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東芝問題(その38)(東芝、10年ぶり好決算で「名門復活」は本物か 親子上場解消へ 上場3社を完全子会社化、東芝機械を揺さぶる村上グループの通告 買収防衛策の導入を取締役会で決めるな、東芝子会社で発覚、広がる「架空取引」の波紋 メガバンク系など5社以上が関わった疑い) [企業経営]

東芝問題については、2018年11月24日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その38)(東芝、10年ぶり好決算で「名門復活」は本物か 親子上場解消へ 上場3社を完全子会社化、東芝機械を揺さぶる村上グループの通告 買収防衛策の導入を取締役会で決めるな、東芝子会社で発覚、広がる「架空取引」の波紋 メガバンク系など5社以上が関わった疑い)である。

先ずは、昨年11月14日付け東洋経済オンライン「東芝、10年ぶり好決算で「名門復活」は本物か 親子上場解消へ、上場3社を完全子会社化」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/314246
・『経営再建中の東芝が久々に大型投資に踏み切る。 東芝は11月13日、上場子会社4社のうち3社を完全子会社化すると発表した。総額約2000億円の手元資金を投じてTOB(株式公開買い付け)を実施し、少数株主から株式を取得する。これまでグループ企業の株式売却などで資金を捻出してきた東芝にとって、まとまった額で買収に資金を投じるのは久しぶりのことだ』、どういう事情の変化があったのだろう。
・『生き残りかけ、保有株式を矢継ぎ早に売却  東芝が完全子会社するのは、プラント据え付け工事の東芝プラントシステム(売上高2442億円、営業利益203億円)、半導体製造装置メーカーのニューフレアテクノロジー(売上高578億円、営業利益118億円)、船舶用電機大手の西芝電機(売上高194億円、営業赤字5億円)の3社(いずれも2018年度)。 TOB価格は東芝プラントが1株あたり2670円(13日終値は2701円)、ニューフレアが同1万1900円(同1万1180円)、西芝電機が同240円(同300円)。買い付け期間はいずれも11月14日から12月25日までだ。 東芝は2015年の不正会計や2016年に起きたアメリカの原発事業の巨額損失で経営危機に陥った。生き残り策として上場株式や資産を矢継ぎ早に売却してきた。 昇降機世界大手フィンランド・コネ社の保有株式を2015年に総額約1180億円で売却したほか、グループ会社で測量機器大手トプコン株も約500億円で売却。同じくグループ会社で半導体製造装置を手がける芝浦メカトロニクスの株式も大半を手放した。 最近も保有するIHIやジャパンマテリアル株を次々売却しており、2015年から現在まで上場株式の売却額だけで約2600億円にのぼる。さらには、稼ぎ頭だった半導体メモリー事業を2018年に約2兆3000億円で売却するなど、キャッシュ捻出に奔走してきた。 しかし、今回の上場3社の完全子会社化により、東芝が違うフェーズに入ったことを示した。では今回、2000億円を投じてまで、上場3子会社を買収する必要はあったのだろうか』、これまでは、なりふり構わず売却してきたのが、一転して、購入に転じた理由を知りたいところだ。
・『完全子会社化はガバナンスの問題  東芝の車谷暢昭会長兼CEOは13日の決算説明会で「東芝にとって必要不可欠の3社だから」と繰り返したうえで、「上場子会社の問題は日本の産業界におけるガバナンスの大きなテーマでもある。そういう意味で優先順位が高かった。これだけのキャッシュを使ってM&A案件がほかにあるかというと多くない」と述べた。 そして、「社内の成長分野に投じるにも手順が必要だ。子会社の3社ほど1株利益が上がってシナジーを取れるものはほかにはない。株主にも成果を還元できる。グループ内の自社株買いみたいなものだ」と説明した。 実はこれに先立ち、東芝は10月に社外取締役と海外株主とのグループミーティングを実施し、海外投資家から上場子会社を問題視されていた。ミーティングに出席した、ある海外投資家は「東芝の大きな競合相手である日立は上場子会社を売却し、非常に戦略的に事業を集中するなどリストラクチャリングを行って成果を出してきた。東芝は今のところ劣勢だが、これから日立などにキャッチアップし、さらには追い越していくためにどうするのか」と質問した。 これに対して、社外取締役で取締役会議長の小林喜光氏(三菱ケミカルホールディングス会長)が「日立も上場子会社を今4つまで減らした。東芝も上場子会社の議論は相当今深くやっている」としたうえで、「M&Aはものすごく大」、きなものは別として、それぞれの事業を補完するというレベルではどんどんアグレッシブにやっていきたい。もう心は成長フェーズになった。上場子会社問題、M&Aを含めて分析していく」と応じた。 こうした自信の裏返しともいえるのが、同じ13日に発表した2019年4~9月期決算だ。 「東芝にきてちょうど1年半。上期決算はメモリを除くとここ10年で過去最高益。全セグメントで黒字化して増益となったのはここ10年で初めて。(2020年3月期通期で目標としている)年間1400億円の営業利益に向けて順調な滑り出しだ」 車谷会長がこう語るように、東芝の業績は急回復している。本業の儲けを示す営業利益は前年同期比約7.5倍の520億円と大幅増益を記録。受注案件を精査して赤字プロジェクトが減ったほか、全社的な取り組みである調達改革や構造改革、人員削減などが大きく効いた』、「海外投資家から上場子会社を問題視されていた」こと、さらに上期の好調な決算(営業利益)が理由のようだ。
・『東芝テックの子会社化は見送りに  三井住友銀行出身の車谷会長は2018年4月に東芝の再建を託された。2019年4月から中期経営計画「東芝Nextプラン」をスタートさせ、リストラを主導。6000億円にのぼる大幅増資によって株主となった「モノ言う株主」は車谷会長の手腕を注視していたが、まずは及第点と言えるだろう。 もっとも、東芝がリストラから成長段階に移れるかは未知数だ。車谷会長が以前から高く評価していた上場子会社でPOS大手の東芝テックについて、今回は完全子会社化を見送った。車谷会長は「データ事業で戦略的にどう企業価値を上げていくべきか、さまざまなモデルは検討している。ただそれに必要なお互いの組み方が何か、確信を持てる議論ができていない」と述べるにとどめた。 2019年4~9月期の業績も、営業利益以下をみると、最終損益は1451億円の赤字に転落した。アメリカのLNG事業の売却損892億円のほか、約40%出資する持分投資会社で、半導体メモリ大手のキオクシア(旧東芝メモリ)で613億円の損失を計上したからだ。キオクシアは早期の上場を予定しており、今後東芝が同社株を保有し続けるのか注目される。 目先の業績のV字回復が見えてきたかにみえる東芝だが、日立などライバルに再び追いつくことができるのか。道のりはまだまだ長そうだ』、「最終損益は1451億円の赤字に転落」したのは、これまでの膿を一気に出したためだ。自己資本比率も28.8%とまだまだ低水準のようだ。

次に、本年1月24日付け東洋経済オンライン「東芝機械を揺さぶる村上グループの通告 買収防衛策の導入を取締役会で決めるな」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/326368
・『東芝機械にとって痛恨の一撃となるのか。かつて“村上ファンド”としてニッポン放送株の買収などを手がけた村上世彰氏が、東芝機械に対するTOB(株式公開買い付け)で「妙手」を打ち出した。 TOBを開始した翌日の1月22日、村上氏が実質支配するオフィスサポートがプレスリリースを公表。対抗策である新たな買収防衛策の導入を、東芝機械の取締役会ではなく、臨時株主総会で決めるよう「待った」をかけたのだ。 東芝機械は射出、ダイカストなど成形機が主軸の工作機械メーカー。飯村幸生会長は日本工作機械工業会の会長を務める業界の顔である。2017年に東芝から自己株を取得し東芝グループから離脱。今年4月から社名を「芝浦機械」に変更する予定だが、その最中に新たな大株主からの突き上げを食らった格好だ』、「東芝グループから離脱」したので、「東芝問題」で扱うのは不適切だが、コーポレート・ガバナンスを考える上で、興味深いので、取上げた次第。
・『TOBで約44%の株式取得を目指す  オフィスサポートは現在、同じく村上氏が実質支配するエスグラントコーポレーション、シティインデックスイレブンスの3社で東芝機械株の12.75%を共同保有する実質筆頭株主である。これまで村上側はROE(株主資本利益率)や株主価値向上策を繰り返し提案してきた。 だが、会社側が応じないため、「発言権を強化しコーポレートガバナンスを改善する」として、1月21日からTOBを開始。買い付け期間は3月4日までと設定し、発行済株式の43.82%の取得を目指している。 これに対し東芝機械は、村上側がTOBを公表する4日前、「公開買付けの予告を受けた当社の対応方針」と題したリリースを発表。TOB開始前に、「予告を受けた」と当該会社が発表するのは異例のことだ。併せて東芝機械は新たな買収防衛策を導入するとともにTOBの反対意向も表明した。
 オフィスサポートが出した冒頭のリリースによると、臨時総会で2つの議題を扱うよう求めている。 1つは、1月17日に東芝機械が公表した買収防衛策(買収者が現れた際に第三者に新株予約権を無償付与する「新買収防衛策」)の導入を承認するべきか否か、もう1つは、新買収防衛策を村上氏の関連会社に発動すべきか否か、である。 村上側は取締役会に宛てた22日付の文書で、以下の論理で会社側に対応を迫っている。東芝機械が21日に公表したリリースで、TOBの判断は、「最終的には株主の皆様によってなされるべき」としている。そして、今回のTOBが、不十分な情報の中でいきなり始まったとして「株主の皆様の適切なご判断の機会を奪うものであり、誠に遺憾」としている。 これに対して村上側は「(2019年5月に)株主の意向に従って買収防衛策を廃止したのにもかかわらず、廃止からわずか7カ月後に株主の意思に反して『有事』という名目で買収防衛策を復活させた」と指摘。「(東芝機械の)取締役会こそ、株主の意思をないがしろにするものであり、許されるものではない」と村上自身も憤りを示す。 しかしながら、取締役会に宛てた文書は、「弊社は、株主の意思を確認することにやぶさかではありません」と続く。東芝機械が、株主が判断する機会を奪うものだというのであれば、TOBの対抗策である買収防衛策導入も株主の判断を仰ぐべき、という論法である』、「東芝機械」が「買収防衛策を廃止したのにもかかわらず、廃止からわずか7カ月後に株主の意思に反して『有事』という名目で買収防衛策を復活させた」、信じられないようなお粗末な対応で、どう考えても村上氏側に理がありそうだ。
・『臨時総会のためにTOB期間の延長も辞さず  村上氏は21日にこの提案をひらめき、「妙手」であると確信。興奮して寝付けなかったという。「株主のためと言ってきた手前、東芝機械には打ち手がなく、臨時総会を開催せざるをえないだろう」(村上氏)と自信を示す。 TOBの終了後に臨時総会を開いても意味がないため、総会の開催日が焦点となる。そこで村上氏側は、「(TOB中の臨時総会開催が)もしどうしても間に合わないということであれば、弊社は、公開買い付け期間を延長する用意があります」としている 臨時株主総会の議題のうち、新買収防衛策の導入については「普通決議(=過半数で可決)でも株主の賛成の意思表示と解することも可能」とする一方、村上氏の関連会社に新買収防衛策を発動するか否かは、「特別決議(=3分の2以上の賛成が必要)を要するものと考えます」としている。 特別決議が必要なことについては、過去のブルドックソース事件の最高裁判例を引用するとともに、「新株予約権の発行は有利発行と同視される」と指摘している。そのうえで臨時総会開催について、文書では「対応方針を早急にご回答願います」と締めくくっている。東芝機械はこの要請にどう対応するのか。頭を悩ませる日々が続きそうだ』、「東芝機械」側は、買収への取締役会の意思を決めるには情報不足として、賛否を留保。さらに、株主意思確認総会を3月下旬から4月上旬に開くが、株主名簿の基準日は2月15日とすると表明。これであれば、「東芝機械」側に有利に総会を運営できるのかも知れない。最終的には、どうなるのだろう。

第三に、1月25日付け東洋経済オンライン「東芝子会社で発覚、広がる「架空取引」の波紋 メガバンク系など5社以上が関わった疑い」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/326416
・『東芝の連結子会社、東芝ITサービスで発覚した架空取引が新たな展開を見せている。 鉄鋼国内最大手・日本製鉄の連結上場子会社である日鉄ソリューショズ、東証1部上場でIT大手のネットワンシステムズ、重電大手・富士電機の子会社である富士電機ITソリューション、さらに、みずほフィナンシャルグループのみずほリースの子会社であるみずほ東芝リースなど、少なくとも5社以上が関与する大規模な「循環取引」である疑いが強まっているのだ。 循環取引とは、製品やサービスの取引を伴わずに3社以上で架空取引を繰り返すことで、帳簿上の売上高や利益を見かけ上、増やしていく古典的な粉飾決算手法だ。東芝や日本製鉄、富士電機といった業界を代表する大手企業はなぜ子会社の暴走を止められなかったのか』、もともと東芝で問題化したのは、不正会計だったが、「循環取引」まで飛び出すとはいやはや・・・。
・『架空取引疑惑に投資家は厳しい目  事の発端は東芝が1月18日、「当社子会社における実在性の確認できない取引について」というリリースを発表し、ITサービスを手がける東芝ITサービスで架空取引があったことを明らかにしたことだ。同社が2019年4~9月期に計上した売上高のうち、約200億円に架空取引の疑いがあり、これは2019年3月期の売上高440億円の実に半分近くに上る。 東芝は2月14日に2019年4~12月の決算発表を予定している。そこで東芝ITサービスの架空取引分を業績に反映する予定だが、「連結全体に与える影響は少ない」(同社)としている。 実際、東芝の2020年3月期の売上高は3兆4400億円(会社予想)で、数字上のインパクトは小さい。「(東芝ITサービスは)利益率も低く、利益のインパクトも小さい」(東芝)という。ただ、2015年にパソコン事業などで不正会計が発覚した経緯もあり、子会社で発覚した粉飾決算疑惑に投資家などからは厳しい目が向けられている。 だが、今回は過去の東芝粉飾決算とは様相がまったく異なる。東芝の陰に隠れて目立たないが、カギを握っているのは東証1部に上場するネットワンシステムズと日鉄ソリューションズだ。両社は2019年12月13日に国税庁から「一部取引について納品の事実が確認できない取引がある」との指摘を受けた。現在、弁護士などから構成された特別調査委員会を設置し、調査を進めている。 両社はともにIT関連大手だ。ネットワンシステムズは、四季報上場業種別のSI・ソフトウエア開発関連194社中の時価総額で第10位。2019年3月期の売上高は1819億円、営業利益は130億円で、アメリカの通信機器大手シスコシステムズ製品関連の取扱比率が約5割と高いのが特徴だ。一方、日鉄ソリューションズはSI・ソフトウエア開発で時価総額第9位。2019年3月期の売上高は2652億円、営業利益は256億円。日本製鉄が約61%を出資する大株主になっている』、東芝にとって「数字上のインパクトは小さい」とはいっても、株価は大幅に下落した。「ネットワンシステムズと日鉄ソリューションズだ。両社は2019年12月13日に国税庁から「一部取引について納品の事実が確認できない取引がある」との指摘を受けた」、「国税庁」からの「指摘」が発端になったとは、ITシステム業界の闇は深そうだ。
・『循環取引で破綻する中堅・中小企業が増加  複数の関係者の話をまとめると、シスコ代理店をしているネットワンがシスコの通信機器などを東芝ITサービスを通じて日鉄ソリューションズに売却する流れとなっている。日鉄ソリューションズはさらに同じ機器をネットワンに売却していく循環取引を繰り返すものだ。輪のようにつながった流れが複数存在しており、その中で富士電機ITソリューションとみずほ東芝リースも組み込まれていた。この5社以外の企業が関わっている可能性もある。 これは業界用語で「Uターン取引」や「まわし」と呼ばれ、実際の製品の移動は伴わない売買を会社間で回し続け、帳簿上の売上高が増え続ける構図だ。昔からよく使われる循環取引だが、いつかは決済できずに破綻する一方、短期的な売上確保には大きな効果があるため、「麻薬」ともされる。 今後の焦点はどの会社が主導したかだ。主導した会社以外は知らないうちに循環取引に組み込まれている可能性がある。実際に入金されていれば、経理部門も循環取引に気づかない場合が少なくないという。 今回の取引の特徴は、どのルートでもネットワンを起点に日鉄ソリューションズからさらにネットワンへという共通の流れがある。東芝ITサービスや富士電機ITソリューション、みずほ東芝リースの3社はいずれも「架空取引であったことを認識していたことを示す事情が認められない」という趣旨のコメントや発言をし、架空取引に主体的に関わったことを否定している。 関係者によると、東芝ITサービスの担当者はネットワンの担当者から「日鉄ソリューションズに機器販売をしたいが、間に入って欲しい」との話があったという趣旨の説明を調査委員会にしている。その際にネットワンの担当者からは「官公庁の秘匿案件のため、実際に機器を納入するのはネットワンが直接行う」との趣旨だったという。東芝ITの社内からは機器の購入先も納入先もネットワンになっている資料が見つかっており、ネットワンが価格や販売ルートをすべて調整していたのではないかとみられている』、中心的な「ネットワン」は大丈夫なのだろうか。
・『増える中堅・中小企業の循環取引  実際に販売先の代理店を通さないで、機器を販売する商慣行自体はIT業界で普通にある。今回は入金も確認されていたため、東芝ITの担当者が架空取引に気づかなかった可能性はある。ただ、東芝ITでは5年前からこうした取引が始まっているとみられ、1件の取引額は数十億円以上に上ることもあったという。東芝ITの売上高はここ数年で急増しており、今後の調査結果が待たれる。 企業の信用調査などを手がける帝国データバンク横浜支店の内藤修情報部長は、「最近は中堅・中小企業が循環取引で破綻するケースが少なくないが、循環取引は破綻するまでプロでも見抜きにくい。売上高が増えていれば(成長会社として)融資を増やす金融機関も多く、被害に巻き込まれている」と話す。 「1社が資金繰りでおかしくなると、バタバタと連鎖してつぶれる」(内藤部長)ことも循環取引の特徴だ。2019年11月末には、20代女性向けに人気のカラーコンタクトレンズ「DopeWink」などを主力としていたシーンズが民事再生法の適用を申請。負債額は45億円にのぼった。循環取引の噂は出ていたが、取引先1社の破綻をきっかけに数社がつぶれる事態になっている。 大企業による循環取引も後を絶たない。IT大手のニイウスコーは2008年に過去5会計年度にわたる循環取引で売上高682億円の過大計上をしていたことを発表し、民事再生法適用を申請して事実上破綻。冷凍食品の加ト吉(現・テーブルマーク)は2007年に循環取引が発覚し、日本たばこ産業(JT)に救済された。 今回の循環取引はまだ全貌が明らかになっていない。ネットワンは1月21日、1月30日に予定していた決算発表を2月13日に延期すると発表した。関係各社の決算発表も今後本格化する。どこまで説明がなされるかが注目される』、「ニイウスコー」は日本IBMと野村総合研究所の合弁会社で、大規模な「循環取引」が発覚したことで衝撃的な事件だった。いまだに、「循環取引」が出てくるのは、「循環取引は破綻するまでプロでも見抜きにくい」とはいっても、日本企業の財務部門のチェックの甘さの表れなのではあるまいか。
タグ:東洋経済オンライン ネットワンシステムズ 東芝機械 東芝itサービス 東芝問題 (その38)(東芝、10年ぶり好決算で「名門復活」は本物か 親子上場解消へ 上場3社を完全子会社化、東芝機械を揺さぶる村上グループの通告 買収防衛策の導入を取締役会で決めるな、東芝子会社で発覚、広がる「架空取引」の波紋 メガバンク系など5社以上が関わった疑い) 「東芝、10年ぶり好決算で「名門復活」は本物か 親子上場解消へ、上場3社を完全子会社化」 上場子会社4社のうち3社を完全子会社化 生き残りかけ、保有株式を矢継ぎ早に売却 2015年から現在まで上場株式の売却額だけで約2600億円 半導体メモリー事業を2018年に約2兆3000億円で売却 完全子会社化はガバナンスの問題 海外投資家から上場子会社を問題視されていた 上期決算はメモリを除くとここ10年で過去最高益。全セグメントで黒字化して増益となったのはここ10年で初めて 東芝テックの子会社化は見送りに 2019年4~9月期の業績も、営業利益以下をみると、最終損益は1451億円の赤字に転落 LNG事業の売却損892億円 半導体メモリ大手のキオクシア(旧東芝メモリ)で613億円の損失 「東芝機械を揺さぶる村上グループの通告 買収防衛策の導入を取締役会で決めるな」 村上氏が実質支配するオフィスサポート 対抗策である新たな買収防衛策の導入を、東芝機械の取締役会ではなく、臨時株主総会で決めるよう「待った」をかけた 飯村幸生会長は日本工作機械工業会の会長を務める業界の顔 2017年に東芝から自己株を取得し東芝グループから離脱 今年4月から社名を「芝浦機械」に変更する予定 TOBで約44%の株式取得を目指す 東芝機械は新たな買収防衛策を導入するとともにTOBの反対意向も表明 (2019年5月に)株主の意向に従って買収防衛策を廃止したのにもかかわらず、廃止からわずか7カ月後に株主の意思に反して『有事』という名目で買収防衛策を復活させた」と指摘。「(東芝機械の)取締役会こそ、株主の意思をないがしろにするものであり、許されるものではない 臨時総会のためにTOB期間の延長も辞さず 株主意思確認総会を3月下旬から4月上旬に開く 「東芝子会社で発覚、広がる「架空取引」の波紋 メガバンク系など5社以上が関わった疑い」 東芝ITサービスで発覚した架空取引が新たな展開 日鉄ソリューショズ 富士電機ITソリューション みずほ東芝リース 少なくとも5社以上が関与する大規模な「循環取引」である疑い 架空取引疑惑に投資家は厳しい目 同社が2019年4~9月期に計上した売上高のうち、約200億円に架空取引の疑いがあり、これは2019年3月期の売上高440億円の実に半分近くに上る 数字上のインパクトは小さい ネットワンシステムズと日鉄ソリューションズだ。両社は2019年12月13日に国税庁から「一部取引について納品の事実が確認できない取引がある」との指摘を受けた 循環取引で破綻する中堅・中小企業が増加 昔からよく使われる循環取引だが、いつかは決済できずに破綻する一方、短期的な売上確保には大きな効果があるため、「麻薬」ともされる ネットワンが価格や販売ルートをすべて調整していたのではないかとみられている 増える中堅・中小企業の循環取引 循環取引は破綻するまでプロでも見抜きにくい。売上高が増えていれば(成長会社として)融資を増やす金融機関も多く、被害に巻き込まれている ニイウスコーは2008年に過去5会計年度にわたる循環取引で売上高682億円の過大計上をしていたことを発表し、民事再生法適用を申請して事実上破綻
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M&A(一般)(その1)(5億で売れたはずの会社を2億円で売却! 億単位でピンハネするM&A悪徳業者の「甘い罠」、沖縄・オリオンビール「第2創業」に至った舞台裏 県民が育てるビール会社はなぜ売られたのか、昭和電工 「小が大を飲む」9640億円買収の成否 社運賭け 「御三家」日立化成を公開買い付け) [企業経営]

今日は、M&A(一般)(その1)(5億で売れたはずの会社を2億円で売却! 億単位でピンハネするM&A悪徳業者の「甘い罠」、沖縄・オリオンビール「第2創業」に至った舞台裏 県民が育てるビール会社はなぜ売られたのか、昭和電工 「小が大を飲む」9640億円買収の成否 社運賭け 「御三家」日立化成を公開買い付け)を取上げよう。

先ずは、アドバンストアイ株式会社 代表取締役社長の岡本行生氏が7月16日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「5億で売れたはずの会社を2億円で売却! 億単位でピンハネするM&A悪徳業者の「甘い罠」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/207643
・『今、企業を売り買いするM&A市場は大活況です。 売り手側にとって有利な時代です。 しかし一方で、悪条件でだまされて安く買い叩かれたり、不利な条件で会社を手放したりといった不幸な案件も増えています。 M&Aの「仲介会社」は、 売り手企業側と買い手企業側の双方と契約を交わします。 成功したときの手数料も、売り手企業と買い手企業の双方から受け取ります。 このような、「双方から手数料を徴収する取引形態」を逆手に取った悪質なケースも…。 『あなたの会社は高く売れます』の著者が、このカラクリについて解説します』、テレビでもM&Aアドバイザリー・仲介会社のコマーシャルが流れるほど、中小企業の「M&A市場は大活況」なのは確かなようだ。
・『両手取引を逆手に取った悪質なケース  私の会社はM&Aの助言会社なので、一つの案件で売り手企業側か買い手企業側のどちらかにしかアドバイスをしません。 売り手企業と買い手企業は利益が相反しますので、どちらも満足させるアドバイスなどできないからです。 一方、仲介会社は、売り手企業側と買い手企業側の双方と契約を交わします。売り手企業と買い手企業を引き合わせ、双方に取引に関してのアドバイスを行います。 そもそもこの仕組みが健全ではないのですが、成功したときの手数料も、売り手企業と買い手企業の双方から受け取ります。 普通に考えれば、利益相反となります。ただ現在の日本において、この仕組みは商道徳的な問題を内包するものの、広く見受けられます。仲介会社が悪だと言っているわけではありません。だからといって問題がないともいえません。 次にご紹介するのは、双方から手数料を徴収する取引形態を逆手に取った悪質なケースです』、「売り手企業側と買い手企業側の双方と契約を交わします」、「利益相反となります。ただ現在の日本において、この仕組みは商道徳的な問題を内包するものの、広く見受けられます」、欧米では利益相反にうるさいが、日本ではまだまだのようだ。
・『悪徳業者の甘い誘惑 タダより高いものはない  「売り手さんからは1円も報酬はいただきません」「手数料は買い手からいただくので、売り手さんには無料で誠心誠意尽くします」 この営業トークは、売り手企業には魅力的に映ります。 この誘惑に勝てる売り手企業がいるでしょうか。 無料で買い手企業を探してくれる仲介会社は、事情があって会社を売却せざるを得ない中小企業のオーナーや経営者にとっては、救世主のようです。それこそが、悪徳業者がつけ込むワナなのです。 たとえば、売り手企業と買い手企業の手数料がともに5%だったとします。仲介会社が売り手企業から徴収する5%を放棄し、買い手企業から5%の手数料だけを徴収する場合、取引条件が適正に交渉されるという前提があれば良心的な業者と言えるかもしれません。 売り手企業から受領しない5%を買い手企業に上乗せし、買い手企業から10%を徴収する仲介会社も、買い手企業との合意があれば問題にならないと思います。 しかし、本来徴収できる手数料を放棄してまでクライアントのために尽くす仲介会社は、そうはいません。彼らは、こんな仕組みで依頼先をだましてきました。 はじめに、買い手企業との間で通常では考えられない契約を結びます。 それはあらかじめ「売却想定価格」を設定し、その想定価格より安い金額で買収できた場合には、想定価格と実際の買収価格の差額のうち、半分を成功報酬として受け取るという内容です。 定価3000円のシャツを、セールで2000円で買ってきたとしたら、値引き分の1000円の半額、500円を成功報酬として払ってください、ということです。 具体的に説明しましょう』、「売却想定価格」が問題だが、「想定価格と実際の買収価格の差額のうち、半分を成功報酬として受け取る」、というのは巧みなやり方だ。
・『売り手企業を手玉に取るからくり  仲介会社が売り手企業の会社内容を大まかに調査し、売却想定価格として提示します。仮に営業利益が5000万円で純現預金が1億円ある会社をマルチプル(8倍とします)で求めた場合、個別の事情を考慮しないとすると、株式価値の市場価格の目安は5億円という数字になります。 この数字を、買い手企業との間であらかじめ定める売却想定価格と設定するのです。この金額で売買が成立した場合、通常の仲介会社の報酬体系であれば、株式の譲渡対価である5億円の5%の2500万円を、売り手企業と買い手企業から受領し、合計5000万円の手数料を稼ぐことになります。 しかし、悪徳業者は違います。売り手企業は仲介会社の算出した「本来の」売却適正価格を知らされないので、5億円という数字は知りません。悪徳業者はそれをいいことに巧みな話術で売り手企業を煙に巻き、こう言い放ちます。 「当社と取引のある買い手さんをくまなく回ったのですが、どうしても2億円以上で買ってくれる会社が出てこないんです。でも、この会社は良心的ですよ。ここで決断しなければ、市場価格はどんどん下がっていってしまいますよ」 その会社しか好条件での買い手企業がいないように錯覚させ、その金額で合意しないと損をするような気になる心理状態に置き、追い詰めて契約を結ばせるのです。 売り手企業の経営者は、M&Aを経験したことがない素人です。どのような金額が相場なのか判断基準を持っていません。 「手数料はいらない」と言ってくれた良心的な業者なので、その言葉に嘘はないと信じ込み、うっかり契約書にサインしてしまう。 その結果、売り手企業は5億円で売れたはずの会社を、たった2億円で売却してしまうことになります』、「売り手企業の経営者」が「素人」であることにかこつけた悪辣な商法だ。
・『差額の3億円はどこへ…?  では差額の3億円はどこにいくのでしょうか。 この詐欺まがいの仕組みは買い手企業も承諾していないと成立しないので、実質的には仲介会社と買い手企業で「山分け」することになります。 買い手企業は3億円の半分、1億5000万円を仲介会社に払い、買収価格の2億円と合わせて3億5000万円で売り手企業を手に入れた計算になります。5億円の価値がある企業を3億5000万円で買収できたのですから、買い手企業にとってはお得な買い物です。 仲介会社は、3億円の半額の1億5000万円を手にします。売り手企業と買い手企業双方から5%ずつの手数料を受け取る通常の仲介会社としての手数料契約に比べると、当初の予想通り5億円で売買が成立していたときに受領する手数料総額5000万円の3倍の金額を手にするのですから、笑いが止まらないはずです。売り手企業だけが、一人で大損したということになります。 ちなみに、仲介会社へ支払う手数料の算式もしっかり確認しましょう。 株式の譲渡対価に対して料率が生じているのか、移動する総資産の金額に料率を乗じているのか、この違いは決定的です。 たとえば、負債10億円を有し、総資産が12億円の会社のM&Aにおいて、株式の譲渡対価が3億円であった場合、手数料が5%とすると、株式の譲渡対価を基準にすると、3億円×5%=1500万円となる一方、総資産額を基準にすると12億円×5%=6000万円となってしまいます。 M&Aの成果は株式の譲渡対価に集約されることを考えると、売り手にとっては、株式の譲渡対価に対する手数料率とするのが合理的です。総資産に対する料金体系となると、手数料が過大になりがちですので、十分留意しましょう。当然ながら、大手企業に対する助言会社の報酬体系は、基本的に株式の譲渡対価が基準となっています』、「売り手企業だけが、一人で大損したということになります」、「売り手」がやがて真相を知れば、やりきれないだろう。
・『詐欺まがいの行為に引っかからないために  基本的には、売り手企業か買い手企業の一方としか契約しない助言会社を選んでおけば、間違いは起こりません。ただ、仲介会社はそれなりの強みもあるので、仲介会社を選ぶ場合は、買い手企業との契約内容を確認するようにしてください。 守秘義務を盾にされたら、売り手企業は何も言えません。それでも、開示してくれない仲介会社を不誠実とみなし、契約しない自由があります。私は、買い手企業との契約を隠す仲介会社とは契約してはいけないと考えています。 もし、契約内容を開示してくれなければ、仲介会社を選択する場合には少なくとも特定の1社と契約する「専任契約」ではなく、複数の仲介会社と契約することで、売買条件を客観的に知ることができる状態に近づけておくべきです。 一方、助言会社は、売り手企業と契約すると売り手企業の利益しか考えません。 売り手企業の利益には、さまざまな利益があります。コンペにして複数の買い手企業に条件を出させることで売却価格を少しでも高くします。 売却価格以外にも、たとえば「技術を守ってほしい」といった経営者の望みを叶えるのも重要な利益です。 「安過ぎるからもう1年待ったほうがいい」「この買い手企業は高い価格を出しているけれど、事業をぞんざいに扱い、従業員もリストラしそうだからやめたほうがいい」「この買い手は安い価格しか出してきていないけれど、真剣にシナジーを考えている。事業の発展を考えれば、受けたほうがいい」 価格だけではない売り手企業の利益をアドバイスし買い手と交渉できるのは、売り手企業側だけについた助言会社です。 仲介会社は、どちらかを立てればどちらかが引っ込むことになるため、売り手企業の価値を最大化するアドバイスや、買い手企業の要望に沿ってできる限り安い価格での買収に持ち込む交渉は、基本的には実現困難なはずです。それができないことこそがまさに利益相反であり、仲介会社の根底にある問題点だと思います。 また、売り手企業とのお付き合いは売るとき1回だけですが、買い手企業はたくさんの企業を買ってくれる「お得意さま」である可能性も高いはずです。となると、売り手と買い手、どちらを向いて商売をするか、容易に想像がつくはずです。 日本の中小企業のM&A市場におけるこの構造問題は、M&Aがより身近になり、さまざまな業者のトラブルが顕在化するなかで、時間をかけて解消されていくかもしれません。ぜひ少なくともそうしたリスクがあることを認識したうえで業者を選び、M&Aのプロセスを進めていただきたいと思います』、「売り手企業とのお付き合いは売るとき1回だけですが、買い手企業はたくさんの企業を買ってくれる「お得意さま」である可能性も高いはずです。となると、売り手と買い手、どちらを向いて商売をするか、容易に想像がつくはずです」、確かにその通りだろう。業者選びには気をつける必要がありそうだ。

