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物流問題(その4)(「宅配クライシス」の犯人は人手不足ではなく宅配会社自身だった!、「宅配値上げ」に透けて見える各社の周到なシェア奪取作戦、ヤマトの現場に漂う「改革」後も変わらぬ疲弊、アマゾンの物流を担う新興勢力の素顔) [企業経営]

物流問題については、6月25日に取上げたが、今日は、(その4)(「宅配クライシス」の犯人は人手不足ではなく宅配会社自身だった!、「宅配値上げ」に透けて見える各社の周到なシェア奪取作戦、ヤマトの現場に漂う「改革」後も変わらぬ疲弊、アマゾンの物流を担う新興勢力の素顔) である。

先ずは、外資系証券で流通業界のアナリストをした後、フロンティア・マネジメント代表取締役の松岡真宏氏が6月26日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「宅配クライシス」の犯人は人手不足ではなく宅配会社自身だった!」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・宅配ビジネスが揺れている。急増するeコマース(EC)に対して現場の体制が追いつかず、業界の“雄”であるヤマト運輸は荷受量の総量規制に踏み切った。同業他社も送料値上げの方針を固めている。こうした「宅配クライシス」の原因は “人手不足”として語られているが、本当にそうなのだろうか。ダイヤモンド・オンラインでは「宅配クライシス」と題した特集を掲載、第1回は、クライシスの“犯人”に迫る。
・学生時代で下宿生活をしていた30年前。宅配便は今よりも価値あるものを運んでいた。実家から宅配便で送られてくる食品や衣服を、下宿先で待ちわびていたものだった。社会人に成り立ての頃も、地方出張の際に各地の名産を実家に宅配便で送っていたが、実家では荷物の到着を心待ちにしていたようだ。
・このように、20世紀の宅配便は「送る人」と「受け取る人」の“想い”を繋ぐものであり、金銭的かつ感情的価値のあるモノが運ばれていた。消費者(C:Consumer)が、消費者(C:Consumer)に送るというのが原点であり、宅配便とは「CtoCサポートビジネス」であった。
・そのため、ヤマト運輸はじめとする宅配企業にとって、送り手である消費者(C)こそが、宅配送料、つまり価格交渉の相手であった。宅配企業と消費者個人では、前者にバーゲニングパワーが存在していたため、消費者からの送料値下げ要求などは考える必要がなかった。
▽産業の裾野は拡大してもでも ラストワンマイルは昔のまま
・ところが、21世紀に入ってECが登場したことによって、宅配便の性格が大きく変容する。 アマゾンなどに代表されるECでは、シャンプー1本、本1冊からでも宅配の対象となる。もちろん、シャンプーや本も価値あるものだが、家やオフィスで数時間、じっと待って受け取るほど金銭的・感情的価値のあるモノではないし、代替手法として近くのコンビニや書店で購買することが可能だ。
・スマートフォンを使って「スキマ時間」に何でもできるようになったこの10年余り。20世紀と比べると、価値がそれほど高くないモノを家やオフィスで数時間待つという「宅配の受取行為(ラストワンマイル)」は極めて効率の悪い時間の使い方となってしまったのだ。 ただ、価値がそれほど高くないモノが運ばれるようになったということは、決して悪いことではない。ちょっとした買い物をECでするのは控えようなどという言説もあるが、これは大きな誤りだ。価値が低いモノが運ばれるようになったということは、「宅配の裾野が広がった」という意味であり、「産業の発展」とさえ言えるからだ。
・ECは、アマゾンなど「事業会社(B:Business)」から「消費者(C)」に商品を送る仕組みであり、宅配企業にとっては「BtoCサポートビジネス」である。したがって、宅配企業が送料の価格交渉をする相手は、従来の消費者ではなく、事業会社へと変わった。当然、宅配企業側には、消費者との交渉のように強いバーゲニングパワーがあるわけではなく、収益性改善のためには従来からのビジネスモデルの改革が必要となる。
・ここで大きな問題なのは、ECの拡大で宅配の裾野が広がったにもかかわらず、宅配サービスを提供する側の「ラストワンマイル」の仕組みが、20世紀と基本的に変わっていないことである。
・荷物と同様に人を運ぶ産業で言えば、エアライン業界がある。エアライン業界では、乗客の収入や用途、利用シーンに合わせて、ファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラスとサービスが分かれており、近年では格安航空会社としてLCCも登場するなど、バラエティ豊かなサービスが定着してきた。 全世界で、旅行需要が継続的に増大することで、新婚旅行など特別なニーズだけではなく、気軽に海外旅行に行ける時代となり、エアライン業界の裾野が広がった。そして、サービスを提供する側が、LCCといった新業態を開発するなど、それに呼応する形で発展的に進化したのである。
・それに比べて日本の宅配業界は、依然としてどんな小さな商品でも、またどんな価値の薄い商品であっても、全く同じサービスで宅配している。宅配員と受取人が対面し、受け渡しをするというラストワンマイルの“非効率な”仕組みが変わっていないのである。エアライン業界でいえば、不必要に全ての乗客をファーストクラスの席に乗せているようなものである。 
