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日本の外交政策(その9)(出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は 世界に3つだけ」、ミャンマー ウイグル 香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応、「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果) [外交]

日本の外交政策については、昨年10月16日に取上げた。今日は、(その9)(出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は 世界に3つだけ」、ミャンマー ウイグル 香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応、「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果)である。

先ずは、本年3月2日付け日経ビジネスオンラインが掲載した立命館アジア太平洋大学(APU)学長の 出口 治明氏による「出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は、世界に3つだけ」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00087/022500177/
・『「知の巨人」と呼ばれる出口治明さんが、「教養としての地政学」を、分かりやすい言葉で説き起こすシリーズ連載。 第1回の前々回と、第2回の前回は、「地政学」の定義と枠組みを振り返った。 今回からは、日本が今、国際社会のなかで置かれている現実を、出口さんが地政学的に解説する。日本列島の地理的な特殊性に、経済規模などを加味すると、「日本が実効性のある軍事同盟を結べる国は、世界に3つしかない」と喝破する。その3カ国とはどこ? そして、なぜ? 出口さんの新刊『教養としての「地政学」入門』の刊行を記念した企画。 日本は島国です。そのため陸上の国境で接している隣国はありません。海を経て接しているのは、太平洋を挟んで遠い向こう側にあるアメリカとカナダを除けば、ロシア、北朝鮮、韓国、中国、台湾という、四カ国とひとつの地域です。 このうち、北朝鮮とは正式の国交が成立していません。加えて残りすべての国や地域と領土上の懸案を抱えています。ロシアとは北方領土、韓国とは竹島、中国や台湾とは尖閣諸島です。 日本の置かれている現状は、住宅地に家を買ったけれど、向こう三軒両隣との境界線争いを同時に背負い込んでしまった。そういう状況です。これでは落ち着けませんよね。 世界史的に見れば、周囲の国とトラブルを抱えていたら、せめて一カ国か二カ国とは仲良くしようと考えるのが普通です。それが常識的な発想です。 けれど、日本は五軒のお隣さんと角(つの)を突き合わせているのに、平然としているように見えます。 それはなぜなのか? おそらく少し離れてはいるけれど太平洋の向こう側にアメリカという世界最強国家があって、そこと軍事同盟を結んでいるから、そのことが大きな安心材料になっているのでしょう』、「日本」が隣接する北朝鮮を除く三カ国とひとつの地域と「領土上の懸案を抱えています」、確かに不安定だが、海が隔てているのがせめてもの幸いだ。ただ、陸で接している多くの国は、隣の国とは国境問題を抱えるケースは多いのではなかろうか。
・『隣国すべてと火種を抱える日本は、異常である  しかし周囲のすべての国と火種を抱えている現実は、ただならぬ事態だと、まともに受け止める必要があります。アメリカの存在に頼りすぎて、現実のトラブルを軽視するのは危険ですし、そもそもアメリカが永遠に強力な同盟相手であり続けるのかどうかは、神のみぞ知ることですから。 そのことをクールに認識することから、今日の日本における地政学は始まるのだ、と考えざるを得ません。 世界地図を南半球を上にして、ユーラシア大陸と日本列島、そして太平洋との位置関係を眺めてみてください。 ロシアや中国の立場に立ってみると、海路で太平洋に出ようとしたら、日本列島がとてつもなく邪魔な存在になっていることが一目瞭然です。日本列島から沖縄まで続く南西諸島が、連続して太平洋への出口をふさいでいる形となっています。 このような場所に存在することが、日本の地政学的な特徴を形成してきました』、確かにロシアや中国にとっては、「日本」は太平洋に出る際の邪魔な存在なのだろう。
・『日本列島は実に絶妙な位置にある  ロシアや中国を封じ込めようとしたら、日本列島の有する戦略的な位置は絶妙です。 東西対立から冷戦の時代、まさに日本列島が西側の不沈空母の役割を果たしていたのは記憶に新しいところです。日本列島に資源と呼ぶべきものは、ほとんどありません。例えば産業革命の三要素と呼ばれている化石燃料も鉄もゴムもありません。日本の特徴といえるのは、ユーラシア大陸の東側に障害物のように存在する列島である――それがすべてです。 ですから日本という国を、地政学的な現実だけから定義づけると、次のようになるのではないでしょうか。 「周辺の国々のすべてとトラブルの火種を抱えている歴史上稀(まれ)な国で、ロシア、中国という大陸の二大国家が太平洋に出ていく障害となる、絶妙な位置に列島が連なっている島国である」 日本は国内総生産(GDP)で見れば、世界三位もしくは四位の経済大国です。四位というのは購買力平価で計算するとインドに負けているからです。名目では三位です。 このように日本は経済的にはとても大きな国です。ということは、潜在的には軍事大国になる可能性を持っているのですね。自衛隊は高性能の航空機や艦艇をたくさん所有しています。その軍事力は相当に強大です。 ローマ時代の政治家であり哲学者だったキケロ(BC106―BC43)は、「戦争とは金だ」と一言でその本質を喝破しています。総力戦の時代に入った今日では、長い目で見ると経済力に勝る国が戦争に勝ちます。兵士に食べさせる食料も、一丁の小銃も、すべてお金がなければ買えません。 それでは日本が、どこかの国と軍事同盟を結ぶとしたら、可能性のある国はどこでしょうか』、「戦争とは金だ」とは言い得て妙だ。
・『自分より貧しい国に、助けを求めるのか?  経済的にも軍事的にも、日本は小国ではありません。かなり大きい国です。大きい国を守るのですから、同盟相手の国は日本より小さい国では不可能です。日本より貧しい国に「守ってくれ」といったらどうなるか。「じゃあ、お金をくれ」という話になるしかありません。発展途上国や日本より小さい国との同盟で、日本の安全保障を求めることは難しいのです。 そのように考えていくと、実効性のある軍事同盟を結べる国は、世界に三つしかないということがわかります。 アメリカ、中国、欧州連合(EU)です。 EUを構成する国々は小さいのですが、全体としての経済規模は、さほどアメリカに劣りません。また、日本は日英同盟の経験がありますから、ヨーロッパと同盟関係を結ぶことも決して唐突ではありません。 経済力と軍事力において自国と同等以上の水準を有する国をパートナーに選ばないと、安全保障条約を結んでも実効性を欠くことになりがちです。大国になると、理想的なパートナーを探すことはかなり難しくなってくるのです』、小国からみれば贅沢な悩みなのかも知れない。

次に、4月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元外務審議官で日本総合研究所国際戦略研究所理事長の田中 均氏による「ミャンマー、ウイグル、香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応」を紹介しよう。
・『「対話と協力」が基本の日本 「制裁」アプローチには一線画す  ミャンマーでは軍事クーデターに対する抗議デモへの治安当局の発砲などの呵責なき弾圧で数百人が死亡し、新疆ウイグル自治区では、米国が「ジェノサイド(集団殺害)」と呼ぶウイグル族への弾圧に国際社会の批判が高まっている。 香港では「一国二制度」の下で認められてきた高度な自治が損なわれ、自由が抑圧される「香港の中国化」が進んでいる。 米国のバイデン大統領は民主党の伝統的な人権外交を進め、日米首脳会談でも日本に中国の人権問題に対する協調を求めた。 日本はこれまで、欧米諸国の「制裁」アプローチとは一線を画し、ODA(政府開発援助)などを使って「対話と協力」で相手国政府に向き合うことを基本にしてきた。 人権の侵害に対して国家としてどう対処するか、改めて日本社会でも議論を深める必要がある』、「改めて日本社会でも議論を深める必要がある」、今さら「議論を深める」のではなく、行動が求められている筈だ。
・『戦後、対照的な道を歩んだ日独 日本の人権外交の背景にあるもの  人権の侵害にどう対応するかでは、ともに第二次世界大戦の敗戦国であり、人権の侵害で厳しく糾弾されたドイツと日本では対照的な道をたどった。 1990年代後半、ドイツが憲法の解釈を変更し、敗戦後初めて、連邦軍の海外派遣を決定したきっかけは、ユーゴ紛争だった。 コソボでアルバニア系の人々がセルビアにより虐殺された問題で、ドイツは初めてNATOの空爆に参加した。NATOの介入は国連の決議なく行われ、先導した米国のクリントン大統領は「人道的介入」と呼んだ。 ドイツはその後もアフガニスタンなどにNATOの一員として軍の派遣に参加している。 ドイツにとっては、ナチスの非人道的な行為に対する反省に立てば、近隣のコソボで人道に対する犯罪が行われているのに、黙視するわけにはいかないという意識が、長い間、海外で軍事的役割を果たすことに慎重だったドイツの殻を破ったといえる。 一方で日本は、戦闘目的での自衛隊の海外派遣は認められないとの憲法解釈を堅持し、もともと他国の人権問題に口を出すことには相当慎重な態度をとってきた。 特に中国など近隣諸国の人権問題には慎重だ。 これにはいくつかの理由が挙げられる。第一には、やはり戦前の日本軍の行動が中国や韓国、東南アジアの国々に爪痕を残し、日本がこれら諸国の人権問題について声を大に叫ぶことは、日本自身に跳ね返ってくるのではという思いを抱いてしまうことがある。 国際社会が協調して制裁を科す場合には同調することは多いが、制裁が問題を解決するとは考えているわけではないこともある。 従って制裁よりも対話による解決を目指してきた。中国の天安門事件の後、真っ先に制裁解除に踏み切ったのは日本だった。 国際社会でも、著しい人権侵害があり人道上の危機に際してどういう行動をとるべきかについては、これまでもさまざまな議論が行われてきた。 国連では、自国民を保護する責任はその国家が負うべきものだが、その責任を果たせない国家については、国際社会がそれらの人々を「保護する責任」が国連決議でも成立している。 しかし、コソボ紛争やソマリア内戦でも多くの犠牲者を出したように、いかに人道的介入といっても紛争解決をもたらすのは容易なことではない。 むしろ泥沼化する危険性を秘めており、国際社会が「保護する責任」を具体化するのは容易ではない』、「日本がこれら諸国の人権問題について声を大に叫ぶことは、日本自身に跳ね返ってくるのではという思いを抱いてしまうことがある」、言い訳に過ぎないと思う。
・『北朝鮮には圧力と対話 ミャンマーは粘り強く説得を  日本は具体的な人権問題にどう行動するのか。 北朝鮮による日本人拉致事件は、日本の国家主権が侵害され個人の人権が著しく侵害された事例だ。 だがこの問題は対話のみで解決が図れるわけではない。 北朝鮮が拉致を認め謝罪し、被害者を帰国させた背景には米国などの強い圧力があったことも事実だろう。 2001年に発足した米国ブッシュ政権は「ネオコン」と呼ばれた保守勢力の力が強く、イラク・イラン・北朝鮮を「悪の枢軸」と呼び、アフガニスタンのアルカイダ勢力の掃討に乗り出すなど、「ならず者国家は武力で崩壊させる」ことを実践していった。 北朝鮮は自国が攻撃される危機と考え米国の緊密な同盟国である日本との関係改善に利益を見いだしたのだろう。 さらに日朝の交渉で日本との関係正常化に伴う経済援助など、拉致問題解決が北朝鮮にも利益をもたらす「ウィン・ウィン」の絵を描いたことが、北朝鮮を動かしたのだと思う。 対北朝鮮の問題では背後に圧力があるという形が対話で結果を生みやすいといえるかもしれない。 一方でミャンマーで日本が一貫して追求してきたのは、90年の選挙で勝利した国民民主連盟(NLD)と国軍との関係の橋渡しだ。 それが長い時間をかけ、スー・チー国家最高顧問を事実上の長とするNLD政権という民主主義的な手続きによる政権誕生につながった。 日本は民主化を支援する最大の援助国であり、民間直接投資も急増した。今回の軍事政権のクーデターや人権抑圧に対しても、日本は欧米諸国のように正面切った制裁のアプローチをとるのではなく、ODAの新規供与は控えつつ、国軍との対話を模索し民主化の軌道に戻す道筋をつけようとしているのだろう。 ミャンマーを巡っては、関係諸国の思惑は異なり、国際社会が一致して国軍に圧力をかけるという姿にはなりにくい。 米欧にとってミャンマーは地理的だけではなく政治的にも経済的にも遠い国だ。一定の制裁は実施しても自らが主導して問題解決に乗り出すわけではない。 中国はミャンマーを抜けベンガル湾に至る石油ガスパイプラインがマラッカ海峡を通らずに済む戦略的重要性を持つので、このパイプラインを守ることを第一と考えている。 必ずしも国軍の統治が好ましいと思っているわけではないが、NLDを支援することはない。 ASEANも一枚岩ではない。度々軍によるクーデターで政権が作られてきたタイなどはミャンマー情勢に介入しようとは考えないだろう。 日本はASEANの中では民主主義が定着しているインドネシアやミャンマーに多額の投資をしているシンガポールとよく協議しつつ、一刻も早く民主化のプロセスに戻るよう説得を重ねるべきだろう。 ミャンマーの軍事政権も新型コロナ感染問題による経済停滞に加え、海外からの投資の激減による経済停滞に長く耐えられるわけではない』、日本が強い態度に出れば、軍部も聞かざるを得ない筈なのに、「一刻も早く民主化のプロセスに戻るよう説得を重ねるべきだろう」、と極めて慎重だ。
・『新疆ウイグル、香港問題は対中戦略全体の中で解決を模索  新疆ウイグルや香港の人権問題は、急速に国力を高めている中国を相手にするだけに、さらに難しい要素を内包している。 新疆ウイグルは共産党支配の下、漢族を超える人口を持つウイグル族への弾圧が激しい。中国は「核心的利益」として外国の介入は許さないとする。 この問題で、欧米諸国はウイグル族への人権抑圧に責任がある当局者に対し資産凍結などの制裁を科し、中国はそれへの報復として欧米の当局者へ制裁を科した。 制裁という強いアプローチは中国の報復を招き、事態が改善されているわけではない。 同様のことが香港問題についてもいえる。 香港の民主化に対する中国の弾圧に対して、米国は香港優遇措置を停止するとともに、香港政府や国の当局者に対して制裁を科している。 しかし、これらの制裁措置は立場の明確な表明という意味はあるが、実効的な効果を上げているわけではない。 むしろその後、中国は香港に国家安全維持法導入に続いて、選挙法を改定して「愛国者」という概念の下に親中国派を立法会選挙の候補者とするような仕組みを導入しようとしている。高度な自治と自由な資本主義を認める「一国二制度」は崩壊したといえる。 新疆ウイグル問題も香港問題も人権など民主主義的価値が大きく損なわれているが、問題の解決は中国との関係への全般的アプローチの中で考えていかざるを得ない。 中国に対して問題の改善に向けて強い圧力をかけられるとすれば、おそらくG7、さらにはQUAD(日米豪印戦略対話)の枠組みだろう。 しかし中国は安保理の常任理事国であり、また経済の面でも世界の中で巨大な市場を持つ国だ。G7といえども従来持っていたような強力なてこがあるわけではない。 米国は同盟国と連携して中国に圧力をかけていくアプローチをとるが、中国も「一帯一路」やワクチン外交などを通じて特に途上国への影響力は飛躍的に拡大している。 事態が早急に改善する見通しは持ちにくいが、米国はハイテク分野などで中国との市場分離(デカップリング)を進めているし、今は外国企業も中国国内への投資を増やすことを躊躇している状況もある。 このような動きが中国の経済成長に著しい障害となってくれば、中国政府は姿勢を変える可能性はあるのだろう。 政治的自由が制約されている共産党体制では経済成長が人々の不満を吸収している。いわば共産党統治の安定と直結しているので、経済成長が続くのかどうかは、新疆ウイグルや香港の人権問題の今後の動きを左右する大きな要素だ』、「「一国二制度」は崩壊した」、というよりも、中国はその国際公約を破ったという方が、実態に近い。ただ、「中国は安保理の常任理事国であり、また経済の面でも世界の中で巨大な市場を持つ国」、なので、「経済成長に著しい障害となってくれば、中国政府は姿勢を変える可能性はある」、のに僅かに期待するほかないようだ。
・『「ESG」や「SRI」は企業に真剣な検討を求めている  現状ではミャンマーや新疆ウイグル、香港の問題で人権外交が解決に向けて早急に成果を上げられることはなかなか見通せない。 ただその中で、民間企業の間でも、投資の評価基準として「ESG(環境・社会・ガバナンス)」や「SRI(社会的責任投資)」といった概念が強まっていることは注目される。 企業にとっても直接投資や取引の相手が人権問題にどう絡んでいるかは無視できない要素となっているからだ。 今後、企業はESGやSRIの観点からもミャンマーや新疆ウイグル、香港での活動には改めて長短両面から検討をせざるを得ないのだろう。 ミャンマーでの国軍関連企業との取引は企業価値を損ないかねない。香港の民主化支援企業との取引は中国本国で製品購入のボイコットを生みかねないが、一方でSRIを重視する投資家から支持されるだろう。 中国政府がウイグル自治区の少数民族に強制労働で作らせているとされている「新疆綿」の使用している企業は、人権侵害を容認、助長していると批判を受け、企業価値を損ないかねないし、逆に使用を停止すれば中国政府からなんらかの制裁をされる可能性がある。だがそれを覚悟で人権問題を優先するのか。 企業も今後は人権問題に対してどう振る舞うべきか、企業ガバナンスの観点から真剣な検討が必要になるだろう』、「「ESG」や「SRI」」が「企業に真剣な検討を求めている」ようになったのはいいことだ。「真剣」に「検討」してほしいものだ。我々も投資家の立場で、企業を厳しく評価してゆくべきだ。

