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医療問題(その25)(大前研一「アフターコロナは遠隔診療を新常識にせよ」 オンライン診療が日本で遅れるワケ、安倍政権は厳しい医療費抑制策を復活させた 日本福祉大の二木立名誉教授に聞く医療政策、東京女子医大病院「400人退職」の裏にある混沌 医療スタッフのボーナスをカットした本当の訳) [生活]

医療問題については、5月11日に取上げた。今日は、(その25)(大前研一「アフターコロナは遠隔診療を新常識にせよ」 オンライン診療が日本で遅れるワケ、安倍政権は厳しい医療費抑制策を復活させた 日本福祉大の二木立名誉教授に聞く医療政策、東京女子医大病院「400人退職」の裏にある混沌 医療スタッフのボーナスをカットした本当の訳)である。

先ずは、プレジデント 2020年6月12日号が掲載したビジネス・ブレークスルー大学学長の大前 研一氏による「大前研一「アフターコロナは遠隔診療を新常識にせよ」 オンライン診療が日本で遅れるワケ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/35617
・『オンライン診療はなぜ日本で遅れているのか  2020年4月13日から初診患者のオンライン(遠隔)診療が解禁された。新型コロナウイルス感染症が拡大する中、感染拡大を予防し、医療崩壊を防ぐための特別措置として、感染が収束するまでに限定して、初診患者へのオンライン診療が公的医療保険の対象になったのだ。 オンライン診療とは、パソコンやスマートフォン、タブレット端末などの画像通話機能を活用して診療するシステムのことだ。診療予約から実際の診断、決済までネット上で完結するので、患者は病院に出向く必要は一切ない。当然、院内感染のリスクもない。 オンライン診療はアメリカやカナダなど国土が広く、医師や医療機関へのアクセスが困難な患者が発生しやすい国で早くから発達してきた。電子政府化を進めて今や電子カルテの普及率が100%に達しているフィンランドなども、オンライン診療の先進国といえる。 日本では離島や僻地でのオンライン診療から始まって、段階的に条件が緩められてきたものの、なかなか広がってこなかった。既得権を脅かされることを嫌う医師会の圧力もあるのだが、最大の理由は医師法の壁である。 「医師は、自ら診療しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し……または自ら検案をしないで検案書を交付してはならない」 医師法第20条にこうある。いわゆる「無診察治療」の禁止を定めた条文で、つまり触診なり、聴診なり、問診なり、医師は自分で「診察」したうえで、治療や処方をしなければならないのである。 そもそも無診察治療が禁じられている理由は、患者に適切な医療サービスを提供するためだ。たとえば、問診は電話でも可能だとしても、患者の顔色や容態を視診したり、あるいは同じ部屋で対面して触診や聴診してみなければ、正しい診断を下して処方することができない場合もある。 その後、2018年度の診療報酬改定で「オンライン診療料」が創設されて、オンライン診療の保険適用が始まった。ただし、健康保険が適用される「保険診療」の場合、初診は対面診療に限られてきた。 ということで、情報通信技術(ICT)が日進月歩の進化を遂げているにもかかわらず、日本ではオンライン診療がなかなか広がってこなかったのだ。 今回のコロナ禍で医療現場が逼迫し、医療従事者と患者がリスクにさらされる状況になったために、オンライン診療の有用性が広く認知され、ようやく門戸が少し開いたといえる』、「コロナ禍」の思わぬ副産物だ。
・『門前薬局で待たなくてよくなる  20年4月7日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」で、パンデミックが収束するまでの間、初診でのオンライン診療を認める方針が示された。 解禁された20年4月13日以降、患者からオンライン診療を求められた医師は、診断や処方が可能と医学的に判断すれば、初診の患者でもオンライン診療が行える(初診料の自己負担額は3割負担で642円)。処方には制限があって、麻薬性の鎮痛薬や向精神薬などは認められていない。 また患者のなりすましや、虚偽の申告による処方を防止するために、受診する患者、診察する医師双方ともに顔写真付きの身分証明書や保険証などによる本人確認を行うことが実施要件になっている。 今後、厚労省はウイルス感染の状況、医療現場での実用性や実効性、安全性などの観点から3カ月ごとに検証を行うという。初診患者へのオンライン診療は時限的な措置にとどまって、対面医療を補完するツールに戻るのだろうか。私はそうは思わない。アフターコロナの新常識として定着する可能性は少なくないと見ている。 オンライン診療で薬の処方や受け取りはどうなるのか。薬は医師が書いた処方せんに則って調剤される。処方には病院の中で薬が処方される「院内処方」と、病院が発行する処方せんを調剤薬局に持ち込んで薬を受け取る「院外処方」がある。 最近は院外処方が圧倒的に多い。院外処方にすれば、病院としては薬剤師を雇わずに済むし、院内に薬局用のスペースを設けたり、薬の在庫を持つ必要もなくなるからだ。 病院と院外薬局の蜜月関係もある。病院前にある院外薬局は「門前薬局」とも呼ばれるが、病院と裏でつながっていることが多い。病院はキックバックをもらったり、接待を受けている、という指摘もある。 さて、今回の「コロナ特例」では、初診患者へのオンライン診療解禁とともに、薬剤師による電話などでの服薬指導も解禁された。処方された薬を自宅に送ってもらうことも初診から可能になった。 院外処方の場合でいえば、オンライン診療を受けた後に処方せんの原本が自宅などに送られてきて、それを持って調剤薬局に行って薬を処方してもらう、というのがこれまでの手順だった。「医師は患者に処方せんの原本を提供しなければならない」という決まりがあるからだ。 しかし今回の特例では、オンライン診療を受けた患者の希望する薬局に病院がファクシミリなどで処方せんの情報を送って、それに基づいて薬局が薬を調剤できるようになった。薬ができたら薬局は患者に電話などで連絡を入れて、服薬指導が必要な場合はそれを行ってから、郵送などで薬を送付する。患者はわざわざ薬局に出向かなくていいのだ。 処方せんの原本は、病院と薬局の間でやりとりしてまとめて保管しておく。会計は後日に来局して支払ったり、代金引き換えやクレジットカードなども利用できる。 これもあくまで新型コロナウイルス感染症の流行が収まるまでの特例措置だが、気が気でないのは門前薬局だろう。こうした院外処方が定着して身近な薬局に処方せん情報を送ってもらいたいという患者が増えたら、高い地代や高いコミッションを支払って病院のそばで薬局を経営する“うまみ”がなくなるからだ』、恒常的措置にする場合でも、「門前薬局」の既得権は考慮する必要はないだろう。
・『アメリカではAmazonが薬を届けてくれる  米国サンフランシスコに「プラクティスフュージョン」という電子カルテを管理するクラウドサービスを無料で提供している新興企業がある。この会社は全米の開業医に声を掛けて、約15万の開業医と提携した。開業医が高額な電子カルテのシステムを導入するのは厳しい。それがタダで使えるのだから、開業医がこぞって導入するのも当然だ。 プラクティスフュージョンがどこから収益を得ているかといえば、薬を売る側である。同社の電子カルテシステムを使えば、患者のスマホに診療データや処方せんが送られてくる。必要な薬が近場のどのドラッグストアで売っているかまで表示されるのだ。 今やプラクティスフュージョンのシステムは総合医療の巨大プラットフォームとなり、アメリカの医療システムは激変した。 これに目を付けたのがアマゾンである。アマゾンは18年に「ピルパック」という新興のオンライン薬局を買収した。アメリカは今やプラクティスフュージョンから引き出した処方せんをアマゾンに転送するだけで薬が届く時代になっているのだ。しかも月10ドル払ってアマゾンプライム会員になれば配送無料。月に何度でもOK。さらに「当日お急ぎ便」や「日時指定便」といったサービスまで無料とくれば、ユーザーが殺到しないわけがない』、日本では「アマゾン」経由で薬を受け取るのは、規制上無理だろう。
・『コロナ危機が日本医療システムに与えた、数少ないプラスの貢献  日本薬剤師会が一番恐れているのは、アマゾンが日本でも薬の流通に入り込んでくることだろう。もちろん既得権益と規制の壁は相当に高く、容易には入り込めない。それでも今回のコロナ禍によって、世界から遅れに遅れた日本の医療システムに小さな風穴が開いたのは確かだ。 私はコロナ危機を奇貨としてオンライン医療を患者中心の考え方に根本から見直すべきと考える。カルテが患者のものだ、という認識からクラウド上にすべての個人医療情報を集める。病院が替われば診断や検査をやり直すということも禁じる。遠隔診療のためには医者側が使うAIの充実も欠かせない。検査結果が出たらどのような治療をするべきか、医者の判断を側面支援するデータベースを構築する。 アメリカでは野戦病院で診断結果が出ると、治療に関しては専門家がいない場合が多いので20年も前からこのようなシステムを使っている。医者の処方もすべて個人医療情報システムに入力させ、これを時系列的に追跡できるようにする。このようなデータベースをお互いに共有すればオンラインでも“初診”ということはなくなる。すべての患者は日本の医療システムデータベースでは既存の患者、となるからだ。 今までの医者・病院という提供者の論理から患者中心のシステムに転換する。これができれば、長い間を経た後に、コロナ危機が日本医療システムに与えた数少ないプラスの貢献、と見返す日が来ることを期待しよう』、「医療システムデータベース」は確かに効率的だが、ハッカー攻撃などに抵抗力がなければ、重要なプライバシー情報が流出するリスクがある。

次に、9月18日付け東洋経済オンライン「安倍政権は厳しい医療費抑制策を復活させた 日本福祉大の二木立名誉教授に聞く医療政策」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/376217
・『新型コロナウイルス対策への課題が山積されたまま、安倍晋三・前首相は退陣を表面した。コロナ禍によって医療への関心は高まっているが、安倍政権下で日本の医療界はどのように変わったのか。  安倍政権の7年8カ月を振り返る連続インタビューの4回目は、医療経済や医療政策が専門の二木立・日本福祉大学名誉教授。安倍政権の医療政策を振り返ってもらうとともに、9月16日に発足した菅政権の課題を聞いた(Qは質問、Aは二木氏の回答』、興味深そうだ。
・『ステルス作戦で医療費を抑制  Q:二木さんは、安倍政権が厳しい医療費抑制政策を復活させたと指摘していますが、あまり一般には知られていませんね。 A:今回、私自身も調べてみて驚いた。アベノミクスの成果かどうかは別にして、第2次安倍政権で国内総生産(GDP)の成長率は上昇した。だが、国民医療費の伸び率は、直前の民主党政権の時はもちろん、その前の3代の自民党政権のときよりも低い。医療費を抑制したといわれる小泉純一郎政権の時代でさえ、医療費の対GDP比は微増していた。 経済の伸びに合わせて医療費も大きくなるというのが医療経済学の常識だが、第2次安倍政権でその関係が完全に失われているのは、歴史的にも極めて異例なことだ。 安倍政権が診療報酬全体のマイナス改定を断行した2014年度、2016年度、2018年度の医療費伸び率は改定前より明らかに低下している。このことは、診療報酬の引き下げがストレートに医療費に影響していることを示している。 Q:小泉政権と安倍政権の違いは何だったのでしょうか。 A:小泉政権はいわば劇場的な手法で、日本医師会や自民党の厚労族などを「抵抗勢力」に見立てて敵をつくり、医療分野への市場原理の導入や患者負担の大幅増加を推し進めようとした。 それに対して、安倍政権の医療費抑制政策には小泉政権のような派手さはまったくない。ステルス(秘密)作戦のように、4回あった診療報酬改定ですべて下げて医療費抑制の実を取った』、「経済の伸びに合わせて医療費も大きくなるというのが医療経済学の常識」、医療業界の肩を持った主張だ。下記にみるように医療費と介護費のGDP比は一貫して上昇し、2018年で59.9%とOECDで6番目に多い(日医総研リサーチエッセイ77)。今後の高齢化を踏まえれば、抑制が必要なのは明らかだ。
https://www.jmari.med.or.jp/download/RE077.pdf
・『Q:新型コロナウイルス禍で、医療機関の経営難が広く報道されています。厳しい医療費抑制政策が影響したのでしょうか。 A:厳しい医療費抑制政策が2013年度以降、7年間も続き、医療機関、特に民間の急性期病院の利益率は急減した。福祉医療機構のデータによると、急性期の民間病院の経常利益率は小泉政権のときに0%までに低下した。民主党政権で3%台まで持ち直したと思ったら、安倍政権の医療政策で再び下がり、2016年には0.6%まで低下した。 これではとてもではないが内部留保を蓄積できない。そこに新型コロナが襲い、収入減と費用増によって多くの病院が経営危機に直面している』、「民間の急性期病院の利益率は急減」は確かに問題だが、要因をもっと詳しく分析する必要がある。

第三に、7月16日付け東洋経済オンラインが掲載した ジャーナリストの岩澤 倫彦氏による「東京女子医大病院「400人退職」の裏にある混沌 医療スタッフのボーナスをカットした本当の訳」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/363372
・『東京は、7月になって新型コロナウイルスの新規感染者が連日200人を超え、16日には過去最高となる280人以上の感染を確認。すでに「第2波」に突入した状態だ。 中でも新宿・歌舞伎町は、ホストクラブやキャバクラ、ライブハウスでの集団感染が相次ぎ、新型コロナの「震源地」として警戒されている。 この歌舞伎町から、東へ約1キロメートルに位置する東京女子医科大学病院が、いま大きく揺れている。 新型コロナの診療にあたる、医師、看護師などの医療スタッフに対して、大学は夏のボーナスをゼロに。これに対して、約400人の看護師が一斉に退職の意向を表明したという。 新型コロナの感染拡大を、最後の砦で食い止める医療スタッフが、大幅に収入を減らされてしまう不条理。この背景に存在する、名門大学病院の知られざる実態を追った──』、新聞では簡単に報じられただけだったので、「実態」を是非知りたいところだ。
・『新型コロナと向き合う大学病院  女子医大病院の「総合外来センター」エントランス前には、武骨な白いテントが2つ並ぶ。 通院患者は、発熱やせきなと?の症状がある場合、ここで新型コロナの初期診断を受けなければならない。医師が必要と判断した場合には、PCR検査も行う。 しばらく見ていると、うつむき加減の中年男性を、看護師が別棟の関連施設に誘導していった。看護師が装着しているのは、立体的な形状の特殊なマスク。「N95」と呼ばれる飛沫感染を防止するタイプだ。 「うちの病院は、感染症指定医療機関ではないので、当初は新型コロナ患者を受け入れていませんでした。しかし、東京都から再三の要請を受けて、新型コロナ専用病棟を設置して、約30床のベッドを確保したのです。非常事態ですから当然の対応ですが、病院の経営的には打撃でしたし、マンパワー的にも大変です」 内情を証言してくれたのは、女子医大に勤務する関係者だ。新型コロナの患者は、1つの病室に1人が原則。そのため、病室の稼働率が悪くなり、収益が大きく圧迫されている。 国は新型コロナ患者の重症・中等症患者の病床に1日当たり4万1000円を補助するとしているが、収支が改善する効果はないという。 新型コロナ専用病棟の看護師として、各診療科から有志を集めたが、感染症の専門的なトレーニングを積んだ看護師は限られていた。 海外では診療中に、新型コロナに感染した医療関係者のケースが報じられ、看護師には精神的にも体力的にも強いプレッシャーがかかった。幼い子どもを持つ看護師も多く、互いに励まし合いながら立ち向かう日々。 ようやく感染拡大の第1波を乗り切ったところへ、大学側から職員に非情な通告が突きつけられた──。 「今期の上半期賞与は支給しない」 6月11日、団体交渉に臨んだ女子医大の労働組合に対して、大学当局はボーナスゼロの回答を行った。対象は、医師、看護師、検査技師から事務職まで全職員だ。 労働組合には、生活に対する不安と、大学当局に対する怒りや不信の声が寄せられた。 「奨学金の返金もできません。食費の確保もできません。生きていけません。毎日、不安で不安で、正直眠れないです」(20代・女性) 「説明もなしに、いきなりボーナス全額カットなんて詐欺もいいところ。職員はボランティアですか?」(20代・看護師) 「私たちが必死でやってきたことに、感謝すら感じていないのだと思い、本当に涙が出ます」(30代・看護師) 「どこまで頑張る職員を侮辱し、痛めつければ気が済むのですか?職員が病気になりますよ」(30代・医療技術者) 実は、ボーナスゼロには伏線があった。 新型コロナの第1波を受けて、外来患者が大きく減少したため、女子医大は職員の一部を「一時帰休」させた。 いわゆる自宅待機だが、その期間の給与は4割減。当然、職員からは反発の声が上がったが、方針は変わらなかった。 女子医大には、新宿の本院のほかに2つの病院があり、看護師だけで2206人が働く(女子医大HPより)。今回のボーナスゼロ回答を受けて、全看護師の5分の1にあたる約400人が退職の意向を示したという。 6月25日、再交渉に臨んだ労働組合に対し、大学当局の代理人である弁護士からは、神経を逆なでする発言が繰り返された』、「国は新型コロナ患者の重症・中等症患者の病床に1日当たり4万1000円を補助するとしているが、収支が改善する効果はない」、引き受けて損がないよう十分に補助すべきだろう。しかし、「大学当局」の姿勢は極めて高圧的だ。
・『「足りなければ補充するしかない」  組合:「女子医大よりも減収額が大きい大学でもボーナスは出ている」 大学:「減収と赤字は違う。うちは30億円の赤字だ」 組合:「中小の病院も赤字に苦しんでいる。それでも職員のことを考えて、借りてでもボーナスを支給しているところもある」 大学:「女子医大も借りて支給せよということですか。そんな不健全な経営は間違っているし、やるつもりもない」 組合:「看護師の希望退職者が400人を超えることについてどう考える?」 大学:「深刻だと思うが、足りなければ補充するしかない。現在はベッドの稼働率が落ちているので、仮に400人が辞めてもなんとか回るのでは。これは完全に経営の問題であり、組合に心配してもらうことではない」 今期、30億円の赤字になる、という弁護士の主張について、女子医大関係者に聞くと、意外なカラクリがあるという。 「30億円の赤字は、ボーナスを前年並みに支給した場合の推計値です。結局、ボーナスはゼロだったわけですから、30億円の赤字は理屈に合いませんね」 女子医大関係者は、看護師の離職について、大学側の認識を明かした。 「毎年、ウチでは300人前後の看護師が入れ替わっています。若い看護師にブランド病院として人気が高く、キャリアを積んで比較的短期間で辞めていく人が多いからです」 また、若い看護師を次々に入れ替えるほうが、人件費は安く済むという現実もある。 実際、女子医大では来年度に向けて、すでに330人の看護師を募集していた。 ただし、今回は例年を超える大量の離職者が出ることが必至。現場にも悪影響が出ているという声が、労働組合に寄せられている。 「ただでさえ看護師が足りていないのに、ここから辞めてしまったら経験者もいなくなり、患者の安全も守れないでしょう」(30代・看護師) 「私たち看護職がいなくなったら、誰が看護をするんですか?看護の質も下がり、インシデント(※)の数は増えていませんか?このままでよいのですか?」(20代・看護師) (※)重大な事件・事故に発展する可能性がある事象やミス  同じ新宿区内にある東京医科大学病院では、ボーナスは例年と変わらず、さらにコロナ特別手当として医師、看護師などに月額2万円が支給されている。都内の別の大学病院でもコロナ手当があり、今夏のボーナスがゼロというところはない。 東京女子医大だけがなぜ違うのか。探っていくと、名門大学病院の知られざる「裏の顔」が浮かび上がってきた』、「「毎年、ウチでは300人前後の看護師が入れ替わっています。若い看護師にブランド病院として人気が高く、キャリアを積んで比較的短期間で辞めていく人が多いからです」、「東京女子医大」の強行な姿勢の背後には、思い上がりの強さがあるようだ。
・『名門大学病院の凋落を招いた、医療事故と同族経営  外科医の本田宏氏は弘前大学医学部を卒業後、1981年に女子医大の医局に入った。 「心臓、肝臓、腎臓などの外科手術で、日本トップレベルの医者たちが女子医大に集まっていました。当時、自他共に認める名門大学病院だったのです。ここで私は肝臓の移植医になるつもりでした。でも、実際に入ってみると、まるで西部劇のような大学で、給料も安く、若手の医者や看護師はディスポーザブル(使い捨て)のように扱われていたのです」 当時、ガチガチの“男社会”だった日本の医療界。東京女子医大でさえ、生え抜きの女医が教授になるケースは多くなかった。 そこで、腕に自信のある医者たちが、全国各地から一旗あげようと東京女子医大に集まっていたのである。これが本田医師の目には「西部劇」のように映ったという。 腎臓移植や人工心肺装置の開発などで、女子医大は日本を代表する大学病院の地位を確立。1日の外来患者数は、約4000人と人気が高かった。 しかし、名門病院のブランドは、2001年に起きた心臓手術の死亡事故を契機に一変する。 2人の医師が逮捕され、執刀医(講師)は患者のカルテを改ざんした証拠隠滅罪で有罪判決が確定。もう1人の医師(助手)は、女子医大による内部報告書で、事故原因の責任を押しつけられたが、刑事裁判では無罪判決となった。裁判の過程で、組織ぐるみの隠蔽工作が明らかになり、後に女子医大は助手だった医師に謝罪と損害賠償を支払っている。 ガバナンスの欠如を重視した厚生労働省は、女子医大の特定機能病院の指定を取り消した。外来患者数が急減した女子医大は、一気に赤字経営へと転落したのである。 特定機能病院の指定は2007年に再承認されたが、2014年に再び重大な死亡事故が発覚する。 2014年、女子医大のICU(集中治療室)で治療中の2歳児が、プロポフォールという鎮静薬を大量投与され、3日後に死亡した。プロポフォールは、ICUで人工呼吸中の子どもに使用を禁止されていたことから、女子医大の管理責任が問われた。 さらに女子医大では、ほかに63人の子どもにもプロポフォールを投与、そのうち12人が投与後3年以内に死亡していたことが明らかになる(女子医大側は、投与と死亡の因果関係を否定)。 この問題をめぐって、女子医大の理事長と学長の内部対立をさらけ出し、遺族への対応のまずさも目立った。 「女子医大は2度死んだ」と、勤務する医師が嘆くほど、2つの事故によって、かつての栄光は地に堕ちたのである。 厚生労働省は、改めて女子医大の特定機能病院の承認を取り消した。外来患者の減少と評価の高い看板医師の流出が起こり、女子医大は3期連続の赤字に逆戻りする。経営立て直しのために、人件費の抑制が行われ、職員のボーナスは、2013年から2016年までの3年間で、最大123万円も減額された(労働組合調べ)。このとき、労務担当理事として大なたを振るったのが、去年から理事長に就任している岩本絹子氏である。 「岩本氏は、東京・江戸川区の産婦人科クリニックで院長をしていましたが、創業者一族として女子医大の運営に乗り出してきました。厳しい人で、書類を投げつけるときもあるそうです。誰も意見できない雰囲気で、まるで独裁者だと揶揄する職員もいます」(女子医大関係者)』、「外科手術で、日本トップレベルの医者たちが女子医大に集まっていました。当時、自他共に認める名門大学病院だった」、のに、「2つの事故によって、かつての栄光は地に堕ちた」、「経営立て直しのために、人件費の抑制が行われ、職員のボーナスは、2013年から2016年までの3年間で、最大123万円も減額」、「労務担当理事として大なたを振るったのが、去年から理事長に就任している岩本絹子氏」、「創業者一族として女子医大の運営に乗り出してきました」、「まるで独裁者だと揶揄する職員も」、病院のガバナンスがまるで機能してないようだ、これを放置している当局の姿勢も問題だ。
・『人件費切り詰めの一方で施設整備に巨額費用投下  岩本理事長に対する女子医大職員の反発は大きい。それは、ボーナスカットなど強引に人件費を切り詰める一方で、総額1000億円と言われる、莫大な資金を投入して、大学施設の建て替えや移転などの再整備を進めているからだ。 極めつきは、今年2月に完成した新校舎の改修工事である。職員によると、6億2000万円をかけて、新たに理事長室などを設置しているという。 「赤字だったら理事長室にかけるお金もないはず。コロナに便乗して、本当はもらえるはずのお金を経営に回しているだけ。職員を駒扱いにして働かせるだけ働かせて、報酬なしなんてありえません」(30代・看護師)」 「理事諸室の工事さえ始めさえしなければ、億単位の無駄遣いは減らせたと思います」(20代女性)※労働組合に寄せられた投稿より 学内では、岩本理事長の強気な大学運営を可能にしているのは、自民党との強いパイプだと言われている。 批判を浴びている新校舎の竣工式には、二階俊博幹事長が駆けつけた。ちなみに、二階氏の母親は女子医大出身の医師だったという。 日本医療労働組合連合会の調査によると、夏のボーナスについて回答した全国の医療機関338のうち、約3割が去年より支給額が下がった。 ただし、「ボーナスゼロ」は、女子医大のみ。 新型コロナによって通院を控える患者が多く、大半の医療機関が前年より収益が激減している現実もある。 民間の船橋二和病院(千葉県)は、新型コロナの対応で発熱外来や専用病床を用意するなど、職員たちは対応に追われてきた。しかし、夏のボーナスは、前年の1.5カ月分から、0.9カ月に減額されたという。 一方、約100億円の費用をかけて、病院の建て替え計画は予定どおり進む。 このまま黙っていると、いずれボーナスがなくなるかもしれない。強い危機感から、たった9人の小さな労働組合が、今月10日にストライキを決行した。 「自治体から要請されて、頑張って新型コロナの対応をした。病院の減収分を自治体は補填してくれないので(病院が)自前でやるしかない。だからボーナス削減、というのが病院経営者の言い分。 でも、『なぜ私たちのボーナスを削るの?』という疑問があって、今回のストライキ行動では、千葉県や船橋市にも要請を行いました」(書記長の内科医・柳澤裕子氏) ▽人件費を削られる医療スタッフにも生活がある(「いま医療機関は、どこも人件費を削らないと経営できない状況になっています。でも、職員たちにも生活があるわけです。高校生や大学生の子どもには学費、親の介護。住宅ローンがあれば、ボーナス期にたくさん支払いがあるわけで、本当に切実な問題なのです」(組合員の医師・関口麻理子氏) 茨城県つくば市の地域医療を支える「坂根Mクリニック」。 坂根みち子院長によると、外来患者の受診控えなどの影響で、去年同期と比較して利益は3割減。それでも、ボーナスは内部留保を取り崩して、例年どおり支給した。 「新型コロナで、職員は大変な思いをしてきたから、ボーナスを出すのは当然のことだと思っています。国は診療所に対して1人当たり5万円の慰労金を出すそうですが、私たちに必要なのは、1回きりの慰労金ではなく、持続可能なシステムにするための抜本的な診療報酬の見直しです」(坂根院長) 厚生労働省は医療費の削減に躍起だが、相次ぐ診療報酬の切り下げで、医療機関はどこもギリギリの経営を続けてきた。 新型コロナの「第2波」で、とどめを刺されて経営破綻する医療機関が続出する可能性も出てきた。欧米で起きた医療崩壊は、すぐそこに迫っている。 ところで、女子医大関係者によると、大学当局は銀行から借り入れして夏のボーナスを支給する方向で準備を進めているという。 医療スタッフたちの苦労が、少しでも報われることを願うばかりだ』、「人件費切り詰めの一方で施設整備に巨額費用投下」、経営のガバナンスはデタラメのようだ。「自民党との強いパイプ・・・新校舎の竣工式には、二階俊博幹事長が駆けつけた。ちなみに、二階氏の母親は女子医大出身の医師」、これでは厚労省など手も足も出ないのも納得である。「大学当局は銀行から借り入れして夏のボーナスを支給する方向で準備を進めている」、目先は混乱を収拾できても、「二階氏」がバックにいるのであれば、ガバナンスの問題解決は期待できなそうだ。
タグ:医療問題 大前 研一 東洋経済オンライン プレジデント 東京女子医科大学病院 (その25)(大前研一「アフターコロナは遠隔診療を新常識にせよ」 オンライン診療が日本で遅れるワケ、安倍政権は厳しい医療費抑制策を復活させた 日本福祉大の二木立名誉教授に聞く医療政策、東京女子医大病院「400人退職」の裏にある混沌 医療スタッフのボーナスをカットした本当の訳) 「大前研一「アフターコロナは遠隔診療を新常識にせよ」 オンライン診療が日本で遅れるワケ」 オンライン診療はなぜ日本で遅れているのか 門前薬局で待たなくてよくなる アメリカではAmazonが薬を届けてくれる コロナ危機が日本医療システムに与えた、数少ないプラスの貢献 医療システムデータベース」は確かに効率的だが、ハッカー攻撃などに抵抗力がなければ、重要なプライバシー情報が流出するリスクがある 「安倍政権は厳しい医療費抑制策を復活させた 日本福祉大の二木立名誉教授に聞く医療政策」 ステルス作戦で医療費を抑制 経済の伸びに合わせて医療費も大きくなるというのが医療経済学の常識」、医療業界の肩を持った主張 「民間の急性期病院の利益率は急減」は確かに問題だが、要因をもっと詳しく分析する必要 岩澤 倫彦 「東京女子医大病院「400人退職」の裏にある混沌 医療スタッフのボーナスをカットした本当の訳」 夏のボーナスをゼロに。これに対して、約400人の看護師が一斉に退職の意向を表明 新型コロナと向き合う大学病院 国は新型コロナ患者の重症・中等症患者の病床に1日当たり4万1000円を補助するとしているが、収支が改善する効果はないという 引き受けて損がないよう十分に補助すべきだろう 「大学当局」の姿勢は極めて高圧的 足りなければ補充するしかない 「毎年、ウチでは300人前後の看護師が入れ替わっています。若い看護師にブランド病院として人気が高く、キャリアを積んで比較的短期間で辞めていく人が多いからです 名門大学病院の凋落を招いた、医療事故と同族経営 外科手術で、日本トップレベルの医者たちが女子医大に集まっていました。当時、自他共に認める名門大学病院だった 2つの事故によって、かつての栄光は地に堕ちた 経営立て直しのために、人件費の抑制が行われ、職員のボーナスは、2013年から2016年までの3年間で、最大123万円も減額 労務担当理事として大なたを振るったのが、去年から理事長に就任している岩本絹子氏 創業者一族として女子医大の運営に乗り出してきました まるで独裁者だと揶揄する職員も 病院のガバナンスがまるで機能してないようだ 人件費切り詰めの一方で施設整備に巨額費用投下 自民党との強いパイプ 新校舎の竣工式には、二階俊博幹事長が駆けつけた。ちなみに、二階氏の母親は女子医大出身の医師 厚労省など手も足も出ないのも納得である 大学当局は銀行から借り入れして夏のボーナスを支給する方向で準備を進めている 目先は混乱を収拾できても、「二階氏」がバックにいるのであれば、ガバナンスの問題解決は期待できなそうだ
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健康(その10)(「よく走る人ほど風邪ひきやすい訳」 「免疫力UP」の誘い文句は疑ったほうがいい、「熱中症」で見落とされがちな3つのポイント 水やお茶だけでは「水分補給」には不十分だ、高齢者の脳の若返りに有酸素運動が有効な理由、浅い眠り「レム睡眠」の長さが寿命に影響する?) [生活]

健康については、3月6日に取上げた。今日は、(その10)(「よく走る人ほど風邪ひきやすい訳」 「免疫力UP」の誘い文句は疑ったほうがいい、「熱中症」で見落とされがちな3つのポイント 水やお茶だけでは「水分補給」には不十分だ、高齢者の脳の若返りに有酸素運動が有効な理由、浅い眠り「レム睡眠」の長さが寿命に影響する?)である。

先ずは、5月10日付け東洋経済オンラインが掲載した神戸大学教授(感染症内科)の岩田 健太郎氏による「岩田健太郎「よく走る人ほど風邪ひきやすい訳」 「免疫力UP」の誘い文句は疑ったほうがいい」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/348107
・『なぜよく走る人ほど風邪をひきやすいのか? 日本人が知らない「免疫力の基本」について、2月に横浜港に停泊したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の内情を告発して注目を集めた、神戸大学感染症内科の岩田健太郎教授が解説。新書『新型コロナウイルスの真実』から一部抜粋・再構成してお届けする。  巷では「〇〇を食べたら治った!」みたいな話が出回っているようですが、基本的に取るに足りません。今のところ、新型コロナウイルスに関して「これをやったら治る」とか「予防に効く」ような食品はありません。 何しろ、現在の段階では、堅牢な臨床試験で証明された治療薬が存在しないわけですから、「私はこれ飲んだら大丈夫だった」みたいな納豆とかヨーグルトとか、ホメオパシーのレメディみたいなやつも全部でたらめだと思っていい。 そもそも、一般論として「免疫力アップ」という言葉はだいたいインチキだと思っていいんです。 ステロイドとか免疫抑制剤のように、免疫力を「下げるもの」の候補は世の中にたくさんあります。あとで説明しますが、免疫力を下げる行動もたくさんあります』、医薬品にも広告規制があるのに、「免疫力アップ」などの誇大広告が横行しているのは、下記のような厚労省の規制が緩過ぎるためなのだろう。有力医師のかなりが製薬業界から金をもらっていることもあって、「岩田」氏のような勇気ある告発は貴重だ。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html
・『そもそも「免疫力」とは何か?  でも、免疫力を総合的に上げる方法って、ないんです。それを理解してもらうために、「そもそも免疫力とは何なのか」についてお話ししましょう。 「免疫力」とは病原体に対抗する力、つまり生体防御反応の強さのことです。これは、強くなれば強くなるほどいいものではなく、むしろ害になります。 例えばアトピー性皮膚炎や喘息、花粉症、関節リウマチなどの症状は「自己免疫疾患」に分類されますが、これらは全部免疫力が高すぎるがゆえに起きた弊害です。 つまり、免疫力ってバランスなので、高すぎても低すぎてもダメなので、「免疫力アップ」を売り物にしている時点で、既に間違いです。 ぼくも学生の頃に、免疫細胞の機能に関する実験をしていましたけど、一般的に免疫力アップを謳う医者がいたら、その人はインチキだと決めつけてほぼ間違いないでしょう。 それではインチキでなく免疫力を上げる方法はないのかというと、一つだけあります(専門家であれば「他にもある」と反論するでしょうが、一般の方が知っておいたほうがいいのは「一つだけ」です)。それはワクチンです。 ワクチンは、特定の病原体に対する免疫力を高めて防御するもので、典型的なものは麻疹のワクチンです。 麻疹は普通の感染防御が全く通用しない、たいへん怖い感染症ですが、ワクチンはすごく効く。だからみんな麻疹に罹らなくて済んでいるんですね。 麻疹のウイルスは新型コロナウイルスなんかよりもはるかに感染力が強いですから、ワクチンがなかったら世界中麻疹だらけになって大変なことになっているわけで、我々が麻疹にならなくて済んでいるのは、ワクチンがあり、ちゃんと接種しているからなんです。 日本の感染症でいえば、日本脳炎も同様です。日本脳炎ウイルスは豚の中に生息していて、夏になると蚊を介して人間に感染します。じつは、豚の体内のウイルスを排除できないので、日本中、ウイルスだらけなんですよ。 でも日本脳炎って、今の日本ではめったに起きないですよね。それは子供の頃にちゃんと日本脳炎ワクチンを打ってるからなんです。 このようにワクチンは、我々は普段自覚はしないですけど、ちゃんと我々の体を守ってくれているんです』、「免疫力ってバランスなので、高すぎても低すぎてもダメなので、「免疫力アップ」を売り物にしている時点で、既に間違いです」、その通りなのだろう。
・『調子が悪い=ただの疲労  「免疫力」は、目に見えないので、自覚できないものです。「お酒を飲み過ぎて肝臓の調子が悪い」とか「食い過ぎて胃の調子が悪い」とかは自覚できるけど、「いま免疫が弱ってる」みたいなことは自覚できない。体の調子が悪いときに「ちょっと免疫が落ちてるな」みたいに言っちゃうこともあるでしょうが、それは免疫とはまた無関係な、ただの疲労のことが多いですね。 それではワクチン以外では免疫は変わらないかというと、一過的に下がることはよくあります。例えばぼくはマラソンをしますが、一般的に、フルマラソンをした後は数週間、免疫が下がるといわれてます。だからフルマラソンの後は風邪をひきやすくなるんですね。 マラソンのような無理をして免疫力が下がることはよくあるんですけど、かといってアップする方法はない。でもあえて言うならば、免疫力をメンテナンスする、正常な状態に維持する方法ならあります。 それは休養、睡眠、適度な運動……「適度」というのは、マラソンみたいな過度な運動じゃなくて普通の運動ですね、そして食事栄養のバランスです。食事も特別なサプリメントとか必要なくて、果物とか野菜に入っているビタミンを摂れば十分です。休養、睡眠、運動、食事……要するに普通にするのが一番なんです。 特別なことをする必要は一切ありません。と言われても「その普通が難しいんだよ!」と思う方も多いですよね。日本の社会の場合、「普通のこと」ができないから、その結果として病気になる人も多い。けれども、残念ですが、睡眠不足を睡眠以外の方法で補うことはできません』、「フルマラソンをした後は数週間、免疫が下がるといわれてます。だからフルマラソンの後は風邪をひきやすくなる」、初めて知った。「免疫力をメンテナンスする、正常な状態に維持する方法ならあります。 それは休養、睡眠、適度な運動」、なるほど。
・『栄養ドリンクもあまり意味がない  睡眠不足が原因で病気になりやすい人は寝るのが一番だし、疲労がたまっている人は休養を取るしかない。疲れているときに栄養ドリンクを飲んでも意味はありません。あれにはビタミン以外にもアルコールとかカフェインとかが入っていて、「疲れてないよ」と錯覚を与える効果があるんです。 なんか元気になった気分になるけど、疲労そのものを取ってるわけではなく、単に自分をごまかしてるだけなんです。昔、よく鉱山とかでヒロポン注射を打って、疲労困憊の人たちを無理やり働かせたわけですけど、やっていることはそれと一緒です。 繰り返しますが、疲れている人は休養、寝不足の人は睡眠、栄養が足りない人は栄養、運動してない人は適度な運動と、普通のことをするしかない。バランスなのです。免疫力はメンテナンスするものであって、アップするものではない、という考え方が大事になってきます』、「栄養ドリンク・・・にはビタミン以外にもアルコールとかカフェインとかが入っていて、「疲れてないよ」と錯覚を与える効果があるんです。 なんか元気になった気分になるけど、疲労そのものを取ってるわけではなく、単に自分をごまかしてるだけなんです』、私は「栄養ドリンク」は飲まないようにしているが、やはり「自分をごまかしてるだけ」、なのに、堂々とテレビCMを流しているとは悪質だ。

