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コーポレート・ガバナンス問題(その10)(みずほ銀行に見る…社外取締役は「田んぼのカカシ以下」、インタビュー前編/東レ社長 日覺昭廣 「経営を欧米向けにわかりやすく。おかしな話だ」、インタビュー後編/東レ社長 日覺昭廣 「社外役員3分の1以上」には根拠も意味もない) [企業経営]

コーポレート・ガバナンス問題については、昨年11月16日に取上げた。今日は、(その10)(みずほ銀行に見る…社外取締役は「田んぼのカカシ以下」、インタビュー前編/東レ社長 日覺昭廣 「経営を欧米向けにわかりやすく。おかしな話だ」、インタビュー後編/東レ社長 日覺昭廣 「社外役員3分の1以上」には根拠も意味もない)である。なお、タイトルから「日本企業の」をカット。

先ずは、昨年12月22日付け日刊ゲンダイが掲載した評論家の佐高信氏による「みずほ銀行に見る…社外取締役は「田んぼのカカシ以下」」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/282980
・『富士銀行、第一勧業銀行、そして日本興業銀行が合併してスタートしたみずほにも社外取締役はいる。外から経営をチェックするために存在しているのだが、この国の会社ではほとんどが“社内”取締役になっている。ズバリと直言する人間ではなく、イエスマンもしくはイエスウーマンだけを指名するからである。たとえば竹中平蔵の後に経済財政政策担当大臣となった“おんな竹中平蔵”の大田弘子がみずほフィナンシャルグループの社外取締役となった。しかし、彼女が経営陣に厳しい注文をつけたという話は聞かない。 社外取締役全般について言えることだが、私はある雑誌でこうコメントしたことがある。 「社外取締役は単なるお飾り。初めから『ノー』と言わない人と会社から認定された“うなずき人形”のようなもので、御用学者ならぬ御用取締役です。田んぼの中のカカシはそこにいるだけで役に立っているが、『ノー』と言わない社外取締役はカカシ以下でしかない」) 1997年6月29日、旧第一勧銀の頭取、会長を歴任した宮崎邦次が総会屋への利益供与事件で自殺した。それに関して2007年7月6日号の「週刊朝日」が宮崎の遺書を報じた。 「今回の不祥事について大変ご迷惑をかけ、申し訳なくお詫び申し上げます。真面目に働いておられる全役職員そして家族の方々、先輩のみなさまに最大の責任を感じ、且、当行の本当に良い仲間の人々が逮捕されたことは、断腸の思いで、6月13日相談役退任の日に、身をもって責任を全うする決意をいたしました。逮捕された方々の今後の処遇、家族の面倒等よろしくお願い申し上げます。スッキリした形で出発すれば素晴らしい銀行になると期待し確信しております」 「宮崎」と記した遺書の最後に「佐高先生に褒められるような銀行に」という1行があったというのだが、現在のみずほに私を社外取締役にするような勇気はない。(敬称略)』、「社外取締役は単なるお飾り。初めから『ノー』と言わない人と会社から認定された“うなずき人形”のようなもので、御用学者ならぬ御用取締役です。田んぼの中のカカシはそこにいるだけで役に立っているが、『ノー』と言わない社外取締役はカカシ以下でしかない」、言い得て妙だ。「「宮崎」と記した遺書の最後に「佐高先生に褒められるような銀行に」という1行があったというのだが、現在のみずほに私を社外取締役にするような勇気はない」、遺書に「佐高先生に褒められるような銀行に」、初めて知った。

次に、本年7月10日付け東洋経済Plus「インタビュー前編/東レ社長 日覺昭廣 「経営を欧米向けにわかりやすく。おかしな話だ」」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27474
・『「答えはすべて現場にある」――。現場主義を貫く東レでは、社内の声を重視し、長い目線で事業を育てる経営を続けてきた。 そうした中、これまで半世紀以上の時間と多額の費用を費やしてきた炭素繊維や水処理膜が育ってきた。炭素繊維は飛行機などの軽量化につながり、二酸化炭素の削減に貢献できる素材だ。いずれの分野も世界シェアの上位は日本企業だ。 東レの日覺昭廣社長は、その背景に日本ならではの経営環境があると考えている。経営の在り方について欧米追従の流れが強まる中、「ルール作りは欧米人がやるものという感覚を捨てるべき」と警鐘を鳴らす(Qは聞き手の質問、Aは日覺社長の回答)。 後編:「社外役員3分の1以上には、根拠も意味もない」 Q:最近の新聞で東レは、業績低迷で投資家や株主のプレッシャーに耐えられなくなり、ガバナンス改革の波に屈して取締役体制を変えざるを得なくなったと、書かれていました。 A:それは間違いだ。業績に結び付けるのは完全に余計だよね。 景気回復のこちら(コロナ影響からの立ち直りが鈍い側)に航空機やアパレルなどの主要な事業を持っているから一時的に下がってしまっているだけ。また回復するわけだから。業績と取締役体制の変更(2020年6月に社外取締役を全体の3分の1に増やした)は一切、関係がない。 Q:日本では、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、委員会設置会社と機関設計が3つも林立しています。 経営の実態を分析もせず、仕組みばかりたくさん作るというのはいかがなものか。容れ物先行では、物事は解決しない。すべての仕組みに一長一短がある。 それぞれ何が問題なのか、何が欠けているのか。それを解決するにはどう運用するのがいいのか。現場から考えれば答えは出る。(当局や専門家などの)経営現場の経験のない人が考えて解決するほど(経営は)甘くはない』、「現場主義を貫く東レ」にとって、政府が旗を振る理念型の「コーポレート・ガバナンス」改革は腹立たしいのだろう。
・『監査役会設置会社は素晴らしい  Q:これら3つの中で、特に評価している仕組みはありますか? A:日本では東証1部上場企業のうち、アメリカ式の委員会設置会社はわずか数%だ。委員会設置会社へのつなぎと見られていた監査等委員会設置会社も30数%にとどまる。従来の監査役会設置会社が60数%と依然主流だ。この傾向はずっと続くと思う。 監査役は議決権を持たない日本独自の制度のため、会計監査人と混同されるなど欧米ではよく理解されていない。だが、素晴らしい制度だ。 監査役は指揮命令系統から独立し、取締役と対等な立場で取締役を監視している。監査役会は半数以上を社外監査役で構成し、かつ常勤監査役の選任が会社法で定められており、独立性と監査の実効性が確保されている。同時に(単独で権限を行使できる)「独任制」という強力な権限も保有している。 取締役が執行と監督を兼ねることが多い日本において、取締役のパフォーマンスを現場に即して監査することができる非常に理にかなったシステムだ。それなのに、監査役というものが欧米にないから、彼らがわかりやすいように変えようという。おかしな話だ。 正しいことを論理的に説明することで日本発のすばらしいシステムにしようという気概がほしい。委員会設置会社への移行を強制するよりも、監査役による機関設計を海外の機関投資家に理解していただくことを考えるべきだ。(国際的な)ルール作りは欧米人がやるもの、という感覚を捨てなければいけない』、「委員会設置会社への移行を強制するよりも、監査役による機関設計を海外の機関投資家に理解していただくことを考えるべき」、同感である。
・『欧米は原則主義、日本は細則主義  Q:企業経営の形やガバナンスコードを欧米追従にすることには反対です か。 A:まあ、向こうのコードも、内容自体を見るとそんなに変なことは書かれていない。「企業価値」を高めましょうとかね。ただし、彼らが言っている企業価値というのは株価、いわゆる時価総額だ。 私は、時価総額は企業価値の2割程度だと思っている。企業価値の8割は企業の社会的責務を果たすことだ。でも欧米のコードではそれが一切、触れられていない。株価ばかりというのはお粗末だ。 Q:文化的、風土的に違うところに同じやり方をしてもうまくいかないと? A:欧米ではコードが原則としてあり、事業活動や経営を見て詳細を判断する。しかし、日本ではコード遵守を厳格に運営する。 例えばISO(国際標準化機構)規格でも同様で、日本では事細かくがんじがらめにしてしまう。何事も物事を一律に決められるものではない。フレキシブルに対応できるようにしていないと、かえって現場の力を削ぎ、競争力を弱めることになってしまう。そこが日本の悪いところだ。 にっかく・あきひろ/1949年生まれ、兵庫県出身。1973年東京大学大学院修了、東レ入社。2001年エンジニアリング部門長、2002年取締役。2010年6月から現職(撮影:梅谷秀司) 会社では、手続きよりも生産現場で本当に正しいことをやっているかどうかが大事なはずだ。日本も本来、昔は匠の世界だった。ところがISOでは、ちゃんと(工程や品質試験などの)記録を取っていますね、残していますね、ということだけが問われる。だからある意味で、ISO規格は日本の製造業を堕落させた運動だと私は思っている。 原則主義の欧米では、企業がコード通りにしていなくても、実態に照らして成長発展するのにふさわしい体制であればよし、とされるところがある。コードが目的化しないように運用されているが、日本ではそうなっていない。 機関投資家がスチュワードシップ・コード(の運用)を厳格化した結果、われわれ(経営者)に対して「社外取締役を増やさないと困る」と言ってきたのもまさに細則主義だからだろう』、国際財務報告基準(IFRS)では、欧米は原則主義、日本は細則主義とされる。
https://globis.jp/article/7958
・『「東レがうらやましい」と言われた  Q:欧米式の企業統治では長期的な目線で事業経営が難しいのでしょうか。 A:昔、デュポンのチャールズ・ホリデー元会長に、「東レがうらやましい」と言われたことがある。1960年頃に世界中で炭素繊維の開発が始まった。でもアメリカの企業は「何年やってもモノになるかわからない」ということで、やはり投資家や株主の賛同を得るのは難しかったようだ。 アメリカでは株主の代表が取締役で、求められているのは株価を上げて株主が短期的に利益を出せるようにすること。そういう環境では長期的な視点で事業を育てることは不可能だろう。経営者も、クビにされたらおしまいだから。 結局、炭素繊維も水処理膜も開発を続けて事業化までいけたのは、長期目線で取り組むことができた日本企業ばかりになった。 Q:日本企業も昔から欧米流の企業統治をしていたら、炭素繊維や水処理膜の今日のような成功はなかったと。 A:それはできなかっただろう。株主の代表である取締役とか、アクティビスト(物言う株主)からダメだと言われたらやろうとしてもできないわけだから。 それでもやろうとしたら辞めさせられる。デュポンの前CEOのエレン・クレマンさんなんかも、アクティビストと軋轢があって思いどおりに経営できなかった(筆者注:アクティビストの株主から事業再編のために会社の4分割を要求されるが拒否。だがその後、退任に追い込まれた)。 Q:ダイバーシティについて。経営中枢に女性の視点を入れると事業に広がりが出るという見方もありますが、どう思いますか。 A:それは(エンドユーザーに女性が多い)資生堂さんやユニクロさん(ファーストリテイリング)なら意味があるかもしれない。 でも、素材産業では女性の視点を入れるということ自体に意味はない。もっといえば、女性を何割入れてとか、取締役に女性を入れてとか、そういったことを外野の経営経験もない人が言ったりルールをつくったりするのは最悪だ。 問題は、やれ自由だ、ダイバーシティだというと、あたかもそれが正しいように聞こえてしまうこと。言葉の響きで。でもそれに何の意味があるのか。ダイバーシティが目的ではないはずだ。 後編「社外役員3分の1以上には、根拠も意味もない」』、「炭素繊維も水処理膜も開発を続けて事業化までいけたのは、長期目線で取り組むことができた日本企業ばかりになった」、「デュポンのチャールズ・ホリデー元会長に、「東レがうらやましい」と言われたことがある」、も分かる気がする。

第三に、この続きを、7月12日付け東洋経済Plus「インタビュー後編/東レ社長 日覺昭廣 「社外役員3分の1以上」には根拠も意味もない」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27475
・『「重要な経営方針は、会社をよくわかっている社内の人間で決めるべきだ」。折に触れてそうした考えを述べてきた東レの日覺昭廣社長。 だがそんな東レも昨年、ついに経営体制の見直しに動いた。従来は社内取締役が17人、社外取締役が2人だったが、社内取締役を8人に減らし社外取締役を4人に増やすことで、社外取締役比率を「3分の1」に引き上げたのだ。 自身の経営哲学とのせめぎ合いの中で最低限の対応をとった日覺社長は、「いい加減なアイデアで決めた数字で企業を縛るべきではない」と話す。(前編:「経営を欧米向けにわかりやすく。おかしな話だ」) Q:今回のコーポレートガバナンス(CG)・コードの改訂では、上場企業の社外取締役の割合を少なくとも3分の1以上にすることを求めています。 A:3分の1以上や過半数といった数字にはそもそも何の根拠もないし、まったく意味がない。 もし、誰かが経営の現場で何が起きているのかといった事実を調査して、「課題の本質原因や不祥事が起きる理由は社外取締役が3分の1以上いないからだ」という分析結果に至って決めた数字なら、多少は意義があるかもしれない。 だが実際は、経営経験のない人が連想ゲームのように何となく決めた数字だろう。社外取締役の比率は企業の自主性を尊重するべきだ。いい加減なアイデアで決めた数字で企業を縛るべきではない』、「実際は、経営経験のない人が連想ゲームのように何となく決めた数字だろう。社外取締役の比率は企業の自主性を尊重するべきだ。いい加減なアイデアで決めた数字で企業を縛るべきではない」、筋論だが、現実には「社内取締役を8人に減らし社外取締役を4人に増やすことで、社外取締役比率を「3分の1」に引き上げた」、という弾力性ももつようだ。
・『このままだと賛成できない  Q:それでも、東レは2020年6月の株主総会を経て、「社外比率3分の1以上」という基準に合わせました。 A:日本の金融機関や機関投資家では(投資家の行動規範であるスチュワードシップ・コードの強化で)投資方針と議決権行使の結果を開示して外部に公表することが求められるようになってきた。 例えば、ある機関投資家が「社外取締役が3分の1以上でない企業への投資は推奨しません」などの方針を公表したうえで、後で議決権行使がその方針に沿っているかの結果も公表しなければならない。 それで、以前までは「(社外取締役が3分の1以上いなくても)東レのガバナンスは問題ない」と言ってくれていた機関投資家から、「これからは今までのようにはいかなくなる」と言われるようになった。 東レの社外取締役比率が3分の1未満だと、機関投資家が(株主総会での日覺氏の取締役の再任に)賛成した場合、方針と齟齬がある結果を公表しなければならなくなる。彼らはそれはできないから、「このままだと賛成票は入れられない」と。だから対応した。それによって別に困ることもないしね。 Q:社内取締役を8人、社外取締役を4人にし、同時に執行役員制度を採り入れた意図は何ですか? A:取締役会の体制を変えて社内取締役を減らすに当たって、事業をわかっている人間が事業を判断するという部分は変えないつもりだった。 それで執行役員を30人置くことにした。それまで社内取締役だった人はみんな執行役員に就いた。今までどおり経営業務は専門能力を持った役員で実行するということを、執行役員制度で明確化したかった。 社内取締役の人数は、取締役会に最低限必要な代表者は何人なのかを考えて決めた。繊維、フィルム、炭素繊維などの事業や、研究、エンジニアリング、生産がそれぞれわかる人から代表を選ぶと結果的に8人になった。それに対して社外取締役は3分の1以上にする必要があるということで4人になった。 執行役員制度の導入で、実質的に取締役体制を変える前とさほど変わらない状態を維持できている』、「執行役員制度の導入で、実質的に取締役体制を変える前とさほど変わらない状態を維持できている」、なるほど。
・『社外取に「監視・監督」は不可能  Q:社外取締役は「経営執行の監視・監督」が第一義的な役割だとされています。 社外の目で企業を監視するなんて不可能だ。 社外からは、それこそROE(自己資本利益率)が悪いからその事業をやめろとか、その程度のことは言えるかもしれない。 けれども、社外から内部で何が起こっているかなんて、わかるわけがない。もしも部長と課長とか上司と部下がつるんで何かやったら、社内からでも絶対に不正なんて暴けない。ましてや社外の、現場を知らない人が不正を暴いたり、監視したりするなどということはできないはずだ。 Q:今回のコード改訂では、社外取締役は経営経験者が望ましいとされています。東レの社外取締役4人のうち経営経験者は1人(元住友精密工業社長の神永晉氏)だけです。 A:経営経験者を社外取締役にしたほうがよい、という考え方には賛同できない。一口に企業経営と言っても事業によってぜんぶ違う。自動車会社の経営経験者を素材会社に持ってきても意味がないし、同じ繊維の会社でも東レと他社では異なる。 それなのに社外の経営経験者のアドバイスを受けて「いい意見をもらった」と喜ぶようなトップはよっぽどレベルが低いから、すぐに辞めたほうがいい。大事なのは経営経験の有無ではなく、社外取締役にどんなポテンシャルがあるかだ。 Q:コード改訂は海外を中心とした投資家の考え方に合わせるのが目的とされています。 A:間違った考え方だ。日本の従来のやり方が、欧米では「やっていない」「理解されない」から変えましょう、というのでは理屈にならない。 日本でしかやっていないことでも、そっちのほうがいい仕組みかもしれない。何でも海外の投資家がわかりやすいほうに持っていこうとすること自体が誤りの原点だ。 欧米のコードにしても、変わってきている。彼らも日本の(公益への企業貢献を重んじる)公益資本主義を一生懸命勉強している。 公益資本主義のルールを改訂し、日本から発信しないといけない。どうも日本は劣等感の塊で、明治以降の舶来主義だ。もう少し自信をもって、自律的に考えていかないとダメだ』、「公益資本主義のルールを改訂し、日本から発信しないといけない。どうも日本は劣等感の塊で、明治以降の舶来主義だ。もう少し自信をもって、自律的に考えていかないとダメだ」、同感である。
・『女性、外国人の「登用ありき」はおかしい  Q:取締役への女性や外国人の登用が注目されていますが、東レではどちらもいません。 女性や外国人でふさわしい人材がいるのであれば取締役にすればいい。だが、登用ありきにすることはおかしい。目的は、女性や外国人を取締役に入れることではなく、会社を成長させることのはずだ。 東レには今、海外子会社含め外国人の社長が26人いて、うち2人は(東レ本体の)執行役員だ。女性の幹部も増えており理事が1人、部長は19人、課長級は115人いる。女性の活躍推進のための研修も5、6年以上前からやっている。女性には家庭での役割などハンディがあるので、女性をサポートするための議論や情報交換もしている。 いずれこうした人たちが取締役になるかもしれない。だが、女性や外国人をとにかく取締役会に入れようということでただちに誰かを昇格させるとか、社外から人を連れてこよう、というのはまったく意味がない。適性があるかどうかで考えるべきだろう。 Q:東レが社外取締役を2人から4人に増やして1年経ちました。何か変わりましたか。 A:社外取締役を増やしてから、そのポテンシャルや経験をいかに経営に生かすかを考えるようになった。 それまでは決議事項をきっちり決議するのが取締役会だったが、これでは社外取締役はなかなか議論に入ってこられない。決議事項は、それまでに経営会議や事業本部で何回も議論して固まってから上がってくるものだからだ。 そこで新たに「協議事項」というものを多く設けることにした。長期ビジョンや中期経営計画をつくるとき、あるいは大型のM&Aの検討などの会社の方向性を考える際に、早い段階から社外も含めた取締役で話し合ってもらう。結論がまったく固まっていないタイミングで議論することで、いろいろな意見が出てくるようになった。 これならば、さまざまな知識や経験を持つ社外の方からの違った意見を生かせる。社外取締役をどうせ一定人数置くのならば、有効なものにしたい。 前編:「経営を欧米向けにわかりやすく。おかしな話だ」』、「新たに「協議事項」というものを多く設けることにした。長期ビジョンや中期経営計画をつくるとき、あるいは大型のM&Aの検討などの会社の方向性を考える際に、早い段階から社外も含めた取締役で話し合ってもらう。結論がまったく固まっていないタイミングで議論することで、いろいろな意見が出てくるようになった」、なかなかいいアイデアだ。
タグ:佐高信 日刊ゲンダイ コーポレート・ガバナンス問題 東洋経済Plus (その10)(みずほ銀行に見る…社外取締役は「田んぼのカカシ以下」、インタビュー前編/東レ社長 日覺昭廣 「経営を欧米向けにわかりやすく。おかしな話だ」、インタビュー後編/東レ社長 日覺昭廣 「社外役員3分の1以上」には根拠も意味もない) 「みずほ銀行に見る…社外取締役は「田んぼのカカシ以下」」 「社外取締役は単なるお飾り。初めから『ノー』と言わない人と会社から認定された“うなずき人形”のようなもので、御用学者ならぬ御用取締役です。田んぼの中のカカシはそこにいるだけで役に立っているが、『ノー』と言わない社外取締役はカカシ以下でしかない」、言い得て妙だ。 「「宮崎」と記した遺書の最後に「佐高先生に褒められるような銀行に」という1行があったというのだが、現在のみずほに私を社外取締役にするような勇気はない」、遺書に「佐高先生に褒められるような銀行に」、初めて知った。 「インタビュー前編/東レ社長 日覺昭廣 「経営を欧米向けにわかりやすく。おかしな話だ」」 「現場主義を貫く東レ」にとって、政府が旗を振る理念型の「コーポレート・ガバナンス」改革は腹立たしいのだろう。 「委員会設置会社への移行を強制するよりも、監査役による機関設計を海外の機関投資家に理解していただくことを考えるべき」、同感である。 国際財務報告基準(IFRS)では、欧米は原則主義、日本は細則主義とされる。 「炭素繊維も水処理膜も開発を続けて事業化までいけたのは、長期目線で取り組むことができた日本企業ばかりになった」、「デュポンのチャールズ・ホリデー元会長に、「東レがうらやましい」と言われたことがある」、も分かる気がする。 「インタビュー後編/東レ社長 日覺昭廣 「社外役員3分の1以上」には根拠も意味もない」 「実際は、経営経験のない人が連想ゲームのように何となく決めた数字だろう。社外取締役の比率は企業の自主性を尊重するべきだ。いい加減なアイデアで決めた数字で企業を縛るべきではない」、筋論だが、現実には「社内取締役を8人に減らし社外取締役を4人に増やすことで、社外取締役比率を「3分の1」に引き上げた」、という弾力性ももつようだ 「執行役員制度の導入で、実質的に取締役体制を変える前とさほど変わらない状態を維持できている」、なるほど。 「公益資本主義のルールを改訂し、日本から発信しないといけない。どうも日本は劣等感の塊で、明治以降の舶来主義だ。もう少し自信をもって、自律的に考えていかないとダメだ」、同感である。 「新たに「協議事項」というものを多く設けることにした。長期ビジョンや中期経営計画をつくるとき、あるいは大型のM&Aの検討などの会社の方向性を考える際に、早い段階から社外も含めた取締役で話し合ってもらう。結論がまったく固まっていないタイミングで議論することで、いろいろな意見が出てくるようになった」、なかなかいいアイデアだ。
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「物言う株主」(アクティビスト・ファンド)(その4)(アクティビストは「必要悪」 企業経営に改善の余地、この金余り時代に活発化するアクティビストはどんな企業を狙うのか?、モノ言う株主対策で打ち出した「ある奇策」 村上系ファンドと西松建設「株買い増し」で緊迫の攻防戦) [企業経営]

「物言う株主」(アクティビスト・ファンド)については、昨年4月11日に取上げた。今日は、(その4)(アクティビストは「必要悪」 企業経営に改善の余地、この金余り時代に活発化するアクティビストはどんな企業を狙うのか?、モノ言う株主対策で打ち出した「ある奇策」 村上系ファンドと西松建設「株買い増し」で緊迫の攻防戦)である。なお、昨日取上げた「東芝問題」にもこの問題は関連している。

先ずは、昨年12月17日付け日経ビジネスオンラインが掲載したみずほ証券エクイティ調査部、チーフ株式ストラテジストの菊地 正俊氏による「アクティビストは「必要悪」 企業経営に改善の余地」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00225/121500001/
・『2020年を振り返ると物言う株主、つまりアクティビストによる日本企業への株主提案、要求が目立った年だった。アイ・アールジャパンの集計では、2020年はアクティビストが出した株主提案の案件数が11月末時点で前年比6割増の26件と過去最高になった。新型コロナウイルス感染拡大がもたらした景気悪化を反映してか、単純な株主還元を求める提案は影を潜めた。その一方、企業の経営改善につながるだろう建設的な提案もあり、全体として過去最高になったことは資本市場の発展にとってポジティブではないか。 議案の中身ではバランスシートの改善に関するものが38%、役員選解任が25%、ガバナンスが20%、事業戦略や運営が18%と多岐にわたった。 日本企業の経営が完璧であればアクティビストはいらない。しかしガバナンス、経営戦略で不十分な会社が少なくない。株価純資産倍率(PBR)も解散価値である1倍を割っている会社が多く、資産効率が悪く、設備投資や賃上げ、株主還元にも及び腰な企業が少なくない。物言う株主の介入によってそうした企業の経営が活性化するならば、その存在は「必要悪」ではないか。日本の株式市場を良くするためにもアクティビストは役立つ。これが筆者の見方だ。 ただアクティビストが増えているとはいえ、依然として日本企業は外部の株主発の改革案をすんなり受け入れることには抵抗感がある。かつてサイレント株主と批判された国内機関投資家の賛成を取り付けられないケースもまだ多い。またアクティビストによる株主提案の中には極端な増配や自社株買いを求めるなど、これは絶対通らないという無理筋の提案もあり、玉石混交なのは否めない。提案数は増加傾向だが総会で可決したものはほとんどないのが現状だ。 その中で香港のオアシス・マネジメントによるサン電子への株主提案が可決されたことが話題を集めた。サン電子は通信機器やゲームソフトを手掛ける企業だ』、「単純な株主還元を求める提案は影を潜めた。その一方、企業の経営改善につながるだろう建設的な提案もあり、全体として過去最高になったことは資本市場の発展にとってポジティブではないか」、「資産効率が悪く、設備投資や賃上げ、株主還元にも及び腰な企業が少なくない。物言う株主の介入によってそうした企業の経営が活性化するならば、その存在は「必要悪」ではないか。日本の株式市場を良くするためにもアクティビストは役立つ」、立場上、企業経営者の側に立たざるを得ないにしても、「必要悪」というのはやや後ろ向き過ぎる印象だ。
・『変わり種提案をするアクティビスト、オアシス  話を進める前に、まずオアシスというファンドを簡単に紹介しておこう。オアシスは少し変わった、興味深い提案をたまにすることで知られる。親子上場をしている企業や対話が難しいとされるオーナー系企業にも投資をする。19年、20年には準大手ゼネコンの安藤ハザマに対して「安全衛生管理の徹底」を定款に入れるよう株主提案した。過去に重大事故が発生したためだ。17年、18年には片倉工業に「ROEを意識した経営」を定款に盛り込むよう提案した。いずれもそれぞれの株主総会で否決された。わざわざ定款に入れることではないと他の株主が判断したためだろう。ただ一石を投じる意味合いは大きい。企業として当たり前のことをあえて提案されたことで、その後の経営陣の意識改革にもつながる効果が期待できる。実際、片倉工業は経営トップが代わったことが大きかったが、事業再編など構造改革に踏み切った。オアシスも経営方針の転換を高く評価している。) ではオアシスとサン電子の話題に戻りたい。4月に開催されたサン電子の臨時株主総会で、オアシスの株主提案によって、サン電子の社長を務めた山口正則氏を含む4人の取締役が解任されて、オアシス提案の3人が新たに取締役に選任された。いずれも賛成率は高かった。 勝因としてオアシスは一定数の株式を持つ創業家側を味方に付けたことが効いたようだ。そのうえサン電子は2020年3月期まで最終損益が4期連続で赤字だったため、経営責任を問う機関投資家も多かった。サン電子の企業価値は、2007年に買収したイスラエルのモバイルデータソリューションのセレブライト社がほとんどを占めた。そのため、3人の外国人取締役がどのように経営改善に貢献するのかが今後問われそうだ。2009年の株主総会で米スティール・パートナーズの取締役選任案が可決されて社長が交代したアデランスホールディングスは、その後経営混乱が続き、結局2017年、上場廃止になった。サン電子の経営の先行きは要注目だ』、「サン電子の企業価値は、2007年に買収したイスラエルのモバイルデータソリューションのセレブライト社がほとんどを占めた」、情けない話だ。
・『世界最大級アクティビスト、ソフトバンクに迫る  20年は著名の巨大ファンドがソフトバンクグループ(SBG)、ソニーに要求を突きつけたことも印象的だった。 運用資産4兆円超と世界最大級のアクティビスト・ファンドである米エリオット・マネジメントは、コロナ禍が世界中に広がる前の2月にSBGの株式の約3%を取得し、株主還元の強化、SBGが運用する投資ファンドの情報開示充実などを促した。SBGの株価は急落後、2兆5000億円と巨額の自社株買い枠を設定したことで急反発した。このためエリオットの投資は結果として成功したと言っていいだろう。エリオットは4月のユニゾホールディングスの従業員による買収(エンプロイー・バイアウト=EBO)時にも保有株を売却して利益を得た。 19年9月にはエリオットは米通信・メディア大手のAT&Tに経営改善を求める書簡を送った。エリオットが約32億ドル(約3300億円)と巨費を投じて株式を保有していたため、AT&Tは資産売却を含む経営改善計画の発表を余儀なくされた。エリオットは国家をも恐れないことで知られ、01年、債務不履行に陥ったアルゼンチンを相手に債務返済を巡って訴訟を起こした。こうした経緯もあり米国でも企業の脅威となっている』、「エリオット・マネジメント」が「ソフトバンクグループ」に要求を突き付け、「結果として成功」とは大したものだ。「アルゼンチン」との争いでは、米裁判所が示した返済額の75%を支払わせることで合意。
・『ソニーを狙い続けるサード・ポイント  著名投資家ダニエル・ローブ氏率いる米国大手アクティビストのサード・ポイントは、1月に投資家向け書簡の中でソニーに対して半導体部門のスピンオフ、金融子会社など上場株の保有見直しを要求した。ソニーは拒否したが、ソニー株が高値を付けた際に一部を売却したとみられる。 サード・ポイントとソニーの因縁は深い。13年にソニー株を保有していると公表し、映画などのエンターテインメント事業を分離して株式上場するよう要求した。この際、ソニーは要求を拒否し、サード・ポイントはソニー株をいったん売却。19年にサード・ポイントはソニー株に再投資し、「ストロンガー・ソニー」なる専用ウェブサイトを開いて、書簡を公開した。 複数の事業部門を抱えて経営効率が悪いとする「コングロマリット(複合企業)ディスカウント」批判を展開した。ソニー側も吉田憲一郎会長兼社長兼CEO(最高経営責任者)が「ソニーのDNAである技術が多様な事業を貫き、力を与える」と反論するなど緊張が高まっていた。 経営者が事業の選択と集中を怠ったツケで経営資源が分散した「コングロマリット・ディスカウント」の企業は数多い。複合企業は何人ものアナリストがいないと正味の企業価値を分析できないケースが多い。このなかで経営効率が良くない企業は、今後もアクティビストに目を付けられやすいと見ている。 筆者は30年以上のキャリアということもあり多くのアクティビストとコンタクトし、投資先の傾向も分かっている。次回は2020年に起こったアクティビストによる企業経営参加の事例、アクティビストに狙われやすい企業について取り上げたい』、「ソニー」が。「サード・ポイント」と長年争い、正論を主張して一歩も譲ってないのは大したものだ。なお「次回」は有料なので紹介省略。

次に、本年4月16日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したみさき投資株式会社 代表取締役社長の中神康議氏による「この金余り時代に活発化するアクティビストはどんな企業を狙うのか?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/268389
・『楠木建 一橋大学教授が「経営の王道がある。上場企業経営者にぜひ読んでもらいたい一冊だ」と絶賛、青井浩 丸井グループ社長が「頁をめくりながらしきりと頷いたり、思わず膝を打ったりしました」と激賞。経営者界隈で今、にわかに話題になっているのが『経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営』だ。 著者はアンダーセン・コンサルタント(現アクセンチュア)やコーポレート・ディレクションなど約20年にわたって経営コンサルタントを務めたのち、投資業界に転身し「みさき投資」を創業した中神康議氏。経営にも携わる「働く株主だからこそ語れる独自の経営理論が満載だ。特別に本書の一部を公開する』、興味深そうだ。
・『アクティビストに狙われる企業の2つの特徴  アクティビスト、いわゆる「物言う株主」と言うと、経営者のみなさんは身構えると思います。長期視点に立った経営の阻害要因となってきた歴史を振り返ると当然です。 2000年代中盤のスティール・パートナーズや村上ファンドの活動はまだ記憶に新しいうえに、2010年代後半にはサード・ポイントがソニーやセブン&アイといった規模の大きな企業を対象に、事業の切り離しや経営人事に介入するアクティビズムを展開しました。最近ではJR九州、TBSといった企業も、アクティビストからの提案を受けています。 このようなアクティビズムというものは、今後どのような存在になっていくのでしょう。株式市場の鬼っ子のような存在だったアクティビストはいま、どんどん進化しています。この流れをきっちりと押さえ、本質的な対応方針を立てておかなければ、「みなで豊かになる経営」への道筋を攪乱されかねません。 図表1を見てください。これはダイヤモンド・オンラインの特集(*1)に載った「アクティビストに狙われやすい日本企業ランキング」のリストです。ここで挙げられている企業が実際に狙われているのか否かは別として、ここで把握しておきたいことは、狙われやすい企業の特徴です。 (図表1 アクティビストに狙われやすい日本企業ランキング(リンク先参照)』、「図表1」はなかなかよく出来ているようだ。
・『アクティビストに狙われる企業の特徴1 PBR1倍以下  一つめは、株価回りに見られる特徴です。業界内の同業他社と比べて株価そのものが長期低迷していることは、経営陣の責任を追及する格好の口実になります。 PBR(Price to Book-value Ratio、株価純資産倍率)が1を切った株価水準は、アクティビストが改善を迫ってくる典型的なきっかけを作ります。ある企業の株価が、一株当たりの純資産額より低いということは、株式を買い占めて会社を丸ごと買収したあと、持っている資産を全部売り払えば大儲けできるということです。アクティビストが喜んで買いあげてくる典型的な株価水準がこの水準です』、「会社を丸ごと買収したあと、持っている資産を全部売り払えば大儲けできる」、というのは素人向けに単純化した言い方だが、現実には継続企業の前提で作成されるバランスシートよりも、解散を前提で作成されるバランスシートの方が悪くなるので、そうはいかないのが通例だ。
・『アクティビストに狙われる企業の特徴2 「みさきの黄金比を守れていない  アクティビストが狙う会社の二つめの特徴は、経営回り、特にBS回りにあります。 図表1を見ると、「ネットキャッシュ倍率」とか、「金融資産比率」、あるいは「自己資本比率」というように、いくつか警戒すべき指標が示されています。これはこれでその通りなのですが、もっと体系的にアクティビスト対策を講じることができます。実はここに、『三位一体の経営』でご紹介する「みさきの黄金比の大きな役割が出てくるのです(図表2)。 (図表2 みさきの黄金比はリンク先参照) アクティビストの攻撃対象になりがちなBS回りの特徴が、すべてここに集約されています。(1)調達した平均資本コストをROAが上回っていないこと、(2)BSに余剰資産が溜まっていること、そして(3)事業特性に応じた適切なレバレッジをかけていないことは、鵜の目鷹の目で攻撃対象を探しているアクティビストのレーダーには、すぐに映ってきます。 BSをこのように放置している企業は、アクティビスト格好の攻撃対象であることを、みずから公言しているようなものなのです。 (本原稿は『経営者・従業員・株主がみなで豊かになる 三位一体の経営』 の内容を抜粋・編集したものです)) (著者略歴はリンク先参照)』、「図表2」は一見したところ、なかなかよく出来ている印象だ。(これ以降の「著者からのメッセージ」などは紹介を省略)

