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GoTo問題(その3)(天下の愚策「GoTo代替事業」が招く感染急増の最悪シナリオ、HIS(上)GoToトラベル不正受給のキーマンは元社長だった、HIS(下)モンゴルのハーン銀行を子会社に持つ澤田HDを売却、ネット旅行社で浮上 HIS事件との共通点も散見 相次ぐ「GoTo不正」で浮き彫りとなった深すぎる闇) [パンデミック]

GoTo問題については、一昨年12月20日に取上げたままだった。今日は、(その3)(天下の愚策「GoTo代替事業」が招く感染急増の最悪シナリオ、HIS(上)GoToトラベル不正受給のキーマンは元社長だった、HIS(下)モンゴルのハーン銀行を子会社に持つ澤田HDを売却、ネット旅行社で浮上 HIS事件との共通点も散見 相次ぐ「GoTo不正」で浮き彫りとなった深すぎる闇)を取上げよう。

先ずは、昨年3月31日付け日刊ゲンダイ「天下の愚策「GoTo代替事業」が招く感染急増の最悪シナリオ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/287209
・『再び、天下の愚策を繰り返すのか――。全国で停止中のGoToトラベルに替わる国の支援事業が、4月1日からスタートする。新型コロナウイルスの感染再拡大が勢いを増す中、人の移動を促すアクセルを踏んだら何が起きるのか――。正気の沙汰とは思えない。 国の支援事業は、GoToトラベル再開までの間、5月末まで実施される。県境をまたがない「県内旅行」を独自に観光支援している自治体に対し、国が1人当たり最大7000円を支援する。今年度のGoToトラベル予算が、まだ約1兆2000億円も残っていて、そのうち約3000億円を充てる』、「GoToトラベル」の再開は見送られたが、代わりに地域観光事業支援がスタート。
・『4月1日スタート 全国32道県が対象  もちろん、感染が拡大している自治体には認められないが、それでも感染状況のハードルは低く、「ステージ2」(感染漸増)以下の自治体なら対象となる。厚労省の発表(26日時点)によると、32道県が病床や陽性者数など「ステージ2」の6指標をすべてクリアしている。47都道府県の7割近くがその気になれば国から観光支援を受けられるのである。これから気候がよくなることもあり、7000円の支援を受けられるなら、旅行に行こうという人も多いはずだ。もし、各地で県内旅行が盛り上がったら、どうなるのか』、現実にはそこまでの「盛り上がり」はなかった。
・『驚異の第4波…グーグル予測  宮城では2月に入り、1日の感染者数が1ケタになる日もあり、2月23日からGoToイートを再開したら、人口当たりの感染者数が全国最多となるなど感染爆発を招いた。独自の緊急事態宣言を発令する事態となり、今も深刻な状況が続いている。 GoTo代替事業を強行すれば、各地で宮城の二の舞いになりかねない。西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)が言う。 「県内に限っても旅行を後押しするのは危険です。ステージ2は感染者が少ないとはいえ、漸増です。検査を受けていない無症状の陽性者もいる。せっかく、漸増で踏んばっていたのに、人の移動が盛んになれば、ステージ3(感染急増)に向かうリスクは高い。第4波は変異株が主流になり、第3波をはるかに超える恐れもある。大きな波が押し寄せようとしている時に、自治体に“ニンジン”をぶら下げて、感染リスクの高い事業を国が支援するのは理解に苦しみます」』、なるほど。
・『1日の新規陽性者1万4000人超  各地で急激なリバウンドが広がっている。今後、第4波が第3波を上回るとの観測もある。 グーグル予測(29日時点)によると、3月27日~4月23日の28日間の全国の新規感染者数は計14万1704人。4月7日には、1日に3000人、14日には5000人を突破する。18日には8000人を超え、第3波のピーク7949人(1月8日)を上回る。23日には1万4480人まで膨れ上がると見込んでいる。足元の2000人程度から約7倍である。 このタイミングでの観光支援はどう考えても、むちゃだ。予算が余っているなら、医療支援に回せばいいのに、菅政権はGoTo予算の消化に固執しているのだから、どうかしている。 あちこちで感染爆発が起きてもおかしくない』、岸田内閣になっても、「GoToトラベル」再開は塩漬け状態だ。

次に、2月2日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの有森隆氏による「HIS(上)GoToトラベル不正受給のキーマンは元社長だった」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/300756
・『旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)は2021年12月28日、子会社2社による政府の観光支援事業「GoToトラベル」の給付金不正受給問題を受け、管理監督責任を怠ったとして創業者の澤田秀雄会長兼社長ら取締役3人の減俸を発表した。 澤田は月額報酬を3カ月間75%減額し、子会社の取締役を兼務する中森達也専務、織田正幸常務は同50%減とした。 子会社2社のうち、悪質性が高いと認定したミキ・ツーリスト(東京・港区)の檀原徹典社長は解任。ジャパンホリデートラベル(大阪市)については不正受給をしたものの故意ではなかったと判断。呉煜康社長は取締役に降格となった。 観光庁が同日に発表した調査結果によると、ミキ社とジャパン社はホテル運営会社JHAT(ジェイハット、東京・港区)と合計7億9900万円の給付を申請し、うち3億1600万円を受給していた。地域共通クーポンも3社合計で3億4200万円分の発行を受け、3億3100万円分が使われていた。 観光庁は給付金と地域共通クーポンの不正使用分の返還を求める。今後、再開される予定の「GoToトラベル」に関して3社の参加を停止した。 斉藤鉄夫国土交通相は同日の会見で、HISを厳重注意したと明らかにし、「刑事告訴を視野に入れる」とした。給付金不正受給問題は刑事事件に発展することになる。 HIS子会社のGoTo不正受給をスクープしたのはTBS「news23」の「調査報道23時」(12月9日)の一連の報道。「仕掛け人は元HIS社長でJHATの平林朗社長だ」と報じた』、驚くべき事件で、HISが舞台になった点では、「澤田会長」の責任も重大だ。
・『かつては澤田会長の側近  TBSの報道を受け、HISは顧問弁護士らでつくる調査委員会を立ち上げ、同24日、調査報告書を公表した。会見で、「かつてHIS社長だった平林朗が不正に関わっていたのか」と問われた澤田は「むかついている。なんでそんなことをしたのか」と憤りをあらわにしたと伝わっている。 平林は澤田の最側近だった人物だ。澤田は世界50カ国を旅し、その体験をもとに、帰国後、若者向けの個人旅行の格安旅行券の販売を始めた。 平林もフリーターの海外放浪者だった。旅行ガイドのアルバイトをしながら米国、中南米を放浪。帰国後の1993年9月、アルバイトとしてHISに入社。翌94年、正社員となり、インドネシア・バリ島に開設する支店を実質的に立ち上げた。 その働きぶりが澤田の目に留まり、34歳で2000人のスタッフを擁する関東営業本部長代理に就任。08年4月、40歳の若さで社長に大抜擢された。 会長だった澤田は長崎県佐世保市の大型リゾート施設、ハウステンボスの再建を引き受けハウステンボス内に定住した。 澤田は16年11月、HISの社長に復帰した。平林は代表権のない副会長にタナ上げされた。誰が見ても降格人事だった。) トップの座から引きずり降ろされた平林は、面白かろうはずがない。17年10月末、“一身上の都合”でHIS副会長を退任。同じタイミングで、取締役の高木潔も去った。高木はハウステンボスの専務取締役として、テーマパークの復活を牽引した立役者だ。 平林は18年6月、訪日観光客を対象としたホテルを運営するJHATを立ち上げる。社長は平林、副社長にはHISを同時に辞めた高木が就いた。国内外の金融・小売・旅行会社が出資した。 「MONday(マンデー)」の名称のホテルを全国展開する。東京オリンピック・パラリンピックが開催される20年までに東京都心と京都市で計8施設を開く計画だったが、新型コロナウイルスの感染拡大が平林のもくろみをご破算にした。訪日外国人旅行者向けのホテルと外国人労働者を対象としたアパートメントホテルが2本立てのビジネスモデルは成り立たなくなった。) 資金繰りに窮した揚げ句、架空の宿泊プランをデッチ上げ、GoTo不正受給に走ったとされる。 澤田は12月24日の記者会見で、平林との現在の関係について、「私がハウステンボスの社長をしていた時にHISの社長を任せたが、私がHISに戻った時に外れてもらった。それ以降、話し合いをしたことも取引も一切ない」と突き放した。「当たり前だが、今後はJHATと取引は一切しないし、関連会社にもさせない」と言い切った。 GoTo不正受給の問題だけが、澤田をこれほど苛立たせていたわけではない。=敬称略)』、「澤田は・・・私がハウステンボスの社長をしていた時にHISの社長を任せたが、私がHISに戻った時に外れてもらった。それ以降、話し合いをしたことも取引も一切ない」、社長を外して以降は、「話し合い」も「一切ない」というのは、どう考えても不自然過ぎて、苦し紛れのウソの可能性がある。

第三に、続きを、2月3日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの有森隆氏による「HIS(下)モンゴルのハーン銀行を子会社に持つ澤田HDを売却」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/300814
・『エイチ・アイ・エス(HIS)の創業者、澤田秀雄は“コロナ増資”資金を捻出するために、自分の名前を冠した上場企業を売却した。 モンゴル・ハーン銀行を子会社に持つジャスダック上場の澤田ホールディングスは21年12月14日、臨時株主総会を開き、新体制への移行を決めた。社名を22年1月1日付でHSホールディングス(HD)に変更した。 筆頭株主だった会長の澤田秀雄と社長の上原悦人ら全役員が退任し、新社長には投資会社メタキャピタル(東京・港区)が送り込んだ日本興業銀行(現・みずほ銀行)出身の原田泰成が就任した。 澤田は99年、協立証券(現・エイチ・エス証券)を買収し、金融証券事業に参入。03年、国際入札によってモンゴルのハーン銀行をわずか8億円で買収した。ハーン銀行は首都ウランバートルから遊牧民が暮らす地方まで、モンゴル全土に店舗網を広げ、個人・中小企業などのリテール分野ではモンゴル最大の銀行といわれ、澤田HDの連結売上高の85%、営業利益の90%を稼ぎ出している(21年3月期)。 勢いに乗り、12年、ロシアのソリッド銀行を持ち分法適用会社に。17年、キルギスのキルギスコメルツ銀行を子会社にした。 今回、澤田HDを買収したメタキャピタルは、元ソニー会長の出井伸之が取締役会議長、元財務省理財局次長の小手川大助らが取締役に名を連ねる投資ファンドだ。メタ社は20年2月20日、澤田HDに対しTOB(株式公開買い付け)を実施。208億円を投じ、50.1%を取得して子会社にする計画だった。 澤田と資産管理会社が持ち株会社を全て売り渡せば123億円が手に入る。これがHISの増資を引き受ける原資になるはずだった。だが、TOBは21年7月16日に不成立となるまで343日に及ぶ異例の長期戦となった。モンゴル中央銀行が支配株主の異動について事前の承認を与えない状況が続いたためだ。 ところが事態は急展開する。TOB不成立後、モンゴル中央銀行から事前承認が得られた。メタ社は澤田ら3者との相対取引で株式を取得した。 その結果、21年11月1日付で筆頭株主が異動した。メタ社(名義はウプシロン投資事業)が32.01%を保有する筆頭株主となった。一方、澤田の保有比率は26.81%から12.58%に低下し、第3位の株主に後退した。臨時総会を経て経営陣が入れ替わる素地が出来上がったわけだ。 HSHDの新たなオーナーは社外取締役に就いた服部純市。投資会社メタ社に個人で260億円を拠出している。これが澤田HD買収の“軍資金”となった。 服部純市は世界的時計ブランド・セイコーホールディングスの本家の御曹司。将来のセイコーグループの総帥と目されていた。 ところが、06年11月、グループの製造部門を担うセイコーインスツル(SII)の臨時取締役会で会長の服部純市が解任された。本家の御曹司を追放するクーデターとして話題になった。その彼がHSHDのオーナーとして株式市場のひのき舞台に返り咲いた』、「服部純市」氏も今回の登場人物の派手さに華を添えたようだ。
・『コロナ増資の資金を捻出  HISはコロナ禍で、主力の海外旅行が壊滅的な打撃を受けた。資金難に陥り、“コロナ増資”に走る。20年10月の第三者割当増資は香港のファンドが引き受け、新株予約権を澤田会長兼社長が引き受ける形で222億円を調達した。 さらに21年11月から年末にかけ3回にわけて第三者割当増資を行い、アジア系投資ファンドが資金を出し、新株予約権は澤田に割り当て、最大215億円を調達した。 21年10月期の連結決算は売上高が20年10月期比72%減の1185億円、最終損益は500億円の赤字(20年10月期は250億円の赤字)だった。最終赤字は2期連続で赤字幅は過去最大だ。新型コロナによる渡航制限や水際対策が強化されたため海外旅行の取り扱いが大幅に減った。不正受給は売上高で20億円、最終損益は3億9500万円のマイナスに作用した。 オミクロン株の第6波が襲い、海外旅行の回復のメドは立たない。子会社2社によるGoToトラベルの給付金不正受給事件が追い打ちをかける。 HISは1月18日、「子会社の役員選びにHISがより積極的に関与する」などとする6項目の再発防止策をまとめ観光庁に提出した。澤田秀雄は断崖絶壁に立たされた。=敬称略』、「澤田秀雄は断崖絶壁に立たされた」、同感である。

第四に、3月9日付け東洋経済Plus「ネット旅行社で浮上、HIS事件との共通点も散見 相次ぐ「GoTo不正」で浮き彫りとなった深すぎる闇」を紹介しよう。
・『調査報告書から不正の経緯を読み解くと、あまたの問題点が浮かび上がった。 旅行業界を揺るがす「Go Toトラベル不正問題」。その闇の深さが浮き彫りとなった。 旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)の子会社に続き、2月にGo To トラベルの不適切な申請が判明したネット専業の旅行会社・旅工房。同社は3月2日、西村あさひ法律事務所の高橋宏達弁護士を委員長とする第三者委員会の調査報告書を公表した。 旅工房は個人客に向けてパッケージ旅行を企画・販売し、航空券やホテル宿泊などの旅行商品を販売している。売り上げの大半が海外旅行で、ネットを駆使しつつも、コンシェルジュによるサービスを併用するのが特徴だ。顧客は30~40代の女性が中心となっている』、第3の記事のHIS子会社以外にも、不正事件が発生したようだ。
・『最大で4億円の損失が発生  調査委員会は焦点となった旅行商品について、不泊が多かったことなどから、給付金の対象とすることが不適切とされる可能性があると結論付けた。旅工房は今回の件で、仕入れ先に対して計上している債務が3億1370万円。地域共通クーポンについてもGo To トラベル事務局から9362万円分の返還を求められる可能性があり、最大で4億円超の損失が発生する可能性がある。 また、旅工房については積極的に不適切な催行に関与したわけではなく、Go To トラベルの仕組みから不当な利益を得ようとする取引先に利用された可能性を指摘した。調査報告書から不正の経緯を読み解くと、渦中の旅行商品を取り巻く奇妙な状況やHISグループの問題との関連性、Go To トラベル全体の課題など、あまたの問題点が浮かび上がった。 事の発端は2020年10月、ホテル運営会社JHATの社長で旅工房の社外取締役だった平林朗氏が、ゴルフの場でIT導入補助金の活用支援などを行うB社の社長を旅工房の高山泰仁会長兼社長に紹介したことだ。平林氏は2016年までHISの社長を務め、HISグループにGo Toを利用した不正な取引を持ち掛けたとされる人物でもある。 B社が旅工房に提案したのは、eラーニングでSNSの活用やECサイトの販売ノウハウなどを学ぶ、求職者向けの宿泊付き研修プラン。料金は1人1泊4万円で、2020年11月下旬から2021年1月末までの研修だ。取引をまとめたのは、旅工房の前澤弘基取締役。商品はWebシステム開発などのコンサルティングを行うA社が購入し、その窓口をB社が担当した。 B社は同時にJHAT、HISグループの旅行会社・ジャパンホリデートラベル(以下ジャパンホリデー)とも類似のスキームについて協議しており、参加者の募集も始めていた。これはHISグループの問題における、取引の1つとみられている。 旅工房に提案したプランと合わせると、旅行商品の参加者は2000人を超える。11月、旅工房の常勤取締役の会議でこの点について質問が投げかけられた。この人数を募集できるのか、応募者は実際に宿泊するのかというものだ。これに対し、B社は旅工房の商品に参加する560人のリストを送付。560人は一般人で、本人確認書類も提出する形で申し込みされており、架空ではなかった。 国内旅行の手配ノウハウに乏しい旅工房は、ホテル客室の手配をジャパンホリデーに依頼。11月20日から順次、研修がスタートした』、「560人は一般人で、本人確認書類も提出する形で申し込みされており、架空ではなかった」、その面では問題はなさそうだ。
・『提案者と購入者、研修提供者が同一か  ところが、チェックインの人数が予定よりも少ない。ジャパンホリデーは翌21日、旅工房に状況を確認するように連絡。旅工房もB社に、参加者への連絡を要請した。購入者のA社も3度にわたり参加者にチェックインを促すメールを送信したが、結局、560人中297人が宿泊せず、予定されていた全2万0240泊中1万1078泊が利用されなかった。 A社にとって今回の研修は、育成した人材の派遣・就職によって利益を得るモデル。代金はA社が全額負担し、参加者は無償だった。そのうえ、研修形態は自宅でも受講可能なeラーニングだ。当時はコロナの感染者が急増し、Go To事業への批判が集まっていたこともあり、宿泊をやめた者が多かったようだ。 観光需要を喚起するGo Toの趣旨と異なり、商品自体も研修がメインだった。旅行代金4万円の内訳は、ホテル代が3000円、研修が3万3000円、旅工房の手数料が4000円。Go Toの割引(1万4000円)を差し引くと、実質2万6000円で3万3000円の研修が受けられてしまう。 今回のスキームが呆れるほど悪質なのは、商品を提案したB社、購入したA社、研修を提供したD社が同一または一体だった可能性が高い点だ。つまり、この事業者が購入者として2万6000円を支出しつつ、研修提供者として3万3000円(ホテル代と旅工房の手数料を除く)を得る。「旅行者1人1泊につき7000円の利益を得られるように思える構造となっていた」(調査報告書)のである。 調査委員会から「積極的に関与した可能性は認められない」とされた旅工房にも問題は多い。地域共通クーポンを宿泊者ではなくホテル側に渡し、ホテルがリネン・清掃代として計上(具体的な使途は不明)されていたことがわかった。クーポンは地域の振興が目的で、利用者が宿泊した地域で使うもの。ホテルのリネン代に充てるなど前代未聞だ。これを決めたのは前澤取締役と平林氏だった。 HISグループの問題とも深く関係している。旅工房にジャパンホリデーを紹介したのはB社だ。B社は前述のように、HISグループの問題における取引を行った会社だ。観光庁・Go To トラベル事務局もHISグループの問題と旅工房の事例を1つの問題として調査している。 「共通するスキームが使われているのが事実。進捗を伝えることはできないが、捜査機関と十分に連携して調査している。できるだけ早く刑事告訴したい」(観光庁)』、「研修形態は自宅でも受講可能なeラーニング」、なのに宿泊させるのは不自然だ。「呆れるほど悪質なのは、商品を提案したB社、購入したA社、研修を提供したD社が同一または一体だった可能性が高い点だ。つまり、この事業者が購入者として2万6000円を支出しつつ、研修提供者として3万3000円(ホテル代と旅工房の手数料を除く)を得る。「旅行者1人1泊につき7000円の利益を得られるように思える構造となっていた」、酷い話だ。
・『Go To復活へ再発防止できるか  調査委員会は事業者を問わず、Go To全体の運用実態にも疑問を投げかけている。利用者が割引やクーポンを受けていながら宿泊せず、給付金の返還を請求されていない例は「むしろ多数存在していたと推測される」(調査報告書)。宿泊するつもりがなく旅行商品を購入し、今回の研修に当たる付帯サービスのみ提供を受けた例も「相当数存在したと考えられる」(同)としているのだ。 観光庁はこうした報告書の指摘に対し、「不泊が対象外というのは一貫してきた。不適切な事案を放置しているように言われるのは心外。審査は事細かくやっている」と反論している。 Go To事務局側も事業者への説明やサポートが不十分で、対象商品の明確化が遅れた側面はある。だが、観光需要の喚起という趣旨から逸脱した例が多く存在したとすれば大問題だろう。Go To再開には、全容解明と同時に再発防止策が打たれ、旅行業界に対する不信が払拭されることが必須条件だ』、「宿泊するつもりがなく旅行商品を購入し、今回の研修に当たる付帯サービスのみ提供を受けた例も「相当数存在したと考えられる」、「GoToトラベル」に伴う問題の多くは、制度設計のいい加減さがある。「GoToトラベル」を復活するには、制度の再設計が必要だが、私は「GoToトラベル」復活そのものに反対である。余った予算は大蔵省に戻すべきだ。
タグ:「560人は一般人で、本人確認書類も提出する形で申し込みされており、架空ではなかった」、その面では問題はなさそうだ。 (その3)(天下の愚策「GoTo代替事業」が招く感染急増の最悪シナリオ、HIS(上)GoToトラベル不正受給のキーマンは元社長だった、HIS(下)モンゴルのハーン銀行を子会社に持つ澤田HDを売却、ネット旅行社で浮上 HIS事件との共通点も散見 相次ぐ「GoTo不正」で浮き彫りとなった深すぎる闇) 第3の記事のHIS子会社以外にも、不正事件が発生したようだ。 GoTo問題 有森隆氏による「HIS(上)GoToトラベル不正受給のキーマンは元社長だった」 「GoToトラベル」の再開は見送られたが、代わりに地域観光事業支援がスタート。 「研修形態は自宅でも受講可能なeラーニング」、なのに宿泊させるのは不自然だ。 現実にはそこまでの「盛り上がり」はなかった。 「澤田秀雄は断崖絶壁に立たされた」、同感である。 東洋経済Plus「ネット旅行社で浮上、HIS事件との共通点も散見 相次ぐ「GoTo不正」で浮き彫りとなった深すぎる闇」 日刊ゲンダイ 岸田内閣になっても、「GoToトラベル」再開は塩漬け状態だ。 「服部純市」氏も今回の登場人物の派手さに華を添えたようだ。 有森隆氏による「HIS(下)モンゴルのハーン銀行を子会社に持つ澤田HDを売却」 「澤田は・・・私がハウステンボスの社長をしていた時にHISの社長を任せたが、私がHISに戻った時に外れてもらった。それ以降、話し合いをしたことも取引も一切ない」、社長を外して以降は、「話し合い」も「一切ない」というのは、どう考えても不自然過ぎて、苦し紛れのウソの可能性がある。 「呆れるほど悪質なのは、商品を提案したB社、購入したA社、研修を提供したD社が同一または一体だった可能性が高い点だ。つまり、この事業者が購入者として2万6000円を支出しつつ、研修提供者として3万3000円(ホテル代と旅工房の手数料を除く)を得る。「旅行者1人1泊につき7000円の利益を得られるように思える構造となっていた」、酷い話だ。 「宿泊するつもりがなく旅行商品を購入し、今回の研修に当たる付帯サービスのみ提供を受けた例も「相当数存在したと考えられる」、「GoToトラベル」に伴う問題の多くは、制度設計のいい加減さがある。「GoToトラベル」を復活するには、制度の再設計が必要だが、私は「GoToトラベル」復活そのものに反対である。余った予算は大蔵省に戻すべきだ。 驚くべき事件で、HISが舞台になった点では、「澤田会長」の責任も重大だ。 日刊ゲンダイ「天下の愚策「GoTo代替事業」が招く感染急増の最悪シナリオ」
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パンデミック(医学的視点)(その25)(「ブースター接種」はどこまで科学的に有効なのか イスラエルではすでに4回目接種も始まったが、あまり語られないオミクロン株の「後遺症問題」 重症化リスクが下がったとしても安心できない、コロナ後遺症で「脳の霧」が出る!?脳脊髄液中に確認された抗体とは?) [パンデミック]

パンデミック(医学的視点)については、1月13日に取上げた。今日は、(その25)(「ブースター接種」はどこまで科学的に有効なのか イスラエルではすでに4回目接種も始まったが、あまり語られないオミクロン株の「後遺症問題」 重症化リスクが下がったとしても安心できない、コロナ後遺症で「脳の霧」が出る!?脳脊髄液中に確認された抗体とは?)である。

先ずは、1月18日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「「ブースター接種」はどこまで科学的に有効なのか イスラエルではすでに4回目接種も始まったが」を紹介しよう。
・『1年前は、新型コロナウイルス感染症のワクチンを2回接種するだけで——あるいはジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンなら1回で——十分な予防効果が得られると考えられていた。 しかし、驚くほど感染力の強いオミクロン株が出現し、イスラエルでは重症化リスクの高い人々を対象に4回目の接種が始まっている。アメリカ疾病対策センター(CDC)はブースター接種の対象を若者にも広げ、「ワクチン接種が完了した」という表現を用いるのを避けるようになった。2回接種ではもはや十分といえなくなったためだ。 これからは、ワクチン接種状況が「最新の基準を満たしている」のかいないのか、といった表現が使われることになるだろう。そうなれば当然、次のような疑問が出てくる。新型コロナワクチンの接種に終わりはあるのか、数カ月ごとに袖をまくり上げてブースター(追加)接種を繰り返すことになるのか、という疑問だ』、日本でも「ブースター接種」することになり、医療従事者から優先的に「接種」が進んでいる。
・『効果を裏付けるデータは存在しない  科学者たちはこのウイルスに何度となく予想を裏切られ、身の程を思い知らされてきたため、今後の見通しを示すことに乗り気ではない。ただ、今回の取材では10人ほどの科学者が、ウイルスが今後どのような展開をたどろうとも、全人口を対象に数カ月ごとにブースター接種を繰り返すのは現実的ではないし、科学的でもない、と話した。 イエール大学の免疫学者、岩崎明子氏は、「ワクチンを定期的に接種する例がほかにないわけではないが、半年ごとにブースター接種を繰り返すより、もっといいやり方があるだろう」と話す。 そもそも、数カ月ごとにワクチン接種の行列に並ぶよう人々を説得できるのかといえば、その勝算はかなり低い。アメリカでは成人の約73%がワクチン接種を完了しているが、ブースター接種を受けることを選んだのは今のところ3分の1強にとどまる。 「はっきりいって、これは長期的に維持できる戦略とは思えない」と、アリゾナ大学で免疫学を研究するディープタ・バタチャリア氏は指摘する。 同じく重要な点として、現行ワクチンによる4回目接種の効果を裏受けるデータが存在しないという問題もある(ただ、免疫不全の人は話が異なり、こうした人々は4回目接種で防御効果が高まることは十分に考えられる)。 オミクロン株で感染が急速に広がったアメリカでは、できるだけ早期に3回目の接種を受けるべき、というのが専門家のコンセンサスになっている。とはいえ、追加接種による免疫のブースト効果は一時的なものにすぎず、3回目の接種からわずか数週間で抗体濃度が低下することを示す予備的研究もすでに出ている。さらに、抗体濃度がピークにあるときでさえ、3回目の接種ではオミクロン株に対し感染を一様に予防できるほどの効果は引き出せない。 オミクロン株、あるいは今後出てくる新たな変異株に対して免疫を引き上げることを目的とするのなら、最初に感染が広がったウイルス株に合わせて開発されたワクチンを繰り返し接種するのではなく、ほかの戦略を用いた方がよいというのが専門家の見解だ。 一部では「汎コロナウイルスワクチン」の開発も進められている。変異が極めて遅いか、まったく変異を起こさないウイルス部位を標的とするワクチンだ。 現行ワクチンを打った人々に、ブースターとして経鼻または経口ワクチンを用いることも考えられる。経鼻・経口ワクチンはウイルスの侵入経路となっている鼻腔などの粘膜表面に抗体をつくり出すため、感染予防にはより適している。 さらに、ワクチン接種の間隔を広げるだけで、免疫が強まる可能性もある。これは、新型コロナ以外の病原体に対する戦いで得られた科学的知見だ』、「追加接種による免疫のブースト効果は一時的なものにすぎず、3回目の接種からわずか数週間で抗体濃度が低下することを示す予備的研究もすでに出ている」、「わずか数週間で抗体濃度が低下」、とは頼りない話だ。
・『感染を完全に防ぐのは無理  ニューヨークのロックフェラー大学で免疫学を研究するミシェル・ヌッセンツヴァイク氏は、「ワクチン接種は入院率の抑制に極めて高い効果を発揮している」とした上で、感染を完全に防ぐのは無理だということがオミクロン株によってはっきりしたと話す。 ワクチンで感染の拡大を防げるのなら、定期的なブースター接種には合理性があるかもしれない。「しかしオミクロン株(がこれだけ感染を広げている現状)を踏まえると、(感染防止目的のブースター接種には)意味がない」とヌッセンツヴァイク氏は語る。「目指すべきは、入院を防ぐことだ」。 アメリカでパンデミック関連の首席医療顧問を務めるアンソニー・ファウチ氏も、本当に重要なのは入院を減らすことだと述べている。 ブースター接種で感染を防ぐには、実施のタイミングを変異株の流行にぴったりと合わせ込む必要がある。例えば、昨年秋に3回目の接種を済ませた人は多いが、オミクロン株が流行し始めたころには免疫のブースト効果がすでに低下し、感染しやすい状況になっていた。) インフルエンザの場合は一般的に、冬の流行が始まる直前にワクチン接種を受けることが推奨されている。新型コロナもインフルエンザと同様、季節的に感染を繰り返す病気となる可能性があるが、そうなれば「毎年、冬の前にブースター接種を行うシナリオも考えられる」と、ペンシルベニア大学の免疫学者、スコット・ヘンズリー氏は語る。 さらにインフルエンザの教訓としては、頻繁に接種しても効果が期待できない、というものもある。インフルエンザワクチンを1年に2回接種しても、「それに比例して効果が上がるわけではないので、そこまで頻繁に接種を行う意味はないだろう」と、香港大学で公衆衛生を研究するベン・カウリング氏は言う。「頻繁なワクチン接種で免疫を強めるのは困難だと思う」。 あまりにも頻繁なブースター接種は害をもたらしかねない、といった懸念も出ている。これには理論上、2つの可能性がある。 1つ目の可能性は、免疫システムが疲弊して「アネルジー」という状態に陥り、ワクチンに反応しなくなるシナリオだ。大半の免疫学者は、こちらの可能性については低いとみている。 可能性がより高いとみられているのは、「抗原原罪」と呼ばれる2つ目のシナリオだ。この学説によると、免疫システムの反応は最初に接したウイルス株の記憶に引きずられるため、変異株に対する反応は大幅に低下してしまう。 オミクロン株には50カ所を超える変異があり、それまでの変異株とはかなり異なる。そのため、最初に感染が広がった新型コロナウイルスに反応してできた抗体では、オミクロン株をうまく認識できない。 ハーバード大学のワクチン専門家、エイミー・シャーマン氏は「これが問題となる可能性を示唆する証拠は十分にある。短期間で(ウイルスが)進化している状況を、私たちは間違いなく目撃している」と話す』、「抗原原罪」説では、「免疫システムの反応は最初に接したウイルス株の記憶に引きずられるため、変異株に対する反応は大幅に低下」、もっともらしいシナリオだ。
・『感染防止と重症化予防のどちらを目指すのか  定期的なブースター接種であれ、別の手法であれ、何らかの戦略を採用するには、まず政府が目指す目標をはっきりさせなければならないと専門家は指摘する。例えば、感染防止を目標にするのと、重症化の防止を目標にするのとでは、求められる戦略もまったく違ってくる。 「事態は急速に変化しており、どこに向かっているのかも見えない状況にある」と、エモリー大学の生物統計学者、ナタリー・ディーン氏は言う。「今後の展開がどうあれ、何を目指すのか、とにかく目標をはっきりさせなくてはならない」』、「感染防止と重症化予防のどちらを目指すのか」、「政府が目指す目標をはっきりさせなければならない」のは確かだ。

次に、1月26日付け東洋経済オンラインが転載sたThe New York Times「あまり語られないオミクロン株の「後遺症問題」 重症化リスクが下がったとしても安心できない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/505485
・『保健当局者の多くは、オミクロン株がそれまでの新型コロナウイルス株に比べ重症化しにくいことを示唆する初期データに勇気づけられているが、そこに別の重大な疑問が影を落としている。 ワクチン接種完了者のブレークスルー感染も含め、オミクロン株への感染が「長期コロナ感染症(Long COVID)」につながる可能性はどうなのか、という疑問だ。長期コロナ感染症というのは、いわゆる後遺症のこと。何カ月にもわたって続き、日常生活に支障を及ぼすこともある身体的、神経的、認知的な一連の症状を指す。 オミクロン株とワクチン接種、そして長期コロナ感染症をめぐる関係性はまだ科学的によくわかっていない。これまでに行われてきた研究では、決定的な手がかりが得られていないということだ。この記事では、科学的にわかっていることと、まだわかっていないことのポイントを紹介する』、興味深そうだ。
・『オミクロン株の後遺症リスクは?  オミクロン株が最初に確認されたのは昨年11月。そのため、症状がどれだけ長引く可能性があるかを見極めるには、まだしばらく時間がかかる。また、感染から回復して陰性になった後、これまでのウイルス株と同様に、頭にもやがかかったようになるブレインフォグや、激しい倦怠感といった症状につながる可能性があるのかどうかもよくわかっていない。 オミクロン株はそれまでのウイルス株ほど感染当初に重症化しないとするデータが報告されているが、基本的な症状はそれまでのウイルス株と似ているため、長期的な影響もこれまでと同じようなものになる可能性がある。 感染当初の重症化リスクが低下したとしても、それはオミクロン株が長期コロナ感染症を引き起こしにくくなったことを必ずしも意味するものではないと、複数の医師、研究者、患者団体は警告を発している。これまでの研究からは、新型コロナに感染した当初は軽症または無症状だった人々の多くが、その後、何カ月も続く長期コロナ感染症を患ったことが明らかになっている。 ワクチンで長期コロナ感染症を防げるのかどうかは、はっきりしない。 重症化や死亡を防ぐことがワクチンの本来の目的だが、これまでのウイルス株に関していえば、ワクチンによって感染リスクそのものが下がったケースもあったとみられる。長期コロナ感染症を避ける最善の方法はもちろん、最初から感染しないことだ。しかしワクチンによる感染予防効果は、オミクロン株に対してはこれまでほど強くなく、ブレークスルー感染も以前に比べはるかに一般的になっている。 ワクチン接種者と長期コロナ感染症に関する研究は、今のところデルタ株が登場する前に収集されたデータが中心になっており、しかも結果が割れている。ワクチンが長期コロナ感染症の抑制につながるとする研究がある一方で、つながらないとする研究も存在するということだ』、「ワクチン接種者と長期コロナ感染症に関する研究は、今のところデルタ株が登場する前に収集されたデータが中心になっており、しかも結果が割れている」、これでは役立たずだ。
・『ワクチンを打つと後遺症が和らぐ?  ワクチンの運用が始まったときにはまだ、感染力の強いデルタ株も、それよりさらに感染力を増したオミクロン株も出現していなかった。が、当時、長期コロナ感染症患者の中には、ワクチン接種後にブレインフォグ、関節痛、息切れ、倦怠感といった症状が改善した人たちもいた。それでも、ワクチンを打っても症状がまったく変化しないという人は多かったし、症状が悪化したと感じる人も少数ながらいた。 2021年2〜9月に症状があると答えた18〜69歳を対象としたイギリス国家統計局の調査によると、長期コロナ感染症の症状を訴える確率は1回のワクチン接種で13%低下し、2回の接種でさらに9%低下した。 長期コロナ感染症の原因は今も明らかになっておらず、専門家によると、さまざまな症状の背後には、患者によって異なる原因が存在する可能性があるという。有力な仮説としては、感染が治まって陰性になった後に残ったウイルスやその遺伝子物質の残骸が関係しているとするもの、あるいは免疫の過剰反応が止まらなくなり、それによって引き起こされた炎症もしくは血行不良と関係しているとするものがある。 イェール大学の免疫学者・岩崎明子氏は、ウイルスの残骸が原因となっている場合には、ワクチンが症状の長期的な改善につながるのではないかと話す。これは、ワクチンで生成される抗体に、そうした残骸を取り除く能力があることが前提となる。 反面、感染後に自己免疫疾患に似た反応を起こし、これが長期コロナ感染症の原因となっている場合には、ワクチンでは一時的にしか症状が改善せず、倦怠感などの問題が再発する可能性がある』、科学的な解明は徐々にしか進まないとはいえ、着実に進展しているようだ。