次に、8月31日付け東洋経済オンラインが掲載した 医師・産業医の上原 桃子氏による「「熱中症」で見落とされがちな3つのポイント 水やお茶だけでは「水分補給」には不十分だ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/371085
・『首都圏では連日最高気温30度以上が続き、1週間で1万人以上が熱中症で搬送されるなど酷暑が続いています。 近年は、在宅勤務の増加に伴い、炎天下での運動による熱中症だけでなく、屋内で発症する熱中症が増えてきていることが問題視されています。子どもや高齢者のみならず働く若い世代でも注意が必要です』、夕方のTVニュースで、ある小学校で運動会の練習で多くの生徒が熱中症で救急搬送されたとあったが、こんな暑いなかで運動会の練習とは全く馬鹿な学校だ。これ以前にも同様の例があったのに、同じ過ちを繰り返すとは・・・。
・『熱中症とは?  以前は日射病・熱射病・熱失神・熱痙攣などさまざまな呼び方がありましたが、現在はこれらをまとめて「熱中症」と呼び、その重症度を1~3度の3段階に分けて表しています。 1度:(日射病)「自身で対処できる段階」 めまい、立ち眩み、生あくび、大量発汗、強いのどの渇き 2度:(熱疲労)「医療機関の受診をすすめる段階」 頭痛、嘔吐、倦怠感、軽い意識障害 3度:(熱射病)「入院が必要な段階」 重い意識障害とともに肝臓や腎臓、脳など臓器に影響 ただし、これらはあくまでもガイドラインに沿った分類です。一口に倦怠感といっても「ちょっとだるい」「ぐったりして動けない」というように症状はさまざまで、症状も刻一刻と変わるため、いつ受診するべきかを日常生活で判断するのは大変難しいことです。 すると元気に歩いてきて「なんとなくだるい」とおっしゃるような不要な救急受診が起こる一方、命に関わる症状にもかかわらず受診しないケースも出てしまい、医療機関側でこれをすべてケアするのは非常に困難です。 したがって、「まず熱中症にならないよう自分自身で予防する」ことが重要です。熱中症の予防には3つのポイントがあります。それは「水分補給」「暑い環境からの回避」「冷却」です。 熱中症では汗などで水分とともに塩分が失われるため、0.1~0.2%の食塩水、つまり1Lの水に対して1~2g(およそひとつまみ)の食塩が含まれるものがよいとされています。水やお茶だけでは「水分」は補給できても塩分を含まないためうまく身体に吸収されません。 最適な飲みものは経口補水液(いわゆる「OS-1」)であり、これには医療用の輸液に近い成分が含まれています。最近では高齢者でも安心して飲めるよう、誤嚥のしにくいゼリータイプのものも市販されているようです。こちらももちろん同様の効果があります。 市販のスポーツドリンクも塩分が含まれるため熱中症予防に効果的ですが、経口補水液に比べて塩分が少なく、糖分が多いことに注意する必要があります。飲みすぎは「ペットボトル症候群」と呼ばれるような、血糖値が上がるためにのどが渇き、またスポーツドリンクを飲むという悪循環に陥る可能性があります。 経口補水液の味が苦手な方は、スポーツドリンクに頼りすぎることなく、梅干しやお味噌汁、塩飴と一緒に水やお茶を摂取することで水分と塩分を同時に補うようにしましょう。 逆に水分補給として不適切なものは、コーヒーなどカフェインを含むもの、そしてお酒です。嗜好品としておいしく飲むのはいいことですが、カフェインやアルコールには利尿作用があるため、水分補給という意味ではむしろ脱水になってしまうのです。 飲み物を飲むタイミングは「のどが渇く前に、こまめに」が基本です。とくに寝起きやお風呂上りには身体が脱水状態になっているため、コップ1杯の飲料を必ず飲むようにしましょう。1日の目安となる水分量は約1.2Lです』、「ペットボトル症候群」まであるとは初めて知った。
・『暑い環境からの回避と冷却の方法  熱中症は、身体の外への熱放出がうまくできず体温が著しく上昇した状態をいいますが、これには温度・湿度・風速・太陽からの日射が関係します。見落とされがちなのは湿度で、湿度が高いと汗が蒸発せず熱がこもってしまいます。湿度の高い日は、たとえ曇りでも水分補給を十分行うようにしましょう。 室内の環境を適切に涼しく整えることも、熱中症予防には非常に重要です。室内ではやはりエアコンが素早く効果的です。温度調節はもちろん、除湿機能で湿度を下げて風量調節で適度な風を送ることも可能です。 ここで毎年問題視されているのは「エアコン嫌い」の方が多くいることです。熱中症で搬送された人の8割がエアコンをつけていないという報道もありました。にもかかわらず使用しない方が案外多いという印象です。 理由はさまざまですが、風が身体に当たるのが不快であれば風向き調節で吹き出し口を上方向にする、ブランケットを羽織ることで対策になります。電気代が気になる場合は、カーテンなどで外からの熱を遮断する、サーキュレーター(空気を循環させるもの)を併用することで冷房効率を上げることができます。 また、加齢に伴って体温調節機能が低下するため暑さを感じにくく、エアコンなどの必要性を感じなくなってしまう方も多くいらっしゃいます。温度計や湿度計を設置することで、視覚的に目標の温度・湿度をわかりやすくして温度調節をするとよいでしょう。 それでも室内が暑くつらい日は、保冷剤などをタオルに包んで首・わきの下・足の付け根といった太い血管が通る場所を中心に冷やしましょう。冷えた血液が全身に回りやすくなり、たいへん効果的です。 熱中症予防の3つのポイントを押さえ、残暑の季節も健康に乗り切っていきましょう』、私も「エアコン嫌い」なので、大いに気を付けたい。

第三に、5月31日付けダイヤモンド・オンラインがヘルスデーニュースを転載した「高齢者の脳の若返りに有酸素運動が有効な理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/238846
・『有酸素運動が高齢者の脳を若返らせる?  たとえ長い間、座ってばかりいる生活を送っていた高齢の人でも、有酸素運動を半年間行うことで、思考力や記憶力は向上する可能性があるとする研究結果を、カルガリー大学医学部(カナダ)のMarc Poulin氏らが報告した。有酸素運動により脳への血流が増大し、加齢による影響にも対抗できるのだという。Poulin氏は「どんな人でも、加齢とともに頭脳や身体は衰えるものだ。しかし、年をとってからでも運動を始めることは、脳にとても大きなベネフィットをもたらす可能性がある」と述べている。この研究論文は「Neurology」5月13日オンライン版に掲載された。 この研究は、記憶障害や心疾患の既往がない成人206人(平均年齢66歳)を対象にしたもの。Poulin氏らは、思考力と記憶力に関する試験を研究の開始時と終了後に実施して、対象者の認知機能を評価したほか、経頭蓋超音波検査で脳の血流速度を測定した。対象者は、週3回の監督つき運動プログラムを6カ月間行った。運動量は、1日平均20分から始めて、1日平均40分以上まで徐々に増やしていった。さらに、対象者は週に1回、自分自身で運動するようにとの指示を受けていた』、私も1日1万歩をしているので、「思考力や記憶力は向上する可能性がある」とは嬉しいニュースだ。
・『言語流暢性の領域では5歳の若返りに相当する効果も  その結果、運動プログラム終了時点で、対象者の実行機能に5.7%の改善が認められた。実行機能には、集中する、計画する、指示を思い出す、並行作業を行うなどに関する能力が含まれる。また、情報処理速度の指標である言語流暢性は2.4%向上していた。Poulin氏は「この言語流暢性の改善は、5歳の若返りに相当するものだ」と述べている。 さらに、試験終了後の脳への血流は、試験開始前と比べて平均2.8%増大しており、通常、加齢とともに低下する思考力の改善に関連していた。Poulin氏は「われわれの研究から、活発な運動を6カ月間続けることで、脳への血流が増大し、言語能力のほか、記憶力や頭脳明晰さも向上する可能性が示された」とした上で、「年齢的には、正常な老化により低下していくはずのこうした能力が、逆に向上したという事実は非常に興味深い」と述べている。 Poulin氏は「有酸素運動が全身の血流改善に寄与することは分かっていたが、今回の研究で、脳内の、特に言語流暢性や実行機能に関わる領域への血流も改善する可能性のあることが分かった。この知見は、アルツハイマー病をはじめとする、認知症や脳疾患のリスクがある高齢者には特に重要だと思われる」との見方を示している。(HealthDay News 2020年5月15日)』、「この言語流暢性の改善は、5歳の若返りに相当するものだ」、1日1万歩への意欲がますます高まった。

第四に、7月18日付けダイヤモンド・オンラインがヘルスデーニュースを転載した「浅い眠り「レム睡眠」の長さが寿命に影響する?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/243488
・『「レム睡眠」の長さは寿命に影響する?  健康を保つには深い眠りが欠かせないとされるが、浅い眠りであっても、短すぎると健康に影響するようだ。米スタンフォード大学のEileen Leary氏らの研究から、浅い眠りの「レム睡眠」の時間が短すぎると寿命が短縮する可能性があることが分かった。研究結果の詳細は「JAMA Neurology」7月6日オンライン版に掲載された。 レム睡眠とは、眠っていても眼球が動いている浅い眠りの状態で、急速眼球運動(Rapid Eye Movement)の頭文字をとって「REM(レム)」と呼ばれる状態の睡眠のこと。レム睡眠中には夢をよく見るとされ、この間に身体の疲労回復を図っていると考えられている。 Leary氏らは今回、平均年齢76.3歳の男性2,675人を中央値で12.1年追跡したデータと、別の研究に参加した成人男女1,386人(男性54.3%、平均年齢51.5歳)を中央値で20.8年追跡したデータを分析し、レム睡眠の長さと死亡リスクとの関連について調べた。 その結果、総睡眠時間に占めるレム睡眠の割合が低いことが、心血管疾患などによる死亡リスクだけでなく、あらゆる原因による早期死亡リスクの上昇と関連することが明らかになった。高齢男性のコホートのデータからは、総睡眠時間に占めるレム睡眠の割合が5%減るごとに、心血管疾患による死亡率、および全死亡率がいずれも13%上昇することが示された。また、このような関連は、より年齢が若い男女のコホートでも同様に認められた。 Leary氏は、「数多くの研究で、睡眠不足は健康に重大な影響を及ぼすことが報告されている。ところが、いまだに睡眠を軽視し、十分な睡眠を取ろうとしない人も少なくない」と指摘。その上で、「忙しくペースの速い生活を送る中で、睡眠は時間の無駄だと感じてしまうこともあるかもしれない。しかし、今回の研究から、独立した2つの集団でレム睡眠の時間が短いと死亡率が上昇する可能性が示された」と説明している。 また、Leary氏は、「レム睡眠は信頼性の高い死亡の予測因子だと考えられる。レム睡眠を保つためのアプローチは、治療の効果にも影響を及ぼし、死亡リスクの低下につながる可能性がある。そのようなアプローチは、特に、レム睡眠の比率が睡眠時間全体の15%にも満たない成人の死亡リスク低減にとって有望だと思われる」と述べている。 ただし、Leary氏は、この研究は、レム睡眠が短いことと早期死亡リスク上昇の因果関係を証明したものではないとし、「今回の研究結果のみに基づいてレム睡眠の時間を延ばすことを推奨するのは時期尚早だ」と断っている。 付随論評の著者の一人で、米フロリダ大学神経学准教授のMichael Jaffee氏は、「これまでの研究は総睡眠時間に着目したものがほとんどで、睡眠時間は長すぎても短すぎても早期死亡リスクの上昇と関連するとされていた。しかし、今回のLeary氏らの研究からは、総睡眠時間だけでなく、レム睡眠を含めて、さまざまな段階の睡眠時間のバランスを取ることも重要である可能性が示された」とこの研究の意義を強調する。 今回の結果を踏まえJaffee氏は、医師に対し、患者が閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)などの、レム睡眠に影響を与える疾患を有しているかどうかを確認するよう求めている。また、「一部の処方薬は、レム睡眠を減らすように作用することも知っておくべきだ」としている。さらに、一般の人々に対しては、「睡眠に問題を抱えていたり、ひどいいびきに悩んだりしている人は、かかりつけ医に相談してほしい」と助言している。(HealthDay News 2020年7月7日)』、「これまでの研究は・・・睡眠時間は長すぎても短すぎても早期死亡リスクの上昇と関連するとされていた。しかし、今回のLeary氏らの研究からは、総睡眠時間だけでなく、レム睡眠を含めて、さまざまな段階の睡眠時間のバランスを取ることも重要である可能性が示された」、深い睡眠のノンレム睡眠については、どんな研究成果が出てくるのだろう。楽しみだ。
タグ:健康 ノンレム睡眠 東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン 熱中症とは? (その10)(「よく走る人ほど風邪ひきやすい訳」 「免疫力UP」の誘い文句は疑ったほうがいい、「熱中症」で見落とされがちな3つのポイント 水やお茶だけでは「水分補給」には不十分だ、高齢者の脳の若返りに有酸素運動が有効な理由、浅い眠り「レム睡眠」の長さが寿命に影響する?) 岩田 健太郎 「岩田健太郎「よく走る人ほど風邪ひきやすい訳」 「免疫力UP」の誘い文句は疑ったほうがいい」 「ダイヤモンド・プリンセス号」の内情を告発して注目 『新型コロナウイルスの真実』 医薬品にも広告規制があるのに、「免疫力アップ」などの誇大広告が横行しているのは、下記のような厚労省の規制が緩過ぎるためなのだろう そもそも「免疫力」とは何か? 免疫力ってバランスなので、高すぎても低すぎてもダメなので、「免疫力アップ」を売り物にしている時点で、既に間違いです 調子が悪い=ただの疲労 フルマラソンをした後は数週間、免疫が下がるといわれてます。だからフルマラソンの後は風邪をひきやすくなる 免疫力をメンテナンスする、正常な状態に維持する方法ならあります。 それは休養、睡眠、適度な運動 栄養ドリンクもあまり意味がない ビタミン以外にもアルコールとかカフェインとかが入っていて、「疲れてないよ」と錯覚を与える効果があるんです。 なんか元気になった気分になるけど、疲労そのものを取ってるわけではなく、単に自分をごまかしてるだけなんです 堂々とテレビCMを流しているとは悪質だ 上原 桃子 「「熱中症」で見落とされがちな3つのポイント 水やお茶だけでは「水分補給」には不十分だ」 飲みすぎは「ペットボトル症候群」と呼ばれるような、血糖値が上がるためにのどが渇き、またスポーツドリンクを飲むという悪循環に陥る可能性があります 暑い環境からの回避と冷却の方法 「エアコン嫌い」 ヘルスデーニュース 「高齢者の脳の若返りに有酸素運動が有効な理由」 有酸素運動が高齢者の脳を若返らせる? 思考力や記憶力は向上する可能性がある 言語流暢性の領域では5歳の若返りに相当する効果も 「浅い眠り「レム睡眠」の長さが寿命に影響する?」 「レム睡眠」の長さは寿命に影響する? レム睡眠中には夢をよく見るとされ、この間に身体の疲労回復を図っていると考えられている これまでの研究は総睡眠時間に着目したものがほとんどで、睡眠時間は長すぎても短すぎても早期死亡リスクの上昇と関連するとされていた 今回のLeary氏らの研究からは、総睡眠時間だけでなく、レム睡眠を含めて、さまざまな段階の睡眠時間のバランスを取ることも重要である可能性が示された
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発達障害(その1)(29歳東大院生が「書類選考」で落ち続けたワケ 80社応募して内定を1社も得られなかった、発達障害「専門医の多くが誤診してしまう」理由 そもそも白黒つけられる簡単な症状ではない、これほど違う自閉症の現れ方 3歳男児と4歳女児の例) [生活]

今日は、発達障害(その1)(29歳東大院生が「書類選考」で落ち続けたワケ 80社応募して内定を1社も得られなかった、発達障害「専門医の多くが誤診してしまう」理由 そもそも白黒つけられる簡単な症状ではない、これほど違う自閉症の現れ方 3歳男児と4歳女児の例)を取上げよう。

先ずは、昨年3月28日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの藤田 和恵氏による「29歳東大院生が「書類選考」で落ち続けたワケ 80社応募して内定を1社も得られなかった」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/271725
・『現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。 今回紹介するのは「大学院を卒業し一般枠で正社員として就労しているものの、適応障害を発症し勤怠が不安定で何度も休職しています。転職して障害者枠に落ち着くべきか悩んでいます」と編集部にメールをくれた、29歳の独身男性だ』、どういう事情があったのだろう。
・『聞いたそばから忘れてしまう…  「物理の面白さですか?物ごとの理(ことわり)を知ること、でしょうか。もっと具体的に?そうですね――。例えば、コップに注いだ水の温度は時間がたつと、周囲と同じになりますよね。物理を学べば、その理屈を知ることができます。すべての自然現象の根底。それが物理だと言ってもいいでしょう」 東京大学大学院で物理を専攻していたフユキさん(29歳、仮名)に言わせると、数多くある三角関数の公式も「sin2θ+cos2θ=1」と「tanθ=sinθ/cosθ」さえ覚えていれば十分なのだという。 「そのほかの公式は、計算すれば導き出せるので、覚える必要はないんです」 一方で、フユキさんは買い物や飲食店などでの会計時に、金額を伝えられても、払うことができない。発達障害の1つ、自閉症スペクトラムで、耳から聞いた言葉をそのまま記憶する能力「聴覚的短期記憶」が低いからだ。金額を口頭で言われただけでは、聞いたそばから忘れてしまうのだという。 「それ以外にも、繰り上がりがあるような足し算もダメですね。『800+200は?』と聞かれても、すぐには答えられない。耳から入ってきた情報を、頭の中で処理したり、文字に書き起こそうとすると、ラグが生じるようなイメージです」 学生時代、ノートを取ったことがないという。というより、教師が話したことを、文字にして書き記すという作業ができない。自宅に戻ってから、教師が話した、大まかな内容を思い出しながら、教科書や参考書を読んで確認する――。これが、フユキさんの勉強方法だった。それでも、成績はいつもトップクラスだったという。 「幼い頃から、自分はヘンな人間だという自覚はありました」とフユキさん。集団で行動することが苦痛で、自室で独り、動植物の図鑑などを読んでいるほうが好きだった。心配した母親からよく「ほかの子と遊んできなさい!」と言われたことを、覚えているという。 「いじめに遭ったこともありました。クラスの中心にいるような、活発な子が苦手だったのは、そうした経験の影響だったようにも思います。いつも限られた友達2、3人と一緒にいる、おとなしいタイプの子どもでした」 将来の夢は研究者になることで、そのために大学院に進んだ。しかし、全国から優秀な学生が集まる最高学府において、早々に「自分の能力では、研究者として生き残るのは厳しい」と悟ったという。このため、卒業後の進路を就職へと変更。理工系出身者のニーズが高いとされる金融機関のリスク管理などを担当する部門などを目指すことにした』、「「聴覚的短期記憶」が低いからだ。金額を口頭で言われただけでは、聞いたそばから忘れてしまう」、というのでは、研究者はどう考えても無理だろう。
・『就職活動で内定を得られなかった原因とは  ところが、いざふたを開けてみると、就職活動は難航した。ほとんどが書類選考で落ちてしまうのだ。中堅と言われる規模の会社や、金融以外の職種にもエントリー先を広げたが、結果は同じ。80社近く応募して、1社も内定を得られなかった。 原因は、適性検査の一部である性格検査にあったのではないかと、フユキさんは言う。現在、多くの企業は面接前の選考過程で、さまざまな適性検査を実施している。主に基礎学力などを測る能力検査と、その人の考え方や行動パターンなどをチェックする性格検査で構成され、このうち性格検査は、200問以上の設問に短時間で答えることが求められる。 「能力検査は、できたという手応えがありました。となると、性格検査の結果に問題があったとしか考えられないんです」。正直に答えたつもりだが、ストレス耐性や協調性に難ありとみなされたのではないかと、フユキさんは考えている。 不採用が続く中、次第にうつ状態に陥り、医療機関で向精神薬などの処方を受けながら、就職活動を続けた。秋頃には、数日間にわたって食事も水も処方薬も喉を通らなくなり、さらに処方薬を断ったことによる離脱症状に襲われる――、といった状態を繰り返すようになり、やむなくその年の就職を諦めたという。 医療機関に通う際、フユキさんは同時に「自分は発達障害なのではないか」という相談も持ちかけていた。当初、臨床心理士からは、発達障害に特徴的なコミュニケーションにおける問題は見られないと言われたが、念のために専門の検査を受けた。 その結果、「計算力」「長期記憶」などの項目が平均水準をはるかに上回ったのに対し、「聴覚的短期記憶」「結果を予測する力」などは平均以下であることが判明。得意なことと、不得意なことの差が大きいのは、発達障害の特徴の1つである。 「検査の中でも、4、5枚のイラストをストーリー順に並べ替えよ、という問題がまったくできませんでした。(結果を示す)折れ線グラフが、とにかく凹凸の激しい形状だったことを覚えています」 翌年、フユキさんは服薬治療とカウンセリングを受けながら、再び就職活動に挑戦。今度は、ほぼ希望どおりの会社への採用が決まった。しかし、一難去ってまた一難。卒業前、臨床心理士から「学歴が高いので、周囲からの期待も高い。それに伴うストレスもまた大きいでしょう」と言われていたのだが、その予想が、入社後、見事に的中したのだ』、合格した会社では、「性格検査」がなかったのかも知れない。
・『仕事の失敗が重なると不調を来し、休職しがちに  会社組織において、新入社員に任されがちなのは、会議録の作成と電話応対。しかし、フユキさんは、この2つがまったくと言っていいほどできない。「聴覚的短期記憶」が低いので、会議中にメモを取ることはほぼ不可能。かといって、いったん録音したものをメモに書き起こすような時間的な余裕もない。電話の相手から、会社名や名前、用件などを伝えられても、受話器を置いたときにはほとんど忘れてしまっている。 未完成の会議録を提出するたび、上司はあきれたような、戸惑ったような複雑な表情を見せたという。電話応対にいたっては、「まともに取り次げたことがない」。 「もとから眠りは浅いほうだったのですが、就職してからは、作業に追われたり、得体のしれない怪物に追われたり、『何かに追われる』という悪夢を、毎日見るようになりました」とフユキさん。 仕事の失敗が重なると、「自分は欠陥人間」「存在価値などない」と思い詰め、さらには食欲不振や頭痛など身体にも不調を来し、そのたびに休職。休職期間は2、3週間と比較的短いものの、すでにこうしたことを何度も繰り返しているという。 会社では、怒鳴らたり、パワハラを受けたりしたことはない。人事部などには発達障害のことは報告しており、フユキさんの勤怠が不安定になると、担当者のほうから休職してはどうかと促してくる。最近は、電話応対の少ない部署への異動もなされた。 会社は決して障害への理解がないわけではないように見えるが、フユキさんに言わせると、「理解してくれているというよりは、見逃してくれているという感じ。人事部の対応もごく事務的なもので、そろそろ(解雇や退職勧奨などについて)何か言われるのではないかと恐れています」といった受け止めになる。 不安がピークに達したある日、いっそ障害者枠で働いたほうがよいのではと考え、専門の転職サイトに登録してみた。しかし、担当者からはきっぱりと「収入は間違いなく下がります。今の会社から支援を受けられるなら、転職は勧めません」と言われたという。 現在、フユキさんの年収は約400万円。自分でも調べたが、障害者枠で転職した場合、収入は悪ければ半減、そもそも正規雇用の求人がほとんどないことがわかった。非正規雇用では、つねに雇い止めの不安におびえなくてはならない。 「社内には居場所がないと感じます。かといって、転職しても、(雇い止めの恐れがある)非正規雇用では、かえってメンタルは悪化するでしょう」。会社にとどまるのも苦痛、転職しても待っているのは貧困――。そう考えると、絶望感しかないという。 フユキさんの話しぶりは終始、穏やかだった。物理や三角関数の説明をするときも、典型的な文系人間の私が、ちゃんと話についてきているかを確認しながら、ゆっくりと話を進めてくれた。臨床心理士の見立てと同じく、私もフユキさんからは、発達障害のある人特有のコミュニケーションの取りづらさは、まったく感じなかった』、せっかく「正社員」として入社、「人事部などには発達障害のことは報告」しているのであれば、能力に見合った仕事を「人事部など」と相談しながら探していくほかないようだ。
・『他人ができることを自分ができないつらさ  最後に、会社の同僚や上司たちに望むことはありますか、と尋ねると、フユキさんは「広い心を持ってほしい。みんなが同じことを、同じだけできるわけじゃないことを理解してほしいです。私の場合は、(人並み以上に)得意な分野もあります」という。 これに対し、私が「会議録の作成や電話対応が不得手だと、打ち明けたのですか」と聞くと、話していないという。理由は、「たぶん、理解してもらえない。『え?そんなこともできないの』と言われてしまうと思うから」。 広い心を持ってほしいと言いながら、自分ができないことを伝えないのは、少し矛盾しているのではないか――。そう言いかけ、私は取材中の自分のある振る舞いを思い出した。 レジで金額が記憶できない、会議録の作成や電話応対ができないというフユキさんに対し、私は繰り返し「一瞬でも記憶できないのですか」「意味がわからなくても、とりあえずメモするということも難しいですか」「(電話相手の)名前だけでも覚えていられないのですか」と尋ねたのだ。 このとき、フユキさんは、大学ノートにメモを取る私の手元を見つめながら、「みんなが普通にできることを、自分はできないんだなって思います」と言ってため息をついていた。 自分が当たり前にできることを、他人ができないということを理解することは意外に難しい。そして、自分はできないことを、多くの人が当たり前にできていることを目の当たりすることのしんどさを思った。 本連載「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください』、「私が「会議録の作成や電話対応が不得手だと、打ち明けたのですか」と聞くと、話していないという。理由は、「たぶん、理解してもらえない。『え?そんなこともできないの』と言われてしまうと思うから」、難しいだろうが、正直に打ち明け、会社と一緒になって能力を発揮できる職務を探していくほかなさそうだ。

次に、本年8月4日付け東洋経済オンラインが掲載した精神科医の岩波 明氏による「発達障害「専門医の多くが誤診してしまう」理由 そもそも白黒つけられる簡単な症状ではない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/363663
・『近年注目を集める「発達障害」。実は医師による「誤診」も少なくないという。発達障害の患者が誤診によって受ける被害の実態とは?精神科医の岩波明氏による新書『医者も親も気づかない 女子の発達障害』から抜粋・再構成してお届けします。 実のところ、著名な精神科医や発達障害の専門医であっても誤診がまれではありません。例えば「うつ病と診断したけれども、発達障害だった」「ASD(注1)だと診断したが、本当はADHD(注2)だった」などということは、しばしば見られています。 もちろん、私たち自身の診断が絶対に正しいということはありませんし、誤った判断もあることでしょう。 ただ、私たちの外来に紹介されて受診する患者さんを見ていると、多くの先生方には、発達障害の基本的な点が浸透していないように思えます』、なるほど。
(注1)ASD:自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群。自閉スペクトラム症は多くの遺伝的な要因が複雑に関与して起こる生まれつきの脳機能障害で、人口の1%に及んでいるとも言われています(e-ヘルスネット)。
(注2)ADHD:注意欠如・多動症は、「不注意」と「多動・衝動性」を主な特徴とする発達障害の概念のひとつです。ADHDを持つ小児は家庭・学校生活で様々な困難をきたすため、環境や行動への介入や薬物療法が試みられています(e-ヘルスネット)。
・『「誤診」で発達障害が見逃されたケース  発達障害に関する誤診には、いくつかの理由があります。1つは、うつ病をはじめとして、対人恐怖症(社交不安障害)やパニック障害などの不安障害、躁うつ病など、発達障害が原因で起こるさまざまなトラブルをきっかけに生じる、2次障害との関連が問題となります。 このような場合、そうした2次障害に対する診断と治療が先行してしまい、根本的な原因である発達障害が見逃されがちです。こうなると、適切な治療が難しくなることが珍しくありません。 例えば、うつ病と診断されて抗うつ薬を飲み続けたが症状が改善されない、ADHDの治療薬に切り替えたら劇的に改善した、といったケースが実際に存在しています。「うつ病と診断されたものの、実は発達障害だった」ということは、よくある話です。 患者本人が「私はADHDだと思いますが、どうなのでしょうか?」と主治医に言っているにもかかわらず、「いえ、うつ病であることは確実です」「発達障害というのは考えすぎ」などと言って、正しい診断に行き着かない例が後を絶たないのが現状です。 また、ADHDとASDの区別も、非常に曖昧で難しい面があります。ADHDなら多動・衝動性と不注意、ASDなら対人関係のトラブルとこだわりの症状など、それぞれ典型的な特性があるのは確かですが、臨床の場面では、両方を同時に示すようなケースにも頻繁に出合います。 例えば「話し出したら止まらない」のは、ADHDにもASDにも見られる症状です。ADHDの場合は「思いついたことを言わずにいられない」衝動性が原因であるのに対して、ASDの場合は「他人に対する無関心、配慮のなさ」が原因ですが、見かけの症状は同じなのです。 さらに付け加えるなら、子どもの場合は両親からの虐待が引き金になり、「愛着障害」といって、ADHDやASDによく似た症状が表れるケースも見られます。 医師の側の問題もあります。もともと発達障害の専門医の多くは、自閉症やアスペルガー症候群などのASDを専門としていました。そのため、診断もASD寄りになる傾向があるのですが、実際にはASDよりもADHDのほうが何倍も症例が多いのです。 しかし、これはある程度やむをえない面があるのかもしれません。というのは、これまでの児童精神科において治療の対象としていた発達障害は、ASDの中でも最も重症の自閉症であり、さらにその多くが知的障害を伴うケースだったからです。 これに対して現在、成人の女性の発達障害においては、主な疾患はADHDであることに加えて、知的レベルは正常かそれ以上の例が大部分です。つまり、対象としている患者層が、以前とはまったく異なっているのです』、「患者本人が「私はADHDだと思いますが、どうなのでしょうか?」と主治医に言っているにもかかわらず、「いえ、うつ病であることは確実です」「発達障害というのは考えすぎ」などと言って、正しい診断に行き着かない例が後を絶たないのが現状です」、「もともと発達障害の専門医の多くは、自閉症やアスペルガー症候群などのASDを専門としていました。そのため、診断もASD寄りになる傾向があるのですが、実際にはASDよりもADHDのほうが何倍も症例が多いのです」、なかなか難しい問題のようだ。
・『「グレーゾーン」の患者も多くいる  さらに厄介なことに、「発達障害か、そうでないか」についても、線引きが曖昧です。そもそも精神科の診断には、白黒はっきりつけがたい「グレーゾーン」が多く含まれています。 発達障害も、発達障害という確定的な診断はつかないにしても、発達障害的な特性によって、日常生活に問題を抱えているケースがよくあります。つまり、ASDもADHDも、「スペクトラム」なのです。 例えば、ADHDと断定はできないけれども落ち着きがなくて忘れ物が多い人、ASDと診断するほどではなくても空気が読めずに人の輪に入れない人などは、たくさんいます。 発達障害とそうでない人の間には明確な区別が存在しているわけではなく、さまざまなグラデーションが存在しています。そのため、「この一線を超えたら発達障害」という線引きは、医師ごと、病院ごとに委ねられています。 ある病院では「発達障害でない」と言われ、別の病院では「発達障害だ」と言われるケースも少なくありません。 しかし、発達障害に限らず、ほとんどの精神科の疾患には数値で表せる明確な指標は存在していません。血液検査の数値など、なんらかの検査で白黒つけられるわけではないのです。 それでも、現在の症状とこれまでの経過について多くの「情報」が手に入るなら、ほぼ間違いのない診断が下せると思います。しかし、それには本人の子ども時代にまでさかのぼって、話を聞かなくてはなりません。本人の記憶が曖昧なことも多いし、本人は「私は普通の子だった」と思っていても、周囲は「すごく変わった子だった」と思っているケースも多く、なかなか簡単なことではありません』、「発達障害とそうでない人の間には明確な区別が存在しているわけではなく、さまざまなグラデーションが存在しています。そのため、「この一線を超えたら発達障害」という線引きは、医師ごと、病院ごとに委ねられています」、確かに診断がばらつくのは不可避のようだ。
・『家族が当てにならない問題も  現実には、情報不足によりグレーゾーンとして扱わなければいけないケースであっても、情報がそろったことで、後になってから発達障害だと確定するケースがあることは、十分に考えられます。 さらに、情報を得るにあたって、親などの近親者が必ずしも当てにならないことも、大きな問題です。非常に熱心な家族も存在している一方で、子ども時代のことはよく覚えていないという親や、そもそも発達障害の存在そのものを頭から否定する人も存在しているからです。 繰り返しになりますが、発達障害は生まれつきのものですから、「治す」という言い方は適切ではありません。しかし、本人にその意志があるなら、日常生活で問題が起こらないように、問題となる部分をカバーすることは可能です。 それにはまず、自分の特性を理解することが大切です。さまざまなトラブルは、その自らの特性が原因で起きている、ということを知る。そのうえで、どうしたらトラブルを防げるか、具体的に考えていくことになります。) 例えば「上司の指示をすぐ忘れてしまう」なら、すぐに「メモを取る」。「マルチタスクが苦手」なら、「複数の仕事を同時に進めるのではなく、1つの仕事を終えてから次の仕事にとりかかる」習慣をつける。 自分が上司の立場なら、ASDの人に出す指示は、できる限り具体的にします。例えば、期日はいつなのか、ほかの仕事より優先するべきなのか。「適当にやっておいて」は、ASDの人には厳禁です。文字どおりに解釈して、「いい加減に」仕事をしてしまうかもしれません。 こうした工夫そのものが難しい環境であるなら、今度は環境を変えることを考えます。極端な話ですが、対人関係が苦手なASDの人も、「研究室にこもりきりで、他人と交流しなくていい」といった環境で働けるのであれば、問題は顕在化しないかもしれません。実際、高名な科学者や研究者において、ASDの特徴を持つ人は少なくありません。 ASDでもADHDでも、多くの場合、理解力自体は普通に持っています。何が問題で、どうすれば解決できるのかさえ理解できれば、対処できる場合が大半です』、「多くの場合、理解力自体は普通に持っています。何が問題で、どうすれば解決できるのかさえ理解できれば、対処できる場合が大半です」、とはいうものの、現実には「何が問題で、どうすれば解決できるのかさえ理解できれば」、が難しいのだろう。
・『「変えようがない人間」もいる  一方で、こんなケースもあります。ADHDの人には、わからないというより、アドバイスを「受け入れたくない」人が全体の2?3割はいます。 アドバイスの内容そのものは理解できでも、やりたくない、やろうとしない。人の言うことを聞きたくないのです。これには自分の意志を押し通そうとする傾向が強いこともありますが、そもそも他の人の話を聞くことが得意ではないのです。 ASDの人は、変えたくても、「変えようがない」ケースもあります。いくら能力が高くても、「マイルール」へのこだわりが強いと、変えたほうがいいとわかっていても、なかなか変えられません。 あるASDの女性は、非常に高い能力がありました。大学を卒業して10年以上のブランクのある主婦だったのですが、大学の研究室でアルバイトを始めると、英語論文を書いて海外の雑誌に掲載されるほどになりました。 しかし、対人関係がまるで苦手でした。研究室のトップに理解があるため長く勤めていられるのですが、対人関係が改善する様子は見られません。 「こうしてみたら」と私がアドバイスをしているのですが、なかなか周囲との関係を変えることができません。そのため、研究成果を上げてはいますが、彼女はほとんど1人で仕事をしています』、「アドバイスを「受け入れたくない」人が全体の2?3割はいます」、「あるASDの女性」の例は「研究室のトップに理解がある」という幸運に恵まれた稀有な例なのだろう。

