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LIXIL問題(その3)(『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』より4題:「4日後に辞めてもらうことになりました」リクシル社長に突然すぎる“クビ宣告”…日本有数の大企業で起きた“疑惑の社長交代劇”、「僕は会食で辞意なんか告げていません」世間が注目した“リクシルお家騒動”の裏で…取締役会を手なずけた“創業家のウソ”、「今回の社長交代には納得できない」リクシルを追われた“プロ経営者”が創業家と全面戦争へ…CEO復帰を明言した“逆襲の記者会見”、「これで『100倍返し』をしてやった」“お家騒動中 [企業経営]

LIXIL問題については、2019年6月17日に取上げた。今日は、(その3)(『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』より4題:「4日後に辞めてもらうことになりました」リクシル社長に突然すぎる“クビ宣告”…日本有数の大企業で起きた“疑惑の社長交代劇”、「僕は会食で辞意なんか告げていません」世間が注目した“リクシルお家騒動”の裏で…取締役会を手なずけた“創業家のウソ”、「今回の社長交代には納得できない」リクシルを追われた“プロ経営者”が創業家と全面戦争へ…CEO復帰を明言した“逆襲の記者会見”、「これで『100倍返し』をしてやった」“お家騒動中”のリクシルが取締役辞任を電撃発表…プロ経営者を追い込む“創業家のシナリオ”)である。

先ずは、本年6月24日付け文春オンライン「「4日後に辞めてもらうことになりました」リクシル社長に突然すぎる“クビ宣告”…日本有数の大企業で起きた“疑惑の社長交代劇” 『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』より #1」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/54681
・『2018年10月31日、LIXILグループ(現LIXIL)は突如として瀬戸欣哉社長兼CEOの退任と、創業家出身の潮田洋一郎取締役の会長兼CEO復帰を発表。外部から招へいした「プロ経営者」の瀬戸氏を創業家が追い出す形となった。しかし2019年6月25日、会社側に戦いを挑んだ瀬戸氏が株主総会で勝利し、社長兼CEOに“復活”する。 ここでは、一連の社長交代劇の裏側に迫ったジャーナリスト・秋場大輔氏の著書『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』(文藝春秋)から一部を抜粋。瀬戸氏が社長退任を告げられた経緯とLIXILグループの内部事情を紹介する。(全4回の1回目/2回目に続く)』、信じられないような事件だが、興味深そうだ。
・『ローマを訪問したLIXILグループ社長兼CEOの瀬戸欣哉  10月のローマは気温が東京とほぼ同じで湿度は低い。旅行のベストシーズンといわれるそんな時期に、LIXILグループ(現LIXIL)社長兼CEO(最高経営責任者)の瀬戸欣哉は仕事で訪れていた。2018年のことだ。 新型コロナウイルスが全世界で猛威を振るう前まで、瀬戸は月の3分の1、多い時は半分くらいを海外で過ごし、各地に散らばるLIXILグループの経営幹部と話し合う日々を送っていた。今回のローマ訪問はカーテンウォールを手がける子会社、ペルマスティリーザの社長であるリカルド・モロと面談するのが目的だ。 一般に大企業トップの海外出張には経営幹部や秘書といった帯同者がいるものだが、瀬戸はほとんど1人で行動する。今の時代、たくさんの部下を引き連れて大名旅行のような出張をするのは時代錯誤と考えるからだが、他にも理由があった。1人になれるからだ。 瀬戸は会社の実情を細部に至るまで可能な限り自分で把握したいと考えるタイプの経営者である。必要と思えば昼夜を問わず幹部に電話をかけたり、メールをしたりして、情報を吸い上げる。手を尽くして集めたものを頭の中で整理し、考え抜いて経営の方向性を示す。決断はできる限り早く、間違いだと気づけば修正する。時間をかけるのは悪だとすら考える合理主義者だ。 経営者には連日会食の予定を入れて人脈を広げることが仕事の1つと思う人も少なくない。しかし瀬戸は考える時間の方が大事だと思っているから、親睦を深めるぐらいの意味しか持たない会食はなるべく避ける。床に着くのは夜10時くらい。平均睡眠時間は7、8時間とやや長めで、朝5時には起きる。それから1時間ほどかけて、その日にやるべきことの優先順位を付け、仕事に取り掛かる。休日は家族団欒を優先するのでゴルフはしない。) こうしてみると公私のメリハリが相当ついているようにみえるが、それでも日本に居れば次から次へと課題が持ち上がり、自由な時間を作るのは難しい。だから海外出張をした時には、わざと「空白の1日」を作るようにしていた。海外に4日間滞在するという日程を組んでいれば、5日間にするといった具合である。むろん平日に休暇を取るわけにはいかないので、日程は週末を絡めるようにする。 「空白の1日」は誰にも居場所を知らせず、自分で予約を入れ、投宿したホテルで1日中本を読み耽ったり、見損ねていた映画を鑑賞したりする。リフレッシュをして再び仕事に臨むのに、帯同者がいることはかえって不便。だから可能な限り単独行動を取るようにしていた』、「考える時間の方が大事だと思っているから、親睦を深めるぐらいの意味しか持たない会食はなるべく避ける」、徹底した合理主義者のようだ。「海外出張」時に「空白の1日」をつくるとは上手いやり方だ。
・『突然スマートフォンが鳴り「瀬戸さん、急な話だけれど……」  2018年10月27日土曜日は、この空白の1日だった。カラッと晴れたローマにあるホテルで朝食をゆっくり取り、食後にカプチーノを飲みながら、「今日はどの本を読むかな」などと考えていた時、突然スマートフォンが鳴った。電話の主はLIXILグループ取締役会議長の潮田洋一郎だった。 「瀬戸さん、急な話だけれど指名委員会の総意で、あなたには辞めてもらうことになりました。交代の発表は4日後の10月31日です。後は私と(社外取締役の)山梨(広一)さんがやりますから」 潮田は抑揚のない話し方をする。この時もそうだった。藪から棒で、衝撃的な話を落ちついた声で伝えられるのはかえって不気味である。瀬戸の休日モードは一気に吹き飛んだ。 〈辞めろ? 指名委員会の総意? 交代発表は4日後? どういうことだ?〉 潮田とは1週間前、赤坂にあるザ・キャピトルホテル東急で会食をしたばかりだった。その場で自分の人事については話題にもならなかった。 会食には瀬戸と潮田、エグゼクティブの人材紹介を手がけるJ社の社長がいた。Jの社長は潮田と付き合いが長く、LIXILグループ幹部にはJの紹介で入社した人も少なくない。なにより瀬戸のLIXILグループ入りを仲介したのもこの人物である。3人には共通項があって、全員が東京大学経済学部土屋守章ゼミのOBだった。 食事が終わると潮田とJの社長はホテルにあるバーへ消えていった。そこで潮田と軽く飲んだJの社長はその後、瀬戸に電話を掛けてきて、「潮田さんの話を聞いた印象だけれど、瀬戸さんは長期政権になると思ったよ」と告げた。約1週間前にそんなやり取りすらあったというのに、潮田は電話で「辞めてもらう」と言った。 ローマで受けた電話で仰天したことは他にもあった。それまで瀬戸はCEOの人事権を事実上握る指名委員会のメンバーと良い関係が築けていると思っていたが、潮田は電話で、「辞めてもらうのは指名委員会の総意だ」と言った』、「ローマ」での「空白の1日」に辞任を宣告されたとはさぞかし驚いたことだろう。
・『取り付く島がない潮田と食い下がる瀬戸  「本当に指名委員会の総意なんですか」 しばらくの沈黙を経て瀬戸は潮田に二度同じことを尋ねたが、潮田は「ええ。指名委員会の総意です」と言った。取り付く島がないことはわかったが、それでもこう食い下がった。 「中期経営計画がスタートしたのはこの4月です。わずか半年で辞めるなんて無茶ですよ。しかも4日後なんて従業員に説明がつかないし、そもそも株価が暴落します」 しかし潮田は何度も「指名委員会で機関決定したのだから仕方がないでしょう」としか言わず、電話を切った。瀬戸はひとまずカップに残っていたカプチーノを一気に飲み干した。本場の味を楽しむつもりで注文したが、すっかり冷めている。美味いはずがない。レストランには休日の朝を楽しむ観光客の声が響き渡っていたが、その中で一人、瀬戸は瞬きもせず、窓の外をじっと見つめた』、「4日後」に辞めさせられるとは本当に急な話だ。
・『巨大メーカーの誕生  LIXILグループはサッシやトイレといった住宅設備機器を手がける国内最大のメーカーである。傘下に約270社のグループ会社を抱え、150以上の国と地域で商品やサービスを提供している。2022年3月期の売上高は1兆4285億円、従業員は全世界で約6万人にのぼる。 公表している会社の歩みを見ると、同社は2011年、トステムとINAX、新日軽、サンウエーブ工業、東洋エクステリアが一緒になって誕生した会社となっている。一度に5社が統合して、巨大住設機器メーカーが誕生したという印象を与えるが、厳密にはいくつかの段階を経ている。 まずは遡ること10年前の2001年、サッシや窓、シャッターなどを製造・販売するトステムと、トイレや洗面器などを手がけるINAXが経営統合し、INAXトステム・ホールディングス(HD)が誕生した。 INAXトステムHDは2004年、住生活グループに社名を変更している。潮田の父親で、1949年にトステムの前身である日本建具工業を設立、当時はINAXトステムHDの会長だった潮田健次郎の意向によるものだった。健次郎は住宅関連商材を総合的に取り扱う会社という意味を新社名に込めたが、住宅関連以外にも手を出すといった野放図な多角化はしないという含意もあったといわれる。 住生活グループは2010年にシステムキッチンやシステムバスなどを製造・販売していたサンウエーブ工業とサッシ大手の新日軽を傘下に収め、健次郎が社名に込めた思いはさらに具体化した。残る東洋エクステリアはもともとトステムの関連会社として1974年に誕生した会社で、2000年に完全子会社となっている。つまりLIXILグループの中核となっているのはトステムとINAXで、そこにサンウエーブ工業と新日軽、東洋エクステリアがくっ付いていると理解した方が分かりやすい。 2021年に複数回にわたる情報システムトラブルで経営トップが辞任に追い込まれたみずほフィナンシャルグループは、同じメガバンクの三井住友フィナンシャルグループや三菱UFJフィナンシャルグループの後塵を拝し、常に業界3位に甘んじている。原因の1つは、みずほの母体となっている日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行出身者に旧行意識があるからといわれる。それを踏まえるとLIXILグループは5社のDNAが混ざり、せめぎ合っている会社と映るかもしれないが、歴史的な経緯もあって実際に残っているのはトステムとINAXの企業カルチャーだけである』、「実際に残っているのはトステムとINAXの企業カルチャーだけ」、そんなものだろう。
・『トステムとINAXの経営統合の裏側  もっとも中核であるトステムとINAXの力関係は対等とは言いがたかった。それは2001年の経営統合の形態をみるとわかる。表向きはHDの傘下にトステムとINAXがぶら下がる形になっているが、統合するにあたってHDを新設したのではなく、トステムがHDの母体で、ぶら下がったトステムは新設された企業体である。だから経営統合はしたものの買収企業はあくまでトステムで、INAXは被買収企業だった。 健次郎の自叙伝ともいえる『熱意力闘』(日本経済新聞出版社刊)には当時の経緯が描かれている。 INAX創業家出身の2代目社長で中興の祖と呼ばれ、当時会長だった伊奈輝三が2000年11月、健次郎に電話をかけ、面会を申し入れた。輝三がINAXの本社があった愛知県常滑市から単身で東京にあるトステム本社にやってくるというので、健次郎も1人で応対。すると輝三はいきなり「両社が一緒になってはどうでしょうか」と提案した。 健次郎は、それまで深い付き合いがあったわけでもなかった輝三の急な申し出にひどく驚いたが、その場で同意し、経営統合は事実上1時間足らずで決まった。その際、輝三は株式の統合比率やトップ人事などに一切の前提条件を付けなかった。健次郎は『熱意力闘』の中で、「あれほどの優良企業がと思うと、今も不思議な気がする」と記している。 この経営統合について、当時を知る関係者は大概こう言う。 「もともとトステムは業界6位だったが、営業の猛者たちが片っ端から商談を成立させてトップにのし上がった会社。一方、INAXは争いを好まない、お公家さん集団のような会社だった。企業体質が全く異なる2社の経営統合は驚きで、獰猛なトステムにおっとりしたINAXは飲み込まれてしまうんだろうなあと思った」 企業体質の違いはその後のLIXILグループの権力構造に如実に現れている。瀬戸が潮田からの突然の電話で辞任を迫られた2018年10月時点の取締役の構成をみると分かりやすい。総勢12人のうちトステム出身者は潮田を含めて4人、対するINAX出身者は創業家出身の伊奈啓一郎と、INAX最後の社長だった川本隆一の2人しかいない。 残る6人のうち1人は瀬戸。あとの5人はコンサルタント会社マッキンゼー・アンドカンパニー出身の山梨広一、元警察庁長官の吉村博人、作家の幸田真音、英国経営者協会元会長のバーバラ・ジャッジ、公認会計士の川口勉。いずれも潮田の要請を受けて社外取締役に就いた人たちだ。) LIXILグループは指名委員会等設置会社で、潮田と山梨、吉村、幸田、バーバラの5人がCEOの人事権を事実上握る指名委員。取締役のうち瀬戸と伊奈、川本を除く9人は濃淡こそあれ潮田に近い人物である。圧倒的にトステム系が多く、もしINAXとの間で争い事が起きれば、必ずトステムの主張が通るようになっていた』、「「もともとトステムは業界6位だったが、営業の猛者たちが片っ端から商談を成立させてトップにのし上がった会社。一方、INAXは争いを好まない、お公家さん集団のような会社だった。企業体質が全く異なる2社の経営統合は驚きで、獰猛なトステムにおっとりしたINAXは飲み込まれてしまうんだろうなあと思った」」、「INAX]のような無欲な会社があったこと自体が驚きだ。
・『怪しかったLIXILのコーポレートガバナンスの実情  指名委員会等設置会社について説明する必要があるだろう。 日本企業は長らく取締役が経営の「執行」と「監督」を兼任してきたため、株主の視点から経営されることが少なかったと指摘される。しかし、これからは株主の利益を重視した経営をするべきだとして、2015年にコーポレートガバナンス・コードが定められた。 日本語で企業統治と訳されるコーポレートガバナンスが最も機能する仕組みは指名委員会等設置会社だといわれる。株式会社は「所有(株主)」と「経営」が分離されていて、株主の負託に経営が応える形になっているが、指名委員会等設置会社は経営をさらに「執行」と「監督」に分離しており、業務は執行に委ね、それを取締役会が監督することになっている。執行が合理的で適正な経営判断をしているのかを取締役が監督し、株主の負託に応えるという建て付けだ。 LIXILグループがこの指名委員会等設置会社となったのは2011年。日本でコーポレートガバナンス・コードが導入されるより前だったこともあり、「コーポレートガバナンスの優等生」と呼ばれたが、実情はかなり怪しいものだった。 瀬戸に「指名委員会の総意で辞めてもらう」という電話をかけた潮田はLIXILグループの発行済み株式の約3%しか所有していない少数株主である。会社に顔を出すことは滅多になく、月の半分以上をシンガポールで過ごし、そこで骨董品を集めたり、プロの声楽家を呼んで発声練習をしたりする悠々自適の生活を送っていた。 しかし実質的にCEOを選任する機能を持つ指名委員会や取締役会のメンバーを自分に近い人材で固めているため、思い通りにならなければ経営トップのクビを飛ばすことができる。表向きは指名委員会等設置会社だが、実際はわずかばかりの株式しか持たない潮田がオーナーとして振る舞ういびつな会社というのがLIXILグループで、瀬戸への電話は絶対権力者の最後通牒と言えた』、「表向きは指名委員会等設置会社だが、実際はわずかばかりの株式しか持たない潮田がオーナーとして振る舞ういびつな会社というのがLIXILグループ」、なるほど。

次に、6月24日付け文春オンライン「「僕は会食で辞意なんか告げていません」世間が注目した“リクシルお家騒動”の裏で…取締役会を手なずけた“創業家のウソ” 『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』より #2」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/54682
・『2018年10月31日、LIXILグループ(現LIXIL)は突如として瀬戸欣哉社長兼CEOの退任と、創業家出身の潮田洋一郎取締役の会長兼CEO復帰を発表。外部から招へいした「プロ経営者」の瀬戸氏を創業家が追い出す形となった。しかし2019年6月25日、会社側に戦いを挑んだ瀬戸氏が株主総会で勝利し、社長兼CEOに“復活”する。 ここでは、一連の社長交代劇の裏側に迫ったジャーナリスト・秋場大輔氏の著書『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』(文藝春秋)から一部を抜粋。2018年10月31日、取締役会を終えたLIXILグループは記者会見を開き、瀬戸氏の社長兼CEO退任と、山梨広一社外取締役の社長兼COO就任、潮田氏の会長兼CEO復帰を公表。瀬戸氏はその直後、自らを退任に追い込んだ潮田氏の“暗躍”を知ることになる――。(全4回の2回目/1回目から続く)』、興味深そうだ。
・『瀬戸退任が決議された取締役会では……  記者会見とアナリスト説明会を終えた瀬戸はその日の夜、簡単な夕食を取りながら長かった1日を振り返っていた。 取締役会の直前に伊奈啓一郎と川本隆一、川口勉を見かけた。3人は瀬戸の退任に一様に驚いていて、取締役会では疑義を唱えることを約束してくれた。しかし実際に異議を唱えたのは伊奈と川本の2人だけで、その主張はかき消された。川口は退任の経緯こそ聞いたものの、逆に自分が辞任するという話が出ると大賛成といわんばかりの態度を見せたのには驚いたが、「潮田派」が多数を占める取締役会の構成を考えれば、議論の流れは想定内なのかもしれない。 しかし幸田真音が「今回の人事については、瀬戸さんがCEOを降りてもいいという話があったところから全てが始まった印象がある」という発言は意外だった。自分が辞めるのは指名委員会の総意、そうではなくとも潮田が意思統一をしていると思い込んでいたからだ。 取締役会で幸田は「用事がありますので失礼します」と言って採決には参加せず、部屋から出て行った。だから発言の真意を質すことはできなかったが、退席する際に、他の参加者に見つからないように「私は瀬戸さんにもう少し長くCEOをやって欲しかった」と書き添えた自分の名刺をそっと瀬戸に渡した。そこには幸田の携帯電話の番号が書かれていた。 自分も知りたいことがあるし、幸田も話したいことがあるに違いない。そう思った瀬戸は食事を途中でやめてスマートフォンを取り出し、名刺に書かれていた番号に電話を掛けた。そこで幸田が話した内容は瀬戸にとって驚くべきことばかりだった』、どういうことだろう。
。『幸田から聞いた“瀬戸退任劇”の驚きの裏側  指名委員会を10月26日に開くというのは急に決まったことで、事務局は24日から日程調整を始めた。忙しい身の幸田は「当日は残念ながら足を運ぶことができません。電話で参加します」と答えると、25日の夕方には潮田から直接電話があって、「瀬戸さんとは10月19日に夕食を一緒にしたんですけれど、そこで『CEOを辞めたい』と言い出したんです。びっくりしましたよ。至急後任を決めなければならない。だから私がCEOに、山梨さんがCOOになります」と言った。 幸田は唐突な話に驚きながら、「でも潮田さんは普段、シンガポールにいらっしゃるじゃないですか。経営なんてできるんですか」と聞くと、潮田は「方法は色々とありますよ」と答えた。 幸田は瀬戸にそんなやり取りがあったことを明かし、さらに「瀬戸が急に辞意を表明したため、潮田と山梨がショートリリーフで急場を凌ぐことになった。それならばリモート経営は仕方のないことかもしれない。いずれにせよ潮田CEO、山梨COOに就任は暫定的なものだ」というのが当時の自分の理解だったとも語った。 「幸田さん、僕は潮田さんに辞意なんか告げていませんよ。だいたい10月19日の会食で人事の話なんか出ていません」 瀬戸がそう言うと、今度は幸田が「驚きました」と言い、それから、26日の指名委員会の様子を説明した』、「潮田」は「瀬戸」が辞めるのは指名委員会の総意」と「瀬戸」に説明していたのとは、全く異なるようだ。
・『潮田が使った“二枚舌”の内容  指名委員会に出席したのは潮田と山梨、吉村博人の3人。自分とバーバラ・ジャッジは電話で参加した。さしたる質問は出ず、提案された人事案を指名委員全員が条件付きで賛成した。条件とは潮田が改めて瀬戸の意向を確認するというもので、31日の取締役会の前に指名委員会を再度開き、潮田の説明を聞くことが決まった。 幸田との電話で瀬戸は自分の退任が決まった経緯を理解した。つまりこういうことだ。 指名委員会を開くにあたり、潮田は幸田らに「瀬戸さんが辞めたいと言っている」と説明した。しかし指名委員会が開催された翌日の電話で、自分には「指名委員会の総意で辞めてもらう」と言った。つまり偽計を図った、言い換えれば二枚舌を使ったのだ。 翌日、瀬戸は吉村に電話を掛け、幸田から聞いた話が本当なのかを尋ねた。吉村は幸田が話した内容が概ね正しいと言い、さらにこんな経緯も明かした。 「潮田さんは『瀬戸さんが辞意を表明した』と言ったけれど、私にしてみれば『ああそうですか』と簡単には言えない。だから『潮田さんが瀬戸さんの意向を改めて確認した上でトップ交代を取締役会に諮ろう』ということにした。31日の取締役会の前に開かれた2回目の指名委員会は、潮田さんが瀬戸さんの意思を説明する場だった」という趣旨のことを言った。 事実が確認できて瀬戸は腹立たしさが募った。しかし二枚舌を使った潮田に反撃するべきなのか否か。心は揺れた。 〈クビ宣告があったことを知った幹部の中には「それはおかしいよ。泣き寝入りせず、立ち上がるべきだ」と言った人もいたけれど、指名委員会の総意なら仕方がないと考えて退任を受け入れた。しかし事実が違うのであれば話は変わってくる〉 〈とはいえ10月31日の午前中に開かれた取締役会でCEOの交代を決議している。その後の記者会見やアナリスト説明会で潮田体制はお披露目された。ここまで話が進んでいるのに、自分が暴れて会社が混乱に陥るようなことになるのは本望ではない。屈辱的なアナリスト説明会も我慢したのはそう思ったからだ。暴れることがきっかけで自分のキャリアに傷が付くのも困る。そうであれば大人しく引っ込むのも選択肢の1つではないか〉』、「瀬戸」氏が「自分が暴れて会社が混乱に陥るようなことになるのは本望ではない。屈辱的なアナリスト説明会も我慢したのはそう思ったからだ。暴れることがきっかけで自分のキャリアに傷が付くのも困る。そうであれば大人しく引っ込むのも選択肢の1つではないか」、さすがプロ経営者は考えることが違う。
・『瀬戸退任への反響  潮田に辞任を言い渡された時、瀬戸は「急に辞めれば株価は大暴落するだろうし、社員は混乱する」と言った。実際はどうだったのか。 記者会見は取引時間中に開かれたが、31日の東京株式市場でLIXILグループ株はさして反応することもなく取引を終了した。このため記者会見とアナリスト説明会の合間を控室で過ごした潮田は、同じ部屋にいた瀬戸に聞こえるよう大きな声で「山梨さん、株式市場は反応していないねえ」と言ったが、翌日になって、市場は潮田体制に露骨な疑問を呈した。11月1日の終値は1530円。前日に比べて14%下落した。 「社員は混乱する」という瀬戸のもう1つの“予言”も当たった。 瀬戸の退任はほとんどの社員にとって寝耳に水で、辞めることを知ったのは、瀬戸が社内向けSNSの「ワークプレイス」にこんなメッセージを載せたからだ。 「私は2016年1月にLIXILに参画して以来、グループ内のシナジー最大化に注力し、組織の簡素化、フラット化を進め、水回り事業を担うLWT事業をLIXILグループの成長を支える中核事業として強化してきました。また、デジタル分野への投資を進め、新しい戦略を推進することで、業界を主導する体制を築いてきました」 「しかしながら、私と取締役会の間で今後の方向性に相違があることがわかりました。取締役会の決定によりこの会社の舵取りを任されたのですが、今後の経営方針の転換という取締役会の判断を尊重したいと思います。この3年間の、みなさんの協力とこれまでの貢献に心から感謝しています」 その後、約10日間に瀬戸のコメントには400近くのリアクションが寄せられ、そのほとんどに「悲しい」というマークが付いた。中にはあえてコメントを寄せる従業員もいた。 「残念でなりません。瀬戸さんの方針がとてもオープンで大企業で働いているって思えました。仕事をしていて将来を明るく感じていたところなのに。残念です。できればやめないでいただきたいと切に思っております。方針の違いってなんだったのでしょうか。不安で仕方ありません」 「オープンな企業文化改革、フラットな組織改革、新価格制度、LIXILのあらゆる改革をスクラップ&ビルドで取り組まれており、いずれも共感できるもので軌道に乗ればきっと最高のLIXILになると思ってがんばってきたのですが、スクラップしたところでビルドの形を変えるのはあり得ません。ただただ不安です。瀬戸さんとしても本意ではないのかもしれませんが、このタイミングで退任しないでほしいです」 従業員向けの対応で、潮田、山梨と瀬戸の態度は異なった。新体制が発足した11月1日に潮田と山梨は早速一部の営業幹部を集めて檄を飛ばしたものの、従業員全員に対するメッセージを発信することはなかった。それに広報担当役員のジン・モンテサーノは苛立った』、「潮田と山梨は早速一部の営業幹部を集めて檄を飛ばしたものの、従業員全員に対するメッセージを発信することはなかった」、「広報担当役員のジン・モンテサーノは苛立っ」のも無理もない。
・『広報担当役員が苛立った理由  ジンがLIXILグループに入社したのは2014年である。当時はベルギーのブリュッセルで仕事をしていたが、瀬戸の前任だった藤森義明に「広報体制をグローバル化するのに協力してくれないか」と誘われたのがきっかけだった。その藤森が急にCEOを退任するとなった時に社内は大混乱した。瀬戸の退任も藤森の時と同じくらい急である。ここで新体制がどういうつもりなのかを従業員にはっきりさせておかないと藤森退任の時の二の舞になると思ったが、潮田も山梨もどうやらそのつもりがない。 苛立った理由はまだあった。ジンが瀬戸から「クビを宣告された」という連絡を受けたのは10月27日である。びっくりして翌日の日曜日に「事態が飲み込めません。そもそも急すぎるのではないでしょうか」と潮田に連絡すると、「落ち着いてください。月曜日に説明しますよ。ジンさんは心配性なんだから」と諫められた。しかし「説明しますよ」といった29日月曜日に訪ねると、潮田は突然、「24時間以内にプレスストーリーを作ってください」と言った。おかげでジンは突貫工事を強いられた。 〈潮田さんと山梨さんは忙しいのかもしれないが、ひょっとすると従業員など眼中にないのかもしれない。だからメッセージを出そうとしないのではないか。しかし情報を発信しないことが経営にマイナスであることにそのうち気づくだろう。「心配性なんだから」と言っておいて、後になってから急に「交代会見のプレスストーリーを作ってくれ」と言った時と同じように態度を急変させるかもしれない。そのしわ寄せは広報に来るに違いない〉 そう考えたジンは改めて潮田と山梨に「社内は動揺しています。顧客も同じに違いありません。何も言わないのはかなり不親切じゃないですか」と食い下がった。潮田はようやく「ジンさん、それでは文面を作ってください」と言った。新体制が出した所信表明は広報部が作成した文書で、それがワークプレイスに載った。 瀬戸は会社の実情を細部に至るまで自分で把握したがる経営者だが、潮田はそれとは正反対のタイプ。実務には無頓着で、「経営者とは大きな方向性を打ち出すだけでよい」と考えていたフシがある。『日経ビジネス』のインタビューでは「私は捨て石になることも多いが、布石を打つのが好きなんですよ。それに今期の利益を極大化する必要はないと思っている。10年後、20年後に花開く要素をどれだけ持っているかによって経営は決まるという考え方なんです」と語っているのはその象徴だ。 新体制スタート前後の潮田にとって、最大の関心事は瀬戸を追い出すことで、それ以外、例えば従業員向けにメッセージを出すことなどは些事だったのだろう。広報作成のメッセージには「良い会社にして欲しい」「期待している」といったコメントもあったが、潮田の姿勢を批判する辛辣なコメントも寄せられた。 「感謝している、という言葉の果てが実質的解任なんですか? 世間が言わしめるほどのプロ経営者を招いて、続けて2人も。コーポレートガバナンスとはなんですか? 創業家のエゴですか? 彼ら2人を招聘されたのは取締役会の決定という名ばかりのあなたの独断ではないですか? 世間はそう思っています」』、「瀬戸は会社の実情を細部に至るまで自分で把握したがる経営者だが、潮田はそれとは正反対のタイプ。実務には無頓着で、「経営者とは大きな方向性を打ち出すだけでよい」と考えていたフシがある」、「従業員向けにメッセージを出すことなどは些事だった」、なるほど。
・『瀬戸に掛かってきた弁護士の友人からの電話  11月2日。金曜日の深夜に、吉野総合法律事務所の弁護士、吉野正己のスマートフォンが鳴った。掛けてきたのは瀬戸だ。新聞記事で瀬戸がLIXILグループのCEOを辞任したことを知っていた吉野はどう慰めたら良いのか分からず、とりあえず「大変だったなあ」と言うと、瀬戸は「その件で相談したいんだ」と言った。 瀬戸と吉野は私立武蔵中学校時代からの友人である。共に武蔵高校へ進み、卒業後、瀬戸は東京大学文科二類に、吉野は文科一類にそれぞれ進学した。受験時代は分厚い参考書でも2、3度読めば、ほぼ内容が頭に入ったという記憶力を持つ吉野は、外務省の上級職試験に合格して東大法学部を卒業、外務省へ入省したが、わずか6年で退職。退職後に司法試験を受けて弁護士になっていた。 瀬戸が辞任の顚末を話すと、吉野はこう答えた。 「取締役会が虚偽の情報に基づいて人事を決議したのなら、決議を無効にすることはできるよ。そんなことは俺がやってやる。ただ裁判には時間がかかる。それに潮田さんのCEO選任決議が無効になっても、瀬戸をCEOに選任する決議は別にやり直さなければならない。取締役会は潮田派が多数を握っているんだろ。選任決議に持ち込んだとしても瀬戸は選ばれないよ。残念ながら裁判に訴えても瀬戸のCEO復帰は難しいということだ。むろん手がないわけではない。臨時株主総会を開いて潮田さんと山梨さんを取締役から解任すること。でもそれはちょっと過激な行動だよな」 退任発表後の従業員やアナリストの反応、株価の動き、そして吉野の話を聞いて、今後のキャリアを考えれば大人しくしている方が得策ではないかという心境に傾いていた瀬戸の気持ちは少し変わった。 〈騒がないことが会社のためになるかも知れないとも考えたけれど、退任を惜しんでくれる人がいる。少なくとも真実は明らかにしたい。しかし吉野は裁判だと時間がかかると言った。そうであれば退任の経緯を指名委員会の人にきちんと認識してもらい、決議を覆すのが最善策かもしれない〉 まずは指名委員会だ。そう思った瀬戸は指名委員会から取締役会までに何が起きたのかを教えてくれた幸田や吉村に動いてもらおうと考え、2人に面会を申し込んだ。その一方で吉野に改めて連絡をして、「とりあえず幸田さんと吉村さんに会うつもりだ。話を聞いた後に会って、また相談させてくれ」と言った。 瀬戸からの電話を受けた吉野は当初、友人として軽くアドバイスをしているつもりだったが、次第にかなり由々しき事態であることがわかり、法曹家として見過ごしてはいけない気になってきた。 吉野は週末にいつでも瀬戸に会えるよう自宅で待機していた。しかし待てど暮らせど瀬戸から電話がない。ようやく掛かってきたのは11月4日、日曜日の夜だった。瀬戸は言った。 「申し訳ない。今日は吉野に相談することがなくなっちゃった。指名委員会を動かそうと幸田さんと吉村さんに何度も電話をしているんだけれど通じない。2人とも指名委員会から取締役会までの経緯をちゃんと教えてくれたのに、なんで急に距離を置くようになったのだろう。理由が分からない」』、「幸田さんと吉村さんに何度も電話をしているんだけれど通じない。」、何が起こったのだろう。