第三に、6月16日付け東洋経済Plus「モノ言う株主対策で打ち出した「ある奇策」 村上系ファンドと西松建設「株買い増し」で緊迫の攻防戦」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27248
・『準大手ゼネコンの西松建設をめぐるアクティビストとの攻防。村上系ファンドとどんなやりとりがあったのか。 準大手ゼネコン「西松建設」の株式買い増しをめぐり、同社とアクティビスト(モノ言う株主)の激しい攻防の経緯が明らかになった。 1874(明治7年)創業の老舗ゼネコンである西松建設は6月2日、同月末の定時株主総会に提出予定だった議案の一部を取り下げると発表した。アクティビストとして知られる村上世彰氏らの株式買い増しについて、村上氏側から買い増し中止の同意が得られたため、株主総会で決議予定だった一般株主に中止の賛同を求める議案を取り下げた。 シティインデックスイレブンスなど、いわゆる「村上系ファンド」は5月24日時点で、西松建設株の23.87%を保有している。西松建設は村上系ファンド側に25%超の株式を購入しないことを要請。紆余曲折を経て、村上系ファンドは5月21日から2022年3月期第2四半期決算発表がなされるまでの間、25%超となる買い付けを行わないことに合意した。 シティインデックスイレブンスは6月2日付けリリースの中で、「2022年3月期第2四半期決算発表までという期限付きのものであり、株主総会に当議案が出されることによって株主価値が毀損されることを防ぐため、不本意ながら誓約書を提出した」としている』、「25%超の株式を購入しないことを要請」とあるが、これは犯罪収益移転防止法で、25%を超える議決権を有するものは、実質的支配者として、実質的支配者申告書により必ず申告する必要があり、こうした面倒を避けるためと思われる。
・『株買い増しで「過去最大の経営ピンチ」に  村上系ファンドの動きは西松建設側にどんなインパクトを与えたのか。 「長い歴史のある西松建設はこれまで、2000年代に有力政治家への違法献金問題が発覚するなど経営危機もあったが、一連の村上系ファンドによる株の買い増しの攻防は、過去最大の経営ピンチだったと言える。今の水準以上に株を買い増されると、西松建設が食いつぶされるだけでなく、(業界再編を仕掛けてくるなど)ゼネコン業界全体に波及する恐れもあった。それを食い止めることができたので、危機はいったん乗り越えたと見ていい」。西松建設の関係者はこのように語る。 アクティビストに株の買い増し中止を要請したケースとしては、ジャスダック上場のセゾン情報システムズが2012年6月に開催した株主総会で、シンガポールを拠点とするエフィッシモ・キャピタル・マネジメントに対して行った前例がある。上場株式の売買は自由であり、買い増し中止の要請は拘束力はないとはいえ、稀有なケースであることは確かだ。 村上系ファンドが西松建設株を取得し始めたのは、2020年の初めごろのことだ。西松建設は不動産や投資有価証券などの優良資産が豊富なのに、PBR(株価純資産倍率)が0.5~0.7倍と1倍を大きく割り込んでいた点に付け込まれた(当時)。村上系ファンドはその後も買い増しを続け、同年4月17日には大量保有報告書の提出を義務付けられる5.09%を保有した。 西松建設側が村上氏と初めて接触したのは同年3月3日。「キャッシュや資産の使途をどのように考えているのか」「自社株取得や増配に対する計画はどうか」「不動産や政策保有株式の売却への考えはどうか」。村上氏は独特の早口で、西松建設側を質問攻めにしたようだ。 その後も、村上氏の長女である野村絢氏らは西松側と電話会議などを行う一方、2021年に入って西松建設株の買い増しを加速していく。同年2月26日には村上系ファンドの保有比率は16.42%に達した。 そして、同年3月3日の「ひな祭り会談」で村上系ファンドは踏み込んだ。西松建設に対して、①西松建設を軸にした同業者との経営統合(具体的には、村上系ファンドが現在30%超を保有する大豊建設との統合)、②MBO(マネジメント・バイアウト)による株式の非公開化、③自社株買いなどによる株主価値の向上、のいずれかを実行するよう書簡で迫ったのだ。 これに対し、西松建設は①と②は受け入れがたいと判断。③に沿う形で中期経営戦略を打ち出す方針を固めた。5月11日に発表した2023年度までの中期経営計画では、連結配当性向を従来の30%超から70%以上に引き上げ、かつ今後3年間で純資産の1割に相当する200億円以上の自社株買いを実施する株主還元策をぶち上げた』、この程度の「株主還元策」であれば、問題はさほどなさそうだ。
・『「2000億円の自社株買い」を追加提案  「うちとしては精一杯の対応をした」(関係者)という内容で、ゼネコン関係者からは「西松は前2021年3月期に、首都圏マンションの施工不備で約90億円もの完成工事補償引当金を積んだばかり。いくらなんでも還元しすぎではないか」という驚きの声が出たほどだ。 ところが、新中計発表翌日の5月12日。ZOOMで行われたリモート会談で、村上氏はさらなる要望を加える。最大で2000億円の自社株買いを提案したのだ。シティインデックスイレブンスのリリースによると、「極端に言えば」という前置きを述べたうえで、「最大で2000億円の自社株式取得が可能であると述べたにすぎない」としている。 結局は、25%以上を保有されることにより、特別決議事項に実質的に拒否権を有することを嫌う西松建設と、3分の1超の株式を持つことを主張する村上系ファンド側の溝は埋まることはなかった。 「(これ以上、株を買い増す意向であれば)うちも何らかの対策を打たざるを得なくなりますよ」。西松建設側は村上氏にそう伝えたうえで、冒頭のように株の買い増し中止を要請し、村上系ファンドが受け入れると表明したため、ひとまず「休戦」となった。 村上系ファンドはなぜ西松側の要請を受け入れたのか。投資ファンドの動向に詳しい建設業界の関係者は、「自己資本とほぼ同じ規模の2000億円もの自社株買い提案は、会社に『つぶれてください』と言っているようなもの。あまりにも無茶な要望で、他の株主から強い批判を招く可能性があり、村上氏がこの流れを嫌ったのではないか」と話す。なお、西松建設の2021年3月期末の純資産は2075億円だ。 村上系ファンドが以前から「西松建設の株主価値向上が実現すれば、株式を売却する意向」としていることから、別の業界関係者は「PBR1倍以上の水準に株価が上昇すれば、十分な売却益を得ることができると判断したのかもしれない」とみる』、「「2000億円の自社株買い」を追加提案」は、いくらなんでも無茶だ。ただ、「25%以上を保有されることにより、特別決議事項に実質的に拒否権を有することを嫌う西松建設」、とあるが、これは「3分の1超」の間違いだろう。東洋経済にあるまじき間違いだ。
・『ファンド対西松建設、「第2ラウンド」の焦点  西松建設内には安堵感が広がっているようだが、もちろんこれで幕引きになったのではない。ポイントは「2022年3月期第2四半期決算発表まで」という期限があることだ。西松建設の同決算発表は11月15日前後になるとみられる。西松建設のPBRは6月10日時点で0.9倍まで上昇しており、1倍のハードルは高くないように見える。 しかし、村上系ファンドは「西松建設には保有不動産に多額の含み益があることから、その含み益(2020年3月期有価証券報告書では約400億円)を加算したうえでのPBR1倍は最低でも達成していただきたい」とする。400億円を純資産に単純合算した場合のPBR1倍の株価はおよそ4300円。現在の株価水準を20%以上引き上げなければならない計算になる(6月10日終値は3395円)。 西松建設の河埜祐一副社長は、「企業価値向上に向けて新中計を策定した。これを実行することによって、PBR1倍以上を目指す。これがわれわれの考え方だ」と強調する。 建設事業では得意のトンネル技術を武器にリニューアル工事などを獲得。開発・不動産事業では賃貸を中心にしたストック型ビジネスから、私募REITなどを活用した循環型再投資ビジネスに軸足を移す。これらの成長戦略を愚直に推進することで、中長期的に企業価値を高めていく算段だ。 【2021年6月16日9時40分追記】初出時の表記を一部修正いたします。 新中計を発表して以降、西松建設の株価は上昇トレンドにある。このまま株価が上昇し続ければ、村上系ファンドはタイミングをはかりながら西松株を売却していく可能性がある。だが、西松建設のシナリオどおりに成長戦略による株価上昇が実現しなければ、村上ファンドとの攻防「第2ラウンド」が待ち受ける。 大豊建設、東急建設、前田建設工業などのゼネコン株も保有する村上系ファンド。業界関係者は同ファンドの動きを固唾をのんで見守っている』、さあ、どうなるか大いに注目される。
タグ:日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 「物言う株主」 (アクティビスト・ファンド) 東洋経済Plus (その4)(アクティビストは「必要悪」 企業経営に改善の余地、この金余り時代に活発化するアクティビストはどんな企業を狙うのか?、モノ言う株主対策で打ち出した「ある奇策」 村上系ファンドと西松建設「株買い増し」で緊迫の攻防戦) 菊地 正俊 「アクティビストは「必要悪」 企業経営に改善の余地」 「単純な株主還元を求める提案は影を潜めた。その一方、企業の経営改善につながるだろう建設的な提案もあり、全体として過去最高になったことは資本市場の発展にとってポジティブではないか」、「資産効率が悪く、設備投資や賃上げ、株主還元にも及び腰な企業が少なくない。物言う株主の介入によってそうした企業の経営が活性化するならば、その存在は「必要悪」ではないか。日本の株式市場を良くするためにもアクティビストは役立つ」、立場上、企業経営者の側に立たざるを得ないにしても、「必要悪」というのはやや後ろ向き過ぎる印象だ。 「サン電子の企業価値は、2007年に買収したイスラエルのモバイルデータソリューションのセレブライト社がほとんどを占めた」、情けない話だ。 「エリオット・マネジメント」が「ソフトバンクグループ」に要求を突き付け、「結果として成功」とは大したものだ。「アルゼンチン」との争いでは、米裁判所が示した返済額の75%を支払わせることで合意。 「ソニー」が。「サード・ポイント」と長年争い、正論を主張して一歩も譲ってないのは大したものだ。 中神康議 「この金余り時代に活発化するアクティビストはどんな企業を狙うのか?」 「図表1」はなかなかよく出来ているようだ 「会社を丸ごと買収したあと、持っている資産を全部売り払えば大儲けできる」、というのは素人向けに単純化した言い方だが、現実には継続企業の前提で作成されるバランスシートよりも、解散を前提で作成されるバランスシートの方が悪くなるので、そうはいかないのが通例だ。 「図表2」は一見したところ、なかなかよく出来ている印象だ。 「モノ言う株主対策で打ち出した「ある奇策」 村上系ファンドと西松建設「株買い増し」で緊迫の攻防戦」 「25%超の株式を購入しないことを要請」とあるが、これは犯罪収益移転防止法で、25%を超える議決権を有するものは、実質的支配者として、実質的支配者申告書により必ず申告する必要があり、こうした面倒を避けるためと思われる。 この程度の「株主還元策」であれば、問題はさほどなさそうだ。 「「2000億円の自社株買い」を追加提案」は、いくらなんでも無茶だ。ただ、「25%以上を保有されることにより、特別決議事項に実質的に拒否権を有することを嫌う西松建設」、とあるが、これは「3分の1超」の間違いだろう。東洋経済にあるまじき間違いだ。 さあ、どうなるか大いに注目される。
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東芝問題(その41)(東芝 「株主への圧力問題」で判明した経産省の影 ガバナンス提唱者が企業経営に介入する大矛盾、【緊急寄稿】東芝スキャンダルと経産省の暗躍(古賀茂明)、「底なしに悪い会社」東芝から得る7つの教訓 山崎元が解説) [企業経営]

東芝問題については、5月12日に取上げた。6月25日に株主総会が終ったばかりの今日は、(その41)(東芝 「株主への圧力問題」で判明した経産省の影 ガバナンス提唱者が企業経営に介入する大矛盾、【緊急寄稿】東芝スキャンダルと経産省の暗躍(古賀茂明)、「底なしに悪い会社」東芝から得る7つの教訓 山崎元が解説)である。

先ずは、6月16日付け東洋経済オンライン「東芝、「株主への圧力問題」で判明した経産省の影 ガバナンス提唱者が企業経営に介入する大矛盾」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/434485
・『イギリスの投資ファンドからの買収提案と車谷暢昭社長の電撃的な辞任から2カ月。落ち着きを取り戻したかに見えた東芝を、再び激しい嵐が襲っている。 2020年7月に開催された定時株主総会をめぐり、東芝が株主提案などを妨害したとされる問題で、会社法に基づく調査報告書が6月10日に公表された』、「会社法に基づく調査報告書」とは物々しいが、アクティビスト・ファンドが中心になって昨年の株主総会で調査すると決定し、彼らが指名した第三者委員会が発表したもので、確かに「会社法に基づく調査報告書」ではある。
・『東芝と経産省は「一体」  報告書は、東芝の幹部と経済産業省幹部との生々しいやりとりを明らかにした。東芝幹部が、エフィッシモ・キャピタル・マネジーメントなどの大株主を「モノ言う株主(アクティビスト)」と見なし、その排除のために2020年5月に改正された外為法(外国為替及び外国貿易法)を利用しようとしたと指摘。 さらに、株主提案をさせないようエフィッシモに働きかけたり、東芝が有利になるように、経産省と一緒になってほかの大株主の議決権行使に影響を与えようとした。その結果、東芝の株主の権利が制限され、株主総会が公平に運営されなかったと結論づけた。 報告書を受けた東芝は6月14日、同25日開催の株主総会で会社側の社外取締役候補である太田順司、山内卓両氏の再任案を取り下げた。さらに、豊原正恭副社長、加茂正治上席常務の退任も決めた。 同日には永山治取締役会議長が記者会見を行い、陳謝した。東芝は今後、第三者による調査を行い、原因究明と責任の明確化を目指す。永山氏は取締役候補に残り、25日の株主総会で再任が適切か否か、株主の判断を仰ぐ。 報告書は図らずも、「東芝は、経産省といわば一体」という、経産省と東芝の親密な関係も白日の下にさらした。 具体的には、経産省幹部が東芝に対して株主への対応を指示したほか、幹部や経産省参与(当時)が株主に接触して圧力をかけたと指摘。その過程で得た情報を不当に東芝に流した、国家公務員法における守秘義務違反の疑いすらあると踏み込んだ。 経産省はこれまで日本企業に対してコーポレートガバナンスの推進を掲げ、制度設計を進めてきた。その提唱者がガバナンスの原理原則に反するような行動を取っていただけに、問題は根深い。 ところが、経産省の動きは鈍い。梶山弘志経産相は15日の記者会見で経産省として独自に調査する考えを否定。東芝に関する一連の言動も「経産省の政策として当然のことを行っているまで」と開き直った。 職員の守秘義務違反の疑いについても、「必ずしも根拠が明確ではない」と問題視せず、「国の経済安保上重要」という言葉を繰り返し、今後も東芝への外為法上の監督を続ける姿勢を示す』、「永山治取締役会議長」の「取締役」選任議案は「株主総会」で否決される異例の展開となった。「経産省」や「梶山弘志経産相」の姿勢は大いに問題だ。
・『車谷前社長と菅首相の関係  2015年の不正会計以後、人心一新を図ったはずなのに、東芝はなぜガバナンス上の問題を繰り返すのか。 「車谷氏もそれ以外の取締役も東芝の外部から来た。にもかかわらず不祥事が起きることに驚きを隠せない」。14日の会見では、アナリストからこんな意見も飛び出した。 東芝が選んだ社外取締役にも経産省の影がちらつく。そもそも車谷氏が社長に就任したのも、経産省の強い後押しがあったから。ある元社外取締役は、車谷氏を推薦したのは当時の経産省事務次官の嶋田隆氏で、その背後には菅義偉官房長官(現首相)の意向も働いていたと証言する。 東芝の調査報告書でも車谷氏と菅氏の会食が指摘され、このときに株主への対応を報告した可能性が高い。一連の株主への圧力行為はトップである車谷氏の主導で行われており、菅氏の関与が明確になれば、政治問題化する可能性もある。 25日の株主総会は波乱が避けられそうにない。永山氏らの再任案には投資助言会社が反対推奨しているほか、問題に直接関与した取締役候補だけを取り下げる対応に株主が納得するかわからない。「経産省との関わりなどに予想以上に踏み込んだ」(市場関係者)報告書に、株主の追及は必至だろう。 永山氏は14日、取締役としての監督責任を認めたうえで「責任を取る(辞任)よりも責任を果たす(続投)」と続投の理由を説明する。仮に永山氏が辞任したとして東芝の取締役会議長という「火中のクリ」を拾う人がいない現実も表している。東芝は株主総会後も取締役候補を探す予定だが、適任者が見つかる保証はない。 原子力など国家の安全保障に関わる事業を手がける東芝は、いや応なしに政官と関わらざるをえない宿命にある。だが、東芝に健全なガバナンスを取り戻すには、経産省との関係を見直す必要がある』、「車谷前社長」が威張っていたのは「菅首相の関係」が背景にあったようだ。「東芝」の「取締役候補」選びは難航しているらしい。

次に、6月19日付け日刊ゲンダイが掲載した元経産官僚の古賀茂明氏による「【緊急寄稿】東芝スキャンダルと経産省の暗躍(古賀茂明)」を紹介しよう。
・『「栄光の時代を生きた運命共同体」は今や落ちぶれた「腐れ縁」  日本政府とマーケットに対する信頼を根底から覆す大スキャンダルが起きた。大胆に要約すれば、外国株主が東芝に影響力を行使することを嫌った「外資嫌い」の経済産業省と、外資によって自らの地位を脅かされることを恐れた東芝首脳が共謀して、経産省の外国為替管理法上の規制権限をちらつかせて、外国株主に総会での人事案などの提案を止めさせようとしたり、経産省が海外の投資家に対して、外資による提案に賛成しないように働きかけたというものだ。当時の官房長官であった菅総理もこれに関わった疑いが強いという。 真相解明と再発防止策の策定までにはまだ時間がかかるが、それとは別に、マスコミからの取材で、私は、同じ質問を受けている。 東芝と経産省はなぜこんなにべったりの関係なのか、というものだ。 経産省は東芝の所管官庁で、貿易管理や原発関連などで東芝に対する規制権限を持つ。補助金、税の優遇措置でも東芝に便宜を図っているから、経産省は東芝の上に立つようにも見える』、「経産省の外国為替管理法上の規制権限をちらつかせて、外国株主に総会での人事案などの提案を止めさせようとしたり、経産省が海外の投資家に対して、外資による提案に賛成しないように働きかけた」のは、確かに「大スキャンダル」だ。
・『経産官僚にとって東芝は「居心地のいい」天下り先  一方、筆者が経産省にいた頃、東芝に天下りした先輩は、「居心地が良い」と言っていた。加計学園事件で問題になった安倍前首相秘書官を務めた柳瀬唯夫元経済産業審議官も東芝の関連会社、ダイナブック社の非常勤取締役に天下りした。 天下り以外にも、経産省が東芝の世話になることは多い。東芝の社長、会長は経済界で絶大な力を持ち、日本商工会議所(日商)や経団連のトップなど要職の常連だった。自民党への影響力も大きい。筆者も、課長や部長をしている時などに日商会頭だった東芝会長などに「ご説明」に行ったものだ。 経産省の政策にお墨付きをもらう最高機関である産業構造審議会でも東芝首脳は要職を占め、経産省のシナリオ通りに発言してくれた。もちろん、経産省最大の利権である原子力発電のメーカーでもある。どこから見ても、日本産業の頂点に位置し、80年代のジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた日本の黄金期に、「ノートリアスMITI(悪名高き通産省)」と世界に恐れられた当時の通産省から見て、最高のパートナーであった。 両者に上下の関係はない。「栄光の時代を生きた運命共同体」だったと言うべきだろう。 後に、経産省の意向を受けて米国の原発メーカー・ウェスチングハウス社を買収して大失敗した東芝は、破綻寸前となった。その時も経産省は、産業革新機構や日本政策投資銀行などを使って東芝を救済し、「東芝復活」の夢に賭けた。その結果が、今回の不祥事だ。両者の関係は、今や、ただの「腐れ縁」に落ちぶれてしまったようだ。 これが「両者の関係は?」という問いに対する答えである』、「東芝」と「経産省」の「関係」は、「栄光の時代を生きた運命共同体」から「「腐れ縁」に落ちぶれてしまった」とは、言い得て妙だ。
・『時代にそぐわず不幸を生む経産官僚「2つのDNA」  東芝と経産省による外国株主の権利行使妨害スキャンダル。メディアから受ける質問で2番目に多いのが、「経産官僚とはどういう人間なのか」である。 彼らには「性」とも言うべき2つのDNAがある。 1つ目は、私が「中央エリート官僚型」と呼ぶタイプの公務員に共通するDNAだ。「自分たちが一番賢い」、だから、「我々が考えることは常に正しい」と思い込む。だが、現実には彼らの頭は時代遅れで使えない。このギャップが不幸の源になる。 例えば、「コーポレート・ガバナンス強化」をうたいながら、その本質は理解できない。ただ、そういう言葉を使えば、企業に対して偉そうに振る舞える。彼らのDNAがそういう方向に導くのだ。独立社外取締役を増やせというのも同じ。自分たちの天下り先が何倍にも増えるということを裏では計算しているが、「自分たちこそが正義」という意識に酔うあまり、そういう自身の下心を自覚できない。今回も、ガバナンスの観点では最低最悪の行為なのだが、本人たちは正義を追求したと信じている。 経産官僚2つ目のDNAは、「日本の経済界を仕切るのは俺たちだ」という強烈なプライドだ。企業が頭を下げて頼ってきたとき、「俺たちが助けてやる」とそれに応える瞬間こそ、至福の時だ。半導体のエルピーダや液晶のJDI(ジャパンディスプレイ)のような経産省のDNAが生んだ、負け組「日の丸連合」は残念ながら連戦連敗だった。ダイエー救済に失敗する直前まで「ダイエー再生はわれらの使命。経産省の鼎の軽重が問われている」と語っていた事務次官もこのDNAの持ち主だった』、「時代にそぐわず不幸を生む経産官僚「2つのDNA」」は、的確な指摘だ。
・『東芝が手に入れた「安全保障」という武器  実は、90年代までに、経産省はエネルギー関連を除く大半の権限を失い、構造的失業時代に入った。安倍政権で権勢を振るった同省出身の今井尚哉総理秘書官のおかげで一時は経産省内閣などと持ち上げられて喜んだが、それも終わった。 そんな経産省が、「改正外為法」により最高の武器を手に入れた。安全保障を口実に、海外投資家に干渉する権限だ。「安保」といえば、「国家の命運を左右する」仕事だ。いや応なく彼らのDNAを刺激する。彼らは、国家を守るためだから何でもできる、というおかしな世界に入ってしまった。 経産省のDNAには「外資嫌い」も含まれる。彼らは平気で経産省に逆らうから、「一番偉いのは我々だぞ!」となる。今回も、外資が東芝の株主総会で提案権を行使すると聞いただけで、「外資の野郎が!」と逆上し、「東芝を守り外資を潰せ」という条件反射となった。 経産官僚のDNAのおかげで日本が沈没、という事態を避けるには経産省解体しかないのかもしれない』、「経産省が、「改正外為法」により最高の武器を手に入れた。安全保障を口実に、海外投資家に干渉する権限だ。「安保」といえば、「国家の命運を左右する」仕事だ。いや応なく彼らのDNAを刺激する。彼らは、国家を守るためだから何でもできる、というおかしな世界に入ってしまった」、暴走を防ぐべきマスコミは記者クラブの枠に囚われて監視機能を果たしてないようだ。困ったことだ。

第三に、6月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「「底なしに悪い会社」東芝から得る7つの教訓、山崎元が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/275361
・『6月25日、東芝の株主総会が行われ、取締役会議長を含む2人の取締役選任議案が否決される異例の事態に陥った。近年の東芝は「底なしに悪い会社」だ。本稿では、この東芝を巡る一連の不祥事から、一般市民及びビジネスパーソンにとって役に立つ「教訓」を七つ、いささかの皮肉と共に抽出したい』、「底なしに悪い会社」とは、「山崎 」氏もよほど腹を立てたのだろう。
・『「底なしに悪い会社」東芝 錯乱経営の末路  東芝の株主総会が6月25日に行われて、会社側が提出した取締役選任議案が2人分、否決された。 この議案は、昨年の株主総会が公正に行われなかったという第三者委員会による調査結果を受けて、提出直前に取締役候補2人の選任を撤回するという異例のプロセスで提出されたものだった。そして、取締役会議長の永山治氏(中外製薬名誉会長)を留任させるものであったため、株主の賛成を得られるかどうかが注目されていた。永山氏には、昨年の株主総会の運営に関する責任があると目されたからだ。 近年の東芝は、一言で言って「悪い」。それも、常軌を逸する悪さだ。 ごく大まかに経緯を振り返る。表立ったケチのつきはじめは、総額6000億円超で買収した米国の原子力発電所メーカー、ウェスチングハウスを通じて生じた米国原発事業の多額損失だった。広い事業分野の中から、将来の事業の柱として半導体と原発を選んだ経営的な「選択と集中」(東芝のスローガンでは「集中と選択」)の意志決定が盛大に裏目に出た。 立ち直りを目指す過程では、業績を実態以上によく見せるための大規模な「不適切会計」の問題が生じて、名門・東芝は東京証券取引所第1部から脱落する。この事案は、率直に言って会社ぐるみの粉飾決算だったが、長年の広告宣伝費が効いたものか、国策企業への遠慮があったのか、メディアの報道は必要以上に優しかった。 財務的余裕と信用の両方を失った東芝は、医療機器や半導体といった将来成長が見込めそうな事業を売却し、今回の問題の遠因となる資金調達を行うなどで延命と再建を図る。「そうしないと生き残れなかった」ということなのかもしれない。しかし、普通の感覚の第三者が経営を眺めるなら、重荷である原発事業を維持するために有望なビジネスを売却するという、ほとんど「逆噴射」と言いたくなる錯乱経営だった。しかし、これこそが経済産業省と共に東芝が選択した道だった。 そしてこの度は、昨年の株主総会に際してアクティビスト(物言う株主)の取締役人事案を退けるために、経産省と共謀して株主に不当な圧力をかけたとの嫌疑をかけられている。株主総会に提出する直前に人事案を修正したのだから、状況証拠的に東芝の経営陣には本件に関して、少なくとも「心当たりがある」のだろう。 東芝は、つくづく悪い会社だと言うしかない。ただ、もちろん大多数の東芝社員は悪くないばかりか有能でもあるし、東芝の製品にも優れたものがある(筆者も愛用している)。 本稿では、この東芝関連のもろもろから、怒りを抑えて(少しは怒るが)、一般市民及びビジネスパーソンにとって役に立つ「教訓」を七つほど、いささかの皮肉と共に抽出したい』、「重荷である原発事業を維持するために有望なビジネスを売却するという、ほとんど「逆噴射」と言いたくなる錯乱経営」、とは厳しい指摘だ。「「教訓」を七つ」とは興味深そうだ。
・『【教訓その1】「問題の解決が私の責任」は通用しない  不祥事を起こした企業の社長や政治家などが、「問題を解決することこそが私の責任だ」と言って、そのままポストに居座ろうとすることがある。しかし今回、永山氏の取締役会議長留任が否決されたことは、この言い分が以前よりも通用しにくくなったことを示している。 今回の永山氏の「問題」は、昨年の株主総会の運営が不適切だったのではないかという嫌疑だが、この問題は事実の全貌が十分明らかになっていないし、問題があったとした場合に誰がどのような責任を取るのがいいのかが不確定的だ。 「第三者から見て」、自分自身に責任があるかもしれない問題の解明と処理に永山氏自身が関わることは、自分自身に不都合な真実を隠蔽する可能性が考えられるし、自分に有利な裁定に導こうとする動機が働くかもしれない、との疑いが消せない。つまり、永山氏はこの問題の解決に当たる責任者として(単なる関与者としてもだが)不適切なのだと、自ら理解しなければならない。 経営者や大臣などの組織のトップにとって、自らに責任があるかもしれない問題を扱う際の責任者であり続けることは、「ほぼ例外のない一般論として不適切なのだ」と知るべきだ。「俺は余人をもって代えがたい」と本人が思い込んでいてもダメなのだ』、「「問題を解決することこそが私の責任だ」と言って、そのままポストに居座ろうとする」人は多いが、確かに大きな問題を孕んでいる。
・『【教訓その2】投資家は格好だけのガバナンスを疑え  「不適切会計問題」(より適切には「粉飾決算」だ)の際にも指摘したが、東芝はこの問題が生じる前から、コーポレートガバナンス(企業統治)にあって先進的とされる「委員会等設置会社」であった。 しかし、不適切会計の問題だけでなく、今回は株式会社の企業統治の根幹に関わる株主総会の運営に不正があったと疑われている。 一般論として投資家は、外形的に優れたガバナンス体制を整えている企業に対して、「感心する」よりは、むしろ「疑わしい」と思うくらいでちょうどいい。 委員会等設置会社も社外取締役も取締役会の「多様性」も、それぞれに結構な側面があるが、格好だけに騙されてはいけない。 年金基金などの機関投資家は昨今、議決権行使の助言会社(妙な商売があるものだ)のアドバイスに従って議決権を行使することが多い。ところが、その助言会社も企業の「外面」しか見ていない場合が少なくない。 「不祥事を起こした東芝的な会社について、助言会社はどうアドバイスしていたか過去を検証してみよう」とまで意地悪を言うつもりはないが、「体裁だけの先進的ガバナンス」に気をつけよう。ちなみに、外面だけ良くて中身がダメな会社を見抜く有力な判別手段は、「どう見てもビジネスの機微が分からなそうな社外取締役」の存在であるように思われる。しかし、サンプル数が多すぎて検証が難しいかもしれない』、「どう見てもビジネスの機微が分からなそうな社外取締役」、については「サンプル数が多すぎて検証が難しいかもしれない」とはその通りだろう。
・『【教訓その3】自由な経営にとって「上場」のコストは高い  今や、東芝の株主や投資家一般は東芝に対して「怒っている」に違いないのだが、視点を変えてみよう。東芝を自分の利害にとって都合良く経営したい経営者や、民間会社のまま国策に協力させたい経産省などにとって、東芝が上場企業であることは適切なのだろうか。 上場企業は、株主だけでなく投資家一般に対する情報提供を公平かつ迅速に行わなければならない建前だ。そしてもちろん、特定の株主の利益を増進することも、損なうことも行うべきではない。 経産省は現時点で、防衛などの点で国策上重要な企業の経営に同省が関与することがあるのは当然だと半ば開き直っている。だが、上場会社の株主に対して不公平が生じる関与を行っていいとは思えない。驚く読者がおられるかもしれないが、実は、経産省は上場企業のコーポレートガバナンス改革を主導する立場の官庁なのだ。 百歩譲って「東芝は特別な会社なのだから、われわれが経営に介入することがあってもいいはずだ」という経産省の言い分を認めるとしよう。そうだとしても、上場会社である東芝の株主にとって、そのことは事前に明らかでなければならなかったはずだ。 競馬で言うなら、「このレースでは国策による八百長があるかもしれないことを含んだ上で馬券を買ってください」と宣言するのが、主催者の最低限の良心だろう。 経産省に関しては、少なくともこの人たちにコーポレートガバナンスを語る資格はないと強く感じる。 東芝を自由に操りたい人々にとって、株式の「上場」は余計なのではないか。一方の投資家にとっては、株主総会でさえ八百長をやりかねない人々の存在が余計だ。 東芝は、非上場の「国策東芝」と、クリーンな上場企業の「民間東芝」に事業分割するといいのではないか。後者が、前者のために利用される今の状況は健全でない。 なお東芝の経営問題は、狭くは東芝の株主、広く見ても投資家一般にとっての問題だが、上場企業の経営に隠れて介入するような腐敗した官庁が存在することは、広く国民全体にとっての問題だ。東芝経営陣の責任よりも、経産省の関与の実態解明と責任の明確化の方がはるかに重要な問題だろう』、「東芝経営陣の責任よりも、経産省の関与の実態解明と責任の明確化の方がはるかに重要な問題だろう」、同感である。
・『【教訓その4】官僚は逃げる!  繰り返すが、本件の重要性に鑑みると、誰が、いつ、何をしたのかについて、事実が明らかにされなければならない。調査の必要性を認めないとする梶山弘志経産大臣の発言は、経産行政の責任者として著しく危機感を欠いている。 こんなに大事な問題をなぜ調べないのだろうか。それで、大臣が存在する意味があるのか。この大臣は、単に経産省の責任回避のために、振り付け通りにしゃべっているだけの、ネクタイを締めた発声機能付きのぬいぐるみ程度の人物なのだろう。 このレベルの政治家は与野党を問わず少なくない。次の内閣改造で視界から消える方だろうが、当面不愉快だ。 一般人が「教訓」として気に留めておくべきなのは、経産省のスタンスだろう。経営に介入し、加えておそらくは相談の上で株主総会対策に関わったとみられる経産省が、問題が発生してみると対外説明の上で全く味方になってくれない。そればかりか、「それは民間の問題だ」と言わんばかりの態度を取っていることだ。 嫌疑をかけられている東芝の経営陣の個々の人にとっては、行動の背景に経産省との方針の擦り合わせがあったり、経産省の指示や情報提供があったりしたことを明らかにしてもらえたら、「個人としては、やむを得なかった」という言い訳ができて(少しは)気が楽だったろう。ところが現状では、東芝経営陣が対外的な説明責任を負い、世間の非難を一手に引き受ける形になっている。 永山氏が、一企業である東芝だけでなく国家を思う人であるなら、経緯を「全て」明らかにして、経産省の官僚や関係者も含めて、「事実を明らかにした上で、一緒に然るべき責任を取りましょう」と責任の道連れにしてくださるとよいのだが、そうしようとしても官庁と官僚は責任から逃げるだろう。 経産省幹部の官僚さん個人にとっては、長い官僚人生の「収穫期」に入っていて、本人にとって大事な時期なのだろう。そういうことだから、民間人にとって官僚は、「一緒にリスクを取ってくれる信頼できる相手」ではないことをよくわきまえておくべきだ』、「官僚は逃げる!」、「官僚」だけでなく、民間企業の間でも情勢が厳しくなったら、「逃げ」られるとの覚悟を持って事に当たるべきだ。
・『【教訓その5】カネを出す人は、クチも出す  権利として(即ちゲームのルールとして)当然のことであり、本件にあって、アクティビストは少しも悪くはない。利益を求めて、ルール通りにゲームをプレイしようとしただけだ。東芝が彼らから株式を使って資金を調達した以上、彼らから経営に口出しされる事態は当然のことだ。 アクティビストは、例えば自社株買いや配当の増額のような財務政策的な短期利益を好む傾向がある。しかし、経営陣に十分な成算と説得力があれば、例えば将来の技術やビジネスに投資することが、単なる株主還元よりも株主の利益につながることを納得させられる可能性が十分ある。アクティビストも「もうけたい株主」なのだ。同時に、アクティビストは経営者を鍛えてくれる存在でもある。 さすがに、東芝クラスの会社の経営者は少なくとも耳学問レベルで「資本コスト」という言葉の意味をご存じだろうが、昭和の経営者のように、株主から調達した資本を「配当だけ払っておけばいい、自由に使えるカネ」だと考えているようではいけない。 本来、企業としての東芝の将来に強いモチベーションを持つ経営者なら、アクティビストを味方に付けて、経産省の悪影響を削減するためのバランサーに使うというくらいの戦略性を持つべきだ』、「アクティビストは少しも悪くはない・・・東芝が彼らから株式を使って資金を調達した以上、彼らから経営に口出しされる事態は当然のことだ」、「アクティビストは経営者を鍛えてくれる存在でもある」、「アクティビストを味方に付けて、経産省の悪影響を削減するためのバランサーに使うというくらいの戦略性を持つべき」、その通りだ。
・『【教訓その6】国策は今や足かせだ  東芝がかくも異様な会社となったことの大きな理由は、単に伝統ある大企業だったことだけではなく、同社が、おそらくは防衛政策等に組み込まれた国策企業であったことによるだろう。そして、今も国策企業だ。 端的に言って東芝は、原発事業を企業としての一存で止めることはできないのだろう。そして米国の意思を前提とすると、日本の政府にもそれは不可能なのだろう。日本は米国の実質支配下にある国であり(「対等な同盟国」ではない)、原発はその文脈の下にある。故に東芝側には、「政府はわれわれをつぶせないはずだ」という安心感があるだろう。 だが一般論として、商売の相手が国でなくとも、一つの顧客に大きく依存することは経営上不適切だ。そして、それは現実かもしれないのだが、「国策企業」であることのコストは特に、そこに勤める社員にとって大きい。 国策企業だから東芝はつぶれない(だろう)。これは安心であり、社員にとってもプラスだと思える要素かもしれないが、そのせいで成長ビジネスを売って重荷を抱える「逆噴射経営」が行われた。さらに、消費者向けの商品も扱うにもかかわらず、再三の不祥事でイメージが悪い中でのビジネスを余儀なくされている。 そしてついでに言うと、国策企業でもつぶれることはあるし(例えば日本航空〈JAL〉を見よ)、会社がつぶれなくても社員のリストラは大いにあり得る。 東芝は今でも、多くの技術とビジネスの可能性を持った組織だ。「国策企業なんて、やめてほしい」と思う社員が少なくないのではないか』、「国策は今や足かせだ」はその通りだ。
・『【教訓その7】腐敗した会社の株でももうかる!  今回の問題では昨年の株主総会に際して、経産省の関係者が米ハーバード大学の基金運用ファンドに対して議決権行使を控えるように働きかけたと報道されている。働きかけの有無も内容も現時点では明らかにされていないので、この経緯の事実関係の調査と公表が重要であることは当然なのだが、その点はさておき、ハーバード大学は昨年の株主総会当時にあって、東芝の実質的な大株主だったのだ。 ハーバード大学の基金による東芝株への投資は、昨年の総会で議決権行使を控えたことからも分かるように、シンプルな「純投資」だろう。 筆者の推測だが、ハーバード大学の基金は「不正会計」問題に揺れて株価が安いときに東芝株を大量に取得したのだろう。その後、昨年に東芝の前CEO(最高経営責任者)が仕掛けたMBO(マネジメント・バイアウト、経営陣による自社株買い取り)騒動(これも妙な話だった)による株価急騰までは享受できなかったのかもしれないが、大いにもうかった投資だったにちがいない。 同大学の基金が投資していた時期も、その前も現在も、東芝は株式市場の倫理から言って腐った会社だ。昨今流行の「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」的には最低の会社だったはずだ。 しかし、その株式は、「安く買って、高く売れたらもうかる」普通の株式だった。加えて、「安く」買うためには不祥事が役に立ったとさえいえる。 投資自体の効率を考えるなら(ほかに何を考えるのだろうか?)、「ESG」は投資に関係させない方が明らかにいい。投資論としては当たり前の話だが、今回の教訓に加えておこう』、「腐敗した会社の株でももうかる!」、「「ESG」は投資に関係させない方が明らかにいい」、山崎氏らしいシャープな教訓、同感である。
タグ:東洋経済オンライン 日刊ゲンダイ ダイヤモンド・オンライン 古賀茂明 山崎 元 東芝問題 (その41)(東芝 「株主への圧力問題」で判明した経産省の影 ガバナンス提唱者が企業経営に介入する大矛盾、【緊急寄稿】東芝スキャンダルと経産省の暗躍(古賀茂明)、「底なしに悪い会社」東芝から得る7つの教訓 山崎元が解説) 「東芝、「株主への圧力問題」で判明した経産省の影 ガバナンス提唱者が企業経営に介入する大矛盾」 「会社法に基づく調査報告書」とは物々しいが、アクティビスト・ファンドが中心になって昨年の株主総会で調査すると決定し、彼らが指名した第三者委員会が発表したもので、確かに「会社法に基づく調査報告書」ではある。 「永山治取締役会議長」の「取締役」選任議案は「株主総会」で否決される異例の展開となった。「経産省」や「梶山弘志経産相」の姿勢は大いに問題だ。 「車谷前社長」が威張っていたのは「菅首相の関係」が背景にあったようだ。「東芝」の「取締役候補」選びは難航しているらしい。 「【緊急寄稿】東芝スキャンダルと経産省の暗躍(古賀茂明)」 「経産省の外国為替管理法上の規制権限をちらつかせて、外国株主に総会での人事案などの提案を止めさせようとしたり、経産省が海外の投資家に対して、外資による提案に賛成しないように働きかけた」のは、確かに「大スキャンダル」だ。 「東芝」と「経産省」の「関係」は、「栄光の時代を生きた運命共同体」から「「腐れ縁」に落ちぶれてしまった」とは、言い得て妙だ。 「時代にそぐわず不幸を生む経産官僚「2つのDNA」」は、的確な指摘だ。 「経産省が、「改正外為法」により最高の武器を手に入れた。安全保障を口実に、海外投資家に干渉する権限だ。「安保」といえば、「国家の命運を左右する」仕事だ。いや応なく彼らのDNAを刺激する。彼らは、国家を守るためだから何でもできる、というおかしな世界に入ってしまった」、暴走を防ぐべきマスコミは記者クラブの枠に囚われて監視機能を果たしてないようだ。困ったことだ。 「「底なしに悪い会社」東芝から得る7つの教訓、山崎元が解説」 「底なしに悪い会社」とは、「山崎 」氏もよほど腹を立てたのだろう。 「重荷である原発事業を維持するために有望なビジネスを売却するという、ほとんど「逆噴射」と言いたくなる錯乱経営」、とは厳しい指摘だ。「「教訓」を七つ」とは興味深そうだ。 【教訓その1】「問題の解決が私の責任」は通用しない 「「問題を解決することこそが私の責任だ」と言って、そのままポストに居座ろうとする」人は多いが、確かに大きな問題を孕んでいる。 【教訓その2】投資家は格好だけのガバナンスを疑え 「どう見てもビジネスの機微が分からなそうな社外取締役」、については「サンプル数が多すぎて検証が難しいかもしれない」とはその通りだろう。 【教訓その3】自由な経営にとって「上場」のコストは高い 「東芝経営陣の責任よりも、経産省の関与の実態解明と責任の明確化の方がはるかに重要な問題だろう」、同感である。 【教訓その4】官僚は逃げる! 「官僚は逃げる!」、「官僚」だけでなく、民間企業の間でも情勢が厳しくなったら、「逃げ」られるとの覚悟を持って事に当たるべきだ。 【教訓その5】カネを出す人は、クチも出す 「アクティビストは少しも悪くはない・・・東芝が彼らから株式を使って資金を調達した以上、彼らから経営に口出しされる事態は当然のことだ」、「アクティビストは経営者を鍛えてくれる存在でもある」、「アクティビストを味方に付けて、経産省の悪影響を削減するためのバランサーに使うというくらいの戦略性を持つべき」、その通りだ。 【教訓その6】国策は今や足かせだ 「国策は今や足かせだ」はその通りだ。 【教訓その7】腐敗した会社の株でももうかる! 「腐敗した会社の株でももうかる!」、「「ESG」は投資に関係させない方が明らかにいい」、山崎氏らしいシャープな教訓、同感である。
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海外事業(海外投資)(その2)(元日経のエースも参画 「深圳再開発」への疑問 宮越HD 1200億円の巨大プロジェクトの不可解、資生堂 「ドルガバ終了」から始まる欧米撤退戦 赤字続く欧米事業 ブランド整理加速の序章か、スズキが直面「インドとミャンマー」という難関 積年の課題「インド一本足」から脱却できるか) [企業経営]