第三に、6月9日付け日経ビジネスオンラインが掲載した文筆家の川端 裕人氏による「これほど違う自閉症の現れ方、3歳男児と4歳女児の例」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00112/00039/?P=1
・『発達障害である自閉症は、人口の2%に及び、“グレーゾーン”も入れると1割を超すという。現在の診断名は「自閉スペクトラム症」で、かつてのアスペルガー症候群も含め、その現れ方は様々だ。そんな自閉症への理解を深めるために、日本の研究と治療と支援をリードしてきた医師、神尾陽子先生の研究室に行ってみた!その2回目。 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所で発達障害をめぐる研究と行政への提案を行い支援の社会実装を主導してきた神尾陽子さん(現・発達障害クリニック附属発達研究所・所長)に自閉スペクトラム症について伺っている。前回は、やや抽象的な議論に終わってしまった感があるので、今回は、自閉スペクトラム症を持つ子どもたちに、それがどんなふうに現れるかもっと具体的に教えてもらおう。 「実はすごく説明しにくいんです。自閉スペクトラム症の人って、知能に遅れのある人から、とても知能の高い人までいて、『こういう行動をする』って一言では記載はできません。おまけに、同じ人でも1歳のときから亡くなるまで、年齢によっても症状は違います。だから、具体的に説明するとしたら、やっぱり発達水準、性別、年齢などを想定しないといけないんです」 神尾陽子さんは、発達障害の研究はもちろん、行政への提案や支援の社会実装を主導してきた。 そこで「人と年齢」を設定する。「3歳の知的な遅れのある男の子」と「遅れのない4歳の幼稚園に行っている女の子」の2ケースだ。 「3歳で遅れのあるお子さんは、一番典型的です。3歳になると普通のお子さんはいっぱいしゃべるようになりますけど、まず言葉が遅れるので気づかれやすいんです。そして、言葉が出てきても、特徴的なのはおうむ返しといって、誰かが言ったのをそのまんま返すので、会話にならなかったりします。単語はたくさん覚えるけれども、あんまり人の動作や状態にかかわるようなことを言いません。『おなかすいた』『食べる』『飲む』という、自分がしたいことを伝えることがあんまりできないんです」 こういう言葉の出方を「機能的ではない言語」というそうだ。語彙が多くても、言葉の最大の「機能」であるコミュニケーションのためにうまく使えない。喉がかわいてジュースを飲みたいときにも、「ジュースを飲みたい」と言うかわりに自分で冷蔵庫に行って勝手に飲むようなイメージだ。 「子どもは、言葉を獲得していく中で自分の要求が伝わるようになったり、『あ、ブーブー』とか言うと、お母さんがそっちを見て『ああ、ブーブーだね』って一緒に喜んでくれたりして、共有する喜びを知るわけです。そういったことが対人関係の一番基礎ですよね。でも、遅れがある場合は、言葉が出てきてもそういうことに使わず、一人で黙々と本読んでいるとか、基本的には一人遊びが好きです。お母さんが一緒に何かしようと思って、子どもが遊んでいるものに手を触れたらパッと手を払っちゃう。たとえば何かを自分で楽しく並べていたとしたら、崩されるのがいやだから一人遊びの方がいいと、こだわりの部分もかかわっています。お母さんはすごい悲しいし、何とかして遊ぼうと思ってかかわると、子どもは余計嫌がって泣いたり怒ったりするんです」』、「自閉症は、人口の2%に及び、“グレーゾーン”も入れると1割を超す」、そんなに多いとは改めて驚かされた。「遅れがある場合は、言葉が出てきてもそういうことに使わず、一人で黙々と本読んでいるとか、基本的には一人遊びが好きです。お母さんが一緒に何かしようと思って、子どもが遊んでいるものに手を触れたらパッと手を払っちゃう。たとえば何かを自分で楽しく並べていたとしたら、崩されるのがいやだから一人遊びの方がいいと、こだわりの部分もかかわっています。お母さんはすごい悲しいし、何とかして遊ぼうと思ってかかわると、子どもは余計嫌がって泣いたり怒ったりするんです」、親の対応もなかなか難しそうだ。
・『自閉症という言葉は、Autismという英語の訳だ。接頭辞のAut(o)は「自動的」「自律的」を意味するもので、それを「閉じている」と訳すのが適切なのかどうか分からないが、自分で完結しているというようなニュアンスなら、今紹介してもらったような事例にはよく当てはまるかもしれない。それにしても、親が「愛情」の表出である共感を持って接しようとしても、それが本人にとっては不快なことが多いとしたら、いろいろ悲しいことが起きそうだ。特に、自閉スペクトラム症が母親の育て方の問題だとされたりすると、母親は必死に関わろうとするあまり子どもが嫌がることをしてしまうことになる。 また、自閉スペクトラム症特有の「こだわり」や「感覚過敏」が日常生活の中でもしばしば大きな困難に発展することがある。 「その子を連れてどこか買い物に行こうとすると、いつもの道で工事をしていたとします。じゃあ、違う道から行こうっていったら、もうパニックです。そこでひっくり返って、泣いたり怒ったり。だから、もう予定していた外出が全然できないとか、もう外出自体がお母さんのストレスになっちゃって、2人でこもりっきりっていう方もいらっしゃいます。味や臭いについて感覚過敏で偏食がすごいから生きてくために何とか食べさせようとするけど食べないとか、ちょっとした刺激ですぐに目覚めてしまってぜんぜん寝ないっていう人もいます。いったん寝付いても、ちょっと物音がするとすぐ起きちゃうんです」 では、もう一つのシナリオ、「遅れのない4歳で、幼稚園に行っている女の子」の場合はどうだろう。 「そういう子は、見かけは遅れがないからわりと見逃されますが、とにかく幼稚園みたいな場になじめません。家の中でよく知った環境ではそれほど困らなくても、幼稚園に行くといろんな子どもたちがいるでしょう。子どもって一番予測できない人たちだから、自分がこれで遊ぼうと思っても他の子が来て取ったりされるし、一緒に遊ぶのもあんまり楽しくないし。それでワーッと泣く子もいれば、泣かないでじっと耐えて、だんだん耐えられなくなってくると、行きしぶります。そうすると、親は無理やり連れていって悪循環になってしまいがちです。何で嫌なのか、どういうふうにしたら楽しくなるのかというのを、わりと見逃されているのが多いんですね」 遅れがないがゆえに問題が見えにくくなることは皮肉なことである。これもまた親だけでなく、社会の問題でもある』、「子どもって一番予測できない人たちだから、自分がこれで遊ぼうと思っても他の子が来て取ったりされるし、一緒に遊ぶのもあんまり楽しくないし。それでワーッと泣く子もいれば、泣かないでじっと耐えて、だんだん耐えられなくなってくると、行きしぶります。そうすると、親は無理やり連れていって悪循環になってしまいがちです」、普通はあきらめて、別の遊びに切り替えるのに、こだわりが強くあきらめられないのだろうか。
・『「幼稚園や保育園によっては『いや、この子は、全然、遅れはないし、発達障害じゃない』と言われたり、やっぱりお母さんが気にしすぎだとか、ちょっと過保護だってスルーされちゃうことも多いんです。結局、小学校に行ったらもっと問題が大きくなるので、そういうパターンもあり得るということを幼稚園や保育園でも知っていただいて、合うような環境で対応していってほしいんですが」 さらにもう一点、神尾さんは「不安」について付け加えた。 「不安というのは、よくある精神障害ですけど、自閉スペクトラム症にもこの合併が多いんです。子どもの不安って、恐怖に近いから、さっきまで普通にしていても、あるときに爆発的に出たりします。不安がある子はそういう場を徹底的に避けるようになるので、見えないだけで。本人は本当に生きづらくて、世界が怖くて、場合によっては怒りとかまで感じて、やっぱり自分の中にためていくので、親も含めてそこで悪いループに入っていくわけです」 ほんとうに様々なケースがある中で、それらを早めに見つけて早めに対処するというのが神尾さんの立場だ。古典的な知的な遅れを伴う自閉スペクトラム症も、この2、30年のうちにクローズアップされた、知的な遅れを伴わない「高機能」な自閉スペクトラム症も、放置しておくとのちのち大変なことになることがある。それこそ、つらい場所に置かれ続けて、本来伸ばし得たはずの様々な特徴をスポイルされた上で、うつや不眠や不安など、ありとあらゆる穏やかならざる合併に悩まされ、本来、過ごせるはずだったかもしれない豊かな生き方が想像できなくなるほどの深みに落ち込んでしまうことだってありうる。やがて重たい精神症状を合併して、精神病院で隔離されて一生を終えるというようなことも、20世紀にはありえたのである。 自閉スペクトラム症に早いうちから対処できれば、重い合併症を防げ、伸ばし得る特徴を伸ばしやすいという。 今、この問題にかかわる世界中の専門家たちは、適切な診断に基づいた治療や支援を早期から始めたり、それ以前のところで良い環境(発達障害の子も定型発達の子も、ともにメンタルヘルスを保ちやすい環境)を作ることで事態を改善できると信じ、努力をしている。神尾さんも、その流れに棹さす一人だ。 そして、そのためには、今、わたしたちの社会の中で、自閉スペクトラム症の子どもたちがどれくらいいて、診断や治療や支援や環境の改善を必要としているか知らなければならない。臨床の現場からは、一歩引いて、いわゆる疫学的な調査が大事になる局面だ。 国立の研究機関にいた神尾さんは、その点でも、時代を画する研究を行っているので次回以降の議論で教えてもらおう。(づづく)』、「知的な遅れを伴わない「高機能」な自閉スペクトラム症も、放置しておくとのちのち大変なことになることがある。それこそ、つらい場所に置かれ続けて、本来伸ばし得たはずの様々な特徴をスポイルされた上で、うつや不眠や不安など、ありとあらゆる穏やかならざる合併に悩まされ、本来、過ごせるはずだったかもしれない豊かな生き方が想像できなくなるほどの深みに落ち込んでしまうことだってありうる。やがて重たい精神症状を合併して、精神病院で隔離されて一生を終えるというようなことも、20世紀にはありえた」、現在ではそんな最悪の事態に辿り着く前に、「精神科医」の治療があるということなのだろうが、「精神科医療」の重要性を再認識した。
タグ:AsD 発達障害 東洋経済オンライン ADHD 日経ビジネスオンライン 藤田 和恵 川端 裕人 (その1)(29歳東大院生が「書類選考」で落ち続けたワケ 80社応募して内定を1社も得られなかった、発達障害「専門医の多くが誤診してしまう」理由 そもそも白黒つけられる簡単な症状ではない、これほど違う自閉症の現れ方 3歳男児と4歳女児の例) 「29歳東大院生が「書類選考」で落ち続けたワケ 80社応募して内定を1社も得られなかった」 聞いたそばから忘れてしまう 東京大学大学院で物理を専攻 発達障害の1つ、自閉症スペクトラムで、耳から聞いた言葉をそのまま記憶する能力「聴覚的短期記憶」が低いからだ。金額を口頭で言われただけでは、聞いたそばから忘れてしまう 就職活動で内定を得られなかった原因とは 「性格検査」 仕事の失敗が重なると不調を来し、休職しがちに 「聴覚的短期記憶」が低いので、会議中にメモを取ることはほぼ不可能 人事部などには発達障害のことは報告 他人ができることを自分ができないつらさ 私が「会議録の作成や電話対応が不得手だと、打ち明けたのですか」と聞くと、話していないという。理由は、「たぶん、理解してもらえない。『え?そんなこともできないの』と言われてしまうと思うから」 岩波 明 「発達障害「専門医の多くが誤診してしまう」理由 そもそも白黒つけられる簡単な症状ではない」 「誤診」で発達障害が見逃されたケース 「うつ病と診断されたものの、実は発達障害だった」ということは、よくある話です 患者本人が「私はADHDだと思いますが、どうなのでしょうか?」と主治医に言っているにもかかわらず、「いえ、うつ病であることは確実です」「発達障害というのは考えすぎ」などと言って、正しい診断に行き着かない例が後を絶たないのが現状 もともと発達障害の専門医の多くは、自閉症やアスペルガー症候群などのASDを専門としていました。そのため、診断もASD寄りになる傾向があるのですが、実際にはASDよりもADHDのほうが何倍も症例が多いのです 「グレーゾーン」の患者も多くいる 発達障害とそうでない人の間には明確な区別が存在しているわけではなく、さまざまなグラデーションが存在しています 「この一線を超えたら発達障害」という線引きは、医師ごと、病院ごとに委ねられています」 家族が当てにならない問題も 多くの場合、理解力自体は普通に持っています。何が問題で、どうすれば解決できるのかさえ理解できれば、対処できる場合が大半です 「変えようがない人間」もいる アドバイスを「受け入れたくない」人が全体の2?3割はいます 「これほど違う自閉症の現れ方、3歳男児と4歳女児の例」 発達障害である自閉症は、人口の2%に及び、“グレーゾーン”も入れると1割を超すという 遅れがある場合は、言葉が出てきてもそういうことに使わず、一人で黙々と本読んでいるとか、基本的には一人遊びが好きです。お母さんが一緒に何かしようと思って、子どもが遊んでいるものに手を触れたらパッと手を払っちゃう。たとえば何かを自分で楽しく並べていたとしたら、崩されるのがいやだから一人遊びの方がいいと、こだわりの部分もかかわっています。お母さんはすごい悲しいし、何とかして遊ぼうと思ってかかわると、子どもは余計嫌がって泣いたり怒ったりするんです 子どもって一番予測できない人たちだから、自分がこれで遊ぼうと思っても他の子が来て取ったりされるし、一緒に遊ぶのもあんまり楽しくないし。それでワーッと泣く子もいれば、泣かないでじっと耐えて、だんだん耐えられなくなってくると、行きしぶります。そうすると、親は無理やり連れていって悪循環になってしまいがちです 知的な遅れを伴わない「高機能」な自閉スペクトラム症も、放置しておくとのちのち大変なことになることがある。それこそ、つらい場所に置かれ続けて、本来伸ばし得たはずの様々な特徴をスポイルされた上で、うつや不眠や不安など、ありとあらゆる穏やかならざる合併に悩まされ、本来、過ごせるはずだったかもしれない豊かな生き方が想像できなくなるほどの深みに落ち込んでしまうことだってありうる。やがて重たい精神症状を合併して、精神病院で隔離されて一生を終えるというようなことも、20世紀にはありえた
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医療問題(その24)(精神病院から出られない医療保護入院の深い闇 現場医師の裁量で強制長期入院も可能になる、夫の策略で「強制入院3カ月」妻が味わった悪夢 精神疾患の既往歴なしの人が精神科病院に幽閉、コロナ下で医療崩壊危機を高める「都立病院の独法化」は必要なのか) [生活]

医療問題については、2月10日に取上げた。今日は、(その24)(精神病院から出られない医療保護入院の深い闇 現場医師の裁量で強制長期入院も可能になる、夫の策略で「強制入院3カ月」妻が味わった悪夢 精神疾患の既往歴なしの人が精神科病院に幽閉、コロナ下で医療崩壊危機を高める「都立病院の独法化」は必要なのか)である。

先ずは、3月1日付け東洋経済オンライン「精神病院から出られない医療保護入院の深い闇 現場医師の裁量で強制長期入院も可能になる」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/331577
・『精神疾患により医療機関にかかっている患者数は日本中で400万人を超えている。そして精神病床への入院患者数は約28万人、精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占めるとされる(数字は2017年時点)。人口当たりで見ても世界でダントツに多いことを背景として、現場では長期入院や身体拘束など人権上の問題が山積している。本連載では日本の精神医療の抱える現実をレポートしていく。 「緊急の帝王切開で手術室に入り、出てきたときには卵管結紮されていました。自分のまったく知らないところで不妊手術をされていたと聞いたときはショックでした」 今年1月30日、日本弁護士連合会に人権救済の申立書を提出した米田恵子さん(43歳)は、その心中を吐露した。申し立ては旧優生保護法下での強制不妊手術の救済策が議論される一方、条項の削除後も、精神障害者などに不妊手術が行われている実態を告発するものだ。 連載第1回「精神病院に4年閉じ込められた彼女の壮絶体験」(2020年1月28日配信)で詳しく報じたとおり、米田さんは今年1月上旬まで、精神科病院に長期入院していた。最後の子どもを分娩し不妊手術が実施されてから1年後の2016年2月に入院し、その後院内での生活はおよそ4年間にわたった』、「自分のまったく知らないところで不妊手術をされていた」、「院内での生活はおよそ4年間にわたった」、こんな人権侵害があるとは「精神医療」の闇だ。
・『当事者からの声が140件以上集まった  これを報じた記事への反響は大きく、本連載の情報提供フォーム(文末に設置)には、すでに140件を超える当事者や医師、看護師、精神保健福祉士など医療関係者からの切実な声が寄せられている。どれも日本の精神医療の抱える問題を告発するものばかりだ。また、「本人も家族も退院を望んでいるのに、なぜ退院できなかったのか。その理由を知りたい」という読者からの声も多く届いた。今回はその理由に迫りたい。 米田さん自身も、入院当初はすぐに退院できるものだと思っていたという。ところが主治医からは「何でも自分の思うとおりになると思わないでください。私はあなたのことを信用していません」と言われ、「パーソナリティ障害」との診断名を付けられた。退院の見通しが立つまで、まだ1年近くかかると通知された。 「せいぜい1~2カ月だと思って同意したのに、まさかこんなに長くなるとは思わなかった」。思った以上に長い入院計画に驚いたのは、当初入院に同意した米田さんの妹も同様だった。 米田さんを支援した佐藤暁子弁護士は、病院側とのやり取りをこう振り返る。「精神科に入院している場合、まず弁護士につながることが非常に難しい。今回弁護士が介入しても、病院側は『社会に迷惑をかける』などと、極めて抽象的で法的根拠のない理由を繰り返し、なかなか退院に向けた話が進まなかった」』、「弁護士が介入しても・・・なかなか退院に向けた話が進まなかった」、人権侵害の極致だ。
・『極めて使い勝手がよい制度  妹や弁護士のバックアップがあったにもかかわらず、米田さんが4年近くも入院を余儀なくされた背景にあるのが、精神科特有の入院制度である「医療保護入院」だ。医療保護入院は精神保健福祉法が定める強制入院の1つ。本人が入院に同意しない場合に、家族など1人の同意に加え、同じく1人の精神保健指定医の診断があれば、強制入院させられる。 自由の制約という点では同じ刑事事件の場合、逮捕・勾留には現行犯以外は令状が必要で、その発行には裁判所の判断が介在するが、医療保護入院にはそれがない。刑期の決まっている刑事事件に対して、医療保護入院には入院期間の定めがない。 「刑事法になぞらえて言えば、医療保護入院は、入院期間の決定をすべて指定医の判断にゆだねる絶対的不定期刑に等しく、近代法では罪刑法定主義の原則上、許されないとされているもの。本人の不利益があまりに大きすぎる制度だ」。同制度に詳しい小笠原基也弁護士は話す。 また同じ強制入院でも自傷や他害のおそれがある場合に適用される「措置入院」は、2人の指定医の診断を受け、都道府県知事が入院を決める制度だ。複数の医師と行政が介在することで、ある程度は第三者の視点が入りやすいが、医療保護入院にはそれもない。 つまり、医療保護入院はある人を入院させたいと考える側にとって極めて使い勝手がよい制度で、実際その件数は年々増加している。厚生労働省によれば、2018年度の医療保護入院の届け出数は18万7683件(「衛生行政報告例」)。6万件前後で推移した1990年代前半と比べ、3倍超に膨らんでいる。 さらに家族1人の同意が必要というのも、入院する時点に限ってのものだ。いったん入院してしまったら、その後家族が同意を撤回しても、入院継続の必要性の判断はあくまで指定医に委ねられることになる。米田さんのケースでも妹が退院を求めても、なかなか出られなかったのはそのためだ。 また米田さんのように主治医の指示で、家族とも一切の面会、そして通話すら禁止された場合、家族は本人の意向を確認することが難しく、結局は医師の判断に委ねざるをえないケースがほとんどだろう。 つまり医療保護入院の仕組みは、入院や行動制限の要否を判定する精神保健指定医の判断の正当性がすべての前提となっている。指定医の患者に対する権限は絶大だ。だが、同資格をめぐっては数年前に制度の根幹を揺るがすような大きな不祥事が起きている。 2015年、聖マリアンナ医科大学病院で、組織的な指定医資格の不正取得が発覚した。指定医資格を得るには、5年以上医師として働き、うち3年以上は精神障害の診断、治療に従事することが前提だ。そのうえで、自ら担当として診断、治療した症例について作成されたケースレポートで審査される。 あろうことかこのレポートで、ほかの医師が診察して作成したものを使い回していたことが明らかとなった。審査対象のレポートが大量に「コピペ」されていたというわけだ。その後の厚生労働省の全国調査で、100人強の不正が認定され、その多くが指定取り消し処分に加え、戒告・業務停止などの行政処分を受けることになった』、「医療保護入院はある人を入院させたいと考える側にとって極めて使い勝手がよい制度で・・・2018年度の医療保護入院の届け出数は18万7683件・・・6万件前後で推移した1990年代前半と比べ、3倍超に膨らんでいる」、「医療保護入院の仕組みは、入院や行動制限の要否を判定する精神保健指定医の判断の正当性がすべての前提となっている。指定医の患者に対する権限は絶大だ」、医師性善説を前提にしているのだろうが、病床の稼働率を上げため、「判断」が歪むことが背景にある筈だ。少なくとも「措置入院」のように、「2人の指定医の診断を受け、都道府県知事が入院を決める」といった歯止めが必要だ。
・『第三者機関も形骸化  また入院後に患者や家族が、第三者機関である精神医療審査会に対して、退院請求や処遇改善請求を行う制度もあるが、「ほとんど形骸化している」と、同制度に詳しい関係者は口をそろえる。 審査会の構成は指定医である医療委員が過半を占めるものが大多数で、「審査会は非公開で、あたかも本人の出席を原則としないかのような運用で、請求しても認められないことが多く、しかも事実認定が裁判基準からすると緩すぎる」と、審査会の法律委員を務めた経験のある佐藤弁護士は批判する。 実際、昨年5月には、米田さんの退院請求、処遇改善請求とも退けられている。退院が認められない理由は、「入院者に病識や自省がなく、その治療の必要性に関する認識が不十分であるため」だとされたが、その判断の具体的な根拠は示されていない。 東京都の精神医療審査会が2018年度の退院請求審査206件のうち、退院を認めたのはたったの1件。もはや「開かずの扉」となっている』、「第三者機関も形骸化」、「審査会の構成は指定医である医療委員が過半を占めるものが大多数」、まずは「構成」に弁護士などを増やすべきだろう。
・『「問答無用で徹底的に痛めつける」  日本社会事業大学大学院の古屋龍太教授はこう批判する。 「一精神科医の判断と家族等の同意によって、一個人を公権力によらず強制的に精神科病院に入院させる制度は、この日本にしか存在しない。裁判所等が関与する治療のための強制入院制度は他国にもあるが、『保護』のための強制入院制度は、ほかの諸外国にはない制度だ。 多くの精神医療関係者は、医療保護入院制度の存在は当たり前のものと考え疑問を持たない。だがそうした日本の精神医療の常識は、人権を尊ぶ世界には通用しない」 実際、日本の医療保護入院をモデルに制度を導入した韓国では、人権上問題視され、精神障害者当事者団体を中心に法改正を求める運動が本格化。当事者団体は憲法裁判所へ医療保護入院の違憲申請を提出。2016年、韓国憲法裁判所は制度の悪用と濫用の可能性を排除できないとして、身体の自由を定めた憲法12条に反して違憲であるとした。 世界には通用しない日本の精神医療の常識の、筆頭格にあたるこの医療保護入院。絶大な権限をもつ精神保健指定医がひとたび暴走したら歯止めはきかず、取り返しのつかない人権侵害へと直結することになりかねない。 今年2月、最高裁判所は診療報酬詐欺で一審、二審と有罪判決を受けていたある精神科医の上告を棄却した。懲役2年執行猶予4年の有罪判決が確定したこの医師は、一審の有罪判決後、こうした内容のメールを送っていたという。 「僕は1つだけやってやろうと決めてることがある。捜査機関の奴らが認知症やら何やらで精神科に来たら問答無用で隔離室に放り込んで、徹底的に痛めつける。絶対出さないしいくらでもいてもらう。完全に壊してから自宅に引き取らせる。厚労省関係者も同じ」(2019年5月18日付メール) 精神保健指定医の資格を有し、日本精神神経学会認定の専門医および指導医でもあるこの医師は、精神医療の現場を追われることなく、一審判決時にも複数の病院、クリニックで勤務していたという。 有罪が確定したことで、今後、厚生労働省の医道審議会に行政処分が諮られることになるが、通常は診療報酬の不正請求の場合、医師免許停止数カ月程度の処分が相場。こうした医師が指定医の資格で強大な権限を行使しているのが、日本の精神医療のまぎれもない現実だ。(第3回に続く)』、「『保護』のための強制入院制度は、ほかの諸外国にはない制度だ。 多くの精神医療関係者は、医療保護入院制度の存在は当たり前のものと考え疑問を持たない。だがそうした日本の精神医療の常識は、人権を尊ぶ世界には通用しない」、制度の早急な見直しが不可欠だろう。「有罪判決が確定したこの医師」、恐ろしい医師もいるものだと驚かされるが、これも制度の歪みがもたらしたものだ。

次に、この続きを、4月1日付け東洋経済オンライン「夫の策略で「強制入院3カ月」妻が味わった悪夢 精神疾患の既往歴なしの人が精神科病院に幽閉」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/340162
・『精神疾患により医療機関にかかっている患者数は日本中で400万人を超えている。そして精神病床への入院患者数は約28万人、精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占めるとされる(数字は2017年時点)。人口当たりで見ても世界でダントツに多いことを背景として、現場では長期入院や身体拘束など人権上の問題が山積している。日本の精神医療の抱える現実をレポートする連載の第3回。 「精神疾患の既往歴などいっさいない自分が、まさか精神科病院に強制入院させられるなんて、夢にも思いませんでした」 西日本のある県で看護師として働く30代後半の女性Aさんは、6年前にわが身に降りかかった出来事を、「今でも信じられない悪夢のようでした」と振り返る。2014年4月、双極性障害(そううつ病)で以前から入退院を繰り返していた夫の症状が悪化したため、Aさんは当時住んでいた四国地方の精神科病院を訪れた。 その1年前に結婚した夫は、結婚当初から躁(そう)状態になると、「お前に俺は釣り合わない」など暴言を吐く、必要な生活費を渡さないなど、精神的・経済的なDVを繰り返していたという。長男が生まれた後もそれは変わらず、病院に行く数日前にも、夫はまた精神状態が悪化していた。 だが、通院や入院を拒否。躁状態が続く夫への対応に、Aさんは困り果てていたところ、夫はAさんが一緒に行くなら診察を受けると約束したため、病院に同行することになった。 「はい、入院です」 「薬の量を減らしてから、精神状態が悪化しております」。夫と2人で診察室に入ったAさんは、「どうされましたか?」と目の前に座る医師に問われたため、夫の症状を話し始めた。だが、話し始めるやいなや、医師はAさんの話を遮り、思いもよらない一言を告げた。 「あなたのことですよ」 その言葉の意味がわからずAさんが医師に「何のことですか?」と聞き直したところ、医師は「支離滅裂がありますね」「ふわふわしていますね」と矢継ぎ早に言葉を並べた。Aさんが不穏な雰囲気を感じ、「ちょっと話がおかしいので、ほかの医師に診察をお願いできますか」と病院スタッフに話しかけると、この医師は大きなハンコを取り出し、紙のカルテにドンと音を立てて判を押して、こう告げたという。 「はい、入院です」) 抵抗する間もなく、両手、両肩を2人の男性看護師につかまれて、診察室から閉鎖病棟内の隔離室へと連れられた。隔離室内ではいきなり鎮静剤を注射されそうにもなった。「夫の診察に付き添ってきただけのはずが、なぜか私が入院、しかも隔離室に入れられたという現実が、当初まったく理解できませんでした」とAさん。医師からは入院の必要性もその形態の説明もなかったが、退院後にカルテの開示を受け、医師が押したハンコに書かれていた入院形態が「医療保護入院」だということがわかった。 連載第2回「精神病院から出られない医療保護入院の深い闇」(2020年3月1日配信)で詳しく触れたとおり、医療保護入院は精神保健福祉法が定める精神科特有の強制入院の1つだ。家族など1人の同意に加え、同じく1人の精神保健指定医の診断があれば、本人が入院に同意しなくても強制入院させられる。ある人を入院させたいと考える側にとって極めて使い勝手がよい制度で、その件数は右肩上がりに増加を続けている。厚生労働省によれば、2018年度の医療保護入院の届け出数は18万7683件に至っている』、「双極性障害」をもつ「夫」についていったら、「看護師として働く」自分が入院させられたとは、信じられないような事件だ。
・『不仲の夫でも「同意権者」に  Aさんの医療保護入院に同意したのは夫だ。自らの強制入院の経験に加え、身内に精神科医のいる夫は、同制度を熟知していた。「夫とその親族が、離婚や息子の親権の取得を有利に進めるために、この制度を悪用したのではないか」とAさんはいぶかる。法律上、夫婦間が係争中の場合などには同意権限は認められないが、この2人のように夫婦仲が悪かっただけでは欠格事由には該当しない。離婚調停を申し立てている場合であっても同様だ。 私物の持ち込みが一切出来ず、布団と便器だけがある隔離室の中で、Aさんがひたすら不安に思っていたのが、引き離された生後9カ月の息子のことだ。「精神状態が悪化した夫のもとに子供を残して、本当に心配だった」。 女性は結局、3カ月後の退院時まで隔離室で過ごした。病院側は「攻撃性、多弁、多動、易刺激性(ささいなことで不機嫌になる性質)が認められた」ことなどを、その理由として挙げる。だがAさんは「必要性や理由が何ら説明されないまま、突然強制的に入院させられ、しかも隔離室に入れられたら、誰だって強く反発するに決まっています」と憤る。カルテなどによれば、診断名は入院中の3カ月間で、統合失調症、双極性障害、自閉症スペクトラム障害、広汎性発達障害などへと、たびたび変遷している。 Aさんは、今は地元を離れ息子と2人で暮らしている。夫とは離婚調停中だ。向精神薬の服用はいっさいしていない。「看護師として精神病床のある総合病院でも働いたことがあり、あんなことがあるまで精神医療はかつてとは比べものにならないぐらいよくなっているものだとばかり思っていました。ですが、実際被害に遭ってわかったのは、健常者でさえも精神医療の被害に遭っている現実でした」』、「「夫とその親族が、離婚や息子の親権の取得を有利に進めるために、この制度を悪用したのではないか」、極めて悪質だが、それに加担した「精神科医」の責任も重大だ。損害賠償請求をしれば、勝訴する可能性もありそうだ。幸い「3カ月後の退院」、と短期だったからよかったものの、「健常者でさえも精神医療の被害に遭っている現実」、はやはり問題だ。
・『見知らぬ男たちに突如、連れて行かれた  既往歴もないのに、何の前触れもなく精神科病院に強制入院させられる。そんな経験をしたのはAさんだけではない。 「寝起きでまだ部屋着姿でいたところ、突然自宅に屈強な男が数人上がり込んできて、靴も履けないまま、玄関前に止まっていた車に連れ込まれました。あまりに突然のことで、スマホを持ち出すことさえもできませんでした」 都内在住の50代女性のBさんは、その日のことを鮮明に覚えていると話す。2011年の冬、普段はパジャマ姿のままで娘の保育園の送り迎えをするような夫が、その日はなぜか早朝から着替えて人を待つような様子だったので、不思議に思っていたと振り返る。夫はその数年前に発達障害の1つのアスペルガー症候群と診断されており、夫婦間にはいさかいが絶えなかった。 見知らぬ男たちによって有無を言わせず車に乗せられ、連れて行かれたのが都内の精神科病院だった。ちなみに「民間移送業者」と呼ばれるこの男たちが、いったい何者なのかについては、今後の連載中で詳しく取り上げていく予定だ。 医師のごく短時間の診察で、夫を同意者として、Bさんの医療保護入院が決まった。その後すぐに隔離室へと連行されたのはAさんと同様だ。「アスペルガーの夫は児童相談所や保健所、警察に私が娘を虐待していると巧妙な嘘をついて、それを真に受けた保健所が協力し、事前に入院の手はずを整えていたことが後でわかりました」(Bさん)。夫が事前に、警察や保健所などに入念に根回しをしていたのは、やはりAさんのケースとそっくりだ。 退院後に開示されたカルテによって、ほぼ夫からの情報だけによって、統合失調症の疑いと診断され、医療保護入院が決まった経緯が明らかとなっている。 結局、5日間の経過観察を経て、「特記すべき精神病症状を認めない」として退院が決まった。「夫は離婚が避けられないなら、子供の親権を取るために私を強制入院させようと画策したようです。もめ事は絶えませんでしたが、まさかここまでやるとは。それに法治国家の日本で本当にこんな拉致・監禁がまかり通っている現実にもショックを受けました」(Bさん)』、「Bさん」も「5日間の経過観察を経て・・・退院」、と短かったようだが、「アスペルガーの夫」に騙された「児童相談所や保健所、警察」の責任も重い。
・『DV夫の格好の「武器」に  DV被害者支援と加害者更生に取り組む、一般社団法人エープラスの吉祥眞佐緒代表理事によれば、離婚を有利に進め子供の親権を得るために、この医療保護入院が悪用される事例の相談は、ほぼ切れ間なくコンスタントに寄せられるという。 いま吉祥代表が支援しているのは下記のようなケースだ。首都圏在住の30代派遣社員の女性Cさんは、夫からの数年にわたるDVで不安定となり、精神科クリニックに通院していた。ある時言い争いの末のショックで、精神安定剤などをオーバードーズ(大量服薬)したことで、夫の同意で精神科病院に医療保護入院となった。 入院から3カ月経って、ようやく一時帰宅が許され自宅に戻ると、すでに自宅はもぬけの殻で、夫と子供の行方がわからなくなってしまった。住民票にも閲覧制限がかけられ探す手段がなく、途方に暮れているという。「数日間で出られれば子供を奪われずに済んだはず。医師はその時々の症状をちゃんと診断し、社会での生活能力があれば退院させるべきです。家族の意見ばかり聞くのではなく、本人の意見もしっかり聞いてほしい」(Cさん)。 「DV加害者の夫はたいてい外づらが非常によく、病院関係者だけでなく、行政職員や警察も女性を虐待加害者だと欺く話術を持っている。ヒステリックな妻と穏やかな夫というイメージの演出に長けている」と吉祥代表は実情を語る。 医療保護入院制度は、そんな彼らには格好の「武器」となっている。(第4回に続く)』、「DV夫の格好の「武器」に」「医療保護入院が悪用」、やはり制度の抜本的見直しが急務だ。

第三に、4月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの北 健一氏による「コロナ下で医療崩壊危機を高める「都立病院の独法化」は必要なのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/235969
・『新型コロナウイルスの感染者の拡大が日本でもっとも深刻な東京都で、3月31日、8つの都立病院と6つの公社病院を、2022年度内をめどに地方独立行政法人(独法)にする方針が決まった。実施されれば、都立病院は東京都の直営から独立行政法人に経営形態が変わる。 独法というのは、以前は国や自治体が行っていた事業を国や自治体から独立して行う法人で、大学や病院などに多い。国や自治体が直接運営する公営と株式会社が運営する民営との中間的な経営形態といえる』、「新型コロナ」対応は大丈夫なのだろうか。
・『東京都が病院を独法化する理由  東京都は何のために病院を独法化するのか。 都は「今後、超高齢化社会になるなかで深刻化する医療課題に応え、(採算が取りにくい)行政的医療を安定的、継続的に提供するという役割を将来にわたって果たし続けるのが独法化の目的です」(東京都病院経営本部)ときれいに説明する。 もっと明快な解説もある。「都立病院独法化 医療経営、自由度を向上」という見出しが躍った日本経済新聞(2018年1月18日付)記事だ。 「東京都立病院の経営形態を議論する有識者委員会は……独立行政法人化を促す報告案をまとめた。都立病院は慢性的な赤字体質で、年間400億円程度を都が一般会計から繰り入れている。独法化で経営の自由度を高め、効率化することで赤字を圧縮し、必要な医療サービスを維持するのが狙いだ」 しかし、都立病院の現場からは、小池都政幹部の意向を反映したこの記事に「フェイクに近い」と反発する声が上がる。 都立病院の経常収支は黒字基調で、年間400億円ほどの都一般会計からの繰り入れは、島しょ、周産期、感染症、精神科など採算が取りにくいが公共性の高い医療(行政的医療)に取り組むため法律にもとづいて都が負担しているもので、赤字補てんとは違うからだ。 日経記事から約1年半後の19年6月19日。小池百合子知事は知事室で、東京都病院経営本部の幹部から独法化についてレクを受けた。レク資料には「都の財政負担を軽減、独法化による効果を生かし病院のワイズスペンディングを実現」と記されていた。ワイズスペンディングとは「賢い支出」を意味する経済学者ケインズの言葉だ』、「日経記事」に対して、「都立病院の現場からは、小池都政幹部の意向を反映したこの記事に「フェイクに近い」と反発する声」、日経も一方的な記事で「フェイクに近い」と批判されるようでは、落ちたものだ。
・『新型コロナ問題で感染症対応の最前線に  日経新聞が「赤字体質」と非難し、都幹部も「ワイズ」ではないと小池知事に吹き込んだ都立病院。 だが、その存在意義が誰の目にもはっきりしたのが、新型コロナ感染症対応だった。 都立・公社病院はもともと備えていた感染症病棟をフル稼働させて感染患者を受け入れたばかりではなく、小池知事の要請に応じて次々と感染者を受け入れるためのベッドを増やしたからだ。 明治期にはコレラやチフスの、戦後は結核などの感染症治療に貢献してきた都立病院は、今また、感染爆発を食い止める最前線に立っている。それでも小池知事は、都立病院独法化の旗を降ろそうとはしていない』、「旗を降ろ」さずに「新型コロナ感染症対応」は上手くいくのだろうか。
・『人件費削減で収益率を向上  大阪では2006年、5つの府立病院が独法化され大阪府立病院機構の下に置かれた。都道府県立病院では初めての独法化で、公立病院独法化の「成功モデル」ともいわれる。独法化当時の府知事は通産官僚出身の太田房江氏だ。東京都も大阪を参考にしている。 大阪での独法化が「成功例」とされたのは、独法化初年度に17.2億円もの収支改善に成功したことが大きい。だが、その理由は単純だった。人件費のカットである。 府立病院機構は「地方独立行政法人の特性を活かして、業務運営の改善及び効率化に取り組」んだ結果だと胸を張った。ところが、初年度の人件費削減が17.2億円に上っており、収支改善はもっぱらその効果による。 効率化やアウトソーシングによって事務部門で76人減らしたのが大きいが、さらに、賃金カーブをフラット化した独立行政法人国立病院機構の給与表に合わせ、看護師ら職員の賃金が勤続年数によって上がるのを抑えたのも見逃せない。 独法化後、府立病院改革の旗を振った松下電器(現パナソニック)出身の徳永幸彦副理事長(当時)は「病院“運営”から病院“経営”に変えていこう」と唱えた。 病院機構の内部文書「(平成)19年度計画必達に向けて経営改善のポイント」には、府立病院の人員について「福祉ではない。基本は減少が時代の流れ」「医師、看護師は聖域としてきたが、看護師については、生産性が低い」(から増やさない)、「医師については、優秀な人材は確保」と記されている。また、中期計画に関して「給与比率は前年より下回ること」とされ、「自治体病院は給与比率50%を目指すが合言葉。国立は40%台になっている」ともある。 大阪府関係職員労働組合(大阪府職労)の小松康則書記長は「独法化時点で20%だった非正規職員が30%を超えました。これも人件費を抑えるためでしょう」と説明する。 2019年には労働基準監督署の指摘で、この2~3年だけで総額約12億円もの残業代未払いがあることが発覚、病院機構は約3000人に支給した』、「独法化時点で20%だった非正規職員が30%を超えました」、「この2~3年だけで総額約12億円もの残業代未払いがあることが発覚」、など「人件費」抑制には必死のようだ。
・『高級ホテル以上の料金の病室も  府立病院は、高度専門医療への重点化と効率的・効果的な医療サービスの提供を基本方針に掲げて医業収入を増やしていった。 独法化後、大阪城を見下ろす13階建て(地下2階)に建て替えられたがんセンターでは、7500円だった個室代が1万5000円になり、「最高の部屋は約5万9000円。(ホテル)ニューオータニより高い」(がんセンター勤務の看護師)という。) さらに個室料だけではなく、セカンドオピニオン料、母子センターでの分娩料などさまざまな料金が独法化後に上がった。 大阪府立5病院の独法化後の財務の変化をまとめたのが下のグラフだ。 独法化後の大阪府立病院の財務の変化(リンク先参照) 大阪府が出す「運営負担金」は約144億円から約85億円へ4割以上もカットされるなか、医業収入を懸命に上げてきた。 そして独法化3年目の08年をピークに一貫して下がり続けたのが、折れ線グラフが示す「給与費比率(給与総額÷医業収益×100)」である。 18年度は給与比率50.5%と、徳永副理事長が掲げた「50%」をほぼ達成した。 他方、入院単価は直営最後の年(05年度)の3万7116円から18年度には6万5743円まで、ほぼ2倍になった。民間の営利企業なら万々歳かもしれないが、「単価」が患者と健康保険組合の負担であることを考えれば、こうした「成功」を手放しでは評価できない』、「入院単価」の倍増は「手放しでは評価できない」のは確かだ。
・『感染症対応に追われる中で独法化の準備を開始  患者、そして都民には、行政的医療の後退や負担増の不安を振りまく独法化だが、独法化への移行は大きなビジネスチャンスでもある。 都立病院の現場が武漢からの帰国者受け入れなど新型コロナ感染症対応に追われ始めた2月3日、「独法化への移行を準備する業務」の入札申請がひっそりと開始された。委託のための予算さえ都議会に出される前の見切り発車だ。そして3月18日、あずさ監査法人が落札した。 あずさ監査法人は、国鉄、郵政の民営化支援や独法化支援に豊富な実績を持つ。ホームページに掲載している「公的セクター関連サービス」には、「公立病院の地方独立行政法人化に際しては、経営改善を第1の目標としながら、短期間で広範な作業が求められます」と書かれ、支援項目には「人事・給与システム」の構築もある。他方、オリンパス事件では巨額の粉飾を見逃し続け、金融庁から業務改善命令を受けたこともあった』、「あずさ監査法人」にとっては、大きな「ビジネスチャンス」だろう。
・『橋下徹元知事のツイートに医療現場から怨嗟の声も  前述の日経記事では「東京都に先行し2010年度に県立5病院を独法化した神奈川県は従来、運営費として131億円(09年度)を一般会計から繰り入れていたが、16年度には104億円と約2割減った」と先行例を示し、独法化を持ち上げた。 だが、その神奈川県立病院機構は2018年度、25億1200万円の経常赤字を出し、繰越欠損金は94億6700万円に及んだ。 3月9日の都議会予算特別委員会で白石たみお都議(共産党)から「これで(神奈川が)うまくいっていると言えるのか」と問われた小池知事は答弁せず、代わりに立った堤雅史東京都病院経営本部長も「神奈川県立病院機構は……努力している」と答えるのが精いっぱいだった。 独法化の成功例とされた大阪でも、府立病院の現場はマスクや手袋、防護服の不足に悩む。その渦中の4月3日、橋下徹元府知事はこうツイートした。 「僕が今更言うのもおかしいところですが……徹底的な改革を断行し、有事の今、現場を疲弊させているところがあると思います。保健所、府立市立病院など。そこは……見直しをよろしくお願いします」 これに対し、大阪の医療現場からは「ほんまに何を今さら」「怒りで吐きそう」といった怨嗟(えんさ)の声がもれる。 橋下氏は「平時のときの改革の方向性は間違っていたとは思っていません」とも付け加えたが、むしろ「平時」の改革の誤りが「有事」に露呈したようにも見える。 新型コロナ感染者を多数受け入れる都立駒込病院で働く看護師で、都庁職病院支部書記長でもある大利英昭さんはこう話す。 「福祉や医療を切り捨ててきたツケが今、回ってきています。新自由主義的な政策を推進してきた金持ちではなく私たち普通の労働者が、そのツケを自分のいのちで払わされようとしている。その瀬戸際まで来ているのです」』、「「平時」の改革の誤りが「有事」に露呈したようにも見える」、その通りなのかも知れない。いずれにしろ、「独法化」の真価が問われることになりそうだ。
タグ:日本経済新聞 大阪 医療問題 東洋経済オンライン 人権侵害 ダイヤモンド・オンライン 「医療保護入院」 (その24)(精神病院から出られない医療保護入院の深い闇 現場医師の裁量で強制長期入院も可能になる、夫の策略で「強制入院3カ月」妻が味わった悪夢 精神疾患の既往歴なしの人が精神科病院に幽閉、コロナ下で医療崩壊危機を高める「都立病院の独法化」は必要なのか) 「精神病院から出られない医療保護入院の深い闇 現場医師の裁量で強制長期入院も可能になる」 精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占める 人口当たりで見ても世界でダントツに多いことを背景として、現場では長期入院や身体拘束など人権上の問題が山積 連載第1回「精神病院に4年閉じ込められた彼女の壮絶体験」 自分のまったく知らないところで不妊手術をされていた 院内での生活はおよそ4年間にわたった 当事者からの声が140件以上集まった 弁護士が介入しても なかなか退院に向けた話が進まなかった 極めて使い勝手がよい制度 本人が入院に同意しない場合に、家族など1人の同意に加え、同じく1人の精神保健指定医の診断があれば、強制入院させられる 入院期間の定めがない 6万件前後で推移した1990年代前半と比べ、3倍超に膨らんでいる 医療保護入院の仕組みは、入院や行動制限の要否を判定する精神保健指定医の判断の正当性がすべての前提となっている。指定医の患者に対する権限は絶大だ 第三者機関も形骸化 審査会の構成は指定医である医療委員が過半を占めるものが大多数 「問答無用で徹底的に痛めつける」 ある精神科医の上告を棄却 僕は1つだけやってやろうと決めてることがある。捜査機関の奴らが認知症やら何やらで精神科に来たら問答無用で隔離室に放り込んで、徹底的に痛めつける。絶対出さないしいくらでもいてもらう。完全に壊してから自宅に引き取らせる。厚労省関係者も同じ 『保護』のための強制入院制度は、ほかの諸外国にはない制度だ。 多くの精神医療関係者は、医療保護入院制度の存在は当たり前のものと考え疑問を持たない。だがそうした日本の精神医療の常識は、人権を尊ぶ世界には通用しない 「夫の策略で「強制入院3カ月」妻が味わった悪夢 精神疾患の既往歴なしの人が精神科病院に幽閉」 数は18万7683件に至っている』、「双極性障害」をもつ「夫」についていったら、「看護師として働く」自分が入院させられた 不仲の夫でも「同意権者」に 健常者でさえも精神医療の被害に遭っている現実 見知らぬ男たちに突如、連れて行かれた DV夫の格好の「武器」に 医療保護入院が悪用 北 健一 「コロナ下で医療崩壊危機を高める「都立病院の独法化」は必要なのか」 8つの都立病院と6つの公社病院を、2022年度内をめどに地方独立行政法人(独法)にする方針が決まった 東京都が病院を独法化する理由 都立病院の現場からは、小池都政幹部の意向を反映したこの記事に「フェイクに近い」と反発する声 新型コロナ問題で感染症対応の最前線に 人件費削減で収益率を向上 都道府県立病院では初めての独法化で、公立病院独法化の「成功モデル」 人件費のカット 独法化時点で20%だった非正規職員が30%を超えました この2~3年だけで総額約12億円もの残業代未払いがあることが発覚 高級ホテル以上の料金の病室も がんセンターでは、7500円だった個室代が1万5000円になり、「最高の部屋は約5万9000円 入院単価」の倍増 手放しでは評価できない 感染症対応に追われる中で独法化の準備を開始 橋下徹元知事のツイートに医療現場から怨嗟の声も 「平時」の改革の誤りが「有事」に露呈したようにも見える
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ウイルス(その1)(人間と共生する生き物?可能性未知数のウイルスの正体 ただの病原体ではないウイルスの本当の姿と活用の可能性を探る、インフルエンザウイルスが持つ本当の脅威 止めどなく変化し続けるインフルエンザウイルスと日本の対策、アルツハイマー病や肥満の予防にも!ワクチンが秘める可能性とは ウイルス退治はワクチンだけの仕事じゃない?進むアジュバント研究の今) [生活]

