、経営者がIRを通じてそのメッセージやストーリーをマーケットにしっかりと伝え、評価してもらう努力が必要です。その際、実現可能性のないストーリーを語って大風呂敷を広げるのではなく、確固たるビジネスプランがあることが大切です。アナリストには、そこをしっかり見極める目を持ってほしい。 大上 PBRの分子、すなわち企業価値そのものをいかにあげていくかが大切です。企業価値は将来のキャッシュフローを現在に割り戻した現在価値ですから、そのシナリオがきちんと描けているかどうかが本質ですね。 橋本 1.0は合格ラインでもなんでもない。PBRが1.1だったらセーフなどと考えている経営者はさすがにいないとは思いますが(笑)』、「PBR1倍割れは企業価値を毀損していると言えますが、テクニカルにレバレッジを利かせればいいとか、配当を多くして株主還元すればいい、という話ではありません。これをひとつのきっかけとして、ROE・・・とPER・・・の問題として捉え(PBR=ROE×PER)、それぞれを上げていく、成長性も考えながら、事業の収益性や投資効率をしっかりレベルアップしていくことが肝要」、確かにその通りだ。
・『新規事業はイシュー・ドリブンで  日置 小手先の数値ではなく、企業価値を本質的に上げようとする場合、その手段として、オーガニック成長とM&Aという二つがあると思います。いずれにしても、橋本さんがおっしゃったように、新しい成長のストーリーをうち出していく必要があるが、日本企業はそれがない。 PBRの分子を大きくする、すなわち成長を考えるに当たっての新規事業に関してですが、日本の大企業の構造問題のひとつとして、新規事業が生まれにくいということがあります。大上さんは、実際オムロンの中でCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)なども関わった経験がおありで、そのあたりはどうご覧になりますか。 大上 スタートアップに関わる仕事をしていますが、今の時代は、社会・経済システムの移行期にあり、新旧の価値観がぶつかり合ってさまざまな社会課題が噴出して、新しい事業のネタは豊富です。ESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス))、とりわけ環境に関する問題には、多くのスタートアップが様々な手段で社会課題の解決にチャレンジしています。 大手企業でも新規事業に取り組まれていますが、どのように経営資源をマネジメントするかが、企業の成長にとって重要になってきます。高い技術を持ちながらも、技術を事業化していくところが、日本企業が下手な部分であると思います。 大上 高充氏の略歴はリンク先参照) 日置 その原因をどのように見ていますか。 大上 起点が社会課題でなく、自社の強みが先に立ってしまいがちなところではないでしょうか。まず、解決したい大きな社会的課題を採り上げ、それに対して、どのように自社の資産を生かしていくかという、逆方向の発想が必要ではないかと思います。 日置 テクノロジー・ドリブンではなく、イシュー・ドリブンということですね。たとえば、橋本さんがいらしたデュポンは、2002年に200周年を迎えたタイミングで、300周年を迎えるときにはどういう会社でありたいかを検討した際にメガトレンド分析をして、自社が取り組むべき社会課題を特定。その後はそれに照らしながら、大きく既存事業を外しながら、小さく新規事業を興してという形で、事業の入れ替えを盛んにやってきていますね。どういうメカニズムで行われていたのですか。 橋本 新規事業開発(ニュー・ビジネス・デベロップメント)みたいなイニシアチブに、その仕組みがありました。日本企業と違うポイントは、日本ではR&Dなど開発ドリブンからスタートしがちなところを、デュポンでは早い段階から、いかにビジネスにつなげていくかという観点で、将来性のあるアイデアを見つけようとしていました。 デュポンの開発部門では、ある程度上のクラスの社員は専門分野のPhDを持っている人が多く、加えてMBAも持っているので、ビジネスをどう回していくかという基盤があるのです。テクノロジーとビジネスの両方がわかっていないと、ビジネスに結びつく研究開発にはなりにくい。 橋本 勝則氏の略歴はリンク先参照) 日置 一人の社員が併せ持っていないなら、そこは組織として両方の側の人材を担保するという作り込みが必要ですね。 橋本 デュポンでは開発チームの中に、ビジネスマインドを持った人物が早い段階で入ります。R&D部門付きのFP&A(Financial Planning & Analysis。財務や会計の知識をもとに企業戦略のアドバイスを行う職種)のような、ファイナンスの担当者が必ずいます。そこが日本企業の開発部門との大きな違いですね。デュポンではその担当者をビジネス・ファイナンスという言い方をしていました。 日置 IBMのファイナンスも同様の動きをしていると聞きました。ファイナンスの担当者は事業部門に対して統制もするけれど、事業部門にやりたいことがあるときは、やらせてあげられるようリソース調整を試みる。そうしないと、ファイナンス部門の言うことを聞いてくれなくなるから。そこはうまくバランスをとりながらやっていると。 大上 ある意味、その構図はスタートアップとVC(ベンチャーキャピタル)の構図に通じるところがあると思います。スタートアップのディープテック(研究を通じて得られた科学的な発見に基づく技術)に対して、トータルでのリスクとリターンというファイナンス的な価値思考で、出資を判断し、場合によっては支援します。 西山 日本企業の新規事業の探索や立ち上げに関する難しさを考えるとき、三つほどポイントがあると思います。第一に、企業側が社会や顧客のニーズからというよりも、既存のビジネスから発想しがちなこと。第二に、従来と発想を変えるためには、内部の人材だけでは限界があること。第三に、「3年で成果を出しなさい」といった評価軸の問題があること。一つ目と二つ目については、オープンイノベーションなども試みていると思いますが、もっと外部との連携をうまくやっていくことが必要だと思います。最近は、優秀な若手で新規事業やスタートアップをやりたい人も多いですから。 日置 オープンイノベーションが下手な企業は、外部に何かを探しに行ってしまう。それこそオープンに(笑)。もちろん「飛び地」みたいな話もあるかもしれませんが、単に飛び地を求めただけでは、そこからビジネスに仕立て上げることは到底できませんよね。さきほどから話に出ているようにビジネスとしてのストーリーがあり、その中でうまく発展させていく視点がないとダメですね。 橋本 評価のお話が出ましたが、一般論として、そもそも大企業は多くの人が安定を求めて入社している。新規事業では、多少山っ気があって博打をうてるくらいの人がいないと(笑)。なおかつ人事考課が減点方式なので、どちらかというと、何もしないでじっとしていたほうが減点されずに相対的に評価が高くなってしまう。 日置 そうしたときに、問題になるのが多様性です。多様性と言うと、日本企業の場合、まだまだ管理職の男女比率などデモグラフィー型で、かつ数値的なことに注力しがちですが、ダイバーシティを考える時にはタスク型の発想が大事です。中途採用は拡大していますが、新卒一括採用のあり方についても本気で再考すべきですね。 大上さんが指摘されたようなVCの役割は、経済学者ヨーゼフ・シュンペーターのイノベーションの理論でも、銀行の役割の大切さが論じられています。いかにリスクをとって、きちんとレバレッジがかけられるかを含めたファイナンス感覚を、組織の基本動作の中に収めておくことが大事だなと感じます。 大上 いまや電池などハードの開発にも必ずAIが関わってくる。そうすると、まったく分野の違う技術者同士が混ざらないとやっていけない。シリコンバレーはそうしたエコシステムもよくできています。異質な人同士が出会う「場づくり」のようなこと、異質な研究者同士をつなぐ役割もVCが担っているところがある。もっと幅広く、交わるというか、多様性をつくっていかなければこれからの競争に負けてしまうという危機感があります。 日置 新規事業には、図のような「シックスパック」が必要だと考えています。きちんと腹筋が鍛えられてないと代謝を高めたりまともな運動ができなかったりというように、「いくらイノベーションの掛け声を上げたところで、企業の体質が整っていないと強い新規事業を生み出すことはできないでしょう?」という意味です。 図表の「ならではの眼差し」は、メガトレンドなど長期的な社会動向を追いかけること自体はよいのですが、コンサルや調査会社からやみくもに情報を集め、それを整理整頓するだけでは差別化を生み出すためのインプットにはなりません。自社で持つリレーションを最大限活用して一次情報に当たるとか、これまでの経営のコンテクストの中で培ってきたものの見方などによって、独自の知見やインテリジェンスとして積み上げられるかが問われます。 「小さく起こし、大きくたたむ」は、デュポンがまさにそうですが、新陳代謝を絶えず起こして、リソースをきちんとシフトする。例えば、新しい事業のためのリソースは、既存の事業の売却により調達するといった企業行動です。 「共通言語」は、難しいリソース配分の判断をブラさないように、各事業の持つキャッシュ創出力や成長率などをきちんと数字で表し、各事業の位置付けに関して共通認識を持てるようにするということです。ただし、全てを数字で表現できるわけでもありません。新規事業に限らず全ての経営判断のベースとなる自社の価値観や、自社の保有する技術やビジネモデルなどの強みやその裏にある弱みも共通言語として重要です。現実の判断は数字というハードと価値観のようなソフト、両方の共通言語を加味して行われます。 「自由と規律のバランス」は、ステージゲート法などのように、新規事業のプロジェクトの進捗をがっちり管理する体制がありつつ、他方で博打が打てる人材を擁するといった、「遊び」の部分というかアローワンスもなければならないということ。両者のバランスをどう取るか。勤務時間の一定割合を自分独自のプロジェクトに充てるよう奨励する、スリーエムの15%ルールやグーグルの20%ルールに近い話かもしれません。 「キャッシュ思考」は、単年のPL思考ではなく、キャッシュで物事を考えて、この企業が将来どうなるかというビジョンを持つ。 また、評価はもちろん大事なのですが、それ以上にエンジニアが称賛され尊敬される環境であることも大切です。エンジニアが楽しそうに働いている企業は、イノベーティブである確率が高いのではないでしょうか。 橋本 デュポンをはじめ欧米企業では、エンジニアには「フェロー」という肩書きをつけています。「大学の特別研究員」「最上位」のニュアンスを持つ言葉であり、一種の名誉ですね』、「日本企業と違うポイントは、日本ではR&Dなど開発ドリブンからスタートしがちなところを、デュポンでは早い段階から、いかにビジネスにつなげていくかという観点で、将来性のあるアイデアを見つけようとしていました。 デュポンの開発部門では、ある程度上のクラスの社員は専門分野のPhDを持っている人が多く、加えてMBAも持っているので、ビジネスをどう回していくかという基盤があるのです。テクノロジーとビジネスの両方がわかっていないと、ビジネスに結びつく研究開発にはなりにくい」、「ある程度上のクラスの社員は専門分野のPhDを持っている人が多く、加えてMBAも持っている」、これは大きなハンディキャップだ。「自由と規律のバランス」は、ステージゲート法などのように、新規事業のプロジェクトの進捗をがっちり管理する体制がありつつ、他方で博打が打てる人材を擁するといった、「遊び」の部分というかアローワンスもなければならないということ。両者のバランスをどう取るか。勤務時間の一定割合を自分独自のプロジェクトに充てるよう奨励する、スリーエムの15%ルールやグーグルの20%ルールに近い話かもしれません・・・評価はもちろん大事なのですが、それ以上にエンジニアが称賛され尊敬される環境であることも大切です。エンジニアが楽しそうに働いている企業は、イノベーティブである確率が高いのではないでしょうか。 橋本 デュポンをはじめ欧米企業では、エンジニアには「フェロー」という肩書きをつけています。「大学の特別研究員」「最上位」のニュアンスを持つ言葉であり、一種の名誉ですね」、なるほど。
・『M&A成功の肝はコア・バリューの浸透  日置 続いて、成長のための、もう一つの手段としてのM&Aについて、日本企業の構造的な問題について議論したいと思います。デュポンから学べるところをまずお聞きしたいのですが。 橋本 PMI(M&A後の統合プロセス)で、一番肝になるのはコア・バリューの浸透ですね。それができてこそ同じ傘の下でビジネスをやるという共通認識につながります。買収会社と被買収会社の両者が同じようなコア・バリューを持っているのです。一方、日本企業の多くは、買収企業と被買収企業の間に占領軍と植民地のような上下関係が歴然とある。デュポンではそれはなくて、同等です」、これは致命的な格差だ。「デュポンのアニュアルレポートを昔から見ているのですが、そのときどきで、事業ごとに比較対象の同業他社をベンチマークしていますよね。買収前の段階から「この会社なら合いそうだ」ということも議論するのでしょうか。 橋本 ベンチマークは出していますね。買収は、相手先の技術が欲しいということが最初の取っかかりとなりますが、副次的にはそういう企業文化もしっかり見ています。 大上 コア・バリューの浸透はとても大事だと思います。もうひとつ、買収先会社の価値を上げられているのかという発想も欠かせないと思います。その会社の価値を数年後にいくらまで上げられるか。 買収する側のシナジー効果も重要ですが、買収元会社が持つ有形・無形資産を使って、買収先会社の価値をどれだけ上げられるかという発想が必要です。買収先の企業の価値が上がってこそ、買収元会社のシナジー効果も出てくる。 大企業がスタートアップ企業へ投資していく際にも同じことが言えます。「投資先の企業価値をわれわれは上げることができるのか」、を問わなければならない」、その通りだ。「CVCが出資する場合、最初から大企業の論理で、自分たちに取り込むという考え方をしているとうまくいかない。スタートアップファーストで考えて、お金だけでなく、大企業が持つチームとか技術などの無形資産を活用して、買収先のスタートアップ企業の価値をいかに上げていくかという発想が要る。社会課題解決を目的に、キャピタルゲイン最大化をKPIとして投資をしていく会社も少しずつ出てきているかなと思います。 日置 大企業側はシーズを探しているし、スタートアップ側はリソース、キャパシティを探しているので、そこのマッチングをすることで、よりお互いに入り込んだ議論ができて、ビジネス展開も進みそうですね。 橋本 デュポンの経験でいうと、シナジーでこれだけ見込めるということを、M&Aの際に必ず算出しますが、それは決して安直な数字ではありません。1項目ずつリスト化されたものを足し上げたものです。それを内部監査が入ってチェックするプロセスがあります。バリデーション(validation)ですね。 日置 ダウ・ケミカルと統合したときも、そこは相当やっていたという印象があります。アップサイドとダウンサイド、成功シナリオと失敗シナリオの数字が出ていましたね」、作成するのは大変そうだ。 「「M&A人口は多いけど、M&A人材は少ないのではないか」ということをよく話します。社内のスプレッドシートに数字を入力して、投資承認が通るか通らないか、それこそゲームのようなことをしておしまい。その会社を買って、それをどのように事業として育て上げるのかとか、エグジットとしてどうするのかというところまで、一貫して責任を持ってやっている感じがしないM&Aが時々ある。投資銀行ならそれでもいいのかもしれませんが、事業会社では問題ですね。 (日置 圭介氏の略歴はリンク先参照) 大上 日本企業はリスクサイドのデューデリジェンスは一生懸命やっているのに、ビジネスの成長、ビジネスデューデリジェンスについては、事業部に任せているケースが多い印象があります。 日置 安易に外部の証券会社や投資銀行から持ってこられた案件に飛びつかないといったことも含めて、いかにM&Aを自分事として位置づけられるか。企業の中でのM&Aの位置づけをもっと明確にしたほうがいいですね」、なるほど。 「PMI(M&A後の統合プロセス)で、一番肝になるのはコア・バリューの浸透ですね。それができてこそ同じ傘の下でビジネスをやるという共通認識につながります。買収会社と被買収会社の両者が同じようなコア・バリューを持っているのです。一方、日本企業の多くは、買収企業と被買収企業の間に占領軍と植民地のような上下関係が歴然とある。デュポンではそれはなくて、同等です」、これはデュポンの考え方の方が優れている。「デュポンのアニュアルレポートを昔から見ているのですが、そのときどきで、事業ごとに比較対象の同業他社をベンチマークしていますよね。買収前の段階から「この会社なら合いそうだ」ということも議論するのでしょうか。 橋本 ベンチマークは出していますね。買収は、相手先の技術が欲しいということが最初の取っかかりとなりますが、副次的にはそういう企業文化もしっかり見ています・・・買収先会社の価値を上げられているのかという発想も欠かせないと思います。その会社の価値を数年後にいくらまで上げられるか。 買収する側のシナジー効果も重要ですが、買収元会社が持つ有形・無形資産を使って、買収先会社の価値をどれだけ上げられるかという発想が必要です。買収先の企業の価値が上がってこそ、買収元会社のシナジー効果も出てくる。 大企業がスタートアップ企業へ投資していく際にも同じことが言えます・・・日本企業はリスクサイドのデューデリジェンスは一生懸命やっているのに、ビジネスの成長、ビジネスデューデリジェンスについては、事業部に任せているケースが多い印象があります。 日置 安易に外部の証券会社や投資銀行から持ってこられた案件に飛びつかないといったことも含めて、いかにM&Aを自分事として位置づけられるか。企業の中でのM&Aの位置づけをもっと明確にしたほうがいいですね・・・」、同感である。
・『自社のスタンスを市場に明確に伝える  日置 ここまでは実際に成長するための手段の話でしたが、ではそれをどうやってアピールしていくかという観点で、マーケットとの対話について考えてみたいと思います。これはオムロンが日本企業のなかでは早い段階から意識的にしてきたことで、学べる教訓がたくさんあると思います。 大上 オムロンは、1990年代からステークホルダーとの対話を重視するスタンスでした。そこから世の中の流れを捉えて多くを学び、それを社内で消化しながらガバナンスを進化させてきました。求められているのは、SDGsなりダイバーシティなり、時々の社会要請を横並び的に「やらねばならない」と議論をするのでなく、本質を掘り下げたうえで、「Comply or Explain(「ルールに従え(comply)、従わないのであれば、その理由を説明せよ(explain)」することです。受け身でなく、きちんと自分たちのスタンスを明確にして自ら行動し、対話するとことが大事だと思います。 日置 受け身だと、アナリストや株主から追い込まれる一方になりますよね。投資家との対話もなんだかちぐはぐで、comply しているのにさらにexplainしている会社もあったりする(笑)」。「「Comply or Explain(」をきちんとしているとはたいしたものだ。「海外のアナリストの場合、自分の予想が外れると、自分の予測モデルの問題にも関わってくるので、日本に比べて「ツッコミ」が激しい。それで必要に迫られて上手にならざるを得ないという感じですね。 一度、苦い経験があって、四半期決算発表日の2、3日前に業績が予想レンジから外れてしまうという開示をしたところ、アナリストから、「なぜもっと早い段階で市場に伝えられなかったのか?」と業績の下方修正もさることながら、適時に業績を把握できているのかという経営陣の手腕を随分たたかれました。アナリストは予想がぶれれば、いち早くマーケットに伝えるということが求められていますので。そういう意味で、経営者に対するアナリストを中心としたマーケットの見方は本当に厳しいものがあります。 もう一点、海外は、前年の4~6月と今年の4~6月、前年の7~9月と今年の7~9月という形で、純粋に四半期の結果を見比べますが、日本は四半期ごとに累計されて、第3四半期なら、4月〜12月までを見る。 日置 累計で比べると、以前に開示した時の差分に今期間の差分が相まって要因分析が分かりにくくなりそうですね。一方で、長期のビジネスの方向感というのも投資家とのコミュニケーションに必要だと思うのですが、この点はどうですか。 橋本 デュポンでは、ビジネスセグメントごとに、翌年の単年はもちろん、向こう3年ぐらいについても、成長率や、収益のトップラインとボトムラインの両方を公表します。社内の業績管理では、3×6=18カ月の6クオーターのローリング予測数字を出すのです。この数字の根拠はまず、いわゆるS&OP(販売・生産計画)があり、その延長が18カ月まで延びているイメージです。オペレーションと計画が一気通貫になっているので、日本企業のように、業績数字と関連のない中計の数字が浮いているということはない。 大上 オムロンでは10年ごとに長期ビジョンを策定していますが、世の中がどのように変わっていくかということを予測し、その中で自分たちの目指す姿を描き、そこからバックキャストで自分たちがやるべきことを示します。根底にある投資家との対話の共通言語はファイナンスの考え方や企業価値そのものです。 たとえば、資本コスト8%、つまり期待収益率8%といった時、10年間経つと、株価上昇+配当を合わせた累計でだいたい当初の投資額の2倍くらいになりますよね。 西山 利回りを複利で積み重ねれば、だいたい10年で投資額の2倍+αぐらいになる感じですね。 大上 それが共通言語として根底にあって、ここを意識して投資家と対話をするということですね。企業価値の向上ということを掲げている会社は多いですが、具体的に資本コストを意識してできているかが重要です。 橋本 それをキャッシュフローで。 大上 ええ。その水準まで企業価値を上げられていないのなら、配当や自己株取得という形のリターンで報いていくということも選択肢としてあるわけです。 日置 日本企業は投資家に話すときに、客観的な視点が足りない気がします。投資家に話しているのに、自分たちの目標の話に終始している。投資家にしてみれば、その企業は同じ業種の中での選択肢の一つでしかないのに、企業側は同業間で比べられた時、自社がどう見られているのかという想像が足りない。統合報告書のボリュームがどんどん増えていることも気になっているのですが、投資家から「どこも社会課題を掲げ、新規事業もやっているが、皆、同じテーマを掲げていて特徴がない」と見えてしまう。目線は広げつつも、少しメッセージを絞る、それだけで違う風景が見えてくると思うのですが。 橋本 かつて経営者の中に、「短期の投資家のために、なぜ手間をかけて四半期決算の開示をしなくてはならないのか」と不満気だった人がいましたが、不思議なことを言うなと思いました。「最低限、四半期で業績を互いに開示することで、同業の中での位置づけがわかる。他社の結果がわからなくて、どういう戦略を立てるのですか」と言いたくなりました(笑)。 自社の数字を出し、同業の競争相手の数字を見て、万一下回っているなら、競合に勝つ戦略を立てなくてはいけない。そういう見方がなかなかできていないですね。先程のお話の通り、投資家から見れば同じセグメントの中で競合他社のA社に張るのか、自社に張るのか、どちらをオーバーウェイトするかの判断材料になるわけですから、そうした舞台裏をもっと意識しながら戦略を立てるべきです。 西山 私も、日本企業のIRはやや受け身の傾向が強いように感じます。また、CEOやCFOと、他の役員との間にIRに対する温度差もあるように感じています。 橋本 日本企業の多くは投資家説明会にCFOとせいぜいその下にいるコントローラー(経営管理担当者)ぐらいしか出席しない。デュポンでは、CEOとCFOが必ず出て、加えてそのときどきでトピックスのある事業部のリーダーとスタッフが出席します。 日置 市場が評価する企業価値は、企業への期待値ということであるので、その期待値をどうつくっていくか。根拠を持った上で、客観的に自社を評価し、しっかりアピールすることが大事ですね。 →後編は11月10日に公開いたします』、「オムロンは、1990年代からステークホルダーとの対話を重視するスタンスでした。そこから世の中の流れを捉えて多くを学び、それを社内で消化しながらガバナンスを進化させてきました。求められているのは、SDGsなりダイバーシティなり、時々の社会要請を横並び的に「やらねばならない」と議論をするのでなく、本質を掘り下げたうえで、「Comply or Explain(「ルールに従え(comply)、従わないのであれば、その理由を説明せよ(explain)」することです。受け身でなく、きちんと自分たちのスタンスを明確にして自ら行動し、対話するとことが大事だと思います」、「オムロン」がそんな進んだ姿勢で「ステークホルダーとの対話を重視」してきたとは初めて知った。今後、そうした目でみてみよう。
タグ:資本市場 経営戦略デザインラボによる「企業財務の論客が激論【前編】「PBR1倍割れ」の真因と解決策を示す」 ダイヤモンド・オンライン 「8000万円の過怠金を支払うよう命じました」、さらに「顧客の知識や経験、財産の状況などに照らして不適当と認められる勧誘」した結果の取引が無効とされ、その分の損失も負担する必要がありそうだ。 「PMI(M&A後の統合プロセス)で、一番肝になるのはコア・バリューの浸透ですね。それができてこそ同じ傘の下でビジネスをやるという共通認識につながります。買収会社と被買収会社の両者が同じようなコア・バリューを持っているのです。一方、日本企業の多くは、買収企業と被買収企業の間に占領軍と植民地のような上下関係が歴然とある。デュポンではそれはなくて、同等です」、これはデュポンの考え方の方が優れている。 PMI(M&A後の統合プロセス)で、一番肝になるのはコア・バリューの浸透ですね。それができてこそ同じ傘の下でビジネスをやるという共通認識につながります。買収会社と被買収会社の両者が同じようなコア・バリューを持っているのです。一方、日本企業の多くは、買収企業と被買収企業の間に占領軍と植民地のような上下関係が歴然とある。デュポンではそれはなくて、同等です」、これは致命的な格差だ。 時々の社会要請を横並び的に「やらねばならない」と議論をするのでなく、本質を掘り下げたうえで、「Comply or Explain(「ルールに従え(comply)、従わないのであれば、その理由を説明せよ(explain)」することです。受け身でなく、きちんと自分たちのスタンスを明確にして自ら行動し、対話するとことが大事だと思います」、「オムロン」がそんな進んだ姿勢で「ステークホルダーとの対話を重視」してきたとは初めて知った。今後、そうした目でみてみよう。 日置 安易に外部の証券会社や投資銀行から持ってこられた案件に飛びつかないといったことも含めて、いかにM&Aを自分事として位置づけられるか。企業の中でのM&Aの位置づけをもっと明確にしたほうがいいですね・・・」、同感である。 買収する側のシナジー効果も重要ですが、買収元会社が持つ有形・無形資産を使って、買収先会社の価値をどれだけ上げられるかという発想が必要です。買収先の企業の価値が上がってこそ、買収元会社のシナジー効果も出てくる。 大企業がスタートアップ企業へ投資していく際にも同じことが言えます・・・日本企業はリスクサイドのデューデリジェンスは一生懸命やっているのに、ビジネスの成長、ビジネスデューデリジェンスについては、事業部に任せているケースが多い印象があります。 種の名誉ですね」、なるほど。 両者のバランスをどう取るか。勤務時間の一定割合を自分独自のプロジェクトに充てるよう奨励する、スリーエムの15%ルールやグーグルの20%ルールに近い話かもしれません・・・評価はもちろん大事なのですが、それ以上にエンジニアが称賛され尊敬される環境であることも大切です。エンジニアが楽しそうに働いている企業は、イノベーティブである確率が高いのではないでしょうか。 橋本 デュポンをはじめ欧米企業では、エンジニアには「フェロー」という肩書きをつけています。「大学の特別研究員」「最上位」のニュアンスを持つ言葉であり、一 「ある程度上のクラスの社員は専門分野のPhDを持っている人が多く、加えてMBAも持っている」、これは大きなハンディキャップだ。「自由と規律のバランス」は、ステージゲート法などのように、新規事業のプロジェクトの進捗をがっちり管理する体制がありつつ、他方で博打が打てる人材を擁するといった、「遊び」の部分というかアローワンスもなければならないということ。 「日本企業と違うポイントは、日本ではR&Dなど開発ドリブンからスタートしがちなところを、デュポンでは早い段階から、いかにビジネスにつなげていくかという観点で、将来性のあるアイデアを見つけようとしていました。 デュポンの開発部門では、ある程度上のクラスの社員は専門分野のPhDを持っている人が多く、加えてMBAも持っているので、ビジネスをどう回していくかという基盤があるのです。テクノロジーとビジネスの両方がわかっていないと、ビジネスに結びつく研究開発にはなりにくい」、 「PBR1倍割れは企業価値を毀損していると言えますが、テクニカルにレバレッジを利かせればいいとか、配当を多くして株主還元すればいい、という話ではありません。これをひとつのきっかけとして、ROE・・・とPER・・・の問題として捉え(PBR=ROE×PER)、それぞれを上げていく、成長性も考えながら、事業の収益性や投資効率をしっかりレベルアップしていくことが肝要」、確かにその通りだ。 NHK「高齢者にリスク 十分説明せず外国株式販売 三木証券に過怠金」 「過度に手数料収益を追う施策をやめた後、経営を安定させられるかは未知数だ。顧客層の高齢化や契約口座数の減少は、避けがたい現状として立ちはだかっている。道を誤った中小証券会社の更生はあまりにも厳しい」、その通りだ。 「2018年には自主規制機関である日証協の検査で、コンプライアンス部門の人員不足を指摘されていた。 それにもかかわらず、赤字体質からの脱却と継続的な黒字化を図るため、社長自らが主導してコンプライアンス部門の担当社員を削減。2018年9月に14人いた監査部の社員が2022年9月には6人になっていた」、これは「社長」の確信犯だ。 いまだに「適合性の原則に反した営業活動」が行われていたとは驚かされた。 「行政処分」は次の記事で紹介する。 東洋経済オンライン「80代高齢者から荒稼ぎ、三木証券のあきれた実態 口座数減で業績低迷の小規模証券会社が暴走」 「楽天証券の収益が大きく下がれば、みずほ証券の出資分の価値が損なわれることになる。 それらの懸念を払拭するためには、楽天証券が単独かつ短期で収益を上向かせる「秘策」を練り上げなくてはならない。ただでさえ、ポイント制度の改正などの影響で新規口座数の伸びが鈍化している。2023年1~6月の新規口座数は60.9万口座。前年同期比で33.6%マイナスの状況だ。 手数料無料化で最も追い込まれたのは楽天証券かもしれない」、確かに「楽天証券」の今後は大変だ。 「SBI証券の場合、2023年4~6月期の国内株式取引委託手数料は64億円だった。1年間同じ成績だったとすると250億円程度の収益だ。この分の収益がなくなる一方、システム維持コストなどは引き続きかかるため、減収分がそのまま利益の押し下げ圧力になる。 こうした衝撃を和らげるため、投資信託や外国株、FXなど収益源の多様化を進めてきた・・・SBIHDの年間利益予想は非開示だが、無料化を前提にしても少なくとも2024年3月期は前期並みの税前利益(IFRS)を確保できる見通しだ」、なるほど。 「東証における個人の売買代金のうち、2022年度でSBI証券が占める割合は43.7%、楽天証券も33.5%ある」、2社のシェアは本当に圧倒的だ。 「最大手のSBI証券」が仕掛けた「オンラインでの国内株式売買の手数料」「無料化」に、「2位の楽天証券も」やむなく追随せざるを得なかったのだろう。 東洋経済オンライン「SBIvs.楽天で開幕!「国内株売買手数料ゼロ」競争 楽天証券は上場控える時期に収益減を自ら選択」 (その11)(SBIvs.楽天で開幕!「国内株売買手数料ゼロ」競争 楽天証券は上場控える時期に収益減を自ら選択、80代高齢者から荒稼ぎ、三木証券のあきれた実態 口座数減で業績低迷の小規模証券会社が暴走、高齢者にリスク 十分説明せず外国株式販売 三木証券に過怠金、企業財務の論客が激論【前編】「PBR1倍割れ」の真因と解決策を示す)
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金融業界(その20)(マネックス証券「ドコモ傘下入り」をめぐる皮算用 鼻息荒いドコモと「次の一手」模索のマネックス、ガザ抗争で見えたアメリカ金融界「勢力図」の変貌…もはやゴールドマン・サックスに「金融界の巨人」の面影はない、SBIの「半導体参入」で際立つ北尾氏の深謀遠慮 多額の補助金を前提としつつ堅実な事業モデル) [金融]

