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保険(その8)(「ビッグモーター後の保険業界を「時限爆弾」から救う独立専門家の叡智」、「金融庁、損保ジャパンに「激甘行政処分」の舞台裏 構造問題への切り込みを先送りにした「怠慢」」、「SOMPO櫻田謙悟CEOがようやく退場…「大物財界人」を意識し“らしさ”を失った【政官財スキャニング】) [金融]

保険については、昨年5月15日に取上げた。今日は、(その8)(「ビッグモーター後の保険業界を「時限爆弾」から救う独立専門家の叡智」、「金融庁、損保ジャパンに「激甘行政処分」の舞台裏 構造問題への切り込みを先送りにした「怠慢」」、「SOMPO櫻田謙悟CEOがようやく退場…「大物財界人」を意識し“らしさ”を失った【政官財スキャニング】)である。

先ずは、昨年12月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフロンティア・マネジメント シニアディレクターの藤森涼恵氏による「ビッグモーター後の保険業界を「時限爆弾」から救う独立専門家の叡智」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336187
・『日本でも発展が期待される企業のための保険最適化  米国発の保険仲介業の動きが活発だ。彼らは日本企業向けにリスク管理に最適な保険契約の提案事業の拡大に乗り出している。 従来、日本の保険代理店は保険会社を含む様々な利害を考慮し、「総合的」な判断を基に保険を売ってきた。一方、米国では保険を購入する企業が抱える様々なリスクに照らし、当該企業に適切な保険商品を過不足なく選び提案する仲介業が活躍している。こうした保険仲介業者が、業務で培われた専門知識によって保険を最適化し、保険のかけ過ぎやかけ漏れを防ぎ、日本企業の利益に資する狙いだ。 ビッグモーターによる保険金不正請求問題では、代理店と損保会社のもたれ合いが保険契約者の不利益となっている可能性が指摘された。この問題が記憶に新しい今、高い専門性を持つプロによる保険最適化のニーズは高いと期待されている。 今回の不正請求問題が表出しなければ、企業は保険見直しの必要性を認知せず、不要な保険料を払い続けたかもしれない。もしくは逆に、企業にとって必要な保険が漏れたままだったかもしれない。そこで「プロの第三者による保険見直しにより最適化を実施しました」とステークホルダーにアピールするのは悪い話ではない。 「自社で保険の見直しを実施し、こうした点が問題と思われ、それを解決する保険商品がA、B、Cと思われたので、これこれの理由でBを選択しました。これにて最適化が実現できたと弊社は考えます」という説明は、前世紀ではさておき、現在では必要十分ではなかろう』、「・・・」という説明は、前世紀ではさておき、現在では必要十分ではなかろう」、「現在では必要十分」な「説明」を知りたいものだ。
・『客観性を担保するために 不可欠な第三者の存在  むしろ、「第三者専門家による見直しを実施し、保険契約の最適化を行いました」と簡潔明瞭に報告する方が、ステークホルダーや社会は好意的に受け入れるかもしれない。第三者の専門家による介入が客観性を担保し、企業の説明責任を果たす。 たとえばNTT東日本は、自社のサステナビリティ情報の客観性を「独立第三者の保証報告書」をウェブサイトに掲載することで担保している。独立の第三者の視点から企業内を監視し、不正や不祥事による信頼失墜の予防を目的の一つとして利害関係のない外部人材を取締役に加える社外取締役制度も、その存在自体に企業運営の質の担保を期待してのものと言える。 存在が客観性を担保してくれるなら、いかに客観性を担保しているかを長々と説明するよりよほど簡潔に済む。説明の準備時間を、社外取締役に適切な知見を持つ外部人材探しにあてれば良い』、「存在が客観性を担保してくれるなら、いかに客観性を担保しているかを長々と説明するよりよほど簡潔に済む。説明の準備時間を、社外取締役に適切な知見を持つ外部人材探しにあてれば良い」、その通りだ。
・『外部の人間にはわかるまいという歪みは「時限爆弾」  筆者はかつて米国で弁護士業に従事していたが、米国の裁判では独立した専門家(独立専門家)による客観性の担保が常識だ。企業と企業との間で行われる民事裁判において、損害賠償額が当事者企業の算定に依存することはまずない。 原告・被告それぞれが経済学者や公認会計士などの独立専門家を手配する。専門家は企業から提供された財務データを精査し、あるべき損害賠償額を客観的に証言する。独立専門家を携えずに裁判に臨めば負け戦だ。陪審員は当事者自前の数値ではなく「独立専門家の意見」という点のみでそちらを優先する 一般化し過ぎるとのご批判を承知で申し上げると、日本企業は独立専門家の戦略的活用が不得手かもしれない。多くが「外部の人間にはわかるまい」と考えがちだ。また、外部の専門家が見てわからない状態に問題がある、という点に不思議と頓着しない。さらに外部の参加を忌避する傾向が強い。歴史・文化的背景の影響かもしれないが、外部に晒されずに長年続く関係が歪みを生じさせる可能性は否めない。)この歪みは「外の人間にはわかるまい」で片付けられてはいけない。この歪みを内包し続けることは、今後さらに加速する企業の説明責任や開示義務を勘案しても時限爆弾になりこそすれ、利益にならない。 この時限爆弾が不祥事として爆発すれば、培われたブランド価値も一瞬で吹き飛ぶ。「自分が現役の間は爆弾が爆発しませんように」と祈るのではなく、次世代が安心して引き継げる組織を残すべく爆弾の解除に努めるべきだ』、「「自分が現役の間は爆弾が爆発しませんように」と祈るのではなく、次世代が安心して引き継げる組織を残すべく爆弾の解除に努めるべきだ」、その通りだ。
・『独立専門家の活用は「企業ドック」になる  独立専門家の意見を積極的に採り入れ、爆弾を解除することは、企業経営において人間ドックならぬ企業ドック的な意味合いもある。 我々外部コンサルティングの活用も客観的意見を取り入れるという点で同じだ。経験上、コンサルティングの使い方が残念な企業では、どんな診断や提案も「やはり外部の人間にはわからない」となり、コンサルタント活用は無駄な費用という苦い経験になる。 一方、コンサルタントの使い方が上手い企業は、外部コンサルタントを社内説得や社内変革の正当化のための道具として用いることで、費用対効果を最大化する。「客観的に評価させた結果、こうする方が良いという結論です」と、クライアントのプロジェクトチームが社内に説明する場面を我々も多数見てきた。 そしてサービスの提供側も、客観性担保の道具として都合よく使ってもらえるよう有資格者を揃えたり、上場して自らを開示義務に晒すなど社会的信用の確立に努めたりする構図になっている。 独立専門家の介入を企業の説明責任の代替として、戦略的に活用する余地は多分にある。自前主義の限界を見極め、手付かずのもたれ合い構造に別れを告げるときが来ているのではなかろうか。積極的に外部を介入させることで客観性を担保し、介入の事実にて説明責任を果たすことは、企業にとって効率の良い生き残り作戦の一つかもしれない』、「自前主義の限界を見極め、手付かずのもたれ合い構造に別れを告げるときが来ているのではなかろうか。積極的に外部を介入させることで客観性を担保し、介入の事実にて説明責任を果たすことは、企業にとって効率の良い生き残り作戦の一つかもしれない」、その通りだ。

次に、1月25日付け東洋経済オンライン「金融庁、損保ジャパンに「激甘行政処分」の舞台裏 構造問題への切り込みを先送りにした「怠慢」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/728437
・『中古車販売大手ビッグモーターによる保険金不正請求問題をめぐって、金融庁は1月25日、損害保険ジャパンと親会社のSOMPOホールディングスに対して、保険業法に基づく業務改善命令を出す方針だ。 金融庁は当初、保険会社が不正請求の隠蔽に加担するという悪質性などを踏まえ、損保ジャパンに対して一部業務停止の命令を加えることを視野に入れていた。改善命令に業務停止が加われば、行政処分としてはより重くなる。 ところが、4カ月間に及ぶ立ち入り検査を経て出した結論は、比較的軽い処分にとどめるというものだった。 金融庁のOBからは「腰砕け」「怠慢」などと批判的な声が相次いでいる。いったいなぜ金融庁は一部業務停止に踏み切れなかったのか。その舞台裏を探った』、「4カ月間に及ぶ立ち入り検査を経て出した結論は、比較的軽い処分にとどめるというものだった。 金融庁のOBからは「腰砕け」「怠慢」などと批判的な声が相次いでいる」、なるほど。
・『実質1営業日で処分を決定  そもそも今回の行政処分をめぐって、金融庁が処分内容について議論を尽くしたとはお世辞にも言えない。 金融庁が立ち入り検査を実質的に終えたのは1月18日、検査結果と処分内容を通知したのは同22日だ。通常は、検査終了後3週間前後の期間を経て処分を決めるが、今回はそれが実質1営業日。検査終了前から、処分の方向性を早々に固めていたとしか思えない。) 「ビッグモーターの経営がすでに立ち行かなくなっている状況で、新たな不正請求が生じるリスクはもはやない。であれば、不正請求防止のために、損保ジャパンの業務を一部停止するという理屈が立たない。ペナルティや見せしめとして停止するというのも、おかしな話だ」 金融庁のある幹部は、一部業務停止の判断に至らなかった経緯についてそう解説する。一見もっともらしい理由だが、これはあくまで建前とみられる。 別の幹部によると、その本音は「ビッグモーターに限らず、業界の中では不正請求が蔓延している。その多くを黙認しているという構造問題にまで切り込みたくない、先送りしたいという思いがあるからだ」という。 事実、トヨタ自動車系列の販売店(ディーラー)では、事故車の修理に伴う保険金の水増し請求が多発している。そうした不適切行為を未然防止できるように牽制機能を強力に働かせ、是正できる管理体制を構築できるまでは、損保ジャパンの一部業務を停止し、新たな不正請求の発生リスクを最小化すべきだろう。業務停止とする理屈も十分に立つはずだ』、「その本音は「ビッグモーターに限らず、業界の中では不正請求が蔓延している。その多くを黙認しているという構造問題にまで切り込みたくない、先送りしたいという思いがあるからだ」という。 事実、トヨタ自動車系列の販売店(ディーラー)では、事故車の修理に伴う保険金の水増し請求が多発している。そうした不適切行為を未然防止できるように牽制機能を強力に働かせ、是正できる管理体制を構築できるまでは、損保ジャパンの一部業務を停止し、新たな不正請求の発生リスクを最小化すべきだろう」、その通りだ。
・『「スーパーマンでもない限りとても手に負えない」  業務停止を免れた損保ジャパンからは「危なかった。セーフ(笑)」と安堵する声が漏れる(記者撮影) 一方で金融庁は、損保ジャパンをはじめ大手損保による保険料カルテル問題にも直面しており、その調査と対応に足元で忙殺されている。 その状況で、不正請求の黙認という業界に深く根差した構造問題にも切り込めば、「自動車整備などを所管する国土交通省との綿密な調整も必要になる。スーパーマンでもない限りとても手に負えない」(金融庁OB)という現実もある。 そもそも金融庁は当初から、ビッグモーターによる不正請求問題に正面から向き合おうとしてこなかった。 今から1年半前の2022年7月、金融庁はこの問題について損保ジャパンから任意報告を受けた。その報告は、工場長の指示に関する証言シートの改ざんについての事実を隠したものだった。「虚偽報告」だったことから、重大な不正事案と認識できなかったという言い訳が金融庁から聞こえてきそうだが、それは通用しない。) なぜなら、東京海上日動火災保険と三井住友海上火災保険の2社が同じ時期に金融庁へ、損保ジャパンが不正請求を黙認し単独で入庫再開している状況を逐一報告し、対応を働きかけていたからだ。 2社の報告を受けて、金融庁が早期に損保ジャパンに改めてヒアリングし、調査などの対応に乗り出していれば、ここまで問題が長引くことはなかった。ましてや、カルテル問題と同時並行での対応を迫られることもなかったはずだ』、「東京海上日動火災保険と三井住友海上火災保険の2社が同じ時期に金融庁へ、損保ジャパンが不正請求を黙認し単独で入庫再開している状況を逐一報告し、対応を働きかけていた、、なるほど。
・業務停止にしない理屈付けより先にすべきこと  保険会社が虚偽報告をしようが、不正請求の隠蔽に加担しようが、業務停止にはしないという前例をつくってしまった金融庁。上層部からはマスコミ対策として、「業務停止をしない理屈をしっかりと考えておけ」と指示が飛んでいるという。 だが、理屈付けに頭をひねっている暇があるのであれば、手始めに水増し請求をした自動車ディーラーにヒアリング調査し、いかに深く根差した構造問題であるか実態を見てみてはどうだろうか』、「理屈付けに頭をひねっている暇があるのであれば、手始めに水増し請求をした自動車ディーラーにヒアリング調査し、いかに深く根差した構造問題であるか実態を見てみてはどうだろうか」、筋論ではあるがその通りだ。

次に、1月31日付け日刊ゲンダイ「SOMPO櫻田謙悟CEOがようやく退場…「大物財界人」を意識し“らしさ”を失った【政官財スキャニング】」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/335485
・『官界通(以下=官) 中古車販売大手ビッグモーターによる保険金の不正請求問題が波及して大揺れだったSOMPOホールディングスで、なかなか辞任しなかった櫻田謙悟会長兼CEO(67)が、ようやく1月26日に退場を表明したな。 政界通(同=政) でも「引責辞任」とせず、「それは皆さんの判断にお任せしたい」と言った。パーティー券の販売収入を裏金にしていたことに責任を認めようとしない政治家と似ていて潔さが感じられない。 財界通(同=財) SOMPOグループ内でも最後まで「引責」を認めなかったようで、社内はゲンナリしていた。 官 櫻田氏は、そんな人じゃなかったのにね。1990年代末の金融危機後の損保業界再編で「会社をよくしたい」との心意気と説得力で2度にわたる合併を推進し、実現させた。もう10年以上前だが、社員たちの支持を集めて当然、トップになった。どうして、あんなに変わってしまったのかな? 財 2019年に経済同友会の代表幹事に選ばれた後、櫻田さんらしさを失ったと言う関係者が多いね。) 政 「大物財界人」になったという勘違いからか? 財 そんな感じもするが、産業別の業界団体が集まっていて「財界の総本山」と呼ばれる経団連や全国の商工会議所や商工会の頂点に立つ日商と比べれば、同友会は異質。論客は多いが、「財界人」と呼ぶような面々ではない。 官 確かに、同列にするには無理があるね。 財 でも、代表幹事はさまざまな場で経団連会長や日商会頭と並び、発言の機会も同様にあるから「大物財界人」のような気になっていた例がある。 官 そんな状況になると、周囲の言うことなど、もう聞かないな。 政 では、経営責任を指摘した金融庁に追い詰められて、逃げられなくなったということか? 財 それもあるが、SOMPOグループには人物がいて、櫻田氏と刺し違える形で追い詰めた気がする。 政 それが誰だと聞いても言わないだろうが、だとすればSOMPOグループにも希望はあるな』、「SOMPOグループには人物がいて、櫻田氏と刺し違える形で追い詰めた気がする。 政 それが誰だと聞いても言わないだろうが、だとすればSOMPOグループにも希望はあるな』、「櫻田氏と刺し違える形で追い詰めた」のは誰なのだろう。

第三に、 2月13日付けダイヤモンド・オンライン「SOMPOがビッグモーター問題で食らった行政処分、辛辣ワード満載の行政文書を深読み」の無料部分を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338780
・(有料)中古車販売大手のビッグモーターによる保険金不正請求に端を発した一連の問題は、SOMPOホールディングスと損害保険ジャパンに対する行政処分が下されたのに加え、両トップの辞任という幕切れを迎えた。そこで金融庁が公表した行政処分の文書をひも解くことで、改めて問題の所在を浮き彫りにする』、興味深そうだ。
・『厳しい言葉がずらりと並んだ金融庁の業務改善命令の文書(Qは聞き手の質問、Aは関係者の回答)  Q: 中古車販売大手ビッグモーター(BM)による保険金の不正請求をめぐる問題ですが、1月中旬から月末にかけて慌ただしかったですね。 A: そうですね。1月16日には、損害保険ジャパンの親会社SOMPOホールディングス(HD)が社外調査委員会による最終報告書を公表しました。そして、同25日には金融庁がSOMPOHDと損保ジャパンに対して業務改善命令を下し、翌26日には両社が記者会見を開きました。 Q:金融庁による記者への説明会や記者会見も長い時間がかかったそうですね。 A:記者説明会は2時間超、記者会見は3時間超と共に長丁場でした。金融庁による行政処分の中身や、会見ではSOMPOHDの櫻田謙悟グループCEOの経営責任に加え、社外取締役で指名委員会委員長のスコット・トレバー・デイヴィス氏も登壇したこともあり、質問が途切れませんでしたね。 Q:今回、金融庁や調査委員会が指摘した内容とはどのようなものでしょうか。 A:26日の会見でSOMPOHDと損保ジャパンが公表した資料を見ると分かりやすいと思います。 (SOMPOホールディングス(SOMPOホールディングスと損保ジャパンが公表した、金融庁検査で指摘された問題の真因と社外調査委員会による原因分析 はリンク先参照) Q: 「歴代社長を含む経営陣の下で醸成された企業文化」が断罪されたのですね。 A :「顧客の利益より自社の営業成績に価値を置く」や「上司の決定に異議を唱えない上意下達」、「ネガティブな情報が適時適切に報告されない」など、金融庁はかなり厳しい指摘をしています。 Q: 金融庁が公表した行政処分の文書を読みましたが、辛辣な言葉が多かったですね。 A: そうですね、ちなみに、公表された文書は13ページの概要版ですが、両社が提示された完全版は100ページほどあるようです。概要版は処分事由だけをピックアップしたものですが、完全版の方には体制面も含めてかなりシビアに指摘しているようですね。 Q: 100ページですか。相当細かく検査したのでしょうね。 A: そのようです。ヒアリングだけでなく、メールの復元や、役員間の情報共有に使用しているコミュニケーションツールも全てデジタルフォレンジックにて検査を行い、主要人物に関しては過去10年分をチェックしたようです。 Q: そんなに調べたのですね!その結果が100ページの完全版だと。でも、「業務停止処分が出るのでは?」とのうわさもありましたが、結局は業務改善命令にとどまりましたね』、「記者説明会は2時間超、記者会見は3時間超と共に長丁場でした・・・公表された文書は13ページの概要版ですが、両社が提示された完全版は100ページほどあるようです。概要版は処分事由だけをピックアップしたものですが、完全版の方には体制面も含めてかなりシビアに指摘しているようです」、無料部分だけではよく分からないが、それでも相当厳しい内容のようだ。
タグ:保険 (その8)(「ビッグモーター後の保険業界を「時限爆弾」から救う独立専門家の叡智」、「金融庁、損保ジャパンに「激甘行政処分」の舞台裏 構造問題への切り込みを先送りにした「怠慢」」、「SOMPO櫻田謙悟CEOがようやく退場…「大物財界人」を意識し“らしさ”を失った【政官財スキャニング】) ダイヤモンド・オンライン 藤森涼恵氏による「ビッグモーター後の保険業界を「時限爆弾」から救う独立専門家の叡智」 「・・・」という説明は、前世紀ではさておき、現在では必要十分ではなかろう」、「現在では必要十分」な「説明」を知りたいものだ。 「存在が客観性を担保してくれるなら、いかに客観性を担保しているかを長々と説明するよりよほど簡潔に済む。説明の準備時間を、社外取締役に適切な知見を持つ外部人材探しにあてれば良い」、その通りだ。 「「自分が現役の間は爆弾が爆発しませんように」と祈るのではなく、次世代が安心して引き継げる組織を残すべく爆弾の解除に努めるべきだ」、その通りだ。 「自前主義の限界を見極め、手付かずのもたれ合い構造に別れを告げるときが来ているのではなかろうか。積極的に外部を介入させることで客観性を担保し、介入の事実にて説明責任を果たすことは、企業にとって効率の良い生き残り作戦の一つかもしれない」、その通りだ。 東洋経済オンライン「金融庁、損保ジャパンに「激甘行政処分」の舞台裏 構造問題への切り込みを先送りにした「怠慢」」 「4カ月間に及ぶ立ち入り検査を経て出した結論は、比較的軽い処分にとどめるというものだった。 金融庁のOBからは「腰砕け」「怠慢」などと批判的な声が相次いでいる」、なるほど。 「その本音は「ビッグモーターに限らず、業界の中では不正請求が蔓延している。その多くを黙認しているという構造問題にまで切り込みたくない、先送りしたいという思いがあるからだ」という。 事実、トヨタ自動車系列の販売店(ディーラー)では、事故車の修理に伴う保険金の水増し請求が多発している。そうした不適切行為を未然防止できるように牽制機能を強力に働かせ、是正できる管理体制を構築できるまでは、損保ジャパンの一部業務を停止し、新たな不正請求の発生リスクを最小化すべきだろう」、その通りだ。 「東京海上日動火災保険と三井住友海上火災保険の2社が同じ時期に金融庁へ、損保ジャパンが不正請求を黙認し単独で入庫再開している状況を逐一報告し、対応を働きかけていた、、なるほど。 「理屈付けに頭をひねっている暇があるのであれば、手始めに水増し請求をした自動車ディーラーにヒアリング調査し、いかに深く根差した構造問題であるか実態を見てみてはどうだろうか」、筋論ではあるがその通りだ。 日刊ゲンダイ「SOMPO櫻田謙悟CEOがようやく退場…「大物財界人」を意識し“らしさ”を失った【政官財スキャニング】」 「櫻田氏と刺し違える形で追い詰めた」のは誰なのだろう。 ダイヤモンド・オンライン「SOMPOがビッグモーター問題で食らった行政処分、辛辣ワード満載の行政文書を深読み」 無料部分 「記者説明会は2時間超、記者会見は3時間超と共に長丁場でした・・・公表された文書は13ページの概要版ですが、両社が提示された完全版は100ページほどあるようです。概要版は処分事由だけをピックアップしたものですが、完全版の方には体制面も含めてかなりシビアに指摘しているようです」、無料部分だけではよく分からないが、それでも相当厳しい内容のようだ。
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株式・為替相場(その19)(「円安の終わりはアメリカ次第」という思い込み 円より安いのはロシア・トルコ・アルゼンチン、なぜ株価はほとんどいつも上がっているのか? ただし「10年に1度の暴落」も近いかもしれない、岸田内閣で株価上昇は「幻想」だ! 株・不動産の高騰の真相は「円の劣化」) [金融]

株式・為替相場については、昨年8月31日に取上げた。今日は、(その19)(「円安の終わりはアメリカ次第」という思い込み 円より安いのはロシア・トルコ・アルゼンチン、なぜ株価はほとんどいつも上がっているのか? ただし「10年に1度の暴落」も近いかもしれない、岸田内閣で株価上昇は「幻想」だ! 株・不動産の高騰の真相は「円の劣化」)である。

先ずは、昨年8月31日付け東洋経済オンラインが掲載した みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「「円安の終わりはアメリカ次第」という思い込み 円より安いのはロシア・トルコ・アルゼンチン」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/698309
・『早いもので夏が終わろうとしている。 年初に支配的だったドル円相場のシナリオは、「早ければ3月、遅くとも5月にFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の利上げは停止。夏を境に利下げ機運が高まり、これに伴って円高・ドル安が進む」といったものだった。 現実はまだ利上げも円安も続いており、円安に至っては加速している。すぐに反転したものの、8月29日夜には年初来高値である1ドル147円を突破した。 なお、「早ければ3月、遅くとも5月にFRBの利上げは停止」という見通しは筆者も同様であったが、同時に「利上げ停止の直後に利下げが議論されるわけではない」といった主張を続け、米金利が円高のトリガーをひくという想定には否定的な立場を示してきた』、確かに円安は止まるところを知らずに進行している。
・『「FRB頼み」で円相場を見通す危うさ  現状の為替市場を見渡すと、いまだに「米金利低下と共に円高になるというシナリオが後ずれしているだけ」という論調は多く、「FRB頼み」の風潮は強い。だが、そのようなシナリオメークはやはり同意しかねる。 確かに円安のピークアウト時期を見極めるにあたって、米金利と円相場の関係性に着目することは有用だと思う。歴史的にもそれは奏功してきた。 しかし、そうした米金利動向に依存した円相場見通しでは「なぜここまで大幅な円安が進んでいるのか」という根本的な問いに答えられないように思う。) 主要通貨の年初来の対ドル変化率を見ると、円(マイナス11%)よりも下落幅が大きい通貨はロシアルーブル(マイナス33%)とトルコリラ(マイナス42%)、そしてアルゼンチンペソ(マイナス97%)しかない。 アルゼンチンペソは図表が崩れるので掲載を控えた G7に所属する国・地域の通貨(英ポンド、ユーロ、カナダドル)はほぼ対ドルで横ばいか上昇しているので、日本という国の属性(先進国)を考えれば明らかに異質な立ち位置であることがわかる』、「主要通貨の年初来の対ドル変化率を見ると、円(マイナス11%)よりも下落幅が大きい通貨はロシアルーブル(マイナス33%)とトルコリラ(マイナス42%)、そしてアルゼンチンペソ(マイナス97%)しかない」、これはショッキングな事実だ。
・『1ドル=152円の昨秋より安い  しかも、この構図は2022年から1年半続いている。 日本では円安の理由として「アメリカの利上げが長引いている」という事実が持ち出されやすいが、そもそも2023年はドル高ではないのでその説明は不十分である(詳しくは2023年8月17日配信のコラム『「どうせ円高に戻るはず」という時代遅れの発想』をご参照)。 むしろ、ここまで「円独歩安」のような状況が続いている以上、日本側の要因に関心を向けるのが普通の分析姿勢ではないのか。 ちなみに主要貿易相手国に対する円相場(いわゆる実効相場)の変化率を見ると、名目・実質の双方で年初来はもちろん、1ドル152円に迫った昨年10月と比較しても下落している。 アメリカを含めた主要貿易相手国通貨に対して継続的かつ広範囲に売りが続いているというのが円相場の現実である。アメリカの情勢は言うまでもなく重要だが、日本の情勢を理解する必要性も確実に高まっている。) なお、あくまで杞憂に過ぎないものだが、一応紹介しておきたい論点がある。 年初来で円よりも下落幅が大きかったロシアルーブル、トルコリラ、アルゼンチンペソはいずれも高インフレで購買力が毀損している通貨の代表格である。それは恐らく為替に詳しくない読者でも知っているのではないか』、「年初来で円よりも下落幅が大きかったロシアルーブル、トルコリラ、アルゼンチンペソはいずれも高インフレで購買力が毀損している通貨の代表格、、不名誉この上ないことだ。
・『日本のインフレは米欧に近づいてきた  日本がその仲間に入っているとは思わないが、現時点で消費者物価指数(CPI)の上昇率はアメリカを上回り(ユーロ圏にも肉薄し)、それでもマイナス金利を堅持する方針を示していることが、インフレ抑制という観点から不安を抱かせ、円売りにつながっているという説は一応筋が通っている。 特に日本の事情がよくわからない海外市場参加者からすれば腹落ちしやすいテーマだろう。 ジャクソンホール経済シンポジウムの日米欧中銀総裁の言動を見る限り、「タカ派の欧米 vs. ハト派の日本」という構図は今後1年で簡単に変わりそうにない。とすれば、「日本はインフレを制御できるのか」が海外市場を中心としてにわかにテーマ視されるような展開には構えておきたい。 もちろん、今はまだ話半分以下でよく、リスクシナリオとしてもマイナーな部類だが、頭の片隅には置いておきたい論点である。)日本側の要因を主体として先行きを分析した場合、行き着くところは日本だけマイナス金利であることや、需給環境において外貨流出が大きくなっているという従前から言われている事実である。 金利と需給。いずれの理由を重く見るかという点は論者により異なるものの、FRBが利上げを停止して、いずれ利下げ転換する動きがあったとしても、それで日銀がマイナス金利解除に至る理由はないし、もちろん貿易収支やサービス収支の赤字が小さくなったりする理由もないだろう。 ゆえに円相場の現状や展望を検討する際、FRBの挙動は目先の方向感を多少規定することはあっても、「かつてのような円高に戻る」と主張するには材料として不十分だというのが筆者の認識である』、「ジャクソンホール経済シンポジウムの日米欧中銀総裁の言動を見る限り、「タカ派の欧米 vs. ハト派の日本」という構図は今後1年で簡単に変わりそうにない・・・FRBが利上げを停止して、いずれ利下げ転換する動きがあったとしても、それで日銀がマイナス金利解除に至る理由はないし、もちろん貿易収支やサービス収支の赤字が小さくなったりする理由もないだろう。 ゆえに円相場の現状や展望を検討する際、FRBの挙動は目先の方向感を多少規定することはあっても、「かつてのような円高に戻る」と主張するには材料として不十分だというのが筆者の認識である」、なるほど。
・『「日米金利差」で語る限界  言い方を変えると「アメリカ要因だけでかつての円高を取り戻すのは難しい」という話である。 この点、「日本は経常黒字国だからいずれ円高に戻る」という主張はいまだ目にするが、「会計上の黒字」と「実務上の赤字」を混同してはならない。黒字の源泉となっている第1次所得収支は外貨のまま再投資される割合が大きく、黒字が額面通りの円買いを意味しない可能性を直視すべきだ。 FRBの政策運営の方向感(タカなのかハトなのか)といった論点、いわゆる日米金利差の拡大・縮小に応じて先行きを読もうとするアプローチは「円安のピークアウト時期」を特定するには有用かもしれないが、「1ドル=120~140円のレンジが常態化してしまったドル円相場」、もしくは実質実効為替相場などに象徴される「安い日本」の背景を解き明かすにはさほど役に立たない材料である。 日米金利差はシナリオの方向感を、需給環境は円相場の地力を規定する論点と考え、展望を作っていきたいと思う』、「「日本は経常黒字国だからいずれ円高に戻る」という主張はいまだ目にするが、「会計上の黒字」と「実務上の赤字」を混同してはならない。黒字の源泉となっている第1次所得収支は外貨のまま再投資される割合が大きく、黒字が額面通りの円買いを意味しない可能性を直視すべきだ・・・日米金利差の拡大・縮小に応じて先行きを読もうとするアプローチは「円安のピークアウト時期」を特定するには有用かもしれないが、「1ドル=120~140円のレンジが常態化してしまったドル円相場」、もしくは実質実効為替相場などに象徴される「安い日本」の背景を解き明かすにはさほど役に立たない材料である」、なるほど。

次に、本年1月20日付け東洋経済オンラインが掲載した 慶應義塾大学大学院教授の小幡 績氏による「なぜ株価はほとんどいつも上がっているのか? ただし「10年に1度の暴落」も近いかもしれない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/729097
・『日本株が力強い上昇を続けている。 2024年の大発会(4日)は、大地震、航空機事故と不幸な出来事の連続で、寄り付きから大幅下落で始まった。だが、代表的な株価指標である日経平均株価はすぐさまマイナス幅を急速に縮小して終えた。 この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています【2024年1月5日編集部追記】2024年1月1日、山崎元さんは逝去されました。心から哀悼の意を捧げ、ご冥福をお祈りします)。記事の一覧はこちら 2日目の5日には早くも昨年末を上回り、この日を含めて15日まで6営業日連続で上昇した。しかも1日で500円、600円以上も上昇する日も多く、あっという間に、平成バブル崩壊以来約33年ぶりの高値を連日のように更新し、ついに3万6000円台を付けた。 米国株が下落しようが何だろうが、上がり続けた。これはあまり見ない光景である。足元では一息ついたように見えるが、多くの市場関係者は、今年は今後も上昇が続き、2022年、2023年に続き、米国株を上回る上昇と続けると予想している』、「多くの市場関係者は、今年は今後も上昇が続き、2022年、2023年に続き、米国株を上回る上昇と続けると予想している」、なるほど。
・『株価は世界的に常に上がってきた  なぜ、株価は上がるのだろうか?巷では、「なぜ今株価がこんなに上がっているのか」と、NHKでさえ扱うほどで、素朴な驚きとともに、いろいろな解説ニュースが氾濫している。 「新NISA(少額投資非課税制度)が始まったから」、とか何とかいろいろな解説がなされているが、もちろん、私は、そんなことに興味はない。今回のテーマは、日本株が今年上がるかどうかという話ではなく、「なぜ株はほとんどいつも上がっているのか」「そもそも株というものは、なぜ値上がりするのか?」という話である。 実際、株価は世界的には常に上がってきた。確かに日本にいると、1989年12月29日の3万8915円というバブル期最高値から下がり続け、ようやく最高値をうかがうところまで戻ってきた」ということになる。) だが、アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱になっている。アメリカは常に例外だが、ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている。このように株価というのは上がるものなのである。ここでは日本が例外だ。 しかし、日本に関しても、実はほとんどの期間、株は上がっている。ただ、1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない。実際、この10年を見ると、日経平均は2014年から2023年の10年間で8回上昇している』、「アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱に・・・ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている・・・1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない」、なるほど。
・『株価はおおむね「9割の時間帯」で上昇している  その理由は何か。 「どうせオバタのことだ。要は『それはバブルだから』ということだろ」と思われるだろうが、今回の小幡は違う。バブルであることもそうなのだが、もう少し細かい構造と投資家心理の話をしよう。 まず、第1に、株価というものは、普通の時は右上がりを続け、ある瞬間、暴落が起きて、一気に調整する。そして、そこから上昇トレンドを再開する。この繰り返しなのだ。 おおむね、9割の期間、小さい上げ下げを繰り返しながら(典型的には3四半期、9カ月上がって、1回四半期で下げて、また3四半期上昇する)、上昇を続け、突然暴落し、1割の期間で調整する。「10年に1度、金融危機が来る」というのはそういうことなのである(ラリー・サマーズ元財務長官は、2008年のリーマンショックの時に『100年に1度の危機は10年に1度来る』という名言を残した)。だから、基本、多くの場合、株価は上がっている。 それで、株式投資が好きな個人は、いつも上がるから、上昇トレンドに乗ろうとする。株式投資をしない人々(だから、普段は株価水準など気にしない)は、暴落のニュースだけをテレビなどで見て「ああ、株って怖いな」と思って、株式投資を避ける。 個人向けのファンドマネージャーも、基本は買い続ける。なぜなら、買いトレンドが起きているときしか、つまり、上がり続けているときしか、個人は投資を増やそうとはしないからだ。 「これから株を始めてみよう」と思って投資信託を買う人は、そういうときしか、重い腰を上げないし、避けていたところに、恐る恐る近寄ってこないものだからだ。そして毎日「日経平均がいくら上がったか」を急に気にするようになる。 そうすると、「あ、今日は日経上がった、自分のファンドも値上がりしているだろう」、と思って、ファンドの基準価格や自分の資産の時価を見ると(ネット口座になって、本当にリアルタイムの自己資産がわかるようになり、こういうことは便利になった)、「あれ、あんまり上がってない。なんだよ!」などと、怒りを証券会社やファンドマネージャーにぶつけたくなる人も多い。) 証券会社からは「リスク分散や、リスク回避のためにディフェンシブな銘柄が多かったり、株式以外の資産も入っていたりするのです」などと説明されるかもしれない。顧客にとってみれば「そんなのよりも、ちゃんと上がる商品を売ってくれよ!」となる。 だから、個人には日経平均に連動性が高く、流動性やボラティリティ(変動率)の大きい大型株が人気になるし、投資信託も値動きに勢いがある「成長系」などが人気になる。ファンドマネージャーや運用会社、それを取り次ぐ証券会社は、それが正しくないと思っていても、そういうものを組成し、運用し、売りまくるのである』、「個人には日経平均に連動性が高く、流動性やボラティリティ(変動率)の大きい大型株が人気になるし、投資信託も値動きに勢いがある「成長系」などが人気になる。ファンドマネージャーや運用会社、それを取り次ぐ証券会社は、それが正しくないと思っていても、そういうものを組成し、運用し、売りまくるのである」、なるほど。
・『「プロ」運用者の手法も、個人と大差なし  プロの運用者である機関投資家のファンドマネージャーも、似たり寄ったりである。彼らもサラリーマンだったり、ランキングで評価されて、投資家に選ばれたりする存在である。 したがって、絶対的なリターンよりも相対評価で生きている。基本は、日経平均やTOPIX(東証株価指数)などのインデックスに対して、どれだけ勝ったかで評価される。 しかし、現実的にもっと強力な比較基準は「ライバルに比べてどのくらいパフォーマンスがいいか」ということになる。なんとしても隣のファンドマネージャーに勝たないといけないのである。 そうでないと、GPIF(年金積立管理運用独立行政法人)などから資金ももらえなくなるかもしれないし、企業年金の資金も入らない。だから、上がるときに上がる運用になってしまう。 実際は、インデックスにちょっと色をつけて個性を出すのだが、その争いになったときに、ライバルよりも「上がるときにより上がるポートフォリオ」を組む。そして、ビリはまずい。資金を引き揚げられてしまい、クビになるからだ。だから、ある程度はインデックスについていく。 つまり、ほとんどすべての投資家は、上がる方向に賭けているか、少なくとも、下がるよりも上がる方向にバイアスを持って投資しているのである。だから、上昇トレンドの方が起きやすいし、上昇トレンドがあるときに、それにレバレッジを賭けたかのように、上昇トレンドが強まるのである。) 第2に、彼ら、個々の投資家がベンチマークとするインデックス自体が、上昇バイアスがある。NYダウはわずか30銘柄だし、S&P500種指数の銘柄も、もちろん上昇が期待される銘柄を選んできている。 正確に言うと、もう退屈になり、上昇力が失われた株は、こうしたインデックスから取り除かれる。一方、企業の側としては、こういう退屈な企業になって投資家から逃げられることを避けるために、成長力の代わりに財務を強化して、株主還元を徹底的に行ったり、あるいは、M&AでPER(株価収益率)が高い業種の企業を買収し、成長セクターを取り込もうとしたりする。コカ・コーラやP&Gはその典型例である。 インデックスの側としては、このような企業が成長性の取り込みに失敗して投資家にとっても魅力が下がれば、似た業界だが新しく成長性が高く見える企業をインデックスに取り入れ、指標銘柄を交代させる。 入れ替えは実際にはもっと客観的な基準に基づいて行われてはいるが、結果的に起きているのはそういうことだ。そして、この入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる』、「ほとんどすべての投資家は、上がる方向に賭けているか、少なくとも、下がるよりも上がる方向にバイアスを持って投資しているのである。だから、上昇トレンドの方が起きやすいし、上昇トレンドがあるときに、それにレバレッジを賭けたかのように、上昇トレンドが強まるのである。) 第2に、彼ら、個々の投資家がベンチマークとするインデックス自体が、上昇バイアスがある。NYダウはわずか30銘柄だし、S&P500種指数の銘柄も、もちろん上昇が期待される銘柄を選んできている。 正確に言うと、もう退屈になり、上昇力が失われた株は、こうしたインデックスから取り除かれる。一方、企業の側としては、こういう退屈な企業になって投資家から逃げられることを避けるために、成長力の代わりに財務を強化して、株主還元を徹底的に行ったり、あるいは、M&AでPER(株価収益率)が高い業種の企業を買収し、成長セクターを取り込もうとしたりする・・・この入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる」、なるほど。
・『日経平均は2000年に銘柄を入れ替えすぎたことも  少し古くなるが、代表的なケースは2000年4月に起こった、「日経平均30銘柄同時入れ替え事件」である。このときは日経平均が実質2000円以上も下落した崩壊要因となったと、今でも言われている。つまり、当時は、それまでは大々的に意図的な入れ替えを行っていなかった日経平均が「時代に即して」という理屈で、突然30銘柄の入れ替えとなった。 それはそれでいいのだが、日本では、この規模の入れ替えは前代未聞であったから、10日間の猶予が与えられた。つまり、発表が同年の4月14日金曜日の引け後で、実際の入れ替え実施が4月24日月曜日の寄り付きからということにしたので、2回週末の猶予があり、5営業日はまるまる取引のチャンスができた。 その結果、どうなったか。この5日間に外される銘柄は平均で20%以上下がり、新たに組み入れられる銘柄は平均でも20%近くも上がった。「入れ替えバブル」である。つまり、20%の下げの影響はインデックスに反映され、強烈な上げの影響はインデックスに入る前だった。 さらに影響が大きかったのは、組み入れ後、20%上がってから入った銘柄は暴落した。そして、日経平均を計算する際の特殊なウェイト付け方法によって、組み入れ銘柄にいわゆる値ガサ株(1株の価格の数字が大きい銘柄。1株100円の銘柄と1株1万円の銘柄ではウェイト付けに100倍の違いがある。これがファーストリテイリングの取引と日経平均の取引でアルゴリズム的に仕掛けるトレーダーがいる理由である)が多かったから、暴落の影響は大きかった。) だが、アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱になっている。アメリカは常に例外だが、ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている。このように株価というのは上がるものなのである。ここでは日本が例外だ。 しかし、日本に関しても、実はほとんどの期間、株は上がっている。ただ、1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない。実際、この10年を見ると、日経平均は2014年から2023年の10年間で8回上昇している』、「アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱になっている。アメリカは常に例外だが、ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている。このように株価というのは上がるものなのである。ここでは日本が例外だ。 しかし、日本に関しても、実はほとんどの期間、株は上がっている。ただ、1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない。実際、この10年を見ると、日経平均は2014年から2023年の10年間で8回上昇している」、なるほど。
・『株価はおおむね「9割の時間帯」で上昇している  その理由は何か。 「どうせオバタのことだ。要は『それはバブルだから』ということだろ」と思われるだろうが、今回の小幡は違う。バブルであることもそうなのだが、もう少し細かい構造と投資家心理の話をしよう。 まず、第1に、株価というものは、普通の時は右上がりを続け、ある瞬間、暴落が起きて、一気に調整する。そして、そこから上昇トレンドを再開する。この繰り返しなのだ。 おおむね、9割の期間、小さい上げ下げを繰り返しながら(典型的には3四半期、9カ月上がって、1回四半期で下げて、また3四半期上昇する)、上昇を続け、突然暴落し、1割の期間で調整する。「10年に1度、金融危機が来る」というのはそういうことなのである(ラリー・サマーズ元財務長官は、2008年のリーマンショックの時に『100年に1度の危機は10年に1度来る』という名言を残した)。だから、基本、多くの場合、株価は上がっている。 それで、株式投資が好きな個人は、いつも上がるから、上昇トレンドに乗ろうとする。株式投資をしない人々(だから、普段は株価水準など気にしない)は、暴落のニュースだけをテレビなどで見て「ああ、株って怖いな」と思って、株式投資を避ける。 個人向けのファンドマネージャーも、基本は買い続ける。なぜなら、買いトレンドが起きているときしか、つまり、上がり続けているときしか、個人は投資を増やそうとはしないからだ。 「これから株を始めてみよう」と思って投資信託を買う人は、そういうときしか、重い腰を上げないし、避けていたところに、恐る恐る近寄ってこないものだからだ。そして毎日「日経平均がいくら上がったか」を急に気にするようになる。 そうすると、「あ、今日は日経上がった、自分のファンドも値上がりしているだろう」、と思って、ファンドの基準価格や自分の資産の時価を見ると(ネット口座になって、本当にリアルタイムの自己資産がわかるようになり、こういうことは便利になった)、「あれ、あんまり上がってない。なんだよ!」などと、怒りを証券会社やファンドマネージャーにぶつけたくなる人も多い。)  第2に、彼ら、個々の投資家がベンチマークとするインデックス自体が、上昇バイアスがある。NYダウはわずか30銘柄だし、S&P500種指数の銘柄も、もちろん上昇が期待される銘柄を選んできている。 正確に言うと、もう退屈になり、上昇力が失われた株は、こうしたインデックスから取り除かれる。一方、企業の側としては、こういう退屈な企業になって投資家から逃げられることを避けるために、成長力の代わりに財務を強化して、株主還元を徹底的に行ったり、あるいは、M&AでPER(株価収益率)が高い業種の企業を買収し、成長セクターを取り込もうとしたりする。コカ・コーラやP&Gはその典型例である。 インデックスの側としては、このような企業が成長性の取り込みに失敗して投資家にとっても魅力が下がれば、似た業界だが新しく成長性が高く見える企業をインデックスに取り入れ、指標銘柄を交代させる。 入れ替えは実際にはもっと客観的な基準に基づいて行われてはいるが、結果的に起きているのはそういうことだ。そして、この入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる』、「入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる」、なるほど。
・『日経平均は2000年に銘柄を入れ替えすぎたことも  少し古くなるが、代表的なケースは2000年4月に起こった、「日経平均30銘柄同時入れ替え事件」である。このときは日経平均が実質2000円以上も下落した崩壊要因となったと、今でも言われている。つまり、当時は、それまでは大々的に意図的な入れ替えを行っていなかった日経平均が「時代に即して」という理屈で、突然30銘柄の入れ替えとなった。 それはそれでいいのだが、日本では、この規模の入れ替えは前代未聞であったから、10日間の猶予が与えられた。つまり、発表が同年の4月14日金曜日の引け後で、実際の入れ替え実施が4月24日月曜日の寄り付きからということにしたので、2回週末の猶予があり、5営業日はまるまる取引のチャンスができた。 その結果、どうなったか。この5日間に外される銘柄は平均で20%以上下がり、新たに組み入れられる銘柄は平均でも20%近くも上がった。「入れ替えバブル」である。つまり、20%の下げの影響はインデックスに反映され、強烈な上げの影響はインデックスに入る前だった。 さらに影響が大きかったのは、組み入れ後、20%上がってから入った銘柄は暴落した。そして、日経平均を計算する際の特殊なウェイト付け方法によって、組み入れ銘柄にいわゆる値ガサ株(1株の価格の数字が大きい銘柄。1株100円の銘柄と1株1万円の銘柄ではウェイト付けに100倍の違いがある。これがファーストリテイリングの取引と日経平均の取引でアルゴリズム的に仕掛けるトレーダーがいる理由である)が多かったから、暴落の影響は大きかった。) 同時に、抜けた銘柄はウェイトが小さい銘柄が多かったことで、入れ替えがなかった残りの195銘柄は、入れ替え前と入れ替え後でウェイトが大幅に低下することとなった。実際、それに連動して、入れ替え準備の5日間で、これら195銘柄も平均で8%程度下落した。この入れ替え事件によって、日経平均は全体で見ても10%前後、損したのである。 一方、入れ替えをサプライズでうまくやれば、上昇トレンドを強化することができる。あるいは自然に上昇が起こる。だから、銘柄を入れ替えるインデックスの方が上がりやすい。だから面白い。これも日経平均からTOPIXへの先物トレードの移行が起きない1つの理由である。前者の方が値動きが大きく派手なのだ。 さて、株価というものは上がるものだ、という現象には、さらに細かい理由がいくつかある。まず、インフレである。モノがインフレであれば、資産もインフレにならなければ辻褄が合わない。企業の売り上げも、利益も、インフレ分膨らむから、名目の株価は上がるものである。 次に、金利がある。普通の債券(アメリカの国債など)に金利が付く、ということは、株式投資をすると、その金利プラスリスクプレミアム分は、株価が上がらないと、株式投資をすることに辻褄が合わない。だから、金利がプラスで付く以上、平均的には、株価は上がらないといけないし、リスクプレミアム分、金利よりも上昇率は高くないといけない。だから、上昇トレンドは必須である。 さらに、1980年以降、先進国はおおむね金利は低下傾向にあった。インフレが収まったからであるが、予期せず金利が低下するということは、ご存じのように、株価は上昇することになる。 一方、いったん金利が下がり切ってしまうと、後は金利は上がるしかないから、株価は下がることになるし、同時に、前述の、債券を持っていると得られる利子に見合った上昇、あるいは配当がないと株式投資をしないから、株価の上昇率は金利と見合いだ、ということになると、金利がゼロになれば、株価も上がらなくてもつじつまが合う。 だから、二重の意味で、金利ゼロの世界からプラスに戻っていくと、株価は大きく下がるのである。一方、世界的な金利低下トレンドにあったこの30年は、株価が上がり続けたのである。 付け加えると、アメリカなどでは、配当すると二重課税になるため、配当を嫌って自己(自社)株買いをする傾向があるから、日経平均のように配当権利落ちの額が少なく、上がり続けることになる。実際、日経平均も配当込みで計算すると、NYダウに対してもう少しキャッチアップできることはよく知られている』、「金利がゼロになれば、株価も上がらなくてもつじつまが合う。 だから、二重の意味で、金利ゼロの世界からプラスに戻っていくと、株価は大きく下がるのである。一方、世界的な金利低下トレンドにあったこの30年は、株価が上がり続けたのである。 付け加えると、アメリカなどでは、配当すると二重課税になるため、配当を嫌って自己(自社)株買いをする傾向があるから、日経平均のように配当権利落ちの額が少なく、上がり続けることになる。実際、日経平均も配当込みで計算すると、NYダウに対してもう少しキャッチアップできることはよく知られている」、なるほど。
・『株はそもそも上がることが構造的に決まっている  このように見てくると、株価はそもそも上がることが構造的に決まっていることになる。これが実は、見かけ以上に重要である。こういうトレンドがあるならば、上昇トレンドに乗るのが、投資の王道、必勝法である。だから、みんな株を買う。この構造をわかっていても、いなくても、株を買う。株を買う人ばかりになるのである。 だから、株は上がる。ただ、それだけのことなのだ。暴落が来たときは、いち早く逃げるか、売りに転じて儲けるか、あるいは、政府や中央銀行に救済させ、税金で負担をさせ、このトレンドに乗らなかった人々ともコストをシェアする。そういうことなのだ。これが派手に起きているときは、バブルとその後の崩壊となり、地味に起きているときは、普通の株価上昇トレンドの世の中になるのである。 個人的には、そろそろ「10年に1度のとき」だと思っているが、どうなるか(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が週末のレースなどに予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい)』、「株価はそもそも上がることが構造的に決まっていることになる。これが実は、見かけ以上に重要である。こういうトレンドがあるならば、上昇トレンドに乗るのが、投資の王道、必勝法である。だから、みんな株を買う。この構造をわかっていても、いなくても、株を買う。株を買う人ばかりになるのである。 だから、株は上がる。ただ、それだけのことなのだ。暴落が来たときは、いち早く逃げるか、売りに転じて儲けるか、あるいは、政府や中央銀行に救済させ、税金で負担をさせ、このトレンドに乗らなかった人々ともコストをシェアする。そういうことなのだ。これが派手に起きているときは、バブルとその後の崩壊となり、地味に起きているときは、普通の株価上昇トレンドの世の中になるのである。 個人的には、そろそろ「10年に1度のとき」だと思っているが、どうなるか』、「個人的には、そろそろ「10年に1度のとき」だと思っているが、どうなるか」、「10年に1度の暴落」は困るが、さてどうなるのだろう。