第三に、この続きを、6月24日付け文春オンライン「「今回の社長交代には納得できない」リクシルを追われた“プロ経営者”が創業家と全面戦争へ…CEO復帰を明言した“逆襲の記者会見” 『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』より #3」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/55342
・『2018年10月31日、LIXILグループ(現LIXIL)は突如として瀬戸欣哉社長兼CEOの退任と、創業家出身の潮田洋一郎取締役の会長兼CEO復帰を発表。外部から招へいした「プロ経営者」の瀬戸氏を創業家が追い出す形となった。しかし2019年6月25日、会社側に戦いを挑んだ瀬戸氏が株主総会で勝利し、社長兼CEOに“復活”する。 ここでは、一連の社長交代劇の裏側に迫ったジャーナリスト・秋場大輔氏の著書『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』(文藝春秋)から一部を抜粋。2019年4月5日、東京・大手町のオフィスビルで記者会見を開いた瀬戸氏は、CEOに復帰してLIXILグループを立て直すことを表明する。(全4回の3回目/4回目に続く)』、興味深そうだ。
・『号砲を鳴らす日  2019年4月5日の東京は、雲の切れ間から時折日差しが地面に届くような天気だった。この時期にしては少々蒸し暑い日に、東京・日本橋にある吉野の事務所には朝から続々と人が入ってきて、「久しぶり」「元気だった?」などと声を掛け合った。 声の主は瀬戸が立ち上げたモノタロウのOBやOGである。モノタロウは本社を兵庫県尼崎市に置いていて、社員のほとんどは関西に住んでいる。吉野の事務所に集まった面々は前日に東京へやってきてビジネスホテルに宿泊し、この日の朝、地図を頼りに地下鉄の日本橋駅から少し離れたところにある吉野の事務所へやってきたのだ』、「モノタロウ」は「瀬戸が立ち上げた」とは初めて知った。
・『「最近は何してんの?」  「家の近くに畑を借りて、きゅうりやらトマトやらを植えてんねん。この歳やから、体がきつくてかなわんわ」 OBとOGが、まるで同窓会が開かれているかのような会話を関西弁でしているところに瀬戸が現れた。 「急なお願いで本当に悪かったね。東京へは昨日来たんでしょ。よく休めた?」 瀬戸がお礼と労いの言葉をかけると、1人が答えた。 「いや、電話をくれて嬉しかったわ。新聞やテレビで瀬戸さんが大変な目に遭うていることは知ってましたから。こんな時にお役に立てることがあるなんて、ありがたいお話ですわ」 瀬戸は2018年10月31日に開かれた記者会見の冒頭で「皆さんにお会いするのもこれで最後になると思いますけれど……」と、表舞台に立つのはこれが最後であるかのようなことを言った。 しかしその後、潮田と山梨を解任し、CEOに復帰してLIXILグループを立て直そうと考えを改めた。それがDo The Right Thingだと思ったからだ。もっともこの試みが正義であることは、指名委員会や株主からの賛同を得て初めて証明できるものでもあった。それには公の場に立ち、世間に訴える必要がある。4月5日はその号砲を鳴らす日だ。 瀬戸はこの日に備えてAというPR会社と契約を結んでいた。会見場の設営や記者会見の司会進行はもちろんのこと、当日、メディアに配る資料を作成したり、質疑応答に備えて想定問答を作ったりするのがAの仕事だった。 しかしAは記者会見の直前になって突然、契約の解除を申し入れてきた。瀬戸が理由を尋ねると、担当者はこう言った』、「PR会社と契約を結んでいた」とはさすがだ。
・『瀬戸が激怒した担当者の言葉  「うちがPRの業務委託を受けている先にLIXILグループと関係の深いところがあります。瀬戸さんの依頼を受けると、ともすれば利益相反行為になってしまいます。それで誠に申し訳ありませんがお断りしようということです」 瀬戸は激怒した。契約を結ぶ時、Aの担当者は「弊社が業務委託を受けている先には瀬戸さんと利益相反が生じる可能性があるところもあります」と確かに言った。しかし「しかし社内では完全にファイアーウォールを敷いておりますのでご安心下さい」とも語った。それが記者会見の直前になって利益相反を理由に契約の解除を申し入れてきたのだ。おまけに契約を結んでからその日までの委託料を当然のように請求してきた。 いずれにせよ関係を継続するわけにはいかない。契約はその場で打ち切った。それからしばらく「利益相反が生じる可能性がある相手」とは誰なのかを考えたが、最重要課題は目前に控えている記者会見をどう乗り切るかだと思い直し、善後策を考えた』、「利益相反を理由に契約の解除を申し入れてきた」にも拘らず、「契約を結んでからその日までの委託料を当然のように請求してきた」、とは酷い話だ。
・『記者会見には瀬戸の妻、陽子の姿も  Aが予約した会見場は大手町のオフィスビルの2階にある会議室である。記者会見に使えそうな近隣の会議室に比べると使用料は手頃だったが、その分、エントランスから会見場までの動線が少し分かりにくかった。 記者会見に参加するメディアは迷うかもしれないから会場まで案内をする人が3人必要だ。そのほか受付にも3人いるだろう。司会が1人、質疑応答の際に記者の元へマイクを運ぶ人が2人……。瀬戸は自ら会場へ足を運び、記者会見を開くのに必要な人数を割り出し、モノタロウのOBやOGに直接電話をかけた。瀬戸からの突然の電話に誰もが一様に驚いたが、事情を聞き、ほとんどが2つ返事で東京行きを決めた。 記者会見の開催を決めてから実際に開くまでの時間はわずかだったにも拘わらず、吉野の事務所に10人近くが顔を揃えた。その中にモノタロウのOBやOG一人ひとりに頭を下げ、お礼を言っている瀬戸の妻、陽子の姿もあった。同じ部屋にいた瀬戸が人数を数え、「マイクを運ぶ人がどうしても1人足りないなあ」と言うと、陽子は「それ、私がやるわ」と買って出た。 受付は陽子が営む会社で働く岩根静江が、司会はモノタロウでIRを担当していたOGの山崎知子が請け負った。記者会見で配布するプレスリリースは当日の朝までかかって瀬戸と吉野が作成した。徹夜になったのは、株主に海外の機関投資家もいて、日本語版だけでなく、英語版も2人で手分けして作ったことに加え、記者会見で出そうな質問に対する回答集も作ったからだ。 難儀だったのは取締役候補者の略歴書作りだった。社外取締役候補となった西浦や鬼丸、濱口、鈴木はさまざまな経験をして現在に至っている。これを寸分間違えることなく経歴書に落とし込む作業は、間違いがあってはいけないため意外と手間がかかる。それを瀬戸に西浦を紹介した岸田が仕事の合間を縫ってまとめた。 約20年前の2000年、瀬戸はわずかばかりの仲間と大阪の阿波座にあるペンシルビルに事務所を借りてモノタロウを創業した。当時、eコマースと呼ばれたビジネスの肝である情報システムですら自前で構築し、家賃5万円のマンションを借りて、そこにサーバーと冷却用のクーラーを何台も置いて商売を始めた。4月5日午後1時から始まった記者会見は、裏方にその道のプロが1人としていない何から何まで手作りの舞台だったが、それはモノタロウが産声を上げたころの様子をどこか彷彿とさせた。 司会の山崎に促される形で登壇した瀬戸は、自分を含む取締役候補を紹介した上で2つの話をした。1つは6月の定時株主総会に株主として瀬戸を含む8人を取締役候補として提案、選任を求めるが、今後指名委員会に対し、この8人を会社提案の取締役候補にするよう働きかけていくということである』、「社外取締役候補となった西浦や鬼丸、濱口、鈴木はさまざまな経験をして現在に至っている。これを寸分間違えることなく経歴書に落とし込む作業は、間違いがあってはいけないため意外と手間がかかる」、確かに大変そうだ。
・『「お友達内閣を作ろうとしているのではない」  もう1つは、この取締役候補が選任されれば自分はCEOに戻るつもりであり、復帰後には昨年スタートさせた中期経営計画を復活させると話した。 瀬戸は4人の社外取締役候補について説明し、「いずれも立派で実績もある方ばかりですが、もう1つ候補者には共通項があります。いずれも信頼できる第三者からの紹介で出会った人ということです。かねてからの友人ではなく、私を監督し、叱り、必要によっては交代させられる方々であり、誰の私利私欲も退けられる人ばかりです」と強調した。それは指名委員会や株主に対するメッセージで、「お友達内閣を作ろうとしているのではない」という意思表示である。 もう1つ語気を強めたのは吉田がトステム出身者であることだった。自分たちの提案にトステムもINAXもないということを伝えたかったからだ。その上で今の自分の心境を語った。 「昨年10月31日にCEOを退任してから何をすべきかをずっと考えました。正直申し上げて他の仕事をしようかと思ったこともあります。でも私の行動規範の最後の拠りどころは『Do The Right Thing』です。虚心坦懐に自分がすべきことを考えた時、LIXILグループに戻って仕事を全うすることが正しいことだと結論づけました」 「今回の経営者交代は明らかに正しい事ではなかったと思います。これを許したら、LIXILグループは正しい事をしない会社と思われてしまう。それでは従業員や株主に迷惑がかかるし、そもそも従業員に対して『正しいことをしよう』と言い続けてきた自分自身がそこから逃げたことになる。だから復帰を目指すことにしました」 質疑応答に移ると、メディアからの質問は退任の経緯に集中した。すでに『日経ビジネス』や『FACTA』、『日本経済新聞』などが報じていたことに加え、公表された調査報告書要旨にも書かれていることではあったが、瀬戸が公の場に出たのは昨年10月31日以来のこと。メディアは本人の口から聞きたいと思ったのか、さかんにこれまでの経緯を問いただした。 次に多くの質問が寄せられたのは瀬戸の潮田に対する思いだった。瀬戸は「LIXILグループを経営する機会を与えてくれたことは感謝したい」と前置きした上で、国内事業でシェアと利益率のどちらを重視するか、ペルマをどう捉えるかといった点で潮田とは考えが違ったことを指摘した。さらにシンガポールに住みながら経営が出来るのかなどと潮田の経営スタイルに疑問を投げかけ、事実上、潮田の一存で人事が決まってしまうLIXILグループのコーポレートガバナンスは正さざるを得ないと語った。 一般的に記者会見の所要時間は40分から50分程度で、長くても1時間というのが目安である。しかし、少しでも多くの世間や株主に自分たちの行動は正義であると認識してもらう必要があると考えた瀬戸は吉野と相談して会見時間を1時間半と設定し、さらに質疑応答が終わった後に発表者をメディアが囲んで追加の質問をする、いわゆる「ぶら下がり」にも応じた。会見が終わったのは午後3時を過ぎていた』、「少しでも多くの世間や株主に自分たちの行動は正義であると認識してもらう必要があると考えた瀬戸は吉野と相談して会見時間を1時間半と設定し、さらに質疑応答が終わった後に発表者をメディアが囲んで追加の質問をする、いわゆる「ぶら下がり」にも応じた。会見が終わったのは午後3時を過ぎていた」、マスコミ対応を丁寧にしたのは正解だ。
・『2通りのプロセス  3月20日に機関投資家4社と伊奈が、潮田と山梨の解任を議案とする臨時株主総会の開催を請求した。これが賛成多数で可決されたとして、LIXILグループのその後の経営をどうするか。瀬戸が4月5日に発表したのは自身を含む8人の取締役が選任され、自分がCEOに復帰して舵取りをするというものだった。 復帰は2通りのプロセスが考えられた。株主提案で8人の選任を求めて定時株主総会に臨み、株主の審判を仰ぐというものが1つで、もう1つは指名委員会や取締役会が瀬戸を含む8人を会社提案の候補者にするという方法である。それを4月5日の記者会見で話した瀬戸は、後者のプロセスの可能性が10分にあるのではないかと考えていた。この時点でLIXILグループは定時株主総会に諮る会社提案の取締役候補を決めていないからばかりではない。他にも理由があった。) 1つはメディアの報道が概ね瀬戸に好意的だったことだ。記者会見で可能な限り丁寧に対応し、その後、続々と申し込まれた単独インタビューに全て対応したことも奏功したのかもしれない。瀬戸が記者会見を開いている間にLIXILグループの株価が急騰し、4月5日は前日比90円高の1654円で引けたことも好材料だった』、「株価が急騰」は経営陣への信認の表れだ。
・『瀬戸の追い風となる2つの動き  さらに瀬戸には追い風となる2つの動きがあった。1つは豪ファンド運用会社のプラチナム・アセット・マネジメントが潮田と山梨の解任に賛成すると表明し、「瀬戸氏主導の事業再生が道半ばで、経営首脳の交代に納得できない」というコメントを出したことである。プラチナムはLIXILグループの株式を議決権ベースで4・42%保有する2位株主。それが解任に賛成すると表明したことは、他の株主にも少なからず影響を及ぼすことが予想された。 もう1つは会見当日と偶然重なった朝日新聞の報道だった。年明け以降、西村あさひ法律事務所がまとめた調査報告書の内容と開示方法を巡ってLIXILグループの取締役会はもめた。侃々諤々の議論の末、2月25日に報告書を編集した「報告書要旨」が会社名で公表され、それが機関投資家らの反発をさらに増幅させたが、朝日は「要旨」ではなく、「調査報告書」の内容を報じ、会社が意図的に公表を避けた点を明らかにしたのだ。少々長くなるが記事を引用する。 住宅設備大手、LIXIL(リクシル)グループの首脳人事の経緯が不透明だと機関投資家が疑問視している問題で、第三者の弁護士がまとめた首脳人事に関する調査報告書の全容が明らかになった。CEO(最高経営責任者)に復帰した創業家の潮田洋一郎氏に対する遠慮が多くの取締役にあったことがガバナンス(企業統治)上の問題を招いた原因だと報告書は指摘していたが、LIXILはこうした部分を伏せて公表していた。 LIXILは、首脳人事の手続きの透明性について調査・検証が必要だとする意見が一部の取締役から出たことを受け、第三者の弁護士に調査を依頼した。2月25日に調査報告書の簡略版を自社ホームページで公表したが、全文公開はしなかった。首脳人事を疑問視する機関投資家が情報開示が不十分だとして反発。全文公開を求めているが、LIXILは応じていない。 朝日新聞は2月18日付の調査報告書の全文を入手した。LIXILの監査委員会から調査を委嘱された弁護士がまとめた報告書は全17ページ。取締役全員に聞き取り調査を実施し、関連資料を精査してまとめたものだ。一方、LIXILが公表した簡略版は8ページ。社長を退任した瀬戸欣哉氏と潮田氏の対立の詳しい経緯や背景、聞き取り調査での取締役の発言など多くの記述が省略されていた。 調査に至った経緯や報告された事実をまとめ、今後の対応を記す体裁をとっており、報告書全文の章立てにも修正が施されていた。全文には「一連の手続きにおけるガバナンス上の問題点」と題する4ページにわたる章があるが、その大半が削られ、「調査結果を踏まえた当社の対応」の章が加えられており、全文に沿った要約とは言い難い内容に修正されていた。(中略) 簡略版では伏せられているが、首脳人事の「ガバナンス上の問題点」の検証結果も盛り込まれていた。指名委の議論が潮田氏主導で行われ、指名委が瀬戸氏の辞意を確認していなかったと指摘し、手続きの客観性・透明性の観点から望ましくないとの見解を示していた。 さらに、「創業家である潮田氏が自分でCEOをやると言っている状況で、それに異を唱えることのできる者はおらず、誰も反対のしようがない状況だった」という調査対象者の発言を記し、「社外取締役を含めた多くの取締役に潮田氏に対する遠慮があったことが認められる」と分析。「このことが潮田氏が提案する人事に対して、ガバナンスを効かせた議論をすることができなかった原因・背景の1つになった」と指摘していた。(朝日新聞2019年4月5日) 機関投資家と伊奈が臨時株主総会の開催を請求した時点で、指名委員会にその結果を見通すことは難しく、取りうる選択肢はいくつもあった。しかしプラチナムの発表や朝日のスッパ抜き、記者会見後の一連の報道や株価の値動きで、潮田サイドは不利な状況に追い込まれているといえた。おまけに会社は朝日新聞の報道で観念したのか、シンガポール移転のくだりなどを黒塗りにした報告書を9日に全文開示している。潮田と山梨が解任される可能性は俄然高まった。 それでも指名委員会が潮田の意向に沿った取締役候補を立てれば、今度は批判の矛先が指名委員会に向かいかねない。さらに瀬戸は記者会見で、「現在の社外取締役で、私たちの候補者チームに参加して頂ける方がいれば、それは経営の連続性の観点からも前向きに検討したい」と語り、社外取締役の中で再任に意欲を見せていた指名委員長のバーバラ・ジャッジがなびきやすい状態も作っていた。だから指名委員会は自身を含む8人、もしくはバーバラを含む9人を会社提案の取締役候補にすることもあり得る。瀬戸はそう考えた』、最終的にどうなったかは次の記事。

第四に、この続きを、6月24日付け文春オンライン「「これで『100倍返し』をしてやった」“お家騒動中”のリクシルが取締役辞任を電撃発表…プロ経営者を追い込む“創業家のシナリオ” 『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』より #4」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/55343
・『2018年10月31日、LIXILグループ(現LIXIL)は突如として瀬戸欣哉社長兼CEOの退任と、創業家出身の潮田洋一郎取締役の会長兼CEO復帰を発表。外部から招へいした「プロ経営者」の瀬戸氏を創業家が追い出す形となった。しかし2019年6月25日、会社側に戦いを挑んだ瀬戸氏が株主総会で勝利し、社長兼CEOに“復活”する。 ここでは、一連の社長交代劇の裏側に迫ったジャーナリスト・秋場大輔氏の著書『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』(文藝春秋)から一部を抜粋。2019年4月18日、緊急記者会見を開いたLIXILグループの潮田氏は、自ら取締役辞任を表明する。その真意とはいったい——。(全4回の4回目/3回目から続く)』、興味深そうだ。
・『突然の潮田辞任表明  瀬戸が記者会見を開いたのは2019年4月5日だった。その4日後の9日に、潮田は『読売新聞』と経済誌『週刊東洋経済』のインタビューに応じている。そこで2018年10月31日に開いた記者会見の時と同じように、瀬戸の経営は拙かったという趣旨の発言を繰り返したが、同時に今後の経営に対して意欲的とも取れることを語った。 例えば臨時株主総会で解任を求められていることについては、「希望があれば株主様には会います。分かってもらえるはずですよ」と発言。今後の経営計画を問われると、「連休明けの5月13日に決算発表を予定しています。その時に2020年3月期決算の見通しと、今後3~5年の新しい計画を発表する予定です」とも答えた。しかし10日も経たずに態度を180度変えた。 4月18日午後4時半、東京・六本木にある会議場「ベルサール六本木」でLIXILグループが緊急記者会見を開いた。ペルマの減損損失を計上したことなどで、3月期の最終損益が当初見込んでいた15億円の黒字から一転、530億円の赤字になる見通しだという業績下方修正を発表した。 この会見には潮田と山梨、CFOの松本が出席。そこで潮田は5月20日付で取締役を退任し、6月の定時株主総会でCEOも辞めると表明した。山梨は定時株主総会までは取締役とCOOを続けるが、総会後は取締役には残らないと言った。 潮田の取締役辞任表明は“奇襲”といえた。臨時株主総会が開かれれば潮田と山梨は解任される可能性がかなり高まっていたが、その臨時株主総会を開く根拠を失くすものだったからだ。しかし潮田は会見で、そうした目論見があって退任するのではないと強調した。巨額の赤字を計上することになったのは瀬戸がCEOとして手を打たなかったからで、退任するのはその瀬戸をCEOにした任命責任を取るからだという論理を展開した。 「取締役退任は臨時株主総会を回避するためではありません。今回の巨額損失の責任は瀬戸さんにありますが、彼をCEOに任命したのは当時の指名委員会のメンバーで、取締役会議長だった私の責任です。だから辞めるんです。私は38年間取締役をやってきましたが、(瀬戸の任命は)大変な、最大の失敗でした」 会見での潮田は瀬戸の退任を発表した2018年10月31日の時と同様、言いたい放題だった』、「潮田の取締役辞任表明は“奇襲”といえた」、確かにその通りだ。
・『潮田の過激な発言は瀬戸に向けられ……  「ペルマの買収を決めたのは私です。窓については世界一の技術を持つ会社を手に入れるのは夢でしたからねえ。うまく経営できるはずだったんです。しかし瀬戸さんの3年間の経営が宝石のようだったペルマを石ころにしてしまった。経営がおかしくなっているのなら、せめて取締役会で報告して欲しかったが、それもなかった」 「瀬戸さんは定時株主総会に株主提案をして、自らCEOへの復帰を目指しているようですけれど、この赤字を招いた責任をどう思っているんですかねえ。訝しく感じます」 一般的に会見に出席する記者は、発表者が口にする刺激的な発言をわざと取り上げる傾向がある。発表者が会見後に「一部が切り取られて報道された」と怒ったりするのはこのためだ。その意味で4月18日の会見は報道する材料にとって、いわば「撮れ高」の多いものだったが、ほとんどのメディアは潮田の過激な発言をカットして報じた。瀬戸への強烈な私怨を感じ取り、さすがにこれを報道するわけにはいかないと思ったからだろう。 業績下方修正を発表して、全ての責任を瀬戸に負わせる。臨時株主総会を前に潮田が辞任する。瀬戸にとって2つのシナリオは予想の範囲内ではあったが、いざ発表となると、さすがに驚き、聞き捨てならないと思った。 ペルマは確かに優れた会社だったかもしれない。しかしデジタル技術の革新で優位性は失われ、買収した時点ですでに「宝」どころではなかった。無理に受注したのは藤森時代で、そのツケが今回の決算に出たのに、潮田は会見で瀬戸の責任だと言った。 瀬戸は潮田の説明が明らかに間違いだと証明することができた。CEO就任が決まってすぐに作成したLIXILグループの経営に関する報告書では、かなりのページを割いてペルマのリスクを説明していた。正式にCEOになったのは2016年6月の株主総会後だが、その翌月の取締役会でペルマにどれくらいの損失が発生する可能性があるのか、具体的な数字を盛り込んだ資料も提出していた。取締役会の議事録を見れば、その後も報告を続けていたことは明らかだ。「取締役会への報告がなかった」という発言は、瀬戸の退任劇で偽計を使った潮田らしいと言えばそれまでだが、およそ容認できるものではなかった』、取締役会議事録を見れば分かるのに、「取締役会への報告がなかった」と強弁する「潮田」は平常心を失っているようだ。
・『潮田に反論するために瀬戸が取った行動  潮田の会見が終われば、メディアは当然、瀬戸にコメントを求めてくることが予想された。どこで応じ、どう反論するか。瀬戸がそれを考え始めた時に吉野から電話が入った。 「瀬戸、すぐに反論しよう。しかし、今から記者会見を設営するのは無理だ。20人くらいしか入れないけれど、俺の事務所でぶら下がり取材に応じるしかない」 「潮田さんの発言を聞いたけれど、よくあそこまで噓が言えるな。頭にきたからぶら下がりは霞が関ビルのエントランス前にして、時折、36階を見上げてやるパフォーマンスをしようと思ったくらいだが、吉野の事務所に集まってもらうのが現実的だな」 瀬戸は続けた。 「吉野、もちろん反論するよ。でも潮田さんと水掛け論になるのは避けたい。だからぶら下がりでは説得力を持たせることが大事だと思うんだ。LIXILグループの経営分析をした時の報告書とか、ペルマのリスクを数字で示すために作った資料が手元にあるんだけれど、これを持って話をするのはどうかなあ」 「でも、それは内部文書だろ。メディアに見せるわけにはいかないよな」 「だから『中身を見せるわけにはいかないが、証拠はここにある』と言うつもりだ」 「それならメディアは潮田さんの噓を理解するかも知れないね」 4月18日午後7時過ぎ。吉野の事務所は20人を超えるメディアで溢れかえった。「急に呼び立てたのに、広い部屋じゃなくて申し訳ないですね」。吉野が殺到するメディアに何度も詫びているところへ、瀬戸が予定よりも少し遅れて現れた。) すかさず取り囲んだ記者に潮田の取締役退任について「臨時株主総会を回避するためではないですかね」と感想を述べるなどしていると、案の定、「潮田さんは『瀬戸さんからペルマの経営状態について報告がなかった』と言っていましたが……」という質問が出た。 「そうおっしゃったみたいですが、事実と違います。私が手に持っているのがその証拠で、当時の報告書の一部です。皆さんにお見せしたいところですけれど、内部情報が含まれているから見せられない。残念です」 瀬戸はそう言いながら、数十枚に及ぶA4サイズの紙の束をくしゃくしゃに握りしめ、「悔しさ」を演出した』、「A4サイズの紙の束をくしゃくしゃに握りしめ、「悔しさ」を演出した」、「瀬戸」氏もなかなかの役者だ。
・『潮田が10日足らずで退任を表明した理由  潮田がメディアの取材に応じてから10日足らずで退任を表明することにしたのはなぜか。瀬戸は調査報告書をまとめて以降、LIXILグループからは手を引いた西村あさひ法律事務所に代わって再び前面に出てきた森・濱田松本法律事務所か、株主総会をどう乗り切るべきかというアドバイスなどをするコンサルタント会社のアイ・アールジャパン(IRJ)ホールディングスの入れ知恵だろうと考えた。 機関投資家と伊奈は3月20日に臨時株主総会の開催を請求し、そこでの潮田と山梨の解任を求めたが、潮田は当初、実際に開いたところで賛成は少数にとどまると踏んでいたフシがある。しかし時間が経つにつれて雰囲気は変わり、解任が現実味を帯びてきた。瀬戸は、潮田にそうした情勢変化を伝えたのも、取締役を退任するという「ウルトラC」を考えたのも森・濱田松本法律事務所かIRJと考えた。 会見で潮田は「6月の株主総会で会長兼CEOも辞めるが、その後、アドバイザーをやってくれと言われれば考える」と言い、山梨は「株主総会以降は取締役にはならないが、許されるのであれば執行に専念したい」と含みをもたせた。つまり山梨は潮田の後任となる会長兼CEOに就く用意があり、潮田は山梨の相談に乗るのはやぶさかでないと言った。 潮田は大掛かりなことは考えるが、細かなことには関心を持たない。一方の山梨は前年11月以降、LIXILグループのCOOとして日常的なオペレーションの舵取りをするようになったが、大事なことは必ず潮田に相談していると聞いていた。2人が会見で断定的な物言いをしていないから決めつけるわけにはいかないが、取締役ではないCEOと相談役が経営する、極論すれば「6月以降、肩書きは変わるが業務執行体制は変わらない」という前代未聞の人事を2人が考えつくとは思えない。 いずれにせよ4月18日の記者会見は事態を大きく変えた。潮田や山梨にとって臨時株主総会を開く必要がなくなったことはプラスの局面転換だっただろうが、一方、その時の2人が予想できなかったマイナスの局面転換もあった。その1つはCFOの松本が態度を一変させたことだ。 説明が必要だろう。瀬戸を陰に陽に支えたLIXILグループの経営幹部は何人もいたが、潮田や山梨にとって明確な敵は株主提案の取締役候補になった吉田と広報担当役員のジン、それに瀬戸チルドレンともいえる金澤ぐらいだった。 株主提案の取締役候補となった吉田は言うまでもない。広報担当役員のジンは昨年10月に瀬戸が事実上解任されたことについてメディアや株式市場の反応をレポートにまとめて取締役会に提出、潮田の逆鱗に触れた。その後、広報業務は潮田や山梨がIRJと同じタイミングで雇った危機管理広報コンサル会社のパスファインドが担うようになるという憂き目も見た。潮田や山梨はLIXILグループのデジタル戦略を支えるCDOの金澤に業務上では頼ったものの、瀬戸に誘われてLIXILグループ入りしている以上、潮田や山梨にとって味方とは言えない。 やや脱線するが、金澤については余談がある。瀬戸は4月5日に記者会見を開いて以降、メディアからの取材依頼を積極的に受けたが、窓口となったのは森明美という女性だった。瀬戸や吉野が作ったプレスリリースの最後には連絡先として必ずこの森の名前と携帯電話の番号が記されていた』、なるほど。
・『「森明美とは何者か」  「森明美とは何者か」。PR業界ではそれがちょっとした話題になった。この業界は横のつながりが強く、ライバル会社に所属する人であっても同業者ならば名前ぐらいは知っている。しかし森明美は聞いたことがなかったからだ。それもそのはずで、森はモノタロウOGであると同時に金澤の妻である。「金澤」を名乗れば会社側に勘ぐられかねないと考え、旧姓を名乗った。金澤は夫婦ともども瀬戸シンパだった。 しかし松本は吉田やジン、金澤とは違った。瀬戸に同情的ではあったが、瀬戸が退任し、潮田−山梨体制になってからもCFOとしての職務も忠実にこなしていた。本人は決して瀬戸と潮田−山梨を両天秤にかけていたつもりではなかった。自分の感情はひとまず横に置き、肩書きに相応しい仕事をすることが自分にとっての「正しいこと」だったと思ったからそうしたに過ぎない。 しかし潮田が退任会見を終えて、松本の堪忍袋の緒は切れた。肩書きはCFOだが、事実上、経営企画も担当しているのに直前まで潮田と山梨の人事を知らされていなかった。「ジンは知っていたの?」と聞くと、ジンは「そんなわけないじゃない」と言った。潮田と山梨は重要事項を決めるのに本来は関わらせるべき松本とジンらを外し、危機を乗り切るために雇ったIRJとパスファインド、それと森・濱田松本法律事務所に相談して物事を決めている。松本にはそう見えた。 株主から解任を突きつけられ、その流れが大勢となりそうな情勢になって潮田と山梨が多少なりとも動揺したことは間違いない。社内を見渡せば、誰と断定することはできないにしても瀬戸シンパの幹部は確実にいる。次第に猜疑心が強まって社内の人を信用せず、外部の専門家にしか頼らなくなった。それはそれで異常だが、「プロ」を名乗り、カネを渡す限りは忠実な人材で脇を固めるという心境は分からないでもない。しかし松本は会見でのペルマについての潮田の説明がどうしても許せなかった。 2016年1月に初めて出会ってから、時をおかずして瀬戸は「松本さん、ペルマを子会社として持ち続けることはリスク以外の何物でもないですよね」と言った。「最初からLIXILグループの急所を見抜いてくるとは。瀬戸という人はただ者ではないな」と思ったことを松本は鮮明に覚えている。その後、瀬戸が取締役会で具体的な数字を元にペルマ売却に言及し、それを潮田は表情にこそ出さないが、明らかに不満な様子で聞いていたことも見ている。 最終的にCFIUSが待ったをかけたため、ペルマのLIXILグループへの出戻りが決まったことが報告された取締役会で、松本は潮田が嬉しそうな顔をして会議室を飛び出して行ったことも目撃した。ところが退任を発表した会見場で隣に座った潮田は真顔で延々と「悪いのは瀬戸だ」と語った。松本はCFOの仕事を忠実にこなすことは決して「正しいこと」ではないと悟った。 〈このままでは会社がダメになる。もういい。これからは肩書ではなく、自分の気持ちに正直に行動しよう〉 松本が反旗を翻そうと決心をしたころ、ジンは金澤に相談を持ちかけていた。 臨時株主総会が開かれれば、潮田さんと山梨さんは解任される。そうしたらキンヤがCEOに復帰する可能性が一気に高まると思っていたけれど、記者会見で情勢が分からなくなった。2人は取締役にはならない。でも代わりの取締役は潮田さんの息のかかった人を据え、CEOを山梨さんにする。そして潮田さんが裏で糸を引くというのが、彼らの狙っているシナリオでしょう。そうなれば私達は間違いなくクビだけれど、考えてみたらもうクビになっているようなものじゃない。お互い次の道を歩むことになるだろうけれど、その前に『正しいこと』をしない?」 ジンが金澤に言ったアイデアはビジネスボードを活用するというものだった。前年12月にドイツのデュッセルドルフで開かれたビジネスボードのミーティングでの振る舞いを見て、メンバーのほとんどは山梨にはリーダーの資格がないと判断した。そのメンバーで「潮田−山梨体制では会社が持たない」という一種の連判状を作成し、指名委員会や主な機関投資家に送りつけて賛同を得るのはどうか。ジンはそう言った。 金澤はジンの言う「どっちにしろクビになるのだから、次の道を歩む前に自分たちができることをしよう」という考えには賛成した。しかし金澤は連判状に名を連ねるのが確実なのは自分とジン、吉田の3人しかいないと考え、「連判状を出すのなら、有志の数が多くないと意味がないよね。問題はどうやって仲間を増やすかだ」と言った。どうしたら金澤の懸念を払拭できるのか、ジンが自席に戻ってその方法を考えているところへ、松本がふと現れた。) 「ジン、先日の記者会見で、このままではうちは持たないと確信したよ。もう行動しなければダメだと思う」 松本の話に驚いたジンは、松本が旗幟を鮮明にしたのは「あの場面」ではないかと思った』、なるほど。
・『「『倍返し』、いや『100倍返し』かな」  取締役辞任という電撃発表を終えて控室に戻ってきた潮田は、メディアに対して瀬戸への思いを語ることができたという満足感からか、山梨にこんなことを言った。 「山梨さん、会見はどうだった? 臨時株主総会を請求されて、瀬戸さんには株主提案の取締役候補を発表されてと、向こうのやりたい放題だったけれど、赤字決算の原因であるペルマの責任は彼にあると言ってやった。これで『倍返し』だろう。いや『100倍返し』かな」 山梨はぼそっと答えた。 「潮田さん、ちょっと喋りすぎですよ」 2人の会話を横目で見ていた松本とジンはやり取りの意味が分かった。巨額の赤字決算を計上することになったのはペルマが主因で、それは瀬戸の経営が無策だったからである。瀬戸をCEOに招き入れたのは自分だから、その任命責任を取って自分は取締役もCEOも辞める。会見で潮田はそう言ったが、IRJは事前の打ち合わせで「ペルマを瀬戸さんのせいにするのは無理がありますね」と釘を刺しているのを2人は見た。 しかし潮田は忠告を無視して持論を展開し、「100倍返しをしてやった」と満足気に話した。 会見での潮田発言は致命的で、何としても止めなければならなかったはずだ。案の定、同日夜のぶら下がりで瀬戸は反撃している。もっともあの場面で潮田を止められたのは山梨だけで、自分たちはどうしようもなかった。 その山梨は会見中、潮田の話を黙って聞くばかりで、今度も「喋りすぎですよ」と窘めるだけ。肝心の場面でも山梨の振る舞いは昨年10月の会見やビジネスボードミーティングと同じで、潮田が経営を誤った方向に持っていった時の抑止力にはならない。これではLIXILグループの未来はないだろう・・・』、「IRJは事前の打ち合わせで「ペルマを瀬戸さんのせいにするのは無理がありますね」と釘を刺している」、当然だろう。しかし、「潮田」のお粗末さにはあきれるばかりだ。辞めさせられるのは当然だ。最後が尻切れ気味なのは残念だ。
タグ:「考える時間の方が大事だと思っているから、親睦を深めるぐらいの意味しか持たない会食はなるべく避ける」、徹底した合理主義者のようだ。「海外出張」時に「空白の1日」をつくるとは上手いやり方だ。 文春オンライン「「4日後に辞めてもらうことになりました」リクシル社長に突然すぎる“クビ宣告”…日本有数の大企業で起きた“疑惑の社長交代劇” 『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』より #1」 LIXIL問題 (その3)(『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』より4題:「4日後に辞めてもらうことになりました」リクシル社長に突然すぎる“クビ宣告”…日本有数の大企業で起きた“疑惑の社長交代劇”、「僕は会食で辞意なんか告げていません」世間が注目した“リクシルお家騒動”の裏で…取締役会を手なずけた“創業家のウソ”、「今回の社長交代には納得できない」リクシルを追われた“プロ経営者”が創業家と全面戦争へ…CEO復帰を明言した“逆襲の記者会見”、「これで『100倍返し』をしてやった」“お家騒動中 「ローマ」での「空白の1日」に辞任を宣告されたとはさぞかし驚いたことだろう。 「4日後」に辞めさせられるとは本当に急な話だ。 「実際に残っているのはトステムとINAXの企業カルチャーだけ」、そんなものだろう。 「「もともとトステムは業界6位だったが、営業の猛者たちが片っ端から商談を成立させてトップにのし上がった会社。一方、INAXは争いを好まない、お公家さん集団のような会社だった。企業体質が全く異なる2社の経営統合は驚きで、獰猛なトステムにおっとりしたINAXは飲み込まれてしまうんだろうなあと思った」」、「INAX]のような無欲な会社があったこと自体が驚きだ。 「表向きは指名委員会等設置会社だが、実際はわずかばかりの株式しか持たない潮田がオーナーとして振る舞ういびつな会社というのがLIXILグループ」、なるほど。 文春オンライン「「僕は会食で辞意なんか告げていません」世間が注目した“リクシルお家騒動”の裏で…取締役会を手なずけた“創業家のウソ” 『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』より #2」 どういうことだろう。 「潮田」は「瀬戸」が辞めるのは指名委員会の総意」と「瀬戸」に説明していたのとは、全く異なるようだ。 「瀬戸」氏が「自分が暴れて会社が混乱に陥るようなことになるのは本望ではない。屈辱的なアナリスト説明会も我慢したのはそう思ったからだ。暴れることがきっかけで自分のキャリアに傷が付くのも困る。そうであれば大人しく引っ込むのも選択肢の1つではないか」、さすがプロ経営者は考えることが違う。 「潮田と山梨は早速一部の営業幹部を集めて檄を飛ばしたものの、従業員全員に対するメッセージを発信することはなかった」、「広報担当役員のジン・モンテサーノは苛立っ」のも無理もない。 「瀬戸は会社の実情を細部に至るまで自分で把握したがる経営者だが、潮田はそれとは正反対のタイプ。実務には無頓着で、「経営者とは大きな方向性を打ち出すだけでよい」と考えていたフシがある」、「従業員向けにメッセージを出すことなどは些事だった」、なるほど。 「幸田さんと吉村さんに何度も電話をしているんだけれど通じない。」、何が起こったのだろう。 文春オンライン「「今回の社長交代には納得できない」リクシルを追われた“プロ経営者”が創業家と全面戦争へ…CEO復帰を明言した“逆襲の記者会見” 『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』より #3」 「モノタロウ」は「瀬戸が立ち上げた」とは初めて知った。 「PR会社と契約を結んでいた」とはさすがだ。 「利益相反を理由に契約の解除を申し入れてきた」にも拘らず、「契約を結んでからその日までの委託料を当然のように請求してきた」、とは酷い話だ。 「社外取締役候補となった西浦や鬼丸、濱口、鈴木はさまざまな経験をして現在に至っている。これを寸分間違えることなく経歴書に落とし込む作業は、間違いがあってはいけないため意外と手間がかかる」、確かに大変そうだ。 「少しでも多くの世間や株主に自分たちの行動は正義であると認識してもらう必要があると考えた瀬戸は吉野と相談して会見時間を1時間半と設定し、さらに質疑応答が終わった後に発表者をメディアが囲んで追加の質問をする、いわゆる「ぶら下がり」にも応じた。会見が終わったのは午後3時を過ぎていた」、マスコミ対応を丁寧にしたのは正解だ。 「株価が急騰」は経営陣への信認の表れだ。 最終的にどうなったかは次の記事。 文春オンライン「「これで『100倍返し』をしてやった」“お家騒動中”のリクシルが取締役辞任を電撃発表…プロ経営者を追い込む“創業家のシナリオ” 『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』より #4」 「潮田の取締役辞任表明は“奇襲”といえた」、確かにその通りだ。 取締役会議事録を見れば分かるのに、「取締役会への報告がなかった」と強弁する「潮田」は平常心を失っているようだ。 「A4サイズの紙の束をくしゃくしゃに握りしめ、「悔しさ」を演出した」、「瀬戸」氏もなかなかの役者だ。 「IRJは事前の打ち合わせで「ペルマを瀬戸さんのせいにするのは無理がありますね」と釘を刺している」、当然だろう。しかし、「潮田」のお粗末さにはあきれるばかりだ。辞めさせられるのは当然だ。 「IRJは事前の打ち合わせで「ペルマを瀬戸さんのせいにするのは無理がありますね」と釘を刺している」、当然だろう。しかし、「潮田」のお粗末さにはあきれるばかりだ。辞めさせられるのは当然だ。最後が尻切れ気味なのは残念だ。
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東芝問題(その43)(「東芝の混乱は 日本の原子力政策の混乱を象徴している」東芝を"崩壊"させた経産省の罪深さ 選挙に響くから…元凶は国が原子力事業への方針を定めなかったこと、東芝迷走の原因はメディアと有識者にある、東芝 再建策に影を落とす「取締役選任への異論」 ファンド推薦の候補者2人は賛同を得られるか) [企業経営]

東芝問題については、昨年11月22日に取上げた。今日は、(その43)(「東芝の混乱は 日本の原子力政策の混乱を象徴している」東芝を"崩壊"させた経産省の罪深さ 選挙に響くから…元凶は国が原子力事業への方針を定めなかったこと、東芝迷走の原因はメディアと有識者にある、東芝 再建策に影を落とす「取締役選任への異論」 ファンド推薦の候補者2人は賛同を得られるか)である。