金融業界については、本年9月3日に取上げた。今日は、(その20)(マネックス証券「ドコモ傘下入り」をめぐる皮算用 鼻息荒いドコモと「次の一手」模索のマネックス、ガザ抗争で見えたアメリカ金融界「勢力図」の変貌…もはやゴールドマン・サックスに「金融界の巨人」の面影はない、SBIの「半導体参入」で際立つ北尾氏の深謀遠慮 多額の補助金を前提としつつ堅実な事業モデル)である。

先ずは、10月9日付け東洋経済オンライン「マネックス証券「ドコモ傘下入り」をめぐる皮算用 鼻息荒いドコモと「次の一手」模索のマネックス」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/707119
・『「わが国におけるエポックメーキングになる出来事。ドコモという巨人と、起業家精神あふれる個人の集合体であるマネックスが手を組むことは、非常にエキサイティングだ」 ネット証券大手・マネックスグループの会長で創業者でもある松本大氏は、10月4日の記者会見でそう語った。 マネックスグループは同日、NTTドコモと資本業務提携を結び、祖業でグループ中核のマネックス証券がドコモの連結子会社になると発表した。提携は次のようなスキームで行われる』、興味深そうだ。
・『独立系証券の旗を降ろすことに  まず中間持ち株会社を設立し、その新会社にマネックス証券の全株式を取得させる。そのうえで新会社の株式の一部をドコモに売却、同時に新会社がドコモを割当先とした第三者割当増資を行う。 一連の取引は2024年1月に完了する予定だ。新会社の株式は約51%をマネックスグループ、約49%をドコモがそれぞれ所有する。現在マネックスグループの100%子会社であるマネックス証券は、ドコモの子会社になる。 新会社の取締役の過半はドコモが選任する。そのため、実質支配力基準に基づき、新会社とマネックス証券はドコモの連結子会社になり、マネックスグループにとっては持分法適用会社となる。 1999年の設立から四半世紀を転機に、マネックス証券は独立系の旗を降ろすことになった。) マネックスグループの連結から外れるが、マネックス証券の社名は変更しない。社長も現任の清明祐子氏が務めるなど、マネックスのブランドは維持する方向だ。 松本氏は提携に至った理由を、「ネット証券が生き残っていくうえで、プラットフォームとの提携は避けられない」と説明する。 松本大氏は今回の提携について「最高のタイミングと最良の相手」と話した(撮影:尾形文繁)』、「独立系証券」がなくなってしまうのには一抹の寂しさも覚える。
・『競争が激化するネット証券業界  2024年1月から始まる新NISAを初めとして、「貯蓄から投資へ」の流れが加速している。一方、今年10月からはSBI証券と楽天証券が国内株の取引手数料無料化に踏み切るなど、ネット証券業界の競争が激化している。 こういった状況下、マネックスグループはドコモと協業することで顧客基盤を強化する。9600万人の会員を持つ「dポイント」や決済サービス「d払い」、電子マネー「iD」などドコモのサービスと連携、比較的金融リテラシーの高い個人が多かった顧客層の裾野を広げていく。 業績への影響はどうか。マネックスグループの2023年3月期の営業収益793億円(IFRS)に対し、マネックス証券単体の営業収益は310億円だった。 持分法適用会社となることで、マネックス証券の営業収益と営業利益はグループ連結に反映されなくなる。見かけ上、マネックスグループの事業規模は大きく縮む。51%の持分に応じた当期利益への反映はあるものの、マネックス証券の上げた利益の半分はドコモのものになってしまう。 それでも、提携効果によってマネックス証券が大きく成長することで利益規模は早期に回復すると、マネックスグループは見通す。 マネックス証券は2023年9月現在、223万口座、預かり資産残高7兆円を抱える。これまでは2026年度に300万口座、預かり資産残高10兆円を目標としてきた。この目標をそれぞれ500万口座、15兆円に引き上げる。 「dポイント経済圏とのシナジーにより、非連続的な成長を達成する」と、マネックス証券の清明社長は力を込める。) ドコモにとっても、マネックスグループとの提携への期待は大きい。ドコモの井伊基之社長は、「初めての人でも、手軽で簡単に資産形成できるサービスを提供する」と意気込む。会見では、「家族」という言葉を何度も使い、「身近なサービスを展開する」と強調した。 ドコモのライバルである通信各社が「auカブコム証券」(au)、「PayPay証券」(ソフトバンク)、「楽天証券」(楽天)という証券会社を傘下に抱える中、ドコモにとって証券サービスは是が非でも欲しい事業だった』、「ドコモのライバルである通信各社が・・・という証券会社を傘下に抱える中、ドコモにとって証券サービスは是が非でも欲しい事業だった」、なるほど。
・『SBIの「1強体制」をどう崩すのか  どこと組むのかは、証券業界でも注目を集めていた。「ドコモが組むとしたら、マネックス証券か松井証券だと思っていた」。ある業界関係者はそう話す。 ドコモの江藤俊弘スマートライフカンパニー統括長は会見後の囲み取材で、「ドコモがせっかくやるのであれば、マネックス証券は数百万口座では物足りない。時期は未定だが、1000万口座を目指したい」と鼻息荒く語った。 ただ、ドコモやマネックスグループのもくろみどおり、マネックス証券が成長できるかどうかは疑問符がつく。 ネット証券と通信プラットフォームとの連携では、先述したようにauやソフトバンクが先行するが、成功しているのは900万口座を超える楽天証券くらい。口座数を積み重ねても、取引量が伸びずに収益面で苦戦する例も目立つ。野村ホールディングスと組んだLINE証券に至っては今年6月、サービス終了に追い込まれた。 手数料無料化の荒波にもさらされている。ネット証券最大手のSBI証券が仕掛けた無料化は、マネックス証券の苦境に追い打ちをかけた。楽天証券は収益面でのダメージを覚悟のうえで追随。一方でマネックス証券と松井証券は、追随すらできなかった。 手数料収入に依存しないビジネスモデルを着々と準備したSBI証券の「1強体制」をどう崩すか。対抗策は見当たらない。) マネックス証券の純資産額は2023年3月末で487億円。それに対して今回、中間持ち株会社の株式価値は970億円とした。つまりマネックス証券にはそれだけの企業価値があると、ドコモが認めたわけだ。 ある証券会社幹部はこの金額が「高めだ」と指摘。「マネックスグループは、レッドオーシャン(苛烈な市場)から手を引くだけでなく、高値で売却できたのだとしたら見事」と舌を巻く。 ドコモへの株式売却価額は約466億円で、マネックスグループには売却益182億円が発生する。マネックス証券の2023年3月期の純利益は26億円ななだけに利益インパクトは大きい。「うまくいった取引」(同)というわけだ』、「ネット証券と通信プラットフォームとの連携では、先述したようにauやソフトバンクが先行するが、成功しているのは900万口座を超える楽天証券くらい。口座数を積み重ねても、取引量が伸びずに収益面で苦戦する例も目立つ。野村ホールディングスと組んだLINE証券に至っては今年6月、サービス終了に追い込まれた・・・ネット証券最大手のSBI証券が仕掛けた無料化は、マネックス証券の苦境に追い打ちをかけた。楽天証券は収益面でのダメージを覚悟のうえで追随。一方でマネックス証券と松井証券は、追随すらできなかった・・・「マネックスグループは、レッドオーシャン(苛烈な市場)から手を引くだけでなく、高値で売却できたのだとしたら見事」と舌を巻く。 ドコモへの株式売却価額は約466億円で、マネックスグループには売却益182億円が発生する。マネックス証券の2023年3月期の純利益は26億円ななだけに利益インパクトは大きい。「うまくいった取引」、なるほど。
・『今後は「何業」の会社に?  マネックスグループはさしあたり株売却で入ってくる資金を元手に、成長領域とするアセットマネジメントビジネスを中心に投資を進める。競争が激化する証券ビジネスから距離を置き、事業ポートフォリオの再編成に乗り出すとの見方もある。 気になるのは、グループとしてのマネックスは、今後どこへ向かうのかだ。暗号資産(仮想通貨)交換所の「コインチェック」やアメリカの証券会社「トレードステーション」、資産運用を扱う「マネックス・アセットマネジメント」が残るが、この先は何を中核事業とするかに関心が集まる』、「気になるのは、グループとしてのマネックスは、今後どこへ向かうのかだ」、同感である。
・『マネックス松本氏とソニー出井氏  写真は1999年8月、マネックス証券の誕生を支援したのが当時ソニー社長だった出井伸之氏(右)。「出井さんなくしてマネックスは生まれませんでした」と松本氏は述べている・・・「マネックスは『何業』の会社になるのか」。10月4日に行われたアナリスト向け説明会では、このような質問も出た。松本氏は「個人の生涯バランスシートの最適化というビジョンに向かって事業を行っている。何業かと言われると難しい」と答えた。 この答弁に表れているように、マネックスの創業者でカリスマ経営者でもある松本氏は、事業構造改革の方向性を明確に示せていない。 先だって9月4日に開いた事業戦略説明会では、グループ戦略の説明を清明氏に任せ、自身は医療分野の新規事業について説明しただけだった。金融業への興味が薄れたかのようにもみえるが、東洋経済の問いに松本氏は「金融への情熱は失われていない」と断言した。 ドコモとの提携発表翌日の10月5日、マネックスグループの株価はストップ高となる659円を付け、年初来高値を更新した。配当の下限をこれまでの2倍となる30円に引き上げると発表したことも影響しているが、今後の成長への期待の表れでもある。 この先、どういった方向性を打ち出すのか。マネックスグループの「次の一手」が問われる』、「マネックスの創業者でカリスマ経営者でもある松本氏は、事業構造改革の方向性を明確に示せていない・・・マネックスグループの株価はストップ高となる659円を付け、年初来高値を更新・・・マネックスグループの「次の一手」が問われる』」、その通りだ。

次に、10月28日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの歳川 隆雄氏による「ガザ抗争で見えたアメリカ金融界「勢力図」の変貌…もはやゴールドマン・サックスに「金融界の巨人」の面影はない」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/118400?imp=0
・『ガザを巡る抗争(10月24日、第7回未来投資イニシアチブ(Future Investment Initiative=FII) がサウジアラビアの首都リヤドのリッツ・カールトン・ホテルで開幕した。因みに日本経済新聞(25日付朝刊)はFIIを「国際投資会議」と表記するが、「未来投資イニシアチブ」の方が実態に適っている。 同国の実力者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の肝いりでスタートしたFIIは金融関係者の間で「砂漠のダボス会議」と呼ばれる。同皇太子が推進する石油依存経済からの脱却の中核を担うのが運用資産7780億ドル(約117兆円)のサウジ政府系ファンドのパブリック・インベストメント・ファンド(Public Investment Fund=PIF=ヤセル・ルマイヤン総裁)である。 イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの激烈な戦闘が続くことを念頭にルマイヤン総裁は開幕式冒頭に、「現在の世界は不確かなものに見えるが、我々はより強い社会を構築しなければならない」と述べた。ガザを巡る抗争がエスカレートするリスクを認めたに等しい。 そうした緊迫する中東情勢のなか注目すべきは、このFIIに米ウォール街の金融業界トップが揃い踏みで参加したことである。世界有数の金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)、グローバル金融最大手ゴールドマン・サックス(GS)のデービッド・ソロモンCEO、資産運用最大手ブラックロックのラリー・フィンクCEO、大手金融機関シティグループのジェーン・フレーザーCEO、投資大手カーライル・グループのハービー・シュワルツCEO、世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツのレイ・ダリオ創業者らが蝟集した。 何もFIIに参加したのは金融業界の超大物だけではない。米石油メジャーの大物を始め世界各国から石油・ガス業界のトップも馳せ参じた。石油メジャー最大手のエクソン・モービルのダレン・ウッズCEO、フランスの総合エネルギー企業トタル・エナジーズのパトリック・プヤンヌCEOらも会議の合間を縫って、激動の中東情勢に関する意見交換や原油価格についてサウジのアブドルアジズ・ビン・サルマン・エネルギー相や国営石油会社サウジアラムコのアミン・ナセルCEOと協議している』、さすが「砂漠のダボス会議」だけあって、「参加者の顔ぶれ」は超豪華だ。
・『勢力図の変貌  筆者がサウジ主催の未来投資イニシアチブ(FII)年次会議の報道(ロイター通信、米ブルームバーグ及び日経新聞)に接し、その背景を深掘りして得たポイントは唯一つ。 先ず指摘すべきは、この間、米金融機関の勢力図が大きく変貌したということである。際立つのは金融大手のゴールドマン・サックスの業績不振だ。年初の1月17日、GSのソロモンCEOは22年12月期決算を発表したが、純利益が前期比48%減の112億ドル(約1兆4000億円)だった。 今年になっても不振は続き、7~9月期純利益は33%減の20億ドル(約3000憶円)と21年10~12月期から8四半期連続の2桁減益となった。主力の投資銀行ビジネスの不調と得意とするM&A(合併・買収)助言の低調が大きい。GSに「金融界の巨人」という往年の面影はない。 一方、JPモルガンは7~9月期が35%増益の131億ドル(約1兆9500億円)に達し、GSの6倍超である。今年に入ってからの金利上昇で融資などから生じる純金利収入の伸びが著しい。ブラックロックと共にJPモルガンの好調は、米金融界の関心を集めている。 そのJPモルガン・アセット・マネジメントの広告「アメリカ成長株ファンド・アメリカの星」(全面3分の1段)が日本経済新聞(10月26日付朝刊)の最終面(48面)に掲載された。9月25日、10月12日に続く3回目だ(昨年は7月4日を含め4回掲載)。米国株推奨のキャンペーンである。 この彼我の差はどこから来るのか。もちろん、個人向け(リテール)事業の規模の差もある。何よりもそれは一に懸かってJPモルガンのダイモン氏の頭抜けた経営手腕に負うものだ。同氏の複眼は日本を見据えつつ、サウジアラビアにも向けられる。さらに戦後復興を視野にウクライナも俯瞰する。果たして「投資される日本」を目指す岸田文雄首相はその期待に応えられるのか』、「ダイモン氏の頭抜けた」「複眼は日本を見据えつつ、サウジアラビアにも向けられる。さらに戦後復興を視野にウクライナも俯瞰する」、まさに超人的で、「岸田」政権には到底無理だろう。

第三に、11月9日付け東洋経済オンライン「SBIの「半導体参入」で際立つ北尾氏の深謀遠慮 多額の補助金を前提としつつ堅実な事業モデル」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/713549
・『「まるで“政商”といった感じですよね」——。 ある半導体関連企業の関係者がそう評したのは、総合金融業を展開するSBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長だ。理由はここぞとばかりにぶち上げた半導体事業参入でみせる北尾会長の立ち回りのうまさにある。 台湾の半導体製造受託企業(ファウンドリー)であるパワーチップと新会社を設立し、日本でファウンドリー事業を立ち上げるとSBIが公表したのは7月初めのことだった。それから約4カ月。10月31日に行われた会見で、全容が明らかになった。 宮城県大衡村にある工業団地に新工場を建設し、2027年の稼働を目指す。必要となる資金は、この第1期投資だけでも約4200億円、2029年に完了する第2期投資まで見据えると総額では8000億円超となる。 新会社にはSBIとパワーチップの2社で過半を出資する。1000億円規模のファンドを立ち上げるなどして、国内外投資家の出資も促す。融資については、メガバンクや日本政策投資銀行と協議をしているという』、初めのうちは、勝算があるのかと疑問を感じたが、「補助金」狙いとはあり得る話だ。「2029年に完了する第2期投資まで見据えると総額では8000億円超となる。 新会社にはSBIとパワーチップの2社で過半を出資する。1000億円規模のファンドを立ち上げるなどして、国内外投資家の出資も促す。融資については、メガバンクや日本政策投資銀行と協議をしている」、なるほど。
・『「補助金なしにはやらない」と明言  いくら有望産業の半導体とはいえ、8000億円もの巨額資金を調達することは容易ではない。それでもSBIが参入を決めた理由は、無尽蔵とも言える政府支援の存在だ。 「政府からの補助金が前提。補助金が出なければこの事業をやるつもりはない」。北尾会長は会見でそう言いきった。関係者によると、経済産業省との議論が水面下で進んでいるという。会見の場であえて見得を切ったのは、北尾流交渉術なのかもしれない。 半導体産業の強化はいまや国策だ。世界中でサプライチェーンの再構築が行われ、各国が自国域内での製造を強化している。日本政府も兆円単位という空前の予算を計上。半導体関連企業による投資では、投資額全体の3〜5割、数百〜数千億円規模となる補助金の支給が相次いで決まっている。 半導体関連とあらば大盤振る舞いをいとわない政府のこうした姿勢が、異業種であるSBIをも引き寄せた格好だ。「北尾会長は補助金があれば絶対に勝てるビジネスと踏んだのだろう」。金融業界関係者はそう舌を巻く。 そんなSBIに秋波を送ったのが、地域活性化の起爆剤として半導体工場を誘致したい地方だった。 SBIが7月に半導体事業参入を発表して以降、北海道から九州まで31の候補地から誘致があったという。「多くの知事や副知事、地方銀行のトップがみんな(SBI本社に)お見えになった」(北尾会長)。 建設予定地に選ばれたのは宮城県だ。7月の参入表明時から新工場の誘致を行ってきたという村井嘉浩・宮城県知事は会見に駆けつけ、「宮城県が一丸となって支援することを約束する」と喜んだ。 「半導体工場の建設が決まっている千歳と遠くなく、新幹線整備に伴い街が活性化している札幌に比べて、仙台地区はニュースが少なく焦りを感じていた」(地元財界関係者) ファウンドリー世界最大手の台湾TSMCが工場を建設している熊本や、ニッポン半導体復活のため次世代の最先端半導体の量産を目指すラピダスが工場建設をスタートさせた千歳市。ともに地元の期待は高まっている。宮城が歓迎一色ムードなのも理解できる』、「日本政府も兆円単位という空前の予算を計上。半導体関連企業による投資では、投資額全体の3〜5割、数百〜数千億円規模となる補助金の支給が相次いで決まっている。 半導体関連とあらば大盤振る舞いをいとわない政府のこうした姿勢が、異業種であるSBIをも引き寄せた格好だ・・・SBIに秋波を送ったのが、地域活性化の起爆剤として半導体工場を誘致したい地方だった・・・建設予定地に選ばれたのは宮城県だ。7月の参入表明時から新工場の誘致を行ってきたという村井嘉浩・宮城県知事は会見に駆けつけ、「宮城県が一丸となって支援することを約束する」と喜んだ」、なるほど。
・『関係の深い仙台銀行にも恩恵  会見では、北尾会長から興味深い発言も飛び出した。「地元にはわれわれと関係の深い仙台銀行がある。できるだけプラスになるようにしたい」というものだ。 SBIは仙台銀の親会社であるじもとホールディングスに17%を出資する筆頭株主。コロナ禍の際に行った実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が本格化し融資先の経営が悪化するなど、地方銀行は苦しい環境下にある。安定した融資先を確保できる半導体工場建設は渡りに舟だ。 仙台銀は早速プロジェクトチームを発足させる予定だ。仙台銀幹部は「SBIとしては、宮城の足がかりは仙台銀と考えていると思う。できる限りの協力をしたい」と意気込む。) SBIは9月に子会社のSBI新生銀行の非上場化を完了させたばかり。3000億円超の不良債権を返済するためには新生銀をハブにした地銀連携を進化させ、収益力を高める必要がある。そうした面でも半導体事業への進出はシナジーだ。SBIの唐突な半導体進出にはそうした事情がある。 ただ、半導体は多額の設備投資が必要なだけでなく、市況の浮き沈みの激しい産業だ。ビジネスとしての勝算はあるのだろうか。受託製造に特化するファウンドリーは、委託する半導体メーカーがあって初めて成立するビジネス。そこで新会社が狙うのは、日本での車載半導体市場の開拓だ』、「SBIは9月に子会社のSBI新生銀行の非上場化を完了させたばかり。3000億円超の不良債権を返済するためには新生銀をハブにした地銀連携を進化させ、収益力を高める必要がある。そうした面でも半導体事業への進出はシナジーだ。SBIの唐突な半導体進出にはそうした事情がある・・・受託製造に特化するファウンドリーは、委託する半導体メーカーがあって初めて成立するビジネス。そこで新会社が狙うのは、日本での車載半導体市場の開拓だ」、なるほど。
・『車載半導体のストライクゾーンを狙う  半導体のプロセスノード(回路線幅)の単位はナノ(ナノは10億分の1)メートル。新会社で製造するのは55ナノ、40ナノ、28ナノの3つの世代となる。 半導体は世代を表すプロセスノードの数字が小さくなるほどに高性能になっていく。現在量産されている最先端品はiPhoneの最新世代に搭載されている3ナノ。28ナノは10年以上前の世代だ。 だが、イギリスの調査会社・オムディアのコンサルティングディレクターである杉山和弘氏によると、「車載マイコン(半導体)の現在のボリュームゾーンは65〜40ナノ。最先端のもので28ナノ世代」。スマホなどに比べると車載半導体の進化は緩やかだ。 新会社が宮城に建てる工場の稼働は2027年以降。それを考えると、55〜28ナノは車載半導体のストライクゾーンといえるだろう。 加えて、現在の日本の半導体工場の状況を見ても、55〜28ナノというのは供給が手薄になっている絶妙なラインナップだ』、「「車載マイコン(半導体)の現在のボリュームゾーンは65〜40ナノ。最先端のもので28ナノ世代」。スマホなどに比べると車載半導体の進化は緩やかだ。 新会社が宮城に建てる工場の稼働は2027年以降。それを考えると、55〜28ナノは車載半導体のストライクゾーンといえるだろう。 加えて、現在の日本の半導体工場の状況を見ても、55〜28ナノというのは供給が手薄になっている絶妙なラインナップだ」、上手くしたものだ。
・『SBIが参入で狙う半導体のプロセスノード  というのも、現在日本で製造できるのはルネサスエレクトロニクスの40ナノ品まで。一方で同社は、最低限の自社工場しか持たない「ファブライト」の方針を掲げており、供給量は十分ではない。2024年の稼働を見込むTSMC熊本工場は28〜12ナノの製造を行うが、こちらは合弁相手のソニーがほぼ全量を自社のイメージセンサー向けに使用するとみられている。 パワーチップは世界シェア2%前後でファウンドリーの中では中堅クラス。最大手のTSMCのように量産体制を整えるために巨額の設備投資費用が必要となる先端品は追い求めず、成熟した世代の準先端品を手がけている。そのようなパワーチップの強みも新会社で生かせる。 唐突にもみえたSBIの半導体事業参入。北尾会長からすると、練りに練った策だったのかもしれない』、「パワーチップは世界シェア2%前後でファウンドリーの中では中堅クラス。最大手のTSMCのように量産体制を整えるために巨額の設備投資費用が必要となる先端品は追い求めず、成熟した世代の準先端品を手がけている。そのようなパワーチップの強みも新会社で生かせる。 唐突にもみえたSBIの半導体事業参入。北尾会長からすると、練りに練った策だったのかもしれない」、これを膨大な補助金付きで手に入れたとは「SBI」も相当したたかな「政商」だ。
タグ:東洋経済オンライン「マネックス証券「ドコモ傘下入り」をめぐる皮算用 鼻息荒いドコモと「次の一手」模索のマネックス」 金融業界 (その20)(マネックス証券「ドコモ傘下入り」をめぐる皮算用 鼻息荒いドコモと「次の一手」模索のマネックス、ガザ抗争で見えたアメリカ金融界「勢力図」の変貌…もはやゴールドマン・サックスに「金融界の巨人」の面影はない、SBIの「半導体参入」で際立つ北尾氏の深謀遠慮 多額の補助金を前提としつつ堅実な事業モデル) 「独立系証券」がなくなってしまうのには一抹の寂しさも覚える。 「ドコモのライバルである通信各社が・・・という証券会社を傘下に抱える中、ドコモにとって証券サービスは是が非でも欲しい事業だった」、なるほど。 「ネット証券と通信プラットフォームとの連携では、先述したようにauやソフトバンクが先行するが、成功しているのは900万口座を超える楽天証券くらい。口座数を積み重ねても、取引量が伸びずに収益面で苦戦する例も目立つ。野村ホールディングスと組んだLINE証券に至っては今年6月、サービス終了に追い込まれた ・・・ネット証券最大手のSBI証券が仕掛けた無料化は、マネックス証券の苦境に追い打ちをかけた。楽天証券は収益面でのダメージを覚悟のうえで追随。一方でマネックス証券と松井証券は、追随すらできなかった・・・「マネックスグループは、レッドオーシャン(苛烈な市場)から手を引くだけでなく、高値で売却できたのだとしたら見事」と舌を巻く。 ドコモへの株式売却価額は約466億円で、マネックスグループには売却益182億円が発生する。マネックス証券の2023年3月期の純利益は26億円ななだけに利益インパクトは大きい。「うまく いった取引」、なるほど。 「気になるのは、グループとしてのマネックスは、今後どこへ向かうのかだ」、同感である。 「マネックスの創業者でカリスマ経営者でもある松本氏は、事業構造改革の方向性を明確に示せていない・・・マネックスグループの株価はストップ高となる659円を付け、年初来高値を更新・・・マネックスグループの「次の一手」が問われる』」、その通りだ。 現代ビジネス 歳川 隆雄氏による「ガザ抗争で見えたアメリカ金融界「勢力図」の変貌…もはやゴールドマン・サックスに「金融界の巨人」の面影はない」 さすが「砂漠のダボス会議」だけあって、「参加者の顔ぶれ」は超豪華だ。 「ダイモン氏の頭抜けた」「複眼は日本を見据えつつ、サウジアラビアにも向けられる。さらに戦後復興を視野にウクライナも俯瞰する」、まさに超人的で、「岸田」政権には到底無理だろう。 東洋経済オンライン「SBIの「半導体参入」で際立つ北尾氏の深謀遠慮 多額の補助金を前提としつつ堅実な事業モデル」 初めのうちは、勝算があるのかと疑問を感じたが、「補助金」狙いとはあり得る話だ。「2029年に完了する第2期投資まで見据えると総額では8000億円超となる。 新会社にはSBIとパワーチップの2社で過半を出資する。1000億円規模のファンドを立ち上げるなどして、国内外投資家の出資も促す。融資については、メガバンクや日本政策投資銀行と協議をしている」、なるほど。 「日本政府も兆円単位という空前の予算を計上。半導体関連企業による投資では、投資額全体の3〜5割、数百〜数千億円規模となる補助金の支給が相次いで決まっている。 半導体関連とあらば大盤振る舞いをいとわない政府のこうした姿勢が、異業種であるSBIをも引き寄せた格好だ・・・SBIに秋波を送ったのが、地域活性化の起爆剤として半導体工場を誘致したい地方だった ・・・建設予定地に選ばれたのは宮城県だ。7月の参入表明時から新工場の誘致を行ってきたという村井嘉浩・宮城県知事は会見に駆けつけ、「宮城県が一丸となって支援することを約束する」と喜んだ」、なるほど。 「SBIは9月に子会社のSBI新生銀行の非上場化を完了させたばかり。3000億円超の不良債権を返済するためには新生銀をハブにした地銀連携を進化させ、収益力を高める必要がある。そうした面でも半導体事業への進出はシナジーだ。SBIの唐突な半導体進出にはそうした事情がある・・・受託製造に特化するファウンドリーは、委託する半導体メーカーがあって初めて成立するビジネス。そこで新会社が狙うのは、日本での車載半導体市場の開拓だ」、なるほど。 「「車載マイコン(半導体)の現在のボリュームゾーンは65〜40ナノ。最先端のもので28ナノ世代」。スマホなどに比べると車載半導体の進化は緩やかだ。 新会社が宮城に建てる工場の稼働は2027年以降。それを考えると、55〜28ナノは車載半導体のストライクゾーンといえるだろう。 加えて、現在の日本の半導体工場の状況を見ても、55〜28ナノというのは供給が手薄になっている絶妙なラインナップだ」、上手くしたものだ。 「パワーチップは世界シェア2%前後でファウンドリーの中では中堅クラス。最大手のTSMCのように量産体制を整えるために巨額の設備投資費用が必要となる先端品は追い求めず、成熟した世代の準先端品を手がけている。そのようなパワーチップの強みも新会社で生かせる。 唐突にもみえたSBIの半導体事業参入。北尾会長からすると、練りに練った策だったのかもしれない」、これを膨大な補助金付きで手に入れたとは「SBI」も相当したたかな「政商」だ。
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個人債務問題(その4)(“日の丸ヤミ金”奨学金 若者から収奪する「日本学生支援機構」、若者が陥る不動産投資のワナ 「フラット35」の不正利用が相次ぐ【WBS】、「警察vs新手のヤミ金」仁義なき戦い ギフト券買い取り商法などの狡猾手口) [金融]