第三に、2月5日付けダイヤモンド・オンラインが転載したヘルスデーニュース「コロナ後遺症で「脳の霧」が出る!?脳脊髄液中に確認された抗体とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295280
・『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が治癒した後の後遺症の一つとして“脳の霧”(Brain Fog)が注目されているが、その発症機序の解明の手掛かりとなり得る研究結果が、「Annals of Clinical and Translational Neurology」に1月19日掲載された。論文の上席著者である、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のJoanna Hellmuth氏によると、脳の霧の症状が現れている人の脳脊髄液中には、その症状のない人からは検出されない抗体が確認されたという。 COVID-19治癒後に生じる“脳の霧”とは、Hellmuth氏によると、最近の出来事や名前を思い出せない、物事を表現するのに適切な言葉を想起できない、集中力が途切れる、情報処理スピードが低下するといった、認知機能関連症状のことだという。最近の研究によると、このような症状はCOVID-19治癒後の人にとって珍しいものではなく、ニューヨークのクリニックからは、156人のCOVID-19後遺症患者の約67%に認められたというデータが報告されている。 このようなウイルス感染症罹患に伴う“脳の霧”はCOVID-19に限ったものではない。これまでに、COVID-19以外の重症急性呼吸器症候群(SARS)の罹患や、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、C型肝炎ウイルス(HCV)などの感染でも、認知機能関連症状を来すケースがあることが知られている。 今回の研究は、認知機能関連症状のある22人(平均年齢48歳)と、その症状のない10人(同39歳)、計32人のCOVID-19既往者を対象に行われた。COVID-19の発症から10カ月後に採血検査を行うとともに、同意の得られた17人(有症状者13人、無症状者4人)の脳脊髄液を採取して分析した。なお、研究対象者は全員が成人であり、COVID-19の治療に入院を要していなかった。 脳脊髄液検査の結果、有症状のCOVID-19既往者13人中10人に炎症の亢進や、自分の体を攻撃する可能性のある抗体が活性化した所見が認められ、無症状のCOVID-19既往者4人は全て正常と判定された(77%対0%、P=0.01)。また、有症状者で認められた異常所見の一部は、血液検査の結果にも現われていた。 両群の認知機能関連リスク因子を比較すると、無症状者はリスク因子数が平均1未満であるのに対して、有症状者は平均2.5のリスク因子が該当した(P=0.03)。評価した認知機能関連リスク因子には、脳卒中、軽度認知障害、および血管性認知症のリスクを高める可能性のある疾患として、糖尿病と高血圧が含まれていた。また、注意欠如・多動症(ADHD)、アルコール・薬物使用障害、うつ病の既往なども評価されていた。 有症状のCOVID-19既往者の脳脊髄液中に見られた抗体について、Hellmuth氏は、「それらの抗体の標的は不明」とした上で、「ウイルスによって刺激された免疫系によって、意図しない病理学的機能により出現した可能性がある」と推測している。 なお、本研究では、HIV関連神経認知障害(HAND)の診断に使用される基準と同じ手法を用いて、神経心理学者の面接による認知機能の評価が対象者全員に行われていた。その結果は、有症状者では22人中13人(59%)、無症状者では10人中7人(70%)がHAND基準を満たしており、その割合に有意差はなかった(P=0.70)。 この点についてHellmuth氏は、「既存の評価手法では、COVID-19の後遺症として現れる認知機能の低下を診断できない可能性がある。しかし、思考や記憶の問題を訴える患者に対して、医療者は疾患の診断基準を満たすか否かにとらわれるのではなく、患者の訴えを信じて対応すべきではないか」と語っている。(HealthDay News 2022年1月20日)』、「最近の出来事や名前を思い出せない、物事を表現するのに適切な言葉を想起できない、集中力が途切れる、情報処理スピードが低下するといった、認知機能関連症状」とは怖い後遺症だ。「156人のCOVID-19後遺症患者の約67%に認められた」、「評価した認知機能関連リスク因子には、脳卒中、軽度認知障害、および血管性認知症のリスクを高める可能性のある疾患として、糖尿病と高血圧が含まれていた。また、注意欠如・多動症(ADHD)、アルコール・薬物使用障害、うつ病の既往なども評価」、「ウイルスによって刺激された免疫系によって、意図しない病理学的機能により出現した可能性がある」と推測」、なるほど。
タグ:パンデミック(医学的視点) については、1月13日に取上げた。今日は、(その25)(「ブースター接種」はどこまで科学的に有効なのか イスラエルではすでに4回目接種も始まったが、あまり語られないオミクロン株の「後遺症問題」 重症化リスクが下がったとしても安心できない、コロナ後遺症で「脳の霧」が出る!?脳脊髄液中に確認された抗体とは?)である。 先ずは、1月18日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「「ブースター接種」はどこまで科学的に有効なのか イスラエルではすでに4回目接種 東洋経済オンライン The New York Times「「ブースター接種」はどこまで科学的に有効なのか イスラエルではすでに4回目接種も始まったが」 日本でも「ブースター接種」することになり、医療従事者から優先的に「接種」が進んでいる。 「追加接種による免疫のブースト効果は一時的なものにすぎず、3回目の接種からわずか数週間で抗体濃度が低下することを示す予備的研究もすでに出ている」、「わずか数週間で抗体濃度が低下」、とは頼りない話だ。 「抗原原罪」説では、「免疫システムの反応は最初に接したウイルス株の記憶に引きずられるため、変異株に対する反応は大幅に低下」、もっともらしいシナリオだ。 「感染防止と重症化予防のどちらを目指すのか」、「政府が目指す目標をはっきりさせなければならない」のは確かだ。 The New York Times「あまり語られないオミクロン株の「後遺症問題」 重症化リスクが下がったとしても安心できない」 「ワクチン接種者と長期コロナ感染症に関する研究は、今のところデルタ株が登場する前に収集されたデータが中心になっており、しかも結果が割れている」、これでは役立たずだ。 科学的な解明は徐々にしか進まないとはいえ、着実に進展しているようだ。 ダイヤモンド・オンライン ヘルスデーニュース「コロナ後遺症で「脳の霧」が出る!?脳脊髄液中に確認された抗体とは?」 「最近の出来事や名前を思い出せない、物事を表現するのに適切な言葉を想起できない、集中力が途切れる、情報処理スピードが低下するといった、認知機能関連症状」とは怖い後遺症だ。「156人のCOVID-19後遺症患者の約67%に認められた」、「評価した認知機能関連リスク因子には、脳卒中、軽度認知障害、および血管性認知症のリスクを高める可能性のある疾患として、糖尿病と高血圧が含まれていた。また、注意欠如・多動症(ADHD)、アルコール・薬物使用障害、うつ病の既往なども評価」、「ウイルスによって刺激された免疫系によっ
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パンデミック(経済社会的視点)(その20)(オミクロンに慌てふためく日本政府の致命的欠陥 時間はあったはずなのに備えが全然できていない、ポンコツ岸田政権で日本の「ワクチン敗戦」再び…3回目接種遅れは厚労省のブレーキが元凶) [パンデミック]

昨日に続き、今日はパンデミック(経済社会的視点)(その20)(オミクロンに慌てふためく日本政府の致命的欠陥 時間はあったはずなのに備えが全然できていない、ポンコツ岸田政権で日本の「ワクチン敗戦」再び…3回目接種遅れは厚労省のブレーキが元凶)を取上げよう。なお、前回 経済社会的視点を取上げたのは、昨年10月31日である。

先ずは、1月10日付け東洋経済オンラインが掲載した医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広氏による「オミクロンに慌てふためく日本政府の致命的欠陥 時間はあったはずなのに備えが全然できていない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/501812
・『オミクロン株の感染が拡大している。政府は沖縄、広島、山口県に対し、1月9日から31日まで特措法に基づくまん延防止等重点措置を適用。東京都も11日から動物園や水族館などの都立施設を休館し、会食を4人以内に制限した。 マスコミは、「病床逼迫リスク再び東京、空床の即時把握できぬまま」(日本経済新聞1月5日)、「沖縄、一般診療に制限一部病院担い手不足」(読売新聞1月8日)など、オミクロン株のリスクを強調する。 私は、このような論調に賛同できない。現時点でまん延防止措置や緊急事態宣言を発出することは愚の骨頂だ。図1をご覧いただきたい。経済協力開発機構(OECD)加盟国における1月7日の人口100万人あたりの感染者数を示す。日本はニュージーランドに次いで少ない。この感染者数で「第6波が来た」と大騒ぎする国は日本以外にはない。(図1OECD加盟国における1月7日の人口100万人あたりの感染者数はリンク先参照) (外部配信先では図表や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)』、確かに、「図1」の通り「この感染者数で「第6波が来た」と大騒ぎする国は日本以外にはない」。 
・『アメリカやイギリスは学校や経済を止めていない  感染拡大が続く海外の対応は違う。12月27日、アメリカ・バイデン大統領は「備えはできている。学校と経済は動かし続ける」、1月4日、イギリス・ジョンソン首相は「学校と企業活動を継続させ、コロナとともに生きていく方法を見いだす」と発言している。なぜ、彼らは規制を強化しないのか。いくつかの理由がある。ところが、このことはあまり日本では論じられない。 まずは、オミクロン株の毒性が低いことだ。オミクロン株は感染者数ほど、医療体制に負荷をかけていない。昨年12月1日と比べ、1月1日の感染者はアメリカで4.6倍、イギリスは3.6倍増加したが、死者数は1.3倍、1.1倍しか増えていない。コロナ対策で重視すべきは、感染者数ではなく、重症者や死者を減らすことが世界的コンセンサスだ。オミクロン株の感染者は、重症度に関わらず、全員入院させる日本のやり方は異様だ。 なぜ、こんなことになるのか。それは日本でのコロナ対応が、医師と患者が相談して方針を決定する医療ではなく、感染症法に基づいた国家の防疫措置だからだ。感染症法で規定された病原体に感染すれば、たとえ無症状であっても、「病院」に強制隔離されることが感染症法に規定されている。判断するのは保健所長で、医師は介在しないし、本人の同意も不要だ。 沖縄で医療従事者の感染が相次ぎ、医療体制が弱体化していることが問題となっているが、これは感染力が強く、かつワクチン接種者にも感染しうるオミクロン株感染者を、隔離目的で入院させたからだろう。コロナは空気感染するから、院内感染が拡大する。人災と言わざるをえない。病床を確保したいなら、医学的に入院を必要としない感染者を入院させるべきでない。こんなことをしていれば、いくら病床数を増やしても、院内感染で使えなくなる』、「病床を確保したいなら、医学的に入院を必要としない感染者を入院させるべきでない」、その通りだ。
・『海外のコロナ対応は防疫でなく医療が基本  コロナが世界的にまん延した現在、海外のコロナ対応は、防疫でなく医療が基本だ。日本で言えばインフルエンザ感染の扱いだ。患者と医師が相談して、治療法を決める。医師が入院の必要はないと判断すれば、自宅で「自主隔離」となる。高額な支払いを求められる病院を隔離施設として利用したりはしない。 私は馬鹿げていると思っている。繰り返すが、厚生労働省がこのようなことをするのは、感染症法に規定されているからだ。感染症の雛形は、明治時代の伝染病予防法である。内務省が所管し、その基本方針は警察を使った国家権力による強制隔離だ。感染症の流行は国家を不安定化する。国家権力にとって、感染者は犯罪者同様、隔離すべき対象だったのだろう。 この基本思想は今も同じだ。コロナ対策でも、積極的疫学調査、クラスター対策、病床確保など、感染者の同定と隔離には力をいれるが、検査拡充やワクチンによる感染予防、感染者への早期治療についてはおざなりだ。感染者が治療を受ける権利、家族にうつさないための隔離される権利などは保障されていない。 中国で自宅での隔離のルールを守らず外出した人が、ドアを溶接され閉じ込められたことが日本でも話題となっているが、国民の意向とは無関係に、感染者を国家が強制的に隔離する日本も人権軽視という点では中国と大差ない。) 欧米が経済活動を続けられるのは、ウィズ・コロナを実現するため、感染予防や治療体制を強化してきたからだ。この点で日本は大きく見劣りする。 オミクロン株はワクチン接種者へのブレイクスルー感染が問題となっている。これに対しては、追加接種が有効だ。昨年12月11日、イスラエルのシェバ・メディカルセンターと同国保健省の中央ウイルス学研究所は、追加接種により、オミクロン株への中和活性が100倍高まったと報告している。 世界各国は追加接種に懸命だ。ところが、日本は遅々として進まない。図2をご覧いただきたい。OCED加盟38カ国中、36カ国が追加接種の進行状況を公表しているが、日本はその中で断トツの最下位だ(図2)。(図2OCED加盟38カ国中36カ国の追加接種進行状況はリンク先参照)』、「コロナ対策でも、積極的疫学調査、クラスター対策、病床確保など、感染者の同定と隔離には力をいれるが、検査拡充やワクチンによる感染予防、感染者への早期治療についてはおざなりだ。感染者が治療を受ける権利、家族にうつさないための隔離される権利などは保障されていない」、やはり「感染症法」の桎梏から脱する必要がありそうだ。「世界各国は追加接種に懸命だ。ところが、日本は遅々として進まない」、これは重大な政策ミスだ。 
・『早期治療には早期検査と投薬が必要  治療薬の入手も遅れている。アメリカ・メルク社のモルヌピラビル、アメリカ・ファイザー社のパクスロビドなどの経口治療薬は、感染早期に投与することで、重症化や死亡のリスクを、それぞれ3割、9割減らすことが証明されている。世界各国は治療薬確保に奔走している。 アメリカ政府は1月4日、ファイザー社のパクスロビドの供給を、昨年11月に契約した1000万回分から2000万回分に倍増させたと発表した。1月末までに400万回分が納入される。日本が確保したのはモルヌピラビル160万回分、パクスロビド200万回分で、十分量とは言いがたい。1月7日、日本経済新聞は、調剤薬局クオールで「4日時点で全店の1割にあたる約90店に届いたが、この店には1箱、患者1人分のみ」という状況を紹介している。 図3OECD加盟国での人口1000人あたりの検査数 治療体制の問題は、治療薬の確保だけではない。早期投与のためには、早期に検査しなければならない。そのためには、検査体制の強化が必須だ。図3は、1月7日時点でのOECD加盟国での人口1000人あたりの検査数だ。日本の検査数は0.41件で、メキシコについで少ない。英国(20.6)や米国(4.99)のそれぞれ50分の1、12分の1だ。) このような状況を知れば、日本は追加接種を進めず、治療薬を確保せず、検査体制を強化せず、国民への規制だけを強めているのがおわかりいただけるだろう。日本以外の先進国が医療体制を充実させながら、ウィズコロナへと向かっているのとは対照的だ。コロナのパンデミック(世界的流行)が始まってから間もなく2年である。時間は十分にあったはずなのに、ウィズ・コロナへの備えができていなかったとしか言えない。 では、なぜ、海外はそこまでして規制を嫌がるのだろうか。それは過度な規制が人権侵害や経済的なダメージだけでなく、規制が国民の健康を蝕むからだ。 あまり議論されることはないが、規制強化の悪影響は日本で最も深刻だ。それは、日本が先進国でもっとも高齢化が進んでいるからだ。実は、コロナ流行下で日本での死亡数は増加している。 医療ガバナンス研究所の山下えりかの調査によれば、2017~19年の死亡数と比較し、2020、21年の5月は、1.25倍、1.37倍、8月は1.29倍、1.35倍、さらに2021年の1月には1.19倍死亡者数が増えていた。コロナが流行するたびに死亡が増加していることがわかる。この増加は自然変動では説明がつかず、国立感染症研究所は「超過死亡」を認定している』、「日本は追加接種を進めず、治療薬を確保せず、検査体制を強化せず、国民への規制だけを強めている」、「コロナ流行下で日本での死亡数は増加」。 医療ガバナンス研究所の山下えりかの調査によれば、2017~19年の死亡数と比較し、2020、21年の5月は、1.25倍、1.37倍、8月は1.29倍、1.35倍、さらに2021年の1月には1.19倍死亡者数が増えていた。コロナが流行するたびに死亡が増加」、確かに「規制強化の悪影響は日本で最も深刻」なようだ。
・『コロナの規制強化で高齢者の健康が害されている  「超過死亡」はコロナ感染による死亡が増えたためではない。2021年1月には過去3年間と比べて、2万4748人死者が増えているが、この時期にコロナによる死亡が認定されたのは、2261人に過ぎない。コロナの流行時期に合わせて、多数のコロナ関連死が生じていたと考えるのが妥当だ。 全く同じことがコロナ流行下で起こってもおかしくない。12月24日、スポーツ庁は全国の小学5年生と中学2年生を対象とした2021年度の全国体力テストで、男女とも全8種目の合計点の平均値が調査開始以来最低であったと発表した。小中学生の体力がこれだけ落ちるのだから、高齢者の健康が害されるのも、むべなるかなだ。今回のオミクロン株での規制強化でも、多くの高齢者の命が失われてもおかしくないのだ。 オミクロン株対策は合理的でなければならず、海外の経験からもっと学ばなければならない。オミクロン株の流行は、南アフリカだけでなく、イギリス、カナダ、ギリシャ、イタリア、フィンランドなどでもピークアウトしている。感染拡大から1カ月程度で収束に転じたことになる。日本も同様の展開を辿るだろう。ちなみに昨年の冬の流行のピークは1月11日だった。日本でのオミクロン株の流行が欧米レベルまで拡大する可能性は低い。大騒ぎせず、冷静に科学的に議論すべきである』、「冷静に科学的に議論すべきである」、確かにその通りだ。

次に、1月11日付け日刊ゲンダイ「ポンコツ岸田政権で日本の「ワクチン敗戦」再び…3回目接種遅れは厚労省のブレーキが元凶」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/299753
・『新型コロナウイルスはオミクロン株の猛威で感染者が倍々ゲームで拡大中。欧米の状況から「オミクロンは軽症」という認識が広がっているが、欧米と日本には大きな差があることを忘れちゃならない。抗体量が25倍や37倍に増えるとされる3回目接種が、日本は圧倒的に遅れているのだ。厚労省が立てた接種計画すらクリアできていない。 2回目接種から8カ月後を前提にした厚労省の計画では、昨年12月には104万人の3回目接種が完了しているはずだった。さらに、岸田首相は医療従事者や高齢者施設の入所者らを対象に2カ月の前倒し接種を指示、12月中に接種できる人は約880万人になっていた。 ところが、首相官邸の発表によれば、今月7日時点の3回目接種完了者は75万2799人。対象者のわずか8%にすぎず、当初計画の104万人にすら達していないのだ』、「当初計画の104万人にすら達していない」、厚労省の明白なサボタージュだ。
・『後藤厚労相は、接種券が届く前に接種し、集計システムに登録されていない人がいるとして、「公表の接種実績が実際より少ない可能性はある」と苦しい言い訳だったが、ワクチン自体の供給不足もあるからか、どうも3回目の加速への本気度が見えない。 今月に入り、オミクロンの急激な拡大で高齢者施設でのクラスターも発生し、自治体によっては一般高齢者の3回目接種を早める動きも出てきた。そのひとつ、7日から接種を始めた東京・世田谷区の保坂展人区長に話を聞くと、3回目接種が遅れている理由についてこう言った。 世田谷区長「厚労省がブレーキをかけ1カ月を無駄にした」 「高齢者を守るため、世田谷区では昨年11月5日に『3回目前倒し接種』を厚労省に働きかけました。その後、いったん前倒しが進む状況になるかと思われましたが、11月16日に厚労大臣が、自治体間の競争を避けるとして『勝手な前倒しはできない』とブレーキをかけてしまったのです。本来なら12月から前倒しを加速させられたのに、1カ月、時間を無駄にし、それが今の遅れにつながっています」 オミクロンの足音に慌てたのか、12月末になって厚労省が「高齢者施設の先行接種完了の見通しが立てば、一般高齢者の1月中の前倒しを認める」と方針転換したため、今月になって前倒しを表明する自治体が相次いでいるというわけだ。 岸田首相がファイザーCEOとワクチン供給を早める交渉をしたが失敗。堀内ワクチン担当相はポンコツのうえ存在感ゼロ。10日は祝日にもかかわらず政府分科会の尾身会長らが首相公邸で岸田首相と面会し、「高齢者への3回目接種を最優先で推進」するよう要請した。 安倍・菅政権のワクチン確保の遅れに続き、岸田政権も「ワクチン敗戦、再び」である』、「11月16日に厚労大臣が、自治体間の競争を避けるとして『勝手な前倒しはできない』とブレーキをかけてしまったのです。本来なら12月から前倒しを加速させられたのに、1カ月、時間を無駄にし、それが今の遅れにつながっています」、「12月末になって厚労省が「高齢者施設の先行接種完了の見通しが立てば、一般高齢者の1月中の前倒しを認める」と方針転換したため、今月になって前倒しを表明する自治体が相次いでいる」、いかにも厚労省がやりそうなことだが、こんな調子では、「岸田政権も「ワクチン敗戦、再び」である」、となるのは確かだ。
タグ:確かに、「図1」の通り「この感染者数で「第6波が来た」と大騒ぎする国は日本以外にはない」 「ポンコツ岸田政権で日本の「ワクチン敗戦」再び…3回目接種遅れは厚労省のブレーキが元凶」 日刊ゲンダイ 「冷静に科学的に議論すべきである」、確かにその通りだ。 「11月16日に厚労大臣が、自治体間の競争を避けるとして『勝手な前倒しはできない』とブレーキをかけてしまったのです。本来なら12月から前倒しを加速させられたのに、1カ月、時間を無駄にし、それが今の遅れにつながっています」、「12月末になって厚労省が「高齢者施設の先行接種完了の見通しが立てば、一般高齢者の1月中の前倒しを認める」と方針転換したため、今月になって前倒しを表明する自治体が相次いでいる」、いかにも厚労省がやりそうなことだが、こんな調子では、「岸田政権も「ワクチン敗戦、再び」である」、となるのは確か 「日本は追加接種を進めず、治療薬を確保せず、検査体制を強化せず、国民への規制だけを強めている」、「コロナ流行下で日本での死亡数は増加」。 医療ガバナンス研究所の山下えりかの調査によれば、2017~19年の死亡数と比較し、2020、21年の5月は、1.25倍、1.37倍、8月は1.29倍、1.35倍、さらに2021年の1月には1.19倍死亡者数が増えていた。コロナが流行するたびに死亡が増加」、確かに「規制強化の悪影響は日本で最も深刻」なようだ。 「コロナ対策でも、積極的疫学調査、クラスター対策、病床確保など、感染者の同定と隔離には力をいれるが、検査拡充やワクチンによる感染予防、感染者への早期治療についてはおざなりだ。感染者が治療を受ける権利、家族にうつさないための隔離される権利などは保障されていない」、やはり「感染症法」の桎梏から脱する必要がありそうだ。「世界各国は追加接種に懸命だ。ところが、日本は遅々として進まない」、これは重大な政策ミスだ。 「オミクロンに慌てふためく日本政府の致命的欠陥 時間はあったはずなのに備えが全然できていない」 「当初計画の104万人にすら達していない」、厚労省の明白なサボタージュだ。 「病床を確保したいなら、医学的に入院を必要としない感染者を入院させるべきでない」、その通りだ。 上 昌広 東洋経済オンライン (その20)(オミクロンに慌てふためく日本政府の致命的欠陥 時間はあったはずなのに備えが全然できていない、ポンコツ岸田政権で日本の「ワクチン敗戦」再び…3回目接種遅れは厚労省のブレーキが元凶) パンデミック(経済社会的視点)
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パンデミック(医学的視点)(その24)(アングル:新型コロナ 国ごと異なる「エンデミック」化の道筋、ゼロからわかる変異株の大物「オミクロン」の正体 感染症未来疫学センターの水谷哲也教授に聞く、オミクロン株が心配な人に知ってほしい最新事情 欧米で先行 日本国内での流行に備えは十分か、ブースター接種繰り返し 疫系に悪影響の恐れ EU当局が警告 寒い季節の到来に合わせるべきと) [パンデミック]

パンデミック(医学的視点)については、昨年10月30日に取上げた。今日は、(その24)(アングル:新型コロナ 国ごと異なる「エンデミック」化の道筋、ゼロからわかる変異株の大物「オミクロン」の正体 感染症未来疫学センターの水谷哲也教授に聞く、オミクロン株が心配な人に知ってほしい最新事情 欧米で先行 日本国内での流行に備えは十分か、ブースター接種繰り返し 疫系に悪影響の恐れ EU当局が警告 寒い季節の到来に合わせるべきと)である。

先ずは、11月7日付けロイター「アングル:新型コロナ、国ごと異なる「エンデミック」化の道筋」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/covid-endemic-idJPKBN2HP0MD
・『新型コロナウイルスの「パンデミック(世界的大流行)」が来年以降のいつ、どこで「エンデミック(一定地域で普段から継続的に発生する状態)」に移行するのか――。感染力の強いデルタ株の拡大が多くの地域で一服するとともに、世界中の科学者がこうした予測に乗り出している。ロイターが十数人の有力専門家を取材して分かった。 専門家の見立てでは、パンデミックから最初に脱却する国は、高いワクチン接種率と感染者が獲得した自然免疫の効果が組み合わさっているはずで、米国、英国、ポルトガル、インドなどが該当しそうだ。もっとも専門家らは、新型コロナは依然として予測不能なウイルスであり、ワクチン未接種の人々に広がる過程で変異を続けると警告する。 ウイルスがようやく獲得した免疫をすり抜ける形に進化してしまう、いわゆる「ドゥームズデー(終末)シナリオ」を完全に否定する向きも見当たらない。ただ、多くの国が向こう1年間にパンデミックの最悪局面を抜け出せるとの自信は、専門家の間で深まりつつある。 世界保健機関(WHO)で新型コロナ対応を主導している疫学研究者、マリア・バンケルコフ氏は「今から来年末までの期間に、われわれはこのウイルスを制御し、重症者と死者を大幅に減らせると想定している」とロイターに語った。 そうしたWHOの考えは、今後18カ月のパンデミックがたどる最も蓋然(がいぜん)性が高い経路を専門家と検討した結果に基づいている。来年末までにWHOが目指すのは、ワクチン接種率を世界の全人口の7割に高めること。バンケルコフ氏は「この段階に達すれば、疫学的に(今とは)非常に異なる状況になるだろう」とみる。 WHOが10月26日に公表した報告書によると、世界のほぼ全ての地域で8月以降、新型コロナウイルスの感染者と死者は減少が続く。例外は欧州で、ロシアやルーマニアといったワクチン接種率が低い国や、マスク着用義務を解除した国・地域をデルタ株の新たな感染の波が襲った。デルタ株は、ワクチン接種率こそ高いが、極めて厳格なロックダウンを実施したため自然免疫がほとんど得られなかった中国やシンガポールなどでも感染者が増えている。 ハーバードT・H・チャン公衆衛生大学院の疫学研究者、マーク・リプシッチ氏は「(エンデミックへの)移行は各地域で違ってくる。なぜならそれは自然感染による免疫を獲得した人の数と、当然ながら国ごとにとてもばらつきがあるワクチン配分量に左右されるからだ」と述べた。 複数の専門家は、米国のデルタ株感染の波は今月で峠を越え、これが最後の大規模な感染急増局面になると見込む。米食品医薬品局(FDA)元長官のスコット・ゴットリーブ氏は「われわれはパンデミックの局面からエンデミック、つまりこのウイルスが米国で持続的な単なる1つの病気となる段階へと移ろうとしている」と説明した。 ワシントン大学の疾病予測分野の有力な専門家の1人、クリス・マレー氏も、米国のデルタ株感染急増は今月で終わり、新たに大きな存在となるような変異株が出現しなければ、来年4月にはコロナ感染症の収束が始まるとみている。 パンデミック局面の規制撤廃に伴って足元で感染者が急増している英国などでも、ワクチンのおかげで入院患者は増えていないもよう。インペリアル・カレッジ・ロンドンの疫学研究者、ニール・ファーガソン氏は、緊急事態としてのパンデミックは大方が過去の話になったと言明した』、「「われわれはパンデミックの局面からエンデミック、つまり・・・持続的な単なる1つの病気となる段階へと移ろうとしている」、楽観的過ぎる印象も受けるが、「WHO」の前提は「ワクチン接種率を世界の全人口の7割に高める」、前提も楽観的過ぎるのかも知れない。
・『<緩やかに改善>  新型コロナウイルスはこれから何年も、マラリアのような他の風土病と同じく、人々に病気や死をもたらす大きな要因となり続けるだろう。WHOのバンケルコフ氏は「エンデミックは(ウイルスが)無害になるという意味ではない」とくぎを刺した。 一部の専門家は、新型コロナウイルスがいずれ、ワクチン接種率の低い地域で感染が急増するはしかのような存在になると話す。インフルエンザのように、より季節性がある呼吸器疾患となりつつあるとの声も聞かれる。また別の専門家によると、新型コロナウイルスは次第に致死率が低下し、主に子どもが感染する方向に進んでいく可能性があるが、そうなるまでに何十年もかかる可能性があるという。 インペリアル・カレッジのファーガソン氏は、英国では新型コロナウイルスのために呼吸器疾患の死者が長期平均を超える状況があと2─5年続く半面、それで医療提供体制がひっ迫したり、社会的距離を確保する措置が再び求められたりする公算は小さいとの見方を示した。 同氏は「進化は緩やかに進んでいく。われわれは新型コロナウイルスをより永続的なウイルスとして扱うことになる」と述べた。 新型コロナウイルスの動向を追ってきたフレッド・ハッチンソンがん研究センターの計算ウイルス学者、トレバー・ベッドフォード氏は、米国で新型コロナウイルスは来年から2023年の間にエンデミックに移行すると想定。年間死者数は5万─10万人と、インフルエンザの3万人より多いと試算した。 その上で、新型コロナウイルスは変異を続けそうなので、最新の流行株に狙いを定めたワクチンを毎年接種しなければならなくなるとの見通しを示した』、「米国で新型コロナウイルスは来年から2023年の間にエンデミックに移行すると想定。年間死者数は5万─10万人と、インフルエンザの3万人より多いと試算」、「エンデミック」に移行しても、死者数が高水準なのに驚かされた。

次に、12月4日付け東洋経済オンライン「ゼロからわかる変異株の大物「オミクロン」の正体 感染症未来疫学センターの水谷哲也教授に聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/473053
・『新型コロナウイルスの変異ウイルスである「オミクロン株」に対する警戒感が日増しに高まっている。日本政府は11月30日から全世界を対象に外国人の入国を禁止すると発表した。 11月24日に南アフリカが初めてWHO(世界保健機関)に報告したオミクロン株に対し、VOC(懸念すべき変異株)としてWHOが指定したのは11月26日。 全世界で猛威を振るったデルタ株ですら、インドで確認されてからVOCに指定されるまで6カ月間の期間があった。報告から2日というオミクロン株の指定は、ほかの変異株も含めて最速である。 異例の速さで“マーク”されたオミクロン株はどういう特徴を持っているのか。コロナウイルスを専門に研究している、東京農工大学農学部附属感染症未来疫学研究センターの哲也教授に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは水谷氏の回答)』、興味深そうだ。
・『悪いところを“総取り”  Q:オミクロン株はなぜこんなにも警戒されているのでしょうか? A:デルタ株以降、“大物”の変異株はあまり出てこなかった。WHOがデルタ株をVOC(懸念すべき変異株)として指定したのは2021年4月。その後ラムダ株が6月、ミュー株が8月にVOCの前段階である「注目すべき変異株」に指定されたが、どちらもデルタ株の流行に入る隙間がなくて消えてしまった。 オミクロン株はデルタ株に代わって拡大している地域もあるようなので、久しぶりの“大物”になるかもしれない、ということだ。 その可能性の根拠として考えられているのは、ヒトの細胞に感染するときの足がかりになる「スパイクタンパク質」に起きている変異が、従来とは比べものにならないほど多いことだ。 スパイクタンパク質は、いくつものアミノ酸が連なって構成されている。ラムダ株であれば、その内7カ所のアミノ酸が別のものに変わる変異が起きている。一方のオミクロン株では30カ所以上のアミノ酸が変異しており、これまでVOCに指定されたどの変異株と比べても明らかに数が多い。 単に変異の数が多いだけではない。イギリスや南アフリカで最初に確認されたアルファ株やベータ株、インドで確認されたデルタ株など、これまで感染が拡大した変異株の悪いところを総取りしたような特徴がある。 Q:総取り、ですか? 重要なのは、感染の足がかりになるスパイクタンパク質の中でもその一部、「受容体結合領域」と呼ばれる場所で起きている変異だ。ヒトの細胞に侵入する際、直接細胞と接する領域で、ここに変異が起きていると感染のしやすさなどに変化が起こりやすい。 オミクロン株の受容体結合領域の変異を一つ一つ見ると、実験室レベルではヒト細胞とウイルスとの融合を促進することがわかっているもの、中和抗体から逃れる可能性があるもの、それからすでに感染性を高めることがわかっているものなどがある。 さらに、受容体結合領域の外側ではあるものの、領域の構造に影響を与えて感染性を高める変異も起きている。 オミクロン株の変異の特徴は、(イギリス、南アフリカ、ブラジルで最初に確認された)アルファ・ベータ・ガンマ株に近い。そこにインド由来のデルタ株の変異も一部が入ってきたようなイメージだ。 感染しやすくなるなどの特徴がすでにわかっている変異が、これまでの変異株には2?3つだったところ、オミクロン株には少なくとも4つは入っている』、「オミクロン株」には「これまで感染が拡大した変異株の悪いところを総取りしたような特徴がある」、「悪いところを総取り」とはいかにも恐ろしそうだ。
・『かなり厄介な存在の可能性も  Q:ほかにも懸念すべき点はありますか? A:新型コロナが細胞に侵入するとき、「フーリン」と呼ばれるタンパク質分解酵素がスパイクタンパク質を切断するプロセスがある。気になるのは、オミクロン株では初めて、フーリンによって切断される部位の近くにも変異が起こっていることだ。 同じコロナウイルスであるSARSやMERSコロナウイルスは、フーリンによって切断されるこの部位そのものを持っていない。新型コロナウイルスは、この切断部位を持ったことで感染効率が上がり、SARSやMERSコロナウイルスよりも感染が広がったといわれている。 そのため、もしこれがより切断されやすくなるような類いの変異なのであれば、明らかに感染しやすくなっていることになる。変異が起きている場所(フーリンによって切断される部位の近く)だけを見ると、オミクロン株はこれまでの変異株に比べてかなり厄介な感じに見えるのは確かだ。 Q:その一方で、現在主流のデルタ株に比べてどれだけ感染しやすくなっているのかや、重症化しやすくなっているのかなど、まだ詳しいことはわかっていない状況です。) たくさんの変異があるからといって、本当にそれが全体としてウイルスにとって有利な変異になっているのかはわからない。確かに、オミクロン株に起きているこうした変異を1つひとつ見れば、より感染しやすくなっているように見える。 だが大事なのは、スパイクタンパク質全体の「構造」がどう変わっているかだ。変異が起きている部分を個別に見て、感染しやすさや重症化のしやすさを判断することはできない。 フーリンによる切断部位に入った変異も、そこに変異が入ることによって結果的にさらに切断されやすくなって感染性が増すのか、逆に切断されにくくなっているのか、どちらの可能性もありうるため、実際のところはまだわからない。これから出てくる研究成果を見なければいけない。 Q:改めて、ウイルスにとって変異とはどんな意味を持つのでしょうか? A:そもそも一般的には、変異をすること自体ウイルスにとっては不利なことだ。変異前には一定の感染性があったのに、ランダムに変異が入ることでウイルスとして駄目になってしまうことのほうが多いはずだからだ』、「一般的には、変異をすること自体ウイルスにとっては不利なことだ。変異前には一定の感染性があったのに、ランダムに変異が入ることでウイルスとして駄目になってしまうことのほうが多いはず」、なるほど。
・『変異株の大半は人知れず消える  Q:つまり「変異ウイルス=人間にとって危険」というわけではないのですね。(水谷氏の略歴はリンク先参照) A:感染しにくくなるような変異が起きればもちろんその株は流行しないし、逆に感染者の致死率が高くなるような変異が起きてもウイルスは広まることができない。こういう変異は数多く起きているはずだが、ほとんどの変異株は人知れず消えていってしまう。 だからわれわれは、結果的に今回のように感染が広がって生き残った後の変異株しか確認できない。疫学的にも調べないと結論は出ないが、本当にこのままオミクロン株がデルタ株に代わって感染の主流になっていくのであれば、感染しやすくなるような変異が起きた、と考えるのが自然だ。 Q:オミクロン株ではワクチンなどによる中和抗体の効き目の低下が懸念されていますね。 A:中和抗体からどのようにウイルスが逃れているのかは、実際に中和抗体を持った人の血清を使うなどして研究する必要があるので、効果の有無を確認するのには時間がかかる。 とはいえ、中和抗体がまったく効かなくなるということはないだろう。中和抗体は、スパイクタンパク質上にある複数のアミノ酸を認識して結合している。そのため、いくつかのアミノ酸が変異したとしても、中和抗体はほかの部分でウイルスを認識して感染を抑えられる。程度はわからないが、くっつき方が悪くなるようなイメージだ。 Q:今後、主流になったデルタ株に代わって世界中に広まっていくのでしょうか? A:繰り返しになるが、本当に感染しやすくなっているかどうかは起きている変異を一つ一つ見るだけではわからないので、結論が出るのは時間がかかる。 ラムダ株やミュー株も、変異している場所を見て厄介なウイルスなのではないかと思ってはいた。それでも、先んじて流行していたデルタ株に代わる主流にならなかった』、「変異株の大半は人知れず消える」ので、「われわれは、結果的に今回のように感染が広がって生き残った後の変異株しか確認できない」、言われてみればその通りだ。
・『かなりの警戒が必要  変異によってズバ抜けて感染しやすくなるとか、より効率的に体内でウイルスを複製できるようになるとか、そういうことがない限り簡単には世界中で感染の主流になることはない。 だが実際にデルタ株の感染が減る一方でオミクロン株が増えていくのであれば、未知な部分が多いだけにかなりの警戒が必要だ。 デルタ株の流行が続いているアメリカではデルタ株とオミクロン株のせめぎ合いが起きる。一方、今、日本にはほとんど感染者がいない。そこにポンッと入ってくれば、一気にオミクロン株が主流になって広がる可能性もある』、「日本」でも既に「オミクロン株が主流」になりつつあるようだ。