・つまり、宅配サービスにおいても、エアライン業界でいうところのLCCを創造することが喫緊の課題といえるのだ。 エアライン業界におけるLCCが行ったことは、徹底したローコスト戦略に加えて、様々なサービスの「セルフサービス化」である。チケット予約やチェックインの自動化だけでなく、搭乗口に積まれたランチボックスを乗客が自分で手に取って飛行機の座席に着くなど、サービスを提供する側と受ける側とが、宅配受取のように対面して時間を共有することを徹底的に排除したことが奏功した。
・第三者と同じ時間、同じ場所(電話などバーチャルも含む)を共有することを「同時性」と呼ぶ。換言すれば、LCCは、乗客とサービスする側の「同時性」を解消し、セルフサービス化をすることで、損益計算書上の費用削減を行っただけでなく、乗客・サービスする側双方の時間効率を大幅に改善したのである。
▽宅配業界に求められる受け取りのセルフサービス化
・となれば、今、宅配業界に求められているのは、エアライン業界同様の同時性解消であり、宅配受取におけるセルフサービス化だ。 具体的に言えば、ミネラルウォーターなどの重量があって自分で運ぶのが面倒な特殊なモノを除き、日本中に張り巡らせた「宅配ボックスネットワーク」で対応するということが考えられる。消費者は、家で宅配便がやってくるのを数時間も待つような無駄なことは、もうやめた方が良い。
・例えば、ECで頼んだ商品を家の周りに設置された宅配ボックスに送り、会社や学校の帰り、散歩の途中など自分が都合の良い時間にピックアップする仕組みが有効である。こうすれば、再配達問題もなくなるし、配送の時間帯も大きく変わる。各宅配ボックスへの配送を夜間にすれば、昼間の渋滞解消にも大きく貢献する。
・最近、コンビニエンスストアや駅などに宅配ボックスが設置され始めているが、それでは十分に対応できないほど宅配便は多いし、今後は更に増えていく。現在の宅配個数は年間40億個と言われているが、『宅配がなくなる日 同時性解消の社会論』の共著者である山手剛人氏の試算によれば、コンビニなどでの宅配ボックスが対応できる宅配個数はわずか2億個である。
・そう考えると、現在の自動販売機(日本に250万台)同様に細かなメッシュでの宅配ボックスの設置が必要となる。仮に100万ヵ所設置し、1ヵ所あたり10個のボックスがあるとすると、1日ボックス1個当たり荷物1個を配送すれば、年間36.5億個の宅配をこなせることとなる。 こうしたネットワークは、宅配企業数社同士が共同設置・利用するような「独占・寡占的アプローチ」ではなく、個人事業主や各地の地場有力企業・中小企業が参入し、活躍できる仕組みの方が競争的で好ましいといえる。
▽人手不足が元凶ではない 緩和してもビジネスモデルは破綻する
・今後、ECが更に消費者に浸透して行けば、年間の宅配個数は現在の40億個から100億個になってもおかしくない。人手不足が宅配問題の“元凶”と言われているが、筆者はそうは思わない。宅配個数が現在の倍以上となれば、多少人手不足が緩和したからといって、現在のビジネスモデルの破綻は逃れないからである。
・宅配企業各社の動きを見ていると、宅配個数の総量を制限したり、値上げしたりして現在の“宅配クライシス”に対応しようとしている。しかし、こうした手法は産業としては後退のベクトルであるし、今後本格的に急増するであろうECに対応できるとは思えない。現在のビジネスモデルを温存しながらの、現場での漸進的な改善に終始すれば、本質的な解決には至らない。
・もはや、日本の宅配システムが「世界最高」などと自負していられる時代ではない。中国では、前述した宅配ボックスネットワークの構築が始まっており、すでに数万ヵ所の設置が行われている。CtoCで消費者が第三者にモノを販売したり、レンタルしたりする際に、送る側の仕組みとして使える宅配ボックスも増えていると聞く。
・そう考えると、日本の宅配の仕組みは、もはや世界で最も便利なものとは言えなくなった。世界最高であるという前提を捨て、新しい仕組みを構築する局面に来ている。宅配のLCCの確立、つまり「宅配受取のセルフ化」こそが、宅配クライシスの「答え」ではないだろうか。
http://diamond.jp/articles/-/133605

次に、百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏が9月8日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「宅配値上げ」に透けて見える各社の周到なシェア奪取作戦」を紹介しよう(▽は小見出し、+は段落)。
▽ついに「ゆうパック」まで 宅配クライシスで相次ぐ値上げ
・9月5日、日本郵便が「ゆうパック」の料金を来年の3月1日から平均12%値上げすることを発表した。これまでにヤマト運輸、佐川急便も値上げを発表しており、これで宅配便大手3社がすべて値上げを決めたことになる。国内の宅配便シェアはこの3社で93%を占めるため、この発表は宅配市場全体が値上げをすることになったのとほぼ同義であることを意味する。
・値上げの背景には、周知のように「物流クライシス」と呼ばれる業界の危機がある。インターネット通販やオークション、フリマなどの発達で宅配便の量が増加し過ぎて、すでに運び切れない量の荷物が宅配業者に持ち込まれているのだ。
・そのため国内の半分近いシェアを持つヤマト運輸では、総量コントロールを施策として打ち出した。今期の宅配便取扱個数を前年度と比べて3600万個減らすというのである(当初計画の約8000万個から削減幅を下方修正)。 しかし、8月の段階でもまだ荷物は減らずに増加している。確かに今年3月時点で前年比6.0%増だったヤマト運輸の宅急便取扱い個数は、6月には4.6%、8月には2.6%となっており、削減へのコントロールは効き始めている。しかし結局のところ、8月までの上期累計では4.2%増加しているので、年間の取扱数量を大きく削減することは不可能な状況である。
