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人工知能(AI)(その15)(野口 悠紀雄氏による生成系AIの3考察(生成系AIで「なくなる職業・減る仕事」 マネージメントや高度金融サービスにも波及、生成系AIがもたらす格差拡大 「シンギュラリティ時代」の政府の責任、ChatGPTは働く人の敵か味方か?賃金や雇用へ影響の鍵を握るのは「需要」) [イノベーション]

人工知能(AI)については、本年4月17日に取上げた。今日は、(その15)(野口 悠紀雄氏による生成系AIの3考察(生成系AIで「なくなる職業・減る仕事」 マネージメントや高度金融サービスにも波及、生成系AIがもたらす格差拡大 「シンギュラリティ時代」の政府の責任、ChatGPTは働く人の敵か味方か?賃金や雇用へ影響の鍵を握るのは「需要」)である。

先ずは、6月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「生成系AIで「なくなる職業・減る仕事」、マネージメントや高度金融サービスにも波及」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324441
・『AIが変える未来の雇用事情 「バタフライ・エフェクト」で思わぬ変化も  ChatGPTなどの生成系AIによって文章を書くなどの作業が代替され雇用への影響が懸念されている。 生成系AIが人々の仕事や雇用に与える影響を考える際には、まず生成系AIの機能を理解することが重要だ。 多くの人は、生成系AIは創作をしたりデータを集めて提供したりするものだと誤解している。しかし、生成系AIは創作もできず、正しいデータを提供することもできない。生成系AIとは指示に従って文章を生成するための仕組みだ。 そのうえで文章を書く仕事を中心として、ホワイトカラーの仕事にこれからどのような変化が起きるかを考えてみると、業務用の翻訳や形式的な校正などの仕事は生成系AIに代替される可能性が高いが、マネージメントや高度な金融サービスでも仕事は残っても職が減る。 だがその一方、生成系AIで言葉の壁が低くなり国際分業が進むなどでプラスの「バタフライ・エフェクト」が起きる可能性もある』、「業務用の翻訳や形式的な校正などの仕事は生成系AIに代替される可能性が高いが、マネージメントや高度な金融サービスでも仕事は残っても職が減る。 だがその一方、生成系AIで言葉の壁が低くなり国際分業が進むなどでプラスの「バタフライ・エフェクト」が起きる可能性もある」、なるほど。
・『将来は大幅に仕事が減る翻訳や校正、文字起こし  生成系AIの登場によってすでに潜在的には不要になっており、将来は大幅に減る仕事として、次の三つがある。 一つは翻訳、特に業務用の翻訳や資料翻訳の仕事だ。生成系AIが十分実用になる翻訳を作成でき、要旨の作成も可能だ。これらについての生成系AIの仕事ぶりは、ほぼ完全といってよい。 ただし、文学書などの翻訳は例外で、その需要は減少するが、完全になくなることはないだろう。 二つ目は文章の校正・校閲だ。形式的な誤りは、生成系AIによってほぼ完全に検出・修正可能だ。しかし表現法などに関する好みの問題は残るだろう。 事実や統計数字のチェックは、生成系AIにはできないので、これらについての誤りの検出が、校閲の主要な作業となるだろう。 三つ目は、ライターや文字起こしの仕事だ。録音したものを音声認識でテキスト化し、生成系AIがそれを校正することで、ほぼ自動的に文章を作成できる。 したがって、ライターや文字起こしの作業は、不要になるか、内容が大きく変わるだろう。例えば、事実やデータのチェック、資料の収集などを主な業務とする形に変化するだろう』、「翻訳、特に業務用の翻訳や資料翻訳の仕事だ。生成系AIが十分実用になる翻訳を作成でき、要旨の作成も可能だ・・・ただし、文学書などの翻訳は例外で、その需要は減少するが、完全になくなることはないだろう」、「二つ目は文章の校正・校閲だ。形式的な誤りは、生成系AIによってほぼ完全に検出・修正可能だ。しかし表現法などに関する好みの問題は残るだろう」、「三つ目は、ライターや文字起こしの仕事だ。録音したものを音声認識でテキスト化し、生成系AIがそれを校正することで、ほぼ自動的に文章を作成できる。 したがって、ライターや文字起こしの作業は、不要になるか、内容が大きく変わるだろう」、なるほど。
・『著者や記者の仕事は重要性増す AIにはできないテーマ設定や真実追及  著者の仕事そのものは残るだろうが、作業内容は大きく変わる可能性がある。音声入力と生成系AIの組み合わせを上手く利用することによって、作業効率が飛躍的に向上する。また外国文献の要約などを生成系AIに依頼することによって、資料が得やすくなる。 しかし、事実の調査やデータの入手が現在より格別に便利になるわけではない。著者の最も重要な仕事はテーマの選択だが、この重要性がさらに増すだろう。 文章を書く前段階でのデータの分析は、一見すると生成系AIによって自動化できる場合が多いように思われるが、実際にはそう簡単にはいかない。適切なデータの選択から始って、それをどう分析するかなど、人間が個別に判断しなければならない仕事が多い。 記者の取材活動を生成系AIで代替することはできない。取材は現場での情報収集だけでなく、人々との対話などを通じて真実を追求する重要なプロセスだ。 信頼性のある情報を提供し、社会的な意義を持つ報道を行なうという記者の役割は重要なものとして残るだろう。) 編集者の仕事への影響は場合によって大きく異なる。形式的な仕事しか行なっていない場合、その役割は生成系AIに置き換えられるだろう。しかし、雑誌の特集企画や書籍の企画、著者とのコミュニケーションなどは生成系AIによっては置き換えられない仕事だ。 生成系AIの進歩は金融業務にも影響を与えるだろうが、分析的作業への影響は比較的少ないだろう。しかし、データサイエンスへの影響は大きいだろう。高度なアルゴリズムや機械学習を利用したデータ分析により、リスク評価の精緻化が可能となるだろう』、「記者の取材活動を生成系AIで代替することはできない。取材は現場での情報収集だけでなく、人々との対話などを通じて真実を追求する重要なプロセスだ。 信頼性のある情報を提供し、社会的な意義を持つ報道を行なうという記者の役割は重要なものとして残るだろう」、「編集者の仕事への影響は場合によって大きく異なる。形式的な仕事しか行なっていない場合、その役割は生成系AIに置き換えられるだろう。しかし、雑誌の特集企画や書籍の企画、著者とのコミュニケーションなどは生成系AIによっては置き換えられない仕事だ」、「金融業務にも影響を与えるだろうが、分析的作業への影響は比較的少ないだろう。しかし、データサイエンスへの影響は大きいだろう。高度なアルゴリズムや機械学習を利用したデータ分析により、リスク評価の精緻化が可能となるだろう」、なるほど。
・『「GPTはGPT(汎用技術)」 労働者の80%が10%の業務で影響  オープンAIとペンシルベニア大学の研究者が2023年3月27日に発表した論文(GPTs are GPTs: An Early Look at the Labor Market Impact,Potential of Large Language Models)は、LLM(大規模言語モデル:ChatGPTなどの対話型生成系AIの基礎技術)がホワイトカラーに与える影響について、次のように予測している。 +アメリカの労働者の約80%が少なくとも10%の業務で影響を受ける。 +約19%の労働者は、少なくとも50%の業務で影響を受ける。 +高学歴で高い賃金を得ているホワイトカラーへの影響が特に大きい。 なお、この論文のタイトルは、なかなか洒落ている。GPTはGenerative Pre-trained Trensformerの略だが、これは同時に、「汎用技術」(General Purpose Technology)という意味でのGPTでもあるというのだ。 したがって、社会に対する影響は極めて大きいことになる。「文章を書く」というのは、知的作業の一部に過ぎないような気がするのだが、実はそうでなく、知的作業全般の中で基本的な地位を占めているのだ。 なお、汎用技術については、次を参照していただきたい。『ジェネラルパーパス・テクノロジー日本の停滞を打破する究極手段』(アスキー新書、2008年7月。筆者と遠藤諭氏との共著)』、「+アメリカの労働者の約80%が少なくとも10%の業務で影響を受ける。 +約19%の労働者は、少なくとも50%の業務で影響を受ける。 +高学歴で高い賃金を得ているホワイトカラーへの影響が特に大きい」、このうち、3番目は衝撃的だ。
・『マネージメントや高度金融サービスは人間と人間との職の奪い合いに  「GPTs are GPTs」の指摘で重要なのは、「作業時間が減少する」ということだ。「ある仕事が残るかどうかと、失業が生じるかどうかは別」なのだ。 だから、ある仕事がChatGPTによって代替されないとしても、それに従事している人々全てが安泰だというわけではない。) それらの人々の中には、ChatGPTを活用することによって生産性を高められる人が現われるだろう。それらの人々は、その分野の他の人々を駆逐するだろう。このような事態が広範囲に発生する可能性がある。 ホワイトカラーについても、このことが言える。ホワイトカラーの仕事の全てがAIによって代替されないとしても、ホワイトカラーの中の誰かがAIを使いこなすことによって生産性を上げ、「これまで2人でやっていた仕事を1人でできるようになる」といった類いのことが起きるだろう。そうなれば、残りの1人は余分になるわけで、職を失うことになるだろう。 このようなことが、高度に知的な活動、例えばマネージメントの仕事や高度な金融サービス等について頻発するだろう。 「AIが職を奪う」としばしば言われる。確かにその危険があるが、それは、人間がいまやっている仕事がAIにとって変わられるというだけのことではない。AIを巧みに使う人が生産性を上げ、そのため他の人が失業するといった場合のほうが多いのではないかと考えられる。 つまり、AIと人間との職の奪い合いではなく、人間と人間との間の職の奪い合いが起こると考えられる』、「AIを巧みに使う人が生産性を上げ、そのため他の人が失業するといった場合のほうが多いのではないかと考えられる。 つまり、AIと人間との職の奪い合いではなく、人間と人間との間の職の奪い合いが起こる」、「AI」を使いこなせる人と、そうでない人との「職の奪い合いが起こる」、というのは納得的だ。 
・『風が吹けば桶屋が儲かる面も 言葉の壁低くなりプラスの変化も  このように、ChatGPTが引き起こす影響は複雑だ。確実に分かるのは、知的活動に関して非常に大きな変化が起きたということだ。それが、人々にどのような影響を与えるかについては、まだ分からない点が多い。 「バタフライ・エフェクト」は、気象学者のエドワード・ローレンツによる「ブラジルでの蝶のはばたきがテキサスに竜巻を引き起こすか?」という問題提起が由来の言葉で、「些細な出来事が、後の大きな出来事のきっかけとなる」という意味だ。「風が吹けば桶屋が儲かる」と同じようなことだ。 生成系AIの影響として一般的に検討の対象とされるのは、直接的な変化だ。ここでの議論も直接的効果を取り上げた。しかし、生成系AIの効果は、直接的なものだけではないだろう。思いもよらぬところに大きな影響が及ぶことは十分あり得る。 生成系AIがある分野で引き起こした変化が、次々に連鎖反応を引き起こし、最初に変化が起きた分野からは想像もできないところで大きな変化を引き起こすこともあるだろう。 生成系AIの登場は「些細な出来事」とは到底言えないので、それが巻き起こす雇用上の変化は、テキサスの竜巻や桶屋どころのものではないだろう。 ここまでは失業とか、仕事がなくなるというようなネガティブな面を中心に取り上げた。もちろん、これとは逆の側面もある。実際、「風が吹けば……」は、桶屋の仕事が増えるというポジティブな変化だ。 生成系AIによる変化は、最初は文章を書く仕事に関して起きるが、それは次々に連鎖反応を引き起こし、さまざまな経済活動を大きく変える可能性がある。生成系AIは汎用技術であるために、こうしたことが起きるのだ。 例えば、生成系AIが翻訳を簡単にやってくれるため、日本人にとって言葉の壁が低くなり、海外との情報交換がより頻繁に行われるようになることが期待される。 これまで、日本は言葉の壁のために国際分業で遅れていたが、この状況が変わるかもしれない。それによって日本と外国とのさまざまな分業関係が促進され、それが日本再生のきっかけになることもあり得るだろう。このようなポジティブな変化が起きることを期待したい』、「これまで、日本は言葉の壁のために国際分業で遅れていたが、この状況が変わるかもしれない。それによって日本と外国とのさまざまな分業関係が促進され、それが日本再生のきっかけになることもあり得るだろう。このようなポジティブな変化が起きることを期待したい」、その通りだ。

次に、7月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「生成系AIがもたらす格差拡大、「シンギュラリティ時代」の政府の責任」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/326335
・『「シンギュラリティ」はすでに到来? AIの進歩「火や電気より深遠な影響」  「ニューヨーク・タイムズ」(2023年6月11日)に掲載されたデイヴィッド・ストレイトフェルド記者の論考は、「シリコンバレーがシンギュラリティの到来に直面している」とした。 「シンギュラリティ」(技術的特異点)とは、AI(人工知能)の急速な進化によって、人間が理解できないほど高度な能力を持つ機械が出現することを指す。 人と機械の立場が逆転し、人間が理解できるスピードより、AIが発展するスピードの方が早くなる。変化は劇的で、指数関数的、かつ不可逆だ。 多くの人々が、AIの急速な進歩を見て、AIが人間を超える日がいつかは来るかもしれないと不安を覚えつつ、「AIが人の仕事を奪うほど賢くなるのはだいぶ先のこと」と考えていた。 しかし、シンギュラリティは、ChatGPTの出現によってすでに実現してしまったのではないだろうか? これが、ストレイトフェルド氏の論考が指摘するところだ。 GoogleのCEOサンダー・ピチャイ氏は、人工知能を「火や電気よりも深遠な影響を持つ。われわれが過去に行ったどんなことよりも深遠」と述べた。今我々はそんな未知の時代に入ろうとしている』、「シンギュラリティは、ChatGPTの出現によってすでに実現してしまったのではないだろうか? これが、ストレイトフェルド氏の論考が指摘するところだ」、先のことと思っていたら、既に「実現」していたとは・・・。
・『シンギュラリティの到来 2045年と予測されていたが  シンギュラリティの概念を最初に提出したのは、アメリカの発明家、思想家、未来学者、実業家であるレイ・カーツワイル氏だ。 彼は2005年の著作の中で、「100兆の極端に遅い結合(シナプス)しかない人間の脳の限界を、人間と機械が統合された文明が超越する瞬間が訪れる」とした。そして、シンギュラリティが起こるのは、2045年頃だろうと予測した。 ストレイトフェルド氏は、この考えは、コンピュータ科学者のジョン・フォン・ノイマンによって、すでに1950年代に語られていたと指摘している。 フォン・ノイマンは、同僚だったスタニスラウ・ウラムとの会話で、「技術の急速に加速する進歩」が「人類の歴史における何か本質的な特異点」をもたらすだろうと語っていた。その後の人間の世は永遠に変わってしまうだろうと、予言めいて話していたというのだ』、「シンギュラリティの到来 2045年と予測されていたが」、なるほど。
・『チューリング・テストにはChatGPTなどは明らかに合格  コンピュータの能力を測るのに、「チューリング・テスト」というものが提唱されている。これは、数学者のアラン・チューリングが提えたものだ。 テストを通して、審査員が人間とコンピュータを判別し間違えたら、そのコンピュータは人間並みの知能を持っているかのように振る舞えるわけであり、「合格」になる(参加者は全員隔離されているので、会話の内容以外からは相手を判断できない)。 ChatGPTは、このテストには明らかに合格しているように思われる。実際、学生がレポートをChatGPTに書かせて提出しても、先生は見抜けない。 現在のChatGPTの能力は不完全だが、人間も不完全だ(ビリー・ワイルダーに指摘されるまでもなく、Nobody's perfectである)。ChatGPTは嘘を言うことがあるが、人間でも知ったかぶりをする人は大勢いる。だから、ChatGPTが間違えるということと、ChatGPTが人間のレベルになっているのは、別のことだ。 ChatGPTは完全ではないし、創造もできないけれども、もはや人間のレベルになっていると考えることができる。そして、幾つかの面では人間をはるかに超えている。例えば、外国語の文献をあっという間に翻訳してしまう。処理スピードの点では、問題なく人間のレベルをはるかに超えている』、「外国語の文献をあっという間に翻訳してしまう。処理スピードの点では、問題なく人間のレベルをはるかに超えている」、限定された分野では、あり得ることだ。
・『約束されてきた“楽園“は富める者はますます豊かに  シンギュラリティは不可逆的なものだと説明されている。そして、政府は急速に進展する技術開発を監督するには遅すぎ、愚かすぎるとシリコンバレーの人々は考えている。 「政府の中には、それを正しく理解できる人はいない。しかし、業界はおおよそ正しく行うことができる」と、Googleの元CEOエリック・シュミット氏は述べた。 AIは技術やビジネス、政治を前例のないように揺さぶっている。長らく約束されてきた仮想的な楽園がついに来たように思える。教育分野でいえば、何でも答えてくれる先生がいつでもそばにいるようなものだ。 しかし、暗い側面もある。これから何が起こるかの予測が難しい。豊かさの時代がもたらされる一方で、人類を滅ぼす可能性もある。) ステレイトフェルド氏は、生成系AIは無限の富を生み出すマシンであるはずなのに、金持ちになっているのは、すでに金持ちである人々だけだと指摘している。 実際、Microsoftの市場価値は、今年に入ってから半兆ドル強増加した(この増加額だけで、トヨタ自動車の時価総額のほぼ2.5倍になる)。AIシステムを動かすチップの製造会社であるNvidiaは、これらのチップの需要が急増したことによって、最も価値のあるアメリカ企業の一つとなった(現在、時価総額の世界ランキングで第6位)。 生成系AIの開発には膨大な資金が必要となることから、これを行える企業は限定的だ。ChatGPTを開発したオープンAIは、Microsoftから130億ドルもの巨額の資金を調達できたために、開発が可能になった。 大企業はこれを利用して生産性を上げる。そして、人員を削減する道具として用いる。一方で小企業はこれを使えずに排除されてしまう。このようにして、格差がますます拡大することは十分にあり得る。富める者はさらに富み、強い者がますます強くなる。そして貧しい者はさらに貧しくなり、弱い者はますます弱くなる。 仮にシンギュラリティがまだ起きてないとしても、このような変化が起きる可能性は大いにある。というより、すでに起きつつあると考えることができる』、「生成系AIの開発には膨大な資金が必要となることから、これを行える企業は限定的だ。ChatGPTを開発したオープンAIは、Microsoftから130億ドルもの巨額の資金を調達できたために、開発が可能になった。 大企業はこれを利用して生産性を上げる。そして、人員を削減する道具として用いる。一方で小企業はこれを使えずに排除されてしまう。このようにして、格差がますます拡大することは十分にあり得る。富める者はさらに富み、強い者がますます強くなる。そして貧しい者はさらに貧しくなり、弱い者はますます弱くなる」、なるほど。
・『全ての人が無料で使える環境が必要 政府は補助金を整理して支援を  こうした事態に対して、技術開発の面で日本が世界のリーダーとなるのは難しいだろう。しかし、国民の全てがこれらのサービスを利用できるような条件を整備することは、十分に可能だ。 ChatGPT3.5やBingやBardは無料で使えるが、ChatGPT4.0はすでに有料になっている。年間240ドル(約3万4000円)という利用料は決してべらぼうな額ではないが、誰もが簡単に払える額でもない。したがって、これを払える人と払えない人との間で、すでに情報処理能力の差が生じてしまっていることになる。 仮にこれを国民の全てが使えるように補助金を出すとすれば、年間で4兆円を超える。マイナンバーカード普及のために、マイナポイントに約2兆円の支出を行ったことを考えれば、日本政府ができないことはない。 今後に登場する生成系AIのサービスには、有料のものも増えるだろう。そうなると、それらを使える人は、ますます能力を高め、使えない人が振り落とされていくことになる。 他方で、政府がこれらのサービスを無料で利用できるようにし、多くの人々が利用できるようになれば、日本再生のための強力な手段とすることも可能だろう。現在支出しているさまざまな補助金を大胆に廃止して、上記のことに集中すれば、これは、決してできないことではない。 シンギュラリティは技術的な問題なので、これを完全にコントロールすることは難しい。しかし、いま指摘した経済的・社会的問題は政府の政策によって変えることが十分に可能だ。 政府がいま起こりつつある事態の重大性を理解し、それに対して適切な対策を行えるかどうかが、これからの日本の進路に対して重大な意味を持っている』、「政府がこれらのサービスを無料で利用できるようにし、多くの人々が利用できるようになれば、日本再生のための強力な手段とすることも可能だろう。現在支出しているさまざまな補助金を大胆に廃止して、上記のことに集中すれば、これは、決してできないことではない。 シンギュラリティは技術的な問題なので、これを完全にコントロールすることは難しい。しかし、いま指摘した経済的・社会的問題は政府の政策によって変えることが十分に可能だ」、その通りだ。

第三に、8月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「ChatGPTは働く人の敵か味方か?賃金や雇用へ影響の鍵を握るのは「需要」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327111
・『生成系AIの雇用や賃金への影響 低スキル労働者に有利か?  ChatGPTのような生成系AIは、雇用や賃金にどのような影響を与えるか? 多くの人が、この問題に強い関心を寄せている。 カール・フレイ・オックスフォード大学准教授は、これらの技術は低スキル労働者に有利に働くだろうと、経済紙で解説しているが、そうなる可能性もあるが、そうならない可能性もある。 生成系AIは登場したばかりの技術であり、実際に広く使われているわけではない。したがって、雇用を始めとする経済活動にどのような影響があるかについては、さまざまな可能性があり、見通すことが難しい。 ただ生成系AIが雇用を増やしたり賃金が上がったりするプラスの影響を与えるかは、AIによって生産性が上昇するのに応じて需要が増えるかどうかが大きく左右するだろう』、「生成系AIが雇用を増やしたり賃金が上がったりするプラスの影響を与えるかは、AIによって生産性が上昇するのに応じて需要が増えるかどうかが大きく左右するだろう」、その通りだ。
・『需要が増えなければ失業が発生する  生成系AI(正確には、その中で、文章の生成を行う大規模言語モデル:LLM)は、人間の指示や質問に対応して文章を生成する。したがって、文書に関わるさまざまな仕事の効率を飛躍的に高める。 とりわけ翻訳や要約、校正などでは驚くべき力を発揮する。また定型的な文章を事情の変更に応じて書き直すといったことも自動的に行うことができる。このため、こうした仕事に携わっていた人々の生産性は向上する。それに伴って賃金が上昇するだろうと考えるのは自然なことだ。 しかし、この考えには重要な仮定がある。それは、作成された文書に対する需要が生産性の向上に合わせて増えることだ。 しかし、実際にこうなる保証はない。作成された文書に対する需要は増えないことがあり得る。その場合には、従業員にとっての条件が悪化することがある。 例えば、2人の従業員がいて、各人が1時間働き、合わせて2nの量の文章を作っていたとしよう。そして各人が2anの賃金を得ていたとする。ここで、aは文章量に対する賃金の比率だ。 生成系AIの導入によって能率が2倍になり、1人が1時間働けば2nの文章が作れるようになったとする。もし文章に対する需要の総量が4nに増えるなら、各人とも1時間働いて2nずつの文章を作り、1時間当たりの収入(賃金)は2anに増加する(aの値は不変と仮定。なお、このようになるのは生成系AIが「労働増加的技術進歩」と考えられるからだが、詳細の議論は省略)。 しかし、もし文章の需要総量が2nのままだとすれば、企業は1人の従業員を解雇し、残りの1人の従業員だけで2nの量の文章を作ることができる。この場合、解雇されなかった従業員は賃金が2anに増えるが、解雇された従業員の収入は0になる。 2人の生産性が厳密には同一ではなく、少しの差があるとすれば、生産性の低い従業員が解雇されるだろう。つまり低スキル従業員に不利に働くわけだ。こうしたことが起る可能性はかなり高いと考えられる。 生成系AIをうまく使える人々が生産性を上げ、これまでより高い賃金を得るようになる。そして、うまく使えない人々を駆逐して仕事を独占することになるわけだ。) ただ、もちろんこれへの対処は可能だ。2人の従業員を雇いつつ、2人とも30分働いてもらえばよい。その場合には、各人の賃金(1時間あたり収入)は変わらない(ただし、収入は半分になる)。 生産性が上昇すればそれに応じて需要が増え、したがって生産額が増えるということを前提にすれば、恩恵はすべての従業員に及ぶ。 しかし、需要が現実にどうなるかは分からない(フレイ氏も、需要が増大するかどうかが重要な条件だと指摘している)。現在の日本経済の状況では需要が増えないのは、十分にあり得ることだ』、「 生成系AIをうまく使える人々が生産性を上げ、これまでより高い賃金を得るようになる。そして、うまく使えない人々を駆逐して仕事を独占することになるわけだ。) ただ、もちろんこれへの対処は可能だ。2人の従業員を雇いつつ、2人とも30分働いてもらえばよい。その場合には、各人の賃金(1時間あたり収入)は変わらない(ただし、収入は半分になる)。 生産性が上昇すればそれに応じて需要が増え、したがって生産額が増えるということを前提にすれば、恩恵はすべての従業員に及・・・現在の日本経済の状況では需要が増えないのは、十分にあり得ることだ」、なるほど。
・『事務的な仕事は人手が過剰で人手不足の建設や介護には影響少ない  生産性の向上に対して雇用の需要が増えるか増えないかを判断するには、有効求人倍率が参考になる。 最近の数字を見ると、一般事務従事者の有効求人倍率は、0.33だ(厚生労働省、一般職業紹介状況、2023年5月)。 日本経済全体としては、事務的な仕事については人が余っていることになる。生成系AIは、こうした仕事についての生産性を上昇させる。だから上で述べたメカニズムによれば、それにかかわる従業員にとって不利な状況をもたらす可能性が高い。 いまの日本で労働力不足が顕著なのは次の分野だ。 ・建設・採掘従事者(有効求人倍率 4.95) ・介護サービス職業従事者(同 3.54) こうした分野においても、AIが重要な役割を果たすことはある。例えば、介護における介護ロボットは、省力化を進めるために重要な役割を果たす。しかしこれは生成系AIの役割である文書作成とは、あまり関係がない』、「一般事務従事者の有効求人倍率は、0.33だ(厚生労働省、一般職業紹介状況、2023年5月)。 日本経済全体としては、事務的な仕事については人が余っていることになる。生成系AIは、こうした仕事についての生産性を上昇させる。だから上で述べたメカニズムによれば、それにかかわる従業員にとって不利な状況をもたらす可能性が高い」、なるほど。
・『職種間・産業間移動が重要 職に応じたリスキング必要  以上では、従業員が企業間や職種間を移動しないことを前提にして考えた。しかし実際には移動することが可能だ。これによって次のような変化が起こり得る。 労働力不足があまり深刻でない分野(例えば事務職)で生成系AIによって事務能率が向上し、その結果、従業員数が過剰になり、労働力不足が深刻である分野に移動する。これによって、経済全体としての労働力不足が緩和されるはずだ。 ここで重要なのは労働力の職種間・産業間移動だ。『職種間、産業間の労働力の移動は日本でも経済発展や産業の盛衰によってこれまでも行われてきた。 例えば、農業から製造業への転換、あるいは炭鉱の閉鎖などだ。ただしそれは、かなり長い時間をかけて行われた。 ところが、生成系AIによる変化は急激に起こる可能性がある。したがって、社会的に大きな混乱をもたらす可能性がある。さらに、1950年代、60年代に日本で行われた産業間の雇用移動は全体としての経済規模が拡大していく中で行われた。したがって調整に伴うコストが比較的少なかった。 しかし日本はいま、低成長問題に直面している。そうした中で調整を行うのは極めて難しいことだ。いま必要なのは、このような移動を容易にする経済・社会の仕組みを作ることだ。 ところが、実際の政策は、それまでの仕事を続けられるように支援するというものが多い。したがって職種間の移動を妨げる結果になっている。 コロナ禍で採られた雇用調整助成金はその典型的な例だ。こうした政策から脱却する必要がある なお、新しい職種に就くためには新しいスキルが必要であり、そのためにリスキリングが必要だ。このことは最近ではよく言われるが、必要とされるのは、生成系AIという新しい技術を使うためのもの(例えば、プロンプトの作り方)に限らない。これまでとは違う職種に就くとすれば、それに応じたリスキリングが必要になるだろう』、「実際の政策は、それまでの仕事を続けられるように支援するというものが多い。したがって職種間の移動を妨げる結果になっている。 コロナ禍で採られた雇用調整助成金はその典型的な例だ。こうした政策から脱却する必要がある なお、新しい職種に就くためには新しいスキルが必要であり、そのためにリスキリングが必要だ」、その通りだ。
・『生成系AIは「第3次産業革命」 経済社会構造を柔軟に変えられるか  第3次産業革命ということがしばしば言われてきた。あるいは、第4次革命、第5次革命とも言われた。しかし、その中身は大したものではなく、人目を引くためのキャッチフレーズに過ぎない場合が多かった。 だが、生成系AI(大規模言語モデル)は、間違いなく第1次産業革命(蒸気機関の導入)や第2次産業革命(電気の導入)に次ぐ、第3次産業革命だ。 この技術の本質は、人間が日常用語によってコンピューターを操れるようになったことだ。これは、経済社会の基本的な構造を変える。これにうまく対応できるように、社会経済の構造を柔軟に変えていけるかどうかが、今後の経済の成長を決めることになる。 日本政府は、ぜひこのような問題意識を持って政策を進めてもらいたい。生成系AIを国会答弁に用いるというようなこととは全く次元の違う対応が必要なのだ。 さらに、教育の仕組み、特に大学教育が改革されなければならない。日本の大学はこれまで、時代の変化や技術の変化に対して柔軟に対応してきたとは言いがたい。 生成系AIがもたらす変化は、これまでのさまざまな技術革新がもたらしたもの以上に大きなものになる可能性が強い。そうした変革を可能にするために、高等教育の内容を変革していくことが重要な課題だ』、「生成系AI(大規模言語モデル)は、間違いなく第1次産業革命(蒸気機関の導入)や第2次産業革命(電気の導入)に次ぐ、第3次産業革命だ。 この技術の本質は、人間が日常用語によってコンピューターを操れるようになったことだ。これは、経済社会の基本的な構造を変える。これにうまく対応できるように、社会経済の構造を柔軟に変えていけるかどうかが、今後の経済の成長を決めることになる。 日本政府は、ぜひこのような問題意識を持って政策を進めてもらいたい。生成系AIを国会答弁に用いるというようなこととは全く次元の違う対応が必要なのだ。 さらに、教育の仕組み、特に大学教育が改革されなければならない。日本の大学はこれまで、時代の変化や技術の変化に対して柔軟に対応してきたとは言いがたい。 生成系AIがもたらす変化は、これまでのさまざまな技術革新がもたらしたもの以上に大きなものになる可能性が強い。そうした変革を可能にするために、高等教育の内容を変革していくことが重要な課題だ」、同感である。
タグ:人工知能(AI) (その15)(野口 悠紀雄氏による生成系AIの3考察(生成系AIで「なくなる職業・減る仕事」 マネージメントや高度金融サービスにも波及、生成系AIがもたらす格差拡大 「シンギュラリティ時代」の政府の責任、ChatGPTは働く人の敵か味方か?賃金や雇用へ影響の鍵を握るのは「需要」) ダイヤモンド・オンライン 野口悠紀雄氏による「生成系AIで「なくなる職業・減る仕事」、マネージメントや高度金融サービスにも波及」 「業務用の翻訳や形式的な校正などの仕事は生成系AIに代替される可能性が高いが、マネージメントや高度な金融サービスでも仕事は残っても職が減る。 だがその一方、生成系AIで言葉の壁が低くなり国際分業が進むなどでプラスの「バタフライ・エフェクト」が起きる可能性もある」、なるほど。 「翻訳、特に業務用の翻訳や資料翻訳の仕事だ。生成系AIが十分実用になる翻訳を作成でき、要旨の作成も可能だ・・・ただし、文学書などの翻訳は例外で、その需要は減少するが、完全になくなることはないだろう」、「二つ目は文章の校正・校閲だ。形式的な誤りは、生成系AIによってほぼ完全に検出・修正可能だ。しかし表現法などに関する好みの問題は残るだろう」、「三つ目は、ライターや文字起こしの仕事だ。録音したものを音声認識でテキスト化し、生成系AIがそれを校正することで、ほぼ自動的に文章を作成できる。 したがって、ライターや 「記者の取材活動を生成系AIで代替することはできない。取材は現場での情報収集だけでなく、人々との対話などを通じて真実を追求する重要なプロセスだ。 信頼性のある情報を提供し、社会的な意義を持つ報道を行なうという記者の役割は重要なものとして残るだろう」、「編集者の仕事への影響は場合によって大きく異なる。形式的な仕事しか行なっていない場合、その役割は生成系AIに置き換えられるだろう。しかし、雑誌の特集企画や書籍の企画、著者とのコミュニケーションなどは生成系AIによっては置き換えられない仕事だ」、 「金融業務にも影響を与えるだろうが、分析的作業への影響は比較的少ないだろう。しかし、データサイエンスへの影響は大きいだろう。高度なアルゴリズムや機械学習を利用したデータ分析により、リスク評価の精緻化が可能となるだろう」、なるほど。 このうち、3番目は衝撃的だ。 「AIを巧みに使う人が生産性を上げ、そのため他の人が失業するといった場合のほうが多いのではないかと考えられる。 つまり、AIと人間との職の奪い合いではなく、人間と人間との間の職の奪い合いが起こる」、「AI」を使いこなせる人と、そうでない人との「職の奪い合いが起こる」、というのは納得的だ。 「これまで、日本は言葉の壁のために国際分業で遅れていたが、この状況が変わるかもしれない。それによって日本と外国とのさまざまな分業関係が促進され、それが日本再生のきっかけになることもあり得るだろう。このようなポジティブな変化が起きることを期待したい」、その通りだ。 野口悠紀雄氏による「生成系AIがもたらす格差拡大、「シンギュラリティ時代」の政府の責任」 「シンギュラリティは、ChatGPTの出現によってすでに実現してしまったのではないだろうか? これが、ストレイトフェルド氏の論考が指摘するところだ」、先のことと思っていたら、既に「実現」していたとは・・・。 「シンギュラリティの到来 2045年と予測されていたが」、なるほど。 「外国語の文献をあっという間に翻訳してしまう。処理スピードの点では、問題なく人間のレベルをはるかに超えている」、限定された分野では、あり得ることだ。 「生成系AIの開発には膨大な資金が必要となることから、これを行える企業は限定的だ。ChatGPTを開発したオープンAIは、Microsoftから130億ドルもの巨額の資金を調達できたために、開発が可能になった。 大企業はこれを利用して生産性を上げる。そして、人員を削減する道具として用いる。一方で小企業はこれを使えずに排除されてしまう。このようにして、格差がますます拡大することは十分にあり得る。富める者はさらに富み、強い者がますます強くなる。そして貧しい者はさらに貧しくなり、弱い者はますます弱くなる」、なる ほど。 「政府がこれらのサービスを無料で利用できるようにし、多くの人々が利用できるようになれば、日本再生のための強力な手段とすることも可能だろう。現在支出しているさまざまな補助金を大胆に廃止して、上記のことに集中すれば、これは、決してできないことではない。 シンギュラリティは技術的な問題なので、これを完全にコントロールすることは難しい。しかし、いま指摘した経済的・社会的問題は政府の政策によって変えることが十分に可能だ」、その通りだ。 野口悠紀雄氏による「ChatGPTは働く人の敵か味方か?賃金や雇用へ影響の鍵を握るのは「需要」」 「生成系AIが雇用を増やしたり賃金が上がったりするプラスの影響を与えるかは、AIによって生産性が上昇するのに応じて需要が増えるかどうかが大きく左右するだろう」、その通りだ。 「 生成系AIをうまく使える人々が生産性を上げ、これまでより高い賃金を得るようになる。そして、うまく使えない人々を駆逐して仕事を独占することになるわけだ。) ただ、もちろんこれへの対処は可能だ。2人の従業員を雇いつつ、2人とも30分働いてもらえばよい。その場合には、各人の賃金(1時間あたり収入)は変わらない(ただし、収入は半分になる)。 生産性が上昇すればそれに応じて需要が増え、したがって生産額が増えるということを前提にすれば、恩恵はすべての従業員に及・・・現在の日本経済の状況では需要が増えないのは、十分 にあり得ることだ」、なるほど。 「一般事務従事者の有効求人倍率は、0.33だ(厚生労働省、一般職業紹介状況、2023年5月)。 日本経済全体としては、事務的な仕事については人が余っていることになる。生成系AIは、こうした仕事についての生産性を上昇させる。だから上で述べたメカニズムによれば、それにかかわる従業員にとって不利な状況をもたらす可能性が高い」、なるほど。 「実際の政策は、それまでの仕事を続けられるように支援するというものが多い。したがって職種間の移動を妨げる結果になっている。 コロナ禍で採られた雇用調整助成金はその典型的な例だ。こうした政策から脱却する必要がある なお、新しい職種に就くためには新しいスキルが必要であり、そのためにリスキリングが必要だ」、その通りだ。 「生成系AI(大規模言語モデル)は、間違いなく第1次産業革命(蒸気機関の導入)や第2次産業革命(電気の導入)に次ぐ、第3次産業革命だ。 この技術の本質は、人間が日常用語によってコンピューターを操れるようになったことだ。これは、経済社会の基本的な構造を変える。これにうまく対応できるように、社会経済の構造を柔軟に変えていけるかどうかが、今後の経済の成長を決めることになる。 日本政府は、ぜひこのような問題意識を持って政策を進めてもらいたい。生成系AIを国会答弁に用いるというようなこととは全く次元の違う対応が必要 なのだ。 さらに、教育の仕組み、特に大学教育が改革されなければならない。日本の大学はこれまで、時代の変化や技術の変化に対して柔軟に対応してきたとは言いがたい。 生成系AIがもたらす変化は、これまでのさまざまな技術革新がもたらしたもの以上に大きなものになる可能性が強い。そうした変革を可能にするために、高等教育の内容を変革していくことが重要な課題だ」、同感である。
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イノベーション(その4)(日本でイノベーションが生まれなくなった真因 新規事業の構築における「5つの罠」と処方箋、一流ビジネススクール教授陣が指南「イノベーションに挑戦する企業経営者の行動指針」とは) [イノベーション]

イノベーションについては、2019年1月31日に取上げた。久しぶりの今日は、(その4)(日本でイノベーションが生まれなくなった真因 新規事業の構築における「5つの罠」と処方箋、一流ビジネススクール教授陣が指南「イノベーションに挑戦する企業経営者の行動指針」とは)である。