今日は、現在のパンデミック騒動の基本である、ウイルス(その1)(人間と共生する生き物?可能性未知数のウイルスの正体 ただの病原体ではないウイルスの本当の姿と活用の可能性を探る、インフルエンザウイルスが持つ本当の脅威 止めどなく変化し続けるインフルエンザウイルスと日本の対策、アルツハイマー病や肥満の予防にも!ワクチンが秘める可能性とは ウイルス退治はワクチンだけの仕事じゃない?進むアジュバント研究の今)を取上げよう。

先ずは、昨年10月15日付けEMIRAが掲載した神戸大学大学院農学研究科の中屋敷 均教授による「人間と共生する生き物?可能性未知数のウイルスの正体 ただの病原体ではないウイルスの本当の姿と活用の可能性を探る」を紹介しよう。
https://emira-t.jp/special/7814/
・『ことしは早くも9月にインフルエンザA型の流行が確認され、また乳幼児へのRSウイルス感染症のニュースも出た。人口密度の高い都市部では感染スピードも速く、もはやウイルスとは無縁の生活はできない現代。悪者のイメージが強いウイルスだが、実は人体を守り、さらには人の誕生に関わる働きもしているという。そもそもウイルスがどのようなものなのか正確に知っている方はいるだろうか。今回は、植物や糸状菌を材料にした染色体外因子の研究を専門とする神戸大学大学院農学研究科の中屋敷 均教授に、ウイルスとは何なのかを聞いた』、基本を押さえるにはもってこいの記事だ。
・『ウイルス=病原体とは限らない  「ウイルスとは、バクテリア(細菌)、菌類、微細藻類、原生動物などとともに、よく“微生物の一種”と思われています。中でもウイルスは、一般的に病原体、つまり“悪いもの”というイメージですね」 神戸大学大学院農学研究科の中屋敷 均教授がそう話すとおり、「ウイルス」と聞くと、悪いイメージを持つ人が大半だろう。しかし、「病原体」とされる微生物には他にバクテリアや真菌(カビや酵母の総称)などもあり、必ずしもウイルスだけが“悪者”というわけではないという。その理由を知るためには、まずはそもそもウイルスとは何者なのかを理解する必要がある。 「よく大学の新入生に、大雑把なイメージをつかんでもらうために、真菌はわれわれと同じ多細胞生物、バクテリアはその体の一つの細胞が飛び出して独立して生きているもの、そしてウイルスは、その細胞の中の遺伝子が細胞から飛び出て“独立”したようなもの、と説明しています。もちろん遺伝子だけだと何もできませんから、細胞の中に入ることで初めて活動できるのがウイルスなんですよ。学術的には『ヌクレオキャプシド(nucleocapsid)』と呼ばれていて、遺伝子である核酸(DNAやRNAの総称)をキャプシドと呼ばれるタンパク質の殻が包み込んで粒子を作っているものとされています。つまり、核酸とタンパク質の複合体がウイルスに共通するコアな構造ということになります」 細胞からは独立した存在だが、宿主の細胞に入ると遺伝子として機能する。侵入した細胞のタンパク質を利用するなどして、活動できるようになるのだという。要するにウイルスは、人間などの細胞を構成している一つのパーツのような存在なのだ。 ちなみに、テレビなどでは菌のことをウイルスと表現することもあるが、「そこは区別しておきたい」と中屋敷教授は言う。 「ウイルスがバイ菌の中に含まれて表現されることがあります。しかしウイルスは『菌と呼んでくれるな』と思っているでしょうね」 ここまで聞くと、ウイルスは人間の体内で次から次へと細胞に侵入し、グループをつくっていくように感じるが、「ウイルスは人間と違って、意思を持って行動しているわけではないので、仲間を作ろうとか、他のウイルスと仲良くやろうとか、言ってしまえが(注:正しくは「ば」)、自分を増やしていこうとも思っていない」のだそう。 「“増やす”ではなく、正確には環境を与えられたので、“増えられるから増えている”ものだと思います。その中でより増えることができたものが残っていくのですが、まれにウイルス同士で助け合うこともあります。調べてみると、ウイルス集団の中には、しばしば自分だけでは増えることができないものが見つかり、他のウイルスからタンパク質をもらうことで、生きているようです。共助ですね」 積極的に増殖するのではなく、他人を利用して増えられるなら増えていく。ちゃっかり者のような存在なのかもしれない。 しかし、「ウイルスの全てが病気の元になっているわけではないのです。いることによって何かしらの役に立っているものもあるんですよ」と教授は続ける。 現に、われわれの根本であるヒトゲノム(人間の遺伝情報)の45%が、「ウイルス」や「ウイルスのようなもの」で構成されていることが示されている。「ウイルスがいたからこそ人間はここまで進化できた」と中屋敷教授は言うが、そうなると、やはり「=病原体」ではないのかもしれない』、「ヒトゲノムの45%が、「ウイルス」や「ウイルスのようなもの」で構成されている」、なくてはならない存在でもあるようだ。
・『人体にとってウイルスは善か、悪か?  とは言うものの、現実問題としてさまざまなウイルスに人間は感染し、病気にかかってしまう。例えば、大腸にはもともとさまざまな大腸菌が存在している。そこに、ウイルスの介在によってコレラ菌から毒素遺伝子が大腸菌に運び込まれることで、人を病気にする腸管出血性大腸菌「O-157」が出現したとのことだ。ここでは完全に“悪役”だ。 「ウイルスは一般的には病気の元になりますし、それは事実。一方でウイルスがあるからこそ元気でいられることもあるんです。例えば、子宮で子供を育てるという戦略は、哺乳類が繁栄できているキモだと言われています。実は、子宮の胎盤形成に必須の遺伝子の一つがウイルス由来のもので、胎盤の機能を進化させる上で重要な役割を果たしていることが知られています。現在でも、その遺伝子がなければ胎盤は正常には作れません」 また、ウイルスには他の病原体の感染をブロックしてくれるような存在意義もあるそう。 「例えばヘルペスのように、それがいることで他の菌に感染しにくくなっている、と報告されているものがあります。あるウイルスのおかげでわれわれの体は他の菌やウイルスに対して強くなる。つまり、ワクチンを打っているようなものかもしれませんね」 ウイルスは遺伝子として機能するため、ゲノムの中に存在するウイルスは、多様で重要な役割を果たしていることが、次々と分かってきているという。中屋敷教授が、「そもそもわれわれの進化も、そういったウイルスや“ウイルスのようなもの”のおかげで加速されてきた側面があると思います」というように、DNAにウイルスが入ってくることで変革が起こり、それが長いスパンで見ると“進化”の引き金になったとこともあるそうだ』、「子宮の胎盤形成に必須の遺伝子の一つがウイルス由来のもので、胎盤の機能を進化させる上で重要な役割を果たしている」、は「“進化”の引き金になった」重要な例の1つだろう。
・『ウイルスは生き物なのか?  このウイルスの“活動”は、あくまで自分から何かを生み出し、消費するのではないという。 「ウイルスは基本的にエネルギーを作ったりはしません。自身では設計図を持っているだけで、それを誰かに渡して製品(遺伝子産物や子孫)を作ってもらっているような感じです。自分の製品をより多く作ってくれるところへ潜んでいき、そこで設計図を渡す。その動きだけを見ると、結構世渡り上手な感じですね。だからウイルス自身が何か生産的なことをしているというより、宿主の細胞に働きかけて上手にそのシステムを利用しているイメージです」 そして、自分の子孫をより多く作ってくれるように働きかける過程が、人間の体内では免疫を抑制することにつながっているそうだ。 「自身を増やす過程で、自分を排除しようとするものから巧妙に逃れる性質があります。この活動があるからこそ、ウイルスは増えていき、その結果、病気を引き起こすことにもつながっているのです」 これらの活動から考えると、ウイルスはまるで生きているかのようだ。“かの”とあえて付けたのは、ウイルス=生き物かどうか、には賛否両論があるからだ。 「自分では動けない、しかし自身を増やすことはできる。何をもって“生きている”と定義するかによるのですが、進化をして、子孫を残すという性質を重視すれば、生きていると考えることもできるように思っています」 人間が長い年月をかけて現在の形になったように、もしかしたら今から10億年後に、現在のウイルスを先祖として進化した“生物”がいるかもしれない。 ちなみに多くの場合、ウイルスは遺伝子を10個以下、少ない場合は1、2個しか持っていないが、最新の研究では、遺伝子を2500個以上も有する「パンドラウイルス」という巨大ウイルスが見つかったそう。遺伝子数で見れば、小型のバクテリアとほぼ変わらない存在だ。 「この巨大ウイルスが、遠い未来に意思を持つような生物になるかもしれませんね(笑)。実は、巨大ウイルスを研究していたところ、彼らに“寄生するウイルス” (これは普通サイズ)というのが見つかり、寄生されると巨大ウイルスが病気になることが分かったのです。その後、巨大ウイルスは寄生したウイルスをやっつけるための免疫システムのようなものを持っていることも判明しました」 つまり彼らは自己、非自己の認識ができて、非自己はやっつけるという仕組みを持っているということ。「巨大ウイルスが持つ“免疫”の仕組みは、バクテリアのシステムに似ている」と中屋敷教授は言う。 「こういった“生物的な”巨大ウイルスの活動を考えるともう、ウイルスを生き物の仲間に入れてあげてもいいんじゃないかと思いますね」 この巨大ウイルスのように、「進化」していることが分かると、今後のウイルス研究では、われわれの健康に役立つことも見つかるのではないだろうか? 「今までウイルスは、それを原因とした病気の発生を通して見つかるという歴史でしたが、次世代シーケンサー(遺伝子の塩基配列を高速に読み出せる装置)と呼ばれる技術の発展により、病気を起こさないウイルスというのが生物界に広く存在していることが明らかになりつつあります。そういったものの中には、病気やストレスに対するワクチンのような効果を持つことが分かったものも少なくありません。ウイルス研究が進めば、これからさらに“共生体としてのウイルス”の良い面がどんどん分かってくるかもしれません。今からのウイルスの研究は、これまでと一味違うものになっていく可能性がありますし、その動きは既に始まっています」 人間にとっては善でも悪でもあるウイルス。しかしその活動や進化の状況を考えると、善の側面が将来的には広がり、ウイルス=悪いものという存在ではなくなっていくのかもしれない。 本特集第2回では、毎年猛威を振るうインフルエンザウイルスについて掘り下げていく』、「巨大ウイルスは寄生したウイルスをやっつけるための免疫システムのようなものを持っていることも判明」、まだまだ分かっていないことが多そうで、今後の解明が待たれる。

次に、この続きを10月15日付けEMIRAが掲載した国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の小田切孝人氏による「インフルエンザウイルスが持つ本当の脅威 止めどなく変化し続けるインフルエンザウイルスと日本の対策」を紹介しよう。
https://emira-t.jp/special/7971/
・『特集第1回では、「ウイルス」そのものについて見てきた。自らエネルギーを発するわけではないものの、時に病原となって、われわれのエネルギーを奪っていくのは事実だろう。中でも、これからの時期に脅威となるのが「インフルエンザ」だ。今回は、国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の小田切孝人氏に、誰もが知るウイルスが人体の中で一体何をしているのかを教えてもらい、来るべき脅威に対する防御策を考えていく』、「インフルエンザ」について深く知る意味も大きそうだ。
・『本当は一年中流行しているインフルエンザ  10月に入り、ことしもまたインフルエンザの予防接種シーズンが始まった。 インフルエンザは、「インフルエンザウイルスを病原とする気道感染症であるが、『一般のかぜ症候群』とは区別できる『重くなりやすい疾患』」(国立感染症研究所HP参照)とされている。われわれにとって最も知名度が高く、身近なウイルスといえば、このインフルエンザウイルスだろう。実際、「インフルエンザは、いまだ人類に残されている最大級の疫病である」(同HPより)と言われている。 このインフルエンザウイルスについて、ワクチン検査や予防治療法研究などを行う国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の小田切孝人氏はこう補足する。 「インフルエンザウイルスというのは、簡単に言うとインフルエンザ(病名)を引き起こすウイルスなんです。インフルエンザというのは、一気に発熱して筋肉痛や関節痛といった体の痛みなど全身症状から発症するのが特徴です。一般的な風邪の症状である鼻水や咳(せき)は治りかけたころにやってくるんです」 そもそも風邪というのは、ウイルスによる「上気道感染症」、つまり気道、呼吸器に起こる感染症を指す。その原因となるウイルスには、代表的な「ライノウイルス」、夏場のプールで感染する「アデノウイルス」など、さまざまな種類が存在している。ことしは9月1日に、今シーズン最初のインフルエンザによる学級閉鎖が大分県で報告されているが、通常、12月から翌2月が流行シーズンと言われている「インフルエンザ」もその一種だ。 「日本では、冬にはやるものですよね? それは、インフルエンザウイルスは乾燥と低温に強いため、冬場は空気中で長く生きることができるからなのです。そもそもヒトに感染するインフルエンザウイルスは、高温多湿になる夏場には活発に動くことができない。 また、インフルエンザウイルスは空気感染することはまれで、ほとんどは飛沫感染か接触感染。つまりウイルスが付着した手でモノを食べたり、顔をこすったりしてうつるのですが、次のヒトに到着するまでは空気中を浮遊する必要があるため、湿度の低い冬場に流行するわけです」 こうした“季節性”を持つウイルスであることも特徴だそうだが、実は、これはあくまで北半球での話。熱帯地域や亜熱帯地域では、年がら年中インフルエンザウイルスがはやっているという。 「乾燥に強いということは、逆に言えば湿気に弱い。一見矛盾しているように感じますが、そうした地域では雨季にインフルエンザがはやります。屋外では湿度が高く、長く活動することが難しいものの、雨季になると人が屋内で過ごす時間が長くなり密集環境になるため、そこで感染が広がりやすくなるのです」 インフルエンザは、WHO(世界保健機関)によって世界規模で行う感染症サーベイランス(調査・監視)の対象と定められており、6エリアに分かれて常時調査、研究が行われている。日本はアジア圏を担当しており、夏場でも近隣国や東南アジア諸国でウイルス株を入手して研究が続けられているという。 インフルエンザは地球規模の感染症であり、冬場だけのものではない。実はこれが“流行型”を決めるカギになっている』、「そもそも風邪というのは、ウイルスによる「上気道感染症」」、「湿度の低い冬場に流行する・・・これはあくまで北半球での話。熱帯地域や亜熱帯地域では、年がら年中インフルエンザウイルスがはやっている」、などは初めて知った。
・『インフルエンザウイルスの“流行型”とは?  毎年4月ごろ、厚生労働省は次のシーズンのインフルエンザワクチンの製造株決定を通知している。インフルエンザのシーズンとは、毎年第36週から、翌年の第35週までの1年間を指し(9月~翌年8月末)、2018/2019シーズンは2018年9月1日~2019年8月31日までと区切られている。 「そもそも『株』というのは、ウイルスのことを意味しています。ワクチン製造には、敵となるウイルスそのものを使う必要があるので、ワクチンの製造株=シーズン中の流行株の代表選手なんです。ただ、前の2017/2018シーズンの流行型は『B/山形系統』が主流でしたが、実際にその年の冬にはやる型は完全には予想できないために、ヒト社会ではやるA型2種類とB型2種類の全てを含んだワクチンが使われているんですよ」 ここで、インフルエンザウイルスの種類についても解説しておきたい。インフルエンザウイルスには症状の激しいA型、腹部に症状が出やすいB型、幼児がかかりやすいC型の3種類が存在しており、季節性と言われるインフルエンザウイルスは、基本的にA型とB型を指しているという。その上で、流行株の名称にある「シンガポール」や「香港」といった地名は、その流行ウイルスが採れた場所を指す。つまり、例えば最新型のウイルスが東京で検出されれば、『A型東京(学術名ではA/Tokyo)』と名付けられる。 「毎年2月ごろにWHOの世界会議で、次のシーズンの北半球で使うインフルエンザワクチン株を決めています。シーズン真っただ中にある北半球諸国で次に主流となることが予想される流行株を見つけ出し、次シーズン向けのワクチンとして推奨しているのです。しかし、ワクチン株1つを見つけるためには、世界中の数千株の流行ウイルスをチェックする必要があり、それが本当にワクチンとして適切であるか、増殖性なども見極める必要があるのです。 また、日本では毎年3月下旬がワクチンの製造株を決めるデッドライン。ワクチンの製造と国家検定には少なくとも6カ月はかかるため、10月からの予防接種に間に合わせるためには、そこがギリギリなのです。ところが、流行のピークは12~2月ですが、日本でも4月下旬までは流行が続きます。なので、3月時点で流行株を決めても、その後に流行ウイルスが変わってしまったこともあります。 そもそもインフルエンザウイルスはすごいスピードで進化するので、流行シーズンの最初と最後でウイルスの抗原性(免疫の元となる抗体としての性質)が変わってしまっていることもあるんですよ」 当然、より効果的なワクチンを製造するためには、流行型に対して使用するウイルスの抗原性がマッチしていることが重要だ。しかし、思いどおりにいかないのが、インフルエンザワクチンだと小田切氏は続ける。 「遺伝子の中でも、人体の細胞が持つのはDNA(デオキシリボ核酸)ですが、インフルエンザウイルスはRNA(リボ核酸)です。DNAは、進化がものすごく遅く、間違った進化をしても元に戻すメカニズムがあります。対してRNAは、間違った進化を遂げてもお構いなし。ものすごいスピードで間違ったまま進化していくのです。 他のウイルス性の病気に比べて、ワクチンが効きにくいのもこれが原因の一つなのですよ。本来、同じウイルスが5年、10年はやり続けたとすれば、人間の体内には免疫ができてくる。しかし、インフルエンザウイルスは変化が速いため、体の免疫機構が追いつかないのです。 昨年、ワクチン不足が問題となりましたが、『有効性が高い』と考えていたウイルスがうまく増殖せず、前シーズンに使用したワクチン株に軌道修正したために、製造開始が例年より2カ月出遅れてしまったのが原因でした。私たち研究者からすれば、効果の高いワクチンを供給したい思いが強いのですが、毎年約2600万本分のワクチンを作る必要がありますから、国からの要請で、時にワクチン株を変更する妥協をしなければならないこともあります」 昨年は結局、H3N2亜型(俗称は香港型)ワクチンを製造し直したそうだが、ことしはどうなるのか。ことしのワクチン株は、
・A/Singapore(A型シンガポール)/GP1908/2015(IVR-180)(H1N1)pdm09 ・A/Singapore(A型シンガポール)/INFIMH-16-0019/2016(IVR-186)(H3N2) ・B/Phuket(B型プーケット)/3073/2013(山形系統) ・B/Maryland(B型メリーランド)/15/2016(NYMC BX-69A)(ビクトリア系統) と、どのウイルスがはやっても対応できるようにA型2種類、B型2種類の4種混合で製造されている。予防接種シーズンの半年前にその冬の流行型を見極めるのがいかに至難の技であるかは、お分かりいただけたのではないだろうか』、「インフルエンザウイルスはすごいスピードで進化するので、流行シーズンの最初と最後でウイルスの抗原性(免疫の元となる抗体としての性質)が変わってしまっていることもある」、「人体の細胞が持つのはDNA・・・インフルエンザウイルスはRNA・・・DNAは、進化がものすごく遅く、間違った進化をしても元に戻すメカニズムがあります。対してRNAは、間違った進化を遂げてもお構いなし。ものすごいスピードで間違ったまま進化していくのです。 他のウイルス性の病気に比べて、ワクチンが効きにくいのもこれが原因の一つ」、なかなか厄介な代物のようだ。 
・『どんな薬でもいずれ耐性を持ったウイルスが出現してくる?  ここまで、インフルエンザウイルスの脅威をお伝えしてきたが、一方で、今話題となっている新薬がある。「抗インフルエンザウイルス薬バロキサビル マルボキシル」、通称「ゾフルーザ」だ。 インフルエンザウイルスは、感染した細胞内で自身の遺伝子を複製し、増殖・放出することで同体内の他の細胞に感染を拡大すると言われているが、この新薬は、細胞内でのウイルス遺伝子複製に必須となる酵素(RNAポリメラーゼ)の働きを抑えることで、その増殖を防ぐことができるという。 「ゾフルーザが酵素部分に直接作用することで、ウイルスは子孫を残せなくなる。つまりそれ以上伝染できなくなるわけです。もちろん、“予防”のためのワクチンと違い、あくまで発症してからの“治療”。空気中に浮遊するウイルス自体をなくすこともできません。それでも、体内で発症してからウイルスを根絶できるのは画期的だと思います」 ゾフルーザがあればインフルエンザも怖くない! ……と、思いきや、小田切氏は「油断はできない」という。 「先にお話したとおり、インフルエンザウイルスは、進化がとても速いのです。どんな新薬にも一定の割合で自発的に抵抗性を示す『耐性ウイルス』が出現します。つまり、ゾフルーザにもいずれ、抵抗性を示すウイルスが出てくるかもしれないのですよ」 人体と同じく、自らを攻撃してくる物質に対して耐性をつくる。特集第1回の中屋敷均教授の話にもあったとおり、やはりウイルスは“生きている”のかもしれない。 「ただ、面白いのは、薬が効かないインフルエンザウイルスは、薬が効くウイルスよりも早く死んでしまうのです。やっぱりどこか“生きるために”ちょっと無理をしているのですよね。耐性を作るために負荷がかかっている分、短命になる。命を削って、彼らも薬と戦っているわけです」 いたちごっこ状態となっているインフルエンザウイルスとワクチンや薬の研究だが、今後、ウイルスの突然変異によるパンデミック(爆発的な流行)が起こり、まったく歯が立たなくなる……なんてことも、起こり得るのだろうか。 「20世紀には3度、大きなパンデミックがありました。1度目は1918年『H1N1亜型』でいわゆる『スペインかぜ』、2度目は1957年『H2N2亜型』でいわゆる『アジアかぜ』、3度目は1968年『H3N2亜型』でいわゆる『香港かぜ』と呼ばれるものです。いずれも鳥から由来したウイルスによるもので、『香港かぜ』は50年たった今でも季節性インフルエンザウイルスとして主流の一つとなっています。そして21世紀に入って最初のパンデミックは2009年に流行したブタ由来の『H1N1pdm09』です。全て人間社会にはなかったウイルスが突然流行したため、大きな問題となりました。 今後、トリやブタ以外から新たなウイルスが流入することは考えにくいのですが、これらのインフルエンザの動向は注意深く監視していくことが非常に大切になります。それに、実は2017/2018シーズンのインフルエンザは、諸外国でも大流行したうえ、1999年の感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)によるサーベイランスが始まって以来の大流行だったのですが、それほど大騒ぎになりませんでしたよね? 一年中調査・研究を続け、対策は強化されていますから、きちんと予防接種をして、うがい手洗いを心掛けてもらえれば、インフルエンザには負けません」 最も身近であろうウイルスの脅威克服のために、人間は多くの予防線を張ってきた。それでもまだ、世界的な視野で「人類に残された最大級の疫病」の監視を怠ってはならないようだ。 次回は、その予防医療を実現し、われわれの盾となっているワクチン研究の今を見ていく』、「1999年の感染症法・・・対策は強化されています」、にも拘らず、今回の新型コロナウィルスには世界中が手を焼いているなど、「ウィルス」との戦いはまだまだのようだ。

第三に、この続きを10月15日付けEMIRAが掲載した国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチン・アジュバント研究センター センター長の石井健氏による「アルツハイマー病や肥満の予防にも!ワクチンが秘める可能性とは ウイルス退治はワクチンだけの仕事じゃない?進むアジュバント研究の今」を紹介しよう。
https://emira-t.jp/special/8121/
・『特集第2回でも触れたとおり、インフルエンザウイルスは間違いなくことしもやって来る。そして、予防のためのワクチンを人々は接種する。この「ウイルス」と「ワクチン」は、そもそもどのようにせめぎ合っているのか? ワクチンとその効用に大きく関わる因子「アジュバント」の研究開発を専門とする、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 ワクチン・アジュバント研究センター センター長の石井健氏に、抗ウイルスの現在、そしてこれからを聞いた』、面白そうだ。
・『ワクチンはウイルスからつくられる  「例えばインフルエンザのワクチンは何からできているかというと、“無害化した”インフルエンザウイルスからできています。ウイルスを一度バラバラにして、そこから熱の原因などになるものを取り除き、人の免疫システムが認識できるHA(ヘマグルチニン)というタンパク質にしているのです」 まずそう教えてくれたのは、ワクチン・アジュバント研究センターでセンター長を務める石井健氏だ。 ウイルスによる感染症にはいろいろあるが、多くの場合、一度かかるとそのウイルスに対して体が強くなり、二度はかからないと言われている。それと原理はほぼ同じで、ワクチンとは簡単に言うと、体にウイルスを覚えさせるためのもの。ワクチンを体に入れることで、ウイルスに“感染するマネ”を体に認識させる。するとそのワクチンのもとになったウイルスに対して免疫ができるため、病気になる原因を持ったウイルスが体に入ってきても、やっつけたり、弱めたりできるというわけだ。 「現在ワクチンで予防できる疾患というのは世界中で27種類あり、インフルエンザ、天然痘、破傷風などがそこに含まれます。新しいワクチンもどんどん登場していて、帯状疱疹(たいじょうほうしん)のワクチンもことし日本で認可されたので、来年には世の中に登場するのではないでしょうか」 帯状発疹とは、ヘルペスウイルスの一種、水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスによって発症する。子供のころに水疱瘡(みずぼうそう)にかかった場合、大人になって免疫力が低下してくることで、体内に残っていた水痘・帯状疱疹ウイルスが再び活発化してしまうのだ。「大人の水疱瘡」として話題になった帯状疱疹だが、このワクチンにより、水痘・帯状疱疹ウイルスの再始動を予防することができるという。 ちなみにワクチンには、ウイルスの毒性を弱めた生ワクチン、不活性化および消毒した不活化ワクチン、毒性をなくしたトキソイドがある。生ワクチンはウイルスが弱いものの生きていて、体内で増えながら免疫力を高めていくため、免疫ができるまでに時間がかかるが、接種は1回で済む。不活化ワクチンとトキソイドはウイルスの能力をなくしているので、免疫ができても力は強くなく、複数回接種することで免疫力を維持する。 これらワクチンの開発には実に20年近い歳月を要するそう。数え切れない実験を行い、人間の体に入れても安全だというお墨付きが得られて初めて認可される。だから世界中で日々研究・実証が行われているが、何がいつ認可されるかはその進捗(しんちょく)次第。ただし、常に進化しているということは言えそうだ』、「帯状疱疹」への「ワクチン」が今年、「世の中に登場する」とは嬉しい話だ。「ワクチンの開発には実に20年近い歳月を要する」のでは、新型コロナウィルスへのワクチンはまだまだ遠い先のようだ。
・『ワクチンの効果を高めるアジュバントの存在  ところで、実はワクチンだけを投与しても、その効果は持続しない。ワクチンの効果を高め、持続性をよくするために、ほとんどのワクチンには「アジュバント」と呼ばれるものが含まれている。 「アジュバントとは、ひと言で言うと“ワクチンの効き目を高めるもの”です。特定の物質名ではなく、効果を増強する因子の総称。一般的には耳慣れない言葉ですが、開発の歴史は80年以上もあるんですよ。アルミニウム塩をベースにつくられるものが現在は主ですが、他に人間の体内にもともと存在する核酸などでもアジュバントはつくられています。アジュバントを含んだワクチンを投与すると、含んでいない場合に比べて免疫反応は早く起き、その効果も高く、しかも免疫力が長く持続する。そして現在の研究は、この免疫力をどこまで長くできるかという点に重点を置いています」 先述したワクチンの種類のうち、生ワクチン以外は全てアジュバントを含んでいる。具体的な病名で言うと、ジフテリア毒素や破傷風、百日咳、B型肝炎、肺炎球菌など、よく知られる感染症のワクチンのほとんどに含まれているのだ。つまり効果があると言われているワクチンには必ずと言っていいほどアジュバントが含まれており、逆にアジュバントなしのワクチンは効き目が低い、と言えるそうだ。 また、アジュバントには効き目を高める以外にも、メリットがある。 「アジュバントはワクチンの効き目を高めるものなので、ワクチンの中にある不活性化・無毒化したウイルスなどの抗原(免疫反応を発生させる物質)の効き目を高めた上で、そもそもの含有量を減らすことも可能になります。例えばインフルエンザが大流行し、より多くのワクチンが必要になったときには、アジュバントを含むことによってワクチン1つあたりに使う抗原量を減らすことができるので、より多くのワクチンを作り出せることになります。それに、効き目が高ければ、ワクチン摂取量を減らすこともできるでしょう」 仮に「抗原15マイクログラム:アジュバントなし」のワクチンがあったとしよう。ワクチンの効きをよくするアジュバントを入れれば、同種のワクチンが大量に必要となった場合、理論上では抗原を半分から10分の1にしても、効果がさほど変わらないワクチンをつくることができるという。 ちなみに、アルミニウム塩をもとにつくられているアジュバントは、約90年前に偶然その効果が発見された。製造方法が確立して保存性も優れているため、1932年にジフテリアワクチンに用いられてからというもの、現在世界で最も普及しているアジュバントだ。 「ただ、現在のアジュバントにも限界点はあります」』、どういうことだろう。
・『ワクチンとアジュバント研究が未来の医療を変える!?  現在主流のアルミニウム塩アジュバントが抱える問題、それは「ワクチンの効き目を高めてウイルスの活動を抑えることはできたが、ウイルスが感染している細胞をやっつけるような免疫力までは引き出せていない」ということ。また、発熱やアレルギー反応を起こす可能性もあるそうだ。そのため、“次世代アジュバント”の研究開発が急ピッチで進んでいる。 「ワクチンは万能ではありません。他のどのような物質からアジュバントをつくり出せば、より多くのウイルスに効果を発揮できるのか研究していかなければならないのです。それで、核酸や脂質の分子からアジュバント開発が進められていて、私は『CpGDNA』という、ウイルスや細菌のDNAに多くある配列(CpG配列)を組み込んだDNA断片をアジュバントとして研究開発しています」 ワクチンにアルミニウム塩からつくり出したアジュバントを加えていくという従来の方法から一歩進んで、今後は対象となる疾患に合わせたワクチン+アジュバントをつくることが求められていくという。 では、その研究開発は、これからどうなっていくのだろう? 「日本ではすでに、ミネラルオイルと植物由来界面活性剤をもとにしたアジュバントの臨床研究が行われるなど、さまざまな種類のアジュバント開発が進んでいます。今後は予防医学の観点から、アルツハイマー病をはじめ、高血圧や動脈硬化、肥満などの生活習慣病を予防するためのワクチン開発も期待されています。といってもすぐに完成するわけではなく、まだ開発段階なので、実現するのは近未来ですね」 他にも、世界では熱帯地域における寄生虫が原因のウイルス性疾患など、緊急の対策が必要な感染症をはじめとする病気が50近くあるそう。「これらはワクチン開発、実用化を急がなければなりません」 感染症への対応でいえば、ワクチンができたことで、例えば天然痘ウイルスは1980年にWHOが世界根絶宣言を行っていて、以後の患者の発生はないと発表されているし、ポリオウイルスも近い将来根絶できると言われているそうだ。そうなれば、先述の50近い病気の原因を含むいろいろなウイルスを根絶できる時代が来るのかと考えてしまうが、「ワクチンはウイルスを消し去るものではない」と石井氏は続ける。 「ワクチンによって一つのウイルスをやっつけるというのは、体内からウイルスを排除することではありません。私たちの体は、ウイルスとバランスよく共生していて、その中の一つが悪さをしたときに、ワクチンで抑えるのです。仮に、ある特定のウイルスを排除してしまうと、その際に良いウイルスまで排除してしまう可能性もありますし、そのことが原因で他のウイルスが悪さをしてしまうことだって考えられます」 これを大前提の出発点として、ワクチン開発は進む。いずれワクチン、そしてアジュバントが医療を大きく変える日が来るのだろう』、「アルツハイマー病をはじめ、高血圧や動脈硬化、肥満などの生活習慣病を予防するためのワクチン開発も期待されています」、嬉しい話だが、私が必要とする時には間に合いそうもなさそうだ。「私たちの体は、ウイルスとバランスよく共生していて、その中の一つが悪さをしたときに、ワクチンで抑えるのです。仮に、ある特定のウイルスを排除してしまうと、その際に良いウイルスまで排除してしまう可能性もありますし、そのことが原因で他のウイルスが悪さをしてしまうことだって考えられます」、「ワクチン開発」もなかなか難しそうだが、大いに頑張ってもらいたいものだ。
タグ:ウイルス 石井健 (その1)(人間と共生する生き物?可能性未知数のウイルスの正体 ただの病原体ではないウイルスの本当の姿と活用の可能性を探る、インフルエンザウイルスが持つ本当の脅威 止めどなく変化し続けるインフルエンザウイルスと日本の対策、アルツハイマー病や肥満の予防にも!ワクチンが秘める可能性とは ウイルス退治はワクチンだけの仕事じゃない?進むアジュバント研究の今) EMIRA 中屋敷 均 「人間と共生する生き物?可能性未知数のウイルスの正体 ただの病原体ではないウイルスの本当の姿と活用の可能性を探る」 ウイルス=病原体とは限らない ヒトゲノムの45%が、「ウイルス」や「ウイルスのようなもの」で構成されている 人体にとってウイルスは善か、悪か? 子宮の胎盤形成に必須の遺伝子の一つがウイルス由来のもので、胎盤の機能を進化させる上で重要な役割を果たしている ウイルスは生き物なのか? 巨大ウイルスは寄生したウイルスをやっつけるための免疫システムのようなものを持っていることも判明 小田切孝人 「インフルエンザウイルスが持つ本当の脅威 止めどなく変化し続けるインフルエンザウイルスと日本の対策」 本当は一年中流行しているインフルエンザ 風邪というのは、ウイルスによる「上気道感染症」 湿度の低い冬場に流行する これはあくまで北半球での話。熱帯地域や亜熱帯地域では、年がら年中インフルエンザウイルスがはやっている インフルエンザウイルスの“流行型”とは? インフルエンザウイルスはすごいスピードで進化するので、流行シーズンの最初と最後でウイルスの抗原性(免疫の元となる抗体としての性質)が変わってしまっていることもある 人体の細胞が持つのはDNA インフルエンザウイルスはRNA DNAは、進化がものすごく遅く、間違った進化をしても元に戻すメカニズムがあります。対してRNAは、間違った進化を遂げてもお構いなし。ものすごいスピードで間違ったまま進化していくのです。 他のウイルス性の病気に比べて、ワクチンが効きにくいのもこれが原因の一つ どんな薬でもいずれ耐性を持ったウイルスが出現してくる? 「アルツハイマー病や肥満の予防にも!ワクチンが秘める可能性とは ウイルス退治はワクチンだけの仕事じゃない?進むアジュバント研究の今」 ワクチンはウイルスからつくられる 帯状疱疹(たいじょうほうしん)のワクチンもことし日本で認可されたので、来年には世の中に登場するのではないでしょうか ワクチンの開発には実に20年近い歳月を要する ワクチンの効果を高めるアジュバントの存在 ワクチンとアジュバント研究が未来の医療を変える!? アルツハイマー病をはじめ、高血圧や動脈硬化、肥満などの生活習慣病を予防するためのワクチン開発も期待されています 私たちの体は、ウイルスとバランスよく共生していて、その中の一つが悪さをしたときに、ワクチンで抑えるのです。仮に、ある特定のウイルスを排除してしまうと、その際に良いウイルスまで排除してしまう可能性もありますし、そのことが原因で他のウイルスが悪さをしてしまうことだって考えられます
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健康(その9)(ベジタリアン食は脳卒中リスクが20%高まる可能性、医師が警告!「糖質制限したい人」、ここに注意 「朝食抜き」「隠れ糖質」…その方法で大丈夫?、筋肉体操の谷本氏「運動効果を倍にする歩き方」 ちょっとのコツだけでエクササイズにもなる) [生活]

健康については、昨年8月30日に取上げた。久しぶりの今日は、(その9)(ベジタリアン食は脳卒中リスクが20%高まる可能性、医師が警告!「糖質制限したい人」、ここに注意 「朝食抜き」「隠れ糖質」…その方法で大丈夫?、筋肉体操の谷本氏「運動効果を倍にする歩き方」 ちょっとのコツだけでエクササイズにもなる)である。