・とはいえ物流危機を回避するには、少なくとも短期の数量の抑制は不可欠である。経済学的な視点で言えば、数量を抑制する一番確実な方法は値上げだ。仮に価格弾力性を保守的に1.0だと見積もっても、ゆうパックのように12%値上げをすれば荷物の量は12%減少する。
・おそらくだが、実際に今の宅配便の量を押し上げているのは、通販の送料無料の需要であろうことを考えると、そこが値上げされれば需要は値上げ幅以上に減るはずだ。なぜなら、不要不急の衝動買い的な需要は価格弾力性が大きいから、送料が無料でなくなれば、買う人は減るはずだからだ。
・ただ問題は、宅配便の荷物の9割が値上げが確定した個人向けではなく、現在進行形で値上げを交渉している大口契約の法人向けであるということだ。中でも最大顧客であるアマゾンが、ヤマト運輸に対してどれだけ値上げに応じてくれるか、そしてその値上げ分をどれだけ消費者に転嫁するかがはっきりしないと、宅配便の量が減るかどうかははっきり見通せない。
・この夏、アマゾンをはじめ大口の通販業者と宅配各社がぎりぎりの交渉を重ねている。一部の大口顧客は値上げどころか取引を切られてしまったという報道もあるとおり、何らかの成果は出ているようだ。ただ残念なことに大口取引の契約内容は各社のトップシークレットであり、公表されることはないだろう。だからこの切り口で宅配クライシスの未来がどうなるのかを占うのには限界がある。
▽個人向けの値上げプランに見る宅配3社の「思惑」
・その代わりと言っては何だが、個人向け宅配の値上げプランを分析してみよう。実は、そこに各社の異なった戦略が見て取れて興味深いのだ。各社がどんな思惑を持っているかを、ナナメ視点から読み解いてみよう。
・3社の中で最初に値上げを発表したのはヤマト運輸だ。値上げは今年の10月1日から。ヤマトによれば、値上げ幅は平均15%になると発表されている。 ヤマトの発表から2ヵ月遅れて佐川急便が値上げを発表した。値上げ実施は11月21日からで、「大型荷物は現行より平均17.8%、最大133%(当初33%と発表したが後に訂正)の値上げ」とされているが、実は値上げ幅が大きいのは170サイズを超える飛脚ラージサイズ宅配便で、宅急便と同じ60サイズから160サイズでは値下げ幅は3社の中で一番小さい。ヤマトから少し遅れて、あまり値上げをしないというのが佐川のスタンスである。
・そして、今回発表された日本郵便の値上げ実施は来年3月1日で、値上げ幅は平均12%と極めて平均的だ。ここから、各社それぞれの戦略意図を裏読みすることができる。
・まず重要なのは値上げ時期だ。早く値上げをする会社ほど荷物の量を減らしたい、遅く値上げをする会社ほど荷物の量を増やしたいという台所事情がありそうだ。 つまり、シェア47%と業界トップのヤマト運輸は、とにかく他社に先んじて値上げをすることで総量を減らしたいのだ。また2位でシェア31%の佐川急便は、そのヤマトの荷物を奪いたい意欲がありそうだ。ただし、荷物の量が増える年末が来る前に一定のシェア奪取を終え、年末年始は平穏にやり過ごしたいという考えだろう。
・そして3位の日本郵便は、シェア16%と上位2社に引き離されている。日本郵便であるがゆえに、実は配送キャパシティも3社の中では比較的余裕があるようだ。そのため今回の値上げのタイミングは、完全にシェアを取りに行くために設定されたように感じられる。 需要の多い年末も含め、5ヵ月のタイムラグを大いに利用して安い運賃で荷物を引き受けることが狙いではないか。ただし、それでは長期的に見て現場に無理が出るため、3月にはきちんと値上げをして辻褄を合わせるということだろう。
▽大きな荷物を残したいヤマト、小さな荷物を安くしたい佐川
・一方で興味深いのは、3社の値上げ幅が荷物の大きさによってまったく異なるという点である。ここに各社の戦略の違いが見て取れる。 各社の運賃を東京~大阪間の荷物の場合で比較してみよう。ヤマト運輸の場合、値上げ幅が一番大きいのは60サイズで値上げ率は17%、そこからサイズが大きくなるにつれ値上げ幅は小さくなり、160サイズは10%しか値上げしていない。
・つまり、どうせ総量を減らすのであれば、玄関まで配達する手間は同じなのだから、できるだけ大きい荷物を残しておきたいという考えで、値上げ幅をコントロールしているわけである。 とはいえ物流危機を回避するには、少なくとも短期の数量の抑制は不可欠である。経済学的な視点で言えば、数量を抑制する一番確実な方法は値上げだ。仮に価格弾力性を保守的に1.0だと見積もっても、ゆうパックのように12%値上げをすれば荷物の量は12%減少する。
・これは、ヤマトやゆうパックから価格に敏感な顧客を奪い取る際に取られるプライシング。最安値の商品ではとにかく一番安くすることによって、「価格が安い」というイメージをつくることができるやり方なのだ。特にヤマトと逆のプライシングをすることで、ヤマトが進んで手放そうとしている60サイズの顧客をごっそりと引き受けることができる価格設定になっている。
・3社の中で、ゆうパックがどのサイズでも同じような値上げ幅になっているあたりは、何となく郵政省時代の慣習を踏襲しているように見え、これはこれで微笑ましい。
▽値上げに走る苦境の裏に実は周到な「シェア奪取作戦」
・実際の荷物の変動がどうなるかは、大口顧客の動向を見なければわからないが、価格表を見た限りで言えば、次のことが言えるのではないか。