先ずは、2020年5月24日付け東洋経済オンラインが掲載したマッキンゼー・アンド・カンパニー パートナー の野崎 大輔氏と同社 アソシエイトパートナーの 田口 弘一郎氏による「日本でイノベーションが生まれなくなった真因 新規事業の構築における「5つの罠」と処方箋」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/346923
・『日本から生まれた新たな製品やサービスが世界を席巻する──。かつて度々耳にしたそうした輝かしい報道を聞かなくなって久しい。企業も研究機関も、そして個人も日々努力を重ねているのだが、頓挫したり空回りしたり、思ったような成果が出せないケースが多く見られる。その問題の真因はどこにあるのか。昨年、『マッキンゼー ホッケースティック戦略成長戦略の策定と実行』を監訳した野崎大輔氏と、一部翻訳を担当した田口弘一郎氏が、新規事業において日本企業が陥りがちな罠とその処方箋を解き明かす』、興味深そうだ。
・『研究開発費自体は増えている  近年、日本企業のイノベーション力が低下しているという声をよく聞くようになった。例えば中国に特許出願数や論文の被引用数で後れを取り始めたというのはその証左であろう。 リチウムイオン電池のように、革新的な技術を開発して世界を席巻するということについては強さを誇ってきた日本企業であるはずだが、今何が起きているのか。そこには、日本ならではの課題が存在しているとわれわれは考えている。 本稿では80年代からの長期にわたるデータ分析と共に、これまで数多くのクライアントをご支援してきた経験から、日本企業がイノベーションを推進するうえで陥りがちな罠と、今後必要な取り組みについて考えてみたい。 まず、日本の研究開発に対するリソースがどう推移してきたか見てみたい。 1987年から2019年までの日本企業における研究開発費売上高比率と企業研究者の人数を見ると、実は80年代後半から今に至るまで、基本的には日本企業の研究開発にかけるリソースは継続的に増加してきている。 研究開発費売上高比率では、1987年に2.8%だったものが継続的に増加し2017年では3.9%、企業における研究者も1987年に26万人だったものが2017年では50万人近くまで、年率2%程で継続的に増えてきている。 では、なぜ特許出願数などで中国に後れを取り始めているのか。単純に、中国の研究開発費や研究者の増加が日本よりも急激だからであろうか』、「なぜ特許出願数などで中国に後れを取り始めているのか」、不思議だ。
・『課題は研究者1人当たりの生産性  ここで、日本とアメリカ・中国の間で研究開発の生産性の比較を行ってみたい。あくまでも一つの指標ではあるが、研究者1人当たりの研究開発費(インプット)と、研究者1人当たりの特許出願件数(アウトプット)がどのように推移してきたか、それぞれの国で見ていく。横軸に1人当たり研究開発費(インプット)、縦軸に1人当たり特許出願件数(アウトプット)をプロットして時系列で見てみると、面白いことが見えてくる。 (出所:OECD Stat, WIPO Statistics database より筆者作成) まず、中国について。2000年代前半まで1人当たり研究開発費は10万ドル未満、特許出願件数も0.1件程度であったが、2009年に1人当たり研究開発費が15万ドルを超え、特許出願数0.2件と倍増したあたりから、毎年1人当たり研究開発費と1人当たり特許出願件数がきれいに相関を持って増加し、2017年では1人当たり研究開発費は約28万ドル、特許出願件数は0.75件程度となり、インプット・アウトプットともに日本の水準を超えている。 アメリカについては、1980年代に1人当たり研究開発費は20万ドル未満で特許出願件数も約0.1件程度であったが、その後継続的にインプットもアウトプットも増加し、2016年では1人当たり研究開発費が38万ドル程度、特許出願件数が0.4件程度と増加してきている。 つまり、アメリカでも中国同様、緩やかではあるものの、基本的にはインプットが増えればアウトプットが増える、という相関が維持されている。 一方日本はどうか。1980年代前半までは1人当たり研究開発費が10万ドル未満、1人当たり特許出願件数は0.6件程度であったが、そこから2000年代前半まで、1人当たり研究開発費が継続的に増加し17万ドル程度となり、1人当たり特許出願件数もそれに伴って0.8件程度まで増加していった。 つまり2000年代前半までは、日本もインプットを増やすほどアウトプットが増えていたのである。 ところが2000年代後半からは様子が大きく変わる。2017年までに1人当たり研究開発費は27万ドル程度まで増加したが、1人当たり特許出願件数はむしろ減少し、0.7件を下回っている。1人当たり研究開発費が10万ドル増えたにもかかわらず、特許出願件数が減っている。 つまり、インプットを増やしてもアウトプットが増えない、むしろ減ってしまうという壁に突き当たってしまっているのである。) もちろん、特許出願数はイノベーション力の1つの指標にすぎず、これはあくまでも1つの可能性にすぎないが、日本のイノベーション力の低下は、人員数や資金の問題ではなく、研究者1人当たりの生産性の低下がボトルネックになっていることが可能性として考えられる。 仮にそうであった場合、なぜこういった生産性の低下が起こってしまっているのであろうか』、「日本のイノベーション力の低下は、人員数や資金の問題ではなく、研究者1人当たりの生産性の低下がボトルネックになっていることが可能性として考えられる」、その原因は何なのだろう。
・『変わらない研究領域  こういった生産性低下の原因の1つのヒントとなるのが、日本の研究開発領域の硬直性である。日本の研究開発領域は、過去20年ほとんど変わっていない。 アメリカや中国は、過去20年間で大きく研究開発分野をシフトさせてきた。例えば特許登録件数の分野別比率(8技術分野)を見ると、アメリカは2000年から2018年の間で、特許登録件数に占める情報通信分野の割合が16%から29%へほぼ倍増し、代わりに化学や機械工学といった分野の比率が大きく下がった。 一方日本は、構成比率が最も大きく増減した分野でも、輸送機械分野の7%から10%へ移行した、約3%ポイントのみである。それ以外の分野に至っては、構成比率は3%ポイント未満しか増減していないのである。19年間という期間を考えれば、むしろ驚くべき硬直性である。また、毎年総務省が行っている科学技術研究調査という研究開発に関するサーベイの結果を見ても、少なくともここ10年間、研究者の専門分野構成はほとんど変わっていないことがわかる。 これは、ある程度成熟してしまった研究領域の中でさらに深掘りをし続けているということでもあるし、世界のニーズが大きくシフトしてきている中で、新たなニーズが生まれ多くのイノベーションが求められている領域での勝負ができていないということかもしれない。 こういったところに、日本企業の研究開発における生産性低下の一因があるのではないだろうか。つまり、アウトプットとしての事業領域がシフトできていない、新たなニーズをうまくとらえた事業を展開できていないために、研究開発も既存の領域にとどまり、結果的に生産性が低下してきてしまっているのではないか。 実際、携帯電話の顔認証機能など、先に基礎技術としての研究開発で成果は出していても、結局消費者のニーズをうまく捉えて製品化・事業化したのは海外企業であった、という例も見られる。 これを解決するためには、そもそもの日本企業の事業領域シフトを加速させることが重要である。 しかし、ここに日本特有の難しさが存在している。) たとえば上場企業の新陳代謝は、アメリカに比べ日本は非常に緩やかである。2017年の日経新聞調査によれば、ニューヨーク証券取引所の上場企業における平均寿命(上場維持年数の平均値)は15年であるのに対し、日本取引所上場企業の平均寿命は89年。経営の安定性が高い一方で、新陳代謝が進みにくく、新たな産業領域の開拓は苦手な傾向にある。 こういった事業のシフトを加速すること、そして、事業上のニーズに合わせて研究開発の方向性を調整し生産性を高めていくためには、まずそのかじ取りを行うマネジメント側が変わっていく必要があるのではないか。 既存企業の中において、新たな事業構築にかかわるマネジメントの行動様式を整え、そして組織としてのスキルを獲得すること(リスキリング)で、企業の新陳代謝を高め、新たな事業領域を切り開くことができるのではないだろうか』、「アメリカや中国は、過去20年間で大きく研究開発分野をシフトさせてきた。例えば特許登録件数の分野別比率(8技術分野)を見ると、アメリカは2000年から2018年の間で、特許登録件数に占める情報通信分野の割合が16%から29%へほぼ倍増し、代わりに化学や機械工学といった分野の比率が大きく下がった。 一方日本は、構成比率が最も大きく増減した分野でも、輸送機械分野の7%から10%へ移行した、約3%ポイントのみである。それ以外の分野に至っては、構成比率は3%ポイント未満しか増減していないのである。19年間という期間を考えれば、むしろ驚くべき硬直性である」、本当に「驚くべき硬直性」だ。「ニューヨーク証券取引所の上場企業における平均寿命(上場維持年数の平均値)は15年であるのに対し、日本取引所上場企業の平均寿命は89年。経営の安定性が高い一方で、新陳代謝が進みにくく、新たな産業領域の開拓は苦手な傾向にある。 こういった事業のシフトを加速すること、そして、事業上のニーズに合わせて研究開発の方向性を調整し生産性を高めていくためには、まずそのかじ取りを行うマネジメント側が変わっていく必要があるのではないか」、その通りなのだろう。
・『日本企業の新規事業構築「5つのポイント」  特に近年、我々のクライアントに対しても、こういったリスキリングと新規事業創出の具体的支援を並行して進めるケースが増えてきている。さまざまなご支援をさせていただく中で、我々は特に日本企業のマネジメントが陥りがちな罠がいくつか存在すると考えている。 今回は、その中でも主な5つをご紹介しつつ、それぞれにどう対処すべきか考えてみたい。 (1)「製品開発」の発想で「事業開発」を推進しない(これまで既存事業を長く続けてきた日本企業は、「製品開発」と「事業開発」が根本的に異なるものであることを意識しなければならない。 例えば既存事業において、製品開発の中止は稀にしか起きない憂慮すべき事態である。新型車の開発は遅延こそ起きるが、中止されることは比較的まれである。 一方で新規事業についてはどうか。事業開発は、そのほとんどが失敗する、もしくはピボット(注)が必要になるというのが前提である。VCの事業ポートフォリオは平均30社以上で、その内1?2社がIPOすれば成功であり、それらの事業もIPOまでに3~4回程度のピボットを経験することが普通であると言われている。それに対し、例えば自動車のような製品開発の発想だと、30の製品開発を始めて、1製品でもヒットすればいい、しかも途中で大きな設計変更が3?4回生じるというのは通常許容されないだろう。 新規事業開発は製品開発と違い、そもそも顧客のニーズが存在するのか、事業モデル・マネタイズモデルが機能するのか不明確なところからスタートするため、当然確度は低くなる。複数の案件を、そのほとんどがうまくいかない前提で、顧客ニーズの確度を検証しつつ、頻度高くポートフォリオ管理を実施していくことが求められる。 また製品開発は、ある技術やサービス単品の開発をロードマップに沿って行うことが多いが、事業開発は事業として10年後、20年後の広がりを見据えて行う。仮にロードマップ通りに製品やサービスが開発されて単体として成功しても、事業としての長期的な展開に対するビジョンがないと、散発的な新規事業の一つとして数年で成長が止まってしまうことが多い。この製品開発から事業開発への考え方の切り替えが、リスキリングの重要な一歩となる』、「VCの事業ポートフォリオは平均30社以上で、その内1?2社がIPOすれば成功であり、それらの事業もIPOまでに3~4回程度のピボットを経験することが普通であると言われている。それに対し、例えば自動車のような製品開発の発想だと、30の製品開発を始めて、1製品でもヒットすればいい」、なるほど。
(注)ピボット:本来「回転軸」の意味ですが、最近ではアメリカのシリコンバレーなどのベンチャー企業で「方向転換」「路線変更」といった意味で盛んに使われるように(HRpro)。
・『(2)既存事業の物差しで新規事業を見ない  上記のようなものの見方の違いを頭ではわかっても、いざ同じ経営会議の俎上にのせて同じメンバーで議論をしてしまうと、必然的に同じ物差しに寄せるバイアスが働くのは人の性といえる。場合によっては新規事業が経営企画部の管掌であったり、新規事業担当役員が既存事業と兼任であったりして、どうしても既存事業のKPI(重要業績評価指標)や成功確率やスピードに引きずられてしまう。) 日本企業、特に産業の中心を担ってきた自動車などの製造業は既存事業の確度が比較的高いことが多い。もちろん、そういった業界でも不確定性は常に存在するが、生産性・効率性等オペレーショナルなKPIをきっちりとやり切ればそれなりの成果は見込める。 一方で新規事業については、ニーズそのものが不透明で、何がKPIかも決まっておらず、わずかに垣間見える顧客ニーズの一端といった定性的な要素に基づいて頻度高い経営判断を行うことが求められる。 もちろんこういったことができるように既存経営陣に対してリスキリングを進めていく必要はあるが、同じ土俵・メンバーで議論している限り、リスキリングの進みはどうしても遅くなってしまう。 新規事業については組織を分け、担当役員も完全に分離した上で、新規事業に係る意思決定は既存の経営会議と分けて実施をするのがあるべき姿といえる。そして新規事業担当役員については、社内に適任者がいない場合、外部登用も積極的に検討すべきである』、「既存経営陣に対してリスキリングを進めていく必要はあるが、同じ土俵・メンバーで議論している限り、リスキリングの進みはどうしても遅くなってしまう。 新規事業については組織を分け、担当役員も完全に分離した上で、新規事業に係る意思決定は既存の経営会議と分けて実施をするのがあるべき姿といえる」、なるほど。
・『既存事業の物差しも必要  一方で、いつかは新規事業も既存事業の物差しで評価していくことが必要となってくる。例えばある大手電機メーカーの社内ベンチャー制度では、立ち上げた新規事業に対して社内の他部門から引き合いが来た段階で、既存事業部に事業ごと引き渡すということを行っている。 また、営業キャッシュフローが黒字になるタイミングをマイルストーンとして事業部として独立させ、それ以降は既存事業と同等の評価指標で見るといった工夫も考えられるであろう』、「いつかは新規事業も既存事業の物差しで評価していくことが必要となってくる。例えばある大手電機メーカーの社内ベンチャー制度では、立ち上げた新規事業に対して社内の他部門から引き合いが来た段階で、既存事業部に事業ごと引き渡すということを行っている。 また、営業キャッシュフローが黒字になるタイミングをマイルストーンとして事業部として独立させ、それ以降は既存事業と同等の評価指標で見るといった工夫も考えられる」、なるほど。
・『(3)新規事業の成功体験を持つ外部人材の活用  新興国の台頭やデジタル化の進展、CASE(自動車業界に大きな影響を与えつつある4つのトレンド:Connected, Autonomous, Shared, Electrificationの頭文字を取ったもの)など破壊的トレンドによって日本企業が本格的に新規事業に取り組み始めたのは比較的最近のことである。 その中で、まだ新規事業の創出に成功したプレーヤーは多くはない。ほとんどの企業で、新規事業の成功体験がないのである。よって、社内でリスキリングを推進できるコーチ役となる人材は通常ほぼいない。 また、その中で、概念的に見るべきKPIや組織体制など他社のベストプラクティスを模倣しても、具体的なKPIの粒度や顧客ニーズの掘り起こし方など、成功体験を持ち肌感覚でわかる人材がいなければ成功確度は当然下がってしまう。 リスキリングを加速させるためには、起業経験・VC経験を持つ社外の人材をアドバイザーとして起用したり、短期契約でも新規事業創出のプロセスを一緒にひと回ししてもらい、社内の人材に実体験を蓄積したりすることが効果的である。一部の国内メーカーでは、既に社外有識者をアイデア創出等の取り組みにおいて積極的に活用し始めている』、「リスキリングを加速させるためには、起業経験・VC経験を持つ社外の人材をアドバイザーとして起用したり、短期契約でも新規事業創出のプロセスを一緒にひと回ししてもらい、社内の人材に実体験を蓄積したりすることが効果的である」、なるほど。
・『(4)リスキリングを組織として消化する  せっかく外部人材を登用してリスキリングを推進しようとしても、実際のオペレーションや、人材の評価・育成の仕組みが既存のままだと、組織としての慣性力(イナーシャ)が働き、リスキリングは停滞するか、以前の状況に簡単に戻ってしまう。 これを避けるためには、上述のようなオペレーションや、人材の評価・育成を新規事業に即したものに変えていき、リスキリングを継続させる仕組みを組織として構築する必要がある。 このためには、上述のように新規事業組織を分けるとともに、そこに新規事業スキルを保有する人材、新たな研究開発領域の知見を持つ人材を集約し、オペレーションや人材評価・育成を既存事業と分けて実施することが重要である。) たとえばある国内の鉄道会社では、そもそも採用の時点で既存の鉄道事業部門と電子マネーなど新規事業を担当する部門を分け、人事制度も既存事業とは分けている。 このように、新規事業として独立した人事制度・採用枠を作り、必要な人材がクリティカルマスを超えるように、新卒・中途双方での採用を行うべきである。 そして、新規事業を推進できる魅力的な人材を採用できるだけの柔軟な処遇や、新規事業からのキャリアパスが描けることなど、人事制度上の工夫が必須である。 人事制度の独立が必須(このように、新規事業は新規事業として、独立した人事制度・採用枠を作り、必要な人材がクリティカルマスを超えるように、新卒・中途双方での採用をすべきである。そのためには、新規事業を推進できる魅力的な人材を採用できるだけの柔軟な処遇や、新規事業からのキャリアパスが描けることなど、人事制度の独立が必須である』、「新規事業組織を分けるとともに、そこに新規事業スキルを保有する人材、新たな研究開発領域の知見を持つ人材を集約し、オペレーションや人材評価・育成を既存事業と分けて実施することが重要」、「新規事業として独立した人事制度・採用枠を作り、必要な人材がクリティカルマスを超えるように、新卒・中途双方での採用を行うべきである」、なるほど。
・『(5)新規事業=ゼロイチというバイアスの克服  これまで見てきたように、新規事業といっても、本当にゼロから事業を創出しスケールアップさせることは、確率が低く忍耐を伴い、見通しも不透明なものである。 1つの手法として、プログラマティックなM&Aを活用して新たな領域にどう入っていくかを検討することも重要な新規事業のアプローチである。 特に、対象とする事業領域の人材や組織をそのまま手に入れることが可能であるため、上記で述べたような陥りがちな罠はM&Aという手法を取ることによってある程度回避できる。 ゼロイチからの新規事業を検討する前に、どういった新規事業を目指すのか、本当にM&Aではなくゼロからの立ち上げを目指す必要があるのかを具体的に検討したうえで新規事業立ち上げの手法を選択すべきである。 そして本当にゼロから立ち上げる新規事業を目指すのであれば、経営陣として覚悟を持ち、外部役員の登用や人事制度の独立など、これまで述べてきたようなドラスティックなやり方を取ってリスキリングも並行して進めていくことが必要となる』、「ゼロイチからの新規事業を検討する前に、どういった新規事業を目指すのか、本当にM&Aではなくゼロからの立ち上げを目指す必要があるのかを具体的に検討したうえで新規事業立ち上げの手法を選択すべきである。 そして本当にゼロから立ち上げる新規事業を目指すのであれば、経営陣として覚悟を持ち、外部役員の登用や人事制度の独立など、これまで述べてきたようなドラスティックなやり方を取ってリスキリングも並行して進めていくことが必要となる」、やはり中途半端なやり方は失敗する可能性が高いようだ。

次に、2021年9月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した野村マネジメント・スクールによる「一流ビジネススクール教授陣が指南「イノベーションに挑戦する企業経営者の行動指針」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/282773
・『今日の企業にとって最も重要な課題、それは継続的なイノベーションを起こすことだといっても過言ではない。では、それを可能にする企業文化をいかに生み出すか、すなわちイノベーションを促す企業文化へと変革できるか。さらに、危機に備えビジネスモデル変革に取り組むための経営チームのあり方とは――。書籍『有事の意思決定 一枚岩の経営チームがリードする』の教授陣にさまざまな視点から意見を伺った。連載第2回は、イノベーションに挑戦する企業経営者の行動と意思決定の指針を提示する』、「有事の意思決定」とは興味深そうだ。
・『平時の「思い込み」の排除が従業員の創造性を解放する(マイケル・ロベルト教授 (ブライアント大学カレッジ オブ ビジネス) これまで、よりイノベーティブな組織を作るには、何かを加えよというものが大半でした。つまり、創造性の豊かな人を採用しろ、新規事業担当組織を作ってスピンアウトしろ、スカンクワークの仕組みを導入しろといったことでした。 しかし、多くの企業がこれらのことを実施しているにもかかわらず、うまくいっていません。その原因は、組織に根付いた「組織的な思い込み」にあるのです。何かを加えるよりも先に、取り除く必要があるのです。 一つの例として、多くの企業が特別研究室のようなものを設置していますが、私は、これを廃止せよといっているのではありません。イノベーターは、単に集中だけしているのではなく、時には「あえて集中しない」ことも必要ということです。集中しないとは、人々の視野を広げ、目先の問題から一寸距離を置いてみるといったことです。だから、これらの活動を単に止めるのではなく、運営方法を見直せと言うことなのです。 経営者の仕事は、言ってみればゴールまでの道のりをきれいに片付けることであって、創造性豊かな賢い人々に、何をしろなどと指示する必要はないのです。 同様に必ずしもチームメンバーに答えを与えてそれを実行しろと指示するのではなく、チームを一つにまとめ、問題にアプローチする視角を考え、分析を求めるのが良いリーダーだと言えます。 日本の経営者だけに限りませんが、世界中の経営者の喫緊の課題は、今回のパンデミックや、思いがけない競争相手の出現などによって不意打ちを受けたとき、「俊敏に対応する能力」を構築することではないでしょうか。 イノベーションを成し遂げる上で、実験やプロトタイピングはとても重要で、多くの企業で実践項目に取り入れられているのですが、企業文化に根付いている「完璧主義」が問題となるのです。 実験やプロトタイピングに長けているということは言い換えれば、完璧でないことを受け入れることです。だが、これは難しい。 頭では実験やプロトタイピングの重要性を理解しても、実際に行おうとすると完璧主義が邪魔をしてしまいます。 最初から完璧なものを作ろうとすると、イノベーションのプロセスを遅らせることになります。だから、「早期に、何度でも、荒削りでも」を開発のモットーにした会社が生き残る。ある段階では完璧でないことを受け入れなければならないということです』、「思いがけない競争相手の出現などによって不意打ちを受けたとき、「俊敏に対応する能力」を構築することではないでしょうか。 イノベーションを成し遂げる上で、実験やプロトタイピングはとても重要で、多くの企業で実践項目に取り入れられているのですが、企業文化に根付いている「完璧主義」が問題となるのです。 実験やプロトタイピングに長けているということは言い換えれば、完璧でないことを受け入れることです。だが、これは難しい。 頭では実験やプロトタイピングの重要性を理解しても、実際に行おうとすると完璧主義が邪魔をしてしまいます。 最初から完璧なものを作ろうとすると、イノベーションのプロセスを遅らせることになります。だから、「早期に、何度でも、荒削りでも」を開発のモットーにした会社が生き残る。ある段階では完璧でないことを受け入れなければならないということです」、なるほど。
・『実験重視の企業文化構築に向けて(ステファン・トムキ教授(ハーバード・ビジネス・スクール)) 実験重視の企業文化を既存企業が構築するのは、おそらく最も挑戦的な課題と言えます。 まず、「好奇心を啓発する」ことです。組織の底辺からトップリーダー層に至るまで、「サプライズ(驚き)」を価値あるものだと考えるようにならなければなりません。 サプライズの価値を金額で表すのは、コストの数値化に比べて難しいです。これから何が起こるか分からないことを数値化しようとするからです。 したがって、企業文化として、組織全体がサプライズを良いものとみなすようになる必要があります。このようなマインドセットが定着すれば、好奇心が組織全体に広がり、人々は失敗をコストのかかる過ちではなく、学習機会と捉えるようになります。 二つ目に、「データが意見に勝るという原則に固執する」ことです。組織の意思決定が、意見や直感に基づいてなされると、どうしても組織のヒエラルキーが影響を及ぼすようになります。上司の意見が部下のそれより重視されるとか。 先端企業においてすら、10の実験のうち、8〜9は予想された結果を生み出しません。逆に言えば、全体の10~15%の実験しか「成功」しないのです。 つまり、我々はほとんどの場合、間違っているんだということを受け入れなければならないのです。だが、それが難しいのです。 だからこそ実験をすべきなのですが、事実よりも意見に重きが置かれたり、ヒエラルキーが大きな影響を与えたりする組織では、それらが邪魔をしてしまいます。 日本企業の常にカイゼンしようという姿勢は、広い意味で科学的手法に基づいており、QCサークルなどの活動に由来する慣行が長く行われてきたのはプラスです。 しかし、コンセンサス重視の企業文化は、障害となる可能性があります。 全ての意思決定、全ての実験にコンセンサスを求めるとなると、プロセスに時間がかかりすぎてしまいます。そもそも結果の分からないことにコンセンサスを得ることは無理です。だからリスク回避になりがちです。コンセンサスは意思決定後の行動を迅速化しますが、実験という環境では、全てを遅らせることになり、実施の障害になりかねません。 イノベーションは、不確実性を機会に変える行為です。不確実性を排除しようとすると、どうしてもコストサイド重視になってしまいます。オペレーションの効率向上は達成できますが、イノベーションからは遠ざかってしまいかねません』、「コンセンサスは意思決定後の行動を迅速化しますが、実験という環境では、全てを遅らせることになり、実施の障害になりかねません。 イノベーションは、不確実性を機会に変える行為です。不確実性を排除しようとすると、どうしてもコストサイド重視になってしまいます。オペレーションの効率向上は達成できますが、イノベーションからは遠ざかってしまいかねません」、日本企業の弱味のようだ。
・『ビジネスモデルイノベーションで競走優位に立つ(ラモン・カサデサス=マサネル教授(ハーバード・ビジネス・スクール)) 多くの企業がDX(デジタル・トランスフォーメーション)に挑戦し、苦労しています。当初意図していたような結果がもたらされていない原因についての一つの仮説は、BMI(ビジネスモデル・イノベーション)一般に言える、諸活動のコーディネーション問題が生じている可能性です。 デジタル化した時にうまく機能するような諸活動の調整のあり方は、それ以前のノンデジタルの時のそれとはかなり異なっているのかも知れません。両方の世界でうまく機能させるというのは簡単ではないでしょう。 ただし企業が、傘下にある異なるビジネスモデルを共存させることは可能です。 私がBMIに関連して、日本の経営者にお伝えしたいことは次の4点です。 第1に、「進んで実験せよ」ということです。特に実験が安価に行え、何がうまく行き何がうまく行かないかを判断する上での参考になるような状況においてはです。 第2に、「不確実性を歓迎し、リスクを取れ」と申し上げたい。 第3には、「失敗を心地よいものと考え、イノベーションを起こそうとしてうまく行かなかった人々に汚名を着せるな」が挙げられます。 そして最後に、「異なるバックグラウンドやキャリアを持つ多様な人々からなるチームがなし得る、視野を広げる貢献を過小評価するな」ということを指摘したいと思います。 多様性や相違を受容することは、単に社会的責任であるばかりではなく、自社の競争優位性を高めるイノベーション重視の企業文化を育むことになります』、「私がBMIに関連して、日本の経営者にお伝えしたいことは次の4点です。 第1に、「進んで実験せよ」ということです・・・第2に、「不確実性を歓迎し、リスクを取れ」と申し上げたい。 第3には、「失敗を心地よいものと考え、イノベーションを起こそうとしてうまく行かなかった人々に汚名を着せるな」が挙げられます。 そして最後に、「異なるバックグラウンドやキャリアを持つ多様な人々からなるチームがなし得る、視野を広げる貢献を過小評価するな」ということを指摘したい」、なるほど。
・『カイゼンから、製品やサービスのカクシンへ(ロバート・オースティン教授(ウェスタン大学アイビー・ビジネス・スクール)) トランスフォーメーションと呼ぶような大きな変革を成し遂げることは難しいものです。今日リーダーにとって、最も困難な課題だと言えるかも知れません。社会が大きく変わっていますので、組織変革は不可避にもかかわらずです。 ここで、2種類の変化を混同しないように注意を喚起したいと思います。一つ目の種類の変化は、自分自身が起こしたのではないものです。世界情勢など自社を取り巻く環境とか競争相手がもたらしたものです。二つ目はリーダー自身が起こし、そちらへ組織を向かわせようとする変化です。 どちらの変化も対処することが難しいです。外から与えられた変化への対応は喫緊の課題です。なぜなら、変化に対応しなければ生き残れないかもしれないからです。 多くの日本企業は、今話題のマイケル・タッシュマン教授らの「両利き性」の議論でいうところの探査(exploration)よりも深耕(exploitation)モードに安住していたように思います。カイゼンはこのモードにとても適合的ですが、カクシンはそうではありません。 日本企業にとってプロセス・イノベーションはより自然にできるものの、「両利き性」を維持してラディカルなイノベーションを起こし、顧客やビジネスモデルに大きな変革をもたらすことはそうでもないということです。 昔、日本の経営者に「革新ということばから想起されるのはプロセス・イノベーションですか製品やサービスのイノベーションですか」と問うたところ、40社中39社の人がプロセス・イノベーションだと回答しました。 もちろんプロセス・イノベーションが悪いわけではなく、効率性向上は日本企業が長年にわたって得意としてきたことです。ただ、プロセス・イノベーションは顧客に対し、価格引き下げなどを通じた間接的なインパクトしか与えないのに対し、ラディカルなイノベーション、あるいはBMI(ビジネスモデル・イノベーション)はより直接的なインパクトがあります。 顧客にとってただ間接的に実感するイノベーションなのか、喜んで対価を支払おうとするイノベーションなのかには差があります。日本企業は後者のことをもっと考えるべきではないかと思います』、「プロセス・イノベーションが悪いわけではなく、効率性向上は日本企業が長年にわたって得意としてきたことです。ただ、プロセス・イノベーションは顧客に対し、価格引き下げなどを通じた間接的なインパクトしか与えないのに対し、ラディカルなイノベーション、あるいはBMI・・・はより直接的なインパクトがあります。 顧客にとってただ間接的に実感するイノベーションなのか、喜んで対価を支払おうとするイノベーションなのかには差があります。日本企業は後者のことをもっと考えるべきではないかと思います」、同感である。
・『価値創出の手段としてのM&A(カール・ケスター教授(ハーバード・ビジネス・スクール)) 日本企業は国内企業同士のM&Aだけでなく海外企業を対象とするM&Aも相当数実施するようになっていると思います。しかし、日本における大規模M&Aのほとんどは、買収側の企業が変わるというよりも、被買収側の価値創造を目的とするにとどまるものが多かった印象です。 さらに驚いたのは、買収後の統合がほとんど進んでいない事例が多かった点です。価値を創出しているかどうかをM&Aの成功の基準として考えるのであれば、なかなか成功事例を探すのは難しいと言えるでしょう。 長期的なM&Aの成功を分析すること、すなわち価値創造の如何を測定することは非常に難しいという点です。 日本企業のM&Aでも、買収後の減損件数が3割程度あることなどから考えて、一般にM&Aから価値創造を実現するのは難しいと言えるでしょう。 M&Aの買収時のプロセスにおいて、日本企業が改善すべき点としては、資本コスト(特にエクイティのコスト)の意識を高める必要があることが挙げられます。 日本企業は長らく資金調達を銀行に頼っていたこともあり、資本コストの認識が十分でないといえます。価値をどうやって創造し、計測するかの根本に資本コストの概念があるので、その出発点があやふやだということは大きな問題です。 近年、日本でも、資本市場側との対話が重視されていると聞いていますが、この動きは妥当な資本コストが形成されるという意味で、非常に良い流れであると考えています。 ところで、私は、ESGは現時点ではまだアセットマネジメント会社のマーケティングギミック以上のものではないと考えています。そもそも定義も不明確ですし、それが投資パフォーマンスを向上させるという証拠は見られません。 私が野村マネジメント・スクールで行っている講義では、NPVに基づく投資判断は、少なくとも株主の投資ホライズンの選好とは無関係に使えるということを論証しています。つまり、この枠組みで投資判断すれば、長期投資を考える若い株主の利益も、年金を補完するものとして比較的短期のリターンを求める高齢者の利益も満たすことが出来るのです。 しかし、ESGではそういったことを示すことはできません。ましてやESGの目的である様々なステークホルダーの利益のバランスの最適化ができるとは言えないのです。 一方で、ESGのトレンド自体は不可避な流れになっていることも事実です。今後、機関投資家は、ますます大きな存在となり、その市場における影響力が甚大であることを考えなければなりません。ESGを無視した経営をしている企業は、資金調達面で不利な状況に追い込まれるおそれがあるでしょう』、「日本企業のM&Aでも、買収後の減損件数が3割程度あることなどから考えて、一般にM&Aから価値創造を実現するのは難しいと言えるでしょう。 M&Aの買収時のプロセスにおいて、日本企業が改善すべき点としては、資本コスト(特にエクイティのコスト)の意識を高める必要があること」、「今後、機関投資家は、ますます大きな存在となり、その市場における影響力が甚大であることを考えなければなりません。ESGを無視した経営をしている企業は、資金調達面で不利な状況に追い込まれるおそれがあるでしょう」、同感である。 
タグ:「アメリカや中国は、過去20年間で大きく研究開発分野をシフトさせてきた。例えば特許登録件数の分野別比率(8技術分野)を見ると、アメリカは2000年から2018年の間で、特許登録件数に占める情報通信分野の割合が16%から29%へほぼ倍増し、代わりに化学や機械工学といった分野の比率が大きく下がった。 一方日本は、構成比率が最も大きく増減した分野でも、輸送機械分野の7%から10%へ移行した、約3%ポイントのみである。 「日本のイノベーション力の低下は、人員数や資金の問題ではなく、研究者1人当たりの生産性の低下がボトルネックになっていることが可能性として考えられる」、その原因は何なのだろう。 「なぜ特許出願数などで中国に後れを取り始めているのか」、不思議だ。 『マッキンゼー ホッケースティック戦略成長戦略の策定と実行』 田口 弘一郎氏による「日本でイノベーションが生まれなくなった真因 新規事業の構築における「5つの罠」と処方箋」 野崎 大輔氏 東洋経済オンライン イノベーション (その4)(日本でイノベーションが生まれなくなった真因 新規事業の構築における「5つの罠」と処方箋、一流ビジネススクール教授陣が指南「イノベーションに挑戦する企業経営者の行動指針」とは) それ以外の分野に至っては、構成比率は3%ポイント未満しか増減していないのである。19年間という期間を考えれば、むしろ驚くべき硬直性である」、本当に「驚くべき硬直性」だ。「ニューヨーク証券取引所の上場企業における平均寿命(上場維持年数の平均値)は15年であるのに対し、日本取引所上場企業の平均寿命は89年。経営の安定性が高い一方で、新陳代謝が進みにくく、新たな産業領域の開拓は苦手な傾向にある。 こういった事業のシフトを加速すること、そして、事業上のニーズに合わせて研究開発の方向性を調整し生産性を高めていくためには、まずそのかじ取りを行うマネジメント側が変わっていく必要があるのではないか」、その通りなのだろう。 「VCの事業ポートフォリオは平均30社以上で、その内1?2社がIPOすれば成功であり、それらの事業もIPOまでに3~4回程度のピボットを経験することが普通であると言われている。それに対し、例えば自動車のような製品開発の発想だと、30の製品開発を始めて、1製品でもヒットすればいい」、なるほど。 (注)ピボット:本来「回転軸」の意味ですが、最近ではアメリカのシリコンバレーなどのベンチャー企業で「方向転換」「路線変更」といった意味で盛んに使われるように(HRpro)。 「既存経営陣に対してリスキリングを進めていく必要はあるが、同じ土俵・メンバーで議論している限り、リスキリングの進みはどうしても遅くなってしまう。 新規事業については組織を分け、担当役員も完全に分離した上で、新規事業に係る意思決定は既存の経営会議と分けて実施をするのがあるべき姿といえる」、なるほど。 「いつかは新規事業も既存事業の物差しで評価していくことが必要となってくる。例えばある大手電機メーカーの社内ベンチャー制度では、立ち上げた新規事業に対して社内の他部門から引き合いが来た段階で、既存事業部に事業ごと引き渡すということを行っている。 また、営業キャッシュフローが黒字になるタイミングをマイルストーンとして事業部として独立させ、それ以降は既存事業と同等の評価指標で見るといった工夫も考えられる」、なるほど。 「リスキリングを加速させるためには、起業経験・VC経験を持つ社外の人材をアドバイザーとして起用したり、短期契約でも新規事業創出のプロセスを一緒にひと回ししてもらい、社内の人材に実体験を蓄積したりすることが効果的である」、なるほど。 「新規事業組織を分けるとともに、そこに新規事業スキルを保有する人材、新たな研究開発領域の知見を持つ人材を集約し、オペレーションや人材評価・育成を既存事業と分けて実施することが重要」、「新規事業として独立した人事制度・採用枠を作り、必要な人材がクリティカルマスを超えるように、新卒・中途双方での採用を行うべきである」、なるほど。 「ゼロイチからの新規事業を検討する前に、どういった新規事業を目指すのか、本当にM&Aではなくゼロからの立ち上げを目指す必要があるのかを具体的に検討したうえで新規事業立ち上げの手法を選択すべきである。 そして本当にゼロから立ち上げる新規事業を目指すのであれば、経営陣として覚悟を持ち、外部役員の登用や人事制度の独立など、これまで述べてきたようなドラスティックなやり方を取ってリスキリングも並行して進めていくことが必要となる」、やはり中途半端なやり方は失敗する可能性が高いようだ。 ダイヤモンド・オンライン 野村マネジメント・スクールによる「一流ビジネススクール教授陣が指南「イノベーションに挑戦する企業経営者の行動指針」とは」 「有事の意思決定」とは興味深そうだ。 「思いがけない競争相手の出現などによって不意打ちを受けたとき、「俊敏に対応する能力」を構築することではないでしょうか。 イノベーションを成し遂げる上で、実験やプロトタイピングはとても重要で、多くの企業で実践項目に取り入れられているのですが、企業文化に根付いている「完璧主義」が問題となるのです。 実験やプロトタイピングに長けているということは言い換えれば、完璧でないことを受け入れることです。だが、これは難しい。 頭では実験やプロトタイピングの重要性を理解しても、実際に行おうとすると完璧主義が邪魔をしてしまいます。 最初から完璧なものを作ろうとすると、イノベーションのプロセスを遅らせることになります。だから、「早期に、何度でも、荒削りでも」を開発のモットーにした会社が生き残る。ある段階では完璧でないことを受け入れなければならないということです」、なるほど。 「コンセンサスは意思決定後の行動を迅速化しますが、実験という環境では、全てを遅らせることになり、実施の障害になりかねません。 イノベーションは、不確実性を機会に変える行為です。不確実性を排除しようとすると、どうしてもコストサイド重視になってしまいます。オペレーションの効率向上は達成できますが、イノベーションからは遠ざかってしまいかねません」、日本企業の弱味のようだ。 「私がBMIに関連して、日本の経営者にお伝えしたいことは次の4点です。 第1に、「進んで実験せよ」ということです・・・第2に、「不確実性を歓迎し、リスクを取れ」と申し上げたい。 第3には、「失敗を心地よいものと考え、イノベーションを起こそうとしてうまく行かなかった人々に汚名を着せるな」が挙げられます。 そして最後に、「異なるバックグラウンドやキャリアを持つ多様な人々からなるチームがなし得る、視野を広げる貢献を過小評価するな」ということを指摘したい」、なるほど。 「プロセス・イノベーションが悪いわけではなく、効率性向上は日本企業が長年にわたって得意としてきたことです。ただ、プロセス・イノベーションは顧客に対し、価格引き下げなどを通じた間接的なインパクトしか与えないのに対し、ラディカルなイノベーション、あるいはBMI・・・はより直接的なインパクトがあります。 顧客にとってただ間接的に実感するイノベーションなのか、喜んで対価を支払おうとするイノベーションなのかには差があります。日本企業は後者のことをもっと考えるべきではないかと思います」、同感である。 「日本企業のM&Aでも、買収後の減損件数が3割程度あることなどから考えて、一般にM&Aから価値創造を実現するのは難しいと言えるでしょう。 M&Aの買収時のプロセスにおいて、日本企業が改善すべき点としては、資本コスト(特にエクイティのコスト)の意識を高める必要があること」、 「今後、機関投資家は、ますます大きな存在となり、その市場における影響力が甚大であることを考えなければなりません。ESGを無視した経営をしている企業は、資金調達面で不利な状況に追い込まれるおそれがあるでしょう」、同感である。
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スタートアップ(その8)(VCからの資金調達3題(VCから上手く資金調達する技、VCが使う3つの投資基準、VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス)、「肩書きがいつのまにか『教授』から『寄付講座教授』に…」「阪大医学部の承認も受けず上場して大問題」安倍政権を後ろ盾にしていた「大阪パビリオン・総合プロデューサー」への疑問、国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」) [イノベーション]

スタートアップについては、昨年5月31日に取上げた。今日は、(その8)(VCからの資金調達3題(VCから上手く資金調達する技、VCが使う3つの投資基準、VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス)、「肩書きがいつのまにか『教授』から『寄付講座教授』に…」「阪大医学部の承認も受けず上場して大問題」安倍政権を後ろ盾にしていた「大阪パビリオン・総合プロデューサー」への疑問、国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」)である。

