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企業不祥事(その23)(「まだ黒じゃない?」 エリートが堕ちる無意識下の悪事、整備事業の指定取り消し 整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃、新車を売った後のアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか) [企業経営]

企業不祥事については、1月7日に取上げた。今日は、(その23)(「まだ黒じゃない?」 エリートが堕ちる無意識下の悪事、整備事業の指定取り消し 整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃、新車を売った後のアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか)である。

先ずは、4月1日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏による「「まだ黒じゃない?」 エリートが堕ちる無意識下の悪事」を紹介しよう。なお、ここで取上げているのは、厳密には企業ではなく、官公庁だが、ここでは広く捉えることにした。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00124/
・『厚生労働省で耳を疑うような“事件”が続発している。 1つ目は、「怒りを買った組織の末路」だ。 新型コロナウイルス対策で最前線に立つ厚労省の職員23人が、銀座で送別会をしていた問題で、宴会に参加していた3人と同じ部署(老健局)の3人、計6人が新型コロナウイルスに感染したことが確認された』、今日の新聞報道によると、大阪市や大阪府の職員が多数で飲食店を利用していたことも判明している。いくら歓送迎会のシーズンとはいえ、自粛を呼びかける主体がこのザマでは、示しがつかない。
・『パワハラ相談員がパワハラ  SNSでは、「これでやっぱり大人数の宴会の感染リスクが高いってことが分かったじゃん」だの、「厚労省が自ら少人数・時短営業の効果を証明した」だのと皮肉交じりのコメントが相次いだが、ったく何をやっているのか。 逼迫している医療現場のリアルや様々なシミュレーションを基にした感染源の特定などを、感染拡大を危惧する専門家たちと共同作業をしている“はず”なのに、「自分たちは別」とでも思っていたのだろうか。 そして、2つ目は、「パワハラ対策の相談員が、パワハラをしていた」という、看過できない事実だ。 報道によれば、2017年に元室長補佐の部下だった男性が、暴言などのパワハラに該当する行為を受けたとして昨年(20年)、公務災害を申請し、今年(21年)3月2日付で認定された。男性の上司は、職場でパワハラ対策をする相談員だったにもかかわらず、部下の男性に対し、「潰してもいいのか」「死ねといったら死ぬのか」などと、他の職員たちがいる前で罵倒を繰り返したという。 男性はうつ病を発症し、昨年、退職。「複数の部署や窓口などに相談したが、どこも機能しなかった」そうだ。一方、厚労省は「パワハラ防止を所管する省として誠に遺憾で反省している。職員への研修を再徹底したい」とコメントし、元室長補佐の給与を1カ月間1割減額する懲戒処分にした。 続く3つ目の問題も、同じくパワハラである。 スクープを連発している『週刊文春』が、上司にパワハラを受けていた男性が、事前に準備していたハンマーで厚労省が入る合同庁舎の窓ガラス1枚を派手にたたき割り、そこから飛び降り自殺を図ろうとしたという、かなりショッキングな“事件”を報じた。 男性は19年春ごろに異動してきた上司から、「簡単な仕事にいつまでかかってるんだ!」「バカか、お前は!」などと、同僚たちの目の前で罵倒され、同年秋頃に体調不良で休職。その後、職場復帰を果たすも、部署全員が受信する業務メールから外されるなどの“いじめ”を受けた。 部署異動の内示を受けていた男性は、“事件”の起きた当日、同僚たちに挨拶メールを送信。そこには、「上司からのパワハラに苦しめられたことを示唆」する文面がつづられていたという。 ……ったく。いったい厚労省は何をやってるのか。 10年以上も、専門家たちとともに、パワハラ対策に取り組んできたのは何だったのか。 パワハラに悩み、傷つき、生きる力を失った人たちに関わってきた専門家たちの「パワハラをなくしたい」という強い思いを、件の厚労省の職員たちは踏みにじったに等しい』、「「パワハラ対策の相談員が、パワハラをしていた」、まるで笑い話だ。しかし、(対象となった人は)「うつ病を発症し、昨年、退職、悲惨だ。
・『倫理観ではなく組織風土の問題  まさか「俺たちは“国民”のために、昼夜問わず働いてるんだからさ、そりゃ飲みにも行きたくなるし、怒号を飛ばすことだってある。だって、“国民”のために粉骨砕身働いているんだもん!」とでも思っているのだろうか。 厚労省の職員の不祥事はこれまでも、あきれるほど繰り返されてきた。どれもこれも一般の企業なら、一発で“吹き飛びそう”なものばかりだ。 04年には「年金個人情報漏えい」が発覚し、長官ら約500人が訓告などの処分 05年には「書籍の監修料受領問題」で、55人が戒告などの処分 15年には「年金個人情報流出」で、事務次官ら14人が戒告などの処分 17年には「戦没者遺骨収集事業での不正経理」で、課長補佐ら3人が停職などの懲戒処分 18年には「不適切な労働時間調査」で、事務次官ら5人が戒告などの処分 さらに、 19年4月には、介護保険料が約200億円も不足する恐れがある計算ミスが発覚した。同年7月には、シベリア抑留者の遺骨の一部が日本人ではない可能性があると把握しながら放置していたことが明らかになった。いずれも厚労省が自ら公表したものではない。また同年12月には再び介護保険料に絡む計算ミスが発覚している。 ……これはもはや職員の倫理観の問題ではなく、組織風土の問題である。 ミス、不正、パワハラ、不祥事が起きると、個人や職員の資質が問題にされがちだが、働く人たちの倫理観はおおむね、組織風土に左右される。 組織風土とは、「その組織に所属する多くの人に共通したものの見方や考え方、行動特性」で、長い年月をかけて培われ、組織に深く根ざし、組織を包んでいる目に見えない“空気”のようなものだ。トップが「(不祥事を)二度と起こさないように」「深く反省し」などと頭を下げて、変わるものではない。 腐った組織風土は、人間の良心と魂をむしばんでいく。組織への帰属意識が高ければ高いほど、その傷は深く、痛手を負い、違法すれすれでも「まだ黒じゃない」と当人は思い込むようになるし、「慣習的に先輩たちがやってきたことだから」と何の疑問も持たなくなる。 最初は抵抗があった人でも、次第に慣れて、無意識下で悪事に手を染めてしまう。ある調査では、従業員の4人に1人が、悪いと分かっていることを強いられるプレッシャーを経験したと答えた(イェール大学センター・フォー・エモーショナル・インテリジェンスとファース財団の共同調査、全米1万4500人以上が対象)』、厚労省といえば、前身は戦前のエリート官庁の内務省である。それがこんな体たらくとは情けない。米国でも「従業員の4人に1人が、悪いと分かっていることを強いられるプレッシャーを経験したと答えた」、組織につきものの病理のようだ。
・『おかしいと感じない「傍観者」を量産  組織を包む“空気”圧は……とんでもなく手ごわい代物なのだ。 仮に、「それはおかしい」などと声を上げようものなら、「アイツは組織の論理が分かっていない」だの、「めんどくさいヤツ」呼ばわりされ、「やっかい者は追い出せ!」と排除される。 結果的に、「おかしい」を「おかしい」と言わない傍観者が量産され、「おかしい」が日常になる。これは実に恐ろしいことだ。 くしくも、厚労省は、「パワハラ防止法」に、「平均的な労働者の感じ方」「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動で総合的に考慮する」「労働者が受ける身体的又精神的な苦痛の程度等を総合的に考慮して」などという、至極曖昧な言葉を入れ込み、「時代を巻き戻した」わけだが(参考コラム「時代を巻き戻した厚労省パワハラ認定の唖然」)、「潰してもいいのか」「死ねといったら死ぬのか」「簡単な仕事にいつまでかかってるんだ!」「バカか、お前は!」といった明らかなパワハラは、厚労省内では総合的・平均的に、飛び交ってるということなのだろう。 とはいえ、開いた口がふさがらないような“事件”は、厚労省に限ったことではない。文書書き換え、高額接待など、枚挙にいとまがない。つまり、「官僚の倫理観」が昨今問われているけれど、問題の根本は官公庁全体の組織風土にある。そう思えてならないのだ。 そもそも組織風土は、競争が激しく、出世へのキャリパスが明確で、手に入る権力が大きければ大きいほど強固になることが分かっている。 自治官僚として地方財政制度の基盤を築き、内閣官房副長官として7人の内閣総理大臣に仕えた石原信雄氏は、著書『官かくあるべし――七人の首相に仕えて――』の中で、バブル崩壊以降の、官僚の不祥事やスキャンダル、大蔵官僚(当時)の「ノーパンシャブシャブ事件」などに触れ、官僚のスーパーエリート教育の末路を嘆き、それらを引き起こす要因に言及している。 その中で、官僚たちのマインド&役割の変遷を述べているのだが、これがかなり興味深い』、「石原信雄氏」の指摘とは興味深そうだ。
・『大きすぎる「政」と「官」の重なり  石原氏は、「昭和20年代に入省した官僚たちには強い意欲と使命感があり、戦後復興と経済再建し、高度成長につなげるなど、明確な目的意識と戦略目標があった」と評価。さらに、「それは官僚たちにとって緊張感と高揚感に満ちた時代であり、行政や政策形成の仕事に確かな手応えが感じられた時代であった」とした。 一方、昭和30年代半ばから昭和40年代以降に入省した高級官僚については、「急成長の軌道を全力で疾走してきた国が“限界のカベ”に突き当たって停滞ないし下降に転じたとき、……露呈した矛盾をつくろい、問題点を処理し、国家的な大目標が見失われた時代環境のなかで、限られたパイをめぐっての族議員と利益団体、それに省益拡大をねらう官僚が絡んだ『利益調整型』政治に取り込まれていった」と酷評している。 また、石原氏は日本の官僚制度が、欧米諸国と大きく異なる点として、「政治家との距離感の近さ」を指摘している。 「政」と「官」の役割の重なり合う部分が欧米諸国ではありえないほど大きいのだ、と。その上で、「批判されてきた官僚の行動やあり方の本質的な原因は政治側にある」と指摘する。 ――有能なエリートによる行政には、エリートだからこそ発揮できるプラス面がある。的確な分析と判断、状況に即応した政策立案・策定、効率的な行政運営など、いくらもあげることができよう。が、エリート行政のマイナス面も同じようにしてある。その弊害の最たるものは、エリート意識がもたらす独善的な判断や権限行使によって行政が硬直化してしまうということである(前掲書、P94より)――) そのエリート意識の末路が、大蔵省(当時)の「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」であり、大和銀行不正取引事件であり、住専問題処理、一連の金融機関破綻だとした。 これらの問題が起きてから20年以上がたったわけだが、その間、“高級官僚の暴走”を食い止める制度がいくつもできた。しかし、いかなる制度も階層・組織上階のトップたちが、問題を直視し、受け止め、組織を変えようという強い意志を持たない限り、変わるものではない。組織風土が長い年月で培われるものなら、それを変えるにはそれ以上の長い年月がかかる』、「エリート行政のマイナス面も同じようにしてある。その弊害の最たるものは、エリート意識がもたらす独善的な判断や権限行使によって行政が硬直化してしまうということである」、その通りだ。
・『ウミだらけの組織に  「政治家への忖度(そんたく)が生まれるのは、官僚の人事制度に問題があるからだ」という意見があるけれど、いかなる制度も常に不完全であるので、問題を生むのはそれを運営するトップの問題である。 そもそも「腐った倫理観」は、上から下に伝播(でんぱ)するものだ。 海外の研究になるが、米カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネスのキャメロン・アンダーソン教授らが行った調査では、集団の中で高い地位に就くと帰属意識が高まり、集団の非倫理的行為に対する分別を失わせることが分かっている。 また、同教授が米国の22の政府機関の職員1万1000人以上を対象に実施した調査でも、役職が上がるごとに声を上げる見込みが低下し、上級管理職は地位が最も低い職員に比べて、その(声を上げる)割合が64%も低かった。 本来、階層組織の上位者はたくさんのリソースを手に入れた組織の逸材……のはずなのに。 組織の褒美をひとつ、またひとつ、と手に入れるうちに、誠実さや勇気、謙虚さや忍耐といった人格の土台が崩壊し、そうした上位者から生まれる絶対的権力者が長きにわたり地位にとどまることで、組織は“ウミ”だらけの組織に堕することになる。 やがて組織全体に緊迫感がなくなり、現場は「何をやっても無駄」とあきらめ、「上もやってることだから」と腐っていく。無意識に。そう、無意識に。そして、そのあきらめが、今、「私」たちにも広がっているような気がするのは、決して気のせいではないように思う。自戒も込めて』、「組織の褒美をひとつ、またひとつ、と手に入れるうちに、誠実さや勇気、謙虚さや忍耐といった人格の土台が崩壊し、そうした上位者から生まれる絶対的権力者が長きにわたり地位にとどまることで、組織は“ウミ”だらけの組織に堕することになる。 やがて組織全体に緊迫感がなくなり、現場は「何をやっても無駄」とあきらめ、「上もやってることだから」と腐っていく」、組織が腐敗していくメカニズムには、納得できる部分が多い。

次に、4月11日付け東洋経済Plus「整備事業の指定取り消し、整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26723
・『トヨタのおひざ元である愛知県で起きた販売店の不正車検。前代未聞の不正はなぜ起きたのか。その背景を探った。 「今回のような不正が本当にありえるのかと思った。どんなに作業が忙しくても絶対に越えてはならない一線だ」ーー。トヨタ自動車の販売店で発覚した不正車検について、他メーカーの販売会社の社長はそう口にした。 国土交通省中部運輸局は3月30日、ネッツトヨタ愛知の販売店(プラザ豊橋)の不正車検に対する行政処分を発表した。法令違反の対象台数は5158台。この店で2018年12月22日~2021年1月13日に車検を行ったすべてに当たる。ネッツトヨタ愛知を含めて4つのトヨタ系販社を持つATグループ(名証2部上場)は、愛知県内で最大手のディーラーだ(詳細は「愛知県に12社『トヨタ販社』の序列)。 今回の不正は2020年12月、中部運輸局が行った抜き打ちの監査で発覚した。 プラザ豊橋では、排ガスの一酸化炭素濃度やスピードメーターの誤差、サイドブレーキの制動力などに関する点検・検査を省いて保安基準適合証を交付したり、実際に検査したかのような虚偽の整備記録を作成したりしていた。 不正に関与した整備士は中部運輸局の監査に対し、「過剰な入庫が常態化し、顧客を待たせないように一部の検査を省いてしまった」と話したという 自動車販売店における車検は、国が行うべき業務を代行するもので、販売店には「指定工場」、整備士には「自動車検査員」の資格が国から与えられている。 中部運輸局はプラザ豊橋店での自動車整備事業の指定を取り消し、整備士8人のうち不正に関与した整備士7人について自動車検査員の解任命令を出した。この行政処分により、プラザ豊橋は自動車整備事業の申請が2年間できず、7人の整備士も2年間は車検業務ができない』、トヨタの「愛知県内で最大手のディーラー」で「不正車検」が「2年間」も続いていたとは、心底から驚いた。
・『「店長は指示していない」  法令違反の対象となった5158台について、ATグループのほかの販社(愛知トヨタ自動車、トヨタカローラ愛豊、ネッツトヨタ東海)にも協力を仰ぎ、車両の再点検・再整備を行う。作業完了には8カ月かかる見通しだ。 県内に約30店を展開するネッツトヨタ愛知は今回の問題を受けて、ほかの店舗の整備士全員に聞き取りを行い、「同種の不正はなかったことを確認した」としている。 だが、不正が公になってから、他店舗で車検を受けた顧客から、「自分の車は大丈夫か」といった問い合わせが相次いでいるという。過去2年間にネッツトヨタ愛知の別の店舗で行った車検についても、すべての車両を対象に再点検・再検査を実施する方向で準備を進めている。 違反行為の対象となっている5158台の再検査を最優先しつつ、ほかの店舗で扱った車検の車両についても再点検するのだから、その作業量は膨大だ。 ネッツトヨタ愛知は今回の不正について、「(プラザ豊橋の)店長は指示していない」とし、あくまでも整備士が不正の認識がありながら、自主的な判断で行ったとしている。そのうえで、「1台当たりにかかる車検の時間の認識が適当ではなかった」「(車検の予約を受け付ける)営業部門と整備部門の意思疎通が不十分だった」と釈明する』、「違反行為の対象となっている5158台の再検査を最優先しつつ、ほかの店舗で扱った車検の車両についても再点検するのだから、その作業量は膨大だ」、自ら蒔いた種だから、自分で責任を持って対処するのは当然だ。
・『サイトから消えた「45分車検」  首都圏のトヨタ系販社幹部は今回の不正について、「数が多いからといって検査を適切にやらないなんてことは考えられない。現場の状況を考えて(車検の受け入れ数を)コントロールするのが会社の役割だ」と批判する。 今のところ、不正車検の対象車両に不具合が出たという報告はないが、手抜きの検査は人命に関わる。トヨタ幹部は「(車検は)国から任せてもらっていることなので、こうした問題は絶対に避けなければならない。われわれとしても深刻に受け止めている」と話す。 実は、ネッツトヨタ愛知は「ネッツ45 車検」と銘打って、45分でのスピード車検を10年以上前から展開していた。不正発覚後は同サービスを停止し、同社のホームページからもその表示が削除されている。 ATグループによれば、45分と作業時間を明確にしたスピード車検を展開していたのは、傘下4つの販社の中でネッツトヨタ愛知だけ。早さを「売り」に集客したものの、処理しきれないほどの数を受注してしまった可能性が高い。 現在、ネッツトヨタ愛知のホームページから削除されているが「ネッツ45 車検」とうたっていた(画像はネッツトヨタ愛知のサイト) 東海地方のホンダ系販社の店長は、「整備点検や検査も含めて考えるとどうやっても車検は45分では終わらない。うちの店は(12カ月の)法定点検ですら1時間半かけている。時間がかかることは丁寧に説明してお客さんに理解してもらっている。ただ、最近はガソリンスタンドなどでも『1時間車検』などとうたっていて、短時間で終わるからお客様に喜ばれる。そういうものが世の中に浸透しすぎている」と警鐘を鳴らす。 今回、不正が見つかったプラザ豊橋での法令違反の対象台数は5158台だから、1年で約2500台の車検を行っていたことになる。 愛知県の別のトヨタ系販社の店長はこれについて、「自分たちの店では整備士が4人で年間にできる車検は1000件程度。整備士7人で1年間に2500件以上はさすがに多い」と指摘する。この販社では45分車検のサービスは公式にうたっていない。ただ、新車購入から3年目の初回車検に限り、見積もり段階で車を見た上で、「45分のスピード車検が可能だと判断することもある」という』、「45分車検」をサイトに出していたということは、現場の判断だけでなく、会社も承認していたことになるのではなかろうか。「店長は指示していない」、というのもウソだろう。
・『トヨタも「45分」を売りに  スピード車検は愛知県内の販社だけの売りではない。トヨタのホームページには「トヨタだからジャスト・イン・タイム、プロの技術で45分で車検完了」と紹介している。トヨタ系販社の中には「30分車検」(ハイブリッド車は40分)をうたうところもある。 西日本のトヨタ系販社の幹部は、「新車購入後3年の初回車検と2回目の車検の一部では、部品交換なしで45分車検は可能だが、車齢が長くなると部品交換なども増えて2時間以上かかるのはざら」と話す。近年比率が高まっているハイブリッド車はエンジン車に比べて車検の時間がかかることも多く、車検にかかる時間は慎重に見積もっているという。 つまり、「45分車検」そのものが諸悪の根源というわけではなく、プラザ豊橋で起きた大量の不正車検は、車検業務に当たる整備士の数と受注数(車検車両の受け入れ)のバランスが崩れていたにもかかわらず、放置されていたことが問題の本質だろう。前出の愛知県の販社の店長は「ネッツトヨタ愛知は(1935年に創業した)名門のATグループ傘下で、いわゆる“お堅い会社”。過去にも問題を起こすようなことはなかった。なぜこんな不正が起きたのか」と首をかしげる。 ネッツトヨタ愛知の担当者は、「車検の台数目標は存在していたが、整備士の人員規模が適切だったかは改めて検証する必要がある」と説明する』、「整備士の人員規模」からみて無理な「車検の台数目標」が今回の「不正」の背景の1つにありそうだ。
・『不正車検の始まりは特定できず  今回の件でネッツトヨタ愛知が聞き取りを行ったところ、検査員は「2年よりも前から不正を行っていた」ことを認めたものの、いつから行われていたかは特定できなかったという。 販売店が車検を行った場合、指定整備記録簿と呼ばれる書類を2年間保管する義務がある。そのため、中部運輸局は過去2年間分の車検を法令違反とした。仮に2年よりも前に不正があっても、書類での確認ができないため不問にせざるをえないのだ。ATグループでは、ネッツトヨタ愛知の問題を受けて、傘下のほかの3社でも不正車検がなかったのかを点検している。 ネッツトヨタ愛知は半年に一度、販売店を対象に社内監査を行っていたが、主に書類をベースとした監査でプラザ豊橋の不正車検を見抜けなかった。再発防止策として、監査の強化や全社員へのコンプライアンス教育の徹底、サービスオペレーションの見直しを軸とする再発防止策を策定し中部運輸局に提出している。 中部運輸局が行政処分を発表した3月30日、トヨタ系販売会社の組織である「トヨタ自動車販売店協会」の役員会が行われた。トヨタ国内販売事業本部の佐藤康彦本部長は販売店での不祥事が増えていることに触れ、人材育成の重要性を強調したという。販社関係者によると、トヨタは全国の販売会社に対してネッツトヨタ愛知と同様の事案がないか、ヒアリングをしているという。 トヨタ系ディーラーで起きた前代未聞の不正車検。全国の販社に対するヒアリングを経て、トヨタはどんな指示を出すのか(記者撮影) 国内の新車販売はコロナ禍が響き2020年度は5年ぶりに500万台を下回った。コロナの影響が軽微だった2019年度でも最盛期の3分の2にまで縮小している。一方で、国内の自動車保有台数(乗用車・商用車)は8000万台弱と緩やかな増加が続く。保有台数が増えていれば、法律で定められている車検の需要も見込める。 乗用車の場合、新車購入から3年、以降は2年おきの車検は販社の貴重な収益源だ(詳細は「販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか」)。アフターサービスとして安定した収益が得られる車検は顧客からの信頼があってこそ。東北地方のトヨタ系販社の社長は「車の販売会社として、正しいメンテナンスは責務。襟を正して真摯に取り組んでいかないといけない」と話す。 今回の問題が発覚した後、他のメーカーでも「ウチは大丈夫か」となり、車検の抜き打ち監査に動くところもある。前出のホンダ系販社の店長はこう述べた。「(店舗ごとに)高い数値を求められて、現場の整備士に余裕がなかったのだろうか。ましてトヨタ、しかも愛知県で」。トヨタ系に限らず全国の販売会社に衝撃が走った不正であることは間違いない。 【情報提供のお願い】東洋経済では、自動車ディーラーの経営や車検の課題を継続的に取り上げていきます。こちらのフォームへ、情報提供をお待ちしております』、「乗用車の場合、新車購入から3年、以降は2年おきの車検は販社の貴重な収益源だ」、これも今回の「不正」の背景の1つのようだ。

第三に、この続きを、4月11日付け東洋経済Plus「新車を売った後のアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26725/?utm_campaign=EDtkprem_2104&utm_source=edTKO&utm_medium=article&utm_content=210417&_ga=2.253158665.1680389212.1618707326-1011151403.1569803743
・『ネッツトヨタ愛知で発覚した不正車検では、中部運輸局の監査に対して、整備士が「過剰な入庫が常態化していた」と話したという。販売店が身の丈を超えた数の検査を受け入れたのは、車検が「儲かるサービス」であることと無縁ではないだろう。 自動車の安全確保という趣旨の下、自動車検査(車検)は道路運送車両法で義務づけられている。普通車や軽自動車は新車で購入した場合、初回が購入後3年、2回目以降は2年ごとに受ける必要がある。車検を受けていない車で公道を走っていた場合、罰則(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)もある。 本来、車検は国が行うべきものだが、新車の販売店が車検を代行しており、それが収益源になっている』、なるほど。
・『車検には3つの方法  車検の主な検査項目は、車両に割り当てられている車台番号などが自動車検査証(車検証)と同じかの確認、ライトやタイヤなどの正常性の確認(外観検査)、ブレーキやヘッドライトの性能確認、排気量検査がある。 検査方法は、①ユーザー自身が運輸支局などに持ち込んで行う、②点検・整備と完成検査まで一括して代行する「指定整備工場」へ持ち込む、③点検・整備のみを行う「認証整備工場」に持ち込み検査を運輸支局などで行う、の3つがある。 新車の販売店は指定整備工場の資格を取得していることがほとんどだ。馴染みの販社から車検の案内が記載されたダイレクトメールを受け取り、車を持っていく人は少なくないだろう。 車検とは別に法令で義務づけられているのが12カ月点検と24カ月点検だが、この点検を受けていなくても罰金や罰則はない。24カ月点検は通常、車検に合わせて実施する一方、12カ月点検はそうした機会もなく、半ばユーザーの自主性に委ねられている。 国土交通省によると、普通車と軽乗用車の12カ月点検実施率は最新集計で約6割(2017年)。それでも、日本のように1年や2年で点検、車検を実施する国は海外でも珍しい。そもそも点検整備が法律で義務づけられている国はニュージーランドやアメリカ(州によって異なる)など先進国でも少なく、「過剰すぎる」と批判されることもある。 一方、車検制度は自動車業界にとってアフターサービス市場を形成する重要な“事業”だ。車検や点検に結びついた整備や修理、部品交換といった整備事業の市場は大きく、日本自動車整備振興会連合会によると、2020年度(2019年7月~2020年6月)の総整備売上高は約5兆6000億円もある』、「整備」の市場規模もかなりあるが、そのうち「車検」の規模はどれくらいあるのだろう。
・『新車販売減り、整備に活路  特に近年、車検や点検の入庫獲得に躍起なのが新車の販売店だ。理由は主に2つある。 1点目は重要な収益源になっているという点だ。販売店の主な事業は新車販売以外に、整備(サービス)や中古車販売、自動車保険などがある。 その中で、安定収益とされるのが整備事業だ。仕入れ費用で利幅が薄い新車販売と異なり、整備事業はそうした費用もかからない。ホンダ系販売店の店長は「整備事業は新車販売に比べて利益率が高く、安定的に収益の5割を占める」と話す。 さらに自動車の平均車齢はここ30年で2倍の9年近くにまで伸び、新車を売る機会は減っている。今や国内の新車販売はピークだった1990年の777万台に比べ3分の2の規模だ。一方で自動車の保有台数は8000万台弱と緩やかな増加が続く。車検や点検は法律で定められているため、需要は底堅い。 もう1つは顧客との接点を持てること。首都圏の日産系販社の社長は「購入してもらった新車で車検や12カ月点検の入庫が獲得できれば、顧客と“つながる”ことができる」と話す。来店してもらえれば営業スタッフがお客さんと話す機会も作れる。その結果、次の新車への乗換えや保険の提案が可能になる。 西日本のトヨタ系販社の幹部は「うちの場合、新車を購入したお客さんのうち7割が初回車検に来てくれる。車検は利益率が高いので、(利益率が低い)新車販売が減ってきても、当面は車検需要で食っていける」と本音を漏らす。「車検や点検で車を入れてくれるのは『ディーラーだから』という信頼感が大きい。お客さんと信頼関係を築いて、新たな商機につなげていくのが基本」(ホンダ系販社) つまり、販社は新車を販売して終わりではない。販売してから、いかにお客さんと関係を維持し、メンテナンスなどで店に来てもらえるかが重要なのだ』、「整備事業は新車販売に比べて利益率が高く、安定的に収益の5割を占める」、「車検や12カ月点検の入庫が獲得できれば、顧客と“つながる”ことができる」、確かにディーラーにとっては「車検」は重要なビジネスだ。
・『「メンテパック」で顧客囲い込み  こうした背景から新車の販売店では車検や点検、消耗品補充がセットになったメンテナンス(メンテ)パックの販売を積極的に推進している。新車発売後の1カ月点検や6カ月点検をパックに盛り込む会社も少なくない。手厚いサービスにみえるが、それだけ収益に結びつけようとしているとも言える。前出の日産系販社では「初回の車検は(同社で新車を買った人のうち)8割、2回目で7割を獲得している」という。 車検の争奪戦には、車検チェーンなどの整備業者やカー用品店、ガソリンスタンドなども参戦しており、競争が激化。事業性の側面が強まっていることは否めない。 しかし、車検や点検は法令に基づいた義務であり、安心・安全のためという大前提でユーザーがお金を払っている。前出の日産販社社長こう強調する。「車検は自動車産業を支える1つの根幹。どんなことがあっても手抜かりは許されない」』、確かに「車検は自動車産業を支える1つの根幹。どんなことがあっても手抜かりは許されない」、それなのに、トヨタの「愛知県内で最大手のディーラー」で「不正車検」が行われていたとは、まさに不祥事中の不祥事だ。
タグ:企業不祥事 日経ビジネスオンライン 河合 薫 東洋経済Plus (その23)(「まだ黒じゃない?」 エリートが堕ちる無意識下の悪事、整備事業の指定取り消し 整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃、新車を売った後のアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか) 「「まだ黒じゃない?」 エリートが堕ちる無意識下の悪事」 今日の新聞報道によると、大阪市や大阪府の職員が多数で飲食店を利用していたことも判明している。いくら歓送迎会のシーズンとはいえ、自粛を呼びかける主体がこのザマでは、示しがつかない。 「「パワハラ対策の相談員が、パワハラをしていた」、まるで笑い話だ。しかし、(対象となった人は)「うつ病を発症し、昨年、退職、悲惨だ 厚労省といえば、前身は戦前のエリート官庁の内務省である。それがこんな体たらくとは情けない。米国でも「従業員の4人に1人が、悪いと分かっていることを強いられるプレッシャーを経験したと答えた」、組織につきものの病理のようだ。 「石原信雄氏」の指摘とは興味深そうだ 「エリート行政のマイナス面も同じようにしてある。その弊害の最たるものは、エリート意識がもたらす独善的な判断や権限行使によって行政が硬直化してしまうということである」、その通りだ。 「組織の褒美をひとつ、またひとつ、と手に入れるうちに、誠実さや勇気、謙虚さや忍耐といった人格の土台が崩壊し、そうした上位者から生まれる絶対的権力者が長きにわたり地位にとどまることで、組織は“ウミ”だらけの組織に堕することになる。 やがて組織全体に緊迫感がなくなり、現場は「何をやっても無駄」とあきらめ、「上もやってることだから」と腐っていく」、組織が腐敗していくメカニズムには、納得できる部分が多い。 「整備事業の指定取り消し、整備士7人を解任 ネッツトヨタ愛知「不正車検5000台」の衝撃」 「愛知県内で最大手のディーラー」で「不正車検」が「2年間」も続いていたとは、心底から驚いた。 「違反行為の対象となっている5158台の再検査を最優先しつつ、ほかの店舗で扱った車検の車両についても再点検するのだから、その作業量は膨大だ」、自ら蒔いた種だから、自分で責任を持って対処するのは当然だ。 「45分車検」をサイトに出していたということは、現場の判断だけでなく、会社も承認していたことになるのではなかろうか。「店長は指示していない」、というのもウソだろう。 「整備士の人員規模」からみて無理な「車検の台数目標」が今回の「不正」の背景の1つにありそうだ。 「乗用車の場合、新車購入から3年、以降は2年おきの車検は販社の貴重な収益源だ」、これも今回の「不正」の背景の1つのようだ 「新車を売った後のアフターサービスに必死 販売会社はなぜ「車検」で顧客を取り合うのか」 「整備」の市場規模もかなりあるが、そのうち「車検」の規模はどれくらいあるのだろう。 「整備事業は新車販売に比べて利益率が高く、安定的に収益の5割を占める」、「車検や12カ月点検の入庫が獲得できれば、顧客と“つながる”ことができる」、確かにディーラーにとっては「車検」は重要なビジネスだ。 確かに「車検は自動車産業を支える1つの根幹。どんなことがあっても手抜かりは許されない」、それなのに、トヨタの「愛知県内で最大手のディーラー」で「不正車検」が行われていたとは、まさに不祥事中の不祥事だ。
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ESG(その1)(ESG投資がなぜ騒がれているか知っていますか 脱炭素の流れが大規模な資本の再配分を起こす、ESG投資のプロが語る「脱炭素マネー」の潮流 気候変動が生み出すリスクとビジネス機会、誤ったESGの議論は格差を拡大し成長を損なう 日本企業に株主主権の強化を求めたのは間違い) [企業経営]

今日は、ESG(その1)(ESG投資がなぜ騒がれているか知っていますか 脱炭素の流れが大規模な資本の再配分を起こす、ESG投資のプロが語る「脱炭素マネー」の潮流 気候変動が生み出すリスクとビジネス機会、誤ったESGの議論は格差を拡大し成長を損なう 日本企業に株主主権の強化を求めたのは間違い)を取上げよう。

先ずは、2月1日付け東洋経済オンライン「ESG投資がなぜ騒がれているか知っていますか 脱炭素の流れが大規模な資本の再配分を起こす」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/408511
・『「世界的な流れを力に、民間企業に眠る240兆円の現預金、さらには3000兆円ともいわれる海外の環境投資を呼び込む」 1月18日の施政方針演説で菅義偉首相はそう述べ、国内外の巨額マネーを誘導しグリーン成長戦略を実現する考えを表明した』、なるほど。
・『世界のESG投資残高は4000兆円規模に  「環境投資3000兆円」というのは、国際的なESG(環境・社会・企業統治)投資の調査機関であるGSIA(世界持続可能投資連合)の報告書を基にしている。それによると、2017年度末の世界のESG投資残高は30.7兆ドル(約3200兆円)で2年前から34%増えた。ESG投資の定義がかなり幅広く、E(環境)に限った投資ではないが、2020年には40兆ドルに近づいたとみられる。 『週刊東洋経済』2月1日発売号は「脱炭素サバイバル水素、EVめぐり大乱戦」を特集。世界各国が将来のグリーン戦略を示すなか、菅首相も「2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロに」と表明。日本でも脱炭素への大変革が始まった。特集では、日本の脱炭素戦略のポイント解説、日本モデルの問題点、グリーンマネーのうねり、アメリカ、欧州、中国の動向、日本の強み・ハイブリッド車のジレンマ、トヨタ自動車の燃料電池車の成否、アップルも参入するEV覇権争いの行方、鉄鋼・商社・重工業といった各産業の課題、EV・水素・再生可能エネルギーの注目70銘柄など、脱炭素で変わる世界と日本企業の実情に迫った。 直近のESG投資の勢いを実証するのが、ESG関連ETF(上場投資信託)への資金流入の急増だ。昨夏以降、世界全体の純流入額は急増。コロナ禍の中、再生可能エネルギーへの投資など気候変動対策を経済再生につなげる「グリーンリカバリー」が欧州を中心に世界的潮流となったことと軌を一にする。 日本国内でもESG投資熱は顕著だ。象徴的事例が、大手資産運用会社アセットマネジメントOneが2020年7月に運用を開始した追加型投信「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」の絶大な人気だ。当初設定額で国内歴代2位の3830億円を集め、直近の純資産総額は9200億円まで膨らんだ。 個人投資家の参入も顕著だが、グリーンマネーの主役は何といってもグローバルな大手機関投資家だ。単に株や社債に投資するだけではない。企業に対してさまざまな形で脱炭素を迫る彼らの圧力は日に日に強まっている。 世界の500以上の機関投資家が加盟する投資家団体「クライメート・アクション100プラス」は、温室効果ガス排出量の多い世界167の企業とのエンゲージメント(対話)を通じ、2050年までの排出ゼロへ向けた目標設定と対策を求めている。 その団体にも加盟する世界最大の資産運用会社であるアメリカのブラックロック。同社のラリー・フィンクCEO(最高経営責任者)は気候変動リスクを先取りした形で「大規模な資本の再配分が起きる」との認識を示し、投資先企業に対して気候変動リスクの情報開示や対策の要求圧力を強める。同社は昨年、そうした対応が不十分だとして53社の株主総会で取締役選任案に反対票を投じるなどした。 HSBCグローバル・アセット・マネジメントの機関投資家ビジネス部門でESGリーダーを務めるサンドラ・カーライル氏は、「気候変動による現実のリスクが増大し、再エネなどのビジネス機会も増える中でESGが資本の流れを変えた」と話す。そして、環境政策を柱とするバイデン政権の誕生で、「カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)などの進歩的な投資家に限らず、(世界最大規模の)アメリカマネーの脱炭素シフトが本格化する」とみる』、確かに「バイデン政権の誕生」は大きな追い風のようだ。
・『日本の機関投資家も脱酸(正しくは「炭」)素を軸に選別  日本の機関投資家の間でも脱炭素を軸とした企業選別が進む。野村アセットマネジメントはカーボンプライシング(炭素の価格づけ)の仕組みを活用して企業の二酸化炭素(CO2)排出量をコストに換算し、財務情報に組み込んで投資判断に活用する。CO2はESG評価会社の推計値も使ってサプライチェーン全体の分も評価する。「今年1月から大手300社ほどを対象に始め、順次対象を広げる方針」(同社総合企画部)だ。 日本生命保険は今年4月から投融資全体にESG評価を導入する。国債や国内融資、不動産にもカバー範囲を広げ、気候変動をテーマとする企業対話も強化する。国内運用会社として最も早くESG評価を開始したニッセイアセットマネジメントのノウハウを活用した独自評価を行う。 SOMPOホールディングスは2020年9月、国内の石炭火力発電所の新規建設について保険引き受け・投融資は原則として行わないと発表。取引先の立地条件などから例外規定を残すものの、脱炭素への重要な一歩となる。「自然災害が増えていけば保険料が高騰し、損害保険という金融インフラの機能を果たせなくなる危惧がある。金融機能を使って影響力を行使し、気候変動問題の改善に貢献したい」と堀幸夫CSR室課長は話す。) 取締役選任への反対投票や株主提案を増やすなど、大手機関投資家は、今や「環境アクティビスト(物言う株主)」へ変容しつつあるといっても過言ではない。そうした流れに便乗するヘッジファンドなどの新興投資家や環境団体も増え、企業への圧力は増すばかりだ。 アメリカでは世界最大の石油・ガス開発会社のエクソン・モービルに対し、気候変動リスクへの対応の遅れで10兆円以上の株主価値が失われたとしてヘッジファンドが改革を要求している。エクソンに対しては、ブラックロックなども2020年の株主総会で会社側の取締役選任議案に反対票を投じた。 日本国内では昨年、環境NPOの気候ネットワークがみずほフィナンシャルグループに対し、脱炭素の行動計画を年次報告書で開示するよう定款変更を求める株主提案を行った。6月の株主総会で否決されたものの、海外の大手議決権行使助言会社が賛成を推奨し、野村アセットや農林中央金庫系運用会社を含む国内外株主の34.5%の支持を得た。 気候ネットワークの平田仁子理事はこう語る。「巨額の投融資を行う金融機関が資金の振り向け先をどうするかは決定的に重要だ。みずほの件で株主提案にはものすごい波及効果があるとわかった。今後も脱炭素に向けた金融の“うねり”の中で何ができるか考えたい」。ほかの環境団体と連携し、石炭火力発電を続ける企業の主要株主にダイベストメント(投資撤退)を求める要請書も送付している。 今後はEU(欧州連合)が導入を予定する「EUタクソノミー」の影響も注目される。何がグリーンな経済活動かを分類する基準となるもので、EUに拠点を置く機関投資家はその基準に従って運用状況を開示するよう求められる。彼らの投資先の日本企業や、彼らの資金を預かる国内運用会社への影響は避けられず、投資家による企業選別が加速する可能性は高い』、「大手機関投資家は、今や「環境アクティビスト(物言う株主)」へ変容しつつあるといっても過言ではない」、そこまできたかといささか驚かされた。「石炭火力発電」は日本だけが推進してきたが、ESGの観点から見直しも進みつつある。
・『日本企業の対応は待ったなし  日本企業の対応は待ったなしだ。大和総研でESG投資動向を分析する田中大介研究員は、「グリーン投資の拡大に伴い、環境対策や情報開示が従来と同じままでは企業の資金調達は難しくなる」と語る。そのうえで、化石燃料関連など脱炭素が短期的に難しい企業に対して資金を誘導する「トランジション(移行)ファイナンスの重要性も高まる」と指摘する。そうした企業の改善がない限り、社会全体の脱炭素達成は不可能だからだ。 政府がグリーン成長戦略の旗を明確に振り、企業が能動的に変革を進め、投資家が企業の成長への確信を強めてマネーを投じれば、脱炭素へ向けた歯車の回転は加速する。日本でその流れが本格化していくか。官民の本気度が問われることになる』、「日本で」「脱炭素へ向けた」「流れが本格化して」もらいたいものだ。