先ずは、昨年9月21日付けダイヤモンド・オンライン「ベジタリアン食は脳卒中リスクが20%高まる可能性」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/215354
・『ベジタリアン食で脳卒中リスクが高まる?  野菜中心で肉を食べないベジタリアン食は、心臓の健康には良いが、脳卒中リスクはわずかに高まる可能性があることが、英オックスフォード大学ナッフィールド保健省のTammy Tong氏らの研究で明らかになった。 研究では、肉を食べる人に比べて、ベジタリアンでは心疾患リスクが22%低下した一方で、脳卒中リスクは20%高まることが示された。一方、肉は食べないが魚を食べる人(ペスカタリアン)では心疾患リスクは低く、脳卒中リスクの上昇は認められなかったという。研究結果の詳細は「BMJ」9月4日号に掲載された。 この研究は、1993~2001年の間に登録した虚血性心疾患や脳卒中の既往歴がない英国人の男女4万8188人(平均年齢45歳)を対象としたもの。参加者を、肉を食べる群(2万4428人)と魚を食べるペスカタリアン群(7506人)、ベジタリアン群(1万6254人)の3つの群に分けて約18年間追跡し、虚血性心疾患と脳卒中の発症を調べた。 追跡期間中に2820人が心疾患を発症し、1072人が脳卒中を発症した。脳卒中患者のうち519人は脳梗塞で、300人は出血性脳卒中であった。病歴や喫煙歴、サプリメント使用の有無、身体活動量などの因子を調整して解析した結果、虚血性心疾患リスクは、肉を食べる人に比べてペスカタリアンでは13%、ベジタリアンでは22%それぞれ低いことが分かった。一方、肉を食べる人に比べて、ベジタリアンでは脳卒中リスクが20%高いことも示された』、参加者は開始時の「平均年齢45歳」、なので、終了時には63歳になったようだ。「病歴や喫煙歴、サプリメント使用の有無、身体活動量などの因子を調整して解析」、したのであれば、信頼性が高そうだ。気の長い研究で、研究結果は大いに役立ちそうだ。ただ、「肉を食べる人に比べて、ベジタリアンでは脳卒中リスクが20%高い」、というのは常識と違うので、意外だった。
・『Tong氏は「ペスカタリアンやベジタリアンで心疾患リスクが低下したのは、食事による減量や血圧、コレステロール値の改善、糖尿病有病率の低下などが部分的に関与したのでは」との見方を示している。ただし、この研究は因果関係を証明するものではないとして、同氏は慎重な解釈を求めている。 また、心疾患リスクの低下度や脳卒中リスクの上昇度はわずかであり、「肉を食べる人と比べて、ベジタリアンでは10年間に心疾患を発症する人が1000人当たり10人少なく、脳卒中を発症する人が1000人当たり3人多いだけだ」と同氏は説明している。 Tong氏によると、最近の研究から、コレステロール値を過度に下げると出血性脳卒中のリスクが高まることが報告されている。また、ベジタリアンやヴィーガン(注)の人は、動物性食品のみから摂取できるビタミンB12などの一部の栄養素が不足しがちになることも指摘されている。さらに、ビタミンB12欠乏は、脳卒中リスクの上昇と関連する可能性も示唆されているが、結論には至っていないという。 論文の付随論評を執筆したディーキン大学(オーストラリア)公衆栄養学教授のMark Lawrence氏は、「食事ガイドラインでは、食事が健康全体に与える影響について考察されており、肉や魚を食べる人たちと同様に、ベジタリアンにとっても適切なアドバイスが示されている」と説明。また、「植物性食品を中心とした食事に変えることは、個人の健康だけでなく地球環境にも優しいといえる。ただし、そのためにベジタリアンになる必要はない」と話している。 一方、専門家の一人で米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン医療センターの管理栄養士であるSamantha Heller氏は、「野菜中心の生活を送る人たちは、ビタミンB12やビタミンD、ω3脂肪酸などが不足しないよう食事やサプリメントから補う必要がある」と指摘する。ただ、植物性食品が主体の食事は、心血管疾患や一部のがん、2型糖尿病などの予防に有用だとし、「牛肉や豚肉などの赤肉や加工肉の摂取を控え、豆類や豆腐、ブロッコリー、ホウレンソウ、カリフラワーなどを食べるとよい」と助言している。(HealthDay News 2019年9月5日)』、「この研究は因果関係を証明するものではないとして、同氏は慎重な解釈を求めている」、学者らしい良心的発言だ。「リスクの低下度・上昇度」でみると、「肉を食べる人と比べて、ベジタリアンでは10年間に心疾患を発症する人が1000人当たり10人少なく、脳卒中を発症する人が1000人当たり3人多いだけだ」、と違いはそれほど大きくないようだ。ただ、この僅かの差をどうみるかは、人それぞれだろう。
(注)ヴィーガン:完全菜食主義者。卵・乳製品・はちみつも口にしない(Vegewel)

次に、医学博士/池谷医院院長の池谷 敏郎氏が12月10日付け東洋経済オンラインに掲載した「医師が警告!「糖質制限したい人」、ここに注意 「朝食抜き」「隠れ糖質」…その方法で大丈夫?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/318043
・『内科、循環器科の専門医として、数多くの患者と日々接している医学博士の池谷敏郎氏。血管、心臓などの循環器系のエキスパートとして『モーニングショー』(テレビ朝日)、『深層NEWS』(BS日テレ)などテレビにも多数出演しているが、過去15キロ以上の減量に成功し、57歳でも体脂肪率10.6%を誇ることはあまり知られていない。 その減量メソッドを全公開した著書『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える内臓脂肪を落とす最強メソッド』が13万部のベストセラーになっており、日テレ系列『世界一受けたい授業』(12月7日放映)にも出演した池谷氏が、「糖質制限の注意点」について解説する』、自ら「15キロ以上の減量に成功し、57歳でも体脂肪率10.6%」の「医学博士」が言うのであれば、説得力がありそうだ。
・『「間違った糖質制限」は体調を崩しかねない  「ダイエット中だからご飯もパスタも食べないようにしている」「朝食は抜きにして、ランチもサラダだけ」と、ダイエットを頑張っている人たちからは、このような話をよく聞きます。 糖質をたくさんとるとエネルギー過剰となり、大量に分泌されるインスリンの働きによって、どんどん「内臓脂肪」が蓄積されていきます。 内臓脂肪は「糖尿病」や「動脈硬化」「がん」など、さまざまな疾患の原因となるだけでなく、見た目も老けさせます。内臓脂肪を増やさないためにも「糖質をとりすぎないようにする」ということは、体にとって大切なことです。 しかし、多くの患者さんと接してきて「糖質制限」について間違った知識や考えをもたれている方がとても多いことを感じました。 「ひたすら炭水化物をとらないようにする」「極力食べないようにする」というようなことを続けていると、確かに体重は減るかもしれませんが、「無理な糖質制限」によるダイエットは、体に大きな負担をかけてしまいます。私自身もかつて、無理な糖質制限を行ってしまい、体調を崩したことがありました。 では、「正しい糖質制限」をするには、どんなことに注意をすればいいのか。さまざまな注意点がありますが、ここでは主な6つの注意点を解説します。 まず、初めに注意していただきたいのが「極端な糖質制限はNG」ということです』、「私自身もかつて、無理な糖質制限を行ってしまい、体調を崩したことがありました」、経験を踏まえているだけに、説得力がある。「内臓脂肪は・・・見た目も老けさせます」、とはショックだ。
・『「糖質」は少なすぎてもいけない  【注意点1】「極端な糖質制限」はNG  「糖質制限がいいというのなら完全な糖質制限にすればいいのでは」と思われるかもしれませんが、「極端な糖質制限」は、私はおすすめしません。 ブドウ糖は不要な栄養素ではなく、私たちの体を動かしたり脳を働かせたりするために必要な、大切なエネルギー源の1つだからです。 そのため、糖質中心だった食事から炭水化物を極端に減らすとエネルギー不足に陥りやすくなります。また、動物性脂肪が過剰になり、心疾患のリスク増加につながる可能性が高まる危険性も出てきます。糖質は「多すぎず、少なすぎず」上手にとることが重要なのです。 そこでおすすめなのが、「なんちゃって炭水化物」です。ごはんの量を1/2~1/3に減らすのですが、その分、きのこや大豆などを炭水化物とみなして「カサ増し」をするのです。 これならチャーハンや焼きそばでも大丈夫。糖質が減った分、たんぱく質や食物繊維がとれるので栄養バランスもよくなります。「極端な糖質制限」は避け、上手に糖質をコントロールしましょう』、「炭水化物を極端に減らすとエネルギー不足に陥りやすくなります。また、動物性脂肪が過剰になり、心疾患のリスク増加につながる可能性が高まる危険性も出てきます」、「心疾患のリスク増加」とは驚いた。「なんちゃって炭水化物」は確かによさそうだ。
・『【注意点2】「朝食抜き」はかえって太る  「食べる量を減らすために、朝食は抜いてしまおう」と、つい考えてしまいがちですが、実は朝食を抜くと体重はかえって増加しやすくなってしまいます。これは、最近になって名古屋大学の研究チームにより解明されました。 理由は、体内のエネルギー代謝をつかさどる「時計遺伝子」と、「脂質代謝を担う遺伝子」に狂いが生じたことでした。また、活動期になっても上がるはずの体温も上がってこないという症状もありました。 つまり、朝食を抜くことで「体内時計」に異常が生じ、エネルギーをあまり消費しない体になってしまうのです。 また朝食をとらないと空腹の時間がより長くなってしまうので、その反動が昼食や夕食のドカ食いへとつながってしまう危険性も大きくなります。 ダイエットのために、朝食は必ずとりましょう。しかし、だからといって油断をして糖質をとりすぎてしまうと、その後の空腹感を導いてしまいます。 朝食では、なるべく不足しがちな栄養素である食物繊維やビタミン、ミネラルを含んだ食事になるよう心がけましょう。 3つ目の注意点は、「食事の量を減らすと、必要な栄養素も減ってしまう」ことです』、「朝食を抜くことで「体内時計」に異常が生じ、エネルギーをあまり消費しない体になってしまうのです」、大いに気をつけたい。
・『「積極的に摂りたい栄養素」と「食べる時間帯」を知る  【注意点3】食事を減らしすぎると「ほかの栄養素も制限」してしまう  食事の量を極力減らそうとすると、糖質は減らすことができますが、それと同時にほかの必要な栄養素も減ることになるので、「単純に食事の量を減らす」のは要注意です。 とくに、たんぱく質不足には気をつけましょう。たんぱく質が足りなくなると筋肉が落ちていきます。筋肉が落ちると代謝が下がり、結果として、身体機能が低下してしまいます。 エネルギーを燃やす筋肉がないと、リバウンドは簡単に起きてしまいます。そのため、食事の量をむやみに減らさず、減らしたときは筋肉の材料となるたんぱく質は積極的にしっかりとることが大切です。 ただし、慢性腎臓病(CKD)などで、たんぱく質の摂取を制限されている人は、動物性たんぱく質を食べすぎないように気をつけましょう。 豆などの植物性たんぱく質であれば腎臓への悪影響が少ないことがわかっているので、主治医とよく相談しながら、たんぱく質不足にならないように気をつけてください』、「たんぱく質が足りなくなると筋肉が落ちていきます。筋肉が落ちると代謝が下がり、結果として、身体機能が低下してしまいます」、これも気をつけたいところだ。
・『【注意点4】「太りやすい時間帯」と「太りにくい時間帯」がある  ダイエット中でも、スイーツが無性に食べたくなるときがありますよね。しかし、無理に我慢をしてストレスをためてしまうと、最終的にドカ食いになってしまい、努力が水の泡にもなりかねません。 そういうときは無理に我慢をしないで「食べる時間」を工夫してみましょう。どうしても食べたいものは「午後2~6時の間」に食べるようにするのです。なぜなら、この時間帯は食べても「太りにくい時間帯」だからです。 私たちの体には「BMAL1(ビーマルワン)」という遺伝子があります。この遺伝子は、体内時計に関係する遺伝子であると同時に、脂肪の分解を抑制して、体内にため込む働きをしています。 最近の研究成果で、このBMAL1は1日の中で影響力が変動することがわかりました。影響力が強まるのは夜間の時間帯で、日中は弱まります。午後2時ごろがいちばん弱く、6時ごろからまた強くなっていきます。つまり、影響力が弱まる午後2~6時の間に食事をすると、太りにくいということになります。 まだ、動物実験レベルの研究結果ではありますが、食べる時間の工夫の1つとして取り入れてみる価値はありそうです』、「どうしても食べたいものは「午後2~6時の間」に食べるようにするのです。なぜなら、この時間帯は食べても「太りにくい時間帯」だからです」、初めて知った。夕食も「6時」までに済ますようにしよう。
・『5つ目の注意点は「主食やお菓子以外の『隠れ糖質』がある」ことです。 【注意点5】主食やお菓子以外の「隠れ糖質」に注意  「糖質制限をしているのに全然効果がない」と悩んでいる人がいますが、じつは、自分で気づかないところで、糖質をとっていることが多いものです。 「糖質」というと、つい主食のご飯や麺類やパン、お菓子などに目がいきがちですが、それ以外にも糖質を含む食べ物は結構あります。野菜や果物、飲み物などでも糖質を多く含む食べ物があるので注意しましょう。 【糖質を多く含む食品の例(主食やお菓子以外)】(野菜……イモ類(じゃがいも、さつまいもなど)、れんこん、かぼちゃ、そら豆など 果物……バナナ、ぶどう、もも、なし、マンゴー、柿など その他……くずきり、シリアル、練り物(ちくわ、かまぼこなど)、栄養調整食品(大豆バー、ゼリーなど) 飲み物……スポーツドリンク、市販の野菜ジュースなど』、これは常識の範囲だ。
・『【注意点6】体重が減らなくなっても「1カ月」は継続する  「内臓脂肪」は食べすぎや運動不足により急速に蓄積します。しかしその一方で、食事改善や運動のエネルギー消費により、急速に減少するのが特徴です。ダイエットを始めてからたった15日でも、変化を感じることができると思います。 これに対して「皮下脂肪」は15日程度では、そうそう減りません。また、落ちる過程としては、内臓脂肪が落ち切ってから皮下脂肪が落ちるのではなく、途中から同時進行になっていきます。そのため、順調に減っていった体重も、ある時期から変化が出なくなる可能性もあります。 しかし、ここで体重が減らないといって諦めては、またすぐにリバウンドしてしまいます。まずは1カ月のダイエット計画を立ててみましょう。日々の体重の変化で一喜一憂するかもしれませんが、1カ月をメドに続けてみることが大切だと思います』、「内臓脂肪」は「急速に減少する」が、「「皮下脂肪」は15日程度では、そうそう減りません」、やはり「体重が減らなくなっても「1カ月」は継続する」のが重要なようだ。
・『「間違った糖質制限」は命に関わるリスクがある  糖質のとりすぎは「内臓脂肪」を増やし、さまざまな疾患の原因となるので、ある程度の制限をする必要があります。しかし、間違った認識で「糖質制限」をすると、体に負担がかかるだけでなく、かえって命に関わる重大なリスクにつながる可能性もあります。 そのためには、「糖質制限」を正しく理解したうえで実践することが大切です。 そうやって「内臓脂肪」を落とせば、健康体になれるだけでなく、「見た目」も「心」も若々しく生き生きとした毎日を過ごすことができる、私は57歳の医師として自分自身の経験からも、そう確信しています』、先ずは「内臓脂肪」を落とすことを心がけよう。

第三に、近畿大学准教授の谷本 道哉氏が本年2月29日付け東洋経済オンラインに掲載した「筋肉体操の谷本氏「運動効果を倍にする歩き方」 ちょっとのコツだけでエクササイズにもなる 」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/331139
・『国民総肥満、定年延長が叫ばれる昨今、健康管理と継続的な運動を通じ、70歳まで働けるカラダを維持することはもはや義務とも言えそうな状況にある。一方、人気TV番組出演の谷本道哉・近畿大学准教授の著書『新装版 学術的に「正しい」若い体のつくり方-なぜあの人だけが老けないのか?』 によると、ちょっとのコツを取り入れるだけで、普段の「歩く」がエクササイズになるという。 日常生活の中で最もエネルギー消費の大きい活動は「歩くこと」です。 普段の歩きをキビキビ行う、歩いていける距離ならば車や電車などを使わずになるべく歩く、といったことを心がけるだけでもずいぶん違うものです。 つまり、普段の移動をエクササイズと考えてしっかり歩けば、すべての道があなたにとってのプライベートジムになるともいえますね。 特別な運動以外の1日の身体活動量はおおよそ「歩数」に反映されます。そして1日の歩数は、歩数計をつけることで把握することができます。いまはスマートフォンのアプリなどでも気軽に計測できるようになりました。 そこで皆さんにはぜひ歩数計をつけ、「自分の日常の活動量」を把握していただきたいと思います。 目標は身体活動基準で示す23メッツ・時/週に相当する、「8000歩から10000歩」。自分の活動量がこの目標値に比べてどのくらいなのか、まずは知りましょう』、「普段の移動をエクササイズと考えてしっかり歩けば、すべての道があなたにとってのプライベートジムになるともいえますね」、嬉しいご託宣だ。私は1日「10000歩」を目標にして、ほぼ達成している。
・『速く歩くほど、運動効果がぐんと高まる   私たちが歩くとき、自然と「体の振り子」を利用しています。  脚を振り出すときは、振り出す脚をぶら下がった振り子にし、蹴り出すときは、棒が前に倒れるように、体を前に倒す、倒立振り子の揺れを利用しているのです。歩いているときというのは体という振り子の持つ揺れに自然と合わせているため、歩行動作というのは実はとても効率がよい動きなのです。  振り子の揺れ自体はエネルギー消費「ゼロ」であり、その揺れを存分に利用して、自然の速度で歩いているとき、実は私たちはエネルギー消費を抑え、ラクに進んでいるわけです。 しかし図のとおり、普段の歩きよりも速くすればするほど、この振り子の力に頼れなくなるので、ぐんと運動効果が上がるのです。 例えば通常歩行の70m/分を1.5倍のスピードに上げたとします。やや足早にシャキシャキ歩くくらいでしょうか。 この場合、エネルギー効率は1.6倍ほど落ちます。これは、同じ距離歩いた場合のエネルギー消費が1.6倍になるということ。そして歩くスピードが1.5倍ですから、おおよそ1.5×1.6で、なんと約2.4倍の運動の強度ということになるのです。 普段の生活で、階段を積極的に使うこともとてもおすすめです。 2階や3階くらいまでならエレベーターやエスカレーターではなく階段を使いましょう。とはいえ、「階段を積極的に」といわれても、あまり体を動かしていなかったり、エレベーターに慣れすぎた人にとっては簡単ではないかもしれません。 そこで、階段をスイスイ上るのに役立つ、ょっとした体の動かし方のコツを紹介しましょう。筋肉、腱のバネを利用した「反動動作」を使った階段の上り方です。 私たちの筋肉・腱には、弾性力、つまりバネ作用があります。これを上手に使うと、体を要領よくダイナミックに動かせるようになります。このバネ作用を生み出すのが「反動」を使った動きです』、「やや足早にシャキシャキ歩くく・・・同じ距離歩いた場合のエネルギー消費が1.6倍になるということ。そして歩くスピードが1.5倍ですから、おおよそ1.5×1.6で、なんと約2.4倍の運動の強度ということになる」、この掛け算はよく理解できないが、専門家なので正しいのだろう。「筋肉・腱には、弾性力、つまりバネ作用があります。これを上手に使うと、体を要領よくダイナミックに動かせるようになります。このバネ作用を生み出すのが「反動」を使った動きです」、意識して「反動」を使ってみよう。
・『立ち上がる時の「よいしょ」も効果あり  わかりやすい例として、まず椅子からの立ち上がり動作で説明しましょう。 椅子から立ち上がるときは、必ず一度お辞儀をするように上体を前にかがめてから立ち上がります。 そして体を起こす前に、自然と私たちはそれと反対の前にかがむ動きをとるのです。これこそが「反動」です。 前にかがめる下向きの力を筋肉、腱のバネ作用で上向きに返すため、スッと体を起こして立ち上がることができます(図)。 バネを使った反動動作のポイントは、お辞儀をしてから体を起こす動作へと「動きを切りかえす瞬間」にポンと力を出すことです。「よいしょ!」という声が出ることがありますが、切りかえしで強い力を発揮するときに、つい声が出るのです。 ですから、「よいしょ!」は、反動を使った動きでうまく力を発揮するためのかけ声といえます。年寄りくさいと思わないでください。むしろその声こそ、活動的に体を動かせている証拠。「よいしょ!」をどんどん使っていただきたいと思います。 試しに、この反動動作を少し大げさにして立ち上がってみてください。反動をバネにしてすっと立ち上がるという感覚がよくおわかりになるはずです』、「よいしょ!」を「年寄りくさい」と思っていたが、「反動を使った動きでうまく力を発揮するためのかけ声」とは初めて知った。大いに実行してみたい。
タグ:健康 東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン (その9)(ベジタリアン食は脳卒中リスクが20%高まる可能性、医師が警告!「糖質制限したい人」、ここに注意 「朝食抜き」「隠れ糖質」…その方法で大丈夫?、筋肉体操の谷本氏「運動効果を倍にする歩き方」 ちょっとのコツだけでエクササイズにもなる) 「ベジタリアン食は脳卒中リスクが20%高まる可能性」 ベジタリアン食で脳卒中リスクが高まる? 英オックスフォード大学ナッフィールド保健省のTammy Tong氏らの研究 肉を食べる人に比べて、ベジタリアンでは心疾患リスクが22%低下した一方で、脳卒中リスクは20%高まることが示された。一方、肉は食べないが魚を食べる人(ペスカタリアン)では心疾患リスクは低く、脳卒中リスクの上昇は認められなかった 肉を食べる群 魚を食べるペスカタリアン群 ベジタリアン群 約18年間追跡 虚血性心疾患と脳卒中の発症を調べた 病歴や喫煙歴、サプリメント使用の有無、身体活動量などの因子を調整して解析 虚血性心疾患リスクは、肉を食べる人に比べてペスカタリアンでは13%、ベジタリアンでは22%それぞれ低いことが分かった。一方、肉を食べる人に比べて、ベジタリアンでは脳卒中リスクが20%高いことも示された この研究は因果関係を証明するものではないとして、同氏は慎重な解釈を求めている 肉を食べる人と比べて、ベジタリアンでは10年間に心疾患を発症する人が1000人当たり10人少なく、脳卒中を発症する人が1000人当たり3人多いだけだ 池谷 敏郎 「医師が警告!「糖質制限したい人」、ここに注意 「朝食抜き」「隠れ糖質」…その方法で大丈夫?」 『50歳を過ぎても体脂肪率10%の名医が教える内臓脂肪を落とす最強メソッド』 過去15キロ以上の減量に成功し、57歳でも体脂肪率10.6%を誇る 「間違った糖質制限」は体調を崩しかねない 内臓脂肪は「糖尿病」や「動脈硬化」「がん」など、さまざまな疾患の原因となるだけでなく、見た目も老けさせます 極端な糖質制限はNG 「糖質」は少なすぎてもいけない 【注意点1】「極端な糖質制限」はNG 【注意点2】「朝食抜き」はかえって太る 「積極的に摂りたい栄養素」と「食べる時間帯」を知る 【注意点3】食事を減らしすぎると「ほかの栄養素も制限」してしまう 【注意点4】「太りやすい時間帯」と「太りにくい時間帯」がある どうしても食べたいものは「午後2~6時の間」に食べるようにする 【注意点5】主食やお菓子以外の「隠れ糖質」に注意 【注意点6】体重が減らなくなっても「1カ月」は継続する 「内臓脂肪」 急速に減少 「皮下脂肪」は15日程度では、そうそう減りません 「間違った糖質制限」は命に関わるリスクがある 谷本 道哉 「筋肉体操の谷本氏「運動効果を倍にする歩き方」 ちょっとのコツだけでエクササイズにもなる 」 普段の移動をエクササイズと考えてしっかり歩けば、すべての道があなたにとってのプライベートジムになる 目標は身体活動基準で示す23メッツ・時/週に相当する、「8000歩から10000歩」 速く歩くほど、運動効果がぐんと高まる やや足早にシャキシャキ歩く 約2.4倍の運動の強度 筋肉、腱のバネを利用した「反動動作」を使った階段の上り方です 私たちの筋肉・腱には、弾性力、つまりバネ作用があります。これを上手に使うと、体を要領よくダイナミックに動かせるようになります。このバネ作用を生み出すのが「反動」を使った動きです 立ち上がる時の「よいしょ」も効果あり 「よいしょ!」 反動を使った動きでうまく力を発揮するためのかけ声
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医療問題(その23)(精神病院に4年閉じ込められた彼女の壮絶体験 「入院は社会的制裁、市役所も児相も同意」、「精神病床数」が世界一レベルに多い日本の異様 精神疾患を持つ人の出口戦略を考えるべきだ、人権侵害が蔓延する「ブラック精神科」ついに患者たちの反撃が始まる 来春始動する「精神医療人権ネット」とは) [生活]

医療問題については、昨年11月14日に取上げた。今日は、(その23)(精神病院に4年閉じ込められた彼女の壮絶体験 「入院は社会的制裁、市役所も児相も同意」、「精神病床数」が世界一レベルに多い日本の異様 精神疾患を持つ人の出口戦略を考えるべきだ、人権侵害が蔓延する「ブラック精神科」ついに患者たちの反撃が始まる 来春始動する「精神医療人権ネット」とは)である。

先ずは、本年1月28日付け東洋経済オンライン「精神病院に4年閉じ込められた彼女の壮絶体験 「入院は社会的制裁、市役所も児相も同意」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/326880
・『精神疾患により医療機関にかかっている患者数は日本中で400万人を超えている。そして精神病床への入院患者数は約28万人、精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占めるとされる(数字は2017年時点)。人口当たりで見ても世界でダントツに多いことを背景として、現場では長期入院や身体拘束など人権上の問題が山積している。本連載では日本の精神医療の抱える現実をレポートしていく。 まずは精神科病院の「深い闇」に分け入っていきたい』、どんな「闇」なのだろう。
・『「2度とここから出られないと…」  世間では正月休みが明けたばかりの、1月6日午前10時。米田恵子さん(42歳)は東京都八王子市にある精神科病院「多摩病院」(持田政彦院長)から退院した。2016年2月の入院から、すでに4年近くの歳月が流れていた。 「まだ夢を見ているような感じで、日常のささいなことがすごく幸せです」 退院から10日ほどたった1月半ば。取材に応じた米田さんは、そう笑顔で話した。病院では週に1度しか食べられなかった好物の麺類を好きなときに食べたり、少し夜更かしをしてテレビを見たりすることに、幸せを覚える日々だという。「何よりいちばんの幸せは、家族や友人と自由に連絡が取れることです」。 「逆に今のほうが本当は夢で、目が覚めたらやっぱり現実は閉鎖病棟内のままだった、と想像すると、怖くなって泣き出しそうになります。入院しているときは外で生活しているイメージがまったくできなくて、声を上げても誰も助けてくれず、2度とここから出られないと思ったこともありましたから」 米田さんはそう振り返ったあと、語気を強める。 「この4年間、家族とは面会はおろか、声を聞くことすらかないませんでした。入院当時、中学1年生だった次男は今では高校生。すっかり声変わりしていて成長がうれしい半面、一緒にいられなかった悲しみもあります。人生の貴重な時間を奪った病院のことは、決して許せません」 30代から40代にかけての、この4年間。米田さんが長期入院を余儀なくされた背景にはいったい何があったのか。 米田さんには男の子2人、女の子5人の計7人の子どもがいた。そのうち長女と次女は離婚した夫が親権を有している。2013年1月、地元の八王子児童相談所は、生後数ヵ月の四女を保護した。米田さんがうつ傾向にあり、一時パニック障害を生じ通院していたことから養育が難しいと判断したとみられる。その数日後、四女が救急搬送された病院で急死したと児相職員から告げられた。「乳児突然死」だった。 入院の前年である2015年、彼女にとってショッキングな出来事が相次いだ。1月には生まれたばかりの五女が、ついで9月には三女が、八王子児相に保護されていった。つまり米田さんにとってみれば、その保護下で四女を亡くした児相に、三女と五女も奪われたことになる。 「娘のなかでも、一番長くママをさせてくれた三女が、小学2年生のかわいい盛りに奪われたショックは言葉にできません。このとき以来、自分を責め精神的に追い詰められてしまいました」 その結果、精神安定剤などをオーバードーズ(大量服薬)したことで、2016年2月に多摩病院へ入院することになった』、最近はやるべきことをしない「児童相談所」がやり玉に挙げられているが、本件はやり過ぎのケースのようだ。「四女」が「乳児突然死」、「児相に、三女と五女も奪われた」、となれば、普通の母親でも「精神的に」不安定になるのは当然のことだ。この段階での「多摩病院へ入院」自体はやむを得ないだろう。
・『「あなたのことを信用していません」  「入院当初はすぐに退院できるものだと思っていました」 米田さんは入院から数カ月後には、作業療法のプログラムに参加するなど順調に体調を戻していた。通常はそこから、院内散歩、院外散歩、そして外出、外泊へと少しずつ行動領域を広げ、3カ月程度で退院する患者が多かったためだ。ところが同時期に院内の関係者間で開かれた「退院支援委員会」に出席した彼女は、主治医の言葉に耳を疑った。 「何でも自分の思うとおりになると思わないでください。私はあなたのことを信用していません」 後日、手元に届いた通知には、退院の見通しが立つまで、まだ1年近くかかると記されており、院内散歩すら認められなかった。思った以上に長い入院計画に驚いたのは、入院に同意した米田さんの妹も同様だった。「せいぜい1~2カ月だろうと思ったのでサインしたのに、まさかこんなに長くなるとは思わなかった」。 入院からほぼ1年経つころ、妹は面談した主治医からこう告げられた。「お姉さんの入院は社会的制裁です。退院するとあなたや社会に迷惑をかけることになる。市役所も児童相談所もこれに同意しています」』、「入院は社会的制裁」で「市役所も児童相談所もこれに同意」、犯罪行為に走ったわけでもないのに、「社会的制裁」とは全く理解できない。残された子どもたちを虐待する恐れがある、と判断したのだとしても、そんな根拠薄弱な理由で退院を許可しないのは不当だ。
・『この主治医が米田さんに付けた診断名は「パーソナリティ障害」。実際、主治医からはたびたび、「あなたはほかの患者を支配する『操作性』がある」と指摘されていた。 「統合失調症や認知症の人のなかには、相手との意思疎通や自己主張がうまくできない人がいます。私は病院スタッフの代わりに相談に乗ったり、病院への不満も聞いてそれを伝えたりする役も担っていたので、それが操作的とみられたのかも」。米田さんに思い当たる節は、それしかないという。 「そもそもパーソナリティ障害では通常は入院の適応とはならない。よほど社会的不適応性が大きいとすれば別だが、だとしたら長期入院などできないはずなので、やはり一般的ではない」。以前、別の精神科病院の院長だった、ことぶき共同診療所の越智祥太医師はそう疑問を呈する。 米田さんは4年間のほとんどを、4人の相部屋の病室で過ごした。うち2人が統合失調症で夜中に大声を上げることも多く、不眠に悩まされていた。そうした状況を主治医に訴え睡眠薬の処方を依頼したところ、「あなたは病気ではないから、薬は出さない」と言われたという。 実際、彼女が入院中に服薬していたのは鉄剤と耳鳴りの漢方薬などで、頓服で出されていた精神安定剤は1度も用いることはなかった。向精神薬等の薬物治療は4年間いっさい受けておらず、一般的な作業療法以外の治療プログラムもとくになかった。そのため看護師たちからも「米ちゃん、なんでここにいるの?」「米ちゃん、ぜんぜん病気に見えないんだけど」と不思議がられたという。 「面談した主治医からは、彼女には薬物治療も治療プログラムもないとはっきり言われ、ではなぜ退院できないのかと尋ねたら、『この人は操作的なんです』『人を支配しようとする』と言われ、これではまったく話にならないと感じた」。米田さんの退院を支援してきた、佐々木信夫弁護士はそう振り返る』、『この人は操作的なんです』『人を支配しようとする』と診断する「主治医」こそ精神に異常があるとしか思えない。
・『「4年間で湯船につかったのは数回だけ  閉鎖病棟内の生活においては、制約が多岐にわたる。 入浴は火曜、金曜午前中の週2回だけ。しかも4人一組で入り、制限時間は15分だ。一時は要介護者の入浴介助を男性スタッフが行い、浴室内で鉢合わせすることすらあった。 また男女交代制でその間の湯の交換が途中からなくなったことや、要介護者が湯を汚してしまうこともあり、「家ではぬるま湯で1時間ぐらいリラックスするのが楽しみだったが、4年間で湯船につかったのは数回だけ。頭皮のかゆみが悪化して、せめて手のかからない自立の人だけでも、週3回にしてほしいと交渉したけど駄目でした」。 食事も同様だ。「好物の牛肉やパンはほとんどメニューに入らず、パサついた鶏肉が多くて、あまり口に合わなかった」。代わりに売店で売っているスナック菓子やせんべいなどで空腹を紛らわせることもよくあった。ただし、「開いているのは週3日。またアメやガムなどは職員用に制限されていた」。 夕食後はテレビを見て過ごしたが、それは21時の消灯までだ。「夜9時に寝るなんて小学生以来で、4年近く病院での生活が続いても最後まですぐには眠れませんでした」。 最もつらかったのが、この4年の間、ほとんど外部と連絡が取れなかったことだ。主治医の指示で、友人・知人はおろか、子どもや親族ともいっさいの面会、そして通話すらできなかった。スマートフォンの持ち込みも禁じられたため、メールやSNSでのやりとりもできず、唯一許された外部との通信手段は手紙だけだった。 「刑務所だって直接面会できるのに、それ以下の扱いですね」。妹が主治医にそう詰め寄ると、「そんなことはない」とかわされたという』、「4年間で湯船につかったのは数回だけ」、入浴は精神安定にいい筈だが、制限がひど過ぎる。家族との「面会、そして通話すらできなかった」、禁止に合理的な理由は見出し難く、やはり「制裁」が目的なのだろうか。
・『ごまんとあるケース  インターネットも使えないため、情報収集には苦労したが、それでも患者同士の口コミなどで精神障害者の当事者団体などを知り、めげずに手紙を出し続けたことで、佐々木弁護士ら支援者たちとつながることができた。弁護士との面会は、病院側も制限できない。 さらに米田さんにとって幸運だったのが、昨年春に主治医が代わったことだった。その後、昨年8月には唯一妹とだけは面会や電話が可能となり、9月には病院敷地内での外出、その後は院外外出も可能となるなど、入院から3年半止まっていた時間が、一気に動き出した。 昨年10月からは病院、役所、弁護士、そして米田さんを交えて退院に向けた面談が始まった。家族の元に帰りたいと訴える米田さんに対して、病院と役所はグループホームへの入居を提案するなど、退院こそ認めるものの、あくまで彼女を管理下に置き続けることを求めた。妹や弁護士のバックアップもあり、交渉の末、最終的には自宅への退院が認められた。 「米田さんは自分から声をあげることができたからよかったが、精神科に入院している場合、まず弁護士につながることが非常に難しい。今回弁護士が介入しても、病院側は『社会に迷惑をかける』などと極めて抽象的で法的に根拠のない理由を繰り返し、なかなか話が進まなかった。医師は『まだ不安定だ』などとも言うが、4年近く閉鎖病棟にいればむしろ不安定にならないほうがおかしい」。佐々木弁護士とともに米田さんを支援した佐藤暁子弁護士も、病院側とのやりとりをそう振り返る。 長年、精神障害者の支援活動を行ってきた佐々木弁護士は、「なぜ彼女をこれほど長期に入院させたのか。その理由がわからないという点では、これまで携わった中でも最もひどいケース。ただひどいケースではあるが、同時にごまんとあるケースでもある」と話す。米田さんも「4年間の入院生活でさまざまな患者と会ったが、なぜ入院させられているのかわからない人も少なくなかった」という。 薬物治療も特別な治療プログラムもない中での長期入院、そして「社会的制裁だ」などという主治医の発言、家族との面会も不許可など厳しい行動制限の理由と真意について、多摩病院に取材を申し込んだところ、持田政彦院長名で下記のような書面回答が届いた』、「弁護士のバックアップ」、を受けられたからよかったようなものの、それがなければ、入院が続いていたのだろう。「4年近く閉鎖病棟にいればむしろ不安定にならないほうがおかしい」、その通りだ。
・『病院も市役所も児相も取材拒否  「弊院に入院されていた患者様の件について取材のご依頼を頂きました。しかしながら、弊院では取材はお受けしておりませんので対応できかねます。ご諒解下さいますようお願い致します。」 八王子市役所と八王子児童相談所は、「特定の個人に関する情報は、第三者の方にはお答えできないことになっています」などと回答した。 次回は米田さんを4年にわたり社会から隔離した「元凶」ともいえる、精神科特有の入院制度、「医療保護入院」の問題点について検討していく。(第2回に続く)』、「第2回」は本日まで掲載されてないが、掲載され、内容的にも面白ければ紹介する予定。「病院も市役所も児相も取材拒否」、とは酷い話だ。「米田さん」は損害賠償を提訴できる筈だ。「弁護士」と相談して提訴すれば、事実は明らかになるだろう。