先ずは、本年3月9日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「「東芝の混乱は、日本の原子力政策の混乱を象徴している」東芝を"崩壊"させた経産省の罪深さ 選挙に響くから…元凶は国が原子力事業への方針を定めなかったこと」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/55360
・『「モノ言う株主」が実質株主になっている  東芝が迷走を続けている。昨年11月、グループを3分割する計画を公表したものの海外ファンドなど大株主が反対したことから2月には2分割案に修正した。それでも混乱が収まらず、3月1日に綱川智社長と畠沢守副社長が同日付で突如退任する事態に陥った。3月24日に予定している臨時株主総会は実施し、従来方針のまま2分割案を議題として諮るとしている。もっとも、否決された場合は、新分割案を修正するともしており、東芝がどんな形で存続していくのか、見通せない状況が続いている。 東芝の大株主上位には2021年3月末現在、証券保険業務を行う金融機関の名前が並び、「モノ言う株主」と言われる海外の投資ファンドが実質株主になっている。提出されている大量保有報告書によると、旧村上ファンドの幹部だった高坂卓志氏らがシンガポールで立ち上げたエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが実質筆頭株主、シンガポールの資産運用会社、3Dインベストメント・パートナーズが2位、米国の資産運用会社ファラロン・キャピタル・マネジメントなどが上位を占める。東芝が公表したデータでは、発行済株式の50.44%を「外国法人等」が保有している』、「発行済株式の50.44%を「外国法人等」が保有」、こうした混乱はかねてから予想されていたものだ。
・『会社分割案を決める前に、経営執行体制を整えるのが筋  また、24.14%を第一生命保険や日本生命保険など「金融機関」が持つ。こうした国内金融機関も「スチュワードシップ・コード」によって保険契約者の利益につながるかどうかで投票方針を決めるため、必ずしも経営陣支持に動くとは限らない。 昨年の株主総会では、会社側が提案していた、取締役会議長だった永山治・中外製薬名誉会長の取締役再任議案が否決された。結局、社外取締役で永山氏の後任を引き受ける人物は現れず、綱川社長が議長を兼ねた。今回、綱川氏は社長を退任したものの、取締役会議長にはとどまる。東芝はガバナンス体制の強化に向けて社外取締役から議長を選ぶとしてきたが、混乱が続く中で、社外の経営者が誰も引き受けない事態が続いている。 綱川氏は退任の理由について会見で「引責辞任ではない」と強弁していた。「新体制が見えないと(臨時総会で)投票しにくいという声があった」としていたが、本来は会社分割案を決める前に、東芝の経営執行体制を整えるのが筋だという批判は根強い。一方で、綱川氏ら現経営陣は、海外ファンドなどが選ぶ社外取締役が経営の実権を握ることに強く抵抗している。投資ファンドの多くは、短期的な資金回収を狙っており、東芝が持つ事業の売却などで利益を得ようとしているという』、「現経営陣は、海外ファンドなどが選ぶ社外取締役が経営の実権を握ることに強く抵抗している。投資ファンドの多くは、短期的な資金回収を狙っており、東芝が持つ事業の売却などで利益を得ようとしているという」、「投資ファンド」に屈する必要はない。
・『会社を破綻処理しなかったことに元凶がある  経営側は、発行済み株式の4割を保有する半導体大手キオクシアホールディングスの株式売却で株主への利益還元を行うことでファンド側の理解を得て、分割した新会社を上場させることで、海外ファンドの呪縛から解き放たれようとしていると見られる。どれだけ株主還元するかが、ファンド側との条件闘争のような様相を呈しており、エレベーター事業や照明事業の売却でその利益を株主還元に回すとしている。 なぜ、ここまで東芝はボロボロになったのか。 会社を破綻処理せず、形の上で存続させることにこだわったことが大きな要因だろう。粉飾決算と子会社だった米ウェスティングハウスの巨額損失が表面化した2016年の段階で、いったん会社更生法を申請し、債務処理を行っていれば、再生できていたかもしれない。東芝メディカルシステムズのキヤノンへの売却を始め、優良な事業の売却で辻褄を合わせ、会社を存続させることに終始したことから、事業の多くを切り売りするハメになった。破綻処理をすれば債権放棄などが求められる銀行主導で再建策が作られたことが大きい。 極め付けは資本不足を補って上場維持をするために2017年末に大規模な第三者割当増資を実施。海外機関投資家を呼び込んだことだ。これによって会社は存続し、上場も維持されたが、その後、投資ファンドに翻弄されることになった』、「2016年の段階で、いったん会社更生法を申請し、債務処理を行っていれば、再生できていたかもしれない」、「破綻処理をすれば債権放棄などが求められる銀行主導で再建策が作られたことが大きい。 極め付けは資本不足を補って上場維持をするために2017年末に大規模な第三者割当増資を実施。海外機関投資家を呼び込んだことだ。これによって会社は存続し、上場も維持されたが、その後、投資ファンドに翻弄されることになった」、無茶な「大規模な第三者割当増資」が元凶になったようだ。
・『存続を支えていた経産省の責任も大きい  東芝の経営者が会社の形上の存続にこだわったのは、破綻処理すれば自身の責任が問われることが大きかったが、裏で存続を支えていた経済産業省の責任も大きい。 ウェスティングハウスの買収は、経済産業省の原子力発電政策の一環として、いわば「国策」で進められていたことは明らか。2015年に発覚する粉飾決算も、リーマンショック時に経営危機に陥っていた東芝を経産省など霞が関が「救済」していたことが遠因になっている。事実上、破綻していたものを存続させるためのやりくりのひとつが粉飾決算だったと見られている。これも、国の原子力事業を担ってきた東芝に対する経産省の「意思」が反映されていたと見ていい。 その後、モノ言う株主の排除に向けて経産省の関係者が「介入」していたと見られる問題が発覚し、米国メディアなどでも報じられたが、それも、原子力事業へのファンドなどへの関与を回避したい経産省の思いがあったと見られている』、「裏で存続を支えていた経済産業省の責任も大きい」、むしろ「経済産業省の責任」の方が「大きい」が適切だと思う。
・『背景にあるのは「国の原子力事業への方針」  逆に言えば、今の東芝の迷走も、国の原子力事業への方針が定まらないことが大きい。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故以降、政治は原発の将来の方向性について議論することを避け続けている。安全性が確認されたものから再稼働するとはしているものの、将来的には原発依存を下げていくともしている。そうした中で、原子力技術を将来にわたってどう継承していくのか。抜本的に考えることすら放棄している。国民世論を二分する原発に「前向き」な政権だとなれば、選挙に響くと考えているからだろう。 民間電力会社に原発を維持させている原発政策にしても、今後どうするのか不明なままだ。現状の原発は、いずれ稼働年限が来て廃炉になっていくが、原発の新設の可否どころか、リプレイス(建て替え)の議論すら事実上タブーになっている。仮にリプレイスをするにしても、それを民間の「事業」として行うのか、国の事業として行っていくのかも、まったく議論されていない。経産省の一部には原発をすべて国有会社に集約すべきだという意見もあるが、政治が議論を避けている中で、一向に方向が定まらない』、「経産省の一部には原発をすべて国有会社に集約すべきだという意見もあるが、政治が議論を避けている中で、一向に方向が定まらない」、「政治」の無責任さは余りに酷い。
・『日本の原子力政策の混乱を象徴している  そんな状況の中で、原子力技術の研究開発や、原発新設、廃炉などの事業を東芝や日立などの民間会社に「独自に」行わせる体制を続けられるのか。東芝は福島第一原発の廃炉作業に大きく関与しており、会社のあり方が定まらない中で、本来、国が責任を持たねばならない廃炉作業が宙に浮く危険性もはらんでいる。 本来は、会社を分割するなど東芝が事業形態を見直す前段階として、国が今後の原発事業をどうしていくのか、方向性を明確にする必要がある。さもなければ、東芝の持つ原子力事業や技術を将来にわたってどうしていくのか、より国の管理に近い事業体に変えていくのか。あるいは日立などに集約していくのか、議論が進まない。 ロシアによるウクライナへの侵攻で、原油価格が高騰を続けている。また、西側諸国がロシア産原油・ガスの輸入停止に踏み切れば、価格高騰だけでなく、エネルギー確保にも重大な支障を来しかねない。そんな中で、将来のあり方を議論することなく、原発へのなし崩し的な依存へと進んでいく可能性もある。そうなれば、東芝はまたしても国策に振り回されることになるかもしれない。 東日本大震災からまもなく11年。東芝の混乱は、日本の原子力政策の混乱を象徴していると言ってもいいだろう』、「本来は、会社を分割するなど東芝が事業形態を見直す前段階として、国が今後の原発事業をどうしていくのか、方向性を明確にする必要がある。さもなければ、東芝の持つ原子力事業や技術を将来にわたってどうしていくのか、より国の管理に近い事業体に変えていくのか。あるいは日立などに集約していくのか、議論が進まない」、「東芝」だけに押し付けず、本来、国が前面に立ってリーダシップを取ってゆくべきだろう。

次に、5月31日付けアゴラが掲載した財務省出身で慶応義塾大学准教授の小幡 績氏による「東芝迷走の原因はメディアと有識者にある」を紹介しよう。
https://agora-web.jp/archives/220530052755.html
・『東芝は迷走を続けているが、迷走が、ついに餌食として食い尽くされる局面にまで進んできてしまった。 なぜなら、6月末の株主総会へ向けて、ようやく会社側の提案する取締役候補のメンバーが固まったのだが、それが世界的に常識となっているコーポレートガバナンスのスタンダートから大きく外れるばかりか、もっともやってはいけない陣容になってしまったからだ。 新しく取締役に加わるのは7名で、そのうちの2名は執行役員と兼任だから、日本でいうところの社内であり、それ以外の5名が社外取締役である。そのうちの2名が、東芝の現在の大株主であるファンドの幹部である。 これは最悪だ。 絶対にやってはいけない例として、コーポレートガバナンスの教科書に出てくる、最悪の取締役人事である。 東芝は、この候補者を発表したプレスリリースの中で、こう言っている。 株主からの代表が取締役会に参加することにより、株主と経営陣はより足並みをそろえることができます。 180度間違いだ。 これは一番やってはいけないことだ。 東芝は、取締役の役割と、コーポレートガバナンスの役割と、両方ともまったくわかっていないだけでなく、180度逆に理解している。 取締役とは、すべての投資家の代理として、経営陣を監視する役割である。 ここで大事なのは、「すべての投資家」の代理、ということである。「特定の」株主の代理ではない。 上場企業における取締役は、潜在的な株主、つまり上場企業の株主には、誰でも株式を取引所で買えばなりうるわけであり、「彼らの評価が高い」ということが企業価値であり、「株価が高い」ということになる。すなわち取締役が代表するのは、現在株式を保有しているすべての株主と、それに潜在的な株主、将来株主になり得る投資家である。 株価は、新たにその会社の株式を買う人が決める値段、払う価格であるから、潜在的な投資家は極めて重要な取締役が代表すべき投資家たちである。 それにも関わらず、現在の株主の代理人、しかも特定の大株主の代理人を取締役にする。それは現在の株主を有利に扱い、将来の株主を犠牲にしているのである。 経営陣および社員は、今後もその会社、ここでは東芝と命運をともにするから、会社の長期的利益を最大化しようとする。同時に、潜在的な株主は、将来東芝株を買って、さらにその先の将来に売却する可能性があるわけだから、長期的な企業価値を大事にする。しかし、現在の株主の利益だけを考える取締役は、現在の株価を優先に考えるから、長期の企業価値を最大化しない可能性がある。 これが第一の問題点である』、「経営陣および社員は・・・東芝と命運をともにするから、会社の長期的利益を最大化しようとする」、「潜在的な株主は・・・長期的な企業価値を大事にする」、しかし、「現在の株主の利益だけを考える取締役は、現在の株価を優先に考えるから、長期の企業価値を最大化しない可能性がある」、確かに問題だ。
・『しかし、第二の問題点は、遥かに深刻で致命的だ。 それは、20世紀末に経済学会で確立し、企業の実際のガバナンスの基本として世界中の法制度に取り込まれた原則、「ガバナンスとは、経営陣と株主の対立ではなく、株主と株主の対立をターゲットとし、大株主が、一般の少数株主の利益を奪うことを防止することが最重要である」という不動の真理、これに真っ向から反しているからである。 特定大株主はガバナンスの敵である。仮想敵国である。彼らが、外部の少数株主の利益を損なわないように、一般の株主全体の利益を損なわないように、すべてのガバナンス法令は存在するのである。少数株主は、株主総会の投票で数の力で負けてしまうから、少数派の権利を守るために、法律があり、重要な決定に反対したにもかかわらず、数で押し切られた場合には、株式の買い取り請求が認められており、1株1票の原則、利益配分の平等性の確保のための配当原則、などが決められているのである。 例えば、大株主が、彼らの関係する別の企業に有利なように会社と契約を結ばせることや、戦略的にこの会社を利用することは、その他の株主の利益を大きく損ねるのである。 したがって、ファンドの代表を取締役に入れることは絶対にやってはいけないのである。ファンドが複数集まり、過半数を超えていたとしても、ファンドの短期的な売却利益追求が、長期の企業価値を損なうとその他の少数株主が思った場合には、ファンド主導で決められた決定がなされる前の株価で買い取り請求ができるように法律は作られているのである。法律で守り切れないところは、取締役が、すべての株主の利益を平等に守るためにいるのである。これが取締役の役割の本質である。 そして、経営陣は大株主に選ばれているから、経営陣は大株主の言いなりになることが普通なので、実は、大株主と経営陣の利害対立というのは本質的な問題ではなく、大株主と一般株主の対立こそが、ガバナンスの最大のイシューなのである。それが20世紀の末にアンドレシュライファーというハーバードの教授のグループの研究により確立し、世界銀行も世界各国の政府も、この考え方に倣ってガバナンス関連法制度を整備してきたのである。 したがって、ファンドという大株主の代理人を取締役にするのは、もっともガバナンスが悪い会社なのである。 しかしこれを誰も指摘せず、いままで経営陣側がファンドという大株主の言うことを聞かないのがガバナンスの悪い会社だと批判してきた、有識者、メディア。 こんな無知どころか経済や企業を破壊する有識者とメディアがはびこっている国は、日本だけなのである』、「ファンドという大株主の代理人を取締役にするのは、もっともガバナンスが悪い会社なのである。 しかしこれを誰も指摘せず、いままで経営陣側がファンドという大株主の言うことを聞かないのがガバナンスの悪い会社だと批判してきた、有識者、メディア。 こんな無知どころか経済や企業を破壊する有識者とメディアがはびこっている国は、日本だけなのである」、確かに「有識者、メディア」による「批判」は真逆だ。どうしてこのようなことが起こるのだろう。恐らく、批判の対象としては、最も弱小な「東芝」を血祭にあげ、政府という巨悪には目をつぶっているのが、居心地がいいためなのだろう。

第三に、6月9日付け東洋経済オンライン「東芝、再建策に影を落とす「取締役選任への異論」 ファンド推薦の候補者2人は賛同を得られるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/595408
・『「10件も応募してくださった。当社の潜在的な価値に対して、大きく期待されていることをうれしく思う」。6月3日に東芝が開いたメディア合同インタビュー。その場で島田太郎社長は笑顔を見せた。 3月下旬の臨時株主総会で、半導体などのデバイス事業を分離する会社分割案が否決された。その後、東芝経営陣は5月30日を期限とし、株式の非公開化を含む経営再建策を「公募」するという異例の方法で、スポンサーを探してきた。 公募に応じて出された提案は島田社長が述べたように計10件。そのうち8件が非公開化を含む内容、2件が上場を維持したうえで資本業務提携を結ぶ、というものだった。 提案をしたスポンサー候補の名前は伏せられている。ただ、市場関係者の間ではCVCキャピタル・パートナーズ、ベインキャピタル、KKRとブラックストーンの連合といった海外ファンドの名前が浮上している。さらに国内勢の産業革新投資機構(JIC)も買収を検討しているもようだ』、やはり、第二の記事で問題にしたファンドが「スポンサー候補」になっているようだ。
・『島田社長は妙に自信ありげ  東芝経営陣はどの提案を選ぶのか。島田社長は、スポンサー選定協議の途中経過と同時に公表した、新たな「経営方針」に合う相手を選びたいようだ。 経営方針で掲げた数値目標はかなり強気だ。2025年度に売上高4兆円、営業利益3600億円を目指すとしている。東芝の2021年度の売上高は約3.3兆円、営業利益は約1590億円。わずか4年で利益を倍以上にするというのだ。2030年度には売上高5兆円、営業利益6000億円を目指すという。 中核とするのがデータビジネス。かみ砕いて言えば、東芝がすでに持っているエレベーターや小売り、発電システムなどのハードから得られるデータをサービスにつなげようという戦略だ。最終的には、量子技術を活用した産業の創出も見据えている。 「ディメンジョン(次元)が違うビジョンになっている」と、島田社長はこの経営方針に自信満々だ。「『この方向に行くなら東芝と一緒にやりたい』と考えてもらいたい」とも語り、スポンサーに歩調を合わせてもらいたいと期待していることが分かる。 ただ、島田社長の思惑どおりに事が運ぶ保証はない。今回手を挙げているスポンサー候補はファンドが中心。「事業の切り売りも含め、短期的な利益を追求するだろう」(ファンド関係者)との見方は強い。 ファンドの考える時間軸は、島田社長が描く中長期の視点と合わない可能性が高い。選ぶスポンサーによっては、経営戦略の前提となる事業そのものが変わってしまう懸念もある。 実際、今回の経営方針では、会社分割案で非注力事業とし売却を検討するとしていたエレベーターや照明、東芝テックなどを、一転して注力事業と位置付けている。外的要因によって、方針が二転三転するような事態も起きかねない』、「ファンドの考える時間軸は、島田社長が描く中長期の視点と合わない可能性が高い。選ぶスポンサーによっては、経営戦略の前提となる事業そのものが変わってしまう懸念もある」、当然だろう。
・『スポンサーは日本勢の参加必須か  さらに問題となるのは、改正外為法上、国がとくに重要な「コア業種」として位置づける原子力や防衛関連の事業を東芝が抱えていることだ。それらの買収には外為法の審査を通過する必要があり、海外のファンド・企業のみでの買収はハードルが高い。日本勢の参加が必須とみられている。 島田社長は外為法について、「バイヤー(買い手)がクリアするハードルだと考えている」と述べた。あくまでその問題をクリアした提案の中から、1つを「選ぶ」というスタンスだ。 現状上がっている候補者の中で、確実に外為法をクリアできそうなのは国内勢のJICくらいだろう。ほかのプレーヤーがこのハードルを乗り越えられるかによって、実際の選択肢の数は変わってくる。 外為法をクリアした提案の中から、東芝が描いた戦略に合うものを選び、すり合わせをしていく。今後この難しい選定は、6月28日の株主総会で選ばれる経営陣によって進んでいくことになる。 ところが、この株主総会からして波乱含みだ。東芝が提案している取締役候補の中には、主要株主である2社の幹部が含まれている。ファラロン・キャピタルマネジメントの今井英次郎氏と、エリオット・マネジメントのナビール・バンジー氏だ。 ファラロンとエリオットの2社合わせて、約10%の東芝株を保有している。そのため、特定の株主の意見が強く反映されるのではないかと、取締役候補をめぐっては批判が相次いでいる。 今井氏とバンジー氏の選任に当たっては、東芝の内部でも意見が割れている状況だ。スポンサー選定などを協議する特別委員会の委員長であるジェリー・ブラック社外取締役は前述の合同インタビューで、「社外取締役で弁護士の綿引万里子氏が2人の選任に反対した」と明かした。 その理由については「綿引氏の考えを誤って伝える可能性があるため、コメントは控える」とした。2人の新任が認められると、13人の取締役のうち、ファンドの関係者や推薦者である取締役が6人へと増える。そのことを綿引氏は問題視したとみられる。 ブラック氏自身は「株主からの任命であることに注目するのではなく、個々人の能力が重要だった」とし、2人を取締役候補とすることに賛同。「常に全員が合意できるわけではない。指名委員会としては会社の最大の利益のため、このメンバーでいくと決めた」と説明した。 綿引氏が反対をした事実は、東芝の株主総会招集通知にも注記され、株主にも見える形になった。判断は株主たちに委ねられた形だ』、「外為法について、「バイヤー(買い手)がクリアするハードルだと考えている」と述べた。あくまでその問題をクリアした提案の中から、1つを「選ぶ」というスタンスだ」、「外為法」「の問題をクリア」する必要があるとは、難題が加わった形だ。
・『6月末の株主総会が最大の焦点  実は、綿引氏が問題視しているのは、この2名の選任だけではない。指名委員会委員長のレイモンド・ゼイジ氏に対しても、意見を表明した。その意見は、招集通知と共に公表された「第183期報告書」の中に、監査委員の橋本勝則氏との連名で掲載されている。 ゼイジ氏は今年3月の臨時株主総会直前、3Dインベストメント・パートナーズから受けた株主提案に、ツイッター上で個人的に「賛成」を表明した。取締役会が全会一致で決めた「反対」と真逆の意見を発信したのだ。 これについて綿引氏らは、「善管注意義務に反するとまでは言えない」としつつ「ガバナンス不全につながりかねない」と指摘している。東芝の取締役会はまさに内紛状態にあるわけだ。これを株主はどう判断するだろうか。 昨年の定時株主総会では、永山治取締役会議長と小林伸行監査委員の再任が否決された。ほかの取締役についても、ワイズマン廣田綾子氏が56.31%、畠澤守氏が66.26%と、低い賛成率でなんとか選任された候補者が少なくない。 経営方針の実践やスポンサー探しの話をするにも、まずは体制が安定する必要がある。株主推薦の2人やゼイジ氏は無事に承認され、東芝が描く経営体制は敷けるのか。まずは6月28日が最大の焦点となる』、「東芝の取締役会はまさに内紛状態にある」、「経営方針の実践やスポンサー探しの話をするにも、まずは体制が安定する必要」、さて、「6月28日」の「株主総会」ではどうなるだろうか。
タグ:「発行済株式の50.44%を「外国法人等」が保有」、こうした混乱はかねてから予想されていたものだ。 磯山 友幸氏による「「東芝の混乱は、日本の原子力政策の混乱を象徴している」東芝を"崩壊"させた経産省の罪深さ 選挙に響くから…元凶は国が原子力事業への方針を定めなかったこと」 PRESIDENT ONLINE 東芝問題 (その43)(「東芝の混乱は 日本の原子力政策の混乱を象徴している」東芝を"崩壊"させた経産省の罪深さ 選挙に響くから…元凶は国が原子力事業への方針を定めなかったこと、東芝迷走の原因はメディアと有識者にある、東芝 再建策に影を落とす「取締役選任への異論」 ファンド推薦の候補者2人は賛同を得られるか) 「現経営陣は、海外ファンドなどが選ぶ社外取締役が経営の実権を握ることに強く抵抗している。投資ファンドの多くは、短期的な資金回収を狙っており、東芝が持つ事業の売却などで利益を得ようとしているという」、「投資ファンド」に屈する必要はない。 「2016年の段階で、いったん会社更生法を申請し、債務処理を行っていれば、再生できていたかもしれない」、「破綻処理をすれば債権放棄などが求められる銀行主導で再建策が作られたことが大きい。 極め付けは資本不足を補って上場維持をするために2017年末に大規模な第三者割当増資を実施。海外機関投資家を呼び込んだことだ。これによって会社は存続し、上場も維持されたが、その後、投資ファンドに翻弄されることになった」、無茶な「大規模な第三者割当増資」が元凶になったようだ。 「裏で存続を支えていた経済産業省の責任も大きい」、むしろ「経済産業省の責任」の方が「大きい」が適切だと思う。 「経産省の一部には原発をすべて国有会社に集約すべきだという意見もあるが、政治が議論を避けている中で、一向に方向が定まらない」、「政治」の無責任さは余りに酷い。 「本来は、会社を分割するなど東芝が事業形態を見直す前段階として、国が今後の原発事業をどうしていくのか、方向性を明確にする必要がある。さもなければ、東芝の持つ原子力事業や技術を将来にわたってどうしていくのか、より国の管理に近い事業体に変えていくのか。あるいは日立などに集約していくのか、議論が進まない」、「東芝」だけに押し付けず、本来、国が前面に立ってリーダシップを取ってゆくべきだろう。 アゴラ 小幡 績氏による「東芝迷走の原因はメディアと有識者にある」 「経営陣および社員は・・・東芝と命運をともにするから、会社の長期的利益を最大化しようとする」、「潜在的な株主は・・・長期的な企業価値を大事にする」、しかし、「現在の株主の利益だけを考える取締役は、現在の株価を優先に考えるから、長期の企業価値を最大化しない可能性がある」、確かに問題だ。 「ファンドという大株主の代理人を取締役にするのは、もっともガバナンスが悪い会社なのである。 しかしこれを誰も指摘せず、いままで経営陣側がファンドという大株主の言うことを聞かないのがガバナンスの悪い会社だと批判してきた、有識者、メディア。 こんな無知どころか経済や企業を破壊する有識者とメディアがはびこっている国は、日本だけなのである」、確かに「有識者、メディア」による「批判」は真逆だ。どうしてこのようなことが起こるのだろう。恐らく、批判の対象としては、最も弱小な「東芝」を血祭にあげ、政府という巨悪には目をつ 東洋経済オンライン「東芝、再建策に影を落とす「取締役選任への異論」 ファンド推薦の候補者2人は賛同を得られるか」 やはり、第二の記事で問題にしたファンドが「スポンサー候補」になっているようだ。 「ファンドの考える時間軸は、島田社長が描く中長期の視点と合わない可能性が高い。選ぶスポンサーによっては、経営戦略の前提となる事業そのものが変わってしまう懸念もある」、当然だろう。 「外為法について、「バイヤー(買い手)がクリアするハードルだと考えている」と述べた。あくまでその問題をクリアした提案の中から、1つを「選ぶ」というスタンスだ」、「外為法」「の問題をクリア」する必要があるとは、難題が加わった形だ。 「東芝の取締役会はまさに内紛状態にある」、「経営方針の実践やスポンサー探しの話をするにも、まずは体制が安定する必要」、さて、「6月28日」の「株主総会」ではどうなるだろうか。
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倒産・経営破綻(その1)(ジェネリック大手「日医工」が私的整理申請 赤字が1048億円に拡大、オンキヨー経営破綻「3つの原因」が浮き彫りにする  日の丸家電凋落の深層) [企業経営]

今日は、倒産・経営破綻(その1)(ジェネリック大手「日医工」が私的整理申請 赤字が1048億円に拡大、オンキヨー経営破綻「3つの原因」が浮き彫りにする  日の丸家電凋落の深層)を取上げよう。

先ずは、本年5月19日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの重道武司氏による「ジェネリック大手「日医工」が私的整理申請 赤字が1048億円に拡大」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/305363
・『後発医薬品(ジェネリック医薬品)を巡る品質不正問題が、業界大手3社の一角の経営破綻劇にまで発展した。日医工で、先週末に事業再生ADR(裁判外紛争手続き)を申請。主力行の三井住友銀行(SMBC)をはじめとした取引金融機関による債権放棄など債務負担軽減を受けたうえで再建を目指すとしている。 日医工は2020年、国に承認されていない手順で薬剤を製造していたことが発覚。翌21年3月に主力の富山第一工場(滑川市)が富山県から32日間の業務停止命令を受けた。このため品質管理の厳格化など改善を進めてきたものの思うようにはかどらず、今なお「170品目前後で生産や出荷停止が続いている」(事情通)とされる。 製造委託先だった小林化工(福井県あわら市)の不祥事にも足をすくわれた。睡眠導入剤の成分が薬剤に混入し、2人の死者まで出す「健康被害」を引き起こしたもので、委託品の販売中止に追い込まれた』、「ジェネリック医薬品」業界での相次ぐ「不正」については、このブログの昨年10月5日付けで取上げた。いまだに「「170品目前後で生産や出荷停止が続いている」とは異常事態だ。
・『メガバンクは支援へ  業績は急激に悪化して21年3月期に41億円強の最終赤字に転落。22年3月期には16年に買収した北米子会社ののれんや無形資産などの減損に、原材料・製品の廃棄などを見越した棚卸資産評価損の計上も余儀なくされ、最終損失額は一気に前期比25倍超の1048億円余にまで膨らんだ。 こうなると重荷になってくるのが“借金”だ。過去にしきりとM&Aを繰り返してきたこともあって、3月末の有利子負債残高は1626億円と7年前の約10倍にものぼる。巨額赤字による自己資本の毀損で、財務制限条項に抵触するハメにも陥った。 日医工の取引行はSMBCを筆頭に政府系の日本政策投資銀行(政投銀)や三井住友信託銀行、三菱UFJ銀行、農林中央金庫など。北陸銀行や北国銀行などの地銀も名を連ねる。融資残高は「SMBCで370億円前後」(関係者)とみられ、政投銀と三井住友信託銀行が各200億円前後で続く。すでに政投銀と3メガバンクが設立した事業再生ファンドが最大200億円を出資するとの意向を示しており、「ADR成立は比較的容易では」というのが金融筋の見立てだが、予断は許さない。 後発薬業界では品質不正が多発。38社中約8割の企業が承認外の手順で薬剤を製造していたという業界団体の報告もある』、「過去にしきりとM&Aを繰り返してきたこともあって、3月末の有利子負債残高は1626億円と7年前の約10倍にものぼる。巨額赤字による自己資本の毀損で、財務制限条項に抵触するハメにも陥った」、「財務制限条項に抵触」とは逃げ道がない。それにしても、「後発薬業界では品質不正が多発。38社中約8割の企業が承認外の手順で薬剤を製造していたという業界団体の報告」、とは驚くほどコンプライアンス意識が欠如した業界のようだ。

次に、5月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した早稲田大学大学院経営管理研究科教授の長内 厚氏による「オンキヨー経営破綻「3つの原因」が浮き彫りにする、日の丸家電凋落の深層」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/303672
・『「hi-fi」のオンキヨーが経営破綻した3つの理由  この1年、オンキヨーという会社をウォッチし続けてきた。日本のエレクトロニクス企業というと、パナソニック、東芝、ソニー、シャープなどを思い浮かべるが、40、50代以上のhi-fiブームを知っている世代にとって、この度のオンキヨーの破産申請は大きなショックとともに受け入れられたであろう。オンキヨーはもともと、松下電器産業(現パナソニック)の音響エンジニアが独立して作った、オーディオ専業メーカーである。 昨年9月にオンキヨーは主力のAV事業を売却し、売却先のAV事業の売り上げのライセンス料を収益化することを狙っていた。しかし、このスキームが上手く機能することはなく、収益のあてのないオンキヨーは破産の道を選んだ。創業が1946年であるから、創業80年を目前にしての消滅であった。 筆者は2020年秋と2021年秋に、通信社やテレビ局からオンキヨーの経営についてコメントを求められた。2020年の段階ではまだオンキヨーは生き残る術はあったかもしれないし、当時そう答えていた。ただし、大規模なリストラは必要であった。 筆者は、日本の現場を守るためなら経営トップが外国人になっても構わないという考えを本連載でも述べてきたので、リストラ、特にエンジニアの集団をそぎ落とすことについては、最後の最後までやるべきではないと考えている。しかし、オンキヨー破綻の原因は大きく3つあり、その中でも中途半端な規模感というのが最も問題であったと言える』、「中途半端な規模感」とはどういうことなのだろう。
・『パイオニアAV部門買収が岐路に 規模拡大の誘惑に潜むリスク  その1つ目の要因とは、パイオニアのAV機器部門の買収による中途半端な規模の拡大である。ソニーやパナソニックといった企業は、まず多くの製品カテゴリーがあり、また組織が十分に大きくコスト競争力もあり、ブランドの知名度も高いので、多品種大量販売をしても何とかなるメーカーである。一方オンキヨーは、一部オンキヨーマニアによって支えられてきた企業であり、知る人ぞ知る高機能・高性能・高級AV機器を少品種少量販売すべきであった。) しかし、パイオニアのAV機器部門を吸収したことで、開発部門の人員という固定費は膨らみ、既存のオンキヨーの製品ラインアップだけでは、到底コストが賄い切れなかった。そのため、事業計画の数字上の辻褄を合わせるために、組織の体力に見合わない大量モデルの投入とそれらが売れることを前提とした、収益化プランを作ってしまった。 実際には、オンキヨーにはそれだけの多くのラインアップを販売店に押し込む力はなく、そもそも店頭に展示されない機種が多数存在していた。 家電の世界は、店頭展示シェアがほぼイコール実販シェアである。店頭に並んでいない商品をカタログから取り寄せ注文する顧客は極めてレアであり、SKU(店頭に並ぶ定番商品)を取れない限り、むやみにモデル数を増やしても売り上げが伸びることはない。 むしろオンキヨーの場合、同社のムダに多いラインアップ同士が競合を起こし、同じメーカーの製品内で共食いのような競合状態になっていた。これは、必ずしもオンキヨーのせいではないが、コロナ禍の輸送力低下、半導体不足により、そもそもカタログに載っている商品の生産すらできないという状況も経営を苦しめていた。 歴史に「たられば」はないというが、オンキヨーが無理をしてパイオニアのAV機器部門を吸収せず、身の丈に合ったオーディオ専業メーカーとしてやっていれば、その後の状況は違っていたかもしれない』、「オンキヨーの場合、同社のムダに多いラインアップ同士が競合を起こし、同じメーカーの製品内で共食いのような競合状態になっていた」、こんな状態では、「パイオニアのAV機器部門を吸収」などもともと無理だったのではあるまいか。
・『オーディオ不況が敗因ではない? ブランドイメージの重要性  2つめの要因は、何がオンキヨーを代表するシグニチャー商品なのかがわからないことだ。hi-fiブームが去り、オーディオ不況とも呼ばれて久しいが、それでも生き残っていて元気のあるオーディオ専業メーカーは、世界を見渡せばいくつもある。 かつてのデンオン、現在のデノンもそうした国内オーディオ専業メーカーである。他にもサウンドバーやミキサーで有名なヤマハのオーディオ部門、米国にはスピーカーのBOSE、欧州ではハイエンドデザインAV機器のB&Oなども健在である。オーディオ不況がオンキヨーの敗因というわけではなさそうだ。 では、何がもうひとつの原因なのか。それは、今述べたメーカーの枕詞にある。BOSEならスピーカー、B&Oならデザイン家電のように、各社は自社の製品の特徴と製品ラインアップを絞って、「このブランドと言えばこれ」「これといえばこのブランド」というイメージを作ってきた。アップルですら、スマートフォン、PC、イヤホンから大きくラインアップを広げようとしていない。 一方のオンキヨーはどうか。デノンのような単品コンポのピュアオーディオだけではなく、ソニー同様のポータブルオーディオを出してみたり、ワイヤレスイヤホンや、パイオニアブランドではあるがシーリングランプまで手がけたりしていた。 あるとき、オンキヨーがオーディオに特化したスマートフォンを発表したときに、真偽のほどは定かではないが、「評価用サンプル」という名目でお土産に新製品のスマートフォンを配っていたという話をしていた記者もいた。少し横道にそれるが、メーカーにとって新製品は我が子であって、それをただでお土産にするなど言語道断である。筆者もメーカー勤務時代にサンプルの貸し出しは行っていたが、「借りパ……」ではないが、返却の遅い媒体にいかに製品サンプルを返却してもらうかで苦労をしていた』、「オンキヨー」には「「このブランドと言えばこれ」「これといえばこのブランド」というイメージがなかった。
・『「良いものをつくれば売れる」という固定観念の危うさ  バブル期と言わないまでも1990年代までは、中堅メーカーが良いものをつくれば、ラインアップを広げていったり、製品の数を増やしたりしても、何とかやっていけたかもしれない。それは、かつてNEBA店と呼ばれた地域量販店が、歩合制の店員を店内に配置し、一生懸命商品説明をして、少しでも高いものを売ろうとしていた時代であったからである。 2000年代に入ると、YKK(ヤマダ、コジマ、ケーズ)という全国チェーンが台頭し、ほとんど売り場に説明員がいない状況が生まれ、良いものを作っても顧客に良さが伝わりにくくなった。さらにEコマースの広がりや、Amazonによる家電取り扱いの開始によって、さらに細かな説明をしないと良さが伝わらない商品は売れない状況に陥った。むしろ最近のヤマダ電機の方が、丁寧に商品説明をしてくれている。 このような状況では、店頭での商品力の訴求を期待するのは難しく、ネットでパッと見て良さがわかるかブランドが認知されるような、一点豪華主義にシフトした方が良い。それがオンキヨーにはできなかった』、「店頭での商品力の訴求を期待するのは難しく、ネットでパッと見て良さがわかるかブランドが認知されるような、一点豪華主義にシフトした方が良い。それがオンキヨーにはできなかった」、なるほど明解である。
・『優れた現場があってもそれだけで製品は売れない  最後に3つ目の敗因。これは毎度の話であるが、オンキヨーに戦略がなかったことだ。良いものを作ればいつか消費者はわかってくれる――。このような「待ち」の姿勢では、いくら優れた現場があっても、それだけで製品が売れるわけではない。 最近アップルはiPodの販売終了を発表したが、いまだにソニーはウォークマンのビジネスを世界中で展開している。30万円以上もするような高級モデルもラインアップされている。ソニーのウォークマンの販売戦略は、ひとことでいえば松竹梅の竹をなくして「超松」と「超梅」の2本柱にしたことだ。 「超梅」は1万円前後の商品。これは、スマートフォンを持てない小中学生が外で音楽を聴くためのエントリーモデルである。一方「超松」モデルは大人のウォークマンである。hi-fi世代がハイレゾ音源を趣味として楽しむような顧客に向けて、数は少ないが確実に利益を取れるモデルを出している。 つまり、超梅モデルで、規模の経済性を生み出すことで固定費を稼ぎ、「ハイレゾと言えばウォークマン」という高級オーディオブランドにウォークマンをスイッチさせるための超ハイエンドモデルを、持続的に開発するための土台にしていると言える。それによって、「ソニーのオーディオといえばウォークマン」「ウォークマンと言えば高いけれど超高音質のハイレゾ音楽が楽しめる商品」という、ブランド浸透を図っているのである。 それに対してオンキヨーは、個々の製品をしっかり見るといずれも良い商品ばかりだった。しかし世の中には、しっかり紙のカタログを読み込んでくれたり、店頭で販売員に相談したりするお客さんがいなくなった。この販売の現場の変化に対応できなかったことも、オンキヨーという企業に寿命をもたらした要因だと言える』、確かに「ソニー」の「ブランド」戦略は凄い。「オンキヨー」はマーケティング戦略不在のまま沈没したようだ。 
タグ:倒産・経営破綻 (その1)(ジェネリック大手「日医工」が私的整理申請 赤字が1048億円に拡大、オンキヨー経営破綻「3つの原因」が浮き彫りにする  日の丸家電凋落の深層) 「ジェネリック医薬品」業界での相次ぐ「不正」については、このブログの昨年10月5日付けで取上げた。いまだに「「170品目前後で生産や出荷停止が続いている」とは異常事態だ。 「過去にしきりとM&Aを繰り返してきたこともあって、3月末の有利子負債残高は1626億円と7年前の約10倍にものぼる。巨額赤字による自己資本の毀損で、財務制限条項に抵触するハメにも陥った」、「財務制限条項に抵触」とは逃げ道がない。それにしても、「後発薬業界では品質不正が多発。38社中約8割の企業が承認外の手順で薬剤を製造していたという業界団体の報告」、とは驚くほどコンプライアンス意識が欠如した業界のようだ。 ダイヤモンド・オンライン 長内 厚氏による「オンキヨー経営破綻「3つの原因」が浮き彫りにする、日の丸家電凋落の深層」 「中途半端な規模感」とはどういうことなのだろう。 「オンキヨーの場合、同社のムダに多いラインアップ同士が競合を起こし、同じメーカーの製品内で共食いのような競合状態になっていた」、こんな状態では、「パイオニアのAV機器部門を吸収」などもともと無理だったのではあるまいか。 「オンキヨー」には「「このブランドと言えばこれ」「これといえばこのブランド」というイメージがなかった。 「店頭での商品力の訴求を期待するのは難しく、ネットでパッと見て良さがわかるかブランドが認知されるような、一点豪華主義にシフトした方が良い。それがオンキヨーにはできなかった」、なるほど明解である。 確かに「ソニー」の「ブランド」戦略は凄い。「オンキヨー」はマーケティング戦略不在のまま沈没したようだ。
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デジタルトランスフォーメーション(DX)(その2)(【スクープ】セブンで出向社員が出向元へ127億円発注!「DXバブル」の裏でコンプラ違反疑惑、100億円のシステム開発を破綻させる抵抗勢力の正体 机を片付けない子供と同じだぞ) [企業経営]

デジタルトランスフォーメーション(DX)については、昨年4月21日に取上げた。今日は、(その2)(【スクープ】セブンで出向社員が出向元へ127億円発注!「DXバブル」の裏でコンプラ違反疑惑、100億円のシステム開発を破綻させる抵抗勢力の正体 机を片付けない子供と同じだぞ)である。