先ずは、本年3月28日付け東洋経済オンラインが掲載したアンドリーセン・ホロウィッツ マネージング・パートナー のスコット・クポール氏による「先輩、VCから上手く資金調達する技教えて下さい 君のビジネスとVC投資との相性を探るコツとは」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/660057
・『事業を大きくしたい起業家であれば誰もが通るであろうプロセスに、資金調達がある。シリコンバレーの著名なVC(ベンチャー・キャピタル)、アンドリーセン・ホロウィッツの最初期のメンバーであり、起業家としての経験も持つスコット・クポール氏の著書『VCの教科書』から、資金調達の際の基本的な問いについて、3回に分けて考えていこう。今回は1回目となる』、本場のベンチャー・キャピタル事情とは興味深そうだ。
・『資金調達するときの3つの基本的問い  まず、資金調達の3つの基本的な問いかけをしよう。 1、VCから資金調達するべきか? 2、するならば、その金額は? 3、どんなバリュエーションで?  この3つに対する答えは、一見きわめて明白に思える。 できるだけ多くの資金を、自分のビジネスを成長させるために、できるだけ高いバリュエーションで調達すること、となるだろう。 (伝説のベンチャー投資家として知られる)ジョン・ドーアが、資金調達をカクテルパーティーになぞらえたことはよく知られている。 ウェイターがミニホットドッグのトレイを持って近くに来たら、必ず1つもらうこと。その後、ウェイターがいつやって来るかわからないからだ。 それと同じで、資金調達に最適の時期とは、資金が手に入るときだ。あなたが資金を集める準備ができたと判断したタイミングで、資金調達のウェイターが戻って来るかどうかなど、誰にもわからない。 しかしまずは、あなたがふさわしいカクテルパーティーに来ているのかどうか考えることにしよう。 ビジネスにとっての「カンパニー・ベンチャー・キャピタル・フィット」がどんなものか、想像がつくのではないかと思う。 プロダクト・マーケット・フィット──製品と市場の適合性──のように、あなたの会社がVCにふさわしいかどうか見きわめる必要がある。) VC投資の基本ルールは、すべては市場規模に始まり、市場規模に終わる、というものだ。 興味深く、知的刺激を与えるビジネスであっても、最終的に独立し自立できるビジネスを築けるほど市場の規模が大きくなければ、VC投資の対象にはならないだろう』、「資金調達に最適の時期とは、資金が手に入るときだ。あなたが資金を集める準備ができたと判断したタイミングで、資金調達のウェイターが戻って来るかどうかなど、誰にもわからない」、なるほど。
・『ビジネスの規模に見合った調達方法を考える  はっきり言って経験則とは、過剰な一般化と、複雑なテーマを単純化する荒削りな方法だ。 とはいえ一般的な経験則として、市場機会は十分に大きくて、7年から10年で数億ドルの収益が出る、高成長で儲かる事業を築けるのだと、あなたは自身を(それにパートナーとなるVC候補を)しっかり納得させることができなくてはいけない。 それほどの利益を生み出すのは並たいていのことではないが、公開会社になるために何が必要か考えれば、こうした財政的特徴は(少なくとも現在の市場では)、数十億ドル規模の公開株式時価総額に裏づけを与えられるだろう。 その時点でのVCの持ち株比率次第で、この投資に対するVCのリターンは、ファンド全体の経済状態に目立った変化をもたらせるほどの額になるはずだ。 では、市場機会がそれほど大きくなかったら? だからといって、あなたに責任があるとか、あなたのビジネスがよくないというわけではない。多くの創業者がそんなふうに思ってしまうのは残念だ。 あなたは大きな利益を挙げる大規模事業を運営できるだろうし、幸福で豊かで、他人に大きな影響を与える人生を歩めるだろう。そのビジネスは人の役に立ち、人の生活を豊かにし、人を救うかもしれない。 だが、それでもやはりVCからの資金調達とは合わない。 つまりこの場合、どこからどうやって資金を集めるか別の方法を考え、異なるアプローチを見つける必要があるということだ。 たとえば、ごく早い段階で企業に投資し、もっぱら低額の最終バリュエーションの買収によってイグジットすることをビジネスモデルにする、小規模のVCファンド(おもに1億ドル規模のファンドを運用する)があるとする。 市場規模が理由で独立型ビジネスが維持できないならば、この種のVC企業のほうが、あなたのビジネスにふさわしいかもしれない。) すべての小規模ファンドがこの戦略をとるわけではない。ちまたには多くのエンジェル投資家やシード投資家がおり、投資金額は少ないが、彼らも本塁打率で勝負している。 よって、パートナー候補がどんな中心戦略を持つかは、あらかじめ必ず理解しておくことが肝心だ。また、銀行からの負債による資金調達も、このような状況での1つの資金源の可能性としてある』、様々な選択肢があるようだ。
・『VCの課すルールの下でプレーしたいかも考える  端的に言えば、どんな場合でも資金源としてVCがふさわしいわけではない。あなたのビジネスにふさわしいツールではないかもしれないのだ。 それはどういうことなのだろうか? VCも人間であり、彼らのために作られたインセンティブに反応するということだ。そのインセンティブとは要するに(金銭的なインセンティブに要約すれば)、次のようなものだ。 ■多くはうまくいかず、少数がファンドの金銭的リターンの大部分を生み出すことを理解して、投資ポートフォリオを作ること。 ■そうした巨額のリターンを挙げるビジネスを10年から12年以内に現金化すること。そうすることで、リミテッド・パートナー(LP)に現金を返すことができるし、LPがVCに出資して、新ファンドで再びゲームに参加することが期待できる。 これが、VCのライフサイクルだ。 また、たとえあなたのビジネスが(最終的な市場規模やその他要因から)VCにふさわしいとしても、あなたはVCが課したルールの下でプレーしたいのかどうか、自分で判断する必要がある。 そのルールとは、VCに自社株を分配し、取締役会の支配権やガバナンスをVCとともに握ることであり、「現実の」結婚と同じくらい継続する結婚生活を始めることである(アメリカの平均結婚年数は8年から10年だ……想像はつくだろうが)』、「インセンティブとは要するに・・・次のようなものだ。 ■多くはうまくいかず、少数がファンドの金銭的リターンの大部分を生み出すことを理解して、投資ポートフォリオを作ること。 ■そうした巨額のリターンを挙げるビジネスを10年から12年以内に現金化すること。そうすることで、リミテッド・パートナー(LP)に現金を返すことができるし、LPがVCに出資して、新ファンドで再びゲームに参加することが期待できる。 これが、VCのライフサイクルだ。 また、たとえあなたのビジネスが・・・VCにふさわしいとしても、あなたはVCが課したルールの下でプレーしたいのかどうか、自分で判断する必要がある。 そのルールとは、VCに自社株を分配し、取締役会の支配権やガバナンスをVCとともに握ることであり、「現実の」結婚と同じくらい継続する結婚生活を始めることである』、なるほど。

次に、4月30日付け東洋経済オンラインが掲載したアンドリーセン・ホロウィッツ マネージング・パートナー のスコット・クポール氏による「本場米国のプロが教える、VCが使う3つの投資基準 VCがパワポのピッチだけで投資判断する理由」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/661591
・『起業家が資金調達を考える際の有力な候補の1つに、ベンチャーキャピタルがある。 シリコンバレーの著名なVC、アンドリーセン・ホロウィッツの最初期のメンバーであり、起業家としての経験も持つスコット・クポール氏の著書『VCの教科書』から、VCがアーリー・ステージの投資先をどのように判断するのかについて、抜粋・編集して3回に分けてお届けしよう。今回は1(正しくは2)回目となる』、興味深そうだ。
・『VCが用いる3つの評価基準  ベンチャー投資のアーリー・ステージでは、ありのままのデータの入手は非常に難しい。 それはそうだ!企業は普通、その時点では市場に進出していない。よって、多くのVCが投資の可能性についてスタートアップを評価しているとき、定性的評価は定量的評価を小さく見せる。 古い格言の「ごみを入れればごみしか出てこない」は、アーリー・ステージのベンチャー投資にとくにあてはまる。 起業家が(ときにはVC企業とのピッチミーティングのほんの数時間前に)まとめたパワーポイントのスライド上にしか存在しないビジネスに、将来見込まれるリターンを有意義にモデル化できるほどの金融的指標は、ないに等しいのだ。 では、どうするのか? じつは、VCが投資見込みを評価するために用いる、定性的かつ高水準の定量的ヒューリスティクスがある。それは一般に、人、製品、市場の3つに分類される。) ここでは、「人」について見ていこう。これはアーリー・ステージの投資にとって、間違いなく定性的評価基準であり、おそらく最重要となる評価基準だ。 「企業」とは、あるアイデアを持った個人のごく小さな集合ーー創業者1人か2人だけのこともあるーーにほかならないので、VCの評価はチームを重視する傾向がある』、「「人」について見ていこう。これはアーリー・ステージの投資にとって、間違いなく定性的評価基準であり、おそらく最重要となる評価基準だ」、なるほど。
・『競合の見極めがVC投資のカギ  とりわけ、彼らがアイデアを実行するときの効率性について手がかりを得ようとして、多くのVCは創業者の背景を深く探る。 この場合の考え方の基本として、アイデアは独占的なものではないということが前提となる。要するに、対抗馬がいることを仮定する。 それが優れたアイデアだと判明した場合、当然、このアイデアを追求する創業者や、それを実現するために作られる企業がたくさんあるだろうと考えるのだ。 だから、VCとして何より重要になるのは、このアイデアを形にしようと現れるその他無数のチームのなかで、どうしてこのチームを支援したいのか、ということだ。 このチームに投資する機会費用は計り知れない。つまり、ひとつのチームに投資を決定すれば、そのアイデアを達成する能力が高い別のチームが現れても、VCはそこに投資できないのだ。 クライナー・パーキンス社のパートナーである、ベンチャー・キャピタリストのジョン・ドーアは、VCの基本ルールは「競合なくして利益なし」と言ったとされるが、現代のVCにとって、競合の見きわめが大きな影響を与えるのは事実である』、「ひとつのチームに投資を決定すれば、そのアイデアを達成する能力が高い別のチームが現れても、VCはそこに投資できないのだ」、「競合の見きわめが大きな影響を与える」、その通りだろう。
・『VC投資の機会費用とは  ベンチャー・キャピタリストは事実上、同じチャンスを追求する企業には投資できない。もっとも、競合相手をどう見きわめるかは、見る人によって当然異なる。 なぜかと言えば、VCが企業への投資を決定するということは、その領域における事実上の勝者として、その企業を実質的に承認することだからである。 たとえば、フレンドスターがソーシャルネットワーキング市場を独占しそうだと思っていたら、フェイスブックではなくフレンドスターに投資するだろう。 VCはその領域の直接の競争相手に投資できなくなるという点で、どの投資決定にも計り知れない機会費用が備わる。どの馬に乗るかは、自分で決めなくてはいけない。 これを踏まえると、正しい分類を選択しても(つまり、ある特定の領域に大企業ができると的確に予想しても)、企業を間違える(つまり、支援する馬を間違える)ことがあれば、VCは大きな誤りを犯したことになる。 たとえば、2000年代初めに、ソーシャルネットワーキングが広がると気づいていたかもしれないが、フェイスブックではなくフレンドスターに投資をした。 または1990年代後半に、検索がビッグビジネスになると気づいていたのに、グーグルではなくアルタリターン(AltaReturn)への投資を選んだ、という具合にだ。) では、創業チームをどう評価したらいいのか?当然、VCによってやり方はそれぞれ異なるが、何を調べるかについてはいくつかの共通点がある。 まずひとつは、この創業チームがそのアイデアを追求するにいたった独特のスキルやバックグラウンド、経験は何かということだ。わたしのパートナーは、「製品ファーストの企業」に対して「企業ファーストの企業」という概念を用いる』、「VCはその領域の直接の競争相手に投資できなくなるという点で、どの投資決定にも計り知れない機会費用が備わる。どの馬に乗るかは、自分で決めなくてはいけない」、「正しい分類を選択しても・・・企業を間違える・・・ことがあれば、VCは大きな誤りを犯したことになる」、なるほど。
・『「製品ファースト」か「企業ファースト」か  製品ファーストの企業の場合、創業者はある問題を特定するか経験し、その問題を解決する製品を開発するにいたった。そしてついに、その製品を市場に出すための手段として、企業を設立するよりほかになかった。 企業ファーストの企業では、創業者はまず企業を起こしたいと決意する。そして企業を中心に構築するために、関心を集めるだろう製品のアイデアを出す。 もちろん最終的には、成功を収める企業はどちらの形式からでも生まれるのだが、実際には製品ファーストの企業が企業設立の本来の性質を表している。創業者が経験した現実社会の問題が、製品を(そしてついには会社を)創る刺激となる。 このような本質的なきっかけが、VCには非常に魅力的に映るものだ。 プロダクト・マーケット・フィット(製品と市場の適合性)という概念は、間違いなく多くの人になじみがある。 スティーブ・ブランクとエリック・リースによって世に広まったプロダクト・マーケット・フィットは、適切な市場に向けて、その市場のニーズを満足させる製品を送り出せている状態を指摘した概念だ。消費者の「喜び」と再購入は、プロダクト・マーケット・フィットの典型的特徴である。 エアビーアンドビーにはこれがある。インスタカートにも、ピンタレスト、リフト、フェイスブック、インスタグラムにもこれがある。その製品が登場する前はどうしていたのか、消費者には想像がつかない。 製品の画期的な性質と、製品が目的とした市場の問題に対する適合性から登場したので、やはり本質的に顧客を引きつけるのだ』、「プロダクト・マーケット・フィットは、適切な市場に向けて、その市場のニーズを満足させる製品を送り出せている状態を指摘した概念だ。消費者の「喜び」と再購入は、プロダクト・マーケット・フィットの典型的特徴である」、なるほど。

第三に、5月12日付け東洋経済オンラインが掲載したアンドリーセン・ホロウィッツ マネージング・パートナーのスコット・クポール氏による「VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス 「チームも製品も素晴らしい」だけでは足りない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/661596
・『起業家が資金調達を考える際の有力な候補の1つに、ベンチャーキャピタルがある。 シリコンバレーの著名なVC、アンドリーセン・ホロウィッツの最初期のメンバーであり、起業家としての経験も持つスコット・クポール氏の著書『VCの教科書』から、VCがアーリー・ステージの投資先をどのように判断するのかについて、抜粋・編集して3回に分けてお届けしよう。今回は3回目となる』、興味深そうだ。
・『なぜ大規模な市場が好ましいのか?  VCがアーリー・ステージで投資機会の評価に用いる基準として、人、製品、市場がある。 前々回では人について、前回は製品について見た。ここでは、「市場」について解説しよう。 VCにとって最も重要なものは、創業者が追求する市場機会の最終的な規模ということがわかっている。 不動産についての格言が、「1に立地、2にも3にも立地」ならば、VCの場合は、「1に市場規模、2にも3にも市場規模」だ。大規模な市場が好ましく、小規模な市場は好ましくない。 その理由は? 大きな市場のルールは、べき乗則カーブと「本塁打率」の説明から直接導かれる。 VCが正解よりも誤りが多いならば、また、VCとしての成功(または失敗)が投資の20~30%をホームランできるかどうかの結果であるならば、勝者の規模だけが重要になる。 ベンチャー投資の犯す誤りは、カテゴリーを正確に選びながら、正しくない企業を選ぶことだ。それに加えて、あと2つの誤りがある。 ひとつは、正しい企業を選ぶが、誤った市場を選ぶことだ。つまり、優良で利益の大きなビジネスを行い、チームも製品も素晴らしいが、さほど大きくない市場にいる企業に投資することだ。 チームがいかに業務を立派に遂行しても、収益が5000万~1億ドルに達しなければ、その企業の時価総額は伸びない。 もうひとつは、不作為の罪は作為の罪よりも重いということだ。 最終的に失敗に終わった企業にVCが投資することはかまわない。このビジネスではよくあることだ。 やってはいけないことは、次のフェイスブックになる企業に投資しないことだ。このビジネスで成功を収めるためには、リスクを回避してはいけない』、「このビジネスで成功を収めるためには、リスクを回避してはいけない」、その通りだろう。
・『その市場は、必要なリターンをもたらしうるか?  以上の点から、VCは大きな市場機会に投資すべきだという自明の理が導かれる。小さな市場で成功を収めても、ビジネス継続のために必要なリターンを、決してVCにもたらさない。 たとえば、スタートアップの成功の可能性を評価する際、VCは市場規模を「そんなの大した問題じゃない」と考えることがよくある。 だが素晴らしいチームと素晴らしい製品はいいとして、市場規模がビッグビジネスを維持するのに十分でなければ、それは大した問題、ということになる。 ベンチマーク・キャピタルの創業者アンディ・ラクレフはこう言っている。平凡なチームでも巨大な市場にいれば企業は成功できるが、素晴らしいチームでも貧弱な市場にいては必ず失敗する。 市場規模を適切に評価することが、なぜそれほど難しいのか?それは、市場の実際の大きさは、投資する時点ではわからないことが多いからだ。だから、市場を評価する際に、VCはさまざまな形で自らをごまかしている。 新製品が既存製品にそのまま置き換わる場合、市場規模は最も評価しやすい。 例としてデータベースを挙げよう。 オラクルはデータベース市場では巨大企業なので、その市場機会をつかもうとするスタートアップは、大きな市場で勝負することになると難なく推測できる。いとも簡単なことだ。 だが、データベース市場全体が、時間がたつにつれてどう展開するのかはわからない。) データベースの機能に取って代わる新たなテクノロジーが現れて、市場を空洞化することになるのか? それとも、クラウド・コンピューティングがワークフローで主流となるにつれて、データベースを必要とするアプリケーションの数が飛躍的に増加し、結果としてデータベース市場が今以上に大きくなるのか? どちらも良い質問だが、おそらくほとんどのVCは、データベース市場を狙うスタートアップには大企業を築くのに十分な規模の市場があるので、もし成功すれば投資のホームランになると考えるだろう』、「市場の実際の大きさは、投資する時点ではわからないことが多いからだ。だから、市場を評価する際に、VCはさまざまな形で自らをごまかしている」、「ほとんどのVCは、データベース市場を狙うスタートアップには大企業を築くのに十分な規模の市場があるので、もし成功すれば投資のホームランになると考えるだろう」、なるほど。
・『エアビーアンドビーの市場規模は?  市場規模の見積もりをさらに難しくするのは、現在存在しない市場を狙うスタートアップや、テクノロジー的な制約があるためまだ規模が小さい市場を狙うスタートアップがもたらす影響だ。 たとえばエアビーアンドビーを考えてみよう。同社が最初に資金を集めたとき、使用した事例の大部分は、他人の家のソファで寝る人たちだった。 そのような、ひどくお腹を空かせている大学生がどれくらいいるのか調べればーーハンバーガーやチーズやラーメン、つまり、お腹を空かせた大学生が購入するその他製品の市場規模と同じようにーー論理的に結論を下すこともできただろう。 だが、時間がたつにつれて、サービスがほかの要素にまで拡大したらどうなるだろう?そのときはおそらく、既存のホテル市場が、全体的な市場規模の代わりとなるだろう。 なるほど、だがエアビーアンドビーの予約しやすさや低価格により、それまであまり旅行しなかった人たちが旅行するようになったらどうだろうか? 宿の必要な旅行者の市場が、エアビーアンドビーの登場によってむしろ拡大したとしたら? 今になってみると、エアビーアンドビーの成功は、これまでなかった旅行宿泊施設の新形態のおかげで、市場規模が拡大したことが背景にあると思われる。 幸運をつかむか逃すかは、VCの市場規模を理解する能力、発展途上の新市場でテクノロジーの果たす役割について創造的に考える能力によって決まるのだ』、「幸運をつかむか逃すかは、VCの市場規模を理解する能力、発展途上の新市場でテクノロジーの果たす役割について創造的に考える能力によって決まるのだ」、その通りなのだろう。

第四に、5月25日付け現代ビジネス「「肩書きがいつのまにか『教授』から『寄付講座教授』に…」「阪大医学部の承認も受けず上場して大問題」安倍政権を後ろ盾にしていた「大阪パビリオン・総合プロデューサー」への疑問」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/110588?imp=0
・『麻布で開かれた阪大大学院教授森下竜一の誕生日パーティー。一見普通の誕生日パーティーだが調べていくとどうやら"黒い”部分が…。著名人も絡む「金権人脈」を巡ったパーティーの実情に迫る。 前編記事『【追及・大阪万博】「「肩書きがいつのまにか『教授』から『寄付講座教授』に…」「阪大医学部の承認も受けず上場して大問題」安倍政権を後ろ盾にしていた「大阪パビリオン・総合プロデューサー」への疑問』に引き続き紹介する』、興味深そうだ。
・『人脈形成の秘訣  森下は安倍政権下、規制改革会議のメンバーにも名を連ね、内閣官房参与に就いてきた。 大阪パビリオンの総合プロデューサーになったのも、そんな安倍・菅政権や日本維新の会といった政界の後ろ盾があればこそ、という以外にない。森下はどうやってここまでの政界人脈を築き、成り上がることができたのか。 森下竜一の政界人脈の中心は、やはり安倍晋三である。生まれ故郷の岡山県が選挙区の大物厚労族議員、元首相の橋本龍太郎の伝手で安倍と知り合ったと前に書いた。そこから政府参与や万博プロデューサーに成り上がれた原動力は、創薬ベンチャー、アンジェスの創業にほかならない。 アンジェスの設立は'99年12月、森下が初めに手掛けた創薬が慢性動脈閉塞症向けのコラテジェンなる遺伝子治療薬だった。当の森下はまだ阪大医学部の助教授であり、37歳という若さだ。国立大学発の医療ベンチャーが一種のブームになり、東大や京大などでも起業が相次いだ時期と重なる。 いち早く起業に飛びついた森下は、そこからわずか3年後の'02年9月、大学発の創薬ベンチャー第1号として、東証マザーズ市場にアンジェスの株式上場を果たした。 ときは小泉純一郎政権下、規制緩和が金科玉条のごとく叫ばれ、若い起業家が雨後の筍のように現れて株式市場は活況を呈した。アンジェス上場時の一株の公募価格も22万円と高額だった。1万5185株を保有していた筆頭株主の森下は、公募価格で33億4000万円を手に入れた計算だ。文字通り一夜にして億万長者になったわけである』、「アンジェス上場」で「筆頭株主の森下は、公募価格で33億4000万円を手に入れた計算だ。文字通り一夜にして億万長者になった」、なるほど。
・『未公開株を「ばらまき」  半面、大阪の医学界を取材すると、森下ならびにアンジェスの評判はすこぶる悪い。ある医師会の重鎮が語る。 「アンジェスが上場を目指した2000年代初め、彼は阪大医学部の承認も受けず、薬の有効性についてろくな検証もないまま臨床試験のデータを使って株式上場したのです。医学部は出し抜かれたようなものですから、教授会でそれが大問題になりました。倫理委員会が立ち上がり、彼を詰問した場面もありました。 あのときは担当教授が彼をかばってとりなしていたけれど、今の基準ならあの臨床データはかなり怪しい。それでも曲がりなりにも株式を上場できたのですが、大儲けしたのは森下だけじゃなかったから、大変な騒ぎになりました」 アンジェスの株式上場時、第三者割当増資が実施され、未公開株が阪大関係者にばらまかれていたのである。 アンジェスが開発したコラテジェンという遺伝子治療薬の臨床試験に携わった教授や医師ら10人のうち、5人が一株5万円で未公開株を割り当てられた。おまけに、上場後のアンジェス株は公募価格の22万円どころではなく、瞬く間に100万円を突破、その後数年間は70万円前後で推移してきた』、「阪大医学部の承認も受けず、薬の有効性についてろくな検証もないまま臨床試験のデータを使って株式上場したのです。医学部は出し抜かれたようなものですから、教授会でそれが大問題になりました。倫理委員会が立ち上がり、彼を詰問した場面もありました。 あのときは担当教授が彼をかばってとりなしていたけれど、今の基準ならあの臨床データはかなり怪しい」、「アンジェスの株式上場時、第三者割当増資が実施され、未公開株が阪大関係者にばらまかれていた」、未公開株をネタに政治資金をばら撒いたリクルート事件の再来だ。
・『アンジェスの問題発覚  アンジェスの未公開株問題が発覚したのは上場から2年後の'04年6月のことだ。 未公開株を手にしたおかげで、創薬にかかわった阪大関係者の中には家まで買った医師もいたという。リクルート事件を彷彿とさせる出来事でもあった。アンジェス株上場で森下が手にしたのは、33億円どころか100億円という計算になる。 だが、結局株を受け取った大学関係者は法的に罪に問われることなく、いつしか話題にも上らなくなる。 そうして森下はアンジェスを使い、安倍との距離を縮めていったようだ。小泉の後を受けて'06年9月に第一次政権を発足させた安倍は、翌年6月「イノベーション25」と題し、'25年までの長期経済成長計画をぶち上げた。 その主眼の一つが、バイオ・医薬品のベンチャー育成であり、森下のアンジェスもそこに名乗りを上げた。森下はコラテジェンの医薬品承認を厚労省に申請することを決めた。 しかし翌'07年9月、安倍は自ら首相の椅子を手放し、第一次政権が幕を閉じた。すると、当然のようにコラテジェンの承認は見送られ、しばらく日の目を見なかった。と同時に、アンジェスの株価は下がり続けた。 そんな森下が再浮上するのはやはり第二次政権がスタートした'12年12月以降だ。政権にカムバックした安倍は翌'13年1月、内閣府に規制改革会議を設置し、その15人の委員の一人として、アンジェス取締役、大阪大学大学院医学系研究科教授という肩書の森下が加わった。 それについて、別の大阪医学界の医師はこう指摘する。 「森下さんの肩書は、今の寄附講座教授ではなく、医学部の教授。そのあと'16年頃までは、ずっとその肩書を使っていました。ですが、大学にお金を寄付さえすれば講座を持てるそれと、研究成果を認められた学部の教授とは雲泥の差があり、森下さんは教授会のメンバーでもありません。 つまり、森下さんは政府の審議会で嘘の肩書で委員になっていたことになる。安倍総理や官房長官の菅(義偉)さんには大学の事情はわからないかもしれないけれど、森下さんは肩書を詐称して政府を騙したことになります」』、「アンジェス株上場で森下が手にしたのは、33億円どころか100億円という計算になる。 だが、結局株を受け取った大学関係者は法的に罪に問われることなく、いつしか話題にも上らなくなる」、「寄附講座教授」は「大学にお金を寄付さえすれば講座を持てるそれと、研究成果を認められた学部の教授とは雲泥の差があり、森下さんは教授会のメンバーでもありません」、「森下さんは肩書を詐称して政府を騙したことになります」、飛んでもない話だ。
・『安倍ブレーンとのパイプ  アンジェスの未公開株のときほどではないにしろ、それもまた医学部内で問題になり、'17年から森下は寄附講座教授の肩書に変わったという。 第二次安倍政権の規制会議の中に「健康・医療ワーキンググループ」という部会が設置され、森下は委員に加わった。先の厚労省の官僚が言う。 「その流れで、内閣官房(官邸)に『健康・医療戦略室』が設置されたのです。医療そのものを成長産業としてとらえ、医薬品や病院を海外に輸出していこうという発想で、経産省出身の今井尚哉元首相秘書官が提唱したとされています。経産、厚労、文科の各省の縦割りをなくし、官邸が指揮を執って先端医療を進めるという部署です」 その健康・医療戦略室のトップが官房長官だった菅、室長に菅の側近である首相補佐官の和泉洋人が就任し、さらに和泉の愛人とされた厚労省の医系技官である大坪寛子が次長に抜擢された。和泉・大坪は海外出張の際、つながった隣の部屋に宿泊していたことからコネクティングカップルなどと揶揄された。 そして森下がこの健康・医療戦略室の担当参与に就き、さらに政府に対する影響力を増していったという。 「森下さんの強みは『アベ友』というだけではなく、何かと厚労行政に口を挟んできた和泉さんとのパイプがあることです。とくに第二次安倍政権ができてからアンジェスの売り込みが激しく、それまで何度申請しても門前払いだった遺伝子治療薬のコラテジェンが第一段階の承認を受けました」(同前) アンジェスは'18年1月に医薬品承認を申請し、1年後の'19年2月に厚労省から条件・期限つきで承認されている。先の厚労官僚はこうも付け加えた。 「この間、アンジェスは増資を繰り返し、株価もかなり上下しています。そこに疑問の声も上がってきました。コロナワクチンの開発なども、相当株価に影響していると思います」 医療ベンチャーを使って億万長者となり、万博を取り仕切る森下竜一。冒頭の誕生パーティ参加者たちは、単なる知人として駆け付けただけだというが、怪しげなその金脈に吸い寄せられているようにも感じる』、「医療ベンチャーを使って億万長者となり、万博を取り仕切る森下竜一」、もっと叩けばホコリも出てきそうだ。

第五に、6月12日付け東洋経済オンライン「国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/678343
・『「われわれの想定とは、まったく違う税務上の解釈となりました」──。6月上旬、都内に本社を置くあるスタートアップ企業の経営陣は、社員にそのような説明を行った。 事の発端は5月29日、あるストックオプション(SO)の税率をめぐって国税庁が示した見解にある。SOはあらかじめ決めた価格で自社株を買える権利で、「株式購入権」ともいう。そのうち「信託型SO」が焦点となった。 スタートアップ関係者らを集めて開かれた説明会の場で国税庁の担当者は、「(SOの)権利行使と株式の交付が行われている場合、給与課税の対象となり、源泉所得税の納付が必要」などと指摘。これにより、約800社に及ぶとされる信託型SOの発行企業には突如、追加の税負担が生じることとなった。冒頭の会社もその一社だ』、興味深そうだ。
・『株売却時の課税のみと考えられていた  SOは通常、役員や社員に直接与えられる。それに対して信託型では、信託会社などにオプションプール(SOの交付枠)として割り当て、信託契約期間中や契約終了時に、企業が指定する役員や社員などに同一条件のSOを交付する。 発行時に、誰にどれだけ権利を与えるかを決めておく必要がなく、SOの発行後に入社した人も同一条件でSOを得ることができる公平性などを売りにしていた。従来この信託型SOは、SOの行使時に給与所得課税は行われず、株式売却時の譲渡益課税のみになるとの見方が広がっていた。 ところが国税庁が示した見解に沿えば、役職員が信託型SOを行使した時点で、給与所得として最大55%の課税がなされる。20%の譲渡益課税が生じる前の時点で、キャッシュインなき課税が発生する。) SOの行使と株式の売却でキャピタルゲインを得て20%の納税をすでにしていても、過去5年にさかのぼり、給与所得として追徴課税される。年収4000万円を超えていた場合は、最高税率55%が課せられる。 「所属会社の税解釈を信じてお金を使い切っていた場合、納税のために家などの資産を手放さざるをえない人が出てくるのでは」。スタートアップ関係者からは不安の声が上がる。 信託型SOを導入していた会社やそれを支援していたコンサルティング会社などは行使時点の課税について、一貫して負担は生じないと見ていた。しかし国税庁の説明で、それがひっくり返ることとなった。 (信託型ストックオプションでの課税の流れの図はリンク先参照) 源泉所得税を徴収して納付する立場の企業では、会計上の損失計上が必要になる可能性もある。 日本公認会計士協会や企業会計基準委員会(ASBJ)の見解次第では、信託型SOを発行し、すでに役職員による行使が行われていた場合、追加の税負担を会計上で処理しなければならなくなる。上場企業では、人工知能(AI)開発で知られるPKSHA Technologyなどで、その影響が大きいとみられている。 いったいなぜ、このような事態になってしまったのか。あるベンチャーキャピタルの幹部は、「信託型SOはもともと課税関係がグレーだった。今回の件を機に抜け道がふさがれたのはよかった」と指摘する。 一方で投資先が信託型SOを導入している別のベンチャーキャピタルの幹部は、「多くの会社が慎重に調べて信託型SOを導入している。課税関係はクリアだったと信じており、国による後出しじゃんけんは許せない。『税金が安い』と推奨してきたコンサル会社の罪も大きい」と憤る』、「「信託型SOはもともと課税関係がグレーだった。今回の件を機に抜け道がふさがれたのはよかった」と指摘する。 一方で投資先が信託型SOを導入している別のベンチャーキャピタルの幹部は、「多くの会社が慎重に調べて信託型SOを導入している。課税関係はクリアだったと信じており、国による後出しじゃんけんは許せない。『税金が安い』と推奨してきたコンサル会社の罪も大きい」と憤る』、なるほど。
・『SOの環境整備では一歩前進  立場によって見方は分かれるが、国税庁は説明会当日、日本のスタートアップにとって追い風となるSOの環境整備策も公表している。それは一定の要件を満たすことで、税制の優遇措置を受けることができる「税制適格SO」の行使時における新たな株価算定ルールだ。 従来は明確な算定式がなく保守的な運用が行われていたが、新ルールによって、20%の譲渡益課税のみで済む税制適格SOが発行しやすくなる。信託型SOの特長だった低い行使価格で、税制適格SOを発行できるメリットが生まれる。 自社でも信託型SOを発行していたフォースタートアップスの志水雄一郎社長は、「株価算定ルールが新しくなったのは画期的。既存の信託型SOを新しくして、税制適格SOの仕組みにつくり直すところが多くなるだろう」と予測する。 SOの環境整備をめぐっては、政治による後押しも進む。自民党は5月に公表した提言で、株主総会の決議事項であるSOの行使期間や期間に関する承認を取締役会に委任できるよう会社法を改正することなどを求めた。政府の側も、使い勝手のよいSOの制度設計はスタートアップの人材獲得力向上に欠かせないという意識を持っている。 「国税ショック」を機に、日本のスタートアップの活性化に弾みをつけられるか』、「「税制適格SO」の行使時における新たな株価算定ルールだ。 従来は明確な算定式がなく保守的な運用が行われていたが、新ルールによって、20%の譲渡益課税のみで済む税制適格SOが発行しやすくなる。信託型SOの特長だった低い行使価格で、税制適格SOを発行できるメリットが生まれる」、「既存の信託型SOを新しくして、税制適格SOの仕組みにつくり直すところが多くなるだろう」と予測する」、これであれば、「信託型SO」の解釈変更をことさら、問題視すべきではないように思える。
タグ:スタートアップ (その8)(VCからの資金調達3題(VCから上手く資金調達する技、VCが使う3つの投資基準、VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス)、「肩書きがいつのまにか『教授』から『寄付講座教授』に…」「阪大医学部の承認も受けず上場して大問題」安倍政権を後ろ盾にしていた「大阪パビリオン・総合プロデューサー」への疑問、国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」) 東洋経済オンライン スコット・クポール氏による「先輩、VCから上手く資金調達する技教えて下さい 君のビジネスとVC投資との相性を探るコツとは」 スコット・クポール氏の著書『VCの教科書』 本場のベンチャー・キャピタル事情とは興味深そうだ。 「資金調達に最適の時期とは、資金が手に入るときだ。あなたが資金を集める準備ができたと判断したタイミングで、資金調達のウェイターが戻って来るかどうかなど、誰にもわからない」、なるほど。 様々な選択肢があるようだ。 「インセンティブとは要するに・・・次のようなものだ。 ■多くはうまくいかず、少数がファンドの金銭的リターンの大部分を生み出すことを理解して、投資ポートフォリオを作ること。 ■そうした巨額のリターンを挙げるビジネスを10年から12年以内に現金化すること。そうすることで、リミテッド・パートナー(LP)に現金を返すことができるし、LPがVCに出資して、新ファンドで再びゲームに参加することが期待できる。 これが、VCのライフサイクルだ。 また、たとえあなたのビジネスが・・・VCにふさわしいとしても、あなたはVCが課したルールの下でプレーしたいのかどうか、自分で判断する必要がある。 そのルールとは、VCに自社株を分配し、取締役会の支配権やガバナンスをVCとともに握ることであり、「現実の」結婚と同じくらい継続する結婚生活を始めることである』、なるほど。 スコット・クポール氏による「本場米国のプロが教える、VCが使う3つの投資基準 VCがパワポのピッチだけで投資判断する理由」 「「人」について見ていこう。これはアーリー・ステージの投資にとって、間違いなく定性的評価基準であり、おそらく最重要となる評価基準だ」、なるほど。 「ひとつのチームに投資を決定すれば、そのアイデアを達成する能力が高い別のチームが現れても、VCはそこに投資できないのだ」、「競合の見きわめが大きな影響を与える」、その通りだろう。 「VCはその領域の直接の競争相手に投資できなくなるという点で、どの投資決定にも計り知れない機会費用が備わる。どの馬に乗るかは、自分で決めなくてはいけない」、「正しい分類を選択しても・・・企業を間違える・・・ことがあれば、VCは大きな誤りを犯したことになる」、なるほど。 「プロダクト・マーケット・フィットは、適切な市場に向けて、その市場のニーズを満足させる製品を送り出せている状態を指摘した概念だ。消費者の「喜び」と再購入は、プロダクト・マーケット・フィットの典型的特徴である」、なるほど。 スコット・クポール氏による「VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス 「チームも製品も素晴らしい」だけでは足りない」 「このビジネスで成功を収めるためには、リスクを回避してはいけない」、その通りだろう。 「市場の実際の大きさは、投資する時点ではわからないことが多いからだ。だから、市場を評価する際に、VCはさまざまな形で自らをごまかしている」、「ほとんどのVCは、データベース市場を狙うスタートアップには大企業を築くのに十分な規模の市場があるので、もし成功すれば投資のホームランになると考えるだろう」、なるほど。 「幸運をつかむか逃すかは、VCの市場規模を理解する能力、発展途上の新市場でテクノロジーの果たす役割について創造的に考える能力によって決まるのだ」、その通りなのだろう。 現代ビジネス「「肩書きがいつのまにか『教授』から『寄付講座教授』に…」「阪大医学部の承認も受けず上場して大問題」安倍政権を後ろ盾にしていた「大阪パビリオン・総合プロデューサー」への疑問」 「アンジェス上場」で「筆頭株主の森下は、公募価格で33億4000万円を手に入れた計算だ。文字通り一夜にして億万長者になった」、なるほど。 「阪大医学部の承認も受けず、薬の有効性についてろくな検証もないまま臨床試験のデータを使って株式上場したのです。医学部は出し抜かれたようなものですから、教授会でそれが大問題になりました。倫理委員会が立ち上がり、彼を詰問した場面もありました。 あのときは担当教授が彼をかばってとりなしていたけれど、今の基準ならあの臨床データはかなり怪しい」、 「アンジェスの株式上場時、第三者割当増資が実施され、未公開株が阪大関係者にばらまかれていた」、未公開株をネタに政治資金をばら撒いたリクルート事件の再来だ。 「アンジェス株上場で森下が手にしたのは、33億円どころか100億円という計算になる。 だが、結局株を受け取った大学関係者は法的に罪に問われることなく、いつしか話題にも上らなくなる」、「寄附講座教授」は「大学にお金を寄付さえすれば講座を持てるそれと、研究成果を認められた学部の教授とは雲泥の差があり、森下さんは教授会のメンバーでもありません」、「森下さんは肩書を詐称して政府を騙したことになります」、飛んでもない話だ。 「医療ベンチャーを使って億万長者となり、万博を取り仕切る森下竜一」、もっと叩けばホコリも出てきそうだ。 東洋経済オンライン「国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」」 約800社に及ぶとされる信託型SOの発行企業には突如、追加の税負担が生じることとなった 「「信託型SOはもともと課税関係がグレーだった。今回の件を機に抜け道がふさがれたのはよかった」と指摘する。 一方で投資先が信託型SOを導入している別のベンチャーキャピタルの幹部は、「多くの会社が慎重に調べて信託型SOを導入している。課税関係はクリアだったと信じており、国による後出しじゃんけんは許せない。『税金が安い』と推奨してきたコンサル会社の罪も大きい」と憤る』、なるほど。 「「税制適格SO」の行使時における新たな株価算定ルールだ。 従来は明確な算定式がなく保守的な運用が行われていたが、新ルールによって、20%の譲渡益課税のみで済む税制適格SOが発行しやすくなる。信託型SOの特長だった低い行使価格で、税制適格SOを発行できるメリットが生まれる」、「既存の信託型SOを新しくして、税制適格SOの仕組みにつくり直すところが多くなるだろう」と予測する」、これであれば、「信託型SO」の解釈変更をことさら、問題視すべきではないように思える。
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メタバース(仮想空間)(その2)(メタバースは「ドラえもんの四次元ポケット」!何でも飛び出す期待と脅威、ナイキの「デジタルスニーカー」が 仮想空間ビジネスで成功できそうな理由) [イノベーション]

メタバースについては、昨年1月21日に取上げた。今日は、(仮想空間)(その2)(メタバースは「ドラえもんの四次元ポケット」!何でも飛び出す期待と脅威、ナイキの「デジタルスニーカー」が 仮想空間ビジネスで成功できそうな理由)である。