第三に、3月11日付け東洋経済オンラインが掲載した東京大学名誉教授の北岡 伸一氏による「「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/413415
・『第2次安倍内閣は2012年12月に成立し、2020年9月まで2822日、7年8カ月あまり続いた。これは1964年から1972年にかけての佐藤榮作内閣の2798日を超える憲政史上最長記録であり、また第1次と合わせて通算3188日(8年8カ月あまり)というのは、明治大正期における桂太郎の三度の内閣を超える最長記録である。 この安倍政権の成果を、外交安保政策について振り返り、評価することが、本稿の課題である。経済、社会などの政策や、政治運営の手法などは対象としない。 あらかじめ述べておけば、私は、安倍政権の最大の成果は、2015年の平和安全保障法制と戦後70年談話、および2016年における自由で開かれたインド太平洋構想の提唱であって、それは近年の日本外交の中でも特筆すべきものだと考える。 筆者は、このうちとくに最初の2つに深く関与していたので、十分客観的な評価が可能かどうか、疑問がないわけではない。しかし、関与したゆえに知りえたこともあり、それを差し支えない範囲で明らかにすることは、義務でもあろうと思う』、確かに当事者だったのであれば、客観性は期待できない。
・『NSCから安保法制へ 特定秘密保護法  安倍内閣は、特定秘密保護法を2013年10月の国会に提出し、12月、これを成立させた。日本は秘密漏洩に対する処罰が緩く、かつてスパイ天国と言われたものであった。同盟国、友好国との安全保障上の提携を強化するためには、こうした法律が必要だった。 しかし、野党とメディアの多くは、この法案を民衆の権利を弾圧するものとして批判した。そのため安倍内閣の支持率は10ポイントほど下がり、50%を切ったが、安倍首相は、ためらうことなく立法を進めた。のちに、内閣に対する支持は回復した』、私もこれらの法制には反対した。
・NSCとNSS  また、この2013年には、国家安全保障会議(NSC)とその事務局(NSS:National Security Secretariat)が作られた。NSCは、2007年、第1次安倍内閣で着手され、首相の辞職によって中断されていた。安倍内閣はあらためて立法に着手し、NSC/NSSを成立させたのである。それまでは、国防会議という名目的な会議体しかなかったのが、ようやく外交と防衛を総合的に担当する組織が成立したのである。 このNSCについては、それくらいでは日本の縦割り行政は解消されないとか、情報収集機関が不十分なので役に立たないなどというシニカルな批判が、専門家の間にも見られたが、成立以後、肯定的な評価が定着している。 他方で、これが十分だというわけではない。日本独自の情報機関という課題は残っているし、近年の米中貿易紛争を見ても、経済安全保障についての役割がさらに期待されている。) 国家安全保障戦略:National Security Strategy(また2013年12月には、国家安全保障戦略の策定がなされた。日本の基本的な安全保障戦略を策定することは、対外的な安定性の点でも、国内の啓蒙、政策的統一のために、きわめて必要なものであるが、日本にはそれがなかった。 わずかに、1957年5月、岸内閣策定にかかる国防の基本方針があったが、かなり古く、また極めて簡潔なもので、政策指針としては十分ではなかった。戦前の日本でも、外交と軍部の対立は根深く、陸軍と海軍の対立も深刻だった。その意味で、外交と防衛をカバーする国家安全保障戦略の制定は、日本にとって画期的なものだった。 その中心は、自由で安定した国際秩序の維持が日本の基本的な国益であり、その維持強化のために、日本は積極的な役割を果たすべきだということであり、これを積極的平和主義と呼んだ。具体的には、自衛力の強化、日米安保の強化のみならず、国際平和活動、ODA(政府開発援助)、外交による平和構築にも、より積極的に取り組むべきだという内容だった。 これに対しても、一部から、政府は世界中に自衛隊を進出させようとしているという批判があったが、これらは、まったく事実無根であって、以下に述べるとおり、安倍内閣はPKOなどについてはきわめて慎重で、むしろ臆病なほどであった』、確かに「国家安全保障戦略の制定」は画期的だった。
・『防衛装備品輸出三原則  2014年4月、国家安全保障戦略に基づいて、防衛装備品輸出三原則が定められた。元来、日本は武器の輸出を極めて厳格に制限していた。1970年代半ばまでは、共産主義国、国連で制裁を受けている国、紛争当事国には武器を輸出しないという方針だったが、1974年、三木内閣において、原則として武器は輸出しないという方針に転じた。 のち、1983年、中曽根内閣は方針を転換し、同盟国アメリカへの武器技術輸出は可能だとしたが、それ以外は依然として原則的に禁止だった。 もちろん、他国を侵略したり、国内で国民を弾圧したりするような国には、武器を輸出すべきではない。しかし世界には他国の脅威にさらされて防衛力を強化しようとしている国もある。そういう国々に対しては、日本は資金等の援助などをすることがある。) それゆえ、そうした国々に対しては、武器の輸出は一切禁止とするのではなく、一定の範囲で防衛装備品の輸出は可能とすべきだとして、新しい原則が立てられたのである。 これまで、武器輸出三原則(事実上の禁止)の結果、日本の防衛産業は海外に市場を持たず、国内の自衛隊だけを顧客とせざるをえなかった。 その結果、日本の武器産業は高価で競争力を持たなくなった。また、現代の武器はきわめて高価で、国際共同生産となることが多いが、この原則により、国際共同生産に参加することもできなかった。そうした禁止をなくしたことは、より柔軟な防衛政策が可能となることを意味した。 ただ、すぐにこれが効果をあげたわけではない。オーストラリアに対する潜水艦の売り込みに、日本は失敗したが、経験不足は否めなかった。しかし、日本の武器が求められ、それが防衛用に使われ、日本の防衛産業が一息つけるなら、今後とも進められるだろう』、「オーストラリアに対する潜水艦の売り込みに、日本は失敗」、失敗したのは残念だが、コストが高目だったのではなかろうか。
・『開発協力大綱改定と「国益」 開発協力大綱(2015年2月には開発協力大綱が改定された。 そこで大きな話題となったのは、まず、国益という言葉が登場したことである。これは確かにODAの世界ではあまり見かけない言葉である。 しかし、途上国の発展に貢献する中で、援助国の側の利益をも目指すことは、これまでも普通に行われていた。この開発協力大綱に言う国益は、国家安全保障戦略が、日本にとって、平和的国際環境の維持が最も重要な国益であると述べていることを踏まえたものである。 このように国益を定義すれば、国税を使って支援をする以上、開発協力が日本の利益を目指すのは自然なことである。 また、この大綱において、軍に対する協力も、非軍事的なものならば可能となった。例えば、軍人の留学生を受け入れることが可能となった。戦前の日本では、軍人に対する教育が偏狭なものであったことが致命的だった。 それゆえ現在の防衛大学校では、幅広い見識と視野を持つ人材育成を目指している。外国の軍人に対しても、こうした教育を提供することは、国際協力の範囲で考えて構わないだろう。) 安保法制懇談会報告と平和安全法制(こうした政策の延長上に行われたのが、2014年5月の安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)の再開と報告書の提出、この報告書に基づく7月の閣議決定、そして2015年9月の平和安保法制の成立である。 まず、安保法制懇は、第1次安倍内閣において活動していた懇談会(2007年5月設立)を、ほぼ同一のメンバーで再度立ち上げた。座長は柳井俊二国際海洋裁判所判事が、座長代理は私が務めた。 その提言は、日本国憲法9条2項は必要最小限度の自衛力までも禁止はしていないという1954年解釈と、これを支持した1959年最高裁判所の判決に基づき、現代においては集団的自衛権の部分的行使は必要最小限度のうちに入ると考えるべきであって、集団的自衛権行使を不可とした1972年法制局解釈を修正すべきだとした。 それ以外に9条1項の「武力の行使による国際紛争解決の禁止」は、日本を当事者にする国際紛争に関するものであって、日本が当事者でないPKOなどにおいて、武力の行使ならぬ「武器の使用」まで禁止されているという従前の解釈は国際常識に反するとして、改めるように提言した』、なるほど。
・『2015年安保法制の成立と海外の反応  これに対し政府は、日本周辺における米軍などとの共同活動について、集団的自衛権の行使は可能と判断したが、憲法9条1項に関する懇談会の提言については受け入れず、これを7月の閣議決定とした。 これを盛り込んだ法律は2015年に提出され、異例の長い審議を経て、成立した。日本の憲法学者の多くは反対し、国会審議に際しては、多くのデモが国会を取り囲んだ。 しかし、日本の憲法学者の多数派の議論はきわめて特異なものであることには留意が必要である。そもそも憲法は国家の運用のルールであり、国家が国際競争の中で活動することを前提としているのにもかかわらず、日本の憲法学者は国際法や国際政治にほとんど関心を持たず、ただ成文憲法に合致しているかどうかだけを判断するのである。 2015年安保法制の成立は、海外の多くの国々によって歓迎された。かつて日本が安全保障政策を強化すると、野党やメディアの一部はこれに反対し、アジア諸国は不安を覚えると言うことが普通だった。しかし、今回は、中国、韓国、北朝鮮からも強い反対はなく、東南アジア諸国は安保法制の成立を歓迎した。彼らは中国の脅威にさらされているのであって、当然の反応だった。) さらに興味深いことに、安保法制成立から5年を経た今、反対論は著しく後退している。反対論の拠点であった朝日新聞の2020年12月18日の記事によれば、安保法制を支持する人は反対論を明白に上回っている。 ここで想起したいのは、トランプ大統領が繰り返し、「米兵が日本を守るために血を流して戦い、日本人はそれをソニーのテレビで見る。アンフェアーだ」と言っていたことである。このトランプ発言は、現在では誤りであって、日本の防衛のために行動している米軍が危険に遭遇したときは、日本はともに戦うことになっている。しかし、安保法制が成立するまでは、トランプ発言のとおりの状態だったのである。 事実として、安保法制成立以後、日本とアメリカの間では飛躍的に情報の共有が進んでいる。ともに危険を負担する間でなければ機微な情報を共有しないのは当然のことであって、安保法制はその意味でも大きかったのである』、「飛躍的に情報の共有が進んでいる」、のは確かにプラスの効果だ。
・』PKOの現状とその他の課題  PKOの現状(しかし、憲法9条1項に関する懇談会提言を受け入れなかったように、安倍内閣の国際平和協力に対する姿勢は十分ではなかった。2016年、南スーダンのジュバで内戦が起こったあと、政府は、PKOに参加している他国の部隊や一般市民が襲撃を受けたときは、自衛隊が助けに行けるよう、「駆け付け警護」という世界に例のない法律を作った。 国連平和維持活動においては、そうした友軍支援や市民保護は、明文に規定していなくても、当然の義務であるが、自衛隊は法的根拠を必要とした。しかし、それから間もなく、南スーダンの自衛隊は引き上げてしまったのである。 その他の課題(ともあれ、PKOを別として、安倍内閣のもとで安全保障政策は強化された。それでも、中国の軍事的膨張は急速であり、尖閣諸島周辺での行動も一段と活発化しており、海上警察の組織や役割も変更して強化している。日本の安全保障がこれで十分であるとは到底言えない状況である。 その1つは、ミサイル防衛の不備である。2019年、陸上イージスの配備が中止されることとなった。それは、ミサイルからの落下物の安全が保障されていないという理由であったが、ミサイル防衛の限界を示したものだった。 中国はもとより、北朝鮮のミサイルが著しく発展した今、ミサイル防衛によって本当に日本の安全を守れるか、疑問である。しかも、性能や価格を十分吟味しないで購入を決定していた疑いが濃い。) いずれにせよ、ミサイル防衛を中心とする防衛政策や、その基底にある専守防衛という原則自体が、不可能になりつつあるが、まだ有効な対処はなされていない。 2020年には新型コロナが世界を直撃した。日本の感染者は相対的に少なかったが、検査の数にせよ、病院の準備にせよ、ワクチンの開発にせよ、資金の給付にせよ、多くの欠陥が明らかになった。パンデミックは、いわゆる非伝統的安全保障と呼ばれるものの1つであるが、これにおいて日本の対応は失敗だった。有事において政府が強い権限を行使し、国民の安全と福祉を守るという仕組みが、根付いていないことが明らかになったのである』、「陸上イージス・・・性能や価格を十分吟味しないで購入を決定していた疑いが濃い」、お粗末な騒動だった。「中国はもとより、北朝鮮のミサイルが著しく発展した今、ミサイル防衛によって本当に日本の安全を守れるか、疑問である:、その通りだ。
・『歴史認識問題  次に、いわゆる歴史認識の問題に移りたい。これも、外交の大きな制約要因になりうるので、外交安全保障政策の一環だと考えるべきである。 安倍首相が2013年12月末に靖国神社を訪問すると、中国、韓国は激しくこれを批判し、同盟国のアメリカまで、失望したというコメントを発表した。 これは、同盟国としては、やや行きすぎた反応だったと思う。なぜなら、歴代の首相は、日本は侵略したことを認め、A級戦犯には責任があると述べ、しかし祖国のために生命をささげた一般兵士のために参拝すると言ってきた。今回も同様だった。これに対して中国や韓国が批判するのはそれなりの意図があってのことであり、ある程度は理解できるが、アメリカが批判するのは行きすぎだと私は考える。 しかし安倍は右翼だとする論調が欧米、とくにアメリカのリベラル系の学者に多かったことは事実である。 2014年にはマグロウヒル社の教科書に、「日本軍は14〜20歳の女性を、20万人も強制的に徴用し、……『慰安所』……で働かせた」と記されていることが判明し、日本の外務省が訂正を求めたところ、2015年5月、アメリカの学者グループはこれを歴史に対する検閲であるとして抗議書簡を発出した。) しかし、今日明らかになっているところでは、「慰安婦」のほとんどは成人であり、その中には日本人が多く、朝鮮人が多数ではなかった。また朝鮮では新聞広告や業者の勧誘によって応募した女性が多く、強制的に徴用した証拠は見つかっていない(強制的に慰安婦にされた人は、旧オランダ領インド〈現在のインドネシア〉における少数のオランダ人女性などがあった。しかし、朝鮮半島においては、強制連行されたという証拠は見つかっておらず、大部分は新聞記事を見たり、ブローカーの紹介によって応募した成人女性だった。かつて朝鮮半島で強制連行があったと報道した朝日新聞は、2014年8月、誤りであったとして取り消し、謝罪した。なお、上記オランダ人元慰安婦に対しては、日本政府は謝罪補償を行っている)。 また慰安婦の総数についても、日本の中で最も韓国側に近い立場の研究者でも4万5000人という数字をあげており、20万人というのが甚だ誇張されたものであることは明らかである。さらに、日本の外務省はアメリカの学者や出版社に対して何らの権力を有しておらず、事実に反するとの指摘や訂正の要求が検閲というのは、これまた荒唐無稽な話であった。 日本ではこの問題に対し、慰安婦問題を専門とする学者を代表して、2名の有力教授が共同で記者会見をした。その1人、左派と目されている大沼教授すら、アメリカの学者の動きを批判して、自分がそういう指摘を受け取ったら、自分の誤りを気づかせてくれたかもしれないので、まずお礼の手紙を書くと述べた。 しかし、アメリカの世論はそのようなものではなく、事実に即さない感情的なものだった。ちなみに、こうした行きすぎたリベラルに対するアメリカ国内の反感が、2016年におけるトランプ候補の大統領当選の大きな背景だったように思われる。 70年談話の焦点(安倍首相はこうした背景に、アメリカの理解を得ることが最も重要だと考え、2014年、オーストラリアのキャンベラにおけるスピーチで、率直に戦争について謝罪して、歓迎を受けた。それから、2015年4月、ワシントンにおいて、連邦上下両院議員合同会議で演説を行い、大喝采を浴びた。 国内では、20世紀における日本のあり方を考え、21世紀の世界と日本を考える懇談会(21世紀構想懇談会)を組織した。座長が西室泰三東芝相談役、私が座長代理を務めた。世間の関心は侵略という言葉を使うかどうかに収斂していた。) 懇談会報告は、20世紀初頭の世界から説き起こし、世界が植民地主義に覆われていて、日本もその一員であったこと、しかし第1次大戦後、国際協調体制が成立していたのにもかかわらず、それに最初に大きな打撃を与えたのは満州事変であって、日本の責任はとくに重いとして、その責任を改めて想起し、戦後の日本は国際協調体制の推進に力を入れてきたことを述べている。 また、日本は戦争と植民地統治について何度も謝罪し、相当の補償も行っているのであり、これ以上、国民が謝り続ける必要はない、ただ、こういう歴史があったことを忘れないという責任のみが残っている、という趣旨を述べた。 安倍首相の談話は基本的にこの線で書かれた。その結果、侵略という言葉を使うことに反対していた右派(例えば渡部昇一上智大学名誉教授)もこれを支持し、侵略という言葉を使うことを強く求めていた左派の知識人およびメディアも、一部の例外を除いて、おおむね賛成ないし黙認するに至った。 これで、ともあれ、長く続いた歴史認識問題は一応の決着となった。懇談会は当然の事実を述べたにすぎない。しかしこれを70年談話という注目度の高いところで述べたことが、広く納得を得たのである』、「長く続いた歴史認識問題は一応の決着となった」、のはいいことだ。
・『日韓慰安婦に関する合意が成立したが  そして、その延長線上に、12月、日韓慰安婦に関する最終合意が成立した。 そもそも、慰安婦問題については、1995年に村山首相当時、政府と民間の合同でアジア女性基金が作られ、首相の謝罪の手紙と償い金を渡した。朝鮮以外の元慰安婦はこれを受け取り、韓国で認定されていた200名あまりの元慰安婦のうち、61名は、これを受け取った。 それ以上に、2015年12月には、日本の拠出によって韓国に新たな基金を作り、これを持って慰安婦問題は終わりとするという合意が、両国の間に成立したのである。生存している元慰安婦のうち46人のうち36人がこれを承認し、資金を受け取った。 ところが、朴槿恵大統領のあとに大統領となった文大統領は、この合意は元慰安婦の声を十分反映していないとして、問題を蒸し返した。) あわせて、戦時中のいわゆる徴用工に対する補償問題が蒸し返され、韓国の裁判所は請求権を認める判決を下している。 しかし、徴用工の請求権は1965年の日韓基本条約において、明示的に、解決されている。韓国の政策は、従来の基本的合意を一方的に変更するもので、日本としては受け入れることができない。これは日本では、野党もメディアも一致するところである。外交安全保障上、隣国との関係が順調でないのは遺憾なことであるが、すべては韓国の責任である。 その後、慰安婦問題で影響力を持っていた団体が、資金の不正使用をしてきたことが明らかになっており、また事実に即した研究も少しずつ増えてきていて、いわゆる慰安婦問題はやや下火になっている。しかし、韓国でまた火が付く可能性はないとは言えない。中国とアメリカとの関係が厳しくなっている現在、なお懸念の残る問題である』、「韓国」が反日を政権浮揚の手段にしているのは、困ったことだ。
・自由で開かれたインド太平洋(FOIP)  TPP11(TPPは2005年に結ばれたシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドによる環太平洋戦略的経済連携協定に始まる。 これに2008年、日米などが協議に参加し、2015年10月、上記4カ国に、オーストラリア、カナダ、日本、マレーシア、メキシコ、ペルー、アメリカ、ベトナムが加わった12カ国が、環太平洋パートナーシップ(TPP)の締結について、大筋合意に至り、翌2016年2月、署名するに至った。これは高い水準の野心的、包括的な経済連携協定で、事実上は中国に対抗する意味を持つものと思われていた。 2017年1月、トランプ大統領は、政権発足と同時にTPPからの脱退を宣言した。しかし残り11カ国は内容を修正して新たな協定(TPP11)を締結し、2018年末、協定は発効した。このTPP11を実現するにあたって、安倍首相のリーダーシップは大きかった。 FOIPの提唱(2016年8月には、安倍首相はケニアのナイロビで開かれたTICADⅥ(第6回アフリカ開発会議)において、自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP、のちに自由で開かれたインド太平洋「構想」と言い換えている)を提唱した。) FOIPは、2013年に中国が提唱した一帯一路と対抗するもののように言う人がいる。しかし、むしろ逆である。日本の戦後の復興と発展は、東南アジアからインドに及び、また日本は1970年代からODAなどで中東にも関与するようになっていた。そして1993年からTICADを開催している。つまり、日本の発展が自由で開かれたインド太平洋の成立を促してきたのであって、むしろ、そこに挑戦してきたのが中国の一帯一路だったのである。 FOIPは、それは単に経済連携の構想ではなく、法の支配や航海の自由という普遍的原則と不可分であり、民主主義という価値とも結び付いている。 FOIPの不可欠の一部が、例えば集団的自衛権の部分的行使容認を含む日米関係の強化だった。また、安倍首相はインドのモディ首相ととくに親しい関係を結び、これがFOIPの骨格となっていることはあらためていうまでもない』、「FOIP」は中国が覇権主義的性格を強めているなかで、1つの対抗手段だ。TPPに米国を復帰させるのも重要な課題だ。
・『大阪G20で合意されたインフラ投資原則  2017年6月5日、しかし安倍首相は日経新聞の会議で講演し、中国の一帯一路とむやみに対立するのではなく、事業に開放性、透明性、経済性があり、また対象国の債務健全性に配慮するものならば、協力が可能だと述べた。 これは、2018年大阪におけるG20の成果文書に取り入れられた。やや異なった表現ではあるが、インフラ建設において以上の4原則、それに環境配慮などの原則を守ることが合意された。中国はG20の一員であるから、この原則にコミットすることになったのである。 FOIPという言葉は、その後、アメリカも使うようになった。トランプ政権の間に日米印豪の間の安全保障協力(QUAD)が進むようになったが、これもFOIPの一部をなすと考えられる。中国の南シナ海支配に抗議する航海の自由作戦も、その一部である。) FOIPの内容に、日米の間で完全な合意があるわけではない。バイデン政権のコミットについても、まだ不明なことも多い。しかし、安倍政権が自由で開かれたインド太平洋構想を打ち出し、広めていったことには、誰も異論のないところであろう』、「大阪G20で合意されたインフラ投資原則」は、中国への一定の歯止めになる可能性もあり、確かに成果だ。
・『安倍内閣の外交安保における成果  広く外交安保に関係するもので、安倍首相が重要政策として挙げたもののうち、憲法改正には手が届かなかったし、日露領土問題でも拉致問題でも前進はなかった。 しかし、憲法改正について言えば、安倍首相の打ち出した現行の9条を維持して第3項を付け加えるというやり方は、戦力不保持を定めた第2項を維持するということであり、どれほど日本の安全に寄与しうるかは、やや疑問の残るところである。日本の安全にただちに役に立つという点では、安保法制のほうが、明らかに意味があった。 また、拉致問題が解決しなかったことは遺憾だったが、もし解決しても北朝鮮の核とミサイルの脅威まで除去はできなかっただろう。ロシア問題については、交渉の内実が明らかになっていないので、コメントは控えておきたい。 安倍首相の外交安保における成果は、本稿冒頭で在任期間を比較した佐藤榮作の沖縄返還や、桂太郎の日露戦争などとは、比べられるようなものではない。 しかし、中国の経済的・軍事的膨張と、強圧的な対外政策を前に、日本に根深い原理主義的な平和主義を考えるとき、相当の成果を挙げたと言って過言ではないだろう。 同盟国のアメリカでは、オバマ政権からトランプ政権へと大きな転換があった。その中で安倍首相はワシントンの連邦議会で演説(2015年4月)し、オバマ大統領の広島訪問(2016年5月)を実現させ、さらに真珠湾を訪問(2016年12月)し、かつ、トランプ大統領との間で信頼関係を築いた。これは、重要な成果であったと言ってよいだろう。 ただ、安倍内閣の成果が本当に実のあるものとして定着するには、これからの歴代政府の努力にかかっていると言ってよいであろう』、「北岡」氏安部外交への評価は、当事者だっただけに、予想通り異常に高い。それでも、安部外交を締めくくる意味でも、取上げた次第である。
タグ:東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 出口 治明 田中 均 日本の外交政策(その9)(出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は 世界に3つだけ」、ミャンマー ウイグル 香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応、「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果) 「出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は、世界に3つだけ」 『教養としての「地政学」入門』 確かにロシアや中国にとっては、「日本」は太平洋に出る際の邪魔な存在なのだろう。 「戦争とは金だ」とは言い得て妙だ。 小国からみれば贅沢な悩みなのかも知れない。 「ミャンマー、ウイグル、香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応」 「改めて日本社会でも議論を深める必要がある」、今さら「議論を深める」のではなく、行動が求められている筈だ。 「日本がこれら諸国の人権問題について声を大に叫ぶことは、日本自身に跳ね返ってくるのではという思いを抱いてしまうことがある」、言い訳に過ぎないと思う。 日本が強い態度に出れば、軍部も聞かざるを得ない筈なのに、「一刻も早く民主化のプロセスに戻るよう説得を重ねるべきだろう」、と極めて慎重だ。 「「一国二制度」は崩壊した」、というよりも、中国はその国際公約を破ったという方が、実態に近い。ただ、「中国は安保理の常任理事国であり、また経済の面でも世界の中で巨大な市場を持つ国」、なので、「経済成長に著しい障害となってくれば、中国政府は姿勢を変える可能性はある」、のに僅かに期待するほかないようだ。 「「ESG」や「SRI」」が「企業に真剣な検討を求めている」ようになったのはいいことだ。「真剣」に「検討」してほしいものだ。我々も投資家の立場で、企業を厳しく評価してゆくべきだ。 北岡 伸一 「「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果」 確かに当事者だったのであれば、客観性は期待できない。 私もこれらの法制には反対した 確かに「国家安全保障戦略の制定」は画期的だった 「オーストラリアに対する潜水艦の売り込みに、日本は失敗」、失敗したのは残念だが、コストが高目だったのではなかろうか。 「飛躍的に情報の共有が進んでいる」、のは確かにプラスの効果だ。 「陸上イージス・・・性能や価格を十分吟味しないで購入を決定していた疑いが濃い」、お粗末な騒動だった 「中国はもとより、北朝鮮のミサイルが著しく発展した今、ミサイル防衛によって本当に日本の安全を守れるか、疑問である:、その通りだ。 「長く続いた歴史認識問題は一応の決着となった」、のはいいことだ。 「韓国」が反日を政権浮揚の手段にしているのは、困ったことだ 「FOIP」は中国が覇権主義的性格を強めているなかで、1つの対抗手段だ。TPPに米国を復帰させるのも重要な課題だ 「大阪G20で合意されたインフラ投資原則」は確かに大きな成果だ。 「大阪G20で合意されたインフラ投資原則」は、中国への一定の歯止めになる可能性もあり、確かに成果だ 「北岡」氏安部外交への評価は、当事者だっただけに、予想通り異常に高い。それでも、安部外交を締めくくる意味でも、取上げた次第である。
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バイデンと日米関係(その1)(周到準備の日米首脳会談で菅政権が背負う「重い宿題」、日米首脳会談に強烈な不満の中国こそ 戦前日本の失敗を学ぶ時、「中国激怒」の日米共同声明、それでも台湾を守る理由とは) [外交]

今日は、バイデンと日米関係(その1)(周到準備の日米首脳会談で菅政権が背負う「重い宿題」、日米首脳会談に強烈な不満の中国こそ 戦前日本の失敗を学ぶ時、「中国激怒」の日米共同声明、それでも台湾を守る理由とは)を取上げよう。

先ずは、4月19日付け日経ビジネスオンラインが掲載した明星大学経営学部教授(元経済産業省通商政策局米州課長)の細川昌彦氏による「周到準備の日米首脳会談で菅政権が背負う「重い宿題」」を紹介しよう。
・『菅義偉首相とバイデン米大統領による初の対面での日米首脳会談は“成功”で終わった。両首脳ともに外交当局同士による事前のよく練られたシナリオ通りに、地味ながら堅実に対応したようだ。まさに「周到準備の首脳会談」だった。予測可能性のないトランプ前大統領の際の「出たとこ勝負の首脳会談」とは予想通り様変わりだ。 日米ともに「トップダウン」から「ボトムアップ」に変わった。事前に見通した前稿「日米首脳会談へ、『人権』対『グリーン』の駆け引き」で首脳会談の全体像を指摘したが、大方は予想通りの展開だった。 ポイントはこうだ。(1)米国は対中国で日本に腰を入れた対応を求めて、日米首脳会談を対中戦略の重要な場と位置付けている。(2)3月の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)はその前哨戦だった。(3)「台湾」と「人権」が菅政権の対中姿勢を問う“踏み絵”としてメインテーマとなる。 そしてさらに付け加えたのが、「米国から難題が投げかけられたとき、日本は様々な分野で日米の協力案件を用意して、そこだけに焦点が当たるのを避けてきた。それがこれまでの対米外交の常とう手段だ」ということだ。 今回の場合、日本が二の足を踏む「台湾」と「人権」にばかり焦点が当たるのを避けて、日本側で周到に用意されたのが、「気候パートナーシップ」と「競争力・強靭(きょうじん)性パートナーシップ」だ。米国側も受け入れそうなものを仕立てたものだ。その詳細は省くが、この書きぶりを見ると、その原案、たたき台は日本側が詳細に書き込んで用意したことが私の経験から一見して分かる。 日本のメディアの事前報道でも、これらが報じられていたが、必ずしも米国の関心のプライオリティと合致しているわけではない。日本では、バイデン政権が気候変動問題を重視していることから、あたかもこれが日米のメインテーマの一つであるかのように報道されるが、そうではない。米国の報道を見ても米国の世論の関心は気候変動には向けられていないことがわかる』、「「周到準備の首脳会談」だった。予測可能性のないトランプ前大統領の際の「出たとこ勝負の首脳会談」とは予想通り様変わりだ。 日米ともに「トップダウン」から「ボトムアップ」に変わった」、的確な表現だ。
・『本丸は「台湾」と「人権」  あくまでも今のバイデン政権にとっての「本丸」は台湾と人権であった。米国にとって今回の首脳会談は「中国対抗のための首脳会談」だ。その対中政策の中核であるにもかかわらず、日本側の腰が引けているからこそ、よく言えば「すり合わせする」、悪く言えば「追い込む」。そこに今回の首脳会談の目的があった。 3月の2プラス2から周到に仕掛けていくシナリオは、さすがに実務重視のバイデン政権の真骨頂だ。米国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官に任命されたカート・キャンベル氏が仕切ったようだ。 仕上がった共同声明だけを表面的に読んでも、そうした本質は見えてこない。当然のことながら、事前準備で最後まで共同声明の文言づくりで難航したのが、この2つの本丸案件だった。 台湾問題では、米国は2プラス2の共同文書で日本に飲ませた「台湾海峡の平和と安定の重要性」という文言をさらに一歩踏み込んで強めようとした。他方、日本は中国の反発を恐れて2プラス2どまりの表現で踏みとどまろうとした。そうした綱引きの妥協の産物が最終の文言になった。 人権もそうだ。2プラス2の共同文書の「深刻な懸念の共有」の文言もさらに踏み込むことを米国は要求したが、日本は抵抗し切ったようだ。欧米諸国が制裁に踏み出しているのとは一線を画して、伝統的な“対話路線”にこだわった。 今回の共同声明の文言では米国は妥協したが、これで終わりではない。忘れてはならないのが人権重視の欧州の存在だ。6月の英国での主要7カ国首脳会議(G7サミット)において日本は孤立しかねない』、外交交渉の経験が長い「細川」氏ならではの深い分析だ。確かに「6月の・・・G7サミット)において日本は孤立しかねない」、ことも要注目だ。
・『重い宿題にどう対応するか  とりあえず共同声明の文言は合意したが、問題はこれからだ。ある意味、首脳会談はキックオフだ。菅首相はこの2つの問題で大きな宿題を背負って日本に帰国した。 台湾問題では日本が日米での抑止力強化のために主体的に何ができるかが問われる。具体論として、中距離ミサイルの配備問題を巡る議論は避けて通れないだろう。さらにもっと大事なのは、台湾有事において後方支援だけにとどまらず、限定的な集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」に当たるのかどうかといった議論も不可避の重いテーマだ。 人権では共同声明は「深刻な懸念」で済ませても、何らかの“行動”あるいは“行動の用意”も必要になってこよう。国内では親中派の反対で国会決議もできない状況だ。国会決議は日米首脳会談で米国に押し込まれてから行う予定のようだ。 制裁の根拠となる法律がないことを理由にしているが、欧米からは言い逃れにすぎないと見られている。発動するかどうかは別にして、せめて“行動の用意”ぐらいはあるべきではないか。「人権侵害制裁法」の制定を目指した超党派の議員連盟も本気度が問われる』、「制裁の根拠となる法律がないことを理由にしているが、欧米からは言い逃れにすぎないと見られている。発動するかどうかは別にして、せめて“行動の用意”ぐらいはあるべきではないか」、その通りだ。
・『日本企業も他人事では済まされない  さらにもう一つの深刻な問題は企業の行動も問われようとしていることだ。米国は強制労働で作られた製品の排除を目指した通商政策を考えている。欧州も企業に人権問題を厳しくチェックすることを義務付けようとしている。 米欧が共鳴する中で、日本企業も他人事では済まされない。他方でこうした動きに危機感を抱いた中国は反発して、企業に対して不買運動などでけん制している。日本企業にとってまさに「前門の虎、後門の狼(おおかみ)」の状況だ。 中国は早速、「強烈な不満と断固反対を表明する」との談話を出して反発した。台湾問題も香港・新疆ウイグル自治区の人権問題も中国にとって核心的利益としているので、ある意味当然だろう。しかし中国の反発は織り込み済みだ。3月の2プラス2の共同文書に盛り込んだ段階で、中国の反発の瀬踏みはされている。むしろ、今の中国に対しては反発がないような共同声明では意味がない。 今後、中国は日本に対して、硬軟織り交ぜて揺さぶりをかけてくるだろう。中国からは日本は揺さぶりやすい相手と見られていても仕方がない。中国ビジネスを人質にとられた産業界や親中派の政治家への働きかけも強まろう。逆にいくつか見せしめ的にターゲットとされる企業が出てくる可能性さえある。 そうした揺さぶりに腰が定まった対応ができるかどうかだ。ここまで対中姿勢を鮮明にさせられたことがなかっただけに、これから菅政権は正念場を迎えことになる。 追記:前稿の追記でこう指摘した 「日米首脳会談が直前になって1週間延期という異例の事態となった。表向きは「コロナ対応など準備に万全を期するため」と日本政府は説明するが、額面通りに受け取る者はいない。(中略)ワシントンの事情通の間では、ケリー米大統領特使(気候変動問題担当)の外遊日程との関係がささやかれている。米国主催の気候変動問題サミットの根回しに奔走しているケリー特使の訪中説も浮上している」 これも推測通りだった。恐らく共同声明に対する中国の反発が当然予想されるので、ケリー特使の訪中前に共同声明が出ることを避けるように米側でスケジュール調整された結果だろう』、「中国ビジネスを人質にとられた産業界や親中派の政治家への働きかけも強まろう。逆にいくつか見せしめ的にターゲットとされる企業が出てくる可能性さえある」、ただ、「中国」としては「日本」を完全に「米国の側」に追いやらない範囲で、今後圧力をかけてくる懸念がありそうだ。