先ずは、本年2月7日付けダイヤモンド・オンライン「【スクープ】セブンで出向社員が出向元へ127億円発注!「DXバブル」の裏でコンプラ違反疑惑」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295251
・『『週刊ダイヤモンド』2月12日号の第1特集は「セブンDX敗戦」です。巨大流通帝国、セブン&アイ・ホールディングスが巨費を投じて進めてきたデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略が水泡に帰しました。一方、セブン&アイによる「DXバブル」を巡って、ITベンダーやコンサルティング会社が繰り広げた激しい受注競争が、法令順守違反の疑惑を生み出していました』、「セブンDX敗戦」とは興味深そうだ。
・『1200億円投資の「DXバブル」ベンダーの受注競争は過熱  セブン&アイ・ホールディングスの“DX敗戦”の柱は、2021年のDX戦略の「司令塔」であるグループDX戦略本部の解体とそのトップだったリクルート出身の米谷修氏の“失脚”、そして目玉のDX施策の白紙撤回である。 それまでセブン&アイでは20年から米谷氏をトップとするDX部門が中心となってグループ横断でDX施策を展開してきた。大型プロジェクトも目白押しで、グループ全体のDXへの投資は総額で1200億円にも上った。これは流通企業の売り上げに対するIT投資の平均的な比率の2倍超にも及ぶ巨大な投資だった。 この「DXバブル」に群がったのがITベンダーやコンサルティング会社である。激しい受注競争はベンダーやコンサルの序列をも大きく変える熾烈なものとなった。 その一方で、激しい「利権争い」が統制不全を招きかねない事態を生んだ。ダイヤモンド編集部が入手した内部資料が明らかにするのは、DXバブルを巡るITベンダーの「やりすぎ」ともいえる案件受注である。 セブン&アイに出向した社員の在籍する部署が、出向元に巨額の発注を繰り返していたのだ』、「グループ全体のDXへの投資は総額で1200億円・・・これは流通企業の売り上げに対するIT投資の平均的な比率の2倍超にも及ぶ巨大な投資」、確かに巨額だ。「セブン&アイに出向した社員の在籍する部署が、出向元に巨額の発注を繰り返していた」、コンプライアンス違反の酷い話だ。
・『出向者が出向元に計127億円発注 内部資料「コンプラリスクを懸念」「DX戦略本部内の統制」 内部資料にはそう題したA4サイズのペーパーが存在する。それは、ベンダーからの出向社員による出向元への発注金額を部門別に示したものだ。 例えば、グループDX戦略本部には、PwCから出向してきた2人が所属。そのPwCに対して案件を発注し、5億7000万円を支払っている。 金額が大きいのが、IT統括部・GMSシステムという部門である。同部門はアクセンチュアから社員1人受け入れており、アクセンチュアに発注することで、60億1600万円も支払っていた。NTTデータから出向で1人を受け入れるITインフラ部という部署は、NTTデータに26億5700万円を支払っていた。 内部資料が示すのは、その驚くべき総額である。計10部門で31人を受け入れており、出向元への支払額を合計すると127億5000万円にも上るのだ。 同じペーパーには、直近の稟議の数と、ITベンダーに対するシステムの導入や業務委託を提案・依頼する際の提案依頼書(RFP)の実施状況が記されている。内部資料の作成時点では、RFPは任意で実施されていたとし、全体の稟議の610件のうちRFPが実施されたのはわずか18件程度としている。その実施率はわずか3%ほどだ。 意味するのは、セブン&アイに出向してきた社員が、出向元のベンダーにRFPのプロセスを経ずに案件を発注できてしまうということだ。内部資料は「コンプライアンス上のリスクが懸念される」と警鐘を鳴らしている。 全体の1割をも占める127億円という数字は、DXバブルが、コンプラリスクを懸念させるほどにITベンダーの競争を過熱させていた事実を如実に表している。取引先にとって、セブン&アイは金払いの極めて良い“上客”だったのだ』、「計10部門で31人を受け入れており、出向元への支払額を合計すると127億5000万円」、しかも「ITベンダーに対するシステムの導入や業務委託を提案・依頼する際の提案依頼書(RFP)の実施状況」は、「実施率はわずか3%ほど」と「出向してきた社員が、出向元のベンダーにRFPのプロセスを経ずに案件を発注できてしまう」、極めて大きな問題だ。
・『セブン「DX敗戦」を極秘資料で解明 経営陣混迷…「DX失敗の教科書」  『週刊ダイヤモンド』2月12日号の第1特集は「セブンDX敗戦」です。実は、2021年秋、セブン&アイのある幹部役員がひっそりとグループを去っています。その幹部役員とは社外から招かれ、グループのDX部門のトップとして戦略を主導した米谷修氏です。まさにDX戦略の最重要人物ともいえる存在です。 しかし、セブン&アイは、役員人事にもかかわらず、その幹部の退任をいまだに公表していません。なぜでしょうか。それは、そのキーマンの退任こそが、大号令をかけて進めてきた同社のDX戦略が瓦解してしまったこと表しているからです。 では、セブン&アイの内部で一体何が起きていたのでしょうか。特集では、ダイヤモンド編集部が入手した社外秘の内部資料や動画を基に、DX戦略を巡る創業家役員も絡む人事や組織の混迷、ITベンダーやコンサルティング会社も巻き込んで繰り広げられた苛烈な暗闘の全容を明らかにしていきます。 今回の“DX敗戦”の主要な柱は、DX部門の解体と部門トップの失脚、そして目玉のDX施策の白紙撤回です。創業家役員によってDX戦略に引導が渡された「見せしめ御前会議」の様子を社外秘の動画を基に完全再現。DX部門がグループ内部から集中砲火を浴びるきっかけになった、グループ内の著しい「待遇格差」についても紹介します。 内部資料からは、改革の“抵抗勢力”によるDX戦略の「解体作戦」の実態も浮かびあがります。セブンの社外秘の内部資料で、宿命のライバル、イオンのDX戦略が「ベタ褒め」されている理由も紹介します。 また、セブン&アイのDX大号令はITベンダーやコンサルにとって千載一遇のチャンスとなりました。特集では、「DXバブル」に沸いたベンダー・コンサルの激しい受注競争で起きた序列の変化や、“恩人”の野村総研を巡り創業家役員が激怒した“大事件”の顛末も取り上げます。 さらに、内部資料には、バブルに群がったベンダー・コンサルの実名と実額がこれでもかとばかりに登場します。NTTデータ、野村総合研究所、アクセンチュア…。特集では、取引ベンダー主要53社の受注額ランキングに加え、ITベンダー人月単価の実額も完全公開します。また、IT業界座談会を緊急開催し、業界で日常的にDXに関わる「インサイダー」たちに「セブンDX敗戦」を読み解いてもらいました。 セブン&アイにとって今回の“DX敗戦” は、ECサイト「オムニ7」、スマホ決済「セブンペイ」に続く「第三の敗戦」になります。特集では、”負の遺産“となってきたオムニ7が23年にも閉鎖するとの特報に加え、デジタル戦略での失敗連鎖の裏にある「二族経営」の呪縛について解説していきます。 “流通のカリスマ”鈴木敏文前会長兼最高経営責任者(CEO)の息子で、セブン&アイでデジタル戦略を主導した鈴木康弘元最高情報責任者(CIO)もインタビューに登場。IT導入を巡る「血みどろの戦い」を生み出すセブン&アイの“病理”を激白しています。 DXブームに沸く中、セブン&アイのDX敗戦は、必読の「DX失敗の教科書」ともいえます。ぜひご一読ください』、「戦略を主導した米谷修氏」「の退任をいまだに公表していません」、信じ難い内向き姿勢だ。「創業家役員によってDX戦略に引導が渡された「見せしめ御前会議」、責任があるのは「米谷修氏」だけなのか、他の役員は責任がないのか、これが流通最大手とは到底思えないようなお粗末さだ。「セブン&アイ」側としても、再発防止のためにも、今回の問題の総括をきちんとすべきだろう。

次に、5月9日付け日経ビジネスオンラインが掲載した日経クロステック/日経コンピュータ編集委員の木村 岳史氏による「100億円のシステム開発を破綻させる抵抗勢力の正体、机を片付けない子供と同じだぞ」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00322/042000042/
・『この「極言暴論」やもう1つのコラム「極言正論」を書き続けていることもあり、理想に燃えてDX(デジタルトランスフォーメーション)などの変革に挑んでいる人たちと議論する機会が結構ある。匿名やオフレコを条件に話を聞くのだが、その際に必ず出てくるのが社内の抵抗勢力の存在だ。理想に燃える人たちは抵抗勢力が改革を妨げていることに怒り嘆くのだが、その話を聞けば聞くほど「そりゃ、あなたの認識のほうがおかしいよ」と言ってあげたくなるケースもある。 いや、実際にそう言ったこともある。どこの会社か特定できないようにするために、枝葉の話を省いて書くと次のようになる。要は基幹系システムの刷新を伴う業務改革の話だ。ある意味、DXの王道といってよい。IT部門で改革派を自認するその人は、利用部門の抵抗勢力に手を焼いていた。「利用部門の連中はDXに賛同すると言いながら、自分たちの業務のやり方を変えることにはいろいろ理由をつけて反対するんですよ。けしからん話です」と憤っていた。 私から言わせれば、典型的な駄目パターンである。駄目なのは利用部門じゃなくて、改革派のこの人である。「利用部門が抵抗するのは当たり前じゃないですか」と私が言うと、その人は少しムッとして「木村さんらしくもない。当たり前じゃなくて、それじゃ駄目でしょ!」と力説する。さらに続けて「いいですか。業務プロセスを全体で最適化すれば、利用部門の業務が効率化されて現場の仕事が楽になるのですよ。それを何度言っても理解しようとしない」と嘆いていた。 その人がこの記事を読んでいれば気分を害すのは間違いないが、あえて書く。これは理想に燃える改革派の人が陥る最もアカン発想パターンである。そもそも自分も含めた「人」に対する洞察がなっていない。人はたとえ仕事が楽になると分かっていたとしても、今までの仕事のやり方を変えるのを嫌がるものなのだ。要するに、変えるのが面倒くさい。だから、いろいろと理由をつけてサボタージュしようとするわけだ。 そんな話をこの人にすると、当初は「そんなばかな」と言下に否定していた。仕方がないので「あなたの作業机はいつも片付いていますか?」と聞いてみた。いきなり何を言い出すんだと不審の目を向けられたが、返答は「いいえ、机を片付けるのは苦手です」だった。これはもう説得するチャンスである。「机の上を片付ければ作業効率が上がるのを分かっているのに、なぜ片付けられないのでしょうか。要は面倒くさいからでしょ」と問うと、その人は「うーん」となって何となく納得したようだった。 実は、この問答を契機に私も少し反省した。極言暴論ではDXなどの変革を阻もうとする抵抗勢力の存在を何度も描いてきたが、あまりに強大に見積もり過ぎていたのかもしれない。抵抗勢力の大半は、単なる「面倒くさがり屋さん」にすぎないはずだ。なのに、そんな軟弱な抵抗勢力によって改革が頓挫する。かつてのBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)もそうだったし、ERP(統合基幹業務システム)のビッグバン導入の際もそうだった。この問題はもう少し深く考えてみる必要がある』、「いいですか。業務プロセスを全体で最適化すれば、利用部門の業務が効率化されて現場の仕事が楽になるのですよ。それを何度言っても理解しようとしない」と嘆いていた」、「これは理想に燃える改革派の人が陥る最もアカン発想パターンである。そもそも自分も含めた「人」に対する洞察がなっていない。人はたとえ仕事が楽になると分かっていたとしても、今までの仕事のやり方を変えるのを嫌がるものなのだ」、「抵抗勢力の大半は、単なる「面倒くさがり屋さん」にすぎないはずだ。なのに、そんな軟弱な抵抗勢力によって改革が頓挫する」、「この問題はもう少し深く考えてみる必要がある」、なるほど。
・『くびがかかる米国の抵抗勢力とは本気度が違う  先ほど書いた「抵抗勢力の大半は、単なる面倒くさがり屋さんにすぎない」について、読者の中には「なぜそんなふうに言えるのだ。根拠を示せ」と思う人がいるかもしれない。確かに直接的な根拠を示すのは難しいが、外国企業、特に米国企業や新興国の企業のケースと比較して考えてみるとよいだろう。米国企業などの場合、抵抗勢力は本気で抵抗する。何せ自分の仕事がなくなるかもしれない。つまり、改革の内容いかんによっては失業の危機に直面するからな。 例えば米国企業がかつて続々とERPを導入したのは、一般管理費の削減を狙ったからだ。身も蓋もなく言ってしまえば、リストラによる人件費などの削減だ。主に間接部門の業務のやり方をERPに合わせてしまえば、業務が効率化されて人員を大きく削減できる。ついでに言えば、それまでの独自システムを保守運用してきたIT部員の多くも用済みとなり、解雇に踏み切れる。日本企業はよくERPのライセンス料が高過ぎると不満を言うが、米国企業の経営者からすれば「高過ぎる」料金を支払っても十分に元が取れるわけだ。 一方、リストラ対象となる間接部門の人たちや、ERP導入に汗をかいたら給料アップどころか解雇されかねないIT部員は、おいそれと「ERP導入による業務改革」には賛同しない。転職が当たり前で特定企業で長く働かない米国人とはいえ、会社都合でくびになりたくはない。だから本気の抵抗勢力となる。そんな抵抗勢力を説得したり懐柔したり、あるいは排除したりして改革を実現することが、CEO(最高経営責任者)やCIO(最高情報責任者)らの力量といえる。 そういえば以前、米国企業を買収した日本企業の経営者からこんな話を聞いたことがある。買収後にその米国企業の基幹系システムを、本社が導入しているERPに置き換えることにした。その際、「なぜ何の問題もないシステムを変更するのか」と声高に唱える米国側の経営陣やIT部門の抵抗に手を焼いたそうだ。ただし、この件は大ごとにはならなかった。何せ親会社になったのは日本企業だ。基幹系システムはERPに入れ替えても、リストラしなかったからだ。 ちなみに、ERP導入の効用として日本で言いはやされている「経営(事業)の見える化」なるものはどうだったかというと、米国企業の導入事例でも効果抜群だった。ただし、あくまでもリストラによる一般管理費の削減がERP導入の主たる目的であり、経営の見える化は「おまけで付いてきた」ようなものだ。リストラというと日本では感じが悪いので、この経営の見える化が強調されているが、米国企業の経営者にとっての一番の効用は直接的なコスト削減効果である。 さて、日本企業のERP導入の場合はどうだったのか。大概の企業ではERPを導入する際に、業務改革と経営の見える化を目的に掲げる。で、問題は業務改革のほうで、日本企業でも「現場で創意工夫してカイゼンしてきた業務のやり方をなぜ変える必要があるのか」などといった理屈を立てて、利用部門の多くが抵抗勢力となる。場合によってはIT部門までが「コンサルタントの言うことを真に受けてはいけない」などと訳の分からないことを言って抵抗勢力の一員となったりもする。 こうした日本企業の抵抗勢力たちは、米国企業などのそれと同じくリストラの恐怖におびえているだろうか。もちろん、そんなことはあるわけない。私の知る限り、システム刷新による業務効率化で人員削減に踏み切った日本企業を聞いたことがない。もちろん配置転換などはあるにしても、終身雇用が原則で労働法制上も解雇が難しい日本企業においては、解雇とシステム刷新がリンクすることはあり得ない』、「ERP導入の効用として日本で言いはやされている「経営(事業)の見える化」なるものはどうだったかというと、米国企業の導入事例でも効果抜群だった。ただし、あくまでもリストラによる一般管理費の削減がERP導入の主たる目的であり、経営の見える化は「おまけで付いてきた」ようなものだ。リストラというと日本では感じが悪いので、この経営の見える化が強調されているが、米国企業の経営者にとっての一番の効用は直接的なコスト削減効果である」、「経営の見える化は「おまけで付いてきた」ようなもの」とはその通りなのだろう。
・『過大評価し過ぎた日本企業の抵抗勢力  そんな訳なので、冒頭で書いた通り「日本企業における抵抗勢力は単なる面倒くさがり屋さん」と一般化してよさそうだ。もちろん、中には「うちの部門の業務プロセスは世界一」などと根拠レスに思い込んで変革に反対する人がいるかもしれない。ただ「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと外国人におだてられて夜郎自大になっていた昭和の世ならともかく、これだけ日本企業の生産性の低さが笑いものになっている現代において、そんな人はほぼ絶滅したはずだ。 「抵抗勢力は単なる面倒くさがり屋さん」説を裏付ける格好の事例があったな。ある大手製造業では旧システムもERPを導入していたが、利用部門の要求を聞き入れ過ぎて5000本ものアドオンを開発・保守していた。「これではあまりに非効率」ということで、ERPを切り替える際に「アドオンは原則廃止」を打ち出した。ただ、絶対に必要ということならば、その可否を判定する委員会に申請せよ、というルールにしたそうだ。するとあら不思議。申請するのは面倒くさいからか、新たにつくったアドオンは100本で済んだという。 ついでにIT部門が抵抗勢力になる場合も検討しておこう。このケースは、経営者がDXの推進に当たってコンサルティング会社に支援を依頼した際などに発生する。で、コンサルタントは独自の基幹系システムをERPに変え、それに合わせて全社的な業務改革に取り組むことを提案する。まあ、王道の提案だ。IT部門としては、頭越しにERP導入を進言されたことに腹を立てるとともに、新しい技術(=ERP)に対応できるのかと不安になり、先ほど書いた訳の分からない理由で抵抗することになった。 「不安」と書いたが、もちろん解雇される不安ではない。というか、そもそも不安と呼べる類いのものではない。技術者ならば少し勉強すれば新しい技術に対応できるに決まっている。要するに、今までなじんできたCOBOLなどの環境で今までと変わらないやり方で作業をしていたいだけなのだ。新しい技術を勉強するのも面倒くさいし、新しい環境に変わるのも面倒くさいわけだ。IT部門の抵抗勢力も、利用部門と同じく面倒くさがり屋さんなのだ。 要するに、こういうことだ。業務改革にあれこれと理由をつけて反対してくる抵抗勢力は、「机の上が片付いていないほうが作業がはかどる」とか「下手に片付けると必要な物がどこにあるのか分からなくなる」とか、理由にならない理由をつけて机を片付けようとしない人たちと同じなのだ。もう少し言うと、勉強机を片付けられない子供と同じレベルなのだ。そんなとき親はどうするのかといえば、「とっとと片付けないと、今日の晩ご飯は抜き!」と叱るだけ。まさにそれだけの話である。 自分自身の反省も踏まえて書くのだが、DXあるいは単なるシステム刷新の際に反対したりサボタージュしたりする連中を、抵抗勢力と命名することで「過大評価」し過ぎているのではないか。経営者が宿敵の役員のシマである部門に手を突っ込むといった、上層部の権力闘争が絡む案件ならともかく、単に業務をシステムに合わせるだけのことを面倒くさがって嫌がる連中を、抵抗勢力などと「持ち上げる」ものだから、かえってつけ上がるのだ。 駄々をこねて勉強机を片付けようとしない子供と同じなのだから、そんな面倒くさがり屋さんに対しては「やれ!」と言えば済む話である。もしくは、独自のやり方にこだわる理由や言い分を聞いてあげて、誰が見ても確かにその通りだと思えることだけを新システムに組み込めばよい。あるいはシステムに業務のやり方を合わせることで作業が効率化して利用部門の人も楽ができると確信しているのならば、押し通せばよいではないか。後で利用部門から感謝されるぞ。なのに、なぜできないのか。そこが問題なのである』、「旧システムもERPを導入・・・5000本ものアドオンを開発・保守」、「ERPを切り替える際に「アドオンは原則廃止」を打ち出した。ただ、絶対に必要ということならば、その可否を判定する委員会に申請せよ、というルールにしたそうだ。するとあら不思議。申請するのは面倒くさいからか、新たにつくったアドオンは100本で済んだ」、絞る気になれば絞れるもののようだ。「業務改革にあれこれと理由をつけて反対してくる抵抗勢力は、「机の上が片付いていないほうが作業がはかどる」とか「下手に片付けると必要な物がどこにあるのか分からなくなる」とか、理由にならない理由をつけて机を片付けようとしない人たちと同じなのだ。もう少し言うと、勉強机を片付けられない子供と同じレベルなのだ。そんなとき親はどうするのかといえば、「とっとと片付けないと、今日の晩ご飯は抜き!」と叱るだけ。まさにそれだけの話である」、同感である。
・『丸投げ経営者からは「お墨付き」をもらっておけ  例えばこんな話がある。日本の大手製造業が外国企業に買収され、基幹系システムを本社となった外国企業と同じERPに置き換えることになった。先ほど紹介した日本企業が米国企業を買収した話とは、ちょうど逆のパターンだ。で、米国企業のCIOがやって来た際に、日本側のIT部長が現行の独自システムの優位性をプレゼンし、ERPへの移行をやめるように訴えた。IT部長はこの独自システムに思い入れが強く、単なる面倒くさがり屋さんとは違うのでプレゼンには熱が入ったと聞く。 そのプレゼンを熱心に聞いていたCIOは「素晴らしい。皆さんがいかに会社のために貢献してきたのかがよく分かりました」と称賛した。そのうえで次のように言い放ったそうだ。「ただし、私の決定は覆りません。直ちにシステム刷新に向けた準備を始めてください。この議論は以上です」。で、どうなったかというと、気の毒なIT部長が魂の抜け殻のようになったのを別にすれば、大した抵抗も問題も発生せずにERPへ移行できたという。 もう1つ「軽め」の話も紹介しよう。ある小売企業のCIOが話していたが、システム導入に当たって「この機能はこれでよいですか」とお伺いを立てるから、文句を言う人が現れるとのことだ。もちろん基幹系システムの話ではないが、ある意味で本質を突いている。IT部門からそう聞かれれば、利用部門は「うちのやり方にマッチしない」機能などを探し出すわけであり、「ここはこう直してもらいたい」「あんな機能もぜひ欲しい」と言い出すに決まっているのである。 そうではなくて、そのCIOによると「この機能はこれでいきます」と言い切ってしまえば済む話だという。面倒くさがり屋さんたちはいちいち調べて文句を言ってはこない。導入後に「なんでこんな面倒なことをやらないといけないんだよ」といった不平が出るかもしれないが、放置しておいて無問題。やがて使い方に慣れ、本質的な意味で有用なシステムであれば、そのうち「こりゃ便利だ」と喜んで使うようになるという。 結局のところ、やはり人間はたとえ楽になると分かっていたとしても、今までのやり方を変えるのを嫌がる生き物なのである。だからシステム刷新では「現行通り」を要求する。面倒くさいことをやりたくないがために、「うちの業務のやり方は優れている」とか「その機能がないと業務が回らない」などと言い出す。そんな低次元なわがままを深刻に捉え、何とか利用部門のご機嫌を取ろうとするから、50億円、100億円をかけたシステム開発プロジェクトが炎上して破綻する。これが「抵抗勢力問題」の本質である。 じゃあ、どうすればよいのか。経営者がDXや業務改革のためにリーダーシップというか「強権」を発動すれば済む話だ。もしそれをやらずに丸投げするような経営者なら、CIOやプロジェクトマネジャー(PM)が「経営者のお墨付き」をもらっておけばよい。そのお墨付きとは「DXによる全体最適に向け全業務を見直す。その権限をCIO(あるいはPM)に与える」というものだ。それを振り回してはアカンが、面倒くさがり屋さんたちのわがままを抑止するには十分な効果があるだろう。 もちろん、これだけでDXや業務改革が成功するなどと言ってはいないからな。さすがに私はそこまで脳内お花畑ではない。ただ、変えるのが面倒くさい、新しいことをやるのが面倒くさいという人間の本質を頭にたたき込み、対処法を準備しておけと言っているのだ。そうすれば抵抗勢力に振り回されずに、変革に向けた真の課題の解決に集中できるだろう……。えっ、そんな面倒くさいことするより、ご用聞きとして利用部門の言いなりになったほうが楽だって? あらら、面倒くさがり屋さんがここにもいたか』、「丸投げするような経営者なら、CIOやプロジェクトマネジャー(PM)が「経営者のお墨付き」をもらっておけばよい。そのお墨付きとは「DXによる全体最適に向け全業務を見直す。その権限をCIO(あるいはPM)に与える」というものだ」、「面倒くさがり屋さんたちのわがままを抑止するには十分な効果があるだろう」、「変えるのが面倒くさい、新しいことをやるのが面倒くさいという人間の本質を頭にたたき込み、対処法を準備しておけと言っているのだ。そうすれば抵抗勢力に振り回されずに、変革に向けた真の課題の解決に集中できるだろう……」、確かに効果がありそうだ。
タグ:デジタルトランスフォーメーション(DX) (その2)(【スクープ】セブンで出向社員が出向元へ127億円発注!「DXバブル」の裏でコンプラ違反疑惑、100億円のシステム開発を破綻させる抵抗勢力の正体 机を片付けない子供と同じだぞ) ダイヤモンド・オンライン「【スクープ】セブンで出向社員が出向元へ127億円発注!「DXバブル」の裏でコンプラ違反疑惑」 「セブンDX敗戦」とは興味深そうだ。 「グループ全体のDXへの投資は総額で1200億円・・・これは流通企業の売り上げに対するIT投資の平均的な比率の2倍超にも及ぶ巨大な投資」、確かに巨額だ。「セブン&アイに出向した社員の在籍する部署が、出向元に巨額の発注を繰り返していた」、コンプライアンス違反の酷い話だ。 「計10部門で31人を受け入れており、出向元への支払額を合計すると127億5000万円」、しかも「ITベンダーに対するシステムの導入や業務委託を提案・依頼する際の提案依頼書(RFP)の実施状況」は、「実施率はわずか3%ほど」と「出向してきた社員が、出向元のベンダーにRFPのプロセスを経ずに案件を発注できてしまう」、極めて大きな問題だ。 「戦略を主導した米谷修氏」「の退任をいまだに公表していません」、信じ難い内向き姿勢だ。「創業家役員によってDX戦略に引導が渡された「見せしめ御前会議」、責任があるのは「米谷修氏」だけなのか、他の役員は責任がないのか、これが流通最大手とは到底思えないようなお粗末さだ。「セブン&アイ」側としても、再発防止のためにも、今回の問題の総括をきちんとすべきだろう。 日経ビジネスオンライン 木村 岳史氏による「100億円のシステム開発を破綻させる抵抗勢力の正体、机を片付けない子供と同じだぞ」 「いいですか。業務プロセスを全体で最適化すれば、利用部門の業務が効率化されて現場の仕事が楽になるのですよ。それを何度言っても理解しようとしない」と嘆いていた」、「これは理想に燃える改革派の人が陥る最もアカン発想パターンである。そもそも自分も含めた「人」に対する洞察がなっていない。人はたとえ仕事が楽になると分かっていたとしても、今までの仕事のやり方を変えるのを嫌がるものなのだ」、「抵抗勢力の大半は、単なる「面倒くさがり屋さん」にすぎないはずだ。なのに、そんな軟弱な抵抗勢力によって改革が頓挫する」、「この問題 「ERP導入の効用として日本で言いはやされている「経営(事業)の見える化」なるものはどうだったかというと、米国企業の導入事例でも効果抜群だった。ただし、あくまでもリストラによる一般管理費の削減がERP導入の主たる目的であり、経営の見える化は「おまけで付いてきた」ようなものだ。リストラというと日本では感じが悪いので、この経営の見える化が強調されているが、米国企業の経営者にとっての一番の効用は直接的なコスト削減効果である」、「経営の見える化は「おまけで付いてきた」ようなもの」とはその通りなのだろう。 「旧システムもERPを導入・・・5000本ものアドオンを開発・保守」、「ERPを切り替える際に「アドオンは原則廃止」を打ち出した。ただ、絶対に必要ということならば、その可否を判定する委員会に申請せよ、というルールにしたそうだ。するとあら不思議。申請するのは面倒くさいからか、新たにつくったアドオンは100本で済んだ」、絞る気になれば絞れるもののようだ。「業務改革にあれこれと理由をつけて反対してくる抵抗勢力は、「机の上が片付いていないほうが作業がはかどる」とか「下手に片付けると必要な物がどこにあるのか分からな 「丸投げするような経営者なら、CIOやプロジェクトマネジャー(PM)が「経営者のお墨付き」をもらっておけばよい。そのお墨付きとは「DXによる全体最適に向け全業務を見直す。その権限をCIO(あるいはPM)に与える」というものだ」、「面倒くさがり屋さんたちのわがままを抑止するには十分な効果があるだろう」、「変えるのが面倒くさい、新しいことをやるのが面倒くさいという人間の本質を頭にたたき込み、対処法を準備しておけと言っているのだ。そうすれば抵抗勢力に振り回されずに、変革に向けた真の課題の解決に集中できるだろう…
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企業不祥事(その26)(アクセンチュア過重労働に潜むコンサルの業界悪 残業が消えない真の理由、【スクープ】東レの樹脂製品「安全認証の不正行為」 5年前から火消し工作か、吉野家取締役が「生娘をシャブ漬け戦略」発言 会社が謝罪「極めて不適切」「到底許容できない」) [企業経営]

企業不祥事については、昨年10月14日に取上げた。今日は、(その26)(アクセンチュア過重労働に潜むコンサルの業界悪 残業が消えない真の理由、【スクープ】東レの樹脂製品「安全認証の不正行為」 5年前から火消し工作か、吉野家取締役が「生娘をシャブ漬け戦略」発言 会社が謝罪「極めて不適切」「到底許容できない」)である。

先ずは、本年3月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「アクセンチュア過重労働に潜むコンサルの業界悪、残業が消えない真の理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/298719
・『アクセンチュアの書類送検騒動はコンサルの業界問題でもある  アクセンチュアが、社員に違法な残業をさせていたとして書類送検されました。ソフトウエアエンジニアの男性社員1人に、1か月140時間余りの残業をさせた労働基準法違反の疑いです。 「法律をちゃんと守れよ」ということではあるのですが、そのうえでこの問題、それだけでは済まない課題を抱えた業界問題でもあります。今回のアクセンチュアの問題はあくまで入り口として、コンサル業界全体が抱える課題と乗り越え方について内部の立場で考えてみたいと思います。 コンサル業界は学生の就活でも一番人気の業種で、アクセンチュアはその中でも世界のトップにランキングされます。30代前半で年収1000万円が狙える一方で、仕事は激務でライフワークバランスを維持するのが大変そうだ、というのが一般的なイメージでしょうか。 その激務の話ですが、労働基準法では使用者と労働者の代表が36協定を結べば例外的に月45時間の残業が許され、さらに例外の例外として業務量の大幅な増加に対して上限で月100時間まで(かつ2カ月以上の平均で80時間以内)の残業・休日出勤が許されるとされています。今回書類送検された事案の140時間はこの基準を超えるので、「よくない」という点については間違いないと思います。 とはいえ、アクセンチュアはこの残業問題については業界内ではかなりきちんと取り組んでいたという評判を聞いています。そのあたりはこの記事の後半でお話しするとして、まず総論として、なぜコンサル業界で過重労働が発生するのかについてまとめてみましょう。 過重労働は、命に係わる問題だと認識されています。過労死ラインと言われるのが月80時間を超える時間外労働で、健康障害を発症した人はそのような状況が長く続き、発症の直前には時間外労働が月100時間を超えていたという例が多いようです』、「男性社員1人に、1か月140時間余りの残業をさせた労働基準法違反の疑い」、確かにこれではアウトだ。それにしても、「30代前半で年収1000万円が狙える」とは、なかなかいい待遇だ。
・『人気のコンサル業界で残業が発生する三つの理由  それでは、なぜコンサル業界で残業が発生するのか? 三つのタイプの理由から、その原因と対策を考えてみたいと思います。 その三つとは、 (1)取り組む課題の難易度が高い (2)自身の能力が低い (3)組織の能力が低い、ないしは上司の能力が低い です。 1番目の理由は職種柄、仕方ない側面もあります。というのも、そもそも大企業が多額の報酬を支払ってコンサルに依頼をする問題は、どんなものであれ簡単なものではないケースが大半だからです。ノウハウがあるとはいえ、毎回頭をひねって打開策を考えに考え抜く仕事ばかり。時間がかかるのは当然です。 2番目の理由ですが、実はほとんどのコンサルタントが「自分の能力の低さ」を認識しています。これは、トップアスリートの心境に似ています。その道のプロであればプロであるほど、要求される能力の高みを理解しています。同時に、自分がそこに到達するためにはまだ距離があることを、痛いほど自覚しているのです。 ちなみに、それを認識していない自信満々のコンサルもいますが、自分を客観視できない人は比較的短時間で業界から淘汰される傾向にあるようです。 それでこれはコンサル業界共通の課題になるのですが、この二つの理由から「残業せずに早く帰れ」と命令しても、仕事を続けたいと考えるコンサルは結構多いのです。職人気質というと理解しやすいかもしれませんが、今できている案では不十分であることがわかっていて、仕事にもっと時間をかけたいのです。 コンサルの場合、能力に応じてポジションが与えられ昇給する格差が大きいことから、なんとしても実力を上げて認められ、早く上に行きたいという競争心も大きいものです。 過重労働の問題が叫ばれるようになって以降、コンサル会社は労働時間を厳しく把握するようにしています。すると、当然のように「今の上司は若い頃に無限大の残業をして力をつけた。今になって若い社員に時間制限を課して成長の機会を奪うのは、フェアではない」という不満が、若くて上昇志向の強い社員から噴出したりもします。 実際、そういう社員は帰宅しても夜遅くまで勉強したり調べものをしたりします。だから、会社の管理できない場所で健康に負荷がかかっていることも多いのです』、「「今の上司は若い頃に無限大の残業をして力をつけた。今になって若い社員に時間制限を課して成長の機会を奪うのは、フェアではない」という不満」にも一理ある。「会社の管理できない場所で健康に負荷がかかっていることも多い」、仕事の持ち帰りが増えるのでは、労働時間の実態が分からなくなり、かえってマイナスだ。
・『上司の能力が低いコンサル会社では「デスマーチ(死の行進)」が起きやすい  一方で3番目の理由として、コンサル会社にプロジェクト運営の巧拙があったり、上司の能力が低かったりすることで、社員の労働時間に負担がかかることも実際問題としては非常に多いものです。 こんな例がよくあります。午後まるまるかけて検討したアウトプットが、上司の目から見てだめだったとします。苦虫をかみつぶしたような顔をして、上司が部下に再検討の指示をします。そのうえで自分のスケジュールを見ると、空き時間がほとんどない。仕方なく、「明日の朝7時半から8時半までなら時間がとれるからそれまでに作っておいて」と指示を出して会議室を後にします。 要するに、会議が終わった午後7時半から次の朝の午前7時半までにアウトプットを作り直せと指示を出しているのです。これを「緊急事態ならオッケーだ」と考える上司は、一定数存在します。 実際は、クライアントの役員を集めた会議直前にこういったダメ出しが頻出するようなプロジェクトは、コンサル会社の上司のプロジェクト設計能力に問題があります。組織や上司の能力が低いために、このような事態が引き起こされるケースも多いものです。 さらに、コンサルのアウトプットとして提案した戦略にシステム開発を実装していくような場合には、システム業界で言う「デスマーチ」に社員が巻き込まれている可能性も出てきます。 デスマーチ、すなわち死の行進というのは、IT業界での過重労働が起きているプロジェクトを差す俗語です。そして、このデスマーチはそもそも失敗するように設計されたプロジェクトであったり、適正な資源(人員や予算、期間)が割かれていないプロジェクトであったりすることが大半だといいます。 コンサル会社でも特に、システムエンジニアに過重労働が降りかかる事例は、このデスマーチの可能性が常にあります。もしそうだとしたら、組織としての能力不足か上司の能力不足がその結果を引き起こしているというわけです』、「組織としての能力不足か上司の能力不足が」、「デスマーチ」「を引き起こしている」、「巻き込まれている」「社員」もたまったものではない。
・『若さをあてにした過重労働は長い目で見ると個人にとってマイナス  さて、冒頭のアクセンチュアに話を戻しますと、実は業界内で耳にする話としてはライフワークバランスの実現は、かなりうまくいっている方だとされています。 会社全体で働き方改革のプロジェクトを進めていて、残業時間の上限は以前の79.5時間から2017年に45時間に変更されました。さらに、これまでの組織風土を改めて、全社員の意識改革を行う取り組みを進めています。 業界全体の中では働き方改革が進んでいたはずのアクセンチュアでも、冒頭のような事案が発生したというのが今回の報道です。背景としては3番目の問題について組織全体としてかなり取り組んできたものの、プロジェクト単位ではその域に達していなかったということが表面化したものでしょう。 2番目の理由のように、社員が働きたくて働きたくて仕方なかったから140時間働いていた話ではないと思われます。 業界のトップ企業が今回のように摘発されたことは、コンサル業界の未来にとってはプラスに働くと思います。この年齢になって分かるのですが、やはり若さをあてにした過重労働は人生トータルではいいものではありません。 もし、この記事を読んでいる業界人の中で2番目の理由で働き過ぎている人がいらっしゃったら、業界の先輩としては少し立ち止まって自分や自分の家族をいたわる時間を作った方がいいとアドバイスしたいと思います』、同感である。ただ、裁量労働制を導入すれば、時間外の問題は解消する筈だが、導入に障害があるのだろうか。