第三に、12月23日付け東洋経済オンラインが掲載した医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広 氏による「オミクロン株が心配な人に知ってほしい最新事情 欧米で先行、日本国内での流行に備えは十分か」を紹介しよう。
・『オミクロン株の感染が世界中で拡大している。筆者が考えるオミクロン株の主要な論点について議論したい』、興味深そうだ。
・『オミクロン株はアジアで流行するか  私の最大の関心事だ。11月に南アフリカでオミクロン株が検出された時、筆者はこの変異株が北半球で流行するか否か懐疑的だった。ベータ株(南アフリカ株)、ガンマ株(ブラジル株)、ラムダ株(ペルー株)など、南半球由来の変異株が北半球で流行しなかったからだ。 一方、日本で大流行したアルファ株(イギリス株)、デルタ株(インド株)などの変異株は、いずれもユーラシア大陸由来だ。その本当の発生地は兎も角、最初の流行がユーラシア大陸で確認されている。 私は、この事実を知ると、1997年にアメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のジャレド・ダイアモンド教授が表した名著『銃・病原菌・鉄』を思い出した。この本の中で、ダイアモンド教授は、東西に同緯度の陸地が広がる北半球では疾病は拡散しやすく、南北に細長い南半球では、気候帯が異なるため、感染症は広がりにくいと論じていた。私は、全く同じ事が新型コロナウイルス(以下、コロナ)にも通用するかもしれないと考えていた。 ただ、この考えはほどなく否定された。イギリス、そしてアメリカでオミクロン株の流行が拡大したからだ。12月18日、イギリスでは1日あたりのオミクロン株の新規感染者数が、前日の3倍以上となる1万59人となり、翌19日も1万2133人に増加した。状況はアメリカも同じだ。12月20日、アメリカ疾病対策センター(CDC)は、12月18日までの1週間で確認されたコロナの73%がオミクロン株だったと発表した。 では、オミクロン株はアジアでも流行するのか?アルファ株がそうだったように、英米で大流行すれば、常識的にはアジアでも流行するだろう。果たして、本当にそうだろうか。私がひっかかるのは、今冬に限っては、アジアと欧米の流行状況が全く違うことだ。 欧米でデルタ株、およびオミクロン株が大流行している中、アジアで感染が拡大しているのは韓国、ベトナム、ラオスくらいだ(図)。この3カ国で流行しているといっても、その規模は欧米と比較して小さい。12月19日の1日あたりの感染者数(人口100万人あたり、1週間平均)は、イギリス1138人、アメリカ392人であるのに対し、ベトナム185人、ラオス179人、韓国132人だ。(外部配信先では図表や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) コロナは流行当初から、欧米と比べ、アジアでの感染は小規模だった。ただ、今冬ほど、その差が極端だったことはない。今夏、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、そして日本の流行は欧米とほぼ同レベルだった。なぜ、今夏、このような国で大流行したデルタ株が、流行の本番である真冬に抑制されているのか、ワクチン接種(追加接種)や既感染による免疫では説明がつかない』、確かに不思議だ。
・『沖縄米軍基地でクラスターが発生したものの・・・  オミクロン株についても、英米との交流が多いシンガポール、インド、フィリピンなどで感染は拡大していない。また、日本でも沖縄米軍基地の職員の間で150人以上のクラスターが発生しているが(米軍は、このクラスターがオミクロン株によるとは認めていないが、基地に出入りする日本人からオミクロン株が検出されているため、オミクロン株が原因と考えていいだろう)、基地外に感染が拡大したという話は聞かない(12月19日現在)。 オミクロン株は強い感染力を有する。12月17日、イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者は、オミクロン株の再感染リスクはデルタ株の5.4倍というモデル研究の結果を発表した。私の知人でイギリス在住の医師も「オミクロン株の感染力は麻疹なみ」という感想を伝えてきた。その理由についても、香港大学の研究者が、デルタ株と比べて、オミクロン株は気管で増殖しやすいために、周囲に広まりやすく、逆に肺で増殖しにくいため、肺炎にならずに重症化しにくいなど、幾つかの仮説を提唱している。欧米で急速にオミクロン株の流行が拡大したのも納得できる。) ただ、欧米の研究でわかったことはアジアでも通用するのか、現時点ではわからないということだ。デルタ株の流行が抑制されているアジアで、オミクロン株が流行するのか、現状では何とも言えない。データに基づいた冷静な議論が必要だ』、「クラスター」は「沖縄米軍基地」の他にも、「岩国」、「横須賀」などのの米軍基地」でも発生(人数はそれぞれ、574人、529人、213人(1月7日付けしんぶん赤旗)。
・『水際対策と同時に国内大規模検査を  では、わが国は何を最優先すべきか。もちろん、オミクロン株が日本でも流行しうるという前提にたって対策を講じることだ。優先すべきは、水際対策と国内でのスクリーニングだ。水際対策の重要性は改めて言うまでもない。 問題は国内スクリーニングだ。日本は、水際対策が成功していると主張してきたため、国内でのオミクロン株の大規模検査を実施してこなかった。12月15日現在の国民1000人あたりの検査数は0.36件で、主要先進7カ国(G7)で最も多い英国(18.0件)の50分の1だ。デルタ株の流行が抑制されているという点では日本と変わらないインド(0.84件)の半分以下である。 クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号で、厳格な船内検疫を実施していたころに、すでに国内感染が拡大していたし、オミクロン株の流行でも、オランダでは、外国との渡航を禁止することを決めた1週間以上前に国内に入っていた。検査数が少ない日本では、オミクロン株が国内に流入していたとしても、検出できていない可能性が否定できない。 日本を含むアジアがオミクロン株に抵抗力があるのでなく、何らかの幸運で、日本国内に流入するのが遅れているだけなら、国内の検査を怠ることで、蔓延を許してしまう。 こうならないためには、国内での検査体制の強化が喫緊の課題であるが、前途は多難だ。それは、厚生労働省が、安倍晋三・元首相の頃から一貫してPCR検査を抑制しているからだ。この状況は現在も変わらない。 岸田文雄首相は自民党総裁選出馬にあたり、9月2日に「岸田4本柱」を発表し、その中に「検査の無料化・拡充」を盛り込んだ。ところが、11月12日、新型コロナ感染症対策本部が発表した「次の感染拡大に向けた安心確保のための取組の全体像」では、無料検査の対象を「感染拡大の傾向が見られる場合、都道府県の判断により」実施するか、あるいは「健康上の理由等によりワクチン接種を受けられない者」に限定した。「感染拡大の傾向」が確認されてから検査をしても手遅れだ。 この状況について、岸田首相には既視感があるはずだ。今年1月、岸田首相のおひざ元である広島県が、広島市の中心に位置する4区の住民約80万人を対象とした無料PCR検査の実施を計画し、県議会は10億3800万円の予算を可決したが、最終的に8000人規模に縮小された。 これは、「医系技官の意向を反映したもの(厚労省関係者)」だ。広島県が計画を発表後、政府は広島市を「緊急事態宣言に準じた措置」の対象地域に該当しないという見解を示し、休業補償などで広島県を冷遇したからだ。広島県は厚労省の意向に従わざるをえなかった。岸田首相はこのあたりの状況について、地元の支援者から聞いているはずだ。 現在、内閣官房で、コロナ感染症対策推進室長を務める迫井正深氏は、広島大学附属高校から東京大学医学部に進んだ医系技官だ。このまま医系技官たちの抵抗を許すのか、あるいは、彼らを方向転換させるのか、岸田首相の手腕が問われている』、「医系技官」が「PCR検査」件数を抑制しようととするのは、迫井氏の前任者からの伝統だ。
・『ワクチン追加接種の必要性は?  検査体制の強化と並ぶ、もう1つのオミクロン株対策の肝は、ワクチン追加接種の促進だ。オミクロン株に限らず、コロナ対策での追加接種の重要性については、「善戦で始まった岸田政権のコロナ対策に映る不安」(12月1配信)でも述べた。 日本が迷走する中、世界は追加接種を進めた。12月18日現在の主要先進国の追加接種完了率はイギリス40%、ドイツ30%、フランス24%、イタリア24%、アメリカ18%、カナダ11%だ。冬場の本格的流行が始まる前に、高齢者や医療従事者の接種を終えていることになる。12月1日から、医療従事者向けに追加接種を開始した日本は、先進国では異例の存在だ。 南アフリカの研究者たちは、デルタ株と比べて、オミクロン株の毒性は低いと報告しているが、感染者の多くが若年者である南アフリカの経験を、そのまま日本にあてはめることはできない。12月16日にインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームが発表した報告によると、イギリスではオミクロン株の重症度はデルタ株と変わらない。) では、オミクロン株に追加接種は有効なのか。オミクロン株は、コロナワクチンが標的とするスパイク(S)蛋白質に30カ所以上の変異があるため、ワクチンが効きにくい。追加接種しても駄目だろうとお考えの読者も多いだろう。確かに、12月10日にアメリカ疾病管理センターは、オミクロン株感染者43人中、14人は追加接種を終えていたと報告している。 ただ、その後に発表された研究によれば、悲観する必要はなさそうだ。12月9日、アメリカ・ファイザー社は、同社製のワクチンを追加接種することで、オミクロン株の阻止効果は25倍増強されると報告している。さらに、12月13日、イスラエルのシェバ・メディカルセンターの研究チーム、12月20日にはアメリカ・モデルナ社からも同様の報告がなされている。 12月15日にはアメリカ・バイデン政権の首席医療顧問であるアンソニー・ファウチ医師が、オミクロン株に特化したワクチンの追加接種は不要という見解を表明している。つまり、追加接種は完全ではないが、オミクロン株の感染リスクを相当レベル低下させるというのが、現時点での世界のコンセンサスだ。このような状況を知れば、日本は一刻も早く追加接種を進めなければならないことがわかる。2回目接種から6カ月とか8カ月とかの議論をしている場合ではない』、「追加接種は完全ではないが、オミクロン株の感染リスクを相当レベル低下させるというのが、現時点での世界のコンセンサスだ」、「日本は一刻も早く追加接種を進めなければならない」、その通りだ。
・『エビデンスに基づいた議論を  以上が、私が考えているオミクロン株の論点だ。アメリカ国立医学図書館データベース(PubMed)によると、「オミクロン」という単語をタイトルに含むコロナ関係の論文は、すでに63報が発表されているが、日本からは金沢大学呼吸器内科の研究チームが『呼吸器医学』誌に発表した一報だけだ。 ワクチン、治療薬については、「国産」の重要性を声高に主張する政府や有識者たちも、臨床研究による現状把握を求める人は少ない。これが、わが国のコロナ対策が迷走する理由だ。データに基づいた合理的な議論が必要である』、「臨床研究による現状把握」を含めて「データに基づいた合理的な議論が必要」、強く同意する。

第四に、1月13日付け東洋経済オンラインがブルームバーグを転載した「ブースター接種繰り返し、免疫系に悪影響の恐れ EU当局が警告、寒い季節の到来に合わせるべきと」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/502217
・『欧州連合(EU)の医薬品規制当局は11日、新型コロナウイルスワクチンのブースター(追加免疫)接種を頻繁に行うと免疫系に悪影響を及ぼす恐れがあると警告した。 欧州医薬品庁(EMA)は、4カ月ごとのブースター接種を繰り返すと最終的に免疫力が低下する可能性があると指摘。各国はブースター接種の間隔をより空け、インフルエンザ予防接種戦略で示された青写真のように寒い季節の到来に合わせるべきだとの見解を示した』、「接種を頻繁に行うと免疫系に悪影響を及ぼす恐れ」とは穏やかではない、どういうことなのだろう。
・『オミクロン変異株、数週間で欧州人口の半数以上が感染も-WHO  オミクロン感染が急速に広がる中、一部の国は2回目のブースター接種を行う可能性を検討している。イスラエルは今月に入り、60歳以上を対象に4回目のワクチン接種(2回目のブースター)を開始。英国は現時点では2回目のブースターは必要ないが、必要に応じてデータを見直すとしている。 ブースター接種についてEMAでワクチン戦略などの責任者を務めるマルコ・カバレリ氏は「一度や二度ならともかく、何度も繰り返すべきと考えるものではない」と指摘。「現在のパンデミック(世界的大流行)の状況から、よりエンデミック(地域的流行)の状況にどう移れるかを考える必要がある」と記者会見で語った』、確かに「接種を頻繁に行うと免疫系に悪影響を及ぼす恐れ」とは、あり得る問題だ。有効な「免疫」が期待できる上限回数はどの程度なのだろう。
タグ:(その24)(アングル:新型コロナ 国ごと異なる「エンデミック」化の道筋、ゼロからわかる変異株の大物「オミクロン」の正体 感染症未来疫学センターの水谷哲也教授に聞く、オミクロン株が心配な人に知ってほしい最新事情 欧米で先行 日本国内での流行に備えは十分か、ブースター接種繰り返し 疫系に悪影響の恐れ EU当局が警告 寒い季節の到来に合わせるべきと) パンデミック(医学的視点) ロイター 「アングル:新型コロナ、国ごと異なる「エンデミック」化の道筋」 「「われわれはパンデミックの局面からエンデミック、つまり・・・持続的な単なる1つの病気となる段階へと移ろうとしている」、楽観的過ぎる印象も受けるが、「WHO」の前提は「ワクチン接種率を世界の全人口の7割に高める」、前提も楽観的過ぎるのかも知れない。 「米国で新型コロナウイルスは来年から2023年の間にエンデミックに移行すると想定。年間死者数は5万─10万人と、インフルエンザの3万人より多いと試算」、「エンデミック」に移行しても、死者数が高水準なのに驚かされた 東洋経済オンライン 「ゼロからわかる変異株の大物「オミクロン」の正体 感染症未来疫学センターの水谷哲也教授に聞く」 「オミクロン株」には「これまで感染が拡大した変異株の悪いところを総取りしたような特徴がある」、「悪いところを総取り」とはいかにも恐ろしそうだ。 「一般的には、変異をすること自体ウイルスにとっては不利なことだ。変異前には一定の感染性があったのに、ランダムに変異が入ることでウイルスとして駄目になってしまうことのほうが多いはず」、なるほど。 「変異株の大半は人知れず消える」ので、「われわれは、結果的に今回のように感染が広がって生き残った後の変異株しか確認できない」、言われてみればその通りだ。 「日本」でも既に「オミクロン株が主流」になりつつあるようだ。 上 昌広 「オミクロン株が心配な人に知ってほしい最新事情 欧米で先行、日本国内での流行に備えは十分か」 「クラスター」は「沖縄米軍基地」の他にも、「岩国」、「横須賀」などのの米軍基地」でも発生(人数はそれぞれ、574人、529人、213人(1月7日付けしんぶん赤旗) 「医系技官」が「PCR検査」件数を抑制しようととするのは、迫井氏の前任者からの伝統だ。 「追加接種は完全ではないが、オミクロン株の感染リスクを相当レベル低下させるというのが、現時点での世界のコンセンサスだ」、「日本は一刻も早く追加接種を進めなければならない」、その通りだ 「臨床研究による現状把握」を含めて「データに基づいた合理的な議論が必要」、強く同意する。 ブルームバーグ 「ブースター接種繰り返し、免疫系に悪影響の恐れ EU当局が警告、寒い季節の到来に合わせるべきと」 「接種を頻繁に行うと免疫系に悪影響を及ぼす恐れ」とは穏やかではない、どういうことなのだろう。 確かに「接種を頻繁に行うと免疫系に悪影響を及ぼす恐れ」とは、あり得る問題だ。有効な「免疫」が期待
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パンデミック(経済社会的視点)(その19)(コロナ死者を追悼もしない日本に漂う強烈な不信 私たちはなぶり殺し同然にされるのを恐れている、なぜPCR検査数は増えないのか? 背景に「衛生の歴史」と「官僚の利権意識」、ワクチンじゃない?謎のコロナ急減解く3つの鍵 ロックダウンなど強い行動制限なしでも急減した) [パンデミック]

パンデミックについては、(医学的視点)を昨日取上げ、(経済社会的視点)は8月30日に取上げた。今日は、(その19)(コロナ死者を追悼もしない日本に漂う強烈な不信 私たちはなぶり殺し同然にされるのを恐れている、なぜPCR検査数は増えないのか? 背景に「衛生の歴史」と「官僚の利権意識」、ワクチンじゃない?謎のコロナ急減解く3つの鍵 ロックダウンなど強い行動制限なしでも急減した)である。第一の記事は、政府のコロナ対策に対する批判のなかでも、私がこれまで読んだなかでも最大限に手厳しいもので、必読である。

先ずは、9月5日付け東洋経済オンラインが掲載した評論家・著述家の真鍋 厚氏による「コロナ死者を追悼もしない日本に漂う強烈な不信 私たちはなぶり殺し同然にされるのを恐れている」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/452729
・『新型コロナウイルスに感染し、肺炎を起こして入院した女優・綾瀬はるかさんに対して、ネット上では「上級国民だから優先的に入院できた」といった批判が沸き起こった。中等症だから入院できるのは当然との反論もあったが、ご承知の通り東京都内では、中等症で救急車を呼んでも入院先が見つからず、自宅療養を余儀なくされるケースが相次いでおり、最悪の場合そのまま死亡してしまうことも珍しくない。つまり、医療提供体制がまともに機能していないのである。 もちろん上級国民は幻想だ。しかしそのような特権階級がいるかのように思わせる社会的な不公平性がすでに顕在化しているからこそ、「たまたま入院できた」という出来事の真相を解き明かす上級国民というパワーワードが一定のリアリティを持ってしまうのである』、「中等症で救急車を呼んでも入院先が見つからず、自宅療養を余儀なくされるケースが相次いでおり、最悪の場合そのまま死亡してしまうことも珍しくない。つまり、医療提供体制がまともに機能していないのである」、「そのような特権階級がいるかのように思わせる社会的な不公平性がすでに顕在化しているからこそ、「たまたま入院できた」という出来事の真相を解き明かす上級国民というパワーワードが一定のリアリティを持ってしまうのである」、コロナ対策の欠陥を突いた手厳しい批判である。
・『人命軽視としか評しようのない政府のコロナ対策  それらの疑心暗鬼を作り出す心理的な背景となっているのは、現在進行している人命軽視としか評しようのない政府のコロナ対策だ。自宅療養、自宅待機という名の医療提供の放棄が横行し、事実上の無政府状態が出現していることへの国民の不安といら立ちが、デルタ株の感染爆発という新しい段階において急速に膨れ上がっている。菅義偉首相は9月3日に辞任を表明したが、それだけで事態が好転するワケではない。 第5波の真っただ中にある東京では、病床の逼迫が深刻化し、自宅療養中の死亡が続出している。入院患者は4000人を超え、自宅療養者はおよそ2万人に上っている(9月1日現在)。 東京都の新型コロナウイルス感染症モニタリング会議における「医療提供体制は深刻な機能不全に陥って」「救える命が救えない事態となる」「自分の身はまず自分で守ることが必要である」という言葉には、「生物としての人間」を維持するために不可欠なロジスティクス(兵站)を軽んじた代償を現場の指揮官や兵士、軍属や民間人に押し付けた戦時中の無責任体制を髣髴(ほうふつ)とさせるものがある。 これはかつて第2次世界大戦で従軍し戦後評論家として活躍した山本七平が語っていたことで、セクショナリズムが国益を食い潰す文化が絡んでいる。しかも今回は、感染爆発に備えるだけの十分な時間があり、人員や病床の確保や、地域医療を含めた支援体制の構築等々オールジャパンで取り組める素地がないわけではなかった。けれども、為政者はパン(=GoToキャンペーン)とサーカス(=東京五輪)ばかりに貴重な資源を費やし、せっかくのチャンスを台無しにした。 元厚生労働省医系技官で医師の木村盛世氏は、既存の病床をICUとして使用できるといった法整備、人工呼吸器を扱える医師やスタッフをかき集めるのに十分な時間があったはずなのに、厚労省も日本医師会もこのような取り組みをいっさいしてこなかったと批判。「その結果として、欧米に比して極めて少ない感染者数と死亡者数でいとも簡単に医療が逼迫してしまった」と述べ、「現在の医療の逼迫は、実際には新型コロナウイルスの登場から1年以上がたったにもかかわらず、重症化対応に関して、なんの努力もしなかった厚労省と日本医師会の責任」と強調した(『新型コロナ、本当のところどれだけ問題なのか』飛鳥新社)。 さらに付け加えれば、いまだに重症化を防ぐための早期診断、早期治療を施す基本的な診療体制すら構築されていない。まさにコロナ戦争において戦時医療体制の構築を怠り、「救える命が救えない事態」を作り出してしまったのは、大戦中と同じく政治決定における重大な過ちに基づくものと言わざるをえない』、「自宅療養、自宅待機という名の医療提供の放棄が横行し、事実上の無政府状態が出現していることへの国民の不安といら立ち」、「「医療提供体制は深刻な機能不全に陥って」・・・という言葉には、「生物としての人間」を維持するために不可欠なロジスティクス(兵站)を軽んじた代償を現場の指揮官や兵士、軍属や民間人に押し付けた戦時中の無責任体制を髣髴(ほうふつ)とさせるものがある」、「感染爆発に備えるだけの十分な時間があり、人員や病床の確保や、地域医療を含めた支援体制の構築等々オールジャパンで取り組める素地がないわけではなかった。けれども、為政者はパン・・・とサーカス・・・ばかりに貴重な資源を費やし、せっかくのチャンスを台無しにした」、「既存の病床をICUとして使用できるといった法整備、人工呼吸器を扱える医師やスタッフをかき集めるのに十分な時間があったはずなのに、厚労省も日本医師会もこのような取り組みをいっさいしてこなかったと批判。「その結果として、欧米に比して極めて少ない感染者数と死亡者数でいとも簡単に医療が逼迫してしまった」と述べ、「現在の医療の逼迫は、実際には新型コロナウイルスの登場から1年以上がたったにもかかわらず、重症化対応に関して、なんの努力もしなかった厚労省と日本医師会の責任」と強調」、ここまで手厳しい批判は初めて読んだ。
・『権力や権益のほうが重要で国民の生命は二の次に  政治決定において自らの権力の延命や自組織の権益の保全のほうが重要な場合、国民の生命や財産を守ることは二の次となる。コロナ禍でどれだけ犠牲者が生じても関心には上らなくなる。死者や遺族に対する認識にそれが如実に表れている。 ドイツ政府は今年4月、新型コロナウイルス感染症によって亡くなった8万人近い死者を追悼する式典を執り行なった。フランクワルター・シュタインマイヤー大統領は、「あらゆる数字の裏に人の運命があり、人々の存在があるということを、われわれ社会が自覚できていないような印象がある」と述べ、コロナ禍の孤独の中で亡くなった人々に思いをはせるよう訴えた(ドイツ政府、式典でコロナ死者追悼 国民に団結求める/2021年4月19日/AFP)。 同様の死者追悼は、イギリスではロックダウンのちょうど1年後に当たる今年3月に、アメリカでは同2月に実施している。犠牲者数が多いからという見方もできるが、中国では昨年4月に先祖の墓参りの時期に死者追悼を執り行っている。 日本でこのような国民の心情に配慮した死者追悼を寡聞にして知らない。ここにこそ為政者のメッセージが刻印されているといえる。つまり、たとえ「人災」の側面があったとしても、悪いのは人流を抑制できない国民であり、協力的でない民間の医療機関であり、犠牲者のことなどどうでもいいのである。 わたしたちは、かなり前からこのことに気付いていたはずだ。経済学者のジャック・アタリが言っていたように、「指導者は、自分たちを守るためになすべきことをしかるべき時期に実行しなかったのではないか」という疑念はすぐに確信に変わったのではないだろうか(『命の経済パンデミック後、新しい世界が始まる』林昌宏・坪子理美訳、プレジデント社)』、国家による「死者追悼」が「日本」で行われないのは、「悪いのは人流を抑制できない国民であり、協力的でない民間の医療機関であり、犠牲者のことなどどうでもいいのである」、「日本政府」は「自分たちを守るためになすべきことをしかるべき時期に実行しなかった」のは確かだ。
・『シワ寄せを受けるのは社会的に不利な立場の人々  これら一連のコロナ対策のシワ寄せを受けるのは、とりわけ感染しやすい就業環境で働いていたり、重症化の因子となる基礎疾患を持っていたり、いまだワクチン接種を受けられなかったり、さまざまな理由によって社会的に不利な立場にいる人々である。 そこで、いっそのこと日本が崩壊してしまえば、そこから新しい世界が立ち上がるなどといった願望とも予言ともつかない観測にすがる傾向が出てくるが、これはあまりにもおめでたい希望的観測だろう。個人化した快適な生活というバブルに閉じてしまったわたしたちは、真に何が重要な事柄なのかを見定める以前に、自分の運のよさを日々のニュースを一瞥することで確かめ、同情と憂いのため息をついてみせるのが関の山であり、具体的なアクションを起こすには至らないからだ。 そういう意味において東京五輪で注目された「バブル方式」という概念は、すでに人々の間に定着していた、数多の階層や、健康状態、情報環境などによって囲い込まれ、泡(バブル)の膜で外部を遮断する処世を、目に見えるグロテスクな形で再現した模倣にすぎなかったといえる。 要するに、その真意とは、どれだけ社会が悪化しようともバブルの中にいる人々は痛くもかゆくもなく、パニック映画のようなわかりやすい破局はついに訪れず、統計的に犠牲者だけが緩慢なペースで増えてはいくものの、それは別のバブルで発生した避けられない悲劇のように受容され、総体として社会は問題なく継続していく極めて不愉快なものなのである。 哲学者のスラヴォイ・ジジェクは、現在のような事態は、これまでハリウッド映画が描いてきたいずれのディストピアとも異なると主張し、「COVID?19パンデミックに関する真に奇妙な点」は「その〝非終末的な〟性質」であり、「世界の完全な破滅という通常の意味での終末でもなく、ましてや、これまで隠されていた真実の暴露という本来の意味での終末もない」と注意を促した。 そう、我々の世界はバラバラに崩れようとしているが、この崩壊のプロセスはダラダラと続いて終わりが見えないのだ。感染者と死亡者の数字が増えているときにも、メディアはピークがいつ来るかの憶測ばかり。すでに今がピークじゃないかとか、あと一、二週間はどうかとか。皆がパンデミックのピークが来るのを見守り心待ちにしていて、まるでその後は徐々に平常を取り戻せるかのように思っている。が、危機はいつまでも続くのだ。おそらく、たとえCOVID?19のワクチンが開発されたとしても、今後も感染発生や環境変動に脅かされ続ける〝ヴァイラルワールド〟から逃れられないーーということを受け入れる勇気を持つべきだろう。(『パンデミック2COVID-19と失われた時』岡崎龍監修、中林敦子訳、Pヴァイン)。 決定的な終末はやって来ない。「感染爆発による日本の崩壊」もありえない。崩壊するのは個々の現場の医療、個々の現場の家族であり、ずさんな支援体制の下、最前線で職務に当たっている医師や看護師、保健所の職員などが疲弊し、健康リスクの高い人々とその家族が重症化と死の恐怖に怯え、改善できたはずの構造的欠陥の犠牲者としてカウントされていくのである。このような終わりなき悪夢がいつまでも繰り返され、わたしたちは自分の身に降り掛かってから初めて、その悪夢の実相に触れて驚愕することになるのだろう』、「危機はいつまでも続くのだ。おそらく、たとえCOVID?19のワクチンが開発されたとしても、今後も感染発生や環境変動に脅かされ続ける〝ヴァイラル(注)ワールド〟から逃れられないーーということを受け入れる勇気を持つべきだろう」、不吉な予告だ。
(注)ヴァイラル:「情報が口コミで徐々に拡散していく」さま(IT用語辞典)
・『全力で異議を唱えなければ危機の片棒を担ぐのと同じ  私たちが本当に恐れているのは、コロナという新興感染症がもたらす災厄ではない。世界的な危機において、欧米諸国に比べて相当恵まれた状況にありながら、信じられないほど無能で、想像を上回るほど役立たずで、国民の命を屁とも思わないように見える国家、恥知らずな為政者の不作為によって、結果的に通常の医療さえ受けられず、なぶり殺し同然になることを心底恐れているのである。 これに全力で異義を唱えないことは、コロナ禍以後に起こりうる次なる危機においても、まったく同じ目詰まりによって危機が助長され、より熾烈化する〝ヴァイラルワールド〟の片棒を担ぐことに等しい。 わたしたちは進んでバブルの外に出なければならない』、「欧米諸国に比べて相当恵まれた状況にありながら、信じられないほど無能で、想像を上回るほど役立たずで、国民の命を屁とも思わないように見える国家、恥知らずな為政者の不作為によって、結果的に通常の医療さえ受けられず、なぶり殺し同然になることを心底恐れているのである。 これに全力で異義を唱えないことは、コロナ禍以後に起こりうる次なる危機においても、まったく同じ目詰まりによって危機が助長され、より熾烈化する〝ヴァイラルワールド〟の片棒を担ぐことに等しい。 わたしたちは進んでバブルの外に出なければならない』、全く同感である。

次に、昨年8月11日付けAERAdot「なぜPCR検査数は増えないのか? 背景に「衛生の歴史」と「官僚の利権意識」」を紹介しよう。昨年の記事でやや古いが参考になるので取上げた次第。
https://dot.asahi.com/aera/2020081700036.html?page=1
・『感染が不安だ。だが希望してもPCR検査を受けられない。そんな状況が今も続く。背景には戦前か続く「医療」と「衛生」の分断や、官僚の利権意識がある。AERA 2020年8月24日号で掲載された記事から。 「自治体の現場を知る者として申し上げたいのは、(PCR検査は)絶対に増えない構造になっています」 8月4日に日本記者クラブで記者会見した東京都世田谷区の保坂展人区長は、新型コロナウイルスのPCR検査の拡充の難しさについてこう述べた。 同区の人口は都内最大の約92万人。7月末までに約1千人の区民が感染した。最近では家庭内、職場内での感染も広がっているという。保坂区長は、検査の拡充が難しいとは認めつつ、それでも拡充しなければいけないという考えだ。 「これだけ市中感染が広がると、PCR検査のハードルをぐっと低くする、もしくはなくしていく(ことが必要だ)。ニューヨークでやっているような『いつでも、どこでも、何度でも』ということを最終的に目指していく」 同区では、東京大学の児玉龍彦名誉教授の提案を元に、検査数の桁違いの拡充や医療や介護の現場で働く人たちへの検査体制の確立に向けて動き出した。「うまくいった例を参考にして、ということになると、PCR検査を制限するという話にはならない」(保坂区長) 安倍晋三首相が4月に1日2万件を目指すと表明した国内のPCR検査数は、7月30日現在で1日あたりの能力で3万5664件。感染が急激に広がっているさなかの7月19~30日の12日間の実際の検査数をみると、6712~2万2302件。2万件を超えたのは2日しかなく、1万件を切った日は3日ある。安定的に目標を達成している状況ではない。 ウェブサイト「worldometer」では5日現在、人口比の検査人数で、日本は世界215の国と地域の中で155位だ』、最新の「人口比の検査人数」は、下記のように100万人当たり210千件、ランキングは分からぬが、低水準であることは確かだ。
https://www.worldometers.info/coronavirus/
・『医師で、医療ガバナンス研究所(東京)の上昌広理事長は、検査が増えない理由について、日本の公衆衛生が成り立ちの経緯から医療の現場と“距離感”があることを指摘する。 「国内の感染症対策は、感染研(国立感染症研究所)と保健所が感染者を隔離してその周囲の人たちを検査するという仕組みになっています。これは、戦前は衛生警察と言われる警察の業務だった経緯もあり、現在の医療システムとは切り離されているとも言えます。感染研や保健所にはキャパシティーがないため、大量の検査をこなすことはそもそもできません」 英キングス・カレッジ・ロンドンの渋谷健司教授(公衆衛生学)もこんな指摘をする。 「一つはPCR検査を行政検査という枠にはめたことです。外国ならいわゆる上気道感染の識別診断という形で通常の医療の中で行われますが、日本は感染症法に基づく行政検査にすることで、医師の判断で通常の検査ができませんでした」 厚生労働省の組織と利権の問題だと指摘する声もある。厚労相時代に新型インフルエンザの流行を経験した舛添要一氏は、安倍首相が目指したほど検査数が十分に増えていないことについて、「加藤(勝信)厚労相に直言できるブレーンがいないのでは」との見方を示す。 「民主党から自民党に政権が戻ったとき、厚労省でも能力のある人たちが『お前ら民主党に協力したな』とずいぶんパージされました。長期政権になって、大臣にモノが言える役人がいなくなったようです」(舛添氏) しかし、そもそも「増やせ」という総理の意向があるのに、なぜ大臣に言えないのか。 「今は状況が違います。コロナ対応の失敗が続く中で『安倍は終わり』と思っている官僚は多い。検査を大幅に増やすということは、感染研の情報独占体制を脅かしかねないので、厚労省の官僚たちは、安倍首相を守るより、自分たちの利権を守るべきだと考えたはずです」(舛添氏) 前出の上理事長も、少ない検査数に対する国民の批判と“公衆衛生ムラ”の情報独占のバランスを取る苦肉の策としてできたのが、民間医療機関への検査の業務委託だとみる。 ここまでの3氏はいずれもPCR検査の拡充を訴えているが、別の考え方もある』、「感染研・・・と保健所が感染者を隔離してその周囲の人たちを検査するという仕組みになっています。これは、戦前は衛生警察と言われる警察の業務だった経緯もあり、現在の医療システムとは切り離されている」、「PCR検査を行政検査という枠にはめたことです。外国ならいわゆる上気道感染の識別診断という形で通常の医療の中で行われますが、日本は感染症法に基づく行政検査にすることで、医師の判断で通常の検査ができませんでした」、「少ない検査数に対する国民の批判と“公衆衛生ムラ”の情報独占のバランスを取る苦肉の策としてできたのが、民間医療機関への検査の業務委託」、なるほど、歴史的経緯もあるようだが、政府が増やせと命じたのに、さほど増えないのは官僚のサボタージュだろう。
・『2009年の新型インフルエンザ流行時、厚労相だった舛添氏の私的アドバイザーを務めた山形大医学部附属病院検査部の森兼啓太部長はこう話す。 「当初は東京都など検査のキャパシティーが明らかに足りないところがあり、準備不足という点で確かに問題はありました。ただ、今は民間も含めて随分キャパシティーは大きくなっています。『山ほど増やせ』という意見もありますが、現状で適正な規模だと考えられますし、そもそもロジスティクス(工程)的に難しいのではないでしょうか」 厚労省結核感染症課の医系技官、加藤拓馬さんも、そもそも感染者数が違うので外国との比較をしたうえで「増やせ」という議論には意味がないという考えだ。「感染予防の観点から必要な検査だけをやればよいのです」と話す』、厚労省やその息のかかった専門家は厚労省の肩を持つのは当然だが、その意見は割り引いてみる必要がある。