次に、 作家で元東京都知事の猪瀬 直樹氏が1月20日付け東洋経済オンラインに掲載した「「精神病床数」が世界一レベルに多い日本の異様 精神疾患を持つ人の出口戦略を考えるべきだ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/325075
・『日本で精神的な「居場所」を見つけられず、心の病を抱えたり、引きこもりになったりしている人は少なくない。こうした問題を抱えるひとは欧米にも多く存在するが、日本のように医療の世界に「閉じ込める」ことはしていない。病院の外でそれぞれにあった働き方をし、自らの力で社会に役立っている。 ならば日本も欧米先進国を参考にできないか――。『日本国・不安の研究―「医療・介護産業」のタブーに斬りこむ!』著者の猪瀬直樹氏が、医療業界の歪んだ構造にメスを入れ、精神的な病気を抱える人が、自力で社会での役割を担うための方策を提案する』、「猪瀬」氏の東京都知事としての活動は酷いものだったが、この問題ではどういったの「提案」をするのだろう。
・『精神病床数はダントツで世界一  高齢化した親と無職の引きこもり、で生活に行き詰まる現象は「8050(はちまるごーまる)問題」と呼ばれたりし始めている。内閣府が、40歳から60歳で引きこもりにあたる人が全国で61万人と発表したのは、昨年の3月だった。これまで15歳から39歳の引きこもり調査で54万人の推計を出したが、40歳から60歳を調査したのは初だった。 カリタス学園バス停の死傷事件、元農林事務次官の家庭内暴力の息子刺殺事件、吹田市の交番襲撃事件など、連続した3つの事件、さらには「京アニ事件」もそうだが、その背景は一様ではないが、自分の居場所がないがために起こされた事件としては共通項があった。 この内閣府調査で「通院・入院経験のある病気」としては「精神的な病気」を挙げる人が32%、また「関係機関に相談したことがある」が44%、そのうち半数が「病院・診療所」を挙げている。 こうした事件の背景にはさまざまな要因があるけれど、日本の精神医療システムがうまく対応しきれていないことも挙げられよう。図(人口1000人当たり精神病床数の推移・国際比較)をご覧いただきたい。主要な欧米の国々の折れ線グラフは右肩下がりである。) ところが日本は1960年代の高度経済成長の時代から極端な右肩上がりが始まり、まるで持ち家政策が発動されたのではないかと勘違いするような展開になっている。高度経済成長期以前にあった郊外の結核用サナトリウムの転用も一因だった。不治の病と恐れられた結核は抗生物質の発達で治療効果が上がり不必要で空院となり、精神科病棟へ転換して入院患者を埋めるようにした。私宅監置など座敷牢的な処遇からすれば、近代化のプロセスといえなくもない。 ところが入院病床数はそのまま減るどころか増え続けた。1980代から1990年代がピークでその後も微減でしかない。精神病床数(人口1000人当たり)はダントツで世界一なのだ。しかも平均在院日数は1カ月以内の先進国が多いが、日本だけが9カ月と、これもまたダントツである。異様な風景である。 現在、精神疾患による入院患者数は28万人(2017年厚労省調査)、1年以上の入院患者は6割・17万人、5年以上は3割・9万人もいる。明らかに日本独特の課題がある、と診断できる。日本には優秀な精神科医がたくさんいるはずなのに、なぜこうなってしまうのか』、確かに人口当たり「精神病床数」、「平均在院日数」とも「ダントツ」に多いのは異常だ。どんな「日本独特の課題」があるのだろう。
・『ベッド数を多くして稼ぐビジネスモデル  精神科病院に対する日本政府の政策としては「ハンセン病問題」と同根の考え方、19世紀から始まる隔離収容政策があった。ヨーロッパでもこうした隔離収容政策は存在した。だが、すでに図で示したように、入院患者数が激減し始めている。ではこの差はどこにあるのか。 NHK『クローズアップ現代』(2014年7月24日放映)で証言した男性は、1968年、16歳で上京したが職場での慣れない環境や人間関係のストレスから体調を崩し、妄想などの症状があらわれ統合失調症と診断され、都内の精神科病院に入院した。 22歳のときに福島の病院に転院して2011年の東日本大震災で被災するまで、40年間も隔離収容されていた。症状はほとんどない状態であるにもかかわらず、退院させてもらえなかった。これはほんの一例で、あたかも終身刑のような事例はしばしば耳にする。 精神科病院が増えていったのは患者に対する医師・看護師数の比率が低い特例基準があるため、また抗精神病薬などの開発が進み、患者が興奮して暴れるなどということが少なくなり、病床数を増やせば増やすほど経営的に利益が出やすい構造が生まれたのも一因ではある。 精神科病院側では自嘲的に「薄利多売」と評している。通常の一般医療なら月額入院費100万円のところ、精神科月額入院費は約45万円と保険点数が低い。ベッド数を多くして稼ぐビジネスモデルである。) 厚労省は精神科病院の長期入院を減らそうとはしてきた。2004年に「入院医療中心から地域生活中心へ」との理念が示されている。「精神保健医療福祉の改革ビジョン」で「受入条件が整えば退院可能な者約7万人について、10年後の解消を図る」としていたが、33万人が29万人に減ったにすぎない。7万人の目標の半分強、4万人減った程度だった。入院患者が微減に留まっているのは、受け皿がつくられていないからだ。 「精神療養病棟に入院する患者の退院の見通し」(2014年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査)によると、入院患者の半分が、在宅サービスの支援体制が整えば退院可能とされている。そうであるなら受け皿を用意しなければならない。欠けているのは出口戦略である』、「出口戦略」が「欠けている」のは事実だろうが、入院者を確保したい病院側の事情もあるのではなかろうか。
・『新しいスタイルのグループホーム  東京の通勤圏、千葉県八千代市の住宅街に新しいスタイルのグループホームが始まりかけていた。わおん障害者グループホーム(株式会社ケアペッツ)は全国各地にフランチャイズで展開中だが、八千代市の住宅街の空き家7軒で精神障害者、知的障害者などがそれぞれ3人から4人ずつ居住している。 ふつうの一般家庭と変わらない木造2階建ての家の玄関を入ると、犬が1匹、尻尾を振りながら出迎える。どこにでもある家の風景なのだ。玄関の脇に個室が1部屋、リビングとダイニングキッチン、風呂場、トイレ、これは共有スペース。階段を昇った2階に3部屋、ごくふつうの間取りだが、違いは、個室がすべて鍵付きであること、つまりその点はアパートのように独立している。 共有スペースのリビングに4人でいると孤独にはならないし、戻りたいときには各個室に鍵をかけて寝ればよい。男性棟と女性棟は別にしてある。こうした家が、住宅街の中にバラバラに7軒ある。その7軒全体の27人を管理しているサービス管理責任者が1人、生活支援員、世話人、夜間職員を含め7人がスタッフである。 サービス管理者はそれぞれの財布の管理や書類の作成などを生活支援員に手伝ってもらったりしながらこなしており、生活支援員は入居者の必要なサポートをする。世話人は料理や掃除など身の回りの暮らしの支え、夜間職員はダブルワークの会社員や学生が担当している。 生活支援員からつぎの言葉を聞いた。「病院に行きたい、市役所に行きたいという要求があれば同行します。知的障害があると文章が読めなかったり、窓口でうまく説明できなかったりします。書類を書いてあげたりもします」 入居者にはさまざまな障害者がいる。精神障害者、知的障害者、身体障害者、発達障害者。入居者の大半は一般企業の障害者雇用枠で就職している。 例えば宅配便の倉庫で、仕分け作業で就労している知的障害者の男性、また夫のDVで右足の身体障害を抱えているうえに、今度は20歳になった発達障害の息子の暴力で精神障害者(PTSD)となった女性は、就労支援施設に通い地域新聞のポスティングなど軽作業の仕事をしている。 費用の計算をしてみよう。このグループホーム入居の家賃3万7000円、食費2万5000円、日用品3000円、光熱費1万3000円、計7万8000円。家賃補助が国庫から1万円、地方自治体から1万円が利用者に支払われ、自己負担は5万8000円となる。しかし障害者年金6万5000円、就労による収入が別途あるので生活費には余裕が生じる。 グループホームは、利用者4人に対して職員1人の配置基準にしたがえば、7軒のホームに27人がいる場合は、職員数は7人となる。グループホームに支給される事業費は2000億円(「共同生活援助」サービス費)で、入居者27人に対して1人16万円給付されるので432万円、これがグループホームの運営費(人件費含む)である。人件費が月額20万円なら7人で140万円、30万円なら210万円、つまり他の支出を入れても高い利益率が確保できる』、「グループホームに支給される事業費」を払っても、精神病院などでかかる医療費よりは安くなるのだろう。「入居者の大半は一般企業の障害者雇用枠で就職している」、というのはよさそうだ。
・『犬と猫が果たしている大きな役割  グループホームなら精神科病院の入院患者は半分のコストで済む。だが退院がしっかりと社会への通路になっていないと、また舞い戻ってしまう。グループホームは孤独からの帰還のプロセスである。 玄関に犬が出迎えた、と書いた。1軒に1匹の犬がいる。アニマルセラピーによる障害者の癒やし効果がようやく証明されはじめた。このグループホームのリビングでは会話が得意でない精神障害者に対して犬がコミュニティーの中心になっていた。 わが国の人口1億2500万人に対し、全国に犬が約1000万頭、猫が約1000万頭いる。過剰ではないか。殺処分、犬1.6万頭、猫6.7万頭という現実がある。わおん障害者グループホームでは殺処分される前の保護犬・保護猫を動物保護センターから引き取って、各ホームに供給している。 首都圏や大都市圏の郊外には、かつての高度経済成長の時代に造られた庭付き一戸建ての住宅が余っている。八千代市のグループホームはかつてサラリーマンが夢見た小奇麗なマイホームだった。いま空き家は売れない。売れても安く買いたたかれる。そのままだと固定資産税の負担が残る。家賃12万円ほどもらえれば家主は喜んで貸したい心境になる。 医療費削減だけでなく、障害者も健常者も共存できるノーマライゼーションの社会、就労促進、空き家対策、ペット殺処分対策とあわせて、課題先進国・日本の処方箋のひとつがここにある。一石二鳥どころか三鳥、四鳥は、市場の力を借りて成し遂げていけばよいのだ』、説得力に溢れた主張で、同意したい。

第三に、ジャーナリストの佐藤 光展氏が昨年12月15日付け現代ビジネスに掲載した「人権侵害が蔓延する「ブラック精神科」ついに患者たちの反撃が始まる 来春始動する「精神医療人権ネット」とは」を紹介しよう』、どんなものなのだろう。
・『精神医療で傷ついた人々が立ち上がる  患者たちの反撃が始まる──。過剰な投薬や強制入院、身体拘束などで、当然のように人権を侵害されてきた精神疾患の患者たちが、人として当たり前の権利や自由を守るために、自ら立ち上がろうとしているのだ。 舞台は375万都市、横浜。福祉現場でスタッフやボランティアとして働く約300人の患者(ピアサポーター)を核とした患者支援組織「横浜精神医療人権ネット(Yネット)」=仮称=が、来春活動を開始する。 市内の精神科病院を巡回して、入院患者と友達のような関係で接し、医師や家族には言えない悩みを把握する。退院促進や、退院後も患者を孤立させないためのきめ細かな支援を行っていく。また、患者の通報によって不適切な医療行為や人権侵害が発覚した場合は、協力関係にある精神科医や弁護士と連携して、医療機関に説明や改善を求める。 ピアサポーター主体の同種の組織は前例がなく、全国への波及効果が期待される。来年1月26日にはプレイベントとして、「医療者に身体拘束の苦しみを味わってもらう体験会」を計画している。 Yネットは、横浜ピアスタッフ協会(YPS)の組織をベースに誕生する。同協会の約300人のピアサポーターたちは、作業所で通所者を支援する活動などに従事する患者で、現在は病状は安定、寛解しているが、その多くは、回復までの間に精神医療によって著しく傷つけられた経験を持っている。 医師や看護師から暴力や暴言を浴びせられたり、暴れてもいないのに隔離や身体拘束をされたり、誤診や過剰投薬で病状をますます悪化させられたりしたことがあるのだ』、「ピアサポーターたちは、作業所で通所者を支援する活動などに従事する患者で、現在は病状は安定、寛解している」、のであれば、「患者」というより「元患者」のようだ。
・『人権侵害を信じてもらえず…  このような経験や悩みを、患者が行政の相談窓口などに伝えても、「被害妄想」などと症状のせいにされて信じてもらえなかったり、攻撃的な性格だと誤解されて「パーソナリティ障害」という新たなレッテルを貼られたり、「医師の裁量権には踏み込めない」と匙を投げられたりして、著しい人権侵害すらも顕在化しない状態が続いてきた。 これに危機感を抱いたYPSのピアサポーターたちは、患者同士が密接な連携を図り、病院や行政に対して団結し改善を求めることが不可欠だと考えて、専門組織の立ち上げを決めた。 Yネットの設立準備を中心的に進めるピアサポーターの堀合研二郎さん(39)は、大学在学中の22歳の時、被害妄想が表れて精神科を受診した。すると、すぐに統合失調症と診断された。 「当時は、皮膚疾患の影響で眠れない状態が続いていました。今から思えば、極度の疲労で一時的な精神症状が現れたのだと思います」 しかし、この時の主治医は「統合失調症」と決めつけて投薬を続けた。やがて、薬を減らすと症状が強まるようになり、服薬をやめられなくなった。 こうした不適切な診療が原因で、堀合さんは心身の不調が続いて就労できず、精神科病院への入退院を34歳までに4度繰り返した。その過程で、医療スタッフによる度重なる暴言や、安易な身体拘束、薬漬けの苦しみ、任意入院なのに退院できない理不尽さ、などを次々と味わった。 回復のきっかけは、今の主治医と交渉して減薬に成功したことと、それによって副作用が減り、30代半ばにして仕事ができるようになったことだった。仕事を通して多くの仲間ができ、なんでも話せるようになった。すると心が楽になり、1種類の薬で安定して過ごせるようになった』、「主治医」が変わったのは幸運だが、変わらなければ地獄の日々が続いたことになる。健康保険連合会などが、診断書をチェックするようにすれば、無駄な医療費削減、患者の幸福にもつながる筈だ。
・『精神科は「収容所」ではない  堀合さんは現在、作業所スタッフとして働く傍ら、精神科病院の訪問活動も積極的に続けている。「医療職や福祉職は立場上、患者と友達関係になれません。私たちにはそれができる」と堀合さん。野球などのレクリエーションで長期入院の患者と親しくなるうちに「本当は退院したい」という思いを打ち明けられたこともある。働く場所や家を確保して、退院につなげた。この患者は現在、元気に働いている。 「病院を訪問すると、提供しているサービスの質がすぐにわかります。医療スタッフが私たちにもひどい言葉を浴びせてくる病院もある。そういう施設が患者をどのように扱っているか、推して知るべしです」 退院促進というと、症状は安定しているのに地域の受け皿がなく、数十年入院している高齢患者を想像しがちだが、「若くて元気で、入院の必要性など感じないのに、入院期間が数年に及んでいる人も少なくない」と堀合さんは語る。 そのようなケースは、複雑な家庭環境などの環境要因が患者の背景にあることが多く、本来は長期的な入院医療の対象ではない。それなのに精神科病院が、いわば「収容所」として便利使いされているのだ。Yネットでは、こうしたケースについても問題提起を行う方針だ。 プレイベント「医療者に身体拘束の苦しみを味わってもらう体験会」は、精神科医療の身体拘束を考える会(代表・長谷川利夫杏林大学教授)と連携して、来年1月26日、横浜市での開催を計画している。看護師の指導のもと、精神科病院で頻繁に使われるマグネット式拘束具を用いて、医療職や福祉職の希望者に、身体拘束の苦しみや、そのまま放置される恐怖を体験、想像してもらう』、「医療者に身体拘束の苦しみを味わってもらう体験会」は効果がありそうなイベントだ。
・『病院とも良好な関係を築く  Yネットの活動開始は2020年4月を予定している。NPO法人横浜市精神障害者地域生活支援連合会や、弁護士グループなどとの連携も図る。 専用の相談電話を開設し、横浜市内の全精神科医療機関に電話番号の院内掲示を依頼するほか、病院訪問や患者の退院支援を積極的に進める。各病院の対応をネットで公開する計画もある。主な活動資金は、Yネットに関心を寄せる財団などからの助成金で賄う方針だ。 堀合さんは「患者の人権を守り、病状や生活環境を良くしたいという思いは、我々も精神科病院も変わらないはず。病院とは敵対関係ではなく、良好な関係を築きながら、精神医療の改善を求めていきたい」と話している』、今後の活動に期待したい。
タグ:医療問題 東洋経済オンライン 主治医 四女 猪瀬 直樹 現代ビジネス (その23)(精神病院に4年閉じ込められた彼女の壮絶体験 「入院は社会的制裁、市役所も児相も同意」、「精神病床数」が世界一レベルに多い日本の異様 精神疾患を持つ人の出口戦略を考えるべきだ、人権侵害が蔓延する「ブラック精神科」ついに患者たちの反撃が始まる 来春始動する「精神医療人権ネット」とは) 「精神病院に4年閉じ込められた彼女の壮絶体験 「入院は社会的制裁、市役所も児相も同意」」 精神科病院の「深い闇」 「2度とここから出られないと…」 精神科病院「多摩病院」 入院当時、中学1年生だった次男は今では高校生。すっかり声変わりしていて成長がうれしい半面、一緒にいられなかった悲しみもあります。人生の貴重な時間を奪った病院のことは、決して許せません 「乳児突然死」 五女が、ついで9月には三女が、八王子児相に保護 精神安定剤などをオーバードーズ(大量服薬) 多摩病院へ入院 「あなたのことを信用していません」 「お姉さんの入院は社会的制裁です。退院するとあなたや社会に迷惑をかけることになる。市役所も児童相談所もこれに同意しています 診断名は「パーソナリティ障害」 なぜ退院できないのかと尋ねたら、『この人は操作的なんです』『人を支配しようとする』と言われ、これではまったく話にならないと感じた」 「4年間で湯船につかったのは数回だけ 面会、そして通話すらできなかった ごまんとあるケース 4年近く閉鎖病棟にいればむしろ不安定にならないほうがおかしい 病院も市役所も児相も取材拒否 「「精神病床数」が世界一レベルに多い日本の異様 精神疾患を持つ人の出口戦略を考えるべきだ」 『日本国・不安の研究―「医療・介護産業」のタブーに斬りこむ!』 精神病床数はダントツで世界一 カリタス学園バス停の死傷事件、元農林事務次官の家庭内暴力の息子刺殺事件、吹田市の交番襲撃事件など、連続した3つの事件、さらには「京アニ事件」もそうだが、その背景は一様ではないが、自分の居場所がないがために起こされた事件としては共通項があった 平均在院日数は1カ月以内の先進国が多いが、日本だけが9カ月と、これもまたダントツ ベッド数を多くして稼ぐビジネスモデル 新しいスタイルのグループホーム 犬と猫が果たしている大きな役割 グループホームなら精神科病院の入院患者は半分のコストで済む 佐藤 光展 「人権侵害が蔓延する「ブラック精神科」ついに患者たちの反撃が始まる 来春始動する「精神医療人権ネット」とは」 精神医療で傷ついた人々が立ち上がる 横浜精神医療人権ネット(Yネット) 福祉現場でスタッフやボランティアとして働く約300人の患者(ピアサポーター)を核 人権侵害を信じてもらえず 精神科は「収容所」ではない 病院とも良好な関係を築く
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医療問題(その22)(「名医という言葉には抵抗を感じる」という医師が追求する 真の神業とは、国保料引き上げの真犯人 「ムダな医療費」を貪る人々の正体、徹底討論! それでも必要?一般病院の“身体拘束”) [生活]

医療問題については、9月10日に取上げた。今日は、(その22)(「名医という言葉には抵抗を感じる」という医師が追求する 真の神業とは、国保料引き上げの真犯人 「ムダな医療費」を貪る人々の正体、徹底討論! それでも必要?一般病院の“身体拘束”)である。

先ずは、医療ジャーナリストの木原洋美氏が9月29日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「「名医という言葉には抵抗を感じる」という医師が追求する、真の神業とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/215721
・『名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を、医療ジャーナリストの木原洋美が取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第17回。画期的な術式や医療機器、医療材料などの開発者として高く、現在も甲南病院(滋賀県)で消化器外科医として診療にあたっている谷徹医師(滋賀医科大学革新的医療機器・システム研究開発講座特任教授)を紹介する』、興味深そうだ。
・『内臓をじゃぶじゃぶ洗う手術も 敗血症を治療する血液浄化器も  「私、失敗しないので」の名セリフで人気を博した医療系ドラマ『ドクターX』(テレビ朝日)。主人公が毎度のように駆使する一見「ありえない」手術法も話題になったが、なかでも視聴者の度肝を抜いたのが、シーズン2で登場した、がん切除手術後に内蔵をお湯でじゃぶじゃぶと洗浄してしまう 「腹腔内温熱化学療法(HIPEC)」ではないだろうか。 驚くなかれ、この術式は、現滋賀医科大学 革新的医療機器・システム研究開発講座特任教授の谷徹先生が外科学講座現役の時に開発・実践したもので、実在している。 もちろん、内臓を洗うのには理由がある』、「がん切除手術後に内蔵をお湯でじゃぶじゃぶと洗浄してしまう」、家族が意味も分からずに見たら卒倒してしまいそうだ。
・『例えば進行性胃がんの場合、手術後の再発率は高く、ステージIIIBで患部を全部摘出したとしても、再発による5年生存率は31%。術前や術中に、がん細胞が腹膜内に散らばってしまうことが、再発の一番の原因と考えられている。 そこで先生たちは、手術でがんを取り去った後、生理食塩水に複数の抗がん剤を加えて加熱し、腹膜内を30分にわたり洗浄することにした。 「肉眼で確認できるがんを全部摘出した後、お湯の温度を抗がん剤の効果が最も高まる42~43度に保持しながら、お腹全体を洗います。そして、3種類の抗がん剤を入れてさらに洗います。この抗がん剤は、点滴などの濃度の70~80倍の濃さです。こうすることにより、腹膜内に拡散していた目に見えないがん細胞が死滅し、ステージIIIBの5年生存率は77.9%と生存率が飛躍的に高まりました。胃がん(IIIAまで)切除後の5年生存率は100%です」(谷先生) ちなみにその後、手術中にガン細胞が飛散する元凶としてリンパ管断端が特定され、飛散のある場合に再発率が高くなることも確認されたが、谷先生は、後で述べるマイクロ波手術器によってリンパ漏も抑制できるようにしてしまった』、「進行性胃がん」「ステージIIIB」の手術で、「再発による5年生存率は31%」から「77.9%」へ飛躍的に高まったとは驚くべき成果だ。
・『消化器外科医である谷先生は、現在も甲南病院(滋賀県)で診療にあたっているが、その名声はむしろ、画期的な術式や医療機器、医療材料などの開発者として高い。中でも、世界的に知られているのが東レ・メディカル株式会社との共同研究によって生み出した血液浄化器(製品名「トレミキシン」)だ。生産・販売開始は1994年で、なんと20年以上も前になる。 「当初は5年で競争相手があらわれると思っていましたが、意外なことに、未だ登場していません。欧米でも広く普及しており、本製品に関する論文は1000点を超えています」 敗血症は、大ケガや手術の後に起こりやすい病気で、医学が発達した今日でも死亡率は約30%と非常に高い。薬での治療が主だが特効薬はなく、発症は相変わらずの状況にある。感染症などで体に病原体(細菌など)が侵入することをきっかけに発症するのだが、その際、体内では菌の細胞壁の成分である「エンドトキシン」と呼ばれる毒素が発生し、悪さをする。トレミキシンは、このエンドトキシンなどの毒素を除去する血液浄化器で、これまでに、十数万人もの重症敗血症患者の治療に使われてきた。 また昨年には、血中エンドトキシン値に基づく対象患者において二重盲検法による臨床治験サブ解析にて有効性が確認され、今年から米国FDAの認可に向け、追加の臨床治験を実施中である』、「トレミキシン・・・十数万人もの重症敗血症患者の治療に使われてきた」、というのも画期的だ。
・『外科手術に革命を起こす 血の出ないメスを開発  谷先生の直近の功績は、独自に開発を重ね、医療機器メーカーの日機装と共に製品化した、電子レンジや携帯電話と同じマイクロ波を利用して切離と同時に止血もできる血の出ないメス「アクロサージ」だ。マイクロ波を用いる治療用製品は、1981年に針型で実用化されているが、ハサミ型と鑷子(ピンセット)型は世界初。 アクロサージがどれくらい役に立つのか、一般人には分かりにくいので、少し解説したい。 外科手術はある意味、出血との戦いだ。出血が少ないということは、即ち肉体に与えるダメージも小さいということにつながるし、大量に出血した場合には、いかに迅速かつ手際よく止血できるかが手術の成功、ひいては患者の生命を左右する。 電気メスは、そうした医療現場のニーズに応えて開発され、今やそれなしには外科手術が成り立たないほど、重要な医療機器になっている。 ただし従来の電気メスには、改良すべき点が多々あった。高周波や超音波を用いて、切離する箇所の組織表面を加熱することでその機能を果たすため、加温のON-OFF スピードは遅く、組織は焼け焦げ易く、周辺にも熱損傷を与えてしまう。電気メス使用中のオペ室には、肉の焦げる臭いと煙や湯気が漂い、切離部分にできた焦げは、剥がれる際に再出血の原因にもなる。煙やミストはしばしば視野を妨げ、手術の手を止めざるを得ない、などだ。 アクロサージは、電子レンジと同じ2.45GHz帯のマイクロ波を使い、生体組織を凝固することで切離と止血を同時に行う。生体組織の水分子にマイクロ波が直接作用し、水分子を励起して発熱するので、生体組織の外側だけでなく内側からも加熱される点で、高周波や超音波とは大きく異なる。加熱部分の温度は、高くても100℃を少し超える程度。生体を焦がす心配もなければ、煙も発生しないのだ。 谷先生は、こうしたマイクロ波の特性に独自の技術を掛け合わせることで、日本の消化器外科医が世界に誇るリンパ節廓清術をエネルギー器具にて実現するべく、刃の形をハサミ状とし、リンパ管の封止も完全にできる器具として、従来品が持つ数々の弱点解消に成功した。 「その昔、輸血の登場が外科手術に革命を起こしたように、アクロサージは、輸血不要の手術を可能にするでしょう。手術が身体に及ぼすダメージを最小限にすることで、身体の回復が早くなり、入院日数も短くなります。リンパ節廓清時には、リンパ網のシーリングができるため、術中がん細胞飛散を抑制し、予後改善に寄与できる可能性があります。ほかにもメリットは枚挙にいとまがありません。 電子レンジが台所に革命起こしたように、アクロサージは手術に革命を起こすでしょう」』、「手術に革命を起こす」「アクロサージ」は2017年に発売されたようだ。世界的な評価も知りたいところだ。
・『患者が元気で長生きすることが真に神業といえる手術の証  さて、これほど凄い功績をあげてきたにもかかわらず、谷先生は「アイデアマンと呼ばれるのは好きじゃない」と語る。 「アイデアって、何か天から、努力もなしに閃きが降ってくるような印象がありませんか。そうではないんです。常に、患者さんへの低侵襲と医療現場の労働環境を改善するには何が必要かを考え続けているからこそ、アイデアにもたどり着けるし、問題を解決するヒントに気づくこともできる。ぽっと思いつくわけじゃない、問題意識の継続性が重要なんです」 追求しているのは「患者さんのためになること」。加えて、大学で教鞭をとっていた頃には「できない理由を探すな、できることからやれ。」と教えていた。 「(滋賀医科大学)は新設医大ですから、従来の領域では、何十年も先行している大学に追いつくのは至難の業です。私たちが10年やったら、向こうも10年。だから、自分たちの特徴ある研究に取り組み、独自の武器を持たなければいけない」 谷先生は金沢大学医学部を76年に卒業し、東京の虎の門病院外科に4年間勤務したのち滋賀医科大学第一外科に入局。85年に同大学医学研究科外科学専攻博士課程を修了したのだが、まだ助手にもなっていなかった大学院生時代に着手し、10年近い歳月をかけて開発したのがトレミキシンだ。 一方アクロサージの開発にも10年余りの歳月をかけている。発端は放射線被曝のないMRI装置を術中モニターとして用いて、手術器具の位置をモニタリングしながら手術ができる「MR画像誘導下手術システム」の開発という壮大なプランだった。 「このシステムなら身体の深部を3次元で、リアルタイムで見ながら手術ができます。血管と神経の区別もできますし、温度も組織の代謝も画像化して表示される。同様の研究に取り組んでいる有名大学はたくさんありますが、リアルタイムに行えるシステムは我々が世界で唯一で、すでに動物を使った模擬手術実験に成功しています」 アクロサージは、この手術システムの開発過程での副産物だ。MR画像強磁場下では、高周波も超音波も使えないため、MRと干渉しないマイクロ波の手術器具がどうしても必要だった。 「しかしながら、『MR画像誘導下手術システム』を世に出すには、もう少し時間がかかります。でもアクロサージなら、マイクロ波を用いた一般の手術器具として世に出せば、多くの現場で早く使っていただけると考え、先に事業化しました」』、「常に、患者さんへの低侵襲と医療現場の労働環境を改善するには何が必要かを考え続けているからこそ、アイデアにもたどり着けるし、問題を解決するヒントに気づくこともできる。ぽっと思いつくわけじゃない、問題意識の継続性が重要なんです」、地に足がついた開発姿勢だ。「アクロサージ」は「MR画像誘導下手術システム」の「開発過程での副産物」、とはまだ開発中の「MR画像誘導下手術システム」もきっと凄いのだろう。
・『ところで、冒頭で紹介した「腹腔内温熱化学療法(HIPEC)」は、2016年に先進医療として認めてくれるよう国に申請したが、却下されてしまった。過去の治療成績に対するネガティブな意見があり、賛同が得られなかったからだが、「お湯の温度管理をしっかりやっていなかったのでは」と谷先生は悔しがっている。 MR画像誘導下手術システムにも、やるせないエピソードがある。 「十数年前に東京の新聞社が取材に来てくれましたが、『山の中の大学がこんな凄いことやるなんて腰が抜けた』と言ってくれました。でも掲載はしてもらえませんでした。『人口100万の滋賀県のニュースより、1000万の東京のニュースの方が読んでもらえるから』だそうです」 日本は狭い。どこの大学にいようが、谷先生が消化器外科医として常に患者のためを思い、手術法や医療機器を開発し、膨大な数の生命を救ってきた名医であることは間違いない。 「名医という言葉には抵抗があります。例えば、小説やドラマでは、早さと手際の良さが名医の条件のようになっていますが、少なくとも消化器外科の悪性腫瘍手術で一番大切なのは、なすべきことを丁寧に、正確に行うことです。なぜなら、手術の本当の結果が分るのは5年後、10年後で、手術直後ではありません。当然術後も患者さんが元気でいられ、さらに長く生きていただくことが、真の意味での神業であり、『失敗ではない手術』だからです」』、「HIPEC」が「先進医療として認め」られなかったのは残念だ。東大など医学会主流と距離があったことが影響したのかも知れない。「MR画像誘導下手術システム」も取材されながら、「掲載はしてもらえませんでした」のも残念だが、今回、ダイヤモンド・オンライン記事になったのは何よりだ。それにしても、凄い医師がいたものだ。

次に、フリーランス・ライターのみわよしこ氏が11月8日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「国保料引き上げの真犯人、「ムダな医療費」を貪る人々の正体」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/219866
・『国民健康保険料の引き上げは本当に「仕方ない」のか  2019年10月30日、厚労省の社保審・医療保険部会は、2020年、国民健康保険料の課税限度額を3万円引き上げる方針を示した。国民健康保険料は、ある程度は所得に比例する仕組みとなっているが、「年間所得2000万円の世帯は、年間所得400万円の世帯の5倍」となるわけではなく、課税限度額という“天井”がある。 この“天井”を引き上げ、「高額所得者には所得に見合う国民健康保険料を払っていただきましょう」というのが、現在検討されている改定の趣旨だ。同時に、中間所得層の負担を軽減する措置も検討されている。 しかし、10月1日に消費税率が8%から10%へと引き上げられてから、1ヵ月も経っていない。正直なところ、「また?」と言いたくなるが、高齢化が進行する日本で、増大する医療費が国家財政の大きな負担になり続けているのは事実である。国民健康保険が破綻すると、必要なときに医療を受けることはできなくなるかもしれない。日本の国民皆保険制度と良好な医療アクセスは、世界に誇るべき日本社会の宝物、社会の健康を底支えする重要な土台だ。 現在は「社保完」の会社員も、退職後はいつか、国民健康保険または後期高齢者医療のお世話になる。国民健康保険を維持するために必要な負担なら、「痛いけれど、仕方ない」と受け入れるしかないのかもしれない。 しかし医療費の内訳や削減の仕方には、数多くの疑問を感じている。それは、「医療費が無料だからといって、ムダな医療を欲しがる生活保護の人々」という都市伝説にも通じている』、「医療費の内訳や削減の仕方には、数多くの疑問を感じている」、同感だ。具体的に知りたいところだ。
・『多くの精神科入院患者は誰のために必要なのか  まず気になるのは、精神医療の医療費だ。 精神科病院の入院患者数は、世界において日本の「悪名が高い」点の1つだ。2017年度、日本には約28万人の精神科入院患者がいた。この人数は、全世界の精神科入院患者の約2割にあたる。しかも、平均入院日数は2014年に281日で、世界ダントツの長さであった。 日本に次いで平均入院日数が長いのは韓国だが、それでも同年に125日だった。他の先進国には50日を超える国はない。公費による医療が比較的充実している国々では、平均入院日数はやや長めになる傾向があるが、それでも30~45日程度にとどまる。 1970年代に法律で精神科入院を原則禁止して「どうしても」という場合に厳しく制限したイタリアや、米国のように高額化した入院医療費が退院を促進してきた国では、平均入院日数は10~20日前後となる。これらの国々では、家庭や地域から長期にわたって離れること自体が社会復帰の阻害要因になるということが、広く認識されている。 「日本人は精神疾患にかかりやすく重症化しやすい」という事実はない。長年にわたって、入院を短期化する努力が続けられており、精神医療そのものも進歩している。1990年ごろの平均入院日数が約500日だったことを考えると、2014年に281日まで短縮されていたことは、むしろ大きな進歩であろう。 しかし2014年、約18.5万人が1年以上にわたって入院していた。このうち約10万人は、5年以上の入院であった。長期にわたる入院は、それだけで大きな医療費負担となる。1年間の精神科入院に必要な医療費は、少なくとも500万円~600万円程度と見積もられる。すると、10万人分の入院医療費だけで、5000~6000億円となる。 この背景として、日本の精神科病院の約9割が私立精神科病院であるという事実は、どうしても考えざるを得ないだろう。厚労省は国内外からの長年の要請を受け、精神科入院患者の退院促進と地域移行に取り組んではいるのだが、「重度かつ慢性」ならば地域移行は考慮しなくても良いこととしている。 そして厚労省は、「重度かつ慢性」の入院患者数を見積もり、それに合わせた退院目標を設定し、各都道府県に実行を求めている。語弊を恐れずに言えば、これは「一定数の入院患者は確保し続ける」ということだ。認知症の高齢者を「重度かつ慢性」のカテゴリに含めれば、当面「重度かつ慢性」の入院患者数が減ることはない』、精神科の「平均入院日数」が短くなったとはいえ、「281日」と他の先進国の「30~45日程度」と比べ、飛躍的に長いのには改めて驚かされた。「家庭や地域から長期にわたって離れること自体が社会復帰の阻害要因になる」、のであれば、再考が必要だろう。「約18.5万人が1年以上にわたって入院」、入院医療費だけで、9250~11100億円、というのはベラボウな大きさだ。「精神科病院の約9割が私立精神科病院」で、「厚労省は、「重度かつ慢性」の入院患者数を見積もり、それに合わせた退院目標を設定し、各都道府県に実行を求めている。語弊を恐れずに言えば、これは「一定数の入院患者は確保し続ける」ということだ」、やる気のない厚労省に対し、財務省はもっと切り込むべきだろう。
・『交通が不便で偏見の強い地域に精神科病床が突出して多い現実  厚労省が毎年取りまとめている「医療費の地域差分析」の2016年版には、「地域差への寄与を疾病分類別に見ると、入院では『V 精神及び行動の障害』の寄与度が大」という記述がある。精神科入院患者数の多さは、公共の医療費を圧迫している。このことは、誰の目にも明らかだ。 精神科病棟が多い地域で、入院医療費が増大するのは当然だ。そして、人口あたり精神科病床数を県別に見ていくと、四国や九州などの交通が不便で偏見の強い地域が突出している。責任は、そのような地域に精神科病院を押し付けてきた他地域や政策にあるはずだが、たとえば「東京都が責任を持つから、栃木県や山梨県は精神科病床を減らしてください」という方向への動きは聞いたことがない。 そうこうする間にも、国民健康保険料の地域格差は拡大していく。地域の高齢化が進み、雇用が劣化し、納税者と納税額が減少すると、国民健康保険料は引き上げられる。そうしないと、医療ニーズに対応できないからだ。しかし、そのことが意味するのは、減少していく現役世代が、減少していく自らの所得から、さらに重い負担を強いられるということだ。公的健康保険の意義と必要性がわかっていても、「仕方ない」と納得できるとは限らない』、「責任は、そのような地域に精神科病院を押し付けてきた他地域や政策(正しくは:地域政策?)にあるはずだが」、意味不明だ。むしろ、国の精神医療政策の貧しさにあるのではなかろうか。
・『社会にコストを強いる人に「死んで」と望むことの是非  担い手や負担能力が増えない以上は、医療ニーズを減らす必要があるかもしれない。9月にも、花粉症薬が保険適用外になる可能性が関心を集めたばかりだ。精神科以外の入院医療に関しては、「極力、短期で」という方向での制度改革が進められてきている。 長年にわたって高額の医療費を必要とする疾患の患者に対しては、「治療しない」という方向性も検討されている。2018年、腎臓病で人工透析の開始を希望していた40代女性が、入院していた公立病院で希望に応じられず、死亡した。女性はいったん、透析治療を希望しないと述べたのだが、その後、やはり透析を受けて生き延びたいと望んだ。 しかし、病院は応じなかった。今年10月、遺族が病院を提訴したのだが、当事者らの主張も報道も、病院の判断を是とするか非とするかによって、二分された形となっている。日本透析医学会は、病院の判断を妥当としている。 筆者は、「社会コストが必要な状態で生き続け、メリットをもたらす見込みが薄いのなら、死んでください」という論理に賛成する気はない。その論理が言葉通りに実行されていたら、たとえば参議院議員の舩後靖彦氏と木村英子氏(れいわ新選組)は、とっくにこの世にいなくなっていたかもしれない。2人はALSや脳性麻痺の当事者として、日本社会が必要としている変革を実現することを期待され、立法府のプレーヤーとして活躍している。それが可能になったのは、2人が生き延びてきたからだ。 しかし、「命は大切」「かけがえのない人生」という言葉を、言葉通りに実行するのなら、実行するための医療経済の維持について考えることも、避けて通れないはずだ。そして日本の病院の経営は、財務省の方針に沿って、厚労省がベネフィットとコストの「アメとムチ」で統制している。統制が「医療費がかさみそうな場合、早く死なせれば評価して利益をバックする」という方向に向かうと、本人が「生きたい」「生きよう」と思っていても、生きられなくなってしまうかもしれない』、誠に難しい問題で、私も回答は持ち合わせない。
・『冷静に考えたい医療制度改革の「誰得」  今回の国民健康保険料の上限額引き上げは、仕方なく認めざるを得ないものかもしれない。しかし、高度成長期の恩恵を受けて長生きできた高齢者に怒りをぶつける前に、怒りのターゲットを考え直す必要はないだろうか。 2013年以後、水道や種子など日本の人々の生存にとっての重要な基盤を、日本と日本の人々のために保護するための規制が、次々に撤廃された。そして、必ずしも日本のために活動しているわけではない外国資本が参入している。地方行政や条例レベルでの抵抗は続いているが、国の政策に自治体が対抗することは容易ではない。 そして日本国内では、「いくつかの企業に日本の人々のお金を渡す」と見るのが妥当と言える動きが続く。2020年度から開始される予定の「大学入試共通新テスト」は、幸いにも英語民間試験の導入が見送られ、大手業者への文科省からの「天下り」などの背景が明らかにされつつある。少子化対策が必要な日本で、子育て世帯の教育資金が業者に移動させられることは、それだけで弊害となるはずだ。 2018年から今年にかけては、「“貧困ビジネス”に対する経済的保護ですか」と言いたくなるような無料定額宿泊所政策が検討され、現実になりつつある。そのことが意味するのは、「生活保護費が貧困ビジネス業者の利益になる」ということだ。 そしてもともと、精神医療の医療費の多くは、私立精神科病院の収入となってきた。そこには、国民健康保険料も生活保護費も含まれている。生活保護費のうち精神科入院費は、医療以外の日用品費などの費用を合わせ、国と自治体の負担分を合計すると、2500億円~3000億円程度の金額と見積もられる。1%の桁で四捨五入すれば、生活保護費総額の10%に達する。生活保護の医療費を本気で削減したいのなら、最初にすべきことは、「精神科病院からの、聖域なき退院促進」だろう。それは、国民健康保険料の負担にも、大いに関係している』、この部分はその通りだ。