次に、3月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの村上 力氏による「【スクープ】東レの樹脂製品「安全認証の不正行為」、5年前から火消し工作か」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/299424
・『日本を代表する化学メーカー、東レ(日覺昭廣社長)で今年1月末、家電製品や自動車部品に使う樹脂製品の安全認証での不正行為が明らかになった。製品特性の一つである燃えにくさについて、アメリカの第三者安全機関であるUL(アンダーライターズ・ラボラトリーズ)から認証を得る際に、実際の製品とは異なるサンプルを提出するなどして、試験を不正にクリアしていたという。東レは今月にも報告書を公表する運びだが、取材を進めると、実は東レが、5年以上前からこの不正を把握し、公表直前までひそかに“火消し工作”を図っていたことが分かった。また、5年前に子会社であった品質不正を教訓として実施した再発防止策が、まったく機能していなかった疑いも浮上している』、「5年以上前からこの不正を把握し、公表直前までひそかに“火消し工作”を図っていた」、「5年前に子会社であった品質不正を教訓として実施した再発防止策が、まったく機能していなかった疑い」、経団連会長を輩出した会社とは思えないお粗末さだ。
・『認証を得た410品種のうち110品種で不正が発覚  東レのリリースや新聞報道によると、昨年末に東レが実施した社内アンケート調査への回答で、ULの不正が発覚したという。東レが販売している樹脂製品約1600品種のうち、燃えにくさである難燃性能を示す規格「UL94」の認証を得たのは約410品種。そのうち110の品種で、不正行為が確認されたようだ。東レ全体の売上高に占める樹脂ケミカル事業セグメントの売り上げは16%に相当し、会社全体の信用を揺るがす不祥事だ。 東レは、不正行為があった品種のうち9割超は、難燃性能がULの基準を満たしており、安全性への問題は軽微と説明している。表沙汰になっている経緯だけを見ると、さほど大きな問題ではなく、むしろ社内のチェック機能が有効に機能しているように思えてくる。 だが、事はそう単純ではない。実は、不正のあった樹脂製品を担当する樹脂ケミカル事業部では、2016年6月から、秘密裏に事態を把握していたにもかかわらず、今日まで不正の事実を伏せていたのだ。 そもそも、ULの不正とは具体的にどういうものか。 東レで実行されていた不正行為は、主に2種類に分けられる。一つ目は、樹脂製品をULに登録する際のものであり、二つ目は、ULが行うフォローアップ試験を切り抜けるために実行されたものだ。 UL認証を取得するためには、開発した樹脂製品を短冊状に成形したサンプルをULに提出し、これをバーナーであぶるといった難燃性の試験を通過しなければいけない。合格すれば認証を得られ、材料や生産拠点などの情報が登録される。UL認証の取得は、顧客からの要求事項に入っていることも多いという。 だが東レでは、このUL登録の際に、実際の生産方法とは異なる方法で作られたULが求める難燃性能を満足するサンプルを提出することで、試験をクリアしていたという。 最初の登録で不正を行えば、その後もごまかし続けなければいけない。 ULは、登録した品種の品質が維持されているかチェックするために、年に4回、フォローアップ試験として、既に登録されている品種の難燃性能を確認している。ULの検査員が抜き打ちで、登録品種の生産拠点を訪れ、フォローアップ試験の対象品種を指定することもあるという。 東レでは、フォローアップ試験でも、材料に難燃剤を混ぜたり、燃えやすい成分を減量するなどして偽サンプルを作成し、ULに提出していたという』、「UL登録の際に、実際の生産方法とは異なる方法で作られたULが求める難燃性能を満足するサンプルを提出することで、試験をクリアしていたという。 最初の登録で不正を行えば、その後もごまかし続けなければいけない」、「フォローアップ試験でも、材料に難燃剤を混ぜたり、燃えやすい成分を減量するなどして偽サンプルを作成し、ULに提出」、極めて悪質だ。
・『5年前に行われた樹脂製品の不正調査  このような工作を行うと、UL登録時のサンプルと、実際の樹脂製品と、フォローアップ試験時に提出したサンプルの、三つの製品に乖離(かいり)が生じることになる。東レの樹脂ケミカル事業部の幹部は、90年代から製品に乖離があることに気付いていた。 だが、本格的な調査が始まったのは2016年6月である。同じ頃、後述する東レ子会社での品質不正が発覚していただけでなく、日本の製造業全体で、品質データ改竄(かいざん)などの不正が相次いで見つかっていた。そうした内外の動きを受けて、実態把握に乗り出したと思われる。調査は17年1月まで、半年にわたって行われたという。 不正が見つかった樹脂製品は、家電製品や自動車など、一般消費者向けの商品の部品に使用されている。本来なら、速やかに事態の公表を行うべきだっただろう。 ところが、現実に行われたのはひそかな「火消し」だった。樹脂ケミカル事業部は、問題の樹脂製品をリスクレベルで3区分し、UL登録品種と実際の製品との乖離が大きい「ランクA」の品種について、代替品に置き換えることでつじつまを合わせることを試みた。ランクB、Cの不正はそのまま継続し、商品の製造販売は続いていた。) だが、2018年にはランクAの代替品導入を断念し、品種を廃番とするなどして、事態の収束を図っていたのである。2021年11月には、ランクBの代替品の導入や販売中止に着手。UL不正が発覚したのは、その直後だった』、「不正が見つかった樹脂製品は、家電製品や自動車など、一般消費者向けの商品の部品に使用されている。本来なら、速やかに事態の公表を行うべき」、「現実に行われたのはひそかな「火消し」だった。樹脂ケミカル事業部は、問題の樹脂製品をリスクレベルで3区分し、UL登録品種と実際の製品との乖離が大きい「ランクA」の品種について、代替品に置き換えることでつじつまを合わせることを試みた。ランクB、Cの不正はそのまま継続し、商品の製造販売は続いていた」、悪質な隠蔽だ。
・『ネット掲示板への書き込みにより急ぎ公表された子会社の品質不正  樹脂ケミカル事業部がULの不正の火消しにあたっていた頃、東レ子会社「東レハイブリッドコード」(以下、THC)で、タイヤ補強材の品質不正が発覚している。 この事案の発覚は、2016年7月である。同年6月、THCが独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)から補助金を不正受給していたことが発覚し、東レの法務・コンプライアンス部門が、同年7月1日にTHCの社員にアンケート調査を実施。THCが製造販売するタイヤの補強材などの品質データが改竄されているという情報提供があった。 にもかかわらず、対外公表がされたのは1年以上たった17年11月である。東レは16年7月に調査に着手し、同年10月には日覺社長に報告していた。しかし、対外公表や外部顧客への公表をしないまま、安全性調査などを進めていたという。 だが、17年11月にネット掲示板にTHCの不正に関する書き込みがされ、記者に嗅ぎつけられる前に、急ぎ公表に踏み切った経緯があった。日覺社長は会見で、「(当初は)公表するつもりはなかった」と明言していた。 THCの不正では、途中まで内々にコトを収めようと試みていたのである。一方、ULの不正は外部に情報が漏れることなく、今日まで情報を伏せておくことに“成功”したと言える』、「THCが製造販売するタイヤの補強材などの品質データが改竄」された問題も、「ネット掲示板にTHCの不正に関する書き込みがされ、記者に嗅ぎつけられる前に、急ぎ公表に踏み切った経緯」、隠蔽体質は根強いようだ。
・『再発防止のために新設した品質保証本部の足元で不正  問題は、THCの不正を受け、全社的に実施された再発防止策である。 2017年12月末に公表されたTHCの報告書によると、東レは、日覺社長への報告があった2016年10月頃から、品質保証部門の格上げや、品質検査の厳格化、コンプライアンス教育などの再発防止策を実施している。) また、2018年3月までに、品質データを取り扱う社員や管理監督者など1万人弱を対象に一斉アンケート調査を行い、法令違反や製品の安全性に影響がある案件はなかったという結果を得ている。 だが前述の通り、THCの不正調査、再発防止策の実施が行われたまさに同時期に、ULの不正は「火消し」が敢行されていた。 一斉アンケート調査は19年にも行われたが、ULの不正は上がってこなかった。コンプライアンス教育や品質向上プロジェクトはどこ吹く風、2度のアンケートもすり抜け、昨年末まで、不正行為が続いた。 再発防止策についてさらに言えば、東レは2018年に品質保証本部を新設し、東レグループ全体の品質保証業務を集約させている。しかし、ULのフォローアップ試験は、樹脂ケミカル事業部の品質保証課を通して行われていた。 東レの生産拠点は、ULの抜き打ち検査を受けると、東レの担当部門の品質保証課に連絡している。同課は、東レの余剰人員の受け皿会社である「殖産会社」にサンプルの成形を依頼し、この殖産会社が、難燃剤を混ぜるなどして偽サンプル作りを担っていた。 なんのことはない、鳴り物入りで創設された品質保証本部の足元ですら、不正が横行していたのである』、「鳴り物入りで創設された品質保証本部の足元ですら、不正が横行していた」、あきれ果てた。
・『無効の再発防止策に太鼓判を押した弁護士らがUL不正を調査  さらなる問題は、無効と言わざるを得ない再発防止策を褒めそやしていた面々が、ULの不正の調査・原因究明を任されていることである。 東レは、ULの不正のリリースで、「有識者調査委員会」の具体的なメンバーを明らかにしていないが、その構成員は、藤田昇三弁護士(藤田昇三法律事務所)、松尾眞弁護士(桃尾・松尾・難波法律事務所)、永井敏雄弁護士(卓照綜合法律事務所)である。 この3人は、THCの調査委員会と全く同じ面々である。 彼らは、無効だった再発防止策をどう評価していたのか。17年12月の報告書では〈いずれも、策定時点の再発防止策としては、有効かつ適切に機能することが期待でき、妥当なものである〉と太鼓判を押している。 また、一斉アンケート実施を踏まえた2018年3月の有識者委員会議事録では、結果的にULの不正が上がってこなかったアンケートを〈適切な方法でなされ、相応の時間と人員を割いて、十分な調査、分析及び検討がされている〉とお墨付きを与えていた。委員の一人は「これだけ広範な調査を行って、法令違反や製品の安全性に影響がある案件が検出されなかったことについては、敬意を表する」という賛辞まで贈っている。 再発防止策についても、〈東レグループ全体にわたる品質保証業務の実効性を確保する体制を整え、改善のための施策を着実に実行に移していることが確認できた〉と満足げなコメントを付していた。 THCの不正では、子会社の社長が責任を取ったが、長期間にわたり不正を公表しなかった日覺社長はおとがめなしだった。もし、THCの不正が明らかになった時、似たような不正がないか徹底的なチェックを行い、不正を内緒にしておく体質が改められていれば、ULの不正にも、早期に適切な対応が取れていた可能性が高い。THCの調査委員会が下した裁定は、結果的にではあるが、間違っていたのではないか。 またULの不正は、再発防止策が有効に機能したかが重要な論点になってくるだろう。だが問題の再発防止策を是認し、褒めそやしていた面々に、適切な調査や原因究明ができるのだろうか。 筆者は東レに、調査委員会メンバーの適性について取材したところ、「東レハイブリッドコードの事案では、会社が実施した調査の妥当性を有識者委員会で検証してもらったものだが、今回は調査そのものの計画・実行から有識者調査委員会に入ってもらうものであり、当時とは調査の対象が異なります。また、前回の知見を生かしていただくことで、効果的に調査・分析を深掘りいただけるものと考えています」と回答があった。 報告書は3月中にも公表される予定だ』、「UL」の「有識者調査委員会」、「THCの調査委員会」、とも「全く同じ面々である」、「再発防止策としては、有効かつ適切に機能することが期待でき、妥当なものである〉と太鼓判を押している」、「委員の一人は「これだけ広範な調査を行って、法令違反や製品の安全性に影響がある案件が検出されなかったことについては、敬意を表する」という賛辞まで贈っている」、「調査委員会」はまさに御用機関で、意味がない。こんな御用機関を重用するようでは、「東レ」の権威も地に落ちたようだ。

第三に、4月18日付けJ-CASTニュース「吉野家取締役が「生娘をシャブ漬け戦略」発言 会社が謝罪「極めて不適切」「到底許容できない」」を紹介しよう。
・『吉野家は2022年4月18日、常務取締役企画本部長が外部で不適切な発信をしたとして、「多大なるご迷惑とご不快な思いをさせた」と謝罪した』、興味深そうだ。
・『利用の継続を図りたいという考え方の元…   吉野家の発表によれば、2022年4月16日の社会人向け講座に講師として招かれた取締役が、不適切な発言をしたという。  「人権・ジェンダー問題の観点からも到底許容できるものではありません」とし、「講座受講者と主催者の皆様、吉野家をご愛用いただいているお客様に対して多大なるご迷惑とご不快な思いをさせたことに対し、深くお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした」と謝罪した。  この取締役は講座翌日、主催者に書面で謝罪し、後日改めて対面で謝罪するという。会社としては処分を含め対応を検討しているとする。  問題の発言は、早稲田大学の社会人向けのマーケティング講座(計29回、受講料38万5000円)の初回授業で飛び出したとみられる。 受講生のSNS投稿によれば、取締役は自社の若年女性向けマーケティングを「生娘をシャブ漬け戦略」と発言し、「田舎から出てきた右も左も分からない若い女の子を無垢・生娘な内に牛丼中毒にする。男に高い飯を奢って貰えるようになれば、絶対に食べない」とも話していたという。  投稿は広く拡散し、問題視する意見が相次いでいた。吉野家広報はJ-CASTニュースの取材に、会社としての考えではないとし、「一度利用したお客様の利用の継続を図りたいという考え方の元発言しましたが、講座内で用いた言葉・表現の選択は極めて不適切でした」などとコメントした。  主催した早稲田大にも見解を求めている。回答があり次第、追記する』、「吉野家」「常務取締役」ともあろう人物が、「早稲田大学の社会人向けのマーケティング講座」で破廉恥な発言をするとは、いささか驚かされた。本人は気が利いた発言をしたつもりだったのかも知れないが、世間的な常識からは大きく外れているようだ。
タグ:村上 力氏による「【スクープ】東レの樹脂製品「安全認証の不正行為」、5年前から火消し工作か」 同感である。ただ、裁量労働制を導入すれば、時間外の問題は解消する筈だが、導入に障害があるのだろうか。 「吉野家」「常務取締役」ともあろう人物が、「早稲田大学の社会人向けのマーケティング講座」で破廉恥な発言をするとは、いささか驚かされた。本人は気が利いた発言をしたつもりだったのかも知れないが、世間的な常識からは大きく外れているようだ。 J-CASTニュース「吉野家取締役が「生娘をシャブ漬け戦略」発言 会社が謝罪「極めて不適切」「到底許容できない」」 「UL」の「有識者調査委員会」、「THCの調査委員会」、とも「全く同じ面々である」、「再発防止策としては、有効かつ適切に機能することが期待でき、妥当なものである〉と太鼓判を押している」、「委員の一人は「これだけ広範な調査を行って、法令違反や製品の安全性に影響がある案件が検出されなかったことについては、敬意を表する」という賛辞まで贈っている」、「調査委員会」はまさに御用機関で、意味がない。こんな御用機関を重用するようでは、「東レ」の権威も地に落ちたようだ。 「鳴り物入りで創設された品質保証本部の足元ですら、不正が横行していた」、あきれ果てた。 「THCが製造販売するタイヤの補強材などの品質データが改竄」された問題も、「ネット掲示板にTHCの不正に関する書き込みがされ、記者に嗅ぎつけられる前に、急ぎ公表に踏み切った経緯」、隠蔽体質は根強いようだ。 「組織としての能力不足か上司の能力不足が」、「デスマーチ」「を引き起こしている」、「巻き込まれている」「社員」もたまったものではない。 「「今の上司は若い頃に無限大の残業をして力をつけた。今になって若い社員に時間制限を課して成長の機会を奪うのは、フェアではない」という不満」にも一理ある。「会社の管理できない場所で健康に負荷がかかっていることも多い」、仕事の持ち帰りが増えるのでは、労働時間の実態が分からなくなり、かえってマイナスだ。 「不正が見つかった樹脂製品は、家電製品や自動車など、一般消費者向けの商品の部品に使用されている。本来なら、速やかに事態の公表を行うべき」、「現実に行われたのはひそかな「火消し」だった。樹脂ケミカル事業部は、問題の樹脂製品をリスクレベルで3区分し、UL登録品種と実際の製品との乖離が大きい「ランクA」の品種について、代替品に置き換えることでつじつまを合わせることを試みた。ランクB、Cの不正はそのまま継続し、商品の製造販売は続いていた」、悪質な隠蔽だ。 「UL登録の際に、実際の生産方法とは異なる方法で作られたULが求める難燃性能を満足するサンプルを提出することで、試験をクリアしていたという。 最初の登録で不正を行えば、その後もごまかし続けなければいけない」、「フォローアップ試験でも、材料に難燃剤を混ぜたり、燃えやすい成分を減量するなどして偽サンプルを作成し、ULに提出」、極めて悪質だ。 「5年以上前からこの不正を把握し、公表直前までひそかに“火消し工作”を図っていた」、「5年前に子会社であった品質不正を教訓として実施した再発防止策が、まったく機能していなかった疑い」、経団連会長を輩出した会社とは思えないお粗末さだ。 「男性社員1人に、1か月140時間余りの残業をさせた労働基準法違反の疑い」、確かにこれではアウトだ。それにしても、「30代前半で年収1000万円が狙える」とは、なかなかいい待遇だ 鈴木貴博氏による「アクセンチュア過重労働に潜むコンサルの業界悪、残業が消えない真の理由」 ダイヤモンド・オンライン 企業不祥事 (その26)(アクセンチュア過重労働に潜むコンサルの業界悪 残業が消えない真の理由、【スクープ】東レの樹脂製品「安全認証の不正行為」 5年前から火消し工作か、吉野家取締役が「生娘をシャブ漬け戦略」発言 会社が謝罪「極めて不適切」「到底許容できない」)
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ソニーの経営問題(その9)(なぜソニーはモバイルゲーム事業を売却したのか 2つの理由と期待、ソニーがEV初参入へ見せた大胆な「らしさ」の凄み “中の人"が語る「なるほど」な独自性の生み出し方) [企業経営]

ソニーの経営問題については、昨年8月10日に取上げた。今日は、(その9)(なぜソニーはモバイルゲーム事業を売却したのか 2つの理由と期待、ソニーがEV初参入へ見せた大胆な「らしさ」の凄み “中の人"が語る「なるほど」な独自性の生み出し方)である。

先ずは、昨年11月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「なぜソニーはモバイルゲーム事業を売却したのか、2つの理由と期待」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/286302
・『ソニーはモバイルやオンラインゲーム開発のGSN Gamesを米スコープリーに約10億ドルで売却すると発表した。今後の注目は、ソニーの選択と集中が成果につながるか否かだ。世界経済の変化は激烈を極めている。ソニーといえども変化への対応が遅れれば、事業運営体制が不安定化するリスクは否定できない』、興味深そうだ。
・『知的財産分野へ経営資源を集中する狙い  ソニーグループ(以下、ソニー)傘下のソニー・ピクチャーズ エンターテイメントは、傘下のGSN Games(GSN)を米スコープリーに約10億ドル(約1100億円)で売却すると発表した。GSNはモバイルやオンラインゲームの開発を主な業務としてきた。今回の売却の背景には、ソニーが重視するコンテンツIP(知的財産)分野へ経営資源の集中する狙いがあるとみられる。 一方、同社は半導体などハードウエアの分野でも台湾積体電路製造(TSMC)との共同で新工場の建設を行うなど、自社の市場シェアや収益性、成長性などを評価の軸にして選択と集中を進め、今後、より効率的な事業運営体制の確立を目指している。 今後の注目点は、ソニーの事業戦略が成果につながるか否かだ。これまでの業績を見る限り、コンテンツ事業の強化などは同社の市場シェアの拡大と収益性の向上に寄与する可能性は高いだろう。 ただ、世界経済の変化の速度は恐ろしいほど増している。特に、デジタル化の加速や脱炭素への取り組みなど、世界の経済環境の変化は激烈を極めている。そうした大きな変化の中、ソニーといえども変化への対応が遅れれば、事業運営体制が不安定化するリスクは否定できない』、「大きな変化の中、ソニーといえども変化への対応が遅れれば、事業運営体制が不安定化するリスクは否定できない」、その通りだ。
・『『鬼滅の刃』などのIP創出 株高による投資収益の確定も  ソニーがGSNを売却する理由の一つは、ソニーが重視するコンテンツIP分野へ経営資源の配分を高める狙いがあるのだろう。そのために、GSNの主要業務を、早めにプロダクト・ポートフォリオから外しておく意図が感じられる。 ソニーは『鬼滅の刃』などのコンテンツIPを生み出してファンを獲得し、ゲームなどの新しい需要の創出につなげたい。一方、GSNはカードゲームやビンゴなどのモバイルゲームを得意とする。IPランドスケープ(知財、非知財情報を分析して自社の現状と将来の展開予想を分析すること)に基づいて考えると、ソニーとGSNは目指すコンテンツを構成する要素が異なる。コンテンツIPの創出力に磨きをかけるという重要な目的に照らした場合、ソニーにとってGSNを支配下に置き続ける意義は低下しているようだ。 そのほかにも売却理由があるはずだ。その一つが、投資収益の確定だろう。2019年にソニーは約 414億円(当時の邦貨換算額)を投じてGSNの親会社であるゲーム・ショー・ネットワークを完全子会社化している。一方、今回の売却額は約1100億円だ。モバイルゲーム市場などでシェアを獲得することによってGSNの企業価値は高まった。現在、世界的に株価が高値圏で推移している状況を生かしてソニーは利得を確保し、それを成長期待の高い分野に再配分したいだろう。それも売却理由の一つといえる。 ただ、今回の売却によってソニーとGSNの関係が完全に解消されるわけではない。ソニーは売却額の半分をスコープリーの優先株として受け取る。コンテンツIP開発戦略上のシナジー効果は薄れたものの、モバイルゲーム市場でのビジネスチャンスを手に入れるためにGSNと一定の関係を維持することは重要との判断がソニーにあるとみられる。 コンテンツIP分野にフォーカスして考えると、ソニーは新しいコンテンツIP創出のために組織の集中力を高めたいだろう。そのためにGSNを売却してよりスピーディーかつ多くのコンテンツIPを生み出す体制整備を加速させようとしているのではないか』、「ソニーは新しいコンテンツIP創出のために組織の集中力を高めたいだろう。そのためにGSNを売却してよりスピーディーかつ多くのコンテンツIPを生み出す体制整備を加速させようとしているのではないか」、なるほど。
・『世界トップCMOSイメージセンサーや電気自動車の「VISION-S」へ  次にグループ全体での事業運営に目を向けると、ソニーは成長性、収益性、市場シェアなどの要素に基づいて、最も有効な資源配分を行おうとしている。 その一つのケースが、代表的な画像処理センサーであるCMOSイメージセンサー事業だ。12年以降の経営再建でソニーは、CMOSイメージセンサー事業に経営資源を再配分して世界市場でトップのシェアを獲得した。現在、CMOSイメージセンサー市場でソニーは49%程度のシェアを持つ。近年のシェアは韓国のサムスン電子や米国のオムニビジョンの追い上げによって徐々に低下している。 そうした状況下、ソニーは画像処理センサー事業の競争力を強化してさらなる成長を目指すために、台湾積体電路製造(TSMC)やデンソーとコンソーシアムを組み、熊本県に半導体工場を建設する予定だ。具体的には画像系のセンサーに加えて、車載、ロボット用のチップも生産される予定だ。 その先にソニーが見据える事業展開を考えると、より鮮烈な映像などのコンテンツ没入体験を人々に与えることを目指しているだろう。例えば、ソニーは自動車分野での取り組みを進めている。同社が開発する電気自動車(EV)の「VISION-S」は、CASE時代の到来を念頭に置いた新しいモビリティー創出を目指した取り組みだ。その実現には、インターネットと接続し自律走行を行うための演算装置や画像処理技術、さらには車内エンターテインメントのためのコンテンツの開発や音響・映像技術などの革新が求められる。 そのためにソニーは自社の持つモノづくり精神やコンテンツ創出力を、TSMCが持つ半導体製造の総合力の高さと、自動車関連分野でのデンソーの知見と結合して、新しい画像処理機能を持つセンサーや車載半導体などの創出を目指しているはずだ。より高性能、あるいは新しいチップの創出は、プレイステーションなどゲーム事業の強化にも欠かせない』、「ソニーは自社の持つモノづくり精神やコンテンツ創出力を、TSMCが持つ半導体製造の総合力の高さと、自動車関連分野でのデンソーの知見と結合して、新しい画像処理機能を持つセンサーや車載半導体などの創出を目指しているはずだ」、なるほど。
・『経営陣が世界経済の環境変化に迅速かつ的確に対応できるか  現在、ソニーが進めようとしている選択と集中の目的は、人々に鮮烈な体験を与える力の向上と発揮にあるといえる。ソニーは、ソフトウエア分野では映画・アニメの制作やミュージシャンの育成に、ハードウエア面では半導体の製造技術の磨き上げに集中し、両者を結合することによって新しい生き方の創出を目指しているとの印象を強くする。 ただ、そうした取り組みが成果を発揮するためには、経営陣が世界経済の環境変化に迅速に、的確に対応できるか否かが問われる。経営陣が変化にうまく対応できれば、ソニーの選択と集中が相応の成果を上げることはできるだろう。同社の株価の上昇を見る限り、ソニーが強みを持ち、成長と収益拡大が見込まれる分野への選択と集中を進めることによってさらなる業績拡大が可能と期待する主要投資家は多いようだ。 反対に、経営陣が環境変化への対応に遅れる、あるいは判断を誤ると、ソニーといえども成長力が弱まり、かなり厳しい状況を迎える可能性は否定できない。世界全体で脱炭素やエネルギー資源の高騰、新型コロナウイルスの感染再拡大による動線の不安定化を背景とする供給制約の問題など、ソニーを取り巻く不確定要素は増えている。加えて、コンテンツIP分野において米ネットフリックスの成長や、半導体分野では中国企業によるソフトウエア開発力の強化など、ソニーが選択と集中を進める分野での競争も激化している。 現時点でソニーの取り組みがどのような成果をもたらすかを見通すことは難しい。そうした中ではあるが、同社の成長はわが国経済の再生に不可欠だ。同社が組織を一つにまとめてよりスピーディーに事業を運営する体制を整備し、市場の勝者になることを期待したい』、「ソニーを取り巻く不確定要素は増えている」、「ソニーが選択と集中を進める分野での競争も激化」、今後、「ソニー」が「市場の勝者」となれるかの否か、大いに注目される。

次に、本年2月15日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの川島 蓉子氏による「ソニーがEV初参入へ見せた大胆な「らしさ」の凄み “中の人"が語る「なるほど」な独自性の生み出し方」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/510670
・『コロナ禍をはじめ、企業を取り巻く環境が激変する中、経営の大きなよりどころとなるのが、その企業の個性や独自性といった、いわゆる「らしさ」です。ただ、その企業の「らしさ」は感覚的に養われていることが多く、実は社員でも言葉にして説明するのが難しいケースがあります。 いったい「らしさ」とは何なのか、それをどうやって担保しているのか。ブランドビジネスに精通するジャーナリストの川島蓉子さんが迫ります。 組織に身を置いて仕事していると、「うちらしい」あるいは「うちらしくない」という言葉が頻繁に登場する。新商品や新しい企画を立ち上げるときはもちろん、会議で何か発言すると、上司から「それはうちらしい意見じゃないね」と言われたり、営業で訪れた客先から、「その話は御社らしくないですね」と言われたりすることも――。 「らしさ」という言葉には、個性や独自性という枠組みを越え、企業活動や社員のふるまいまでが含まれるし、その意味でブランディングと深くかかわっている。 一方で「らしさ」とは何かを定義したり、突き詰めたりするのは容易ではない。ブランディングの分析過程で「らしさ」を要素分解したり、場合によってそれを数値化したりすることがある。あるいは、企業のビジョンや理念、行動指針を作るにあたって、「らしさ」を文言で定義する試みがなされているものの、それがズバリかというと、そうではないと思う。 誰もが日常的に使っているのに、意味するところが多面的な「らしさ」という言葉――本連載では、「らしさ」とは何なのかについて考察する。それも、「らしさ」の解を導き出すのではなく、「らしさ」をとらえる視点について探っていく。具体的には、さまざまな企業における「らしさ」をインタビューし、根っこにあるものを見ていきたい。読者の方々にとって、日々の仕事における何らかのヒントになれば幸いだ』、「本連載では、「らしさ」とは何なのかについて考察する」、興味深そうだ。 
・『「ソニーらしさ」を社内ではどうとらえているのか  第1回はソニーグループのクリエイティブセンターを取り上げる。「ウォークマン」や「aibo(アイボ)」をはじめ、クルマの「VISION-S Prototype」や銀座の「Sony Park」など、ソニーには先進的なイメージがあり、それが「らしさ」につながっている。「ソニーらしい」「ソニーらしくない」と評されることも少なくない。 社内でそこをどうとらえているのかを知りたいと思い、昨年10月からクリエイティブセンターのセンター長になった石井大輔さんに話を聞いた。 クリエイティブセンターは、ソニーグループのデザイン部門を担っている。ソニーが掲げる事業は、「ゲーム&ネットワークサービス」「音楽」「映画」「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション」「イメージング&センシング・ソリューション」「金融」の6つの領域に及ぶ。 エレクトロニクス事業はもとより、エンタテインメントや金融などを含めて幅も奥行きも広く深い。クリエイティブセンターがかかわっているのも、プロダクトのデザインに限らず、UI/UX、ブランディング、コミュニケーション、空間のディレクション、サービスなど多岐にわたっている。 デザインというと、製品の色やかたちを創り出すところととらえる人もいるだろうがそうではない。クリエイティブセンターに籍を置くデザイナーは、ユーザーとかかわる多様な領域すべてにかかわっていると言っても過言ではない。そして、ソニーとユーザーとのタッチポイントに携わるという意味では、いわゆるブランディングの一角を担う仕事であり、「らしさ」に大きく関与している。 “ソニーらしさ”とは何でしょうか」という質問に対し、「実は内部では『らしい』『らしくない』という話をすることは、あまりないのです」と石井さん。「らしさ」について、侃々諤々の議論がなされているという筆者の読みは見事にはずれた』、「クリエイティブセンターに籍を置くデザイナーは、ユーザーとかかわる多様な領域すべてにかかわっていると言っても過言ではない。そして、ソニーとユーザーとのタッチポイントに携わるという意味では、いわゆるブランディングの一角を担う仕事であり、「らしさ」に大きく関与している」、社内にこうした部署を持つのも「ソニーらしい」。
・『デザインを洗練されたものにする「審議」  一方で、「デザインを洗練されたものにするためのディスカッションはしょっちゅうして、それを審議と言っています」とも。社内のいわば公用語として審議が使われていて、さまざまな場面で行われている。国内はもとより、世界各地のソニーでも、“SHINGI”と呼ばれている。オープンでフラットを旨としていて、役職やキャリアに関係なく意見を言い合うという。 「何かあったら『審議しよう』というのは、ソニーのデザイン文化の1つかもしれません。Review(考察)やCritique(批評)とはニュアンスが違っていて、いわば“共創”的な要素が強いのだと思います」(石井さん) よりよくするためにどうするかをゴールに、共に創り上げていくという考えが、企業のDNAのように存在しているのだ。それとともに、人真似ではなく、独自性を追求していくことを重視してもいる。今までにないこと、ほかがやっていないことに挑戦する姿勢も、過去から脈々と受け継がれてきた気風だ。 審議の場では、新人時代から『意見ないの?』と話を振られます」(石井さん)。新人と先輩が入り交じって、フラットな目線で意見を言い合う。開かれた環境ではあるものの、新人にとってはある意味厳しいし、先輩にとっては自分が試される場でもある。そうやって意見をぶつけ合うことで、「らしさ」が培われていくのだろう。 ただ、自由闊達と言っても、それがネガティブに出ると、「自分の意見を否定されてしまった」「上司の言うことを聞かざるをえなくなった」となってしまう。「ネガティブな意見も出ますが、言われた人は、自分の思考のもと、取捨選択してかまわない。そういう風土があるのです」。健全な話し合いだが、他者の意見を取り入れるか否かを自分で判断するということは、主体性と責任が問われるものであり、そこに物差しも必要だ。 どのようになされているのか。) 「基本的にはユーザーがどうとらえるか、そこを起点に考えるのです」(石井さん)。デザイナーというと、自分の世界を表現する人ととらえられがちだがそうではない。あくまで使い手の視点に立って、概念だけでなく、カタチ化するところまでを担う役割――クリエイティブセンターには、そういう共通認識があるという。 企業内の会議でありがちなのは、交わされる議論が、企画書の起承転結のつけ方や、微細なデータや言葉使いの吟味に陥ってしまうこと。だが、クリエイティブセンターでは、議論が白熱しても、それが概念や企画書で終わることはない。抽象レベルで終わらず、実際のカタチ化するところまでを行っているからだ。 クリエイティブセンターは、昨年60周年を迎えた。もともとは、ソニーの創業メンバーの一人である大賀典雄氏が、デザインとブランドを見る組織として作ったという。業容が広がるに従い、組織の位置づけや規模の変化はあったものの、そのポジションを変わらず取り続けてきた。 戦後から高度経済成長の波にのって拡大してきた企業の中で、こういう組織が継承されている事例は数少ない。そう考えると、クリエイティブセンターの存在そのものが、ソニーという企業の独自性の一角をなしていると言っても過言ではないだろう』、「クリエイティブセンター」は「大賀典雄氏が、デザインとブランドを見る組織として作ったという。業容が広がるに従い、組織の位置づけや規模の変化はあったものの、そのポジションを変わらず取り続けてきた」、「ソニーという企業の独自性の一角をなしている」、確かに興味深い組織だ。
・『EVにおけるソニーらしさとは?  2020年に発表された「VISION-S」は、「あのソニーがEV車に挑戦した」と大きな注目を集めた。その姿勢も含めて「ソニーらしい」と国内外で高い評価を得たのだ。 始まりは2018年のこと。 「ソニーが持っている技術やサービスの強みを、モビリティの領域で活かせるのではということから、EVに取り組んでみようという話が出て、先行してクリエイティブセンターでもスタイリングだけでなくUXやブランド考察を含め、さまざまなアイデア展開を始めました」(石井さん) 安心・安全な走行を支援する「センシング」、アップデートによる進化の土台を担う「ネットワーク技術」、オーディオビジュアルやゲームなどの「エンタテインメント」、3つの領域におけるソニーの独自性を盛り込み、これからの社会で求められていくモビリティの可能性を追求することになった。 そのプロジェクトのクリエイティブディレクターにアサインされたのが石井さんだ。傍から見ると、最初から外部のカースタイリングのスタジオに委託して進めるという手もあったのにと思うのだが、あえてその道を選ばなかった。ソニーのデザイン力を信じ、クリエイティブセンターにデザインを任せたという上層部の判断があったのだ。 では、どのように進められたのか。 ゼロから生み出していくプロジェクトということで、まずはどこを目指し、どういうユーザーに向け、どういうものを作っていくのかといった全体構想を、文字とビジュアルで構成する冊子にまとめた。石井さんは「夢物語のようなものを描いた」というが、表層的な夢でないことは、話を聞いているとよくわかる。 未来の社会と人の暮らしを思い描きながら、圧倒的な魅力を放つクルマとはどんな存在か。そこにソニーの独自性をどう盛り込み表現するか。いわば、このプロジェクトのフィロソフィーのようなものをまとめたのだ。この段階で、根幹となる部分を徹底的に審議し、冊子として凝縮したことは、後々、役立ったという。プロジェクトの途上で迷ったとき、そこに立ち返って確認するツールとして機能したのだ。 プロジェクトを進めるうえでいくつかのターニングポイントもあった。さまざまな意見が出る中で、その冊子のコンセプトに立ち返って考え直し、ユーザーから見た新たなソニーらしさの象徴として、「ソニーの技術の結晶体、テクノロジーショーケースにする」と改めて方向性を確認し、アメリカ・ラスベガスで行われるエレクトロニクス関連の展示会、CES(Consumer Electronics Show)で発表することにしたという。 モーターショーなどで展示される、いわゆるコンセプトカーは、未来に飛翔するアイデアが盛り込まれているものの、実現性に乏しいものが少なくない。しかしソニーでは、走行はもとより、現存の基準や規定を充たすことのできる「本物」をデザインすることにした。ここにも「ほかにはない独自性を徹底して追求する」というソニーの精神が現れている』、「最初から外部のカースタイリングのスタジオに委託して進めるという手もあったのにと思うのだが、あえてその道を選ばなかった。ソニーのデザイン力を信じ、クリエイティブセンターにデザインを任せたという上層部の判断があった」、さすが「ソニー」だ。「コンセプトカー」は・・・実現性に乏しいものが少なくない。しかしソニーでは、走行はもとより、現存の基準や規定を充たすことのできる「本物」をデザインすることにした。ここにも「ほかにはない独自性を徹底して追求する」というソニーの精神が現れている」、なるほど。
・『マグナ・シュタイヤーと協業、多様性のある「審議」に  クリエイティブセンター内では、極秘プロジェクトとして進められていたが、開発にあたっては、オーストリアに拠点を置く自動車製造業者のマグナ・シュタイヤーとの協業体制で行われた。欧州のさまざまな国籍のメンバーも入り、まさに多様性のある審議を重ねていったのだ。「社外の人と意見を交わしながら、『本物』を作っていくのは、とても楽しい経験にもなりました」(石井さん) 「最後に悩んだのはブランディングとしてのシンボルマークの表現の部分」だったという。「VISION-S」というブランドの思想を、どう表現するかについて議論を繰り返したのだ。チームメンバーでアイデアを出し合いながら進めたが、いい案がなかなか出てこない。 最後に出てきたのが、EVならではの、電気回路図の図記号からインスピレーションを得た「S」の文字を、フロントに付いているデイライトに埋め込むというもの。「VISION-S」のキーを解除すると、そこから光が放たれ、側面、ドアハンドル、テールランプへと巡っていく。) このクルマは、周囲にぐるりとセンサーが入っていて、車外環境を360度チェックするのが独自性の1つ。「OVAL=人を包む」というコンセプトのもと、「センシングで人を守るモビリティという考えを体現することができました」と石井さん。強いブランディングが行えると意見が一致した。 「ソニーグループのPurpose(存在意義)である『クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす』には、“感動”という言葉が出てくるのですが、「VISION-S」のブランディングは、まさに”心の琴線に触れる”ものになるのではないかという確信みたいなものを抱きました」(石井さん)。 その域に達することができたのは、ブランド、外観から内装、UI/UXも含め、専門領域を持ったデザイナーが1つのチームとなり、連携しながら作り上げていった成果だ。クリエイティブセンターの強みを改めて確認できたという』、「「VISION-S」のブランディングは、まさに”心の琴線に触れる”ものになるのではないかという確信みたいなものを抱きました」(石井さん)。 その域に達することができたのは、ブランド、外観から内装、UI/UXも含め、専門領域を持ったデザイナーが1つのチームとなり、連携しながら作り上げていった成果だ。クリエイティブセンターの強みを改めて確認できたという」、大したものだ。
・『事業分野を横断する「クリエイティブハブ」に  大半の企業は、事業領域が広がるにつれ、部門ごとの縦割り組織が増えていく。仕事の合理効率化ははかれるのだが、水平的な連携は弱くなりがちだ。クリエイティブセンターは、組織を横断して活動している点においてもユニークな存在だ。 例えば、ある領域で培ってきた先進的な技術について、ほかの領域に活用することができる。 「インターフェースの研究開発で培ってきたサービスデザインのノウハウを、ソニー生命のリモートコンサルティングシステムの開発に役立てるといったことも進めています」(石井さん) 分野を横断して全体とかかわれるという立ち位置も、クリエイティブセンターの特色の1つだという。 ソニーの事業領域は、今後ますます広がっていくが、それを横断的につないでシナジーを出していくのは、クリエイティブセンターが担っていくべき役割の1つでもある。「“クリエイティブハブ”と呼んでいるのですが、その幅を広げ、奥行きを深めていくのが課題の1つです」(石井さん)。またクリエイティブセンターでは「ブランディングの一環として、コーポレートビジョンをデザインする仕事が増えています」(石井さん)。 ブランディングにまつわる仕事は、外部のコンサルティング企業や広告代理店などが入って進めることが多い。が、ソニーでは、クリエイティブセンターという内部組織がかかわるというのだ。内部ならではの深い理解がブランディングに有効であること、企業の全体像を俯瞰したうえで、各社のブランディングが行えることなど、いい効果が見えてきているという。 筆者は仕事柄、経営トップに話を聞くこともあれば、さまざまなデザイナーに話を聞くこともある。そこに共通しているのは「未来を見つめる眼差しを持っていること」だ。 経営トップは、未来へ向けた方向づけをして、人や組織を動かしていく、かたやデザイナーは未来に向けた方向づけを、言葉や視覚を通してカタチ化する。経営にデザイナーが関与するのは、ブランディングに寄与するところ大と思ってきたので、これは腑に落ちる話だった。 では、クリエイティブセンターでは、どのようにブランディングを進めるのか。) 例えばソニーモバイルコミュニケーションズ(現ソニー)の場合、まずは、トップをはじめとするマネジメント層と、目指すべき方向についてディスカッションしながら「言葉」を探していく。ワークショップ形式で、思考を言語化して収斂していくプロセスを、クリエイティブセンターが導き出すかたちで進めていった。とともに、その言葉を象徴的に表現するビジュアル化を行ったという。 成果を見せてもらった。「好きを極めたい人々に想像を超えたエクスペリエンスを」というメッセージのもと、ソニーモバイルのコーポレートビジョンが綴られている。(現在はXperiaのビジョンとなっている)。 「人の数だけ、好きはある。人の数だけ、愛するものがある」という文面は、表層的に整えられた言葉の羅列でもなければ、カタカナ用語が羅列された抽象的なものでもない。少しロマンティックな空気をはらみながら、読む人の心に伝わってくる。背景にある星がまたたく宇宙のビジュアルと相まって、明快でわかりやすく、読む人の心に伝わってくる力がある』、「「インターフェースの研究開発で培ってきたサービスデザインのノウハウを、ソニー生命のリモートコンサルティングシステムの開発に役立てるといったことも進めています」・・・分野を横断して全体とかかわれるという立ち位置も、クリエイティブセンターの特色の1つ」、「「好きを極めたい人々に想像を超えたエクスペリエンスを」というメッセージのもと、ソニーモバイルのコーポレートビジョンが綴られている。(現在はXperiaのビジョンとなっている)」、なるほど。
・『ソニーがソニーたるゆえんとは?  発表したところ、社内外の反応が良かった。「ソニーモバイルの中で、万人に向けた普及品というより、一部であっても好きな人が選んでくれる尖ったものを出していこうという意図が、モノ作りをはじめ、社内の風土として根づいていっているのが嬉しいです」と石井さん。 今は、ソニーファイナンスのブランディングを一緒にやっているというが、これから、ソニーの業容が広がっていく中、ブランディングにまつわる仕事は重要度を増していくという。 石井さんの話を聞いていて、ソニーがソニーたるゆえんは、ほかにはない独自性を究めること、ものごとの本質を掘り下げることなど、一見するときれいごとで終わってしまう事柄について、泥臭いと言えるほど真面目に取り組み、デザインを通してカタチ化する。つまり世の中に伝え広めていくことを続けてきた――その積み重ねの成果と感じた。 しかも、1つのところにとどまることなく、前へ前へと進み続ける。時代の先端を切り拓こうと挑み続ける。その姿勢を堅持しているところが「らしさ」につながっている。若い石井さんが、これからのクリエイティブセンターをどう率いていくのか、ソニーの「らしさ」の行方が楽しみだ』、「ソニーがソニーたるゆえんは、ほかにはない独自性を究めること、ものごとの本質を掘り下げることなど、一見するときれいごとで終わってしまう事柄について、泥臭いと言えるほど真面目に取り組み、デザインを通してカタチ化する。つまり世の中に伝え広めていくことを続けてきた――その積み重ねの成果と感じた」、今後も楽しみだ。
タグ:(その9)(なぜソニーはモバイルゲーム事業を売却したのか 2つの理由と期待、ソニーがEV初参入へ見せた大胆な「らしさ」の凄み “中の人"が語る「なるほど」な独自性の生み出し方) ソニーの経営問題 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫氏による「なぜソニーはモバイルゲーム事業を売却したのか、2つの理由と期待」 「大きな変化の中、ソニーといえども変化への対応が遅れれば、事業運営体制が不安定化するリスクは否定できない」、その通りだ。 「ソニーは新しいコンテンツIP創出のために組織の集中力を高めたいだろう。そのためにGSNを売却してよりスピーディーかつ多くのコンテンツIPを生み出す体制整備を加速させようとしているのではないか」、なるほど。 「ソニーは自社の持つモノづくり精神やコンテンツ創出力を、TSMCが持つ半導体製造の総合力の高さと、自動車関連分野でのデンソーの知見と結合して、新しい画像処理機能を持つセンサーや車載半導体などの創出を目指しているはずだ」、なるほど。 「ソニーを取り巻く不確定要素は増えている」、「ソニーが選択と集中を進める分野での競争も激化」、今後、「ソニー」が「市場の勝者」となれるかの否か、大いに注目される。 東洋経済オンライン 川島 蓉子氏による「ソニーがEV初参入へ見せた大胆な「らしさ」の凄み “中の人"が語る「なるほど」な独自性の生み出し方」 「本連載では、「らしさ」とは何なのかについて考察する」、興味深そうだ。 「クリエイティブセンターに籍を置くデザイナーは、ユーザーとかかわる多様な領域すべてにかかわっていると言っても過言ではない。そして、ソニーとユーザーとのタッチポイントに携わるという意味では、いわゆるブランディングの一角を担う仕事であり、「らしさ」に大きく関与している」、社内にこうした部署を持つのも「ソニーらしい」。 「クリエイティブセンター」は「大賀典雄氏が、デザインとブランドを見る組織として作ったという。業容が広がるに従い、組織の位置づけや規模の変化はあったものの、そのポジションを変わらず取り続けてきた」、「ソニーという企業の独自性の一角をなしている」、確かに興味深い組織だ。 「最初から外部のカースタイリングのスタジオに委託して進めるという手もあったのにと思うのだが、あえてその道を選ばなかった。ソニーのデザイン力を信じ、クリエイティブセンターにデザインを任せたという上層部の判断があった」、さすが「ソニー」だ。「コンセプトカー」は・・・実現性に乏しいものが少なくない。しかしソニーでは、走行はもとより、現存の基準や規定を充たすことのできる「本物」をデザインすることにした。ここにも「ほかにはない独自性を徹底して追求する」というソニーの精神が現れている」、なるほど。 「「VISION-S」のブランディングは、まさに”心の琴線に触れる”ものになるのではないかという確信みたいなものを抱きました」(石井さん)。 その域に達することができたのは、ブランド、外観から内装、UI/UXも含め、専門領域を持ったデザイナーが1つのチームとなり、連携しながら作り上げていった成果だ。クリエイティブセンターの強みを改めて確認できたという」、大したものだ。 「「インターフェースの研究開発で培ってきたサービスデザインのノウハウを、ソニー生命のリモートコンサルティングシステムの開発に役立てるといったことも進めています」・・・分野を横断して全体とかかわれるという立ち位置も、クリエイティブセンターの特色の1つ」、「「好きを極めたい人々に想像を超えたエクスペリエンスを」というメッセージのもと、ソニーモバイルのコーポレートビジョンが綴られている。(現在はXperiaのビジョンとなっている)」、なるほど。 「ソニーがソニーたるゆえんは、ほかにはない独自性を究めること、ものごとの本質を掘り下げることなど、一見するときれいごとで終わってしまう事柄について、泥臭いと言えるほど真面目に取り組み、デザインを通してカタチ化する。つまり世の中に伝え広めていくことを続けてきた――その積み重ねの成果と感じた」、今後も楽しみだ。
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経営学(その1)(日本と「世界の経営学」がこんなにも違う理由 「大学で教える経営学」は本当に役に立つのか、世界の経営理論に「ビジネスモデル」がない理由 持続的繁栄には「センスメイキング」が不可欠、知識創造理論が「ビジネス最強の武器」になる訳 四半世紀で「日本企業が失ったもの」は何か) [企業経営]