次に、8月5日付け東洋経済オンライン「沖縄・オリオンビール「第2創業」に至った舞台裏 県民が育てるビール会社はなぜ売られたのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/295031
・『「沖縄の皆様の中には『オリオンビールが沖縄のビールではなくなる』という懸念があるようだが、オリオンのDNAは変わらない」 7月22日、オリオンビールの社長兼最高経営責任者(CEO)就任が決まった早瀬京鋳(けいじゅ)氏は会見でこう述べた。今年1月、野村ホールディングスとアメリカの投資ファンド、カーライル・グループに買収されることが発表され、県民には「外資にのっとられてしまうのか」という不安の声が広がっていた』、どういう事情があったのだろうか。
・『「ワッター自慢の」オリオンが買収される  オリオンビールの2018年3月期の売上高は283億円、経常利益37億円。ビール業界では大手4社(キリン、アサヒ、サントリー、サッポロ)に次ぐ国内5位ではあるものの、売上数量の実に約8割を沖縄県内が占める。沖縄の歌手グループBEGINが「ワッター(私たち)自慢のオリオンビール」と歌うほどに、地元にとっては1つのアイデンティティとなっている。 カナダのスポーツ用品大手「ルルレモン・アスレティカ」の日本法人社長を務めていた早瀬氏に社長就任の打診があったのは、今年の春先だった。以前から地域貢献につながる仕事がしたいと公言していた早瀬氏は、当時の心境を「チャレンジするしかないと思った」と振り返る。 早瀬氏が「オリオンのDNAは変わらない」と強調したのは、ひとえに「県民感情」への配慮だ。創業者の具志堅宗精(故人)は「沖縄財界四天王」の1人に数えられる沖縄が誇る偉人。1959年、「オリオンビール」という商品名を公募によって決めたのも、「県民が育てるビール会社」になることを宗精が重視したからだ。それだけにオリオン株の売却には、県民の反発が大きかった。 新社長就任が発表される約2週間前の7月5日、オリオンビール創業の地である名護市で開かれた「具志堅宗精を語る会」では、株売却に怒りの声が飛び交った。 オリオンビールのOBは「宗精が築き、県民が育ててきた会社を勝手に売り払うなんて、経営陣はいったい何を考えているんだ」と憤る。別のOGは「(売却は)新聞記事で初めて知った。何が起きていたのか、真相を知りたいのに会社からは何も知らされない」と嘆いた。 オリオン経営陣への不満の声が飛び交う中に、1人、居心地の悪そうな顔をした男がいた。身の置き所がなく、そそくさとその場を離れてしまったが、創業家一族であるこの男こそ、オリオン売却を誘導した張本人だ。東洋経済の取材には「こうするより仕方がなかった……」と釈明する。何があったというのか――』、「「オリオンビール」という商品名を公募によって決めた」、初めて知ったが、「ワッター自慢の」、も頷ける。ただ、「売上数量の実に約8割を沖縄県内が占める」、とローカルブランドに留まっているようだ。
・『創業家と経営陣の対立  オリオンビール本社(沖縄県浦添市)の5階に、幸商事という会社がある。オリオンの本社ビルなどを所有する資産管理会社で、経営するのは具志堅宗精の子たち。オリオン株の約8.5%を保有し、同社に対する影響力を保持してきた。 オリオンの筆頭株主は2002年に業務提携を結んだアサヒビール(10%保有)だが、歴代の経営陣は幸商事、すなわち創業家との関係に神経を磨り減らしてきた。 「この人(自分に近い人)を社員にしてやってくれ」「この保険を買いなさい」といった“天の声”が降りてくれば、経営陣は無下にはできない。「とくに苦しかったのが、創業家の人間をオリオン役員に迎え入れなさいというプレッシャーだった」と役員経験者の1人は述懐する。 一方、創業家の側にも「株主である自分たちの存在が軽んじられている」という不満があった。配当は長い間1株当たり50円に据え置かれ、その後70円、2016年度には100円へと増額されたものの、3%前後の配当性向に「非上場企業とはいえ、低すぎる」という不満があった。 創業家と経営陣のにらみあいは、県民の目の届かぬところで深刻度を深めていた。約10年前には、幸商事の財務資料や実印が入った金庫が何者かに持ち去られるという騒動まで起きている。警察は「身内同士のケンカ」と判断して事件化しなかったが、事態が泥沼化する中、創業家から「もう、オリオン株と幸商事を売却したい」という声が上がりはじめる。 先の創業家の男は「宗精の子たちの平均年齢が80歳を超えている。1人亡くなるだけでも後始末が大変だ」と遺産相続問題を理由に挙げるが、理由はそれだけではない。「創業家の中には事業に失敗して多額の負債を抱えた人間もいた」(同)。 しかし、オリオン株と幸商事売却の協議は順調にはいかなかった。5年前の当初、オリオン経営陣が提示した幸商事の買収額は約25億円だったが、これに創業家は「安すぎる」と受け入れを拒んだのだ。 オリオン本社ビルなどの不動産のほか、同社株8.5%の売却額は県内企業の株価などを参考にして算出されたが、創業家は納得しなかった。実際、今回の野村・カーライルによる株式公開買い付け(TOB)価格は、1株当たり7万9200円。幸商事の持ち株数を単純に掛け合わせると、それだけでも48億円を超える。オリオン経営陣は、はなから創業家との交渉を行うつもりはなかったのかもしれない。 経営陣を見限った創業家は、沖縄県内の有力ゼネコンや外資ファンドなどいくつかの門をたたき、2016年、カーライルにたどりついた。「オリオンビール株を買い取ってもらえないか」。オリオンのブランド価値、成長可能性に着目したカーライルは興味を示した』、「オリオン経営陣が提示した幸商事の買収額は約25億円だった」、のであれば、「創業家」が「カーライル」に打診したのは当然だ。
・『野村に駆け込んだ経営陣  翌2017年、創業家はカーライルの担当者とともにオリオン株主のもとを訪れ始める。カーライル単独でオリオンのTOBを実施しようと画策したのだ。カーライルをバックにつけた創業家による「敵対的買収」準備だった。創業家の動きを察知したオリオン経営陣は慌て2018年2月、ホワイトナイト(買収防衛策)の要請のため野村證券那覇支店に駆け込んだ。 互いの動きを探り合っていた2018年の10月下旬、創業家側に一本の連絡が入る。銀行出身のオリオン取締役、亀田浩氏による面会の要請だった。11月3日、東京・中央区の野村證券本社で実現した面会で、亀田氏は創業家に「(野村の力を借りて)幸商事を買い取りたい」と告げる。それであれば、創業家にとっても株の現金化という目的は達せられる。 カーライルと野村による買収合戦は、こうして両者の「共同TOB」にかたちを変えることになった。 そのスキームはこうだ。野村の投資ファンド「野村キャピタル・パートナーズ」(NCAP)が51%、カーライルが49%出資するSPC(特別目的会社)であるオーシャン・ホールディングスがオリオンのTOBを実施する。オーシャンHDは、あわせて幸商事も買収する。創業家は今回のTOBですべての保有株式を売却する。 その後、アサヒビールがオーシャンHDに約10%出資、筆頭株主の地位を維持する。さらに、オリオンの嘉手苅義男会長がオーシャンHDに出資し、形式上「MBO(マネジメントバイアウト=経営者による買収)」となるようにした。つまり、会社は買収されるが、対外的には「オリオンは自主独立を維持した」と言えるようにする。創業家・経営陣・そしてファンド。これら3者による妥協の産物が、今回のスキームといっていいだろう。 今年3月、オーシャンHDによるTOBが終了し、予定どおり嘉手苅会長が「ほんの少しだけ」(オリオン幹部)出資をしたことでMBOは成功した。かろうじて「自主独立」の形を守ったオリオンは5年後をメドにIPO(新規上場)を目指す。 カーライルや野村は5年後に向け、今回の買収価格を上回る価格で売却するためのイグジット戦略を描かなくてはならない。そのために招聘したのが早瀬新社長だが、オリオンには大きな難題がある。酒税減免措置とどう向き合うかだ』、「3者による妥協の産物が、今回のスキーム」、なかなかよく出来ている。
・『47年間も続く酒税減免措置  1972年に沖縄が本土復帰をした際、市場環境の激変を緩和するための措置として敷かれたのが酒税軽減措置。沖縄県産の酒類に対して酒税を20%軽減する措置だ。本来であれば2~3年で終了すべき減免措置が47年間も続いていることに、県内からも疑問の声が絶えない。 2018年3月期のオリオンの純利益は23億円だが、このうち約20億円は減税効果とされている。つまりオリオンは、国の補助支援策に大きく依存した収益構造になっているのだ。 減免措置から脱却し、正当な競争力の下でIPOできるよう汗を流すのか。それとも、旧経営陣がやってきたように、減免措置維持のための政界ロビー活動に汗を流すのか。早瀬氏は22日の会見で酒税減免措置について「勉強中」と明言を避けたが、いずれその具体的な対処策を示さなければならない時がくる。 創業者が「県民が育てるビール会社」になるよう志したオリオンビールは、皮肉にも、子や孫たちの「現金ニーズ」によって県外、国外に売却された。「オリオン経営陣が示す買収額が低いから、こうするより仕方がなかった」という創業家の理屈に、心から納得する県民は少ないだろう。 一方、新生オリオンは「創業家の影響がなくなり、カーライルの企業価値向上の手腕と野村の金融の知見、両方を使えることになった」(オリオン幹部)。しかしそれは、経済合理性がより厳しく求められることを意味する。そこに、沖縄における「身内の論理」が入り込む余地がないことだけは確かだろう』、「身内の論理」による甘えを排して、自立してほしいものだ。

第三に、12月19日付け東洋経済オンライン「昭和電工、「小が大を飲む」9640億円買収の成否 社運賭け、「御三家」日立化成を公開買い付け」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/320701
・『日立グループ「御三家」の一角、日立化成の売却先が昭和電工に決まった。 昭和電工は2020年2月にTOB(株式公開買い付け)を始め、日立化成の全株式を約9640億円で買い取る。日立化成に51.2%を出資する日立製作所は現在、矢継ぎ早に事業ポートフォリオの見直しを進めている最中で、その中でも重要な案件に決着がつくことになる』、「日立グループ」が選択と集中で「事業ポートフォリオの見直しを進めている」のはいいことだ。
・『社運を賭けた9640億円の買収劇  「100年を超える歴史の中でも重要な転換点。日立化成を仲間として、新しい歴史に踏み出す」 12月18日、東京都内で会見した昭和電工の森川宏平社長は力強く語った。同社の時価総額は4521億円(12月18日時点)。対する日立化成は売上、利益規模こそ昭和電工に劣るもものの、時価総額は8501億円、従業員数約2万3000人と、いずれも昭和電工の2倍近い大所帯だ。 9640億円もの買収費用も巨額だが、いわば「小が大を飲み込む」M&Aによって昭和電工は社運を賭けた大勝負に打って出る。 買収スキームは、買収のために設立する特別目的会社(SPC)がみずほ銀行からノンリコースローンとして4000億円を借り入れ、みずほ銀行と日本政策投資銀行から2750億円の優先株出資も受ける。昭和電工本体もSPCに普通株出資するが、その資金2950億円もみずほ銀行が融資する。 日立化成株の親会社である日立製作所はTOBに応募する契約を昭和電工とすでに結んでおり、TOBが成立するのは確実だ。 昭和電工の業績は現在、絶好調だ。2018年12月期の営業利益は1800億円と過去最高を記録し、2017年12月期に引き続いて2期連続で最高益を更新している。それ以前は年数百億円の利益を稼ぎ出すのがやっとで、2009年12月期にはリーマンショックの影響を受けて営業赤字に沈んだこともある。まして、時価総額で2倍近い日立化成を買収できるほどの体力はなかった。 その昭和電工が飛躍のきっかけをつかんだのは、2年前に打って出た、ある買収があった。 2017年当時、昭和電工は構造不況にあえいでいた電炉向け黒鉛電極事業で、世界2位のSGLカーボン(ドイツ)を約150億円で買収した。黒鉛電極とは、鉄スクラップを溶かして鋼を作る電炉で使われ、世界の粗鋼の4分の1が電炉で生産されている。 ただ、中国で蔓延していた「地条鋼」と呼ばれる粗悪な鉄鋼の影響で、鉄の値段が下がる「鉄冷え」が発生。電炉用黒鉛電極の市況もそのあおりを受けていた。昭和電工の黒鉛電極事業は2013年から2016年の間は赤字で、「そろそろ市況は回復する」(森川社長)との読みのもと、打って出たのが、当時「無謀」と評された2017年の買収だった』、「昭和電工」が赤字続きの「電炉向け黒鉛電極事業」で、「SGLカーボン(ドイツ)を約150億円で買収」とは思い切った英断をしたものだ。
・『読みがぴたり的中、黒鉛電極で業績急回復  昭和電工の「読み」はぴたりと的中する。買収直後に中国政府が地条鋼の取り締まりを強化。その結果、中国各地で電炉を使用した粗鋼生産が増え、高品質な黒鉛電極の需要が急増した。昭和電工の2018年12月期の営業利益1800億円の7割以上、1324億円を黒鉛電極を中心とする「無機」事業部門が稼ぎ出した。 それにつれて財務体質も大幅に改善し、2015年12月期に1.2倍だったD/Eレシオ(株主資本に対する負債の比率)は0.62倍まで改善した。 ただ、今回の日立化成の買収額は約9640億円。2017年当時とは桁違いの財務リスクを取ることになる。買収相手である日立化成の資産を担保にしたノンリコースローンでの借り入れが多いため、昭和電工は「無理のない借り入れだ」と主張する。 買収後のD/Eレシオは1.6~1.7倍程度に悪化。昭和電工は早期に1倍未満にできる見通しだと説明するが、頼みの黒鉛電極市況が再び悪化しつつあり、2019年12月期の業績は減益を予想している。 巨額買収成功のカギを握るのは、「個性派事業」というものさしだ。昭和電工が2018年に発表した中期経営計画では、「適正な市場規模(数百~数千億円市場)でトップシェアを獲得」できる事業を個性派事業として育成していく方針を示した。それを超える巨大市場だと、設備投資にかかる費用が膨大になり、競争力を維持できないことが理由だ。 実際、昭和電工の事業を見ると、ハードディスクと電子材料用高純度ガス、黒鉛電極の3事業がそれぞれ数千億円程度の市場規模で世界シェアのトップを握っている。 買収後の日立化成に対しても、同様の指標をもとに事業ポートフォリオの再編に乗り出す。日立化成が高いシェアを握るのは封止材や配線板などの半導体向け材料や、自動車向けリチウムイオン電池負極材など。これらは個性派事業の要件を満たすと考えられる』、「日立化成」のなかで「個性派事業の要件を満た」さない事業は売却されるのだろうか。
・『トップ企業になるチャンスを逃したくない  ただ、裏を返せば、このものさしに当てはまらなければ、切り捨てられる可能性がある。18日の会見で森川社長は、「個性派事業を目指ざせる限りは昭和電工にとって必要な事業である。経営陣がそういうふうに考えられない場合、必要ない事業になると常々言ってきた」と説明し、今後の事業再編については、「まだ何も決まっていない。聖域を設けずにやっていく」と語るにとどめた。 子会社の売却を決めた日立製作所とは「日立化成の雇用を守る」約束しているため、買収後すぐに大規模なリストラに踏み出すとは考えづらい。しかし、今後1~2年のうちに日立化成の一部事業を売却する可能性は消えない。 もう1つは、今回の買収が「高値づかみ」だったとの批判をはね返すことができるかどうか。2019年初めに1600円程度だった日立化成の株価は日立製作所が売却の手続きを進めてから右肩上がりに上昇し、12月18日の終値は4080円に達した。今回のTOBの買い付け価格は4630円で、昭和電工は「直近の株価値上がりだけを見ているわけではなく、もう少し長い目でみるとこの価格は妥当だ」と説明したが、「高すぎる。とても手を出すような金額ではない」(化学メーカーの幹部)という声もあがる。 「これから10年、20年、うち単独でやっていくということも考えたが、世界のトップ企業になれるチャンスを逃したくなかった」。森川社長は会見で巨額買収に踏み切った心情を率直に吐露した。 目の前に転がり込んだ「おいしそうな果実」に目がくらんで安易に手を出したのなら今後数年間、その結果が厳しく問われるのは間違いない。今後1年ほどかけて新しい中期経営計画を策定する予定だといい、まずはその内容が問われることになる』、株価の推移から見る限り、やはり「高値づかみ」のようだ。「新しい中期経営計画」で無理のない将来像を描けるのか、注目したい。
タグ:オリオンビール 東洋経済オンライン M&A 昭和電工 日立化成 ダイヤモンド・オンライン 利益相反 (一般) (その1)(5億で売れたはずの会社を2億円で売却! 億単位でピンハネするM&A悪徳業者の「甘い罠」、沖縄・オリオンビール「第2創業」に至った舞台裏 県民が育てるビール会社はなぜ売られたのか、昭和電工 「小が大を飲む」9640億円買収の成否 社運賭け 「御三家」日立化成を公開買い付け) 岡本行生 「5億で売れたはずの会社を2億円で売却! 億単位でピンハネするM&A悪徳業者の「甘い罠」」 M&A市場は大活況 「仲介会社」は、 売り手企業側と買い手企業側の双方と契約を交わします 両手取引を逆手に取った悪質なケース 仲介会社は、売り手企業側と買い手企業側の双方と契約を交わします 現在の日本において、この仕組みは商道徳的な問題を内包するものの、広く見受けられます 悪徳業者の甘い誘惑 タダより高いものはない 「売り手さんからは1円も報酬はいただきません」 あらかじめ「売却想定価格」を設定し、その想定価格より安い金額で買収できた場合には、想定価格と実際の買収価格の差額のうち、半分を成功報酬として受け取るという内容 売り手企業を手玉に取るからくり 売り手企業の経営者は、M&Aを経験したことがない素人です。どのような金額が相場なのか判断基準を持っていません 差額の3億円はどこへ…? 仲介会社と買い手企業で「山分け」 売り手企業だけが、一人で大損したということになります 契約内容を開示してくれなければ、仲介会社を選択する場合には少なくとも特定の1社と契約する「専任契約」ではなく、複数の仲介会社と契約することで、売買条件を客観的に知ることができる状態に近づけておくべき 売り手企業とのお付き合いは売るとき1回だけですが、買い手企業はたくさんの企業を買ってくれる「お得意さま」である可能性も高いはずです。となると、売り手と買い手、どちらを向いて商売をするか、容易に想像がつくはずです 「沖縄・オリオンビール「第2創業」に至った舞台裏 県民が育てるビール会社はなぜ売られたのか」 野村ホールディングスとアメリカの投資ファンド、カーライル・グループに買収される 「ワッター自慢の」オリオンが買収される 「県民感情」への配慮 「オリオンビール」という商品名を公募によって決めたのも、「県民が育てるビール会社」になる 売上数量の実に約8割を沖縄県内が占める 創業家と経営陣の対立 オリオン経営陣が提示した幸商事の買収額は約25億円だった 「創業家」が「カーライル」に打診 野村に駆け込んだ経営陣 会社は買収されるが、対外的には「オリオンは自主独立を維持した」と言えるようにする。創業家・経営陣・そしてファンド。これら3者による妥協の産物が、今回のスキーム 47年間も続く酒税減免措置 「昭和電工、「小が大を飲む」9640億円買収の成否 社運賭け、「御三家」日立化成を公開買い付け」 日立化成の全株式を約9640億円で買い取る 社運を賭けた9640億円の買収劇 時価総額は4521億円( 時価総額は8501億円 「小が大を飲み込む」M&A 昭和電工が飛躍のきっかけをつかんだのは 構造不況にあえいでいた電炉向け黒鉛電極事業で、世界2位のSGLカーボン(ドイツ)を約150億円で買収 読みがぴたり的中、黒鉛電極で業績急回復 巨額買収成功のカギを握るのは、「個性派事業」というものさし 「適正な市場規模(数百~数千億円市場)でトップシェアを獲得」できる事業を個性派事業として育成していく方針 日立化成が高いシェアを握るのは封止材や配線板などの半導体向け材料や、自動車向けリチウムイオン電池負極材など トップ企業になるチャンスを逃したくない 今回の買収が「高値づかみ」だったとの批判 2019年初めに1600円程度だった日立化成の株価 TOBの買い付け価格は4630円
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M&A(コクヨVSぺんてる)(その2)(ぺんてる 望まぬコクヨとの“縁談” 仲介役の言い分とは、コクヨの直接出資を受け入れ「ぺんてる」経営陣の因果応報、コクヨを激怒させたぺんてる「密告書」の全内容 提携協議から一転して敵対的買収に発展、激化する「ぺんてる株争奪戦」 揺れるOBたち OBたちに宛てられた2通の手紙の中身とは) [企業経営]

M&A(コクヨVSぺんてる)については、6月1日に取上げた。今日は、(その2)(ぺんてる 望まぬコクヨとの“縁談” 仲介役の言い分とは、コクヨの直接出資を受け入れ「ぺんてる」経営陣の因果応報、コクヨを激怒させたぺんてる「密告書」の全内容 提携協議から一転して敵対的買収に発展、激化する「ぺんてる株争奪戦」 揺れるOBたち OBたちに宛てられた2通の手紙の中身とは)である。

先ずは、6月17日付け日経ビジネスオンライン「ぺんてる、望まぬコクヨとの“縁談”、仲介役の言い分とは」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00050/061200001/?P=1
・『筆記具大手のぺんてるが、望まぬ相手との“縁談”に反発している。その相手とはコクヨ。両社を結び付けたのは、ぺんてるの筆頭株主である投資会社だ。株主としてガバナンスを利かせる狙いがあったというが、とても一緒になれる状況にはない。株主ガバナンスの難しさが浮かび上がる。 5月半ば。筆記具大手、ぺんてるの和田優社長は急きょ、従業員を集めて、こう宣言した。「(今回の)一方的な行いは極めて遺憾。青天の霹靂(へきれき)だ。会社としての独立性を今後も維持する」 一方的な行い、とは何なのか。 ぺんてるの筆頭株主は東証1部に上場している投資会社のマーキュリアインベストメントが運営するファンド(37%を出資)だ。そのマーキュリアは2018年、ぺんてるの創業一族から保有株を譲り受け筆頭株主になった。 このファンドに同業のコクヨが5月10日に101億円を出資、間接的とはいえ事実上、ぺんてるの筆頭株主になった。これが和田社長の言う「一方的な行い」だ。 ぺんてるが反発するのは、未上場の同社の株式には、売買時に取締役会の承認が必要な譲渡制限がついているためだ。ファンド側は「ファンドへの出資者が変わっただけで、ファンドがぺんてる株を持っている状態に変わりはなく違法ではない。大手弁護士事務所のお墨付きももらっている」とするが、ぺんてる側は「当社取締役会の承認が必要な株式譲渡につながるような、当社株式を保有する組合出資持ち分の譲渡を決定、しかも公表直前に当社に連絡があった事実は大変遺憾」とし、脱法行為だと反論する。 和田社長が怒る理由はほかにもあった。実は水面下で文具大手のプラスとの資本提携協議を進めていたからだ。「プラスとの交渉をつぶされ、突如、コクヨと組まされるなんて」。これが和田社長の思いだろう。 マーキュリアは社外取締役をぺんてるに送り込んでいるため、プラスとの提携協議の中身も把握していたという。だがマーキュリアは「プラスとの提携内容はぺんてるにとって不利な内容が多かった。一緒に立ち上げるとされた共同出資会社も株のマジョリティーはプラス側だったし、ぺんてるが利益を上げるには相当な売り上げ増を必要とする無理な計画に見えた」と判断した』、ファンドをを通じた株式取得で、「譲渡制限」をかいくぐるとは巧妙なやり方だが、後日、コクヨはこれを何故か承諾したようだ。
・『「プラスと組むと企業価値が毀損する」  マーキュリアがコクヨを引き込んだのは「今の計画でプラスと組むとぺんてるの企業価値が毀損する」と感じたからだ。そしてコクヨはぺんてるが今後も成長が期待できる中国事業に強みを持つため「一緒に成長できる」と判断した。 投資ファンドのマーキュリアとしては、いずれやってくる株の売却時に高値で売るためには、ぺんてるの企業価値をできるだけ上げておく必要がある。「プラスがダメとかコクヨがいいとかではない。ぺんてるの企業価値を高めるために何が必要かを考えた結果だ」と今回の判断を説明する。 経営陣が画策した提携話に筆頭株主がノーを突き付け、代わりの提携先をあてがった。今回の話を一言で言うとこうなるだろう。仮にプラスとの提携が本当にぺんてるにとって利益を生まないのであれば、今回の動きは筆頭株主によるガバナンスが利いた事例となる。 もちろん、コクヨと組めばぺんてるの企業価値が上がるという保証もない。現経営陣がコクヨに反発している現状ではなおさら、そのハードルは高い。 ぺんてるは「コクヨと業務提携について協議を行っている事実はない。本件取引が当社との一切の協議なく実行された背景・真意等について確認をさせていただいている状況。いかなる場合においても企業間の関係構築は相互の信頼感が基盤となるべきだ」とコメントしており、現状ではなかなか実のある議論に入ること自体が難しそうな状況だ。 ぺんてるは2018年3月期の連結売上高が409億円。一方でコクヨは18年12月の連結売上高が3151億円と企業規模では大きな開きがある。独立性を盾に態度を硬化させている和田社長の心の中には、このままだと将来、コクヨに飲み込まれてしまうのではないか、という思いがあるのかもしれない。 いずれにしろこの事例は、非公開企業も今や株主ガバナンスとは無縁ではいられない、という教訓と同時に、株主ガバナンスを行使した結果、経営陣とのあつれきで企業価値向上どころではない泥沼に陥るリスクもある、という副作用にも気づかせてくれる。ガバナンスは使い道を一歩間違えると、劇薬にもなりかねない、極めてさじ加減の難しい処方箋なのだ』、「投資ファンドのマーキュリアとしては、いずれやってくる株の売却時に高値で売るためには、ぺんてるの企業価値をできるだけ上げておく必要がある。「プラスがダメとかコクヨがいいとかではない。ぺんてるの企業価値を高めるために何が必要かを考えた結果だ」、本当にこうした判断したのであれば、当否は別として。投資ファンドがガバナンスに強く影響した初の事例になる。

次に、経済ジャーナリストの重道武司氏が10月3日付け日刊ゲンダイに掲載した「コクヨの直接出資を受け入れ「ぺんてる」経営陣の因果応報」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/262685
・『因果は巡る――といったところか。7年前のクーデターで創業家出身社長を追い出した老舗筆記具メーカー、ぺんてる(東京・中央区)の経営陣が今度は、回り回って創業家保有株を手に入れた業界最大手、コクヨによってその軍門に下る形となった。 ぺんてる経営陣が取締役会で古参役員らの退任を求めた堀江圭馬社長(当時)に解任動議を突き付け、返り討ちにしたのは2012年5月のこと。後任に納まったのが現社長の和田優氏だ。 堀江氏は返り咲きを策したものの、他の創業家一族らの反対で失敗。18年3月、やむなく、保有していた発行済み株37・45%を日本政策投資銀行系の上場投資会社、マーキュリアインベストメントの設立した受け皿ファンドに約70億円で売り払った。 ところが今年5月、マーキュリアが、そのファンドを101億円でコクヨに転売。コクヨが実質的な筆頭株主に躍り出たのだ。水面下で業界2位、プラス(東京・港区)との資本業務提携を模索していたぺんてる経営陣はこれに強く反発。「間接出資の経緯が不透明で、信頼関係が築けていない」などとして、コクヨが求める業務提携協議にも応じない姿勢を示してきた』、「ぺんてる」に「7年前のクーデター」があったとは初めて知った。「因果は巡る」はまさに言い得て妙だ。
・『とはいえ収益環境が厳しさを増す中、対立の長期化は企業統治の混乱を招くだけ。取引先などから早期の事態収拾を促す声も上がり、先週になって一転、コクヨの直接出資受け入れに踏み切ったのだ。コクヨはファンドから保有ぺんてる株を譲り受け、ぺんてるを持分法適用会社とする。 ぺんてるは1911年東京・浅草で創業の卸問屋「堀江文海堂」が母体。世界21カ国に販売拠点を持つなどグローバル展開で先行し、グループの海外売上比率は6割を超える。ただ最近はヒット商品不在で国内が苦戦。19年3月期の単体売上高は235億円と前期比2・2%の減収となり、営業利益は0・72億円と同86・8%の大幅減益に陥った。コクヨとの協業を進めることで生き残りを目指す。 もっとも、コクヨも国内文具事業は低迷気味。当面は調達や物流機能の一本化など、経費面での相乗効果をどこまで引き出せるかが焦点になりそうだ』、「コクヨの直接出資受け入れ」後に、次の記事にあるように、泥沼化したようだ。

第三に、11月20日付け東洋経済オンライン「コクヨを激怒させたぺんてる「密告書」の全内容 提携協議から一転して敵対的買収に発展」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/315366
・『文具業界最大手のコクヨは11月15日、筆記具4位・ぺんてるの株の過半数を取得し子会社化すると発表した。コクヨはぺんてる株の約38%を保有しているが、1カ月後の12月15日までに、ぺんてるの既存株主から1株3500円で買い取り、議決権比率を50%超にまで引き上げる方針だ。費用は約38億円を見込む。 ぺんてるは即日、「コクヨの一方的かつ強圧的な当社の子会社化方針に対し強く抗議します」というリリースを出し、コクヨによる買収に徹底抗戦する構えを見せた』、事態が急変した背景はどんなものなのだろう。
・『食い違う両社の主張  ことが複雑なため、時計の針を半年ほど巻き戻す。 コクヨは5月、ぺんてるの筆頭株主だった投資会社が運営するファンドに出資することで、ぺんてる株を間接保有した。ぺんてるの和田優社長は当時、社員に「青天の霹靂だ」と述べ、投資会社とコクヨに反発する意思を見せた。 だがその後、業務提携に向けた協議や互いの工場視察などを重ね、9月にはコクヨが株を直接保有することを容認。コクヨは投資会社からぺんてる株を取得し、直接保有に切り替えた。コクヨが名実ともに、ぺんてるの筆頭株主になったのだ。 両社は12月上旬にも業務提携を発表することを目指していた。それがここにきて、コクヨが「一方的かつ強圧的」にぺんてるを子会社化すると発表したのは、なぜなのか。 ぺんてるは先のリリースで「(コクヨの発表は)当社に対し一切の相談や協議なく行われた」と抗弁したが、コクヨが明らかにしたこれまでの経緯、事実関係は、ぺんてるの説明とは大きく食い違う。 コクヨが会見やリリースで明らかにしたところによれば、ぺんてるは海外事業の提携については継続して協議していたものの、国内事業の提携協議については一転、消極的になった。コクヨは会計監査上、ぺんてるに出資したことを裏付ける資料が必要となったため、ぺんてる経営陣に株主名簿の開示を求めたが、これにもぺんてるは応諾しなかった。 両社にギクシャクした空気が流れ始めていた10月16日、コクヨ代表取締役宛てに、差出人不明の封書が送られてきた。「K社」による「PE社」の株式過半数取得を阻止するためとして、「PL社」が「PE社」の株式を取得すること、すなわち「PL社」と「PE社」が資本提携するのが望ましい旨が記されていた。ぺんてるの「内部文書」だった。 10月29日には2通目の封書が届く。やはり差出人不明で、そこには「PE社」と「PL社」の資本提携の具体的なスケジュールが記されていた。 K社をコクヨ、PE社をぺんてるとするとPL社は、コクヨに次ぐ総合文具2位のプラス社だ。ただ、コクヨの売上高は3151億円(2018年度)、プラスのそれは1772億円(同)と、両社の企業規模には開きがある。この文書に記されていることが事実であれば、ぺんてるは、筆頭株主コクヨの知らぬところで、コクヨをライバルとするプラス社と資本提携の協議を進めていたことになる』、「コクヨ代表取締役宛てに、差出人不明の封書が送られてきた」、「ぺんてるは、筆頭株主コクヨの知らぬところで、コクヨをライバルとするプラス社と資本提携の協議を進めていた」、とは驚かされた。
・『「密告書」に書かれていたこと  穏やかならぬ「通知」に驚いたコクヨ経営陣は11月11日、2通の文書を持参してぺんてる本社に乗りこみ、和田社長と小林健次取締役に、文書の真偽をただした。和田社長は否定しなかったという。コクヨはその場で、第三者との間では資本業務提携に関する協議を行っていないことを誓約する「誓約書」案を渡し、翌12日17時までにぺんてる経営陣で決議、押印してコクヨに提出するよう求めた。 だが、ぺんてるは回答しなかった。そのかわり翌13日、コクヨが誓約書の提出を求めたことを「遺憾」とする書面を提出。しびれをきらしたコクヨは15日、緊急記者会見を開き、ぺんてる買収を決断するに至った経緯をマスコミに公表した。黒田英邦代表取締役社長は、ぺんてるがコクヨの知らぬところで第三者と資本提携の協議を進めていたことについて「青天の霹靂だ」と、和田社長に意趣返しをしてみせた。 ぺんてるには「密告書」が誤算だった。上層部だけで固め、執行役員クラスにすら共有していなかった極秘文書が、何者かによって外部にリークされたからだ。 社内の極秘文書をコクヨに送ったのは誰なのか。文書には具体的に何が書かれてあったのか。ぺんてるはもちろん、コクヨもその中身については伏せたままだが、東洋経済は業界関係者への取材を通じて、その文書を入手した。 文書に記されてあるのは、コクヨの支配力を弱めるにはどうすればよいか、の策だ。「K社による子会社化を防ぐ」ためとして、プラス社が、コクヨの持分割合を上回る「40%」を保有する案が挙がっている。40%という数字は、コクヨが持つ約38%よりは多く、かつ、ぺんてるを子会社化する過半数には満たない、そのような数字だ』、「上層部だけで固め、執行役員クラスにすら共有していなかった極秘文書が、何者かによって外部にリークされた」、ぺんてる上層部にも反和田社長派がいるのだろう。
・『文書にはまた、ぺんてる経営陣に近い与党株主が株主全体の3分の1いることを前提に、「K社による過半数取得を阻止するという観点からは当該対象株式のうち約18%を取得することにより、仮に残株式(の議決権行使委任状)をK社が取得したとしてもその議決権行使割合は50%を超えないことから、下限を18%とすることも考えられます」と、コクヨに過半数を握られないための取得率の下限まで提言している。 文書には作成者のクレジットとして、ASPASIO(東京都中央区、田中康之社長)という会社名が記されている。ASPASIOはファイナンシャルアドバイザリー業務を主とする会社で、長年、ぺんてるの財務コンサルを担ってきた。 上層部しか知りえない極秘文書を外部にリークするだけでなく、ぺんてるの意思決定に携わるコンサル会社、顧問契約する法律事務所、マスコミ対応を担うPR会社名まで記載された文書を、当のコクヨに送付しているところから推測するに、この文書はぺんてる上層部の何者かによる「密告書」であり「内部告発の書」といえそうだ』、コクヨが怒り心頭に発して、完全支配に切り替えたのも頷ける。
・『コクヨは現経営陣の退陣を要求  その人物は、なぜそこまでのリスクを冒したのか。 コクヨの発表後、ぺんてるの和田社長が一部の幹部社員に向けて出したメッセージが出回っている。そのメッセージで和田社長は、プラス社との資本業務提携の協議を進めてきたことは事実であることを明らかにしている。社長みずから「密告書」の中身とコクヨの主張を認めた格好だ。 ぺんてるはもはや、プラス社との資本提携協議を隠さなくなりつつある。だが、ぺんてるが15日に発表したリリースや、その後、幹部向けに出したメッセージには、プラスとの提携を進めることによってどのようなメリットがあるのか、言及はない。 ぺんてるは非上場企業のため、株式には取締役会の承認がなければ売買ができない譲渡制限がついている。その壁を打開するため、コクヨは既存株主から株を買い取る際に株主総会の委任状もセットで取り付ける考えだ。ぺんてるが取締役会で譲渡を却下すれば、臨時株主総会を招集し、現経営陣を退陣させたうえで、新しい経営陣に譲渡を認めさせる。 コクヨのやり方を「強引すぎる」と見る向きもある。それでも、ぺんてるの上層部から「密告書」あるいは「内部告発の書」がコクヨに寄せられてしまうのは、現経営陣に確たるビジョンが見当たらないからではないか。 コクヨとぺんてる&プラス連合は、これから約1カ月間、株の争奪戦、プロキシーファイトを繰り広げる。そこでは買い取り価格だけでなく、市場低迷する文房具業界をこれからどうしていくのか、ビジョンこそが競い合われるべきだろう』、「ビジョンこそが競い合われるべき」、その通りだ。