海外事業(海外投資)については、2016年8月18日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その2)(元日経のエースも参画 「深圳再開発」への疑問 宮越HD 1200億円の巨大プロジェクトの不可解、資生堂 「ドルガバ終了」から始まる欧米撤退戦 赤字続く欧米事業 ブランド整理加速の序章か、スズキが直面「インドとミャンマー」という難関 積年の課題「インド一本足」から脱却できるか)である。なお、タイトルから「の失敗・不振」は削除した。

先ずは、3月17日付け東洋経済オンライン「元日経のエースも参画、「深圳再開発」への疑問 宮越HD、1200億円の巨大プロジェクトの不可解」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/416702
・『2021年に入り、東証1部上場の宮越ホールディングス(HD)の株価がにわかに上昇している。背景にあるのが中国で行うとしている巨大な再開発計画だ。 同社は長年、中国などで音響・映像機器の製造を手がけてきたが、バブル崩壊後の1990年代に業容が悪化し、その後撤退。生産工場として1987年に取得したという深圳市福田区の工場跡地13.6万平方メートル(一部譲渡し現在は12.7万平方メートル。東京ドーム3個分)を活用し、中小事業者向けのオフィスや運動場として貸し出してきた。現在は収益のすべてがこの不動産の賃貸収入だ。 それが2018年に突如、深圳の工場跡地に建設費70億元(当時の為替レートで約1200億円)を投じて大規模再開発を行うとぶち上げた。具体的には、テナントとして世界中からイノベーション企業500社を誘致し、研究開発拠点、オフィス、商業、住宅を含むアジア最大級のワールド・イノベーション・センター(WIC)に生まれ変わらせるというものだ。 当初、2019年に現地政府から開発許可を得たうえで、2020年上半期に建設工事を開始、2021年に開業するというものだったが、計画発表後、現地政府からの開発許認可が下りることはなかった。しかし2021年1月8日、「WIC開発構想進捗」「平井卓也デジタル改革担当大臣との会談」と題した情報を自社サイトで発信。時を同じくして株価も上昇しはじめた。 「ちょうどよいところに来た」 2021年2月下旬、大田区の宮越HD本社に取材に訪れると、事前の予告なしに宮越邦正会長兼社長が記者を出迎えた。「あなたはちょうどよいところに来た。中国の旧正月が明けて、2月23日に深圳市福田区の政府から今年この地域一帯を重点プロジェクトとして開発するという方針が正式に打ち出された」(宮越社長)と切り出したのだ。 会社側の説明と資料内容をまとめるとこうだった。まだ現地政府の開発許認可は下りておらず、いくつかのプロセスを経る必要があるものの、順調にいけば2021年の夏前に開発許認可を得たのち設計に入り、2022年初に既存施設を取り壊して着工、早ければ2023年半ばに4つに区分けしたうちの第1期ビルを開業する予定だという。 「傘下に設計や不動産開発会社を持つシンガポールの(政府系投資会社)テマセク・ホールディングスが事業提携をしたいという話も来ていて、彼らは2年で全部建てられるという。コロナで開発が遅れた分を取り戻せるかもしれない」「(再開発計画が軌道に乗ったら)バークシャー・ハサウェイのような少数精鋭の投資会社として本格的にやろうと」。今年で80歳の宮越社長は、はきはきとした口調で1時間近く壮大な深圳の計画を披露した。 この日の取材には日本経済新聞社で経済部長兼日経フィナンシャル編集長を務めていた矢沢俊樹氏が、宮越HDの広報IR担当者として同席。矢沢氏は日経新聞の中では社長候補とも目されたエースだったが、 2021年2月に宮越HDの常務執行役員経営企画本部長に就任している。 業容拡大に必要な陣容を整えるため、 宮越HDは、ほかにも大手ゼネコンや証券会社の元幹部などを次々に迎え入れている。 その後、3月8日の朝に「2030年に時価総額1兆円 少数精鋭のエクセレントな投資会社へ飛躍」と題したトップメッセージが同社のホームページ掲載されると、宮越HDの株価はストップ高となった。2020年末に666円(終値)だった株価は3月11日のザラバで一時1366円まで急騰した。 だが、深圳での巨大な再開発計画について、関係者に取材を進めていくと不可解な点がいくつか出てきた』、「平井卓也デジタル改革担当大臣との会談」は、同社のHPから削除されたようだ。社長はかなり山っ気がありそうだ。株価は足元でも1068円と高値圏にある。HPの「深センプロジェクトは下記の通り。
http://www.miyakoshi-holdings.com/project/
・『入居意向書に記された有名企業に尋ねた  取材当日、宮越社長が「これは、本当は見せてはいけないから、ささっと飛ばしますけども」と前置きしつつも、記者にぱらぱらとめくってみせる中国語のタイトルが書かれた赤い装丁の立派な冊子には、有名な東証1部上場の企業名とハンコがずらり。日本の大手企業の入居意向を取り付け現地政府に提出したとする「意向書」をまとめた名簿だという。 取材時、宮越社長は「時価総額10兆円以上もあるあの会社も、出てくるとは言いませんけど、この名簿の中にはそれに似たような会社さんが全部入っています」「(日本企業の誘致目標100社のうち)すでに7割超を取り付けた。なかなかのものでしょう?」と説明した。 記者は後日、宮越社長から見せられた冊子の中で社名が目視で確認できた複数の上場企業に、匿名を条件に事実関係の確認を申し込んだ。深圳市福田区で計画されている不動産再開発について、テナントとして入居する意向書を提出している事実もしくは予定があるかを、中国の関連子会社も含めて照会してもらったのだ。 すると、いずれの企業も進出を否定。「そのような事実は確認できませんでした。計画もないと聞いています」という答えのほか、「海外事業の統括部門や中国子会社の経営陣にも確認しましたが、そういった情報はありません。そもそもうちは深圳に進出できておらず……。他社との間違いではないですか?」という困惑した回答もあった。 宮越HDは、1966年に宮越社長が25歳で東邦電器製作所を創業、電子部品の製造を開始したのが発祥だ。その後オーディオメーカーのユニセフグループとして業容を拡大。1983年にはダイエーから東証1部上場の音響機器メーカーであったクラウンを買収、1984年には東芝から東証2部上場の冷凍機器メーカー・田尻機械工業の経営権を取得するなど新興の投資グループとしても名を馳せた。 だが音響機器の基幹事業は新興国との価格競争で1990年代以降、大幅に縮小。財テクの失敗が追い打ちをかけ、バブル崩壊とともに凋落の一途をたどった。株価操縦を狙った仕手筋が暗躍していた銘柄として取り沙汰されたこともある。そんな中、生産工場向けに取得したという深圳市の土地が、今やハイテク都市の一角となったことで億円単位の賃料収入を生んでいる。 実は宮越HDによる深圳での再開発計画が浮上したのはこれが初めてではない。現地メディアによれば、宮越社長は2006~2007年に深圳をたびたび訪問。当時の陳応春副市長と面談し、19億元(現在の為替レートで約310億円)を投じて「ハイテク企業園区」へと再開発し、日本企業100社前後を誘致する計画だと報じられた。 2010年には深圳市省エネ協会と省エネルギー・環境保護事業で提携し合弁会社「深圳国際省エネセンター(仮称)」を設立するとのリリースを出している』、「テナントとして入居する意向書を提出」、については裏付けが取れないようだ。同社の1980年代以降の戦略をみると「山っ気」が伺える。「深圳市の土地が・・・億円単位の賃料収入」、これが主たる収入源のようだ。
・『当局は重点プロジェクトを発表していない  しかしその後、再開発計画は進展が見られなかった。会社側は「(2012年に起きた)尖閣諸島の反日デモ問題が影響した」(板倉啓太常務取締役)と説明してきたが、現地の不動産関係者からは、「深圳市政府は外資単独での開発は支持できないというのが一貫した態度。宮越側も過大な要求を続けて立ち消えになった」という話が聞かれる。 近年の状況についても、「現地のパートナー企業である美芝電器(宮越HDの子会社で深圳の不動産賃貸事業を手がける皇冠電子に10%出資)の創業者が亡くなり、 現地政府が同社の過去の放漫経営を問題視。(皇冠電子が所有するという)工場用地に関しても、当局の資産調査が入るかもしれない」(前出の関係者)といった不穏な指摘も聞かれる。 宮越社長が語った同社の工場用地一帯が「重点プロジェクトに認定されることになった」という情報は、少なくとも現時点では現地政府から対外的な発表はされていない。宮越HDはホームページで「できるだけ速やかに正式な開発許可を取得すべく精力的に協議」としているが、当局から開発許可が下りるかどうかは定かでない。 宮越HDが深圳での再開発計画を進めるとした場合、もう一つハードルになりそうなのが開発資金だ。総額1200億円(4区画の合算、1区画300億円)もの巨大プロジェクトを実現するには、同社の財務規模では自己資金(2020年末の現預金は114億円)と事業収益だけでまかなうのは現実的に不可能で、今後、何らかの資金調達が必要になる。 実際、宮越HDは再開発計画を公表した2018年、大株主クラウンユナイテッド(宮越社長一族が100%の議決権を保有するネットホールディングの完全子会社)に対する第三者割当増資で77.4億円を調達している。 このスキームはやや複雑で、まず東京スター銀行が宮越社長個人に対して融資を行い、その後、宮越社長がクラウンユナイテッドに融資。同社への第三者割当増資により宮越HDに資金が入るという形式をとっている。クラウンユナイテッドは、第三者割当増資で取得した宮越HDの株式を担保として東京スター銀行に提供している』、「東京スター銀行が宮越社長個人に対して融資」から「スキーム」が始まっているのは、同社そのものより「社長個人」の方は信用力があるともいたためだろう。なお、同社HPの「深センプロジェクト」は以下。
http://www.miyakoshi-holdings.com/project/
・『日経の元経済部長を財務担当に  なぜ宮越社長個人を介して融資する必要があるのか。会社側は「クラウンユナイテッドが債務超過で融資審査基準に適さないため」(板倉常務)と説明している。 宮越社長は2月下旬の取材時、金融業界に幅広いネットワークを持つ日本経済新聞出身の矢沢氏に財務本部長を兼任させる予定だと語っていた。「(再開発の資金として)自己資金のほか、国内金融機関や政府系金融機関から調達していきたい」(宮越社長)としているが、矢沢氏はその責務を担うことになるのだろうか。 時価総額1兆円を目指すというホームページ上の社長メッセージは、「さて、次はどんな宮越流の一手をポケットから取り出そうか。山あり谷ありの人生でしたが、私は今ほど胸がワクワクしていることはありません」と締めくくられている』、「日本経済新聞出身の矢沢氏」を獲得というのは驚きだが、FACTA Online4月号によれば、「昨年11月下旬、矢沢氏は突如、依願退職してしまう。その真相は謎だが、社内での女性ハラスメント問題が一因だったともされる ………」、もっともらしい説明ではあるが、やはり「真相は謎だ」。いずれにせよ、壮大なプロジェクトの今後が注目される。

次に、5月11日付け東洋経済オンライン「資生堂、「ドルガバ終了」から始まる欧米撤退戦 赤字続く欧米事業、ブランド整理加速の序章か」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/427335
・『「ドルチェ&ガッバーナの その香水のせいだよ」――。キャッチーなフレーズと独特のハスキーボイスで一躍ヒット曲となった、瑛人の「香水」。この歌詞を思わず口ずさんでしまいそうな動きが、化粧品メーカー最大手の資生堂で起きた。 資生堂は4月28日、2021年12月期に350億円の特別損失を計上する見込みとなったと発表した。原因となったのは、ドルチェ&ガッバーナ社との香水などに関するライセンス契約の解消だった。 ドルチェ&ガッバーナはバッグや化粧品を展開するイタリアの高級ファッションブランド。資生堂は2016年にドルチェ&ガッバーナ社と、香水やメイク化粧品などの開発・生産、販売などを世界各国で行う契約を締結した。しかし、2021年12月31日をもって、その契約を解消するという』、出資した時は威勢良かったが、撤退する時は悲惨だ。
・『国内で販路拡大を進めていたが・・・  350億円という特別損失の額は、アメリカの子会社・ベアエッセンシャルの減損損失などで811億円を計上した2017年12月期以来の大きさとなる。資生堂が期初に示した2021年12月期の純利益予想は115億円。5月12日に予定している2021年1~3月期の決算発表時に、7月の日用品事業売却(譲渡額は1600億円)と併せて、通期業績への影響が説明される見込みだ。 「豪華なおまけなどを付けて販促を頑張っていたし、私の店舗では売れていたブランドだった。まさか契約を解消するとは」。資生堂のある美容部員は驚きを隠せない様子だ。 2019年にはドルチェ&ガッバーナのブランドで国内の常設店舗をオープン。その後も取り扱い店舗を増やしてきた。注力していたブランドを手放す展開にはちぐはぐな印象を受けるが、国外に目を移すと厳しい事情が見えてくる。ドルチェ&ガッバーナは中国で苦戦を強いられていた。きっかけは2018年に起きた広告をめぐる騒動。本国のドルチェ&ガッバーナ社が、箸を使ってピザやスパゲッティを不器用に食べる中国人女性の動画を公開したところ、侮蔑した内容であり人種差別的だとして、中国で批判の的となった。 批判の矛先はドルチェ&ガッバーナ社に向けられたとはいえ、資生堂も影響を免れなかった。中国の大手ECサイトでは、今もドルチェ&ガッバーナの商品が販売されていないからだ。アリババの「天猫(Tモール)」や京東集団の「JD.com」では、同ブランドを検索しても「関連する商品は見つかりません」と表示される。事実上、中国市場から締め出されているのだ。 また、ドルチェ&ガッバーナが得意とする香水やメイク化粧品は外出時に使用することが多く、コロナ禍で売り上げの落ち込みが激しかった。資生堂における、同ブランドの2020年12月期の売り上げは前期比28%減。これは日本国内の化粧品市場の20%減やアメリカの同市場の8%減(2020年、イギリスの市場調査会社ユーロモニター調べ)を大きく上回る』、「本国のドルチェ&ガッバーナ社が、箸を使ってピザやスパゲッティを不器用に食べる中国人女性の動画を公開したところ、侮蔑した内容であり人種差別的だとして、中国で批判の的となった」、海外投資の難しさだ。
・『欧米での拡大策は惨憺たる結果に  資生堂は2010年のベアエッセンシャル社買収を皮切りに、欧米で積極的な拡大策を続けてきた。メイク化粧品のローラ メルシエや自然派スキンケアのドランクエレファントを立て続けに買収した。 しかし、結果は惨憺たるものだ。2016年以降、アメリカ事業とヨーロッパ事業で計上した営業赤字は累計1000億円を超える。加えて、今まで稼ぎ頭だった日本と中国事業がコロナ禍の影響で低迷し、欧米事業の赤字をカバーできなくなってしまった。今年2月に開催された決算説明会で、魚谷雅彦社長は「欧米の収益性の改善は最大の課題」と危機感をあらわにした。 「欧米事業はブランドの価値を上げるために採算度外視で進出しており、もともと赤字体質だった。さらにM&Aを中心とした拡大戦略によって、のれん償却などのコストがかさみ、赤字幅が拡大していた」。資生堂の元役員の1人はそう指摘する。) 資生堂は戦略の転換を余儀なくされている。「(ブランド)ポートフォリオを変更し、『SHISEIDO』や『クレ・ド・ポー ボーテ』など日本発の収益性の高いスキンケアブランドを徹底的に強化していく」と、魚谷社長は2月の決算説明会で表明した。欧米事業ではドルチェ&ガッバーナ以外にもブランドの撤退や売却を進めることが予想される。 次の売却ブランドはどこになるのか。それを探る手がかりとなるのが、「(欧米では)メーキャップとフレグランス事業は抜本的に収益構造の改革をしていく」という魚谷社長の発言だ。 資生堂はドルチェ&ガッバーナ以外にも、2020年1月にアメリカのファッションブランド・トリーバーチとライセンス契約を結び、香水などの製造・販売を行っている。ただ香水の原料となる香料やアルコールは、化粧品としては原価が高い。容器などの包装にもコストがかかり利益率は低い。 「利益率を高めるのであれば採算性の低い香水から撤退し、儲かるスキンケアの売上比率を高める戦略は正しい」(あるOB)。このような見方に立てば、トリーバーチからの撤退も十分に考えられる』、「「欧米事業はブランドの価値を上げるために採算度外視で進出しており、もともと赤字体質だった。さらにM&Aを中心とした拡大戦略によって、のれん償却などのコストがかさみ、赤字幅が拡大していた」、そんな甘い姿勢では、「欧米での拡大策は惨憺たる結果に」、なったのは当然の結果だ。
・『最大の焦点はベアエッセンシャル  とはいえ、売却対象の最有力候補はなんといってもアメリカのベアエッセンシャルだ。 2010年に1800億円で買収したものの、その直後から業績が悪化。2013年3月期と2017年12月期に、計900億円を超える減損を計上した。現在も店舗の縮小などを続けている「お荷物ブランド」だ。一刻も早く手放したいのはやまやまだろうが、問題は売却先が見つかるかどうかだ。 香水やメイク化粧品からの撤退を進め、利益率が高い高価格帯スキンケア領域の比率を上げていく構えを取る資生堂。一方で、この新戦略を不安視する向きもある。「香水が中心のヨーロッパやメイクが中心のアメリカで、スキンケア商品が売れるとは考えづらい」。前出とは別のOBはその実現性に疑問を投げかける。 資生堂は2020年に7年ぶりの最終赤字に転落し、大手化粧品メーカーでは"独り負け"となった。「プロ経営者」として2014年に就任した魚谷社長は、同社の業績を復活させ長期的な成長に向けた道筋を示すことができるのか。その手腕が問われる正念場を迎えている』、「香水が中心のヨーロッパやメイクが中心のアメリカで、スキンケア商品が売れるとは考えづらい」、との懸念ももっともだ。「プロ経営者」の化けの皮が剥がれたようだ。

第三に、5月29日付け東洋経済オンライン「スズキが直面「インドとミャンマー」という難関 積年の課題「インド一本足」から脱却できるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/430792
・『今年、どういうふうにインド市場が回復していくのか、明確に生産計画を言えない状況にある」 国内軽自動車大手・スズキが5月13日に開いた決算説明会。鈴木俊宏社長は終始厳しい表情で語った。 スズキの2021年3月期決算は、売上高が前期比8.9%減の3兆1782億円、営業利益は同9.6%減の1944億円に沈んだ。3期連続の営業減益となる』、「インド市場」が「低迷」しては打つ手もなさそうだ。
・『コロナで3000店舗が営業停止に  スズキはこの2年間、インド市場の低迷に苦しんできた。スズキにとってインドは世界販売台数の半分以上、売上高の約3割を占める主要マーケットだ。インドでは銀行の不良債権問題が発端となり、自動車ローンを提供するノンバンクの貸し渋りが2019年に発生。自動車販売が大きく減少し、これに引きずられてスズキの業績も大きな打撃を受けた。 2019年末にはいったん販売が上向き、市場回復の兆しが見えていたが、その矢先に新型コロナウイルスがインド全土を直撃した。厳格なロックダウンが実施され、スズキがインドで展開する約3000店の自動車販売店も全店営業できず、インド国内に3カ所ある生産工場も稼働停止を強いられた。 2020年4月にはインドに展開する全自動車メーカーの販売台数合計がゼロ台となる前代未聞の出来事も起きた。その結果、スズキは2期連続の減収減益決算に陥った。 しかもスズキは国内の自動車メーカーで唯一、2022年3月期の業績予想を公表できなかった。2020年5月に2021年3月期の業績予想を公表できたのは最大手のトヨタ自動車だけだったが、2021年はスズキを除く各社とも業績予想を発表している。 他社と同様、半導体不足や原材料費の高騰といった不安要素を抱えてのスタートとなったスズキだが、他社と大きく異なるのがインドに収益を大きく依存していることだ。 インドが好調だった2018年3月期、スズキは営業利益の4割以上をインド子会社のマルチスズキで稼いでいた。それが2021年3月期には17%まで低下した。日本市場のこれ以上の成長が厳しい中、スズキが大きな成長を期待できる市場がインドなのだ。 インドの感染状況は深刻だ。陽性者数は5月27日時点で240万人以上、累計で31万人以上が死亡している。インドでは感染拡大当初から、症状が出てもPCR検査を受けない人もいることなどから陽性者数のカウント漏れが指摘されており、実態はより厳しいとみられる。 インド国内に36ある州のうち、5月13日時点で28州がロックダウンを行っている。2020年の厳格な措置とは違い、物流など一部機能は維持されているが、スズキの販売店は13日時点で8割が休業を余儀なくされている』、「8割が休業」とは深刻だ。
・『酸素不足で自動車生産を一時停止  感染者が一気に増加したことで2020年にはなかった問題も発生した。医療用酸素の不足だ。自動車の生産にも部品製造の段階などで工業用酸素を使用する工程がある。各事業者はインド政府からの要請で工業用酸素を医療向けに提供しており、自動車の生産が難しくなった。 スズキもこれを受けて、現地の生産拠点すべての稼働を5月1日から停止した。当初は6月に予定していたメンテナンスの前倒しという形で5月9日までの停止としていたが、最終的には減産期間を5月16日まで延長した。 5月17日には酸素を使わない生産方式に切り替え、全工場の稼働を再開した。とはいえ、フル稼働ではなく、販売店の休業も続いている。そうした状況でも財政赤字を抱える政府の企業支援策は手薄だ。ジェトロの村橋靖之ニューデリー事務所長は「今回の第2波はあまりに短期間に感染者が急増したため、政府支援も酸素の確保や医療体制支援等に集中した。企業活動の一部も継続しているので、現時点で具体的な企業支援策は講じられていない」と指摘する。 インド経済に詳しい日本総合研究所の熊谷章太郎副主任研究員も「政府が景気刺激策を実施しても、そのために必要な国債の増発により、長期金利が上昇して景気浮揚効果を打ち消してしまう展開も想定される」と話す。かえって景気の悪化が長引くことになってしまううえ、2019年にインド減速の原因となった金融不安も残る。 悩ましいのは、スズキの「外患」がインドだけでないことだ。2月に国軍がクーデターを起こし、現在も市民の弾圧を続けるミャンマーも大きなリスクを抱えている』、「ミャンマーも大きなリスク」とは踏んだり蹴ったりだ。
・『ミャンマー工場は稼働停止に  スズキがミャンマーで自動車生産を始めたのは1999年のこと。現在は4輪車工場が2カ所あり、スイフトやキャリイなど4車種を年間約1.3万台、生産している。2019年の市場シェアは約60%とトップシェアを誇っており、2020年には120億円を投じ、年間4万台の生産能力を持つ新工場の建設をヤンゴン市南東にあるティラワ工業団地で進めていた。 ティラワ新工場の稼働予定は2021年9月だったが、鈴木社長は「(ミャンマーは)先行きが読める状況ではない、ミャンマーの情勢をしっかりみながら、どの時期に生産を開始するのがいいか判断する。常識的に考えると9月の稼働は難しい」と話す。ミャンマーの現状を考えると稼働延期の可能性が高く、既存工場も2月から稼働停止が続いている。 5月の決算説明会で鈴木社長は「(インド以外の新市場といっても)他の市場はリスクが低いかというと、ミャンマーの例があったりする。新しい市場に行くというのは簡単に見えて非常にリスクが高い。僕はインド以上に(新市場は)リスクが高いと思っている」と語り、インドに収益を依存した現状からの脱却には否定的な考えだ。 6月の株主総会で鈴木社長の実父である鈴木修会長が引退し、スズキの舵取りは鈴木社長の肩に全面的にのしかかる。インドの新経営体制は発足して早々、難題が突きつけられることになった』、「インド」の「感染拡大」は、ワクチンが遅れていることもあって、当面、続きそうだ。「スズキ」としては、固定費負担圧縮などで耐え忍ぶほかなさそうだ。
タグ:東洋経済オンライン 海外事業 (海外投資) (その2)(元日経のエースも参画 「深圳再開発」への疑問 宮越HD 1200億円の巨大プロジェクトの不可解、資生堂 「ドルガバ終了」から始まる欧米撤退戦 赤字続く欧米事業 ブランド整理加速の序章か、スズキが直面「インドとミャンマー」という難関 積年の課題「インド一本足」から脱却できるか) 「元日経のエースも参画、「深圳再開発」への疑問 宮越HD、1200億円の巨大プロジェクトの不可解」 「平井卓也デジタル改革担当大臣との会談」は、同社のHPから削除されたようだ。社長はかなり山っ気がありそうだ。株価は足元でも1068円と高値圏にある。HPの「深センプロジェクトは下記の通り。 http://www.miyakoshi-holdings.com/project/ 「テナントとして入居する意向書を提出」、については裏付けが取れないようだ。同社の1980年代以降の戦略をみると「山っ気」が伺える。「深圳市の土地が・・・億円単位の賃料収入」、これが主たる収入源のようだ。 「東京スター銀行が宮越社長個人に対して融資」から「スキーム」が始まっているのは、同社そのものより「社長個人」の方は信用力があるともいたためだろう。なお、同社HPの「深センプロジェクト」は以下。 http://www.miyakoshi-holdings.com/project/ 「日本経済新聞出身の矢沢氏」を獲得というのは驚きだが、FACTA Online4月号によれば、「昨年11月下旬、矢沢氏は突如、依願退職してしまう。その真相は謎だが、社内での女性ハラスメント問題が一因だったともされる ………」、もっともらしい説明ではあるが、やはり「真相は謎だ」。いずれにせよ、壮大なプロジェクトの今後が注目される。 「資生堂、「ドルガバ終了」から始まる欧米撤退戦 赤字続く欧米事業、ブランド整理加速の序章か」 出資した時は威勢良かったが、撤退する時は悲惨だ。 「本国のドルチェ&ガッバーナ社が、箸を使ってピザやスパゲッティを不器用に食べる中国人女性の動画を公開したところ、侮蔑した内容であり人種差別的だとして、中国で批判の的となった」、海外投資の難しさだ。 「「欧米事業はブランドの価値を上げるために採算度外視で進出しており、もともと赤字体質だった。さらにM&Aを中心とした拡大戦略によって、のれん償却などのコストがかさみ、赤字幅が拡大していた」、そんな甘い姿勢では、「欧米での拡大策は惨憺たる結果に」、なったのは当然の結果だ。 「香水が中心のヨーロッパやメイクが中心のアメリカで、スキンケア商品が売れるとは考えづらい」、との懸念ももっともだ。「プロ経営者」の化けの皮が剥がれたようだ。 「スズキが直面「インドとミャンマー」という難関 積年の課題「インド一本足」から脱却できるか」 「インド市場」が「低迷」しては打つ手もなさそうだ。 「8割が休業」とは深刻だ。 「ミャンマーも大きなリスク」とは踏んだり蹴ったりだ。 「インド」の「感染拡大」は、ワクチンが遅れていることもあって、当面、続きそうだ。「スズキ」としては、固定費負担圧縮などで耐え忍ぶほかなさそうだ。
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企業不祥事(その24)(整備事業の指定取り消し 整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃、新車を売ったらアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか、問われる生保トップ企業の危機意識 日本生命、「ゴルフ会食」後に6人のコロナ感染判明) [企業経営]

企業不祥事については、4月27日に取上げた。今日は、(その24)(整備事業の指定取り消し 整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃、新車を売ったらアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか、問われる生保トップ企業の危機意識 日本生命、「ゴルフ会食」後に6人のコロナ感染判明)である。

先ずは、4月11日付け東洋経済Plus「整備事業の指定取り消し、整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26723
・『トヨタのおひざ元である愛知県で起きた販売店の不正車検。前代未聞の不正はなぜ起きたのか。その背景を探った。 「今回のような不正が本当にありえるのかと思った。どんなに作業が忙しくても絶対に越えてはならない一線だ」ーー。トヨタ自動車の販売店で発覚した不正車検について、他メーカーの販売会社の社長はそう口にした。 国土交通省中部運輸局は3月30日、ネッツトヨタ愛知の販売店(プラザ豊橋)の不正車検に対する行政処分を発表した。法令違反の対象台数は5158台。この店で2018年12月22日~2021年1月13日に車検を行ったすべてに当たる。ネッツトヨタ愛知を含めて4つのトヨタ系販社を持つATグループ(名証2部上場)は、愛知県内で最大手のディーラーだ(詳細は「愛知県に12社『トヨタ販社』の序列)。 今回の不正は2020年12月、中部運輸局が行った抜き打ちの監査で発覚した。 プラザ豊橋では、排ガスの一酸化炭素濃度やスピードメーターの誤差、サイドブレーキの制動力などに関する点検・検査を省いて保安基準適合証を交付したり、実際に検査したかのような虚偽の整備記録を作成したりしていた。 不正に関与した整備士は中部運輸局の監査に対し、「過剰な入庫が常態化し、顧客を待たせないように一部の検査を省いてしまった」と話したという。 自動車販売店における車検は、国が行うべき業務を代行するもので、販売店には「指定工場」、整備士には「自動車検査員」の資格が国から与えられている。 中部運輸局はプラザ豊橋店での自動車整備事業の指定を取り消し、整備士8人のうち不正に関与した整備士7人について自動車検査員の解任命令を出した。この行政処分により、プラザ豊橋は自動車整備事業の申請が2年間できず、7人の整備士も2年間は車検業務ができない』、「トヨタのおひざ元である愛知県」の「最大手のディーラー」で「不正車検」が「中部運輸局が行った抜き打ちの監査で発覚」、とは心底驚かされた。
・『「店長は指示していない」  法令違反の対象となった5158台について、ATグループのほかの販社(愛知トヨタ自動車、トヨタカローラ愛豊、ネッツトヨタ東海)にも協力を仰ぎ、車両の再点検・再整備を行う。作業完了には8カ月かかる見通しだ。 県内に約30店を展開するネッツトヨタ愛知は今回の問題を受けて、ほかの店舗の整備士全員に聞き取りを行い、「同種の不正はなかったことを確認した」としている。 だが、不正が公になってから、他店舗で車検を受けた顧客から、「自分の車は大丈夫か」といった問い合わせが相次いでいるという。過去2年間にネッツトヨタ愛知の別の店舗で行った車検についても、すべての車両を対象に再点検・再検査を実施する方向で準備を進めている。 違反行為の対象となっている5158台の再検査を最優先しつつ、ほかの店舗で扱った車検の車両についても再点検するのだから、その作業量は膨大だ。 ネッツトヨタ愛知は今回の不正について、「(プラザ豊橋の)店長は指示していない」とし、あくまでも整備士が不正の認識がありながら、自主的な判断で行ったとしている。そのうえで、「1台当たりにかかる車検の時間の認識が適当ではなかった」「(車検の予約を受け付ける)営業部門と整備部門の意思疎通が不十分だった」と釈明する』、「店長は指示していない」、直接指示はしていなくても、黙認していたのは明らかだろう。
・『サイトから消えた「45分車検」  首都圏のトヨタ系販社幹部は今回の不正について、「数が多いからといって検査を適切にやらないなんてことは考えられない。現場の状況を考えて(車検の受け入れ数を)コントロールするのが会社の役割だ」と批判する。 今のところ、不正車検の対象車両に不具合が出たという報告はないが、手抜きの検査は人命に関わる。トヨタ幹部は「(車検は)国から任せてもらっていることなので、こうした問題は絶対に避けなければならない。われわれとしても深刻に受け止めている」と話す。実は、ネッツトヨタ愛知は「ネッツ45 車検」と銘打って、45分でのスピード車検を10年以上前から展開していた。不正発覚後は同サービスを停止し、同社のホームページからもその表示が削除されている。 ATグループによれば、45分と作業時間を明確にしたスピード車検を展開していたのは、傘下4つの販社の中でネッツトヨタ愛知だけ。早さを「売り」に集客したものの、処理しきれないほどの数を受注してしまった可能性が高い。 現在、ネッツトヨタ愛知のホームページから削除されているが「ネッツ45 車検」とうたっていた(画像はネッツトヨタ愛知のサイト) 東海地方のホンダ系販社の店長は、「整備点検や検査も含めて考えるとどうやっても車検は45分では終わらない。うちの店は(12カ月の)法定点検ですら1時間半かけている。時間がかかることは丁寧に説明してお客さんに理解してもらっている。ただ、最近はガソリンスタンドなどでも『1時間車検』などとうたっていて、短時間で終わるからお客様に喜ばれる。そういうものが世の中に浸透しすぎている」と警鐘を鳴らす。 今回、不正が見つかったプラザ豊橋での法令違反の対象台数は5158台だから、1年で約2500台の車検を行っていたことになる。 愛知県の別のトヨタ系販社の店長はこれについて、「自分たちの店では整備士が4人で年間にできる車検は1000件程度。整備士7人で1年間に2500件以上はさすがに多い」と指摘する。この販社では45分車検のサービスは公式にうたっていない。ただ、新車購入から3年目の初回車検に限り、見積もり段階で車を見た上で、「45分のスピード車検が可能だと判断することもある」という』、「45分でのスピード車検を10年以上前から展開」、単に整備士だけの問題ではなく、販売店全体の問題だ。
・『トヨタも「45分」を売りに  スピード車検は愛知県内の販社だけの売りではない。トヨタのホームページには「トヨタだからジャスト・イン・タイム、プロの技術で45分で車検完了」と紹介している。トヨタ系販社の中には「30分車検」(ハイブリッド車は40分)をうたうところもある。 西日本のトヨタ系販社の幹部は、「新車購入後3年の初回車検と2回目の車検の一部では、部品交換なしで45分車検は可能だが、車齢が長くなると部品交換なども増えて2時間以上かかるのはざら」と話す。近年比率が高まっているハイブリッド車はエンジン車に比べて車検の時間がかかることも多く、車検にかかる時間は慎重に見積もっているという。 つまり、「45分車検」そのものが諸悪の根源というわけではなく、プラザ豊橋で起きた大量の不正車検は、車検業務に当たる整備士の数と受注数(車検車両の受け入れ)のバランスが崩れていたにもかかわらず、放置されていたことが問題の本質だろう。前出の愛知県の販社の店長は「ネッツトヨタ愛知は(1935年に創業した)名門のATグループ傘下で、いわゆる“お堅い会社”。過去にも問題を起こすようなことはなかった。なぜこんな不正が起きたのか」と首をかしげる。 ネッツトヨタ愛知の担当者は、「車検の台数目標は存在していたが、整備士の人員規模が適切だったかは改めて検証する必要がある」と説明する』、「トヨタも「45分」を売りに」、ということであれば、「ネッツトヨタ愛知」だけの問題ではなさそうだが、この記者もさすがに「トヨタ」には遠慮して詳しくは調べなかったようだ。
・『不正車検の始まりは特定できず  今回の件でネッツトヨタ愛知が聞き取りを行ったところ、検査員は「2年よりも前から不正を行っていた」ことを認めたものの、いつから行われていたかは特定できなかったという。 販売店が車検を行った場合、指定整備記録簿と呼ばれる書類を2年間保管する義務がある。そのため、中部運輸局は過去2年間分の車検を法令違反とした。仮に2年よりも前に不正があっても、書類での確認ができないため不問にせざるをえないのだ。ATグループでは、ネッツトヨタ愛知の問題を受けて、傘下のほかの3社でも不正車検がなかったのかを点検している。 ネッツトヨタ愛知は半年に一度、販売店を対象に社内監査を行っていたが、主に書類をベースとした監査でプラザ豊橋の不正車検を見抜けなかった。再発防止策として、監査の強化や全社員へのコンプライアンス教育の徹底、サービスオペレーションの見直しを軸とする再発防止策を策定し中部運輸局に提出している。 中部運輸局が行政処分を発表した3月30日、トヨタ系販売会社の組織である「トヨタ自動車販売店協会」の役員会が行われた。トヨタ国内販売事業本部の佐藤康彦本部長は販売店での不祥事が増えていることに触れ、人材育成の重要性を強調したという。販社関係者によると、トヨタは全国の販売会社に対してネッツトヨタ愛知と同様の事案がないか、ヒアリングをしているという。 国内の新車販売はコロナ禍が響き2020年度は5年ぶりに500万台を下回った。コロナの影響が軽微だった2019年度でも最盛期の3分の2にまで縮小している。一方で、国内の自動車保有台数(乗用車・商用車)は8000万台弱と緩やかな増加が続く。保有台数が増えていれば、法律で定められている車検の需要も見込める。 乗用車の場合、新車購入から3年、以降は2年おきの車検は販社の貴重な収益源だ(詳細は「販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか」)。アフターサービスとして安定した収益が得られる車検は顧客からの信頼があってこそ。東北地方のトヨタ系販社の社長は「車の販売会社として、正しいメンテナンスは責務。襟を正して真摯に取り組んでいかないといけない」と話す。 今回の問題が発覚した後、他のメーカーでも「ウチは大丈夫か」となり、車検の抜き打ち監査に動くところもある。前出のホンダ系販社の店長はこう述べた。「(店舗ごとに)高い数値を求められて、現場の整備士に余裕がなかったのだろうか。ましてトヨタ、しかも愛知県で」。トヨタ系に限らず全国の販売会社に衝撃が走った不正であることは間違いない』、「車検は販社の貴重な収益源」であれば、車検への信頼性回復は喫緊の課題だ。