先ずは、昨年2月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「メタバースは「ドラえもんの四次元ポケット」!何でも飛び出す期待と脅威」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295532
・『「メタ・プラットフォームズ」に社名を変えた旧フェイスブックが、有力ゲームメーカーを多額の資金でM&Aの対象とするなど、世界の有力企業がメタバース分野の取り組みを急速に強化している。米マイクロソフトは687億ドル(約7.9兆円)を投じてゲームソフト会社アクティビジョン・ブリザード(アクティビジョン)を、ソニーグループは米バンジーを36億ドル(約4100億円)で買収する。突き詰めて言えば、「こんなことができたらいい」という人々の根源的な欲求や夢を実現することが、メタバースだ。メタバースは「ほんやくコンニャク」や「どこでもドア」などが飛び出す「ドラえもんの四次元ポケット」に例えることができる』、「メタバースは「ほんやくコンニャク」や「どこでもドア」などが飛び出す「ドラえもんの四次元ポケット」に例えることができる」、「ドラえもんの四次元ポケット」とは言い得て妙だ。
・『ゲーム業界ではメタバース時代を見据えてかつてない規模で再編が進んでいる  メタバース(超越空間)に対する社会の関心が、大きく高まっている。今回は、メタバースの発展性と経済に対するインパクトについて考えてみたい。「メタ・プラットフォームズ」に社名を変えた旧フェイスブックが、有力ゲームメーカーを多額の資金でM&Aの対象とするなど、世界の有力企業がメタバース分野の取り組みを急速に強化している。 拡張現実(AR)や仮想現実(VR)を用いて構築されたメタバースで、人々はアバター(自分の分身)として活動する。接触によるウイルス感染のリスクなどを気にする必要はない。メタバースによって、新しくより自由な発想が一気に具現化するだろう。それは世界経済に対する強烈なインパクトを持っている。 特に目に付くのは、ゲーム業界ではメタバース時代を見据えて、かつてない規模で再編が進んでいることだ。 米マイクロソフトは687億ドル(約7.9兆円)を投じてゲームソフト会社アクティビジョン・ブリザード(アクティビジョン)を、ソニーグループは米バンジーを36億ドル(約4100億円)で買収する。 主な目的はソフトウエア開発力の向上と、ユーザー獲得とみられる。今後、ハードのゲーム機需要は減少し、さまざまなデバイスを通してアバターがゲームに参加する状況が想定される。これから、ゲームはゲーム機やスマホで楽しむという常識は大きく変わるだろう。 メタバース時代の競争を有利に進めるために、新しい半導体やデバイスの開発競争も激化する。デジタル化の遅れが深刻なわが国企業は、早急にメタバースに対応する事業戦略を立案し、実行に移すことが求められる』、「今後、ハードのゲーム機需要は減少し、さまざまなデバイスを通してアバターがゲームに参加する状況が想定される。これから、ゲームはゲーム機やスマホで楽しむという常識は大きく変わるだろう」、なるほど。
・『メタバースの本当の姿とは? オンラインとオフラインの境目がなくなる  メタバースの実現により、わたしたちは、24時間365日、いつでも、どこでも、現実を超越した空間に接続できる。 例えば、運動のために散歩をしながらメタバース内のオフィスで同僚と会議をしたり、工場の製造ラインのメンテナンスを行ったりすることが当たり前になるだろう。 メタバースはIoTなど世界経済のデジタル化をさらに加速させる。メタバースがもたらす「生き方の変化」に対応できるか否かが、企業の長期存続に決定的な影響を与えるはずだ。 メタバースによって、私たちのコミュニケーションは根本から変わる。インターネットがない時代、私たちは他者と、対面や電信技術によって情報を交換した。それをもとに企業は付加価値を生み出したり、事業運営の効率性を高めたりしてきた。 それが1990年代に米国でインターネット革命が起きて以降、私たちは必要に応じてデバイスを起動し、ネットに接続するようになった。それは、個人や企業などの経済運営の効率性を一段と高めた。 メタバースとネット社会の違いは、現実世界(リアル)における生活と同時に、超越空間でも人々が活動することだ。オンラインとオフラインの境目がなくなるといってもよいだろう。常に多くの人と共有される空間であるため、メタバースではリアルで味わったことのない臨場感や刺激、満足感、驚きなど、新しい発想や価値観がより多く得られると期待される。 リアルで手に入れるのが難しい情報でも、メタバースでは比較的容易に手に入る可能性もある。例えば、東京のオフィスで仕事をしつつ、必要な情報はメタバースで多様なバックグラウンドを持つ人から収集する。それは業務の効率性を向上させる。参加者も限定されない。個人をベースに現実と超越空間がリアルタイムでつながり、相互に影響しあうのがメタバースだ』、「メタバースとネット社会の違いは、現実世界(リアル)における生活と同時に、超越空間でも人々が活動することだ。オンラインとオフラインの境目がなくなるといってもよいだろう・・・リアルで手に入れるのが難しい情報でも、メタバースでは比較的容易に手に入る可能性もある。例えば、東京のオフィスで仕事をしつつ、必要な情報はメタバースで多様なバックグラウンドを持つ人から収集する。それは業務の効率性を向上させる。参加者も限定されない。個人をベースに現実と超越空間がリアルタイムでつながり、相互に影響しあうのがメタバースだ」、本当に便利になるようだ。
・『メタバースが持つすさまじい発展性とは? 「非代替性トークン」  NFT)にも注目  メタバースの発展性の一つとして注目されるのが、アバターだ。メタバースの中で私たちは、アバターとして活動する。つまり、アバターの活動範囲の拡大が、メタバースを成長させる。 例えば、アバターとして、アクティビジョンが手掛ける「コールオブデューティ」などのゲームに参加すると、リアルでは味わえない体験を得ることができる。それがメタバース・ユーザーを増加させ、新しいサービスや製品の需要を生み出す。そうした状況が、近い将来の経済成長に不可欠となるだろう。 ところで、メタバースの利用増加によって、デジタル資産の管理問題が浮上している。現実社会で私たちは土地や自動車などを所有したり、シェアしたりしている。誰が、何を所有し、利用権を持つかは明確に管理されている。 メタバースでも同じだ。メタバース内での空間の所有や利用の権利、アバターの所有権、デジタルアートの識別とその所有権などは、確実に管理されなければならない。 その手段として「非代替性トークン」(NFT)がある。NFTの一元管理のためには、「分散型元帳」もとい「ブロックチェーン」の運営技術の向上が欠かせない。メタバースにおけるデジタル資産の価値基準や交換手段、価値の保存のために、価値が安定しているNFTなどへのニーズも高まるだろう。 このように考えると、メタバース時代の到来によって、ハードからソフトへのシフトが加速する。マイクロソフトがアクティビジョンを買収するのはそのためだ。ゲームコンテンツ創出などソフトウエア開発が加速し、その結果としてより気軽に、より鮮烈な体験を得られるデバイス創出ニーズが高まる。 ゲームのコンテンツ(ソフト)はクラウドコンピューティングで管理し、多種多様なデバイスを用いてユーザーがアクセスするようになるだろう。特定のゲーム機を利用する必要性は低下する。そうした展開を見据えて、マイクロソフトなどが企業買収によってゲームユーザーを囲い込み、メタバース開発競争を有利に進めようとしている』、「メタバース内での空間の所有や利用の権利、アバターの所有権、デジタルアートの識別とその所有権などは、確実に管理されなければならない。 その手段として「非代替性トークン」(NFT)がある。NFTの一元管理のためには・・・「ブロックチェーン」の運営技術の向上が欠かせない。メタバースにおけるデジタル資産の価値基準や交換手段、価値の保存のために、価値が安定しているNFTなどへのニーズも高まるだろう。 このように考えると、メタバース時代の到来によって、ハードからソフトへのシフトが加速する」、なるほど。
・『人々の根源的な欲求や夢を実現する「ドラえもんの四次元ポケット」  メタバースは、世界の常識を根底から覆す。これまで私たちは、さまざまな媒体を通してデータや情報を入手した。それを分析することによって新しい発想が生み出され、より良い生き方が実現した。古くは伝書バトによる情報の伝達、新聞、ラジオやテレビ、パソコンやスマホを用いたネット検索という具合に、情報収集の効率性は高まった。 ただ、いずれも、双方向のコミュニケーションではない。誰かが発信した情報を、別のところで受け取る。リアルタイムでその印象をフィードバックするのは難しい。コロナ禍を機に急速に普及したテレビ会議システムは、その隔たりを低下させたものの、いつでも、だれでも出入り自由な空間ではない。 情報の発信と受信の隔たりがなくなり、新しい発想が生み出され、現実と異なる空間が拡張しうるという点で、メタバースは世界経済に「創造的破壊」をもたらすだろう。 人工知能を用いて翻訳を行うことで言語の壁は低下し、これまで以上のスピードで情報検索や海外事業の運営が可能になる。 突き詰めて言えば、「こんなことができたらいい」という人々の根源的な欲求や夢を実現することが、メタバースだ。メタバースは「ほんやくコンニャク」や「どこでもドア」などが飛び出す「ドラえもんの四次元ポケット」に例えることができる。 メタバースがもたらす成長のチャンスは多い。それを手に入れるべく、各国でゲーム企業などの買収が増え、人材獲得競争も熾烈(しれつ)化するだろう。プログラミングや人工知能のディープラーニング、データサイエンス、アニメのクリエイター、さらにはより高性能な半導体やバッテリー、その実現を支える素材など、最先端分野ではすでに人材の争奪戦が起きている。 わが国の企業は、激化するメタバース開発競争に迅速に対応しなければならない。中長期的に考えると、それができる企業とできない企業の差が、急速に拡大することだろう』、「情報の発信と受信の隔たりがなくなり、新しい発想が生み出され、現実と異なる空間が拡張しうるという点で、メタバースは世界経済に「創造的破壊」をもたらすだろう。 人工知能を用いて翻訳を行うことで言語の壁は低下し、これまで以上のスピードで情報検索や海外事業の運営が可能になる。 突き詰めて言えば、「こんなことができたらいい」という人々の根源的な欲求や夢を実現することが、メタバースだ。メタバースは「ほんやくコンニャク」や「どこでもドア」などが飛び出す「ドラえもんの四次元ポケット」に例えることができる」、「メタバースは・・・「ドラえもんの四次元ポケット」に例えることがで昨年きる」、便利なツールのようだ。

次に、昨年5月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「ナイキの「デジタルスニーカー」が、仮想空間ビジネスで成功できそうな理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/303100
・『ナイキが仮想空間に参入 仮想空間ビジネス「成功の条件」は?  メタバースでの新しいビジネスへの関心が高まる中で、ナイキがデジタルスニーカービジネスに参入したことが話題になっています。このデジタルスニーカーは、実際には手に取ることができません。しかも、NIKEではなく子会社のRTFKTのロゴがついた商品です。それにもかかわらず、RTFKTの取引サイトでは仮想通貨で20万円以上の高値で取引されています。 はやりのメタバースには、本当にビジネスチャンスがあるのか? どのような企業がビジネスとして活用できるのか? メタバースの可能性について考えてみたいと思います。 前提として、今回の記事は未来予測記事です。まだルールが定まっていないメタバースビジネスで、ナイキのようなIP側(ブランドなどの権利を持っている側)とメタバースを運営するプラットフォーム側で、どのような取り分でビジネスの利益を分け合うのか自体が双方のビジネス戦略になります。その予測も踏まえて、未来について解説したいと思います』、「まだルールが定まっていないメタバースビジネスで、ナイキのようなIP側(ブランドなどの権利を持っている側)とメタバースを運営するプラットフォーム側で、どのような取り分でビジネスの利益を分け合うのか自体が双方のビジネス戦略になります。その予測も踏まえて、未来について解説したい」、なるほど。
・『ナイキの仮想スニーカーが「高価値」を維持する可能性が高い三つの理由  さて、今回話題になっているのはナイキがメタバース上の仮想店舗で販売し、NFT(非代替性トークン)でその価値を保証した仮想のスニーカーです。実際には履くことができないスニーカーがネット上で高額で取引をされている。これはいったい、どういう意味を持つのでしょうか。 「話題のメタバースでナイキが最初に販売したデジタルスニーカーだから、将来の値上がりを見越して投機的に価格がつり上がっている」というのは一つの見方です。ただし、ナイキが発売するデジタルスニーカーは、そのような初期の興奮がおさまった後でも価値が安定する可能性が高いと思われます。 私がそう予測する理由は三つあります。一つはナイキのスニーカー自体が、再販市場が確立しているトレードアイテムだからというものです。これは実際に履くことができるリアルなスニーカーの中古商品の話ですが、エアマックスシリーズやエアジョーダンシリーズのレアものは、ビンテージ市場で高額で取引がされています。それを欲しいと考えるナイキファンがたくさんいて、ブランド価値が確立している。ここが最初のポイントです。 二つ目に、そのようなレア商品は「履かないで眺める」人が多いという点です。そもそもナイキのスニーカーが高額で売られるイノベーションアイデアは、「優れたアスリートが着用する商品は、それにあこがれるスポーツファンが競って着用したがるはずだ」というものでした。 1970年代までの若者にとっては、スニーカーは運動靴で、スーパーで1000円から3000円ぐらいで売られているただの道具でした。ところがナイキの成功以降、たとえばマイケル・ジョーダンのようにプレーしたいとあこがれるバスケット部の高校生は、バイトをして3万円するスニーカーを購入して試合に臨むようになりました。 さらに、アメリカのプロバスケリーグNBAの人気選手のイメージから、ナイキはストリートファッションブランドへと変貌し、スニーカーはバスケの道具からファッションアイテムへとランクアップします。そこでレアもののエアジョーダンの特別モデルをゲットした人は、とっておきの日以外はそれを履かずに、部屋に飾って眺めて楽しむようになったのです。 ここで、三つ目の予測理由が登場します。メタバース上で購入したナイキのスニーカーは、今はまだ用途が限定されています。しかし、将来的にはいろいろなメタバースの中でアバターに着用させることができるようになると予測されています。将来メタバース市場が大きくなれば、ファッションアイテムとしてのデジタルスニーカーの実利用価値も高騰するかもしれません。 メタバース上で何げなく履いていたスニーカーを見た通りすがりの人が、「そっ、それは100足しか発売されていないエアジョーダン1の2022年NFT復刻バージョン!」と言って驚いて、「1億ゴールドで売ってくれないか?」と交渉してくる未来など、いかにもやってきそうです。1億ゴールドが円換算でいくらかは知りませんが。 このナイキの動きを見て、アディダスなど競合スポーツブランドもデジタルスニーカー販売に動いています。私は、この動きは中古市場が確立していて高値で売られているブランドであれば、皆、関係してくる話だと考えています』、「このナイキの動きを見て、アディダスなど競合スポーツブランドもデジタルスニーカー販売に動いています。私は、この動きは中古市場が確立していて高値で売られているブランドであれば、皆、関係してくる話だと考えています」、その通りだろう。
・『ロレックスのNFTがメタバースで「バカ売れ」する時代が来る?  たとえば、高級腕時計のロレックスについて考えてみましょう。人気のデイトナは、定価は150万円程度ですが、そもそも正規店に入荷せずに購入が困難なことで知られています。そして、中古市場では300万円前後で取引されます。 一方で、その価格高騰に目を付け高品質の偽物が出回っていることが問題になっています。さらにスマホの普及で将来的に腕時計を身に着ける人の人口が減っていくという問題も抱えています。これらの高級腕時計業界が抱える問題は、仮想デジタルウオッチが解決するかもしれません。 方法はいくつか考えられますが、一番簡単な方法として、リアルなロレックスをバーチャルなNFTロレックスとバンドルして販売することが考えられます。 ロレックス好きな人がロレックスを酒場で見せびらかすだけでなく、メタバース上でアバターにロレックスを身に着けさせ、自分が富裕層であることをさりげなくアピールするような使い方ができます。 過去に発売したロレックスも正規店に持ち込んでNFTを発行してもらえるようにすれば、メタバースが拡大した時代には、アバターは普通の腕時計をしているのにリアルな場ではロレックスを着けている人は怪しいかもしれない。 仮想世界では、ブランド品を富裕層が無数に買うようになります。コレクターで部屋の中がスニーカーだらけになっていて、もう保管場所がないというような人は、購入したスニーカーはナイキで保管してもらっておいて、普段は主にメタバースで着用するような方向にマーケットが進化するかもしれません』、「ロレックス好きな人がロレックスを酒場で見せびらかすだけでなく、メタバース上でアバターにロレックスを身に着けさせ、自分が富裕層であることをさりげなくアピールするような使い方ができます。 過去に発売したロレックスも正規店に持ち込んでNFTを発行してもらえるようにすれば、メタバースが拡大した時代には、アバターは普通の腕時計をしているのにリアルな場ではロレックスを着けている人は怪しいかもしれない」、なるほど。
・『メタバース上で高価なブランド品を購入するのは「危険な賭け」になるかもしれない理由  さて、本来であれば一度購入したバーチャルブランドアイテムは、どのメタバースにでも持ち込めるのが消費者側の理想ですが、ここは近い将来、メタバースの運営企業とブランド企業の間でもうけを巡ってひと騒動が起きそうです。 実は消費者から見れば今、どこかのメタバースサイト上で高価なブランド品を購入するのは賭けかもしれません。というのは、そのメタバースがそれほど流行せずに消えてしまうかもしれないからです。 あくまでわかりやすい例として架空の未来を想像すると、任天堂の家庭用ゲーム「あつまれ どうぶつの森」上にナイキがお店を開いて、スニーカーを売ってくれる未来が来ると仮定しましょう。それで、読者のみなさんが3万円でスニーカーを買ったとします。 ところが10年後、ニンテンドースイッチの時代は終わり、ユーザーはニンテンドースイッチ5上の「あつまれ どうぶつの森2032」で遊んでいるかもしれません。そのとき、以前3万円で買ったスニーカーを新しいメタバースに持ち込めるのかという話が問題になります。 今の例なら任天堂とナイキの話し合いで解決してくれるかもしれませんが、それが2032年のプレイステーションX上のモンスターハンター32となると、任天堂が販売したナイキのデジタルスニーカーは持ち込めないかもしれません。 これは、プラットフォームを運営する側から見れば当然そうしたいところです。ディズニーが運営するメタバースに、任天堂が販売したマリオのTシャツを着たアバターが簡単に来園しては困りものです。 そもそもプラットフォーム側では、メタバース上で販売されるスニーカーから30%ぐらいの手数料を取るビジネスモデルを考えるでしょう。グーグルのプラットフォーム上で購入したアイテムを、無料でアップルのプラットフォーム上に持ってこられたらビジネスにならないと考えるかもしれません。 一方でIP側のナイキやロレックスやマリオにとってみれば、NFTで裏打ちしたデジタル商品の価値は永続した方が販売しやすい。消費者も価値の永続を保証してもらった方が購入について納得しやすいはずです。 おそらく将来的にはこのあたりのルールが定められて、レアなデジタルスニーカーを持っている所有者は一定の利用料を払うことで、さまざまなメタバースにお気に入りのアイテムを持ち込むことができるようになるのではないか、と私は予測しています。理由は、そのようなルールのほうが、市場が広がるからです。 話をまとめます。メタバースはこれから先、さまざまな形で私たちの日常にバーチャルな形で入り込み、市場は成長していくことでしょう。そのメタバースで私たちの代わりに活動するアバターに対して、さまざまなブランド品市場が生まれるでしょう。それはルールさえ早期に固まれば、リアルな世界で販売されているブランド品やキャラクター商品の市場を倍化させられる可能性を持っていると思います。 そして、電子書籍の漫画市場がリアルな本棚の制約がなくなったことで拡大したように、場合によってはコレクターが、自宅の広さを気にせずにたくさんのアイテムを購入することでリアル市場よりも大きなブランド市場を作れるかもしれない。そう考えれば、今、メタバースの関係者が早期に着手すべきはルール作りなのかもしれません』、「将来的にはこのあたりのルールが定められて、レアなデジタルスニーカーを持っている所有者は一定の利用料を払うことで、さまざまなメタバースにお気に入りのアイテムを持ち込むことができるようになるのではないか、と私は予測しています。理由は、そのようなルールのほうが、市場が広がるからです」、「今、メタバースの関係者が早期に着手すべきはルール作りなのかもしれません」、その通りのようだ。
タグ:真壁昭夫氏による「メタバースは「ドラえもんの四次元ポケット」!何でも飛び出す期待と脅威」 鈴木貴博氏による「ナイキの「デジタルスニーカー」が、仮想空間ビジネスで成功できそうな理由」 (その2)(メタバースは「ドラえもんの四次元ポケット」!何でも飛び出す期待と脅威、ナイキの「デジタルスニーカー」が 仮想空間ビジネスで成功できそうな理由) メタバースは「ほんやくコンニャク」や「どこでもドア」などが飛び出す「ドラえもんの四次元ポケット」に例えることができる」、「メタバースは・・・「ドラえもんの四次元ポケット」に例えることがで昨年きる」、便利なツールのようだ。 「情報の発信と受信の隔たりがなくなり、新しい発想が生み出され、現実と異なる空間が拡張しうるという点で、メタバースは世界経済に「創造的破壊」をもたらすだろう。 人工知能を用いて翻訳を行うことで言語の壁は低下し、これまで以上のスピードで情報検索や海外事業の運営が可能になる。 突き詰めて言えば、「こんなことができたらいい」という人々の根源的な欲求や夢を実現することが、メタバースだ。 このように考えると、メタバース時代の到来によって、ハードからソフトへのシフトが加速する」、なるほど。 「メタバース内での空間の所有や利用の権利、アバターの所有権、デジタルアートの識別とその所有権などは、確実に管理されなければならない。 その手段として「非代替性トークン」(NFT)がある。NFTの一元管理のためには・・・「ブロックチェーン」の運営技術の向上が欠かせない。メタバースにおけるデジタル資産の価値基準や交換手段、価値の保存のために、価値が安定しているNFTなどへのニーズも高まるだろう。 当に便利になるようだ。 「メタバースとネット社会の違いは、現実世界(リアル)における生活と同時に、超越空間でも人々が活動することだ。オンラインとオフラインの境目がなくなるといってもよいだろう・・・リアルで手に入れるのが難しい情報でも、メタバースでは比較的容易に手に入る可能性もある。例えば、東京のオフィスで仕事をしつつ、必要な情報はメタバースで多様なバックグラウンドを持つ人から収集する。それは業務の効率性を向上させる。参加者も限定されない。個人をベースに現実と超越空間がリアルタイムでつながり、相互に影響しあうのがメタバースだ」、本 「今後、ハードのゲーム機需要は減少し、さまざまなデバイスを通してアバターがゲームに参加する状況が想定される。これから、ゲームはゲーム機やスマホで楽しむという常識は大きく変わるだろう」、なるほど。 「メタバースは「ほんやくコンニャク」や「どこでもドア」などが飛び出す「ドラえもんの四次元ポケット」に例えることができる」、「ドラえもんの四次元ポケット」とは言い得て妙だ。 メタバース(仮想空間) 「このナイキの動きを見て、アディダスなど競合スポーツブランドもデジタルスニーカー販売に動いています。私は、この動きは中古市場が確立していて高値で売られているブランドであれば、皆、関係してくる話だと考えています」、その通りだろう。 「将来的にはこのあたりのルールが定められて、レアなデジタルスニーカーを持っている所有者は一定の利用料を払うことで、さまざまなメタバースにお気に入りのアイテムを持ち込むことができるようになるのではないか、と私は予測しています。理由は、そのようなルールのほうが、市場が広がるからです」、「今、メタバースの関係者が早期に着手すべきはルール作りなのかもしれません」、その通りのようだ。 「ロレックス好きな人がロレックスを酒場で見せびらかすだけでなく、メタバース上でアバターにロレックスを身に着けさせ、自分が富裕層であることをさりげなくアピールするような使い方ができます。 過去に発売したロレックスも正規店に持ち込んでNFTを発行してもらえるようにすれば、メタバースが拡大した時代には、アバターは普通の腕時計をしているのにリアルな場ではロレックスを着けている人は怪しいかもしれない」、なるほど。 「まだルールが定まっていないメタバースビジネスで、ナイキのようなIP側(ブランドなどの権利を持っている側)とメタバースを運営するプラットフォーム側で、どのような取り分でビジネスの利益を分け合うのか自体が双方のビジネス戦略になります。その予測も踏まえて、未来について解説したい」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン
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スタートアップ(その8)(VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス 「チームも製品も素晴らしい」だけでは足りない、国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」) [イノベーション]

スタートアップについては、昨年5月1日に取上げた。今日は、(その8)(VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス 「チームも製品も素晴らしい」だけでは足りない、国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」)である。

先ずは、本年5月12日付け東洋経済オンラインが掲載したアンドリーセン・ホロウィッツ マネージング・パートナーのスコット・クポール氏による「VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス 「チームも製品も素晴らしい」だけでは足りない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/661596
・『起業家が資金調達を考える際の有力な候補の1つに、ベンチャーキャピタルがある。 シリコンバレーの著名なVC、アンドリーセン・ホロウィッツの最初期のメンバーであり、起業家としての経験も持つスコット・クポール氏の著書『VCの教科書』から、VCがアーリー・ステージの投資先をどのように判断するのかについて、抜粋・編集して3回に分けてお届けしよう。今回は3回目となる』、興味深そうだ。
・『なぜ大規模な市場が好ましいのか?  VCがアーリー・ステージで投資機会の評価に用いる基準として、人、製品、市場がある。 前々回では人について、前回は製品について見た。ここでは、「市場」について解説しよう。 VCにとって最も重要なものは、創業者が追求する市場機会の最終的な規模ということがわかっている。 不動産についての格言が、「1に立地、2にも3にも立地」ならば、VCの場合は、「1に市場規模、2にも3にも市場規模」だ。大規模な市場が好ましく、小規模な市場は好ましくない。 その理由は? 大きな市場のルールは、べき乗則カーブと「本塁打率」の説明から直接導かれる。 VCが正解よりも誤りが多いならば、また、VCとしての成功(または失敗)が投資の20~30%をホームランできるかどうかの結果であるならば、勝者の規模だけが重要になる。 ベンチャー投資の犯す誤りは、カテゴリーを正確に選びながら、正しくない企業を選ぶことだ。それに加えて、あと2つの誤りがある。) ひとつは、正しい企業を選ぶが、誤った市場を選ぶことだ。つまり、優良で利益の大きなビジネスを行い、チームも製品も素晴らしいが、さほど大きくない市場にいる企業に投資することだ。 チームがいかに業務を立派に遂行しても、収益が5000万~1億ドルに達しなければ、その企業の時価総額は伸びない。 もうひとつは、不作為の罪は作為の罪よりも重いということだ。 最終的に失敗に終わった企業にVCが投資することはかまわない。このビジネスではよくあることだ。 やってはいけないことは、次のフェイスブックになる企業に投資しないことだ。このビジネスで成功を収めるためには、リスクを回避してはいけない』、「このビジネスで成功を収めるためには、リスクを回避してはいけない」、なるほど。
・その市場は、必要なリターンをもたらしうるか?  以上の点から、VCは大きな市場機会に投資すべきだという自明の理が導かれる。小さな市場で成功を収めても、ビジネス継続のために必要なリターンを、決してVCにもたらさない。 たとえば、スタートアップの成功の可能性を評価する際、VCは市場規模を「そんなの大した問題じゃない」と考えることがよくある。 だが素晴らしいチームと素晴らしい製品はいいとして、市場規模がビッグビジネスを維持するのに十分でなければ、それは大した問題、ということになる。 ベンチマーク・キャピタルの創業者アンディ・ラクレフはこう言っている。平凡なチームでも巨大な市場にいれば企業は成功できるが、素晴らしいチームでも貧弱な市場にいては必ず失敗する。 市場規模を適切に評価することが、なぜそれほど難しいのか?それは、市場の実際の大きさは、投資する時点ではわからないことが多いからだ。だから、市場を評価する際に、VCはさまざまな形で自らをごまかしている。 新製品が既存製品にそのまま置き換わる場合、市場規模は最も評価しやすい。 例としてデータベースを挙げよう。 オラクルはデータベース市場では巨大企業なので、その市場機会をつかもうとするスタートアップは、大きな市場で勝負することになると難なく推測できる。いとも簡単なことだ。 だが、データベース市場全体が、時間がたつにつれてどう展開するのかはわからない。) データベースの機能に取って代わる新たなテクノロジーが現れて、市場を空洞化することになるのか? それとも、クラウド・コンピューティングがワークフローで主流となるにつれて、データベースを必要とするアプリケーションの数が飛躍的に増加し、結果としてデータベース市場が今以上に大きくなるのか? どちらも良い質問だが、おそらくほとんどのVCは、データベース市場を狙うスタートアップには大企業を築くのに十分な規模の市場があるので、もし成功すれば投資のホームランになると考えるだろう』、「ほとんどのVCは、データベース市場を狙うスタートアップには大企業を築くのに十分な規模の市場があるので、もし成功すれば投資のホームランになると考えるだろう」、なるほど。
・『エアビーアンドビーの市場規模は?  市場規模の見積もりをさらに難しくするのは、現在存在しない市場を狙うスタートアップや、テクノロジー的な制約があるためまだ規模が小さい市場を狙うスタートアップがもたらす影響だ。 たとえばエアビーアンドビーを考えてみよう。同社が最初に資金を集めたとき、使用した事例の大部分は、他人の家のソファで寝る人たちだった。 そのような、ひどくお腹を空かせている大学生がどれくらいいるのか調べればーーハンバーガーやチーズやラーメン、つまり、お腹を空かせた大学生が購入するその他製品の市場規模と同じようにーー論理的に結論を下すこともできただろう。 だが、時間がたつにつれて、サービスがほかの要素にまで拡大したらどうなるだろう?そのときはおそらく、既存のホテル市場が、全体的な市場規模の代わりとなるだろう。 なるほど、だがエアビーアンドビーの予約しやすさや低価格により、それまであまり旅行しなかった人たちが旅行するようになったらどうだろうか? 宿の必要な旅行者の市場が、エアビーアンドビーの登場によってむしろ拡大したとしたら? 今になってみると、エアビーアンドビーの成功は、これまでなかった旅行宿泊施設の新形態のおかげで、市場規模が拡大したことが背景にあると思われる。 幸運をつかむか逃すかは、VCの市場規模を理解する能力、発展途上の新市場でテクノロジーの果たす役割について創造的に考える能力によって決まるのだ』、「幸運をつかむか逃すかは、VCの市場規模を理解する能力、発展途上の新市場でテクノロジーの果たす役割について創造的に考える能力によって決まるのだ」、いずれも、そんなに容易いことではないようだ。

次に、6月12日付け東洋経済オンライン「国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」」を紹介しよう。
・『「われわれの想定とは、まったく違う税務上の解釈となりました」──。6月上旬、都内に本社を置くあるスタートアップ企業の経営陣は、社員にそのような説明を行った。 事の発端は5月29日、あるストックオプション(SO)の税率をめぐって国税庁が示した見解にある。SOはあらかじめ決めた価格で自社株を買える権利で、「株式購入権」ともいう。そのうち「信託型SO」が焦点となった。 スタートアップ関係者らを集めて開かれた説明会の場で国税庁の担当者は、「(SOの)権利行使と株式の交付が行われている場合、給与課税の対象となり、源泉所得税の納付が必要」などと指摘。これにより、約800社に及ぶとされる信託型SOの発行企業には突如、追加の税負担が生じることとなった。冒頭の会社もその一社だ』、「約800社に及ぶとされる信託型SOの発行企業には突如、追加の税負担が生じることとなった」、大変な混乱だ。
・『株売却時の課税のみと考えられていた  SOは通常、役員や社員に直接与えられる。それに対して信託型では、信託会社などにオプションプール(SOの交付枠)として割り当て、信託契約期間中や契約終了時に、企業が指定する役員や社員などに同一条件のSOを交付する。 発行時に、誰にどれだけ権利を与えるかを決めておく必要がなく、SOの発行後に入社した人も同一条件でSOを得ることができる公平性などを売りにしていた。従来この信託型SOは、SOの行使時に給与所得課税は行われず、株式売却時の譲渡益課税のみになるとの見方が広がっていた。 ところが国税庁が示した見解に沿えば、役職員が信託型SOを行使した時点で、給与所得として最大55%の課税がなされる。20%の譲渡益課税が生じる前の時点で、キャッシュインなき課税が発生する。 SOの行使と株式の売却でキャピタルゲインを得て20%の納税をすでにしていても、過去5年にさかのぼり、給与所得として追徴課税される。年収4000万円を超えていた場合は、最高税率55%が課せられる。 「所属会社の税解釈を信じてお金を使い切っていた場合、納税のために家などの資産を手放さざるをえない人が出てくるのでは」。スタートアップ関係者からは不安の声が上がる。 信託型SOを導入していた会社やそれを支援していたコンサルティング会社などは行使時点の課税について、一貫して負担は生じないと見ていた。しかし国税庁の説明で、それがひっくり返ることとなった』、「従来この信託型SOは、SOの行使時に給与所得課税は行われず、株式売却時の譲渡益課税のみになるとの見方が広がっていた。 ところが国税庁が示した見解に沿えば、役職員が信託型SOを行使した時点で、給与所得として最大55%の課税がなされる。20%の譲渡益課税が生じる前の時点で、キャッシュインなき課税が発生する。 SOの行使と株式の売却でキャピタルゲインを得て20%の納税をすでにしていても、過去5年にさかのぼり、給与所得として追徴課税される。年収4000万円を超えていた場合は、最高税率55%が課せられる」、「コンサルティング会社など」の見方を勝手に信じていたのが悪いともいえる。
・『信託型ストックオプションでの課税の流れ  源泉所得税を徴収して納付する立場の企業では、会計上の損失計上が必要になる可能性もある。 日本公認会計士協会や企業会計基準委員会(ASBJ)の見解次第では、信託型SOを発行し、すでに役職員による行使が行われていた場合、追加の税負担を会計上で処理しなければならなくなる。上場企業では、人工知能(AI)開発で知られるPKSHA Technologyなどで、その影響が大きいとみられている。 いったいなぜ、このような事態になってしまったのか。あるベンチャーキャピタルの幹部は、「信託型SOはもともと課税関係がグレーだった。今回の件を機に抜け道がふさがれたのはよかった」と指摘する。 一方で投資先が信託型SOを導入している別のベンチャーキャピタルの幹部は、「多くの会社が慎重に調べて信託型SOを導入している。課税関係はクリアだったと信じており、国による後出しじゃんけんは許せない。『税金が安い』と推奨してきたコンサル会社の罪も大きい」と憤る』、「「信託型SOはもともと課税関係がグレーだった。今回の件を機に抜け道がふさがれたのはよかった」と指摘」、「『税金が安い』と推奨してきたコンサル会社の罪も大きい」と憤る」、なるほど。
・『SOの環境整備では一歩前進  立場によって見方は分かれるが、国税庁は説明会当日、日本のスタートアップにとって追い風となるSOの環境整備策も公表している。それは一定の要件を満たすことで、税制の優遇措置を受けることができる「税制適格SO」の行使時における新たな株価算定ルールだ。 従来は明確な算定式がなく保守的な運用が行われていたが、新ルールによって、20%の譲渡益課税のみで済む税制適格SOが発行しやすくなる。信託型SOの特長だった低い行使価格で、税制適格SOを発行できるメリットが生まれる。 自社でも信託型SOを発行していたフォースタートアップスの志水雄一郎社長は、「株価算定ルールが新しくなったのは画期的。既存の信託型SOを新しくして、税制適格SOの仕組みにつくり直すところが多くなるだろう」と予測する。 SOの環境整備をめぐっては、政治による後押しも進む。自民党は5月に公表した提言で、株主総会の決議事項であるSOの行使期間や期間に関する承認を取締役会に委任できるよう会社法を改正することなどを求めた。政府の側も、使い勝手のよいSOの制度設計はスタートアップの人材獲得力向上に欠かせないという意識を持っている。 「国税ショック」を機に、日本のスタートアップの活性化に弾みをつけられるか』、「日本のスタートアップにとって追い風となるSOの環境整備策も公表している。それは一定の要件を満たすことで、税制の優遇措置を受けることができる「税制適格SO」の行使時における新たな株価算定ルールだ」、「「株価算定ルールが新しくなったのは画期的。既存の信託型SOを新しくして、税制適格SOの仕組みにつくり直すところが多くなるだろう」と予測する」、こんな「優遇措置」も出していたようだ。
タグ:「約800社に及ぶとされる信託型SOの発行企業には突如、追加の税負担が生じることとなった」、大変な混乱だ。 東洋経済オンライン「国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」」 「幸運をつかむか逃すかは、VCの市場規模を理解する能力、発展途上の新市場でテクノロジーの果たす役割について創造的に考える能力によって決まるのだ」、いずれも、そんなに容易いことではないようだ。 「ほとんどのVCは、データベース市場を狙うスタートアップには大企業を築くのに十分な規模の市場があるので、もし成功すれば投資のホームランになると考えるだろう」、なるほど。 「このビジネスで成功を収めるためには、リスクを回避してはいけない」、なるほど。 スコット・クポール氏の著書『VCの教科書』 スコット・クポール氏による「VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス 「チームも製品も素晴らしい」だけでは足りない」 東洋経済オンライン (その8)(VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス 「チームも製品も素晴らしい」だけでは足りない、国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」) スタートアップ 「従来この信託型SOは、SOの行使時に給与所得課税は行われず、株式売却時の譲渡益課税のみになるとの見方が広がっていた。 ところが国税庁が示した見解に沿えば、役職員が信託型SOを行使した時点で、給与所得として最大55%の課税がなされる。20%の譲渡益課税が生じる前の時点で、キャッシュインなき課税が発生する。 SOの行使と株式の売却でキャピタルゲインを得て20%の納税をすでにしていても、過去5年にさかのぼり、給与所得として追徴課税される。年収4000万円を超えていた場合は、最高税率55%が課せられる」、 「コンサルティング会社など」の見方を勝手に信じていたのが悪いともいえる。 「「信託型SOはもともと課税関係がグレーだった。今回の件を機に抜け道がふさがれたのはよかった」と指摘」、「『税金が安い』と推奨してきたコンサル会社の罪も大きい」と憤る」、なるほど。 「日本のスタートアップにとって追い風となるSOの環境整備策も公表している。それは一定の要件を満たすことで、税制の優遇措置を受けることができる「税制適格SO」の行使時における新たな株価算定ルールだ」、 「「株価算定ルールが新しくなったのは画期的。既存の信託型SOを新しくして、税制適格SOの仕組みにつくり直すところが多くなるだろう」と予測する」、こんな「優遇措置」も出していたようだ。
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人工知能(AI)(その15)(「ChatGPTの生みの親」爆発的人気に透ける葛藤 毀誉褒貶のオープンAIだが 拡大は止まらない、ChatGPTの情報は画一的 「生成系AI」は民主主義社会を支えるツールたり得るか、AIに潜む「蛾」の正体 リスクが脅威になる前にすべきこと) [イノベーション]

人工知能(AI)については、本年4月17日に取上げた。今日は、(その15)(「ChatGPTの生みの親」爆発的人気に透ける葛藤 毀誉褒貶のオープンAIだが 拡大は止まらない、ChatGPTの情報は画一的 「生成系AI」は民主主義社会を支えるツールたり得るか、AIに潜む「蛾」の正体 リスクが脅威になる前にすべきこと)である。