第四に、11月26日付け東洋経済オンライン「激化する「ぺんてる株争奪戦」、揺れるOBたち OBたちに宛てられた2通の手紙の中身とは」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/316349
・『総合文具業界トップのコクヨ(2018年度売上高3151億円)と、業界2位のプラス(同1772億円)が、筆記具4位ぺんてる(同235億円)の株の争奪戦で激しい攻防を繰り広げている。 11月15日、コクヨがぺんてる株を1株3500円で買い受ける方針を示すと、プラスは11月20日、単独出資で立ち上げたジャパンステーショナリーコンソーシアム合同会社(JSC)がコクヨと同額の3500円で買い受ける方針をリリースした。 これにコクヨは即座に反応し、買い付け価格を3750円に引き上げると発表。一歩も引かない姿勢だ』、買収合戦とは面白くなってきた。
・『狭間で揺れ動くOB・OGたち  コクヨの強みは厚い資本に裏打ちされた事業構想、そしてぺんてる株の38%をすでに保有する筆頭株主である点にある。対するプラスは、ぺんてるの現経営陣に請われた「ホワイトナイト」という役回りだ。11月23日付の日本経済新聞でプラスの新宅栄治常務取締役は、「(ぺんてるとは)経営において非常に共感できる関係」とし、ぺんてるの和田優社長も「プラスとは6年の付き合いであうんの呼吸」と相思相愛ぶりをアピールした。 プラス&ぺんてる連合vs.コクヨ。両陣営の狭間で今、揺れ動いているのが、ぺんてるのOBやOGたちだろう。未上場会社であるぺんてるにはOB・OGの株主が多いとみられる。OBやOGたちは、「ぺんてるの未来」をどちらに託すのがいいのか、考えあぐねている。 「コクヨ株式会社が、突然、ぺんてるに対して敵対的な買収を始めています」「経営陣も、コクヨの、突然かつ一方的な動きに大変困惑しているとのことです」ぺんてるの株主に宛てられた、11月20日付けの手紙。差出人は、ぺんてる元社長の水谷壽夫氏だ。 「株主の皆様へ」と題する手紙は、次のように続く。「ぺんてるの経営陣は、ぺんてるのために、株主の皆様のために、プラス社からの提案であるジャパンステーショナリーコンソーシアム合同会社(JSC)による当社株式の買受け提案を承諾しました。是非、コクヨへの敵対的な買収の提案に応じることなく、ぺんてるの経営陣が最善と考えるJSCからの買受けにご応募いただきますよう、そして、将来にわたりぺんてるの価値を守っていただきますよう、ひたすらにお願い申し上げる次第です」 水谷氏は今年6月に開かれたぺんてる株主総会の前にも、経営陣に自社株買いを求める株主提案がなされたことに、「(この提案が通れば)会社の存続そのものを危うくしかねない」と、提案に賛成しないよう株主やOBたちに呼びかける役を買って出た。ぺんてる経営陣にとっては、どこまでも自分たちの味方をしてくれる後ろ盾のような存在だ』、「水谷氏」が社長だったのは、解任された「堀江圭馬」氏よりも前で、だいぶ昔のようだ。
・『暗証に乗り上げたプラットフォーム構想  一方、11月24日付で「ぺんてるを愛する皆様へ」というメッセージを出したのが、ぺんてる元専務でOB会の会長を務める池野昌一氏だ。 池野氏は「今回のコクヨとプラスの一連の騒動に多くのOBの方々がご心配され、株主の皆さんも頭を悩ませていらっしゃることでしょう。私にもOBの方々から相談が寄せられています」とOBらの苦悩を推し量る。そのうえで、「私は、現在のぺんてる経営陣の考え方には大反対です」とプラス&ぺんてる連合に反対する意向を示した。 その趣旨は、JSCが買い取った株は実質的にプラスのものになるが、それでいいのかというもの。「プラスの昨今のM&Aは、その結果をみても乗っ取りに近いようなブランド軽視の事例もあります。そしてぺんてるの有力卸チャネルの皆様もプラスの強引なやり方(メーカー販社連合)には強く反発しています」。 メーカー販社連合とは、プラスとぺんてるの2社が軸となって国内営業窓口を一本化し、新たなプラットフォームを築く構想のことだ。これまで文具メーカーはそれぞれ独自の卸・販売店網を築き上げてきた。それを両社で統一して、国内販売の強化を図ろうとした。 販社連合にはもう一つの狙いがある。「対コクヨ」政策だ。連合にはプラスとぺんてるのほか、ラベルプリンタ「テプラ」をヒットさせたキングジムや、「セロテープ」で有名なニチバンなども合流する構想があった。そうした連合を作ることで、規模に勝るコクヨに対抗しようとしたのだ。販売連合はプラス経営陣が主導する形で進められ、昨年5月には新社名案を「コーラス」と発表、社長にぺんてるの和田氏が就く案までできあがっていた。 ところが、足下から反旗が上がる。ぺんてる社員、とりわけ販売畑の従業員たちが、「これまで協力してくれた卸売会社を裏切ることになる」「雇用が維持されるのか不安が残る」といった理由で反対したのだ。全国の文具流通業企業の大手複数社からも反対声明が出され、販社連合は暗礁に乗り上げた』、プラスとの間に「暗証に乗り上げたプラットフォーム構想」があったとは初めて知った。
・『ぺんてるの経営陣も、そのトラウマは癒えていない。コクヨがぺんてるを子会社化すると発表した翌週の11月18日、ぺんてるの和田社長は一部の幹部社員向けにメッセージを送っているが、そこで販社連合についても触れている。 和田社長は、「プラットフォーム会社について、その実施については一切検討を行っておりません。皆様に以前お話させていただいた通り、プラットフォームは社内でのコンセンサスが得られない限り、プラス社との協議は行いません」と念を押すように説明している。 それに対して池野氏は、「ぺんてるというブランドや社員たちを守るという意味でも、まずは状況を冷静に見極められたうえで、今の経営陣の判断に異を唱え、安易に現経営メンバーやプラスの誘いに乗られないようにお願い申し上げます」と、メッセージを締めくくっている。 池野氏は長年、ぺんてるの営業のリーダーを務め、OB会の「ご意見番」的な存在でもある。それだけに池野氏の言葉には一定の重みがある。そして今回の混乱の遠因には、国内の営業戦略を巡るぺんてる社内の対立があるのだ』、「国内の営業戦略を巡るぺんてる社内の対立」、とは一朝一夕で解決できる問題ではなく、深刻だ。しかも、「ぺんてる元専務でOB会の会長を務める池野昌一氏」が「今の経営陣の判断に異を唱え」ているとは、コクヨには有利な材料のようだ。 
・『プラスは他社にも出資を呼びかけ  水谷氏の必死の訴えと、冷静な判断を求める池野氏の呼びかけ。ぺんてるOB・OGは揺れている。 過半の株式取得を目指すコクヨに対し、プラスはぺんてるの資本的な独立を維持する方針。さらにプラスは「(JSCに)他のメーカーの参画を期待しております」と、他社にも出資を呼びかけている。一部報道では、新販売連合への合流も検討されたキングジムやニチバンがJSCに参画する意思があるとされた。 キングジムもニチバンも今後のJSC参画には含みを持たせているが、現在までのところ、両社は報道内容を否定している。12月中旬にも決着がつくコクヨとの株争奪戦には、プラス1社だけで臨むことになりそうだ。 総合文具業界1位と2位によるぺんてるの争奪戦は、今後の業界再編にも影響を及ぼす。キャスチングボードを握るぺんてるのOB・OGたちは、「ぺんてるを愛する」がゆえに、しばらくは苦悶の日々を過ごすことになる』、さて最終的にどうなるか、大いに注目したい。
タグ:プラス 東洋経済オンライン M&A 日刊ゲンダイ 日経ビジネスオンライン (コクヨVSぺんてる) (その2)(ぺんてる 望まぬコクヨとの“縁談” 仲介役の言い分とは、コクヨの直接出資を受け入れ「ぺんてる」経営陣の因果応報、コクヨを激怒させたぺんてる「密告書」の全内容 提携協議から一転して敵対的買収に発展、激化する「ぺんてる株争奪戦」 揺れるOBたち OBたちに宛てられた2通の手紙の中身とは) 「ぺんてる、望まぬコクヨとの“縁談”、仲介役の言い分とは」 投資会社のマーキュリアインベストメントが運営するファンド マーキュリアは2018年、ぺんてるの創業一族から保有株を譲り受け筆頭株主になった このファンドに同業のコクヨが5月10日に101億円を出資、間接的とはいえ事実上、ぺんてるの筆頭株主になった ファンド側は「ファンドへの出資者が変わっただけで、ファンドがぺんてる株を持っている状態に変わりはなく違法ではない 水面下で文具大手のプラスとの資本提携協議を進めていた プラスと組むと企業価値が毀損する マーキュリアとしては、いずれやってくる株の売却時に高値で売るためには、ぺんてるの企業価値をできるだけ上げておく必要がある。「プラスがダメとかコクヨがいいとかではない。ぺんてるの企業価値を高めるために何が必要かを考えた結果だ」と今回の判断を説明 重道武司 「コクヨの直接出資を受け入れ「ぺんてる」経営陣の因果応報」 7年前のクーデターで創業家出身社長を追い出した 今度は、回り回って創業家保有株を手に入れた業界最大手、コクヨによってその軍門に下る形となった 対立の長期化は企業統治の混乱を招くだけ。取引先などから早期の事態収拾を促す声も上がり 一転、コクヨの直接出資受け入れに踏み切った グループの海外売上比率は6割を超える 最近はヒット商品不在で国内が苦戦 「コクヨを激怒させたぺんてる「密告書」の全内容 提携協議から一転して敵対的買収に発展」 食い違う両社の主張 コクヨは投資会社からぺんてる株を取得し、直接保有に切り替えた 両社は12月上旬にも業務提携を発表することを目指していた コクヨが「一方的かつ強圧的」にぺんてるを子会社化すると発表 ぺんてるは海外事業の提携については継続して協議していたものの、国内事業の提携協議については一転、消極的になった コクヨ代表取締役宛てに、差出人不明の封書が送られてきた K社」による「PE社」の株式過半数取得を阻止するためとして、「PL社」が「PE社」の株式を取得すること、すなわち「PL社」と「PE社」が資本提携するのが望ましい旨が記されていた 2通目の封書 「PE社」と「PL社」の資本提携の具体的なスケジュールが記されていた 「密告書」に書かれていたこと 黒田英邦代表取締役社長は、ぺんてるがコクヨの知らぬところで第三者と資本提携の協議を進めていたことについて「青天の霹靂だ」と、和田社長に意趣返しをしてみせた 上層部だけで固め、執行役員クラスにすら共有していなかった極秘文書が、何者かによって外部にリークされた この文書はぺんてる上層部の何者かによる「密告書」であり「内部告発の書」といえそうだ コクヨは現経営陣の退陣を要求 市場低迷する文房具業界をこれからどうしていくのか、ビジョンこそが競い合われるべきだろう 「激化する「ぺんてる株争奪戦」、揺れるOBたち OBたちに宛てられた2通の手紙の中身とは」 コクヨと同額の3500円で買い受ける方針をリリース コクヨは即座に反応し、買い付け価格を3750円に引き上げると発表 狭間で揺れ動くOB・OGたち ぺんてる元社長の水谷壽夫氏 ぺんてる経営陣にとっては、どこまでも自分たちの味方をしてくれる後ろ盾のような存在だ 暗証に乗り上げたプラットフォーム構想 ぺんてる元専務でOB会の会長を務める池野昌一氏 ぺんてる経営陣の考え方には大反対 メーカー販社連合とは、プラスとぺんてるの2社が軸となって国内営業窓口を一本化し、新たなプラットフォームを築く構想 ぺんてる社員、とりわけ販売畑の従業員たちが、「これまで協力してくれた卸売会社を裏切ることになる」「雇用が維持されるのか不安が残る」といった理由で反対 プラスは他社にも出資を呼びかけ キングジムもニチバンも今後のJSC参画には含みを持たせているが、現在までのところ、両社は報道内容を否定 総合文具業界1位と2位によるぺんてるの争奪戦は、今後の業界再編にも影響を及ぼす
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ソフトバンクの経営(その13)(ヤフーとLINE統合の裏に ソフトバンク「スーパーアプリ」の野望、ヤフトピよ なぜ統合の話をとりあげない? ラインとの統合で何が変わるか、「ヤフー」と「LINE」の一体化は至難の業…違う魂を持つ人たちが、経営統合してうまくいくのか?) [企業経営]

昨日に続いて、ソフトバンクの経営(その13)(ヤフーとLINE統合の裏に ソフトバンク「スーパーアプリ」の野望、ヤフトピよ なぜ統合の話をとりあげない? ラインとの統合で何が変わるか、「ヤフー」と「LINE」の一体化は至難の業…違う魂を持つ人たちが、経営統合してうまくいくのか?)を取上げよう。

先ずは、11月16日付けダイヤモンド・オンライン「ヤフーとLINE統合の裏に、ソフトバンク「スーパーアプリ」の野望」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/220849
・『ヤフーとLINEが経営統合に向けて協議を進めている。8000万人を超える顧客基盤を持ちながら赤字が続くLINEと、メッセージアプリが欲しいソフトバンクグループ。統合が実現すれば、ソフトバンクの野望である、日常のあらゆるサービスをスマートフォンのアプリ1つで解決する「スーパーアプリ」の実現に一歩近づく』、かつてインターネットの世界で、ポータルサイトを目指すブームがあったが、そのスマホ版なのだろうか。ちょっと乱暴過ぎる比喩なのかも知れない。
・『あらゆるサービスをワンストップで ペイペイが目指す「スーパーアプリ」構想  「スーパーアプリ」実現の野望とLINEの“救済”がマッチしたか――。 ソフトバンクグループでZホールディングス(HD)傘下のヤフーとメッセージアプリ運営大手LINEが経営統合に向けて協議していることが明らかになった。 ZHDは「協議を行っていることは事実」、LINEは「企業価値向上のための施策の一つとして検討を進めていることは事実」と14日にそれぞれコメントを発表し、経営統合の交渉について認めた。 関係者によれば、交渉はZHD側から持ち掛け、親会社のソフトバンクと、LINEの親会社である韓国ネイバーを交えて協議を進めているという。ソフトバンクとネイバーが50%ずつ出資して新会社を設立してその傘下にZHDを置き、ヤフーとLINEを子会社にする案が検討されている。来週中にも正式発表する。 ヤフーとLINEの統合で実現するものは何か。そのヒントとなるのが「スーパーアプリ」だ』、統合は18日に発表された。
・『「スマートフォン上であらゆる暮らしを便利にする“スーパーアプリ”を目指して、進化を続けていく」 11月5日、ソフトバンクの2020年3月期第2四半期の決算会見。宮内謙CEO(最高経営責任者)はこう宣言した。宮内CEOが期待を寄せるのは、ソフトバンクグループが全力で普及を目論むキャッシュレス決済サービス「PayPay(ペイペイ)」である。昨年10月のサービス開始から13カ月で利用者は1900万人を突破した。 ペイペイが目指すのは、単なる決済アプリに留まらず、ショッピングはもとより、ホテルやタクシーの予約から公共料金の支払い、さらには保険や投資まで、あらゆるサービスをワンストップで手掛けることができる存在だ。この構想の一環としてショッピング分野を強化するため、ZHDはアパレルECサイト大手ZOZOの買収に踏み切った スーパーアプリ構想を具現化した例として宮内CEOが挙げたのは、ソフトバンクグループの中国アリババが手掛ける決済サービス「アリペイ」である。実際にアリペイは決済だけでなく、レストランやチケットの予約、資産管理や保険、小口融資などサービスの幅を広げ、利用者数は6月に全世界で12億人を突破している。 ただ、宮内CEOはあえて言及しなかったのだろうが、中国にはアリペイと並ぶスーパーアプリがある。それがテンセントの手掛ける「ウィーチャットペイ」だ。 アリペイがリリースされたのは04年。一方、後発組のウィーチャットペイが登場したのは13年で、既に地盤を固めていたアリペイの牙城を崩すのは困難とみられていた。ところがウィーチャットペイは怒涛の勢いで成長し、中国のキャッシュレス決済市場におけるシェアはアリペイが約50%、ウィーチャットペイは約40%と一気に追い上げた。 ウィーチャットペイが急成長できた最大の要因は、メッセージアプリ「ウィーチャット」とひも付いていたからだ。ウィーチャットは中国版LINEのような存在だが、規模はけた違いで、月間アクティブユーザ数は10.8億人に達している。 メッセージアプリはコミュニケーションツールとして1日に何度も使う。買い物のときだけ立ち上げる決済アプリと比べ、ユーザーとの距離は圧倒的に近い。頻繁に起動するアプリを“窓口”にすれば、周辺サービスをユーザーが目にする回数は必然的に増える。 8200万人というLINEの顧客基盤もさることながら、スーパーアプリの実現に向けて、毎日必ず起動してくれる顧客との接点が欲しかった。これこそZHDがLINEに手を伸ばした要因だろう』、「ウィーチャットペイが急成長できた最大の要因は、メッセージアプリ「ウィーチャット」とひも付いていたからだ」、なるほど。
・『キャッシュレス決済は消耗戦 LINEペイ「300億円祭り」で営業赤字524億  一方、メッセージアプリで一発当てたLINEもまた、サービスの幅を広げ、スーパーアプリを目指していた。ショッピングのほかにも、金融関係では昨年10月に損保ジャパン日本興亜と組んで「LINEほけん」のサービスを開始し、今年8月には野村HDとLINE証券を始めた。また、みずほフィナンシャルグループとLINE銀行の発足準備を進めている。 LINEニュースやゲームなど、一定のユーザーを獲得して成功している領域もあるが、多くはまだまだ発展途上だ。16年にはLINEモバイルを設立してMVNO事業に参入したが、最終的にソフトバンクに身売りする形となった。 現状のLINEの収益を支えるのは広告やゲーム、漫画などのコンテンツであり、LINEが抱える膨大な顧客基盤の活用を目論むものの、投資先行で苦戦が続いている。 とりわけ先行きが不透明なのが決済分野だ。キャッシュレス決済サービス「LINEペイ」は14年にサービス開始以降、着実に育ててきたのだが、ここにきて熾烈な競争に巻き込まれている。昨秋デビューしたペイペイが、支払額の一部を還元する「100億円キャンペーン」を連発して急成長したことに煽られたのか、LINEペイも今年5月に「300億円祭り」で対抗。体力勝負の消耗戦に突入した。 LINEの19年12月期第3四半期までの9カ月間で、売上高1667億円に対して営業赤字は275億円。広告などのコア事業は249億円の営業黒字だったにもかかわらず、LINEペイを含む戦略事業が524億円の営業赤字で、LINEペイの出血が大きな痛手になっている。 ペイペイもまた、20年3月期第2四半期までの6カ月間で売上高15.9億円に対して345億円の営業赤字を計上。とはいえ、年間の売上高が9兆円を超えるソフトバンクグループにしてみれば、ペイペイの出費の痛みはLINEほど大きくない。 スーパーアプリを目指すソフトバンクにとって、LINEは喉から手が出るほど欲しい存在だ。8200万人の顧客基盤に対してフルサービスを提供する余力に乏しいLINEの思惑とマッチしたことが、今回の経営統合を後押ししているのだろう』、これだけみれば、ソフトバンク、LINE双方にウィン・ウィンのように見えるが・・・。

次に、慶應義塾大学総合政策学部 特別招聘教授の下山 進氏が11月19日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「ヤフトピよ、なぜ統合の話をとりあげない? ラインとの統合で何が変わるか」を紹介しよう。
・『「ヤフトピはヤフーやスポンサーにとって悪いニュースこそを載せる」。読売新聞からヤフーに移りヤフトピを創設した奥村倫弘(現東京都市大学教授)が当時のニュース部門の責任者・宮坂学(現東京都副知事)に言った言葉だ。このヤフー・ニュースの「公共性」は、ラインとの統合によってどうなるか。『2050年のメディア』(文藝春秋)でヤフー・読売・日経のこの20年の攻防史を初めて明らかにした下山進が分析する——』、興味深そうだ。
・『96年の誕生時から「ヤフー」の海外展開はできなかった  私は『2050年のメディア』を次のように終えている。 デジタル化とグローバル化の潮流に抗して企業は生き残れない。 ヤフー・ジャパンが、創業時の進取の気性をもって、ソフトバンクグループとともにグローバル化に挑むとすれば、それはそれで、また新たな心躍る物語の誕生ということになるだろう。 11月18日、ヤフーとラインの統合が正式発表され、川邊健太郎ヤフー社長と、出澤剛ライン社長の記者会見が行われた。ヤフーとラインの統合については、13日夜からニュースが流れ始め、14日の各紙朝刊はこぞってこれを書いた。多くの記事は、ペイペイとラインペイの統合シナジーなどに目を向けていた。が、私は、このニュースを最初に聞いた時に、ああ、いよいよ、日本のヤフーがグローバル化に挑もうとしているのだな、と思ったのだった。 というのは、ネットというボーダーレスの空間で興隆してきた企業でありながら、ヤフー・ジャパンは、96年の誕生時から米国ヤフーとの契約によって、ヤフーの商標をつかった海外展開ができなかったからだ』、「ヤフー・ジャパン」が「ヤフーの商標をつかった海外展開ができなかった」、これまでは我慢せざるを得なかったのが、制約がなくなったので、思い切った展開も可能になったようだ。
・『「コンテンツをつくりたい」という社内の声を抑えてきた  米国のヤフーは、記者やプロデューサーを雇い、自らコンテンツをつくってメディア企業になろうとした。一方、日本のヤフーは、月間224億PV(2004年当時)というガリバーになっても、「自分たちでコンテンツをつくりたい」という社内の声を抑えて、あくまでもプラットフォーマーに徹した。 その結果、米国ヤフーは、さまざまな経営者に変わったあと、事業体としてその寿命を終え、通信会社のベライゾンに売却された。ヤフー・ジャパンの株をもっていた後継会社のアルタバが、ヤフー・ジャパンの全ての株を売却したのは2018年の9月。 このとき、ソフトバンクの孫正義は、初めて米国からの縛りから逃れ、ヤフーを完全に自由にできることになったのだった。そして、最初の一手として、ヤフーの株を買収、ソフトバンクが45パーセントの株を持つ親会社になった。これが、2019年6月27日。 その次の手が、子会社となったヤフーと日本のラインの経営統合だった』、「ソフトバンク」と「ヤフー・ジャパン」の関係がよく理解できた。
・『目的は、GAFA、BATHに対抗する「第三極」になること  今年6月の株主総会でヤフーの会長を退任し、完全にヤフーから離れた宮坂学と飲んでいた時、ヤフーの国際化の話になったことがある。 宮坂は「今、世界の人々は、GAFA陣営かBATH陣営のどちらの経済圏に入るかということになりつつある。しかし、その中でアジアの国々でそれなりのプレゼンスをもって出ていっているのがラインだ」と語っていた。 そのことがあったので、私はすぐに、この統合の本当の狙いは、ヤフーのグローバル化にある、と踏んだのだった。 実際、11月18日の記者会見で、川邊健太郎ヤフー社長と出澤剛ライン社長の二人は、はっきりと今回の統合の目的を、「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニー」になることとした。ラインがすでに進出し優勢となっているアジアのタイや台湾、マレーシアのような国々を足掛かりに、米国勢のGAFA(グーグル・アマゾン・フェイスブック・アップル)、中国勢のBATH(バイドゥー、アリババ、テンセント、ファーウェイ)に対抗する第三極としてのグローバル展開が目的と言明したのだった』、「目的は、GAFA、BATHに対抗する「第三極」になること」、「ラインがすでに進出し優勢となっているアジアのタイや台湾、マレーシアのような国々を足掛かり」にしていくとしても、その道は容易なものではなさそうだ。
・『学生全員は「ニュースはラインで見ている」と答えた  川邊社長は、今回の統合は弱いところをお互いに補う、シナジーの効果が高いとも言った。 確かに、SNSを出発点にコマースや決済サービスに広がってきたラインは若年層に強く、パソコン時代からのヤフーは中高齢層に強い。 だが、その中で気になるのは、両社のシナジーが効かず、ほぼ同じ事業を行っている分野だ。 そのひとつにニュースがある。 ヤフー・ニュースは後発のライン・ニュースを常に気にかけていた。私は、慶應SFCで調査型の講座「2050年のメディア」を持っているが、その中でヤフー・ニュースの幹部の取材に立ち会ったことがあった。そのとき、幹部は学生たちに、「ニュースはどのアプリで得ているのか?」と聞いたが、全員が「ライン」と答えた。 「まずラインでメッセージをチェックしてそのまま画面の下にいって、右に指を動かしニュースをタップ、ニュースをチェックする。そう手がもう覚えてしまっている」 こう学生が答えたとき、その幹部は明らかにショックをうけていたように見えた』、若い学生であれば当然だろう。
・『ヤフーからラインに経験ある編集者が次々と移籍  そして、ヤフー・ニュースから次々に経験のある編集者がラインに移籍していっていた。東奥日報からヤフーに転職し、ヤフトピの見出し2万本をつくった編集者の葛西耕は2018年10月末で退社、ラインへ。同じく北国新聞からヤフーに転職した杉本良博も、2019年5月にラインへ移籍した。 彼らは、ヤフーが川邊健太郎体制のもと、メディア企業からデータ企業にはっきりと舵をきったことを見越して移籍していっていた。 そのラインがヤフーと統合する。記者会見の同日開かれた投資家への説明の中で、川邊健太郎は、補完する分野として、フィンテックやコマースを挙げていたが、現在競合している分野についてはとくに分野を示さず「合理化する」と答えていたから、ニュース部門はまさにその対象になるだろう』、「ラインへ移籍した」「編集者」たちは、結果オーライになったようだ。
・『「公共性」のないニュースサイトは長期的な価値をつくれない  ヤフー・ニュースがここまで大きくなった理由のひとつに、「公共性」という創設以来のDNAがある。ヤフー・ニュース・トピックス(ヤフトピ)は今知るべき8本のニュースを表示するキラーコンテンツだが、このヤフトピは、誰が世界のどこでアクセスしようと、同じ8本が並んでいる。 競合する「スマートニュース」や「グノシー」の場合は、ユーザーのログをAIが分析して、そのユーザーが好むニュースが表示されるようになっている。だから私が見ているスマートニュースはあなたが見ているスマートニュースとは違うのだ。 しかも、ヤフトピの場合、8本のうち上に表示される4本は、どんなときでも、政治、経済、国際の硬いニュースが並び、エンタメや芸能はかならず下の4本に配置される。 その理由を、宮坂学は「知らせるべきニュースを知らせる。自分は人々に間違いのない選択をしてほしいと考えていた」と答えていた。スマートニュースやグノシーのようなやりかただと短期のPVはあがるかもしれないが、長期的な価値には結びつかないとヤフーはよくわかっていたのだった』、「ヤフトピ」が「公共性」を売り物にしていたとは初めて知った。統合後はどうなるのだろう。
・『ヤフトピに「ライン・ヤフー統合」のニュースが1本もない  映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』でメリル・ストリープ演じるワシントン・ポスト社主のキャサリン・グラハムの言葉を借りれば、「質(クオリティ)が利益(プロフィッタビリティ)をつれてくる」ことをよく知っていたということになる。 統合後のヤフー・ニュースは、川邊健太郎構想の要、「さまざまなシナジーを効かしていく」という方針の中では、難しい局面を迎えることになる。たとえば、位置情報とペイペイがあわさって店に誘導する、そこまではいい。しかし、これにニュースが連動することになれば当然、ニュースの信頼性や倫理の問題に触れてくる。 何よりもヤフーが創業以来、大切にしてきた「ヤフー・ニュース」の公共性が揺らぐことにならないように、経営陣がしっかりとしたグリップを効かせることが必要だ。 たとえば、現在までのところ、ヤフトピに、ライン・ヤフーの統合のニュースが1本もあげられていないのはどうしたことだろう。 ヤフトピの創設者である奥村倫弘は、かつてニュース部門を率いていた宮坂学に、「ヤフトピはヤフーやスポンサーにとって悪いニュースこそをむしろとりあげる。それが最終的には両者の利益になる」と言い、宮坂は感動していた。 そうした創業のDNAを忘れてはならない』、「創業のDNA」は立派でも、現実に「ライン・ヤフーの統合のニュース」を取上げるのは困難だろう。
・『ヤフーから抜けられるのは「電子有料版」だけ  新聞社や出版社などのコンテンツを提供している側は、これまでも広告料の7割から9割をヤフーにとられてきたが、ヤフーとラインの統合でこのプラットフォームが大きくなることで、情報提供料などの価格交渉でさらに劣勢に立たされることになるだろう。 多くの新聞社や出版社は、経営者がプラットフォーマーの意味を理解せず、ヤフーに記事を出し続けてきたことで抜けられなくなっている。組織が年功序列であり、和をもって貴しとなすので、デジタル部門の収益が一気に下がるような、ヤフーからの引き上げはこれまでできなかった。 読売グループ現社長の山口寿一も、社長室長時代の2000年代後半に、日経、朝日との共同のポータル「あらたにす」の開設に挑んだが、結局、読売をヤフーから抜けさせることは、全社的な理解が得られずできなかった。 こうした中、抜けでていくメディアは、ニューヨーク・タイムズやエコノミスト、そして日本経済新聞のように、そこだけでしか読めない調査型の記事を電子有料版でだすメディアだけだろう。日本の出版社では東洋経済新報社、ダイヤモンド社は早い段階でそのことに気がついて2011年ころから社の組織自体を変えてきている』、「読売グループ現社長の山口寿一も、社長室長時代・・・読売をヤフーから抜けさせることは、全社的な理解が得られずできなかった」、大手新聞にとっては、ヤフーなどへの出稿は麻薬のようなものらしい。
・『川邊ヤフー社長にとって「新たな心踊る物語の誕生」  川邊健太郎は『2050年のメディア』が見本が送られてくるとすぐに読んでいる。 その感想は、「懐かしい」というものだった。川邊健太郎は2000年代半ば以降、新聞社に包囲網をしかれたヤフー・ニュースの舵取りをしたが、そのすさまじい駆け引きも、どこか遠景の過去のフィルムを見ているようだったのだ。 すでにヤフー・ニュースを中心としたメディア企業としての段階は終わり、データ企業として世界にうってでようとする川邊にとっては、今起こっていることが、まさに「新たな心踊る物語の誕生」なのだった。(文中敬称略)』、「新たな心踊る物語」がどのように展開されるか、注視したい。

第三に、11月24日付けZAKZAK「【大前研一のニュース時評】「ヤフー」と「LINE」の一体化は至難の業…違う魂を持つ人たちが、経営統合してうまくいくのか?」を紹介しよう。
https://www.zakzak.co.jp/eco/news/191124/ecn1911240001-n1.html
・『ネット検索などのポータルサイト「ヤフー」などを展開するZホールディングス(HD)とメッセージアプリのLINEの経営統合は、来月に最終契約を締結し、来年10月までに完了させる。それぞれの親会社であるソフトバンクと韓国・ネイバーが50%ずつ出資して新会社を設立し、その傘下にZHDを置いてヤフーやLINEを子会社化する。 利用者はLINEが約8000万人、ZHDのサービスは約5000万人。これにより、通販や金融、SNSを一手に担うトップのIT企業が誕生し、米国の「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)や、中国の「BAT」(バイドゥ、アリババ、テンセント)と呼ばれる巨大IT企業に対抗するというのが狙いだ。 LINEの出沢剛社長は「ネット業界は優秀な人材やデータなどすべてが強いところに集約する構造。2社が一緒になっても米国の大手企業とはケタ違いの差がある」と危機感を述べ、ZHDの川辺健太郎社長は「最強のワンチームを目指していきたい」と抱負を述べた。ただ、2つの違う魂を持つ人たちが、対等の形で折半出費して、うまくいくのだろうか。 ZHDには、eコマース(電子商取引)サービスやポータルサイト運営の「ヤフー」のほか、電子決済サービスの「PayPay」、無料動画配信サイト「GYAO」、電子書籍の販売サイト「イーブックイニシアティブ」、事務用品の通信販売をする「アスクル」、高級ホテルや旅館専門の予約サイト「一休」、そして「ジャパンネット銀行」などがある。 ZHDにカネがあったので、どんどん広げてしまっているのだが、これで一体経営をするのは非常に難しいと思う。すでにアスクルの創業社長を電撃解任するなど、人間性、ソフトスキルには疑問符がついている。下手をすると、急速なM&A(企業の合併・買収)で子会社を抱えすぎて、収拾がつかなくなったRIZAPグループのようになるかもれない』、確かに「アスクルの創業社長を電撃解任」は、私も首を傾げざるを得なかった。
・『例えば、アスクルを利用してくれる顧客企業の社員に対して旅行サービスを考えたとき、そこに一休を組み込もうとしても、高級なホテルばかりでは紹介しづらい。LINEのユーザーもどちらかというと富裕層ではない。いずれの場合も楽天トラベルみたいなところがいいわけ。したがって一つずつ吟味してみるとシナジー(相乗)効果も出しにくいと思われる。 そういう中に、LINEはSNSでは日本一で一本筋が通っているが、マネタイズ(お金に換えるワザ)ではかなり問題を抱えている。しかも、顔は親会社のある韓国の方を今までは向いていた。そういう意味では、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と日本の安倍晋三首相ほど水と油とは言わないが、日本の寄り合い所帯であるヤフー(ZHD)と一体化するのは難しいかもしれない。 ZHDの共同CEOには川辺氏と出沢氏が就き、それぞれ代表権を持つ。やはり経営マインドというのは、台湾のEMS(電子機器受託製造サービス)企業「鴻海精密工業」の郭台銘氏のように、1人の創業者的な人間が構想し、指揮、命令ができるようでないといけない。目標としているアリババやテンセントも創業者とその取り巻きが骨格を作った。ソフトバンクも日本のヤフーも創業社長に恵まれた。 強いものと強いものを足しても、1+1が2にならずに、1・6ぐらいで終わってしまうのもよくあること。今回のケースを見ている限り、ZHDに全ての企画機能を集約でもしない限り、専門店を集めた渋谷PARCOのようになる可能性が高い。そこにワンフロア貸し切りのLINEが大型店として入ってきた。そんな感じで、うまくパズルがハマるようなことにはならないのではないかと思われる』、「ZHDに全ての企画機能を集約でもしない限り、専門店を集めた渋谷PARCOのようになる可能性が高い。そこにワンフロア貸し切りのLINEが大型店として入ってきた」、とは上手い比喩だ。さすが経営コンサルタントの草分けの大前氏らしい冷静な判断だ。統合が上手くいくのか、注視したい。
タグ:ZAKZAK ダイヤモンド・オンライン PRESIDENT ONLINE テンセント ソフトバンクの経営 下山 進 (その13)(ヤフーとLINE統合の裏に ソフトバンク「スーパーアプリ」の野望、ヤフトピよ なぜ統合の話をとりあげない? ラインとの統合で何が変わるか、「ヤフー」と「LINE」の一体化は至難の業…違う魂を持つ人たちが、経営統合してうまくいくのか?) 「ヤフーとLINE統合の裏に、ソフトバンク「スーパーアプリ」の野望」 日常のあらゆるサービスをスマートフォンのアプリ1つで解決する「スーパーアプリ」 あらゆるサービスをワンストップで ペイペイが目指す「スーパーアプリ」構想 ペイペイが目指すのは、単なる決済アプリに留まらず、ショッピングはもとより、ホテルやタクシーの予約から公共料金の支払い、さらには保険や投資まで、あらゆるサービスをワンストップで手掛けることができる存在だ ウィーチャットペイ シェアはアリペイが約50%、ウィーチャットペイは約40%と一気に追い上げた ウィーチャットペイが急成長できた最大の要因は、メッセージアプリ「ウィーチャット」とひも付いていたから キャッシュレス決済は消耗戦 LINEペイ「300億円祭り」で営業赤字524億 「ヤフトピよ、なぜ統合の話をとりあげない? ラインとの統合で何が変わるか」 「ヤフトピはヤフーやスポンサーにとって悪いニュースこそを載せる」 96年の誕生時から「ヤフー」の海外展開はできなかった ヤフー・ジャパンは、96年の誕生時から米国ヤフーとの契約によって、ヤフーの商標をつかった海外展開ができなかった 「コンテンツをつくりたい」という社内の声を抑えてきた あくまでもプラットフォーマーに徹した ヤフーの株を買収、ソフトバンクが45パーセントの株を持つ親会社に 次の手が、子会社となったヤフーと日本のラインの経営統合 目的は、GAFA、BATHに対抗する「第三極」になること ラインがすでに進出し優勢となっているアジアのタイや台湾、マレーシアのような国々を足掛かりに 学生全員は「ニュースはラインで見ている」と答えた ヤフーからラインに経験ある編集者が次々と移籍 「公共性」のないニュースサイトは長期的な価値をつくれない ヤフー・ニュースがここまで大きくなった理由のひとつに、「公共性」という創設以来のDNAがある 8本のうち上に表示される4本は、どんなときでも、政治、経済、国際の硬いニュースが並び、エンタメや芸能はかならず下の4本に配置される スマートニュースやグノシーのようなやりかただと短期のPVはあがるかもしれないが、長期的な価値には結びつかないとヤフーはよくわかっていた ヤフトピに「ライン・ヤフー統合」のニュースが1本もない ヤフーから抜けられるのは「電子有料版」だけ 川邊ヤフー社長にとって「新たな心踊る物語の誕生」 「【大前研一のニュース時評】「ヤフー」と「LINE」の一体化は至難の業…違う魂を持つ人たちが、経営統合してうまくいくのか?」 2つの違う魂を持つ人たちが、対等の形で折半出費して、うまくいくのだろうか ZHDにカネがあったので、どんどん広げてしまっているのだが、これで一体経営をするのは非常に難しいと思う アスクルの創業社長を電撃解任するなど、人間性、ソフトスキルには疑問符 一つずつ吟味してみるとシナジー(相乗)効果も出しにくい LINEはSNSでは日本一で一本筋が通っているが、マネタイズ(お金に換えるワザ)ではかなり問題を抱えている ZHDに全ての企画機能を集約でもしない限り、専門店を集めた渋谷PARCOのようになる可能性が高い。そこにワンフロア貸し切りのLINEが大型店として入ってきた。そんな感じで、うまくパズルがハマるようなことにはならないのではないかと思われる
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ソフトバンクの経営(その12)(なぜ孫正義はWeWorkの投資失敗を認めないのか、巨額債務のソフトバンク 資産下落時に逆回転リスク、「孫正義流」目利き力に不信感 ソフトバンクG投資戦略が裏目で大赤字、ソフトバンク・ショックと世界経済の恐い関係 なぜボロボロでも投資し続けるのか) [企業経営]

