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ゴーン問題(その3)(日産ゴーン事件「最後の証人」が示した重大見解 東大教授は法廷で「虚偽記載ではない」と述べた、逃亡中のゴーンが本誌独占取材に実名で語った陰謀の「黒幕」、ゴーン氏報酬の助言し、掌返しで追放した人たち 責任追及を免れてきた利益相反行為の弁護士) [司法]

ゴーン問題については、昨年3月25日に取上げたままだった。今日は、(その3)(日産ゴーン事件「最後の証人」が示した重大見解 東大教授は法廷で「虚偽記載ではない」と述べた、逃亡中のゴーンが本誌独占取材に実名で語った陰謀の「黒幕」、ゴーン氏報酬の助言し、掌返しで追放した人たち 責任追及を免れてきた利益相反行為の弁護士)である。なお、タイトルから「逃亡」は削除した。

先ずは、本年5月27日付け東洋経済オンライン「日産ゴーン事件「最後の証人」が示した重大見解 東大教授は法廷で「虚偽記載ではない」と述べた」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/430516
・『「虚偽記載ではないと考えます」――。 東京大学の田中亘教授はそう証言した。4月22日、東京地方裁判所104号法廷でのことだ。 2018年11月に起きたカルロス・ゴーン氏の逮捕劇から2年半余り、ゴーン氏は国外に逃亡したが、同氏とともに逮捕された日産自動車・元代表取締役グレッグ・ケリー被告(64)の裁判が2020年9月から続いている。この日、田中教授は弁護側(ケリー被告側)からの証人として出廷した。 ケリー被告の容疑は金融商品取引法違反で、元CEO(最高経営責任者)のカルロス・ゴーン氏(67)と共謀し、ゴーン氏の役員報酬を実際よりも低く記載した有価証券報告書(有報)を提出したというもの。 2010年度から2017年度のゴーン氏の報酬が合計170億円だったのに、実際の記載は合計79億円だけだったので「虚偽記載」だというのが、検察の起訴事実である。これらに対し、ケリー被告は公判で「未払い報酬を隠すためにゴーンと共謀した事実はない」と一貫して否認している』、「ゴーン氏」逃亡後は、マスコミ報道も激減したので、貴重な続報だ。
・『虚偽記載ではなく「不記載」  田中教授が見解を示すうえで着目したのは、日産が有報に書いた「支払われた報酬は」という文言だった。 この開示の仕方は、内閣府令が役員報酬1億円以上の役員について個別の報酬開示を義務づけた2010年以前から、日産に限らず多くの上場企業が行ってきた。内閣府令が施行された後も、同じ形式で開示をしていた。 その事業年度の役員への対価はすべて「当期の役員報酬」とみなされる。内閣府令は、既払いか未払いかについて特に定めておらず、「役員報酬は未払い分を含めて開示しなければならない」と解釈するのが法律家の間では常識なのだという。 金融商品取引法は、「虚偽記載」と「不記載」を明確に分けている。投資家の判断に影響を与えるような重要な情報について、虚偽の数字や文章を書くのが虚偽記載、書かないことが不記載である。田中教授の見解は後者だ。 虚偽記載も不記載も、証券取引等監視委員会が課徴金の対象となると金融庁に勧告すれば、金融庁が当該企業に課徴金の納付命令を出せる。 日産は2020年2月に金融庁から24億円の課徴金納付命令を受けて、それに応じている。あくまでこれは行政処分だ。だが、検察が「特に悪質だ」と判断すれば起訴し、刑事責任の有無を問う』、「投資家の判断に影響を与えるような重要な情報について、虚偽の数字や文章を書くのが虚偽記載、書かないことが不記載である。田中教授の見解は後者だ。 虚偽記載も不記載も、証券取引等監視委員会が課徴金の対象となると金融庁に勧告すれば、金融庁が当該企業に課徴金の納付命令を出せる」、とはいっても、「不記載」より「虚偽記載:の方がはるかに悪質だ。
・『「投資家の判断」に影響を与えたか  法廷での証言から、虚偽記載ではないという田中教授の考え方はこうなる。 日産自動車の有価証券報告書。 日産の有報に書かれた「支払われた報酬は」という文言から、一般投資家は「既払いの役員報酬額が書かれているのだな」と読む。未払い分を含めた役員報酬のすべてを開示すべきと解釈されている内閣府令の趣旨を一般投資家は熟知していないだろうから「既払いの報酬はこのくらいかな」としか考えない。 機関投資家などプロの投資家ではどうか。内閣府令を熟知したプロの投資家ならば、「支払われた報酬は」と書いてあっても「報酬はすべて支払い済みであり、他に未払い報酬はないのだろう」と推察するかもしれない。 とはいえ「支払われた金額は」という書き方に、プロの投資家ならば違和感を覚えるかもしれない。その場合でも「もしかしたら未払い報酬は不記載であり、本当はあるのかもしれない」と慎重になり、他の自動車メーカーに分散投資するなどして開示に不備があるリスクを低減しようとする。だから、未払い報酬が不記載でも大きな影響はないというのが田中教授の見解だ。 この見解と正反対の証言をしたのが証券取引等監視委員会だ。 田中教授が出廷する2日前、証券取引等監視委員会の谷口義幸・開示検査課長が証言台に立った。かつて役員報酬の個別開示を企画立案した官僚であり、日産の有報を虚偽記載だと判断した責任者だ。2012年から2015年には東北大学で教鞭を取った経験もある。 谷口氏の説明はこうだった。「(日産の有報に記載された)『支払われた報酬』というのは、前置きのような文章だと一般投資家は理解する。前後の文脈から、そして総合的に見れば、内閣府令で求められている報酬(受け取るもしくは、受け取る見込みの報酬)が記載されていることは明らかだから、一般投資家は未払い報酬を含むと読む」。一般投資家が内閣府令を“熟知”しているという前提である。 だが、虚偽記載か不記載かは「個々にいろいろ勘案して決めている」。ゴーン氏の役員報酬を虚偽記載だと判断した理由や個別具体的な事情については「お話をしないことになっている」と、明確な根拠を示さなかった』、「証券取引等監視委員会の谷口義幸・開示検査課長」は「判断した理由や個別具体的な事情については「お話をしないことになっている」と、明確な根拠を示さなかった」、なるほど。
・『「田中証言は到底無視できない」  当局とは正反対の田中見解を、本裁判を担当している下津健司裁判長はどう受け止めたのだろうか。 株式会社商事法務の発刊する『会社法コンメンタール』。ビジネスに関する判例や法解釈をまとめた全22巻の大著だが、その第8巻「機関(2)」(2009年2月発行)の「第361条(取締役の報酬等)」「第379条(会計参与の報酬等)」「第379条(監査役の報酬等)」の計498ページ(索引除く)のうち、85ページを執筆したのが当時35歳だった田中教授だった。 会社関係の法務に詳しいある弁護士は、「(田中教授は)商法学者の中でもホープ中のホープ」とし、「下津裁判長はもちろんのこと、法務省のお偉方は田中証言を到底無視できない」と指摘する。 田中教授はケリー裁判の最後の証人だった。本裁判は被告人のケリー氏本人への尋問が始まっている。5月27日までで計6日間の主尋問が行われ、5月28日から計6日間の検察側尋問が始まる。 ケリー氏はゴーン氏との共謀を否定しており、司法取引をした大沼敏明・元秘書室長の証言についても「ケリー氏に指示されて未払い報酬の仕組みを考えた」などの主要部分をことごとく否定している。結審は7月7日の予定。はたして田中見解は判決にどう影響するのか。ゴーン事件の結末を最後まで見届ける必要があるだろう。 2020年1月8日、逃亡したゴーン氏がレバノンで行った会見で「田中先生」と口にしたため、後日、東洋経済は田中教授にインタビューした。全文(「ゴーン事件は日本にとって恥ずかしいことだと思う」)は『東洋経済プラス』で無料でお読み頂けます』、「「(田中教授は)商法学者の中でもホープ中のホープ」とし、「下津裁判長はもちろんのこと、法務省のお偉方は田中証言を到底無視できない」と指摘する」、さてどうなるのだろう。

次に、10月2日付けNewsweek日本版が掲載した自動車業界担当記者のアイリーン・ファルケンバーグハル 氏による「逃亡中のゴーンが本誌独占取材に実名で語った陰謀の「黒幕」を紹介しよう。
・『<自らの失脚は、一部の日産幹部が画策して日本の検察と共謀した「でっち上げ」だと主張> 自分を裏切った人間に仕返しするためではなく、自らの汚名をそそぐために、本当のことを話したいと、日産自動車のカルロス・ゴーン元会長は私たちに語った。 自分の失脚は、役員報酬の開示をめぐる不正とされるものとは全く関係がないと、新著『壊れた連合』のプロモーションのために先頃レバノンの自宅で本誌のインタビューに答えたゴーンは主張した。日本側が経営の実権をフランスに譲り渡すことを恐れたのが真相だという。 ゴーンは新著で、ビジネス界での特筆すべき成功、その輝かしいキャリアに終止符を打った「陰謀」、そして2018年11月19日の逮捕について語っている。 この著書でゴーンは初めて、自らの追放を画策したと考えている日産幹部の実名を挙げた。まず、内部監査室本部長を務めていたクリスティーナ・ムレイは、社内でゴーンのスキャンダルを探っていたと、同書は記している』、「ゴーンのスキャンダルを探っていた」、ありそうなことだ。
・『画策したのは日産の幹部たち  チーフ・パフォーマンス・オフィサー(CPO)の職にあったホセ・ムニョス(現在は現代自動車のグローバル最高執行責任者)も、追放計画に共謀したという。また、日産のベテラン幹部だった川口均(現在は副社長を退任)も関与したとしている。 こうした幹部たちが日本政府と一緒になって、逮捕の理由をでっち上げたと、ゴーンは語った。「この謀略は、いわば日産のオールド・ボーイズが画策したものだと思う。日産で長年働いていて......(ルノーと資本提携を結ぶ以前の時代に)郷愁を抱いている人たちのことだ」 転機になったのは18年6月にルノーと日産と三菱自動車の3社連合の全体を監督するようになったときだったと、ゴーンは振り返る。「(オールド・ボーイズたちは)自分たちの自治が奪われることを恐れた......そこで、日本政府の一部の支援を得て検察と共謀した。まさかそんなことが起きるとは、想像もしていなかった」) この出来事は単なるビジネス上の事件ではなく、国際問題という性格を持っていたと、ゴーンは指摘する。「私が逮捕されたとき......ルノーはCEOだった私を守ろうとせず、すぐに厄介払いした。フランスの大統領と財務大臣は、1つのビジネス上の取引よりも日本とフランスの関係のほうが重要だと言った」 自分の失脚の背景には人種差別とナショナリズムもあったと、ゴーンは言う。「私は日本で人気のある人物の1人ではあったが、外国人だというだけの理由で一部の日本人に嫌われていることにも気付いていた。日本有数の大企業で実権を持っているために、なおさら嫌われていたのだと思う......それでも構わないと、私は思っていた」 「けれども、タカタやオリンパス、東芝など、日本の企業でスキャンダルが持ち上がっても、日本人経営幹部は1人も刑事責任を問われなかった。私は思った。『責任を問われるべき日本人が1人もいないなんてあり得ない』」 ゴーンの逮捕と起訴は世界中で大きなニュースになり、19年末の逃亡劇はそれに輪を掛けて大きな話題を呼んだ。しかし、ゴーン自身は、「日本で大企業を立て直した唯一の外国人、そして、3つの大陸で2社、のちに3社の経営者として成功した唯一の人物として記憶されたい」と語る。 そして言う。「私は、この地球上で日本から逃げ出すことに成功した数少ない人物の1人だ」と』、「フランスの大統領と財務大臣は、1つのビジネス上の取引よりも日本とフランスの関係のほうが重要だと言った」、「フランス」から見捨てられたようだ。

第三に、11月20日付け東洋経済オンラインが転載したブルームバーグ「ゴーン氏報酬の助言し、掌返しで追放した人たち 責任追及を免れてきた利益相反行為の弁護士」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/470352
・『日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が羽田空港で身柄を拘束されてから3年の間、権勢を誇っていた元会長排除のために日産社内でどのような力関係が働いたかについて多くのことが明らかになってきた。一連の過程で主要な役割を果たしたにも関わらず、その役回りについて追及を免れてきた存在がある。弁護士だ。 世界最大級の法律事務所であるレイサム・アンド・ワトキンス(L&W)所属の一部の弁護士らは長年にわたりゴーン元会長の報酬のあり方について日産に助言を行っていた。その中にゴーン元会長が起訴された理由の一つとなった収入の総額を隠した報酬パッケージの問題が含まれていた。 一方で、2018年にゴーン元会長の報酬問題が刑事事件の捜査対象となった際には、深刻な利益相反になるとの警告が日産取締役会に寄せられていたにも関わらず、同事務所は不正行為の調査担当に採用された。 会社によるゴーン元会長の不正行為の調査に「彼らが関与することに私は当初から懸念を抱いていた」と日産の元グローバル法務担当のラビンダ・パッシ氏は話す。パッシ氏は昨年、L&Wが日産の最善の利益のために行動していたかどうかについて疑問を呈したことで解雇されたとして、不当解雇で日産を訴えた。 「私は信じられないほど驚き、ショックを受けた。同じ弁護士が自身の関与した仕事を含む事案を調査するということがどのように思われるか。不正行為があってもおかしくない状況だった」。 日産は、ルノーとのより緊密な統合を進めようとしたゴーン元会長の計画が自分たちの地位を脅かし、自社の独立性が損なわれることを恐れた。しかし、社内の関係者らが自ら引き金を引くことはしなかった。 多くの主要な局面で、1980年代から日産の法務を担ってきたL&Wの存在があったことが数百枚に及ぶ文書やインタビュー、ゴーン元会長とともに逮捕されたグレッグ・ケリー元日産取締役の公判での証言などに基づいたブルームバーグの調査で明らかになった。 利益相反の立場にあるとのパッシ氏の指摘にも関わらず、日産が裁判対応も含めてゴーン元会長関連の案件処理に追われる中、L&Wは同社の最上位の顧問法律事務所の地位にとどまった。 日産はまた、世界各地で株主やビジネスパートナー、元従業員らから起こされた多くの訴訟にも直面している。ゴーン元会長のハリウッド映画的な逮捕・逃亡劇は人々の記憶から薄れたかもしれないが、日産にとっては赤字脱却や自動車業界の急激な変化に対抗するための努力の妨げとなっており、長引く影響として残っている。 日産広報担当の百瀬梓氏は「当社は確固たる、徹底した、かつ適切な社内調査」を進め、ゴーン元会長とケリー元取締役に「重大な不正行為があったことを確認」したとコメント。「その内容は、その後複数の政府機関が自身で実施した、綿密で独立した調査結果によって裏付けられています」とした。 百瀬氏はまた、「L&Wのクライアントは常に日産であり、日産の調査に関わることによる利益相反はありません。L&Wに利益相反があった、または利益相反の可能性により確固たる調査が行えなかったという主張は、事実に基づいたものではありません」とも述べた。  L&Wはブルームバーグに宛てた声明文で、同社は「内部調査への弊社の関与については定期的に日産や同社の役員、パッシ氏を含む従業員らと議論してきた。彼ら全員が弊社の関与の継続について許可し、同意した」とコメント。 さらに、「レイサムは内部調査が偏っていたとするいかなる指摘にも強く異議を唱える。また、日米の多くの独立機関や司法当局がそれぞれ綿密な独立した捜査を実施し、内部調査と矛盾しない結論に至ったことも指摘しておく」とも述べた。 L&Wの東京オフィスのパートナーである小林広樹弁護士は、3月のケリー元取締役の公判でL&Wと日産の関係を詳細に説明した。小林氏らL&Wの東京オフィスの弁護士は日産の大株主であるルノーとの契約や子会社の設立、商業上の契約まであらゆることについて助言した。それには役員報酬の案件も含まれていたという。 2018年の初頭、ゴーン元会長は、10年に報酬1億円以上の役員に関して有価証券報告書への報酬額の開示が義務づけられて以降、自主的に放棄していた収入の一部を取り戻す方法を探っていた。 ブルームバーグが確認した電子メールによると、18年7月3日、小林氏は、当時日産の法務責任者だったハリ・ナダ専務に、ゴーン元会長の退職前に退職金から元会長への報酬を支払う場合に求められる開示内容の要件について助言を行っていた。 このやり取りは、ナダ専務やケリー元取締役を介してL&Wに転送されたゴーン元会長からの質問に対する返答という形でなされた。弁護士らはまた、日産がゴーン元会長のためにブラジルやフランス、レバノンで購入した不動産物件を元会長に売却する可能性に関してもナダ専務に助言を行った。 小林氏が送信した電子メールによると、ナダ専務とケリー元取締役は、もし株主がゴーン元会長への早期の退職金支払いを承認したとしても「取締役報酬の開示をやり直す必要はない」とL&Wから伝えられたという。 ただ、遅くともその年の4月ごろまでには、L&Wはナダ専務に別件で助言を与えるようになっていた。事情に詳しい関係者とブルームバーグが確認した文書によると、ナダ専務は公開されない給与を用意するという刑事事件に発展する可能性がある行為について、ゴーン元会長が不利になるような情報を求めていた。 L&Wからナダ専務あてに送られたある電子メールでは、日産が有価証券報告書でゴーン元会長の報酬について完全に説明することができなかった場合、日本の当局から罰金や罰則、責任者の収監などを含めた介入を受ける可能性があることなどが説明されている。 電子メールの内容は、L&Wが日産社内の少人数のグループと仕事をしていたナダ専務に対して、金融商品取引法に違反している可能性がある報酬の支払い方法について助言を行っていたことを示している。資料によると、それらの電子メールのいくつかはナダ専務の会社のメールアドレスではなく、個人のアドレス宛てに送られていた。 報酬問題で主要なアドバイザーを務めていたにも関わらず、L&Wはゴーン元会長の逮捕後に、当時の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)から社内調査に関する正式な依頼を受け、これを引き受けた。事情に詳しい関係者によると、西川元社長はナダ専務の意見を受けてL&Wを起用したという。19年に日産を退社した西川氏はコメントを控えた。  小林氏はゴーン元会長とケリー元取締役の逮捕から1年半後の19年9月の日産取締役会で社内調査の結果を発表し、この調査が最終的に両社の不正に関する公的な説明となった。 ゴーン元会長の広報担当者であるジュン・アイセンウォーター氏は「日産がL&Wと実施した日産の内部調査は利益相反の問題で汚点がついており、独立したものではない」とコメント。「まさに捜査対象となっていた案件について法務上のアドバイスを与えていたということで、日産の長年にわたる外部顧問としてL&Wは独立して事実を指摘する存在ではなかった」。 ケリー元取締役の米国における代理人を務めるジェームス・ウェアハム氏はL&Wについて自らが助言した案件についての調査を主導したという意味で「地球上で最も利益相反となっている法律事務所」だと表現。調査に関わることに同意するべきではなかったとした。 少なくとも六つの法律事務所が当時パッシ氏が率いていた日産の法務部門に対し、ナダ専務とL&Wに調査の責任者を継続させることについての法的なリスクや利益相反を警告した。そのうちの一つはルノー、もう一つは日産が採用した事務所だった。 「L&Wは調査の対象となっている事実に関与しており、証人として呼ばれる可能性があることを認めていることから、独立しているとはみなされない」。日産に採用された法律事務所のアレン・アンド・オーヴェリーは19年1月の書簡でこのように述べた。 ゴーン元会長らの逮捕を巡る状況を精査するためにルノーに採用されたクイン・エマニュエル・アークハート・サリバンは、「レイサムは日産の役員報酬問題のさまざまな側面に深く、長期にわたって関与してきた。その結果がゴーン元会長にかけられた嫌疑の基礎となっている」とした。 調査の評価のためにパッシ氏によって雇われたクリアリー・ゴットリーブ・スティーン・アンド・ハミルトンと森・濱田松本法律事務所などもL&Wは刑事訴訟や内部調査の手続きから距離を置かれるべきだと警鐘を鳴らしていた。 クリアリー・ゴットリーブはこの記事に関するコメントを控えた。アレン・アンド・オーヴェリーとクイン・エマニュエル、森・濱田松本にもコメントを求めたが返答はなかった。  元裁判官で19年に刑事手続きのアドバイス役として日産の法務部門に採用された山室恵弁護士も、L&Wが利益相反の可能性があるにも関わらずゴーン元会長の調査に関与していることに衝撃を受けたと日産の担当弁護士に伝えていたことが、19年7月の山室氏と担当弁護士らとの会合の要旨で明らかになっている。山室氏は取材に対してコメントを控えるとした。 その年の年末までには、ゴーン元会長の調査に携わったL&Wの東京オフィスの弁護士2人が退社していた。この弁護士らの当時の考えに詳しい複数の関係者によると、利益相反の案件に関わることで自分たちのキャリアに傷が付くことを恐れたためという。 ブルームバーグが確認した文書によると、日産の法務部門の責任者だったパッシ氏もナダ専務やL&Wが内部調査に関与することは、会社にとってリスクにつながると反対していた。裁判において日産を守れるかどうか危うくなるというのが理由だ。 その兆候は既に出始めているのかもしれない。日産はこのほど、米テネシー州で投資家が提起したゴーン元会長の報酬体系や内部調査に関する文書の提出を求める集団訴訟で和解に合意した。 日産はまた、多くの地域で元従業員から不当解雇で訴えられてもいる。そのうちのいくつかはゴーン元会長の件が関係している。 ゴーン元会長の逮捕以降、日産は調査のために数億ドル(数百億円)もの費用をかけて対応してきた。その規模はゴーン元会長が記載しなかったとされる約90億円を大きく上回っている』、「ゴーン元会長の逮捕以降、日産は調査のために数億ドル(数百億円)もの費用をかけて対応してきた。その規模はゴーン元会長が記載しなかったとされる約90億円を大きく上回っている」、収益基盤の弱い「日産」にとっては大きな負担だ。「ゴーン元会長の調査に携わったL&Wの東京オフィスの弁護士2人が退社・・・利益相反の案件に関わることで自分たちのキャリアに傷が付くことを恐れたためという」、「L&W」の脱法行為を如実に示しているようだ。
タグ:(その3)(日産ゴーン事件「最後の証人」が示した重大見解 東大教授は法廷で「虚偽記載ではない」と述べた、逃亡中のゴーンが本誌独占取材に実名で語った陰謀の「黒幕」、ゴーン氏報酬の助言し、掌返しで追放した人たち 責任追及を免れてきた利益相反行為の弁護士) ゴーン問題 東洋経済オンライン 「日産ゴーン事件「最後の証人」が示した重大見解 東大教授は法廷で「虚偽記載ではない」と述べた」 「ゴーン氏」逃亡後は、マスコミ報道も激減したので、貴重な続報だ。 「投資家の判断に影響を与えるような重要な情報について、虚偽の数字や文章を書くのが虚偽記載、書かないことが不記載である。田中教授の見解は後者だ。 虚偽記載も不記載も、証券取引等監視委員会が課徴金の対象となると金融庁に勧告すれば、金融庁が当該企業に課徴金の納付命令を出せる」、とはいっても、「不記載」より「虚偽記載:の方がはるかに悪質だ。 「証券取引等監視委員会の谷口義幸・開示検査課長」は「判断した理由や個別具体的な事情については「お話をしないことになっている」と、明確な根拠を示さなかった」、なるほど。 「「(田中教授は)商法学者の中でもホープ中のホープ」とし、「下津裁判長はもちろんのこと、法務省のお偉方は田中証言を到底無視できない」と指摘する」、さてどうなるのだろう。 Newsweek日本版 アイリーン・ファルケンバーグハル 「逃亡中のゴーンが本誌独占取材に実名で語った陰謀の「黒幕」 「ゴーンのスキャンダルを探っていた」、ありそうなことだ。 「フランスの大統領と財務大臣は、1つのビジネス上の取引よりも日本とフランスの関係のほうが重要だと言った」、「フランス」から見捨てられたようだ。 ブルームバーグ 「ゴーン氏報酬の助言し、掌返しで追放した人たち 責任追及を免れてきた利益相反行為の弁護士」 世界最大級の法律事務所であるレイサム・アンド・ワトキンス(L&W) 長年にわたりゴーン元会長の報酬のあり方について日産に助言 「ゴーン元会長の逮捕以降、日産は調査のために数億ドル(数百億円)もの費用をかけて対応してきた。その規模はゴーン元会長が記載しなかったとされる約90億円を大きく上回っている」、収益基盤の弱い「日産」にとっては大きな負担だ。「ゴーン元会長の調査に携わったL&Wの東京オフィスの弁護士2人が退社・・・利益相反の案件に関わることで自分たちのキャリアに傷が付くことを恐れたためという」、「L&W」の脱法行為を如実に示しているようだ。
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ゴーン逃亡問題(その2)(日本弁護士連合会が憤激した東京地検の捜索、ゴーンが逃亡した「レバノン」のヤバすぎる現状 焦点は3月に迫っている債務返済期限、ゴーン被告不在のまま行政は不法行為を認定 司法は刑事責任を問えるか) [司法]

ゴーン逃亡問題については、1月27日に取上げた。今日は、(その2)(日本弁護士連合会が憤激した東京地検の捜索、ゴーンが逃亡した「レバノン」のヤバすぎる現状 焦点は3月に迫っている債務返済期限、ゴーン被告不在のまま行政は不法行為を認定 司法は刑事責任を問えるか)である。