次に、2月6日付け東洋経済オンライン「ESG投資のプロが語る「脱炭素マネー」の潮流 気候変動が生み出すリスクとビジネス機会」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/409463
・『世界的な気候変動リスクへの関心の高まりと各国政府の脱炭素宣言もあって、環境・社会・企業統治を考慮したESG投資は全世界で急速に拡大している。中心的な担い手は、世界展開する欧米の大手機関投資家だ。 その1社であるHSBCグローバル・アセット・マネジメントで機関投資家ビジネス部門のESGリーダーを務めるサンドラ・カーライル氏は、ESGに関する資産運用業界のスポークスパーソン的存在であり、責任投資原則(PRI)のボードメンバーを務めた経験も持つ。同氏に、世界のESG投資の動向や日本企業のESG活動の評価などについて聞いた(Qは聞き手の質問、Aはカーライル氏の回答)』、「ESGに関する資産運用業界のスポークスパーソン的存在」の見解とは興味深そうだ。
・『ESGは資本の流れを変えた  Q:主要各国が2050年までのカーボン・ニュートラル達成方針を宣言したことを受け、世界のESG投資にはどんな変化が見られますか。 A:ESGは資本の流れに大きな変化を与えた。ESGは今や投資分析の重要な要素となった。気候変動はますます現実のリスクを生み出すと同時にビジネス機会をもたらしている。投資家は世界をESGの「レンズ」を通して見るようになり、それがビジネスへの資本の流れを変えている。 例えば、日本は1980年代以来、太陽光発電の技術でリーダーだった。ただ、1990年代に入っても太陽光技術の価値はあまり高く評価されなかった。でも今は、そうした技術を持つ企業が高く評価されるようになっている。 投資家はクリーンエネルギーやヘルスケアのようなESGの解決策に資金を投じるようになった。特定のESG関連指数に投資する投資家もいるし、ポートフォリオをゼロカーボンに近づけようとする投資家もいる。HSBCが取り組んでいるようなナチュラル・キャピタル(水資源や森林などの自然資本)のファンドに資金を投じる投資家もいる。 Q:気候変動対策に積極的なバイデン政権に転換したことで、アメリカの投資家の姿勢はどう変わるでしょうか。 A:アメリカの投資家の中でもカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)など一部の機関投資家はESGに関して非常に進歩的な考え方をしている。日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)と同様だ。一方で、ほかの多くの投資家ははるかに遅れており、ESGをまったく配慮しない投資家もいる。 バイデン大統領は気候変動対策と環境正義(Environmental Justice)を政策の柱としている。そのため、アメリカの投資家全体の間でESGへの関心が高まり、資金の流れに本格的な変化が起こるだろう。 アメリカの投資家は欧州やアジアの投資家に比べて投資のスタンダードや枠組みをより重視しており、アメリカのSASB(サステイナビリティ会計基準審議会)のルールをESG投資の際の参照基準としている』、「投資家は世界をESGの「レンズ」を通して見るようになり、それがビジネスへの資本の流れを変えている」、「投資家はクリーンエネルギーやヘルスケアのようなESGの解決策に資金を投じるようになった」、「バイデン大統領は気候変動対策と環境正義・・・を政策の柱としている。そのため、アメリカの投資家全体の間でESGへの関心が高まり、資金の流れに本格的な変化が起こるだろう」、なるほど。
・『ESG投資はリターンに結びつくのか  Q:ESG投資は必ずしも市場平均以上の投資リターンには結びつかないと言われてきました。 A:ESGを組み込んだ投資や財務分析は必ずしも投資パフォーマンスにつながるとはいえない。ESGはパフォーマンスを生み出す1つの要素にすぎないからだ。しかし、中長期的なリスク調整後リターンで言えば、環境や従業員・株主への対応などのESGをうまく管理する企業は、中長期的によりよいパフォーマンスを上げるとわれわれは考えている。 Q:グリーンな経済活動を分類するEU(欧州連合)のタクソノミー規則が市場に導入された場合の影響をどう考えますか。 A:2021年3月に欧州のアセットマネジメント(資産運用)会社に対するディスクロージャー(情報開示)規則が施行される。欧州以外の誰もがその規則がどう機能し、何が開示されるかに注目している。 ほかの国々は必ずしもEUと同じタクソノミーを導入しないだろう。EUタクソノミーはかなり制限的であるためで、部分的に自国に合うものを取り入れることになろう。重要なのは、ローカル市場を反映した規則であることだ。スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードと同様に、他の地域とまったく同じものである必要はない。 日本は2022年にかけてEUタクソノミーの導入状況と欧州の投資家の反応を見たうえで将来、日本国内の投資家のための規則をつくることになるかもしれない。ただ、何がサステイナブル(持続可能)な事業活動かを投資家により多く情報開示することは、EU方式かEU以外の方式かにかかわらず、非常に重要な原則だ』、「中長期的なリスク調整後リターンで言えば、環境や従業員・株主への対応などのESGをうまく管理する企業は、中長期的によりよいパフォーマンスを上げる」、「日本は2022年にかけてEUタクソノミーの導入状況と欧州の投資家の反応を見たうえで将来、日本国内の投資家のための規則をつくることになるかもしれない」、なるほど。
・『日本企業のESG活動の強みは  Q:HSBCが本社を置くイギリスはEUから離脱しましたが、HSBCはEUタクソノミーにどう対応していますか。 A:HSBCの顧客はグローバルであり、EU域内のフランスやドイツなどでも大きなビジネスを行っている。われわれは規則に従ってEUタクソノミーを適用することになるし、グローバルな顧客のために何がいいかを考えている。顧客は5年ぐらい前からESG情報を求めるようになっており、われわれは世界各地域で非常に多くの情報開示を行っている。 Q:日本企業のESG活動における長所と短所についてどう見ていますか。 A:日本企業の長所として感じるのは、ESGに関する情報開示と説明の必要性を強く認識していることだ。日本でスチュワードシップ・コードが導入されたことが大きな契機となった。日本企業のSDGs(持続可能な開発目標)に関する行動方針をまとめたステートメントは非常に実践的なもので、それは日本に行って企業と対話するたびに感じる。 また、日本企業はSDGsを国際的に考え、それが日本企業にとって何を意味するかをよく考えている。ジェンダー・ダイバーシティ(女性の活躍推進)など社会問題に焦点を当てた取り組みも大きな強みだ。 一方、日本企業の課題と思われるのは、国際的な投資家として期待するレベルの対話を行うことが英米の企業に比べて依然難しいことだ。そのため、投資家として情報を得ることが比較的難しい。一部の日本企業の対応は極めていいが、閉鎖的な企業もまだ多い。文化的な行動様式の違いもあろうが、国際的に見れば変化はまだスローといえるかもしれない。 もちろん、過去10年間の変化は常にポジティブなものだった。投資家との対話や議論が増え、ESGに焦点を当てた取り組みが増えたのは確かだ。 Q:文化的な違いというのは言語を含めてですか。 A:言語は常に障壁になっている。これは日本に限ったことではない。言語の違いも含め、投資家との議論や対話を行う文化が英米企業に比べると進んでいるとはいえない。ただ、そうした文化は変化してきており、ESG重視によって大きな前進が見られる』、「一部の日本企業の対応は極めていいが、閉鎖的な企業もまだ多い。文化的な行動様式の違いもあろうが、国際的に見れば変化はまだスローといえるかもしれない」、「投資家との議論や対話を行う文化が英米企業に比べると進んでいるとはいえない」、やはり課題も多そうだ。
・『重要なのは脱炭素化の「証拠」  Q:石油・ガス業界など化石燃料関連の企業にはどう対応していますか。 A:われわれは気候変動リスクの観点からあらゆる産業の企業を分析する。投資先企業については、CO2排出原単位(carbon intensity)を見るために、ビジネスモデルのカーボン・フットプリント(商品・サービスのライフサイクル全体で排出された温室効果ガスをCO2排出量に換算して「見える化」する仕組み)を調べる。 もちろん化石燃料関連の企業はCO2排出原単位が高いので、より厳密に分析する。そうした企業に対して脱炭素化のプランを尋ねる。ネットゼロ達成に向けて、期間はどれくらいを想定しているのか。目標達成に向けてどのような課題があり、どのような技術を用いるのか。 さらに、非常に実務的な質問として、経営陣の報酬を脱炭素化の取り組みに連動させているかといったことも聞く。そうした分析を通じて脱炭素へ向けた勝者と敗者を判断し、ポートフォリオの低カーボン化を進めている。重要なのは、脱炭素化へのトランジション(移行)を確信できる証拠があるかどうかだ。 Q:ダイベストメント(投資撤退)の対象となる企業とは。 A:投資家の一部はすでに石炭や石油・ガスの関連企業の株式を売ったり、投資対象から外したりしている。だが、われわれは異なるアプローチをしている。企業との話し合いやエンゲージメント(建設的対話)を重視する。2021年の現在、どの業界のどの企業が将来的にトランジションに成功するか失敗するかを正確に見通すことはできないからだ。 そのため、原則としてわれわれはダイベストメントを行わない。投資を続け、エンゲージメントを行う。もしくは、リスク調整後リターンで見てリスクが非常に高い場合には新たな投資は行わない。 Q:ESG投資についてはすでに「バブル」との見方も一部にあります。 A:市場でブーム&バスト(バブルとその崩壊)が起こるのは、あるタイプの投資やESGストーリーに投資家が一斉に群がり、市場価格が上昇して過剰評価の状態になるためだ。これに対し、ESGを財務分析の1つの要素と考え、ROEやレバレッジ、資産価格なども踏まえて投資を行えば、ブーム&バストにはつながりにくい』、「ESGを財務分析の1つの要素と考え、ROEやレバレッジ、資産価格なども踏まえて投資を行えば、ブーム&バストにはつながりにくい」、確かにその通りなのかも知れない。
・『コロナ禍がグリーンスワンかもしれない  Q:BIS(国際決済銀行)が報告書で警告した気候変動発の金融危機「グリーンスワン」についてはどう考えますか。 A:気候変動には未知のことが多い。2020年は地球の平均気温が過去最高の気温を記録した年となり、地球温暖化が進んでいるのは事実だ。昨年は(台風などの)熱帯性暴風雨も過去最多となったが、こうした気候変動がこの先、われわれにどう影響するかは見通せない。グリーンスワンのようなことが発生する可能性は否定できないだろう。 人類が自然への侵害、開発を増やしていけばグローバル・パンデミックを引き起こすという科学的証拠も指摘されている。もしかしたら今(のコロナ禍)がまさにその状況であり、グリーンスワン的な出来事と言えるかもしれない。 グリーンスワンを防ぐには、気候変動リスクを考え、それに対応していくことだ。グリーンスワンを待つことはやめよう。課題を理解し、対応策を考えていけば、リスクに対処できるだろう。われわれはポートフォリオの見直しを通じて、リスクに対応していく。 Q:HSBCグローバル・アセット・マネジメントは合弁で「自然資本」に投資する会社を設立しました。 A:自然資本としては例えば農地や農業、林業・山林管理、海洋保全、マングローブ林やサンゴ礁の保全などが対象となる。太陽光発電や風力発電事業などは対象とならない。今のところリスクの少ない先進国が対象だ。 投資家は自然保護の必要性を理解しており、われわれが創設した自然資本ファンドへの関心は非常に強い。現在のファンドの規模は小さいため、機関投資家のためのより大規模なファンドを設定する予定だ』、「自然資本ファンド」のリターンは、農産物や材木、海産物などなのだろうが、誰が管理・栽培するのかにより大きな違いが出てくるので、果たして「ファンド」ビジネスが成り立つのだろうか。

第三に、4月5日付け東洋経済オンラインが掲載した日銀出身で前早稲田大学教授、現在、(社)自律分散社会フォーラム代表理事の岩村 充氏による「誤ったESGの議論は格差を拡大し成長を損なう 日本企業に株主主権の強化を求めたのは間違い」を紹介しよう。これはかなり理論的だが、経済システムの問題もをキレイに解き明かしている好論文だ。
https://toyokeizai.net/articles/-/420597
・『ESG経営あるいはESG投資といった議論が盛んになってきた。Eは環境、Sは社会、そしてGは企業統治だが資本主義下では株主ガバナンスといってよい。これらの観点を経営管理あるいは投資の軸に据えることで、企業は発展し、環境や社会全体、ほかのステークホルダー(顧客、従業員、取引先など)などにもよい影響を与えるはずとする議論である。 しかし、この議論、そもそも筋がおかしくないだろうか。EとSは多くの人が賛同する「目標」だが、Gは目標達成のための「手段」にすぎない。そのGをEやSと同格の目標であるかのように扱うのは、議論のすり替えでありただの政治的アジテーションではないか。浅い考えでGの強化を叫ぶことは、EやSをよくするどころか、かえって損なう要因になりかねない』、冒頭から岩村氏らしい理論的なパンチだ。
・『株主ガバナンス強化論はなぜ間違いなのか  そのことを、今や経済学の基本定理といえる「コースの定理」の考え方を用いて整理しよう。図にするとわかりやすいので次ページに掲載した(「図」はリンク先参照)。 横軸に企業の新しい可能性に対するチャレンジ度をとり、縦軸に企業のステークホルダーである株主と従業員に生じる変化に対する限界的な(単位当たりの)利益と損失をとることにする。 企業経営のチャレンジ度が上がることで株主に生じる限界的な利益を図示すると、それは一般的には右下がりの軌跡となる。なぜなら、企業が新たな機会に挑戦して得られる追加的なリターンは最初のうちこそ大きいが、その程度を上げていくうちに、持てる経営資源の限界に制約され徐々に低下するはずだからだ。 一方、チャレンジ度の増加が従業員にもたらす単位当たりの損失は右上がりの直線である。企業が新しいことに挑戦すると、従業員たちが蓄えていた業務に関する知識や経験は、新しい状況に応じて改めて作り直されなければならない。また、企業がチャレンジ度を上げるにしたがって倒産可能性も増加する。株主は分散投資によって倒産による損失をコントロールできるのに対し、従業員にはそれができないからだ。 この図を見ていくと、2014年に経済産業省の研究会の成果として公表された『伊藤レポート』に代表される、株主ガバナンス強化論の大きな問題点が明らかになる。 企業活動水準について見ると、企業がまったくリスクに挑戦しないXは確かに過小だが、株主利益が最大化されるYは従業員に生じる負担という点で明らかに過大である。では最適点はどこなのだろうか。それは、株主利益を示す右上がり直線と従業員損失を示す右下がり直線の交点Zである。 この図では、企業のステークホルダーたちに生じた利益や損失の大きさが、面積として表現されている。それをAからDまでの4つの三角形に分けて確認しておこう。まずAの部分、これは株主に生じた金銭的利益から、従業員に生じた社会的損失を差し引いたネットベースでの社会的サープラス(余剰)である。この部分を黄色に塗っておくことにする。 次はBとCだが、ここはマクロでみればゼロサムの部分だ。株主に生じた利益と従業員に生じた損失とが打ち消し合って、経済価値の移転、従業員から株主への移転だけが生じているだけの部分だからだ。 問題はDの部分だ。ここは、株主利益が存在しないのに社会的損失だけが生じていることを示す部分である。これを放置する国家や経済は衰え、やがては消滅の日を迎えるかもしれない。この部分、わかりやすくするために青で塗っておくことにしよう。 こう説明すれば、日本経済全体にとって中間点Zの合理性は明らかだろう。企業が水準Zを選択してくれれば、CとDの部分は関係者に意識はされても現実には存在しなくなるから、企業活動はネットベースではAの大きさに相当する富を作り出してくれることになる。では、どういう方法で企業決定をZに導いたらよいだろうか』、この「コースの定理」に基づいた「図」は、難しいが、かなり高度なことが盛り込まれているようだ。
・『社会とって最適なZで合意することは可能だ  そこで想起するのが「コースの定理」である。コースの考えによれば、この図でZと表記した最適な企業活動水準は、当事者同士が交渉して合意し、その合意を遵守すれば実現可能である。最適水準Zが選ばれるかどうかは、企業経営の主導権を株主が握っているのか、従業員が持っているのかには関係なく、両者の交渉と合意により実現できるはずだというのである。どうしてそうなるのか。 まず、企業がどの活動水準を選ぶか、それを決める権限を株主あるいは株主の代理人である経営陣が持っているとしよう。そのとき経営陣は活動水準として当然のようにYを選ぶだろうか。彼らが賢く、かつ従業員から誠実さにおいて信頼されているとすれば、もっとよい方法がある。Yよりも自重した水準であるZを選び、Yを選んでほしくないと考える従業員たちに相応の見返りを求めるという戦略が存在するのだ。 ちなみに、ここで従業員に求める見返りの大きさはCの面積よりは大きく、CとDを合わせた面積よりも小さなものでなければならない。Cの面積よりは大きくないと株主に利益がないし、CとDの合計より大きくなると従業員の賛成を得られないからだ。 やや具体的なイメージで言えば、彼ら経営陣としては、従業員に対して、「企業活動レベルを水準Zまで自制自重するから、その代わり、会社に忠誠心を持って参加してくれ、賃金は少なめでも頑張ってくれ、自分の会社での役割を意識して切磋琢磨してくれ」などと説くわけだ。何の合意もなく株主ガバナンス論を振りかざして水準Yを選ぶのではなく、従業員との合意の上でZを選んだほうが、株主にとっても従業員にとっても好ましい状態になる。 これに気づけば、単純な株主ガバナンス強化論が見落としていることは明らかだろう。問答無用型の株主ガバナンスは、従業員たちと経営陣との交渉あるいは合意形成への努力を無意味化することにより、日本全体に大きな外部不経済をもたらしかねないのだ。 ところで、この水準Zは、企業の意思決定を従業員が完全に握っていて、株主は企業の株式を持つか売るかの自由しかないときでも、同様に実現しうる。 この場合は、株主から従業員にBよりは大きくAとBの合計よりは小さい価値移転が生じる。結果として株主に残るのはAの面積の一部でしかないものの、企業がまったく新しいことに挑戦しないで何も得られない状態よりは、株主にとって好ましい状況を作り出せる。従業員たちも何のチャレンジもせずに水準Xにとどまっているより大きな報酬が得られるはずだ』、「何の合意もなく株主ガバナンス論を振りかざして水準Yを選ぶのではなく、従業員との合意の上でZを選んだほうが、株主にとっても従業員にとっても好ましい状態になる」、「問答無用型の株主ガバナンスは、従業員たちと経営陣との交渉あるいは合意形成への努力を無意味化することにより、日本全体に大きな外部不経済をもたらしかねない」、「株主ガバナンス論」を完膚なきまで叩きのめしたのはさすがだ。
・『同じZでも株主支配か従業員支配かで分配は変わる  しかし、ここで注意したいことがある。それは、企業活動水準として社会的最適点であるZを選ぶことに変わりはないのに、株主に支配されている場合と従業員に支配されている場合とでは、企業活動の成果の「分配」は大きく変わっているということである。 株主が企業を支配している場合には、株主に本来の帰属利益であるA+Bに加えてCとDの一部を合わせた大きさの従業員からの移転利益が生じる。従業員には本来の帰属損失Bに加えてCとDの一部を合わせた大きさの株主への移転損失が生じる。これに対し、従業員が企業を支配している場合には、従業員にAの一部の大きさの利益が生じて、株主にはAの残余部分に相当する利益しか生じないであろう。 つまり、企業経営が社会全体にとって最適な選択をするかどうかには関係なく、企業支配における株主の立場を強化することは、富める者をより富ませ、貧しいものをより貧しさせる効果があるわけだ。 そして、これはGの強化により日本経済全体の高い成長を実現できるなどと口にする政治家たちの思考不足をあざ笑うものでもある。なぜなら、一般に富裕層の消費性向は低く貧困層の消費性向は高い。だから、貧富の格差拡大は公正あるいは社会正義の問題だけでなく、いわゆる総需要の伸び悩みをも通じて国民経済成長の足を引っ張るのである。株主ガバナンス論は、長期的には日本を貧しくしかねないのである。 そこまで考えれば、第2次大戦後の公職追放の結果として従業員出身取締役に支配されていたとされる日本企業についても見方が変わってくるだろう。アングロサクソン型経営が世界標準となる中で、従業員に軸足を置きすぎと批判されるようになった日本的経営こそが、あの「高度経済成長」の理由の一つだったかもしれないという気がしてくるからである。そして似たような話がありそうなのは日本だけではない。重要な意思決定には従業員代表の同意が必要だとする「共同決定法」という法律の下にあった旧西ドイツがそれだ。 日本の企業経営に活力が失われた理由も、冷戦終了後のドイツの企業から輝きが消えていった理由も、国際的資本移動自由化の下で株主優遇を競い合うというという意味での「底辺への競争」に呑み込まれ、結果として株主以外のステークホルダー、とりわけ従業員たちとの合意を重視しなくなったことに関係があるだろうと筆者は考えている』、「貧富の格差拡大は公正あるいは社会正義の問題だけでなく、いわゆる総需要の伸び悩みをも通じて国民経済成長の足を引っ張るのである。株主ガバナンス論は、長期的には日本を貧しくしかねないのである」、「従業員に軸足を置きすぎと批判されるようになった日本的経営こそが、あの「高度経済成長」の理由の一つだったかもしれないという気がしてくるからである。そして似たような話がありそうなのは日本だけではない。重要な意思決定には従業員代表の同意が必要だとする「共同決定法」という法律の下にあった旧西ドイツがそれだ」、こうした経済システムの問題まで「コースの定理」に基づいた図で解き明かすとは、さすがだ。
・『環境や社会への影響を専門に見る取締役が必要  そうしたなか、もう2年近く前になる2019年8月に、筆者が衝撃を受けたニュースがあった。アメリカのトップ企業経営者たちが作るフォーラムであるビジネスラウンドテーブルが、これからの企業経営について、株主だけを重視するのではなく、従業員や地域住民などの広範なステークホルダーたちとの対話と合意を尊重すべきと提言したのである。 提言に関する日本メディアの伝え方には、これは大企業が格差拡大による批判を怖れたからだ、そこまでアメリカにおける分配の不平等は深刻なのだ、というニュアンスのものが多かった。しかし、コースの定理に沿って考えれば、この提言は株主利益のかさ上げにも使えることは明らかである。強力な株主主権の下で株主代表である経営陣が従業員その他のステークホルダーたちと交渉すれば、前掲の図のDの大部分は株主に帰属し、貧富の格差はさらに拡大する可能性だってありうるのだ。そのことを突いた論説が展開されることがなかったのは、わが国の知的貧困であると思う。 本当はどうすればよいのか。企業ガバナンスを改革して格差是正につなげる、本当にSを実現するためにGを変える。それにはどうすればよいのだろうか。旧西ドイツ流の「共同決定法」はもはや答えにならないと思う。いわゆる資本移動の自由化によって生まれた国家間での資本誘致競争、いわゆる底辺への競争のもとでは、一国だけがそんな法律を作っても無意味だからだ。 筆者が状況を改善するアイデアになりうると思っているのは、株式会社の経営陣ラインアップに、株主利益への奉仕ではなく、自由にEやSのために、社会の持続可能性のためだけに奉仕する役割を付託された取締役を設置する運動を始めることなのだ。それについては場を改めて語りたい』、この提案はまだいささか唐突だ。「場を改めて語りたい」、待ちどおしい。
タグ:東洋経済オンライン ESG 岩村 充 (その1)(ESG投資がなぜ騒がれているか知っていますか 脱炭素の流れが大規模な資本の再配分を起こす、ESG投資のプロが語る「脱炭素マネー」の潮流 気候変動が生み出すリスクとビジネス機会、誤ったESGの議論は格差を拡大し成長を損なう 日本企業に株主主権の強化を求めたのは間違い) 「ESG投資がなぜ騒がれているか知っていますか 脱炭素の流れが大規模な資本の再配分を起こす」 世界のESG投資残高は4000兆円規模に 確かに「バイデン政権の誕生」は大きな追い風のようだ。 「大手機関投資家は、今や「環境アクティビスト(物言う株主)」へ変容しつつあるといっても過言ではない」、そこまできたかといささか驚かされた。「石炭火力発電」は日本だけが推進してきたが、ESGの観点から見直しも進みつつある。 「日本で」「脱炭素へ向けた」「流れが本格化して」もらいたいものだ 「ESG投資のプロが語る「脱炭素マネー」の潮流 気候変動が生み出すリスクとビジネス機会」 「ESGに関する資産運用業界のスポークスパーソン的存在」の見解とは興味深そうだ 「投資家は世界をESGの「レンズ」を通して見るようになり、それがビジネスへの資本の流れを変えている」、「投資家はクリーンエネルギーやヘルスケアのようなESGの解決策に資金を投じるようになった」 「バイデン大統領は気候変動対策と環境正義 を政策の柱としている。そのため、アメリカの投資家全体の間でESGへの関心が高まり、資金の流れに本格的な変化が起こるだろう」、なるほど。 「中長期的なリスク調整後リターンで言えば、環境や従業員・株主への対応などのESGをうまく管理する企業は、中長期的によりよいパフォーマンスを上げる」 「日本は2022年にかけてEUタクソノミーの導入状況と欧州の投資家の反応を見たうえで将来、日本国内の投資家のための規則をつくることになるかもしれない」、なるほど。 「一部の日本企業の対応は極めていいが、閉鎖的な企業もまだ多い。文化的な行動様式の違いもあろうが、国際的に見れば変化はまだスローといえるかもしれない」、「投資家との議論や対話を行う文化が英米企業に比べると進んでいるとはいえない」、やはり課題も多そうだ。 「ESGを財務分析の1つの要素と考え、ROEやレバレッジ、資産価格なども踏まえて投資を行えば、ブーム&バストにはつながりにくい」、確かにその通りなのかも知れない。 「自然資本ファンド」のリターンは、農産物や材木、海産物などなのだろうが、誰が管理・栽培するのかにより大きな違いが出てくるので、果たして「ファンド」ビジネスが成り立つのだろうか。 「誤ったESGの議論は格差を拡大し成長を損なう 日本企業に株主主権の強化を求めたのは間違い」 EとSは多くの人が賛同する「目標」だが、Gは目標達成のための「手段」にすぎない。そのGをEやSと同格の目標であるかのように扱うのは、議論のすり替えでありただの政治的アジテーションではないか。 冒頭から岩村氏らしい理論的なパンチだ 株主ガバナンス強化論はなぜ間違いなのか この「コースの定理」に基づいた「図」は、難しいが、かなり高度なことが盛り込まれているようだ。 「何の合意もなく株主ガバナンス論を振りかざして水準Yを選ぶのではなく、従業員との合意の上でZを選んだほうが、株主にとっても従業員にとっても好ましい状態になる」、「問答無用型の株主ガバナンスは、従業員たちと経営陣との交渉あるいは合意形成への努力を無意味化することにより、日本全体に大きな外部不経済をもたらしかねない」、「株主ガバナンス論」を完膚なきまで叩きのめしたのはさすがだ。 同じZでも株主支配か従業員支配かで分配は変わる 「貧富の格差拡大は公正あるいは社会正義の問題だけでなく、いわゆる総需要の伸び悩みをも通じて国民経済成長の足を引っ張るのである。株主ガバナンス論は、長期的には日本を貧しくしかねないのである」、 「従業員に軸足を置きすぎと批判されるようになった日本的経営こそが、あの「高度経済成長」の理由の一つだったかもしれないという気がしてくるからである。そして似たような話がありそうなのは日本だけではない。重要な意思決定には従業員代表の同意が必要だとする「共同決定法」という法律の下にあった旧西ドイツがそれだ」、こうした経済システムの問題まで「コースの定理」に基づいた図で解き明かすとは、さすがだ。 この提案はまだいささか唐突だ。「場を改めて語りたい」、待ちどおしい。
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ブラック企業(その13)(「電通」はなぜ迷走し続けるのか? 畏友・山本敏博CEOへの“最後の諫言” 田中康夫緊急寄稿、電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか、ワタミはなぜ提訴されたのか 労基署さえ「手玉」にとる魔手の数々か?」) [企業経営]

ブラック企業については、2月9日に取上げた。今日は、(その13)(「電通」はなぜ迷走し続けるのか? 畏友・山本敏博CEOへの“最後の諫言” 田中康夫緊急寄稿、電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか、ワタミはなぜ提訴されたのか 労基署さえ「手玉」にとる魔手の数々か?」)である。