 +ヤマト運輸は、小さい荷物の数量をとにかく減らしたい。
 +佐川急便は、逆に小さい荷物が増えてもいいから安いイメージを維持し、ヤマトの顧客を奪いたい。
 +日本郵政は、とにかく5ヵ月間のタイムラグを利用して、他の2社からシェアを奪いたい。
そんな思惑が透けて見える、今回の値上げ発表なのであった。
http://diamond.jp/articles/-/141479

第三に、 元ヤマトのドライバーで物流ライターの二階堂 運人氏が8月29日付け東洋経済オンラインに寄稿した「ヤマトの現場に漂う「改革」後も変わらぬ疲弊 元社員から見た「ブランド」ゆえのジレンマ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・宅配便業界最大手のヤマト運輸。他社では対応できない荷物にも対応する、対応してみせる。その姿勢が顧客の信頼を勝ち取ってきた。 「会議で至急使う書類」 「結婚式で袖を通す衣装」 「翌朝に建設現場で使う工具や資材」 「誕生日やクリスマスのプレゼント 」 ヤマトは顧客の多様なニーズに対応するために、さまざまなサービスを作り上げてきた。時間帯サービス、翌朝10時までに配達するタイムサービス、関東当日便、ビジネス5(23区のみ当日5時までに配達)などだ。
・一方、顧客のニーズに応えるために、それらのサービスを遂行するために、ドライバーの肩には計り知れないプレッシャーがのしかかっていた。 私は十数年ヤマトのドライバーとして勤務した経験があり、かつてのドライバー仲間との交流などにより、今も現場を見聞きしている。ヤマトの宅配現場では、ハード面のサービスだけではなく、顧客対応などソフト面でのサービスも高度なものが求められる。つねに「ヤマトこそ」 「ヤマトだから」 「ヤマトなのに」 「ヤマトに限って」の言葉が付きまとってきた。そのプレッシャーもドライバーが疲弊する大きな要因になってきた。
▽ある中堅ドライバーの憂鬱
・「ヤマトに関するいろんなニュースが流れていたときは、お客さんから同情の声やねぎらいの声、なかには今までのことに対して謝罪してくる声もあったけど、最近は何だか普通に戻りました」 ヤマトのある営業所の中堅ドライバーは、荷物を仕分けながらこう話してくれた。
・「少し前は『無理のないスケジュールでいいよ』と言うお客さんも多かったですが、またタイトな時間で再配達を依頼する方が増えましたね。いつか、『いつまでも甘えてるんじゃねぇ』って言われないかヒヤヒヤしてますよ。汗水垂らして走ってたって、そんな演技するな!なんて言われかねません」 連日報道された、宅配便に関する問題も前ほどには熱がないものになっている。世間の関心が徐々に薄らいでいる。ドライバー自身もそんな世間の風当たりを肌で感じている。
・ヤマトは10月1日、27年ぶりに宅急便料金を値上げする。ドライバーの負担を減らすためだ。 だが、ドライバーの収入は、集荷と配達の個数によって決まるインセンティブによる部分も大きい。確かに荷物が減れば体力的に楽にもなるが、収入に響くのは痛い。
・「稼ぎたいと思ってこの会社に入ったのに、稼げなくなると思うと考えますね。でも、俺も勝手なことばかり言ってますよね。荷物が多いと体がもたないなんて文句言って、今度は荷物が少なくなると給料減って困るとか言うんだから」 中堅ドライバーは、苦笑いをしながら職務に戻っていった。
・ヤマトが連日報道されたような一連の問題でいろいろと改革をした結果、現場はどうなったか? まだ、始まったばかりではあるが、営業所によっては人も補充され、ドライバーは休憩もしっかり取れるようになり劇的に変わった店もある。 その反対に、今までよりもむしろ大変になった店もある。人は辞め、人員補充もされていない。むろん、休憩など取れる状況ではない。変わらない激務でケガをして休んでいるドライバーもいる。営業所によって差がある。
・未払い残業代の件に関してもそうだ。 未払い残業代をもらって満足する者、不満に思う者。同じくらい残業しているにもかかわらず、金額に大きな開きがあったらしい。社員のモチベーションアップの目的もあったが、新たな不満の種にもなっている。まだまだ、足並みがそろっていないのが現状である。 ドライバーたちの間でも、「ヤマトはよくなった」という意見と「やっぱり何も変わらない」という声に二極化している。
▽値上げをめぐるセンター長の憂鬱
・ヤマトはドライバーの待遇改善のため、当初、今後引き受ける荷物の総量を約8000万個減らす計画を示していたが、2017年度は前年度比4000万個弱の削減にとどまる見通しだ。値上げを提示したことで他社に流れると予想していた顧客が、今後も利用しているためと7月末に発表した。 これは多くの企業や個人の顧客が「値上げしてもヤマトを使い続けたい」という方針だということだ。
・複雑なのは現場だ。営業所の責任者であるセンター長は、エリア内の法人企業に対する値上げ運賃交渉のための見積書の作成に追われている。 法人相手の金額は一律ではない。宅急便を利用する数などから、営業所と各企業の交渉により決められている。どのくらいの値上げを行うか、各法人との交渉がこれから始まる。営業所の売り上げを考えればどこまで強気に踏み込めるのか、どこまで踏み込んでいいのかの指示は会社からは出ていない。
・「荷物の取扱量を減らすための取引停止を前提とした値上げなのか、それとも利益を残すための値上げなのか、正直わかりません」 あるセンター長は漏らす。 会社としては当然後者だが、今のヤマトが取り組んでいる問題を見ると、一概にそうとは言えない。