個人債務問題については、2021年2月5日に取上げた。今日は、(その4)(“日の丸ヤミ金”奨学金 若者から収奪する「日本学生支援機構」、若者が陥る不動産投資のワナ 「フラット35」の不正利用が相次ぐ【WBS】、「警察vs新手のヤミ金」仁義なき戦い ギフト券買い取り商法などの狡猾手口)である。

先ずは、2022年4月7日付け週刊金曜日「“日の丸ヤミ金”奨学金 若者から収奪する「日本学生支援機構」」を紹介しよう。
https://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2022/04/07/news-124/
・『日本学生支援機構による〝違法回収〟の実態が明らかになりつつある。利用者への「最終通知」内容が情報公開請求で発覚。そしてついに国会でも取り上げられた。〈重要/必ずお読みください!/今回お送りした「支払督促申立予告」は、あなたへの最終通知です。〉(傍線は原文ママ) 日本学生支援機構が奨学金ローンの利用者らに送付する「最終通知」。 A4判の紙に赤色の大文字をまじえてそんな文句が書かれている。作成者は闇金融でもなければ貸金業者でもない。独立行政法人日本学生支援機構(以下、支援機構)である。特殊詐欺と疑われてもやむを得ないほど威圧感のある取り立て文書を、奨学金ローンの返還困難に陥った利用者や保証人に対して送りつけていたのだ。 「最終通知」は情報公開請求に対して支援機構が開示したものだが、その意味は重大だ。違法性が疑われる繰り上げ一括請求を実行するために作成された「違法回収の証拠」だからだ。 奨学金ローンは20年以内に月賦または年賦などで返還する仕組みだ。それを、返済が滞ると将来払う予定のものまで前倒しで一括弁済をと迫る。200万円であろうが300万円であろうが、耳を揃えて即座に払えというのが繰り上げ一括請求である。根拠は日本学生支援機構法施行令5条5項とされる。 さて、最終通知をさらに読むと、赤色や下線、傍点で強調した大文字でこうある。 予告書の内容をお読みいただき、一括返還が困難なときは、必ず「○月末日までに」日本学生支援機構に連絡し、分割返還や返還期限猶予手続等について相談してください。/連絡がないときは、裁判所に支払督促申立を行います。〉(傍線、傍点は原文ママ) 【差出人は元武富士代理人】 強い調子の文面の中に「予告書」という言葉が出てくる。「返還未済奨学金の一括返還請求(支払督促申立予告)」という文書のことだ。やはり情報公開請求で開示された。最終通知といっしょに送っているらしい。 その予告書(A4判)を見ると、こちらは平凡な事務文書の体裁で赤色や大文字は使われていないものの、やはり内容はおどろおどろしい。 〈あなたは、日本学生支援機構(旧日本育英会)からの貸与を受けた奨学金の返還について、再三の督促を受けながら、長期にわたり返還がなされていません。/ついては、独立行政法人日本学生支援機構法施行令(日本育英会奨学規程)により、下記の返還未済額の全部を、下記の返還期限までに一括して返還されますよう請求します。/もし、この期限までに返還されず、また、然るべき対応もなされないときは、やむなく返還未済額の全部、および内訳記載以後の延滞金について、上記規程に定める返還強制の手続きをとることになりますので、ご承知おきください。(略) 返還未済額○円(内訳は下記のとおり)/返還期限○年○月○日 (略) 1 返還期日が到来し、滞納となっている額 ○円 2 約定返還期日未到来であるが、奨学規程により繰上げ返還すべき額 ○円〉(傍線は原文ママ)  差出人は支援機構の吉岡知哉理事長。その下には「顧問弁護士・熊谷信太郎」の名があり、文面に迫力を与えている。熊谷氏はサラ金最大手・武富士(2010年に経営破綻)元代理人の経歴を持つ支援機構の看板弁護士だ。 「奨学金」の利用者や保証人がこれらの文書を受け取れば、ほとんどの人は「滞納した方が悪い。全額払わなければいけない」と思い、動揺するにちがいない。 だが、本連載でたびたび指摘してきたとおり、支援機構の一括請求には違法性が疑われる。施行令5条5項には「支払能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠ったと認められるとき」にのみ一括請求できるとあるのに、じっさいは利用者の支払能力を調べることすらせず、一括請求を乱発している。払えない人から容赦なく貸しはがしている。  この問題意識をもって最終通知や予告書をみれば強い違和感を覚える。一括請求は「支払能力がある」場合にしかできない旨明記した施行令の内容が、文書のどこにも説明されていない。 支援機構は意図的に施行令を歪めているのではないか。そう疑いたくなる』、「支援機構の一括請求には違法性が疑われる。施行令5条5項には「支払能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠ったと認められるとき」にのみ一括請求できるとあるのに、じっさいは利用者の支払能力を調べることすらせず、一括請求を乱発している。払えない人から容赦なく貸しはがしている」、なるほど。
・『【衆院文科委での応酬】  3月2日、衆議院文部科学委員会で宮本岳志議員(共産)が繰り上げ一括請求問題に関する質問で「施行令歪曲疑惑」を取り上げた。答弁者は増子宏・文部科学省高等教育局長だ。 宮本 施行令5条5項ですね。「支払能力があるにもかかわらず」これが一つ。二つめ、「割賦金の返還を著しく怠ったと認められるときは」。(期限の利益喪失は)この二つの条件となっているわけです。(略)。しかしここ(返還開始時に配付する「返還のてびき」)には「督促しても返還しない場合は」という言葉はありますけれども、「支払能力があるにもかかわらず」という肝心の条件は書かれておりません。(略)返還が始まるまでの間に日本学生支援機構はこの施行令5条5項を明記した文書を、貸与を受ける奨学生に対して示しておりますか? 増子 奨学生に採用された際に配付しております「貸与奨学生のしおり」というものがございます。この103ページにおいて明示はしております。 「明示はしております」という増子局長の答弁の意味が、続く宮本議員の質問で明らかになる。 宮本 (「しおり」本文の)79ページを見ますと、法的手続きでは長期にわたって滞納が解消しない場合には触れていますけれども、やっぱり「支払能力があるにもかかわらず」という文言はありません。どこかと思って探したら、資料編、103ページにその施行令5条5項が細かい字でちょちょっと4行書いてあるというのがすべてなんですね。私は、これは本当にひどいなと』、「宮本 (「しおり」本文の)79ページを見ますと、法的手続きでは長期にわたって滞納が解消しない場合には触れていますけれども、やっぱり「支払能力があるにもかかわらず」という文言はありません。どこかと思って探したら、資料編、103ページにその施行令5条5項が細かい字でちょちょっと4行書いてあるというのがすべてなんですね。私は、これは本当にひどいなと」、確かにひどい。
・『【「欺く趣旨ではない」】  何のことはない。増子局長の言う「明示」とは「しおり」の中の資料のことだった。宮本議員はさらに、法的手続きの際に裁判所に対しても「支払能力」を説明していない点を指摘して、是正を要するのではないかと質す。 宮本 (支援機構が起こした債権回収訴訟の訴状においても)施行令5条5項が定める「支払能力があるにもかかわらず」、この文言がありません。まるで施行令が、支払能力の有無とは無関係に、割賦金の返還を著しく怠っただけで一括請求を許しているかのように説明しております。これは裁判所を欺こうということですか? 増子 決して、裁判所を欺くとかそういう趣旨ではございません。この第5条5項においては、返済者に支払能力があるにもかかわらず割賦金の返済を著しく怠ったと認めるときに、返済未済額の全部の返済義務を負うというふうに考えているところでございます。 宮本 支払能力があるかどうかはきわめて重大な条件なんですね。(略)少なくとも日本学生支援機構は、この施行令5条5項に明記された文章、すなわち「支払能力があるにもかかわらず」「割賦金の返還を著しく怠ったと認めるときは」という二つの条件をあらかじめ丁寧に貸与を受ける者に説明しなければならない。またその説明が不十分なまま法的措置に踏み込むのはあまりにも不誠実だと思います。大臣、是非とも改善、せめて検討を。 答弁を求められた末松信介文科大臣は、こう答えた。 「わかりやすい通知文書となるように努めたい。やはりわかってもらうことが一番大事ですので、基本の『き』のところということでございますから、その点よく念頭におきます」 一括請求問題が初めて世に問われたのは2013年。以来10年近くを経てようやく見えた小さな改善の兆しだった。もっとも何をどう改めるのか、具体的にはまだ明らかにされていない。(つづく)』、「一括請求問題が初めて世に問われたのは2013年。以来10年近くを経てようやく見えた小さな改善の兆しだった。もっとも何をどう改めるのか、具体的にはまだ明らかにされていない」、なんと長いこと放置していたものだ。今後の改定の動きを注視したい。

次に、7月28日付けYahooニュースが転載したテレ東BIZ「若者が陥る不動産投資のワナ 「フラット35」の不正利用が相次ぐ【WBS】」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4e9688fe31dd637cc3dfb83959edfd967cc71ff3?page=1
・『不動産価格の高騰などを受け、今、数千万円に上るローンを借りて不動産投資を始める若い人が増えています。しかし、このローンをめぐって「ある落とし穴」にはまり、中には自己破産に追い込まれるケースも多発しています。その実態を取材しました。 7月22日、都内で開かれたJKAS主催の「不動産トラブル『救済』セミナー」。100人以上が参加しました。参加者の1人が佐藤さん(仮名・30歳)。5年前、投資用にマンションを購入しました。 佐藤さんが購入した物件は、都心の最寄り駅から徒歩1分の1LDK(約45平方メートル)。築15年(購入時)で4900万円でした。 物件自体に問題はありませんでしたが、「投資用のローンではなく、住宅居住用の『フラット35』を使用してしまった。不動産会社とやり取りをしていて、投資用ローンで購入しているものだと思っていた」(佐藤さん)といいます。 投資物件では利用できない「フラット35」  「フラット35」は、最長35年間、一定の金利で借りられる住宅ローン。 問題は、このローンを利用できるのは、本人や親族が住むための物件を購入する場合に限られていることです。佐藤さんのように、投資用物件で使うと、不正利用にあたります。 購入から1年後、佐藤さんの元に届いたのは、住宅金融支援機構からの居住確認でした。 不動産会社に手紙が来たということを言ったときに、アンケートのようなものだから答えなくていいと言われ、私もそういうものなのかと楽観的に捉えてしまった」(佐藤さん) 最終的に居住実態がないことが確認され、佐藤さんは住宅支援機構から残ったローンの一括返済を求められました。その後、物件を販売した不動産会社とは、連絡が取れなくなったといいます。 「不動産のプロは詐欺のようなことはしないだろうと思っていた。後悔している」(佐藤さん) 実は今、佐藤さんのように、知らずにフラット35の不正利用をしてしまう事例が相次いでいます。住宅金融支援機構の調査によると、その不正利用のうち84%が20代から30代前半の購入者でした。』、「「投資用のローンではなく、住宅居住用の『フラット35』を使用してしまった。不動産会社とやり取りをしていて、投資用ローンで購入しているものだと思っていた」(佐藤さん)といいます・・・購入から1年後、佐藤さんの元に届いたのは、住宅金融支援機構からの居住確認でした・・・販売した不動産会社とは、連絡が取れなくなった」、これでは「投資物件」であることがバレてしまうし、「不動産会社とは、連絡が取れなくなった」のであれば、どうしようもない。
・『壁もボロボロ、資料も改ざん  田中さんが購入した物件には、壁に複数の穴が開いていた 取材を進めると、さらに悪質な不動産会社の存在が見えてきました。 5年前に、不動産投資を始めた田中さん(仮名・29歳)。4400万円で投資用に購入したという川崎市内のマンションは築24年(購入時)で、3LDK(約70平方メートル)です。 「(壁には)穴が複数開けられていて、ガラスの縁のところも割れている」(田中さん) 壁には多数の落書きが描かれていました。「ミストサウナ付き」と書いてあった浴室は、水回りも古いままです。今年1月に入居者が出て行き、初めて物件を確認したといいます。 田中さんが購入のために利用したのも、フラット35のローン。投資用に購入したため、田中さんの元にも一括返済の督促が来ました。 「不動産会社に相談しても、ろくな回答がもらえなかった。先輩に相談したときに、もう自己破産するしかないと言われた」(田中さん) 田中さんが提出した資料と開示された資料を比べると月収が10万円ほど上乗せされている 不動産会社が金融機関に提出していた書類を入手したところ、月収が10万円ほど上乗せされ、年収にすると100万円近く水増しされていました。ローンの審査を通すために源泉徴収票など多くの書類が書き換えられていたのです。 「本当に腹立たしい気持ちでいっぱいです」(田中さん) 田中さんに物件を販売した不動産会社のオフィスを訪ねました。そこにあったのはレンタルオフィス。しかし、この不動産会社がいたことはないということでした。 不動産会社に電話し、「融資を通す上で提出された書類と違うものが、ローン会社に提出されていたというが事実か」 と質問すると、受話器の向こうから返ってきた返事は、「わからない。私はこの場でなにも判断する権限がない」。その後、何度電話をしても、回答は得られませんでした。 不動産トラブルに詳しい銀座第一法律事務所の大谷郁夫弁護士は、「事務所に行っても誰もいないというケースはある。そうすると、もう打つ手がない」といいます。 その上でトラブルに巻き込まれないために注意すべきことについて、大谷弁護士は「言われるがままハンコを押して儲かる不動産はまずない。投資をするならその対象について、それなりに勉強してほしい。それからいろいろな書類にハンコを押すときは必ず読んでほしい」と話しました。 ※ワールドビジネスサテライト』、「4400万円で投資用に購入したという川崎市内のマンションは築24年(購入時)で、3LDK(約70平方メートル)です。 「(壁には)穴が複数開けられていて、ガラスの縁のところも割れている」(田中さん) 壁には多数の落書きが描かれていました。「ミストサウナ付き」と書いてあった浴室は、水回りも古いままです」、物件はひどいようだ。「田中さんに物件を販売した不動産会社のオフィスを訪ねました。そこにあったのはレンタルオフィス。しかし、この不動産会社がいたことはないということでした」、これでは話にならない。「購入のために利用したのも、フラット35のローン。投資用に購入したため、田中さんの元にも一括返済の督促が来ました」、これでは確かに自己破産しか道がなさそうだ。

第三に、11月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した東京情報大学 総合情報学部 教授の堂下浩氏による「「警察vs新手のヤミ金」仁義なき戦い、ギフト券買い取り商法などの狡猾手口」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/331819
・『10月25日に神奈川県警が新たなヤミ金を逮捕した。金券買い取りを偽装して資金を提供する「ギフト券買い取り商法」と呼ばれる新種のヤミ金であり、全国で初めての摘発となる。一昔前と違い、近年のヤミ金は単純な金銭貸借の形を取らず、法律の抜け道をくぐるような狡猾な手口を次々と編み出している。邪智深く進歩するヤミ金と、執念を燃やして追いかける警察の戦いが続いている』、興味深そうだ。
・『フリマサイトを装った新種のヤミ金を摘発  「ギフト券買い取り商法」を展開するヤミ金は、金銭を貸す代わりに、ギフト券など金券を媒介しているのが特徴だ。まず、ヤミ金はネット上で金券を買い取るフリーマーケットサイトを装って資金需要のある申込者(実態としては債務者)を誘い込む。たとえば2万円分の金券を申込者が出品するとしよう。しかし、額面通りの金額では売れず、1万5000円などといったディスカウント価格で出品する。そして、ヤミ金がこれを買い取り、1万5000円を申込者に振り込む。 通常の金券売買なら、代金が振り込まれた時点で即座に金券が発送されるところだが、このサイトでは翌月の給与日まで発送を猶予してもらえる。 そして、翌月の給与日には2万円分の金券をヤミ金に郵送しなければならない。つまり、1万5000円を現金で借りて、翌月の給与日に2万円を金券で返済する、という図式になる。差額の5000円が金利だから、1カ月で30%以上ということになる。 金券の買い取り行為に違法性はなく、通常の金券ショップの業態とくくれなくもないため、このスキームを貸金業違反として決めつけて摘発することは難しい。そこで、今回は警察側も相当の警察資源を投入しながら、周到な計画の下で証拠を集め、綿密な法的ロジックを組み立てた上で逮捕に至ったものと思われる。 現在、同様の業者はネット上でも流行りつつあり、警察も時間との戦いに迫られながらの捜査を強いられたものと推察される』、「1万5000円を現金で借りて、翌月の給与日に2万円を金券で返済する、という図式になる。差額の5000円が金利だから、1カ月で30%以上ということになる。 金券の買い取り行為に違法性はなく、通常の金券ショップの業態とくくれなくもないため、このスキームを貸金業違反として決めつけて摘発することは難しい。そこで、今回は警察側も相当の警察資源を投入しながら、周到な計画の下で証拠を集め、綿密な法的ロジックを組み立てた上で逮捕に至ったものと思われる」、なるほど。
・『巨大化するヤミ金組織と暗号資産化で見えない収益の行方  警察がヤミ金の摘発に「本気」にならざるを得ない背景には、いくつもの理由がある。 まず一つ目が、ヤミ金の規模が大きくなっている点である。近年、暗躍するヤミ金の組織規模が大きくなっている。当然、被害規模も一段と巨額化しているはずだ。しかも、収益の相当額が暗号資産などを通してフィリピンなど海外の銀行口座に流出し、全容解明が困難となってきている。 そして、二つ目の点として挙げられるのが、ヤミ金が考え付くスキームの巧妙さである。背後には悪徳弁護士のネットワークの存在も囁かれている。一昔前のように、単純な高利貸しはなりをひそめ、一見してヤミ金とはわからないようなスキームで、摘発にも時間がかかるようになってきた。 つまり、ヤミ金被害は拡大しているのに、その実態が掴みにくい。こうした構図に業を煮やした警察は、ヤミ金摘発に力を入れるようになってきた。 このような警察とヤミ金の暗闘は、2018年頃から隆盛を誇るようになったヤミ金である「給与ファクタリング商法」の摘発に遡れる。 当時、肥大化した銀行カードローンは、杜撰な審査により数多くの返済困難者を発生させていた。社会でも銀行カードローンへの批判が強まり、慌てた全国銀行協会(全銀協)は2017年にカードローン審査の厳格化に向けた申し合わせを公表した。この自主規制により市場の膨張に急ブレーキがかかり、社会的な批判も沈静化していった。一方で、急な信用収縮は銀行カードローン市場からの借入困難者を発生させる事態を招いた。 こうした借入困難者の新たな受け皿として成長した市場が「給与ファクタリング商法」と呼ばれるヤミ金であった。国民生活センターに寄せられた事例を1つ見てみよう。  ある男性は子どもの医療費のために、自身の給与債権12万円をファクタリング業者に売却。手数料を差し引いた7万円を手にした。そして翌月の給料日に12万円を銀行振り込みするという契約であった。 これを貸金として考えると、7万円を借り入れて、翌月に12万円を返済。たった1カ月で利息は5万円ということになる。ところが、業者側の言い分としては「給与を債権として買い取っているので、金銭貸借ではない。したがって、差額の5万円は手数料であり、利息ではない」ということになる。) 当時、「ファクタリング業を偽装した新種のヤミ金」と批判されつつも、利息制限法を含めた法的適用性を巡る議論に余地が残されていた。このため、警察もその摘発に慎重にならざるを得なかった。いくら実態がヤミ金そのものだからといって、法的根拠なくして逮捕はできないからだ。 こうして野放しで成長していった給与ファクタリング問題が社会でもクローズアップされるようになった頃、ようやく重い腰を上げた金融庁は2020年3月にノンアクションレターを通して、このスキームが貸金業に当たるとの見解を示した。これにより、法的な根拠を得た警察は一斉に給与ファクタリング業者の摘発を進めたのだ。 警察が動き出したことに加えて、コロナショックが始まり、資金需要が大きく落ち込む局面でもあったことから、給与ファクタリング業者の多くは市場からの撤退を進めた。 しかしながら、経済活動の正常化に伴い、今度は給与ファクタリングのスキームを発展させた「後払い現金化商法」というヤミ金が跋扈し始める。 筆者がネット上で新たに出店した後払い現金化業者の屋号や所在地を調べたところ、給与ファクタリング業者時代と同一であった事例をいくつも確認できた』、「借入困難者の新たな受け皿として成長した市場が「給与ファクタリング商法」と呼ばれるヤミ金であった。国民生活センターに寄せられた事例を1つ見てみよう。  ある男性は子どもの医療費のために、自身の給与債権12万円をファクタリング業者に売却。手数料を差し引いた7万円を手にした。そして翌月の給料日に12万円を銀行振り込みするという契約であった。 これを貸金として考えると、7万円を借り入れて、翌月に12万円を返済。たった1カ月で利息は5万円ということになる。ところが、業者側の言い分としては「給与を債権として買い取っているので、金銭貸借ではない。したがって、差額の5万円は手数料であり、利息ではない」ということになる・・・経済活動の正常化に伴い、今度は給与ファクタリングのスキームを発展させた「後払い現金化商法」というヤミ金が跋扈し始める。 筆者がネット上で新たに出店した後払い現金化業者の屋号や所在地を調べたところ、給与ファクタリング業者時代と同一であった事例をいくつも確認できた」、なるほど。
・『次々に誕生するヤミ金の新手口 警察がなかなか動けないのはなぜか?  後払い現金化のスキームを説明しよう。まずヤミ金が提供する無価値な商品やサービス(スマホで撮った風景写真、複写のアート画像など)を購入する申し込みを行う。ヤミ金は申込者(債務者)を与信判断した上で、無価値な商品やサービスを提供する。商品やサービスを受領した申込者は、口コミや評価点をネット上で記載することでヤミ金からキャッシュバックという名目で現金(「元本」に相当)を受け取る。 その後、申込者は次の給料日にヤミ金へ、購入した商品やサービスの代金(「元本」+「利息」に相当)を後払いするという仕組みである。 このように、さまざまに手口を変えながら拡大していくのが、ヤミ金の狡猾なところである。そして、この時も金融庁は法解釈の難しさから、後払い現金化商法が貸金業に相当するか否かの見解を示さなかった。その理由は後述する。) 金融庁が沈黙し、警察が動けない中、後払い現金化業者がネット上で堂々と営業を続ける日々が続いたが、2021年9月に北海道警は抜かりない捜査の末、後払い現金化商法でヤミ金を営んだとして、情報商材販売会社「OSGS」(札幌)の代表らを逮捕した。 報道によると、同社はネット上で「ゲーム攻略法」などの情報商材を後払いで販売し、そして購入者に最大5万円をキャッシュバックするという名目で顧客に送金し、後日、情報商材の購入代金として最大8万円を回収していた。さらに2022年9月には、警視庁生活経済課と広島県警の合同捜査本部は規模が一段と大きい別の現金買い取り業者を逮捕した。 ただし、摘発されたスキーム自体を見ると、この商法が貸金業に該当すると単純に見ることはできない。貸金業法第二条第一項三号には「物品の売買(中略)を業とする者がその取引に付随して行う」金銭授受は貸金業に当たらないと規定されている。つまり、摘発された販売業者が行った金銭の授受は情報商材という取引に伴って発生したものであり、貸金業に相当するとは必ずしも言えない。 しかし、これらの業者が扱っていた情報商材は、記事によると「ほぼ価値のない情報」であり、その金額である「最大8万円」という価格に合理性が認められなかった。結果として、そのスキームは貸金業に該当すると論定され、代表らは貸金業法及び出資法違反として逮捕された』、「これらの業者が扱っていた情報商材は、記事によると「ほぼ価値のない情報」であり、その金額である「最大8万円」という価格に合理性が認められなかった。結果として、そのスキームは貸金業に該当すると論定され、代表らは貸金業法及び出資法違反として逮捕された」、なるほど。
・『茨城県警が執念の摘発!「先払い買い取り商法」とは  警察による一連の後払い現金化商法の逮捕が続いた結果、今度は「先払い買い取り商法」と呼ばれる新たな業態が誕生し、瞬く間に広がっていった。後払い現金化商法が出現した時と同様に、先払い買い取り業者の大半は給与ファクタリングや後払い現金化からの転業組であったと容易に推測できる。 そのスキームについて説明する。資金需要者は買主であるヤミ金(多くは古物商として偽装)の指定するスマホやゲーム機器といった中古品や未使用品を売却する申し込みを行う。業者は申込者(売主)を与信判断した上で、その審査が通った申込者とのみ買い取り契約を交わす。) そして業者は商品を受領する前に、売主に代金(「元本」に相当)を支払う。その後、業者は売主に買い取り契約をキャンセルさせた上で、1か月後の給料日を期限に高額なキャンセル料(「元本」+「利息」に相当)をキャンセル申出者(資金需要者)から回収する。先払い買い取り商法のスキームは審査や回収の知識という点で給与ファクタリングと本質的に同一であり、その派生形と捉えられる。 身近な中古商品がネットを介して売買される取引は一般化しつつあり、多様な商品の買い取り業者が社会に存在する。こうした状況下で、金銭交付を目的とした取引と実需を伴う取引を線引きすることは極めて難しい。しかしながら、2023年1月に全国で初めて茨城県警が先払い買い取り業者を摘発した。利用者(被害者)は1万2800人、貸し付け利益は約4億円にのぼる。警察の執念ともいえる捜査の結果であろう。そして、多くのヤミ金は「先払い買い取り商法」から、今回神奈川県警が逮捕した「ギフト券買い取り商法」へ転業していった。 しかし、これらの摘発で一件落着かというと、そう甘くはない。ここまで見てきたように、新種のヤミ金はいずれも法解釈の難しいスキームである。したがって、「違法ではない」と法廷で執拗に争うヤミ金もいるのだ。たとえ敗訴となっても、裁判所が認めなかった要因を分析し、それを克服する新たなスキーム開発に活かすのかもしれない。 たとえば、給与ファクタリングが貸金業に該当すると金融庁が発表してから約1年後の2022年2月に、北海道警が給与ファクタリングを営んでいるとして「日本強運堂」という業者を逮捕した。 しかしながら、逮捕された経営者らは自分たちのスキームが金融庁の示した見解に当てはまらないと主張し、容疑を認めず最高裁まで争う事態に発展した。2023年2月、最終的に最高裁は日本強運堂のスキームが貸し付けに当たると判断を下した。ただし、この裁判ではファクタリング業者による「回収リスクの負担」という観点で金融庁の見解に反駁の余地が残されている可能性を示唆した』、「新種のヤミ金はいずれも法解釈の難しいスキームである。したがって、「違法ではない」と法廷で執拗に争うヤミ金もいるのだ。たとえ敗訴となっても、裁判所が認めなかった要因を分析し、それを克服する新たなスキーム開発に活かすのかもしれない。 たとえば、給与ファクタリングが貸金業に該当すると金融庁が発表してから約1年後の2022年2月に、北海道警が給与ファクタリングを営んでいるとして「日本強運堂」という業者を逮捕した。 しかしながら、逮捕された経営者らは自分たちのスキームが金融庁の示した見解に当てはまらないと主張し、容疑を認めず最高裁まで争う事態に発展した。2023年2月、最終的に最高裁は日本強運堂のスキームが貸し付けに当たると判断を下した」、なるほど。
・『警察がヤミ金摘発に本気になる本当の理由  そして、警察がヤミ金の摘発に「本気」にならざるを得ない三つ目の理由として、ヤミ金の借受人、つまり被害者が往々にして次に詐欺に加担し、今度は加害者となってしまうという傾向が見られる点が挙げられる。近年拡大して問題になっている闇バイトなどを束ねる犯罪集団と一般人との関係形成に、ヤミ金との接触が影響を及ぼしている可能性が事件などで散見されるようになってきた。ただし、その傾向はヤミ金の“業態(=手口)”により異なるのだ。この点については改めて解説する』、「ヤミ金の借受人、つまり被害者が往々にして次に詐欺に加担し、今度は加害者となってしまうという傾向が見られる点が挙げられる。近年拡大して問題になっている闇バイトなどを束ねる犯罪集団と一般人との関係形成に、ヤミ金との接触が影響を及ぼしている可能性が事件などで散見されるようになってきた。ただし、その傾向はヤミ金の“業態(=手口)”により異なるのだ」、「被害者が往々にして次に詐欺に加担し、今度は加害者となってしまうという傾向が見られる」とは奇妙キテレツだ。後日のもっと詳しい解説を待つとしよう。 
タグ:個人債務問題 (その4)(“日の丸ヤミ金”奨学金 若者から収奪する「日本学生支援機構」、若者が陥る不動産投資のワナ 「フラット35」の不正利用が相次ぐ【WBS】、「警察vs新手のヤミ金」仁義なき戦い ギフト券買い取り商法などの狡猾手口) 週刊金曜日「“日の丸ヤミ金”奨学金 若者から収奪する「日本学生支援機構」」 「支援機構の一括請求には違法性が疑われる。施行令5条5項には「支払能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠ったと認められるとき」にのみ一括請求できるとあるのに、じっさいは利用者の支払能力を調べることすらせず、一括請求を乱発している。払えない人から容赦なく貸しはがしている」、なるほど。 「宮本 (「しおり」本文の)79ページを見ますと、法的手続きでは長期にわたって滞納が解消しない場合には触れていますけれども、やっぱり「支払能力があるにもかかわらず」という文言はありません。どこかと思って探したら、資料編、103ページにその施行令5条5項が細かい字でちょちょっと4行書いてあるというのがすべてなんですね。私は、これは本当にひどいなと」、確かにひどい。 「一括請求問題が初めて世に問われたのは2013年。以来10年近くを経てようやく見えた小さな改善の兆しだった。もっとも何をどう改めるのか、具体的にはまだ明らかにされていない」、なんと長いこと放置していたものだ。今後の改定の動きを注視したい。 Yahooニュースが転載 テレ東BIZ「若者が陥る不動産投資のワナ 「フラット35」の不正利用が相次ぐ【WBS】」 「「投資用のローンではなく、住宅居住用の『フラット35』を使用してしまった。不動産会社とやり取りをしていて、投資用ローンで購入しているものだと思っていた」(佐藤さん)といいます・・・購入から1年後、佐藤さんの元に届いたのは、住宅金融支援機構からの居住確認でした・・・販売した不動産会社とは、連絡が取れなくなった」、これでは「投資物件」であることがバレてしまうし、「不動産会社とは、連絡が取れなくなった」のであれば、どうしようもない。 「4400万円で投資用に購入したという川崎市内のマンションは築24年(購入時)で、3LDK(約70平方メートル)です。 「(壁には)穴が複数開けられていて、ガラスの縁のところも割れている」(田中さん) 壁には多数の落書きが描かれていました。「ミストサウナ付き」と書いてあった浴室は、水回りも古いままです」、物件はひどいようだ。 「田中さんに物件を販売した不動産会社のオフィスを訪ねました。そこにあったのはレンタルオフィス。しかし、この不動産会社がいたことはないということでした」、これでは話にならない。「購入のために利用したのも、フラット35のローン。投資用に購入したため、田中さんの元にも一括返済の督促が来ました」、これでは確かに自己破産しか道がなさそうだ。 ダイヤモンド・オンライン 堂下浩氏による「「警察vs新手のヤミ金」仁義なき戦い、ギフト券買い取り商法などの狡猾手口」 「1万5000円を現金で借りて、翌月の給与日に2万円を金券で返済する、という図式になる。差額の5000円が金利だから、1カ月で30%以上ということになる。 金券の買い取り行為に違法性はなく、通常の金券ショップの業態とくくれなくもないため、このスキームを貸金業違反として決めつけて摘発することは難しい。そこで、今回は警察側も相当の警察資源を投入しながら、周到な計画の下で証拠を集め、綿密な法的ロジックを組み立てた上で逮捕に至ったものと思われる」、なるほど。 「借入困難者の新たな受け皿として成長した市場が「給与ファクタリング商法」と呼ばれるヤミ金であった。国民生活センターに寄せられた事例を1つ見てみよう。  ある男性は子どもの医療費のために、自身の給与債権12万円をファクタリング業者に売却。手数料を差し引いた7万円を手にした。そして翌月の給料日に12万円を銀行振り込みするという契約であった。 これを貸金として考えると、7万円を借り入れて、翌月に12万円を返済。たった1カ月で利息は5万円ということになる。ところが、業者側の言い分としては「給与を債権として買い取っているので、金銭貸借ではない。したがって、差額の5万円は手数料であり、利息ではない」ということになる・・・経済活動の正常化に伴い、今度は給与ファクタリングのスキームを発展させた「後払い現金化商法」というヤミ金が跋扈し始める。 筆者がネット上で新たに出店した後払い現金化業者の屋号や所在地を調べたところ、給与ファクタリング業者時代と同一であっ た事例をいくつも確認できた」、なるほど。 「これらの業者が扱っていた情報商材は、記事によると「ほぼ価値のない情報」であり、その金額である「最大8万円」という価格に合理性が認められなかった。結果として、そのスキームは貸金業に該当すると論定され、代表らは貸金業法及び出資法違反として逮捕された」、なるほど。 「新種のヤミ金はいずれも法解釈の難しいスキームである。したがって、「違法ではない」と法廷で執拗に争うヤミ金もいるのだ。たとえ敗訴となっても、裁判所が認めなかった要因を分析し、それを克服する新たなスキーム開発に活かすのかもしれない。 たとえば、給与ファクタリングが貸金業に該当すると金融庁が発表してから約1年後の2022年2月に、北海道警が給与ファクタリングを営んでいるとして「日本強運堂」という業者を逮捕した。 しかしながら、逮捕された経営者らは自分たちのスキームが金融庁の示した見解に当てはまらないと主張し、容疑を認めず最高裁まで争う事態に発展した。2023年2月、最終的に最高裁は日本強運堂のスキームが貸し付けに当たると判断を下した」、なるほど。 「ヤミ金の借受人、つまり被害者が往々にして次に詐欺に加担し、今度は加害者となってしまうという傾向が見られる点が挙げられる。近年拡大して問題になっている闇バイトなどを束ねる犯罪集団と一般人との関係形成に、ヤミ金との接触が影響を及ぼしている可能性が事件などで散見されるようになってきた。ただし、その傾向はヤミ金の“業態(=手口)”により異なるのだ」、「被害者が往々にして次に詐欺に加担し、今度は加害者となってしまうという傾向が見られる」とは奇妙キテレツだ。後日のもっと詳しい解説を待つとしよう。
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投資(商品販売・手法)(その4)(岸田内閣は「企業年金」をどう改革したらいいのか?、「天皇」林野vs「王子」中野、セゾン投信巡る愛憎劇 なぜ60歳会長は81歳会長に解任されたのか?) [金融]