ソフトバンクの経営については、10月2日に取上げた。今日は、(その12)(なぜ孫正義はWeWorkの投資失敗を認めないのか、巨額債務のソフトバンク 資産下落時に逆回転リスク、「孫正義流」目利き力に不信感 ソフトバンクG投資戦略が裏目で大赤字、ソフトバンク・ショックと世界経済の恐い関係 なぜボロボロでも投資し続けるのか)である。なお、ヤフーとLINEの統合については、明日取上げる予定だ。

先ずは、ジャーナリストの大西 康之氏が11月1日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「なぜ孫正義はWeWorkの投資失敗を認めないのか 一日でも早く「携帯電話の次」が必要」のうち、無料部分の2頁目までを紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/30535
・『狂気の投資を支えてきた孫氏の「眼力」  孫正義氏率いるソフトバンクグループ(SBG)の先行きに不透明感が強まっている。海外では米シェアオフィス「WeWork(ウィーワーク)」を運営するウィーカンパニーに約1兆円の追加支援を余儀なくされ、国内では子会社のヤフーがショッピング・サイト「LOHACO(ロハコ)」を運営するアスクルの社長と社外取締役を解任、ほぼ同時に前澤友作氏の持ち株を買い取ってファッション・サイトのZOZO(ゾゾ)を傘下に収めた。 ここ半年の出来事は一言で説明できる。「成長神話の限界」だ。 SBGの成長神話の源泉は、何と言っても孫正義氏の「眼力」である。1994年にソフトバンクの株式上場でキャピタル・ゲインを得た孫氏は、その金で米国のコンピューター展示会会社、コムデックスとコンピューター雑誌を得意とする出版社のジフデービスを買収する。2社の買収総額は3100億円で当時のソフトバンクの株式時価総額2700億円を超えていた。 金額的に狂気の投資であり、そもそもなぜ展示会会社と出版社なのか。インタビューで尋ねると、孫氏は不敵に笑ってこう言った。 「コムデックスとジフデービスはアメリカにおける僕の目であり耳なんですよ」 私がこの言葉の意味を理解したのは10年近く後だった』、「狂気の投資を支えてきた孫氏の「眼力」」に陰りが出てきたとすれば、大変だ。
・『社員5、6人の会社にポンっと100億円を出資  孫氏はスタンフォード大学の学生だったジェリー・ヤン氏とデビッド・ファイロ氏が設立した米Yahoo!が上場した1996年、社員5、6人のこの会社にポンっと100億円を出資している。ヤン氏は「今資金は潤沢だから金はいらない」と孫氏の出資を断ったが「あって困るものではない」と金を置いて帰ったという。 2000年には中国の名も無い英語教師が立ち上げた会社に20億円を出資した。その会社「アリババ」は中国のインターネット・ショッピング市場を席巻し、SBGは8兆円の含み益を手に入れた。 孫氏は業界通の間に情報網を持つコムデックスとジフデービスを通じて「掘り出し物」のベンチャーを見つけていた。それらの会社が大化けすることで、SBGは10兆円を超える含み益を手に入れ、その信用力で米携帯大手のスプリントや英半導体のARMを買収した。 投資家の脳裏には今もこの神話が焼き付いている。この1年半のSBGの株価を見れば、投資家の迷いがよく分かる。 SBGが2018年3月期決算を発表した同年5月から9月にかけて、同社の株価は3800円から5700円に上昇した。だがその後、同社が計上した巨額利益の多くが、国際会計基準に基づく未公開企業の評価益であることが嫌気され、再び3500円まで下降する』、今日の株価は4250円と多少戻したようだ。米Yahoo!に「「あって困るものではない」と金(100億円相当)を置いて帰った」、とは剛毅なものだ。「コムデックスとジフデービスを通じて「掘り出し物」のベンチャーを見つけていた」、彼らが探す窓口だったとは初めて知ったが、上手いやり方だ。
・『UberやWeWorkが「大化け」することはなさそう  ところが投資先の配車アプリ大手、ウーバー・テクノロジーズがニューヨーク証券取引所の上場が目前に迫り、ウィーワークの上場日程も決まった2018年12月から19年4月にかけて再び6000円まで上昇する。ウーバーやウィーが第2、第3のYahoo!、アリババになる可能性が出てきたからだ。 しかし公開価格が45ドルだったウーバー株は20ドル台まで下落、ウィーは自分が所有する不動産をウィーにリースしていた自己取引などの疑惑で創業者のアダム・ニューマン氏が辞任。2019年9月としていた新規株式公開(IPO)も延期となり、その後IPOの目論見書に誤りや抜けがあったことも明らかになった。ウーバーとウィーの変調でSBG株は10月末時点で4000円近辺まで落ち込んでいる。 分かってきたのは、ウーバーやウィーが「Yahoo!やアリババのように大化けすることはなさそうだ」ということだ。 ウーバーの創業者、トラヴィス・カラニック氏は2017年、社内でのパワハラ、セクハラや会社がグーグルの自動運転技術を盗用していた問題など、さまざまなトラブルを起こして辞任した。ウィーのニューマン氏は自己取引のほか、自社株の売却や自社株を担保にした借入で7億ドルを調達し、その金でプライベート・ジェットを乗り回していたことなどが投資家の不興を買った。(3頁目以降は有料なので紹介できず)』、「UberやWeWorkが「大化け」することはなさそう」、というのは確かだろう。これからが、正念場だ。

次に、Liam Proud and Karen Kwok両氏が11月11日付けロイターに掲載した「コラム:巨額債務のソフトバンク、資産下落時に逆回転リスク」を紹介しよう(記事中の会社コードは省略)。
https://jp.reuters.com/article/sofbank-breakingviews-idJPKBN1XG0EM
・『孫正義氏が会長兼社長として率いるソフトバンクグループは、ハイテク分野の巨大投資マシーンであり、気前よく重ねた借金が潤滑油の役割を果たしている。同社が抱える資産の価値が高まっていた局面では、借り入れによる経営がうまく機能した。しかし、今後は資産価値が下がって、借金が問題になりかねない。 孫氏が好んで用いる指標に基づくと、ソフトバンクグループの債務負担は、やり繰りが可能に思われる。同氏は、借入金を総資産価値の25%未満にとどめたい考えだ。この総資産には、中国電子商取引最大手アリババの株式や、携帯電話2社、半導体メーカーのArm(アーム)、1000億ドル規模の巨額ファンド「ビジョン・ファンド」が含まれる。 これらの資産価値は、上場株の時価やソフトバンクによる未上場資産の評価を踏まえると2600億ドルに上る。6月末の純債務は450億ドルで、この17%に収まる。手元の現金は少なくとも2年間の社債返済資金をカバーしており、キャッシュフローは6月までの1年間の利払い額の2倍を超える』、表面上は問題なさそうに見えるが・・・。
・『だが、こうした指標で全ての状況が説明されたわけではない。まず初めに、傘下の携帯電話会社である米スプリントと日本のソフトバンクは、合計で約900億ドルを借り入れている。 法的に考えると、両社の債務は返済原資が限定されるノンリコース型なので、ソフトバンクグループは万が一の場合、債権者の追及を免れることができる。とはいえ、孫氏がスプリントとすっぱり手を切るとは想像しがたい。そんなことをすれば、ソフトバンクグループの資産価値の10%強が一気に消滅し、他の子会社による将来の借り入れがより難しくなる。 実際に孫氏は最近、ソフトバンクグループの資産価値を利用して、経営難に陥っている共有オフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィーカンパニーの支援策を打ち出した。債権者は、資金繰りに窮している出資先企業への救済措置は、いわゆる「偶発債務(将来何らかの形で返済義務が生じる債務)」ではないかとみなす傾向にある。 ビジョン・ファンドは、配車サービスの米ウーバー・テクノロジーズなど赤字企業の株式を保有しているという面で、別の重荷も背負っている。 同ファンドの資本のうち約400億ドルは優先株の形になっており、サウジアラビアのパブリック・インベストメント・ファンドといった出資者に年間7%の配当を支払っている。優先株は厳密には債務ではないが、孫氏はソフトバンクグループの株主への利益還元よりも、優先株の配当をきっちりと行わなければならない。 また、ビジョン・ファンドは、一部投資案件について最大41億ドルを銀行から借り入れることができる契約に調印し、優先株の配当にも活用されている。その点でも資産価値が急落すれば、事態悪化に拍車が掛かる』、「サウジアラビア」の出資「のうち約400億ドルは優先株の形」、これは債務に近い性格だ。こうしてみると、実態的には債務負担は重そうだ。
・『最後に、孫氏自身の問題がある。ブルームバーグの報道によると、同氏は個人的な借り入れの担保として、保有しているソフトバンク株180億ドル相当の38%を差し入れている。ビジョン・ファンドへの投資資金としてソフトバンクの幹部・社員に提供された総額50億ドルの融資のほとんども、孫氏向けだ。つまり孫氏とソフトバンクグループはともに、ビジョン・ファンドのパフォーマンスに命運が左右される側面が強まっている。 孫氏が定義する狭義の純債務で判断しても、ソフトバンクグループの借り入れ負担は、見た目よりも重い。公式に発表している総資産有利子負債比率(LTV)は、かさ上げされた資産が前提になっているのだ。 例えば、アリババの持ち分26%について、処分すれば最大で30%の税率が課せられてもおかしくないにもかかわらず、時価の1200億ドルのままで評価している、とバーンスタインのアナリストチームはみている。 株式市場の投資家は適切に、より懐疑的な見方をしており、ソフトバンクグループの時価総額は、債務を差し引いた後の総資産価値の38%程度に過ぎない。 ソフトバンクグループの今後の利払い能力も、見かけほど堅固ではない。6月までの1年間に傘下企業から受け取った現金は45億ドル前後で、約21億ドルの債務返済費用を十分に賄えた。 ただ、現金の出所は2つだけだ。1つ目はビジョン・ファンドからの資産管理手数料と半導体企業・エヌビディアなどの株式売却益の20億ドル。2つ目は携帯電話子会社・ソフトバンクが配当金として支払った25億ドルだ。 ウィーワークの上場中止でハイテク企業の新規株式公開(IPO)に対する需要が冷え込んだことから、ビジョン・ファンドからの現金納付はもはやほとんど当てにできない。 そこで孫氏が携帯電話子会社からの配当金だけに依存するようになれば、余裕は乏しくなる。6月までの1年間のソフトバンクグループの利払い費は、携帯電話子会社から受け取った配当金の82%に達するからだ。リフィニティブのデータに基づくと、ソフトバンクグループは、向こう3年間で債務返済予定額が140億ドルに急増するという逆風にも見舞われる。 では、孫氏は現金が必要になった場合、何ができるのか。良いニュースは、流動性のある資産に不自由はしないことだ。保有するアリババ株の4%を現在の価格で売れば、税率30%と仮定しても、来年から2022年までに満期が到来するソフトバンクグループの全社債の返済資金が確保できる。2016年に320億ドルで買ったアームなどの未上場資産を手放す方法もある。 悪いニュースは、やむを得ない形の資産売却が、売り手にとって満足のいく価格になるケースがほとんどないことだろう。ソフトバンクグループはアリババの圧倒的な大株主なので、売却に動けばアリババ株の需給自体を崩してしまう。 一方、資産価値が下落するのに伴って、借り入れによって投資を拡大するという孫氏の戦略が裏目に出てくるだろう。ソフトバンクグループの純債務は、企業価値のほぼ5分の2に上る。したがって保有資産の価値が20%目減りすれば、株価は33%程度下がるはずだ。その時点で、孫氏の巨大な投資マシーンは逆回転し始める』、「逆回転」すれば大変なことになるので、要注意のようだ。

第三に、11月14日付けダイヤモンド・オンライン「「孫正義流」目利き力に不信感、ソフトバンクG投資戦略が裏目で大赤字」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/220491
・『ソフトバンクグループが、10兆円規模の投資ファンド事業で損失を出し、7000億円規模の四半期赤字を計上した。世界中のユニコーン企業を買いあさるという巨大ファンドの投資手法は岐路に立たされている。 「私自身の投資の判断がまずかった」。6日にソフトバンクグループ(SBG)の決算説明会に登壇した孫正義会長兼社長の「反省」の弁で示されたのは、武器としてきた自身の「目利き」への懸念だ。 10兆円の投資枠を持つ「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の損失で、SBGの2019年4~9月期決算の営業損益は156億円の赤字となった。前年同期から1兆4000億円を超える記録的な落ち込みだ。 この要因は、シェアオフィス「ウィーワーク」の運営会社である米ウィー・カンパニーへの巨額投資にある。 10年に創業したウィーは、ビルのワンフロアや1棟を丸ごと借りて、それを不特定多数の利用者に転貸する不動産業が基本的なビジネスモデルだ。世界29ヵ国に528拠点を構え、会員数は52万人以上だ。事業は年々拡大を続けてきたが、創業から9年の間に利益は出していない。 ウィーのシェアオフィスの貸出先は主にスタートアップ企業で、会員同士の交流を深める仕掛けを施して、一種のコミュニティーをつくり出すのが売り。そうした交流が新しい価値を生み出すといううたい文句で普通の不動産会社とは異なるビジネスモデルとされ、高い企業価値が付けられてきた。 この企業価値を演出したのがSBGとビジョン・ファンドの巨額資金に他ならない。赤字のベンチャー企業にすぎないウィーに資金を注ぎ続け、9月末時点の累計投資額は103億ドル(約1.1兆円)に上っている。今年1月にはウィーの企業価値は470億ドル(約5兆円)に達したが、その後の上場準備で転機を迎える』、「ウィーのシェアオフィスの貸出先は主にスタートアップ企業」、であれば、ブームが去れば一気に業績が悪化するリスクがあり、通常の不動産賃貸業よりはるかにリスクが大きいようだ。
・『目論見書などでビジネスモデルの将来性に疑念が深まったほか、ウィー創業者のアダム・ニューマン氏の公私混同の経営や薬物疑惑などの問題が明るみに出た。さらに、ニューマン氏に普通株の20倍の議決権を割り当てるという計画も明らかとなり、9月末に予定していた上場が撤回に追い込まれた。 ウィーの9月末の企業価値は78億ドル(約8400億円)まで急落。SBGは9月末までにニューマン氏を退任に追い込んだが、巨額の評価損を計上することになった。 結果、7~9月期(19年度第2四半期)の投資ファンド事業の営業損失は9703億円に達し、SBGの営業損失は7044億円、純損失は7002億円に上った。いずれも1981年の創業以来、最大の四半期赤字だ。 孫社長は、今回の損失計上の最大の反省として「ウィーの価値を高く見過ぎた」と振り返ると同時に、ニューマン氏の暴走を食い止めることができなかったガバナンスの問題を指摘した。 だが、そのニューマン氏の奇抜さに入れ込み、持ち上げてきたのは孫社長自身に他ならない。 もともとソフトバンクは、孫社長自身の目利きによるベンチャー投資で成長してきた。96年には、米ヤフー創業者のジェリー・ヤン氏とデビット・ファイロ氏の2人に惚れ込み、社員が5~6人だった同社に100億円を出資する決断を下した。また、2000年には、創業間もない中国のアリババのジャック・マー氏と面談し、会って10分もたたずして20億円の出資を即断即決したことが、現在の13兆円に上るアリババの保有価値につながっている。 だが、ウィーについてはニューマン氏が経営に失敗したのは明らかだ。この経営者に賭けた孫社長の投資判断には疑問符が付く。今後のビジョン・ファンドの投資については、フリーキャッシュフローを重視して、創業経営者のガバナンスを評価する基準を設ける方針だ。孫社長の目利きに頼り切った投資スタイルに規律を導入する狙いがある。 一方でSBGは、これだけの損失を計上したウィーについて損切りすることなく、全面支援に乗り出す』、「孫社長の目利きに頼り切った投資スタイルに規律を導入する」、とはいうものの、そんなに簡単に出来る訳はなさそうだ。
・『「第2のウィー」も? ユニコーン買いあさる投資手法の曲がり角  その理由として、かつてウィーと締結した株式買い増しの契約の存在がある。来年4月に15億ドルのワラント(株式買取権)を購入する契約で、ウィーが経営危機に陥った後もこの義務を解消する交渉は受け入れられず、株式転換価格の交渉に切り替えざるを得なかったのが実態だ。 こうしてSBGはワラントの購入義務を前倒しで履行する代わりに株式の転換価格を引き下げ、保有する株数を増やして経営の関与を高める判断にかじを切った。 金融支援のパッケージは、15億ドルのワラントの購入に加え、最大30億ドルの発行済み株式の公開買い付けとともに、新規に債券や信用保証で50億ドルの資金供給も実施する予定で、最大95億ドル(約1兆円)となる。 ベンチャー企業の支援に巨額の資金を投じる異例の判断について孫社長は「今回は例外」と弁明したが、今後も「第2、第3のウィー」が出てくる懸念は拭えない。 7~9月期は、未上場のウィーだけでなく、ライドシェア大手の米ウーバー・テクノロジーズ、ビジネスチャットアプリの米スラック・テクノロジーズなど上場企業の株価下落により、計25銘柄で1兆1276億円の評価損を計上した。今後、他の投資先の企業価値も急落するリスクはくすぶるが、孫社長自身も「投資に10勝0敗はあり得ない。同じような懸念はある」と認める。 9月末時点で、ビジョン・ファンドの投資先は88社で、累計投資額は8.2兆円。すでに1号ファンドは投資枠10億円に達して新規投資は終了。予定通りに2号ファンドを立ち上げる計画で、SBGは自己資金で一部の運用を開始した。だが、他の資金の出し手は慎重にならざるを得ない。すでに複数の投資家が資金拠出の見直しに踏み切ったもようだ。 ウィーは、ウーバー(5月10日に上場)や同じくライドシェア大手の中国・滴滴出行(DiDi)、民泊大手のエアービーアンドビーと並ぶユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)の代表だった。今回の損失計上により、世界中のユニコーン企業に巨額の資金をつぎ込んで企業価値を引き上げるというビジョン・ファンドの投資手法は曲がり角を迎えている』、ソフトバンクGはもともとベンチャーファンド的な性格があったのが、ビジョン・ファンド創設でますますその性格を大きく強めた。「曲がり角を迎えている」のは「ビジョン・ファンドの投資手法」だけでなく、ソフトバンクGの基本戦略そのものの筈だ。

第四に、元銀行系エコノミストで、法政大学大学院 教授の真壁 昭夫氏が11月18日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「ソフトバンク・ショックと世界経済の恐い関係 なぜボロボロでも投資し続けるのか」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/30809
・『大赤字で本当に反省しているのか  11月6日、ソフトバンクグループ(ソフトバンク)が2019年7~9月期の連結決算を発表した。それによると、最終損益は約7002億円の赤字だった。これは、四半期ベースで過去最大の赤字だ。グループを率いる孫氏は「大赤字で反省している」と述べた。 巨額の損失が発生した背景の一つには、ソフトバンクがかなり急いで成長を追求してきたことがある。同社は、世界有数のIT先端企業を糾合することを目指している。ただ、成長にこだわるあまり、やや高値での株式取得が重なったことに加えて管理体制が甘くなってしまった。そうした事態は、いってみれば“急成長に対するコスト”といえなくもない。 また、ここへきて世界経済に関する不確定要素が増えていることもマイナスの要因として働いた。世界全体で非製造業は安定を保っているものの、米国の保護主義的な政策の影響もあり、サプライチェーンの分断などで製造業の景況感が不安定化している。 米中貿易摩擦の影響などを考えると、当面、短期間で投資家のリスク許容度が大きく高まる展開は期待しづらい。そうした状況下、ソフトバンクが成長エンジンのパワーを維持できるか注目される』、政治経済面も踏まえて分析するとはさすがだ。
・『経営は「ボロボロ」  足許、ソフトバンクの経営は厳しい状況に直面している。7~9月期の業績は、孫氏自ら『ボロボロ』と評するほどだ。とくに、ソフトバンクが重視してきた事業戦略が、想定された成果を実現できなかった事態は深刻といわざるを得ない。 ソフトバンクは、未上場のスタートアップ企業に積極的に投資を行い、新規の株式公開(IPO)を実現して株を売却し、利得を手に入れることで成長(企業価値の増大)を目指してきた。具体的に、ソフトバンクは、創業者である孫正義氏の企業家(創業者)の「資質を見極める力=眼力」によって買収や新興企業への出資を重ね、業績拡大を実現した。 さらなる成長を目指し、ソフトバンクは10兆円規模の“ビジョン・ファンド”を設定し、IT先端企業やスタートアップ企業への出資などを積極的に進めてきた』、「ソフトバンクが重視してきた事業戦略が、想定された成果を実現できなかった事態は深刻といわざるを得ない」、その通りだ。
・『積極的な投資より大切なこと  やや気になることは、ソフトバンクが成長を追求するあまり、企業家の資質や新興企業の体制を冷静に見極めることを軽視してしまった部分があると考えられることだ。ソフトバンクは米オフィスシェア大手ウィーワークを運営するウィーカンパニーのコーポレート・ガバナンス上の問題点を十分に把握できなかった。 ウィーカンパニーのIPOが延期され、資金繰り懸念が高まり、企業価値が毀損された。この結果、7~9月期、ソフトバンクはウィーカンパニーへの投資から約82億ドル(約8900億円)の損失(評価引き下げ)を被った。 ソフトバンクの投資戦略は、利害関係者の不安も高めている。当初、ソフトバンクはサウジアラビア政府などから出資を募り、第2号のビジョン・ファンドの運営を開始しようとしたが、ウィーカンパニーのIPO延期などを受け、サウジアラビアは第2号ファンドへの出資を決められていないとみられる。 第2号ファンドはソフトバンクの資金を用いて投資を進めている。足許、ウィーカンパニーがリストラを進めていることなどを考えると、ソフトバンクの積極的な投資スタンスは冷静に見直されるべき時を迎えているといえるだろう』、「第2号ファンドへの出資」がソフトバンクG以外には期待できなくなれば、「積極的な投資スタンス」は自ずから見直さざるを得なくなるだろう。。
・『ソフトバンクと世界経済の相関関係  ソフトバンクの業績悪化につながった背景の一つとして、「世界経済の基礎的な条件=ファンダメンタルズ」が大きく変化してきたことは見逃せない。 2017年5月にソフトバンクが第1号のビジョン・ファンドを設定した時、世界経済は比較的堅調に推移していた。とくに、米国のGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)をはじめ、世界のIT先端企業の成長期待は高かった。 半導体業界の一部では、人工知能(AI)の開発と実用化に向けて、高性能のICチップやDRAMなどのメモリー需要が飛躍的に高まるという強い期待もあったほど、先行きへの楽観が多かった。 その中で、ソフトバンクはAIが人間の知性を超越する時代を見据え、先端テクノロジーなどに強みを持つ企業への投資を急速に拡大した。その考えは、ITを駆使して石油依存度を低下させようとしたサウジアラビア政府などの共感を得ることもできた。 同年12月に米トランプ政権が1.5兆ドル規模の減税を実施し、世界経済への楽観が追加的に高まったことも、ソフトバンクへの期待を高めただろう』、孫社長がトランプ大統領と面談したのも記憶に新しいところだ。
・『熱気に巻き込まれ、冷静さを欠いた  しかし、2018年に入ると、中国経済の減速が鮮明化した。共産党政権による景気刺激策にもかかわらず中国経済が持ち直す兆しは見られない。中国経済は成長の限界を迎えたと見られる。 また、米国は中国に制裁関税を賦課し、米中貿易摩擦が世界経済を下押ししはじめた。世界的にサプライチェーンが寸断され、製造業の景況感が急速に悪化した。世界的なデータセンター向けの投資減少なども重なり、世界の半導体市況も悪化した。 7~9月期の業績を見る限り、ソフトバンクには、一時の“熱気”に巻きこまれ、変化を冷静に見極めることが難しかった部分があったとみられる。そのため、冷静に投資先企業のビジネスモデルや創業者の資質を冷静に見極めるよりも、積極的な投資拡大を優先してしまったようだ。 それは、決算会見にて孫氏がウィーカンパニーへの出資が「高すぎた」と反省の弁を述べたことから確認できる』、「一時の“熱気”に巻きこまれ、変化を冷静に見極めることが難しかった部分があったとみられる」、孫社長を「忖度」して多少遠慮気味な表現だが、その通りだ。
・『景気が一段と減速する可能性も  当面、ソフトバンクの業績がどうなるかは不透明の部分が残る。現在、個人消費を中心とする米国経済の落ち着きが、世界経済を支えている。今すぐに世界経済が大きく落ち込む可能性は低い。世界的に株価も高値圏を維持している。アリババをはじめとするソフトバンク保有株式の評価額は約28兆円にまで上昇している。 ただ、世界経済の先行きは楽観できない。米中の貿易摩擦にはIT先端分野での覇権争いや中国の産業補助金など、短期間での解決が難しい分野も含まれる。米国政府内には、米国企業などによる対中投資を制限すべきとの意見もあるようだ。米中間の制裁・報復関税がどうなるかも見通しづらい。 景気循環の観点から見ても、米国では企業の設備投資が鈍化している。景気が一段と減速する可能性は軽視すべきではない。中国では生産・投資・消費が低迷し、さらに景気が落ち込む恐れもある。当面、ソフトバンクを取り囲む事業環境の不確実性は高まりやすい。 一方、長い目で考えるとソフトバンクの成長期待が高まる展開もあるだろう。世界全体でAIが活用される分野は増えるだろう。企業や家庭など様々な経済活動の場において、スマートスピーカーやAIを搭載した機器が使われ、“IoT(モノのインターネット化)”に関する取り組みも加速すると期待されている』、「長い目で考えるとソフトバンクの成長期待が高まる展開もあるだろう」、確かにその可能性は否定できないが、「当面、ソフトバンクを取り囲む事業環境の不確実性は高まりやすい」、この当面の嵐を乗り切れるかが、最大の注目点の筈だ。
・『不透明要素が残る今後の業績見通し  このように考えると、ソフトバンクが傘下および投資先企業の成長を取り込むには相応の時間がかかるだろう。それまで、ソフトバンクは安定的に収益を獲得し、事業や経済環境の変化といったリスクへの抵抗力をつけなければならない。 そのために、ソフトバンクは収益基盤の整った企業との経営統合を重視しはじめたようだ。ヤフーを運営する傘下のZホールディングスが、無料通信アプリ大手のLINEと経営統合に関して協議しているのはその表れといえる。 現時点で、そうした取り組みの実現を含め、ソフトバンクの収益にどのような変化があるかを予想することは容易ではない。同時に、ソフトバンクはスタートアップ企業などへの投資を重視する姿勢を崩していない。ソフトバンクの業績がどうなるか、不透明な部分は多いと考えられる』、「ヤフーを運営する傘下のZホールディングスが、無料通信アプリ大手のLINEと経営統合」、については明日取上げる予定である。ご期待を!
タグ:ロイター ダイヤモンド・オンライン PRESIDENT ONLINE ソフトバンクグループ 真壁 昭夫 ソフトバンクの経営 大西 康之 (その12)(なぜ孫正義はWeWorkの投資失敗を認めないのか、巨額債務のソフトバンク 資産下落時に逆回転リスク、「孫正義流」目利き力に不信感 ソフトバンクG投資戦略が裏目で大赤字、ソフトバンク・ショックと世界経済の恐い関係 なぜボロボロでも投資し続けるのか) 「なぜ孫正義はWeWorkの投資失敗を認めないのか 一日でも早く「携帯電話の次」が必要」 狂気の投資を支えてきた孫氏の「眼力」 ウィーカンパニーに約1兆円の追加支援 「成長神話の限界」 米国のコンピューター展示会会社、コムデックスとコンピューター雑誌を得意とする出版社のジフデービスを買収 社員5、6人の会社にポンっと100億円を出資 米Yahoo!が上場した1996年、社員5、6人のこの会社にポンっと100億円を出資 中国の名も無い英語教師が立ち上げた会社に20億円を出資した。その会社「アリババ」 コムデックスとジフデービスを通じて「掘り出し物」のベンチャーを見つけていた スプリントや英半導体のARMを買収 UberやWeWorkが「大化け」することはなさそう Liam Proud and Karen Kwok 「コラム:巨額債務のソフトバンク、資産下落時に逆回転リスク」 同社が抱える資産の価値が高まっていた局面では、借り入れによる経営がうまく機能した 後は資産価値が下がって、借金が問題になりかねない 傘下の携帯電話会社である米スプリントと日本のソフトバンクは、合計で約900億ドルを借り入れている ノンリコース型 ビジョン・ファンド 資本のうち約400億ドルは優先株の形 実態的には債務負担は重そうだ 孫氏自身 個人的な借り入れの担保として、保有しているソフトバンク株180億ドル相当の38%を差し入れている ソフトバンクグループの純債務は、企業価値のほぼ5分の2に上る。したがって保有資産の価値が20%目減りすれば、株価は33%程度下がるはずだ。その時点で、孫氏の巨大な投資マシーンは逆回転し始める 「「孫正義流」目利き力に不信感、ソフトバンクG投資戦略が裏目で大赤字」 7000億円規模の四半期赤字を計上 シェアオフィス「ウィーワーク」の運営会社である米ウィー・カンパニーへの巨額投資 ウィーのシェアオフィスの貸出先は主にスタートアップ企業 上場が撤回に追い込まれた。 ニューマン氏を退任に追い込んだが、巨額の評価損を計上 孫社長の目利きに頼り切った投資スタイルに規律を導入する狙い 「第2のウィー」も? ユニコーン買いあさる投資手法の曲がり角 「ソフトバンク・ショックと世界経済の恐い関係 なぜボロボロでも投資し続けるのか」 大赤字で本当に反省しているのか 経営は「ボロボロ」 ソフトバンクが重視してきた事業戦略が、想定された成果を実現できなかった事態は深刻といわざるを得ない 積極的な投資より大切なこと ソフトバンクが成長を追求するあまり、企業家の資質や新興企業の体制を冷静に見極めることを軽視してしまった部分がある ソフトバンクと世界経済の相関関係 熱気に巻き込まれ、冷静さを欠いた 景気が一段と減速する可能性も 長い目で考えるとソフトバンクの成長期待が高まる展開もあるだろう 当面、ソフトバンクを取り囲む事業環境の不確実性は高まりやすい 不透明要素が残る今後の業績見通し
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ソフトバンクの経営(その11)(純利益1兆円のソフトバンク「法人税ゼロ」を許していいのか? 孫さんは「日本は後進国」と言いますが…、ウィーワーク創業者の辞任 小さすぎて遅すぎる、ソフトバンク ウィーワーク追加出資で損失泥沼化も) [企業経営]

ソフトバンクの経営については、5月19日に取上げた。今日は、(その11)(純利益1兆円のソフトバンク「法人税ゼロ」を許していいのか? 孫さんは「日本は後進国」と言いますが…、ウィーワーク創業者の辞任 小さすぎて遅すぎる、ソフトバンク ウィーワーク追加出資で損失泥沼化も)である。