・今までお世話になった荷主に対して無下にはできない。かといって中途半端な交渉をしても変わらずドライバーに負担を強いるだけだ。おそらくどんな結果が出たとしても会社から文句を言われるだろうと、そのセンター長は頭を抱える。
▽ある雑貨店主の憂鬱
・「正直、どのくらいの値上げを要求してくるかヒヤヒヤしているよ。でも、信じてるよ、ヤマトさんとは付き合い長いし、そんな薄情な人じゃないよ、近藤(仮名)さんは……でもね……」 ヤマトを利用する雑貨店店主は語る。 「近藤さん」という名前が出てきたように、店主はヤマトではなくドライバーに荷物を預けているという感覚だ。
・この店は、もともと他社で荷物を出していた。そこにその近藤氏が正規の運賃より安い運賃設定で営業に来た。 「ヤマトさんに配達を希望するお客さんも多いし、前からヤマトを使いたいと思っていたからね。でも、運賃が高くてね。それにうちみたいな小さい店だと送料別なんて言ったらすぐお客が離れちゃうから。そんなときに近藤さんが営業にきて、安い見積もりと人柄に惚れちゃって」
・店主に話を聞いている最中、同業他社が配達の荷物片手に封筒を持ってきた。金額に関する見積もりだ。 「一応、うちでも万が一のため動いておかなきゃね」 その封筒から中身を取り出し、渋い顔で見ている。  ここ最近、ヤマトの担当ドライバーがその近藤氏から違うドライバーに変わったらしい。
・ドライバーの疲弊に引き金を引いたのは何であるか。その大きな要因が、ヤマトのシェアアップ至上主義だ。 業界トップをひた走るヤマトは、毎年着実にシェアを増やし、ライバルの佐川急便に水をあけていた。そこから、少しずつ日本郵政がシェアを伸ばしてきた。かつて宅配便のあり方をめぐり激しいバトルを繰り広げた相手がまた力をつけてきたことに、焦りを感じ始めていたのだろう。
・2013年に佐川急便がアマゾンから撤退。当時、既存の販路ではシェア率拡大に限界を感じていたヤマトにとっては渡りに船とばかりに、ヤマトがアマゾンの荷物を引き受けることになった。 最初の誤算はここにあった。アマゾンを請けたところでシェアの拡大にはつながらず、むしろ翌2014年度のシェアは前年比0.9ポイントダウンの45.4%と下がってしまったのだ。その間、日本郵政は、11.9%→13.6%とシェアを伸ばしている(国土交通省調べ)。
・ヤマトはそこから「値下げしてでも荷物を獲得する」路線に踏み込んだ。 当時は、大切な荷物はヤマトでそうでないものは他社、というように使い分けていた荷主が多かった。ヤマトは「高いけれど安全、確実」なブランドだった。そこに「値を下げてでも荷物を増やせ」の一斉営業活動開始。「安くてもヤマトの品質ならば」と、多くの荷主が鞍替えをした。宅配便の価格破壊を招いたのは、ほかならぬヤマト自身である。
・安くして扱う荷物の数が増えても、必死に今までと同じ品質を守る。負担はすべて現場にシワ寄せがくる。ドライバーは疲弊し、ケガや離職も発生し、残るメンバーがますます苦しくなる。そうして負のループに陥っていった。
▽ヤマトは我なり
・「ヤマトは我なり」という言葉が社訓の一つにある。まさしくドライバーは制服を着た瞬間に私人、一個人ではなく「ヤマト」になる。よくも悪くもこの言葉がヤマトブランドとして、ドライバーの心と体を縛る。ヤマトのドライバー一人ひとりが「宅急便を担っている誇り」を持っている。だからこそ苦しい。
・「高品質の宅配」をやめてなりふり構わぬ価格競争に飛び込んだ結果、「高くてもヤマトに頼みたい」と思うロイヤルカスタマーの要望に応えきれない現状を生み出してしまった。2019年に創業100周年を迎えるヤマト。この会社が抱えている問題は、自らが招いたからこそ、また長い歴史に基づいた信頼と実績があるからこそ、一朝一夕には解決ができない困難なものだ。
http://toyokeizai.net/articles/-/185635

第四に、9月21日付け日経ビジネスオンライン「アマゾンの物流を担う新興勢力の素顔 スピード配送の荷物は誰が運ぶ?」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・ヤマト運輸が、当日配送を縮小・撤退する方向で荷主と交渉を進めている。一方、最大荷主のアマゾンジャパンは、当日や1時間以内といったスピード配送を追求。その動きを商機ととらえる新興勢力が台頭しているが、持続性に危うさもある。(日経ビジネス2017年7月24日号 46~50ページより転載)
・7月上旬、東京・尾山台のアマゾンジャパンの配送センターでは、様々な会社のロゴが入った軽車両が出入りしていた。ここは同社が有料の「アマゾンプライム」の会員向けに、最短1時間以内というスピード配送を提供する「プライムナウ」の専用拠点だ。ここから荷物を運んでいるのは、宅配最大手ヤマト運輸ではない。アマゾンが独自に委託する地域限定の配送業者だ。
・近所に住む初老の男性は、「春にヤマトが当日配送を見直す話が報道された頃から、クルマの動きが活発になっているようだ」と話す。 ネット通販における宅配の担い手に変化が起きている。発端は「ヤマトショック」だ。ネット通販の急拡大に加えて当日配送のニーズが高まり、ヤマトの宅配ドライバーの負荷が増大。そこに人手不足が追い打ちをかけ、サービス残業の常態化が明らかになった。それを受けてヤマトは構造改革に着手。荷物の取扱量を制限すると同時に、当日配送を縮小している。