第三に、2月6日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリスト・千葉商科大学教授の磯山 友幸氏による「岸田内閣で株価上昇は「幻想」だ! 株・不動産の高騰の真相は「円の劣化」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/123896
・『「金建て」では内閣発足以来2割下落:実は株価は下落している  「30年ぶりの水準となった賃上げ、設備投資、株価。日本経済が新たなステージに移行する明るい兆しが随所に出てきています」 岸田文雄首相は1月30日に国会で行った施政方針演説で、こう日本経済の状況を語った。確かに日経平均株価はバブル後の最高値を更新して3万6000円を突破。年初は3万3000円だったので1月で1割近くも上がっている。岸田内閣で唯一評価できるのが株高だ、といったこ声も出ている。 だが、それは「幻想」に過ぎず、実際の株価は岸田内閣発足時より安いと言ったら、読者各位は訝しく思われるに違いない。 30年ぶりだと岸田首相が胸を張る「賃上げ」にしても、表面上の賃金は上がっているが、物価上昇には追いつかず、「実質賃金」はマイナスが続いている。それと同様、見た目の株価は大きく上昇しているが、見方によっては実態価値は上がっていない、ということが起きている。これは物価との関係ではなく、株価を示している「円」という通貨の価値の問題だ。今の株価の急激な上昇は、円の価値が劣化しているために他ならない。 筆者が以前から使っている指標に、日経平均株価を「円建て」ではなく、貴金属である「金(ゴールド)」の小売価格で割った、いわば「金建て」の指数がある。証券界ではしばしば「ドル建て」の日経平均株価などが指標として使われるが、ドルという貨幣自体の価値も変動する。そこで人類の歴史と共に価値保存に使われてきた「金」をベースに日経平均株価を見ているのだ。 例えば2021年1月の「円建て」の日経平均株価と「金建て」の価格を100としてグラフを作ると、2021年秋までは似たような動きをしていたものが、それ以降、大きく乖離を始める。この乖離は岸田内閣発足後に円安が進むのと共に激しくなった。 岸田内閣が発足した2021年10月4日の両者の価格を100として指数化すると、2024年1月31日は「円建て」で127.6と3割近くも上がっている。これが岸田首相が胸を張る「見た目」の日経平均株価の大幅な上昇である。 ところが、「金建て」で見ると様相は一変する。1月末現在で指数は83.4。何と岸田首相が就任した時に比べて日本株の「実態価値」は2割近くも落ちているのだ。2021年10月4日の日経平均株価は2万8444円。金の国内小売価格は1グラム6981円だった。この1月末で日経平均は3万6286円になったが、金は1グラム1万674円まで上昇している。ドル建ての金価格は落ち着いているものの、円建てでは高値水準にある。つまり「円」が劣化しているのだ』、「2021年1月の「円建て」の日経平均株価と「金建て」の価格を100としてグラフを作ると、2021年秋までは似たような動きをしていたものが、それ以降、大きく乖離を始める。この乖離は岸田内閣発足後に円安が進むのと共に激しくなった。 岸田内閣が発足した2021年10月4日の両者の価格を100として指数化すると、2024年1月31日は「円建て」で127.6と3割近くも上がっている。これが岸田首相が胸を張る「見た目」の日経平均株価の大幅な上昇である。 ところが、「金建て」で見ると様相は一変する。1月末現在で指数は83.4。何と岸田首相が就任した時に比べて日本株の「実態価値」は2割近くも落ちているのだ」、面白い指摘だが、投資家の多くは「金建て」ではなく、あくまで「円建て」で判断しているので、「金建て」はあくまで参考指標に過ぎないような気もするが・・・。
・『要するに円の劣化  確かに円安は進んでいるが、2022年秋のように1ドル=150円を超えていた頃に比べれば円高ではないか、という指摘もあるだろう。もうひとつの指標を見れば、その謎が解ける。「実質実効為替レート」だ。「円の実力」とも言われるもので、2020年を100とした指数が、毎月、日本銀行によって公表されている。 この実質実効為替レートは、実際の円ドル相場が150円を超える円安を付けた2022年10月の指数が73.70だった。ところが、2023年11月にはこれを下回って71.39と、過去最低を更新しているのだ。「見た目」の為替相場に比べて円の劣化は進んでいるということができる。 ちなみにこの指数の計算が始まった1970年1月は2020年を100として75.02なので、すでに円の実力は1970年を下回っているということになる。当時の「見た目」の為替レートは1ドル=360円の固定相場時代だ。その後、最も円の「実力」が強くなったのは1995年4月。2020年を100とした指数で193.97を付けた。円ドル為替レートが1ドル=79.75円を付けた時だ。猛烈に円が強くなり、海外旅行ブームが起きていた。その時の指数に比べて現在は3分の1近い。円の実質的な強さも3分の1になったということだ。 今、アジアに海外旅行をしても物価水準は日本と変わらないか、高い。米国でラーメンと餃子、ビールでチップを入れると1万円近くかかった、という話も聞くようになった。円の弱さを痛感している日本人は多い。 米国は経済成長しているので1995年の1ドルの価値は今と比べ物にならないくらい高かった。一方で、日本国内での円の購買力はさほど変わらない。なので、1ドル=150円の円安と言っても、その昔に1ドル=150円だった頃とドルの価値は大きく下がっている。つまり、見た目の「円」は同じ150円でも実態価値は劇的に下がっているということなのだ』、「1ドル=150円の円安と言っても、その昔に1ドル=150円だった頃とドルの価値は大きく下がっている。つまり、見た目の「円」は同じ150円でも実態価値は劇的に下がっているということなのだ」、その通りだ。
・『今の3万8915円は同じ価値ではない  それが、猛烈に進行しているのが岸田内閣ということになる。円安を放置し、物価上昇を起こさせる政策を取れば、当然、円の実態価値は下がる。長年、デフレに親しんだ日本国民からすれば、円建ての価格が上がって、価値が上がっていると思っているが、これは「見た目」の賃金が上がっても「実質賃金」が下がっているのと同じことだ。 これは明らかに過去のバブル時代とは違う。都心のマンション発売価格が1億円を超えたとしてニュースになっているが、これも「円」の劣化による「円建て」価格の上昇と見ることも可能だ。中国人富裕層など外国人が東京のマンションを買うようになって、日本の不動産市場は「円」の相場が実態を示さなくなったのではないか。バブル当時は賃金も大幅に上がり、資産を持っている人たちも「バブル」に浮かれて高級品消費に走った。今、そうしたムードは少なくとも庶民の間にはない。 2008年にベトナムに取材に行った際、通貨ドンの価値が日々劣化するのに対応して庶民が「金」に変える姿を見た。当時のマンションなど不動産価格はドンではなく金建ての「カイ」という単位で価格表示されていた。通貨が劣化して信用を失うと究極はそういう事態に陥る。 いやいや、日本株が上昇しているのは、企業収益が大きく改善しているからだ、という反論もあるだろう。確かに、売り上げも利益も大きく増えている。だが、注意しなければいけないのは、これらの数字も「円建て」であることだ。かつての輸出中心の時代とは異なり、連結決算の海外利益は、円に転換されてキャッシュが国内に戻ってくるわけではない。海外の利益を円に換算した際の「見た目」が実態以上に良くなっているという側面もある。 だが、今後も日本円の劣化が止まらないとすれば、海外の事業が好調な日本企業などの円建ての収益はさらに大きく伸び、それに伴って円建ての株価も大きく上がっていくことになる。日経平均株価の3万8915円を抜いて、過去最高値を付けるのも時間の問題だろう。だが忘れてはいけないのは当時の3万8915円と今の3万8915円は同じ価値ではないということだ』、「今後も日本円の劣化が止まらないとすれば、海外の事業が好調な日本企業などの円建ての収益はさらに大きく伸び、それに伴って円建ての株価も大きく上がっていくことになる。日経平均株価の3万8915円を抜いて、過去最高値を付けるのも時間の問題だろう。だが忘れてはいけないのは当時の3万8915円と今の3万8915円は同じ価値ではないということだ」、その通りだ。
タグ:株式・為替相場 (その19)(「円安の終わりはアメリカ次第」という思い込み 円より安いのはロシア・トルコ・アルゼンチン、なぜ株価はほとんどいつも上がっているのか? ただし「10年に1度の暴落」も近いかもしれない、岸田内閣で株価上昇は「幻想」だ! 株・不動産の高騰の真相は「円の劣化」) 東洋経済オンライン 唐鎌 大輔氏による「「円安の終わりはアメリカ次第」という思い込み 円より安いのはロシア・トルコ・アルゼンチン」 、確かに円安は止まるところを知らずに進行している。 「主要通貨の年初来の対ドル変化率を見ると、円(マイナス11%)よりも下落幅が大きい通貨はロシアルーブル(マイナス33%)とトルコリラ(マイナス42%)、そしてアルゼンチンペソ(マイナス97%)しかない」、これはショッキングな事実だ。 「年初来で円よりも下落幅が大きかったロシアルーブル、トルコリラ、アルゼンチンペソはいずれも高インフレで購買力が毀損している通貨の代表格、、不名誉この上ないことだ。 「ジャクソンホール経済シンポジウムの日米欧中銀総裁の言動を見る限り、「タカ派の欧米 vs. ハト派の日本」という構図は今後1年で簡単に変わりそうにない・・・FRBが利上げを停止して、いずれ利下げ転換する動きがあったとしても、それで日銀がマイナス金利解除に至る理由はないし、もちろん貿易収支やサービス収支の赤字が小さくなったりする理由もないだろう。 ゆえに円相場の現状や展望を検討する際、FRBの挙動は目先の方向感を多少規定することはあっても、「かつてのような円高に戻る」と主張するには材料として不十分だというの が筆者の認識である」、なるほど。 「「日本は経常黒字国だからいずれ円高に戻る」という主張はいまだ目にするが、「会計上の黒字」と「実務上の赤字」を混同してはならない。黒字の源泉となっている第1次所得収支は外貨のまま再投資される割合が大きく、黒字が額面通りの円買いを意味しない可能性を直視すべきだ・・・日米金利差の拡大・縮小に応じて先行きを読もうとするアプローチは「円安のピークアウト時期」を特定するには有用かもしれないが、「1ドル=120~140円のレンジが常態化してしまったドル円相場」、もしくは実質実効為替相場などに象徴される「安い日本」の背 景を解き明かすにはさほど役に立たない材料である」、なるほど。 小幡 績氏による「なぜ株価はほとんどいつも上がっているのか? ただし「10年に1度の暴落」も近いかもしれない」 「多くの市場関係者は、今年は今後も上昇が続き、2022年、2023年に続き、米国株を上回る上昇と続けると予想している」、なるほど。 「アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱に・・・ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている・・・1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない」、なるほど。 「個人には日経平均に連動性が高く、流動性やボラティリティ(変動率)の大きい大型株が人気になるし、投資信託も値動きに勢いがある「成長系」などが人気になる。ファンドマネージャーや運用会社、それを取り次ぐ証券会社は、それが正しくないと思っていても、そういうものを組成し、運用し、売りまくるのである」、なるほど。 「ほとんどすべての投資家は、上がる方向に賭けているか、少なくとも、下がるよりも上がる方向にバイアスを持って投資しているのである。だから、上昇トレンドの方が起きやすいし、上昇トレンドがあるときに、それにレバレッジを賭けたかのように、上昇トレンドが強まるのである。) 第2に、彼ら、個々の投資家がベンチマークとするインデックス自体が、上昇バイアスがある。NYダウはわずか30銘柄だし、S&P500種指数の銘柄も、もちろん上昇が期待される銘柄を選んできている。 正確に言うと、もう退屈になり、上昇力が失われた株は、こ うしたインデックスから取り除かれる。一方、企業の側としては、こういう退屈な企業になって投資家から逃げられることを避けるために、成長力の代わりに財務を強化して、株主還元を徹底的に行ったり、あるいは、M&AでPER(株価収益率)が高い業種の企業を買収し、成長セクターを取り込もうとしたりする・・・この入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる」、なるほど。 「アメリカのNYダウ30種平均株価は、1980年末には960ドル台にすぎなかったのが、2023年末には3万7689ドルで40倍弱になっている。アメリカは常に例外だが、ドイツでも代表的なDAX指数は2003年末の3965から2023年末には1万6751ポイントとなっており、約4.5倍となっている。このように株価というのは上がるものなのである。ここでは日本が例外だ。 しかし、日本に関しても、実はほとんどの期間、株は上がっている。ただ、1989年に日経平均が3万8915円をつけた平成バブルがあまりに異常なだけなのだ。あのバブルに惑わされてはいけない。実際、この10年を見ると、日経平均は2014年から2023年の10年間で8回上昇している」、なるほど。 「入れ替えが投資家にとってサプライズであればあるほど、インデックスに入ってからこの銘柄は買われて株価は上昇し、外れた銘柄はインデックスから外れた後に株価が下落することになる」、なるほど。 「金利がゼロになれば、株価も上がらなくてもつじつまが合う。 だから、二重の意味で、金利ゼロの世界からプラスに戻っていくと、株価は大きく下がるのである。一方、世界的な金利低下トレンドにあったこの30年は、株価が上がり続けたのである。 付け加えると、アメリカなどでは、配当すると二重課税になるため、配当を嫌って自己(自社)株買いをする傾向があるから、日経平均のように配当権利落ちの額が少なく、上がり続けることになる。 実際、日経平均も配当込みで計算すると、NYダウに対してもう少しキャッチアップできることはよく知られている」、なるほど。 「株価はそもそも上がることが構造的に決まっていることになる。これが実は、見かけ以上に重要である。こういうトレンドがあるならば、上昇トレンドに乗るのが、投資の王道、必勝法である。だから、みんな株を買う。この構造をわかっていても、いなくても、株を買う。株を買う人ばかりになるのである。 だから、株は上がる。ただ、それだけのことなのだ。暴落が来たときは、いち早く逃げるか、売りに転じて儲けるか、あるいは、政府や中央銀行に救済させ、税金で負担をさせ、このトレンドに乗らなかった人々ともコストをシェアする。そういうことな なのだ。暴落が来たときは、いち早く逃げるか、売りに転じて儲けるか、あるいは、政府や中央銀行に救済させ、税金で負担をさせ、このトレンドに乗らなかった人々ともコストをシェアする。そういうことなのだ。これが派手に起きているときは、バブルとその後の崩壊となり、地味に起きているときは、普通の株価上昇トレンドの世の中になるのである。 個人的には、そろそろ「10年に1度のとき」だと思っているが、どうなるか』、「個人的には、そろそろ「10年に1度のとき」だと思っているが、どうなるか」、さてどうなるのだろう。 現代ビジネス 磯山 友幸氏による「岸田内閣で株価上昇は「幻想」だ! 株・不動産の高騰の真相は「円の劣化」」 「2021年1月の「円建て」の日経平均株価と「金建て」の価格を100としてグラフを作ると、2021年秋までは似たような動きをしていたものが、それ以降、大きく乖離を始める。この乖離は岸田内閣発足後に円安が進むのと共に激しくなった。 岸田内閣が発足した2021年10月4日の両者の価格を100として指数化すると、2024年1月31日は「円建て」で127.6と3割近くも上がっている。これが岸田首相が胸を張る「見た目」の日経平均株価の大幅な上昇である。 ところが、「金建て」で見ると様相は一変する。1月末現在で指数は 83.4。何と岸田首相が就任した時に比べて日本株の「実態価値」は2割近くも落ちているのだ」、面白い指摘だが、投資家の多くは「金建て」ではなく、あくまで「円建て」で判断しているので、「金建て」はあくまで参考指標に過ぎないような気もするが・・・。 「1ドル=150円の円安と言っても、その昔に1ドル=150円だった頃とドルの価値は大きく下がっている。つまり、見た目の「円」は同じ150円でも実態価値は劇的に下がっているということなのだ」、その通りだ。 「今後も日本円の劣化が止まらないとすれば、海外の事業が好調な日本企業などの円建ての収益はさらに大きく伸び、それに伴って円建ての株価も大きく上がっていくことになる。日経平均株価の3万8915円を抜いて、過去最高値を付けるのも時間の問題だろう。だが忘れてはいけないのは当時の3万8915円と今の3万8915円は同じ価値ではないということだ」、その通りだ。
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投資(商品販売・手法)(その4)(「AI任せ」の資産運用はうまく儲けられるのか?、投資とカジノで「5億円熔かした」70代女性社長 懲りずに1銘柄に3億つぎ込んだバクチ投資の末路) [金融]

投資(商品販売・手法)については、昨年7月13日に取上げた。今日は、(その4)(「AI任せ」の資産運用はうまく儲けられるのか?、投資とカジノで「5億円熔かした」70代女性社長 懲りずに1銘柄に3億つぎ込んだバクチ投資の末路)である。

先ずは、8月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家の山崎 元氏による「「AI任せ」の資産運用はうまく儲けられるのか?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328376
・『AI(人工知能)を活用した資産運用が広がりつつあるようだが、実際のところ「AI任せ」の資産運用はうまくもうけられるのだろうか?筆者の率直な意見を述べてみる』、筆者の山崎 元氏は本年1月1日に死去された。ご冥福を祈りたい。
・『Z世代がAIで資産運用 「放置できるのが一番の魅力」  世間はAI(人工知能)ブームに沸いており、ほとんどあらゆる分野でAIの活用が話題になっている。資産運用の分野も例外ではない。「日本経済新聞」に「Z世代、資産形成はAI任せ 銘柄選び『時間かけたくない』」(8月28日)という記事が載った。 Z世代とは1990年代後半以降の生まれの世代を指す言葉だ。「ミレニアル世代」と称されたその前の世代が既に若者とは言い難くなってしまったので、近年専ら若者を指す代名詞として使われている。 Z世代が、AIを使っていると称する投資アドバイザーアプリを利用しているという事実を伝える記事だが、利用者の一人は、「運用を放置できるのが一番の魅力」だと言い、自分で状況に合わせて資産を再配分する必要がないことを長所だと捉えているようだ。 資産配分を行ってくれるという意味では既に、投資信託なら「バランスファンド」、人間のサービスなら「ファンドラップ」、システムによる一任運用なら「ロボアドバイザー」が存在した。「AI」になると何が違うのだろうか。 記事によると、AIによって運用するという触れ込みのロボアドバイザーを利用しているらしい。利用者は、時間とともに学習データを増やしてAIが賢くなっていくことや、人間の先入観による投資判断が排除できると「感じる」ことなどをポジティブに捉えているようだ』、「資産配分を行ってくれるという意味では既に、投資信託なら「バランスファンド」、人間のサービスなら「ファンドラップ」、システムによる一任運用なら「ロボアドバイザー」が存在した・・・AIによって運用するという触れ込みのロボアドバイザーを利用しているらしい。利用者は、時間とともに学習データを増やしてAIが賢くなっていくことや、人間の先入観による投資判断が排除できると「感じる」ことなどをポジティブに捉えているようだ」、なるほど。
・『「商品」としての資産運用は“ありがたみ”が時代で変化  「商品」としての資産運用を考えると、顧客から見た「ありがたみ」の在りかが、「プロの証券マン」→「プロのファンドマネージャー」→「運用の天才」→「コンピュータープログラム」→「成長するAI」といった具合に変化している。 投資家が自分で株式を買うような時代は「早耳情報」や「いい勘」を持っているように見える証券マンがありがたかったし、その後運用のプロとしてファンドマネージャーが認知される。さらに、ファンドマネージャーに「カリスマ」や「天才」のイメージを重ねようとするマーケティングの試みが行われたが、彼らの天敵とも言うべきインデックスファンドとの比較で「人間の天才投資家」は色あせてしまった。 そうなると、人間的な判断はむしろ嫌われる材料になった。コンピューターの処理能力やビッグデータ、機械学習、そしてAIといったイメージが、「よく分からないけれどもすごそうな中身」として商品としての運用の価値を支えることになったのだろう。 行動経済学で「後悔回避のバイアス」として表現されているように、近い将来に失敗が明らかになるかもしれない判断を自分で下すことにちゅうちょする人間は少なくない。そこに、運用に関するアドバイスや一任の潜在的なニーズが存在する。 いくらか達観しすぎかもしれないが、サービスの供給者側は、その時々に「自分で判断せずに済む、ありがた味のある仕掛け」を顧客に提供してやればいい。今やAIがブームなのだから、AIと名の付くものを売ればいい、というのは自然な商売の成り行きだ。 一方で、AIのサービスの方を人間が提供する運用サービスよりも良いと判断した投資家については、人間にはそれなりに高い人件費が掛かるし、人間は顧客からより多くの利益を引き出そうとして駆け引きをする存在でもあるので、これを疑う気持ちを持ったことを一応は褒めておくことにしよう』、「彼らの天敵とも言うべきインデックスファンドとの比較で「人間の天才投資家」は色あせてしまった。 そうなると、人間的な判断はむしろ嫌われる材料になった。コンピューターの処理能力やビッグデータ、機械学習、そしてAIといったイメージが、「よく分からないけれどもすごそうな中身」として商品としての運用の価値を支えることになったのだろう。 行動経済学で「後悔回避のバイアス」として表現されているように、近い将来に失敗が明らかになるかもしれない判断を自分で下すことにちゅうちょする人間は少なくない。そこに、運用に関するアドバイスや一任の潜在的なニーズが存在する。 いくらか達観しすぎかもしれないが、サービスの供給者側は、その時々に「自分で判断せずに済む、ありがた味のある仕掛け」を顧客に提供してやればいい。今やAIがブームなのだから、AIと名の付くものを売ればいい、というのは自然な商売の成り行きだ」、なるほど。
・『資産運用におけるAIの可能性とは? 率直な意見を述べると…  資産運用、あるいはもっと直裁に投資にあってAIの可能性はどれほどのものだろうか。 筆者の率直な意見を述べると、 (1)AIは資産運用ビジネスをほぼ100%良く代替できるが、 (2)AIによる投資が大いにもうかることは期待できそうにない、 と思っている。 どの範囲のコンピューター処理をAIと呼ぶかは議論のあるところだが、定義をなるべく広く取るとして、AIは幾つかの分野で大方の予想以上のパフォーマンスを達成するに至っている。 例えば、将棋や囲碁のようなゲームでは、局面の優劣の判断が難しいのでAIは人間のプロに勝てまいと言われていたが、今や天才中の天才と呼ばれるようなプロ棋士でもAIに全く歯が立たない。 また、言語的な表現やコミュニケーションなどは人間のセンスや状況判断が必要なので、AIには歯が立たないと考えられてきたが、ChatGPTが軽々とそのハードルを越えつつある。 ゲームにせよ、言語処理にせよ、「人間がやるようなこと」は、データと計算の量を飛躍的に増やすことによって、「人間がやる以上にうまくやる」ことができた。投資に関しても、人間がやるようなことを人間以上にうまくやることは難しくあるまい。 投資でプロがやっていることは何だろうか? 大まかに言うと、自分が情報だと思う材料をインプットして判断を投資行動に反映させ、その結果を通じて判断方法をアップデートしているというのが、大まかな流れだ。加えて、その投資行為を「ありがたいもの」に見せ、商品として効果的に売るための調査活動や投資家向けのご説明を含めた広義のマーケティング活動が、運用のプロのお仕事である。 今や、データを処理しポートフォリオを作ることだけでなく、個々の投資銘柄について要領のいいアナリストレポートを作ることも、運用の結果について「顧客の期待を将来につなぐことのできる言い訳」を考えることも含めて、「運用の仕事」をAIに置き換えることに全く無理はなさそうだ。 人間のアナリスト、ファンドマネージャー、マーケティング担当者のいずれも、その気になると置き換えることは容易だろう。置き換えの進捗度合いは、商品としての運用のありがた味として何を残すのがいいのかと、コストとの関係で決まるだろう』、「今や、データを処理しポートフォリオを作ることだけでなく、個々の投資銘柄について要領のいいアナリストレポートを作ることも、運用の結果について「顧客の期待を将来につなぐことのできる言い訳」を考えることも含めて、「運用の仕事」をAIに置き換えることに全く無理はなさそうだ・・・人間のアナリスト、ファンドマネージャー、マーケティング担当者のいずれも、その気になると置き換えることは容易だろう。置き換えの進捗度合いは、商品としての運用のありがた味として何を残すのがいいのかと、コストとの関係で決まるだろう」、なるほど。
・『AI投資が大成功を収めることに「懐疑的」である理由は…  では、投資でもうけることはAIにできるのか? ここでは、「もうける」の定義が重要だろう。株式のリスクプレミアムが実現するような環境では、何らかの形で株式に分散投資しておくなら、AIであろうと人間であろうと、利益を上げることは難しくない。 投資の世界で「もうけること」として意味があるのは、平均的なリスクを取りながら平均を上回るリターン(「アクティブリターン」と称する)を稼ぐことだ。これを意図的に継続することができるなら「もうける能力がある」といえるだろう。 この意味でAIが大規模な成功を収めることについて、筆者は懐疑的だ。 まず、そもそも手本となるべき人間がこのことに成功しているとは言い難い。それは、人間の能力や努力が足りないからというよりは、特定のマーケットの中での運用パフォーマンス競争にあっては、ライバルの平均像となるポートフォリオを持ってじっとしていることが有利な「平均投資有利の原則」とでも呼ぶべき原則が働くことが理由だ。 この原則は、東京証券取引所の上場銘柄やS&P500種株価指数の採用銘柄(米国の代表的な大型株)といった狭いマーケットだとハッキリしやすいが、投資の選択範囲をグローバル株式や債券などに広げても本質は同じだ。 AIでうまく運用できたように感じていても、正確にパフォーマンスを評価してみたら、実はプラスの効果がなかったということが十分あり得るのだ。 過去を振り返り、世間を見回してみても、学力や能力の高そうな運用者がより良くもうけていたということもないし、努力や修行に比例して投資のもうけが増えるというものでもない。AIが優秀な人間らしく振る舞っても、アクティブリターンを稼ぐことにはつながらないのではないか。 また、投資の世界はいかにもデータが豊富に見えるが、例えば過去せいぜい百数十年分の株価が、AIが飛躍的に賢くなるためのデータとして十分な量なのかいささか疑問に思う。それに、制度や時代背景も異なる昔の株価と今の株価を共に有効なデータとして評価していいものだろうか。) 加えて、仮にうまくアクティブリターンを稼ぐAIが登場したとして、これが容易に別のAIに模倣されるのではないかという、別の高い障壁が存在する。 もちろん、AIの「人間がやるようなことを人間以上にうまくやる」能力を過小評価してはならない。 アクティブリターンを稼いだり、稼げなかったりするような「揺らぎ」を商品群に与えながら、たまたまうまくいっているものを巧みに強調して会社のブランド価値を高めるような経営判断も(これは露骨ではないが、実際の運用会社がすでにやっていることだ)、AIには容易だろう』、「投資の世界で「もうけること」として意味があるのは、平均的なリスクを取りながら平均を上回るリターン(「アクティブリターン」と称する)を稼ぐことだ。これを意図的に継続することができるなら「もうける能力がある」といえるだろう。 この意味でAIが大規模な成功を収めることについて、筆者は懐疑的だ・・・手本となるべき人間がこのことに成功しているとは言い難い。それは、人間の能力や努力が足りないからというよりは、特定のマーケットの中での運用パフォーマンス競争にあっては、ライバルの平均像となるポートフォリオを持ってじっとしていることが有利な「平均投資有利の原則」とでも呼ぶべき原則が働くことが理由・・・仮にうまくアクティブリターンを稼ぐAIが登場したとして、これが容易に別のAIに模倣されるのではないかという、別の高い障壁が存在する」、なるほど。
・『ロボアドバイザーの利用がラップ運用のつもりなら100%ダメ  さて、利用者の「世代」ははっきり言ってどうでもいい。何歳の人が投資しようと、同じ時に同じものに投資していれば、投資の成果は同じである。記事を作る上では、あるいは運用商品をマーケティングする上では仕方がないのかもしれないが、資産運用を世代と関連付けるのはつまらない(有益でない)問題意識だ。 世代論を離れるとして、AIを利用すると称するロボアドバイザー的なサービスを利用することの可否はいかがなものだろうか。 これは、ありていに言って「人間がやるよりもマシに見えるラップ運用」の利用に過ぎない。だとすると、全く褒められたものではない。 ラップ運用がダメな理由は、一般に、(1)運用者(プログラムも含めて)に特別なアセットアロケーション能力は存在しない、(2)利用者は中身を十分把握できていない、(3)運用手数料が割高である、(4)そもそも運用を他人任せにしようという根性がいけない、の4点だ。最後の一つには、筆者の好みが反映されているのでさておくとして、利用者にはせめて(3)についてだけでも考えてみてほしい。 比較の対象は、全世界の株式に投資するインデックスファンドの投資信託。グローバルに資金運用する海外の大きな機関投資家の「平均ポートフォリオ」に近い投資内容の商品だ。今や、このカテゴリーの商品で最割安な商品は運用資産額に対して年率0.05775%以下(税込み)のコストで運用が可能だ。 つまり、100万円を年間578円で運用できるのだ。残高の大きなものは既に1兆3000億円を大きく超えている。知っている人は、有利な運用商品を既に利用しているのだ。) 個々の商品についてあげつらうことはやめておくが、100万円に対して数千円単位の手数料を支払っている投資家は、意思決定のレベルで既に「負けている」と言ってもいいだろう。 投資家に限らず、近年はタイパ(タイムパフォーマンス)とコスパ(コストパフォーマンス)を重視するらしい。 インデックスファンドへの投資は一度方針を決めたら「ほったらかし」にできるし、むしろその方がいい。また、コストについては先ほどご紹介した通りだ。ロボアドバイザーを使っている投資家は、一体自分が幾ら手数料を払っているのかを確かめてみてほしい。 一度頭を使って方針を決めることのタイパとコスパがどのようなものになるのかは、個人の資質や環境によって異なるのだろうが、優劣は明らかであるような気がする。悔しくないだろうか? Z世代とやらの若い人にあえて声掛けするなら、「そこは、時間やお金をかけるところではない。一回だけ頭を使うところなのだよ」と言いたい』、「今や、このカテゴリーの商品で最割安な商品は運用資産額に対して年率0.05775%以下(税込み)のコストで運用が可能だ。 つまり、100万円を年間578円で運用できるのだ・・・インデックスファンドへの投資は一度方針を決めたら「ほったらかし」にできるし、むしろその方がいい・・・一度頭を使って方針を決めることのタイパとコスパがどのようなものになるのかは、個人の資質や環境によって異なるのだろうが、優劣は明らかであるような気がする」、やはり優れているようだ。

次に、11月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したアレース・ファミリーオフィス代表取締役の江幡吉昭氏による「投資とカジノで「5億円熔かした」70代女性社長、懲りずに1銘柄に3億つぎ込んだバクチ投資の末路」を紹介しよう。
・『富裕層といえども、多額の資産をきちんと守れている人ばかりではない。時に、一般人には想像できないスケールの「大失敗」をすることも富裕層の特徴といえよう。富裕層の投資での失敗例から学べる、資産形成の鉄則についてお話ししたい』、興味深そうだ。
・『資産が3年で20分の1に…… ワンマン社長の綱渡り投資  70代の女性会社経営者Aさんは、さかのぼること3年前の2020年、新型コロナウイルスで注目されたあるハイテク銘柄の株を1億円分購入した。その後、その銘柄はAさんの読み通り、加速度的に価格が上昇した。Aさんは追加で同銘柄をどんどん買い進めた。約半年で投資した金額は3億円。株価が上昇したので、資産は約5億円になった。つまり、約2億円の含み益が出たのだ。 しかし、Aさんの投資は大成功……とはいかなかった。好調は長くは続かず、株価はなんと100円にまで下落。3億円の投資金額が、1500万円の価値になってしまった。20分の1にまで減少してしまったのだ。さらに現在、損失は拡大している。とはいえ、3億円が1500万円になろうと1300万円になろうと、もうここまでくると大差はない。 実はAさん、投資で大損するのはこれが初めてではない。 十数年前、Aさんは当時のあるベンチャー株に投資した。買った株はぐんぐん上がり、資産は総額10億円になった。しかし、しばらくすると当該株は急落。気付いたときには証券会社の営業マンから追証を求められる状況になってしまった。 預貯金などの余剰資金はとっくに証拠金として消えていたので、会社の資金に手をつけた。社長自身の「経費の立て替え精算」ということで自社の銀行口座から1億円を自分の証券口座に移したという。追証の証拠金として突っ込むこと数回……。一度やってしまうと、会社のお金を証拠金に充てることに慣れてしまい、何度もその株を買い支えてしまった。 Aさんの危ない綱渡りはこれだけでは終わらなかった。仲の良い社長仲間と行ったマカオのカジノで、あろうことか信用取引での損を挽回しようとしたのだ。案の定、ここでも1000万円単位の負けを繰り返すことになった。 その後、税務調査で怪しい経費の存在がバレた。「社長自身が立て替え精算した、この5億円もの経費はなんだ?」という話になり、結局のところ経費とは認定されなかった。社長が会社からお金を借りた、つまり会社から見ると役員貸付金という形で5億円の貸し付けを受ける形に落ち着いた。 Aさんは、当時はまだ働き盛りの60代前半。気力も十分であり、その後の10年間で自分の役員報酬を年間数億円にすることで、役員貸付金を完済することができた(こういった役員貸付金が多額になるケースでは役員報酬を増額することで貸付金を解消するケースは多い。正直間違ったやり方であるが、本稿では触れない)』、「税務調査で怪しい経費の存在がバレた。「社長自身が立て替え精算した、この5億円もの経費はなんだ?」という話になり、結局のところ経費とは認定されなかった。社長が会社からお金を借りた、つまり会社から見ると役員貸付金という形で5億円の貸し付けを受ける形に落ち着いた。 Aさんは、当時はまだ働き盛りの60代前半。気力も十分であり、その後の10年間で自分の役員報酬を年間数億円にすることで、役員貸付金を完済することができた」、なるほど。
・『大きな失敗も多い富裕層 70代以降はコンサバな運用が必要  そして十数年後――。 過去の反省を生かし今回はマカオでもなく、株の信用取引でもなく、あくまで自己資金の範囲内の取引だった。しかしながら、3億円の資産を1500万円まで減らしてしまったのだ。自社の業績はまずまずであり、自宅もあれば自社ビルもある。しかし自分の余剰資金はほぼ消滅してしまった。 会社と社長個人でも銀行に多額の借り入れがある状況なので、純資産ベースで見るとほぼゼロの状況になっている。関西の高級住宅街の邸宅に住み、広大な別荘を手にし、一見華やかな社長だが、実はすっからかん――そんなことも起こり得るのである。 さらに残酷なのは、Aさんの年齢だ。健康状態も良くなく、十数年前と比べると元気ではあるが、体力も気力も相当衰えている。さすがに今回は、3億円を取り戻すことは現実的に不可能だ。退職金という手段はあるが、借入金が流動資産を上回る状況なので、退職金を払うとキャッシュが枯渇する。本業自体はもうかっているがこれ以上の借り入れは危険な状態だ。あまりにもワンマンだったため、右腕の古参社員もおらず、事業を引き継ぐ予定だった子どもたちは全員会社から逃げ出したという有り様だ。 往々にして創業の経営者は、投資においてもこのような強烈な成功体験と失敗体験を併せ持つ。若いうちであればいくらでも挽回が利く。しかし、人生の終盤に差し掛かったときの失敗はリベンジができない。よって、70歳以降の富裕層には、コンサバな資産運用が求められるのだ。とはいえ、強烈な成功体験があればあるほど、晩年に慎重な方向に方向転換することは非常に難しい……。』、「人生の終盤に差し掛かったときの失敗はリベンジができない。よって、70歳以降の富裕層には、コンサバな資産運用が求められるのだ」、その通りだ。
・『富裕層ならではのリカバリー方法とは? 失った1億円を5年で取り戻す  富裕層だからといって、特別な運用方法があるわけではない。ただ、元手となる資金が多い分、ハードルの高い投資ができるというだけだ。そのハードルの高い投資の代表例が、最低投資金額が10万ドル、20万ドルの債券投資やデリバティブである。もちろん、言うまでもなく、こうした投資にはリスクがある。一歩間違えば、先ほどのAさんのような大損につながりかねない。 東海地方に住む60歳の会社経営者・Bさん(男性)は、そうしたデリバティブを内包している仕組み債に投資し、資産を減らしてしまった。彼は余剰資金のほぼ全てである1億円分、投資した。しかし、1000万円分の株になって戻ってきてしまったのだ。 しかし、Bさんは、資産が10分の1になる大失敗をしたにもかかわらず、生活スタイルを変える必要はなかった。失った資産額を取り戻すことができた。本業で多額の稼ぎがあるからだ。 Bさんの年収は約7000万円。毎年2000万円程度のお金が手元に残った。よって5年程度でまた1億円の資産を手に入れることができたのだ。これが、収入の多い富裕層特有のリカバリー法だ。 「有名企業に勤めた人が退職金で1億円入ってきた」という話や、「親の資産を相続して家を売却したら1億円になった」という話はそれなりにある。しかし、この1億円を使って投資に失敗したら、リカバリーするすべはない。よって、いかにこの1億円を失敗なく運用し続けるかが重要だ。 しかし、フローで多額の収入がきちんと入ってくる富裕層は、大きな失敗をしてもすぐに生活が脅かされることがない。そして失敗を繰り返す中で、投資にもぼちぼち成功をするようになってくる。本業で稼ぎながら資産運用にもコツコツ成功することで、財産を築く。Bさんも「最終的には最大の資産運用が本業だよ」と笑いながら度々、言う。 投資は常に失敗がつきもの。しかし、若いときにした失敗にはリカバリーが利く。稼ぎで取り返すことができるからだ。一方で、高齢者はリカバリーや失敗が許されない。退職金や相続などでまとまったお金を手にした人にとっては、大きな金額の失敗は致命傷になる。 金融機関などに言われるがままに投資するのは避けたいところだ。投資で多少なりともリターンが上がるようになったなら、高齢者は徐々に資産を取り崩す時期に入るため、保守的な投資方法にシフトしていく必要がある。そのあたりはまた次回、書きたいと思う』、「高齢者は徐々に資産を取り崩す時期に入るため、保守的な投資方法にシフトしていく必要がある」、その通りだ。