先ずは、2月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家・元長野県知事の田中康夫氏による「「電通」はなぜ迷走し続けるのか? 畏友・山本敏博CEOへの“最後の諫言” 田中康夫緊急寄稿」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/263134
・『2020年12月期は1595億円と過去最大の最終赤字に沈んだ日本の広告業界の巨人・電通グループ。世界「BIG5」に肩を並べようともくろんだ海外企業の買収が主要因だが、電通を蝕むのはそれだけではない。収益拡大の絶好の機会である東京オリンピック・パラリンピックの開催も危うく、一発逆転の可能性は風前の灯火だ。山本敏博CEOを知る作家で元長野県知事の田中康夫氏が、“最後の諫言”を緊急寄稿した』、山本氏はかつて、田中氏が出演していたラジオ番組の愛聴者だったので接点が出来たのかも知れない。
・『最終損失の主要因は海外子会社の減損 CFOの決意に相槌を打っている場合ではない  純粋持株会社「電通グループ」は2020年12月期の連結決算(国際会計基準)を2021年2月15日に発表。以下の“言い訳”は、「経営成績及び財政状態」と大書きされた「決算短信」の1行目に記されています。 「2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界的に景気が急速に悪化しました。特に2020年3月以降は、当社グループの国内外の事業にも影響を及ぼし始めました」(https://ssl4.eir-parts.net/doc/4324/tdnet/1935567/00.pdf) 同日22:00配信「日本経済新聞」記事の冒頭も再録しておきます。(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD156FE0V10C21A2000000/) 「電通グループが15日発表した2020年12月期の連結決算(国際会計基準)は、最終損益が1595億円の赤字(前の期は808億円の赤字)と過去最大だった。新型コロナウイルス禍によって世界の広告市況が悪化、海外事業を中心にのれんなどの減損損失1400億円強を計上した。 M&A(合併・買収)を軸に海外事業を広げてきたが、買収後の成長が遅れコロナ禍が追い打ちをかけた。売上高にあたる収益は前の期比10%減の9392億円、営業損益は1406億円の赤字(前の期は33億円の赤字)だった。最終赤字、営業赤字とも2期連続となる。 減損損失は子会社や地域ごとの判断ではなく海外全ての地域をまとめて収益性を見直して1403億円を計上、国内でも数十億円が発生した。20年9月末時点で約7300億円あった貸借対照表上の、のれんは今回の減損で約5900億円に減った」 翌16日付け朝刊13版にも、一字一句違わぬ同じ文面の記事が掲載されています。1面右肩で報じた「日経平均3万円回復 金融政策で押し上げ 企業収益 改善道半ば」よりも“ニュース性”が稀薄だったのか、掲載面は21面「投資情報2」の右肩でした。 再録した記事の末尾を飾るのは、曽我有信(そが・ありのぶ)取締役執行役員(財務担当)のコメント。「曽我氏は日本経済新聞の取材に『今後のM&Aは数や規模ではなく質を重視したい』と強調。スタートアップ企業との連携も深めていく方針も示した」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD156FE0V10C21A2000000/) 脊髄反射で「その言や良し」と大きく相槌を打った「ニッポン凄いゾ論」の「意識高い系」諸兄姉(しょけいし)にとって今回の拙稿は、些か読み進むのが辛いかも知れません。が、太古の昔から“良薬は口に苦し”。それも又、「公理」なのです。 「#Tokyoインパール2021」のハッシュタグがSNS上で人口(じんこう)に膾炙(かいしゃ)する程に迷走・混迷の度合いを深める、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会TOCOGからマーケティング専任代理店として2014年4月17日に指名を受けた「(株)電通」。 「当社は、これまで長年にわたり培ってきたスポーツ事業における知見やノウハウを生かし、2020年に開催される第32回オリンピック競技大会および第16回パラリンピック競技大会の成功に向けて、組織委員会のマーケティングパートナーとして、マーケティングプランの策定やスポンサーセールスなどを支援し、グループの総力を挙げて貢献してまいります」のプレスリリースは現在もHPで閲覧可能です。(https://www.dentsu.co.jp/news/sp/release/2014/0417-003720.html) その後、幾度かの組織改編を経て「電通」は現在、国内事業会社「(株)電通」。その社内カンパニーとして電通を中核に日本国内の約130社で構成される「電通ジャパンネットワーク」。昨年9月25日に電通イージス・ネットワーク(株)から社名変更したロンドンが本拠地の海外事業会社「電通インターナショナル(株)」。それらを束ねる純粋持株会社「(株)電通グループ」。以上4組織に大別されています。 以下は、電通グループ代表取締役社長執行役員兼CEOにして、電通インターナショナル非常勤取締役(Non-Executive Director)も務める畏友・山本敏博氏への“最後の諫言”。最後までお読み頂ければ幸いです』、「海外事業を中心にのれんなどの減損損失1400億円強を計上」、海外の買収には無理があったのだろうか。
・『世界広告「BIG5」に躍り出るも赤字を救う“公助”の可能性も  敢(あ)えて非デジタル的表現を用いて時計の針を戻すと、昨年12月7日に電通グループは、2020年12月期の連結業績予想(国際会計基準)が237億円の赤字になるとの見込みを発表。(https://www.nikkei.com/article/DGXZASFL07H9S_07122020000000/) グループ従業員の1割近くに当たる6000人を2021年末までに、限りなく解雇に近い削減へと踏み切ると表明。それに伴う構造改革費用876億円を計上しています。が、その2カ月後の今年2月15日の発表では1595億円へと赤字額が大幅に「増大」していたのです。 更にお復習(さら)いとして再録すれば、「広告業界ビッグ4」英WPP、米オムニコム、仏ピュブリシス、米インターパブリックに次ぐ世界第5位の“地歩”を、東洋の島国に本社を置く「電通」が築く切っ掛けとなったのは2013年3月26日のM&Aです。当時世界8位だった英国のイージス・グループを約4000億円で買収。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO91489550Y5A900C1000000/) 「電通イージス・ネットワーク社」へ名称変更したロンドンの拠点を海外本社に位置付け、「110カ国・地域で事業展開するグローバル・コミュニケーション・グループ」を標榜します。(https://www.nikkei.com/article/DGXLZO80419570S4A201C1DTA000/) その後もM&Aを加速。僅か5年で164社を傘下に収め、2019年12月には145カ国・地域に6万6000名の従業員を擁する900社もの多国籍企業改め“無国籍企業”へと急激に拡張しました。 それらに伴い、昨年1月1日に発足した電通グループ全体の売上総利益に占める国内比率は85%から43%へと半減。57%の収益を海外に依拠する構造へと変容を遂げます。が、豪州や中国を含むアジア太平洋地域を始めとする海外部門がよもやの苦戦に直面。2019年9月時点で7886億円まで膨張した「のれん」の減損損失701億円分の計上を昨年2月12日に発表。赤字転落しました。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55544130S0A210C2DTD000/) 言わずもがな「のれん代」とは、「買収された企業の純資産」と「買収価額」の差額を意味します。冒頭で紹介した「日経」の“心優しき認識”も今一度、復習しておくと「20年9月末時点で約7300億円あった貸借対照表上の、のれん」を「今回(2020年12月期)の減損で約5900億円に減」らすべく「減損損失は子会社や地域ごとの判断ではなく海外全ての地域をまとめて収益性を見直して1403億円を計上、国内でも数十億円が発生し」ています。 瀕死の重症状態から脱するべく、幼気(いたいけ)にも「自助」努力を続ける「電通」には、日本政府からの「公助」も受けられる可能性があります。 会計上の赤字と同様に税務上の損失を計上することができれば、「繰越欠損金制度」が持株会社の電通グループ及び事業会社の電通に適用されます。仮に赤字転落した昨年から既に適用されていたとしたら、本社登記地の東京都に納付する法人都道府県民税80万円以外は、国税の法人税も地方税の法人事業税も最大10年間に亘って毎年の納付額がゼロ円で済む「合法的」恩恵に浴していることになるのです。 「繰越欠損金制度」(https://tanakayasuo.me/archives/23720)と申し述べるや、「お前は三百代言の輩か」と烈火の如く反駁される向きも居られましょうから、暫し入念に説明を加えておきましょう』、「僅か5年で164社を傘下に収め、2019年12月には145カ国・地域に6万6000名の従業員を擁する900社もの多国籍企業改め“無国籍企業”へと急激に拡張・・・電通グループ全体の売上総利益に占める国内比率は85%から43%へと半減。57%の収益を海外に依拠する構造」、とはかなり急速に海外M%Aを進めたようだ。「減損損失」で税務上でも赤字となれば、「繰越欠損金制度」が適用されるようだ。
・『借入金にコベナンツが付いた 社員に副業“解禁”でも炎上  財務省のデータに拠れば、株式会社の7割は、国税の法人税と地方税の法人事業税を1円も納めていません。連結決算を導入する超大企業ですら、66%が同様です。それは利益に対して課税する仕組だからです。 国会議員時代に僕は、予(あらかじ)め財務省の担当者から説明を受けた上で、「法人税を1円も支払っていない企業はどのくらいの割合に上るか、御存知でしょうか」と、2011年2月8日の衆議院予算委員会で、時の菅直人内閣総理大臣に尋ねています。彼に代わって野田佳彦財務大臣が「全体の7割でございます」と答弁し、それに対して僕が、「法人の7割が法人税を払っていないということですね。即ち71・5%、7割を超える企業が法人税を支払っておりません。これは中小の零細企業に限った話なのでは無い訳です。資本金が1億円を超える企業でも、過半数の51・5%が1円も法人税を支払っておりません。これは連結決算対象の総法人数を除いての数値ですから、現実には、日本経済団体連合会=経団連や経済同友会に加盟する上場企業の約6割もが法人税を払っていないということです。この国会中継をテレビやラジオ、あるいはインターネットでお聞きの皆さんは、本当かとキツネにつままれているかと思います」と発言した言葉も含めて、議事録から削除されることなく10年後の今日も確認する事が出来ます( http://www.nippon-dream.com/wp-content/uploads/1aa4eff00be9af6f591d33ef9d2b6a41.pdf )。 その後、2回に亘って2011年11月1日と2012年1月27日の衆議院本会議の代表質問でも同様に確認し、同様の答弁がNHKの国会中継で放送されています。 故に余談ながら僕は、この理不尽な状況を改善する上でも、事業規模や活動量を基準に課税する「新しい発想の外形標準課税」へと抜本的に刷新すべきと提唱し続けているのです。 赤字企業でも事業収入自体は存在します。而(しか)して、何処で何人働き、何を幾つ作って、何処で幾つ売れたか、瞬時に把握可能な時代です。 ならば、老若男女を問わず全ての国民が支払う消費税と同じく、更には誰もが二酸化炭素CO2を排出するのと同じく、全ての企業が広く薄く外形標準課税で納入すれば、法人税率を現行の3分の1に引き下げても全体では逆に1割の税収増となります。事業展開しているそれぞれの地点で、事業量に応じて納税する「新税制」を確立すれば、これぞ21世紀のノーベル経済学賞! 全国各地の自治体が支度金(バンス)も用意して工場誘致を実現しても、法人税は東京や大阪、愛知の本社登記地に支払われるから、多少の雇用と固定資産税が見込めるだけで、「地方の自律」は夢のまた夢。 それは、GAFAに象徴される「無国籍企業」が、実際に事業を展開している国で税金を納めていない深刻な問題を合法的に解決する道でもあります。 閑話休題。が、仮に「電通」が法人都道府県民税80万円ポッキリで済む「恩恵」に浴していたとしても猶、身の丈を超えたM&Aで「ビッグ5」の仲間入りを果たした巨大広告代理店の財務状況は極めて深刻です。また、借入金の一部に「コベナンツCovenants」と呼ばれる「財務制限条項」が課せられているのも気掛かりです。 コベナンツとは、年度資金や事業資金を複数の金融機関が分担して貸し付ける「協調融資」に際し、財務健全性維持を求める契約条項。有り体に述べれば、債務者の財務状況に応じて債権者が契約解除を可能とする条項なのです。 コベナンツ(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD154JF0V11C20A2000000/?n_cid=BRFR3010) 電通インターナショナルへと看板を付け替えた旧電通イージス・ネットワークの呼称に関しても説明を加えておきましょう。 イージスAegisとはギリシア神話に登場する「守護神」ゼウスが娘の女神アテーナーに与えた、全ての邪悪・災厄を払う魔除けとしての山羊革=ゴートスキンを使用した防具アイギス Aigisの英語読みです。 奇しくも「官邸の守護神」と呼ばれし東京高等検察庁の黒川弘務(くろかわ・ひろむ)検事長が2020年5月に辞職。翌6月には弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」配備計画も中止。名にし負う国際企業の電通グループたればこそ逆に、日本的な験(げん)を担いだのかも知れません。 連結子会社の電通イージス・ネットワークを2020年9月25日に電通インターナショナルへと商号変更。広大な敷地内に駐箚(ちゅうさつ)アメリカ合衆国特命全権大使公邸も位置するロンドンのリージェンツ・パークから程近い複合施設リージェンツ・プレイスに、商号変更後も本拠地を構え続けています。が、こうした「ブランド・イメージ」堅持の努力も虚しく、純粋持株会社「電通グループ」は2019年12月期に続いて2期連続で2020年12月期の営業利益も純利益も赤字となりました。 再び時計の針を戻して昨年11月1日、「電通、社員230人を個人事業主に 新規事業創出ねらう」の大見出しで「日本経済新聞」が記事を掲載しています。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO6610376011112020916M00/) それは、国内事業会社・電通の正社員全体の3%に当たる230人が「個人事業主」として「勤務」する「新しい働き方改革」。営業・制作・間接部門等、全職種の40代以上の社員約2800人を対象に募集。適用者は早期退職した上で、電通設立の新会社と10年間の業務委託契約を締結。電通時代の給与を基にした固定報酬に加え、実際の業務で発生した利益に応じてインセンティヴ報奨金も支給。兼業や起業も、他社との業務委託契約も可能。 至れり尽くせりの好条件と思いきや、「競合他社との業務は禁止」の一文に、「“蟹工船”的働き方改革」だと「業界関係者」がSNSで一刀両断。TV各局と仕事可能なフリーランスの放送作家や映像ディレクターと異なり“廓(くるわ)の論理”を押し付ける“脱法リストラ”じゃね、とプチ炎上する展開となりました。 無理からぬ批判です。年金・健保等の事業主負担、労基法の遵守と労災の刑事的・民事的責任から逃れた電通が、今度は胴元として「名ばかり個人事業主」を指揮監督する寸法なのですから。フリーランスとは自らの技能を提供する社会的に独立した自由業としての個人事業主。この形態で請け負った業務を遂行する人間がフリーランサー。その原義は、常備軍を擁する王族や貴族が有事の際に結成する傭兵団(フリー・カンパニー)の一員を意味します。無論、この場合のフリーは、ただ働きを意味する「無料」とは異なります。 「電通、本社ビル売却検討 国内最大規模の3000億円規模 コロナ禍でオフィス改革広がる」――。時流を先取りしたかの如き印象を与える見出しで「日本経済新聞」が速報したのは、コマーシャルの教科書として名高き「3時のおやつは文明堂」を彷彿とさせる今年1月20日午後3時5分でした。ttps://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD184X60Y1A110C2000000/) が、その「決断」は、西新宿に聳える東京都庁の“魔天楼”で「後手後手やってる感」を巧みに演じ続ける“緑の旗振りオバサマ”小池百合子都知事が好んで用いる羊頭狗肉な惹句「ワイズスペンディング」の本来の定義とも異なる、背に腹は代えられぬ“帳尻合わせ”に他ならぬ、と僕の目には映るのです』、「借入金にコベナンツが付いた」、ということは財務の柔軟性が失われて、ショックに弱い体質になったことを意味する。「正社員全体の3%に当たる230人が「個人事業主」として「勤務」する「新しい働き方改革」」は、確かに「“廓(くるわ)の論理”を押し付ける“脱法リストラ”じゃね」、との「批判」も当たっているようだ。
・『山本CEOに昨夏に提案済み 電通改革に必要な4項目とは  僕は『サンデー毎日』2020年7月26日号に「『電通』化する日本 巨大広告代理店は なぜ迷走したか」と題して寄稿しています。 拙稿及び関連資料を含む『「電通」化する日本 巨大広告代理店は なぜ迷走したか』まとめサイト(https://tanakayasuo.me/dentsu/) 「日本最大の広告代理店、電通に厳しい批判の目が向けられている。2015年には社員の過労自殺があり、いま給付金委託『中抜き』問題で国策企業と指弾されているのだ。電通の迷走ぶりは、空洞化する日本の産業構造、劣悪化する日本の労働環境の縮図だと看破(かんぱ)する異能作家が、友人でもある山本敏博電通グループ社長に峻烈(しゅんれつ)な直言(ちょくげん)を呈(てい)しつつ、問題の核心を明らかにする――」 担当編集者M氏が記した「簡にして要を得た」リード文に続いて僕は冒頭で、2017年1月19日に当時の(株)電通取締役会で抜擢された時点では、その取締役会の構成員ですらなかった“次代のホープ”が社内外に発したコメント「最優先の課題は、労働環境の改革であると認識しています」を引用しました。 その4日後の2017年1月23日に社長執行役員に就任した畏友・山本敏博氏の決意表明は以下の如く続きます。「強い決意のもと、社員と共に改善施策を着実に遂行してまいります。経営の健全性や透明性の確保を図るガバナンス体制を強化すると同時に、当社の企業価値の源泉を見つめ直して、新しい電通の創造に向けて、全社を挙げて取り組んでまいります」 『サンデー毎日』発売直後の昨年7月21日、山本敏博(株)電通グループ代表取締役兼CEOから求められて2人で面談した際、僕は4項目のメモ書き『(1)「殖民地化」の阻止(2)「電通」労働環境のプロトタイプ化(3)電通イージス・ネットワークの可視化(4)HP JP上でガバナンスを明確化』を手渡しました。 (1)「殖民地化」の阻止(「広告業界」に疎い読者諸氏でも、1970年代半ばに耳目を集めた博報堂の醜聞をご記憶かも知れません。「教育雑誌」の広告取次店として1895年=明治28年に事業を興した博報堂創業家のお家騒動に端を発し、社長経験者を含む4名が特別背任罪で逮捕された事件です。相前後して、何れも旧大蔵省出身の2人の人物が社長、会長として君臨する進駐軍統治が、1975年から2000年まで四半世紀にも亘って続きました。「監督官庁」総務省や厚生労働省からの常勤取締役、社外取締役等の受け入れに伴う社内外の士気への影響に、「トップ・リーダー」はセンシティブであるべきなのです。 (2)「電通」労働環境のプロトタイプ化(日本の産業界は、実態と乖離した政治や行政が掲げる「働き方改革」に翻弄され続けています。9時-5時勤務が夢物語な「業界」の雄たればこそ電通は、職務給・職能給の枠組みを超えて「超過労働時間を最大5年有効のポイントに換算」するヴァカンス発想を始め、人間の相貌(かお)と体温が感じられる現場の実態に即した「労働環境」の範を垂れ、延(ひ)いては他業種にも伝播するプロトタイプとしての存在を目指すべき。それは、彼が取締役会の構成員ではなかった2016年11月にも口頭と書面で伝えていた具体的提言です。 「田中康夫の新ニッポン論」Vol.42「職務給・職能給」(https://tanakayasuo.me/wp-content/uploads/2016/11/verdad42.pdf) (3)電通イージス・ネットワークの可視化、そして(4)日本語版HP上でのガバナンスを明確化。(この2項目に関して僕は、持参したノート・パソコンを開いて具体的に、(株)電通グループ代表取締役社長兼CEOに指摘しました。 純粋持株会社の電通グループ、国内事業会社の電通、海外事業会社の電通イージス・ネットワーク、更に電通グループの社内カンパニーとして電通を中核に日本国内の約130社で構成される電通ジャパンネットワーク。4つの異なるURLのホームページは、ユーザー・オリエンテッドな「ワンストップサーヴィス」とは凡そ真逆な「縦割り行政」に陥ったグローバル・カンパニーDENTSUの病巣を体現していませんかと。 広告、そして経営、その何れの領域に於いても「プロフェッショナル」の足元にも及ばぬ僕の4項目の提言は、都合8カ月の歳月を経た2月17日現在も、「反映」されているとは言い難い状況です。 僕の「懸念」は筋違いだったのか否か、「ダイヤモンド・オンライン」読者の皆さんの忌憚なき判断を仰ぎたいと思います』、「提言(1」)~「(4)」は、。いずれも妥当なものだ。
・『社名変更後も今なお旧社名「デジタル重視」が泣く英文HP  「国内外で約1000社に広がる企業集団のネットワーク(株)電通グループは、国内・海外の事業を支えています」と2021年2月15日の決算発表日には誇示していた純粋持株会社のHPは、本稿を脱稿した2月17日に改めて確認すると件の惹句(じゃっく)は見当たらず、その形式もLP=ランディングページへと衣替えしていました。PCでの閲覧を想定した旧来型から、スマホにも対応の上から下へとスクロールするデザインへとヴァージョン・アップしたのです。(https://www.group.dentsu.com/) けれども僕は、文字と映像、更には印象(イメージ)を扱う専門集団にも拘らず、「言霊の幸ふ国(ことだまのさきわうくに)」に本社登記地を置く企業とは俄(にわか)に信じ難き、以下の現実に直面してしまったのです。 「About us 企業情報」と大書きされた電通グループのサイトをスクロールすると、(https://www.group.dentsu.com/jp/about-us/) 『「多様性」を創発していく企業グループへ』『純粋持株会社「株式会社電通グループ」の役割』の見出しに続いて『当社は一般的な持株会社ではなく、dentsu全体をチームにする会社、すなわち「チーミング・カンパニー」になることを目指します。』の決意表明が記され、その下の「dentsuの体制図」をクリックすると、「Group グループ」へとジャンプします。(https://www.group.dentsu.com/jp/group/) そこには「電通ジャパンネットワーク(https://www.japan.dentsu.com/jp/) 」と「電通インターナショナル(https://www.dentsu.com/) 」へのリンクが並列して張られており、「dentsu international」バナーをクリックすると、何故か「dentsu Global」でなく「dentsu Asia Pacific」と左上に表示されたHPへと飛びます。よもやの苦戦に直面する豪州や中国を含むアジア太平洋地域を重視する意思表示でしょうか? とまれ、「dentsu Global (https://www.dentsu.com/?global=true)」を探し当て、右上に表示された「Menu (https://www.dentsu.com/?global=true#top)」にはサイトマップが見当たらず、ページをスクロールして「Sitemap(https://www.dentsu.com/sitemap)」に辿り着くと、そこには数々の“笑撃”が待ち構えていました。 「Who We Are」の下段レイヤー=layer「Our leadership」一覧に「Tadashi Ishii」なる表記を見付けてクリックすると、2016年12月28日に電通代表取締役社長からの引責辞任を会見で表明した石井直氏の顔写真と英文プロフィール「Chairman,DentsuInc.」が現れます。(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/tadashi-ishii) 僕の拙い英語力では「chairman」を「顧問」若しくは「相談役」とは邦訳出来ず、訝りながら計31名の列記された面々を順次クリックしていくと、 Dentsu Aegis Network Americas&US CEOと記されたNick Brien氏(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/nick-brien) Chief Network Development Officer, Dentsu Aegis Networkと記されたNicholas Rey氏(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/nicholas-rey) Global President Business Operations, Dentsu Aegis Networkと記されたVolker Doberanzke氏(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/volker-doberanzke) 日系DNAと思しきSo Aoki氏の肩書もChief Corporate Planning Officer, Dentsu Aegis Network(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/so-aoki) Executive Senior Advisor, Dentsu Group Inc.と記されたValerie Scoular女史も、そのプロフィールは「Currently she is Executive Director Human Resources and a member of the Dentsu Aegis Network Board and Compensation Committee」と現在形で記されています。(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/valerie-scoular) Ashish Bhasin氏も「Under his leadership, Dentsu Aegis Network India is now the second largest Advertising & Media Group in India by revenue.」 と現在進行形です。(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/ashish-bhasin) 更にはGlobal CEO, CreativeのJean Lin女史が担当している中国も(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/jean-lin) 「dentsu Asia Pacific」サイトから降りていくと直ぐに「for KFC China」のロゴタイプを前面に押し出した「Dentsu Aegis Network:KFC Digital Transformation」に辿り着きます。(https://www.dentsu.com/sg/en/dentsu-aegis-network-kentucky-fried-chicken-digital-transformation) 2月15日の電通グループ決算発表会見を担当した曽我有信取締役執行役員は、「電通グループが直近の10年の重点課題として捉え、これからも経営の鍵となる分野は、『デジタル』です」と「マネジメントメッセージ」の冒頭で語っています。(https://www.group.dentsu.com/jp/ir/top-message/top2.html) 国内事業会社(株)電通の「持続可能なリモートワーク」推進は、その現れなのでしょう。(https://www.dentsu.co.jp/news/sp/release/2020/0319-010035.html) が、海外事業会社の電通インターナショナル(株)は、その「重点課題」を遥かに上回る「成果」を収めています。なにしろ、役員自ら先頭に立って“瞬間移動スキル”を体得し、過去と現在を自由自在に行き来する「ワープワーク」を実現しているのですから。 2月16日付け「日本経済新聞」が全10段を費やして19面に掲載した「会社・人事」の「情報・通信」に「電通グループ(3月下旬)代表取締役(取締役)ティム・アンドレー▽取締役、電通インターナショナル社グローバルCEOウェンディ・クラーク」と記載されていた件にも触れておくべきかも知れません。(https://www.nikkei.com/article/DGXZTSJD60701_V10C21A2000000/) 電通グループが昨年1月27日に『当社の連結子会社「電通イージス・ネットワーク(DAN)」における取締役会議長兼CEOの職務の代行に関するお知らせ』の中で「この度、当社の取締役副社長執行役員であり、DANの取締役会議長兼CEOを務めているティム・アンドレーが、健康上の理由により療養に入りました。このことを受け、一時的な措置として、当社の代表取締役社長執行役員であり、DANの取締役を務めている山本敏博が、ティム・アンドレーの担っているDANの取締役会議長兼CEOとしての職務を代行することといたしました」(https://www.group.dentsu.com/jp/news/release/000198.html)と広報していたミシガン州デトロイト出身の本名ティモシー・アンドレーTimothy Andree氏は、米国のNBA=ナショナル・バスケットボール・アソシエーションの選手として活躍した御仁。(https://en.wikipedia.org/wiki/Tim_Andree)(https://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2008035-0512.pdf)  “生き馬の目を抜く”広告業界に於ける「余人を以て代えがたき」屈強な体躯の人物たればこそ、奇蹟の復活を遂げたのでしょう。 その彼の“恢復”と“昇格”を祝うと共に(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/tim-andree)、昨年7月21日の”畏友”との面談の際、「私が白羽の矢を立てた女性です」と語っていたウェンディ・クラーク女史(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/wendy-clark)の両名が、「多様なリソースを統合し、多様なステークホルダーをつないでいく」と決意表明する畏友・山本敏博CEOと“三本の矢”となって名実ともに、『dentsu全体をチームにする会社、すなわち「チーミング・カンパニー」』を、今この瞬間も日本国内外で粉骨砕身する一人ひとりのチームメンバー、更には取引先の人々の為にも築き上げることを願ってやみません。(https://www.group.dentsu.com/jp/ir/top-message/top1.html)』、なるほど。
・『戦争にも協力した過去の電通 求められる「自分の意思と言葉」  「国鉄民営化」で日本国有鉄道清算事業団に移管された港区東新橋1丁目の、貨物列車・荷物列車ターミナル駅だった汐留駅跡地に位置する地上48階建て電通本社ビル。併設の電通四季劇場「海」、地階と最上階の飲食店舗等を含む施設全体の呼称は「カレッタ汐留」。 「長い時間を悠々と生きる亀のイメージに、ゆったりとした時間、余裕のあるライフスタイルを持つ都市生活者のイメージを重ね合わせ」、アオウミガメの学名“Caretta Caretta”からネーミング、と能書きに記されています。 その地階で、江戸時代からの広告資料28万点を蒐集するアドミュージアム東京。(https://www.admt.jp/) 公益財団法人吉田秀雄記念事業財団が運営する「日本で唯一の広告ミュージアム」です。大政翼賛会が広告主のポスター「進め一億火の玉だ 大政翼贊會」も所蔵されています。 「大東亜戦争」と東條英機内閣が閣議決定した当時の「日本」の人口は7300万人。台湾と朝鮮の人口も含めて「一億」なのです。そのポスターの作成は自暴自棄な敗戦間際かと思いきや、真珠湾攻撃の翌年1942年。 「このポスターを製作したのは『報道技術研究会』。民間の広告技術者によるボランティアのような組織から、戦争が進むにつれて、国家宣伝を担う専門集団に発展していった」と解説が付されています。 ハンナ・アーレントが描いたアドルフ・アイヒマンと比べたら失礼なくらいに「ナイーヴ」だったであろうクリエーター達が、戦略も戦術も欠落した無謀な戦時体制の「同調圧力」に組み込まれていった歴史を伝える一枚の広告物です。 現在は閉館中のアドミュージアム東京のHPでも閲覧可能な、その「一枚の広告物」に付された解説を読み返す度、僕は痛感します。(https://www.admt.jp/collection/item/?item_id=85) 「良心」の持ち主をも、いとも無慈悲に併呑(へいどん)し、消費していく社会は、昔も今も変わらないのだと。であればこそ、何時の時代に於いても「自分の五感で捉え、自分の言葉で語り、自分の意思で動く」しなやかな心意気を私たち一人ひとりが持ち合わせることが、如何なる業種、職種に於いても肝要なのではなかろうかと』、それは作家という自由業の田中氏なら可能だろうが、サラリーマンにとっては、無理なように思われる。

次に、2月25日付け東洋経済オンライン「電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/413333
・『巨額減損に人員削減。デジタル転換で出遅れたツケは大きかった。 国内広告最大手の電通グループが2月15日に発表した2020年12月期の最終損益は1595億円という過去最大、そして2期連続の赤字(前期は808億円の赤字)に沈んだ。 売上高に当たる収益は9392億円(前期比10%減)、営業損益は1406億円の赤字(前期は33億円の赤字)で、すべての段階利益で2期連続の赤字となった。「再び赤字となったことは経営者として重く受け止めている」。山本敏博社長は投資家向け決算説明会でそう口にした。 赤字の最大の要因は、コロナ禍で世界の広告市況が悪化したことを受け、過去の海外買収で膨らんだのれんの減損で1400億円超の損失を計上したことだ。さらに783億円の事業構造改革費用も打撃となった。内訳は、海外での事業統合や人員削減で500億円超、国内での早期退職で200億円超。2021年12月期にも引き続き、残りの構造改革費用として国内外で500億円超を計上する見込みだ』、第一の記事と同じ電通問題である。
・『旧来型の代理店ビジネスは限界  電通グループは2013年に英広告大手イージスを約4000億円で買収した後、海外で毎年10社以上を矢継ぎ早に取り込み、国内事業を超える規模となった。売上総利益ベースの海外比率は直近で約58%だ。世界シェアでは今や英WPPグループ、米オムニコムグループ、仏ピュブリシスグループという世界3大広告会社に次ぐレベルになっている。 だが結果的にM&Aが足を引っ張った。電通グループの曽我有信CFO(最高財務責任者)は、「事業環境の変化が激しい」としたうえで、「今回減損の対象になったのは、イージスと一緒になった直後の2010年代前半に買収した広告領域の事業会社だ」と話す。 ここでいう広告領域とは、日本のマス広告のように広告会社がメディアの枠を買って広告主に売るという旧来型の“代理店”ビジネスを指す。2019年に海外のうちアジア太平洋(APAC)地域で700億円強の減損損失を計上した際も、同じ領域が中心だった。 ここ数年、電通グループは消費者に関するさまざまなデータを活用したデジタルマーケティングを中心とする業態への転換を急ぐ。 2020年の海外業績を見ると、旧来型の代理店ビジネスである「メディア」「クリエイティブ」の両部門の売上総利益が前期比15%以上減少した。一方、デジタルマーケティングを中心とした「カスタマーエクスペリエンスマネジメント」部門は同3.2%減にとどまった。国内でも売上高の3分の1を占めるテレビ広告が前期比12%減だったが、ネット広告は同1.4%減だった。) そもそも2013年に買収したイージスは旧来型の代理店だった。実際、イージスを含むヨーロッパ・中東・アフリカ(EMEA)地域はメディアとクリエイティブの収益の割合が大きい。 会社側は減損の対象を海外事業全体としているが、今回減損の判定を行った際にはAPAC、EMEAそして米州という海外のすべての地域ごとに稼ぐ力を測っている。地域ごとの減損損失額は3月に公表される有価証券報告書で明らかになるが、EMEAでの損失が膨らんでいる公算が大きい。 巨額減損を経てもなお、2020年12月末時点では6000億円弱ののれんが残っており、次なる火種となる可能性もある。 「この5年で市場環境が驚くほど変わった」と電通グループ関係者はつぶやく。2010年代前半はネットも含めてメディアの枠を売り買いするビジネスが大きかった。そこから米グーグルの検索広告やソーシャルメディア広告が台頭し、ネット通販の発達で企業と消費者がネット上でつながる場面が激増。そこにコロナ禍が直撃し、デジタルマーケティングの重要性が急速に高まった。結果的にイージスは時代に乗り遅れたと言わざるをえない』、「2013年に買収したイージスは旧来型の代理店だった」、「結果的にイージスは時代に乗り遅れたと言わざるをえない」、なるほど。
・『10%超の大規模人員削減を敢行  海外では現在これまで買収してきた160の事業ブランドを6つのブランドに集約する構造改革中だ。この過程で12.5%の人員削減を行う。重複するバックオフィス人員のほか、旧来型の代理店営業の人材が対象になる。その一方でデジタルマーケティング人材の育成を進める。 デジタル転換の中で電通グループが強くアピールするのが、2016年に約1000億円で買収した米データマーケティング会社のマークルだ。買収額はイージスに次ぐ規模だ。同社は広告主が持つ消費者の氏名やメールアドレスを含むIDデータを活用し、そのブランドのファンになってもらうよう広告や販促のターゲティングを行うためのツールを提供する。 コロナ禍で大きく減ったM&Aも再始動させる。「とくにデジタルソリューション領域を中心に、事業の変革にはM&Aは不可欠。件数や事業規模ではなく質を追う。電通グループに参画するメリットを強調して金銭面だけではない条件交渉をしたい」(曽我CFO)。 国内でもデジタル転換を進める。システム開発子会社の電通国際情報サービス(ISID)やデジタルマーケティング専業の電通デジタルの成長ぶりを強調。山本社長は決算説明会で、「マークル、ISID、電通デジタルの3社は過去3年で(売上総利益が)年平均で20%超伸びた」と話した。 中核子会社である電通の五十嵐博社長は「電通本体とISID、電通デジタルの3社の協業でデジタルのソリューション力を上げていく」と意気込む。「国内の大手企業にもマークルのサービスを提供するなど、海外との連携強化も進めている」(五十嵐氏)』、なるほど。
・『国内の営業利益率は大きく低下  その国内も今回、先述の通り構造改革を断行する。最大の課題は「高コスト体質」だった。2015年末に社員が過労などを原因として自殺したことを受け、国内では働き方改革を急速に進めてきた。その過程で人事システムへの投資や業務の外注などでコストが増加。一方で海外のように容易に人員削減ができない。国内事業の営業利益率は2016年12月期の23.1%から、直近は14.8%まで低下した。 構造改革の中身は大きく分けて2つだ。1つは国内事業を従来型の広告やデジタルマーケティング、顧客のビジネス変革支援などの4分野に分け、組織を再構成するものになる。その過程で人員規模の適正化を図るため、希望退職を募る計画だ。もう1つはコロナ禍で出社率が大きく減った東京・汐留の本社ビルを国内グループ会社間で共有すること。これによりグループ各社の家賃を節減する。 一連の人員削減や構造改革で2022年以降、国内外で年間平均約760億円の費用削減が可能だという。さらに現在は汐留の本社ビル売却も進める。「金額など詳細についてはコメントできない」(曽我CFO)とするが、今後の施策の柱としてバランスシートの効率化も挙げており、本社ビルも含めた資産を整理し、M&Aなどの投資資金を捻出するとみられる。 デジタルへの業態転換は、これまでマスメディアで謳歌してきた既得権益に頼らないことを意味する。デジタルマーケティングは広告会社だけでなく、米アクセンチュアをはじめとしたコンサルティング会社なども注力し、競争は苛烈だ。稼ぎどころである東京五輪の開催も危ぶまれる中、電通グループの底力が試されている』、「デジタル」分野の「競争は苛烈」で、「東京五輪」も海外見物客を入れないなど厳しさが増している。今後の「電通グループの底力が試されている」のは確かなようだ。

第三に、4月1日付けYahooニュースが掲載したNPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者の今野晴貴氏による「ワタミはなぜ提訴されたのか 労基署さえ「手玉」にとる魔手の数々か?」」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20210401-00230322/
・『昨日、ワタミの宅食で営業所長を務める40代の女性Aさんが、ワタミ株式会社を提訴した。 訴訟の主要な争点は、以前から問題となっている残業代の不払いに関するものだが、問題はさらに複雑化しているようだ。Aさんの提訴の重要な理由の一つは、ワタミがAさんの上司らに指示をして、配達スタッフらにAさんを訴えるように「扇動」させたというものである。 ワタミ側が背後で「扇動」か? 筆者は昨晩までにワタミに訴訟についての見解を質問したが、残念ながら期限までに返答をもらうことはできなかった。 そこで本記事では、Aさんの訴訟のもう一つの重要な要求である未払い残業代について、なぜ労基署の是正勧告まで出ていたのに、訴訟になってしまったのか、Aさんの証言をもとにその背景に迫っていきたい』、興味深そうだ。
・『労基署の発言を都合よく切り取って、ホームページで公表  残業代未払いについては、すでに昨年9月に、高崎労働基準監督署から是正勧告が出ている。ところが、それ以降、ワタミはさまざまなやり方で、Aさんに具体的な未払い残業時間について回答することを避けてきた。 まず最初は、「特別調査委員会」を一方的に立ち上げて、その調査を理由として、団体交渉での労働時間の交渉を拒否したことだ。なお、この特別調査委員会は、Aさんが条件付きで調査に応じると主張していたにもかかわらず、Aさんに対する聞き取りを一切行わないまま、今年1月末で調査を終了している。 さらに、つい2週間前には、ワタミが労働時間をできるだけ短く、あたかも「値切り」をしようとしている様子が明らかになった。 3月15日、高崎労働基準監督署はワタミに対して、今度は36協定で認められた残業時間の上限を超えた残業をさせていたとして、労働基準法32条違反で是正勧告を出した。 すると、ワタミは是正勧告を受けた即日、ホームページ上で「労働基準監督署からの労働時間に関する是正勧告について」という文章を掲載し、「この度、本件に関連して2020年3月の当該社員の残業時間75時間29分が、36協定の75 時間を29分超過していることから改善するよう是正勧告書を受領いたしました」と報告している。 これを読んだら人は誰でも、あたかも労働基準監督署がワタミの残業時間の超過を認めたのは29分のみで、それ以外は問題にされず、指導は終わったものであるかのように受け取るだろう。しかし、それは事実と全く異なっているのだ。 監督官「いまだ労基署とワタミで確定した労働時間は出ていない」? 担当の監督官に確認したところ、驚くべき答えが返ってきた。担当の監督官の説明によると、監督官とワタミで「労働時間が合致した月はない」「いまだ監督署とワタミ側で確定した労働時間は出ていない状況」であるというのだ。 一体どういうことだろうか? 要はこういうことだ。担当の監督官としては、より多くの長時間残業があるのではないかとワタミに指摘しているのに、ワタミが一向に認めようとせず、29分だけを認めたので、やむをえず「「少なくとも」という部分で是正勧告をした」だけだというのだ。 これでは、ワタミがインターネット上で是正勧告について公表されることを想定して、できるだけ少ない残業時間しか認めさせないよう、労基署に食い下がったのではないかとすら考えられる。 しかも監督官は、「これで確定ではない」と述べ、これからさらに長い残業時間が認められる可能性があるとまで、Aさんに伝えている。特にAさんはかなりの数の業務メールを自宅でも送っており、これについても労基署は労働時間に含まれると考えている。しかし、ワタミはメールの業務性を一切認めなかったという。 このようにワタミは労基署の指摘をねじ伏せて、「最小限」の時間だけを一旦認めて、それをホームページで公表したのである』、「ワタミ」のやり方は全く悪質で、かってのブラック企業批判も頷ける。
・『半年間一度も具体的な労働時間を認めていないのに、「労働時間については、団体交渉を継続しています」?  労基署の監督官の発言を都合よく切り取り、読者の誤読を誘うような書きぶりでホームページで公表するワタミのやり口は、実に狡猾だ。 現にワタミの発言を鵜呑みにしたネットのコメントでは、「29分なんてすぐに遅らせられる。この「A」はヤクザやゴロツキと同じだ」とAさんを非難する者も現れている。 しかも上記のホームページの書面において、ワタミは「労働時間については、現在も団体交渉を継続しております」と公表している。ところが、ワタミはAさんの加盟するブラック企業ユニオン に対して、一度も具体的な労働時間の認め方について、提案してきたことはないという。 Aさんは、自分には真摯に向き合おうとしないのに、ホームページでは「いい顔」をするワタミの「外面の良さ」に、怒りを募らせている』、「ワタミ」がいまだにこのような組織的な不正工作をしているとは驚かされた。
・『ワタミが狙っていたのは「時間切れ」なのか  実はAさんがこのタイミングで提訴に踏み切った理由の一つは、未払い残業代の「時間切れ」の問題があった。 どういうことかといえば、Aさんはブラック企業ユニオンを通じて、昨年10月上旬に残業代を請求していた。一度請求すると、「催告」という行為を行なったことになり、その日から遡って2年間分の未払い残業代の時効が中断される。 ただし、これは催告から6ヶ月だけの間である。その間に、提訴をするか、残業時間の承認をさせる必要があるのだ。しかし、期限の4月上旬が迫っていたにもかかわらず、一向にワタミは具体的な残業時間を認めようという反応は、なかったという。ましてや上述したように、労基署に対して残業時間を値切らせようとして、ホームページで誤解を招く発表をしている。 ワタミは半年間残業代についての具体的な回答を引き伸ばすことによって、時効が切れるタイミングを待っていたのではないかと勘繰る意見が出てきても仕方ないだろう。 いずれにせよ、Aさんは4月上旬に催告の効力がなくなることを恐れて、提訴しなければならなかったという事情もあるようだ。 以上、Aさんが今回訴訟に踏み切ったの背景を説明してきた。筆者は引き続き、本件について調査していくつもりだ。 Aさんを応援したい方や、「ブラック企業」と闘いたいという方は、ぜひ連絡・相談をしてほしい。 追記 2021年4月1日17時40分 ワタミ側は下記の通りHPに発表していることが確認できたので、追記します。(「当社従業員の記者会見に関して」は中身がないので省略)』、「ワタミが狙っていたのは「時間切れ」」、というのはその通りだろう。Aさんに組織的支援があったのが幸いしたようだ。いまだにこのようなことを平然とやる「ワタミ」の「ブラック企業」体質には呆れ果てた。
タグ:東洋経済オンライン yahooニュース 田中康夫 ブラック企業 ダイヤモンド・オンライン 今野晴貴 (その13)(「電通」はなぜ迷走し続けるのか? 畏友・山本敏博CEOへの“最後の諫言” 田中康夫緊急寄稿、電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか、ワタミはなぜ提訴されたのか 労基署さえ「手玉」にとる魔手の数々か?」) 「「電通」はなぜ迷走し続けるのか? 畏友・山本敏博CEOへの“最後の諫言” 田中康夫緊急寄稿」 最終損失の主要因は海外子会社の減損 CFOの決意に相槌を打っている場合ではない 「海外事業を中心にのれんなどの減損損失1400億円強を計上」、海外の買収には無理があったのだろうか 僅か5年で164社を傘下に収め、2019年12月には145カ国・地域に6万6000名の従業員を擁する900社もの多国籍企業改め“無国籍企業”へと急激に拡張 電通グループ全体の売上総利益に占める国内比率は85%から43%へと半減。57%の収益を海外に依拠する構造」、とはかなり急速に海外M%Aを進めたようだ。 「減損損失」で税務上でも赤字となれば、「繰越欠損金制度」が適用されるようだ 「借入金にコベナンツが付いた」、ということは財務の柔軟性が失われて、ショックに弱い体質になったことを意味する 「正社員全体の3%に当たる230人が「個人事業主」として「勤務」する「新しい働き方改革」」は、確かに「“廓(くるわ)の論理”を押し付ける“脱法リストラ”じゃね」、との「批判」も当たっているようだ 「提言(1」)~「(4)」は、。いずれも妥当なものだ 戦争にも協力した過去の電通 求められる「自分の意思と言葉」 それは作家という自由業の田中氏なら可能だろうが、サラリーマンにとっては、無理なように思われる 「電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか」 「2013年に買収したイージスは旧来型の代理店だった」、「結果的にイージスは時代に乗り遅れたと言わざるをえない」、なるほど 10%超の大規模人員削減を敢行 「デジタル」分野の「競争は苛烈」で、「東京五輪」も海外見物客を入れないなど厳しさが増している。今後の「電通グループの底力が試されている」のは確かなようだ。 「ワタミはなぜ提訴されたのか 労基署さえ「手玉」にとる魔手の数々か?」」 労基署の発言を都合よく切り取って、ホームページで公表 「ワタミ」のやり方は全く悪質で、かってのブラック企業批判も頷ける。 「ワタミ」がいまだにこのような組織的な不正工作をしているとは驚かされた 「ワタミが狙っていたのは「時間切れ」」、というのはその通りだろう。 Aさんに組織的支援があったのが幸いしたようだ。いまだにこのようなことを平然とやる「ワタミ」の「ブラック企業」体質には呆れ果てた
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ブラック企業(その12)(後継者はなぜ育たなかったのか?ワタミ渡邉会長の告白、大成建設 ブラック社員情報が下請け職人に出回る「過去最低の現場」の惨状、「ブラック職場で夫失踪」救った妻の見事な対応 会社に殺されない自分の心の守り方) [企業経営]

ブラック企業については、昨年3月7日に取り上げた。今日は、(その12)(後継者はなぜ育たなかったのか?ワタミ渡邉会長の告白、大成建設 ブラック社員情報が下請け職人に出回る「過去最低の現場」の惨状、「ブラック職場で夫失踪」救った妻の見事な対応 会社に殺されない自分の心の守り方)である。