第三に、10月27日付け東洋経済オンラインが掲載した東京大学大学院経済学研究科 准教授 の仲田 泰祐氏による「ワクチンじゃない?謎のコロナ急減解く3つの鍵 ロックダウンなど強い行動制限なしでも急減した」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/464336
・『東京都では7月後半から新型コロナウイルスの感染が急拡大した。8月前半には多くの人々が、人流を大幅に削減しなければ感染は減少しないと主張した。ロックダウンを求める声もあった。 現実には8月中旬から多くの人流データは増加に転じた、もしくは下げ止まったにもかかわらず、感染は急速に減少した。東京都での1日新規感染者数(7日間平均)は8月19日には4774人であったが、その1カ月後の9月19日には815人、2カ月後の10月19日には52人である。この記事を書いている現在もまだ減少は続いている。 この急速な感染減少の要因に関してさまざまな推測・仮説が提示されているが、それらの定量的重要性を探った分析はあまり提示されていない。今後さまざまな分析が提示されてくると推測するが、現時点では、10月19日に発表された名古屋工業大学の平田研究室(平田晃正教授)の分析「7〜9月における新規陽性者数の増加と減少について」とわれわれが今回公表した分析の2つである。 この論考では、われわれのレポートの要旨を読者の皆様にお届けしたい(別府その他〈2021〉「東京での感染減少の要因:定量分析」』、大きな謎を解き明かしてくれそうで、興味深そうだ。
・『ワクチンだけが感染急減の要因にならない  重要ポイントは、以下の4つである。 1.ワクチン接種は7月後半から感染を抑制させる大きな力を継続的に働かせているが、それだけでは8月後半からの感染減少のタイミングと急速さは説明しにくい。 2. 基本再生産数の過大評価・医療逼迫に伴う人々のリスク回避行動・120日周期の存在は、その1つひとつが感染減少の多くを説明することが可能である(だからと言ってこれらが正しい仮説とは必ずしも言えないことには留意)。 3. 仮説によっては、今後の見通しは大きく改善する。 4. どの仮説が正しいかにかかわらず、「追加的な人流抑制をしなくても感染が急速に減少することもある」ことが判明したことは、今後の政策に大きな含意がある。 この分析の出発点は「感染減少が始まる直前の8月中旬に人流データを重要視していたら提示したであろう仮想の感染見通し」である。過去のデータから推定されたわれわれのモデルの接触率パラメーターと人流データにはある程度の相関関係がある。) 人流データの8月後半以降の実現値を仮に当時知っていて、過去の人流と感染の相関関係を利用していたら提示していた仮想の見通しが図1の青い線である。 この見通しによると、8月後半以降も感染拡大が続き10月第1週には1日新規感染者数約7000人となっている。この仮想見通しは、後ほど言及する当時の藤井仲田チームが提示していたものとは違うことは留意していただきたい。 (「図1:8月中旬の仮想基本見通し」はリンク先参照) (外部配信先では図を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) この仮想見通しをベースとして「感染減少要因として挙げられている要素を考慮していたら見通しはどのくらい減少したであろうか?」というシミュレーションをすることで、それぞれの要因の定量的重要性を探っていく』、なるほど。
・『ワクチン接種が遅くても感染減少は起こっていた  1つひとつの要因を眺める前に強調しておきたいポイントは、上記の仮想見通しはその後に観察されたワクチン接種率向上を考慮していることである。ワクチン接種率向上をきちんと考慮してもここで提示した見通しは感染減少を予見できていない。程度の違いはあれ、この特徴は8月中旬に提示されていたさまざまな研究チームによる見通しに共通している。 (「図2:ワクチンの感染拡大抑制効果」はリンク先参照) ワクチン接種率向上が8月後半からの急速な感染減少の説明としては成り立ちにくいことは、ワクチン接種がこれまで感染抑制に貢献していないということではない。図2では、仮にワクチン接種ペースが遅かった場合の感染の推移を計算しているが、7月後半からワクチンが感染拡大を大きく抑制してきたことが読み取れる。それと同時に、感染推移の輪郭はワクチン接種の有無には強く影響されないことも読み取れる。 ワクチン接種ペースはこれまで連続的に推移しているので、ワクチン接種の影響だけで感染がある時期に急速に増減することは起こりにくい。8月後半からの感染減少のタイミングと急速さを説明するためには、ワクチン以外の要因も必要そうだと言える。 ワクチン接種が8月後半からの急速な感染減少を説明しにくいのであれば、どのような要素が説明できるのであろうか?』、「ワクチン接種の影響だけで感染がある時期に急速に増減することは起こりにくい」、確かにその通りだが、では要因は何なのだろう。
・『感染減少に貢献したかもしれない3つの要素  ここでは3つの要素を定量分析する。紙面の都合上、感染減少に大きな貢献をしたとは言えなさそうないくつかの仮説には触れることはできないが、そちらにも興味のある方々は元のレポートをご覧になっていただきたい。また、資源的・時間的制約から、世の中に提示されている興味深い仮説をすべて定量化することはできなかったことは理解していただきたい。 1.当時の想定よりも低いデルタ株の感染力(われわれは、7月最終週の感染急拡大を観察した直後に「デルタ株の感染力は想定以上に高い」と判断し、デルタ株のアルファ株に対する相対的感染力の設定を1.3倍から1.5倍に変更した。 しかしながら、デルタ株割合が増加し始めた6月下旬からの実効再生産数の推移を見てみると、7月最終週に大きな値を記録した以外はそれほど高くないレベルで推移している。7月最終週の値を、デルタ株の感染力の高さのシグナルとして捉えるのではなくほかの特別要因によるものとして捉えたほうがよかったのかもしれない。 8月中旬にデルタ株の感染力をアルファ株の1.5倍ではなく例えば1.2倍と評価していたら、感染見通しは10月第1週で約3500人減少する(図3の水色の線)。 (「図3:想定よりも低い基本再生産数」はリンク先参照) この仮説はより広く、標準的なモデルに考慮されていない集団免疫獲得の閾値を下げるさまざまな要素の定量的重要性を捉えていると解釈してもいい。そういった要素の例としては、個人間での免疫力の異質性・細分化されたコミュニティーの存在等などがある。 どんなに複雑なモデルも現実を単純化しており、単純化のされ方によって集団免疫獲得の閾値を過大評価してしまう可能性がある。運用しているモデルを変更せずにそういった影響を修正する1つの方法は、基本再生産数を低く設定することである。もし、モデルと現実の乖離が理由で基本再生産数が想定よりも低いと判断するのならば、図3の水色の線で示した以上に低い基本再生産数設定も正当化しうる。 この仮説が正しいとすると、今後の見通しは改善する。低い基本再生産数は、集団免疫獲得までに必要な感染者数を減少させるからだ。 2.医療逼迫による人々のリスク回避(われわれが分析を始めた昨年から重視している感染増減メカニズムの1つが「医療逼迫による人々のリスク回避・個人レベルでの感染症対策の徹底」である。このメカニズムはさまざまな研究者がコロナ危機発生直後から重要視しており、それをサポートする実証研究も存在する。 肌感覚としてこの仮説に納得感を持つ人も少なくないと考える。個人的な話で恐縮だが、8月前半に東京都で深刻な医療逼迫を理由に外出も控えた人々はわれわれの周りに少なからずいる。SNSで同様の行動変容をした人々を探せばいくらでも見つかる。もちろんまったく医療逼迫に動揺しなかった人々もたくさんいると推測するが、このような行動変容をした人々が一定数いた可能性がまったくなかったとは断言しにくい。) 既存のデータだけではわからないことも多い中では、こういった事例証拠(Anecdotal Evidence)も積極活用するのが自然である。中央銀行は、データだけからは経済・金融の全体像がつかめないこともあることを長年の経験で理解しているので、事例証拠を政策判断の一部として積極的に活用している。もちろん事例証拠に頼りすぎたり、自分と似たような価値観の人々だけと意見交換をしたりしていると、判断を誤るので要注意であるが』、「深刻な医療逼迫を理由に外出も控えた人々はわれわれの周りに少なからずいる・・・このような行動変容をした人々が一定数いた可能性」、「既存のデータだけではわからないことも多い中では、こういった事例証拠・・・も積極活用するのが自然」、その通りだろう。
・『追加的な人流抑制なしでも感染は急減する  このメカニズムを根拠に、われわれは7月後半・8月前半には「自主的な行動変容による感染拡大抑制シナリオ」というものを提示していた。このシナリオでの見通しは定量的には現実との乖離もあるが、「追加的な人流抑制なしでも感染は急速に減少する」というパターンを大体捉えている。 図4では、この仮説の定量的重要性を捉えるために、過去の接触率パラメーターと新規感染者数、重症病床使用率の過去の相関関係を取り入れていたら、仮想見通しはどのように変化したかを示している。過去のデータによると、新規感染者数・重症病床使用率の増加はその後の実効再生産数の減少を予測する力がある。 結果としては、図に示されているように、この仮説は8月後半からの感染者減少をある程度説明することが可能である。 (「図4:医療逼迫によるリスク回避」はリンク先参照) この仮説の弱点は、新規感染者数が減少して重症病床使用率が下がった10月以降でも、感染減少が続いていることを説明しにくいことである。われわれは、この仮説は8月後半・9月前半の感染減少にある一定の貢献をしたが、それ以降の感染減少の説明には他の要因が必要であると判断している。 3.自然の周期(ウイルスの流行・変異には自然の周期というものがあり人間の行動とは関係なしに増加したり減少したりするという主張も聞かれる。季節性インフルエンザが人流抑制とはまったく関係なしに毎年冬に訪れることを考えると、ウイルス学を専門としないわれわれには十分に検討に値する仮説に思える。 (「図5:120日周期」はリンク先参照) 実際に、図5に示されているように、120日のサイクルと過去の接触率パラメーターとの相関関係を考慮した見通しを立てていたら、8月後半以降の感染減少をある程度捉えることができる。この仮説が正しいならば、感染症対策と社会経済活動の両立という視点からの最適な政策というものは根本的に見直す必要があるかもしれない。 この要素の今後の見通しへの影響は、周期がなぜ生まれるかに依存する。冬に拡大・4カ月後にアルファ株が蔓延・その4カ月後にデルタ株が蔓延したことで外生的に120日周期が発生してきたとする。そうすると、冬にまた拡大すると考えることもできれば、デルタ株よりも強い変異株が出てこない限り、拡大はもう起こらないと考えることもできる。もしこのような周期が上記したような人々の自主的なリスク回避行動によって内生的に発生するのであれば、それは再度波が来る可能性を示唆する』、「このような周期が上記したような人々の自主的なリスク回避行動によって内生的に発生するのであれば、それは再度波が来る可能性を示唆する」、要警戒だ。
・『急速な感染減少の政策含意  今回のレポートでは、急速な感染減少に関するいくつかの仮説の定量的重要性を分析した。こういった分析の結果は分析手法によって大きく変わる。したがって、われわれの分析結果を真実として受け止めるのではなく、今後出てくるであろう数ある分析結果の1つとして受け止めていただきたい。また、われわれもこの分析を最終地点として位置付けているわけではなく、今後も分析を続ける。分析でわかりにくい点・物足りない点等があれば、気軽に連絡していただけるとありがたい。 分析によって上記した3つの仮説が有力に見えてきたが、これら3つの仮説のすべてがある程度正しいのか、1つが正しくてほかの2つはまったく間違っているのか、等はまったくわからない。しかしながら、どの要素がどのくらい感染減少に貢献したかにかかわらず今回の感染減少からはっきりとしたことがある。それは「ロックダウン等の強い追加的行動制限なしでも感染は急速に減少することがある」という事実である。 この事実は、今後感染症対策と社会経済の両立を考えていくうえで示唆がある。もし周期性や医療逼迫によるリスク回避説にある程度の正当性があるのならば、感染拡大時において休校・時短要請・イベントでの人数制限等の追加的な人流削減政策を打たなくても、感染はある時点で減少に向かうと考えられる。政府は人々に正しい情報を提供することに徹することが重要であると言えるかもしれない。 上記の事実は、行動制限政策が無力であることを必ずしも意味しない。柔軟性があるとは言いがたい医療体制、保健所や一部のコロナ患者受け入れ病院の疲労、高齢者の重症化率や致死率の高さ等を考慮すると、行動制限政策が効果的な局面もあるかもしれない。 だが、そういった政策は社会・経済・文化・教育へ多大な負の影響をもたらす。飲食・宿泊業に従事されている方々をはじめ、これまで多くの方々がさまざまな生活の犠牲を払ってきた。自殺者もコロナ禍で若い世代を中心に増加しており、子ども達への発育・教育への長期的な負の影響も懸念されている。 今回の経験を記憶に刻み、「感染のリスク評価」と「感染症対策のリスク評価」の両方に配慮しながら意見形成・政策判断をしていただけたらと願う』、分科会メンバーに統計学の専門家が加わって、「行動制限政策」がどこまで有効だったのか、検証がさらに進み、科学的根拠に基づいて政策が展開されてほしいものだ。
タグ:「自宅療養、自宅待機という名の医療提供の放棄が横行し、事実上の無政府状態が出現していることへの国民の不安といら立ち」、「「医療提供体制は深刻な機能不全に陥って」・・・という言葉には、「生物としての人間」を維持するために不可欠なロジスティクス(兵站)を軽んじた代償を現場の指揮官や兵士、軍属や民間人に押し付けた戦時中の無責任体制を髣髴(ほうふつ)とさせるものがある」、「感染爆発に備えるだけの十分な時間があり、人員や病床の確保や、地域医療を含めた支援体制の構築等々オールジャパンで取り組める素地がないわけではなか AERAdot 「ワクチン接種の影響だけで感染がある時期に急速に増減することは起こりにくい」、確かにその通りだが、では要因は何なのだろう。 大きな謎を解き明かしてくれそうで、興味深そうだ。 「感染研・・・と保健所が感染者を隔離してその周囲の人たちを検査するという仕組みになっています。これは、戦前は衛生警察と言われる警察の業務だった経緯もあり、現在の医療システムとは切り離されている」、「PCR検査を行政検査という枠にはめたことです。外国ならいわゆる上気道感染の識別診断という形で通常の医療の中で行われますが、日本は感染症法に基づく行政検査にすることで、医師の判断で通常の検査ができませんでした」、「少ない検査数に対する国民の批判と“公衆衛生ムラ”の情報独占のバランスを取る苦肉の策としてできたのが、 仲田 泰祐 「コロナ死者を追悼もしない日本に漂う強烈な不信 私たちはなぶり殺し同然にされるのを恐れている」 「欧米諸国に比べて相当恵まれた状況にありながら、信じられないほど無能で、想像を上回るほど役立たずで、国民の命を屁とも思わないように見える国家、恥知らずな為政者の不作為によって、結果的に通常の医療さえ受けられず、なぶり殺し同然になることを心底恐れているのである。 これに全力で異義を唱えないことは、コロナ禍以後に起こりうる次なる危機においても、まったく同じ目詰まりによって危機が助長され、より熾烈化する〝ヴァイラルワールド〟の片棒を担ぐことに等しい。 わたしたちは進んでバブルの外に出なければならない』、全く同感 (経済社会的視点)(その19)(コロナ死者を追悼もしない日本に漂う強烈な不信 私たちはなぶり殺し同然にされるのを恐れている、なぜPCR検査数は増えないのか? 背景に「衛生の歴史」と「官僚の利権意識」、ワクチンじゃない?謎のコロナ急減解く3つの鍵 ロックダウンなど強い行動制限なしでも急減した) 東洋経済オンライン 「なぜPCR検査数は増えないのか? 背景に「衛生の歴史」と「官僚の利権意識」」 「危機はいつまでも続くのだ。おそらく、たとえCOVID?19のワクチンが開発されたとしても、今後も感染発生や環境変動に脅かされ続ける〝ヴァイラル(注)ワールド〟から逃れられないーーということを受け入れる勇気を持つべきだろう」、不吉な予告だ。 (注)ヴァイラル:「情報が口コミで徐々に拡散していく」さま(IT用語辞典) パンデミック 真鍋 厚 「このような周期が上記したような人々の自主的なリスク回避行動によって内生的に発生するのであれば、それは再度波が来る可能性を示唆する」、要警戒だ。 国家による「死者追悼」が「日本」で行われないのは、「悪いのは人流を抑制できない国民であり、協力的でない民間の医療機関であり、犠牲者のことなどどうでもいいのである」、「日本政府」は「自分たちを守るためになすべきことをしかるべき時期に実行しなかった」のは確かだ。 「中等症で救急車を呼んでも入院先が見つからず、自宅療養を余儀なくされるケースが相次いでおり、最悪の場合そのまま死亡してしまうことも珍しくない。つまり、医療提供体制がまともに機能していないのである」、「そのような特権階級がいるかのように思わせる社会的な不公平性がすでに顕在化しているからこそ、「たまたま入院できた」という出来事の真相を解き明かす上級国民というパワーワードが一定のリアリティを持ってしまうのである」、コロナ対策の欠陥を突いた手厳しい批判である。 最新の「人口比の検査人数」は、下記のように100万人当たり210千件、ランキングは分からぬが、低水準であることは確かだ。 https://www.worldometers.info/coronavirus/ 「深刻な医療逼迫を理由に外出も控えた人々はわれわれの周りに少なからずいる・・・このような行動変容をした人々が一定数いた可能性」、「既存のデータだけではわからないことも多い中では、こういった事例証拠・・・も積極活用するのが自然」、その通りだろう。 「既存の病床をICUとして使用できるといった法整備、人工呼吸器を扱える医師やスタッフをかき集めるのに十分な時間があったはずなのに、厚労省も日本医師会もこのような取り組みをいっさいしてこなかったと批判。「その結果として、欧米に比して極めて少ない感染者数と死亡者数でいとも簡単に医療が逼迫してしまった」と述べ、「現在の医療の逼迫は、実際には新型コロナウイルスの登場から1年以上がたったにもかかわらず、重症化対応に関して、なんの努力もしなかった厚労省と日本医師会の責任」と強調」、ここまで手厳しい批判は初めて読んだ。 厚労省やその息のかかった専門家は厚労省の肩を持つのは当然だが、その意見は割り引いてみる必要がある。 「ワクチンじゃない?謎のコロナ急減解く3つの鍵 ロックダウンなど強い行動制限なしでも急減した」 分科会メンバーに統計学の専門家が加わって、「行動制限政策」がどこまで有効だったのか、検証がさらに進み、科学的根拠に基づいて政策が展開されてほしいものだ。
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パンデミック(医学的視点)(その23)(3回接種が進んだイスラエルで感染爆発 4回目を準備 データ提供という「偉大な貢献」、政府の説明ではさっぱり分からない「なぜ第5波は終息したのか」 感染者データを用いたコロナ感染者予測モデルから分かること、感染急減の日本が油断大敵になってはいけない訳 ワクチン効果は徐々に薄れ 追加接種が不可欠、ワクチン3回目接種 2回終えた“全員対象”の方針 厚労省分科会) [パンデミック]

パンデミック(医学的視点)については、9月24日に取上げた。今日は、(その23)(3回接種が進んだイスラエルで感染爆発 4回目を準備 データ提供という「偉大な貢献」、政府の説明ではさっぱり分からない「なぜ第5波は終息したのか」 感染者データを用いたコロナ感染者予測モデルから分かること、感染急減の日本が油断大敵になってはいけない訳 ワクチン効果は徐々に薄れ 追加接種が不可欠、ワクチン3回目接種 2回終えた“全員対象”の方針 厚労省分科会)である。

先ずは、10月4日付けPRESIDENT Onlineが転載した「ニューズウィーク日本版」「3回接種が進んだイスラエルで感染爆発、4回目を準備 データ提供という「偉大な貢献」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/50503
・『<ブースター接種が1回で不十分だとすれば、いったい何回打てば感染を防げるのか、ワクチンは万能薬ではないのか、世界も近く問題に直面する:サマンサ・ロック>  新型コロナウイルスのワクチン接種で世界の先陣を切ったイスラエルは、ワクチンの効果を持続させるブースター接種(3回目の接種)にもいち早く着手した。それにもかかわらず今、感染者が急増している。 9月14日には新たな感染者数が1万730人、直近7日間の平均は1万1027人だ。 「これまでの波では存在しなかった記録だ」イスラエル保健省の新型コロナ対策を率いるナフマン・アッシュは9月14日に議会の委員会にオンラインでそう語ったと、地元メディアが伝えた。 今年6月には1日の感染者数を10数人前後まで抑え込めていたが、今は過去のピークを上回る第4波の真っ只中にある。 「1週間前には明らかな減少傾向が見られたが、ここに来て下げ止まり、Rの数字が(再び)1を上回った」と、アッシュは警告した。Rとは1人の感染者が何人に感染させるかを示す実効再生産数(Rt)のこと。1を下回れば感染は収束に向かうが、上回れば拡大を続ける。「今後より顕著に減少すると思いたいが、現時点ではその兆しは見えない」』、せっかく「ブースター接種」に「着手」しても、「感染者が急増」しているようだ。
・『学生フェスや巡礼で密集  イスラエル政府のコロナ対策の最高責任者サルマン・ザルカによると、9月13日の新規感染者1万556人の半数は未成年者だ。 ザルカによれば、保健省は政府に対し、大規模な集会を規制し、サッカーの試合など大観衆が集まるイベントを禁止するよう要請してきた。だが当局の警告にもかかわらず、9月初めには港湾都市エイラートで恒例の学生フェスが実施され、全土から集まった若者たちがどんちゃん騒ぎを繰り広げた。高名なラビ(ユダヤ教の聖職者)の墓があるウクライナ中部のウマニへの巡礼も、昨年は見送られたが今年は再開され、ワクチン接種を拒む超正統派のユダヤ教徒が大挙して参加した。 今後もこうした大規模イベントが次々に実施されると見られる。 今月に入りザルカは4回目のワクチン接種に向けて準備を進める考えを示した。 「ウイルスが存在し、今後も存在し続ける以上、4回目の接種にも備える必要がある」と、ザルカは9月4日、公共ラジオの取材に応えて語ったが、実施時期は明らかにしなかった。 ザルカによれば、4回目の接種では、感染力が強いデルタ株など新たな変異株に対応した改変型のワクチンを使う予定だ。今後も新たな変異株が次々に出現し、感染拡大の「波が繰り返される」と見られるため、定期的なブースター接種が「ニューノーマルになる」と、ザルカは予告する。イスラエル保健省は、今の第4波を乗り越えても、第5波は必ず起きるとの前提で準備を進めているという。 イスラエルは昨年12月に他国に先駆けてワクチン接種を開始し、今年3月初めには国民の半数以上が2回目の接種を済ませていた。 その後保健当局は、新たなデータで時間の経過と共にワクチンの効果が低下することがわかったと発表。7月末には高齢者を対象にいち早くブースター接種を開始した。 当初は、重症化のリスクが高い60歳以上を対象に、ファイザー製ワクチンの3回目接種を行なっていたが、8月には対象年齢が40歳以上に拡大された』、「4回目のワクチン接種に向けて準備を進める」、ずいぶん手回しがいいようだ。「高名なラビ・・・の墓があるウクライナ中部のウマニへの巡礼も、昨年は見送られたが今年は再開され、ワクチン接種を拒む超正統派のユダヤ教徒が大挙して参加した」、「ワクチン接種を拒む超正統派のユダヤ教徒」とは困ったものだ。
・『米政府も追加接種を目指すが  イスラエルのナフタリ・ベネット首相は先月フェイスブックの公式アカウントで、わが国は世界に先駆けてブースター接種を実施することで、グローバルなコロナとの戦いに、データ提供という「偉大な貢献」をしていると述べた。 「イスラエルはグローバルな知識に偉大な貢献をもたらそうとしている。われわれなしでは、世界はブースター接種の正確な有効性も、打つべきタイミングも、感染状況への影響も、重症化への影響も分からないだろう」 イスラエルでは早期にワクチン接種を受けた人たちの抗体レベルの低下を示すデータがあると、公衆衛生当局の責任者シャロン・アルロイプライスは述べているが、追加接種が進む今も、全土で感染者が増え続けている状況を見ると、ワクチンだけでは感染拡大は止められそうもない。 アメリカでも近々、ブースター接種が始まる。米食品医薬品局(FDA)は9月12日、臓器移植を受けた人など免疫力が低い人に限り、ファイザー製とモデルナ製ワクチンの3回目の接種を認める方針を発表した。 バイデン政権は9月末から医療従事者や高齢者を対象にブースター接種を進めたい考えだが、FDAも米疾病対策センター(CDC)も今のところ一般の人たちは2回の接種で十分に守られているとして、追加の接種は必要ないとの見解を変えていない』、「イスラエルはグローバルな知識に偉大な貢献をもたらそうとしている。われわれなしでは、世界はブースター接種の正確な有効性も、打つべきタイミングも、感染状況への影響も、重症化への影響も分からないだろう」、その通りだ。「追加接種が進む今も、全土で感染者が増え続けている状況を見ると、ワクチンだけでは感染拡大は止められそうもない」。

次に、10月8日付けJBPressが掲載したスタイルアクト(株)代表取締役・不動産コンサルタントの沖 有人氏による「政府の説明ではさっぱり分からない「なぜ第5波は終息したのか」 感染者データを用いたコロナ感染者予測モデルから分かること」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67233
・『コロナ第5波は終息したが、なぜ終息したかは明らかではなく、何をすれば感染減に繋がるのかという点も曖昧なまま。感染に関わる膨大なデータが日々発表されるにもかかわらず、新型コロナウイルス感染症対策分科会は科学的とは言えない説明に終始している。来たるべき第6波に備えるため、われわれは何を指標とすべきなのか──。統計解析のスペシャリスト、スタイルアクトの沖有人氏が分析する。 新型コロナの第5波が終息した理由は何だったのだろうか。 第5波のピークだった8月20日前後は全国で毎日2万5000人が感染する状況だったが、その後、急速に感染者は減少し、9月末には1000人台となっている。結果、緊急事態宣言は解除されたが、流行と抑え込みのメカニズムはいまだに分かっておらず、第6波の到来を前に、私たちはただおびえるしかない。 この謎を科学的に解くにはどうすればいいのだろうか。私は統計分析を生業としており、主に不動産や人口予測の分野でマーケティングのための様々な予測モデルを構築してきた。その知見を生かして、どういう条件で新規感染者や死亡者が増加するか、予測モデルを作成した。そこで分かったことを、ここでみなさんにお伝えしようと思う。 9月末の緊急事態宣言解除の記者会見では、当時の菅首相だけでなく、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身会長が5つの要因を提示した。しかし、ここで挙げられた要因は、残念ながら統計的にはほぼ説明できないことばかりだった』、「尾身会長が5つの要因を提示」したが、「ここで挙げられた要因は、残念ながら統計的にはほぼ説明できないことばかりだった」、非科学的なやり方にはガッカリする。
・『感染の減少と因果関係が見えない尾身会長の説明  (1)一般市民の感染対策強化(第5波の山は高く、急降下している。この山と谷を説明するには極端な変化を伴う変数が必要だが、公開されているデータを分析する限り、そういった変数は見当たらない。自分の日常やメディアの報道を通してという限定的な範囲だが、このピークの前後で国民の日常生活が劇的に変わったという事実は見当たらない。国民の努力に対するリップサービスなのかもしれないが、因果関係は全く把握できない。 (2)人流、特に夜間の滞留人口減少(公開情報を分析したところ、人流の減少は多く見ても、直近ピーク時の2割程度というところだ。 例えば、お盆の時期の移動は東海道新幹線の乗車率の推移で分かる。それを見ると、8月の乗車率は7月以下で、お盆に例年のような大移動は起きていない。また、政府は人流を重視するが、ただの外出で感染した人がどれぐらいいるのだろうか。人流で感染拡大するのであれば、毎日、山手線でクラスターが発生していてもおかしくない。 飛沫感染が主な理由と言われていることを考えれば、外出の制限に意味があるという統計的な説明はできない。 なお、夜間の滞留人口を夜10~12時に外出している人だと定義すれば、いわゆる夜の店に行っている人が中心だろう。それは「うつるべくしてうつった人」であり、一般的な人流とは異なるのではないだろうか』、このように要因をきちんと切り分けることも重要だ。
・『ワクチン接種率40%でピークアウトと説明するには無理がある  (3)ワクチン接種率の向上(第5波の山がピークアウトしたのは、2回目のワクチン接種率が40%程度の時だ。ワクチン接種率は月間で10%程度上昇しているので、ワクチン接種率が30%の頃に生まれた大きな波が40%でピークアウトすると説明するのは無理がある。 また、ワクチンに絶大な効果があるのであれば第5波の上昇を抑えられたはずだが、山はこれまで以上に高かった。ワクチンに新型コロナを抑え込む効果が一定程度あることは統計を用いて後述するが、決定的な要因にはなっていない。 (4)医療機関・高齢者施設での感染者の減少(日本国民の中で、病院や高齢者施設にいる人は1%もいない。そこでの数が倍増しようが、全体の感染者の数値に影響を与えることはない。そうした施設の話をわざわざ持ち出したのは、コロナの最前線で戦った医療機関や高齢者施設に対するリップサービスなのだろうか。少なくとも公共の電波で伝えるような要因とは思えない。 (5)気象の要因(夏が終わりに近づき、気温が下がったら感染者が減るという指摘には、全く因果関係がない。ここまで来ると、もはや滑稽な話でしかない。 ここまで、尾身会長の説明に統計的な説得力がないということを説明してきた。次に、統計的に今後の感染者数がどうなっていくのかという点について見ていこう』、なるほど。
・『日々の感染者数で1週間後は予測可能  毎日ニュースとして耳にする感染者数は、過去の推移から短期的な将来を予測することができる。 予測対象は、陽性者数→入院治療等を要する者→重症者数→死亡者数の順で相関関係が明らかに出る。つまり、陽性者が増えれば入院患者が増え、重症者が増え、死亡者が増えるという関係だ。 それゆえに、明日の陽性者数は今日の陽性者数と昨日から今日の数の変化でほぼ説明できる。昨日100人、今日110人なら、増加数10人なので、今日の110人と増加数10人の影響を受けて明日は123人──という具合に決まるような話だ。 例えば、入院治療等を要する者はその前日水準と陽性者数(過去2週間)とワクチン2回目接種率の3つの変数で説明でき、並べた順で影響力が強い。私の分析では、ワクチン接種率が10%上がると、入院等を要する者が1750人減少する。 同様に、重症者数は入院治療等を要する者(1週間前)とワクチン2回目接種率(接種率10%上がると、重症者数は70人減少)の2つの変数で説明できる。 死亡者数は、その前日水準と重症者数(1週間前)とワクチン2回目済率(10%上がると、死亡者数は10人減少)で説明できる。この2か月でワクチン接種率は20%ほど上昇したので、毎日20人の命が救われていることになる。ただ、死亡者の場合、最も効く変数は重症者数であり、ワクチン接種率ではない。 これらのモデルから分かることは、(1)毎日の動きが予測の最大の根拠となる (2)ワクチンの効果は一定程度あるが、補助的であり決定的ではない (3)このモデルでは1週間先はほぼ予測できる』、確かに「1週間先はほぼ予測できる」ようだ。
・『節目の変わるタイミングでは何が起きているか?  なお、波が来ることも、ピークアウトすることも、前日との差(前週の同じ曜日と比較しての差)で予測可能だ。具体的に言えば、連続して4日同じ方向に動いた時にトレンドが転換する。つまり、4日連続で新規感染者数が増加に転じたら、第6波がやってくると考えた方がいい。 ただ、その山の高さ(感染者数の多さ)は予見することができない。実行再生産数を用いることもできるが、これは単なる仮定に過ぎず、実行再生産数自体を予測することはできない。 このように、現状では毎日変化するグラフの傾きに応じて1週間程度先を予測することくらいしかできないが、それでも1週間後に向けて事前に対処できるということに意味はあるはずだ。 第5波の教訓として語られるべきことは、山の高さをもたらした要因を正確に把握することだ。これが分かれば、第6波に備えられる。 第5波である7月、8月の感染者を見ると、20代以下が5月より+8%、6月より+4%と大幅に増えている。この年代の人々からすれば、ワクチン接種は先の話になりそうで、たとえ感染しても死亡する確率は極めて低い。そうした状況から気を緩めてしまった人によって、山が高くなったというのは明らかな傾向としてある。 この層は夜間の滞留人口と同様で、「うつるべくしてうつった人」なのかもしれない。「かもしれない」と語尾を緩めたが、データがないだけで、これは調べることができる。感染者の感染経路を全件調査し、感染パターンを類型化し、何%を占めるかを明確にすればいいのだ。 感染経路は現在4割程度しか判明していないが、この結果が有効な行動制限を確定させる決め手となる。 例えば、「マスクをせず飲み会に参加した」「カラオケでマイクの消毒をせず歌い続けた」「感染者らしき人に出くわした後に手洗いを忘れた」といった感染理由が浮上したとして、その感染パターンとは関係ないことを気をつけても仕方がない。恐らく、外出を控えても効果がないことはここから分かるだろう。自粛という形を取る以上、具体的な行動を自粛対象として告知することが端的に効果を出す何よりの方法だ』、「感染経路は現在4割程度しか判明していないが、この結果が有効な行動制限を確定させる決め手となる」、でも判明率を上げるのは困難だろう。
・『科学的とは言えない分科会メンバー  第6波が来るとしたら、10月の下旬以降になりそうだ。冬場で大流行する可能性もあり備える必要があるが、「何をすべきかが分からない」という事態は避けなければならない。そのためには、日本の科学の英知を結集することが必要だ。 2020年4月の第1回の緊急事態宣言の際は、専門家の委員会は感染病の専門家と医療関係者だけだった。その後、経済学者が入り、経済を動かす必要性を提言することになった。 現在の分科会メンバーについては、偏っていて科学的でないという印象を受ける。科学的とは、分からないことを数多く明らかにし、分からないことは分からないと明示することだ。予測モデルで因数分解したように、各要因の因果関係と影響度は統計で処理できる。これほど毎日の数字が克明に出るのに、定性的なぼんやりとした話を繰り返すのは数字を扱い、判断する能力がないと考えた方がいい。 その意味で、統計学者は委員に1人必要だろう。また、具体的な感染パターンの把握と自粛行動へのアナウンスも、人間心理に長けた心理学者が欲しいところだ。その人の役目は、人心を把握し、効果を最大化する説得力ある発信をすることにある。 まだ、コロナとの闘いは終わってはいない。菅首相が退陣を余儀なくされたように、ただ一生懸命に取り組むだけでは評価されない。リーダーたるもの、効果を見せながら、「この人の言うことは守らなければ」と思われるようにならなければならない。そこには、事実に基づいた実行性のある見識が必要である』、「分科会メンバー」には「経済学者が入り」、経済学者であれば、統計のことも分かっている筈だ。ただ、専門的な「統計学者」や「人間心理に長けた心理学者」がいる方が望ましい。彼らの助言を得て、「首相」には「事実に基づいた実行性のある見識」を示してほしいものだ。