先ずは、本年4月19日付け東洋経済オンライン「「ChatGPTの生みの親」爆発的人気に透ける葛藤 毀誉褒貶のオープンAIだが 拡大は止まらない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/666240
・『爆発的に普及する対話型AIのChatGPT。日本企業の中にも社内での業務や事業に活用しようという動きがある一方で、サイバーセキュリティや著作権法上のリスクもある。4月17日発売の『週刊東洋経済』では「ChatGPT 仕事術革命」を特集。「第4次AIブーム」の本格的な到来に備えて会社員が知るべき生成AIの今を追った。(この記事は本特集内にも収録されています) ChatGPTの登場で一躍有名になったのが、人工知能(AI)の研究開発を行う米オープンAIだ。 社会を大変革する技術を生み出した同社だが、足元ではその潜在的リスクの大きさや、データ収集の違法性をめぐって批判にさらされてもいる。いったい、どんな素性の企業なのか』、興味深そうだ。
・『当初は家庭用ロボット向けの開発も  オープンAIは、2015年に非営利法人として設立された。共同議長に就いたのは、現在CEOを務めるサム・アルトマンと、米テスラなどのCEOとして知られるイーロン・マスクだ。 今でこそ大規模言語モデル(LLM)の開発で知られる同社だが、設立翌年に発表された「テクニカルゴールズ」を見ると、それに特化していたわけではない。 ゴールとして定めたのが、家庭用ロボット向けのアルゴリズム導入、自然言語を理解するAIの構築、単一AIでのさまざまなゲーム解決など。 設立当初はとくに、ゲーム解決に必要な「強化学習」のための製品を複数出していた。強化学習とは、与えられた条件下で最大限の結果が出るようにAIの行動を最適化させる手法のこと。 例えば、2016年に発表された「OpenAI Gym」は、ユーザーが開発したAIが強化学習するのを支援するツールだ。2018年には、強化学習をさせたオンライン対戦ゲーム『Dota 2』のAIシステムを発表し、翌年には人間の世界王者に勝利している。 当時のオープンAIを知るゲーム開発者は「多くのゲーム会社が、同社のツールを導入してソフトに搭載するAIの開発をしていた。言語モデルの開発をメインにしている印象はなかった」と振り返る。 ただ実際は、並行して言語モデルの開発も進めていた。2018年には、言語モデルの初代となるGPTを発表。翌2019年にはGPT-2、2020年にはGPT-3と、モデルの表現力や性能を更新していった。今年3月には、大方の予想よりも早くGPT-4を発表し、その飛躍的な性能向上を見せつけた。) オープンAIが言語モデルの開発に邁進するのは、同社がミッションとして掲げる「AGIが全人類に利益をもたらすことを確実にすること」を達成するためだ。 AGIとは「汎用人工知能」のこと。限られた用途でしか使えない現状のAIとは異なり、人間に匹敵する、あるいは超人間的な知性を備える。 今年2月に公表された「Planning for AGI and beyond」という文書には、AGIに関するアルトマンCEOの考え方が記されていた。曰(いわ)く、その実現により、世界経済や新しい科学的知識の発見を活性化させ、人間の創造性にも大きな力を与える、という。 AGIの実現には今後複数の技術的ブレークスルーが必要だが、言語モデルの進化はその重要な道のりの1つ、というわけだ』、「オープンAIは、2015年に非営利法人として設立。共同議長に就いたのは、現在CEOを務めるサム・アルトマンと、米テスラなどのCEOとして知られるイーロン・マスクだ」、「マスク」氏が「共同議長」だったとは初めて知った。「設立当初はとくに、ゲーム解決に必要な「強化学習」のための製品を複数出していた。強化学習とは、与えられた条件下で最大限の結果が出るようにAIの行動を最適化させる手法」、「「多くのゲーム会社が、同社のツールを導入してソフトに搭載するAIの開発をしていた。言語モデルの開発をメインにしている印象はなかった」と振り返る。 ただ実際は、並行して言語モデルの開発も進めていた」、「2018年には、言語モデルの初代となるGPTを発表。翌2019年にはGPT-2、2020年にはGPT-3と、モデルの表現力や性能を更新していった。今年3月には、大方の予想よりも早くGPT-4を発表し、その飛躍的な性能向上を見せつけた。) オープンAIが言語モデルの開発に邁進するのは、同社がミッションとして掲げる「AGIが全人類に利益をもたらすことを確実にすること」を達成するためだ。 AGIとは「汎用人工知能」のこと。限られた用途でしか使えない現状のAIとは異なり、人間に匹敵する、あるいは超人間的な知性を備える」、「「Planning for AGI and beyond」という文書には、AGIに関するアルトマンCEOの考え方が記されていた。曰(いわ)く、その実現により、世界経済や新しい科学的知識の発見を活性化させ、人間の創造性にも大きな力を与える、という。 AGIの実現には今後複数の技術的ブレークスルーが必要だが、言語モデルの進化はその重要な道のりの1つ、というわけだ」、「汎用人工知能」を目指した動きとは初めて知った。
・『AGI実現のための「公共財」を提供  2018年の「オープンAI憲章」によれば、同社は社会がAGI実現への道を歩むための「公共財」を提供するとし、従業員や利害関係者により全人類への利益供与を損なう事態を最小限にするという。オープンAIが非営利の研究開発機関として設立されたゆえんだ。) ただ、今のオープンAIはこの憲章と異なる方向に突き進んでいるようにみえる。 2019年には非営利法人である本体の子会社として、営利企業である「オープンAI LP」を設立。また同年、米マイクロソフトが同社に対する10億ドルの出資と包括的パートナーシップを結ぶことを発表している。 マイクロソフトは2020年9月、新しいAIサービスを開発するためGPT-3の独占的ライセンスを締結。WordやExcelといったオフィス製品を含めた製品群へのAI搭載を加速させていく計画だ。今後数年間で数十億ドルの追加出資を行うことも決まっている。 膨大な計算能力が必要なAIシステムの開発には多くの設備投資が必須で、オープンAIにとってこの提携のうまみは大きい。ただ、同社が資本主義に組み込まれることを批判する声は少なくない。 2018年にオープンAIの理事会を離れたイーロン・マスクは、3月24日のツイッター投稿で「マイクロソフトは投資の一環でオープンAIのコード基盤全体への独占的なアクセス権を獲得した。ChatGPTは完全に(同社のクラウドサービスである)Azureの中に収まっており、いざとなればすべてを手に入れることができる」と警鐘を鳴らした』、「今のオープンAIはこの憲章と異なる方向に突き進んでいるようにみえる。 2019年には非営利法人である本体の子会社として、営利企業である「オープンAI LP」を設立。また同年、米マイクロソフトが同社に対する10億ドルの出資と包括的パートナーシップを結ぶことを発表している。 マイクロソフトは2020年9月、新しいAIサービスを開発するためGPT-3の独占的ライセンスを締結。WordやExcelといったオフィス製品を含めた製品群へのAI搭載を加速させていく計画だ。今後数年間で数十億ドルの追加出資を行うことも決まっている。 膨大な計算能力が必要なAIシステムの開発には多くの設備投資が必須で、オープンAIにとってこの提携のうまみは大きい」、これに対し、「オープンAIの理事会を離れたイーロン・マスクは、3月24日のツイッター投稿で「マイクロソフトは投資の一環でオープンAIのコード基盤全体への独占的なアクセス権を獲得した。ChatGPTは完全に(同社のクラウドサービスである)Azureの中に収まっており、いざとなればすべてを手に入れることができる」と警鐘を鳴らした」、「オープン」な開発と、「巨額の設備投資」と有料サービスでの回収の関係は、確かに難しい問題だ。 
・『安全性に対する懸念  足元では、安全性に対する懸念も表明されている。3月28日には、AIの安全性を研究するFuture of Life Institute(FLI)が、GPT-4よりも強力なAIシステムの開発・運用を6カ月以上停止することを呼びかけ、AIの急速な進化に警鐘を鳴らした。イーロン・マスクや米アップル共同創業者のスティーブ・ウォズニアックら、1000名以上が署名したとされる。 同31日には、イタリアのデータ保護当局がChatGPTの利用の一時禁止を発表。同社がAIの学習に用いるデータ処理が法令に違反していることや、青少年への悪影響などがその理由だ。 こうした動きを受けてか、オープンAIは4月5日に「強力なAIを安全に、広く有益な形で維持することを約束する」などと記した声明を発表している。 ただ、逆風下でも足元の勢いに急ブレーキがかかる様子はない。外部の企業が開発したアプリなどと接続できるChatGPTのAPIが公開されたことで、機能を搭載した製品やサービスは加速度的に増えている。この先にあるのは「全人類への利益」か、巨大企業による「強大な技術の独占」か。行方を注視することが必要だ』、「足元では、安全性に対する懸念も表明されている。3月28日には、AIの安全性を研究するFuture of Life Institute(FLI)が、GPT-4よりも強力なAIシステムの開発・運用を6カ月以上停止することを呼びかけ、AIの急速な進化に警鐘を鳴らした。イーロン・マスクや米アップル共同創業者のスティーブ・ウォズニアックら、1000名以上が署名したとされる。 同31日には、イタリアのデータ保護当局がChatGPTの利用の一時禁止を発表。同社がAIの学習に用いるデータ処理が法令に違反していることや、青少年への悪影響などがその理由だ。 こうした動きを受けてか、オープンAIは4月5日に「強力なAIを安全に、広く有益な形で維持することを約束する」などと記した声明を発表している」、今後はどう展開していくのだろう。

次に、5月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「ChatGPTの情報は画一的、「生成系AI」は民主主義社会を支えるツールたり得るか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323363
・『ChatGPTは対話型だが、私が誰であるかを知らない  ChatGPTのような対話型の生成系AIを使うと、多くの人はしばしば、自分が深く理解されていると感じてしまう。 個人個人が投げかける質問や指示に、それぞれ異なる回答を出してくれるからだ。 これまでのマスメディアとは全く違う!ChatGPTは、利用者の個別事情を理解して対応してくれる! こうした思いを抱くかもしれないが、しかしこれは錯覚にすぎない。 ChatGPTなどが、個々人の多様な事情や考え方を学習したり記憶したりする能力は限定的で、個々人に応じてや多角的な視点で答えをだすまでの能力はない。 対話型生成系AIを使う場合に認識すべき最も重要な点は、このことだ。私はChatGPTがどのようなものであるかをおよそは知っている。しかし、ChatGPTは私が誰かを知らないのだ。)(これ以降は、有料だが、今月の閲覧本数残り4本までは無料。) これを理解するには、あなたがよろず相談人になったと想像すればよい。ChatGPTの利用者は、現在約1億人と言われるので、1億人があなたのところに相談に押し寄せると想像しよう。 突如として誰か一人があなたの前に現れ、「この問題をどう解決したらよいのか、アドバイスがほしい」と相談を持ち掛ける。しかし、あなたはその人が誰であるかを全く知らない。だから、具体的なアドバイスを出すことはできない。 この状況は、生成系AIの場合にも同じだ。1億人が押し寄せてくる。そして、それぞれが自分だけの困りごとや疑問・質問への答えや、アドバイスを求めてくる。 しかし、AIは、その一人一人が誰であるかを知らない。だから、当然のことながら、それぞれの個々の状況に応じた具体的なアドバイスを提供することはできない』、「AIは、その一人一人が誰であるかを知らない。だから、当然のことながら、それぞれの個々の状況に応じた具体的なアドバイスを提供することはできない」、言われてみれば、その通りだ。
・『マスメディアや検索エンジンより親身になってくれるように思える  マスメディアも、全ての視聴者や読者に向けて同じ情報を発信している。私たちはそれをよく知っている。それに対して、対話型生成系アプリは、対話形式をとる。そして、個々の場合に、異なる情報を提供している。だから、前記のような錯覚に陥るのだ。 これは従来の検索エンジンとも違う点だ。検索エンジンは、私たちが問いを投げ掛けると、候補のサイトを一覧で示し、それを私たちに引き渡して去ってしまう。だから、検索エンジンは私たちに対して、相談に乗ってくれるような感覚を与えない。検索エンジンは単に情報を提供し、それ以上のことはしない これに対して対話型AIは、利用者の個々の問いに対して真剣に考え、適切な回答を見つけてくれているかのように感じるのだ。こうした体験は私たちにとって新鮮で、それが対話型生成AIの大きな魅力となっている。 しかし、ここで忘れてならないのは、対話型AIが私たちに与える「こちらを見て相談に乗ってくれる」感覚は、実は単なる錯覚に過ぎないという事実だ。中身は同じなのだが、利用者の質問文や指示文にあわせて、見掛けを変えているだけだ』、「対話型AIは、利用者の個々の問いに対して真剣に考え、適切な回答を見つけてくれているかのように感じるのだ。こうした体験は私たちにとって新鮮で、それが対話型生成AIの大きな魅力となっている。 しかし、ここで忘れてならないのは、対話型AIが私たちに与える「こちらを見て相談に乗ってくれる」感覚は、実は単なる錯覚に過ぎないという事実だ。中身は同じなのだが、利用者の質問文や指示文にあわせて、見掛けを変えているだけだ」、なーんだ。
・『一時的には1対1だが記憶の保持は限定的  対話型AIは、一定の時間内であれば、私のことを覚えている。 これによって、「先ほどの回答を少し変えて」とか、「先ほどの質問の後半を変えて」などという問い掛けをすることが可能になる。同じことを何度も繰り返す必要がなくなるため、対話がスムーズに進む。 しかし、この記憶の保持は限定的だ。ChatGPT4の場合は、比較的長い間、多くの回答や質問を記憶することができる。その期間内であれば、私は1億分の1の利用者ではなく、まるで二人だけで話をしているかのように感じられる。それまでの対話の内容に基づく回答が得られるためだ。 しかし、一定の時間が過ぎると、私についての記憶は消えてしまい、私は再び1億分の1の利用者となってしまう』、「ChatGPT4の場合は、比較的長い間、多くの回答や質問を記憶することができる。その期間内であれば、私は1億分の1の利用者ではなく、まるで二人だけで話をしているかのように感じられる。それまでの対話の内容に基づく回答が得られるためだ。 しかし、一定の時間が過ぎると、私についての記憶は消えてしまい、私は再び1億分の1の利用者となってしまう」、やむを得ないようだ。
・『プライバシー保護や公平性の観点からというが  これは、AIが利用者個々の特性や個人情報を記憶することなく、公平に対話するための重要なメカニズムであると同時に、私たちのプライバシーを保護するための重要な機能でもあるとされる。 個別の事情に応じた回答や情報を得られるようにするため、生成系AIを使う場合には、AIに特定の役割を規定するのがよいという提案がある。たとえば「学校の先生になったつもりで答えてほしい」と指示することだ。 こうした規程はもちろん可能だが、筆者がChatGPTにこの方法の有用性を尋ねてみると、「あまり意味がない」との答えが返ってきた。AIに特定の視点や立場を強制し、個々のユーザーに対する公平性を損なう可能性があるからだという。 それよりも、自己紹介のように、自分自身の視点や立場を説明したほうがよいだろう。 つまり、対話型生成系AIを活用する場合には、記憶保持の限定性を理解し、それに合わせて対話することが求められる。一時的な記憶保持の恩恵を享受しつつ、同時にその限定性とそれが意味するものを理解し、適切な使用を心掛ける必要がある』、「対話型生成系AIを活用する場合には、記憶保持の限定性を理解し、それに合わせて対話することが求められる。一時的な記憶保持の恩恵を享受しつつ、同時にその限定性とそれが意味するものを理解し、適切な使用を心掛ける必要がある」、その通りのようだ。
・『マスメディアより平板で画一的情報 懸念される民主主義社会への影響  生成系AIの回答は、われわれが想像する以上に限定的だ。それは画一的、さらにいえば平板と表現すべきものだろう。要するに、何の目新しさもない、毒にも薬にもならない情報だ。 一般的な問い掛けに対して、よく知られた情報や一般的な答えを提供してくれるのだが、それが利用者の主張や考えと全く逆の考えに基づくものであることもしばしばある。 また特定の視点を主張するような文章を生成することを求めても、その要求が必ずしも満たされるわけではない。筆者も不満や腹立たしさを感じることがある。 だが、それは、これまで述べてきた対話型AIの仕組みからすると当然のことだ。 マスメディア、例えばテレビや新聞などは、全ての視聴者や読者に同一の情報を発信しているものの、その中で個人の意見や少数意見を紹介してくれることがある。 対話型生成系AIの場合、「この問題について、少数意見はどんなものがありますか?」と聞くことはできるが、どの程度の少数意見までカバーできるかは、AIの設計や学習データに大きく依存する。 「日本国憲法第9条は必要か?」といった具体的な問題についても、AIが多角的な視点を提供することは保証されていない。 このようなメディアの登場は、多様な考え方や少数意見の尊重が前提になっている民主主義社会にどのような影響を与えるのだろうか? われわれはまだ手探り状態であり、この問題に対する答えを見いだすことができないでいる。生成系AIが人類に投げ掛けた最も大きな問題は、このことだろう』、「「日本国憲法第9条は必要か?」といった具体的な問題についても、AIが多角的な視点を提供することは保証されていない。 このようなメディアの登場は、多様な考え方や少数意見の尊重が前提になっている民主主義社会にどのような影響を与えるのだろうか? われわれはまだ手探り状態であり、この問題に対する答えを見いだすことができないでいる。生成系AIが人類に投げ掛けた最も大きな問題は、このことだろう」、なるほど。

第三に、6月23日付け日経ビジネスオンラインが掲載したロバストインテリジェンス共同創業者の大柴 行人氏による「AIに潜む「蛾」の正体 リスクが脅威になる前にすべきこと」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00548/061600009/
・『私が米ハーバード大学の学生だったころ、研究室のあった理工系学部が入る建物「サイエンスセンター」に巨大な物体が設置されていた。1940年代に登場した米国初のコンピューター「Harvard Mark I(以下、マーク1と表記)」だ。私は毎朝、その物体の目の前を歩いて研究室に通っていた。 コンピューターは誕生当初、一部の研究機関だけが利用するとても特殊な装置だった。「ENIAC」や「IBM 701」など、大きな筐体(きょうたい)にたくさんの電子部品が詰まったその姿は、今や手のひらに収まるスマートフォンを日常的に使用する我々からすれば、信じられないほど遠い過去のもののようにも思える。 しかし、その後の半世紀の間に、コンピューターは何度もの革新を経て性能を飛躍的に向上させ、ユーザビリティーも向上した。パーソナルコンピューターの登場、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)の普及、インターネットの出現、そしてスマホの普及。これら一連の進化によって、コンピューターは今や我々の生活に欠かせない存在となっている。 AI(人工知能)の現状は、コンピューターの黎明(れいめい)期をほうふつとさせる。一部のマニアが研究していただけだったAIが、多くの企業・消費者に活用されるようになり、裾野は急速に広がりつつある。現状は「大規模」言語モデルと呼ばれているモデルについても、コンピューターがそうであったように性能を劇的に向上させつつ、より小規模で安価なモデルが登場する可能性が十分にあるだろう。 さらに、コンピューターがインターネットを介して互いにつながっていったように、すでにAIは様々なアプリケーションをつなぐインターフェースになり始めている。『AI新時代』の幕開けだ』、「現状は「大規模」言語モデルと呼ばれているモデルについても、コンピューターがそうであったように性能を劇的に向上させつつ、より小規模で安価なモデルが登場する可能性が十分にあるだろう」、「コンピューターがインターネットを介して互いにつながっていったように、すでにAIは様々なアプリケーションをつなぐインターフェースになり始めている」、まさに「『AI新時代』の幕開け」のようだ。
・『サイバーセキュリティーの歴史と相似系のAIリスク  冒頭の話には続きがある。マーク1に近づくと奇妙な物体が展示されていることに気づく──。蛾(が)だ。マーク1の計算処理中に機械に混入したもので、ソフトウエアの「バグ(英語で昆虫を指す)」の由来となった。人類史に最も名を残した昆虫と言えよう。 コンピューターの歴史から学べるもう1つの重要な教訓は、技術の進化と普及が進む一方で、常にバグやハッカーとの戦いが続いてきたという事実だ。 初期のコンピューターではハードウエアの故障やソフトウエアのバグが頻繁に発生し、それらを解決するためにエンジニアたちは日夜努力を重ねていた。 そして、インターネットの普及とともに新たなリスク「サイバーセキュリティー」の問題が台頭する。グローバルにつながったネットワークを通じてマルウエアの拡散を目指すハッカーの台頭に対し、多くのプレーヤーが対抗する努力を重ねた。各国政府はサイバーセキュリティーをめぐる行動計画を立て、大企業は専門の部署をつくってこの問題に対処する。そして、研究者やテック企業は攻撃への対応策の開発に努めた。 こうした各ステークホルダー(利害関係者)の努力の歴史を経て、最終的にサイバーセキュリティー産業は世界で30兆円を超えるとされる巨大市場へと成長している。 AIをめぐり今後同じような変化が起きていく。本連載で複数回にわたって紹介してきたように、AIが急速に普及する中で、すでに大きなひずみみが生まれている。AIが他のアプリケーションにつながることによる様々なリスク、対応に追われる大企業、規制に躍起になる各国政府──。既視感があるだろう。 私たちロバストインテリジェンスは2019年から一貫してこの問題に取り組んできた。それはサイバーセキュリティーがわずか数十年で一大産業となったように、AIリスクがAIの拡大とともにサイバーセキュリティーをもりょうがする大きな課題になると考えているからだ。急拡大を続ける「AI新時代の落とし穴」から人類を救うこと、それが我々の使命だ』、「AIが急速に普及する中で、すでに大きなひずみみが生まれている。AIが他のアプリケーションにつながることによる様々なリスク、対応に追われる大企業、規制に躍起になる各国政府──」、「ロバストインテリジェンスは2019年から一貫してこの問題に取り組んできた。それはサイバーセキュリティーがわずか数十年で一大産業となったように、AIリスクがAIの拡大とともにサイバーセキュリティーをもりょうがする大きな課題になると考えているからだ。急拡大を続ける「AI新時代の落とし穴」から人類を救うこと、それが我々の使命だ」、なるほど。
・『社会として、どうAIリスクに向き合うべきか  当然、私たちだけで立ち向かうにはAIリスクは敵として大きすぎる。AIを導入する産業・政府・そして私たちのようなAI技術を持った企業が共同でこの問題に立ち向かっていく必要がある。 (ステークホルダーが共同で問題に対処することが必要の図 はリンク先参照) まず企業の経営層は意識を変革し、AIの持つリスクを経営アジェンダと捉えて向き合うべきだ。これは何よりも、AIの社会実装の流れに乗り遅れず自社の競争力を高める上で不可欠となることだ。前回までの連載で述べてきた通り、実際に先進企業はAI活用とそのリスク管理をセットで進めている。 次に政府は、いわばAIリスクをめぐる「What」や「Why」示す役割を担う。 AIの活用が当たり前となる時代に備え、規制や制度をアップデートしたり、AIという技術のガバナンスについてのスタンダードを積極的に発信したりすべきだ。その際、特にAIという領域においては必ずしも厳しい規制を導入する必要はなく、むしろ技術の激しい変化に対応できる柔軟な仕組みづくりが求められるだろう。 最後にテック企業や研究機関は、実際にAIリスクに対抗するための「How」を示す立場にある。 AIリスクの研究を深め、新たなリスクを予見し、対策となるソリューションを開発するという役割は今後重要性を増すだろう。 また、実際には産業界や政府が持つ情報には限りがあるため、積極的にそれらのセクターに技術的な情報を発信して、それぞれの役割をサポートしていくことも求められる。 AIの社会実装が進み、より「当たり前」になっていく中で、どのステークホルダーが欠けても経済の成長や人々の幸福は実現できないだろう』、「当然、私たちだけで立ち向かうにはAIリスクは敵として大きすぎる。AIを導入する産業・政府・そして私たちのようなAI技術を持った企業が共同でこの問題に立ち向かっていく必要がある」、「企業の経営層は意識を変革し、AIの持つリスクを経営アジェンダと捉えて向き合うべきだ。これは何よりも、AIの社会実装の流れに乗り遅れず自社の競争力を高める上で不可欠となることだ」、「政府は、いわばAIリスクをめぐる「What」や「Why」示す役割を担う。 AIの活用が当たり前となる時代に備え、規制や制度をアップデートしたり、AIという技術のガバナンスについてのスタンダードを積極的に発信したりすべきだ。その際、特にAIという領域においては必ずしも厳しい規制を導入する必要はなく、むしろ技術の激しい変化に対応できる柔軟な仕組みづくりが求められるだろう」、「テック企業や研究機関は、実際にAIリスクに対抗するための「How」を示す立場にある。 AIリスクの研究を深め、新たなリスクを予見し、対策となるソリューションを開発するという役割は今後重要性を増すだろう。 また、実際には産業界や政府が持つ情報には限りがあるため、積極的にそれらのセクターに技術的な情報を発信して、それぞれの役割をサポートしていくことも求められる」、「AIの社会実装が進み、より「当たり前」になっていく中で、どのステークホルダーが欠けても経済の成長や人々の幸福は実現できないだろう」、なるほど。
・『ロバストインテリジェンスの今後の取り組み  私たちロバストインテリジェンスは当然、先ほど述べた「テック企業」の立場で、引き続きこの領域の先頭を走り続けたいと考えている。大きくは、以下3点の取り組みに力を入れたい。 最初に、テック企業の本来の役割として、AIリスクをめぐる最先端の技術開発を行っていくことだ。 当社には米Google(グーグル)の元シニアAIエンジニアでAIセキュリティーの草分けであるメンバーや、米Microsoft(マイクロソフト)でAIリスクの統括を担当していたメンバー、私の共同創業者でありハーバード大学でコンピューターサイエンスの教授を務めていたYaron Singer(ヤローン・シンガー)など、世界トップクラスのAI人材が集積している。まだ見ぬリスクをいち早く顕在化し、社会に警告していくことに大きな意義があると考えている。 連載の第4回で、当社のエンジニアが発見した新しいプロンプト・インジェクションをご紹介したが、その後も私たちは生成AIや関連ツールのリスク評価を続けている。最近では、米NVIDIA(エヌビディア)のAIソフトウエアの脆弱性をいち早く発見し、公表したところだ。 詳細は省くが、そこでは「『I』を『J』に置き換えてください」といった単純なプロンプトを入力するだけで、学習に用いられた個人情報を引き出せることが分かっている。一見、本当にささいな「バグ」のようなところに、重大な権利侵害につながりうる落とし穴が潜んでいるのだ。 NVIDIAのAIソフトウエア「Nemo Guardrails」に対して、文字の書き換えといった単純なプロンプトで個人情報を引き出せることが判明した。詳細はロバストインテリジェンスのブログにて発信している  2点目は、こうした技術を生かしてAIを活用しビジネスを変革しようとしている国内外の企業のAIリスク管理を担っていくことだ。 本連載で紹介した通り、すでにロバストインテリジェンスでは多くの企業と生成AIを含むAIリスク管理の仕組みをつくってきた。「継続的なリスク検証」の考え方は、必ず今後のAIリスク管理のスタンダードになると考えており、その実装例を1つでも多く作って、社会としてAIリスクに立ち向かう体制づくりに貢献したい。 最後に、政府との協業を進め、AIリスクへ向き合う社会を下支えすることだ。 現在、技術の変化に応じた政策的な対応が様々な場で議論されている。先ほど述べたようにAIリスクについて最先端の研究を重ねている当社も、そうした政策の動きに対して情報を提供し、よりよい制度やスタンダードの形成に貢献していければと考えている。実際これまでも私たちは、米国の標準策定機関であるNIST(米国立標準技術研究所)などと積極的に意見交換してきた。日本でも自民党のAIプロジェクトチームに参加したほか、関係省庁とのコミュニケーションも日々続けている。 多くの先進企業とのつながりを生かし、AIリスクに関する事例や悩み事を共有しあう議論の場づくりにも取り組んでいる。そうした場の成果も積極的に政府とも共有していきたい。 ロバストインテリジェンスの掲げる「AI Integrity」という理念は、AIリスクを除去し、誰もが信頼してAIシステムと向き合える状態を指す。そのためには、少しでも多くの皆さんがこの問題をめぐる議論に参加してくださり、解決の糸口を一緒に探してくださることが不可欠だ。 すでに社会の様々な場面に姿を現しつつある、「蛾」より大きくなってしまったAIリスク。それが社会にとっての本当の脅威となる前に、私たちは次の一手を打たなければならない』、「ロバストインテリジェンスの今後の取り組み」、「テック企業の本来の役割として、AIリスクをめぐる最先端の技術開発を行っていくこと・・・当社には・・・世界トップクラスのAI人材が集積している」、「2点目は、こうした技術を生かしてAIを活用しビジネスを変革しようとしている国内外の企業のAIリスク管理を担っていくことだ・・・「継続的なリスク検証」の考え方は、必ず今後のAIリスク管理のスタンダードになると考えており、その実装例を1つでも多く作って、社会としてAIリスクに立ち向かう体制づくりに貢献したい」、「最後に、政府との協業を進め、AIリスクへ向き合う社会を下支えすることだ。 現在、技術の変化に応じた政策的な対応が様々な場で議論されている。先ほど述べたようにAIリスクについて最先端の研究を重ねている当社も、そうした政策の動きに対して情報を提供し、よりよい制度やスタンダードの形成に貢献していければと考えている。実際これまでも私たちは、米国の標準策定機関であるNIST(米国立標準技術研究所)などと積極的に意見交換してきた。日本でも自民党のAIプロジェクトチームに参加したほか、関係省庁とのコミュニケーションも日々続けている」、「自民党のAIプロジェクトチームに参加」、とは抜け目がないようだ。「すでに社会の様々な場面に姿を現しつつある、「蛾」より大きくなってしまったAIリスク。それが社会にとっての本当の脅威となる前に、私たちは次の一手を打たなければならない」、大いに頑張ってもらいたいものだ。 
タグ:「オープンAIは、2015年に非営利法人として設立。共同議長に就いたのは、現在CEOを務めるサム・アルトマンと、米テスラなどのCEOとして知られるイーロン・マスクだ」、「マスク」氏が「共同議長」だったとは初めて知った。 東洋経済オンライン「「ChatGPTの生みの親」爆発的人気に透ける葛藤 毀誉褒貶のオープンAIだが 拡大は止まらない」 人工知能(AI) (その15)(「ChatGPTの生みの親」爆発的人気に透ける葛藤 毀誉褒貶のオープンAIだが 拡大は止まらない、ChatGPTの情報は画一的 「生成系AI」は民主主義社会を支えるツールたり得るか、AIに潜む「蛾」の正体 リスクが脅威になる前にすべきこと) 「設立当初はとくに、ゲーム解決に必要な「強化学習」のための製品を複数出していた。強化学習とは、与えられた条件下で最大限の結果が出るようにAIの行動を最適化させる手法」、「「多くのゲーム会社が、同社のツールを導入してソフトに搭載するAIの開発をしていた。言語モデルの開発をメインにしている印象はなかった」と振り返る。 ただ実際は、並行して言語モデルの開発も進めていた」、 「2018年には、言語モデルの初代となるGPTを発表。翌2019年にはGPT-2、2020年にはGPT-3と、モデルの表現力や性能を更新していった。今年3月には、大方の予想よりも早くGPT-4を発表し、その飛躍的な性能向上を見せつけた。) オープンAIが言語モデルの開発に邁進するのは、同社がミッションとして掲げる「AGIが全人類に利益をもたらすことを確実にすること」を達成するためだ。 AGIとは「汎用人工知能」のこと。限られた用途でしか使えない現状のAIとは異なり、人間に匹敵する、あるいは超人間的な知性を 知性を備える」、「「Planning for AGI and beyond」という文書には、AGIに関するアルトマンCEOの考え方が記されていた。曰(いわ)く、その実現により、世界経済や新しい科学的知識の発見を活性化させ、人間の創造性にも大きな力を与える、という。 AGIの実現には今後複数の技術的ブレークスルーが必要だが、言語モデルの進化はその重要な道のりの1つ、というわけだ」、「汎用人工知能」を目指した動きとは初めて知った。 「今のオープンAIはこの憲章と異なる方向に突き進んでいるようにみえる。 2019年には非営利法人である本体の子会社として、営利企業である「オープンAI LP」を設立。また同年、米マイクロソフトが同社に対する10億ドルの出資と包括的パートナーシップを結ぶことを発表している。 マイクロソフトは2020年9月、新しいAIサービスを開発するためGPT-3の独占的ライセンスを締結。WordやExcelといったオフィス製品を含めた製品群へのAI搭載を加速させていく計画だ。今後数年間で数十億ドルの追加出資を行うことも決まっている。 膨大な計算能力が必要なAIシステムの開発には多くの設備投資が必須で、オープンAIにとってこの提携のうまみは大きい」、 これに対し、「オープンAIの理事会を離れたイーロン・マスクは、3月24日のツイッター投稿で「マイクロソフトは投資の一環でオープンAIのコード基盤全体への独占的なアクセス権を獲得した。ChatGPTは完全に(同社のクラウドサービスである)Azureの中に収まっており、いざとなればすべてを手に入れることができる」と警鐘を鳴らした」、「オープン」な開発と、「巨額の設備投資」と有料サービスでの回収の関係は、確かに難しい問題だ。 「足元では、安全性に対する懸念も表明されている。3月28日には、AIの安全性を研究するFuture of Life Institute(FLI)が、GPT-4よりも強力なAIシステムの開発・運用を6カ月以上停止することを呼びかけ、AIの急速な進化に警鐘を鳴らした。イーロン・マスクや米アップル共同創業者のスティーブ・ウォズニアックら、1000名以上が署名したとされる。 同31日には、イタリアのデータ保護当局がChatGPTの利用の一時禁止を発表。同社がAIの学習に用いるデータ処理が法令に違反していることや、 、青少年への悪影響などがその理由だ。 こうした動きを受けてか、オープンAIは4月5日に「強力なAIを安全に、広く有益な形で維持することを約束する」などと記した声明を発表している」、今後はどう展開していくのだろう。 ダイヤモンド・オンライン 野口悠紀雄氏による「ChatGPTの情報は画一的、「生成系AI」は民主主義社会を支えるツールたり得るか」 「AIは、その一人一人が誰であるかを知らない。だから、当然のことながら、それぞれの個々の状況に応じた具体的なアドバイスを提供することはできない」、言われてみれば、その通りだ。 「対話型AIは、利用者の個々の問いに対して真剣に考え、適切な回答を見つけてくれているかのように感じるのだ。こうした体験は私たちにとって新鮮で、それが対話型生成AIの大きな魅力となっている。 しかし、ここで忘れてならないのは、対話型AIが私たちに与える「こちらを見て相談に乗ってくれる」感覚は、実は単なる錯覚に過ぎないという事実だ。中身は同じなのだが、利用者の質問文や指示文にあわせて、見掛けを変えているだけだ」、なーんだ。 「ChatGPT4の場合は、比較的長い間、多くの回答や質問を記憶することができる。その期間内であれば、私は1億分の1の利用者ではなく、まるで二人だけで話をしているかのように感じられる。それまでの対話の内容に基づく回答が得られるためだ。 しかし、一定の時間が過ぎると、私についての記憶は消えてしまい、私は再び1億分の1の利用者となってしまう」、やむを得ないようだ。 「対話型生成系AIを活用する場合には、記憶保持の限定性を理解し、それに合わせて対話することが求められる。一時的な記憶保持の恩恵を享受しつつ、同時にその限定性とそれが意味するものを理解し、適切な使用を心掛ける必要がある」、その通りのようだ。 「「日本国憲法第9条は必要か?」といった具体的な問題についても、AIが多角的な視点を提供することは保証されていない。 このようなメディアの登場は、多様な考え方や少数意見の尊重が前提になっている民主主義社会にどのような影響を与えるのだろうか? われわれはまだ手探り状態であり、この問題に対する答えを見いだすことができないでいる。生成系AIが人類に投げ掛けた最も大きな問題は、このことだろう」、なるほど。 日経ビジネスオンライン 大柴 行人氏による「AIに潜む「蛾」の正体 リスクが脅威になる前にすべきこと」 「現状は「大規模」言語モデルと呼ばれているモデルについても、コンピューターがそうであったように性能を劇的に向上させつつ、より小規模で安価なモデルが登場する可能性が十分にあるだろう」、「コンピューターがインターネットを介して互いにつながっていったように、すでにAIは様々なアプリケーションをつなぐインターフェースになり始めている」、まさに「『AI新時代』の幕開け」のようだ。 「AIが急速に普及する中で、すでに大きなひずみみが生まれている。AIが他のアプリケーションにつながることによる様々なリスク、対応に追われる大企業、規制に躍起になる各国政府──」、「ロバストインテリジェンスは2019年から一貫してこの問題に取り組んできた。それはサイバーセキュリティーがわずか数十年で一大産業となったように、AIリスクがAIの拡大とともにサイバーセキュリティーをもりょうがする大きな課題になると考えているからだ。急拡大を続ける「AI新時代の落とし穴」から人類を救うこと、それが我々の使命だ」、なる ほど。 「当然、私たちだけで立ち向かうにはAIリスクは敵として大きすぎる。AIを導入する産業・政府・そして私たちのようなAI技術を持った企業が共同でこの問題に立ち向かっていく必要がある」、「企業の経営層は意識を変革し、AIの持つリスクを経営アジェンダと捉えて向き合うべきだ。これは何よりも、AIの社会実装の流れに乗り遅れず自社の競争力を高める上で不可欠となることだ」、 「政府は、いわばAIリスクをめぐる「What」や「Why」示す役割を担う。 AIの活用が当たり前となる時代に備え、規制や制度をアップデートしたり、AIという技術のガバナンスについてのスタンダードを積極的に発信したりすべきだ。その際、特にAIという領域においては必ずしも厳しい規制を導入する必要はなく、むしろ技術の激しい変化に対応できる柔軟な仕組みづくりが求められるだろう」、 「テック企業や研究機関は、実際にAIリスクに対抗するための「How」を示す立場にある。 AIリスクの研究を深め、新たなリスクを予見し、対策となるソリューションを開発するという役割は今後重要性を増すだろう。 また、実際には産業界や政府が持つ情報には限りがあるため、積極的にそれらのセクターに技術的な情報を発信して、それぞれの役割をサポートしていくことも求められる」、「AIの社会実装が進み、より「当たり前」になっていく中で、どのステークホルダーが欠けても経済の成長や人々の幸福は実現できないだろう」、なるほど。 「ロバストインテリジェンスの今後の取り組み」、「テック企業の本来の役割として、AIリスクをめぐる最先端の技術開発を行っていくこと・・・当社には・・・世界トップクラスのAI人材が集積している」、 「2点目は、こうした技術を生かしてAIを活用しビジネスを変革しようとしている国内外の企業のAIリスク管理を担っていくことだ・・・「継続的なリスク検証」の考え方は、必ず今後のAIリスク管理のスタンダードになると考えており、その実装例を1つでも多く作って、社会としてAIリスクに立ち向かう体制づくりに貢献したい」、 「最後に、政府との協業を進め、AIリスクへ向き合う社会を下支えすることだ。 現在、技術の変化に応じた政策的な対応が様々な場で議論されている。先ほど述べたようにAIリスクについて最先端の研究を重ねている当社も、そうした政策の動きに対して情報を提供し、よりよい制度やスタンダードの形成に貢献していければと考えている。実際これまでも私たちは、米国の標準策定機関であるNIST(米国立標準技術研究所)などと積極的に意見交換してきた。日本でも自民党のAIプロジェクトチームに参加したほか、関係省庁とのコミュニケーションも も日々続けている」、「自民党のAIプロジェクトチームに参加」、とは抜け目がないようだ。「すでに社会の様々な場面に姿を現しつつある、「蛾」より大きくなってしまったAIリスク。それが社会にとっての本当の脅威となる前に、私たちは次の一手を打たなければならない」、大いに頑張ってもらいたいものだ。
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人工知能(AI)(その14)(米中が覇権を握る生成AI 人材・資金でかなわない日本、イーロン・マスクですらこの危機感 世界でAI開発停止要求 なのに日本では無批判に国会答弁に使用提言!、チャットGPTの回答「官僚が結局精査」 非公表情報を入力する恐れも…答弁導入に疑問の声) [イノベーション]

人工知能(AI)については、3月20日に取上げた。今日は、(その14)(米中が覇権を握る生成AI 人材・資金でかなわない日本、イーロン・マスクですらこの危機感 世界でAI開発停止要求 なのに日本では無批判に国会答弁に使用提言!、チャットGPTの回答「官僚が結局精査」 非公表情報を入力する恐れも…答弁導入に疑問の声)である。

先ずは、3月20日付けエコノミストOnlineが掲載した立教大学ビジネススクール教授の田中道昭氏による「米中が覇権を握る生成AI 人材・資金でかなわない日本」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20230328/se1/00m/020/055000c
・『あらゆる問いに対して人間が書くような文章で回答する「対話型AI」が出現した。この技術のいったい何が革命的なのかを解き明かす。 対話型AI(人工知能)の「チャットGPT」の出現は、世の中に革命的な変化をもたらした。2022年11月にリリースされて以降、その驚くべき性能に利用者が急増している。 チャットGPTを世に送り出したオープンAIは、当初はAIの発展を目指してイーロン・マスク氏などが出資して15年に設立された非営利組織だった。しかし19年、AI技術を社会で実用化する営利目的の会社として、マイクロソフトなどが10億ドルを出資してオープンAI LP(リミテッド・パートナーシップ)を設立した。 マイクロソフトの参加により、オープンAIはマイクロソフトが持つさまざまなデータやリソース(経営資源)を使えるようになり、開発のスピードが一気に上がったとされる。 GPTとは「Generative Pre-trained Transformer」の略で、事前学習済み(Pre-trained)の文章生成型(Generative)トランスフォーマー(深層学習モデルの名称)を意味する、オープンAI開発の「巨大言語モデル」だ。チャットGPTを動かしている「GPT-3」(現在は改良版のGPT-3.5)のシステムは1750億のパラメーター(変数)を読み込んでおり、前バージョンに比べて性能が格段にアップした』、興味深そうだ。
・『高水準の文章で回答  チャットGPTが対話型で返してくる回答は、現時点においてかなりの水準に達している。 一つ例を挙げると、筆者が主宰するワークショップで研究している企業に、カインズやワークマンを傘下に持つベイシアグループがあるが、「ベイシアグループではどのようなDX(デジタルトランスフォーメーション)をしていますか」と聞いてみると、たちどころに「ベイシアグループでは、DXを推進するために、いくつかの取り組みをしています。例えば……」として複数の項目を答えてくる。 もちろん、正確性に問題はあるかもしれないが、このように文章の形で回答するシステムは、ほんの少し前まで、この世に存在しなかった。このレベルにまで達していることに驚きを覚える。 さらに、マイクロソフトの検索システム「Bing(ビング)」とチャットGPTを組み合わせて使うことで、利便性が飛躍的に高まった。 例えば、ベイシアグループについてBingで検索すると、最上部にチャットGPTの回答、その下側にはグーグルと同じような検索結果が出て、これらを同時に見ることができる。チャットGPTの回答をもっと知りたいと思えば、そこをクリックすると、チャットGPT専用の画面に切り替わる。このような仕組みは非常に有用だ』、「文章の形で回答するシステムは、ほんの少し前まで、この世に存在しなかった。このレベルにまで達していることに驚きを覚える」、すごい進歩だ。「マイクロソフト」と、「チャットGPT」を扱う「オープンAI」の提携はさすが本格的だ。
・『グーグルは「非常事態宣言」  これまでは、検索欄に「ベイシアグループ」と入れると、それに関連する記事などが出てきただけだが、決定的に違うのは、ベイシアグループとは何であるかを「ベイシアグループとは日本の流通企業です……」などといった文章で回答してくることだ。 また、画面の下には、どこから引用してきたかの情報が出ている。そこをクリックすると引用元のサイトに飛べるようになっている。この便利さに圧倒されて、筆者は最近、Bingばかりを使い、グーグルで検索することがなくなった。 チャットGPTの能力の奥深さは計り知れない。オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は「チャットGPTで実現したかったことの一つは、プログラミング言語を知らない人でもプログラムが組めて問題解決できるようになること」とまで語っている。恐るべき可能性を秘めていることは間違いない。 このようなチャットGPTに対して、検索で大きなシェアを持つグーグルはどのように対抗していくのか。グーグルの幹部は大きな危機感を抱き、今年1月に社内に「非常事態宣言」を発した。共同創業者のセルゲイ・ブリン氏は数年ぶりに現場に復帰してAI部門のテコ入れを図るようだ。 もちろんグーグルも生成AI、対話型AIの研究はこれまでも行っている。ただ、グーグルのビジネスモデルは、検索によって得られる情報から広告を提示する「検索広告」が事業の主力。収入の9割以上を広告に依存しているため、下手に新しいサービスを立ち上げることで広告に影響するようなことがあってはならないと、一歩を踏み出せずにいた。 しかし、マイクロソフトがグーグルの牙城である検索に踏み込んできたのだから黙ってはいられない。「検索プラス対話型AI」のサービスを遠くない時期に提供できるよう準備を進めている』、「グーグル」は、「今年1月に社内に「非常事態宣言」を発した」、「共同創業者のセルゲイ・ブリン氏は数年ぶりに現場に復帰してAI部門のテコ入れを図るようだ」、「マイクロソフトがグーグルの牙城である検索に踏み込んできたのだから黙ってはいられない。「検索プラス対話型AI」のサービスを遠くない時期に提供できるよう準備を進めている」、「グーグル」の反攻は上手くいくのだろうか。
・『準備を進める中国・百度  一方、中国はどうなっているのか。中国のグーグルと呼ばれる「百度(バイドゥ)」がその先頭を走る。同社は検索はもちろん、クルマの自動運転なども事業展開してきた会社だ。 今年1月上旬に米ラスベガスで開かれた世界最大級のテクノロジー見本市「CES」で生成AIやチャットGPTが話題になった。驚いたのはグーグルなどに先行して、1月下旬に百度はチャットGPTと似た対話型AIサービスを提供すると発表したことだ。当然ながら、生成AIについてずっと研究・開発を行ってきたからこそ、すぐに追随することが可能になる。 中国企業による開発に一つ利点があるとすれば、扱えるデータ量が多いということだろう。欧米はプライバシー重視の必要があるため、使えるデータに制約がかかる可能性がある。中国にはこのような制約がほとんどないことから、AIの精度を上げるために有利に働くと思われる。 いずれにしても今後、生成AIの分野は、マイクロソフトによるオープンAIとグーグルの米2社、それに中国・百度を加えた3社が、それぞれの世界をプラットフォーマーとして覇権を獲得していく可能性が高い。残念ながら、現時点でこの分野に日本の出番はない。人材面、資金面ともにまったく太刀打ちできないのが実情だ』、「中国企業による開発に一つ利点があるとすれば、扱えるデータ量が多いということだろう。欧米はプライバシー重視の必要があるため、使えるデータに制約がかかる可能性がある。中国にはこのような制約がほとんどないことから、AIの精度を上げるために有利に働くと思われる」、「現時点でこの分野に日本の出番はない。人材面、資金面ともにまったく太刀打ちできないのが実情だ」、寂しい限りだ。
・『危険性認識すべき  ただ、イアン・ブレマー氏が率いる米国の政治リスクの専門コンサルティング「ユーラシアグループ」が23年の10大リスクで「生成AI」を3位にランキングしているように、社会を混乱させる危険性があることは常に意識していなければならない。 ユーラシアグループは「大混乱生成兵器」と題し、AIの技術的な進歩が、デマゴーグを生んだり権威主義者に力を与えたりして、ビジネスや市場を混乱させる危険性があることを示した。 チャットGPTなどの利用によって、コンテンツの作成に参入障壁がなくなると、コンテンツの量は指数関数的に増加していき、市民の多くが事実とフィクションを区別できなくなる。偽情報が横行し、社会的な連帯、商業や民主主義の基盤である信頼が損なわれる可能性があると指摘していることは、十分認識しておくべきだろう』、参考にすべき警鐘だ。