先ずは、昨年3月22日付け日経ビジネスオンライン「後継者はなぜ育たなかったのか?ワタミ渡邉会長の告白」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00120/030400003/?P=1
・『居酒屋「和民」を人気業態に育てたワタミ創業者の渡邉美樹氏(60)。創業16年で東証1部上場を果たし、2008年3月期には売上高1000億円を突破。その手腕から外食業界のカリスマ経営者として名をはせ、小説『青年社長』のモデルにもなった。 「100年企業」を目指し経営を後進に託すべく、09年に社長の座をすかいらーく出身の桑原豊氏に譲り、自らは会長兼CEO(最高経営責任者)に。11年には東京都知事選に出馬(落選)するために代表権を返上し、取締役最高顧問に就任した(同年、非常勤の取締役会長に)。13年には取締役も辞し、参議院議員になり国政に進出。ワタミには「1000%戻らない」と公言していた。 ところが、渡邉氏が経営を離れてからワタミは坂道を転げ落ちるように業績が悪化する。労務問題の影響や外食事業の不振がたたり、15年3月期には上場以来初の営業赤字に転落し、自己資本比率は危険水域の7.3%にまで低下。05年に進出し、有料老人ホームが100カ所を超えるまでに成長した介護事業を売却せざるを得なくなり、その後も減収に長く苦しむことになった。 これを見かねた渡邉氏は、6年間の議員生活を終え、19年7月にワタミの取締役に戻り、10月には8年ぶりに代表取締役会長に復帰した。グループCEOという新たな肩書も名乗り、自身に権限を集中させ経営の立て直しに奔走。20年3月期は6期ぶりの増収を見込むが、売上高は1000億円に届かず、ピーク時の1631億円(14年3月期)には遠く及ばない。 グループの未来を託せる後継者はなぜ育たなかったのか――。渡邉氏が自戒を込めて、心中を明かした。 Q:昨年10月、8年ぶりに代表取締役会長に復帰しましたが、政界進出する際には「ワタミの経営には絶対に戻らない」と宣言していました。 渡邉美樹・ワタミ会長(以下、渡邉氏):まずあれだけ強く戻らないと言ったのは、実は対外的というよりも社内に対するメッセージでした。要するにどうしても僕がつくった会社ですし、いろいろなことをすべて私が決めてきたわけですから、社員にしてみれば私が少しでも会社に残ったり、戻ってきたりすることが分かれば、甘えが当然発生します。経営陣に緊張感を持ってもらうために、「二度と戻らない」と公言したわけです。それと同時に、政治から日本を変えていく、日本の未来をつくっていくという決心を固めるために、自分に対して、一種のけん制をしたということでもあります。もっとも政界に入ってみて分かったのは、国会議員は本当にいかに周りと仲良く、群れをつくりながら泳いでいくかが大事な仕事だということです。僕が発言したことは議事録には残っていますが、1つも形にはならなかった。 それでも国会議員になってから、僕は経営情報を取りに行きもしなかった。取れば甘えてくるはずだからです。でも結果として、工場の設備、店舗の改装、広告宣伝などに対する過剰投資が生まれていた。15年3月期に(上場以来初の)営業赤字に転落してからは、銀行から「渡邉さん、戻ってこなかったら、もう融資しないよ」と言われるところまで追い込まれました。それからは、2週間に1回ぐらい、役員会の相談を受け、大株主の責任として財務や資金繰りの状況を見ていました。でも、やはり中途半端に経営ってできませんから、それ以上踏み込むことは自制していました。 Q:それだけ戻らないと強く決心されたのに、昨年トップに復帰されたのはなぜですか。 渡邉氏:創業者にとって会社は自分の子供だし自分が育てたわけですが、ある段階に来たときには自ら前に進んでいってもらえるようにしたい。ただ、やはり創業者というのは本当に死ぬまで創業者なんだなということは、今回復帰するにあたって、改めて思い知らされました。中途半端に言うと今の経営陣の批判になってしまうので、これは避けたいんですが、「やはり戻らねばならない」と思った理由は2つあります。 1つは、司令塔だった私が欠けたことで、グループの各事業がバラバラになってしまったことです。それから2つ目は、都知事選のためにトップを退いてから8年間、ワタミを客観的に見たときに、何一つ新しいことが生まれてないわけですよ。現状の中における工夫はしているんです。1あるものを1.1とか1.2にするような。でも、そこには目指すものが見えない。僕は大きな未来の目標を立てて、そこを目指して新しい事業をつくってきた。やっぱり創業者じゃないと未来が見えないんだなということは強く感じました。 Q:ここで言う「未来」が見えるか見えないかは、何の差なんですか。 渡邉氏:まあ、それはたぶん創業者の1つの変態、特異性だと思いますよね。一般のサラリーマン経営者の方ならば、現状を守ることを考えて経営するのは、やむを得ないことだと思います。ただアントレプレナー、創業者というのはもともと何もないところから、仕事を始めているわけですよね。「こんな夢を追い掛けよう」という思いから始まっているわけで。現状の1を1.1にしていこうとかいう、概念自体がないんですよ。だからそれにおいてはもう人種も違うと思います』、「営業赤字に転落してからは、銀行から「渡邉さん、戻ってこなかったら、もう融資しないよ」と言われるところまで追い込まれました。それからは、2週間に1回ぐらい、役員会の相談を受け、大株主の責任として財務や資金繰りの状況を見ていました」、銀行にしたら当然の要求だ。
・『「タテ割り」の弊害が顕著に  Q:会社を船に例えれば、船自体をつくる方法を考えてきた人と、出来上がった船に乗り込んできた人とは、見える景色が違うというのは当然といえば当然なのかもしれませんね。 渡邉氏:出発点がまるで違います。あと船の進む方向をもともと持っていた人と、後から乗り込んできて船をどこに進めていいか分からない人とは、全く違うと思います。ですから、ワタミの中で新しいことが何一つ生まれていなかったのは、僕にとって非常に残念なことで、またこれを何とかしなければ乗組員を幸せにできないと思いました。 外食事業(上左)の他に、宅食(上中)、介護(上右、15年に売却)、農業(下左)、自然エネルギー(下右)などの事業を抱えるワタミには、相乗効果を生む「全体最適」の戦略を描けるリーダーが必要だったのだが……  Q:ただ、外食事業では「和民」に代わる居酒屋の新業態もいくつか生まれました。 渡邉氏:それは看板を掛け替えただけですから。「ミライザカ」や「鳥メロ」というのは、和民を変形させたものなので新しい業態とは言えません。そこで今度、4月に、(飼料や食肉の生産から手掛ける)高品質の和牛を手ごろな価格で提供するファミリー向けの業態をオープンします。他にも、今伸ばしているファストフード業態の「から揚げの天才」。これらは従来のワタミにはなかった文化です。駅前型居酒屋の和民とは違うこの2つの業態を本格的に立ち上げることが、復帰後の僕の仕事でした。 Q:一方で、グループ全体の事業をもう一度まとめる作業が必要だということですが、経営を退かれた後、会社はどういう状況に陥ったのでしょうか。 渡邉氏:一言で言えば、「タテ割り」の弊害が顕著になったということです。ワタミには、農業、自然エネルギー、外食、宅食など様々な事業があり、それが連携することで初めて本来の強みを発揮します。これらの事業はトップを退くまでの29年間で、僕がつくってきたものです。そして、各事業がそれぞれ独立して走っていて、それらを横断的に見て、シナジーを考えるのは僕1人だった。ところがその本人が抜けたものだから、各事業がバラバラに動き始めたんです。人的交流も情報共有もあまりなかったので、例えば、外食事業と宅食事業がそれぞれ手配したトラックがほとんど同じ所に向かって別々に走っていた。 でも、僕が政治家になる前は、タテ割りの方が僕自身が会社を見やすかったですよね。各部門を分社化していたので、この会社はこう、この会社はこうと、会社単位で管理して指示できたので、僕にとって一番効率が良かった。でも、その結果として全体最適ではない組織をつくってしまった。これはもう僕自身の反省ですが、横の連絡を取り合いながら常に全体最適を考えられるような役員がまだ育っていなかった。だからタテ割りにして、僕が直接指示をした方がやりやすかった。 それに組織は小さい単位の方が、頑張りや成果も見えやすい。だからタテ割りで、それぞれの会社と役員が自立していけばいいと思っていました。でもこれが大きな間違いでした。1+1が3とか4を生むことを目指したのに、1+1が1になってしまった。結局、農業部門は赤字で足を引っ張っている。エネルギー部門でもソーラー発電事業などを一部手放さねばならなくなってしまった。最高の経営状態でバトンを渡したつもりだったが、肝心のバトンの渡し方が悪かった。だから事業をつくった人間の責任として、相乗効果が生まれるような仕組みにつくり替えていかなきゃいけないと思ったんです。 Q:タテ割りを解消して、全体最適を考えられるリーダーを育てるために、今はどのような取り組みをしているんですか? 渡邉氏:昨年10月に会長に復帰してからすぐに、通常の取締役会とは別に、部門を横断する「経営戦略会議」を立ち上げました。毎週月曜日に各部門を統括する6~7人の役員が集まり、朝8時から昼の1時くらいまでじっくり時間をかけてグループの各事業の現状や課題を共有し、成長戦略を話し合います。この会議が今のワタミの心臓になっています。すべての事業の戦略立案、およびそのPDCAについて、毎回20項目ほどの内容を、1つずつ討議する、非常に中身の濃い会議です。案件ごとにその事業の担当者が順番に来て、戦略の進捗などについて次々に報告します。 会議に参加する役員は、そうした各事業の動きや課題をお互いに共有し、他部門と連携しながら全体のシナジーを高める方法を一緒に議論します。ITを使って、各部門の情報共有も進めています。例えば外食で1つの販促策を打つ場合などは、食材を作る工場も、素材を供給する農場も、人材育成の担当部署も、もちろん本部も、全員が情報を共有して「同時案件」として扱います。各部門を預かる役員が集まってそれを検討し、そして合意し、前に進む。これを繰り返すことで、グループ全体を見渡す大きな視野で物事を判断できるようになるはずです。 Q:今振り返ると、ワタミの経営幹部に本来必要だったリーダーシップとはどのようなものだったのでしょうか。 渡邉氏:難しいね。結局、その育成をできなかったのが僕ですから。ただ、1つ、付け足しておきたいことは、いろいろな問題点はあるけれども、今の清水(邦晃)社長(兼COO=最高執行責任者=、15年に就任)は非常に良いリーダーだとは思っているんです。ラグビーの日本代表チームに例えれば、彼は主将のリーチ・マイケルで、僕はヘッドコーチのジェイミー・ジョセフだと。私は上から見て指示して、戦略も練り、人も決める。実際に現場で戦って、ここはスクラムでいくのかキックするのか現場で判断するのは彼です。外食事業にとって一番大切な、商品と立地の2つを彼に任せていて、僕はタッチしていません。ボトムアップのリーチ・マイケルを中心とした、いい組織が出来上がっていると思っています。リーダー論で言うならば、まずは現場でみんなをまとめられる人材を育てることまではできた。次は経営戦略を担える人を、これから時間をかけて育てていきたいというのが正直なところです』、「タテ割りで、それぞれの会社と役員が自立していけばいいと思っていました。でもこれが大きな間違いでした。1+1が3とか4を生むことを目指したのに、1+1が1になってしまった」、「最高の経営状態でバトンを渡したつもりだったが、肝心のバトンの渡し方が悪かった」、痛烈な反省のようだ。
・『「同族企業について調べて、考え方が変わった」  ではその先、渡邉さんの後継者については、どうお考えですか。 渡邉氏:正直言って次の後継者のことなんて全く考えていません。今はとにかく会社をゼロからもう一回つくり直さなきゃならない。その上で、経営をどう渡したらいいのかを、もう一度考えます。 Q:今年1月、長男の将也さん(32歳)が執行役員に就任し、海外事業を担当していますが、2月5日に新型コロナウイルスの影響で中国の「和民」業態の撤退も決めました。 渡邉氏:就任早々、試練と向き合っていますよ。彼は大学を出た後に、ヘルパーの資格を取って介護事業の現場に入り、外食事業での店長や店舗開発を経て、海外の仕事を担当していました。その後、うちの大株主のサントリーさんから「勉強しませんか」と声をかけていただいて、16年からまずは日本のマーケティング部門にいて、18年に(米蒸留酒大手の)ビーム(現ビームサントリー)のシカゴ本社に移り、マーケティングの部署でブランドマネジャーを担当しました。これまでにMBA(経営学修士)も取得しています。まあ、僕の息子じゃなくても、そういう経歴の人がいたら採りたいですよ。ゼロ歳から僕の後ろ姿を見て、経営理念が染みついていますし、これから非常に期待したいとは思っています。 Q:渡邉さんの後を継いでCEOを担う可能性も当然あるわけですね。 渡邉氏:可能性はありますが、今は何とも言えませんね。本人の力次第だと思います。社員の幸せと会社の発展につながるようなら、なった方がいいし、そうでないならなるべきではない。以前、僕は世襲に対しては疑問がありました。能力がない人がトップに就いたり、子供に継がせることが会社の存在目的になってしまっていたりする会社を見てきたからです。ただ、議員時代に改めて同族企業について調べて、考え方が変わりました。 Q:どういうことでしょうか。 渡邉氏:世界的に同族企業は、そうでない企業と比べて3倍の収益性を誇ります。創業家のトップであれば、創業理念も守りやすいし、オーナーとして短期的な収益にとらわれずに、長期的な視点で経営判断ができます。緊急ではないけど大事なことにお金を使う。つまり未来に投資できる。これが大きい。一方で、家業を守るために「ケチ」にもなれる。会社を長きにわたって成長させる上で、創業家の出身者に有利な点が多いのは事実です。すべてはリーダーとしての能力次第ですが、能力が同じなら、絶対同族の方がいいと思います。 現在、ワタミの株式の約26%を私の資産管理会社が持っていますが、これ以上、株は絶対売らないと対外的に宣言しています。大株主がころころ変われば、会社の方向性がブレます。創業家が一定の株をしっかり持って、その創業家からしっかりとした方針が出され、未来図が示される。これは部下にとって最高に仕事がしやすい状況だと思います。 Q:会長復帰と同時に、自ら策定された中期経営計画を発表しました。 渡邉氏:あのままいったら僕はワタミはつぶれていたと思います。これが、復帰して会社の中を見回してみた感想です。大事なのはここから10年、もっと言うとこの3年だと思っています。社員を含めてみんなで劇的に会社を変えようとしています。その成果が出るのが22年3月期。そして、29年3月期には売上高を(現状の2倍以上の)2000億円に引き上げて、サービス業で日本のリーダー的な存在にもう一度戻りたいと思います』、「29年3月期には売上高を(現状の2倍以上の)2000億円に引き上げて、サービス業で日本のリーダー的な存在にもう一度戻りたいと思います」、「カリスマ経営者」の化けの皮が剥がれた「渡邉氏」の願望が実現するか、注目してみておきたい。

次に、7月20日付けダイヤモンド・オンライン「大成建設、ブラック社員情報が下請け職人に出回る「過去最低の現場」の惨状」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/242993
・『大成建設の現場を担当する“要注意”の同社社員について、現場の下請け職人たちは人物情報を口コミで共有している。コロナ感染者が発生した新宿住友ビル改修工事には、「過去最低の現場」と評された都内工事で要注意人物とされる社員がいた。特集『バブル崩壊 ゼネコンwithコロナ』(全7回)の#2では、工事現場の惨状に迫る』、「過去最低の現場」「と評される」ようであれば、よほど酷いようだ。
・『三角ビルのコロナ感染を発表しなかった大成建設にまつわる“いわく”  東京・新宿のオフィス街で6月末、新宿住友ビル1階の足元と上空にガラス張りの巨大アトリウムが完成した。その特徴的な形から“三角ビル”の愛称で親しまれるこの超高層ビルは、竣工から今年で46年。老朽化に対応し、新たな価値を付加するリニューアルプロジェクトの目玉となるアトリウムの工事は、大手ゼネコンの大成建設が施工した。 この工事現場では4月下旬、新型コロナウイルスの感染者が発生していたが、大成はそれを一般に公表しなかった(詳細は本特集#1『大成建設「本社社員コロナ死」隠しの真相、新宿住友ビル工事でも感染者』 参照)。 7月15日にも都内の別の現場で17人の感染者が発生し、さすがにこのときは一般に発表したが、それまでは建設現場での感染発生をゼネコン各社が相次ぎ発表する中でも、大成は“コロナ隠し”とも受け取られかねないほど公表に消極的だったのである。三角ビルについては施主である住友不動産とも協議した上ではあろうが、大成の建設現場で働いたことがある下請け職人たちは、感染発生を耳にすると「あの会社ならば公表しないのは当然」とささやき合っていた。 三角ビルの現場では、感染発生により工程が組み替えられ、それに伴って急きょスケジュールに空きが出た職人もいたが、その休業補償は自己申告制。下請けである職人は大成に忖度して、申告しづらい。職人たちに言わせれば、それもまた「当然のこと」。「大成は職人を馬車馬のように扱うから。それに比べれば、同じ東京発祥の大手でも清水建設や鹿島はまだ上品」と辛辣な言葉を吐く者もいる。 しかも、この大成については、ある“いわく”があった。 大成の現場を担当する“要注意”の同社社員について、現場の下請け職人たちは人物情報を口コミで共有している。コロナ感染者が発生した三角ビルの改修工事には、「過去最低の現場」と評された都内工事で要注意人物とされる社員が出入りしていたのである』、「大成は“コロナ隠し”とも受け取られかねないほど公表に消極的」、公表すれば工事の遅れにつながるので、どうしても隠蔽したくなるのだろう。「現場の下請け職人たちは人物情報を口コミで共有」、よほど悪質な社員なのだろう。
・『不安全行動はすぐ指導せず、こっそり撮影 「まるで下請けいじめ」  現場を担当する大成の社員は、工事が完成するたびに、所属部署が管轄するエリア内の他の現場にある程度の人数が固まって移動する。その中に、大成の社員でも「変わり者が集まっている」と評するグループがある。そのグループの一人が、三角ビルの現場に姿を見せていた。 この社員は、2年前の「丸の内3-2計画」(丸の内二重橋ビル)の現場で、職人にどう喝まがいの口調で接していたことで有名だった。 「丸の内3-2計画」は、工期が2015年11月~18年10月の約3年に及ぶ大規模な再開発工事だった。三菱地所が運営するオフィスや商業店舗、東京商工会議所の会議室、東京會舘の結婚式場やホールなどが入る複合施設を建設するものだ。 完成した今では、東京メトロ千代田線の二重橋前駅に直結し、華やかな感じでにぎわいを見せるが、工事中は重苦しい雰囲気に包まれていた。17年8月、高所作業車の落下事故が発生して職人が3人亡くなったからだ。 もともと予定されていた工程が遅れに遅れたのに加え、事故への対応で工事を中断したことで工期を圧迫したため、工事最盛期には何日も現場に泊まり込んだり、徹夜したりするのが当たり前だった。下請け業者にすれば、職人を確保するために中断や待機の期間でも給料を払い続け、工程の遅れを取り戻すべく職人を増やして対応するなど、まさに身を削る現場だった。 作業環境も下請け業者を苦しめた。特に完成を控えた18年の夏は猛暑が現場を襲い、休憩所の冷房設備や冷水機の不足によって職人が何人も熱中症にかかった。暑さだけでなく、トイレや資材搬入用のエレベーターが少ない、職人の休憩所にエアコンが付いていない、エレベーターの使用料が1回2000円かかるなど、「過去最低の現場」と職人たちに言わしめた。 死亡事故直後に現場に入ったある職人は、大成社員の所長が朝礼で、遺族に会ってきた話をしたときのことをよく覚えている。「『これは俺のせいなのか?うちらも迷惑だ!』という趣旨で責任を職人に押し付けるような話し方をしていて、みんな驚いていた。ちょっと鬱っぽくなっているなとも感じた」。 事故発生以降、安全専任の大成社員による監視は過剰なほど厳しかった。高所作業時に安全帯を着けるのを忘れていたり、高所作業車を使うときにコーンが区画からはみ出ていたり、足場の固定を支えるつっぱりが緩んでいたりといった不安全行動を見つけると、その場では注意せず、現場のビニールシートの隙間からこっそりカメラを差し入れて写真を撮影し、翌日の朝礼で写真を皆に見せて周知した。 不安全行動を取り締まることはもちろん重要であり、危険性の共有は事故を防ぐために必要だ。しかし「現場ですぐに指導しないのはたちが悪かった。まるで下請けいじめだった」と前出の職人は振り返る。 科されるペナルティーも厳しいものだった。不安全行動をした業者から新規入場者を受け入れなかったり、資材を搬入させなかったり、作業を中止させて業者の代表者を呼び謝罪を要求したり、「ペナルティーのせいで工事の進捗が遅れる」ようなケースも相次いだ。 呼び出しを食らった業者の代表者は、“恐喝担当”とあだ名された社員から土下座を強要されるなどしており、現場は恐怖で支配されていた。厳しい取り締まりが相次いだため、職人たちは結託して監視を行う安全専任担当の社員の行動を逆に監視する係を立て、作業を邪魔されないようにひそかに見張ったりもした。 この現場の所長、安全専任担当、恐喝担当などは“ブラック社員”として職人たちの間で人物情報を共有されるようになった。工事が終わって2年たった今でも「あの現場にいる」「うちの現場で見掛けた」と情報がやりとりされているのだ。 丸の内3-2計画の現場で社員による下請け業者へのパワーハラスメントが行われていたことや、極端に短い工期だったことについて、大成に問い合わせたところ、「指摘のような事実はない」との回答だった。 なお、大成の村田誉之社長(当時。現副会長)がこの現場を視察したときもひと騒動あった』、「エレベーターの使用料が1回2000円かかる」、所属する組織は様々なのに、どうやって請求するのだろう。「呼び出しを食らった業者の代表者は、“恐喝担当”とあだ名された社員から土下座を強要されるなどしており、現場は恐怖で支配されていた」、下請工事業者から抗議が入りそうなものだが、遠慮しているのだろうか。
・『大成社長の視察に備えて徹夜でエアコン設置、あいさつの練習  現場の大成社員が村田氏に対していい顔をしたかったからだろうか、社長訪問に備えて休憩所のエアコン不足を解消するべく、職人たちは徹夜でエアコン設置をやらされたり、あいさつの練習をさせられたりした。 「訪問当日、村田氏による職人へのねぎらいは乏しかったけどね」と前出の職人。休憩所内は一瞥しただけで特にあいさつするようなことはなかった。 村田氏は昨年、「週刊ダイヤモンド」のインタビューで「職人の技、匠の技をリスペクトする立場でずっと来てる」と語っていたが、訪問の準備に付き合わされた分、職人の間で村田氏の評判は下がった。職人たちからは「村田社長になってから現場での社員の締め付けは厳しくなった気がする」という声も出ている。ちなみに村田氏は今年6月に副会長に就き、安全・働き方改革担当となっている。 建設業界は人手不足である。再開発需要が旺盛な近年は、職人も仕事を選べそうなものだ。大成の仕事で痛い目を見たのであれば、断ればよいだけの話にも映る。しかし、不満を抱きながらも、職人たちは露骨にゼネコンをえり好みしようとはしない。 「自分一人なら断ってもいいが、上に迷惑が掛かる」と前出の職人が語る。 建設業界は、大手ゼネコンをトップとしたヒエラルキーが形成され、重層の下請け構造になっている。末端の一人が工事を断ると、上位の下請け業者が仕事を引き受けられなくなり、迷惑が掛かる。一人親方といっても、なじみの業者は決まっているので、影響は必ず波及する。上位の会社の仕事が干されないように忖度し、嫌なゼネコンとの仕事も引き受けざるを得ないというのだ。 もう一つ、丸の内3-2計画の現場しかり、工期に無理があると現場はより過酷になる。無理のない工程や適切な環境を整えられるかどうかは、現場ゼネコン社員の力量に懸かっているが、それができていない現場は山のようにある。 その点で、今後はさらに状況が悪くなるだろう。コロナ危機の影響で工期が変更されたり、東京オリンピック・パラリンピック開催の後ろ倒しで開発プロジェクトのスケジュールが乱れたりすることが必至であるからだ。そのしわ寄せがくれば、現場はさらに厳しいものになる』、「末端の一人が工事を断ると、上位の下請け業者が仕事を引き受けられなくなり、迷惑が掛かる。一人親方といっても、なじみの業者は決まっているので、影響は必ず波及する。上位の会社の仕事が干されないように忖度し、嫌なゼネコンとの仕事も引き受けざるを得ないというのだ」、建設業界にもやはり厳しい掟があるようだ。

第三に、12月28日付け東洋経済オンラインが掲載した公認心理師・臨床心理士の谷地森 久美子氏による「「ブラック職場で夫失踪」救った妻の見事な対応 会社に殺されない自分の心の守り方」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/395564
・『他人に振り回されがちな人は、そのストレスで心身に不調を来し、場合によっては命まで手放してしまう可能性があります。公認心理師、臨床心理士である谷地森久美子氏の著書『ふりまわされない自分をつくる 「わがまま」の練習 心の中に線を引けば全部うまくいく 』を一部抜粋・再編集し、仕事で精神的に追い込まれたときの本人や支える側の対処法をお届けします』、興味深そうだ。
・『夫が家を出たまま出社しなかった  Cさんとの出会いは、臨床心理士の私が当時勤務していた精神科クリニックでした。 クリニックの待合室では、ぐったりとしているCさんのわきで、心配そうに、奥さんが付きそっていました。奥さんが経緯説明や症状などの情報を記した、インテークシートには、次のように書かれていました。 2日前の朝、夫Cは家を出たまま出社しませんでした。その日は夜遅くまで、会社と警察と連絡を取りながら夫をさがしまわりました。幸いなことに、深夜3時ごろ夫から私あてにメールが入り、昨日、帰宅しました。 私が『生きて帰ってきてくれただけでよかった』と伝えたら、夫は『つらくなりすぎて、誰もいないところに行きたくなった。でもふと君の顔が浮かんできた。おおごとになって申し訳ない』と泣きながら、話してくれました。夫が心おだやかにすごせるようになるにはどうしたらよいでしょうか。 時間となり、私がCさんをカウンセリングルームに案内しようとしたとき、奥さんは頭を下げて言いました。 「カウンセリングのあとで、私にもアドバイスをください。夫にはOKをもらっていますので」 カウンセリングルームの椅子に腰をおろすなり、Cさんは「ふーっ」と深いため息をつきました。 C:「妻に『お願いだから一緒にクリニックに行って』と言われてきました」 私:「大変な中、よく来られましたね」 今日来てくれたことをねぎらうと、緊張していたCさんの顔がほっとゆるみました。 C:「自分が担当している部門の営業成績が、ここ半年かんばしくありませんでした。そのため結果を出せない同僚が何人も切られる事態となりました。自分も伸びなやみ、対策を練り続けて、毎日残業。深夜に帰宅しても眠れない。その分、日中はぼうっとして考えがまとまらず、上司に怒鳴られ――。 『自分はダメな人間だ、会社のお荷物だ、自分なんかいないほうがいいんだ……』そんな思いを抱えるようになり、次第につらくなっていきました。そして、この苦しみをどうにか終わらせられないかとぐるぐる考えているうちに、気がついたら……逃げだしていました」』、強烈なパワハラをする典型的な「ブラック企業」だ。
・『自分の存在自体が意味がないと考えた  私:「どれだけつらいか自分ではわからないほど、限界に達してしまったんですね。もしかして消えてしまいたいとか、死んでしまいたい、といった思いが、頭をよぎったりしませんでしたか」 C:「ありました。自分の存在自体、意味がないとまで考えていました。迷惑をかけるくらいなら死んだほうがましだと思っていました。こんなこと、妻には言えないです、心配かけたくないですから」 Cさんは、急にうつむき、身体をふるわせました。それからしばらくのあいだ、あふれるように涙が流れ続けました。 20分くらいたったころでしょうか、ひとしきり泣いたCさんは、深呼吸しながら、次のように言いました。 C:「『死にたくなった』なんて、これまで誰にも言えませんでした。でも、聞いてもらうと、今までより少し気持ちが楽になるものなんですね」 私:「『話すことは、思いを手放す意味もある』って、聞いたことはありませんか。抱えてきたものを手放すと、問題と自分とのあいだに距離がとれるのです。つまり、自分を守る心の境界線を引くことができる。 Cさんは自覚がないと思うのですが、逃げだしたくなるほど、ひとりで仕事の責任を抱えこんでいた。心の境界線が脅かされていたんです。安心、安全な場所に一刻も早く避難しなければならない危険な状況でした。 こんなときは、物理的に距離をとる、つらい状況・人との関係を切る、誰かに助けを求めること。シンプルなことですが、それ自体、あらたに自分を守る強力な境界線となります。 そういう意味で今回の失踪の件は、Cさんにとってはご自身を守るぎりぎりの選択だったように私には思えます、もちろん今後はおすすめしませんが……。おかげで、Cさんは、今しっかりと生き残ることができました。ぎりぎりのところで、ご自身を守ったのです」 Cさんは、また少し涙を流し、照れたように笑いました』、「安心、安全な場所に一刻も早く避難しなければならない危険な状況でした。 こんなときは、物理的に距離をとる、つらい状況・人との関係を切る、誰かに助けを求めること。シンプルなことですが、それ自体、あらたに自分を守る強力な境界線となります」、その通りだ。
・『自分の限界がわからなくなって無理をする  ブラックな環境に身をおく人は、心と身体が疲弊して、どこまでが自分の限界かわからなくなり無理をしがちです。安全や健康の境界線がおびやかされ、自分を見失ってしまうのです。今回のように生命にかかわる状況にいたってしまうこともあります。 私:「さて、危険にさらされたとき、何を大事にすればいいのか、ですが、先ほど誰かの支えが必要だと述べましたよね。それには家族など身近な人の温かな協力が必要なんです。ここからは奥さんをお呼びしてもよろしいでしょうか」 Cさんは、深くうなずきました。 私:「危機的状況に陥った人の命綱は、やはり、人とのつながりです。Cさんは身を隠そうとしたときも、ぎりぎりのところで奥さんに連絡をとりました。そして、Cさんがもどってこられたときの奥さんの対応も、すばらしかったです。つらくて弱っているときほど、温かで、自分を受け入れてくれる言葉は本当に助けになります。 多くの場合、支え手側が陥りやすいのは、弱っている人に対して、否定語をもりこみながら無責任に励ましてしまうこと。具体的には、『なんで、そんなことをやってしまったのか。こういうの、あなたらしくない。残念だ。もっと前向きに頑張れ』といった言葉の用い方をしないこと。 『なんで』『らしくない』『残念』は、弱っている相手にとっては否定語になります。『もっと前向きに頑張れ』と声をかけることは、あまりに酷で、さらなる徒労感や失望感をいだかせるだけです。 それから今後、ご夫婦で心にとめていただきたいこと。それは、夫婦や家族だと心理的距離が近すぎて、お互いにつらくなることがあります。支えている方にも、支えてくれる相談相手が必要なのです。 そのため、カウンセリングというよりも、家族ミーティングのイメージで、定期的にこちらで話し合いの場をもちましょう」 このカウンセリング後、主治医の判断で、Cさんは1か月の病気休暇を取ることになりました。私はCさんの許可をもらったうえで、会社の担当者や産業医に対して、状態や経過に関してやりとりし、それを夫婦そろっての家族ミーティングで話題にし、会社の受け入れ状況を確認していきました』、こうした「カウンセリング」は有効なようだ。
・『家族にとっても気がかりはたくさんある  危機的状況に陥っている本人のみならず、その家族にとっても、今後の身分や給与、復帰の可能性など気がかりはたくさんあるものです。一見、当たり前のようですが、療養中、心の専門家が本人や家族にかわって、会社に対して働きかけることは、回復を促す重要なポイントです。 その後、Cさんは3か月の休暇をとりながら、日々穏やかな生活を重ねることで、確実に回復へと向かっていきました。 過重労働、パワハラ、セクハラなど過酷な労働環境の問題は、新卒のみなさんやその親御さんにも、ぜひ考えていただきたいことです。 私のオフィスにも、過酷な職場環境の中で、立場が弱い分、不当で卑劣な扱いをされながら、頑張っている20代の人たちがやってきます。 過度な責任を押しつけられ続けた人たちは、最終的に心身の不調で働けなくなり、それがきっかけで会社を離れることが少なくありません。ですが、これではご本人に相当なダメージが残ります。 「退職は逃げではないか。でも、会社のことを考えると、身体の震えがとまらない」 「今後、転職活動をするにしても、こんな自分なんて採用してくれるところがあるとは思えない」 「仮に、次の会社が決まっても、ちゃんと働けるのだろうか。またダメになるんじゃないか」 これらの思いを四六時中抱えていたら、心身の健康をおびやかします。そんな生き方は、自分を大切にしていませんよね。 「その意味で“退職も辞さない覚悟”は、混乱からあなたを守る、強力な境界線」――相談に来られる方に、私はいつもこのことを伝えています』、「退職も辞さない覚悟”は、混乱からあなたを守る、強力な境界線」、同感である。
・『自分自身を守ることを最優先する  そして、もしその決断ができないのであれば、それは、すでにかなり消耗している証拠です。今、やるべきことは、どんな方法でもいい。ご自身を守ることを最優先に、ぜひ休養をとってください。 医療機関で診断書を書いてもらい、会社から物理的に離れるのです。これらの手段が、困難な状況からあなたを守る強力な境界線となります。 そして、このような状況に陥っている20代、30代のお子さんの親である、あなたへ。 お子さんが、相当無理をしているのもわかっている。でも「せっかく良い会社に入ったのだから、やめていいのか」「退職して引きこもりになってしまうのではないか」など心配がつきないために、今の会社でやっていくよう、つい叱咤激励してしまっているかもしれません。 ですが、こんなときこそ、話を丁寧に 聞きながら、お子さんを最大限に受け入れてあげましょう。弱っているときは思考のブラックホールにはまりこみ、普段なら選ばない失踪や自殺企図などを頭の片隅で思い描いてしまうことがあります。 自分を気にかけてくれる人がいるというのは、最後の最後で見えないけれど強力な命綱になる。そのことを心にとめておいていただきたいです』、「自分を気にかけてくれる人がいるというのは・・・強力な命綱になる。そのことを心にとめておいていただきたいです」、その通りだろう。
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人権(その5)(DHC問題3題:【DHC現役社員が告発】ヘイト炎上の源泉は会長のヤバすぎる“差別通達”《タレントの出自に関する記述も》DHC現役社員が告発 #1、DHC会長が全社員に口コミサイトへ“サクラ投稿”奨励「ゴールド社員の称号を与える」《消費者庁は「非常にグレー」》 DHC現役社員が告発 #2、【内部文書入手】DHCのヤバすぎる勤務実態「産休取得で降格、査定基準に“愛社精神指数”、ボーナスのお礼を会長にファクス DHC現役社員が告発 #3) [企業経営]

人権については、昨年11月1日に取上げた。今日は、(その5)(DHC問題3題:【DHC現役社員が告発】ヘイト炎上の源泉は会長のヤバすぎる“差別通達”《タレントの出自に関する記述も》DHC現役社員が告発 #1、DHC会長が全社員に口コミサイトへ“サクラ投稿”奨励「ゴールド社員の称号を与える」《消費者庁は「非常にグレー」》 DHC現役社員が告発 #2、【内部文書入手】DHCのヤバすぎる勤務実態「産休取得で降格、査定基準に“愛社精神指数”、ボーナスのお礼を会長にファクス DHC現役社員が告発 #3)である。

先ずは、昨年12月28日付け文春オンライン「【DHC現役社員が告発】ヘイト炎上の源泉は会長のヤバすぎる“差別通達”《タレントの出自に関する記述も》DHC現役社員が告発 #1」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/42628
・『11月中旬、化粧品・健康食品大手「DHC」の公式サイトで公開された文書が、いまだ波紋を呼んでいる』、どういうことなのだろう。
・『DHCキャンペーン「ヤケクソくじ」  予想売上高の1%を、消費者に抽選くじの形式で還元するキャンペーン「ヤケクソくじ」についての同社代表取締役会長・吉田嘉明氏(79)の文章なのだが、特定の民族や国籍を差別する言葉が並べられており、12月中旬になってネットで炎上した。 《サントリーのCMに起用されているタレントはどういうわけかほぼ全員がコリアン系の日本人です。そのためネットではチョントリーと揶揄されているようです》(DHC公式サイト「ヤケクソくじについて」より) Twitterでは「#差別企業DHCの商品は買いません」というハッシュタグをつけた不買運動が展開されたが、現在に至るまで、サイトから当該文章が削除されることはなく、謝罪文の掲載などもない。文末には吉田氏の記名があり、ネットには吉田氏個人の責任を追及する声も多い』、化粧品メーカーの創業トップが、公然と差別発言をネット上に公開するとは心底、驚かされた。
・『50年間ワンマン体制でDHCを経営してきた吉田会長 「吉田会長は1972年、31歳の時にDHCを創業しました。社名の由来は『大学(D)翻訳(H)センター(C)』で、当初は翻訳事業がメインでした。しかし1980年から化粧品製造販売を開始。今に至るまで、約50年間ワンマン体制でDHCを経営しています。吉田氏自身は、2005年に国税庁から公表された高額納税者名簿では2004年の納税額で全国6位(約10億円)に記録されています。DHCは非上場企業です」(化粧品業界誌記者) 2014年にはみんなの党・渡辺喜美代表に8億円を選挙資金として貸した旨の手記を週刊新潮(4月3日号)に寄せたことが話題となった。当初渡辺氏は「個人的に借りた」としていたが、吉田氏は次々と渡辺氏とのメールの文面などを公表し、渡辺氏は最終的に「皆に迷惑をかけた」と辞職した。しかし吉田氏自身がメディアに登場する機会は少なく、パーソナリティについては謎に包まれた部分が多い。 吉田氏とは一体どんな人物なのか。DHCの女性社員A子さんが取材に応じた』、「渡辺喜美」の「借金問題」はおぼろげに覚えている。
・『人格についてはみな閉口  「会長の見た目は、普通のおじいちゃんです。もうすぐ傘寿という年相応の外見ですが、眼光は鋭く、常に何かに対して怒っているような険しい顔をしています。大学卒業後は英語が堪能だったことから企業で通訳を務めていたそうですが、商談相手のお偉いさん方を見て『俺もあっち側になる』と一念発起してDHCを起業したそうです」 DHCは吉田氏が一代で築き上げた企業だ。A子さんは「社員の誰もが吉田会長を尊敬のまなざしで見ている」と語るが、その表情は暗い。 「会長の実績を疑う人はいません。しかし人格については、みな閉口しているんです。実は、炎上した文章がサイトに載る数日前、社員に対して同様の内容がすでに開示されていました。みんなで『ひどい文章だね』と話し合いましたが、一方で『会長らしいね』という諦めにも似た感想も出ていました」 実は、吉田氏はこれまでもDHCの公式サイト上やメディアで“ヘイト投稿”を繰り返しているのだ』、「企業で通訳を務めていたそうですが、商談相手のお偉いさん方を見て『俺もあっち側になる』と一念発起してDHCを起業」、とは大したものだ。
・『ヘイト投稿の数々  《問題なのは日本人として帰化しているのに日本の悪口ばっかり言っていたり、徒党を組んで在日集団を作ろうとしている輩です。いわゆる、似非日本人、なんちゃって日本人です。(中略)似非日本人はいりません。母国に帰っていただきましょう》(2016年2月12日 公式サイト「会長メッセージ」より) 《我々は全くの異人種である韓国人と仲良くすることはあっても、そして多少は移民として受け入れることはあっても、決して大量にこの国に入れてはいけないのです》(2018年4月30日 iRONNA寄稿文より) 吉田氏のヘイト発言は社内でも常態化していたという。 「会長は『通達』と題された社内向けの文書で、これまで何度も差別的な言葉を使っているんです。文書には会長の印が押されています。『通達』は社内に掲示されていて、誰でも見ることができます」 「文春オンライン」特集班はその「通達」を含む内部文書を複数枚入手。そこには確かに差別的な言葉がたびたび用いられている。「ヤケクソくじ」の文書でも言及されていた、タレントなどの「出自」に関する記述もある』、「差別発言」は自分の信念から発せられた確信犯のようだ。
・『「文春オンライン」特集班が入手した内部文書  《現在、広告代理店は自社グループの伝々虫と業界最大手の電通の二社に限定している。(中略)今後は二社限定を解除する。ただし、名前は忘れたが、チョントリーの広告を専用にやっている代理店はもちろん使用禁止である》(2019年3月20日「通達」より) 《TVコマーシャルは社長、会長秘書部、広報部の最終判定を受け、その中の一人でも反対がある場合は却下とする。判定の対象は商品の出来栄え、タレントの出自と品性、製作費とする》(2018年12月14日「通達」より』、自社の広告をどうするかは勝手だ。
・『“正しい出自の持ち主が資格要件”  《(秘書の採用について)現在29歳のZ(※文書では実名)がトップになることから、20代であり、頭脳明晰、強い愛社精神、正しい出自の持ち主が資格要件となる》(2019年3月20日「通達」より) 「通達」では、吉田氏が特定の社員を名指しして人格否定ともいえる激しい批判に及ぶこともあった。その際にも差別的な文脈で韓国語が使われている』、パワーハラスメントの典型例だ。
・『差別的に使われている“ケンチャナヨ精神”  《体に入るもの、顔に触れるものは一度だって不良品を出すことは許されない。こういう研究室の体質は、おそらくX(※文書では実名)をはじめとする部員全体に充満しているいい加減な生まれつきの気質から来ているものと思われる。いわゆる「ケンチャナヨ精神」である。特にXは指導者としては欠陥が多すぎる。リーダーの資格がない。人格形成をやり直せ》(2020年8月12日「通達」より) ケンチャナヨとは、韓国語で「大丈夫」を意味する言葉だ。吉田氏はX氏の研究室の体質を批判する際にわざわざ「ケンチャナヨ」と韓国語を用いている。 しかしその発言を諫める社員はいないという。A子さんによると「DHCは会長を教祖とする宗教団体のよう」なのだという。 「会長は創業者としてこれまで50年に渡ってDHCを差配してきました。会長が黒と言えば白も黒になります。それに、会長の機嫌を損なった社員がこれまでどんな憂き目にあっているのか、社内中が知っていますから……」(A子さん)』、「韓国語」にも通じているのだろうか。
・『役員や社員の解雇を示唆  吉田氏からの「通達」では、前出のように名指しで特定の社員を批判するほか、役員や社員の解雇を示唆することもあるという。 《この前、数名の役員を解任した(中略)。役員の任を果たしていない人物、心からは信頼できない人物、これらは前もって一掃して、きれいにしておきたかった》(2019年3月20日「通達」より』、完全に自分のやりたい放題のようだ。
・『“不要な社員が多すぎる”  《全体の雰囲気がだらけているし、どの部署も費用対効果が非常に悪い。不要な社員が多すぎる。3200人近くいる従業員は2000人ほどに減らす必要がある。過去四年にさかのぼり個人一人一人の勤怠・業績・能力を精査し退職勧奨すべき従業員を現在急ピッチでピックアップする作業を開始している》(2020年8月20日「通達」より) A子さんが続ける。 「吉田会長は元々こういった厳しい言葉を使ったり、人事権を笠に着て社員を意のままに動かそうとしたりする傾向はありました。差別的な用語を遣うことも昔からです。ただコロナ禍以降、無茶苦茶な言動が増えてきた。社員が特に滅入っているのが“サクラ投稿業務”なんです」 “サクラ投稿業務”とは一体なんなのか。実際にその業務についたDHC社員・Bさんに話を聞くことができた。(#2につづく)』、「コロナ禍以降、無茶苦茶な言動が増えてきた」、困ったことだ。「“サクラ投稿業務”」をみてみよう。