先ずは、2月5日付け東洋経済オンライン「日本弁護士連合会が憤激した東京地検の捜索」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/328841
・『その談話は怒りに満ちていた。「検察官らは、無断で裏口から同(原文)法律事務所に立ち入った」「再三の退去要請を無視して長時間にわたり滞留した」「ドアの鍵を破壊し、事件記録等が置かれている弁護士らの執務室内をビデオ撮影するなどした」――。1月31日、日本弁護士連合会の菊地裕太郎会長が東京地方検察庁の捜索を批判する異例の談話を発表した。 談話は「1月29日、東京地方検察庁の検察官らが、刑事被疑事件について、関連事件を担当した弁護士らの法律事務所の捜索を行った」と具体名を伏せているが、東京・麹町にある「法律事務所ヒロナカ」を指していることは明らかだ。同事務所の代表の弘中惇一郎弁護士は日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告の弁護団の1人。1月29日に東京地検が同事務所の家宅捜索を行った』、東京地検は「ゴーン被告の国外逃亡」で怒り心頭に達しているとはいえ、「担当した弁護士らの法律事務所の捜索」したとは暴挙だ。
・『狙いはゴーン被告が使ったパソコン  ゴーン被告の国外逃亡に伴い、弘中弁護士は1月16日にゴーン被告の代理人を辞任している。だが、ゴーン被告が事務所内で使用していたパソコンはまだ事務所内にあるとみられている。これはゴーン被告のものではなく、法律事務所の所有物だからだ。 東京地検はゴーン被告が海外に逃亡して以降、弘中弁護士にパソコンの任意提出を求めてきた。海外逃亡の計画を記した記録があるとみているためだ。しかし、弘中弁護士は「押収拒絶権」を行使し、その求めには応じず、今回の捜索でもパソコンの提出を拒絶した。 この押収拒絶権とは刑事訴訟法に定められた権利だ。同法105条は、医師や弁護士などは、「保管し、又は所持する物で他人の秘密に関するものについては、押収を拒むことができる」と定めている。菊地会長の談話では、「押収拒絶権が行使され、立入りを拒まれているにもかかわらず、検察官らが、裏口から法律事務所に侵入し、要請を受けても退去せず、法律事務所内のドアの鍵を破壊し、執務室内をビデオ撮影するなどしたことは、正当化の余地のない違法行為である」と断じている。 法律事務所ヒロナカを捜索した翌日、東京地検の斎藤隆博次席検事は記者会見を行った。斎藤次席検事は、ゴーン被告の逃亡を主導したと疑われているマイケル・テイラー被疑者(59歳・米国籍)の息子ピーター・テイラー被疑者(26歳・米国籍)が、法律事務所ヒロナカを2019年7月と8月に計4回訪問し、ゴーン氏と面会していたと指摘。「ピーター被疑者の来日目的は逃亡の相談以外に考えられない」と、計画が法律事務所で話し合われたと言わんばかりだった。このテイラー親子はゴーン氏の逃亡を手助けした容疑で逮捕状が出ている。) また、「ゴーン被告と面会した人物の確認はいっさい行っていない、という(事務所側の)説明だった」(斎藤次席検事)と弁護人の管理を暗に批判した。保釈条件では、面会者の氏名と面会日時の記録は義務づけていたが、どんな人物かを確認することを義務づけていない。だが、斎藤次席検事は「弁護団は『保釈中のゴーン被告を指導・監督する』と裁判所に約束していた。その中には当然、面会者がどんな人物かを確認する責任があった」と述べている。 弘中弁護士は家宅捜索のあった1月29日、記者団に対して「事務所で逃亡を謀議したことを裏付ける証拠はない。不愉快だ」と怒りをあらわにした。 法律事務所で鍵を壊したことについて、斎藤次席検事は1月30日の会見で、「弁護人に押収拒絶権があることは認識し、できる限り尊重するということで事務所に向かった。ただ、パソコンの中には拒絶権が及ばないものがある可能性があるので捜索を行いたいと説明した。1時間以上、丁寧に説明した。それでもなお『(ゴーン被告の使用したパソコンが置いてある部屋への)入室を拒む』ということだったので、必要な処分として鍵を解錠した」と説明した』、「菊地会長の談話では、「押収拒絶権が行使され、立入りを拒まれているにもかかわらず、検察官らが、裏口から法律事務所に侵入し、要請を受けても退去せず、法律事務所内のドアの鍵を破壊し、執務室内をビデオ撮影するなどしたことは、正当化の余地のない違法行為である」と断じている」、その通りだ。
・『結局パソコンは押収せず  また、検察が鍵を壊したことが違法ではない理由の1つとして刑事訴訟法111条を挙げた。ここには「差押状又は捜索状の執行については、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる」と定めている。 もっとも、室内の鍵を壊したものの、”目的”とするパソコンは押収しなかった。「パソコンの中のデータのうち、秘密と認められるものとそうでないものとに切り分けて提出を求めたが、『応じられない』と言われたのでパソコンの押収は控えた」(斎藤次席検事)。 では、何を押収したのか。斎藤次席検事は面会記録を押収したことを認めた一方、それ以外について「1個1個、細かくお答えするわけにはいかない」とした。菊地会長の談話によれば「検察官らが押収に至った物は、弁護士らが捜索の始まる前に任意に呈示していた書面等1袋のみ」である。 面会記録は東京地方裁判所にその写しを弘中弁護士が定期的に提出していたもの。家宅捜索をしてまで押収するほどなのかは疑問だが、斎藤次席検事は「裁判所から入手できるが、それが正しいかどうか確認する必要があった。提出しているもの以外の面会記録があるかもしれないので、それを確認したかった」と主張した。 菊地会長は「違法な令状執行に抗議するとともに、同様の行為を二度と繰り返すことのないよう求める」と談話を締めくくっている。2018年11月のカルロス・ゴーンの逮捕から密出国という事態に発展した今回の事件。前代未聞のケースとはいえ、令状執行と刑事訴訟法111条を盾に、逃亡の証拠探しに強引な手法を使ってもよいことにはならない。日弁連は「刑事司法の公正さを著しく害するもの」としており、東京地検は今回の捜索の正当性を改めて説明すべきだろう』、「結局パソコンは押収せず」、何のための「家宅捜索」だったのか、よく理解できない暴挙だ。法律を駆使して抵抗した「弘中弁護士」はさすがだ。

次に、『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員のレジス・アルノー氏が2月17日付け東洋経済オンラインに掲載した「ゴーンが逃亡した「レバノン」のヤバすぎる現状 焦点は3月に迫っている債務返済期限」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/330145
・『カルロス・ゴーン元日産会長が、自らの「母国」に逃亡してから約2カ月。ゴーンは、2022年ごろ引退した後、コンサルタントとして世界中の裕福な顧客を相手に商売する未来を思い描いていたが、そううまくいきそうもない。それどころか、実際には四国の半分程度の大きさしかない国を出られないまま一生を終える可能性もある。 しかも、目下レバノンはまさに崖っぷち状態にある。レバノンに住むエコノミストで弁護士のカリム・ダーハーに言わせると、「デフォルトまで秒読み状態」だ。レバノンは3月9日までに返済期限を迎える債務12億ドルを抱えており、目下の焦点は求められている利息を無事に返済できるかどうか。大手格付機関は債務不履行の可能性も鑑みて、相次いでレバノンの国債格付けを引き下げている。 一部ではロシアによる救済も取り沙汰されているが、レバノンの有力シンクタンクの1つクルナ・イラダは、レバノンの財政はもはや壊滅的で一刻も早く債務不履行を経て、一大リストラを敢行しなければいけない状況にある、と訴えている。 「多くのエコノミストは口をそろえて、レバノンの現在の状況は過去に債務不履行に陥ったアルゼンチンやギリシャ、アイスランドなどと比べてもはるかにひどいと言っている」と、レバノンの有力シンクタンク、クルナ・イラダのポリシーディレクター、シビル・リスク氏は話す。「この国は今すぐにも債務不履行に陥るかもしれないうえ、ベネズエラのように貨幣価値が急落してハイパーインフレに襲われ、失業者があふれ、預金封鎖に至るかもしれない」。 「いずれにせよレバノンは、年内に債務の金利40億ドルを支払わなければならないのに、ドル建ての外貨準備高は100億ドルしかない。この外貨準備はレバノンの生命線だ。レバノンは製造業も輸出も盛んでない一方、輸入額は大きい。ドルが底をつけば、即座に食料や衣料品が不足することになる」(リスク氏)』、2月19日付け日経新聞は「レバノン、デフォルト危機 迫る国債償還 IMFに支援要請」と報じた。IMFが支援する場合には、様々な厳しい条件を付けるので、「レバノン」経済社会の混乱は必至だ。「ゴーン氏」の場合、財産はタックスヘイブンに預けているのだろうから、「デフォルト」の直接の影響は及ばないだろうが、「レバノン」国民の反感が強まることは必至だろう。
・『かつては「中東のパリ」と呼ばれたが…  「中東のパリ」と呼ばれるレバノンはかつて活気にあふれていた。が、いまでは人々が夜な夜な集まったクラブやレストランには誰もいない。昼間にもかかわらず、通りにも人はまばらだ。国立競技場を当初デザインしたザハ・ハディット氏がデザインした高級ショッピングモールにいたっては恐ろしいほどガラガラである。 長年の失策と縁故主義による癒着もあり、公的債務額はGDPの152%に上るなど、レバノン経済は厳しい状況にある。カーネギー研究所の最近の調査によると、レバノンの人口の40%以上が間もなく貧困ラインを下回り、多くの人が中流階級から転落する可能性があるという。ダーハーによると、「法学生の40%が今年授業料を支払うことができない状態」だ。 レバノン人のディアスポラはかつて、海外で稼いだお金をレバノンに送金した。外国人投資家は、レバノン中央銀行が提示する非常に高い金利や、ベイルートで加熱する不動産市場における不動産価格の上昇を享受することができた。 しかし現在、こうしてレバノン経済を「支援」してきた人たちが次々と、自らのドルを引き出している。国の経済状態、シリアの内戦の影響、イランとアメリカとの間の戦争のリスクを恐れ、海外に住んでいるレバノン人は自らのドルは母国ではもはや安全ではないと考えているのだ。そのため、国の外貨準備は縮小している。 レバノン・リラも急落している。銀行は1500レバノン・リラを1ドルで両替しているが、街の両替商のレートは2300レバノン・リラで1ドルだ。ドルが非常に不足しており、ほとんどの銀行は1週間の引き出し上限を200ドルに制限している。 こうした行為は、財産権の侵害にあたる。「銀行がやっていることは違法だ。第一に、裁判所はレバノンの人々が預けたドルを返還するように銀行に命じることができる。そうなると、銀行は破綻を余儀なくされる。しかし、裁判所はそうしない。これによって銀行ではなく、人々が破産に追い込まれている」と、アラブ経済学者協会の会長サミル・アイタは説明する。 他国政府や金融機関は、NGOトランスペアレンシー・インターナショナルによる腐敗指数で138位のレバノンを財政的に支援することにうんざりしている。 「レバノンの政治家がプライベートジェットでパリに到着後、経済的支援を求めるのを見ると、少しうんざりする」とそっけなくコメントするのは、フランスとレバノンの外交関係者であるフランスの官僚だ。 レバノン政府は昨年9月30日、ドルでの輸入を石油、小麦、医薬品に制限することを決定した。これは、国が現在輸入する品目を必需品に制限しているからであり、必需品以外は輸入できないことを意味する。車を輸入するだけでも困難になっている。 レバノンが経済的地獄へと転落したことは、同国の銀行システムを使用して必需品を輸入してきた隣国のシリアの状況が劇的に変化していることも意味する。「シリアでは間もなく飢餓も起こるかもしれない」と、アイタは警告する』、「レバノンの政治家がプライベートジェットでパリに到着後、経済的支援を求めるのを見ると、少しうんざりする」、確かにこれでは、「経済的支援」をする気がしなくなるだろう。
・『国民にとってゴーンは「腐敗の象徴」  経済の急速な悪化は、レバノン人にとって恐ろしいものだ。レバノン人は、歴史上何度も極度の貧困に苦しんできた。20世紀初頭にゴーンの祖父であるビシャラ・ゴーンがブラジルに逃亡せざるをえなくなったのも貧困が原因だ。ベイルートから車で30分のところにある彼の出身地、マウント・レバノンは、これまで人類史上最悪の飢餓の1つを経験している。 1975年に内戦に入ったとき、レバノンは再び困窮した。当時、ゴーンは21歳。「1975年の内戦は基本的に、非常に裕福なキリスト教徒と、パレスチナ人を含む非常に貧しいアラブ人との間の格差が原因で起こった。若く裕福な私の元妻が馬に乗っていると、彼女が馬に与えようとしている砂糖を掴み取ろうと子供たちが彼女に向かって走ってきたそうだ」と、アイタは打ち明ける。 当時も今も、ゴーンの出身地である裕福なマロナイト派キリスト教徒の社会と、貧しいイスラム教徒のアラブ社会の間には、同じ敵意が深く横たわっている。「口座保有者の1%がレバノンの預金の60%を保有している」と、アイタは主張する。 レバノンでは、人口約600万人に対し、受け入れた難民の数は100万人以上に上る。こうした中、ゴーンはエリート層の腐敗の象徴と目されている。彼が住む家から800メートル離れた殉教者広場に集まるデモ隊は、ゴーンについて意見を求められると、「彼は泥棒だ」と答える。ゴーンが“余生”を送ることになったレバノンは、ゴーン同様これから何が起こるかわからない』、超格差社会で、「国民にとってゴーンは「腐敗の象徴」」というのでは、気楽に外出することなど夢のまた夢だろう。ガードマンに囲まれた暮らしを死ぬまで余儀なくされそうだ。

第三に、事件ジャーナリストの戸田一法氏が3月23日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「ゴーン被告不在のまま行政は不法行為を認定、司法は刑事責任を問えるか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/232362
・『「私はいまレバノンにいる」――。無罪を主張しつつ、正々堂々と法廷で争うことなく日本から逃亡した元日産会長カルロス・ゴーン被告(66)=金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)などの罪で起訴=。日本政府は国際刑事警察機構(ICPO)を通じレバノンに身柄拘束を要請しているが、レバノン側は否定的な姿勢で、日本で公判が開かれる見通しは立っていない。一方で主役不在ながら、行政処分は既にゴーン被告の不法行為を認定し、司法も脇役(共犯)の公判で有罪を追認する可能性がある』、「司法」側の対応とは興味深そうだ。
・『日産の課徴金命令受け入れで不法行為認定  大きく報道されていないので気付かなかった読者の方も多いと思うが、金融庁は2月27日、ゴーン被告らの役員報酬を過少に偽って有価証券報告書(有報)に記載した金融商品取引法違反があったとして、法人としての日産に約24億円の課徴金の納付を命令した。 これに先立って昨年12月、証券取引等監視委員会(SEC)は同額の課徴金を納付させるよう金融庁に勧告していた。 SECは東京地検特捜部とともに事件を捜査(SECは行政機関なので正しくは調査)して同法違反容疑で地検に告発した、金融庁に属する「審議会等」の一つだ。そして、法令違反が認められた場合、行政処分を勧告するのもSECの役割だ。 もっとも、同法違反容疑で地検に告発した機関だから、告発した容疑内容に基づき勧告するのは当然の流れだったとは言える。 ゴーン被告と法人としての日産、共犯とされた前代表取締役グレッグ・ケリー被告(63)の起訴内容は、ゴーン被告の2011年3月期~18年3月期の役員報酬が計約170億円だったのに、約78億円と記載した有報を提出したとされる。 日産の命令対象はこのうち、15年3月期~18年3月期の4年分。検査前は起訴内容を違反事実として課徴金は約40億円に上る見込みだったが、日産側が違反事実を報告して減額申請し、SECが認めていた。 日産は命令を受け「決定を真摯(しんし)に受け止める。告知書に従い国庫に納付する」とするコメントを発表していた。 つまり「市場の番人」であるSECの勧告を受け、金融庁も追認して日産に課徴金を命令。日産も受け入れたことで、行政処分としてはゴーン被告の不法行為が認定されたわけだ』、「行政処分としてはゴーン被告の不法行為が認定」、当然のことだ。
・『脇役の公判で刑事責任明らかに  では、ゴーン被告の刑事責任はどうなるのか。 昨年末まで1カ月に1回の割合で公判前整理手続きが開かれていたが、ゴーン被告の逃亡で一時停止された。 一方、日産とケリー被告は分離公判になることが決まった。初公判は4月21日に開かれる予定だったが、3月6日の公判前整理手続きで、尋問する証人や時間配分の調整に時間がかかるため、5月以降に延期されることになった。 東京地裁は初公判が開かれる予定だった4月21日を公判前整理手続きの期日に指定し、争点をさらに詳細に絞り込む方針だ。 冒頭、「主役不在」と書いたが、刑事訴訟法第83条第3項の規定で、被告と弁護人の法廷への出席を開廷の原則としている。 これは日本国憲法32条「裁判を受ける権利」で規定されているためだ。当事者や弁護人が出席しないで意見を述べる機会が奪われる「欠席裁判」はNGということだ。 だから、ゴーン被告不在でゴーン被告の公判を開くことはできないのだが、分離公判という形で日産とケリー被告の公判を開くことは可能だ。 主役は不在だが、脇役の公判を通じて判決が言い渡され、犯罪事実が認定されるケースは過去にもある。イレギュラーではあるが、こうした形でゴーン被告が有罪か無罪か、刑事責任が明らかになるというわけだ』、「脇役の公判を通じて・・・ゴーン被告が有罪か無罪か、刑事責任が明らかになる」、これでは興冷めだ。
・『起訴で有罪率99%以上の理由  それでは、日産とケリー被告の公判の行方はどうなるのか。 ゴーン被告は逃亡前、日本の刑事裁判で有罪率が99%以上であることを理由に「有罪が前提で基本的人権が否定されている」「公正な裁判は期待できない」などと日本の刑事司法制度を批判していた。 これは当たっている面もあるが、的外れな面もある。 というのは、起訴されると99%以上の確率で有罪という点はその通りだが、それは検察側が証拠を精査し、確実に有罪が見込める事件しか起訴しないから高い有罪率になっているにすぎない。 検察官が扱った事件のうち、起訴する割合は年々減少している。1985年は約6割だったが、05年には半分以下に。18年は約37%だった。 これは被告人になると公開の法廷に立たされ、公判の準備で相当な時間を費やすため、精神的・経済的な負担が大きく、無罪の可能性がある人にこうした負担を強いるべきではないというのが検察側のスタンスだからだ。 だが、それが行き過ぎてしまうと起訴すべき事件も不起訴にしてしまうという弊害もありうる。 最近では学校法人「森友学園」を巡る一連の疑惑で、刑事告発された佐川宣寿元国税庁長官や財務省職員らが不起訴となって捜査は終結した。 誰の目にも不正は明らかだったのに、集めた証拠や証言は法廷で公開されることもなかった。ネットでは「官僚に忖度(そんたく)」「上級国民はおとがめなしか」と批判が噴出していた』、「起訴で有罪率99%以上の理由」の1つに、「検察官が扱った事件のうち、起訴する割合は年々減少している。1985年は約6割だったが、05年には半分以下に。18年は約37%」、があったとは初めて知った。
・『裁判官の判断、分かれる可能性  それでは、起訴されたゴーン被告は逃亡しなければ99%以上の確率で有罪になっていたのだろうか。 実は、そうでもないようだ(以前の記事『ゴーン被告の海外逃亡に、検察が「ほっとしている」かもしれない理由』参照)。 「これまで(金商法違反の)虚偽記載で立件されたのはライブドア事件など粉飾決算が主で、報酬の虚偽記載が刑事罰として問われた例はない」(SECに出向経験がある公認会計士)ため、判例もないのだ。 SECを担当したこともある全国紙社会部デスクも「別に起訴された会社法違反(特別背任)の罪は明々白々な公私混同だから、こちらの有罪は堅かったと思う。だが、今回のケースは裁判官の判断も分かれるのではないか」との見解を示した。 日産は起訴内容を認める方針だが、ケリー被告は「報告書に記載すべき『確定した報酬』ではなかった」と無罪を主張。検察側が主張する共謀についても「ゴーン被告がサインした報酬の書面作成に関わっていない」と成立を否認している。 全国紙社会部デスクは「退任後の報酬受領は取締役会に諮り、株主総会での承認が必要だ。その手続きがなされていないのに、報酬が確定したと言い切れるのか」と疑問視した。 検察側が主張するこの点が否定されると、ゴーン被告はおろか、ケリー被告、罪を認める方針の日産も有罪にはならない。 共謀を巡るケリー被告の主張が容認されると、ケリー被告は無罪、ゴーン被告と日産が有罪となる公算が大きい。 もちろん、ケリー被告、日産ともに有罪ならば、自動的にゴーン被告の有罪も認定されるのは言うまでもない。 全国紙社会部デスクが「公私混同」と表現した特別背任は、日産の資金を私的に流用して損失を与えたとされる事件だ。 こちらの事件で日産は被害者であり、ケリー被告にも共謀の起訴事実はない。あくまでゴーン被告の事件だから、日本に戻らない限り公判が開かれる可能性はない。 日産とケリー被告の公判がどう決着するのか、行方が注目される』、無理がありそうな「(金商法違反の)虚偽記載」を裁判所がどう判断するか、1つの注目点だ。
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ゴーン逃亡問題(その1)(ゴーンに惨敗した日本 森法相の大失言が世界に印象付けた「自白強要文化」、ゴーン逃亡劇の背景にある 司法と水際危機管理の「構造欠陥」、「ゴーンは無罪の可能性高い」元特捜部検事が語る、ゴーン氏を逃がしたのは誰か?「チーム・ゴーン」驚きの正体と実力 佐藤優が事件を徹底分析する) [司法]

これまでは日産ゴーン不正問題として取上げてきた。ゴーン逃亡を受けて、タイトルもゴーン逃亡問題に変更する。今日は、(その1)(ゴーンに惨敗した日本 森法相の大失言が世界に印象付けた「自白強要文化」、ゴーン逃亡劇の背景にある 司法と水際危機管理の「構造欠陥」、「ゴーンは無罪の可能性高い」元特捜部検事が語る、ゴーン氏を逃がしたのは誰か?「チーム・ゴーン」驚きの正体と実力 佐藤優が事件を徹底分析する)である。特に4番目の記事は必読である。なお、このブログで日産ゴーン不正問題を最近取上げたのは、昨年6月15日である。

先ずは、ノンフィクションライターの窪田順生氏が本年1月16日付けダイヤモンド・オンライン に掲載した「ゴーンに惨敗した日本、森法相の大失言が世界に印象付けた「自白強要文化」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/225890
・『日本から逃亡してレバノンで記者会見を開いたゴーン氏に対して、森雅子法務大臣が放った一言が、国際社会で「日本の司法制度の欠点を表している」と物議を醸している。この一言で、日本vsゴーンの第1ラウンドは、「日本の惨敗」が決定的となった』、お粗末極まる発言だ。
・『森法相の「失言」に日本の司法の本質が出ている  世界が注目した日本vsカルロス・ゴーン。その第1ラウンドは完全にこちらの「惨敗」のようだ。 メディアの注目がマネロン疑惑へ向かわぬよう、日本の司法制度をこれでもかとディスった“ゴーン劇場”。それを受けて、珍しく迅速にカウンターを打った日本政府だったが、森雅子法務大臣がドヤ顔で「ゴーン被告は司法の場で無罪を証明すべきだ」と口走ったことが、国際社会をドン引きさせてしまったのである。 逃亡を許した途端、大慌てでキャロル夫人を国際手配したことで、全世界に「へえ、やっぱ日本の捜査機関は好きな時に好きな罪状をつくれるんだ」と印象付けたことに続いて、ゴーン氏のジャパンバッシングにも一理あると思わせてしまう「大失言」といえよう。 実際、森法相が「無罪の主張と言うところを証明と間違えた」と訂正をしたことに対して、ゴーン氏の代理人がこんな皮肉たっぷりな声明を出している。 「有罪を証明するのは検察であり、無罪を証明するのは被告ではない。ただ、あなたの国の司法制度はこうした原則を無視しているのだから、あなたが間違えたのは理解できる」(毎日新聞1月11日) つまり、ゴーン陣営が国際世論に対して仕掛けた「日本の司法制度はうさんくさい=ゴーン氏にかけられた疑いもうさんくさい」という印象操作に、まんまと日本側が放った「反論」も一役買ってしまっているのだ。 と聞くと、「ちょっとした言い間違いで日本を貶めやがって!」と怒りで我を忘れそうな方も多いかもしれないが、ゴーン氏の代理人の指摘はかなり本質をついている。 ほとんどの日本人は口に出さないが、捜査機関に逮捕された時点で「罪人」とみなす。そして、そのような人が無罪を主張しても、「だったら納得できる証拠を出してみろよ」くらい否定的に受け取る傾向があるのだ。 森法相も同様で、あの発言は言い間違えではない。もともと弁護士として立派な経歴をお持ちなので当然、「推定無罪の原則」も頭ではわかっている。しかし、世論を伺う政治家という職業を長く続けてきたせいで、大衆が抱くゴーン氏への怒りを忖度し、それをうっかり代弁してしまったのだ。 なぜそんなことが断言できるのかというと、我々が骨の髄まで「推定有罪の原則」が叩き込まれている証は、日本社会の中に山ほど転がっているからだ』、「森法相も・・・もともと弁護士として立派な経歴をお持ちなので当然、「推定無罪の原則」も頭ではわかっている。しかし、世論を伺う政治家という職業を長く続けてきたせいで、大衆が抱くゴーン氏への怒りを忖度し、それをうっかり代弁してしまったのだ」、納得できる説明だ。「ゴーン氏の代理人」の声明は、確かに最大限の皮肉だ。
・『「被疑者が無罪を証明すべき」 ズレている日本の感覚  例えば、森法相が生きる政治の世界では2010年、小沢一郎氏にゴーン氏のような「疑惑」がかけられた。マスコミは、起訴もされていない小沢氏周辺のカネの流れを取り上げ、逮捕は秒読みだとか、特捜部の本丸はなんちゃらだとお祭り騒ぎになった。いわゆる陸山会事件だ。 では当時、日本社会は「疑惑の人」となった小沢氏にどんな言葉をかけていたのか。民主党のさる県連幹事長はこう述べている。 「起訴されれば無罪を証明すべきだ」(朝日新聞2010年4月28日) ワイドショーのコメンテーターたちも、渋い顔をして似たようことを述べていた。新橋のガード下のサラリーマンも、井戸端会議の奥様たちも同様で、日本中で「小沢氏は裁判で無罪を証明すべき」のシュプレヒコールをあげていた。 日本人としては認めたくないだろうが、この件に関して国際社会の感覚からズレているのは、ゴーン氏の代理人ではなく、我々の方なのだ。 「図星」であることを指摘されてムキになって正当化することほど見苦しいものはない、というのは世界共通の感覚だ。つまり、「被告人は無罪を証明すべき」という言葉をあれやこれやと取り繕ったり、誤魔化したりすればするほど、「うわっ、必死すぎて引くわ」と国際社会に冷ややかな目で見られ、ゴーン陣営の思うツボになってしまうのである。 「テキトーなことを言うな!世界中から尊敬される日本がそんな嘲笑されるわけないだろ!」という声が聞こえてきそうだが、「愛国」のバイアスがかかった日本のマスコミがあまり報じないだけで、この分野に関してはすでに日本はかなりヤバイ国扱いされているのだ。 2013年5月、スイス・ジュネーブで、国連の拷問禁止委員会の審査会が開かれた。これは残酷で非人道的な刑罰を禁じる「拷問等禁止条約」が、きちんと守られているかどうかを調べる国際人権機関なのだが、その席上でアフリカのモーリシャスのドマー委員がこんな苦言を呈した。 「日本は自白に頼りすぎではないか。これは中世の名残だ」 アフリカの人間に、日本の何がわかると不愉快になる人も多いだろうが、この指摘は非常に的を射ている。足利事件、袴田事件、布川事件などなど、ほとんどの冤罪は、捜査機関の自白強要によって引き起こされている』、「アフリカのモーリシャスのドマー委員」の「苦言」はその通りで、日本の司法関係者は深く反省し、考え直すべきだった。日本のマスコミもこれを余り取上げなかったのは問題だ。
・『痛いところを突かれて逆ギレする  それは遠い昔のことで今はそんな酷いことはない、とか言い訳をする人もいるが、2012年のPC遠隔操作事件で、無実の罪で逮捕され、後に警察から謝罪された19歳の大学生も、取調室で捜査官から「無罪を証明してみろ」(朝日新聞2012年12月15日)と迫られたと証言している。 この自白偏重文化が中世の名残であるということは、そこからやや進んだ江戸時代の司法を見れば明らかだ。死罪に値するような重罪の場合、証拠がいかに明白だろうと自白を必要とした、と記録にある。さらに、自白をしない被疑者に対しては「申しあげろ。申しあげろ」とむち打ち、えび責めなどの拷問で強要した、という感じで、罪を告白するまで100日でも自由を奪う「人質司法」のルーツを見ることもできる。 罪を吐くまで追い込むので当然、現代日本のような冤罪も量産される。名奉行で知られる大岡越前は、徳川吉宗にこれまで何人殺したかと聞かれ、冤罪で2人を死刑にしたと告白している。 話を戻そう。ゴーン氏の代理人同様に、鋭い指摘をするドマー委員に対して、日本の代表として参加した外務省の上田秀明・人権人道大使は「この分野では、最も先進的な国のひとつだ」と返したが、日本の悪名高い人質司法などは、参加者たちの間では常識となっているので、思わず失笑が漏れた。すると、上田大使はこのようにキレたという。 「Don't Laugh! Why you are laughing? Shut up! Shut up!」(笑うな。なぜ笑っているんだ。黙れ!黙れ!) 昔から日本は、海外から痛いところを突かれると逆ギレして、とにかく日本は海外とは事情は違うという結論に持っていって、変わることを頑なに拒んできた。 このままやったら戦争に負けて多くの国民が死にますよ、という指摘があっても、この国は世界の中でも特別な「神の国」だと、頑なに耳を塞いだ結果、凄まじい悲劇を招いた。 先進国で唯一、20年間も経済成長をしていないのは日本だけなので、異様に低い賃金を引き上げて生産性を向上させていくしかない、と指摘をされても、日本の生産性が低いのは、日本人がよその国よりもサービスや品質にこだわるからだ、ちっとも悪いことではない、などというウルトラC的な自己正当化をしている。 筆者が生業とするリスクコミュニケーションの世界では、「図星」の指摘に対して、逆ギレ気味に自己正当化に走るというのは、事態を悪化させて新たな「敵」をつくるだけなので、絶対にやってはいけない「悪手」とされる』、「自白偏重文化」、「「人質司法」のルーツ」、が江戸時代にもあるとの指摘はさすがだ。「リスクコミュニケーションの世界では、「図星」の指摘に対して、逆ギレ気味に自己正当化に走るというのは、事態を悪化させて新たな「敵」をつくるだけなので、絶対にやってはいけない「悪手」とされる」、その通りなのだろう。
・『国際人権団体も日本の司法を批判  しかし、今回も日本はやってしまった。国内的には、森法相や東京地検の反論で溜飲の下がった日本人も少なくないかもしれないが、国際社会ではかなりヘタを打ってしまったと言わざるを得ない。 それを如実に示すのが、ニューヨークの国連本部で14日に催された、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの記者会見だ。ケネス・ロス代表はゴーン氏が「取り調べに弁護士が立ち会えなかった」と批判していることに対して、以下のように述べた。 「日本の刑事司法制度が容疑者から自白を得るために課した巨大な圧力を物語っている」「司法制度ではなく、自白(強要)制度だ」(時事通信1月15日) 慰安婦問題や徴用工問題なども然りだが、日本政府は「人権問題」の対応がうまくない。人権という多様な価値観が衝突するテーマであるにも関わらず、「日本は正しい」というところからしか物事を考えることができないので、傲慢かつ独善的な主張や対応になることが多い。そのゴリ押しが裏目に出て、揚げ足を取られ、オウンゴールになってしまっているのだ。 これは一般社会などでもそうだが、「オレ様は絶対に間違っていない」と自己主張するだけの者は、次第に誰からも相手にされなくなる。その逆に、厳しい指摘や批判にもしっかりと耳を傾けるような真摯な姿勢の人は、周囲から信頼される。 日本の司法制度や懲罰主義は、国際社会から見るとかなりヤバい。――。ゴーン氏側のジャパンバッシングを迎え撃つためにも、まずはこの厳しい現実を受け入れることから始めるべきではないか』、非常に説得力溢れる指摘で、全面的に同意する。