次に、11月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したアレース・ファミリーオフィス代表取締役の江幡吉昭氏による「投資とカジノで「5億円熔かした」70代女性社長、懲りずに1銘柄に3億つぎ込んだバクチ投資の末路」を紹介しよう。
・『富裕層といえども、多額の資産をきちんと守れている人ばかりではない。時に、一般人には想像できないスケールの「大失敗」をすることも富裕層の特徴といえよう。富裕層の投資での失敗例から学べる、資産形成の鉄則についてお話ししたい』、興味深そうだ。
・『資産が3年で20分の1に…… ワンマン社長の綱渡り投資  70代の女性会社経営者Aさんは、さかのぼること3年前の2020年、新型コロナウイルスで注目されたあるハイテク銘柄の株を1億円分購入した。その後、その銘柄はAさんの読み通り、加速度的に価格が上昇した。Aさんは追加で同銘柄をどんどん買い進めた。約半年で投資した金額は3億円。株価が上昇したので、資産は約5億円になった。つまり、約2億円の含み益が出たのだ。 しかし、Aさんの投資は大成功……とはいかなかった。好調は長くは続かず、株価はなんと100円にまで下落。3億円の投資金額が、1500万円の価値になってしまった。20分の1にまで減少してしまったのだ。さらに現在、損失は拡大している。とはいえ、3億円が1500万円になろうと1300万円になろうと、もうここまでくると大差はない。 実はAさん、投資で大損するのはこれが初めてではない。) 十数年前、Aさんは当時のあるベンチャー株に投資した。買った株はぐんぐん上がり、資産は総額10億円になった。しかし、しばらくすると当該株は急落。気付いたときには証券会社の営業マンから追証を求められる状況になってしまった。 預貯金などの余剰資金はとっくに証拠金として消えていたので、会社の資金に手をつけた。社長自身の「経費の立て替え精算」ということで自社の銀行口座から1億円を自分の証券口座に移したという。追証の証拠金として突っ込むこと数回……。一度やってしまうと、会社のお金を証拠金に充てることに慣れてしまい、何度もその株を買い支えてしまった。 Aさんの危ない綱渡りはこれだけでは終わらなかった。仲の良い社長仲間と行ったマカオのカジノで、あろうことか信用取引での損を挽回しようとしたのだ。案の定、ここでも1000万円単位の負けを繰り返すことになった。 その後、税務調査で怪しい経費の存在がバレた。「社長自身が立て替え精算した、この5億円もの経費はなんだ?」という話になり、結局のところ経費とは認定されなかった。社長が会社からお金を借りた、つまり会社から見ると役員貸付金という形で5億円の貸し付けを受ける形に落ち着いた。 Aさんは、当時はまだ働き盛りの60代前半。気力も十分であり、その後の10年間で自分の役員報酬を年間数億円にすることで、役員貸付金を完済することができた(こういった役員貸付金が多額になるケースでは役員報酬を増額することで貸付金を解消するケースは多い。正直間違ったやり方であるが、本稿では触れない)』、「ハイテク銘柄の株では資産が3年で20分の1に」、「ベンチャー株投資」では、「税務調査で怪しい経費の存在がバレた。「社長自身が立て替え精算した、この5億円もの経費はなんだ?」という話になり、結局のところ経費とは認定されなかった。社長が会社からお金を借りた、つまり会社から見ると役員貸付金という形で5億円の貸し付けを受ける形に落ち着いた・・・Aさんは、当時はまだ働き盛りの60代前半。気力も十分であり、その後の10年間で自分の役員報酬を年間数億円にすることで、役員貸付金を完済することができた」、これは幸運だった。
・『大きな失敗も多い富裕層 70代以降はコンサバな運用が必要  そして十数年後――。 過去の反省を生かし今回はマカオでもなく、株の信用取引でもなく、あくまで自己資金の範囲内の取引だった。しかしながら、3億円の資産を1500万円まで減らしてしまったのだ。自社の業績はまずまずであり、自宅もあれば自社ビルもある。しかし自分の余剰資金はほぼ消滅してしまった。 会社と社長個人でも銀行に多額の借り入れがある状況なので、純資産ベースで見るとほぼゼロの状況になっている。関西の高級住宅街の邸宅に住み、広大な別荘を手にし、一見華やかな社長だが、実はすっからかん――そんなことも起こり得るのである。 さらに残酷なのは、Aさんの年齢だ。健康状態も良くなく、十数年前と比べると元気ではあるが、体力も気力も相当衰えている。さすがに今回は、3億円を取り戻すことは現実的に不可能だ。退職金という手段はあるが、借入金が流動資産を上回る状況なので、退職金を払うとキャッシュが枯渇する。本業自体はもうかっているがこれ以上の借り入れは危険な状態だ。あまりにもワンマンだったため、右腕の古参社員もおらず、事業を引き継ぐ予定だった子どもたちは全員会社から逃げ出したという有り様だ。 往々にして創業の経営者は、投資においてもこのような強烈な成功体験と失敗体験を併せ持つ。若いうちであればいくらでも挽回が利く。しかし、人生の終盤に差し掛かったときの失敗はリベンジができない。よって、70歳以降の富裕層には、コンサバな資産運用が求められるのだ。とはいえ、強烈な成功体験があればあるほど、晩年に慎重な方向に方向転換することは非常に難しい……。』、「人生の終盤に差し掛かったときの失敗はリベンジができない。よって、70歳以降の富裕層には、コンサバな資産運用が求められるのだ」、その通りだ。
・『富裕層ならではのリカバリー方法とは? 失った1億円を5年で取り戻す  富裕層だからといって、特別な運用方法があるわけではない。ただ、元手となる資金が多い分、ハードルの高い投資ができるというだけだ。そのハードルの高い投資の代表例が、最低投資金額が10万ドル、20万ドルの債券投資やデリバティブである。もちろん、言うまでもなく、こうした投資にはリスクがある。一歩間違えば、先ほどのAさんのような大損につながりかねない。 東海地方に住む60歳の会社経営者・Bさん(男性)は、そうしたデリバティブを内包している仕組み債に投資し、資産を減らしてしまった。彼は余剰資金のほぼ全てである1億円分、投資した。しかし、1000万円分の株になって戻ってきてしまったのだ。 しかし、Bさんは、資産が10分の1になる大失敗をしたにもかかわらず、生活スタイルを変える必要はなかった。失った資産額を取り戻すことができた。本業で多額の稼ぎがあるからだ。 Bさんの年収は約7000万円。毎年2000万円程度のお金が手元に残った。よって5年程度でまた1億円の資産を手に入れることができたのだ。これが、収入の多い富裕層特有のリカバリー法だ。 「有名企業に勤めた人が退職金で1億円入ってきた」という話や、「親の資産を相続して家を売却したら1億円になった」という話はそれなりにある。しかし、この1億円を使って投資に失敗したら、リカバリーするすべはない。よって、いかにこの1億円を失敗なく運用し続けるかが重要だ。 しかし、フローで多額の収入がきちんと入ってくる富裕層は、大きな失敗をしてもすぐに生活が脅かされることがない。そして失敗を繰り返す中で、投資にもぼちぼち成功をするようになってくる。本業で稼ぎながら資産運用にもコツコツ成功することで、財産を築く。Bさんも「最終的には最大の資産運用が本業だよ」と笑いながら度々、言う。 投資は常に失敗がつきもの。しかし、若いときにした失敗にはリカバリーが利く。稼ぎで取り返すことができるからだ。一方で、高齢者はリカバリーや失敗が許されない。退職金や相続などでまとまったお金を手にした人にとっては、大きな金額の失敗は致命傷になる。 金融機関などに言われるがままに投資するのは避けたいところだ。投資で多少なりともリターンが上がるようになったなら、高齢者は徐々に資産を取り崩す時期に入るため、保守的な投資方法にシフトしていく必要がある。そのあたりはまた次回、書きたいと思う』、「高齢者はリカバリーや失敗が許されない。退職金や相続などでまとまったお金を手にした人にとっては、大きな金額の失敗は致命傷になる。 金融機関などに言われるがままに投資するのは避けたいところだ。投資で多少なりともリターンが上がるようになったなら、高齢者は徐々に資産を取り崩す時期に入るため、保守的な投資方法にシフトしていく必要がある」、その通りだ。
タグ:Aさんは、当時はまだ働き盛りの60代前半。気力も十分であり、その後の10年間で自分の役員報酬を年間数億円にすることで、役員貸付金を完済することができた」、これは幸運だった。 「ハイテク銘柄の株では資産が3年で20分の1に」、「ベンチャー株投資」では、「税務調査で怪しい経費の存在がバレた。「社長自身が立て替え精算した、この5億円もの経費はなんだ?」という話になり、結局のところ経費とは認定されなかった。社長が会社からお金を借りた、つまり会社から見ると役員貸付金という形で5億円の貸し付けを受ける形に落ち着いた・・・ 「高齢者は徐々に資産を取り崩す時期に入るため、保守的な投資方法にシフトしていく必要がある」、その通りだ。 「人生の終盤に差し掛かったときの失敗はリベンジができない。よって、70歳以降の富裕層には、コンサバな資産運用が求められるのだ」、その通りだ。 「税務調査で怪しい経費の存在がバレた。「社長自身が立て替え精算した、この5億円もの経費はなんだ?」という話になり、結局のところ経費とは認定されなかった。社長が会社からお金を借りた、つまり会社から見ると役員貸付金という形で5億円の貸し付けを受ける形に落ち着いた。 Aさんは、当時はまだ働き盛りの60代前半。気力も十分であり、その後の10年間で自分の役員報酬を年間数億円にすることで、役員貸付金を完済することができた」、なるほど。 江幡吉昭氏による「投資とカジノで「5億円熔かした」70代女性社長、懲りずに1銘柄に3億つぎ込んだバクチ投資の末路」 「今や、このカテゴリーの商品で最割安な商品は運用資産額に対して年率0.05775%以下(税込み)のコストで運用が可能だ。 つまり、100万円を年間578円で運用できるのだ・・・インデックスファンドへの投資は一度方針を決めたら「ほったらかし」にできるし、むしろその方がいい・・・一度頭を使って方針を決めることのタイパとコスパがどのようなものになるのかは、個人の資質や環境によって異なるのだろうが、優劣は明らかであるような気がする」、やはり優れているようだ。 それは、人間の能力や努力が足りないからというよりは、特定のマーケットの中での運用パフォーマンス競争にあっては、ライバルの平均像となるポートフォリオを持ってじっとしていることが有利な「平均投資有利の原則」とでも呼ぶべき原則が働くことが理由・・・仮にうまくアクティブリターンを稼ぐAIが登場したとして、これが容易に別のAIに模倣されるのではないかという、別の高い障壁が存在する」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン (その4)(「AI任せ」の資産運用はうまく儲けられるのか?、投資とカジノで「5億円熔かした」70代女性社長 懲りずに1銘柄に3億つぎ込んだバクチ投資の末路) 「高齢者はリカバリーや失敗が許されない。退職金や相続などでまとまったお金を手にした人にとっては、大きな金額の失敗は致命傷になる。 金融機関などに言われるがままに投資するのは避けたいところだ。投資で多少なりともリターンが上がるようになったなら、高齢者は徐々に資産を取り崩す時期に入るため、保守的な投資方法にシフトしていく必要がある」、その通りだ。 投資(商品販売・手法) 山崎 元氏による「「AI任せ」の資産運用はうまく儲けられるのか?」 「投資の世界で「もうけること」として意味があるのは、平均的なリスクを取りながら平均を上回るリターン(「アクティブリターン」と称する)を稼ぐことだ。これを意図的に継続することができるなら「もうける能力がある」といえるだろう。 この意味でAIが大規模な成功を収めることについて、筆者は懐疑的だ・・・手本となるべき人間がこのことに成功しているとは言い難い。 置き換えの進捗度合いは、商品としての運用のありがた味として何を残すのがいいのかと、コストとの関係で決まるだろう」、なるほど。 「今や、データを処理しポートフォリオを作ることだけでなく、個々の投資銘柄について要領のいいアナリストレポートを作ることも、運用の結果について「顧客の期待を将来につなぐことのできる言い訳」を考えることも含めて、「運用の仕事」をAIに置き換えることに全く無理はなさそうだ・・・人間のアナリスト、ファンドマネージャー、マーケティング担当者のいずれも、その気になると置き換えることは容易だろう。 そこに、運用に関するアドバイスや一任の潜在的なニーズが存在する。 いくらか達観しすぎかもしれないが、サービスの供給者側は、その時々に「自分で判断せずに済む、ありがた味のある仕掛け」を顧客に提供してやればいい。今やAIがブームなのだから、AIと名の付くものを売ればいい、というのは自然な商売の成り行きだ」、なるほど。 「彼らの天敵とも言うべきインデックスファンドとの比較で「人間の天才投資家」は色あせてしまった。 そうなると、人間的な判断はむしろ嫌われる材料になった。コンピューターの処理能力やビッグデータ、機械学習、そしてAIといったイメージが、「よく分からないけれどもすごそうな中身」として商品としての運用の価値を支えることになったのだろう。 行動経済学で「後悔回避のバイアス」として表現されているように、近い将来に失敗が明らかになるかもしれない判断を自分で下すことにちゅうちょする人間は少なくない。 利用者は、時間とともに学習データを増やしてAIが賢くなっていくことや、人間の先入観による投資判断が排除できると「感じる」ことなどをポジティブに捉えているようだ」、なるほど。 「資産配分を行ってくれるという意味では既に、投資信託なら「バランスファンド」、人間のサービスなら「ファンドラップ」、システムによる一任運用なら「ロボアドバイザー」が存在した・・・AIによって運用するという触れ込みのロボアドバイザーを利用しているらしい。 筆者の山崎 元氏は本年1月1日に死去された。ご冥福を祈りたい。
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金融業界(その20)(三井住友FG「急転直下のトップ交代劇」異例の経緯 剛腕社長が急逝、未完となった「純利益1兆円」、東和 みちのく銀…公的資金注入の地銀6行「完済の道」は3つ メインにすべき道は? 普通株転換を前に加速した地銀「公的資金返済」の行方 残る注入行は金利上昇を味方に内部留保の積み上げを、地銀で5年ぶり、トモニ「公募増資」に問われる意義 地域貢献の名の下に、株主は犠牲を払うべきか) [金融]

金融業界については、昨年9月6日に取上げた。今日は、(その20)(三井住友FG「急転直下のトップ交代劇」異例の経緯 剛腕社長が急逝、未完となった「純利益1兆円」、東和 みちのく銀…公的資金注入の地銀6行「完済の道」は3つ メインにすべき道は? 普通株転換を前に加速した地銀「公的資金返済」の行方 残る注入行は金利上昇を味方に内部留保の積み上げを、地銀で5年ぶり、トモニ「公募増資」に問われる意義 地域貢献の名の下に、株主は犠牲を払うべきか)である。

先ずは、昨年12月1日付け東洋経済オンライン「三井住友FG「急転直下のトップ交代劇」異例の経緯 剛腕社長が急逝、未完となった「純利益1兆円」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/718704
・『「痛恨の極み」「言葉もない」「耐えがたい思い」――。およそ経営トップの交代会見とは思えない、重苦しい言葉が並んだ。 11月30日、三井住友フィナンシャルグループ(FG)は中島達(なかしまとおる)副社長が社長に昇格する人事を発表した。12月1日付という異例の人事の背景にあるのが、太田純前社長の急逝だ。「剛腕」と称されたトップの喪失で、三井住友FGは新たな局面を迎える』、興味深そうだ。
・『「脱銀行」を掲げ矢継ぎ早に改革を推進  「脱銀行」。太田氏は2019年4月に社長就任後、伝統的な銀行業務からの脱却を掲げて、矢継ぎ早に改革を進めた。 「社長製造業」と銘打ち、若手・中堅社員を社内ベンチャー事業の社長に抜擢したほか、2023年3月には銀行や証券、カード、保険など個人向け金融サービスを一元化したアプリ「オリーブ」を投入した。 SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長やCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)の増田宗昭会長兼CEO(最高経営責任者)など、個性派の経営者とも交友を深めた。海外では、アメリカ証券大手ジェフリーズや東南アジアの現地金融機関への出資を進めた。) 三井住友FGは2023年3月期決算で過去最高純利益を更新するなど、順風満帆かと思われた。だが、その中で発覚したのが太田氏の膵臓がんだ。 太田氏は4月に経営陣に罹患を打ち明けた後も精力的に活動を続けたが、抗がん剤の副作用からか持ち前のがっしりとした体躯はみるみる痩せていった。 周囲には、がんに苦しむそぶりを見せなかった。今秋、ある会合で同席した別のメガバンク首脳から「体調はいかがですか」と痩身ぶりを案じられた際、太田氏は「ダイエットですよ」と涼しい顔で答えたという』、「太田氏は4月に経営陣に罹患を打ち明けた後も精力的に活動を続けたが、抗がん剤の副作用からか持ち前のがっしりとした体躯はみるみる痩せていった・・・今秋、ある会合で同席した別のメガバンク首脳から「体調はいかがですか」と痩身ぶりを案じられた際、太田氏は「ダイエットですよ」と涼しい顔で答えたという」、職業柄弱音は吐けないとはいえ、大したものだ。
・『水面下で進んでいた後継社長の選定  一方、三井住友FGの指名委員会では、健康問題が顕在化する前の2022年頃から、太田氏の後継者選定が水面下で進んでいた。 FG社長の任期は6年が慣例で、通常なら太田氏の任期は2025年まで。だが、2023年4月に中核子会社の三井住友銀行頭取が交代するのに合わせて、「FGの社長人事も並行して審議した」(三井住友FGの國部毅会長)。そこで浮上したのが、太田氏とともに企画部門で仕事をしていた中島氏だった。 中島氏は1986年に旧住友銀行入行後、支店勤務などを経て企画畑を歩んだ。2001年の住友銀行・さくら銀行の合併に際しては住銀側の事務局を務めたほか、消費者金融大手のプロミス(現SMBCコンシューマーファイナンス)の買収も手がけた。 中島氏が2012年に投資銀行統括部へ異動になった際、直属の上司となったのが太田氏だ。その後も企画部長やグループCFO(最高財務責任者)など、太田氏の下で要職を歴任。こうした経緯もあり、次期社長ポストの「最右翼」として指名委員会の合意を得た。 おりしも、三井住友FGは2023年度から「コンティンジェンシープラン」を導入していた。経営トップに不測の事態が発生した際の対応計画で、太田氏が経営の指揮を執れなくなった際には、中島氏が社長業務を代行することが決められた。) 皮肉にも、コンティンジェンシープランは導入後に、早速発動されることとなる。太田氏は11月初旬に体調を崩し都内の病院で治療を行っていたが、容体が急変。同14日に予定されていた決算説明会を急遽欠席した。業務継続が困難と判断した太田氏は同21日、指名委員会に辞意を表明した。 「1週間ほど前、國部会長から『近いうちに社長として推挙される可能性がある』という話をいただいた」(中島氏) 本来であれば、社長交代の時期はもう少し後に予定されていたようで、太田氏は治療を継続しつつ、特別顧問として経営の後ろ盾となるはずだった。だが太田氏は11月25日早朝に65歳で息を引き取り、急転直下のトップ交代となった』、「指名委員会では、健康問題が顕在化する前の2022年頃から、太田氏の後継者選定が水面下で進んでいた・・・2023年度から「コンティンジェンシープラン」を導入していた。経営トップに不測の事態が発生した際の対応計画で、太田氏が経営の指揮を執れなくなった際には、中島氏が社長業務を代行することが決められた」、十分な備えがあったようだ。
・『動揺が続く中での舵取り  動揺が続く中で、舵取りを任された中島氏。「太田社長が推し進められたことをしっかりやる」と意気込むが、目先の課題は2023年度から始まった中期経営計画の見直しだろう。 三井住友FGは11月、2024年3月期決算の純利益見通しを従来の8200億円から9200億円へと上方修正した。株売却益などの特殊要因があるとはいえ、中期経営計画の「2026年3月期に9000億円」という最終目標をあっさり超過してしまった。 身内からも、「最終年度の目標をわずか半年で達成してしまったことは、(中計の目標設定が正しかったのか)きちんと分析しないといけない」(三井住友銀行の福留朗裕頭取)という声が上がる。 中・長期的には、他メガバンクに見劣りする領域の挽回がカギになりそうだ。三井住友FGは個人や中堅・中小企業取引、デジタル化などで先行する一方、「大企業取引は3メガの中でも十分なものになっていない」(中島氏)。直近では大企業部門の責任者を務めていた中島氏の手腕が、早々に試される。 海外展開でも、アメリカの証券業務はモルガン・スタンレーを抱える三菱UFJフィナンシャル・グループや、現地の投資銀行買収で拡大するみずほフィナンシャルグループに後れを取る。 太田氏は2023年6月に実施した東洋経済のインタビューで、「アメリカの投資銀行部門の強化は長年の目標だ。ボンド(債券)の引き受けではSMBC日興証券もそこそこの競争力があるが、エクイティ(株式)やM&Aの強化は、今からではとても間に合わない」と話していた。 太田氏の置き土産であるジェフリーズとの資本提携の効果を発現できるかが、今後重要になりそうだ。 「2028年度に純利益1兆円が目標。でも、金利環境が変わったら(達成時期も)変わりますよ」。国内金利の上昇機運が高まる中、太田氏は東洋経済のインタビューでこう期待をにじませていた。「1兆円の大台」の遺志を継ぐ中島氏に、重責がのしかかる』、「2024年3月期決算の純利益見通しを従来の8200億円から9200億円へと上方修正した。株売却益などの特殊要因があるとはいえ、中期経営計画の「2026年3月期に9000億円」という最終目標をあっさり超過してしまった・・・(中計の目標設定が正しかったのか)きちんと分析しないといけない」(三井住友銀行の福留朗裕頭取)という声が上がる・・・「2028年度に純利益1兆円が目標。でも、金利環境が変わったら(達成時期も)変わりますよ」」、今後の実績が目標を上回るかどうか注目したい。

次に、昨年12月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したY’sリサーチ代表の山田能伸氏による「東和銀、みちのく銀…公的資金注入の地銀6行「完済の道」は3つ、メインにすべき道は? 普通株転換を前に加速した地銀「公的資金返済」の行方 残る注入行は金利上昇を味方に内部留保の積み上げを」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/335001
・『リーマンショック後に地銀が受け入れた公的資金の完済が相次いでいる。公的資金が優先株式から普通株式に一斉転換する期限が近づいてきたなか、各行は(1)内部留保の蓄積、(2)第三者割当増資による資本調達、(3)再編による資本力増強──の三つの方法で返済原資を確保した。公的資金が残る6地銀は、今後、予想される金利上昇も味方に付けて、地道な内部留保の積み上げで公的資金の完済を目指していくべきだろう』、興味深そうだ。
・『7行が返済原資を確保し普通株転換を前に完済  2021年10月の福邦銀行を皮切りに、地銀による公的資金の返済が相次ぎ、三十三フィナンシャルグループ(旧第三銀行)(FG)など7行が完済を果たしている。これにより、公的資金が残存している地銀は、東和銀行や筑波銀行など6行(持株会社ベースでは5社)となった(図表)。 (図表:地銀の公的資金の異動(2018年以降) はリンク先参照) 現在、6行はいずれも金融機能強化法に基づき公的資金の注入を受けている。各行に対する公的資金の注入は転換型の優先株式で行われているが、上場会社の場合、優先株が普通株に転換すると株価変動によって返済の時期や手法が不安定になる。完済した7行の一斉転換期限は24年から25年に設定されていたことから、期限前の返済が意識された可能性が高い。 過去にメガバンクなど大手行が公的資金を完済した方法は三つある。金融機能強化法に基づく返済でも、この三つの方法がベースになっている。) 一つ目が、内部留保の蓄積だ。フィデアホールディングス(HD)は傘下の北都銀行の公的資金100億円を、21年9月と23年2月の2回に分けて完済した。蓄積してきた内部留保が返済原資となった。公的資金が残る銀行でも、東和銀行が18年5月に350億円のうち200億円を内部留保によって返済している。 二つ目に、第三者割当増資や市場からの資本調達が挙げられる。南日本銀行、宮崎太陽銀行、高知銀行の3行は、優先株を地元財界の有力企業が引き受けるかたちで発行した。もっとも、3行とも優先株の発行額が公的資金注入額を下回っており、実際には内部留保の蓄積分も合わせて返済が行われた。 そして、三つ目が再編による返済で、福井銀行の子会社である福邦銀行や三十三FG、プロクレアHD(みちのく銀行)が該当する。経営統合はいずれも公的資金返済のためではなく、地域経済への貢献を主眼としているが、結果として資本力の増強が完済につながった。 このうち、第一、第二の手法をとった5行では、公的資金完済後の自己資本比率(国内基準)が、市場が大まかなメドとする「8%」をクリアしている。他方、再編による返済では、統合の趣旨に鑑みれば、自己資本比率は公的資金を受け入れた銀行の単体ではなく、グループ連結で見るべきだろう。直近(23年9月期)の連結自己資本比率は三十三FGとプロクレアHDが8%を超えており、福井銀行も7.56%と8%に近い水準を確保している』、「金融機能強化法に基づく返済でも、この三つの方法がベースになっている。) 一つ目が、内部留保の蓄積だ。フィデアホールディングス(HD)は傘下の北都銀行の公的資金100億円を、21年9月と23年2月の2回に分けて完済した。蓄積してきた内部留保が返済原資となった・・・二つ目に、第三者割当増資や市場からの資本調達が挙げられる。南日本銀行、宮崎太陽銀行、高知銀行の3行は、優先株を地元財界の有力企業が引き受けるかたちで発行した。もっとも、3行とも優先株の発行額が公的資金注入額を下回っており、実際には内部留保の蓄積分も合わせて返済が行われた・・・三つ目が再編による返済で、福井銀行の子会社である福邦銀行や三十三FG、プロクレアHD(みちのく銀行)が該当する。経営統合はいずれも公的資金返済のためではなく、地域経済への貢献を主眼としているが、結果として資本力の増強が完済につながった」、なるほど。
・『金利上昇は追い風も不毛な消耗戦は避けよ  では、公的資金が残る6行についてはどうか。 まず前述のとおり、東和銀行はすでに1回目の返済を終えている。同行は一斉転換期限を迎える24年12月までに、内部留保による完済を行う方針だ。 次に、筑波銀行、東北銀行、豊和銀行に注入された優先株の一斉転換期限は29年から37年に設定されている。各行は中長期的な目線で内部留保の積み上げを目指すと思われる。 また、じもとHDでは23年9月、傘下のきらやか銀行に180億円の公的資金が新たに注入され、同行が受け入れている公的資金の残高は480億円になった。同じく傘下の仙台銀行(300億円)を合わせて計780億円になる。きらやか銀行は、24年10月に一斉転換期限が設定されている200億円の優先株の返済を計画しており、新たな公的資金の受け入れは「実質的な借り換え」とみられる。 これらの公的資金が残る地銀では、返済手法として内部留保の蓄積をメインルートとして考えるべきだろう。幸いなことに、今はこれまで低位にとどまっていた金利が上向きつつある。これに伴う預貸ビジネスという本業での収益増は、各行にとって間違いなく追い風になる。) 注意すべき点もある。すべての預金取扱金融機関において、過去20年以上にわたる継続的な預貸金利ザヤの低下は、貸出金利の引き下げ競争の影響が大きかったと考える。こうした不毛な消耗戦が金融機関の体力を弱めた側面は否めない。 筆者は、金利上昇の過程で、同様のことが預金金利でも生じることを危惧している。金利が高く設定された預金には資金が集まるが、それに対抗するために金利の引き上げ競争が起きれば収益は改善しない。内部留保を蓄積していくに当たっては、不毛な消耗戦を繰り返すのが本当に正しいのかを胸に手を当てて考えるべきだ』、「金利上昇の過程で、同様のことが預金金利でも生じることを危惧している。金利が高く設定された預金には資金が集まるが、それに対抗するために金利の引き上げ競争が起きれば収益は改善しない。内部留保を蓄積していくに当たっては、不毛な消耗戦を繰り返すのが本当に正しいのかを胸に手を当てて考えるべきだ」、その通りだ。
・『所期の成果が上がった公的資金の予防注入  最後に公的資金が果たしてきた役割と、それに対する評価をまとめたい。 公的資金注入には、金融システムの安定を図る「金融危機対応」と、資本増強を通じて金融仲介機能を高める「予防注入」の2類型がある。根拠法でいえば、金融機能安定化法(1998年施行、旧安定化法)と早期健全化法(98年施行)、預金保険法(2000年の法改正で金融危機対応措置を導入)は前者、組織再編法(03年施行)と金融機能強化法(04年施行)は後者に相当する。 金融危機対応では、「多くの企業が破綻しているのになぜ銀行だけ救済するのか」という社会的批判が巻き起こったことから、当時、公的資金の注入を受けたメガバンクグループは店舗や人員削減、業務の効率化を急いだ。また、経営健全化計画の目標が未達の場合は、当局から経営責任を追及された。 結果として、3メガバンクグループは07年3月期までに公的資金を完済し、3社合計で預金保険機構に1兆円を超える利益をもたらした。また、これにより大手行に「市場規律」が根付き、CEO(最高経営責任者)による国内外の機関投資家との率直な対話や、SDGsなどの観点を含めた幅広い情報開示につながってきたと考える。 一方、予防注入では社会的批判の対象にはなりづらく、法人や個人取引先に対する堅実な貢献が重視されてきた。そのため、公的資金注入行における“モラルハザード”に関する批判も聞かれる。 もっとも、どの地域でもクレジットクランチ(信用収縮)は起きておらず、貸出は順調に増加している。こうしたことから、予防注入は所期の成果が上がったとみていいだろう』、「予防注入では社会的批判の対象にはなりづらく、法人や個人取引先に対する堅実な貢献が重視されてきた。そのため、公的資金注入行における“モラルハザード”に関する批判も聞かれる。 もっとも、どの地域でもクレジットクランチ(信用収縮)は起きておらず、貸出は順調に増加している。こうしたことから、予防注入は所期の成果が上がったとみていいだろう」、その通りだ。

第三に、昨年12月28日付け東洋経済オンライン「地銀で5年ぶり、トモニ「公募増資」に問われる意義 地域貢献の名の下に、株主は犠牲を払うべきか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/724343
・『地方銀行としては5年ぶりとなる公募増資が、波紋を呼んでいる。 香川銀行と徳島大正銀行を傘下に持つ地銀グループ「トモニホールディングス(HD)」は12月5日、公募および第三者割当増資を行うと発表した。 払込期日については、公募増資は12月20日、第三者割当増資は12月29日とする。発行済み株式数の2割にあたる3220万株を発行し、約112億円を調達。得た資金は、中小企業向け貸し出しに充当する。 地銀セクターによる久方ぶりの公募増資について、その反応はさまざまだ。「国内金利の上昇を控え、成長戦略を描きやすくなった」(大手証券会社)と歓迎の声が挙がる一方、「株主を軽視している」(機関投資家)という不満もくすぶる。賛否が割れる背景には、何があるのか』、興味深そうだ。
・『リスクアセットの膨張を懸念  「当社の自己資本比率は、地銀の中では後ろから数えたほうが早い(水準が低い)。今の水準でも問題はないが、もう少し資本を厚くしたいと思っていた」。トモニHDの幹部は、公募増資の意義をこう話す。 銀行の自己資本比率には、厳格な規制が敷かれている。海外に営業拠点を持たない銀行は4%が必須とされるが、資本が毀損された場合に備えて各行は8%以上を意識する。 2023年9月末時点におけるトモニHD傘下行の単体自己資本比率は香川銀が9.5%、徳島大正銀が8.1%。後者は2020年1月、6%前後だった大正銀を徳島銀が吸収合併したことで数値が押し下げられたものの、両行とも危険水域ではない。 それでもトモニHDが増資を急いだ背景にあるのは、「リスクアセット」の膨張だ。 銀行の自己資本比率の分母には、総資産ではなく貸出金や有価証券ごとのリスクを数値化したリスクアセットが用いられる。高格付けの大企業向け貸し出しなら残高の一部しかリスクアセットとして計上されない一方、信用力の低い中小企業向けは残高のほぼ全額がリスクアセットとみなされる。 総資産や自己資本の額が変わらずとも、貸し倒れリスクが高い先への貸し出しが増えるほどリスクアセットが膨らみ、自己資本比率は低下する。) 中でも、トモニHDが得意とする中小企業や事業用不動産向け貸し出しはリスクが高く計測され、一般にはリスクウェイト100%、つまり貸出残高が全額リスクアセットとしてみなされる。 同社のディスクロージャー誌によれば、2023年3月末時点でリスクウェイト100%に分類される資産は、約1.9兆円にのぼる。 同社は近年貸し出しを積極化しており、リスクアセットは直近3年間で10%以上増えた。今後も中小企業の資金需要に応えていると、リスクアセットの膨張を通じて自己資本比率が低下しかねない。 そこで「(公募増資によって)財務基盤を一層強化し、貸出金増強に伴うリスクアセット拡大に備えることが必要と判断した」(トモニHDの開示資料)とする。 「増資はかねて検討していた」(前出の幹部)というが、8月中旬に300円台後半だった株価が、9月以降400円台後半に乗せたことが背中を押したようだ。 「この株価水準での増資はあり得ない」「中小企業支援のための資金調達」とのもっともらしい理由を掲げるトモニHDだが、株主は今回の公募増資に疑問を抱いている。 「この株価水準での増資はあり得ない」。ある機関投資家は語気を強める。やり玉に挙げるのはトモニHDのPBR(株価純資産倍率)だ。公募増資発表日の12月5日時点でPBRは0.31倍。実際には発表直後に株価が急落し、発行価格はPBR0.23倍の水準で決まった。 低PBRでの増資には2つの問題点がある。1つは発行体が調達する資金の減少だ。トモニHDは公募増資などで約112億円を調達する見込みだが、仮に株価がより高値で推移し、発行・売り出し価格をPBR換算で1倍の水準に設定できていれば、同じ発行株数でも調達額は4倍に増えていた。) 株主がより看過できないのは、BPS(1株当たり純資産)希薄化の問題だろう。 9月末時点におけるトモニHDのBPSは1535円。一方、今回の公募増資では、前述の通り3220万株を発行して約112億円を調達する。1株当たりの調達額は、わずか約347円だ。株数の増加に純資産の増加が追いつかず、BPSは強烈に希薄化する。 希薄化を覚悟で強行した公募増資には、同業も首をかしげる。「トモニHDの自己資本比率は、決して低すぎる水準ではない。貸し出しを伸ばしたいとはいえ、資本増強を急ぐ必要性があったのだろうか」(四国地方の地銀幹部)』、「株主がより看過できないのは、BPS(1株当たり純資産)希薄化の問題だろう。 9月末時点におけるトモニHDのBPSは1535円。一方、今回の公募増資では、前述の通り3220万株を発行して約112億円を調達する。1株当たりの調達額は、わずか約347円だ。株数の増加に純資産の増加が追いつかず、BPSは強烈に希薄化する」、その通りだ。
・『調達資金は地元に還元されるのか  増資で調達した資金が、地元に還元されるかも未知数だ。近年のトモニHDの貸出残高を見ると、中核市場に据える香川・徳島両県が微増にとどまるのに対して、成長領域に位置付ける大阪や東京の伸びが著しい。 折しも、傘下の香川銀は10月に、都内で4カ店目となる品川支店を開設した。「地元のために存在する地銀が、地元ではなく大都市向け取引強化のために増資を行うように見える。それには違和感がある」(中国地方の地銀幹部)。 トモニHDの増資を引き受けたある証券会社の幹部は、「教科書的に言えば、(PBRが1倍割れの現状では)増資よりも自己株取得をすべきなのは確かだ」と認める。 一方、同幹部は「地銀の株主は地元の住民や企業が多い。増資を通じて一層成長し、より地域に貢献するという観点で理解を得たい」とも付け加えた。新たに発行される株式の多くは、トモニHDのおひざ元である四国地方の支店に配分されるもようだ。 調達資金が大都市の企業向け貸し出しに充当されるのでは、という指摘に対して、トモニHD幹部は「(東京や大阪は)マーケットが大きいことは事実。貸出金も大都市を中心に伸びるだろう。ただ、地元を軽視するつもりはない」と反論する。 四国地方でもビジネスマッチングなどを展開し、大都市圏で稼いだ収益を地元に還元することを描く。) トモニHDの公募増資実施を受けて、「うちは考えていないが、増資を検討する銀行が出てきてもおかしくない」と、別の地銀幹部は指摘する。 引き受け側の証券会社は、「金利がある世界の到来で(金融緩和の解除を控え)銀行の収益が回復する、という成長シナリオを描きやすくなった」(大手証券幹部)と、増資対応に向けて早くも鼻息が荒い』、「引き受け側の証券会社は、「金利がある世界の到来で(金融緩和の解除を控え)銀行の収益が回復する、という成長シナリオを描きやすくなった」(大手証券幹部)と、増資対応に向けて早くも鼻息が荒い」、なるほど。
・『2017年から2018年に地銀の公募増資ラッシュ  地銀における公募増資ラッシュは、直近では2017年から2018年にかけて訪れた。トモニHDと同様に、いずれも中小企業向け貸し出しの拡大に伴うリスクアセットの増加が理由だった。そして、増資発表時のPBRも軒並み1倍を割っていた。 公募増資後、各行の株価はどう推移したか。低金利政策やコロナ禍といった外部環境はあるにせよ、いずれも増資発表前の水準を回復できていない。充実したのは銀行の自己資本だけだ。 この点、既存株主への影響を緩和するため、普通株ではなく優先株で資金調達を図った例もある。2022年末に優先株で60億円を調達した、島根銀行が好例だ。 6%台だった自己資本比率の増強が目的だったが、「議決権の希薄化を防ぐため」(島根銀行幹部)普通株ではなく優先株を選択。さらに優先株の半分は島根県内を中心とする中小企業に割り当てることで、地元から資金を調達し、地元に還元する道を選んだ。 優先株は2032年に普通株へと転換されるが、期限までに収益力を強化し、買い戻すことを目指す(2022年12月2日配信「島根銀行が2度目の増資、『SBI頼み』を避けた意図」)。 中小企業支援という大義名分があるにせよ、希薄化という犠牲を伴ってまで公募増資を断行する意義とは何か。資本コストやPBRに注目が集まる昨今、トモニHDはこれまで以上に株主の厳しい目にさらされることになる』、「中小企業支援という大義名分があるにせよ、希薄化という犠牲を伴ってまで公募増資を断行する意義とは何か。資本コストやPBRに注目が集まる昨今、トモニHDはこれまで以上に株主の厳しい目にさらされることになる・・・普通株ではなく優先株を選択。さらに優先株の半分は島根県内を中心とする中小企業に割り当てることで、地元から資金を調達し、地元に還元する道を選んだ。 優先株は2032年に普通株へと転換されるが、期限までに収益力を強化し、買い戻すことを目指す」、さて現実にはどうするのか、お手並み拝見だ。
タグ:(その20)(三井住友FG「急転直下のトップ交代劇」異例の経緯 剛腕社長が急逝、未完となった「純利益1兆円」、東和 みちのく銀…公的資金注入の地銀6行「完済の道」は3つ メインにすべき道は? 普通株転換を前に加速した地銀「公的資金返済」の行方 残る注入行は金利上昇を味方に内部留保の積み上げを、地銀で5年ぶり、トモニ「公募増資」に問われる意義 地域貢献の名の下に、株主は犠牲を払うべきか) 金融業界 東洋経済オンライン「三井住友FG「急転直下のトップ交代劇」異例の経緯 剛腕社長が急逝、未完となった「純利益1兆円」」 「太田氏は4月に経営陣に罹患を打ち明けた後も精力的に活動を続けたが、抗がん剤の副作用からか持ち前のがっしりとした体躯はみるみる痩せていった・・・今秋、ある会合で同席した別のメガバンク首脳から「体調はいかがですか」と痩身ぶりを案じられた際、太田氏は「ダイエットですよ」と涼しい顔で答えたという」、職業柄弱音は吐けないとはいえ、大したものだ。 「指名委員会では、健康問題が顕在化する前の2022年頃から、太田氏の後継者選定が水面下で進んでいた・・・2023年度から「コンティンジェンシープラン」を導入していた。経営トップに不測の事態が発生した際の対応計画で、太田氏が経営の指揮を執れなくなった際には、中島氏が社長業務を代行することが決められた」、十分な備えがあったようだ。 「2024年3月期決算の純利益見通しを従来の8200億円から9200億円へと上方修正した。株売却益などの特殊要因があるとはいえ、中期経営計画の「2026年3月期に9000億円」という最終目標をあっさり超過してしまった・・・(中計の目標設定が正しかったのか)きちんと分析しないといけない」(三井住友銀行の福留朗裕頭取)という声が上がる・・・「2028年度に純利益1兆円が目標。でも、金利環境が変わったら(達成時期も)変わりますよ」」、今後の実績が目標を上回るかどうか注目したい。 ダイヤモンド・オンライン 山田能伸氏による「東和銀、みちのく銀…公的資金注入の地銀6行「完済の道」は3つ、メインにすべき道は? 普通株転換を前に加速した地銀「公的資金返済」の行方 残る注入行は金利上昇を味方に内部留保の積み上げを」 「金融機能強化法に基づく返済でも、この三つの方法がベースになっている。) 一つ目が、内部留保の蓄積だ。フィデアホールディングス(HD)は傘下の北都銀行の公的資金100億円を、21年9月と23年2月の2回に分けて完済した。蓄積してきた内部留保が返済原資となった・・・二つ目に、第三者割当増資や市場からの資本調達が挙げられる。南日本銀行、宮崎太陽銀行、高知銀行の3行は、優先株を地元財界の有力企業が引き受けるかたちで発行した。もっとも、3行とも優先株の発行額が公的資金注入額を下回っており、実際には内部留保の蓄積分 も合わせて返済が行われた・・・三つ目が再編による返済で、福井銀行の子会社である福邦銀行や三十三FG、プロクレアHD(みちのく銀行)が該当する。経営統合はいずれも公的資金返済のためではなく、地域経済への貢献を主眼としているが、結果として資本力の増強が完済につながった」、なるほど。 「金利上昇の過程で、同様のことが預金金利でも生じることを危惧している。金利が高く設定された預金には資金が集まるが、それに対抗するために金利の引き上げ競争が起きれば収益は改善しない。内部留保を蓄積していくに当たっては、不毛な消耗戦を繰り返すのが本当に正しいのかを胸に手を当てて考えるべきだ」、その通りだ。 「予防注入では社会的批判の対象にはなりづらく、法人や個人取引先に対する堅実な貢献が重視されてきた。そのため、公的資金注入行における“モラルハザード”に関する批判も聞かれる。 もっとも、どの地域でもクレジットクランチ(信用収縮)は起きておらず、貸出は順調に増加している。こうしたことから、予防注入は所期の成果が上がったとみていいだろう」、その通りだ。 東洋経済オンライン「地銀で5年ぶり、トモニ「公募増資」に問われる意義 地域貢献の名の下に、株主は犠牲を払うべきか」 「株主がより看過できないのは、BPS(1株当たり純資産)希薄化の問題だろう。 9月末時点におけるトモニHDのBPSは1535円。一方、今回の公募増資では、前述の通り3220万株を発行して約112億円を調達する。1株当たりの調達額は、わずか約347円だ。株数の増加に純資産の増加が追いつかず、BPSは強烈に希薄化する」、その通りだ。 「引き受け側の証券会社は、「金利がある世界の到来で(金融緩和の解除を控え)銀行の収益が回復する、という成長シナリオを描きやすくなった」(大手証券幹部)と、増資対応に向けて早くも鼻息が荒い」、なるほど。 「中小企業支援という大義名分があるにせよ、希薄化という犠牲を伴ってまで公募増資を断行する意義とは何か。資本コストやPBRに注目が集まる昨今、トモニHDはこれまで以上に株主の厳しい目にさらされることになる・・・普通株ではなく優先株を選択。さらに優先株の半分は島根県内を中心とする中小企業に割り当てることで、地元から資金を調達し、地元に還元する道を選んだ。 優先株は2032年に普通株へと転換されるが、期限までに収益力を強化し、買い戻すことを目指す」、さて現実にはどうするのか、お手並み拝見だ。
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金融関連の詐欺的事件(その14)(不動産会社の「許せない手口」の実態…お金に困った高齢者への殺し文句に要注意、スルガ銀 「膠着2年半」アパマン融資の視界不良 揺れる、もう1つの「かぼちゃの馬車」問題) [金融]