第二に、この続きを、12月28日付け文春オンライン「DHC会長が全社員に口コミサイトへ“サクラ投稿”奨励「ゴールド社員の称号を与える」《消費者庁は「非常にグレー」》 DHC現役社員が告発 #2」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/42629
・『公式サイトに「チョントリー」など特定の人種や国籍を差別する文章を掲載したDHC代表取締役会長の吉田嘉明氏(79)。ネット上ではこの“ヘイト投稿”を受け「#差別企業DHCの商品は買いません」との不買運動が広がっている。 前稿#1では、吉田氏名義でDHC社内向けに不定期で出される内部資料「通達」と、現役社員(12月18日現在)の告発をもとに、吉田氏の常態化したヘイト発言について詳報した。 しかし、問題はこれだけではなかった。吉田氏は社員に対して、 “サクラ”として自社商品の口コミをネットに投稿するよう指示し、その対応如何によって、社員を“格付け”しているというのだ――』、「自社商品の口コミ」を「社員」に操作させようというのは悪質だ。
・『「なりふり構わず逆襲に出なければならない」  2020年8月20日、吉田氏名義で社内に“檄文”のような「通達」が社内に掲示された。そこにはこう記されている。 《同業者が空を覆いつくす飛蝗か野壺にうごめく蛆虫のごとく蝟集するこの業界においては、NO.1だけがかろうじて認識され、あとはクズインチキの扱いしか受けない》 《もう我慢ができない。なりふり構わず逆襲に出なければならない。DHCは宣伝がどこよりも稚拙である》 《ある国籍不明の国会議員が「一番ではなく二番ではダメなんでしょうか」と寝ぼけたことを言っていた》 現社員であるA子さんが語る。 「実はDHCの前期売上高が1000億円を切ってしまい、DHCが業界ナンバーワンの座から落ちてしまったんです。会長はそのことについて、かなり怒っているようでした。その怒りの矛先はまず宣伝部に向かいました。社内向け文書『通達』のなかで《DHCは宣伝がどこよりも稚拙である》《どこよりも売り方がへたくそである》と批判したのです。 そして、新たな宣伝活動を始めるとして、社員に対し『らくがき板の活用』を指示したんです」(同前)』、「DHCの前期売上高が1000億円を切ってしまい、DHCが業界ナンバーワンの座から落ちてしまった」、のでは「会長」がカリカリするのは理解できる。
・『DHCの“らくがき板”とは?  “らくがき板”とは、DHCの商品を通販で購入した消費者のもとに送られてくる葉書のことだ。そこに商品の口コミを書いて返送し、DHCが発行している会報誌に掲載された場合は1万円分の商品が当たる。 「商品が欲しいと思って口コミを書いてくださる消費者が多いので、いい口コミばかりが集まります。そうでないと採用されませんから。なので、会報誌に載るのはDHCの商品を絶賛した口コミだけです。 一方でSNSや化粧品口コミサイトには、DHCに対して厳しい評価が書き込まれることもあります。会長はそのことがずっと気に入らなかったようです」(同前)』、「SNSや化粧品口コミサイト」に「DHCに対して厳しい評価が書き込まれることもあります」、当然のことなのに、「会長は」不満とは勝手な人だ。
・『ついに“サクラ投稿”を募集  同「通達」で、ついに吉田氏は社内に向けてこんな募集を始めた。 《落書き版(原文ママ)に書かれた内容をデジタル化して、それをファンの人に成り代わってあらゆるメディアに次から次へと投稿していく、これを副業でやってくれる人を募集する。固定給制度でスタートは月給10万円。毎月一度報告をしてもらい、貢献度によって11万円、12万円、・・・、20万円と上がっていく。DHCに愛社精神があり、是非やってみたいと思う人は応募せよ》(2020年8月20日「通達」より) 「つまり、消費者の方が書いた口コミを、あたかも自分が商品を使用した口コミであるかのようにSNSやほかの口コミサイトに投稿せよという社員への“サクラ投稿”の指示だったのです。投稿先として、Instagram、Twitter、Facebook、YouTubeなどのSNSのほかに、『アットコスメ』などの大手口コミサイトも対象として指定されました」(A子さん) この募集に対して、当初は「多くの従業員が『こんな“グレーな業務”には関わりたくない』と目を伏せていた」(同前)という』、「消費者の方が書いた口コミを、あたかも自分が商品を使用した口コミであるかのようにSNSやほかの口コミサイトに投稿せよという社員への“サクラ投稿”の指示」、とは悪質だ。
・上司からの指示  「だから数人が応募したとしても、そんなに大規模な動きにはならないだろうと思っていました。なので、その後に会長から送られてきた『通達』を読んで驚きました」(同前) 《なんと応募者が二百数十名に達した。しかもその大半が、報酬は辞退したいというのである。会社の窮状を見て一灯をともしたいという愛社精神に満ちた社員がまだこれほどもいたのかと、小生はずっしりと重い申し込み用紙を抱いて落涙した》(2020年8月25日「通達」より) DHC社員は約3200名。なかには会長がいる本社から遠い店舗や工場に勤めている社員もいる。なぜこれほど希望者が集まったのか。 実際に“サクラ投稿”をしていたというDHC社員のBさんが語る。 「もちろんこんな業務に関わりたくはありませんでしたが、コロナ禍で家計が逼迫していたこともあり、私は8月20日の『通達』で案内されていた通り、月給10万円スタートの有償で引き受けることにしました。 しかし応募があまりなかったのか、ある部署では上司から『無償でやると手を挙げなさい』と言われ、無償で引き受けた社員も多かったと聞いています」』、「上司から『無償でやると手を挙げなさい』と言われ、無償で引き受けた社員も多かった」、「会長」にとっては都合がいい話のようだ。
・『DHCからB子さんに届いた分厚い封筒のなかみ  そうして2020年9月半ば頃から、“サクラ投稿”のプロジェクトが始まった。Bさんの自宅にはDHCから分厚い封筒が届けられたという。 「応募した後、自宅に大量の“らくがき板”のコピーが郵送されてきました。この中から、自分の年齢や性別と近しいお客さまの口コミを選別して自分のSNSに投稿せよ、とのことでした。 ルールは、口コミの文言を一字一句変えることなく投稿すること。あくまでユーザーの方の口コミであり『口コミを捏造したわけではない』と主張したいのだと思います。でも、なりすましであることに変わりはありませんよね……。投稿には罪悪感がありました」 Bさんが“サクラ投稿”をしている間にも、DHCからは細かい指示があり、そのたびに少しずつルールが変わっていったという。 「当初はアットコスメなど大手美容口コミサイトに投稿する社員が多かったのですが、『運営に目をつけられるかもしれないから』と投稿制限がかかりました。それ以降はInstagramやFacebookに投稿している人が多いようです』、「大手美容口コミサイト」では他社の目もあり、公正さが求められるので、「InstagramやFacebookに投稿」するように変わったようだ。
・『ついには要報告のノルマ化  最初はノルマもなく、空いた時間に1、2件投稿するだけでよかったのですが、最終的には家族にも投稿してもらうことや、1日2件以上投稿することが“有償投稿”の条件になりました」(同前) 口コミを投稿した後には会社への報告も義務付けられたという。 「どんな内容の口コミをどのSNSに投稿したのかを管理する専用サイトが作られ、自分の成果はそこに記録していました。実際に投稿した口コミのスクリーンショットをメールで秘書の方に送るようにも指示されていました」(同前) そのうち“サクラ投稿”に関わる社員だけのメーリングリストが作成され、吉田氏の秘書から「会長からのお言葉を連絡します」と、吉田氏の熱い感想が届くようになったという。 《諸君の熱心な投稿活動によって、本プロジェクトはすこぶる順調に推移している。必ずや成果につながるものと確信している。(中略)DHCの宣伝広告部隊の社員は商品知識が乏しく、他社に比べて驚くほど全てが稚拙である。(中略)もうDHC広告宣伝担当者には頼るな。お客様に頼っていこう(原文ママ)》(吉田氏の言葉が記載されたメール2020年10月12日) 社員の複雑な心中とは裏腹に、吉田氏は投稿を引き受けた社員、特に報酬を辞退した社員がいることに感激したようで、彼らに対し“称号”を与え、称賛した』、「報酬を辞退した社員」に、「“称号”を与え、称賛した」、そんな程度で済んだのだろうか。
・『「ゴールド社員」という称号  《報酬を辞退したいと申し出てくれた奇特な人達には、家で仕事をしてもらうわけにはいかないので、当然就業中の手がすいたときにやってもらうことになる。この人たちには「ゴールド社員」という称号を与え、その愛社精神を将来にわたって尊崇の対象としたい》(2020年8月25日「通達」より) 《無償ゴールド会員はいま専用のゴールドバッヂを作っているので、これも今しばらく待っていただきたい。無償ゴールド会員は賞与支給の際にその貢献度に応じて熱く報いるつもりである(原文ママ)》(メール2020年10月12日) こうした“サクラ投稿”は法的には問題ないのだろうか。消費者庁に取材したところ、「非常にグレーではある」という。 「口コミを事業主側が捏造した場合は景品表示法で取り締まりの対象となります。内容を捏造せず、あくまで消費者の感想を転載する場合に取り締まり対象になるかどうかは、個別のケース次第です。それでも事業者側が消費者の良い感想のみを意図的に選んで転用するという行為は、消費者の商品選択のために好ましい行為とはいえません」(同前)』、法的にはともかく、「口コミ」の公正さを揺るがす不正だ。
・『うまく法を潜り抜けようと  また文化庁の担当者に取材したところ、こういった見解を示した。 「口コミも、内容に創作性があり、ある程度の長さがあるものは著作物にあたります。そのため、事前に著作者に告知せずにほかの媒体等に転載・転用する場合は著作権法違反にあたります」 Bさんは、「会長は著作権法違反の恐れがあると途中で気が付いた」と明かす。 「10月から、お客様に送付されるらくがき板の葉書の仕様が変わったのです。『あなたに代わって活字に清書し、いろいろな活字媒体に掲載されるように取り計らいます』との但し書きが追加されました。著作権法を気にしてのことでしょう。しかし結局いま現在社員が“サクラ”をしているもののほとんどは、但し書きが付け加えられる数年前の感想です。いまになって但し書きを加えれば、許されるものなのでしょうか……」 Bさんが続ける。 「ゴールド社員の待遇からもわかるように、会長は、たとえ違反行為であっても、見返りを求めず、とにかく会社のために身を粉にして働く人が大好きなんです。社員のなかには生活のためや他の趣味のために働いて結果を出している人もいるのに、そういった人は『不要な社員』として見なされてしまう。 “愛社精神”が人事評価にも直結するんです」 「文春オンライン」はDHCの人事評価項目が記された文書を入手した。するとそこには目を疑う評価基準が記されていたのだ——。(#3につづく)』、「但し書きが付け加えられ」たとはいえ、少なくともそれ以前のものには但し書きは無効の筈だ。次に、「人事評価」の「評価基準」をみてみよう。

第三に、この続きを12月28日付け文春オンライン「【内部文書入手】DHCのヤバすぎる勤務実態「産休取得で降格、査定基準に“愛社精神指数”、ボーナスのお礼を会長にファクス DHC現役社員が告発 #3」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/42630
・『公式サイトに「チョントリー」など特定の民族や国籍を差別するような文書を掲載したDHC代表取締役会長の吉田嘉明氏(79)。ネット上ではこの“ヘイト投稿”を受け「#差別企業DHCの商品は買いません」との不買運動が広がっている。 「文春オンライン」の取材で、実は吉田氏の差別発言は常態化していたことが判明。吉田氏名義でDHC社内向けに不定期で出される内部資料「通達」と、現役社員(取材時)の告発をもとに、その実態を詳報した。(#1) しかし問題はこれだけではない。吉田氏は社員に対して、自社商品の口コミを書き込む“サクラ投稿”を指示していることが判明。消費者庁や文化庁に取材をしたところ、吉田氏が主導している“サクラ投稿”は景品表示法や著作権法に触れる可能性があるという。そのうえ吉田氏は、“サクラ投稿”を無償で引き受けた社員を「ゴールド社員」などと“格付け”していることも明らかになった。(#2) ヘイト発言に“サクラ投稿”——。こうした行為がDHC社内でまかり通ってしまう状況には、「人事」が影響を及ぼしているという。#1と#2で告発したDHCの社員A子さんとBさんが語る』、確かに「人事」が基本だ。
・『大っぴらに批判すれば人事評価で最低点に  「私たちも会長のヘイト発言や“サクラ投稿”には嫌気がさしています。しかしそれを大っぴらに批判することはできません。もし“会長派”の誰かが聞いていたら、告げ口のFAXを会長に送られたり、人事評価で最低点の『2.0』をつけられてしまうかもしれませんから。 DHCではボーナス前の時期に、社員同士で人事評価をし合う制度があるんです。しかもその評価軸が少し変わっているというか……」 取材班が入手した「平成30年より新人事評価」と題されたDHCの内部文書には、次のように記されている。 《4.0 誰が見ても著しく会社に貢献している。能力が並外れて高く、この人がいなくなると会社は大損害である。誰よりも愛社精神に満ち満ちている。 3.5 会社にとってかなり大切な人である。平均的な社員より間違いなく優秀であり、会社に確実に利益をもたらしている。愛社精神が感じられる。 3.0 給料分は働いている。勤労意欲はあるが、結果が優れているというわけでもない。大企業のどこにでもいる並みの社員である。 2.5 給料をもらうため、生活のために会社に来ている。こういう社員が蔓延すると会社は必ず衰退していき、やがては倒産につながる。 2.0 問題外の社員。穀潰し。即刻辞めてもらいたい。》「2.0」になったtら、次の期には辞めさせるための厳しい指導が始まるのだろうか。
・『“愛社精神”を周囲にアピールすることもポイント  A子さんが続ける。 「自分と同じ部署の社員に0.1ポイント刻みで点数をつけて、専用の用紙に点数を記入していきます。部署によっては1人だけの部署もあるので、そういうところは自己評価になりますが、2.4以下か3.6以上の点数をつけた場合は、その理由も記入する決まりです。平均点が3.0くらいになるように調整するので、2.0がつけられることはかなり稀ですが、誰か1人にでもこんな評価をされたら会長に目をつけられてしまいます。それにこの評価を見ればわかるように、結果を出していればそれでいいというわけではないのです。“愛社精神”を周囲にアピールすることも大切なポイントなんです」 そして2020年12月24日、DHCではまた新たな人事の評価基準が導入されたという。社内に掲示された「賞与と愛社精神について」と題された会長からの文書に社員らはどよめいた。 《12月28日に賞与を支給する。賞与の査定は従来、勤怠と会社への売上貢献度を中心に判定した「頑張り評価」を指数化(2.5から4.5)して行われたが、今後「頑張り評価指数」と「愛社精神評価指数(2.0~5.0)」の平均値で評価することとた(原文ママ)》 「穀潰し」などの通常の人事評価とは異なる、賞与査定時に用いられる新たなシステムだ』、なるほど。
・『「DHC特別社員」と命名  《会社勤務に当たって最も大切なものは何よりも愛社精神である。今回らくがき板のデジタル化の協力を社員に求めたが、120名の社員が無償で協力したいとの応募があり、今現在想定以上の多数の投稿が実施され、その効果の大きさに驚いている。これこそ愛社精神の発露以外の何物でもない。今後彼らがDHCの救世主になることは間違いない。涙が出るほどありがたい社員たちであり、彼らを「DHC特別社員」と命名することにした。特別社員はその投稿数によって3.0から5.0の指数を与えることとした》 《らくがき板のデジタル化の協力》とは#2で詳報した“サクラ投稿”のことだ。吉田氏は2020年8月にDHCの商品を絶賛する口コミをSNSなどに投稿する業務を担ってくれる社員を募った。そして、この“サクラ投稿”を無償で引き受けた社員を「ゴールド社員」と呼んでいたのだが、彼らを「DHC特別社員」と命名し、ボーナスの支給額をアップさせるというのだ』、「ゴールド社員」には「ボーナスの支給額をアップ」という実利がつくようだ。
・『「IT推進部は腐った部署」という評価  しかし「愛社精神評価指数」が導入されたことで、憂き目に遭っている社員もいる。「賞与と愛社精神について」にはこうも書かれている。 《最低評価2.5に該当するのは、大勢の部署で部署全体に協力しようとする者が誰もいない腐った部署である。IT推進部がそれにあたる(原文ママ)》 「なぜIT推進部がこんなにも酷い扱いを受けているかは誰もわかりません。噂では、らくがき板の“サクラ投稿”に誰も手を挙げなかったからだとか、IT推進部の社員が『ヤケクソくじ』が炎上した際に検索サイトで上位に表示されるように細工したから会長に目をつけられたのだろう、とか言われています。 IT推進部はDHCの通信販売を取り仕切ったりネット広告などを請け負う、今後のDHCには欠かせない部署なのに……」(A子さん)』、会長の理不尽な好き嫌いがこれほどストレートに出てくると、「IT推進部」がやる気を失ってしまうリスクがありそうだ。
・『ボーナスのお礼をファクスで  そのうえ、吉田氏の言う愛社精神は「アピールが上手いかどうかで決まるという側面もある」ようだ。A子さんが説明する。 「2020年8月7日に出された『通達』には、《(賞与の支払いについて)三千人もいる社員の中で小生にお礼のファックス送ってくれた社員はたったの一名のみであった。DHCは腐っている(原文ママ)》と書かれていました。《小生》というのはもちろん吉田会長のことです。ボーナスのお礼を社員がファクスで会長に伝えるなど、普通の会社ではあり得ませんよね? この会社では一生懸命仕事をするだけでは評価されない。やるせないですよ」 「賞与と愛社精神について」にはこうも記されている。 《特別社員の愛社精神指数の平均は3.4である。その分、今期の賞与支給において優遇されることとなる。今回は愛社精神を判定する材料が限られるので、ほとんどの社員が2.7~2.8程度となる。今後自薦他薦を含めて愛社精神を発揮している社員がいれば、その都度会長室迄ファックスをしてほしい。反社行動もまたしかりである。必ず愛社精神指数に反映することを約束する》 この評価が本人に明かされることはないのだという。 「自分自身がどのように評価されているかは全くフィードバックされません。理由が明かされないままに、給与や賞与がいつの間にか下がっているんです。そんなときには『何かまずいことしたかな……?』と不安になります」(A子さん) Bさんによると、こうしたボーナス前の人事評価アンケートとはまた別のアンケートも存在するという』、何なのだろう。
・『「昇格させたい人」「降格させたい人」を名指しで  「会長は『昇格させたい人』『降格させたい人』を名指しで書かせるアンケートを人事評価を行うタイミングで行っています。もし『降格させたい人』に名前が書かれた場合は人事が周辺の社員に聞き取りをして、評価が妥当だと判断されると降格させられてしまうこともあります」 しかも降格に際しては、上長から「自分から降格を申し出るように」と指示されることもあるというのだ。対象となるのは「産休・育休をとる女性社員」だ。A子さんが語る』、「産休・育休をとる女性社員」に「上長から「自分から降格を申し出るように」と指示されることもある」、悪質だ。
・『「産休・育休をとる女性社員」の降格  「主任や次長など、役職に就いている女性社員は産休・育休を取得する場合には職務解任処分、つまり降格する方がほとんどです。ただ、会社が妊娠・出産などを理由に一方的に降格人事をすることは法律で禁じられているため、ある先輩社員は妊娠が発覚した際に、上司に促され、自ら役職を降りる旨と『ご迷惑をおかけして申し訳ございません』と綴ったファックスを会長宛てに送付していました。指示されなくても『慣習だから』と自ら降格を申し出る方もいました。あくまで“自己都合”で降格するので、社内に公表される場合には『本人からの申し出により』と表記されます」 降格時期は女性社員が会社に妊娠を報告するタイミングによるというが、多くが産休に入る前に降格されるのだという。 「産休・育休が明けて復職してからも肩書は元に戻らず、子育てをしながらもう一度昇進を目指す必要があります。育休中に上司から『いつ戻ってくるのか』と催促メールが送られてきたという女性社員は、それに耐えかねて通常1年とれるはずの育休を4カ月にして復帰した人もいました」(同前) 妊娠・出産・育児等を理由とする不利益な扱いは、マタニティハラスメントとして男女雇用機会均等法9条3項、育児・介護休業法10条により禁止されている。 東京労働局の担当者が語る。 「会社から一方的に降格することは男女雇用機会均等法、育児・介護休業法における不利益取り扱いにあたります。一方的ではない場合も、本人の意に反して、降格を申し出るように強要することがあった場合は、同様に不利益取り扱いに当たる可能性があります」 「文春オンライン」特集班はDHCに文書で事実確認を行うとともに、吉田氏へもインタビュー取材を申し込んだが、期日までに回答はなかった』、「マタニティハラスメント」だけでなく、より一般的な「パワーハラスメント」に該当するケースは多そうだが、ワンマン「会長」のもとでは、訴えるには退職を覚悟する必要がありそうだ。週刊文春でここまで暴露記事が出た以上、同社の苦境はさらに強まりそうだ。
タグ:人権 文春オンライン 上司からの指示 (その5)(DHC問題3題:【DHC現役社員が告発】ヘイト炎上の源泉は会長のヤバすぎる“差別通達”《タレントの出自に関する記述も》DHC現役社員が告発 #1、DHC会長が全社員に口コミサイトへ“サクラ投稿”奨励「ゴールド社員の称号を与える」《消費者庁は「非常にグレー」》 DHC現役社員が告発 #2、【内部文書入手】DHCのヤバすぎる勤務実態「産休取得で降格、査定基準に“愛社精神指数”、ボーナスのお礼を会長にファクス DHC現役社員が告発 #3) 「【DHC現役社員が告発】ヘイト炎上の源泉は会長のヤバすぎる“差別通達”《タレントの出自に関する記述も》DHC現役社員が告発 #1」 DHCキャンペーン「ヤケクソくじ」 同社代表取締役会長・吉田嘉明氏(79)の文章なのだが、特定の民族や国籍を差別する言葉が並べられており、12月中旬になってネットで炎上 化粧品メーカーの創業トップが、公然と差別発言をネット上に公開するとは心底、驚かされた 50年間ワンマン体制でDHCを経営してきた吉田会長 「渡辺喜美」の「借金問題」 人格についてはみな閉口 企業で通訳を務めていたそうですが、商談相手のお偉いさん方を見て『俺もあっち側になる』と一念発起してDHCを起業」、とは大したものだ ヘイト投稿の数々 「差別発言」は自分の信念から発せられた確信犯のようだ 「文春オンライン」特集班が入手した内部文書 “正しい出自の持ち主が資格要件” 吉田氏が特定の社員を名指しして人格否定ともいえる激しい批判に及ぶこともあった 差別的に使われている“ケンチャナヨ精神” 役員や社員の解雇を示唆 コロナ禍以降、無茶苦茶な言動が増えてきた 「DHC会長が全社員に口コミサイトへ“サクラ投稿”奨励「ゴールド社員の称号を与える」《消費者庁は「非常にグレー」》 DHC現役社員が告発 #2 「自社商品の口コミ」を「社員」に操作させようというのは悪質だ 「なりふり構わず逆襲に出なければならない」 「DHCの前期売上高が1000億円を切ってしまい、DHCが業界ナンバーワンの座から落ちてしまった」、のでは「会長」がカリカリするのは理解できる DHCの“らくがき板”とは? 「SNSや化粧品口コミサイト」に「DHCに対して厳しい評価が書き込まれることもあります」、当然のことなのに、「会長は」不満とは勝手な人だ ついに“サクラ投稿”を募集 消費者の方が書いた口コミを、あたかも自分が商品を使用した口コミであるかのようにSNSやほかの口コミサイトに投稿せよという社員への“サクラ投稿”の指示」、とは悪質だ DHCからB子さんに届いた分厚い封筒のなかみ 「大手美容口コミサイト」では他社の目もあり、公正さが求められるので、「InstagramやFacebookに投稿」するように変わったようだ ついには要報告のノルマ化 「報酬を辞退した社員」に、「“称号”を与え、称賛した」、そんな程度で済んだのだろうか 「ゴールド社員」という称号 法的にはともかく、「口コミ」の公正さを揺るがす不正だ うまく法を潜り抜けようと 「但し書きが付け加えられ」たとはいえ、少なくともそれ以前のものには但し書きは無効の筈だ 「【内部文書入手】DHCのヤバすぎる勤務実態「産休取得で降格、査定基準に“愛社精神指数”、ボーナスのお礼を会長にファクス DHC現役社員が告発 #3」 大っぴらに批判すれば人事評価で最低点に “愛社精神”を周囲にアピールすることもポイント 「DHC特別社員」と命名 「ゴールド社員」には「ボーナスの支給額をアップ」という実利がつくようだ 「IT推進部は腐った部署」という評価 「昇格させたい人」「降格させたい人」を名指しで 「産休・育休をとる女性社員」に「上長から「自分から降格を申し出るように」と指示されることもある」、悪質だ 「産休・育休をとる女性社員」の降格 「マタニティハラスメント」だけでなく、より一般的な「パワーハラスメント」に該当するケースは多そうだが、ワンマン「会長」のもとでは、訴えるには退職を覚悟する必要がありそうだ。 週刊文春でここまで暴露記事が出た以上、同社の苦境はさらに強まりそうだ
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企業不祥事(その22)(有力メーカーや商社が関わる大規模「循環取引」疑惑が発覚!、焦点:電通関連法人 突出する政府からの事業委託 運営の不透明感に批判も、日本企業が不祥事を起こす七つの原因 ~いつまでこんなことが続くんだ!~【怒れるガバナンス】) [企業経営]

企業不祥事については、5が6日に取上げた。今日は、(その22)(有力メーカーや商社が関わる大規模「循環取引」疑惑が発覚!、焦点:電通関連法人 突出する政府からの事業委託 運営の不透明感に批判も、日本企業が不祥事を起こす七つの原因 ~いつまでこんなことが続くんだ!~【怒れるガバナンス】)である。

先ずは、昨年11月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した東京経済東京支社情報部の井出豪彦氏による「有力メーカーや商社が関わる大規模「循環取引」疑惑が発覚!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/254875
・『大掛かりな架空・循環取引疑惑が浮上している。対象となったのはコンクリート二次製品などの建設資材で、北は北海道から南は九州まで全国の有力メーカーや商社の合計15社程度が関与した模様だ』、ずいぶん大規模なようだ。
・『大掛かりな循環取引 議員がらみの可能性も  関係者の話を総合すると、循環取引は今年5月から8月頃にかけて行われ、同月下旬から9月初めに発覚したという。 中心的な役割を担ったとされる会社の営業担当社員A氏は10月末で解雇されたが、A氏の後ろ盾には某市の現職市議会議員X氏がおり、X氏が経営する会社も循環の輪に加わっていたとの情報もある。 9月以降、関係者が何度か会合を重ねて実態解明に乗り出してはいる。X氏も一度は会合に参加したが「A氏に名前を貸しただけ」などと発言し、終始いら立ちを隠せないでいたという。A氏とX氏は同じコンクリート製品メーカーでの勤務歴があり、親しい間柄だったという。A氏は周囲からトップセールスの優秀な社員と認識されていた。 問題の取引はいくつかの商流に分かれているほか、関与した業者も多い。工事案件そのものが架空のケースがあるとされる。いずれにせよ問題究明への各社の協力姿勢に温度差があるなどでなかなか全貌の把握には至っていないようだ。 すでに一部の会社は「不正に巻き込まれた」として弁護士に相談しているほか、刑事告訴の意向を示す業者もあるという。今後事件に発展する可能性もある。 いまのところ一連の循環取引で各社が計上した売り上げは2億~3億円程度とされるが、X氏が経営する会社については、今回の循環が発覚する前の今年5月頃、ある会社が振り出した高額手形を割引業者(ノンバンク)に持ち込んだものの、手形成因が怪しいとして否決され、いわゆる「割止め」情報が出た経緯もある。X氏周辺の資金難が今回の不正の動機になった可能性がある。循環メンバーに名を連ねる某社幹部は「議員がらみの案件と認識している」とコメントした』、「工事案件そのものが架空のケースがあるとされる」、とは本当に悪質だ。
・『上場会社で相次ぎ循環取引が発覚  ほかにも今年は上場企業などで循環取引の発覚が相次いだ。 IT業界では、東証1部の「ネットワンシステムズ」を中心として「東芝ITサービス」「富士電機ITソリューション」「日鉄ソリューションズ」などそうそうたる企業が加わった大規模な循環取引事件が表面化したことは記憶に新しい。 このケースでは営業マンのノルマ達成が不正に手を染める動機とされた。特に個人の報酬が売り上げノルマの達成率と連動している場合、架空・循環取引が起きるのは構造的な宿命といえるだろう。 7月には大手タイヤメーカー「住友ゴム工業」の子会社「住ゴム産業」(大阪市中央区)で元社員が土木資材の架空取引で数億円の損害を会社に与えたとして背任容疑で警視庁捜査2課に逮捕される事件もあった。この場合、元社員は取引先からのキックバックを遊興費に充てていたとされる。 一般的に、いわゆる「飲む、打つ、買う」で私生活に問題がある社員には不正の動機があるとされる。テレワークが浸透して社員のちょっとした変化に気づきにくくなると、この手の不正はますます防ぐのが難しくなりそうだ。 さらに2月にはアミューズメント施設の運営や機器販売を手掛ける東証2部の「共和コーポレーション」(長野市)でも多数の循環取引への関与が発覚した。 昨年12月に大阪のゲーム機卸業者「アーネスト」が倒産して1億円を超える不良債権が発生したことをきっかけに、共和コーポレーション東京支店の元副支店長が中心的に不正に関与していたことが明らかになった。 循環取引には、売り(代金回収)と買い(支払い)のサイト差を利用した金融取引という側面があるため、資金難の会社が加わっていることが多い。資金繰りが厳しい会社は取引先の協力を得て、仕入れの支払いを延ばし、売り上げの入金を早めてもらえば、資金を調達したのと同様の効果が得られるのだ。さらに循環取引で見かけの売上高が増えれば銀行も業績がいいと誤認して新規融資に応じるという副産物が得られる可能性もある。 ところが不正は長く続かない。銀行にもやがて粉飾がバレてしまう。もともと資金繰りは厳しいので、ノンバンクから資金を引くようになる。そんなこんなで、ちょっとしたきっかけから循環の輪の「最も弱い部分」が切れてしまい、スキームが崩壊するケースが多いのだ。 大阪市中央区の「FEP」は債権者から破産を申し立てられ、8月に大阪地裁より破産手続き開始決定を受けた(負債35億円)。病院や介護施設に置く液晶テレビなどの架空取引の商流に入っていたが、昨年末に横浜にある、もう1社の中心的企業が事実上行き詰まり、循環の輪が切れたもの。 この商流に巻き込まれた形で飲食店の什器などを扱っていた「AIKジャパンコーポレーション」(東京都中央区)も8月に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた(負債47億円)。また、AIKのグループ会社で個性的な飲食チェーンを展開していた「虎杖東京」(同)は新型コロナの影響もあり、一足早く6月に民事再生法の適用を申請したが、母体のAIKの循環取引問題がなければ起きなかった倒産だったかもしれない。このように循環取引は連鎖倒産も引き起こす』、「テレワークが浸透して社員のちょっとした変化に気づきにくくなると、この手の不正はますます防ぐのが難しくなりそうだ」、大いに気を付けるべきだ。ただ、「不正は長く続かない。銀行にもやがて粉飾がバレてしまう。もともと資金繰りは厳しいので、ノンバンクから資金を引くようになる。そんなこんなで、ちょっとしたきっかけから循環の輪の「最も弱い部分」が切れてしまい、スキームが崩壊するケースが多いのだ」、少し安心した。
・『循環取引を回避するための3つの原則とは  最後に、現在進行中の案件としては、大手IT商社「ダイワボウホールディングス」(東証1部)の繊維部門子会社「大和紡績」(旧・ダイワボウノイ)で循環取引が行われてきた疑いが浮上し注目されている。 この影響でダイワボウHDは4-9月期の決算発表が遅れている。9月上旬に売掛金の回収遅延をきっかけに営業担当の元社員にヒアリングしたところ「2014年1月から循環取引等を行い、不適切な売り上げおよび利益を計上していた」旨の説明があったという。 これまでの社内調査の結果、ダイワボウHDの損失見込み額は19億円に上るとのことだが、9月30日に公認不正検査士の資格を持つ弁護士や会計士らからなる「特別調査委員会」を立ち上げ、本格的な調査に入っている。ダイワボウノイといえば、不織布マスクのメーカーとして知られており、今年4月にグループの繊維事業の合理化に伴い大和紡績に吸収合併された経緯がある。 また、ダイワボウHDの大株主には、あの「3Dインベストメント・パートナーズ」のファンドが入っており、経営陣は神経をとがらせているはずだ。3Dといえば今年の東芝の株主総会で社長解任を要求し、結果的に三井住友信託銀行の不適切な議決権集計というパンドラの箱を開けたすご腕のファンド。今後ダイワボウHDのガバナンス不全について具体的になんらかの改善提案を行う可能性もあるだろう。 いずれにしても、ここまでみただけでも循環取引を根絶するのは難しいことが分かっていただけただろう。 三菱商事の伝説の審査マンで、現在、与信管理協会の専務理事をつとめる大宮有史氏は「自社が循環取引に巻き込まれないための3原則」として以下の確認を怠るなと強調する。 (1)取引に関わっている取引先の「顔ぶれ」と取引が「実需」に基づくものか (2)取引の入り口(起点)と出口(終点)がはっきりしているか (3)三現主義(現場、現物、現実)が徹底されているか  商流がグローバルに広がり、しかもコロナで対面商談が減る昨今だからこそ、この原則を肝に銘じる必要があるだろう』、「すご腕のファンド」までが登場してきたとは、ますます面白くなってきた。「自社が循環取引に巻き込まれないための3原則」は取引チェックの基本だ。

次に、12月31日付けロイター「焦点:電通関連法人、突出する政府からの事業委託 運営の不透明感に批判も」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/dentsu-group-contracts-insight-idJPKBN295096
・『不透明性が指摘されている政府から民間企業への行政事業委託について、大手広告代理店の電通が設立に関与した2つの社団法人が10年間で100件超の事業を委託されていたことがロイターの調べで分かった。契約の多くは競争相手がいない「一者入札」で決められていたほか、両法人は受注した事業の大半を電通に再委託しており、野党議員などから事業経費の中抜きや税金の無駄遣いなどの可能性を懸念する声が上がっている』、飛んでもない話だ。
・『<持続化給付金事業など多岐に>  政府の行政事業を積極的に受託してきた電通関連の社団法人は「環境共創イニシアチブ(SII)」と「サービスデザイン推進協議会(サ推協)」の2法人。両法人が委託された行政事業は観光振興プロジェクトの運営や代替エネルギー補助金給付など多岐にわたり、経済産業省からの委託案件が多い。 ロイターの調べによると、2法人による過去10年の受注規模は少なくとも103件あり、総額は約1710億円に達している。しかし、そのうち、およそ1242億円分が電通に再委託されていた。 とりわけ問題視されているのは、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた中小企業などを支援する持続化給付金事業だ。約2.3兆円を投じた同事業では、給付金を配る業務が経産省から769億円でサ推協に委託された。しかし、サ推協は同業務の大半を電通に再委託しており、行政事業の丸投げだとして日本国内メディアの報道も相次いだ。 持続化給付金事業の運営に対する批判の高まりを受け、経産省は是正策を講じるための有識者検討会を設け、12月25日に新しいルールを公表した。 新ルールでは、入札の透明性向上のほか、再委託についてはその比率が50%を超える場合は受託先の実施体制の確認を求めるなどの規制強化を打ち出した。 また、電通は28日、ロイターの取材に対し、経産省の検討会の議論を受けて設けられた新たな規定に従う、と表明した。 しかし、経産省など政府各省や電通は、持続化給付金事業を始めとする問題案件に関する個別の契約や業務遂行の実態などについて詳細を明らかにしていない』、「日本国内メディア」は電通が大株主であることもあり、報道姿勢は極めて甘い。
・『<なぜ社団法人か>  政府による業務委託は、民間企業の活力や組織力を生かして公益事業を円滑に遂行する重要施策だ。しかし、なぜ電通は直接に受託しなかったのか。 電通が行政事業受託への動きを強化したのは世界経済にリーマンショックの後遺症が続いていた約10年前だ。当時、日本政府は「官から民へ」の掛け声のもと、行政事業の民間委託を進めていた。ある元電通社員によると、同社はこうした「官から民へ」の流れを大きなビジネスチャンスととらえ、公的セクターへの業務拡大に動き始めた。 関連の社団法人から政府事業を再委託する手法の背景には、日本が2006年に実施した公益法人改革がある。この規制緩和により、一般社団法人の設立が最低社員2人の登録、かつ最小限の情報開示だけで可能になり、そうした法人が行政事業を受託できるようになった。 サ推協が政府から最初に受託したのは、レストランや旅館・ホテルなどにフランスのミシュランのようなホスピタリティのランクを与える「おもてなし規格認証」事業。東京オリンピック・パラリンピック開催をにらんだ企画だった。 ロイターが取材した5人の関係者によると、電通本社で会議が行われ、出向した電通社員が業務にあたるなど、実際の運営はサ推協ではなく電通が行っていたという。 サ推協と電通はロイターの問い合わせに対し、電通は社団法人の会員企業として同事業に協力しており、サ推協がプロジェクトを主導している、と述べた。 これまでにサ推協が受託した行政事業14件のうち、8件が1者入札だった。 一方、SIIは元電通社員の田中哲史氏によって設立された。同法人は電通子会社1社と同じ東京都内のビルに事務所を構えている。ロイターが検証した資料によると、SIIは2011年から現在までに、少なくとも89件の行政事業、約868億円を受託している。 経産省が国会議員に提出した資料によると、2015年以降に受託した事業のうち、約4分の3が再委託され、その大半が電通に任されていた。 SIIの田中氏は過去の事業委託の規模と電通への再委託の詳細について、現時点ではコメントできないとしている。 こうした行政事業の委託構造について、経産省・中小企業庁の中小企業政策統括調整官、高倉秀和氏は「ルール違反ではない」と指摘する。 同氏はロイターの取材に対し、行政事業を受託するために一般社団法人を作るというのは、出資も不要で財務諸表に子会社として記載する必要もなく、株主から批判を受けることもないため、「ある種、合理的な判断」だと述べた。 電通は給付金事業を政府から直接受託しなかったことについて、バランスシートへの影響と通常業務が滞る可能性も含め、社内の経理局から「(直接受託は)適切ではないとの意見があった」と説明した。 経産省は「適切な入札などの手続きが行われている場合、法人格が一般社団法人であること自体に問題があるとは考えていない」とコメントした』、「一般社団法人」といったトンネルを通じた「受注」は、正体を隠す隠蔽的色彩もありそうだ。
・『<会計検査の回避も可能か>  政府や電通側の説明について、有川博・日本大学客員教授(公共政策担当)・会計検査院元局長は、行政事業が一般社団法人を通じて電通に再委託されることで、税金が無駄に使われる可能性がある、と指摘する。また、社団法人を使う受託にすれば、電通は直接の受託者ではないため、会計検査から逃れることができるとしている。 「問題になっているのは(中間利益を取るための)トンネル会社のような再委託。国から直接委託を受けた会社がそのまま自分は何もしないで丸投げするような再委託は、何をするためにその会社をかませるのか。お金を上乗せするためなのか、契約の全体をわかりにくくするためか。いろいろな弊害が出てくる」と再委託の問題点を指摘する。 立憲民主党の蓮舫代表代行は11月の参院予算委員会で、給付金事業を受託したサ推協やSIIが電通などに再委託した問題を取り上げ、梶山弘志経産相に委託先について調査するよう要請。さらに税金の使途が適切かどうか、会計検査院による検査を求めた。 会計検査院では、この要請を取り上げるかどうか来年度に決定するとしている。検査は1年以上かかる場合もあり、その結果については政府に報告書が提出される。 電通が設立した一般社団法人が経産省から受託した事業の一部について、野党議員や専門家から、公的資金を使った事業に対する会計検査から逃れる手段になったとの指摘がでていることについて、電通はロイターの問い合わせに直接回答していない。 同社は「一般社団法人は、多くの専門性を有する団体・企業で構成されており、当社も会員企業の一つしてコンソーシアムに参加している。当該社団法人が受託した業務はコンソーシアム内で連携して実施しており、当社もこれに参画している」とコメントした』、「一般社団法人」を通じることの問題点として、①「行政事業が一般社団法人を通じて電通に再委託されることで、税金が無駄に使われる可能性」、②「電通は直接の受託者ではないため、会計検査から逃れることができる」、③「トンネル会社のような再委託」することは、「何をするためにその会社をかませるのか。お金を上乗せするためなのか、契約の全体をわかりにくくするためか。いろいろな弊害が出てくる」、どういても問題が多いようだ。政府には明確に説明する義務がある。