投資(商品販売・手法)については、本年7月13日に取上げた。今日は、(その4)(岸田内閣は「企業年金」をどう改革したらいいのか?、「天皇」林野vs「王子」中野、セゾン投信巡る愛憎劇 なぜ60歳会長は81歳会長に解任されたのか?)である。

先ずは、本年10月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家の山崎 元氏による「岸田内閣は「企業年金」をどう改革したらいいのか?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330120
・『岸田内閣は、企業年金の改革へ乗り出す方針だという。政府は何を狙っているのか。現在出てきている改革案を実現したら何が起こるのか。そして、具体的に企業年金をどう改革したらいいのだろうか』、「運用」のプロの診断とは興味深そうだ。
・『企業年金の運用成績開示はDB(確定給付型)に効果あり  政府は企業年金の運用成績公開などを含む企業年金改革に乗り出す(日本経済新聞電子版「企業年金の運用成績公開へ 政府検討、予定利率上げ促す」、10月2日)。 公的年金(厚生年金)に上乗せする給付を目指す企業年金には、将来受け取る年金額が確定している確定給付型(以下「DB」)と、企業や社員の拠出額(積立額)が確定していて将来の年金受取額は加入者本人が選択した運用の結果による確定拠出型(DC)の2種類がある。 DBは企業年金基金という専門組織をつくって運用され、DCでは金融機関が提供する運営管理機関を通じて加入者本人が運用対象を選ぶ。どちらか一方を提供する会社もあるし、両方を併用して提供する会社もあれば、DBもDCもない企業もあるなど、さまざまだ。 政府は、何を狙っているのだろうか。) まず、DBにあっては、運用成績の相対比較を意識することを通じて、リスク資産への投資を増やすよう促したいのだと思われる。記事の見出しにある「予定利率」とは、年金制度設計上の積立金の想定利回りのことだ。予定利率を高くすると、同じ将来の給付に対して拠出すべき掛け金が少なくなるが、高い利回りを目指すために通常は株式などのリスク資産への投資を増やさなければならない。 一方、運用のリスクを最終的に負う企業の側では、DB年金の運用失敗による負担を避けたいと考えるため、長引く「ほぼゼロ金利」を背景に、予定利率はこれまで低下する傾向にあった。バブル崩壊を背景として、1990年代、2000年代に企業年金の損失負担に苦しんだ悪い記憶の影響もあって、企業年金では余計なリスクを取りたくないと考える企業が多かった。企業側に運用リスク負担があるDBを廃止ないしは縮小して、DCに移行する企業も少なくなかった。 多くの企業にとって、資産運用は本業ではない。企業年金でリスクを取りたくないという方針は経営判断として妥当だったといえるだろう』、「1990年代、2000年代に企業年金の損失負担に苦しんだ悪い記憶の影響もあって、企業年金では余計なリスクを取りたくないと考える企業が多かった。企業側に運用リスク負担があるDBを廃止ないしは縮小して、DCに移行する企業も少なくなかった。 多くの企業にとって、資産運用は本業ではない。企業年金でリスクを取りたくないという方針は経営判断として妥当だったといえるだろう」、なるほど。
・『運用成績が公開されると一体何が起こるのか?  では、ここでDBの企業年金基金ごとの運用成績が公開されて、加入者が横比較をすることができるようになると何が起こるだろうか。もちろん、マーケットの動向に左右されるのだが、予定利率を低く設定して安全第一で運営しているDB基金は、運用利回りが相対的に低くなって肩身の狭い思いをする公算が大きい。 早くても2、3年はかかるような時間軸の中でだが、DB企業年金基金の運用計画は比較的短期間のうちに相互に似たようなものになりながら、リスク資産への投資比率を高めることになりそうだ。 加入者は自分が加入する企業年金の運用利回りが他の基金に比べて低いと、不満に思うだろう。正しくはリスクまで考慮に入れて評価すべきだが、リターンの単純比較が注目されるはずだ。当該企業年金基金は、他の基金に合わせてリスク資産の組み入れ比率を上げる対応を取る場合が多いと予想される。 マーケットが不調な場合も「他の基金と同じくらい(悪い)なら言い訳ができる」と割り切れば、リスク資産を積み増すことに大きな抵抗はないのではないか。) DB年金の運用成績公開と、その分かりやすい提示は、大きな予算を使わず、かつ政府に直接的な責任が及ばない形でリスク資産積み増しの「成果」を得られる策になる可能性がある。年金はもともと大きな公的サポートを得ている制度なので、基金は情報公開に反対できる立場にない。分かりやすい情報公開を大々的に行うといいだろう。 母体企業の方針などでリスクを小さく抑えたい年金基金は、加入者向けに丁寧に説明したらいいだけのことだ』、「年金はもともと大きな公的サポートを得ている制度なので、基金は情報公開に反対できる立場にない。分かりやすい情報公開を大々的に行うといいだろう。 母体企業の方針などでリスクを小さく抑えたい年金基金は、加入者向けに丁寧に説明したらいいだけのことだ」、その通りだ。
・『DCで効果的なのは「デフォルトファンド」  DCでも、各企業の運営管理機関ごとにおける加入者の運用リターンの平均や分布状況、さらに全体の加入者のリターン分布を公表することは、情報提供として望ましいだろう。また、刺激を受けて運用に取り組む加入者がある程度出てくることは考えられる。 しかし、個々の加入者にとっては、自分の実名入りで「偏差値」に相当するものが公開されるわけではないし、何よりデータを見ることも、それを見て行動を起こすことも「面倒くさい」ので、DBの企業年金基金に対するほどの効果は期待できまい。 DCの場合は、運用開始時の初期設定状態(デフォルトファンド)について、リスクを取った状態のものからスタートすることが、行動経済学で言う「ナッジ」として有効であることが相当程度はっきりしている。 例えば、公的年金の基本ポートフォリオ(現在「国内株式25%、外国株式25%、国内債券25%、外国債券25%」の4資産均等)をインデックスファンドで作り、それを「デフォルトファンド」として企業型DCを運営するように義務づけるとしよう。そうすれば、「リスク資産に多く投資させて国民の資産を増やしたい」「日本株にもっと投資させたい」といった政府の目的が達成されるのではないだろうか。 もちろん、大前提としてDCの運用は加入者の自由であり、デフォルトファンドではなく、元本確保型資産100%でも、株式100%でも、加入者が自由に選択できることは確保されていなくてはならない。デフォルトファンドが常に絶対に望ましいとは誰も保証できないのだし、政府に最後の言い訳を用意するためにも、加入者における運用の自由は強調されるべきだ。それでも、デフォルトファンドに多くの加入者がとどまることが予想される。 成績公開とデフォルトファンドの両方をやればいいと思うが、より効果的なのはデフォルトファンドだろう』、「デフォルトファンドが常に絶対に望ましいとは誰も保証できないのだし、政府に最後の言い訳を用意するためにも、加入者における運用の自由は強調されるべきだ。それでも、デフォルトファンドに多くの加入者がとどまることが予想される。 成績公開とデフォルトファンドの両方をやればいいと思うが、より効果的なのはデフォルトファンドだろう」、なるほど。 
・『基金の集約と拡充、アセットオーナー活動も目的か?  さて、政府の目的は、単に国民の「貯蓄から投資へ」を一歩進めることだけではなさそうだ。 資産規模がせいぜい数百億円程度で、フルスペックの運用体制を持つには規模が小さいDB企業年金基金を集約して大きなものにしたいという思惑が見え隠れする。あるいは基金自体を集約しないまでも、運用を共通化するなどして、年金基金を「アセットオーナー」としてのスチュワードシップ活動(財産管理を任された者の責任を果たす活動)に取り組ませたいとの、「一見より高次元の」(もちろん皮肉だ!)目的もあるように推察される。基金が投資先企業と対話したり、ESG(環境・社会性・企業ガバナンス)投資に取り組んだりすることを期待しているようだ。 前述の日経の記事には、「投資先との建設的な対話を促す原則『スチュワードシップ・コード』を導入する年金基金は60程度にとどまっているのが実態だ」とあり、その背景として基金の人材難を挙げている。 基金は必要に応じて議決権行使に関心を持つべきだが、投資先との有効な対話を彼らに求めるのは「手段の割り当てが非効率的だ」と思われる。そのような本来手間のかかることを年金基金に担わせるのは余計だし、実際には、議決権行使アドバイス会社を使ってコストを掛けたり、世間の様子を見たりして、体裁を整えるだけに終わるだろう。 筆者がかつて関わった、運用資産数兆円レベルの年金基金にあっても、実質的に意味のある対話が企業とできるような体制には全くなかったし、そうした体制を真面目に作るのは運用の改善につながらない余計なコストであるように思われた』、「運用資産数兆円レベルの年金基金にあっても、実質的に意味のある対話が企業とできるような体制には全くなかったし、そうした体制を真面目に作るのは運用の改善につながらない余計なコストであるように思われた」、なるほど。
・『「ESG投資」は純粋な投資に劣後する  また、「ESG投資」が、純粋な投資と比較してリスク・リターンの特性において劣後する傾向があることは、データを見るまでもなく、論理的なレベルではっきりしている。 「E(環境)」「S(社会性)」「G(企業ガバナンス)」が投資評価の上で重要である(ただし、重要ではあるが重要なことの全てではない)ことは常識だが、これは基金に義務づけられている「普通の運用」の合理性の中で考慮されたらいいことだ。別途お金を払ってESG運用に取り組んだり、スタッフを確保して手間とコストを掛けたりすることは、合理的な年金基金運営ではない。 インデックス運用の広がりとともに、年金運用は、ここをターゲットとする業者にとってもうけにくい世界になった。そこで、「企業との対話」や「ESG活動」をアセットオーナーの義務であるかのように仕立てて、新たな商売の種にしようという意図が働いているように見えるが、年金基金はその手に乗らない方がいい。 だが、一方で、「新たな仕事が欲しい」事情は年金基金でも同様の面があるので、気を付けないと年金基金も取り込まれる可能性がある。彼らが余計な仕事をつくらないように、企業年金にあっては母体企業が、公的年金にあっては国民が、しっかりと監視する必要がある。 この点について、政府がどのような考えと立場なのか判然としないが、年金関連業界のビジネスの提灯(ちょうちん)持ちをして年金運用を非効率化するよりも、年金の制度と運用を徹底的に効率化することに取り組んでほしい』、「「企業との対話」や「ESG活動」をアセットオーナーの義務であるかのように仕立てて、新たな商売の種にしようという意図が働いているように見えるが、年金基金はその手に乗らない方がいい。 だが、一方で、「新たな仕事が欲しい」事情は年金基金でも同様の面があるので、気を付けないと年金基金も取り込まれる可能性がある。彼らが余計な仕事をつくらないように、企業年金にあっては母体企業が、公的年金にあっては国民が、しっかりと監視する必要がある」、その通りだ。
・『将来は企業年金を解体へ? 「公的年金+iDeCo」に集約はどうか  企業によっては、DBとDCが併用されるような現在の企業年金制度は、明らかに非効率的だし、複雑に過ぎる。そもそも、税金で大きくサポートする(年金掛け金の所得控除は加入者にメリットの大きい免税措置だ)年金制度にあって、加入者が所属する企業や企業集団によって異なる大きさのメリットを受け取るような制度は公平でない。 また、資産運用は大半の企業にとって専門分野ではないので、企業は年金運用でリスクを抱え込まないことが経営判断として合理的だ。 加えて、多くの年金基金があること、運用に不向きな人材が運用に取り組まされていることなど、制度としての無駄と不合理が大きい。 企業が社員に対して、年金の形で報いることがあってもいいだろうし、その規模において企業ごとに差が生じることは認めてもいいだろう。だが、そのためにDB、DC双方において無駄な組織をたくさんつくったり、余計なコストや手間をかけたりすることは制度設計として利口ではない。 理想的な整理の方向としては、国民の年金は、「公的年金+個人型DC(iDeCo)」に集約するといいと思う。企業や役所が年金の形で一定額まで拠出できるようにするといいし、自営業者もそれに見合う拠出ができるようにするとフェアだ。 そして、DCの運営管理機関は個人が選ぶ。全て個人単位が基本だ。日本の社会保障をフェアに整理するためには、現在、企業単位や世帯単位になっているものを個人単位に整理し直す必要がある。その中で、国はDCに必要なファンドとデフォルトファンドを指定するといい。 DB年金は企業にとって合理的でないし、基金の組織も要らない。まして、DCの運営管理機関が企業や企業グループごとにあって、金融機関に取り込まれていて、選択可能な運用対象商品に差があるような状況は無駄かつ不公平だ。 こうした方向に持って行く上では、公務員の共済年金の3階(職域加算)部分を個人型確定拠出年金にしなかったことが悔やまれる。まだ大した金額になっていないはずなので、DCに振り替えてしまってはどうだろうか。 現実には、企業のDBもDCも消滅させるまでのプロセスは長い道のりだろうし、その間をより合理的なものとして運営していく知恵と根気が要る』、「理想的な整理の方向としては、国民の年金は、「公的年金+個人型DC(iDeCo)」に集約するといいと思う。企業や役所が年金の形で一定額まで拠出できるようにするといいし、自営業者もそれに見合う拠出ができるようにするとフェアだ。 そして、DCの運営管理機関は個人が選ぶ。全て個人単位が基本だ。日本の社会保障をフェアに整理するためには、現在、企業単位や世帯単位になっているものを個人単位に整理し直す必要がある。その中で、国はDCに必要なファンドとデフォルトファンドを指定するといい・・・こうした方向に持って行く上では、公務員の共済年金の3階(職域加算)部分を個人型確定拠出年金にしなかったことが悔やまれる。まだ大した金額になっていないはずなので、DCに振り替えてしまってはどうだろうか。 現実には、企業のDBもDCも消滅させるまでのプロセスは長い道のりだろうし、その間をより合理的なものとして運営していく知恵と根気が要る」、なるほど。
・『現実のDB、DCの改善策とは?  DBにあっては、組織的コストの効率性を考えると、基金の集約や運用機能の共同化があってもいいだろう。ただし、こと運用だけなら、政府が非効率的だと考えている数十億円から数百億円規模の企業年金基金にあっても、「公的年金の運用をしているGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)とほぼ同等、あるいは少し上回る効率の運用」は十分可能だ。 実現している基金もある。基本ポートフォリオ通りにインデックスファンドを買うのではない、多少の工夫が必要なのだが、考えてみてほしい。「どうしたらいいと思いますか」と総幹事会社(信託銀行または生命保険会社)に電話をかけるような常務理事・運用執行理事には絶対に無理だと思うが、そういう人が多いだろうから、今回、答えは書かない。 もっとも、運用の効率化は可能だが、長期的には制度としての効率性を考える必要があるだろう。 企業型DCは将来、個人型DC(iDeCo)に統合されるのが公平で合理的だと思うが、こちらもしばらくの間は残るだろう。 企業型DCは、特に導入が早かった企業にあって、信託報酬率の高い、加入者に不利益な商品ラインナップが残っていたり、加入者教育も含めて丸ごと取引先の金融機関グループに取り込まれていたりするケースがあって、「明らかに問題だ」といえる場合が少なくない。 (1)手始めに運営管理機関の金融機関グループ以外の専門家による加入者教育を行う、(2)商品に、デフォルトファンド用のバランスファンド(とりあえずGPIF型4資産均等か)、国内株式、外国株式、全世界株式のそれぞれのインデックスファンドで信託報酬率が年率0.1%未満のものを追加する、といった辺りから改善に着手するといいだろう。場合によっては、政府の介入があってもいい。 公的年金にも改善の余地があるが、企業年金には母体企業の経営的な意思で判断・実行できる改善策が少なくない。そして企業年金の改善は、企業側と加入者側双方のメリットになる。道のりは長いが、改善を目指す価値がある』、「企業年金には母体企業の経営的な意思で判断・実行できる改善策が少なくない。そして企業年金の改善は、企業側と加入者側双方のメリットになる。道のりは長いが、改善を目指す価値がある」、その通りだ。