金融関連の詐欺的事件については、本年5月6日に取上げた。今日は、(その14)(不動産会社の「許せない手口」の実態…お金に困った高齢者への殺し文句に要注意、スルガ銀 「膠着2年半」アパマン融資の視界不良 揺れる、もう1つの「かぼちゃの馬車」問題)である。

先ずは、本年9月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したスタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタントの沖有人氏による「不動産会社の「許せない手口」の実態…お金に困った高齢者への殺し文句に要注意」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328428
・『持ち家を売って資金を得た後、そのまま賃貸契約を結んで住み続けられる「リースバック」。この不動産取引は高齢者などから需要があるようだが、契約者は下手をすれば自宅を失うリスクがある。不動産事業者が設定する買い取り金額は相場より安く、家賃は高くなりがちだからだ。筆者が「許せない」と感じる取引の問題点を詳しく解説する』、最近はテレビでも「リースバック」を派手に宣伝しているが、「買い取り金額は相場より安く、家賃は高くなりがちだ」なので、確かに「契約者は下手をすれば自宅を失うリスクがある」、なるほど。
・『親のすみかが奪われる!? リースバックに潜む大損リスク  生まれ育った実家や、両親のすみかを失っている人が急増中だ。広告で見ることも増えている「リースバック」という不動産取引が原因で、国土交通省や国民生活センターが注意喚起を行っている。 お盆は過ぎたが、もしこれから実家に帰る機会があれば、このリースバックには気を付けるよう親に話しておいた方がいい。 リースバックとは、自宅(持ち家)を不動産事業者に売却して資金を得た一般消費者が、賃貸契約を結んで同じ物件に住み続けられる仕組みだ。高齢者などから需要があり、最近は戸建て住宅のリースバックを手掛ける不動産事業者が増えている。 だが、この手法で得られる売却代金は、一般的な取引よりも大幅に安いことが多い。それどころか、賃貸契約後の家賃は相場よりも高くなりがちだ。ビジネスそのものは現行法では問題ないのかもしれないが、筆者はこれらを「法外」な水準だと思っている。 それでもお金に困っている高齢者は、自宅を売却して老後資金を手に入れられるだけでなく、そこに「住み続けられる」という殺し文句で相場を知らずに契約してしまう。 契約者は自分名義ではなくなった家に、昨日までと同様に住み続けることができるが、その裏側では大損するリスクがある。最悪の場合はホームレスになってしまう。 というのも、リースバックを手掛ける不動産事業者にとって、期待利回り(年率)はなんと約7~12%ある。買い取り価格の最大12%程度の金額を、家賃収入として毎年受け取ることができるのだ。 だが契約者側にとってみれば、仮に相場通りの金額で自宅を売却できても、その資金は約8~14年でなくなってしまう。そして、これはあくまで理論上の数値だ。実際に手に入る資金は相場以下になるので、もっと短い期間で底を突くと考えた方がいい。  この実態を考えると、リースバックを使わずに自宅を持っていた方が得である。すでに仕事を引退し、年金生活をしている高齢者はなおさらだ。安易に手を出した結果、再び資金繰りに苦慮して家賃を支払えなくなり、数年後に家を失う事態に発展するかもしれない。) そんなことをするくらいなら、別の資金繰りの方法はいくらでもある。 リースバックを使わず、通常の手続きで持ち家を売却して、他の賃貸物件に引っ越すのだ。一般的な戸建て賃貸の利回りは5%なので、家賃はリースバックよりも安い。最大で半額程度に抑えられる。 他にもやり方はある。リバースモーゲージという、自宅を担保に入れてお金を借りる方法だ。金利は3%ほどである。そして、リバースモーゲージ型住宅ローンの返済は、契約者が亡くなった後に物件を売却する形で行われる。要は、死ぬまで安心して住み続けられるのだ。 いずれも、リースバックと比較したら、はるかにリーズナブルな方法となる』、「リースバックを手掛ける不動産事業者にとって、期待利回り(年率)はなんと約7~12%ある。買い取り価格の最大12%程度の金額を、家賃収入として毎年受け取ることができるのだ。 だが契約者側にとってみれば、仮に相場通りの金額で自宅を売却できても、その資金は約8~14年でなくなってしまう。そして、これはあくまで理論上の数値だ。実際に手に入る資金は相場以下になるので、もっと短い期間で底を突くと考えた方がいい・・・他にもやり方はある。リバースモーゲージという、自宅を担保に入れてお金を借りる方法だ。金利は3%ほどである・・・返済は、契約者が亡くなった後に物件を売却する形で行われる。要は、死ぬまで安心して住み続けられるのだ。 いずれも、リースバックと比較したら、はるかにリーズナブルな方法となる」、なるほど。
・『「強引に勧誘された」…自宅売却を巡るトラブル続出  こうした方法を知らない一般消費者に向けて、リースバック事業を積極推進している不動産事業者はかなり儲かる。そして、リースバックに応じた人は後悔するケースが多い。 (不動産会社の「許せない手口」の実態…お金に困った高齢者への殺し文句に要注意 の図はリンク先参照) その証拠に、全国の消費生活センターなどには、自宅の売却について下記のような相談が寄せられているという。 ・自宅を売却し、家賃を払ってそのまま自宅に住み続けることができると言われ契約したが、解約したい ・強引に勧誘され、安価で自宅を売却する契約をしてしまった ・解約したいと申し出たら違約金を請求された リースバックだけでなく他の住宅売却トラブルも含めたデータだが、国民生活センターには60歳以上の一般消費者から年間600件を超える相談が寄せられる年もあるそうだ。泣き寝入りしている人もいるはずなので、契約者はその数倍はいるものと想定される。 相談者全体に占める70歳以上の割合は、2016年には36.2%だったのに対し、20年には52.3%まで増えている。住宅売却トラブルに悩まされる人の高齢化も進んでいるようだ。 さらに恐ろしいことに、不動産事業者に持ち家を売却した場合、契約のクーリングオフはできない。高齢者の生活に悪影響が生じかねないため、国民生活センターは注意喚起や関係機関(国土交通省、全国宅地建物取引業協会連合会など)への要望を行っているという』、「国民生活センターには60歳以上の一般消費者から年間600件を超える相談が寄せられる年もあるそうだ。泣き寝入りしている人もいるはずなので、契約者はその数倍はいるものと想定される。 相談者全体に占める70歳以上の割合は、2016年には36.2%だったのに対し、20年には52.3%まで増えている・・・不動産事業者に持ち家を売却した場合、契約のクーリングオフはできない」、なるほど。
・『筆者はリースバックを人道的にどうかと思う  なお、不動産取引の勧誘で、「しつこい、長時間、迷惑、脅迫、強引、うそ」などを含む説明は宅地建物取引業法で禁止されている。こうした勧誘を受けた場合は、「免許行政庁に連絡します」と言うと、たいていの営業担当者は引き下がる。宅地建物取引業法違反で行政処分が行われるからだ。 法改正によってこの規制が設けられた結果、不動産事業者は高属性(信用度が高く融資しやすい)の会社員に投資用不動産を売ることがかなり難しくなった。それまでは、会社に勧誘の電話をかける手段が横行していたが、法的に撃退できるようになったからだ。 だが上記の相談内容を見る限り、リースバックは営業担当者の撃退方法を知らない高齢者がターゲットになっている印象だ。こうした勧誘や、法外な価格・家賃の設定に関して、筆者は人道的にどうかと思う。 そして皮肉なことに、リースバック事業を展開している会社には、上場企業のグループ会社・子会社・関連会社などが含まれている。親会社が上場しているということは、それなりの社会的信用はあるはずだが、消費者の利益よりも「業績を伸ばして株主を満足させること」を最優先に考えているのだろう。  最後に、あらためて問題を整理しておく。持ち家の売却後も「賃貸」という形で住み続けられるリースバック契約は、一見すると自宅という資産を有効活用する手段のように思える。引っ越しの必要もなく、売却代金を得ることで資金繰りも一時的に良くなるからだ。 しかし実は、その価格設定や契約内容は、かなり消費者にとって不利になっている。最悪の場合、契約者が大損するだけでなく自宅を失うこともあり得る』、「あらためて問題を整理しておく。持ち家の売却後も「賃貸」という形で住み続けられるリースバック契約は、一見すると自宅という資産を有効活用する手段のように思える。引っ越しの必要もなく、売却代金を得ることで資金繰りも一時的に良くなるからだ。 しかし実は、その価格設定や契約内容は、かなり消費者にとって不利になっている。最悪の場合、契約者が大損するだけでなく自宅を失うこともあり得る」、なるほど。
・『両親の「自宅喪失」を防ぐ有効な方法は?  これを止める有効な方法は「親子間の会話」だと筆者は考える。振り込め詐欺と同様、身内の注意喚起があれば防げる可能性が高い。帰省が難しいならば、電話をかけて「リースバックという、下手をすれば大損する不動産取引があって、問題になっているから気を付けて」と言うだけでもいい。 それでも心配なら、実家を共有名義にするのもいいだろう。子どもの持ち分が少しでもあれば、子どもの同意がないと売却できなくなる。贈与税を取られるのが癪(しゃく)だという場合は、ほんの一部だけを買い取って、司法書士に登記してもらえればいい。 こんなコラムを書かなければならないのは、不動産業界にいる者として大変申し訳なく思う。だが筆者は、自社の利益のために消費者に不当な契約を課し、時として自宅を取り上げる事業者を許す気はないということを、ここに記しておく』、「これを止める有効な方法は「親子間の会話・・・それでも心配なら、実家を共有名義にするのもいいだろう。子どもの持ち分が少しでもあれば、子どもの同意がないと売却できなくなる。贈与税を取られるのが癪(しゃく)だという場合は、ほんの一部だけを買い取って、司法書士に登記してもらえればいい」、これで安心だ。

次に、12月13日付け東洋経済オンライン「スルガ銀、「膠着2年半」アパマン融資の視界不良 揺れる、もう1つの「かぼちゃの馬車」問題」を紹介しよう。
・『「シェアハウス以外の投資用不動産向け融資についての当社対応状況」。11月22日、スルガ銀行がこんな表題のプレスリリースを公表した。シェアハウス以外の投資用不動産、とは1棟アパート・マンション(アパマン)を指す。 今年4月以降、スルガ銀はアパマンオーナーが結成した弁護団との交渉状況を開示しており、今回が2度目の公表となる。 弁護団側は計864物件のアパマン融資について、「書類改ざんなどの不正行為によって、オーナーが高値づかみをさせられた」と主張。元本カットを求めて、スルガ銀と交渉を続けている。 2018年の発覚以来、投資用不動産をめぐる不正融資に揺れてきたスルガ銀。2022年にシェアハウス「かぼちゃの馬車」の問題が終局した一方、いまだ懸案となっているのがアパマン融資だ。スルガ銀は早期解決に向け落としどころを探るも、弁護団との溝はなかなか埋まらない』、「2022年にシェアハウス「かぼちゃの馬車」の問題が終局した一方、いまだ懸案となっているのがアパマン融資だ・・・弁護団との溝はなかなか埋まらない」、なるほど。
・『シェアハウスよりも問題が長期化  41回――。アパマンオーナーの弁護団が発足した2021年5月から2023年11月末までの間に、スルガ銀と弁護団との間で行われた交渉回数だ。2年半が経過しても協議は平行線をたどっている。 シェアハウスのケースでは、交渉開始から解決までに2年を要した。シェアハウスオーナーが弁護団を結成したのは2018年3月。以後スルガ銀と50回以上もの折衝を重ねた末、2020年3月にオーナー257人とスルガ銀との間で和解が成立した。 残るオーナーとも翌2021年、2022年に和解にこぎつけ、スルガ銀は一連のシェアハウス問題から解放された。 シェアハウスが全面解決に至った背景には、2つの要因がある。1つはシェアハウスの特殊性が、スルガ銀に譲歩の余地を与えたことだ。 シェアハウスは投資用不動産としてのマーケットが未成熟ゆえ、行内でも審査ノウハウが確立していなかった。不動産業者が画策した非現実的な収益計画を見抜けず、オーナーに高値づかみをさせてしまった。 行員による不正行為の有無は脇に置き、あくまで審査不備の責任を取る形式を裁判所の調停委員が認定し、スルガ銀は和解に応じた。) もう1つは代物弁済に似た、「奇策」とも言えるスキームが機能したことだ。スルガ銀がシェアハウス向けの貸出債権を投資家に売却し、オーナーは投資家にシェアハウスを差し出すことで、銀行・オーナー間の債権および債務を帳消しにした。 幸いシェアハウスの多くは首都圏の好立地にあり、入札には複数の投資家が参加。最終的にアメリカ投資ファンド「ローンスター」が落札し、現在は賃貸住宅として運用している(詳細は2022年4月10日配信記事:「かぼちゃの馬車」再生狙う米投資ファンドの勝算)。 シェアハウスでは早期解決の決め手となった2つの要因が、アパマンでは通用しない。 成熟したアパマン市場では審査の不備に原因を求められないうえ、「案件ごとに事情は異なるため、(シェアハウスのような)一律の解決はできない」(スルガ銀)。 代物弁済スキームも、地方物件の多いアパマンでは投資家が名乗りを上げる見込みは薄い』、「シェアハウスが全面解決に至った背景には、2つの要因がある。1つはシェアハウスの特殊性が、スルガ銀に譲歩の余地を与えたことだ。 シェアハウスは投資用不動産としてのマーケットが未成熟ゆえ、行内でも審査ノウハウが確立していなかった。不動産業者が画策した非現実的な収益計画を見抜けず、オーナーに高値づかみをさせてしまった。 行員による不正行為の有無は脇に置き、あくまで審査不備の責任を取る形式を裁判所の調停委員が認定し、スルガ銀は和解に応じた・・・もう1つは代物弁済に似た、「奇策」とも言えるスキームが機能したことだ。スルガ銀がシェアハウス向けの貸出債権を投資家に売却し、オーナーは投資家にシェアハウスを差し出すことで、銀行・オーナー間の債権および債務を帳消しにした。 幸いシェアハウスの多くは首都圏の好立地にあり、入札には複数の投資家が参加。最終的にアメリカ投資ファンド「ローンスター」が落札し、現在は賃貸住宅として運用している・・・ェアハウスでは早期解決の決め手となった2つの要因が、アパマンでは通用しない。 成熟したアパマン市場では審査の不備に原因を求められないうえ、「案件ごとに事情は異なるため、(シェアハウスのような)一律の解決はできない」、なるほど。
・『早期解決フレームワークで打開を図る  膠着状態に陥る中、スルガ銀は2022年5月に「早期解決フレームワーク」なる解決策を弁護団に提案する。アパマン融資を案件ごとに以下の3つの基準に当てはめ、適合すればスルガ銀が解決金を支払う内容だ。 条件付きながら解決金を支払う試案によって、アパマン問題は前進するかに見えた。だが、弁護団の態度を軟化させるには至っていない。基準の適合要件が厳しく、ほとんどの案件がふるい落とされたためだ。 弁護団が試験的に24物件を提示し、スルガ銀に基準適用を求めたところ、まず第1段階で16物件が弾かれ、さらに第2段階で6物件が除外された。最終的に解決金の支払い対象となったのは2物件のみで、スルガ銀から提示された解決金も、弁護団が納得する水準ではなかった。) 「高値づかみ」の有無を判断する第1段階では、レントロール(家賃明細表)が重視された。物件価格は家賃収入から逆算して決まるため、レントロールの数字が実際に入居者が支払う家賃よりも水増しされていると、オーナーは不当に高い価格で物件を購入させられたことを意味する。 だが、関係者によれば、単にレントロールが実際の家賃から水増しされただけでは要件には足りず、2割程度の大幅な乖離がなければ高値づかみとは認められなかったという。 第2段階においても、不正行為が確認されただけでなく、行員の関与を裏付ける証拠が必要な点がネックとなっている。早期解決フレームワークは現状、宙に浮いた状態だ。 手詰まり感が漂う中、スルガ銀は交渉の枠外に活路を見出そうとしている。交渉の決着を待たずして、オーナーにアパマンの売却を促すことだ。 スルガ銀によれば、2022年9月から2023年9月までの1年間で64物件が売却によってオーナーの手から離れたことで、弁護団が受任する案件からも外れた。昨今の不動産市況の高騰が、もっけの幸いとなった』、「スルガ銀は2022年5月に「早期解決フレームワーク」なる解決策を弁護団に提案する。アパマン融資を案件ごとに以下の3つの基準に当てはめ、適合すればスルガ銀が解決金を支払う内容だ。 条件付きながら解決金を支払う試案によって、アパマン問題は前進するかに見えた。だが、弁護団の態度を軟化させるには至っていない。基準の適合要件が厳しく、ほとんどの案件がふるい落とされたためだ・・・弁護団が試験的に24物件を提示し、スルガ銀に基準適用を求めたところ、まず第1段階で16物件が弾かれ、さらに第2段階で6物件が除外された。最終的に解決金の支払い対象となったのは2物件のみで、スルガ銀から提示された解決金も、弁護団が納得する水準ではなかった・・・単にレントロールが実際の家賃から水増しされただけでは要件には足りず、2割程度の大幅な乖離がなければ高値づかみとは認められなかったという。 第2段階においても、不正行為が確認されただけでなく、行員の関与を裏付ける証拠が必要な点がネックとなっている。早期解決フレームワークは現状、宙に浮いた状態だ。 手詰まり感が漂う中、スルガ銀は交渉の枠外に活路を見出そうとしている。交渉の決着を待たずして、オーナーにアパマンの売却を促すことだ。 スルガ銀によれば、2022年9月から2023年9月までの1年間で64物件が売却によってオーナーの手から離れたことで、弁護団が受任する案件からも外れた。昨今の不動産市況の高騰が、もっけの幸いとなった」、なるほど。
・『業務改善命令はいまだに解除されていない  実はスルガ銀にとって、シェアハウスないしアパマン問題は財務面での重荷でなくなりつつある。 前者は代物弁済スキームによって、バランスシート上からはほぼ消えた。後者も弁護団が受任するアパマンは引当金や担保などでほぼ100%保全し、2022年からは弁護団が受任していない物件についても、延滞を重ねている場合には予防的引き当てを進めている。 ピーク時に1300億円を突破した実質与信費用は、2025年度以降は年間30億円程度で平準化する見通しだ。 それでも、金融庁が2018年10月にスルガ銀に発した業務改善命令はいまだ解除されていない。 命令の中で金融庁は、「シェアハウス向け融資及びその他投資用不動産融資に関して、金利引き下げ、返済条件見直し、金融ADR等を活用した元本の一部カットなど、個々の債務者に対して適切な対応を行うための態勢の確立」を求めている。 アパマン問題が解決しない限り、投資用不動産にまつわるガバナンス体制が刷新されたとはみなされない。 「アパマン問題の解決は重要な経営課題。1日でも早い解決を希望している」。11月に開催された決算説明会において、スルガ銀の加藤広亮社長はこう述べた。だが、有言実行に向けた打開策は見つかっていない』、「シェアハウスないしアパマン問題は財務面での重荷でなくなりつつある。 前者は代物弁済スキームによって、バランスシート上からはほぼ消えた。後者も弁護団が受任するアパマンは引当金や担保などでほぼ100%保全し、2022年からは弁護団が受任していない物件についても、延滞を重ねている場合には予防的引き当てを進めている。 ピーク時に1300億円を突破した実質与信費用は、2025年度以降は年間30億円程度で平準化する見通しだ。 それでも、金融庁が2018年10月にスルガ銀に発した業務改善命令はいまだ解除されていない。 命令の中で金融庁は、「シェアハウス向け融資及びその他投資用不動産融資に関して、金利引き下げ、返済条件見直し、金融ADR等を活用した元本の一部カットなど、個々の債務者に対して適切な対応を行うための態勢の確立」を求めている。 アパマン問題が解決しない限り、投資用不動産にまつわるガバナンス体制が刷新されたとはみなされない。 「アパマン問題の解決は重要な経営課題。1日でも早い解決を希望している」。11月に開催された決算説明会において、スルガ銀の加藤広亮社長はこう述べた。だが、有言実行に向けた打開策は見つかっていない』、「代物弁済スキームによって、バランスシート上からはほぼ消えた。後者も弁護団が受任するアパマンは引当金や担保などでほぼ100%保全し、2022年からは弁護団が受任していない物件についても、延滞を重ねている場合には予防的引き当てを進めている」、しかし、引当などを積んだだけで、「バランスシート」には残っている。不良債権問題の時と同様に、これをオフバランス化する必要があるのだろう。
タグ:金融関連の詐欺的事件 (その14)(不動産会社の「許せない手口」の実態…お金に困った高齢者への殺し文句に要注意、スルガ銀 「膠着2年半」アパマン融資の視界不良 揺れる、もう1つの「かぼちゃの馬車」問題) ダイヤモンド・オンライン 沖有人氏による「不動産会社の「許せない手口」の実態…お金に困った高齢者への殺し文句に要注意」 最近はテレビでも「リースバック」を派手に宣伝しているが、「買い取り金額は相場より安く、家賃は高くなりがちだ」なので、確かに「契約者は下手をすれば自宅を失うリスクがある」、なるほど。 「リースバックを手掛ける不動産事業者にとって、期待利回り(年率)はなんと約7~12%ある。買い取り価格の最大12%程度の金額を、家賃収入として毎年受け取ることができるのだ。 だが契約者側にとってみれば、仮に相場通りの金額で自宅を売却できても、その資金は約8~14年でなくなってしまう。そして、これはあくまで理論上の数値だ。実際に手に入る資金は相場以下になるので、もっと短い期間で底を突くと考えた方がいい・・・ 他にもやり方はある。リバースモーゲージという、自宅を担保に入れてお金を借りる方法だ。金利は3%ほどである・・・返済は、契約者が亡くなった後に物件を売却する形で行われる。要は、死ぬまで安心して住み続けられるのだ。 いずれも、リースバックと比較したら、はるかにリーズナブルな方法となる」、なるほど。 「国民生活センターには60歳以上の一般消費者から年間600件を超える相談が寄せられる年もあるそうだ。泣き寝入りしている人もいるはずなので、契約者はその数倍はいるものと想定される。 相談者全体に占める70歳以上の割合は、2016年には36.2%だったのに対し、20年には52.3%まで増えている・・・不動産事業者に持ち家を売却した場合、契約のクーリングオフはできない」、なるほど。 「あらためて問題を整理しておく。持ち家の売却後も「賃貸」という形で住み続けられるリースバック契約は、一見すると自宅という資産を有効活用する手段のように思える。引っ越しの必要もなく、売却代金を得ることで資金繰りも一時的に良くなるからだ。 しかし実は、その価格設定や契約内容は、かなり消費者にとって不利になっている。最悪の場合、契約者が大損するだけでなく自宅を失うこともあり得る」、なるほど。 「これを止める有効な方法は「親子間の会話・・・それでも心配なら、実家を共有名義にするのもいいだろう。子どもの持ち分が少しでもあれば、子どもの同意がないと売却できなくなる。贈与税を取られるのが癪(しゃく)だという場合は、ほんの一部だけを買い取って、司法書士に登記してもらえればいい」、これで安心だ。 東洋経済オンライン「スルガ銀、「膠着2年半」アパマン融資の視界不良 揺れる、もう1つの「かぼちゃの馬車」問題」 「2022年にシェアハウス「かぼちゃの馬車」の問題が終局した一方、いまだ懸案となっているのがアパマン融資だ・・・弁護団との溝はなかなか埋まらない」、なるほど。 「シェアハウスが全面解決に至った背景には、2つの要因がある。1つはシェアハウスの特殊性が、スルガ銀に譲歩の余地を与えたことだ。 シェアハウスは投資用不動産としてのマーケットが未成熟ゆえ、行内でも審査ノウハウが確立していなかった。不動産業者が画策した非現実的な収益計画を見抜けず、オーナーに高値づかみをさせてしまった。 行員による不正行為の有無は脇に置き、あくまで審査不備の責任を取る形式を裁判所の調停委員が認定し、スルガ銀は和解に応じた・・・ もう1つは代物弁済に似た、「奇策」とも言えるスキームが機能したことだ。スルガ銀がシェアハウス向けの貸出債権を投資家に売却し、オーナーは投資家にシェアハウスを差し出すことで、銀行・オーナー間の債権および債務を帳消しにした。 幸いシェアハウスの多くは首都圏の好立地にあり、入札には複数の投資家が参加。最終的にアメリカ投資ファンド「ローンスター」が落札し、現在は賃貸住宅として運用している・・・ェアハウスでは早期解決の決め手となった2つの要因が、アパマンでは通用しない。 成熟したアパマン市場では審査の不備に原因を求められないうえ、「案件ごとに事情は異なるため、(シェアハウスのような)一律の解決はできない」、なるほど。 「スルガ銀は2022年5月に「早期解決フレームワーク」なる解決策を弁護団に提案する。アパマン融資を案件ごとに以下の3つの基準に当てはめ、適合すればスルガ銀が解決金を支払う内容だ。 条件付きながら解決金を支払う試案によって、アパマン問題は前進するかに見えた。だが、弁護団の態度を軟化させるには至っていない。基準の適合要件が厳しく、ほとんどの案件がふるい落とされたためだ・・・弁護団が試験的に24物件を提示し、スルガ銀に基準適用を求めたところ、まず第1段階で16物件が弾かれ、さらに第2段階で6物件が除外された。 最終的に解決金の支払い対象となったのは2物件のみで、スルガ銀から提示された解決金も、弁護団が納得する水準ではなかった・・・単にレントロールが実際の家賃から水増しされただけでは要件には足りず、2割程度の大幅な乖離がなければ高値づかみとは認められなかったという。 第2段階においても、不正行為が確認されただけでなく、行員の関与を裏付ける証拠が必要な点がネックとなっている。早期解決フレームワークは現状、宙に浮いた状態だ。 手詰まり感が漂う中、スルガ銀は交渉の枠外に活路を見出そうとしている。交渉の決着を待たずして、オーナーにアパマンの売却を促すことだ。 スルガ銀によれば、2022年9月から2023年9月までの1年間で64物件が売却によってオーナーの手から離れたことで、弁護団が受任する案件からも外れた。昨今の不動産市況の高騰が、もっけの幸いとなった」、なるほど。 「シェアハウスないしアパマン問題は財務面での重荷でなくなりつつある。 前者は代物弁済スキームによって、バランスシート上からはほぼ消えた。後者も弁護団が受任するアパマンは引当金や担保などでほぼ100%保全し、2022年からは弁護団が受任していない物件についても、延滞を重ねている場合には予防的引き当てを進めている。 ピーク時に1300億円を突破した実質与信費用は、2025年度以降は年間30億円程度で平準化する見通しだ。 それでも、金融庁が2018年10月にスルガ銀に発した業務改善命令はいまだ解除されていない。 命令の中で金融庁は、「シェアハウス向け融資及びその他投資用不動産融資に関して、金利引き下げ、返済条件見直し、金融ADR等を活用した元本の一部カットなど、個々の債務者に対して適切な対応を行うための態勢の確立」を求めている。 アパマン問題が解決しない限り、投資用不動産にまつわるガバナンス体制が刷新されたとはみなされない。 「アパマン問題の解決は重要な経営課題。1日でも早い解決を希望している」。11月に開催された決算説明会において、スルガ銀の加藤広亮社長はこう述べた。だが、有言実行に向けた打開策は見つかっていな い』、「代物弁済スキームによって、バランスシート上からはほぼ消えた。後者も弁護団が受任するアパマンは引当金や担保などでほぼ100%保全し、2022年からは弁護団が受任していない物件についても、延滞を重ねている場合には予防的引き当てを進めている」、しかし、引当などを積んだだけで、「バランスシート」には残っている。不良債権問題の時と同様に、これをオフバランス化する必要があるのだろう。
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株式・為替相場(その19)(円安がさらなる貿易赤字と円売りを招くカラクリ サービス収支に透ける製造業のグローバル化、日経平均株価 一時3万3853円をつけた戻り高値の「教訓」とは?) [金融]

株式・為替相場については、本年6月19日に取上げた。今日は、(その19)(円安がさらなる貿易赤字と円売りを招くカラクリ サービス収支に透ける製造業のグローバル化、日経平均株価 一時3万3853円をつけた戻り高値の「教訓」とは?)である。

先ずは、10月24日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「円安がさらなる貿易赤字と円売りを招くカラクリ サービス収支に透ける製造業のグローバル化」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/710381
・『長引く円安の理由を理解するうえでは、日米金利差拡大という論点に終始するだけではなく、「円の需給構造があらゆる面で変化を強いられている」という論点も理解する姿勢が重要になっていると筆者は考えている。 円の需給構造変化を象徴するのは、約10年前から確認される貿易黒字の消滅だろう。 その背景は単純ではないが、輸出面では、①日本企業が海外生産移管を進めたことや、②そもそも日本の輸出品が競争力を喪失したこと、輸入面では、③東日本大震災を契機に原子力発電の稼働が停止したこと(≒結果的に一段と鉱物性燃料輸入に依存する電源構成に切り替わったこと)などが挙げられる』、為替動向を見る上で、こうした構造的要因に注目する見方は、参考になる。
・『製造業が消え、円安でも輸出は増えない  とりわけ、③が資源輸入国である日本の貿易収支の脆弱性を高め、円安や資源価格上昇によって需給が崩れやすい(貿易赤字が拡大しやすい)体質につながったという話は広く知られている。2022年以降の貿易赤字拡大も、基本的にはそうした論点に起因するものと理解される。 だが、円安で日本から海外への輸出数量が押し上げられるならば、貿易収支が一方的な悪化を強いられることもなく、2022年のような「悪い円安」論も噴出しにくい側面はあっただろう。 この点、①で指摘されるように、円安を起点として実体経済に好循環をもたらすことが期待される製造業の生産拠点が日本から消えてしまったことが、円の需給構造が円売りに傾斜しやすくなった根本的な原因とも考えられる。) ただし、国際収支統計上、製造業の海外生産移管は貿易収支悪化の一因であると同時に、サービス収支改善の一因になっている部分もある。それが産業財産権等使用料であり、同項目には日本企業が海外子会社等から受け取るロイヤルティーなどが計上される。 日本の「その他サービス収支」において唯一、黒字を記録する知的財産権等使用料も、その実態は産業財産権等使用料の黒字に支えられている。 近年、海外企業から供給される音楽や動画の定額課金サービスを受けて著作権等使用料の赤字が増勢傾向にあるものの、産業財産権等使用料の黒字が多額に上っているため、これら2本から構成される知的財産権等使用料全体では黒字が維持される構図にある。 製造業の海外生産移管は経常収支上、赤字拡大と黒字拡大の二面性を有する』、「①で指摘されるように、円安を起点として実体経済に好循環をもたらすことが期待される製造業の生産拠点が日本から消えてしまったことが、円の需給構造が円売りに傾斜しやすくなった根本的な原因とも考えられる・・・製造業の海外生産移管は貿易収支悪化の一因であると同時に、サービス収支改善の一因になっている部分もある。それが産業財産権等使用料であり、同項目には日本企業が海外子会社等から受け取るロイヤルティーなどが計上される。 日本の「その他サービス収支」において唯一、黒字を記録する知的財産権等使用料も、その実態は産業財産権等使用料の黒字に支えられている。 近年、海外企業から供給される音楽や動画の定額課金サービスを受けて著作権等使用料の赤字が増勢傾向にあるものの、産業財産権等使用料の黒字が多額に上っているため、これら2本から構成される知的財産権等使用料全体では黒字が維持される構図にある。 製造業の海外生産移管は経常収支上、赤字拡大と黒字拡大の二面性を有する」、なるほど。
・『ロイヤルティー収入は増加  2023年8月公表の日銀レビュー『国際収支統計からみたサービス取引のグローバル化』ではサービス収支を軸に日本経済が経験しているさまざまな構造変化を分析しているが、そこでは産業財産権等使用料の黒字が増勢傾向にあることも注目されている。 日本企業が海外生産移管を進めるほど、国内企業が海外から受け取るロイヤルティー(産業財産権等使用料)は増えるので、例えば自動車の海外生産台数の動きなどと安定した関係を見いだすことができる。 ちなみに日本の貿易収支が慢性的な赤字傾向に陥る直前の2010年の貿易収支は約6.6兆円の黒字だった。同じ年、産業財産権の受取は約2.2兆円だった。これが2021年の産業財産権の受取は約4.6兆円と倍以上に膨らんでいる。) 上述した輸入面に関する③電源構成の燃料輸入依存の論点もあって、産業財産権の受取だけで日本の貿易赤字が穴埋めできるような状況ではないが、海外移管された生産拠点や、それにより失われた輸出すべてが「円売り」に直結しているわけではなく、サービス収支上、産業財産権として回帰している部分もあることは円の需給を考察するうえでは知っておきたい事実だ。 単なる親子間取引の結果と言えばそれまでだが、日本経済の重要な構造変化を端的に表している部分と言える』、「海外移管された生産拠点や、それにより失われた輸出すべてが「円売り」に直結しているわけではなく、サービス収支上、産業財産権として回帰している部分もあることは円の需給を考察するうえでは知っておきたい事実だ」、なるほど。
・『海外生産が「海上貨物の支払い増」を招く  なお、自動車のように海外生産が増えれば、当然それを運ぶためのサービス利用も活発化する。これはサービス収支上では輸送収支、その中でも海上貨物を扱う収支を見るとわかる。 受取と支払いを差し引きした収支で見た場合、2010年以降、産業財産権の受取がはっきり超過して黒字が拡大する一方、海上貨物は2017年以降に支払いが顕著に増え始め、2019年以降は赤字に転化し、拡大している。 だが、海上貨物に関する赤字拡大も二面性がある話だ。 日銀レビューでは「本邦製造業における海外生産比率の高まりは、海外海運企業との競争激化と相まって、本邦海運企業が海外子会社を活用して競争力を強化する形などで、グローバル化を促進した可能性も考えられる」と分析している。 日本の海運企業が海外子会社を活用し、そこで収益を積み上げれば、輸送収支(とりわけ海上貨物の収支)上の赤字は拡大しても、当該海外子会社の収益は第一次所得収支に計上される。 それが配当金として日本に帰ってくるのか、再投資収益として海外に滞留するのかという別問題はあるが(近年は海外に滞留する再投資収益が増える傾向にある)、海上貨物サービスへの支払いがすべて円売りになっているわけではない。) いずれにせよ、上述したような、「産業財産権の黒字が増えて、海上貨物の赤字が増えている」という構図からは、日本が単に原材料を輸入し、国内で生産し、海外へ輸出するというシンプルな加工貿易から撤退しつつある状況が読み取れる。 その代わりに、海外で生産した財を海外で販売したり、第三国向けに輸出したりする世界全体を巻き込んだサプライチェーン体制を組成している様子が読み取れる』、「「産業財産権の黒字が増えて、海上貨物の赤字が増えている」という構図からは、日本が単に原材料を輸入し、国内で生産し、海外へ輸出するというシンプルな加工貿易から撤退しつつある状況が読み取れる。 その代わりに、海外で生産した財を海外で販売したり、第三国向けに輸出したりする世界全体を巻き込んだサプライチェーン体制を組成している様子が読み取れる」、昔とはずいぶん変わったものだ。
・『円安による「好循環」は想定すべきではない  こうした実情を踏まえれば、円安が製造業にコストメリットをもたらし、海外への輸出数量を押し上げ、国内経済に生産・所得・消費の好循環をもたらすという伝統的な波及経路をもはや想定すべきでないこともよくわかるだろう。 例えば、上述の議論を踏まえれば、海外生産拠点から受け取るロイヤルティーは円安で膨らみやすいが、海上貨物サービスへの支払いも円安で膨らみやすい状況が推測される。 むしろ、筆者がこれまで議論してきたような国際化されたサービス取引(例えばデジタル取引など)の存在を踏まえると「円安で支払いが増える」という事実から、円売りは増えそうなイメージもある。 伝統的な貿易収支への影響について言えば、円安が輸出を押し上げる構造がもはやない一方、円安で輸入が押し上げられる構造はしっかり存在しているため、やはり円安は赤字拡大に直結しやすい状況が想像されるし、事実、過去2年弱はそうなっている。 サービス収支を詳細に分析することで、近年の日本経済が経験している構造変化を深く理解し、また、為替需給の変遷も把握することができる。 毎月のアメリカ雇用統計やFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の「次の一手」など、日米金利差の拡大・縮小に直結する短期的な材料も当然重要だが、自国通貨の需給環境を包括的に理解する助けになる国際収支は、今も昔も円相場の中長期見通しを分析する立場から最重要の計数と言える』、「毎月のアメリカ雇用統計やFRB・・・の「次の一手」など、日米金利差の拡大・縮小に直結する短期的な材料も当然重要だが、自国通貨の需給環境を包括的に理解する助けになる国際収支は、今も昔も円相場の中長期見通しを分析する立場から最重要の計数と言える」、その通りだ。