次に、4月9日付け現代ビジネスが掲載した一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「イーロン・マスクですらこの危機感、世界でAI開発停止要求、なのに日本では無批判に国会答弁に使用提言!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108584?imp=0
・『生成系AIの技術開発を一時停止すべきだとの提言が、アメリカでなされました。この技術が持つ潜在的な影響力の大きさを考えれば、当然の懸念です。一方日本では、国会答弁の下書きに利用するというのですが……』、「日本」は他国に先んじて利用したいというスケベ心が見え見えだ。
・『AIを開発しながら慎重な国と無批判に使おうとする国  ChatGPTやBingなど、生成系AIと呼ばれる技術について、その技術開発を半年間ストップさせるべきだとの提言が、アメリカでなされました。 これが 報道された日に、日本では、これと正反対の提言がなされました 。 国会答弁の下書きなどに生成系AIを活用するという提言案を、自民党がまとめたのです。 この2つは、AIに対する基本的な態度の際立った違いを示すものです。 一方は、極めて高度な技術を開発しながら、それを無条件に受け入れるのではなく、その社会的な影響について真剣に検討しようとしています。 もう一方は、外国で開発された技術を、その見かけに幻惑されて、無条件に受け入れようとしています。 この2つの差は極めて深刻なものだと、私は考えます』、「日本」の「提言案」は「自民党がまとめた」ので、本質が理解できないまま「利用」に重点をおいたようだ。
・『生成系AIの技術開発をストップさせる提言  まず、アメリカでの提言は、「人間と競合する知能を持つAIは、社会や人類に深刻なリスクとなりうる」として、強力なAI開発の半年間の停止を訴えています。 さらに、AI開発者は、「自分たちでさえ理解できないデジタル知性を開発する統制不能な競争に陥っている」と批判しています。 これに署名した1000人以上のテクノロジー関係者の中には、起業家イーロン・マスク氏も含まれています。彼は、ChatGPTを開発した企業OpenAIの創業者の1人でした。 現在のAIに、それだけの能力があるとは思えないのですが、将来様々な問題が起こり得ることは否定できないでしょう。この提言が指摘するように、AIの進歩が社会に与える影響は、きわめて大きいと考えざるをえません。 だから、その開発に規制を加えるべきだというのは、 大変重要な問題提起です 。兵器関係の技術以外の技術に関して、これほど強い危惧の念が表明されたのは、初めてのことではないでしょうか? 生成系AIの潜在力は、それほど大きいのです』、「アメリカでの提言は、「人間と競合する知能を持つAIは、社会や人類に深刻なリスクとなりうる」として、強力なAI開発の半年間の停止を訴えています。 さらに、AI開発者は、「自分たちでさえ理解できないデジタル知性を開発する統制不能な競争に陥っている」と批判しています。 これに署名した1000人以上のテクノロジー関係者の中には、起業家イーロン・マスク氏も含まれています」、「AIの進歩が社会に与える影響は、きわめて大きいと考えざるをえません。 だから、その開発に規制を加えるべきだというのは、 大変重要な問題提起です 。兵器関係の技術以外の技術に関して、これほど強い危惧の念が表明されたのは、初めてのことではないでしょうか? 生成系AIの潜在力は、それほど大きいのです」、確かにその通りだ。
・『AIはでたらめな答えを出す  上記の提言は、生成系AIの今後の技術開発に関わるものです。それ以前の問題として、生成系AIが、現在すでに様々な問題を抱えていることも間違いありません。 最大の問題は、誤った答えを出すことです。したがって、 結果を信用することができません。 Bing は、ホームページで、「誤った答えを出すことがあるから、依存しないように」と注意を喚起しています。Googleの対話型AIであるBardは、「自信満々に間違うことがある」とされています。 出力をそのまま信じて利用しようとすれば、深刻な混乱が生じるでしょう。 OpenAIのChatGPTにしても、MicrosoftのBingにしても、またGoogleのBardにしても、未完成の技術を一般の利用に供してしまったと考えざるをません』、「自信満々に間違うことがある」、とは言い得て妙だ。「未完成の技術を一般の利用に供してしまったと考えざるをません」、その通りだ。
・『悪貨が良貨を駆逐する危険  もう一つの問題として私が危惧するのは、優勝劣敗の法則が働かず、逆に、悪貨が良貨を駆逐してしまうことです。 生成系AIは 文章を作るコストを激減させます。内容を指定して、「何字程度の文章を書け」と言えば、数秒のうちに文章を出力します。 その内容は信頼できないものなのですが、読者が受け入れれば、世の中に流通するでしょう。 つまり、内容も誤っているし質も低い文章が、大量に生産される危険があるのです。手抜きの文章が世の中に溢れ、その結果、良質の文章が駆逐されてしまうという事態になりかねないのです。 現在のウェブは、すでにそのような状況になってしまっています。それが加速することが懸念されます』、「内容も誤っているし質も低い文章が、大量に生産される危険があるのです。手抜きの文章が世の中に溢れ、その結果、良質の文章が駆逐されてしまうという事態になりかねない」、恐ろしい事態だ。
・『どうやって規制するのか?  仮に規制が必要であるとしても、その実効確保は難しいでしょう。インターネット上の情報に関して、プロファイリング規制の必要性がいわれています。しかし、その実効性はいまだに確保できていません。生成系AIについても同じことが言えるでしょう。 しかも、Microsoftは、生成系AIにすでに巨額の投資をしています。したがって、上記提言に従って生成系AIの開発をストップさせることは、半年間といえども、現実には不可能ではないでしょうか? 他方で、この技術をうまく使えば、新たな価値が生み出されることも間違いありません。問題は、そのような可能性をいかにして実現していくかでしょう。 したがって、利用者が、この技術を無条件で受けるのではなく、賢明に利用することが求められます。 どんな技術であっても、その見かけに騙されず、賢明な利用方法をすることが重要です。生成系AIについては、とりわけそれが重要なのです』、「利用者が、この技術を無条件で受けるのではなく、賢明に利用することが求められます。 どんな技術であっても、その見かけに騙されず、賢明な利用方法をすることが重要です。生成系AIについては、とりわけそれが重要なのです」、その通りなのだろう。
・『いま行政に取り入れても、混乱が広がるだけ?  本稿の最初に述べたように、日本では、アメリカの提言と正反対の 提言がなされました。自民党が 国会答弁の下書きなどにこれを活用するという提言案をまとめたのです。 しかし、この考えには、首を傾げざるをえません。国会答弁作成にAIを活用しようとしても、能率が上がることはなく、かえって混乱が生じる危険が大きいでしょう。 官僚が国会答弁作成のため、深夜までの勤務を強いられています。私自身も(だいぶ昔のことですが)、この仕事にさんざん苦労させられました。 役人がなぜ夜遅くまで役所に残っているのかといえば、それは、資料の収集や分析などに手間がかかるからではありません。 時間がかかる理由は、第1には国会議員からの質問が夜遅くにならないと得られないことです。それまでの間、役人たちは役所でただ待機しているだけです。この状態が改善されない限り、深夜勤務問題は解決しません。 国会答弁作成に時間がかかる第2の理由は、他部局や他省庁との調整が必要なことです。関係する部局の了解を得られないと、最終答弁にはできません。この過程で、AIは何の役にも立ちません。 AIを使えば答弁に必要な資料やデータなどが簡単に得られると考えられているのかもしれませんが、先に述べたように、AIの出力には誤りが含まれています。この状態が改善されずにAIを使えば、大変な混乱が生じるでしょう。 対話型AIに接したときの人々の反応は、普通、つぎのような経過を辿ります。 第1段階として、知的な人間が書いたような文章がすらすらと出力されるのを見て、驚きます。しかし暫く使っていると、その内容が全くあてにならないことに気づきます。これが、第2段階です。 そして、第3段階として、そのような制約を知った上でどのような利用法があるかだろうと模索するようになります。 自民党の提言は、第1段階に止まっているのではないかと考えざるをえません』、「国会答弁作成」に、「時間がかかる理由は、第1には国会議員からの質問が夜遅くにならないと得られないことです。それまでの間、役人たちは役所でただ待機しているだけです」、「第2の理由は、他部局や他省庁との調整が必要なことです。関係する部局の了解を得られないと、最終答弁にはできません。この過程で、AIは何の役にも立ちません」、「対話型AIに接したときの人々の反応は、普通、つぎのような経過を辿ります。 第1段階として、知的な人間が書いたような文章がすらすらと出力されるのを見て、驚きます。しかし暫く使っていると、その内容が全くあてにならないことに気づきます。これが、第2段階です。 そして、第3段階として、そのような制約を知った上でどのような利用法があるかだろうと模索するようになります。 自民党の提言は、第1段階に止まっているのではないかと考えざるをえません」、「自民党の提言は、第1段階に止まっている」とは手厳しい批判だ。同感である。

第三に、4月12日付け読売新聞「チャットGPTの回答「官僚が結局精査」、非公表情報を入力する恐れも…答弁導入に疑問の声」を紹介しよう。
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230412-OYT1T50033/
・『西村経済産業相が11日の閣議後の記者会見で対話型AI(人工知能)「チャットGPT」で国会答弁を作成する可能性に言及したことについて、専門家からは情報管理の安全性を懸念する声や、導入の効果を疑問視する指摘が出ている。 「結局、チャットGPTの回答を官僚が精査しなければならない」。西村氏が検討理由に掲げる「国家公務員の業務負担軽減」について、元官僚の小峰隆夫・大正大客員教授はそんな見方を示した。 小峰氏は、諸外国の制度の調査など、官僚の業務でチャットGPTを使うメリットは多いとしつつ、「公開情報の中から無理やり回答を作り出すことがあり、うのみにするのは危険だ」と指摘。「政府の公式見解を示す国会答弁をチャットGPTに丸ごと委ねることにはなり得ない」と話した。 国立情報学研究所の佐藤一郎教授(情報学)は、「官僚が答弁を作成する上で非公表情報を入力してしまい、チャットGPTの学習に利用され、機密情報が漏えいするリスクがある」と指摘する。 チャットGPTは、オンライン上の大量の情報を読み込んだ上で、指示に対して新たな文章を生成する。誤った内容でも自然な文章のため気づきにくく、偽情報が拡散する恐れがある。 ほかにも、学習データに著作権のある文章が含まれていた場合、表現がその文章と同じだったり、似通ったりして著作権を侵害する可能性がある。学習データによっては、差別や偏見を助長する答えを返す恐れもある。 教育界からも悪影響を懸念する声が相次いでいる。チャットGPTは論文やリポート、読書感想文なども瞬時に生成するためで、名古屋大の杉山直学長は先月27日の卒業式祝辞で「大学の教育の危機といえる状況」と述べた。 東京大など、学生リポートなどでの利用制限方針を示す大学が相次ぐ。上智大は、リポート作成などに無許可でのチャットGPT利用を認めないと学生に通知。同大の担当者は取材に「教育の質の保証や公平性の観点から、生成AIで作成することは、ひょう窃や他人に依頼して作成させる行為と同様に認めることはできない」とした。 文部科学省も今後、教育現場での取り扱いを示す資料を作成する方針だ』、「「小峰氏は」、「公開情報の中から無理やり回答を作り出すことがあり、うのみにするのは危険だ」と指摘。「政府の公式見解を示す国会答弁をチャットGPTに丸ごと委ねることにはなり得ない」と話した。 国立情報学研究所の佐藤一郎教授(情報学)は、「官僚が答弁を作成する上で非公表情報を入力してしまい、チャットGPTの学習に利用され、機密情報が漏えいするリスクがある」と指摘する。 チャットGPTは、オンライン上の大量の情報を読み込んだ上で、指示に対して新たな文章を生成する。誤った内容でも自然な文章のため気づきにくく、偽情報が拡散する恐れがある。 ほかにも、学習データに著作権のある文章が含まれていた場合、表現がその文章と同じだったり、似通ったりして著作権を侵害する可能性がある。学習データによっては、差別や偏見を助長する答えを返す恐れもある。 教育界からも悪影響を懸念する声が相次いる」、同感である。先に取上げた「自民党の提言」は、余りにも能天気で勉強不足が見え見えだ。
タグ:田中道昭氏による「米中が覇権を握る生成AI 人材・資金でかなわない日本」 エコノミストOnline 人工知能(AI) (その14)(米中が覇権を握る生成AI 人材・資金でかなわない日本、イーロン・マスクですらこの危機感 世界でAI開発停止要求 なのに日本では無批判に国会答弁に使用提言!、チャットGPTの回答「官僚が結局精査」 非公表情報を入力する恐れも…答弁導入に疑問の声) 「文章の形で回答するシステムは、ほんの少し前まで、この世に存在しなかった。このレベルにまで達していることに驚きを覚える」、すごい進歩だ。「マイクロソフト」と、「チャットGPT」を扱う「オープンAI」の提携はさすが本格的だ。 「グーグル」は、「今年1月に社内に「非常事態宣言」を発した」、「共同創業者のセルゲイ・ブリン氏は数年ぶりに現場に復帰してAI部門のテコ入れを図るようだ」、「マイクロソフトがグーグルの牙城である検索に踏み込んできたのだから黙ってはいられない。「検索プラス対話型AI」のサービスを遠くない時期に提供できるよう準備を進めている」、「グーグル」の反攻は上手くいくのだろうか。 「中国企業による開発に一つ利点があるとすれば、扱えるデータ量が多いということだろう。欧米はプライバシー重視の必要があるため、使えるデータに制約がかかる可能性がある。中国にはこのような制約がほとんどないことから、AIの精度を上げるために有利に働くと思われる」、「現時点でこの分野に日本の出番はない。人材面、資金面ともにまったく太刀打ちできないのが実情だ」、寂しい限りだ。 参考にすべき警鐘だ。 現代ビジネス 野口 悠紀雄氏による「イーロン・マスクですらこの危機感、世界でAI開発停止要求、なのに日本では無批判に国会答弁に使用提言!」 「日本」は他国に先んじて利用したいというスケベ心が見え見えだ。 「日本」の「提言案」は「自民党がまとめた」ので、本質が理解できないまま「利用」に重点をおいたようだ。 「アメリカでの提言は、「人間と競合する知能を持つAIは、社会や人類に深刻なリスクとなりうる」として、強力なAI開発の半年間の停止を訴えています。 さらに、AI開発者は、「自分たちでさえ理解できないデジタル知性を開発する統制不能な競争に陥っている」と批判しています。 これに署名した1000人以上のテクノロジー関係者の中には、起業家イーロン・マスク氏も含まれています」、 「AIの進歩が社会に与える影響は、きわめて大きいと考えざるをえません。 だから、その開発に規制を加えるべきだというのは、 大変重要な問題提起です 。兵器関係の技術以外の技術に関して、これほど強い危惧の念が表明されたのは、初めてのことではないでしょうか? 生成系AIの潜在力は、それほど大きいのです」、確かにその通りだ。 「自信満々に間違うことがある」、とは言い得て妙だ。「未完成の技術を一般の利用に供してしまったと考えざるをません」、その通りだ。 「内容も誤っているし質も低い文章が、大量に生産される危険があるのです。手抜きの文章が世の中に溢れ、その結果、良質の文章が駆逐されてしまうという事態になりかねない」、恐ろしい事態だ。 「利用者が、この技術を無条件で受けるのではなく、賢明に利用することが求められます。 どんな技術であっても、その見かけに騙されず、賢明な利用方法をすることが重要です。生成系AIについては、とりわけそれが重要なのです」、その通りなのだろう。 「国会答弁作成」に、「時間がかかる理由は、第1には国会議員からの質問が夜遅くにならないと得られないことです。それまでの間、役人たちは役所でただ待機しているだけです」、「第2の理由は、他部局や他省庁との調整が必要なことです。関係する部局の了解を得られないと、最終答弁にはできません。この過程で、AIは何の役にも立ちません」、「対話型AIに接したときの人々の反応は、普通、つぎのような経過を辿ります。 第1段階として、知的な人間が書いたような文章がすらすらと出力されるのを見て、驚きます。しかし暫く使っていると、その内容が全くあてにならないことに気づきます。これが、第2段階です。 そして、第3段階として、そのような制約を知った上でどのような利用法があるかだろうと模索するようになります。 自民党の提言は、第1段階に止まっているのではないかと考えざるをえません」、「自民党の提言は、第1段階に止まっている」とは手厳しい批判だ。同感である。 読売新聞「チャットGPTの回答「官僚が結局精査」、非公表情報を入力する恐れも…答弁導入に疑問の声」 「「小峰氏は」、「公開情報の中から無理やり回答を作り出すことがあり、うのみにするのは危険だ」と指摘。「政府の公式見解を示す国会答弁をチャットGPTに丸ごと委ねることにはなり得ない」と話した。 国立情報学研究所の佐藤一郎教授(情報学)は、「官僚が答弁を作成する上で非公表情報を入力してしまい、チャットGPTの学習に利用され、機密情報が漏えいするリスクがある」と指摘する。 チャットGPTは、オンライン上の大量の情報を読み込んだ上で、指示に対して新たな文章を生成する。誤った内容でも自然な文章のため気づきにくく、偽 情報が拡散する恐れがある。 ほかにも、学習データに著作権のある文章が含まれていた場合、表現がその文章と同じだったり、似通ったりして著作権を侵害する可能性がある。学習データによっては、差別や偏見を助長する答えを返す恐れもある。 教育界からも悪影響を懸念する声が相次いる」、同感である。先に取上げた「自民党の提言」は、余りにも能天気で勉強不足が見え見えだ。
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人工知能(AI)(その13)(中国「ChatGPT」偽ニュース拡散で揺れる政権対応 アメリカに対抗の一方で、懸念も生まれている、チャットGPTは アメリカ社会をどう変えるか?、チャットGPTで株価高まる世界のAI企業 懸念される「巨大リスク」とは) [イノベーション]

人工知能(AI)については、2021年9月3日に取上げた。久しぶりの今日は、(その13)(中国「ChatGPT」偽ニュース拡散で揺れる政権対応 アメリカに対抗の一方で、懸念も生まれている、チャットGPTは アメリカ社会をどう変えるか?、チャットGPTで株価高まる世界のAI企業 懸念される「巨大リスク」とは)である。

先ずは、本年2月21日付け東洋経済オンラインが掲載した経済ジャーナリストの浦上 早苗氏による「中国「ChatGPT」偽ニュース拡散で揺れる政権対応 アメリカに対抗の一方で、懸念も生まれている」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/654040
・『アメリカのスタートアップ企業、オープンAIが昨年末リリースした対話型人工知能(AI)「ChatGPT」が世界的に注目を浴びている。 高度な対話、文章作成が可能なことから、検索、教育、マーケティングなど幅広い応用が期待され、中国では「中国版ChatGPT」の開発競争が過熱するが、その一方で早くも同技術を使ったフェイクニュースがSNSで広がり、警察が介入する騒動も起きている』、興味深そうだ。
・『フェイクニュースで大混乱  2月17日、浙江省の政府系放送局「浙江之声」がSNSの公式アカウントで、前日に拡散した杭州市の政策転換のニュースを「フェイク」だと打ち消した。 「(同省の)杭州市が自動車の通行制限を3月1日に撤廃する」との情報が16日に拡散したが、実際はChatGPTが作成したフェイクニュースだったのだ。 同局の説明によると、地域住民のグループチャットでChatGPTが話題に上った。ITの最新事情に詳しいメンバーが、同技術について説明するため、「杭州市が通行制限を廃止する」という設定でChatGPTにニュースリリースを書かせ、その様子を動画でシェアするとともに完成した文章を投稿した。 その後、ChatGPTを知らない別のメンバーがニュースリリースを本物だと信じ、コピペして別のグループチャットでシェアした。 杭州市は約10年前に、自動車増加に伴う渋滞を緩和するため通行制限を導入したが、ゼロコロナ政策やその後の感染爆発で走行量が減少し、最近は制限解除も期待されている。 絶妙なタイミングで投下された偽リリースは瞬く間に拡散し、ついに浙江省の広報媒体でもある浙江之声が「フェイクニュース」として否定する大騒動となった。) 同局によると警察が捜査に着手し、文章の作成者は「社会や政府に迷惑をかけたこと」を謝罪した。 作成者に悪意はなく、ネットでは同情の声が多く上がっている。一方で多くの人がAI作成の文章だと気づかないまま拡散したことで、これまではIT業界でのバズワードだったChatGPTへの注目度や懸念が一気に高まった。 2022年11月末にリリースされたChatGPTは、誰でも試せる気軽さもあり1月時点でアクティブユーザー数が1億人に達したといわれている。だが、中国のIPアドレスや電話番号では登録できないため、現時点で中国から利用しているのは、アクセスポイントを偽装するソフトや外国の電話番号でアクセスする「IT通」に限られる』、「ChatGPTは、誰でも試せる気軽さもあり1月時点でアクティブユーザー数が1億人に達したといわれている。だが、中国のIPアドレスや電話番号では登録できないため、現時点で中国から利用しているのは、アクセスポイントを偽装するソフトや外国の電話番号でアクセスする「IT通」に限られる」、「「IT通」に限られる」のに、「アクティブユーザー数が1億人」、とはさすが「中国」だ。
・『中国政府は今のところ後押ししている  それでも、お金のにおいがする有望技術に、中国企業や投資家は我先にと飛びついている。 マイクロソフトが2月初旬に、自社の検索エンジン「Bing(ビング)」にChatGPTを搭載し、検索で圧倒的なシェアを持つアルファベット傘下のグーグルが対話型AI「Bard(バード)」を近く一般公開すると発表すると、中国では「中国版ChatGPT」の開発競争が一気に加速した。 株式市場ではAIやマイクロソフトに関係する企業の株価が連日ストップ高となり、当局が注意喚起するほど過熱している。 中国政府は2020年以降IT企業の規制を強化しているが、AIはビッグデータ、5G、ブロックチェーンと並び、次世代の覇権に関わる技術として支援している。 だからか、中国政府の代弁者的なメディアも今のところ中国版ChatGPTの開発を後押しする姿勢を見せる。 政府系経済メディアの経済日報は2月12日、「中国企業の技術力はChatGPTに2年遅れているが、中国は世界最大規模のネットユーザーと多用な応用シーンを持っており、データ蓄積環境の優位性は明らかだ。ChatGPTに追いつき追い越すこともできる」と論評した。 検索に続いて対話型AIが応用されそうな教育・研究分野でも、警戒より期待が上回っている。 上海市で教育行政を統括する倪閩景氏は寄稿で「ChatGPTの登場は教育改革の大きな機会である」「ChatGPTのような学習ツールを教育改革に活用すれば、学習の質をさらに高められる」と指摘した。) そんな中で、共産党のエリート青年組織「中国共産主義青年団(共青団)」の機関紙「中国青年報」は2月17日、中国の大学で学ぶ学生が、ChatGPTを使って期末試験でクラス1位の成績を取った事例をレポートした。 記事によると大学2年生の男子学生は、昨年末に実施された期末試験の課題レポート「インターネット広告マーケティングの特徴」をChatGPTを利用して作成した。 オンラインで実施された期末試験は授業で使った資料や関連論文の閲覧を許可され、制限時間は2時間だった。ほかの学生が授業で配られた資料や数十本の関連論文をパソコンに保存し、試験に備えていたのに対し、男子学生はChatGPTにレポートのテーマを入力し複数回の対話を経て、1分足らずでChatGPTに6000字のドラフトを作らせた。その後、学生が1200文字に編集し、試験終了1時間前に提出したという。 中国青年報によると、「学校の課題にChatGPTを使う是非」について、SNSやインターネット掲示板で少なくとも数十万の投稿が公開されている。学生が「宿題の神器」「最強の家庭教師」と歓迎する一方、「思考力や創造力を奪う」との批判も少なくない。 中国青年報は記事でChatGPTを使って高得点を取った学生を批判しておらず、「正しく質問を入れないと、適切な回答は得られない。AIを使いこなすにも知識や技量がいる」「人間とAIが協業してより価値の高い成果を出せる」といった大学教授の声を多く紹介している。同メディアが共産党の機関紙であることを考えると、政府も対話型AIを「アメリカと肩を並べるための神器」と期待しているように見える』、「期末試験の課題レポート「インターネット広告マーケティングの特徴」をChatGPTを利用して作成した。 オンラインで実施された期末試験は授業で使った資料や関連論文の閲覧を許可され、制限時間は2時間だった。ほかの学生が授業で配られた資料や数十本の関連論文をパソコンに保存し、試験に備えていたのに対し、男子学生はChatGPTにレポートのテーマを入力し複数回の対話を経て、1分足らずでChatGPTに6000字のドラフトを作らせた。その後、学生が1200文字に編集し、試験終了1時間前に提出したという」、なかなか要領がいいようだ。「政府も対話型AIを「アメリカと肩を並べるための神器」と期待しているように見える」、なるほど。
・『締め付けに転じる可能性も  とはいえ、対話型AIの活用についてはまだ始まったばかりで、前述したように中国では使えない建前にもかかわらず、すでに大学の期末試験で使う学生が現れ、フェイクニュースが世の中を騒がせている。政府や企業の前のめりな期待をよそに、政府にとって想定外の事象が次々に生み出されるのは想像にかたくない。 習近平国家主席が率いる共産党政権は社会の秩序を乱す事象を何より嫌う。TwitterやFacebookなどのアメリカのSNSをブロックしたり、巨大なコストをかけてSNSを監視するのも、情報統制に絶対的な価値を置いているからだ。対話型AIが「デマの神器」になりそうな兆候が見えたら、躊躇なく締め付けに転じるだろう。 検索ポータルで中国首位のバイドゥ(百度)は3月に自社開発した対話型AIを発表する計画だが、中国政府のプレッシャーを背負う「中国版ChatGPT」は、どんな姿になるのだろうか』、「対話型AIが「デマの神器」になりそうな兆候が見えたら、躊躇なく締め付けに転じるだろう」、「バイドゥ」の「中国版ChatGPT」はどんな形になるのだろう。

次に、3月1日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家の冷泉彰彦氏による「チャットGPTは、アメリカ社会をどう変えるか?」を紹介しよう。引用の順番を部分的に変更した。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2023/03/gpt_1.php
・『<英語で使用する限りでは、文章の作成・添削の能力は実用レベルに達している> 2022年11月30日に、サンフランシスコに本拠を置くベンチャー企業 Open AI 社は、AI(人工知能)が人間と対話する「チャットポット」をインターネットのパブリックな空間でリリースしました。UI(ユーザーインターフェース)は簡単で、ユーザーが文章でポットに質問を投げかけると、文章で回答を返してくるというスタイルです。これが現在、世界中で話題になっているチャットGPT の始まりでした。 私が、その存在と効果を知ったのはリリースから約1カ月弱後の12月後半でした。その時は英文のネイティブチェック的な使い方を、テック技術者のアシストで経験したのですが、その精度に驚嘆したのを覚えています。それから1カ月経過した本年の1月末には、かなり広範な社会現象になり、2月に入るとユーザーが3億人を超えたとして一般のメディアでも話題にされるようになりました。 その後、サーバの容量不足でサービスを受けるのに時間がかかる時期もありましたが、本稿の時点では容量の追加や、日々のアップデートなどがされているらしく、接続については、やや改善されています。運営サイドも、2月13日には「初期リリース」から「安定的リリース」にフェーズを進めています。また、混雑時に優先して使用ができる有料サービスの「PLUS」も始まっていますが、本稿の時点ではキャパを超えているらしく、登録しようとすると「ウェイトリスト」に入れられます。 ちなみに、現時点では日本語のデータ蓄積量はまだまだ少ないようで、事実を問うような質問ではどんどん誤情報が返ってくるのが現状です。試しに、今現在「旬」である芸能人3人について入力してみたところ、1名は「知らない」と言われ、残りの2名については全く間違った情報が返ってきました。ビジネスレターの様式などはある程度は習得しているようですが、日本語特有のニュアンスの表現に関しては、まだまだ実用レベルにはなっていません』、「英語で使用する限りでは、文章の作成・添削の能力は実用レベルに達している」、しかし「日本語特有のニュアンスの表現に関しては、まだまだ実用レベルにはなっていません」、ただ、それも時間の問題だろう。
・『英語の膨大な言語データ  ですが、英語の世界では違います。そもそも Open AI 社が英語圏の企業ということもありますが、恐らく膨大な言語データを有しているものと思われ、まず文章の作成や添削の能力としては、ハッキリ申し上げて実用レベルに達していると思います。現時点では、アメリカ社会もその実力を認め、その上で様々な分野で議論が始まっているところです。今回は4つの分野についてお話したいと思います。 1つ目は、教育の分野です。情報を検索するということでは、既にネットに多くのツールがありますが、チャットGPT を使うと正確な英文が簡単に書けてしまう、これは画期的なことです。まず、高校や大学では宿題のエッセイを書くのに、学生が使い始めており、早速論争になっています。例えば、調査と作文を一括で処理させるような行為が横行するようだと、学生の学習体験にならず学力が向上しないという指摘がされています。このため原則禁止にする学区もあり、学校貸与のデバイスでは接続を遮断するケースも見られます。 一部の大学では、チャットGPT が出力してくる英文の「クセ」を見抜くソフトを導入して「不正行為」の摘発に乗り出すとしているケースもあります。深刻な問題は、大学入試の小論文(エッセイ)試験です。アメリカの場合は、在宅受験であり、しかも教員や親などから英語の「言葉遣い」のチェックを受けることは特に禁止されていません。ですが、最初からAIに書かせたエッセイが横行すると入試制度が混乱してしまう懸念があります。今年の入試(原則として昨年の12月末締め切り)では、表面だった問題にはなっていませんが、次年度へ向けては各大学が対応に追われることと思います。 一方で、修士レベル以上では、文章作成というのが「論文執筆の後工程」に過ぎないという考え方を取るならば、チャットGPT というのは論文の生産性を劇的に高めるのは事実です。また、英語力が発展途上の留学生に取っては、論文執筆の心強い味方になります。もちろん出力された英文が自分の論旨に外れていないかを確認する工程を省略することはできませんし、ある程度はオリジナルな表現を入れるべきですが、こうした使用法は否定できないという意見はあります。) 2つ目は、生活の分野です。医者にちょっと複雑な相談をテキストで行う、小売店などが消費者への注意事項を告知する文書を用意する、保護者が教師に対して子どもの様子を報告する、などといった生活の中で「かなり丁寧で、正確性が求められる」レターを書くという局面はあります。そんな場合に、チャットGPT を使えば誰でも一定レベルの英文が書けるというのは便利です。 さらに、そうした利用者からの依頼や問い合わせに応える側では、一々考えて文章を書くのではなく、AIに条件を放り込めば回答を作ってくれるわけです。この点に関しては、このままAIが進化すると、ある程度の知的労働は機械に取って代わられてしまうのではという議論もあります。 3つ目は、プログラミング(コーディング)の分野です。チャットGPT には、当初からプログラムを入力すると、より良いプログラムの書き方を返してくるという機能があります。もちろん、産業別に込み入った条件があったり、複雑なインターフェースがあったりという条件下では、要件を入れただけでは、使えるプログラムを返してくるわけではありません。 ですが、スキルの低いプログラマーがダラダラ書いたステップ数の多いプログラムを入れると、短くて切れ味の良いプログラムに書き換えてくれるとか、条件の入れ方のコツを習得すると中級者レベルでも生産性支援ツールとして役立つということは確かにあるようです。デバッグ(プログラムのバグの解決)の機能も結構使えるという声があります。そうしたツールは既に色々出回っているわけですが、チャットGPT が相当なビッグデータを集めているとしたら、業界のゲームチェンジャーになる可能性はあります』、「1つ目は、教育の分野です」、「チャットGPT を使うと正確な英文が簡単に書けてしまう、これは画期的」、「調査と作文を一括で処理させるような行為が横行するようだと、学生の学習体験にならず学力が向上しないという指摘がされています。このため原則禁止にする学区もあり」、「2つ目は、生活の分野です。医者にちょっと複雑な相談をテキストで行う、小売店などが消費者への注意事項を告知する文書を用意する、保護者が教師に対して子どもの様子を報告する、などといった生活の中で「かなり丁寧で、正確性が求められる」レターを書くという局面はあります。そんな場合に、チャットGPT を使えば誰でも一定レベルの英文が書けるというのは便利」、「3つ目は、プログラミング(コーディング)の分野です。チャットGPT には、当初からプログラムを入力すると、より良いプログラムの書き方を返してくるという機能があります・・・スキルの低いプログラマーがダラダラ書いたステップ数の多いプログラムを入れると、短くて切れ味の良いプログラムに書き換えてくれるとか、条件の入れ方のコツを習得すると中級者レベルでも生産性支援ツールとして役立つということは確かにあるようです」、この「プログラミングの分野」は本当に便利そうだ。
・「4番目は、これは使用法ではなく、チャットGPT が出力してくる英文の「味付け」の問題です。昨年12月に使い始めた人の多くは、私も含めて、出てくる英語の文章が「とても丁寧で感じがよく、スッキリしていて、しかも世界中の誰も傷つけないように」書かれていることに驚いたのでした。これは、そのような「味付け」がアルゴリズムの中で設定されているようですし、またその背景には、そのような「味付け」が21世紀の英語圏では最も広範な実用性を持つという判断があると考えられます』、「4番目は、これは使用法ではなく、チャットGPT が出力してくる英文の「味付け」の問題です」、なるほど。 
・『ポリコレに汚染されている?  これに対しては早速「チャットGPT はポリコレに汚染されている」とか「政治的バイアスが不快」という声が上がっています。この問題は、もしかすると2022年のイーロン・マスク氏による「同氏の基準による発言の自由」を掲げての、ツイッター買収のような騒動に発展するかもしれません。 チャットGPT が実用化されることで、あるスキル以下のプログラマーは不要になるとか、職種の分担が変わってくるとか、あるいはシリコンバレー名物の「面倒な要件を与えてプログラムを書かせる入社試験」が、今まで以上に、やたらに難しくなるかもしれないなどという議論があります。それはともかく、リベラル寄りとされる チャットGPT に「対抗」して、保守的な立場や、統制的な価値観に基づいたAI開発などの動きが出てくるかもしれません。 いずれにしても、2023年3月初旬の現在、テックの分野では、このチャットGPT が大きな話題になっているのは間違いありません』、「リベラル寄りとされる チャットGPT に「対抗」して、保守的な立場や、統制的な価値観に基づいたAI開発などの動きが出てくるかもしれません」、「リベラル」と「保守」の争いが「AI開発」の分野でまで出てくるとすれば、見物だ。