先ずは、9月30日付け現代ビジネス「純利益1兆円のソフトバンク「法人税ゼロ」を許していいのか? 孫さんは「日本は後進国」と言いますが…」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/67498
・『消費増税のうえ、医療費・介護費の負担増が見込まれる日本。一方で、過去最高売り上げのソフトバンクは1円も法人税を払っていない。金持ちだけがより儲かるこの国、いくらなんでもおかしくないか』、節税策もまさにここに極まれりだ。
・『社内で株を回し租税回避  「日本はAIにおける開発分野で、完全に後進国になってしまった。このまま目覚めないと、やばいことになる」――。 ソフトバンクG(グループ)主催のイベント「ソフトバンクワールド2019」(7月18日)で、基調講演に登壇した孫正義氏は、こう言って嘆いてみせた。 AIや自動運転など最新の技術がテーマとなったこの講演。「日本企業の戦略は焼き直しばかり」「衰退産業にしがみついている」と厳しい発言が増えている近ごろの孫氏だが、この日も冒頭のように、日本経済の現状を辛辣な言葉で一刀両断。テクノロジーについては「日本は後進国」と言い切った。 ソフトバンクGは'16年には英半導体大手アーム社を3.3兆円で買収、'18年には主幹事業であった携帯キャリア事業を子会社化した。こうした流れの中でいま、孫氏がもっとも注力しているのは、SVF(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)なる投資事業だ。 単なる通信サービス企業から、日本最大規模の10兆円を運用する投資ファンドへと変貌を遂げようとしている。 孫氏は同講演で次のようにも語っている。 「『孫さんは日本の会社にちっとも投資していない。何か思いがあるのか』とよく聞かれる。悲しいことに、日本には世界でナンバー1といえるユニコーン(創業10年以内、評価額10億ドル以上の未上場企業)が少ないのが現実で、投資したくても投資できない」 もはや日本には、投資する価値がある企業がないとすら言う孫氏。カリスマの言葉に同調し、にわかに国内産業の未来を憂い始める向きもあるようだが、それ以前に、私たちが知っておくべき事実がある。 ソフトバンクは国内の投資云々以前に、もっとも大切なおカネを日本に払っていない。それは、莫大な利益に対する「法人税」である。 2018年3月期の決算で、ソフトバンクGの売上高は約9兆1587億円の過去最高額、純利益は1兆390億円を計上していた。ところが、これほど儲けている企業が、日本の国税に納めた法人税は、なんと「ゼロ」。実質的に1円も払っていないというのだ。 単純計算はできないが、本来であれば1000億円単位の法人税を国に納めていてもおかしくないはずのソフトバンク。孫氏は合法的な「租税回避」を計画し、国税の手を逃れたのだ。 「ポイントになるのは、'16年に買収したアーム社の株式です。ソフトバンクGはこの株式の一部を、グループ内のSVFに移管しました。 この移管で会社側に損失があるわけではないのですが、税務上の処理ではアーム社株の時価評価額が取得価格を1.4兆円下回り、同額の『欠損金』が生じたという計算がなされた。 その結果、ソフトバンクGの'18年3月期決算は税務上、1兆円超の黒字が消えたうえ、赤字扱いになったのです」(税理士の奥村眞吾氏)』、「純利益は1兆390億円を計上」したが、「アーム社株の時価評価額が取得価格を1.4兆円下回り、同額の『欠損金』が生じたという計算」で、「赤字扱いになった」というが、非上場になった「アーム社株の時価評価額」はどのように算出したのだろう。
・『開き直った孫さん  東京国税局は欠損金のうち4000億円は'18年3月期に計上できないと指摘し、ソフトバンクGもこれに応じて修正申告している。それでも、1.4兆円という欠損金の処理額があまりにも大きく、追徴課税は生じなかった。 簡単に言えば、買収した企業の株を社内で売り買いして作った損を計上して、課税利益を作らないようにしている。法の抜け道を利用する形で、公表利益と税務利益がかけ離れた、数字の「マジック」を作り上げたのだ。 「かつて日本IBMが米国の親会社との事業再編における株取引で損を発生させ、法人税の圧縮を目論んだのではないかと国税が指摘し、裁判に発展したことがありました。'16年に判決が出たこの裁判は、IBMの勝訴でした。 今回のソフトバンクGの件のスキームや国税の調査の詳細はわかりませんが、IBM事件のような判例から、海外企業との株取引をうまく使えば節税になるのではないかと判断した可能性があります」(公認会計士で税理士の深見浩一郎氏) 国税の修正申告にも応じたうえで法人税がゼロというのだから、ソフトバンク側からすればむしろ「適法」のお墨付きをもらった格好になる。 こうした結果を見込んでか、今年6月19日のソフトバンクG株主総会で孫氏は、開き直ったかのような発言をしている。 「世界の投資家は世界のルールのなかで色々な節税を合法的にやっている。合法的な範囲のなかである程度節税を図っていく」 ソフトバンクは租税回避の「前歴」がある。'13年に米携帯電話大手スプリント社、'14年に米携帯卸売り大手ブライトスター社を買収した後、2社の売り上げに関してタックスヘイブンで知られるバミューダ諸島を経由させ、税負担を軽くして利益を増やそうとした。 '13年~'16年の4年間で、申告漏れと指摘された金額は約939億円。もしこれが「違法」とみなされていれば、とんでもない金額のごまかしとして糾弾されるところだった。 だが、国税は「意図的な税逃れではない」と判断。ペナルティーである重加算税は課されなかったのだ。この国は税金を納めなくても怒られない。そう、孫氏は味を占めていることだろう。 こうした孫氏の手法について、経済学者の野口悠紀雄氏は大きなため息をつく。 「今回の件のアーム社株は非上場株で、しかも子会社への売却です。ソフトバンクGが算出した時価評価額が適正なものかどうか、客観的に知ることは私たちにはできません。 ですから、国税がこれを正しく評価し、きちんと追及できたのか疑問が残ります。 法律的に見れば問題はないのかもしれませんが、日本を代表する企業が、世間一般から疑いの目をかけられるような税金の処理を行うのはいかがなものか、と思います。 携帯会社としてのソフトバンクは消費者に商品を直接販売して利益を出している企業ですから、信頼を失っては大問題です。信頼を失うようなことはないと思っているのでしょうか」 税金ゼロということは、利用者がソフトバンクにいくら携帯料金を支払ったところで、医療費や介護費などに還元されるおカネは1円もないということだ』、「今回の件のアーム社株は非上場株で、しかも子会社への売却です。ソフトバンクGが算出した時価評価額が適正なものかどうか、客観的に知ることは私たちにはできません。 ですから、国税がこれを正しく評価し、きちんと追及できたのか疑問が残ります」、大蔵省出身の野口悠紀雄氏の言うことを信じる他なさそうだ。
・『税務署もどうかしている  「企業は社会の公器である」というのは、パナソニック創業者・松下幸之助の基本理念である。企業の利益ではなく社会の利益を追い求め、公共的責任を果たすことが、会社の役割であるという考え方だ。 ソフトバンクは研究開発に投資し、社会に貢献していると言うかもしれない。たしかに、東日本大震災が発生した時にいち早く100億円の寄付を申し出たり、「孫正義育英財団」を設立して優秀な人材を発掘したり、「表向き」の社会貢献は積極的に進めているように見える。 だが、「税金を払う」という基本中の基本の義務を果たしていなければ、単なる宣伝活動にしか映らない。「日本は後進国になっている」と偉そうに言われても、「お前が言うな」という話だ。 サラリーマンや年金暮らしの高齢者でも、少しでも生活を楽にするために、税負担を軽くするためのさまざまな控除を利用したり、相続対策を講じる人は多いだろう。 こうした個人のささやかな税金対策に関して、税務署は血眼になって調査する。少しでも税金を納めずにいると、督促状が届き、延滞金が加算され、場合によっては問答無用で金品を差し押さえられるなど、徹底的な追及を受けてしまう。 その一方で、明らかに「税逃れ」している大企業がなんのお叱りもないのは、いったいどういうことなのか。 ソフトバンクGは、あくまで表向きは過去最高売り上げだ。そのため、役員報酬や株主配当は高くなる。 孫氏のCEOとしての年間報酬は2億2900万円で、企業規模から考えると控えめと言えるが、自身でソフトバンクG株を2億3000万株以上保有している。 ざっくり計算すれば、年間100億円以上の配当が受けられるうえ、その配当収入も「キャピタルゲイン課税」の扱いになり、給料や事業収入にかかる所得税の半分程度で済んでしまう。 要するに、ソフトバンクが税を圧縮して株価を維持していれば、孫氏の懐に大金が転がり込む仕組みになっているのだ。 孫氏だけではなく、ソフトバンクG株を保有する大口の個人投資家やヘッジファンドも同じように、同社が節税すればするほど懐に入ってくる額が大きくなる。そのため、株主総会で同社の節税スキームに異を唱える者が出ることもない』、ソフトバンクGに限らず、株主は「節税」を大歓迎するので、「株主総会」は最もふさわしくない。マスコミが叩けば、効果があるだろうが、ソフトバンクGと喧嘩をするようなマスコミはないだろう。
・『これじゃ日本が終わるよ  一方で、市井の一般国民や高齢者はどうだろうか。いくばくかの貯金をやりくりして暮らす高齢者は、国から言われるままに税金を吸い上げられる。かといって、少しでも稼ぎを増やそうと働きに出ると、様々な控除を外され、結果的に税負担増になる。 それどころか、政府や財務省は仕方のないことだと言わんばかりに高齢者の負担増を訴え、医療費や介護保険料の値上げが社会保障改革の指針に組み込まれている。 こうした幾重もの課税に加えて、今年10月には消費増税も控えているわけだ。元国税調査官の大村大次郎氏は言う。 「日本の法人税は世界的に高額と言われていますが、ありえないほど抜け穴が多く、タックスヘイブンレベルとさえ言うことができます。 『金持ちから1円の税金を取るのは、貧乏人から1万円を取るより難しい』と言ったりしますが、本来であれば消費増税をするよりも、こうした法人税の抜け穴をふさいでいくことで増収を見込むべきだと思います」 消費増税による家計への負担は4.6兆円と見られている。とてつもない金額だ。だが、'89年から導入された消費税の税収を私たちがこれまで享受してきたかと言えば、そういうわけではない。 立正大学法学部客員教授の浦野広明氏は言う。「消費税が導入されてから、これまでに徴収された消費税収の累計は349兆円におよびます。一方で政府は、法人3税(法人税、法人住民税、法人事業税)の優遇を進めてきました。この法人3税の減税額は'17年度までの累計で、実に281兆円にのぼるのです。 消費税は逆進性が高く、高齢者をはじめとする所得が高くない世帯のほうが、重い負担を強いられる税金といえます。 その消費税の8割近くを、法人税の減税で食いつぶしてしまった。税制的には、大資本を持った企業であればあるほど有利な状況で、むしろ格差を容認する仕組みを政府は作っているとさえ思えます」 こうした我が国の現状は、はっきり言って「異常」だ。タックスヘイブンの活用や租税回避は外国で横行しているイメージがあるが、実際には違う。日本だけが、ソフトバンクのような大企業の「税逃れ」に対して見て見ぬふりをしている。 前出・奥村氏は次のように言う。 「G20会議では近年、『低税率国や租税回避地を利用した脱税に近い方法は、企業のモラルとして禁止しなければならない』と決議しています。 また、ジェフ・ベゾス氏がCEOを務める米アマゾンも税逃れの常習犯で有名ですが、トランプ大統領がベゾス氏を名指しで批判し、苦言を呈したこともありました。 こうしたことを鑑みると、世界では法人の税逃れに否定的な風潮に向かっていると言えます。そのなかで、意図的に租税回避を行っている孫氏のやり方は、もっと日本で取り沙汰されてもおかしくないと思います」 なけなしの年金から安くない携帯料金を、ソフトバンクに払っている人もいるだろう。そうして得た儲けは、すべて彼らの懐に入り、税金として世の中に還元されることはない。 重税にあえぐ庶民から、さらにカネを吸い上げるだけの企業ばかりになったら、それこそ日本は終わりだ』、「「消費税が導入されてから、これまでに徴収された消費税収の累計は349兆円・・・法人3税の減税額は'17年度までの累計で、実に281兆円・・・消費税の8割近くを、法人税の減税で食いつぶしてしまった」、しかも法人税減税分は、投資よりも内部留保蓄積に回っているというのでは、余りの法人優遇だ。

次に、9月26日付けダイヤモンド・オンラインが米ウォールストリートジャーナル記事を転載した「ウィーワーク創業者の辞任、小さすぎて遅すぎる」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/215765
・『米シェアオフィス大手ウィーワークの共同創業者アダム・ニューマン氏が引きずり下ろされたが、もう手遅れであり、これだけではどうにもならない。 ニューマン氏のおおらかな個性に後押しされ、同社は並外れた企業価値を持つまでに成長した。だが市場の力がある時点でそれを現実に引き戻すのは必然だった。 もし成長の途上でニューマン氏とソフトバンクグループ(SBG)があと半歩慎重であれば、今の状況は違っていたかもしれない。だが同氏の飽くなき野望は、ウィーワークを守りきれない状況にまで追い込んだ。たとえ同氏が采配を振るうことはなくても、その「遺産」を修正するのは容易ではない。 ニューマン氏はウィーワークの親会社ウィーカンパニーの最高経営責任者(CEO)を退いた。今週に入って筆頭株主のソフトバンクから辞任を求められていたとされる。ニューマン氏は非常勤会長職にとどまるが、会社の経営は新CEOに委ねられる。 新規株式公開(IPO)に乗り出すテクノロジー系の新興企業はウィーカンパニーだけではないが、企業統治(ガバナンス)に深刻な欠陥を抱えながら、未公開株に途方もない価値がついたという点では他に類を見ない。直近の資金調達ラウンドでは、評価額が470億ドル(約5兆円)を超え、オフィス転貸を本業とする企業としては非現実な水準に達していた。同様の共有オフィス賃貸事業を手掛ける「リージャス」を傘下に持つIWGの時価総額はおよそ45億ドル。ウィーワークの運営するオフィス528カ所に対し、リージャスは3000カ所以上あるにもかかわらず、ウィーには何倍もの価値がついていた。 また、ウィーの資本構造には特に懸念される要因がある。株式希薄化の恐れがある転換社債や、30億ドルの資本を調達した場合に限り実行するとの条件付きの信用枠などだ。さらに同社は年内に上場を果たす必要がある。さもなければ新興成長企業という立場を失い、IPO実施への道が一段と厳しくなりかねない。 こうした状況がCEO交代によって変わることはない。ニューマン氏の自己取引(IPO前に株式売却と借り入れを通じて7億ドル以上の現金を手にしたことなど)やウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が先週報じた個人的な振る舞いなどは、単なる添え物にすぎない。それらは同社が直面する他の根本的な問題から目をそらすだけのものになりつつある。実際、薬物使用の疑いが明らかになったのはIPOが延期された後であり、IPOが難航したのはそれが理由ではない。 ニューマン氏が過半数の議決権を手放す決意をしたのは重要なことだが、経営チームを全面的に刷新するには至らなかった。ウィーワークは依然、同氏が作り上げた会社であり、同氏が根づかせたビジネスモデルや文化も残っている。さらに言うと、新CEOが任命されても希薄化に直面する資本構造の解消にはならず、ソフトバンクをウィーの大幅な価値下落から救うこともできない。 ウィーが謙虚な姿勢で投資家の前に戻ってくるためには、もっと根本的な見直しが必要だろう。問題は、ウィーと最大出資者であるソフトバンクがそれほど長く待てるかどうかだ』、あれだけもてはやされた「ウィーワーク」のCEO交代劇は、どうも大変なことになってきたようだ。大株主のソフトバンクへの影響も深刻なようだ。

第三に、この問題をさらに9月28日付けロイター「コラム:ソフトバンク、ウィーワーク追加出資で損失泥沼化も」で見てみよう。
https://jp.reuters.com/article/softbank-wework-breakingviews-idJPKBN1WC0JF
・『無能なギャンブラーは損が出るとそれを取り返そうと賭け金を増やし、最後には茫然自失してしまう。ソフトバンクグループの孫正義社長は、共用オフィス「ウィーワーク」を運営するウィーカンパニーへの追加出資によって、同じ間違いを犯す危険がある。 既に約110億ドルを投じたウィーカンパニーは、まさに「金食い虫」に他ならない。 英紙フィナンシャル・タイムズによると、ソフトバンクはウィーカンパニーへの追加出資額を当初合意した15億ドルから25億ドルに引き上げる方向で協議している。ソフトバンクは将来、以前の合意よりも安い価格でウィーカンパニー株を取得する権利を手に入れるという。 ウィーカンパニーの企業価値は一時の470億ドルからその5分の1に落ち込んでおり、追加出資の上積みは失敗したビジネスにさらに資金をつぎ込むように聞こえるだろう。 実施が延期となった新規株式公開(IPO)向けに当局に提出された書類を見ると、ウィーカンパニーは昨年、孫氏が検討する追加出資額とほぼ同額のキャッシュを使い切った。孫氏はトップが代われば時間とともにウィーカンパニーの経営は持ち直すと期待しているのだろう。ウィーカンパニーでは24日に共同創業者のアダム・ニューマン氏が最高経営責任者(CEO)を辞任した。 こうした期待はある程度理に適っている。ソフトバンクの出資によりウィーカンパニーは別途銀行から30億─40億ドルを借り入れることが可能になりそうだ。キャッシュがどうしても必要な、成長性のある事業への資本注入において、出資者は好ましい条件を引き出すことが可能だ。例えばベンチャーのTCVは1999年にネットフリックス(NFLX.O)に投資し、「インターネット・バブル」崩壊後の2001年に増資を行った。結果的にネットフリックスは生き残り、業務を大幅に拡大。今では時価総額が1150億ドルとなった。 思わぬ障害となりかねないのは、ソフトバンクが投資のリターンだけを考えて動いているわけではないかもしれない点だ。ウィーカンパニーを見限れば、新たな投資家を呼び込んだり、有望な企業をグループに引き込むよりどころにしている、ソフトバンクの評判が傷つくだろう。スタートアップ企業は、ソフトバンクは経営が苦しい時期に見放すと不安を抱くかもしれない。 ソフトバンクがウィーカンパニーについて難しい判断を迫られるのは今回だけではなさそうだ。ウィーカンパニーは成長が可能だということを示しているが、同社の規模自体にもはや価値はなく、既に複数の企業が参入している業界で収益をもたらすこともない。 競合するIWG(IWG.L)の企業価値は四半期売上高の約3.7倍で、ウィーカンパニーにこの倍率を当てはめると企業価値は80億ドル強となり、ソフトバンクのこれまでの出資額を下回る。ウィワークのテナントと同様に、孫社長が腰を落ち着けることができる場所は別にある』、時価評価額10憶ドル以上のベンチャー企業をユニコーンといい、ウィーカンパニーはその代表格とされたが、時価評価額そのものが全く当てになず、過大評価される場合もあることを示した。「ウィーカンパニーの企業価値は一時の470億ドルからその5分の1に落ち込んでおり」、というのは酷い話だ。ソフトバンクグループの株価は4200円と、半年前の5500円前後から大きく下落した。
・『背景となるニュース *26日の英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、ソフトバンクグループ(9984.T)が共用オフィス「ウィーワーク」を運営するウィーカンパニーへの追加出資について、当初計画の15億ドルから10億ドル余りの上積みを検討していると報じた。 *ソフトバンクはウィーカンパニーが新規株式公開(IPO)を延期する前にワラントに関する契約を結んでおり、来年4月にクラスA普通株と引き換えに15億ドルを出資する計画だった。 *ウィーワークは銀行団から増資を条件に30億─40億ドルの融資を受ける方向で協議を進めており、ソフトバンクの追加出資によって資金調達の選択肢が広がる可能性がある』、「ウィーカンパニー」が成長軌道に戻れるか、ソフトバンクグループが今回の痛手をどのように克服するか、などに注目したい。
タグ:ロイター ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス ソフトバンクの経営 (その11)(純利益1兆円のソフトバンク「法人税ゼロ」を許していいのか? 孫さんは「日本は後進国」と言いますが…、ウィーワーク創業者の辞任 小さすぎて遅すぎる、ソフトバンク ウィーワーク追加出資で損失泥沼化も) 「純利益1兆円のソフトバンク「法人税ゼロ」を許していいのか? 孫さんは「日本は後進国」と言いますが…」 過去最高売り上げのソフトバンクは1円も法人税を払っていない 社内で株を回し租税回避 SVF(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)なる投資事業 純利益は1兆390億円を計上していた。ところが、これほど儲けている企業が、日本の国税に納めた法人税は、なんと「ゼロ」 アーム社の株式です。ソフトバンクGはこの株式の一部を、グループ内のSVFに移管しました。 この移管で会社側に損失があるわけではないのですが、税務上の処理ではアーム社株の時価評価額が取得価格を1.4兆円下回り、同額の『欠損金』が生じたという計算 買収した企業の株を社内で売り買いして作った損を計上して、課税利益を作らないようにしている。法の抜け道を利用する形で、公表利益と税務利益がかけ離れた、数字の「マジック」を作り上げたのだ ソフトバンクは租税回避の「前歴」 スプリント社 ブライトスター社 2社の売り上げに関してタックスヘイブンで知られるバミューダ諸島を経由させ、税負担を軽くして利益を増やそうとした。 '13年~'16年の4年間で、申告漏れと指摘された金額は約939億円 税は「意図的な税逃れではない」と判断。ペナルティーである重加算税は課されなかった ソフトバンクGが算出した時価評価額が適正なものかどうか、客観的に知ることは私たちにはできません 国税がこれを正しく評価し、きちんと追及できたのか疑問が残ります 税務署もどうかしている 消費税が導入されてから、これまでに徴収された消費税収の累計は349兆円 法人3税の減税額は'17年度までの累計で、実に281兆円 消費税の8割近くを、法人税の減税で食いつぶしてしまった 米ウォールストリートジャーナル 「ウィーワーク創業者の辞任、小さすぎて遅すぎる」 評価額が470億ドル(約5兆円)を超え、オフィス転貸を本業とする企業としては非現実な水準 IWGの時価総額はおよそ45億ドル ウィーの資本構造には特に懸念される要因がある。株式希薄化の恐れがある転換社債や、30億ドルの資本を調達した場合に限り実行するとの条件付きの信用枠などだ 「コラム:ソフトバンク、ウィーワーク追加出資で損失泥沼化も」 既に約110億ドルを投じたウィーカンパニーは、まさに「金食い虫」 ウィーカンパニーの企業価値は一時の470億ドルからその5分の1に落ち込んでおり スタートアップ企業は、ソフトバンクは経営が苦しい時期に見放すと不安を抱くかもしれない 競合するIWG(IWG.L)の企業価値は四半期売上高の約3.7倍で、ウィーカンパニーにこの倍率を当てはめると企業価値は80億ドル強となり、ソフトバンクのこれまでの出資額を下回る
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リクナビ問題(その1)(リクナビの「内定辞退率」データ提供は何が問題だったのか 弁護士が解説、リクナビ内定辞退率問題で厚労省激怒 「データ購入企業」にも鉄拳) [企業経営]

今日は、リクナビ問題(その1)(リクナビの「内定辞退率」データ提供は何が問題だったのか 弁護士が解説、リクナビ内定辞退率問題で厚労省激怒 「データ購入企業」にも鉄拳)を取上げよう。一昨日は、個人情報保護を取上げたが、本件はより幅広いので、独立させた。

先ずは、8月23日付けダイヤモンド・オンラインに掲載したSTORIA法律事務所 東京オフィスの杉浦 健二弁護士へのインタビュー「リクナビの「内定辞退率」データ提供は何が問題だったのか、弁護士が解説」を紹介しよう(Qは聞き手の質問、Aは回答、付注は省略)。
https://diamond.jp/articles/-/212543
・『8月1日、就職情報サイト「リクナビ」を運営する株式会社リクルートキャリア(以下、リクルートキャリア)は、同社が提供していた「リクナビDMPフォロー」サービスにおいて、いわゆる「内定辞退率」データをクライアントである採用企業に提供していたことを公表。その際、ユーザーである学生の個人データの扱いや同意の取得方法等が適切だったかが問われています。 8月5日には7,983名の学生からプライバシーポリシー同意取得の不備と、「リクナビDMPフォロー」の廃止についてリクルートキャリアから報告されました。 ユーザーから同意を取得する方法や個人データの扱い、また行動履歴等を分析した結果の活用方法に関して議論がなされる本事案について、STORIA法律事務所 東京オフィスの杉浦健二弁護士に見解を伺いました』、興味深そうだ。
・『1.同意取得の方法以前に、同意の対象となるプライバシーポリシーの内容の明確性が問われた事案 Q:本事案について、ユーザーである学生からの同意取得の方法をはじめとした個人情報取り扱いの観点からは、どういった点に問題があったと考えられますか。) A:報道によればリクルートキャリアは「リクナビDMPフォロー」を通して、就活生の内定辞退率を個人が特定できるかたちで、同サービスを利用する企業38社に提供していたとのことでした*1。リクナビ2020のプライバシーポリシーには、以下のような記載がなされています。 (リクナビ2020 プライバシーポリシー(株式会社リクルートキャリア、2019年8月14日取得、傍線加工 BUSINESS LAWYERS編集部)) この「行動履歴等(当該ログイン以前からの行動履歴等を含みます)を分析・集計」した結果こそが、今回問題となっている内定辞退率にあたると考えられます。同プライバシーポリシーの記載では、「行動履歴等は、あらかじめユーザー本人の同意を得ることなく個人を特定できる状態で第三者に提供されることはございません」とあるものの、冒頭の傍線で示した「個人を特定したうえで、」の文言がどの文節にかかるのかがはっきりしないために、個人が特定されるかたちで内定辞退率を企業に提供するという意味なのか、個人が特定されないかたちで企業に提供するという意味なのかが不明確といえます。 個人情報保護法上、個人情報取扱事業者は、原則として、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならないものとされています(個人情報保護法23条1項)。リクルートキャリアの8月1日付プレスリリースによれば、「ご同意いただいたプライバシーポリシーに基づき、リクナビサイト上での行動履歴の解析結果を取引企業に対して提供しておりました」との記載があるため、リクルートキャリア自身はユーザー個人が特定されるかたちで内定辞退率を提供することについて、同プライバシーポリシーによって同意を取得できていると判断していたようです。その後、リクルートキャリアは8月5日付プレスリリースで、学生7983名については同プライバシーポリシーによる形式的な同意すら得られていなかったことを発表しました。 しかし本件で問題なのは、プライバシーポリシーの内容が不明確であることで、これら7983名以外の学生についても適切な同意が得られていなかった可能性が残っているという点であると考えます』、企業側は自社に都合良く解釈しがちだが、「リクルートキャリア」の場合は酷過ぎる。
・『Q:ユーザーである学生から、個人情報の取扱いについて適切な同意を得る方法はどうあるべきだったと考えられますか。 A:個人データを第三者に提供するにあたってあらかじめ本人の同意を得たといえるためには、事業の性質及び個人情報の取扱状況に応じ、本人が同意に係る判断を行うために必要と考えられる合理的かつ適切な方法によらなければならないものとされています(個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」2-12「本人の同意」、平成28年11月(平成31年1月一部改正))。 たとえばプライバシーポリシーを公表している場合は、当該プライバシーポリシーの内容に同意する旨のボタンをクリックしてもらう方法が考えられますが、同意の前提として、プライバシーポリシーで示された取扱い方法で自分の個人情報が取り扱われる旨を理解していることが必要となります。 リクナビ2020のプライバシーポリシーの記載内容は上記のとおり明確であったとはいえず、同意ボタンをクリックする方法等をとっていたとしても、ユーザー個人が特定されるかたちで各企業に対して内定辞退率が提供されることについて本人の同意を得たといえるかどうかは疑問の残るところです。本件では同意取得の方法以前に、同意の対象となるプライバシーポリシーの内容の明確性が問われた事案であったといえます。 今回のプライバシーポリシーの問題となった部分について、より明確な内容にしようとすれば、たとえば以下のような文案が考えられます(また、当社は、ユーザーがログインして本サービスを利用した場合には、ユーザーが本サービスに登録した個人情報、およびcookieを使用して本サービスまたは当社と提携するサイト(当社と提携するサイトはこのリンクをご参照ください)から取得した行動履歴等(当該ログイン以前からの行動履歴等を含みます)を分析・集計したデータについて、ユーザー個人を特定できる状態で、利用企業等に対して提供する場合があります。このデータ提供は利用企業等における採用活動補助を目的としてなされるものであり、利用企業等において選考目的で利用されることはありません。また利用企業等に対して提供されるデータは行動履歴等の分析・集計データであり、行動履歴等そのものは、あらかじめユーザー本人の同意を得ることなく個人を特定できる状態で第三者に提供されることはありません。) この文案であれば、「行動履歴等を分析・集計したデータ」について、ユーザー個人を特定できる状態で利用企業等に提供される可能性があることは、少なくとも明確となります。 しかし、この文案によっても、行動履歴等を分析・集計した個人データに「内定辞退率」とのラベルが貼られて利用企業等に提供されることまでは想起できないため、プライバシーポリシーの明確性については問題とならなかったとしても、「内定辞退率」とのラベルが貼られて個人データが利用企業等に提供されるビジネスモデルになお批判が集まった可能性は否定できません』、「内定辞退率」とは企業がノドから手が出るほど欲しがるデータだ。着想はさすが攻撃的なリクルート系だけあるが、きちんとしたコンプライアンス上の詰めが疎かになったようだ。
・『2.「内定辞退率」を選考に利用しない条件で有償提供するという契約に無理があった  Q:リクルートキャリアは8月1日のリリースにおいて「学生の応募意思を尊重し、合否の判定には当該データを活用しないことを企業に参画同意書として確約いただいています」としています。しかしクライアント企業が当該データを合否の判定に用いていないかは確認が難しいことから、合否判定に利用された懸念があるとする声もあります。当該データの用途の取り決め方法については適切だったのでしょうか。 A:たしかにリクナビ2020のプライバシーポリシー上、企業に提供した内定辞退率(ユーザー行動履歴等の分析・集計結果)については「選考に利用されることはありません」と記載されています。またリクルートキャリアの8月1日付プレスリリースによれば「提供された情報を合否の判定に活用しないことにご同意いただいた企業にのみ、本サービスをご提供してきました」「ご利用いただいている企業には当社から定期的に利用状況の確認をさせていただいております」とも記載されています。 しかし、たとえこれらの運用が十分に行われていたとしても、「リクナビDMPフォロー」を導入する各企業側とすれば、内定辞退率データを選考に利用したい動機があることは否めず、各企業が実際に選考に利用していなかったかどうかも不明です。 契約の取り決め方法としては、リクルートキャリアからの利用状況の確認にとどまらず、リクルートキャリアから各企業に対する立入調査条項を含めることも考えられますが、自社の顧客である各企業に対する調査権限を認めるような条項を定めることは非現実的といえます。企業が選考に利用したいと考える価値があるデータを、選考に利用しない条件で有償で提供するという契約内容自体にそもそも無理があったといえるかもしれません。 Q:サービスを利用するために、ユーザー本人が望まない個人情報の利用に同意せざるを得ないケースもあるのではないかと懸念されます。「本人の同意」に加え、データ利活用時代における、個人情報を提供する側、利用する企業側双方が納得できる仕組みについてはどのように考えますか。 A:ユーザーが個人情報の提供を望まないのに、他のサービスに乗り換えられないために個人情報を提供せざるを得ないケースが問題視されています。現在、GAFAをはじめとした大手IT企業による個人情報の収集方法について、公正取引委員会が、独占禁止法違反である「優越的地位の乱用」にあたるケースを示す運営指針(ガイドライン)案を策定中であると報道されています*2。ユーザーに利用目的を知らせなかったり、サービス提供に必要な範囲を超えて個人情報を取得したりするようなケースについて、今後規制が進むことが予想されます。 またEUの「一般データ保護規則(GDPR)」では個人データの利用停止はいつでも行える(EU 一般データ保護規則 第7条)のに対し、日本の個人情報保護法では、個人データの利用停止は個人情報保護法違反があった場合にのみ可能とされている(個人情報保護法30条)点は問題ではないかとの声があり、2019年4月に個人情報保護委員会が公表した「個人情報保護法 いわゆる3年ごと見直しに係る検討の中間整理(個人情報保護委員会、平成31年4月25日)」では、個人データの利用停止制度の導入について検討がされています』、「「リクナビDMPフォロー」を導入する各企業側とすれば、内定辞退率データを選考に利用したい動機があることは否めず、各企業が実際に選考に利用していなかったかどうかも不明です」、というのであれば、「提供された情報を合否の判定に活用しないことにご同意いただいた企業にのみ、本サービスをご提供してきました」との強弁には無理がある。 
・『3.「リクナビDMPフォロー」を利用したクライアント企業が問われ得る法的責任  Q:「リクナビDMPフォロー」は38社で「試験的な運用」がなされていたと公表されています。今回の件について、利用していたクライアント企業に責任等は生じますか。 A:報道によれば各企業は、「リクナビDMPフォロー」の利用にあたって、選考結果や学歴などの応募学生の個人データをリクルートキャリアに提供していたとのことでした*3。個人データを第三者に提供する場合、原則として本人の同意が必要となることは先に述べた通りですが(個人情報保護法23条1項)、各企業が、個人データの取扱いを利用目的の達成に必要な範囲でリクルートキャリアに委託していたといえる場合、個人情報保護法上は本人の同意を得る必要はないとされています(個人情報保護法23条5項1号)。 本件では、各企業がリクルートキャリアに提供した応募学生の個人データについて、たとえばリクルートキャリアが委託に基づかず自ら取得した行動履歴等の個人データを突合して内定辞退率を算出し、各企業に提供する内容の業務委託契約であったような場合は、各企業による応募学生の個人データの提供は個人情報保護法23条5項1号が定める委託の範囲を超えるものとして、各企業は個人情報保護法違反の責任を問われる可能性が生じます。この場合、個人情報保護委員会は各企業に対して、必要に応じて報告を求めたり立入検査を行うことができるほか、実態に応じて指導・助言、勧告・命令を行うことができ(個人情報保護法40条、41条、42条)、命令に違反した者は6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する旨も定められています(個人情報保護法84条)。 Q:本件では、職業安定法への抵触の可能性もあるとされていますが、この点についてはいかがでしょうか。 A:本サービスのような、人事労務分野においてAIやデータを活用する手法はHRテックと呼ばれ、近年注目が集まっています。ただしHRテックの分野では、職業安定法に抵触しないかどうかの検討が不可欠となります。職業安定法では、採用活動を行う企業には求職者の個人情報の取扱いについての義務が課せられる旨が定められているところ(職業安定法5条の4)、厚生労働省の指針*4によれば「職業紹介事業者等は、個人情報を収集する際には、本人から直接収集し、又は本人の同意の下で本人以外の者から収集する等適法かつ公正な手段によらなければならない」とされています。 本件では、38社の企業が、個人が特定できる状態の内定辞退率という個人情報の提供を受けていたとされています。仮に38社の企業が、リクルートキャリアから個人情報の提供を受けることについて応募学生から同意を得ていなかったとすれば、上記指針に抵触する可能性が生じます。 Q:個人情報を扱ううえで、適法かどうかの判断は今まで以上に重要となりますね。 A:今回の件で、「リクナビDMPフォロー」と同様のHRテックビジネスに対する世間の目は厳しくなることが予想されます。個人情報保護法、職業安定法等の法令を遵守することはもちろん、たとえ適法であっても、採用時における求職者情報というデリケートなデータを取り扱う以上、そのビジネスモデル自体が批判を受けることも想定されますので、これまで以上に慎重な検討が求められるものと考えます。 特に個人データの第三者提供を行う場合は、不明確なプライバシーポリシーを提示して形式的な同意を得ておくだけでは不十分であり、ユーザーの個人データが第三者提供される旨が明確にわかるようまず利用目的の欄に記載したうえで、提供を予定する個人データの項目もできる限り具体的に記載することが求められるでしょう。さらに個人データの第三者提供に同意することで、ユーザーにとってどのようなメリットが生じるのか(たとえば当該サービスの無償提供や、より充実したサービスが提供可能となること等)まで触れられていれば望ましいものといえます。 明確でわかりやすい内容のプライバシーポリシーを提示し、ユーザーも納得したうえで真に同意していると評価できる個人情報の取扱いを行うことが、結果的にユーザーや世間からも評価されるサービスの実現につながるのではないかと考えます』、(利用企業)「仮に38社の企業が、リクルートキャリアから個人情報の提供を受けることについて応募学生から同意を得ていなかったとすれば、上記指針に抵触する可能性が生じます」、と「職業安定法に抵触」する恐れがあるとは、リクルートキャリアは顧客の利用企業まで違法行為に巻き込んだことになり、罪は深いようだ。「人事労務分野においてAIやデータを活用する手法はHRテック」、については、まだまだ手探りのようだ。