次に、11月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家の山崎 元氏による「日経平均株価、一時3万3853円をつけた戻り高値の「教訓」とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/332756
・『日経平均株価が33年ぶりの高値水準を付けた。この「戻り高値」には意外感を持った人が多かったのではないか。そこで、今回の株価上昇の要因を分析するとともに、投資家が学ぶべき「教訓」について考えたい』、どんな「教訓」があるのだろう、興味深そうだ。
・『日経平均株価が33年ぶり高水準 意外な戻り高値  11月20日の日中、いわゆる「ザラ場」の東京証券取引所の取引で、日経平均株価が33年ぶりの高水準まで上昇した。7月3日に付けた終値での戻り高値(バブル崩壊後高値)を一時上回る、3万3853円を付けた。33年間にわたってすっきりと「史上最高値」と言えないのは、わが国がかつて経験したバブルの威力と、その後の異例の経済停滞による泣き所だが、高値の一種には違いない。 もちろん人によって感じ方は違うだろうが、今回の高値には意外感を持つ向きが多いのではないか。 つい少し前、10月の終わりの4取引日にあっては、日経平均の終値はいずれも3万1000円を割っていて、3万円を維持できないのではないかと心配になるような状況だった。 それが、3週間のうちにざっと1割上昇して「戻り高値」なのである。この間、米連邦準備制度理事会(FRB)が今後にも利上げの可能性があると意外にタカ派的な示唆をしたり、逆に米国のインフレ関連のデータが落ち着きを見せたりといった、いつもあるようなニュースはあった。ところが、日本の株価に影響を与えるような大きなニュースがあったわけではない』、「今回の高値には意外感を持つ向きが多いのではないか。 つい少し前、10月の終わりの4取引日にあっては、日経平均の終値はいずれも3万1000円を割っていて、3万円を維持できないのではないかと心配になるような状況だった。 それが、3週間のうちにざっと1割上昇して「戻り高値」なのである・・・米国のインフレ関連のデータ・・・にも日本の株価に影響を与えるような大きなニュースがあったわけではない」、どうしたのだろう。
・『株価上昇の要因とは? 後から探すとたいてい見つかる  意外ではあっても、株価の動きに理由はある。予測は難しいけれども、後からの説明はできるのが相場業界の強いところである。 今回、大変良い説明を提供している、日本経済新聞の篠崎健太記者の記事「日経平均、一時33年ぶり高値 マネー再び日本株へ」(『日本経済新聞』11月20日電子版)を参考にさせてもらいながら、要因を整理しておこう。 今や、新聞記事のスクラップを行う人は激減しているだろうが、筆者が思うに、この記事はスクラップして、しばらく手元に置いておく価値がある。特に、今後しばらくして株価が低迷するようであれば、読み返してみて「戻り」の要因を再確認するのだ。 さて、株価の説明のためには、企業の業績から見るのがオーソドックスだ。記事はまず、日本の小売企業がコスト増を吸収する値上げを実現できたことと、外需企業の業績が上方修正ラッシュであり、「日本企業のファンダメンタルズの堅調さが確認できた」というヘッジファンドマネージャーの意見を紹介している。 小売価格の上昇は、少し気を付けて街を歩いて生活していたら気が付くだろうし、業績修正はインターネットか新聞でチェックしていれば、投資家なら気付いているはずだ。円安の効果は大きい。ただし、これらは11月に入って3週間の間に目立って生じたものではない。 なお、この後に「日経平均は年内に3万5000円まで上昇余地がある」とするファンドマネージャーの見解が紹介されているが、この部分に情報は含まれていない。「余地」はあるし、勢いはあってもおかしくはない。答える側も記事を書いている人も、いずれも大した意味を感じていないはずだ。 ただ、これに続く、日本株の上昇要因には株価収益率(PER)の拡大に表れた投資家の期待だけではなく、増益の寄与度が欧米を上回っていることが指摘できるとの分析は、記憶にとどめる価値がある。 ある程度の大きさの株価変動を説明できる要因は、後から探すとたいてい見つかるものなのだ』、「今回、大変良い説明を提供している、日本経済新聞の篠崎健太記者の記事「日経平均、一時33年ぶり高値 マネー再び日本株へ」(『日本経済新聞』11月20日電子版)を参考にさせてもらいながら、要因を整理しておこう・・・この記事はスクラップして、しばらく手元に置いておく価値がある。特に、今後しばらくして株価が低迷するようであれば、読み返してみて「戻り」の要因を再確認するのだ。 さて、株価の説明のためには、企業の業績から見るのがオーソドックスだ。記事はまず、日本の小売企業がコスト増を吸収する値上げを実現できたことと、外需企業の業績が上方修正ラッシュであり、「日本企業のファンダメンタルズの堅調さが確認できた」というヘッジファンドマネージャーの意見を紹介している・・・日本株の上昇要因には株価収益率(PER)の拡大に表れた投資家の期待だけではなく、増益の寄与度が欧米を上回っていることが指摘できるとの分析は、記憶にとどめる価値がある」、なるほど。
・『株価を決めるのは「海外勢」と「海外要因」  記事には「相場を押し上げている主体は海外投資家だ」とある。記者はそう思ったのだろうし、多くの市場関係者がそう感じていたはずだ。もちろん、筆者もそう思った。 日本取引所グループによると、8〜9月は現物株を2.4兆円売り越していた海外勢が、10月以降に1.1兆円買い越しているという。市場関係者が注目する主体別売買動向の数字だが、よく考えてみると、海外勢の売り越し・買い越しに対して、国内勢の別の主体が同金額の売買の相手になっているはずだ。なぜ、海外勢の売買の方が株価への影響力があるのだろうか。 直接的・直感的には、海外勢の買い方・売り方が、前者では上値を払い、後者では下値をたたくような、マーケットインパクトに対して積極的なものであることが原因だ。加えて、背後にある大きな資金主体のグローバルな株式投資のリバランスの意図が、売買によって示唆されるような情報上のインパクトがあるのかもしれない。 ただ、原因のいかんにかかわらず、日本の株価は海外の投資家の行動によって大きく影響を受けて形成されている。そして、変動要因の多くは海外にあり、日本市場は一つのローカルマーケットにすぎないという点は常に留意しておく価値がある。 それで別段卑下する必要はないが、趣味として株式投資をするレベルではなく、資産形成のために株式運用を行う多くの投資家にとって、日本株は「世界株の中の(愛すべき)一部」だと割り切って、分散投資の一部に取り入れたら十分なのではないかと考えられるゆえんだ』、「日本の株価は海外の投資家の行動によって大きく影響を受けて形成されている。そして、変動要因の多くは海外にあり、日本市場は一つのローカルマーケットにすぎないという点は常に留意しておく価値がある・・・資産形成のために株式運用を行う多くの投資家にとって、日本株は「世界株の中の(愛すべき)一部」だと割り切って、分散投資の一部に取り入れたら十分なのではないかと考えられるゆえんだ」、なるほど。
・『33年ぶり高値の理由は「3週間」の変化にはない  さて、日経・篠崎記者の記事は、さらに親切に、アベノミクス以降の日本株の利益を指数化して、米国、欧州と比べたグラフを掲げてくれている。この間、日本株の利益成長は両地域の株式を大きく上回っている。 日本株の投資家にとっては心強いデータだ。アベノミクスの株式市場に対する好影響が確認できることもよいことだ。政策パッケージとして不足はあったかもしれないが、株価を下げる政策よりも良かったことは間違いあるまい。) さて、こうして戻り高値の要因を振り返ってみたが、海外勢の売買と、その背後にある海外の株価形成要因を除くと、いずれも、日経平均3万円割れ寸前から約1割高い戻り高値が形成された3週間の中の変化ではないことが分かる。 より正確には、この3週間の変化の中に将来の株価説明要因になるような大きな変化を「示唆」する情報はあったのかもしれないが、それはデータで確認できるようなものではなかった』、「アベノミクス以降の日本株の利益を指数化して、米国、欧州と比べたグラフを掲げてくれている。この間、日本株の利益成長は両地域の株式を大きく上回っている。 日本株の投資家にとっては心強いデータだ。アベノミクスの株式市場に対する好影響が確認できることもよいことだ。政策パッケージとして不足はあったかもしれないが、株価を下げる政策よりも良かったことは間違いあるまい・・・海外勢の売買と、その背後にある海外の株価形成要因を除くと、いずれも、日経平均3万円割れ寸前から約1割高い戻り高値が形成された3週間の中の変化ではないことが分かる。 より正確には、この3週間の変化の中に将来の株価説明要因になるような大きな変化を「示唆」する情報はあったのかもしれないが、それはデータで確認できるようなものではなかった」、なるほど。
・『投資家はうまくやれたか? 今回の戻り高値の「教訓」とは  さて、一連の株価の動きを見て、日本の投資家の行動と心理を推測する。 最もまずいのは、この間に「3万円割れは確実だ」「もっと株価が下がったところで買い直したらいい」などと自分に言い聞かせて、怖くなって持ち株を売ってしまった投資家だろう。仮に、日経平均3万1000円の水準で持ち株を売ったとすると、現水準までに、あるいは現在の水準で株式を買い直すことは心理的に相当ハードルが高そうだ。 次にまずそうなのは、株式の買いチャンスをうかがっており、「3万円を割れたら買おう」と思っていて、買いそびれているうちに買いのタイミングを失した投資家だろうか。今後、株式投資のポジションを作るのが大幅に遅れるかもしれないし、さらに高値が形成されたときに多額にまとめて投資することになるのかもしれない。 今回の展開を見て、「定期的な定額積立投資だったら、安値でも買えていたはずだ」などという結果論を言うつもりはない。 投資家に確認してほしいのは、この3週間の変動の間に、投資方針を変えた方がいいと言えたような根拠となる情報要因がほぼ何もなかったことだ。 根拠がないのに売買を行うと、掛かるのは手数料であり、マーケットインパクトであり、ついでに余計な精神的疲労だ。その状態を、「面倒だったし、徒労だった」と振り返ることができずに、売買が一種の気晴らしになるような心境に陥っているのだとすると、さらにまずい。 合理的な投資家にできることは、余計な売買をせずに自分にとって必要な大きさの投資を維持してじっとしている真の「長期投資」と、これと両立する「分散投資」「低コスト」のポートフォリオの保有である。さらには、自分が合理的であるとの自信を持って精神的なストレスを減らすことだ。 この点を確認するに当たって、今回の一連の株価の動きは、極めて分かりやすい教材であった』、「合理的な投資家にできることは、余計な売買をせずに自分にとって必要な大きさの投資を維持してじっとしている真の「長期投資」と、これと両立する「分散投資」「低コスト」のポートフォリオの保有である。さらには、自分が合理的であるとの自信を持って精神的なストレスを減らすことだ。 この点を確認するに当たって、今回の一連の株価の動きは、極めて分かりやすい教材であった」、どうも「合理的な投資家」である筆者への鎮魂歌にも聞こえる。 
タグ:山崎 元氏による「日経平均株価、一時3万3853円をつけた戻り高値の「教訓」とは?」 さて、株価の説明のためには、企業の業績から見るのがオーソドックスだ。記事はまず、日本の小売企業がコスト増を吸収する値上げを実現できたことと、外需企業の業績が上方修正ラッシュであり、「日本企業のファンダメンタルズの堅調さが確認できた」というヘッジファンドマネージャーの意見を紹介している・・・日本株の上昇要因には株価収益率(PER)の拡大に表れた投資家の期待だけではなく、増益の寄与度が欧米を上回っていることが指摘できるとの分析は、記憶にとどめる価値がある」、なるほど。 「①で指摘されるように、円安を起点として実体経済に好循環をもたらすことが期待される製造業の生産拠点が日本から消えてしまったことが、円の需給構造が円売りに傾斜しやすくなった根本的な原因とも考えられる・・・製造業の海外生産移管は貿易収支悪化の一因であると同時に、サービス収支改善の一因になっている部分もある。それが産業財産権等使用料であり、同項目には日本企業が海外子会社等から受け取るロイヤルティーなどが計上される。 ダイヤモンド・オンライン この点を確認するに当たって、今回の一連の株価の動きは、極めて分かりやすい教材であった」、どうも「合理的な投資家」である筆者への鎮魂歌にも聞こえる。 「今回、大変良い説明を提供している、日本経済新聞の篠崎健太記者の記事「日経平均、一時33年ぶり高値 マネー再び日本株へ」(『日本経済新聞』11月20日電子版)を参考にさせてもらいながら、要因を整理しておこう・・・この記事はスクラップして、しばらく手元に置いておく価値がある。特に、今後しばらくして株価が低迷するようであれば、読み返してみて「戻り」の要因を再確認するのだ。 にも日本の株価に影響を与えるような大きなニュースがあったわけではない」、どうしたのだろう。 「毎月のアメリカ雇用統計やFRB・・・の「次の一手」など、日米金利差の拡大・縮小に直結する短期的な材料も当然重要だが、自国通貨の需給環境を包括的に理解する助けになる国際収支は、今も昔も円相場の中長期見通しを分析する立場から最重要の計数と言える」、その通りだ。 「「産業財産権の黒字が増えて、海上貨物の赤字が増えている」という構図からは、日本が単に原材料を輸入し、国内で生産し、海外へ輸出するというシンプルな加工貿易から撤退しつつある状況が読み取れる。 その代わりに、海外で生産した財を海外で販売したり、第三国向けに輸出したりする世界全体を巻き込んだサプライチェーン体制を組成している様子が読み取れる」、昔とはずいぶん変わったものだ。 為替動向を見る上で、こうした構造的要因に注目する見方は、参考になる。 東洋経済オンライン 「日本の株価は海外の投資家の行動によって大きく影響を受けて形成されている。そして、変動要因の多くは海外にあり、日本市場は一つのローカルマーケットにすぎないという点は常に留意しておく価値がある・・・資産形成のために株式運用を行う多くの投資家にとって、日本株は「世界株の中の(愛すべき)一部」だと割り切って、分散投資の一部に取り入れたら十分なのではないかと考えられるゆえんだ」、なるほど。 海外勢の売買と、その背後にある海外の株価形成要因を除くと、いずれも、日経平均3万円割れ寸前から約1割高い戻り高値が形成された3週間の中の変化ではないことが分かる。 より正確には、この3週間の変化の中に将来の株価説明要因になるような大きな変化を「示唆」する情報はあったのかもしれないが、それはデータで確認できるようなものではなかった」、なるほど。 「アベノミクス以降の日本株の利益を指数化して、米国、欧州と比べたグラフを掲げてくれている。この間、日本株の利益成長は両地域の株式を大きく上回っている。 日本株の投資家にとっては心強いデータだ。アベノミクスの株式市場に対する好影響が確認できることもよいことだ。政策パッケージとして不足はあったかもしれないが、株価を下げる政策よりも良かったことは間違いあるまい・・・ 日本の「その他サービス収支」において唯一、黒字を記録する知的財産権等使用料も、その実態は産業財産権等使用料の黒字に支えられている。 近年、海外企業から供給される音楽や動画の定額課金サービスを受けて著作権等使用料の赤字が増勢傾向にあるものの、産業財産権等使用料の黒字が多額に上っているため、これら2本から構成される知的財産権等使用料全体では黒字が維持される構図にある。 製造業の海外生産移管は経常収支上、赤字拡大と黒字拡大の二面性を有する」、なるほど。 「海外移管された生産拠点や、それにより失われた輸出すべてが「円売り」に直結しているわけではなく、サービス収支上、産業財産権として回帰している部分もあることは円の需給を考察するうえでは知っておきたい事実だ」、なるほど。 唐鎌 大輔氏による「円安がさらなる貿易赤字と円売りを招くカラクリ サービス収支に透ける製造業のグローバル化」 「今回の高値には意外感を持つ向きが多いのではないか。 つい少し前、10月の終わりの4取引日にあっては、日経平均の終値はいずれも3万1000円を割っていて、3万円を維持できないのではないかと心配になるような状況だった。 それが、3週間のうちにざっと1割上昇して「戻り高値」なのである・・・米国のインフレ関連のデータ・・・ どんな「教訓」があるのだろう、興味深そうだ。 「合理的な投資家にできることは、余計な売買をせずに自分にとって必要な大きさの投資を維持してじっとしている真の「長期投資」と、これと両立する「分散投資」「低コスト」のポートフォリオの保有である。さらには、自分が合理的であるとの自信を持って精神的なストレスを減らすことだ。
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保険(その8)(【ビッグモーター不正】損保業界関係者は「損保ジャパンは別 報酬返上では済まされない 逮捕されますよね」、ビッグモーターに経営指導したのは“沈没事故”知床遊覧船と同じコンサル会社 無理な指導なかった?、ビッグモーター不正事件で平均年収1100万円 最高5000万円の「超高待遇」社員たちはどうなるのか?、伊藤忠がビッグモーター買収!?火中の栗拾う理由 「創業家の切り離し条件」24年春までに買収判断) [金融]

保険については、本年5月15日に取上げた。今日は、(その8)(【ビッグモーター不正】損保業界関係者は「損保ジャパンは別 報酬返上では済まされない 逮捕されますよね」、ビッグモーターに経営指導したのは“沈没事故”知床遊覧船と同じコンサル会社 無理な指導なかった?、ビッグモーター不正事件で平均年収1100万円 最高5000万円の「超高待遇」社員たちはどうなるのか?、伊藤忠がビッグモーター買収!?火中の栗拾う理由 「創業家の切り離し条件」24年春までに買収判断)である。

先ずは、7月20日付けデイリー新潮が掲載した「【ビッグモーター不正】損保業界関係者は「損保ジャパンは別。報酬返上では済まされない。逮捕されますよね」」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/07201047/?all=1
・「『♪くーるまを売るな~らビッグモーター!の歌声も虚しい。7月18日、中古車販売大手ビッグモーターの兼重宏行社長(71)が、報酬の全額を1年間返上とする方針を固めた。車の修理代を損害保険各社に水増し請求していたことが特別調査委員会によって認定されてからおよそ2週間、社長をはじめ役員たちの報酬返上では済まないという声が……。 ビッグモーターは中古車の買取・販売のみならず、大半の店舗に隣接された整備工場をウリにしていた。そして“最先端設備でどこよりもキレイに素早く修理!”を謳っていたのだ。 ところが整備工場内では、ゴルフボールを入れた靴下を振り回してぶつけて車体を損傷、不必要な部品の交換、1台あたりの修理工賃が14万円前後のノルマ……とても修理とは呼べない工賃が上乗せされて、損保会社に請求されていたのだ。報告書には「コンプライアンス(法令遵守)意識の鈍麻」「経営陣に忖度するいびつな企業風土」といった批判も入っていた。大手損保の関係者は言う。 「ビッグモーターの良くない評判は今に始まったことではありません。この会社は保険の代理店業務も行っていて、社員たちは保険契約にノルマがありました。それが達成できないと罰金が課せられていたのです」 2017年2月に産経新聞がこう報じている。 同社では全国約80の販売店で、前月の保険販売実績に応じて目標を達成できなかった店の店長個人から10万円を上限に現金を集め、達成した店の店長へ分配していた。産経新聞の取材に同社は昨年12月、「会社と関係なく店長間で慣習的に行われていた。一切強制していない」と説明した。/しかし、昨年6月に全社員宛てに送られた兼重社長名での社内メールでは、「保険選手権大会に関して」とのタイトルで「罰金を払うということは、店長としての仕事をしてないということだ!」「罰金を払い続けて、店長として(中略)恥ずかしくないか!」などと記載されていた》(産経新聞:17年2月26日)』、「整備工場内では、ゴルフボールを入れた靴下を振り回してぶつけて車体を損傷、不必要な部品の交換」、よくマスコミで取り上げられたニュースだ。 「保険の代理店業務も行っていて、社員たちは保険契約にノルマがありました。それが達成できないと罰金が課せられていたのです」 2017年2月に産経新聞がこう報じている。 同社では全国約80の販売店で、前月の保険販売実績に応じて目標を達成できなかった店の店長個人から10万円を上限に現金を集め、達成した店の店長へ分配していた」、なるほど。
・『一代で全国300店  「もともとビッグモーターは、76年に山口県岩国市に開店した兼重オートセンターが母体です。そこから兼重社長が一代で、本社を東京の六本木ヒルズに置き、北海道から沖縄まで全国300店舗に迫る出店をし、“買取台数6年連続日本一”を謳う会社に成長したんです。もちろんそこには、関西の中古車販売会社ハナテンを傘下に収めたことが大きいのですが、兼重社長は自衛隊出身と聞いたこともありますし、かなり無理をしてきたのでしょう」 今回の損保への不正請求問題は、昨年はじめの内部告発が発端だった。同社と取引のある損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上の3社がサンプル調査を実施し、全国にある整備工場の大半から水増し請求の疑いが発覚した。 「そこで3社で、ビッグモーターに自主調査を要請したわけです。ところが、返ってきたのは、修理作業員の技術不足、社内の手続き上のミスが原因だったという回答でした。これに納得できない東京海上と三井住友海上が独自に調査を始めると、ようやくビッグモーターも第三者による特別調査チームを立ち上げたのです」 損保ジャパンは加わらなかったのか。 「損保ジャパンだけはビッグモーターの回答を鵜呑みにして、一度は辞めていた事故車両の紹介を復活させたそうですから」 なぜ損保ジャパンは取引を復活させたのか』、「今回の損保への不正請求問題は、昨年はじめの内部告発が発端だった。同社と取引のある損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上の3社がサンプル調査を実施し、全国にある整備工場の大半から水増し請求の疑いが発覚した。 「そこで3社で、ビッグモーターに自主調査を要請したわけです。ところが、返ってきたのは、修理作業員の技術不足、社内の手続き上のミスが原因だったという回答でした。これに納得できない東京海上と三井住友海上が独自に調査を始めると、ようやくビッグモーターも第三者による特別調査チームを立ち上げたのです」、「損保ジャパンだけはビッグモーターの回答を鵜呑みにして、一度は辞めていた事故車両の紹介を復活させた」、「損保ジャパン」は共同正犯といえるほど悪質だ。
・『強く出られなかった部分も  「太いパイプがあるのでしょうね。損保ジャパンはビッグモーターに社員を出向させていたそうです。これは勝手な想像ですが、損保ジャパンは旧安田火災の頃から大手損保に追いつけ追い越せで、ゆるい契約を結ぶ社風がありました。実際、損保ジャパンとなってからも、業務が営業偏重だと業務停止処分が下ったことがありました。ビッグモーターものし上がってきた会社ですから、似た部分があるのではないかと思います」 それにしても、損保に修理代を水増し請求したところで、それほど儲かるのだろうか。 「修理代は損保から支払われますから確実ですし、修理の工賃などの見積もりを増やせば余計に儲かります」 タイヤにネジを打ち込んで、わざとパンクさせていたという報道もあった。 「通常のパンクだけなら保険の対象外です。事故によるパンクや、タイヤだけでなくボディも傷つけられたのであれば、車両保険の対象となる可能性があります。いわば修理の水増しをしていたということでしょう」 そうした不正請求が損保にバレなかったということか。
「そういうことになります。ビッグモーターは保険を売ってくれるので、損保にとってはお客様でもある。自賠責保険など1台では大した金額ではありませんが、販売大手となればかなりの額になる。そのため、修理にちょっと高い見積もりが来ても強く出られない部分もあったと思います。損保ジャパンについては、社員まで出向させていたのですから、うちは知らなかったでは済まないと思いますけど、いずれにしても最終的には保険に加入いただいたお客様が最大の被害者です。修理代を損保が支払う分、等級が下がって保険料は割り増しとなったわけですから」 歴とした詐欺事件のように思われるが、 「正直言って、こんなことをやっていたら逮捕されます。少なくとも報酬を1年返上すれば責任を取ったことになるなんていう話ではありません」』、「ビッグモーターは保険を売ってくれるので、損保にとってはお客様でもある。自賠責保険など1台では大した金額ではありませんが、販売大手となればかなりの額になる。そのため、修理にちょっと高い見積もりが来ても強く出られない部分もあったと思います。損保ジャパンについては、社員まで出向させていたのですから、うちは知らなかったでは済まないと思いますけど、いずれにしても最終的には保険に加入いただいたお客様が最大の被害者です」、「損保ジャパン」への金融庁の処分はまだ検討中のようだが、悪質性からみて相当重いものになるだろう。

次に、7月26日付け日刊ゲンダイ「ビッグモーターに経営指導したのは“沈没事故”知床遊覧船と同じコンサル会社 無理な指導なかった?」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/326532
・『「天地神明に誓って知らなかった」 25日、保険金の不正請求問題で揺れる中古車販売大手「ビッグモーター」の兼重宏行社長が記者会見を行い、26日付で自身と会見に姿を見せなかった息子の宏一副社長の辞任を発表した。 同社は客が持ち込んだ故障車両に「ドライバーで傷つける」「ゴルフボールを入れた靴下を振り回して叩く」「サンドペーパーで塗装をはがす」「ヘッドライトのカバーを割る」などの不正行為を行い、修理費用を水増ししたうえで保険金を請求していたことが明らかになっている。 兼重社長は会見で「個々の工場長が指示してやったんじゃないか。事実確認が取れていませんけれども、それでないとこういうことは起きない」と、不正への組織ぐるみの関与を否定。 外部専門家からなる特別調査委員会の調査報告書によると、同社は修理車両1台あたり14万円前後の粗利をノルマとして設定していたという。 本来、車両の損傷状況に応じて施される修理に収益目標を設定するなど、売り上げ至上主義が現場に無理を強いていた可能性が高いが、兼重社長は不正の原因について、「不合理な目標設定。それが目標ではなく、ノルマになって、(板金塗装の幹部が)達成させるために強くプレッシャーをかけた。それが原因で今回の不正が起きたと考えられますので、組織的と思われてもこれは致し方ないんですけども、決してそんなことはありません」と述べている。 「同社は業界でもトップクラスの給与水準を謳っていて、実際に幹部クラスになると2000~4000万円台の年収を得ている社員もいます。その一方で上層部からのプレッシャーはものすごく、ノルマが達成できないと降格や左遷、減給というペナルティがあったため、現場は不正に手を染めざるをえない状況にあったといいます。 ほかにも“環境整備点検”といって、幹部が月一で店舗を巡回し、掃除や整理整頓がきちんと行われているかなどを厳しくチェックする作業を深夜や朝方まで強いられていたようです。こうした会社のブラックな体質を嫌い、離職者が多いことでも知られていました」(中古車業界関係者) 特別調査委員会の調査報告書は、ビッグモーターの「環境整備点検」についてこう厳しく批判している。 “環境整備点検は、スーツを着たお偉方が上から目線で難癖をつけるだけのイベントになっていたのであり、そのような状況下で経営陣に現場の声が上がってくるはずがない』、歩道の植木への除草剤散布で枯らせてしまった問題は、この「環境整備点検」に備えたものだった〟「「同社は業界でもトップクラスの給与水準を謳っていて、実際に幹部クラスになると2000~4000万円台の年収を得ている社員もいます。その一方で上層部からのプレッシャーはものすごく、ノルマが達成できないと降格や左遷、減給というペナルティがあったため、現場は不正に手を染めざるをえない状況にあったといいます」、なるほど。
・『■「儲かる仕組み」を会員企業に指導  この環境整備点検を指導したとされるのが、経営コンサルタントの小山昇氏(75)が率いる株式会社武蔵野で、ダスキンのフランチャイズ事業のほか、中小企業への経営コンサルティング事業で知られている。 同社は18年連続増収を謳い、小山氏が編み出したとされる「儲かる仕組み」を会員企業に指南。武蔵野から経営指導を受けた750社のうち、400社以上が過去最高益を達成しているという。その会員企業の一つが、今回の不正が発覚したビッグモーターだ。 小山氏は、2014年9月12日配信のダイヤモンドオンラインの記事「【第1回】日本初「日本経営品質賞」2度受賞の秘密!「朝一番の掃除」7つのメリットとは?」で、ビッグモーターについてこう記している。 《山口県岩国市に本社がある自動車販売会社、株式会社ビッグモーター(兼重宏行社長)は、記録的台風(2005年9月6~7日)の影響により、展示車両が全滅。一瞬にして2億円の損害を受けてしまいます。 ところが「ビッグモーター」は、3日後には営業再開し、いまや中古車販売台数で「業界日本一」になりました》 小山氏によると、ビッグモーターが壊滅的状況から這い上がれた唯一の解が、掃除をはじめとする「環境整備」にあるという。 《人材を鍛え、組織を改善し、高収益体質をつくるうえで、「環境整備」ほど効果的なしくみはありません》 ほかにも、毎年社員に配る「経営計画書」なるものがビッグモーターには存在する。 「3.強烈な願望を心に抱く」「4.誰にも負けない努力をする」「5.売り上げを最大限に、経費は最小限に」「8.燃える闘魂」といった自己啓発書顔負けの項目が並び、社員は毎朝唱和させられていたという』、安物の「自己啓発書顔負けの項目」だ。
・『「幹部には目標達成に必要な部下の生殺与奪権を与える」  「組織や人事に関して、『社長の意図が素早く実行されるフラットな組織にする』『会社と社長の思想は受け入れないが、仕事の能力はある。今、すぐ辞めてください』『経営方針の執行責任を持つ幹部には、目標達成に必要な部下の生殺与奪権を与える』といった文言が並び、これらビッグモーターの経営計画書も小山氏が指導したといわれています」(経済誌記者) 小山氏といえば、昨年4月23日、北海道知床半島の沖合で沈没した遊覧船「KAZUⅠ(カズワン)」の運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長に経営指導していたことでも知られている。 同社は乗員・乗客合わせて26名全員が死亡・行方不明となる大惨事を起こしているが、事故発生後、ベテラン船長や従業員の解雇のほか、船の整備不良や悪天候での無理な出航など、ずさんな経営実態が明らかになった。遊覧船買収の際、桂田社長は小山氏に相談したとされている。 偶然とはいえ、武蔵野は不祥事を起こした2社のコンサルに関わっていたことになる。企業にとって清掃や整理整頓、従業員の士気向上は必要ではあるものの、現場に不正行為をさせるような行き過ぎた経営指導はなかったのか。 武蔵野に質問を送ったところ、次のような回答があった(qは質問、Aは回答)。 Q:貴社がビッグモーターに経営指導していたのは事実ですか? A:「弊社の経営サポート会員企業様であり、弊社主催の研修・セミナーにご参加頂いたことはございます」 Q:「環境整備点検」「経営計画書」などの仕組みは、貴社の経営指導の一環ですか? A:「そのような仕組みの導入を推奨していたのは事実ですが、過度な経費削減、無理な努力目標や自己啓発を強いるよう指導する事はございません。ましてや、パワハラまがいの行為を誘発するようなことは、あってはならないものと考えております」 Q:ビッグモーターへの経営指導はいつから開始されましたか? 現在も継続中でしょうか? A:「個別の顧客情報に関しましては、お答えいたしかねます」 Q:特別調査委員会の報告書にも、無理な努力目標や自己啓発を強いられ、パワハラまがいの行為があったと指摘されていますが、このあたりも貴社が指導してきたということで間違いないでしょうか? 見解を聞かせてください。 A:「前述のように全くの間違いであります。そのような指導はしておりません」 ビッグモーターの経営指導には関わっていたものの、不正行為に至る無理な指導は決して行っていないという。 ホームページに掲載されている武蔵野の60期経営計画についての、小山氏による次のような記述がある。 《この経営計画書は家族の期待と責任を一身に背負っている社員が、安定した生活を築くため、昨年の過ちを正し、お客様に愛され支持される会社を実現するために、数字による目標と方針を明確にし、何をしなければならないか、又、何をしてはいけないかを、全身全霊、精魂を込めて書き上げたものです》 ビッグモーターは社長、副社長の辞任で創業家が全役職から退任したことになるが、大株主として引き続き同社への関与、影響力が指摘されている。ビッグモーターは不正という“過ち”を正し、客を裏切らない企業として再出発できるのか』、「ビッグモーターの経営計画書も小山氏が指導したといわれています」・・・小山氏といえば、昨年4月23日、北海道知床半島の沖合で沈没した遊覧船「KAZUⅠ(カズワン)」の運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長に経営指導していたことでも知られている。 同社は乗員・乗客合わせて26名全員が死亡・行方不明となる大惨事を起こしているが、事故発生後、ベテラン船長や従業員の解雇のほか、船の整備不良や悪天候での無理な出航など、ずさんな経営実態が明らかになった。遊覧船買収の際、桂田社長は小山氏に相談したとされている。 偶然とはいえ、武蔵野は不祥事を起こした2社のコンサルに関わっていたことになる」、「武蔵野」の「小山氏」の化けの皮は完全に剥がれたことになる。

第三に、7月28日付けダイヤモンド・オンラインが記載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「ビッグモーター不正事件で平均年収1100万円、最高5000万円の「超高待遇」社員たちはどうなるのか?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/326768
・『連日報じられるビッグモーターの不正事件。これは「ビッグモーター1社の凋落(ちょうらく)」だけでは終わらないでしょう。私は、中古車業界・他業界まで波及する影響があると予測します。今後、何が起こるのか? 平均年収1100万円、最高5000万円の「超高待遇」社員たちも、このままではいられないかもしれません』、興味深そうだ。
・『ビッグモーターの不正事件は「1社の凋落」では終わらない  ビッグモーターの不正事件が大きく動き出しました。不正は2021年秋から断続的にメディアに報道されてきたのですが、ビッグモーターという大企業の特殊性から、これまで2年にわたってそれほど大きな事件とはなっていなかったのです。 ビッグモーターは未上場企業であるために情報の開示義務がないことが、この事件の特異な状況を作り出していました。さらに内部告発やリークから不正を疑う報道が出るたびに会社がそれを黙殺したことで、後追い報道も出づらかったのです。 今月、事態が大きく動いたのは第三者委員会の報告書が明らかになったからなのですが、実はこの報告書自体、当初は開示されていませんでした。あくまで被害者の立場にある損保3社に宛てた報告書だったという事情からです。この対応に業を煮やしたいずれかの関係者が多数のメディアに内容をリークしたことから、ようやく大事件に発展しました。 今回の記事では未来予測の専門家の立場から「これから何が起きるのか」にフォーカスして、ビッグモーターを取り巻く今後について予測していきます。) 上記の事情から、記事中の記述はメディアがこれまで報道してきた内容に依拠している点をご容赦ください。 これから起きると予測されることは、以下の三つです。 (1)中古車相場の暴落 (2)損保ジャパンへの飛び火 (3)ビッグモーター自体の凋落(ちょうらく) それぞれ、これから起きることを整理していきましょう』、「報告書自体、当初は開示されていませんでした。あくまで被害者の立場にある損保3社に宛てた報告書だったという事情からです。この対応に業を煮やしたいずれかの関係者が多数のメディアに内容をリークしたことから、ようやく大事件に発展」、こんな経緯があったとは初めて知った。
・『(1)中古車価格は確実に暴落する  今回の報道で「これから間違いなく起きる」と断言できることは、ビッグモーターから車を買う人がいなくなり、ビッグモーターで自分の車を修理をする人がいなくなることです。過去の不祥事から類推するに、売り上げは8割から9割減少するでしょう。 ビッグモーターは情報非開示企業ですが、従業員数6000人、全国300店舗以上を展開していて「買取台数6年連続日本一」をうたう、まさに中古車販売業界のリーダー企業といえる存在です。 その会社が修理の際に、「ヘッドライトのカバーを割る」「ドライバーで車体に傷をつける」「ゴルフボールを靴下に入れたもので車をたたいて、傷を拡大させる」といった修理代金の水増しを行っていたことが分かりました。 そのことがこれだけの規模で、ワイドショーなどで報道され続けたわけですから、ビッグモーターを使おうという消費者は、事件を知らない人以外いなくなると考えるのが普通です。 それで何が起きるかというと、売り上げが9割減っても6000人の従業員がいて300店舗が営業している以上、現金が枯渇します。銀行からは追加の借り入れができるどころか、むしろ借入金の返済を求められることになります。 そこで経営陣ができることは、在庫の中古車を投げ売りすることです。店頭では大幅な値引きセールが行われるでしょうけれども、問題は中古車の品質を消費者がどう考えるかです。 「きちんとメンテナンスされていないのでは?」「不具合が隠されているんじゃないだろうか?」 そう考えて、大幅な値引きをされた中古車をビッグモーターから買うことも消費者は躊躇(ちゅうちょ)することになるでしょう。 そうなると、経営としては中古車在庫をオークションで換金売りするようになります。 実は、昨年の夏までは中古車市場は空前の高値をつけていました。コロナ禍や上海ロックダウンのあおりを受けた部品の供給遅れや半導体不足で新車の納車が1年待ちといった状況となり、人気車種の中古価格が新車価格を上回っていたのです。 その半導体不足が解消され始めたことや、大きな買い手であるロシアに対する輸出規制の強化などから、中古車相場はこれから徐々に下がり始めることが予想されていました。 その「徐々に」という観測に対して、急速に暗雲が垂れ込めてきたわけです。これまで供給不足から高値になっていた中古自動車が、今回の事件によりビッグモーターが在庫を放出すれば、逆に供給過多に転じてしまう。そのため、中古車価格の暴落が起きる可能性が高まってきたのです。 業界にとってはとんだとばっちりになりますが、この先、中古車市場は大いに冷え込むことになるでしょう』、「ロシアに対する輸出規制の強化などから、中古車相場はこれから徐々に下がり始めることが予想されていました。 その「徐々に」という観測に対して、急速に暗雲が垂れ込めてきた」、最悪のタイミングだ。
・『(2)損保ジャパンは説明責任を強く問われるだろう  さて、7月25日のビッグモーターの記者会見で非常に興味深いやり取りがありました。 同社の兼重宏行前社長が途中まで不正に関与した社員について「刑事告発する」と主張していたのですが、会見の最後に「先ほど刑事告発の話をしましたが、質問を受けて考えてみると、その責任も私にあるなと。そこまでする必要はないなと考え直しましたので、訂正します」と発言を修正したのです。 刑事告発をすれば当然社内に捜査の手が入りますし、裁判を通じて事実関係が明らかになります。刑事告発をしないことにすればそれがなくなります。 これは私の視点ですが、現在被害者の立場にある損保ジャパンがビッグモーターを刑事告発をするかしないかが、この事件の試金石になるでしょう。予測としてはこの先、損保ジャパンは今回の事件についての説明責任を強く求められるようになります。 被害者である損保ジャパンの白川儀一社長は今回の事件について、「会社全体としてビッグモーターの不正行為を見抜けなかった」と陳謝しています。一方で、この謝罪について疑念を向ける報道があります。) 前述の通り、ビッグモーターは未公開会社です。しかし、2015年に中古車売買を行っていた公開会社のハナテンを買収した際に、株主構成が公開されています。その時点では、損保ジャパンが持ち株比率6.88%で兼重前社長に次ぐ第2位の株主になっていることが判明しています。 他の保険会社2社の出向者がそれぞれ3名のレベルであるのとは違い、損保ジャパンが37人という突出した出向者を出していることはこの資本関係から説明がつきます。 2021年秋に内部告発で水増し請求が表面化して、翌2月には損保3社がサンプル調査を行い多数の工場で水増し請求が起きていたことが発覚しました。結果を受けて3社ともビッグモーターとの取引を停止したのですが、損保ジャパンだけは22年7月に「組織的な不正の指示がなかったことを確認できたため」という理由で、受け入れを一時再開します。 一方で、損保ジャパンの白川社長によれば、同社の経営陣が今回の不正の内部告発の情報を知ったのは2022年の夏だといいます。損保ジャパンが弁護士を含めた調査委員会を立ち上げることを表明するのはそのずっと後の2023年7月、つまり事件が完全に表面化するまでの10カ月以上なぜか調査を始めていないのです。 ビッグモーターの記者会見で現場のことは知らないとしていた兼重前社長が、損保ジャパンの出向社員は関与していないことだけは知っていると強調していたのも印象的でした。 実は損保ジャパンは2019年に、ビッグモーターに関して「完全査定レス」の仕組みを導入しています。それまではビッグモーターが修理の見積もりを作成したら、損保ジャパンの損害査定人(アジャスター)がその見積もりをチェックしてから修理に着手していました。これは保険の一般的なワークフローです。 しかし、ビッグモーターではそのチェック工程を完全に省略して保険金を支払う形に変えたのです。 損保ジャパンの出向者は不正の現場に立ち会っていないということですが、工場長会議には出ていたという報道がありますし、ビッグモーターが修理1件当たりの工賃にノルマを設定していたことも知っていたという報道もあります。 そもそも、修理1件当たりの工賃にノルマがあるということ自体がいろいろと不可解です。工賃は一定ではなく車の状態によって変動するため、修理の程度が軽微であれば、ノルマを達成できないことだってあるはずです。 そしてよく考えてみると、損保ジャパンはそれほど大きな被害は受けていないかもしれません。 ビッグモーターは損保ジャパンにとって、年間100億円台の保険料収入をもたらしてくれる大手保険代理店です。被害額が水増しされた車の保険契約者は翌年からの保険料が上がりますから、後々元がとれます。 そしてビッグモーターについてはアジャスターレスだったので、損保ジャパンのアジャスターは他の事故に専念できます。実は業界では損保ジャパンのアジャスターはすご腕だと評判で、事故の相手が損保ジャパンに入っていると厳しい金額の賠償金しか受け取れないと嘆く人も多くいます。 邪推すれば、全体での収支は維持できている可能性があるのです。 いずれにしてもこれから起きることとしては、損保ジャパンがこれらの事柄について、対外的に厳しく説明責任を求められるようになるということだけは間違いないでしょう』、「ビッグモーターは損保ジャパンにとって、年間100億円台の保険料収入をもたらしてくれる大手保険代理店です。被害額が水増しされた車の保険契約者は翌年からの保険料が上がりますから、後々元がとれます。 そしてビッグモーターについてはアジャスターレスだったので、損保ジャパンのアジャスターは他の事故に専念できます。実は業界では損保ジャパンのアジャスターはすご腕だと評判で、事故の相手が損保ジャパンに入っていると厳しい金額の賠償金しか受け取れないと嘆く人も多くいます」、「損保ジャパン」が「ビッグモーターについてはアジャスターレスだった」とは初めて知った。「これから起きることとしては、損保ジャパンがこれらの事柄について、対外的に厳しく説明責任を求められるようになる」、「説明責任」を果たすのはどうみても困難だろう。
・『(3)ビッグモーターが救済されるとしたらそれはM&Aではない  さて、飛ぶ鳥を落とす勢いで発展してきたビッグモーターという会社自体は間違いなく衰退に向かうでしょう。企業のブランドというものは、本業でここまでの不祥事が起きてしまうと、回復不可能なほどの傷がついてしまうものです。 これまでは、このような不祥事が起きた企業がたどる道は二通りでした。業績が極端に低迷したのちに破綻を表明して、廃業ないしは民事再生に向かうのが一つの道。そしてもう一つは、ファンドないしは同業他社に買収される道です。 では、同業他社にとってビッグモーターは有用でしょうか? 私は、ビッグモーターについては企業やファンドによる買収(M&A)は起きないと予測しています。代わりに営業権が譲渡されることになるというのが私の予測です。 中古車業界の他社から見れば、ビッグモーターのブランドは「絶対に要らないブランド」でしょう。 しかし、店舗と工場、在庫車が安く手に入るなら、そこには非常に大きな経済価値があります。人手不足が企業成長のボトルネックになっている昨今ですから、若くて技術のある従業員がまとめて確保できることも魅力です。 ただ、M&Aできない最大の理由も人材にあります。なにしろサンプル調査によれば、4人に1人が不正に関与しているほどの企業です。管理職のパワハラ体質に関する報道もあります。人気ドラマになぞらえて言えば「腐ったミカン」が心配です。)不正体質と表裏の関係にあるのが、ビッグモーターの給料の高さです。大手求人サイトではビッグモーターの正社員の募集で「残業ほぼなし、平均年収1109万円」となっています。 すでに閉鎖されて読めなくなっていますが、ビッグモーターのホームページでも「営業職の約半数が年収1000万円超えの実績」とされていて、募集要項では2021年12月〜2022年11月実績として「年収462万円〜5040万円」と表示されています。 業界水準を超えて異常に高い報酬部分は業績連動のインセンティブであり、ノルマを達成したことによる手当です。ですから、今後はビッグモーターの社員の給与水準は急速に年収462万円に近づいていくと思われます。 とはいえ、業界常識とはかけ離れた給与に慣れている人材をごっそりそのまま受け入れるかどうかというと、業界他社は躊躇するはずです。 管理職は不要だが若手中心に社員は欲しいとなると、スキームとしてはM&Aではなく営業権を譲渡してもらう形で店舗や工場の設備と在庫の車を入手して、人材については一人一人面接して、個別採用する形を取るのがベストです。 救済する側から見れば、「業界水準と比較して異常に給与が高い人材を採らなければいい」と考えることでしょう。むしろ、給与の低い人ほど正直に仕事をしてくれる人だと感じるはずです。 諸般の事情から、ビッグモーターを救済しようとする企業はしばらくのところ出現しない可能性の方が高いと私は予測します。待っているのはいばらの道です』、「業界水準を超えて異常に高い報酬部分は業績連動のインセンティブであり、ノルマを達成したことによる手当です。ですから、今後はビッグモーターの社員の給与水準は急速に年収462万円に近づいていくと思われます。 とはいえ、業界常識とはかけ離れた給与に慣れている人材をごっそりそのまま受け入れるかどうかというと、業界他社は躊躇するはずです」、次の記事にあるように伊藤忠が買収に名乗りを挙げたようだ。これは次の記事でみてみたい。