次に、司法ジャーナリストの村山 治氏が1月21日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「ゴーン逃亡劇の背景にある、司法と水際危機管理の「構造欠陥」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/226345
・『世界中を驚かせた日産前会長、カルロス・ゴーン被告=会社法違反(特別背任)などの罪で起訴=のレバノン逃亡には、米軍特殊部隊の元隊員やプロの「運び屋」らが関わったとされる。 検察は、ゴーン氏の身柄確保にやっきだが、国家主権などの壁があり、すぐ連れ戻すのは難しそうだ。 一方、逃亡劇は、日本の刑事司法と水際危機管理の構造的な欠陥を露呈した』、興味深そうだ。
・『空疎な内容の会見だったが  「世論という法廷では無罪」?「非人道的な扱いを受け、私自身と家族を守るためには、(逃亡する以外の)選択肢がなかった」 1月8日午後10時(日本時間)に始まったレバノン・ベイルートでの記者会見。黒っぽいスーツに赤いネクタイのゴーン氏は、身ぶり手ぶりを交え、雄弁に語った。しかし、1時間余りの独演会の中身は拍子抜けするほど、空疎だった。 メディアが注目した逃亡方法などは語らず、「日本の政府高官と日産の国ぐるみの陰謀」と主張しておきながら、「レバノン政府に迷惑がかかる」として高官の名も挙げなかった。 無罪主張の根拠や日本の刑事司法批判も、これまで弁護人が発表した範囲を出なかった。 会見をテレビで見た検察幹部は、「中身がなくてがっかり。裁判で白黒つける法の支配の基本から逃げた男に正義を語る資格なし」と皮肉まじりに切り捨てた。 ゴーン氏の主張を額面通りに受け取る日本メディアの報道は皆無だったが、海外メディアの中には、「日産や検察から説得力のある新しい証拠がなければ、ゴーンは世論という法廷で無罪になるはずだ」(2020年1月9日付ウォール・ストリート・ジャーナル日本版)などゴーン氏の「潔白」主張に理解を示す報道もあった。 これには森雅子法相が「制度を正確に踏まえていない」と反論を同紙に寄稿する一幕もあった』、森法相のお粗末な発言に触れなかったのは、忖度著しい「司法ジャーナリスト」らしい。
・『逃亡にはプロの「運び屋」と「サポート組織」を利用した可能性  内外メディアが伝えるゴーン氏の逃亡劇はアクション映画のようだ。 帽子とマスクで顔を隠したゴーン氏が、保釈中の住居と定められた東京都港区の住宅を1人で出たのは昨年12月29日午後2時半ごろ。六本木のホテルで米国籍の男2人と合流し、その後、新幹線で大阪に移動。関西空港近くのホテルに入った。 ゴーン氏は男たちが用意した楽器の収納箱の中に隠れて空港まで移動した可能性がある。同空港第2ターミナルのプライベートジェット専用ゲートの出国検査をかいくぐり、用意したプライベートジェット機(PJ)で午後11時すぎ、同空港を飛び立った。 トルコ・イスタンブールで男たちと別れ、別の小型のビジネスジェット機に乗り換え翌30日にレバノンに到着した、とされている。 その直後に「キャロル夫人から、夫との再会は『私の人生にとって最高の贈り物』とのテキストメッセージを受け取った」というウォール・ストリート・ジャーナルによると、戦闘地域で拘束された人質の救出経験を持つ元米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の隊員を含む十数人のチームがゴーン氏逃亡に関わったという。 チームのメンバーは数カ月前から日本を20回以上訪問して国内の10カ所以上の空港を下見。関空のプライベートジェット専用ゲートのX線検査機械が大きな荷物には対応していないことから、関空を脱出ルートに選んだという。逃亡計画には数百万ドルがかけられたとしている。 検察関係者は「脱出支援チームのほか、中東などのサポートする組織も介在したとみられる国際的組織犯罪だった」という。 ゴーン氏が、逃亡の詳細を語るのを避けたのは、チームやサポート組織から口止めされている可能性もある』、「チームのメンバーは数カ月前から日本を20回以上訪問して国内の10カ所以上の空港を下見」、これでは抜け穴は容易に把握できたのだろう。
・『裁判の開始は当面無理 最悪の場合は「棚ざらし」に  ゴーン氏が金商法違反(有価証券報告書虚偽記載)、会社法違反(特別背任)の4事件で起訴され、4月下旬に東京地裁で金商法違反事件から公判が始まる予定だった。 「(最高裁で決着するまで)10年ほども耐えろというのか」(朝日新聞1月12日付朝刊)と、違法承知で逃亡したゴーン氏が自らの意思で日本の裁判所に出頭する可能性はまずない。 金商法違反などは被告人不在では裁判は開けない。最悪の場合、起訴した事件は棚ざらしになり、真相はうやむやになる恐れがある。 菅義偉官房長官は1月6日、テレビ番組に出演。ゴーン氏の身柄の引き渡しについて「さまざまな外交的手段を行使しながら、総力を挙げる」と宣言。国際刑事警察機構(ICPO)にゴーン前会長を起訴済みの罪について国際手配する手続きを取り、駐レバノン日本大使がアウン大統領に面会し、身柄の引き渡しを求めた。 しかし、日本はレバノンとは容疑者の身柄の引き渡しに関する条約を結んでおらず、さらに、レバノン国内法が自国民を他国に引き渡さないと規定していることから、引き渡しが実現する可能性は高くない。 それでも政府は経済支援などをてこにして粘り強く交渉する方針だ。 ゴーン氏は、「公正な裁きが受けられるなら、どこの国でも裁判を受ける用意がある」と会見で述べた。 刑事裁判を他国に依頼する「代理処罰」という国際ルールがあり、日本政府が、レバノン政府に要請すれば、それは可能だ。しかし、刑事裁判の規定は国ごとに異なり、証拠の翻訳も必要で、専門家は技術的に難しく、実現の可能性は小さいとみている。 何よりメンツを失う日本の検察が認めるはずがない』、「代理処罰」は、「刑事裁判の規定」だけでなく、法体系そのものが大きく異なっている以上、「メンツ」を抜きに考えても無理だろう。
・『検察の追っ手 米当局が摘発する可能性も  検察は、「国家の威信」をかけて逃亡の事実解明に乗り出している。 レバノンでゴーン氏と合流したキャロル夫人が昨年4月の東京地裁での証人尋問で偽証した疑いがあるとして、逮捕状を取り、警察庁を通じて国際刑事警察機構(ICPO)に国際手配を要請した。 キャロル夫人がゴーン氏の不正の証拠隠滅を主導し、逃亡にも関与したとみているためだ。夫婦ともにレバノン国外への移動を制限する狙いもあるとみられる。 検察は昨年12月、ゴーン氏側に還流したとされる日産資金の一部が米国在住の息子が経営に関わっていた米国の投資会社に流れた疑いがあるとして米司法当局に要請してゴーン氏の息子や娘から事情を聴いた。 息子は、投資会社の資産には前会長からの送金も含まれていたことを認めたとされる。 これは、不正資金の洗浄(マネー・ロンダリング)に当たる可能性がある。米国では、不正資金洗浄を厳しく取り締まり、資金の移動や保管の形態に「出所」を隠す意図がうかがわれるだけで処罰されることもある。 今後、米国がゴーン氏の摘発に乗り出す可能性もあり、そうなれば、事態は一変するだろう』、確かに米国の出方は1つの鍵だろう。
・『保釈認めた裁判所はひたすら沈黙 弁護団も裏切られた形に  ゴーン氏逃亡で、ゴーン氏の保釈を認めた裁判所の責任を問う声も噴出した。 刑事訴訟法では、証拠隠滅や逃亡の恐れがある場合を除き、保釈を許さなければならないと定め、裁判官の裁量による保釈も認めている。 「無罪請負人」の異名をとる弘中惇一郎氏や米国流の刑事手続きに詳しい高野隆氏ら著名刑事弁護士らで構成するゴーン弁護団は、制限住居への監視カメラの設置など15項目にわたる保釈条件を提示。裁判官は弁護団を信用し、逃亡や証拠隠滅の恐れはないと判断し、15億円の保釈保証金を納付させてゴーン氏を保釈した。 弘中弁護士は当時、「知恵を絞って逃亡や証拠隠滅がありえないシステムを考えて裁判所に評価された」と語った。弁護団もゴーン氏に裏切られた形だ。 弘中、高野氏らは16日に弁護人を辞任、ゴーン氏の公判手続きは止まった。 共犯に問われた日産元代表取締役のグレッグ・ケリー被告と法人としての日産の裁判は、分離して行われる見通しだ。 2000年代初めの司法制度改革以来、保釈のハードルを低くする流れがあり、また、海外メディアなどからの「長期勾留」「人質司法」批判も考慮したとみられるが、いずれにしろ「被告は逃げるはずがない」という性善説の上に立った判断だった。 検察幹部は「ゴーン氏ほどの金と人脈があれば逃げる、と我々は主張した。裁判所は本来なら、保釈できない事件と認識しながら、実効性のない条件をつけて出した。結果的に間違った判断で、膨大な血税を無駄にし、国の威信を失墜させた」と批判し、これには一部のマスコミも同調した。 東京の司法記者クラブは裁判所に説明を求めたが、黙殺し、コメントを拒否している』、保釈を認めた裁判所を批判するのは筋違いだろう。問題は保釈後のフォロー体制にある。
・『保釈中の逃亡に「逃走罪」にならず 「逃げるはずはない」の“共同幻想”  一方、ゴーン氏の逃亡は、日本の刑事司法の制度的欠陥を露呈した。 保釈された被告人に対する管理の「空白」である。 裁判所も、検察も、弁護人も、誰にも管理責任がなかったのだ。 拘置所や刑務所などで身体を拘束されている容疑者や被告、受刑者らが逃走した場合、刑法の逃走罪が適用されるが、保釈中の逃走については同罪の対象になっていなかった。 被告人が逃亡や証拠隠滅をしないよう責任を持って監視する存在がない。逃亡を実質的に担保するのは保釈保証金だけだった。 「15億円もの大金を捨てるはずがない」という共同幻想があった。ゴーン氏にとってはその程度は、はした金だった。 実は、国内でも逃亡事件は後を絶たない。ゴーン氏のような大金持ちは別にして、現在は、保証金も立て替える業者もいて、保釈保証金の重みは減った。 古来の日本人の「お上に対する畏敬」「公序を尊重するマインド」に期待するしかなかったのが実態だ。 お上意識も日本の公序良俗にも関心がなく、逃げる意思と能力(脱出のプロを雇えるカネ)があるゴーン氏が、逃げないと損という気になってもおかしくない。 今回の逃亡劇を受け、森雅子法相は1月7日の閣議後会見で「できる限り速やかに法制審に諮問できるよう検討を進めたい」と述べた。 ようやく、保釈被告人に逃走罪を適用する法改正や、衛星利用測位システム(GPS)装着による常時行動監視の議論が始まるとみられる』、「保釈中の逃走については同罪(逃走罪)の対象になっていなかった」、とは驚きだ。「法制審」でしっかり議論してほしいものだ。
・『プライベートジェットは盲点に 保安検査は機長の判断次第  ゴーン氏が脱出に使った関空のPJ専用ゲートには、あってはならない「穴」があった。 乗客が「身内」に限られるPJでは一般の民間航空会社が行うX線を使った手荷物や身体の保安検査を乗客が受ける必要はなく、検査するかどうかは機長の判断に任される。 保安検査の後にはPJの乗客もCIQ(税関・出入国管理・検疫)の検査を受ける必要があるが、税関のチェックは甘く、大きな荷物の中身を透視するX線装置も設置されていなかった。 検察幹部は「ゴーン氏の逃亡を支援した組織は、中東などのテロ組織ともつながり、テロリストの密入出国をサポートしているとの情報もある」という。 ゴーン氏の脱出を支援したチームは日本への出入りにPJを使っていたとされる。その全てがゴーン氏の案件だったとは限らない。テロリストや武器、禁止薬物などを運んでいた可能性はないのか。 赤羽一嘉国土交通相は7日の閣議後記者会見で、羽田、成田、中部、関西の4空港にあるPJ専用ゲートで全ての大型荷物の保安検査をするよう6日から義務付けた。 こちらも泥縄の対応だ。数カ月後には東京五輪が始まる。大会の安全管理は大丈夫なのか』、PJで「武器、禁止薬物などを運んでいた可能性は」、大いにあり得ると考えるべきだろう。こんな「あってはならない「穴」」があったというのは、国際的にも恥ずかしいことだ。
・『ゴーン氏の復権はあるのか 大金使ったがレバノン出国は困難  ブルームバーグ通信によると、ゴーン氏の資産は、この1年間で約1億2000万ドル(約131億8000万円)から約7000万ドル(約76億9000万円)に減ったという。 逃亡で保釈保証金15億円を裁判所に没取され、さらに逃亡費用として1500万ドル(約16億円)以上かかったためだ。 それでも、ゴーン氏が億万長者であることに変わりはない。レバノンでは「ビジネスの成功者」として遇されるだろう。 しかし、国際的な経済シーンで「名経営者」として復権できるかは疑問だ。 逃げたこと自体を疑問視する見方が広がっている中で復権を果たすには、裁判で無罪を証明する必要がある。だが、日本以外で裁判を受けるのは困難だ。 検察が開示した捜査記録を自分で雇った法律家に分析させ「無実だ」と主張したところで、PRと受け取られるだけだ。 行動の自由も制約される。ゴーン夫妻は、不正出国や証拠隠滅容疑で国際手配され、お尋ね者状態にある。 米国など日本の友好国に行けば、身柄を引き渡される恐れがある。国籍のあるフランスでは、捜査当局が2016年にベルサイユ宮殿でゴーン氏が結婚披露宴を開いた際にルノーの会社資金を不正使用した疑惑や、中東オマーンの販売代理店への不審な支出についてルノー本社を捜索した。 渡仏すれば身柄拘束され、訴追される恐れがあり、もうひとつ国籍のあるブラジルは、レバノンからの直行の航空便がなく、中継地で身柄拘束され日本に引き渡される恐れがある。 ゴーン氏はレバノンでじっとしているしかない。 しかし、レバノンは経済が疲弊し、昨年秋から反腐敗を訴える大規模な反政府デモが頻発し、首相が辞意を表明した。 ゴーン氏はその政府に近い「特権階級」とみられている。政権が転覆するようなことになれば、「腐敗」の象徴としてやり玉に挙げられかねない。 「そうなると生きた心地はしないだろう」と検察関係者は指摘する』、政情不安な「レバノンでじっとしているしかない」、これも覚悟の上での逃亡だったのだろう。

第三に、1月22日付けNewsweek日本版がロイター記事を転載した「「ゴーンは無罪の可能性高い」元特捜部検事が語る」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2020/01/post-92202.php
・『日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の事件で検察側に批判的な元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士は22日、ゴーン被告と側近だった日産前代表取締役グレッグ・ケリー被告の金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)について、両被告とも「無罪の可能性が高い」と述べ、ゴーン被告の会社法違反(特別背任)に関しては「絶望的に長期間の刑事裁判になっていただろう」との見方を示した』、郷原氏はかねてから「無罪の可能性が高い」と主張していた(このブログの昨年6月15日)。
・『金商法違反、刑事事件としての立件は「異常」  郷原氏は同日、日本外国特派員協会で会見。金商法違反が無罪になる可能性が高いとみる理由について、刑事処罰の対象は「重要な事項についての虚偽記載」であり、まだ受け取っていない役員報酬の記載の有無は「重要事項に該当しない」と指摘。逮捕が必要なほど「明白で重大な犯罪ではないことは明らか」で、刑事事件として立件されたのは「異常だ」と批判した。その上で「ケリー氏の無罪判決が出れば、ゴーン氏も無罪であっただろうという結論になる」と語った。 金商法違反と会社法違反の罪で逮捕・起訴され、保釈中だったゴーン被告は昨年12月29日夜に保釈条件に違反して日本を不法出国したとみられ、国籍を持つレバノンに逃亡。日本はレバノンと容疑者の身柄引き渡しに関する条約を結んでおらず、レバノンも国内法で自国民を他国に引き渡さないことを定めている。このため、身柄引き渡しが実現する見通しはなく、ゴーン被告の裁判は開かれない可能性が極めて高い。 一方、ゴーン被告のみ起訴されている会社法違反については「証拠が十分にないまま検察が逮捕・起訴したことに問題がある」と指摘。「証拠がないので有罪か無罪かはっきりしないまま、公判が長期化する可能性が高い」と述べた。 ゴーン被告は8日にレバノンで開いた会見で「2つの罪状の公判が同時に進行できない」ことや、当初は今年9月に特別背任の公判開始と聞いていたのに検察の意向で「2021年以降と言われた」こと、妻や子供に会えないことが出国を決意した理由と説明していた』、「金商法違反」については、確かに「ケリー氏の無罪判決が出れば、ゴーン氏も無罪であっただろうという結論になる」ので、今後も注目したい。
・『問題の背景に前近代的な日本の刑事司法制度  郷原氏は、ゴーン被告の不法出国は「犯罪行為」だが、今回の事件は検察が加担・日本政府も関与したクーデターの可能性が高いこと、ゴーン氏の犯罪事実の根拠が薄弱なこと、関与者への措置・処罰の不公平感があること、無実を訴える被告人は身柄拘束が続くという「人質司法」など日本の刑事司法制度の前近代性が問題の背景にある、との認識を示した。 郷原氏はゴーン事件に関する書籍を今年4月に出版する予定で、昨年11月から12月27日までに計10時間以上、ゴーン氏のインタビューを実施。しかしその後、ゴーン氏は不正出国し、レバノンへ逃亡したことから、出版計画は白紙となった』、「出版計画は白紙となった」のは残念だ。