次に、9月20日付けダイヤモンド・オンライン「リクナビ内定辞退率問題で厚労省激怒、「データ購入企業」にも鉄拳」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/215312
・『労働者保護を原則とする厚生労働省が、怒り狂っている。就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが就活学生の内定辞退率予測データを大企業に販売していた問題についてだ。厚労省の怒りの矛先は、個人情報のデータを販売したリクルートキャリアのみならず、購入したビッグカンパニーへも向いている。 戦後最大の疑獄事件「リクルート事件」が発覚したのは、1988年のこと。リクルートから賄賂として未公開株を譲渡された収賄側には、時の労働省(現・厚生労働省)事務次官の名もあった。 リクルートホールディングス(HD)が31年前の亡霊に取り付かれている。 就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリア(リクルートHD傘下)が就活学生の内定辞退率を算出、その予測データを企業に販売するサービス「リクナビDMPフォロー」が廃止に追い込まれたのだ。データを購入した企業はトヨタ自動車やホンダ、NTTグループなどビッグネームばかり34社に上る。 実は、この問題の根っこはリクルート事件にある。 ある厚労省OBは、「当時、求職者と企業をマッチングする職業紹介事業と同じように、求人情報サービスを行う『募集情報等提供事業』に対しても、規制をかけるべきという議論が省内であったが、ノールールという結論が導き出された」と打ち明ける。 後に、その判断を下したのが収賄罪に問われた労働次官であり、リクルートによる根回しが取り沙汰された。それでも、「募集情報等提供事業=無法地帯」という結論が覆ることはなく、うやむやにされた。求人情報サービスに野放図が許された元凶はここにある』、「この問題の根っこはリクルート事件にある」、というのには驚かされた。
・『怒り心頭の厚労省は新ビジネスを本気でつぶす  9月6日、厚労省はリクルートキャリアに対して、職業安定法に基づく行政指導を実施。同時に、業界団体である全国求人情報協会向けに、役所らしからぬ感情的な文言で要請を行った。厚労省はリクルートHDが考案した「新しいビジネスモデル」を本気でつぶしにかかったのだ。 そもそも、「リクナビDMPフォロー」で売買されたデータとはどんなものなのか。 トヨタの場合、採用試験を受けた大学新卒学生の名簿をリクルートキャリアに提出、同社が「リクナビ」のプラットフォーム上で得られた個人情報(トヨタ志願者が何社にエントリーしたか、どんな就職活動をしたのか)からトヨタの「志望度の高さ」を数値化し、内定辞退率予測データと称して販売していたというものだ。 要するに、学生が浮気性であるかどうかが分かる身辺調査のようなものである。身持ちが堅い学生の歩留まりは高くなるだろうという想定の下、「相場は400万~500万円」(購入企業関係者)ともいわれる高額データに、企業が群がったのである。 厚労省は怒り心頭に発している。「リクルートの顧客は企業だけではなく、学生でもあるはず。ビジネスの起点を忘れるとは言語道断だ」(厚労省幹部)と手厳しい。 まず、リクナビなど募集情報等提供等事業で得た個人情報を「選別・加工」して別の商品としてビジネスを展開した段階で、それはより規制の強い職業紹介事業の範疇になるとした。 厚労省による新ビジネスつぶしの本気度は、二つの視点で分かる。 一つ目は、就活学生が個人情報利用に同意しているか否かにかかわらず、採用合否の決定前に募集企業へデータを提供するビジネスをシャットアウトしたことだ。 今回の事案は、職業安定法と並行して、個人情報保護法にも抵触するのだが、こちらは学生本人の同意さえ得られればビジネス続行の可能性はあった。その意味で、厚労省の決断は、一歩踏み込んでいるといえる。 二つ目は、厚労省の怒りの鉄拳が、リクルートHDのみならず、データを購入した企業にも向けられていることだ。 購入企業の多くは、「合否判定に使っていない」の一点張りだ。仮に合否に使った場合でも、社会的に責めを負うことはあっても法的責任を問われることはない。) また、リクルートキャリアと購入企業は業務委託契約を結んでおり、購入企業が名簿など個人情報を渡した場合でも、「人事部人事課から人事部分析課(リクルートキャリア)へデータ分析を外注しただけ」(厚労省幹部)という扱いになる。厚労省が購入企業の法律違反を追及することは極めて難しい。 厚労省の旗色は悪い。それでも、労働局を動員することは決まっている。派遣や職業紹介など人材サービスの専門家である、需給調整指導官が調査に入るのだという。「個人情報データを目的外で使用していないか」など職業安定法に抵触していないかどうかを丹念にヒアリングする予定だ。 労働基準監督官のように強い捜査権を持っているわけではないが、「需給調整指導官が切る指導書は監督官でいう是正勧告のようなものだと思ってもらっていい」(厚労省幹部)と息巻く。百戦錬磨の大企業が尻尾を出すとは思えないが、労働者に不利に働く新ビジネス頻発の抑止力にはなるだろう』、「志願者が何社にエントリーしたか、どんな就職活動をしたのか から・・・「志望度の高さ」を数値化し(た)内定辞退率予測データ」が、「相場は400万~500万円」で入手できるのであれば、利用企業にとっては、有難いデータだろう。
・『採用だけではなく雇用管理でも個人情報が使われる  厚労省は、「内定辞退率データ」事業を業として展開できるのは、寡占化された業界上位のリクナビや「マイナビ」くらいしか想定しておらず、今回の強硬手段で法の網を掛けられたと判断している。 だがいつの時代も、法整備が技術革新を超えることは難しい。 すでに「リクナビ」モデルも陳腐化しつつある。約80万人もの新卒学生がエントリーシートを企業へ一括送信し、募集企業は大量の学生を選別しなければならない。学生と企業の双方が非効率なマッチングという「壮大なる無駄」を前に疲弊している。 ひずみのあるところにビジネスが生まれるのは世の常だ。効率化を目的に、内定辞退率データ販売という違法なビジネスは生まれた。 本来、どの企業が第1志望なのかを秘密にすることは、学生に許された特権だったはず。それが、本人があずかり知らぬところで選考過程が進む理不尽さが明らかになった。 ICTやAIの進化により、今後、個人情報からブラックボックスになっていた経済状況、嗜好、生活パターンなどが暴かれやすくなる。その解析データが企業の人事評価に使われる公算は大きい。 今回のリクナビ問題は「採用」という入り口の規制で解消したかにみえるが、企業が雇った後の「雇用管理」の現場でも、個人情報は駆使されるはずだ。データ解析で得られた「判断」は一定の根拠があるだけに覆すことが難しく、社会の差別構造を助長するリスクをはらむ。 リクナビ問題は、技術革新と労働者保護を両立することの難しさを露呈している』、「企業が雇った後の「雇用管理」の現場でも、個人情報は駆使されるはずだ」、というのは嫌な監視社会の到来である。日本でもEUのGDPR(一般データ保護規則)のような規制で歯止めをかける必要がありそうだ。
タグ:ダイヤモンド・オンライン 職業安定法 リクナビ問題 (その1)(リクナビの「内定辞退率」データ提供は何が問題だったのか 弁護士が解説、リクナビ内定辞退率問題で厚労省激怒 「データ購入企業」にも鉄拳) 杉浦 健二弁護士 「リクナビの「内定辞退率」データ提供は何が問題だったのか、弁護士が解説」 リクナビDMPフォロー 同意取得の方法以前に、同意の対象となるプライバシーポリシーの内容の明確性が問われた事案 内定辞退率 「内定辞退率」を選考に利用しない条件で有償提供するという契約に無理があった EUの「一般データ保護規則(GDPR) 「リクナビDMPフォロー」を利用したクライアント企業が問われ得る法的責任 職業安定法では、採用活動を行う企業には求職者の個人情報の取扱いについての義務が課せられる旨が定められている 人事労務分野においてAIやデータを活用する手法はHRテックと呼ばれ、近年注目 「リクナビ内定辞退率問題で厚労省激怒、「データ購入企業」にも鉄拳」 「リクルート事件」が発覚したのは、1988年 31年前の亡霊に取り付かれている 求人情報サービスを行う『募集情報等提供事業』に対しても、規制をかけるべきという議論が省内であったが、ノールールという結論が導き出された その判断を下したのが収賄罪に問われた労働次官であり、リクルートによる根回しが取り沙汰された。それでも、「募集情報等提供事業=無法地帯」という結論が覆ることはなく、うやむやにされた 怒り心頭の厚労省は新ビジネスを本気でつぶす トヨタの場合、採用試験を受けた大学新卒学生の名簿をリクルートキャリアに提出、同社が「リクナビ」のプラットフォーム上で得られた個人情報(トヨタ志願者が何社にエントリーしたか、どんな就職活動をしたのか)からトヨタの「志望度の高さ」を数値化し、内定辞退率予測データと称して販売していた 「相場は400万~500万円」 採用だけではなく雇用管理でも個人情報が使われる
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アスクルVSヤフー(窮地のアスクル ヤフーの反論に社外取締役が再反論 「ヤフーに最低限のモラルあると過信してた」、アスクル新社長が激白!ヤフーとの離別に迷いなし 吉岡 晃(アスクル社長 最高経営責任者)特別インタビュー、アスクル社長と独立社外取締役の不再任は 本当に問題だったのか?) [企業経営]

今日は、アスクルVSヤフー(窮地のアスクル ヤフーの反論に社外取締役が再反論 「ヤフーに最低限のモラルあると過信してた」、アスクル新社長が激白!ヤフーとの離別に迷いなし 吉岡 晃(アスクル社長 最高経営責任者)特別インタビュー、アスクル社長と独立社外取締役の不再任は 本当に問題だったのか?)を取上げよう。

先ずは、ジャーナリストの大西 康之氏が7月24日付けJBPressに掲載した「窮地のアスクル、ヤフーの反論に社外取締役が再反論 「ヤフーに最低限のモラルあると過信してた」」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57106
・『8月2日の株主総会直前にIFRS(国際財務報告基準)で連結子会社アスクルの岩田彰一郎社長に退任要求を突きつけたヤフーに対し、ガバナンスの権威が一斉に異論を唱え始めた』、総会はヤフー勝利となったが、問題を改めてみてみよう。
・『「大株主なら何をやってもいいわけじゃない」  7月23日には元パナソニック副社長の戸田一雄氏らアスクルの独立取締役が、独立役員会アドバイザーの久保利英明弁護士とともに記者会見し「大株主なら何をやってもいいということではないはず」(戸田)と訴えた。同日には日本の商法の大家、上村達男早稲田大学名誉教授も「退任要求は提携違反」とする法律意見書を出した。 23日、都内で開いたアスクル独立委員会の記者会見には戸田氏のほか、アスクルの社外監査役の安本隆晴氏、弁護士の松山遥氏も参加した。 戸田氏は記者会見の冒頭で「(アスクルの個人向けネットショッピング事業)『ロハコを売れないか』と言ってきて『売れない』と答えたら『社長を辞めろ』。これでは支配株主の立場で圧力をかけているとしか思えない。1週間後には(株主総会で大株主のヤフーが岩田社長の取締役選任案に反対して)そうなってしまう。本当に悩んでいる」と苦しい胸の内を明かした。 7月18日に岩田氏が記者会見で「ロハコ事業の譲渡を要求された」と語ったことに対し、ヤフーが「事業を譲渡する意向があるかどうか打診しただけ」とのコメントを発表したことについては、「実際には、事細かな条件を提示して譲渡を求めてきている」と反論した。 その上で独立役員会の意見として、 (1)岩田社長退任の是非については、指名報酬委員会で議論・決議した後の交代は現場を混乱させ、企業価値にマイナスになる (2)ロハコ事業の譲渡については、2018年12月にロハコ事業の再構築プランを発表したばかりであり、その効果を検証してから検討すべき (3)(ヤフーが今後もアスクルにロハコ事業譲渡を求めるなら)支配株主であるヤフーとの利益相反取引であることを十分に理解し、対等な立場で交渉することが求められる の3つを公表した。 コーポレートガバナンスの権威として知られる久保利弁護士は、「株式の過半を握っていれば何でもできる、というわけではない。世界でも稀な日本の親子上場(親会社と子会社がともに上場企業であるケース)は非常に大きな問題を抱えている」と語った』、「上村達男早稲田大学名誉教授」や「独立役員会アドバイザーの久保利英明弁護士」の主張は説得力がある。
・『「ヤフーに最低限のモラルがあると過信していた」  記者会見での質疑応答は以下の通り(Qは聞き手の質問)。 Q:今回のアスクルとヤフーの一件で一番の問題は何か。 戸田氏 「自分は一体、何をやってきたのか」ということだ。アスクルの独立取締役、指名委員会の委員長として一生懸命ガバナンスをやってきたのに、土壇場でゴロッと変わってしまう。 久保利氏 ガバナンスは日本の資本市場を機能させる上で大変重要だが、世界でも稀な日本の親子上場、多層上場は果たして合理的なのか。1つの会社の資産を二重三重に勘定する仕組みでもあり、非常に多くの問題を抱えたスタイルだと思う。私はJPX(日本証券取引所)の社外取締役でもあるので、この問題を座視する訳にはいかない。 松山氏 支配株主の義務とは何かという問題だ。(業績不振などの場合)株主には取締役を交代させる権利がある。だが今回のように、事前には一声も上げず、株主総会の招集通知案内が印刷の校了を迎える1週間前になって、突然「トップには辞めてもらう。後任は好きに選べ」という姿勢には問題がある。 Q:今回、ヤフーから社長の退任要求があったことで親子上場が問題視されたが、その前に「親子上場には問題がある」とは考えなかったのか。 戸田氏 正直に言うと(支配株主としての権利を乱用しない)最低限のモラルが(ヤフーには)あるものだと過信していた。(取締役会や独立委員会などで)親子上場の問題点については何度か議論をしたこともあるが、性善説にぶら下がりすぎたと反省している。 Q:株主総会でヤフーから派遣されているアスクル取締役2名を候補者から外す考えはないか。 戸田氏 一昨年まで、ヤフーとアスクルは非常にうまくいっていた。イコール・パートナーシップの一番いい例ではないかと思えたほどだ。ヤフーから派遣されている二人の取締役も非常によくやってくれていて、感謝の気持ちがあった。それがこんなことになるとは、という思いだ。 安本氏 アスクルの生みの親であるプラスの今泉公二社長が、岩田氏の取締役選任を否決すると聞いた時には、非常にがっかりした。もう少し長い目で見て欲しかった』、「親子上場」の問題点が、改めてクローズアップされたことは確かなようだ。「生みの親であるプラス」がヤフー側についた理由を知りたいところだ。

次に、8月24日付けダイヤモンド・オンライン「アスクル新社長が激白!ヤフーとの離別に迷いなし 吉岡 晃(アスクル社長 最高経営責任者)特別インタビュー」を紹介しよう(Qは聞き手の質問、Aは吉岡氏の回答)。
https://diamond.jp/articles/-/212710
・『筆頭株主であるヤフーと対立しているオフィス用品大手のアスクル。8月2日の株主総会では、創業社長だった岩田彰一郎氏の再任にヤフーが反対し、吉岡晃COO(最高執行責任者)が社長に昇格した。新社長はヤフーとどう対峙するのか、直撃した。 Q:前社長を解任した筆頭株主のヤフーに、後継社長としてどう向き合っていきますか。 A:ヤフーとの資本提携は解消したい。その考えは、社長が代わっても全く変わることはありません。 こんな形で社長を代えられて、いつまた同じことが起こるか分からないし、経営陣や社員のしこりは消えない。それにヤフーは独立社外取締役まで3人全員解任したので、会社が壊れてしまった。社長が新しくなったからといって次の日から仲良くしましょうということになるはずがない。 Q:ソフトバンクの宮内謙社長は、記者会見で「アスクルは本当に資本提携の解消を求めているのでしょうか」と述べましたが。 A:われわれは本当に解消したい。そのスタンスで間違いありません。ただ、ヤフーとすぐに資本提携を解消しようとすれば、ヤフーが保有するアスクル株の売り渡しを求める権利(売り渡し請求権)を行使することになります。今の段階でそれに踏み切れば、先方は拒否すると思うので、間違いなく法廷闘争になるでしょう。それを望んでいるわけではないので、慎重に事を進めていきます。 Q:ヤフーと話し合いはできそうですか。 A:早速、アスクルの社外取締役でもある小澤隆生・ヤフー専務執行役から協議の提案をいただいたので、話し合いを始めます。最初のテーマは独立社外取締役の選任。資本提携を解消するにも、独立した役員からガバナンスの意見を求めて進めるのが最良の方法ですから。) Q:独立社外取締役はヤフーが決めることになる? A:いいえ。独立社外取締役を全員解任したのはヤフーですが、もともと独立社外取締役には支配的株主をけん制する機能があるので、それをヤフーが選ぶのは絶対に間違っています。すでにわれわれで新たな社外役員のリストアップに入っています。実際に誰にお願いするかは、独立した指名報酬委員会で議論して決めるプロセスを踏みたいと思っています。 Q:ヤフーが解任したので、今のアスクルに指名報酬委員会はありませんが。 A:ですから、臨時にでも指名報酬委員会を設置したい。独立社外取締役は全員解任されましたが、独立した社外の監査役が2人残っているので、その2人を中心に第三者の弁護士を入れて組成することを考えています。 それはアスクル内部の機関なので、そこが新しい独立社外取締役を選定し取締役会に提案する。そして臨時株主総会を早期に開催し、独立役員の承認を受けることになります。ヤフーには、こうしたプロセスで進めることをお話しするつもりです。 Q:本当に資本提携を解消することはできるのでしょうか。 A:ヤフーのプレスリリースによると「ヤフーよりよい相手がいるなら話を聞く意向はある」ということですから、話し合いの糸口はあると思います。これも独立役員の意向を聞きながら進めていくので、臨時株主総会の後に本格化することになるでしょう。 Q:ヤフーが保有する45%のアスクル株の譲り渡し先として、ヤフーよりよい相手がいますか。 A:現在、事業会社や国内外のファンド4社から提案を受けています。そこから複数社を選んでいきます。1社だけを選ぶとまた同じように独立性を脅かされかねないので。 Q:そこは、ヤフーよりも企業価値を高める相手になりますか。 A:まさにそうした視点で、4社の提案を精査しています。ヤフーとの提携は、BtoCのロハコ事業の集客で大きな効果を発揮しましたが、BtoBも含めて考えると、ヤフー以外の方が有効かもしれない。どんな相手とどんなシナジーを生み出せるのか。それを精査して、最終的には、これから選ぶ独立役員の意見を聞いて決めます。) Q:ヤフーの傘下で、ロハコ事業を成長させた方がよいとの見方もあるのではないでしょうか。 A:いいえ。もはやヤフーと一緒にいることがアスクルの企業価値にとってよいという結論にはなりません。ヤフーの連結子会社でいることの最大の問題点は、ヤフーもアスクルもeコマース(電子商取引、EC)をやっていることです。結果、ヤフーのECにとってはよいことでも、それがアスクルにとってはそうではないという利益相反が生まれることがはっきりした。 例えば、ECでアマゾンや楽天を追い抜くという目標を立てているヤフーは、赤字を拡大してでも流通総額をどんどん増やしたいが、われわれは赤字を拡大して規模を大きくしていく戦略を取り得ない。 仮にECを巨大グループの中の一つのコストセンターとして位置付けるなら、赤字を出して流通総額を拡大する戦略は有効かもしれませんが、上場企業であるわれわれが、赤字を出して規模を大きくするなんてあり得ないわけです。 Q:ヤフーがアスクルのロハコ事業の流通総額を一気に増やそうとするなら、アスクルを完全子会社化するしかないと。 A:契約では、ヤフーがアスクルの株を買い増すには両社の合意が必要ですから、そんなことは想定もしていません。先方がどう考えるかは計り知れないが、われわれとしてはそんなことはできない話だと思っています。 Q:ヤフーはロハコ事業の92億円の赤字を「由々しきこと」としているが、その移管は「考えていない」としている。彼らのそもそもの狙いは何ですか。 ヤフーのEC事業の成長の定義は流通総額の増加です。そのためにロハコ事業をコントロールしたいという狙いは明白です。私は、これまでヤフーとロハコ事業について何度も協議しましたが、「こんな赤字なんて大したことない」「むしろ流通総額を上げろ」という意向の方が強かった。だから、この期に及んで急にロハコが赤字じゃないかと問題視するのは非常に違和感がありますね。 Q:ヤフーの川邊健太郎社長は、ソフトバンクグループの孫正義社長から、アマゾンと楽天を追い抜くようにプレッシャーをかけられていたのでしょうか。吉岡さんは、そうした話を聞いたことはありますか。 A:ああ、1月11日に川邊さんが来社されたとき、「孫さんから、楽天とアマゾンをいつ超えるんだという質問ばかりされる」という話をしていましたよ。岩田の隣で私も聞きました。まあ、孫さんのプレッシャーって私は直接見たことがないので断定的なことは言えませんが、お立場としてそういうものもあるのかもしれませんね。でも、だからといって、アスクルが赤字を出してロハコの流通総額を拡大させるという話には全くならないです』、誕生した新社長もヤフーに対する反感が強く、このままではヤフーの思い通りにはなりそうもなさそうだ。ヤフーもソフトバンクグループから「楽天とアマゾン」超えの圧力を受けていたようだ。今後の展開が大いに注目される。

第三に、早稲田大学大学院経営管理研究科(早稲田大学ビジネススクール)教授の鈴木一功氏が9月4日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「アスクル社長と独立社外取締役の不再任は、本当に問題だったのか?」を紹介しよう。なお、注は省略。
https://diamond.jp/articles/-/213626
・『アスクルの年次株主総会において、大株主のヤフーとプラスの反対により、同社の岩田彰一郎社長と独立社外取締役の再任が否決されたことは大きく報道された。川邊健太郎社長をはじめとするヤフー経営陣の決定はあまりに一方的であるとして、業界団体や個人投資家などから批判の声が上がっている。だが、ヤフーによる決断は本当に問題だったのだろうか。M&Aの専門家でファイナンス理論の第一人者である、早稲田大学ビジネススクールの鈴木一功教授は、コーポレートガバナンスや法律の原則論を軽視した感情的な議論が展開される現状に警鐘を鳴らす。 2019年8月2日、アスクルは年次株主総会を開催し、大株主であるヤフーとプラスの反対により、社長である岩田彰一郎氏、および独立社外取締役の位置づけにある戸田一雄氏、宮田秀明氏、斉藤惇氏の会社側提案の取締役候補4名について、再任を否決した。 本件については、ヤフー側とアスクルの現経営陣側で激論が闘わされ、特に独立社外取締役を実質的に大株主が解任した形となったことから、「少数株主の利益を護る立場にある独立社外取締役」を大株主の一存で交替させることは、コーポレートガバナンスの観点から問題であり、大株主の株主権の濫用ではないか、という批判が各種団体や証券取引所の関係者から相次いだ。 筆者は、こうしたヤフー批判の論調に違和感を覚えるとともに、今回のヤフーへの批判が、2006年のライブドアによるニッポン放送の株式公開買付(TOB)によらない株式取得を巡る、ライブドアへの批判と酷似している、という意味で既視感を覚えた。 本稿では、本件の簡単な経緯と双方の主張の中で問題視された点を整理し、今回の不再任の是非、および少数株主保護と親子会社間の利益相反問題について考察する』、珍しくヤフーの立場をファイナンス理論の立場から擁護する記事なので、参考までにみてみよう。
・『アスクルとヤフーによる提携から現在に至るまでの事実関係  まず、アスクルとヤフーとの資本業務提携の経緯を確認しておこう。 両社が提携を発表したのは、2012年4月27日である。ヤフーは第三者割当増資によって、1株1433円で、2302万8600株のアスクル株を取得した。その投資金額は330億円、議決権比率で42.6%を握る大株主となった。アスクルの親会社であったプラスも株主として留まったことから、2社合算での持株比率は過半数を超えることとなり、その状況は現在も続いている。 当時の新聞記事によると、アスクルは、2009年に自社で始めた個人向けの通販サイトが営業赤字になり、また全社でも最終赤字となったので、ヤフーのポータルから顧客を自社サイトに誘導することで、個人向け通販を立て直そうという意図があった。他方ヤフーも、自社の個人向けショッピングサイトが楽天やアマゾンに取扱高で水をあけられていて、アスクルの持つ配送網を活用して利便性を高める必要があった。 そして資本業務提携により、アスクルは、ロハコ(Lohaco)という個人向けショッピングサイトを立ち上げ、ヤフーのトップページからリンクされるようになった。 資本業務提携後のアスクルの業績は、図表1のように推移した。なお、2018年5月期、2019年5月期のロハコ部門の数字には、2017年7月に買収したペット用品通販のチャーム社のデータを含む(図表中∗を参照)。 提携から7年間で、ロハコ部門の年間売上は21億円から652億円(チャーム社分を除けば513億円)と大きく増えているものの、他の大手ネット通販が1兆円規模の売上であることと比べれば、到底及ばない。また、2019年5月期においても、アスクルのロハコ部門は営業赤字であり、2020年5月期予想でも営業赤字が続く予想(赤字幅は縮小)である。 株価については、どうだろうか。図表2は、両社が提携を発表した直後の2012年5月における株価を100として、アスクル、ヤフー、楽天の株価の推移を示したものである。 株価については、2019年6月末時点で、アスクルの株価は業務資本提携発表直後の約1.9倍となっており、同期間にヤフーや楽天の株価が1.3~1.4倍程度にしかなっていないことに比べれば、パフォーマンスがよい。ただし、同期間に東証株価指数(TOPIX)も約1.9倍になっているので、アスクルの株価のパフォーマンスが格段によかったとはいえない。なお、2019年6月末時点で、ヤフーが保有するアスクル株は約200億円の含み益を抱えていた計算になる』、なるほど。
・『以上を踏まえたうえで、今回の案件について考えてみよう。 本件には、いくつかの異なる次元の問題点があり、それが議論を複雑にしている。そこで、以下のように論点を整理する。なお本稿では、主に(1)と(2)について議論し、(3)については(1)との関連で簡単に触れたい。 (1)過半数を超える議決権を持つ株式による、現社長および現在の指名委員会委員長を兼ねる独立社外取締役の再任に反対することに正当性はあるか。また、その結果として、一時的にとはいえ独立社外取締役が存在しない企業となることに対する、コーポレートガバナンス・コード上の問題はないか。 (2)上場子会社において、大株主である親会社と、子会社の少数株主の利益相反に問題はないか。独立社外取締役が果たすべき役割は何か。本件における、大株主と少数株主間の利益相反問題の本質はどこにあるのか。 (3)子会社上場について、どのような規制が必要か。また、親子上場を認める場合、望ましいガバナンス上のあり方とは何か』、論点整理は問題なさそうだ。
・『論点(1)社長と独立社外取締役の不再任は不当で、コーポレートガバナンス・コード上の問題があったのか  まず、過半数を超える議決権を持つ株式による、現社長、および指名委員会委員長を兼ねる独立社外取締役の再任への反対。これが、今回の最大の論点であることは間違いない。 特に、独立社外取締役を大株主が再任しないことについては、「親子上場企業のガバナンス上、重大な問題」(日本取締役協会)、「上場子会社のガバナンスの根幹を崩すもの」(日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク)、「議決権行使を行い、それによって子会社の安全装置とも言われる独立社外取締役の解任にまで至ったことを懸念」(日本取引所グループ清田CEO)と、数多くの反対意見や懸念が表明されている。 しかしながら、そもそも取締役の選任は、会社法によって株主総会の普通決議事項として認められているものである。少なくとも現行の法律上は、上場子会社に関する特別の定めはなく、取締役に社内、独立社外の区別もない。今回の手続きに格段の問題はないように思える。 また不再任の背景についても、図表1に示したように、ロハコ事業の業績が提携から7年を経ても必ずしも芳しくないことを考えれば、株主権の濫用というほどまでに、説得力のない理由による不再任とはいえないように思える。 さらに言えば、コーポレートガバナンス・コードでは、“comply or explain”(遵守せよ、さもなければ説明せよ)の原則に基づき、遵守が望ましいものの、遵守せずにその理由を説明する、という選択肢が認められている。不再任によって、一時的に独立社外取締役が不在になるとしても、その理由がきちんと説明できれば、違法状態とはいえない。加えて言えば、経済産業省「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」も、あくまでも「指針」である。 むしろ、こうしたいわゆるソフトローにおける、社外取締役やグループ・ガバナンスに関する考え方を理由に、会社法に基づく株主総会での株主の取締役選任が制約されるとは考えがたい。もしそのようなことが許されるのであれば、少数株主保護を掲げれば、経営陣は支配株主の要請を跳ね返すことが可能になってしまう。すなわち、経営陣の保身(エントレンチメント)の口実として、少数株主保護が使われかねないことを意味する。 筆者は、今回の不再任騒ぎに既視感を覚えている。それは、2005年に株式公開買付(TOB)規制の裏を掻いて、ニッポン放送の議決権の過半数を握るに至ったライブドアのケースである』、mply or explain”の原則に基づき、遵守が望ましいものの、遵守せずにその理由を説明する、という選択肢が認められている」、のは確かだが、今回は「その理由」の説明はどうもないようだ。「少数株主保護を掲げれば、経営陣は支配株主の要請を跳ね返すことが可能になってしまう」、というのはもっともらしいが、議論を単純化した極論のようにも思える。
・『これはライブドアが、本来であればTOBにより取得することが強制されているニッポン放送の過半数の議決権を、市場内取引(株式市場の立会外取引ToSTNeT-1と通常取引の組み合わせ)によって取得してしまった事例である。このときにも、ライブドアの行為が、少数株主も平等に支配権プレミアムを享受するために存在するTOB規制の趣旨がないがしろにされた、という批判がなされた。 しかしながら、TOB規制にこのような抜け道があることは、当時筆者を含めたM&Aの専門家の間では広く知られていた。だが、たとえば大崎貞和によれば、公開買付制度による厳しい規制を、子会社化等による企業グループ再編や他の企業との戦略的提携の妨げとなるとして嫌ってきたのは、むしろ経済界であったとされる。なお、ニッポン放送の件を契機に、2006年証券取引法が改正され、この抜け道は塞がれた。 今回の独立社外取締役問題も構図が似ているように思える。田中亘によれば、平成26年改正会社法の検討過程において、一定の株式会社に対し、社外取締役の選任を義務づけるべきかが、法制審議会会社法制部会で議論された。しかし、「各会社がその特性に適した企業統治を採用する自由を妨げるべきではないことなどを理由とする反対論」により義務づけは見送られた。 田中によると「こうした反対論は、主として産業界出身者から寄せられた」、とされる。すなわち、経済界の経営の自由度を重視する姿勢が、社外取締役の選任を努力義務的位置づけにし、社外取締役が不在となっても、違法ではない状況への道を開く遠因となったと考えられる。 ニッポン放送とアスクルの件に共通しているのは、経済界の経営の自由度を確保したいというニーズによって、ある種、規制や制度設計に曖昧さ(抜け道)が意図的に残され、その抜け道が、本来の規制や制度設計の趣旨に必ずしもそぐわない形で利用されてしまったということである。 実際にそのような事例が出てくると、「このような抜け道の利用は、規制の趣旨から認められない」といった批判の嵐になる。しかしながら、抜け道を残すということには、それが自分たちの都合の良いようにも悪いようにも利用される可能性を残すことでもある。それが嫌なのであれば、ある程度みずからの手足を縛ることになるとしても、曖昧さを残さず、可能な限り規制や制度の趣旨が達成できるような形で当初から文言を設計すべきである。 なお、秋に開かれる臨時国会で、上場企業や非上場の大会社に社外取締役の設置を義務づける方向で、会社法を改正することが審議される予定という。今回の件は、法律改正が後手に回るという意味でも、ニッポン放送の件と酷似している』、「経済界の経営の自由度を確保したいというニーズによって、ある種、規制や制度設計に曖昧さ(抜け道)が意図的に残され、その抜け道が、本来の規制や制度設計の趣旨に必ずしもそぐわない形で利用されてしまった」、というのはその通りだろう。しかし、「コンプライアンスとは単なる法令順守ではなく、社会的要請に応えていくこと」という元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏の考え方に従えば、ヤフーの行為はやはり問題がある。筆者は「法令順守」という狭義の考え方に束縛されているようだ。
・『論点(3)で掲げた親子上場問題についても、類似の問題がある。 経済界は従来から、親子上場の規制には消極的であり、今回ヤフーに批判的意見を開示した団体においても、「上場子会社は、独自の資金調達手段による成長の加速や社員のモチベーションの維持・向上という利点を有する。」(日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク)、「親子上場は子会社の事業成長を加速するインキュベーション支援機能もあり」(日本取締役協会)と、親子上場制度自体には肯定的な見解をわざわざ述べている。 親子上場については、学識経験者の中でも、その賛否は分かれる。たとえば、宮島英昭らは、上場子会社にとっては、親会社という大株主によるモニタリング機能により、業績が独立企業よりも良いと報告している。 しかしながら、アスクルは、ソフトバンクグループから見ると曾孫会社(アスクルは、ヤフー〔親〕、ソフトバンク〔祖父〕、ソフトバンクグループ〔曾祖父〕という支配構造を持つ)である。アスクルに対して、親、祖父、曾祖父の誰がモニタリングを提供するかとなると、責任の所在は曖昧といわざるを得ない。むしろ、積み重なった4つの親子関係といういびつな支配構造の中で、より複雑な少数株主問題が内在しているように思える。 かつて、ニッポン放送・ライブドアの件を契機に、TOB規制が見直されたように、今回のアスクルの件は、親子上場に関する規制や制度設計、そして上場子会社のガバナンスに関して議論する格好の機会を与えてくれたといえる。経営の自由度を理由に、こうした議論を封じるのでなく、親子上場のメリットとデメリットを検証し、どのような形態や条件の下で上場子会社が許容、もしくは規制されるべきかという議論を進めるべきであろう』、これはその通りだ。
・『論点(2)少数株主利益の保護に背き、支配株主との利益相反を招いたのか  ここからは2つ目の論点である、少数株主保護についても考察しておこう。 たしかに、コーポレートガバナンス・コードにおいては、独立社外取締役に少数株主の利益の代弁することを期待していると思われる。しかしながら、今回のアスクルの件に関して、ことさらに少数株主利益の保護が持ち出されていることに対して、筆者は違和感を覚える。 そもそも、ロハコ事業はもちろんのこと、BtoB事業を含めても、アスクルの業績は芳しくない。2017年2月の倉庫火事や、近時の配送料高騰という事情はあるにせよ、売上高営業利益率は、2012年5月期の3%台から、直近2決算期には1.2%弱にまで低下している。 このような状況において、現社長の再任を決定した指名委員会や独立社外取締役は、はたして少数株主利益のために行動したと言い切れるのだろうか。 独立社外取締役といえども、経営陣によって、株主総会に候補として提案され、選任される。そのような独立社外取締役が、自身を候補として推薦してくれた経営陣に、どこまで厳しい意見を言えるのだろうか(あまり厳しいことを言っていると、次の株主総会では取締役候補から外されてしまうかもしれない)。独立社外取締役は、社内取締役よりは、しがらみに囚われない意見を述べられるであろうことは認めるが、経営陣に対する監視役という意味では絶対の存在ではない。 さて、少数株主の利益という観点から、ヤフーが取締役の不再任を発表した前日の7月16日から、株主総会の開催された8月2日までのアスクルの株価の推移を見ておこう。この間、アスクルの株価の上昇率は17%、同期間のTOPIXの上昇率は-2%である。もし今回の不再任のニュースが、少数株主利益を害するものであると市場が判断したのであれば、株価は下落したはずである。少なくとも、株価の反応を見る限り、不再任の発表によって少数株主利益が棄損されたとはいえない。 大株主であるヤフーとアスクルの利益相反と、少数株主利益の保護が問題になるとすれば、ロハコ事業を安値でヤフーに譲渡することであろう。この点については、アスクルの独立役員会が7月10日付の意見書で、ロハコ事業の譲渡への現経営陣の反対が、今回の不再任の背景にある可能性を主張している。これに対して、ヤフー側は7月29日付の開示資料で、不再任の理由はアスクルの業績低迷であるとし、こうした可能性を全面否定している。 今後、ロハコ事業を巡って、利益相反が生じる可能性は否定できない。だが現時点では仮定の話であり、どちらか一方の見解に与することは難しいというのが、筆者の意見である』、これもその通りだろう。
・『以上、アスクルの取締役不再任問題について、3つの論点を整理し、筆者の見解を述べた。 2019年を振り返ると、本件を含めて、上場企業の経営権を巡る問題が多い。 伊藤忠によるデサントへの敵対的TOB成立、廣済堂のMBOに対する旧村上ファンドの対抗TOBによる阻止、LIXILの会社側取締役候補の否認と株主提案取締役の選任という、3つの従来にはない形の経営権争いが行われ、いずれもその後、経営陣が交代している。また、HISによるユニゾホールディングスへの敵対的TOBは失敗には終わったものの、議決権の過半数を取得せず、比較的少ない資金で企業の経営権を掌握しようとするTOBが可能であるという、現状の制度の問題点を明らかにしたように思える。 こうした事案は、2014年以降、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードの導入により目指してきた、株主によるコーポレートガバナンスが、本格的に機能し始めている証左とも考えられる。それは経営者に対して、株主に説明責任が果たせる、より理論的な企業経営への転換を迫っているように思える。今回のアスクルのケースも、株主を主体とするガバナンスの新しい形を模索する過程で起こった事案と考えられるかもしれない。 少数株主利益は軽んじられてはならないが、その一方で、支配株主が経営陣を選任し、企業の経営の方向性を決められるというのが、株式会社の経営の原則でもある。「一所懸命に経営してきた現社長を、冷徹に解任する大株主」という構図に感情的に惑わされるのではなく、経営陣の保身(エントレンチメント)に悪用されないための独立社外取締役を含めた社外取締役の選解任方法や、ガバナンス上、社外取締役にどこまでの責任を期待するのかを考え直す機会として、本件が受け止められることを期待したい』、総論的で特に違和感はない。いずれにしても、アスクル新社長が今後、ヤフーとどのように提携関係を深めてゆくのか、注目したい。
タグ:郷原信郎 ダイヤモンド・オンライン JBPRESS 大西 康之 アスクルVSヤフー (窮地のアスクル ヤフーの反論に社外取締役が再反論 「ヤフーに最低限のモラルあると過信してた」、アスクル新社長が激白!ヤフーとの離別に迷いなし 吉岡 晃(アスクル社長 最高経営責任者)特別インタビュー、アスクル社長と独立社外取締役の不再任は 本当に問題だったのか?) 「窮地のアスクル、ヤフーの反論に社外取締役が再反論 「ヤフーに最低限のモラルあると過信してた」」 「大株主なら何をやってもいいわけじゃない」 独立役員会アドバイザーの久保利英明弁護士 上村達男早稲田大学名誉教授も「退任要求は提携違反」とする法律意見書 『ロハコを売れないか』と言ってきて『売れない』と答えたら『社長を辞めろ』。これでは支配株主の立場で圧力をかけているとしか思えない 独立役員会の意見 (1)岩田社長退任の是非については、指名報酬委員会で議論・決議した後の交代は現場を混乱させ、企業価値にマイナスになる (2)ロハコ事業の譲渡については、2018年12月にロハコ事業の再構築プランを発表したばかりであり、その効果を検証してから検討すべき (3)(ヤフーが今後もアスクルにロハコ事業譲渡を求めるなら)支配株主であるヤフーとの利益相反取引であることを十分に理解し、対等な立場で交渉することが求められる ヤフーに最低限のモラルがあると過信していた 「アスクル新社長が激白!ヤフーとの離別に迷いなし 吉岡 晃(アスクル社長 最高経営責任者)特別インタビュー」 ヤフーとの資本提携は解消したい。その考えは、社長が代わっても全く変わることはありません。 こんな形で社長を代えられて、いつまた同じことが起こるか分からないし、経営陣や社員のしこりは消えない。それにヤフーは独立社外取締役まで3人全員解任したので、会社が壊れてしまった。社長が新しくなったからといって次の日から仲良くしましょうということになるはずがない 慎重に事を進めていきます ヤフーの連結子会社でいることの最大の問題点は、ヤフーもアスクルもeコマース(電子商取引、EC)をやっていることです 「孫さんから、楽天とアマゾンをいつ超えるんだという質問ばかりされる」 鈴木一功 「アスクル社長と独立社外取締役の不再任は、本当に問題だったのか?」 今回のヤフーへの批判が、2006年のライブドアによるニッポン放送の株式公開買付(TOB)によらない株式取得を巡る、ライブドアへの批判と酷似している、という意味で既視感を覚えた アスクルとヤフーによる提携から現在に至るまでの事実関係 論点(1)社長と独立社外取締役の不再任は不当で、コーポレートガバナンス・コード上の問題があったのか そもそも取締役の選任は、会社法によって株主総会の普通決議事項として認められているものである コーポレートガバナンス・コードでは、“comply or explain” ソフトローにおける、社外取締役やグループ・ガバナンスに関する考え方を理由に、会社法に基づく株主総会での株主の取締役選任が制約されるとは考えがたい。もしそのようなことが許されるのであれば、少数株主保護を掲げれば、経営陣は支配株主の要請を跳ね返すことが可能になってしまう 経済界の経営の自由度を確保したいというニーズによって、ある種、規制や制度設計に曖昧さ(抜け道)が意図的に残され、その抜け道が、本来の規制や制度設計の趣旨に必ずしもそぐわない形で利用されてしまったということ 「コンプライアンスとは単なる法令順守ではなく、社会的要請に応えていくこと」 論点(3)で掲げた親子上場問題についても、類似の問題 親子上場のメリットとデメリットを検証し、どのような形態や条件の下で上場子会社が許容、もしくは規制されるべきかという議論を進めるべき 論点(2)少数株主利益の保護に背き、支配株主との利益相反を招いたのか 伊藤忠によるデサントへの敵対的TOB成立 廣済堂のMBOに対する旧村上ファンドの対抗TOBによる阻止 LIXILの会社側取締役候補の否認と株主提案取締役の選任 従来にはない形の経営権争い いずれもその後、経営陣が交代している 株主によるコーポレートガバナンスが、本格的に機能し始めている証左
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7pay不正利用(7pay不正利用で露呈したセブン&アイの「ITオンチなのに自前主義」、「7pay」不正問題には 日本企業の経営のダメさが凝縮している これはマネジメントの問題だ、セブンペイは氷山の一角!ITオンチ企業が陥るデジタル戦略の落とし穴、7pay大失敗に見る セブン帝国最大の強み「結束力」に生じた亀裂) [企業経営]