今日は、経営学(その1)(日本と「世界の経営学」がこんなにも違う理由 「大学で教える経営学」は本当に役に立つのか、世界の経営理論に「ビジネスモデル」がない理由 持続的繁栄には「センスメイキング」が不可欠、知識創造理論が「ビジネス最強の武器」になる訳 四半世紀で「日本企業が失ったもの」は何か)を取上げよう。

先ずは、2020年5月20日付け東洋経済オンラインが掲載した:早稲田大学商学学術院教授の井上 達彦氏と早稲田大学ビジネススクール教授の 入山 章栄氏の対談「日本と「世界の経営学」がこんなにも違う理由 「大学で教える経営学」は本当に役に立つのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/346557
・『2019年末に刊行された早稲田大学の2人の経営学者の著作が話題となっている。井上達彦氏の『ゼロからつくるビジネスモデル』と、入山章栄氏の『世界標準の経営理論』だ。前者が500ページ強、後者が800ページ強ものボリュームだ。 井上氏の所属は商学部で大学生に、入山氏はビジネススクールで実務家に経営学を教えている。それぞれのフィールドも異なる。かたや日本発の経営学、入山氏はアメリカを中心とする世界の経営学だ。そんな立場が対照的な名物教授である2人が、経営学という学問が、役に立つかについて、自由に語りあった』、興味深そうだ。
・『未経験者に経営学は学べないのか?  井上:入山さんとは、アメリカにいらした頃からの知り合いです。2012年に研究休暇でアメリカに行ったときには、入山さんにナイアガラの名物レストランを案内していただいたり、ご自宅で息子の遊び相手になっていただくなど、お世話になりました。 入山:こちらこそ、いろいろお世話になっています。井上さんは今、ビジネス経験のない学部生に経営やビジネスを教えていますが、雲をつかむようなところはありませんか。 井上:確かに、経験があるほうが必要な理論や知識がわかるというアプローチもあります。現在、文科省の次世代アントレプレナー育成事業(EDGE-NEXT)に協力し、海外のカリキュラムにも注目しているのですが、例えば、アメリカのバブソン大学では1年目に起業を経験させますよね。実際に経験してみれば、その後の理論だとか知識の理解度が深まるという考えです。 ただし、私は未経験者に教えても意義がないとは思いません。実は、学生から「先生の話は具体的すぎて、わかりません」と言われたこともあります(笑)。まさに名言で、実務経験がないから、抽象的な話のほうがわかると言うのです。 入山:面白いですね。井上さんの『ゼロからつくるビジネスモデル』と私の本に共通するのは、具体と抽象の往復をしていることです。私の『世界標準の経営理論』では、具体感を持っている実務家向けに、経営理論という抽象を思い切り攻めています。) 例えば、私は単独企業向けの研修講師は基本的に受けていないのですが、唯一引き受けているのが、大手企業4社が合同になっての研修です。ここでは、多様な背景を持つ4社の方々に『世界標準の経営理論』の章をいくつかを読んでもらい、そこで知った経営理論をベースに業界横断で自社・他社の課題や方向性などを議論してもらいます。 業種・業界が違っても、理論をベースにして具体的な悩みごとを話し合うと、すごく盛り上がるし、すごく学びが多いんですよ。考える「軸」が共通であれば、いくらでも議論ができる。これは究極の具体と抽象の往復ですよね。その点、ビジネス経験のない学部生に抽象を説明した後で、井上さんはそれをどう具体と往復させるのですか。 井上:つねに具体を感じている学生もいます。例えば、リーダーシップのテーマであれば、サークルやゼミの体験をふまえて、あれだとピンとくる。グランドデザインなど戦略の大きなところは、それでかなり理解できます。ただし、管理会計などのお金や利益については、アルバイトの経験なども必要になってきますが。 (井上達彦氏の略歴はリンク先参照) 入山:なるほど……。経営学は結局、人間の本質を突き詰めた学問だから、ビジネスである必要はないわけですね。面白いですね。 井上:そうだと思います。それから、学生は頭が柔らかいので、たとえ話やアナロジーを使うと、直感的にわかることもありますね。 むしろビジネスパーソンは業界が違ったりすると「うちとは違う」と言って、アナロジーとして受けつけにくいことがあるかもしれません。具体を知っているからこそ、「うちとは違う」と考えがちですが、本質を理解して自分事として考えてほしいものです。 逆に、学生には自身の経験に当てはめてもらう必要があります。そこで私がよく使うのは、恋愛にたとえること。例えば、SWOT分析で自分の強みは何かと聞いたりします。 」、入山:なるほど。例えば自分の強みは、イケメンではないけれど、お金はあるとか。脅威は周りにイケメンがたくさんいる場合、とかね(笑)。 井上:そして機会は、例えばクリスマスが来ているなら、彼女が好きなのはこれだと(笑)。 入山:確かに、恋愛はわかりやすいですね(笑)』、「私は未経験者に教えても意義がないとは思いません。実は、学生から「先生の話は具体的すぎて、わかりません」と言われたこともあります(笑)。まさに名言で、実務経験がないから、抽象的な話のほうがわかると言うのです」、意外だがよく考えてみればそうなのかも知れない。
・『日本の経営学はガラパゴスか?  井上:入山さんは日本の経営学について、どんな印象を持っていますか。 入山:僕はアメリカでしか経営学の教育を受けていないので、日本の実情はそれほど詳しく知らないのですが、面白い研究をしている人は多いなと思います。 例えば、以前に井上さんの研究を紹介してもらったことがありますが、「3人1組の結束力」や「粋」の概念などを取り上げていますよね。これは、日本のコンテクストだから出てくることだと思うので、すごく面白い。 しかし残念なのは、それが海外に十分に発信されていない。もう少し日本の研究成果を海外に橋渡ししたり、つながっていけばよいと思います。私が今回の本を書いた理由の1つも、国内の経営学の研究者に読んでもらい、日本のコンテクストで自分の研究内容を理論とつなげて、情報発信する材料に使ってもらえればと思ったからなのです。 井上:世界の標準の言語、作法、スタイルなど、プロトコルに合わせて発信するのが、今後、日本の経営学がこれから目指すべきところだと私も思っています。 (入山章栄氏の略歴はリンク先参照) 入山:グローバルに見ると、経営学では標準化が進んでいます。同じ理論を使い、実証研究では、定性分析と統計解析をうまく組み合わせながら普遍的な法則を発見していく。 井上:私の印象では、アメリカを中心にするアカデミーは、標準化を進めようとしているのに対し、日本はそうではない。だから、先生の数だけ経営学がある、なんて言われますよね。 私が『ブラックスワンの経営学』を書いたのは、日本の経営学のケーススタディのやり方を海外の標準様式に合わせれば、海外のジャーナルにも掲載してもらえる可能性が出てくると思ったからです。プロトコルは世界に合わせて、問題意識はアメリカの経営学の中ではなかなか語り尽くせないところを見つけて、固有の考え方や現象を探せばよいのです。 入山:そうですね。日本で大事にされているものがあるなら、プロトコルに合わせた形でグローバルに発表できればよいでしょうね』、「アメリカを中心にするアカデミーは、標準化を進めようとしているのに対し、日本はそうではない。だから、先生の数だけ経営学がある、なんて言われますよね」、日本は皆がお山の大将なのだろうか。
・『経営という現象は理論化できるのか?  井上:ところで、私は経営理論というものが本当にあるのかと、たまに思ったりします。入山さんは理論を説明するときに「ディシプリン」という言葉を使っていますが、本をたどれば、経営理論のルーツはすべて社会科学や人文科学の理論ですよね。 入山:海外でも、経営学はセオリー・ボローイング(他分野からの借り物の理論)だと言う人がいます。というのも、経営は現象であり、やっているのは人間だから、人間の根本的な意思決定・行動原理を取り扱う心理学や経済学の考えを借りてくるからです。 私自身はそこにこだわりはなく、「経営学独自の理論でなくてもよい」と思っています。大事なのは経営学という領域の独自性ではなく、あくまで企業・組織・人の真理法則に迫ることですから。例えば、エンジニアリングは背景に物理理論、化学理論があるけれども、だからエンジニアリングに価値がないわけではない。経営学も同じです。 井上:しかし、工学部の人はそれを使って橋が作れますが、経営学では理論を知っているだけでは経営はできません。 入山:うーん、これはどうなんだろう。これは、自然科学と社会科学の違いではないでしょうか。土木は橋を作るのは物理法則が明確だから、こうなったら倒壊する、これなら絶対に大丈夫だとわかる。そういう自然科学と比べて、社会科学は人間を扱います。人間はすごくいい加減で、「絶対こうだ」と言い切れないところが難しい。 井上:普遍的かつ一般化可能な法則を求めないと、科学ではないと言われます。人間を相手にする学問で、果たして科学は成り立ちうるのかと、私はかなり疑問に思っています。) 入山:とはいえ、経済学や経営学でも、ある一定の条件だと再現可能なものはすでにかなりあります。例えば、マーケティングの世界では、データ分析をもとに、方程式を作って予測するとそれなりに当たったり、マイケル・ポーター教授のSCP理論にしても、独占に近いほうが儲かりやすいという法則性はほぼ明らかですよね。 でも、それは100%ではない。自然科学はよほどのことがない限り「外れない」のに対し、人間の科学はそれなりに外れるけれども、大まかな予測ができる。そういう感覚だと思うのです。むしろ重要なのは、とりあえず組織を作った後で、なんで自分はちゃんと組織が作れたのか、失敗したのかと、論理的に説明できることではないかとも思います。 拙著もそうなのですが、ビジネスパーソンにとって「経営理論は自分のやりたいこと、やってきたことを言語化して説明できるツール」だと思っています。 井上:振り返りができるという話ですね。ただし、研究者になろうとする大学院生を見ていて思うのは、どうでもよい細かいことで、重箱の隅をつつくような研究に入り込みやすいことです。変数を1つ加えて統計的に有意になればよいという世界で、それで説明力がどれだけ高まったかは省みられなくなる。 海外のスタイルや様式を使いつつも、問題意識の志や面白さが足りない。現実の経営では、「そこさえ押さえればいい経営ができる」というように、もっと大事なことがほかにもあると思うのです。 入山:面白いご指摘ですね。海外でもそこは問題視されているように思います。特に、「Pハッキング」と呼ばれるように、いかに統計的に有意な結果を特定の変数で出すかという姿勢がよろしくない、という流れに最近はなっています』、「どうでもよい細かいことで、重箱の隅をつつくような研究に入り込みやすいことです。変数を1つ加えて統計的に有意になればよいという世界で、それで説明力がどれだけ高まったかは省みられなくなる」、嘆かわしい傾向だ。
・『経営学は本当に役立つのか?  入山:ここまでの話の中で感じたのは、おそらく井上さんの問題意識の背景には、「経営学は実学だから、役に立たなくてはならない」という感覚があるのではないでしょうか。 井上:まさにそのとおりです。私の学部時代の指導教授の丸山康則先生は、産業心理学で博士号を取得された後、実務家として企業の研究所で鉄道事故など人の生死がかかった切実な状況で安全学を究めました。 その先生から、心理学の切り口は小刀みたいだが、経営学はそういうものではない。多様な理論がある「マネジメント・セオリー・ジャングル」の時代に、小刀を持って歩いても進めないから、あなたは大ナタをふるいなさい。もっと大きなもので切ったほうが、経営はわかってくるよ、と指摘されたのです。 入山:それは、マクロ的なことをやれという意味でしょうか。 井上:それは、大局を見る「ものの見方」という意味でのパースペクティブだと思います。そのときに引き合いに出されたのは、梅棹忠夫先生の『文明の生態史観』のような観点です。私の大学院時代の師匠の加護野忠男先生(神戸大学名誉教授)も25年前にまったく同じことをおっしゃっていて、驚かされました。「ものの見方」や「考える軸」という話をして、テクニカルなことは、大学で学ぶビジネスパーソンに必要ではない。考えるときの軸が必要だ、と。現象は無限にあっても、軸の数は少なくても間に合います。) 入山:おっしゃるとおりで、「考える軸」を持つことは大切ですよね。僕も『世界標準の経営理論』でさんざん「思考の軸」と書いていますし、とても共感します。 一方で、あえて議論のためにスタンスを取るとすれば、経営学をピュアに学問だとすると、「学問なのだから、重要なのは『知』を膨らませることであって、別に実社会に役に立たなくたってよいではないか」という考え方もあるのではないでしょうか。 例えば私が今、研究しているのは、インド企業と中国企業のどちらがどういう条件で賄賂をするかというもの。これはおそらく実社会には1ミリも役に立ちません(笑)』、なるほど。
・『「面白い」と「役に立つ」が同じベクトルか?  井上:そうでもないと思いますが。入山さんは知的好奇心から研究するとしても、それをほかの人が面白いと思えば、きっと役に立ちます。 入山:井上さんはいい方だから、ポジティブに見ていただければそうですね。問題はその「面白い」と「役に立つ」が同じベクトルかどうか。 ノーベル物理学賞を受賞された梶田隆章先生が、取材であなたの研究は役に立つのかと聞かれて、「役に立つ必要があるの?」とあっさり答えられたというエピソードがあります。ここは重要なポイントで、素粒子衝突実験装置のリニアコライダーを国家レベルで巨額の費用をかけて作っても、当面は役に立たない。 これは企業のイノベーション施策と似たところがあり、「業務に直結」と言い出した途端に、斬新なアイデアが生まれなくなる傾向があると思います。でも、素粒子衝突にしても何にしても、長い目で見ると、結果的にそういう役に立っていないように見えたものの蓄積の一部が世の中で役に立つ可能性がある。 そう考えると、私の経営学へのスタンスは純粋に好奇心から組織や人間の行動を説明したい、というものです。しかも私はデータ解析が好きなので、それをデータで検証していけばよい、という入り方です。「役に立つ研究をやる」ことに自分の興味はありません。 他方で、先人たちの教えの中で役に立ったり、思考の軸になるかもしれないものが、経営理論としてそれなりに普遍化されつつあるのも事実。「興味のあるビジネスパーソンは、それを思考の軸にしてみてください」というスタンスで書いたのが、今回の本なのです。 井上:入山さんはご自身の研究と、一般向けの書籍の執筆などを分けて考えていらっしゃるわけですね。普通は研究結果を社会に発信しようとするのです。入山さんはせっかく関心を持って世界水準の研究もたくさんされているのに、そこでわかったことを人に伝えたくならないのでしょうか。 入山:まず、自分の研究結果は、あくまで1個の研究から得られたものにすぎませんので、それがどのくらい普遍性があるかの保証が十分ではありません。ですから、自分の研究そのものを「役に立つ」と見せかけて一般の方に伝えるスタンスは取らないようにしています。自分の研究は、同業の研究者の人たちに「面白い」と思ってもらえばいい。 とはいえ確かに、自分の興味があることを解明し、それを伝えることは根本的に好きですね。しかし、それは雑誌の連載でも、ラジオでも何でもいいですね。 井上:私の場合は、「役に立ちそうです」と言われるほうがむちゃくちゃうれしいです。だから、「役に立ちそうだ」という雰囲気で話を聞いてくれるほうが燃えるし、もっとそういうものを提供しようと思います。この書籍を書くための取材でも、それが原動力となりました。 入山:この2人のスタンスの違いも面白いですね』、「「面白い」と「役に立つ」が同じベクトルか?」、での「2人のスタンスの違い」は確かに面白い。

次に、この続きを2000年5月20東日付け東洋経済オンライン「世界の経営理論に「ビジネスモデル」がない理由 持続的繁栄には「センスメイキング」が不可欠」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/346559
・『2019年末に刊行された早稲田大学の2人の経営学者の著作が話題となっている。井上達彦氏の『ゼロからつくるビジネスモデル』と、入山章栄氏の『世界標準の経営理論』だ。前者が500ページ強、後者が800ページ強ものボリュームだ。 井上氏の所属は商学部で大学生に、入山氏はビジネススクールで実務家に経営学を教えている。それぞれのフィールドも異なる。かたや日本発の経営学、入山氏はアメリカを中心とする世界の経営学だ。前回に続いて、そんな立場が対照的な名物教授である2人が、「ビジネスモデル」の研究と実践について、自由に語りあった』、興味深そうだ。
・『なぜビジネスモデルは科学との相性が悪いのか?  入山:私は井上さんの新著『ゼロからつくるビジネスモデル』にすごく関心があるんです。なぜなら、海外の経営学では、トップジャーナル(学術誌)に「ビジネスモデル」をテーマにした研究が載ることはほとんどありません。 なぜかというと、私の理解では、ビジネスモデルとエコシステムは、既存の経営学で扱いづらいから。両方ともフワッとしていて、いろんな要素があり、全体性が重要になってくる。 現代の科学は要素還元主義なので、分解して、分解して細かいメカニズムを解き明かす傾向にあります。経営学もそう。細かいメカニズムを解明し、それが積み上がっていくと全体が説明できるだろうと考える。しかし、現実はそう簡単ではない。だから、もともと「全体」を説明しようとするビジネスモデルとは相性がよくないのです。 かといって、海外の経営学者はビジネスモデルに興味がないというと、まったくそうではありません。学会でビジネスモデルのセッションを開くと、大勢の人が集まりますから。その意味でいうと、実務には絶対に意味がありそうだけど、科学的には捉えづらいビジネスモデルというテーマで本を書かれたところは、井上さんっぽいですね。 井上:私は基本的な姿勢として、経営学者は役に立ってなんぼだと思っています。要素に還元できるもの、科学で語りやすいものだけを語って、経営のためになるかというと、決してそんなことはない。むしろ、経営は総合だと思います。 私の師匠の加護野忠男先生(神戸大学名誉教授)も伊丹敬之先生(国際大学学長、一橋大学名誉教授)も『ゼミナール経営学入門』の中で、「経営の神髄は矛盾のマネジメントだ」と書いています。 矛盾というのは、複数の要素があり、ここの組織を正常化すれば、別のところで別の問題が起きるからです。そして、これに絶えず直面するのが経営者だ、と。だから経営者は複数の視点から同じ現象に切り込んで、総合的に判断しなければならないというのです。 入山:私も、そのとおりだと思います。 井上:それを特に強く感じたエピソードがあって。以前、私が広島大学で社会人教育を行っていたときに、子会社を垂直統合するのか、自由に活動できるよう独立させるかを考えるケースをつくりました。 (井上達彦氏の略歴はリンク先参照) 取引コストの観点でどう判断すべきかという問いを立てたので、学生たちはコストや情報の非対称性を中心に議論しましたが、終盤で実際に会社を経営している受講生が「これはこうすべきだ」と指摘したのです。多面的な視点で問題を捉えていたので、すごく説得力があり、みんなも納得しました。 ビジネスモデルもそれと同じで、事業の仕組みとか、収益をあげる仕組みを議論するなら、多面的に見ればいい。1つのディシプリンや構成概念で定義するのではなく、戦略、製品開発、イノベーションと同じような形で見ていけば、何とかなるのではないかと私は思っています。 例えば、起業家がどうやって発想しながら、ビジネスを起こすのか。異業種の例を参照しながらつくっていることがわかれば、事業創造にはそういう方法があるとわかる。そういう努力を積み重ねれば、ビジネスモデルとしての研究は十分に成り立ちます。 入山:そういう意味では、たぶん私の『世界標準の経営理論』が目指しているところも同じですね。特定の理論だけを見るのは学者の仕事なので、学問としてはそれでいいのですが、実務は多面的に見る必要がある。 だからビジネスパーソンは特定の事象でも、経済学ディシプリン、心理学ディシプリン、社会学ディシプリンの理論を総合的に踏まえて、全体で考え、意思決定しないといけない』、「私は基本的な姿勢として・・・要素に還元できるもの、科学で語りやすいものだけを語って、経営のためになるかというと、決してそんなことはない。むしろ、経営は総合だと思います」、「実務は多面的に見る必要がある。 だからビジネスパーソンは特定の事象でも、経済学ディシプリン、心理学ディシプリン、社会学ディシプリンの理論を総合的に踏まえて、全体で考え、意思決定しないといけない」、「ビジネスパーソン」の方が大変なようにも思える。
・『ビジネスモデルは卵か鶏か?  入山:例えばアメリカのウォルマートのビジネスモデルは非常によくできたものですが、それは事後的にそう見えるだけで、現実には、いろんな企業のアイデアを模倣していくうちに、結果的にできあがったものと言われています。 そういうビジネスモデルのつくり方のほうが役に立つのか。それとも、模範的なビジネスモデルを置いて、この部分はこのメカニズムを入れようとか、演繹的に考えるべきなのか。井上さんはどうお考えでしょうか。) 井上:日本の経営学では、以前に「ビジネスシステム」という言葉がありました。ほぼビジネスモデルと同じことですが、結果として生み出された仕組みを指します。それに対して、「ビジネスモデル」は型であり、木の幹に当たります。こういう儲け方をしたらいいな、こういうカスタマー・セグメントにこんな価値提案をして、こういうリソースを使ったらいいなと、枝葉をつけていく。 したがって、経営者は枝葉のないビジネスモデルを参照するのですが、現実はそのとおりにいかないので、創発的に元々の木がすごく複雑に茂ったビジネスシステムができあがるのです。 持続的競争優位を説明するときは、ウォルマートの仕組みの枝葉の茂った部分まで注目して、ここに複雑性や模倣困難性があると見ていく。でも、つくるときには、そんな複雑な部分まで真似できないので、型としてのビジネスモデルが大事だと分けて考えていくと、かなり整理できます。 入山:へえ、そういう型みたいなものがあるのですね。 井上:例えば、広告モデル、マッチングモデル、フリーミアムモデルなどです。30~40の型があるとする書籍もあれば、私たちみたいに、具体と抽象の往復運動しながら、自分で型をつくらないとうまく使えないというスタンスもあります。 型だけあってもつくれないので、「あのビジネスはいい」と思えるお手本を自分で抽象化し、適用してみる。その往復運動をするうちに、本当にいいものになっていくのだと思います』、「「あのビジネスはいい」と思えるお手本を自分で抽象化し、適用してみる。その往復運動をするうちに、本当にいいものになっていくのだと思います」、ずいぶん大変なようだ。
・『引用する言葉によるアプローチの違い  入山章栄氏の略歴はリンク先参照) 入山:基本的に本の内容を鵜呑みにするよりは、それを前提にもっと考えてもらいたい、と。それは私の本でも同じです。 井上:そうですね。しかし、私はそれを学術の言葉を使わずにやりたいのです。「日常の理論」と言ったりしますが、本でもなるべく現場の人たちが使っている言葉を引用するようにしました。 もちろん、標準の言葉を使ったほうがいい場合もあるのですが、例えばデザイン・シンキングの話をするときには、学問の言葉よりも、デザイナーたちが普段使っている言葉遣いのほうが腹落ち感、納得感があり、脈絡や歴史も拾ってこられる。だから、一見するとすごく学術っぽくならない。 入山:私の本は逆で、むしろアカデミックな言葉をわかりやすく使って説明しようとしています。アカデミックな理論をそのまま知って読者に納得してもらうことで、思考の軸にしてもらいたい。 井上さんはダイレクトに「役に立つ」ことに関心があるから、現場の言葉に落として伝えていく。私は「思考の軸」としての腹落ちにまずは関心があるから、理論をそのまま解説する。私と井上さんで目指していることは近くても、アプローチが違うところは面白いですね。 入山:いろいろな企業を見てくる中で、「このビジネスモデルは面白い」と思ったものはありますか。 井上:やはり公文教育研究会のモデルでしょうか。イギリスのソーシャル・インパクト・ボンドの調査を行い、そこから認知症患者の学習療法に応用して展開するなど、面白いですね。それに、すぐに儲けようと短絡的な考え方をしていない。 ビジネスモデルを設計しようとする中間管理職は、収益モデルばかりにこだわりますが、それではお客さんは誰か、どんな価値を提供するのかという点を忘れてしまう。 その点、公文のグローバル化を進めてきた歴代の社長も、スノーピークの山井太社長も、自分の実現したい世界を実現させるために一生懸命やってきたら、こういう仕組みができていたという展開になっています。 入山:いい会社のいい経営者はたいてい、長期目線で社会にどう影響を与えるかをつねに考えていますよね。私の本で紹介しているのが「センスメイキング」の理論です。 実は、イノベーションに関する講演をするときに、私はいつも「最も日本に足りていないのがセンスメイキングです」と話しています。目先で考えると収益に向かい、いわゆる経営学で言う「Exploitation(深化)」になる。「Exploration(探索)」を続けるには、会社の長期の方向感について腹落ちすることが重要です。 井上:長期的に繁栄する仕組みをつくろうと思ったときの発想や考え方として、すごくこだわる準拠点を意識して、理念をしっかりと持てば、自然にできあがっていきますよね。ビジネスモデルづくりは一朝一夕にはできなくて、持続的に収益を上げる仕組みとなると10年がかりだったりします。そこに一貫性を持たせるのが理念ではないでしょうか」、「井上さんはダイレクトに「役に立つ」ことに関心があるから、現場の言葉に落として伝えていく。私は「思考の軸」としての腹落ちにまずは関心があるから、理論をそのまま解説する。私と井上さんで目指していることは近くても、アプローチが違うところは面白いですね」、学者による「アプローチ」の違いが理解できた。
・『グローバル企業が用いる腹落ちの仕組み  入山:日本でファミリービジネスが強いのは、経営者が方向感について腹落ちがあるからだと思います。いい経営者は30年くらい先のことまでを見て、会社の方向感に自分が腹落ちしています。 しかも、ファミリー企業の場合は、経営者があっちへ行けと言えば、みんながそっちへ動く。だから、長い目で見ると業績もいいというのが、私の理解です。その一方で、日本の同族企業の弱点は、この作業を経営者1人が自分だけの脳内でやっていること。自分は腹落ちしていても、引退した後、たぶんその腹落ちが会社に残らないことも多い。 では、優れたグローバル企業はどうしているかというと、それを仕組みで入れています。例えばデュポンには100年委員会とでもいうべきものがあり、経営幹部が年に1度集まって、専門家も呼んで100年後の未来を死ぬ気で考えて、腹落ちさせるプロセスを実施しています。シーメンスもメガトレンドとして30年先について考えています。 日本企業が「青臭い」とバカにするような会社の方向性やビジョンの腹落ちの刷り込みを、実は優れたグローバル企業は一番大事にしている。そこが日本企業との決定的な違いだと思います。) 井上:そういう腹落ち感でいうと、私の本で紹介したスノーピークの社員はみんなキャンパーなので、キャンプの価値観、自然に対する向き合い方、必要な準備がわかっていて、だから経営ではこれが必要だという考え方をします。社内の雰囲気はいいし、一丸となっている空気があって、面白いですよ。 入山:そういうのが前提にあり、結果的にみんなの方向が揃っているから、気づいたらたぶんビジネスモデルも、一見突飛なように見えるけど、面白い仕組みが出てくるのでしょうね。 井上:理念や仕組みで維持しようとする場合、少数の細かいルールで縛っても、仕組みはいい感じで進化していかないように思います。官僚制がどんどんできていくばかりで。「これだけは守る」という基本原則や、経営者が日々語っている一言のほうが重要です。 例えば、京都では歴史的に、絶対に競争してはいけない、地域に迷惑をかけてはいけないという不文律があり、それが棲み分けにつながり、新しいものをつくろうというチャレンジ精神を育んだと言われています。だから、仕組みづくりのためのプロセス、ルールは面白いと思います。 入山:本当に重要なことですよね。特に日本では、そういうものが現場レベルではあっても、会社の理念になると方向感の腹落ちがすごく弱く、すぐに目先の収益の話になってしまう企業も多い。 ビジネスモデルを考えるときも、どうやってお金を落としてもらえるかではなく、そもそもどうしたらこのビジネスモデルで、経営理念でいう社会問題を解決できるのかを考えることが必要なのでしょうね。まさに自らのビジネスの意味づけ、センスメイキングをすることが大切だということでしょう』、「京都では歴史的に、絶対に競争してはいけない、地域に迷惑をかけてはいけないという不文律があり、それが棲み分けにつながり、新しいものをつくろうというチャレンジ精神を育んだと言われています」、しかし、「日本では、そういうものが現場レベルではあっても、会社の理念になると方向感の腹落ちがすごく弱く、すぐに目先の収益の話になってしまう企業も多い」、なるほど。
・『「センスメイキング」×「ビジネスモデル」  井上:ビジネスモデルは価値の創造と獲得です。相手にもメリットを与えて、こちらもメリットを得て永続する。これは誘因と貢献で、本当は協力し合えないようなパートナーや取引先と一緒に価値を生み出して大きなことをやろうという、マネジメントの基本です。そう考えていくと、入山さんの言うセンスメイキングの話にもつながりますね。 継続的に儲けるための仕組みづくりの大事なキーワードとして、出てくるのがセンスメイキング。収益モデルの設計というのは、ある意味で技術ではあるけれど、理念なき技術は危ういとも言われます。入山さんの本の第23章(センスメイキング理論)をもう一度読み直しますね。 入山:ありがとうございます(笑)。 井上:入山先生の本でセンスメイキングを読んだ後で、私の本でスノーピークのビジネスモデルを読んでもらうとよいかもしれません。そして、「自分にとってビジネスモデルは何か」と問いかけてみる。 入山:自分の夢や願いを全うするという意志は、日本の会社に足りないですよね。井上さんの本の中でそういう話が出てくるのは第3章、意志の話は第12章。となれば、私の推奨としては、井上さんの本は第1章から読むよりも、まず第3章「ビジネスモデルを学ぶ意義」を読むのがいい読み方かも。 井上:2冊をセットで読み比べて、具体と抽象を行き来させるとよいのかもしれません。合わせると1300ページになってしまいますが(笑)、私も読み直してみます』、「自分の夢や願いを全うするという意志は、日本の会社に足りない」、なんでなのだろう。もっとも、「1300ページ」もある原典を読む気は起きないが・・・。