第三に、10月16日付けNHKクローズアップ現代+「徹底討論! それでも必要?一般病院の“身体拘束”」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4342/
・『医療現場のスタッフ、患者の家族など関係者がスタジオで徹底討論!患者の体をベッドや車いすに縛る“身体拘束”。番組では先月、一般病院で広がる実態とその深刻な影響、そして、削減へ向けた現場の取り組みについて放送した。すると、放送直後から「現場の厳しさを分かっていない」「今後も拘束はなくせない」など、現場で働く医療関係者を中心に多くの批判が。拘束は本当に減らせないのか?声を寄せてくれた現場の人たち、患者の家族、専門家など総勢13名をスタジオに招いて議論、解決策の糸口を探る。 記事【身体拘束は減らせない?】① 医療の担い手は“孤立”している!? 出演者 宮田裕章さん (慶應義塾大学 教授) 小川朝生さん (国立がん研究センター東病院 医師) 田中志子さん (内田病院 理事長 医師) 小池京子さん (内田病院 看護師) 中西悦子さん (金沢大学附属病院 副看護部長) 小川聡子さん (調布東山病院 理事長 医師) 福地洋子さん (調布東山病院 看護部長) 番組に意見を寄せてくれた皆さん(看護師・介護福祉士など) 母親が身体拘束された息子さん 武田真一 (キャスター) 、 高山哲哉 (アナウンサー)』、見ごたえがある番組だったので紹介したい。
・『徹底討論 “身体拘束”  武田:一般病院での身体拘束は、今よりも減らすことができるのではないか。私たちの問題提起に対して多くの方から、現場を知らない、理想論だという批判の声がたくさん寄せられました。 高山:放送の直後からインターネット、SNSで本当に大きな反響を頂戴しまして、番組では改めて皆さんからご意見を募集しました。わずか3日間で200を超えるご意見が届いたんですが、その中の一部をご紹介していきたいと思います。 ある男性です。「1人で15~30人をみなければならない中、身体拘束を減らせというのは現実が見えていないとしか言いようがない」。 東京都にお住まいの40代の看護師の方です。「安静にさせるためには身体拘束をするしかないんです。暴力を振るわれても我慢。看護師も守らないといけません」。 そして、愛知県40代、公立病院に勤務されている方です。「誰もがインシデント、つまり事故につながるようなことは起こしたくないんです。拘束を解除して事故が起こったら後悔します。だから解除しない。できないんだよ!」。 武田:そこで私たちは、もう一度現場の声にしっかり耳を傾けてみることにしました。スタジオには、番組にこういった意見を寄せてくださった方にお越しいただいています。ありがとうございます。 長期入院の患者さんを主に担当しているという看護師のささきさん。やっぱり減らせないですか? ささきさん(仮名)(慢性期病院 看護師):そうですね。高齢の患者さんが増えてきてる中、事故を起こさないためにはやはり身体拘束はまぬがれないかなと思っています。 武田:いちばん減らせない理由はどういうことなんですか? ささきさん:看護師は患者さんを24時間みているのと、あと多重業務といいまして、ほかにも業務に追われていまして、ほかの業務をしながら、ほかの重症な患者さんをみながら、危険のある患者さんを集中してみるということは難しいので、やはり身体拘束という手段を使わざるを得ないことが多いです。 武田: そしてもうひと方、救急の患者も受け入れている病院の看護師のさとうさん。 さとうさん(仮名)(二次救急指定病院 看護師):認知症を持っている方もすごく多くて、現場でも「危ないから立っちゃだめだよ」と言った言葉が通じないことが大半なので、縛らざるを得ないというか、転倒・転落、また新しい傷を作らないために、安全のためにっていうことで、命を守るためにということで、やりたくはないですけどやらざるを得ない現状はあると思います。 武田:やりたくはないんですか? さとうさん:やりたくないですね、本当は。やりたくないっていう思いでやってますけど、だから「ごめんね」って言いながら、いつも「ごめんね」って言いながら(拘束具を)つけますね。 まみさん(仮名)(准看護師、学生):私は准看護師なんですけども、やっぱり身体拘束を選ばないと患者さんの命を守れないという状況が多くありました。 武田:命を守れないというのは、具体的にはどういうことなんでしょうか? まみさん:点滴を抜いてしまうとか。いろんなものが体についてるんですけど、胃ろうとかチューブとかついてるんですけど、それを自己抜去してしまうと生命に関わってしまったり、あと、骨折の恐れもありますし、点滴を見えないような位置に置いたりとか、看護師はみんな試行錯誤していろんな病院でやっているんですけども、やっぱりそれが防ぎようがないときがどうしてもあるので身体拘束を選ばざるをえない状況が多くありました。(※自己抜去(ばっきょ)=点滴やチューブなどを自分で抜き取ること)』、医療現場には「身体拘束」がやむを得ないという意見が予想通り多いようだ。
・『身体拘束 何が問題?  高山:すべての身体拘束が禁じられているというわけではありません。身体拘束は厚生労働省が作った手引きによると、こういったケースで認められています。 命が危険にさらされる可能性が著しく高い「切迫性」、ほかに替わる方法がない「非代替性」、そして、身体拘束が一時的なものである「一時性」。これらの3つの要件をすべて満たす「緊急やむをえない場合」は認められています。 武田:身体拘束が行われることで、さまざまな弊害も起きているということも私たちはお伝えしました。 <9月11日放送より>前回の番組に登場した、70代の女性と、その息子です。もともと自立していた母親が身体拘束され、心や体に大きな悪影響を受けたといいます。4年前、持病で入院した母親は、「治療と安全の確保のため」という理由で、両手両足を拘束されていたといいます。およそ2ヶ月にわたる拘束の後の母親の姿です。コミュニケーションはほとんどとれず、余命宣告されるほど衰弱していたといいます。足の筋肉が落ち、歩くこともできなくなっていました。転院した先の病院では、身体拘束せず、薬を減らしてリハビリに力を入れました。すると、普通に会話ができるほど回復しました。 (ディレクター「(100マス計算を)どうしてやられているんですか?」) 母親「どうして?頭がボケないように。」 武田:一時は、余命3か月と宣告もされたということですよね? 母親が身体拘束された息子さん:そのときには車いすにぐるぐる巻きの状態にされました。余命3か月ぐらいですねと言われたことはありました。 武田:拘束が患者さんの安全のためというお話もあったと思いますが、患者さんの状態を逆に悪化させてしまうという現実もあるということが浮かび上がってきてるんですけれども。 ささきさん:確かに身体拘束の期間とか時間が長くなると、歩けていた患者さんが筋力が落ちて歩けなくなったりですとか、動きが悪くなったりとか、そういうことはあるというのは実感としてはあります。 武田:状態が悪くなるかもしれない。だけど、いま目の前にある危険にも対処しなきゃいけない? まみさん:歩けなくなったりとかは、よく目にしていた光景なんですけども、やっぱり看護師とか現場にいる人たちはジレンマだと思うんです。それでも縛らなきゃいけないという現実を知っているので、それに替わるものがないというか、やっぱり、人手不足とか。人がずっとみていられない。 ささきさん:時間とか労力を考えたときに、効率というか、いちばんすぐに解決できる手段をみんな選んでしまうんではないかなと思います』、「2ヶ月にわたる拘束・・・余命宣告されるほど衰弱」、ここまでマイナス面があるというのに、改めて驚かされた。
・『現場の訴え① 深刻な人手不足  武田:皆さんから多く出ているご意見の1つに、人手の問題というのがあると思います。 高山:いただいた声の中にも「休憩なしで働かざるをえない」という現場からの声や、みている患者さんにもよると思うんですけど「計り知れない力で暴力を震われることもあります。こうなってくると、1人では夜とても対応できないんです。特に夜間は患者さんへの対応も手薄になってしまう」「看護師、患者さんを守るためなんだ」などがありました。 さとうさん:ひと晩で2人体制で、多いときは40~45人くらいを持ちますね。 武田:2人で? さとうさん:2人でです。1人が仮眠に入ってる時間はフロアに1人です。救急外来の対応もします。 武田:その間に入院患者さんに何かあったらどうなるんですか? さとうさん:ないように、縛ってるんですよね、結局は。お薬使って眠ってもらっているとか。そうじゃないと救急外来に対応ができないし。 ささきさん:患者さんが歩いて転んだりとかした場合、看護師の責任を問われることが多くて。みているのは看護師なので、直接的な事故報告書を書くのも看護師ですし、「もっとこうできなかったのか」とか、「こうすることができたんじゃないか」とか、後々責められたりするのも看護師ですし。 まみさん:私も夜間、顔を殴られることとかしょっちゅうありました。 武田:どうして殴られちゃうんですか。 まみさん:患者さんのご家族とか、ほかの職種の人は夜いないから分からないと思うんですけど、人って変わるんですよね。夜になったら、本当に。泣き叫んだり、すごく暴れたりとかして。そのときに、やっぱり身体拘束をしなければ転んでしまったりとか、看護師の責任がすぐ問われてしまう。下手をすれば訴訟問題になったりとか。 武田:人手もないし、責任の多くも現場の看護師に負わせられてしまうという現状があるわけですけども。 小川聡子さん(調布東山病院 理事長 医師):もう胸が詰まってくる。私たちも6年ぐらい前、取り組みを始めたときは、本当に同じ状況でした。働く看護師さんたちが本当にぼろぼろで、すばらしい仕事をしているのにやりがいを失っている。やりがいを失ってる看護師さんたちがいちばんそばで患者さんをみている。 田中志子さん(内田病院 理事長 医師):私たちの病院も、初めから身体拘束がなかったわけではなくて、かつてあった身体拘束を、いろんな工夫をしてみんなで減らしてきたというような歴史があります。49人に対して、夜間、看護師さんが2名と看護師さんをサポートするケアの方が1人でみています。だから、決して人数が多いわけではないんですけれども、患者さんが日中活動して、落ち着いて夜休むとか、BPSDが起こらないような、せん妄を起こさないような関わりを、医師も含めてすべての職種で作り上げていくということで、何とか穏やかな夜を積み重ねているという感じです。(※BPSD(行動心理症状)=暴言・暴行などの認知症の症状)(※せん妄=一時的な意識レベルの低下などを伴う症状) 高山:医療現場がいかに追いつめられているのかを物語るデータがあります。医療系の労働組合が全国3万人以上の看護師に聞いた調査の結果なんですが、7割以上が「仕事を辞めたいと思ったことがある」と回答してるんです。 高山:その理由についても尋ねています。およそ半数が「人手不足で仕事がきつい」。続いて「賃金が安い」「休暇が取れない」「夜勤がつらい」「思うような看護ができない」「医療事故が不安である」。労働環境も大きな負担になっていることがうかがえるんです。 宮田裕章さん(慶應義塾大学 教授):病棟が努力していないのかと言えば、そんなこと全くなくて、本当に医療現場はギリギリの中で、患者さんのために最善を尽くすという中でやっている。ただ、高齢者がどんどん増えていると。80年代は65歳以上の入院患者さんは3割。これが2000年代に6割になって、いま7割以上になっている。さらにそれだけではなくて、医療の進歩で、これはすばらしいことなんですが、体への負担が少ない手術や治療を行うことができるようになって、いま高齢で入院する患者さんが急速に増えている。そういった現状が大きく変わる中で、これは現場の1人1人、あるいは病院だけではなくて、状況が変わったということを国が認識した上で、対策を行っていくことも必要なのかなと』、高齢化の急速な進展で、対策は待ったなしだ。
・『現場の訴え② 難しい家族との関係  武田:もう1つ寄せられた意見で多かったのは、家族との関わりですよね。 高山:結構来ています。「けがをさせるな、転ばせるな」「うば捨て山のように施設や病院を利用する家族もいらっしゃる」ということです。 ささきさん:私がとても感じているのは、いま日本の病院とか医療現場とかそうなんですけど、ご家族の協力を得られていないというか。例えば、家に帰りたいといって寝ない患者さん、帰宅願望というんですけど。帰りたいという患者さんに、ご家族が付き添ってくれれば、まだ落ち着いたりとかするんですけれど。協力をお願いしても、仕事があるんでとか、家が忙しいとか。高齢社会なので老老介護で、息子さん、娘さんとかが高齢だったりもするわけで、そこの協力が得られないというのも看護師としては苦しいところです。 さとうさん:ご家族もいろんな意見を持っていると思うんですけど、社会的な風潮が、訴訟とか事故を起こしたスタッフとか、病院が敵みたいな、悪みたいなところがあるから、なかなか(拘束が)なくならないんじゃないかなっていうのはありますね。 稲葉玲奈さん(訪問介護事業所 介護士):うば捨て山じゃないけど、全く無関心な家族っていうのもいらっしゃいます。「転倒しないように生命を守ってくださればいい」というような考え方のご家族ということですね。 宮田裕章さん:司法の判断で、かつて、転倒で重いけがをさせた病院が訴訟を受けて罪に問われた。このケースが、特に一般病棟、急性期病院ではすごく重くのしかかってるということですよね。 小川朝生さん(国立がん研究センター東病院 医師):他の手段がもうない。そういう中でやむを得ず実施しているという、その判断を現場のスタッフだけに、本当に忙しい、そして緊急の場面で求めるというのは非常に厳しい状況だと思います。何らかのガイドラインであるとか手引きというような、社会を含めたコンセンサスを作るとか。 小川聡子さん(調布東山病院 理事長 医師):拘束されたときに、された人がどうなるかというのは、ご家族もわれわれも本当の意味でまだ知らないと思います。実際、自分が縛られたらどうなるかを経験すれば、誰もが「あっ!」って思うんですけど、私も教わったことがないです。当然、看護教育もそういう教育はされてないし、まだまだ今の高齢社会に対応するような教育が追いついていない。そこが今のいちばんのジレンマではないか。 福地洋子さん(調布東山病院 看護部長):さまざまなジレンマはあると思うんですけど、家族とふだんから関係性を築いておくと、意外と転倒しても全然うまくいくっていうのは、私も何例か経験しています。患者さんも、骨折してほかで手術して、また当院に戻りたいっていう方もいますので、そこは重要かなと思っております。 小川朝生さん:いちばん大事なのは、認知症のご本人がどんなふうなことを望んでいるのか。それを、医療者もそうですし、ご家族も一緒に考えていくという、そういう姿勢をどう作っていくか。そこへの医療者の試みであるとか社会への働きかけとかが大事になってくるんじゃないかと思いますね。 高山:番組では、実際に身体拘束の削減に成功した病院に、あなたも視察・見学に行ってみませんかという呼びかけをしてみました。今回スタジオにいらっしゃっているさとうさんが参加してくださったんです』、「かつて、転倒で重いけがをさせた病院が訴訟を受けて罪に問われた」、患者が高齢者だったのかは不明だが、高齢者については拘束しない代わりに、けがをしてもやむを得ないとの認識に変えてゆくべきだろう。それが心配なら、家族が付添うべきだ。
・『どう実現? 身体拘束の削減  番組の呼びかけに応じたさとうさんたち、医療関係者です。さとうさんがまず驚いたのは、拘束をしないこの病院のケアが、患者に与える変化でした。 この病院に入院した直後の、認知症の男性。暴力や大きな声を上げるなどせん妄の症状があらわれています。それが、拘束をしないケアを続けること、10日間・・・。(笑ったり、盆踊りを踊るようになった男性) 次に、ふだん病院スタッフ向けに行われている研修も受けることにしました。認知症のお年寄りの立場を体験するという研修です。その際、看護師の都合を優先させたケアをあえて行うことで、患者の側の気持ちに気づいてもらおうという狙いです。そして、両手両足をしばられます。 さとうさん「これは厳しいですね、これは。でも良い患者体験でした。これをやってるんだなって思うと、悲しくなりますね本当に・・・。悲しすぎて涙が出てくる・・・。」 内田病院では、患者に対するケアは職種を越えて連携していました。 病院のスタッフ「ここで離床してるのナースじゃないんですよ。歯科衛生士とリハビリ職。ナース1人じゃ大変でしょ。」 さとうさんは、日々、看護を行うなかで気になっていたことを、質問しました。 さとうさん「やっぱりアクシデント、インシデントは起きていますか?」 病院のスタッフ「起きています。起きます。」 さとうさん「起きているんですね。起きてても、やっぱり縛らない?」 病院のスタッフ「縛りません。起きてしまって、そこを責めませんね、本当に。」 さとうさん「普通だったら(批判)されますもんね。アクシデント、インシデントが起きたら、『何してんだよ』ってなりますよね。」 武田:さとうさんの中で身体拘束に関するイメージ、あるいは、いままで思っていたことは変わりましたか? さとうさん:180度変わりました。がらっと変わって、これはできるなって。内田病院さんのことを聞いて魔法でも使ってるのかなぐらいに思っていて、第1回目(の番組)は理想論だっていう意見派でした。でも、視察が終わってから、早く伝えたいなっていう思いがすごく強くなって、これは本当に知ってもらいたい。 武田:個人の意識が変わったとして、周りはどういうふうに変わるべきだと感じました? さとうさん:病院のトップだったり、看護部だったり、各職トップがそういう覚悟というか「取り組んでいくんだよ。これだったらなくせるんだよ、やっていこう」と声を出してくれないと。看護師が「こんな視察に行ってきて、身体拘束ゼロの病院あるんです、やってみませんか?」と言ったところで、そんなの無理でしょみたいに言われると思うんですよね。 武田:ささきさんいかがですか。何か聞きたいことがあれば? ささきさん:病院が取り組みますって決めたときと、下の温度差ですよね。私たちはギリギリのモチベーションを保って、仕事をしている中で、さらにそういう取り組みをしましょうというのも1つの精神的な負担であることと。看護師としての根性論というか、1人1人が頑張ればできるんだぞみたいなことを求められたところで、全員のスタッフが、じゃあやりましょうってなったのかって。全員が全員、そうやって納得してというか。全体的にできないと意味がないことじゃないですか。 まみさん:私も看護師のモチベーションとしていまギリギリの状態でやってるのに、自分たちの仕事を増やすわけではないですけど、(削減への取り組みを)やっていくというのが、まだ現状としては厳しいのかなって率直に思いました。 小池京子さん(内田病院 看護師):(身体拘束削減への取り組みを)なんでやってるかって言ったら、患者さんが教えてくれた。楽しかったんです。本当にそれが私たちの喜びだった。それでいまも続けてるんですけど。患者さんがありがとうと言ってくれたり、ほどいていって目が合うようになってきた。この人たちはただ縛られてる人じゃないんだなって、1人の人なんだっていう思いがあって、そこからが私たちのスタートだった。 田中志子さん:理想論と方法論はセットでなければ、身体拘束は減らすこともできなくて。この人だけでも外してみようっていうような、本当に初めの一歩ができるとすごい自信になっていくんですよね。 武田:(急性期病院で身体拘束ゼロを実現している)中西さん、どうですか? 中西悦子さん(金沢大学附属病院 副看護部長):個人ではなくみんなで行います。ケアもチームで考えて決定していきますので、できるだけ個人の責任にはしたくないと思っています。最初、抑制(身体拘束)をしていたころは、チューブ類の自己抜去を防ぎたいってことでやってたんですけれども。例えば自己抜去が起こったときに、個人だけの責任ではなくて、そこはチームとしてケアが足りなかったんじゃないかとか、患者さんがチューブを持つという意味があるはずですので、何かしたかったんじゃないかとか、そこをちゃんとアセスメント(評価)できなかったんじゃないか、そういうところで必ず振り返りをみんなで行います。 小川朝生さん:重要なのは、これを看護だけの責任にしてはならない。具体的にいえば、医師とか、リハビリとか、多職種での問題意識の共有と連携、いわゆる多職種チームだと思うんですけれども、そういう現場の活性というのができるのかどうか、目標がどれだけ共有できるのか。そこの力というのは非常に大きいかなと思います。 山賀献夫さん(特別養護老人ホーム ヘルパー):たぶんですけど、ふだんのそこの関係性が。いちばん末端の仕事を現場でしている管理職ではない人たちからすると、(管理職と)話す機会って正直なかなかなくて。いざ何かそういう場になったときに、配慮した聞き方をしてくれるのか、上から聞いちゃうのかみたいなのことも、現場として受ける印象が違う。 稲葉玲奈さん:多職種で連携していくことに光があるんじゃないかなってすごく思うんですね。制度の問題だったりは結構あると思うので、その辺を、大きな部分でカバーしていただけるような社会体制みたいなものができたら、ナースさんの負担も減ると思いますし、私たち介護士も、よりよいケアを共有していくことができるんじゃないかな。 ささきさん:私もやりがいを感じているので看護師を続けてますけれども、いちばんは患者さんに寄り添いたいですし、看護師の味方でもありたいというか、医療者の味方でもありたい。これ以上辞めていく人たちとか、やりがいを感じられなくなる人が増えるのは嫌ですし、病院とかだけではなくて、世の中がいま高齢者の時代で、日本がどういう状況に置かれているかっていうのを社会全体で理解してもらうことも大事だと思うので、私自身は看護師として努力していきたいと思いますけども、世間の方との距離も縮められるように、今後もコミュニケーションを取っていきたいと思います。 武田:ありがとうございました。きょうは番組にご意見を寄せてくださった医療現場で働く皆さんとともに、身体拘束にまつわる医療のあり方を考えました』、「重要なのは、これを看護だけの責任にしてはならない。具体的にいえば、医師とか、リハビリとか、多職種での問題意識の共有と連携、いわゆる多職種チームだと思うんですけれども、そういう現場の活性というのができるのかどうか、目標がどれだけ共有できるのか。そこの力というのは非常に大きいかなと思います」、その通りで、先進的な取り組みが広がってほしいものだ。厚労省も「身体拘束」しない病院には何らかのインセンティブを与えることで、積極的に広げるべきだろう。
タグ:医療問題 ダイヤモンド・オンライン みわよしこ NHKクローズアップ現代+ 木原洋美 (その22)(「名医という言葉には抵抗を感じる」という医師が追求する 真の神業とは、国保料引き上げの真犯人 「ムダな医療費」を貪る人々の正体、徹底討論! それでも必要?一般病院の“身体拘束”) 「「名医という言葉には抵抗を感じる」という医師が追求する、真の神業とは」 甲南病院(滋賀県)で消化器外科医 谷徹医師(滋賀医科大学革新的医療機器・システム研究開発講座特任教授) 内臓をじゃぶじゃぶ洗う手術も 敗血症を治療する血液浄化器も 外科手術に革命を起こす 血の出ないメスを開発 患者が元気で長生きすることが真に神業といえる手術の証 「国保料引き上げの真犯人、「ムダな医療費」を貪る人々の正体」 多くの精神科入院患者は誰のために必要なのか 日本には約28万人の精神科入院患者がいた。この人数は、全世界の精神科入院患者の約2割 平均入院日数は2014年に281日で、世界ダントツの長さ 交通が不便で偏見の強い地域に精神科病床が突出して多い現実 社会にコストを強いる人に「死んで」と望むことの是非 冷静に考えたい医療制度改革の「誰得」 「徹底討論! それでも必要?一般病院の“身体拘束”」 徹底討論 “身体拘束” 身体拘束 何が問題? 現場の訴え① 深刻な人手不足 現場の訴え② 難しい家族との関係
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子育て(その2)(うつぬけ精神科医が見た「子どもの不調」の背景 「家」を子どもの"ホーム"にする大切な考え方、「普通の家庭の子」の精神が追い詰められるワケ 7年間 うつを経験した医師が語る実際、日本の子どもは「世界一寝不足」 キレたり暴れたりする原因に?) [生活]

子育てについては、6月21日に取上げた。今日は、(その2)(うつぬけ精神科医が見た「子どもの不調」の背景 「家」を子どもの"ホーム"にする大切な考え方、「普通の家庭の子」の精神が追い詰められるワケ 7年間 うつを経験した医師が語る実際、日本の子どもは「世界一寝不足」 キレたり暴れたりする原因に?)である。

先ずは、自ら7年間うつを患っていた経験を持つこころのクリニック 院長の宮島 賢也氏が2月16日付け東洋経済オンラインに掲載した「うつぬけ精神科医が見た「子どもの不調」の背景 「家」を子どもの"ホーム"にする大切な考え方」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/265515
・『今、「心の不調」を抱える小中学生が増えているという。大人の視点では、その世代の子どもと精神疾患はあまり結びつかない印象もあるが、インターネットやSNSの普及もあり、最近の子どもたちは、対人関係など「大人と同じストレス」を受けやすい世の中を生きているのだ。 この記事は、小中学生を取り巻く現在の生活環境をふまえつつ、新刊『うつぬけ精神科医が教える 心が折れない子を育てる親の習慣』を著した精神科医・宮島賢也医師に、子どものメンタルをサポートするために「親はまず何をすべきなのか」を教えていただく。宮島氏自身、かつて7年間うつを患っていた経験を持つ』、「自身、かつて7年間うつを患っていた経験」、大いに参考になりそうだ。
・『今、元気のない子どもが増えている現実  子どもの不登校、引きこもりが年々増加しています。文科省の調査(2017年)によると、不登校の子どもは小学生が3万5032人(1000人当たり5.4人)、中学生が10万8999人(同32.5人)でした。また、2017年度に自ら命を絶った児童生徒(高校生含む)は250人で、これは過去30年で最多です。 それと同時に、子どもの「心の不調」も増えています。小中学生の世代に精神疾患がある事実はあまり知られていないかもしれませんが、うつ病や不安障害などは小学生から見られ、10代後半になるとさらに増加しているのです。 私のクリニックにも、小学生のお子さんを連れた親御さんが訪れますし、大人の患者さんに「初めて精神科を受診したのは?」と聞くと、「小学校の頃」と答える方もいます』、「うつ病や不安障害などは小学生から見られ、10代後半になるとさらに増加している」、そんな若い時から発症しているとは、驚かされた。
・『実は、こんなことをお伝えしている私自身、かつて7年間もうつを患った当人です。私がうつになったのは研修医時代ですが、そのきっかけは、日々の激務に加え、「自分は医師としてふさわしくないのでは?」「診断を間違ったらどうしよう」などと不安にさいなまれたからだと、その当時は思っていました。 でも今になって思えば、その“根本”は少年期にありました。この記事をお読みになっている方の参考になるかもしれないので、まずは私の当時に触れておきたいと思います。 私が小さい頃、両親はしょっちゅうケンカをしていました。母は大学卒業後に英語教師となり、私を妊娠したあと仕事を辞めていました。父は外資系のエリートサラリーマンです。父は仕事で多忙でしたから、母の関心はやがて子どもの私に集中するようになりました。 私は小4から塾に通い、多いときで週6日。日曜ごとに試験の成績が発表されるのですが、いい成績をとらないと母がいい顔をしない。それを気にした私はカンニングをしたりもしましたが、そんなことをしても気持ちよくありません。そして、だんだんそんな自分が嫌になっていき、「何のために勉強しているのか」疑問を抱くようになりました。 それでも、「1校だけ」と受けた中高一貫の難関校・開成中学に合格します。入学後はラグビー部に入りましたが、実力は伸びず、やがて部活を辞め、家でゲームにはまりました。でも、家にいると母が怒るばかりで、まったく心が休まりません。 学校の試験には詰め込み暗記で臨んでいました。でも、高校になると実力テストではガクンと成績が下がります。そうなると学校もつまらなくなり、家でも落ちつかない毎日。家にいたくなくてバイトをしたり、髪を伸ばしたり、ピアスの穴を開けたりもしました。あるとき母に「勉強しなさい!」と包丁を持って追いかけられたことも。私は「大学なんて行くもんか」と、酒やたばこにも手を出し、まさに自暴自棄でした。 その後、ある女医さんに憧れたことをきっかけに、「医者なら価値のない自分でも人の役に立てるかも」と思い立ち、運よく1浪後に防衛医大に受かりましたが、私の少年時代は不安定極まりない日々だったのです』、うつになった「“根本”は少年期にありました」、そんなに長いタイムラグがあることに、改めて驚かされた。「開成中学に合格・・・高校になると実力テストではガクンと成績が下がります。そうなると学校もつまらなくなり、家でも落ちつかない毎日・・・母に「勉強しなさい!」と包丁を持って追いかけられたことも」、絵に描いたようなエリートの卵も、悪循環にはまると大変なようだ。「ある女医さんに憧れたことをきっかけに、「医者なら価値のない自分でも人の役に立てるかも」と思い立ち、運よく1浪後に防衛医大に受かりました」、ひょんなきっかけで立ち直ったものだ。
・『子どものメンタルを守る「親の考え方」  「今、心の不調を抱える子どもが増えている」とお伝えしましたが、その背景には、実はそうなる根本原因といえる「親子関係」が大きく関わっています。 先述のとおり、私自身子どもの頃、親子関係に苦しんだ一人です。当時、いい成績と学歴、地位ある職業に価値を見出していた親に育てられた私は、結局、親が望んだような仕事に就いたともいえますが、医者になってからも自分に自信が持てず、「自己肯定感の低い人間」になってしまったのです。 この記事を読んでいただいている方には、お子さんのことで今まさに悩んでいる方もおられるでしょう。そこでここでは、現在心の不調を抱えている、あるいは最近いつもと様子が違う子どもに対する「親の接し方」についてお伝えしておきます』、「医者になってからも自分に自信が持てず、「自己肯定感の低い人間」になってしまった」、親の接し方は難しいものだ。
・『学校から帰ってきて子どもの顔を見ると、なぜか元気がない。親なら誰しも気になるはずです。こんなとき、いったいどんな声がけをすればいいのでしょうか。 「どうしたの?」と聞くのはいいのですが、畳みかけるように「何かあった?」などと問い詰めるのはやめましょう。少しでも何か話をしてくれたら、まずは聞いてみること。たとえ何も話してくれなくても、「それもあり」と受け入れます。 小学校高学年以上になると、まったく返事をしてくれないこともあるでしょうが、そこで「何か言いなさい」などとは決して言わないでください。学校で何かあったのかもしれないし、子どもの心の中で何か思うことがあるのかもしれない。いずれにせよ、外で何か「居心地が悪いこと」があったのです。 そうであるにもかかわらず、家で親に問い詰められたら、その家自体、居心地が悪くなってしまいます。少なくとも、家だけは安心で安全で、子どもにとって「居心地のいい快適な場所」であることがまずは重要なのです。 「家が快適な場所だと、学校に行かなくなったり、引きこもりになったりしませんか?」。親御さんからこんなふうに聞かれることもあります』、「家で親に問い詰められたら、その家自体、居心地が悪くなってしまいます。少なくとも、家だけは安心で安全で、子どもにとって「居心地のいい快適な場所」であることがまずは重要なのです」、私もこんなことは知らずに、「問い詰め」たこともあったが、幸い悪影響は出なかったようだ。
・『“学校はオマケ”と思う親のスタンス  でも、家すら安心な場所でなくなったら、子どもは完全に居場所を失い、それがひいては自殺につながることさえあるのです。もしお子さんから「いじめられた」など何らかの返事が得られた場合も、まずは子どもが“どこにいたいのか”を第一に考えましょう。 私がここでぜひ親御さんにお伝えしたいのは、「学校に行っても行かなくてもいい」というスタンスを親御さん自身がとれるかどうかということ。もっと言えば“学校はオマケ”とすら思えるかどうかです。 これを言うと驚く親御さんも多いのですが、「学校には行かなくてはいけない」では、お子さんも親御さんも追い詰められてしまいます。でも、それとは逆のスタンスで構えていれば、お子さんへの声がけや問いかけがだいぶ変わってくるはずです。 まずは、「外で何かあった」子どもが家にいたければ家にいてもらう。「学校に行きなさい!」と追い立てるスタンスをやめ、「家」を子どもにとって本当の意味での“ホーム”にする。シンプルですが、これが、子どもの元気を取り戻し、彼らのメンタルを守っていくための“最初の一歩”になると私は考えています』、「家すら安心な場所でなくなったら、子どもは完全に居場所を失い、それがひいては自殺につながることさえあるのです」、確かにその通りだろう。しかし、「“学校はオマケ”と思う親のスタンス」は言うは易く、実行するのは難しそうだ。

次に、この続きを、2月28日付け東洋経済オンライン「「普通の家庭の子」の精神が追い詰められるワケ 7年間、うつを経験した医師が語る実際」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/267965
・『最近、小中学生の間で、うつなど「心の不調」が増えているようだ。ネットやSNSの普及による情報化が進んで、対人関係に代表される「大人と同じストレス」に遭遇しやすい世の中になったことに、その一因があるとも考えられている。 この記事では、今の小中学生を取り巻く生活環境をふまえながら、新刊『うつぬけ精神科医が教える 心が折れない子を育てる親の習慣』を著した精神科医・宮島賢也氏に、子どもの心を守るために「親はどう行動すべきなのか」を教えていただく。この宮島医師自身、かつて7年間うつを患っていたという経験を持つ』、「親はどう行動すべきなのか」もずいぶん難しそうだが、どんなことだろう。
・『「ごく普通の家庭」で育っているのに…  「うちは子どもに愛情を注いで育ててきたつもりだ」「自分で言うのもなんだけど、わが家はいい家庭だと思う」。お子さんのことで悩みながらも、このように考える親御さんは少なくありません。 では、虐待があるわけでもない、夫婦ゲンカが絶えないわけでもない、いわゆる「ごく普通の家庭」で愛されて育ったお子さんでも、「心が折れてしまう」ことがあります。いったいなぜでしょうか。 「母原(ぼげん)病」という言葉があります。これは、母親の育児が原因で、子どもの病気や問題を引き起こしてしまうことを言います。もちろん、お母さん方を責めるつもりはありませんが、子どもを愛しているのは事実でも、子どもを「囲ってしまう」ような愛し方に問題があるのです。 これは知り合いから聞いた話ですが、客船に乗っていた際、日本人の親と外国人の親の、子どもへの接し方の違いに驚いたと言います。 日本人の親は、子どもが船上で遊んでいると、危ないところに行かないようつねにそばにいる。一方、外国人の親は、子どもを自由に遊ばせ、本当に危ないときにだけ、さっと駆けつけるのだそうです。 私は、子育てもこれに近いと思っています。本当に危険なときは当然守るべきですが、危ない目や嫌な目に遭わないようにいつも先回りしたり、問題が起きたときに親のほうで解決したりすると、「生きる力が弱い子」にもなりかねません』、「母原病」、「子どもを「囲ってしまう」ような愛し方に問題があるのです」、なるほどありそうな話だ。
・『痛い思いや失敗を経験して、人は「生きる力」を育んでいきます。例えば、公園で子ども同士が遊んでいてケンカをしても、最近はすぐ親が介入してしまいます。 おもちゃを取った取られたという程度のことでも、すぐに親が「謝りなさい」と言ったり、「だめでしょ!」と注意したりする。なかには子どもに代わって謝ってしまう親御さんも。もちろん、事の状況次第で解決策も変わるでしょうが、親の過度な介入は、子どもの「心の成長」の機会を奪うことになります。 では、本当に親御さんの育て方に問題があるのかというと、そうではありません。実は「親御さん自身の育てられ方」に問題の根源があったりするのです。 クリニックで親御さんに話を聞くと、ご自身が「親に愛されていなかった」という方が多いと私は感じています。愛されていなかったといっても、虐待や放任などだけではなく、親に育てられていくなかでそう思い込んでいった、というものです。 例えば「母はいつも兄ばかりかわいがっていた」とか「父はいつも怒ってばかりいた」というようなこともそうでしょう。一言でいうと、親御さん自身も忘れている「過去の記憶」が、自分自身の子育てに影響しているのです。 過去の記憶は、コミュニケーションにおける1つのパターンになっていきます。無意識に自分が親にされていた接し方を繰り返していることもあれば、逆に、親にされたことが嫌だったから、自分は子どもに同じことをしたくないと思っている場合もあります。 でも、どちらのパターンも親御さんが自分の親から影響されていることに変わりはなく、過去の記憶が蓄積した結果です。親を反面教師にしている場合も、親にされたことをひっくり返しているだけ。一見、愛にあふれているような子どもへの接し方も、実は、親御さん自身の「過去の記憶」の影響を受けているのです』、「親の過度な介入は、子どもの「心の成長」の機会を奪うことになります」、確かにその通りだろう。「本当に親御さんの育て方に問題があるのかというと、そうではありません。実は「親御さん自身の育てられ方」に問題の根源があったりするのです」、一世代に亘って影響するというのには本当に驚かされた。
・『子どもを追い詰める「ダブルお母さん」  ところで最近、「2人のお母さん」がいるご家庭が目につくようになりました。これまでは、「教育ママ」という言葉もあるとおり、子どもの塾や受験について調べたり、勉強に干渉したりといった、いわゆる「教育熱心」なのは母親がメインだったと思います。 私自身、母親が教育熱心すぎて、子どもの頃に苦しんだ経験があるのでよくわかるのですが、最近は「教育熱心な父親」も増えてきました。それが「ダブルお母さん」現象です。家の中に口うるさいお母さんが2人いる、そんな状態です。 子どもが家にいるとき、母親だけでなく父親もあれこれ干渉してくるとなると、子どもは家での居場所を失っていきます。) 家に帰りたくないお父さん「フラリーマン」も最近話題になっていますが、フラリーマンは、家に居場所がなくても職場や外に居場所があります。でも、子どもは家にも外にも居場所はなく、心が満たされない状態が続きます。 「ダブルお母さん」がいるご家庭は、両親が子どもによく接している分、周囲からは「いい家庭」に見えることもあります。それどころか、親御さんも「わが家はいい家庭」だと思っている。でも、肝心な「子どもの心」は置き去りです』、「最近は「教育熱心な父親」も増えてきました。それが「ダブルお母さん」現象です。家の中に口うるさいお母さんが2人いる、そんな状態です・・・子どもは家での居場所を失っていきます・・・親御さんも「わが家はいい家庭」だと思っている。でも、肝心な「子どもの心」は置き去りです」、確かに「子ども」にしたら、やり切れない状態だろう。
・『子どもは親の「言葉以外の部分」を察している  「過保護」の親とその娘をユニークに描いた『過保護のカホコ』というテレビドラマがありましたが、親の過保護が「過干渉」までいくと、子どもの決定権はほとんどなくなってしまいます。 親が先回りしてなんでも決めてしまう。あるいは、それしか選択できないような提案をしている場合も。「こうしなさい」とは言わなくても、「こうしたほうがいいよね」「そっちがいいんじゃない?」と提案しているようでいて、結果的には子どもに選択の余地がない状態にさせていることがあるのです。 もちろん、「親の言うことを聞いてよかった」というお子さんもいますが、なかには自分の気持ちを押し殺し、ため込んでしまうお子さんもいます。でも、たまったものは、いつか爆発します。自分自身で爆発する子もいれば、ため込んだまま大人になり、自分自身の子育てのとき、そのお子さんのトラブルとなって爆発する場合もあります。 子どもは言葉以上に、親の言葉以外の部分を感じ取っています。「私はなんでも子どもに決めさせている」と言う親御さんもいますが、「自分で決めていいんだよ」と子どもに言いながら、目つきや雰囲気で「選択肢はこっちしかない状態」にしていることもあるのです。 言葉に出さなくても、子どもは敏感に「こっちを選んでほしいんだろうな」という親の思いを読み取ります。親が想像する以上に、子どもは親の気持ちを察しているのです。 親子の関係は、短く見積もっても10~15年はあります。その間、子どもは親の背中を見て育っていく。ですから、口では言わないことも無意識のうちに感じ取りますし、すべて子どもの「潜在意識」の中に入っていきます。 子どもが何歳であっても、過度な干渉はおすすめしません。小さい頃から干渉しすぎると、一見しつけはうまくいくかもしれませんが、親の顔色をうかがう子どもになってしまいます。どんなに小さな子どもでも、何もわからない人として扱うのではなく、生きる力を持っている1人の人として、自分の人生を自分で決めていくためのサポートをしていくことが大切だと私は思います』、「結果的には子どもに選択の余地がない状態にさせていることがあるのです・・・たまったものは、いつか爆発します。自分自身で爆発する子もいれば、ため込んだまま大人になり、自分自身の子育てのとき、そのお子さんのトラブルとなって爆発する場合もあります」、「小さい頃から干渉しすぎると、一見しつけはうまくいくかもしれませんが、親の顔色をうかがう子どもになってしまいます。どんなに小さな子どもでも、何もわからない人として扱うのではなく、生きる力を持っている1人の人として、自分の人生を自分で決めていくためのサポートをしていくことが大切だと私は思います」、本当に親子関係は難しいものだ。筆者の宮島医師は自らはアドバイス通りに出来ているのだろうか。