第三に、本年1月3日付け時事通信が掲載した元銀行員で作家の江上 剛氏による「日本企業が不祥事を起こす七つの原因 ~いつまでこんなことが続くんだ!~【怒れるガバナンス】」を紹介しよう。
https://www.jiji.com/jc/v4?id=20210102lin0001
・『第一生命保険のセールスレディーが、約19億円もの顧客資金を詐取したという事件が起きた。彼女は89歳という高齢だ。事件が発覚して以来、認知症だと主張しているらしい。 高齢の人には申し訳ないが、89歳というのは日本人の平均寿命を超えており、亡くなっている人の方が多いということだ。生きている人でも大方は現役を去り、静かな余生を送っていることだろう。 ところが彼女は、第一生命でただ一人という「特別調査役」の肩書を与えられ、それを材料に使い、自分に任せれば10~30%の利回りを保証すると客を信用させていたというから、すごいという一言に尽きる。 事件の全体像は、これから解明されるだろうが、人生100年時代とはいえ、こんな高齢の女性を営業の現場に立たせ続け、不正のうわさもあったらしいが、そのことには耳を傾けなかった第一生命の責任は重いと言わざるを得ない』、常軌を逸した不祥事中の不祥事だ。「第一生命」の経営陣の責任も問われるべきだ。
・『◆不正の予兆  報道によると、同社は被害額の30%を弁済すると言っているようだが、根拠が分からない。19億円は巨額だが、事件を長引かせることで失う同社の信用、信頼の損失の大きさを考えれば、さっさと全額を弁済し、被害者との訴訟問題を収め、事件解明に努めた方がプラスではないか。 第一生命は、不正の予兆を感知することはできなかったと説明しているようだが、本当にそうだろうか。3年も前に外部から問題を指摘する情報が上げられていたという報道もある。怪しい、おかしいなどという声が現場から上がってきていたにもかかわらず、上層部は、それを深く追及しなかったのだろう。 イエス・キリストは「彼らは見ても見ず、聞いても聞かず、また悟らないからである」(新約聖書フランシスコ会聖書研究所訳注)と語ったが、現場からの声に経営者が耳を傾けなかっただけではないのか。 実は、彼女をモデルにしたと思われる小説がある。小説なので事実とは異なるだろうが、小説の主人公の生保レディーは、ある地方銀行の実力頭取の庇護(ひご)を受けているという設定だ。 その銀行では、頭取に認めてもらうため、彼女の保険契約に関し行員が競い合っていたという。その結果、彼女は所属する保険会社でナンバーワンの実績を挙げることが可能となったというストーリーだ。 下世話な表現を許してもらえれば、女の武器を使い頭取を籠絡し、威光を背に抜群の成績を挙げたのだ。 小説内の保険会社では、頭取の威光もあり、また成績を挙げた彼女の機嫌を悪くしないように、いつの間にか腫れ物扱いになっていたのだ』、この「小説」も一概にウソと決めつけられない部分もありそうだ。
・『◆触らぬ神に  本事件の報道では、この小説に描かれたような背景の問題は出てこないので、これを事実として扱うことはできない。しかし、第一生命においては、当該の89歳のセールスレディーが何らかの事由で「アンタッチャブル」、すなわち「タブー」、すなわち「触らぬ神にたたりなし」扱いになっていたことは事実だろう。 第一生命と同様に「触らぬ神にたたりなし」的人物のせいで経営が揺らいだのが、関西電力だ。関電の幹部たちが、福井県高浜町の元助役から数億円に上る多額の現金やスーツ仕立券を受け取っていた事件だ。 当該元助役は、すでに鬼籍に入っているが、原発立地に貢献した人物らしく、もし金品などの受け取りを拒否すれば、「ワシを軽く見るなよ」と脅迫されたため、受け取らざるを得なかったという。 関電側は「死人に口なし」とばかりに被害者として振る舞い、当時のトップは「不適切だが、違法ではなかった」と発言し、ひんしゅくを買った。 この資金が、原発立地に関わる資金であれば、結果として電力料金に跳ね返る。ならば「真の被害者は消費者だ」と強く言いたい。結果、関電側は、事件の責任を取って辞任した旧経営陣たちに善管注意義務違反があったとして約19億円の損害賠償請求訴訟を行うようだ。 余談だが、関電ともなれば、経営陣を監視する社外取締役には、重厚な人物が就任していたと思うが、彼らの責任追及はどうなったのか。 現在は、社外取締役などの重要性がいわれているが、彼らに活躍してもらうためには、事件が発覚した際に責任を負う覚悟が必要だ。 そうでなければ、現役引退後の良い稼ぎ場所として、幾つもの企業の社外取締役を掛け持ちする「なんちゃって社外取締役」ばかりになってしまう。 後で触れるが、第一勧業銀行(現みずほ銀行)総会屋事件の際には、社外監査役が責任を取らされてはたまらないと、さっさと辞任し、後任を見付けるのに苦労した記憶がある』、確かに「不祥事」の背後には、「「触らぬ神にたたりなし」扱いになっていたこと」がある場合が、ありそうだ。
・『◆総会屋事件  なぜ企業に「触らぬ神にたたりなし」的存在が大きくなり、それが原因で不祥事に発展するのか、私が経験した総会屋事件で考えてみたい。 私が勤務していた第一勧銀は、1997年5月に総会屋との癒着を問われ、東京地検の家宅捜索を受けることになった。第一勧銀総会屋事件である。結果として11人の幹部が逮捕され、宮崎邦次相談役が自殺するという大きな経済事件となった。 企業に寄生し、不当な利益を上げる総会屋は、82年10月の商法改正以降も、たびたび事件化していた。イトーヨーカ堂、高島屋、キリンビール、味の素、野村証券などだ。事件が発生するたびにトップは辞任していた。 そんな事態を第一勧銀の幹部は見ていながら、自分の銀行にも総会屋が巣くっている事実から目をふさいでいた。まさに「彼らは見ても見ず、聞いても聞かず、また悟らないからである」状態だった。 私は、当該事件の処理を直接担当したが、出てくる事実に驚愕(きょうがく)、当惑、困惑するばかりだった。 大物総会屋は事件発覚当時、すでに亡くなっていた。にもかかわらず、彼との関係は、後任の総会屋に引き継がれていたのだ。 第一勧銀は、第一銀行と日本勧業銀行が71年に合併して発足したが、大物総会屋はその際に暗躍したらしい。それ以来、26年にも及ぶ総会屋との関係が、彼らをいつの間にか「触らぬ神にたたりなし」的存在に祭り上げてしまったのだ』、かつての日本企業、特に銀行では、「総会屋」対策が経営上の大きな課題で、それに振り回されていたのも事実だ。
・『◆「呪縛」という言葉  私は、東京地検が家宅捜索に入った後の記者会見の原稿を作っていた。その際、トップの責任回避を考えて、総会屋との癒着関係は、総務部や審査部などが、いわば勝手にやっており、頭取などは関係していないという文章を作った。そして、それを頭取たちが居並ぶ会議で発表した。 するとM副頭取が、「それは違う。責任は自分たち経営陣にある。総務部や審査部の責任ではない。長年にわたる総会屋との関係を断ち切れなかった経営陣である自分たちの責任だ。そういうことをはっきりさせる会見文に直してほしい」と発言した。 この発言で、その場がシンと静まり返ったのをよく覚えている。経営陣は、この事件は自分たちの責任で、現場はそれに従った、忖度(そんたく)しただけで、責任はないと言い切ったのだ。 私は少なからず、感動を覚えた。それで、会見文を書き直すため、N法人企画部長と2人で、どういう内容に直すべきか、呻吟(しんぎん)した。 N部長は漢字に強かったのだろう。「呪縛という言葉はどうだろうか」と言った。私は即座に、その言葉に飛びついた。大物総会屋という存在の呪いに縛られ、身動きが取れなくなった状態を表していたからだ。 それに経営陣の責任も、何となく曖昧な感じ、やむを得ない感じがするではないか。当時は、今のようにコンプライアンス(法令順守)意識が強くなかったせいもあるが、長い歴史の中で、経営陣が思うに任せないほど巨大化してしまった「悪」の存在に、責任を負わせるのにふさわしい言葉だと思った。 案の定、その「呪縛」という言葉を記者会見でK頭取が発言すると、会見場に集まった記者たちは目の色を変え、その言葉を原稿に打ち込んだ。「呪縛」という、それ以前はあまり使われなかった言葉が、世間に広まった瞬間だった』、「呪縛」はその後、定着したが、「第一勧銀」事件が発端だったとは初めて知った。
・『◆なぜ失敗するのか  「名経営者が、なぜ失敗するのか?」(シドニー・フィンケルシュタイン著)という本がある。この本は、著者が多くの企業経営者の失敗を分析した内容で、失敗の原因を次の7項目に集約している。 傲慢(ごうまん)=自分と会社が市場や環境を支配していると思い込む  私物化=自分と会社の境を見失い、公器であることを忘れ、公私混同する  過信=自分を全知全能だと勘違いする  排斥=自分を100%支持する人間以外を排斥する  空虚化=会社の理想像にとらわれ、現実を見なくなる。現場を忘れる  鈍感=ビジネス上の大きな障害を過小評価して見くびる  執着=かつての成功体験にしがみつく  この7項目を活用して第一生命や関電、そして第一勧銀の「触らぬ神にたたりなし」的存在による不祥事の説明を試みてみよう。 カッコ内は私の見た第一勧銀のそれぞれの項目に関連する実態である。 3社とも社会的に尊敬される大企業であり、自分たちは不祥事と縁はないと「傲慢」になっていた。 〔銀行に東京地検が家宅捜索に入るはずはない。そんなことになれば金融システムが揺らぐ、と裁判官出身の大物顧問弁護士が発言した〕 本来の顧客のことを考えず、経営を「私物化」していたからこそ、「触らぬ神にたたりなし」的存在と癒着してしまった。 〔総会屋の言うなりに不良債権になることが分かっているのに、無担保、無審査で巨額融資を繰り返した〕 自分たちの不祥事は発覚しない、あるいは問題にならないと「過信」していた。 〔他社での総会屋事件を他山の石ではなく、対岸の火事と考えていた。総会屋と関係するのも仕事だと思っていた浅はかな経営者がいた。また大蔵省(当時)検査のごまかし、検査官を接待し籠絡することが常態化しており、他行も同じようにしているから、問題ないとうそぶく役員がいた〕 経営陣に「触らぬ神にたたりなし」的存在について警告、諫言(かんげん)する人を「排斥」していた。 〔総会屋との関係を続けてはならないと経営陣に諫言した総務部長は左遷されてしまった〕 自分たちが在籍するのは立派な会社である、その評判を落としてはならない、と不祥事を隠蔽(いんぺい)することが常態化し、経営が外見のみにとらわれ、「空虚化」していた。 〔大物総会屋が亡くなったにもかかわらず、後任総会屋やその他の総会屋との関係を断とうとしなかったのは、銀行の評判が落ちることを懸念したからだ。銀行=無謬(むびゅう)との空虚な神話にとらわれていた〕 長い間の「触らぬ神にたたりなし」的存在に「鈍感」になっていた。 〔総会屋事件発覚後の株主総会においてさえ、ある経営者は現場に「うまくやってくれよ」と言った。言われた総務部長は逮捕されたため、私が株主総会を仕切ることになった。事態の深刻さを自覚せず、うまくやってくれよと発言した経営者の名前を総務部長は明かさなかった。彼は「トップに忠誠を誓うのが男のロマンだ」と悲しくつぶやいた〕 生保も、電力も、銀行も、かつての成功体験に「執着」し、ビジネスモデルの変換に苦労している業界だ。だから過去の経営者たちの「触らぬ神にたたりなし」的存在との関係をそのまま引き継いでしまう。 〔株主総会は、行員株主ばかりでシャンシャン総会。総会屋関係の会社から物品などを購入し、彼らに資金提供を続けていた。それらを断ち切ったら「行員の命が危ないから」とある役員は恐怖におののきながら語った。しかし、自己保身でしかないだろう。昔の経営者が彼らとうまく付き合ったのに、自分が関係を悪化させたくないと思っただけだ。過去もうまくやってきたのだから、先々もうまくやらねばならないと思っていた』、「失敗の原因を次の7項目に集約」はいずれも頷ける。
・『◆傲慢こそ最悪  この本が指摘する7項目の失敗の原因に、第一生命も関電も第一勧銀も見事に符合するではないか。 私は7項目の中でも「傲慢」が最悪だと考えている。企業は、傲慢になれば、その時が失敗のわなに落ちる時である。「この世をば わが世とぞ思ふ 望月(もちづき)の 欠けたることも なしと思へば」(藤原道長)の古歌にあるように、望月になれば次は欠けるだけなのである。 今や、世の中の価値観は大きく変わった。また変わらねばならない。特に感染症拡大で、私たちは生き方そのものの変革を迫られている。 しかし、いまだに会社の中に「触らぬ神にたたりなし」的存在がいる企業は多いのではないだろうか。 それは「悪」というべき存在ばかりではないだろう。過去の成功体験、偉大な先輩経営者の遺訓、失敗を恐れる気持ちなどなど。「悪」であろうとなかろうと、「触らぬ神にたたりなし」的存在を断ち切ってこそ、日本企業のイノベーションがあるのではないだろうか』、「「悪」であろうとなかろうと、「触らぬ神にたたりなし」的存在を断ち切ってこそ、日本企業のイノベーションがあるのではないだろうか」、強く同意する。
タグ:ロイター 江上 剛 時事通信 企業不祥事 ダイヤモンド・オンライン 井出豪彦 (その22)(有力メーカーや商社が関わる大規模「循環取引」疑惑が発覚!、焦点:電通関連法人 突出する政府からの事業委託 運営の不透明感に批判も、日本企業が不祥事を起こす七つの原因 ~いつまでこんなことが続くんだ!~【怒れるガバナンス】) 「有力メーカーや商社が関わる大規模「循環取引」疑惑が発覚!」 大掛かりな架空・循環取引疑惑が浮上 大掛かりな循環取引 議員がらみの可能性も 工事案件そのものが架空のケースがあるとされる 上場会社で相次ぎ循環取引が発覚 テレワークが浸透して社員のちょっとした変化に気づきにくくなると、この手の不正はますます防ぐのが難しくなりそうだ 「不正は長く続かない。銀行にもやがて粉飾がバレてしまう。もともと資金繰りは厳しいので、ノンバンクから資金を引くようになる。そんなこんなで、ちょっとしたきっかけから循環の輪の「最も弱い部分」が切れてしまい、スキームが崩壊するケースが多いのだ」、少し安心した 循環取引を回避するための3つの原則とは 「自社が循環取引に巻き込まれないための3原則」 (1)取引に関わっている取引先の「顔ぶれ」と取引が「実需」に基づくものか (2)取引の入り口(起点)と出口(終点)がはっきりしているか (3)三現主義(現場、現物、現実)が徹底されているか 「すご腕のファンド」までが登場してきたとは、ますます面白くなってきた 「焦点:電通関連法人、突出する政府からの事業委託 運営の不透明感に批判も」 電通が設立に関与した2つの社団法人が10年間で100件超の事業を委託されていた 持続化給付金事業など多岐に なぜ社団法人か 会計検査の回避も可能か 「一般社団法人」を通じることの問題点として、①「行政事業が一般社団法人を通じて電通に再委託されることで、税金が無駄に使われる可能性」、②「電通は直接の受託者ではないため、会計検査から逃れることができる」、③「トンネル会社のような再委託」することは、「何をするためにその会社をかませるのか。お金を上乗せするためなのか、契約の全体をわかりにくくするためか。いろいろな弊害が出てくる」、どういても問題が多いようだ。政府には明確に説明する義務がある 「日本企業が不祥事を起こす七つの原因 ~いつまでこんなことが続くんだ!~【怒れるガバナンス】」 第一生命保険のセールスレディーが、約19億円もの顧客資金を詐取 不正の予兆 触らぬ神に かつての日本企業、特に銀行では、「総会屋」対策が経営上の大きな課題で、それに振り回されていたのも事実だ 「呪縛」という言葉 「呪縛」はその後、定着したが、「第一勧銀」事件が発端だったとは初めて知った なぜ失敗するのか 「失敗の原因を次の7項目に集約」はいずれも頷ける 傲慢こそ最悪 「悪」であろうとなかろうと、「触らぬ神にたたりなし」的存在を断ち切ってこそ、日本企業のイノベーションがあるのではないだろうか」、強く同意する
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小売業(一般)(その5)(群馬の巨人「ベイシア」孤高の小売集団の全貌 2020年にグループの総売上が1兆円を突破、インタビュー/ベイシア創業者 土屋嘉雄 「ベイシアは“膨張”ではなく“成長”を追求してきた」、ワークマンの経営幹部は極力出社しない、年収1000万「ワークマンフランチャイズ」の内情 狭き門FCのオーナーになるための「5つの条件」) [企業経営]

小売業(一般)については、7月21日に取上げた。今日は、(その5)(群馬の巨人「ベイシア」孤高の小売集団の全貌 2020年にグループの総売上が1兆円を突破、インタビュー/ベイシア創業者 土屋嘉雄 「ベイシアは“膨張”ではなく“成長”を追求してきた」、ワークマンの経営幹部は極力出社しない、年収1000万「ワークマンフランチャイズ」の内情 狭き門FCのオーナーになるための「5つの条件」)である。

先ずは、12月17日付け東洋経済オンライン「群馬の巨人「ベイシア」孤高の小売集団の全貌 2020年にグループの総売上が1兆円を突破」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/396908
・『「本年10月をもって総売上1兆円を達成いたしました」 2020年11月19日、群馬に本拠を置く小売り企業主体のベイシアグループは、静かに1兆円(2019年11月~2020年10月の総売上高)到達のお知らせをホームページに掲載した。 売上高1兆円を超える小売りグループは、国内に10もない。直近の決算期ベースで売上高の上位を見ると、イオン、セブン&アイホールディングス(HD)、ファーストリテイリング、パン・パシフィック・インターナショナルHD(旧・ドンキホーテHD)といった誰もが知る上場企業が名を連ねる。その中で、非上場のベイシアグループは7位。まさに異色の存在である。 ベイシアグループで唯一上場するのが作業服チェーンで急成長を続けるワークマンだ。ホームセンター業界で売上高トップのカインズもグループの一角をなす。カインズとワークマンが“きょうだい”であることは、あまり知られていないだろう』、私も初めて知った。
・『M&Aをせずに1兆円に到達  ベイシアグループは1959年に群馬県伊勢崎市で服地屋として創業した「いせや」を前身とする小売り主体の企業集団で、グループ会社は28社を数える。創業者である土屋嘉雄氏(88)が会見などの表舞台に出てくる機会はほぼない。創業者一代で築き上げたグループは孤高の流通小売り集団ともいえる。 小売り業界では事業拡大の切り札としてM&Aを積極的に行ってきた企業が多い。だが、ベイシアグループはM&Aを一切行わず、自前での着実な成長路線を歩んできた。創業者の土屋嘉雄氏は、東洋経済の取材に対し「(M&Aを)否定してきたのではなく、これまで選択する必要性がなかった。規模だけの追求はしたくない」と答えた。 現在、ベイシアグループ全体をとりまとめる旗振り役はカインズの土屋裕雅会長(創業者の長男)が担っており、新たなグループ経営を見据えた取り組みが着々と進んでいる。孤高の小売り集団は売上高1兆円を達成した先に、どのような変貌を遂げるのか。 『東洋経済プラス』の短期連載「群馬の巨人 ベイシアグループの正体」ではこの記事の続きを無料でお読みいただけます。 以下の記事を配信しています。 知られざる「1兆円小売り集団」の全貌 インタビュー①/創業者・土屋嘉雄氏がすべてを語る インタビュー②/カインズ・土屋裕雅会長を直撃 インタビュー③/ワークマン・土屋哲雄専務を直撃 カインズ、ワークマン“真逆”の経営スタイル データ/3つの指標でわかるベイシアグループの実力』、「M&Aを一切行わず、自前での着実な成長路線を歩んできた」、とは大したものだ。

次に、上記記事の最後に紹介したもののうち、第一のインタビューである、12月17日付け東洋経済オンライン「インタビュー/ベイシア創業者 土屋嘉雄 「ベイシアは“膨張”ではなく“成長”を追求してきた」」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/25503
・『26歳のときに群馬県の伊勢崎市でいせやを創業し、一代で1兆円の流通グループを築いた土屋嘉雄氏。どのような思いで大目標の到達を受け止め、そして今後のベイシアグループや小売業の将来をどう考えているのかを聞いた。(インタビューは書面で行った、Qは聞き手の質問、Aは土屋嘉雄氏の回答) Q:少子高齢化やネット通販台頭の影響を受け、競争の激しい国内小売市場において、ここまで成長できた理由、大手の同業他社と決定的に違う強みをどう見ていますか。 A:10月末におかげさまで1兆円を達成いたしました(2019年11月~2020年10月の年間売上高)。要約すれば「継続」「原理原則の徹底追求」「人材の育成」「情報収集と時代への対応」ということに尽きるかと思います。 「継続」とは、潰れたりせずに事業を続けるということ。一緒に働いてくれる社員に対する責任、支持してくれるお客様のためにも、会社が継続されなければならないということです。当社の標語に「継続は力」というのがありますが、続けるところから新しい力も生まれてくると思っています。 これを実現するために、いたずらに規模の拡大を求めず、身の丈に合った成長を守り続ける。そのためにも人を育て、“膨張”でなく“成長”を追求してきました。 そして、広く情報を集め、的確に時代に反応する。いうなれば、当たり前のことですが、そのための原理原則を愚直に、徹底的に追求してきました。振り返れば、それがベイシアグループの一番の特色であると思います。 一方で「1兆円構想」「商業の工業化」「地域格差の解消」といった大きな目標を掲げて自分たちの目指す方向性や社会的な使命を意識づけてきました』、「いたずらに規模の拡大を求めず、身の丈に合った成長を守り続ける。そのためにも人を育て、“膨張”でなく“成長”を追求してきました」、ずいぶん堅実にやってきたようだ。
・『成長に2つの要因  Q:創業以来、時代や消費環境の変化に応じて見直してきた経営戦略、逆にあえて変えずに守り通してきた戦略は何ですか。 A:いろいろと社会の変化に対応して変えてきましたが、最も大きかったのは「分社経営」と「PB(プライベートブランド)化」です。 もともとベイシア(当時は「いせや」)はGMS(総合スーパー)として成長してきました。衣食住の生活必需品を総合的に扱い、店舗も8000平方メートルから1万平方メートルと大型でした。 しかし、1973年に「大店法」が施行され、1978年にはこれが強化されて500平方メートル以上の大型店の出店が強く規制されました。これを機にベイシアは分社経営に転換しました。 最初は、住関連部門を「いせやホームセンター」として専門店化し、その後「カインズ」として分社しました。「ワークマン」はフランチャイズチェーンとして1982年に分社・独立。その後、カー用品を「オートアールズ」、家電部門を「ベイシア電器」として分社、急拡大していたコンビニ部門で「セーブオン」を設立しました。 それぞれが専門性を追求、独自に成長した結果、カインズはホームセンター業界でのトップ企業、「ワークマン」は“第2のユニクロ”とマスコミから言われるような特色ある企業に成長しました。 経営理念を共有化する以外、グループとしてとくにコントロールすることもなく専門性を追求してきて、他に例を見ない企業集団になったと思います。ここからベイシアグループ独特のシナジーも生まれています。 オリジナル商品化(PB商品)への取り組みでは、最初は「商工分離」で、作るのはメーカーに任せ、自分たちは販売に徹するという方針でしたが、アメリカなど海外からの直輸入を経てオリジナル商品化に取り組みました。これは一般的に低価格化が目的でしたが、カインズは機能、デザインなどNB(ナショナルブランド)を超える価値を追求、多くの賞もとって、オリジナル商品化をリードする企業になっています。 守り通してきたものは、「よりいいものをより安く」という基本理念です。これはいつの時代にも、どこでも普遍的な理念だと思います。 もう1つ、当グループには「クリーンポリシー」というものがあります。取引先との饗応、社員間での金銭の貸借を一切禁じたもので、その徹底ぶりは全産業でみてもトップクラスのものだといえます』、「分社経営」で「それぞれが専門性を追求、独自に成長した結果、カインズはホームセンター業界でのトップ企業、「ワークマン」は“第2のユニクロ”とマスコミから言われるような特色ある企業に成長」、大したものだ。「「クリーンポリシー」・・・取引先との饗応、社員間での金銭の貸借を一切禁じたもの」、ここまで徹底するとは驚かされた。
・『規模だけの追求はしない  Q:大手小売企業では珍しく、M&Aに頼らず自社成長にこだわってきた理由を教えてください。また、グループ企業の統一感を打ち出すのではなく、それぞれ異なる形で業態を独立させた意図は何だったのでしょうか。 A:吸収合併などを一切行わずに、オーガニックに成長してきたことは、ベイシアグループのきわめて大きな特色です。 しかし、M&Aを否定してきたものではなく、これまでのところ、選択する必要性がなかったから、といったほうが正しいと思います。いたずらに規模の拡大を追求しないという方針に沿ったものです。 今後、戦略的に必要であれば(M&Aを)行うこともあります。デジタル時代になって専門的な知識、機能が必要になり、それを社内で育てるには時間がかかりそうだという場合には、そのような企業を吸収や合併することも必要になるでしょう。 しかし、規模だけの追求はしたくありません。機能、技術などで一体になることで企業価値が上がるものでなければ意味がありません。合併しても、企業理念は共有できなければならないと思います。 異なる業態で独立したのは、専門性を追求することで特色のある企業となり、グループ全体として世界観が広がるからです。そのうえで、お互いが切磋琢磨して競うほうがいいと思っています。グループシナジーもそのほうがより広いものとなるでしょう。 Q:カインズ会長の長男・土屋裕雅氏は、PB開発やIT戦略の強化を推進しています。こうした裕雅氏の経営をどうみていますか。 (裕雅氏は)デジタル時代に果敢に挑戦し、新しい小売業のスタイルを創造しようとしています。「IT小売業」と言っていますが、小売業の特性を最大限に活かした企業像を作ってもらいたいと思います。 また、積極的に広い世界の人たちとコミュニケーションをとっています。異業態の人たちとも交流しています。これからの時代に大切なことです。今後はグループ全体をどうリードし、何を創り出すか、楽しみにしています。 Q:三井物産出身でご自身の甥に当たる土屋哲雄氏を2012年にワークマンに招聘した背景には、どのような狙いがあったのですか。 ワークマン専務(哲雄氏)に対しては、三井物産という世界企業で培われた視野はこれからのベイシアグループにとっても極めて貴重なものだと楽しみです。若い人たちにとっても大きなインパクトを持ち、目標になる人材です。 結果として、これまで純血主義できたベイシアグループも変わっていくべきで、必要なら外部のすぐれた人たちを積極的に招聘していくべきでしょう。そのほうが、若い人たちも大きく育つと思います。 Q:企業経営において、創業家が担うべき、もしくは創業家に求められる役割は何だと考えていますか。 A:創業家というものをあえて意識してきたわけではありませんが、創業の歴史は極めて重要な企業文化だと思います。 根がしっかりしていなければ樹は大きくなれない、という例えの通り、企業文化をしっかりと守り、継承することは大切だと思います』、「ワークマン専務」へのインタビューは第三の記事で紹介するが、なかなかの人物のようだ。
・『新しい小売業が誕生する  Q:アマゾンを筆頭にEC(ネット通販)が拡大し、GMSやコンビニ業態の成長が頭打ちとなる中、画一的なサービスや品ぞろえでの店舗運営は限界にあるとも言われています。チェーンストア経営のメリットとデメリットをどう考えていますか。 地域により需要も異なる。当然のことながら、地域のニーズに合った品ぞろえは小売業の原点です。 一方で、商品開発や調達、とくに海外開発などではチェーンストアとしての統一性と一定のスケールが重要です。運営面でのチェーンストア方式と地域ニーズへの対応は、両方ともますます重要になるもので矛盾するものではありません。 ECとリアルは両方を融合して最もお客様にとって便利なシステムを追求するべきで、それはITの活用で可能です。新しい小売業のスタイルが誕生すると思っています。 Q:消費者のニーズはこれからどう変化していき、今後の国内小売市場で生き残る企業の条件は何だと考えていますか。 A:一人ひとりのお客様のニーズに的確に応えるということは、どのような時代になってもサービス業の究極です。そのためにECやリアルを、それぞれの利点を活かして融合していくべきでしょう。 ECにはECならではの便利さがあり、リアルにはECにはない楽しさがあります。フードコートのような憩いの場や商品体験ができる場を提供することは、ECにはないものです。 また、小売業は「膨大な人たちが集まる」という、他の産業にはない特色があります。この、人との出会いとそこから生まれるデータの蓄積は、これからの楽しい社会をつくるうえで極めて貴重なものです。それをいかに活用していくかが、これからのサービス業の大きな使命であり、楽しみでもあると思います。 グループシナジーも、それぞれの企業にそれぞれのニーズを持ったお客様が集まります。そこから面白い結果が生まれるでしょう。(カインズやベイシアが出店している商業施設「くみまちモール」のような)さまざまな機能を持つ企業の集積となるモールは、これからの地域の活性化に大きな役割を果たせると思います』、今後の「ベイシア」グループの展開が楽しみだ。

第三に、11月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した株式会社ワークマン専務取締役の土屋哲雄氏による「ワークマンの経営幹部は極力出社しない」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/252734
・『今、最も注目を集める急成長企業ワークマン。 10月16日、横浜・桜木町にオープンした次世代店舗「#ワークマン女子」1号店には、3時間の入店待ち行列ができたという。 そんなワークマンは「しない会社」だ。◎社員のストレスになることはしない 残業しない。仕事の期限を設けない。ノルマと短期目標を設定しない。◎ワークマンらしくないことはしない 他社と競争しない。値引をしない。デザインを変えない。顧客管理をしない。取引先を変えない。加盟店は、対面販売をしない、閉店後にレジを締めない、ノルマもない。 ◎価値を生まない無駄なことはしない 社内行事をしない。会議を極力しない。経営幹部は極力出社しない。幹部は思いつきでアイデアを口にしない。目標を定め、ノルマを決め、期限までにやりきるといった多くの企業がやっていることは一切しない。とりわけ「頑張る」はしないどころか、禁止だ。 それでも業績は、10期連続最高益を更新中だ。 2020年3月期は、チェーン全店売上(ワークマンとワークマンプラス)が1220億円(前年同期比31.2%増)。営業利益192億円(同41.7%増)、経常利益207億円(同40%増)、純利益134億円(同36.3%増)となった。 なぜ、コロナ禍でも業績が伸び続けているのか。 「データ活用ゼロ」だったワークマンが、どうやって自分の頭で考える社員を育てたのか。 このたびワークマン急成長の仕掛け人である土屋哲雄専務が、Amazonに負けない戦略など4000億円の空白市場を切り拓いた秘密を語り尽くした初の著書『ワークマン式「しない経営」』がジュンク堂書店池袋本店、ブックファースト中野店などでビジネス書ランキング1位となり、発売たちまち重版。日経新聞にも掲載された。 なぜ、「しない経営」が最強なのか?(スタープレーヤーを不要とする「100年の競争優位を築く経営」とは何か。 ワークマン急成長の仕掛け人、土屋哲雄専務が初めて口を開いた』、普通はXXする経営が一般的なのに、「しない経営」をモットーにしているとは、素晴らしい会社だ。
・『なぜ経営幹部は極力出社しないのか  (土屋哲雄氏の略歴はリンク先参照) 会社の中で付加価値を生まない時間をどんどん削っても、生産性が上がらないのはなぜか。 それは付加価値を生まない時間をつくる人がいるから。 その犯人は経営者や幹部だ。 優秀な経営者や幹部ほど、社員の余計な仕事をつくる。思いついたことをまわりに言うと、経営者や幹部の言うことだから関心を持たざるをえない。 たまたまエチオピア経済のニュースを見た経営者が、「エチオピアが熱いというが、アパレルは生産しているのか?」と部長に聞く。 部長は忖度(そんたく)して「さっそく調べます」と言って、自分の部下に「明日までにエチオピアで生産しているアパレル業者についてレポートをまとめてくれないか」と仕事を振る。 部下は自分の仕事をいったん止め、ネットでエチオピアのビジネスをリサーチする。 結果として、エチオピアは関税面でアメリカにもヨーロッパにも有利に輸出できる有望な産地であることがわかる。 でも会社には差し迫ったニーズはない。なにしろ遠すぎる。 たまたま聞きかじったトレンドの調査を部下に投げるなんて一番やってはいけないことだ。その分、継続的な重要テーマへの時間が削がれる。必要なら部下に振らないで、自分で調べればいい。 そのために、経営者や幹部は現場に行って極力出社しなければいい。 現場で発見したことは長短あるが、どこかで聞きかじったテーマより重要性が高い。 現場には改善と改革のヒントが隠されている。経営者が新しいテーマを出してもいいが、1年で数回程度にすべきだ。それまでじっと我慢してため込む。その間に忘れたら重要性が低い証拠だ』、「付加価値を生まない時間をつくる人がいるから。 その犯人は経営者や幹部だ。 優秀な経営者や幹部ほど、社員の余計な仕事をつくる。思いついたことをまわりに言うと、経営者や幹部の言うことだから関心を持たざるをえない」、「現場には改善と改革のヒントが隠されている。経営者が新しいテーマを出してもいいが、1年で数回程度にすべきだ。それまでじっと我慢してため込む。その間に忘れたら重要性が低い証拠だ」、その通りだ。。
・『稟議中も発議者は座らない  当社の属するベイシアグループでは、創業時から現場主義が徹底されている。 社長が会社にいるのは週1回、私は週2回だ。 出社したときには稟議がある。ワークマンの稟議は発議者が決裁者のデスクの前に立って説明する。 私は最初その現場を見て、上下関係が際立ってよくないと思ったが、実際に立って説明すると、余計なことを言わないからすぐ終わっていい。社長の出社を週1回にするためにも立ち稟議は必要だ。 私は出社しない日は、加盟店で販売や在庫状況をチェックして自動発注の精度を確認したり、地方の不動産を見て、売れる場所かどうかを判断したりしている』、「社長が会社にいるのは週1回、私は週2回だ」、よくこんなもので回るものだとも思うが、通常はどうでもいい質問や指示で現場を混乱させているのだろう。「稟議は発議者が決裁者のデスクの前に立って説明する・・・実際に立って説明すると、余計なことを言わないからすぐ終わっていい」、なるほど。
・『幹部は思いつきでアイデアを口にしない  幹部が思いつきで何かを始めることほど会社にとってマイナスなことはない。 社員はやらなくてもいい仕事に時間を取られて迷惑だ。 ビジネス書を読んで思いついたこと、セミナーや勉強会で聞きかじったことなどを、すぐに自社に当てはめて実施しようとしても成果は出ない。 「これからはAIだ」「ビッグデータだ」「DXだ」と2年くらいで消えていく言葉(バズワードという専門用語)に惑わされ続ける。 経営者が思いつきでいろいろやろうとすると、本当に仕事に没頭している社員には迷惑だ。 フラフラする社長を見るにつけ社員はイライラする。 「しない経営」を実施するのは、感度がよく、いい経営者ほどつらい。 「しない経営」は私への戒(いましめ)でもある。 本書で触れたように、私は何にでもすぐに飛びつくジャングル・ファイターだった。 元来やりたがりで、おいしそうな話があるとすぐにやってみたくなり、ちょこちょこ仕掛けるのが大好き。トレンドには乗りたい。One to Oneマーケティングの顧客管理や、お客様に応じて値段を変えるダイナミック・プライシングも試してみたくて興味津々。 だが、ワークマンのような一つのことを深掘りするのが得意な会社には有害だ。 だからじっと堪えた。 私が会社にいる間は、客層拡大という目標と、それを支える「しない経営」と「エクセル経営」だけでいい。絶対にやるまい。 いい経営者ほどアイデアが浮かぶ。 ビジネス書を1冊読むたびに新しい事業アイデアや改革案が浮かぶ。 それを封印するのは結構つらい。でも、未熟な私が並みの経営者になるには、そのつらさを乗り越えなければいけない。 鈍感に見えるくらい愚直に一つの目標しか持たず、それに没頭するのが本当にいい経営者だ。 この8年間、ずっとそう自分を戒めてきた』、「いい経営者ほどアイデアが浮かぶ。 ビジネス書を1冊読むたびに新しい事業アイデアや改革案が浮かぶ。 それを封印するのは結構つらい。でも、未熟な私が並みの経営者になるには、そのつらさを乗り越えなければいけない。 鈍感に見えるくらい愚直に一つの目標しか持たず、それに没頭するのが本当にいい経営者だ」、自分らしさを「封印して」いるのは、大変だろう。
・『【著者からのメッセージ】  急成長ワークマンの仕掛け人が初めて全てを語る! ワークマンは「しない会社」だ。 ◎社員のストレスになることはしない(残業しない。仕事の期限を設けない。ノルマと短期目標を設定しない。 ◎ワークマンらしくないことはしない(他社と競争しない。値引をしない。デザインを変えない。顧客管理をしない。取引先を変えない。加盟店は、対面販売をしない、閉店後にレジを締めない、ノルマもない。 ◎価値を生まない無駄なことはしない(社内行事をしない。会議を極力しない。経営幹部は極力出社しない。幹部は思いつきでアイデアを口にしない。目標を定め、ノルマを決め、期限までにやりきるといった多くの企業がやっていることは一切しない。とりわけ「頑張る」はしないどころか、禁止だ。 それでも業績は10期連続最高益を更新中だ。 2020年3月期は、チェーン全店売上(ワークマンとワークマンプラス)が1220億円(前年同期比31.2%増)。営業利益192億円(同41.7%増)、経常利益207億円(同40%増)、純利益134億円(同36.3%増)となった。 2020年9月末現在、ワークマンとワークマンプラスの店舗数は885店舗(ワークマン663店舗、ワークマンプラス222店舗)となり、ユニクロの国内店舗数を抜いた』、「しない会社」のなかでも、「目標を定め、ノルマを決め、期限までにやりきるといった多くの企業がやっていることは一切しない。とりわけ「頑張る」はしないどころか、禁止だ」、それで「10期連続最高益を更新中」、とは恐れ入った。
・『「しない会社」が、どのようにブルーオーシャン市場を発見し、客層拡大して業績を上げたのか。どのように自分の頭で考える社員を育てたのか。 これが本書のテーマである。 このテーマを解読する上で大切なのが、本書で初めて紹介する「しない経営」と「エクセル経営」だ。 「しない経営」により「社員よし」「加盟店よし」「取引先よし」「会社よし」の”四方よしの経営”ができている。 「しない」とは、相手の立場で考えると、「されない」ということだ。 無用な干渉をされないことで、自分の時間を有効に使えるので、ストレスフリーで売上を上げ、自分のペースで楽しく働くことができる。 ワークマンにきてびっくりしたのが、データ活用ゼロの会社だったことだ。 店舗在庫の数量データすらなかった会社が、高度なAIソフトやデータサイエンティストを使わずに、ただのエクセルを活用することで、どのように変わったか。 ワークマンプラスの品揃えは「エクセル経営」で決まった。 2012年以来、8年間飽きずにコツコツとデータ活用研修をやり続けている。 「継続は力なり」とはよく言ったもので、社員のデータ活用力は年々高まっている。 まったく自信のなかった人、存在感のなかった人、店長に信頼されていなかった人が、いまやトップクラスの人材になり、会社を引っ張るリーダーになった。 この本の最終章には、早稲田大学大学院・ビジネススクールの入山章栄(いりやま・あきえ)教授との対談で、いま話題の「両利きの経営(知の探索×知の深化)」はどうすれば実現するかを考察した。 本書で紹介する方法は特別なものではない。すべての企業で実施できるものばかりだ。 ビジネスに携わる方には企業変革のケーススタディとして、経営者や幹部の方には、経営変革の参考材料として活用いただければと思う。 この本は私の初めての本だ。成功談や美談を書く気は一切ない。 還暦直前に入社した私が、拙い頭でどう考え、実行したか。 それだけをありのままに書こうと思う。 ps.【だから、この本。】で5回、インタビューを受けました。こちらもぜひご覧ください』、時間が出来たら読んでみたい。 
タグ:東洋経済オンライン 小売業 ダイヤモンド・オンライン (一般) 【著者からのメッセージ】 (その5)(群馬の巨人「ベイシア」孤高の小売集団の全貌 2020年にグループの総売上が1兆円を突破、インタビュー/ベイシア創業者 土屋嘉雄 「ベイシアは“膨張”ではなく“成長”を追求してきた」、ワークマンの経営幹部は極力出社しない、年収1000万「ワークマンフランチャイズ」の内情 狭き門FCのオーナーになるための「5つの条件」) 「群馬の巨人「ベイシア」孤高の小売集団の全貌 2020年にグループの総売上が1兆円を突破」 カインズとワークマンが“きょうだい”であることは、あまり知られていないだろう M&Aをせずに1兆円に到達 M&Aを一切行わず、自前での着実な成長路線を歩んできた 「インタビュー/ベイシア創業者 土屋嘉雄 「ベイシアは“膨張”ではなく“成長”を追求してきた」」 一代で1兆円の流通グループを築いた土屋嘉雄氏 いたずらに規模の拡大を求めず、身の丈に合った成長を守り続ける。そのためにも人を育て、“膨張”でなく“成長”を追求してきました 成長に2つの要因 「分社経営」と「PB(プライベートブランド)化」 れぞれが専門性を追求、独自に成長した結果、カインズはホームセンター業界でのトップ企業、「ワークマン」は“第2のユニクロ”とマスコミから言われるような特色ある企業に成長しました 「クリーンポリシー」 取引先との饗応、社員間での金銭の貸借を一切禁じたもの 規模だけの追求はしない 新しい小売業が誕生する 今後の「ベイシア」グループの展開が楽しみだ 土屋哲雄 「ワークマンの経営幹部は極力出社しない」 普通はXXする経営が一般的なのに、「しない経営」をモットーにしているとは、素晴らしい会社だ なぜ経営幹部は極力出社しないのか 付加価値を生まない時間をつくる人がいるから。 その犯人は経営者や幹部だ。 優秀な経営者や幹部ほど、社員の余計な仕事をつくる。思いついたことをまわりに言うと、経営者や幹部の言うことだから関心を持たざるをえない 現場には改善と改革のヒントが隠されている。経営者が新しいテーマを出してもいいが、1年で数回程度にすべきだ。それまでじっと我慢してため込む。その間に忘れたら重要性が低い証拠だ 稟議中も発議者は座らない 社長が会社にいるのは週1回、私は週2回だ 稟議は発議者が決裁者のデスクの前に立って説明する 実際に立って説明すると、余計なことを言わないからすぐ終わっていい」 幹部は思いつきでアイデアを口にしない いい経営者ほどアイデアが浮かぶ。 ビジネス書を1冊読むたびに新しい事業アイデアや改革案が浮かぶ。 それを封印するのは結構つらい。でも、未熟な私が並みの経営者になるには、そのつらさを乗り越えなければいけない。 鈍感に見えるくらい愚直に一つの目標しか持たず、それに没頭するのが本当にいい経営者だ 「しない会社」のなかでも、「目標を定め、ノルマを決め、期限までにやりきるといった多くの企業がやっていることは一切しない。とりわけ「頑張る」はしないどころか、禁止だ」、それで「10期連続最高益を更新中」、とは恐れ入った
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日本企業のコーポレート・ガバナンス問題(その9)(コロワイド・蔵人金男会長 外食日本一を目指しМ&Aに邁進、1000社超の上場企業が総会の結果を訂正 株主軽視の総会は通用しない、インタビュー①/マネックスグループ社長 松本大 「総会は穏便に滞りなく。経営者の腰が引けている」、専門家が指摘する議決権“集計外し"の根本原因 株主総会の実務に詳しい中島茂弁護士に聞く) [企業経営]