・だが、ヤマト最大の荷主であるアマゾンは依然として、当日配送を含むスピード配送を強化する構えを崩していない。その象徴が2015年11月に開始したプライムナウだ。今年6月には都内で4つ目の配送拠点を開設。23区に加えて武蔵野市や三鷹市などにもサービス地域を拡大した。既に、東京以外でも、大阪、神奈川などプライム会員が多い地域から対象を広げている。
・Prime Now事業部の永妻玲子事業部長は、「今すぐ欲しいというだけではなく、確実に商品を受け取りたいというニーズが多い」と説明する。利用者は、朝8時(一部地域では朝6時)から夜12時まで1時間以内に商品を受け取れる。出勤前や帰宅後など、確実に家にいる時に荷物を受け取りやすい。話題の書籍やゲームソフトの発売日には、午前0時の解禁直後に商品を手に入れたいというニーズもあり、配送時間を午前2時まで延長することもある。
・こうしたスピード配送を担うのは、ヤマト以外の新興勢力だ。アマゾンはウェブサイトで地域限定の配送業者を「デリバリープロバイダ」として、丸和運輸機関やファイズ、SBS即配サポートなどの名前を挙げている。
・この夏、こうした新興勢力の現場でも、増え続ける荷物と過酷な暑さなどから負荷は高まり、一部では遅配が発生。ヤマトが苦しい状況は、新興勢力にとっても克服するのが容易ではない。 それでも、そこに商機を見いだし、ヤマトと佐川急便、日本郵便でほぼ寡占状態だった宅配市場に割り込もうとしている新興勢力とは。その素顔に迫る。
▽丸和運輸機関
・食品スーパー向けで頭角 専用物流で効率化に強み  6月上旬、アマゾンのウェブサイトで公開されているデリバリープロバイダのリストの一部が、ひっそりと書き換わった。「ジャパンクイックサービス」から「丸和運輸機関」へ。丸和はジャパンクイックサービスの親会社である。ある物流会社幹部は、「丸和としてアマゾンへのコミットメントを示した結果だろう」とみる。
・6月22日、日本経済新聞は1面で「アマゾン 独自の配送網 個人事業者1万人囲い込み」との記事を掲載。丸和が東京都心部でアマゾン向けに独自の当日配送網を構築すると報じた。それ以降、丸和は日経ビジネスの取材申し込みに対し、「一切対応できない」と固く口を閉ざした。アマゾン側から、箝口令が出されたようだ。
・丸和の設立は1973年。和佐見勝社長(72歳)が、それまで営んでいた青果店を「押してはいけない判を押した」ことで失い、残ったトラック1台で運送業を始めたのがきっかけだ。青果店で培った営業力を武器に、小売業向けに配送から倉庫の運営まで一括して手掛ける物流改革を提案。ドラッグストア大手マツモトキヨシの物流を一手に引き受けるなどして成長してきた。2014年に東証2部、15年に東証1部に上場。17年3月期の連結業績は売上高が672億円、営業利益が44億円で、3期連続の増収増益となっている。
・その丸和が、次の成長分野と位置付けるのが、食品スーパー向けの物流改革と、EC(電子商取引)向けの当日配送だ。いずれも、顧客企業向けに専用物流を構築することが特徴である。 食品スーパー向けには、専用の物流センターを丸和が構築、運営し、店舗への商品納入といった物流機能を一括して請け負う。個別のスーパーのニーズに応じて、生鮮食品を産地から店舗に直送したり、店舗への納入時間を工夫したりして業務改革を提案。ネットスーパーの当日配送も担い、食品卸では十分に対応できない物流全体のコスト削減を目指す。
・一方、アマゾンなどEC事業者向けには、ネットスーパーなどで培った当日配送のノウハウを生かす。決算資料などによれば、「当日お届け110作戦」と銘打って東京23区を中心に仕分け拠点を作り、そこから丸和が宅配する体制を整備する。ドライバーの始業時間を午後3時にし、午後10時半までの間にトラックを2便出すといった工夫をすることで、長時間残業を避けつつ当日配送を実現する仕組みなどを検討しているもようだ。
・既に都内の一部では、アマゾン専用配送網の構築が進んでいる。7月7日、東京・新宿に住む女性は、アマゾンで注文した当日配送の荷物を、丸和の「クイック桃太郎便」の制服を着た男性から午後10時半までに2度、受け取った。
・ただ、こうした事業拡大には、ドライバーの確保が急務となる。そこで、中小の物流会社や個人運送業者を「AZ-COM丸和・支援ネットワーク」というサービスで、丸和の委託先として会員組織化していく計画だ。通常、荷主からの支払いは約90日後だが、丸和は20日後に支払うことで会員の資金繰りを支援。車両や燃料の共同購入や、スマートフォンを格安で利用できる定額制の通信サービスなども提供する計画だ。既に会員数は660社を超え、中期的に2000社、トラック数で2万台を確保する目標を掲げている。
・傘下に抱えた個人運送業者は今後、「クイックエース」として組織化し、宅配時の接客などの教育も施すことで、ECの拡大に備える。和佐見社長は今年5月の本誌の取材で、「雇用者の責任として、働く人が幸せになれるよう、生活をしっかり保障していきたい」と話していた。EC拡大と人手不足を好機と捉え、その思いを貫きたい考えだ。
▽丸和運輸機関
・設立 1973年 社長 和佐見 勝  売上高 672億円(2017年3月期) 営業利益 44億円(同)
・特徴 +•マツモトキヨシなど小売業向け物流で成長 +食品スーパー向け低温物流事業に注力 + AZ-COM丸和・支援ネットワークで中小支援 + EC事業者向けスピード配送網を構築
▽ファイズ
・アマゾン向けで急成長 庫内作業から宅配まで  設立後わずか3年半で東証マザーズに上場した物流会社がある。アマゾンとの取引をてこに急成長するファイズだ。17年3月期の売上高は前の期比49%増の52億1500万円、営業利益は前の期比3倍の3億4500万円だった。アマゾン向けは売上高全体の6割以上を占める。社員の増加で本社の移転が続いており、6月に本社を訪れると移転の最中で、フロアの片隅にポツンとデスクがあり数人が席を構えていた。