第四に、1月26日付け現代ビジネスが掲載した作家の佐藤 優氏と野村邦丸氏の対談「ゴーン氏を逃がしたのは誰か?「チーム・ゴーン」驚きの正体と実力 佐藤優が事件を徹底分析する」を紹介しよう。
※本記事は『佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」』に収録している文化放送「くにまるジャパン極」の放送内容(2020年1月17日)の一部抜粋です。野村邦丸氏は番組パーソナリティです。
・『「獄中死」を避けるための逃亡  佐藤:私は去年から「ゴーンさんは逃亡する」と指摘していたんです。理由は簡単です。逮捕されていた時、ゴーンさんには次のような可能性がありました。最初の罪状は金融商品取引法違反。これは罰金か、あるいは2件あっても確実に執行猶予がつくんです。ところがゴーンさんが頑なに罪を認めないから、たぶん検察はカッとなったんですね。それで会社法を使って特別背任にした。これは最高刑が10年なんです。 そうなると、2つの罪状が複合するので、最高刑がいちばん長い刑の5割増しまでいけるんです。だから最高で懲役15年になる。 さらに、ゴーンさんの保釈が検察の意思に反して認められちゃったので、検察はまたカッとなって、もう一本の背任で再逮捕した。これは「絶対に実刑にしてくれ、できるだけ長く刑務所に入れてやる」という検察の強い意思表示なんですね。この場合、求刑の相場感は懲役12年だと思います。 検察官が求刑した7割以下の量刑になると、検察が控訴する可能性がある。そうすると、ゴーンさんの刑はだいたい相場感として8年なんです。それで、裁判自体に10年はかかります。そうしたら、10年裁判やって、それから刑務所に8年行く。 今、ゴーンさんは65歳なので、出てくるときは83歳です。刑務所の中の医療はベストとはいえないですから、たぶん獄中死するでしょう。つまり、ゴーンさんにとって最もありそうなシナリオは「獄中死」だったんです。 密出国の場合の刑期は1年。ということは、もし国外脱出しようとして、バレて捕まっても1年刑期が増えるだけで、成功すれば自由の身になれる可能性がある。どっちを取るかって話ですよ。 邦丸:獄中死は嫌ですよね。 佐藤:だから賭けたということで、脱出はごく合理的な判断なんです』、「金融商品取引法違反」だけでなく、「会社法を使って特別背任」を付け加えた理由が理解できた。「10年裁判やって、それから刑務所に8年行く。 今、ゴーンさんは65歳なので、出てくるときは83歳です。刑務所の中の医療はベストとはいえないですから、たぶん獄中死するでしょう・・・脱出はごく合理的な判断なんです」、説得力ある説明だ。
・『「IR汚職」との関連性  佐藤:それと、なんで12月末のあのタイミングでやったか。これは、私はIRの汚職で逮捕された秋元司議員の件と関係していると思う。 邦丸:一見、関係ないように見えますけど。 佐藤:実は深い関係があるんです。 警察というのは、人がたくさんいます。警察官は全国に30万人いる。しかし、検察には特捜部の事務官しかいないんです、尾行とかする人材は。報道によると、検察は12月29日にゴーンさんの尾行を外した。 邦丸:これは日産側が依頼した警備会社とは違うんですか。 佐藤:違います。検察本体です。日産とは別に、検察も事務官がゴーンさんの行動をウォッチしているわけです。これを業界用語で「行確」といいます。行動確認。これがどうして12月に外れたのか。クリスマスに秋元司議員を捕まえたでしょ。それで人手が足りなくなったからなんです。 邦丸:え、物理的にですか? 佐藤:そう。東京地検はこういうとき、警察に応援をお願いしないんです。 邦丸:はあ~。 佐藤:警察も「お手並み拝見」で、協力しない。その辺のことを、ちゃんとゴーンさんの背後にある組織は見ているんですよね。 さらに、ゴーンさんには日産も尾行をつけていたでしょ、これ、尾行のプロなんです。だいたい警察の公安部とかを中途退職している人たちで、こういうプロが10人ぐらいチームを組んで尾行すると、まずわからないです。 じゃあ、なぜゴーンさんは気づいたのか。彼らを上回る能力を持つ尾行の専門家が、ゴーンさんのチームにいたからです』、「検察は12月29日にゴーンさんの尾行を外した」のは、「IR汚職」で「人手が足りなくなった」、「東京地検はこういうとき、警察に応援をお願いしないんです」、とは検察のメンツが招いたオウンゴールのようなものだ。
・『元グリーンベレーは「見せ玉」  邦丸:これは報道されているように、アメリカ陸軍の特殊部隊にいた、元グリーンベレーのマイケル・テイラーさんという人が首謀したんじゃないかと言われていますけど……。 佐藤:違うでしょうね。テイラーさんは前科がありますから。前科がある人は顔も名前も知られてしまっているわけです。 邦丸:アメリカで禁固刑を受けている。 佐藤:だから、前科のある人はこういうオペレーションの中心には入りません。 私も以前、そういった国際的な警備保障会社から「就職しないか」と誘われることがあったんですよ。 邦丸:へえ~。 佐藤:でも、それは使い捨てにされちゃうの。どうしてかというと、いったん捕まって表に出た人は、裏の世界で動けなくなるから。このテイラーさんも同じで、陽動作戦、すなわち見せるために使われている人です。計画の全体像は知らされていない。 邦丸:じゃ、誰なんですか? 佐藤:誰がゴーンさんを連れて行ったか。それは、地面師みたいなネットワークなんですよ。 邦丸:というと。 佐藤:何かあるとその都度、ガーッと湧いてくる人たちです。ゴーンさん救出プロジェクトがある、じゃあやろうか、と何人か集まってくる、お互いに横の連絡はない。ですから、トルコの航空会社で捕まった人たちは、何も知らない。 邦丸:パイロットの人たちですね。 佐藤:オレオレ詐欺の入れ子や出し子と一緒ですから。 邦丸:要するに、パーツでしかない』、「元グリーンベレーは「見せ玉」」、この世界の闇の深さを改めて知らされた。
・『弘中弁護士も「パーツ」  佐藤:そうです。これを「クオーター化」というんです、業界用語で。区分に分けるという意味です。 そういう組み立てだから、「おい、ブツの運びがある。いい金になるぞ」「ヤバいものじゃないですよね?」「麻薬や兵器ではない。中身は知らなくていい」「わかりました」──こういう世界ですよ。 邦丸:なるほど。 佐藤:それで、尾行されていることを知っていて、「こんな尾行は人権侵害だから解除してくれ」とゴーンさんが弘中弁護士たちに頼むわけでしょ。そういう意味では、弘中さんたちも知らず知らず、パーツとして利用されているわけですよ。 それで解除を要求したら、その日に脱出した。すでに救出のネットワークはでき上がっていて、関空に穴が開いているといったことも調べあげて、車も飛行機も全部手配してと、こういうやり方ですよ。 しかもゴーンさんは、逃亡時の経緯については、ウォール・ストリート・ジャーナルに独占的に流すということに決めていますね。今回、報道ではここが全部早いですから。 邦丸:早かったですよね。 佐藤:なんでだと思います? 私は、ゴーンさんはウォール・ストリート・ジャーナルをあえて選んでいるんだと思う。なぜかというと、日本語版があるから。 ちなみに、毎日新聞の電子版とか琉球新報などの毎日系の新聞をとっていると、ウォール・ストリート・ジャーナルが無料で読めるんですけど、日本語版があるから、日本の検察とかマスメディアにメッセージをすぐに出せるでしょ。実際、ゴーンさん関連の日本の報道は、よく見るとすべてウォール・ストリート・ジャーナルの後追いになっているんですよ。 邦丸:そうですね。 佐藤:こういうつくりにすることも全部、このチームは計算していますね』、どこまで真実かはともかく、なかなかよく練られた救出劇だったようだ。
・『日本政府も「深入りしたくない」  邦丸:そのゴーンさんのチームですが、ゴーンさんはインタビューで「日本人が今回の逃亡にかかわっているという話があるけど、どうなんだ?」と聞かれて、「日本人がかかわっていないなんて考えること自体が幻想だ」と言っているわけですね。 佐藤:もちろん、かかわっていますよ。しかし、それが誰なのか、どういうネットワークかというのは、ゴーンさんも知らないと思う。 邦丸:え、それじゃあどんな窓口に助けを求めたんですか。 佐藤:これはあくまで私の推定ですが、こうした種類のことになると、彼がいつも頼む「仕事師」がいるんでしょう。イメージでいうと、ゴルゴ13みたいな感じ。殺しは今回はやらないですけどね。 邦丸:グレート東郷ですか……グレートじゃないか。 佐藤:デューク東郷。彼に頼んで、あとは何も知らなくていい。こういう世界ですよ。 それで、今回の最大の争点は、レバノン政府が噛んでいるかどうか。 邦丸:はい。 佐藤:レバノン政府が噛んでいなければ、1人の容疑者とそれをサポートしている犯罪組織の話で、単なる刑事事件なんです。しかし、もしレバノン政府が噛んでいると日本国家の主権侵害になって、北朝鮮の拉致問題とか金大中事件とかと同じ話になっちゃいます。 そうすると日本政府として、レバノン政府と全面的に構えないといけないんです。ただし、今は中東情勢のなかでレバノンはカギを握る国なので、ケンカしたくない。だから、本来ならレバノン政府に引き渡しを強く要求するとか、レバノンにいる日本の大使を一時日本に戻すとかするんですけど、しないでしょ。 邦丸:しないですね) 佐藤:これは、真相が明らかにならないほうが日本政府も都合がいい。レバノン政府も都合がいい。ゴーンさんも都合がいい。みんな都合がいいので、迷宮入りになろうとしていますね。 ですから、すごく変な感じの事件になっている。国家を超えるようなネットワークがあって、機能しているということですね』、「真相が明らかにならないほうが日本政府も都合がいい。レバノン政府も都合がいい。ゴーンさんも都合がいい。みんな都合がいいので、迷宮入りになろうとしていますね」、なるほど、さすが深い読みだ。
・『宗教という重要ファクター  佐藤:ゴーンさんは15億円の保釈金が没収されたでしょ。新聞報道だと、脱出計画に22億円かかった──私はそれだとちょっと安いという気がしますが──けれど、でも十分取り返せる。 まず、手記を書くでしょ。その後、ハリウッド映画にする。そうすると数百億儲かりますから、逃亡劇までちゃんとマネーになる。映画ができたら、検察官役とか、とんでもない大物役者をつけてくると思いますよ。 邦丸:えーと、ちょっと戻っていいですか。ゴルゴ13のような人が日本にいるんですか。それともアメリカですか。 佐藤:中東だと思う。 邦丸:中東! 佐藤:中東で、今までいろんなヤバい仕事をするときの相棒がいたんだと思う。その人に「助けてくれ、ここから出たい」とひと言だけメッセージを送ると、あとは組み立ててくれる。今までもいろんな仕事をしているんだと思う。 邦丸:へえ~~。 佐藤:そういうふうに私は見ています。それからもうひとつ、これはぜんぜん報道に出てこないけれど、重要なのはゴーンさんの宗教なんですよ。彼はキリスト教徒です。キリスト教のマロン派、これはカトリック教会に属しているんです。 もし、ゴーンさんがレバノンのイスラム教徒だったら、国際的にこれだけの支援は受けられなかったと思う。要するに「東洋のなんかおっかない国で、キリスト教徒が弾圧されている」と、こういうイメージですよね。このイメージをつくることに成功している。 レバノンのキリスト教徒というのは、ヨーロッパのいわば利益代表みたいな意味があるんですね。それだから、レバノンはヨーロッパ諸国と非常に関係がいいんですよ。実は、宗教の要素が今回は非常に大きいんです。そういうところは、日本の報道ではぜんぜんわからない』、「宗教という重要ファクター」、読み過ぎの気もしないではないが、ありそうな面白い見方だ。
・『日本がいくら正当性を主張しても…  佐藤:日本の報道では、「ゴーンの会見は見苦しい言い訳だ」「世界でも非難囂々だ」というトーンでしょ。ところが、ちょっとウォール・ストリート・ジャーナル日本語版を見てみると、社説を立てて、「ゴーンの説明には説得力がある」とか「マクロン大統領は、安倍総理に何度も処遇を改善してくれと話をしている」とか出てきているでしょ。 日本だけ情報空間がズレている。実際は、ゴーンさんはかなり有利です。 邦丸:はあ~~。 佐藤:でも、今回は分けて考えなければいけない。私は、この件のあと国内外のメディアから「日本の刑事司法手続きをどう思いますか?」とか「拘置所の処遇をどう思いますか?」と聞かれて、言いたいことはたくさんあるんだけれど、ほとんど言っていないんです。 どうしてかというと、私はやはり元外交官、つまり日本の公務員だったわけで、この事件は日本国家の主権が侵されていると私は思っている。国際的なネットワークとレバノン政府に。 そのときに、私が「検察の対応に問題がある」とか「日本の拘置所はおかしい」と言ったら、それはゲームのなかで利用されてしまうわけです。深刻なのは、日本の法手続きが無視されて、国家主権が無視されて、コケにされているんだから、それを助長する方向には加わりたくないんです。 ただ、日本はメディアにしても、法務省にしても、事態が見えていない。森法務大臣が一生懸命、日本の手続きには問題ありません、人権を尊重していますと言ったって、拘置所へ入所するときの検査では、「お前、指詰め、入れ墨、玉入れ(性器にシリコンの玉を入れること)はあるか」というような質問をしている。 邦丸:それはそういうスジの人ではなくてもやるんですか。 佐藤:全員です。私もやらされましたから。 拘置所の中では小さな机の前で、畳のところで一日じゅう座っている。お風呂は週に2回で、お風呂に行くときはパンツ1枚、希望すればシャツを着ることができる。支給されるサンダルには水虫菌がたっぷり付いていて、水虫に苦しめられる。こういうことは事実です。ですから、日本がいくら「手続きに則しています」と言っても、国際的には「やっぱりひどい」という感じになるじゃないですか』、日本の「拘置所」の人権無視の扱いなどについては、これを熟知している「佐藤」氏が、「ゲームのなかで利用されてしまう」ので、こに点には敢えて触れないというのはさすが大人の対応だ。
・『『大岡越前』は国際的には「気持ち悪い」  邦丸:逆に諸外国、欧米各国っていうのは、拘置所に入所した、要するに罪になるかどうか決まっていない人たちに対する接し方は、日本とは違うんですか。 佐藤:違いますね。電話もできるし、家族とも会えるし、ましてや裸にするなんて最低限しかしない。ぜんぜん違うんですよね。 しかも、日本の場合は懲役刑があるでしょ。囚人労働というのは今、欧米ではないですから。 邦丸:欧米は懲役刑がないんですか。 佐藤:禁固です、みんな。ですから、確かに日本には日本の手続き、制度の伝統があるんだけれど、その話をすればするほど、国際的には調子が悪くなるわけ。 邦丸:墓穴を掘ってしまう。 佐藤:そう。日本人は今でも『忠臣蔵』が好きでしょ。浅野内匠頭の家臣たちは解散が決まったのに、何十人がかりで1年も待って、七十いくつのおじいさんを襲ってなぶり殺しにして、首を槍の先に付けて凱旋して、最後に腹を切る。これを感動のドラマだといって観ているのが日本人だ、という話になったら、やっぱり普通のヨーロッパ人とかアメリカ人はびっくりしますよ。それで、戦時中の日本のイメージと重なってくる。 『遠山の金さん』とか『大岡越前』にしても、基本は弁護人がいなくて裁判官と検察が一緒で、一審制で、拷問を使った自白が証拠になって、判決理由は物証ではなくて心象。「不届き至極」とか「この桜吹雪を覚えているか」というのは、心象主義ですよ。 邦丸:はははは。 佐藤:日本ではこういう考え方が今でも生きている、というのは、その雰囲気自体がすごく変なんですよ。 邦丸:要するに、異文化というふうに見られちゃうんでしょうな。司法制度云々というより、ちょっと気持ち悪いという。 佐藤:死刑制度も残っていますしね。そういうことをトータルすると、日本はあまり調子よくないので、もう少し情報戦をうまくやって、都合が悪いことは黙っていたほうがいいと思う』、確かにその通りだろう。
・『事件は迷宮入り、ゴーンは生き残る  邦丸:レバノン政府はその辺が上手いですよね。 佐藤:「日本から資料を送ってください、ウチで裁判しますから」と、こういうことでしょ。無罪になるに決まってます。 邦丸:ちゃんと裁判したよ、ということですね。 佐藤:ゴーンさんの言い分を聞いて、日本政府の言い分も聞いて、「これはレバノンの法律では無罪ですね」──これで終わりですよ。 ですから日本としては、主権放棄みたいなレバノンへの裁判委譲はしない。こういうモヤモヤのまま時間が経って、迷宮に入っていくという、これがゴーン事件の今後ですね。しかもその間も、ゴーンさんは日本を攻撃し続ける。めんどくさいです。 邦丸:ところで中東のデューク東郷って、普段は何をやっているんですかね。 佐藤:収入は非常にいいですから、普段はぶらーっとして、ネットワークだけ維持しているんでしょうね』、どこまで真実かはともかく、「佐藤」氏の深い読みには感服するほかない。
タグ:ゴーン逃亡問題 (その1)(ゴーンに惨敗した日本 森法相の大失言が世界に印象付けた「自白強要文化」、ゴーン逃亡劇の背景にある 司法と水際危機管理の「構造欠陥」、「ゴーンは無罪の可能性高い」元特捜部検事が語る、ゴーン氏を逃がしたのは誰か?「チーム・ゴーン」驚きの正体と実力 佐藤優が事件を徹底分析する) 日産ゴーン不正問題 窪田順生 ダイヤモンド・オンライン 「ゴーンに惨敗した日本、森法相の大失言が世界に印象付けた「自白強要文化」」 森法相の「失言」に日本の司法の本質が出ている 「ゴーン被告は司法の場で無罪を証明すべきだ」と口走った 国際社会をドン引きさせてしまった 「無罪の主張と言うところを証明と間違えた」と訂正 ゴーン氏の代理人がこんな皮肉たっぷりな声明を出している。 「有罪を証明するのは検察であり、無罪を証明するのは被告ではない。ただ、あなたの国の司法制度はこうした原則を無視しているのだから、あなたが間違えたのは理解できる 「被疑者が無罪を証明すべき」 「被告人は無罪を証明すべき」という言葉をあれやこれやと取り繕ったり、誤魔化したりすればするほど、「うわっ、必死すぎて引くわ」と国際社会に冷ややかな目で見られ、ゴーン陣営の思うツボになってしまう 国連の拷問禁止委員会の審査会 ドマー委員がこんな苦言を呈した。 「日本は自白に頼りすぎではないか。これは中世の名残だ」 痛いところを突かれて逆ギレする リスクコミュニケーションの世界では、「図星」の指摘に対して、逆ギレ気味に自己正当化に走るというのは、事態を悪化させて新たな「敵」をつくるだけなので、絶対にやってはいけない「悪手」とされる 自白偏重文化 人質司法 国際人権団体も日本の司法を批判 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの記者会見 ケネス・ロス代表 日本の刑事司法制度が容疑者から自白を得るために課した巨大な圧力を物語っている」「司法制度ではなく、自白(強要)制度だ」 日本の司法制度や懲罰主義は、国際社会から見るとかなりヤバい 村山 治 「ゴーン逃亡劇の背景にある、司法と水際危機管理の「構造欠陥」」 空疎な内容の会見だったが ゴーンは世論という法廷で無罪になるはずだ 逃亡にはプロの「運び屋」と「サポート組織」を利用した可能性 チームのメンバーは数カ月前から日本を20回以上訪問して国内の10カ所以上の空港を下見。関空のプライベートジェット専用ゲートのX線検査機械が大きな荷物には対応していないことから、関空を脱出ルートに選んだ 裁判の開始は当面無理 最悪の場合は「棚ざらし」に 検察の追っ手 米当局が摘発する可能性も 息子は、投資会社の資産には前会長からの送金も含まれていたことを認めたとされる。 これは、不正資金の洗浄(マネー・ロンダリング)に当たる可能性 保釈認めた裁判所はひたすら沈黙 弁護団も裏切られた形に 保釈中の逃亡に「逃走罪」にならず プライベートジェットは盲点に 保安検査は機長の判断次第 ゴーン氏の復権はあるのか 大金使ったがレバノン出国は困難 Newsweek日本版 ロイター 「「ゴーンは無罪の可能性高い」元特捜部検事が語る」 郷原信郎弁護士 金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)について、両被告とも「無罪の可能性が高い」 金商法違反、刑事事件としての立件は「異常」 問題の背景に前近代的な日本の刑事司法制度 現代ビジネス 佐藤 優 野村邦丸 「ゴーン氏を逃がしたのは誰か?「チーム・ゴーン」驚きの正体と実力 佐藤優が事件を徹底分析する」 「獄中死」を避けるための逃亡 10年裁判やって、それから刑務所に8年行く。 今、ゴーンさんは65歳なので、出てくるときは83歳 たぶん獄中死 「IR汚職」との関連性 検察は12月29日にゴーンさんの尾行を外した 秋元司議員を捕まえたでしょ。それで人手が足りなくなったから 東京地検はこういうとき、警察に応援をお願いしないんです 元グリーンベレーは「見せ玉」 弘中弁護士も「パーツ」 日本政府も「深入りしたくない」 宗教という重要ファクター 日本がいくら正当性を主張しても… 『大岡越前』は国際的には「気持ち悪い」 事件は迷宮入り、ゴーンは生き残る
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日産ゴーン不正問題(その9)(ゴーン氏は「明らかに無罪」と言える会計的根拠 『会計と犯罪』を書いた細野祐二に聞く、泡を食ったフランス政府 ゴーン事件の黒幕は誰だ? 地検特捜部と連携して筋書きを立てた人物は安倍首相の親戚だった、「日産公判分離せず」は法人処罰の問題ではなく 司法取引の問題) [司法]

日産ゴーン不正問題については、4月21日に取上げた。今日は、(その9)(ゴーン氏は「明らかに無罪」と言える会計的根拠 『会計と犯罪』を書いた細野祐二に聞く、泡を食ったフランス政府 ゴーン事件の黒幕は誰だ? 地検特捜部と連携して筋書きを立てた人物は安倍首相の親戚だった、「日産公判分離せず」は法人処罰の問題ではなく 司法取引の問題)である。

先ずは、6月11日付け東洋経済オンライン「ゴーン氏は「明らかに無罪」と言える会計的根拠 『会計と犯罪』を書いた細野祐二に聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/284478
・『かつては日本航空などの、最近は東芝の不正会計分析で知られる元公認会計士の会計評論家・細野祐二氏は、現在「犯罪会計学」の研究家を自任する。本書はそのケーススタディーだが、会計とは無縁の冤罪(えんざい)事件に過半が割かれている。村木厚子・厚生労働省雇用均等・児童家庭局長(後に事務次官)が逮捕された郵便不正事件だ。『会計と犯罪』を書いた会計評論家の細野祐二氏に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは細野氏の回答)』、検察による冤罪の被害者になった細野氏との対談とは興味深そうだ。
・『キャッツ事件で有罪に  Q:犯罪会計学とは耳慣れない言葉です。 A:オリンパス事件や東芝事件で明らかなように、企業から巨額の金をもらって行う日本の公認会計士監査は機能していない。一方で現行司法は制度疲労が激しく、経済事件に対して有効に機能していない。犯罪会計学は、機能不全に陥る会計監査と経済司法を学際的な研究対象としたものだ。 Q:会計監査とは無関係の郵便不正事件が本書の執筆動機となったそうですが、それはなぜですか。 A:私はキャッツの株価操縦事件に絡み、有価証券虚偽記載罪で2004年に逮捕・起訴された。一貫して容疑を否認し無罪を主張したが最高裁で上告棄却。懲役2年、執行猶予4年の判決が確定し公認会計士の登録を抹消された。 Q:9年前のことですね。 A:キャッツ事件で有罪判決を受けて以降、メディアは会計の分野でも私の話をまともに聴こうとはしなかった。ところが、村木さんが無罪判決を得て、冤罪だったことが判明すると、特捜部への信頼は地に落ち、メディアは私の論稿を掲載するのをためらわなくなった。これは村木さんのおかげ。だから郵便不正事件はどうしても調べないといけないと思った』、村木さんの無罪判決で、「特捜部への信頼は地に落ち、メディアは私の論稿を掲載するのをためらわなくなった」、メディアも「現金」なものだ。
・『Q:村木さんは著書『私は負けない』で、無罪判決は6つの幸運に恵まれたからだと書いています。 A:それを読んで私はかちんときた。村木さんは無罪を勝ち得たのだからそれでいいかもしれない。「数々の幸運に恵まれた」と書くのは奥ゆかしくもある。だが、私は有罪判決を食らっている。私は運が悪かった、では納得がいかない。村木さんが無罪を勝ち得た本当の理由、納得のいく答えが欲しかった。 村木さんが挙げた6つの運のうち「心身の健康」「安定的経済力」「家族の信頼」「友人等のサポート」の4つは村木さんの個人的優位性であり、これは運とはいわない。「優秀な弁護団」も、村木さんの弁護を受任した弘中惇一郎弁護士の実績は公知のことで、村木さん自身が弘中弁護団を選択しているのだから、これも運ではない。 唯一、運だといえるのは、横田信之裁判長(大阪地方裁判所)という客観証拠を重視する希有な裁判官が担当となったことだ。『私は負けない』によれば、弘中弁護士は当時、「事件が起きた場所は東京で、被告人もほかの関係者も東京周辺にいる人なのだから(公判を)東京地裁に移管すべきだと主張しようと思ったが、評判のいい裁判長だったのでやめた」と語っていたそうだ。 判決文を読む限り、フロッピーディスクの改ざんや(偽の障害者団体代表が村木さんを連れて石井一国会議員を訪ね、厚労省への口利きを頼んだとする日は)石井議員がゴルフをしていて不在だったことが無罪判決の理由となっている。それでも検察官の面前で取られたいわゆる「検面調書」は豊富にあった。客観証拠を重視する横田裁判長が担当しなければ、村木さんは有罪になる可能性があった』、「村木さんが無罪を勝ち得た本当の理由、納得のいく答えが欲しかった」ので、独自に調べたというのはさすがに凄い執念だ。
・『弘中弁護士の事務所がリーガルチェック  Q:公判廷では、公判証言よりも検面調書のほうが信憑性は高いとされるのだそうですね。 A:公判証言よりも検面調書を信じるべき状況を「特信状況」という。そして特信状況にあるかどうかを厳格に立証することは、刑事訴訟法が要求していない。「外部的な特別の事情が立証されなくても、特信状況の存在を推知せしめられれば十分である」という最高裁の判例もある。それにもかかわらず、横田裁判長は本件で「刑事訴訟法上の特信状況を客観証拠と整合する範囲に限定して認める」という画期的な判断を示した。 Q:本書は弘中弁護士の法律事務所によるリーガルチェックを受けたそうですね。 A:弘中弁護士は村木さんの事件で無罪判決を勝ち取った当人であり、私はライブドア事件の最高裁審理において会計分析をお手伝いした。それ以来のお付き合いだ。 私は司法教育を受けていない。私の司法論述が「素人の法律論」と揶揄されてはいけないと思い、弘中弁護士に査閲をお願いした。日産ゴーン事件の裁判準備で忙しいにもかかわらず、弘中事務所の査閲を受けることができたのはぜいたくであり僥倖だと思っている』、「特信状況」については、初めて知った。弘中弁護士とは付き合いがあったとはいえ、「事務所がリーガルチェック」してくれたというのは、さすがだ。
・『Q:本書のもう1つのテーマが日産ゴーン事件。人質司法への批判など物議を醸しています。 A:ゴーン元会長の容疑は有価証券報告書虚偽記載と特別背任だ。しかし、どれも犯罪事実が成立しておらず、ゴーン元会長は明らかに無実だ。元会長の役員報酬のうち支払いの蓋然性(probability)の低い報酬を有価証券報告書に記載していなかったが、それは正しい会計処理だ。 発生した費用は支払いの蓋然性が高ければ記載する。これを会計の世界では「発生主義の原則」という。会計士ならば誰でもわかっていることだ。ところがこの会計の基本原則を東京地検特捜部の検事はわかっていない』、信じられないようなお粗末極まる話だ。
・『先物の損だけ取り上げるから変な話に  Q:ゴーン元会長の特別背任容疑についてはどうですか。 A:特別背任容疑についてはサウジアラビアルートとオマーンルートの2つがある。サウジのほうは、リーマンショックの影響により通貨スワップ取引で損が発生。その損を日産に肩代わりさせようとしたというのが発端となっているが、あくまでもリスクヘッジ目的のスワップ取引だ。先物に損が発生したら直物に利益が発生している。全体としてみると損をしていない。その取引を日産に移すことは、損も利益も移すことになる。それなのに先物の損だけを取り上げるから変な話になるのである。 Q:オマーンルートは? A:損失すら発生していないので話にならない。中東日産から流れた資金は借入金として処理されているはずだ。「借金を踏み倒す」と借りた側が明言しているのでもない限り、会計上、損失を計上できない。会計取引には、金銭の貸借である資金取引と、損や利益が発生する損益取引とがある。特捜部はその区別をまったく理解せずに特別背任罪を立件している』、これもお粗末だ。優秀な特捜部であっても、ゴーン元会長をなんとしてでも有罪にしたいとの思いが先走って、肝心の会計面のチェックが抜け落ちたとしか思えない。次の記事は特捜部の内実に迫ったものである。