日本企業のコーポレート・ガバナンス問題については、2016年10月30日に取上げた。久しぶりの今日は、(その9)(コロワイド・蔵人金男会長 外食日本一を目指しМ&Aに邁進、1000社超の上場企業が総会の結果を訂正 株主軽視の総会は通用しない、インタビュー①/マネックスグループ社長 松本大 「総会は穏便に滞りなく。経営者の腰が引けている」、専門家が指摘する議決権“集計外し"の根本原因 株主総会の実務に詳しい中島茂弁護士に聞く)である。

先ずは、本年10月29日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの有森隆氏による「コロワイド・蔵人金男会長 外食日本一を目指しМ&Aに邁進」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/280616
・『蔵人金男・コロワイド代表取締役会長は1947年8月3日生まれの73歳。83年3月に社長に就任して以来、37年間経営トップを続けているワンマンカンパニーだ。 大戸屋に敵対的TOB  9月9日、定食チェーンの大戸屋ホールディングス(以下、大戸屋)に対するTOB(株式公開買い付け)が成立したと発表した。外食業界で敵対的TOBが成立するのは初めてのことだ。大戸屋株式の保有比率を19%から47%に引き上げた。11月4日に開く臨時株主総会で、現社長の窪田健一を含む10人の取締役の解任と、コロワイドの蔵人賢樹専務ら7人の取締役の選任を求める株主提案をしている。 コロワイドの株主提案だけが議案で可決されれば経営陣が刷新され、大戸屋はコロワイドの連結子会社となる。総会後の取締役会で金男の長男、賢樹が社長に就任する。 2019年10月、大戸屋の創業家から同社株を取得したコロワイドが大戸屋の筆頭株主として突如、登場した。子会社になるよう持ちかけたが、大戸屋の経営陣は断固拒否。壮絶なバトルに突入した。 この過程で、さまざまなハプニングが起こった。 「デイリー新潮」(20年7月15日付)が、〈コロワイドを率いる蔵人金男会長が32億円もの巨額詐欺に遭っていた〉と報じた。 7月30日、福島県郡山市の飲食店「しゃぶしゃぶ温野菜 郡山新さくら通り店」で爆発があり、内装工事の現場責任者が死亡。19人が重軽傷を負う惨事となった。ガス漏れが原因とみられている。郡山市の店は焼き肉の「牛角」などを展開するレインズインターナショナルが運営。レインズはコロワイドの全売り上げの4割強を叩き出している。金男が経営不振に陥ったレインズを買収した。 臨時株主総会に向け、大戸屋の経営陣の首のすげ替えを敢行しようとしているさなか、金男の過去の暴言が暴露された。17年に発行された社内報に「挨拶もできない馬鹿が多すぎる」「生殺与奪権は、私が握っている」などと書かれていた。 「カンパニーとは同じパンを食べる仲間、という意味だ」 金男の口癖である。傘下に収めた企業の本社は横浜ランドマークタワーにあるコロワイド本社内に移転させる。一体感を基礎に、傾いた企業を素早く再建し、軌道に乗せるのが金男のやり方だ。 学歴・経歴に関係なく力があればどんどん登用する半面、実績を示せなくなった役員を更迭するのは日常茶飯事だ。 今年6月の大戸屋の株主総会で完敗した金男は敵対的TOBに打って出た。情に訴えるのをやめて、資本の力でねじ伏せる決断をした』、「〈コロワイドを率いる蔵人金男会長が32億円もの巨額詐欺に遭っていた〉との「デイリー新潮」報道は、結局どうなったのだろう。
・『1977年、金男は神奈川県逗子市にあった父親の中華料理店を引き継ぎ、自分でノコギリと金づちを使って炉端焼き居酒屋「甘太郎」の1号店に模様替えした。 99年、株式を店頭公開。2000年、東証2部(02年1部へ指定替え)への上場を機に、経営不振に陥った外食企業のM&Aを開始した。スタート時点では「北海道」「いろはにほへと」など居酒屋がほとんどだった。 00年代、コロワイドはモンテローザ、ワタミとともに居酒屋の「新ご三家」と呼ばれるようになったが、若者の酒離れが進み、脱居酒屋へと経営のかじを切る。 12年10月、焼き肉店チェーンの「牛角」を運営するレックス・ホールディングス(現レインズインターナショナル)を子会社にした。買収額は137億円。家族連れを取り込むのが狙いだった。グループの店舗数は2倍の約2200に拡大。グループ全体の食材の調達や加工を行うセントラルキッチン方式を導入した。 14年、305億円を投じ、回転寿司チェーン「かっぱ寿司」のカッパ・クリエイトを買収した。「かっぱ寿司」は「安かろう、まずかろう」との悪いイメージに染まってしまっていて、3年の間に社長が4人交代するなど苦戦が続く。 「大戸屋の買収は第2のかっぱ寿司になりかねない」(外食担当のアナリスト)と懸念されている。 金男は外食日本一を目指している。牛丼チェーン「すき家」などを展開するゼンショーホールディングスの6304億円(20年3月期)がトップ。コロワイドは大戸屋の売り上げを単純合算しても2598億円(同期)。ゼンショーの背中は遠い。コロナ不況下、外食株は安値をつけ、「絶好の買い場」(外食産業の動向に詳しい中堅証券会社の役員)となっている。金男の次のターゲットはどこになるのか。 スキャンダルはあまたあったが突破力を評価して成熟度はプラス4点。大戸屋に“再建社長”として送り込む長男、賢樹の経営力は未知数だ。後継者として実績を積ませるための布石だろうが、この人事が吉と出るか。老害度はマイナス3点とした。 =敬称略 ■成熟度 +4 ■老害度 -3 ※筆者が成熟度を+1~+5、老害度を-1~-5で評定)』、「大戸屋」経営陣を「コロワイド」系に入れ替え、手作りを「セントラルキッチン方式」に変更するのだろうが、手作りに親しんだ顧客や中核社員を繋ぎ止められるか、がカギだろう。

次に、11月10日付け東洋経済オンライン「1000社超の上場企業が総会の結果を訂正 株主軽視の総会は通用しない」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/25178
・『9月に大手信託銀行で明らかになった議決権数の不適切な取り扱い。今回の問題は総会の実態に目を向けるいい機会だ。4人の識者のインタビューとともに日本の株主総会が抱える課題を浮き彫りにする。 今年9月、上場企業の株主名簿管理人である信託銀行が、株主総会で数えるべき一部議決権を集計していなかったという、“不都合な真実”が明らかになった。 三井住友信託銀行株式会社(当社の株主名簿管理人)において、一部議決権の未集計が判明したため(中略)本報告書を提出する――。10月5日、東証1部上場で高級フランス料理店を展開するひらまつは訂正臨時報告書を金融庁に提出した。 ひらまつは、6月26日に開催した株主総会の議決権行使結果を6月29日に開示していたが、これを訂正した。結果、社外取締役・楠本正幸氏の18.14ポイントを筆頭に、取締役選任議案の6人と監査役選任議案の1人、7人全員の賛成率が10ポイント以上も引き上がった。 9月末以降、ひらまつのほかにも1000社を超す上場企業が株主総会の議決権行使結果について訂正臨時報告書を提出している。これは9月24日に、三井住友信託銀行とみずほ信託銀行のそれぞれが記者会見を開いて、顧客企業の代理人として郵送で受け取った議決権行使書の一部をカウントしていなかったと明らかにしたことの影響だ。 東洋経済が10月末までに開示された訂正報告書を調べたところ、取締役選任議案と監査役選任議案に関して5ポイント以上の訂正があった会社が4社あることがわかった(下表)。 9月24日の会見で三井住友信託銀行は「再集計により賛成率が約16ポイント下がった(上場企業の)議案が2つあった」と説明したが、当該議案があった企業名などは明かしていない。現時点で、訂正報告書からもそれに該当する企業は発見できていない』、「1000社を超す上場企業が株主総会の議決権行使結果について訂正臨時報告書を提出」、とは影響がずいぶん広がったものだ。ただ、議決やり直しになるものがなかったのは不幸中の幸いだ。
・『議案の可否に影響を及ぼさなければ問題ない?  株主名簿管理人が数えるべき議決権数をカウントしないという前代未聞の事態はなぜ起こったのか。三井住友信託とみずほ信託が集計業務を委託していた折半出資の合弁会社、日本株主データサービス(JaSt)が行っていた特殊な事務処理に起因する。 JaStは総会シーズンに届く膨大な議決権行使書をスムーズに処理するため、株主総会が集中する3月、5月、6月について、郵便局に依頼して翌日に届ける予定の議決権行使書を(本来予定より)1日早く届けてもらう「先付け処理」を行ってきた。 問題を招いたのは株主総会前日に届いた議決権行使書の扱いだ。というのも、JaStは先付け処理で届いた議決権行使書を、その日のうちにOCR(光学文字認識)機で読み取っていたにもかかわらず、手続き上の受領日は本来届くはずだった日付(実際の配送日の翌日)としていたからだ。 一般に事前の議決権行使期限は株主総会前日を最終日と設定している。つまり、先付け処理で総会前日に届いた議決権行使書は、翌日(締め切り後)の受領となるため集計から外れてしまうのだ。もちろん、実際に届いたのは期限内であり、民法でも郵便物が物理的に到着した日を基準に考えることから、「集計結果に算入するべきだった」(西田豊・三井住友信託銀行専務)。 焦点は適正に集計されていれば、結果が異なる議案があったかどうかだ。会見で三井住友信託やみずほ信託は「調査したが、議案の可否に影響を及ぼす事案はなかった」と繰り返した。だが、これは2020年5月以降の株主総会についてのみ。先付け処理は20年近く続けられていた可能性があるが、2020年4月以前については「データはすべて消去した」(西田氏)ため、調べようがないのだ』、「2020年4月以前については「データはすべて消去した」」、とは驚かされた。データ消去は首相官邸だけの特技ではなかったようだ。
・『発覚は偶然の産物  今回、議決権行使書の”集計外し”が発覚したのは、東芝の株主の声がきっかけだった。同社に対し、シンガポールの投資ファンド、3Dオポチュニティー・マスター・ファンド(3D)や、エフィッシモ・キャピタル・マネジメントが、会社提案とは異なる社外取締役の選任を株主提案していた。 結局、東芝の株主総会で会社提案が可決され、株主提案は否決されたが、議決権の集計結果に疑問を持った3Dが東芝に確認を要求。東芝が株主名簿管理人である三井住友信託に調査を要請した結果、JaStの不適切な処理が発覚した。 これにはちょっとした偶然も絡んでいる。東芝の株主総会は7月31日に開催された。本来なら先付け処理の期間外だが、コロナ禍で3月決算会社のいくつかが7月に総会を開いたことで(東芝もその1社)、今年はJaStが7月総会分も先付け処理を行ったのだ。ファンドの指摘がなければこの先も”集計外し”は続いていた可能性が高い。 JaStに業務を委託している三井住友信託、みずほ信託、日本証券代行、東京証券代行の4社は上場企業全体の約58%から議決権の集計を受託している。過去20年近く先付け処理が行われていたとすれば、長年にわたって、数多くの企業が影響を受けたことになる。 もっとも、ほとんどの企業の訂正幅は1%未満で、議案の可否に影響もなかった。誤差の範囲ともいえる訂正だったためか、問題発覚の直後こそ大きく報じられたものの、早々にトーンダウンした。しかし、今回の問題を単に信託銀行の事務処理ミスと片付けていいのか。企業と信託銀行という株主総会の運営側が依然として株主を軽視している、その一端が現れただけではないか。 そうした問題意識から、企業経営者兼アクティビストの松本大氏、外国機関投資家でスチュワードシップ活動の責任者を務める三瓶裕喜氏、コーポレート・ガバナンスや総会実務に詳しい中島茂弁護士、会社法の専門家である田中亘教授の4人に、今回の一件に対する受け止めや株主総会についての問題意識を聞いた』、興味深そうだ。
・『信託銀行の姿勢が”集計外し”を生んだ  4人とも集計すべき議決権を集計しなかったことは論外としつつ、むしろ、その背景にある日本の株主総会に関する諸問題を指摘する。具体的な中身は各インタビューを読んでいただきたいが、ここでは2点補足をしておきたい。 まず問われるべきは、株主名簿管理人としての信託銀行の姿勢だ。 記者の手元に三井住友信託銀行が発行した「株主総会想定問答事例集 2020年3月版」がある(上写真)。これは企業に対して配布している冊子で、合計122項目にわたって、さまざまな質問を想定した回答例が解説付きで載っている。 “お客様”である企業に対して続けている手厚いサービスの一貫だろうが、結果的に企業が総会で「回答事例を読み上げる」ことを助長してきた。こうした株主を軽視するような信託銀行の姿勢が議決権の”集計外し”を生んだのではないか。 2つ目は企業における総会当日の議決権行使の扱いだ。 実は、当日の議決権行使を集計していない企業は多い。全国株懇連合会の2019年の調査によれば、臨時報告書の開示で当日行使を行った株主の一部の議決権のみ集計、または集計しないと答えた企業は全体の約83%に達する。 事前の議決権行使や委任状で賛成が確定している以上、当日の会場では拍手などで意思を確認すれば十分という判例があるからだ。しかし、この事前の議決権行使の集計に漏れがあることが今回明らかになった。2020年5月~7月の3カ月分だけで最大16ポイントも異なる議案があった。となれば、事前の賛成多数が微妙だったケースはあったかもしれない。 冒頭で挙げたひらまつの18ポイントの差異のうち、10ポイント以上がJaStの“集計外し”による影響で、残りの数ポイントは総会当日の議決権行使を集計に加えたことで生じた。大株主に当日の議決権行使について問い合わせ、賛成に加算したという。同社の場合、再集計で賛成率は高くなったが、ほかの上場企業にその逆(反対率の上昇)がなかったとは言い切れない。 JaStの先付け処理問題をきっかけに、日本の株主総会の実態に目を向けるべきだ』、信託銀行のミスがコーポレート・ガバナンスの実務面の問題に波及したようだ。

第三に、11月10日付け東洋経済オンライン「インタビュー①/マネックスグループ社長 松本大 「総会は穏便に滞りなく。経営者の腰が引けている」」を紹介しよう。
・『信託銀行が顧客から受託していた議決権行使書の集計業務で、郵送された議決権書の一部がカウントされていなかった問題を専門家はどう見ているのか。 インタビューの1人目は、創業者として20年以上にわたって企業のトップを務め、直近では「アクティビストファンド」のマネージャーとしても活動するマネックスグループの松本大社長。 今回の一件について「悪意があったとは思わない」とする一方で、「信託銀行の姿勢には問題を感じていた」と切り出した。そして、株主総会運営における大胆な法改正のアイデアも語った(Qは聞き手の質問、Aは松本氏の回答)』、興味深そうだ。
・『私はアドバイスを無視して自由にやっている  Q:三井住友信託銀行やみずほ信託銀行が議決権の一部を集計していなかったということが明らかになりました。この件をどう見ていますか。 A:実際には株主総会の前日に議決権行使書が到着していたのだから、「株主の大切な議決権なんだからちゃんと数えよう」という発想を持ってほしかった。 けれども、私はそこ(総会前日の到着分を集計しなかったこと)に悪意があったとは思わない。信託銀行としては、あくまで総会に間に合わせるためにちゃんとカウントしようとしていたと解釈している。 今回のことで信託銀行への信頼が大きく低下したとは思わない。一方で、株主総会に対する信託銀行の姿勢には問題を感じていた。 Q:どういった問題でしょうか。 A:株主総会へ向けて、信託銀行とリハーサルをやるのだが、彼らからは「質疑応答を早めに切り上げてください」とアドバイスを受ける。 私は創業社長でこれまで20回以上の株主総会をやってきた経験があるので、リハーサルでは「はい、はい」と聞き流して、当日はアドバイスを無視して自由にやっている。 だが、通常の社長はアドバイス通りに総会の質問を早めに切り上げようとしてもおかしくない。 Q:日本の経営者は株主との対話にあまり積極的ではありません。その背景には信託銀行の指導があるということですか。 A:日本の経営者は顧客に会うことはまったく厭わない。強い批判や要望を出されても、「ありがとうございます」と言って話を聞く。 しかし、相手が株主だと「会いたくない」と言う経営者が多い。これは経営者の人格の問題ではなく、「そういうことはやらないものなんです」と(株主対応の)担当社員や信託銀行が言うので、腰が引けているケースが多いように思う。 上場企業の経営者の中には社長就任時に「開かれた株主総会にして、大勢の株主の意見を聞きたい」と思う人は大勢いるはずだ。だが、株主総会はなるべく穏便に、滞りなく運営したほうがいいという担当者や信託銀行の意見に従ってしまう。 Q:それはやはり経営者の問題では? A:総会実務の担当者は長年の経験がある。信託銀行も株主対策の専門家だ。対して、社長は就任したばかりだったりする。社長としてやらなくてはいけないミッションは山積みで、「株主総会のことで戦ってもしょうがない」と思ってしまい、「分かった。今までどおりでいい」とつい言ってしまうのだろう。結局、昔からやってきた総会のやり方を変えられない。 Q:事なかれ主義や前例踏襲主義が実務側に強いという問題意識ですね。どのようにすれば改善できるでしょうか。 A:株懇(株式懇話会)という株式実務担当者の横のつながりは廃止するべきだ。信託銀行が前例踏襲型のアドバイスをするのも見直したほうがいい』、「株主総会」の「リハーサル」に、「信託銀行」が来ているとは初めて知った。「彼らからは「質疑応答を早めに切り上げてください」とアドバイスを受ける」、しかし、「リハーサルでは「はい、はい」と聞き流して、当日はアドバイスを無視して自由にやっている」、「松本」氏はさすがだ。
・『株主番号と名前を言う必要はない  Q:株主総会での前例踏襲とはたとえばどんなことでしょうか。 A:一般的に株主総会で質問する株主に「株主票番号と名前を言ってください」とお願いする。入場時に株主であることを確認しているのに、発言前に株主票番号と名前を言ってもらうのは、壇上から牽制球を投げているようなものだ。私たちはあなたが誰だかわかっていますよ、と。 でも、牽制したうえで発言してもらうというのはおかしい。当社ではこれをやめた。今は「株主票番号も名前も言わないでください」としている。 ほかにも、平日開催が当たり前だということ。当社は2001年6月の上場会社として最初の株主総会から、毎年土曜日に株主総会を開催している。最近では週末開催もずいぶん増えているが、依然として特定日に集中している。株主総会に来て欲しくないのだろう。 株主提案権も制限しようとする。当社はホームページで「何株以上を何日間持っていれば、株主として提案できます」と書いて、むしろ促している。 こうした取り組みを進めようとしたとき、社内の総務部からは「お願いだからやめてください」と言われたし、信託銀行からも「何を考えているんですか?」と言われた。私が「なるべく多くの株主の人に来てもらって、意見を言ってもらうことが大切だから」といって説得した。 Q:アメリカの株主総会は非常に短時間で簡素です。日本はアメリカを見習うべきだという意見もあります。 A:確かにバークシャー・ハサウェイとディズニーを除いたら、アメリカの株主総会の規模は小さい。私はマスターカードの取締役でもあるが、時価総額が世界でも10何番目のマスターカードでも、当日会場に来る株主は7人とかそんなもの。 この事実だけをみて、「アメリカを見習って日本の総会も簡素化すべき」と言う人がいるが、それは違う。 アメリカでは総会当日までに株主と会社の間でいろんな対話が行われている。総会の1日だけではなく、1年間を通して株主と会社の間でコミュニケーションが取られているので、総会の日は簡単でいい。だが、日本では年間を通じた株主と企業のコミュニケーションがない。 Q:日本で株主と企業が年間を通じたコミュニケーションを行うためには、どうすればいいのでしょうか。 A:一番ドラスティック(抜本的)なのは、取締役選任議案を株主にしか提案できないように法律を変えること。会社側は取締役を提案できないことにする。 もちろん株主なら誰でも良いというわけではなくて、何%以上保有とか、何カ月以上保有とか一定の制限は設ける。例えば1%以上を半年保有している株主であるというように。そうすると、次の総会までの1年間にきちんとした対話が行われるようになるだろう。 会社は株主に会いに行って、あるいは株主が会社に対して、「自分が株主として提案しないといけないけど、誰がいいの?」という話になるからだ。もしくは、「どういう社外取締役が欲しいの?」「こんな感じの人です」「だったら、こういう人がいるよ」というふうに、株主と会社の間で建設的な会話がもたれて、取締役会の候補者名簿ができていく。 「株主がおかしな議案をたくさん出してきて手がつけられなくなる」と言う人がいるかもしれないが、それは違う。株主は自分のお金を入れている。自分の財産を守るためにも真剣に考えるはずだ。連続性のないめちゃくちゃな人事案を持ってくる株主なんてほとんどいないだろう。 いいアイデアでしょ?(笑)』、「株主総会で質問する株主に「株主票番号と名前を言ってください」とお願いする」必要はないのに、続いているのは、かつての「総会屋」対策の名残なのかも知れない。「取締役選任議案を株主にしか提案できないように法律を変えること」、面白そうだが、社外取締役の候補を選ぶにはやはり執行側の社長の権威が必要なのではなかろうか。
・『経営者にフレンドリーな提案であるべきか  Q:最近は経営者としてだけでなく、物言う株主、アクティビストとしての活動をされています。その立場から企業の株主への姿勢で感じたことはありますか。 A:アクティビストとして企業との対話をしようとすると、「その提案はフレンドリーな提案なのか、アンフレンドリーな提案なのか」と言われることがある。このフレンドリーかどうかは、あくまで経営者に対する視点で聞いてくる。これはおかしい。 会社は誰のものかという議論が昔からある。株主だと言う人もいれば、従業員だと言う人も、お客さまだと言う人もいる。現代においては普通に考えると株主であり、ステークホルダー(利害関係者)を含めて広めに考えるなら、会社は、株主、従業員、お客さま、そして社会のものだ』、その通りだ。
・『「重要なことは実りのある株主との対話だ」と強調した松本社長  つまり、ステークホルダーの中に経営者は入っていない。経営者はあくまで期間限定のアドミニストレーター(管理者)でしかない。本来問われるべきは、その提案が株主にとって、あるいはお客さまや従業員、社会全体などのステークホルダーにとってフレンドリーかどうかであって、経営者に対してではないはずだ。 なのに、日本で議論されるときは、経営に対してフレンドリーかどうかばかりが問われている。こうしたところから、経営者の都合が優先されていると感じる。 Q:招集通知の発送から株主総会までの期間が短く、株主が議案を検討する時間が十分でないといった指摘や、議決権の電子行使の使い勝手が悪いという批判もあります。 A:そういったことも問題だが、海外と比べて特にひどいかというとそうでもない。招集通知の発送から総会までの期間について、現状の2週間」、から3週間、もしくは4週間にしようというよりも、(株主総会日以外の)残りの50週に何をやるか議論するほうが実利的だ。 今回の信託銀行の集計問題も、それ自体は大したことではない。背景まで考えないと、木を見て森を見ずになってしまう。政府の審議会でも、総会前の4週間ぐらいの話をすごくしたがるが、そこじゃない。 何度も言うが、重要なのは1年間を通して株主と会社が実りのある対話をすること。 そのために私が考えるのは、取締役の選任議案を株主しか提案できないようにすることだ。そうすれば否が応でも、総会が終わったときから(株主と会社の対話が)始まる』、「重要なのは1年間を通して株主と会社が実りのある対話をすること」、同感である。

第四に、11月13日付け東洋経済オンライン「信託銀行の議決権“集計外し"に欠如した視点 会社法に詳しい東京大学の田中亘教授に聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/388066
・『今年9月、上場企業の株主名簿管理人である信託銀行が、株主総会で数えるべき一部議決権を集計していなかったという前代未聞の事態が明らかになった。 問題発覚の直後こそ大きく報じられたものの、早々にトーンダウンした。だが、今回の問題を単に信託銀行の事務処理ミスと片付けていいのか。会社法に詳しい東京大学の田中亘教授に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは田中氏の回答)』、興味深そうだ。
・『信託銀行の取り扱いに衝撃を受けた  Q:株主総会前日に配達された議決権行使書で、実際には届いているにもかかわらず、翌日扱いとして集計から外すことが20年近く続いていました。今回の事態をどう見ていますか。 A:信託銀行がああいった取り扱いをしていたことは知らず、衝撃を受けた。 会社法上、投票期限は会社が決定して、招集通知に記載すればよい。投票期間は招集通知の発送から2週間あればよく、集計が間に合わないのであれば、株主総会前日よりも前に(議決権行使の)期限を設定できる。 しかし、招集通知に株主総会前日が期限と記載している以上、前日に届いた議決権行使書はカウントしなければいけない。 Q:三井住友信託とみずほ信託は、調査した過去3カ月の株主総会に関して「賛否には影響がなかった」と強調しています。 A:結果に影響がなかったから問題ない、ということではない。株主総会決議の方法に法令違反があれば、決議が取り消されるというのが原則だ。 今回のカウントミスは法令違反なので、これ自体が(決議の)取消事由にはなる。ただし、法令違反であっても瑕疵が重大ではなく、決議結果に影響がなければ、裁判所が裁量で棄却する可能性が高い。 Q:重大な瑕疵とは、具体的にはどういうケースですか。 A:株主総会の当日に、決議に「反対」を表明している株主の出席を意図的に拒否したようなケースがあれば、(決議が)取り消される可能性が高い。このような場合、事前に行使された議決権だけで全議決権の過半数の賛成が集まっていて、決議が可決されることが総会前までに確定していたとしても取り消されるだろう。 正当な理由が何もないのに株主を排除していれば、たとえ結果に影響を及ぼす可能性がゼロだったとしても、決議の効力は否定されるというのが原則になる。法律は結果に影響がなければよいという考え方には立っていない』、「今回のカウントミスは法令違反なので、これ自体が(決議の)取消事由にはなる。ただし、法令違反であっても瑕疵が重大ではなく、決議結果に影響がなければ、裁判所が裁量で棄却する可能性が高い」、「法律は結果に影響がなければよいという考え方には立っていない」、「法令違反」とはやはり重大だったようだ。しかし、プロたる「信託銀行」が「法令違反」を長年続けてきたというのには、改めて驚かされた。
タグ:東洋経済オンライン 日刊ゲンダイ デイリー新潮 有森隆 日本企業の コーポレート・ガバナンス問題 (その9)(コロワイド・蔵人金男会長 外食日本一を目指しМ&Aに邁進、1000社超の上場企業が総会の結果を訂正 株主軽視の総会は通用しない、インタビュー①/マネックスグループ社長 松本大 「総会は穏便に滞りなく。経営者の腰が引けている」、専門家が指摘する議決権“集計外し"の根本原因 株主総会の実務に詳しい中島茂弁護士に聞く) 「コロワイド・蔵人金男会長 外食日本一を目指しМ&Aに邁進」 外食業界で敵対的TOBが成立するのは初めて 大戸屋株式の保有比率を19%から47%に引き上げた 金男の過去の暴言が暴露 「挨拶もできない馬鹿が多すぎる」「生殺与奪権は、私が握っている」などと書かれていた。 「カンパニーとは同じパンを食べる仲間、という意味だ」 傘下に収めた企業の本社は横浜ランドマークタワーにあるコロワイド本社内に移転させる。一体感を基礎に、傾いた企業を素早く再建し、軌道に乗せるのが金男のやり方だ コロワイドを率いる蔵人金男会長が32億円もの巨額詐欺に遭っていた コロナ不況下、外食株は安値をつけ、「絶好の買い場」 手作りに親しんだ顧客や中核社員を繋ぎ止められるか、がカギ 「1000社超の上場企業が総会の結果を訂正 株主軽視の総会は通用しない」 信託銀行が、株主総会で数えるべき一部議決権を集計していなかったという、“不都合な真実”が明らかになった ひらまつは訂正臨時報告書を金融庁に提出 議案の可否に影響を及ぼさなければ問題ない? 株主名簿管理人が数えるべき議決権数をカウントしないという前代未聞の事態 三井住友信託とみずほ信託が集計業務を委託していた折半出資の合弁会社、日本株主データサービス 先付け処理は20年近く続けられていた可能性があるが、2020年4月以前については「データはすべて消去した 発覚は偶然の産物 3Dオポチュニティー・マスター・ファンド(3D)や、エフィッシモ・キャピタル・マネジメント 東芝の株主の声 信託銀行の姿勢が”集計外し”を生んだ 三井住友信託銀行が発行した「株主総会想定問答事例集 2020年3月版」 企業が総会で「回答事例を読み上げる」ことを助長 臨時報告書の開示で当日行使を行った株主の一部の議決権のみ集計、または集計しないと答えた企業は全体の約83%に達する 「インタビュー①/マネックスグループ社長 松本大 「総会は穏便に滞りなく。経営者の腰が引けている」」 マネックスグループの松本大社長 私はアドバイスを無視して自由にやっている 「株主総会」の「リハーサル」に、「信託銀行」が来ている 「彼らからは「質疑応答を早めに切り上げてください」とアドバイスを受ける」 「リハーサルでは「はい、はい」と聞き流して、当日はアドバイスを無視して自由にやっている」、「松本」氏はさすがだ 株主番号と名前を言う必要はない かつての「総会屋」対策の名残なのかも知れない 経営者にフレンドリーな提案であるべきか 「重要なことは実りのある株主との対話だ」と強調した松本社長 重要なのは1年間を通して株主と会社が実りのある対話をすること 「信託銀行の議決権“集計外し"に欠如した視点 会社法に詳しい東京大学の田中亘教授に聞く」 信託銀行の取り扱いに衝撃を受けた 今回のカウントミスは法令違反なので、これ自体が(決議の)取消事由にはなる。ただし、法令違反であっても瑕疵が重大ではなく、決議結果に影響がなければ、裁判所が裁量で棄却する可能性が高い 法律は結果に影響がなければよいという考え方には立っていない プロたる「信託銀行」が「法令違反」を長年続けてきたというのには、改めて驚かされた
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レオパレス問題(その2)(レオパレス「30年保証」裏付けた酷いアパートの次なる真相、レオパレス スポンサー決定でも茨の道の理由 賃料減額交渉 資金支援は金利14.5%という重荷、経営危機のレオパレス 500億円超の“救いの手”も…違法建築の補修「1千億円はかかる」の声〈AERA〉) [企業経営]

レオパレス問題については、昨年4月2日に取上げたままだった。一応スポンサーも決まったのを踏まえた今日は、(その2)(レオパレス「30年保証」裏付けた酷いアパートの次なる真相、レオパレス スポンサー決定でも茨の道の理由 賃料減額交渉 資金支援は金利14.5%という重荷、経営危機のレオパレス 500億円超の“救いの手”も…違法建築の補修「1千億円はかかる」の声〈AERA〉)である。

先ずは、本年9月4日付け幻冬舎GOLD ONLINEが掲載したウィステリア・グループ株式会社 会長兼代表取締役社長の藤本 好二氏による「レオパレス「30年保証」裏付けた酷いアパートの次なる真相」を紹介しよう。
https://gentosha-go.com/articles/-/28770?per_page=1
・『賃貸アパートの施工不良発覚から2年。昨年度の補修完了を目指すとしていたが、レオパレス21の改修工事は終わらない。業績も悪化の一途をたどっており、不動産オーナーからは心痛極まった声が上がっている。本件の構造的問題は何だったのか。ウィステリア・グループ株式会社の代表である藤本好二氏が書籍『不動産投資業者のリアル』(幻冬舎MC)で指摘しているのは…』、興味深そうだ。
・『「30年一括借り上げ保証」レオパレスの罪 ■「レオパレス21」訴訟で明らかになった、管理会社の闇  投資家が購入した不動産の管理を請け負う、管理会社。入居者募集や建物のメンテナンスなどの管理業務を、他に仕事を抱えている投資家自らが行うというのは現実的ではありません。ほとんどの場合、管理会社に業務委託することになります。 管理会社の系譜を辿ると、大きく二つに分かれます。一つは、もともと建築を手掛けていた会社が管理部門をつくったケース。もう一つは、内装など装飾を行っていた会社が管理事業を始めたというものです。近年は、管理だけに絞って事業を展開する会社も増えてきましたが、源流としてはこの二つになります。 いわゆる「サブリース」にまつわる問題の中心にいるのも、管理会社です。「かぼちゃの馬車」を運営していたスマートデイズも、もともとはその創業者が荒稼ぎをして引退するためにつくったスキームにおける管理会社部門でした。 管理会社のトラブルとして記憶に新しいのが、レオパレス21に対する訴訟です。 同社は「30年一括借り上げ保証」というサブリース契約を謳い、オーナーは入居者の有無にかかわらず安定した家賃収入が得られるというメリットを全面に押し出して管理を請け負っていました』、「オーナー」にとっては「30年一括借り上げ保証」が魅力的に思えたのだろう。
・『兵庫県、埼玉県…続々と判明したレオパレス21の不備  しかし実際には、早いもので10年も満たないうちに、家賃を減額したり、借り上げ契約を解除したりするようオーナーに強制的に迫った疑いがもたれています。 家賃減額や借り上げ契約解除は、オーナーを直接的に追い詰める非常に重要な事案です。もともとの立地がよく、物件としても魅力的であれば、たとえ契約解除がなされても賃貸経営を続けられるでしょう。しかし「30年保証」の甘い言葉により、そもそも賃貸需要が薄いような地域に物件を建ててしまったような場合には、ローン返済どころか負債ばかり増えていくことになります。 賃貸経営においては、まずはマーケティングを行ってその地域の賃貸需要をリサーチし、単身者向けやファミリー向けなど需要に合わせた建物を採算の取れる範囲内の金額で建設して運営するというのが基本です。建物の劣化により家賃の下落もあらかじめ考慮し、それも込みで経営が成り立つかを、投資する前に判断する必要があります。 ところが、「入居者の有無にかかわらず、30年間は安定した収入がある」というセールストークをそのまま受け入れ、マーケティングなど一切せずに投資を行ってしまったことが、レオパレス21に対する訴訟の前段であると思います』、「レオパレス21」側の「セールストーク」はさぞかし猛烈なものだったのだろう。
・『■「手抜き工事」「手抜き管理」も存在する  もちろん、レオパレス21側にも大きな問題があります。 レオパレス21はもともと仲介会社であり、1973年創業の古参です。その後、1985年から、都市型アパートとして「レオパレス21」を本格展開。バブルの勢いに乗って成長を続け、2018年4月現在では、約57万戸を管理しています。 現在のレオパレス21は、建設から完成後の借り上げ、管理までを一括して行う事業者です。そのビジネスモデルにも、「30年一括借り上げ」へとつながる伏線があります。個人的には、マンションやアパートを建設する時点で、かなりの利益を上げていたと推測します。 2018年5月、レオパレス21が1996年から2009年の間に建てたアパート38棟に関して、欠陥が指摘され、建築基準法の疑いが浮上しました。もともと、「レオパレスのアパートは壁が薄い」という噂が囁かれてきましたが、それが事実であると示されたわけです。具体的には、兵庫県や埼玉県など12都道府県で、天井裏に音漏れや延焼を防ぐための界壁がなかったり、施工が不十分だったりというのを、レオパレス21側が確認しました。 不良物件については、2019年10月までに補修工事を行うとしています※。 ※編集部注・・・補修工事は延期され「2020年6月末を目処」に完了するとの発表があったが、2020年8月末時点で終了していない』、「界壁」がなければ完全に違法である。
・『「30年一括借り上げ」でも利益を上げていたカラクリは  なお、発覚の経緯については、2018年3月29日と4月17日に、オーナー2人から、「行政が発行した確認通知書の内容と実際の建物に相違がある」と指摘を受け、調査を開始したと説明しています。184棟を確認した結果、168棟に違いが見つかったといいます。 そうした手抜き工事が示すのは、利益の水増しです。建設費を少しでも安く抑えれば、それは事業者の利益となります。 レオパレス21ブランドのアパートはどれもほぼ同じ仕様であり、同じ規格で大量に発注することで建設コストを安く抑えることができたはずです。それに加えて手抜き工事を行った上、相場より割高で販売するとしたら、通常で同様のアパートを建設するのに比べ2倍の利益が出てもおかしくありません。 建設時にそれだけ稼げれば、その一部を「30年一括借り上げ」の初期費用に回しても、十分に利益が出るわけです。逆から見れば、オーナーは自分が払ったお金の一部の返金を受けているだけともいえます。そしてそこから断続的に家賃を下げたり、契約解除を行ったりすれば、利益を確定できます(注:主語はレオパレス21)。 また、レオパレス21は自らのアパートの仲介も行っていたわけですから、建設地における賃貸需要も当然、分かっているはずです。それにもかかわらず近隣に何棟もの自社アパートを建設し、それらが競合するのを承知の上で数年で家賃の減額や借り上げ解除を迫るというのは、あらかじめスキームとして計画されたと疑われても仕方ありません。 その他に、管理面のトラブルもあります。2017年8月、静岡、岐阜、愛知などにアパートを所有するオーナー29人が、「レオパレス21が契約通りに修繕を行っていない」として、修繕契約の無効および支払った修繕費計1億4700万円の返却を求める訴訟を起こしています。 このオーナーたちは、レオパレス21と一括借り上げの契約を結んだ上、別途締結した修繕契約に基づいて、月々10万円ほどの修繕費を賃料から差し引くかたちで支払っていました。 訴えによれば、屋根の塗り替えなど一定期間で行うべき修繕がほとんど行われていなかったといいます』、「月々10万円ほどの修繕費」を集めておきながら、「屋根の塗り替えなど一定期間で行うべき修繕がほとんど行われていなかった」とは悪質だ。
・『投資家には管理会社の見極めが求められる  建物の修繕も、その実際の頻度や実施内容を見れば割高と思えるような設定をしている管理会社はいくつもありますが、訴訟にまで発展しているということは、おそらくオーナーからの度重なる修繕要求にもレオパレス21側が応じなかったのでしょう。 もし、これらすべてが真実であるとするなら、レオパレス21は投資家が関わってはいけない悪徳業者の一つであると言わざるを得ません。 そして管理面での訴訟は、他の管理会社でも同様に起こり得ることです・・・』、「投資家には管理会社の見極めが求められる」、とはいっても、見極めができないよう素人にまで客層を広げたことは罪深い。