第三に、本年1月28日付け東洋経済オンラインが掲載した 一橋大学名誉教授の野中 郁次郎氏とシナ・コーポレーション代表取締役の 遠藤 功氏の対談「知識創造理論が「ビジネス最強の武器」になる訳 四半世紀で「日本企業が失ったもの」は何か」を紹介しよう。
・『『現場力を鍛える』『見える化』など数多くの著作があり、経営コンサルタントとして100社を超える経営に関与してきた遠藤功氏。遠藤氏が緊急出版した『コロナ後に生き残る会社食える仕事稼げる働き方』はいまも反響が大きい。 わずか半年ほどで世界を震撼させ、経済活動や社会活動をいっきに停滞させ、世界中の人々の生活をどん底に陥れた「コロナ・ショック」。2020年は「コロナ・ショック」で経済的な側面だけでなく、日本人の価値観や働き方も大きく変わっていったが、2021年もその変化は続いている。 このたび『ワイズカンパニー』『知識創造企業新装版』を上梓した一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏と遠藤氏が対談を行った。これからは「『知識創造理論』はビジネス最強の武器になる」という。その理由について両氏が語る。※対談第1回、第2回』、興味深そうだ。
・『SECIモデルの起点は「共同化プロセス」にある  遠藤:1995年に英語版の『知識創造企業』が世に出て、翌年出版された日本語版を当時の私もむさぼり読みました。 つい最近、24年ぶりに新装版が発売されました。おめでとうございます。2020年は続編の『ワイズカンパニー』の翻訳版も出ていますから、「知識創造理論」の当たり年ですね(笑)。 野中:ありがとうございます。『知識創造企業』と『ワイズカンパニー』を一緒に読むと、前著で取り上げられた日本企業と後著のそれの顔ぶれががらりと変わっています。 前著では知識創造のメカニズム、つまり「SECI(セキ)モデル」がうまく合致する新製品開発プロセスにフォーカスしているのに対し、後著は経営全般に光を当てています。 そのため、顔ぶれが違って当然といえば当然なのですが、例えば、前著で取り上げたシャープは、後著では候補にもなりませんでした。「イノベーションを生む経営の持続力」という面で、この四半世紀、「日本企業が失ったもの」は何なのか、一度考えてみたいと思っています。 遠藤:それはとても興味深いテーマですね。ぜひ考察をお願いします。「SECIモデル」の大前提は、最初の「Sの共同化(Socialization)」、つまりは「暗黙知」を互いに共有するプロセスにあると考えてよいのでしょうか?) 野中:そのとおりです。もっと簡単に言うと、「お互いが裃を脱ぎ、向き合って共感すること」です』、「「暗黙知」を互いに共有するプロセス」とは、「お互いが裃を脱ぎ、向き合って共感すること」、なるほど。
・『「共感」は相手の行動を目にした途端「無意識に起こる」  野中:そうすると「相手の視点」に無意識に達することができ、「唯一無二のペア」になる。その結果、「相手が何か困っているなら、何とかしてやりたい」と悩むことになります。ひとしきり悩んだ後、「では一緒に解決しよう」となると、そこに「対話」が生まれます。 「思い」が「言葉」に、「暗黙知」が「形式知」に変わる。それが「Eの表出化(Externalization)」です。 次の段階として、「暗黙知」が「形式知」となり、その「形式知」と「新たな形式知」が組み合わさって、「コンセプト」や「モデル」となります。それが「Cの連結化(Combination)」で、それらを実践することで、各自が「新たな暗黙知」を獲得し身体化するのが「Iの内面化(Internalization)」です。 こうやって組織内を「SECIモデル」がぐるぐると廻っていくわけです。 遠藤:改めてそう聞くと「SECIモデル」はとても手間のかかるプロセスですね(笑)。だからこそ最初に、お互いがペアになるための「共感」が必要になるのでしょうか。 野中:それはそうかもしれません(笑)。興味深いのは、「共感」というのは、「相手の行動を目にした途端、無意識に起こる」ということです。 人間の脳には、他者の行動を外から眺めているだけで、あたかも鏡のように、その行動を自分が行っているような働きをする細胞があります。これを脳科学では「ミラーニューロン」と呼んでいます。それがあるから、2人の人間が出会ったら、すぐにシンクロナイズできるのです。 遠藤:「SECIモデル」は哲学だけではなく、脳科学も取り込んでいるということですね。 野中:そうです。その共感関係の原型は「親子関係」なのです。 赤ん坊にとっては、いま触れている肌が自分のものか母親のものか、いま聞こえた声が、自分が発したのか母親なのかが、よくわからない主客未分関係にある。そこには母親との一心同体の共感しかありません。その状態を現象学では相互主観性(が成立した状態)と呼んでいます。) 遠藤:現象学まで取り込んでしまうとは、つくづく奥が深い。私が「知識創造理論」をすごいと思うのは、世界で唯一といっていい、「組織において新しい知がつくり出されるプロセスをしっかり説明した理論」だからです。「知識社会」という言葉を発明したピーター・ドラッカーも、『知識創造理論』を「現代の名著」と絶賛していたくらいですから。 野中:ありがとうございます。 (野中郁次郎氏の略歴はリンク先参照) 遠藤:さらに言うと、2つの意味ですごいと思っています。ひとつは、「経営における『情報』と『知識』の違いを明らかにした」こと。 すごくはしょっていうと、「情報」というのは、「人間の目的や信念とは関係なく外からもたらされるもの」であるのに対し、「知識」は「目的や信念に深く関わり、人間自身が作り上げるものである」ということです。 現代の企業を制するのは「情報」よりも「知識」なんですよ。そういう意味では、「知識創造理論」は競争力の源泉となる革新、つまり、イノベーションが起こるメカニズムを説明する際にも活用できる。 野中:そのとおりですね。 遠藤:もうひとつは、その「知識」にも2種類があることを明らかにしたことです。ひとつは言語化あるいは記号化された「形式知」であり、もうひとつが言語化や記号化が困難な、その人の身体に深く根差した「暗黙知」です。その2つをもった個人が全人格的に交流しながら新たな知を紡いでいく。それが知識創造のプロセス、すなわち「SECIモデル」ということですよね。 野中:おっしゃるとおりです。「形式知」と「暗黙知」の区別は氷山で考えるとわかりやすいんです。海の上に出ていて、その正体がよく見えるのが「形式知」であり、逆に海の底に潜って見えないのが「暗黙知」なんです。暗黙知と形式知はグラデーションでつながっていますが、「暗黙知」こそが人間の創造力の源泉なのです』、「「SECIモデル」はとても手間のかかるプロセス」、「「ミラーニューロン」・・・があるから、2人の人間が出会ったら、すぐにシンクロナイズできるのです」、「「知識創造理論」をすごいと思うのは、世界で唯一といっていい、「組織において新しい知がつくり出されるプロセスをしっかり説明した理論」だから」、「暗黙知と形式知はグラデーションでつながっていますが、「暗黙知」こそが人間の創造力の源泉なのです」、なるほど。
・『知識創造が「神棚に供えられて」しまっている  遠藤:なるほど。私が最近思っているのは、この「SECIモデル」にしても、知識創造にしても、多くの日本人が日本企業の現場で日々取り組んでいることにほかならないということです。ほかの国ではなかなかそうはいかないでしょう。 知識創造が「大衆化」「民主化」されているところに日本の強みがあったはずなのに、それがどんどん薄れてきた。知識創造が神棚に供えられ、「特殊な人しか実行できない特別なもの」のように思われている。私はそこを大変残念に思っています。 野中:最初に「思いや共感ありき」ではなく「理論や分析ありき」になっているからではないでしょうか。 野中:同志社大学教授の佐藤郁哉さんが、いみじくもこう言っています。「ビジネスの現場に相当、浸透しているPDCAサイクルは、得てして『PdCaサイクル』になりがちで、『P』と『C』は大きいが、『d』と『a』は尻すぼみだ」と。 何を言いたいかというと、肝心の「実行(Do)」と「行動(Action)」がほとんど行われず、「計画(Plan)」と「検証(Check)」ばかりになってしまうというわけです。 その結果、「オーバープランニング(過剰計画)」「オーバーアナリシス(過剰分析)」「オーバーコンプライアンス(過剰規則)」という3つの過剰病にかかって、実行力が衰え、組織が弱体化しているのです。 理屈をこいている暇があったら、まずやってみる。うまくいったら儲けもの、うまくいかなかったら反省して「別の方法」を試す。何が真理かといったら、うまくいったものが真理になるのです。 遠藤:私が思うに、いい経営をしている企業は結局、「SECIモデル」を廻しているのです。しかも、それは世界中の企業に当てはまるはずです』、「知識創造が「大衆化」「民主化」されているところに日本の強みがあったはずなのに、それがどんどん薄れてきた。知識創造が神棚に供えられ、「特殊な人しか実行できない特別なもの」のように思われている。私はそこを大変残念に思っています」、「「オーバープランニング(過剰計画)」「オーバーアナリシス(過剰分析)」「オーバーコンプライアンス(過剰規則)」という3つの過剰病にかかって、実行力が衰え、組織が弱体化しているのです」、その通りなのだろう。
・『数値至上経営の「虚妄」  野中:「われ思うゆえにわれあり」と説いたデカルト以来、サイエンスは分析至上主義できました。 (遠藤功氏の略歴はリンク先参照) サイエンスは分析と不即不離の関係にあるので、仕方がありません。でも、そのサイエンスだって、最初に「分析ありき」ではないはずです。 人間には身体がありますから、物事を認識する最初のプロセスにはその身体を通した主観的な経験がくる。その主観的な経験の本質を極めていくと客観的な数値やモデルになり、それがサイエンスになる。最初に「経験ありき」で、その後に分析がくる。その順番は揺らがない。 遠藤:それが逆転しているのが、一部コンサルタントや経営学者が、アメリカの受け売りで一時盛んに唱えていた「ROE(株主資本利益率)経営」ですね。 野中:そのとおりです。ROEの値は、何の価値も生まない自社株買いや社員の解雇による経費削減でも高まります。 「ROEの値ありき」で走ると、株主しかハッピーになりませんから、「経営の持続性」が損なわれ、結局、「何のためのROEなのか」わからない。 最近はさすがに流行らなくなってきたので、「ESG(環境・社会・ガバナンス重視)経営」に乗り換える輩もいる。SDGsへの熱狂などを見ると、「バッジを付け替えればいいのか、もうやめてよ」と言いたくなります(笑)。 遠藤:情けない話ですね。 野中:最近、伊藤忠商事が企業理念を「三方よし」に変えました。清水建設は「論語と算盤」を社是にしました。日本企業は古くからSDGsに取り組んできたわけです。 それには頬かむりして、バッジ付け替え組は、さも新しい経営手法のように唱道してしまう。実に嘆かわしいことです』、「一部コンサルタントや経営学者が、アメリカの受け売りで一時盛んに唱えていた「ROE・・・経営」ですね」、「「ROEの値ありき」で走ると、株主しかハッピーになりませんから、「経営の持続性」が損なわれ、結局、「何のためのROEなのか」わからない」、「最近はさすがに流行らなくなってきたので、「ESG・・・経営」に乗り換える輩もいる」、「「バッジを付け替えればいいのか、もうやめてよ」と言いたくなります」、同感である。
タグ:経営学 「私は未経験者に教えても意義がないとは思いません。実は、学生から「先生の話は具体的すぎて、わかりません」と言われたこともあります(笑)。まさに名言で、実務経験がないから、抽象的な話のほうがわかると言うのです」、意外だがよく考えてみればそうなのかも知れない。 遠藤 功 「一部コンサルタントや経営学者が、アメリカの受け売りで一時盛んに唱えていた「ROE・・・経営」ですね」、「「ROEの値ありき」で走ると、株主しかハッピーになりませんから、「経営の持続性」が損なわれ、結局、「何のためのROEなのか」わからない」、「最近はさすがに流行らなくなってきたので、「ESG・・・経営」に乗り換える輩もいる」、「「バッジを付け替えればいいのか、もうやめてよ」と言いたくなります」、同感である。 「「SECIモデル」はとても手間のかかるプロセス」、「「ミラーニューロン」・・・があるから、2人の人間が出会ったら、すぐにシンクロナイズできるのです」、「「知識創造理論」をすごいと思うのは、世界で唯一といっていい、「組織において新しい知がつくり出されるプロセスをしっかり説明した理論」だから」、「暗黙知と形式知はグラデーションでつながっていますが、「暗黙知」こそが人間の創造力の源泉なのです」、なるほど。 「「暗黙知」を互いに共有するプロセス」とは、「お互いが裃を脱ぎ、向き合って共感すること」、なるほど。 「知識創造が「大衆化」「民主化」されているところに日本の強みがあったはずなのに、それがどんどん薄れてきた。知識創造が神棚に供えられ、「特殊な人しか実行できない特別なもの」のように思われている。私はそこを大変残念に思っています」、「「オーバープランニング(過剰計画)」「オーバーアナリシス(過剰分析)」「オーバーコンプライアンス(過剰規則)」という3つの過剰病にかかって、実行力が衰え、組織が弱体化しているのです」、その通りなのだろう。 「知識創造理論が「ビジネス最強の武器」になる訳 四半世紀で「日本企業が失ったもの」は何か」 「どうでもよい細かいことで、重箱の隅をつつくような研究に入り込みやすいことです。変数を1つ加えて統計的に有意になればよいという世界で、それで説明力がどれだけ高まったかは省みられなくなる」、嘆かわしい傾向だ。 「アメリカを中心にするアカデミーは、標準化を進めようとしているのに対し、日本はそうではない。だから、先生の数だけ経営学がある、なんて言われますよね」、日本は皆がお山の大将なのだろうか。 「日本と「世界の経営学」がこんなにも違う理由 「大学で教える経営学」は本当に役に立つのか」 東洋経済オンライン 入山 章栄 野中 郁次郎 「自分の夢や願いを全うするという意志は、日本の会社に足りない」、なんでなのだろう。もっとも、「1300ページ」もある原典を読む気は起きないが・・・。 「京都では歴史的に、絶対に競争してはいけない、地域に迷惑をかけてはいけないという不文律があり、それが棲み分けにつながり、新しいものをつくろうというチャレンジ精神を育んだと言われています」、しかし、「日本では、そういうものが現場レベルではあっても、会社の理念になると方向感の腹落ちがすごく弱く、すぐに目先の収益の話になってしまう企業も多い」、なるほど。 「井上さんはダイレクトに「役に立つ」ことに関心があるから、現場の言葉に落として伝えていく。私は「思考の軸」としての腹落ちにまずは関心があるから、理論をそのまま解説する。私と井上さんで目指していることは近くても、アプローチが違うところは面白いですね」、学者による「アプローチ」の違いが理解できた。 「「あのビジネスはいい」と思えるお手本を自分で抽象化し、適用してみる。その往復運動をするうちに、本当にいいものになっていくのだと思います」、ずいぶん大変なようだ。 「私は基本的な姿勢として・・・要素に還元できるもの、科学で語りやすいものだけを語って、経営のためになるかというと、決してそんなことはない。むしろ、経営は総合だと思います」、「実務は多面的に見る必要がある。 だからビジネスパーソンは特定の事象でも、経済学ディシプリン、心理学ディシプリン、社会学ディシプリンの理論を総合的に踏まえて、全体で考え、意思決定しないといけない」、「ビジネスパーソン」の方が大変なようにも思える。 東洋経済オンライン「世界の経営理論に「ビジネスモデル」がない理由 持続的繁栄には「センスメイキング」が不可欠」 「「面白い」と「役に立つ」が同じベクトルか?」、での「2人のスタンスの違い」は確かに面白い。 井上 達彦 (その1)(日本と「世界の経営学」がこんなにも違う理由 「大学で教える経営学」は本当に役に立つのか、世界の経営理論に「ビジネスモデル」がない理由 持続的繁栄には「センスメイキング」が不可欠、知識創造理論が「ビジネス最強の武器」になる訳 四半世紀で「日本企業が失ったもの」は何か)
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不正会計(東芝以外)(その3)(「パチンコ台木枠製造「薮塚木材工業」の大型倒産はなぜ起きたのか(DOLより)」、「粉飾決算で資金調達して「アイドル投資」 コロナ禍で増える問題企業(Yahooより)」、「滝川クリステルのCM」で知られる企業が 粉飾決算で上場廃止の危機!) [企業経営]

不正会計(東芝以外)については、2019年4月26日に取上げた。久しぶりの今日は、(その3)(「パチンコ台木枠製造「薮塚木材工業」の大型倒産はなぜ起きたのか(DOLより)」、「粉飾決算で資金調達して「アイドル投資」 コロナ禍で増える問題企業(Yahooより)」、「滝川クリステルのCM」で知られる企業が 粉飾決算で上場廃止の危機!)である。

先ずは、昨年7月29日付け会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)「「パチンコ台木枠製造「薮塚木材工業」の大型倒産はなぜ起きたのか(DOLより)」を紹介しよう。これを報道したダイヤモンド・オンライン記事は有料会員限定のため、それを引用した「会計ニュース・コレクター」で代わりに紹介するものである。
https://ivory.ap.teacup.com/kaikeinews/17201.html
・『パチンコ台木枠製造「薮塚木材工業」の大型倒産はなぜ起きたのか  「薮塚木材工業」という遊技機器のキャビネットなどを製造していた群馬県の会社とその親会社「K.テクニカ」の倒産について取り上げた記事。負債額は単純合算で30億円とのことです。 2016年から粉飾決算をやっていたそうです。 「申立書によれば、薮塚とK.テクニカの代表を兼務するA氏は2016年2月に薮塚の社長に就任した直後から売り上げや預貯金を多く見せかける粉飾決算を始め、その決算書を使って昨年10月までに2社で12行から約23億円を借り入れた(薮塚につき12行18億円、K.テクニカにつき8行5億4000万円)という。」 粉飾決算・不正資金流出について(外部から?)指摘があり、昨年10月頃には粉飾が金融機関にばれてしまったそうです。 そこで、私的整理を目指すバンクミーティングが開催されました。 「薮塚はメインバンクのしののめ信金などの指導の下、中小企業再生支援協議会の二次対応による私的整理手続きを目指し、昨年12月7日にバンクミーティング(BKMTG)を開催。まずはしののめ信金推薦の会計士、税理士によるデューデリジェンスを行い、実態ベースの決算を21年4月中に行うとして、今年5月末までの返済リスケジュールを各金融機関に依頼した。」 ところが、その前後に、一部金融機関に対する、代金取り立て手形の預け入れ、社長名義預金の担保差し入れ、売掛債権担保設定など、債権者平等に反する行為があり、一部に法的手続きを求める動きも出てきたそうです。会社側は、代理人弁護士を選任し、さらなるリスケを交渉します。 その一方で、会社側は、不透明な取引をやっていたようです。 「実はA社長は昨年11月以降、金融機関から新規借り入れができなくなる一方で、木材仕入れ先のY社との間で売り上げを多く見せかけるための循環取引を行っていたため、その決済資金不足などを補う必要が生じ、ファクタリング業者に対し、架空の売掛債権または金額を水増しした請求書を作成するなどして売掛債権譲渡(ファクタリング取引)を行うようになった。このファクタリング取引は順次拡大し、今年5月時点で4社につき3億2000万円まで拡大したという。」 このY社から取引がストップされ、資金繰りに行き詰まってしまったようです。 Y社との取引はどのようなものだったのか... 「Y社が巻き込まれるきっかけは18年9月。A社長から頼まれ、資金繰りを助けるためにY社がK.テクニカの在庫をいったん買い上げ、薮塚が遊技機器メーカーに販売した段階でY社が薮塚に売るという商流に加わった。もちろん架空取引とは知らなかったという。」 「もともとの商流は「K.テクニカ」→「薮塚」→「遊技機器メーカー」となっていたものが、K.テクニカと薮塚の間にY社が入り、「K.テクニカ」→「Y社」→「薮塚」→「遊技機器メーカー」となったわけだ。これによりK.テクニカは在庫をすぐに資金化できるため、グループの資金繰りが楽になる。もちろんY社は物流には関与せず、伝票と資金だけが動く。 Y社は当初5000万円程度の買い取り枠から始めたが、安定的にマージンが得られることから最終的に1億4000万円まで枠を拡大していたという。ところが、実際はモノが存在せず、カネだけが「Y社」→「K.テクニカ」→「薮塚」→「Y社」と循環していた。そのたびにマージンが乗るからやがて行き詰まるのは必然だ(Y社は結果的に支払い済みの1億4000万円を含め多額の損害を被った)。」 在庫が実在していたとしても、親会社も含めたグループ全体で見れば、買い戻し条件付きの販売ですから、売上には計上できない取引だったかもしれません。品物がない架空取引であれば、なおさらです。 ファクタリング会社もだまされていたことになります。 「結局、薮塚はファクタリング業者4社のうち3社への支払いを滞らせることとなったという。そのため、ファクタリング業者が売掛先のX社など合計4社に対し確認したところ、3社については債権の不存在を、残る1社については薮塚にてすでに債権を回収したことを確認したとし、詐欺および横領であるとして第三債務者(X社など)に対して債権譲渡通知を6月2日、3日に順次発したという。」(X社は最大の得意先) 得意先であるX社からも見放されます。支給部材を回収され、取引停止になってしまいました。 代理人弁護士も、直前まで実態を知らされていなかったそうです。 「6月12日に代理人が打ち合わせのために薮塚の本社に向かう車中にA社長から真実を告白するメールがあり、同日から至急破産申し立ての準備を進めることになり、2日後東京地裁への申し立てに及んだものである。」 「要するに粉飾発覚後、融資ストップを受け、循環取引を維持するための架空債権ファクタリングという新たな不正(銀行、代理人弁護士への虚偽説明を含む)がスタート、その間銀行団の足並みも乱れ、最後は主要得意先の喪失で万事休す、となったわけだ。」 経営不振会社の経営者がやってはいけないことを、かたっぱしからやっていたということのようです』、「実際はモノが存在せず、カネだけが「Y社」→「K.テクニカ」→「薮塚」→「Y社」と循環していた。そのたびにマージンが乗るからやがて行き詰まるのは必然だ(Y社は結果的に支払い済みの1億4000万円を含め多額の損害を被った)」、[
経営不振会社の経営者がやってはいけないことを、かたっぱしからやっていたということのようです」、ヤレヤレ・・・。

次に、10月23日付け会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)「「粉飾決算で資金調達して「アイドル投資」、コロナ禍で増える問題企業(Yahooより)」を紹介しよう。
https://ivory.ap.teacup.com/kaikeinews/17534.html
・『不正経理 粉飾決算で資金調達して「アイドル投資」、コロナ禍で増える問題企業(DOL配信):この記事も第一の記事と同様に、ダイヤモンド・オンラインに掲載されたが、有料限定なので、それを引用している記事を代わりに紹介する。 UNITHINXというインド関連の事業をしていた会社の倒産を取り上げた記事。新型コロナ倒産のように見えましたが、それだけではなかったそうです。 インドビールなどの輸入販売やインド料理店を経営していたUNITHINX(東京都品川区)が7月29日、負債約17億円を抱えて東京地裁から破産開始決定を受けた。 同社は2004年12月に設立され、インド貿易で業績を伸ばしていたが、コロナ禍で様相が一変した。2018年4月期の売上高は11億9288万円と順調に伸ばしていたところに、新型コロナ感染拡大が襲い掛かった。得意先の飲食店が休業や時短営業に追い込まれ、アルコール飲料が急減。インターネット通販サイトの販売を強化したが、業績は回復しなかった。」 金融機関が預金取引を調べたところ、あやしいカネの動きを見つけたそうです。 「UNITHINXも2020年4月期決算の作成が遅れ、金融機関など関係先へ期限通りに提出できなかった。この時点では提出遅れ自体は特に問題視されず、金融機関でも与信判断に変化はなかった。 ただこの間、金融機関は漫然と待っていたわけでない。決算書提出が遅れた企業の過年度決算の見直しを進めており、UNITHINXの取引行も例外ではなかった。 その見直しの中で、ある金融機関が預金残高の不自然な動きに着目した。調べを進めていくと、取引先からの入金のはずがUNITHINXの別の取引行から振り込まれていたケースも判明した。 遅れて提出された2020年4月期の決算書は、前年13億円以上あった売上高が、9億円に急減し、営業利益や経常利益、最終利益はそろって1億円を超える大幅赤字という惨状だった。」 金融機関には、それぞれ(科目)明細書がバラバラな決算書が提出されていたようです。 「取材を進める中で、複数の関係先に提出された2020年4月期の決算書を入手した。貸借対照表・損益計算書・株主変動計算書は、各提出先とも同じものだった。ところが、附属明細書の預金と借入金明細はまったく異なっていた。 金融機関Aに出された附属明細書では、A・B・C・D・E……と取引金融機関名が記載されているが、金融機関BではB・C・D・E……と続き、金融機関Aの名前がない。別の金融機関でも、金融機関AやBに提出された明細表にない金融機関の名前が記載されていた。 結局、複数の決算書を見ると、同一の明細書は何ひとつ確認できない。ただ、預金と借入金のそれぞれの合計金額はどれも同じ。突き合わせると明らかに信ぴょう性を欠く決算書だった。」 取引している金融機関の数がものすごく多かったそうです。借入金の残高も急増していました。 「中小企業の場合、金融機関との取引は普通3~5行程度だ。多くの金融機関と取引をすれば、社内の事務手続きは非効率で仕方がない。 ところがUNITHINXの取引金融機関は、約20行あった。しかも、都内の金融機関だけでなく、中部や四国などの地方銀行・第二地銀の名前がズラリと並ぶ。コロナ資金もこうした金融機関を窓口に調達していた。 UNITHINXは2019年4月期まで順調に業績を伸ばし、金融機関からの借入金は2019年4月期の約6億円から、2020年同期は約2.6倍に急増した。その裏には実権者のX氏の動きが関わっている。」 記事で粉飾決算といっているのは、普通の意味とはちょっと違って、他の金融機関からの借入資金を、営業上の入金であるかのように金融機関をだましていたということを指しているようです。 そのような資金操作は見抜かれてしまいましたが、それとは別にBSの資産側で問題が発覚しました。 「UNITHINXは2020年4月期で、金融機関から預金・借入金の操作を見抜かれた。それとは別に、貸借対照表に計上された4億円以上の仮払金も違和感を放っていた。... 2020年4月期の決算書で仮払金の金額が大きかったため、金融機関がX氏に説明を求めると、インドのアイドルグループに投資したことを明らかにした。関係者によると、このアイドルグループは今後活動を開始する予定で、インドの大手財閥グループともつながりがあり、投資は心配ないとX氏は説明していたという。」 この仮払金については、仮払金という科目での表示が正しいかどうかは別として、それだけで粉飾とはいえないでしょう、もちろん中身は精査して資産性があるのか判断する必要があり、また、銀行をだましていたとすれば大問題ですが...。』、「取引金融機関は、約20行」、と中小企業にしては異例の多さだ。「都内の金融機関だけでなく、中部や四国などの地方銀行・第二地銀の名前がズラリと並ぶ」、順調な時は優良企業で金融機関は先を競って取引したのだろう。「インドのアイドルグループに投資」、には笑いを禁じ得なかった。

第三に、第三に、1月26日付けYahooニュースが転載したダイヤモンド・オンライン、東京経済東京支社長の井出豪彦氏による「「滝川クリステルのCM」で知られる企業が、粉飾決算で上場廃止の危機!」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/247347ff325cb9e0a5f7767c75cdf97a51b6ae63?page=1
・『東証1部上場企業で、機械メーカーやソフトウエア開発会社などに向けて、各種操作マニュアルや運用マニュアルなどの作成支援を行うグレイステクノロジーで、とんだ粉飾決算が発覚し、上場廃止の危機に追い込まれている。その内幕を明らかにする』、「CM」はよく覚えている。
・『● 滝川クリステルのCMで知られる企業が 粉飾決算で上場廃止の危機  グレイステクノロジー(東京都港区)といえば、一時、滝川クリステル氏を起用したテレビCMが流れていたことを記憶している人もいるかもしれない。機械メーカーやソフトウエア開発会社などを顧客に、各種操作マニュアル、運用マニュアルなどの作成支援を行う東証1部上場企業であるが、とんだ粉飾決算が発覚し、上場廃止の危機に追い込まれている。 上場廃止か維持か、今月27日に結論が出る見通しだが、本社オフィスはコロナ対策を理由に閉鎖(冒頭写真)されており、取引先の不安は募っている。 グレイステクノロジーは昨年11月、外部からの指摘で不正会計の疑いが浮上したとして、昨年4~9月期決算の発表を延期した。 併せて外部の弁護士や会計士を委員とする「特別調査委員会」を設置したが、その時点のリリースでは、不正会計は2017年3月期から行われていた可能性があるとの認識だった。21年8月には有望株として東証と日経新聞が共同で算出する「JPX日経中小型株指数」の構成銘柄に選ばれたばかりだったが、当然株価は急落した。 関東財務局への四半期報告書の提出期限を今年1月17日まで延長し、特別調査委員会が調査を進めてきたが、1月14日になって、17日の期限までに四半期報告書を提出するのは不可能になったと開示した。同委員会はもともと架空売り上げの計上について調査を進めてきたが、新たにリース取引でも疑わしい取引が発覚したこともあり、まだ調査が終わらないという。 それでも現時点までにわかったこととして、同委員会からは、(1)架空売り上げを計上し、その架空取引に係る売掛金を当社役職員の自己資金を用いて仮装入金等していたこと、(2)売り上げの前倒し計上をしていたこと、(3)利益操作目的で架空外注費を計上していたこと、(4)前記(1)ないし(3)を実現する手段とし偽装工作をしている状況が多数発見された、との報告があったという』、東証から四半期報告書を提出できなかったので、1月27日付けで整理銘柄に指定され、1カ月後に上場廃止となる見込み。
・『● 創業者が昨春に 66歳の若さで急死  架空売り上げは当初の開示より1年早く、16年3月期からスタートし、初年度は129万円(単体ベースの暫定値、以下同)だったが、2年目の17年3月期は833万円、3年目の18年3月期は3億4787万円と跳ね上がり、4年目の19年3月期は5億557万円、5年目の20年3月期は4億8987万円、直近期である21年3月期は9億9428万円と、全体の売上高の実に55%が架空、つまりウソの売り上げという状況だったという。 グレイステクノロジーの東証マザーズへの新規株式公開(IPO)は16年12月。粉飾2年目となるこの期(17年3月期)の架空売り上げは前述の通り883万円だったが、次年度には架空売り上げの金額が3億4787万円へと、一気に桁違いとなる。 その甲斐あって18年8月には早くも東証1部に昇格した。 なお、創業者の松村幸治代表取締役会長は、21年3月期決算が締まった直後の同年4月13日に66歳の若さで急死した。これはなんとも意味深だ。 というのも特別調査委員会の中間報告によれば、「本件調査の過程で、元代表取締役及び元取締役が関与する重大な経営者不正が発見された」とある。 前述の特別調査委員会の報告による粉飾の手法(1)~(4)のうち、(1)について触れた中で「架空計上した売掛金を当社役職員の自己資金を用いて仮装入金等していた」と記載されている。だが、年間最大9億円もの仮装入金ができる人物となると、役職員の中でも突出したキャピタルゲインを得ていた松村氏の関与を疑わざるを得ないためだ。) 関東財務局に提出されている「大量保有報告書」(変更報告書)によれば、松村氏夫妻と個人会社の計3人の共同保有者はグレイステクノロジー株式を頻繁に売却、または担保提供して資金を捻出していることがうかがえる。松村氏の妻もグレイステクノロジーに勤務していた。 目立つ取引をピックアップすると、18年7月にみずほ銀行に176万株余り(当時の時価で44億円)を担保提供、19年5月には130万株をゴールドマン・サックス証券へ売却(単価2401円)して31億円余りを捻出(翌月みずほへの担保提供は解消)、19年11月に68万株を市場外取引で売却(単価2725円)して18億円余りを捻出、最後は20年8月に260万株をゴールドマン・サックス証券へ売却(単価4369円)して113億円余りを捻出、という具合である。 これほどのキャッシュがあれば、年間9億円程度の仮装入金はたいした負担ではないだろう』、「直近期である21年3月期は・・・全体の売上高の実に55%が架空」、なんと半分以上が「架空」とは・・・。累積の売却額は206億円、結果的に売り逃げていたことになる。
・『● 大手監査法人も 不正を見抜けず  また、粉飾の手法(1)~(4)のうち、(4)では「偽装工作をしている状況が多数発見された」とあるが、偽装とはおそらく架空売り上げの相手先名で作った銀行口座からグレイステクノロジーの口座に資金を振り込み、反対に架空外注費の支出についてもウソの外注先名で作った口座にグレイステクノロジーの口座から振り込ませていたということだろう。 この手法は役職員に元手となるカネが必要だが、それさえ確保できれば、架空売掛金が滞留せず、営業キャッシュフロー(CF)が正常値となるため、監査法人はやや気づきにくいかもしれない。実際、グレイステクノロジーの営業CFは一貫してプラスである。 当然大口の得意先や外注先には監査法人から、受発注実績や期末の売掛・買掛残高を社内のデータと照合するためのレターが届いたはずで、このチェックをどのようにくぐり抜けたのか現時点では定かではないが、いずれにしてもこうした偽装工作をやり遂げるのはいかにも手が込んでいるし、市場を欺く意図が露骨と言わざるを得ない。 ところで、よく考えると我が国でも相次ぐ不正会計の発覚を受けて、21年3月期から上場企業の監査報告書には「KAM」(キー・オーディット・マター、監査上の主要な検討事項)の記載が求められている。グレイステクノロジーの会計監査人は大手のEY新日本監査法人である。監査報告書には何が書かれていたのか。) 筆者が確認したところ、KAMは「負ののれんの金額の妥当性」と記載されていた。グレイステクノロジーは20年11月、大阪のマニュアル制作会社、HOTARUとその中国・上海市の子会社を合計14億円で買収したが、帳簿価格より割安だったため、差額の2億円を21年3月期に「負ののれん発生益」として特別利益に計上している。新日本監査法人はその妥当性について検討したという。 結果として妥当だということで監査報告書では「無限定適正意見」を得ていた。当たり前だが、9億円もの架空売り上げ計上の可能性を疑った形跡はない。せっかく鳴り物入りでスタートしたKAMも、そもそも的を外していれば不正の歯止めにはならないということだ。 本稿執筆日である24日のグレイステクノロジーの終値は67円。わずか1年5カ月前に創業者の個人会社が4369円で売り抜けていたことを考えると、なんともやりきれない投資家も多いだろう。 このまま1月27日までに四半期報告書を提出できなければ整理ポストに入り、上場廃止となる。こうした不正に対し、仮に当局がおざなりの処分で幕引きをしてしまうようでは、「やっぱりまともな人間は株式投資などしないほうがいい」という残念な結論になってしまいそうだ。 東証や金融当局が、預金として眠ったままの巨額の個人マネーを株式市場に向かわせたいと思うなら、真剣に不正の排除に取り組むべきだ。上場前から粉飾しているような会社がなぜ厳格なはずの上場審査をすり抜けるのか。これでは何を信じて投資していいかわからない。 今春の市場再編を機に、一通りの開示情報を理解できるレベルの、ごく普通の個人投資家が安心して参加できる証券市場に生まれ変わる努力をするべきだと思うのは筆者だけだろうか』、「24日のグレイステクノロジーの終値は67円。わずか1年5カ月前に創業者の個人会社が4369円で売り抜けていた」、「なんともやりきれない投資家も多いだろう」、その通りだ。「上場前から粉飾しているような会社がなぜ厳格なはずの上場審査をすり抜けるのか」、徹底的な解明と再発防止策により、「ごく普通の個人投資家が安心して参加できる証券市場に生まれ変わる努力をするべき」、その通りだ。
タグ:不正会計(東芝以外) (その3)(「パチンコ台木枠製造「薮塚木材工業」の大型倒産はなぜ起きたのか(DOLより)」、「粉飾決算で資金調達して「アイドル投資」 コロナ禍で増える問題企業(Yahooより)」、「滝川クリステルのCM」で知られる企業が 粉飾決算で上場廃止の危機!) 会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)「「パチンコ台木枠製造「薮塚木材工業」の大型倒産はなぜ起きたのか(DOLより)」 薮塚木材工業 「実際はモノが存在せず、カネだけが「Y社」→「K.テクニカ」→「薮塚」→「Y社」と循環していた。そのたびにマージンが乗るからやがて行き詰まるのは必然だ(Y社は結果的に支払い済みの1億4000万円を含め多額の損害を被った)」、[ 経営不振会社の経営者がやってはいけないことを、かたっぱしからやっていたということのようです」、ヤレヤレ・・・。 会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)「「粉飾決算で資金調達して「アイドル投資」、コロナ禍で増える問題企業(Yahooより)」 「取引金融機関は、約20行」、と中小企業にしては異例の多さだ。「都内の金融機関だけでなく、中部や四国などの地方銀行・第二地銀の名前がズラリと並ぶ」、順調な時は優良企業で金融機関は先を競って取引したのだろう。「インドのアイドルグループに投資」、には笑いを禁じ得なかった。 yahooニュース ダイヤモンド・オンライン 井出豪彦氏による「「滝川クリステルのCM」で知られる企業が、粉飾決算で上場廃止の危機!」 「CM」はよく覚えている。 東証から四半期報告書を提出できなかったので、1月27日付けで整理銘柄に指定され、1カ月後に上場廃止となる見込み。 「直近期である21年3月期は・・・全体の売上高の実に55%が架空」、なんと半分以上が「架空」とは・・・。累積の売却額は206億円、結果的に売り逃げていたことになる。 「24日のグレイステクノロジーの終値は67円。わずか1年5カ月前に創業者の個人会社が4369円で売り抜けていた」、「なんともやりきれない投資家も多いだろう」、その通りだ。「上場前から粉飾しているような会社がなぜ厳格なはずの上場審査をすり抜けるのか」、徹底的な解明と再発防止策により、「ごく普通の個人投資家が安心して参加できる証券市場に生まれ変わる努力をするべき」、その通りだ。
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ソフトバンクの経営(その16)(「まだ1合目」 資本家・孫正義の見る未来、ソフトバンク「孫正義」の後継者選び 副社長退任のウラで起こっていた「意外なこと」、孫正義氏が米ナスダック再上場を計画する半導体大手アームは「イギリスの国宝」 戦略企業の流出危機に青ざめる英政界) [企業経営]

ソフトバンクの経営については、2000年9月21日に取上げた。久しぶりの今日は、(その16)(「まだ1合目」 資本家・孫正義の見る未来、ソフトバンク「孫正義」の後継者選び 副社長退任のウラで起こっていた「意外なこと」、孫正義氏が米ナスダック再上場を計画する半導体大手アームは「イギリスの国宝」 戦略企業の流出危機に青ざめる英政界)である。

先ずは、昨年12月24日付け日経ビジネスオンライン「「まだ1合目」 資本家・孫正義の見る未来」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00415/122300001/
・『「まだ1合目。始まったばかりだ」──。 浜離宮を見下ろすソフトバンクグループ本社ビル高層階で、孫正義会長兼社長はこう語り始めた。自ら心血を注ぐユニコーン(企業価値10億ドル以上の未上場企業)投資の達成度を聞かれてのことだ。 「資本家として、お金ではなく未来をつくる」。 世界にユニコーン企業とその予備軍は約3000社。このうち約400社に、ソフトバンクG傘下の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」などが出資する。2021年3月期、ソフトバンクGは日本の上場企業として史上最大の約5兆円の純利益をたたき出し、「本業」と位置づけるユニコーン投資はいよいよ軌道に乗ったかにみえた。しかし今、同社はかつてないほどの逆風の最中にある。 「実質は大赤字。一大事だ」(孫氏)。21年4~9月期決算で3636億円の純利益を確保したが、投資会社としての「成績表」であるNAV(ネット・アセット・バリュー、株式など保有資産から負債を除いた評価額)は3カ月で6兆円減った。 保有する中国・アリババ集団の株価は1年で半分に下落、6月末にニューヨーク証券取引所に上場した中国配車アプリ大手の滴滴出行(ディディ)も株価が6割下落した。米中対立の先鋭化により、高度なプログラミング技術や重要な個人情報を囲い込もうと中国当局がIT大手に規制をかけているとされ、成長性への不透明感が強まっている。 世界の分断の余波はそれだけではない。20年9月、ソフトバンクGは傘下の英半導体設計大手アームを米半導体大手エヌビディアに売却することで合意したが、米連邦取引委員会(FTC)が21年12月に入り、売却を阻止するため提訴。欧州委員会も本格調査に入っている。エヌビディアが強くなりすぎれば半導体産業全体の競争が阻害されるとの懸念からだ。売却で見込んでいた3兆~4兆円の利益の実現が遠のく』、「投資会社としての「成績表」であるNAV(ネット・アセット・バリュー、株式など保有資産から負債を除いた評価額)は3カ月で6兆円減った」、見る影もないような大逆風だ。
・『株価は半値に  21年の春先に1万円あったソフトバンクGの株価は足元で半値の5000円台に沈む。売上高のほとんどを占める通信子会社ソフトバンクや英アームの業績は堅調そのもの。それでも株価が低迷するのは、これらの実業よりも、投資こそが本業だと金融市場はみていることを示す。英アームの売却で得られるはずの資金を逃せば、次なるユニコーン投資の足かせになるとの懸念もある。 マクロ視点でみれば、インフレ退治のために米当局が進める金融緩和の正常化も逆風だ。カネ余りが縮小すれば「上場によって一段と価値が高まる」というユニコーン投資の必勝方程式が成り立たなくなる可能性も否定できない。 実際、21年12月に上場したばかりのシンガポールのスーパーアプリ「グラブ」の株価は安値圏で推移。20年度の業績拡大に寄与した韓国ネット通販大手クーパン株も21年3月の上場直後の高値から4割下落した。市場の一部には、破綻した英フィンテックのグリーンシル・キャピタルや米建設テックのカテラを念頭に、ソフトバンクGの「選別眼」の力量を疑問視する向きがなお残る。 振り返れば、孫氏、そしてソフトバンクの歴史はアップダウンの連続だ。ITバブル崩壊による株価急落、英ボーダフォンの日本法人買収による携帯通信事業への参入、米携帯通信大手スプリント買収……。 日本の産業界にとって前例のない大胆な決断は資金繰りのリスクと隣り合わせ。外野は常に、事業の継続性や危機をささやく。だが、そのたびに乗り越えてきたのも事実だ。 孫氏は自らが目指す姿を「投資家でなく資本家」と表現する。今回の逆風は米中対立という外的要因が発端とはいえ、市場環境に大きく左右される「投資会社」の宿命とも言える。この荒波を乗り越え、「300年続く会社」の基礎をどう固めようとしているのか。 次回から、ソフトバンクGおよびビジョン・ファンドの知られざる実態を、幹部の証言を基に追う』、これまで膨大な含み益を支えてきたアリババやネット企業の米国上場に対する中国政府の姿勢が厳しくなり、環境は様変わりとなった。