第三に、3月14日付けダイヤモンドが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「チャットGPTで株価高まる世界のAI企業、懸念される「巨大リスク」とは」を紹介しよう。
・『世界のIT産業ではAI分野に関心がシフトしている。言語型AIなどと呼ばれる「チャットGPT」を用いてマイクロソフトは検索市場のシェアを、王者・グーグルから奪取しようとしている。AIが果たす役割は日常生活から企業の事業運営、社会インフラなどの管理、さらには防衛(安全保障)まで増えている。米国は中国が台頭する状況に懸念を強め、さまざまな対策を講じている。米中対立のはざまで揺れるAI業界の成長性をどのように見極めればいいのだろうか』、興味深そうだ。
・『米中対立のはざまで揺れるAI業界  最近、世界のIT先端分野の中心は、急速に変化している。主な兆候は、AI(人工知能)を使った文章や画像の生成などへの期待の高まりだ。米オープンAIの「GPT-3.5(チャットGPTを支えるAI)」、グーグルの「Bard」、中国バイドゥの「文心一言(アーニーボット)」などが注目を集めている。こうした先端分野の企業に期待する投資家が増え、足元で米ナスダック総合指数も底堅い展開になっている。 米国のバイデン政権は、中国の華為技術(ファーウェイ)に対する全面禁輸を検討している。米議会では超党派議員によって、動画投稿アプリ「TikTok」の一般利用を禁止する法案成立も視野に入っている。なお、オーストラリアでは、AIを搭載した中国製の監視カメラの排除が進みつつあるようだ。日用品などの分野で米中の相互依存度が高まっている一方、先端分野での米中対立はさらに熱を帯びている。それは、世界経済にとって無視できないマイナスの要因になる。 世界経済はウクライナ紛争をはじめとする不安要因を抱え、インフレなどに苦しんでいる。米国や欧州では、想定以上に金融引き締めが長引く可能性が高い。世界経済の成長に大きなインパクトを与えるAIなどの先端分野において、米中対立が一段と激化すると、実体経済と金融市場にマイナス影響が及ぶことは避けられないだろう』、「AIなどの先端分野において、米中対立が一段と激化すると、実体経済と金融市場にマイナス影響が及ぶことは避けられない」、その通りだ。
・『世界のAI企業で期待の星は?  世界のIT先端分野ではサブスクリプションや広告などのビジネスモデルから、より急速にAI関連分野に関心がシフトしている。きっかけの一つが、マイクロソフトとオープンAIとの連携強化だ。 従来のAI利用方法といえば、機器の使い方の説明やアラームの設定などがメインだった。しかし、言語型AIなどと呼ばれる「チャットGPT」は、自ら情報を生成する力を発揮し始めた。それを用いてマイクロソフトは検索市場のシェアを、王者・グーグルから奪取しようとしている。AIは既存の産業構造にかなりのインパクトを与えるとの見方は増えた。 AI利用の範囲は検索にとどまらない。1月12日の米国株式市場では、企業、政府、安全保障関連で意思決定などをサポートするAI開発を行う企業であるビッグ・ベアAI(BigBear.ai Holdings,Inc)の株価が前営業日の引け値から260%(株価は3.6倍)超上昇した。材料視されたのは、同社が米空軍から数量未確定の契約を(期間10年、総額9億ドル、およそ1215億円)を結んだことだった。 日常生活から企業の事業運営、社会インフラなどの管理、さらには防衛(安全保障)まで、AIが果たす役割は増えている。AI利用には、深層学習を支えるチップの性能向上が欠かせない。AI需要の増加期待を背景に、2023年初から3月初旬まで、米国の株式市場では、フィラデルフィア半導体株指数の上昇が顕著だった。 中国でもAI関連企業が注目されている。代表例はファーウェイだ。米トランプ前政権下での半導体禁輸措置などによって一時、ファーウェイの経営体力は大きく低下した。そのため同社は「オナー」ブランドのスマホ事業を売却して生き残りを図りつつ、AI分野に経営資源を急速に再配分した。その成果として、世界の港湾別コンテナ取扱個数ランキングで上位の天津港で、ファーウェイのAIを用いた港湾の運行システムを稼働し始めた。 中国では寒武紀科技(カンブリコン・テクノロジーズ)など、AI関連新興企業に対する成長期待も高まっている。習国家主席の肝いりで創設された「科創板市場」に上場するカンブリコンの株価は、3月上旬までの年初来で約70%上昇した』、「言語型AIなどと呼ばれる「チャットGPT」は、自ら情報を生成する力を発揮し始めた。それを用いてマイクロソフトは検索市場のシェアを、王者・グーグルから奪取しようとしている」、「中国では寒武紀科技(カンブリコン・テクノロジーズ)など、AI関連新興企業に対する成長期待も高まっている」、なるほど。
・『米中対立がAI分野で先鋭化  米国は中国が台頭する状況に懸念を強めている。ファーウェイの全面禁輸に加え、TikTokなど外国企業のITサービスの利用を禁じる権限を米国政府に付与する法案成立も目指している。なお、欧州委員会、カナダ、わが国でも政府職員の業務用端末でのTikTok利用が禁止された。カナダでは、「19年と21年の連邦議会選挙に中国が介入した」との報道もある。また、米国では港湾で稼働しているクレーンが、「中国によるデータ抜き取りの手段になる」といった懸念が浮上し始めている。 そうしたリスクに対応するために、米国は日韓台との連携を強化し、半導体など先端分野での対中包囲網をさらに強固にする意向だ。また、アップルなどは生産拠点を中国からインドに移管しており、インドともAIなど先端分野での連携を強化しようとしている。 一方、中国共産党政権は、米国などの圧力に対抗し、AI利用を加速させようとしている。象徴的なのが、3月5日から始まった全人代と同じタイミングで実施された、全人代代表の改選だ。経済分野の代表としてAI開発企業である科大訊飛(アイフライテック)トップの劉慶峰氏が再選された。一方、テンセントの馬化騰(ポニー・マー)氏は代表から退いた。 習政権は、産業補助金の積み増しなどによってAI開発、ロジック半導体の微細化などの製造技術向上を加速するはずだ。また、2月下旬から3月上旬にスペイン・バルセロナで開催された世界最大規模の移動体通信展示会「モバイル・ワールド・コングレス」にて、ファーウェイは、政府や大企業だけでなく、中小企業向けの事業を強化すると発表した。シェアは低下したものの依然としてファーウェイは世界トップの通信基地局メーカーだ。その地位を生かし、同社がAIなどを用いたIoTサービスを新興国の中小事業者に提供するもようだ』、「シェアは低下したものの依然としてファーウェイは世界トップの通信基地局メーカーだ。その地位を生かし、同社がAIなどを用いたIoTサービスを新興国の中小事業者に提供するもようだ」、「ファーウェイ」が「世界トップの通信基地局メーカーだ」、には驚かされた。
・『明確な絵が描けないAIの可能性・成長性  現時点でチャットGPTなど生成AIの設計、開発などに関して、米国は中国をリードしている。米国は中国の半導体関連企業への禁輸措置をさらに強化するなどし、ファーウェイをはじめとするIT先端企業の成長をより強く抑え込もうとするだろう。それによって、先端分野における中国の取り組みが鈍化する可能性がある。 翻って米国をはじめ主要先進国のAI利用には、克服されるべき課題も多い。チャットGPTに関して、誤った検索結果の提示や、子どもの教育への配慮などの懸念が多く指摘されている。  一例としてアップルはチャットGPTを用いて過去のメールを検索し、自動で文書を作成するアプリ、「ブルーメール」のアップデートをしなかった。AIを用いることで定型化された業務の効率化などは期待されているものの、現時点では米中対立の先鋭化、人権への配慮、さらには人類の学ぶ意欲への悪影響など、AI利用がどのように進捗(しんちょく)するか不確定な要素は多い。そう考えると、年初来のAI関連株の上昇は、「行き過ぎ」に見える。 加えて、主要先進国は当面の間、インフレ沈静化のために金融を引き締めなければならない。米国を中心に世界的に金利はさらに上昇し、株価は下落しやすくなる。特に、期待先行で株価が上昇したAI関連銘柄への売り圧力は相対的に大きくなりやすい。 懸念されるのは、世界的に株価が下落するタイミングで、先端分野での米中対立の先鋭化が本格化する展開だ。AI、半導体、さらには人権の分野で米中対立が一段と熱を帯びれば、サプライチェーンの混乱が再燃する。台湾侵攻の緊迫感も高まり、中国ではなく他国に生産拠点をシフトさせる動きも激化するだろう。 そうなると、これまで以上に在庫を積み増そうとする企業は増えるに違いない。それに伴い、各国企業のコストは増加し、世界経済と金融市場の不安定感が追加的に高まると予想される。現在、AI関連企業を物色する投資家は多いが、チャットGPTなどの利用は一筋縄にはいかないだろう』、「期待先行で株価が上昇したAI関連銘柄への売り圧力は相対的に大きくなりやすい。 懸念されるのは、世界的に株価が下落するタイミングで、先端分野での米中対立の先鋭化が本格化する展開だ。AI、半導体、さらには人権の分野で米中対立が一段と熱を帯びれば、サプライチェーンの混乱が再燃する。台湾侵攻の緊迫感も高まり、中国ではなく他国に生産拠点をシフトさせる動きも激化するだろう」、「現在、AI関連企業を物色する投資家は多いが、チャットGPTなどの利用は一筋縄にはいかないだろう」、投資の観点からは、当面、「AI関連企業」は要警戒のようだ。
タグ:東洋経済オンライン (その13)(中国「ChatGPT」偽ニュース拡散で揺れる政権対応 アメリカに対抗の一方で、懸念も生まれている、チャットGPTは アメリカ社会をどう変えるか?、チャットGPTで株価高まる世界のAI企業 懸念される「巨大リスク」とは) 人工知能(AI) 浦上 早苗氏による「中国「ChatGPT」偽ニュース拡散で揺れる政権対応 アメリカに対抗の一方で、懸念も生まれている」 オープンAI 「ChatGPT」 「「IT通」に限られる」のに、「アクティブユーザー数が1億人」、とはさすが「中国」だ。 「期末試験の課題レポート「インターネット広告マーケティングの特徴」をChatGPTを利用して作成した。 オンラインで実施された期末試験は授業で使った資料や関連論文の閲覧を許可され、制限時間は2時間だった。ほかの学生が授業で配られた資料や数十本の関連論文をパソコンに保存し、試験に備えていたのに対し、男子学生はChatGPTにレポートのテーマを入力し複数回の対話を経て、1分足らずでChatGPTに6000字のドラフトを作らせた。その後、学生が1200文字に編集し、試験終了1時間前に提出したという」、なかなか要 領がいいようだ。「政府も対話型AIを「アメリカと肩を並べるための神器」と期待しているように見える」、なるほど。 「対話型AIが「デマの神器」になりそうな兆候が見えたら、躊躇なく締め付けに転じるだろう」、「バイドゥ」の「中国版ChatGPT」はどんな形になるのだろう。 Newsweek日本版 冷泉彰彦氏による「チャットGPTは、アメリカ社会をどう変えるか?」 「英語で使用する限りでは、文章の作成・添削の能力は実用レベルに達している」、しかし「日本語特有のニュアンスの表現に関しては、まだまだ実用レベルにはなっていません」、ただ、それも時間の問題だろう。 「1つ目は、教育の分野です」、「チャットGPT を使うと正確な英文が簡単に書けてしまう、これは画期的」、「調査と作文を一括で処理させるような行為が横行するようだと、学生の学習体験にならず学力が向上しないという指摘がされています。このため原則禁止にする学区もあり」、 「2つ目は、生活の分野です。医者にちょっと複雑な相談をテキストで行う、小売店などが消費者への注意事項を告知する文書を用意する、保護者が教師に対して子どもの様子を報告する、などといった生活の中で「かなり丁寧で、正確性が求められる」レターを書くという局面はあります。そんな場合に、チャットGPT を使えば誰でも一定レベルの英文が書けるというのは便利」、 「3つ目は、プログラミング(コーディング)の分野です。チャットGPT には、当初からプログラムを入力すると、より良いプログラムの書き方を返してくるという機能があります・・・スキルの低いプログラマーがダラダラ書いたステップ数の多いプログラムを入れると、短くて切れ味の良いプログラムに書き換えてくれるとか、条件の入れ方のコツを習得すると中級者レベルでも生産性支援ツールとして役立つということは確かにあるようです」、この「プログラミングの分野」は本当に便利そうだ。 4番目は、これは使用法ではなく、チャットGPT が出力してくる英文の「味付け」の問題です 「リベラル寄りとされる チャットGPT に「対抗」して、保守的な立場や、統制的な価値観に基づいたAI開発などの動きが出てくるかもしれません」、「リベラル」と「保守」の争いが「AI開発」の分野でまで出てくるとすれば、見物だ。 ダイヤモンド 真壁昭夫氏による「チャットGPTで株価高まる世界のAI企業、懸念される「巨大リスク」とは」 「AIなどの先端分野において、米中対立が一段と激化すると、実体経済と金融市場にマイナス影響が及ぶことは避けられない」、その通りだ。 「言語型AIなどと呼ばれる「チャットGPT」は、自ら情報を生成する力を発揮し始めた。それを用いてマイクロソフトは検索市場のシェアを、王者・グーグルから奪取しようとしている」、「中国では寒武紀科技(カンブリコン・テクノロジーズ)など、AI関連新興企業に対する成長期待も高まっている」、なるほど。 「シェアは低下したものの依然としてファーウェイは世界トップの通信基地局メーカーだ。その地位を生かし、同社がAIなどを用いたIoTサービスを新興国の中小事業者に提供するもようだ」、「ファーウェイ」が「世界トップの通信基地局メーカーだ」、には驚かされた。 「期待先行で株価が上昇したAI関連銘柄への売り圧力は相対的に大きくなりやすい。 懸念されるのは、世界的に株価が下落するタイミングで、先端分野での米中対立の先鋭化が本格化する展開だ。AI、半導体、さらには人権の分野で米中対立が一段と熱を帯びれば、サプライチェーンの混乱が再燃する。台湾侵攻の緊迫感も高まり、中国ではなく他国に生産拠点をシフトさせる動きも激化するだろう」、 「現在、AI関連企業を物色する投資家は多いが、チャットGPTなどの利用は一筋縄にはいかないだろう」、投資の観点からは、当面、「AI関連企業」は要警戒のようだ。
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ブロックチェーン(その2)(世界に挑む「国産ブロックチェーン」起業家の素顔 「ウェブ3.0は若者に非常に有利な領域だ」、「Web3.0・NFT」って何?「NBAのカードが100万ドルで売買」される理由) [イノベーション]

ブロックチェーンについては、昨年1月15日に取上げた。今日は、(その2)(世界に挑む「国産ブロックチェーン」起業家の素顔 「ウェブ3.0は若者に非常に有利な領域だ」、「Web3.0・NFT」って何?「NBAのカードが100万ドルで売買」される理由)である。

先ずは、昨年4月25日付け東洋経済オンライン「世界に挑む「国産ブロックチェーン」起業家の素顔 「ウェブ3.0は若者に非常に有利な領域だ」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/584073
・『ウェブ3.0の分野で起業する日本の若者が続々と出てきている。日本発のブロックチェーンを標榜するステイク・テクノロジーズの渡辺創太CEO(26)もその1人だ。 インターネットの秩序を大きく変えようとしている「ウェブ3.0」。ブロックチェーン技術を基盤として、特定の管理者が存在せず、ユーザーがデータの所有権を持てる世界だ。 2019年1月にステイク・テクノロジーズを創業し、独自のブロックチェーン「アスター・ネットワーク」を開発した渡辺創太CEO(26)。世界中の暗号資産関連の投資家から資金調達を行うなど、業界内でも日本を代表する起業家として注目を集めている。 起業のきっかけやウェブ3.0における勝ち目について聞いた(Qは聞き手の質問、Aは渡辺氏の回答)』、興味深そうだ。
・『最初から「波に乗れる」と思った  Q:なぜブロックチェーン領域での起業を決めたのですか。 A:テクノロジーには波があると思っていて、一番最初の大波がインターネットの誕生だったと思う。このときは僕らの世代は生まれていなかった。その次の波がモバイルで、アップルのスティーブ・ジョブズがiPhoneを発表したときは、中学生くらいだった。 そして今ブロックチェーンやウェブ3.0の波が起きている。歴史的なテクノロジーの大波の中で、今26歳の自分が最初からそれに乗れるのがこの波だった。ビットコインが生まれてからはまだ13年ほど。既存の常識にとらわれず、体力もある。若者に非常に有利な領域だと思う。 学生時代にインドや中国でボランティア活動に携わり、貧困や格差を解決したいと思ったということもある。ブロックチェーンは搾取されてきた人たちに権力を分配できる技術だ。いわゆる「GAFAM」はネットビジネスで勝ち抜いた。今後20年は、それがウェブ3.0になる。最初から世界を見据えて起業した。 Q:ブロックチェーンが「権力を分配できる」とは? A:ウェブ3.0は「Less trust, More truth(信頼に代わる真実を)」という世界。これまではあらゆる経済活動に、人々に「信頼」された中間的な業者が入っていた。 例えば今ウクライナに寄付をするにも、銀行や赤十字社が間に入る。そのため、現地にお金が届いているのか、「真実」はわかりにくい。あらゆるビジネスはすべて、信頼の上に成り立っているゆえに、間の人たちが実際に何をしているのかは見えない状態だった。 ブロックチェーンはユーザー同士を直接つなぎ、透明性や検証性の高い経済活動を実現する。中抜き構造が変わるのは大きなインパクトになる。 Q:現在開発する「アスター・ネットワーク」というブロックチェーンは、どのような役割を担うのでしょうか。 A:世界には今ビットコインやイーサリアムなど主要なブロックチェーンが20個ほどあるが、相互につながっていない。アスターはこれらをつなげるプラットフォームになる。 アスターは(イーサリアムの共同創設者である)ギャビン・ウッド氏が開発した「ポルカドット」というブロックチェーンに接続する、パラレルチェーンという部分を担っている。これが意味するのは、ポルカドットに接続されたほかのチェーンと相互に通信ができるということ。 ポルカドットに接続するチェーンはすべて同じ開発ツールで作られている。ただイーサリアムやソラナといったほかのチェーンは違う。それらのチェーンとポルカドットをつなぐ存在が必要で、僕らがその役割を担いたいと考えている。 Q:そもそもなぜブロックチェーン同士をつなぐ必要があると?) 今はユーザーがそれぞれのブロックチェーンのことを理解しなければ、アプリケーションが使いづらい。一般にブロックチェーンが普及するには、一つひとつのチェーンを意識せずに、さまざまなアプリケーションが使えることが重要だ。 例えばビットコインでイーサリアム上のNFT(非代替性トークン)を買える、といった世界観。それができなければ、ブロックチェーンがもたらすインクルージョン(包摂)が実現できない。 Q:今年1月にはアスター・ネットワークのトークンを発行し、時価総額は1000億円規模になりました。 A:たくさんのアプリ開発者が入ってきてくれていることが大きい。今後伸びるプラットフォームだと思ってくれていて、そこに早くから参入したいと思う人が入ってくれている。 開発者に対するインセンティブを用意していることも(特徴として)ある。ほかのチェーンではアプリを実装すると、開発者が高額な手数料を支払う必要がある。一方で、われわれのチェーンでは取引数や接続されたウォレットの数など貢献の度合いに応じて、開発者に報酬としてトークンを付与している。 既存のチェーンではコストがかかる構造になっており、開発インセンティブの設計として正しくない。ビットコインではマイニング(ブロックチェーン上の取引の承認に必要なコンピューターの演算作業)をした人に報酬が支払われているが、アスターではマイナー(マイニングをする人)だけでなく、開発者にも報酬を分配している』、「ウェブ3.0は「Less trust, More truth(信頼に代わる真実を)」という世界。これまではあらゆる経済活動に、人々に「信頼」された中間的な業者が入っていた。 例えば今ウクライナに寄付をするにも、銀行や赤十字社が間に入る。そのため、現地にお金が届いているのか、「真実」はわかりにくい。あらゆるビジネスはすべて、信頼の上に成り立っているゆえに、間の人たちが実際に何をしているのかは見えない状態だった。 ブロックチェーンはユーザー同士を直接つなぎ、透明性や検証性の高い経済活動を実現する。中抜き構造が変わるのは大きなインパクトになる」、「ブロックチェーンは搾取されてきた人たちに権力を分配できる技術だ。いわゆる「GAFAM」はネットビジネスで勝ち抜いた。今後20年は、それがウェブ3.0になる」、「ウェブ3.0は「Less trust, More truth(信頼に代わる真実を)」という世界。これまではあらゆる経済活動に、人々に「信頼」された中間的な業者が入っていた・・・あらゆるビジネスはすべて、信頼の上に成り立っているゆえに、間の人たちが実際に何をしているのかは見えない状態だった。 ブロックチェーンはユーザー同士を直接つなぎ、透明性や検証性の高い経済活動を実現する。中抜き構造が変わるのは大きなインパクトになる」、「世界には今ビットコインやイーサリアムなど主要なブロックチェーンが20個ほどあるが、相互につながっていない。アスターはこれらをつなげるプラットフォームになる。 アスターは・・・ギャビン・ウッド氏が開発した「ポルカドット」というブロックチェーンに接続する、パラレルチェーンという部分を担っている。これが意味するのは、ポルカドットに接続されたほかのチェーンと相互に通信ができるということ。 ポルカドットに接続するチェーンはすべて同じ開発ツールで作られている。ただイーサリアムやソラナといったほかのチェーンは違う。それらのチェーンとポルカドットをつなぐ存在が必要で、僕らがその役割を担いたいと考えている」、「今はユーザーがそれぞれのブロックチェーンのことを理解しなければ、アプリケーションが使いづらい。一般にブロックチェーンが普及するには、一つひとつのチェーンを意識せずに、さまざまなアプリケーションが使えることが重要だ。 例えばビットコインでイーサリアム上のNFT(非代替性トークン)を買える、といった世界観。それができなければ、ブロックチェーンがもたらすインクルージョン(包摂)が実現できない。 Q:今年1月にはアスター・ネットワークのトークンを発行し、時価総額は1000億円規模になりました」、「既存のチェーンではコストがかかる構造になっており、開発インセンティブの設計として正しくない。ビットコインではマイニング・・・をした人に報酬が支払われているが、アスターではマイナー・・・だけでなく、開発者にも報酬を分配している」、「開発者にも報酬を分配」とはいいインセンティブになる。
・『ブロックチェーン業界で重視されるのは「TVL」  Q:アスターのチェーン上ではどんなアプリが実際に使われているんでしょうか。 A:「DeFi(Decentralized Finance、ディーファイ/分散型金融)」の取引が盛んだ。アスター上のDEX(デックス、分散型交換所=余剰の暗号資産を持つ人と、手持ちの暗号資産を別の暗号資産に交換したい人をつなげる場)やレンディング(暗号資産の貸し出し)などが増えており、チェーン上の預かり資産額(Total Value Locked、TVL)はグローバルでトップ10に入った。 Q:DeFiで稼ぐ人が増えるということは、渡辺さんが目指しているインクルージョン(包摂)の世界と乖離してしまうのでは? A:それはその通りで、ブロックチェーンの利用者はまだアーリーアダプターが大半。交換所で暗号資産を買って、暗号資産用のウォレットをインストールして、イーサリアムからアスターにトークンを移したりしないといけない。ウェブ3.0の世界はまだ敷居が高い。だからお金が稼げるという動機があり、自分で学んで体験してみたいという人が多いのは事実だ。 ただそういった人たちだけにサービスを提供すればよいわけではなくて、インターフェースや体験、技術的な制約を解決して、一般に普及させなきゃいけない。これは業界の皆が考えていることだ。 自分が日本人で良かったと思うのは、日本がマンガやアニメなどの強いIP(知的財産、キャラクター)の大国であること。それを活用したNFTが国産ブロックチェーンに乗って世界を席巻する将来像を描きたい。それによって日本での普及も進むと思っている。) Q:アメリカのコインベースやシンガポールのCrypto.com、中国のバイナンスといった大手暗号資産交換所の投資部門や、海外のさまざまな暗号資産ファンドから資金調達をしています。ウェブ3.0における世界のプレイヤーから注目されている背景は何でしょうか。 A:Day 1(創業初日)からグローバルを意識しているというところが前提にあると思う。すでに世界で一定の認知度と技術の先端を走っているということが認められている。 あとはコミュニティの大きさ。チェーン上の取引数やアプリの盛り上がりなど、実際にコミュニティが大きくなっている。今後アプリが増えれば、トークンの時価総額も上がるという評価をしてもらっている。中国とアメリカのトップ投資家に支援してもらえたのは大きい。 Q:日本のベンチャーキャピタル(VC)などから資金を調達するという選択肢はなかったのですか。 A:ウェブ3.0はこれまでの株式だとか売上高だとかの世界観とはかなり違うので、既存のVCはアンラーン(学び直し)する必要がある。この領域はすごく盛り上がっているので、売り手市場になっており資金調達自体は難しくない。 日本のVCがついてこれないというのは仕方ない部分もあって、日本のLPS法(投資事業有限責任組合契約に関する法律)で、(投資事業有限責任組合である)VCの投資対象が株式などに限られており、暗号資産で投資ができない。やりたくてもできないのが現状だと思う』、「アメリカのコインベースやシンガポールのCrypto.com、中国のバイナンスといった大手暗号資産交換所の投資部門や、海外のさまざまな暗号資産ファンドから資金調達をしています。ウェブ3.0における世界のプレイヤーから注目されている背景は何でしょうか。 A:Day 1(創業初日)からグローバルを意識しているというところが前提にあると思う。すでに世界で一定の認知度と技術の先端を走っているということが認められている。 あとはコミュニティの大きさ」、なるほど。
・『日本のウェブ3.0起業家は皆、海外へ出ていく  Q:2019年に日本で創業して、2020年にはシンガポールに拠点を移しました。法人が保有するトークンの含み益への期末課税の問題が大きかったようですね。 A:これは本当に深刻で暗号資産を持っているだけで課税されてしまう。 特にわれわれのようにトークンを発行する会社への影響は大きい。トークンを発行して時価総額が1000億円になったとき、この1000億円の含み益に対して課税されてしまう。仮に会社側が発行済みトークンの50%を持っているとすると、500億円の含み益に対して30%課税される。もし日本で事業をしていれば、150億円を納税しなければいけない。 ただ納税のために150億円分のトークンを換金すれば、売り圧力が強すぎてマーケットが崩れてしまう。しかも、このトークンは「ガバナンストークン」といって議決権の役割もあるので、売ってしまうと運営不可能になる。だから今ウェブ3.0の領域で起業する人たちは皆、海外に出てしまっている。 Q:渡辺さんはこうした日本における規制の問題を指摘し続けています。ただ、グローバルでの成功を目指すのであれば、もはや場所は関係なくなってくるようにも思います。 A:個人としても会社としても税金の問題はセンシティブなので、発言するメリットはまったくない。 ただ、やはり1人の日本人として母国が沈んでいくのは悔しいじゃないですか。ウェブ2.0でも結局アメリカや中国のサービスを皆が使っている。データも日本ではなくて海外で管理されている。日本はすでに“デジタル植民地”になっていると思っている。 新しいウェブ3.0の波がある中で、日本人、そして日本の企業として、どれだけウェブ2.0の反省を生かして世界で戦えるか。それが国益にも繋がる。(起業家が海外へ出るという)由々しき事態が一刻も早く解決されることを望んでいる』、「「2019年に日本で創業して、2020年にはシンガポールに拠点を移しました。法人が保有するトークンの含み益への期末課税の問題が大きかった」、「トークンを発行して時価総額が1000億円になったとき、この1000億円の含み益に対して課税されてしまう。仮に会社側が発行済みトークンの50%を持っているとすると、500億円の含み益に対して30%課税される。もし日本で事業をしていれば、150億円を納税しなければいけない。 ただ納税のために150億円分のトークンを換金すれば、売り圧力が強すぎてマーケットが崩れてしまう。しかも、このトークンは「ガバナンストークン」といって議決権の役割もあるので、売ってしまうと運営不可能になる。だから今ウェブ3.0の領域で起業する人たちは皆、海外に出てしまっている」この重課税は由々しい問題だ。「新しいウェブ3.0の波がある中で、日本人、そして日本の企業として、どれだけウェブ2.0の反省を生かして世界で戦えるか。それが国益にも繋がる。(起業家が海外へ出るという)由々しき事態が一刻も早く解決されることを望んでいる」、同感である。

次に、4月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「「Web3.0・NFT」って何?「NBAのカードが100万ドルで売買」される理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302308
・『「ウェブ3.0(スリー)」が注目され、「非代替性トークン」(NFT)の発行が急増している。象徴的な企業が、米国のダッパー・ラボだ。2020年10月、同社はNBAの名プレーシーンをNFTとして集めるゲーム、「NBA Top Shot」を始めた。希少性を担保する仕組みと、レアなカードを集めたいファンの欲求が重なった結果、NBA Top ShotのNFT価格が高騰。ロサンゼルス・レイカーズに所属しているレブロン・ジェームズ選手のNFTが、100万ドルで売りに出されている』、「レブロン・ジェームズ選手のNFTが、100万ドルで売りに出されている」、「希少性を担保する仕組みと、レアなカードを集めたいファンの欲求」があったとはいえ、驚きの高価格だ。
・『世界的に注目されるウェブ3.0  最近、世界的に「ウェブ3.0(スリー)」が注目を集めている。ウェブ3.0により、プライベート型のブロックチェーン技術を用いて、個人が公正なデータの管理などのメリットを享受できる。 そうした取り組みを加速させる企業の一つに、米国のDapper Labs(ダッパー・ラボ)がある。同社は処理能力の高いブロックチェーンを開発し、「非代替性トークン」(Non-Fungible Token、NFT、電子的な証明書)の発行と流通を可能にした。それを用いた、米NBAのスーパープレー動画を記録したNFT取引が、過熱している。国内でも大手芸能事務所などがNFTビジネスに参入している。 ただ、短期間に、GAFAM (Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)を頂点とした世界のIT業界の構図が崩れ、ウェブ3.0に移行するとは想定しづらい。今後、IT先端分野での競争は激化するだろう。その中で、ブロックチェーンなど新しいデジタル技術の利用が増え、分散型と中央集権型のシステム運営が並走する状況が続く可能性が高い。 その中で、より効率的かつ持続的に付加価値を生み出す技術が評価されるはずだ。言い換えれば、IT先端分野の環境変化のスピードは加速し、淘汰される企業が増える。行政を中心にデジタル化の遅れが深刻なわが国の、デジタル・ディバイド(情報格差)が鮮明化することが懸念される』、「IT先端分野の環境変化のスピードは加速し、淘汰される企業が増える。行政を中心にデジタル化の遅れが深刻なわが国の、デジタル・ディバイド(情報格差)が鮮明化することが懸念される」、その通りだ。
・『ウェブ3.0は金融にも変革をもたらす  1990年代から2000年9月の米ITバブル崩壊まで、米国から世界へITサービスが広がった。その一つに、ヤフーは検索機能や電子メールのサービスを提供し、経済運営の効率性が高まった。この時代を「ウェブ1.0(ワン)」と呼ぶ。 次に03年ごろ、世界はウェブ2.0(ツー)に移行したと考えられる。当時、広告シェアにおいてグーグルがヤフーを超えた。グーグルは広告収入を増やし、クラウドサービス事業などに資金を再配分してプラットフォーマーとしての地位を固めた。その後、アマゾンドットコムなどの急成長によってデジタル化は加速し、IT業界は寡占化した。その結果、個人のデータが、一部の大手企業に集中した。 今度は、ウェブ3.0が、そうした中央集権的なネット業界の構造を変えると期待されている。分散型のネットワークテクノロジーであるブロックチェーンによって、特定の組織の影響力が低下するのが特徴だ。 ブロックチェーンは、所有権など個人のデータを記録し、参加者の相互承認によってその取引を行う。理論上、改竄(かいざん)は不可能だ。取引の一例が、仮想通貨のビットコインである。 ビットコインを入手したい人は、一種の数学のクイズを解く。解答が正当か否かを全参加者が確認し、承認する。承認された解答者はビットコインを手に入れる。そうして、この取引のデータ(ブロック)が、過去から鎖のように連なるデータに付け加えられる。 一連の作業は、特定の監視者ではなく、システムが自律的に行う。誰がどれだけのビットコインを保有しているかは、企業ではなく分散型のネットワークシステムが管理する。この技術を用いたウェブ3.0の世界では、個人が自らのデータをよりよく管理し、その利用から利得を手にすることができると期待されている。 ウェブ3.0は金融にも変革をもたらす。銀行が預金を集めて信用審査を行い、信用を供与するのではなく、ブロックチェーン上で資産価額が評価され、融資が行われる。これにより金融ビジネスは、「分散型金融」(Decentralized Finance、DeFi、ディファイ)に向かうとみられている。システム上で資産の所有権や価値の評価などが行われるため、店舗運営などのコストが低下し、効率性が向上することが注目点だ』、「ウェブ3.0は金融にも変革をもたらす。銀行が預金を集めて信用審査を行い、信用を供与するのではなく、ブロックチェーン上で資産価額が評価され、融資が行われる。これにより金融ビジネスは、「分散型金融」・・・に向かうとみられている。システム上で資産の所有権や価値の評価などが行われるため、店舗運営などのコストが低下し、効率性が向上することが注目点だ」、「分散型金融」に向かった「金融ビジネス」は、これまでとは全く異なったものになるのだろう。
・『「NBA Top Shot」では、NFTが100万ドルに  ウェブ3.0を考える上で、NFTの発行が急増していることは見逃せない。その象徴的な企業が、米国のダッパー・ラボだ。2020年10月、同社はNBAの名プレーシーンをNFTとして集めるゲーム、「NBA Top Shot」を始めた。 NBAトップ・ショットは、ダッパー・ラボが開発・運営する「Flow」と名付けられたブロックチェーンが管理する。もともとダッパー・ラボは、他社のブロックチェーンを利用していたが、処理速度が遅いという問題があった。そのため、新しいブロックチェーンのFlowを自社開発し、より円滑な取引環境を利用者に提供している。 取引の仕方はこうだ。まず、NBA Top Shotの公式サイトにアクセスして、デジタル化されたトレーディングカードのパックを購入する。これは、有価証券の発行市場になぞらえることができる。 カードと呼ばれてはいるが、実際に購入するのは短い動画だ。パッケージには、ふつう(Common)、珍しい(Rare)、レジェンド(Legendary)の三つの区分があり、右に行くほど希少性が増し、価格も高くなる。イメージとしては、かつて子供に人気だったプロ野球選手のカード付きスナック菓子を買うことに似ている。 また、公式サイトのマーケットプレイス(流通市場)にアクセスし、他の保有者からデジタルカードを購入したり、売却したりすることもできる。決済はイーサリアムやビットコインといった仮想通貨、クレジットカードなどで行い、ダッパー・ラボは決済の手数料を獲得する。その他、カードを獲得できるイベントも開催されている。 ブロックチェーンが管理するNFTは、その一つ一つが唯一無二のデジタル資産だ。偽造はできない。デジタルであるため劣化もしない。そのため、NBAファンは、いつでもお気に入りの名選手の名プレーを、自分だけのものとして楽しむことができる。 そうした希少性を担保する仕組みと、希少なカードを集めたい欲求が重なった結果、NBA Top ShotのNFT価格が高騰した。一例として、マーケットプレイスでは、ロサンゼルス・レイカーズに所属しているレブロン・ジェームズ選手のNFTが、100万ドル(約1億2800万円)で売りに出されている(4月19日アクセス時点)』、「レブロン・ジェームズ選手のNFTが、100万ドル(約1億2800万円)で売りに出されている」、「希少性を担保する仕組みと、希少なカードを集めたい欲求が重なった結果」、なるほど。
・IT業界の競争激化とわが国への影響  世界経済はウェブ2.0から3.0への移行期にあると考えられる。とはいえ、ブロックチェーンの利用が増えたとしても、中央集権的な仕組みはなくならないだろう。 米FRB(連邦準備制度理事会)や日本銀行などは、「中央銀行デジタル通貨」(CBDC)に関する研究を進めている。パブリック型のブロックチェーンの利用が進むことによって、中央集権的な経済や社会の運営は続く。また、GAFAMのような大手IT企業が、ウェブ3.0企業を買収するなどして、中央集権的なネット運営が続くことも考えられる。 その一方で、ダッパー・ラボのように処理速度の速いブロックチェーン技術を開発し、人々の新しい取り組みや欲求を刺激できる企業は、競争に生き残る可能性がある。 また、現在のウェブ3.0への期待には、「行き過ぎ」の部分がある。筆者がそう考える理由の一つに、世界で金融政策の正常化および引き締めが進んでいることが挙げられる。 物価の高騰によって、米国をはじめ世界の主要中央銀行は利上げやバランスシートの縮小を急ぎ始めた。世界的に金利上昇圧力は高まり、米国のナスダック上場銘柄など、期待先行で上昇した株は売られるだろう。 それに伴って、ウェブ3.0への期待を集めたスタートアップ企業は不安定化し、ビジネスの継続に行き詰まる展開も予想される。2000年のITバブル崩壊の時のような状況が、再来する可能性は排除できない。NFT関連の規制も強化されるだろう。 今後、ウェブ2.0を牽引(けんいん)した企業と、ブロックチェーン開発を進めてNFT取引の拡大を目指す新興企業の競争が激化するはずだ。ひるがえって、わが国には米国や中国の有力プラットフォーマーに匹敵する企業が見当たらない。ダッパー・ラボのように新しく社会の関心と期待をさらうような企業も少ない。 ウクライナ危機をきっかけに、世界経済の分断は深まり、各国の経済運営の効率性も低下するだろう。それは、外需依存度が高まるわが国にマイナス影響をもたらす。ウェブ2.0からウェブ3.0へ、世界が加速度的にシフトする中、わが国のデジタル・ディバイドぶりは一段と鮮明化する恐れがある』、「わが国には米国や中国の有力プラットフォーマーに匹敵する企業が見当たらない。ダッパー・ラボのように新しく社会の関心と期待をさらうような企業も少ない」、「ウェブ2.0からウェブ3.0へ、世界が加速度的にシフトする中、わが国のデジタル・ディバイドぶりは一段と鮮明化する恐れがある」、世界の潮流からこれ以上、取り残されないようにしてもらいたいものだ。
タグ:ブロックチェーンはユーザー同士を直接つなぎ、透明性や検証性の高い経済活動を実現する。中抜き構造が変わるのは大きなインパクトになる」、「世界には今ビットコインやイーサリアムなど主要なブロックチェーンが20個ほどあるが、相互につながっていない。アスターはこれらをつなげるプラットフォームになる。 アスターは・・・ギャビン・ウッド氏が開発した「ポルカドット」というブロックチェーンに接続する、パラレルチェーンという部分を担っている。これが意味するのは、ポルカドットに接続されたほかのチェーンと相互に通信ができるという 「ブロックチェーンは搾取されてきた人たちに権力を分配できる技術だ。いわゆる「GAFAM」はネットビジネスで勝ち抜いた。今後20年は、それがウェブ3.0になる」、「ウェブ3.0は「Less trust, More truth(信頼に代わる真実を)」という世界。これまではあらゆる経済活動に、人々に「信頼」された中間的な業者が入っていた・・・あらゆるビジネスはすべて、信頼の上に成り立っているゆえに、間の人たちが実際に何をしているのかは見えない状態だった。 東洋経済オンライン「世界に挑む「国産ブロックチェーン」起業家の素顔 「ウェブ3.0は若者に非常に有利な領域だ」」 ブロックチェーン (その2)(世界に挑む「国産ブロックチェーン」起業家の素顔 「ウェブ3.0は若者に非常に有利な領域だ」、「Web3.0・NFT」って何?「NBAのカードが100万ドルで売買」される理由) こと。 ポルカドットに接続するチェーンはすべて同じ開発ツールで作られている。ただイーサリアムやソラナといったほかのチェーンは違う。それらのチェーンとポルカドットをつなぐ存在が必要で、僕らがその役割を担いたいと考えている」、「今はユーザーがそれぞれのブロックチェーンのことを理解しなければ、アプリケーションが使いづらい。一般にブロックチェーンが普及するには、一つひとつのチェーンを意識せずに、さまざまなアプリケーションが使えることが重要だ。 例えばビットコインでイーサリアム上のNFT(非代替性トークン)を買える 「アメリカのコインベースやシンガポールのCrypto.com、中国のバイナンスといった大手暗号資産交換所の投資部門や、海外のさまざまな暗号資産ファンドから資金調達をしています。ウェブ3.0における世界のプレイヤーから注目されている背景は何でしょうか。 A:Day 1(創業初日)からグローバルを意識しているというところが前提にあると思う。すでに世界で一定の認知度と技術の先端を走っているということが認められている。 あとはコミュニティの大きさ」、なるほど。 「「2019年に日本で創業して、2020年にはシンガポールに拠点を移しました。法人が保有するトークンの含み益への期末課税の問題が大きかった」、「トークンを発行して時価総額が1000億円になったとき、この1000億円の含み益に対して課税されてしまう。仮に会社側が発行済みトークンの50%を持っているとすると、500億円の含み益に対して30%課税される。もし日本で事業をしていれば、150億円を納税しなければいけない。 ただ納税のために150億円分のトークンを換金すれば、売り圧力が強すぎてマーケットが崩れてしまう ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫氏による「「Web3.0・NFT」って何?「NBAのカードが100万ドルで売買」される理由」 「レブロン・ジェームズ選手のNFTが、100万ドルで売りに出されている」、「希少性を担保する仕組みと、レアなカードを集めたいファンの欲求」があったとはいえ、驚きの高価格だ。 「IT先端分野の環境変化のスピードは加速し、淘汰される企業が増える。行政を中心にデジタル化の遅れが深刻なわが国の、デジタル・ディバイド(情報格差)が鮮明化することが懸念される」、その通りだ。 「分散型金融」・・・に向かうとみられている。システム上で資産の所有権や価値の評価などが行われるため、店舗運営などのコストが低下し、効率性が向上することが注目点だ」、「分散型金融」に向かった「金融ビジネス」は、これまでとは全く異なったものになるのだろう。 「レブロン・ジェームズ選手のNFTが、100万ドル(約1億2800万円)で売りに出されている」、「希少性を担保する仕組みと、希少なカードを集めたい欲求が重なった結果」、なるほど。 「わが国には米国や中国の有力プラットフォーマーに匹敵する企業が見当たらない。ダッパー・ラボのように新しく社会の関心と期待をさらうような企業も少ない」、「ウェブ2.0からウェブ3.0へ、世界が加速度的にシフトする中、わが国のデジタル・ディバイドぶりは一段と鮮明化する恐れがある」、世界の潮流からこれ以上、取り残されないようにしてもらいたいものだ。
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半導体産業(その9)(日本の半導体産業を復活させるには何が必要か――太田泰彦(日本経済新聞編集委員)【佐藤優の頂上対決】、日本の「次世代半導体連合」に台湾が必要不可欠な理由、岸田政権・日本政府が主導して「半導体会社」を設立したが…「戦略不在」でまったく「成功を期待できない」ワケ) [イノベーション]

半導体産業については、8月25日に取上げた。今日は、(その9)(日本の半導体産業を復活させるには何が必要か――太田泰彦(日本経済新聞編集委員)【佐藤優の頂上対決】、日本の「次世代半導体連合」に台湾が必要不可欠な理由、岸田政権・日本政府が主導して「半導体会社」を設立したが…「戦略不在」でまったく「成功を期待できない」ワケ)である。