第三に、ジャーナリストの岡田幹治氏が10月27日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「日本の子どもは「世界一寝不足」、キレたり暴れたりする原因に?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/218154
・『日本の子どもの睡眠時間は世界一短く、睡眠不足が子どもの発達と成長を妨げ、キレたり暴れたりする一因にもなっている。 社会の夜型化が進み、夫婦の共働きが普通になって、大人の睡眠時間も先進国では最も短い。 そんな事態を改善しようと、「産学連携」による斬新な取り組みをする自治体も出てきた』、確かに深刻な問題だ。
・『中学生で平均睡眠7時間 肥満や精神不安定の一因に  世界17ヵ国・地域で「0~3歳児の総睡眠時間」を調べたデータ(Mindellらの研究論文、2010年発表)によると、日本は11時間37分で最も短く、最長のニュージーランドの13時間19分より1時間42分も短い。 この傾向は子どもが成長しても変わらない。 思春期の若者(中学生)の睡眠時間の国際比較では、日本は平均7時間台で、米国より約30分、欧州諸国より約1時間30分も短い。 睡眠に関する研究や教育で著名なNPO・全米睡眠財団は子どもの睡眠時間について、3~5歳は10~13時間、小学生は9~11時間、中高生は8~10時間を推奨している。 これと比べても日本の子どもの睡眠不足は明らかだ。 睡眠不足が子どもの発達や成長の妨げになることは科学的に明らかになっている。 睡眠が短くなると、夜間の睡眠中に大量に分泌される「メラトニン」「セロトニン」「成長ホルモン」などの分泌が乱れるからだ。 メラトニンは、日々の生活リズムを調節する機能をもつホルモンで、不足すると良質な睡眠がとれなくなり、規則正しい生活リズムができない。このホルモンは抗酸化作用など、身体を守る作用もある。 またセロトニンは、脳の機能を高め、感情をコントロールする神経伝達物質であり、不足すれば、脳の発達の遅れや睡眠障害の原因になる。キレたり暴れたり、うつ状態になったりすることもある。 成長ホルモンは、骨や体をつくり、免疫力を高めて病気になりにくくする。脂肪を分解する作用もあるので、不足すると肥満になりがちだ。 睡眠不足で規則正しい生活リズムが乱れた子どもは、身体と脳の発達が遅れ、精神が不安定になる可能性が大きいのだ』、夜遅くまで勉強して「睡眠不足」になっているとすれば、非効率なことこの上ない。
・『大人の睡眠時間も先進国で一番短い  日本の子どもの睡眠不足はいくつもの事情が重なって起きている。 まず日本社会の夜型化が進み、共働きが普通になって、両親の睡眠時間が短くなったから、その影響を受ける。 経済協力開発機構(OECD)が調べた「15~64歳の睡眠時間」によると、日本は一日平均7時間22分と加盟国で最も短く、加盟国平均の8時間25分より1時間も短かった。 厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2017年)では、20歳以上の平均睡眠時間は6時間未満が約4割もいて、「睡眠で十分な休養がとれていない」と答える人が増え続けている。 子どもの睡眠不足をもたらす第二の事情は、子どもの生活が塾や習い事や部活動などで、幼いころから予定がびっしり詰まっていることだ。 しかも最近は、スマートフォン(スマホ)やSNS(LINE・ツイッター・インスタグラム)、ゲームなど、子どもを夜更かしに誘う要因が増えた。 保護者が睡眠の重要さを知らず、無関心であることも大きい。 子どもたちの現状を心配した文部科学省は2006年度から「早寝早起き朝ごはん運動」を推進している。 子どものすこやかな成長には、適切な運動・調和のとれた食事・十分な休養と睡眠が大切だとの考えのもとに、各地の自治体や学校が啓発活動をしている』、「保護者が睡眠の重要さを知らず、無関心であることも大きい」、もっとマスコミなどでもPRすべきだろう。「文部科学省は2006年度から「早寝早起き朝ごはん運動」を推進している」、いい試みではあるが、効果の報道を殆ど見かけないので、余り効果がなかったのだろう。
・『スマホや夜のコンビニ 利用多いほど睡眠短い  自治体の取り組みで注目されているのが、「子育て世帯が住み続けたいと思う街」をめざしている大阪市淀川区の「子どもの睡眠習慣改善支援事業」だ。 「ヨド川区の子どもは夜ネル、よくネル!」から4文字をとって「ヨドネル」と呼んでいる。 きっかけは、榊正文・前区長が、子どもの生活習慣の乱れと睡眠の関わりを取り上げたテレビ番組を見たことだ。保護者らとの会議で、区内の子どもの睡眠習慣も乱れていることを知り、「不規則な生活の改善が、学力アップにもつながっていくのではないかと考えた」 取り組みの特徴は、科学的根拠を明らかにしてまず保護者の意識を変えようとした点にある。 具体的には大阪市立大学と連携し、水野敬・同大学大学院医学研究科特任准教授の指導を受けた。 水野特任准教授は抗疲労研究が専門の脳研究者で、同大学健康科学イノベーションセンター副所長を務めている。 まず実施したのは、区内の小学4年~中学2年生の合計約5300人を対象にした詳細なアンケートだ。2016年と17年の各6~7月の2回行われた。 その結果、次のようなことが明らかになった。 回答した児童生徒の約4割が「疲れている」「とても疲れている」と回答し、約1割は疲れが3ヵ月以上続く「慢性疲労」だった。 疲れを感じている子どもほど睡眠時間が短いことも分かった。 「とても疲れている」と答えた子どもは「全く疲れていない」子どもに比べ、平日の平均睡眠時間が1時間も短かった。 疲れが強いほど、「注意制御力」が低く、注意制御力が高いほど授業の理解度が高いことも分かった。 注意制御力とは、2つ以上のことに同時に注意を向けたり、多くのものから1つの目的物をすばやく見つけたりする力のことで、大人になって最も大切な能力だ。 就寝時刻を遅くする要因として、スマホ、テレビや動画、SNS、夜のコンビニの4つを選んで調べたところ、これらの利用時間が長く、利用頻度が多いほど、睡眠時間が短いことも分かった。 たとえばスマホを「5時間以上」利用する子どもは、「全く使わない」子どもより睡眠時間が1時間半も短かった。 また、家族と一緒に夕食を食べたり、よくほめられたりする子どもほど、睡眠時間が長かった』、「平均睡眠時間」が短くなると、疲れやすくなり、大人になって最も大切な能力である「注意制御力」が低くなるというのは、初めて知った。「睡眠」が如何に重要なものかを再認識させられた。「大阪市淀川区の「子どもの睡眠習慣改善支援事業」」はなかなかいい取り組みのようだ。
・『「夜9時以降は“既読スルー”」「すいみんのオキテ」作り  区はこうした結果を分かりやすく解説した「淀川すいみん白書」を発行・配布するとともに、動画「すいみんドクターKのすいみん講座」をつくってYouTubeで公開した。保護者らを対象にした結果報告会も開いた。 同時に、睡眠習慣を改めるのに役立つ「小道具」をいくつも作成した。 たとえばこうだ。 年代別の「すいみんのオキテ」を記したちらし。「オキテ」には、「小学2年生は夜9時までに寝る」「中学1・2年生はゲーム機・携帯電話・スマホに夜10時以降はさわらない」といったものがある。 ▽家庭や学校で「すいみんルール」を定める際のひな型。 たとえば小学生は「夜9時以降は保護者がスマホを預かる」というルールを家庭でつくる。 中学生なら「夜9以降はLINEも既読スルーで(返信しない)」と生徒会で決めるといった例を挙げている。 市内の小中学校はこれらを使って睡眠習慣づくりを進めるわけだ。 このほかにも、生活のリズムが乱れがちな夏休みなどの長期休暇中、毎晩9時に区の公式アカウントLINE@から約5000の登録アカウントに向け、オリジナルキャラクターの「がんこおやじ夢さん」が「はよ寝んかい」と呼びかける取り組みをしていたこともある。 効果は短期間では現れない。16年と17年の調査結果を比べると、小学4~6年生の平日の睡眠時間は4分延びたが、中学1~2年生は逆に3分短くなった。 疲れも小学生は軽減されたが、中学生は増加した。 ただ、「勉強をがんばったとき、家の人はほめてくれるか」という問いに「いつも」「だいたい」と答えた子どもの割合は、小中学生とも増加した。 家族にほめられる子どもほど睡眠時間が長いことを知った保護者が、積極的にほめるようになった結果と考えられる。 淀川区の担当者は、「息長く続けたい」としており、今年3月には区と大阪市立大学に老舗寝具メーカー・西川株式会社を加えた3者の連携協定を結んだ。 良質の睡眠をとるための環境(温度・湿度・香り・寝具など)や子どもたちの行動(1日の過ごし方)について、「望ましいあり方」を例示したいという。そうした面での研究実績がある西川の協力を得たいとしている』、「小学4~6年生の平日の睡眠時間は4分延びたが、中学1~2年生は逆に3分短くなった。 疲れも小学生は軽減されたが、中学生は増加した」、やはり効果が表れるには時間もかかるようだ。 「保護者が、積極的にほめるようになった」のは好ましい結果だろう。こうした動きがもっと広がってほしいものだ。なお、「すいみんドクターKのすいみん講座」は、下記URL
https://www.city.osaka.lg.jp/yodogawa/page/0000394929.html
タグ:子育て 東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン 岡田幹治 (その2)(うつぬけ精神科医が見た「子どもの不調」の背景 「家」を子どもの"ホーム"にする大切な考え方、「普通の家庭の子」の精神が追い詰められるワケ 7年間 うつを経験した医師が語る実際、日本の子どもは「世界一寝不足」 キレたり暴れたりする原因に?) 宮島 賢也 「うつぬけ精神科医が見た「子どもの不調」の背景 「家」を子どもの"ホーム"にする大切な考え方」 『うつぬけ精神科医が教える 心が折れない子を育てる親の習慣』 今、元気のない子どもが増えている現実 小中学生の世代に精神疾患がある事実はあまり知られていないかもしれませんが、うつ病や不安障害などは小学生から見られ、10代後半になるとさらに増加 私自身、かつて7年間もうつを患った その“根本”は少年期にありました 開成中学に合格 高校になると実力テストではガクンと成績が下がります。そうなると学校もつまらなくなり、家でも落ちつかない毎日。家にいたくなくてバイトをしたり、髪を伸ばしたり、ピアスの穴を開けたりもしました 母に「勉強しなさい!」と包丁を持って追いかけられたことも ある女医さんに憧れたことをきっかけに、「医者なら価値のない自分でも人の役に立てるかも」と思い立ち、運よく1浪後に防衛医大に受かりました 子どものメンタルを守る「親の考え方」 医者になってからも自分に自信が持てず、「自己肯定感の低い人間」になってしまった 、家で親に問い詰められたら、その家自体、居心地が悪くなってしまいます。少なくとも、家だけは安心で安全で、子どもにとって「居心地のいい快適な場所」であることがまずは重要なのです “学校はオマケ”と思う親のスタンス 家すら安心な場所でなくなったら、子どもは完全に居場所を失い、それがひいては自殺につながることさえあるのです 「「普通の家庭の子」の精神が追い詰められるワケ 7年間、うつを経験した医師が語る実際」 「ごく普通の家庭」で育っているのに… 「母原(ぼげん)病」 母親の育児が原因で、子どもの病気や問題を引き起こしてしまう 子どもを「囲ってしまう」ような愛し方に問題がある 親の過度な介入は、子どもの「心の成長」の機会を奪うことになります 実は「親御さん自身の育てられ方」に問題の根源があったりするのです 親御さんに話を聞くと、ご自身が「親に愛されていなかった」という方が多いと私は感じています 親御さん自身も忘れている「過去の記憶」が、自分自身の子育てに影響 子どもを追い詰める「ダブルお母さん」 「教育熱心な父親」 子どもは家にも外にも居場所はなく、心が満たされない状態が続きます 子どもは親の「言葉以外の部分」を察している なかには自分の気持ちを押し殺し、ため込んでしまうお子さんもいます。でも、たまったものは、いつか爆発します。自分自身で爆発する子もいれば、ため込んだまま大人になり、自分自身の子育てのとき、そのお子さんのトラブルとなって爆発する場合もあります 小さい頃から干渉しすぎると、一見しつけはうまくいくかもしれませんが、親の顔色をうかがう子どもになってしまいます。どんなに小さな子どもでも、何もわからない人として扱うのではなく、生きる力を持っている1人の人として、自分の人生を自分で決めていくためのサポートをしていくことが大切だと私は思います 「日本の子どもは「世界一寝不足」、キレたり暴れたりする原因に?」 中学生で平均睡眠7時間 肥満や精神不安定の一因に 日本は11時間37分で最も短く、最長のニュージーランドの13時間19分より1時間42分も短い 思春期の若者(中学生)の睡眠時間の国際比較では、日本は平均7時間台で、米国より約30分、欧州諸国より約1時間30分も短い 睡眠が短くなると、夜間の睡眠中に大量に分泌される「メラトニン」「セロトニン」「成長ホルモン」などの分泌が乱れる 睡眠不足で規則正しい生活リズムが乱れた子どもは、身体と脳の発達が遅れ、精神が不安定になる可能性が大きい 大人の睡眠時間も先進国で一番短い 子どもの生活が塾や習い事や部活動などで、幼いころから予定がびっしり詰まっていることだ 保護者が睡眠の重要さを知らず、無関心であることも大きい 文部科学省は2006年度から「早寝早起き朝ごはん運動」を推進 スマホや夜のコンビニ 利用多いほど睡眠短い 大阪市淀川区の「子どもの睡眠習慣改善支援事業」 大阪市立大学と連携 「とても疲れている」と答えた子どもは「全く疲れていない」子どもに比べ、平日の平均睡眠時間が1時間も短かった 疲れが強いほど、「注意制御力」が低く、注意制御力が高いほど授業の理解度が高いことも分かった 注意制御力とは、2つ以上のことに同時に注意を向けたり、多くのものから1つの目的物をすばやく見つけたりする力のことで、大人になって最も大切な能力だ 「夜9時以降は“既読スルー”」「すいみんのオキテ」作り 「すいみんのオキテ」 「小学2年生は夜9時までに寝る」 中学1・2年生はゲーム機・携帯電話・スマホに夜10時以降はさわらない」 家族にほめられる子どもほど睡眠時間が長いことを知った保護者が、積極的にほめるようになった結果 「すいみんドクターKのすいみん講座」
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医療問題(その21)(相次ぐ高額医薬品 国民皆保険制度は維持できるか、がん検診にデメリットはあるのか? 第49回 がん外科医の本音⑤、健保連が「医療費抑制」に向けた政策提言 花粉症、風邪ですぐ病院へ) [生活]

医療問題については、8月4日に取上げた。今日は、(その21)(相次ぐ高額医薬品 国民皆保険制度は維持できるか、がん検診にデメリットはあるのか? 第49回 がん外科医の本音⑤、健保連が「医療費抑制」に向けた政策提言 花粉症、風邪ですぐ病院へ)である。

先ずは、8月8日付け日経ビジネスオンライン「相次ぐ高額医薬品、国民皆保険制度は維持できるか」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00067/080600007/?P=1
・『発売当初は年間で約3500万円の費用がかかったオプジーボや、2019年5月に承認された1回投与で3349万円のキムリアなど、高額な医薬品の登場が相次いでいる。気になるのは医療保険財政への影響だ。日本が世界に誇る国民皆保険制度は、このまま維持できるのか。 このまま高額医薬品が増え続ければ、医療保険財政は破綻するのではないか――。オプジーボの登場以降、こうした議論が盛んに繰り広げられるようになった。財務省秘書課長の吉野維一郎氏(取材時の肩書は主計局主計官、厚生労働係第一担当)も「こうした高額医薬品が次々と出てくるようになれば、それなりに医療保険財政への影響はある」とみる。 医療保険財政が圧迫されれば、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入し、お互いの医療費を支え合う「国民皆保険制度」も揺らぎかねない。では、どう財政への影響を最小限にするか。現状は医薬品の公定価格(薬価)を下げる「薬価下げ」に頼っているが、これ以外にも財政負担を軽減するための手立てが検討されている。 代表的な例が、医療費の自己負担割合の見直しだ。現状では、病院や薬局で処方される医療用医薬品は原則3割負担で、75歳以上は1割負担となっている。 この負担率を、病気の重さによって変動させようという案がある。例えばドラッグストアなどでも購入できる一般用医薬品(OTC)があるなら、患者の負担額を引き上げるべきだという考え方だ。 湿布薬や鼻炎薬などのOTCには、医療用医薬品と同じ成分のものも多い。ところが、現状ではドラッグストアなどで市販薬を買うよりも、医師に処方してもらった方が患者が負担する金額は数分の1程度まで抑えられる。金銭的なメリットから気軽に病院に通う患者が少なくないが、負担率を上げれば、一定の歯止めをかけることができる。外来の診察料に定額負担を求めることで、割安な薬を求めて病院に足を運ぶ患者を減らす考え方もある。 財務省の吉野氏は「一般用医薬品がある薬は、保険でカバーするかどうかまで踏み込んでもよいのではないか。単価は小さいものの、合計すれば全体の薬剤費は決して小さくない」と話す。法政大学で財政学を専門とする小黒一正教授も、「市場規模が大きく、患者が負担する費用が小さいものから自己負担率を上げるといった見直しをすべきだ」と指摘する』、「ドラッグストアなどで市販薬を買うよりも、医師に処方してもらった方が患者が負担する金額は数分の1程度まで抑えられる。金銭的なメリットから気軽に病院に通う患者が少なくないが、負担率を上げれば、一定の歯止めをかけることができる」、こうした負担率引き上げは必須だろう。
・『一方で、強い口調でこれに反対するのが日本医師会だ。日本医師会は自由民主党の大票田としても知られ、政治的な影響力を持つ。日本医師会常任理事の松本吉郎氏は「“軽い病気の薬は保険から外すべき”という意見もあるが、日本医師会としては絶対に反対」と対抗姿勢を見せる。 同氏の説明によれば、初めは症状が軽くとも徐々に病気は重くなっていくのだから、軽症なときに医療保険でしっかりカバーして重症化を防ぐべきだという。また、そもそも実際に医師の診察を受けるまで本当に軽症かどうかは分からないとも説明し、医師による診察の重要性を訴える。 確かに、命に関わる病気であっても、軽い症状を示す病気はある。例えばがんの自覚症状は少なく、発熱や倦怠(けんたい)感、せきなど一見すると風邪と勘違いしかねない。患者の負担額を引き上げれば、通院を控える人が出て発見が遅れるということだ。 自己負担の在り方を巡っては、高額医薬品について、一定額を超える部分を自己負担にすべきだ、という案もある。所得水準によって、薬を手にできない患者も生まれかねないが、この場合は、民間の保険でカバーするという考え方だ。 製薬企業が取り組むべき課題もある。例えば、薬の値段の決め方。日本では製薬企業が開示する原価データを基に国が公定価格として決めるが、そもそもその原価計算が不透明との指摘がある。単にコスト面だけでなく、薬の価値を認めて欲しい、という意見も製薬業界にはあるが、少なくとも透明性を高める取り組みは欠かせないだろう。 医薬品の費用対効果を評価して、薬価に反映させる考え方もある。すでに2019年4月から同じ病気に使う新薬と既存薬の費用対効果を調べて、効果の割に新薬の価格が高いと判断されれば、薬価を下げる仕組みが導入されたが、これを古くからある薬にも適用すべきだ、という声も出ている。 40兆円を突破し、今後も高齢化を背景に増加するとみられている国民医療費。保険財政の破綻を危惧する声が大きくなる中で、国民一人ひとりがどう負担を分かち合うか。国民を巻き込んだ幅広い議論が欠かせないことだけは確かだ』、「同じ病気に使う新薬と既存薬の費用対効果を調べて、効果の割に新薬の価格が高いと判断されれば、薬価を下げる仕組みが導入されたが、これを古くからある薬にも適用すべきだ、という声も出ている」、当然のことだ。過度な抑制には問題があるとしても、まだまだ、抑制の余地は大きそうだ。

次に、外科医の中山 祐次郎氏が8月22日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「がん検診にデメリットはあるのか? 第49回 がん外科医の本音⑤」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00135/00010/?P=1
・『こんにちは、総合南東北病院外科の中山祐次郎です。 私の住む福島では、猛暑は足早に過ぎ去り、もう涼しくなってきました。考えてみればセミの声もそれほどうるさいと感じることはありませんでしたね。みちのくの夏はやっぱり少し短いのかな、と感じます。昨年は灼熱(しゃくねつ)の京都で過ごしたので、その落差で勘違いしているのかもしれませんが。 さて、今回も前回までに引き続き2019年6月に出した著書「がん外科医の本音」から、日経ビジネス電子版読者の皆様の関心が特に高そうな「がん検診」の項から引用してお届けします。 ここを書くにあたり、私は非常に多くの論文と医療ガイドラインを読み情報をあらためて精査し、市販のがん検診について書かれた本10冊以上に目を通すことで今世に流布している意見を把握しました。さらには、京都大学大学院医学研究科の健康情報学の教授に意見を仰ぎ、ディスカッションをした上で監修をしていただき、医学的な信頼性を担保しました。そこに、がんを専門とするいち医師である私の意見を付記しています。 非常に苦心して書きましたが、これほど情報を俯瞰(ふかん)し、さらに複数の専門家の見解をもとにまとめたものは他にないと自負しています。 それではどうぞ』、確かに「医学的な信頼性を担保」したのはさすがだ。
・『検診はすればするほどよいわけではない  誤解のある人が多いのですが、がん検診にはメリットとデメリットのどちらもあります。「検査をすればするほど、病気がちゃんと見つかっていいのではないか」「若い人全員にもしたほうがいいのではないか」と考えている方もいらっしゃるでしょう。実は、どちらも答えはNOです。 今回、皆さんにお伝えしたい最も大切なこと。それは、検診を受けるべきかどうかを決めるには「メリットとデメリットをてんびんにかけた結果、どちらが上回っているか」を考えなければならない、ということなのです。 そして、このてんびんにかけた結果は、「人によって答えが異なる」という点が極めて重要です。それはつまり、人それぞれの価値観によって結論が真逆になる可能性が十分にあるということを意味します。ですから、ここではまずメリットとデメリットを説明し、最後に私の価値観で考えた結果を本音でお話しすることにいたしましょう』、「メリットとデメリットをてんびんにかけた結果」は、「人によって答えが異なる」とhどういうことなのだろう。
・『ステージⅣで急激に悪くなる  まず、がん検診を受けることのメリットから。メリットは、「そのがんで死亡することを防ぐこと」です。がんというものは、原則的に「早期に見つけて早期に治療を行えば治るもの」。そして、「あるポイントを超えてしまうと、どんな名医がどれほどすごい治療を行ったとしても、どうしても治らないもの」でもあります。 では、あるポイントとはどこにあるのか。これは残念ながら、はっきり「ここ!」と分かるわけではありません。がんにかかってしまった人によっても、がんの種類によっても、そして治療法が年々進化している現代ではかかった時期によっても異なるでしょう。 ただ、だいたいの予測はつけられます。例えば私の専門の大腸がんであれば、ステージⅠの人が標準治療を受けると、5年後に生きている確率は97%を超えます。しかし、ステージⅡになると90%、ステージⅢでは84%と下がっていきます。そして、ステージⅣになると急に下がり、なんと20%ほどになってしまいます。 そうです。ステージⅣになると急激に悪くなるのです。これは大腸がんだけに限ったことではなく、多くのがんで見られます。それもそのはず。ステージは生存率を反映するように作っている面もあるからです。もう少し詳しくお話しすると、ステージⅣはほとんどのがんで「遠隔転移あり」という状況を指します』、「遠隔転移あり」では、「5年後に生きている確率」が「20%ほどになってしまいます」というのも納得だ。
・『2つの武器で「タチの悪さ」を見る  遠隔転移とは、最初にできたがんの臓器と離れた別の臓器にがんが転移してしまっている状態を指します。「なんだかタチが悪そう」と思いますよね。このタチの悪さを測るものは何でしょうか? そんな検査があったらいいのに、と思いますよね。 実は、現代の医学は2つの武器を持っています。1つは、「経過を見る」という方法です。これは、時間による経過を見ることで「がんの勢い」がどれほどかを推測するもの。例えば、もともとの大きさが1cmのがんがあったとして、2年かけて1.2cmになるものより、1カ月で大きさが5cmになり他の臓器に転移するもののほうがはるかにタチが悪そうです。現実的にはがんを放置することはなく、見つけたらすぐに治療をしますが、それでも検査や患者さんの仕事の都合などで1~2カ月ほど治療が遅れ、たまたま増殖スピードが見えてしまうことがあります。はからずもタチの悪さが見えてしまうのです。 もう1つは、「病理診断」という武器です。これは、調べたいがん細胞を取ってきて、その細胞を顕微鏡を通して見ることで、どれくらいタチが悪いかを測定することができます。現在では、乳がんなどでは「病理診断」の結果によって治療法が変わる場合もあるのです。 がん検診では、定期的に検査することで、がんがないかどうかをチェックします。ですから、タチがとても悪いものに対してはあまり効果を発揮することができません。1年間隔で検査しても、発生して半年で手がつけられないほど進行してしまうがんであれば、検診は無力です。 一方で、今の医学では「誰がどれくらいタチの悪いがんにかかるか」は分かりません。ですので、年齢を区切って全員一斉に検査をする。そして中には運良く早めにがんが見つかり、治療を受けて治る人がいる。ここまでが、がん検診のメリットの説明になります』、「1年間隔で検査しても、発生して半年で手がつけられないほど進行してしまうがんであれば、検診は無力です」、運が悪かったとあきらめるしかなさそうだ。
・『知られていないがん検診のデメリット  一方、がん検診のデメリットはどんなものでしょうか。 1つ目は「過剰診断・過剰治療」です。過剰という言葉が入っている通り、本来は不要だったのに検診を受けたことで生じてしまったものです。 具体例を挙げましょう。例えば、乳がん検診で、マンモグラフィー検査という乳房をレントゲンに撮る検査を受け、がんを疑うようなしこりが見つかったとします。すると、今度は「病院で精密検査を受けてください」ということになり、医師の診察を受けます。同時に採血検査、超音波検査、MRI(磁気共鳴画像)検査などを行います。その結果、「まずどう見ても良性なのでここでおしまい」となることもあれば、「悪性の可能性があるため、針生検をしましょう」となることもあります。針生検では、怪しいしこりそのものに針を刺し、しこりの成分を1mmほど取ってきて、顕微鏡でがん細胞やがんの組織がないかをチェックします。 その結果、もしがんの診断だったら手術や抗がん剤治療へ進みますし、がんではなかったら「大丈夫でした。よかったですね」で終わります。 さて、もし検診をしていなかったらどうなったでしょうか。病院で受診することはなく、従っていろいろな検査はしないでしょう。生検という、針を刺して傷をつくる検査もしなくてよかったことになります。 これが、過剰診断です。ここまでならまだよいのですが、「やはり悪性が否定できない」として、手術になることがあります。メスを入れ、手術をした結果「いやあ、良性でした。よかったですね」と言われることもあるのです。これは、人によって受け取り方が大きく変わるところでもあります。「ラッキーだった」と思う人がいる半面、「それならば最初からすべて不要だったのではないか」と思う人もいるでしょう』、医師が手術すべきと診断して手術を受けた結果が、「良性」だったのであれば、「ラッキーだった」と思うべきだろう。
・『検診そのもので起きる合併症もある  2点目は、「検診そのもので起きる合併症」です。合併症とは、「検査や治療によって起きた良くないこと」を指します。確率はさまざまですが、この世のあらゆる治療や検査にはすべて一定の割合で合併症が起こります。2人に1人以上起こるものから、隕石(いんせき)に当たるより確率が低いもの(インフルエンザワクチンの接種で死亡するなど)までさまざまです。 がん検診では、検査を行いますので、残念ながら検査に伴う合併症の危険性があります。胃がん検診を例に挙げましょう。胃がん検診では胃カメラもしくはバリウム検査があります。胃カメラの合併症について、2016年に発表された全国調査報告(08年~12年までの5年間)では、前処置(鎮静剤など)に関連した合併症は約3万6000人に1人(0.0028%)で、死亡数は9件で200万人に1人(0.00005%)でした。そして観察のみ(生検を含む)の胃カメラでは約7000人に1人(0.014%)の割合で合併症が起きています。合併症は出血や胃・食道に穴が空いたというものでした。 これを見ると、胃カメラを受けるだけで死亡する可能性がゼロではなく、合併症も起きていることが分かります。頻度が低いだけで、一定数は確実に起きているのです』、「胃カメラ」でも「死亡する可能性がゼロではなく、合併症も起きている」、というのは確かに留意すべきことのようだ。
・『根拠のない検診を避ける  もう1つ大切なことを述べます。「どんながん検診が採用されているかは、お住まいの市区町村によって異なる。中には科学的根拠がまだはっきりしないものを採用し、検診を受けてくださいと勧めているところもある」という点です。この点は本や雑誌ではあまり触れられていません。 がん検診を受けるかどうかは、3つの段階で決まります。 第1段階は国です。まず国がどんな検診を行うかを決めます。ここにガイドラインを作る集団が意見を言い、検診のためのガイドラインの案が作られます。第2段階は市区町村です。市区町村、つまり自治体ごとに、「どの検診をやり、どれをやらないか」を判断しています。そして最終である第3段階はあなた個人です。あなたがお住まいの市区町村などから届いたはがきを見て、実際に検診を受けるかどうかを決めるのです。 ここで注意すべきは第2段階です。実は、ガイドラインの対策型検診で推奨されていないが、市区町村の判断で行われているがん検診が非常に多いのです。国の資料から引用します。 「指針に定められていないがん種に対するがん検診を実施している市町村は、全体の86.5%(1496/1730)となっている」(平成29年度の市区町村におけるがん検診の実施状況調査集計結果) そのほとんどは前立腺がんの検診(1411自治体)で、続いて子宮体がん(501自治体)、卵巣がん(94自治体)、口腔(こうくう)がん(64自治体)、甲状腺がん(63自治体)……と続きます。 さて、事実はここまでです。ここからは私の個人的な意見になります』、「ガイドラインの対策型検診で推奨されていないが、市区町村の判断で行われているがん検診が非常に多い」、いささか驚かされた。市区町村は地域の医師会から圧力でもかけられているのだろうか。「ガイドラインで推奨されていない」ものについては、国からの補助金を出さず、独自財源とするべきだろう。
・『一人の医者の価値観は?  これは、医師一人の経験に基づく話なので、私の人生観、(偏っている可能性を否定できない)現場経験に基づいています。ですので、最も科学的根拠が低い(あるいはほとんどない)ことを先にお伝えしておきます。悲しいことに、どんな人間も自分の経験と知識の中でしか議論をすることはできません。また私の考えも今後、変わる可能性があります。 補足すると、世に出ている多くのがん検診にまつわる本や雑誌は、書き手の価値観を大きく押し出したものにすぎません。つまり、デメリットを重く感じた人は「がん検診はけしからん」となり、メリットが上回ると感じた人は「受けましょう」となるのです。 では私のチョイスはどうか。下記に要約します。 対策型検診は、すべて前述した日本の「科学的根拠に基づくがん検診」ガイドラインの推奨通りにきっちり受ける 「科学的根拠に基づくがん検診」ガイドラインでの推奨度が低い、あるいは現時点で不明のものは受けない です。そして推奨は変わる可能性があるため、きっちり情報を追いかけていき、推奨度が変更されたらそれに従います。 断っておきますが、私はガイドラインを推奨したところで利益を得る立場にはありません。「いやいや、あんたはがんの外科医なんだから、がん疑いの患者が増えたらうれしいのではないか」と言われるかもしれませんが、患者さんの人数で医師の給料は決まりません。ただでさえ多忙極まる現場ですし、がん患者さんが減ることでのメリットは少なくありません。 さらにここだけの話、私は医者業に経済的依存をしておらず、もの書きとしての収入もあります。「業界からの回し者では?」という陰謀論は、少なくとも私には当てはまりません。 では追加として、任意型、つまり人間ドックなどはどうするか。こちらは対策型検診で求められるレベルで見ると科学的な根拠が必ずしも十分とは言えないので、基本的には受けません。ただ、自分の専門である胃や大腸にがんが進行した状態で見つかったらいろいろカッコがつかないので、胃カメラ・大腸カメラは1~2年に1度やろうと思っています。胃については逆流性食道炎もあるので、悪くなっていないか、がん化していないか定期的にチェックしたいと思います。そして、妻や家族がそれ以外の検査の人間ドックをどうしても受けてくれ、と⾔ったら、まあしぶしぶ受けようかな、と思っています』、「人間ドックなどはどうするか。こちらは対策型検診で求められるレベルで見ると科学的な根拠が必ずしも十分とは言えないので、基本的には受けません」、なるほど。
・『高級人間ドックはどうか  いろいろな病院で、さまざまながん検診が提案され、また人間ドックが提案されています。中には超豪華なものまでありますが、過剰診断・過剰治療のことを考えると今はあまり乗り気になれません。お金ももったいないですし。 では、お金がジャブジャブあったらどうするだろうか、と私は考えてみます。私の知るお金持ちの多くは、1回10万円以上を支払って人間ドックを毎年受けています。しかし、がんについては、今のところメリットがデメリットを大きく上回るものは対策型の検診以外にないでしょう。ですから、私はお金があったらその分をがん予防のほうで、例えば、運動のためのパーソナルレーナーでもつけようかなと思います。お金持ちの皆さんには、過剰診断・過剰治療のデメリットについてご存じであることを心より願います。 そして、それらのデメリット以上に「検診を受け、がんによる死亡を避けたい」という気持ちになっておられるならよいのですが。 私の意見は以上です。お読みのあなたは、ご自身の価値観でがん検診を受けるかどうかを決めてください。あ、その前にまずたばこを吸っている人は、検診がどうのこうの悩むより、まず禁煙することをおすすめします。そして、私の父の話です。父は医療関係ではない仕事をしてきた60歳代後半の男性ですが、「がん検診は受けたくない」と言っています。毎年毎年、私は一生懸命、市区町村のがん検診を受けるよう説得しています。 最後に注意点として、「医学界の重鎮による意見は、偏っている可能性がある」とお伝えしておきます。重鎮とは、教授や〇〇学会の理事などです。別に重鎮が嫌いなわけではありませんが、彼ら、彼女らは業界の大切なポジションになり、ポジショントークが入ります。ポジショントークとは、例えば「本当は〇〇はあんまり勧められないんだけど、理事をやってるナントカ学会はこれを推進しているしな」というようなもの。偉くなれば、製薬会社や検査会社との関係も濃厚になっていくでしょう。もちろんポジショントークを一切排した、科学者としての誠意のみで動く重鎮もいらっしゃいます。しかし、まったく影響がないかと言われたら、言い切れないことはあるだろうと私は想像します。 さらに、重鎮になるとどうしても自身の経験が増えるため、自分の経験に引っ張られた発言になってしまうということです。これは、医者としての経験年数が増えれば増えるほど悪化していきます。これからは、この私も悲しいことに逃れることはできません。がん検診についての本稿は、元臨床医で長年、健康情報学の学者をやっている先生に加え、さらに2人の医師にも読んでもらい意見をいただきました。それほど、私は自身の意見が偏っていることを心配したのです。そういう極めてデリケートなテーマであることを、お伝えしたいと思います』、「父は医療関係ではない仕事をしてきた60歳代後半の男性ですが、「がん検診は受けたくない」と言っています。毎年毎年、私は一生懸命、市区町村のがん検診を受けるよう説得しています」、がん外科医でも検診を嫌がる父親を説得できないというのは、人生の皮肉だ。「医学界の重鎮による意見は、偏っている可能性がある」、というのはその通りなのだろう。

第三に、9月8日付けZAKZAK「【大前研一のニュース時評】健保連が「医療費抑制」に向けた政策提言 花粉症、風邪ですぐ病院へ」を紹介しよう。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190907/dom1909070004-n1.html
・『企業の健康保険組合で構成する健康保険組合連合会(健保連)が、急増する医療費の抑制に向けた政策提言をまとめた。柱の1つは、医療機関を受診して処方される花粉症薬のうち、同じような効果の市販薬で代替できる薬を公的医療保険の対象外とすること。実施されれば、薬剤費が年597億円削減できると試算している。 この件について、私が学長を務める「ビジネス・ブレークスルー大学」の大学院生から「アレルギー薬よりも、生活習慣病のような食事や運動で改善する可能性のある疾患こそ対象にするべきだ」という指摘があった。そのとおりだ。 ちなみに健保連では、比較的薬剤費の高い先発品が処方されることの多い生活習慣病の薬について、同じような効果のジェネリック医薬品(後発薬)を優先的に処方すれば薬剤費を年3141億円減らせるとの試算も示している。 日本の場合、花粉症はおろか、風邪をひいたというだけで、病院で薬をもらってくる。なぜそんなことをするのかというと、医療機関でかかる費用の7割以上を公的医療保険でまかなっているからだ。医者もそれに乗っかり、ほかの国では普通に薬局やドラッグストアで売っているOTC医薬品(いわゆる大衆薬と呼ばれる一般用医薬品)も医療用医薬品として処方している。 今回、健保連がこういうことを言い始めたのは、軽症の患者が薬目的で医療機関を受診すると、医療費が膨らんで企業健保の財政を圧迫し、健保組合そのものの存続が危なくなってきたからだ』、「健保連」の「政策提言」は当然の要求で、むしろ遅きに失した感すらある。
・『高齢化を背景に医療費は増え続け、この30年で倍増している。2017年度の医療機関に支払われた医療費の総額は、前年度より1兆円増加の約42兆円。過去最高を更新している。そのうち調剤費は約7兆円。馬に食わせるほど薬をくれる病院もある。 ビタミン剤を処方する医師もいれば、1回の診察で処方できる上限70枚の湿布をもらう患者もいる。どう考えても余ってしまう。 こういったものは、すべて市販品で代用できる。これらを含め、すべて費用対効果を考えないと、健康保険は持たない。だから、これを見直すというのは私も大賛成だ。 これに対し、日本医師会は「冗談ではない」と批判している。以前は医師会が反対するとニッチもサッチも行かなくなることが多かったが、現在ではそれほど強くない。 国民皆保険というのは素晴らしい制度だが、すべての病気を保険の対象にするというところが、ヨソの国とは違う。例えばオーストラリアは、医師が「はい、これは薬局で買ってください。ウチは関係ありません」とはっきりしている。 救急車についても、オーストラリアの場合、「救急車が早く来たおかげで助かった」ということを医師が証明してくれれば、その費用を払わなくて済むが、基本的には患者側が払うことになっている。呼んだ後、タクシー代よりも高い請求書がくる。だから、呼ぶ側も考えてしまう。 日本では軽症なのにタクシー代わりに救急車を呼んで病院に行く人も結構多い。その辺も医療費が下がらない理由。国民皆保険に甘えているところがある。これを見直すのは当然だと思う』、オーストラリアの救急車利用ルールは、極めて広い国土面積という要因もあるにせよ、日本でも参考にするべきだ。投薬ルールも同様だ。
タグ:医療問題 日経ビジネスオンライン ZAKZAK 中山 祐次郎 (その21)(相次ぐ高額医薬品 国民皆保険制度は維持できるか、がん検診にデメリットはあるのか? 第49回 がん外科医の本音⑤、健保連が「医療費抑制」に向けた政策提言 花粉症、風邪ですぐ病院へ) 「相次ぐ高額医薬品、国民皆保険制度は維持できるか」 高額医薬品が次々と出てくるようになれば、それなりに医療保険財政への影響はある ドラッグストアなどで市販薬を買うよりも、医師に処方してもらった方が患者が負担する金額は数分の1程度まで抑えられる。金銭的なメリットから気軽に病院に通う患者が少なくないが、負担率を上げれば、一定の歯止めをかけることができる 日本医師会としては絶対に反対 同じ病気に使う新薬と既存薬の費用対効果を調べて、効果の割に新薬の価格が高いと判断されれば、薬価を下げる仕組みが導入されたが、これを古くからある薬にも適用すべきだ、という声も出ている 「がん検診にデメリットはあるのか? 第49回 がん外科医の本音⑤」 京都大学大学院医学研究科の健康情報学の教授に意見を仰ぎ、ディスカッションをした上で監修をしていただき、医学的な信頼性を担保しました 検診はすればするほどよいわけではない がん検診にはメリットとデメリットのどちらもあります 検診を受けるべきかどうかを決めるには「メリットとデメリットをてんびんにかけた結果、どちらが上回っているか」を考えなければならない てんびんにかけた結果は、「人によって答えが異なる」という点が極めて重要 ステージⅣで急激に悪くなる ステージⅠの人が標準治療を受けると、5年後に生きている確率は97%を超えます。しかし、ステージⅡになると90%、ステージⅢでは84%と下がっていきます。そして、ステージⅣになると急に下がり、なんと20%ほどになってしまいます 「遠隔転移あり」 2つの武器で「タチの悪さ」を見る 1つは、「経過を見る」という方法 もう1つは、「病理診断」という武器 知られていないがん検診のデメリット 過剰診断・過剰治療 検診そのもので起きる合併症もある 根拠のない検診を避ける 市区町村によって異なる。中には科学的根拠がまだはっきりしないものを採用し、検診を受けてくださいと勧めているところもある 一人の医者の価値観は? 高級人間ドックはどうか 私はお金があったらその分をがん予防のほうで、例えば、運動のためのパーソナルレーナーでもつけようかなと思います 医学界の重鎮による意見は、偏っている可能性がある 父は医療関係ではない仕事をしてきた60歳代後半の男性ですが、「がん検診は受けたくない」と言っています。毎年毎年、私は一生懸命、市区町村のがん検診を受けるよう説得しています 「【大前研一のニュース時評】健保連が「医療費抑制」に向けた政策提言 花粉症、風邪ですぐ病院へ」 健康保険組合連合会(健保連) 急増する医療費の抑制に向けた政策提言 花粉症薬のうち、同じような効果の市販薬で代替できる薬を公的医療保険の対象外とすること。実施されれば、薬剤費が年597億円削減できると試算 生活習慣病の薬について、同じような効果のジェネリック医薬品(後発薬)を優先的に処方すれば薬剤費を年3141億円減らせるとの試算 オーストラリアは、医師が「はい、これは薬局で買ってください。ウチは関係ありません」とはっきりしている 救急車についても、オーストラリアの場合、「救急車が早く来たおかげで助かった」ということを医師が証明してくれれば、その費用を払わなくて済むが、基本的には患者側が払うことになっている
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