次に、この続きを、4月11日付け東洋経済Plus「新車を売ったらアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26725
・『ネッツトヨタ愛知で発覚した不正車検では、中部運輸局の監査に対して、整備士が「過剰な入庫が常態化していた」と話したという。販売店が身の丈を超えた数の検査を受け入れたのは、車検が「儲かるサービス」であることと無縁ではないだろう。 自動車の安全確保という趣旨の下、自動車検査(車検)は道路運送車両法で義務づけられている。普通車や軽自動車は新車で購入した場合、初回が購入後3年、2回目以降は2年ごとに受ける必要がある。車検を受けていない車で公道を走っていた場合、罰則(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)もある。 本来、車検は国が行うべきものだが、新車の販売店が車検を代行しており、それが収益源になっている』、「国が行うべき」「車検」を「販売店が」「代行」し、「収益源になっている」のに、「不正」が行われていたとは、一体、何をやっているのかとドナリつけたい気分だ。
・『車検には3つの方法  車検の主な検査項目は、車両に割り当てられている車台番号などが自動車検査証(車検証)と同じかの確認、ライトやタイヤなどの正常性の確認(外観検査)、ブレーキやヘッドライトの性能確認、排気量検査がある。 検査方法は、①ユーザー自身が運輸支局などに持ち込んで行う、②点検・整備と完成検査まで一括して代行する「指定整備工場」へ持ち込む、③点検・整備のみを行う「認証整備工場」に持ち込み検査を運輸支局などで行う、の3つがある。 新車の販売店は指定整備工場の資格を取得していることがほとんどだ。馴染みの販社から車検の案内が記載されたダイレクトメールを受け取り、車を持っていく人は少なくないだろう。 車検とは別に法令で義務づけられているのが12カ月点検と24カ月点検だが、この点検を受けていなくても罰金や罰則はない。24カ月点検は通常、車検に合わせて実施する一方、12カ月点検はそうした機会もなく、半ばユーザーの自主性に委ねられている。 国土交通省によると、普通車と軽乗用車の12カ月点検実施率は最新集計で約6割(2017年)。それでも、日本のように1年や2年で点検、車検を実施する国は海外でも珍しい。そもそも点検整備が法律で義務づけられている国はニュージーランドやアメリカ(州によって異なる)など先進国でも少なく、「過剰すぎる」と批判されることもある。 一方、車検制度は自動車業界にとってアフターサービス市場を形成する重要な“事業”だ。車検や点検に結びついた整備や修理、部品交換といった整備事業の市場は大きく、日本自動車整備振興会連合会によると、2020年度(2019年7月~2020年6月)の総整備売上高は約5兆6000億円もある』、「検査方法」の「①」は自分車検と呼ばれたものだ。
・『新車販売減り、整備に活路  特に近年、車検や点検の入庫獲得に躍起なのが新車の販売店だ。理由は主に2つある。 1点目は重要な収益源になっているという点だ。販売店の主な事業は新車販売以外に、整備(サービス)や中古車販売、自動車保険などがある。 その中で、安定収益とされるのが整備事業だ。仕入れ費用で利幅が薄い新車販売と異なり、整備事業はそうした費用もかからない。ホンダ系販売店の店長は「整備事業は新車販売に比べて利益率が高く、安定的に収益の5割を占める」と話す。 さらに自動車の平均車齢はここ30年で2倍の9年近くにまで伸び、新車を売る機会は減っている。今や国内の新車販売はピークだった1990年の777万台に比べ3分の2の規模だ。一方で自動車の保有台数は8000万台弱と緩やかな増加が続く。車検や点検は法律で定められているため、需要は底堅い。 もう1つは顧客との接点を持てること。首都圏の日産系販社の社長は「購入してもらった新車で車検や12カ月点検の入庫が獲得できれば、顧客と“つながる”ことができる」と話す。来店してもらえれば営業スタッフがお客さんと話す機会も作れる。その結果、次の新車への乗換えや保険の提案が可能になる。 西日本のトヨタ系販社の幹部は「うちの場合、新車を購入したお客さんのうち7割が初回車検に来てくれる。車検は利益率が高いので、(利益率が低い)新車販売が減ってきても、当面は車検需要で食っていける」と本音を漏らす。「車検や点検で車を入れてくれるのは『ディーラーだから』という信頼感が大きい。お客さんと信頼関係を築いて、新たな商機につなげていくのが基本」(ホンダ系販社) つまり、販社は新車を販売して終わりではない。販売してから、いかにお客さんと関係を維持し、メンテナンスなどで店に来てもらえるかが重要なのだ』、「整備事業は新車販売に比べて利益率が高く、安定的に収益の5割を占める」、「新車を購入したお客さんのうち7割が初回車検に来てくれる」、「車検や点検で車を入れてくれるのは『ディーラーだから』という信頼感が大きい」、なるほど。
・『「メンテパック」で顧客囲い込み  こうした背景から新車の販売店では車検や点検、消耗品補充がセットになったメンテナンス(メンテ)パックの販売を積極的に推進している。新車発売後の1カ月点検や6カ月点検をパックに盛り込む会社も少なくない。手厚いサービスにみえるが、それだけ収益に結びつけようとしているとも言える。前出の日産系販社では「初回の車検は(同社で新車を買った人のうち)8割、2回目で7割を獲得している」という。 車検の争奪戦には、車検チェーンなどの整備業者やカー用品店、ガソリンスタンドなども参戦しており、競争が激化。事業性の側面が強まっていることは否めない。 しかし、車検や点検は法令に基づいた義務であり、安心・安全のためという大前提でユーザーがお金を払っている。前出の日産販社社長こう強調する。「車検は自動車産業を支える1つの根幹。どんなことがあっても手抜かりは許されない」』、「「車検は自動車産業を支える1つの根幹。どんなことがあっても手抜かりは許されない」、同感である。

第三に、4月28日付け東洋経済Plus「問われる生保トップ企業の危機意識 日本生命、「ゴルフ会食」後に6人のコロナ感染判明」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26874
・『3度目の緊急事態宣言が4都府県に発令される直前、大手生保でゴルフ会食と幹部職員のコロナ感染が明らかになった。 3回目の緊急事態宣言が東京など4都府県に発令される中、新型コロナ対策において、生命保険大手の危機感の欠如があらわになった。 業界最大手・日本生命の営業拠点の管理職6人が、4月に開催された会社主催のイベント終了後に「ゴルフ会食」に出かけ、その後、新型コロナに感染していたことが判明したのだ』、「生命保険大手の危機感の欠如があらわになった」、とは言い得て妙だ。
・『台場のホテルで全拠点長大会を開催  同社は職員の新型コロナの感染状況について、ホームページで直近2週間分の情報を公表している。4月26日時点では、4月18日に1人、19日に12人、合計13人のコロナ感染者が出ている。 感染者が所属する営業部の所在地はバラバラで、それぞれに関連性はないように見える。だが、13人のうち6人は神奈川県・湘南支社管内の営業部に所属しており、同一の感染経路であることが疑われる。 というのも、日本生命は4月16日、東京・台場のホテル「グランドニッコー東京 台場」で、首都圏の支社長や営業部長らが集まって情報共有する「全拠点長大会」を開催した。最も広い宴会場を貸し切りにし、約220人が参加した。 同大会が終了した後、神奈川県内にある同社湘南支社管内の営業部長らは、1泊2日のゴルフコンペに出かける。飲食・宿泊と行動をともにした後、営業部長の1人が体調不良を理由に急きょ帰宅。ほかのメンバーは後から合流した湘南支社の支社長らとともにゴルフに興じる。 その後、PCR検査によって、体調不良を訴えた営業部長が18日に新型コロナの陽性と判明。濃厚接触者であるほかの営業部長らもPCR検査を受けたところ、19日に5人のコロナ感染が判明した。日生によると、コロナに感染した職員は全員男性で、30代が3人、40代が3人という。 営業部長がコロナ感染者となった湘南支社管内の6営業部は、20日、21日の両日は職員全員が自宅待機となり、その間、保健所の指導に従い、オフィスの消毒作業を実施した。22日に業務を再開したが、30日までは対面での顧客訪問は休止の措置をとっている。 一連の経緯と事実関係について、日本生命広報部は「湘南支社管内の営業部で6人のコロナ感染者が出たことは事実」と認めながらも、業務上の会食については「原則、4人以下、2時間以内、感染対策が十分図られた店舗で実施することを徹底している」とし、「(6人の感染は)あくまで業務時間外でのプライベートでの出来事であり、詳細は差し控えたい」と回答した。 ただ、コロナ感染者が発生した営業部内からは、憤りと不安の声が上がっている。ある営業職員は「お客様だけでなく、営業部内にも高齢の営業職員は多く、コロナ感染に対して日々不安を抱えながら活動している。有志の集まりとはいえ、危機感がなさすぎではないか」と怒りをあらわにする』、「全拠点長大会」に出席後、「ゴルフ」に興じたのは、他にもかなり多くのグループがあった筈だが、「コロナ感染者が出た」のは、このグループだけだったようだ。
・『営業職員から上がる切実な声  営業拠点間の情報共有のために作成された、2021年1月20日付の日本生命・首都圏営業本部作成の内部資料には、営業職員の切実な声がつづられている。湘南支社はこの首都圏営業本部に所属している。 「問題なのは営業部長の朝礼が長いこと。大きな声で職員の周りをうろつきながら話すので飛沫が気になる」 「(上司との)面談頻度が多い。拠点の換気が全くされない。営業部長は『アポを徹底的に取って提案に行け』と執拗にメールを送ってくる」 「営業部長から、『私たち(営業職員)はエッセンシャルワーカーであり、出勤は今まで通り』という話があったが、会社は私たちの命を何だと思っているのか」 現場の営業職員から、こうした痛切な叫びが多く届いていることを知りながら、たとえプライベートでの行動とはいえ、コロナの感染拡大防止を軽視した行動に疑問の声が上がるのは当然だ。 日本生命では神奈川県以外にも、大阪市内にある営業管理職を育成するための拠点「拠点長ビジネススクール室・大阪養成センター」の20代の職員8人が4月8日、コロナに感染している。同社広報部は「保健所からは感染経路が不明で、クラスターと判定されているわけではない」と話すが、その後、同センターで4月11日~13日にかけて各1人ずつの感染が判明。合計11人が感染者となっている。 新型コロナで医療体制は逼迫しているうえ、東京五輪の開催可否の判断もまさに瀬戸際の状況にある。3回目の緊急事態宣言が出てもなお、日本生命のコロナ対策への姿勢は変わらないのだろうか』、「私たち(営業職員)はエッセンシャルワーカーであり、出勤は今まで通り」、リモートに出来ない職種を、勝手に「エッセンシャルワーカー」と称する図々しさには、呆れ果てた。これでは、警察官や消防士などの本来の「エッセンシャルワーカー」の立場がなくなってしまう。生保のトップ企業としては、誠にお粗末な不祥事だ。
タグ:企業不祥事 東洋経済Plus 「整備事業の指定取り消し、整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃」 (その24)(整備事業の指定取り消し 整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃、新車を売ったらアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか、問われる生保トップ企業の危機意識 日本生命、「ゴルフ会食」後に6人のコロナ感染判明) 「トヨタのおひざ元である愛知県」の「最大手のディーラー」で「不正車検」が「中部運輸局が行った抜き打ちの監査で発覚」、とは心底驚かされた。 「店長は指示していない」、直接指示はしていなくても、黙認していたのは明らかだろう。 「45分でのスピード車検を10年以上前から展開」、単に整備士だけの問題ではなく、販売店全体の問題だ。 「トヨタも「45分」を売りに」、ということであれば、「ネッツトヨタ愛知」だけの問題ではなさそうだが、この記者もさすがに「トヨタ」には遠慮して詳しくは調べなかったようだ。 「車検は販社の貴重な収益源」であれば、車検への信頼性回復は喫緊の課題だ。 「新車を売ったらアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか」 「国が行うべき」「車検」を「販売店が」「代行」し、「収益源になっている」のに、「不正」が行われていたとは、一体、何をやっているのかとドナリつけたい気分だ。 「検査方法」の「①」は自分車検と呼ばれたものだ。 「整備事業は新車販売に比べて利益率が高く、安定的に収益の5割を占める」、「新車を購入したお客さんのうち7割が初回車検に来てくれる」、「車検や点検で車を入れてくれるのは『ディーラーだから』という信頼感が大きい」、なるほど 「「車検は自動車産業を支える1つの根幹。どんなことがあっても手抜かりは許されない」、同感である。 「問われる生保トップ企業の危機意識 日本生命、「ゴルフ会食」後に6人のコロナ感染判明」 「生命保険大手の危機感の欠如があらわになった」、とは言い得て妙だ。 「全拠点長大会」に出席後、「ゴルフ」に興じたのは、他にもかなり多くのグループがあった筈だが、「コロナ感染者が出た」のは、このグループだけだったようだ。 「私たち(営業職員)はエッセンシャルワーカーであり、出勤は今まで通り」、リモートに出来ない職種を、勝手に「エッセンシャルワーカー」と称する図々しさには、呆れ果てた。これでは、警察官や消防士などの本来の「エッセンシャルワーカー」の立場がなくなってしまう。生保のトップ企業としては、誠にお粗末な不祥事だ。
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東芝問題(その40)(東芝従業員が 社外の人々に握られた会社の「オール」を取り戻すには、車谷前社長が引き寄せた東芝「解体」「身売り」のXデー お粗末過ぎる辞任のウラ側、東芝社長をクビにした「社内アンケート」 幹部の5割以上が信任せず) [企業経営]

東芝問題については、昨年4月21日に取上げた。今日は、(その40)(東芝従業員が 社外の人々に握られた会社の「オール」を取り戻すには、車谷前社長が引き寄せた東芝「解体」「身売り」のXデー お粗末過ぎる辞任のウラ側、東芝社長をクビにした「社内アンケート」 幹部の5割以上が信任せず)である。

先ずは、4月16日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「東芝従業員が、社外の人々に握られた会社の「オール」を取り戻すには」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/268613
・『経営陣や株主ではなく東芝従業員が迎えている「本当の危機」  この記事は、東芝の全従業員に読んでいただきたいと思っています。 東芝の従業員が、2015年の不正会計発覚以来の危機を迎えています。「東芝が」ではなく、「東芝の従業員が」危機を迎えているとしている点に注意してお読みください。少なくとも経営陣や株主から見れば、東芝は危機を迎えているわけではありません。 4月14日、東芝の車谷暢昭社長兼CEOが辞任しました。報道によれば、車谷前社長は株主との関係が悪化していたことに加え、イギリスの投資ファンドからの買収提案に関連して経営陣との対立が起きていたとされています。前日段階で「14日の臨時取締役会で社長の進退問題を協議する」と報道されていましたが、結局本人が辞任を申し出たようです。 さて、当事者からは批判されることを覚悟のうえで、事の成り行きを事実に沿って違う文脈に書き替え、整理してみます。 三井住友銀行の元副頭取で、イギリスの投資ファンド・CVCキャピタル・パートナーズの日本法人の前会長だった車谷前社長は、中外製薬出身の永山取締役会議長をはじめ12人中11人が社外出身者で構成される取締役会と、CVCからの買収提案に関連して対立し、外堀を埋められた結果、解任動議が出る前に辞任しました。 車谷前社長は、旧村上ファンド出身者らが運営するシンガポールのファンドとも対立していたことで知られています。2020年の「モノいうファンド」からの株主提案では、ファンドからの取締役選任案については退けることができましたが、その株主総会での車谷氏の取締役再任議案の賛成も57%台にとどまっていました。 一連の報道を確認していただくとわかる通り、今回の騒動の渦中に純粋な東芝出身者は綱川智新社長以外、1人も登場しません。 これが最先端の大企業のガバナンスというものなのですが、こうした状況を見ると、さすがに私のような部外者としても、違和感を覚えずにいられません。「会社はいったい誰のものなのか?」と思ってしまいます。) 綱川新社長以外の東芝の取締役会メンバーのバックグラウンドを並べると、三井住友銀行、中外製薬(長銀)、検察庁、新日本製鐵、三井物産、CVC最高顧問(日商岩井、GE、LIXIL他を歴任)、欧米の金融機関が複数、そして会計事務所出身が4名となります。このメンバーが、歴史ある日本の大企業・東芝の運命の決定権を握っています。 東芝の選択肢の中では、CVCキャピタル・パートナーズからの買収案を受け入れる可能性は、この社長交代劇で少なくなったと考えられます。一方、今回の騒動を受けて他の欧米の巨大ファンドも東芝の買収提案に向けて動き出したといいます。そして、東芝がどの未来へ進むべきかは、株主が選んだ11名の社外出身役員の意思決定に委ねられているわけです。 「いや、1人社内出身がいるじゃないか」とはいっても、1対11ですから多勢に無勢です、念のため』、「車谷前社長」が出身元の「CVCキャピタル・パートナーズ」と仕組んだ、延命のための買収工作が失敗したとは、お粗末だ。
・『「切り売り」で消えてしまった東芝関係者  このような状況になってしまったのは、もともとは東芝の自己責任だったと思います。2006年に東芝の当時の経営陣が、アメリカの原子力大手(株主はイギリス)であるウェスティングハウス・エレクトリック・カンパニー(WEC)を買収します。当時は地球温暖化対策として、原子力事業は成長領域だと認識されていていたので、買収当時からいろいろと課題は指摘されていたものの、必ずしも間違った投資だったとはいえない経営判断だったかもしれません。 しかし現実には、2011年の東日本大震災で福島の原発事故が起き、その後原子力事業は世界的に低迷します。そして2015年にWECの巨額減損処理が発生して、東芝は債務超過状態に陥ります。 そこで、東芝を存続させるために「会社の切り売り」が始まります。経営の柱だった半導体メモリ事業はファンドに売却されてキオクシアホールディングスと名前を変え、黒字の優良企業だった東芝メディカルもキヤノンに売却されます。それ以外にもノートPCの『ダイナブック』や薄型テレビの『REGZA』もグループを去りました。 さらに東芝が失ったものとして、日本を代表するエンタテインメント会社だった東芝EMIや独占スポンサーだったテレビアニメ『サザエさん』も忘れてはいけないと思います。) 会社の生き残り策としては仕方のないことだったとしても、東芝の生き残りには大問題が伴います。会社の所有者が入れ替わってしまったのです。 東芝を救済するために優良部門を売却する資金だけでは足りず、結局は新しい資本を入れることになった。新しい資本にとっては、不正会計に手を染めた旧経営陣は信用できないので、現代的なガバナンス体制が組まれる。ことが回りまわって、東芝出身者ではない経営陣が東芝出身者ではない「モノいう株主たち」と対立するという、現在の状況につながっているのです』、「東芝出身者ではない経営陣が東芝出身者ではない「モノいう株主たち」と対立する」、皮肉なことだが、ファンドに依存した宿命なのだろう。
・『会社はいったい誰のものか 東芝従業員はこのままでいいのか  「会社は誰のものなのか?」というと、「それは究極的には株主のものだよ」と答える人が結構、多数派です。ただしそれは、欧米流の資本主義の論理に基づいた話です。 現実社会での影響力は小さい理論かもしれませんが、より広い経済学的には、会社はもっと多くの利害関係者の共有物であるべきだと考えます。株主や金融機関だけではなく、社員や従業員、取引先、顧客、そして社会も、会社の持ち主の重要な一部であるべきだと考えます。 これは、昭和の時代の古い会社観に近い概念かもしれません。昔は、会社は従業員のものであって、短期の利益よりも長期的な存続こそを優先させるべきだと説かれていました。実際その考え方で、日本経済は発展してきました。その頃と比較すれば、今の東芝は極端に従業員の権利と長期的な存続を脇に置いてしまっているのではないでしょうか。 そしてこの点を一番考えていただきたいのですが、東芝の従業員はそれでいいのでしょうか。 わたしはTOKIOの『宙船』という歌が大好きです。中でも「おまえが消えて喜ぶ者におまえのオールをまかせるな」という歌詞は、人生においてその通りだと思っています。そして私が理解できないことは、なぜ東芝の従業員や執行役員は、東芝が消えて喜ぶ人たちに会社のオールを手渡したままなのか、ということです。 誤解しないでいただきたいのですが、東芝の社外役員が「東芝に消えてほしい」と思っていると言っているのではありません。もちろん今回の騒動を見ると、1人や2人は東芝に消えてほしいと思っている人がいたと思える節はありますが、それを防いだのは取締役会でした。 しかしその取締役会も、基本的なスタンスとしては株主に対する責任に目が向いています。あくまでスタンスは株主寄りであって、もし仮に今回の提案よりもずっと儲かる東芝買収・分割提案が持ち込まれたら、それを冷徹に評価し判断を下すであろう、プロの経営者たちです。 資本主義の原則としては、現経営陣はそのように動かざるを得ません。だったら、従業員の代表である執行役員たちは、「東芝という船を漕ぐオールを取り返す」対抗策を考える時期に来ているのではないでしょうか。東芝の企業価値が2兆円しかないことを意識すれば、1つの方法として、従業員による東芝買収を考えるタイミングなのかもしれないと私は思います』、「株主や金融機関だけではなく、社員や従業員、取引先、顧客、そして社会も、会社の持ち主の重要な一部であるべきだと考えます」、いわゆるステークホルダー主権論で、私も賛成だ。「従業員による東芝買収を考えるタイミングなのかもしれない」、いわゆるEBO(従業員中心による買収)だ。
・『「お前のオールを任せるな」 従業員による東芝買収の選択肢も  従業員による大企業買収というのは、あまり耳慣れない言葉かもしれません。有名な事例としては、1993年にユナイテッド航空の従業員が親会社を買い取り、世界最大の従業員所有会社になったケースがあります。ただこの買収事例は、利用者へのサービスが悪くなったなど、経営学の世界ではどちらかというと失敗事例として評価されています。 いずれにしても資本主義が進化したことで、企業買収の手法は非常に多様化してきています。ですから海外のファンドだけでなく、東芝の従業員が東芝を買収する現実的な手法もあるわけです。 さらに言えば、旧東芝メモリであるキオクシアは、近々3兆円規模で再上場ないしは売却されることが想定されますが、それだけの価値があるならば官民ファンドがキオクシアを買い取り、その子会社として東芝を買収してグループを再統合させるといった荒業だって、手法としては可能なのです。 そして、こういったことを考えなければ、いつか東芝が完全に消えてしまう日がやってくると私は危惧しています。東芝従業員の皆さんは、どうお考えでしょうか』、「それだけの価値があるならば」、「官民ファンドがキオクシアを買い取り」、とあるが、「官民ファンド」が乗り出す必要もない筈だ。無論、「その子会社として東芝を買収してグループを再統合させる」ためには、「官民ファンド」の方がやり易いのだろうが、そういう安易な「官民ファンド」の使い方には私は反対である。

次に、4月20日付けデイリー新潮「車谷前社長が引き寄せた東芝「解体」「身売り」のXデー、お粗末過ぎる辞任のウラ側」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/04200603/?all=1&page=1
・『「救済色」が露骨  東芝の代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)の車谷暢昭氏(63)が4月14日、突如辞任した。東芝が開催した緊急記者会見には本人は出席せず、「東芝再生ミッションが全て完了し、現在かなり達成感を感じている。3年の激務から離れて心身共に充電したい」というコメントだけが代読された。 しかし、この言葉を文字通り受け止める人はまずいないだろう。それは、4月7日に表面化した英投資ファンド「CVCキャピタル・パートナーズ」による東芝買収計画に、「水面下で協力していたのが、CVC日本法人会長から東芝に転じた車谷氏本人だった」と、金融界や霞が関は見ているからだ。 そもそも、CVC買収が発覚した時期、車谷氏は東芝に出資する多数の「アクティビスト(物言う株主)ファンド」との調整に行き詰まり、東芝社内での信用も急激に失っていった。そのため、次の株主総会では取締役人事承認を得られず、退任に追い込まれるだろうと、周囲の誰もが思っていた。 金融機関の幹部は、こう断言する。 「古巣のCVCによる買収で東芝が上場廃止となり、アクティビストを追い出せれば、車谷氏は留任される可能性もありました。つまり、CVCとともに起死回生の一手を打ったということでしょう」 だが、あまりにも「車谷救済色」が強いCVCの提案は、東芝取締役会の永山治議長らの不信を買うことになった。多数の取締役が車谷氏解任の準備に動いたことで、車谷氏は辞任に追い込まれた。そして、「車谷氏が保身のために、CVCの買収案を呼び込んだことで、パンドラの箱が開いてしまった」(前出金融機関幹部)という。結果、東芝は今後、多数のファンドからの買収攻勢にさらされることになるというのだ』、「あまりにも「車谷救済色」が強いCVCの提案は、東芝取締役会の永山治議長らの不信を買うことになった。多数の取締役が車谷氏解任の準備に動いたことで、車谷氏は辞任に追い込まれた」、「車谷氏が保身のために、CVCの買収案を呼び込んだことで、パンドラの箱が開いてしまった」、お粗末さの極みだ。
・『抱え込んだ“重荷”  今回の混乱を理解するために、まずは東芝とアクティビストの関係を振り返ってみたい。 東芝は2016年、米国での原子力事業を頓挫させ、米原子力子会社「ウエスチングハウス(WH)」に巨額の損失を発生させた。そのままWHを破綻処理したものの、17年12月には、2年連続の債務超過で上場廃止となる事態を免れようと、海外のヘッジファンドによる増資を行って6000億円を調達した。 この増資で上場を維持できたが、“重荷”も抱え込んだ。ファンドの中には、シンガポールの「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」をはじめとするアクティビストが含まれており、東芝は彼らの厳しい要求への対応を迫られることになったのである。ちなみに、エフィッシモは、旧村上ファンド出身者が設立した投資ファンドだ。 このとき、アクティビストからの攻勢をしのぐため、東芝が助けを求めたのが車谷氏だった。旧三井銀行出身の車谷氏は、三井住友銀行の副頭取などを歴任している。11年の東京電力福島第1原発事故に際しては、東電の実質国有化の計画案をまとめ上げ、経済産業省から厚い信頼を得た「金融のプロ」と見られていた。経産省のお墨付きを得て、18年、CVC日本法人会長から東芝のCEOに転じたのだ。 しかし結論を先に言えば、 「東芝再建やアクティビスト対応という点で、車谷氏は力不足でした」(東芝関係者) 連結最終損益は、車谷氏就任後の19年3月期に1兆円の黒字をはじき出したものの、20年3月期には1146億円の赤字に転落した。19年の黒字も、東芝メモリの売却益を織り込んだもので、もの言う株主ファンドたちの不満は強まる一方だった』、「車谷氏」が「東電の実質国有化の計画案をまとめ上げ、経済産業省から厚い信頼を得た」、初めて知った。
・『法的根拠の薄い“圧力”  さらに話を複雑にしたのが、政府主導のアクティビスト対策だ。 東芝は東京電力福島第1原発の廃炉作業や先端情報処理、機微軍事技術(武器や軍事転用可能な技術)にも関わっており、日本の安全保障にとって重要な企業といえる。20年5月に政府は、外国資本による重要企業への投資を厳格に監視する改正外為法を施行したが、これが東芝を守る「アクティビスト対策」だったと言われる。霞が関関係者が語る。 「改正法には、企業経営に口を出すアクティビストをけん制するような措置が盛り込まれました。安全保障に関わるような指定業種の企業に、海外企業が1%以上の出資をする場合、届出を行うことを義務付けました。ですが、経営に口を出さなければ、届出は必要ありません。まさに、アクティビストにつき上げられている東芝を守るために整備されたと言えます。車谷氏やその周辺が経産省や首相官邸に泣きつき、実現したと見られています」 そして同時期、英「フィナンシャルタイムズ」や「ロイター」などは、「20年7月の株主総会直前に、経産省に近い金融関係者が、東芝の株主である米ハーバード大学が運用するファンドに対し、(エフィッシモなどのアクティビストによる)東芝に敵対するような提案に賛同すれば、改正外為法に基づく調査対象になる恐れがあると圧力を掛けていた」と報道した。大手紙の経済記者が説明する。 「記事に出てくる“経産省に近い金融関係者”は、車谷氏が経産省や官邸に相談し、アドバイザーとして紹介された人物です。金融関係者は車谷氏の意向を受けて、ハーバード大に働きかけたのですが、そもそも改正外為法は、すでに株を持っている出資者ではなく、施行後に出資した企業やファンドが対象ですから、改正外為法に抵触する可能性は低い。法的根拠の薄い“圧力”でした」 エフィッシモは昨年の株主総会でこうした件などについて第3者による調査を求め、今年3月18日の臨時株主総会では、エフィッシモの提案が賛成多数で認められた。 この改正外為法の影響で、アクティビストと東芝の関係はより険悪になっていく。そして、それを制御できない車谷氏への風当たりも強まっていった。CVCが東芝に「現経営体制の維持」を明記した買収提案を送り付けたのは、その最中だった。 「車谷さんが自身の地位を守るため、CVCを呼び込んだとしか思えません」 と、東芝社員も語る。社内外でこうした憶測が広がり、永山取締役会議長らは車谷氏へ解任もちらつかせざるを得ず、冒頭のような辞任劇となったのだ。 ▽「買収合戦」になるか(だが、車谷氏が東芝社長の座を降りても、CVCの動きがすぐに止まることはなさそうだ。 グローバル投資ファンドにとって車谷氏は「東芝に近寄るための船頭」にすぎず、彼がいなくても、東芝自体には投資する価値がある。M&Aに詳しい金融機関幹部は、こう話す。 「むしろ、ここでCVCが退けば、車谷氏と連携していたことを認める形になってしまいます」 さらに、CVCが東芝買収の可能性を明示したことで、東芝の株主達は「東芝買収合戦」への期待を脹らませ始めた。CVCに対抗する買収者が続出すれば、最終的に高値での買収となり得るからだ。東芝に出資する香港のファンド「オアシス・マネジメント」はすでに、CVCが最初に示した買収提案をめぐり、「1株5000円では安すぎる。6200円以上が適切だ」との声明を発表した。米国の有力投資ファンド「KKR」やカナダのファンド「ブルックフィールド・アセット・マネジメント」も、CVCに対抗するような東芝買収策を検討していることが報じられている。 「買収を得意とする米欧の巨大ファンドは、ほぼすべてと言っていいほど、東芝買収の可否を調べ始めているはずです」(前出のM&Aに詳しい金融機関幹部) 多くの買収提案は東芝の全株式を買収した後、非公開化したうえで経営改善し、再上場を目指すものになるはずだ。買収合戦勃発を目前に、東芝取締役会は「上場を維持したい」という意向を取引銀行などにも説明している。だが、 「買収提案が水面下で続き、買取額が上がっていけば、株主への責任を果たすため、早々に東芝は身売りを検討せざるを得ない局面が来るかもしれません」(大手投資会社) これまでの経営危機で東芝は家電やパソコン、メディカル事業なども手放し、事業同士の関連が乏しいコングロマリット企業になってしまった。東芝に関わってきた銀行幹部は、こう嘆いた。 「東芝は本業に成長の芽がない企業になってしまい、厳しい金融の世界の餌食にされ、分割、再編される可能性が高まってきました。グローバルな金融資本市場に触れる機会がなかった、日本のものづくり産業の末路を見るようです」』、「外国資本による重要企業への投資を厳格に監視する改正外為法」は、「アクティビストにつき上げられている東芝を守るために整備されたと言えます。車谷氏やその周辺が経産省や首相官邸に泣きつき、実現したと見られています」、とは初めて知った。

第三に、4月29日付けデイリー新潮「東芝社長をクビにした「社内アンケート」 幹部の5割以上が信任せず」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/05040556/?all=1
・『く再生ミッションを成し遂げ、天命は果たせました〉 4月14日、社長辞任にあたって車谷暢昭(くるまたにのぶあき)氏(63)が出したコメントを東芝社員はどんな思いで受け止めたか。同氏をトップに戴いた3年間、東芝がずっと苦慮してきたのが株主との関係だ。 東芝の関係者が言う。 「2017年、当社は約6千億円の増資に踏み切り、60社の投資ファンドが株主になりました。彼らの要求は厳しく、株主総会を乗り切るのが大変だったのです」 そのことを象徴するのが昨年、経産省の参与(当時)が大株主(ハーバード大基金)に議決権を行使しないよう圧力をかけたと報じられた件だ。これを問題視したエフィッシモ・キャピタル・マネージメント(筆頭株主)が調査委員会の設置を求め、臨時株主総会が開かれた。 「エフィッシモは旧村上ファンド系で、スタンドプレーが多い。ところが、3月の臨時総会では彼らの提案が可決された。株主の大半が車谷さんにNGを出したということです」(同) だが、そも車谷氏の手法に、もっとも否定的だったのは部下たちである。 「東芝では16年から社長に対する信任調査を実施しています。事業部長や関連会社の社長らが回答するアンケートですが、かつて“チャレンジ”と称して社員らに無茶な利益目標を強いるパワハラが横行し不正会計を止められなかった反省から、現場の役職者がトップを評価する制度を導入したのです」(同) 意外な結果が出たのは1月のこと。約120名を対象に行われた信任調査で、車谷氏に2割を超える「×」がつけられたのだ。 「そこで念のため執行役や事業部長クラスを対象に、2月にもアンケートを行った。すると『×』が5割以上も。この結果を受けて東芝の指名委員会(社外取締役で構成)が、車谷氏に“次の社長指名はない”と伝えたのが3月25日。そこで4月19日に取締役会で社長交代を正式決定する予定が組まれたのです」(同) ところが、その矢先にCVCキャピタルから買収の提案である。車谷氏は同ファンドの元日本法人代表だ。 「車谷氏が東芝に残るための画策だったのは明白。社内外の反発は必至でした」(同) もはや、車谷氏が株主からも社内からも見放されていたのは間違いない』、「執行役や事業部長クラスを対象に、2月にもアンケートを行った。すると『×』が5割以上も。この結果を受けて東芝の指名委員会・・・が、車谷氏に“次の社長指名はない”と伝えたのが3月25日。そこで4月19日に取締役会で社長交代を正式決定する予定が組まれたのです」、「その矢先にCVCキャピタルから買収の提案」、ここまで見え見えの「留任工作」だったとは、改めて驚かされた。
タグ:鈴木貴博 ダイヤモンド・オンライン 東芝問題 デイリー新潮 (その40)(東芝従業員が 社外の人々に握られた会社の「オール」を取り戻すには、車谷前社長が引き寄せた東芝「解体」「身売り」のXデー お粗末過ぎる辞任のウラ側、東芝社長をクビにした「社内アンケート」 幹部の5割以上が信任せず) 「東芝従業員が、社外の人々に握られた会社の「オール」を取り戻すには」 「車谷前社長」が出身元の「CVCキャピタル・パートナーズ」と仕組んだ、延命のための買収工作が失敗したとは、お粗末だ 「東芝出身者ではない経営陣が東芝出身者ではない「モノいう株主たち」と対立する」、皮肉なことだが、ファンドに依存した宿命なのだろう 「株主や金融機関だけではなく、社員や従業員、取引先、顧客、そして社会も、会社の持ち主の重要な一部であるべきだと考えます」、いわゆるステークホルダー主権論で、私も賛成だ。「従業員による東芝買収を考えるタイミングなのかもしれない」、いわゆるEBO(従業員中心による買収)だ。 「それだけの価値があるならば」、「官民ファンドがキオクシアを買い取り」、とあるが、「官民ファンド」が乗り出す必要もない筈だ。無論、「その子会社として東芝を買収してグループを再統合させる」ためには、「官民ファンド」の方がやり易いのだろうが、そういう安易な「官民ファンド」の使い方には私は反対である。 「車谷前社長が引き寄せた東芝「解体」「身売り」のXデー、お粗末過ぎる辞任のウラ側」 「車谷氏が保身のために、CVCの買収案を呼び込んだことで、パンドラの箱が開いてしまった」、お粗末さの極みだ 「車谷氏」が「東電の実質国有化の計画案をまとめ上げ、経済産業省から厚い信頼を得た」、初めて知った 「外国資本による重要企業への投資を厳格に監視する改正外為法」は、「アクティビストにつき上げられている東芝を守るために整備されたと言えます。車谷氏やその周辺が経産省や首相官邸に泣きつき、実現したと見られています」、とは初めて知った 「東芝社長をクビにした「社内アンケート」 幹部の5割以上が信任せず」 「執行役や事業部長クラスを対象に、2月にもアンケートを行った。すると『×』が5割以上も。この結果を受けて東芝の指名委員会・・・が、車谷氏に“次の社長指名はない”と伝えたのが3月25日。そこで4月19日に取締役会で社長交代を正式決定する予定が組まれたのです」、「その矢先にCVCキャピタルから買収の提案」、ここまで見え見えの「留任工作」だったとは、改めて驚かされた。
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企業不祥事(その23)(「まだ黒じゃない?」 エリートが堕ちる無意識下の悪事、整備事業の指定取り消し 整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃、新車を売った後のアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか) [企業経営]