次に、4月20日付け日経ビジネスオンラインが掲載した元外務省官房参事官でキヤノングローバル戦略研究所 研究主幹の宮家 邦彦氏による「日米首脳会談に強烈な不満の中国こそ、戦前日本の失敗を学ぶ時」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/042000252/
・『バイデン米政権が発足して初の日米首脳会談。事前の推測記事はさまざまだったが、終わってみれば、「まずまず合格点」ではなかろうか。ジョー・バイデン大統領が初めて対面で会う外国首脳として、アジアの同盟国・日本の菅義偉首相を選んだこと自体、今後の米外交の方向性を暗示する重要な動きである。アジアはもちろん、欧州や中東の各国も注目したに違いない。今回の首脳会談は新たな時代の外交の始まりを予感させるものだった。 一方、批判がないわけではない。本邦の一部有力紙には、「日本の受け身外交」「米国に踏み絵を踏まされる」「対中戦略は主体的に」といった論調が散見された。昭和30年代ならいざ知らず、2021年の成熟した日米関係に対し、旧態依然の「対米追随論」を繰り返すのはいかがなものか。これでは「日本は米国の戦略的属国で、対中関係の破壊をもくろんでいる」とする中国外交部のプロパガンダと大差ない。論ずべき問題の本質は別にあると見るべきだ。 一連の行事が終了した後、ワシントンの中国大使館ウェブサイトは次のような報道官声明を掲載した。 ●台湾、香港及び新疆の問題は中国の内政であり、東シナ海及び南シナ海は中国の領土主権と海洋権益に関わる。これらの問題は、中国の根本的利益に関わるものであり、干渉は受け入れられない。我々は、日米首脳による共同声明と関連する表明に強烈な不満と断固たる反対を表明する。 ほぼ同時期に、東京の中国大使館ウェブサイトも次のメッセージを掲載した。 ●日米双方が首脳会談および共同声明において、中国に対し、言われ無き指摘をし、中国の内政に乱暴に干渉し、中国の領土主権を侵犯したことに対し、中国側は強い不満と断固たる反対を表す。 中国側の「不満」と「反対」は、常に「強烈」で「断固」たるものだから、こうした反応自体に驚きはない。むしろ、中国がかかる立場を表明せざるを得ない背景を分析することで、今回、日米共同声明が言及した「中国との率直な対話」や「中国との協働」の可能性を模索できるのではないか。筆者の問題意識はここにある。日米から見た首脳会談の意義に関する論評はほぼ出尽くした感がある。されば、本稿では中国から見た日米共同声明の問題点を書こう』、「中国から見た日米共同声明の問題点を書こう」、とは興味深そうだ。
・『中国を「名指し」批判し、台湾・人権にも言及  今回の日米共同声明は中国を厳しく批判している。改めて該当部分をここに紹介しよう。 ●菅総理とバイデン大統領は、インド太平洋地域及び世界の平和と繁栄に対する中国の行動の影響について意見交換するとともに、経済的なもの及び他の方法による威圧の行使を含む、ルールに基づく国際秩序に合致しない中国の行動について懸念を共有した。 ●日米両国は、東シナ海におけるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対する。 ●日米両国は、南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明するとともに、国際法により律せられ、国連海洋法条約に合致した形で航行及び上空飛行の自由が保証される、自由で開かれた南シナ海における強固な共通の利益を再確認した。 対中批判はこれだけではない。今回の共同声明は、従来言及したことのない「台湾」や中国国内の「人権問題」にも、以下の通り、あえて触れている。 ●日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。(中略)日米両国は、中国との率直な対話の重要性を認識するとともに、直接懸念を伝達していく意図を改めて表明し、共通の利益を有する分野に関し、中国と協働する必要性を認識した。 ●日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する。 当然、誇り高き中国は今回の日米共同声明に怒り心頭だろう。「国際秩序に合致しない中国の行動」「南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張」などと中国が「公然」かつ「名指し」で批判されたからだ。では、中国は今回、不意打ちを食らったのだろうか。そう問われれば、答えは「ノー」だ。こうした対中「名指し」批判を含む表現は、本年3月に東京で開かれた日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)の共同文書にたっぷりと書き込まれていたではないか。 「もしかしたら、バイデン・菅の首脳レベルでは、表現ぶりで中国に配慮するのではないか」。中国側がこうしたいちるの望みを抱いた可能性はあるだろう。ところが、日米首脳会談の結果は予想通り、中国にとって最悪となった。されば、今さら日米に再び秋波を送っても効果は見込めないと踏んだのだろう。これが、中国側が今回「強烈な不満と断固たる反対を表明」した理由だと筆者は考える。少なくとも、当たらずといえども遠からず、だろう』、「日米首脳会談の結果は予想通り、中国にとって最悪となった」ので、「強烈な不満と断固たる反対を表明」せざるを得なくなったようだ。
・『かなり前から練られたとみられる中国側の反応  そもそも、日米2プラス2の共同文書の内容を首脳レベルの共同声明で踏襲しなければ、それ自体が間違ったメッセージになる。中国側も当然、今回の日米共同声明が同様の対中批判を繰り返すことぐらいは事前に覚悟していただろう。案の定、先ほどご紹介した東京の中国大使館ウェブサイトは、次のような表現で中国側の「強烈な不満と断固たる反対」を正当化した。それなりに練られた文章であり、かなり前から準備したものだろうと推察する。 ●日米は冷戦思考にしがみつき、排他的な小さいサークルを作り上げ、政治的対立を煽(あお)り立てて完全に時代の流れに逆走する動きをしており、地域諸国が平和を求め、発展を図り、協力を推し進める期待に背き、その企みは必ず成り立たない。 ●中国は関連国家が陳腐で、時代遅れのゼロサムゲーム思考を放棄し、中国への言われ無き指摘、そして中国への内政干渉を止め、実際の行動で二国関係および地域の平和と安定の大局を維持することを求める。 ●最近、日本側は中国関連の問題において、たびたび消極的な行動をとり、双方の政治的相互信頼を深刻に損ない、双方が関係を発展させる努力を妨害している。日本側が中日間の四つの政治文書の原則および関連の約束を厳守し、中日関係がごたつかず、滞らず、後退せず、大国対抗に巻き込まれないことを確保するよう忠告する。 申し訳ないが、日米には「冷戦思考」などない。目指すは「排他的な小サークル」どころか、開かれた大グループである。また、香港やウイグルへの関心は、内政干渉というより、人道的要素が大きい。さらに、日中関係が最近悪化したのは、日米の「妨害」が理由ではなく、むしろ従来とは異なるレベルの中国の対外強硬姿勢が原因である。これらすべてに共通するのは、力を使うこともいとわない中国の「現状変更志向」だ』、「日米には「冷戦思考」などない。目指すは「排他的な小サークル」どころか、開かれた大グループである。また、香港やウイグルへの関心は、内政干渉というより、人道的要素が大きい」、「さらに、日中関係が最近悪化したのは、日米の「妨害」が理由ではなく、むしろ従来とは異なるレベルの中国の対外強硬姿勢が原因である。これらすべてに共通するのは、力を使うこともいとわない中国の「現状変更志向」だ」、スッキリする反論だ。
・『中国はどこまで報復するか  さて、日米首脳会談が終わった今、日本側、特に経済界が懸念するのは、中国側が報復する可能性だろう。日米首脳会談が開催される前、4月16日の中国外交部定例記者会見で同部報道官は次の通り述べているからだ。 ●現在の米中関係、日中関係は、いずれも重要な分岐点にあり、国際社会は(菅総理による)今次の訪問において対外的に何を発信するかについて高い関心を持っている。 ●日米は、中国側の懸念と要求を真剣に受け止めるべきであり、中国の内政に干渉したり、中国の利益を損なうような言動をとったり、中国に狙いを定めた小グループをつくってはならない。中国側は状況に応じて、必要な対応をとるだろう。 さらに、4月17日付の環球時報ネット版社説は、「日米同盟はアジア太平洋の平和を危うくする枢軸国になりつつある」との見出しで次の通り主張した。日本が台湾問題に介入した場合の報復までほのめかしているようにみえる。関連部分をここに紹介しよう。 ●中国の強大な発展のエネルギーに対する羨望と嫉妬こそが、対中問題における日米両国の最大の「共通の価値」である。 ●日本は近代以降、中国に何度も危害を加えてきたことを忘れてしまったのだろうか。 ●日米同盟は、かつてのドイツ、イタリア、日本の枢軸国と同様に、アジア太平洋の平和に致命的な破壊をもたらす枢軸国に変わっていく可能性が高い。 ●数年前、日本は一度中国に向き合って距離を縮め、日中関係を緩やかに正しい軌道に戻そうとしていた。現在、日本は再び路線を変え、米国の中国抑止戦略に加わり、日中関係改善の機運を断ち切った。 ●我々は日本に台湾問題から少し離れるようにと忠告する。他(の問題)では、外交手腕を弄んだり、策を用いて連合や分裂を図ったりも可能だが、もし台湾問題に関われば、最後は自ら身を滅ぼすだろう。その関与の度合いが深いほど、支払うべき代償も大きくなる。 日米同盟を日独伊三国同盟と比較するこの歴史観は滑稽ですらある。それを言うなら、今の中国を1930年代の日本と比較すべきだろう。「東アジアの新興国」が「シビリアンコントロール」を失い、「不健全なナショナリズム」の下で、「力による現状変更」を目指し、西太平洋で「海洋権益を拡大」し、「国際社会に挑戦」している。中国の外交部も戦前の日本の外務省に似ているのだろうか。「歴史は繰り返さないが、時に韻を踏む」(注)という言葉を思い出す。 普通なら、外交部報道官レベルの発言や環球時報の社説に一喜一憂する必要はないのだが、今回はもう少し分析が必要だ。中国指導者のDNAには古(いにしえ)の大帝国の感覚が刷り込まれているのか、彼らの外交には「大国」と「小国」を厳然と区別する傾向がある。「大国」には一定の配慮をするが、「小国」となれば、明確に差別し、見下し、公然と脅しをかけるのだ。その典型例が、オーストラリアに対して中国が最近発動した「言われ無き」制裁だろう。 中国はオーストラリアに対し貿易制限措置を相次いで発動した。豪州産の牛肉、大麦、石炭、ロブスター、ワイン、木材を対象とした輸入制限をさまざまな形態で導入している。理由は、豪州首相が昨年4月、新型コロナウイルスの発生源や感染拡大に関する中国国内での調査を国際社会に訴え始めたためだ、といわれる。これ以外にも、中国がこの種の報復措置を他の「小国」に発動した例は枚挙に暇(いとま)がない。 それでは、日本に対する報復はあるのだろうか。その可能性がゼロとは言えない。実際に、2012年には中国で日本製品不買運動が起きている。ただし、その実態は中国民衆の対日不満というより、尖閣問題をめぐって中国政府が日本政府に対してかけた圧力であった。されば今後、中国政府がその種の圧力を再び仕掛けてくる可能性は否定できない。当然、日本政府もそうした懸念は織り込み済みと思われる。 されば、中国側の言う「必要な対応」「支払うべき代償」とは何を意味するのか。仮に日本企業に対し制裁を発動すれば、短期的には脅しとしてある程度有効だとしても、中長期的には逆効果だろう。2021年の今、日本企業に報復措置をとれば、日本企業による中国離れの連鎖が始まるだろう。日米が現在進めている「中国デカップリング」「サプライチェーン見直し」「ハイテク製品の国産化」という流れを中国が自ら促進することにもなりかねない。 それが中国にとって真の国益なのか。そんなことをすれば、日本企業の中国デカップリングが加速し、日本からの対中投資や技術移転も縮小し、中国経済自体が孤立して、最悪の場合、縮小再生産に陥る可能性が高まるだけだ。それが中国にとっての長期的利益とは到底思えない。いくら巨大な人口を抱える大市場とはいえ、現在の中国経済が、投資や技術開発などの面で自立可能となるにはまだ相当の時間がかかるだろう。 中国側の発言の揚げ足を取るならば、「重要な分岐点」にあり「対外的に何を発信するかについて国際社会が高い関心を持っている」のは日米ではなく、むしろ中国である。今後数カ月のうちに中国側が日米に対し取る措置次第では、今後数十年間のインド太平洋地域の安定と繁栄に重大な影響が及ぶだろう。中国の賢明な指導者たちにはぜひとも、1930年代の日本の失敗とその教訓を正確に学んでいただきたいものである』、「日米同盟を日独伊三国同盟と比較するこの歴史観は滑稽ですらある。それを言うなら、今の中国を1930年代の日本と比較すべきだろう。「東アジアの新興国」が「シビリアンコントロール」を失い、「不健全なナショナリズム」の下で、「力による現状変更」を目指し、西太平洋で「海洋権益を拡大」し、「国際社会に挑戦」している。中国の外交部も戦前の日本の外務省に似ているのだろうか」、「今の中国を1930年代の日本と比較すべき」とは痛烈な批判だ。「仮に日本企業に対し制裁を発動すれば、短期的には脅しとしてある程度有効だとしても、中長期的には逆効果だろう。2021年の今、日本企業に報復措置をとれば、日本企業による中国離れの連鎖が始まるだろう。日米が現在進めている「中国デカップリング」「サプライチェーン見直し」「ハイテク製品の国産化」という流れを中国が自ら促進することにもなりかねない」、同感である。
(注)「歴史は繰り返さないが、時に韻を踏む」:米国作家マーク・トウェインの言葉(Wikiquote)