次に、ジャーナリストの須田 慎一郎氏の著書を6月14日付けJBPressが抜粋・再編集した「泡を食ったフランス政府、ゴーン事件の黒幕は誰だ? 地検特捜部と連携して筋書きを立てた人物は安倍首相の親戚だった」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56661
・『東京地検特捜部は、なぜカルロス・ゴーン氏の逮捕に躍起となったのだろうか? 「時代の空気」を味方につけ、組織の復活を印象づけたいという法務・検察の思惑が見え隠れするが、本事件にはそれだけでは片づけられない複雑な背景があった。日産とルノーの背後で、ゴーン失脚のシナリオを描いた陰のプレイヤーとは? ジャーナリスト、須田慎一郎氏が、日本経済史を揺るがした大事件の裏側を明らかにする。(※)本稿は『なぜカリスマ経営者は「犯罪者」にされたのか?』(須田慎一郎著、イースト・プレス)の一部を抜粋・再編集したものです』、興味深そうだ。
・『ゴーン事件と東京地検特捜部  かつて1970年代から2000年代にかけて、東京地検特捜部は「日本最強の捜査機関」という称号をほしいままにしていました。また、特捜部に所属する検事たちも、そのことを強く自負していました。そして、その東京地検特捜部を抱える検察庁も、同部をみずからのアイコンとするかたちで、日本のエスタブリッシュメントのなかにおいて、まさに畏怖される存在となっていたのです。 では、東京地検特捜部の何が「日本最強」だったのでしょうか。その問いに対する答えをひとことでいってしまうなら、「巨悪」に立ち向かうという点で日本では唯一にして絶対の存在、ということになるでしょうか。  その具体例をひとつだけ挙げるとするなら、ロッキード事件捜査にからんで、かつて政治権力の頂点に君臨していた田中角栄元総理をその絶頂期に逮捕・起訴した東京地検特捜部が、その最たるケースだといえます。しかし、現在、その「日本最強の捜査機関」なる金看板は、まさに崩れ落ちそうな様相を呈しているのが実情でしょう。 だからといって、検察サイドがそれをよしとしているわけではありません。むしろ、まさにいま、現在進行形で「日本最強の捜査機関」の復活に向けて躍起になっている最中なのです。そうした一連の動きのなかに日産・ゴーン事件は位置づけられるといえるでしょう。つまり、日産・ゴーン事件は、特捜部復活をかけて挑んだ捜査なのです。したがって絶対に失敗は許されません。 カルロス・ゴーンを何がなんでも有罪に持ち込むことが、特捜部の復活にはどうしても必要不可欠だと検察サイドは考えているようです。とはいえ、ゴーンは果たして「巨悪」でしょうか。 そして仮にゴーンを有罪に持ち込んだとして、国民世論は東京地検特捜部に拍手喝采を送るでしょうか。正直いって、筆者にはどうもそうは思えないのです。いったい、「日本最強の捜査機関」は、どこに向かおうとしているのでしょうか』、手柄とされるロッキード事件捜査も、実際には「田中角栄元総理」の追い落としを図った米国側からの情報提供に支えられていたことが判明している。特捜部も威張れたものではないようだ。
・『「無罪請負人」弘中弁護士の主張  日産・ゴーン事件の本質を理解するうえできわめて重要な動きが2019年4月2日にありました。もっとも、この動きについては、ほとんどのメディアが事実上スルーしているのが実情です。それゆえに、読者のなかにもご存じない方もおられるでしょう。そうした事情を考慮に入れたうえで、ここできちんと振り返っておきます。 その日、ゴーンの弁護人で、「無罪請負人」として知られる弘中惇一郎(ひろなかじゅんいちろう)弁護士が日本外国特派員協会で記者会見を開き、ゴーンとワンセットで金融商品取引法違反の罪に問われた法人としての日産について、両者の裁判を分離するよう、東京地裁に書面で申し立てました。 併せて公判を担当する裁判官の構成も変えるよう求めたというのです。弘中によれば、この申し立ては4月2日の午前に行われたとのことでした。そもそも、この金融商品取引法違反事件に関していえば、被告は以下の三者、ゴーン、ケリー、そして法人としての日産です。 ところが、ゴーン、ケリーと日産では置かれている立場がまったく異なります。180度異なるといっていいでしょう。ゴーンとケリーはこの件に関して全面的に無罪を主張しているのに対し、日産サイドは検察とのあいだで「司法取引」に応じ、その罪を全面的に認めているからです。 弘中は前述の記者会見の席上、こう説明してみせました。 「(法人としての)日産は検察官と一体となってゴーン元会長を追及してきた。にもかかわらず、一緒の席で審理を受けるのは公正な裁判に反する」』、なるほど。
・『地検サイドの狙いは?  つまり、日産サイドは検察側のストーリーに完全に乗るかたちで捜査に協力し、調書を作成していることは間違いありません。その一方で、ゴーンとケリーはまったく逆の立場にいるわけです。利害関係が完全に対立する三者が、公判では同じ被告人席に座るのです。法廷での証言は、ゴーン、ケリーと日産では正反対のものとなるでしょう。 こうした状況を踏まえ、弘中はゴーン、ケリーと日産の刑事裁判を分離せずに併合したまま審理を進めたなら「フェアトライアル(公正な審理)」に反するとしたのです。これはきわめて重要な指摘であると同時に、検察側にとってはきわめて痛い指摘だったといっていいでしょう。 なぜなら、筆者が検察関係者から聞きおよんだところによれば、地検サイドは意識的にゴーン、ケリー、そして日産をひとつの起訴状での起訴に持ち込み、同じ裁判体(個別・具体的な訴訟事件について判断する裁判官から構成される訴訟法上の裁判所を指す)での審理となるように仕向けたからです。 そして裁判所は、そうした検察側の思惑を知ってか知らずか、分離せずに裁判を行うという判断を下したのです。さらに、そのことに関連して、5月に入ってきわめて興味深い事実が明らかになりました』、この裁判の分離については、第三の郷原氏の記事の方が詳しく、信頼性も高そうだ。
・『地検と西川社長との「司法取引」  その“事実”とは、前述の金融商品取引法違反事件に関連して、都内に住む男性が日産の西川廣人(さいかわひろと)社長を同罪で刑事告発していたことの結論が出たことを指します。 結論から先にいえば、東京地検特捜部はこれを4月26日付で不起訴にしました。そもそも事実関係をいうならば、ゴーンが起訴された報酬過少記載のうち、西川は2016年度分と2017年度分の報酬支払い文書にサインしていたのです。 だとすれば、西川もゴーンと共犯関係にあるはずだ、というのが告発者の主張です。筆者としても、そうした告発者の主張についてはもっともだと考えます。仮にこの件に関してゴーンの犯罪が問われるのであれば、少なくとも形式的には西川の共犯性は濃厚だといえるでしょう。 にもかかわらず、東京地検特捜部はそれをいっさい不問に付したのです。その一方で、西川は東京地検特捜部の捜査に全面的に協力しているのです。 このことを考えて、東京地検特捜部と西川とのあいだには事実上の「司法取引」が成立していたと見られています。果たして、こんな状況下で「フェアトライアル」が保障されているといえるでしょうか。はなはだ疑問です。いずれにしても、東京地検特捜部が法の精神を無視し、ありとあらゆる手を使ってでもゴーンを有罪にしようとしているのは明らかです』、最後の部分はその通りだろう。
・『つくられた事件、意外な登場人物  この物語の主人公は東京地検特捜部、それに対立する存在として完全無罪を主張する悪者ゴーンと、彼を守る「無罪請負人」の弘中弁護士がいます。その間に立つ日産自動車の西川社長がいて、さらにほかにも登場人物がいます。それが日本政府です。 最終的に今回の事件の背景にいたのは、経済産業省および官邸だったのではないかという観測が広がっています。 なぜ、官邸かというと、1つ目は、永田町内での次期検事総長の人事をめぐる法務・検察との対立があります。2つ目は、ルノーによる日産吸収をよしとしない経産省が弓を引かせて日産から検察にリークさせたというものです。 まず前者について考えてみましょう。検事総長はまぎれもなく法務・検察のトップで、誰がその座につくかで検察のあり方が決まります。9割方は東京高検検事長になった人物がそのまま検事総長につくという不文律があります。 いまの東京高検検事長は官邸ベッタリといわれている黒川弘務(くろかわひろむ)です。そんな黒川を次の検事総長に据えるべきではないとする動きが法務・検察のなかにはありました。みんな公平な立場で検事総長の座を待っているわけではなく、そこにたどり着くまでのルートがあり、その前の段階から出世をめぐる暗闘があるのです。 2019年1月8日付で法務・検察の一連の人事が発表されました。このとき、東京高検検事長には黒川弘務がつきました。東京高検検事長は法務・検察のトップである検事総長の一歩手前の役職です。東京高検検事長の経験者の8人中7人が検事総長になっています。法務・検察でナンバーツーの存在です。 そんな黒川検事長が次の検事総長の最右翼と見られていますが、そうはすんなりいきそうにない状況もあります。さかのぼって2018年1月9日付で名古屋高検検事長に就任していた林真琴(はやしまこと)という人物の存在があるからです。』、法務・検察内での権力争いとは、ありそうな話だ。
・『次期検事総長は、黒川か?林か?  じつは林と黒川は因縁のライバル関係にあり、おそらく次の検事総長ポストを争うでしょう。黒川は政権与党に近いと見られている人物である一方で、林は法務・検察のエースといわれています。 各省庁において課長、部長、局長を経て次のトップポストである事務次官になるべき人間だと期待がかけられ、同期トップとして出世していく。これが官僚の世界では一般的です。それにあたるのが林でしたが、なぜ、東京高検検事長に任命されなかったのでしょう じつは、黒川のほうは「郵便不正事件」の証拠であるフロッピーディスクの内容を改竄した事件、「大阪地検特捜部主任検事証拠改竄事件」の不祥事が起こった直後、2011年から法務省官房長を5年も務めています。法務省官房長は国会対応のトップという立場です。このあいだ、法務・検察が厳しい状況に置かれたときに政権与党とのパイプ役としてロビイング活動をしてきました。 そのため、政権与党との関係が非常に深いといわれているのです。黒川は共謀罪や入国管理法改正など野党の根強い反対がある一方で、法務・検察サイドからすれば使い勝手がよく強力な武器になるような法案の整備に向けて尽力しました。 一方、ライバルの林は将来の検事総長のエリートコースを歩んできました。役所のなかの期待の星であり、ある種、予定調和的に「林が将来の法務・検察を引っ張っていく」という役人らの価値観のなかから生まれてきた人間でもあります』、官邸の力がこれまで以上に強くなっていることからすれば、黒川氏の方が優位な気がする。
・『官邸と法務・検察、それぞれの思惑  役所側からすると林は将来の検事総長ですから、そのステップをきちんと踏ませたいため、林の事務次官就任を希望していました。しかし、黒川が政権与党の覚えがめでたくなり、「こういう人間が法務・検察の中枢にいれば、われわれも何かとやりやすい」という官邸サイドの強い押しもあって、事務次官というポストにつきました。 事務次官の次が東京高検検事長、そして検事総長と続くため、事務次官に黒川がつくと出世すごろくの流れが狂ってしまいます。ここにひとつ、検察と官邸との軋轢(あつれき)が生まれました。 法務・検察の主流派としては、林真琴が検事総長になるべきだという主張が根強いです。なぜなら一定の独立性を維持するためです。加えて法務・検察の人事という聖域に、政治が内閣人事局を通じて手を突っ込むのはけしからんという役人特有の考えもあります。 その点でいうと、なぜ、わざわざ政権与党を利するような日産・ゴーン事件に着手したのかが疑問です。たとえば検事総長人事に手を突っ込ませないための見返りとして、この事件をあえてしかけたという見方もあるでしょう。それくらい法務・検察は検事総長人事をめぐって官邸とすごい緊張関係にあるのです』、「検事総長人事に手を突っ込ませないための見返りとして、この事件をあえてしかけたという見方」、には驚かされた。
・『ゴーン事件の裏にちらつく経産省の影  次に経産省が弓を引かせて日産が検察にリークしたという2つ目の根拠についても考えてみましょう。 特捜部があえて日産自動車の下請になった理由について考えると、内閣総理大臣秘書官で経産省出身の今井尚哉(いまいたかや)の存在が思い浮かびます。今井は安倍総理の遠い親戚です。官邸秘書官は財務省、外務省、経産省、警察庁から来るのが不文律となっていますが、そのなかでも内閣総理大臣秘書官はまた別格とされています。 経産省は、日産自動車が完全にフランスの会社となってしまうのは、よしとしません。そこで経営統合をひっくり返すために事件をしかけた。本来ならゴーンの報酬の件で了承し、サインまでしていた西川社長も同罪に問われるはずなのですが、司法取引の対象となって、いまのところなんら罪に問われていません。 日本の大手企業は人事報酬委員会という制度があり、3割から4割が導入しているとされています。人事報酬委員会とは、経営トップが報酬や人事などについて自分で自分のことを決めるのは透明性が低いため、委員会の委員に決めてもらおうというものです。 また、監査委員会設置会社というものもあります。これは監査役が報酬や人事を検査するというものです。これらは会社のガバナンスがきちんと機能しているかどうかの評価基準にもなります。 日産自動車には人事報酬委員会がなく、監査委員会である程度チェックしたうえで最終的に代表権がついている人が決裁するかたちになっています。日産自動車においてはそれがゴーンとケリーと西川の3名になるのです。 ゴーンは自分のことを自分で決め、それを了承したことでケリーも逮捕された。しかし、西川は逮捕されなかった。なぜなら、司法取引があったから、というのがエクスキューズになっています。 今回の事件の端緒はなんだったのか。日産内のクーデター。もちろんそういう側面もあるでしょう。ゴーンやケリーは西川にとって目の上のたんこぶであり、ルノーに吸収合併されたくない。そこで検察に垂れ込んで司法取引を交換条件に情報を出す。これなら比較的ありがちでシンプルなストーリーです。 「西川はゴーンの茶坊主で何も決められない」なんてことを話すジャーナリストもいますが、本当にそうだとしたら、そんな人物が事件の先頭に立てるのでしょうか。または日産の独立派の役員につめ寄られて反ゴーンになびいたとも考えられなくもないですが、そんなに小さな話なのでしょうか』、「ゴーンやケリーは西川にとって目の上のたんこぶであり、ルノーに吸収合併されたくない。そこで検察に垂れ込んで司法取引を交換条件に情報を出す」、というのは確かにありそうな話だ。
・『慌てるフランス政府、冷静な日本政府  この事件の大きな背景には世界的な自動車業界の再編がありました。自動運転つき自動車や電気自動車の開発が進んでいますが、これには莫大な投資が必要になります。ものすごく技術開発費が必要ですから、ルノーも日産自動車も自社開発だけでは厳しい。 しかもフランスでは2040年にはハイブリッドを含むガソリン車を販売してはいけないという法律が成立しています。つまり、100パーセント電気自動車でなければならないのです。パーキングメーターのようなかたちをした路上のプラグイン充電器などといったインフラも整備されてきましたが、まだ一気に電気自動車化されるわけではありません。 また、規模の利益という面からいっても協力は不可欠です。「ルノー・日産・三菱アライアンス」は車の販売台数では世界第2位ですが、経営がバラバラになれば3位以下に転落してしまいます。そうなると電気自動車を、ルノー・日産・三菱アライアンス基準で統一できなくなるでしょう。 世界で戦うにはある程度のマーケットシェアが必要なため、アライアンスをつなぎ止めておかなければ将来を展望できません。ルノーは43パーセントの日産自動車の株を持っていますから、資本関係上は日産自動がルノーの連結子会社となっています。ただ、3社のアライアンスというかたちで「ルノー日産BV」という統括会社の本社をオランダに置き、その会長をゴーンが務めていました。 ここは日産自動車とルノーが折半出資しています。本来ならそうではなく、そこを持ち株会社にして、その傘下にルノーも日産自動車も入るべきでした。「ゴーンの個人的な影響力によって統括会社を持ち株会社のようにしてアライアンスを保っていましたが、ゴーンがいなくなれば果たしてどうなるでしょうか』、その後、ルノーとの関連では新な動きもあるので、ここでは触れない。
・『日本政府の不気味な冷静さ  いずれにせよ、自動車は日本経済を支える重要な産業です。そのため、アライアンスというかたちでの戦略的提携ならまだしも、ルノーにすべて吸収されるとなると話が変わってきます。日本を代表する大手企業をみすみす手放してしまえば経産省にとって大きな痛手になるでしょうし、アベノミクスを標榜する安倍政権にとっても悪影響をおよぼします。 そこで今井秘書官を中心に官邸、経産省が裏で西川を動かしたのではないかという観測が出てきたというわけです。 その証拠に、事件化したときに少なくとも日本政府はあたふたしませんでした。巨大企業に東京地検特捜部の手が入ったにもかかわらず、ある意味で冷静な対応をしていたのが不思議です。まるで事前にスケジュールがわかっていたかのようでした。 一方のフランス政府はかなりあたふたしており、まさに寝耳に水の状態でした。この差はいったいなんなのでしょうか。少なくとも捜査当局の動きは官邸や経産省サイドの耳にはある程度入っていたのではないか。逆にフランスサイドには何も入っていなかった。情報の偏差があったのでしょう。 自動車産業をめぐる日仏の綱引き。そこに官邸や経産省が介入していく余地があった。 こう考えるほうがスムーズなのです。結果として特捜部の日産・ゴーン事件の捜査は官邸の意向に沿うかたちで行われていますが、筆者は「たまたま両者の利害が一致しただけ」だと見ています。 日産自動車を国益の観点から守りたいという官邸側の思惑、そして平成最後に完全復活の道筋をつけたいという検察側の思惑が、たまたまいいタイミングで交錯したのでしょう。そんななか、この事件を通じていったい誰がいちばん得をするのか。それは結果が出てみないとわかりません』、検察側が敗訴するようなことになれば、検察側のダメージは途方もなく深刻なものになるだろうが、ルノーとの関係は既に決着済になっている可能性もあるだろう。