第四に、11月17日付け東洋経済オンライン「伊藤忠がビッグモーター買収!?火中の栗拾う理由 「創業家の切り離し条件」24年春までに買収判断」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/716001
・『自動車保険金の不正請求問題をきっかけに経営難に陥った中古車販売大手ビッグモーターに思わぬ援軍候補が現れた。 大手総合商社の伊藤忠商事は11月17日午後、「ビッグモーター社が運営する事業について再建の可能性を検証するために、これよりデューデリジェンスを開始する」と発表した。 伊藤忠商事のほか、子会社の伊藤忠エネクス、投資ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)の3社がビッグモーターと資産査定(デューデリジェンス)の独占契約を結び、来春までに買収の可否を判断する。 現在、ビッグモーター株の100%を握る兼重宏行・前社長ら創業家が経営に一切関与しないことが条件になる』、興味深そうだ。
・『市場は買収検討を「買い」と判断  ビッグモーター側も同時にリリースを発表し、伊藤忠商事について「自動車関連事業におけるハンズオン経営の実績も有し、オペレーション効率化、成長戦略の立案等にも強みを持っている」と評価した。 17日、午前中から上昇基調だった伊藤忠商事の株価は、午後1時に日本経済新聞が「買収検討」の速報を流した後も上がり続け、終値は前日比2.3%高い6132円をつけた。市場は買収検討を「買い」と判断した。) 一連の不正を受け、国土交通省は10月、ビッグモーターの34事業所を道路運送車両法に基づいて事業停止とした。さらに金融庁は保険業法に基づき、同社の保険代理店登録を11月30日付で取り消す方針だ。 伊藤忠商事はなぜ、そんな火中の栗を拾おうとするのだろうか』、大商社のやっているキレイな商売とは、完全に異質な気もする。
・『「見送る可能性も十分ある」(同社関係者は、「今回の買収検討は創業家支援ではない。厳格なデューデリの結果、案件を見送る可能性も十分ある」と強調する。 JWPとの意見交換の中で今回の案件が浮上し、ビッグモーターのファイナンシャルアドバイザーを務めるデロイトトーマツから開示された資料を基に検証した。その結果、より詳しいデューデリを行う価値があると判断したようだ。 伊藤忠商事とビッグモーターには、これまで取引関係はない。だが、伊藤忠グループでは、中古車販売のほか、自動車整備、保険やローンの販売も行うなど、自動車ビジネスとの関係は深い。 イギリス最大手のタイヤ小売りであるクイックフィットも傘下に持つ。2023年8月には全国の整備工場1万1500カ所の自動車整備工場とネットワークを持つリース車両整備受託会社「ナルネットコミュニケーションズ」への出資参画を表明したばかりだった。 「商社が中古車業界に興味を持っているという話は以前からあった。伊藤忠グループは子会社のヤナセをはじめもともと自動車、中古車に強い。(今回の基本合意に)違和感はない」と中古車業界の関係者は話す。) 一方、ビッグモーターはほぼ全国に店舗を持ち顧客との接点も多い。整備工場の設備も比較的新しい。ビッグモーターの事業と伊藤忠グループの自動車関連事業は親和性が高く、シナジー(相乗効果)がそれなりに見込めると伊藤忠側は判断したようだ。 伊藤忠商事をはじめとする総合商社は資源市況の高止まりや円安効果により業績は好調、2024年3月期の業績予想も上方修正が相次いでいた。伊藤忠商事も11月6日に通期純利益予想を7800億円から8000億円に引き上げたばかりだった。潤沢な資金を背景に、各社は有望な成長投資先を模索している。 ただ、伊藤忠には厳しい投資基準があり、投資額に見合う成長が厳格に求められる。今年8月に発表した、子会社・伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の完全子会社化案件ですら「浮かんでは消え、消えては浮かんだ案件」(鉢村剛CFO)だったという』、「伊藤忠グループは子会社のヤナセをはじめもともと自動車、中古車に強い」、のであれば確かに違和感はなさそうだ。
・『買収価格は極めて厳しいものになる  急転直下で浮上した今回の案件は相乗効果がわかりやすい一方、伊藤忠商事から提示される買収価格はビッグモーターにとって、極めて厳しいものになるだろう。 前述のように伊藤忠側は、創業家からの経営切り離しを支援の条件としており、創業家がビッグモーター株の100%を握る資本構成も今後、大きな論点になる。会社分割でビッグモーターを解体し、創業家から切り離された優良資産だけ伊藤忠が買い取っていく可能性もある。 ビッグモーター再建の道筋は、新たな局面に入った』、「伊藤忠」がどのように料理していくのか、見守りたい。 
タグ:(その8)(【ビッグモーター不正】損保業界関係者は「損保ジャパンは別 報酬返上では済まされない 逮捕されますよね」、ビッグモーターに経営指導したのは“沈没事故”知床遊覧船と同じコンサル会社 無理な指導なかった?、ビッグモーター不正事件で平均年収1100万円 最高5000万円の「超高待遇」社員たちはどうなるのか?、伊藤忠がビッグモーター買収!?火中の栗拾う理由 「創業家の切り離し条件」24年春までに買収判断) 保険 「ビッグモーターの経営計画書も小山氏が指導したといわれています」・・・小山氏といえば、昨年4月23日、北海道知床半島の沖合で沈没した遊覧船「KAZUⅠ(カズワン)」の運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長に経営指導していたことでも知られている。 同社は乗員・乗客合わせて26名全員が死亡・行方不明となる大惨事を起こしているが、事故発生後、ベテラン船長や従業員の解雇のほか、船の整備不良や悪天候での無理な出航など、ずさんな経営実態が明らかになった。 安物の「自己啓発書顔負けの項目」だ。 「整備工場内では、ゴルフボールを入れた靴下を振り回してぶつけて車体を損傷、不必要な部品の交換」、よくマスコミで取り上げられたニュースだ。 「保険の代理店業務も行っていて、社員たちは保険契約にノルマがありました。それが達成できないと罰金が課せられていたのです」 2017年2月に産経新聞がこう報じている。 同社では全国約80の販売店で、前月の保険販売実績に応じて目標を達成できなかった店の店長個人から10万円を上限に現金を集め、達成した店の店長へ分配していた」、なるほど。 歩道の植木への除草剤散布で枯らせてしまった問題は、この「環境整備点検」に備えたものだった〟「「同社は業界でもトップクラスの給与水準を謳っていて、実際に幹部クラスになると2000~4000万円台の年収を得ている社員もいます。その一方で上層部からのプレッシャーはものすごく、ノルマが達成できないと降格や左遷、減給というペナルティがあったため、現場は不正に手を染めざるをえない状況にあったといいます」、なるほど。 日刊ゲンダイ「ビッグモーターに経営指導したのは“沈没事故”知床遊覧船と同じコンサル会社 無理な指導なかった?」 「ビッグモーターは保険を売ってくれるので、損保にとってはお客様でもある。自賠責保険など1台では大した金額ではありませんが、販売大手となればかなりの額になる。そのため、修理にちょっと高い見積もりが来ても強く出られない部分もあったと思います。損保ジャパンについては、社員まで出向させていたのですから、うちは知らなかったでは済まないと思いますけど、いずれにしても最終的には保険に加入いただいたお客様が最大の被害者です」、「損保ジャパン」への金融庁の処分はまだ検討中のようだが、悪質性からみて相当重いものになるだろう。 「損保ジャパンだけはビッグモーターの回答を鵜呑みにして、一度は辞めていた事故車両の紹介を復活させた」、「損保ジャパン」は共同正犯といえるほど悪質だ。 「今回の損保への不正請求問題は、昨年はじめの内部告発が発端だった。同社と取引のある損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上の3社がサンプル調査を実施し、全国にある整備工場の大半から水増し請求の疑いが発覚した。 「そこで3社で、ビッグモーターに自主調査を要請したわけです。ところが、返ってきたのは、修理作業員の技術不足、社内の手続き上のミスが原因だったという回答でした。これに納得できない東京海上と三井住友海上が独自に調査を始めると、ようやくビッグモーターも第三者による特別調査チームを立ち上げたのです」 「損保ジャパン」が「ビッグモーターについてはアジャスターレスだった」とは初めて知った。「これから起きることとしては、損保ジャパンがこれらの事柄について、対外的に厳しく説明責任を求められるようになる」、「説明責任」を果たすのはどうみても困難だろう。 ・『(3)ビッグモーターが救済されるとしたらそれはM&Aではない  さて、飛ぶ鳥を落とす勢いで発展してきたビッグモーターという会社自体は間違いなく衰退に向かうでしょう。企業のブランドというものは、本業でここまでの不祥事が起きてしまうと、回復不可能なほどの傷がつい 「ビッグモーターは損保ジャパンにとって、年間100億円台の保険料収入をもたらしてくれる大手保険代理店です。被害額が水増しされた車の保険契約者は翌年からの保険料が上がりますから、後々元がとれます。 そしてビッグモーターについてはアジャスターレスだったので、損保ジャパンのアジャスターは他の事故に専念できます。実は業界では損保ジャパンのアジャスターはすご腕だと評判で、事故の相手が損保ジャパンに入っていると厳しい金額の賠償金しか受け取れないと嘆く人も多くいます」、 「ロシアに対する輸出規制の強化などから、中古車相場はこれから徐々に下がり始めることが予想されていました。 その「徐々に」という観測に対して、急速に暗雲が垂れ込めてきた」、最悪のタイミングだ。 「報告書自体、当初は開示されていませんでした。あくまで被害者の立場にある損保3社に宛てた報告書だったという事情からです。この対応に業を煮やしたいずれかの関係者が多数のメディアに内容をリークしたことから、ようやく大事件に発展」、こんな経緯があったとは初めて知った。 鈴木貴博氏による「ビッグモーター不正事件で平均年収1100万円、最高5000万円の「超高待遇」社員たちはどうなるのか?」 ダイヤモンド・オンライン 遊覧船買収の際、桂田社長は小山氏に相談したとされている。 偶然とはいえ、武蔵野は不祥事を起こした2社のコンサルに関わっていたことになる」、「武蔵野」の「小山氏」の化けの皮は完全に剥がれたことになる。 「伊藤忠」がどのように料理していくのか、見守りたい。 「伊藤忠グループは子会社のヤナセをはじめもともと自動車、中古車に強い」、のであれば確かに違和感はなさそうだ。 大商社のやっているキレイな商売とは、完全に異質な気もする。 東洋経済オンライン「伊藤忠がビッグモーター買収!?火中の栗拾う理由 「創業家の切り離し条件」24年春までに買収判断」 思われます。 とはいえ、業界常識とはかけ離れた給与に慣れている人材をごっそりそのまま受け入れるかどうかというと、業界他社は躊躇するはずです」、次の記事にあるように伊藤忠が買収に名乗りを挙げたようだ。これは次の記事でみてみたい。 救済する側から見れば、「業界水準と比較して異常に給与が高い人材を採らなければいい」と考えることでしょう。むしろ、給与の低い人ほど正直に仕事をしてくれる人だと感じるはずです。 諸般の事情から、ビッグモーターを救済しようとする企業はしばらくのところ出現しない可能性の方が高いと私は予測します。待っているのはいばらの道です』、「業界水準を超えて異常に高い報酬部分は業績連動のインセンティブであり、ノルマを達成したことによる手当です。ですから、今後はビッグモーターの社員の給与水準は急速に年収462万円に近づいていくと です。ですから、今後はビッグモーターの社員の給与水準は急速に年収462万円に近づいていくと思われます。 とはいえ、業界常識とはかけ離れた給与に慣れている人材をごっそりそのまま受け入れるかどうかというと、業界他社は躊躇するはずです。 管理職は不要だが若手中心に社員は欲しいとなると、スキームとしてはM&Aではなく営業権を譲渡してもらう形で店舗や工場の設備と在庫の車を入手して、人材については一人一人面接して、個別採用する形を取るのがベストです。 )不正体質と表裏の関係にあるのが、ビッグモーターの給料の高さです。大手求人サイトではビッグモーターの正社員の募集で「残業ほぼなし、平均年収1109万円」となっています。 すでに閉鎖されて読めなくなっていますが、ビッグモーターのホームページでも「営業職の約半数が年収1000万円超えの実績」とされていて、募集要項では2021年12月〜2022年11月実績として「年収462万円〜5040万円」と表示されています。 業界水準を超えて異常に高い報酬部分は業績連動のインセンティブであり、ノルマを達成したことによる手当 しかし、店舗と工場、在庫車が安く手に入るなら、そこには非常に大きな経済価値があります。人手不足が企業成長のボトルネックになっている昨今ですから、若くて技術のある従業員がまとめて確保できることも魅力です。 ただ、M&Aできない最大の理由も人材にあります。なにしろサンプル調査によれば、4人に1人が不正に関与しているほどの企業です。管理職のパワハラ体質に関する報道もあります。人気ドラマになぞらえて言えば「腐ったミカン」が心配です。 てしまうものです。 これまでは、このような不祥事が起きた企業がたどる道は二通りでした。業績が極端に低迷したのちに破綻を表明して、廃業ないしは民事再生に向かうのが一つの道。そしてもう一つは、ファンドないしは同業他社に買収される道です。 では、同業他社にとってビッグモーターは有用でしょうか? 私は、ビッグモーターについては企業やファンドによる買収(M&A)は起きないと予測しています。代わりに営業権が譲渡されることになるというのが私の予測です。 デイリー新潮が掲載した「【ビッグモーター不正】損保業界関係者は「損保ジャパンは別。報酬返上では済まされない。逮捕されますよね」」
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資本市場(その11)(SBIvs.楽天で開幕!「国内株売買手数料ゼロ」競争 楽天証券は上場控える時期に収益減を自ら選択、80代高齢者から荒稼ぎ、三木証券のあきれた実態 口座数減で業績低迷の小規模証券会社が暴走、高齢者にリスク 十分説明せず外国株式販売 三木証券に過怠金、企業財務の論客が激論【前編】「PBR1倍割れ」の真因と解決策を示す) [金融]

資本市場については、本年8月17日に取上げた。今日は、(その11)(SBIvs.楽天で開幕!「国内株売買手数料ゼロ」競争 楽天証券は上場控える時期に収益減を自ら選択、80代高齢者から荒稼ぎ、三木証券のあきれた実態 口座数減で業績低迷の小規模証券会社が暴走、高齢者にリスク 十分説明せず外国株式販売 三木証券に過怠金、企業財務の論客が激論【前編】「PBR1倍割れ」の真因と解決策を示す)である。

先ずは、9月4日付け東洋経済オンライン「SBIvs.楽天で開幕!「国内株売買手数料ゼロ」競争 楽天証券は上場控える時期に収益減を自ら選択」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/699113
・『「いよいよ来たか」。あるネット証券関係者は業界大手2社の発表を聞きつぶやいた。それはネット証券の地殻変動の号砲となるものだった。 最大手のSBI証券は8月31日、オンラインでの国内株式売買の手数料を9月30日発注分から無料にすると発表した。取引報告書などの各種交付書面を電子交付にすることが条件だが、ほとんどの利用者が手数料ゼロで日本株取引をできるようになる。 対抗するように同日、2位の楽天証券も10月2日約定分から国内株式の取引手数料無料コースを新設すると発表した。ネット証券の上位2社がそろって手数料無料化に踏み込んだことで、顧客の囲い込み競争は一層熱をおびることは間違いない』、「最大手のSBI証券」が仕掛けた「オンラインでの国内株式売買の手数料」「無料化」に、「2位の楽天証券も」やむなく追随せざるを得なかったのだろう。
・『楽天証券の追随には驚き  SBI証券の親会社であるSBIホールディングス(HD)の北尾吉孝会長兼社長は、2022年11月の決算説明会で「来年度(2023年度)の上半期にはオンラインの国内株式取引の売買手数料無料化を図る」と、発言していた。 それ以来、予定通りの無料化は可能なのか、関係者は固唾をのんで見守っていた。結局、公約通りの時期に無料化を実施することになった。 1年前の段階で、無料化方針を打ち出したにもかかわらず、具体的なプランの発表は実施1カ月前にずれ込んだ。その理由を広報担当は、「大量の顧客増が見込まれ、システム対応などを万全にするよう準備した結果」と説明する。 衝撃を与えたのは、ライバルである楽天証券も同じタイミングで無料化に踏み込んだことだ。楽天グループの傘下にあり、楽天証券や楽天投信投資顧問などを抱える楽天証券HDは7月に東証へ上場申請をしている。) 「この時期に無料化という大きな方針転換はできないのではないか」(大手証券幹部)という見方もあった。楠雄治社長は直前まで「検討はしているが、決まったことは何もない」と説明していたが、内部では着々と準備に動いていた。 個人の株取引において、2社の存在感は圧倒的だ。東証における個人の売買代金のうち、2022年度でSBI証券が占める割合は43.7%、楽天証券も33.5%ある(ETFやREIT含む)。この売買にかかる手数料が無料になれば日本市場の活性化にもつながる可能性がある。 折しも岸田政権が「資産運用立国」を掲げ、2024年1月からは新NISA(少額投資非課税制度)が始まるなど、個人の株式投資活発化に対する期待は高い。 SBI証券は8月31日のリリースで「『ゼロ革命』(国内株式売買手数料無料化)の意義は、『証券投資の大衆化』にあります」と説明。「『貯蓄から投資へ』の流れを加速し、広く国民一般の証券市場への積極的な参加を促進できるものと期待」すると謳った』、「東証における個人の売買代金のうち、2022年度でSBI証券が占める割合は43.7%、楽天証券も33.5%ある」、2社のシェアは本当に圧倒的だ。
・『路線修正を迫られた松井証券  こうした動きに対し、ほかのネット証券各社もすぐさま反応した。ある関係者は「黙って指をくわえて見ているわけにはいかない」と話す。 SBI証券、楽天証券に次ぐ規模を誇る松井証券は来年始まる新NISAでの日本株、米国株、投資信託の売買手数料を無料化すると発表した。 和里田聰社長はかねて「無料化には追随しない」と宣言。独自の情報提供やサポート体制を充実することで顧客をつなぎ止めることに注力してきた。しかし、路線の修正を迫られた。 松井証券は営業収益に占める株式委託手数料の割合が46%(2023年4~6月期)と高い。すべての手数料を無料にはできないものの、SBIの動きを看過できないという姿勢をにじませた。 マネックス証券もNISA対象の国内株売買手数料の無料化など現在行っている施策を今後も継続することや、米国株取引のサービス強化などをアピールするリリースを発表。現時点で手数料無料化に追随するとはしなかったものの、今後の検討課題になっている。 手数料無料化が経営に与える影響は重大だ。株取引の委託手数料は証券会社の収益にとって最も重要な柱のひとつでもある。) SBI証券の場合、2023年4~6月期の国内株式取引委託手数料は64億円だった。1年間同じ成績だったとすると250億円程度の収益だ。この分の収益がなくなる一方、システム維持コストなどは引き続きかかるため、減収分がそのまま利益の押し下げ圧力になる。 こうした衝撃を和らげるため、投資信託や外国株、FXなど収益源の多様化を進めてきた。さらには親会社であるSBIHDが銀行や資産運用など多くの事業を抱えている。 こうしたことから、本来ならば痛手となる「無料化」に踏み切れた。実際、SBIHDの年間利益予想は非開示だが、無料化を前提にしても少なくとも2024年3月期は前期並みの税前利益(IFRS)を確保できる見通しだ』、「SBI証券の場合、2023年4~6月期の国内株式取引委託手数料は64億円だった。1年間同じ成績だったとすると250億円程度の収益だ。この分の収益がなくなる一方、システム維持コストなどは引き続きかかるため、減収分がそのまま利益の押し下げ圧力になる。 こうした衝撃を和らげるため、投資信託や外国株、FXなど収益源の多様化を進めてきた・・・SBIHDの年間利益予想は非開示だが、無料化を前提にしても少なくとも2024年3月期は前期並みの税前利益(IFRS)を確保できる見通しだ」、なるほど。
・『楽天証券HDの公開価格に影響懸念  一方の楽天証券。同様に収益源の多様化を進めており、2023年1~6月期の収益に占める国内株式委託手数料は17.4%。 具体的な金額は非開示だが、この間の営業収益が540億円なので約94億円程度、年間の手数料収入は190億円程度になる計算だ。プラン選択により、一部手数料収入が残るが、その多くが無料化でゼロになる。 (SBI証券の委託手数料収入の比率、楽天証券の委託手数料収入の比率はリンク先参照) さらに楽天証券は悩ましい固有の事情を抱えている。先述したように、楽天証券HDが東証への上場手続きの真っ最中である点だ。「楽天証券として大きな減収が避けられない中、思うような株価で上場できないのではないか」。ある業界関係者はそう分析する。 親会社の楽天グループは、上場にあたって 放出する楽天証券HD株に一定水準の株価がつくことを期待している。楽天証券の手数料無料化による業績影響を織り込んで、株価が期待より低くなれば、楽天グループが手にする資金はその分だけ減る。 「モバイル事業に是が非でも資金を手にしたい楽天グループにとっては痛手になるはずだ」。前出の関係者はそう語る。 また、楽天証券にはみずほ証券が2022年11月、800億円で約20%出資している。楽天証券の収益が大きく下がれば、みずほ証券の出資分の価値が損なわれることになる。 それらの懸念を払拭するためには、楽天証券が単独かつ短期で収益を上向かせる「秘策」を練り上げなくてはならない。ただでさえ、ポイント制度の改正などの影響で新規口座数の伸びが鈍化している。2023年1~6月の新規口座数は60.9万口座。前年同期比で33.6%マイナスの状況だ。 手数料無料化で最も追い込まれたのは楽天証券かもしれない』、「楽天証券の収益が大きく下がれば、みずほ証券の出資分の価値が損なわれることになる。 それらの懸念を払拭するためには、楽天証券が単独かつ短期で収益を上向かせる「秘策」を練り上げなくてはならない。ただでさえ、ポイント制度の改正などの影響で新規口座数の伸びが鈍化している。2023年1~6月の新規口座数は60.9万口座。前年同期比で33.6%マイナスの状況だ。 手数料無料化で最も追い込まれたのは楽天証券かもしれない」、確かに「楽天証券」の今後は大変だ。

次に、9月24日付け東洋経済オンライン「80代高齢者から荒稼ぎ、三木証券のあきれた実態 口座数減で業績低迷の小規模証券会社が暴走」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/703707
・『営業員と話した内容を覚えていないととれる発言を繰り返す。勧誘内容とはまったく関係のない話を繰り返す。過去の担当者のことを突然話し始める。直前の会話を覚えていないために何度も同じ問答を繰り返す――。 そのような会話の成立しない高齢者に外国株の取引を行わせ、取引手数料を稼いでいた証券会社があった。 証券取引等監視委員会は9月15日、関東を地盤に活動する三木証券が不適切な営業を行っていたとして行政処分するよう金融庁に勧告した。勧告を受けて金融庁は、業務改善命令などの行政処分を検討する』、「行政処分」は次の記事で紹介する。
・『80歳~90歳代の客に不適切営業  監視委によると、三木証券は2020年4月以降、80歳~90歳代の顧客18人に、リスクを十分に理解させることなくアメリカのIT銘柄など外国株の取引を行わせていた。 ある顧客は8カ月で33回の売り買いをしていた。支払った手数料は、最も多い人で1460万円程度。数百万円を払った顧客も複数いた。ほかにも、新興国のテクノロジー関連企業に投資する投資信託の勧誘でも不適切な取り扱いがあった。 認知能力の衰えた高齢者に向けて、このような営業活動を行うよう、三木証券内部で組織的な指示があったわけではないという。一方で、多くの営業員が関わっており、事態の深刻さを物語っている。) 証券業界全体で顧客本位の業務運営が叫ばれている。それに逆行する三木証券の営業姿勢に驚きが広がった。 金融商品取引法は、顧客の知識や経験に照らして不適切な勧誘を行い、投資者の保護に欠けるおそれのある業務を行ってはならないとしている。これを「適合性の原則」という。 今回はこの適合性の原則に反した営業活動だったと、監視委は認定した。適合性原則違反での勧告は、今年6月のちばぎん証券に対するものに続く。 相次ぐ証券営業での不祥事に対し、日本証券業協会(日証協)の森田敏夫会長は、9月20日の会見で「非常に残念。報告書を見てきちんと対応を考えたい」とコメントした』、いまだに「適合性の原則に反した営業活動」が行われていたとは驚かされた。
・『「極端な収益至上主義」  ただ、こうした姿勢を改めるには一筋縄ではいかなさそうだ。 監視委は、無理な営業が横行した背景として「経営陣による極端な収益至上主義への転換」を挙げる。 顧客の高齢化により口座数が減少傾向にあったことなどで、三木証券は2016年度から4期連続の営業赤字に陥った。経営改善が喫緊の課題になっていた。そこで2020年4月以降、経営陣主導の下、主にアメリカ株への販売に注力した。 (三木証券の業績推移のグラフはリンク先参照) 経営資源が限られている中、販売商品を絞り込むことはほかの会社でもよくあることだ。アメリカ株販売の強化で三木証券は2020年度に営業黒字化を果たす。ところがこの黒字は、経営陣が率先してコンプライアンスを軽視したことにより実現したものだった。) 2019年6月に営業員評価制度を見直し、手数料収入実績を評価に直接反映するようにした。2022年1月には法令違反行為などを行った営業員の評価を下げる仕組みを撤廃。手数料収入に偏った不適切な営業を助長するような評価体制に移行していった。 こうした制度変更に批判的な社員に対するパワハラまがいの行為も横行していたという。営業車の使用を禁じ営業成績が下がったところで、降格処分をしていた。 外部からの指摘にも耳を傾けなかった。2018年には自主規制機関である日証協の検査で、コンプライアンス部門の人員不足を指摘されていた。 それにもかかわらず、赤字体質からの脱却と継続的な黒字化を図るため、社長自らが主導してコンプライアンス部門の担当社員を削減。2018年9月に14人いた監査部の社員が2022年9月には6人になっていた。 結果、日証協の高齢顧客ガイドラインで定められた確認事項も十分に確かめることなく「承認手続きは形骸化していた」(監視委勧告)』、「2018年には自主規制機関である日証協の検査で、コンプライアンス部門の人員不足を指摘されていた。 それにもかかわらず、赤字体質からの脱却と継続的な黒字化を図るため、社長自らが主導してコンプライアンス部門の担当社員を削減。2018年9月に14人いた監査部の社員が2022年9月には6人になっていた」、これは「社長」の確信犯だ。
・『顧客説明は正式処分後に  こうした状況に、日証協幹部もため息をつく。「顧客からの信頼がすべての地場証券でこんな営業をしていると広まったら、顧客はすぐに逃げていく。なぜここまでひどいことになったんだ」。 裏を返せば、背に腹を変えられないほど追い詰められていたのだろうか。 三木証券は、監視委が勧告を出した9月15日に「厳粛に受け止め、深く反省し、根本的な原因分析とその改善を図り、(中略)再発防止に努めてまいります」とのコメントを発表した。 ただ、コンプライアンス体制の見直しや顧客への説明といった具体的な対応は、金融庁からの処分を待ってから行う予定だ。 過度に手数料収益を追う施策をやめた後、経営を安定させられるかは未知数だ。顧客層の高齢化や契約口座数の減少は、避けがたい現状として立ちはだかっている。道を誤った中小証券会社の更生はあまりにも厳しい』、「過度に手数料収益を追う施策をやめた後、経営を安定させられるかは未知数だ。顧客層の高齢化や契約口座数の減少は、避けがたい現状として立ちはだかっている。道を誤った中小証券会社の更生はあまりにも厳しい」、その通りだ。

第三に、行政処分について、11月15日付けNHK「高齢者にリスク 十分説明せず外国株式販売 三木証券に過怠金」を紹介しよう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231115/k10014258721000.html
・『リスクを判断する能力がない高齢者に対して、十分な説明をせずに外国の株式を販売したとして行政処分を受けた東京の証券会社「三木証券」に対し、日本証券業協会は、15日、8000万円の過怠金の支払いなどを命じる処分を出しました。 東京 中央区に本店がある三木証券は、数分前の会話を覚えていないといった顧客の様子からリスクを判断する能力がないと認識していながら、少なくとも18人の高齢者に対しリスクを十分に説明せずに外国の株式を販売したとして先月、関東財務局から一部の業務の停止を命じられるなどの行政処分を受けました。 これについて日本証券業協会は、この会社が手数料収入に偏った不適切な勧誘行為を助長する評価や報酬の仕組みを導入していたほか、顧客の利益を軽視した極端な営業優先の企業風土が形成されていたなどと指摘しました。 その上で、顧客の知識や経験、財産の状況などに照らして不適当と認められる勧誘を行ったことは投資家の保護に欠け、金融商品取引法に反するとして、三木証券に対し、8000万円の過怠金を支払うよう命じました。 さらに再発防止策などを盛り込んだ業務改善計画を実施し、その状況を書面で報告するよう勧告しました』、「8000万円の過怠金を支払うよう命じました」、さらに「顧客の知識や経験、財産の状況などに照らして不適当と認められる勧誘」した結果の取引が無効とされ、その分の損失も負担する必要がありそうだ。