次に、本年2月7日付け現代ビジネス「ソフトバンク「孫正義」の後継者選び、副社長退任のウラで起こっていた「意外なこと」」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/92068
・『「副社長」が去るのは、3人目  1月28日にソフトバンクグループがマルセロ・クラウレ副社長(51歳)の退任を発表した。 「同氏は、ソフトバンクが買収した米通信大手・スプリントのCEOに就任し、経営を軌道に載せた。その手腕に対する孫正義会長兼社長(64歳)の信頼は非常に篤く、後継者レースの『最有力』と見る向きもあっただけに衝撃が大きい」(全国紙経済部記者) 孫氏は「69歳までに後継者に経営を引き継ぐ」とたびたび語ってきた。 だが、後継候補の「副社長」が社を去るのは、これで3人目だ。 「次期社長含みで三顧の礼をもって迎え入れたニケシュ・アローラ氏は'16年に電撃退社し、投資事業の最高責任者として招聘した佐護勝紀氏も昨春、静かに会社を去った。2人は投資の方向性をめぐって孫氏と対立したことが、退任の理由と見られます」(同・経済部記者) 今回のクラウレ氏の退任は、報酬面での決裂が原因と囁かれるが、同グループの関係者は違った見方を示す。 「クラウレ氏は残る最後の副社長、ラジーブ・ミスラ氏との折り合いが非常に悪い。孫さんが鳴り物入りで立ち上げた『ソフトバンク・ビジョン・ファンド』の主導権争いでミスラ氏に敗れたクラウレ氏は傍流のファンドの責任者に追いやられ、意気消沈していた。ただ、残るミスラ氏はファンド運営のプロという側面が強く、おそらく次期社長とは目されていない」 後継者選びはすっかり暗礁に乗り上げたように見える。だが、かつて孫氏の下で社長室長を務めた嶋聡氏は「本当のところ、孫さんは後継の育成に本気になってはいないのではないか」と語る。 「現在急ピッチで進めている投資事業は、これまでの孫さんの経験がすべて役立つ非常にエキサイティングなもの。彼が簡単に誰かに譲るとは思えない。結局、ウォーレン・バフェット氏と同じように90代までやるんじゃないでしょうか」(嶋氏) 孫氏にとっては「孤独」なほうが都合が良いに』、「バフェット氏と同じように90代までやるんじゃないでしょうか」との見方の方があり得そうだ。

第三に、2月10日付けNewsweek日本版が掲載した在英ジャーナリストの木村正人氏による「孫正義氏が米ナスダック再上場を計画する半導体大手アームは「イギリスの国宝」、戦略企業の流出危機に青ざめる英政界」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kimura/2022/02/post-136.php
・『<世界に誇る科学力をテコに多くのユニコーンやデカコーン企業を生み出しながら、資本力に勝るアメリカ市場に奪われ、果てはGAFAMに吸収されてしまうイギリスの悪夢再び> [ロンドン発]投資株式会社化を目指すソフトバンクグループ(SBG)は2月8日、英半導体設計大手アームの売却を断念すると発表した。2016年、SBGは320億ドルでアームを買収。20年、米半導体大手エヌビディアに約400億ドル相当で売却する契約を結んだものの、独禁当局との交渉が難航し、断念に追い込まれた。 22年度中に米ナスダック市場での再上場を目指す孫正義会長兼社長に英政界から恨み節が聞こえてくる。アームはもともとロンドン市場とナスダック市場に上場していたが、SBGによる買収で非上場の完全小会社となった。イギリスが国民投票で欧州連合(EU)離脱を選択した直後でテリーザ・メイ英首相(当時)は孫氏に電話で「イギリスへの信頼の証しだ」と祝福した。 孫氏は8日の記者会見で「米当局の独禁法による訴訟が明確になってきた。イギリス、EUなど各国当局が非常に強い懸念を表明している。エヌビディアが提案した解決策で規制当局も納得すると信じていたが、全く相手にしてもらえなかった。エヌビディア側からこれ以上は難しいだろうと契約解消の話があった」と背景を説明した。 アームの再上場先について「アームの取引先は大半が米シリコンバレーの会社。投資家もアームに非常に高い関心を持っている。ハイテクの中心であるアメリカのナスダックが一番適している。他に若干可能性があるのがニューヨーク市場。おそらくナスダックになるだろうと現時点では考えているが、まだ決まったわけではない」との見通しを示した』、「アームの再上場先について「アームの取引先は大半が米シリコンバレーの会社。投資家もアームに非常に高い関心を持っている。ハイテクの中心であるアメリカのナスダックが一番適している。他に若干可能性があるのがニューヨーク市場」、それが最も合理的だ。
・『イギリスの「国宝」が米市場に流出する  英ケンブリッジに拠点を置くアームは性能が増しても回路の複雑さを増やさない独自の設計で消費電力を抑え、スマホの普及とともにシェアを拡大。クラウド、電気自動車(EV)の需要のほか、スパコンにも進出、計算能力を競うランキングで4期連続の世界一となった理化学研究所の「富岳」にはアームの設計を採用した富士通のプロセッサーが使われている。 「国宝」のようなテクノロジー企業が日本に買収され、ロンドン市場からナスダック市場に持って行かれてはたまったものではない。英紙タイムズは「アームは地球上のほぼすべてのスマホを動かすプロセッサーを製造している。アップル、クアルコム、サムスン電子も利用している」と紹介した上で英政界の苦悩を伝えた。 「アームのロンドンでの上場は不可欠だ。戦略的に重要な企業や主要な雇用主の保有は重要で、われわれは歴史的にあまりに無頓着だった」(保守党のアンソニー・ブラウン下院議員)。「わが国は戦略的資産を国内にとどめ、雇用を守る具体的な政策が必要だ」(労働党のデービッド・ザイクナー下院議員)。2人とも地元ケンブリッジ選出の下院議員である。 ボリス・ジョンソン英首相の報道官は「昨年、ロンドンでは記録的なIPO(新規公開株)と民間投資が行われた。企業がロンドンに上場して成長することを支援し、奨励するために懸命に取り組んでいる」と語った。しかしブレグジットで対EU貿易が激減する中、世界的な英テクノロジー企業が米市場に流出という事態になれば衝撃は大きい』、一般的に英国の政治家は「戦略的に重要な企業や主要な雇用主の保有は重要で、われわれは歴史的にあまりに無頓着だった」が、ここに登場した「2人とも地元ケンブリッジ選出の下院議員」、なので、こだわっているのだろう。少なくとも「戦略企業の流出危機に青ざめる英政界」はオーバーだ。
・『ロンドンはテクノロジー企業の評価が低い  英紙フィナンシャル・タイムズはこんな懸念を伝えている。ロンドン市場は米ナスダック、ニューヨーク市場に比べテクノロジー企業の評価が低いと広く認識される中、クワシ・クワーテン英ビジネス・エネルギー・産業戦略相はアームをロンドン市場に再上場させるよう求める声に直面している。 ダレン・ジョーンズ英下院ビジネス・エネルギー・産業戦略特別委員会委員長は同紙に「SBGがロンドン以外での上場を決定した場合、資金調達をするテクノロジー企業にとってロンドンを最も魅力的な市場にする財務省の取り組みに重大な疑問を投げかける」と懸念を示している。 ロンドン証券取引所ではIPOを活発にするため議決権種類株発行企業の上場を認めるとともに、浮動株比率の下限を25%から10%に引き下げた。「特別買収目的会社(SPAC)」も活用しやすくしたため、昨年ロンドンで上場した企業は海外送金サービス「ワイズ」、出前サービス「デリバルー」など120社以上、168億ポンド(約2兆6千億円)が調達された。 19年の35社、20年の38社を大きく上回ったことからイギリスの「IPO(新規公開株)元年」と呼ばれる。しかしアメリカのインフレ懸念で米連邦準備理事会(FRB)が利上げだけでなく、早い時期に量的引き締め(QT)に転換する見通しが強まったことから、英IPO企業の株価も惨憺たる状況となった』、「ロンドンはテクノロジー企業の評価が低い」のが事実であれば、「米ナスダック、ニューヨーク市場」を選択するべきだろう。
・『GAFAMやモデルナが生まれにくい環境  短期利益を求める英市場参加者は株価が上昇するとすぐに売ってしまうため、アメリカのアルファベット(グーグル)やアマゾン、アップル、メタ(フェイスブック)、マイクロソフトといったビッグテック(GAFAM)やmRNAワクチンで一躍有名になった米モデルナのようなバイオテック企業はイギリスでは育ちにくい。イギリス最大の強みはワクチン開発や変異株の探知、感染予測モデリングでも証明された科学力だ。英高等教育専門誌THEによる世界大学ランキングには1位オックスフォード大学、5位タイのケンブリッジ大学、12位インペリアル・カレッジ・ロンドン、18位タイのユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)をはじめ28校がトップ200校に名を連ねる。 世界トップクラスの大学に支えられた研究開発力は、ユニコーン(評価額10億ドル以上の未上場スタートアップ)だけでなく、評価額100億ドル以上の「デカコーン(ユニコーンの10倍を意味する造語)」を産み落としている。その中には日本にも上陸を果たしたデジタル銀行「レボリュート」も含まれている。 昨年4月時点でユニコーンの数はアメリカ288社、中国133社、インド32社に次ぐ世界4位の27社。欧州勢ではドイツ15社、フランス8社を引き離す。しかしイギリスではアームだけでなく、AIを開発する非公開企業ディープマインドもグーグルに買収されている。テクノロジー企業を大きく育てるには米シリコンバレーのようなハイテクの集積地と巨大な資本市場が不可欠だ。 IPOが活況を呈してもロンドン市場が敬遠される最大の理由はブレグジットに代表される予測不可能な政治にある。ずさんなコロナ対策で欧州最大の18万人超の犠牲を出しながら首相官邸や官庁街では平然と飲み会が続けられ、ジョンソン首相が下院で謝罪した舌の根も乾かぬうちに野党党首を誹謗中傷して恥じないような国にいったい誰が投資するというのだろう』、「モデルナが生まれにくい環境」とあるが、ワクチンメーカーでは、やや小粒だがアストラゼネカは英国企業だ。「IPOが活況を呈してもロンドン市場が敬遠される最大の理由はブレグジットに代表される予測不可能な政治にある」、その通りだ。
タグ:これまで膨大な含み益を支えてきたアリババやネット企業の米国上場に対する中国政府の姿勢が厳しくなり、環境は様変わりとなった。 「投資会社としての「成績表」であるNAV(ネット・アセット・バリュー、株式など保有資産から負債を除いた評価額)は3カ月で6兆円減った」、見る影もないような大逆風だ。 「モデルナが生まれにくい環境」とあるが、ワクチンメーカーでは、やや小粒だがアストラゼネカは英国企業だ。「IPOが活況を呈してもロンドン市場が敬遠される最大の理由はブレグジットに代表される予測不可能な政治にある」、その通りだ。 「ロンドンはテクノロジー企業の評価が低い」のが事実であれば、「米ナスダック、ニューヨーク市場」を選択するべきだろう。 少なくとも「戦略企業の流出危機に青ざめる英政界」はオーバーだ。 木村正人氏による「孫正義氏が米ナスダック再上場を計画する半導体大手アームは「イギリスの国宝」、戦略企業の流出危機に青ざめる英政界」 一般的に英国の政治家は「戦略的に重要な企業や主要な雇用主の保有は重要で、われわれは歴史的にあまりに無頓着だった」が、ここに登場した「2人とも地元ケンブリッジ選出の下院議員」、なので、こだわっているのだろう。 「アームの再上場先について「アームの取引先は大半が米シリコンバレーの会社。投資家もアームに非常に高い関心を持っている。ハイテクの中心であるアメリカのナスダックが一番適している。他に若干可能性があるのがニューヨーク市場」、それが最も合理的だ。 Newsweek日本版 「バフェット氏と同じように90代までやるんじゃないでしょうか」との見方の方があり得そうだ。 現代ビジネス「ソフトバンク「孫正義」の後継者選び、副社長退任のウラで起こっていた「意外なこと」」 日経ビジネスオンライン「「まだ1合目」 資本家・孫正義の見る未来」 (その16)(「まだ1合目」 資本家・孫正義の見る未来、ソフトバンク「孫正義」の後継者選び 副社長退任のウラで起こっていた「意外なこと」、孫正義氏が米ナスダック再上場を計画する半導体大手アームは「イギリスの国宝」 戦略企業の流出危機に青ざめる英政界) ソフトバンクの経営
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M&A(一般)(その2)(日本製鉄・東京製綱問題(日本製鉄が東京製綱に振り上げた「拳」の威力 株式を買い増して「会長は退け」と詰め寄る、日鉄 東京製綱株を一部売却へ 敵対的TOBで3月に取得)、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産599億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<上>、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産600億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<下>) [企業経営]

M&A(一般)については、2019年12月27日に取上げた。今日は、(その2)(日本製鉄・東京製綱問題(日本製鉄が東京製綱に振り上げた「拳」の威力 株式を買い増して「会長は退け」と詰め寄る、日鉄 東京製綱株を一部売却へ 敵対的TOBで3月に取得)、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産599億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<上>、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産600億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<下>)である。

先ずは、本年2月21日付け東洋経済オンライン「日本製鉄が東京製綱に振り上げた「拳」の威力 株式を買い増して「会長は退け」と詰め寄る」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/412132
・『財界総理を輩出した“ザ・日本企業”が出資先に突如として拳を振り上げ、大きな注目を集めている。 日本製鉄は1月21日、ワイヤロープ国内最大手の東京製綱に対するTOB(株式公開買い付け)を発表した。TOB価格は前日終値に36.5%のプレミアムを付けた1500円で、出資比率を直前の9.9%から19.9%まで高める。経営権を握るわけでもなく、持ち分法適用にすらしない。ここだけ見るとよくある資本提携強化の取り組みと思われた。 だが、日本製鉄は公開買付届出書で、東京製綱の業績や財務の悪化を厳しく糾弾。その原因として「ガバナンス体制の不備」を指摘した。中でも、同社の田中重人会長の名前を挙げて、代表取締役の在任期間が約20年にも及ぶことを問題視。報道陣に対して「退任は必須」(日本製鉄)と言い切っている。まるで「モノ言う株主」になったかのようだ。 東京製綱はこのTOBに対して2月4日に「反対」意見を表明した。これにより、日本製鉄のアクションは「敵対的」なTOBとなった』、分かり難いTOBだ。
・『敵対的TOBは異例ではなくなった  かつての日本の企業社会では敵対的TOBへの拒否感が強く、株主の賛同を得られなかったため、事例もごくわずかだった。しかし、2019年には伊藤忠商事がデサントに仕掛けるなど、大企業でも敵対的TOBが「タブー」ではなくなった。 そうした中、官営八幡製鐵所を源流に持つ、保守本流の本尊のような日本製鉄が敵対的TOBに乗り出したことは、日本の企業社会の変化を実感させる出来事だ。 艦船用のマニラ麻ロープの国産化を図るために東京製綱が創立されたのは1887年。「日本資本主義の父」と言われる渋沢栄一が創立に協力し、初代の会長にも就いた老舗企業だ。ロープの素材が鉄に移る中、日本製鉄の前身である富士製鐵が1970年に資本参加した。 日本製鉄は長らく約7%を保有する筆頭株主(信託口を除く)であり、東京製綱にとって原料の主要な主供給元でもある。また、研究開発でもパートナーという密接な関係を築いてきた。田中会長は日本製鉄出身で、歴代のトップや取締役には日本製鉄出身者が少なくない。 2017年以降、日本製鉄は継続的に東京製綱の経営陣と面談を行って経営改善を促してきたが、危機意識もなく改善されなかったと主張する。2017年からは株主総会で取締役の選任議案に反対票を投じてきたとも公開買付届出書に記されている。2020年9月下旬からコミットメントを高めて経営体制の再構築を実現する目的で、株式の追加取得の検討を始めた。TOBについて、日本製鉄は「事前協議は行っていない」としており、敵対的となるのは覚悟の上だった。 長年のパートナーからのTOBの通告を受け、東京製綱は「何らの連絡もなく一方的かつ突然に行われたもの」と反発を隠さなかった。1月27日にはTOBが東京製綱の企業価値向上や株主全体の利益に資するのか不明として「留保」の意見を表明。同時に日本製鉄にいくつかの質問を行った。この質問に対して日本製鉄は2月3日に回答書を提出。その内容を精査した東京製綱があらためて「反対」を表明したのだ』、伝統的大企業にとっては異例の「敵対的TOB」になった訳だ。
・『東京製綱が反対する最大の理由  東京製綱が今回のTOBに反対する最大の理由は「利益相反」にある。日本製鉄は東京製綱の最大の原材料サプライヤーだが、日本製鉄はTOB成立後も持ち分法適用会社にしないため、東京製綱の業績が日本製鉄の業績には反映されない。「当社の企業価値及び株主共同の利益よりも、サプライヤーとしての公開買付者の利益を追求する恐れが将来に渡って継続する」(東京製綱の2月4日リリース)。 東京製綱はこれまで中国や韓国の線材の使用拡大を模索してきた。顧客の認証が必要になるため実績はわずかにとどまっているが、海外材という選択肢を持つことで日本製鉄から特別価格(海外材に見劣りしない価格)を引き出すことができた。近年、日本製鉄からの値上げ圧力が強まっており、海外材の顧客認証も急ピッチで進めていた。日本製鉄の出資比率が一段と高まると、こうした活動が阻害されて調達コストが上昇し、日本製鉄以外の株主の利益を損なうと懸念する。 また、東京製綱は鉄以外の新素材として炭素繊維を使ったケーブル事業(CFCC事業)を育成してきた。先行投資による赤字に耐えて、2020年11月にはアメリカ・バージニア州の大型土木プロジェクトで約40億円の受注に成功した。しかし、日本製鉄はこの事業を「失敗」と烙印を押す。東京製綱としては、日本製鉄による「脱鉄」の動きを阻害することが狙いと映ってもおかしくない。) ただし、日本製鉄の指摘にあるように東京製綱の業績が低迷していることは事実だ。2020年3月期までの5カ年の経営計画では、売上高900億円、営業利益78億円を掲げたが、実際には売上高630億円、営業利益は3億円と大幅に未達だった。しかも、最終利益は24億円の赤字である。 そうした中、田中会長は約20年も代表取締役に居続けている。2010年に田中氏が会長に就いて以降、現在の浅野正也氏で4人目の社長である。「ガバナンス体制の機能不全、とりわけ、社外取締役の経営陣に対する評価や、指名・再任のプロセスが適切に機能していない」(日本製鉄)という指摘は当てはまる』、「田中会長は約20年も代表取締役に居続けている。2010年に田中氏が会長に就いて以降、現在の浅野正也氏で4人目の社長である」、どう考えても長過ぎるようだ。
・『日本製鉄も4000億円超の赤字  東京製綱を批判する日本製鉄の業況はどうなのか。2018年3月期までの3カ年の中期経営計画で掲げたROE10%の目標は6%台にとどまった。2021年3月期までの3カ年中計はコロナ禍もあって達成は不可能だ。2020年3月期には4315億円の最終赤字を計上しており、2021年3月期も1200億円の連続での最終赤字を見込んでいる。 こうした状況について、日本製鉄の役員は、「2020年3月期は大赤字だったが、減損して構造改革をしている。コロナがなければ今年度から黒字になっていた。東京製綱と同じにはされたくない。大事なのはガバナンスを利かせているか。(東京製綱は)20年以上経営が変わっておらず、結果も出ていない」と主張する いずれにしても、他社に対して株主として経営改善を厳しく要求する以上、今後は自分たちの経営について厳しく責任を問われることになるのは間違いない。 「敵対的」というのはTOBをされる側の経営陣にとっての理屈で、企業価値や株主にとって敵対的であるとは限らない。株主としてモノを言う姿勢も、それ自体は高く評価されるべきだ。しかし、今回の日本製鉄のTOBには首をかしげたくなる点がいくつかある。 まず、東京製綱のガバナンスの問題として、CFCC事業(炭素繊維を使ったケーブル事業)を営む子会社が会社法上の公告を行っていないことを指摘している。この事実は容認されるべきことではないが、上場会社の子会社で必要な公告を行っていない会社は少なくない。それを日本製鉄は公開買付届出書で「財務状況・経営状況の隠蔽をする意図を有しているのではないかとの疑念を有さざるを得ない」とまで書く。 日本製鉄の公開買付届出書には明らかなミスリードもある。2017年3月期以降に営業利益が連続して前年を割り込み、減益傾向が続いていると繰り返し、2017年6月の株主総会から取締役の選任議案に反対票を投じてきたと記している。だが、東京製綱が質問状で2013年6月から反対していたと指摘すると、日本製鉄は「2017年以前にも総合的に勘案し、一部に反対していた」と答えている』、「日本製鉄」にとっては、さほど重要性もないので、いい加減にみているのであれば、大問題だ。
・『会長再任の「反対時期」に誤り  実は反対の時期について、日本製鉄と東京製綱の両方に誤りがある。記者が調べて東京製綱に確認したところでは、日本製鉄が田中会長の取締役選任議案に反対するようになったのは2012年6月の株主総会からだった。2012年3月期と2013年3月期はスチールコード事業の悪化で最終赤字に沈んでおり、株主として経営責任を追及してもおかしくはない。ただ、日本製鉄は最高益となった2014年3月期、営業利益率が6%を越えた2015年3月期も一貫して田中会長の再任に反対している。 日本製鉄の言行不一致はほかにもある。リリースではガバナンス不全を表す事例として、在任期間が約10年に及ぶ社外取締役がいることも挙げている。しかし、日本製鉄が在任10年になる増渕稔氏(日本銀行出身)に反対票を入れたことはない。反対しているのはなぜか2017年6月に就任した駒井正義氏(三井物産出身)に対してだ。 もともと「日本製鉄ともあろう会社が、なぜ東京製綱のような小さな会社に対してあそこまでの態度を取るのか」(金融関係者)という疑問がある。そのうえ、公開買付届出書にちぐはくな点が散見されることから、「ガバナンス不全は口実にすぎず、海外材の調達拡大や脱鉄の動きに対する見せしめではないか」(業界関係者)といった声も上がる。 TOB成立後、東京製綱への原料供給で日本製鉄が有利となるようなことはないのかと日本製鉄役員に聞くと、「(東京製綱の複数調達の模索を)問題にしていない。ガバナンスが明らかにおかしいからだ」と語気を強めて答えた。 東京製綱の株価は足元で1450円前後で推移しておりTOB価格(1500円)を下回る。これはTOBでの買い付け上限が10%とわずかであり、上限を超える応募は按分比例されてしまうため。TOBの期間は3月8日までだが、目標とする19.9%への出資比率引き上げは成立の確立が高い。 東京製綱側もそうした状況を十分に理解している。そのうえで「反対」を表明したのは、ほかの株主との利益相反のおそれを無視すれば、株主代表訴訟を起こされるリスクがあるからだ。公然と反対することで「調達の自由度」を約束させたい狙いがあるともいえる』、なるほど。
・『真っ向からケンカを続けられない  もとより東京製綱はワイヤロープに使う線材の仕入の90%超を日本製鉄に依存しており、真っ向からケンカができる関係にはない。日本製鉄が振り上げた拳の威力は大きい。TOB成立後の焦点は、東京製綱の田中会長の進退だろう。同社の取締役の任期は1年であり、2021年6月の株主総会でどのような会社議案を出すかが注目される。 にじり寄る日本製鉄も課題はある。「再建を支援することができる存在は(中略)当社を除いて他にいない」とする一方、東京製綱の独立性を維持する考えも示しており、どう両立させるかを問われるからだ。TOBが成立しても19.9%しか出資しない以上、他の株主の利益相反となるような行動は取れない。かといって、東京製綱の再建支援を通して自社の利益を高められなければ、今度は日本製鉄の経営陣が株主から責任を問われるおそれがある。 株式の持ち合いによって経営にお互いが口出しをしてこなかったことが、日本企業の経営に規律が働かない一因だった。そうした中、日本製鉄がモノ言う株主として動いた意味は大きい。数年後、「ぬるま湯の時代」が終わった分水嶺の出来事として、今回の敵対的TOBを振り返ることになるかもしれない』、このTOB自体は成立したが、その後、事態は次の記事のように、思いもかけない方向に展開した。

次に、8月4日付け日経新聞「日鉄、東京製綱株を一部売却へ 敵対的TOBで3月に取得」を紹介しよう。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC037SI0T00C21A8000000/
・『日本製鉄は3日、敵対的なTOBを経て3月に出資比率を19.9%に高めた東京製綱について、保有株の一部を売却すると発表。公正取引委員会が両社について一体化して事業を進める「結合関係が成立」と指摘。競争維持のために事業活動が制限される可能性が生じたため、出資比率を10%以下に引き下げる。日鉄は保有する約324万株の東京製綱株のうち約163万株を売却。東京製綱の株価が、TOBの買い付け価格である1株1500円を上回る時期などをみて実施。3日の終値は1115円。日鉄は1月、経営不振やガバナンス不全を理由に、東京製綱への出資比率を9.9%から19.9%に高めるTOBの実施を表明。東京製綱の当時の経営陣は反対したが、3月にTOBが成立。その後、全取締役8人が退任するなど経営体制が大幅に見直された。日鉄は東京製綱を持ち分法適用の対象にせず、経営の独立が保たれているという立場。ただ公取委の判断を受けて、独占禁止法の運用指針で結合関係を判断する条件の一つになっている議決権の保有率を10%以下にする売却完了までは議決権行使を10%以下に抑えることを公取委に伝えた。日鉄の石原秀威常務執行役員は「筆頭株主、またサプライヤーとして支えていくことに変わりはない」と話した。日鉄は東京製綱の経営体制の見直しが実現し、TOBの目的は達したとの立場だ。また東京製綱は「本件にかかわらず、企業価値向上の早期実現を目指し、鋭意取り組んでいく」とのコメントを発表した』、「独占禁止法の運用指針で結合関係を判断する条件の一つになっている議決権の保有率を10%以下にする売却完了までは議決権行使を10%以下に抑える」、これでは結局、「日鉄」の「保有比率」はTOB前の「9.9%」に戻り、TOB騒動は単に田中前会長に退いてもらっただけということになる。「東京製綱」も独禁法から反対していれば、もっと恰好がついただろう。

第三に、7月6日付け日刊ゲンダイ「任天堂「中興の祖」の孫が相続資産599億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<上>」を紹介しよう。
・『ファミコンを開発し、任天堂(本社・京都府)を世界的企業に成長させて「中興の祖」と呼ばれた山内溥氏(2013年没、享年85)。その孫の万丈氏(28歳)は溥氏から相続した任天堂株を元手に「アクティビスト・ファンド」として企業乗っ取りを仕掛けていた』、興味深そうだ。
・『「山内溥の意志を受け継ぎ」と言うものの  万丈氏は早稲田大学の在学中に時価600億円に相当する溥氏の任天堂株約3%を相続。大学卒業後の16年に博報堂に入社するも、19年3月には退社。同年6月に相続財産の運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリーオフィス」(以下、ファミリーオフィス)を設立した。 相続税対策のため万丈氏の株の一部を任天堂が自社株買いしたが、同社株はその頃から5倍近く上昇。関係者によるとファミリーオフィスの運用資産は1000億円を超えているという。 ファミリーオフィスはレトロなテレビゲーム画面のような自社ホームページを開設しており、「任天堂中興の祖、山内溥の意志を受け継ぎ、日本がもう一度、挑戦に満ちた国に生まれ変わるために先見性とユーザー目線の思考を持ちながら、私たちは社会に貢献し続ける」などと理念を掲げている。経営陣にはゴールドマンサックス証券など外資系投資会社、邦銀出身者が名を連ねており、何らかの金融ビジネスを営んでいる雰囲気だが、これまで具体的な活動は不透明だった』、「ファミリーオフィス」は情報開示義務がないので、まさに「不透明」だ。
・『相続マネーはシンガポールのファンドに注ぎ込まれた  ところが相続財産は思わぬ目的に使われていたことがわかった。昨今、日本の株式市場で跋扈する「アクティビスト・ファンド」である。 「アクティビスト・ファンド」とは、本業で営々と貯め込んだ現金を眠らせていたり、本来の価値よりも株価が低迷している上場会社の株を買い集め、配当金や自社株買いを求めたり、改善策の提案や役員の送り込みなどを積極的に行う「物言う株主」だ。要求が聞き入れられない場合は、株主総会で経営陣の退陣を求めることも辞さない。 ファミリーオフィスの資金は、そんなアクティビストファンドの中でも、乗っ取り屋として最近、暴れまわっている「アスリード・キャピタル」(拠点はシンガポール)というファンドに注ぎ込まれていた。同ファンドは、「ハゲタカ・ファンド」と恐れられる米国の資産運用会社「ローン・スター」出身者によって運用されており、ファミリーオフィスの設立と同時期に、日本株投資を活発化させている』、なるほど。
・『石油関連企業がターゲットに  そんなアスリード・キャピタルから狙われたのが、ガソリンスタンド等に石油製品を販売している東証一部上場「富士興産」(本社・東京都)だ。石油製品販売という事業自体に真新しさはないが、同社は37億円ものキャッシュを貯め込んでおり、これに目を付けられた。 アスリード・キャピタルは昨年夏頃から富士興産株を買い集めると同時に、経営陣に面談を要請。しかし本業への関心は薄く、3回目の面談で早々にアスリード・キャピタルの支援によるマネジメント・バイ・アウト(MBO)での「非上場化」を求めてきたという。MBOは、株主を気にしない独立した経営をするため、会社経営陣が自社企業の株式買収をすること』、なるほど。
・『非上場化を要求の狙いは  アスリード・キャピタルの主張は富士興産の投資家向け開示資料に詳しい。次のようなものだ。 石油事業が頭打ちになる中、上場を維持したままではコストがかかるだけでなく、経営戦略の実行が難しいので非上場化し、貯め込んだ現金をアスリード・キャピタルと共同で投資に回していくことなどを提案してきたという。MBOによって非上場化すれば業績や配当要求など「市場の雑音」を排して大胆な事業ができる、というわけだ。 しかし経営戦略や改善案などの具体的な提案はなく、とにかく非上場化だけを勧めてきたという。富士興産の関係者は「経営の効率化や企業価値向上など抽象的な話ばかりで、アスリード・キャピタルが非上場化で何をしたかったのか最後まで分からなかった」と話す。そのため富士興産は非上場化の提案を拒否。アスリード・キャピタルは一転して、手持ちのキャッシュを使って効率の良い投資に回すか自社株買いを要求するようになったという。 手のひらを返し、「市場の雑音」の権化たるアクティビストとしての本性を露わにしたのだった。(つづく)』、「アクティビスト」は初めのうちはネコをかぶって、紳士的だが、「本性を露わにした」からが勝負のようだ。

第四に、7月7日付け日刊ゲンダイ「任天堂「中興の祖」の孫が相続資産600億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<下>」を紹介しよう。
・『任天堂を世界的企業に成長させて「中興の祖」と呼ばれた山内溥氏(2013年没、享年85)。その孫の万丈氏(28歳)は溥氏から任天堂株時価600億円(当時)という莫大な資産を相続した。万丈氏はこのカネでヤマウチ・ナンバー10・ファミリーオフィスを設立。海外ファンドの「アスリード・キャピタル」に資金提供し、日本企業買収を次々に仕掛けていたのだった』、「海外の黒目ファンド」の「日本企業買収」の実態とは興味深そうだ。
・『敵対的買収に踏み切るものの  要求が通らないことに業を煮やしたアスリード・キャピタルは今年4月末、富士興産に対して株式公開買い付け(TOB)による敵対的買収に踏み切った。 これに対し富士興産は6月24日の株主総会で、買収防衛策の導入と、対抗措置の一環として新株予約権の無償割当を行うとした。かりにアスリード・キャピタルが発行済み株式の大半を買い占めたとしても、新株予約権が行使されればアスリード・キャピタルの持ち分は減少してしまい、買収は叶わないことになった。 アスリード・キャピタルはこれらの差し止め請求を東京地方裁判所に提起していたが、株主総会で買収防衛策は可決され、東京地裁は差し止め請求を認めなかった。アスリード・キャピタルはこれを受け、7月まで期間を延長していたTOBを撤回すると見られている』、なるほど。
・『村上世彰氏への憧れでファミリーオフィスか  一体なぜ、万丈氏はアスリード・キャピタルのような過激なファンドに資金提供しているのだろうか。 関係者は、「万丈氏は、“村上ファンド”の村上世彰氏(61)のようなファンドマネージャーに憧れていた。村上氏は現在、外部の投資家から資金を集めるのではなく、ファミリーオフィスという形態をとっています。万丈氏もこれを真似たのではないでしょうか」という。 通常の投資ファンドは外部の投資家から資金の委託を受けているため、決められた期間に一定の利回りを出さなければいけない。巨額資金に見合う説明責任があるので、投資先や投資手法にも倫理性が求められる。その点、ファミリーオフィスは資産家一族の資産だけを運用するので、一般の投資ファンドがコンプライアンス上の観点などで尻込みする投資手法や投資案件に手を出すことができる。 活動実態が不透明なものも多く、最近では4月にファミリーオフィス形態をとっていた米ファンド「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」が破綻し、取引相手だった野村ホールディングスなど大手金融機関に巨額の損失が生じ話題となった。 実は、アスリード・キャピタルが最初に富士興産のまとまった株式を取得した相手方は、村上氏の実の娘である野村絢氏(33)である可能性が高い。 ファミリーオフィスは万丈氏が住む六本木の高級マンション近くにオフィスがありながら、わざわざシンガポールに拠点を置くアスリード・キャピタルを通じて日本株投資を行っている。これも村上氏のスキームと似通っている。シンガポールに住む村上氏は、日本国内の資産を税金の安いシンガポールに移し、海外経由で日本に投資している。投資手法やスキームが似通っているのは、山内氏が“村上ファン”だからと思えてくる』、「通常の投資ファンドは外部の投資家から資金の委託を受けているため、決められた期間に一定の利回りを出さなければいけない。巨額資金に見合う説明責任があるので、投資先や投資手法にも倫理性が求められる。その点、ファミリーオフィスは資産家一族の資産だけを運用するので、一般の投資ファンドがコンプライアンス上の観点などで尻込みする投資手法や投資案件に手を出すことができる」、確かに「ファミリーオフィス」は弾力的な「運用」が可能なようだ。
・『アスリード・キャピタルの高い買い物  とはいえ、なぜ富士興産ではTOBという強硬手段を使っても非上場化にこだわったのだろうか。 アスリード・キャピタルが野村絢氏から富士興産株を取得した価格は499円。さらに年末年始にかけて、市場で500円~600円で買い集めていた。富士興産の株価は2月頃には1300円まで上昇しており、すでに十分に儲けが出ているように見える。 しかし4月にアスリード・キャピタルが実施したTOBの買付価格は1250円で、富士興産の1株当たりの純資産とほぼ同額。買収に成功したとしても割安とは言えない。 実は、アスリード・キャピタルと山内ファミリーオフィスが買収に失敗したのは2度目だ。 今年1月、ジャスダックに上場する財務会計システム会社「ジャパンシステム」が、香港の投資ファンド「ロングリーチ」によるTOBで非上場化を実施した際、これに嚙みついていた。山内氏らはジャパンシステムの社長を担ぎ、対抗MBOによる支援を表明。しかし結局、ロングリーチのTOBは成立した。すでにTOBに主要株主が賛同していたためだ。山内氏側は早々に撤退することになった。 「山内氏を前面に押し出したジャパンシステムで事実上失敗して、資金を預かる立場のアスリード・キャピタルには後がなかった。富士興産では多少割高な買い物になっても、実績を作りたかったのではないか」(富士興産関係者)という見方もある。 そんな山内氏側の事情があったとしても、株を買われる側の富士興産には一切関係もない迷惑な話であろう。 欧米流のアクティビストが跋扈する中、日本を代表する任天堂の創業家一族ということで、“国産アクティビスト”に市場も注目していたが、短期間に2度も買収に失敗。金融業界で「拙速なファンド」だったとの評判が立つのは必至と見られる。(おわり)』、「山内氏のファンド」が「短期間に2度も買収に失敗。金融業界で「拙速なファンド」だったとの評判が立つのは必至」、一旦、悪評が立っても盛り返し可能なのだろうか。
タグ:M&A(一般) (その2)(日本製鉄・東京製綱問題(日本製鉄が東京製綱に振り上げた「拳」の威力 株式を買い増して「会長は退け」と詰め寄る、日鉄 東京製綱株を一部売却へ 敵対的TOBで3月に取得)、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産599億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<上>、任天堂「中興の祖」の孫が相続資産600億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<下>) 東洋経済オンライン「日本製鉄が東京製綱に振り上げた「拳」の威力 株式を買い増して「会長は退け」と詰め寄る」 分かり難いTOBだ。 伝統的大企業にとっては異例の「敵対的TOB」になった訳だ。 「田中会長は約20年も代表取締役に居続けている。2010年に田中氏が会長に就いて以降、現在の浅野正也氏で4人目の社長である」、どう考えても長過ぎるようだ。 「日本製鉄」にとっては、さほど重要性もないので、いい加減にみているのであれば、大問題だ。 このTOB自体は成立したが、その後、事態は次の記事のように、思いもかけない方向に展開した。 日経新聞 「日鉄、東京製綱株を一部売却へ 敵対的TOBで3月に取得」 「独占禁止法の運用指針で結合関係を判断する条件の一つになっている議決権の保有率を10%以下にする売却完了までは議決権行使を10%以下に抑える」、これでは結局、「日鉄」の「保有比率」はTOB前の「9.9%」に戻り、TOB騒動は単に田中前会長に退いてもらっただけということになる。「東京製綱」も独禁法から反対していれば、もっと恰好がついただろう。 日刊ゲンダイ 「任天堂「中興の祖」の孫が相続資産599億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<上>」 ファミリーオフィスの運用資産は1000億円を超えている 「ファミリーオフィス」は情報開示義務がないので、まさに「不透明」だ。 「アクティビスト」は初めのうちはネコをかぶって、紳士的だが、「本性を露わにした」からが勝負のようだ。 「任天堂「中興の祖」の孫が相続資産600億円超を元手に海外ファンドと企業乗っ取り<下>」 「海外ファンド」の「日本企業買収」の実態とは興味深そうだ。 「海外の黒目ファンド」の「日本企業買収」の実態とは興味深そうだ。 「通常の投資ファンドは外部の投資家から資金の委託を受けているため、決められた期間に一定の利回りを出さなければいけない。巨額資金に見合う説明責任があるので、投資先や投資手法にも倫理性が求められる。その点、ファミリーオフィスは資産家一族の資産だけを運用するので、一般の投資ファンドがコンプライアンス上の観点などで尻込みする投資手法や投資案件に手を出すことができる」、確かに「ファミリーオフィス」は弾力的な「運用」が可能なようだ。 「山内氏のファンド」が「短期間に2度も買収に失敗。金融業界で「拙速なファンド」だったとの評判が立つのは必至」、一旦、悪評が立っても盛り返し可能なのだろうか。
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