先ずは、11月22日付けデイリー新潮「日本の半導体産業を復活させるには何が必要か――太田泰彦(日本経済新聞編集委員)【佐藤優の頂上対決】」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/11220555/?all=1
・『国家の安全保障を左右する戦略物資としてますます重みを増す半導体。このサプライチェーンをめぐって各国で激しい駆け引きが行われている。かつて日本は半導体大国だった。それがなぜこうまで凋落してしまったのか。そして今後、復活の可能性はあるのか。半導体産業を知悉するジャーナリストの提言』、「半導体産業を知悉するジャーナリストの提言」とは興味深そうだ。 
・『佐藤 ここ数年、半導体は常に経済ニュースの主役です。コロナや米中デカップリング(分離)でサプライチェーンが分断され、深刻な半導体不足が生じて家電製品や自動車の生産ラインが止まりました。ただ、この物資の実態は極めてわかりにくい。その全体像を理解するのに、太田さんの『2030半導体の地政学』は格好のテキストでした。 太田 ありがとうございます。おっしゃる通りで、半導体はあらゆる電気製品に組み込まれており、サプライチェーンはグローバルに広がって複雑です。その上、いまや国家の安全保障を左右する戦略物資となり、半導体を制する者が世界を制すという状況になっています。 佐藤 まずはこの半導体がどこでどう作られているのか、そこからお話しいただきたいと思います。 太田 半導体チップが製品として世に送り出されるまでには、千近くの工程があります。大雑把にまとめると、半導体にどのように仕事をさせるかを考える人、設計する人、実際に作る人がいます。それらが別々の地域、会社で行われています。 佐藤 国を跨いでもいる。 太田 はい。最上流にいるのが、電子回路の基本パターンやデジタル信号を処理する仕様を考え、ライセンスの形で供与する会社です。「IPベンダー」とも呼ばれますが、一番有名なのはイギリスのアームです。 佐藤 2016年に孫正義さんのソフトバンクが買収した会社ですね。 太田 そうです。次に基本設計を買って組み合わせて自社のチップの図面を描く人たちがいます。アメリカならクアルコム、エヌビディアなどの会社で、中国ならファーウェイ傘下のハイシリコンがそうです。またアメリカのインテルやAMDのようにアームとは異なる自前の仕様を採っている会社もあります。 佐藤 はっきり分けられない会社もある。 太田 ただ、これらの企業の多くはファブ(工場)を持たず、「ファブレス」と呼ばれています。 佐藤 つまり頭脳ですね。工場ではなく、オフィスで仕事をしている。 太田 製造を請け負うのは、「ファウンドリー」と呼ばれる企業です。アメリカのグローバルファウンドリーズや韓国のサムスン電子などがありますが、台湾の台湾積体電路製造(TSMC)の一人勝ち状態です。技術力も規模も圧倒的で、世界の60%近いシェアを占めています。 佐藤 世界中でTSMCの工場を誘致していますね。アメリカではアリゾナ州に工場を造ることになりましたが、日本も国を挙げて誘致し、熊本に造ることが決まりました。 太田 製造だけ請け負うというと下請け企業のように見えますが、設計メーカーの方がTSMCに依存しているのが実態です。というのも半導体の仕様が非常に高度になり、設計はできても、製造・量産することが極めて難しくなっているからです。 佐藤 回路にはナノ(10億分の1)単位で描線が引かれるといいますね。 太田 5ナノ~3ナノで量産できるのはTSMCとサムスン電子の2社で、2ナノまで微細化を進めているのはTSMCだけです。 佐藤 このTSMCはいつできた会社なのですか。 太田 1987年です。そもそも設計と製造を分離させたファウンドリーは、TSMCの創業者・張忠謀が発展させてきたビジネスモデルです。アメリカ企業にしてみれば、工場を建てて設備投資すれば1兆円単位でカネがかかりますから、自分で持ちたくはない。安く作ってくれるところがあれば、任せたいわけです。 佐藤 両者の思惑が一致した。 太田 自由貿易と市場原理の一つの均衡点として生まれたモデルといえます。これらを地域で見ていくと、IPベンダーはイギリス、ファブレスはアメリカのシリコンバレー、そしてファウンドリーは台湾、韓国の東アジアと、大西洋も太平洋も跨ぐ形で、広大で複雑なサプライチェーンが広がっています』、「ファウンドリー」は、「製造だけ請け負うというと下請け企業のように見えますが、設計メーカーの方がTSMCに依存しているのが実態です。というのも半導体の仕様が非常に高度になり、設計はできても、製造・量産することが極めて難しくなっているからです」、「2ナノまで微細化を進めているのはTSMCだけ」、「ファウンドリー」はすごい力を持ったものだ。
・『日本はなぜ衰退したか  藤 その中で、いま日本はどんな位置にあるのですか。 太田 半導体を作るには、当然、材料が必要ですし、半導体に特化した製造装置が要ります。この分野は日本が強い。回路を載せるシリコンウエハーなら信越化学工業とSUMCOが世界で大きなシェアを占めていますし、製造装置では東京エレクトロンなどが有名です。 佐藤 日本の半導体産業はかつてメモリが非常に強く、製造機器は露光機なども大きなシェアを占めていました。それが衰退してしまったのは、どこに原因があったのでしょうか。 太田 三つあると思います。一つは1980年代の日米半導体摩擦で、不平等条約に近い不利な協定を結ばされてしまったことです。アメリカは当時から半導体が国家安全保障に関わる戦略物資だと考えていたので、業界を必死に守ろうとしました。これに対し、日本は「安くていいものを作ればいい」くらいにナイーブに考えていたんですね。これで時間を失ってしまった。 佐藤 ここぞ、という時には、アメリカは国家のすごみを出します。 太田 それからやはり政策の失敗も大きい。半導体産業はアップダウンが激しく、苦しい時もあるのですが、それでも投資すべき局面があります。そこは政府が後押ししなければならない。 佐藤 支援が適切な時期に適切な規模でなされなかったのですね。 太田 三つ目は、日本では半導体を総合電機メーカーが作っていたことです。日立も東芝も、重電から家電まで扱い、さらに半導体も作っていました。私はこれが衰退の最大の要因だと思います。 佐藤 確かに総合電機メーカーの事業は幅広く、家庭用洗濯機から原子炉まで作っています。 太田 彼らの主力事業である重電では、電力会社や鉄道会社などの需要を5年先、10年先まで見ながら設備投資をしていきますね。 佐藤 計画経済に近い。 太田 その通りです。でも半導体は、儲かったり儲からなかったり、振幅が大きいシリコンサイクルに振り回されます。すると、総合電機メーカーの中の部門としては浮いてしまう。結果として事業を続けられなくなった。 佐藤 つまりリストラの対象となる。 太田 総合電機メーカーという形態である以上、致し方ないことかもしれないですが、それが日本の半導体産業の悲劇だったと思います。 佐藤 日本でもファウンドリーを作ろうとしたことはあるのですか。 太田 1990年代末に台湾のある企業と総合電機メーカーが組んで始めようとしています。でも数年でやめてしまったんですよ』、「日本では半導体を総合電機メーカーが作っていたことです。日立も東芝も、重電から家電まで扱い、さらに半導体も作っていました。私はこれが衰退の最大の要因」、「振幅が大きいシリコンサイクルに振り回されます。すると、総合電機メーカーの中の部門としては浮いてしまう」、なるほど。
・『半導体と中国人  佐藤 米中のデカップリングで、いまこうした半導体のサプライチェーンが再編されつつあります。 太田 アメリカは、まずトランプ前大統領がファーウェイに制裁を科しました。それをバイデン政権も引き継いでいる。 佐藤 米中間はもちろん、台湾と中国のサプライチェーンも切断しました。 太田 ただすべてではないんですよ。ワシントンでは政府・議会・軍で形成される国防コミュニティーと企業が、常にせめぎ合っています。彼らは、この技術はダメだけども、ここまでは輸出できるとはっきり線を引く。その線は動くこともありますが、決められた範囲内ならほぼ自由に輸出できる。 佐藤 ビジネスを続けている。 太田 先端技術でデカップリングが進んでも、完全に分離するのは難しいでしょう。価値観としてのグローバリズムは終わりましたが、現象としてのグローバリゼーションは止まらない。その中で、多くの日本企業はアメリカが引いた線の一歩も二歩も手前の製品まで輸出しないようにしました。米中対立の実像がよくわかっていないんですよ。 佐藤 忖度ですね。何か言われると嫌だから、自主規制してしまった。それに官僚たちは本性として規制が大好きですから。 太田 安倍政権時代の日韓のけんかでは、日本政府が徴用工問題で韓国の文在寅政権に対抗する形で、韓国への化学素材の輸出管理を厳格化する措置を取りました。半導体のエッチングガスやシリコンの洗浄剤に使われるフッ化水素、有機ELの材料であるフッ化ポリイミド、半導体の基板に塗る感光剤のフォトレジストの3品目です。これによって韓国は悲鳴を上げましたが、同時に輸出を止められた日本の会社も激怒した。 佐藤 国から商売相手を切られたわけですからね。 太田 この時に、政府は輸出規制が強い武器であると確信したのだと思います。そして企業側はサプライチェーンが国家によって簡単に断ち切られるリスクを考慮しなければならなくなった。 佐藤 この対談にご登場いただいたパソコンメーカー・VAIOの山野正樹社長は、1~2ドルの安い半導体が中国から入ってこなくて困った、とお話しされていました。だからデカップリングでも、最先端で高価なものだけが重要なのではない。 太田 そこが大事なところで、どうしても最先端の技術競争に目が行きますが、1ドルのチップだって、欠けたら製品は完成しません。 佐藤 ご著作の中でバイデン大統領の言葉が紹介されていましたね。「釘が1本足りないため、馬の蹄鉄が駄目になった」と。 太田 あれはマザーグースからの引用で、その後は馬が走れず、騎士が乗れず、戦ができないので王国は滅びたと続きます。釘は最先端の部品とは限らない。そうしたチョークポイント(物事の進行を左右する部分)をどれだけ握れるかが、これから国家にとっての眼目になると思います。 佐藤 それをきちんと把握しなければならない。 太田 実はいま中国が10ナノにも届かない一般的な半導体に莫大な設備投資をしています。数年後には間違いなく過剰供給になる。鉄鋼がそうだったように、中国の過剰供給で値段がグンと下がりますから、日本の半導体産業が一気に掃討される可能性だってあります。最先端の領域だけでなく、ボリュームゾーンにも目を配っていかねばなりません。 佐藤 デカップリングでないところでも、危機が生じるのですね。 太田 私は産業を三つの階層から見るべきだと考えています。国家と企業と個人です。国家には安全保障の責務があり、各国の政府は国を守るためにゲームを繰り広げる。一方、企業は利潤を追求して、国境を越えてビジネスを展開します。そして個人は、国家や企業の価値観は関係なく、自分の人生を一番大切にする。 佐藤 それはそうです。 太田 日米半導体摩擦後に、日本のエリート技術者たちが数多く中国や韓国の企業にリクルートされ、技術流出が問題になりましたね。給料を2倍、3倍出すと言われて海を渡った人も多い。でも彼らを「国賊」とか「裏切り者」と言うのは間違っています。2倍3倍の給料が払えなかった企業の経営と、企業が稼げる仕組みを作れなかった政策が悪いのであって、彼らではない。 佐藤 その人たちにそれだけのマーケットバリューがあったということですからね。ただ一方で、イスラエルでは、シリコンバレーに行けば10倍の年収になる人も、国にとどまります。ユダヤ人国家を存続させるには、能力がある者は自国にいるべきだと考えているからです。それはロシアのシリコンバレーといわれるゼレノグラードでも同じです。 太田 なるほど。そうした国では、国家と企業、個人の距離感が違うのでしょうね。 佐藤 国家と個人が非常に近い。その点でイスラエルとロシアは似ていて、共通の感覚があります。だから、イスラエルはアメリカの最重要同盟国なのに、ロシアに経済制裁を行っていません。 太田 かつて日本人も、国や企業との距離が近かったですね。私は1990年代にアメリカに留学しましたが、駐在員や留学生たちはいつも「私の会社では」とか「私の国では」という話し方をしていました。 佐藤 その逆が中国人ですね。 太田 彼らは自分の幸せ、家族の存続を第一に考えますね。また現実主義者で、どこにでも移っていきます。 佐藤 国籍を変えることに抵抗がない。どこの国民になっても自分たちの宗族でまとまりますし、中国人の意識を持ち続けている。 太田 半導体を取材して感じたのは、その中国人、華人たちの活躍ぶりです。シリコンバレーのデジタル企業には、トップ層でマネジメントを担っている華人が多いんです。TSMCの張忠謀もマサチューセッツ工科大学を出て、アメリカの半導体企業テキサスインスツルメンツの幹部でした。彼らはあらゆるところにいる。華人の視点から見ていかないと、半導体はわからないと思うに至りました。ですから次は華人についてもっと研究したいと思っているんです。 佐藤 それは重要な視点です。国家ではないのに、国家のような様相を呈す集団ですね。ユダヤ人に近いかもしれない。 太田 そうですね。ただ彼らの取材は難しいんです。なかなかそのコミュニティーに入っていけませんから』、「中国人」、「彼らは自分の幸せ、家族の存続を第一に考えますね。また現実主義者で、どこにでも移っていきます。 佐藤 国籍を変えることに抵抗がない。どこの国民になっても自分たちの宗族でまとまりますし、中国人の意識を持ち続けている。 太田 半導体を取材して感じたのは、その中国人、華人たちの活躍ぶりです。シリコンバレーのデジタル企業には、トップ層でマネジメントを担っている華人が多いんです。TSMCの張忠謀もマサチューセッツ工科大学を出て、アメリカの半導体企業テキサスインスツルメンツの幹部でした。彼らはあらゆるところにいる。華人の視点から見ていかないと、半導体はわからないと思うに至りました」、その通りだ。
・『エンジニアに敬意を  佐藤 ご著作には、半導体の重要地域として、アルメニアが出てきました。このアルメニア人も国外にいる数の方が多い。その一部は武器商人として知られています。 太田 アルメニアには、アメリカのシノプシスという会社の開発拠点があります。半導体設計の自動支援システムを提供する会社は世界に3社しかなく、その最大手です。アルメニアはロシアと緊密な関係がありますから、ウクライナ侵攻でどうなっているのかと思ったら、シノプシスは以前と変わらず首都エレバンで人を募集していました。 佐藤 ここに注目されたのは慧眼だと思いました。 太田 デジタル技術から見た地政学上の重要地域の一つはASEANで、もう一つはコーカサスだと思っています。アルメニアは人口300万人弱の小国でありながら、IT分野の雇用者数は1万7千人に及ぶと聞きます。アメリカからは他にも、計測・制御ソフトのナショナルインスツルメンツやマイクロソフト、ネットワーク機器最大手のシスコなどが進出しました。 佐藤 もうサプライチェーンの一角を占めているわけですね。アルメニアは、ロシアはもちろん、イランとの関係も極めて深い。戦略上、注目すべき地域です。 太田 アルメニアは資源がないため、デジタル産業で国を興そうとしたんですね。その時、まだ半導体産業が輝いていた時代の日本人エンジニアが現地に行って教えているんですよ。 佐藤 それが基礎になっている。逆に日本は存在感がなくなってしまったわけです。日本はこれからどうすればいいとお考えですか。 太田 私はシンガポール駐在時代、ファーウェイの本社がある中国・深センに通ったんです。この都市の中心にある華強北という一区画には、畳1~2畳ほどの電子部品店が詰まったビルが林立していて、その熱気の中から新しい発想が次々と生み出されてくる。華強北でよく日本の若者にも会いましたが、もう日本にはこんな場所はないと言うんですね。秋葉原はいまやメイドとアニメの街ですから。 佐藤 私は小学生の頃、部品のジャンクショップで真空管やコンデンサーを買いラジオを組み立てていました。3球のラジオを作りましたね。 太田 私もやりました。真空管は、1球、2球と呼び、トランジスタになると1石、2石となる。 佐藤 あれは楽しかった。ワクワクしながら作っていました。 太田 私もそうです。モノ作りに熱量があったんですね。同じものを華強北には感じました。でもいまの日本にはそれがない。 佐藤 私もそう感じます。 太田 だからいま必要なのは、モノを作る人、エンジニアがいろいろなことを、生き生きと面白がってやれるようにすることだと思うのです。それにはエンジニアに対する社会の敬意が必要です。 佐藤 日本では「理系」と十把一絡げにして、狭い世界に閉じ込めてしまうところがありますからね。 太田 同時にエンジニアの方々には、もっと自分の経済価値に目覚めてほしいんですよ。先日、日本の素材サプライヤーを訪ねたんです。世界中でこの会社しかできない金属加工技術を持っていて、インテルやTSMC、サムスンが毎日のように「こっちに回せ」と言ってくる。そんなに需要があれば値段が上がるはずなのですが、むしろ値切られている。 佐藤 どうしてですか。 太田 商慣習だそうです。お客さんを大切にするとおっしゃっていましたが、どうにも腑に落ちない。なぜだろうと考えていて「あっ」と気がついたんです、彼らは幸せなのだと。すごいものを作り、きちんと納期までに仕上げ、それで満足し、喜びを感じているのではないか。それは美しい話ですが、同時にもったいない、とも思いました。 佐藤 非常に日本的ですね。そこに経済合理性を取り入れた方が、持続可能性にもつながるでしょう。 太田 そうですね。日本には優れたエンジニアたちがいます。彼ら、彼女らの価値を正しく認める舞台を作っていかなければいけない。エンジニアが夢を抱けなければ、日本の未来は明るくならないと思いますね。 太田氏の略歴はリンク先参照)』、「そんなに需要があれば値段が上がるはずなのですが、むしろ値切られている・・・商慣習だそうです。お客さんを大切にするとおっしゃっていましたが、どうにも腑に落ちない。なぜだろうと考えていて「あっ」と気がついたんです、彼らは幸せなのだと。すごいものを作り、きちんと納期までに仕上げ、それで満足し、喜びを感じているのではないか。それは美しい話ですが、同時にもったいない、とも思いました。 佐藤 非常に日本的ですね。そこに経済合理性を取り入れた方が、持続可能性にもつながるでしょう。 太田 そうですね。日本には優れたエンジニアたちがいます。彼ら、彼女らの価値を正しく認める舞台を作っていかなければいけない。エンジニアが夢を抱けなければ、日本の未来は明るくならないと思いますね』、「日本」の「エンジニア」は、「すごいものを作り、きちんと納期までに仕上げ、それで満足し、喜びを感じているのではないか。それは美しい話ですが、同時にもったいない」、同感である。

次に、11月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した早稲田大学大学院経営管理研究科教授の長内 厚氏による「日本の「次世代半導体連合」に台湾が必要不可欠な理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/313421
・『「ビヨンド2ナノ」に向けたラピダス設立に感じる課題  ビヨンド2ナノ(回路幅が2ナノクラスの次世代半導体)に向けて、台湾への半導体投資というプランBが必要なのではないか。 先日、トヨタ自動車やNTTなどが立ち上げたラピダス(Rapidus)は、国産半導体復興を目指した共同出資企業だ。ただ、ラピダスは規模を追わずに小規模で最先端半導体の開発をするという。しかし、技術開発は固定費であるし、半導体製造は巨大な装置産業であって、規模の経済性が重要な産業だ。どちらも大量に生産し、販売した方が、次の投資がしやすくなる。 とかく日本人は「いたずらに規模を追わず、技術で勝負する」「金儲けだけが目的ではない」ということを言いがちだが、経営学的に見れば、こんな危うい発言はない。言い換えれば、「入ってくるお金や資源は少ないが、日本人は優秀なので気合いで頑張れる」といった精神論にしか聞こえない。 20世紀のような、変動費の要素が大きいエレクトロニクス製品などの開発においては、数を追わない製品差別化戦略は可能であったと思う。しかし、様々なエレクトロニクス産業の製品がデジタル化し、ソフトウエアと半導体で構成されるようになると、固定費の要素が大半になるので、数を一番多く作ったところが総取りになるような競争が多く見られる。 MIT流の技術経営の考え方に、イノベーションとは新たな価値を産み出す価値創造のプロセスと、産み出した価値からしっかり収益を獲得する価値獲得のプロセスからなる、という考え方がある。価値創造は専ら開発の仕事であるが、価値獲得には製造、標準化、マーケティング、販売、PRなど様々な手段で自社の収益化に結びつけるあの手この手のアイデアが必要となる。日本は価値創造が得意だが、価値獲得が苦手な企業があまりに多い。 液晶パネル、太陽光パネル、NAND型フラッシュメモリ、最近でいえば日本のノーベル賞受賞技術であるリチウムイオン電池など、日本が価値創造に大きく貢献をしながら、価値獲得はよりビジネスの上手い諸外国企業に獲られているという状況が続いている。  これまでも、一度日本が失った市場を取り戻すべく、日の丸連合を作ったケースは多々あった。エルピーダメモリやジャパンディスプレイなど、いずれも規模を追わない日の丸連合で失敗をしている。ラピダスもこれらの失敗は意識しているのか、「日米連携による新会社は日の丸連合ではない」としているが、IBMも苦戦する半導体産業において、台湾や韓国の勢いにどれだけ対抗できるのであろうか。 そもそも規模の経済性を無視して、小規模で最先端ということが可能なのだろうか。最先端のことをやるには開発費がかかる、一方で、数を追って莫大な既存事業の利益を上げている会社と、細々と小規模な売り上げを立てている会社のどちらがその先の投資に有利かは、火を見るよりも明らかだ。 ただし、ここでいう規模というのはIDM(自社で設計、製造、販売まで手がけるメーカー)による少品種大量生産を意味するわけではない。ファウンドリービジネスでは、多品種少量生産をひとつのファウンドリーで集約して大量生産のメリットを活かすことができるので、ファウンドリーが半導体ビジネスの主流になった。ファウンドリーの多品種少量はあくまで大量生産の規模の経済性を最大限活かしているケースだ』、「液晶パネル、太陽光パネル、NAND型フラッシュメモリ、最近でいえば日本のノーベル賞受賞技術であるリチウムイオン電池など、日本が価値創造に大きく貢献をしながら、価値獲得はよりビジネスの上手い諸外国企業に獲られているという状況が続いている」、その通りだ。
・『半導体製造装置の優位性に不安材料も  もうひとつの不安材料は、製造設備だ。今でも半導体の部材や製造設備で日本には優位性のある分野が多いが、半導体製造に必要な露光装置に関していえば、かつて日本のキヤノンなどがアメリカのキャスパーから近接露光方式で優位を勝ち取ったのに対して、近年ではオランダのASMLがより高性能なEUVリソグラフィ露光装置で日本のニコンやキヤノンよりも優位に立っている。 現時点でASMLの露光装置なくして、ビヨンド2ナノの製造は不可能であろう。ASMLが新世代露光装置を独占している状況は、米国にとって必ずしも好ましいことではない。ASMLが中国に露光装置を輸出するのを禁止するよう、米国政府がオランダ政府に圧力をかけたほどであり、より与しやすい日本がこの分野で優位に立つことは米国の利益にもかなう。とはいえ、政府の思惑通りに企業の競争力が高まるわけでもない。) だからといって、日本がこの分野を簡単に諦めてしまっていいということではないだろう。26ナノプロセスの汎用性の高い技術については、熊本に台湾TSMCを誘致したように、日本はすでに日の丸連合にこだわらない半導体施策を進めている。 にもかかわらず、日本が最先端半導体の開発に乗り出すのは、半導体技術が安全保障に直結しているということもあるだろう。ウクライナでの紛争において民間のドローンが活躍しているように、民生用技術と軍事技術の垣根が低くなっている今日、AIやIoT技術に必須となる最先端半導体の国産化は、経済だけでなく安全保障上も重要になるだろう。とはいえ、国際競争力がつかなければ絵に描いた餅に過ぎない』、「日本が最先端半導体の開発に乗り出すのは、半導体技術が安全保障に直結しているということもあるだろう。ウクライナでの紛争において民間のドローンが活躍しているように、民生用技術と軍事技術の垣根が低くなっている今日、AIやIoT技術に必須となる最先端半導体の国産化は、経済だけでなく安全保障上も重要になるだろう」、その通りだ。
・『日本が台湾に学ぶべきビジネスでの「価値獲得」  冒頭で述べた台湾との連携というのも、簡単な話ではない。ラピダスの小池淳義社長は、日立製作所と台湾第2位の半導体ファウンドリー・UMCとの合弁でファウンドリーの立ち上げを目指したトレセンティにおいて量産を指揮したが、それでも上手くいかなかった。その要因は様々指摘されているが、日本は台湾と組むときに、台湾の生産能力だけを活用しようとしているからではないか。 日本が台湾から学ぶべきは、いかに制約条件が大きい中でビジネスの構想力によって課題を突破し、収益化に結びつけるかというビジネスの能力であろう。日本は価値創造が得意であるが、台湾が得意なのは価値獲得である。台湾を単に日本の製造手段として見ていると、台湾を過小評価することになる。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業がシャープを再建したり、熊本の汎用性の高い半導体事業にTSMCを誘致したりと、台湾の価値獲得の能力を活かす日台アライアンスの事例も増えてきている。 また、政策としての海外との連携という点では、日本は台湾と公式の外交関係がなく、日本の政府機関は、出先の民間組織として日本台湾交流協会を通じた外交政策を行っている。各省庁がひとつの出先機関に集中しているのは台湾だけであり、交流協会というひとつの組織で関係省庁が連携をとりやすい環境ができているのも、日台アライアンスを進める上でのメリットだ。) さらにいえば、近年の良好な日台関係も両者のアライアンスを後押しするだろう。米中対立や、ロシアのウクライナ侵攻、3期目に入る中国習近平政権と、東アジアの安全保障に緊張状態をもたらすイベントが多い中で、日本と台湾は同じ脅威に接しており、両者の連携はますます重要になってくるといえる。 また、台湾には日本が必要とする産業も多く、台湾企業への投資は国際的に見ても極めて利回りが良いが、これだけ日台関係が良好で経済的な結びつきもあるのに、日本から台湾企業への投資はほとんど行われていない。台湾側が望んでいないかといえばそうではなく、むしろ「なぜ日本はもっと台湾企業に投資をしないのか」という声が、台湾の財界からは聞こえてくる』、「日本は価値創造が得意であるが、台湾が得意なのは価値獲得である。台湾を単に日本の製造手段として見ていると、台湾を過小評価することになる」、その通りだ。「日本から台湾企業への投資はほとんど行われていない」、「中国政府」に遠慮しているためだろう。
・『単なる連携ではなく台湾の技術や能力を吸収せよ  現在はもっと積極的に台湾との連携を深める好機であり、半導体はその最も有望な候補と言えるだろう。ラピダスもまだその設立が発表されたばかりで、量産に向けてどのような体制を築くのかは不明なところもある。今発表されている米国企業との連携だけで進むということもあるのかもしれない。 しかし、最先端のプロセスでリードする台湾の半導体産業を巻き込むという意味でも、また日本が得意ではない価値獲得の領域でいかに戦略的に立ち回るべきかという意味でも、日本は台湾との関係をもう一度考えてもよいのではないだろうか。 そのときは、単なる業務提携ではなく、日本から台湾の有望な企業への投資を増やし、台湾の技術やビジネスの能力を日本のものにしていくということも、重要ではないだろうか』、「単なる業務提携ではなく、日本から台湾の有望な企業への投資を増やし、台湾の技術やビジネスの能力を日本のものにしていくということも、重要ではないだろうか」、その通りだが、中国本土との関係が悪化しないよう巧みに立ち回る必要がある。

第三に、12月21日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「岸田政権・日本政府が主導して「半導体会社」を設立したが…「戦略不在」でまったく「成功を期待できない」ワケ」を紹介しよう』、興味深そうだ。
https://gendai.media/articles/-/103634?imp=0
・『中国の脅威が増大し、半導体確保のリスクが高まってきたことから、政府は国策半導体企業ラピダスの設立に乗り出した。だが日本は最先端半導体の製造技術において、他国より10年以上遅れており、一足飛びに世界トップを目指す方針には疑問の声も出ている。日本は90年代以降、半導体分野で完膚なきまでに敗北したが、すべての原因は「戦略の不在」である』、「日本は90年代以降、半導体分野で完膚なきまでに敗北したが、すべての原因は「戦略の不在」である」、その通りだ。
・『じつは「海外頼み」  ラピダスは、トヨタ自動車やNTTなど国内企業8社が出資し、次世代半導体の国産化を目指す国策企業である。同社が目指しているのは2ナノメートル(もしくはそれ以下)という最先端の製造プロセスだが、この技術を確立できる見通しが立っているのは、現時点では米インテル、台湾TSMC、韓国サムスンの3社だけである。 日本は現時点において、最先端の製造プロセス技術を持っておらず、2ナノの製造プロセスを実用化するためには、長い時間をかけて研究開発を行うか、他国から技術導入するしかない。 政府は基礎技術の開発を目指し、次世代半導体の研究開発拠点となる「技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)」を設立することも併せて発表している。 LSTCには、多くの研究所や大学が名を連ねているが、日本は長年、最先端半導体の製造分野から遠ざかっており、LSTC単体で技術を確立することは困難と言われる。LSTCは米IBMなど各国の研究機関と連携することが大前提の組織と考えてよいだろう。製造装置についても同様である。 日本メーカーは、2ナノメートルの半導体を製造できる装置を持っておらず、こちらも欧州メーカーから装置を導入する必要がある。基礎技術については米国から、製造装置については欧州から支援を受けるという形であり、自国による生産基盤の確立とは言い難い。) 資金面でも見通しが立っているわけではない。 2ナノメートルの量産体制を確立するためには、最低でも5兆円程度の先行投資が必要となり、上記3社はこの水準の巨額投資を行う方針を明らかにしている。だがラピダスについては、資金のメドが立っているとはいえず、政府も明確に全面支援するとは表明していない。 半導体産業というのは、巨額の先行投資が必要であると同時に、技術が陳腐化するスピードが速く、経営戦略的には極めてやっかいな分野である。十分な成果を上げるためには、完璧な戦略と資金の裏付けが必要であり、これは簡単なことではない。 最先端半導体の分野では圧倒的なナンバーワンである台湾TSMCは、今でこそ、圧倒的な地位を築いているが、同社がここまでの地位に上り詰めるまでには、想像を絶する苦労があった。ラピダスを成功させるためには、TSMCかそれ以上の取り組みが必要となるが、果たしてその覚悟が日本政府や産業界にあるのかは疑問である』、「ラピダスを成功させるためには、TSMCかそれ以上の取り組みが必要となるが、果たしてその覚悟が日本政府や産業界にあるのかは疑問である」、その通りだ。
・『日本の半導体産業の「戦略のミス」  台湾TSMCは半導体のファウンドリ(受託生産)分野のナンバーワン企業である。今でこそ半導体というのは、国際分業が当たり前であり、設計に特化する企業(ファブレス)と製造に特化する企業(ファウンドリ)に分かれ、それぞれが当該分野に特化している(インテルのような企業は例外で、設計から量産まですべて自前で完結できる)。 だが、TSMCが創業した1990年前後、こうした国際分業体制は確立されていなかった。80年代までは日本の半導体産業は圧倒的な競争力を持っており、メモリー(一時記憶を行う半導体)分野のシェアは8割を突破していた。当時の半導体は主に大型コンピュータ用の高価な製品だったが、ここに到来したのが全世界的なIT革命(パソコンの普及)である。パソコンの登場でコンピュータの価格は最終的に数十分の1になり、搭載する部品についても価格破壊が発生した。) パソコンの驚異的な普及は誰の目にも明らかだったにもかかわらず、日本勢は大型コンピュータ用のメモリーにこだわり続け、最終的にはほぼすべてのシェアを失ってしまった。日本勢が敗れたのは、すべて市場動向を見誤った戦略ミスであり、この事実は覆しようがない。いくら技術はすばらしいが商売で負けたと言い訳しても、ビジネスには勝ち負けしかないというのが現実だ。 実際、半導体以外の業界では、日本電産のようにパソコンの驚異的な普及という現実を見据え、パソコンに搭載するハードディスク用モーターに特化して大成功した企業もある。日本電産が世界企業に成長できたのは、世界的なIT革命という市場の流れを的確にとらえたからであり、すべては経営者(創業者の永守重信氏)の戦略性によるものだ。 パソコンの普及による産業構造の変化は、半導体業界にも及ぶことになり、米国では設計に特化するファブレス企業が活発になってきた。こうした状況を受けて製造に特化する企業として設立されたのがTSMCである』、「日本勢が敗れたのは、すべて市場動向を見誤った戦略ミスであり、この事実は覆しようがない。いくら技術はすばらしいが商売で負けたと言い訳しても、ビジネスには勝ち負けしかないというのが現実だ」、その通りだ。
・『台湾の驚くべき半導体戦略  TSMCが設立されたのは1987年だが、同社は半導体の製造を下請けとして受託する小さな新興メーカーに過ぎなかった。筆者はかつてジャーナリストをしていたが、1990年代の初頭、設立間もないTSMCに取材に行った数少ない日本人記者の一人である。 TSMCは台北郊外の新竹にあるサイエンスパークに巨大な生産ラインを構えており、今の新竹はさながら東洋のシリコンバレーといった状況になっている。だが当時の新竹にはTSMCの本社工場がポツンとあるだけだった。新竹は風が強いことで知られ、米粉(ビーフン)が名産だが、殺風景な場所という強烈な印象が残っている。 当時、TSMCが世界をリードする半導体企業になるとは業界の誰もが考えていなかったし、そもそもファウンドリという業態もうまく機能するのか疑問視する声が多かった(単なる下請けなので儲からないという見解が圧倒的に多かった)。そうした中で、無謀ともいえるチャレンジを行っているTSMCに興味が湧き、わざわざ取材に行ったのだが、TSMC幹部が筆者に語った戦略は驚くべきものだった。 同社は当時の段階から、IT業界が完璧な水平分業に体制にシフトし、半導体分野においてもファウンドリが業界の中核になるという見通しを描いていた。加えて、単なる下請け企業に陥らないよう、顧客となる半導体設計企業の業務を徹底的に分析し、彼らが必要とする機能をあらかじめモジュール化して提供する体制を整えるなど、今で言うところのソリューション型ビジネス(問題解決型)を実現する明確な戦略を立案していたのだ。 台湾の凄味は、精神論を排除した冷徹な合理主義と、一方で無謀ともいえる計画を政府が全面的に後押しし、巨額の資金と人材を支援するというリスクテイクの感覚が見事に同居している点だろう。日本の産業界や政府にこうした気概はなく、前例踏襲に終始した結果、半導体産業は壊滅的な状況まで追い込まれてしまった』、「台湾の凄味は、精神論を排除した冷徹な合理主義と、一方で無謀ともいえる計画を政府が全面的に後押しし、巨額の資金と人材を支援するというリスクテイクの感覚が見事に同居している点だろう。日本の産業界や政府にこうした気概はなく、前例踏襲に終始した結果、半導体産業は壊滅的な状況まで追い込まれてしまった」、日台は好対照だ。
・『もっと現実的な対策が必要  TSMCの事例を見ても分かるように、半導体業界において後発企業が大きな実績を上げるためには、極めて高い先見性と想像を超える努力、莫大な資金が必要となる。 日本はこうした生き馬の目を抜く半導体業界において敗北し、10年以上の技術力の差を付けられた状態にある。次の世代が2ナノメートルの製造プロセスが主流になることは誰もが知る事実であり、その技術を確立できる見通しがあり、かつ十分な資金を用意出来る立場にあるのは、冒頭にも述べたようにTSMC、インテル、サムスンの3社だけである。) 後発となった日本が3社に追い付くためには、彼らの何倍も資金を投入して物量で勝負するか、もしくはゲームのルールを自ら変えるゲームチェンジャーになるしかない。 ラピダスはあくまで後発として先行企業に挑むというモデルなので、市場そのものをひっくり返すことを目論んでいるわけではない。だが、ラピダスが後発企業として、先行3社に追い付くための具体的な方策は見えていないのが現実だ。 ラピダスの最大の問題点は、なぜ国策企業を設立するのかという基本戦略が曖昧なことである。 一連のプロジェクトには、中国の台湾侵攻など、地政学的リスクに対処するという意味合いもある。もし経済安全保障が目的であれば、日本にはニーズがない最先端プロセスの半導体を量産するよりも(日本には高度なAIを開発できる企業がないので、最先端半導体を購入する企業が存在していない)、家電や自動車など、具体的ニーズがある汎用的な半導体の国内生産体制を強化した方が圧倒的に効果が高い。 政府は、TSMCに補助金を出し、熊本県に工場を誘致することに成功した。同様に、米国の半導体大手マイクロンテクノロジーにも補助金を出し、広島県の工場での生産体制強化を実現している。 中国の脅威は現実問題であり、台湾有事となれば、国内で半導体が枯渇する可能性は十分にある。一般的な半導体の国内生産体制を確立することも立派な国家戦略である。政府はもっと地に足の着いた戦略を描く必要があるだろう』、「もし経済安全保障が目的であれば、日本にはニーズがない最先端プロセスの半導体を量産するよりも(日本には高度なAIを開発できる企業がないので、最先端半導体を購入する企業が存在していない)、家電や自動車など、具体的ニーズがある汎用的な半導体の国内生産体制を強化した方が圧倒的に効果が高い」、「台湾有事となれば、国内で半導体が枯渇する可能性は十分にある。一般的な半導体の国内生産体制を確立することも立派な国家戦略である。政府はもっと地に足の着いた戦略を描く必要があるだろう」、同感である。
タグ:デイリー新潮「日本の半導体産業を復活させるには何が必要か――太田泰彦(日本経済新聞編集委員)【佐藤優の頂上対決】」 (その9)(日本の半導体産業を復活させるには何が必要か――太田泰彦(日本経済新聞編集委員)【佐藤優の頂上対決】、日本の「次世代半導体連合」に台湾が必要不可欠な理由、岸田政権・日本政府が主導して「半導体会社」を設立したが…「戦略不在」でまったく「成功を期待できない」ワケ) 半導体産業 「半導体産業を知悉するジャーナリストの提言」とは興味深そうだ。 「ファウンドリー」は、「製造だけ請け負うというと下請け企業のように見えますが、設計メーカーの方がTSMCに依存しているのが実態です。というのも半導体の仕様が非常に高度になり、設計はできても、製造・量産することが極めて難しくなっているからです」、「2ナノまで微細化を進めているのはTSMCだけ」、「ファウンドリー」はすごい力を持ったものだ。 「日本では半導体を総合電機メーカーが作っていたことです。日立も東芝も、重電から家電まで扱い、さらに半導体も作っていました。私はこれが衰退の最大の要因」、「振幅が大きいシリコンサイクルに振り回されます。すると、総合電機メーカーの中の部門としては浮いてしまう」、なるほど。 「中国人」、「彼らは自分の幸せ、家族の存続を第一に考えますね。また現実主義者で、どこにでも移っていきます。 佐藤 国籍を変えることに抵抗がない。どこの国民になっても自分たちの宗族でまとまりますし、中国人の意識を持ち続けている。 太田 半導体を取材して感じたのは、その中国人、華人たちの活躍ぶりです。シリコンバレーのデジタル企業には、トップ層でマネジメントを担っている華人が多いんです 。TSMCの張忠謀もマサチューセッツ工科大学を出て、アメリカの半導体企業テキサスインスツルメンツの幹部でした。彼らはあらゆるところにいる。華人の視点から見ていかないと、半導体はわからないと思うに至りました」、その通りだ。 「日本」の「エンジニア」は、「すごいものを作り、きちんと納期までに仕上げ、それで満足し、喜びを感じているのではないか。それは美しい話ですが、同時にもったいない」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 長内 厚氏による「日本の「次世代半導体連合」に台湾が必要不可欠な理由」 「液晶パネル、太陽光パネル、NAND型フラッシュメモリ、最近でいえば日本のノーベル賞受賞技術であるリチウムイオン電池など、日本が価値創造に大きく貢献をしながら、価値獲得はよりビジネスの上手い諸外国企業に獲られているという状況が続いている」、その通りだ。 「日本が最先端半導体の開発に乗り出すのは、半導体技術が安全保障に直結しているということもあるだろう。ウクライナでの紛争において民間のドローンが活躍しているように、民生用技術と軍事技術の垣根が低くなっている今日、AIやIoT技術に必須となる最先端半導体の国産化は、経済だけでなく安全保障上も重要になるだろう」、その通りだ。 「日本は価値創造が得意であるが、台湾が得意なのは価値獲得である。台湾を単に日本の製造手段として見ていると、台湾を過小評価することになる」、その通りだ。「日本から台湾企業への投資はほとんど行われていない」、「中国政府」に遠慮しているためだろう。 「単なる業務提携ではなく、日本から台湾の有望な企業への投資を増やし、台湾の技術やビジネスの能力を日本のものにしていくということも、重要ではないだろうか」、その通りだが、中国本土との関係が悪化しないよう巧みに立ち回る必要がある。 現代ビジネス 加谷 珪一氏による「岸田政権・日本政府が主導して「半導体会社」を設立したが…「戦略不在」でまったく「成功を期待できない」ワケ」 「日本は90年代以降、半導体分野で完膚なきまでに敗北したが、すべての原因は「戦略の不在」である」、その通りだ。 「ラピダスを成功させるためには、TSMCかそれ以上の取り組みが必要となるが、果たしてその覚悟が日本政府や産業界にあるのかは疑問である」、その通りだ。 「日本勢が敗れたのは、すべて市場動向を見誤った戦略ミスであり、この事実は覆しようがない。いくら技術はすばらしいが商売で負けたと言い訳しても、ビジネスには勝ち負けしかないというのが現実だ」、その通りだ。 「台湾の凄味は、精神論を排除した冷徹な合理主義と、一方で無謀ともいえる計画を政府が全面的に後押しし、巨額の資金と人材を支援するというリスクテイクの感覚が見事に同居している点だろう。日本の産業界や政府にこうした気概はなく、前例踏襲に終始した結果、半導体産業は壊滅的な状況まで追い込まれてしまった」、日台は好対照だ。 「もし経済安全保障が目的であれば、日本にはニーズがない最先端プロセスの半導体を量産するよりも(日本には高度なAIを開発できる企業がないので、最先端半導体を購入する企業が存在していない)、家電や自動車など、具体的ニーズがある汎用的な半導体の国内生産体制を強化した方が圧倒的に効果が高い」、 「台湾有事となれば、国内で半導体が枯渇する可能性は十分にある。一般的な半導体の国内生産体制を確立することも立派な国家戦略である。政府はもっと地に足の着いた戦略を描く必要があるだろう」、同感である。
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