第四に、11月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経営戦略デザインラボによる「企業財務の論客が激論【前編】「PBR1倍割れ」の真因と解決策を示す」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/331654
・『上場企業の「PBR1倍割れ」が取り沙汰されて久しい。企業価値向上が経営者の努めであることは論をまたず、1を超えて事足れりではむろんない。では、何が問題か。どう対処すべきか。早稲田大学経営管理研究科の西山茂教授、デュポン元CFOの橋本勝則氏、オムロン元執行役員グローバル理財本部長の大上高充氏と、当代きっての企業財務の論客が、CFO協会シニア・エグゼクティブの日置圭介氏のモデレートのもと、PBR1倍割れ問題を起点に、日本企業の構造的な経営課題、成長性を阻害する要因について語り合った。2回に分けてレポートする前編では、成長手段としての新規事業創出やM&A活用における桎梏、IR(投資家向け広報)での課題を分析し、それぞれの経験を踏まえた解決策を提示する。明日公開の後編では、コングロマリット・ディスカウントをどう考え、事業整理はどうすべきかの具体論から、日本全体としての経済成長論へと広がった議論の詳細をお伝えする』、興味深そうだ。
・『PBR1倍割れ問題の本質は何か  日置 東京証券取引所が今年3月、PBR(時価総額÷自己資本)1倍割れ等に関して上場企業への対応を要請して以来、この問題が投資家や経営者の間でよく取り沙汰されます。「1倍割れ=悪」との論調が大勢です。確かにコーポレートファイナンスの観点では、1倍割れは企業価値を毀損しているのでよくないことではあります。ただ、だからといって数値を上げるためだけに配当を上げるとか、自社株買いをするというのはあまりにも短絡的です。根本には、日本企業や産業の構造的な問題があると考えますが、いかがでしょうか。 西山 PBR1倍割れは企業価値を毀損していると言えますが、テクニカルにレバレッジを利かせればいいとか、配当を多くして株主還元すればいい、という話ではありません。これをひとつのきっかけとして、ROE(純利益÷自己資本)とPER(時価総額÷純利益)の問題として捉え(PBR=ROE×PER)、それぞれを上げていく、成長性も考えながら、事業の収益性や投資効率をしっかりレベルアップしていくことが肝要だと思います。 (西山 茂 教授の略歴はリンク先参照) 橋本 対症療法として1倍以上にするのではなく、実質的な成長が伴うように体質改善すべきです。また、株価形成に際しては、経営者がIRを通じてそのメッセージやストーリーをマーケットにしっかりと伝え、評価してもらう努力が必要です。その際、実現可能性のないストーリーを語って大風呂敷を広げるのではなく、確固たるビジネスプランがあることが大切です。アナリストには、そこをしっかり見極める目を持ってほしい。 大上 PBRの分子、すなわち企業価値そのものをいかにあげていくかが大切です。企業価値は将来のキャッシュフローを現在に割り戻した現在価値ですから、そのシナリオがきちんと描けているかどうかが本質ですね。 橋本 1.0は合格ラインでもなんでもない。PBRが1.1だったらセーフなどと考えている経営者はさすがにいないとは思いますが(笑)』、「PBR1倍割れは企業価値を毀損していると言えますが、テクニカルにレバレッジを利かせればいいとか、配当を多くして株主還元すればいい、という話ではありません。これをひとつのきっかけとして、ROE・・・とPER・・・の問題として捉え(PBR=ROE×PER)、それぞれを上げていく、成長性も考えながら、事業の収益性や投資効率をしっかりレベルアップしていくことが肝要」、確かにその通りだ。
・『新規事業はイシュー・ドリブンで  日置 小手先の数値ではなく、企業価値を本質的に上げようとする場合、その手段として、オーガニック成長とM&Aという二つがあると思います。いずれにしても、橋本さんがおっしゃったように、新しい成長のストーリーをうち出していく必要があるが、日本企業はそれがない。 PBRの分子を大きくする、すなわち成長を考えるに当たっての新規事業に関してですが、日本の大企業の構造問題のひとつとして、新規事業が生まれにくいということがあります。大上さんは、実際オムロンの中でCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)なども関わった経験がおありで、そのあたりはどうご覧になりますか。 大上 スタートアップに関わる仕事をしていますが、今の時代は、社会・経済システムの移行期にあり、新旧の価値観がぶつかり合ってさまざまな社会課題が噴出して、新しい事業のネタは豊富です。ESG(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス))、とりわけ環境に関する問題には、多くのスタートアップが様々な手段で社会課題の解決にチャレンジしています。 大手企業でも新規事業に取り組まれていますが、どのように経営資源をマネジメントするかが、企業の成長にとって重要になってきます。高い技術を持ちながらも、技術を事業化していくところが、日本企業が下手な部分であると思います。 大上 高充氏の略歴はリンク先参照) 日置 その原因をどのように見ていますか。 大上 起点が社会課題でなく、自社の強みが先に立ってしまいがちなところではないでしょうか。まず、解決したい大きな社会的課題を採り上げ、それに対して、どのように自社の資産を生かしていくかという、逆方向の発想が必要ではないかと思います。 日置 テクノロジー・ドリブンではなく、イシュー・ドリブンということですね。たとえば、橋本さんがいらしたデュポンは、2002年に200周年を迎えたタイミングで、300周年を迎えるときにはどういう会社でありたいかを検討した際にメガトレンド分析をして、自社が取り組むべき社会課題を特定。その後はそれに照らしながら、大きく既存事業を外しながら、小さく新規事業を興してという形で、事業の入れ替えを盛んにやってきていますね。どういうメカニズムで行われていたのですか。 橋本 新規事業開発(ニュー・ビジネス・デベロップメント)みたいなイニシアチブに、その仕組みがありました。日本企業と違うポイントは、日本ではR&Dなど開発ドリブンからスタートしがちなところを、デュポンでは早い段階から、いかにビジネスにつなげていくかという観点で、将来性のあるアイデアを見つけようとしていました。 デュポンの開発部門では、ある程度上のクラスの社員は専門分野のPhDを持っている人が多く、加えてMBAも持っているので、ビジネスをどう回していくかという基盤があるのです。テクノロジーとビジネスの両方がわかっていないと、ビジネスに結びつく研究開発にはなりにくい。 橋本 勝則氏の略歴はリンク先参照) 日置 一人の社員が併せ持っていないなら、そこは組織として両方の側の人材を担保するという作り込みが必要ですね。 橋本 デュポンでは開発チームの中に、ビジネスマインドを持った人物が早い段階で入ります。R&D部門付きのFP&A(Financial Planning & Analysis。財務や会計の知識をもとに企業戦略のアドバイスを行う職種)のような、ファイナンスの担当者が必ずいます。そこが日本企業の開発部門との大きな違いですね。デュポンではその担当者をビジネス・ファイナンスという言い方をしていました。 日置 IBMのファイナンスも同様の動きをしていると聞きました。ファイナンスの担当者は事業部門に対して統制もするけれど、事業部門にやりたいことがあるときは、やらせてあげられるようリソース調整を試みる。そうしないと、ファイナンス部門の言うことを聞いてくれなくなるから。そこはうまくバランスをとりながらやっていると。 大上 ある意味、その構図はスタートアップとVC(ベンチャーキャピタル)の構図に通じるところがあると思います。スタートアップのディープテック(研究を通じて得られた科学的な発見に基づく技術)に対して、トータルでのリスクとリターンというファイナンス的な価値思考で、出資を判断し、場合によっては支援します。 西山 日本企業の新規事業の探索や立ち上げに関する難しさを考えるとき、三つほどポイントがあると思います。第一に、企業側が社会や顧客のニーズからというよりも、既存のビジネスから発想しがちなこと。第二に、従来と発想を変えるためには、内部の人材だけでは限界があること。第三に、「3年で成果を出しなさい」といった評価軸の問題があること。一つ目と二つ目については、オープンイノベーションなども試みていると思いますが、もっと外部との連携をうまくやっていくことが必要だと思います。最近は、優秀な若手で新規事業やスタートアップをやりたい人も多いですから。 日置 オープンイノベーションが下手な企業は、外部に何かを探しに行ってしまう。それこそオープンに(笑)。もちろん「飛び地」みたいな話もあるかもしれませんが、単に飛び地を求めただけでは、そこからビジネスに仕立て上げることは到底できませんよね。さきほどから話に出ているようにビジネスとしてのストーリーがあり、その中でうまく発展させていく視点がないとダメですね。 橋本 評価のお話が出ましたが、一般論として、そもそも大企業は多くの人が安定を求めて入社している。新規事業では、多少山っ気があって博打をうてるくらいの人がいないと(笑)。なおかつ人事考課が減点方式なので、どちらかというと、何もしないでじっとしていたほうが減点されずに相対的に評価が高くなってしまう。 日置 そうしたときに、問題になるのが多様性です。多様性と言うと、日本企業の場合、まだまだ管理職の男女比率などデモグラフィー型で、かつ数値的なことに注力しがちですが、ダイバーシティを考える時にはタスク型の発想が大事です。中途採用は拡大していますが、新卒一括採用のあり方についても本気で再考すべきですね。 大上さんが指摘されたようなVCの役割は、経済学者ヨーゼフ・シュンペーターのイノベーションの理論でも、銀行の役割の大切さが論じられています。いかにリスクをとって、きちんとレバレッジがかけられるかを含めたファイナンス感覚を、組織の基本動作の中に収めておくことが大事だなと感じます。 大上 いまや電池などハードの開発にも必ずAIが関わってくる。そうすると、まったく分野の違う技術者同士が混ざらないとやっていけない。シリコンバレーはそうしたエコシステムもよくできています。異質な人同士が出会う「場づくり」のようなこと、異質な研究者同士をつなぐ役割もVCが担っているところがある。もっと幅広く、交わるというか、多様性をつくっていかなければこれからの競争に負けてしまうという危機感があります。 日置 新規事業には、図のような「シックスパック」が必要だと考えています。きちんと腹筋が鍛えられてないと代謝を高めたりまともな運動ができなかったりというように、「いくらイノベーションの掛け声を上げたところで、企業の体質が整っていないと強い新規事業を生み出すことはできないでしょう?」という意味です。 図表の「ならではの眼差し」は、メガトレンドなど長期的な社会動向を追いかけること自体はよいのですが、コンサルや調査会社からやみくもに情報を集め、それを整理整頓するだけでは差別化を生み出すためのインプットにはなりません。自社で持つリレーションを最大限活用して一次情報に当たるとか、これまでの経営のコンテクストの中で培ってきたものの見方などによって、独自の知見やインテリジェンスとして積み上げられるかが問われます。 「小さく起こし、大きくたたむ」は、デュポンがまさにそうですが、新陳代謝を絶えず起こして、リソースをきちんとシフトする。例えば、新しい事業のためのリソースは、既存の事業の売却により調達するといった企業行動です。 「共通言語」は、難しいリソース配分の判断をブラさないように、各事業の持つキャッシュ創出力や成長率などをきちんと数字で表し、各事業の位置付けに関して共通認識を持てるようにするということです。ただし、全てを数字で表現できるわけでもありません。新規事業に限らず全ての経営判断のベースとなる自社の価値観や、自社の保有する技術やビジネモデルなどの強みやその裏にある弱みも共通言語として重要です。現実の判断は数字というハードと価値観のようなソフト、両方の共通言語を加味して行われます。 「自由と規律のバランス」は、ステージゲート法などのように、新規事業のプロジェクトの進捗をがっちり管理する体制がありつつ、他方で博打が打てる人材を擁するといった、「遊び」の部分というかアローワンスもなければならないということ。両者のバランスをどう取るか。勤務時間の一定割合を自分独自のプロジェクトに充てるよう奨励する、スリーエムの15%ルールやグーグルの20%ルールに近い話かもしれません。 「キャッシュ思考」は、単年のPL思考ではなく、キャッシュで物事を考えて、この企業が将来どうなるかというビジョンを持つ。 また、評価はもちろん大事なのですが、それ以上にエンジニアが称賛され尊敬される環境であることも大切です。エンジニアが楽しそうに働いている企業は、イノベーティブである確率が高いのではないでしょうか。 橋本 デュポンをはじめ欧米企業では、エンジニアには「フェロー」という肩書きをつけています。「大学の特別研究員」「最上位」のニュアンスを持つ言葉であり、一種の名誉ですね』、「日本企業と違うポイントは、日本ではR&Dなど開発ドリブンからスタートしがちなところを、デュポンでは早い段階から、いかにビジネスにつなげていくかという観点で、将来性のあるアイデアを見つけようとしていました。 デュポンの開発部門では、ある程度上のクラスの社員は専門分野のPhDを持っている人が多く、加えてMBAも持っているので、ビジネスをどう回していくかという基盤があるのです。テクノロジーとビジネスの両方がわかっていないと、ビジネスに結びつく研究開発にはなりにくい」、「ある程度上のクラスの社員は専門分野のPhDを持っている人が多く、加えてMBAも持っている」、これは大きなハンディキャップだ。「自由と規律のバランス」は、ステージゲート法などのように、新規事業のプロジェクトの進捗をがっちり管理する体制がありつつ、他方で博打が打てる人材を擁するといった、「遊び」の部分というかアローワンスもなければならないということ。両者のバランスをどう取るか。勤務時間の一定割合を自分独自のプロジェクトに充てるよう奨励する、スリーエムの15%ルールやグーグルの20%ルールに近い話かもしれません・・・評価はもちろん大事なのですが、それ以上にエンジニアが称賛され尊敬される環境であることも大切です。エンジニアが楽しそうに働いている企業は、イノベーティブである確率が高いのではないでしょうか。 橋本 デュポンをはじめ欧米企業では、エンジニアには「フェロー」という肩書きをつけています。「大学の特別研究員」「最上位」のニュアンスを持つ言葉であり、一種の名誉ですね」、なるほど。
・『M&A成功の肝はコア・バリューの浸透  日置 続いて、成長のための、もう一つの手段としてのM&Aについて、日本企業の構造的な問題について議論したいと思います。デュポンから学べるところをまずお聞きしたいのですが。 橋本 PMI(M&A後の統合プロセス)で、一番肝になるのはコア・バリューの浸透ですね。それができてこそ同じ傘の下でビジネスをやるという共通認識につながります。買収会社と被買収会社の両者が同じようなコア・バリューを持っているのです。一方、日本企業の多くは、買収企業と被買収企業の間に占領軍と植民地のような上下関係が歴然とある。デュポンではそれはなくて、同等です」、これは致命的な格差だ。「デュポンのアニュアルレポートを昔から見ているのですが、そのときどきで、事業ごとに比較対象の同業他社をベンチマークしていますよね。買収前の段階から「この会社なら合いそうだ」ということも議論するのでしょうか。 橋本 ベンチマークは出していますね。買収は、相手先の技術が欲しいということが最初の取っかかりとなりますが、副次的にはそういう企業文化もしっかり見ています。 大上 コア・バリューの浸透はとても大事だと思います。もうひとつ、買収先会社の価値を上げられているのかという発想も欠かせないと思います。その会社の価値を数年後にいくらまで上げられるか。 買収する側のシナジー効果も重要ですが、買収元会社が持つ有形・無形資産を使って、買収先会社の価値をどれだけ上げられるかという発想が必要です。買収先の企業の価値が上がってこそ、買収元会社のシナジー効果も出てくる。 大企業がスタートアップ企業へ投資していく際にも同じことが言えます。「投資先の企業価値をわれわれは上げることができるのか」、を問わなければならない」、その通りだ。「CVCが出資する場合、最初から大企業の論理で、自分たちに取り込むという考え方をしているとうまくいかない。スタートアップファーストで考えて、お金だけでなく、大企業が持つチームとか技術などの無形資産を活用して、買収先のスタートアップ企業の価値をいかに上げていくかという発想が要る。社会課題解決を目的に、キャピタルゲイン最大化をKPIとして投資をしていく会社も少しずつ出てきているかなと思います。 日置 大企業側はシーズを探しているし、スタートアップ側はリソース、キャパシティを探しているので、そこのマッチングをすることで、よりお互いに入り込んだ議論ができて、ビジネス展開も進みそうですね。 橋本 デュポンの経験でいうと、シナジーでこれだけ見込めるということを、M&Aの際に必ず算出しますが、それは決して安直な数字ではありません。1項目ずつリスト化されたものを足し上げたものです。それを内部監査が入ってチェックするプロセスがあります。バリデーション(validation)ですね。 日置 ダウ・ケミカルと統合したときも、そこは相当やっていたという印象があります。アップサイドとダウンサイド、成功シナリオと失敗シナリオの数字が出ていましたね」、作成するのは大変そうだ。 「「M&A人口は多いけど、M&A人材は少ないのではないか」ということをよく話します。社内のスプレッドシートに数字を入力して、投資承認が通るか通らないか、それこそゲームのようなことをしておしまい。その会社を買って、それをどのように事業として育て上げるのかとか、エグジットとしてどうするのかというところまで、一貫して責任を持ってやっている感じがしないM&Aが時々ある。投資銀行ならそれでもいいのかもしれませんが、事業会社では問題ですね。 (日置 圭介氏の略歴はリンク先参照) 大上 日本企業はリスクサイドのデューデリジェンスは一生懸命やっているのに、ビジネスの成長、ビジネスデューデリジェンスについては、事業部に任せているケースが多い印象があります。 日置 安易に外部の証券会社や投資銀行から持ってこられた案件に飛びつかないといったことも含めて、いかにM&Aを自分事として位置づけられるか。企業の中でのM&Aの位置づけをもっと明確にしたほうがいいですね」、なるほど。 「PMI(M&A後の統合プロセス)で、一番肝になるのはコア・バリューの浸透ですね。それができてこそ同じ傘の下でビジネスをやるという共通認識につながります。買収会社と被買収会社の両者が同じようなコア・バリューを持っているのです。一方、日本企業の多くは、買収企業と被買収企業の間に占領軍と植民地のような上下関係が歴然とある。デュポンではそれはなくて、同等です」、これはデュポンの考え方の方が優れている。「デュポンのアニュアルレポートを昔から見ているのですが、そのときどきで、事業ごとに比較対象の同業他社をベンチマークしていますよね。買収前の段階から「この会社なら合いそうだ」ということも議論するのでしょうか。 橋本 ベンチマークは出していますね。買収は、相手先の技術が欲しいということが最初の取っかかりとなりますが、副次的にはそういう企業文化もしっかり見ています・・・買収先会社の価値を上げられているのかという発想も欠かせないと思います。その会社の価値を数年後にいくらまで上げられるか。 買収する側のシナジー効果も重要ですが、買収元会社が持つ有形・無形資産を使って、買収先会社の価値をどれだけ上げられるかという発想が必要です。買収先の企業の価値が上がってこそ、買収元会社のシナジー効果も出てくる。 大企業がスタートアップ企業へ投資していく際にも同じことが言えます・・・日本企業はリスクサイドのデューデリジェンスは一生懸命やっているのに、ビジネスの成長、ビジネスデューデリジェンスについては、事業部に任せているケースが多い印象があります。 日置 安易に外部の証券会社や投資銀行から持ってこられた案件に飛びつかないといったことも含めて、いかにM&Aを自分事として位置づけられるか。企業の中でのM&Aの位置づけをもっと明確にしたほうがいいですね・・・」、同感である。
・『自社のスタンスを市場に明確に伝える  日置 ここまでは実際に成長するための手段の話でしたが、ではそれをどうやってアピールしていくかという観点で、マーケットとの対話について考えてみたいと思います。これはオムロンが日本企業のなかでは早い段階から意識的にしてきたことで、学べる教訓がたくさんあると思います。 大上 オムロンは、1990年代からステークホルダーとの対話を重視するスタンスでした。そこから世の中の流れを捉えて多くを学び、それを社内で消化しながらガバナンスを進化させてきました。求められているのは、SDGsなりダイバーシティなり、時々の社会要請を横並び的に「やらねばならない」と議論をするのでなく、本質を掘り下げたうえで、「Comply or Explain(「ルールに従え(comply)、従わないのであれば、その理由を説明せよ(explain)」することです。受け身でなく、きちんと自分たちのスタンスを明確にして自ら行動し、対話するとことが大事だと思います。 日置 受け身だと、アナリストや株主から追い込まれる一方になりますよね。投資家との対話もなんだかちぐはぐで、comply しているのにさらにexplainしている会社もあったりする(笑)」。「「Comply or Explain(」をきちんとしているとはたいしたものだ。「海外のアナリストの場合、自分の予想が外れると、自分の予測モデルの問題にも関わってくるので、日本に比べて「ツッコミ」が激しい。それで必要に迫られて上手にならざるを得ないという感じですね。 一度、苦い経験があって、四半期決算発表日の2、3日前に業績が予想レンジから外れてしまうという開示をしたところ、アナリストから、「なぜもっと早い段階で市場に伝えられなかったのか?」と業績の下方修正もさることながら、適時に業績を把握できているのかという経営陣の手腕を随分たたかれました。アナリストは予想がぶれれば、いち早くマーケットに伝えるということが求められていますので。そういう意味で、経営者に対するアナリストを中心としたマーケットの見方は本当に厳しいものがあります。 もう一点、海外は、前年の4~6月と今年の4~6月、前年の7~9月と今年の7~9月という形で、純粋に四半期の結果を見比べますが、日本は四半期ごとに累計されて、第3四半期なら、4月〜12月までを見る。 日置 累計で比べると、以前に開示した時の差分に今期間の差分が相まって要因分析が分かりにくくなりそうですね。一方で、長期のビジネスの方向感というのも投資家とのコミュニケーションに必要だと思うのですが、この点はどうですか。 橋本 デュポンでは、ビジネスセグメントごとに、翌年の単年はもちろん、向こう3年ぐらいについても、成長率や、収益のトップラインとボトムラインの両方を公表します。社内の業績管理では、3×6=18カ月の6クオーターのローリング予測数字を出すのです。この数字の根拠はまず、いわゆるS&OP(販売・生産計画)があり、その延長が18カ月まで延びているイメージです。オペレーションと計画が一気通貫になっているので、日本企業のように、業績数字と関連のない中計の数字が浮いているということはない。 大上 オムロンでは10年ごとに長期ビジョンを策定していますが、世の中がどのように変わっていくかということを予測し、その中で自分たちの目指す姿を描き、そこからバックキャストで自分たちがやるべきことを示します。根底にある投資家との対話の共通言語はファイナンスの考え方や企業価値そのものです。 たとえば、資本コスト8%、つまり期待収益率8%といった時、10年間経つと、株価上昇+配当を合わせた累計でだいたい当初の投資額の2倍くらいになりますよね。 西山 利回りを複利で積み重ねれば、だいたい10年で投資額の2倍+αぐらいになる感じですね。 大上 それが共通言語として根底にあって、ここを意識して投資家と対話をするということですね。企業価値の向上ということを掲げている会社は多いですが、具体的に資本コストを意識してできているかが重要です。 橋本 それをキャッシュフローで。 大上 ええ。その水準まで企業価値を上げられていないのなら、配当や自己株取得という形のリターンで報いていくということも選択肢としてあるわけです。 日置 日本企業は投資家に話すときに、客観的な視点が足りない気がします。投資家に話しているのに、自分たちの目標の話に終始している。投資家にしてみれば、その企業は同じ業種の中での選択肢の一つでしかないのに、企業側は同業間で比べられた時、自社がどう見られているのかという想像が足りない。統合報告書のボリュームがどんどん増えていることも気になっているのですが、投資家から「どこも社会課題を掲げ、新規事業もやっているが、皆、同じテーマを掲げていて特徴がない」と見えてしまう。目線は広げつつも、少しメッセージを絞る、それだけで違う風景が見えてくると思うのですが。 橋本 かつて経営者の中に、「短期の投資家のために、なぜ手間をかけて四半期決算の開示をしなくてはならないのか」と不満気だった人がいましたが、不思議なことを言うなと思いました。「最低限、四半期で業績を互いに開示することで、同業の中での位置づけがわかる。他社の結果がわからなくて、どういう戦略を立てるのですか」と言いたくなりました(笑)。 自社の数字を出し、同業の競争相手の数字を見て、万一下回っているなら、競合に勝つ戦略を立てなくてはいけない。そういう見方がなかなかできていないですね。先程のお話の通り、投資家から見れば同じセグメントの中で競合他社のA社に張るのか、自社に張るのか、どちらをオーバーウェイトするかの判断材料になるわけですから、そうした舞台裏をもっと意識しながら戦略を立てるべきです。 西山 私も、日本企業のIRはやや受け身の傾向が強いように感じます。また、CEOやCFOと、他の役員との間にIRに対する温度差もあるように感じています。 橋本 日本企業の多くは投資家説明会にCFOとせいぜいその下にいるコントローラー(経営管理担当者)ぐらいしか出席しない。デュポンでは、CEOとCFOが必ず出て、加えてそのときどきでトピックスのある事業部のリーダーとスタッフが出席します。 日置 市場が評価する企業価値は、企業への期待値ということであるので、その期待値をどうつくっていくか。根拠を持った上で、客観的に自社を評価し、しっかりアピールすることが大事ですね。 →後編は11月10日に公開いたします』、「オムロンは、1990年代からステークホルダーとの対話を重視するスタンスでした。そこから世の中の流れを捉えて多くを学び、それを社内で消化しながらガバナンスを進化させてきました。求められているのは、SDGsなりダイバーシティなり、時々の社会要請を横並び的に「やらねばならない」と議論をするのでなく、本質を掘り下げたうえで、「Comply or Explain(「ルールに従え(comply)、従わないのであれば、その理由を説明せよ(explain)」することです。受け身でなく、きちんと自分たちのスタンスを明確にして自ら行動し、対話するとことが大事だと思います」、「オムロン」がそんな進んだ姿勢で「ステークホルダーとの対話を重視」してきたとは初めて知った。今後、そうした目でみてみよう。
タグ:資本市場 経営戦略デザインラボによる「企業財務の論客が激論【前編】「PBR1倍割れ」の真因と解決策を示す」 ダイヤモンド・オンライン 「8000万円の過怠金を支払うよう命じました」、さらに「顧客の知識や経験、財産の状況などに照らして不適当と認められる勧誘」した結果の取引が無効とされ、その分の損失も負担する必要がありそうだ。 「PMI(M&A後の統合プロセス)で、一番肝になるのはコア・バリューの浸透ですね。それができてこそ同じ傘の下でビジネスをやるという共通認識につながります。買収会社と被買収会社の両者が同じようなコア・バリューを持っているのです。一方、日本企業の多くは、買収企業と被買収企業の間に占領軍と植民地のような上下関係が歴然とある。デュポンではそれはなくて、同等です」、これはデュポンの考え方の方が優れている。 PMI(M&A後の統合プロセス)で、一番肝になるのはコア・バリューの浸透ですね。それができてこそ同じ傘の下でビジネスをやるという共通認識につながります。買収会社と被買収会社の両者が同じようなコア・バリューを持っているのです。一方、日本企業の多くは、買収企業と被買収企業の間に占領軍と植民地のような上下関係が歴然とある。デュポンではそれはなくて、同等です」、これは致命的な格差だ。 時々の社会要請を横並び的に「やらねばならない」と議論をするのでなく、本質を掘り下げたうえで、「Comply or Explain(「ルールに従え(comply)、従わないのであれば、その理由を説明せよ(explain)」することです。受け身でなく、きちんと自分たちのスタンスを明確にして自ら行動し、対話するとことが大事だと思います」、「オムロン」がそんな進んだ姿勢で「ステークホルダーとの対話を重視」してきたとは初めて知った。今後、そうした目でみてみよう。 日置 安易に外部の証券会社や投資銀行から持ってこられた案件に飛びつかないといったことも含めて、いかにM&Aを自分事として位置づけられるか。企業の中でのM&Aの位置づけをもっと明確にしたほうがいいですね・・・」、同感である。 買収する側のシナジー効果も重要ですが、買収元会社が持つ有形・無形資産を使って、買収先会社の価値をどれだけ上げられるかという発想が必要です。買収先の企業の価値が上がってこそ、買収元会社のシナジー効果も出てくる。 大企業がスタートアップ企業へ投資していく際にも同じことが言えます・・・日本企業はリスクサイドのデューデリジェンスは一生懸命やっているのに、ビジネスの成長、ビジネスデューデリジェンスについては、事業部に任せているケースが多い印象があります。 種の名誉ですね」、なるほど。 両者のバランスをどう取るか。勤務時間の一定割合を自分独自のプロジェクトに充てるよう奨励する、スリーエムの15%ルールやグーグルの20%ルールに近い話かもしれません・・・評価はもちろん大事なのですが、それ以上にエンジニアが称賛され尊敬される環境であることも大切です。エンジニアが楽しそうに働いている企業は、イノベーティブである確率が高いのではないでしょうか。 橋本 デュポンをはじめ欧米企業では、エンジニアには「フェロー」という肩書きをつけています。「大学の特別研究員」「最上位」のニュアンスを持つ言葉であり、一 「ある程度上のクラスの社員は専門分野のPhDを持っている人が多く、加えてMBAも持っている」、これは大きなハンディキャップだ。「自由と規律のバランス」は、ステージゲート法などのように、新規事業のプロジェクトの進捗をがっちり管理する体制がありつつ、他方で博打が打てる人材を擁するといった、「遊び」の部分というかアローワンスもなければならないということ。 「日本企業と違うポイントは、日本ではR&Dなど開発ドリブンからスタートしがちなところを、デュポンでは早い段階から、いかにビジネスにつなげていくかという観点で、将来性のあるアイデアを見つけようとしていました。 デュポンの開発部門では、ある程度上のクラスの社員は専門分野のPhDを持っている人が多く、加えてMBAも持っているので、ビジネスをどう回していくかという基盤があるのです。テクノロジーとビジネスの両方がわかっていないと、ビジネスに結びつく研究開発にはなりにくい」、 「PBR1倍割れは企業価値を毀損していると言えますが、テクニカルにレバレッジを利かせればいいとか、配当を多くして株主還元すればいい、という話ではありません。これをひとつのきっかけとして、ROE・・・とPER・・・の問題として捉え(PBR=ROE×PER)、それぞれを上げていく、成長性も考えながら、事業の収益性や投資効率をしっかりレベルアップしていくことが肝要」、確かにその通りだ。 NHK「高齢者にリスク 十分説明せず外国株式販売 三木証券に過怠金」 「過度に手数料収益を追う施策をやめた後、経営を安定させられるかは未知数だ。顧客層の高齢化や契約口座数の減少は、避けがたい現状として立ちはだかっている。道を誤った中小証券会社の更生はあまりにも厳しい」、その通りだ。 「2018年には自主規制機関である日証協の検査で、コンプライアンス部門の人員不足を指摘されていた。 それにもかかわらず、赤字体質からの脱却と継続的な黒字化を図るため、社長自らが主導してコンプライアンス部門の担当社員を削減。2018年9月に14人いた監査部の社員が2022年9月には6人になっていた」、これは「社長」の確信犯だ。 いまだに「適合性の原則に反した営業活動」が行われていたとは驚かされた。 「行政処分」は次の記事で紹介する。 東洋経済オンライン「80代高齢者から荒稼ぎ、三木証券のあきれた実態 口座数減で業績低迷の小規模証券会社が暴走」 「楽天証券の収益が大きく下がれば、みずほ証券の出資分の価値が損なわれることになる。 それらの懸念を払拭するためには、楽天証券が単独かつ短期で収益を上向かせる「秘策」を練り上げなくてはならない。ただでさえ、ポイント制度の改正などの影響で新規口座数の伸びが鈍化している。2023年1~6月の新規口座数は60.9万口座。前年同期比で33.6%マイナスの状況だ。 手数料無料化で最も追い込まれたのは楽天証券かもしれない」、確かに「楽天証券」の今後は大変だ。 「SBI証券の場合、2023年4~6月期の国内株式取引委託手数料は64億円だった。1年間同じ成績だったとすると250億円程度の収益だ。この分の収益がなくなる一方、システム維持コストなどは引き続きかかるため、減収分がそのまま利益の押し下げ圧力になる。 こうした衝撃を和らげるため、投資信託や外国株、FXなど収益源の多様化を進めてきた・・・SBIHDの年間利益予想は非開示だが、無料化を前提にしても少なくとも2024年3月期は前期並みの税前利益(IFRS)を確保できる見通しだ」、なるほど。 「東証における個人の売買代金のうち、2022年度でSBI証券が占める割合は43.7%、楽天証券も33.5%ある」、2社のシェアは本当に圧倒的だ。 「最大手のSBI証券」が仕掛けた「オンラインでの国内株式売買の手数料」「無料化」に、「2位の楽天証券も」やむなく追随せざるを得なかったのだろう。 東洋経済オンライン「SBIvs.楽天で開幕!「国内株売買手数料ゼロ」競争 楽天証券は上場控える時期に収益減を自ら選択」 (その11)(SBIvs.楽天で開幕!「国内株売買手数料ゼロ」競争 楽天証券は上場控える時期に収益減を自ら選択、80代高齢者から荒稼ぎ、三木証券のあきれた実態 口座数減で業績低迷の小規模証券会社が暴走、高齢者にリスク 十分説明せず外国株式販売 三木証券に過怠金、企業財務の論客が激論【前編】「PBR1倍割れ」の真因と解決策を示す)
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金融業界(その20)(マネックス証券「ドコモ傘下入り」をめぐる皮算用 鼻息荒いドコモと「次の一手」模索のマネックス、ガザ抗争で見えたアメリカ金融界「勢力図」の変貌…もはやゴールドマン・サックスに「金融界の巨人」の面影はない、SBIの「半導体参入」で際立つ北尾氏の深謀遠慮 多額の補助金を前提としつつ堅実な事業モデル) [金融]

金融業界については、本年9月3日に取上げた。今日は、(その20)(マネックス証券「ドコモ傘下入り」をめぐる皮算用 鼻息荒いドコモと「次の一手」模索のマネックス、ガザ抗争で見えたアメリカ金融界「勢力図」の変貌…もはやゴールドマン・サックスに「金融界の巨人」の面影はない、SBIの「半導体参入」で際立つ北尾氏の深謀遠慮 多額の補助金を前提としつつ堅実な事業モデル)である。

先ずは、10月9日付け東洋経済オンライン「マネックス証券「ドコモ傘下入り」をめぐる皮算用 鼻息荒いドコモと「次の一手」模索のマネックス」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/707119
・『「わが国におけるエポックメーキングになる出来事。ドコモという巨人と、起業家精神あふれる個人の集合体であるマネックスが手を組むことは、非常にエキサイティングだ」 ネット証券大手・マネックスグループの会長で創業者でもある松本大氏は、10月4日の記者会見でそう語った。 マネックスグループは同日、NTTドコモと資本業務提携を結び、祖業でグループ中核のマネックス証券がドコモの連結子会社になると発表した。提携は次のようなスキームで行われる』、興味深そうだ。
・『独立系証券の旗を降ろすことに  まず中間持ち株会社を設立し、その新会社にマネックス証券の全株式を取得させる。そのうえで新会社の株式の一部をドコモに売却、同時に新会社がドコモを割当先とした第三者割当増資を行う。 一連の取引は2024年1月に完了する予定だ。新会社の株式は約51%をマネックスグループ、約49%をドコモがそれぞれ所有する。現在マネックスグループの100%子会社であるマネックス証券は、ドコモの子会社になる。 新会社の取締役の過半はドコモが選任する。そのため、実質支配力基準に基づき、新会社とマネックス証券はドコモの連結子会社になり、マネックスグループにとっては持分法適用会社となる。 1999年の設立から四半世紀を転機に、マネックス証券は独立系の旗を降ろすことになった。) マネックスグループの連結から外れるが、マネックス証券の社名は変更しない。社長も現任の清明祐子氏が務めるなど、マネックスのブランドは維持する方向だ。 松本氏は提携に至った理由を、「ネット証券が生き残っていくうえで、プラットフォームとの提携は避けられない」と説明する。 松本大氏は今回の提携について「最高のタイミングと最良の相手」と話した(撮影:尾形文繁)』、「独立系証券」がなくなってしまうのには一抹の寂しさも覚える。
・『競争が激化するネット証券業界  2024年1月から始まる新NISAを初めとして、「貯蓄から投資へ」の流れが加速している。一方、今年10月からはSBI証券と楽天証券が国内株の取引手数料無料化に踏み切るなど、ネット証券業界の競争が激化している。 こういった状況下、マネックスグループはドコモと協業することで顧客基盤を強化する。9600万人の会員を持つ「dポイント」や決済サービス「d払い」、電子マネー「iD」などドコモのサービスと連携、比較的金融リテラシーの高い個人が多かった顧客層の裾野を広げていく。 業績への影響はどうか。マネックスグループの2023年3月期の営業収益793億円(IFRS)に対し、マネックス証券単体の営業収益は310億円だった。 持分法適用会社となることで、マネックス証券の営業収益と営業利益はグループ連結に反映されなくなる。見かけ上、マネックスグループの事業規模は大きく縮む。51%の持分に応じた当期利益への反映はあるものの、マネックス証券の上げた利益の半分はドコモのものになってしまう。 それでも、提携効果によってマネックス証券が大きく成長することで利益規模は早期に回復すると、マネックスグループは見通す。 マネックス証券は2023年9月現在、223万口座、預かり資産残高7兆円を抱える。これまでは2026年度に300万口座、預かり資産残高10兆円を目標としてきた。この目標をそれぞれ500万口座、15兆円に引き上げる。 「dポイント経済圏とのシナジーにより、非連続的な成長を達成する」と、マネックス証券の清明社長は力を込める。) ドコモにとっても、マネックスグループとの提携への期待は大きい。ドコモの井伊基之社長は、「初めての人でも、手軽で簡単に資産形成できるサービスを提供する」と意気込む。会見では、「家族」という言葉を何度も使い、「身近なサービスを展開する」と強調した。 ドコモのライバルである通信各社が「auカブコム証券」(au)、「PayPay証券」(ソフトバンク)、「楽天証券」(楽天)という証券会社を傘下に抱える中、ドコモにとって証券サービスは是が非でも欲しい事業だった』、「ドコモのライバルである通信各社が・・・という証券会社を傘下に抱える中、ドコモにとって証券サービスは是が非でも欲しい事業だった」、なるほど。
・『SBIの「1強体制」をどう崩すのか  どこと組むのかは、証券業界でも注目を集めていた。「ドコモが組むとしたら、マネックス証券か松井証券だと思っていた」。ある業界関係者はそう話す。 ドコモの江藤俊弘スマートライフカンパニー統括長は会見後の囲み取材で、「ドコモがせっかくやるのであれば、マネックス証券は数百万口座では物足りない。時期は未定だが、1000万口座を目指したい」と鼻息荒く語った。 ただ、ドコモやマネックスグループのもくろみどおり、マネックス証券が成長できるかどうかは疑問符がつく。 ネット証券と通信プラットフォームとの連携では、先述したようにauやソフトバンクが先行するが、成功しているのは900万口座を超える楽天証券くらい。口座数を積み重ねても、取引量が伸びずに収益面で苦戦する例も目立つ。野村ホールディングスと組んだLINE証券に至っては今年6月、サービス終了に追い込まれた。 手数料無料化の荒波にもさらされている。ネット証券最大手のSBI証券が仕掛けた無料化は、マネックス証券の苦境に追い打ちをかけた。楽天証券は収益面でのダメージを覚悟のうえで追随。一方でマネックス証券と松井証券は、追随すらできなかった。 手数料収入に依存しないビジネスモデルを着々と準備したSBI証券の「1強体制」をどう崩すか。対抗策は見当たらない。) マネックス証券の純資産額は2023年3月末で487億円。それに対して今回、中間持ち株会社の株式価値は970億円とした。つまりマネックス証券にはそれだけの企業価値があると、ドコモが認めたわけだ。 ある証券会社幹部はこの金額が「高めだ」と指摘。「マネックスグループは、レッドオーシャン(苛烈な市場)から手を引くだけでなく、高値で売却できたのだとしたら見事」と舌を巻く。 ドコモへの株式売却価額は約466億円で、マネックスグループには売却益182億円が発生する。マネックス証券の2023年3月期の純利益は26億円ななだけに利益インパクトは大きい。「うまくいった取引」(同)というわけだ』、「ネット証券と通信プラットフォームとの連携では、先述したようにauやソフトバンクが先行するが、成功しているのは900万口座を超える楽天証券くらい。口座数を積み重ねても、取引量が伸びずに収益面で苦戦する例も目立つ。野村ホールディングスと組んだLINE証券に至っては今年6月、サービス終了に追い込まれた・・・ネット証券最大手のSBI証券が仕掛けた無料化は、マネックス証券の苦境に追い打ちをかけた。楽天証券は収益面でのダメージを覚悟のうえで追随。一方でマネックス証券と松井証券は、追随すらできなかった・・・「マネックスグループは、レッドオーシャン(苛烈な市場)から手を引くだけでなく、高値で売却できたのだとしたら見事」と舌を巻く。 ドコモへの株式売却価額は約466億円で、マネックスグループには売却益182億円が発生する。マネックス証券の2023年3月期の純利益は26億円ななだけに利益インパクトは大きい。「うまくいった取引」、なるほど。
・『今後は「何業」の会社に?  マネックスグループはさしあたり株売却で入ってくる資金を元手に、成長領域とするアセットマネジメントビジネスを中心に投資を進める。競争が激化する証券ビジネスから距離を置き、事業ポートフォリオの再編成に乗り出すとの見方もある。 気になるのは、グループとしてのマネックスは、今後どこへ向かうのかだ。暗号資産(仮想通貨)交換所の「コインチェック」やアメリカの証券会社「トレードステーション」、資産運用を扱う「マネックス・アセットマネジメント」が残るが、この先は何を中核事業とするかに関心が集まる』、「気になるのは、グループとしてのマネックスは、今後どこへ向かうのかだ」、同感である。
・『マネックス松本氏とソニー出井氏  写真は1999年8月、マネックス証券の誕生を支援したのが当時ソニー社長だった出井伸之氏(右)。「出井さんなくしてマネックスは生まれませんでした」と松本氏は述べている・・・「マネックスは『何業』の会社になるのか」。10月4日に行われたアナリスト向け説明会では、このような質問も出た。松本氏は「個人の生涯バランスシートの最適化というビジョンに向かって事業を行っている。何業かと言われると難しい」と答えた。 この答弁に表れているように、マネックスの創業者でカリスマ経営者でもある松本氏は、事業構造改革の方向性を明確に示せていない。 先だって9月4日に開いた事業戦略説明会では、グループ戦略の説明を清明氏に任せ、自身は医療分野の新規事業について説明しただけだった。金融業への興味が薄れたかのようにもみえるが、東洋経済の問いに松本氏は「金融への情熱は失われていない」と断言した。 ドコモとの提携発表翌日の10月5日、マネックスグループの株価はストップ高となる659円を付け、年初来高値を更新した。配当の下限をこれまでの2倍となる30円に引き上げると発表したことも影響しているが、今後の成長への期待の表れでもある。 この先、どういった方向性を打ち出すのか。マネックスグループの「次の一手」が問われる』、「マネックスの創業者でカリスマ経営者でもある松本氏は、事業構造改革の方向性を明確に示せていない・・・マネックスグループの株価はストップ高となる659円を付け、年初来高値を更新・・・マネックスグループの「次の一手」が問われる』」、その通りだ。

次に、10月28日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの歳川 隆雄氏による「ガザ抗争で見えたアメリカ金融界「勢力図」の変貌…もはやゴールドマン・サックスに「金融界の巨人」の面影はない」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/118400?imp=0
・『ガザを巡る抗争(10月24日、第7回未来投資イニシアチブ(Future Investment Initiative=FII) がサウジアラビアの首都リヤドのリッツ・カールトン・ホテルで開幕した。因みに日本経済新聞(25日付朝刊)はFIIを「国際投資会議」と表記するが、「未来投資イニシアチブ」の方が実態に適っている。 同国の実力者ムハンマド・ビン・サルマン皇太子の肝いりでスタートしたFIIは金融関係者の間で「砂漠のダボス会議」と呼ばれる。同皇太子が推進する石油依存経済からの脱却の中核を担うのが運用資産7780億ドル(約117兆円)のサウジ政府系ファンドのパブリック・インベストメント・ファンド(Public Investment Fund=PIF=ヤセル・ルマイヤン総裁)である。 イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの激烈な戦闘が続くことを念頭にルマイヤン総裁は開幕式冒頭に、「現在の世界は不確かなものに見えるが、我々はより強い社会を構築しなければならない」と述べた。ガザを巡る抗争がエスカレートするリスクを認めたに等しい。 そうした緊迫する中東情勢のなか注目すべきは、このFIIに米ウォール街の金融業界トップが揃い踏みで参加したことである。世界有数の金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)、グローバル金融最大手ゴールドマン・サックス(GS)のデービッド・ソロモンCEO、資産運用最大手ブラックロックのラリー・フィンクCEO、大手金融機関シティグループのジェーン・フレーザーCEO、投資大手カーライル・グループのハービー・シュワルツCEO、世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツのレイ・ダリオ創業者らが蝟集した。 何もFIIに参加したのは金融業界の超大物だけではない。米石油メジャーの大物を始め世界各国から石油・ガス業界のトップも馳せ参じた。石油メジャー最大手のエクソン・モービルのダレン・ウッズCEO、フランスの総合エネルギー企業トタル・エナジーズのパトリック・プヤンヌCEOらも会議の合間を縫って、激動の中東情勢に関する意見交換や原油価格についてサウジのアブドルアジズ・ビン・サルマン・エネルギー相や国営石油会社サウジアラムコのアミン・ナセルCEOと協議している』、さすが「砂漠のダボス会議」だけあって、「参加者の顔ぶれ」は超豪華だ。
・『勢力図の変貌  筆者がサウジ主催の未来投資イニシアチブ(FII)年次会議の報道(ロイター通信、米ブルームバーグ及び日経新聞)に接し、その背景を深掘りして得たポイントは唯一つ。 先ず指摘すべきは、この間、米金融機関の勢力図が大きく変貌したということである。際立つのは金融大手のゴールドマン・サックスの業績不振だ。年初の1月17日、GSのソロモンCEOは22年12月期決算を発表したが、純利益が前期比48%減の112億ドル(約1兆4000億円)だった。 今年になっても不振は続き、7~9月期純利益は33%減の20億ドル(約3000憶円)と21年10~12月期から8四半期連続の2桁減益となった。主力の投資銀行ビジネスの不調と得意とするM&A(合併・買収)助言の低調が大きい。GSに「金融界の巨人」という往年の面影はない。 一方、JPモルガンは7~9月期が35%増益の131億ドル(約1兆9500億円)に達し、GSの6倍超である。今年に入ってからの金利上昇で融資などから生じる純金利収入の伸びが著しい。ブラックロックと共にJPモルガンの好調は、米金融界の関心を集めている。 そのJPモルガン・アセット・マネジメントの広告「アメリカ成長株ファンド・アメリカの星」(全面3分の1段)が日本経済新聞(10月26日付朝刊)の最終面(48面)に掲載された。9月25日、10月12日に続く3回目だ(昨年は7月4日を含め4回掲載)。米国株推奨のキャンペーンである。 この彼我の差はどこから来るのか。もちろん、個人向け(リテール)事業の規模の差もある。何よりもそれは一に懸かってJPモルガンのダイモン氏の頭抜けた経営手腕に負うものだ。同氏の複眼は日本を見据えつつ、サウジアラビアにも向けられる。さらに戦後復興を視野にウクライナも俯瞰する。果たして「投資される日本」を目指す岸田文雄首相はその期待に応えられるのか』、「ダイモン氏の頭抜けた」「複眼は日本を見据えつつ、サウジアラビアにも向けられる。さらに戦後復興を視野にウクライナも俯瞰する」、まさに超人的で、「岸田」政権には到底無理だろう。