次に、10月15日付け東洋経済オンライン「「天皇」林野vs「王子」中野、セゾン投信巡る愛憎劇 なぜ60歳会長は81歳会長に解任されたのか?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/705420
・『6月28日(水)、セゾン投信の株主総会で会長職を実質的に解任された、中野晴啓氏(60)。9月に新しい資産運用会社「なかのアセットマネジメント」を設立、日本株とグローバル株のアクティブファンド2本を主力とし、年内から年明けにかけて事業を開始したい意向だ。 もっとも、想定していたより、立ち上げは苦労しているようだ。資本金は当初12億円の予定で、まずは中野氏と、セゾン投信の元広報部長が各2500万円の計5000万円で会社を立ち上げた。その後は増資の形で、セゾン投信内部の人間2人と個人支援者10人から1.5億円を集めて2億円。さらに、銀行や保険など金融機関5社からも計10億円を募り、計12億円というのが当初の算段である。 2024年からスタートする新NISA(少額投資非課税制度)の仕組みや、お勧めの投資信託(ファンド)、さらにはセゾン投信をはじめ投信会社の最新動向まで、資産運用に絡む幅広いテーマを追った』、興味深そうだ。
・『カギ握るファンドマネージャーの移籍  新会社設立が思ったほどスムーズに進んでいない原因は2つある。 まず人の問題。注目されるのは、セゾン投信にいる人間で新会社の出資にも関わっている、現役のファンドマネージャー。日本株ファンドの運用の成功はこの人物の動向いかんなのは間違いない。グローバル株ファンドは海外運用会社への外部委託で補うつもりでいる。 ほかにメガバンク出身者も社外取締役に挙がっていたり、中野氏が長年コンビを組んで頼っていたアドバイザーも設立準備を手伝ったりしているもよう。なかのアセット側にしても、あまり露骨に引き抜けば、古巣からの訴訟リスクもまったくないとはいえず、慎重に事を進めていると聞く。 またお金の問題もある。新会社のスキームを描くにあたり、出資する金融機関にとっては、議決権のある株かない株かが焦点になっていた。中野氏は当初、増資で議決権のない株を与えようとしていたが、一部から反発の声があがったため、議決権を与えて資本調達を優先するもよう。株主が分散すれば、経営判断に時間を要することもありえよう。 新会社の拠点は、破綻した旧山一証券の兜町本社があった、兜町第一平和ビル(東京都中央区)。中野氏は個人のフェイスブックを通じ、運用からバックオフィスまで、新たなスタッフを募集しており、社員は15人程度で始まる見込み。バックオフィスに必要なシステムは日本資産運用基盤グループ(JAMP)に外注し、莫大とされるIT投資を最小限に抑える。金融庁からの認可も早く下りそうだが、年内はまだまだ紆余曲折があるだろう。 そもそもセゾン投信、いやクレディセゾンを含めたグループの”お家騒動”は、どんな経緯で起こったのか。 騒動の発端は4月5日(水)11時過ぎ。 中野氏が大株主のクレディセゾン(保有比率60%、残り40%は日本郵便)の林野宏会長兼CEO(81)から、サンシャイン60ビル52階のCEO執務室に呼び出され、セゾン投信会長を退任するよう告げられたことだった。林野氏といえば、クレディセゾンの”天皇”ともいえる権力者である。個人的に作成された非公式の議事録には、以下のやり取りが記されている(一部を抜粋。読みやすいよう補足してある)。 「今日はあなたに伝えなければならないことがある。セゾン投信の会長を退任してほしい。 (セゾン投信の運用資産残高は6000億円だが)もうすぐ5兆円にするんだ。あなたが16年間やってきた全国回って集めるやり方はもう通用しない。15万口座といったって、セゾンカードの3500万口座に比べるまでもなく、失敗だったんだよ。 これからは証券や銀行とも組んで、大々的にビジネスを拡大させていく。これまでのやり方を変えられない人間はダメなんだ。あなたには変えられないのは、ずっと見てきて明らかだ」 そう伝えた後、林野氏は中野氏に、セゾン文化財団副理事長のポストを用意してある旨を告げた。次の理事長含みの副理事長である。 セゾン文化財団と言えば、林野氏も尊敬し、セゾングループ代表だった故・堤清二氏(2013年没)が設立した財団である。そのトップに就くには、当然、堤家の了承を得なければならない。財団理事長につけば報酬が大きく減ることを考え、別にセゾン投信から差額を補填し、会長当時と同じ年収1700万円程度の水準を出す条件まで提示したという。その代わり、セゾン投信では経営から外れ、従来のように全国を講演する伝道師の役割をこなすよう求められた。話し合いの時間は15分ほどだった』、「騒動の発端は4月5日(水)・・・中野氏が大株主のクレディセゾン・・・の林野宏会長兼CEO(81)から・・・セゾン投信会長を退任するよう告げられたことだった。林野氏といえば、クレディセゾンの”天皇”ともいえる権力者・・・林野氏は中野氏に、セゾン文化財団副理事長のポストを用意してある旨を告げた。次の理事長含みの副理事長である・・・セゾン投信では経営から外れ、従来のように全国を講演する伝道師の役割をこなすよう求められた」、なるほど。
・『メディアにあふれた「積立王子」への同情  その後5月のゴールデンウィークから中旬にかけて、林野氏と、さらにセゾン投信の園部鷹博社長から、電話やSNSで中野氏に3度意思確認を求めたが、中野氏が明確に返答することはなかったようだ。結果的に退任は黙認のような形となった。長く顧客本位の長期投資を説き、投資家から「積立王子」と呼ばれてきた中野氏のプライドは、大きく傷ついただろう。 以降、中野氏は金融庁の元長官2人、さわかみ投信創業者の澤上篤人氏など、金融界の有力者たちの元を回っていた。余談だが、中野氏には金融庁からの信任も厚かった。 「セゾン投信、中野会長が退任経営路線の対立で更迭か」━━。 共同通信のスクープが躍ったのは、6月1日(木)のことだ。前日、5月31日(水)のセゾン投信の取締役会で、会長退任の人事が決定されたことを受けての報道だった。結論は覆ることなく、前述通り、同月28日(水)の定時株主総会で退任が決まった。さらには30日(金)付で内定していた投資信託協会の副会長職の続投も反故になった。 夏にかけては、新聞から雑誌、WEBを含め、怒涛のような「中野氏退任」関連の記事が世にあふれる。全国紙の編集委員や著名なファイナンシャルプランナーをはじめ、メディアや資産運用業界に中野氏のシンパは多い。中野氏は記者会見こそ開かなかったものの、事あるごとに単独インタビューに応じていったのである。世の風潮はクビになった中野氏への同情と、”斬った”クレディセゾンへのバッシングの一色になった。) 業界内でもHCアセットマネジメントの森本紀行社長のように、中野氏をブログで応援、「業界全体で中野氏を応援しなければならない」と、公然と支援する経営者も出てきた。 7月27日(木)夜には、「中野晴啓さんに感謝して応援する会」が兜町で開催。オンラインも含め、定員100人に達するほど、多くの業界関係者が集まった。「感謝して応援する会」は、9月14日(木)に関西編が神戸(兵庫県)でも開かれた。中野氏の第二の人生、そして次の攻勢に向けて、いい景気付けになったに違いない。 今改めて、林野氏と中野氏の衝突を振り返ると、感情的なもつれに加え、いずれかの時点で2人の決裂は避けられなかったのがわかる。 セゾン投信のサイトでは、中野会長が退任した株主総会の6月28日(水)当日、公式サイトを更新。先行した退任報道を受けて顧客の中に、「経営体制や運用不安への不安などをお感じになられ(中略)、長期投資の営みを止めてしまったお客さまが一部いらっしゃる」ことを認めた。しかしその一方、①顧客本位の経営理念、②主力の3つのファンド、③直販中心の販売経路などについて、いずれも従来と変わらないことを強調。引き続きファンドを持ち続けることを投資家に訴えたのである。 実際に「報道があった6月こそ、資金の流入は鈍ったが、プラスは維持。それも7月から通常に戻った」(園部社長)という。 特に両者が対立したのは販売方針だ。親会社の意向が反映されがちな大手証券やメガバンク系の運用会社と違い、セゾン投信は3本のファンド「セゾン・グローバルバランスファンド」「セゾン資産形成の達人ファンド」「セゾン共創日本ファンド」を、自らが直販することにこだわった。ただ現実には中野時代から、すでにネット証券などへも販路は広げている。 むしろ大株主のクレディセゾンとしては、システム面を中心に、3500万人いるセゾンカードの会員をもっとセゾン投信に取り込むような政策を進めてほしい、とかねて促していた。今やネット証券では、若い世代を軸にクレジットカードで投信を積み立てる「クレカ積立」がブームになっており、それに伴ってポイント還元をあてにする”ポイ活”ユーザーなども少なくないからからだ。 ところが現状、セゾンカードを持っている顧客は、クレカ積立で投信を積み立てることができない。腰の重かったセゾン投信も遅ればせながらシステム投資に踏み切った結果、ようやく2024年1月からクレカ積立を含め、口座開設など一連の手続きオンラインで完結できるようになる見込みだ』、「「セゾン投信、中野会長が退任経営路線の対立で更迭か」━━。 共同通信のスクープが躍ったのは、6月1日(木)のことだ。前日、5月31日(水)のセゾン投信の取締役会で、会長退任の人事が決定されたことを受けての報道だった・・・世の風潮はクビになった中野氏への同情と、”斬った”クレディセゾンへのバッシングの一色になった・・・7月27日(木)夜には、「中野晴啓さんに感謝して応援する会」が兜町で開催。オンラインも含め、定員100人に達するほど、多くの業界関係者が集まった。「感謝して応援する会」は、9月14日(木)に関西編が神戸(兵庫県)でも開かれた・・・大株主のクレディセゾンとしては、システム面を中心に、3500万人いるセゾンカードの会員をもっとセゾン投信に取り込むような政策を進めてほしい、とかねて促していた。今やネット証券では、若い世代を軸にクレジットカードで投信を積み立てる「クレカ積立」がブームになっており、それに伴ってポイント還元をあてにする”ポイ活”ユーザーなども少なくないからからだ・・・ネット証券では、若い世代を軸にクレジットカードで投信を積み立てる「クレカ積立」がブームになっており、それに伴ってポイント還元をあてにする”ポイ活”ユーザーなども少なくないからからだ。 ところが現状、セゾンカードを持っている顧客は、クレカ積立で投信を積み立てることができない。腰の重かったセゾン投信も遅ればせながらシステム投資に踏み切った結果、ようやく2024年1月からクレカ積立を含め、口座開設など一連の手続きオンラインで完結できるようになる見込みだ」、なるほど。
・『「カードで口座を」は自分の仕事ではない  一方、周囲からは、「中野氏の講演を聞きに来る客は同じ顔ぶれが多い。新規の人は少なくなった」(セゾン投信幹部)との声も漏れるようになっていた。 従来のやり方にこだわり、クレディセゾン側からややもすると時代遅れと指摘されていた中野氏だが、反論はあった。「『とにかくカードで口座を作ってください。そうすれば1000ポイントあげます』は僕らの仕事じゃない。積極的ではなかったが、やらないとはいってない。僕らは(運用会社という)製造業者なんだから」(中野氏)。 確かに、クリック1つで開設・解約できるような今風の客は、中野氏が顔を突き合わせてきたようなロイヤリティの高い”太客”とは、相通じないものなのかもしれない。クレディセゾンにとっては、競合する楽天カードを扱う楽天証券をセゾン投信が販売先に選んだのも、面白くなかった。 加えて、大株主のクレディセゾンや現経営陣から見れば、会長でありながら経営に深く関与せず、講演で飛び回る中野氏には、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の面で不満もあったようだ。忙しい中野氏が社内を把握し切れず、現場で摩擦が起こったこともなくはなかった。) 少しずつ溝が深まっていった両者。いつしか親会社は「新しいビジネスモデルには経営体制も刷新するほうがいい」(水野克己・クレディセゾン社長)との結論に至ったのである。 思い起こせば、新卒で旧西武クレジットに入社後、一時はセゾングループ内でほされていた中野氏を引っ張り出し、2006年のセゾン投信設立で全面的に協力したのは、当時の林野氏である。林野氏は中野氏からの手紙を読み、「面白い」と感じ、すぐ本人に電話。「顧客本位」「長期投資」の考え方に共鳴し、セゾン投信による5回もの増資の場面も後押しした。 それから途中で小さな食い違いはあっても、決定的な喧嘩は回避してきたつもりだった』、「確かに、クリック1つで開設・解約できるような今風の客は、中野氏が顔を突き合わせてきたようなロイヤリティの高い”太客”とは、相通じないものなのかもしれない。クレディセゾンにとっては、競合する楽天カードを扱う楽天証券をセゾン投信が販売先に選んだのも、面白くなかった。 加えて、大株主のクレディセゾンや現経営陣から見れば、会長でありながら経営に深く関与せず、講演で飛び回る中野氏には、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の面で不満もあったようだ・・・新卒で旧西武クレジットに入社後、一時はセゾングループ内でほされていた中野氏を引っ張り出し、2006年のセゾン投信設立で全面的に協力したのは、当時の林野氏である。林野氏は中野氏からの手紙を読み、「面白い」と感じ、すぐ本人に電話。「顧客本位」「長期投資」の考え方に共鳴し、セゾン投信による5回もの増資の場面も後押しした」、「林野氏」は「中野氏」にとって、本来は引き上げてくれた恩人だが、「中野氏」は運用業界でもてはやされやや不遜になっていたようだ。
・『将来、セゾン投信の売却はありうるか?  ゼロから運用資産6000億円以上、顧客数15万口座までセゾン投信を成長させたのは、紛れもなく中野氏の経営手腕である。それも一歩ずつじっくりとした歩みで、単独黒字には8年間、累損一掃までには10年間以上もかかったほど。確かに林野、中野の両氏は、ある時点まで同じ方向を向いていたはずである。 実は取締役会での退任決定前、中野氏はクレディセゾンの持つセゾン投信株の売却相手を探していたふしがある。セゾン投信のバリュエーション(企業価値評価)は推定で数百億円台。今は無理でも、将来のクレディセゾンの経営陣からすれば、セゾン投信の売却がまったく絵空事とはいい切れまい。 いずれにしても一連の退任劇は残念でならない。今回は林野氏にも取材を申し込んだものの、残念ながら実現しなかった。 2人が再び元のサヤに戻るのは難しいだろう。来るべく新NISAの時代、セゾン投信、なかのアセットともに、健全なる競争でともに発展していってもらいたいものだ』、「来るべく新NISAの時代、セゾン投信、なかのアセットともに、健全なる競争でともに発展していってもらいたいものだ」、同感である。
タグ:「来るべく新NISAの時代、セゾン投信、なかのアセットともに、健全なる競争でともに発展していってもらいたいものだ」、同感である。 ・・・新卒で旧西武クレジットに入社後、一時はセゾングループ内でほされていた中野氏を引っ張り出し、2006年のセゾン投信設立で全面的に協力したのは、当時の林野氏である。林野氏は中野氏からの手紙を読み、「面白い」と感じ、すぐ本人に電話。「顧客本位」「長期投資」の考え方に共鳴し、セゾン投信による5回もの増資の場面も後押しした」、「林野氏」は「中野氏」にとって、本来は引き上げてくれた恩人だが、「中野氏」は運用業界でもてはやされやや不遜になっていたようだ。 「確かに、クリック1つで開設・解約できるような今風の客は、中野氏が顔を突き合わせてきたようなロイヤリティの高い”太客”とは、相通じないものなのかもしれない。クレディセゾンにとっては、競合する楽天カードを扱う楽天証券をセゾン投信が販売先に選んだのも、面白くなかった。 加えて、大株主のクレディセゾンや現経営陣から見れば、会長でありながら経営に深く関与せず、講演で飛び回る中野氏には、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の面で不満もあったようだ 腰の重かったセゾン投信も遅ればせながらシステム投資に踏み切った結果、ようやく2024年1月からクレカ積立を含め、口座開設など一連の手続きオンラインで完結できるようになる見込みだ」、なるほど。 今やネット証券では、若い世代を軸にクレジットカードで投信を積み立てる「クレカ積立」がブームになっており、それに伴ってポイント還元をあてにする”ポイ活”ユーザーなども少なくないからからだ・・・ネット証券では、若い世代を軸にクレジットカードで投信を積み立てる「クレカ積立」がブームになっており、それに伴ってポイント還元をあてにする”ポイ活”ユーザーなども少なくないからからだ。 ところが現状、セゾンカードを持っている顧客は、クレカ積立で投信を積み立てることができない。 世の風潮はクビになった中野氏への同情と、”斬った”クレディセゾンへのバッシングの一色になった・・・7月27日(木)夜には、「中野晴啓さんに感謝して応援する会」が兜町で開催。オンラインも含め、定員100人に達するほど、多くの業界関係者が集まった。「感謝して応援する会」は、9月14日(木)に関西編が神戸(兵庫県)でも開かれた・・・大株主のクレディセゾンとしては、システム面を中心に、3500万人いるセゾンカードの会員をもっとセゾン投信に取り込むような政策を進めてほしい、とかねて促していた。 「「セゾン投信、中野会長が退任経営路線の対立で更迭か」━━。 共同通信のスクープが躍ったのは、6月1日(木)のことだ。前日、5月31日(水)のセゾン投信の取締役会で、会長退任の人事が決定されたことを受けての報道だった・・・世の風潮はクビになった中野氏への同情と、”斬った”クレディセゾンへのバッシングの一色になった・・・ 「騒動の発端は4月5日(水)・・・中野氏が大株主のクレディセゾン・・・の林野宏会長兼CEO(81)から・・・セゾン投信会長を退任するよう告げられたことだった。林野氏といえば、クレディセゾンの”天皇”ともいえる権力者・・・林野氏は中野氏に、セゾン文化財団副理事長のポストを用意してある旨を告げた。次の理事長含みの副理事長である・・・セゾン投信では経営から外れ、従来のように全国を講演する伝道師の役割をこなすよう求められた」、なるほど。 東洋経済オンライン「「天皇」林野vs「王子」中野、セゾン投信巡る愛憎劇 なぜ60歳会長は81歳会長に解任されたのか?」 「企業年金には母体企業の経営的な意思で判断・実行できる改善策が少なくない。そして企業年金の改善は、企業側と加入者側双方のメリットになる。道のりは長いが、改善を目指す価値がある」、その通りだ。 ・・・こうした方向に持って行く上では、公務員の共済年金の3階(職域加算)部分を個人型確定拠出年金にしなかったことが悔やまれる。まだ大した金額になっていないはずなので、DCに振り替えてしまってはどうだろうか。 現実には、企業のDBもDCも消滅させるまでのプロセスは長い道のりだろうし、その間をより合理的なものとして運営していく知恵と根気が要る」、なるほど。 「理想的な整理の方向としては、国民の年金は、「公的年金+個人型DC(iDeCo)」に集約するといいと思う。企業や役所が年金の形で一定額まで拠出できるようにするといいし、自営業者もそれに見合う拠出ができるようにするとフェアだ。 そして、DCの運営管理機関は個人が選ぶ。全て個人単位が基本だ。日本の社会保障をフェアに整理するためには、現在、企業単位や世帯単位になっているものを個人単位に整理し直す必要がある。その中で、国はDCに必要なファンドとデフォルトファンドを指定するといい 「「企業との対話」や「ESG活動」をアセットオーナーの義務であるかのように仕立てて、新たな商売の種にしようという意図が働いているように見えるが、年金基金はその手に乗らない方がいい。 だが、一方で、「新たな仕事が欲しい」事情は年金基金でも同様の面があるので、気を付けないと年金基金も取り込まれる可能性がある。彼らが余計な仕事をつくらないように、企業年金にあっては母体企業が、公的年金にあっては国民が、しっかりと監視する必要がある」、その通りだ。 「運用資産数兆円レベルの年金基金にあっても、実質的に意味のある対話が企業とできるような体制には全くなかったし、そうした体制を真面目に作るのは運用の改善につながらない余計なコストであるように思われた」、なるほど。 (その4)(岸田内閣は「企業年金」をどう改革したらいいのか?、「天皇」林野vs「王子」中野、セゾン投信巡る愛憎劇 なぜ60歳会長は81歳会長に解任されたのか?) 山崎 元氏による「岸田内閣は「企業年金」をどう改革したらいいのか?」 「1990年代、2000年代に企業年金の損失負担に苦しんだ悪い記憶の影響もあって、企業年金では余計なリスクを取りたくないと考える企業が多かった。企業側に運用リスク負担があるDBを廃止ないしは縮小して、DCに移行する企業も少なくなかった。 多くの企業にとって、資産運用は本業ではない。企業年金でリスクを取りたくないという方針は経営判断として妥当だったといえるだろう」、なるほど。 「運用」のプロの診断とは興味深そうだ。 「デフォルトファンドが常に絶対に望ましいとは誰も保証できないのだし、政府に最後の言い訳を用意するためにも、加入者における運用の自由は強調されるべきだ。それでも、デフォルトファンドに多くの加入者がとどまることが予想される。 成績公開とデフォルトファンドの両方をやればいいと思うが、より効果的なのはデフォルトファンドだろう」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン 「年金はもともと大きな公的サポートを得ている制度なので、基金は情報公開に反対できる立場にない。分かりやすい情報公開を大々的に行うといいだろう。 母体企業の方針などでリスクを小さく抑えたい年金基金は、加入者向けに丁寧に説明したらいいだけのことだ」、その通りだ。 投資(商品販売・手法)
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金融業界(その19)(ドル建て債権の“逆ざや”が銀行を襲う 損切りもできない悪循環に(編集部)、預かり資産は652兆円…日本カストディ銀行前社長の不正とは) [金融]

金融業界については、本年6月12日に取上げた。今日は、(その19)(ドル建て債権の“逆ざや”が銀行を襲う 損切りもできない悪循環に(編集部)、預かり資産は652兆円…日本カストディ銀行前社長の不正とは)である。

先ずは、本年6月16日付けエコノミストOnline「ドル建て債権の“逆ざや”が銀行を襲う 損切りもできない悪循環に(編集部)」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20230704/se1/00m/020/060000c
・『新型コロナウイルス禍がようやく収束に向かい、経済活動に明るさが見え始めた矢先。銀行業界を大きなショックが襲っている。外国債券を中心とした保有債券に多額の含み損が生じているのだ。 「有価証券運用について、もう少し、うまくやる余地はあったと思うのですが……」。地銀などに資産運用を助言する和キャピタル(東京都)の伊藤彰一専務取締役は首をかしげる。 「外債ショック」。こうした表現が当てはまるほど、2023年3月期の銀行決算では、保有する外債の価格が下落し、含み損を抱えたり、損失処理をする内容が目立った。各社の決算資料(単体)を分析すると、外国証券を含む「その他の証券」(株式や国債、社債などの債券以外)の項目では、3メガバンクでは三菱UFJ銀行が8569億円、みずほ銀行が6676億円、三井住友銀行が3961億円の含み損を抱えていた。 また、地銀では、山陰合同銀行(島根県)808億円▽横浜銀行(神奈川県)671億円▽第四北越銀行(新潟県)551億円▽南都銀行(奈良県)450億円▽肥後銀行(熊本県)395億円──の順で含み損が大きかった。 背景には、23年3月期に米国など海外で進んだ急激な金利上昇の影響がある。金利が上昇すると債券価格は下落するため、外債を保有していた銀行は含み損を抱えることになる。多くの金融機関は、これまでの資産運用で米国債について、比較的安定した資産として保有額を増やしてきていたが、収益源を金利上昇が直撃した。 なぜ、国内の銀行はそれほど外債を持っていたのか。要因の一つには、本業の顧客向けサービスで利益が上げられなくなっている現状がある。顧客への貸し出しは、日銀の低金利政策や銀行同士の金利引き下げ競争で利回り低下が続く。そこで、各銀行は収益向上を求めて有価証券運用に注力してきた。地銀の有価証券保有残高は、00年代前半のは50兆円台からじわじわと増加し、14年度には100兆円近くまで膨らんだ(図)』、「外国証券を含む「その他の証券」(株式や国債、社債などの債券以外)の項目では、3メガバンクでは三菱UFJ銀行が8569億円、みずほ銀行が6676億円、三井住友銀行が3961億円の含み損を抱えていた。 また、地銀では、山陰合同銀行(島根県)808億円、横浜銀行(神奈川県)671億円、第四北越銀行(新潟県)551億円、南都銀行(奈良県)450億円、肥後銀行(熊本県)395億円──の順で含み損が大きかった」、「顧客への貸し出しは、日銀の低金利政策や銀行同士の金利引き下げ競争で利回り低下が続く。そこで、各銀行は収益向上を求めて有価証券運用に注力してきた。地銀の有価証券保有残高は、00年代前半のは50兆円台からじわじわと増加し、14年度には100兆円近くまで膨らんだ」、なるほど。
・『マイナス金利で投資加速  有価証券運用の内訳も徐々に変化した。銀行経営に詳しい杉山敏啓・江戸川大学教授は「外債の比率は日銀の黒田東彦・前総裁の下で始まった異次元緩和や、マイナス金利政策開始でさらに増えた」と指摘する。地銀が保有する有価証券残高のうち、外債を含む「その他の証券」の割合は、11年度には00年度以降で最少の11%だったが、徐々に増え、足元の23年3月期では全体の約3分の1近い32%まで膨張していた。 日本国債の利回りが低下する中、少しでも高いリターンを求めて、外債などのリスク証券に活路を求めていった結果だった。しかし、外債投資は、日本国債をはじめとする円建て債券のように、含み損を抱えていても満期まで保有すれば額面で償還される(全額が払い戻される)ような単純な性質の投資ではない。米国債に投資するなら、米ドルを市場から調達する必要があることが話をさらに複雑にする。 保有する円貨を米ドルに両替して米国債に投資するのでは、為替の変動リスクをもろに受けてしまう。そこで、特に地銀では為替の変動リスクを避けるため、同額を米ドル建ての負債という形で保有する「スクエア・ポジション」を取るのが一般的だ。その米ドル建て負債は通常、期間の短い低めの金利で調達し、満期までの期間が長く金利が高めの米国債に投資することで、その利ざやが得られる仕組みだった。 だが、こうした形で投資していた銀行にとって誤算となったのは、22年初からの急激な米短期金利の上昇だった。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制のために一気に利上げしたことで、短期金利が10年債金利(長期金利)を上回るような状態となった。すでに購入した米国債の運用利回りは一定だが、米ドル建て負債の調達利回りがそれ以上に急上昇したことで、運用するだけ損失が発生する「逆ざや」に陥ったのだ。 各行の23年3月期決算では「これ以上、損失が膨らむのであれば、早めに損切りをした方がまし」と考えた銀行による外債の損切りが相次ぐことになった。しかし、損切りができる銀行はまだましなのかもしれない。経営体力が弱く、損切りによる多額の損失計上もできない銀行は、逆ざやによる損失がさらに体力を奪う悪循環に陥っていく』、「為替の変動リスクを避けるため、同額を米ドル建ての負債という形で保有する「スクエア・ポジション」を取るのが一般的だ。その米ドル建て負債は通常、期間の短い低めの金利で調達し、満期までの期間が長く金利が高めの米国債に投資することで、その利ざやが得られる仕組みだった。 だが、こうした形で投資していた銀行にとって誤算となったのは、22年初からの急激な米短期金利の上昇だった。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制のために一気に利上げしたことで、短期金利が10年債金利(長期金利)を上回るような状態となった。すでに購入した米国債の運用利回りは一定だが、米ドル建て負債の調達利回りがそれ以上に急上昇したことで、運用するだけ損失が発生する「逆ざや」に陥ったのだ」、「「これ以上、損失が膨らむのであれば、早めに損切りをした方がまし」と考えた銀行による外債の損切りが相次ぐことになった。しかし、損切りができる銀行はまだましなのかもしれない。経営体力が弱く、損切りによる多額の損失計上もできない銀行は、逆ざやによる損失がさらに体力を奪う悪循環に陥っていく』、「経営体力が弱く、損切りによる多額の損失計上もできない銀行」にとって「悪循環」とは悲劇的だ。
・『ぜい弱すぎる運用体制  一方で、日銀総裁が黒田氏から植田和男氏に代わった後も、銀行収益の源泉となる国内の金利はなかなか上昇する気配を見せない。日銀が昨年12月、政策目標として誘導する10年物国債金利(長期金利)の変動幅の上限を従来の「0.25%程度」から「0.5%程度」に引き上げた際には、市場は今後も金利上昇が続くと予想し、銀行株の急騰につながった。 しかし、今年4月に就任した植田氏は大規模な金融緩和について「継続する」と明言し続け、関係者の期待をしぼませた。それでなくとも、大半の銀行が上場する東京証券取引所は、PBR(株価純資産倍率)で1倍割れの企業に対して経営の改善を求めており、PBR1倍割れが大半の銀行にとって風当たりは強まる一方。ある証券アナリストは「銀行収益の鍵を握る金利上昇がなければ、PBR1倍の実現も難しい」とも指摘する。 期待された国内の金利上昇もすぐには見込めない以上、今後の銀行にとって有価証券運用の巧拙が大きなカギを握る。運用人員が数百人に上るメガバンクに対し、小規模な地銀では10人にも満たない担当者で運用するところもある。和キャピタルの伊藤氏は「有価証券運用に携わる人員が少ない地銀は、特に運用力を磨く必要がある」と指摘する。 伊藤氏は一部の地銀について、長期保有を行うことを前提とした投資手法(バイ&ホールド運用)が染みついていることに警鐘を鳴らす。金利が動く局面では、機動的な対応が求められるためだ。すでに運用に関わる人員を減らしてきているような小規模な地銀にとっては、態勢の立て直しも容易ではない。ある投資ファンド幹部は「運用を外部に委ねることも選択肢になる」と指摘する。 銀行が外債運用で体力をすり減らせば、地域に資金を融通する余力もなくなり、コロナ禍から明けた地域経済の回復に水を差しかねない。逆風の中でいかに態勢を立て直すのか、銀行経営はこれから大きな正念場を迎える』、「一部の地銀について、長期保有を行うことを前提とした投資手法(バイ&ホールド運用)が染みついていることに警鐘を鳴らす。金利が動く局面では、機動的な対応が求められるためだ。すでに運用に関わる人員を減らしてきているような小規模な地銀にとっては、態勢の立て直しも容易ではない・・・「運用を外部に委ねることも選択肢になる」と指摘する」、「逆風の中でいかに態勢を立て直すのか、銀行経営はこれから大きな正念場を迎える」、その通りだろう。

次に、7月15日付け日刊ゲンダイ「預かり資産は652兆円…日本カストディ銀行前社長の不正とは」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/326056
・『ドラマ「半沢直樹」さながらの銀行トップの不正が金融界の話題となっている。日本カストディ銀行は、昨年12月に退任した元取締役について、社内調査で不正があったと6月9日に公表した。リリースでは名前は伏せられているが、この元取締役とは前社長の田中嘉一氏であることが明らかになっている。 同銀行は、三井住友トラストHD、みずほFG、りそな銀行などが出資する資産管理信託銀行で、生保や運用会社などの機関投資家が運用する有価証券の決済や保管・データ管理等を担当しており、その預かり資産は652兆円にも及ぶ。生保などを介しているものの、実質的には国民の資産である。事態を重くみた金融庁は銀行法24条に基づいて報告徴求命令を出した。不正の詳細や原因分析、再発防止策、経営管理態勢などについて、8月末を期限に報告するよう求めている。 田中氏は昨年12月末に任期満了で退任したが、その直後の今年1月に同社は不正事案を検知、すぐさま外部弁護士を中心とする調査委員会を設置し、調査を行ってきた。その結果、「外部委託業務に関連して、元取締役による利益相反や任務違背などの不正行為が認められた」と公表とした。 関係者によると、「すでに木目田裕弁護士(西村あさひ法律事務所)を委員長とする調査委員会は約50ページにわたる報告書をまとめている」という。その中身は、まさにドラマ「半沢直樹」を彷彿とさせる内容だという。 「業務を外部委託する際に、田中氏の知り合いのコンサル会社を間に入れることで、中抜きしようとしたとみられています。だが、不正は未遂に終わったようです」(関係者) また、「報告書には透かしが入り、外部に流出した場合、誰から漏れたか分かるようになっており、外部への流出をチェックする委員会も設置されている」(関係者)という念の入れようだ。 田中氏は、「不正は行っていない」と反論しており、調査委員会の聴取には応じず、資料の提出も拒んでいる。だが、日本カストディ銀行は田中氏について、「法律上の対応を適切に講じていく方針であり、刑事上の扱いにつきましても、現在、捜査機関に相談を実施している」として、刑事訴追も視野に入れている。 まさに身から出たサビと言わざるを得ない』、「田中氏は昨年12月末に任期満了で退任したが、その直後の今年1月に同社は不正事案を検知、すぐさま外部弁護士を中心とする調査委員会を設置し、調査を行ってきた。その結果、「外部委託業務に関連して、元取締役による利益相反や任務違背などの不正行為が認められた」と公表とした。 関係者によると、「すでに木目田裕弁護士(西村あさひ法律事務所)を委員長とする調査委員会は約50ページにわたる報告書をまとめている」という。その中身は、まさにドラマ「半沢直樹」を彷彿とさせる内容だという』、「業務を外部委託する際に、田中氏の知り合いのコンサル会社を間に入れることで、中抜きしようとしたとみられています。だが、不正は未遂に終わったようです」(関係者)、「調査委員会を設置し、調査を行ってきた。その結果、「外部委託業務に関連して、元取締役による利益相反や任務違背などの不正行為が認められた」と公表」、同行のコーポレートスローガンは、The Reliable Bank、実に皮肉である。株主は、三井住友トラストHD33.3%、みずほFG27.0%、りそな銀行16.7%、第一生命8.0%、朝日生命5.0%、明治安田生命4.5%、かんぽ生命3.5%、富国生命2.0%となっているので、少なくとも第二位、第三位の株主には気を遣う必要がある筈だ。今回の不正がどのように他の株主の監視の目を逃れたのかは不明だ。いずれにしても三井住友トラストHDは、筆頭株主として責任をもって全貌を明らかにする必要があるだろう。
タグ:「為替の変動リスクを避けるため、同額を米ドル建ての負債という形で保有する「スクエア・ポジション」を取るのが一般的だ。その米ドル建て負債は通常、期間の短い低めの金利で調達し、満期までの期間が長く金利が高めの米国債に投資することで、その利ざやが得られる仕組みだった。 だが、こうした形で投資していた銀行にとって誤算となったのは、22年初からの急激な米短期金利の上昇だった。米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制のために一気に利上げしたことで、短期金利が10年債金利(長期金利)を上回るような状態となった。 金融業界 (その19)(ドル建て債権の“逆ざや”が銀行を襲う 損切りもできない悪循環に(編集部)、預かり資産は652兆円…日本カストディ銀行前社長の不正とは) エコノミストOnline「ドル建て債権の“逆ざや”が銀行を襲う 損切りもできない悪循環に(編集部)」 「外国証券を含む「その他の証券」(株式や国債、社債などの債券以外)の項目では、3メガバンクでは三菱UFJ銀行が8569億円、みずほ銀行が6676億円、三井住友銀行が3961億円の含み損を抱えていた。 また、地銀では、山陰合同銀行(島根県)808億円、横浜銀行(神奈川県)671億円、第四北越銀行(新潟県)551億円、南都銀行(奈良県)450億円、肥後銀行(熊本県)395億円──の順で含み損が大きかった」、 「顧客への貸し出しは、日銀の低金利政策や銀行同士の金利引き下げ競争で利回り低下が続く。そこで、各銀行は収益向上を求めて有価証券運用に注力してきた。地銀の有価証券保有残高は、00年代前半のは50兆円台からじわじわと増加し、14年度には100兆円近くまで膨らんだ」、なるほど。 すでに購入した米国債の運用利回りは一定だが、米ドル建て負債の調達利回りがそれ以上に急上昇したことで、運用するだけ損失が発生する「逆ざや」に陥ったのだ」、「「これ以上、損失が膨らむのであれば、早めに損切りをした方がまし」と考えた銀行による外債の損切りが相次ぐことになった。しかし、損切りができる銀行はまだましなのかもしれない。経営体力が弱く、損切りによる多額の損失計上もできない銀行は、逆ざやによる損失がさらに体力を奪う悪循環に陥っていく』、「経営体力が弱く、損切りによる多額の損失計上もできない銀行」にとって「 「一部の地銀について、長期保有を行うことを前提とした投資手法(バイ&ホールド運用)が染みついていることに警鐘を鳴らす。金利が動く局面では、機動的な対応が求められるためだ。すでに運用に関わる人員を減らしてきているような小規模な地銀にとっては、態勢の立て直しも容易ではない・・・「運用を外部に委ねることも選択肢になる」と指摘する」、「逆風の中でいかに態勢を立て直すのか、銀行経営はこれから大きな正念場を迎える」、その通りだろう。 日刊ゲンダイ「預かり資産は652兆円…日本カストディ銀行前社長の不正とは」 「田中氏は昨年12月末に任期満了で退任したが、その直後の今年1月に同社は不正事案を検知、すぐさま外部弁護士を中心とする調査委員会を設置し、調査を行ってきた。その結果、「外部委託業務に関連して、元取締役による利益相反や任務違背などの不正行為が認められた」と公表とした。 関係者によると、「すでに木目田裕弁護士(西村あさひ法律事務所)を委員長とする調査委員会は約50ページにわたる報告書をまとめている」という。その中身は、まさにドラマ「半沢直樹」を彷彿とさせる内容だという』、「業務を外部委託する際に、田中氏の知り合いのコンサル会社を間に入れることで、中抜きしようとしたとみられています。だが、不正は未遂に終わったようです」(関係者)、 「調査委員会を設置し、調査を行ってきた。その結果、「外部委託業務に関連して、元取締役による利益相反や任務違背などの不正行為が認められた」と公表」、同行のコーポレートスローガンは、The Reliable Bank、実に皮肉である。株主は、三井住友トラストHD33.3%、みずほFG27.0%、りそな銀行16.7%、第一生命8.0%、朝日生命5.0%、明治安田生命4.5%、かんぽ生命3.5%、富国生命2.0%となっているので、少なくとも第二位、第三位の株主には気を遣う必要がある筈だ。 今回の不正がどのように他の株主の監視の目を逃れたのかは不明だ。いずれにしても三井住友トラストHDは、筆頭株主として責任をもって全貌を明らかにする必要があるだろう。
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暗号資産(仮想通貨)(その23)(価格固定のはずが-暗号資産ステーブルコインを暴落させた不安の増幅ブロックチェーンゆえの振幅の大きさ、米検察 経営破綻のFTX創業者を贈賄罪で追起訴 中国当局者へ約52億円を不法に送金) [金融]

暗号資産(仮想通貨)については、昨年6月4日に取上げた。今日は、(その23)(価格固定のはずが-暗号資産ステーブルコインを暴落させた不安の増幅ブロックチェーンゆえの振幅の大きさ、米検察 経営破綻のFTX創業者を贈賄罪で追起訴 中国当局者へ約52億円を不法に送金)である。