第三に、4月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した評論家・翻訳家の白川 司氏による「「中国激怒」の日米共同声明、それでも台湾を守る理由とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/269162
・『日米両政府は首脳会談の共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」を明記した。中国の猛反発が必至の台湾問題を盛り込んだ背景には何があったのか』、なんだろう。
・『アメリカのメディアでは注目されなかった首脳会談  日本ではかなり注目されてメディアでも大きく日米首脳会談だが、アメリカでの報道は驚くほど少なかった。それはこの会談がアメリカの内政に与える影響がほとんどなかったからだ。 実際、主要テーマである「自由で開かれたインド太平洋」における日米連携はすでに進んでいる。ほかの課題についても、新型コロナウイルス対策、気候変動対策、サプライチェーンにおける脱中国連携などもすでに進行中であり、ミャンマー制裁についても確認程度で、いずれの課題もすでに合意ができているか方向性が決まっているものばかりである。 また、尖閣諸島に安保条約第5条を適用することもオバマ政権から繰り返し確認されてきた。さらに、「バイデン大統領が東京オリンピックを支持」という報道がされたが、「実現を支持」ではなく、「努力を支持」という文言にとどまっている。日本側はアメリカからはほとんど果実を引き出せなかったというべきだろう。  今回の首脳会談を切実に求めていたのはアメリカ側であり、その意図は日本を米中貿易戦争においてアメリカ側に引き入れることにあった。ただし、そのことをおくびにも出さずに、日本側に妥協しない点がアメリカ外交のしたたかさである』、「首脳会談」が「アメリカのメディアでは注目されなかった」、大いにありそうな話だ。「今回の首脳会談を切実に求めていたのはアメリカ側」にも拘わらず、「日本側に妥協しない点がアメリカ外交のしたたかさである」、その通りだ。
・『日米首脳の共同声明に台湾が盛り込まれた意義  一連の課題の中で、意外な結果だったことが一つだけある。それは、半導体製造や次世代通信技術(6G)開発において日米共同を確かめる流れで、52年ぶりに「台湾」の項目が作られたことだ。 これは、アメリカ側が日本に求めたものと考えるが、日本は「アメリカか中国か」の選択ですでに立場を明確にすべき時期にさしかかっている。だが、日本国内はまだまだ親中派の力が強く、「台湾」を明記して立場を明確にしたのは、「外圧を利用した政策決定」だと言っていいだろう。 アメリカやオーストラリアなどが対中強硬姿勢を続ける中、日本はアメリカに寄り添いながらも中国とも明確に対抗しないというスタンスを取り続けてきており、それは中国などが「右翼的」と見ていた安倍政権でも根本的には変わっていなかった。実現こそしなかったものの、安倍政権は習近平主席を国賓で迎えるつもりであったわけであるし、本気で対抗する気がなかったのは明らかだろう。 「アメリカか中国か」の選択肢は、最終的に台湾を中国の一部だと認めるかどうかにかかっており、「台湾の独立を守る」と明言すれば、それは中国に政治的に対抗すると宣言することと同意である。 ただし、日本側は台湾問題を「両岸問題」と表現しており、中国側の主張する「1つの中国」に対して最低限の配慮は示している。それでも、共同声明に台湾海峡について言及したことは、日本外交の転換点だと見るべきだろう』、「日本側は台湾問題を「両岸問題」と表現」、初めて知った。苦肉の策なのだろうが、「日本側の自己満足」といった印象も拭えない。
・『日本とアメリカの対中姿勢の違い  アメリカの対中強硬姿勢は、2016年に蔡英文氏が台湾総統選に圧勝したとき、トランプ大統領が蔡氏を「台湾のプレジデント(大統領)」と表現して祝辞を送り、電話会談まで実施したことから始まっている。トランプ政権は「一つの中国」をあからさまに否定していないものの、それを無視するような行動を繰り返してきた。言い換えると、トランプ政権はオバマ政権のスタンスを変更して、中国に対抗する姿勢を明確に見せたと言っていいだろう。 だが、台湾は中国にあまりに近く、経済力・軍事力で圧倒的に劣勢に立たされている。また、経済において中国と密接に関係しているだけでなく、台湾内での親中派の力はかなり強い。中国の強い軍事的圧力を受けながらも、あからさまに中国と敵対できない立場にある。 トランプ大統領はこうした台湾の立場を尊重しながらも、2018年に事実上の領事館である米国在台協会の新庁舎を完成、同年にアメリカ政治当局の台湾での会談を可能にする台湾旅行法が成立する一方で、地対空ミサイルなど先端兵器の売却を決めるなど、米台関係を着実に強めてきた。バイデン政権の外交の要であるブリンケン国務長官もその点は評価しており、東アジアにおいてはトランプ外交を継承している。 それに対して、前述したように、日本は安倍政権になっても台湾へのスタンスは根本的には変わらなかった。それは政権中枢に親中派の二階俊博幹事長が、大きな影響力を持ち続けていることからも明らかだ。日本企業も中国経済に大きく依存していることから、中国との太いパイプがある二階氏が必要とされており、いきおい二階氏をはじめとする親中派の影響力は大きかったのである。 日本はアメリカの意向を酌みながらも、台湾同様、中国とまともに敵対はできない立場にあった。その難しい状況を安倍晋三首相は対中包囲網であるTPPやインド太平洋構想を実現させる一方で、あからさまに中国とは敵対しないで巧妙に乗り切った。 菅首相は「安倍政権の継承」をうたっていたものの、中国に対してどういう方針で臨むつもりなのかは明確ではなかった。二階氏は引き続き中枢に残っていることから、従来と同じようなベクトルで臨むというのが、最も考えられるシナリオだった』、「台湾は中国にあまりに近く、経済力・軍事力で圧倒的に劣勢に立たされている。また、経済において中国と密接に関係しているだけでなく、台湾内での親中派の力はかなり強い。中国の強い軍事的圧力を受けながらも、あからさまに中国と敵対できない立場にある」、共産党革命時に大陸から逃げてきた外省人が国民党の基盤となった。
・『菅首相の決断により対中姿勢は次の段階に  ところが、今回の日米首脳による共同声明に台湾問題が明記されたことで、中国に対抗することが明確になった。これまで中国の立場を守ってきた二階氏も、今回は了承せざるを得なかったということになる。 その予兆はあった。二階氏は4月15日に収録されたCS番組内で、東京五輪について「これ以上とても無理だということだったらこれはもうスパッとやめなきゃいけない」と述べて、「オリンピックでたくさんまん延させたということになったら、何のためのオリンピックかわからない」と新型コロナウイルス感染拡大による五輪中止の可能性に言及したのである。 これは大きなニュースとなり、海外メディアの一部も「日本の有力政治家が五輪中止の可能性を示唆」と大きく扱っている。 それもそのはず、二階氏はこれまで一貫して五輪の実行を明言してきた政権の姿勢に異を唱えて、わざわざ「政府・与党間の不一致」を演出したわけである。 これは菅政権内で、親中派の二階幹事長が「気にくわないこと」が行われたことの表れではないだろうか。あくまで筆者の考えにすぎないが、今回の共同声明に先立ち、台湾問題の明記を認めざるを得なかったことへの「腹いせ」のように思われる。実際、二階氏は過去においても不満があると表に出すことが多かったからである。 あるいは、東京五輪をいったん否定することは、中国に太いパイプがあることを自負する二階氏にとって、中国への何らかのサインを送ることになるのかもしれない。 ただし、二階氏も「何が何でも開催するのかと問われれば、それは違うという意味で申し上げた。安全・安心な大会の開催に向け、しっかり支えていくことに変わりはありません」と文書で述べて、CS番組内の発言は本意ではなかったと釈明している。) だが、この発言の余波は小さくはなかった。これまで五輪開催への機運を作ろうと連立与党で一致団結してきたのに、水を差す形になったからである。当然、政権内でも反発があるはずで、二階氏の影響力低下に拍車がかかる可能性もある。 そのような不協和音はありながらも、菅首相がアメリカと連携して台湾を守る姿勢を見せたことで、これまで曖昧だった日本の対中姿勢を一段階進めることとなった』、「二階幹事長」の「新型コロナウイルス感染拡大による五輪中止の可能性に言及」は、「「気にくわないこと」が行われたことの表れではないだろうか」、穿った見方だが、当たっている可能性もありそうだ。
・『中国にとって台湾が決定的に重要な理由  中国における台湾は、地政学的な要地、あるいは「一つの中国」という象徴をはるかに超える重要な存在になりつつある。それは、米中貿易戦争は、煎じ詰めると半導体の争いに行きつくからである。 半導体ファウンドリ(受託生産)として世界的企業である台湾のTSMCは、韓国のサムスンやアメリカのインテルと技術力で大きく水をあけており、世界の半導体生産受注の分野ではすでに圧倒的な存在となっている。 中国は一連のトランプ制裁で先端半導体を入手しづらくなっており、南京にTSMCの工場は有するものの、TSMCの大型工場のある台湾は、文字どおり喉から手が出るほど欲しいはずだ。台湾有事の可能性がこれまでとは比較にならないほど高まっているのは、まさに台湾が半導体生産の中心になってしまったからにほかならない。 私たちは台湾有事の可能性を、「近未来」から「いつでもありうること」に変更して、その時に備える必要がある。日本は今回の日米首脳会談で中国政策を大きく転換して、これからは尖閣のみならず、台湾防衛についてもコミットしなければならなくなったと考えるべきだろう。 ただし、この問題は言うほど簡単ではない。というのは、台湾自体も日本依存から徐々に中国シフトを始めており、また、台湾政府は尖閣の領有権を主張していることから、日米側に簡単に荷担できる立場ではないからだ。 そもそもTSMCをこのまま日米側にとどめておけるかどうかも決定しているわけではないだろう。 確かにトランプ政権ではアメリカに大型投資をして、大幅にアメリカシフトを見せたが、そもそもアメリカという国は、工場投資に向いているとはいえないのである。台湾や中国と比べると人件費は圧倒的に高い割に生産性が高いわけでもない。投資効率の悪さを知った上での投資であり、TSMCにとっては妥協にすぎない。 また、TSMCとしても、経済成長を続ける中国市場を簡単に捨てられるはずもない。TSMCがアメリカを切って中国側に行くことはないにしても、なんとか両てんびんにかけられないかと考えるのは当然である。 それでもTSMCが完全に中国を切ってアメリカを取れば、半導体技術が欲しい中国による台湾併合のモチベーションは決定的に高まっていくだろう。アメリカが貿易戦争に勝つためには、TSMCをアメリカ側にとどめると同時に、台湾を中国に併合されないことが必須になってしまったわけである。 日米首脳会談のアメリカ側の目的は、台湾防衛に日本を巻き込むことであったと考えるべきだろう。もちろん、日本としても、対中姿勢に覚悟を決めるべき時期にきており、その点でも共同声明に「台湾」という項目を入れて、スタンスを明確にした意義は大きい。それは、日本に経済面だけでなく、安全保障面でも強い覚悟が求められていることを意味している』、「台湾自体も日本依存から徐々に中国シフトを始めており、また、台湾政府は尖閣の領有権を主張していることから、日米側に簡単に荷担できる立場ではない・・・TSMCをこのまま日米側にとどめておけるかどうかも決定しているわけではない」、難しい問題のようだ。
タグ:日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 細川昌彦 白川 司 バイデンと日米関係 (その1)(周到準備の日米首脳会談で菅政権が背負う「重い宿題」、日米首脳会談に強烈な不満の中国こそ 戦前日本の失敗を学ぶ時、「中国激怒」の日米共同声明、それでも台湾を守る理由とは) 「周到準備の日米首脳会談で菅政権が背負う「重い宿題」」 「「周到準備の首脳会談」だった。予測可能性のないトランプ前大統領の際の「出たとこ勝負の首脳会談」とは予想通り様変わりだ。 日米ともに「トップダウン」から「ボトムアップ」に変わった」、的確な表現だ。 外交交渉の経験が長い「細川」氏ならではの深い分析だ。確かに「6月の G7サミット)において日本は孤立しかねない」、ことも要注目だ。 「制裁の根拠となる法律がないことを理由にしているが、欧米からは言い逃れにすぎないと見られている。発動するかどうかは別にして、せめて“行動の用意”ぐらいはあるべきではないか」、その通りだ。 「中国ビジネスを人質にとられた産業界や親中派の政治家への働きかけも強まろう。逆にいくつか見せしめ的にターゲットとされる企業が出てくる可能性さえある」、ただ、「中国」としては「日本」を完全に「米国の側」に追いやらない範囲で、今後圧力をかけてくる懸念がありそうだ。 宮家 邦彦 「日米首脳会談に強烈な不満の中国こそ、戦前日本の失敗を学ぶ時」 「中国から見た日米共同声明の問題点を書こう」、とは興味深そうだ 「日米首脳会談の結果は予想通り、中国にとって最悪となった」ので、「強烈な不満と断固たる反対を表明」せざるを得なくなったようだ。 「日米には「冷戦思考」などない。目指すは「排他的な小サークル」どころか、開かれた大グループである。また、香港やウイグルへの関心は、内政干渉というより、人道的要素が大きい」 「さらに、日中関係が最近悪化したのは、日米の「妨害」が理由ではなく、むしろ従来とは異なるレベルの中国の対外強硬姿勢が原因である。これらすべてに共通するのは、力を使うこともいとわない中国の「現状変更志向」だ」、スッキリする反論だ 「日米同盟を日独伊三国同盟と比較するこの歴史観は滑稽ですらある。それを言うなら、今の中国を1930年代の日本と比較すべきだろう。「東アジアの新興国」が「シビリアンコントロール」を失い、「不健全なナショナリズム」の下で、「力による現状変更」を目指し、西太平洋で「海洋権益を拡大」し、「国際社会に挑戦」している。中国の外交部も戦前の日本の外務省に似ているのだろうか」、 「今の中国を1930年代の日本と比較すべき」とは痛烈な批判だ。「仮に日本企業に対し制裁を発動すれば、短期的には脅しとしてある程度有効だとしても、中長期的には逆効果だろう。2021年の今、日本企業に報復措置をとれば、日本企業による中国離れの連鎖が始まるだろう。日米が現在進めている「中国デカップリング」「サプライチェーン見直し」「ハイテク製品の国産化」という流れを中国が自ら促進することにもなりかねない」、同感である。 「「中国激怒」の日米共同声明、それでも台湾を守る理由とは」 「首脳会談」が「アメリカのメディアでは注目されなかった」、大いにありそうな話だ。「今回の首脳会談を切実に求めていたのはアメリカ側」にも拘わらず、「日本側に妥協しない点がアメリカ外交のしたたかさである」、その通りだ 「日本側は台湾問題を「両岸問題」と表現」、初めて知った。苦肉の策なのだろうが、「日本側の自己満足」といった印象も拭えない 「台湾は中国にあまりに近く、経済力・軍事力で圧倒的に劣勢に立たされている。また、経済において中国と密接に関係しているだけでなく、台湾内での親中派の力はかなり強い。中国の強い軍事的圧力を受けながらも、あからさまに中国と敵対できない立場にある」、共産党革命時に大陸から逃げてきた外省人が国民党の基盤となった 「二階幹事長」の「新型コロナウイルス感染拡大による五輪中止の可能性に言及」は、「「気にくわないこと」が行われたことの表れではないだろうか」、穿った見方だが、当たっている可能性もありそうだ 「台湾自体も日本依存から徐々に中国シフトを始めており、また、台湾政府は尖閣の領有権を主張していることから、日米側に簡単に荷担できる立場ではない TSMCをこのまま日米側にとどめておけるかどうかも決定しているわけではない」、難しい問題のようだ
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米中経済戦争(その15)(もし米中戦争起きたら…米国は地上戦で大損害必至?日本も中国市場失い致命的打撃、「米中半導体戦争」が本格化 日本が急速な構造変化を生き残る道、「過去に例を見ないほどの怒り」米中・新冷戦の狭間で日本がとるべき行動とは) [外交]

米中経済戦争については、昨年12月12日に取上げた。今日は、(その15)(もし米中戦争起きたら…米国は地上戦で大損害必至?日本も中国市場失い致命的打撃、「米中半導体戦争」が本格化 日本が急速な構造変化を生き残る道、「過去に例を見ないほどの怒り」米中・新冷戦の狭間で日本がとるべき行動とは)である。

先ずは、本年1月9日付けAERAdot.が掲載した軍事ジャーナリストの田岡俊次氏による「もし米中戦争起きたら…米国は地上戦で大損害必至?日本も中国市場失い致命的打撃」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/aera/2020122300006.html?page=1
・『日本と豪州が、他国の攻撃から相手国の艦船などを守るといった内容で合意した。事実上の同盟関係と言えるが、対中紛争のリスクなどの議論は置き去りだ。AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号では、そのリスクについて取り上げた。 安倍晋三前首相は中国との友好関係を望む一方で「自由で開かれたインド・太平洋」を旗印とし、対中包囲網に事実上参加した。 海上自衛隊は07年から米国、インドの海軍共同演習「マラバール」に参加したほか、米、豪海軍との演習も行ってきた。今年11月、インド東方のベンガル湾とアラビア海で行われた「マラバール2020」には豪州海軍が参加。初めて米印日豪4カ国の合同演習となり、中国に対抗する「アジア版NATO」結成の様相を示した。 この4カ国は、中国が「一帯一路」の要所としてスリランカのハンバントタ港、パキスタンのグワーダル港の拡張、整備を援助しているのは軍事的拠点にするためと警戒している。 だが米海軍は中国海軍に対し質、数ともに圧倒的優勢なため、もし米中で武力紛争が起きれば、遠隔地の港にいる中国軍艦は出港すれば撃沈される。日露戦争で旅順港を基地としていたロシア太平洋艦隊が「引き籠もり状態」になったのと同様だ。従って、中国は軍事よりは経済上の目的で港の建設を援助していると見る方が自然だろう』、「中国は軍事よりは経済上の目的で港の建設を援助していると見る方が自然」、説得力ある見方だ。
・『もし米中関係がさらに険悪化すれば、米海軍は海上自衛隊、豪州海軍を伴って中国沿岸の封鎖をすることは可能だ。だが中国の食料自給率はほぼ100%で輸入しているのは大豆だけ。石炭が豊富だからエネルギーの自給率も80%に近く、ロシアからのパイプラインもあり、中国が封鎖に屈する公算は低い。 核を使うと共倒れになるから通常弾頭のミサイルや、航空攻撃で都市や軍事拠点の破壊はできても、支配するには地上部隊による占領が必要だ。 黄海最奥部の天津付近から北京へは約180キロ。大損害を覚悟すれば米軍が北京に到達することは可能だろう。だが日中戦争では、首都南京を失った蒋介石は重慶に籠って抗戦を続け、日本軍は最大140万人を投入したが点と線しか確保できなかった。米軍が9年間苦戦して敗退したベトナムは、南北合わせて面積は中国の28分の1、人口は15分の1だった。 米中が戦争となれば日本は輸出の19.1%(香港を合わせると約24%)を占める中国市場を失い、致命的打撃となる。さらに中国が米軍の攻撃に対抗し、その拠点である在日米軍、自衛隊の基地や都市をミサイルで攻撃してくることも当然あり得る。 日本の安全保障にとり、米中の対立を激化させず、戦争を阻止することは必須だ。オーストラリアと同盟して中国包囲網に加わり、米国の背中を押してドロ沼に落とすようなことは、菅氏が討論会で言った通り「戦略的に正しくない」だろう』、親中派の二階幹事長までいるとなれば、「日本」が「米国の背中を押」す可能性が低そうなのが救いだ。

次に、1月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「「米中半導体戦争」が本格化、日本が急速な構造変化を生き残る道」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/259402
・『台湾TSMCはかつてのインテル? 様変わりする世界の半導体産業  日本企業は半導体関連の部材分野で世界的なシェアを持つ。しかし今、世界の半導体産業が、急速な構造変化の局面を迎えているのである。 構造変化の大きな特徴の一つが、半導体の「設計・開発」と「生産」を分離する傾向が鮮明化していることだ。 例えば、米国の大手半導体企業は「設計・開発」を担い、実際の「生産」をファウンドリー(受託製造)である台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)などに委託するケースが多くなっている。半導体の開発・設計と生産の分離(垂直分業)が加速しているのである。 その結果、ファウンダリーの地位が高まり、TSMCは最先端の5ナノ(10億分の1)メートルの生産ラインを確立するなど、製造面での優位性を発揮している。かつて、米インテルが果たしていたマーケットリーダーの役割を、今やTSMCが担っているともいえるだろう。それほど、世界の半導体産業の様相は様変わりしている。 こうした変化は、米中対立にも非常に重要な影響を与えているのである』、確かに「ファウンダリーの地位が高まり」は、目ざましい。
・『半導体産業で優位性を高めたい中国と制裁でそれを阻止する米国  中国は「中国製造2025」によって、先端の半導体産業でさらに優位性を高めたいと考えている。一方、世界の基軸国家である米国は、何とかしてそれを阻止すべく手を打っている。具体的には、米国は中国の通信機器大手であるファーウェイに続いて、大手ファウンドリーであるSMIC(中芯国際集成電路製造)を事実上の禁輸対象に指定した。 これによって一時的に、中国半導体産業の成長は遅れるだろう。ただ、米国が制裁によってIT先端分野での中国の台頭を抑えることは容易ではない。やや長めの視点で考えると、中国は徐々に半導体の製造関連の技術を習得し、米国を追い上げる可能性が高い。 今後、半導体関連の部材分野で世界的なシェアを持つわが国企業は、そうした構造変化からより多くのメリットを享受できるよう、戦略を巡らせることが求められる。そのためには、各企業の技術力向上などに加えて、政府のきめ細かい産業政策が必要だ。政府の対応を期待したい』、「米国が制裁によってIT先端分野での中国の台頭を抑えることは容易ではない」、確かにその通りだろう。
・『米国が世界の覇権を維持するため存在感が高まるTSMC  半導体の「設計・開発」と「生産」の分離の重要性が高まっていることは、2020年の世界の主要な半導体企業の業績を分析すると確認できる。このような変化の中で、有力企業は「設計・開発」に特化するか、「生産」も併せて行うかの選択を迫られているようだ。 生産工場を持たないファブレス化が重視される要因として、半導体の回路線幅を小さくする「微細化」がある。 どういうことかというと、回路線幅が細くなるほど、半導体の面積当たりの処理能力は高まるが、一方で、製造技術の開発や設備投資の負担は増す。一つの半導体企業が「設計・開発」→「生産」までを貫徹することは難しくなっているのだ。 2020年7月23日、インテルのボブ・スワンCEOが、7ナノメートルのCPU生産ライン立ち上げの遅れを公表したことは、それを確認する良い機会だった。微細化のつまずきへの解決策として、インテルは外部のファウンドリーの活用も視野に入れると表明した。その後、昨年12月には、自社で製造を行う体制を見直すよう、米国のアクティビスト投資家がインテルに求めた。 世界の半導体関連テクノロジーのロードマップを描いてきたインテルだが、彼らが重視した垂直統合のビジネスモデルは大きな転換点を迎えているのである』、「インテル」ですら「外部のファウンドリーの活用も視野に入れる」とは、時代も変わったものだ。
・『TSMCに生産を委託することで変化への対応力を高めた米IT先端企業  インテルと対照的に、「設計・開発」に注力してきた米NVIDIAは、TSMCとの関係を重視し、微細かつ高機能なチップを生み出した。昨年7月にNVIDIAの時価総額がインテルを上回った理由は、両社の成長期待の差が拡大したからだ。NVIDIAは英Armの買収によって設計・開発力にさらなる磨きをかけようとしている。また、グーグルやアップル、マイクロソフトが、自社での半導体の設計や開発を強化している。 TSMCは、最先端から既存分野まで総合的な生産ラインを確立し、各企業のニーズに的確に応える生産体制を整えた。TSMCに生産を委託することによって、米IT先端企業は知識集約的な半導体の設計・開発体制を強化し、変化への対応力を高めることができる。そうした発想がファブレス化を勢いづけた。 なお、韓国のサムスン電子は、どちらかといえば「設計・開発」から受託事業を含む「生産」までの統合を重視しているようだ。 いずれにせよ、世界経済が「データの世紀」を迎える中、米国が世界の覇権を維持するために、TSMCの重要性は高まっている』、その通りのようだ。
・『中国の半導体製造技術は米国依存 SMICは米国の制裁にどう対応するか?  一方で中国のSMICの製造能力は、台湾のTSMCに比べて3世代ほど遅れているといわれている。 半導体の自給率向上を目指す中国共産党政権にとって、SMICは欠かせない企業だ。しかし、中国の半導体の製造技術というのは、米国に依存している現状がある。 昨年9月のファーウェイへの制裁に加えて、12月に米国がSMICを事実上の禁輸対象に指定したのは、製造技術面での中国の弱みをたたき、IT先端分野を中心とする覇権強化を阻止するためだ。 一部では米商務省のSMIC制裁には抜け穴があるとの指摘があるが、主要先進国の企業は制裁違反を避けるために、中国向けの半導体および関連部材などの輸出に慎重にならざるを得ない。短期的に、中国の半導体自給率向上への取り組みは鈍化するだろう。  注目されるのが、SMICが米国の制裁にどう対応するかである。米国が制裁を強化する中にあっても、SMICは政府系ファンドと連携して工場の新設に取り組んでいる。また、SMICは4人からなる経営陣のうち3人をTSMCなどの台湾半導体産業出身のプロで固め、微細化をはじめとする生産能力の向上に取り組む意向だ。 中長期的に考えた場合、共産党政権は多種多様な方法を用いてSMICの総合的な生産能力の向上に取り組むはずだ。事実、共産党政権は、企業への補助金や土地の提供、海外企業からの技術移転、人材獲得などによって、半導体の開発力を高めた。それが、フィンテックやドローン、軍事関連技術の高度化など中国の覇権強化を支えた。時間がかかったとしても、中国はSMICの生産能力向上をあきらめないだろう。 現時点で、製造技術で米国に一日の長があることは確かだ。しかし、中国経済のダイナミズムを支える「アニマルスピリッツ」や、テクノクラート(技術官僚)の政策運営力を基に考えると、米国が半導体分野における中国の技術革新を食い止めることは容易ではない。短期的に厳しい状況に直面したとしても、中長期的には、世界経済における中国の半導体産業の重要性は高まる可能性がある』、「中長期的には、世界経済における中国の半導体産業の重要性は高まる可能性がある」、異論はない。
・『日本の半導体関連部材の技術は日本経済の宝  わが国の半導体部材関連の企業にとって、中国市場の重要性は高まるだろう。半導体関連部材の市場において、信越化学工業のシリコンウエハーや、村田製作所のセラミックコンデンサなど、わが国企業のシェアは高い。 その理由は、分解できず、簡単にまねができないからだ。各企業は、原材料のレベルから高純度かつ微細な素材(製品)を生み出すことに取り組み、世界各国の企業から必要とされる立場を確立してきた。半導体関連部材の企業の実力は、わが国経済の宝といえる。 半導体部材関連の企業が、米国からも中国からも必要とされ、より多くの収益を獲得するためには、わが国政府の能動的な取り組みが必要だ。なぜならわが国企業を取り巻く事業環境は、米中の覇権争いをはじめ、各国政府の利害に大きく影響される側面が強まっているからである』、異論はないが、「政府の能動的な取り組み」とは何なのだろう。
・『米中の激突が先鋭化する中、日本はどうすべきか?  今後、米国は、中国の半導体自給率の向上を食い止めるために、制裁を強化する可能性がある。米国の圧力を跳ね返すために、中国はSMICなどへの支援を強化し、国家資本主義体制を強化するはずだ。また、中国は国際社会における孤立を防ぐためにEU(欧州連合)との包括的投資協定を結ぶなど、既成事実をつくろうとしている。 米国の自由資本主義体制と、中国の国家資本主義体制の激突が先鋭化していく中で、わが国はどうすべきか。まずは、安全保障体制の確立のために、米国との信頼関係を強化し、その上で、アジア新興国やEUとの関係を重視しなければならない。 経済面では、多国間の連携を強化することが長期の社会と経済の安定に必要、との見解を共有すべきだ。特に、わが国が過度な補助金や、技術の強制移転の禁止をはじめ、TPPの考えをより多くの国と共有することは、経済面からの「対中包囲網」を整備することにつながるだろう。 新型コロナウイルスの感染再拡大によって、国内外の社会と経済はかなり厳しい状況を迎えている。わが国政府は集中した感染対策によって国民の安全を守り、さらにはワクチンの供給体制を整えることで、感染の克服と景気回復を目指さなければならない。 その状況下、口で言うほど容易なことではないが、わが国政府が相応のスピード感をもって国際世論との連携強化を目指すことができるか否かが、半導体関連部材の需要取り込みをはじめ、わが国の社会と経済の先行きに無視できない影響を与えるだろう』、同感である。