・源流はヴィ企画(京都市)という人材派遣会社だ。佐川急便などの仕事を受託していた物流部門が独立。物流部門長だった榎屋幸生氏(41歳)とヴィ企画の社長が共同でファイズを13年に設立し、榎屋氏が社長に就いた。 強みは、アマゾンなどの物流センターの庫内作業だ。ファイズが手掛けるのは特に、荷物の出庫作業で、棚出しや梱包、仕分けなどが含まれる。こうした作業は労働集約的であり、効率化のノウハウが成功のカギを握る。
・榎屋社長は「庫内作業を外注ばかりに頼っていては効率化のノウハウを蓄積できない。だから、我々は社員が現場を支える」と話す。例えば仕分け作業では作業者ごとの処理スピードにバラつきがあり、一部の作業の遅れは全体に響く。そのためファイズは個人ごとの処理件数をデータ化してスキルを分析。人材を適正に配置して全体の処理スピードを速めている。こうした業務効率化はアマゾンから高く評価され、15年、16年と2年連続で3PL Awardの最優秀協力会社賞を受賞した。
・庫内作業でも人材不足は深刻だが、榎屋社長は「前身が人材派遣会社でノウハウがあるので一般の物流会社より人を集められる」と言う。庫内作業については営業所が5拠点、事業所が11拠点あるが、それぞれ地元の人材を活用している。
・そして今、力を入れているのが宅配事業だ。東京都内に営業所を設け、軽車両20台でアマゾンの宅配を請け負っている。プライムナウの1時間配送を実現するには、効率の良い仕分けが不可欠で、ファイズは宅配でもその強みを生かしている。
・さらに今年度から、ある外資系物流会社の荷物の集配を首都圏で始めた。榎屋社長は「出来上がったインフラの代替需要もあるが、その仕事は価格競争で疲弊する。新しい需要を生み出す顧客と組んで新たな価値を提供していきたい」と話す。
▽INTERVIEW ファイズ 榎屋幸生社長に聞く
・人材派遣業で培ったノウハウを物流に生かす  もともと人材派遣会社として、大手運送会社などに人を派遣していました。そのつながりから、物流部門を強化して2013年の独立まで至りました。物流センターの庫内作業など労働集約的な業務が、得意な分野です。創業当時からIPO(新規株式公開)を計画しており、17年に上場したのはスケジュール通りでした。
・物流センターの庫内業務は、できるだけ内製化しています。継続的に成長するためには、労働力を外注せず、社員を安定雇用してノウハウを蓄積する必要があるからです。私自身が一スタッフとして働いていたので、作業者の思いは分かっているつもりです。作業者が一日でも長く勤めてこの会社に来て良かったと思えるように日々工夫を重ねています。例えば友人紹介システムやスタッフ向けのバースデープレゼントなどを導入しています。
・宅配業務と庫内業務はシナジーがあります。庫内業務や幹線輸送のチームから選抜された人が、宅配業務を担っています。物流センターから宅配までを一貫して請け負うことで、各機能間の連携が取りやすくなり、効率をさらに高められます。 宅配事業に関しては、今年に入ってから様々な顧客から声がかかっており、柱となる事業の一つにしたい。今後もネット通販の利用率が高まり、宅配事業のニーズはますます旺盛になっていくでしょう。
・今は新しい宅配インフラを構築する過程なので、ご意見を伺いながら前に進んでいます。宅配問題の報道が増えてから、玄関先でお客さんの対応が変わってきました。現場のドライバーは玄関先でお客さんから「ありがとう」と言ってもらえることが活力になっています。ネット通販の急速な需要の拡大に後れを取らないように、現場のサービスレベルの向上にも努めていきます。(談)
▽ファイズ
・設立 2013年 社長 榎屋幸生  売上高 52億1500万円(2017年3月期) 営業利益 3億4500万円(同)
・特徴  + アマゾン向け庫内作業受託で急成長 +「プライムナウ」の配送も受託 + 2017年3月に東証マザーズ上場)
(SBSホールディングスの紹介は省略)
▽(まとめ)
・アマゾンの当日・スピード配送を担おうと動き始めた物流各社の取り組みから浮かび上がるのは、不足するトラックとドライバーの苛烈な争奪戦だ。ある物流コンサルタントはこうした状況を、「中小の配送会社や個人事業主を束ねる“元受け”が誰になるかという争いだ」と分析する。その争いの結果、過酷な宅配の現場の状況は変わるのだろうか。
・丸和やファイズ、SBSHDはいずれも、適正な運賃を得て、社員や委託先の中小・個人事業主などの待遇を改善して物流業界の地位向上を目指したいという。運賃が上昇すれば、宅配業界で働くことを希望する人が増えるかもしれない。
・だが、巨大な力を持つアマゾンのような荷主や、競合との関係の中で、思惑通りに計画が進むのかどうか、危うい面もある。実際、軽貨物輸送の個人事業主が組織する協同組合の赤帽の関係者は、「『プライムデー』のためにアマゾンが委託している運送会社から要請が来たが、運賃単価を重視する我々には採算が合わず断った」と打ち明ける。
・国内最大の荷主、アマゾンの飽くなき拡大欲に応えようとする新興勢力が、持続的な宅配インフラを構築していくには、乗り越えなければならない課題も多い。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/278202/092000074/?P=1