次に、10月13日付け東洋経済オンライン「レオパレス、スポンサー決定でも茨の道の理由 賃料減額交渉、資金支援は金利14.5%という重荷」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/380801
・『建築した賃貸アパートの施工不良が発覚したレオパレス21。9月末にスポンサーが決まったと発表されたが、地に墜ちたブランドイメージ再生の足がかりは、いまだつかめていない。 そのレオパレスは10月9日、注目すべき数字を発表した。9月時点の入居率は78.09%にとどまったのだ』、興味深そうだ。
・『目標入居率の達成は絶望的に  同社のビジネスモデルは、賃貸アパートの貸し主(オーナー)から賃貸物件を一括して借り上げ、入居者に転貸するサブリース業だ。オーナーにまとめて固定賃料を支払っているため、入居者が一定数を下回ると、オーナーに支払う賃料が入居者から受け取る賃料を上回る「逆ザヤ」状態になる。損益分岐点となる入居率は80%で、それを下回ると現金の流出が続くことになる。 2021年3月期は施工不良問題の影響に加えて新型コロナウイルスが直撃。賃貸アパートをまとめて借り上げる法人向け需要がふるわない。頼みの綱の外国人需要も蒸発し、5月に80%を割り込んだ入居率は8月には78.18%と過去最低を更新し、9月はそれをさらに下回った。 同社経営企画部の竹倉慎二部長は「足元では法人契約は戻ってきている」というが、2021年3月期の目標として掲げた平均入居率81.63%(2020年3月期実績は80.78%)の達成は絶望的な状況だ。 資材や人件費の高騰、自治体との工事計画の調整も遅れ、補修工事も遅々として進まない。9月末に公表した2020年4~6月期決算では当期純損失として141億円を計上し、118億円の債務超過に転落した。 レオパレスは1000人規模の希望退職を募ることでコストを削減。保有不動産の売却によって現金の確保を急ぐが、債務超過の解消のためには、とにもかくにもスポンサー支援が不可欠だった』、なるほど。
・『金利14.5%で資金調達  そんな中、4~6月期決算と同時に公表されたのが、アメリカの投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」による合計572億円にのぼる資金支援だった。 具体的には、普通株の割り当てで約120億円を調達し、新株予約権をつけて300億円の融資を受ける。さらに子会社の太陽光発電会社レオパレス・パワーの優先株を発行し、150億円を調達する。調達した資金は、補修工事に340億円、子会社の借り入れ返済に134億円、社債返還に65億円を充てるという 驚くべきはその資金調達コストの高さだ。300億円の新株予約権付き融資の金利は、利息制限法の上限(15%)に近い年率14.5%だ。一定の入居率達成で年率10%に軽減されるとはいうものの、市場金利が0%に張りつく時代にあって法外な金利となっている。 子会社の150億円の優先株も最大7%の配当を支払うことになっており、年間で最大54億円もの収益圧迫要因となる。 そもそも債務超過の解消や子会社の借入金返済は、普通株の発行や子会社による優先株発行で実現できる。 不可思議なのは300億円の融資の必要性だ。借金の押し売りにも見えるが、レオパレスは「資金需要はいろいろなものが想定されるので……」(竹倉経営企画部長)と口を濁す』、「新株予約権付き融資の金利は・・・年率14.5%だ」、「優先株も最大7%の配当を支払うことになっており、年間で最大54億円もの収益圧迫要因」、とは本当に重い負担だ。「300億円の融資」の必要性は確かに不明だ。
・『フォートレスの正体とは  さらに、フォートレスはレオパレス・パワーの優先株を普通株に転換して、同社を手に入れることができる。レオパレス・パワーは賃貸アパートの屋上に太陽光パネルを置く売電事業を手掛けており、2020年3月期は4億4000万円の最終利益をあげている。 SMBC日興証券の田澤淳一シニアアナリストは、「(レオパレス・パワーから)あがってくる利益はファンドがすべて吸い取るということ。それでも(スポンサー候補がレオパレス側に示した)複数の提案の中で、これが唯一成立した条件だった」と解説する。 ある金融関係者も「レオパレスをつぶすわけにはいかなかった。施工不良は他社にもあり、国の監督責任も問われることにもなる。この低金利の中、地銀がレオパレスのオーナーに貸し込んでいるアパートローンは、2兆円ではきかないのではないか」と話す。 レオパレスにこのような過酷な条件を課すフォートレスとはいったいどんな存在なのか。 同社はニューヨークを本拠とする投資ファンドで、世界がリーマンショックにあえいでいた2009年から日本における不動産投資事業を本格化させた。 2017年にはソフトバンクの傘下に入るが、同年、全国10万6000戸にのぼる公営住宅不動産(旧雇用促進住宅)を取得。リフォームして、最低賃料2万円台をうたう「ビレッジハウス」として運用している。そのビレッジハウスの約5万戸で「複雑なリノベーション工事を実施・管理し、稼働率を約2倍にした」という。 法人契約が6割のレオパレスと、中低所得者中心のビレッジハウスでは入居者層が異なり、「賃貸営業を一緒に行うとシナジーも期待できる」(前出の田澤シニアアナリスト)という』、「地銀がレオパレスのオーナーに貸し込んでいるアパートローンは、2兆円ではきかないのではないか」、これでは「レオパレス」が万一、破綻した場合、「2兆円」超が宙に浮くことになり、「地銀」や「オーナー」は地獄に追い込まれることになる。
・『賃料減額要求がやってくる  だが、レオパレスの入居率を改善させるには適正な賃料設定が欠かせない。つまり賃料の減額だ。これは賃貸アパートのオーナーにとっては不利益になる。 レオパレスをはじめとするサブリース会社の多くは、オーナーに対して「10年間賃料固定」などとアピールしてきた。しかし、法的には10年契約の途中でも賃料を減額することが可能で、リーマンショック後、オーナーに賃料の減額や解約を突然通告するケースが続発。全国で賃料減額分の返還を求める訴訟も頻発した。 レオパレスは2011年ごろから契約を10年固定から2年固定に切り替える交渉を進め、その過程でオーナー側とのトラブルも発生した。いまでも数件が係争中だという。 同社は「2021年3月までは施工不良問題を理由に賃料の減額はしない」とオーナーに約束した。逆に言えば、2021年4月以降は、更新時期が到来した契約から「相場にあわせた賃料」(レオパレス)に順次変更されることになる。改定水準は不動産鑑定会社による客観的なものになるというが、賃料の実勢を考えると、大半の物件オーナーは減額を迫られるだろう。 「経年劣化や周辺環境にあわせて賃料が下がるのは当たり前」(都内のオーナー)という声もあるが、説明の過程で再び「サブリース問題」を抱えることは、もはや許されない。一方で、国土交通省は「(スポンサー決定で)局面は変わった。補修工事は早期に完了させるべきだ」(幹部)とする。 多額の金利負担に耐えながら賃料の見直しを進め、入居率を上げる。そして、補修工事を早期に終わらせる。スポンサーの資金支援を得て束の間の安息を得ても、レオパレスは結局「茨の道」を歩むことになる』、まずは、当面の「賃料」「減額」交渉に注目したい。

第三に、10月18日付けYahooニュースがライターの吉松こころ氏によるAERAdot記事を転載した「経営危機のレオパレス、500億円超の“救いの手”も…違法建築の補修「1千億円はかかる」の声〈AERA〉」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1def571bb4c913537fe7d00624d28a8a747b76eb?page=1
・『違法建築問題で経営危機のレオパレスを、ソフトバンク系のファンドが救済する。倒産もささやかれる中でぎりぎりで踏みとどまった形だが、まだまだ予断を許さない状況であることには変わりないようだ。AERA 2020年10月19日号では、レオパレスの現状を取材した。 全国的な違法建築問題をきっかけに経営難に陥っていた賃貸住宅大手のレオパレス21に、救済の手がさしのべられた。同社は9月30日、ソフトバンクグループ子会社の米投資ファンド「フォートレス・インベストメント・グループ」から総額572億円の出資と融資を受けて経営再建を目指すと発表した。 レオパレスは6月5日、2020年3月期決算で802億円の純損失を計上。その後1千人以上の人員整理を公表したほか、自社株を相次ぎ売却したり、保有するホテルや賃貸住宅を簿価の半額程度で「投げ売り」したりと現金をかき集めている様子が明らかとなり、倒産の噂がささやかれる中での支援決定だった。 9月30日に発表した4~6月期決算によると、同社は6月末時点で約118億円の債務超過に陥っていた。だがファンドからの第三者割当増資で約119億円の出資を受け入れ、300億円を借り入れるほか、子会社にもファンドの出資を受け入れるなどして、債務超過を解消できるという。まさに土俵際で踏みとどまった形だ』、「自社株を相次ぎ売却したり、保有するホテルや賃貸住宅を簿価の半額程度で「投げ売り」したりと現金をかき集めている」、そこまでやっていたとは初めて知った。
・『オーナーとの契約標的  レオパレスは今後、ファンド主導で経営改善を進めることになる。不動産とファンドに詳しいコンサルタントの西村明彦さんは、改革は短期決戦とみる。 「ファンドの目的は買った株式の価値を上げ、売って利益を得ること。基本は1~2年、長くても3年で結果を出します」 ファンド側がすぐにでも着手すると考えられるのが、優良物件の選別だ。優良物件とは、入居率がよく安定して家賃が入ってくる物件や、大手法人が社宅にしている物件。そうではない物件は収益性が低い不良物件と見なされることになる。 レオパレスの場合、物件は各地のオーナーが建設・保有し、レオパレスが一定額の家賃収入を保証する「サブリース」という仕組みをとっている。オーナーにとっては入居の有無にかかわらず毎月一定の金額が入ってくるため、ローンを組んで賃貸住宅を建てるケースが多い。 だが今回、ファンド側は不良物件のオーナーに対して家賃保証の大幅な減額を要求するとみられる。応じなければ家賃保証の終了に追い込むこともあり得る。西村さんは「手慣れたファンドマネジャーたちによって、家賃減額交渉は一気に進むでしょう」と語る。 レオパレスの4~6月期の営業損益は68億円の赤字。最大の理由は入居率の低さだ。物件全体の入居率は79.43%。駅から遠い、近くに企業や大学などがないなどそもそも需要が少ない物件も多い上、違法建築問題が追い打ちをかけている。一般的にサブリースで家賃保証を行う側(この場合はレオパレス)が利益を得られる損益分岐点は入居率80%とされる。経営再建へ、入居率引き上げも極めて大きな課題だ』、「手慣れたファンドマネジャーたちによって、家賃減額交渉は一気に進むでしょう」、「オーナー」にとっては大変だ。
・『340億円で物件改修  だが、入居率を改善させるには、レオパレス信用不振のきっかけとなった違法建築問題の解決抜きには語れない。 同社によると、明らかな不備がある賃貸住宅は全国に1万3626棟あり、改修工事が完了しているのはその7.7%にあたる1055棟にすぎないという。上記以外にも1万6457棟で小屋裏の界壁(部屋と部屋を仕切る壁)などに軽微な不備が確認されている。 これらの改修を請け負うはずの施工会社が、レオパレスの信用不安から仕事を受けたがらなかったことも進捗が遅れている理由の一つ。工事が終わらず入居者募集を保留している部屋は、7月末時点で5万室に上る。これはレオパレスが管理する約57万室の8%超にあたる。 ファンドから調達した資金のうち、340億3300万円は「界壁等の施工不備に係る補修工事費用」として使用される。これにより工事が進むことが期待されるが、内部事情に詳しい元幹部からは「補修箇所は一律でなく様々なタイプがあるため、費用は1千億円はかかるだろう」との声も聞かれ、なお予断を許さない状況だ』、「費用は1千億円はかかる」ようなことでもなれば、大変だ。「レオパレス」からはまだまだ目が離せないようだ。
タグ:東洋経済オンライン yahooニュース AERAdot レオパレス問題 (その2)(レオパレス「30年保証」裏付けた酷いアパートの次なる真相、レオパレス スポンサー決定でも茨の道の理由 賃料減額交渉 資金支援は金利14.5%という重荷、経営危機のレオパレス 500億円超の“救いの手”も…違法建築の補修「1千億円はかかる」の声〈AERA〉) 幻冬舎GOLD ONLINE 藤本 好二 「レオパレス「30年保証」裏付けた酷いアパートの次なる真相」 「30年一括借り上げ保証」レオパレスの罪 「レオパレス21」訴訟で明らかになった、管理会社の闇 兵庫県、埼玉県…続々と判明したレオパレス21の不備 「手抜き工事」「手抜き管理」も存在する 「30年一括借り上げ」でも利益を上げていたカラクリは 「月々10万円ほどの修繕費」を集めておきながら、「屋根の塗り替えなど一定期間で行うべき修繕がほとんど行われていなかった」とは悪質だ 投資家には管理会社の見極めが求められる レオパレス、スポンサー決定でも茨の道の理由 賃料減額交渉、資金支援は金利14.5%という重荷」 「レオパレス、スポンサー決定でも茨の道の理由 賃料減額交渉、資金支援は金利14.5%という重荷」 目標入居率の達成は絶望的に 9月時点の入居率は78.09% 金利14.5%で資金調達 フォートレス・インベストメント・グループ 合計572億円にのぼる資金支援 300億円の新株予約権付き融資の金利は 年率14.5%だ 150億円の優先株も最大7%の配当 年間で最大54億円もの収益圧迫要因 フォートレスの正体とは 地銀がレオパレスのオーナーに貸し込んでいるアパートローンは、2兆円ではきかないのではないか 「レオパレス」が万一、破綻した場合、「2兆円」超が宙に浮くことになり、「地銀」や「オーナー」は地獄に追い込まれることになる 賃料減額要求がやってくる 法的には10年契約の途中でも賃料を減額することが可能 リーマンショック後、オーナーに賃料の減額や解約を突然通告するケースが続発。全国で賃料減額分の返還を求める訴訟も頻発 吉松こころ 「経営危機のレオパレス、500億円超の“救いの手”も…違法建築の補修「1千億円はかかる」の声〈AERA〉」 802億円の純損失 1千人以上の人員整理 自社株を相次ぎ売却したり、保有するホテルや賃貸住宅を簿価の半額程度で「投げ売り」したりと現金をかき集めている 6月末時点で約118億円の債務超過 118億円の債務超過 オーナーとの契約標的 手慣れたファンドマネジャーたちによって、家賃減額交渉は一気に進むでしょう 340億円で物件改修 補修箇所は一律でなく様々なタイプがあるため、費用は1千億円はかかるだろう
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日産・三菱自・ルノー問題(その3)((日産が巨額赤字 「大リストラ計画」にみる猛省 生産能力2割減 日米中に経営資源を集中、日産がシャープよりも「悲惨な末路」をたどりかねない根拠、「日産に巨額税金投じる」政府の怪しすぎる挙動 なぜ一企業に1300億円もの政府保証するのか?) [企業経営]

日産・三菱自・ルノー問題については、2018年4月17日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)((日産が巨額赤字 「大リストラ計画」にみる猛省 生産能力2割減 日米中に経営資源を集中、日産がシャープよりも「悲惨な末路」をたどりかねない根拠、「日産に巨額税金投じる」政府の怪しすぎる挙動 なぜ一企業に1300億円もの政府保証するのか?)である。なお、タイトルに、三菱自を加え、「VS仏政府」はカットした。

先ずは、5月30日付け東洋経済オンライン「日産が巨額赤字、「大リストラ計画」にみる猛省 生産能力2割減、日米中に経営資源を集中」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/353597
・『「2年ほど前から拡大路線を修正してきたが、足元の700万台の門構え(生産能力)に対して販売は500万台。この状態で利益を出していくことは困難と言わざるをえない」 5月28日、オンラインでの2019年度決算会見に臨んだ日産自動車の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は苦渋の表情でそう語った』、「日産」は大丈夫なのだろうか。
・『部品メーカーからの「上納」はもう限界  同日発表した2020年3月期(2019年度)の最終損益は、6712億円の赤字(前期は3191億円の黒字)に転落した。固定資産の減損などの構造改革関連費用計6000億円を計上したほか、新型コロナウイルスの感染拡大による販売減少が響いた。赤字額はくしくも、1990年代後半に経営危機に陥った際にカルロス・ゴーン最高執行責任者(COO、当時)の下で経営再建を進めていた2000年3月期(6843億円)とほぼ同水準だ。 ゴーン氏主導の再建計画「日産リバイバルプラン(NRP)」では、国内の完成車工場3拠点を閉鎖するなどの大ナタを振るった。傘下部品メーカーの保有株を売却して「系列解体」を断行。部品の購買コストを3年間で20%削減するため、取引停止も辞さない構えで各部品メーカーに厳しい値引きを強いた。それを原資に、日産はV字回復を実現した。 しかし、今回の危機は当時とは事情が異なる。日産からの値引き要請はほかの自動車メーカーと比べて苛烈であることは業界内では有名だ。それに加えて近年の日産の業績不振によって、取引が多い部品メーカーは疲弊しきっている。 ある部品メーカー幹部は「生産台数が右肩上がりの時代だったら値引きに応じることで、日産も部品メーカーも成長してお互いにメリットがあった。でも、今ではこちらから日産に利益を還元できるだけの力がもう残っていない」と話す。 そのため、かつてのように部品会社への苛烈なコスト削減要求は難しく、日産が再建に向けて取り得る選択肢は限られる。最大の手段は自らの身を切ること。具体的には生産能力と人員削減による固定費カットだ。 今回の構造改革計画「NISSAN NEXT」では、ゴーン時代の拡大路線によって負の遺産となった過剰設備の整理に本格的に取り組む。世界の生産能力は現状から2割削減し、2023年度には年間540万台(600万台まで変動可能)とする。 インドネシア工場(生産能力25万台、調査会社マークラインズ調べ)の閉鎖を決めたほか、スペインのバルセロナ工場(生産能力21万台、同)も閉鎖の方向で現地政府や労働組合などとの協議を始めた。 「人員削減の規模は個別協議が必要なので、今日は公表を控える」(内田社長)としたが、2019年7月に発表した1万2500人削減に大幅に上積みされることは確実だ。車種数を現在の69から55以下に減らすことなどと合わせ、固定費を2023年度に3000億円削減(2018年度比)する』、「ゴーン氏主導の再建計画「日産リバイバルプラン(NRP)」時の赤字と同規模とはいっても、ゴーンの時には、目一杯、リストラ費用を積んだが、今回はどこまで積んだのだろう。
・『「全方位戦略」から決別  「日産のいまの実力値に合わせて、展開地域も開発も切るところは切っていくしか道はない」。ある日産幹部は無理な拡大路線を突き進んだ過去を反省したうえで、そう強調する。 日産は今後、ホームマーケットである日本と、販売シェアが高い北米と中国に経営資源を集中投入する。一方で、欧州や東南アジア、南米など販売が弱い地域では、撤退こそしないものの、事業を大幅に縮小する。小型車や一部の次世代技術の開発は提携パートナーであるフランスのルノーに任せるなど、今後の成長投資も思い切って選別する。 日産はこれまで世界中に広く事業展開し、デパートのように軽自動車から小型商用車まで幅広い車種を自社開発して販売する「フルラインナップメーカー」だった。だが、実力以上のモデル数を抱えるあまり、経営資源が拡散して開発に遅れをとった結果、魅力的な新車を投入できずに販売で苦戦するようになった。 今回、そうした全方位戦略から事実上決別し、身の丈にあった中規模メーカーとして生き残りを目指す道を選んだわけだ。カギを握るのが、ルノーと三菱自動車との3社連合(アライアンス)の徹底活用だ。 決算発表の前日にあたる5月27日に発表されたアライアンス中期計画の肝は、3社間でのかなり踏み込んだ役割分担にある。地域や技術、車種ごとに強みがある1社を「リーダー」、サポート役に回る2社を「フォロワー」と位置づけ、研究開発での重複をなくしたり、生産を集約したりしてコストを削減する枠組みだ。 例えば、中型車と電気自動車(EV)の開発は日産がリーダーとなって担い、開発した新車をほかの2社に「姉妹車」として提供する。一方で、小型車開発はルノー、プラグインハイブリッド(PHV)車開発は三菱自に任せ、日産は得意とする分野に人材と資金を集中させる。 CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる次世代技術の開発でも同様だ。自動運転技術は日産、コネクテッドの主要部分はルノーが担うことになる』、「3社間でのかなり踏み込んだ役割分担」はかなり明確になったようだ。
・『ライバルと同水準の研究開発費を確保  日産の研究開発費は潤沢とはいえない。2020年3月期の開発費は5400億円程度で、トヨタ自動車の1.1兆円、ドイツのフォルクスワーゲンの1.8兆円に比べて大きく見劣りする。 ルノーのジャンドミニク・スナール会長は「アライアンスは数年後には、はるかに効率性を高めて、業界のモデルになれる」と自信を示した(アライアンス記者会見のインターネット動画より引用) 一方、ルノーの研究開発費は4400億円、三菱自は1300億円で、3社合わせれば1.1兆円を超える。単純合算すると、数字上はライバルと同じ水準になる。 加えて、3社は開発のすみ分けや、車体を構成するプラットフォーム(車台)やアッパーボディ(上屋)の共通化の加速などによって、1車種あたりの開発費と設備投資額を最大で40%削減できると試算する。 ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストは「今回、3社が明確に担当を決めたことで主導権争いに時間を取られるリスクを減らせられる。現場の社員もかなり動きやすくなるはずだ」と評価する。 振り返れば、日産側にはルノーとの協業を巡って苦い記憶がある。 それはゴーン体制で2014年から始まった、開発や生産、人事、購買などの主要な機能を両社で一体化する取り組みだ。日産社内では「機能統合」と呼ばれた施策で、意思決定を統一してアライアンスの効率性を高めることが表向きの狙いだったが、責任の所在が曖昧だった結果、新型車の投入や技術の採用などを巡って両社間で主導権争いが頻発。日産の開発現場にもルノーからの横やりが入るようになった。 さらに、当時はルノーの筆頭株主であるフランス政府が両社の経営統合を要求し始め、それが両社間の火種として燻り始めていた時期だった。「機能統合は将来的な経営統合への布石だった」(当時の日産幹部)ため、経営の独立を守りたい日産の日本人幹部を中心にルノーとゴーン氏に対する不信感が募っていった。 2018年11月にゴーン氏が逮捕されて以降、ルノーが日産に経営統合を公然と要求し、それを拒否する日産との間で応酬が続いた。一時は提携解消が取りざたされる程にまで関係が悪化した』、「「今回、3社が明確に担当を決めたことで主導権争いに時間を取られるリスクを減らせられる。現場の社員もかなり動きやすくなるはずだ」との評価が、その通りにいくことを期待したい。
・『呉越同舟の中で、エゴをどう抑えるか  そうした経緯がある両社が「経営統合の議論は当面棚上げ」(日産幹部)して、再び手を取り合った。その日産幹部は「両社とも切羽詰まっていて、統合の議論にエネルギーを割くわけにはいかない。立て直しにはアライアンスを活用するのが早道で、少なくとも現時点では思惑が一致している」と言う。 ルノーのジャンドミニク・スナール会長も5月27日のアライアンス記者会見で、「経営統合の計画はない。統合しなくても効率化を追求できる」と言い切った。 それほど各社の経営状況は危機的だ。コロナ危機以前から3社の業績は悪化しており、ルノーは2019年12月期に10年ぶりの最終赤字に転落。三菱自動車も2020年3月期に258億円の最終赤字を計上した。一時は世界トップだった3社合計の販売台数も下降線をたどる。2019年は前年比60万台減の1015万台となり、世界3位に転落した。 アライアンスの中で争いがあっても、絶対的な君主として有無を言わせずに差配してきたゴーン氏はもういない。3社の経営の一体化がさらに進むことになる今回の協業策を機に、ルノー側がいずれ経営統合の話を持ち出し、対立が再燃する可能性もある。日産も含めて瀬戸際に立たされている3社が、「呉越同舟」の中でどうエゴを抑えてアライアンスを機能させるのかが問われている』、「瀬戸際に立たされている3社」の状況がお互いの争いを抑えているとはいえ、やはり薄氷の上にあるようだ。

次に、9月7日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの井上学氏による「日産がシャープよりも「悲惨な末路」をたどりかねない根拠」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/278338
・『経済産業省がホンダと経営危機に陥っている日産自動車の経営統合を両社に働きかけたことが話題になった。結局は両社が取締役会にかける前の段階で断り、御破算になったという。経産省が仕掛けた両社の経営統合案に、関係者からは「あまりに不見識。よくもこんな提案を出したものだ」と驚きの声があがっている。 そもそも日産に提案したところで、親会社の仏ルノーが「うん」と言わなければ話は1ミリも進まない。日産があっさり断ったことから、経産省によるルノーへの根回しはなかった可能性が極めて高い。それだけに「まるで子供のおつかいレベルの交渉」とも揶揄されている』、経産省も焼きが回ったようだ。
・『ホンダと経営統合すれば共倒れの恐れも  ホンダ関係者も「巨額の赤字を抱える日産を受け入れる体力など、ホンダにはない。共倒れになれというようなものだ」と突き放す。救済する側のホンダはともかく、される側の日産にすら「門前払い」で断られた経産省。なぜ、そこまで無理筋の経営統合を働きかけたのか。そこにはルノーの深刻な業績悪化があった。 ルノーが2020年7月30日に発表した1-6月期の純損益は72億9000万ユーロ(約9000億円)と過去最高の巨額赤字に。元凶は連結子会社である日産の業績不振だ。ルノーが計上した巨額赤字のおよそ3分の2に当たる48億ユーロ(約5950億円)が日産の赤字によるものだ。 新型コロナの感染拡大は収まるどころか勢いを増し、少なくとも年内は現在の苦境が続くだろう。そうなればルノーの2020年12月期決算は推定で150億ユーロ(約1兆8000億円)もの純損失に陥る。日産よりも規模が小さいルノーにとっては、経営破綻レベルの巨額赤字だ。 同社の筆頭株主であるフランス政府は、6月に50億ユーロ(約6200億円)の融資枠を保証した。ルノーの経営危機を回避するための措置だが、日産の赤字で融資枠分の支援が吹っ飛んだ格好だ。カルロス・ゴーン前会長時代に日産との経営統合を執拗に求めてきたフランス政府だが、今はルノー最大の経営懸念となっている日産の切り捨てを真剣に検討しているはずだ。 日産との経営統合推進の急先鋒だったジャン・ドミニク・スナール会長も、今年に入ってその言葉を「封印」している。5月に発表した仏ルノー、日産、三菱自動車の新たなアライアンス戦略では、従来の商品計画や開発の一体化が見直され、各社が開発した技術を相互供与する「業務提携」レベルにまで後退した。 グループで一本化して開発に取り組むべき次世代エネルギー車の本命である電気自動車(EV)も、ルノーと日産がそれぞれ担当することになった。すでにルノー・日産グループの「解体」に向けた動きは始まっている。ルノーが日産との共倒れを回避するには、早急に日産を切り離す必要がある。早い話が43.4%を保有する日産株の売却だ』、「日産の切り捨てを真剣に検討しているはずだ」とあるが、3社間の役割分担はどうなるのだろう。「ルノー」も単独での生き残りは可能なのだろうか。
・『日産を買いたがる会社はあるのか  問題は売却先。今、どん底の日産を買いたがる会社があるとすれば、その筆頭は中国の自動車メーカーだろう。日産が持つ中国と米国の自動車工場と生産技術は、中国車メーカーにとっては台数ベースで世界最大の自国市場を押さえる上でも、金額ベースで世界最大の米国市場で展開する上でも有用なリソース(経営資源)だからだ。) 当然、米中市場が「生命線」となっている日本車メーカーにとっては、日産が中国車メーカーに買収されれば強力なライバルが登場することになる。経産省が日産とホンダに経営統合を働きかけたのも、ルノーが日産を中国企業へ売却するのを警戒しているからだ。 いずれ日産も、シャープが台湾の鴻海精密工業(フォックスコングループ)に買収されたのと同じ道をたどるだろう。シャープはまだ自社で身売り先を選ぶことができた。一方、日産の売却先を決めるのはルノーだ。ルノーと同社筆頭株主のフランス政府は、最高額を提示した企業に売却するだろう。たとえ望まない会社であったとしても、日産には拒否する権利はないのだ。「その日」は、着実に近づいている』、「ルノーと・・・フランス政府」はそこまで考えているのかはともかく、予断を許さない状況のようだ。

第三に、9月16日付け東洋経済オンラインが掲載した経営コンサルタントの日沖 健氏による「 「日産に巨額税金投じる」政府の怪しすぎる挙動 なぜ一企業に1300億円もの政府保証するのか?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/374852
・『今月、日本政策投資銀行が5月に決めた日産自動車への融資1800億円のうち、1300億円に政府保証をつけていたことが明らかになりました。これは将来、もし日産からの返済が滞れば8割を国が補塡し、実質的に国民が負担することを意味します。 大企業への融資に対する政府保証は、今回が初めてではありません。リーマン・ショック後の2009年、経営再建中の日本航空にも行われました。そのときは、同じく日本政策投資銀行が約670億円を政府保証つきで融資しましたが、翌年日本航空が経営破綻し、約470億円の国民負担が生じています。 今回の日産への政府保証の額は、日航を大きく上回り、史上最大の規模。もし返済が滞れば、国民負担が生じるとともに、16日に発足される菅政権を揺るがす事態に発展することも考えられます。 日産への政府保証の影響について考えてみましょう』、「1300億円に政府保証をつけていた」、初耳で驚いた。
・『日産と日航の「最大の違い」  今回の日産への政府保証は、2009年の日航と対比されます。政府が大企業を救済するという点では共通していますが、大きな違いがあります。最大の違いは、国民目線で見た「納得感」です。 まず、政府が公的資金を投入して民間企業を支援するというとき、事業の公益性が問題になります。破綻前の日航は、戦後長くナショナルフラッグとして運輸省(現・国土交通省)と一体となって、日本の航空行政を担ってきました。良い悪いは別にして、半官半民というより準国営の企業でした。 一方、日産は、トヨタ・ホンダなど多数のメーカーがひしめく自動車業界の1プレイヤーにすぎません。車離れで自動車は供給過剰ですし、日産にしか作れないという特別な車も存在しません。日産は、14万人近い従業員が働いているものの、日航のような「なくなっては困る」という企業ではないのです。 次に、国民感情として、純然たる日本企業なのかどうかも問題になります。日航は、政府が出資する日本企業でした。 一方、日産の筆頭株主はフランスのルノーで、出資比率は43.4%。その親会社のルノーの筆頭株主はフランス政府です。日産はフランス資本の外資系企業で、日本政府よりもフランス政府の影響を強く受けています。日本国民が納めた税金を使って外資系企業を支援することに、国民は強い抵抗感を覚えます。 また、経営姿勢も問われます。以前の日航は、組合が強かったこともあって、破綻前に大規模なリストラは行われませんでした。 対する日産は、1999年にカルロス・ゴーンがトップに就任した後、リバイバルプランで国内工場の閉鎖や系列破壊などリストラを断行しました。企業としては復活しましたが、多くの国内雇用が失われました。これまで雇用維持にも税収増にも貢献してこなかった日産に、「もっと雇用が減ったら困るから」という理由で税金を投入するのは、合理的ではありません。 経営姿勢ではもう一点、カルロス・ゴーン元CEOの逮捕・国外逃亡や日本側の経営陣の姿勢に厳しい視線が注がれています。周知の通りカルロス・ゴーンは、日産を食い物にして蓄財に励み、揚げ句の果てには日本の司法の手を逃れてレバノンに逃亡しました。 こうしてみると、同じように政府保証を受けたといっても、国民の「まあ致し方ないかな」という納得感は、日航と日産では雲泥の差があるのです』、「納得感は、日航と日産では雲泥の差がある」、同感である。
・『「日産の債務保証」を政府が引き受ける理由  今回、政府が日産の債務保証を引き受けたのは、コロナショックに直面し、日産の倒産、部品メーカーなどの連鎖倒産、それらによる大量の失業発生、という危機的な事態を懸念してのことでしょう。日本政策投資銀行が融資に応じないと日産の資金繰りが厳しくなる恐れがあり、日本政策投資銀行の判断で融資を決めたようです。 菅政権とすれば、資金援助で日産が立ち直り、融資が無事に返済され、数年後に「何事もありませんでした」という結末を迎えたいところ。 しかし、日産は本当に立ち直るのでしょうか。日産は、コロナの影響が2月、3月の実質2カ月しかなかった2020年3月期決算で大赤字を計上している通り、近年、そもそも危機的な経営状態に陥っています。 自動車業界はいまCASE(Connected(コネクテッド)・Autonomous(自動運転)・Shared & Services(シェアリングとサービス)・Electric(電動化))という100年に一度の大変革期を迎えています。 CASEの流れに乗った米テスラが大躍進し、この8月に株式時価総額でトヨタを上回りました。一方、流れに乗り遅れた自動車メーカーは、淘汰されつつあります。現在販売台数世界一のトヨタですら、安泰ではないと言われます。 かつて「技術の日産」と自他共に認めた日産ですが、ゴーン政権以降では短期の収益改善のためにコストダウンを優先し、研究開発など先行投資を怠りました。その結果、CASEへの対応で後手に回り、一部報道では親会社ルノーとともに、自動車業界で完全に「負け組」、淘汰される側とみなされています。 今回の資金援助で、日産はしばらく延命することができるでしょう。コロナが終息すれば、販売が上向くかもしれません。ただ、CASEに対応して抜本的な経営改革を進めないと、グローバル競争に敗れ、数年後に1998年のような経営危機を再び迎える可能性があります』、「抜本的な経営改革」は生き残りの必須の条件だ。
・『もし日産が破綻したらどうなる?  もしも日産が破綻したらどういう影響があるでしょうか。雇用・地域社会・金融市場に悪影響が及ぶことが想定されますが、それだけではありません。菅新首相の政権運営、ひいては政治生命を脅かすことも考えられます。 菅義偉氏は、安倍内閣の官房長官として今回の政府保証に一定の関与をしたと思われます(2018年にゴーンが逮捕されたときは、なぜか日産の川口均専務執行役員が菅氏に陳謝に訪れました)。 国民負担が発生したら、結果責任を問われます。もちろん、そうならないように菅氏は、あらゆる手を打つはずです。日産の本社は横浜市西区で、菅首相の神奈川2区のお膝元。菅氏は何としても破綻を回避しようと、追加で資金援助をするでしょう。すると、ますますこの問題が巨大化し、泥沼化していきます。 仮に追加の資金援助によって日産が破綻を免れても、国民から総スカンの日産を救済すると、国民の猛反発を招き、選挙を戦えなくなります。つまり、日産問題で、菅氏の政治生命が脅かされる可能性があるのです。 また、日産が経営改革に成功して立ち直っても、問題は終わりません。他の大企業が経営危機に陥ったらどう対応するか、という大きな問題があります。 コロナの影響が長引いていることから、今後、中小・零細企業だけでなく、大企業でも経営難に陥ることが考えられます。日産を助けた手前、他の大企業から支援を要請されたら、政府は拒否しにくいことでしょう。経営が厳しくなると国に助けを求めるというのが当たり前になり、収拾がつかなくなります。「なぜ大企業だけ助けるんだ」という国民の反発も増します。 1998年の経営危機、ゴーン改革による復活、ゴーン逮捕と逃亡とこの20年以上、経済界にとどまらず社会の注目を集めた日産。2度目の復活劇を果たすのか、民主党政権を揺るがした日航のように、菅新政権を揺るがす「第2のJAL」になるのか、ますます目が離せません』、「日産の本社は横浜市西区で、菅首相の神奈川2区のお膝元」、「日産問題で、菅氏の政治生命が脅かされる可能性がある」、今後の展開が大いに注目される。
なお、三菱自動車では、益子修前会長が8月7日に突然退任、8月27日直後に心不全で死亡した。三菱グループが後任を送るのかも注目点だ、
タグ:死亡 東洋経済オンライン 三菱自動車 日刊ゲンダイ 益子修会長 日沖 健 日産・三菱自・ルノー問題 (その3)((日産が巨額赤字 「大リストラ計画」にみる猛省 生産能力2割減 日米中に経営資源を集中、日産がシャープよりも「悲惨な末路」をたどりかねない根拠、「日産に巨額税金投じる」政府の怪しすぎる挙動 なぜ一企業に1300億円もの政府保証するのか?) 「日産が巨額赤字、「大リストラ計画」にみる猛省 生産能力2割減、日米中に経営資源を集中」 部品メーカーからの「上納」はもう限界 「全方位戦略」から決別 3社間でのかなり踏み込んだ役割分担 ライバルと同水準の研究開発費を確保 今回、3社が明確に担当を決めたことで主導権争いに時間を取られるリスクを減らせられる。現場の社員もかなり動きやすくなるはずだ 呉越同舟の中で、エゴをどう抑えるか 井上学 「日産がシャープよりも「悲惨な末路」をたどりかねない根拠」 経済産業省がホンダと経営危機に陥っている日産自動車の経営統合を両社に働きかけた まるで子供のおつかいレベルの交渉 ホンダと経営統合すれば共倒れの恐れも 日産の切り捨てを真剣に検討しているはずだ 日産を買いたがる会社はあるのか 筆頭は中国の自動車メーカー 「 「日産に巨額税金投じる」政府の怪しすぎる挙動 なぜ一企業に1300億円もの政府保証するのか?」 日本政策投資銀行が5月に決めた日産自動車への融資1800億円のうち、1300億円に政府保証をつけていた 日産と日航の「最大の違い」 納得感は、日航と日産では雲泥の差がある 「日産の債務保証」を政府が引き受ける理由 CASEに対応して抜本的な経営改革を進めないと、グローバル競争に敗れ、数年後に1998年のような経営危機を再び迎える可能性があります もし日産が破綻したらどうなる? 日産の本社は横浜市西区で、菅首相の神奈川2区のお膝元 日産問題で、菅氏の政治生命が脅かされる可能性がある 三菱グループが後任を送るのかも注目点
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