第三に、10月26日付け東洋経済オンラインが掲載した医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広氏による「感染急減の日本が油断大敵になってはいけない訳 ワクチン効果は徐々に薄れ、追加接種が不可欠」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/464390
・『冬の足音が聞こえてきた。多くの欧州諸国では、感染者の増加が顕著だ(図1)。日本のメディアは「規制撤廃の英国新型コロナ200人超え」(テレビ朝日10月20日)のように、感染者増を規制緩和に伴う人流増に求める論調が強いが、それは的外れだ。欧州の感染増を知れば、季節性変化の影響が大きいと考えるのが合理的だ。 図1(Daily new confirmed COVID-19 Ccases per million peopleの図はリンク先参照)』、上氏は独自の視点から筋論を展開するとして、私が注目している医者だ。「欧州の感染増を知れば、季節性変化の影響が大きいと考えるのが合理的だ」、なるほど。
・『第6波で未曾有の感染爆発が起こる可能性は残る 日本でも早晩、感染者は増加し、冬場の大流行を迎える。イギリス・オックスフォード大学が提供するデータベース「Our World in Data」によれば、昨秋、日本は10月22日の感染者数4.23人(人口100万人あたり、7日間平均)を底に、感染者数は増加の一途を辿った。ピークは1月11日の同51.14人だった。今年も、似たような推移をたどるだろうと私は予想している。 今年、注目すべきは変異株の存在だ。昨冬の流行の中心は変異がない従来株だった。今冬はデルタ株、あるいはイギリスで感染が確認されているデルタ・プラス株のような新たな変異株かもしれない。日本の足元の感染状況は1年数カ月ぶりの低水準まで収まっているが、その理由もはっきりしないだけに、今後、第6波で未曾有の感染爆発が起こる可能性も十分以上に残されていると考えたほうがいい。 では、どうすればいいのか。最優先はワクチンの追加接種だ。コロナに限らず、ワクチン接種は感染症対策の中核となる。コロナ対策でも、昨年12月にイギリスでの接種開始を振り出しに、世界各国はワクチン接種を促進してきた。接種開始が今年2月となった日本だが、その後、急速に追い上げた。10月21日現在の接種完了率は69%で、カナダ(73%)、イタリア(71%)に次いで、主要先進7カ国(G7)で第3位だ。すでにフランス(68%)、イギリス(67%)、ドイツ(66%)、アメリカ(57%)を抜いている。 ところが、それでも楽観視できない。それは、コロナワクチンは接種から時間が経てば、その効果が低減するからだ。このあたり、ワクチン接種を済ませば、ほぼ一生にわたって効果が続く麻疹ワクチンとは違い、有効期間が5カ月と言われているインフルエンザワクチンに近い。アメリカのファイザーは、デルタ株の場合、2回接種から4カ月目には感染予防効果は53%まで低下すると報告していし、アメリカ・モデルナも、ワクチン接種後約5カ月で、感染予防効果が36%低下したと報告している。 すでに日本からも同様の調査結果が報告されている。10月13日、福島県相馬市は、コロナワクチン接種を終えた相馬市民500人から採血し、中和活性を測定した結果を発表した。この研究では、中和活性は、2回目接種から30日未満で2024 AU/mL、30~90日で753 AU/mL、90日以上で106 AU/mLと急速に低下していた。10月22日には、同じく福島県南相馬市からも同様の調査結果が報告された。一連の研究をリードしたのは、坪倉正治・福島県立医科大学教授を中心とした研究チームだ』、「日本」でも「コロナワクチン接種」後の効果が日数経過と共に低下してくる研究があるというのは、初めて知った。
・『イスラエルで今夏大流行が起こったワケ  ワクチンの効果が切れた段階で、コロナが流行すればどうなるのか? 参考になるのはイスラエルの経験だ。イスラエルは、世界で最も早くワクチン接種を進めた国だ。1月30日には国民の20%、2月16日には30%、5月2日には40%、そして5月17日には50%がワクチン接種を済ませている。 (図2) 日本同様、イスラエルでも6月下旬からデルタ株による感染者が増加した。夏の流行のピークは9月14日で、新規感染者数は1254人(人口100万人あたり)で、同国の冬のピーク(981.2人)を大きく上回った。日本の今夏のピークの6.8倍に当たる。今夏、イスラエルの感染者数は、G7諸国よりはるかに多かったが(図2:Daily new confirmed COVID-19 Ccases per million peopleの図はリンク先参照))、これはワクチンの効果が切れた時期に、デルタ波の流行が重なったためだろう。ワクチンの感染予防効果は、接種からの時間とともに減衰することを、認識しなければならない。  問題は感染予防だけではない。これまで、ワクチン接種を済ませておけば、たとえデルタ株であろうが、感染しても重症化しないと考えられてきた。わが国では、今夏、デルタ株が大流行したのに、第3波、第4波ほど死者数は増えなかったのもワクチン接種の恩恵と考えられている(図3)。そうなると、ワクチン接種による、このような重症化予防効果がいつまで続くかが大きなポイントになる。 (図3:Daily new confirmed COVID-19 deaths per million peopleの図はリンク先参照))) イスラエルの経験は、重症化予防効果も、意外に早く低下する可能性があることを示唆している。図4はイスラエルと日本のコロナ感染者の致死率の推移を示したものだ。イスラエルでは、今年3月から7月にかけて致死率が上昇している。特に5、6月の致死率は5%以上を維持し、5月23日には9.5%、6月14日には9.4%に達した。 (図4:Moving average case fatality rate of COVID-19の図はリンク先参照) この時期、決して死者の総数が増えた訳ではない。イスラエルの夏の流行で、死者数が増えるのは8月以降だ。以上の事実は、重症患者が増えて、病床が逼迫したため、致死率が高まった訳ではないことを意味する。なぜ、こんなことが起こるのだろうか』、何故だろう。
・『ワクチン接種を終えて4カ月後に起きた変化  私は、基礎疾患を抱える高齢者でワクチンの効果が切れ始めたためと考えている。イスラエルは2020年12月19日から、高齢者・持病を抱える人・医療従事者を対象にワクチン接種を開始した。2021年1月末の接種完了率は21%。イスラエルの高齢化率は12%だから、1月中には高齢者の接種を終えたことになる。致死率が急上昇した5月は、ワクチン接種を終えて4カ月となる。 イスラエル政府は、この致死率急上昇に焦った。7月11日には免疫力の低い人を対象に追加接種を始める方針を明かしている。注目したいのは、7月11日の人口100万人あたりの感染者数は51.4人だったことだ。その1週間前の7月4日の33.8人からはやや増加したが、イスラエルで感染者が本格的に増え始めるのは7月後半で、同月末には237.6人に達している。 イスラエル政府は、ワクチン接種を済ませた人に感染するブレイクスルー感染が増え始めて、追加接種を検討したのではない。私は、コロナワクチンの効果の持続性に当初から疑問を抱き、春以降致死率が高まってきたことを考慮したからではないかと考えている。 追加接種は著効した。6月14日の致死率9.4%から、8月15日には0.60%、9月24日には0.15%に低下している。10月7日、イスラエルの研究チームはアメリカの『ニューイングランド医学誌』に、追加接種の有効性について、追加接種から12日が経過した段階で、非接種群と比べ、追加接種群の感染率は11.3分の1、重症化率は19.5分の1まで低下したと発表している。 その後、イスラエル政府は、追加接種の対象を拡大し、12歳以上とした。そして、世界のどの国よりも速く追加接種を進めている。10月22日現在の追加接種完了率は44%で、9月12日には、イスラエル保健省高官が、4回目の追加接種に必要なワクチンの確保を進める方針を明かしている』、「4回目の追加接種に必要なワクチンの確保」とは早手回しだ。
・『高齢者や免疫抑制患者に追加接種は不可欠  イスラエルの経験は貴重だ。多くの先進国が追加接種を加速させている。10月16日現在、追加接種の完了率はアメリカ3.6%、フランス3.5%、ドイツ1.8%、イタリア1.6%だ。中国でも、すでに追加接種は始まっている。10月13日、アメリカのニューヨーク・タイムズは、武漢を含む湖北省で4万人以上が追加接種を受けたことを報じている。 高齢者や免疫抑制患者に追加接種が必要なことは、いまや世界的コンセンサスだ。9月22日、米食品医薬品局(FDA)は、ファイザー社製ワクチンの65歳以上の高齢者と重症化リスクが高い人に対する追加接種を承認し、10月20日には、米モデルナとジョンソン・エンド・ジョンソン社製ワクチンについても承認した。 FDAは、ファイザー製については、40歳以上に承認対象を拡大する予定だ。欧州でも、10月4日、イスラエル、イギリスに続き、欧州医薬品庁(EMA)がファイザー製ワクチンの18歳以上に対する追加接種を承認した。さらに、途上国でのワクチン接種を推進するため、当初、追加接種に否定的だった世界保健機関(WHO)も、10月11日、感染を防ぐ抗体が十分にできなかった人に限って推奨すると声明を発表している』、主要国は「追加接種」へと動いているようだ。
・『追加接種については、さまざまな臨床研究が進んでいる。懸念される副反応については、9月28日、米疾病対策センター(CDC)は、2回目接種後と同程度という研究成果を報告している。 効果については、イスラエルからの研究は前述のとおりだ。他には、9月30日、アメリカ・アリゾナ大学の研究チームが、固形癌で抗がん剤治療中の患者53人を対象に、追加接種の有効性を検証した論文をイギリス『ネイチャー・メディスン』に発表している。この研究によれば、追加接種により抗体価は上昇するが、細胞性免疫の活性化は軽微だった。研究者たちは、それでも免疫学的に有益である可能性が高いという結論を出している。かくのごとく、追加接種の臨床研究は急速に進んでいる』、なるほど。
・『日本はワクチンが余っているのに  日本はどうだろうか。厚生労働省は、12月から追加接種を始める方針を明かしている。これでは遅すぎる。日本で、高齢者のワクチン接種が本格化したのは5月だ。早い時期にワクチンを打った人は、接種後半年以上が経過する。免疫は低下していると考えていい。今冬、コロナに罹患すれば、重症化あるいは死亡する可能性が高まってしまう。可及的速やかに追加接種を始めたほうがいいだろう。 何がボトルネックか。日本にワクチンが足りない訳ではない。日本経済新聞は10月7日、1面トップに「先進国でワクチン余剰」という記事を掲載した。この記事では、日本の状況について、「11月ごろまでに希望者への接種がほぼ一巡し、その後は在庫が膨らむ見通し」と説明している。さらに、自治体が設置するワクチン接種会場はガラガラだ。その気になれば、いますぐにでも追加接種を始めることができる。 日本で追加接種が進まないのは、「厚労省の手続きなどの準備が間に合わない(厚労省関係者)」からだ。具体的には薬事承認、審議会での審議などだ。菅義偉・前首相のリーダーシップで、約2カ月のワクチン接種の遅れは挽回した。ところが、追加接種の準備を怠った厚労省の不作為で、また、3カ月以上の遅れができてしまった。昨年末のワクチン導入の失敗と同じことを繰り返したことになる。厚労省の奮起、岸田文雄首相のリーダーシップに期待したい』、「日本で追加接種が進まないのは、「厚労省の手続きなどの準備が間に合わない(厚労省関係者)」からだ」、「菅義偉・前首相のリーダーシップで、約2カ月のワクチン接種の遅れは挽回した。ところが、追加接種の準備を怠った厚労省の不作為で、また、3カ月以上の遅れができてしまった。昨年末のワクチン導入の失敗と同じことを繰り返したことになる」、「岸田文雄首相」は総選挙応援終了後は、直ちに取り組むべきだ。

第四に、10月28日付けNHK NEWS WEB「ワクチン3回目接種 2回終えた“全員対象”の方針 厚労省分科会」を紹介しよう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211028/k10013326011000.html
・『新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種について、厚生労働省の専門家の分科会は28日、2回目の接種を終えた人全員を対象とする方針で一致しました。これを受け厚生労働省は、ことし12月に医療従事者から順次、3回目の接種を始める方針です。 厚生労働省は28日、専門家でつくる分科会を開いて、新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種の対象者について議論しました』、やはり「2月に医療従事者から順次、3回目の接種を始める方針」と悠長なことを言っているようだ。
・『感染予防の効果 2回目接種の5か月後以降には「低下」  分科会では、ファイザーのワクチンの感染を予防する効果が、2回目の接種から5か月後以降にどう変化したかが報告されました。 アメリカの研究結果として、 ▼16歳から44歳では89%が39%に、 ▼45歳から64歳では87%が50%に、 ▼65歳以上では80%が43%に それぞれ低下したとするデータが示されました」、なるほど。
・『入院予防の効果については 目立った低下は見られず  厚生労働省によりますと、入院を予防する効果については、アメリカの研究では、2回目の接種から5か月後以降にはそれぞれ次のようになり、目立った低下は見られなかったということです。 ▼16歳から44歳で88%が90%に ▼45歳から64歳で91%が90%に ▼65歳以上で84%が83%に』、「入院予防の効果については 目立った低下は見られず」、とは結構なことだ。
・『3回目接種 分かれる海外の対応  日本は「全員対象に」  続いて分科会では、海外の対応を確認したうえで、日本での対応を検討しました。 この中では、アメリカは高齢者や18歳以上の特定の疾患がある人などとしている一方、イスラエルは接種が認められている12歳以上の全員とするなど、各国で対応が分かれていることが説明されました。 これに対し、分科会の委員からは「希望する人全員に接種機会を提供すべきだ」とか「自治体の実務上、全員に打てるようにすることが現実的だ」などといった意見が出て、分科会として2回目の接種を終えた人全員を対象にする方針で一致しました。 また、高齢者など重症化を予防する効果が低下しやすい人などには、できるだけ3回目の接種を受けるよう呼びかけることも厚生労働省に求めました』、事務的には「全員対象に」が、混乱を少なくする方法だ。
・『3回目接種後の副反応は“2回目までと同程度”  分科会では、3回目の接種後の副反応についても、アメリカのデータが示されました。 それによりますと、ファイザーやモデルナのワクチンでは、報告された副反応が2回目までと同じ程度だったということです。 厚生労働省は、来月にも改めて分科会を開き、正式に方針を決めたうえで、12月に医療従事者から順次、3回目の接種を始めることにしています』、「副反応は“2回目までと同程度”」、一安心した。
・『海外の3回目接種 各国の対象者の範囲は?  海外でも新型コロナウイルスワクチンの追加接種が始まっていますが、対象者の範囲は異なっています。 厚生労働省によりますと、 +アメリカでは65歳以上の高齢者や、18歳から64歳で特定の疾患がある人や仕事などでウイルスにさらされるリスクが高い人などが追加接種の対象となります。 +イギリスでは50歳以上の人や、16歳から49歳で重症化のリスクを高める疾患がある人、介護施設の居住者や職員、それに医療従事者などです。 +カナダでは長期療養施設などに入っている高齢者です。 +フランスでは自宅で生活する65歳以上の高齢者や高齢者施設などの居住者、重症化リスクが非常に高い人、基礎疾患がある人、それに医療従事者や救急隊員などです。 +イスラエルは、当初、追加接種の対象を60歳以上としていましたが、対象を段階的に拡大し、現在は12歳以上としています』、本来であれば、第三の上氏の主張のように、主要国に遅れないようもっと早目に取り組むべきだろう。
タグ:パンデミック (医学的視点)(その23)(3回接種が進んだイスラエルで感染爆発 4回目を準備 データ提供という「偉大な貢献」、政府の説明ではさっぱり分からない「なぜ第5波は終息したのか」 感染者データを用いたコロナ感染者予測モデルから分かること、感染急減の日本が油断大敵になってはいけない訳 ワクチン効果は徐々に薄れ 追加接種が不可欠、ワクチン3回目接種 2回終えた“全員対象”の方針 厚労省分科会) PRESIDENT ONLINE ニューズウィーク日本版 「3回接種が進んだイスラエルで感染爆発、4回目を準備 データ提供という「偉大な貢献」」 せっかく「ブースター接種」に「着手」しても、「感染者が急増」しているようだ。 「4回目のワクチン接種に向けて準備を進める」、ずいぶん手回しがいいようだ。「高名なラビ・・・の墓があるウクライナ中部のウマニへの巡礼も、昨年は見送られたが今年は再開され、ワクチン接種を拒む超正統派のユダヤ教徒が大挙して参加した」、「ワクチン接種を拒む超正統派のユダヤ教徒」とは困ったものだ。 「イスラエルはグローバルな知識に偉大な貢献をもたらそうとしている。われわれなしでは、世界はブースター接種の正確な有効性も、打つべきタイミングも、感染状況への影響も、重症化への影響も分からないだろう」、その通りだ。「追加接種が進む今も、全土で感染者が増え続けている状況を見ると、ワクチンだけでは感染拡大は止められそうもない」。 JBPRESS 沖 有人 「政府の説明ではさっぱり分からない「なぜ第5波は終息したのか」 感染者データを用いたコロナ感染者予測モデルから分かること」 「尾身会長が5つの要因を提示」したが、「ここで挙げられた要因は、残念ながら統計的にはほぼ説明できないことばかりだった」、非科学的なやり方にはガッカリする。 このように要因をきちんと切り分けることも重要だ。 確かに「1週間先はほぼ予測できる」ようだ。 「感染経路は現在4割程度しか判明していないが、この結果が有効な行動制限を確定させる決め手となる」、でも判明率を上げるのは困難だろう。 「分科会メンバー」には「経済学者が入り」、経済学者であれば、統計のことも分かっている筈だ。ただ、専門的な「統計学者」や「人間心理に長けた心理学者」がいる方が望ましい。彼らの助言を得て、「首相」には「事実に基づいた実行性のある見識」を示してほしいものだ。 東洋経済オンライン 上 昌広 「感染急減の日本が油断大敵になってはいけない訳 ワクチン効果は徐々に薄れ、追加接種が不可欠」 上氏は独自の視点から筋論を展開するとして、私が注目している医者だ。「欧州の感染増を知れば、季節性変化の影響が大きいと考えるのが合理的だ」、なるほど。 「日本」でも「コロナワクチン接種」後の効果が日数経過と共に低下してくる研究があるというのは、初めて知った。 「4回目の追加接種に必要なワクチンの確保」とは早手回しだ。 主要国は「追加接種」へと動いているようだ。 「日本で追加接種が進まないのは、「厚労省の手続きなどの準備が間に合わない(厚労省関係者)」からだ」、「菅義偉・前首相のリーダーシップで、約2カ月のワクチン接種の遅れは挽回した。ところが、追加接種の準備を怠った厚労省の不作為で、また、3カ月以上の遅れができてしまった。昨年末のワクチン導入の失敗と同じことを繰り返したことになる」、「岸田文雄首相」は総選挙応援終了後は、直ちに取り組むべきだ。 NHK NEWS WEB 「ワクチン3回目接種 2回終えた“全員対象”の方針 厚労省分科会」 やはり「2月に医療従事者から順次、3回目の接種を始める方針」と悠長なことを言っているようだ。 「入院予防の効果については 目立った低下は見られず」、とは結構なことだ。 事務的には「全員対象に」が、混乱を少なくする方法だ。 「副反応は“2回目までと同程度”」、一安心した。 本来であれば、第三の上氏の主張のように、主要国に遅れないようもっと早目に取り組むべきだろう。
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パンデミック(医学的視点)(その22)(ラムダにミューも 新型コロナの変異株 知っておきたい10のこと、なぜ「ワクチン接種で死亡」の原因究明が進まないのか 法医学者に聞く、イスラエルの調査で判明「ブースタ接種」の難題 感染予防の底上げ効果は高齢者で数週間) [パンデミック]

パンデミック(医学的視点)については、8月24日に取上げた。今日は、(その22)(ラムダにミューも 新型コロナの変異株 知っておきたい10のこと、なぜ「ワクチン接種で死亡」の原因究明が進まないのか 法医学者に聞く、イスラエルの調査で判明「ブースタ接種」の難題 感染予防の底上げ効果は高齢者で数週間)である。

先ずは、9月10日付け日経ビジネスオンライン「ラムダにミューも 新型コロナの変異株、知っておきたい10のこと」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00210/090900021/
・『日本でも猛威を振るう新型コロナウイルスの変異株。「デルタ株」の感染が急拡大しており、「ミュー株」などの新たな変異株も国内での感染が確認された。そもそも変異株とはどのようなもので、それぞれどんな特徴があるのか。世界で次々と発見されている新型コロナウイルスの変異株について、知っておきたい10項目を整理した。 1:新型コロナウイルスの変異株とは何? 2:変異が起きる仕組みは? 3:現在確認されている主な変異株の種類は? 4:なぜ株の名前はギリシャ文字で表記される? 5:変異株にはどんな特徴がある? 6:報道で目にする「N501Y」や「L452R」はどういう意味? 7:変異株にはワクチンが効きにくい? 8:日本国内で感染が確認されている変異株は? 9:変異株の感染予防のための対策は? 10:今後、変異株はどうなっていきそう? 
(各項目を詳しくみると)1:新型コロナウイルスの変異株とは何?  生物やウイルスの遺伝情報が変化することを「変異」と呼ぶ。一般的にウイルスは増殖や感染を繰り返す中で、その遺伝情報は少しずつ変化していく。幾つかの遺伝情報の変異により、従来のウイルスとは異なる性質を持つようになったものを変異株といい、世界保健機関(WHO)はそのリスクの評価に基づいて、注目すべき変異株(VOI)と懸念される変異株(VOC)とを定義し、「アルファ株」「ベータ株」などの命名を行っている。 日本でも国立感染症研究所が、主に感染性や重篤度が増す・ワクチン効果を弱めるなど性質が変化した可能性のある株をVOC、主に感染性や重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性が示唆される株をVOIとして分類している)。 2:変異が起きる仕組みは?  ウイルスは自己増殖できないため、生物の細胞のなかで複製が行われる。例えば、新型コロナウイルスがヒトの細胞内に侵入すると、RNAの情報からウイルスを形成するためのたんぱく質がつくられる。それと同時にRNA自体も大量に複製されるが、その時にコピーミスが起こることで少しずつ変異する。ウイルスの性質に関わる遺伝情報のコピーミスが起こると、性質も変化する)。 3:現在確認されている主な変異株の種類は?     VOI(注目すべき変異株)とVOC(懸念される変異株)に該当する変異株に対して、WHOはギリシャ文字による命名を行っている。現在はアルファ(α)~ミュー(μ)までの変異株に分類されている。 VOC、VOIに当てはまる変異株は以下の通り。 VOC(懸念される変異株) アルファ株(2020年9月に英国で発見) ベータ株(2020年5月に南アフリカで発見) ガンマ株(2020年11月にブラジルで発見) デルタ株(2020年10月にインドで発見) VOI(注目すべき変異株) イータ株(2020年12月に複数の国で発見) イオタ株(2020年11月に米国で発見) カッパ株(2020年10月にインドで発見) ラムダ株(2020年12月にペルーで発見) ミュー株(2021年1月にコロンビアで発見) 4:なぜ株の名前はギリシャ文字で表記される?  WHOは2021年5月末に新型コロナの変異株をギリシャ文字で表記すると発表した。その理由は、人々がしばしば変異株を発見された場所の名前で呼び、それが差別などにつながる懸念があるからだという。ギリシャ文字はアルファ(α)からオメガ(ω)まで全24種類あり、現在は12番目のミュー(μ)まで使われている。 新型コロナウイルス自体は現在「SARS-CoV-2」、新型コロナウイルス感染症という疾患は「COVID-19」と称されているが、これも地名などは使われていない。流行当初は日本でも疾患に対して武漢肺炎などの表現が使われていた。また、ドナルド・トランプ米大統領(当時)はTwitterでウイルスを「the Chinese Virus」などと表記していた。テドロス・アダノムWHO事務局長は「(COVID-19などの)名前を付けることで、不正確な名前や汚名を着せるような名前の使用を防ぐことが重要だ」と発言している』、インドも「インド株」でイメージダウンになると主張していたのも記憶に新しいところだ。
・『5:変異株にはどんな特徴がある?  VOIは、主に感染性や重篤度・ワクチン効果などに影響を与える可能性が示唆される株である。VOCは、主に感染性や重篤度が増す・ワクチン効果を弱めるなど性質が変化した可能性のある株で、VOIのうち感染性や重篤度、ワクチン効果などと関連していることが実証されるとVOCとされる。 6:報道で目にする「N501Y」や「L452R」はどのような意味?   N501Yはアルファ株、ベータ株、ガンマ株に共通する変異であり、ウイルスが細胞にくっつく際に必要な「スパイク」と呼ばれる突起のたんぱく質を構成するアミノ酸の変異を示す。スパイクたんぱく質のうち、501番目にあるアミノ酸がN(アスパラギン)からY(チロシン)に変わっているという意味だ。L452Rも同様で、スパイクたんぱく質を構成しているアミノ酸のうち、452番目がL(ロイシン)からR(アルギニン)に変異したということだ。これらの変異により、従来のウイルスとは性質が変化したと考えられている。 7:変異株にはワクチンが効きにくい?  アルファ株については発症や感染に関してワクチンの効果は変わらないとされている。一方で、ベータ株とデルタ株については、重症化に対するワクチンの効果は変わらないものの、発症に対する効果は弱まる可能性があるとの指摘がある。ガンマ株に対するワクチンの効果の変化は明らかになっていない。 8:日本国内で感染が確認されている変異株は?  VOC、VOIに分類される変異株は全て日本で検出されている。東京都健康安全研究センターが行ったスクリーニング検査によると、都内で発生した変異株の割合は、アルファ株やベータ株の「N501Y」の変異を持つウイルスが5月時点で6~7割程度だったが、8月23日~29日の期間では1.7%に減少している。代わりに猛威を振るっているのがL452Rという変異を持つデルタ株で、同期間では82.8%を占めている。 8月末には、N501Sの変異を持つ新たなデルタ株が国内で確認されたと東京医科歯科大学が発表した。この変異はアルファ型などのN501Y変異と類似したものと見られている』、「VOC、VOIに分類される変異株は全て日本で検出されている」のであれば、日本の水際対策の実効性も大したことなさそうだ。
・『9:変異株の感染予防のためにできる対策は?  新型コロナウイルス感染症対策分科会は6月に「変異株が出現した今、求められる行動様式に関する提言」を出している。そこでは、フィルター性能の高い不織布マスクの着用や換気への留意などが示されている。感染力が強く、重症になりやすい変異株が目立つ中で、高性能なマスクを使うことに加えて、3密を避け、外出を控えるといった、基本的な対策を一層徹底することが求められている。 10:今後、変異株はどうなっていきそう?  ウイルスの変異は複製時に一定の確率で起こるため、今後も変異株は現れ続けるとの意見が専門家の間では多い。海外では感染力の強い変異株を念頭に、ワクチンの追加接種(ブースター接種)を進める動きがある。追加接種により変異株の感染をどの程度防げるかは今後の研究が待たれる』、「ブースター接種」については、3番目の記事で紹介する。

次に、9月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した医療ジャーナリストの木原洋美氏による「なぜ「ワクチン接種で死亡」の原因究明が進まないのか、法医学者に聞く」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/282431
・『新型コロナウイルスワクチンの接種が進む一方で、重篤な副反応や健康被害については慎重な調査が必要となる。中でも接種後の死亡については、その死因究明が詳細に正しく行われることが重要だ。しかしながら、ワクチン接種後の死亡例については、そのほとんどがワクチン接種によるものなのかきちんと判定されていないままだという。ワクチンの安全な接種にも重要な、死因究明の課題とは何か。法医学者で国際医療福祉大学医学部講師の本村あゆみ氏に話を聞いた』、「ほとんどがワクチン接種によるものなのかきちんと判定されていないまま」、私も疑問に思っていたので、興味深い。
・『ワクチン接種後の死亡 ほぼ100%「因果関係」不明  9月13日政府が公表した集計によると、日本における新型コロナワクチン接種率は1回目が63%、2回目は50.9%に達している。河野太郎規制改革担当相は今月4日、ワクチン接種について、「希望する全国民に対して11月上旬に完了する」との見通しを示しているが、ワクチンに関しては接種率を上げる以前に注力してほしい課題がある。 それは、接種後の死亡と報告された事例の死因究明だ。例えばファイザー製のワクチンについては、2021年2月17日から8月8日までに報告された991の死亡事例中、「ワクチンと死亡との因果関係が否定できないもの」は0件、「ワクチンと死亡との因果関係が認められないもの」5件、「情報不足等によりワクチンと死亡との因果関係が評価できないもの」986件で、大部分の死因はワクチン接種によるものかどうかちゃんとした判定はされていない(厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会が8月25日に公表した調査より)。 国や専門家は、「健康被害のリスクを踏まえてもメリットが圧倒的に上回る」とワクチン接種を推奨し、「健康被害が予防接種によるものであると厚生労働大臣が認定したときは、予防接種法に基づく救済(医療費・障害年金等の給付)が受けられます」と安心を強調してきたが、最悪の健康被害である死亡例については、ほとんど解明されていないのが現状だ。救済は予防接種との因果関係が認定されなければ受けられないことを考えると、8月20日までにワクチン接種後1093人(米ファイザー社製ワクチン1077例、米モデルナ社製ワクチン16例)もの人が亡くなっているのに、救済された人は1人もいないことになる。 死因究明は、亡くなる人を減らすためにも欠かせない。その人の体内で何が起きて死に至ったのか、またそれがワクチン接種によるものなのかどうかが分かれば、重篤な事態が生じないよう先手を打つこともできるからだ。 そういう意味では、死因究明は生きている人のための医学でもある。 そこで今回は、「法医学は、亡くなられた方の死因を究明した結果を、生きている人や社会に還元していく医学です」と語る法医学者で国際医療福祉大学医学部講師の本村あゆみ氏に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは本村氏の回答)』、「救済は予防接種との因果関係が認定されなければ受けられないことを考えると、8月20日までにワクチン接種後1093人・・・もの人が亡くなっているのに、救済された人は1人もいないことになる」、いくら忙しいにしても、酷い職務放棄だ。
・『「心不全」「心肺停止」は 状態であって死因ではない  Q:厚生科学審議会が公表している死因を一つ一つ見ていくと、「心不全」「心肺停止」といった、死因とするには疑問符が付くものが何度も登場してきます。専門家は、このような死因を「死因」と呼ぶのでしょうか? A:厚生科学審議会の調査で死因を判断しているのは各医療機関の報告医なので、診療時の血液検査や画像検査などを踏まえて、死因を推定しているものと思われます。いわゆる通常の臨床医の死因判断です。なので、傷病名ではない「心肺停止」という文言での報告が散見されるのだと思います。 これらの報告を踏まえて、専門家がワクチン接種との関連性の有無を判断されているようですが、やはり元になる死因について解剖を含めた詳細な調査はなされていないことがほとんどで、これでは判断しようがないと言わざるを得ません。 Q:中には、「情報不足で判断できない」というものもかなり多くあります。行政はワクチン接種後に亡くなった人の死因究明に積極的ではないように感じるのですが、先生はどう思いますか? A:ワクチン関連にかかわらず、行政においては死因究明の必要性が理解されていないのではないでしょうか。CTその他検査で、医者が見れば死因は分かるものと思っているのかもしれません。 Q:では、死因究明はそんな単純なものではない? A:即時型のアナフィラキシーショックはまだしも、接種後に起きる可能性が指摘されている心筋炎や血栓症は、もし病院で十分な検査を受ける間もなく亡くなってしまった場合には、外表の所見のみで診断することは不可能です。 そもそも、個別の死因のみをもって接種と死亡の因果関係を問うことは困難です。正確な情報の集積、統計を行い、平時や非接種者との比較によって、接種後の影響を判定する必要があります。しかしながら現状では、土台となるべき死因診断が正確でない可能性があり、また情報そのものが少なすぎて、「因果関係が不明」とせざるを得ないのがほとんどという状況になっています。 例えば厚生科学審議会の資料だと、接種後の「心肺停止」が多いということになるのですが、そもそも死亡とは心肺停止の状態。その事例を検討しているわけですから、心肺停止が多いのは当たり前ですよね。検討するには、その原因を探らないといけません。 急性心不全が死因などとされているものも、中には心筋炎が含まれるかもしれない。せっかく一部の事例では病理解剖まで行って、詳細な検討の結果として例えば凝固因子欠乏※を指摘されていても、他にも同様の病態を示す事例が確認されなければ、この方だけの特異な症状ということになり、一般的なワクチンによる副反応には計上されないままでしょう。※血液が凝固するために必要なタンパク質が著しく減少することで血が止まりにくい症状 これでは接種の安全性は十分に担保されませんし、副反応で亡くなってしまった方も因果関係不明とされたままでは、遺族にも十分な補償が行き届かないということになります。 Q:パンデミック下だから仕方ない」という意見もあります。 A:いいえ。平時から、解剖を含めた死因調査は重要ですが、このようなパンデミック下での緊急事態の時こそ、より正確な情報収集が重要であることは明らかですし、接種後の死因調査として特別に予算や施設、情報管理システムなどの整備をするといった対応が必要です』、「厚生科学審議会の資料だと、接種後の「心肺停止」が多い」、これでは接種と死亡の関係を見られないので、本来は詳細な死因を記入させるべくだ。「より正確な情報収集が重要であることは明らかですし、接種後の死因調査として特別に予算や施設、情報管理システムなどの整備をするといった対応が必要です」、同感である。
・『日本の法医解剖率は1.6%程度 十分な死因究明が行われない理由  Q:ワクチン接種と死亡例の因果関係、死因をきちんと調べるには、どのようなことが必要なのでしょうか? A:やはり解剖を含めた詳細な死因調査が議論の基礎として必要です。死因が分からない、あるいは誤解されたままでは、情報が少ないとして因果関係不明と結論付けられてしまうのも仕方ありません。 コロナではありませんが、千葉県では交通事故死亡事例について、県内の医療機関が集まってPTD(preventable trauma death:避けられた外傷死)ではなかったかどうか、専門家による調査・検討を行っています。救急隊や医療機関からの情報を基に、病院の選定は妥当であったか、診療内容は適切であったかなどを検討するのですが、やはり情報が十分でないと判断が難しくなります。 また、ごく一部では解剖検査が行われ、その結果とも照合して検討するのですが、既往症や生活状況など初療時には分からなかった情報が警察を通じて得られていますし、中には損傷の見落としによって、当初判断された死因が正確でないことが判明するケースもあり、評価の土台としての解剖結果の重要性を実感しています。 Q:コロナに限らず、日本では法医解剖率の低さが以前から問題になっています。現状として、警察取り扱い死体における法医解剖率は11.5%(2019年)、全死亡中では1.6%程度と、日本では十分な死因究明が行われていません。 そうですね。現在の日本では解剖を含めた死因調査自体が十全に行われているとはいえません。法律を制定するなどして解剖を増やす努力は行政、司法、法医学各方面で続けられているところではありますが、予算も限られており、解剖率は諸外国にいまだ到底及びません。 特に、新型コロナウイルスやワクチンに関連した死亡のように犯罪による死亡が疑われない場合、ほとんどの自治体では、警察が取り扱う死体の死因調査として行われる司法解剖や死因身元調査法解剖の対象としてそぐわないことが考えられます。東京23区や大阪市など監察医制度のある地域では行政解剖を行うことができますが……。 例えば千葉県では準行政解剖として知事の権限で行う承諾解剖の制度がありますが、これは年間10件程度の予算しかないため、運用には高いハードルがあります。さらに、通常の解剖に比べて抗原検査やPCR検査、詳細な組織検査など追加の特殊な検査が多く必要となりますので、費用もかさんでしまいます。 いかなる死亡であっても、死因を正しく判断することは死者、遺族の権利であり、その情報に基づいて健康に関する施策を享受することは国民の権利です。国はそのことをよくご理解いただき、このような新しい感染症の脅威、これに対する予防、治療の安全性、有効性をきちんと評価するためにも、改めて予算を組んで既存の行政解剖や承諾解剖を充実させる必要があります』、「通常の解剖に比べて抗原検査やPCR検査、詳細な組織検査など追加の特殊な検査が多く必要となりますので、費用もかさんでしまいます」、しかし、「いかなる死亡であっても、死因を正しく判断することは死者、遺族の権利であり、その情報に基づいて健康に関する施策を享受することは国民の権利です」、「国は」、「新しい感染症の脅威、これに対する予防、治療の安全性、有効性をきちんと評価するためにも、改めて予算を組んで既存の行政解剖や承諾解剖を充実させる必要があります」、その通りだ。無論、対象を全件でなく、サンプルにすることで費用圧縮を図るのは当然だろう。
・『情報連携や費用に課題 解剖を増やすことはできるのか  Q:解剖を増やすのは難しいことなのでしょうか? クリアすべき課題はいくつかあります。一つはお金の問題。人員や物品の確保、諸検査に必要な経費など、国で予算を検討していただく必要があります。特に接種後の死亡についてはさまざまな要因が考えられ、アナフィラキシー、血栓症、心筋炎など、解剖でも肉眼的に直ちに診断するのは難しい病態が多く想定されます。検査も多岐にわたると考えられ、通常の解剖経費では賄いきれません。 またシステムの問題もあります。解剖の体制が整備されたとしても、情報が個々の施設や各都道府県などで保管されたままでは意味がありません。ワクチン接種後の死亡例については厚生労働省に報告を行い、審議会での検討の俎上に乗せなくてはならないということを広く周知する必要があります。 そもそも前提として、ワクチン接種後の死亡なのかどうかが解剖時に分からないことも問題です。接種が始まった頃、(本村氏も解剖する際に)接種と死亡の関連も考えなければと思い、解剖に搬入されたご遺体について警察官に「この方、ワクチンの接種は終わっていますか?」と聞きましたが、はっきりした返答はほとんど返ってきませんでした。 「(ご遺体発見時)部屋に接種券はなかった」程度の把握しかされておらず、行政と警察との連携、公益的な情報の共有についても整備が必要だと考えられます。 Q:海外では、ワクチン接種後の予期せぬ死について、どのような検証がなされているのでしょうか? A:アメリカではVAERS(Vaccine Adverse Event Reporting System)、イギリスではMDRA(Medicines & Healthcare products Regulatory Agency)へのYellow Cardなど、各国で接種後の有害事象について報告するシステムがあり(日本でも厚生労働省に報告するところは同じ)、報告された事例について、臨床症状や検査結果、死亡例では死因を含めた検討が行われています。調べた限りでは、コロナ禍において特別に解剖を増やして行うという報告は見られませんでしたが、死因の検討としてもちろん解剖結果は反映されています。 また、日本の監察医業務を含むメディカルエグザミナーの連合体であるNational Association of Medical Examiners(NAME)のサイトには、新型コロナウイルスワクチン接種後死亡を取り扱う際のガイドラインが出ており、「なるべく解剖してアナフィラキシーなど確認すべし」とされています。 ちなみに日本の監察医務院(東京都)、監察医事務所(大阪府)、監察医務室(兵庫県)からは特にこのような案内はありません。法医学会からも特に提言などはありません(感染者の解剖について案内あり)。会員として申し訳ない気持ちです。 そもそも日本は解剖率が低いので、どうしても死因の裏付けという点で根拠が乏しいのが問題になるかと思います。 海外のワクチン摂取後死亡の解剖例に関する論文報告では、血栓症や心筋炎が死因となった事例が提示されています。いずれも副反応による可能性は示唆されるものの、現時点での確定は難しいようですが、これらの事例の集積、統計により今後副反応としての死因に計上されてくる可能性はあるかもしれません。ですから、やはり詳細な死因を調査し、エビデンスとして残しておくことは非常に重要なのです。 2019年6月6日に死因究明等推進基本法が成立し、翌年4月1日より施行されてはいるが、「死因究明ならびに法医をめぐる状況は、肌感覚としては全く変わりないです」と本村氏。潜在しているであろうワクチン接種関連死を掘り起こし、新たな犠牲者の防止に生かすことは、結果として、ワクチン接種率向上につながる。コロナ禍を機に、日本は死因究明後進国からの脱却をはかるべきなのではないだろうか。 (筆者略歴はリンク先参照)』、「行政と警察との連携、公益的な情報の共有についても整備が必要」、「コロナ禍を機に、日本は死因究明後進国からの脱却をはかるべき」、同感である。