第一の記事で、 『21世紀に入ってECが登場したことによって、宅配便の性格が大きく変容する』、 『産業の裾野は拡大してもでも ラストワンマイルは昔のまま』、 『人手不足が元凶ではない 緩和してもビジネスモデルは破綻する』、 『「宅配受取のセルフ化」こそが、宅配クライシスの「答え」』、などの指摘は説得力がある。 
第二の記事で、『値上げに走る苦境の裏に実は周到な「シェア奪取作戦」』、は各社各様の様子が描かれていて興味深い。
第三の記事は、元ヤマトのドライバーが書いただけあって深く、的確だ。 『未払い残業代・・・同じくらい残業しているにもかかわらず、金額に大きな開きがあったらしい』、とは意外だ。 『「高品質の宅配」をやめてなりふり構わぬ価格競争に飛び込んだ結果、「高くてもヤマトに頼みたい」と思うロイヤルカスタマーの要望に応えきれない現状を生み出してしまった。・・・この会社が抱えている問題は、自らが招いたからこそ、また長い歴史に基づいた信頼と実績があるからこそ、一朝一夕には解決ができない困難なものだ』、というのはなかなか底の深い問題のようだ。
第四の記事で、 『アマゾンの物流を担う新興勢力』、を読むまでは、 『「アマゾンプライム」の会員向けに、最短1時間以内というスピード配送を提供する』、などという神業を提供するからには、ドライバーをコキ使うブラック企業なのではと想像していた。しかし、読んでみると、いずれも各々の強みを活かした経営をしているなかなか素晴らしい企業のようだ。個人向けを抱えたヤマトでは、手出しは無理そうだ。
タグ:大きな荷物を残したいヤマト、小さな荷物を安くしたい佐川 「「宅配クライシス」の犯人は人手不足ではなく宅配会社自身だった!」 ヤマト運輸では、総量コントロールを施策として打ち出した アマゾンが独自に委託する地域限定の配送業者 「アマゾンプライム」の会員向けに、最短1時間以内というスピード配送を提供する「プライムナウ」 ついに「ゆうパック」まで 宅配クライシスで相次ぐ値上げ アマゾンの物流を担う新興勢力の素顔 スピード配送の荷物は誰が運ぶ? 上期累計では4.2%増加しているので、年間の取扱数量を大きく削減することは不可能な状況 「「宅配値上げ」に透けて見える各社の周到なシェア奪取作戦」 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 20世紀の宅配便 宅配便の価格破壊を招いたのは、ほかならぬヤマト自身 消費者(C:Consumer)が、消費者(C:Consumer)に送るというのが原点であり、宅配便とは「CtoCサポートビジネス」 ヤマトは「高いけれど安全、確実」なブランドだった。そこに「値を下げてでも荷物を増やせ」の一斉営業活動開始 ・ヤマトはそこから「値下げしてでも荷物を獲得する」路線に踏み込んだ アマゾンを請けたところでシェアの拡大にはつながらず、むしろ翌2014年度のシェアは前年比0.9ポイントダウンの45.4%と下がってしまったのだ 当時、既存の販路ではシェア率拡大に限界を感じていたヤマトにとっては渡りに船とばかりに、ヤマトがアマゾンの荷物を引き受けることになった 2013年に佐川急便がアマゾンから撤退 同じくらい残業しているにもかかわらず、金額に大きな開きがあったらしい 未払い残業代 21世紀に入ってECが登場したことによって、宅配便の性格が大きく変容 急増するeコマース(EC) 前身が人材派遣会社でノウハウがあるので一般の物流会社より人を集められる」と言う。 個人ごとの処理件数をデータ化してスキルを分析。人材を適正に配置して全体の処理スピードを速めている こうした作業は労働集約的であり、効率化のノウハウが成功のカギを握る。 物流問題 強みは、アマゾンなどの物流センターの庫内作業 鈴木貴博 中小の物流会社や個人運送業者を「AZ-COM丸和・支援ネットワーク」というサービスで、丸和の委託先として会員組織化していく計画 アマゾンなどEC事業者向けには、ネットスーパーなどで培った当日配送のノウハウを生かす SBS即配サポート 確かに荷物が減れば体力的に楽にもなるが、収入に響くのは痛い 顧客のニーズに応えるために、それらのサービスを遂行するために、ドライバーの肩には計り知れないプレッシャーがのしかかっていた 大きな問題なのは、ECの拡大で宅配の裾野が広がったにもかかわらず、宅配サービスを提供する側の「ラストワンマイル」の仕組みが、20世紀と基本的に変わっていないことである 「事業会社(B:Business)」から「消費者(C)」に商品を送る仕組みであり、宅配企業にとっては「BtoCサポートビジネス」である ヤマトの現場に漂う「改革」後も変わらぬ疲弊 元社員から見た「ブランド」ゆえのジレンマ 宅配受取のセルフ化」こそが、宅配クライシスの「答え」 人手不足が元凶ではない 緩和してもビジネスモデルは破綻する 松岡真宏 東洋経済オンライン 価値がそれほど高くないモノを家やオフィスで数時間待つという「宅配の受取行為(ラストワンマイル)」は極めて効率の悪い時間の使い方となってしまったのだ ヤマト運輸は荷受量の総量規制に踏み切った 二階堂 運人 ファイズ (その4)(「宅配クライシス」の犯人は人手不足ではなく宅配会社自身だった!、「宅配値上げ」に透けて見える各社の周到なシェア奪取作戦、ヤマトの現場に漂う「改革」後も変わらぬ疲弊、アマゾンの物流を担う新興勢力の素顔) 丸和運輸機関 宅配業界に求められる受け取りのセルフサービス化 日本郵政は、とにかく5ヵ月間のタイムラグを利用して、他の2社からシェアを奪いたい 値上げに走る苦境の裏に実は周到な「シェア奪取作戦」
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