第三に、3月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した上記と同じ真壁昭夫氏による「「過去に例を見ないほどの怒り」米中・新冷戦の狭間で日本がとるべき行動とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/266873
・『3月18〜19日、米アラスカ州のアンカレッジで開催された米中外交トップ協議では、両国の対立が鮮明だった。外交の専門家が「中国側は過去に例を見ないほど怒りを示した」と指摘するほどだ。「新しい冷戦」とも呼ばれる米中対立は激化の一途をたどっている。両国のはざまで日本が取るべき行動とは?』、わざわざ小雪が降る「アンカレッジ」を選んだとは、バイデン政権もなかなかやるものだ。
・『米中対立は激化の一途 中国は「国家資本主義体制」を強化  米バイデン政権の本格的な活動開始に伴い、米国と中国の対立が一段と鮮明化している。 3月18日に米アラスカ州で行われた、米中の外交高官による協議(以下、米中外交トップ協議)でも、両国はいずれも強硬なスタンスで一歩も譲る気配は見えなかった。今後も両国の対立はより先鋭化するだろう。世界の政治・経済・安全保障といったさまざまな面であつれきが顕在化するとみられる。 コロナショックの前までは、人々の自由な発想と活動を重視する米国の体制は、国家主導での経済成長を目指す中国の体制よりも、優れていると考えられていた。 しかし、コロナ禍の中で、中国のこうした「国家資本主義体制」は、予想外の強い一面を見せている。そのことは、昨年(2020年)4月以降の中国経済の回復が示しており、その結果、中国市場を重視する主要先進国企業は増加している。 基軸国家として世界経済の成長を支え、そのベネフィットを得てきた米国にとって、その状況は容認できない。米国は、人権問題や領土問題などの側面から中国への圧力を強めている。 今後、バイデン政権は、欧州各国や日・豪・印など、国際社会との連携を強化し、対中包囲網の整備を目指す。一方、中国共産党政権は、求心力を維持するためにより一層、米国に対抗することになるだろう。 両国の狭間でわが国が取るべき行動は2つだ』、何なのだろう。
・『米ソの冷戦とは異質の「新しい冷戦」へ突入した  3月18〜19日、米アラスカ州のアンカレッジで開催された米中外交トップ協議では、両国の対立が鮮明だった。 中国は、米国が主張した国際社会のルールに従うことに強く反発。外交の専門家が「中国側は過去に例を見ないほど怒りを示した」と指摘するほどだ。「新しい冷戦」とも呼ばれる米中対立は激化の一途をたどっている。 米ソの冷戦では、両国が関係を絶った。しかし、米中の対立はそれとは異質だ。経済面で米中の関係は深まっているのである。その一方で、米国は人権、領土、知財などの面から中国に圧力をかけ、自国が整備してきた国際社会のルールに従うよう、中国に求めている。それは米国の覇権維持に欠かせない。そのためにバイデン政権は、国際連携に基づいた対中包囲網の整備に取り組んでいる。EU、米国、英国、カナダが足並みをそろえ、ウイグル人権問題で対中制裁を発表したのはその象徴だ。 ただし、バイデン政権の対中政策が短期間で効果を表すとは考えづらい。なぜなら、コロナショックを境に世界経済にとっての中国経済の重要性、相対的な強さが一段と高まったからだ。日米欧などで中国での収益獲得をより重視する企業は多い。 逆に言えば、バイデン大統領に求められるのは、経済面で中国に対する米国の優位性を世界に示し、国際世論の支持を得ることだ。そのために同氏は、インフラ投資など経済対策を強化して米国の雇用環境を回復させ、社会の分断の修復を目指している。その上で、多様性を尊重し、イノベーションが発揮されやすい経済環境を実現しなければならない。 足元、懸念すべき「変異株」の出現など、新型コロナウイルス感染の影響はまだまだ軽視できない。雇用を中心に米国経済には弱さが残るし、アジア系住民などへの差別も深刻だ。 バイデン政権がスピード感を持って、実効性の高い政策を進めることができるか否かは、対中政策に無視できない影響を与える』、なるほど。
・『「国家資本主義体制」の強化で米国に対抗する中国  中国の共産党政権は、米国からの批判や圧力に対して弱腰になることはできない。共産党指導部が恐れるのは、国内の社会心理の悪化だ。 1989年に天安門事件が発生した時、西側の経済の専門家の多くが「これで中国は民主主義に向かい、自由資本主義陣営への仲間入りを目指す」と考えた。 しかし、そうはならなかった。中国共産党指導部は経済運営の指針を定め、海外からの技術移転や金融市場の育成によって工業化、および先端分野への生産要素の再配分を進めて経済成長を実現した。 つまり、中国共産党政権は「党に従えば豊かになれる」というイデオロギーを社会心理に根付かせることによって、求心力を発揮したのである。コロナショック後の中国経済の回復スピードの早さは、こうした国家主導による経済運営体制の強さを世界に示したといえる。 ただ、景気回復の一方で、中国では人口減少と雇用への不安が高まっている。 共産党政権は、中長期的な経済運営への不安、あるいは焦りを強めているだろう。長期の支配体制を目指す習近平国家主席は、より強固に米国に対抗し、強さを誇示しなければならない。フィリピン海域への約220隻の中国船籍の集結や、人権問題をめぐるEUへの対抗措置はその一例だ。 経済運営に関して、求心力維持のために、共産党政権は経済成長を実現しなければならない。 そのため共産党政権は、国内では高速鉄道や道路の延伸などのインフラ投資に加え、産業補助金や海外企業からの技術の強制移転を進める。インフラ投資の結果として、債務問題は深刻化するだろう。 対外的には、「一帯一路」や「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」に基づき、アジア・アフリカ新興国各国との関係を強化し、需要の取り込みを目指す。それは中国にとって、経済成長だけでなく、国際社会における孤立回避にも重要なのである』、「インフラ投資の結果として、債務問題は深刻化するだろう」、過剰な「インフラ投資」は工事完成後の運営コストを押し上げるので、毎年の膨大な赤字が、建設費に加わってくる。そのため、「債務問題」はさらに「深刻化」する可能性がある。
・『米中の対立が激化する中 日本が取るべき2つの対応  今後、米中の対立は激化するだろう。短期的に、中国経済は成長を実現し、その恩恵に浴したい国や企業は増えていくだろう。ただし、長期の視点で考えると、中国経済の不安定感は高まる可能性がある。特に債務問題は軽視できない。 米国はそうした長期の展開を念頭に、対中政策を進めようとしているようにみえる。中国の最先端の製造技術は十分ではない。そのような中国の弱みをたたくため、まずはジーナ・レモンド米商務長官とキャサリン・タイ米通商代表部(USTR)代表は、トランプ前政権の対中禁輸措置や制裁関税などを継続する。半導体関連に加えて、気候問題への対応に必要な水素や脱炭素関連の分野でも、米国は同盟国と連携し、中国に対する関税・非関税障壁を強化する可能性がある。 次に米国政府は、補助金などを用いて自国企業の競争力を高めたい。3月23日には米インテルが200億ドル(約2.2兆円)を投じて、アリゾナ州に工場を建設すると発表。同社は、半導体の受託製造(ファウンドリー)事業にも参入する。それは、バイデン政権が目指す、米国の半導体生産能力強化への取り組みに従ったものだ。アリゾナ州には台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company/台湾積体電路製造)も工場を建設する。それがインテルの競争力にどう影響するかが注目される。 ポイントは、中国の国家資本主義との覇権争いの長期化に備え、米国経済における「政府の役割」が増すことだ。先端分野を中心に、米国の自由資本主義体制には変化が生じているといえる。 米中の対立が激化し、その影響が長期にわたって続く展開が予想される中、わが国が取るべき対応は2つだ。 一つ目は、安全保障面で米国との関係を強固にすること。ニつ目は、先端分野での技術開発をスピード感を持って進めて、米中双方から必要とされる立場を目指すこと。こうした対応が、わが国が中国に是々非々の姿勢で臨むことを支え、国際世論からの信頼を獲得することにつながるだろう』、「わが国が取るべき対応は2つ」、の中身は同感である。
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尖閣諸島問題(その7)(中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的、中国「海警法」への過剰反応が かえって武力衝突リスクを高める理由) [外交]

尖閣諸島問題については、昨年12月11日に取上げた。今日は、(その7)(中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的、中国「海警法」への過剰反応が かえって武力衝突リスクを高める理由)である。

先ずは、3月18日付け日経ビジネスオンライン「中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00179/031600044/
・『Q:中国が2月、海警局に「武器使用」を認めたことに耳目が集まる。日本政府は与党に対し、海警局が尖閣諸島への上陸を強行するなら、兇悪犯罪と見なして危害射撃を加える場合があると説明した。「やられたら、やり返す」と聞こえる。これに対して、日本の防衛政策や現場に詳しい香田洋二・元自衛艦隊司令官(海将)は、「国際法をないがしろにしかねない。竹島や北方領土の周辺を航行する海上保安庁の巡視船や、南シナ海で航行の自由作戦を展開する米海軍の艦船を危険にさらす恐れさえある」と指摘する。果たしてそれはなぜか。 中国が海警法を2月1日に施行しました。海上警備に当たる海警局に武器使用を認めたことが注目されています。例えば第22条で「国家の主権、主権及び管轄権が不法に侵害され、または不法に侵害される危険が差し迫っているとき」は「その侵害を停止し、危険を除去するために、武器の使用を含むあらゆる必要な措置を講ずる権利を有する」との趣旨を定めています。 例えば海警船が以下の行動に出る懸念が浮上してきました。 ケース1:尖閣諸島周辺の日本の領海内で操業している漁船に対し、違法操業だとして停船命令を出す。拿捕(だほ)されることを恐れて、網やロープを流し、あるいは船体を破損する強度の装備品などを海警船の進路上に投入するなどして追跡を妨害しながら逃げようとする漁船に対して武器を使用する。 ケース2:日本の海上保安庁の巡視船に対して強制退去を命じる。 海警法第21条は、外国の軍艦もしくは公船が中国の法令に違反した場合、退去させるための必要な措置を取れるとし、さらに、退去を拒否する場合は強制撤去、強制えい航の措置が取れると定めている。「武器使用が可能」と明記してはいない、「強制撤去」は武器使用を含むと解釈できる。この場合、武器使用のための要件解釈と決断をするのは中国であり、海警局が日本側の言い分や都合に合わせて武器使用の判断をすることはない。 香田:私は日本政府やメディアをはじめとする人々の目が武器使用にのみ集まっていることを強く危惧しています。中国海警局による武器使用は海警法の本質ではありません。この本質は、海警局の船が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動を取る可能性が高まったことです。このことを理解し、尖閣諸島をいかにして守るのかをきちんと考えるべきです。 武器については、日本の海上保安庁も一定の条件を満たせば警察官職務執行法を準用して使用することが認められています。言及されたケース1もケース2も、同法が正当防衛、緊急避難のための危害射撃を許しているので、これを適用すれば事足りる話です。武器使用の規定があることをもって海警法を非難したり、恐れたりすることは問題の本質を見失います。武器使用について申し上げれば、その問題は、海警法が定める武器使用の条件と程度が警察官職務執行法のそれと同等か否かです。 (武器の使用)第七条 警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。但し、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条(正当防衛)若しくは同法第三十七条(緊急避難)に該当する場合又は左の各号の一に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。(後略) 関連してお話しすると、「中国海警局の船が軍艦並みの武器を備え始めている」と懸念する声も、現時点においては公平を欠くと思います。76mm速射砲を装備するといわれる海警局の船は最近建造されたタイプです。海上保安庁の発表によく出てくる、尖閣諸島周辺で一団となって行動する4隻からなるグループの多くはそれ以前の無武装タイプであり、武装しているのは1隻というケースがほとんどです。中国はこのグループを3~4セット配備して、尖閣諸島周辺の海域を交代制で24時間365日航行する体勢を取っているものとみられます。 これに対して海上保安庁は沖縄県石垣島に尖閣諸島専従として10隻の巡視船を配備しています。それぞれの性能は世界最高水準でいずれも20~40mmの機関砲を装備しています。将来は分かりませんが、現時点においては、隻数ではやや劣るものの全体として中国にひけを取るものではありません。 よって、中国が海警法を施行したのを奇貨として我々が考えるべきは、武器使用という「木」ではなく尖閣諸島をいかに守るかという「森」なのです』、「中国海警局による武器使用は海警法の本質ではありません。この本質は、海警局の船が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動を取る可能性が高まったことです」、「武器については、日本の海上保安庁も一定の条件を満たせば警察官職務執行法を準用して使用することが認められています」、「中国が海警法を施行したのを奇貨として我々が考えるべきは、武器使用という「木」ではなく尖閣諸島をいかに守るかという「森」なのです」、さすがプロらしい適格な指摘だ。
・『海警局による尖閣諸島への上陸強行も  Q:「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動として、具体的にはどのような行動があり得るのでしょうか。 香田:海警の船が尖閣諸島への「近接」「上陸」「占拠」「奪還」という行為に及ぶ恐れがあります。 中国共産党は海警法の施行のほかにもその布石を打ってきました。例えば海警局はもともと政府の下にある法執行機関でした。海上保安庁と同じ存在だったわけです。しかし2018年の組織改正で政府を離れ、中国共産党中央軍事委員会の指導下に入りました。軍事行動の先兵になり得るということです。 最近でも、中国共産党ナンバー3の栗戦書(リー・ジャンシュー)全国人民代表大会(全人代)常務委員長(日本の国会議長に相当)が海警法の狙いを「習近平(シー・ジンピン)強軍思想を徹底し、新時代の国防と軍隊建設の需要に応える」ことと説明して世界の耳目を集めました』、「「習近平強軍思想を徹底し、新時代の国防と軍隊建設の需要に応える」、穏やかではなさそうだ。
・『「侵略」を「犯罪」とする対処案、対応誤れば国際法違反  香田:これに対して日本政府は、国内の政治事情にとらわれており適切な対応を取れていません。自民党の国防部会・安全保障調査会に対し、外国公船が尖閣諸島への上陸を強行したなら「兇悪犯罪と認定して武器使用により相手の抵抗を抑える『危害射撃』が可能になる場合がある」と説明しました。 政府によるこの説明は2つの大きな問題をはらんでいます。1つは、危害射撃が可能とするその理由です。 先ほど触れた警察官職務執行法第7条には続きがあり、「兇悪な罪」に臨んだときには武器を使用して危害を加えることを容認しています。 一 死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる兇悪な罪を現に犯し、若しくは既に犯したと疑うに足りる充分な理由のある者がその者に対する警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合。 政府の説明はこの条項を使って、海警局の艦船が尖閣諸島への上陸を強行するなら「兇悪な罪」と見なすということです。果たして中国が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行為は、日本の法律で裁くことができる犯罪なのでしょうか。 Q:私も政府の説明を知って、海警局の艦船がどんな行動を取ったら刑法の何条に違反するのだろうと疑問に思っていました。「国家の意志に基づいて中国が主張する自国の領土である尖閣諸島を奪取する」行為は日本の刑法が定める「犯罪」ではなく、日本にとっては「主権(領土)侵害」すなわち「侵略」です。 香田:そうなのです。外国による国家の意志に基づく行動に対して、刑法という日本の国内法を適用することは不適切です。関連していうと、軍艦と公船は治外法権を持つとする国際ルールがあります。外国の法の適用は受けないということです。 であるにもかかわらず、海警局の艦船が取る行動に日本の法律を「適用できる」と強弁すれば、国際法をないがしろにすることになります。中国が南シナ海において「九段線内に中国の主権が及ぶ」と主張するのと同じことになります。今回の説明がそれほど重大な意味を持つことに政府は気づいていないのでしょうか。恐らく専門家が検討したのでしょうが、今ここで述べた点に言及できない背景があったと考えざるを得ません。 加えて、海警船による尖閣諸島への強行上陸を犯罪と見なすということは、政府がこれを「一過性」の事態とみていることを示します。果たして一過性ですむでしょうか。「国家の意志に基づいて中国の領土である尖閣諸島を奪取する」という国家の任務を遂行するのですから、海上保安庁による抵抗が強く計画通りの奪還作戦ができない場合、海警局が後詰めの部隊を連続して投入してくることは戦理の常です。上陸行動を波状的に繰り返すことも考えられるでしょう。 海上保安庁の人員に被害が生じる可能性も覚悟する必要があります。先ほど言及したように、尖閣諸島周辺の海域における海上保安庁の装備は、現時点においては、中国海警局の装備に見劣りするものではありません。しかし、「国家の意志に基づいて中国の領土である尖閣諸島を奪取する」任務行動ですから、当然、海上保安庁の抵抗を排除し得る性能の装備を拡充して臨んでくることを想定しなければなりません。 海警局はこれまでも着々と装備を拡充していますね。2010~20年に大型船を約60隻から130隻以上に拡充したと報じられています。1万トン級の大型船の配備も進んでおり、尖閣諸島周辺の海域に長期間居座ることができるようになりました。海上保安庁の関係者が「中国海警局の艦船がロケットランチャーを装備したら対応できない」と発言したと聞いたことがあります』、「軍艦と公船は治外法権を持つとする国際ルールがあります。外国の法の適用は受けないということです。 であるにもかかわらず、海警局の艦船が取る行動に日本の法律を「適用できる」と強弁すれば、国際法をないがしろにすることになります。中国が南シナ海において「九段線内に中国の主権が及ぶ」と主張するのと同じことになります」、日本政府の現在の解釈は、国際法からみても極めて問題が多いようだ。
・『航行の自由作戦を遂行する米軍が撃たれる  日本政府の説明がはらむもう1つの問題は、第1の問題と密接に関連します。兇悪な罪に関わるとする外国の公船や軍艦を危害射撃の対象としたことです。国際法上、平時には警告しか認められていません。外国公船や軍艦への危害射撃(攻撃)は通常、戦闘行為を意味します。この解釈に至る検討は相当に慎重であるべきでした。結果的に、我が国政府による今回の説明は同盟国である米国の軍事行動にも負の影響を与えかねません。 Q:米国の軍事行動にも影響するのですか。 香田:そうです。例えば米海軍は南シナ海において航行の自由作戦を展開しています。これにはいくつかケースがありますが、米国による航行の自由作戦そのものを認めない中国がこの米艦の活動を国内法違反と強弁することは十分にあり得ます。日本政府の今回の説明を援用すれば、中国は「米海軍の軍艦が中国の法律に違反したので危害射撃を加えてもよい」と主張できることになります。 最悪の場合、中国海警船が米艦のスキを突いて不意の危害射撃をする事態があり得るのです。先にも申しましたように、国内法違反の有無と武器使用の判断をするのは中国なのですから。米国が注意を促しても、あるいは抗議をしても、中国は「米国が最も信頼する同盟国である日本が同様の主張をしている」とさらに反論するでしょう。 結果的であるにせよ、米国の行動の選択肢を狭め、米軍を危機にさらすリスクが増大することは事実です。日本政府がこのような状況をつくるのは賢明ではありません。 航行の自由作戦は、中国が領海と主張する海域を米海軍の艦船が航行することで「中国の主張を認めない」との意志を示す行動ですね。米イージス巡洋艦「ラッセン」が南シナ海にあるスビ礁の周辺12カイリ内を2015年10月に航行したときから注目を集めるようになりました。 中国は同礁を自国の領土と見なしており周辺12カイリを領海と主張しています。もともと低潮高地であった同礁を埋め立てて人工島を形成し、滑走路などの軍事施設を建設しました。しかし、国連海洋法条約は低潮高地に対して領海を認めていません。よって米国はこの海域を中国の領海ではなく公海と見なしラッセンを航行させました。加えて中国はその領海法で「外国の軍艦が中国領海内を航行する場合には事前に許可を得る」と定めていますが、これも無視しました。 香田:よって、ラッセンが取った行為は、中国からすれば領海法という中国の国内法に違反する行為に当たります。米艦船が今後行う同様の行為に対して中国海警船が危害射撃を加えてもかまわないと主張する根拠というか「お墨付き」を、今回の日本政府の主張により中国に与えることになってしまったのです』、「日本政府の今回の説明を援用すれば、中国は「米海軍の軍艦が中国の法律に違反したので危害射撃を加えてもよい」と主張できることになります」、日本政府の法解釈は余りにお粗末だ。
・『竹島や北方領土で海保の巡視船が撃たれかねない  Q:竹島や北方領土の状況にも影響が及びそうですね。 香田:その通りです。例えば、韓国政府が日本政府による今回の説明を援用すればどうなるでしょうか。竹島周辺の排他的経済水域(EEZ)を航行する海上保安庁の巡視船が韓国国内法に違反しているとして、韓国海洋警察庁の船艇が発砲する事態が起こり得るのです。 韓国の国内法にどのような規定があるのか、そのすべてを我々は知っているわけではありません。また、この場合も判断は韓国側が実施することから、日本側には何がどうなっているのか全く分からないまま事態が進行することがあり得るのです。よって、こうした懸念やリスクが存在することは、日本の行動をしばるとともに韓国の行動の選択肢を広げることにつながります。 EEZにおいて何が許されて何が許されないのか、国連海洋法条約がそれを定めています。そして、同条約はどの国も内容を理解している。だからこの条約の範囲内で解決を図るべきなのです。そこに国内法を持ち込めば収拾がつかなくなってしまいます。 海上において海員は、(1)国連海洋法条約、(2)海上衝突予防法、(3)国際信号書さえ知っていればどこでも航行できるというのが現行の国際ルールの大原則です。これらに加えてさらに周辺国の国内法の規定まで知っていなければ安全な航行ができない、という環境を、国の生存を海洋に大きく依存する日本がつくるべきではありません』、「EEZにおいて何が許されて何が許されないのか、国連海洋法条約がそれを定めています。そして、同条約はどの国も内容を理解している。だからこの条約の範囲内で解決を図るべきなのです。そこに国内法を持ち込めば収拾がつかなくなってしまいます」、確かに「国連海洋法条約」「の範囲内で解決を図るべき」。
・『本来なら防衛出動を発令し自衛隊が対処すべきだが…  Q:日本政府はなぜ、ご指摘のような問題をはらむ説明をしたのでしょう。「国家の意志に基づいて中国の領土である尖閣諸島を奪取する」侵略行動に対しては、自衛隊が対処すべきではありませんか。 香田:これが冒頭述べた政府解釈の背景に関連するものです。1つには、憲法9条の解釈をめぐる長年の問題が影響していると考えます。ご指摘のように、主権(領土)侵害行為すなわち侵略に対しては、政府が防衛出動を発令し自衛隊が克服すべきです 。しかし、これまでの経緯から防衛出動の発令には厳しい条件が課されており、発令のハードルは非常に高いのが現状です。 Q:武力行使の新三要件ですね。 (1)わが国に対する武力攻撃が発生したこと、又はわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること(存立危機事態) (2)これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと (3)必要最小限度の実力行使にとどまること  香田:政府は(1)の「武力攻撃」について、「一般に、一国に対する組織的計画的な武力の行使をいう」と国会で答弁しています。政府は、海警船による尖閣諸島への強行上陸をこの武力行使と判断するでしょうか。これまで国会でなされてきた論議に鑑みると、非常に難しい気がします。 加えて、中国が海警法で「海上警察機関」と表現する海警局の艦船に対して、日本が海上自衛隊の護衛艦を出動させれば、中国は「日本が先に武力行使に踏み切った」と言い立てる懸念があります。 Q:政府はこうした材料を中国に与えかねないことも考慮しているようですね。 香田:その通りです。しかし、こうした環境であっても目の前の現実に対処しなければなりません。そこで、今までの政府の立場の延長に立つ理屈として、海警局の行為を兇悪な罪と見なし、海上保安庁に対処させようと考えたのだと思います。 この対応は、先ほどお話ししたように、中国による九段線の主張と変わるところがありません。憲法9条の解釈をめぐる国内事情に気を配るあまり、肝心の尖閣諸島防衛と国際ルールの順守が脇に追いやられているのです。 また、海上自衛隊部隊の投入に対するためらいは、中国の行動の本質が我が国の主権侵害であるという事実を、我が国政府が世界に堂々と発信することにより対処すべきです。自衛隊の投入遅れにより尖閣諸島を奪取されることがあってはなりません。そして、我が国のこの措置は、時宜を得た明確なものであれば、多くの国に理解されると考えます。もちろん、政府の広報戦への備えが必要なことは言うまでもありません』、「憲法9条の解釈をめぐる国内事情に気を配るあまり、肝心の尖閣諸島防衛と国際ルールの順守が脇に追いやられているのです」、困ったことだ。
・『海上保安庁に「防衛」の任務を付与する  Q:政府の今回の説明が適切でないならば、日本はどうしたらよいでしょう。 香田:3つの案があります。これらをすべて実行することが望ましいと考えます。中国が海軍および海警局の装備を急速に拡充している現状に鑑みて、海上保安庁と自衛隊が持つアセット、つまり我が国の海洋力を総合的にフル活用して事に当たる体勢を整える案です。 第1は、防衛出動を発令する要件を緩和すること。その論拠としている国連憲章との関係も考慮すれば「一般に、一国に対する組織的計画的な武力の行使をいう」という表現を変えるのは難しいでしょう。しかし、「組織的」「計画的」をゆるくとらえ、ハードルを下げることは可能ではないでしょうか。 主権侵害に対処する任務を一義的に付与されているのは自衛隊です。自衛隊が事態に遅れることなくその任務を果たせるよう環境を整えるのが、政府の本来あるべき姿であり、施策だと考えます。 国民感情などを踏まえるとこれは容易ではないかもしれません。ただ、我が国政府には今までの政府解釈の墨守だけでなく、我が国を取り巻く安全保障環境の激変に対応した実利的な検討をする責任があることも事実です。これを実施しなかった結果として尖閣諸島を喪失する事態など決して許してはなりません。 といっても、防衛出動を発令する要件の緩和には時間がかかることも事実でしょうから、第2として、海上保安庁法を改正し、防衛出動が発動されるまで現場にいる海上保安庁の巡視船と海上保安官が自衛隊の代わりに主権を守るための防衛行動を取れると明記するのです。) 海上保安庁の現在の任務は、海上保安庁法第2条が以下と定めています。(1)海難救助、(2)海洋汚染等の防止、(3)海上における船舶の航行の秩序の維持、(4)海上における犯罪の予防及び鎮圧、(5)海上における犯人の捜査及び逮捕、(6)海上における船舶交通に関する規制、水路、航路標識に関する事務その他。同庁は「主権等を確保するための領海警備等」に取り組んでいると言いますが、第2条はそれを明示していません。 また海上保安庁法は第25条で「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」と定め、軍隊として行動することを禁じています。この条文は、日本がまだ占領下にあった1948年に海上保安庁が活動を始める際、「大戦中に暴れまくった連合艦隊を再びつくるものではない」という意志を国内外に示すために挿入した条文です。今日ではその役割を既に終えています。 よって、この第2条と第25条を改正し、海警局の船が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動に出たときには例外的に、海上保安庁が防衛組織として領域の警備に当たれるようにすると明記するのです。ただし、海上保安庁の国防組織としての任務がこのような事態に厳格に限られることは当然です。通常の海上法執行機関としての海上保安庁の活動のほとんどは今まで通りとなります。 第3は、海上自衛隊が平時において警戒監視の任務を担えるようにすることです。これを自衛隊法に明記する必要があります。 巡視船をはじめとする海上保安庁の装備は、世界トップの中国海警に次ぐ優秀さを備えています。特に海上保安官は世界一の任務遂行能力を有しているといえます。しかし、パラシュート部隊が空から降下して尖閣諸島に上陸するとか、ダイバーが潜航して尖閣諸島に近づき夜間に上陸するといった行動に対処する装備と能力は保有していません。 現在の特殊パラシュートは機能が高く、西風が強いときに尖閣諸島西方上空で降下すれば数十km飛ぶことができます。仮に50人の特殊要員がこれに取り組めば、到達率50%でも25人が探知されずに上陸・占拠できます。水中のダイバーが、尖閣諸島の10カイリほど沖で潜水艦から水中航行機器を使用して近接する場合、潜ったまま近づいて来れば巡視船は探知することはできません。朝、目が覚めたら、尖閣諸島に中国の国旗である五星紅旗が翻っていたということがあり得るのです。 これは荒唐無稽な話ではありません。去る2月11日に特殊部隊展開能力を有する米海軍原子力潜水艦「オハイオ」が沖縄近海を航行しました。これはその種の訓練を実施したものと推察されます。中国も同等の能力を持ちつつある、あるいは既に保有していると考えるべきなのです。 海上保安庁が尖閣諸島の「主権等を確保するための領海警備等」を現行法と体制で実施可能としているのは、海警船に対して「のみ」ということです。我が国政府がなすべきは、あらゆる種類の尖閣諸島奪還活動への備えです。その意味において、我が国は現在、想定される事態の一部に対する備えしかないのです。 一方、海上自衛隊はこれらに対処する十分な対空・対潜警戒能力を備えています。なので、自衛隊が警戒監視に当たってこうした脅威の兆候をいち早く察知し、海上保安庁の巡視船はもちろん、警察など関係機関に知らせ、必要な行動が迅速に取れるようにする。例えば警察特殊部隊をヘリで尖閣諸島に運び中国海警局の要員による上陸に備えることができるでしょう。現在持っているアセットをフルに生かすのです。自衛隊の投入が可能な場合には陸上自衛隊部隊の緊急空輸もなされるべきです。 現在の自衛隊法には平時の「警戒・監視」が任務として定められていないという瑕疵(かし)があります(関連記事「自衛隊の中東派遣をめぐる議論が示した安保法制の瑕疵」)。これを改めることは、尖閣諸島を守るための必須要件です。情報収集を含む「警戒・監視」はすべての防衛行動の基礎となるものですから』、「自衛隊法には平時の「警戒・監視」が任務として定められていない」のは、警察の任務だからで、あえて「自衛隊」が乗り出す必要はない。
・『法律論では、尖閣を中国の奪還作戦から守れない  警察官もしくは海上保安官、陸上自衛隊の部隊を尖閣諸島に常駐させる案が時々浮上します。実現できれば尖閣諸島防衛の確実度を高めることができますが、その半面、中国を強く刺激する懸念があります。中国が海警法第20条で「外国が中国の管轄区域で承認を得ることなく建築物を建設した場合は撤去を命じることができ、それを拒むときには強制的に撤去できる」との趣旨を定めたのは、日本がこうした措置を取るのを予想してのことだと考えられます。 仮に、我が国が施設を作り、政府職員、警察官あるいは陸上自衛隊の部隊を常駐させるとするなら、予測される中国の熾烈(しれつ)な奪還作戦に対処する防衛出動をいつでも出す覚悟と制度の整備をもって取り組む必要があるでしょう。この体制を採らない、この案は実施時を失してしまったということです。 繰り返しになりますが、中国が“自国の領土”を奪還すべく海警局を先兵として尖閣諸島に侵攻するシナリオは荒唐無稽な話ではありません。そして、いったん着手すれば、その意志を放棄する可能性は極めて小さいでしょう。我々は憲法9条の解釈をめぐる神学論争を脇に置き、国際ルールを順守した尖閣諸島のあるべき防衛態勢を実現すべく今こそ真剣に考えるべきです。 憲法解釈を含む法律論で、尖閣諸島を中国の奪還作戦から守ることはできません。中国の具体的な活動に対処する体制をわが国の総力を挙げて整備する、加えて、政府と国民が確固たる防衛意志を持つことこそ、中国を抑止する原点です。この原点がしっかりしていれば、不幸にして抑止が崩れた場合でも、我が国の力により中国の奪回作戦を排除することができる。そして米国は、我が国のこの取り組みを見て初めて我が国を真の同盟相手と認知し、必要な際に安保条約5条を発動するのです。 この記事はシリーズ「森 永輔の世界の今・日本の将来」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます』、「憲法9条の解釈をめぐる神学論争を脇に置き、国際ルールを順守した尖閣諸島のあるべき防衛態勢を実現すべく今こそ真剣に考えるべき」、その通りだ。