先ずは、昨年6月17日付け現代ビジネスが掲載した博士(経済学)で帝京大学経済学部教授の宿輪 純一氏による「価格固定のはずが-暗号資産ステーブルコインを暴落させた不安の増幅ブロックチェーンゆえの振幅の大きさ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/96328?imp=0
・『株価より高い暗号資産の暴落率  一般的な暗号資産(仮想通貨)の価格が“乱高下”するのは、法定通貨ではなく単なる金融商品であることを考えれば、当たり前といえば当たり前である。暗号資産の代表銘柄、ビットコインは、最高値6万7000ドル超(2021年11月)まで行ったが、6月中旬、“3分の1”の2万2000ドルあたりまで暴落した。 ちなみに、IMFの注意にも関わらず、ビットコインを通貨としたエルサルバドルや中央アフリカはこの急落で「通貨危機」という皮肉な状況になっている。 第2位のイーサリアムもピークから5割下落している。ハイテク株が多いナスダックでも約2割の下落となっており、暗号資産の暴落幅はいかにも大きい。 今回の下落の主因は、株式市場と同じく、米国の中央銀行、連邦準備制度理事会(FRB)のハイペースな利上げである。今回FRBは高いインフレ率に基づいて判断している。そのため、FRBは経済成長率以上にハイペースで利上げを行っている。株式市場はFRBの利上げと先行きの利上げ継続ムードと合わせて不安定化した。 この不安定な暗号資産の市場が、もともとある金融システムに悪影響を与えるのではないかと懸念されている。しかしこれは、新しい金融商品が登場するときには通る道であり、仕方ないステップである。 奇しくも、6月3日、暗号資産の一種であり資産の裏付けなどで価格固定を謳った「ステーブルコイン(StableCoin)」を対象とする「改正資金決済法」が制定され、裏付け資産の国内保管義務が発生するなど、投資家保護の規制も巡らされてきている』、「IMFの注意にも関わらず、ビットコインを通貨としたエルサルバドルや中央アフリカはこの急落で「通貨危機」という皮肉な状況になっている」、@「IMFの「注意」を無視した自己責任だ。「暗号資産の一種であり資産の裏付けなどで価格固定を謳った「ステーブルコイン・・・」を対象とする「改正資金決済法」が制定され、裏付け資産の国内保管義務が発生するなど、投資家保護の規制も巡らされてきている」、なるほど。
・『ステーブルコインは価格が固定的なはずだが  変動する暗号資産に対して、ステーブルコインは価格が固定されている暗号資産である。例えば1ドル=1ステーブルコインと固定されている。 暗号資産を中心に取引する投資家は、変動する暗号資産の取引を一旦止めるときに、暗号資産取引の外に出すよりも、暗号資産取引の中で、固定的なステーブルな暗号資産に移すことがある。外の他の金融資産に移すのはいろいろと手間が掛かるためである。 般的な暗号資産の変動下落は当たり前であるが、ところが最近、価格が固定されているステーブルコインが大幅に暴落するという、暗号資産の仕組み全体を揺るす事件が発生している。 ステーブルコイン「テラ」(テラ:Terraはもともとは「兆」の意味)の取引量は、185億ドルある。ステーブルコインの取引量で、テザー、USDコインに続き第3位であった。それほどの取引量を誇っていた。 ステーブルコインには担保でその価値を保証する「担保型」と「無担保型」がある。今回の「テラ」はその無担保型にあたり、供給量をコントロールすることで価格を安定させる「アルゴリズム型」だった。 しかも、テラは、独自の貸借市場メカニズム「アンカープロトコル」を持ち、運営者はそのメカニズムで年20%の利回りを得ることが出来るとして、資金を集めていた』、「ステーブルコイン「テラ」・・・の取引量は、185億ドルある」、「ステーブルコインには担保でその価値を保証する「担保型」と「無担保型」がある。今回の「テラ」はその無担保型にあたり、供給量をコントロールすることで価格を安定させる「アルゴリズム型」だった。 しかも、テラは、独自の貸借市場メカニズム「アンカープロトコル」を持ち、運営者はそのメカニズムで年20%の利回りを得ることが出来るとして、資金を集めていた」、なるほど。
・『「テラ」暴落のメカニズム・疑心暗鬼  この20%の利回りというメカニズムは、現在の金融経済情勢で、通常の仕組みでは到底、維持可能とは考えられない。暗号資産の暴落が始まって、このメカニズムをもつテラからも、引き出しが相次ぎ、取り付け騒ぎのようになり、固定価格が耐えられなくなり、暴落したということである。 ステーブルコインであるにも関わらず、一般の暗号資産の暴落に連られ、安定的な価格を維持できなくなり、9割以上暴落した。その売られ方はさながら通貨危機の状況であった。 さらにマズいのは、相場としての取引というよりは、そのステーブルコイン自体の「仕組み」にまで疑念が及んでしまったことである。投資家は「なにか知らされていないリスクがあるのでは」という疑心暗鬼の状況になってしまった。この状態は、新しい金融商品にとって非常にまずい。特に暗号資産全体の評価にも影響を及ぼすことになった。 ブロックチェーン技術を使用した「デジタル金融資産」の範疇には、暗号資産に加えて「NFT」もある。NFTとはNon-Fungible Token(非代替性トークン)のことである。もっとわかりやすい言い方をすれば「デジタル権利書」のことである。筆者は今後、一般化・発展してくるものと考えている。 ところがその、NFTも今回の仮想通貨やステーブルコインの暴落の時期に合わせ、その平均価格が8000ドルから1000ドルまで大幅下落してしまった。つまりは「デジタル金融資産」全体が残念な状況となってしまっている』、「この20%の利回りというメカニズムは、現在の金融経済情勢で、通常の仕組みでは到底、維持可能とは考えられない。暗号資産の暴落が始まって、このメカニズムをもつテラからも、引き出しが相次ぎ、取り付け騒ぎのようになり、固定価格が耐えられなくなり、暴落したということである。 ステーブルコインであるにも関わらず、一般の暗号資産の暴落に連られ、安定的な価格を維持できなくなり、9割以上暴落した。その売られ方はさながら通貨危機の状況であった。 さらにマズいのは、相場としての取引というよりは、そのステーブルコイン自体の「仕組み」にまで疑念が及んでしまったことである。投資家は「なにか知らされていないリスクがあるのでは」という疑心暗鬼の状況になってしまった」、なるほど。
・『不安増幅-ブロックチェーン型プログラムの問題  昨今のデジタル金融商品は、ブロックチェーン技術をベースとしたものが主流であるが、そこで使われる技術がDAO(Decentralized Autonomous Organization)である。日本語訳すると「自律分散型組織」となる。 そもそもデジタルの世界は、発展したIT技術によって、中央集権的に情報を集め、早く確実に判断を下す仕組みとして普及した。 それに対して、DAOは中央管理者が介在せず、当事者だけで判断を下し実現する自立稼働するプログラムである。いわゆる分散型金融(DeFi:Decentralized Finance)であり、今までのデジタル化された中央集権型のシステムと比べると分散していることもあり、サーバー攻撃も相次ぐという問題も発生している。 最近ではDAOは導入が結構進んでいる。一言でいうと、シンプルでコストが安いシステムということもできるかと考えている。さまざまな取引システムにも取り入れられている。 ところが実はそのことが、最近の為替相場の動きのように、相場の波の振れが大きくなるという現象につながっている様である。管理者という冷静な第三者的な視点が存在せず、取引当事者の個別の判断だけで動くので、不安心理などに歯止めがかからない事態も起きやすいと考えられる。 安定した運用のためには、システム自体の役割、そして基本的な目的の確認が必要となる。すべての参加者が善人であるとは限らず、この分野でもガードレールが必要となる』、「管理者という冷静な第三者的な視点が存在せず、取引当事者の個別の判断だけで動くので、不安心理などに歯止めがかからない事態も起きやすいと考えられる。 安定した運用のためには、システム自体の役割、そして基本的な目的の確認が必要となる。すべての参加者が善人であるとは限らず、この分野でもガードレールが必要となる」、確かに「ガードレール」は安定化のためには必要なようだ。
・『今後の対処法として  筆者は、暗号資産よりも「デジタル権利書」としてのNFTに将来性があると考える。新たな金融市場を形成していくことになろう。 残念なことであるが、暗号資産の業界には、ハッキング(詐欺)の事件が多い。現在、暗号資産やNFTの取引をするのは、暗号資産交換業者である。現在、日本の登録業者は30社ある。 金融機関の決済を始めとしたネットワークは、各金融機関をつなぎ共有されたインフラとなっている。例えば、日本が世界に誇る「全銀システム」は、銀行、信用金庫、信用組合など、現在、937機関を繋いでいる、大きなデジタル化した組織となっている。その最終決済は日本銀行である。今後、仕組みとしてCBDC(Central Bank Digital Currency :中央銀行デジタル通貨)も検討されている。 ハッキング事件の対応として、暗号資産交換業者は“それぞれ”に堅固なシステムを構築した。その全体の状況は、その基本機能である「ブロックチェーン」のような個別の塊がいくつもあるような形状であり、一体化することはない。金融システムのような相互のネットワークを作り上げていくことが大事なことと考える。 新しい金融商品の業界が立ち上がっていくときに、大事なのが「業界の自主規制団体」である。現在、急ピッチで統合が進んでいる。現在では、暗号資産やNFTを決済手段とし、また取引の場となるであろうメタバースの業界は、「日本デジタル空間経済連合」と「メタバース・ジャパン」の2つの団体にまとまりつつある。これは極めて重要なことである。 今後、デジタル金融商品の世界は、犯罪への個々の守りを固め、横のネットワークを繋ぐ段階を迎える。特に社会全体に対するリテラシー(知識)教育を実施することが最も大事と考えている。そうすれば、市場が成熟する前の取引量が薄い市場においても、その暗号資産やNFTを始めとしたメタバースで使用され取引される商品の価格の不安定性への耐久力が付く。 そして、何よりも、詐欺をはじめとした犯罪の発生可能性を低下させるものと信じている。筆者も微力であるが、最大限協力していきたいと思っている』、「今後、デジタル金融商品の世界は、犯罪への個々の守りを固め、横のネットワークを繋ぐ段階を迎える。特に社会全体に対するリテラシー(知識)教育を実施することが最も大事と考えている。そうすれば、市場が成熟する前の取引量が薄い市場においても、その暗号資産やNFTを始めとしたメタバースで使用され取引される商品の価格の不安定性への耐久力が付く。 そして、何よりも、詐欺をはじめとした犯罪の発生可能性を低下させるものと信じている。筆者も微力であるが、最大限協力していきたいと思っている」、決済システムの第一人者の筆者の見解は、現実を踏まえたもので、同感である。

次に、本年3月29日付けNewsweek日本版がロイター記事を転載した「米検察、経営破綻のFTX創業者を贈賄罪で追起訴 中国当局者へ約52億円を不法に送金」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2023/03/ftx52.php#:~:text=%E7%B1%B3%E6%A4%9C%E5%AF%9F%E5%BD%93%E5%B1%80%E3%81%AF28,%E3%81%8C%E6%8C%81%E3%81%9F%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82
・『米検察当局は28日、経営破綻した暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXの創業者、サム・バンクマンフリード被告(31)を、中国当局者への贈賄罪で追起訴した。自身のヘッジファンド取引口座の凍結を解除するため、4000万ドル(約52億6,246万円)相当の暗号資産を不法に送金した疑いが持たれている。 バンクマンフリード被告はすでに、FTXの破綻に関連した13件で起訴されている。同被告の広報担当者はコメントを控えた。 同被告は30日、新たな起訴状に関する罪状認否を行う予定。関係筋によると、無罪を主張する方針だ。 起訴状によると、同被告は10億ドル以上の暗号資産を持つヘッジファンド「アラメダ」の口座凍結解除を中国政府当局に依頼するため、アラメダのメイン取引口座からプライベートウォレットに4000万ドルの暗号資産を支払うよう命じたとされる。 検察当局によると、アラメダの口座はある取引先に関する調査の一環で凍結されており、同被告が事前に中国当局者に凍結解除を働きかけたが、失敗に終わっていた。 また、同被告は2021年11月ごろ、賄賂を「完了」させるために数千万ドルの追加暗号資産の送金を許可したという。 ロイターは中国外務省にコメントを求めたが、業務時間外のため回答を得られていない。在ワシントンの中国大使館からも現時点でコメントを得られていない』、「同被告は10億ドル以上の暗号資産を持つヘッジファンド「アラメダ」の口座凍結解除を中国政府当局に依頼するため、アラメダのメイン取引口座からプライベートウォレットに4000万ドルの暗号資産を支払うよう命じたとされる」、全貌が見えないが、かなり危ない橋を渡ろうとしていたようだ。「暗号資産」の取引では、まだこうしたいかがわしい取引も少なくないようだ。
タグ:暗号資産(仮想通貨) (その23)(価格固定のはずが-暗号資産ステーブルコインを暴落させた不安の増幅ブロックチェーンゆえの振幅の大きさ、米検察 経営破綻のFTX創業者を贈賄罪で追起訴 中国当局者へ約52億円を不法に送金) 現代ビジネス 宿輪 純一氏による「価格固定のはずが-暗号資産ステーブルコインを暴落させた不安の増幅ブロックチェーンゆえの振幅の大きさ」 「IMFの注意にも関わらず、ビットコインを通貨としたエルサルバドルや中央アフリカはこの急落で「通貨危機」という皮肉な状況になっている」、@「IMFの「注意」を無視した自己責任だ。「暗号資産の一種であり資産の裏付けなどで価格固定を謳った「ステーブルコイン・・・」を対象とする「改正資金決済法」が制定され、裏付け資産の国内保管義務が発生するなど、投資家保護の規制も巡らされてきている」、なるほど。 「ステーブルコイン「テラ」・・・の取引量は、185億ドルある」、「ステーブルコインには担保でその価値を保証する「担保型」と「無担保型」がある。今回の「テラ」はその無担保型にあたり、供給量をコントロールすることで価格を安定させる「アルゴリズム型」だった。 しかも、テラは、独自の貸借市場メカニズム「アンカープロトコル」を持ち、運営者はそのメカニズムで年20%の利回りを得ることが出来るとして、資金を集めていた」、なるほど。 「この20%の利回りというメカニズムは、現在の金融経済情勢で、通常の仕組みでは到底、維持可能とは考えられない。暗号資産の暴落が始まって、このメカニズムをもつテラからも、引き出しが相次ぎ、取り付け騒ぎのようになり、固定価格が耐えられなくなり、暴落したということである。 ステーブルコインであるにも関わらず、一般の暗号資産の暴落に連られ、安定的な価格を維持できなくなり、9割以上暴落した。その売られ方はさながら通貨危機の状況であった。 さらにマズいのは、相場としての取引というよりは、そのステーブルコイン自体の「仕組み」にまで疑念が及んでしまったことである。投資家は「なにか知らされていないリスクがあるのでは」という疑心暗鬼の状況になってしまった」、なるほど。 「管理者という冷静な第三者的な視点が存在せず、取引当事者の個別の判断だけで動くので、不安心理などに歯止めがかからない事態も起きやすいと考えられる。 安定した運用のためには、システム自体の役割、そして基本的な目的の確認が必要となる。すべての参加者が善人であるとは限らず、この分野でもガードレールが必要となる」、確かに「ガードレール」は安定化のためには必要なようだ。 「今後、デジタル金融商品の世界は、犯罪への個々の守りを固め、横のネットワークを繋ぐ段階を迎える。特に社会全体に対するリテラシー(知識)教育を実施することが最も大事と考えている。そうすれば、市場が成熟する前の取引量が薄い市場においても、その暗号資産やNFTを始めとしたメタバースで使用され取引される商品の価格の不安定性への耐久力が付く。 そして、何よりも、詐欺をはじめとした犯罪の発生可能性を低下させるものと信じている。筆者も微力であるが、最大限協力していきたいと思っている」、決済システムの第一人者の筆者の見解は、現実を踏まえたもので、同感である。 Newsweek日本版 ロイター 「米検察、経営破綻のFTX創業者を贈賄罪で追起訴 中国当局者へ約52億円を不法に送金」 「同被告は10億ドル以上の暗号資産を持つヘッジファンド「アラメダ」の口座凍結解除を中国政府当局に依頼するため、アラメダのメイン取引口座からプライベートウォレットに4000万ドルの暗号資産を支払うよう命じたとされる」、全貌が見えないが、かなり危ない橋を渡ろうとしていたようだ。「暗号資産」の取引では、まだこうしたいかがわしい取引も少なくないようだ。
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資本市場(その10)(東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別、悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠、仕組債問題で批判殺到…金融庁監督局・伊藤豊局長に浮上した「別のスキャンダル」、業績不振・不正で「基準不適合」入りの68社リスト 東証スタンダード・グロース市場の基準に抵触、米国債「格下げ」は想定内でも 警戒すべき投資家の“世界的な思考変化”とは?) [金融]

資本市場については、本年2月6日に取上げた。今日は、(その10)(東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別、悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠、仕組債問題で批判殺到…金融庁監督局・伊藤豊局長に浮上した「別のスキャンダル」、業績不振・不正で「基準不適合」入りの68社リスト 東証スタンダード・グロース市場の基準に抵触、米国債「格下げ」は想定内でも 警戒すべき投資家の“世界的な思考変化”とは?)である。

先ずは、本年5月8日付け東洋経済オンライン「東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/670115
・『「スタンダード市場上場の選択申請の決定に関するお知らせ」。2023年3月、スマホゲーム開発企業のマイネットがリリースを公表した。同社は東証プライム市場に上場しているが、近くスタンダード市場に移行すると表明したのだ。 プライム市場を捨て、自らスタンダード市場に「降格」する――。マイネットを皮切りに、こうした宣言をする企業が相次いでいる。4月末時点で、スタンダードへの移行を宣言したプライム上場企業は9社にのぼる。突如訪れた「降格ラッシュ」の背景に何があるのか』、興味深そうだ。
・『プライム市場「背伸び組」  発端は、2022年4月の市場区分見直しにさかのぼる。プライム市場は3つの区分のうち最も上場基準が厳しく、高い流動性やガバナンスが求められる市場として発足した。 ところが、旧東証1部から横滑りでプライム市場入りした企業のうち、296社は時価総額や流動性などの上場維持基準を下回っていた。東京証券取引所は経過措置を設け、改善計画の策定を条件にプライム市場への移行を許可した。 「背伸び」をしてプライム市場に移った企業群の位置づけは曖昧だった。経過措置の期間は「当分の間」とされており、いつまでプライム市場に残れるのかはわからなかった。改善計画を達成できなかった場合にスタンダード市場へ自動的に移れるのか、改めてスタンダード市場の上場審査が必要なのかも不明確だった。「後者の場合、一斉に移行されると審査の人手が足りなくなる」。証券業界からはこんな悲鳴も上がった。 そこで東証は2023年1月の上場規則改正時、背伸び組に「2択」を迫った。3月期決算企業の場合、2026年3月末時点で上場維持基準に適合しなければ、上場廃止予備軍である「監理銘柄」に指定され、最短で同年9月にも上場廃止となる。スタンダード市場に移る場合には、一度上場廃止してから再度審査を受ける必要がある。 その代わりの選択肢として、早々にプライム市場の上場維持を断念した企業には「特例」を設けた。2023年4月から9月末の間であれば、申請書の提出だけでスタンダード市場に移れるのだ。「上場廃止にならないための、いわば『温情』だ」。東証関係者はこう話す。) 冒頭のマイネットをはじめ、スタンダードへの移行を発表した企業はこの「特例」を選んだ企業たちだ。では、どんな企業が特例を利用したのか。以下は、4月末時点でスタンダード市場への移行を表明した企業の一覧だ。いずれの企業もプライム市場の要件である「流通株式時価総額100億円」を満たしていない。 各社は旧東証1部からプライム市場に移行するにあたり、東証の指示によって流通株式時価総額を引き上げる計画を策定していた。ところが、業績や株価の低迷によって達成の見込みが立たず、およそ1年で撤回したことになる。 土壌汚染調査や産業廃棄物処理を手がけるダイセキ環境ソリューションは2021年末、3年間で純利益を3倍にする中期経営計画を策定した。ところが、首都圏での大型案件受注が想定を下回り、翌2022年に業績予想を2度下方修正。このまま流通株式時価総額が伸び悩めば上場廃止となるリスクを考慮し、スタンダード市場への移行を決めたという。 東洋経済が試算したところ、プライム市場上場企業の中で流通株式時価総額が100億円を下回る企業は203社存在する(ランキングはこちら)。背伸び組のほか、プライム市場への移行当初は基準を満たしていたが、その後株価が下落し100億円を割ってしまった企業も少なくない』、「東洋経済が試算したところ、プライム市場上場企業の中で流通株式時価総額が100億円を下回る企業は203社存在する・・・背伸び組のほか、プライム市場への移行当初は基準を満たしていたが、その後株価が下落し100億円を割ってしまった企業も少なくない」、203社とはかなり多い。
・『「6月」が分水嶺?  降格ラッシュは今後も続くのか。みずほ信託銀行の八木啓至・企業戦略開発部次長は、「6月までにスタンダード市場への移行表明が増えるのではないか」と推測する。 スタンダード市場に無条件で移行できるのは、前述のとおり2023年9月末が期限だ。一方、3月期決算企業の場合、流通株式時価総額などの上場維持基準は3月末時点の数値を基に審査され、未達の場合は6月末までに改善計画を提出ないし更新する必要がある。 スタンダード市場への移行表明が7月以降にずれこむと、それまでにプライム市場への上場を維持するための計画を公表する必要があり、矛盾が生じる。そのため、スタンダード市場を選ぶ企業は改善計画の期限までに移行方針を発表し、定時株主総会で株主に説明するという見立てだ。 ほとんどの企業が旧東証1部から横滑りしたことから「骨抜きの改革」とやゆされたプライム市場。2022年4月の発足から1年を経て、ようやくプライムの名にふさわしい企業の選別が始まろうとしている』、「2022年4月の発足から1年を経て、ようやくプライムの名にふさわしい企業の選別が始まろうとしている」、踏みとどまれる企業はどの程度あるのだろうか。

次に、6月19日付け東洋経済オンライン「悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/679779
・『優雅に達観した生活を送っているように見える富裕層。ただ陰では投資や税金対策に頭を抱え、時にもがき苦しむ様子が垣間見える。6月19日発売『週刊東洋経済』の特集「富裕層のリアル国内150万世帯、受難の時代」では、富裕層の偽らざる実像に迫った。 「こちらがドル建て債券に関する資料です。足元で金利が軒並み上昇している状況なので、円債に比べて高い利回りを確保できます」 今年初め、ある国内証券会社の営業マンは富裕層の顧客にそう言って1枚のリストを見せていた。提示したリストに載っているのは、海外の銀行などが発行するドル建ての「永久劣後債」だ。 劣後債は発行した企業などが倒産した場合に、弁済する優先順位が普通社債などに比べて後回しになる(劣後する)債券のことだ。 中でも永久劣後債は、5年後や10年後といった満期の定めがない。そのため、投資家にとってはかなりリスクが高く、その分利回りも相対的に大きいハイリスク・ハイリターンの商品だ』、発行体は「クレディ・スイス」と信用力はあっても、「劣後」条件に応じて「高」「利回り」という「ハイリターン」になる。
・『投資リスクが高いAT1債  先ほどのリストには6?7%台の商品がずらりと並んでいるが、その中で10%超というひときわ高い利回りを示していた債券がある。スイス金融大手クレディ・スイス・グループの永久劣後債だ。別名「AT1(その他ティアワン)債」とも呼ばれる。 クレディ・スイスといえば、富裕層でなくとも投資家であれば誰でも耳にしたことがある、世界的な金融グループだ。その債券で10%もの利回りを得られるとあって、多くの富裕層が飛びつくようにして購入していった。 それが一転して、紙くずになってしまったのは今年3月のこと。クレディ・スイスは経営不安が一気に高まり、同国金融最大手のUBSグループと株式交換による救済的な買収で合意。さらに、中央銀行のスイス国立銀行から流動性支援(臨時の資金供給)を受けた。 スイス連邦金融市場監督機構はそうした支援策が、クレディ・スイスのAT1債が規定する「元本削減条項」に抵触するとして、無価値化すると判断したわけだ。 紙くずになったAT1債の総額は約160億スイスフラン。日本円に換算すると約2.4兆円にも上る。金融庁の調べでは、日本では富裕層を中心に約1400億円分が販売されていた。そのうち約950億円分を販売していた、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対しては、金融庁が顧客対応などについて報告するよう命令を出すなど、騒動は広がるばかりだ』、「約950億円分を販売していた、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対しては、金融庁が顧客対応などについて報告するよう命令」、リスクをきちんと説明した上で販売していたことを祈りたい。
・『仕組み債でも損失の悲劇  急転直下の事態を受け、4月に入ると日本でも企業や富裕層から悲鳴が次々と上がった。 ゲームソフトなどの開発を手がけるコーエーテクモホールディングスは、AT1債への投資によって41億円の損失を計上。「箱根駅伝」で名をはせた青山学院大学陸上競技部の原晋監督は、「平均年収のウン倍」を失ったとインターネット番組で嘆き、大きな話題になった。 足元では金融分野に強い弁護士事務所の間で、被害を受けた富裕層に広く声をかけて集団訴訟に持ち込もうとする動きが広がり始めている。 訴訟に向けて弁護士らが着目しているのが、販売していた証券会社が元本削減条項などのリスクについて、どれだけ説明責任を果たしていたかという点だ。 実際のところはどうなのか。ある証券会社が作成した契約締結前交付書面を見てみよう。 同書面を見ると、元本削減条項という欄に「CET1(普通株等ティアワン)比率が7%を下回ったとき」「公的機関による支援を受け入れたとき」という2つの条件が書いてある。今回はこのうちの後者(支援の受け入れ)がトリガーを引いたことになり、書面上は問題がないように見える。 一方で、大手証券会社の幹部は「販売している側は、CET1比率の部分しか気に掛けていなかったというのが実態だろう。公的機関の支援うんぬんの部分まで、きっちり説明した営業マンは少ないのではないか」と声を潜める。 つまり、販売する側すら目を向けていなかった条項を、顧客にしっかりと説明し理解させていたかと問われると、苦しい立場に置かれるということだ』、「販売する側すら目を向けていなかった条項を、顧客にしっかりと説明し理解させていたかと問われると、苦しい立場に置かれる」、苦しいところだ。
・『仕組み債でも大きな損失  金融庁の幹部は、AT1債で被害を受けた顧客の中には「仕組み債においても、大きな損失を被った人が一定数いる」と明かす。 仕組み債とは、債券と金融派生商品(デリバティブ)取引を組み合わせた金融商品のこと。デリバティブ取引は個別株価や株価指数、為替相場などに連動しており価格変動が大きいことから、債券ではあるもののかなりハイリスクな商品だ。商品設計が複雑なため、投資初心者はリスクの認識が難しい。 それを地方銀行などが「高利回り商品」などとして販売。富裕層や高齢者に過剰なリスクを取らせていたことが問題となり、規制が強化されてきた経緯がある。 その規制の抜け穴として、証券業界で脚光を浴びたのが、まさにAT1債だった。そこで大きな悲劇が発生するのは、もはや時間の問題だったのかもしれない』、「規制の抜け穴」までなくなってしまった。今後はリスクを粛々と説明して販売していかざるを得ないだろう。

第三に、6月19日付け現代ビジネス「仕組債問題で批判殺到…金融庁監督局・伊藤豊局長に浮上した「別のスキャンダル」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111927
・『証券取引等監視委員会が、リスクの高いデリバティブ(金融派生商品)を使った複雑な仕組債を "素人” に売りつけたとして、千葉銀行と傘下のちばぎん証券などを行政処分するよう金融庁に勧告した』、興味深そうだ。
・『金融機関になめられている金融庁監督局  仕組債の危険性はかねて指摘されており、対応が不十分だったとして金融庁監督局の伊藤豊局長への批判も高まっている。金融庁の締めつけで販売自粛する金融機関がある一方、無視して継続するメガバンク系証券もあり「局長はなめられている」(金融庁関係者)という声も上がる。 伊藤氏は出世コースの財務省大臣官房秘書課長を経たエリートで、自他共に認める金融庁長官候補となった。 仕組債問題は汚点だが、伊藤氏には別のスキャンダルもある。 医療ベンチャー「テラ」を巡る金融商品取引法違反事件の法廷で、竹森郁被告が「高額接待をしたうえ1本5万円の高級ワインを贈った」と爆弾発言したのだ。竹森被告は有罪判決を受けたが、当時、「永田町のフィクサー」として知られる矢島義也氏の側近として政官要人の接待係を務め、資金も負担していた。 それだけに証言には真実味がある。加えて「国家公務員倫理規程違反の告発も考えています」(竹森被告)と、まだ終わった話ではない。仕組債問題と接待疑惑―。金融庁のエリート官僚に荒波が押し寄せている』、「金融庁長官候補」に2つも問題が出てきたとは大変だ。