第三に、9月23日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「イスラエルの調査で判明「ブースタ接種」の難題 感染予防の底上げ効果は高齢者で数週間」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/457343
・『新型コロナワクチンの追加接種(ブースター接種)の是非をめぐる意見対立が激しくなる中、イスラエルの研究者は9月15日、60歳以上に関してはファイザー製ワクチンの3回目接種で感染と重症化の両方を少なくとも12日間防ぐことができるという調査結果を発表した。 世界には未接種者がたくさんいるため、健康な成人にブースター接種を行うことについては厳しい異論が出ている。ジョー・バイデン政権も広く一般にブースター接種を行う計画だったが、医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」で発表された今回の研究で、ブースター接種をめぐる意見対立はさらに深まった』、「3回目接種で感染と重症化の両方を少なくとも12日間防ぐことができる」、効果が小さいことに驚かされた。
・『高齢者でさえ必要ないかもしれない  これまでに累積されたデータを見る限り、ブースター接種が必要なのは高齢者だけで、高齢者ですらブースター接種は必要ないかもしれない、と複数の独立した科学者は語った。 専門家によると、これまでに発表されたすべての研究において、ワクチンは重症化と入院の予防に関しては、今も圧倒的大多数の人々に対して高い有効性を維持している。ただ感染の予防については、とくに感染力の強いデルタ株にさらされた場合には、すべての年齢層で効果が下がってきているように見えるという。 今回、イスラエルのデータで明らかになったのは、ブースター接種を行えば高齢者の予防効果を数週間引き上げられる可能性がある、ということだ。専門家によれば、想定内の結果であり、ブースター接種の長期的なメリットが示されたわけではない。 シアトルにあるワシントン大学の免疫学者マリオン・ペッパー氏は「免疫反応はブースター接種で高まるだろうが、その後、再び低下することが予想される」と話す。「しかし、3〜4カ月(の効果底上げ)というのは、私たちが目指しているものなのだろうか」。 バイデン大統領のパンデミック対策で首席医療顧問を務めるアンソニー・ファウチ氏をはじめとする連邦保健当局の高官は、ワクチン接種の効果が時間の経過とともに低下することを示唆するイスラエルのデータなどを根拠に、ブースター接種計画を正当化してきた。 そのためアメリカ国民には、正式に認可される前から、ブースター接種を受けようと先を争う動きが一部で見られる。しかしブースター接種計画に対しては、政府の科学者からも懐疑的な見方や怒りが向けられるようになっている』、「ブースター接種計画に対しては、政府の科学者からも懐疑的な見方や怒りが向けられるように」、どういうことなのだろう。
・『「予防可能な死」を防ぐことが先決  アメリカ食品医薬品局(FDA)でワクチン部門を率いていた2人の科学者がこの秋に退任すると発表した理由の1つは、連邦政府の研究者によるエビデンス(科学的証拠)の精査を待たずしてブースター接種を推し進めようとする政権への不満だという。 13日には、退任するFDA高官を含む国際的な科学者グループが、ブースター接種の推進を強く非難した。同グループは医学誌「ランセット」で論文を発表し、数十の研究を分析した結果、ワクチンは数十億人の未接種者を守るのに使ったほうが世界のためになると結論づけた。 「今回のパンデミックにおける私たちの第1目標は、まず予防可能な死をすべて回避し、終わらせることにあった」と、世界保健機関(WHO)のチーフサイエンティストで、ランセットの論文の共著者でもあるスミヤ・スワミナサン氏は述べた。「私たちはそのための非常に効果的な手段を手にしているのだから、世界中で(予防可能な)死を防ぐのに使うべきだ」。 ウイルスがデルタ株よりもさらに危険な形態に変異し、免疫を完全に回避する変異株が出現するのを防ぐため、ブースター接種よりも未接種者を減らすほうが課題としては緊急性が高いと専門家らは言う。 ブースター接種の効果に関するイスラエルの今回の研究は、60歳以上の住民110万人以上の健康記録に基づくもので、ブースター接種から少なくとも12日後の感染率は2回しか接種していない人に対し11分の1、重症化率は20分の1近くにまで下がっていたことが確認された。 ただ、研究者は結果が暫定的なものであることを認めている。エルサレム・ヘブライ大学のミハ・マンデル教授(統計学・データサイエンス)は「長期的にどうなるかは、現時点ではわからない」と語った。 ブースター接種が科学的に難しい問題となっているのは、1つには「感染予防」と「重症化や死亡の予防」という目標の間に極めて大きな違いがあるためだ。 体内の最前線で感染を防ぐのが抗体だが、科学者によると、長期にわたる感染予防効果をワクチンで確実に得られる可能性は低い。というのは、ワクチンが人体を刺激することで産生される抗体は時間の経過による減少が避けられないからだ。 ただしワクチンによって作られた細胞性免疫は、重症化や死亡を防ぐのに極めて強力な武器となる。細胞性免疫に書き込まれた「免疫記憶」は、効果が表れるまでに数日を要するものの、しっかりとした効果が何カ月にもわたって維持される』、「(FDA)でワクチン部門を率いていた2人の科学者がこの秋に退任すると発表した理由の1つは、連邦政府の研究者によるエビデンス・・・の精査を待たずしてブースター接種を推し進めようとする政権への不満」、対立は予想以上に深刻なようだ。「ウイルスがデルタ株よりもさらに危険な形態に変異し、免疫を完全に回避する変異株が出現するのを防ぐため、ブースター接種よりも未接種者を減らすほうが課題としては緊急性が高い」、「長期にわたる感染予防効果をワクチンで確実に得られる可能性は低い」、その通りなのかも知れない。
・『終わりなきワクチン接種から抜け出せなくなる  この点にこそブースター接種の問題がある、と一部の科学者は指摘する。入院や死亡を防ぐ道具なら、すでに手元にある。しかし感染予防を目指すとなれば、その国はブースター接種の終わりなきサイクルから抜け出せなくなる。 「本当に感染予防を目標にするなら、半年ごとのブースター接種が必要になるだろうが、非現実的だし達成も不可能だ」と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の感染症専門家ピーター・チンホン氏は話す。 自身がこれまでに病院で実際に目にしたワクチン接種済みの患者たちは、免疫機能が弱っている人か、持病のある70歳以上の高齢者ばかりだった、とチンホン氏は付け加えた。 ブースター接種が必要な理由として、ファウチ氏をはじめとする保健当局者は、あらゆる年齢層で接種者が重症化するケースが増えているというイスラエルのデータを引き合いに出していた。ただ、すべての年齢層をひとまとめにすると、統計上、重症化率が膨らんで見えることがある。 実際、イスラエルの統計を年齢別に分解してみると、重症化の予防に対するワクチンの有効性の低下がはっきりと見られたのは60歳以上だけだった、とニューヨークのベルビュー・ホスピタル・センターの感染症専門家で、バイデン政権の顧問だったこともあるセリーヌ・ガウンダー氏は指摘する。 「高齢者ではワクチンによる免疫反応が比較的弱くなることは、以前から知られていた」とガウンダー氏は言う。「高齢者に追加のワクチン接種を勧めることは物議を醸すような問題にはならない」。 アメリカのこれまでの研究も、ワクチンの重症化予防効果が弱まるのは高齢者だけだと示唆する結果になっている。アメリカ疾病対策センター(CDC)が9月上旬に公開した3つの研究によれば、75歳以上を除くと、ワクチンによる入院予防効果はデルタ株が登場した後でさえ、ほとんど変化しなかった。 科学者の中には、高齢者で感染予防効果が弱まるということは、ブースター接種の必要性を裏付ける強い論拠になる、と主張する向きもある。 ニューヨークにあるロックフェラー大学の免疫学者ミシェル・ヌーセンツワイグ氏は自らもブースター接種を受けたいと話す一方で(同氏は66歳だ)、感染の連鎖を防ぐため広く一般にもブースター接種を行うことを支持していると語った。 若い層の免疫はまだ弱まっているわけではないが、追加接種で感染防止効果を上げれば、周囲のワクチン未接種者に感染させるのを抑えられる、という理屈だ。「それが結果的にほかの人の入院を防ぐことにつながり、ひいてはアメリカの今後にもプラスになる」と言う』、なるほど。
・『追加接種を繰り返すと免疫が疲労する  一方で別の専門家たちは、ブースター接種を正当化できるほど明白な2次感染の抑制効果を示すデータは存在しないとして、上述のような前提には疑問を呈している。 若い人々を対象にブースター接種を行う場合、当局は3回目の接種で得られる限定的なメリットと、血栓や心臓障害といった副反応のリスクとの間でバランスを取らなければならない、と専門家らは言う。さらに前出のペッパー氏によれば、体内の防御機構に繰り返し刺激を与えると「免疫疲労」と呼ばれる現象を引き起こすおそれもある。 「何度も免疫反応を増加させようとすることには、明らかに何らかのリスクが存在する」とペッパー氏は話す。「仮に6カ月ごとに追加接種するサイクルに入り込めば、私たちにマイナスに作用する可能性がある」』、「体内の防御機構に繰り返し刺激を与えると「免疫疲労」と呼ばれる現象を引き起こすおそれもある。「何度も免疫反応を増加させようとすることには、明らかに何らかのリスクが存在する」、そうであれば、「ブースター接種」はするべきではないようだ。日本も年末あたりから、「ブースター接種」に踏み切るとの見方もあるが、慎重に考えた方がよさそうだ。
タグ:パンデミック (医学的視点) (その22)(ラムダにミューも 新型コロナの変異株 知っておきたい10のこと、なぜ「ワクチン接種で死亡」の原因究明が進まないのか 法医学者に聞く、イスラエルの調査で判明「ブースタ接種」の難題 感染予防の底上げ効果は高齢者で数週間) 日経ビジネスオンライン: 「ラムダにミューも 新型コロナの変異株、知っておきたい10のこと」 インドも「インド株」でイメージダウンになると主張していたのも記憶に新しいところだ。 「VOC、VOIに分類される変異株は全て日本で検出されている」のであれば、日本の水際対策の実効性も大したことなさそうだ。 「ブースター接種」については、3番目の記事で紹介する。 ダイヤモンド・オンライン 木原洋美 「なぜ「ワクチン接種で死亡」の原因究明が進まないのか、法医学者に聞く」 「ほとんどがワクチン接種によるものなのかきちんと判定されていないまま」、私も疑問に思っていたので、興味深い。 「救済は予防接種との因果関係が認定されなければ受けられないことを考えると、8月20日までにワクチン接種後1093人・・・もの人が亡くなっているのに、救済された人は1人もいないことになる」、いくら忙しいにしても、酷い職務放棄だ。 「厚生科学審議会の資料だと、接種後の「心肺停止」が多い」、これでは接種と死亡の関係を見られないので、本来は詳細な死因を記入させるべくだ。「より正確な情報収集が重要であることは明らかですし、接種後の死因調査として特別に予算や施設、情報管理システムなどの整備をするといった対応が必要です」、同感である。 「通常の解剖に比べて抗原検査やPCR検査、詳細な組織検査など追加の特殊な検査が多く必要となりますので、費用もかさんでしまいます」、しかし、「いかなる死亡であっても、死因を正しく判断することは死者、遺族の権利であり、その情報に基づいて健康に関する施策を享受することは国民の権利です」、「国は」、「新しい感染症の脅威、これに対する予防、治療の安全性、有効性をきちんと評価するためにも、改めて予算を組んで既存の行政解剖や承諾解剖を充実させる必要があります」、その通りだ。無論、対象を全件でなく、サンプルにすることで費 「行政と警察との連携、公益的な情報の共有についても整備が必要」、「コロナ禍を機に、日本は死因究明後進国からの脱却をはかるべき」、同感である。 東洋経済オンライン The New York Times 「イスラエルの調査で判明「ブースタ接種」の難題 感染予防の底上げ効果は高齢者で数週間」 「3回目接種で感染と重症化の両方を少なくとも12日間防ぐことができる」、効果が小さいことに驚かされた。 「ブースター接種計画に対しては、政府の科学者からも懐疑的な見方や怒りが向けられるように」、どういうことなのだろう。 「(FDA)でワクチン部門を率いていた2人の科学者がこの秋に退任すると発表した理由の1つは、連邦政府の研究者によるエビデンス・・・の精査を待たずしてブースター接種を推し進めようとする政権への不満」、対立は予想以上に深刻なようだ。 「ウイルスがデルタ株よりもさらに危険な形態に変異し、免疫を完全に回避する変異株が出現するのを防ぐため、ブースター接種よりも未接種者を減らすほうが課題としては緊急性が高い」、「長期にわたる感染予防効果をワクチンで確実に得られる可能性は低い」、その通りなのかも知れない。 「体内の防御機構に繰り返し刺激を与えると「免疫疲労」と呼ばれる現象を引き起こすおそれもある。「何度も免疫反応を増加させようとすることには、明らかに何らかのリスクが存在する」、そうであれば、「ブースター接種」はするべきではないようだ。日本も年末あたりから、「ブースター接種」に踏み切るとの見方もあるが、慎重に考えた方がよさそうだ。
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パンデミック(経済社会的視点)(その18)(「コロナ病床5%」旧国立・社保庁197病院への疑問 法律あっても病床確保は厚労相のお願いベース、医師・看護師はもう限界!デルタ株で高まる「自衛隊野戦病院」の必要性、西浦博教授が考える「ワクチン接種が進む日本」でこれから先に見込まれる“展開” 明るい未来を切り開くために、日本が現時点で「ワクチンパスポート」を導入することが あまりに「不合理」と言えるワケ) [パンデミック]

パンデミック(経済社会的視点)については、7月17日に取上げた。今日は、(その18)(「コロナ病床5%」旧国立・社保庁197病院への疑問 法律あっても病床確保は厚労相のお願いベース、医師・看護師はもう限界!デルタ株で高まる「自衛隊野戦病院」の必要性、西浦博教授が考える「ワクチン接種が進む日本」でこれから先に見込まれる“展開” 明るい未来を切り開くために、日本が現時点で「ワクチンパスポート」を導入することが あまりに「不合理」と言えるワケ)である。

先ずは、8月24日付け東洋経済オンラインが掲載した朝日新聞記者の松浦 新氏による「「コロナ病床5%」旧国立・社保庁197病院への疑問 法律あっても病床確保は厚労相のお願いベース」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/450095
・『国立病院機構(NHO)と地域医療機能推進機構(JCHO)をご存じだろうか。いずれも厚生労働省が所管する独立行政法人であり、旧国立病院など公的医療機関を傘下に置く。そのネットワークは国立病院機構が全国140病院で計約3万8000床、地域医療機能推進機構は全国57病院で同約1万4000床を有している。 医療に詳しい人でなければ、JCHOの存在を認識していないかもしれない。ただ、JCHOの理事長が政府対策分科会の尾身茂会長と聞けば、公的医療機関の中でも重要な位置にあると想像がつくだろう。 新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大によって、入院できずに自宅で亡くなる患者が相次ぎ、千葉県柏市では新生児が亡くなる悲劇も起きた。日本は災害同然の事態に見舞われている』、「政府対策分科会の尾身茂会長」が「理事長」をしているとは権威ある機関のようだ。
・『NHOとJCHOのコロナ病床は約5%  その中において、国立病院機構と地域医療機能推進機構はどれほどコロナ患者を受け入れているのだろうか。筆者が入手した資料によると、7月末時点で、国立病院機構の全国140病院の計約3万8000床のうち、コロナ病床は1854床(4.8%)、地域医療機能推進機構は全国57病院の同1万4000床のうち、816床(5.7%)。合わせてざっと5%程度にすぎない』、文字通り厚労省直轄の病院の割には、「コロナ病床」が「5%程度」とはどう考えても少ない。
・『国立病院機構とJCHOのコロナ病床の提供状況についてまとめた厚労省の内部文書  2機構には、それぞれよって立つ法律もある。国立病院機構法と地域医療機能推進機構法は、それぞれの21条に、「公衆衛生上重大な危害が生じ、若しくは生じるおそれがある緊急の事態に対処するため必要があると認めるときは、(厚労相が)機構に対し、必要な業務の実施を求めることができる」といった規定がある。 いま、まさに「公衆衛生上重大な危害」は目の前で進んでいる。東京都では、コロナ陽性と診断されて療養している患者約4万5000人(8月20日現在)のうち、入院できているのはわずか8.7%の3845人だ。1カ月前はこれが25.2%だった。4人に1人が入院できたのに、1カ月で10人に1人も入院できなくなった。入院やホテルなどでの療養を調整中の人は、1カ月前の1671人から、1万2000人余りに急増した。 コロナはいつ急変するかわからない。こうしている間にも、酸素吸入が必要でも入院先がみつからないコロナ難民が救急車でたらい回しにあっている。 この東京で、国立病院機構は3病院の計1541床のうち128床しかコロナ病床に提供できていない。地域医療機能推進機構も5病院の計1455床のうち158床だ。実際の入院患者は8月6日時点で計195人と、同日に都内で入院していた患者3383人の5.8%にとどまった。災害同然の危機的な状況なのに国が関与する医療機関の対応として妥当なのかと疑問に思う。 なぜ、厚生労働相は両機構に緊急の指示を出さないのか。 8月20日、記者会見でこの点を田村憲久厚労相に聞くと、次のように答えた。 「法律にのっとってというより、いまもお願いはしておりまして、病床は確保いただいております。無理やり何百床空けろと言っても、そこには患者も入っているので、転院をどうするという問題もあるので、言うには言えますが、実態はできないことを言っても仕方がない。極力迷惑をかけない中で最大限の病床を確保してまいりたい」』、「厚労相」の弁明は全く理解不能だ。
・『病床確保に強制力を持たせる法整備の議論が進む中で  要するに、あくまでもお願いベースなのだ。いま、民間病院を想定して、病床確保のために強制力を持たせる法整備をするべきだとの議論もある。すでに今年2月の感染症法改正によって、厚労相や都道府県知事が医療機関などに対して医療提供を勧告できるようになった。罰則はないが、正当な理由がなく従わない場合は施設名などを公表できる。 一方、両機構の法は、機構は「求めがあったときは、正当な理由がない限り、その求めに応じなければならない」とも定めている。にもかかわらず、「お願い」しかできないのが実情なのだ。要するに、「法整備」は立法する官僚と政治家の自己満足にすぎず、実効性はないと言っているのと同じではないか。 コロナ以外の病気やケガのために病床を確保しなければならないという大義名分はあるだろう。ただし、それは民間病院も同じことである。なぜ、未曾有の事態においても国は両機構に対して手をこまぬいているのか。そこには、「消えた年金問題」で政権交代の震源となり、売却寸前だったのに公的病院として残った「ゾンビ」のような大病院があった。 知り合いの厚労省官僚がこんなことを教えてくれた。 地域医療機能推進機構は、厚労省の外局だった旧社会保険庁が国民から保険料を集めてできた病院の寄せ集めだった。前身の「旧社会保険病院」は中小企業などが加入する「旧政府管掌健康保険(現・協会けんぽ)」の積立金から、「旧厚生年金病院」は厚生年金積立金から、「旧船員病院」は、年金部門が厚生年金に統合された「旧船員保険」の積立金でつくられた経緯がある。 こうした公的保険制度は、日本が高齢化する前の戦前から戦中にかけてできたため、多額の積立金を保有していた時期がある。 そのひとつの厚生年金積立金については『厚生年金保険制度回顧録』で、制度ができた当初の旧厚生省年金課長が積立金について次のような証言をしている。 「年金を払うのは先のことだから、今のうち、どんどん使ってしまっても構わない。使ってしまったら先行困るのではないかという声もあったけれども、そんなことは問題ではない。20年先まで大事に持っていても貨幣価値が下がってしまう。だからどんどん運用して活用したほうがいい。せっせと使ってしまえ」』、年金官僚の野放図な無駄遣いにはいまでも腹が立つ。
・『国民の年金積立金を湯水のように垂れ流した  こうしてできた施設のひとつが厚生年金病院だ。ほかにも、「年金福祉事業団」という旧厚生省の天下り先があり、リゾート施設などに採算度外視の投資をして、国民の年金積立金を湯水のように垂れ流した。まさに、元年金課長が予言したとおりのことが起きた。 こうした批判に当時の自公政権は、旧社保庁を解体し、厚生年金病院や社会保険病院などを含めた旧社保庁関連施設の民間売却も決めた。ところが、年金記録問題から社保庁解体のきっかけを作り、2009年8月に政権の座についた民主党は、1カ月もたたないうちに方向転換して、3病院の公営を維持する方針を打ち出す。 当時は、赤字の病院が多いなどの理由で引き受け手がみつかりにくいとして、このままでは地域の中核医療拠点がなくなりかねないとされた。結局、3病院は2014年に統合され、地域医療機能推進機構が生まれた。 ところが地域医療機能推進機構は赤字どころか、優良病院そのものだ。2020年度決算によると、201億円もの黒字になっている。好業績は昨年度だけではない。貸借対照表によると、総資産約5800億円に対して負債は約1051億円しかなく、自己資本比率は82%という超健全経営なのだ。 その分析は別の機会に譲るとして、いま、コロナ禍で、民間病院は経営難にあえぐところが多い。民間病院がコロナ患者を引き受けることは、ひとつ間違えば院内感染を引き起こすことにもなり、たちまち経営は傾く』、「民主党は、1カ月もたたないうちに方向転換して、3病院の公営を維持する方針を打ち出す」、きっと官公労の圧力に屈したのだろう。
・『今こそ公的医療機関としての役割を  今こそ、国が主導して民間に範を示すべき時ではないか。20日の記者会見で、田村厚労相に、コロナ専門の病院をつくるために指示を出すつもりはないかと質すと、次のように答えた。 「働いている方々が、覚悟を持って対応していただかなければならないこともありえます。つねに想定しながら、いろいろなお願いをしている。まったく考えていないわけではありませんが、いろいろな問題点がある中で、つねに検討しているということであります」 まどろっこしい言い方だが、考えていないわけではないと言いたいようだ。 取材に対する厚労省医療経営支援課からの回答。なぜこんなにコロナ病床が少ないのか、公的病院の役割を果たしていると考えるか、なども聞いたが回答はなく、都道府県の要請に応じて提供した結果であると、木で鼻をくくったような中身だった 旧社保庁系病院は、一度は民間などに売却されることが決まり、公共性があるという判断で公的医療機関として生き残った。その後に培ってきた経営体力は、今回のような危機の時にこそ活用されなければならないだろう。それができないのであれば、今度こそ、解体・売却したほうがいい。これだけ立派な黒字病院なのに、公的な役割を果たせなければ、公的な優遇措置を続ける意味がない』、「厚労相」が弱腰なのが理解できない。野党は追求しないのだろうか。

次に、8月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「医師・看護師はもう限界!デルタ株で高まる「自衛隊野戦病院」の必要性」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/280193
・『私は、本連載で以前(連載275回)から、野戦病院を新型コロナ対策の「切り札」として提案してきた。デルタ株が猛威を振るっている今になって、野戦病院が現実的なコロナ対策案として浮上している』、興味深そうだ。
・『各界も「野戦病院」の設置を訴え始めた  尾崎治夫・東京都医師会会長や松本正義・関西経済連合会会長などが、新型コロナウイルス感染症の急拡大への対策として「野戦病院」を設置すべきだと提言している。福井県は、実際に100床の病床を持つ「野戦病院」を体育館に設置した。 ただし、これらは、現状のコロナ病床確保の方法の延長線上のものを想定しており、私が提案してきた自衛隊による「野戦病院」と、大きな違いがある。 現在、コロナ病床の確保は、自治体ごとに、都道府県知事の権限で行われている。「感染症法」が改正されて、都道府県知事らは、病院に対しコロナ患者の入院を受け入れるよう「勧告」できる。 しかし、この方式は限界を露呈している。個別の病院がコロナ患者用に転換できるのは、せいぜい数床ずつだからだ。 例えば、大学病院や大病院のがん、心臓病などの高度な治療・手術を維持する必要性を主張されたら、専門家でない知事らは言い返せない。「精神論」で粘って、病院側が病床を1床、2床と切り売りするように最小限、新型コロナ用に明け渡しているのが現状だ(第273回)。 また、医師会の中心メンバーである開業医は、コロナ患者の受け入れが病院経営を直撃するため引き受けたがらない。コロナ患者に対応するための機材、人材が十分ではないという問題もある(高久玲音『やさしい経済学:コロナが問う医療提供の課題(2)患者受け入れが病院収益に影響』)。 今の体制では、野戦病院を現在の病床確保の方法の延長線上でつくっても、同じ問題に直面することになるのではないだろうか』、病院船などのアイデアには首を傾げざるを得なかったが、「野戦病院」は地に足がついた提案だ。
・『医師や看護師の派遣、現実は厳しい? 日本のメリット・デメリット  尾崎会長はテレビ番組で、野戦病院には今までコロナ治療に関わっていないクリニックや大学病院などの医師や看護師が従事する形を想定するという旨を発言した(参照)。 しかし、その医師・看護師らが、自分の病院・クリニックの患者の治療が大事だと主張したら、説得できないだろう。結局、自治体と病院の交渉が難航し、野戦病院に派遣されるのは、最小限の人数とリソースにとどまってしまうのではないだろうか。 また、以前指摘したのだが、野戦病院への医師・看護師の派遣は、おそらく労災などの補償の問題が生じる懸念がある(第264回・p3)。例えば、スポット勤務した医師が、新型コロナに感染した場合、2週間隔離となる。本来の勤務先に出勤できなくなるので、その間の金銭的な補償の問題が発生するのだ。 このように、自治体が野戦病院を設置しようとしても、実現にはさまざまな問題があると思われる。 実際、野戦病院の設置に否定的な東京都は、その理由として現在確保しているコロナ病床が「各医療機関の努力で出してもらったギリギリの数字」だからという。そして、「都内の病院の役割分担や地域性などを考慮して、医療関係者らと現在の体制を組んできた」と説明し、「今ある医療資源を最大限使うことがまず先決」と主張する(毎日新聞『コロナ病床増やしても…東京都が「野戦病院」をつくらない理由』)。 では、無理やり今の医療体制から絞り出して、「野戦病院」を設置すべきかというと、そうとも言い切れないのではないか。現状の医療体制を無理に崩さないほうがいいという考え方もあり得ると思う。 国民皆保険制度により日常的な医療体制が整備され、基礎疾患を持つ人の症状が管理されていることが、日本の新型コロナの重症者、死亡者が欧米に比べて非常に少ない「ファクターX」の一つかもしれないと私は考えている(第262回・p5)。 例えば、英国と比較してみよう』、。
・『英国はコロナ医療にすぐシフトできたが 日常的な医療体制は日本よりも過酷?  英国では、昨年3月にロックダウンを実行したと同時に10日間程度で、国内の医療体制を新型コロナ用にシフトした。しかし、それはがんを除く不要な手術を延期し、退院可能な患者はすべて自宅療養に切り替えて実施したものだった(ピネガー由紀『日本人が知らない英国「コロナ病棟」のリアル 現地在住看護師が語る医療崩壊を防ぐ仕組み』)。 つまり、英国では、日本の何十倍も新型コロナ感染症の患者を出しながら、医療崩壊を起こさなかったことは事実なのだが、重症化する患者や死亡者が多かったことについて、日常的な基礎疾患の管理ができていないからだと思われると、筆者の知人である臨床医は指摘していた。 実際、私が英国に在住していた時に、ナショナルヘルスサービス(NHS:無料の国営医療サービスシステム)へ友人を連れていったことがある。その時は、3カ所病院をたらいまわしにされ、診察を受けられるまで、9時間かかった。 また、NHSでは、普段は風邪や季節性インフルエンザでは病院での入院はおろか、診察すらしてもらえない。NHSの受付窓口で簡単に診断されて処方箋をもらい、薬局で薬を買って自宅で休むだけだ(第277回・p2)。 つまり、英国の日常的な医療のレベルは日本と比べて高いとはいえない。それが、日本と欧米の新型コロナの重症化率、死亡率の差につながっているのではないか。ゆえに、日本の現状の医療体制を崩してコロナ対応に向けることには、慎重であるべきだと思う。 それでは、野戦病院の設置は非現実的な案と切り捨てるべきか。私はそうは思わない』、「英国では、昨年3月にロックダウンを実行したと同時に10日間程度で、国内の医療体制を新型コロナ用にシフトした」、日本では民間中心の医療体制の問題がいち早くから指摘されながら、手つかずでいるのと、「英国」の素早い対応は好対照だ。
・『合理的に考えて、自衛隊が野戦病院をつくるべき  8月12日の東京都のモニタリング会議は「現状の感染状況が続くだけでも、医療提供体制は維持できなくなる」と警鐘を鳴らしている。新しい発想の対策が必要とされているのは間違いない。 そこで、私が提案してきたのが、自衛隊による大規模野戦病院の設置である(第275回)。 まず重要なことは、「自衛隊」が野戦病院をつくることだ。自衛隊には、医官、看護官がそれぞれ約1000人ずつ在籍している。現在、ワクチンの大規模接種センターに医官約90人、看護官約200人が派遣されている。しかし、その業務は8月25日に終了する。 彼らは、いわゆる一般の病院・クリニック、そして医師会の「外側」に存在している。 医療崩壊を防ぐためには、限られた既存の病院・クリニックのリソースをやりくりするよりも、その「外側」に存在する自衛隊に出動してもらい、その人材、機材を加えるほうが、合理的なのではないだろうか。 その上、自衛隊の医官・看護官が「戦場の医師・看護師」であることも重要だ。「救命救急医療」の専門家であり、新型コロナ治療の研修期間は、一般病院・クリニックの医師・看護師が研修するよりも短期間で済む。「即戦力」となり得る存在なのだ。 さらに、自衛隊による「野戦病院」設置の意義は、「集約のメリット」を出せることにある。それは、エクモ・人工呼吸器などの機材、医師、看護師が病院ごとに配置されるよりも、病床を何百床、何千床の単位で1カ所にまとめることで、比較的少ないリソースで、多くの患者を診ることができることだ。 これは、日本以外の諸外国では当たり前のやり方だ(上昌広『「医師多数・コロナ患者少数」の日本が医療崩壊する酷い理由』)。だが、残念ながら日本の現状の医療体制では実現はほぼ不可能である。 だから、日本で、大規模なコロナ専用病院をつくれるとすれば、それは自衛隊しかない。この連載で提案してきたように、まずは東日本と西日本に1カ所ずつ、大規模野戦病院を設置するのである(第275回)』、「集約のメリット」は確かに大きそうだ。
・『大規模野戦病院の具体案…英国のナイチンゲール病院を踏まえて  場所は、東日本は朝霞駐屯地、西日本は伊丹と宇治の駐屯地とする。病床は、前回の私の提案では重症・中等症用としていたが、現在のニーズに合わせて変更したい。患者の重症化を防ぎ、死亡者を出さないことが最重要であるため、中等症用にそれぞれ2000~4000床ずつ用意する。 これは、英国の野戦病院(ナイチンゲール病院)設置を参考にしている(第282回・p2)。この病院は英国軍の支援で、最大4000床の中等症用病床を持ったロンドン・エクセルセンター国際会議場の病院など、全国各地に短期間で建設された(“In case of emergency: The Army and civil assistance” )。 病院開院後は、英国軍の軍医約600人が派遣されてNHSの医師・看護師と協力した。また、機器のメンテナンス、病院内店舗管理など、幅広い臨床支援活動を行った(Financial Times “Military medics to work in UK hospitals as Covid admissions sore”)』、「英国軍の軍医」と「NHSの医師・看護師」の協力は上手くいったのだろうか。
・『医師・看護師はもう限界!デルタ株で高まる「自衛隊野戦病院」の必要性  自衛隊の大規模野戦病院設置は、軽症者を自宅療養とする政府の新方針の実施にも適している。英国軍を事例にすると、「コロナ航空タスクフォース」を設置し、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドなどの地方や、離島から英国本土への患者の緊急搬送などを行ってきた(Covid Support Force: the MOD’s contribution to the coronavirus response)。 日本でも、自宅療養の軽症者の情報を自衛隊に集約しておき、中等症化した際には、ヘリコプター等も使用して地方から大規模野戦病院へ即座に移送できるようにするのだ。 英国は、昨年3月、新型コロナのパンデミックの初期段階で大規模野戦病院を設置し、英国軍の支援体制をとった。結局、野戦病院はほとんど使われることがなかったのだが、先回りして体制を整えていたことが重要だ。 日本では、現行の医療制度の範囲で何ができるかを必死に考えてきたが、医療崩壊の危機に直面し、ひたすら国民の行動制限を求めることしかできなかった。 デルタ株の急拡大に直面し、さらなる新しい変異株の拡大のリスクもある今、現行制度の範囲内の対応では限界がある。新しいシステムを先回りしてつくり、病院にも入れず死を迎えるような悲劇は起きないと、国民が落ち着くことができる体制を築く必要がある』、「英国」で「野戦病院はほとんど使われることがなかったのだが、先回りして体制を整えていたことが重要だ」、同感である。