次に、3月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した軍事ジャーナリストの田岡俊次氏による「中国「海警法」への過剰反応が、かえって武力衝突リスクを高める理由」を紹介しよう。
・『尖閣問題で懸念高まる海保の武器使用拡大の声  中国は2月1日、海上警備に当たる海警局を従来の国家海洋局から分離し、中央軍事委員会傘下の武装警察部隊に編入し、既存の国際法にはない中国独自の線引きをした「管轄下の海域(管轄海域)」で、「主権、主権的権利が侵害されれば武器を含めた全ての必要な措置を取る」などの内容の海警法を施行した。 中国は尖閣諸島を自国領と主張しているから、その付近を「管轄海域」とし、そこでの権益を“侵害”する日本の艦船に対して武器使用をする構えを示したと、日本では受け止める向きが多い。 自民党内などで、「海上保安庁の武器使用の要件を拡大すべきだ」との声が出るのはある意味、当然の動きだ。 だがここは冷静に考えたほうがいい。大騒ぎするほど、むしろ本当の武力衝突につながりかねない危険が強まる』、どうすればいいのだろう。
・『海警局の巡視船に武器使用を含む強力な権限  海警法は習近平体制の下で態勢が強化されてきた海警局の役割と権限を改めて明確にしたものだ。 22条では、「国家主権、主権的権利や管轄権が……違法に侵害された場合、または窮迫した違法な侵害に直面した場合、……武器を含む全ての必要な措置をとる」として、海警局の巡視船などに武器使用を含む強力な権限を与えた。 外国軍艦・公船にも退去命令や必要に応じて強制措置が取れるとされ、防衛活動にも参加できる準軍事組織との位置づけだ。 さら「管轄海域」という定義の曖昧な用語で境界を引き支配が及ぶとした。 国連海洋法条約では、海域を「領海」や「接続水域」、「排他的経済水域」などに分類し、沿岸国の権利や航行のルールなどが決められているが、「管轄海域」という曖昧な言い方が多用され、中国に都合のいい恣意的な運用が行われる可能性がある。 尖閣諸島周辺での中国船の領海侵入が繰り返される状況で、日本でも「危機感」が強まるのはやむを得まい。 だが何が本当は危険なのかを考える必要がある』、「何が本当は危険なのか」、どういうことだろう。
・『すでに海上保安庁は自衛隊との共同訓練も  日本ではすでに1954年制定の自衛隊法80条で、自衛隊が防衛出動、治安出動するような有事の際には防衛大臣が海上保安庁を指揮するよう、総理大臣が命じることができるようになっている。 だが他方、48年に制定された海上保安庁法第25条では、「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」と定めている。 海上保安庁が生まれた48年は戦後3年、憲法施行の翌年だった。 当時の米国は日本の「再軍備」を封じようとしていたが、戦争中に米軍が投下した機雷の除去や密輸の阻止、密航者によるコレラの蔓延防止などに海上警備は不可欠だったから、小型で低速の船艇による海上保安庁の設立を認め、それが海軍に発展することがないようこの条文を入れたのだ。 ところが50年に朝鮮戦争が勃発すると、米国は態度を一転、警察予備隊を急ぎ作らせ、それが54年に陸・海・空自衛隊に発展した。 米国の沿岸警備隊が米海軍の補助部隊であるのと同様に、有事の際には海上保安庁を防衛庁長官の指揮下に動員できる条文を自衛隊法に入れたのだ。 米軍は海上保安庁に中古の3インチ(76ミリ)砲を多数供与し、巡視船を武装させた。 こうして、海上保安庁法と自衛隊法には矛盾が生じ、憲法9条と自衛隊との不整合のミニチュア版のような形となった。 それだけではなく、先にできた海上保安庁と、後に生まれて急速に拡大した海上自衛隊の間には感情的な対立も生じた。 だが近年日本近海への朝鮮の工作船の出没や尖閣諸島を巡る中国海軍や海警局の艦船の行動に共同に対処する機会が増えて“和解”が進んだ。 今では海上自衛隊と海上保安庁は密接に情報を交換し、共同訓練をする仲になり「軍隊として訓練されてはならない」という海上保安庁法の第25条は半ば死文と化した感がある』、「海上保安庁」と「海上自衛隊」は「共同に対処する機会が増えて“和解”が進んだ」、結構なことだ。
・『軍隊と区別する「知恵」 過剰な対応は新たな火種に  海警法を警戒する論者からはこの際、「25条を削除すればよい」という声も出てきそうだが、海上保安庁自身がそれには激しく抵抗するだろう。 独自性を失い、事実上、海上自衛隊の補助部隊化することになってしまうからだ。 海上保安庁を管轄する国土交通省も賛成しないだろう。 欧州の大陸諸国は陸軍とは別に軽装備の国境警備隊を設けていることが多い。 国境付近に戦車や砲兵などを備えた陸軍部隊を展開すれば、相手も陸軍を出して対抗し、小さな事案が重大な結果を招きかねないからだ。 国境警備隊や海上警察などを軍隊と区別することが、安全保障上の一つの知恵になっているといってもいい。 課題はあるにしても、すでに海上保安庁と自衛隊との連携体制が相当できているなかで大きな火種を作りかねない過剰な対応は避けるべきだろう』、「国境警備隊や海上警察などを軍隊と区別することが、安全保障上の一つの知恵になっているといってもいい。 課題はあるにしても、すでに海上保安庁と自衛隊との連携体制が相当できているなかで大きな火種を作りかねない過剰な対応は避けるべきだろう」、同感である。
・『一定の武器使用も可能に 北朝鮮工作船事件を機に法改正  武器使用についても、2001年に海上保安庁法20条が改正され、外国船(軍艦、公船を除く)が日本領海内で、無害航行が疑われたり、重大凶悪犯罪を行っている疑いがあったりする場合には、その船を停止させるため武器使用が認められている。 それまでは人に危害を与える武器使用は警察官職務執行法の規定を準用する形で、正当防衛、緊急避難、凶悪犯の抵抗などの場合に限られていた。 だが99年3月、能登半島沖(佐渡島の西方18キロの日本領海内)にいた北朝鮮の工作船2隻を海上自衛隊の護衛艦と海上保安庁の巡視船が追跡、威嚇射撃をしたが、高速の工作船に逃げ切られた事件があり、海上保安庁法を改正し武器使用を定めた。 国連海洋法条約では、どこの国の船舶も他国の「領海」を通過する権利が認められているが、武力による威嚇や武力行使、兵器を使う訓練、沿岸国の防衛・安全を害する情報収集や測量、通関の法令に反する物品や軍事機器の積み降ろし、漁業などの行為は禁じられている。 こうした有害な行為を防止するために沿岸国は自国の「領海」内で必要な措置を取ることができる。 ただし海洋法条約は軍艦が沿岸国の法令を守らず、順守の要請を無視した場合には「沿岸国はその軍艦に対し領海から直ちに退去することを要求できる」と定められているだけだ。 軍艦を拿捕すれば戦争になる公算が高いためだろう。 海上保安庁の武器使用や執行権限もこうした海洋法条約に準じて定められている』、なるほど。
・『「国際法違反」だが中国側に反論の余地なくもない  一方で海警法の場合は、軍艦に対しても「退去の命令」だけでなく必要に応じ「強制措置」をとることができると解釈される。 さらに、中国の「管轄海域」は、「領海」内だけでなく、陸地から200海里の「排他的経済水域」内や、中国(当初は蒋介石治下の中華民国)が管轄権を主張してきた、南シナ海ほぼ全域で、中国国内法で違法となる行為に対して武器使用をする可能性もある。 こうしたことから「中国の海警法は国際法違反」と日本を含めて多くの国では受け止められている。 だが、2001年に起きた九州西方海域での北朝鮮工作船撃沈事件では、海上保安庁も国際法違反と批判されてもおかしくないことをしている。 この時には、北朝鮮の工作船は日本の領海には全く入っておらず、海上保安庁は工作船の発見当初から「漁網を積んでいない。不審船だ」と発表し、巡視船は追跡して射撃し、相手が反撃すると「正当防衛」として、20ミリ機関砲弾187発を撃ち込んだ。工作船は自沈、約20人の乗組員全員が死亡した。 政府は「日本の排他的水域内で漁業をしている漁業法違反の疑いがあるため停船を命じたが、逃走したため船体射撃を行った」と説明した。 だが初めから「漁船ではない」と言いながら、追跡して公海上で射撃、撃沈したのは、国連海洋法条約と海上保安庁法に違反する疑いがある行動だった。 おそらく中国側は、仮に海警法の下で「管轄地域」を航行する日本の船舶を、武器を使用して拿捕しても、「貴国もかつて同じことをし、合法と言ったではないか」と反論するのではないか』、「北朝鮮工作船撃沈事件
」はこの記事で思い出したが、確かに日本側の行動には行き過ぎもあったようだ。「中国側」が正当化の根拠に引用する口実を与えたのは、まずかった。
・『巡視船の「強弱」を論じる無意味 戦いになれば軍隊の出番  2010年9月尖閣諸島海域での中国漁船と海上保安庁の巡視船の衝突は、事件以降、日中関係は悪化し、巡視船の建造競争の様相を呈している。 中国海警局が保有する船艇は大小合わせて523隻で、うち外洋用巡視船は87隻(12隻は海軍から払い下げの中古)、海上保安庁は大小373隻でうち外洋用巡視船は57隻だ。 米国の沿岸警備隊は大小340隻で外洋用の巡視船は25隻しかない。海上自衛隊の護衛艦は48隻だ。中国と日本は他国とは段違いの規模の海上警察隊を持つことになっている状況だ。 建造される巡視船は次々と大型化し、中国の最新型2隻は米海軍の「タイコンデロガ」級巡洋艦(満載1万117トン)をしのぐ1万2500トンの巨大巡視船だ。 日本も6000トンないし7300トン級の新鋭大型巡視船を6隻持ち、さらに3隻を建造中だ。 中国の大型巡視船は射程10キロの3インチ(76ミリ)砲1門を装備している。それを日本では新たな脅威のように言う人もいるが、日本の大型巡視船はそれに匹敵するスウェーデン製の40ミリ機関砲2門と20ミリ機関砲2門を装備している。 40ミリ機関砲の有効射程は10キロで、1分間に330発を発射できる。目標の動きを追って砲が自動的に目標に向かい、命中弾を浴びせ続ける火器管制システムもあるから、76ミリ砲1門の中国の超大型巡視船と優劣はつけがたい。 中国が巡視船を超大型化しても砲1門では東シナ海での戦力バランスを大きく変える実効はありそうにない。 超大型巡視船を建造したのは、大量の燃料などを積んでソマリア沖の海賊対処など遠隔地に派遣して世界に力を誇示するためかと思われる。) そもそも日中が巡視船の増強をしても、万が一、日中の巡視船が交戦する事態になれば、中国側は海軍や空軍が、日本側は海・空自衛隊が出動するだろう。場合によっては日米安保条約(5条)によって米軍が加わる可能性もある。 日本と中国の巡視船だけが戦闘することを想定して強弱を論じるのは無意味だ』、「日本と中国の巡視船だけが戦闘することを想定して強弱を論じるのは無意味だ」、その通りだ。
・『重要なのは日中で紛争拡大を防ぐ取り組み  日中の軍と軍が衝突する事態となれば、日中ともが大きな打撃を受ける。 世界最大の貿易国である中国にとり、太平洋・インド洋の航行の自由はまさに「死活的利益」であり、その確保のためには日本、米国との軍事衝突は避けたいのが本音だろう。 14年11月10日、当時の安倍首相は北京で習近平国家主席と会談した。 その3日前に尖閣諸島を巡って双方が「異なる見解」を持つのを認め合う合意事項を発表、玉虫色の表現で事実上の棚上げをし、「戦略的互恵関係」に戻ることで合意した。 東シナ海で日中の巡視船や艦船の偶発的な衝突が起きるなどの不測の事態に備え「海上連絡メカニズム」の運用開始を進めることも決まった。 だがいまだにそれは完成していない。そうした紛争拡大を防ぐ冷静な取り組みが優先されるべきだ。 中国と日本が巡視船の増強を競い、強硬な法令を制定し合って対立を激化させるのは、お互いの安全保障にも逆行すると案じざるを得ない』、「海上連絡メカニズム」のような「紛争拡大を防ぐ冷静な取り組みが優先されるべきだ」、同感である。
タグ:日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 尖閣諸島問題 田岡俊次 (その7)(中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的、中国「海警法」への過剰反応が かえって武力衝突リスクを高める理由) 「中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的」 香田洋二・元自衛艦隊司令官(海将) 「中国海警局による武器使用は海警法の本質ではありません。この本質は、海警局の船が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動を取る可能性が高まったことです」、 「武器については、日本の海上保安庁も一定の条件を満たせば警察官職務執行法を準用して使用することが認められています」、 「中国が海警法を施行したのを奇貨として我々が考えるべきは、武器使用という「木」ではなく尖閣諸島をいかに守るかという「森」なのです」、さすがプロらしい適格な指摘だ 「習近平強軍思想を徹底し、新時代の国防と軍隊建設の需要に応える」、穏やかではなさそうだ。 「軍艦と公船は治外法権を持つとする国際ルールがあります。外国の法の適用は受けないということです。 であるにもかかわらず、海警局の艦船が取る行動に日本の法律を「適用できる」と強弁すれば、国際法をないがしろにすることになります。中国が南シナ海において「九段線内に中国の主権が及ぶ」と主張するのと同じことになります」、日本政府の現在の解釈は、国際法からみても極めて問題が多いようだ 「日本政府の今回の説明を援用すれば、中国は「米海軍の軍艦が中国の法律に違反したので危害射撃を加えてもよい」と主張できることになります」、日本政府の法解釈は余りにお粗末だ 「EEZにおいて何が許されて何が許されないのか、国連海洋法条約がそれを定めています。そして、同条約はどの国も内容を理解している。だからこの条約の範囲内で解決を図るべきなのです。そこに国内法を持ち込めば収拾がつかなくなってしまいます」、確かに「国連海洋法条約」「の範囲内で解決を図るべき」 「憲法9条の解釈をめぐる国内事情に気を配るあまり、肝心の尖閣諸島防衛と国際ルールの順守が脇に追いやられているのです」、困ったことだ 「自衛隊法には平時の「警戒・監視」が任務として定められていない」のは、警察の任務だからで、あえて「自衛隊」が乗り出す必要はない 「憲法9条の解釈をめぐる神学論争を脇に置き、国際ルールを順守した尖閣諸島のあるべき防衛態勢を実現すべく今こそ真剣に考えるべき」、その通りだ 「中国「海警法」への過剰反応が、かえって武力衝突リスクを高める理由」 「何が本当は危険なのか」、どういうことだろう。 「海上保安庁」と「海上自衛隊」は「共同に対処する機会が増えて“和解”が進んだ」、結構なことだ。 「国境警備隊や海上警察などを軍隊と区別することが、安全保障上の一つの知恵になっているといってもいい。 課題はあるにしても、すでに海上保安庁と自衛隊との連携体制が相当できているなかで大きな火種を作りかねない過剰な対応は避けるべきだろう」、同感である 「北朝鮮工作船撃沈事件 」はこの記事で思い出したが、確かに日本側の行動には行き過ぎもあったようだ。「中国側」が正当化の根拠に引用する口実を与えたのは、まずかった。 「日本と中国の巡視船だけが戦闘することを想定して強弱を論じるのは無意味だ」、その通りだ。 「海上連絡メカニズム」のような「紛争拡大を防ぐ冷静な取り組みが優先されるべきだ」、同感である。
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韓国(文在寅大統領)(その8)(韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ、韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練 元駐韓大使が解説、レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論) [外交]

韓国(文在寅大統領)については、昨年12月26日に取上げた。今日は、(その8)(韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ、韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練 元駐韓大使が解説、レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論)である。

先ずは、本年2月3日付け東洋経済オンラインが転載したソウル新聞「韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/409182
・『1997年3月。韓国海軍が日本と対等な軍事力を持つために野心を持って準備していた「韓国型航空母艦」導入計画は、韓国国防省と合同参謀本部の反対に直面した。当時の金泳三大統領は、韓国の海軍戦力が日本の10%にすぎないため、基準排水量で2万トン級の軽空母と6隻の駆逐艦からなる空母戦団を編成するよう指示していた(日本の海上自衛隊護衛艦「いずも型」の基準排水量は1万9950トン)。 合同参謀本部などが空母建造に反対した表面的な理由は、「周辺国の軍備増強を引き起こし、地域の安全保障を揺るがしかねない」というものだった。ところが、軍首脳部のホンネは、陸軍中心の合同参謀本部は「当面は北朝鮮に対応する方向で軍事力建設を集中すべき」だった。そのため、空母建造に強く反対した。このとき出たのが、「朝鮮半島不沈空母論」だった』、「韓国型航空母艦」導入計画が「1997年」に出ていたとは初めて知った。「朝鮮半島不沈空母論」とは何なのだろう。
・『23年前の「不沈空母論」が開発のネックに  一方、中国と日本は周辺国が反対するにもかかわらず、空母建造計画を進めていた。とくに中国は、「遼寧」(基準排水量5万3000トン)「山東」(同推定5万5000トン)の2隻の空母を建造し、今や3隻目の空母を準備中だ。これまでアメリカが支配していた太平洋において、力の均衡を崩そうというものだ。中国はアメリカと対等な軍事力を確保するため、4つの空母戦団を編成する方針だ。 2020年12月11日、韓国国会の国防委員会予算審査小委員会。韓国型空母の設計費101億ウォン(約9億4500万円)の代わりに、着手金10億ウォン(約9400万円)だけを確保してほしいとする海軍と防衛事業庁の要請に野党側が強く反対した。「高い維持費に見合うだけの北朝鮮に対する抑止力を持たない」「朝鮮半島は不沈空母だ」という論理が出されたのだ。23年前と同じ論理が出されたことになる。 さらには、「韓国を取り巻く安全保障の現実からいえば必要がない」という意見まで出た。これには海軍が衝撃を受けた。与党内でも一部反対の声が出てしまい、結局、2021年の空母関連予算は1億ウォン(約940万円)にまで減額されてしまった。 ところが、状況は一気に反転する。合同参謀本部は2020年12月30日に合同参謀会議を開き、韓国型空母建造事業について研究開発、または購入するという決定を下した。軍首脳部は軽空母を建造するという計画について「安保上のリスクに対応する未来の合同戦力」と評価し、事業推進を決めた。) これにより、2021~2025年の国防中期計画に韓国型空母建造事業が含まれる可能性が高まった。2021年、防衛事業庁はこの事業の妥当性の分析を、海軍は空母建造と艦載機となるF35B導入に対する細部計画を準備する。事業が順調に進めば、来年2022年に基本設計が始められる。 海軍は23年前の経験を踏まえ、合同参謀本部をどのように説得したのだろうか。海軍は予算の大幅削減でショックを受けたものの、歴史的偉人を利用し反論した。一人は儒学者の李珥(イ・イ、1536~1584年)、もう一人は李朝の宰相だった柳成龍(リュ・ソンリョン、1542~1607年)だ。 李は1592年の文禄の役(~1593年)が始まる10年前に、「10万人の兵士を育成すべきだ」と主張した人物だった。しかし、「国がこれだけ平和なのに戦争なんて起きるものか」と大批判を受けた。また柳は豊臣軍に抵抗して戦功をなした人物であり、その史書「懲毖録」(ちょうひろく)で「事前に戦争を防ぐことができなかったことを反省すべきだ」と書いている』、「海軍は予算の大幅削減でショックを受けたものの、歴史的偉人を利用し反論」、歴史sw反論するとは巧みだ。
・『史実を利用して開発計画を承認させた海軍  中国と日本の海軍力は韓国より優位に立つ。海軍首脳部は「周辺大国レベルまで到達するのは難しいが、少なくとも抑止力は保有すべき」と訴えた。20年超の空母建造反対の理由とされていた「朝鮮半島不沈空母論」も、積極的に賛成理由として利用したという。1950年の朝鮮戦争の経験を取り上げたという。 戦争当初、韓国での飛行場運用は事実上不可能な状況であり、空軍戦闘機は日本から出撃していた。しかし、1時間超の時間をかけて対馬海峡を越えてきた戦闘機の作戦時間は、わずか15分だった。一方、アメリカ海軍の空母から出撃した戦闘機は出撃して5~10分で地上軍支援が可能だった。 韓国のF15K戦闘機の作戦時間は、竹島(韓国名・独島)の上空まで30分、中韓で所有権を争う離於(イオ)島(中国名・蘇岩礁)で20分だ。KF16戦闘機の場合、それぞれ10分と5分にすぎない。空中給油機を導入した場合、F15Kであれば竹島上空での作戦時間が90分程度に増え、最新戦闘機となるF35Aの導入も決定されているが、これ以上の空中戦力の追加は限界がある。これを補うことができる未来の戦力が空母なのだと海軍は主張した。 韓国政界では、原子力潜水艦を導入せよとの声が高まっている。しかし、これには韓米原子力協定が先決条件となり、軽空母とは作戦上の性格が違うと海軍は説明する。例えば戦車と自走砲の性格が違うように、原子力潜水艦と空母は目標がまったく違うということだ。とくに空母は、存在自体が戦争抑止力と外交力の確保につながるのだと海軍は説明する。 一方で、韓国の国力に軽空母は浪費と反対する声もある。しかし、韓国より軍事力や経済力が低いとされるイタリアやブラジル、タイなどがすでに軽空母を保有している。海軍は合同参謀本部に「空母建造には10年以上かかる。建造費を分散させれば、国防予算内で十分に支援できる」と積極的に説明しているようだ。(韓国「ソウル新聞」2021年1月29日)』、無駄な装備の典型で、軍人のおもちゃだ。しかし、「イタリアやブラジル、タイなどがすでに軽空母を保有」というのが、保有論への後押しとなるのだろう。「空母」の仮想敵国は、日本なのではあるまいか。自衛隊にはヘリコプター空母であり護衛艦として、ひゅうが型、いずも型があるが、戦闘機搭載可能に改装するのだろうか。日本にとっても、無駄だ。