企業不祥事については、1月7日に取上げた。今日は、(その23)(「まだ黒じゃない?」 エリートが堕ちる無意識下の悪事、整備事業の指定取り消し 整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃、新車を売った後のアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか)である。

先ずは、4月1日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏による「「まだ黒じゃない?」 エリートが堕ちる無意識下の悪事」を紹介しよう。なお、ここで取上げているのは、厳密には企業ではなく、官公庁だが、ここでは広く捉えることにした。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00124/
・『厚生労働省で耳を疑うような“事件”が続発している。 1つ目は、「怒りを買った組織の末路」だ。 新型コロナウイルス対策で最前線に立つ厚労省の職員23人が、銀座で送別会をしていた問題で、宴会に参加していた3人と同じ部署(老健局)の3人、計6人が新型コロナウイルスに感染したことが確認された』、今日の新聞報道によると、大阪市や大阪府の職員が多数で飲食店を利用していたことも判明している。いくら歓送迎会のシーズンとはいえ、自粛を呼びかける主体がこのザマでは、示しがつかない。
・『パワハラ相談員がパワハラ  SNSでは、「これでやっぱり大人数の宴会の感染リスクが高いってことが分かったじゃん」だの、「厚労省が自ら少人数・時短営業の効果を証明した」だのと皮肉交じりのコメントが相次いだが、ったく何をやっているのか。 逼迫している医療現場のリアルや様々なシミュレーションを基にした感染源の特定などを、感染拡大を危惧する専門家たちと共同作業をしている“はず”なのに、「自分たちは別」とでも思っていたのだろうか。 そして、2つ目は、「パワハラ対策の相談員が、パワハラをしていた」という、看過できない事実だ。 報道によれば、2017年に元室長補佐の部下だった男性が、暴言などのパワハラに該当する行為を受けたとして昨年(20年)、公務災害を申請し、今年(21年)3月2日付で認定された。男性の上司は、職場でパワハラ対策をする相談員だったにもかかわらず、部下の男性に対し、「潰してもいいのか」「死ねといったら死ぬのか」などと、他の職員たちがいる前で罵倒を繰り返したという。 男性はうつ病を発症し、昨年、退職。「複数の部署や窓口などに相談したが、どこも機能しなかった」そうだ。一方、厚労省は「パワハラ防止を所管する省として誠に遺憾で反省している。職員への研修を再徹底したい」とコメントし、元室長補佐の給与を1カ月間1割減額する懲戒処分にした。 続く3つ目の問題も、同じくパワハラである。 スクープを連発している『週刊文春』が、上司にパワハラを受けていた男性が、事前に準備していたハンマーで厚労省が入る合同庁舎の窓ガラス1枚を派手にたたき割り、そこから飛び降り自殺を図ろうとしたという、かなりショッキングな“事件”を報じた。 男性は19年春ごろに異動してきた上司から、「簡単な仕事にいつまでかかってるんだ!」「バカか、お前は!」などと、同僚たちの目の前で罵倒され、同年秋頃に体調不良で休職。その後、職場復帰を果たすも、部署全員が受信する業務メールから外されるなどの“いじめ”を受けた。 部署異動の内示を受けていた男性は、“事件”の起きた当日、同僚たちに挨拶メールを送信。そこには、「上司からのパワハラに苦しめられたことを示唆」する文面がつづられていたという。 ……ったく。いったい厚労省は何をやってるのか。 10年以上も、専門家たちとともに、パワハラ対策に取り組んできたのは何だったのか。 パワハラに悩み、傷つき、生きる力を失った人たちに関わってきた専門家たちの「パワハラをなくしたい」という強い思いを、件の厚労省の職員たちは踏みにじったに等しい』、「「パワハラ対策の相談員が、パワハラをしていた」、まるで笑い話だ。しかし、(対象となった人は)「うつ病を発症し、昨年、退職、悲惨だ。
・『倫理観ではなく組織風土の問題  まさか「俺たちは“国民”のために、昼夜問わず働いてるんだからさ、そりゃ飲みにも行きたくなるし、怒号を飛ばすことだってある。だって、“国民”のために粉骨砕身働いているんだもん!」とでも思っているのだろうか。 厚労省の職員の不祥事はこれまでも、あきれるほど繰り返されてきた。どれもこれも一般の企業なら、一発で“吹き飛びそう”なものばかりだ。 04年には「年金個人情報漏えい」が発覚し、長官ら約500人が訓告などの処分 05年には「書籍の監修料受領問題」で、55人が戒告などの処分 15年には「年金個人情報流出」で、事務次官ら14人が戒告などの処分 17年には「戦没者遺骨収集事業での不正経理」で、課長補佐ら3人が停職などの懲戒処分 18年には「不適切な労働時間調査」で、事務次官ら5人が戒告などの処分 さらに、 19年4月には、介護保険料が約200億円も不足する恐れがある計算ミスが発覚した。同年7月には、シベリア抑留者の遺骨の一部が日本人ではない可能性があると把握しながら放置していたことが明らかになった。いずれも厚労省が自ら公表したものではない。また同年12月には再び介護保険料に絡む計算ミスが発覚している。 ……これはもはや職員の倫理観の問題ではなく、組織風土の問題である。 ミス、不正、パワハラ、不祥事が起きると、個人や職員の資質が問題にされがちだが、働く人たちの倫理観はおおむね、組織風土に左右される。 組織風土とは、「その組織に所属する多くの人に共通したものの見方や考え方、行動特性」で、長い年月をかけて培われ、組織に深く根ざし、組織を包んでいる目に見えない“空気”のようなものだ。トップが「(不祥事を)二度と起こさないように」「深く反省し」などと頭を下げて、変わるものではない。 腐った組織風土は、人間の良心と魂をむしばんでいく。組織への帰属意識が高ければ高いほど、その傷は深く、痛手を負い、違法すれすれでも「まだ黒じゃない」と当人は思い込むようになるし、「慣習的に先輩たちがやってきたことだから」と何の疑問も持たなくなる。 最初は抵抗があった人でも、次第に慣れて、無意識下で悪事に手を染めてしまう。ある調査では、従業員の4人に1人が、悪いと分かっていることを強いられるプレッシャーを経験したと答えた(イェール大学センター・フォー・エモーショナル・インテリジェンスとファース財団の共同調査、全米1万4500人以上が対象)』、厚労省といえば、前身は戦前のエリート官庁の内務省である。それがこんな体たらくとは情けない。米国でも「従業員の4人に1人が、悪いと分かっていることを強いられるプレッシャーを経験したと答えた」、組織につきものの病理のようだ。
・『おかしいと感じない「傍観者」を量産  組織を包む“空気”圧は……とんでもなく手ごわい代物なのだ。 仮に、「それはおかしい」などと声を上げようものなら、「アイツは組織の論理が分かっていない」だの、「めんどくさいヤツ」呼ばわりされ、「やっかい者は追い出せ!」と排除される。 結果的に、「おかしい」を「おかしい」と言わない傍観者が量産され、「おかしい」が日常になる。これは実に恐ろしいことだ。 くしくも、厚労省は、「パワハラ防止法」に、「平均的な労働者の感じ方」「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動で総合的に考慮する」「労働者が受ける身体的又精神的な苦痛の程度等を総合的に考慮して」などという、至極曖昧な言葉を入れ込み、「時代を巻き戻した」わけだが(参考コラム「時代を巻き戻した厚労省パワハラ認定の唖然」)、「潰してもいいのか」「死ねといったら死ぬのか」「簡単な仕事にいつまでかかってるんだ!」「バカか、お前は!」といった明らかなパワハラは、厚労省内では総合的・平均的に、飛び交ってるということなのだろう。 とはいえ、開いた口がふさがらないような“事件”は、厚労省に限ったことではない。文書書き換え、高額接待など、枚挙にいとまがない。つまり、「官僚の倫理観」が昨今問われているけれど、問題の根本は官公庁全体の組織風土にある。そう思えてならないのだ。 そもそも組織風土は、競争が激しく、出世へのキャリパスが明確で、手に入る権力が大きければ大きいほど強固になることが分かっている。 自治官僚として地方財政制度の基盤を築き、内閣官房副長官として7人の内閣総理大臣に仕えた石原信雄氏は、著書『官かくあるべし――七人の首相に仕えて――』の中で、バブル崩壊以降の、官僚の不祥事やスキャンダル、大蔵官僚(当時)の「ノーパンシャブシャブ事件」などに触れ、官僚のスーパーエリート教育の末路を嘆き、それらを引き起こす要因に言及している。 その中で、官僚たちのマインド&役割の変遷を述べているのだが、これがかなり興味深い』、「石原信雄氏」の指摘とは興味深そうだ。
・『大きすぎる「政」と「官」の重なり  石原氏は、「昭和20年代に入省した官僚たちには強い意欲と使命感があり、戦後復興と経済再建し、高度成長につなげるなど、明確な目的意識と戦略目標があった」と評価。さらに、「それは官僚たちにとって緊張感と高揚感に満ちた時代であり、行政や政策形成の仕事に確かな手応えが感じられた時代であった」とした。 一方、昭和30年代半ばから昭和40年代以降に入省した高級官僚については、「急成長の軌道を全力で疾走してきた国が“限界のカベ”に突き当たって停滞ないし下降に転じたとき、……露呈した矛盾をつくろい、問題点を処理し、国家的な大目標が見失われた時代環境のなかで、限られたパイをめぐっての族議員と利益団体、それに省益拡大をねらう官僚が絡んだ『利益調整型』政治に取り込まれていった」と酷評している。 また、石原氏は日本の官僚制度が、欧米諸国と大きく異なる点として、「政治家との距離感の近さ」を指摘している。 「政」と「官」の役割の重なり合う部分が欧米諸国ではありえないほど大きいのだ、と。その上で、「批判されてきた官僚の行動やあり方の本質的な原因は政治側にある」と指摘する。 ――有能なエリートによる行政には、エリートだからこそ発揮できるプラス面がある。的確な分析と判断、状況に即応した政策立案・策定、効率的な行政運営など、いくらもあげることができよう。が、エリート行政のマイナス面も同じようにしてある。その弊害の最たるものは、エリート意識がもたらす独善的な判断や権限行使によって行政が硬直化してしまうということである(前掲書、P94より)――) そのエリート意識の末路が、大蔵省(当時)の「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」であり、大和銀行不正取引事件であり、住専問題処理、一連の金融機関破綻だとした。 これらの問題が起きてから20年以上がたったわけだが、その間、“高級官僚の暴走”を食い止める制度がいくつもできた。しかし、いかなる制度も階層・組織上階のトップたちが、問題を直視し、受け止め、組織を変えようという強い意志を持たない限り、変わるものではない。組織風土が長い年月で培われるものなら、それを変えるにはそれ以上の長い年月がかかる』、「エリート行政のマイナス面も同じようにしてある。その弊害の最たるものは、エリート意識がもたらす独善的な判断や権限行使によって行政が硬直化してしまうということである」、その通りだ。
・『ウミだらけの組織に  「政治家への忖度(そんたく)が生まれるのは、官僚の人事制度に問題があるからだ」という意見があるけれど、いかなる制度も常に不完全であるので、問題を生むのはそれを運営するトップの問題である。 そもそも「腐った倫理観」は、上から下に伝播(でんぱ)するものだ。 海外の研究になるが、米カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスのキャメロン・アンダーソン教授らが行った調査では、集団の中で高い地位に就くと帰属意識が高まり、集団の非倫理的行為に対する分別を失わせることが分かっている。 また、同教授が米国の22の政府機関の職員1万1000人以上を対象に実施した調査でも、役職が上がるごとに声を上げる見込みが低下し、上級管理職は地位が最も低い職員に比べて、その(声を上げる)割合が64%も低かった。 本来、階層組織の上位者はたくさんのリソースを手に入れた組織の逸材……のはずなのに。 組織の褒美をひとつ、またひとつ、と手に入れるうちに、誠実さや勇気、謙虚さや忍耐といった人格の土台が崩壊し、そうした上位者から生まれる絶対的権力者が長きにわたり地位にとどまることで、組織は“ウミ”だらけの組織に堕することになる。 やがて組織全体に緊迫感がなくなり、現場は「何をやっても無駄」とあきらめ、「上もやってることだから」と腐っていく。無意識に。そう、無意識に。そして、そのあきらめが、今、「私」たちにも広がっているような気がするのは、決して気のせいではないように思う。自戒も込めて』、「組織の褒美をひとつ、またひとつ、と手に入れるうちに、誠実さや勇気、謙虚さや忍耐といった人格の土台が崩壊し、そうした上位者から生まれる絶対的権力者が長きにわたり地位にとどまることで、組織は“ウミ”だらけの組織に堕することになる。 やがて組織全体に緊迫感がなくなり、現場は「何をやっても無駄」とあきらめ、「上もやってることだから」と腐っていく」、組織が腐敗していくメカニズムには、納得できる部分が多い。

次に、4月11日付け東洋経済Plus「整備事業の指定取り消し、整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26723
・『トヨタのおひざ元である愛知県で起きた販売店の不正車検。前代未聞の不正はなぜ起きたのか。その背景を探った。 「今回のような不正が本当にありえるのかと思った。どんなに作業が忙しくても絶対に越えてはならない一線だ」ーー。トヨタ自動車の販売店で発覚した不正車検について、他メーカーの販売会社の社長はそう口にした。 国土交通省中部運輸局は3月30日、ネッツトヨタ愛知の販売店(プラザ豊橋)の不正車検に対する行政処分を発表した。法令違反の対象台数は5158台。この店で2018年12月22日~2021年1月13日に車検を行ったすべてに当たる。ネッツトヨタ愛知を含めて4つのトヨタ系販社を持つATグループ(名証2部上場)は、愛知県内で最大手のディーラーだ(詳細は「愛知県に12社『トヨタ販社』の序列)。 今回の不正は2020年12月、中部運輸局が行った抜き打ちの監査で発覚した。 プラザ豊橋では、排ガスの一酸化炭素濃度やスピードメーターの誤差、サイドブレーキの制動力などに関する点検・検査を省いて保安基準適合証を交付したり、実際に検査したかのような虚偽の整備記録を作成したりしていた。 不正に関与した整備士は中部運輸局の監査に対し、「過剰な入庫が常態化し、顧客を待たせないように一部の検査を省いてしまった」と話したという 自動車販売店における車検は、国が行うべき業務を代行するもので、販売店には「指定工場」、整備士には「自動車検査員」の資格が国から与えられている。 中部運輸局はプラザ豊橋店での自動車整備事業の指定を取り消し、整備士8人のうち不正に関与した整備士7人について自動車検査員の解任命令を出した。この行政処分により、プラザ豊橋は自動車整備事業の申請が2年間できず、7人の整備士も2年間は車検業務ができない』、トヨタの「愛知県内で最大手のディーラー」で「不正車検」が「2年間」も続いていたとは、心底から驚いた。
・『「店長は指示していない」  法令違反の対象となった5158台について、ATグループのほかの販社(愛知トヨタ自動車、トヨタカローラ愛豊、ネッツトヨタ東海)にも協力を仰ぎ、車両の再点検・再整備を行う。作業完了には8カ月かかる見通しだ。 県内に約30店を展開するネッツトヨタ愛知は今回の問題を受けて、ほかの店舗の整備士全員に聞き取りを行い、「同種の不正はなかったことを確認した」としている。 だが、不正が公になってから、他店舗で車検を受けた顧客から、「自分の車は大丈夫か」といった問い合わせが相次いでいるという。過去2年間にネッツトヨタ愛知の別の店舗で行った車検についても、すべての車両を対象に再点検・再検査を実施する方向で準備を進めている。 違反行為の対象となっている5158台の再検査を最優先しつつ、ほかの店舗で扱った車検の車両についても再点検するのだから、その作業量は膨大だ。 ネッツトヨタ愛知は今回の不正について、「(プラザ豊橋の)店長は指示していない」とし、あくまでも整備士が不正の認識がありながら、自主的な判断で行ったとしている。そのうえで、「1台当たりにかかる車検の時間の認識が適当ではなかった」「(車検の予約を受け付ける)営業部門と整備部門の意思疎通が不十分だった」と釈明する』、「違反行為の対象となっている5158台の再検査を最優先しつつ、ほかの店舗で扱った車検の車両についても再点検するのだから、その作業量は膨大だ」、自ら蒔いた種だから、自分で責任を持って対処するのは当然だ。
・『サイトから消えた「45分車検」  首都圏のトヨタ系販社幹部は今回の不正について、「数が多いからといって検査を適切にやらないなんてことは考えられない。現場の状況を考えて(車検の受け入れ数を)コントロールするのが会社の役割だ」と批判する。 今のところ、不正車検の対象車両に不具合が出たという報告はないが、手抜きの検査は人命に関わる。トヨタ幹部は「(車検は)国から任せてもらっていることなので、こうした問題は絶対に避けなければならない。われわれとしても深刻に受け止めている」と話す。 実は、ネッツトヨタ愛知は「ネッツ45 車検」と銘打って、45分でのスピード車検を10年以上前から展開していた。不正発覚後は同サービスを停止し、同社のホームページからもその表示が削除されている。 ATグループによれば、45分と作業時間を明確にしたスピード車検を展開していたのは、傘下4つの販社の中でネッツトヨタ愛知だけ。早さを「売り」に集客したものの、処理しきれないほどの数を受注してしまった可能性が高い。 現在、ネッツトヨタ愛知のホームページから削除されているが「ネッツ45 車検」とうたっていた(画像はネッツトヨタ愛知のサイト) 東海地方のホンダ系販社の店長は、「整備点検や検査も含めて考えるとどうやっても車検は45分では終わらない。うちの店は(12カ月の)法定点検ですら1時間半かけている。時間がかかることは丁寧に説明してお客さんに理解してもらっている。ただ、最近はガソリンスタンドなどでも『1時間車検』などとうたっていて、短時間で終わるからお客様に喜ばれる。そういうものが世の中に浸透しすぎている」と警鐘を鳴らす。 今回、不正が見つかったプラザ豊橋での法令違反の対象台数は5158台だから、1年で約2500台の車検を行っていたことになる。 愛知県の別のトヨタ系販社の店長はこれについて、「自分たちの店では整備士が4人で年間にできる車検は1000件程度。整備士7人で1年間に2500件以上はさすがに多い」と指摘する。この販社では45分車検のサービスは公式にうたっていない。ただ、新車購入から3年目の初回車検に限り、見積もり段階で車を見た上で、「45分のスピード車検が可能だと判断することもある」という』、「45分車検」をサイトに出していたということは、現場の判断だけでなく、会社も承認していたことになるのではなかろうか。「店長は指示していない」、というのもウソだろう。
・『トヨタも「45分」を売りに  スピード車検は愛知県内の販社だけの売りではない。トヨタのホームページには「トヨタだからジャスト・イン・タイム、プロの技術で45分で車検完了」と紹介している。トヨタ系販社の中には「30分車検」(ハイブリッド車は40分)をうたうところもある。 西日本のトヨタ系販社の幹部は、「新車購入後3年の初回車検と2回目の車検の一部では、部品交換なしで45分車検は可能だが、車齢が長くなると部品交換なども増えて2時間以上かかるのはざら」と話す。近年比率が高まっているハイブリッド車はエンジン車に比べて車検の時間がかかることも多く、車検にかかる時間は慎重に見積もっているという。 つまり、「45分車検」そのものが諸悪の根源というわけではなく、プラザ豊橋で起きた大量の不正車検は、車検業務に当たる整備士の数と受注数(車検車両の受け入れ)のバランスが崩れていたにもかかわらず、放置されていたことが問題の本質だろう。前出の愛知県の販社の店長は「ネッツトヨタ愛知は(1935年に創業した)名門のATグループ傘下で、いわゆる“お堅い会社”。過去にも問題を起こすようなことはなかった。なぜこんな不正が起きたのか」と首をかしげる。 ネッツトヨタ愛知の担当者は、「車検の台数目標は存在していたが、整備士の人員規模が適切だったかは改めて検証する必要がある」と説明する』、「整備士の人員規模」からみて無理な「車検の台数目標」が今回の「不正」の背景の1つにありそうだ。
・『不正車検の始まりは特定できず  今回の件でネッツトヨタ愛知が聞き取りを行ったところ、検査員は「2年よりも前から不正を行っていた」ことを認めたものの、いつから行われていたかは特定できなかったという。 販売店が車検を行った場合、指定整備記録簿と呼ばれる書類を2年間保管する義務がある。そのため、中部運輸局は過去2年間分の車検を法令違反とした。仮に2年よりも前に不正があっても、書類での確認ができないため不問にせざるをえないのだ。ATグループでは、ネッツトヨタ愛知の問題を受けて、傘下のほかの3社でも不正車検がなかったのかを点検している。 ネッツトヨタ愛知は半年に一度、販売店を対象に社内監査を行っていたが、主に書類をベースとした監査でプラザ豊橋の不正車検を見抜けなかった。再発防止策として、監査の強化や全社員へのコンプライアンス教育の徹底、サービスオペレーションの見直しを軸とする再発防止策を策定し中部運輸局に提出している。 中部運輸局が行政処分を発表した3月30日、トヨタ系販売会社の組織である「トヨタ自動車販売店協会」の役員会が行われた。トヨタ国内販売事業本部の佐藤康彦本部長は販売店での不祥事が増えていることに触れ、人材育成の重要性を強調したという。販社関係者によると、トヨタは全国の販売会社に対してネッツトヨタ愛知と同様の事案がないか、ヒアリングをしているという。 トヨタ系ディーラーで起きた前代未聞の不正車検。全国の販社に対するヒアリングを経て、トヨタはどんな指示を出すのか(記者撮影) 国内の新車販売はコロナ禍が響き2020年度は5年ぶりに500万台を下回った。コロナの影響が軽微だった2019年度でも最盛期の3分の2にまで縮小している。一方で、国内の自動車保有台数(乗用車・商用車)は8000万台弱と緩やかな増加が続く。保有台数が増えていれば、法律で定められている車検の需要も見込める。 乗用車の場合、新車購入から3年、以降は2年おきの車検は販社の貴重な収益源だ(詳細は「販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか」)。アフターサービスとして安定した収益が得られる車検は顧客からの信頼があってこそ。東北地方のトヨタ系販社の社長は「車の販売会社として、正しいメンテナンスは責務。襟を正して真摯に取り組んでいかないといけない」と話す。 今回の問題が発覚した後、他のメーカーでも「ウチは大丈夫か」となり、車検の抜き打ち監査に動くところもある。前出のホンダ系販社の店長はこう述べた。「(店舗ごとに)高い数値を求められて、現場の整備士に余裕がなかったのだろうか。ましてトヨタ、しかも愛知県で」。トヨタ系に限らず全国の販売会社に衝撃が走った不正であることは間違いない。 【情報提供のお願い】東洋経済では、自動車ディーラーの経営や車検の課題を継続的に取り上げていきます。こちらのフォームへ、情報提供をお待ちしております』、「乗用車の場合、新車購入から3年、以降は2年おきの車検は販社の貴重な収益源だ」、これも今回の「不正」の背景の1つのようだ。

第三に、この続きを、4月11日付け東洋経済Plus「新車を売った後のアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26725/?utm_campaign=EDtkprem_2104&utm_source=edTKO&utm_medium=article&utm_content=210417&_ga=2.253158665.1680389212.1618707326-1011151403.1569803743
・『ネッツトヨタ愛知で発覚した不正車検では、中部運輸局の監査に対して、整備士が「過剰な入庫が常態化していた」と話したという。販売店が身の丈を超えた数の検査を受け入れたのは、車検が「儲かるサービス」であることと無縁ではないだろう。 自動車の安全確保という趣旨の下、自動車検査(車検)は道路運送車両法で義務づけられている。普通車や軽自動車は新車で購入した場合、初回が購入後3年、2回目以降は2年ごとに受ける必要がある。車検を受けていない車で公道を走っていた場合、罰則(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)もある。 本来、車検は国が行うべきものだが、新車の販売店が車検を代行しており、それが収益源になっている』、なるほど。
・『車検には3つの方法  車検の主な検査項目は、車両に割り当てられている車台番号などが自動車検査証(車検証)と同じかの確認、ライトやタイヤなどの正常性の確認(外観検査)、ブレーキやヘッドライトの性能確認、排気量検査がある。 検査方法は、①ユーザー自身が運輸支局などに持ち込んで行う、②点検・整備と完成検査まで一括して代行する「指定整備工場」へ持ち込む、③点検・整備のみを行う「認証整備工場」に持ち込み検査を運輸支局などで行う、の3つがある。 新車の販売店は指定整備工場の資格を取得していることがほとんどだ。馴染みの販社から車検の案内が記載されたダイレクトメールを受け取り、車を持っていく人は少なくないだろう。 車検とは別に法令で義務づけられているのが12カ月点検と24カ月点検だが、この点検を受けていなくても罰金や罰則はない。24カ月点検は通常、車検に合わせて実施する一方、12カ月点検はそうした機会もなく、半ばユーザーの自主性に委ねられている。 国土交通省によると、普通車と軽乗用車の12カ月点検実施率は最新集計で約6割(2017年)。それでも、日本のように1年や2年で点検、車検を実施する国は海外でも珍しい。そもそも点検整備が法律で義務づけられている国はニュージーランドやアメリカ(州によって異なる)など先進国でも少なく、「過剰すぎる」と批判されることもある。 一方、車検制度は自動車業界にとってアフターサービス市場を形成する重要な“事業”だ。車検や点検に結びついた整備や修理、部品交換といった整備事業の市場は大きく、日本自動車整備振興会連合会によると、2020年度(2019年7月~2020年6月)の総整備売上高は約5兆6000億円もある』、「整備」の市場規模もかなりあるが、そのうち「車検」の規模はどれくらいあるのだろう。
・『新車販売減り、整備に活路  特に近年、車検や点検の入庫獲得に躍起なのが新車の販売店だ。理由は主に2つある。 1点目は重要な収益源になっているという点だ。販売店の主な事業は新車販売以外に、整備(サービス)や中古車販売、自動車保険などがある。 その中で、安定収益とされるのが整備事業だ。仕入れ費用で利幅が薄い新車販売と異なり、整備事業はそうした費用もかからない。ホンダ系販売店の店長は「整備事業は新車販売に比べて利益率が高く、安定的に収益の5割を占める」と話す。 さらに自動車の平均車齢はここ30年で2倍の9年近くにまで伸び、新車を売る機会は減っている。今や国内の新車販売はピークだった1990年の777万台に比べ3分の2の規模だ。一方で自動車の保有台数は8000万台弱と緩やかな増加が続く。車検や点検は法律で定められているため、需要は底堅い。 もう1つは顧客との接点を持てること。首都圏の日産系販社の社長は「購入してもらった新車で車検や12カ月点検の入庫が獲得できれば、顧客と“つながる”ことができる」と話す。来店してもらえれば営業スタッフがお客さんと話す機会も作れる。その結果、次の新車への乗換えや保険の提案が可能になる。 西日本のトヨタ系販社の幹部は「うちの場合、新車を購入したお客さんのうち7割が初回車検に来てくれる。車検は利益率が高いので、(利益率が低い)新車販売が減ってきても、当面は車検需要で食っていける」と本音を漏らす。「車検や点検で車を入れてくれるのは『ディーラーだから』という信頼感が大きい。お客さんと信頼関係を築いて、新たな商機につなげていくのが基本」(ホンダ系販社) つまり、販社は新車を販売して終わりではない。販売してから、いかにお客さんと関係を維持し、メンテナンスなどで店に来てもらえるかが重要なのだ』、「整備事業は新車販売に比べて利益率が高く、安定的に収益の5割を占める」、「車検や12カ月点検の入庫が獲得できれば、顧客と“つながる”ことができる」、確かにディーラーにとっては「車検」は重要なビジネスだ。
・『「メンテパック」で顧客囲い込み  こうした背景から新車の販売店では車検や点検、消耗品補充がセットになったメンテナンス(メンテ)パックの販売を積極的に推進している。新車発売後の1カ月点検や6カ月点検をパックに盛り込む会社も少なくない。手厚いサービスにみえるが、それだけ収益に結びつけようとしているとも言える。前出の日産系販社では「初回の車検は(同社で新車を買った人のうち)8割、2回目で7割を獲得している」という。 車検の争奪戦には、車検チェーンなどの整備業者やカー用品店、ガソリンスタンドなども参戦しており、競争が激化。事業性の側面が強まっていることは否めない。 しかし、車検や点検は法令に基づいた義務であり、安心・安全のためという大前提でユーザーがお金を払っている。前出の日産販社社長こう強調する。「車検は自動車産業を支える1つの根幹。どんなことがあっても手抜かりは許されない」』、確かに「車検は自動車産業を支える1つの根幹。どんなことがあっても手抜かりは許されない」、それなのに、トヨタの「愛知県内で最大手のディーラー」で「不正車検」が行われていたとは、まさに不祥事中の不祥事だ。
タグ:企業不祥事 日経ビジネスオンライン 河合 薫 東洋経済Plus (その23)(「まだ黒じゃない?」 エリートが堕ちる無意識下の悪事、整備事業の指定取り消し 整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃、新車を売った後のアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか) 「「まだ黒じゃない?」 エリートが堕ちる無意識下の悪事」 今日の新聞報道によると、大阪市や大阪府の職員が多数で飲食店を利用していたことも判明している。いくら歓送迎会のシーズンとはいえ、自粛を呼びかける主体がこのザマでは、示しがつかない。 「「パワハラ対策の相談員が、パワハラをしていた」、まるで笑い話だ。しかし、(対象となった人は)「うつ病を発症し、昨年、退職、悲惨だ 厚労省といえば、前身は戦前のエリート官庁の内務省である。それがこんな体たらくとは情けない。米国でも「従業員の4人に1人が、悪いと分かっていることを強いられるプレッシャーを経験したと答えた」、組織につきものの病理のようだ。 「石原信雄氏」の指摘とは興味深そうだ 「エリート行政のマイナス面も同じようにしてある。その弊害の最たるものは、エリート意識がもたらす独善的な判断や権限行使によって行政が硬直化してしまうということである」、その通りだ。 「組織の褒美をひとつ、またひとつ、と手に入れるうちに、誠実さや勇気、謙虚さや忍耐といった人格の土台が崩壊し、そうした上位者から生まれる絶対的権力者が長きにわたり地位にとどまることで、組織は“ウミ”だらけの組織に堕することになる。 やがて組織全体に緊迫感がなくなり、現場は「何をやっても無駄」とあきらめ、「上もやってることだから」と腐っていく」、組織が腐敗していくメカニズムには、納得できる部分が多い。 「整備事業の指定取り消し、整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃」 「愛知県内で最大手のディーラー」で「不正車検」が「2年間」も続いていたとは、心底から驚いた。 「違反行為の対象となっている5158台の再検査を最優先しつつ、ほかの店舗で扱った車検の車両についても再点検するのだから、その作業量は膨大だ」、自ら蒔いた種だから、自分で責任を持って対処するのは当然だ。 「45分車検」をサイトに出していたということは、現場の判断だけでなく、会社も承認していたことになるのではなかろうか。「店長は指示していない」、というのもウソだろう。 「整備士の人員規模」からみて無理な「車検の台数目標」が今回の「不正」の背景の1つにありそうだ。 「乗用車の場合、新車購入から3年、以降は2年おきの車検は販社の貴重な収益源だ」、これも今回の「不正」の背景の1つのようだ 「新車を売った後のアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか」 「整備」の市場規模もかなりあるが、そのうち「車検」の規模はどれくらいあるのだろう。 「整備事業は新車販売に比べて利益率が高く、安定的に収益の5割を占める」、「車検や12カ月点検の入庫が獲得できれば、顧客と“つながる”ことができる」、確かにディーラーにとっては「車検」は重要なビジネスだ。 確かに「車検は自動車産業を支える1つの根幹。どんなことがあっても手抜かりは許されない」、それなのに、トヨタの「愛知県内で最大手のディーラー」で「不正車検」が行われていたとは、まさに不祥事中の不祥事だ。
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ESG(その1)(ESG投資がなぜ騒がれているか知っていますか 脱炭素の流れが大規模な資本の再配分を起こす、ESG投資のプロが語る「脱炭素マネー」の潮流 気候変動が生み出すリスクとビジネス機会、誤ったESGの議論は格差を拡大し成長を損なう 日本企業に株主主権の強化を求めたのは間違い) [企業経営]

今日は、ESG(その1)(ESG投資がなぜ騒がれているか知っていますか 脱炭素の流れが大規模な資本の再配分を起こす、ESG投資のプロが語る「脱炭素マネー」の潮流 気候変動が生み出すリスクとビジネス機会、誤ったESGの議論は格差を拡大し成長を損なう 日本企業に株主主権の強化を求めたのは間違い)を取上げよう。