第三に、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が5月9日付け同氏のブログに掲載した「「日産公判分離せず」は法人処罰の問題ではなく、司法取引の問題」を紹介しよう。
https://nobuogohara.com/2019/05/09/%E3%80%8C%E6%97%A5%E7%94%A3%E5%85%AC%E5%88%A4%E5%88%86%E9%9B%A2%E3%81%9B%E3%81%9A%E3%80%8D%E3%81%AF%E3%80%81%E6%B3%95%E4%BA%BA%E5%87%A6%E7%BD%B0%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%AA/
・『カルロス・ゴーン氏、グレッグ・ケリー氏と、法人としての日産自動車が併合起訴された金融商品取引法違反の事件について、平成最後の平日の4月26日夕刻から東京地裁で行われた裁判官・検察官・弁護人の「三者打合せ」の場で、裁判所は、公訴事実を全面的に認める日産の公判と全面否認するゴーン氏らの公判と分離せず、日産についてもゴーン氏らと共通の証拠で事実認定する方針を示した。このことによって、検察は「ゴーン氏無罪判決阻止の最後の拠り所」だった「日産の法人事件の早期有罪決着」という「策略」が打ち砕かれることになり、日産も、公訴事実を全面的に認めているのに、ゴーン氏・ケリー氏と検察との全面対立が繰り広げられる公判に巻き込まれることになった。それが、検察にとっても日産にとっても「衝撃」であること、そして、日本の刑事司法の“激変”をも予感させる出来事であることを、平成の最後の日の記事【「日産公判分離せず」が検察と日産に与えた“衝撃”~令和の時代に向けて日本の刑事司法“激変”の予兆】で述べた』、公判分離は弁護側が求めていたもので、裁判所がそれを認めなかったということは、検察に有利と思っていたが、郷原氏の見方は真逆のようだ。
・『10連休も終わり、令和時代の日本が本格的に動き出したが、今のところ、日産・ゴーン氏事件が話題に上ることはほとんどなく、改元とともに、平成最後の重大問題だったはずのこの事件が世の中の関心から遠ざかっているように思える。 しかし、ゴーン氏逮捕の背景に、日産とルノーの経営統合の問題があり、そこに経産省など日本政府も関わっていたこと、日本を代表する自動車会社の一つである日産が社会的にも極めて重要であるからこそ、今回のゴーン氏の事件が発生したことは、もはや否定し難い事実となっている。その日産が、今回の裁判所の方針決定により、ゴーン氏らとともに、法人として刑事裁判の被告席に立たされ続けることが、同社の経営や経営体制に重大な影響を生じることは避けられない。6月末に開かれる日産の定時株主総会に向けて、ルノーなどの動きにもつながる可能性もある。 それに加え、この事件の今後の展開によって、今回の事件での検察の動きの原動力ともなった「日本版司法取引」の今後に、そして、日本における法人処罰の運用にも大きな影響を与えかねない。今回の裁判所の方針決定が、どのような趣旨で、どのような理由によって行われたのか、「司法取引」と「法人処罰」の関係から解説することとしたい』、興味深そうだ。
・『裁判所の方針決定は「法人処罰」特有のものなのか  「日産公判分離せず」の方針が決まったことを伝える記事のうち、産経は 関係者によると、裁判官は「日産の法的責任は代表取締役だったゴーン、ケリー両被告の行動によるので、別々に判断するのは適切ではない。」として分離しないと決めた。 と報じ(【ゴーン被告公判、分離せず 9月撤回、年明けも】)、朝日は、下津裁判長は、「司法取引が本格的に争点になる、初めての事件。証人の証言の信用性は慎重に判断したい」と発言。「日産の法的責任は2人の被告について判断しないうちは決められない。」と述べた と報じている(【ゴーン前会長の公判、日産と分離せず審理へ 時期は未定】)。 これらの記事によると、裁判所の方針決定の理由は、(1)法人としての日産の刑事責任は、ゴーン氏ら行為者についての事実認定と切り離して判断できない (2)司法取引に関する問題が裁判の争点になるので、証人の証言の信用性について慎重な判断が必要 ということになる』、なるほど。
・『「日産公判分離せず」の判断は「法人処罰の問題」によるものではない  仮に、日産の公判が分離されなかった主たる理由が(1)で、それが「法人処罰は行為者個人の処罰に従属するもので、行為者と切り離して独立して処罰の判断をすべきではない」という趣旨だとすれば、今回の方針決定は、「法人処罰特有の問題」と見ることができるということになる。その場合は、影響は法人処罰の事例だけに限られるし、弁護側が指摘した「フェアトライアルの問題」との関係もあまり大きくないということになる。検察としては、今回の裁判所の方針決定に関して、このような理由を強調したいところであろう。 しかし、それは、確立された判例に基づく法人処罰の「理論」に反する。しかも、最近の実務の傾向は、法人を独立して処罰の対象とする傾向を強めており、それを主導してきたのは法務・検察である。「法人処罰は行為者個人の処罰に付随するので独立して処罰の対象とはならない」などと今更言えるわけがない。 日本の法人処罰は、特別法の罰則の中に設けられている「両罰規定」の、「行為者を罰するほか、法人に対しても本条の罰金刑を科する」という規定に基づいて行われる。「行為者について犯罪が成立し、その犯罪について、法人側に選任監督上の過失がある場合に法人が処罰される」というのが確立された判例であり、訴訟手続上も、「被告会社」として、公判に出廷する義務があり(通常は法人の代表者が公判に出廷する)、被告人である行為者とは独立した立場で訴訟活動を行う。被告法人の公訴事実の認否は、行為者たる被告人の認否とは別に行われ、行為者の「犯罪の成否」についても、「選任監督上の過失の存否」についても、争うことができる。 したがって、行為者たる被告人が公訴事実を全面的に否認し、被告会社の方は全面的に公訴事実を認めている場合に、被告会社の公判を行為者の公判とは切り離して、被告会社に有罪判決を出すことは十分に可能なのだ』、さすが説得力溢れる分析だ。
・『「法人処罰」に関する最近の状況変化  もっとも、法人処罰が行為者処罰とは独立したものであるという考え方は、あくまで、「法人処罰に関する刑法上の理論」であり、古くから日本で行われてきた法人処罰の実際の運用は、必ずしもそうではなかった。日本での法人処罰は、法人の役職員個人が行為者として処罰される場合に「付随的」に行われるものに過ぎず、法人に対する罰金の上限も、昔は個人の上限と同じ500万円程度だった。90年代から、独禁法等でようやく「行為者個人と法人との罰金額の上限の切り離し」が行われ、数億円への引き上げが進められていったが、それでも、外為法の10億円が最高であり、法人に対して数百億円、時には数千億円もの罰金が科されることもある米国などとは大きく異なる。しかし、そのような日本における法人処罰の実務は、最近になって大きく変わりつつある。 2015年3月に発覚した「東洋ゴムの免震装置データ改竄事件」では、同年7月、東洋ゴム子会社の法人のみを起訴し、役員ら10人は起訴猶予となり、法人に対しては、罰金1000万円の有罪判決が言い渡されて確定した。 2017年の電通違法残業事件で、東京地検は、過労自殺した新入社員の当時の上司ら3人の労働基準法違反を認定したうえで、不起訴処分(起訴猶予)とし、法人としての電通を同法違反罪で略式起訴した。電通については、代表取締役社長が被告会社代表者として出廷して裁判が開かれ、罰金刑が言い渡されて確定した。 これらの事案は、いずれも、行為者が処罰されず、法人だけが処罰された例である。 そして、2016年5月に成立した刑訴法改正で日本版司法取引が導入されたことによって、法務・検察が、法人処罰を独立のものとして取り扱う傾向を強めてきた。法務省側は、法案審議の過程で、「法人」にとって、その「役職員」の刑事事件は「他人の刑事事件」であり、法人自体も司法取引の対象となることを明確に説明してきた。 そして、2018年に改正法が施行され、日本版司法取引の初適用事案となった「三菱日立パワーシステムズ」の外国公務員贈賄事件では、同社と東京地検特捜部との間で、法人の刑事責任を免れる見返りに、不正に関与した社員への捜査に協力する司法取引(協議・合意)が成立し、社内調査によって捜査に協力した法人は処罰を免れ、役職員のみが起訴され、有罪となった。この事例では、法人が自社の事業に関して発生した犯罪について積極的に内部調査を行って事実を明らかにし、その結果に基づいて捜査当局に協力することが法人の責任を軽減するものと評価されたのであり、まさに法人の行為を独立して評価する方向の運用の典型と言える(【「日本版司法取引初適用事例」への“2つの違和感” ~法人処罰をめぐる議論の契機となる可能性】)。 このように、法務・検察主導で、法人処罰を行為者処罰から独立したものとして取り扱おうとする傾向は、司法取引の導入もあって、もはや不可逆的なものとなっており、徐々にではあるが日本の社会にも浸透しつつある。 そのような法人処罰の運用を前提にすれば、ゴーン氏・ケリー氏を行為者として、日産自動車が法人起訴されている今回の事件では、法人としての日産は、ゴーン氏らとは独立した立場の「被告会社」であり、被告人と同様の権利が与えられ、訴訟活動を行うことができることは明らかだ。日産が第1回公判で公訴事実を全面的に認め、ゴーン氏・ケリー氏が否認した場合には、公判を分離し、日産の公判では検察官請求証拠が「同意書証」として採用されて、早期に有罪判決が言い渡されるというのが、従来の刑事裁判実務から想定される「当然の対応」であった。ところが、裁判所は、その「当然の対応」を行わないことにした。それは、「法人処罰と行為者処罰の関係」で説明することはできないのであり、やはり、上記(2)の「司法取引」をめぐる問題が主たる理由であることは明らかだ』、豊富な判例を参照しながらの説明はさすがだ。
・『「日産公判分離せず」の方針と司法取引をめぐる問題  本件は、初適用となった上記の三菱日立パワーシステムズの事件に続いて2例目の日本版司法取引の適用事件である。日本版司法取引の導入に関する刑訴法改正案の国会審議の過程で、司法取引による供述には、自己の処罰が軽減されることを目的として、他人を引き込むための虚偽供述が行われる危険性があることが問題にされ、様々な議論が行われた。私も、国会審議の過程で、参考人意見陳述において、この問題を指摘した(平成27年7月1日衆議院法務委員会)。 本件の金商法違反の件で検察と司法取引を行ったとされているのは、ゴーン氏の秘書室長を務めていた人物であり、この秘書室長の供述について、一般的な意味の虚偽供述のおそれが問題になるのは当然だが、本件をめぐる司法取引の問題は、その秘書室長の供述だけの単純な問題ではない。 そもそも、事件の発端は、日産が社内調査の結果を検察に提供したことにあり、その後、日産は、検察と「二人三脚」のような関係で全面的に協力し、検察官立証のための証拠を共同して作り上げてきた。前記の三菱日立パワーシステムズの前例からすれば、その法人としての日産も、検察との司法取引により法人起訴を免れていてもおかしくないが、なぜか法人起訴されている(それが、日産についての有罪判決確定で、ゴーン氏らの無罪判決を阻止しようとする検察の策略である可能性については【検察の「日産併合起訴」は、ゴーン氏無罪判決阻止の“策略”か】)。 また、日産の西川社長は、「ゴーン氏の退任後の役員報酬の支払の合意」についての文書に署名しているとされている上、直近2年分については、CEO社長として有価証券報告書を作成提出したものであり、本来虚偽記載の第一的責任を負う立場にあるにもかかわらず、刑事立件すらされていない。そこには、西川氏と検察との「ヤミ司法取引」の疑いがある(【ゴーン氏「直近3年分再逮捕」なら“西川社長逮捕”は避けられない ~検察捜査「崩壊」の可能性も】)。 下津裁判長が「司法取引が本格的に争点になる」と言っているのは、上記のような、本件における日産と検察との関係全体が「司法取引」的であることを意味しているものと考えられる。日産と検察の「合作」のような形で作られた証拠によって、法人としての日産の犯罪を立証すること自体に問題がある。また、西川氏が起訴されないまま、ゴーン氏らだけが起訴されていることも重大な問題とならざるを得ない。このような複雑な「司法取引」の構造を抱えた今回の事件については、日産だけを分離するのではなく、また、日産と検察の「合作」による証拠によってではなく、証人尋問で証言の信用性を慎重に判断した上で、ゴーン氏らの刑事責任とともに日産の刑事責任を判断すべきと考えたのであろう。まさに、弘中弁護士が、4月2日の記者会見で指摘した「フェアトライアルの観点」からの判断だと言える』、「このような複雑な「司法取引」の構造を抱えた今回の事件については、日産だけを分離するのではなく、また、日産と検察の「合作」による証拠によってではなく、証人尋問で証言の信用性を慎重に判断した上で、ゴーン氏らの刑事責任とともに日産の刑事責任を判断すべきと考えたのであろう」、との裁判所判断の推測は誠に見事だ。
・『「最大の武器」を失った特捜検察  従来の刑事裁判では、被告人が公判で公訴事実を認めると、検察官請求の書証がすべて採用されて裁判がすぐに終わり、判決が出るというのが原則だった。最近では、裁判員裁判では、書証によらず証人尋問で事実認定が行われることが多くなり、裁判員裁判ではない事件でもそのような傾向が徐々に広がりつつあるようだ。 しかし、特捜事件では、「人質司法」に加えて、以下のような構図があったために、被告人がいくら争っても有罪判決を免れられなかった。 自白しない限り身柄拘束が続くという「人質司法」のプレッシャーによって、共犯とされた者のうち少なくとも一人が自白し、公判で公訴事実を認めれば、検察官調書どおりの事実認定で有罪判決が出される。その判決を出したのと同じ裁判官が、同じ事件について他の被告人に無罪判決を出すことは、まずない。別の裁判官であれば、無罪判決が出ることもあり得るが、その場合は、検察官が必ず控訴するし、殆どの場合、控訴審で逆転有罪判決が出され、司法判断の統一性が図られる。その結果、特捜事件では、無罪を争っても、結局、この「人質司法」と「自白事件の有罪確定」の組み合わせによる「蜘蛛の糸」に絡み取られ、いくらもがいても有罪判決から逃れることができない、というのが、従来の特捜事件の構図だった。 今回の裁判所のような姿勢が一般化していけば、特捜検察は、「共犯自白事件の有罪確定による無罪判決阻止」という、自らの責任で逮捕・起訴した者を確実に有罪に追い込むための「最大の武器」を失うことになる。 こうして、「検察の正義」の象徴であった特捜部の事件における「検察中心の刑事司法」の構造は、音を立てて崩れようとしている。それは、無理筋の事件で強引にゴーン氏・ケリー氏を逮捕したことの結果であり、この事件での勾留延長請求却下、早期保釈決定、そして、今回の「日産公判分離せず」という裁判所の判断は、本来、あるべき裁判所の姿勢が示されたに過ぎない。しかし、「検察幹部」は、未だに、今回の事件が海外から注目を集めたことで、裁判所が「外圧」に屈したという、身勝手な反発をしていると報じられている。検察幹部にとっては、今回の事態を客観的に受け止めることができないようだ。 このような「検察幹部」が、今回の「日産公判分離せず」の裁判所の方針決定を、「フェアトライアルの観点」と切り離すために、無理やり「法人処罰」の問題に関連付けようとすることも考えられなくはない。しかし、そのような受け止め方は、せっかく、司法取引導入とともに進展しつつあった日本の法人処罰の活性化の流れに水を差すことになりかねない。それによって、法務・検察が、組織を挙げて実現させた「日本版司法取引」の企業社会への浸透も阻害することになりかねない。 日産・ゴーン氏事件の今後の展開が、日本の刑事司法の在り方そのものに重大な影響を生じることは避け難い。法務・検察当局は、その事態を正面から受け止めるべきだ。「司法取引」と「法人処罰」の複雑な関係を念頭に置きつつ、今後の公判に向けての動きを注視していく必要がある』、「特捜事件では、無罪を争っても、結局、この「人質司法」と「自白事件の有罪確定」の組み合わせによる「蜘蛛の糸」に絡み取られ、いくらもがいても有罪判決から逃れることができない、というのが、従来の特捜事件の構図だった」、「今回の裁判所のような姿勢が一般化していけば、特捜検察は、「共犯自白事件の有罪確定による無罪判決阻止」という、自らの責任で逮捕・起訴した者を確実に有罪に追い込むための「最大の武器」を失うことになる」、繰り返しになるが、説得力に溢れた分析という他ない。今後の展開がますます楽しみになってきた。
タグ:日産ゴーン不正問題 (その9)(ゴーン氏は「明らかに無罪」と言える会計的根拠 『会計と犯罪』を書いた細野祐二に聞く、泡を食ったフランス政府 ゴーン事件の黒幕は誰だ? 地検特捜部と連携して筋書きを立てた人物は安倍首相の親戚だった、「日産公判分離せず」は法人処罰の問題ではなく 司法取引の問題) 東洋経済オンライン 「ゴーン氏は「明らかに無罪」と言える会計的根拠 『会計と犯罪』を書いた細野祐二に聞く」 細野祐二 「犯罪会計学」の研究家 『会計と犯罪』 キャッツ事件で有罪に 村木さんが無罪判決を得て、冤罪だったことが判明すると、特捜部への信頼は地に落ち、メディアは私の論稿を掲載するのをためらわなくなった 村木さんが無罪を勝ち得た本当の理由、納得のいく答えが欲しかった 村木さんが挙げた6つの運のうち「心身の健康」「安定的経済力」「家族の信頼」「友人等のサポート」の4つは村木さんの個人的優位性であり、これは運とはいわない 「優秀な弁護団」も 運ではない 唯一、運だといえるのは、横田信之裁判長(大阪地方裁判所)という客観証拠を重視する希有な裁判官が担当となったこと 弘中弁護士の事務所がリーガルチェック ゴーン元会長の容疑は有価証券報告書虚偽記載と特別背任だ。しかし、どれも犯罪事実が成立しておらず、ゴーン元会長は明らかに無実だ 元会長の役員報酬のうち支払いの蓋然性(probability)の低い報酬を有価証券報告書に記載していなかったが、それは正しい会計処理だ 「発生主義の原則」 この会計の基本原則を東京地検特捜部の検事はわかっていない 先物の損だけ取り上げるから変な話に 須田 慎一郎 JBPRESS 「泡を食ったフランス政府、ゴーン事件の黒幕は誰だ? 地検特捜部と連携して筋書きを立てた人物は安倍首相の親戚だった」 『なぜカリスマ経営者は「犯罪者」にされたのか?』(須田慎一郎著、イースト・プレス) ゴーン事件と東京地検特捜部 「巨悪」に立ち向かうという点で日本では唯一にして絶対の存在、ということになる ロッキード事件捜査 「無罪請負人」弘中弁護士の主張 地検サイドの狙いは? 地検と西川社長との「司法取引」 つくられた事件、意外な登場人物 事件の背景にいたのは、経済産業省および官邸 次期検事総長は、黒川か?林か? 官邸と法務・検察、それぞれの思惑 検事総長人事に手を突っ込ませないための見返りとして、この事件をあえてしかけたという見方もある ゴーン事件の裏にちらつく経産省の影 ゴーンやケリーは西川にとって目の上のたんこぶであり、ルノーに吸収合併されたくない。そこで検察に垂れ込んで司法取引を交換条件に情報を出す 慌てるフランス政府、冷静な日本政府 日本政府の不気味な冷静さ 郷原信郎 同氏のブログ 「「日産公判分離せず」は法人処罰の問題ではなく、司法取引の問題」 裁判所の方針決定は「法人処罰」特有のものなのか 「日産公判分離せず」の判断は「法人処罰の問題」によるものではない 「法人処罰」に関する最近の状況変化 「日産公判分離せず」の方針と司法取引をめぐる問題 本件における日産と検察との関係全体が「司法取引」的であることを意味しているものと考えられる。日産と検察の「合作」のような形で作られた証拠によって、法人としての日産の犯罪を立証すること自体に問題がある。また、西川氏が起訴されないまま、ゴーン氏らだけが起訴されていることも重大な問題とならざるを得ない このような複雑な「司法取引」の構造を抱えた今回の事件については、日産だけを分離するのではなく、また、日産と検察の「合作」による証拠によってではなく、証人尋問で証言の信用性を慎重に判断した上で、ゴーン氏らの刑事責任とともに日産の刑事責任を判断すべきと考えたのであろう 「最大の武器」を失った特捜検察 特捜事件では、無罪を争っても、結局、この「人質司法」と「自白事件の有罪確定」の組み合わせによる「蜘蛛の糸」に絡み取られ、いくらもがいても有罪判決から逃れることができない、というのが、従来の特捜事件の構図だった 今回の裁判所のような姿勢が一般化していけば、特捜検察は、「共犯自白事件の有罪確定による無罪判決阻止」という、自らの責任で逮捕・起訴した者を確実に有罪に追い込むための「最大の武器」を失うことになる
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日産ゴーン不正問題(その8)(ゴーン氏「オマーン・ルート」特別背任に立ちはだかる”経営判断原則”、ゴーン逮捕“国策捜査説”を裏付ける新事実! 経産省の日産・ルノー経営統合問題への介入示すメールを仏紙が報道、ゴーン氏サイドの秘策と噂された「報酬に関する特殊な論理構成」とは 東京地検が真っ青になった…?) [司法]

日産ゴーン不正問題については、3月16日に取上げた。異例の4回目の逮捕を踏まえた今日は、(その8)(ゴーン氏「オマーン・ルート」特別背任に立ちはだかる”経営判断原則”、ゴーン逮捕“国策捜査説”を裏付ける新事実! 経産省の日産・ルノー経営統合問題への介入示すメールを仏紙が報道、ゴーン氏サイドの秘策と噂された「報酬に関する特殊な論理構成」とは 東京地検が真っ青になった…?)である。

先ずは、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が4月3日付け同氏のブログに掲載した「ゴーン氏「オマーン・ルート」特別背任に立ちはだかる”経営判断原則”」を紹介しよう。
https://nobuogohara.com/2019/04/05/%E3%80%8C%E3%82%AA%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%88%E3%80%8D%E7%89%B9%E5%88%A5%E8%83%8C%E4%BB%BB%E3%81%AB%E7%AB%8B%E3%81%A1%E3%81%AF%E3%81%A0%E3%81%8B%E3%82%8B/
・『一昨日(4月3日)午後、産経新聞が、ネットニュースで「カルロス・ゴーン被告を4回目逮捕へ オマーン資金流用の疑い」と報じ、翌日の4日早朝、東京地検特捜部は、ゴーン氏を、保釈の制限住居とされていた自宅で逮捕し、同住居内の捜索で、キャロル夫人の携帯電話、パスポートまで押収した。 これまでも、特捜検察による「暴走捜査」「暴挙」は数限りなく繰り返されてきたが、特に、森本宏特捜部長になってからは、昨年のリニア談合事件で「徹底抗戦」の2社のみを対象に行った捜索の際、法務部に対する捜索で、弁護士が捜査への対応・防禦のために作成していた書類やパソコンまで押収し、さらに検事が社長室に押しかけ「社長の前で嘘をつくのか」「ふざけるな」などと恫喝するなど「権力ヤクザ」の所業に近い数々の「無法捜査」が行われてきた。 今回のゴーン氏の「4回目の逮捕」と捜索押収も、常軌を逸した「無法捜査」であり、ゴーン氏弁護人の弘中惇一郎弁護士が「文明国においてはあってはならない暴挙」と批判するのも当然だ。その手続上の問題は、今後、重大な人権問題として取り上げられることになるだろう』、「リニア談合事件で」、「「権力ヤクザ」の所業に近い数々の「無法捜査」が行われてきた」とは、特捜検察の酷さを改めて知らされた。
・『それとは別の問題として、そもそも、このオマーン・ルートと言われる特別背任の事件が、刑事事件として立証可能なのだろうか、という点は、あまり注目されていない。ゴーン氏逮捕を報じるメディアの多くは、「ゴーン元会長による会社私物化が明らかになった」「口座の資金の流れが解明されたことで確実な立証が可能になった」などと検察リークによると思われる情報を垂れ流している。しかし、これまでの捜査の経緯と、経営者の特別背任罪の立証のハードルの高さから考えると、有罪判決の見込みには重大な疑問がある。 今回の検察のゴーン氏逮捕も、追い込まれた末の「暴発」である可能性が強い』、最近の新聞報道はゴーン元会長を悪者に仕立て上げる検察リーク記事で溢れているが、これを正す郷原氏の見解は貴重だ。
・『オマーン・ルートの特別背任での逮捕に至る経緯  報道によると、このオマーン・ルートの特別背任というのは、 ゴーン前会長は2015年12月から18年7月までの間、日産子会社の「中東日産」(アラブ首長国連邦)からオマーンの販売代理店「スヘイル・バウワン・オートモービルズ」(SBA)に計1500万ドル(当時のレートで約16億9800万円)を送金させ、うち計500万ドル(同約5億6300万円)を自らが実質的に保有するペーパーカンパニーに還流させた疑いがある。SBAに送金した資金の原資はCEO(最高経営責任者)直轄の「CEOリザーブ(予備費)」で、「販売促進費」名目で支出された。とのことだ。 「4回目の逮捕」をいち早く報じて捜査報道をリードした産経新聞が、昨日の逮捕後、ネット記事で、ゴーン氏逮捕に至る経緯について【中東「資金工作」解明へ検察慎重派説得 カルロス・ゴーン容疑者再逮捕】と題して詳しく報じている。その中に、検察内部において逮捕が決定された経過について、以下のような内容が含まれている。 (1)検察上層部は、裁判所が特捜部の捜査に厳しい態度をとっていることから、「無理して一部でも無罪が出たら組織が持たない」という理由から、「これ以上の立件は不要」と、オマーン・ルートの立件に「慎重姿勢」だった。 (2)オマーンやレバノンなどに求めた捜査共助では、期待した回答は得られなかった。 (3)特捜部は、中東関係者から事情聴取を重ね、資金支出の決裁文書や資金の送金記録などの関係証拠を積み上げた。 (4)特捜部は、「中東での資金工作の全体像を解明しなければ、サウジアラビア・ルートで無罪が出かねない」と言って検察上層部を説得し、逮捕にこぎつけた。 他社に先駆けて、「逮捕」を報じた産経が、逮捕後いち早く報じたのであるから、検察の現場と上層部との間の動きについて、十分な取材に基づいて書いていると考えてよいであろう』、検察上層部は「オマーン・ルートの立件に「慎重姿勢」だった」が、特捜部が粘ったとはありそうな話だ。
・『検察上層部の「慎重姿勢」と特別背任の「経営判断原則」  この中で、まず重要なのは、検察上層部が、「無理して一部でも無罪が出たら組織が持たない」という理由でオマーン・ルートの立件に「慎重姿勢」だったことである。金商法違反事件、特別背任事件のいずれにも重大な問題があり、無罪判決の可能性が十分にあることは、私が、これまで再三指摘してきたところであり、検察上層部の懸念は正しい。そして、検察上層部が、オマーン・ルートの立件に慎重だったのは、特別背任という犯罪の立証のハードルの高さを認識しているからだと思われる。 会社の経営者は、経営上の意思決定をするうえで、資金の支出について広範な裁量権を持っている。その権限は、取締役会の承認等の手続的な制約があり、その手続に違背すると会社法上の責任の問題が生じる。しかし、経営者の決定による支出が「特別背任罪」に該当するかどうかについては、「経営判断原則」が適用され、その支出が会社にとって「有用性」があるか否か、対価が「相当」かどうかという点から、「任務違背」に当たるかどうかが判断される。 三越の元会長とその愛人が会社を食い物にしたとされて特別背任で起訴された三越事件の東京高裁判決(平成5年11月29日)では、「経営判断原則」に基づいて社長の愛人が経営する会社への支出が「任務違背」に当たるかどうかが判断され、一部無罪とされた。この事件での「経営判断原則」の判断枠組みについては、山口利昭弁護士が、ブログでわかりやすく解説している(【日産前会長特別背任事件-焦点となる三越事件高裁判決の判断基準】)』、特別背任の「経営判断原則」は確かに相当高い壁だろう。
・『ゴーン氏逮捕後の報道は、ほとんどが「SBAに支払われた資金がゴーン氏側に還流した」ことをもって「会社資金の流用」としているが、特別背任罪に問われているのはあくまで「日産からSBAへの支払い」であり、それが「任務違背」に当たらない限り、結果的にその支払がゴーン氏の個人的利益につながったとしても(「利益相反」など経営者の倫理上の問題は別として)、特別背任罪は成立しない。 上記の産経記事で書かれている「検察上層部の慎重姿勢」というのは、まさに、経営判断原則に基づくと、SBAの支払が「任務違背」に当たると言える十分な証拠がないという理由によるものだと考えられる』、「結果的にその支払がゴーン氏の個人的利益につながった」か否かは、特別背任罪とは無関係というのは初めて知った。これでは、壁は本当に高いようだ。
・『オマーン・ルートの特別背任罪の成否  そこで、日産からオマーンの販売代理店SBAへの支払に「任務違背」性が認められるか否かであるが、これについて、ゴーン氏側は、「SBAへの支払は、毎年、販売奨励金として行っているもので、問題ない」と主張しているとのことだ。 上記の通り、任務違背かどうかは、「経営判断原則」に基づき、「有用性」と「対価の相当性」が判断されることになるが、まず、オマーンでの日産の自動車の販売の一般的状況について、「自動車ジャーナリスト」の井上久男氏が、ヤフーニュースの記事【日産とオマーンの怪しい関係 役員に高級時計をプレゼントも】で以下のように述べている。 調査会社によると、オマーンの自動車販売は市場全体で2017年が約14万6000台、18年が約12万4000台とそれほど大きくない。市場規模は日本の40分の1程度だ。その中で日産は17年に2万8000台、18年に2万7000台を売り、シェアは19.2%、21.4%。オマーンではシェア1位がトヨタで、2位が日産、3位が韓国の現代自動車だ。 単純計算して車の卸価格を200万円として、日産のオマーン向け出荷売上高は540億円程度、粗利益は27億円程度ではないか。オマーン市場は将来伸びる可能性があるとはいえ、こんな小さな市場の販売代理店に、日本円で39億円もの大金が流れるのか不思議でならない。 井上氏は、「粗利益27億円」と「39億円」とを比較しているが、年間の「粗利益27億円」と、8年間で39億円の支払いを比較するのはおかしい。1年なら5億になる。通常、販売奨励金は、売上高に応じて算定するはずであり、年間売上高540億円の1%弱という5億円の販売奨励金が特別に高額とは言えないだろう』、井上久男氏の指摘は確かに「お粗末」だが、この点については特捜部はちゃんと分かっているのだろう。
・『上記産経記事では、「資金支出の決裁文書や資金の送金記録などの関係証拠を積み上げた」としているが、オマーンでの日産車の販売に関して一定の実績が上がっていれば、販売奨励金の支払いが、日産にとって有用性がないとは言えないし、対価が不当であったともいえない以上、資金の流れや手続に関する証拠だけでは、「有用性」「対価の相当性」を十分に否定することはできない。 検察は、ゴーン氏が、SBAへの支払のうち500万ドル(同約5億6300万円)を自らに還流させたと主張しているようだ。確かに、正規に支払が予定されていた販売奨励金の金額に、ゴーン氏側への還流分を上乗せして支払ったということであれば、その分は、「経営判断原則」の範囲外の個人的流用となる余地もある。しかし、その点の立証のためには、SBA側から、「当初から、日産が支払うべき販売奨励金に上乗せした支払を受け、それをゴーン氏側に還流させた」との供述が得られることが必要だ。SBA側からそのような供述が得られていないことは間違いなさそうだ(4月5日朝日新聞「時時刻刻」)』、ゴーン氏の強い中東人脈からすれば、SBA側がゴーン氏不利となる供述をする可能性は極めて低いだろう。
・『「15億円クルーザー」は本当か  SBAに渡った約35億円のうち、約15億円がゴーン氏のキャロル夫人の会社に還流し、“社長号”なる愛称がつけられたクルーザーの購入代金に充てられているとしきりに報じられているが、この点に関しても、今年2月の時点で、週刊新潮が以下のようにルノー関係者の説明を報じている(【逆襲の「ゴーン」! 中東の販売代理店が日産を訴える理由】)。 クルーザーは、昨年亡くなったレバノンの弁護士から購入しました。ゴーンは以前からその弁護士と親しかったため、“体調が悪く、もう海に出ることもないから、私の船を買わないか?”と持ちかけられていた。でも、あくまでもポケットマネーで、マリーナなどの契約も引き継ぐためにクルーザーの所有会社ごと買い取って、キャロル夫人の名義にしたとのことでした この説明のとおりだとすると、「15億円のクルーザー」に関する報道も怪しくなる。それは、あくまで新艇の価格であり、上記のような経緯で、マリーナなどの契約も引き継いだ譲受の実際の価格は、大幅に下回っていた可能性がある。 もちろん、事実関係、証拠関係の詳細は不明だ。しかし、産経新聞が報じているように検察上層部が「慎重姿勢」であった理由を考えてみると、現時点においてもオマーン・ルートの特別背任について有罪立証の見通しが立っているようには思えない』、「15億円のクルーザー」は新品ではなく、「亡くなったレバノンの弁護士から購入」したのであれば、「譲受の実際の価格は、大幅に下回っていた可能性がある」というのは確かだろう。
・『そのような特別背任の容疑事実で、敢えてゴーン氏を逮捕し、自宅やキャロル夫人に対する捜索押収を行った特捜部には、再度の逮捕でゴーン氏に精神的打撃を与え、自宅の捜索で保釈条件違反に当たる事実を見つけだして保釈取消に追い込むことや、ゴーン氏側の公判準備の資料を押収して弁護活動に打撃を与えること、そして、最終的には、検察に敵対するゴーン氏を自白に追い込み叩き潰すことが目的だったとしか思えない。 上記、週刊新潮の記事では、SBA側の対応に関して、 オマーンに派遣された日産の調査チームは経営者に対し、取引関係の解消までチラつかせてゴーンに不利な証言を求めました。でも、彼はそれを拒絶し、逆に日産に対する訴訟も辞さずと憤慨している。この代理店は売上実績でかなりのシェアを持っており、中東で強い発言力がある。仮に取引解消となれば、他の代理店も追随して離反するかもしれず、日産側も大打撃を被るのは避けられません と報じている。 検察と日産が結託し、数々の「非道」を重ねている「ゴーン氏追放劇」と「権力ヤクザ」のような捜査は、重大な局面を迎えようとしている』、「日産の調査チームは経営者に対し、取引関係の解消までチラつかせてゴーンに不利な証言を求めました」、こんな見え透いた手を使って、「訴訟も辞さずと憤慨」させた日産のやり方には、呆れ果てた。どうも特捜部の立場はますます悪くなっているようだ。