次に、3月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練、元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/265163
・『約5年ぶりに米韓2+2が実現  米国のトニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官は3月15~17日の日程で訪日した後、17日から1泊2日の日程で韓国を訪問することで日程調整しているという。韓国では鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相、徐旭(ソ・ウク)国防相と「2+2(外務・国防相)会議」が実現する見込みである。米韓による2+2は2016年10月にワシントンで開催されたのが最後であり、約5年ぶりのことである。 中国や北朝鮮などの「レッドチーム」入りを言われている韓国は、これまで日本ばかりでなく米国からもスルーされてきており、日米豪印の4カ国首脳会談にも参加しない見通しである。そうした中で、2+2が開かれる見込みとなったことで、文在寅政権はホッと胸をなで下ろしていることであろう。) 米韓関係では、さらに良いニュースが飛び込んできた。米国務省のプライス報道官は8日の定例会見で「昨日、米国と韓国との交渉団は6年分の新たな防衛費分担金特別協定(SMA)の草案に対して合意に至った」と発表した。同報道官は、米国はトランプ政権の時のような要求はしないのかと問われ、「韓国はわれわれの同盟、過酷な要求はしない」と述べた。 国防総省のカービー報道官も分担金交渉の妥結が「同盟と共同防衛を強化するものと期待する」と述べた。さらに「今回の合意は自由で開かれたインド太平洋地域と北東アジアで、米韓同盟が平和と安保、安定の核心軸(linchpin)であるという事実を再確認するものだ」と述べ、この合意を歓迎した。 しかし、米韓関係が平穏な方向に向かっているように思われる出来事は、むしろ米国が韓国に対し、同盟としての役割を高めることを求める最初のステップだと考えていいのではないか。 それはカービー報道官の「米韓同盟がインド太平洋と北東アジアの平和と安保、安定の核心軸」という言葉に反映されている』、「米韓による2+2は・・・約5年ぶり」、とはずいぶん冷え切っていたようだ。「米国が韓国に対し、同盟としての役割を高めることを求める最初のステップ」、とはさすが深い読みだ。
・『米国の北朝鮮政策の再検討に 文政権はついていけない  米バイデン政権は北朝鮮への対応の再検討を行っている。これまでの対応では北朝鮮の核・ミサイル開発を抑制することはできなかった。これまで手をこまねいている間に北朝鮮の核・ミサイル開発は後戻りできないほどに進んでしまった。そうした北朝鮮に対して、いかに圧力を高めていくか極めて難しい選択になるだろう。 半面、北朝鮮の経済は極めて困難な状況にある。1995年前後に100万人ともいわれる餓死者が出た状況に酷似しているとさえいわれる。北朝鮮経済が正常化するためには核・ミサイル開発を放棄し、劣悪な国内の人道問題を改善することで、国際社会の支援を引き出す以外ない。 北朝鮮のひっ迫した状況は、外部からの圧力に対する抵抗力を弱めているであろう。したがって日米韓はそこに問題解決の可能性を見いだしたい。同時に金正恩総書記は政権の崩壊を恐れ、外部からの圧力の強化にどのような形で反発してくるか、予測が難しく、軍事的衝突に発展する可能性も排除できないかもしれない。こうした命題に対処し、北朝鮮の行動を抑制するためには、日米韓の極めて緊密な連携と協力が必要である。 しかし、韓国は相変わらず、北朝鮮は非核化する意思がある、などと非現実的なことを言い、世界を惑わしている。また、トランプ大統領と金正恩総書記が行ったシンガポール首脳会談の状況に立ち戻り、米朝関係を再構築することを求めている。だが、シンガポール会談は、北朝鮮に核・ミサイル開発の時間稼ぎをさせただけで、失敗であった。 それでも韓国としては、北朝鮮を支援することで、当面の衝突を回避し、あわよくば両国の協力関係を強化することを狙っているようだ。 こうしたデリケートな問題を、今回の米韓2+2でどこまで議論できるか。おそらく韓国には米国の求める方向での議論の用意はできていない可能性が高い。特に文政権は、今年4月のソウル市長選挙はじめ国内の腐敗、土地政策、雇用問題にかかりっきりであり、北朝鮮が強く反発する問題に応じることはできないであろう。 こうした韓国の姿勢に米国はどこまで我慢ができるのだろうか』、「バイデン政権」は「トランプ」よりは忍耐強いだろうが、それでも限界がある筈だ。
・『米韓関係は軍事的にも手詰まり感  米韓連合軍は8日から今年上半期の合同演習を開始した。しかし、今年も実際の兵力や装備を大掛かりに動員する野外演習(FTX)ではなく、コンピューターシミュレーションによる指揮所訓練(CPX)となる。韓国軍は、訓練が始まったことは公表したが、「同盟」などの言葉が含まれた訓練の正式名称を含む具体的な進行状況などについては一切公表せず、関連する写真も配布しなかった。 これとは対照的に米国と日本は大規模機動訓練の頻度を大幅に増やしている。米国のインド太平洋軍によると、米海軍の空母「セオドア・ルーズベルト」を中心とする空母艦隊は、グアム沖合の西太平洋で日本の海上自衛隊と機動訓練を行った。自衛隊は1年で合計38回、延べ日数としては406日間米軍と共同訓練を行った。 韓国軍は訓練規模が縮小した理由としてコロナを挙げているが、日米の訓練を見るとそれはあくまでも口実にすぎないことがよくわかる。韓国統一部は「韓米合同訓練が柔軟かつ最小限の形で行われているだけに、北朝鮮もわれわれのこのような努力に相応する態度を示してほしい」と述べ、これが北朝鮮の顔色をうかがったものであることを明らかにしている。 米韓間で大規模な合同野外演習は2年間行われていない。韓国の徴兵された兵士の任期が1年半であり、在韓米軍の兵士の任期が1年であることから、既に米韓連合軍の実戦能力が低下していることは避けられないだろう。韓国の態度は米国が求める「北東アジアで米韓同盟が平和と安保、安定の核心軸」にはとても及ばない。 米韓は合同訓練を調整する過程では終盤まで隔たりがあり、先週半ばには全体の日程を確定できなかったほどだという。 先述の通り、今年上半期の合同演習が指揮所訓練方式で行われることになり、韓国軍の米韓合同軍の指揮能力に対する評価が今年下半期に延期された。これによって文在寅大統領の任期である来年5月までに戦時作戦統制権の韓国軍への移管手続きを終えることが現実的に不可能になったとして、8日付中央日報は、「文政権での戦時作戦統制権の移管が事実上白紙になった」と報じている』、「韓国の徴兵された兵士の任期が1年半であり、在韓米軍の兵士の任期が1年」、「米韓間で大規模な合同野外演習は2年間行われていない」、とすると、現在の米韓軍は「大規模な合同野外演習」、を全く経験してないことになり、戦力低下したことになる。
・『弱腰の韓国に中国は一層の圧力  バイデン政権はインド太平洋で対中ミサイル網の構築を進めている。これは対中包囲網が軍事分野にも本格的に拡大されることを意味する。専門家は、「中国のけん制のため日米韓協力が強調されており、米国のミサイル包囲網に韓国の参加を公式要請する可能性がある」という見方を示している。この場合、中国の反発は、THAAD(高高度ミサイル防衛システム)を配備した時よりもはるかに強いものになるだろう。 中国は1980年代から太平洋上の島と島を結ぶ「列島線」を引いて段階的に米軍などの活動領域を狭めようとする戦略「接近阻止・領域拒否」を進めてきた。第1列島線は沖縄-フィリピン-マラッカ海峡を、第2列島線はグアム-サイパン-パプアニューギニアを結ぶ線である。 中国は2020年代初頭までに第2列島線までを事実上「自分たちの庭」にしようとしてきた。米軍は第2列島線までの中国の進出を制止するため、第1列島線に沿って中国に対する精密攻撃ネットワークを構築しようとしている。 ブリンケン国務長官は「中国は21世紀最大の地政学上の宿題」と語り、「持ちうるすべての手段の動員」を公言した。2+2の会合時に対中ミサイル網への参加問題に焦点が当たる可能性もある。 文政権は中国から「三不政策」を約束させられている。「米国のミサイル防衛網への参加、THAAD追加配備、日米韓軍事同盟を行わない」というものである。中国とすれば、日米韓が一体となって対中包囲網を構築することは防ぎたい。そのため、最も弱い柱である韓国に集中的に圧力を加えてくる可能性が高い。 これまで、米中の間で方向性の定まらない態度を示した韓国。米国の対中政策の硬化は一層強い難題を突き付けることになった』、「文政権は中国から「三不政策」を約束させられている」、先ずはこの「約束」をホゴにさせることから始める必要がありそうだ。
・『米国は日本に対し日韓関係の改善を要求  米国の国務長官、国防長官が日本に次いで韓国を訪問するのは、日米韓の協力体制を立て直そうとする意図が背景にあるだろう。日韓では茂木敏充外相はいまだに鄭義溶外相と電話会談すら行っておらず、姜昌一(カン・チャンイル)新駐日大使は菅義偉首相ばかりか茂木外相とも面会していない。 こうした状況で一気に日米韓外相会談、国防相会談を行う機は熟していないが、今回米国側は日韓の橋渡し役を果たそうとするであろう。日本は米国と緊密に協力しているのに対し、韓国はふらふらしている。米国はまず日本に関係の立て直しを求めてくるだろう。そしてその返答をもって韓国の説得に当たるだろう。 日本としては、韓国の現在の国際法違反の状況を受け入れることはできず、歴史問題は韓国国内で処理するよう求めていくことを、改めて米国に伝えるべきであろう。ただ、米国の求める日米韓協力に対してゼロ回答もできないのではないか。 その場合、韓国が北朝鮮への無見識な歩み寄り姿勢を改め、日米韓協力に前向きであれば、日本は韓国と歴史問題でも話し合いを行う用意があることを米側に伝えることが一案として考えられるかもしれない。 日本にとって最悪なシナリオは、韓国が困窮極まりない北朝鮮に助け舟を出すことで生き返らせ、核・ミサイル開発を一層進めることである。日本は米国と共に、このような韓国の姿勢を改めさせるべきであり、それこそが国益にかなうと考える。 日本としては、中国、北朝鮮という2大脅威にいかに向き合っていくか、ということが地政学上の最大の課題である。韓国に対して、無意味な譲歩はすべきではないが、日本の置かれた状況を冷静に分析し対応することが求められている。それは日米韓協力に韓国をコミットさせることである』、「韓国」との関係を含め全面的に同意したい。

第三に、3月9日付けJBPressが掲載したフリージャーナリストの金 愛氏による「レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64395
・『文在寅政権後の有力な次期大統領候補の1人である与党「共に民主党」の李洛淵(イ・ナギョン)代表が、3月5日、江原道春川(チュンチョン)市の中央市場で、卵を投げつけられた。このニュースに接した国民はSNSで文政権と李代表を嘲笑い、「ざまを見ろ」「痛快だ」という反応を見せた。 2022年3月に大統領選挙を控える韓国。文大統領は任期最後の年に、国政掌握に失敗した「レームダック(死に体)化」をさらしている。世論調査で文大統領と共に民主党の支持率はかろうじて30%を超える程度で、文大統領を支持してきた30~40代の政権離れが顕著である。 支持率低下に対応するため、文大統領は外に向かって反日を叫び、国内では抗日を掲げて政権を掌握しようとしている。一方、日韓関係改善の「出口戦略」を目指す文大統領は今年になって日本への対話を申し入れると同時に、共に民主党は「親日派の所有する土地を没収する」という手口で「親日派狩り」を続けている。「二枚舌」と「嘘」を直す気は毛頭ないらしい。 李洛淵代表は、3月5日午後4時29分頃、春川市中央路にある中央市場に入った途端、待ち構えていた「春川中島遺跡保護本部」の女性会員Aさん(50代)に卵を投げつけられた。李代表の白いマスクに卵黄がべたりと付き、着ていたスーツにも卵液が飛び散った。李代表は足を止めてハンカチで卵液を拭くと、マスクを替え、上着を着替えた。 李代表に卵を投げたAさんは、「古代遺跡のある土地に観光地を作る」という計画に反対する団体に所属していることが明らかになった。Aさんは李代表が処罰を望まなかったため現行犯逮捕を免れた。韓国メディアがこのニュースを報道すると、国民はSNSで「ダチョウの卵を投げつけてほしかった」「文大統領に当たればよかったのに」「久しぶりに国民の鬱憤が晴れた」などの反応を見せた。おおむね「卵投げつけ事件」を歓迎するムードである』、なるほど。
・『文在寅政権が犯した失政の数々  李代表は韓国国会300議席中180近い議席を有する与党の代表で、有力な次期大統領候補でもある。李代表は元記者で東京特派員を経験し、国会議員時代には長年、日韓議員連盟で活動した。日本語を流暢に話し、日韓議員連盟の副会長を歴任するなど、“知日派”議員として知られている。2019年には文大統領が、李代表を対日特使に任命、悪化の一途をたどる対日関係の改善を直々に頼んでいる。その李代表に対する「卵投げつけ事件」が国民の注目を浴びている理由は何か。 現在、文政権に対する国民の怒りは極限に達していると言っても過言ではない。2021年3月、世論調査機関リアルメーター(Realmeter)は、文大統領の支持率が史上最低の34.1%と発表した。共に民主党の政党支持率も28.7%で最低値を更新。国民の心はすでに冷え、現政権を見限ろうとしているのだ』、「文大統領の支持率が史上最低の34.1%」、とは想像以上に底堅いようだ。
・『文政権が誕生して以降、韓国人の生活はより一層厳しさを増した。文大統領は2017年5月10日の大統領就任の辞で「国らしい国、一度も経験したことのない国を作る」と公約し、さらに「機会は平等、過程は公正、結果は正義の側に寄る」と宣言した。しかし、何ひとつ実現していない。 国民は経済的に貧窮し、公正や正義は高官たちの不正腐敗で跡形もなく消えた。新型コロナウイルスの拡散を防ぐ名目で、小さな店舗にも営業時間の短縮を強制し、自営業者を廃業に追い込んだ。また「積弊」と名付けた、朴槿恵前政権の時に日韓関係の改善を進めた人々に対する厳格な捜査を行った。 現に、徴用工訴訟の判決を引き延ばした容疑などでヤン・スンテ前最高裁判所長官を、慰安婦合意を主導した李丙琪(イ・ビョンギ)元駐日大使等を次々と逮捕した。さらに、釈放を求める世論が勢いを増しているが、反文在寅を掲げる保守党の李明博元大統領と朴槿恵前大統領をいまだ収監したままである。 ほかにも以下の失策が挙げられる。 ▲左派の雇用を無理やり創出、新規採用枠が激減し、20年ぶりに1カ月の失業者数が過去最高の157万人を記録  ▲憲法違反ではないかと批判を浴びている月城(ウォルソン)原子力発電所1号機の早期閉鎖と、産業通商資源部の「北朝鮮地域での原発建設推進方案」ファイルの削除  ▲文政権発足の一翼を担った活動家や左派たちが独占する太陽光事業  ▲所得主導型成長戦略とは真逆の最低水準となった所得分配と、経済二極化の加速  ▲税金増額につながると懸念されている共産主義的な医療政策「健康保険の保障性強化対策」、いわゆる「文在寅ケア」  ▲北朝鮮に過度な「屈辱外交」を行い、次の段階で徹底的に無視される  ▲24回にも及ぶ不動産対策を打ち出して不動産市場の混乱が加速、全国的な不動産価格が高騰』、これでは支持率低下は当然だ。
・『既成事実化しているコリア・パッシング  日韓関係に加えて、米韓同盟も危機に瀕している。外交関係者らの中には、当事者であるはずの韓国が議論から外される「コリア・パッシング(Korea passing)」が既成事実化していると考える人が多いようだ。 文政権は発足後、「2015年の慰安婦問題韓日合意破棄」「2018年韓国大法院(最高裁判所)のいわゆる元徴用工への賠償命令判決」「2019年日本製品不買運動」「2020年ソウル中央地方法院(裁判所)の元慰安婦への賠償命令判決」などで立て続けに日本を挑発し、「親日派のあぶり出し」と「親日派狩り」を続けてきた。菅義偉政権はこうした文政権を徹底的に無視している。 2021年に大統領に就任したジョー・バイデンと米国政府も北朝鮮と中国におもねる韓国を外して、日本との外交や安全保障協力、太平洋戦略の再編に注力している。日本が提唱し、米国が主導した「日米豪印戦略対話(クアッド)」の中国包囲網から韓国を除外した事実もコリア・パッシングを示していると言えるだろう。 韓国では、日米韓同盟関係が悪化の一途を辿れば、駐韓米軍の撤収という最悪のシナリオにつながりかねない懸念が広がっている。米韓同盟をないがしろにし、北朝鮮が望む「終戦協定」と「在韓国連軍の解体」に賛同してきた文政権を米国は無視しているのだ。 日米との関係を回復するため、どれほどの努力をしても足りない状況だが、その文政権の「親日派狩り」はとどまるところを知らない。3月1日には親日派の子孫たちが所有する土地を没収すると脅しをかけた。一方、韓国ではおよそ数万人の公務員が土地投機をした疑惑が持ち上がっているが、これに対するお咎めはない。親日派狩りで反日を煽る一方、身内が私腹を肥やすのは黙認する。ここにも文政権の二面性が垣間見られる』、「親日派の子孫たちが所有する土地を没収」、韓国の法律ではそんあことが可能なのだろうか。
・『文在寅政権は災いそのもの  「一度も経験したことのない国」。今、韓国人は文政権に対する挫折感と憤りで溢れている。ある国民は「文政権は、問題解決策を提案するどころか災いそのものだ」と非難する。 文政権は、大衆を反日に扇動し、北朝鮮や中国にすり寄って韓国を左傾化させながら、国内経済を破綻に導き、経済の二極化を加速させた。そして、これらの結果はすべてコロナのせい、前の保守政権のせい、親日派と日本のせいだと、「人のせい」にし続けている。李洛淵代表への「卵投げつけ事件」を歓迎する韓国人の姿を見ても、いま韓国は、まさに「反日」から「反文在寅」へ流れが変わっているといえそうだ』、「いま韓国は、まさに「反日」から「反文在寅」へ流れが変わっている」、事実であれば、喜ばしいことだ。
タグ:韓国 東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン JBPRESS ソウル新聞 武藤正敏 (文在寅大統領) (その8)(韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ、韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練 元駐韓大使が解説、レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論) 「韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ」 「韓国型航空母艦」導入計画 「韓国型航空母艦」導入計画が「1997年」に出ていたとは初めて知った。「朝鮮半島不沈空母論」とは何なのだろう 23年前の「不沈空母論」が開発のネックに 「海軍は予算の大幅削減でショックを受けたものの、歴史的偉人を利用し反論」、歴史sw反論するとは巧みだ 史実を利用して開発計画を承認させた海軍 無駄な装備の典型で、軍人のおもちゃだ。しかし、「イタリアやブラジル、タイなどがすでに軽空母を保有」というのが、保有論への後押しとなるのだろう 「空母」の仮想敵国は、日本なのではあるまいか。自衛隊にはヘリコプター空母であり護衛艦として、ひゅうが型、いずも型があるが、戦闘機搭載可能に改装するのだろうか。日本にとっても、無駄だ 「韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練、元駐韓大使が解説」 「米韓による2+2は・・・約5年ぶり」、とはずいぶん冷え切っていたようだ 「米国が韓国に対し、同盟としての役割を高めることを求める最初のステップ」、とはさすが深い読みだ 米国の北朝鮮政策の再検討に 文政権はついていけない 「バイデン政権」は「トランプ」よりは忍耐強いだろうが、それでも限界がある筈だ。 米韓関係は軍事的にも手詰まり感 「韓国の徴兵された兵士の任期が1年半であり、在韓米軍の兵士の任期が1年」、 「米韓間で大規模な合同野外演習は2年間行われていない」、とすると、現在の米韓軍は「大規模な合同野外演習」、を全く経験してないことになり、戦力低下したことになる 弱腰の韓国に中国は一層の圧力 「文政権は中国から「三不政策」を約束させられている」、先ずはこの「約束」をホゴにさせることから始める必要がありそうだ 米国は日本に対し日韓関係の改善を要求 「韓国」との関係を含め全面的に同意したい 金 愛 「レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論」 文在寅政権が犯した失政の数々 「文大統領の支持率が史上最低の34.1%」、とは想像以上に底堅いようだ これでは支持率低下は当然だ 既成事実化しているコリア・パッシング 「親日派の子孫たちが所有する土地を没収」、韓国の法律ではそんあことが可能なのだろうか。 文在寅政権は災いそのもの 「いま韓国は、まさに「反日」から「反文在寅」へ流れが変わっている」、事実であれば、喜ばしいことだ
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日韓関係(その13)(日韓関係「再出発」の時 日本が兄貴分の時代は終わった、菅首相が離任する韓国大使との面会を拒否?後任大使も「外交欠礼」と驚き、文在寅が「慰安婦問題」で大博打へ…!日本からの「報復ブーメラン」で いよいよ万事休すか) [外交]

日韓関係については、昨年11月3日に取上げた。今日は、(その13)(日韓関係「再出発」の時 日本が兄貴分の時代は終わった、菅首相が離任する韓国大使との面会を拒否?後任大使も「外交欠礼」と驚き、文在寅が「慰安婦問題」で大博打へ…!日本からの「報復ブーメラン」で いよいよ万事休すか)である。