先ずは、2月1日付け東洋経済オンライン「ESG投資がなぜ騒がれているか知っていますか 脱炭素の流れが大規模な資本の再配分を起こす」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/408511
・『「世界的な流れを力に、民間企業に眠る240兆円の現預金、さらには3000兆円ともいわれる海外の環境投資を呼び込む」 1月18日の施政方針演説で菅義偉首相はそう述べ、国内外の巨額マネーを誘導しグリーン成長戦略を実現する考えを表明した』、なるほど。
・『世界のESG投資残高は4000兆円規模に  「環境投資3000兆円」というのは、国際的なESG(環境・社会・企業統治)投資の調査機関であるGSIA(世界持続可能投資連合)の報告書を基にしている。それによると、2017年度末の世界のESG投資残高は30.7兆ドル(約3200兆円)で2年前から34%増えた。ESG投資の定義がかなり幅広く、E(環境)に限った投資ではないが、2020年には40兆ドルに近づいたとみられる。 『週刊東洋経済』2月1日発売号は「脱炭素サバイバル水素、EVめぐり大乱戦」を特集。世界各国が将来のグリーン戦略を示すなか、菅首相も「2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロに」と表明。日本でも脱炭素への大変革が始まった。特集では、日本の脱炭素戦略のポイント解説、日本モデルの問題点、グリーンマネーのうねり、アメリカ、欧州、中国の動向、日本の強み・ハイブリッド車のジレンマ、トヨタ自動車の燃料電池車の成否、アップルも参入するEV覇権争いの行方、鉄鋼・商社・重工業といった各産業の課題、EV・水素・再生可能エネルギーの注目70銘柄など、脱炭素で変わる世界と日本企業の実情に迫った。 直近のESG投資の勢いを実証するのが、ESG関連ETF(上場投資信託)への資金流入の急増だ。昨夏以降、世界全体の純流入額は急増。コロナ禍の中、再生可能エネルギーへの投資など気候変動対策を経済再生につなげる「グリーンリカバリー」が欧州を中心に世界的潮流となったことと軌を一にする。 日本国内でもESG投資熱は顕著だ。象徴的事例が、大手資産運用会社アセットマネジメントOneが2020年7月に運用を開始した追加型投信「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」の絶大な人気だ。当初設定額で国内歴代2位の3830億円を集め、直近の純資産総額は9200億円まで膨らんだ。 個人投資家の参入も顕著だが、グリーンマネーの主役は何といってもグローバルな大手機関投資家だ。単に株や社債に投資するだけではない。企業に対してさまざまな形で脱炭素を迫る彼らの圧力は日に日に強まっている。 世界の500以上の機関投資家が加盟する投資家団体「クライメート・アクション100プラス」は、温室効果ガス排出量の多い世界167の企業とのエンゲージメント(対話)を通じ、2050年までの排出ゼロへ向けた目標設定と対策を求めている。 その団体にも加盟する世界最大の資産運用会社であるアメリカのブラックロック。同社のラリー・フィンクCEO(最高経営責任者)は気候変動リスクを先取りした形で「大規模な資本の再配分が起きる」との認識を示し、投資先企業に対して気候変動リスクの情報開示や対策の要求圧力を強める。同社は昨年、そうした対応が不十分だとして53社の株主総会で取締役選任案に反対票を投じるなどした。 HSBCグローバル・アセット・マネジメントの機関投資家ビジネス部門でESGリーダーを務めるサンドラ・カーライル氏は、「気候変動による現実のリスクが増大し、再エネなどのビジネス機会も増える中でESGが資本の流れを変えた」と話す。そして、環境政策を柱とするバイデン政権の誕生で、「カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)などの進歩的な投資家に限らず、(世界最大規模の)アメリカマネーの脱炭素シフトが本格化する」とみる』、確かに「バイデン政権の誕生」は大きな追い風のようだ。
・『日本の機関投資家も脱酸(正しくは「炭」)素を軸に選別  日本の機関投資家の間でも脱炭素を軸とした企業選別が進む。野村アセットマネジメントはカーボンプライシング(炭素の価格づけ)の仕組みを活用して企業の二酸化炭素(CO2)排出量をコストに換算し、財務情報に組み込んで投資判断に活用する。CO2はESG評価会社の推計値も使ってサプライチェーン全体の分も評価する。「今年1月から大手300社ほどを対象に始め、順次対象を広げる方針」(同社総合企画部)だ。 日本生命保険は今年4月から投融資全体にESG評価を導入する。国債や国内融資、不動産にもカバー範囲を広げ、気候変動をテーマとする企業対話も強化する。国内運用会社として最も早くESG評価を開始したニッセイアセットマネジメントのノウハウを活用した独自評価を行う。 SOMPOホールディングスは2020年9月、国内の石炭火力発電所の新規建設について保険引き受け・投融資は原則として行わないと発表。取引先の立地条件などから例外規定を残すものの、脱炭素への重要な一歩となる。「自然災害が増えていけば保険料が高騰し、損害保険という金融インフラの機能を果たせなくなる危惧がある。金融機能を使って影響力を行使し、気候変動問題の改善に貢献したい」と堀幸夫CSR室課長は話す。) 取締役選任への反対投票や株主提案を増やすなど、大手機関投資家は、今や「環境アクティビスト(物言う株主)」へ変容しつつあるといっても過言ではない。そうした流れに便乗するヘッジファンドなどの新興投資家や環境団体も増え、企業への圧力は増すばかりだ。 アメリカでは世界最大の石油・ガス開発会社のエクソン・モービルに対し、気候変動リスクへの対応の遅れで10兆円以上の株主価値が失われたとしてヘッジファンドが改革を要求している。エクソンに対しては、ブラックロックなども2020年の株主総会で会社側の取締役選任議案に反対票を投じた。 日本国内では昨年、環境NPOの気候ネットワークがみずほフィナンシャルグループに対し、脱炭素の行動計画を年次報告書で開示するよう定款変更を求める株主提案を行った。6月の株主総会で否決されたものの、海外の大手議決権行使助言会社が賛成を推奨し、野村アセットや農林中央金庫系運用会社を含む国内外株主の34.5%の支持を得た。 気候ネットワークの平田仁子理事はこう語る。「巨額の投融資を行う金融機関が資金の振り向け先をどうするかは決定的に重要だ。みずほの件で株主提案にはものすごい波及効果があるとわかった。今後も脱炭素に向けた金融の“うねり”の中で何ができるか考えたい」。ほかの環境団体と連携し、石炭火力発電を続ける企業の主要株主にダイベストメント(投資撤退)を求める要請書も送付している。 今後はEU(欧州連合)が導入を予定する「EUタクソノミー」の影響も注目される。何がグリーンな経済活動かを分類する基準となるもので、EUに拠点を置く機関投資家はその基準に従って運用状況を開示するよう求められる。彼らの投資先の日本企業や、彼らの資金を預かる国内運用会社への影響は避けられず、投資家による企業選別が加速する可能性は高い』、「大手機関投資家は、今や「環境アクティビスト(物言う株主)」へ変容しつつあるといっても過言ではない」、そこまできたかといささか驚かされた。「石炭火力発電」は日本だけが推進してきたが、ESGの観点から見直しも進みつつある。
・『日本企業の対応は待ったなし  日本企業の対応は待ったなしだ。大和総研でESG投資動向を分析する田中大介研究員は、「グリーン投資の拡大に伴い、環境対策や情報開示が従来と同じままでは企業の資金調達は難しくなる」と語る。そのうえで、化石燃料関連など脱炭素が短期的に難しい企業に対して資金を誘導する「トランジション(移行)ファイナンスの重要性も高まる」と指摘する。そうした企業の改善がない限り、社会全体の脱炭素達成は不可能だからだ。 政府がグリーン成長戦略の旗を明確に振り、企業が能動的に変革を進め、投資家が企業の成長への確信を強めてマネーを投じれば、脱炭素へ向けた歯車の回転は加速する。日本でその流れが本格化していくか。官民の本気度が問われることになる』、「日本で」「脱炭素へ向けた」「流れが本格化して」もらいたいものだ。

次に、2月6日付け東洋経済オンライン「ESG投資のプロが語る「脱炭素マネー」の潮流 気候変動が生み出すリスクとビジネス機会」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/409463
・『世界的な気候変動リスクへの関心の高まりと各国政府の脱炭素宣言もあって、環境・社会・企業統治を考慮したESG投資は全世界で急速に拡大している。中心的な担い手は、世界展開する欧米の大手機関投資家だ。 その1社であるHSBCグローバル・アセット・マネジメントで機関投資家ビジネス部門のESGリーダーを務めるサンドラ・カーライル氏は、ESGに関する資産運用業界のスポークスパーソン的存在であり、責任投資原則(PRI)のボードメンバーを務めた経験も持つ。同氏に、世界のESG投資の動向や日本企業のESG活動の評価などについて聞いた(Qは聞き手の質問、Aはカーライル氏の回答)』、「ESGに関する資産運用業界のスポークスパーソン的存在」の見解とは興味深そうだ。
・『ESGは資本の流れを変えた  Q:主要各国が2050年までのカーボン・ニュートラル達成方針を宣言したことを受け、世界のESG投資にはどんな変化が見られますか。 A:ESGは資本の流れに大きな変化を与えた。ESGは今や投資分析の重要な要素となった。気候変動はますます現実のリスクを生み出すと同時にビジネス機会をもたらしている。投資家は世界をESGの「レンズ」を通して見るようになり、それがビジネスへの資本の流れを変えている。 例えば、日本は1980年代以来、太陽光発電の技術でリーダーだった。ただ、1990年代に入っても太陽光技術の価値はあまり高く評価されなかった。でも今は、そうした技術を持つ企業が高く評価されるようになっている。 投資家はクリーンエネルギーやヘルスケアのようなESGの解決策に資金を投じるようになった。特定のESG関連指数に投資する投資家もいるし、ポートフォリオをゼロカーボンに近づけようとする投資家もいる。HSBCが取り組んでいるようなナチュラル・キャピタル(水資源や森林などの自然資本)のファンドに資金を投じる投資家もいる。 Q:気候変動対策に積極的なバイデン政権に転換したことで、アメリカの投資家の姿勢はどう変わるでしょうか。 A:アメリカの投資家の中でもカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)など一部の機関投資家はESGに関して非常に進歩的な考え方をしている。日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)と同様だ。一方で、ほかの多くの投資家ははるかに遅れており、ESGをまったく配慮しない投資家もいる。 バイデン大統領は気候変動対策と環境正義(Environmental Justice)を政策の柱としている。そのため、アメリカの投資家全体の間でESGへの関心が高まり、資金の流れに本格的な変化が起こるだろう。 アメリカの投資家は欧州やアジアの投資家に比べて投資のスタンダードや枠組みをより重視しており、アメリカのSASB(サステイナビリティ会計基準審議会)のルールをESG投資の際の参照基準としている』、「投資家は世界をESGの「レンズ」を通して見るようになり、それがビジネスへの資本の流れを変えている」、「投資家はクリーンエネルギーやヘルスケアのようなESGの解決策に資金を投じるようになった」、「バイデン大統領は気候変動対策と環境正義・・・を政策の柱としている。そのため、アメリカの投資家全体の間でESGへの関心が高まり、資金の流れに本格的な変化が起こるだろう」、なるほど。
・『ESG投資はリターンに結びつくのか  Q:ESG投資は必ずしも市場平均以上の投資リターンには結びつかないと言われてきました。 A:ESGを組み込んだ投資や財務分析は必ずしも投資パフォーマンスにつながるとはいえない。ESGはパフォーマンスを生み出す1つの要素にすぎないからだ。しかし、中長期的なリスク調整後リターンで言えば、環境や従業員・株主への対応などのESGをうまく管理する企業は、中長期的によりよいパフォーマンスを上げるとわれわれは考えている。 Q:グリーンな経済活動を分類するEU(欧州連合)のタクソノミー規則が市場に導入された場合の影響をどう考えますか。 A:2021年3月に欧州のアセットマネジメント(資産運用)会社に対するディスクロージャー(情報開示)規則が施行される。欧州以外の誰もがその規則がどう機能し、何が開示されるかに注目している。 ほかの国々は必ずしもEUと同じタクソノミーを導入しないだろう。EUタクソノミーはかなり制限的であるためで、部分的に自国に合うものを取り入れることになろう。重要なのは、ローカル市場を反映した規則であることだ。スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードと同様に、他の地域とまったく同じものである必要はない。 日本は2022年にかけてEUタクソノミーの導入状況と欧州の投資家の反応を見たうえで将来、日本国内の投資家のための規則をつくることになるかもしれない。ただ、何がサステイナブル(持続可能)な事業活動かを投資家により多く情報開示することは、EU方式かEU以外の方式かにかかわらず、非常に重要な原則だ』、「中長期的なリスク調整後リターンで言えば、環境や従業員・株主への対応などのESGをうまく管理する企業は、中長期的によりよいパフォーマンスを上げる」、「日本は2022年にかけてEUタクソノミーの導入状況と欧州の投資家の反応を見たうえで将来、日本国内の投資家のための規則をつくることになるかもしれない」、なるほど。
・『日本企業のESG活動の強みは  Q:HSBCが本社を置くイギリスはEUから離脱しましたが、HSBCはEUタクソノミーにどう対応していますか。 A:HSBCの顧客はグローバルであり、EU域内のフランスやドイツなどでも大きなビジネスを行っている。われわれは規則に従ってEUタクソノミーを適用することになるし、グローバルな顧客のために何がいいかを考えている。顧客は5年ぐらい前からESG情報を求めるようになっており、われわれは世界各地域で非常に多くの情報開示を行っている。 Q:日本企業のESG活動における長所と短所についてどう見ていますか。 A:日本企業の長所として感じるのは、ESGに関する情報開示と説明の必要性を強く認識していることだ。日本でスチュワードシップ・コードが導入されたことが大きな契機となった。日本企業のSDGs(持続可能な開発目標)に関する行動方針をまとめたステートメントは非常に実践的なもので、それは日本に行って企業と対話するたびに感じる。 また、日本企業はSDGsを国際的に考え、それが日本企業にとって何を意味するかをよく考えている。ジェンダー・ダイバーシティ(女性の活躍推進)など社会問題に焦点を当てた取り組みも大きな強みだ。 一方、日本企業の課題と思われるのは、国際的な投資家として期待するレベルの対話を行うことが英米の企業に比べて依然難しいことだ。そのため、投資家として情報を得ることが比較的難しい。一部の日本企業の対応は極めていいが、閉鎖的な企業もまだ多い。文化的な行動様式の違いもあろうが、国際的に見れば変化はまだスローといえるかもしれない。 もちろん、過去10年間の変化は常にポジティブなものだった。投資家との対話や議論が増え、ESGに焦点を当てた取り組みが増えたのは確かだ。 Q:文化的な違いというのは言語を含めてですか。 A:言語は常に障壁になっている。これは日本に限ったことではない。言語の違いも含め、投資家との議論や対話を行う文化が英米企業に比べると進んでいるとはいえない。ただ、そうした文化は変化してきており、ESG重視によって大きな前進が見られる』、「一部の日本企業の対応は極めていいが、閉鎖的な企業もまだ多い。文化的な行動様式の違いもあろうが、国際的に見れば変化はまだスローといえるかもしれない」、「投資家との議論や対話を行う文化が英米企業に比べると進んでいるとはいえない」、やはり課題も多そうだ。
・『重要なのは脱炭素化の「証拠」  Q:石油・ガス業界など化石燃料関連の企業にはどう対応していますか。 A:われわれは気候変動リスクの観点からあらゆる産業の企業を分析する。投資先企業については、CO2排出原単位(carbon intensity)を見るために、ビジネスモデルのカーボン・フットプリント(商品・サービスのライフサイクル全体で排出された温室効果ガスをCO2排出量に換算して「見える化」する仕組み)を調べる。 もちろん化石燃料関連の企業はCO2排出原単位が高いので、より厳密に分析する。そうした企業に対して脱炭素化のプランを尋ねる。ネットゼロ達成に向けて、期間はどれくらいを想定しているのか。目標達成に向けてどのような課題があり、どのような技術を用いるのか。 さらに、非常に実務的な質問として、経営陣の報酬を脱炭素化の取り組みに連動させているかといったことも聞く。そうした分析を通じて脱炭素へ向けた勝者と敗者を判断し、ポートフォリオの低カーボン化を進めている。重要なのは、脱炭素化へのトランジション(移行)を確信できる証拠があるかどうかだ。 Q:ダイベストメント(投資撤退)の対象となる企業とは。 A:投資家の一部はすでに石炭や石油・ガスの関連企業の株式を売ったり、投資対象から外したりしている。だが、われわれは異なるアプローチをしている。企業との話し合いやエンゲージメント(建設的対話)を重視する。2021年の現在、どの業界のどの企業が将来的にトランジションに成功するか失敗するかを正確に見通すことはできないからだ。 そのため、原則としてわれわれはダイベストメントを行わない。投資を続け、エンゲージメントを行う。もしくは、リスク調整後リターンで見てリスクが非常に高い場合には新たな投資は行わない。 Q:ESG投資についてはすでに「バブル」との見方も一部にあります。 A:市場でブーム&バスト(バブルとその崩壊)が起こるのは、あるタイプの投資やESGストーリーに投資家が一斉に群がり、市場価格が上昇して過剰評価の状態になるためだ。これに対し、ESGを財務分析の1つの要素と考え、ROEやレバレッジ、資産価格なども踏まえて投資を行えば、ブーム&バストにはつながりにくい』、「ESGを財務分析の1つの要素と考え、ROEやレバレッジ、資産価格なども踏まえて投資を行えば、ブーム&バストにはつながりにくい」、確かにその通りなのかも知れない。
・『コロナ禍がグリーンスワンかもしれない  Q:BIS(国際決済銀行)が報告書で警告した気候変動発の金融危機「グリーンスワン」についてはどう考えますか。 A:気候変動には未知のことが多い。2020年は地球の平均気温が過去最高の気温を記録した年となり、地球温暖化が進んでいるのは事実だ。昨年は(台風などの)熱帯性暴風雨も過去最多となったが、こうした気候変動がこの先、われわれにどう影響するかは見通せない。グリーンスワンのようなことが発生する可能性は否定できないだろう。 人類が自然への侵害、開発を増やしていけばグローバル・パンデミックを引き起こすという科学的証拠も指摘されている。もしかしたら今(のコロナ禍)がまさにその状況であり、グリーンスワン的な出来事と言えるかもしれない。 グリーンスワンを防ぐには、気候変動リスクを考え、それに対応していくことだ。グリーンスワンを待つことはやめよう。課題を理解し、対応策を考えていけば、リスクに対処できるだろう。われわれはポートフォリオの見直しを通じて、リスクに対応していく。 Q:HSBCグローバル・アセット・マネジメントは合弁で「自然資本」に投資する会社を設立しました。 A:自然資本としては例えば農地や農業、林業・山林管理、海洋保全、マングローブ林やサンゴ礁の保全などが対象となる。太陽光発電や風力発電事業などは対象とならない。今のところリスクの少ない先進国が対象だ。 投資家は自然保護の必要性を理解しており、われわれが創設した自然資本ファンドへの関心は非常に強い。現在のファンドの規模は小さいため、機関投資家のためのより大規模なファンドを設定する予定だ』、「自然資本ファンド」のリターンは、農産物や材木、海産物などなのだろうが、誰が管理・栽培するのかにより大きな違いが出てくるので、果たして「ファンド」ビジネスが成り立つのだろうか。

第三に、4月5日付け東洋経済オンラインが掲載した日銀出身で前早稲田大学教授、現在、(社)自律分散社会フォーラム代表理事の岩村 充氏による「誤ったESGの議論は格差を拡大し成長を損なう 日本企業に株主主権の強化を求めたのは間違い」を紹介しよう。これはかなり理論的だが、経済システムの問題もをキレイに解き明かしている好論文だ。
https://toyokeizai.net/articles/-/420597
・『ESG経営あるいはESG投資といった議論が盛んになってきた。Eは環境、Sは社会、そしてGは企業統治だが資本主義下では株主ガバナンスといってよい。これらの観点を経営管理あるいは投資の軸に据えることで、企業は発展し、環境や社会全体、ほかのステークホルダー(顧客、従業員、取引先など)などにもよい影響を与えるはずとする議論である。 しかし、この議論、そもそも筋がおかしくないだろうか。EとSは多くの人が賛同する「目標」だが、Gは目標達成のための「手段」にすぎない。そのGをEやSと同格の目標であるかのように扱うのは、議論のすり替えでありただの政治的アジテーションではないか。浅い考えでGの強化を叫ぶことは、EやSをよくするどころか、かえって損なう要因になりかねない』、冒頭から岩村氏らしい理論的なパンチだ。
・『株主ガバナンス強化論はなぜ間違いなのか  そのことを、今や経済学の基本定理といえる「コースの定理」の考え方を用いて整理しよう。図にするとわかりやすいので次ページに掲載した(「図」はリンク先参照)。 横軸に企業の新しい可能性に対するチャレンジ度をとり、縦軸に企業のステークホルダーである株主と従業員に生じる変化に対する限界的な(単位当たりの)利益と損失をとることにする。 企業経営のチャレンジ度が上がることで株主に生じる限界的な利益を図示すると、それは一般的には右下がりの軌跡となる。なぜなら、企業が新たな機会に挑戦して得られる追加的なリターンは最初のうちこそ大きいが、その程度を上げていくうちに、持てる経営資源の限界に制約され徐々に低下するはずだからだ。 一方、チャレンジ度の増加が従業員にもたらす単位当たりの損失は右上がりの直線である。企業が新しいことに挑戦すると、従業員たちが蓄えていた業務に関する知識や経験は、新しい状況に応じて改めて作り直されなければならない。また、企業がチャレンジ度を上げるにしたがって倒産可能性も増加する。株主は分散投資によって倒産による損失をコントロールできるのに対し、従業員にはそれができないからだ。 この図を見ていくと、2014年に経済産業省の研究会の成果として公表された『伊藤レポート』に代表される、株主ガバナンス強化論の大きな問題点が明らかになる。 企業活動水準について見ると、企業がまったくリスクに挑戦しないXは確かに過小だが、株主利益が最大化されるYは従業員に生じる負担という点で明らかに過大である。では最適点はどこなのだろうか。それは、株主利益を示す右上がり直線と従業員損失を示す右下がり直線の交点Zである。 この図では、企業のステークホルダーたちに生じた利益や損失の大きさが、面積として表現されている。それをAからDまでの4つの三角形に分けて確認しておこう。まずAの部分、これは株主に生じた金銭的利益から、従業員に生じた社会的損失を差し引いたネットベースでの社会的サープラス(余剰)である。この部分を黄色に塗っておくことにする。 次はBとCだが、ここはマクロでみればゼロサムの部分だ。株主に生じた利益と従業員に生じた損失とが打ち消し合って、経済価値の移転、従業員から株主への移転だけが生じているだけの部分だからだ。 問題はDの部分だ。ここは、株主利益が存在しないのに社会的損失だけが生じていることを示す部分である。これを放置する国家や経済は衰え、やがては消滅の日を迎えるかもしれない。この部分、わかりやすくするために青で塗っておくことにしよう。 こう説明すれば、日本経済全体にとって中間点Zの合理性は明らかだろう。企業が水準Zを選択してくれれば、CとDの部分は関係者に意識はされても現実には存在しなくなるから、企業活動はネットベースではAの大きさに相当する富を作り出してくれることになる。では、どういう方法で企業決定をZに導いたらよいだろうか』、この「コースの定理」に基づいた「図」は、難しいが、かなり高度なことが盛り込まれているようだ。
・『社会とって最適なZで合意することは可能だ  そこで想起するのが「コースの定理」である。コースの考えによれば、この図でZと表記した最適な企業活動水準は、当事者同士が交渉して合意し、その合意を遵守すれば実現可能である。最適水準Zが選ばれるかどうかは、企業経営の主導権を株主が握っているのか、従業員が持っているのかには関係なく、両者の交渉と合意により実現できるはずだというのである。どうしてそうなるのか。 まず、企業がどの活動水準を選ぶか、それを決める権限を株主あるいは株主の代理人である経営陣が持っているとしよう。そのとき経営陣は活動水準として当然のようにYを選ぶだろうか。彼らが賢く、かつ従業員から誠実さにおいて信頼されているとすれば、もっとよい方法がある。Yよりも自重した水準であるZを選び、Yを選んでほしくないと考える従業員たちに相応の見返りを求めるという戦略が存在するのだ。 ちなみに、ここで従業員に求める見返りの大きさはCの面積よりは大きく、CとDを合わせた面積よりも小さなものでなければならない。Cの面積よりは大きくないと株主に利益がないし、CとDの合計より大きくなると従業員の賛成を得られないからだ。 やや具体的なイメージで言えば、彼ら経営陣としては、従業員に対して、「企業活動レベルを水準Zまで自制自重するから、その代わり、会社に忠誠心を持って参加してくれ、賃金は少なめでも頑張ってくれ、自分の会社での役割を意識して切磋琢磨してくれ」などと説くわけだ。何の合意もなく株主ガバナンス論を振りかざして水準Yを選ぶのではなく、従業員との合意の上でZを選んだほうが、株主にとっても従業員にとっても好ましい状態になる。 これに気づけば、単純な株主ガバナンス強化論が見落としていることは明らかだろう。問答無用型の株主ガバナンスは、従業員たちと経営陣との交渉あるいは合意形成への努力を無意味化することにより、日本全体に大きな外部不経済をもたらしかねないのだ。 ところで、この水準Zは、企業の意思決定を従業員が完全に握っていて、株主は企業の株式を持つか売るかの自由しかないときでも、同様に実現しうる。 この場合は、株主から従業員にBよりは大きくAとBの合計よりは小さい価値移転が生じる。結果として株主に残るのはAの面積の一部でしかないものの、企業がまったく新しいことに挑戦しないで何も得られない状態よりは、株主にとって好ましい状況を作り出せる。従業員たちも何のチャレンジもせずに水準Xにとどまっているより大きな報酬が得られるはずだ』、「何の合意もなく株主ガバナンス論を振りかざして水準Yを選ぶのではなく、従業員との合意の上でZを選んだほうが、株主にとっても従業員にとっても好ましい状態になる」、「問答無用型の株主ガバナンスは、従業員たちと経営陣との交渉あるいは合意形成への努力を無意味化することにより、日本全体に大きな外部不経済をもたらしかねない」、「株主ガバナンス論」を完膚なきまで叩きのめしたのはさすがだ。
・『同じZでも株主支配か従業員支配かで分配は変わる  しかし、ここで注意したいことがある。それは、企業活動水準として社会的最適点であるZを選ぶことに変わりはないのに、株主に支配されている場合と従業員に支配されている場合とでは、企業活動の成果の「分配」は大きく変わっているということである。 株主が企業を支配している場合には、株主に本来の帰属利益であるA+Bに加えてCとDの一部を合わせた大きさの従業員からの移転利益が生じる。従業員には本来の帰属損失Bに加えてCとDの一部を合わせた大きさの株主への移転損失が生じる。これに対し、従業員が企業を支配している場合には、従業員にAの一部の大きさの利益が生じて、株主にはAの残余部分に相当する利益しか生じないであろう。 つまり、企業経営が社会全体にとって最適な選択をするかどうかには関係なく、企業支配における株主の立場を強化することは、富める者をより富ませ、貧しいものをより貧しさせる効果があるわけだ。 そして、これはGの強化により日本経済全体の高い成長を実現できるなどと口にする政治家たちの思考不足をあざ笑うものでもある。なぜなら、一般に富裕層の消費性向は低く貧困層の消費性向は高い。だから、貧富の格差拡大は公正あるいは社会正義の問題だけでなく、いわゆる総需要の伸び悩みをも通じて国民経済成長の足を引っ張るのである。株主ガバナンス論は、長期的には日本を貧しくしかねないのである。 そこまで考えれば、第2次大戦後の公職追放の結果として従業員出身取締役に支配されていたとされる日本企業についても見方が変わってくるだろう。アングロサクソン型経営が世界標準となる中で、従業員に軸足を置きすぎと批判されるようになった日本的経営こそが、あの「高度経済成長」の理由の一つだったかもしれないという気がしてくるからである。そして似たような話がありそうなのは日本だけではない。重要な意思決定には従業員代表の同意が必要だとする「共同決定法」という法律の下にあった旧西ドイツがそれだ。 日本の企業経営に活力が失われた理由も、冷戦終了後のドイツの企業から輝きが消えていった理由も、国際的資本移動自由化の下で株主優遇を競い合うというという意味での「底辺への競争」に呑み込まれ、結果として株主以外のステークホルダー、とりわけ従業員たちとの合意を重視しなくなったことに関係があるだろうと筆者は考えている』、「貧富の格差拡大は公正あるいは社会正義の問題だけでなく、いわゆる総需要の伸び悩みをも通じて国民経済成長の足を引っ張るのである。株主ガバナンス論は、長期的には日本を貧しくしかねないのである」、「従業員に軸足を置きすぎと批判されるようになった日本的経営こそが、あの「高度経済成長」の理由の一つだったかもしれないという気がしてくるからである。そして似たような話がありそうなのは日本だけではない。重要な意思決定には従業員代表の同意が必要だとする「共同決定法」という法律の下にあった旧西ドイツがそれだ」、こうした経済システムの問題まで「コースの定理」に基づいた図で解き明かすとは、さすがだ。
・『環境や社会への影響を専門に見る取締役が必要  そうしたなか、もう2年近く前になる2019年8月に、筆者が衝撃を受けたニュースがあった。アメリカのトップ企業経営者たちが作るフォーラムであるビジネスラウンドテーブルが、これからの企業経営について、株主だけを重視するのではなく、従業員や地域住民などの広範なステークホルダーたちとの対話と合意を尊重すべきと提言したのである。 提言に関する日本メディアの伝え方には、これは大企業が格差拡大による批判を怖れたからだ、そこまでアメリカにおける分配の不平等は深刻なのだ、というニュアンスのものが多かった。しかし、コースの定理に沿って考えれば、この提言は株主利益のかさ上げにも使えることは明らかである。強力な株主主権の下で株主代表である経営陣が従業員その他のステークホルダーたちと交渉すれば、前掲の図のDの大部分は株主に帰属し、貧富の格差はさらに拡大する可能性だってありうるのだ。そのことを突いた論説が展開されることがなかったのは、わが国の知的貧困であると思う。 本当はどうすればよいのか。企業ガバナンスを改革して格差是正につなげる、本当にSを実現するためにGを変える。それにはどうすればよいのだろうか。旧西ドイツ流の「共同決定法」はもはや答えにならないと思う。いわゆる資本移動の自由化によって生まれた国家間での資本誘致競争、いわゆる底辺への競争のもとでは、一国だけがそんな法律を作っても無意味だからだ。 筆者が状況を改善するアイデアになりうると思っているのは、株式会社の経営陣ラインアップに、株主利益への奉仕ではなく、自由にEやSのために、社会の持続可能性のためだけに奉仕する役割を付託された取締役を設置する運動を始めることなのだ。それについては場を改めて語りたい』、この提案はまだいささか唐突だ。「場を改めて語りたい」、待ちどおしい。
タグ:東洋経済オンライン ESG 岩村 充 (その1)(ESG投資がなぜ騒がれているか知っていますか 脱炭素の流れが大規模な資本の再配分を起こす、ESG投資のプロが語る「脱炭素マネー」の潮流 気候変動が生み出すリスクとビジネス機会、誤ったESGの議論は格差を拡大し成長を損なう 日本企業に株主主権の強化を求めたのは間違い) 「ESG投資がなぜ騒がれているか知っていますか 脱炭素の流れが大規模な資本の再配分を起こす」 世界のESG投資残高は4000兆円規模に 確かに「バイデン政権の誕生」は大きな追い風のようだ。 「大手機関投資家は、今や「環境アクティビスト(物言う株主)」へ変容しつつあるといっても過言ではない」、そこまできたかといささか驚かされた。「石炭火力発電」は日本だけが推進してきたが、ESGの観点から見直しも進みつつある。 「日本で」「脱炭素へ向けた」「流れが本格化して」もらいたいものだ 「ESG投資のプロが語る「脱炭素マネー」の潮流 気候変動が生み出すリスクとビジネス機会」 「ESGに関する資産運用業界のスポークスパーソン的存在」の見解とは興味深そうだ 「投資家は世界をESGの「レンズ」を通して見るようになり、それがビジネスへの資本の流れを変えている」、「投資家はクリーンエネルギーやヘルスケアのようなESGの解決策に資金を投じるようになった」 「バイデン大統領は気候変動対策と環境正義 を政策の柱としている。そのため、アメリカの投資家全体の間でESGへの関心が高まり、資金の流れに本格的な変化が起こるだろう」、なるほど。 「中長期的なリスク調整後リターンで言えば、環境や従業員・株主への対応などのESGをうまく管理する企業は、中長期的によりよいパフォーマンスを上げる」 「日本は2022年にかけてEUタクソノミーの導入状況と欧州の投資家の反応を見たうえで将来、日本国内の投資家のための規則をつくることになるかもしれない」、なるほど。 「一部の日本企業の対応は極めていいが、閉鎖的な企業もまだ多い。文化的な行動様式の違いもあろうが、国際的に見れば変化はまだスローといえるかもしれない」、「投資家との議論や対話を行う文化が英米企業に比べると進んでいるとはいえない」、やはり課題も多そうだ。 「ESGを財務分析の1つの要素と考え、ROEやレバレッジ、資産価格なども踏まえて投資を行えば、ブーム&バストにはつながりにくい」、確かにその通りなのかも知れない。 「自然資本ファンド」のリターンは、農産物や材木、海産物などなのだろうが、誰が管理・栽培するのかにより大きな違いが出てくるので、果たして「ファンド」ビジネスが成り立つのだろうか。 「誤ったESGの議論は格差を拡大し成長を損なう 日本企業に株主主権の強化を求めたのは間違い」 EとSは多くの人が賛同する「目標」だが、Gは目標達成のための「手段」にすぎない。そのGをEやSと同格の目標であるかのように扱うのは、議論のすり替えでありただの政治的アジテーションではないか。 冒頭から岩村氏らしい理論的なパンチだ 株主ガバナンス強化論はなぜ間違いなのか この「コースの定理」に基づいた「図」は、難しいが、かなり高度なことが盛り込まれているようだ。 「何の合意もなく株主ガバナンス論を振りかざして水準Yを選ぶのではなく、従業員との合意の上でZを選んだほうが、株主にとっても従業員にとっても好ましい状態になる」、「問答無用型の株主ガバナンスは、従業員たちと経営陣との交渉あるいは合意形成への努力を無意味化することにより、日本全体に大きな外部不経済をもたらしかねない」、「株主ガバナンス論」を完膚なきまで叩きのめしたのはさすがだ。 同じZでも株主支配か従業員支配かで分配は変わる 「貧富の格差拡大は公正あるいは社会正義の問題だけでなく、いわゆる総需要の伸び悩みをも通じて国民経済成長の足を引っ張るのである。株主ガバナンス論は、長期的には日本を貧しくしかねないのである」、 「従業員に軸足を置きすぎと批判されるようになった日本的経営こそが、あの「高度経済成長」の理由の一つだったかもしれないという気がしてくるからである。そして似たような話がありそうなのは日本だけではない。重要な意思決定には従業員代表の同意が必要だとする「共同決定法」という法律の下にあった旧西ドイツがそれだ」、こうした経済システムの問題まで「コースの定理」に基づいた図で解き明かすとは、さすがだ。 この提案はまだいささか唐突だ。「場を改めて語りたい」、待ちどおしい。
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ブラック企業(その13)(「電通」はなぜ迷走し続けるのか? 畏友・山本敏博CEOへの“最後の諫言” 田中康夫緊急寄稿、電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか、ワタミはなぜ提訴されたのか 労基署さえ「手玉」にとる魔手の数々か?」) [企業経営]

ブラック企業については、2月9日に取上げた。今日は、(その13)(「電通」はなぜ迷走し続けるのか? 畏友・山本敏博CEOへの“最後の諫言” 田中康夫緊急寄稿、電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか、ワタミはなぜ提訴されたのか 労基署さえ「手玉」にとる魔手の数々か?」)である。