今日は、7pay不正利用(7pay不正利用で露呈したセブン&アイの「ITオンチなのに自前主義」、「7pay」不正問題には 日本企業の経営のダメさが凝縮している これはマネジメントの問題だ、セブンペイは氷山の一角!ITオンチ企業が陥るデジタル戦略の落とし穴、7pay大失敗に見る セブン帝国最大の強み「結束力」に生じた亀裂)を取上げよう。

先ずは、7月5日付けダイヤモンド・オンライン「7pay不正利用で露呈したセブン&アイの「ITオンチなのに自前主義」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/207950
・『コンビニ業界の王者・セブン-イレブンを擁するセブン&アイ・HDが満を持して7月1日にスタートさせた独自のキャッシュレスサービス「7Pay」。だが、同月2日に不正利用が発覚し、4日の謝罪会見では幹部の“ITオンチ”ぶりと当事者意識のなさが露呈。消費者の信頼を失墜させている』、お粗末極まる対応には、呆れ果てた。
・『たった4日で900人、5500万円の被害  サービス開始から4日で謝罪会見――。コンビニエンスストア業界の圧倒的な王者であるセブン&アイ・ホールディングス(HD)の子会社が、全国のセブン-イレブンの店舗で7月1日に始めたキャッシュレス決済サービス「7Pay」で、不正利用が発覚。4日に運営会社である7Payの小林強社長らが都内で記者会見して謝罪した。 何者かが利用者のアカウントに不正にアクセスし、利用者が登録していたクレジットカードやデビットカードからお金をチャージ。セブン-イレブンの店舗で、タバコなど単価が高く換金性のある商品を購入していたケースがあったという。 同社によると、4日午前6時現在で約900人、約5500万円の被害があったとみられる。 ただ会見では、不正アクセスは中国など海外の複数の国からあったとは説明されたものの、原因は「調査中」の一点張り。詳細は明らかにされなかった。 7payのセキュリティのずさんさについて、被害者やセキュリティの専門家などがインターネット上で検証作業を進めている。7Payを使うために必要な「7iD」のパスワードを忘れて新たに登録し直す際に、登録したメールアドレス以外のアドレスにパスワードを知らせるメールが送ることができてしまうことや、本人確認のために、SMS(ショートメッセージサービス)に数字などのコードを送って入力させる「二段階認証」と呼ばれる仕組みを採用していなかったことなどが指摘されている』、典型的な謝罪会見の割には、危機管理が全く出来ていない後世に語り継がれるようなお粗末な会見だった。
・『「二段階認証?」と聞き返した7Pay運営会社トップ  こうした7payのセキュリティについて、当然記者会見で注目が集まった。ところが、「どうして二段階認証を採用しなかったのか」という報道陣の質問に対して、7Payの小林強社長が「二段階認証?」と聞き返し、さらには「二段階云々」と発言。運営会社トップがキャッシュレス決済の安全の基本を知らないという”ITオンチ”ぶりを露呈する事態となった。同様に不正利用があったソフトバンクとヤフーが展開する「PayPay」が、二段階認証を採用していても不正を防げなかった先行事例の教訓を学んでいないように見える。 さらに、同席したセブン&アイ・HD執行役員の清水健・デジタル戦略部シニアオフィサーは、不正利用について謝罪したものの、「(サービス開始前に)セキュリティー審査をしたが、脆弱性は確認されなかった」と繰り返すなど、当事者意識がまるで感じられない姿勢を見せた。 そもそもリアルのコンビニ店舗では“業界最強”を誇るセブンだが、インターネット戦略では迷走を繰り返してきた経緯がある。 2015年にスタートしたインターネットショッピングサイト「オムニセブン」は、アマゾンや楽天などすでにECの巨人が市場に浸透した後の進出となり、品揃えの不十分さもあって拡大しなかった。 そこで戦略を切り替え、コンビニ店舗で使えるスマートフォンアプリ「セブンアプリ」を18年6月にリリース。利用者に割引クーポンを送るなどのメリットを付与し、ダウンロード数は1000万を超えた。 だが、同年に小売店の店頭を席巻したのは、前出のPayPayや、LINEの「LINE Pay」などIT大手のキャッシュレス決済サービスだった。業界2位のファミリーマートやローソンは、いち早くこれらのサービスを店頭で使える態勢を整えた。 だがセブンは、これらの利用開始がようやく今月と出遅れたうえに、ようやく独自開発の7Payのスタートにこぎつけたが、いきなり大きくつまずいたわけだ』、「小林強社長が「二段階認証?」と聞き返した」、のもさることながら、「清水健・デジタル戦略部シニアオフィサーは・・・「(サービス開始前に)セキュリティー審査をしたが、脆弱性は確認されなかった」、との言い訳には絶句した。審査のいい加減さを自ら暴露しただけだ。
・『コンビニ創業の成功体験に自信 IT人材が払底  セブンの今回の失態は、長くこだわってきた「自前主義」が、専門外のITの世界で通用しなかったことが大きい。 なぜ、セブンはそこまで自前主義にこだわるのか。総合スーパーのイトーヨーカ堂などを擁するグループ内で圧倒的な力を持つのは、国内コンビニを展開するセブン-イレブン・ジャパンだ。日本独自のコンビニというビジネスモデルを創り上げたのが彼らであることは間違いない。 ところが最近は、人手不足や過剰出店に苦しむフランチャイズ加盟店との間で、営業時間や粗利の分配比率をめぐって対立し、経済産業省や公正取引委員会が是正に乗り出すほどの社会問題となっている。 にもかかわらず自ら抜本的な見直しに踏み込めないのは、自前主義によって、国内コンビニ業界で王者の座を築いた成功体験への、自信とこだわりが強すぎるからだと指摘されている。 コンビニ業界2位のファミリーマートも、7Payと同時に独自のキャッシュレス決済サービス「ファミペイ」をスタートさせた。ただし、こちらは貯まったポイントをNTTドコモの「dポイント」や、楽天ポイントと連携させるなど、セブンとは異なる「オープン主義」を掲げる。 さらにファミマでは、キャッシュレス事業を進めるにあたっても、購買情報などビッグデータの活用を重視する親会社の伊藤忠商事が人材を送り込むなどして深く関与している。ローソンも独自決済サービスこそ始めていないが、決済関連部門に親会社である三菱商事の人員が入っている。 その一方で、セブン&アイ・HDで重要なのはリアル店舗のコンビニ。商品開発、出店、オーナー対応といったコンビニ運営に関わる部署が花形で、前述のオムニセブンなどネット関係の部署は一段低く見られている。ITや決済関連の専門知識を持つ社員の数はそもそも少なく、人材が払底している。 記者会見で失態を曝した7Payの小林社長は、かつてセブン&アイ・HD取締役として「オムニチャネル推進室長」を務めたものの、鈴木敏文名誉顧問が追いやられたクーデターよりも前の15年5月に取締役を退任。グループ内の出世の“本流”から外れた人物と目されていた。 それに加えて、7Payには他の事業会社で問題を起こしたり、成果を上げられなかった社員が送り込まれたりするケースがある。こうした環境では社員のモチベーションも保てず、独自のキャッシュレス決済サービスを導入するのに十分な体制だったか疑問符がつく。 後発組にもかかわらず、利用者の「安心・安全」を守れなかった7pay。キャッシュレス決済そのものへの信頼を失墜させた責任はあまりに重い』、IT部門は社内データの分析が中心で、外部のネットワークの接続では全くノウハウがなかったのだろう。今朝の日経新聞によれば、営業時間短縮を訴えた加盟店が、日曜休業を申請、本部は今回も契約解除で脅しているようだ。セブン-イレブンは、組織としてまともに機能しなくなったようだ。

次に、経済評論家の加谷 珪一氏が7月9日付け現代ビジネスに寄稿した「「7pay」不正問題には、日本企業の経営のダメさが凝縮している これはマネジメントの問題だ」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/65747
・・・『満を持して投入したサービスが4日でダウン  セブン&アイ・ホールディングス傘下の決済サービス会社セブン・ペイは2019年7月4日、都内で記者会見を開き、同社のスマートホンフォン(スマホ)決済サービス「7pay(セブンペイ)」のアカウントが、第三者による不正アクセスを受けたと発表した。 7payは、スマホを利用したQRコード決済のサービスのひとつで、7月1日に事業をスタートしたばかりである。スマホにダウンロードしたアプリにクレジットカードなどからお金をチャージし、アプリが表示するバーコードを店員がスキャンすることで決済が完了する。 QRコード決済のサービスは、操作が簡便であることから、中国などを中心に爆発的に普及しており、国内でもソフトバンクグループのPayPayが100億円還元キャンペーンを実施するなどシェア争いが激化している。 7payは、QRコード決済としては後発だが、セブン-イレブンという巨大な店舗網を背景としたサービスであり、競合各社にとっては警戒すべき相手だったに違いない。だが、同社のサービスはわずか4日でハッキングされ、大半のサービスを停止せざるを得ない状況に追い込まれた。 セブン-イレブンの知名度が高いだけに社会に与えたインパクトも大きく、下手をするとQRコード決済そのものに冷や水を浴びせかねない状況だ。 これに加えて今回のトラブルでは、会見に臨んだ同社トップが、セキュリティについてほとんど知識を持っていないことが明らかになるなど、ずさんな経営体制も露呈している。 今回の不正アクセスの被害者は現時点で約900人、金額は約5500万円とされているが、今回の不正アクセスの原因はどこにあったのだろうか』、原因を解明してもらいたいところだ。
・『「2段階認証って何?」の衝撃  不正アクセスの詳細について会社側は完全に情報を開示していないので、現時点で明らかになっている情報をベースに考察すると、2段階認証と呼ばれる本人確認の仕組みを採用していなかったことと、パスワードを変更する際、登録したメールアドレス以外のアドレスでも手続きができるようになっていたことの2つが大きいと考えられる。 同社以外のQRコード決済サービスでは、本人確認に2段階認証の仕組みを導入している。最初に登録したスマホとは異なるスマホでログインするといった操作を行う場合、携帯電話のSMS(ショートメッセージサービス)にパスワードが送られ、それを入力しない限り次の操作に移ることができない。携帯電話そのものを盗まれない限り、簡単に第三者がアカウントを乗っ取ることはできない仕組みだ。 ところが7payでは、この仕組みが導入されていなかったことから、パスワードが破られてしまうと、第三者がアカウントを乗っ取ることができてしまう。 会見では、記者から「なぜ2段階認証の仕組みを採用しなかったのか」という質問が出たものの、同社トップが「2段階認証?…」と言葉に詰まる状況となり、逆に記者から2段階認証の仕組みを説明され、はじめてその概念を理解するという出来事があった。 これに加えて同社のサービスでは、パスワード失念などリセットが必要となった場合、あらかじめ登録しているメール・アドレスとは別のアドレスに手続きメールを送ることができる仕組みになっていた。同社は、セブン-イレブンやイトーヨーカドー、ネットショッピングのオムニ7などにおいて、多くの既存会員を擁している。各サービスに共通するIDも発効しているので、既存会員は当然、7payも使うことができる。 既存会員の中にはキャリアメール(NTTドコモなど通信会社が提供するメール)でID登録をした人も多く、格安SIMなどへの乗り換えによってキャリアメールが使えなくなっている可能性があることから、別のアドレスも使える仕様にしたという。 若年層でキャリアメールを使っている人はあまり見かけないが、セブンの場合、中高年以上の利用者も多く、キャリアメールでの登録が多かった可能性は高いだろう。だが、パスワードの変更手続きを登録メール以外でもできるような設定にしてしまえば、アカウント乗っ取りが多発するのは自明の理であり、これは明らかにサービスの設計ミスいってよい』、利便性を重視するの余り、セキュリティを疎かにするというのはお粗末過ぎる。
・『経営トップは技術に詳しい人であるべきか?  同社トップが2段階認証を知らなかったことについてはネットを中心に驚きの声が上がっている。2段階認証の仕組みは、セキュリティ分野における初歩の初歩の概念なので、いくら技術の専門家ではないとはいえ、決済サービスのトップがこれを知らなかったというのは、大きな問題といってよいだろう。 だが、技術に詳しい人をトップに据えればそれで問題が解決するのかというと話はそう単純ではない。これはトップが技術に詳しいかどうかということではなく、日本企業が抱えている深刻な経営問題と捉えた方がよい。 一般論として経営トップに立つ人は、自身が経営する企業の製品やサービスについて詳しく知っておく必要がある。だが、技術が細分化されていたり、経営領域が拡大すれば、当然、自身ではカバーできない部分も出てくる。 技術に詳しい人が必ずしも経営者としての適正(正しくは「適性」)を備えているとは限らないので、トップの人選にあたってもっとも重視されるべきなのは、やはり経営者としての能力であることは言うまでもない。 仮に技術に詳しくなくても、優秀な経営者であれば、自身が詳細な知識を持っていないことをすぐに認識するので、詳しい人間をスタッフとして近くに置くか、責任者として登用する形で、知識不足をカバーする体制が構築されるはずである。諸外国のIT企業トップの中にも、ITに詳しくないという人はそれなりにいるが、問題なく経営できている。 だが、人材の流動性が乏しく、年功序列を基本とする日本企業の場合、経営者としての適正(同上)がない人がトップに立つケースはザラにある。仮にトップにそれなりの見識があっても、年次の関係で自由に部下を配置できない、社内に専門的な人材がいないといった理由から、十分なサポート体制を構築できないことも多い。今回のケースがどちらに相当するのかはまだ分からないが、日本企業に顕著な問題である可能性は高いだろう』、確かにセブン-イレブンに止まらず、「日本企業に顕著な問題」なのかも知れない。
・『最終的にはすべてマネジメントの問題  今回のシステムを開発した企業名は明らかにされていないが、既存システムとの連携などを考えると、同社がこれまでシステム開発を依頼してきた複数の大手システム会社である可能性が高い。システム会社の技術力劣化を指摘する声もあるようだが、さすがに2段階認証の不採用や、登録メール以外でもパスワード変更ができる仕組みについて、その脆弱性を理解していなかったはずはない。 現場からは「この仕組みではセキュリティ上危険だ」という指摘が上がっていた可能性が高く、一方、営業サイドの人間からは、利用者の利便性を最優先する声が出たことも想像に難くない。利便性とセキュリティをめぐって論争になるのは悪いことではなく、最適なサービスにするための重要なステップともいえる。 むしろ、経営陣が保身ばかり考え、トラブルを避けたいという意向が強すぎると、某銀行のネットサービスのように、利用者にとって不便極まりないものが出来上がることにもなりかねない。 利便性とセキュリティとの間で対立が起こった時、最終的な決断を下すのは経営者の責務であり、このような場面でこそ経営者としての能力が問われることになる。結果的にこうした脆弱なシステムを作り上げてしまったのは、まさにセブン&アイ・ホールディングスのマネジメントの問題であると筆者は考えている』、その通りだ。

第三に、8月5日付けダイヤモンド・オンライン「セブンペイは氷山の一角!ITオンチ企業が陥るデジタル戦略の落とし穴」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/210786
・『不正利用問題に揺れたセブンペイが、9月末でのサービス終了を発表した。発覚直後の会見では、セキュリティー対策への認識の甘さが露呈したが、これを対岸の火事だと安心してはいられない。あらゆる業種・業態で、デジタル活用にはリスクがつきまとう。かつて東京地方裁判所・東京高等裁判所でIT専門の調停委員を務め、企業におけるデジタル活用やシステム開発の問題に詳しい、経済産業省CIO補佐官の細川義洋氏に“素人”でも気を付けなければならないIT開発の要点を聞いた』、ぴったりの専門家の言い分も参考になりそうだ。
・『セブンペイの開発ベンダーは訴えられたら負ける?  Q:セブンペイの不正利用問題では、同社のセキュリティーへの認識の甘さや対応の遅さなどが浮き彫りになりましたが、この件に関して率直なご意見をお聞かせください。 A:ダイヤモンド・オンラインの読者の方は多くがユーザー企業(事業会社)の立場かもしれません。ただ、今回の件を実際の開発を行うベンダーの視点からお話しすると、もしもセブンペイとベンダーが裁判になったら、ベンダーが負ける可能性が高いと思っています。 Q:なぜでしょうか。 A:平成21年に通販会社のウェブサイトからクレジットカード情報が盗まれるという事件があり、ユーザー企業はシステムを開発したベンダーと裁判になりました。このときの判決は、基本的な責任はベンダー側にあるというものでした。ユーザーの希望通りに開発したのに、何が悪かったのか。 システム開発においては、たとえユーザーから要望がなかったとしても、その専門家たるベンダーがシステムの危険性に気付いて、自分の判断でできるところは修正し、またはユーザー企業に必要な作業を提案したり、追加の見積もりを出したりする責任があります。これを一般に、ITベンダーの「専門家責任」といいます』、「ITベンダーの「専門家責任」」とは初耳だが、合理的な考え方だ。
・『先述の通販会社のウェブサイトは、閲覧者がデータベースを不正に操作できてしまう危険な構造になっていました。しかし、こうした構造を避けてセキュリティー対策を施しておくことは、当時のIT業界ではすでに常識でした。経済産業省やIPA(情報処理推進機構)から注意喚起も出ていましたし、同様の脆弱性が問題となって起きた事件もありました。専門家であるITベンダーは当然そうした常識を知っていたはずですから、ユーザーから要望や注意がなくても、改善策を自発的にやるか、提案をしなければならない。それを怠ったということで、本件はベンダー側の責任になりました。 Q:セブンペイでは、二段階認証を採用していなかった点が問題視されていました。 A:今の時代であれば当然、二段階認証を導入しておかなければいけません。たとえセブンペイ側から要望がなかったとしても、最低限、ベンダーは提案すべきです。実際の提案・開発段階でどのような事情があったのかはわかりませんが、今までのセキュリティーがらみの判決を鑑みると、訴訟になれば「ベンダーが悪い」となる可能性は大いにありますね』、なるほど。
・『“プロにお任せ”はNG! セブンペイに提案を受け入れる姿勢はあったか  逆に、ユーザー企業はこうした提案を引き出さなくてはなりません。つまり、引き出せなかったベンダーとの関係性に問題があるということ。ベンダーも人間です。お金が足りないからそこまでやりきれない、お客さんから要望がないからこれくらいでいいだろう、スケジュールに余裕がないから後回しにしよう…と考えたくもなります。 先ほど、ベンダーには専門家責任があると言いましたが、ベンダーがプロだからといって「任せておけばいい」というわけではありません。むしろ、ユーザー企業がベンダーに積極的に疑問をぶつけて、会話をリードしていかなければならないのです』、(ベンダーの提案を)「引き出せなかったベンダーとの関係性に問題がある」、というのは、驕り高ぶったセブン&アイでは、大いにありそうだ。
・『Q:ユーザー企業として、ベンダーと具体的にどのような対話をしていくべきなのでしょうか。 A:ベンダーに提案を依頼する前に、ユーザー企業内で「どんな心配事があるのか」を考えておくべきです。 まず、どこでどんな情報が発生して、どのようなやりとりを経て、最終的にどうなるのか、という情報の流れを図面にします。データフローとよばれるものです。この図ができたら、今度は自分が悪者になったつもりで、「どこが狙いやすいか」とか「どうやったらなりすませるか」を考えてみる。できればそれなりの技術的な知見を持った人も含めて、複数人でデータフローのあら探しをするのです。 Q:あら探しはユーザー企業内だけでやるべきなのですか。 A:「その情報がどれだけ大切なのか」を一番よくわかっているのが、ユーザー企業です。そのため、技術的な課題はさておき、まずはユーザー企業だけで好き勝手に妄想してみることが必要なのです。 その後、ベンダーに提案を依頼する前の段階でいろいろな心配事をベンダーにぶつけます。できれば、複数のベンダーと話をするのがいい。そこで、セキュリティーを含めてあらゆる心配事をさらに深掘りしていくのです。 また、実際の開発が始まってからは、「提案だけならいつでも受け取る」姿勢が重要です。例えば、開発中にセキュリティーの問題が見つかった場合。ベンダーから「追加の開発が必要だ」と言われたときに、「契約も結んだし、今さら何を言っている。そんなことできるわけない」と、聞く耳持たずではいけません。 やはり、ベンダーは日々ITの現場にいて、知見も蓄積されています。提案するのにも、理由があるはず。最終的にやるかどうかはユーザー企業内で判断すればいいですが、ユーザー企業はベンダーからの追加提案、追加見積もり、スケジュール変更などを「聞く姿勢」をしっかり示しておくべきです。そうすれば、おのずと必要な情報は引き出せてくると思います。 今回、セブンペイがベンダーとどのような関係を築いていたかは臆測の域を出ません。とはいえ、やはり二段階認証の話が開発中ずっと出なかったとは考えられない。ユーザー企業に必要なのは、専門的な知識よりも、謙虚で柔軟な姿勢なのだろうと思います』、「ユーザー企業に必要なのは、専門的な知識よりも、謙虚で柔軟な姿勢」、というのは、セブン&アイに最も欠けていたのだろう。
・『プロジェクトがもめて頓挫するのは同床異夢の組織である  Q:業種業態問わず、さまざまな企業でITプロジェクトが進んでいます。IT開発経験の少ない企業がつまずきやすいポイントは、どんなところでしょうか。 A:一番問題が起きるのは、要件定義(注:導入するシステムにどんな機能を持たせるのか、機能の範囲や性能などを決めておくこと)ですね。開発経験が少ない企業だと、この「要件定義をしなければいけないもの」に抜け漏れが出てしまうことがあります。 また、「この機能は必要かどうか」とか「いつまでに必要なのか」といった意思決定がスムーズにできないことも多いです。システム担当者がやりたいことと、実際にシステムを使うエンドユーザー部門の意見が食い違ってしまう。それをまとめられる人がいないので、上層部に判断を委ねることになり、余計に時間がかかる…ということが起こります。 Q:システム利用者が多くの部門に及ぶと、利害関係が生じてプロジェクトが進まないという話はよく聞きます A:プロジェクト成功に向けてうまく動けていない組織は、「このシステムができたら会社がもうかる」「うちの部署がこう変わる」といった「デジタル化したときの夢」を共有できていません。同床異夢だから、実現すべき姿にズレが生じてしまうのです』、一般論としては分かるが、セブン&アイに当てはまるのかはまだ情報不足だ。
・『開発途中で、「うちの部署にこんなデメリットがあるなんて知らなかった!」というクレームが入るのはよくある話。開発に入る前に、関係者を集めて具体的な業務とメリット・デメリットをみんなで語り合い、模造紙やホワイトボードにまとめるなどして、イメージをビジュアル的に共有することがプロジェクトの第一歩です。この段階で、プロジェクトによって「損をする部門」があるのであれば、会社全体の利益と照らし合わせたうえで、事前に対策を考えておくべきです。 多くの人が関わるプロジェクトにおいて、現場のリーダーには、熱意とイメージ力、そして議論をファシリテートする力が必要です。そして、そのリーダーにきちんと権限が与えられていること。現場に決定権がなければ、結局上層部にお伺いを立てなければならず、滞りが出てしまいます』、これも、セブン&アイに当てはまるのかはまだ情報不足だ。
・『ITを「本業」だと考えない企業にデジタル・トランスフォーメーションはできない  Q:著書『システムを「外注」するときに読む本』の出版から2年がたちました。企業を取り巻く環境も随分変わったと思いますが、最近気になる問題はありますか。 A:昨今のプロジェクトでは、AWS(アマゾン)やAzure(マイクロソフト)などのクラウドサービスを活用することが多くあります。クラウドサービスはそれぞれサービス内容が異なるので、できることとできないことに違いがあるのですが、これを正しく理解できていない。そのため、できると思っていたことが、いざ開発してみると実現できないということがあるのです。 しかも、クラウドサービス事業者はサービスを提供するだけで、それ以外の部分には責任を持ちません。ベンダーも自社の製品ではないため、必要な知識や検討事項に抜け漏れが出ることもあります。こうしたトラブルは今後増えていくでしょう。 対策として、ユーザー企業はクラウドサービス事業者が開催する研修に参加するなど、積極的に情報を収集すべきです。複数のクラウドサービスのサービス内容、セキュリティー、契約内容の比較検討をユーザー企業自身でやったほうがいい。うまくいかなくて、最終的に困るのは自分たちなのですから。 忙しい業務の合間を縫って勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、私は、ITに関する知識の習得は「本業」として考えるべきだと思います。デジタル・トランスフォーメーションでは、IT中心に仕事をしていくことになります。「ITはうちの専門分野ではない」「ITはスタッフ部門の仕事」という認識は改めなければなりません』、これはセブン&アイに当てはまりそうだ。
・『Q:「本業」として考えるには、具体的にどういう点を改善すべきですか。 A:例えば、ユーザー企業において、「IT部門で長年経験を積んだ人が出世しない」とか「ITの研修にお金がかけられない」というのはよくある話です。ITは動いて当たり前。動かないと非難されるけど、動いても褒められない。多くの企業で、システム部門の立場はそんなところでしょう。しかし、これではデジタル・トランスフォーメーションは成功しません。ITの成功を、本業と同様に評価する姿勢が必要です。 今は、部門横断的なデジタル活用をめざして、システム部門以外もITプロジェクトに参加するケースがあります。例えば、営業担当がITプロジェクトに週2回携わるとなったときに、「自分の営業成績が下がって困る」状況ではだめ。ITプロジェクトで出した成果も、その活動の割合に応じて人事考課できちんと加味してあげるべきです。 まずは、こうした人事の視点からITに関わることを評価する。これが関係者のやる気につながります。要件定義とか、セキュリティー対策とか、細かいことはプロジェクトメンバーのモチベーションあってのことです』、専門家だけあって、一般論が多いが、セブン&アイでのシステム部門の軽視は、セブンペイの社長に如実に表れているようだ。