第三に、11月9日付け東洋経済オンライン「SBIの「半導体参入」で際立つ北尾氏の深謀遠慮 多額の補助金を前提としつつ堅実な事業モデル」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/713549
・『「まるで“政商”といった感じですよね」——。 ある半導体関連企業の関係者がそう評したのは、総合金融業を展開するSBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長だ。理由はここぞとばかりにぶち上げた半導体事業参入でみせる北尾会長の立ち回りのうまさにある。 台湾の半導体製造受託企業(ファウンドリー)であるパワーチップと新会社を設立し、日本でファウンドリー事業を立ち上げるとSBIが公表したのは7月初めのことだった。それから約4カ月。10月31日に行われた会見で、全容が明らかになった。 宮城県大衡村にある工業団地に新工場を建設し、2027年の稼働を目指す。必要となる資金は、この第1期投資だけでも約4200億円、2029年に完了する第2期投資まで見据えると総額では8000億円超となる。 新会社にはSBIとパワーチップの2社で過半を出資する。1000億円規模のファンドを立ち上げるなどして、国内外投資家の出資も促す。融資については、メガバンクや日本政策投資銀行と協議をしているという』、初めのうちは、勝算があるのかと疑問を感じたが、「補助金」狙いとはあり得る話だ。「2029年に完了する第2期投資まで見据えると総額では8000億円超となる。 新会社にはSBIとパワーチップの2社で過半を出資する。1000億円規模のファンドを立ち上げるなどして、国内外投資家の出資も促す。融資については、メガバンクや日本政策投資銀行と協議をしている」、なるほど。
・『「補助金なしにはやらない」と明言  いくら有望産業の半導体とはいえ、8000億円もの巨額資金を調達することは容易ではない。それでもSBIが参入を決めた理由は、無尽蔵とも言える政府支援の存在だ。 「政府からの補助金が前提。補助金が出なければこの事業をやるつもりはない」。北尾会長は会見でそう言いきった。関係者によると、経済産業省との議論が水面下で進んでいるという。会見の場であえて見得を切ったのは、北尾流交渉術なのかもしれない。 半導体産業の強化はいまや国策だ。世界中でサプライチェーンの再構築が行われ、各国が自国域内での製造を強化している。日本政府も兆円単位という空前の予算を計上。半導体関連企業による投資では、投資額全体の3〜5割、数百〜数千億円規模となる補助金の支給が相次いで決まっている。 半導体関連とあらば大盤振る舞いをいとわない政府のこうした姿勢が、異業種であるSBIをも引き寄せた格好だ。「北尾会長は補助金があれば絶対に勝てるビジネスと踏んだのだろう」。金融業界関係者はそう舌を巻く。 そんなSBIに秋波を送ったのが、地域活性化の起爆剤として半導体工場を誘致したい地方だった。 SBIが7月に半導体事業参入を発表して以降、北海道から九州まで31の候補地から誘致があったという。「多くの知事や副知事、地方銀行のトップがみんな(SBI本社に)お見えになった」(北尾会長)。 建設予定地に選ばれたのは宮城県だ。7月の参入表明時から新工場の誘致を行ってきたという村井嘉浩・宮城県知事は会見に駆けつけ、「宮城県が一丸となって支援することを約束する」と喜んだ。 「半導体工場の建設が決まっている千歳と遠くなく、新幹線整備に伴い街が活性化している札幌に比べて、仙台地区はニュースが少なく焦りを感じていた」(地元財界関係者) ファウンドリー世界最大手の台湾TSMCが工場を建設している熊本や、ニッポン半導体復活のため次世代の最先端半導体の量産を目指すラピダスが工場建設をスタートさせた千歳市。ともに地元の期待は高まっている。宮城が歓迎一色ムードなのも理解できる』、「日本政府も兆円単位という空前の予算を計上。半導体関連企業による投資では、投資額全体の3〜5割、数百〜数千億円規模となる補助金の支給が相次いで決まっている。 半導体関連とあらば大盤振る舞いをいとわない政府のこうした姿勢が、異業種であるSBIをも引き寄せた格好だ・・・SBIに秋波を送ったのが、地域活性化の起爆剤として半導体工場を誘致したい地方だった・・・建設予定地に選ばれたのは宮城県だ。7月の参入表明時から新工場の誘致を行ってきたという村井嘉浩・宮城県知事は会見に駆けつけ、「宮城県が一丸となって支援することを約束する」と喜んだ」、なるほど。
・『関係の深い仙台銀行にも恩恵  会見では、北尾会長から興味深い発言も飛び出した。「地元にはわれわれと関係の深い仙台銀行がある。できるだけプラスになるようにしたい」というものだ。 SBIは仙台銀の親会社であるじもとホールディングスに17%を出資する筆頭株主。コロナ禍の際に行った実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」の返済が本格化し融資先の経営が悪化するなど、地方銀行は苦しい環境下にある。安定した融資先を確保できる半導体工場建設は渡りに舟だ。 仙台銀は早速プロジェクトチームを発足させる予定だ。仙台銀幹部は「SBIとしては、宮城の足がかりは仙台銀と考えていると思う。できる限りの協力をしたい」と意気込む。) SBIは9月に子会社のSBI新生銀行の非上場化を完了させたばかり。3000億円超の不良債権を返済するためには新生銀をハブにした地銀連携を進化させ、収益力を高める必要がある。そうした面でも半導体事業への進出はシナジーだ。SBIの唐突な半導体進出にはそうした事情がある。 ただ、半導体は多額の設備投資が必要なだけでなく、市況の浮き沈みの激しい産業だ。ビジネスとしての勝算はあるのだろうか。受託製造に特化するファウンドリーは、委託する半導体メーカーがあって初めて成立するビジネス。そこで新会社が狙うのは、日本での車載半導体市場の開拓だ』、「SBIは9月に子会社のSBI新生銀行の非上場化を完了させたばかり。3000億円超の不良債権を返済するためには新生銀をハブにした地銀連携を進化させ、収益力を高める必要がある。そうした面でも半導体事業への進出はシナジーだ。SBIの唐突な半導体進出にはそうした事情がある・・・受託製造に特化するファウンドリーは、委託する半導体メーカーがあって初めて成立するビジネス。そこで新会社が狙うのは、日本での車載半導体市場の開拓だ」、なるほど。
・『車載半導体のストライクゾーンを狙う  半導体のプロセスノード(回路線幅)の単位はナノ(ナノは10億分の1)メートル。新会社で製造するのは55ナノ、40ナノ、28ナノの3つの世代となる。 半導体は世代を表すプロセスノードの数字が小さくなるほどに高性能になっていく。現在量産されている最先端品はiPhoneの最新世代に搭載されている3ナノ。28ナノは10年以上前の世代だ。 だが、イギリスの調査会社・オムディアのコンサルティングディレクターである杉山和弘氏によると、「車載マイコン(半導体)の現在のボリュームゾーンは65〜40ナノ。最先端のもので28ナノ世代」。スマホなどに比べると車載半導体の進化は緩やかだ。 新会社が宮城に建てる工場の稼働は2027年以降。それを考えると、55〜28ナノは車載半導体のストライクゾーンといえるだろう。 加えて、現在の日本の半導体工場の状況を見ても、55〜28ナノというのは供給が手薄になっている絶妙なラインナップだ』、「「車載マイコン(半導体)の現在のボリュームゾーンは65〜40ナノ。最先端のもので28ナノ世代」。スマホなどに比べると車載半導体の進化は緩やかだ。 新会社が宮城に建てる工場の稼働は2027年以降。それを考えると、55〜28ナノは車載半導体のストライクゾーンといえるだろう。 加えて、現在の日本の半導体工場の状況を見ても、55〜28ナノというのは供給が手薄になっている絶妙なラインナップだ」、上手くしたものだ。
・『SBIが参入で狙う半導体のプロセスノード  というのも、現在日本で製造できるのはルネサスエレクトロニクスの40ナノ品まで。一方で同社は、最低限の自社工場しか持たない「ファブライト」の方針を掲げており、供給量は十分ではない。2024年の稼働を見込むTSMC熊本工場は28〜12ナノの製造を行うが、こちらは合弁相手のソニーがほぼ全量を自社のイメージセンサー向けに使用するとみられている。 パワーチップは世界シェア2%前後でファウンドリーの中では中堅クラス。最大手のTSMCのように量産体制を整えるために巨額の設備投資費用が必要となる先端品は追い求めず、成熟した世代の準先端品を手がけている。そのようなパワーチップの強みも新会社で生かせる。 唐突にもみえたSBIの半導体事業参入。北尾会長からすると、練りに練った策だったのかもしれない』、「パワーチップは世界シェア2%前後でファウンドリーの中では中堅クラス。最大手のTSMCのように量産体制を整えるために巨額の設備投資費用が必要となる先端品は追い求めず、成熟した世代の準先端品を手がけている。そのようなパワーチップの強みも新会社で生かせる。 唐突にもみえたSBIの半導体事業参入。北尾会長からすると、練りに練った策だったのかもしれない」、これを膨大な補助金付きで手に入れたとは「SBI」も相当したたかな「政商」だ。
タグ:東洋経済オンライン「マネックス証券「ドコモ傘下入り」をめぐる皮算用 鼻息荒いドコモと「次の一手」模索のマネックス」 金融業界 (その20)(マネックス証券「ドコモ傘下入り」をめぐる皮算用 鼻息荒いドコモと「次の一手」模索のマネックス、ガザ抗争で見えたアメリカ金融界「勢力図」の変貌…もはやゴールドマン・サックスに「金融界の巨人」の面影はない、SBIの「半導体参入」で際立つ北尾氏の深謀遠慮 多額の補助金を前提としつつ堅実な事業モデル) 「独立系証券」がなくなってしまうのには一抹の寂しさも覚える。 「ドコモのライバルである通信各社が・・・という証券会社を傘下に抱える中、ドコモにとって証券サービスは是が非でも欲しい事業だった」、なるほど。 「ネット証券と通信プラットフォームとの連携では、先述したようにauやソフトバンクが先行するが、成功しているのは900万口座を超える楽天証券くらい。口座数を積み重ねても、取引量が伸びずに収益面で苦戦する例も目立つ。野村ホールディングスと組んだLINE証券に至っては今年6月、サービス終了に追い込まれた ・・・ネット証券最大手のSBI証券が仕掛けた無料化は、マネックス証券の苦境に追い打ちをかけた。楽天証券は収益面でのダメージを覚悟のうえで追随。一方でマネックス証券と松井証券は、追随すらできなかった・・・「マネックスグループは、レッドオーシャン(苛烈な市場)から手を引くだけでなく、高値で売却できたのだとしたら見事」と舌を巻く。 ドコモへの株式売却価額は約466億円で、マネックスグループには売却益182億円が発生する。マネックス証券の2023年3月期の純利益は26億円ななだけに利益インパクトは大きい。「うまく いった取引」、なるほど。 「気になるのは、グループとしてのマネックスは、今後どこへ向かうのかだ」、同感である。 「マネックスの創業者でカリスマ経営者でもある松本氏は、事業構造改革の方向性を明確に示せていない・・・マネックスグループの株価はストップ高となる659円を付け、年初来高値を更新・・・マネックスグループの「次の一手」が問われる』」、その通りだ。 現代ビジネス 歳川 隆雄氏による「ガザ抗争で見えたアメリカ金融界「勢力図」の変貌…もはやゴールドマン・サックスに「金融界の巨人」の面影はない」 さすが「砂漠のダボス会議」だけあって、「参加者の顔ぶれ」は超豪華だ。 「ダイモン氏の頭抜けた」「複眼は日本を見据えつつ、サウジアラビアにも向けられる。さらに戦後復興を視野にウクライナも俯瞰する」、まさに超人的で、「岸田」政権には到底無理だろう。 東洋経済オンライン「SBIの「半導体参入」で際立つ北尾氏の深謀遠慮 多額の補助金を前提としつつ堅実な事業モデル」 初めのうちは、勝算があるのかと疑問を感じたが、「補助金」狙いとはあり得る話だ。「2029年に完了する第2期投資まで見据えると総額では8000億円超となる。 新会社にはSBIとパワーチップの2社で過半を出資する。1000億円規模のファンドを立ち上げるなどして、国内外投資家の出資も促す。融資については、メガバンクや日本政策投資銀行と協議をしている」、なるほど。 「日本政府も兆円単位という空前の予算を計上。半導体関連企業による投資では、投資額全体の3〜5割、数百〜数千億円規模となる補助金の支給が相次いで決まっている。 半導体関連とあらば大盤振る舞いをいとわない政府のこうした姿勢が、異業種であるSBIをも引き寄せた格好だ・・・SBIに秋波を送ったのが、地域活性化の起爆剤として半導体工場を誘致したい地方だった ・・・建設予定地に選ばれたのは宮城県だ。7月の参入表明時から新工場の誘致を行ってきたという村井嘉浩・宮城県知事は会見に駆けつけ、「宮城県が一丸となって支援することを約束する」と喜んだ」、なるほど。 「SBIは9月に子会社のSBI新生銀行の非上場化を完了させたばかり。3000億円超の不良債権を返済するためには新生銀をハブにした地銀連携を進化させ、収益力を高める必要がある。そうした面でも半導体事業への進出はシナジーだ。SBIの唐突な半導体進出にはそうした事情がある・・・受託製造に特化するファウンドリーは、委託する半導体メーカーがあって初めて成立するビジネス。そこで新会社が狙うのは、日本での車載半導体市場の開拓だ」、なるほど。 「「車載マイコン(半導体)の現在のボリュームゾーンは65〜40ナノ。最先端のもので28ナノ世代」。スマホなどに比べると車載半導体の進化は緩やかだ。 新会社が宮城に建てる工場の稼働は2027年以降。それを考えると、55〜28ナノは車載半導体のストライクゾーンといえるだろう。 加えて、現在の日本の半導体工場の状況を見ても、55〜28ナノというのは供給が手薄になっている絶妙なラインナップだ」、上手くしたものだ。 「パワーチップは世界シェア2%前後でファウンドリーの中では中堅クラス。最大手のTSMCのように量産体制を整えるために巨額の設備投資費用が必要となる先端品は追い求めず、成熟した世代の準先端品を手がけている。そのようなパワーチップの強みも新会社で生かせる。 唐突にもみえたSBIの半導体事業参入。北尾会長からすると、練りに練った策だったのかもしれない」、これを膨大な補助金付きで手に入れたとは「SBI」も相当したたかな「政商」だ。
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個人債務問題(その4)(“日の丸ヤミ金”奨学金 若者から収奪する「日本学生支援機構」、若者が陥る不動産投資のワナ 「フラット35」の不正利用が相次ぐ【WBS】、「警察vs新手のヤミ金」仁義なき戦い ギフト券買い取り商法などの狡猾手口) [金融]

個人債務問題については、2021年2月5日に取上げた。今日は、(その4)(“日の丸ヤミ金”奨学金 若者から収奪する「日本学生支援機構」、若者が陥る不動産投資のワナ 「フラット35」の不正利用が相次ぐ【WBS】、「警察vs新手のヤミ金」仁義なき戦い ギフト券買い取り商法などの狡猾手口)である。

先ずは、2022年4月7日付け週刊金曜日「“日の丸ヤミ金”奨学金 若者から収奪する「日本学生支援機構」」を紹介しよう。
https://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/2022/04/07/news-124/
・『日本学生支援機構による〝違法回収〟の実態が明らかになりつつある。利用者への「最終通知」内容が情報公開請求で発覚。そしてついに国会でも取り上げられた。〈重要/必ずお読みください!/今回お送りした「支払督促申立予告」は、あなたへの最終通知です。〉(傍線は原文ママ) 日本学生支援機構が奨学金ローンの利用者らに送付する「最終通知」。 A4判の紙に赤色の大文字をまじえてそんな文句が書かれている。作成者は闇金融でもなければ貸金業者でもない。独立行政法人日本学生支援機構(以下、支援機構)である。特殊詐欺と疑われてもやむを得ないほど威圧感のある取り立て文書を、奨学金ローンの返還困難に陥った利用者や保証人に対して送りつけていたのだ。 「最終通知」は情報公開請求に対して支援機構が開示したものだが、その意味は重大だ。違法性が疑われる繰り上げ一括請求を実行するために作成された「違法回収の証拠」だからだ。 奨学金ローンは20年以内に月賦または年賦などで返還する仕組みだ。それを、返済が滞ると将来払う予定のものまで前倒しで一括弁済をと迫る。200万円であろうが300万円であろうが、耳を揃えて即座に払えというのが繰り上げ一括請求である。根拠は日本学生支援機構法施行令5条5項とされる。 さて、最終通知をさらに読むと、赤色や下線、傍点で強調した大文字でこうある。 予告書の内容をお読みいただき、一括返還が困難なときは、必ず「○月末日までに」日本学生支援機構に連絡し、分割返還や返還期限猶予手続等について相談してください。/連絡がないときは、裁判所に支払督促申立を行います。〉(傍線、傍点は原文ママ) 【差出人は元武富士代理人】 強い調子の文面の中に「予告書」という言葉が出てくる。「返還未済奨学金の一括返還請求(支払督促申立予告)」という文書のことだ。やはり情報公開請求で開示された。最終通知といっしょに送っているらしい。 その予告書(A4判)を見ると、こちらは平凡な事務文書の体裁で赤色や大文字は使われていないものの、やはり内容はおどろおどろしい。 〈あなたは、日本学生支援機構(旧日本育英会)からの貸与を受けた奨学金の返還について、再三の督促を受けながら、長期にわたり返還がなされていません。/ついては、独立行政法人日本学生支援機構法施行令(日本育英会奨学規程)により、下記の返還未済額の全部を、下記の返還期限までに一括して返還されますよう請求します。/もし、この期限までに返還されず、また、然るべき対応もなされないときは、やむなく返還未済額の全部、および内訳記載以後の延滞金について、上記規程に定める返還強制の手続きをとることになりますので、ご承知おきください。(略) 返還未済額○円(内訳は下記のとおり)/返還期限○年○月○日 (略) 1 返還期日が到来し、滞納となっている額 ○円 2 約定返還期日未到来であるが、奨学規程により繰上げ返還すべき額 ○円〉(傍線は原文ママ)  差出人は支援機構の吉岡知哉理事長。その下には「顧問弁護士・熊谷信太郎」の名があり、文面に迫力を与えている。熊谷氏はサラ金最大手・武富士(2010年に経営破綻)元代理人の経歴を持つ支援機構の看板弁護士だ。 「奨学金」の利用者や保証人がこれらの文書を受け取れば、ほとんどの人は「滞納した方が悪い。全額払わなければいけない」と思い、動揺するにちがいない。 だが、本連載でたびたび指摘してきたとおり、支援機構の一括請求には違法性が疑われる。施行令5条5項には「支払能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠ったと認められるとき」にのみ一括請求できるとあるのに、じっさいは利用者の支払能力を調べることすらせず、一括請求を乱発している。払えない人から容赦なく貸しはがしている。  この問題意識をもって最終通知や予告書をみれば強い違和感を覚える。一括請求は「支払能力がある」場合にしかできない旨明記した施行令の内容が、文書のどこにも説明されていない。 支援機構は意図的に施行令を歪めているのではないか。そう疑いたくなる』、「支援機構の一括請求には違法性が疑われる。施行令5条5項には「支払能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠ったと認められるとき」にのみ一括請求できるとあるのに、じっさいは利用者の支払能力を調べることすらせず、一括請求を乱発している。払えない人から容赦なく貸しはがしている」、なるほど。
・『【衆院文科委での応酬】  3月2日、衆議院文部科学委員会で宮本岳志議員(共産)が繰り上げ一括請求問題に関する質問で「施行令歪曲疑惑」を取り上げた。答弁者は増子宏・文部科学省高等教育局長だ。 宮本 施行令5条5項ですね。「支払能力があるにもかかわらず」これが一つ。二つめ、「割賦金の返還を著しく怠ったと認められるときは」。(期限の利益喪失は)この二つの条件となっているわけです。(略)。しかしここ(返還開始時に配付する「返還のてびき」)には「督促しても返還しない場合は」という言葉はありますけれども、「支払能力があるにもかかわらず」という肝心の条件は書かれておりません。(略)返還が始まるまでの間に日本学生支援機構はこの施行令5条5項を明記した文書を、貸与を受ける奨学生に対して示しておりますか? 増子 奨学生に採用された際に配付しております「貸与奨学生のしおり」というものがございます。この103ページにおいて明示はしております。 「明示はしております」という増子局長の答弁の意味が、続く宮本議員の質問で明らかになる。 宮本 (「しおり」本文の)79ページを見ますと、法的手続きでは長期にわたって滞納が解消しない場合には触れていますけれども、やっぱり「支払能力があるにもかかわらず」という文言はありません。どこかと思って探したら、資料編、103ページにその施行令5条5項が細かい字でちょちょっと4行書いてあるというのがすべてなんですね。私は、これは本当にひどいなと』、「宮本 (「しおり」本文の)79ページを見ますと、法的手続きでは長期にわたって滞納が解消しない場合には触れていますけれども、やっぱり「支払能力があるにもかかわらず」という文言はありません。どこかと思って探したら、資料編、103ページにその施行令5条5項が細かい字でちょちょっと4行書いてあるというのがすべてなんですね。私は、これは本当にひどいなと」、確かにひどい。
・『【「欺く趣旨ではない」】  何のことはない。増子局長の言う「明示」とは「しおり」の中の資料のことだった。宮本議員はさらに、法的手続きの際に裁判所に対しても「支払能力」を説明していない点を指摘して、是正を要するのではないかと質す。 宮本 (支援機構が起こした債権回収訴訟の訴状においても)施行令5条5項が定める「支払能力があるにもかかわらず」、この文言がありません。まるで施行令が、支払能力の有無とは無関係に、割賦金の返還を著しく怠っただけで一括請求を許しているかのように説明しております。これは裁判所を欺こうということですか? 増子 決して、裁判所を欺くとかそういう趣旨ではございません。この第5条5項においては、返済者に支払能力があるにもかかわらず割賦金の返済を著しく怠ったと認めるときに、返済未済額の全部の返済義務を負うというふうに考えているところでございます。 宮本 支払能力があるかどうかはきわめて重大な条件なんですね。(略)少なくとも日本学生支援機構は、この施行令5条5項に明記された文章、すなわち「支払能力があるにもかかわらず」「割賦金の返還を著しく怠ったと認めるときは」という二つの条件をあらかじめ丁寧に貸与を受ける者に説明しなければならない。またその説明が不十分なまま法的措置に踏み込むのはあまりにも不誠実だと思います。大臣、是非とも改善、せめて検討を。 答弁を求められた末松信介文科大臣は、こう答えた。 「わかりやすい通知文書となるように努めたい。やはりわかってもらうことが一番大事ですので、基本の『き』のところということでございますから、その点よく念頭におきます」 一括請求問題が初めて世に問われたのは2013年。以来10年近くを経てようやく見えた小さな改善の兆しだった。もっとも何をどう改めるのか、具体的にはまだ明らかにされていない。(つづく)』、「一括請求問題が初めて世に問われたのは2013年。以来10年近くを経てようやく見えた小さな改善の兆しだった。もっとも何をどう改めるのか、具体的にはまだ明らかにされていない」、なんと長いこと放置していたものだ。今後の改定の動きを注視したい。

次に、7月28日付けYahooニュースが転載したテレ東BIZ「若者が陥る不動産投資のワナ 「フラット35」の不正利用が相次ぐ【WBS】」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4e9688fe31dd637cc3dfb83959edfd967cc71ff3?page=1
・『不動産価格の高騰などを受け、今、数千万円に上るローンを借りて不動産投資を始める若い人が増えています。しかし、このローンをめぐって「ある落とし穴」にはまり、中には自己破産に追い込まれるケースも多発しています。その実態を取材しました。 7月22日、都内で開かれたJKAS主催の「不動産トラブル『救済』セミナー」。100人以上が参加しました。参加者の1人が佐藤さん(仮名・30歳)。5年前、投資用にマンションを購入しました。 佐藤さんが購入した物件は、都心の最寄り駅から徒歩1分の1LDK(約45平方メートル)。築15年(購入時)で4900万円でした。 物件自体に問題はありませんでしたが、「投資用のローンではなく、住宅居住用の『フラット35』を使用してしまった。不動産会社とやり取りをしていて、投資用ローンで購入しているものだと思っていた」(佐藤さん)といいます。 投資物件では利用できない「フラット35」  「フラット35」は、最長35年間、一定の金利で借りられる住宅ローン。 問題は、このローンを利用できるのは、本人や親族が住むための物件を購入する場合に限られていることです。佐藤さんのように、投資用物件で使うと、不正利用にあたります。 購入から1年後、佐藤さんの元に届いたのは、住宅金融支援機構からの居住確認でした。 不動産会社に手紙が来たということを言ったときに、アンケートのようなものだから答えなくていいと言われ、私もそういうものなのかと楽観的に捉えてしまった」(佐藤さん) 最終的に居住実態がないことが確認され、佐藤さんは住宅支援機構から残ったローンの一括返済を求められました。その後、物件を販売した不動産会社とは、連絡が取れなくなったといいます。 「不動産のプロは詐欺のようなことはしないだろうと思っていた。後悔している」(佐藤さん) 実は今、佐藤さんのように、知らずにフラット35の不正利用をしてしまう事例が相次いでいます。住宅金融支援機構の調査によると、その不正利用のうち84%が20代から30代前半の購入者でした。』、「「投資用のローンではなく、住宅居住用の『フラット35』を使用してしまった。不動産会社とやり取りをしていて、投資用ローンで購入しているものだと思っていた」(佐藤さん)といいます・・・購入から1年後、佐藤さんの元に届いたのは、住宅金融支援機構からの居住確認でした・・・販売した不動産会社とは、連絡が取れなくなった」、これでは「投資物件」であることがバレてしまうし、「不動産会社とは、連絡が取れなくなった」のであれば、どうしようもない。
・『壁もボロボロ、資料も改ざん  田中さんが購入した物件には、壁に複数の穴が開いていた 取材を進めると、さらに悪質な不動産会社の存在が見えてきました。 5年前に、不動産投資を始めた田中さん(仮名・29歳)。4400万円で投資用に購入したという川崎市内のマンションは築24年(購入時)で、3LDK(約70平方メートル)です。 「(壁には)穴が複数開けられていて、ガラスの縁のところも割れている」(田中さん) 壁には多数の落書きが描かれていました。「ミストサウナ付き」と書いてあった浴室は、水回りも古いままです。今年1月に入居者が出て行き、初めて物件を確認したといいます。 田中さんが購入のために利用したのも、フラット35のローン。投資用に購入したため、田中さんの元にも一括返済の督促が来ました。 「不動産会社に相談しても、ろくな回答がもらえなかった。先輩に相談したときに、もう自己破産するしかないと言われた」(田中さん) 田中さんが提出した資料と開示された資料を比べると月収が10万円ほど上乗せされている 不動産会社が金融機関に提出していた書類を入手したところ、月収が10万円ほど上乗せされ、年収にすると100万円近く水増しされていました。ローンの審査を通すために源泉徴収票など多くの書類が書き換えられていたのです。 「本当に腹立たしい気持ちでいっぱいです」(田中さん) 田中さんに物件を販売した不動産会社のオフィスを訪ねました。そこにあったのはレンタルオフィス。しかし、この不動産会社がいたことはないということでした。 不動産会社に電話し、「融資を通す上で提出された書類と違うものが、ローン会社に提出されていたというが事実か」 と質問すると、受話器の向こうから返ってきた返事は、「わからない。私はこの場でなにも判断する権限がない」。その後、何度電話をしても、回答は得られませんでした。 不動産トラブルに詳しい銀座第一法律事務所の大谷郁夫弁護士は、「事務所に行っても誰もいないというケースはある。そうすると、もう打つ手がない」といいます。 その上でトラブルに巻き込まれないために注意すべきことについて、大谷弁護士は「言われるがままハンコを押して儲かる不動産はまずない。投資をするならその対象について、それなりに勉強してほしい。それからいろいろな書類にハンコを押すときは必ず読んでほしい」と話しました。 ※ワールドビジネスサテライト』、「4400万円で投資用に購入したという川崎市内のマンションは築24年(購入時)で、3LDK(約70平方メートル)です。 「(壁には)穴が複数開けられていて、ガラスの縁のところも割れている」(田中さん) 壁には多数の落書きが描かれていました。「ミストサウナ付き」と書いてあった浴室は、水回りも古いままです」、物件はひどいようだ。「田中さんに物件を販売した不動産会社のオフィスを訪ねました。そこにあったのはレンタルオフィス。しかし、この不動産会社がいたことはないということでした」、これでは話にならない。「購入のために利用したのも、フラット35のローン。投資用に購入したため、田中さんの元にも一括返済の督促が来ました」、これでは確かに自己破産しか道がなさそうだ。

第三に、11月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した東京情報大学 総合情報学部 教授の堂下浩氏による「「警察vs新手のヤミ金」仁義なき戦い、ギフト券買い取り商法などの狡猾手口」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/331819
・『10月25日に神奈川県警が新たなヤミ金を逮捕した。金券買い取りを偽装して資金を提供する「ギフト券買い取り商法」と呼ばれる新種のヤミ金であり、全国で初めての摘発となる。一昔前と違い、近年のヤミ金は単純な金銭貸借の形を取らず、法律の抜け道をくぐるような狡猾な手口を次々と編み出している。邪智深く進歩するヤミ金と、執念を燃やして追いかける警察の戦いが続いている』、興味深そうだ。
・『フリマサイトを装った新種のヤミ金を摘発  「ギフト券買い取り商法」を展開するヤミ金は、金銭を貸す代わりに、ギフト券など金券を媒介しているのが特徴だ。まず、ヤミ金はネット上で金券を買い取るフリーマーケットサイトを装って資金需要のある申込者(実態としては債務者)を誘い込む。たとえば2万円分の金券を申込者が出品するとしよう。しかし、額面通りの金額では売れず、1万5000円などといったディスカウント価格で出品する。そして、ヤミ金がこれを買い取り、1万5000円を申込者に振り込む。 通常の金券売買なら、代金が振り込まれた時点で即座に金券が発送されるところだが、このサイトでは翌月の給与日まで発送を猶予してもらえる。 そして、翌月の給与日には2万円分の金券をヤミ金に郵送しなければならない。つまり、1万5000円を現金で借りて、翌月の給与日に2万円を金券で返済する、という図式になる。差額の5000円が金利だから、1カ月で30%以上ということになる。 金券の買い取り行為に違法性はなく、通常の金券ショップの業態とくくれなくもないため、このスキームを貸金業違反として決めつけて摘発することは難しい。そこで、今回は警察側も相当の警察資源を投入しながら、周到な計画の下で証拠を集め、綿密な法的ロジックを組み立てた上で逮捕に至ったものと思われる。 現在、同様の業者はネット上でも流行りつつあり、警察も時間との戦いに迫られながらの捜査を強いられたものと推察される』、「1万5000円を現金で借りて、翌月の給与日に2万円を金券で返済する、という図式になる。差額の5000円が金利だから、1カ月で30%以上ということになる。 金券の買い取り行為に違法性はなく、通常の金券ショップの業態とくくれなくもないため、このスキームを貸金業違反として決めつけて摘発することは難しい。そこで、今回は警察側も相当の警察資源を投入しながら、周到な計画の下で証拠を集め、綿密な法的ロジックを組み立てた上で逮捕に至ったものと思われる」、なるほど。
・『巨大化するヤミ金組織と暗号資産化で見えない収益の行方  警察がヤミ金の摘発に「本気」にならざるを得ない背景には、いくつもの理由がある。 まず一つ目が、ヤミ金の規模が大きくなっている点である。近年、暗躍するヤミ金の組織規模が大きくなっている。当然、被害規模も一段と巨額化しているはずだ。しかも、収益の相当額が暗号資産などを通してフィリピンなど海外の銀行口座に流出し、全容解明が困難となってきている。 そして、二つ目の点として挙げられるのが、ヤミ金が考え付くスキームの巧妙さである。背後には悪徳弁護士のネットワークの存在も囁かれている。一昔前のように、単純な高利貸しはなりをひそめ、一見してヤミ金とはわからないようなスキームで、摘発にも時間がかかるようになってきた。 つまり、ヤミ金被害は拡大しているのに、その実態が掴みにくい。こうした構図に業を煮やした警察は、ヤミ金摘発に力を入れるようになってきた。 このような警察とヤミ金の暗闘は、2018年頃から隆盛を誇るようになったヤミ金である「給与ファクタリング商法」の摘発に遡れる。 当時、肥大化した銀行カードローンは、杜撰な審査により数多くの返済困難者を発生させていた。社会でも銀行カードローンへの批判が強まり、慌てた全国銀行協会(全銀協)は2017年にカードローン審査の厳格化に向けた申し合わせを公表した。この自主規制により市場の膨張に急ブレーキがかかり、社会的な批判も沈静化していった。一方で、急な信用収縮は銀行カードローン市場からの借入困難者を発生させる事態を招いた。 こうした借入困難者の新たな受け皿として成長した市場が「給与ファクタリング商法」と呼ばれるヤミ金であった。国民生活センターに寄せられた事例を1つ見てみよう。  ある男性は子どもの医療費のために、自身の給与債権12万円をファクタリング業者に売却。手数料を差し引いた7万円を手にした。そして翌月の給料日に12万円を銀行振り込みするという契約であった。 これを貸金として考えると、7万円を借り入れて、翌月に12万円を返済。たった1カ月で利息は5万円ということになる。ところが、業者側の言い分としては「給与を債権として買い取っているので、金銭貸借ではない。したがって、差額の5万円は手数料であり、利息ではない」ということになる。) 当時、「ファクタリング業を偽装した新種のヤミ金」と批判されつつも、利息制限法を含めた法的適用性を巡る議論に余地が残されていた。このため、警察もその摘発に慎重にならざるを得なかった。いくら実態がヤミ金そのものだからといって、法的根拠なくして逮捕はできないからだ。 こうして野放しで成長していった給与ファクタリング問題が社会でもクローズアップされるようになった頃、ようやく重い腰を上げた金融庁は2020年3月にノンアクションレターを通して、このスキームが貸金業に当たるとの見解を示した。これにより、法的な根拠を得た警察は一斉に給与ファクタリング業者の摘発を進めたのだ。 警察が動き出したことに加えて、コロナショックが始まり、資金需要が大きく落ち込む局面でもあったことから、給与ファクタリング業者の多くは市場からの撤退を進めた。 しかしながら、経済活動の正常化に伴い、今度は給与ファクタリングのスキームを発展させた「後払い現金化商法」というヤミ金が跋扈し始める。 筆者がネット上で新たに出店した後払い現金化業者の屋号や所在地を調べたところ、給与ファクタリング業者時代と同一であった事例をいくつも確認できた』、「借入困難者の新たな受け皿として成長した市場が「給与ファクタリング商法」と呼ばれるヤミ金であった。国民生活センターに寄せられた事例を1つ見てみよう。  ある男性は子どもの医療費のために、自身の給与債権12万円をファクタリング業者に売却。手数料を差し引いた7万円を手にした。そして翌月の給料日に12万円を銀行振り込みするという契約であった。 これを貸金として考えると、7万円を借り入れて、翌月に12万円を返済。たった1カ月で利息は5万円ということになる。ところが、業者側の言い分としては「給与を債権として買い取っているので、金銭貸借ではない。したがって、差額の5万円は手数料であり、利息ではない」ということになる・・・経済活動の正常化に伴い、今度は給与ファクタリングのスキームを発展させた「後払い現金化商法」というヤミ金が跋扈し始める。 筆者がネット上で新たに出店した後払い現金化業者の屋号や所在地を調べたところ、給与ファクタリング業者時代と同一であった事例をいくつも確認できた」、なるほど。
・『次々に誕生するヤミ金の新手口 警察がなかなか動けないのはなぜか?  後払い現金化のスキームを説明しよう。まずヤミ金が提供する無価値な商品やサービス(スマホで撮った風景写真、複写のアート画像など)を購入する申し込みを行う。ヤミ金は申込者(債務者)を与信判断した上で、無価値な商品やサービスを提供する。商品やサービスを受領した申込者は、口コミや評価点をネット上で記載することでヤミ金からキャッシュバックという名目で現金(「元本」に相当)を受け取る。 その後、申込者は次の給料日にヤミ金へ、購入した商品やサービスの代金(「元本」+「利息」に相当)を後払いするという仕組みである。 このように、さまざまに手口を変えながら拡大していくのが、ヤミ金の狡猾なところである。そして、この時も金融庁は法解釈の難しさから、後払い現金化商法が貸金業に相当するか否かの見解を示さなかった。その理由は後述する。) 金融庁が沈黙し、警察が動けない中、後払い現金化業者がネット上で堂々と営業を続ける日々が続いたが、2021年9月に北海道警は抜かりない捜査の末、後払い現金化商法でヤミ金を営んだとして、情報商材販売会社「OSGS」(札幌)の代表らを逮捕した。 報道によると、同社はネット上で「ゲーム攻略法」などの情報商材を後払いで販売し、そして購入者に最大5万円をキャッシュバックするという名目で顧客に送金し、後日、情報商材の購入代金として最大8万円を回収していた。さらに2022年9月には、警視庁生活経済課と広島県警の合同捜査本部は規模が一段と大きい別の現金買い取り業者を逮捕した。 ただし、摘発されたスキーム自体を見ると、この商法が貸金業に該当すると単純に見ることはできない。貸金業法第二条第一項三号には「物品の売買(中略)を業とする者がその取引に付随して行う」金銭授受は貸金業に当たらないと規定されている。つまり、摘発された販売業者が行った金銭の授受は情報商材という取引に伴って発生したものであり、貸金業に相当するとは必ずしも言えない。 しかし、これらの業者が扱っていた情報商材は、記事によると「ほぼ価値のない情報」であり、その金額である「最大8万円」という価格に合理性が認められなかった。結果として、そのスキームは貸金業に該当すると論定され、代表らは貸金業法及び出資法違反として逮捕された』、「これらの業者が扱っていた情報商材は、記事によると「ほぼ価値のない情報」であり、その金額である「最大8万円」という価格に合理性が認められなかった。結果として、そのスキームは貸金業に該当すると論定され、代表らは貸金業法及び出資法違反として逮捕された」、なるほど。
・『茨城県警が執念の摘発!「先払い買い取り商法」とは  警察による一連の後払い現金化商法の逮捕が続いた結果、今度は「先払い買い取り商法」と呼ばれる新たな業態が誕生し、瞬く間に広がっていった。後払い現金化商法が出現した時と同様に、先払い買い取り業者の大半は給与ファクタリングや後払い現金化からの転業組であったと容易に推測できる。 そのスキームについて説明する。資金需要者は買主であるヤミ金(多くは古物商として偽装)の指定するスマホやゲーム機器といった中古品や未使用品を売却する申し込みを行う。業者は申込者(売主)を与信判断した上で、その審査が通った申込者とのみ買い取り契約を交わす。) そして業者は商品を受領する前に、売主に代金(「元本」に相当)を支払う。その後、業者は売主に買い取り契約をキャンセルさせた上で、1か月後の給料日を期限に高額なキャンセル料(「元本」+「利息」に相当)をキャンセル申出者(資金需要者)から回収する。先払い買い取り商法のスキームは審査や回収の知識という点で給与ファクタリングと本質的に同一であり、その派生形と捉えられる。 身近な中古商品がネットを介して売買される取引は一般化しつつあり、多様な商品の買い取り業者が社会に存在する。こうした状況下で、金銭交付を目的とした取引と実需を伴う取引を線引きすることは極めて難しい。しかしながら、2023年1月に全国で初めて茨城県警が先払い買い取り業者を摘発した。利用者(被害者)は1万2800人、貸し付け利益は約4億円にのぼる。警察の執念ともいえる捜査の結果であろう。そして、多くのヤミ金は「先払い買い取り商法」から、今回神奈川県警が逮捕した「ギフト券買い取り商法」へ転業していった。 しかし、これらの摘発で一件落着かというと、そう甘くはない。ここまで見てきたように、新種のヤミ金はいずれも法解釈の難しいスキームである。したがって、「違法ではない」と法廷で執拗に争うヤミ金もいるのだ。たとえ敗訴となっても、裁判所が認めなかった要因を分析し、それを克服する新たなスキーム開発に活かすのかもしれない。 たとえば、給与ファクタリングが貸金業に該当すると金融庁が発表してから約1年後の2022年2月に、北海道警が給与ファクタリングを営んでいるとして「日本強運堂」という業者を逮捕した。 しかしながら、逮捕された経営者らは自分たちのスキームが金融庁の示した見解に当てはまらないと主張し、容疑を認めず最高裁まで争う事態に発展した。2023年2月、最終的に最高裁は日本強運堂のスキームが貸し付けに当たると判断を下した。ただし、この裁判ではファクタリング業者による「回収リスクの負担」という観点で金融庁の見解に反駁の余地が残されている可能性を示唆した』、「新種のヤミ金はいずれも法解釈の難しいスキームである。したがって、「違法ではない」と法廷で執拗に争うヤミ金もいるのだ。たとえ敗訴となっても、裁判所が認めなかった要因を分析し、それを克服する新たなスキーム開発に活かすのかもしれない。 たとえば、給与ファクタリングが貸金業に該当すると金融庁が発表してから約1年後の2022年2月に、北海道警が給与ファクタリングを営んでいるとして「日本強運堂」という業者を逮捕した。 しかしながら、逮捕された経営者らは自分たちのスキームが金融庁の示した見解に当てはまらないと主張し、容疑を認めず最高裁まで争う事態に発展した。2023年2月、最終的に最高裁は日本強運堂のスキームが貸し付けに当たると判断を下した」、なるほど。
・『警察がヤミ金摘発に本気になる本当の理由  そして、警察がヤミ金の摘発に「本気」にならざるを得ない三つ目の理由として、ヤミ金の借受人、つまり被害者が往々にして次に詐欺に加担し、今度は加害者となってしまうという傾向が見られる点が挙げられる。近年拡大して問題になっている闇バイトなどを束ねる犯罪集団と一般人との関係形成に、ヤミ金との接触が影響を及ぼしている可能性が事件などで散見されるようになってきた。ただし、その傾向はヤミ金の“業態(=手口)”により異なるのだ。この点については改めて解説する』、「ヤミ金の借受人、つまり被害者が往々にして次に詐欺に加担し、今度は加害者となってしまうという傾向が見られる点が挙げられる。近年拡大して問題になっている闇バイトなどを束ねる犯罪集団と一般人との関係形成に、ヤミ金との接触が影響を及ぼしている可能性が事件などで散見されるようになってきた。ただし、その傾向はヤミ金の“業態(=手口)”により異なるのだ」、「被害者が往々にして次に詐欺に加担し、今度は加害者となってしまうという傾向が見られる」とは奇妙キテレツだ。後日のもっと詳しい解説を待つとしよう。 
タグ:個人債務問題 (その4)(“日の丸ヤミ金”奨学金 若者から収奪する「日本学生支援機構」、若者が陥る不動産投資のワナ 「フラット35」の不正利用が相次ぐ【WBS】、「警察vs新手のヤミ金」仁義なき戦い ギフト券買い取り商法などの狡猾手口) 週刊金曜日「“日の丸ヤミ金”奨学金 若者から収奪する「日本学生支援機構」」 「支援機構の一括請求には違法性が疑われる。施行令5条5項には「支払能力があるにもかかわらず割賦金の返還を著しく怠ったと認められるとき」にのみ一括請求できるとあるのに、じっさいは利用者の支払能力を調べることすらせず、一括請求を乱発している。払えない人から容赦なく貸しはがしている」、なるほど。 「宮本 (「しおり」本文の)79ページを見ますと、法的手続きでは長期にわたって滞納が解消しない場合には触れていますけれども、やっぱり「支払能力があるにもかかわらず」という文言はありません。どこかと思って探したら、資料編、103ページにその施行令5条5項が細かい字でちょちょっと4行書いてあるというのがすべてなんですね。私は、これは本当にひどいなと」、確かにひどい。 「一括請求問題が初めて世に問われたのは2013年。以来10年近くを経てようやく見えた小さな改善の兆しだった。もっとも何をどう改めるのか、具体的にはまだ明らかにされていない」、なんと長いこと放置していたものだ。今後の改定の動きを注視したい。 Yahooニュースが転載 テレ東BIZ「若者が陥る不動産投資のワナ 「フラット35」の不正利用が相次ぐ【WBS】」 「「投資用のローンではなく、住宅居住用の『フラット35』を使用してしまった。不動産会社とやり取りをしていて、投資用ローンで購入しているものだと思っていた」(佐藤さん)といいます・・・購入から1年後、佐藤さんの元に届いたのは、住宅金融支援機構からの居住確認でした・・・販売した不動産会社とは、連絡が取れなくなった」、これでは「投資物件」であることがバレてしまうし、「不動産会社とは、連絡が取れなくなった」のであれば、どうしようもない。 「4400万円で投資用に購入したという川崎市内のマンションは築24年(購入時)で、3LDK(約70平方メートル)です。 「(壁には)穴が複数開けられていて、ガラスの縁のところも割れている」(田中さん) 壁には多数の落書きが描かれていました。「ミストサウナ付き」と書いてあった浴室は、水回りも古いままです」、物件はひどいようだ。 「田中さんに物件を販売した不動産会社のオフィスを訪ねました。そこにあったのはレンタルオフィス。しかし、この不動産会社がいたことはないということでした」、これでは話にならない。「購入のために利用したのも、フラット35のローン。投資用に購入したため、田中さんの元にも一括返済の督促が来ました」、これでは確かに自己破産しか道がなさそうだ。 ダイヤモンド・オンライン 堂下浩氏による「「警察vs新手のヤミ金」仁義なき戦い、ギフト券買い取り商法などの狡猾手口」 「1万5000円を現金で借りて、翌月の給与日に2万円を金券で返済する、という図式になる。差額の5000円が金利だから、1カ月で30%以上ということになる。 金券の買い取り行為に違法性はなく、通常の金券ショップの業態とくくれなくもないため、このスキームを貸金業違反として決めつけて摘発することは難しい。そこで、今回は警察側も相当の警察資源を投入しながら、周到な計画の下で証拠を集め、綿密な法的ロジックを組み立てた上で逮捕に至ったものと思われる」、なるほど。 「借入困難者の新たな受け皿として成長した市場が「給与ファクタリング商法」と呼ばれるヤミ金であった。国民生活センターに寄せられた事例を1つ見てみよう。  ある男性は子どもの医療費のために、自身の給与債権12万円をファクタリング業者に売却。手数料を差し引いた7万円を手にした。そして翌月の給料日に12万円を銀行振り込みするという契約であった。 これを貸金として考えると、7万円を借り入れて、翌月に12万円を返済。たった1カ月で利息は5万円ということになる。ところが、業者側の言い分としては「給与を債権として買い取っているので、金銭貸借ではない。したがって、差額の5万円は手数料であり、利息ではない」ということになる・・・経済活動の正常化に伴い、今度は給与ファクタリングのスキームを発展させた「後払い現金化商法」というヤミ金が跋扈し始める。 筆者がネット上で新たに出店した後払い現金化業者の屋号や所在地を調べたところ、給与ファクタリング業者時代と同一であっ た事例をいくつも確認できた」、なるほど。 「これらの業者が扱っていた情報商材は、記事によると「ほぼ価値のない情報」であり、その金額である「最大8万円」という価格に合理性が認められなかった。結果として、そのスキームは貸金業に該当すると論定され、代表らは貸金業法及び出資法違反として逮捕された」、なるほど。 「新種のヤミ金はいずれも法解釈の難しいスキームである。したがって、「違法ではない」と法廷で執拗に争うヤミ金もいるのだ。たとえ敗訴となっても、裁判所が認めなかった要因を分析し、それを克服する新たなスキーム開発に活かすのかもしれない。 たとえば、給与ファクタリングが貸金業に該当すると金融庁が発表してから約1年後の2022年2月に、北海道警が給与ファクタリングを営んでいるとして「日本強運堂」という業者を逮捕した。 しかしながら、逮捕された経営者らは自分たちのスキームが金融庁の示した見解に当てはまらないと主張し、容疑を認めず最高裁まで争う事態に発展した。2023年2月、最終的に最高裁は日本強運堂のスキームが貸し付けに当たると判断を下した」、なるほど。 「ヤミ金の借受人、つまり被害者が往々にして次に詐欺に加担し、今度は加害者となってしまうという傾向が見られる点が挙げられる。近年拡大して問題になっている闇バイトなどを束ねる犯罪集団と一般人との関係形成に、ヤミ金との接触が影響を及ぼしている可能性が事件などで散見されるようになってきた。ただし、その傾向はヤミ金の“業態(=手口)”により異なるのだ」、「被害者が往々にして次に詐欺に加担し、今度は加害者となってしまうという傾向が見られる」とは奇妙キテレツだ。後日のもっと詳しい解説を待つとしよう。
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