次に、4月16日付けLITERA「ゴーン逮捕“国策捜査説”を裏付ける新事実! 経産省の日産・ルノー経営統合問題への介入示すメールを仏紙が報道」を紹介しよう。
https://lite-ra.com/2019/04/post-4663.html
・『先日も保釈中に異例の再逮捕されるなど日産自動車元会長カルロス・ゴーン氏をめぐり検察の強引な捜査が続くなか、一連のゴーン事件の背景に日本政府が関与している可能性が濃厚になってきた。 仏紙ジュルナル・デュ・ディマンシュ(JDD)が14日、関係者のメールから、経産省が日産とルノーの経営統合案を阻止するため介入していたことを報じたのだ。 同紙が報じたのは、2018年4〜5月に当時の日産幹部とゴーン氏との間で交わされたメール。同年4月23日に日産の専務執行役員であるハリ・ナダ氏からゴーン氏に送られたメールには、仏国家出資庁長官でルノー取締役のマルタン・ビアル氏らとの会合が言及されていた。これはルノーとの経営統合をめぐって日産と仏政府とで行われた協議内容の報告だが、そこにはビアル氏が日本の経産省から書簡を受け取っていたとの内容が含まれていたという。 さらに、5月21日に別の日産幹部がゴーン氏や西川広人社長に送ったメールには、経産省が用意したという「覚書案」が添付されており、「両者の提携強化は日産の経営自主性を尊重することによってなされること」などと示されていたという。ようするに、JDDの報道が事実であれば、安倍政権はゴーン氏逮捕以前から日産とルノーの経営統合を阻止するように直接介入していたということになる。 安倍首相はゴーン氏が逮捕された直後の昨年12月、マクロン仏大統領との会談のなかで、日産と三菱自動車、ルノーの3社連合に関して「民間の当事者で決めるべきで、政府が関与するものではない」と伝えたとされるが、やはりウソ八百だったのか』、仏紙JDDが報じただけで、日本のマスコミは「後追い報道」をしないのは、安部政権への「忖度」なのかも知れないが、情けない話だ。
・『となれば、本サイトでは以前から伝えてきたように、一連のゴーン氏逮捕は「日産と三菱自動車の海外移転を阻止するための国策捜査」であるとの説も、さらに信憑性を増してきたといえるだろう。 念のため振り返っておくが、そもそも日産と三菱自動車、ルノーの間にはずっと経営統合の計画がくすぶっていた。これは、ルノーの筆頭株主である仏政府が3社を全面的に統合し、日産や三菱もフランスに移転させるという計画だ。そんななか、仏政府と対立しながらこれに異を唱えていたのがゴーン氏だったのだが、昨年2月にルノーCEOの続投が決まると一転、メディアに対して「すべての選択肢が考えられる」と公言。同年3月、すぐさま日産とルノーの機能統合の拡大に着手したように、ゴーン氏は経営一体化を進めたいフランス政府の“名代”さながらに振舞い始めた。 この流れに強い危機感を覚えたのが経産省だったというわけだ。そして同じ年の6月、日本版の司法取引制度が導入される。ここから経営統合を阻むため、“安倍経産省政権”とも言われる日本政府と、そのグリーンサインを察知した東京地検特捜部、一部の日産幹部とがグルになってゴーン氏だけを狙い撃ちした──これが、永田町周辺で囁かれていた“国策捜査説”のストーリーだった。 言っておくが「陰謀論」ではない。事実、ゴーン氏は昨年11月に3社連合の経営統合案を本格協議する予定だったとされており、結果、来日の瞬間に逮捕されたことによって“ゴーン案”は頓挫したわけだが、本サイトも何度も指摘してきたように、その逮捕劇の裏側には安倍官邸と“経産省人脈”がちらついていた』、日本版司法取引制度導入までが、道具立ての1つだったとは恐れ入るが、“国策捜査説”がますます信憑性を増してきたようだ。
・『日産クーデターのキーマンたちと安倍官邸のただならぬ関係  そのひとつが、日産内部の極秘調査チームの中心人物であると様々なメディアで名指しされている専務執行役員の川口均氏。川口氏は菅義偉官房長官と近い関係にあるといわれており、その間、菅官房長官に逐一報告をあげて相談していたとの見方がある。 さらにもうひとり、安倍政権と「日産のクーデター」を結びつけるキーマンとして取り沙汰されたのが、昨年6月に日産の社外取締役に就任した経産省OBの豊田正和氏だ。もともと、日産は経産省の有力な天下り先だったのだが、ゴーン体制になって以降、長らく同省からの天下りを受け入れてこなかった。そんなか、突如として送り込まれたのが、事務次官に次ぐNo.2である経済産業審議官や内閣官房参与なども歴任した豊田氏。安倍首相の側近中の側近で、やはり経産省出身の今井尚哉首相秘書官とも近い関係にあるといわれる。 そうしたことから、日産を取材する記者たちの間では、この豊田氏こそ「ルノーとの統合や海外移転を阻止するために、経産省が送り込んだ人物」ではないかとの見方が広がったのだ。実際、ゴーン逮捕以降、豊田氏は社外取締役という立場であるにもかかわらず、新聞記者が取材に押しかけており、元朝日新聞編集員の山田厚史氏によれば〈今や「夜の広報担当」といった存在〉(ダイヤモンド・オンライン2018年12月11日)になっていたという』、「経産省OBの豊田正和氏」は確かに大物のようで、「今や「夜の広報担当」といった存在」というのも頷ける。
・『今回、JDDが報じたメールのやりとりは、国策捜査説の背後にある安倍官邸と経産省の策謀を裏づける証拠となるだろう。前述したとおり、経産省の介入を示すメールがあったのは、ゴーン氏が統合機能強化に乗り出した直後の4月から5月。ゴーン氏の“豹変”を目の当たりにした経産省が血相を変え、仏政府と日産へ強引に迫っていたことが想像できる。そして、その後すぐに経産省の大物OB・豊田氏が社外取締役として日産に向かい入れられていたのだ。これが偶然などということがあるのだろうか。 こうした状況を踏まえると、安倍政権はかなり綿密に“ゴーン潰し”の計画を練り、着々と実行に移してきたとしか思えないのである。いずれにしても、ゴーン事件は単なる企業内闘争ではない。安倍政権が直接介入するなど、そこには政治権力が蠢いている。その結果もたらされたのが、強引に繰り返されるゴーン氏の逮捕と拘留だ。巨大な政治的思惑によって、簡単に人間から自由が奪われる様には慄然とせざるを得ない』、「巨大な政治的思惑によって、簡単に人間から自由が奪われる様には慄然とせざるを得ない」というのは言い得て妙だ。何年か経ってゴーン氏無罪が確定したら、安部政権はどうするつもりなのだろう。その前に安部は退陣しているのかも知れないが・・・。

第三に、ジャーナリストの時任 兼作氏が4月17日付け現代ビジネスに寄稿した「ゴーン氏サイドの秘策と噂された「報酬に関する特殊な論理構成」とは 東京地検が真っ青になった…?」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64093
・『「4度目の逮捕」異例の背景  4月4日、東京地検特捜部は保釈中のゴーン被告の4度目の逮捕に踏み切った。 容疑は、会社法違反(特別背任)。日産の資金を中東オマーンに不正送金し、同社に損害を与えたというものだ。 「追起訴はあるかもしれないと思っていたが、逮捕になるとは、まったく予想できなかった」 ゴーン被告の弁護人を務める弘中惇一郎弁護士は、逮捕後の会見でそう述べたが、それもうなずけよう。容疑は前回の逮捕容疑と類似しており、通例ならば追起訴で済むはずだった。 報道陣にとっても予想外の事態であったようで、報道各社はゴーン「被告」の肩書を急遽、「容疑者」と改める慌てぶりだった。すでに起訴されている罪状がある以上、被告であることに変わりはないものの、逮捕後は容疑者としての立場にもなるためだ。 ともあれ、ゴーン被告は約1カ月前の3月6日に108日間の勾留を経て保釈されたばかりであったにもかかわらず、再び逮捕・収監されたわけだが、「特捜部の事件で保釈後、余罪で再逮捕されるのは異例中の異例だ」との批判が絶えない。 いったいこの背景には、何があったのか』、「異例中の異例」の再逮捕の背景とは興味深い。
・『なぜか「イチローの情報収集」…?  その10日ほど前のこと――。 筆者の取材に応じた東京地検関係者が、吐き捨てるようにこんなコメントをしたのを耳にした。 保釈後、ゴーンは自由に行動し、公判対策のためにあちこちで関係者と接触している。しかも、ゴーンと接触した関係者が、ゴーンの指示を受けてさらに多くの関係者にコンタクトしている」 ゴーン被告が保釈されたのは、弁護側が提示した条件に裁判所が納得したからだとされる。すなわち、海外への渡航禁止、住居に防犯カメラを設置し記録を定期的に提出すること、携帯電話はネットに接続できないものを使用し通話記録も残すこと、パソコンは弁護士事務所にあるネットに接続していないものを使う――といった制限のことだ。裁判所は、ゴーン被告がこれらの条件を守るならば証拠隠滅は図れないと判断したとみられる。 だが、元検事の弁護士(ヤメ検)をはじめ、多くの法曹関係者から「この条件では証拠隠滅は防げない」と疑問の声が上がっていたという。 具体的な指摘もあった。「外出先で携帯電話やパソコンを借りれば、第三者と接触するのは簡単だ」といったものだが、どうやら実際はそれ以上の状況だったようだ。ゴーン被告の動きは、それほど活発だったとこの知見(正しくは地検?)関係者はいうのである。 もっとも、東京地検特捜部も手をこまねいていたわけではない。捜査員をフルに動員し、24時間体制で監視や通信傍受に当たっていた、という。 その最中、ゴーン被告と彼の陣営が目論む「抜け目ない法廷戦術」の一端を垣間見たのだという。前出の東京地検関係者が語る。 「ゴーン当人および周辺人物の動きを追い、会話の内容などを確認すると、つい先頃引退した大リーグのイチロー選手に注目し、彼の報酬の受け取り方について、情報収集と分析を綿密に行っていることがわかった。 そこで、どこに焦点を当てているか精査してみると、非常にまずいことが判明した。イチロー氏が選手だった時の『出来高報酬』の例を法廷に持ち出されて援用されると、厳しいということだ。下手をすると、役員報酬の虚偽記載容疑が成り立たなくなってしまう」 イチロー氏と言えば、日産との関わりが深い。数多くのCMに出演しており、ゴーン被告が社長を務めている時期にも起用されているため、イチローサイドとのコネクションがあっても不思議ではないが、それにしてもなぜイチロー氏のことを持ち出されると、役員報酬の虚偽記載が成り立たなくなるというのか』、「イチロー選手に注目」とは意外だ。
・『「イチロー式」報酬受け取り法とは?  この話を聞いた当初は、単純に「後払いならOK」という例としてゴーン被告の無罪立証に資するのか、と思いかけた。だが、よくよく考えてみると、腑に落ちない。 というのも、ゴーン被告の罪状のひとつである役員報酬の虚偽記載についての争点は、東京地検側が「確定報酬を隠していた」というのに対し、ゴーン側は「後払いであって確定していなかった」と主張しているというものである。しかしイチロー氏の場合、あくまでも年棒が確定された上での契約だった。 会計法上の規定からしても、報酬が確定しているならば、有価証券報告書に記載しないのはアウトである。東京地検はこの規定を踏まえ、今年2月、日産にゴーン被告の「引退後の報酬」として約92億円を計上させ、有価証券報告書の訂正を行わせてもいる。 とすると、なぜ東京地検は焦っているのか。 実は、カラクリはイチロー選が大リーグに進出した際、最初に結んだ契約にあった。ポイントは、出来高(インセンティブ)報酬だ。その後の契約では出来高が減っていくが、初回の契約だけは、かなりの出来高報酬があった。 そのしくみを詳しく記すと、こうなる。 200打席を超えると40~60万ドルが支給され、その後、50打席増えるごとに40~60万ドルが加算。450打席を超えた時点で200~300万ドルが支払われる。 また、このほかに、球宴に出場した場合やMVPなどを獲得した場合にも報酬が付く。 この出来高報酬で、イチロー選手は1年目ですら基本年棒を超える額である240万ドルを得ている。金額は事後的に確定するので、仮に怪我などで欠場していれば、これほどの大きな額は受け取れなかっただろう。 ゴーン被告サイドは、ここに目を付けたとみられる』、「出来高報酬」に目をつけたとは、さすがだ。
・『真っ青になった東京地検  筆者がイチロー選手の契約内容をチェックしたのち、東京地検関係者に再取材すると、その関係者はこう言って認めた。 「『私の報酬もイチロー選手と同じく、確定していない、業績に応じたインセンティブ報酬であったから、未記載で構わない』という論理構成をゴーン側は模索しているとみられる。悩ましいところだ」 別の検察関係者も言う。 「報酬は確定してから、要するにもらってから公表するのが当たり前で、そんなケースは世界にざらにある。イチロー選手の場合だってそうだし、いま話題になっている前田(健太)選手もそうだ、とゴーンは主張しようとしている。 こうなると、実はけっこう苦しい。今年2月、日産がゴーンの後払い報酬として92億円を計上した時、ゴーンが『これで本当にもらえることになった』と苦笑気味に漏らした際、東京地検は『ヤバい』と青くなって、訴因の変更すら検討し始めた」 日本の誉である国民的野球選手を引き合いに、ゴーン被告が筋の通った無罪答弁を予定しているとすれば、社会的なインパクトも大きい。 それゆえ、東京地検は訴因変更、すなわち別の罪状での起訴を模索し始めたというのである。 それにしても、さすがは傑出した経営者たるゴーン被告というべきか、あるいは「無罪請負人」弘中弁護士の智恵なのか、ともあれ東京地検は窮地に追い込まれたわけである――。 以上が、4度目の逮捕直前の状況であった。そしてその直後、東京地検は上層部たる最高検に泣きついた。 「もう一度、別の容疑で逮捕しないと、ゴーンは無罪になる」 そう言って、最高検を説得したというのだ。もっとも、その裏では、こうも息巻いていた。 「一度じゃない。こうなったら、何度でもやってやる」 今回の逮捕にあたり、東京地検はゴーン被告の日記や電話などのほか、公判対策用に作成された資料まで押収したというが、ほかの罪状への対応にも念を入れるつもりだとされる。 役員報酬以外の罪状である会社法違反について、「会社に損害は与えていない」「社内の承認は得ている」などとゴーン被告が主張していることも侮れない。今回の特別背任の容疑についても、当然反撃を繰り出してくるとの見方もある。 とすると、追い詰められた東京地検は……場合によっては、さらなる逮捕もありうるかもしれない。 両者の攻防は続く』、第一の訴因である「役員報酬の虚偽記載が成り立たなくなる」恐れが強まったので、東京地検特捜部が今回の逮捕劇で、「ほかの罪状への対応にも念を入れるつもり」とは、なりふり構わずの姿勢になったようだ。しかし、これでは、海外からの批判もますます強まることだろう。一体、どう決着させるつもりなのだろうか。見ものだ。
タグ:「ゴーン氏サイドの秘策と噂された「報酬に関する特殊な論理構成」とは 東京地検が真っ青になった…?」 「ゴーン氏「オマーン・ルート」特別背任に立ちはだかる”経営判断原則”」 これまでも、特捜検察による「暴走捜査」「暴挙」は数限りなく繰り返されてきた 森本宏特捜部長になってからは 「権力ヤクザ」の所業に近い数々の「無法捜査」が行われてきた 今回のゴーン氏の「4回目の逮捕」と捜索押収も、常軌を逸した「無法捜査」 クルーザーは、昨年亡くなったレバノンの弁護士から購入 今や「夜の広報担当」といった存在 経済産業審議官や内閣官房参与なども歴任 日産クーデターのキーマンたちと安倍官邸のただならぬ関係 逮捕劇の裏側には安倍官邸と“経産省人脈”がちらついていた SBA側からそのような供述が得られていないことは間違いなさそうだ 「15億円クルーザー」は本当か 検察と日産が結託し、数々の「非道」を重ねている「ゴーン氏追放劇」と「権力ヤクザ」のような捜査は、重大な局面を迎えようとしている オマーン・ルートと言われる特別背任の事件が、刑事事件として立証可能なのだろうか 検察上層部の「慎重姿勢」と特別背任の「経営判断原則」 オマーン・ルートの立件に「慎重姿勢」だった (その8)(ゴーン氏「オマーン・ルート」特別背任に立ちはだかる”経営判断原則”、ゴーン逮捕“国策捜査説”を裏付ける新事実! 経産省の日産・ルノー経営統合問題への介入示すメールを仏紙が報道、ゴーン氏サイドの秘策と噂された「報酬に関する特殊な論理構成」とは 東京地検が真っ青になった…?) 特別背任罪に問われているのはあくまで「日産からSBAへの支払い」であり、それが「任務違背」に当たらない限り、結果的にその支払がゴーン氏の個人的利益につながったとしても(「利益相反」など経営者の倫理上の問題は別として)、特別背任罪は成立しない 検察上層部は SBA側から、「当初から、日産が支払うべき販売奨励金に上乗せした支払を受け、それをゴーン氏側に還流させた」との供述が得られることが必要 日本版の司法取引制度が導入 「ゴーン逮捕“国策捜査説”を裏付ける新事実! 経産省の日産・ルノー経営統合問題への介入示すメールを仏紙が報道」 オマーン・ルートの特別背任罪の成否 でも、彼はそれを拒絶し、逆に日産に対する訴訟も辞さずと憤慨している 同氏のブログ 安倍首相の側近中の側近 社外取締役に就任した経産省OBの豊田正和氏 日本政府と、そのグリーンサインを察知した東京地検特捜部、一部の日産幹部とがグルになってゴーン氏だけを狙い撃ちした 日産ゴーン不正問題 「経営判断原則」が適用され、その支出が会社にとって「有用性」があるか否か、対価が「相当」かどうかという点から、「任務違背」に当たるかどうかが判断される 巨大な政治的思惑によって、簡単に人間から自由が奪われる様には慄然とせざるを得ない 井上氏は、「粗利益27億円」と「39億円」とを比較しているが、年間の「粗利益27億円」と、8年間で39億円の支払いを比較するのはおかしい 検察リークによると思われる情報を垂れ流している なぜか「イチローの情報収集」 郷原信郎 東京地検は上層部たる最高検に泣きついた。 「もう一度、別の容疑で逮捕しないと、ゴーンは無罪になる」 そう言って、最高検を説得 現代ビジネス ほかの罪状への対応にも念を入れるつもり 東京地検は『ヤバい』と青くなって、訴因の変更すら検討し始めた 一連のゴーン氏逮捕は「日産と三菱自動車の海外移転を阻止するための国策捜査」であるとの説も、さらに信憑性を増してきた 特別背任という犯罪の立証のハードルの高さを認識 真っ青になった東京地検 オマーン・ルートの特別背任での逮捕に至る経緯 経産省が用意したという「覚書案」が添付されており、「両者の提携強化は日産の経営自主性を尊重することによってなされること」などと示されていた 「イチロー式」報酬受け取り法とは? SBA側の対応に関して、 オマーンに派遣された日産の調査チームは経営者に対し、取引関係の解消までチラつかせてゴーンに不利な証言を求めました 譲受の実際の価格は、大幅に下回っていた可能性 安倍政権はかなり綿密に“ゴーン潰し”の計画を練り、着々と実行に移してきたとしか思えない 日産の専務執行役員であるハリ・ナダ氏からゴーン氏に送られたメールには、仏国家出資庁長官でルノー取締役のマルタン・ビアル氏らとの会合が言及されていた。これはルノーとの経営統合をめぐって日産と仏政府とで行われた協議内容の報告だが、そこにはビアル氏が日本の経産省から書簡を受け取っていたとの内容が含まれていたという 井上久男氏 イチロー氏が選手だった時の『出来高報酬』の例を法廷に持ち出されて援用されると、厳しいということだ。下手をすると、役員報酬の虚偽記載容疑が成り立たなくなってしまう ゴーン氏は経営一体化を進めたいフランス政府の“名代”さながらに振舞い始めた 時任 兼作 litera
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日産ゴーン不正問題(その7)(ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡、ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由、日産 株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”) [司法]

日産ゴーン不正問題については、2月25日に取上げた。ゴーン氏保釈を踏まえた今日は、(その7)(ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡、ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由、日産 株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”)である。

先ずは、3月11日付けJBPressが転載した新潮社フォーサイトへの経済ジャーナリストの大西康之氏による寄稿「ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡」を紹介しよう。これは、傑作で、必読である。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/55709
・『日本は再び「ゴーン・ショック」に襲われる。1度目は20年前、フランス・ルノーから日産自動車に乗り込んだカルロス・ゴーン前会長が、ゴーン改革で「系列」に代表される日本企業の古い商慣習を粉砕した。次に破壊されるのは、世界から批判を浴びている日本の「人質司法」だ。ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡である』、2度も「ゴーン・ショック」を引き起こした「ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡である」とは言い得て妙だ。
・『世界に晒された日本の刑事司法  3月6日、逮捕から108日目に保釈されたゴーン被告は、作業服に帽子とマスクという奇妙な姿で東京拘置所から出てきた。だが、メガネの奥の目は鋭さを失っていない。「無罪請負人」の弘中惇一郎弁護士という味方を得て、大反撃を始めるつもりだろう。 「新戦略による初勝利」仏紙『フィガロ』はゴーン被告の保釈を電子版の速報でこう伝えた。監視カメラ設置など、保釈後の証拠隠滅が疑われないような措置を提案したことを「より攻撃的な司法戦略」と評価した。仏紙『ル・モンド』は、日本の裁判所が自白を拒む被告の保釈請求をほとんど認めないとした上で、今回の保釈を「日本の司法制度では異例の決定」と伝えた。 弁護士の立ち会いなしに容疑者を長期間拘留する日本の検察のスタイルは、ゴーン被告の逮捕によって海外にその実態が伝わり、「人質司法」と批判されてきた。 勾留理由開示手続きを巡ってゴーン被告が法廷に現れた時には、『AFP通信』が手錠と腰縄を付けてスリッパ姿で入廷したゴーン被告の様子を事細かに描写し、「7週間に及ぶ東京拘置所での生活が活力を奪った」と批判した。 カルロス・ゴーンという世界的に著名な経営者を逮捕したことにより、前近代的な日本の刑事司法が世界に晒された。裁判所は、こうした海外からの批判を当然、気にしていたはずである』、「人質司法」は「日本の後進性を映し出す鏡」で、日本人として恥ずかしい限りだ。
・『「国連」を持ち出された途端、腰砕けに  そこをうまく突いたのが、ゴーン被告の家族だった。家族は3月4日、ゴーン被告の長期勾留が人権侵害に当たるとして、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)で恣意的拘束について検証する作業部会に申し立てを行ったことを発表した。 発表後に記者会見した家族側の弁護士フランソワ・ジムレ氏は、「懲罰的な環境で尊厳を侵害する不当な勾留が続いている。今回の事件は日本の勾留制度を白日の下にさらすことになる」とまくし立てた。 その直後、新たにゴーン被告の弁護を引き受けた弘中惇一郎氏らの弁護団が3度目の保釈請求をすると、裁判所はあっさりこれを受け入れた。検察は「証拠隠滅の恐れがある」と準抗告したが、裁判所に棄却された。ゴーン被告の家族を動かしたのが弘中氏だとしたら、大した策士ぶりである。いずれにせよ日本の裁判所は、「国連」を持ち出された途端、腰砕けになった。 「泰平の眠りを覚ます上喜撰 たった四杯で夜も眠れず」幕末の江戸で流行った誰もが知る狂歌で、カフェインの強い上等なお茶である上喜撰は蒸気船にかけて黒船を意味する。四杯はペリーの黒船が4隻だったことを意味し、たった4隻の黒船で徳川300年の泰平が破られ右往左往する幕府を揶揄した歌だ。日本は「黒船」が来ないと変わらない』、ゴーン被告の家族が「国連人権高等弁務官事務所で恣意的拘束について検証する作業部会に申し立てを行った」とは初耳だが、上手い高等戦術だ。
・『日本の刑事司法制度に「黒船」が襲来  刑事司法制度の前近代性については、例えば1988年のリクルート事件でゴーン被告と同じ東京拘置所に113日間拘留され、拘禁反応鬱状態になった経験を持つリクルート元会長の江副浩正は、共著『取り調べの「全面可視化」をめざして』(中央公論新社)の中でこう語っている。「てきぱきと働く受刑者の姿を見ながら『羨ましい』と思った」 東京拘置所には刑務所もあるが、「自由に身動きできず、空さえ見えない拘置所での暮らしは刑務所より厳しい」と受刑者の多くは語っている。 しかし有罪率99.9%とも言われる日本では、長期勾留された人間がその非人道性を訴えても、「所詮は罪人の泣き言」と無視されてきた。 言うまでもないが、被告は罪人ではなく、その人権は配慮されるべきである。外国人でしかも超有名人であるゴーン被告の声は、日本を越えて海外に届き、その声が海外メディアで増幅されて日本に跳ね返ってきた。海の向こうから批判されると、日本の権力者たちは途端に狼狽し始めた。それが「異例の保釈」につながったと見るべきだろう。日本の刑事司法制度に「黒船」が襲来したのである』、近代法の基本原則に「推定無罪」があり、誰でも有罪宣告を受けるまでは無罪と推定されるにも拘らず、日本だけは逮捕されたたけで、罪人扱いを受けるというのは、日本の後進性の典型例だ。
・『黒船ゴーンで鉄鋼業界に激震  ゴーン被告が「黒船」の役割を果たすのは今回が初めてではない。冒頭で触れたとおり、20年前の1999年、筆頭株主になったルノーからCOO(最高執行責任者)として日産自動車に送り込まれた時もゴーン被告は黒船だった。 「コストカッター」と呼ばれたゴーン被告は、着任早々、鉄鋼資材の購入先を「選別、集約する」と言い出した。泰平の眠りを貪っていた日本の鉄鋼業界に激震が走る。 当時、日産の月間の鋼板使用量は8~9万トンで、トヨタ自動車に次ぐ大口ユーザーだったが、そのシェアは新日本製鉄(現新日鐵住金)が28%、川崎製鉄が26%、NKKが25%で、残りを住友金属工業、神戸製鋼所が分け合っていた。共存共栄を旨とする高炉5社は入札で競うわけでもなく、シェアは「不変」とされた。コスト競争力ではNKKが一段劣っていたのだが、日産は同じ芙蓉グループのNKKを「系列」とみなし優遇していた。 ゴーン被告はこうした日本的、馴れ合いの商慣習を一顧だにせず、日本以外の国と同様に競争入札を実施した。その結果、新日鉄のシェアが60%に倍増、川鉄は30%に増え、NKKが3分の1の10%に激減した。鉄鋼業界ではこれを「日産事件」と呼ぶ。 「変わらない」と思い込んでいたシェアの大変動に、NKKの経営陣は言い知れぬ危機感を感じた。その予感はあたり、日産事件をきっかけにトヨタ自動車など他の自動車メーカーも鉄鋼メーカーの選別を始めたのだ。流れは自動車、鉄鋼業界にとどまらず、電機メーカーなども素材、部品メーカーを選別し始めた』、筆者の大西氏は、元日経ビジネス記者で企業もので鋭い記事を書いてきただけに、「日産事件」まで引き合いに出すとはさすがである。
・『「系列」は見事に解体された  「単独では生き残れない」と悟ったNKKは「格下」と見ていた川鉄との合併に踏み切る。JFEグループ(現JFE ホールディングス)の誕生である。合併比率は川鉄1に対しNKK0.75。新日鉄に次ぐナンバーツーを自任してきたNKKにとっては屈辱的な条件だったが、背に腹はかえられなかった。 玉突きで新日鉄が住友金属と経営統合して新日鐵住金が誕生し、鉄鋼業界は3社体制に再編された。 ゴーン被告は日産系列の部品メーカーの持ち株を売却し、世界中から安くて良い部品を調達した。他の自動車メーカーもこれに倣い、日本の自動車産業の高コスト体質の原因だった「系列」は見事に解体された。 ゴーン被告による改革は調達だけではなかった。稼働率の低い工場を閉鎖し、余剰人員を削減し、縦割り組織と上意下達のメカニズムを壊して社内の意思疎通を良くした。これらの改革を一気呵成に進めたことで、日産の業績はV字回復し、ゴーン被告の経営は「ゴーン・マジック」、ゴーン被告自身は「カリスマ」と呼ばれるようになった』、「系列」の解体は、やはり外国人経営者でなければ、手をつけられなかっただろう。
・『なぜ日産は「神様」に祭り上げたのか  だがゴーン被告を知る、ある大企業の元会長はこう指摘する。 「ゴーンさんは普通の経営者だし、ゴーンさんがやったのも当たり前の改革。だが当時の日本人経営者にはそれができなかった。文明人が未開の地で日蝕を言い当てて、原住民に神様と崇められたのと同じ。日本の経営のレベルが低かったため、普通の経営者が神様になってしまった」 ゴーン被告を最初に「神様」に祭り上げたのは日産の役員・社員だ。倒産寸前だった会社が、あっという間に優良企業に生まれ変わったのである。ゴーン氏が普通の経営者なら、会社を傾けた自分たちが怠慢で無能だったことになる。自分たちの非を隠すために、ゴーン被告を「不可能を可能にした神様」に祭り上げた』、「神様」誕生についての、極めて説得力溢れた鋭い指摘だ。
・『その尻馬に乗ったのがメディアである。工場を閉め人員を削減して固定費を減らし、不稼働資産を減損処理してしまえば、バランスシートが軽くなり、期間利益が跳ね上がるのは常識である。しかし勉強不足と読者の関心を引きたい下心が相まって「カリスマ・ゴーン」と書きたてた。 残念なのは、前近代的な日本の企業社会に改革の先鞭をつけたゴーン被告が、社内のごますりとメディアのお囃子に乗せられて、自らを「カリスマ」と勘違いしてしまったことである。「経営者として当たり前のことをやったまで」と謙虚にしていれば、逮捕はなかっただろう。 しかし驕ったゴーン被告が逮捕されたことで、今度は未開な日本の刑事司法にスポットライトが当たった。1度目のゴーン・ショックで激震が走った鉄鋼業界と同じように、日本の司法も大いに揺さぶられることになる。本人にその意思はないだろうが、結果的にゴーン被告は2度目の「黒船」として、再び日本を救うのかもしれない』、「残念なのは・・・ゴーン被告が、社内のごますりとメディアのお囃子に乗せられて、自らを「カリスマ」と勘違いしてしまったこと」、というのはその通りで、人間の脆さを物語っている。「未開な日本の刑事司法」を変革する大きな一撃になってもらいたいものだ。