第三に、8月26日付け現代ビジネスが掲載した京都大学大学院 教授の西浦 博氏による「西浦博教授が考える「ワクチン接種が進む日本」でこれから先に見込まれる“展開” 明るい未来を切り開くために」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/86584?imp=0
・『今後の未来像は  予防接種という行為は、接種者自身はもちろんのこと、それ以外の方の感染機会を減らすことに繋がる。そのため、そのような間接的な防御が人口内で積み重なり、流行自体を防ぐ効果が得られたものを集団免疫効果と呼ぶ。そして、流行排除のための閾値について、従来株の場合、予防接種率が60%超程度ではないかと過去の記事で私も言及してきた。 実際に、イスラエルではロックダウン下で2回目接種が完了した者の割合が40%を超えたところで新規感染者数が減少傾向に転じたことから、国内外含めて予防接種に大きな期待が広がったのである。 残念ながら、上記の見通しは楽観的すぎた。それはどうしてなのか。加えて、現時点までの科学的な知見から今後の未来像をどのように見込んでいるのか。簡単ではあるが、本稿で皆さんと共有したい』、興味深そうだ。
・『変異株出現とワクチン効果が見通しを変えた  既に雑誌『数学セミナー』9月号で簡単な数式いくつかを使って解説したが、2021年8月現在に日本で流行を起こしているデルタ株は以下の2つの特徴を有する。 (1)感染性が高い(再生産数が高い) (2)予防接種の効果が従来株より低い いずれの要素も集団免疫閾値に直接的に影響を与える。特に、前回の記事でお伝えした通り、(1)に関して言えば、ウイルスの感染性を表す指標の「基本再生産数」は、デルタ株では5以上の可能性が高く、それは他の感染症で言えば風疹相当くらい高いものである。 風疹相当という観点で考えれば、同室で向かい合って近距離で食事すると危ない、というどころか、同室を一定時間以上共有することで伝播が成立する可能性が十分ある。 この感染性を持つウイルスに対して、不要不急の外出や移動、イベントの自粛、リモートワークなど、主に「非特異的対策」と言われるものだけで防ごうとしている現在の困難な状況については皆さんご存知の通りである。 加えて、予防接種に関しても(1)と(2)の影響のために、少なくとも現在の希望者の予防接種で得られる集団免疫だけでは、パッタリと伝播が止むような予防を期待できない蓋然性が高いことがこれまでにわかった(ただし、後述するように、もちろん予防接種率が高くなると感染頻度は極端に低くなると期待される)。 また、デルタ株に対する予防接種効果が従来株よりも低いことに関して、そのメカニズムの仮説を含めて少しずつ理解されるようになった。 しかし、今後ずっとデルタ株だけが蔓延するわけではなく、新たな変異株が免疫から逃れる機構を獲得していく可能性は高い。また、発生確率が十分高いかは定かではないが今後も感染性がより高い株が生まれる可能性も残されている。 こういった抗原性や感染性の進化をリアルタイムで捕捉しつつ政策が練られたことは科学的にも過去に経験はなく、未だその速度は十分にわかっていない。ただ、少なくとも予防接種と非特異的対策のそれぞれで、国際協調を行うことは必要だったと強く感じさせられている。世界で流行対策に関する足並みを揃えられなかったことの帰結を肌で感じさせられているのが現状なのかも知れない』、「予防接種と非特異的対策のそれぞれで、国際協調を行うことは必要だった」、その通りだ。
・『免疫の失活が起こる  予防接種だけに頼った政策で集団免疫による流行自体の予防が簡単にはできない事実に加え、ワクチンの効果は接種後の時間とともに失活することもわかってきた。 これは主にイスラエルにおいて今年の早い時期から予防接種をしてきた高齢者が、最近になって新たに感染していることがデータとして集積され始めたことから判明した。具体的な持続期間は未だ明らかにされていないが、観察データを見て分析している限りは2回目接種後6-7カ月で感染している事例が珍しくない。 つまり、ワクチン免疫の持続期間は限られている、というものである。 他方、十分にわかっているのは発病の有無に関するものだけであり、重症化や死亡を防ぐ効果がどれくらいの間持続するのかは十分に明らかでない。今後のデータ蓄積で明らかになる見込みである。 これが意味するのは全2回の接種だけで予防接種が終わるわけではないということである。ウイルスの抗原性進化(新しい変異株の出現)に合わせることになるだろうが、免疫が失活した際には流行までの間にイスラエルや米国・英国が決断したような3回目接種が必要になる*1。 これは再接種による免疫の再活性化を期待するもので、ブースター接種と呼ばれる。ブースターは1回で済むかと言えば、おそらくそうではなく、今後の流行動態を注意深く見極めることが求められる』、「ブースターは1回で済むかと言えば、おそらくそうではなく、今後の流行動態を注意深く見極めることが求められる」、そんなに何回も接種させられるのはかなわない。
・『いま、接種をどうすればいいか  いま、集団免疫閾値による流行終息が簡単には達成困難であり、発病そのものから逃れるワクチン免疫も1年以内に失われる可能性がある。そのような中で「じゃあ、もう自身は打たない」と思ってしまう方も出るかもしれない。結論から先に書いた上で背景要因などを解説できればと思うが、私は以下を主張したい。 (1)自身の予防のために接種することをお勧めしたい (2)社会の皆で明るい出口を見つけるためにも接種をお考えいただきたい』、なるほど。
・『ご自身のリスクについて  デルタ株に対する効果が従来株よりも少し低いことやワクチン免疫が失活する可能性はあるが、現在までに日本を含むいくつかの先進国で用いられているmRNAワクチンの効果は高く、接種者のデータを見ると、デルタ株でも80%以上の確率で発病を防ぐことが知られている。 このレベルの効果は抗原性が変化し得るウイルスに対して類を見ないくらいに高く、免疫が失われるまでの間、接種者は十分に高い効果で守られていることになる。 自身の健康や近しい人のためを考えると、接種をして守られている状態が形作れると良いであろう。今後、社会活動上でも予防接種済みであることでベネフィットを見出せるアドバンテージもあるかもしれない(未接種者だとできないことが出て来る日がくるかも知れない)』、「デルタ株でも80%以上の確率で発病を防ぐ」、まずまずだ。
・『社会全体でのリスクについて  他者のために、社会のために、自身の予防接種が効いている、という考え方である。たとえ予防接種だけに頼った政策で流行を止められなくても、高い接種率の状態だと制御は人口レベルで飛躍的に容易になる。 結果として予防接種はコロナ後の明るい未来を切り開く起爆剤になり得ることは変わらざる事実である。社会構成員の一人として「接種者である」ことは社会の中でのリスクを低減することに繋がっており、そのことを誇りに思っていただきたい。 ただし、現時点においては、感染しても重症化リスクの低い若年成人を中心に、予防接種の希望者は満足な数とは言えない。 例えば、国際医療福祉大学の和田耕治教授らによる調査では20歳代男性の27%、女性の38.7%が接種について「少し様子をみたい」と述べており、50歳代でも男性の18.0%、女性の17.2%が同様の回答をした。 この数字から想像される希望者の水準は、集団でこのウイルスによる感染を防御するには十分とは言えないレベルであり、国が強い施策で流行を止められない現状においては未接種者の多くが自然感染するという帰結を迎えるリスクが極めて高い。 今後、流行や感染に対するリスクの認識が十分に高くならなければ、相当の割合の国民の接種が達成できず、その希望者内だけにとどまってしまう。そして、とても勿体ないことに日本でワクチンが一時的に余ってしまう事態が起きかねない。 ただ、個別事例によって接種困難な事情は認容することが求められ、接種をしない自由も確保されるべきである。そのため、社会全体を予防接種で守るためには、「できるだけ接種しよう」という特別に強い勧奨を行うことが求められる。 そのためには、特別な工夫も必要だろう。たとえば、予防接種後の社会の仕組みに「接種の有無」を組み込むことによって、感染リスクをより低く抑えていく戦略を練ることはできないだろうか。 一例として会社に出勤することや12歳以上の者が学校へ登校するための要件として予防接種を強く推奨することは実質的に可能と思われるし、何等かのイベント参加の要件にすることも可能かもしれない』、「予防接種後の社会の仕組みに「接種の有無」を組み込むことによって、感染リスクをより低く抑えていく戦略を練ることはできないだろうか」、賛成だ。
・『極端に変わることがない近未来  以上の議論から想像いただけるかもしれないが、本感染症のリスクに対峙し続けてきた私から言えることは、接種完了時のイスラエルなどで一時的に見られていたような「ぱっと夜が明ける」ような未来社会が、日本で希望者の予防接種が完了しただけで来ることはなさそうである、ということである。 マスクを外した暮らしができて、普段会わない方と飲食が楽しめて、元の世界に近い接触が返ってくる、というイメージを抱く方も多いと思う。しかし、そのようにリスク認識が一気に社会全体で変わり得る、というような景色をすぐ先の未来に想像することは困難である。特に、現時点で見込まれる接種希望者がほぼ接種済みになるだろう今年11月後半の日本でそのようなリスク状態になることは、残念ながらほぼ期待できない。 それどころか、その後もしばらくは大規模流行が起こり得る状態が続き、医療が逼迫し得る状況(積極的治療が出来ない方が生じたり、自宅療養者が溢れかえったりするような、これまでの逼迫状況)が起こり得ると考えている。予防接種だけでは実効再生産数の値が1を上回るからだ。 もちろん、予防接種が進むにつれ、高齢者が最初に防がれ、その次に50歳代、その次に40歳代と次第に接種で防がれていく。だから、本格的な流行拡大が起こるまでの間は、重症患者数は過去と比較して明確に増加し難くなる。 しかし、接種を希望しない者の人口サイズは未だに大規模な流行サイズを引き起こすのに十分であり、そうすると高齢者を含むハイリスク者の間で未接種のままであった者を巻き込みつつ社会全体で感染が拡大し得る状態となる。それは、現状の接種希望者の見立て程度であれば、そのような中で大規模流行が起こると季節性インフルエンザ相当では到底及ばない流行規模・被害規模になり得る状態が継続する、ということである。 もちろん、そういった流行は接種率が高ければ高いほど被害規模を極端に小さくできる。また、すぐにマスクを外して接触を許すのではなく、まだしばらくの間はマスク着用を続けて不要不急の接触を避ける行動制限が緩徐に続くことで流行リスクが下がることに繋がるだろう。 その中で医療従事者や高齢者のようなハイリスク者のブースター接種が十分に行われるのはもちろんのこと、人口内で免疫を持つ者がほとんどの状況に達することができれば、 医療が崩壊するような流行も次第に回避可能となっていく。 ただし、おそらく年単位の時間をかけてそれが起こっていくのだ。 そこに至るまでの道のりにおいても、できるだけ医療逼迫の程度がひどすぎるような状況を回避しながら進み、直接的・間接的に生じる被害者が少なく済む状況を保っていく。繰り返すが、その間、日常生活でマスクは着用しつつ、ソーシャルディスタンスは確保しながらだが、少しずつ、少しずつ、私たちの文化的な社会活動を元の活力あるものに戻していく』、「おそらく年単位の時間をかけてそれが起こっていくのだ」、想像以上に長い時間がかかりそうだ。
・『未来を切り開くために  私は、そういった流行対策を続けていけば、数年から(長くて)5年くらいの時間をかけて次第に未来が切り開かれていくものと見込んでいる。どこかで頓挫して流行が大きくなるリスクもあるかもしれない。どこかで新しい展開が生じるかもしれない。それでも、大枠は変わらないものと考えている。 その中で、ずっと「パンデミック」の状態が持続するわけではない。この感染症の流行で問題であったのは(1)感染者が出すぎると医療が逼迫してしまうこと(救える命が救えないこと)、(2)他の疾病と比較すると死亡リスクが十分に高いこと、であった。 予防接種と自然感染が進んで、一定の対策下であれば(1)の医療逼迫が起こらない状態、になり、また、ハイリスク者が十分に免疫を保持し続けるか周囲に防御されることによって(2)の死亡リスクが他の疾病と変わらない、ということになれば、パンデミックは移行期(transition phase)へと進むことになる。そうなれば世界保健機関もパンデミックが終了したことをアナウンスするはずである。 ただし、このウイルスがヒト集団から消え去ることはしばらくなさそうである。そのため、少なくとも医療従事者や高齢者を中心とした接種は続いていくのだろう。また、一部の進化生物学者は既に本感染症は数年から5年程度のタイムスパンで、子どもの病気へと変わっていくものと予測している。 このように流行対策のハードルと流行の社会的重大度を少しずつ下げていくことを「テーパリング」と呼ぶことができるだろう。日本語では「先細り」と訳されるが、医療業界では、一部の病気の患者さんの投薬量を時間をかけて少なくしていく際にこの用語が用いられている。そのテーパリングを人口レベルでどのように形作るのか、という命題は、コロナ後の明るい未来をどのように作っていくのか、というものでもある。 ご覧になっていただければわかる通り、その明るい未来は私たち社会構成員が参加しつつ切り開くものである。というのも、予防接種率が高い社会ではテーパリングをより近い未来にすることができるのである。心理学や経済学の専門的知見を動員して接種が特別に強く勧奨される仕組みを必死に考えていくべきだろう。政治が責任を持ってパンデミックのリスクと向かい合えない状態が続くのなら、皆さんと専門家で一緒にこのリスクに対峙して未来を明るく照らしていきたいと思うのだ。 *1 本稿でのブースター接種に関連し、西浦が開示すべき利益相反関係として、西浦はサノフィ社のCOVID-19ワクチンのアドバイザリーボードでブースターワクチンに関する専門家助言を行ったことがあることを申し添える』、「テーパリング」は米国の金融政策が超緩和から出口に向けて変化する意味でも使われるが、ここでまで使われているとは、驚いた。

第四に、8月25日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「日本が現時点で「ワクチンパスポート」を導入することが、あまりに「不合理」と言えるワケ」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/86578?imp=0
・『筆者は公共性が高い事業において、従業員に接種を推奨する行為そのものに反対するわけではないが、物事には順序と段階、というものがあり、それを無視すれば、圧倒的に弊害の方が大きくなってしまう。そして、今のタイミングでのパスポート導入はその典型といってよいだろう(従業員への接種推奨や名札装着とワクチンパスポートは厳密には異なるが、ここではとりあえずパスポートとして議論する)。 現時点でワクチンパスポートを導入することの最大の問題点は、政府が十分にワクチンを確保できておらず、打ちたくても打てない人が多数存在しているという現実が無視されていることである』、私は単純に「ワクチンパスポート」に賛成していたが、考え直す必要がありそうだ。
・『肝心の現役世代の接種率は公表されない  政府は、毎日のようにワクチン接種が順調に進んでいるという発表を行っているが、政府が提示するのは高齢者の接種率と全体の接種率ばかりである。 目下、最大の懸案事項となっているのは、仕事で毎日、外出している現役世代に感染拡大が見られることであり、現役世代の接種率が感染抑制のカギを握るが、政府は直接、この数字を出さない。各種の数値から計算しないと現役世代の接種率は分からないので、当然、この数字が報道される頻度は少なくなる。 少し話がそれるが、行政当局が意図的に不十分な情報を公表し、自らの都合のよい世論を形成するというのは、日本では常套手段であり、国民はこうしたカラクリがあることを前提に情報に接しなければならない。だが多くの国民は政府の発表をそのまま受け取るので、誤った解釈が行き渡ることがザラにある。一部のネット民は特にその傾向が強く、メディアがその数字に疑義を呈すると、フェイクニュースだといって大騒ぎする始末である。 報道する側からすれば、政府が出した数字では実態が分からず、再計算する必要があると、そこでミスが発生するリスクが生じるし、確認作業にも多くの手間がかかる。もし間違った情報を出せばそれこそ鬼の首を取ったように騒がれるので、政府が出した情報をそのまま書いた方が無難と考える記者ばかりになっても不思議ではない。 結果として政府が望む情報しか出回らないことになるのだが、こうした事態に対して、「それをチェックして批判するのがメディアの仕事だろ」と安全地帯から声高に批判したところで問題が解決するわけではない。 話を元に戻すと、8月19日時点においてワクチンを2回接種した人は39.7%だが、その多くは65歳以上の高齢者である。ニュースでは全体の接種率や高齢者の接種率の数字ばかりが出てくるが、多くの現役世代が気にしているのは、当該年齢層の接種率だろう』、「行政当局が意図的に不十分な情報を公表し、自らの都合のよい世論を形成する」、困ったことだ。
・『非論理的な思考が招く致命的な事態  65歳未満で2回の接種を終えた人はわずか22.1%であり、医療従事者を含めても28.7%にしかなっていない。1回目を終えた人も36.8%なので、現役世代はまだ多くの人が1回目の接種すら終わっていない状況にある。この数字には職域接種が含まれているが、職域接種は大企業が圧倒的に有利であり、零細企業や自営業者の場合、職域接種を受けることは極めて難しい。 だが全員に公平であるはずの自治体の集団接種は多くが9月まで満杯という状況であり、現時点では予約すら入れられないところも多い。NHKの調査(8月5日)でも、東京23区における若年層の2回接種率は極めて低いとの結果が出ている(20代では3%以下というところが少なくない)。) 会社が責任を持って職域接種を行うのであれば話は別だが、自治体でのワクチン接種を求められても、出来ないというのが現実であり、そうした状況で強引に接種を推奨すれば、差別などの問題を引き起こす可能性が高くなる(ワタミは職域接種を申し出たもののワクチン不足から受理されなかったという報道もある)。 日本人は論理的に物事を考えることが不得意であると指摘されてきたが、非常事態においてこうした非論理的な思考は致命的な事態を招く危険性がある。 今のところ、ワクチンをできるだけ多くの人に接種すること以外、感染を根本的に抑制する方法は存在しない。したがって、ワクチン接種をどれだけ拡大できるのかは、すべてに優先する事項である。 ところが日本では、多くの人が1回目のワクチンすら打てない状態であるにもかかわらず、担当大臣が3回目の接種の目処に言及したり、自治体のトップが若年層の接種が進んでいないことを問題視する発言を行うなど、的外れな議論ばかりしている状況だ』、「多くの人が1回目のワクチンすら打てない状態であるにもかかわらず、担当大臣が3回目の接種の目処に言及したり、自治体のトップが若年層の接種が進んでいないことを問題視する発言を行うなど、的外れな議論ばかりしている」、マスコミがそれを問題視しないのも問題だ。
・『リスクを理解した上での議論なのか?  一部の論者は、欧米ではコロナとの共存を前提に、経済を回すフェーズに入っており、日本もそれを見習って、方針を変えるべきだという主張を行っているが、欧米と日本とでは置かれている状況がまるで異なる。欧米各国は希望者に対するワクチン接種はほぼ全て終えており、3回目の接種も始まっている。やれることはすべてやったので、後は覚悟を持って進み、経済を回していこうという趣旨である。 だが日本は、ワクチン接種という最低限のことが出来ておらず、検査態勢が脆弱であることから、十分な検査もできなくなっており、正確な感染者数の把握すら難しくなっている。 また平時から医療従事者が担当しなければならない患者数が欧米各国の3倍に達するなど、そもそも医療体制が貧弱であり、少し負荷が増えただけで簡単に医療崩壊を起こしてしまう(医療体制の拡充には時間がかかるが、政府は1年間の時間的猶予があったにもかかわらず、この作業を怠ってきた。今すぐに体制を拡充できるわけではないと考えた方がよいだろう)。 筆者は経済を専門分野にしているので、心の底から早く経済を回すフェーズに戻って欲しいと思っている。だが、ワクチン接種が進んでおらず、医療が逼迫した中でそれを行えば、演繹的に得られる結論として感染者は放置せざるを得ない。 コロナに感染した妊婦が自宅で早産に追い込まれて新生児が死亡したり、家族全員が感染して母親が自宅で死亡するなど言葉にならない事例が発生しているほか、一部の医療専門家は、コロナ感染者に無精子症など深刻な後遺症が発生していると指摘している。 ワクチン接種が不十分な中で経済優先に舵を切った場合、こうした事例が多発する可能性があることを理解した上での議論なら問題ないのだが、本当にそうだろうか』、旅行業を救うための「GoTo」キャンペーンが「感染」を酷くしたのも記憶に新しいところだ。
・『日本社会特有の「なかった事にしてしまう」症候群  日本人は演繹的に物事を考える際、都合が悪くなると、演繹の前段階における命題を「なかったことにしてしまう」傾向が顕著である。AならばB、BならばCという具合に論理を構成する際、都合が悪くなるとAが存在しなかったことにしてしまうのだ。 例えば今回のケースでいえば、「ワクチン接種以外に根本的な解決方法はない」という命題があったとしよう。この命題が存在するからこそ、「ワクチンパスポートを導入すればより経済を回しやすくなる」あるいは「3回目の接種を行えば変異株についてもある程度の抑制効果が期待できる」といった新しい命題が得られる。 この演繹プロセスにおいてワクチン接種が唯一の解決策であるという命題はすべてのスタート地点であり、もしワクチン接種が進んでいなければ前提条件が変わってしまうので当該演繹を進めることはできない。だがワクチンパスポートで経済を回す話が海外からやってくると、これにすがってしまい、ワクチン接種が進んでいないという現実を無視してパスポート導入を議論したり、3回目接種の是非ばかりに焦点が集まってしまう。 最近では、「変異株が猛威を振るっているので、ワクチン接種には意味がない」という論理まで登場している。変異株が恐ろしいウイルスならば、ワクチンを接種していなければさらに被害は拡大するはずであり、ますますワクチンが必要というのが正しい演繹だが、一部の人には真逆の論理的帰結になってしまうようである。これも演繹の前段階を無意識的に無視した思考の典型といってよいだろう。 人間は不安になると、無意識的に認知バイアスを生じさせる動物だが、最終的には理性を優先させなければ命は守れない。「現時点ではワクチン接種が唯一の解決策である」という命題は、その事実が変化しない限り、動かしてはならない』、「「現時点ではワクチン接種が唯一の解決策である」という命題は、その事実が変化しない限り、動かしてはならない」、同感である。
タグ:パンデミック (経済社会的視点) (その18)(「コロナ病床5%」旧国立・社保庁197病院への疑問 法律あっても病床確保は厚労相のお願いベース、医師・看護師はもう限界!デルタ株で高まる「自衛隊野戦病院」の必要性、西浦博教授が考える「ワクチン接種が進む日本」でこれから先に見込まれる“展開” 明るい未来を切り開くために、日本が現時点で「ワクチンパスポート」を導入することが あまりに「不合理」と言えるワケ) 東洋経済オンライン 松浦 新 「「コロナ病床5%」旧国立・社保庁197病院への疑問 法律あっても病床確保は厚労相のお願いベース」 文字通り厚労省直轄の病院の割には、「コロナ病床」が「5%程度」とはどう考えても少ない。 「厚労相」の弁明は全く理解不能だ。 年金官僚の野放図な無駄遣いにはいまでも腹が立つ。 「民主党は、1カ月もたたないうちに方向転換して、3病院の公営を維持する方針を打ち出す」、きっと官公労の圧力に屈したのだろう。 「厚労相」が弱腰なのが理解できない。野党は追求しないのだろうか。 ダイヤモンド・オンライン 上久保誠人 「医師・看護師はもう限界!デルタ株で高まる「自衛隊野戦病院」の必要性」 病院船などのアイデアには首を傾げざるを得なかったが、「野戦病院」は地に足がついた提案だ。 「英国では、昨年3月にロックダウンを実行したと同時に10日間程度で、国内の医療体制を新型コロナ用にシフトした」、日本では民間中心の医療体制の問題がいち早くから指摘されながら、手つかずでいるのと、「英国」の素早い対応は好対照だ。 「集約のメリット」は確かに大きそうだ。 「英国軍の軍医」と「NHSの医師・看護師」の協力は上手くいったのだろうか。 「英国」で「野戦病院はほとんど使われることがなかったのだが、先回りして体制を整えていたことが重要だ」、同感である。 現代ビジネス 西浦 博 「西浦博教授が考える「ワクチン接種が進む日本」でこれから先に見込まれる“展開” 明るい未来を切り開くために」 「予防接種と非特異的対策のそれぞれで、国際協調を行うことは必要だった」、その通りだ。 「ブースターは1回で済むかと言えば、おそらくそうではなく、今後の流行動態を注意深く見極めることが求められる」、そんなに何回も接種させられるのはかなわない。 「デルタ株でも80%以上の確率で発病を防ぐ」、まずまずだ。 「予防接種後の社会の仕組みに「接種の有無」を組み込むことによって、感染リスクをより低く抑えていく戦略を練ることはできないだろうか」、賛成だ。 「おそらく年単位の時間をかけてそれが起こっていくのだ」、想像以上に長い時間がかかりそうだ。 「テーパリング」は米国の金融政策が超緩和から出口に向けて変化する意味でも使われるが、ここでまで使われているとは、驚いた。 加谷 珪一 「日本が現時点で「ワクチンパスポート」を導入することが、あまりに「不合理」と言えるワケ」 私は単純に「ワクチンパスポート」に賛成していたが、考え直す必要がありそうだ。 「行政当局が意図的に不十分な情報を公表し、自らの都合のよい世論を形成する」、困ったことだ。 「多くの人が1回目のワクチンすら打てない状態であるにもかかわらず、担当大臣が3回目の接種の目処に言及したり、自治体のトップが若年層の接種が進んでいないことを問題視する発言を行うなど、的外れな議論ばかりしている」、マスコミがそれを問題視しないのも問題だ。 旅行業を救うための「GoTo」キャンペーンが「感染」を酷くしたのも記憶に新しいところだ。 「「現時点ではワクチン接種が唯一の解決策である」という命題は、その事実が変化しない限り、動かしてはならない」、同感である。
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パンデミック(医学的視点)(その21)(中外製薬ロナプリーブ「コロナ第4の薬」の正体 抗体カクテル療法とは何? 有効性、コストは?、コロナワクチン接種後に感染「ブレークスルー感染」どうすれば?) [パンデミック]

パンデミック(医学的視点)については、6月21日に取上げた。今日は、(その21)(中外製薬ロナプリーブ「コロナ第4の薬」の正体 抗体カクテル療法とは何? 有効性、コストは?、コロナワクチン接種後に感染「ブレークスルー感染」どうすれば?)である。

先ずは、7月25日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの村上 和巳氏による「中外製薬ロナプリーブ「コロナ第4の薬」の正体 抗体カクテル療法とは何? 有効性、コストは?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/442812
・『新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対するワクチン接種の進行状況が注目を浴びている中で、これまで思ったように進展してこなかったのが治療薬の開発である。そうした中で厚生労働省は7月19日、中外製薬の新型コロナに対する抗体カクテル療法「ロナプリーブ」を特例承認した。 この薬はすでにアメリカで2020年11月21日に緊急使用許可を取得し、同様の許可はドイツやフランスでも取得しているが、これらはいずれも正式承認前の緊急避難的措置。いわば「仮免許承認」とも言える。正式承認されたのは日本が世界初。新型コロナに対する治療として日本国内で適応を持つ薬剤は、これでようやく4種類目だが、既存の3種類がいずれも中等症以上の重症度で使用されるのに対し、ロナプリーブは条件次第で軽症に使える初の薬でもある。 また、既存の3種類の治療薬である抗ウイルス薬のレムデシビル、ステロイド薬のデキサメタゾン、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬のバリシチニブはいずれも他の病気の治療を目的に開発されたものの中から、新型コロナに対しても有効という臨床試験データが得られたために効能が追加された通称「ドラッグ・リポジショニング」で生み出されたもの。つまり最初から新型コロナの治療を目的として開発された薬剤としては国内初承認でもあり、「正真正銘の新型コロナ治療薬」とも言える』、「最初から新型コロナの治療を目的として開発された薬剤としては国内初承認」、確かに画期的だ。
・『ロナプリーブってどんな薬?  今回承認されたロナプリーブは単一成分の薬ではない。医薬品として使用するため人工的に製造した抗体は別名「抗体医薬品」と呼ばれるが、ロナプリーブはカシリビマブ、イムデビマブと呼ばれる2種類の抗体医薬品が含まれる注射薬である。複数の抗体医薬品で行う治療であることから、酒やジュースなど複数の飲料を混ぜて作られるカクテルになぞらえて、この薬を使う治療法は「抗体カクテル療法」と呼ばれる。 そもそもこの抗体はアメリカの製薬企業リジェネロン・ファーマシューティカルズ社が最初に作り出したもので、現在売上高で世界第1位の製薬企業であるスイス・ロシュ社が同社と提携して獲得。ロシュ社の子会社である中外製薬が日本国内での開発・販売ライセンスを取得していた。ちなみに中外製薬は1925年創業の日本の製薬企業だったが、2002年にロシュ社が過半数の株式を取得し、同社のグループ会社になっている。 ロナプリーブが新型コロナ患者でどのような効果を発揮するかを説明するためには、まず新型コロナウイルスがヒトの体内でどのように感染を起こしているかを知っておく必要がある』、なるほど。
・『ロナプリーブはどのような作用を示すのか?  これまでの各種報道で新型コロナウイルスの模式図を見た人は少なくないと思うが、このウイルスの構造は一言で言うと、円形のボールのようなものの表面に数多くのトゲが突き出している。このトゲがスパイクタンパク質と呼ばれるもので、ヒトの細胞の特定の部分に取り付いて、そこからウイルスの遺伝子がヒトの細胞に送り込まれる。これがまさに「感染」と呼ばれる状態である。その後は送り込まれた遺伝子がヒトの細胞を間借りし、次々と新型コロナウイルスを作り出し(増殖)していく。 この2つの抗体はそれぞれがこのスパイクタンパク質に結合する。そうすることで前述のスパイクタンパクとヒトの細胞との結合、すなわち感染の成立が阻止される。このため2つの抗体は中和抗体とも呼ばれる。 ここで「それってワクチンと似ていない?」と思った人もいるかもしれない。ある意味その通りである。現在新型コロナで使われているメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンは、前述の新型コロナのスパイクタンパク質の遺伝情報が成分である。これがヒトの体内に入りヒトの細胞を間借りしてスパイクタンパク質だけを作り出し、それを異物と認識したヒトの免疫が中和抗体を作ったり、一部の免疫細胞が異物と認識して直接攻撃する能力を獲得・記憶したりする。 ただ、ロナプリーブとワクチンの中和抗体には違いがある。ロナプリーブの中和抗体は感染判明後、静脈に点滴で注射するオンデマンド方式で、それを止めれば抗体は無くなるのに対し、ワクチンの場合はいったん基本スケジュール通りに接種が完了すればその後一定期間はウイルスの体内侵入に合わせて体内で自動的に中和抗体が製造されるオートメーション方式である点だ』、「ロナプリーブとワクチンの中和抗体には違いがある」のは理解できた。
・『新薬ロナプリーブの実力  今回のロナプリーブでの「特例承認」とは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称・薬機法)」の第14条の3に基づき、非常事態の際に国内未承認で海外では承認などを受けた医薬品を簡略化した手続きで特例的に承認する仕組み。簡略化とは、簡単に言えば海外で承認などを受けた医薬品に関して、海外での臨床試験データを軸に日本国内での臨床試験を最小限にして、データを迅速に審査して承認を行う制度だ。 ちなみに特例承認は、あくまで日本と同等水準の医薬品の承認制度を持っている国で承認などを受けた医薬品にのみ対象を限定している。この「同等水準の国」として現時点で認められているのはアメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ドイツの5か国のみだ。 今回のロナプリーブの特例承認の審査では、アメリカなどで緊急使用許可の承認などを受けた際に提出された海外での臨床試験データが用いられている。この試験は「REGN-COV 2067」という名称で、入院には至っていないものの、肥満や50歳以上および高血圧を含む心血管疾患を有するなど、少なくとも1つの重症リスク因子を有している新型コロナ患者を対象に行われた。 対象患者には標準的な対症療法を行いながら、ロナプリーブ1200mg(シリビマブ、イムデビマブをそれぞれ600mg)を静脈内に1回投与するグループと偽薬(プラセボ)を静脈内に1回投与するグループを設定し、効果を比較した』、なるほど。
・『入院や死亡のリスクが70.4%も低下  これまで明らかになっている結果は、投与から約1カ月以内の新型コロナに関連する入院または新型コロナとの関連は問わず何らかの理由で死亡に至った事例の発生率は、プラセボ・グループが3.2%、ロナプリーブ・グループが1.0%で、プラセボ・グループに比べてロナプリーブ・グループは、入院や死亡のリスクが70.4%も低下していた。また症状の持続期間(中央値)は、プラセボ・グループの14日に対して、ロナプリーブ・グループは10日に短縮した。 安全性について、重篤な有害事象発現率はロナプリーブ・グループが1.1%、プラセボ・グループ4.0%。ちなみに有害事象とは、副作用とイコールではなく、薬やプラセボの投与後から一定期間中に起きた好ましくない体の変化をすべてカウントしたものである。 有害事象の中で薬との因果関係が否定できない、あるいは因果関係があると認定されたものが「副作用」と分類される。現時点でロナプリーブによる副作用と考えられているものは、注射から24時間以内に起こる発熱、悪寒、吐き気、めまいなどの急性症状である「急性輸液反応(infusion reaction)」で、その発現率は0.2%である』、「ロナプリーブ」の効果は確かに明確なようだ。
・『家族内感染対策で認められた予防効果  今回、ロナプリーブでは死亡リスクを減少させるというエビデンスが示されたが、すでに新型コロナに対する適応が日本国内で認められている薬剤の中では、デキサメタゾンについで2種類目であり、今後の新型コロナ治療にとっては明るい材料である。 一方、まだ適応として承認されたものではないが、これまでに行われた臨床試験の結果からは家族内感染での発症予防効果も認められている。これはアメリカ国立衛生研究所(NIH)傘下の国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)とロシュ社が共同で実施した臨床試験「REGN-COV 2069」で明らかにされた。 試験では4日以内に新型コロナ陽性と判定された人と同居し、新型コロナウイルスに対する抗体が体内に存在しない、あるいは新型コロナの症状がない人が対象。この対象者でプラセボ注射のグループとロナプリーブ1200mg単回皮下注射のグループで「29日目までの症状のある感染者の発生率」を比較したところ、ロナプリーブ・グループでは、プラセボ・グループに比べ、発生率が81%も減少したことが分かった。 また、症状の消失までに要した期間は、プラセボ・グループでは3週間だったのに対し、ロナプリーブ・グループでは平均1週間以内と大幅な期間短縮が認められている』、「家族内感染での発症予防効果も認められている」、現在のように医療崩壊で自宅療養を余儀なくされる場合には、耳寄りな話のように聞こえるが・・・。
・『どのような患者に使えるか?  さて実際、今回の特例承認でどのような患者に使えるかだが、添付文書では新型コロナウイルス感染症で「重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者」と定めている。 まず「酸素投与を要しない」とは、ロナプリーブの臨床試験の患者選択基準に基づくと酸素飽和度(SpO2)が93%以上ということになる。酸素飽和度は心臓から全身に運ばれる動脈血の中を流れている赤血球に含まれるヘモグロビンの何%に酸素が結合しているかという指標で正常値は96~99%。肺や心臓の機能が低下して酸素を体内に取り込む力が落ちてくると低下する。 厚生労働省が発刊している「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」では、新型コロナの重症度を軽症、中等症Ⅰ、中等症Ⅱ、重症の4段階に定め、酸素飽和度93%以上は軽症から中等症Ⅰに当たる。ちなみに軽症とは肺炎は認められず、呼吸器症状も全くないあるいは咳だけ、中等症Ⅰは肺炎・呼吸困難はあるものの呼吸不全(呼吸がうまくできずに他の臓器の機能にも影響が及ぶ状態)には至っていない状態を指す。 もう1つの投与基準である「重症化リスク因子」だが、これも臨床試験での患者選択基準に従うと以下のような因子が指摘されている。 +50歳以上 +肥満(BMI 30kg/m2以上) +心血管疾患(高血圧を含む) +慢性肺疾患(喘息を含む) +1型または2型糖尿病 +慢性腎障害(透析患者を含む) +慢性肝疾患 +免疫抑制状態(例:悪性腫瘍治療、骨髄または臓器移植、免疫不全、コントロール不良のHIV、AIDS、鎌状赤血球貧血、サラセミア、免疫抑制剤の長期投与) ちなみに「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」で記載のある重症化リスク因子には上記の臨床試験での基準に加え、「妊娠後期」の表記がある。通常、臨床試験で妊婦が対象者になることはなく、添付文書でも生殖への影響を調べる「生殖発生毒性試験」は行っていないと明記され、「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」と記載されている。 いずれにせよロナプリーブではこれら2つの基準を満さねばならず、新型コロナに感染したから誰でも投与を受けられるわけではない。 また、この薬は通常の薬と違い、医療機関が医薬品卸に直接発注して購入することはできない。当面は世界的にも供給量が限られることもあり、国内では中外製薬との契約に基づき全量を政府が買い上げ、必要とする医療機関の求めに応じて国が中外製薬を通じて配分する。 さらに前述の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」では、重症化リスクのある患者は入院治療を要すると定めている。このため厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部が発出したロナプリーブに関する事務連絡通知では、供給する医療機関は、こうした患者の入院を受け入れている医療機関に限定している。感染者急増でベッドの空きがないため、重症化リスクがありながら入院ができないなどの特殊なケースなどを除けば、当面はホテルあるいは自宅での療養者は投与対象にはならない』、「当面はホテルあるいは自宅での療養者は投与対象にはならない」、過度な期待は禁物のようだ。
・『気軽に使えない理由に国の財政負担問題も  ロナプリーブが思ったように気軽に使えない理由には医学的な問題だけでなく、経済的な問題、国の財政負担の問題もあると考えられる。 現在感染症法に基づく指定感染症となっている新型コロナの治療費は全額公費で負担される。つまりロナプリーブを使われる人は一銭も薬剤費はかからない。これはこの薬に限らず、すでに新型コロナに適応のある治療薬のレムデシビル、デキサメサゾン、バリシチニブを使う場合や人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)を使う場合などもすべて公費負担で患者本人の金銭負担はない。 とはいえ、無制限に使えば国庫に負担をかけることになる。ではロナプリーブの薬剤費がいくらになるかだが、これは今のところ不明。通常、日本国内で承認された薬は公定薬価が定められて公開されるが、ロナプリーブは中外製薬と国との契約で一括購入し、使用時は国が全額負担することもあってか公定薬価は決められていない。また、国の購入数量、総購入金額も現時点では非公開である。 ただ、一般的に抗体医薬品は高薬価である。既存の抗体医薬品はおおむね1回の注射で安くても2万~3万円、高いものでは10数万円はかかる。ロナプリーブの場合は2種類の抗体医薬品の組み合わせなので1回4万円以上は念頭に置く必要がある。これで対象患者が多くなればなるほど国の財政負担は激増する。 ちなみに前述のようにこの薬剤がウイルスの中和抗体であり、家族内感染の発症予防効果もあることから「ワクチンではなくロナプリーブを使えば良い」という意見も出てくるかもしれないので、念のためにそれについて答えておくと、医学的にも財政的にも現実的ではない。 ロナプリーブで判明している家族内感染予防効果は1回の注射で1カ月ほど。この原理に従えば確実な予防のためには、毎月注射しなければならないことになる。ワクチンが2回の接種で少なくとも半年以上、おおよそ1年程度は感染予防効果があると考えられていることからすると、医学的に見てパフォーマンスが悪い。接種する患者側の苦痛に関して言及しても、年間12回注射の針を刺されるのと、2回で済むのとどちらが良いかの答えはほぼ自明だ』、「ロナプリーブで判明している家族内感染予防効果」は「医学的に見てパフォーマンスが悪い」ようだ。
・『国民全員に予防的に使うのは割に合わない  また、コストに関してもワクチンは2回の接種で4000円程度。ロナプリープは前述のように1回で4万円以上かかることは確実。現在のワクチン接種対象者は約1億1000万人になるので仮にこれら全員に使うとしたら、ワクチンならば年間4400億円、ロナプリープならば年間53兆円の財源が必要になる。これは日本の国の年間予算(一般会計歳出)の半分に相当する。きわめて非現実的と言わざるをえない。 いずれにせよ今回登場したロナプリーブは、治療薬としてはこれまでの中でも比較的画期性は高いと言えるし、治療選択肢が増えたことは歓迎すべきことだ。 しかし、限定された投与対象、煩雑な注射薬、高額なコストがかかる抗体医薬品という現実を考えれば決定打とはいえない。また、今後の治療薬開発なのでより簡便かつ安価な経口薬が登場した場合は瞬く間に取って代わられる可能性がある』、「ロナプリーブは、治療薬としてはこれまでの中でも比較的画期性は高いと言えるし、治療選択肢が増えたことは歓迎すべきことだ。 しかし、限定された投与対象、煩雑な注射薬、高額なコストがかかる抗体医薬品という現実を考えれば決定打とはいえない」、その通りだ。