第四に、7月18日付け東洋経済オンライン「業績不振・不正で「基準不適合」入りの68社リスト 東証スタンダード・グロース市場の基準に抵触」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/686508
・『東京証券取引所のスタンダード・グロース市場に上場する企業のうち少なくとも68社が今年1月から6月末までに新たに上場維持基準に抵触し、計画書を提出したことが東洋経済の集計でわかった。 2022年4月に新市場区分に移行して約1年が経過。移行当初は基準を満たせたものの、業績悪化や不正会計の発覚などで株価が下落し基準を満たせなくなる例が続出している。プライム市場では57社が基準未達になった(東証プライムから新規50社超の「脱落危機」リスト)。 スタンダード市場への移行、という救済措置が用意されているプライム市場とは異なり、スタンダードやグロース市場の上場企業には、逃げ道がない。 例えば3月末決算企業の場合、2026年3月までに基準を満たせない場合は上場廃止基準に該当する可能性があるとして監理銘柄に指定される。その後も基準を満たせない場合は最終的に上場廃止となる。 そもそも、スタンダード市場の上場維持基準は流通株式時価総額が10億円とプライム市場が要求する100億円より格段に低い。流通株式比率も同様で、プライム市場が35%以上を求めるのに対し、スタンダードでは25%以上でいい。グロース市場の基準はさらに低く、流通株式時価総額は5億円以上を求めている』、「スタンダード市場への移行、という救済措置が用意されているプライム市場とは異なり、スタンダードやグロース市場の上場企業には、逃げ道がない」、もともとは「逃げ道がない」のが普通だ。真剣勝負で臨んでもらいたいものだ。
・『安定株主への対応に苦慮  各社が開示した計画書には、担当者の苦悩が滲む。 「安定株主の皆様に対し、これまでの保有に感謝申し上げるとともに、今後、当社株式の市場への放出にご協力いただけるよう要請してまいります」 消防・防災関連など各種ゴム製品の専業メーカー、櫻護謨は6月29日に東京証券取引所スタンダード市場の基準に適合していないことを適時開示した。流通株式時価総額と流通株式比率の2つで基準未達となった。大株主に売却を依頼する企業は多いが、感謝のコメントを添えた開示はめずらしい。) 「役員及び役員の2親等以内の親族」に対して保有株の売却を促すとしたのはヒューマンホールディングス(スタンダード市場上場)だ。開示によれば流通株式比率が20.85%となり、新たに基準に抵触した。 同社の大株主欄には佐藤耕一会長をはじめ、社長の佐藤朋也氏など佐藤姓の株主が並ぶ。3月には新たに佐藤姓の個人が「安定株主として保有」目的で9.1%の大量保有を報告している。はたして2025年3月末までに売却は進むのだろうか。 ほかにも「特定の元従業員の不正行為」に言及し「かかる事案の及ぼす影響も考慮すべきである」とした会社や、「普通銀行に売却を打診」すると記載した企業など、各社各様の工夫で上場維持基準の適合に向けた計画を公表している』、「普通銀行に売却を打診」がどのように「上場維持基準の適合に向けた計画」に相当するのかは不明だが、各社とも知恵を絞っているようだ。
・『基準未達企業がすがる意外な逃げ道  こうした基準未達企業は今後も増え続ける可能性がある。ただ、東証が市場区分の移行に際して用意した経過措置の適用を受けられるのは2025年2月まで。それ以降は上場維持基準に抵触した場合、監理銘柄となり、それでも基準を満たせない場合は上場廃止となる。 プライム市場の上場企業であれば、経過措置終了後も再度上場審査を受けることで、スタンダード市場へ鞍替えすることができる。ではスタンダードやグロースの上場企業は座して上場廃止を待つほかないのか。 市場関係者の間で上場廃止を回避する秘策として噂されているのが、地方市場への上場だ。札幌、名古屋、福岡などの証券取引所が想定されている。 上記の3市場では、東証などほかの証券取引所で上場している企業が新規に上場する場合、証券会社による上場審査を実質的に免除する仕組みがある。元々は東証や旧大阪証券取引所などとの重複上場を促すための制度だが、上場維持基準もスタンダードやグロースよりさらに低く、東証からの移行がしやすくなっている。 ある地方市場関係者は「東証がダメならうちで、という営業はしていないが、市場なので品物は多いほうがいい。上場してくれる企業が増えること自体は歓迎」と話す。 ただ、現時点で東証の市場再編を理由に地方市場に上場した企業はまだない。逃げ道を確保するよりもまずは業績の改善や流通株式比率の向上など、目の前の課題解決を図るほうが先決だ。(▽基準未達なら「上場廃止」の可能性もー新たに上場維持基準不適合となった東証スタンダード・グロース市場上場企業ーの表はリンク先参照)』、「現時点で東証の市場再編を理由に地方市場に上場した企業はまだない。逃げ道を確保するよりもまずは業績の改善や流通株式比率の向上など、目の前の課題解決を図るほうが先決だ」、その通りだ。

第五に、8月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「米国債「格下げ」は想定内でも、警戒すべき投資家の“世界的な思考変化”とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327512
・『信用格付けサービス3位のフィッチによる米国債格下げは、想定の範囲だった。今回の格下げは、短期的にみると、日本株が下落するきっかけになったことは否めない。ただ、中長期的にみると、米国債の格下げが日本株の下落につながるかは不透明だ。むしろ、フィッチの判断は、投資家が主要国の物価や財政問題などを背景とする金利上昇のリスクを再確認・再評価するきっかけになった』、興味深そうだ。
・『「米国債格下げ」のタイミングで長期金利が上昇の波紋  8月1日、大手信用格付け会社のフィッチ・レーティングスは、米国債の格付けを最上位のAAA(トリプルエー)からAA+(ダブルエープラス)に引き下げた。見通しは「安定的」だ。 既に、同じく有力格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、2011年に米国債をAA+に格下げしている。大手格付け会社のうち、AAA(Aaa)格はMoody’s(ムーディーズ)を残すのみだ。 フィッチは格下げ要因として、主に三つを指摘した。(1)今後3年間での米財政の悪化懸念、(2)高水準かつ増加する公的債務、(3)債務上限を巡る政治対立の激化など債務管理体制の不安――だ。コロナ禍をきっかけに米国で財政支出圧力は強まった。フィッチの指摘は周知の事実ではある。 注目すべきは、格下げとほぼ同じタイミングで、金利とリスク資産の関係に変化の兆しが表れたことだ。米国をはじめ各国で長期金利は上昇し、世界的に株価は下落した。その勢いが強まれば、世界経済は減速に向かうだろう。となると、新興国から資金を引き揚げる投資家も増えるはずだ。フィッチによる米国債の格下げは、予想外の形で世界経済の不安定さを増すことになるかもしれない』、「米国をはじめ各国で長期金利は上昇し、世界的に株価は下落した。その勢いが強まれば、世界経済は減速に向かうだろう。となると、新興国から資金を引き揚げる投資家も増えるはずだ。フィッチによる米国債の格下げは、予想外の形で世界経済の不安定さを増すことになるかもしれない」、既に「S&P」が「格下げ」をしているとはいえ、かつて最上格の「米国債」の「格下げ」はやはり影響が大きい。
・『フィッチが格下げに踏み切った経緯と背景  振り返れば5月、フィッチは米国の信用格付けの見通しを「ネガティブ」(信用力は下向き)に修正していた。背景として、政府債務上限を巡る民主党と共和党の対立激化は大きかった。長期的な財政運営の不透明感は増し、米財務省は一部の公的年金基金の新規の投資をストップするなど臨時措置を取ったが、それは長く続けられる措置ではない。 期日までに、与野党が債務上限の引き上げなどに合意できないリスクもあった。長期的な財政運営の安定性、予見性、財政再建に向けた政治的リーダーシップへの不安などを背景に、フィッチは米国債の信用格付けを最上位のAAAから引き下げる可能性を示唆していた。 6月初旬、米上院は債務上限の効力を2025年1月まで停止する法案を可決した。前回のピンチ(11年)に比べれば幾分か時間はあったが、今回も米連邦政府は資金の枯渇を土壇場で回避した。 こうした背景もあり、フィッチが米国債の格付けを引き下げたことは、5月の見通し修正に沿ったものだった。大手の信用格付け業者が米国債を格下げするのは、今回が初めてではない。11年の債務上限問題では与野党が合意した後に、S&Pが米国の格付けをAA+へ1段階引き下げた。 S&Pは世界の信用格付けサービスの最大手である。米証券取引委員会(SEC)によると21年、世界全体の信用格付け(国債、非国債、証券化商品などが対象)のうちS&Pの割合が50.4%、ムーディーズが31.6%、フィッチが12.4%だった。3社の中でフィッチの規模は小さく、格下げのインパクトも限られる。残るは、ムーディーズが米国の格付けをどうするかだ。8月10日時点で、ムーディーズは米国債をAaa格(S&PなどのAAAと同じ)で維持している。 5月の見通し修正、その後の米債務上限問題の推移を踏まえると、フィッチによる格下げは想定の範囲だった。今回の格下げは、短期的にみると、日本株が下落するきっかけになったことは否めない。ただ、中長期的にみると、米国債の格下げが日本株の下落につながるかは不透明だ』、「米証券取引委員会(SEC)によると21年、世界全体の信用格付け(国債、非国債、証券化商品などが対象)のうちS&Pの割合が50.4%、ムーディーズが31.6%、フィッチが12.4%だった」、S&Pのシェアが想像以上に大きいことに驚かされた。
・『徐々に進む金利上昇リスクの再確認  むしろ、フィッチが米国債の格下げを発表したことは、投資家が主要国の物価や財政問題などを背景とする金利上昇のリスクを再確認・再評価するきっかけになった。その点を冷静に考えることが重要だ。 11年にS&Pが米国債を格下げした時と今回を比べると、世界経済の環境は異なる。リーマン・ショック後、日米欧の中央銀行は金融緩和を強化した。世界経済の回復ペースは緩慢であり、物価も上昇しづらかった。「中央銀行が景気減速に配慮して金融緩和を強化する」と予想する投資家は増えた。こうした認識が、世界中の投資家の記憶に強く刷り込まれた。 ユーロ圏やわが国ではマイナス金利政策も実施され、金融緩和は強化された。「低金利環境は続くはず」といった主要投資家の思い込みは強まった。主要国の財政悪化に対する投資家の警戒感、関心は薄れた。 しかし、20年以降の世界はコロナ禍をきっかけに一変した。各国で財政支出は増大し、物価は上昇。短中期を中心に金利も上昇した。 世界的に現金の給付や、失業保険の特例措置が実施された。現在、米国では家計が過剰な貯蓄を抱え消費は減少していない。旺盛な需要を背景に、インフレ率は2%を上回っている。22年3月以降は急速に利上げが進み、短中期を中心に金利は上昇した。それでも株価は高い。大規模な財政支出により、経済はゆがんだ。 ウクライナ紛争も、財政支出圧力を高めた。1970年代半ばにベトナム戦争が終結して以来、約50年ぶりに、かつての東西陣営を巻き込んだ戦争が長期化している。 ウクライナ紛争が起きて以降、各国で国防関連の支出は増えた。ドイツは国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上に引き上げた。台湾を取り巻く危機意識に対応するために、日米欧の政府は産業政策の方針も転換した。戦略物資として重要性が高まる半導体の自国内生産を増やすために、補助金を積み増す動きが顕著になっている』、「ウクライナ紛争が起きて以降、各国で国防関連の支出は増えた。ドイツは国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上に引き上げた。台湾を取り巻く危機意識に対応するために、日米欧の政府は産業政策の方針も転換した。戦略物資として重要性が高まる半導体の自国内生産を増やすために、補助金を積み増す動きが顕著になっている」、なるほど。
・『金利と株式などリスク資産の関係に変化の兆し  理屈で考えると、財政支出の増加によって、長期、超長期の金利は上昇する。今回の格下げは、主要投資家がそうしたリスクを冷静に考える機会になった。 格下げとほぼ同じタイミングで、世界的に金利と株価の関係は徐々に変化し始めている。7月26日まで、ニューヨークダウ工業株30種平均株価は13連騰を記録していた。生成AIの登場が大きなインパクトとなり、IT産業への成長への期待が膨らんでいる。米連邦準備制度理事会(FRB)が、景気の減速に配慮して秋口にも利下げに転じるとの見方も高まった。米国の2年金利は低下し、株価上昇は勢いづいた。 他方、7月28日、日本銀行はイールドカーブ・コントロール(YCC)政策を修正し、10年金利の上限を1.0%に引き上げた。「米財務省が国債の発行を増やす」との見方も増えた。フィッチの米国債格付け判断を、見極めようとする警戒感も高まっただろう。一般的に信用格付け業者は見通しを修正した後、2カ月程度で新たな格付けを付与することが多い。 米国経済が過熱気味であることも、金利上昇の警戒感を高める要因になった。4~6月期、実質GDPの成長率は予想を上回った。物価安定のためにもFRBは金融引き締めを続けなければならない。8月に入ってからの世界的な株価下落は、金利上昇リスクに身構える投資家の増加に影響された部分が大きい。 8月10日時点で、ムーディーズは米国の信用格付け見通しを修正していない。ごく短期間で米国が最高位の格付けを失うことは考えづらい。また、世界の金融環境は緩和的な部分を残している。短期的には、世界の株価は相応の値動きを伴いつつ、高値圏を維持する可能性はある。 しかしその後、金融市場の不安定感は増すだろう。中期的には、米国の長期金利は上昇し、株や商業用不動産などの価格が下落する恐れがある。それが現実となれば、世界的にリスクを削減する投資家が増えるはずだ』、「短期的には、世界の株価は相応の値動きを伴いつつ、高値圏を維持する可能性はある。 しかしその後、金融市場の不安定感は増すだろう。中期的には、米国の長期金利は上昇し、株や商業用不動産などの価格が下落する恐れがある。それが現実となれば、世界的にリスクを削減する投資家が増えるはずだ」、なるほど。

なお、明日は、更新を休む予定である。
タグ:「ウクライナ紛争が起きて以降、各国で国防関連の支出は増えた。ドイツは国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上に引き上げた。台湾を取り巻く危機意識に対応するために、日米欧の政府は産業政策の方針も転換した。戦略物資として重要性が高まる半導体の自国内生産を増やすために、補助金を積み増す動きが顕著になっている」、なるほど。 「米証券取引委員会(SEC)によると21年、世界全体の信用格付け(国債、非国債、証券化商品などが対象)のうちS&Pの割合が50.4%、ムーディーズが31.6%、フィッチが12.4%だった」、S&Pのシェアが想像以上に大きいことに驚かされた。 「米国をはじめ各国で長期金利は上昇し、世界的に株価は下落した。その勢いが強まれば、世界経済は減速に向かうだろう。となると、新興国から資金を引き揚げる投資家も増えるはずだ。フィッチによる米国債の格下げは、予想外の形で世界経済の不安定さを増すことになるかもしれない」、既に「S&P」が「格下げ」をしているとはいえ、かつて最上格の「米国債」の「格下げ」はやはり影響が大きい。 真壁昭夫氏による「米国債「格下げ」は想定内でも、警戒すべき投資家の“世界的な思考変化”とは?」 ダイヤモンド・オンライン 「現時点で東証の市場再編を理由に地方市場に上場した企業はまだない。逃げ道を確保するよりもまずは業績の改善や流通株式比率の向上など、目の前の課題解決を図るほうが先決だ」、その通りだ。 「普通銀行に売却を打診」がどのように「上場維持基準の適合に向けた計画」に相当するのかは不明だが、各社とも知恵を絞っているようだ。 「スタンダード市場への移行、という救済措置が用意されているプライム市場とは異なり、スタンダードやグロース市場の上場企業には、逃げ道がない」、もともとは「逃げ道がない」のが普通だ。真剣勝負で臨んでもらいたいものだ。 東洋経済オンライン「業績不振・不正で「基準不適合」入りの68社リスト 東証スタンダード・グロース市場の基準に抵触」 「金融庁長官候補」に2つも問題が出てきたとは大変だ。 現代ビジネス「仕組債問題で批判殺到…金融庁監督局・伊藤豊局長に浮上した「別のスキャンダル」」 「規制の抜け穴」までなくなってしまった。今後はリスクを粛々と説明して販売していかざるを得ないだろう。 「販売する側すら目を向けていなかった条項を、顧客にしっかりと説明し理解させていたかと問われると、苦しい立場に置かれる」、苦しいところだ。 「約950億円分を販売していた、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対しては、金融庁が顧客対応などについて報告するよう命令」、リスクをきちんと説明した上で販売していたことを祈りたい。 発行体は「クレディ・スイス」と信用力はあっても、「劣後」条件に応じて「高」「利回り」という「ハイリターン」になる。 東洋経済オンライン「悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠」 「2022年4月の発足から1年を経て、ようやくプライムの名にふさわしい企業の選別が始まろうとしている」、踏みとどまれる企業はどの程度あるのだろうか。 「東洋経済が試算したところ、プライム市場上場企業の中で流通株式時価総額が100億円を下回る企業は203社存在する・・・背伸び組のほか、プライム市場への移行当初は基準を満たしていたが、その後株価が下落し100億円を割ってしまった企業も少なくない」、203社とはかなり多い。 東洋経済オンライン「東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別」 資本市場 (その10)(東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別、悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠、仕組債問題で批判殺到…金融庁監督局・伊藤豊局長に浮上した「別のスキャンダル」、業績不振・不正で「基準不適合」入りの68社リスト 東証スタンダード・グロース市場の基準に抵触、米国債「格下げ」は想定内でも 警戒すべき投資家の“世界的な思考変化”とは?) 「短期的には、世界の株価は相応の値動きを伴いつつ、高値圏を維持する可能性はある。 しかしその後、金融市場の不安定感は増すだろう。中期的には、米国の長期金利は上昇し、株や商業用不動産などの価格が下落する恐れがある。それが現実となれば、世界的にリスクを削減する投資家が増えるはずだ」、なるほど。
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バブル(歴史、一般)(その1)脱獄犯から財務大臣に! 天才ギャンブラーの末路 「リフレ政策」発明者の栄光と挫折、シュンペーターも絶賛!「脱獄した天才経済学者」の末路 「リフレ政策」発明者の栄光と挫折) [金融]

今日は、バブル(歴史、一般)(その1)脱獄犯から財務大臣に! 天才ギャンブラーの末路 「リフレ政策」発明者の栄光と挫折、シュンペーターも絶賛!「脱獄した天才経済学者」の末路 「リフレ政策」発明者の栄光と挫折)を取上げよう。

先ずは、やや古いが、2019年5月9日付け日経ビジネスオンラインが掲載した元外国為替ディーラー・ジャーナリストの玉手 義朗氏による「脱獄犯から財務大臣に! 天才ギャンブラーの末路 「リフレ政策」発明者の栄光と挫折」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19nv/00046/050700009/
・『脱獄したお尋ね者が、なんとフランス財務大臣に! 驚きの成り上がり人生を歩んだギャンブルの達人、ジョン・ロー。しかし、自ら生み出した世界最大級のバブルが弾けた後、流浪の末に無一文で死を迎える――。経済学の巨人シュンペーターが絶賛し、ガルブレイズをもうならせた奇才の、鮮やかすぎる経済理論と転落劇。 一七二九年三月二十一日、男はイタリア・ヴェネチアで五十八年の生涯を終えた。 男はかつてフランスの「財務大臣」と「中央銀行総裁」、そして巨大国営企業のトップを兼任する経済界の支配者だった。パリ中心部にあるヴァンドーム広場の三分の一は男のもので、この他にも数多くの不動産を保有する大金持ちでもあった。 我が世の春を謳歌していた男だったが、ある日突然にフランスを追われ、放浪の末にヴェネチアにたどり着いた。死期が迫る中、男は遺言状を作るようにと促された。しかし、「自分の財産は全てフランスにあって、債権者に差し押さえられている。遺言状を作っても無意味だ」と語ったという。 男の名前はジョン・ロー(John Law)。 その経済政策は窮地にあったフランス経済を劇的に回復させると同時に、数多くの大金持ちを生み出した。「ミリオネア」という言葉が誕生したのもこのときで、ローの経済政策の恩恵を受けて、大金持ちになった人々を呼ぶためのものだった。後にこの男は、経済学者シュンペーターから賛辞を受け、ガルブレイズをもうならせることになる』、「ジョン・ロー」は「かつてフランスの「財務大臣」と「中央銀行総裁」、そして巨大国営企業のトップを兼任する経済界の支配者だった。パリ中心部にあるヴァンドーム広場の三分の一は男のもので、この他にも数多くの不動産を保有する大金持ちでもあった。 我が世の春を謳歌していた男だったが、ある日突然にフランスを追われ、放浪の末にヴェネチアにたどり着いた」、なるほど。「ミリオネア」という言葉が誕生したのもこのときで、ローの経済政策の恩恵を受けて、大金持ちになった人々を呼ぶためのものだった」、「ミリオネア」の語源を初めて知った。
・『世界初の「ミリオネア」  しかし、ローとミリオネアたち、そしてフランス国民も突如として奈落の底に突き落とされる。ミリオネアたちは全財産を失い、経済は大混乱に陥り、非難の的となったローはフランスを逃げ出したのであった。 ミリオネアを生んだ経済政策とは何なのか。なぜ、人々は奈落の底に落とされることになったのか。一度はフランス経済を支配し、巨万の富を獲得した男は、どのような失敗を犯して、一文無しで生涯を終えることになったのだろう。) 一六七一年四月二十一日、ローはイギリス(スコットランド)・エディンバラの裕福な金匠(Goldsmith Banker:金を扱う金融機関の一種)の家に生まれた。 中等学校に入る直前に父親は他界するが、ローは巨額の遺産を相続し、ロンドンに出て放蕩三昧の生活を始める。長身で端正なマスク、愛想が良くて会話も知的だったローは、上流階級の貴婦人たちと浮き名を流す一方で、ギャンブルに興じる日々を送った。 しかし、程なくしてローはギャンブルに大負けして破産してしまう。更に一六九四年四月、ローは女性を巡ってある男と決闘して刺し殺してしまった。殺人罪で死刑判決を受けたロー。人生もこれで終わり……と思われたが、ローは仲間の手助けを受けて脱獄に成功する。看守を薬で眠らせ、密かに持ち込んだノコギリで窓の鉄格子を切断し、窓から飛び降りて待機させていた馬車に飛び乗って、逃げ去ったという。(*1)』、「ローは女性を巡ってある男と決闘して刺し殺してしまった。殺人罪で死刑判決を受けたロー。人生もこれで終わり……と思われたが、ローは仲間の手助けを受けて脱獄に成功する」、血の気が多かったようだ。
・『「お尋ね者」が一転、「気鋭の経済学者」に  「キャプテン・ジョン・ロー、スコットランド人、殺人の罪で最近まで当王座裁判所の監獄に収容中の囚人。年齢二六歳。背が非常に高く色黒、やせぎすで姿勢よき男……この者当監獄より脱走。右の男を捕らえて当監獄に引き渡す者に対して、即刻五十ポンドの賞金を与える」 各地に配られた手配書をあざ笑うかのように、「お尋ね者ロー」は完全に姿を消してしまう。 それから二十年が経過した一七一四年、ローは突如としてフランス・パリに現れた。「お尋ね者」ではなく、大金持ちで、フランス政府が信頼を寄せる気鋭の経済学者としてだ。 ローは逃亡生活の間に、独自の確率論を駆使したギャンブル勝利法を会得し、各地の賭博場を渡り歩いて大儲けしたという。その経験と理論を基に、言葉巧みにフランス政府に、独自の経済政策を売り込んだのだ。 時のフランスはルイ十五世が王位を引き継いだばかり。政府は度重なる戦争と王室の浪費で財政難に喘ぎ、経済は深刻な不況に陥っていた。ところがローは、この危機的な状況を改善する経済政策があると、ルイ十五世の摂政だったオルレアン公フィリップに持ちかけたのだ。) ローはフランス経済が「デフレ状態」にあると考えていた。当時のフランスの貨幣システムは、政府の管理下にある正貨(金貨と銀貨)を使ったもの。政府が財政難になれば、貨幣の流通量が減少する。これによって物価が下落し、収益の悪化から消費が低迷し、これが景気を悪化させて所得が減少し、更なる物価下落と消費の低迷を生む。当時のフランスは、典型的なデフレ不況に陥っていたのである。 デフレ対策には、どんどん紙幣を刷って貨幣供給量を増やす金融緩和政策があることは、今なら誰でも知っているだろう。ところが、当時のフランスには紙幣が存在していなかった。あるのは自由に増やすことができない正貨だけであり、金融緩和政策の概念すらなかったのである。 では、どうすればよいのか。ローの答えは簡単だった。 紙幣を発行すればいい』、「「ローは逃亡生活の間に、独自の確率論を駆使したギャンブル勝利法を会得し、各地の賭博場を渡り歩いて大儲けしたという。その経験と理論を基に、言葉巧みにフランス政府に、独自の経済政策を売り込んだのだ。 時のフランスはルイ十五世が王位を引き継いだばかり。政府は度重なる戦争と王室の浪費で財政難に喘ぎ、経済は深刻な不況に陥っていた。ところがローは、この危機的な状況を改善する経済政策があると、ルイ十五世の摂政だったオルレアン公フィリップに持ちかけたのだ。) ローはフランス経済が「デフレ状態」にあると考えていた。当時のフランスの貨幣システムは、政府の管理下にある正貨(金貨と銀貨)を使ったもの。政府が財政難になれば、貨幣の流通量が減少する。これによって物価が下落し、収益の悪化から消費が低迷し、これが景気を悪化させて所得が減少し、更なる物価下落と消費の低迷を生む。当時のフランスは、典型的なデフレ不況に陥っていたのである」、「当時のフランスには紙幣が存在していなかった。あるのは自由に増やすことができない正貨だけであり、金融緩和政策の概念すらなかったのである。 では、どうすればよいのか。ローの答えは簡単だった。 紙幣を発行すればいい」、なるほど。
・『お金がないなら、刷ればいい  ローは摂政オルレアン公フィリップから、紙幣となる銀行券が発行できる「バンク・ジェネラル」の設立許可を得た。 この銀行はローが保有していた正貨を元手に設立されたもの。バンク・ジェネラルが発行する銀行券は、求められればいつでも正貨に戻すことが約束された「兌換(だかん)紙幣」だったため、高い信用力を得ることができた。更にローは政府に働きかけて、この銀行券で納税が可能になるようにし、貿易取引の決済にも使えるようにした。 度重なる改鋳で金や銀の含有量が低下し、価値が低下していた正貨に嫌気がさしていた人々は、使い勝手の良いローの銀行券を大歓迎した。 一七一六年五月に設立されたバンク・ジェネラルが発行する銀行券は瞬く間に普及し、これによって貨幣供給量が大幅に増加する。フランス経済を苦しめていたデフレは解消に向かい、景気は驚異的な回復を見せた。 ローは「金融緩和策の発明者」であり、人類史上初めてこれを実施して、フランス経済を救った「天才」だったのだ。 絶大な信頼を勝ち取ったバンク・ジェネラルは、一七一八年に国有化され、「バンク・ロワイアル」となる。 「お尋ね者」だったローは、自らの手で「中央銀行」を創設して「総裁」に就任したというわけだ。 しかし、ローの金融緩和策には限界があった。) ローの金融緩和策の限界とは何か。銀行券が兌換紙幣であったため、保有している正貨以上の発行ができなかったのだ。 そこでローは次のステップへ踏み出す。 ローは銀行券を正貨の交換を保証しない「不換紙幣」に変えたのだ。これによってバンク・ロワイアルは、正貨保有量に関係なく、好きなだけ銀行券を発行できるようになる。 正貨という後ろ盾を失ったものの、バンク・ロワイアルが発行する銀行券の信用力が揺らぐことはなかった。銀行券が更に発行されたことで金融緩和策が強化され、フランス経済はより一層の好景気に沸き立つことになる』、「ローは「金融緩和策の発明者」であり、人類史上初めてこれを実施して、フランス経済を救った「天才」だったのだ。 絶大な信頼を勝ち取ったバンク・ジェネラルは、一七一八年に国有化され、「バンク・ロワイアル」となる。 「お尋ね者」だったローは、自らの手で「中央銀行」を創設して「総裁」に就任したというわけだ」、「ローは銀行券を正貨の交換を保証しない「不換紙幣」に変えたのだ。これによってバンク・ロワイアルは、正貨保有量に関係なく、好きなだけ銀行券を発行できるようになる。 正貨という後ろ盾を失ったものの、バンク・ロワイアルが発行する銀行券の信用力が揺らぐことはなかった。銀行券が更に発行されたことで金融緩和策が強化され、フランス経済はより一層の好景気に沸き立つことになる」、なるほど。
・『バブルがやってきた  ローは膨大な財政赤字の削減にも取り組んだ。「ミシシッピ会社」という国営企業を創設、その株式を売り出すことで財政赤字を埋めようと考えたのだ。(*2) ローは政府に働きかけて、当時のフランスが所有していた、ミシシッピを中心とするアメリカ植民地の開発や貿易の権利をこの会社に集約した。目玉の事業は「金の採掘」。ミシシッピには金鉱があり、株式を購入した人には大きな利益がもたらされると宣伝したのだ。 更にローは、ミシシッピ会社の株式を購入しやすくするために、購入代金を国債で支払えるようにした。 これは現代の「債務の株式化」(Debt Equity Swap)の原型となる手法だ。銀行などが保有する貸出債権を、その会社の株式と交換することによって借金の負担を軽減し、経営再建を進めやすくする。 債務の株式化が、日本で本格化するのは二十一世紀に入ってからのこと。ダイエーやシャープなど、巨大企業の経営再建で適用されるようになった高度な手法だ。 現代の最先端の再建手法を先取りするようなアイデアを考案し、財政赤字で苦しんでいたフランス政府に適用したロー。ミシシッピ会社の株式が売れれば売れるほど、政府の財政赤字は減少していくという妙案だったのだ。 売り出されたミシシッピ会社の株式は、投資家の大きな人気を集めた。当時の国債は返済されるはずなどないという思惑から、額面五百リーブルの国債が、百五十~百六十リーブル程度の安値で取引されていた。そこでローは、ミシシッピ会社の株式を国債で購入する場合には、額面の五百リーブルで引き取るとしたのだ。 ここからバブルが発生する。) 「価値の下がった国債で、金鉱を持つミシシッピ会社の株式が買える! しかも額面価格で!」と投資家は大喜び。額面五百リーブルだったミシシッピ会社の株価は、一七一九年の十二月には一万リーブルを突破する大暴騰を演じる。 ミシシッピ会社の株式を買ったことで、一夜にして大金持ちになった人が続出する。「ミリオネア」と呼ばれるようになった彼らは、儲けたお金を不動産や宝石、貴金属などへ投資したため、それらの価格も三倍、四倍と跳ね上がった。 ミリオネアになりたいと押し寄せた人々で、ミシシッピ会社の株式が売買されていたカンカンポア通りは、連日大混雑となった。周辺のアパート家賃は跳ね上がり、靴店は店内で椅子や筆記用具を提供する「貸しオフィス」で大儲け、猫背だった男は背中を机代わりに使わせるだけで稼ぐことができたという。 ミシシッピ会社の株価暴騰に呼応する形で、銀行券の発行も急増していった。これが株式市場へ流れ込んだ結果、更なる株価上昇を生み、銀行券の増発を招くというスパイラルを生み出す』、「額面五百リーブルの国債が、百五十~百六十リーブル程度の安値で取引されていた。そこでローは、ミシシッピ会社の株式を国債で購入する場合には、額面の五百リーブルで引き取るとしたのだ。 ここからバブルが発生する。 「価値の下がった国債で、金鉱を持つミシシッピ会社の株式が買える! しかも額面価格で!」と投資家は大喜び。額面五百リーブルだったミシシッピ会社の株価は、一七一九年の十二月には一万リーブルを突破する大暴騰を演じる」、なるほど。
・『株式バブルで、財政再建!  その一方で、ミシシッピ会社の株式が飛ぶように売れたことから、政府の財政赤字も激減していった。「ロー・システム」と呼ばれた「中央銀行」と「巨大国営企業」のコラボレーションであった。 ミシシッピ会社は明らかに過大評価されていたが、株価暴騰に浮かれていた人々にとっては、どうでもよいことだったのだ。 景気回復と財政赤字削減を成し遂げたローは、一七二〇年一月に財務総監に任命される。首相の地位に匹敵する要職だった。「財務大臣」、「中央銀行総裁」、そして巨大国営会社ミシシッピ会社のトップを兼任する「経済界の巨人」が誕生したのだ。 各地に広大な地所を所有するなど、ローの個人資産も膨れ上がった。貴族の称号を与えられたローは、その端正な姿と相まって社交界の花形となる。「お尋ね者」として追われていた男が、流れ着いたフランスで銀行を設立してから、わずか三年でつかんだ栄光であった。 ロー・システムがもたらした華々しい成果に政府は狂喜し、フランスは諸外国の羨望の的となった。しかし、その成果はバブルがもたらした一時的なものであり、その崩壊は驚くほど早く始まるのである。 次回は後編。ローが生み出した「ミシシッピバブル」のあっけなくも、騒々しい幕切れ。さらに、ローが発明した「リフレ政策」の功罪を考察する。 *1 ジョン・ローの決闘のエピソードは、創作であるとする説もある *2 ミシシッピ会社の正式名称は「西方会社」。のちに「インド会社」となる(参考文献の紹介は省略)』、「景気回復と財政赤字削減を成し遂げたローは、一七二〇年一月に財務総監に任命される。首相の地位に匹敵する要職だった。「財務大臣」、「中央銀行総裁」、そして巨大国営会社ミシシッピ会社のトップを兼任する「経済界の巨人」が誕生したのだ。 各地に広大な地所を所有するなど、ローの個人資産も膨れ上がった。貴族の称号を与えられたローは、その端正な姿と相まって社交界の花形となる。「お尋ね者」として追われていた男が、流れ着いたフランスで銀行を設立してから、わずか三年でつかんだ栄光であった」、「ロー・システムがもたらした華々しい成果に政府は狂喜し、フランスは諸外国の羨望の的となった。しかし、その成果はバブルがもたらした一時的なものであり、その崩壊は驚くほど早く始まるのである」、次回の「崩壊」の姿が楽しみだ。