第四に、8月20日付けダイヤモンド・オンライン「7pay大失敗に見る、セブン帝国最大の強み「結束力」に生じた亀裂」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/212109
・『コンビニエンスストア業界の王者が鳴り物入りで始めたキャッシュレス決済サービス「セブンペイ」は、3カ月でお蔵入りに。後手に回る対応や社内の混乱から、「セブン帝国」の強みである結束力に亀裂が生じていることが伝わってくる。 「記者会見の動画中継を見ていて、思わずズッコケた」──。セブン&アイ・ホールディングス(HD)が、「セブンペイ」の中止を発表した8月1日のそれだ。たった3カ月でサービス終了という失態に、ある関係者は言葉を失った。 セブン独自のスマートフォンによるキャッシュレス決済サービスは、7月1日の開始直後にアカウントの乗っ取りによる不正利用が発覚。「2段階認証」がなされていないなど、セキュリティー上の不備が次々と指摘され、9月末での中止を余儀なくされた。 HD傘下の運営会社であるセブン・ペイの奥田裕康取締役営業部長は、「開発段階では2段階認証を想定していたが、使用感を考慮して“入り口”の敷居を低くした」と見通しの甘さを釈明した。 経済産業省や民間企業などで構成する一般社団法人キャッシュレス推進協議会のガイドラインでは、2段階認証を求めている。そして、協議会の理事には、セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)の古屋一樹会長が就任している他、会員企業にはSEJやセブン・ペイも名を連ねる。前出の関係者は、「協議会の会合には各社の担当者が出席していた。一体何を聞いていたのか」とあきれ顔だ。 不正利用の原因については、グループナンバー2の後藤克弘HD副社長をトップとした、「セキュリティ対策プロジェクト」が調査を続けている。だが、調査報告書は「セキュリティー上の理由」によって外部に公表しない方針だ。過去に個人情報の漏えいを起こしたベネッセHDや日本テレビ放送網は、同様の報告書を公表しているにもかかわらず、である。 セブンペイ終了後も、同じIDとパスワードを用いたインターネット通販サイト「オムニセブン」や、クーポンがたまる「セブンアプリ」はサービスを続ける。セブン側は、IDとパスワードを初期化したことなどから、「セブンペイ以外のサービスはセキュリティー上の問題はない」と主張。これらのサービスに登録された個人情報の「明確な漏洩の痕跡は認められない」との見解を示した。 しかし、国際大学GLOCOM客員研究員の楠正憲氏は、「調査報告書がセキュリティーを理由に公表できないということは、まだ欠陥が残った状態だと思われても仕方がない」と指摘。個人情報についても、「従来使われていたIDが攻撃対象となっており、オムニセブンから相応の流出が起きているのではないか」との見方を示す』、「開発段階では2段階認証を想定していたが、使用感を考慮して“入り口”の敷居を低くした」との奥田裕康取締役営業部長の発言は、セブンペイ社長が2段階認証を知らなかったことから、疑わしい。センブン&アイも参加している「キャッシュレス推進協議会のガイドラインでは、2段階認証を求めている」にも拘らず、セブンペイ社長は知らなかったというのは、お粗末過ぎる。
・『社内ノウハウ得られず欠陥だらけで実用化 コンビニ事業も逆風に  なぜ、ここまで欠陥だらけのセブンペイが実用化されたのか。 運営会社のセブン・ペイには、ファミリーマートのキャッシュレス決済サービス「ファミペイ」が始まる7月に間に合わせなければという焦りがあった。加えて、決済関連のノウハウを有するセブン銀行や電子マネー「nanaco」の担当部署から、十分な協力が得られなかった。さらに、システム構築を請け負ったITベンダーが複数社にまたがっており、責任を持って全体最適の実現を目指す体制でなかったことも影響した。 セブンでは、グループの屋台骨である国内コンビニ事業において今年2月、本部と加盟店との対立が表面化。24時間営業や粗利の分配を巡る不公平さが強い批判を浴び、経産省や公正取引委員会が是正に乗り出している。 こちらを取り仕切るSEJの関係者に言わせれば、セブンペイ問題は、「あれは、HDがやったこと」と、ひとごとの姿勢だ。 セブンペイの火の粉を払おうとするSEJ内部では、24時間営業を巡る社内の足の引っ張り合いが目下の関心事だ。永松文彦社長は、希望する加盟店に時短営業を認めるとアナウンス。それにもかかわらず、時短営業を阻止しようと加盟店に圧力をかける本部社員の動きを上層部が抑え切れない。 このように、結束力が武器だったはずのグループ内は、そこかしこで反目、分裂の様相を呈しており、収拾がつかない。鈴木敏文HD名誉顧問の会長時代は、良くも悪くも持ち前の“徹底力”でグループをけん引していた。だが井阪隆一HD社長の体制となってからは、グループや加盟店に従来たまっていた不満や不均衡が一気に噴き出しているように見える。 不振の百貨店や総合スーパー事業のリストラも焦眉の急だが、「腹をくくって改革を進められる人物が、今のセブン経営陣にはいない。その後継となり得る人材も見当たらない」(ある小売り大手幹部)。 国内コンビニ事業で盤石のシェアを築き、グループ売上高12兆円と「セブン帝国」と呼ばれる巨大企業に成長したセブン&アイ・HD。噴出する諸問題への後手に回る対応は、グループの強固な結束力の崩壊の予兆を感じさせる』、前述のように、今日、新に「日曜休業」問題までが噴出、本部は今回も契約解除で脅しているようだ。あちこちで噴出している「グループの強固な結束力の崩壊の予兆」に対して、如何に対応してゆくか、リーダシップが問われているようだ。 
タグ:ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス 加谷 珪一 7pay不正利用 (7pay不正利用で露呈したセブン&アイの「ITオンチなのに自前主義」、「7pay」不正問題には 日本企業の経営のダメさが凝縮している これはマネジメントの問題だ、セブンペイは氷山の一角!ITオンチ企業が陥るデジタル戦略の落とし穴、7pay大失敗に見る セブン帝国最大の強み「結束力」に生じた亀裂) 7pay不正利用で露呈したセブン&アイの「ITオンチなのに自前主義」」 たった4日で900人、5500万円の被害 「二段階認証?」と聞き返した7Pay運営会社トップ セブンは、これらの利用開始がようやく今月と出遅れたうえに、ようやく独自開発の7Payのスタートにこぎつけたが、いきなり大きくつまずいた コンビニ創業の成功体験に自信 IT人材が払底 後発組にもかかわらず、利用者の「安心・安全」を守れなかった7pay。キャッシュレス決済そのものへの信頼を失墜させた責任はあまりに重い 日曜休業を申請 「「7pay」不正問題には、日本企業の経営のダメさが凝縮している これはマネジメントの問題だ」 「2段階認証って何?」の衝撃 経営トップは技術に詳しい人であるべきか? 日本企業が抱えている深刻な経営問題 トップの人選にあたってもっとも重視されるべきなのは、やはり経営者としての能力であることは言うまでもない。 仮に技術に詳しくなくても、優秀な経営者であれば、自身が詳細な知識を持っていないことをすぐに認識するので、詳しい人間をスタッフとして近くに置くか、責任者として登用する形で、知識不足をカバーする体制が構築されるはずである。諸外国のIT企業トップの中にも、ITに詳しくないという人はそれなりにいるが、問題なく経営できている 日本企業に顕著な問題である可能性 最終的にはすべてマネジメントの問題 「セブンペイは氷山の一角!ITオンチ企業が陥るデジタル戦略の落とし穴」 経済産業省CIO補佐官の細川義洋氏 “素人”でも気を付けなければならないIT開発の要点 セブンペイの開発ベンダーは訴えられたら負ける? ITベンダーの「専門家責任」 “プロにお任せ”はNG! ベンダーの提案を)「引き出せなかったベンダーとの関係性に問題がある プロジェクトがもめて頓挫するのは同床異夢の組織である ITを「本業」だと考えない企業にデジタル・トランスフォーメーションはできない 「ITはうちの専門分野ではない」「ITはスタッフ部門の仕事」という認識は改めなければなりません 「7pay大失敗に見る、セブン帝国最大の強み「結束力」に生じた亀裂」 キャッシュレス推進協議会のガイドラインでは、2段階認証を求めている 協議会の理事には、セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)の古屋一樹会長が就任している他、会員企業にはSEJやセブン・ペイも名を連ねる 調査報告書がセキュリティーを理由に公表できないということは、まだ欠陥が残った状態だと思われても仕方がない 社内ノウハウ得られず欠陥だらけで実用化 コンビニ事業も逆風に 噴出する諸問題への後手に回る対応は、グループの強固な結束力の崩壊の予兆を感じさせる
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日本型経営・組織の問題点(その7)(トヨタが「終身雇用」を諦めてくれた方が日本の労働者の賃金は上がる、相次ぐ脱終身雇用宣言 信頼と責任築く経営哲学いずこに?、NECは新卒1000万 NTTは1億円 研究者待遇 世界基準に) [企業経営]

日本型経営・組織の問題点については、2月12日に取上げた。今日は、(その7)(トヨタが「終身雇用」を諦めてくれた方が日本の労働者の賃金は上がる、相次ぐ脱終身雇用宣言 信頼と責任築く経営哲学いずこに?、NECは新卒1000万 NTTは1億円 研究者待遇 世界基準に)である。

先ずは、ノンフィクションライターの窪田順生氏が5月16日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「トヨタが「終身雇用」を諦めてくれた方が日本の労働者の賃金は上がる」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/202493
・『トヨタ社長が「終身雇用を守るのは難しい」と発言をしたことが、ネット上で大騒動になっている。若い世代ほど「終身雇用」への憧れを持っているのだ。しかし、実際には企業が終身雇用を放棄した方が、日本人の賃金は上がる』、本当だろうか。
・『若い世代が憧れる「終身雇用」を無残にも全否定したトヨタ社長  日本企業ではじめて売上高が30兆円を超えたトヨタ自動車が、ネット民からボロカスに叩かれている。  豊田章男・トヨタ自動車社長が、日本自動車工業会の会長という肩書きで臨んだ記者会見で、「終身雇用を守っていくというのは難しい局面に入ってきた」「雇用を続けている企業にインセンティブがあまりない」と述べたことに対して、以下のような批判の声が一部から寄せられているのだ。 「役員報酬を1人平均2億も払えるのなら社員を大事にしろ」「トヨタがそんなことを言い出したら、もう誰も働きたくなくなる」「こんなことを軽々しく言う会社には、もう優秀な新卒がこないだろ」 このご時世、「安定」を求めてトヨタを目指す若者を「優秀」と呼んでいいのかは甚だ疑問ではあるが、怒れる方たちの気持ちはわからんでもない。 オッサン世代は人数が多いだけで、死ぬまで会社にぶら下がって退職金もガッポリともらえているのに、なんでそんな「老害」の尻拭いを下の世代がやらなくてはいけないのだ、という「世代間格差」が露骨にあらわれるテーマであることに加えて、「終身雇用」というのは、多くの人々、特に若い世代にとっては「憧れ」なのだ。 独立行政法人労働政策研究所の「第7回勤労生活に関する調査」(平成28年)によれば、「終身雇用」「年功賃金」を支持する者の割合は、調査を開始した1999年以降、過去最高の87.9%となっている。 と、聞くと、会社に忠誠を誓う中高年リーマンたちの顔を思い浮かべるかもしれないが、この動きを牽引しているのは、意外にも若者だ。20~30代で「終身雇用」「年功賃金」を支持する割合が2007年頃から急激に伸びているという。 どんな会社でもいいから定年退職の日まで雇われたい――。なんて感じで若者たちが抱いた大志を、日本を代表する大企業トップが無情にも握りつぶしてしまったのだ』、「20~30代で「終身雇用」「年功賃金」を支持する割合が2007年頃から急激に伸びている」、というのは派遣など非正規雇用に苦しめられてきたことも背景にあるのだろう。
・『他の先進国の賃金が上昇する中 日本だけが減少した  ただ、気休めを言うわけではないが、若い世代の方たちは、そこまで悲観的になる必要はない。むしろ、トヨタ自動車のように日本社会に大きな影響を与える大企業が「終身雇用」をサッサとギブアップしてくれた方が、日本のためになる。 皆さんの「賃金」が上がっていくからだ。 ご存じのように、日本の労働者はこの20年、仕事は早くてうまくて、賃金はギリギリまで安くという「牛丼スタイル」でコキ使われてきた。 経済協力開発機構(OECD)が試算した働き手1人の1時間あたりの賃金は、この20年でイギリスは87%アップ、アメリカ76%、フランス66%、ドイツ55%と先進国は順調に増えている中で、日本はマイナス9%となっている。 「見たか!これがメイド・イン・ジャパンの底力だ!」と日本製の電化製品を海外に自慢している間に、外国人がドン引きするほどの「労働者軽視国家」になっていたというわけだ。 では、なぜこうなってしまうのか。要因は様々だが、そこには終身雇用システムの根幹をなす「年功賃金」の影響も大きい。 新卒の給料は安く、中堅はまあまあ、ベテランは高給取りという年功序列型給与の企業というのは、基本的に会社に長いこと勤め上げることを前提とした賃金設定となっている。つまり、日本の労働者は、定年まで雇ってくれるという「保障」と引き換えに、若いうちは低賃金でもガマンすることを強いられているのだ。 この傾向は昨日今日に始まったことではなく、戦後の大企業のサラリーマンはずっと「安定」というニンジンをブラ下げられながら、「賃金先送り」で働いてきた』、「働き手1人の1時間あたりの賃金は、この20年でイギリスは87%アップ、アメリカ76%、フランス66%、ドイツ55%と先進国は順調に増えている中で、日本はマイナス9%となっている」、とのOECD試算には驚かされた。ただ、要因として、「終身雇用システムの根幹をなす「年功賃金」の影響も大きい」との指摘はいささか乱暴だ。為替の影響などもっと多面的にみるべきだろう。もっとも、「戦後の大企業のサラリーマンはずっと「安定」というニンジンをブラ下げられながら、「賃金先送り」で働いてきた」、との指摘はその通りだ。
・『低賃金でもニコニコできたのは終身雇用を前提とした社会だから  わかりやすいのは1974年、不況が長引く中で、一部製造業で「中間管理職に減給旋風」(読売新聞1974年11月14日)が起きた時だ。 普通の国の労働者なら「なぜ俺らだけ」「経営者のクビをとれ」と大騒ぎになるのだが、当時、大企業の中間管理職の多くはこれを素直に受け入れた。それどころか、自主的に給料の10%を返上する“サラリーマンの鑑“も現れたという。この背景に、定年まで雇ってもらえるという「保障」があるのは明らかだ。 「終身雇用を建前にして、会社自身が“社会福祉団体”である日本では、なかなか荒療治がやりにくい。そこで失業者を出さないかわりに、ある程度の賃金カットは耐え忍んでもらいたいということになるわけで、帰属意識の強い管理職には、どの会社にも多かれ少なかれ、こうしたことを受け入れる下地があるようだ」(同上) では、日本人を低賃金でもニコニコさせてきた、この「保障」がなくなったらどうなるか?将来が不安だから、もっと給料を上げろという怒りの声が持ち上がるのは当然だ。優秀な人はどんどん条件のいい会社へ移ってしまうので、企業側も賃上げせざるを得なくなるのだ。 もしトヨタが、終身雇用をギブアップすれば当然、トヨタで働く人たちの賃金は上がっていく。横並びが基本の日本では、他の製造業も同じような動きが出る。大企業がそうなれば、優秀な人材の流出を食い止めるためにも、中小企業も賃上げをしなくてはいけない。そうなると、賃上げのできない経営能力の乏しい経営者や、ブラック企業は自然に淘汰されていくので、労働者の環境も改善されていくというわけだ。 という話をすると、「そんなにうまくいくわけがないだろ!終身雇用がなくなったら街に50~60代の失業者が溢れかえるし、将来を安心して働くことができないので日本企業の競争力も落ちるぞ!」と、まるでこの世の終わりのように大騒ぎをする人がいるが、そういうことには断じてならない。 実は日本の「終身雇用」というのは、実態とかけ離れて過大評価されている部分が多々あるからだ』、「優秀な人はどんどん条件のいい会社へ移ってしまう」、というほど日本の労働市場は流動化してないし、「終身雇用をギブアップすれば当然、トヨタで働く人たちの賃金は上がっていく」、」との見立ても乱暴過ぎる。豊田章男社長は、そこまで甘くない筈だ。
・実は終身雇用は単なるスローガン  内閣府の「日本経済2017-2018」で、学校卒業後に就職して会社に定年まで勤める、いわゆる「一企業キャリア」を歩む人がどれほどいるかを以下のように紹介している。 《就業経験のある男性の79%は初職が正規であるが、そのうち一度も退職することなく「終身雇用」パスを歩んでいる男性(退職回数0回)は、30代で48%、40代で38%、50代で34%である》 《正規で入職した女性のうち、「終身雇用」パスを歩んでいるのは50代で7%程度でしかなく、労働市場から退出した割合も高い》 50代まで1つの会社に勤め上げる日本人は大企業などのほんの一握りで、大多数は他の先進国の労働者と同様に、「定年まで雇ってくれる会社」という理想郷を追い求めながら、自助努力で転職を重ねているのが現実なのだ。つまり、9割近い日本人がもてはやす「終身雇用」だが、実は大多数の人は享受することはない制度であって、スローガンのようなものなのだ。 この傾向はバブル期もそんなに変わっていないし、それ以前も然りである。松下幸之助だ、大家族主義だという一部大企業の特徴的な雇用制度が、マスコミで喧伝されるうちに1人歩きして、何やら日本社会全体の代名詞のようにミスリードされてしまっただけの話なのだ。 もっと言ってしまうと、これは日本人の発明ではない。 終身雇用のルーツは大正あたりだといわれているが、今のような完成形に近づいたのは、1938年に制定された「国家総動員法」である。その前後の「会社利益配当及資金融通令」や「会社経理統制令」で株主や役員の力が剥奪され、とにかく生産力を上げるために企業という共同体に国民を縛り付けておくひとつの手段として、終身雇用も始まった。 では、これは日本オリジナルの発想かというと、そうではない。ソ連の計画経済をドイツ経由でまんまパクったものだ。国が経済発展を計画的に進める中、国民は国が規制をする企業に身を投じて一生涯、同じ仕事をする、というソ連モデルを、時の日本の権力者たちが採用した。それが、集団主義が大好きな日本人にピタッとハマったのである。 要するに、「終身雇用」は日本式経営でもなんでもなく、単に戦時体制時に導入した社会主義的システムをいまだにズルズルとひきずっているだけなのだ。そして、実際には形骸化している終身雇用に安心感を持ち、低賃金も喜んで受け入れてきた、というのが日本人の正しい姿なのである。 よく最近の日本は右傾化しているという指摘があるが、先ほど紹介したように、最近の若者は死ぬまで雇われたいという思いが年々強くなっている。愛国だ、日本は世界一と叫びながら、経済に対する考え方はどんどん左傾化しているのだ。 「最も成功した社会主義」なんて揶揄される日本が、果たして終身雇用という、実態から乖離したイデオロギーから脱却できるのか。注目したい』、「終身雇用は単なるスローガン」、というのはむしろ共同幻想に近いと思う。「経済に対する考え方はどんどん左傾化している」、というのは、前述の「非正規雇用に苦しめられてきたこと」の裏返しなのではなかろうか。いずれにしても、変化には年月がかかるだろうが、最終的な着地点がどうなるかは要注目だ。

次に、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が5月21日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「相次ぐ脱終身雇用宣言、信頼と責任築く経営哲学いずこに?」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00024/?P=1
・『今回は「信頼と責任」について、あれこれ考えてみようと思う。 トヨタ自動車の豊田章男社長の「終身雇用決別宣言」が、物議をかもしている。日本自動車工業会の会長として行った記者会見で、「今の日本(の労働環境)を見ていると雇用をずっと続けている企業へのインセンティブがあまりない」と指摘し、「現状のままでは終身雇用の継続が難しい」との見解を明かしたのだ。 トヨタ自動車といえば、3月期の連結決算(米国会計基準)での売上高が前年比2.9%増の30兆2256億円となり、日本企業として初めて30兆円を超えた名実ともに日本を代表する企業である。 が、実際には日本の企業であって日本の企業ではない。国内生産のうち半分以上は輸出だし、トヨタ本体の社員数はすでに日本人よりも外国人のほうが多い。 つまり、トヨタは「MADE BY TOYOTA」というフレーズが象徴するように、グローバル企業であり、先の豊田社長の言葉を私なりに翻訳すると、「あのね、グローバル的には“終身雇用”という概念はないの。日本人だけ雇用し続けるっておかしいでしょ? だからさ、日本人の社員も、“〇〇歳まで会社にいられるし〜”とか思わないでね」ということなのだろう』、河合氏の「翻訳」は、見事に本音を言い当てている。
・『終身雇用はもう限界  いずれにせよ、終身雇用を巡っては、経団連の中西宏明会長も(日立製作所会長)も7日の定例会見で、「企業からみると(従業員を)一生雇い続ける保証書を持っているわけではない。制度疲労を起こしている。終身雇用を前提にすることが限界になっている」と発言。 経済同友会の桜田謙悟代表幹事も14日の記者会見で、「昭和の時代は、大変よく機能したと思う。ただ、経済そのものが大きく変革してしまった中で、終身雇用という制度をとらえるとすれば、やはり『制度疲労』を起こしている可能性があるので、もたないと、わたしは思っている」と述べるなど、今月に入って立て続けに終身雇用決別宣言が頻発している。 相次ぐ経済界のトップ中のトップの重鎮たちのコメントに、 「その前に賃金を上げろよ!」「役員報酬減らせばいいだけだろ!」「この人たちみんな終身雇用の恩恵を受けた人たちだろ!」「結局は安い賃金で、若くて、使い勝手のいい社員が欲しいだけだろ!」と批判が殺到している。 残念ながら終身雇用は“絶滅危惧種”から“絶滅種”になる。 10年以上前から企業は「希望退職」という名のリストラを行い、定年前に役職定年という「予期的期間」を設け、「セカンドキャリア研修」という名の肩たたき研修を行い、終身雇用脱却を狙ってきたけど、今回の発言で明治時代に起源をもち、昭和期に甘美な香りを漂わせてきた「終身雇用」は死滅するのだ。 私はこれまで「長期雇用」の重要性を何度も指摘してきた。理由は何度も書いてきたとおり、それが人間の生きる力の土台となり、すべての人が秘めるたくましさを引き出すからに他ならない。 であるからして、今回の「終身雇用決別宣言」には、ある種の絶望感なるものを感じている。 そして、働く人たちとの信頼関係で成立してきた長期雇用(終身雇用)という心理的契約を語るのに、 「雇用をずっと続けている企業へのインセンティブがない」(by 豊田社長) 「一生雇い続ける保証書を持っているわけではない」(by 中西会長) などと、インセンティブ、保証書というワードを用いたことに、心がひどくきしんでいる。 いずれの方たちも、トヨタ自動車、日立製作所、SOMPOホールディングスといった日本を代表する企業のトップに上りつめた人たちで、色々な角度から経営を考え、チャンレジし、未来を見据えた上での発言だとは思う』、同感だ。
・『長期雇用は雇用制度ではなく「経営哲学」  だが、なぜ、ひとこと「ただし、戦力となる社員は65歳だろうと、70歳だろうと年齢に関係なく雇用し続ける」と断言してくれなかったのか? なぜ「50代だろうと60代だろうと、我が社が求めるスキルを持っている人は年齢に関係なく新規採用する」と明言してくれなかったのか? それが残念でしかたがないのである。 失礼ついでに言わせていただけば、経済界のトップの方たちは、長期雇用(終身雇用)を制度と考えているようだが、長期雇用は雇用制度ではなく「経営哲学」である。 働く人たちが安全に暮らせるようにすることを企業の最大の目的と考えた経営者が、「人」の可能性を信じた。それは社員と家族が路頭に迷わないようにすることであり、その経営者の思いが従業員の「この会社でがんばって働こう。この会社の戦力になりたい!」という前向きな力を引き出し、企業としての存続を可能にしていたのではないか。 人間は、相手との関係性の中で行動を決める厄介な動物である。 「自分を信頼してくれている」と感じる相手には信頼に値する行動を示し、「自分を大切にしてくれている」と感じる相手には精いっぱいの誠意を尽くす。信頼の上に信頼は生まれるのであって、不信が信頼を生み出すことはない。 トヨタの会長だった奥田碩氏が、機会ある度に「解雇は企業家にとって最悪の選択。株価のために雇用を犠牲にしてはならない」と語り、経団連会長として「人間の顔をした市場経済」という言葉を掲げたのも、「長期雇用は日本株式会社の背骨」という経営哲学があったからではないのか。 そもそも「終身雇用」という言葉の生みの親とされる米国の経営学者ジェームズ・C・アベグレン博士は、Lifetime commitment という言葉を用い、「企業は単なる市場労働の場ではなく、社会組織であり、共同体であり、そこで働く人たちが安全に暮らせるようにすることを最大の目的としている」と説いた(『日本の経営』1958年)。それは働く人を、非人格化していた米国の企業への警鐘でもあった。 そもそも、会社=COMPANYは、「ともに(COM)パン(Pains)を食べる仲間(Y)」であり、一緒に行動する集団である。その集団の機能を発揮するには「つながり」が必要不可欠だ。 Lifetime commitment(=長期雇用) は、いわば企業に内在する“目に見えない力”であるつながりを育むための時間と空間への投資であり、つながりが育まれることで、自分のプライベートな目的の達成を気にかける個人の集団ではなく、協働する組織が誕生する。 私がこれまで講演会や取材でお邪魔した1000社を優に超える企業でも、高い生産性をキープし続けている長寿企業は、例外なく長期雇用を前提としていた』、奥田碩元経団連会長が「長期雇用」を重視していたとはさすがだ。アベグレン博士の指摘も適格だ。
・『雇用を生む仕事を作るのが経営者の仕事  経済界で「終身雇用制度をやめるべし」という議論が出はじめた1990年代初頭にOECD(経済協力開発機構)が行った労働市場の調査でも、米国や英国では流動的な労働市場が成立している一方で、ドイツやフランスは、日本と同じように企業定着率の高い長期雇用慣行が形成されていることがわかっている。 私の尊敬する経済学者であり、トヨタの研究でも知られる東京大学大学院経済学研究科の藤本隆宏先生も、「カネ、カネ、カネの経営は古い。経済の最先端は人だ」と断言し、「現場の人を大切にする、経営者は従業員を絶対に切らないように走り回る。仕事が無けりゃ、仕事を作るのが経営者の仕事だ」と、世界中の現場を見て回った経験を交え、明言する。 つまるところ、問題は「長期雇用」にあるのではなく、長期雇用の利点を引き出すリソースを働く人たちに与えていないことが原因になっているのではないか。そう思えてならないのである。 たとえば、日本企業は「意思決定をしない」あるいは「意思決定が遅い」と酷評されることが多い。 「現地で検討されていることでも、日本は本社の役員会議のタイミングが優先され、検討は後回しになる。段々とこちら側もやる気をなくして、盛り上がっていた現場が沈滞する。裁量権を与えられてないマネジャーの存在意義がわからない。もっとリーダーとしての権限を与えないと日本企業は生き残れない」 こういった話を、海外に赴任している人や、海外の日本法人に勤める人たちから、何度も聞かされてきた。 現場に責任は負わせるけど、現場に裁量権は与えない。そんな組織風土も長期雇用の利点を相殺しているのではないか。 あるいは日本企業は「ラインの決定事項ばかりが優先され、現場のプロフェッショナルの意見に耳を傾けない。専門スタッフと経営スタッフはパートナーなのに日本企業では上下関係。日本にはプロという概念がないのか」というボヤキも幾度となく聞いた。 また、外資系は確かに業績が悪化すると「〇%リストラせよ」という指示が、トップから出されることがあるが、人事制度は日本の企業よりはるかに柔軟で、周りとの人間関係や信頼関係なども評価するケースが多い。働く人が「やりたい」と手を上げれば、それを徹底的にフォローし、教育に投資する制度もある。 マネジメントに進むか、専門職に進むかの選択も早い時期に行われ、それぞれにきちんとした教育を行い、評価し、その成果を発揮する機会もある。定年制は年齢差別になるので存在しないが、長期雇用を前提としている企業は2000年以降、確実に増えた』、「仕事が無けりゃ、仕事を作るのが経営者の仕事だ」との藤本隆宏先生の指摘や、「問題は「長期雇用」にあるのではなく、長期雇用の利点を引き出すリソースを働く人たちに与えていないことが原因になっているのではないか」、というのには諸手を上げて賛成だ。
・『人材重視の経営が収益を生み出す  長期雇用を悪の根源と考えるよりも、社員の能力形成への努力をしてほしい。なぜならどんなに先行研究を探しても「長期雇用が会社の生産性を下げる」エビデンスは見当たらないし、人材重視の経営が結果的に企業の収益を生み出す最良の選択であることは明白だからである。 ただ、本当にただ、終身雇用廃止宣言に踏み切ったトップたちの気持ちも少しだけわかる。というか、経営側だけを責める気になれないという、正直な気持ちがある。 将来が混沌とする社会状況を鑑み、定年まで「死んだふり」をする会社員は増殖しているし、「終身雇用を前提とした会社の正社員になりたい」という若者も増えた。会社にい続けること、会社員でいること自体を目的とする「会社員という病」にかかっている人たちがこの数年で増えたとも感じるからである。 独立行政法人労働政策研究・研修機構の「第7回勤労生活に関する調査」(平成28年)によれば、「終身雇用」「年功賃金」を支持する者の割合は、調査を開始した1999年以降、過去最高の87.9%に達している。「組織との一体感」「年功賃金」を支持する割合もそれぞれ、88.9%、76.3%と過去最高で、特に20~30歳代で、「終身雇用」「年功賃金」の支持割合が2007年から急激に伸びた。 また、1つの企業に長く勤めて管理的な地位や専門家になるキャリアを望む者(「一企業キャリア」)の割合は 50.9%。2007 年調査では年齢階層別でもっとも支持率が低かった 20歳代が、半数を超え54.8% と、もっとも高い支持率となった。 時系列に見ると、「一企業キャリア」を選択する割合が ゆるやかな上昇傾向を示す一方、「複数企業キャリア」「独立自営キャリア」を望む割合は低下傾向を示していた。 長期雇用を望む人が増えること自体に問題はないが、長く雇用されるには自らにも「責任」を果たす必要があることをわかっているのか? とちょっとばかり疑問なのだ』、確かに、正社員たちが既得権益の確保だけに目を向けるのは問題だ。
・『雇用される側にも「責任」が生じる  長期雇用は健康社会学的には「職務保証(=job security)」と呼ばれ、職務保証とは、 第1に、「会社のルールに違反しない限り、解雇されない、という落ち着いた確信をもてる」 第2に、「その働く人の職種や事業部門が、対案の予知も計画もないままに消滅することはない、と確信をもてる」 と働く人が感じることで成立する。 真の職務保証とは、「今日と同じ明日がある」という安心であり、自分も「ルールに違反しない」という責任を全うすることが必要不可欠。 にもかかわらず、責任を放棄し「〇〇歳まで会社にいられる」と“かりそめの安心”に身を委ね、働き方改革を逆手にちょっとでもプレッシャーをかけられようものなら、パワハラだの、ブラック企業だのと企業側を批判する輩も存在する。 今の日本企業に本当に必要なのは、企業と働く人が「信頼と責任」でつながること。そのためにも、企業側は働く人に「あなたは我が社にとって大切な人」というメッセージを送り続けてほしい。 職務保証は、経営者が働く人を尊重し、「人」と接することで機能する心理的契約である。 今回の経済界たちの重鎮の「終身雇用決別宣言」が、企業と働く人たちがもう一度「真の職務保証とは何か? それを実現するには何をすればいいのか?」という問題意識につながればいいなぁと、切に願っている』、前向きないい提言だ。

第三に、7月12日付け日経ビジネスオンライン「NECは新卒1000万、NTTは1億円 研究者待遇、世界基準に」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00019/071100074/?P=1
・『日本企業が最先端のエンジニアや研究者の待遇改善に乗り出している。日本では給料や昇進の面では文系優位と言われる。一方、米シリコンバレーなど世界の潮流は理系やエンジニア優位だ。 こうした中、NTTがスター研究者に年1億円の報酬を出すことが明らかになり、話題となっている。7月8日、NTTはシリコンバレーの3つの研究所で先端研究に乗り出すことを披露する式典を開催した。それに先だってインタビューに応じたNTTの澤田純社長は「研究者の報酬は米国現地の水準に合わせていく。日本ではエキスパートでも年収2000万円程度だが、その5倍を超えるケースも出てくるだろう」と明かした。つまりスター研究者には、1億円以上の報酬を出す用意があると言うのだ。 日本の会社員にとっては夢のような金額かもしれない。だが、シリコンバレーのスター中のスターのエンジニアにとって1億円は十分な報酬ではない。 例えば、GAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)などでは、人工知能(AI)分野で著名なエンジニアであれば、1年あたり株式も含めて200万ドル(約2億2000万円)程度の報酬も普通とされている。米オラクルが人工知能(AI)のトップエンジニアに年600万ドル(約6億6000万円)を提示したことが話題になった。 NTTはこれまでシリコンバレーの研究開発拠点でクラウドコンピューティングやセキュリティー、AIの一分野である機械学習やIoTなど、まさにGAFAと真っ向勝負の分野を手掛けてきた。新しい研究所では対象とする分野や実用化までの時期を変え、シリコンバレーで新たな人材エコシステムの構築を図る。 澤田社長は「量子コンピューター、暗号情報理論、生体情報処理の3分野で10年後以降の将来を見据えた理論的な部分を対象とした基礎研究に取り組んでいく。社員になってもらう方もいるかもしれないが、人的ネットワークをつくってアライアンスもしていく。研究者がいるところには研究所のブランチもつくっていきたい」と説明する。 シリコンバレーに駐在し、3研究所を束ねるNTT Researchの五味和洋社長兼CEO(最高経営責任者)は「各研究所長などを起点に、人が人を呼ぶ循環を作っていきたいと考えている。NTTが築いてきたR&D(研究開発)の歴史も説明することで、共感した方が何人か来てくれている」と言う。 例えば、量子コンピューターなど次世代のコンピューティングに欠かせない物理学と情報学の基礎技術を研究する「Φ Laboratories」の所長には、内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)プログラム・マネージャーの山本喜久氏を招へいした。スタンフォード大学の応用物理学科・電気工学科の教授も務めた経歴を持ち、量子分野で有名な賞を複数受賞している。 GAFAのような派手な買収戦略はとらないという。「大学の研究室を人材ごと買収してしまうケースもあるが、その時点で大学との関係が切れてしまう。大学に在籍したまま連携していただくこともあるだろう」(NTTの川添雄彦・取締役研究企画部門長)。買収には資金も必要な上、買収後のマネジメントにも労力がかかる』、NTTのようにシリコンバレーで最先端研究をするのであれば、給与は現地事情に合わせるのは当然だ。ただ、現地のマネジャーが、彼らを上手くマネージできるのかには疑問も残る。
・『NECの最年少主席研究員はシリコンバレーで独立  一方、NTTとほぼ時を同じくして、NECが今年10月に人事制度を改定し、新入社員でも1000万円以上の年収を得られるようにすることが明らかになった。 NECは2018年にシリコンバレーの研究所で大きな出来事があった。機械学習で世界的にも有名なエンジニアである藤巻遼平氏とそのチームが研究所からごっそりと抜けたのだ。藤巻氏が新会社のドットデータ(dotData)をカーブアウト(事業の一部などを切り離して独立させること)で立ち上げた。詳細は非公開だがNECは株主として関係を保っている。 NECは藤巻氏を同社では史上最年少となる33歳で研究員の最高位である主席研究員に据えて、報酬面でも役員と同等レベルで処遇していた。ただ「AI・機械学習の分野でシリコンバレーの大手やスタートアップと渡り合っていくには、日本の大企業の組織では難しい面がある。一方で日本のスタートアップがシリコンバレーで新規に顧客を開拓するのも難しい」(藤巻氏)として、NECとの関係を保ちつつ、シリコンバレーで世界に打って出る道を選んだ。 滑り出しは好調のようだ。「シリコンバレーや米国内からもエンジニアなどが応募してくれるようになってきた」(藤巻氏)。2019年6月末には米調査会社フォレスター・リサーチのリポートで、自動化機械学習ソリューション分野のマーケットでリーダー的なポジションにある3社のうちの1社であると評価された。別の1社はこの分野で世界的にも有名になった米データロボットだ。 藤巻氏は「NECには第2の藤巻が出てくる流れをつくってほしい」と常々発言している。NECの1000万円スター新入社員はそのきっかけになるかもしれない。GAFAは大卒で1500万円以上の収入があるとされる。500万~600万円程度の日本の大手企業の新卒給与とのギャップはかなり埋まる。 NECがスター新入社員に1000万円を提示する以上、社内の優秀なエンジニアの賃金水準の見直しも必至だろう。実際、今回の制度改定は新入社員だけでなく、若手を対象にしたものだという。また、国内での優秀な人材の獲得競争を受けて、他社が追随していく可能性もありそうだ。 日本の伝統的な大企業であるNTTとNECが賃金水準だけでなく研究内容で世界基準をクリアできるか。それは日本全体の競争力にもつながる課題である。 まずは世界的に著名な学会でのプレゼンスを上げていくべきだろう。AIの学会ではGAFAや中国のテックジャイアントであるBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)が幅をきかせている。既にNTTが掲げる大学との連携も実現している。 量子コンピューターなどはグーグルも研究開発に取り組んでいる。NTTは基礎研究とはいえ重なる分野も出てくるだろう。それまでに世界的な地位を確立できているか。残された時間は意外と少ない』、「NECがスター新入社員に1000万円を提示する以上、社内の優秀なエンジニアの賃金水準の見直しも必至だろう」、と簡単に書いているが、これは実は難題の筈だ。無論、スター新入社員は終身雇用の対象外だろうが、どのような職種、事業部門まで対象を広げるのか、お手並み拝見といきたい。
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