先ずは、2月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家・元長野県知事の田中康夫氏による「「電通」はなぜ迷走し続けるのか? 畏友・山本敏博CEOへの“最後の諫言” 田中康夫緊急寄稿」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/263134
・『2020年12月期は1595億円と過去最大の最終赤字に沈んだ日本の広告業界の巨人・電通グループ。世界「BIG5」に肩を並べようともくろんだ海外企業の買収が主要因だが、電通を蝕むのはそれだけではない。収益拡大の絶好の機会である東京オリンピック・パラリンピックの開催も危うく、一発逆転の可能性は風前の灯火だ。山本敏博CEOを知る作家で元長野県知事の田中康夫氏が、“最後の諫言”を緊急寄稿した』、山本氏はかつて、田中氏が出演していたラジオ番組の愛聴者だったので接点が出来たのかも知れない。
・『最終損失の主要因は海外子会社の減損 CFOの決意に相槌を打っている場合ではない  純粋持株会社「電通グループ」は2020年12月期の連結決算(国際会計基準)を2021年2月15日に発表。以下の“言い訳”は、「経営成績及び財政状態」と大書きされた「決算短信」の1行目に記されています。 「2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界的に景気が急速に悪化しました。特に2020年3月以降は、当社グループの国内外の事業にも影響を及ぼし始めました」(https://ssl4.eir-parts.net/doc/4324/tdnet/1935567/00.pdf) 同日22:00配信「日本経済新聞」記事の冒頭も再録しておきます。(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD156FE0V10C21A2000000/) 「電通グループが15日発表した2020年12月期の連結決算(国際会計基準)は、最終損益が1595億円の赤字(前の期は808億円の赤字)と過去最大だった。新型コロナウイルス禍によって世界の広告市況が悪化、海外事業を中心にのれんなどの減損損失1400億円強を計上した。 M&A(合併・買収)を軸に海外事業を広げてきたが、買収後の成長が遅れコロナ禍が追い打ちをかけた。売上高にあたる収益は前の期比10%減の9392億円、営業損益は1406億円の赤字(前の期は33億円の赤字)だった。最終赤字、営業赤字とも2期連続となる。 減損損失は子会社や地域ごとの判断ではなく海外全ての地域をまとめて収益性を見直して1403億円を計上、国内でも数十億円が発生した。20年9月末時点で約7300億円あった貸借対照表上の、のれんは今回の減損で約5900億円に減った」 翌16日付け朝刊13版にも、一字一句違わぬ同じ文面の記事が掲載されています。1面右肩で報じた「日経平均3万円回復 金融政策で押し上げ 企業収益 改善道半ば」よりも“ニュース性”が稀薄だったのか、掲載面は21面「投資情報2」の右肩でした。 再録した記事の末尾を飾るのは、曽我有信(そが・ありのぶ)取締役執行役員(財務担当)のコメント。「曽我氏は日本経済新聞の取材に『今後のM&Aは数や規模ではなく質を重視したい』と強調。スタートアップ企業との連携も深めていく方針も示した」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD156FE0V10C21A2000000/) 脊髄反射で「その言や良し」と大きく相槌を打った「ニッポン凄いゾ論」の「意識高い系」諸兄姉(しょけいし)にとって今回の拙稿は、些か読み進むのが辛いかも知れません。が、太古の昔から“良薬は口に苦し”。それも又、「公理」なのです。 「#Tokyoインパール2021」のハッシュタグがSNS上で人口(じんこう)に膾炙(かいしゃ)する程に迷走・混迷の度合いを深める、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会TOCOGからマーケティング専任代理店として2014年4月17日に指名を受けた「(株)電通」。 「当社は、これまで長年にわたり培ってきたスポーツ事業における知見やノウハウを生かし、2020年に開催される第32回オリンピック競技大会および第16回パラリンピック競技大会の成功に向けて、組織委員会のマーケティングパートナーとして、マーケティングプランの策定やスポンサーセールスなどを支援し、グループの総力を挙げて貢献してまいります」のプレスリリースは現在もHPで閲覧可能です。(https://www.dentsu.co.jp/news/sp/release/2014/0417-003720.html) その後、幾度かの組織改編を経て「電通」は現在、国内事業会社「(株)電通」。その社内カンパニーとして電通を中核に日本国内の約130社で構成される「電通ジャパンネットワーク」。昨年9月25日に電通イージス・ネットワーク(株)から社名変更したロンドンが本拠地の海外事業会社「電通インターナショナル(株)」。それらを束ねる純粋持株会社「(株)電通グループ」。以上4組織に大別されています。 以下は、電通グループ代表取締役社長執行役員兼CEOにして、電通インターナショナル非常勤取締役(Non-Executive Director)も務める畏友・山本敏博氏への“最後の諫言”。最後までお読み頂ければ幸いです』、「海外事業を中心にのれんなどの減損損失1400億円強を計上」、海外の買収には無理があったのだろうか。
・『世界広告「BIG5」に躍り出るも赤字を救う“公助”の可能性も  敢(あ)えて非デジタル的表現を用いて時計の針を戻すと、昨年12月7日に電通グループは、2020年12月期の連結業績予想(国際会計基準)が237億円の赤字になるとの見込みを発表。(https://www.nikkei.com/article/DGXZASFL07H9S_07122020000000/) グループ従業員の1割近くに当たる6000人を2021年末までに、限りなく解雇に近い削減へと踏み切ると表明。それに伴う構造改革費用876億円を計上しています。が、その2カ月後の今年2月15日の発表では1595億円へと赤字額が大幅に「増大」していたのです。 更にお復習(さら)いとして再録すれば、「広告業界ビッグ4」英WPP、米オムニコム、仏ピュブリシス、米インターパブリックに次ぐ世界第5位の“地歩”を、東洋の島国に本社を置く「電通」が築く切っ掛けとなったのは2013年3月26日のM&Aです。当時世界8位だった英国のイージス・グループを約4000億円で買収。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO91489550Y5A900C1000000/) 「電通イージス・ネットワーク社」へ名称変更したロンドンの拠点を海外本社に位置付け、「110カ国・地域で事業展開するグローバル・コミュニケーション・グループ」を標榜します。(https://www.nikkei.com/article/DGXLZO80419570S4A201C1DTA000/) その後もM&Aを加速。僅か5年で164社を傘下に収め、2019年12月には145カ国・地域に6万6000名の従業員を擁する900社もの多国籍企業改め“無国籍企業”へと急激に拡張しました。 それらに伴い、昨年1月1日に発足した電通グループ全体の売上総利益に占める国内比率は85%から43%へと半減。57%の収益を海外に依拠する構造へと変容を遂げます。が、豪州や中国を含むアジア太平洋地域を始めとする海外部門がよもやの苦戦に直面。2019年9月時点で7886億円まで膨張した「のれん」の減損損失701億円分の計上を昨年2月12日に発表。赤字転落しました。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55544130S0A210C2DTD000/) 言わずもがな「のれん代」とは、「買収された企業の純資産」と「買収価額」の差額を意味します。冒頭で紹介した「日経」の“心優しき認識”も今一度、復習しておくと「20年9月末時点で約7300億円あった貸借対照表上の、のれん」を「今回(2020年12月期)の減損で約5900億円に減」らすべく「減損損失は子会社や地域ごとの判断ではなく海外全ての地域をまとめて収益性を見直して1403億円を計上、国内でも数十億円が発生し」ています。 瀕死の重症状態から脱するべく、幼気(いたいけ)にも「自助」努力を続ける「電通」には、日本政府からの「公助」も受けられる可能性があります。 会計上の赤字と同様に税務上の損失を計上することができれば、「繰越欠損金制度」が持株会社の電通グループ及び事業会社の電通に適用されます。仮に赤字転落した昨年から既に適用されていたとしたら、本社登記地の東京都に納付する法人都道府県民税80万円以外は、国税の法人税も地方税の法人事業税も最大10年間に亘って毎年の納付額がゼロ円で済む「合法的」恩恵に浴していることになるのです。 「繰越欠損金制度」(https://tanakayasuo.me/archives/23720)と申し述べるや、「お前は三百代言の輩か」と烈火の如く反駁される向きも居られましょうから、暫し入念に説明を加えておきましょう』、「僅か5年で164社を傘下に収め、2019年12月には145カ国・地域に6万6000名の従業員を擁する900社もの多国籍企業改め“無国籍企業”へと急激に拡張・・・電通グループ全体の売上総利益に占める国内比率は85%から43%へと半減。57%の収益を海外に依拠する構造」、とはかなり急速に海外M%Aを進めたようだ。「減損損失」で税務上でも赤字となれば、「繰越欠損金制度」が適用されるようだ。
・『借入金にコベナンツが付いた 社員に副業“解禁”でも炎上  財務省のデータに拠れば、株式会社の7割は、国税の法人税と地方税の法人事業税を1円も納めていません。連結決算を導入する超大企業ですら、66%が同様です。それは利益に対して課税する仕組だからです。 国会議員時代に僕は、予(あらかじ)め財務省の担当者から説明を受けた上で、「法人税を1円も支払っていない企業はどのくらいの割合に上るか、御存知でしょうか」と、2011年2月8日の衆議院予算委員会で、時の菅直人内閣総理大臣に尋ねています。彼に代わって野田佳彦財務大臣が「全体の7割でございます」と答弁し、それに対して僕が、「法人の7割が法人税を払っていないということですね。即ち71・5%、7割を超える企業が法人税を支払っておりません。これは中小の零細企業に限った話なのでは無い訳です。資本金が1億円を超える企業でも、過半数の51・5%が1円も法人税を支払っておりません。これは連結決算対象の総法人数を除いての数値ですから、現実には、日本経済団体連合会=経団連や経済同友会に加盟する上場企業の約6割もが法人税を払っていないということです。この国会中継をテレビやラジオ、あるいはインターネットでお聞きの皆さんは、本当かとキツネにつままれているかと思います」と発言した言葉も含めて、議事録から削除されることなく10年後の今日も確認する事が出来ます( http://www.nippon-dream.com/wp-content/uploads/1aa4eff00be9af6f591d33ef9d2b6a41.pdf )。 その後、2回に亘って2011年11月1日と2012年1月27日の衆議院本会議の代表質問でも同様に確認し、同様の答弁がNHKの国会中継で放送されています。 故に余談ながら僕は、この理不尽な状況を改善する上でも、事業規模や活動量を基準に課税する「新しい発想の外形標準課税」へと抜本的に刷新すべきと提唱し続けているのです。 赤字企業でも事業収入自体は存在します。而(しか)して、何処で何人働き、何を幾つ作って、何処で幾つ売れたか、瞬時に把握可能な時代です。 ならば、老若男女を問わず全ての国民が支払う消費税と同じく、更には誰もが二酸化炭素CO2を排出するのと同じく、全ての企業が広く薄く外形標準課税で納入すれば、法人税率を現行の3分の1に引き下げても全体では逆に1割の税収増となります。事業展開しているそれぞれの地点で、事業量に応じて納税する「新税制」を確立すれば、これぞ21世紀のノーベル経済学賞! 全国各地の自治体が支度金(バンス)も用意して工場誘致を実現しても、法人税は東京や大阪、愛知の本社登記地に支払われるから、多少の雇用と固定資産税が見込めるだけで、「地方の自律」は夢のまた夢。 それは、GAFAに象徴される「無国籍企業」が、実際に事業を展開している国で税金を納めていない深刻な問題を合法的に解決する道でもあります。 閑話休題。が、仮に「電通」が法人都道府県民税80万円ポッキリで済む「恩恵」に浴していたとしても猶、身の丈を超えたM&Aで「ビッグ5」の仲間入りを果たした巨大広告代理店の財務状況は極めて深刻です。また、借入金の一部に「コベナンツCovenants」と呼ばれる「財務制限条項」が課せられているのも気掛かりです。 コベナンツとは、年度資金や事業資金を複数の金融機関が分担して貸し付ける「協調融資」に際し、財務健全性維持を求める契約条項。有り体に述べれば、債務者の財務状況に応じて債権者が契約解除を可能とする条項なのです。 コベナンツ(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD154JF0V11C20A2000000/?n_cid=BRFR3010) 電通インターナショナルへと看板を付け替えた旧電通イージス・ネットワークの呼称に関しても説明を加えておきましょう。 イージスAegisとはギリシア神話に登場する「守護神」ゼウスが娘の女神アテーナーに与えた、全ての邪悪・災厄を払う魔除けとしての山羊革=ゴートスキンを使用した防具アイギス Aigisの英語読みです。 奇しくも「官邸の守護神」と呼ばれし東京高等検察庁の黒川弘務(くろかわ・ひろむ)検事長が2020年5月に辞職。翌6月には弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」配備計画も中止。名にし負う国際企業の電通グループたればこそ逆に、日本的な験(げん)を担いだのかも知れません。 連結子会社の電通イージス・ネットワークを2020年9月25日に電通インターナショナルへと商号変更。広大な敷地内に駐箚(ちゅうさつ)アメリカ合衆国特命全権大使公邸も位置するロンドンのリージェンツ・パークから程近い複合施設リージェンツ・プレイスに、商号変更後も本拠地を構え続けています。が、こうした「ブランド・イメージ」堅持の努力も虚しく、純粋持株会社「電通グループ」は2019年12月期に続いて2期連続で2020年12月期の営業利益も純利益も赤字となりました。 再び時計の針を戻して昨年11月1日、「電通、社員230人を個人事業主に 新規事業創出ねらう」の大見出しで「日本経済新聞」が記事を掲載しています。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO6610376011112020916M00/) それは、国内事業会社・電通の正社員全体の3%に当たる230人が「個人事業主」として「勤務」する「新しい働き方改革」。営業・制作・間接部門等、全職種の40代以上の社員約2800人を対象に募集。適用者は早期退職した上で、電通設立の新会社と10年間の業務委託契約を締結。電通時代の給与を基にした固定報酬に加え、実際の業務で発生した利益に応じてインセンティヴ報奨金も支給。兼業や起業も、他社との業務委託契約も可能。 至れり尽くせりの好条件と思いきや、「競合他社との業務は禁止」の一文に、「“蟹工船”的働き方改革」だと「業界関係者」がSNSで一刀両断。TV各局と仕事可能なフリーランスの放送作家や映像ディレクターと異なり“廓(くるわ)の論理”を押し付ける“脱法リストラ”じゃね、とプチ炎上する展開となりました。 無理からぬ批判です。年金・健保等の事業主負担、労基法の遵守と労災の刑事的・民事的責任から逃れた電通が、今度は胴元として「名ばかり個人事業主」を指揮監督する寸法なのですから。フリーランスとは自らの技能を提供する社会的に独立した自由業としての個人事業主。この形態で請け負った業務を遂行する人間がフリーランサー。その原義は、常備軍を擁する王族や貴族が有事の際に結成する傭兵団(フリー・カンパニー)の一員を意味します。無論、この場合のフリーは、ただ働きを意味する「無料」とは異なります。 「電通、本社ビル売却検討 国内最大規模の3000億円規模 コロナ禍でオフィス改革広がる」――。時流を先取りしたかの如き印象を与える見出しで「日本経済新聞」が速報したのは、コマーシャルの教科書として名高き「3時のおやつは文明堂」を彷彿とさせる今年1月20日午後3時5分でした。ttps://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD184X60Y1A110C2000000/) が、その「決断」は、西新宿に聳える東京都庁の“魔天楼”で「後手後手やってる感」を巧みに演じ続ける“緑の旗振りオバサマ”小池百合子都知事が好んで用いる羊頭狗肉な惹句「ワイズスペンディング」の本来の定義とも異なる、背に腹は代えられぬ“帳尻合わせ”に他ならぬ、と僕の目には映るのです』、「借入金にコベナンツが付いた」、ということは財務の柔軟性が失われて、ショックに弱い体質になったことを意味する。「正社員全体の3%に当たる230人が「個人事業主」として「勤務」する「新しい働き方改革」」は、確かに「“廓(くるわ)の論理”を押し付ける“脱法リストラ”じゃね」、との「批判」も当たっているようだ。
・『山本CEOに昨夏に提案済み 電通改革に必要な4項目とは  僕は『サンデー毎日』2020年7月26日号に「『電通』化する日本 巨大広告代理店は なぜ迷走したか」と題して寄稿しています。 拙稿及び関連資料を含む『「電通」化する日本 巨大広告代理店は なぜ迷走したか』まとめサイト(https://tanakayasuo.me/dentsu/) 「日本最大の広告代理店、電通に厳しい批判の目が向けられている。2015年には社員の過労自殺があり、いま給付金委託『中抜き』問題で国策企業と指弾されているのだ。電通の迷走ぶりは、空洞化する日本の産業構造、劣悪化する日本の労働環境の縮図だと看破(かんぱ)する異能作家が、友人でもある山本敏博電通グループ社長に峻烈(しゅんれつ)な直言(ちょくげん)を呈(てい)しつつ、問題の核心を明らかにする――」 担当編集者M氏が記した「簡にして要を得た」リード文に続いて僕は冒頭で、2017年1月19日に当時の(株)電通取締役会で抜擢された時点では、その取締役会の構成員ですらなかった“次代のホープ”が社内外に発したコメント「最優先の課題は、労働環境の改革であると認識しています」を引用しました。 その4日後の2017年1月23日に社長執行役員に就任した畏友・山本敏博氏の決意表明は以下の如く続きます。「強い決意のもと、社員と共に改善施策を着実に遂行してまいります。経営の健全性や透明性の確保を図るガバナンス体制を強化すると同時に、当社の企業価値の源泉を見つめ直して、新しい電通の創造に向けて、全社を挙げて取り組んでまいります」 『サンデー毎日』発売直後の昨年7月21日、山本敏博(株)電通グループ代表取締役兼CEOから求められて2人で面談した際、僕は4項目のメモ書き『(1)「殖民地化」の阻止(2)「電通」労働環境のプロトタイプ化(3)電通イージス・ネットワークの可視化(4)HP JP上でガバナンスを明確化』を手渡しました。 (1)「殖民地化」の阻止(「広告業界」に疎い読者諸氏でも、1970年代半ばに耳目を集めた博報堂の醜聞をご記憶かも知れません。「教育雑誌」の広告取次店として1895年=明治28年に事業を興した博報堂創業家のお家騒動に端を発し、社長経験者を含む4名が特別背任罪で逮捕された事件です。相前後して、何れも旧大蔵省出身の2人の人物が社長、会長として君臨する進駐軍統治が、1975年から2000年まで四半世紀にも亘って続きました。「監督官庁」総務省や厚生労働省からの常勤取締役、社外取締役等の受け入れに伴う社内外の士気への影響に、「トップ・リーダー」はセンシティブであるべきなのです。 (2)「電通」労働環境のプロトタイプ化(日本の産業界は、実態と乖離した政治や行政が掲げる「働き方改革」に翻弄され続けています。9時-5時勤務が夢物語な「業界」の雄たればこそ電通は、職務給・職能給の枠組みを超えて「超過労働時間を最大5年有効のポイントに換算」するヴァカンス発想を始め、人間の相貌(かお)と体温が感じられる現場の実態に即した「労働環境」の範を垂れ、延(ひ)いては他業種にも伝播するプロトタイプとしての存在を目指すべき。それは、彼が取締役会の構成員ではなかった2016年11月にも口頭と書面で伝えていた具体的提言です。 「田中康夫の新ニッポン論」Vol.42「職務給・職能給」(https://tanakayasuo.me/wp-content/uploads/2016/11/verdad42.pdf) (3)電通イージス・ネットワークの可視化、そして(4)日本語版HP上でのガバナンスを明確化。(この2項目に関して僕は、持参したノート・パソコンを開いて具体的に、(株)電通グループ代表取締役社長兼CEOに指摘しました。 純粋持株会社の電通グループ、国内事業会社の電通、海外事業会社の電通イージス・ネットワーク、更に電通グループの社内カンパニーとして電通を中核に日本国内の約130社で構成される電通ジャパンネットワーク。4つの異なるURLのホームページは、ユーザー・オリエンテッドな「ワンストップサーヴィス」とは凡そ真逆な「縦割り行政」に陥ったグローバル・カンパニーDENTSUの病巣を体現していませんかと。 広告、そして経営、その何れの領域に於いても「プロフェッショナル」の足元にも及ばぬ僕の4項目の提言は、都合8カ月の歳月を経た2月17日現在も、「反映」されているとは言い難い状況です。 僕の「懸念」は筋違いだったのか否か、「ダイヤモンド・オンライン」読者の皆さんの忌憚なき判断を仰ぎたいと思います』、「提言(1」)~「(4)」は、。いずれも妥当なものだ。
・『社名変更後も今なお旧社名「デジタル重視」が泣く英文HP  「国内外で約1000社に広がる企業集団のネットワーク(株)電通グループは、国内・海外の事業を支えています」と2021年2月15日の決算発表日には誇示していた純粋持株会社のHPは、本稿を脱稿した2月17日に改めて確認すると件の惹句(じゃっく)は見当たらず、その形式もLP=ランディングページへと衣替えしていました。PCでの閲覧を想定した旧来型から、スマホにも対応の上から下へとスクロールするデザインへとヴァージョン・アップしたのです。(https://www.group.dentsu.com/) けれども僕は、文字と映像、更には印象(イメージ)を扱う専門集団にも拘らず、「言霊の幸ふ国(ことだまのさきわうくに)」に本社登記地を置く企業とは俄(にわか)に信じ難き、以下の現実に直面してしまったのです。 「About us 企業情報」と大書きされた電通グループのサイトをスクロールすると、(https://www.group.dentsu.com/jp/about-us/) 『「多様性」を創発していく企業グループへ』『純粋持株会社「株式会社電通グループ」の役割』の見出しに続いて『当社は一般的な持株会社ではなく、dentsu全体をチームにする会社、すなわち「チーミング・カンパニー」になることを目指します。』の決意表明が記され、その下の「dentsuの体制図」をクリックすると、「Group グループ」へとジャンプします。(https://www.group.dentsu.com/jp/group/) そこには「電通ジャパンネットワーク(https://www.japan.dentsu.com/jp/) 」と「電通インターナショナル(https://www.dentsu.com/) 」へのリンクが並列して張られており、「dentsu international」バナーをクリックすると、何故か「dentsu Global」でなく「dentsu Asia Pacific」と左上に表示されたHPへと飛びます。よもやの苦戦に直面する豪州や中国を含むアジア太平洋地域を重視する意思表示でしょうか? とまれ、「dentsu Global (https://www.dentsu.com/?global=true)」を探し当て、右上に表示された「Menu (https://www.dentsu.com/?global=true#top)」にはサイトマップが見当たらず、ページをスクロールして「Sitemap(https://www.dentsu.com/sitemap)」に辿り着くと、そこには数々の“笑撃”が待ち構えていました。 「Who We Are」の下段レイヤー=layer「Our leadership」一覧に「Tadashi Ishii」なる表記を見付けてクリックすると、2016年12月28日に電通代表取締役社長からの引責辞任を会見で表明した石井直氏の顔写真と英文プロフィール「Chairman,DentsuInc.」が現れます。(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/tadashi-ishii) 僕の拙い英語力では「chairman」を「顧問」若しくは「相談役」とは邦訳出来ず、訝りながら計31名の列記された面々を順次クリックしていくと、 Dentsu Aegis Network Americas&US CEOと記されたNick Brien氏(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/nick-brien) Chief Network Development Officer, Dentsu Aegis Networkと記されたNicholas Rey氏(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/nicholas-rey) Global President Business Operations, Dentsu Aegis Networkと記されたVolker Doberanzke氏(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/volker-doberanzke) 日系DNAと思しきSo Aoki氏の肩書もChief Corporate Planning Officer, Dentsu Aegis Network(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/so-aoki) Executive Senior Advisor, Dentsu Group Inc.と記されたValerie Scoular女史も、そのプロフィールは「Currently she is Executive Director Human Resources and a member of the Dentsu Aegis Network Board and Compensation Committee」と現在形で記されています。(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/valerie-scoular) Ashish Bhasin氏も「Under his leadership, Dentsu Aegis Network India is now the second largest Advertising & Media Group in India by revenue.」 と現在進行形です。(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/ashish-bhasin) 更にはGlobal CEO, CreativeのJean Lin女史が担当している中国も(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/jean-lin) 「dentsu Asia Pacific」サイトから降りていくと直ぐに「for KFC China」のロゴタイプを前面に押し出した「Dentsu Aegis Network:KFC Digital Transformation」に辿り着きます。(https://www.dentsu.com/sg/en/dentsu-aegis-network-kentucky-fried-chicken-digital-transformation) 2月15日の電通グループ決算発表会見を担当した曽我有信取締役執行役員は、「電通グループが直近の10年の重点課題として捉え、これからも経営の鍵となる分野は、『デジタル』です」と「マネジメントメッセージ」の冒頭で語っています。(https://www.group.dentsu.com/jp/ir/top-message/top2.html) 国内事業会社(株)電通の「持続可能なリモートワーク」推進は、その現れなのでしょう。(https://www.dentsu.co.jp/news/sp/release/2020/0319-010035.html) が、海外事業会社の電通インターナショナル(株)は、その「重点課題」を遥かに上回る「成果」を収めています。なにしろ、役員自ら先頭に立って“瞬間移動スキル”を体得し、過去と現在を自由自在に行き来する「ワープワーク」を実現しているのですから。 2月16日付け「日本経済新聞」が全10段を費やして19面に掲載した「会社・人事」の「情報・通信」に「電通グループ(3月下旬)代表取締役(取締役)ティム・アンドレー▽取締役、電通インターナショナル社グローバルCEOウェンディ・クラーク」と記載されていた件にも触れておくべきかも知れません。(https://www.nikkei.com/article/DGXZTSJD60701_V10C21A2000000/) 電通グループが昨年1月27日に『当社の連結子会社「電通イージス・ネットワーク(DAN)」における取締役会議長兼CEOの職務の代行に関するお知らせ』の中で「この度、当社の取締役副社長執行役員であり、DANの取締役会議長兼CEOを務めているティム・アンドレーが、健康上の理由により療養に入りました。このことを受け、一時的な措置として、当社の代表取締役社長執行役員であり、DANの取締役を務めている山本敏博が、ティム・アンドレーの担っているDANの取締役会議長兼CEOとしての職務を代行することといたしました」(https://www.group.dentsu.com/jp/news/release/000198.html)と広報していたミシガン州デトロイト出身の本名ティモシー・アンドレーTimothy Andree氏は、米国のNBA=ナショナル・バスケットボール・アソシエーションの選手として活躍した御仁。(https://en.wikipedia.org/wiki/Tim_Andree)(https://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2008035-0512.pdf)  “生き馬の目を抜く”広告業界に於ける「余人を以て代えがたき」屈強な体躯の人物たればこそ、奇蹟の復活を遂げたのでしょう。 その彼の“恢復”と“昇格”を祝うと共に(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/tim-andree)、昨年7月21日の”畏友”との面談の際、「私が白羽の矢を立てた女性です」と語っていたウェンディ・クラーク女史(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/wendy-clark)の両名が、「多様なリソースを統合し、多様なステークホルダーをつないでいく」と決意表明する畏友・山本敏博CEOと“三本の矢”となって名実ともに、『dentsu全体をチームにする会社、すなわち「チーミング・カンパニー」』を、今この瞬間も日本国内外で粉骨砕身する一人ひとりのチームメンバー、更には取引先の人々の為にも築き上げることを願ってやみません。(https://www.group.dentsu.com/jp/ir/top-message/top1.html)』、なるほど。
・『戦争にも協力した過去の電通 求められる「自分の意思と言葉」  「国鉄民営化」で日本国有鉄道清算事業団に移管された港区東新橋1丁目の、貨物列車・荷物列車ターミナル駅だった汐留駅跡地に位置する地上48階建て電通本社ビル。併設の電通四季劇場「海」、地階と最上階の飲食店舗等を含む施設全体の呼称は「カレッタ汐留」。 「長い時間を悠々と生きる亀のイメージに、ゆったりとした時間、余裕のあるライフスタイルを持つ都市生活者のイメージを重ね合わせ」、アオウミガメの学名“Caretta Caretta”からネーミング、と能書きに記されています。 その地階で、江戸時代からの広告資料28万点を蒐集するアドミュージアム東京。(https://www.admt.jp/) 公益財団法人吉田秀雄記念事業財団が運営する「日本で唯一の広告ミュージアム」です。大政翼賛会が広告主のポスター「進め一億火の玉だ 大政翼贊會」も所蔵されています。 「大東亜戦争」と東條英機内閣が閣議決定した当時の「日本」の人口は7300万人。台湾と朝鮮の人口も含めて「一億」なのです。そのポスターの作成は自暴自棄な敗戦間際かと思いきや、真珠湾攻撃の翌年1942年。 「このポスターを製作したのは『報道技術研究会』。民間の広告技術者によるボランティアのような組織から、戦争が進むにつれて、国家宣伝を担う専門集団に発展していった」と解説が付されています。 ハンナ・アーレントが描いたアドルフ・アイヒマンと比べたら失礼なくらいに「ナイーヴ」だったであろうクリエーター達が、戦略も戦術も欠落した無謀な戦時体制の「同調圧力」に組み込まれていった歴史を伝える一枚の広告物です。 現在は閉館中のアドミュージアム東京のHPでも閲覧可能な、その「一枚の広告物」に付された解説を読み返す度、僕は痛感します。(https://www.admt.jp/collection/item/?item_id=85) 「良心」の持ち主をも、いとも無慈悲に併呑(へいどん)し、消費していく社会は、昔も今も変わらないのだと。であればこそ、何時の時代に於いても「自分の五感で捉え、自分の言葉で語り、自分の意思で動く」しなやかな心意気を私たち一人ひとりが持ち合わせることが、如何なる業種、職種に於いても肝要なのではなかろうかと』、それは作家という自由業の田中氏なら可能だろうが、サラリーマンにとっては、無理なように思われる。

次に、2月25日付け東洋経済オンライン「電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/413333
・『巨額減損に人員削減。デジタル転換で出遅れたツケは大きかった。 国内広告最大手の電通グループが2月15日に発表した2020年12月期の最終損益は1595億円という過去最大、そして2期連続の赤字(前期は808億円の赤字)に沈んだ。 売上高に当たる収益は9392億円(前期比10%減)、営業損益は1406億円の赤字(前期は33億円の赤字)で、すべての段階利益で2期連続の赤字となった。「再び赤字となったことは経営者として重く受け止めている」。山本敏博社長は投資家向け決算説明会でそう口にした。 赤字の最大の要因は、コロナ禍で世界の広告市況が悪化したことを受け、過去の海外買収で膨らんだのれんの減損で1400億円超の損失を計上したことだ。さらに783億円の事業構造改革費用も打撃となった。内訳は、海外での事業統合や人員削減で500億円超、国内での早期退職で200億円超。2021年12月期にも引き続き、残りの構造改革費用として国内外で500億円超を計上する見込みだ』、第一の記事と同じ電通問題である。
・『旧来型の代理店ビジネスは限界  電通グループは2013年に英広告大手イージスを約4000億円で買収した後、海外で毎年10社以上を矢継ぎ早に取り込み、国内事業を超える規模となった。売上総利益ベースの海外比率は直近で約58%だ。世界シェアでは今や英WPPグループ、米オムニコムグループ、仏ピュブリシスグループという世界3大広告会社に次ぐレベルになっている。 だが結果的にM&Aが足を引っ張った。電通グループの曽我有信CFO(最高財務責任者)は、「事業環境の変化が激しい」としたうえで、「今回減損の対象になったのは、イージスと一緒になった直後の2010年代前半に買収した広告領域の事業会社だ」と話す。 ここでいう広告領域とは、日本のマス広告のように広告会社がメディアの枠を買って広告主に売るという旧来型の“代理店”ビジネスを指す。2019年に海外のうちアジア太平洋(APAC)地域で700億円強の減損損失を計上した際も、同じ領域が中心だった。 ここ数年、電通グループは消費者に関するさまざまなデータを活用したデジタルマーケティングを中心とする業態への転換を急ぐ。 2020年の海外業績を見ると、旧来型の代理店ビジネスである「メディア」「クリエイティブ」の両部門の売上総利益が前期比15%以上減少した。一方、デジタルマーケティングを中心とした「カスタマーエクスペリエンスマネジメント」部門は同3.2%減にとどまった。国内でも売上高の3分の1を占めるテレビ広告が前期比12%減だったが、ネット広告は同1.4%減だった。) そもそも2013年に買収したイージスは旧来型の代理店だった。実際、イージスを含むヨーロッパ・中東・アフリカ(EMEA)地域はメディアとクリエイティブの収益の割合が大きい。 会社側は減損の対象を海外事業全体としているが、今回減損の判定を行った際にはAPAC、EMEAそして米州という海外のすべての地域ごとに稼ぐ力を測っている。地域ごとの減損損失額は3月に公表される有価証券報告書で明らかになるが、EMEAでの損失が膨らんでいる公算が大きい。 巨額減損を経てもなお、2020年12月末時点では6000億円弱ののれんが残っており、次なる火種となる可能性もある。 「この5年で市場環境が驚くほど変わった」と電通グループ関係者はつぶやく。2010年代前半はネットも含めてメディアの枠を売り買いするビジネスが大きかった。そこから米グーグルの検索広告やソーシャルメディア広告が台頭し、ネット通販の発達で企業と消費者がネット上でつながる場面が激増。そこにコロナ禍が直撃し、デジタルマーケティングの重要性が急速に高まった。結果的にイージスは時代に乗り遅れたと言わざるをえない』、「2013年に買収したイージスは旧来型の代理店だった」、「結果的にイージスは時代に乗り遅れたと言わざるをえない」、なるほど。
・『10%超の大規模人員削減を敢行  海外では現在これまで買収してきた160の事業ブランドを6つのブランドに集約する構造改革中だ。この過程で12.5%の人員削減を行う。重複するバックオフィス人員のほか、旧来型の代理店営業の人材が対象になる。その一方でデジタルマーケティング人材の育成を進める。 デジタル転換の中で電通グループが強くアピールするのが、2016年に約1000億円で買収した米データマーケティング会社のマークルだ。買収額はイージスに次ぐ規模だ。同社は広告主が持つ消費者の氏名やメールアドレスを含むIDデータを活用し、そのブランドのファンになってもらうよう広告や販促のターゲティングを行うためのツールを提供する。 コロナ禍で大きく減ったM&Aも再始動させる。「とくにデジタルソリューション領域を中心に、事業の変革にはM&Aは不可欠。件数や事業規模ではなく質を追う。電通グループに参画するメリットを強調して金銭面だけではない条件交渉をしたい」(曽我CFO)。 国内でもデジタル転換を進める。システム開発子会社の電通国際情報サービス(ISID)やデジタルマーケティング専業の電通デジタルの成長ぶりを強調。山本社長は決算説明会で、「マークル、ISID、電通デジタルの3社は過去3年で(売上総利益が)年平均で20%超伸びた」と話した。 中核子会社である電通の五十嵐博社長は「電通本体とISID、電通デジタルの3社の協業でデジタルのソリューション力を上げていく」と意気込む。「国内の大手企業にもマークルのサービスを提供するなど、海外との連携強化も進めている」(五十嵐氏)』、なるほど。
・『国内の営業利益率は大きく低下  その国内も今回、先述の通り構造改革を断行する。最大の課題は「高コスト体質」だった。2015年末に社員が過労などを原因として自殺したことを受け、国内では働き方改革を急速に進めてきた。その過程で人事システムへの投資や業務の外注などでコストが増加。一方で海外のように容易に人員削減ができない。国内事業の営業利益率は2016年12月期の23.1%から、直近は14.8%まで低下した。 構造改革の中身は大きく分けて2つだ。1つは国内事業を従来型の広告やデジタルマーケティング、顧客のビジネス変革支援などの4分野に分け、組織を再構成するものになる。その過程で人員規模の適正化を図るため、希望退職を募る計画だ。もう1つはコロナ禍で出社率が大きく減った東京・汐留の本社ビルを国内グループ会社間で共有すること。これによりグループ各社の家賃を節減する。 一連の人員削減や構造改革で2022年以降、国内外で年間平均約760億円の費用削減が可能だという。さらに現在は汐留の本社ビル売却も進める。「金額など詳細についてはコメントできない」(曽我CFO)とするが、今後の施策の柱としてバランスシートの効率化も挙げており、本社ビルも含めた資産を整理し、M&Aなどの投資資金を捻出するとみられる。 デジタルへの業態転換は、これまでマスメディアで謳歌してきた既得権益に頼らないことを意味する。デジタルマーケティングは広告会社だけでなく、米アクセンチュアをはじめとしたコンサルティング会社なども注力し、競争は苛烈だ。稼ぎどころである東京五輪の開催も危ぶまれる中、電通グループの底力が試されている』、「デジタル」分野の「競争は苛烈」で、「東京五輪」も海外見物客を入れないなど厳しさが増している。今後の「電通グループの底力が試されている」のは確かなようだ。

第三に、4月1日付けYahooニュースが掲載したNPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者の今野晴貴氏による「ワタミはなぜ提訴されたのか 労基署さえ「手玉」にとる魔手の数々か?」」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20210401-00230322/
・『昨日、ワタミの宅食で営業所長を務める40代の女性Aさんが、ワタミ株式会社を提訴した。 訴訟の主要な争点は、以前から問題となっている残業代の不払いに関するものだが、問題はさらに複雑化しているようだ。Aさんの提訴の重要な理由の一つは、ワタミがAさんの上司らに指示をして、配達スタッフらにAさんを訴えるように「扇動」させたというものである。 ワタミ側が背後で「扇動」か? 筆者は昨晩までにワタミに訴訟についての見解を質問したが、残念ながら期限までに返答をもらうことはできなかった。 そこで本記事では、Aさんの訴訟のもう一つの重要な要求である未払い残業代について、なぜ労基署の是正勧告まで出ていたのに、訴訟になってしまったのか、Aさんの証言をもとにその背景に迫っていきたい』、興味深そうだ。
・『労基署の発言を都合よく切り取って、ホームページで公表  残業代未払いについては、すでに昨年9月に、高崎労働基準監督署から是正勧告が出ている。ところが、それ以降、ワタミはさまざまなやり方で、Aさんに具体的な未払い残業時間について回答することを避けてきた。 まず最初は、「特別調査委員会」を一方的に立ち上げて、その調査を理由として、団体交渉での労働時間の交渉を拒否したことだ。なお、この特別調査委員会は、Aさんが条件付きで調査に応じると主張していたにもかかわらず、Aさんに対する聞き取りを一切行わないまま、今年1月末で調査を終了している。 さらに、つい2週間前には、ワタミが労働時間をできるだけ短く、あたかも「値切り」をしようとしている様子が明らかになった。 3月15日、高崎労働基準監督署はワタミに対して、今度は36協定で認められた残業時間の上限を超えた残業をさせていたとして、労働基準法32条違反で是正勧告を出した。 すると、ワタミは是正勧告を受けた即日、ホームページ上で「労働基準監督署からの労働時間に関する是正勧告について」という文章を掲載し、「この度、本件に関連して2020年3月の当該社員の残業時間75時間29分が、36協定の75 時間を29分超過していることから改善するよう是正勧告書を受領いたしました」と報告している。 これを読んだら人は誰でも、あたかも労働基準監督署がワタミの残業時間の超過を認めたのは29分のみで、それ以外は問題にされず、指導は終わったものであるかのように受け取るだろう。しかし、それは事実と全く異なっているのだ。 監督官「いまだ労基署とワタミで確定した労働時間は出ていない」? 担当の監督官に確認したところ、驚くべき答えが返ってきた。担当の監督官の説明によると、監督官とワタミで「労働時間が合致した月はない」「いまだ監督署とワタミ側で確定した労働時間は出ていない状況」であるというのだ。 一体どういうことだろうか? 要はこういうことだ。担当の監督官としては、より多くの長時間残業があるのではないかとワタミに指摘しているのに、ワタミが一向に認めようとせず、29分だけを認めたので、やむをえず「「少なくとも」という部分で是正勧告をした」だけだというのだ。 これでは、ワタミがインターネット上で是正勧告について公表されることを想定して、できるだけ少ない残業時間しか認めさせないよう、労基署に食い下がったのではないかとすら考えられる。 しかも監督官は、「これで確定ではない」と述べ、これからさらに長い残業時間が認められる可能性があるとまで、Aさんに伝えている。特にAさんはかなりの数の業務メールを自宅でも送っており、これについても労基署は労働時間に含まれると考えている。しかし、ワタミはメールの業務性を一切認めなかったという。 このようにワタミは労基署の指摘をねじ伏せて、「最小限」の時間だけを一旦認めて、それをホームページで公表したのである』、「ワタミ」のやり方は全く悪質で、かってのブラック企業批判も頷ける。
・『半年間一度も具体的な労働時間を認めていないのに、「労働時間については、団体交渉を継続しています」?  労基署の監督官の発言を都合よく切り取り、読者の誤読を誘うような書きぶりでホームページで公表するワタミのやり口は、実に狡猾だ。 現にワタミの発言を鵜呑みにしたネットのコメントでは、「29分なんてすぐに遅らせられる。この「A」はヤクザやゴロツキと同じだ」とAさんを非難する者も現れている。 しかも上記のホームページの書面において、ワタミは「労働時間については、現在も団体交渉を継続しております」と公表している。ところが、ワタミはAさんの加盟するブラック企業ユニオン に対して、一度も具体的な労働時間の認め方について、提案してきたことはないという。 Aさんは、自分には真摯に向き合おうとしないのに、ホームページでは「いい顔」をするワタミの「外面の良さ」に、怒りを募らせている』、「ワタミ」がいまだにこのような組織的な不正工作をしているとは驚かされた。
・『ワタミが狙っていたのは「時間切れ」なのか  実はAさんがこのタイミングで提訴に踏み切った理由の一つは、未払い残業代の「時間切れ」の問題があった。 どういうことかといえば、Aさんはブラック企業ユニオンを通じて、昨年10月上旬に残業代を請求していた。一度請求すると、「催告」という行為を行なったことになり、その日から遡って2年間分の未払い残業代の時効が中断される。 ただし、これは催告から6ヶ月だけの間である。その間に、提訴をするか、残業時間の承認をさせる必要があるのだ。しかし、期限の4月上旬が迫っていたにもかかわらず、一向にワタミは具体的な残業時間を認めようという反応は、なかったという。ましてや上述したように、労基署に対して残業時間を値切らせようとして、ホームページで誤解を招く発表をしている。 ワタミは半年間残業代についての具体的な回答を引き伸ばすことによって、時効が切れるタイミングを待っていたのではないかと勘繰る意見が出てきても仕方ないだろう。 いずれにせよ、Aさんは4月上旬に催告の効力がなくなることを恐れて、提訴しなければならなかったという事情もあるようだ。 以上、Aさんが今回訴訟に踏み切ったの背景を説明してきた。筆者は引き続き、本件について調査していくつもりだ。 Aさんを応援したい方や、「ブラック企業」と闘いたいという方は、ぜひ連絡・相談をしてほしい。 追記 2021年4月1日17時40分 ワタミ側は下記の通りHPに発表していることが確認できたので、追記します。(「当社従業員の記者会見に関して」は中身がないので省略)』、「ワタミが狙っていたのは「時間切れ」」、というのはその通りだろう。Aさんに組織的支援があったのが幸いしたようだ。いまだにこのようなことを平然とやる「ワタミ」の「ブラック企業」体質には呆れ果てた。
タグ:東洋経済オンライン yahooニュース 田中康夫 ブラック企業 ダイヤモンド・オンライン 今野晴貴 (その13)(「電通」はなぜ迷走し続けるのか? 畏友・山本敏博CEOへの“最後の諫言” 田中康夫緊急寄稿、電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか、ワタミはなぜ提訴されたのか 労基署さえ「手玉」にとる魔手の数々か?」) 「「電通」はなぜ迷走し続けるのか? 畏友・山本敏博CEOへの“最後の諫言” 田中康夫緊急寄稿」 最終損失の主要因は海外子会社の減損 CFOの決意に相槌を打っている場合ではない 「海外事業を中心にのれんなどの減損損失1400億円強を計上」、海外の買収には無理があったのだろうか 僅か5年で164社を傘下に収め、2019年12月には145カ国・地域に6万6000名の従業員を擁する900社もの多国籍企業改め“無国籍企業”へと急激に拡張 電通グループ全体の売上総利益に占める国内比率は85%から43%へと半減。57%の収益を海外に依拠する構造」、とはかなり急速に海外M%Aを進めたようだ。 「減損損失」で税務上でも赤字となれば、「繰越欠損金制度」が適用されるようだ 「借入金にコベナンツが付いた」、ということは財務の柔軟性が失われて、ショックに弱い体質になったことを意味する 「正社員全体の3%に当たる230人が「個人事業主」として「勤務」する「新しい働き方改革」」は、確かに「“廓(くるわ)の論理”を押し付ける“脱法リストラ”じゃね」、との「批判」も当たっているようだ 「提言(1」)~「(4)」は、。いずれも妥当なものだ 戦争にも協力した過去の電通 求められる「自分の意思と言葉」 それは作家という自由業の田中氏なら可能だろうが、サラリーマンにとっては、無理なように思われる 「電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか」 「2013年に買収したイージスは旧来型の代理店だった」、「結果的にイージスは時代に乗り遅れたと言わざるをえない」、なるほど 10%超の大規模人員削減を敢行 「デジタル」分野の「競争は苛烈」で、「東京五輪」も海外見物客を入れないなど厳しさが増している。今後の「電通グループの底力が試されている」のは確かなようだ。 「ワタミはなぜ提訴されたのか 労基署さえ「手玉」にとる魔手の数々か?」」 労基署の発言を都合よく切り取って、ホームページで公表 「ワタミ」のやり方は全く悪質で、かってのブラック企業批判も頷ける。 「ワタミ」がいまだにこのような組織的な不正工作をしているとは驚かされた 「ワタミが狙っていたのは「時間切れ」」、というのはその通りだろう。 Aさんに組織的支援があったのが幸いしたようだ。いまだにこのようなことを平然とやる「ワタミ」の「ブラック企業」体質には呆れ果てた
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ブラック企業(その12)(後継者はなぜ育たなかったのか?ワタミ渡邉会長の告白、大成建設 ブラック社員情報が下請け職人に出回る「過去最低の現場」の惨状、「ブラック職場で夫失踪」救った妻の見事な対応 会社に殺されない自分の心の守り方) [企業経営]