次に、この続きを2019年5月10日付け日経ビジネスオンラインが掲載した元外国為替ディーラー・ジャーナリストの玉手 義朗氏による「シュンペーターも絶賛!「脱獄した天才経済学者」の末路 「リフレ政策」発明者の栄光と挫折」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19nv/00046/050700010/
・『お尋ね者の脱獄犯から、フランス財務大臣と中央銀行総裁を兼任するまで成り上がった、ジョン・ロー(詳しくは、前回を参照)。経済学の巨人シュンペーターも絶賛した奇才は、いかにして破滅したのか。 ギャンブルで荒稼ぎしたローには、天性の経済学的センスがあり、冷え切ったフランス経済をバブルの熱狂に導いた。だが、その末路は――。 18世紀を鮮やかに彩った「ミシシッピバブル」と、昭和の「NTT株」をめぐる狂騒が重なる。 十八世紀のフランスで、今でいう「リフレ政策」を展開したロー。紙幣をどんどん発行することでデフレ不況を克服し、国営企業ミシシッピ会社の株式売却で、国家財政の赤字を削減すると同時に、景気をさらに浮揚させた。 ローが編み出した金融緩和策「ロー・システム」がもたらした華々しい成果に政府は狂喜し、フランスは諸外国の羨望の的となった。しかし、その成果はバブルがもたらした一時的なものであり、その崩壊は驚くほど早く始まるのである』、「バブル」の「崩壊」とは興味深そうだ。
・『「素朴な疑問」が、崩壊の始まり  「ローの銀行券って、本当に信用できるの?」 「いざとなったら、本当に金貨か銀貨に換えてもらえるの?」 「ミシシッピ会社って、何をする会社なんだっけ?」 「金を採掘するって言っていたけど、金は出たんだっけ?」 ロー・システムの崩壊は、こうした素朴な疑問から始まった。 一部の貴族たちが、銀行券をバンク・ロワイアルに持ち込んで、金貨や銀貨に交換をし始める。これを知った他の人々も不安心理に駆られ、我先にと銀行券を正貨に交換しようとした。「取り付け」が起こったのだ。しかし、バンク・ロワイアルが発行する銀行券は不換紙幣であり、その全てを正貨に交換することは到底できない。 一七二〇年七月、バンク・ロワイアルは、正貨への交換を求める人々の激しい取り付けに対応できずに大混乱となり、十五人もの死者が出る事態となる。 激怒した七千人を超える人々が、担架に乗せた遺体と共にパレ・ロワイヤルの庭園までデモ行進し、ローやオルレアン公フィリップに惨状を見せつけようとした。ローが乗っていた馬車を破壊するなど、群衆の一部が暴徒化したことから軍隊が出動、オルレアン公フィリップが出てきて、遺体を責任を持って埋葬すると約束したことでようやく沈静化した。 バンク・ロワイアルの取り付けに合わせるように、ミシシッピ会社の信用も急速に失われ、株価の急落が始まった。少し前まではミシシッピ会社の株式を手に入れようと血眼になっていた人々は、大慌てで売り始め、本当に価値がある金貨や銀貨を手に入れようとしていた。 こうした状況を見たローは、驚きの株価対策を打ち出した。) ローが編み出した、驚きの株価対策とは何か。 パリにいた数千人ものホームレスを集め、シャベルなどの道具を持たせて港まで行進させたのだ。「ミシシッピに金が見つかりました。これから掘りに行きます!」と、ミシシッピ会社による開発計画が順調であることをアピールし、信用を取り戻そうとしたのである』、「一部の貴族たちが、銀行券をバンク・ロワイアルに持ち込んで、金貨や銀貨に交換をし始める。これを知った他の人々も不安心理に駆られ、我先にと銀行券を正貨に交換しようとした。「取り付け」が起こったのだ。しかし、バンク・ロワイアルが発行する銀行券は不換紙幣であり、その全てを正貨に交換することは到底できない。 一七二〇年七月、バンク・ロワイアルは、正貨への交換を求める人々の激しい取り付けに対応できずに大混乱となり、十五人もの死者が出る事態となる」、「バンク・ロワイアルの取り付けに合わせるように、ミシシッピ会社の信用も急速に失われ、株価の急落が始まった。少し前まではミシシッピ会社の株式を手に入れようと血眼になっていた人々は、大慌てで売り始め、本当に価値がある金貨や銀貨を手に入れようとしていた」、「ローが編み出した、驚きの株価対策とは何か。 パリにいた数千人ものホームレスを集め、シャベルなどの道具を持たせて港まで行進させたのだ。「ミシシッピに金が見つかりました。これから掘りに行きます!」と、ミシシッピ会社による開発計画が順調であることをアピールし、信用を取り戻そうとしたのである」、「ホームレスを」使って嘘をつくのは頂けない。
・『ホームレスを動員した“株価対策”  ところが、ホームレスたちは途中で行進を止めて逃げだし、渡されていた道具は換金されてしまった。ローの弥縫(びほう)策はミシシッピ会社の惨状を物語るものであり、その信用は更に失われる事態となった。 ローはその後も様々な株価維持策を打ち出したが効果は全くなく、むしろ株価の下落を加速させてしまう。一七二〇年一月に最高値の一万八千リーブルをつけていたミシシッピ会社の株価は、十月には二千リーブルにまで大暴落し、株式市場は人々の阿鼻叫喚(あびきょうかん)で覆われた。バンク・ロワイアルの銀行券の信用も完全に失われ、誰も受け取ろうとはしなくなったため、経済取引は元の金貨と銀貨の取引に逆戻りしてしまう。ロー・システムは完全に崩壊し、フランス経済は未曾有(みぞう)の大混乱に陥ったのである。 このときの状況を風刺した詩が残されている。 月曜日には株を買い、 火曜日には大儲け。 水曜日には家財道具をそろえ、 木曜日には身なりを整えた。 金曜日には舞踏会、そして土曜日には病院行き』、「一七二〇年一月に最高値の一万八千リーブルをつけていたミシシッピ会社の株価は、十月には二千リーブルにまで大暴落し、株式市場は人々の阿鼻叫喚(あびきょうかん)で覆われた。バンク・ロワイアルの銀行券の信用も完全に失われ、誰も受け取ろうとはしなくなったため、経済取引は元の金貨と銀貨の取引に逆戻りしてしまう。ロー・システムは完全に崩壊し、フランス経済は未曾有(みぞう)の大混乱に陥った」、なるほど。
・『死刑を求める大衆を前に、国外逃亡  一七二〇年十二月、死刑を求める民衆の叫び声に生命の危険を感じたローは、命からがらパリを脱出する。財産の大半はフランス国内の不動産であったこともあり、持ち出すことはできなかった。ローの出国後、保有していた不動産などは全て没収され、残された妻子は年金証書まで取り上げられてしまったという。 再びお尋ね者となったローは、ベルギーのブリュッセル、ドイツのハノーバー、デンマークのコペンハーゲンなど、およそ八年もの間ヨーロッパ各地を転々とした。そして、たどり着いたヴェネチアで死を迎えたのだった。 その墓碑銘にはこう記されていた。 高名なるスコットランド人、ここに眠る。 計算高さでは天下一品、 訳の分からぬ法則で、フランスを病院へ送った。 人類史上初めてとなる金融緩和策を、「訳の分からぬ法則」と批判されたロー。失われた栄光を取り戻すことなく、フランス経済の破壊者という汚名を着せられたまま、生涯を終えることになってしまったのである』、「フランス経済の破壊者という汚名を着せられたまま、生涯を終えることになってしまった」、「フランス」も「ロー」に乗せられたとは不名誉なことだ。
・『リフレ政策の発明者、バブルに飲まれる  ジョン・ローは驚くほど短期間にフランス経済を回復させた。ところが、その状態を維持できず、更に深い傷を負わせることになってしまう。その原因はローが自ら発明したリフレ政策の制御に失敗したことと、それによってバブルを発生させたことにある。 失敗の本質 ① デフレ対策が暴走(ローが打ち出した金融緩和政策は、大量の紙幣を発行して意図的にインフレを起こすリフレーション、いわゆる「リフレ政策」だ。 物価を建物の「室温」と考えるとインフレは「異常な高温」、デフレは「異常な低温」と考えられる。当時のフランスは深刻なデフレ状況にあり、冷え切った部屋で経済活動が鈍り、国民は凍死寸前に追い込まれていたのだ。 そこでローは、部屋を暖めるための政策を打ち出した。それがリフレ政策だ。バンク・ロワイアルを通じて、紙幣である銀行券を大量に発行し、それを燃料にした「たき火」を始めたのだ。売り出したミシシッピ会社の株価が急上昇、これに対応するための紙幣発行が増加したことで、火の勢いは更に強まる。ロー・システムを使ったリフレ政策によって、フランス経済の室温は瞬く間に上昇、見事にデフレを克服してみせたのだ』、「ジョン・ローは驚くほど短期間にフランス経済を回復させた。ところが、その状態を維持できず、更に深い傷を負わせることになってしまう。その原因はローが自ら発明したリフレ政策の制御に失敗したことと、それによってバブルを発生させたことにある」、なるほど。
・『ガルブレイズをもうならせた才能  ところが、ローはやり過ぎてしまう。デフレが克服された後もリフレ政策を継続した。これが必要以上の紙幣が供給される「過剰流動性」を招く。行き場を失った紙幣は、株式市場をはじめとした資産市場に流れ込み、ミシシッピ会社の株式を中心とした資産価格を押し上げてバブルを生み出したのだ。膨れ上がったバブルは遂に破裂して、経済は大混乱に陥ってしまう。部屋が十分に暖まったにもかかわらず、大量の燃料を供給し続けた結果、たき火がバブルとなって爆発し、フランス経済を炎上させてしまったのだ。 「ローがもしそこに留まっていたならば、彼は銀行業の歴史にささやかな貢献をしたという程度に記憶されただろう」と指摘するのは、経済学者ジョン・ガルブレイズ。 ローはデフレが解消された時点で「留まり」、リフレ政策を収束させるべきであったのだ。 人類史上初めてとなるリフレ政策を断行、フランス経済を立ち直らせたロー。しかし、その後は制御に失敗してバブルを生み出し、その崩壊が経済を破壊してしまった。これがローの失敗の第一の本質なのである。) 失敗の本質 ② 政治的圧力に負けてコントロールを失う(ジョン・ローのリフレ政策によってもたらされたミシシッピ会社の株価暴騰は「ミシシッピバブル」と呼ばれ、オランダの「チューリップバブル」、イギリスの「南海バブル」と並ぶ世界三大バブルの一つに数えられている。しかし、その規模と影響の大きさにおいて、ミシシッピバブルは、ずば抜けて巨大なバブルであったといえるだろう。 バブルは崩壊する運命にあることは、今でこそ多くの人が認識している。しかし、当時は「バブル」という言葉すらなかった時代であり、こうした知見も経験も乏しかった。人々は知らず知らずのうちに、バブルの熱狂の渦に巻き込まれてしまったのである』、「人類史上初めてとなるリフレ政策を断行、フランス経済を立ち直らせたロー。しかし、その後は制御に失敗してバブルを生み出し、その崩壊が経済を破壊してしまった。これがローの失敗の第一の本質なのである」、「ミシシッピ会社の株価暴騰は「ミシシッピバブル」と呼ばれ、オランダの「チューリップバブル」、イギリスの「南海バブル」と並ぶ世界三大バブルの一つに数えられている。しかし、その規模と影響の大きさにおいて、ミシシッピバブルは、ずば抜けて巨大なバブルであった」、なるほど。
・『危険を察知しても押し切られる  ロー自身はその危険性を認識していた。ミシシッピ会社の株価上昇に危機感を持ったローは、株価抑制策を数度にわたって打ち出している。その一つが「プレミアム」の販売だ。株式を購入できない人のために、株式購入の権利だけを売るという現代のオプションに類似したデリバティブ商品で、株式の追加発行に代わる手段として販売したのだ。ところが「プレミアム」は、権利だけではあっても、わずかな金額で購入できることから、その価格は販売直後に二倍に跳ね上がり、結果的に株価の上昇に拍車をかけてしまった。 ローは紙幣を発行しすぎると、信用力が低下することも認識していた。設立当初のバンク・ロワイアルは、銀行券を保有している正貨の範囲に収める兌換(だかん)紙幣とすることで、発行の上限を設定していた。「紙幣を良質の硬貨で償還するのに十分な支払い準備を保有しない銀行家は死に値する」。そんな信念を語っていたというロー。これが守られていたからこそ、人々は紙切れにすぎないローの銀行券に資産価値を認めていたのだ。 もし、ローが兌換紙幣にこだわり続けていれば、過剰流動性が生まれることはなく、バブルが発生することも、銀行券の信用が失われることもなかっただろう。しかし、兌換紙幣に固執し続ければ、経済成長の足かせになることも事実であり、いずれは不換紙幣に移行せざるを得なくなる。 そこで重要になるのが紙幣発行量の調整、つまり金融政策だ。経済の成長に合わせて適切な紙幣の発行量を維持し、過剰流動性を生まないように金融政策を遂行していく。これを実現するためには、紙幣を発行する中央銀行の独立性が求められる。政府は景気対策や財源の確保などの目的から、紙幣の発行量を増やすことを求めてくることが多い。しかし、これに安易に応じると、過剰流動性が生まれて、インフレ、さらにはバブルを生み出す恐れがある。こうした事態を避けるために、中央銀行は確固とした独立性を持つことが必要となるのだ。 中央銀行総裁であったローは、この独立性を守ることができなかった――。 ここに第二の失敗の本質がある。) バンク・ロワイアルの成功に気をよくしていた政府は、ローに更なる銀行券の発行を迫った。ローはこの圧力に耐えきれず、不換紙幣に切り替えた上に、銀行券の大量発行に踏み切ってしまう。この結果、銀行券の信用力が失われると同時に、巨大なバブルが生み出されてしまったのである。 しかし、ローはリフレ政策や債務の株式化を発明した天才であったことは間違いない。優れた洞察力で知られる経済学者のジョセフ・シュンペーターも、「あらゆる時代の貨幣理論家のなかで、最上の貨幣理論を構築した人物である」と、ローに賛辞を贈る。また、新古典派経済学の基礎を築いた経済学者アルフレッド・マーシャルも、「向こう見ずで、並外れた、しかし最も魅力的な天才」と、ローを高く評価しているのだ。 リフレ政策という画期的な金融緩和策を編みだしたものの、そのコントロールに失敗して沈んでしまったジョン・ロー。あまりに惜しまれる天才の過ちであった。 ローが作り出した人類史上最大のバブルであるミシシッピバブルだが、人類は同じような失敗をその後何度も繰り返してきた。一九二九年の「暗黒の木曜日」で破裂したアメリカの株式バブルは、全世界を巻き込む大恐慌を招いた。その後もITバブルなど、人類は幾度もバブルを生み出し、その崩壊によって辛酸を嘗めてきた』、「政府は景気対策や財源の確保などの目的から、紙幣の発行量を増やすことを求めてくることが多い。しかし、これに安易に応じると、過剰流動性が生まれて、インフレ、さらにはバブルを生み出す恐れがある。こうした事態を避けるために、中央銀行は確固とした独立性を持つことが必要となるのだ。 中央銀行総裁であったローは、この独立性を守ることができなかった――。 ここに第二の失敗の本質がある」、「ローはリフレ政策や債務の株式化を発明した天才であったことは間違いない。優れた洞察力で知られる経済学者のジョセフ・シュンペーターも、「あらゆる時代の貨幣理論家のなかで、最上の貨幣理論を構築した人物である」と、ローに賛辞を贈る。また、新古典派経済学の基礎を築いた経済学者アルフレッド・マーシャルも、「向こう見ずで、並外れた、しかし最も魅力的な天才」と、ローを高く評価しているのだ」、確かに偉大な人物のようだ。
・『NTT株とミシシッピ会社の重なり  一九八〇年代後半、プラザ合意に伴う急激な円高による景気悪化に対応して、日本銀行は通貨供給量を急激に増やす金融緩和政策を展開した。あふれ出したマネーは、株式や不動産に流れ込み、価格を押し上げていった。その象徴が、政府が売り出したNTT株の株価暴騰だった。バンク・ロワイアルを日本銀行に、NTTをミシシッピ会社に置き換えれば、その構図が全く同じであったことが分かる。また、政府がNTT株式の売却代金を、歳入の足しにした点でも同じといえるだろう。 「バブルの恩恵を一番受けたのは誰だと思う? それは政府だよ」。こう語ったのは、筆者がテレビ局で記者をしていた時代に知り合った大蔵官僚だ。バブル景気のおかげで所得税や法人税、固定資産税などの税収が急増したことで、一九九一年度からの三年間は赤字国債の発行がゼロになっている。大蔵省がローと同じく、財政赤字削減のためにバブルを起こしたのかと疑いたくもなる。 ジョン・ローはギャンブルの天才であった。「儲けたい!」という人の心理を巧みに読み取り、確実に勝利をものにしてきたのだ。そのローが仕掛けたとてつもなく大きなギャンブルがロー・システムであり、ミシシッピバブルだったのかもしれない。デフレ不況が長引く日本では、ジョン・ローのようにリフレ政策からバブルを起こしてその解消を図るべきとの声もある。その理非はさておき、ジョン・ローの亡霊は、今も世界各地に出没し、人々の心を揺り動かしているのである。(参考文献は省略)』、「デフレ不況が長引く日本では、ジョン・ローのようにリフレ政策からバブルを起こしてその解消を図るべきとの声もある」、「ロー」は「制御」に失敗したが、現在の中央銀行システムは「制御」できると楽観的に捉えるリフレ派もいる。しかし、現在の金融政策の「制御」能力には限界があることを考慮すれば、慎重に考えるべきだろう。
タグ:玉手 義朗氏による「脱獄犯から財務大臣に! 天才ギャンブラーの末路 「リフレ政策」発明者の栄光と挫折」 日経ビジネスオンライン バブル(歴史、一般) (その1)脱獄犯から財務大臣に! 天才ギャンブラーの末路 「リフレ政策」発明者の栄光と挫折、シュンペーターも絶賛!「脱獄した天才経済学者」の末路 「リフレ政策」発明者の栄光と挫折) 「ジョン・ロー」は「かつてフランスの「財務大臣」と「中央銀行総裁」、そして巨大国営企業のトップを兼任する経済界の支配者だった。パリ中心部にあるヴァンドーム広場の三分の一は男のもので、この他にも数多くの不動産を保有する大金持ちでもあった。 我が世の春を謳歌していた男だったが、ある日突然にフランスを追われ、放浪の末にヴェネチアにたどり着いた」、なるほど。 「ミリオネア」という言葉が誕生したのもこのときで、ローの経済政策の恩恵を受けて、大金持ちになった人々を呼ぶためのものだった」、「ミリオネア」の語源を初めて知った。 「ローは女性を巡ってある男と決闘して刺し殺してしまった。殺人罪で死刑判決を受けたロー。人生もこれで終わり……と思われたが、ローは仲間の手助けを受けて脱獄に成功する」、血の気が多かったようだ。 「「ローは逃亡生活の間に、独自の確率論を駆使したギャンブル勝利法を会得し、各地の賭博場を渡り歩いて大儲けしたという。その経験と理論を基に、言葉巧みにフランス政府に、独自の経済政策を売り込んだのだ。 時のフランスはルイ十五世が王位を引き継いだばかり。政府は度重なる戦争と王室の浪費で財政難に喘ぎ、経済は深刻な不況に陥っていた。ところがローは、この危機的な状況を改善する経済政策があると、ルイ十五世の摂政だったオルレアン公フィリップに持ちかけたのだ。) ローはフランス経済が「デフレ状態」にあると考えていた。当時のフランスの貨幣システムは、政府の管理下にある正貨(金貨と銀貨)を使ったもの。政府が財政難になれば、貨幣の流通量が減少する。これによって物価が下落し、収益の悪化から消費が低迷し、これが景気を悪化させて所得が減少し、更なる物価下落と消費の低迷を生む。当時のフランスは、典型的なデフレ不況に陥っていたのである」、「当時のフランスには紙幣が存在していなかった。あるのは自由に増やすことができない正貨だけであり、金融緩和政策の概念すらなかったのである。 では、 どうすればよいのか。ローの答えは簡単だった。 紙幣を発行すればいい」、なるほど。 「ローは「金融緩和策の発明者」であり、人類史上初めてこれを実施して、フランス経済を救った「天才」だったのだ。 絶大な信頼を勝ち取ったバンク・ジェネラルは、一七一八年に国有化され、「バンク・ロワイアル」となる。 「お尋ね者」だったローは、自らの手で「中央銀行」を創設して「総裁」に就任したというわけだ」、 「ローは銀行券を正貨の交換を保証しない「不換紙幣」に変えたのだ。これによってバンク・ロワイアルは、正貨保有量に関係なく、好きなだけ銀行券を発行できるようになる。 正貨という後ろ盾を失ったものの、バンク・ロワイアルが発行する銀行券の信用力が揺らぐことはなかった。銀行券が更に発行されたことで金融緩和策が強化され、フランス経済はより一層の好景気に沸き立つことになる」、なるほど。 「額面五百リーブルの国債が、百五十~百六十リーブル程度の安値で取引されていた。そこでローは、ミシシッピ会社の株式を国債で購入する場合には、額面の五百リーブルで引き取るとしたのだ。 ここからバブルが発生する。 「価値の下がった国債で、金鉱を持つミシシッピ会社の株式が買える! しかも額面価格で!」と投資家は大喜び。額面五百リーブルだったミシシッピ会社の株価は、一七一九年の十二月には一万リーブルを突破する大暴騰を演じる」、なるほど。 「景気回復と財政赤字削減を成し遂げたローは、一七二〇年一月に財務総監に任命される。首相の地位に匹敵する要職だった。「財務大臣」、「中央銀行総裁」、そして巨大国営会社ミシシッピ会社のトップを兼任する「経済界の巨人」が誕生したのだ。 各地に広大な地所を所有するなど、ローの個人資産も膨れ上がった。貴族の称号を与えられたローは、その端正な姿と相まって社交界の花形となる。「お尋ね者」として追われていた男が、流れ着いたフランスで銀行を設立してから、わずか三年でつかんだ栄光であった」、 「ロー・システムがもたらした華々しい成果に政府は狂喜し、フランスは諸外国の羨望の的となった。しかし、その成果はバブルがもたらした一時的なものであり、その崩壊は驚くほど早く始まるのである」、次回の「崩壊」の姿が楽しみだ。 玉手 義朗氏による「シュンペーターも絶賛!「脱獄した天才経済学者」の末路 「リフレ政策」発明者の栄光と挫折」 「バブル」の「崩壊」とは興味深そうだ。 「一部の貴族たちが、銀行券をバンク・ロワイアルに持ち込んで、金貨や銀貨に交換をし始める。これを知った他の人々も不安心理に駆られ、我先にと銀行券を正貨に交換しようとした。「取り付け」が起こったのだ。しかし、バンク・ロワイアルが発行する銀行券は不換紙幣であり、その全てを正貨に交換することは到底できない。 一七二〇年七月、バンク・ロワイアルは、正貨への交換を求める人々の激しい取り付けに対応できずに大混乱となり、十五人もの死者が出る事態となる」、「バンク・ロワイアルの取り付けに合わせるように、ミシシッピ会社の信用も急速に失われ、株価の急落が始まった。少し前まではミシシッピ会社の株式を手に入れようと血眼になっていた人々は、大慌てで売り始め、本当に価値がある金貨や銀貨を手に入れようとしていた」、「ローが編み出した、驚きの株価対策とは何か。 パリにいた数千人ものホームレスを集め、シャベルなどの道具を持たせて港まで 行進させたのだ。「ミシシッピに金が見つかりました。これから掘りに行きます!」と、ミシシッピ会社による開発計画が順調であることをアピールし、信用を取り戻そうとしたのである」、「ホームレスを」使って嘘をつくのは頂けない。 「一七二〇年一月に最高値の一万八千リーブルをつけていたミシシッピ会社の株価は、十月には二千リーブルにまで大暴落し、株式市場は人々の阿鼻叫喚(あびきょうかん)で覆われた。バンク・ロワイアルの銀行券の信用も完全に失われ、誰も受け取ろうとはしなくなったため、経済取引は元の金貨と銀貨の取引に逆戻りしてしまう。ロー・システムは完全に崩壊し、フランス経済は未曾有(みぞう)の大混乱に陥った」、なるほど。 「フランス経済の破壊者という汚名を着せられたまま、生涯を終えることになってしまった」、「フランス」も「ロー」に乗せられたとは不名誉なことだ。 「ジョン・ローは驚くほど短期間にフランス経済を回復させた。ところが、その状態を維持できず、更に深い傷を負わせることになってしまう。その原因はローが自ら発明したリフレ政策の制御に失敗したことと、それによってバブルを発生させたことにある」、なるほど。 「人類史上初めてとなるリフレ政策を断行、フランス経済を立ち直らせたロー。しかし、その後は制御に失敗してバブルを生み出し、その崩壊が経済を破壊してしまった。これがローの失敗の第一の本質なのである」、「ミシシッピ会社の株価暴騰は「ミシシッピバブル」と呼ばれ、オランダの「チューリップバブル」、イギリスの「南海バブル」と並ぶ世界三大バブルの一つに数えられている。しかし、その規模と影響の大きさにおいて、ミシシッピバブルは、ずば抜けて巨大なバブルであった」、なるほど。 「政府は景気対策や財源の確保などの目的から、紙幣の発行量を増やすことを求めてくることが多い。しかし、これに安易に応じると、過剰流動性が生まれて、インフレ、さらにはバブルを生み出す恐れがある。こうした事態を避けるために、中央銀行は確固とした独立性を持つことが必要となるのだ。 中央銀行総裁であったローは、この独立性を守ることができなかった――。 ここに第二の失敗の本質がある」、 「ローはリフレ政策や債務の株式化を発明した天才であったことは間違いない。優れた洞察力で知られる経済学者のジョセフ・シュンペーターも、「あらゆる時代の貨幣理論家のなかで、最上の貨幣理論を構築した人物である」と、ローに賛辞を贈る。また、新古典派経済学の基礎を築いた経済学者アルフレッド・マーシャルも、「向こう見ずで、並外れた、しかし最も魅力的な天才」と、ローを高く評価しているのだ」、確かに偉大な人物のようだ。 「デフレ不況が長引く日本では、ジョン・ローのようにリフレ政策からバブルを起こしてその解消を図るべきとの声もある」、「ロー」は「制御」に失敗したが、現在の中央銀行システムは「制御」できると楽観的に捉えるリフレ派もいる。しかし、現在の金融政策の「制御」能力には限界があることを考慮すれば、慎重に考えるべきだろう。
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