次に、8月2日付けNHK首都圏ナビ「コロナワクチン接種後に感染「ブレークスルー感染」どうすれば?」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20210802c.html
・『新型コロナウイルスのワクチン接種を終えたあと、2週間以上して感染が確認されるいわゆる「ブレイクスルー感染」。国の初めての調査結果がまとまり、6月末までの3か月間に67人の感染が確認されました。 国立感染症研究所は「ワクチンの有効性を否定する結果ではないが、接種後も感染対策を続けることが重要だ」としています』、「3か月間に67人の感染が確認」、とはワクチンの効果も万全ではないようだ。
・『ワクチン接種 2回目終了は全人口の29%  ワクチンの接種は、2回目の接種を終えた人は、政府が8月2日に公表した状況によりますと国内で少なくとも新型コロナウイルスのワクチンを1回接種した人は全人口の39.61%となっています。 また2回目の接種を終えた人は全人口の29.12%となります。(全人口にはワクチン接種の対象年齢に満たない子どもも含む)』、なるほど。
・『接種後に感染「ブレークスルー感染」  ワクチンの接種後、感染が確認されるケースはどうなっているのか。国の初めての調査結果がまとまりました。 新型コロナウイルスワクチンの接種を終えてから免疫が完全につくまでには14日かかるとされます。海外では、そのあとに感染が確認される事例がまれに報告され、「ブレイクスルー感染」とも呼ばれています。 国立感染症研究所が、自治体や医療機関からの報告をもとに初めて調査を行った結果、4月1日~6月30日の3か月間に合わせて67人の感染が確認されました。 79%が20代から40代で、重症者はいなかったということです。 ウイルスの遺伝子を解析できた14例 12例:イギリスで確認された変異ウイルスの「アルファ株」 2例: インドで確認された「デルタ株」は2例  また、一部の検体からは感染力を持つウイルスも検出されたということです』、「一部の検体からは感染力を持つウイルスも検出された」、とは驚かされた。
・『国立感染研「接種後も感染対策を」  国立感染症研究所は、「接種後も感染対策を続けることが重要だ」としています。 国立感染症研究所「ワクチンの有効性の高さを否定する結果ではないが、二次感染を起こすリスクもあり、接種後も感染対策を続けることが重要だ。また、医療機関なども、症状などから感染が疑われる場合は積極的に検査を行う必要がある」』、「接種」したらもう感染しないと思っていたが、「ブレークスルー感染」を防ぐには「接種後も感染対策を続けることが重要だ」のようだ。
・『デルタ株感染拡大 米では接種後もマスク着用推奨  さらに、デルタ株の感染拡大に伴う動きも。 アメリカのCDC=疾病対策センターは新型コロナウイルスワクチンの接種を完了した人も感染が深刻な地域では屋内でのマスクの着用を推奨するという新たな指針を示しました。 アメリカでは1日に報告される感染者数の7日間平均が26日の時点で5万人を超え、前の週より50%あまり増えています。 CDCは27日、インドで確認された変異ウイルスの「デルタ株」が感染例の8割を占めると推定されるとして、ワクチンの接種を完了した人も感染者の数などが一定の水準を超えた地域では屋内でのマスクの着用を推奨するという新たな指針を発表しました。 指針は首都ワシントンやニューヨーク、ロサンゼルスなどの大都市を含む39の州や地域が対象となっています。 CDCのワレンスキー所長は、電話会見で「デルタ株はまれに接種を完了した人への感染も確認されている」と述べた上でワクチンの効果は十分高いとして接種を重ねて呼びかけました。 バイデン大統領はことし5月、接種を完了した人は原則としてマスクを着けなくてもよいとしましたが、デルタ株の急速な拡大でわずか2か月で転換を余儀なくされました』、イスラエルやアメリカでは3回目のブースター接種を目指すようだ。ただ、途上国などまだ2回目の「接種」すら済んでない国が殆どで、WHOなどはブースター接種よりも、未接種国での「接種」を優先させたいとしている。アメリカがトランプ前大統領ほどではないにしても、感染症の分野でまで自国優先路線を続けるのは困ったことだ。
タグ:パンデミック (その21)(中外製薬ロナプリーブ「コロナ第4の薬」の正体 抗体カクテル療法とは何? 有効性、コストは?、コロナワクチン接種後に感染「ブレークスルー感染」どうすれば?) (医学的視点) 東洋経済オンライン 村上 和巳 「中外製薬ロナプリーブ「コロナ第4の薬」の正体 抗体カクテル療法とは何? 有効性、コストは?」 「最初から新型コロナの治療を目的として開発された薬剤としては国内初承認」、確かに画期的だ。 「ロナプリーブとワクチンの中和抗体には違いがある」のは理解できた。 「ロナプリーブ」の効果は確かに明確なようだ。 現在のように医療崩壊で自宅療養を余儀なくされる場合には、耳寄りな話のように聞こえるが・・・。 「当面はホテルあるいは自宅での療養者は投与対象にはならない」、過度な期待は禁物のようだ。 「ロナプリーブで判明している家族内感染予防効果」は「医学的に見てパフォーマンスが悪い」ようだ。 「ロナプリーブは、治療薬としてはこれまでの中でも比較的画期性は高いと言えるし、治療選択肢が増えたことは歓迎すべきことだ。 しかし、限定された投与対象、煩雑な注射薬、高額なコストがかかる抗体医薬品という現実を考えれば決定打とはいえない」、その通りだ。 NHK首都圏ナビ 「コロナワクチン接種後に感染「ブレークスルー感染」どうすれば?」 「3か月間に67人の感染が確認」、とはワクチンの効果も万全ではないようだ。 「一部の検体からは感染力を持つウイルスも検出された」、とは驚かされた。 「接種」したらもう感染しないと思っていたが、「ブレークスルー感染」を防ぐには「接種後も感染対策を続けることが重要だ」のようだ。 イスラエルやアメリカでは3回目のブースター接種を目指すようだ。ただ、途上国などまだ2回目の「接種」すら済んでない国が殆どで、WHOなどはブースター接種よりも、未接種国での「接種」を優先させたいとしている。アメリカがトランプ前大統領ほどではないにしても、感染症の分野でまで自国優先路線を続けるのは困ったことだ。
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パンデミック(経済社会的視点)(その17)(タワマンに外車…浪費癖が仇になった経産省キャリア2人の給付金詐欺とお粗末過ぎた国会の女子トイレ盗撮、ワクチン不足・酒提供への圧力で露呈した「やりすぎる日本」という負けパターン、ジョンソン首相 若者をコロナ実験のモルモットに ワクチン接種進む英国 一気に集団免疫を狙う危うさ) [パンデミック]

パンデミック(経済社会的視点)(その17)(タワマンに外車…浪費癖が仇になった経産省キャリア2人の給付金詐欺とお粗末過ぎた国会の女子トイレ盗撮、ワクチン不足・酒提供への圧力で露呈した「やりすぎる日本」という負けパターン、ジョンソン首相 若者をコロナ実験のモルモットに ワクチン接種進む英国 一気に集団免疫を狙う危うさ)である。

先ずは、6月26日付けAERAdot「タワマンに外車…浪費癖が仇になった経産省キャリア2人の給付金詐欺とお粗末過ぎた国会の女子トイレ盗撮」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2021062600017.html?page=1
・『経済産業省の職員3人が相次いでとんでもない事件を起こし、霞が関に激震が走っている。 警視庁に6月25日、コロナ関連の国の給付金550万円をだまし取った詐欺容疑で逮捕されたのは、経産省の経済産業政策局産業資金課の係長、桜井真容疑者(28)と、同局産業組織課の新井雄太郎容疑者(28)。 2人ともキャリア官僚だが、驚いたことに、だまし取った家賃支援給付金の管轄は経産省中小企業庁。職場で堂々と詐欺を働いたというのだ。 2人は慶応高校時代の同級生で、桜井容疑者は慶応大学からメガバンクに就職したが、退職し、経産省に2018年入省した。 新井容疑者は慶応大学から東京大学のロースクールに進学し司法試験に合格し、20年に同省に入省した。 2人は共謀して所有していたペーパーカンパニー「新桜商事」(本社東京都文京区)を使って、家賃支援給付金をだまし取ることを計画。コロナ禍で売上が減少したと虚偽の書類などを作成して、家賃支援給付金を申請した。今年1月に約550万円を会社名義の口座に入金させたという。 「桜井容疑者は高級外車2台を所有している上、1か月分の給料以上になる約50万円の家賃の千代田区一番町のタワーマンション14階に住み、派手な生活をしているという情報が警視庁に寄せられていた。贈収賄を視野に捜査が始まったが、ふたを開けたら家賃支援給付金詐欺だった」(捜査関係者) 2人は新井容疑者の東京都文京区の自宅と親族宅と桜井容疑者の神奈川県の実家の計3か所へ月々200万円の家賃を支払っているというニセの賃貸借契約書を作成し、給付金をだまし取ったという。 「申告書、添付書類などは新井容疑者が大半を作成したようだ。一方、カネを派手に使っていたのは、桜井容疑者で、高級時計や外車を購入していた」(前出の捜査関係者) ちなみに桜井容疑者の住んでいた千代田区一番町の分譲タワーマンションは、不動産業者のサイトで見ると、約90平方メートルの物件で2億円近い値段がついている』、「贈収賄を視野に捜査が始まったが、ふたを開けたら家賃支援給付金詐欺だった」、「捜査関係者」もこの結果には驚いたことだろう。
・『賃貸に出ている部屋の家賃はいずれも50万円前後と超高級だ。経産省幹部はこうため息をつく。 「会社設立、その代表者となれば当然、営業活動をして利益をあげることが目的。国家公務員という立場で会社設立すること自体、兼業禁止が前提なので法に触れかねないのに…」 問題の「新桜商事」の法人登記簿によれば、19年11月に設立されている。当初は新井容疑者が代表取締役だったが、20年3月に新井容疑者の親族に変更されていた。会社の「目的」欄には<商標権、意匠権、知的財産権の取得、譲渡、使用許諾>とある。 知的財産権はまさに経産省が所管するものだ。2人が省内の情報をもとにひと儲けを企んだ可能性もある。前出の経産省幹部は法人登記を見てこう絶句した。 「これはヤバイ。経産省の情報などをもとに、稼ごうとしていたのか?家賃支援給付金もうちですよ。国家公務員として、自分の仕事をしている経産省をネタに詐欺、商売しようとするなんて…」 逮捕された2人は、経産省の出世コースの一つとされる経済産業政策局に在籍していた。産業資金課の桜井容疑者は、企業の資金調達を担当。新井容疑者は産業組織課で不正競争の防止などの仕事をしていた。2人を知る同僚はこう話す。 「2人とも頭の回転が速くて、1を言えばすぐに10を把握できるやり手でしたよ。部下からの信頼も厚かった。桜井容疑者は羽振りがよさそうだという噂はあった。だが、高校から慶応なので家が金持ちなのかな、と思っていた。将来を嘱望されていた2人がこんなバカなことで捕まるのか。信じられない」 警視庁は現在、2人の認否を明らかにしていない。 「2人は認めるような供述をしたり、また翻したりと逮捕にかなり動揺しているようだ。家賃支援給付金は経産省の担当だが、審査に便宜を図ったなどの事実は、今のところ確認されていない」(前出の捜査関係者) 他省庁の官僚は今回の事件についてこう語る』、僅か500万円で絵に描いたようなエリートコースを棒に振ったことになるが、発覚するとは夢にも思わなかったのだろう。
・『「経産省と聞いて、やりかねない気がしました。若手はもとより全体に言えることですが、今の官僚に使命感やロイヤリティを求めるのは幻想で、モラルが崩壊しています。給付金は支給の遅れを政治家から非難され、審査プロセスがどんどん簡素化、悪く言えば、適当になっています。そうした内情を理解した上での犯行でしょう。だからこそ一層、悪質だと思います」 また衆院は25日、国会議事堂内の女子トイレで起こった盗撮事件について、経産省の男性職員が盗み撮りを認めたと発表した。警視庁麹町署が捜査中だという。 4月23日午後5時45分ごろ、衆院2階の女子トイレの個室にいた女性が盗撮に気づき、発覚したという。 「男性職員は女性トイレに忍び込んで、ドアの上からスマートフォンを差し出して、盗撮に及んだようだ。女性が声をあげて助けを求めたことから、ばれてしまった。日本で最も警備が厳しい国会内でそんなことすれば、すぐ捕まるに決まっている。とんでもない不祥事が続き、もう情けない」(前出・経産省幹部)』、「女子トイレ」「盗撮事件」はバカバカしくてコメントする気にもなれない。

次に、7月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「ワクチン不足・酒提供への圧力で露呈した「やりすぎる日本」という負けパターン」を紹介しようhttps://diamond.jp/articles/-/276788
・『ワクチン接種で自治体にプレッシャー、酒提供に対する過剰な圧力  「ワクチン不足」が問題になっている。7月後半のワクチン供給は、自治体が希望する量の3分の1程度にとどまる見通しだという。 政府与党側はさまざまな釈明をしているが、つきつめていけばワクチン接種事業を、身の丈を超えて「過剰」に進めてしまったことが原因だ。 「1日100万回」「7月末までに高齢者接種完了」「10〜11月には希望者全員接種完了」という3つの目標を掲げた政府は、自治体が最も恐れる総務省から「早く接種を」とプレッシャーをかけさせたり、「打ち手」確保のために報酬を上げたりして、自治体のワクチン接種の尻を叩いた。さらに、それだけでは目標達成が不安だったのか、企業の職域接種までスタートさせた。 その甲斐あって、7月9日には会見で菅首相が、「先進国の中でも最も速いスピード」などと胸を張れるようになったワケだが、実力以上に背伸びをした結果、供給が追いつかなくなった。要は、見栄を張るために「やりすぎ」てしまったのだ。 この「やりすぎ」というのは、もうひとつ大きな問題になっている「酒提供をめぐる圧力」にも当てはまる。酒類の提供停止に協力をしない飲食店を、政府としてどうにか従わせたいという気持ちはわからんでもないが、それを法的根拠ゼロで、金融機関や酒卸業者にやらせるというのは明らかに度を越している。表現はマイルドだが、「暴力団排除」の手法とほぼ同じだからだ。 このように「やりすぎ」が招いた失敗が相次いでいるのを見ると、菅政権の先行きにかなり不安を感じてしまう。これは日本のさまざまな組織を壊滅させ、産業を衰退させてきた「負けパターン」だからだ。 身近なところで言えば、現在苦境に立たされているコンビニがわかりやすい』、「ワクチン接種」や「酒提供をめぐる圧力」では確かに「やりすぎ」たようだ。特に、「法的根拠ゼロで、金融機関や酒卸業者にやらせるというのは明らかに度を越している」。
・『「やりすぎ」がもたらす害、コンビニも三菱電機も…数えきれないほどの実例  ご存じのように、日本は世界一のコンビニ大国で、社会インフラと言ってもいいほど全国に店舗網が張り巡らされている。店舗では多種多様な商品、サービスが提供され、店員の接客も他国と比べものにならないほど丁寧である。しかし、これらの経営方針は、人口減少が急速進む日本においては「やりすぎ」として、マイナスに働いている。 店舗が多すぎるがゆえの過当競争で、コンビニ経営の厳しさが増し、「24時間営業」「弁当の値引き販売」などをめぐって、オーナーとFC本部の対立が激化している。また、店員もかつてよりやらなくてはいけない仕事が劇的に増え、もともと低賃金・長時間拘束というデメリットも相まって深刻な人手不足を起こしている。つまり、これまでは成長の原動力だった拡大路線やドミナント戦略(同じ地域に同じチェーン店舗を集中出店する戦略)が時代の変化で、「やりすぎ」となったことで、コンビニチェーンというビジネスモデルを根底から揺るがしているのだ。 また、「酒提供をめぐる圧力」と同様に、「やりすぎ」が不正を招くパターンも実は多い。 例えば、数年前から日本を代表する「ものづくり企業」で相次いで発覚し、最近も三菱電機で35年以上も続いていたことが明らかになった「検査不正」だ。 高品質をうたう日本では、それを担保するように、他国よりも厳しい品質チェツクを義務付けてきた。しかし、それは実際に現場でものをつくっている人々たちからすれば「やりすぎ」だった。だから、建前としてはルールを守りつつ、実際は自分たちが効率良く仕事ができるような「マイルール」で検査をしていたのだ。つまり、本質的なところで言えば、検査不正というのは「過剰な品質チェック」が呼び水になっている。 他にも近年で、致命的なダメージを受けた組織を思い浮かべていただきたい。 東芝、日本郵便、レオパレス21…不正内容の細かな違いはあるが、つきつめていけば、「過剰なノルマ」が影響している。事業やインフラ拡大という「やりすぎ」の尻拭いが現場に押し付けられ、不正行為を誘発しているのだ。 最近の菅政権の迷走ぶりを見ていると、このような「やりすぎ」が引き起こす「負けパターン」にどっぷりとハマってしまったように見えてしまう。 と言うと、「何をやりすぎだというのだ、むしろコロナ対策などぜんぜんやってないじゃないか」という声が飛んできそうだ。しかし、この1年、ハタから見ていて「ちょっとやりすぎじゃないですかね」と心配してしまうものがある。 それは、「過剰な医師会擁護」だ』、「検査不正というのは「過剰な品質チェック」が呼び水になっている」、「東芝、日本郵便、レオパレス21…不正内容の細かな違いはあるが、つきつめていけば、「過剰なノルマ」が影響している」、「この1年、ハタから見ていて「ちょっとやりすぎじゃないですかね」と心配してしまうものがある。 それは、「過剰な医師会擁護」だ」、同感である。
・『医療体制の改革はなぜ進まない?過剰な医師会擁護の理由  ご存じのように、世界を見渡せば、1日の新規感染者が2万人、3万人という国でも「病床のひっ迫」が叫ばれていないのに、日本では1日の新規感染者が5000人というような水準で、「医療崩壊」のアラートが鳴る。 なぜこんなおかしなことが起きるのかというと、「急性期病床」が世界一というほど多いからだ。 『「多すぎる病院」が、コロナ禍で医療現場の危機を招きかねない理由』の中で詳しく解説したが、日本は医療従事者の数は他の先進国とそれほど変わらないにもかかわらず、急な容態の悪化などで用いられる急性期の病床が「異常」というほど多い。それはつまり、医療従事者1人あたりの負担が「異常」なほど重いということだ。 だから、他の先進国のようにコロナ患者に対応できない。これが人口1300万の世界有数の巨大都市・東京で、コロナ患者が1000人出たらもうアウトという「脆弱な医療体制」の構造的な原因であり、「コロナ死を防ぐ」ため、政治が手をつけなくてはいけないところだ。 だが、政府としてはこのあたりはあまり突っ込みたくない。というか、できる限り、国民にはスルーしてもらいたい。なぜなら、これまで日本で病床が足りないと政治に働きかけてきた日本医師会は、自民党最大の支持団体だからだ。 だから、政府も自民党も、いつまで経っても解消されない「病床ひっ迫」については深く掘り下げたくない。しかし、現実問題として病床はひっ迫している。コロナ患者を受け入れている医療機関は、野戦病院のようになって、一部の医療従事者の負担はすさまじいことになった。 となると政治としては当然、この「悲劇」を引き起こしている原因と、この問題を解決するためにリーダーシップを発揮して動いていますよ、というパフォーマンスが必要になる。ストレートに言えば、「こいつらがいるからいつまでも病床がひっ迫するんですよ」というスケープゴートだ。ここまで言えばもうお分かりだろう。それが、「若者」と「飲食店」だ。 「病床がひっ迫しているのは、路上飲みをするような非常識な若者がいるから」、「医療従事者の皆さんが寝る間も惜しんで戦っているのに、居酒屋で酒を提供するなんて不謹慎だ」。そんなストーリーを定着させれば、「日本の脆弱な医療体制」から目を背けられる。 役所のリリースや会見を右から左へ流すマスコミの協力もあって、今のところこの戦略はうまくいっている。しかし、手痛い誤算もあった。国民に過剰に「病床ひっ迫」の恐ろしさを煽り続けてきたことが裏目に出て、東京オリンピック・パラリンピックが、「無観客」へ追い込まれてしまったのだ。医療体制の改革はなぜ進まない?過剰な医師会擁護の理由 ご存じのように、世界を見渡せば、1日の新規感染者が2万人、3万人という国でも「病床のひっ迫」が叫ばれていないのに、日本では1日の新規感染者が5000人というような水準で、「医療崩壊」のアラートが鳴る。 なぜこんなおかしなことが起きるのかというと、「急性期病床」が世界一というほど多いからだ。 『「多すぎる病院」が、コロナ禍で医療現場の危機を招きかねない理由』の中で詳しく解説したが、日本は医療従事者の数は他の先進国とそれほど変わらないにもかかわらず、急な容態の悪化などで用いられる急性期の病床が「異常」というほど多い。それはつまり、医療従事者1人あたりの負担が「異常」なほど重いということだ。 だから、他の先進国のようにコロナ患者に対応できない。これが人口1300万の世界有数の巨大都市・東京で、コロナ患者が1000人出たらもうアウトという「脆弱な医療体制」の構造的な原因であり、「コロナ死を防ぐ」ため、政治が手をつけなくてはいけないところだ。 だが、政府としてはこのあたりはあまり突っ込みたくない。というか、できる限り、国民にはスルーしてもらいたい。なぜなら、これまで日本で病床が足りないと政治に働きかけてきた日本医師会は、自民党最大の支持団体だからだ。 だから、政府も自民党も、いつまで経っても解消されない「病床ひっ迫」については深く掘り下げたくない。しかし、現実問題として病床はひっ迫している。コロナ患者を受け入れている医療機関は、野戦病院のようになって、一部の医療従事者の負担はすさまじいことになった。 となると政治としては当然、この「悲劇」を引き起こしている原因と、この問題を解決するためにリーダーシップを発揮して動いていますよ、というパフォーマンスが必要になる。ストレートに言えば、「こいつらがいるからいつまでも病床がひっ迫するんですよ」というスケープゴートだ。ここまで言えばもうお分かりだろう。それが、「若者」と「飲食店」だ。 「病床がひっ迫しているのは、路上飲みをするような非常識な若者がいるから」、「医療従事者の皆さんが寝る間も惜しんで戦っているのに、居酒屋で酒を提供するなんて不謹慎だ」。そんなストーリーを定着させれば、「日本の脆弱な医療体制」から目を背けられる。 役所のリリースや会見を右から左へ流すマスコミの協力もあって、今のところこの戦略はうまくいっている。しかし、手痛い誤算もあった。国民に過剰に「病床ひっ迫」の恐ろしさを煽り続けてきたことが裏目に出て、東京オリンピック・パラリンピックが、「無観客」へ追い込まれてしまったのだ』、「急性期の病床が「異常」というほど多い・・・他の先進国のようにコロナ患者に対応できない」、「日本医師会は、自民党最大の支持団体・・・政府も自民党も、いつまで経っても解消されない「病床ひっ迫」については深く掘り下げたくない」、「「こいつらがいるからいつまでも病床がひっ迫するんですよ」というスケープゴートだ・・・それが、「若者」と「飲食店」だ」、「若者」と「飲食店」が「スケープゴート」とは、言われてみれば、その通りなのかも知れない。
・『五輪か医師会か、板挟みになった結果、政府が選んだ答え  「人類がコロナに打ち勝った証に」なんて誰も望んでいないようなことを真顔で言ったことからもわかるように、日本政府は五輪を政治利用する気マンマンだった。景気浮揚、支持率アップ、選挙大勝などなどさまざまな下心があったので、通常の国際スポーツ大会と比べたら「やりすぎ」というほど肩入れをしてきた。 だから東京五輪は平常開催したかった。そもそも欧米の感覚では、今の日本の新規感染者数は「うまく抑え込んでいるなあ」というレベルなので当然だ。しかし、それをやってしまうと、「医療崩壊だ!」と危機を叫ぶ日本医師会のスタンスと矛盾してしまう。菅政権からすれば、「前門のIOC、後門の医師会」という感じで、完全に板挟み状態だった。そして最終的に日本は医師会を取った。 アスリートファーストではなく、医師会ファーストだったともいえる。 しかし、これはIOCからすればまったく納得いかないだろう。バッハ会長が無観客五輪を「理解に苦しむ」と述べたが、あれは嫌味でもなんでもなく、なぜ日本のような先進国でこんなに医療体制が弱いのか、とシンプルに意味がわからないのだ』、「「前門のIOC、後門の医師会」という感じで、完全に板挟み状態だった。そして最終的に日本は医師会を取った・・・バッハ会長が無観客五輪を「理解に苦しむ」と述べたが、あれは嫌味でもなんでもなく、なぜ日本のような先進国でこんなに医療体制が弱いのか、とシンプルに意味がわからないのだ」、確かにバッハ会長には理解不能だろう。
・『あらゆることを「過剰」に盛り上げてしまう日本人の気質  このような「やりすぎ」が引き起こす混乱は、五輪だけではなく、社会のいたるところへ広がっている。 ワクチンをめぐる情報戦も「やりすぎ」だ。かなり盛ったデマ情報が飛びかう一方で、ワクチンを嫌がる人を情報弱者扱いで蔑んだり、その逆にワクチン接種をする人々を脅したり口汚く罵るなど、コミュニケーションが「過剰」になっている。 なんでもかんでも過剰にやりすぎてしまう「やりすぎる日本」の悪い部分が、コロナ禍のギスギスした世相で、一気に噴出している印象だ。 この1年半、我々を苦しめてきたのは実はウィルスではなく、異なる価値観への憎悪など、あらゆることを「過剰」に盛り上げてしまう日本人の気質のせいのような気もする。 かつての日本では「過剰」「やりすぎ」は良いことだった。成長のきっかけであり、日本の優位性の象徴だった。 例えば、五輪でも万博でもイベントは過剰に盛り上げて、国をあげてお祭り騒ぎをすることで、景気回復や国威発揚につながるとされた。また、インフラも「やりすぎ」くらいが正解とされた。その代表が、電車や新幹線だ。ここまで秒単位で正確な電車は世界を見渡しても、類を見ない。 社会全体がこんなノリなので、労働者も過剰に働くことが「正しい」とされた。家庭を顧みずに残業や土日出社は当たり前の滅私奉公スタイルは他国から見れば明らかに「やりすぎ」だが、日本人にはそれほど違和感はない。他にも、過剰に低い賃金、過剰に長い会議、過剰に丁寧な社内文書、などなど、我々の身の回りには他国の人から見ると「過剰」に映ることが山ほどあるのだ。 これらをすべて否定するつもりはないが、菅政権への国民の反発を見てもわかるように、もはや「やりすぎ」をゴリ押しして、世の中を動かせなくなってきたのも事実なのだ。 今の日本に一番不足しているのは、何事もそれほどのめり込まず、「ほどほど」というバランス感覚なのかもしれない』、「「やりすぎる日本」という負けパターン」は、確かにパンデミックや東京五輪問題に、新たな切り口を提供してくれた。

三に、7月13日付けJBPressが転載したFinancial Times「ジョンソン首相、若者をコロナ実験のモルモットに ワクチン接種進む英国、一気に集団免疫を狙う危うさ」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66037
・『我々が一つ、新型コロナウイルスのパンデミックから学んでいるべきことは、全員が運命をともにしている、ということだ。 共通の取り組みだけがコロナを抑制できる。誰かのマスク着用が自分の保護になる。 だが、ボリス・ジョンソン英首相は規則にうんざりしている。集団的な行動に取って代わり、今後は「個人の責任」でやっていかなければならないと首相は言う。 ここで本当に意味するところは、疫学者が「集団免疫」と呼ぶものを一気に達成することを目指し、ウイルスを自由に蔓延させるつもりだ、ということだ。 この国の子供が図らずも実験のコマになる。 英国内の新規感染者数は現在、1日当たり2万5000人を上回っており、大半の欧州諸国より格段に多い。 そんなことはお構いなしだ。動揺と逸脱、Uターンを繰り返した1年半を経て、新たな基本計画は「不可逆」だとジョンソン氏は言う。 7月19日、社会的な交流にかけられていた事実上すべての法的制限措置が解除される。 イングランドの新たな制度(スコットランド、ウェールズ、北アイルランドはそれぞれ独自の規則を定める)では、ナイトクラブの営業再開が認められ、ソーシャルディスタンシング(対人距離の確保)を終え、競技場や音楽イベントの会場に人数制限なしで観衆が戻ることが許される。 マスクの着用は義務ではなくなり、今後は個々人がこうした「スーパースプレッダー」イベントに参加するリスクを推し量ることを強いられる』、後述のように「成人人口の3分の2がワクチン接種を2回済ませている」、とはいえ、「社会的な交流にかけられていた事実上すべての法的制限措置が解除」とは、思い切ったことをするものだ。
・『感染爆発は計算ずく  政府自身の計算でも、その結果として起きることは爆発的な感染拡大だ。 ジョンソン氏は、1日当たりの新規感染者数が7月19日までに5万人に達するかもしれないと話している。サジド・ジャビド保健相は、この数字が夏のうちに倍増するかもしれないと予想している。 その影響を受けるのは圧倒的に若者だ。 つまり、まだワクチン接種の対象ではない18歳未満と、せいぜい1回しか接種していない20代だ。そして18歳未満の層だけでも人口の約20%を占めている。 ジョンソン氏はロックダウン(都市封鎖)が好きではない。パンデミックの発生当初に事態を掌握することに失敗した後、制限策について過剰な約束をしては期待を裏切る結果しか出せなかった。 元側近のドミニク・カミングス氏によれば、首相はかつて、法的な規制を厳しくするくらいなら、遺体が路上に積み上がるに任せた方がましだと言い放った。 ジョンソン氏は、そうした言葉を使ったことを否定するが、ダウニング街(首相官邸)の関係者は、ジョンソン氏のムードをよく反映した表現だと話している。 ジョンソン氏は先月、残っている法的制限策を撤廃したいと考えていたが、デルタ株(インド型の変異ウイルス)の病原性のために延期を強いられた。 そして今、同僚たちに向かって、何があっても今度は前言を翻さないと断言している』、「首相はかつて、法的な規制を厳しくするくらいなら、遺体が路上に積み上がるに任せた方がましだと言い放った」、よほど規制が嫌いなようだ。
・『ワクチン接種が隠れ蓑  その結果は、向こう見ずな賭けだ。 それも疫学や、現在のロックダウンの慎重な費用対効果の分析に基づくものではなく、似たような考えを持った保守党議員の騒々しい要求によって拍車がかかった首相の気質が牽引するギャンブルになる。 ジョンソン氏が隠れ蓑にするのは、ワクチン接種キャンペーンの成功だ。 首相によれば、7月19日までに成人人口の3分の2がワクチン接種を2回済ませている。そしてワクチン接種の進展のおかげで、新規感染者と入院・死亡する人の数の連動が劇的に薄れた証拠がふんだんにある。 今では、新型コロナに感染した人の大半は、数日休むだけで回復する。多くの感染者は無症状だ。 首相は、物語の半分だけしか語っていない。 3分の2がワクチン接種を済ませたという数字は、3分の1がワクチンを1回しか接種していないか未接種であることを意味している。 また、「double jabbed(2回接種)」も感染を完全に防げるわけではない。 コロナに感染して自然免疫を獲得した人の存在を割り引いて考えても、感染しやすい成人がまだかなり大勢残っている。ここに子供を加えれば、新型コロナはターゲットに事欠かない。 持病のために重症化リスクが高い人や高齢者が差し迫ったリスクにさらされる。 こうした人が新規感染者全体に占める割合は低いが、感染者が現在のペースで増えていけば、小さな割合が大きな数字を生み出す。 ジョンソン氏の実験の中心に据えられた子供について言えば、当初の感染を軽くやり過ごしても、後々いわゆる「ロングCovid」に苦しむ羽目になる恐れがある』、「ジョンソン氏」のやり方が、「疫学や、現在のロックダウンの慎重な費用対効果の分析に基づくものではなく、似たような考えを持首相の気質が牽引するギャンブルになる」、困ったことだ。
・『集団免疫の本質  政府の首席医療アドバイザーを務めるイングランドのクリス・ウィッティ首席医務官は先日、ロングCovidを患う子供の増加を食い止める唯一の方法は、感染ペースを抑え、ワクチン接種を拡充することだと警告した。 だが、政府はまだ18歳未満のワクチン接種を承認しておらず、集団免疫戦略はいずれにせよ、子供の間でウイルスを蔓延させることにかかっている。 今でなければ、いつなのか――。 首相が口にするこの修辞疑問文には、簡単に答えが出る。コロナ対策の制限措置は、感染ペースが制御可能なレベルにまで下がり、ワクチン接種がもっと進んだ時になってから徐々に撤廃していくべきだ。 もちろん、我々はいずれ、コロナウイルスの存在とともに暮らしていかねばならないが、コロナ制御へ至るルートは、子供を疫学的なモルモットにするのではなく、ワクチン接種を通る道であるべきだ。 ジョンソン氏は、規制を放り込んで燃やす焚き火に気分を良くするかもしれない。また、規制が撤廃される7月19日を「フリーダム・デイ(自由の日)」に指定することに歓喜している人もいるだろう。 だが、それは幻想だ。「個人の責任」に関する首相のブラフや大言壮語によって新型コロナが倒されることはない』、「ジョンソン氏」の壮大な「ギャンブル」の結果はどうなるのだろうか。
タグ:パンデミック (経済社会的視点) (その17)(タワマンに外車…浪費癖が仇になった経産省キャリア2人の給付金詐欺とお粗末過ぎた国会の女子トイレ盗撮、ワクチン不足・酒提供への圧力で露呈した「やりすぎる日本」という負けパターン、ジョンソン首相 若者をコロナ実験のモルモットに ワクチン接種進む英国 一気に集団免疫を狙う危うさ) AERAdot 「タワマンに外車…浪費癖が仇になった経産省キャリア2人の給付金詐欺とお粗末過ぎた国会の女子トイレ盗撮」 「贈収賄を視野に捜査が始まったが、ふたを開けたら家賃支援給付金詐欺だった」、「捜査関係者」もこの結果には驚いたことだろう。 僅か500万円で絵に描いたようなエリートコースを棒に振ったことになるが、発覚するとは夢にも思わなかったのだろう。 「女子トイレ」「盗撮事件」はバカバカしくてコメントする気にもなれない。 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 「ワクチン不足・酒提供への圧力で露呈した「やりすぎる日本」という負けパターン」 「ワクチン接種」や「酒提供をめぐる圧力」では確かに「やりすぎ」たようだ。特に、「法的根拠ゼロで、金融機関や酒卸業者にやらせるというのは明らかに度を越している 「検査不正というのは「過剰な品質チェック」が呼び水になっている」、「東芝、日本郵便、レオパレス21…不正内容の細かな違いはあるが、つきつめていけば、「過剰なノルマ」が影響している」、「この1年、ハタから見ていて「ちょっとやりすぎじゃないですかね」と心配してしまうものがある。 それは、「過剰な医師会擁護」だ」、同感である。 「急性期の病床が「異常」というほど多い・・・他の先進国のようにコロナ患者に対応できない」、「日本医師会は、自民党最大の支持団体・・・政府も自民党も、いつまで経っても解消されない「病床ひっ迫」については深く掘り下げたくない」、「「こいつらがいるからいつまでも病床がひっ迫するんですよ」というスケープゴートだ・・・それが、「若者」と「飲食店」だ」、「若者」と「飲食店」が「スケープゴート」とは、言われてみれば、その通りなのかも知れない。 「「前門のIOC、後門の医師会」という感じで、完全に板挟み状態だった。そして最終的に日本は医師会を取った・・・バッハ会長が無観客五輪を「理解に苦しむ」と述べたが、あれは嫌味でもなんでもなく、なぜ日本のような先進国でこんなに医療体制が弱いのか、とシンプルに意味がわからないのだ」、確かにバッハ会長には理解不能だろう。 「「やりすぎる日本」という負けパターン」は、確かにパンデミックや東京五輪問題に、新たな切り口を提供してくれた。 JBPRESS Financial Times 「ジョンソン首相、若者をコロナ実験のモルモットに ワクチン接種進む英国、一気に集団免疫を狙う危うさ」 後述のように「成人人口の3分の2がワクチン接種を2回済ませている」、とはいえ、「社会的な交流にかけられていた事実上すべての法的制限措置が解除」とは、思い切ったことをするものだ。 「首相はかつて、法的な規制を厳しくするくらいなら、遺体が路上に積み上がるに任せた方がましだと言い放った」、よほど規制が嫌いなようだ。 「ジョンソン氏」のやり方が、「疫学や、現在のロックダウンの慎重な費用対効果の分析に基づくものではなく、似たような考えを持首相の気質が牽引するギャンブルになる」、困ったことだ。 「ジョンソン氏」の壮大な「ギャンブル」の結果はどうなるのだろうか。
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