ブラック企業については、昨年3月7日に取り上げた。今日は、(その12)(後継者はなぜ育たなかったのか?ワタミ渡邉会長の告白、大成建設 ブラック社員情報が下請け職人に出回る「過去最低の現場」の惨状、「ブラック職場で夫失踪」救った妻の見事な対応 会社に殺されない自分の心の守り方)である。

先ずは、昨年3月22日付け日経ビジネスオンライン「後継者はなぜ育たなかったのか?ワタミ渡邉会長の告白」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00120/030400003/?P=1
・『居酒屋「和民」を人気業態に育てたワタミ創業者の渡邉美樹氏(60)。創業16年で東証1部上場を果たし、2008年3月期には売上高1000億円を突破。その手腕から外食業界のカリスマ経営者として名をはせ、小説『青年社長』のモデルにもなった。 「100年企業」を目指し経営を後進に託すべく、09年に社長の座をすかいらーく出身の桑原豊氏に譲り、自らは会長兼CEO(最高経営責任者)に。11年には東京都知事選に出馬(落選)するために代表権を返上し、取締役最高顧問に就任した(同年、非常勤の取締役会長に)。13年には取締役も辞し、参議院議員になり国政に進出。ワタミには「1000%戻らない」と公言していた。 ところが、渡邉氏が経営を離れてからワタミは坂道を転げ落ちるように業績が悪化する。労務問題の影響や外食事業の不振がたたり、15年3月期には上場以来初の営業赤字に転落し、自己資本比率は危険水域の7.3%にまで低下。05年に進出し、有料老人ホームが100カ所を超えるまでに成長した介護事業を売却せざるを得なくなり、その後も減収に長く苦しむことになった。 これを見かねた渡邉氏は、6年間の議員生活を終え、19年7月にワタミの取締役に戻り、10月には8年ぶりに代表取締役会長に復帰した。グループCEOという新たな肩書も名乗り、自身に権限を集中させ経営の立て直しに奔走。20年3月期は6期ぶりの増収を見込むが、売上高は1000億円に届かず、ピーク時の1631億円(14年3月期)には遠く及ばない。 グループの未来を託せる後継者はなぜ育たなかったのか――。渡邉氏が自戒を込めて、心中を明かした。 Q:昨年10月、8年ぶりに代表取締役会長に復帰しましたが、政界進出する際には「ワタミの経営には絶対に戻らない」と宣言していました。 渡邉美樹・ワタミ会長(以下、渡邉氏):まずあれだけ強く戻らないと言ったのは、実は対外的というよりも社内に対するメッセージでした。要するにどうしても僕がつくった会社ですし、いろいろなことをすべて私が決めてきたわけですから、社員にしてみれば私が少しでも会社に残ったり、戻ってきたりすることが分かれば、甘えが当然発生します。経営陣に緊張感を持ってもらうために、「二度と戻らない」と公言したわけです。それと同時に、政治から日本を変えていく、日本の未来をつくっていくという決心を固めるために、自分に対して、一種のけん制をしたということでもあります。もっとも政界に入ってみて分かったのは、国会議員は本当にいかに周りと仲良く、群れをつくりながら泳いでいくかが大事な仕事だということです。僕が発言したことは議事録には残っていますが、1つも形にはならなかった。 それでも国会議員になってから、僕は経営情報を取りに行きもしなかった。取れば甘えてくるはずだからです。でも結果として、工場の設備、店舗の改装、広告宣伝などに対する過剰投資が生まれていた。15年3月期に(上場以来初の)営業赤字に転落してからは、銀行から「渡邉さん、戻ってこなかったら、もう融資しないよ」と言われるところまで追い込まれました。それからは、2週間に1回ぐらい、役員会の相談を受け、大株主の責任として財務や資金繰りの状況を見ていました。でも、やはり中途半端に経営ってできませんから、それ以上踏み込むことは自制していました。 Q:それだけ戻らないと強く決心されたのに、昨年トップに復帰されたのはなぜですか。 渡邉氏:創業者にとって会社は自分の子供だし自分が育てたわけですが、ある段階に来たときには自ら前に進んでいってもらえるようにしたい。ただ、やはり創業者というのは本当に死ぬまで創業者なんだなということは、今回復帰するにあたって、改めて思い知らされました。中途半端に言うと今の経営陣の批判になってしまうので、これは避けたいんですが、「やはり戻らねばならない」と思った理由は2つあります。 1つは、司令塔だった私が欠けたことで、グループの各事業がバラバラになってしまったことです。それから2つ目は、都知事選のためにトップを退いてから8年間、ワタミを客観的に見たときに、何一つ新しいことが生まれてないわけですよ。現状の中における工夫はしているんです。1あるものを1.1とか1.2にするような。でも、そこには目指すものが見えない。僕は大きな未来の目標を立てて、そこを目指して新しい事業をつくってきた。やっぱり創業者じゃないと未来が見えないんだなということは強く感じました。 Q:ここで言う「未来」が見えるか見えないかは、何の差なんですか。 渡邉氏:まあ、それはたぶん創業者の1つの変態、特異性だと思いますよね。一般のサラリーマン経営者の方ならば、現状を守ることを考えて経営するのは、やむを得ないことだと思います。ただアントレプレナー、創業者というのはもともと何もないところから、仕事を始めているわけですよね。「こんな夢を追い掛けよう」という思いから始まっているわけで。現状の1を1.1にしていこうとかいう、概念自体がないんですよ。だからそれにおいてはもう人種も違うと思います』、「営業赤字に転落してからは、銀行から「渡邉さん、戻ってこなかったら、もう融資しないよ」と言われるところまで追い込まれました。それからは、2週間に1回ぐらい、役員会の相談を受け、大株主の責任として財務や資金繰りの状況を見ていました」、銀行にしたら当然の要求だ。
・『「タテ割り」の弊害が顕著に  Q:会社を船に例えれば、船自体をつくる方法を考えてきた人と、出来上がった船に乗り込んできた人とは、見える景色が違うというのは当然といえば当然なのかもしれませんね。 渡邉氏:出発点がまるで違います。あと船の進む方向をもともと持っていた人と、後から乗り込んできて船をどこに進めていいか分からない人とは、全く違うと思います。ですから、ワタミの中で新しいことが何一つ生まれていなかったのは、僕にとって非常に残念なことで、またこれを何とかしなければ乗組員を幸せにできないと思いました。 外食事業(上左)の他に、宅食(上中)、介護(上右、15年に売却)、農業(下左)、自然エネルギー(下右)などの事業を抱えるワタミには、相乗効果を生む「全体最適」の戦略を描けるリーダーが必要だったのだが……  Q:ただ、外食事業では「和民」に代わる居酒屋の新業態もいくつか生まれました。 渡邉氏:それは看板を掛け替えただけですから。「ミライザカ」や「鳥メロ」というのは、和民を変形させたものなので新しい業態とは言えません。そこで今度、4月に、(飼料や食肉の生産から手掛ける)高品質の和牛を手ごろな価格で提供するファミリー向けの業態をオープンします。他にも、今伸ばしているファストフード業態の「から揚げの天才」。これらは従来のワタミにはなかった文化です。駅前型居酒屋の和民とは違うこの2つの業態を本格的に立ち上げることが、復帰後の僕の仕事でした。 Q:一方で、グループ全体の事業をもう一度まとめる作業が必要だということですが、経営を退かれた後、会社はどういう状況に陥ったのでしょうか。 渡邉氏:一言で言えば、「タテ割り」の弊害が顕著になったということです。ワタミには、農業、自然エネルギー、外食、宅食など様々な事業があり、それが連携することで初めて本来の強みを発揮します。これらの事業はトップを退くまでの29年間で、僕がつくってきたものです。そして、各事業がそれぞれ独立して走っていて、それらを横断的に見て、シナジーを考えるのは僕1人だった。ところがその本人が抜けたものだから、各事業がバラバラに動き始めたんです。人的交流も情報共有もあまりなかったので、例えば、外食事業と宅食事業がそれぞれ手配したトラックがほとんど同じ所に向かって別々に走っていた。 でも、僕が政治家になる前は、タテ割りの方が僕自身が会社を見やすかったですよね。各部門を分社化していたので、この会社はこう、この会社はこうと、会社単位で管理して指示できたので、僕にとって一番効率が良かった。でも、その結果として全体最適ではない組織をつくってしまった。これはもう僕自身の反省ですが、横の連絡を取り合いながら常に全体最適を考えられるような役員がまだ育っていなかった。だからタテ割りにして、僕が直接指示をした方がやりやすかった。 それに組織は小さい単位の方が、頑張りや成果も見えやすい。だからタテ割りで、それぞれの会社と役員が自立していけばいいと思っていました。でもこれが大きな間違いでした。1+1が3とか4を生むことを目指したのに、1+1が1になってしまった。結局、農業部門は赤字で足を引っ張っている。エネルギー部門でもソーラー発電事業などを一部手放さねばならなくなってしまった。最高の経営状態でバトンを渡したつもりだったが、肝心のバトンの渡し方が悪かった。だから事業をつくった人間の責任として、相乗効果が生まれるような仕組みにつくり替えていかなきゃいけないと思ったんです。 Q:タテ割りを解消して、全体最適を考えられるリーダーを育てるために、今はどのような取り組みをしているんですか? 渡邉氏:昨年10月に会長に復帰してからすぐに、通常の取締役会とは別に、部門を横断する「経営戦略会議」を立ち上げました。毎週月曜日に各部門を統括する6~7人の役員が集まり、朝8時から昼の1時くらいまでじっくり時間をかけてグループの各事業の現状や課題を共有し、成長戦略を話し合います。この会議が今のワタミの心臓になっています。すべての事業の戦略立案、およびそのPDCAについて、毎回20項目ほどの内容を、1つずつ討議する、非常に中身の濃い会議です。案件ごとにその事業の担当者が順番に来て、戦略の進捗などについて次々に報告します。 会議に参加する役員は、そうした各事業の動きや課題をお互いに共有し、他部門と連携しながら全体のシナジーを高める方法を一緒に議論します。ITを使って、各部門の情報共有も進めています。例えば外食で1つの販促策を打つ場合などは、食材を作る工場も、素材を供給する農場も、人材育成の担当部署も、もちろん本部も、全員が情報を共有して「同時案件」として扱います。各部門を預かる役員が集まってそれを検討し、そして合意し、前に進む。これを繰り返すことで、グループ全体を見渡す大きな視野で物事を判断できるようになるはずです。 Q:今振り返ると、ワタミの経営幹部に本来必要だったリーダーシップとはどのようなものだったのでしょうか。 渡邉氏:難しいね。結局、その育成をできなかったのが僕ですから。ただ、1つ、付け足しておきたいことは、いろいろな問題点はあるけれども、今の清水(邦晃)社長(兼COO=最高執行責任者=、15年に就任)は非常に良いリーダーだとは思っているんです。ラグビーの日本代表チームに例えれば、彼は主将のリーチ・マイケルで、僕はヘッドコーチのジェイミー・ジョセフだと。私は上から見て指示して、戦略も練り、人も決める。実際に現場で戦って、ここはスクラムでいくのかキックするのか現場で判断するのは彼です。外食事業にとって一番大切な、商品と立地の2つを彼に任せていて、僕はタッチしていません。ボトムアップのリーチ・マイケルを中心とした、いい組織が出来上がっていると思っています。リーダー論で言うならば、まずは現場でみんなをまとめられる人材を育てることまではできた。次は経営戦略を担える人を、これから時間をかけて育てていきたいというのが正直なところです』、「タテ割りで、それぞれの会社と役員が自立していけばいいと思っていました。でもこれが大きな間違いでした。1+1が3とか4を生むことを目指したのに、1+1が1になってしまった」、「最高の経営状態でバトンを渡したつもりだったが、肝心のバトンの渡し方が悪かった」、痛烈な反省のようだ。
・『「同族企業について調べて、考え方が変わった」  ではその先、渡邉さんの後継者については、どうお考えですか。 渡邉氏:正直言って次の後継者のことなんて全く考えていません。今はとにかく会社をゼロからもう一回つくり直さなきゃならない。その上で、経営をどう渡したらいいのかを、もう一度考えます。 Q:今年1月、長男の将也さん(32歳)が執行役員に就任し、海外事業を担当していますが、2月5日に新型コロナウイルスの影響で中国の「和民」業態の撤退も決めました。 渡邉氏:就任早々、試練と向き合っていますよ。彼は大学を出た後に、ヘルパーの資格を取って介護事業の現場に入り、外食事業での店長や店舗開発を経て、海外の仕事を担当していました。その後、うちの大株主のサントリーさんから「勉強しませんか」と声をかけていただいて、16年からまずは日本のマーケティング部門にいて、18年に(米蒸留酒大手の)ビーム(現ビームサントリー)のシカゴ本社に移り、マーケティングの部署でブランドマネジャーを担当しました。これまでにMBA(経営学修士)も取得しています。まあ、僕の息子じゃなくても、そういう経歴の人がいたら採りたいですよ。ゼロ歳から僕の後ろ姿を見て、経営理念が染みついていますし、これから非常に期待したいとは思っています。 Q:渡邉さんの後を継いでCEOを担う可能性も当然あるわけですね。 渡邉氏:可能性はありますが、今は何とも言えませんね。本人の力次第だと思います。社員の幸せと会社の発展につながるようなら、なった方がいいし、そうでないならなるべきではない。以前、僕は世襲に対しては疑問がありました。能力がない人がトップに就いたり、子供に継がせることが会社の存在目的になってしまっていたりする会社を見てきたからです。ただ、議員時代に改めて同族企業について調べて、考え方が変わりました。 Q:どういうことでしょうか。 渡邉氏:世界的に同族企業は、そうでない企業と比べて3倍の収益性を誇ります。創業家のトップであれば、創業理念も守りやすいし、オーナーとして短期的な収益にとらわれずに、長期的な視点で経営判断ができます。緊急ではないけど大事なことにお金を使う。つまり未来に投資できる。これが大きい。一方で、家業を守るために「ケチ」にもなれる。会社を長きにわたって成長させる上で、創業家の出身者に有利な点が多いのは事実です。すべてはリーダーとしての能力次第ですが、能力が同じなら、絶対同族の方がいいと思います。 現在、ワタミの株式の約26%を私の資産管理会社が持っていますが、これ以上、株は絶対売らないと対外的に宣言しています。大株主がころころ変われば、会社の方向性がブレます。創業家が一定の株をしっかり持って、その創業家からしっかりとした方針が出され、未来図が示される。これは部下にとって最高に仕事がしやすい状況だと思います。 Q:会長復帰と同時に、自ら策定された中期経営計画を発表しました。 渡邉氏:あのままいったら僕はワタミはつぶれていたと思います。これが、復帰して会社の中を見回してみた感想です。大事なのはここから10年、もっと言うとこの3年だと思っています。社員を含めてみんなで劇的に会社を変えようとしています。その成果が出るのが22年3月期。そして、29年3月期には売上高を(現状の2倍以上の)2000億円に引き上げて、サービス業で日本のリーダー的な存在にもう一度戻りたいと思います』、「29年3月期には売上高を(現状の2倍以上の)2000億円に引き上げて、サービス業で日本のリーダー的な存在にもう一度戻りたいと思います」、「カリスマ経営者」の化けの皮が剥がれた「渡邉氏」の願望が実現するか、注目してみておきたい。

次に、7月20日付けダイヤモンド・オンライン「大成建設、ブラック社員情報が下請け職人に出回る「過去最低の現場」の惨状」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/242993
・『大成建設の現場を担当する“要注意”の同社社員について、現場の下請け職人たちは人物情報を口コミで共有している。コロナ感染者が発生した新宿住友ビル改修工事には、「過去最低の現場」と評された都内工事で要注意人物とされる社員がいた。特集『バブル崩壊 ゼネコンwithコロナ』(全7回)の#2では、工事現場の惨状に迫る』、「過去最低の現場」「と評される」ようであれば、よほど酷いようだ。
・『三角ビルのコロナ感染を発表しなかった大成建設にまつわる“いわく”  東京・新宿のオフィス街で6月末、新宿住友ビル1階の足元と上空にガラス張りの巨大アトリウムが完成した。その特徴的な形から“三角ビル”の愛称で親しまれるこの超高層ビルは、竣工から今年で46年。老朽化に対応し、新たな価値を付加するリニューアルプロジェクトの目玉となるアトリウムの工事は、大手ゼネコンの大成建設が施工した。 この工事現場では4月下旬、新型コロナウイルスの感染者が発生していたが、大成はそれを一般に公表しなかった(詳細は本特集#1『大成建設「本社社員コロナ死」隠しの真相、新宿住友ビル工事でも感染者』 参照)。 7月15日にも都内の別の現場で17人の感染者が発生し、さすがにこのときは一般に発表したが、それまでは建設現場での感染発生をゼネコン各社が相次ぎ発表する中でも、大成は“コロナ隠し”とも受け取られかねないほど公表に消極的だったのである。三角ビルについては施主である住友不動産とも協議した上ではあろうが、大成の建設現場で働いたことがある下請け職人たちは、感染発生を耳にすると「あの会社ならば公表しないのは当然」とささやき合っていた。 三角ビルの現場では、感染発生により工程が組み替えられ、それに伴って急きょスケジュールに空きが出た職人もいたが、その休業補償は自己申告制。下請けである職人は大成に忖度して、申告しづらい。職人たちに言わせれば、それもまた「当然のこと」。「大成は職人を馬車馬のように扱うから。それに比べれば、同じ東京発祥の大手でも清水建設や鹿島はまだ上品」と辛辣な言葉を吐く者もいる。 しかも、この大成については、ある“いわく”があった。 大成の現場を担当する“要注意”の同社社員について、現場の下請け職人たちは人物情報を口コミで共有している。コロナ感染者が発生した三角ビルの改修工事には、「過去最低の現場」と評された都内工事で要注意人物とされる社員が出入りしていたのである』、「大成は“コロナ隠し”とも受け取られかねないほど公表に消極的」、公表すれば工事の遅れにつながるので、どうしても隠蔽したくなるのだろう。「現場の下請け職人たちは人物情報を口コミで共有」、よほど悪質な社員なのだろう。
・『不安全行動はすぐ指導せず、こっそり撮影 「まるで下請けいじめ」  現場を担当する大成の社員は、工事が完成するたびに、所属部署が管轄するエリア内の他の現場にある程度の人数が固まって移動する。その中に、大成の社員でも「変わり者が集まっている」と評するグループがある。そのグループの一人が、三角ビルの現場に姿を見せていた。 この社員は、2年前の「丸の内3-2計画」(丸の内二重橋ビル)の現場で、職人にどう喝まがいの口調で接していたことで有名だった。 「丸の内3-2計画」は、工期が2015年11月~18年10月の約3年に及ぶ大規模な再開発工事だった。三菱地所が運営するオフィスや商業店舗、東京商工会議所の会議室、東京會舘の結婚式場やホールなどが入る複合施設を建設するものだ。 完成した今では、東京メトロ千代田線の二重橋前駅に直結し、華やかな感じでにぎわいを見せるが、工事中は重苦しい雰囲気に包まれていた。17年8月、高所作業車の落下事故が発生して職人が3人亡くなったからだ。 もともと予定されていた工程が遅れに遅れたのに加え、事故への対応で工事を中断したことで工期を圧迫したため、工事最盛期には何日も現場に泊まり込んだり、徹夜したりするのが当たり前だった。下請け業者にすれば、職人を確保するために中断や待機の期間でも給料を払い続け、工程の遅れを取り戻すべく職人を増やして対応するなど、まさに身を削る現場だった。 作業環境も下請け業者を苦しめた。特に完成を控えた18年の夏は猛暑が現場を襲い、休憩所の冷房設備や冷水機の不足によって職人が何人も熱中症にかかった。暑さだけでなく、トイレや資材搬入用のエレベーターが少ない、職人の休憩所にエアコンが付いていない、エレベーターの使用料が1回2000円かかるなど、「過去最低の現場」と職人たちに言わしめた。 死亡事故直後に現場に入ったある職人は、大成社員の所長が朝礼で、遺族に会ってきた話をしたときのことをよく覚えている。「『これは俺のせいなのか?うちらも迷惑だ!』という趣旨で責任を職人に押し付けるような話し方をしていて、みんな驚いていた。ちょっと鬱っぽくなっているなとも感じた」。 事故発生以降、安全専任の大成社員による監視は過剰なほど厳しかった。高所作業時に安全帯を着けるのを忘れていたり、高所作業車を使うときにコーンが区画からはみ出ていたり、足場の固定を支えるつっぱりが緩んでいたりといった不安全行動を見つけると、その場では注意せず、現場のビニールシートの隙間からこっそりカメラを差し入れて写真を撮影し、翌日の朝礼で写真を皆に見せて周知した。 不安全行動を取り締まることはもちろん重要であり、危険性の共有は事故を防ぐために必要だ。しかし「現場ですぐに指導しないのはたちが悪かった。まるで下請けいじめだった」と前出の職人は振り返る。 科されるペナルティーも厳しいものだった。不安全行動をした業者から新規入場者を受け入れなかったり、資材を搬入させなかったり、作業を中止させて業者の代表者を呼び謝罪を要求したり、「ペナルティーのせいで工事の進捗が遅れる」ようなケースも相次いだ。 呼び出しを食らった業者の代表者は、“恐喝担当”とあだ名された社員から土下座を強要されるなどしており、現場は恐怖で支配されていた。厳しい取り締まりが相次いだため、職人たちは結託して監視を行う安全専任担当の社員の行動を逆に監視する係を立て、作業を邪魔されないようにひそかに見張ったりもした。 この現場の所長、安全専任担当、恐喝担当などは“ブラック社員”として職人たちの間で人物情報を共有されるようになった。工事が終わって2年たった今でも「あの現場にいる」「うちの現場で見掛けた」と情報がやりとりされているのだ。 丸の内3-2計画の現場で社員による下請け業者へのパワーハラスメントが行われていたことや、極端に短い工期だったことについて、大成に問い合わせたところ、「指摘のような事実はない」との回答だった。 なお、大成の村田誉之社長(当時。現副会長)がこの現場を視察したときもひと騒動あった』、「エレベーターの使用料が1回2000円かかる」、所属する組織は様々なのに、どうやって請求するのだろう。「呼び出しを食らった業者の代表者は、“恐喝担当”とあだ名された社員から土下座を強要されるなどしており、現場は恐怖で支配されていた」、下請工事業者から抗議が入りそうなものだが、遠慮しているのだろうか。
・『大成社長の視察に備えて徹夜でエアコン設置、あいさつの練習  現場の大成社員が村田氏に対していい顔をしたかったからだろうか、社長訪問に備えて休憩所のエアコン不足を解消するべく、職人たちは徹夜でエアコン設置をやらされたり、あいさつの練習をさせられたりした。 「訪問当日、村田氏による職人へのねぎらいは乏しかったけどね」と前出の職人。休憩所内は一瞥しただけで特にあいさつするようなことはなかった。 村田氏は昨年、「週刊ダイヤモンド」のインタビューで「職人の技、匠の技をリスペクトする立場でずっと来てる」と語っていたが、訪問の準備に付き合わされた分、職人の間で村田氏の評判は下がった。職人たちからは「村田社長になってから現場での社員の締め付けは厳しくなった気がする」という声も出ている。ちなみに村田氏は今年6月に副会長に就き、安全・働き方改革担当となっている。 建設業界は人手不足である。再開発需要が旺盛な近年は、職人も仕事を選べそうなものだ。大成の仕事で痛い目を見たのであれば、断ればよいだけの話にも映る。しかし、不満を抱きながらも、職人たちは露骨にゼネコンをえり好みしようとはしない。 「自分一人なら断ってもいいが、上に迷惑が掛かる」と前出の職人が語る。 建設業界は、大手ゼネコンをトップとしたヒエラルキーが形成され、重層の下請け構造になっている。末端の一人が工事を断ると、上位の下請け業者が仕事を引き受けられなくなり、迷惑が掛かる。一人親方といっても、なじみの業者は決まっているので、影響は必ず波及する。上位の会社の仕事が干されないように忖度し、嫌なゼネコンとの仕事も引き受けざるを得ないというのだ。 もう一つ、丸の内3-2計画の現場しかり、工期に無理があると現場はより過酷になる。無理のない工程や適切な環境を整えられるかどうかは、現場ゼネコン社員の力量に懸かっているが、それができていない現場は山のようにある。 その点で、今後はさらに状況が悪くなるだろう。コロナ危機の影響で工期が変更されたり、東京オリンピック・パラリンピック開催の後ろ倒しで開発プロジェクトのスケジュールが乱れたりすることが必至であるからだ。そのしわ寄せがくれば、現場はさらに厳しいものになる』、「末端の一人が工事を断ると、上位の下請け業者が仕事を引き受けられなくなり、迷惑が掛かる。一人親方といっても、なじみの業者は決まっているので、影響は必ず波及する。上位の会社の仕事が干されないように忖度し、嫌なゼネコンとの仕事も引き受けざるを得ないというのだ」、建設業界にもやはり厳しい掟があるようだ。

第三に、12月28日付け東洋経済オンラインが掲載した公認心理師・臨床心理士の谷地森 久美子氏による「「ブラック職場で夫失踪」救った妻の見事な対応 会社に殺されない自分の心の守り方」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/395564
・『他人に振り回されがちな人は、そのストレスで心身に不調を来し、場合によっては命まで手放してしまう可能性があります。公認心理師、臨床心理士である谷地森久美子氏の著書『ふりまわされない自分をつくる 「わがまま」の練習 心の中に線を引けば全部うまくいく 』を一部抜粋・再編集し、仕事で精神的に追い込まれたときの本人や支える側の対処法をお届けします』、興味深そうだ。
・『夫が家を出たまま出社しなかった  Cさんとの出会いは、臨床心理士の私が当時勤務していた精神科クリニックでした。 クリニックの待合室では、ぐったりとしているCさんのわきで、心配そうに、奥さんが付きそっていました。奥さんが経緯説明や症状などの情報を記した、インテークシートには、次のように書かれていました。 2日前の朝、夫Cは家を出たまま出社しませんでした。その日は夜遅くまで、会社と警察と連絡を取りながら夫をさがしまわりました。幸いなことに、深夜3時ごろ夫から私あてにメールが入り、昨日、帰宅しました。 私が『生きて帰ってきてくれただけでよかった』と伝えたら、夫は『つらくなりすぎて、誰もいないところに行きたくなった。でもふと君の顔が浮かんできた。おおごとになって申し訳ない』と泣きながら、話してくれました。夫が心おだやかにすごせるようになるにはどうしたらよいでしょうか。 時間となり、私がCさんをカウンセリングルームに案内しようとしたとき、奥さんは頭を下げて言いました。 「カウンセリングのあとで、私にもアドバイスをください。夫にはOKをもらっていますので」 カウンセリングルームの椅子に腰をおろすなり、Cさんは「ふーっ」と深いため息をつきました。 C:「妻に『お願いだから一緒にクリニックに行って』と言われてきました」 私:「大変な中、よく来られましたね」 今日来てくれたことをねぎらうと、緊張していたCさんの顔がほっとゆるみました。 C:「自分が担当している部門の営業成績が、ここ半年かんばしくありませんでした。そのため結果を出せない同僚が何人も切られる事態となりました。自分も伸びなやみ、対策を練り続けて、毎日残業。深夜に帰宅しても眠れない。その分、日中はぼうっとして考えがまとまらず、上司に怒鳴られ――。 『自分はダメな人間だ、会社のお荷物だ、自分なんかいないほうがいいんだ……』そんな思いを抱えるようになり、次第につらくなっていきました。そして、この苦しみをどうにか終わらせられないかとぐるぐる考えているうちに、気がついたら……逃げだしていました」』、強烈なパワハラをする典型的な「ブラック企業」だ。
・『自分の存在自体が意味がないと考えた  私:「どれだけつらいか自分ではわからないほど、限界に達してしまったんですね。もしかして消えてしまいたいとか、死んでしまいたい、といった思いが、頭をよぎったりしませんでしたか」 C:「ありました。自分の存在自体、意味がないとまで考えていました。迷惑をかけるくらいなら死んだほうがましだと思っていました。こんなこと、妻には言えないです、心配かけたくないですから」 Cさんは、急にうつむき、身体をふるわせました。それからしばらくのあいだ、あふれるように涙が流れ続けました。 20分くらいたったころでしょうか、ひとしきり泣いたCさんは、深呼吸しながら、次のように言いました。 C:「『死にたくなった』なんて、これまで誰にも言えませんでした。でも、聞いてもらうと、今までより少し気持ちが楽になるものなんですね」 私:「『話すことは、思いを手放す意味もある』って、聞いたことはありませんか。抱えてきたものを手放すと、問題と自分とのあいだに距離がとれるのです。つまり、自分を守る心の境界線を引くことができる。 Cさんは自覚がないと思うのですが、逃げだしたくなるほど、ひとりで仕事の責任を抱えこんでいた。心の境界線が脅かされていたんです。安心、安全な場所に一刻も早く避難しなければならない危険な状況でした。 こんなときは、物理的に距離をとる、つらい状況・人との関係を切る、誰かに助けを求めること。シンプルなことですが、それ自体、あらたに自分を守る強力な境界線となります。 そういう意味で今回の失踪の件は、Cさんにとってはご自身を守るぎりぎりの選択だったように私には思えます、もちろん今後はおすすめしませんが……。おかげで、Cさんは、今しっかりと生き残ることができました。ぎりぎりのところで、ご自身を守ったのです」 Cさんは、また少し涙を流し、照れたように笑いました』、「安心、安全な場所に一刻も早く避難しなければならない危険な状況でした。 こんなときは、物理的に距離をとる、つらい状況・人との関係を切る、誰かに助けを求めること。シンプルなことですが、それ自体、あらたに自分を守る強力な境界線となります」、その通りだ。
・『自分の限界がわからなくなって無理をする  ブラックな環境に身をおく人は、心と身体が疲弊して、どこまでが自分の限界かわからなくなり無理をしがちです。安全や健康の境界線がおびやかされ、自分を見失ってしまうのです。今回のように生命にかかわる状況にいたってしまうこともあります。 私:「さて、危険にさらされたとき、何を大事にすればいいのか、ですが、先ほど誰かの支えが必要だと述べましたよね。それには家族など身近な人の温かな協力が必要なんです。ここからは奥さんをお呼びしてもよろしいでしょうか」 Cさんは、深くうなずきました。 私:「危機的状況に陥った人の命綱は、やはり、人とのつながりです。Cさんは身を隠そうとしたときも、ぎりぎりのところで奥さんに連絡をとりました。そして、Cさんがもどってこられたときの奥さんの対応も、すばらしかったです。つらくて弱っているときほど、温かで、自分を受け入れてくれる言葉は本当に助けになります。 多くの場合、支え手側が陥りやすいのは、弱っている人に対して、否定語をもりこみながら無責任に励ましてしまうこと。具体的には、『なんで、そんなことをやってしまったのか。こういうの、あなたらしくない。残念だ。もっと前向きに頑張れ』といった言葉の用い方をしないこと。 『なんで』『らしくない』『残念』は、弱っている相手にとっては否定語になります。『もっと前向きに頑張れ』と声をかけることは、あまりに酷で、さらなる徒労感や失望感をいだかせるだけです。 それから今後、ご夫婦で心にとめていただきたいこと。それは、夫婦や家族だと心理的距離が近すぎて、お互いにつらくなることがあります。支えている方にも、支えてくれる相談相手が必要なのです。 そのため、カウンセリングというよりも、家族ミーティングのイメージで、定期的にこちらで話し合いの場をもちましょう」 このカウンセリング後、主治医の判断で、Cさんは1か月の病気休暇を取ることになりました。私はCさんの許可をもらったうえで、会社の担当者や産業医に対して、状態や経過に関してやりとりし、それを夫婦そろっての家族ミーティングで話題にし、会社の受け入れ状況を確認していきました』、こうした「カウンセリング」は有効なようだ。
・『家族にとっても気がかりはたくさんある  危機的状況に陥っている本人のみならず、その家族にとっても、今後の身分や給与、復帰の可能性など気がかりはたくさんあるものです。一見、当たり前のようですが、療養中、心の専門家が本人や家族にかわって、会社に対して働きかけることは、回復を促す重要なポイントです。 その後、Cさんは3か月の休暇をとりながら、日々穏やかな生活を重ねることで、確実に回復へと向かっていきました。 過重労働、パワハラ、セクハラなど過酷な労働環境の問題は、新卒のみなさんやその親御さんにも、ぜひ考えていただきたいことです。 私のオフィスにも、過酷な職場環境の中で、立場が弱い分、不当で卑劣な扱いをされながら、頑張っている20代の人たちがやってきます。 過度な責任を押しつけられ続けた人たちは、最終的に心身の不調で働けなくなり、それがきっかけで会社を離れることが少なくありません。ですが、これではご本人に相当なダメージが残ります。 「退職は逃げではないか。でも、会社のことを考えると、身体の震えがとまらない」 「今後、転職活動をするにしても、こんな自分なんて採用してくれるところがあるとは思えない」 「仮に、次の会社が決まっても、ちゃんと働けるのだろうか。またダメになるんじゃないか」 これらの思いを四六時中抱えていたら、心身の健康をおびやかします。そんな生き方は、自分を大切にしていませんよね。 「その意味で“退職も辞さない覚悟”は、混乱からあなたを守る、強力な境界線」――相談に来られる方に、私はいつもこのことを伝えています』、「退職も辞さない覚悟”は、混乱からあなたを守る、強力な境界線」、同感である。
・『自分自身を守ることを最優先する  そして、もしその決断ができないのであれば、それは、すでにかなり消耗している証拠です。今、やるべきことは、どんな方法でもいい。ご自身を守ることを最優先に、ぜひ休養をとってください。 医療機関で診断書を書いてもらい、会社から物理的に離れるのです。これらの手段が、困難な状況からあなたを守る強力な境界線となります。 そして、このような状況に陥っている20代、30代のお子さんの親である、あなたへ。 お子さんが、相当無理をしているのもわかっている。でも「せっかく良い会社に入ったのだから、やめていいのか」「退職して引きこもりになってしまうのではないか」など心配がつきないために、今の会社でやっていくよう、つい叱咤激励してしまっているかもしれません。 ですが、こんなときこそ、話を丁寧に 聞きながら、お子さんを最大限に受け入れてあげましょう。弱っているときは思考のブラックホールにはまりこみ、普段なら選ばない失踪や自殺企図などを頭の片隅で思い描いてしまうことがあります。 自分を気にかけてくれる人がいるというのは、最後の最後で見えないけれど強力な命綱になる。そのことを心にとめておいていただきたいです』、「自分を気にかけてくれる人がいるというのは・・・強力な命綱になる。そのことを心にとめておいていただきたいです」、その通りだろう。
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