次に、司法ジャーナリストの村山 治氏が3月14日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/196834
・『役員報酬の虚偽記載や会社資金を不正流用したとする特別背任の罪に問われ、東京拘置所で勾留されていた前日産自動車会長のカルロス・ゴーン氏が3月6日、保釈された。 昨年11月19日の逮捕以来、勾留は108日に及んだ。 東京地検特捜部が摘発した事件の否認被告が、裁判の争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きの前に保釈を認められるのは極めて異例だ。 法曹関係者が驚く「異例の判断」の背景に何があったのか』、真相を是非、知りたいところだ。
・『予想外の「変装」姿 保釈を巡るさまざまなせめぎ合い  カリスマ経営者と呼ばれた男は、青い帽子にマスクと眼鏡、作業服といういで立ちで東京拘置所の玄関に現れ、詰めかけた報道陣に対応することなく去った。 ゴーン氏は、勾留理由開示公判や弁護士などを通じ、繰り返し「自分は無実」と訴えていた。 マスコミはじめ多くの関係者は、保釈されたゴーン氏は、カメラの前で堂々と「無実」の根拠を明らかにし、また、捜査の問題点を指摘する、と予想していた。 それだけにこの奇策は「何か、人前に出られない事情でもあるのか」との臆測を呼ぶことにもなった。 3月8日、ゴーン氏の弁護人の1人、高野隆弁護士は自らのブログで「『変装劇』はすべて私が計画した。(略)膨大な数のカメラがバイクやハイヤーやヘリコプターに乗って彼を追いかけたでしょう。彼の小さな住居は全世界に知れ渡ります。(略)頭に閃いたのが昨日(ママ)の方法でした」と明かした。 何のことはない。「メディアスクラム」対策だったわけだが、保釈の2日後にはゴーン氏の新たな住居にはマスコミが詰めかけた』、ゴーン氏にとっては、マスコミへの対応は万全の準備をしてからと考えていたのだろうから、マスコミを一旦は遠ざけたのは、成功だったとも言えるだろう。
・『公判前整理手続きが始まる前では初めて  カリスマ経営者の保釈をめぐり、裁判所と検察、弁護団の間で激しい「攻防」があった。 ゴーン氏は、2010~17年度の日産の役員報酬を約91億円過少に有価証券報告書に記載したとして金融証券取引法違反(有価証券報告書虚偽記載)で、また、私的な損失を日産に付け替えて損害を与えたなどとして会社法違反(特別背任)で起訴された。 ゴーン氏の弁護人だった元東京地検特捜部長の大鶴基成弁護士は、起訴後の1月11日と18日の2度にわたって東京地裁に保釈を請求したが、却下された。 1回目の請求では、保釈後にフランスなどに住む条件を提示したとされ、2回目は、住居を日本国内に変更したとされるが、地裁は、いずれも証拠隠滅の恐れがあると判断したようだ。 その後、辞任した大鶴氏に代わって、新たに弁護人になったのが、「無罪請負人」といわれる弘中惇一郎弁護士と、米国流の刑事手続きに通じた高野弁護士だ。 弘中氏らは、同月28日、3回目の保釈を請求。「インターネット接続不可」や「携帯電話のメール禁止」「住居の出入り口に監視カメラ設置」「パソコン作業は弁護人の事務所で」など厳しい行動制限をゴーン氏に課す保釈条件を地裁に提案。 地裁はこれを受け入れ、「罪証隠滅の恐れがある」との検察側の反対意見を退けた。 保釈条件にはさらに、「事件関係者との接触禁止」「住居は東京都内に制限」「海外渡航禁止、パスポートは弁護人が保管」も加えられ、ゴーン氏は、金商法違反に対して2億円、特別背任に対して8億円の計10億円の保釈保証金を納めて、拘置所を出た。 特捜部が摘発した事件で容疑を否認している被告人の保釈は、争点や証拠を絞る公判前整理手続きで検察側、弁護側双方の主張が出そろうまで認められないのが通例だった。 だがゴーン氏の保釈時点では、整理手続きの日程は決まっておらず、検察を含む多くの法曹関係者が、地裁による異例の保釈判断に驚いた』、筆者はどうしても、主な取材源である検察「寄り」になってしまうようだ。
・『検察は反発「証拠隠滅を防げない」  しかし、常識的にみて、この条件で「罪証隠滅」を防げるのかは疑問だ。 住居の入口に監視カメラを付けても、住居の外で関係者と接触すればわからない。他人の携帯を使えば通信もチェックできないからだ。 検察のスポークスマンである久木元伸東京地検次席検事は8日の会見で、東京地裁の保釈決定を、「証拠隠滅を防ぐ実効性はない」と批判。 別の検察幹部は「裁判所は、ゴーン氏側が証拠隠滅しても構わない、と思っているのではないか」と憤った。 検察にとって予想外の事態になる「伏線」はあった。 特捜部は、ゴーン氏の8年分の過少記載容疑を前半の5年分と後半の3年分に分け、昨年12月10日に後半部分の容疑で再逮捕したが、東京地裁は、同月20日、検察が求めたゴーン氏らに対する勾留延長請求を却下した。 ゴーン氏らは容疑を否認していたが、地裁は、2つの逮捕容疑は「実質的にはひとつの事件」とし、捜査内容に踏み込んで、勾留延長しなくても捜査は尽くせた、と認定した。 その後、特捜部はゴーン氏側の保釈請求手続きが始まる直前の翌21日、会社法違反(特別背任)容疑でゴーン氏を逮捕。身柄を引き続き確保したが、検察幹部らは、裁判所が勾留判断で従来のスタンスを変えつつあるのではないか、と警戒していた』、特捜部は「8年分の過少記載容疑を前半の5年分と後半の3年分に分け」たようだが、余りに見え見えの小細工で、「地裁は、2つの逮捕容疑は「実質的にはひとつの事件」」としたのは当然だ。
・『海外からの「人質司法」批判 地裁の判断に影響の見方  「異例の保釈」の背景に何があったのか。 今回のゴーン氏の事件では、ゴーン氏の勾留が長くなるなかで、罪を自白しないと保釈が認められないという「人質司法」の問題が、海外メディアの報道をもとに大きくクローズアップされることになった。 それが、今回の裁判所の保釈判断に影響したとの指摘もある。 司法制度は国によって違う。勾留や保釈などの刑事手続きの是非についても、日本の制度・ルールのもとで適正に行われているかどうかで判断すべきで、「外圧」によって判断を変えるのは、司法のあるべき姿ではない。 当の裁判所も海外の論調に影響されたとは絶対、認めないだろう。 もっとも、「人質司法」が日本の刑事司法の暗部である、との認識は、かなり前から弁護士会や学会の共通認識だった。 裁判所と検察は、戦後の治安をともにささえてきたという「戦友意識」があり、裁判所側は、「容疑を持たれた被疑者、被告人には、すべからく、証拠隠滅する動機があり、保釈すれば罪証隠滅される恐れがある」との検察側の主張を受け入れがちだった。 高野弁護士は1月18日のブログで、この問題にも触れている。 それによると、最高裁事務総局が『会内限り』という限定付きで日弁連に秘密裏に提供した統計資料では、保釈された人(1万801人)のうち9割以上(9832人)は罪を自白した人で、罪を否認した人(5275人)について見ると、全公判期間を通じて保釈されるのは21.6%であり、公判前に釈放されるのは7.4%に過ぎない。 こうした声の高まりが、裁判所を動かした可能性はある』、「日本の制度・ルールのもとで適正に行われているかどうかで判断すべき」は建前論に過ぎず、現在その「制度・ルール」のあり方が国内からも問われていると捉えるべきだ。
・『裁判員裁判が「改善」のきっかけに  一方で裁判所でも、司法制度改革で国民が司法参加する裁判員裁判制度が2004年に導入されてから「人質司法」の改善に向けた具体的な動きが始まっていた。 大阪地裁判事だった松本芳希裁判官(京都大学大学院法学研究科教授)が06年6月、「保釈基準が厳格化しすぎている」などとして、罪証隠滅の恐れについて、個別具体的に判断すべきと指摘する論文を発表。 その考え方が次第に裁判官の間に浸透し、14年には最高裁が証拠隠滅の恐れについて「具体的な検討」を促す決定を出すに至った。 3月6日の朝日新聞朝刊は「最高裁によると、保釈を請求して判決までに認められた割合は、2000年は47%だったが、17年は66%に上昇した」と伝えた。 ただ、特捜事件だけは例外で、勾留が長期化する例がままあった。 松本論文発表以後でも、大阪地検特捜部が摘発した2009年の郵便不正事件で無罪が確定した厚生労働省元局長の村木厚子さんは164日、17年の森友学園事件で同特捜部が詐欺罪などで起訴した籠池泰典前理事長夫妻は299日に及んだ。 18年に東京地検特捜部が摘発したゼネコン大手4社によるリニア談合事件では、罪を認めない2社の幹部は291日にわたって勾留された』、罪状を否認する被告には、こんなに長く勾留されるというのは、やはり罪状を認めろとの陰湿な圧力で、人権問題だろう。
・『ゴーン氏に対する保釈決定は、特捜事件に対しても例外を認めないとする裁判所のスタンスを示したといえる。 ただ、ゴーン氏に対する裁判所の勾留と保釈の判断には、見過ごせない「ぶれ」もみられた。 東京地裁は、ゴーン氏が1月11日に起訴された後、ゴーン氏に対する接見禁止を解除した。 接見禁止は、共犯者との口裏合わせなどの罪証隠滅工作を防ぐために弁護士や特定の外交官以外との面会を禁止するものだ。それを解除したということは、起訴で捜査は一段落し、罪証隠滅の恐れがなくなったので誰と会ってもいい、と判断したということだ。 接見禁止を解除したのだから、11日に大鶴弁護士から出された保釈請求に対しても、許可するのが筋だったが、地裁は、3月7日までゴーン氏を勾留し続けた。 地裁の接見禁止解除と保釈請求却下の判断は明確に矛盾する。純粋に法律と事実だけで判断したのなら、こういう矛盾は起きない。地裁が勾留を続けた理由は何なのか、説明してほしいところだ。 この接見禁止解除と勾留継続の判断矛盾を裁判官は認識し、そのアンバランスをいずれ解消したいと考えていたはずだ。 裁判所にとって、弘中弁護士らが新たに提示した「ゴーン氏に厳しい行動制限を課す」保釈条件は、渡りに舟だったのではないか。 いずれにしろ、ゴーン氏に対する保釈判断は、前例として今後の裁判所の判断を縛ることになる。 検察は、特捜事件を含め、今後、被疑者、被告人の早期保釈を前提とした捜査への転換を迫られる可能性がある』、やはり筆者の検察への遠慮が目立つ。「転換」すべきだろう。
・『検察の「次の一手」注目される余罪捜査  そうした中で、検察の次の動きとして注目されるのが、特捜部のゴーン氏に対する余罪捜査だ。 3月6日の朝日新聞朝刊は「前会長がオマーンの日産販売代理店オーナーから3000万ドル(現在のレートで約34億円)を借り入れ、数年後に中東の日産子会社からその代理店に計約3500万ドル(同約39億円)が送金された」と伝えた。 「特捜部は、中東各国に捜査共助を要請。関係者の聴取や、日産を通じた現地での証拠集めを進めている」と報じている。 3月中にも、中東の関係国からの捜査共助に対する回答が寄せられるとの情報もある。その証拠に対する評価次第で、捜査の次の展開が決まりそうだ。 毎日新聞(3月9日朝刊)は、8日に地裁では開かれたゴーン氏の特別背任事件に関する裁判所、検察、弁護側の三者協議の後、取材に応じた弘中弁護士が、(協議で)検察側は前会長を追起訴する可能性について、「ないとは言えない」と語ったことを伝えている。 ゴーン氏は12日の日産取締役会への出席許可を地裁に求めたが、地裁は検察の反対意見を入れて許可しなかった。 今後、始まる公判前整理手続きは最低でも数ヵ月はかかるとみられ、実際に公判が始まるのは、早くて年内となりそうだ。 その間も、検察と弁護団、地裁の間では、さまざまな駆け引きが続く』、中東案件で追起訴する場合には、再びゴーン氏を拘留するのだろうか。当面、目が離せないようだ。

第三に、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が3月12日付け同氏のブログに掲載した「日産、株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”」を紹介しよう。
https://nobuogohara.com/2019/03/12/%E6%97%A5%E7%94%A3%E3%80%81%E6%A0%AA%E4%B8%BB%E3%81%8C%E9%81%B8%E4%BB%BB%E3%81%97%E3%81%9F%E5%8F%96%E7%B7%A0%E5%BD%B9%E3%81%AE%E5%8F%96%E7%B7%A0%E5%BD%B9%E4%BC%9A%E5%87%BA%E5%B8%AD%E3%81%AB%E3%80%8C/
・『保釈が許可され、108日ぶりに身柄拘束を解かれたゴーン氏は、裁判所の許可があれば日産の取締役会に出席できるとされたことから、取締役会への出席を裁判所が許可するかどうかが注目された・・・。 3月11日の昼のNHKニュースでは、ゴーン氏が12日の日産取締役会出席の許可を裁判所に求めていることについて、「日産側は出席に反対する意向を検察に伝えている」と報じていた。 しかし、取締役は株主に選任されているのであり、その取締役の出席に、会社(執行部側)は反対できる立場ではない、そのような、会社法的にあり得ない「日産のゴーン氏取締役会出席への反対」を、そのまま報じるNHKに疑問を感じていたところ、同日夕方、東京地裁がゴーン氏の取締役会出席を許可しない決定をしたと報じられた。 朝日新聞ネット記事では、被告弁護人の弘中惇一郎弁護士は11日夕、記者団に対し、「日産から強い反対があった」ことを明らかにした。 弘中弁護士によると、日産側から取締役会の開催の案内を受けたため、ゴーン被告が取締役としての責任を果たすために出席を希望し、証拠隠滅の恐れを排除するため、地裁には「弁護士も同席して出席したい」旨を申し入れた。 一方、日産側は顧問弁護士を通じ、ゴーン被告の出席について「強硬に反対」する意見書を出したという。主な反対理由については、1)現在の日産としては今後のことを決めるのにゴーン被告は出席してもらう必要がない、2)ゴーン被告の出席により、他の取締役が影響を受け、罪証隠滅の恐れがある、3)ゴーン被告が出席すると議論がしにくい――というもの としている。 しかし、日産が上記のような意見を提出したというのは、どう考えても理解できない。 1)の「ゴーン氏出席の必要がない」、3)の「ゴーン被告が出席すると議論がしにくい」というのは、日産の執行部として言えることではない。株主に選任された取締役の出席の必要性は、会社執行部が否定できることではない。会社執行部は、取締役会に業務執行を委ねられているのである。その取締役会の一員の出席の要否について意見を言える立場ではない。 2)は「他の取締役が影響を受ける」ということだが、日産の取締役の中でゴーン氏が接触を禁止されている関係者は西川廣人社長だけのはずだ。その西川氏が、「ゴーン氏の取締役会出席によって影響を受け、罪証隠滅の恐れがある」という趣旨であろう。 裁判所は、株主に選任された取締役の、取締役会への出席について「必要性」を否定できる立場ではない。しかし、会社が「出席の必要がない」と意見を述べた場合、それは会社として許されることではないが、会社法上の判断を行う立場ではない刑事裁判所としては、その意見を尊重することになる』、「会社執行部は、取締役会に業務執行を委ねられているのである。その取締役会の一員の出席の要否について意見を言える立場ではない」というのはその通りで、この点を鋭く指摘したのは、私が知る限り郷原氏だけだ。
・『最大の問題は、ゴーン氏の取締役会出席が、関係者の西川氏の公判証言にどう影響するかだ。もし、日産の意見書で、「西川氏は、取締役会でゴーン氏と顔を合わせただけで、心理的圧迫を受け、公判証言ができないと言っている」と述べているのであれば、裁判所としても、公判審理に影響があると判断せざるを得ないであろう。 しかし、ゴーン氏には弁護士が同席し、証拠隠滅の恐れを排除するというのだから、もちろん、ゴーン氏が刑事事件に関する発言などするわけもない。それなのに、「取締役会で顔を合わせるだけで圧迫を受けて公判証言に影響する」と言っているとすれば、西川氏は、今後、ゴーン氏の刑事公判で、ゴーン氏の目の前で証言できるのだろうか。そのような情けないことを言う人間が社長を務めていて、日産という会社は本当に大丈夫なのだろうか。 西川氏は、ゴーン氏逮捕直後の会見で、社内調査の結果、重大な不正が明らかになったゴーン氏に対して「強い憤り」を覚えると述べていた。その時点で西川氏が言っていた「不正」のうち、唯一、検察が起訴事実とした「有価証券報告書虚偽記載」については、西川氏自身が、代表取締役CEOとして有価証券報告書の作成・提出義務を負う立場なのに、西川氏は、逮捕も起訴もされていない・・・。そういう西川氏にとって、ゴーン氏が取締役会に出てきたら「合わせる顔がない」というのはわかる。しかし、そのような「社長の個人的な後ろめたさ」から、株主に選任された取締役の取締役会出席に、「会社として」反対するということが、株式会社のガバナンス上許されるのであろうか。 西川氏は、また、ゴーン氏逮捕直後の会見で、「社内調査によって、カルロスゴーン本人の主導による重大な不正行為が明らかになった。会社として、これらは断じて容認できないことを確認のうえ、解任の提案を決断した。」と述べていたが、その不正の事実を、ゴーン氏本人が出席する取締役会に報告して解職の議案を出すのではなく、検察に情報提供して逮捕してもらってから、本人がいない臨時取締役会で解職を決議したのである。 日産は、ゴーン氏が保釈され、取締役会への出席の意向を示すや、出席に反対する意見書を提出するという、株式会社として「異常な対応」を行い、ゴーン氏の取締役会出席を回避した。しかし、それによって、日産自動車は、会社法上の規律もガバナンスも機能しておらず、もはや株式会社としての「体を成していない」ことを図らずも露呈したことになる。 今日は、日産取締役会の後、日産・ルノー・三菱自動車の共同記者会見が行われるとのことだ。しかし、この取締役会をめぐる動きは、西川社長の下では日産という会社が立ちいかなくなることを示しているように思える』、「「社長の個人的な後ろめたさ」から、株主に選任された取締役の取締役会出席に、「会社として」反対するということが、株式会社のガバナンス上許されるのであろうか」、との指摘は説得力がある。日産・西川社長は会社法を改めて勉強するきだろう。
タグ:日産自動車は、会社法上の規律もガバナンスも機能しておらず、もはや株式会社としての「体を成していない」ことを図らずも露呈 「社長の個人的な後ろめたさ」から、株主に選任された取締役の取締役会出席に、「会社として」反対するということが、株式会社のガバナンス上許されるのであろうか 西川氏は、今後、ゴーン氏の刑事公判で、ゴーン氏の目の前で証言できるのだろうか。そのような情けないことを言う人間が社長を務めていて、日産という会社は本当に大丈夫なのだろうか 最大の問題は、ゴーン氏の取締役会出席が、関係者の西川氏の公判証言にどう影響するか 、会社が「出席の必要がない」と意見を述べた場合、それは会社として許されることではないが、会社法上の判断を行う立場ではない刑事裁判所としては、その意見を尊重することになる 会社執行部は、取締役会に業務執行を委ねられているのである。その取締役会の一員の出席の要否について意見を言える立場ではない 3)ゴーン被告が出席すると議論がしにくい 2)ゴーン被告の出席により、他の取締役が影響を受け、罪証隠滅の恐れがある 主な反対理由については、1)現在の日産としては今後のことを決めるのにゴーン被告は出席してもらう必要がない ゴーン被告の出席について「強硬に反対」する意見書 日産側 「日産、株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”」 同氏のブログ 郷原信郎 特捜部は、中東各国に捜査共助を要請。関係者の聴取や、日産を通じた現地での証拠集めを進めている 検察の「次の一手」注目される余罪捜査 罪証隠滅の恐れについて、個別具体的に判断すべきと指摘する論文を発表 大阪地裁判事だった松本芳希裁判官(京都大学大学院法学研究科教授) 裁判員裁判が「改善」のきっかけに 「人質司法」が日本の刑事司法の暗部である、との認識は、かなり前から弁護士会や学会の共通認識 海外からの「人質司法」批判 地裁の判断に影響の見方 2つの逮捕容疑は「実質的にはひとつの事件」 東京地裁は、同月20日、検察が求めたゴーン氏らに対する勾留延長請求を却下 8年分の過少記載容疑を前半の5年分と後半の3年分に分け、昨年12月10日に後半部分の容疑で再逮捕 検察は反発「証拠隠滅を防げない」 地裁はこれを受け入れ、「罪証隠滅の恐れがある」との検察側の反対意見を退けた 厳しい行動制限をゴーン氏に課す保釈条件を地裁に提案 高野弁護士 弘中惇一郎弁護士 公判前整理手続きが始まる前では初めて 「メディアスクラム」対策 予想外の「変装」姿 保釈を巡るさまざまなせめぎ合い 東京地検特捜部が摘発した事件の否認被告が、裁判の争点や証拠を絞り込む公判前整理手続きの前に保釈を認められるのは極めて異例 勾留は108日 「ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由」 ダイヤモンド・オンライン 村山 治 残念なのは、前近代的な日本の企業社会に改革の先鞭をつけたゴーン被告が、社内のごますりとメディアのお囃子に乗せられて、自らを「カリスマ」と勘違いしてしまったことである 「カリスマ・ゴーン」 その尻馬に乗ったのがメディア ゴーン氏が普通の経営者なら、会社を傾けた自分たちが怠慢で無能だったことになる。自分たちの非を隠すために、ゴーン被告を「不可能を可能にした神様」に祭り上げた なぜ日産は「神様」に祭り上げたのか 「カリスマ」 「ゴーン・マジック」 鉄鋼業界は3社体制に再編 「系列」は見事に解体された 日産事件をきっかけにトヨタ自動車など他の自動車メーカーも鉄鋼メーカーの選別を始めたのだ。流れは自動車、鉄鋼業界にとどまらず、電機メーカーなども素材、部品メーカーを選別し始めた ゴーン被告はこうした日本的、馴れ合いの商慣習を一顧だにせず、日本以外の国と同様に競争入札を実施 コスト競争力ではNKKが一段劣っていたのだが、日産は同じ芙蓉グループのNKKを「系列」とみなし優遇 黒船ゴーンで鉄鋼業界に激震 日本だけは逮捕されたたけで、罪人扱いを受ける 「推定無罪」 被告は罪人ではなく、その人権は配慮されるべき 有罪率99.9%とも言われる日本では、長期勾留された人間がその非人道性を訴えても、「所詮は罪人の泣き言」と無視されてきた 日本の刑事司法制度に「黒船」が襲来 家族は3月4日、ゴーン被告の長期勾留が人権侵害に当たるとして、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)で恣意的拘束について検証する作業部会に申し立てを行った 「国連」を持ち出された途端、腰砕けに 「人質司法」は「日本の後進性を映し出す鏡」 ゴーン改革で「系列」に代表される日本企業の古い商慣習を粉砕した 「ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡」 日本は再び「ゴーン・ショック」に襲われる 大西康之 新潮社フォーサイト 世界に晒された日本の刑事司法 日産ゴーン不正問題 (その7)(ついに保釈! 2度目の黒船「ゴーン」が日本を救うか 「系列」と「人質司法」ゴーン被告は日本の後進性を映し出す鏡、ゴーン元会長の「異例の釈放」に法曹界がざわついた理由、日産 株主が選任した取締役の取締役会出席に「会社」が反対する”異常事態”) JBPRESS 次に破壊されるのは、世界から批判を浴びている日本の「人質司法」だ 1度目
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