先ずは、11月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元外務審議官で日本総合研究所国際戦略研究所理事長の田中 均氏による「日韓関係「再出発」の時、日本が兄貴分の時代は終わった」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/254601
・『新政権の発足は外交関係修復のチャンス  新政権の発足は新しい政策を展開する大きな機会だ。 特に外交では首相交代期は、これまでの外交路線を吟味し、うまくいっていないと思われる政策について修正していく重要な契機になる。 典型が中曽根首相の訪韓だった。1983年1月首相に就任した直後、中曽根首相は電撃的訪韓をし、歴史教科書問題や韓国に対する政府借款供与の問題で悪化していた日韓関係を劇的に改善させた。 日韓関係は1965年の正常化以降最悪だといわれるが、日韓はともに東アジアで民主主義が根付き、米国との安全保障条約で結ばれている。日本にとって、韓国は18年連続で中国・米国に次ぐ第三の貿易相手国であり、また両国間の往来人数は1000万人を超える隣国だ。 最も重要な国の一つであることに疑問の余地はなく、菅政権の発足を日韓関係の再出発とする機会としなければならない』、反韓国の論調が多いなかで、「菅政権の発足を日韓関係の再出発とする機会としなければならない」との提言は貴重で、同感である。
・『文政権と安倍政権の相克 双方に信頼関係が欠落  日韓関係がここまで悪化した原因は何なのか。 最大の要因の一つは、文在寅政権と安倍晋三前政権の基本的な思想の違いだろう。 特に文大統領の支持基盤といわれる「86世代」(80年代の民主化運動に携わった60年代生まれの年代)は、分断された南北朝鮮の統一への思い入れがあり親北朝鮮、反米・反日の傾向が強い。 文政権はこのような世代の支持を受け、支持率が低下しても40%台の支持率を恒常的に確保している。 一方、安倍政権は「戦後体制からの脱却」「美しい国日本」を首相が標榜した保守政権であり、歴史問題などでも日本も主張すべきは主張しようという傾向が強い。 若い人々を中心に支持率は堅固で、選挙で勝ち続けた政権だった。 いつの間にか、日韓ともにお互い、強い主張をぶつけるべき相手となっていた』、確かに「文政権」と「安倍政権」では左派VS右派、と好対照だ。
・『個別案件が不信感に火を注いだ 被害者意識が時に強い反発に  日韓首脳のイデオロギー上の相克はあったものの、日韓の信頼関係が決定的に崩れたのは、2015年以降の慰安婦合意とその事実上の破棄、徴用工問題での韓国大法院判決、そして日本による半導体材料の対韓輸出管理の厳格化、それを受けた韓国側のGSOMIA廃棄問題を巡ってだ。 2015年の慰安婦合意については、日本国内では安倍首相の個人的な心情からすればよく踏み切ったものだという評価がされていたが、これが履行されず、事実上、崩壊することとなったことへの不満は強い。 元徴用工への大法院判決についても、韓国政府が、司法権には介入できないと判決を受け入れるかのような姿勢をとっているだけではなく、これまで一貫して日韓基本条約・請求権協定で「解決済み」としてきた立場を翻したものだという批判が強い。 日本政府内には、政府間の約束を守らずゴールポストを動かして条約の法的基礎を一方的に崩した韓国政府を相手にする必要はないという感情が充満した。 国民世論のベースでも、韓国に「良くない」イメージを持つ国民は2015年以降ほぼ一定で高いレベルに達している。 一方で韓国の対日感情も、もともと良くはなかったものの、2019年からこの1年間では急速に悪化の一途をたどっている。 おそらく同年7月の日本による半導体材料の対韓輸出制限措置が、政府だけでなく国民世論ベースにも大きな影響を与えたということだろう。 歴史的な経緯もあり、韓国では「“強い日本”からいじめられている」という意識があり、時にそれが日本に対する強い反発を生む。 日本政府は韓国の輸出管理が十分でないことを輸出規制の根拠に挙げているが、徴用工問題を巡る日本の報復措置だという印象を多くの韓国国民に植え付けたといってよい』、「半導体材料の対韓輸出制限措置」は経産省の思い付きだろうが、実効性に乏しく、自己満足的だったようだ。
・『「プロフェッショナルな外交」見られず 政権や一部勢力の反発を慮る  外交当局の間でも相互不信は強まっている。 韓国側の対応に起因することだと推察するが、日本の外務省ですらも韓国への嫌悪感を隠していない。 『外交青書』上の韓国に対する表現も、長年にわたり「価値や戦略的利益を共有する重要な隣国」という趣旨が盛られていたものが、ここ数年は単なる「隣国」あるいは「重要な隣国」という表現に留められている。 一方で、韓国側も「それなら我々は態度を改めよう」とはなっていない。むしろ現状では韓国側の日本に対する遺恨の念がますます深まってゆくことは想像に難くない。 プロフェッショナルな外交とは、国内世論が喝采する主張を発することではなく、国益にかなう結果を作り出す作業だ。 しかし残念ながら、今の日韓関係はそれぞれ外交当局が国内の反発などを慮り、いわば国内事情を人質にとられている状況で関係改善の動きがとられていない状況だ。 大統領制の韓国で大統領が持つ権威は大きいが、前述したように86世代を支持基盤にする文政権は日本に歴史問題で少しでも譲歩するような姿を示すことに抵抗が強い。 近年、政策決定プロセスにおける青瓦台(大統領官邸)の力は外交問題でも圧倒的となっており、外交通商部によるプロフェッショナルな意見具申は通りにくく、国内政治的な力学が強く働くと言ってもよいだろう。 議院内閣制の日本でも、近年、官邸の力が強まり、霞が関の幹部人事も差配されるようになっている。 そういう状況である以上、外務省は官邸と異なる意見を具申することには臆病にならざるを得ないということなのだろうか。それだけではなく、官邸の方針を忖度(そんたく)する結果、関係改善のため知恵を出して動くといった姿勢も感じられない』、「政策決定プロセスにおける青瓦台(大統領官邸)の力は外交問題でも圧倒的となっており、外交通商部によるプロフェッショナルな意見具申は通りにくく」、「日本でも、近年、官邸の力が強まり、霞が関の幹部人事も差配されるようになっている。 そういう状況である以上、外務省は・・・官邸の方針を忖度(そんたく)する結果、関係改善のため知恵を出して動くといった姿勢も感じられない」、日韓とも通常の外交チャネルが機能不全となっているようだ。
・『日韓共同世論調査では関係改善を求める声が多数  ところが興味深いのは、2020年の言論NPOと韓国東アジア研究院の共同世論調査では、韓国国民の82%、日本は約48%が「日韓関係は重要だ」としていることだ。 「重要でない」とするのは韓国の13%、日本の21%に過ぎず、関係改善に努力すべきという声が多数を占めている。 このことから思うのは、むしろ青瓦台や首相官邸が関係改善に向けて動くことは国内支持率を下げてしまうという思い込みが強すぎるのでは、ということだ。 あるいは世論全体の雰囲気というより、韓国の左派勢力、日本の保守勢力を慮るゆえに、両国政府が動くのにちゅうちょしているのではないか』、「日韓関係は重要だ」とする「国民はやはり「韓国」の方が多いようだ。
・『等身大で相手を見なければならない協力の可能性を示す「Nizi Project」  私が外務省のアジア大洋州局長だった2002年に韓国はGDP(国内総生産)で日本の7分の1だったが、今はその差が3分の1程度まで縮小し、1人当たり国民所得では肩を並べる存在となった。 企業も、例えばサムスンやLG、現代自動車といった韓国の大手企業は高い競争力を持つ世界のグローバル企業に育っている。従来のように日本がほぼすべての経済指標で優位に立ち、「兄貴分」として振る舞った時代は終わったのだ。 経済で言えば、今、求められる日韓関係とは双方がしのぎを削って競争するという図式ではなく、相互を補完し協力してグローバルに進出していくという図式なのだろう。 実際に日韓の第三国における共同プロジェクトは近年、飛躍的に増え、日本の精緻な素材生産技術と韓国の優れた商品化能力は協力し合い世界的トップの製品を生み出している。 また韓国の大企業はグローバルに展開する際、日本の銀行からも融資を受け日本の信用力を支えにしている。 エンターテインメントの世界でも日韓協力の可能性を示すプロジェクトが始まっている。 韓国の世界的な歌手・ダンサーであるJ.Y. Park氏らが企画した「Nizi Project」は日本各地でおよそ1万人の応募者の中から13人を選抜し、韓国で6カ月間の研修を実施し、最終的に9人のガールズ・グループをデビューさせるというプロジェクトだ。 日本の集団として“和”を重視する傾向と、徹底して“個”を磨こうとする韓国のアプローチが相互に作用し、世界に通用するグループを育成できるというわけだ。 韓国は国内マーケットが必ずしも十分大きいわけではないので、最初から世界に通用する人材を育てようとするし、日本はそれなりに大きな国内マーケットなので、むしろ和を乱さない人材を育成しようとする。 そうした日韓のマーケットや文化性の違いから、これまでのアーティストとは違う二国の良さを取り入れた新グループ“NiziU(ニジュー)”として、12月にメジャーデビューするという。 今後このグループが日韓双方で、また世界でどう評価されるのかは楽しみだ』、「1人当たり国民所得では肩を並べる存在となった」以上、「日本が」「兄貴」風を吹かす訳にはいかなくなった。対等の立場で、お互いの強味を生かして協力してゆくべきだろう。
・『日韓関係を再出発させる時期が来た コロナでの協力や東京五輪開催を契機に  日韓が信頼関係をとり戻すには、まずは相手を等身大で見て、日韓双方が相手の粗探しをするのではなく、優れた点を評価する姿勢を持つことだ。 新型コロナウイルス感染拡大でも韓国は早期の感染防止に成功したといわれ、日本も欧米などに比べれば感染者・死者ともに圧倒的に少ない。両国ともコロナ感染防止をしつつ経済回復を図るという難しい局面に来ているが、もし日韓がこの難しいプロセスを加速化するための協力ができれば、おそらく国際社会からは、その日韓関係を新たな「東アジアの奇跡」と評されることになるのだろう。 コロナだけでなく、2021年夏に開催される東京オリンピック・パラリンピックもそうした日韓の信頼関係回復の機会になり得る。 考えてみれば、1988年ソウル五輪、2018年平昌(ピョンチャン)冬季五輪はいずれも世界史に残る五輪になった。ソウル五輪は韓国を国際社会の中の揺るぎない存在とするきっかけとなったし、平昌冬季五輪は南北首脳会談、米朝首脳会談に道を開いた。 ソウル五輪の時に私は外務省の担当課長として日韓のテロ対策チームを立ち上げ、金大中拉致事件以降関係を断っていた日韓の治安当局の協力が実現したことが思い出される。 来年の東京五輪が、日韓両国政府の協力関係再出発の契機となることを心から期待したい。 年内中の開催がいわれている韓国での日中韓サミットに菅首相は参加するべきだし、首脳レベルでの日韓関係の重要性・将来に向けての揺るぎない協力関係の再確認ができれば、個々の懸案解決は決して難しいことではない。 双方の外交当局もお互いを満足させるような解決策を導き出す知恵を持っているはずだ』、日韓がいがみ合っている様子は欧米諸国には理解し難い筈だ。「東京五輪が、日韓両国政府の協力関係再出発の契機となることを心から期待したい」、同感である。

次に、1月18日付けRecord China「菅首相が離任する韓国大使との面会を拒否?後任大使も「外交欠礼」と驚き」を紹介しよう。
https://www.recordchina.co.jp/b868067-s0-c10-d0058.html
・『2021年1月18日、韓国・世界日報は、菅義偉首相が離任する南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使との面会を「事実上拒否した」とし、「外交欠礼問題が浮上している」と伝えた。 記事によると、南大使は16日に韓国に帰国。菅首相が南大使の離任前に調整していた面会は見送られた。日本政府関係者は「慰安婦問題をめぐる韓国裁判所の賠償判決などを考慮し、面会が保留された」と説明したという。 一方、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は14日、離任する冨田浩司駐韓日本大使と面会し、日韓関係改善への意思を明らかにしていた。記事はこれについて「対照的な対応だ」と指摘している。安倍晋三前首相も2019年4月、離任する李洙勲(イ・スフン)韓国大使と面会した。南大使の後任に内定している姜昌一(カン・チャンイル)氏は17日にソウルで行われたオンライン記者懇談会で、「菅首相が南大使と面会しないことは外交欠礼だ」との指摘に対し「私もそう思う」とし、「なぜあいさつができなかったのか、面会できなかったの分からない」と述べたという。 これに韓国のネットユーザーからは「日本は器が小さい」「いくら嫌いでも外交の慣例なのに。本当に失礼」「こんな日本とはしばらく距離を置いた方がいい」など日本への批判の声が続出している。 一方で「『韓国とは親しくしたくない』という意思表示。これが現実だ」「日韓関係が最悪なのだから会ってくれなくて当然」「この程度で外交欠礼?。中国では文大統領が滞在中ずっと1人で食事をさせられたこともあった」「文政権が『未来志向的』と言うのは矛盾では?」などと指摘する声も寄せられている』、「菅義偉首相が離任する南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使との面会を「事実上拒否した」」、「一方、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は14日、離任する冨田浩司駐韓日本大使と面会し」、いくら「「慰安婦問題をめぐる韓国裁判所の賠償判決」などがあったとしても、明らかに「外交欠礼」だ。「菅首相」に外交プロトコルの基本をレクチャーする勇気がある 外務官僚はいないのだろうか。

第三に、1月27日付け現代ビジネスが掲載した元駐韓国特命全権大使で外交評論家の武藤 正敏氏による「文在寅が「慰安婦問題」で大博打へ…!日本からの「報復ブーメラン」で、いよいよ万事休すか」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/79631?imp=0
・『追い詰められた文在寅  韓国大統領の文在寅氏が日韓関係修復に乗り出した。その発端が昨年の国家情報院長訪日と韓日議連会長訪日時に関係改善の意思を伝えてきたことである。 その意思をさらに明確に示したのが、1月18日の年頭記者会見における慰安婦問題判決に関する判決に「困惑している」とする一連のコメントである。 文在寅氏が日韓関係改善の意向を固める最大の要因となったのが、バイデン氏の大統領当選とこれに続く新政権の成立である。バイデン氏への政権移行が進む中、明らかになったことは、バイデン氏はトランプ氏と異なり、非核化への展望なく金正恩氏とのトップ会談に応じることは考え難く、これを支えるスタッフは実務経験を積んで北朝鮮に対しては厳しい見方を持っているということである。 そうした中で文在寅氏は、短期間に朝鮮半島問題で成果を出すには米国の要求に応じ、米国と協力する姿勢を取るほかないとの状況認識を持つに至ったのであろう。 米国はアジア外交で最も重視する中国封鎖戦略にあたって日米韓の連携強化が必要と考えている。そのため文在寅氏としては、日本との関係修復は不可欠と考えたのであろう。米国のこうした戦略に乗り、米韓関係を強化する中で米朝関係にも取り組んでもらおうとしているのである』、「文在寅氏が日韓関係改善の意向を固める最大の要因となったのが、バイデン氏の大統領当選とこれに続く新政権の成立である」、日本にとっても、いいチャンスだったのに、見逃したのは残念だ。
・『文在寅に正義連を捨てる「覚悟」はあるのか  文在寅大統領は1月21日、自らが主宰した安全保障会議(NSC)で「朝鮮半島を含めたインド太平洋地域の秩序が急激な転換期に入りつつある」と述べた。米中に対して中立的な姿勢で臨んできたこれまでの姿勢の転換を示唆しているのかも知れない。 文在寅氏が日韓関係改善のシグナルを送っても、日本政府の姿勢は冷ややかである。文在寅氏はそれでも日本と慰安婦問題を外交的に解決しようとするであろう。ただ、その最大の障害が正義連・挺対協であることをいまだ認識していない。 これまで慰安婦問題解決の最大の妨げとなってきたのが正義連・挺対協である。文在寅氏が日本と妥協を図ろうとしても抵抗し、再び妨害するであろう。正義連・挺対協と手を切る覚悟ができた時に、問題の外交的解決の道も見えてくるであろう。 文在寅氏は1月18日の年頭記者会見で、慰安婦問題の判決に対して「正直困惑している」と述べ、2015年の合意についても政府間の公式合意であったことを認めて「(合意を土台にして)おばあさんたちも同意できる解決方法を探していけるよう韓日間で協議している」と述べた。 この発言は、文在寅氏の側から見れば、同合意を「真実と正義の原則に背き、内容と手続きも共に誤り」としていた見解からの大転換であり、韓国側の大幅な譲歩に応え、日本側も歩み寄ってほしいと考えていたのではないだろうか。 しかし、日本側は従来の姿勢を変えなかった』、「正義連・挺対協と手を切る覚悟ができた時に、問題の外交的解決の道も見えてくるであろう」、これは明確なメッセージとして伝えておくべきだろう。
・『日本からの「報復」  日本側は文在寅氏が2015年の合意を公式合意としたことは一歩前進と評価しつつも「問題解決に向けた具体策は示さなかった」「解決案を注視する」といった従来の主張を繰り返し、「具体的行動がなければ日韓関係の改善はない」と強調した。 日本の茂木外相は1月23日、慰安婦判決が確定した時点で「外務大臣談話」を発表して、「国際法上、国家主権を有し、互いに対等な存在であることから、原則として、外国の裁判権に服することはない」「(この判決は)極めて遺憾であり、断じて受け入れることはない。韓国に対し、国家として自らの責任で直ちに国際法違反の状態を是正するために適切な措置を講ずることを改めて求める」との日本政府の立場を明らかにした。 そのため韓国政府は、1月23日さらに一歩進んで「政府レベルでは日本に追加請求しない方針」と表明した。 その一方で日本に対しては、外交的論争が避けられない法的賠償の代わりに「自ら表明した責任痛感と謝罪反省の精神に立脚して被害者らの名誉・尊厳回復と心の傷の治癒に向けた真の努力を見せるべきだろう」と要請した。 日本政府がこの判決に基づき、元慰安婦に「賠償金」を支払うことはあり得ず、韓国が日本政府の資産を強制執行すれば、それ相応の報復をするはずである。韓国政府が「日本に追加請求しない」とするのは当然のことである』、なるほど。
・『中央日報に書かれた「問題の核心」  韓国政府が日本に改めて「謝罪や反省を求める」とする点についても、謝罪や反省はすでに何度も行ってきていることである。ただ、それが元慰安婦の人々に正確に伝わっていないのは、正義連・挺対協が間に入り、これを否定してきたからである。それを改めて日本側に求めてくるのは筋違いだろう。 中央日報は、アンチフェミニストとして『フェミニズムはどのようにして怪物になったのか』という本の共著者であるオ・セラビ氏(女性)のインタビュー記事を掲載している。 この本では、政治権力と結託したフェミニズムを批判している。具体的には、「586運動圏(現在50代、80年代の民主化運動にかかわった、60年代生まれの世代)権力と女性団体運動は出発が同じだ。上層部の女性運動家のほとんどが『韓国女性団体連合』から活動を始めた。これは民主化運動がはじまった87年だ。今までこの団体出身の首相、閣僚、国会議員が11人いる」という。 そして、「エリート女性運動家は大きな志を抱いて活動する一般の女性運動家と女性たちを道具として使い、名声を築いた。彼らを政治権力を得るためのルートとして利用する」と批判している。 さらにインタビューでは「韓国女性運動と、正義連・挺対協の運動は同じ幹だ」とし、「正義連は慰安婦問題が本当に解決したら、正義連の存在価値は消えるから、慰安婦問題を本当に解決するつもりがあるのか疑問を感じるのだ。慰安婦問題を一日でも早く解決するためには、正義連のような市民団体に任せるのではなく、最初から最後まで政府が直接責任を取ってやらなくてはならない」と痛烈に語っている。 このオさんの発言は、まさに問題の核心をついている。慰安婦問題はこれまで何度も解決する機会があったが、これをことごとく妨害してきたのが、正義連とその前身である挺対協なのである』、「正義連」は確かに困った存在だ。
・『日韓合意を「妨害」する人たち  日韓の最初の取り組みは、日本側が設立した「アジア女性基金」を通じた解決であった。 7人の韓国人元慰安婦が同基金からのおカネを受け取ると、当時の挺対協のトップは「アジア女性基金からおカネをもらう人は、自ら進んで出かけた娼婦であることを認めるのと同様だ」と元慰安婦を最も傷つける言葉でののしった。 しかし、後でわかったことは、アジア女性基金の代わりに韓国政府からおカネを受け取った人のうち54人がアジア女性基金からもおカネを受け取っていたということである。当時の挺対協が邪魔しなければ、より多くの元慰安婦がアジア女性基金からおカネと総理の謝罪を記した書簡を受け取り、この問題は解決していたということである。 2015年の慰安婦合意の際には、当時韓国政府が設立した和解・癒し財団の理事長がすべての元慰安婦にこの合意を説明し、理解を求めたところ、当時存命であった、46人の元慰安婦のうち36人(78%)が受け入れに同意した。しかし、挺対協の反対を受け、文在寅氏は国民的理解が得られないと同財団を解散させてしまった。 その正義連・挺対協がこれまで何をしてきたかというと、元慰安婦のための寄付金や政府補助金の一部しか元慰安婦のためには使わず、その多くを私的にあるいはその他不適切な形で使ってきたことが、元慰安婦李容洙(イ・ヨンス)氏の告発で明らかになった。ここから明らかなことは、正義連としても寄付金を集め続けるため、慰安婦運動の存続を望んでいたということである。 それでも文在寅政権は、「慰安婦問題の大義を失うことがあってはいけない」と正義連を庇っている。正義連の尹美香(ユ・ミヒャン)前理事長は国会議員を続け、最近では、コロナ禍にもかかわらず、元慰安婦の誕生日を口実にワインパーティを行うなど反省の色を見せていない』、「正義連」の活動の実態を一般の韓国国民はどの程度知っているのだろうか。
・『文在寅の「卑屈」な姿勢  正義連は、1月18日に文在寅大統領が記者会見で2015年の日韓合意が公式合意であったことを認めた際にも、理事長が「日本政府に卑屈に移るほど守勢的に対応したり完全な沈黙で一貫したりする理由は何か」と失望感を表明した。 文在寅政権のむしろ正義連に対する「卑屈」な姿勢を見ると、文氏の日韓関係改善の努力はまたしても正義連の妨害を受けるのではないだろうか。 慰安婦問題を解決したければ、このような正義連とはたもとを分かち、正義連の着服し、横領した金銭を回収して元慰安婦の人々が安らかな老後を送れるような環境を整備することである。正義連のいうことを聞いていてはいつまでたっても堂々巡りである。 韓国政府が関係の改善の姿勢を示しても、日本として原則を守る以外ない。韓国内に請求権協定に対する不満があろうとも、慰安婦合意に対し正義連が反対しようとも、それを無効にし、再度交渉するなどということはできない。 また、日本がこれまで歴史問題で再三、謝罪と反省の意を表明してきたことも事実である。正義連がこれを認めず、これは真の謝罪ではないというのは言いがかりである。日本が改めて謝罪することはこの原則に背くことになる。 今後日本ができることと言えば、これまで日本政府として誠意をもって反省し、謝罪してきたことを再度確認することであろう。それは正義連が言ってきたことが真実でないことを明らかにすることになるが、それによって元慰安婦が日本政府の反省と謝罪を受け入れることになれば意味がある。 わたくしは大使時代、必要であれば、自分が一人一人の元慰安婦にあってこれを伝えてもいいと考えていた。その機会はなかったが、元慰安婦の人々に日本政府の思いを正確に伝えるためには大使が出ていくのは良いのではないかと今でも考えている』、「韓国政府」が「正義連」に厳しい姿勢を取れないのは何故なのだろう。「武藤」氏がやや反韓国的なのは、在韓国大使時代に苦労させられたためかも知れないが、私はむしろ冒頭の田中氏の考え方に同意する。 
タグ:日韓関係 ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス Record China 田中 均 武藤 正敏 (その13)(日韓関係「再出発」の時 日本が兄貴分の時代は終わった、菅首相が離任する韓国大使との面会を拒否?後任大使も「外交欠礼」と驚き、文在寅が「慰安婦問題」で大博打へ…!日本からの「報復ブーメラン」で いよいよ万事休すか) 「日韓関係「再出発」の時、日本が兄貴分の時代は終わった」 新政権の発足は外交関係修復のチャンス 反韓国の論調が多いなかで、「菅政権の発足を日韓関係の再出発とする機会としなければならない」との提言は貴重で、同感である 文政権と安倍政権の相克 双方に信頼関係が欠落 個別案件が不信感に火を注いだ 被害者意識が時に強い反発に 「半導体材料の対韓輸出制限措置」は経産省の思い付きだろうが、実効性に乏しく、自己満足的だったようだ 「プロフェッショナルな外交」見られず 政権や一部勢力の反発を慮る 「政策決定プロセスにおける青瓦台(大統領官邸)の力は外交問題でも圧倒的となっており、外交通商部によるプロフェッショナルな意見具申は通りにくく」 日本でも、近年、官邸の力が強まり、霞が関の幹部人事も差配されるようになっている。 そういう状況である以上、外務省は 官邸の方針を忖度(そんたく)する結果、関係改善のため知恵を出して動くといった姿勢も感じられない 日韓とも通常の外交チャネルが機能不全となっているようだ 日韓共同世論調査では関係改善を求める声が多数 等身大で相手を見なければならない協力の可能性を示す「Nizi Project」 「1人当たり国民所得では肩を並べる存在となった」以上、「日本が」「兄貴」風を吹かす訳にはいかなくなった。対等の立場で、お互いの強味を生かして協力してゆくべきだろう 日韓関係を再出発させる時期が来た コロナでの協力や東京五輪開催を契機に 「東京五輪が、日韓両国政府の協力関係再出発の契機となることを心から期待したい」、同感である。 「菅首相が離任する韓国大使との面会を拒否?後任大使も「外交欠礼」と驚き」 菅義偉首相が離任する南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使との面会を「事実上拒否 「外交欠礼問題が浮上 「慰安婦問題をめぐる韓国裁判所の賠償判決などを考慮し、面会が保留された 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は14日、離任する冨田浩司駐韓日本大使と面会し、日韓関係改善への意思を明らかにしていた 「菅首相」に外交プロトコルの基本をレクチャーする勇気がある 外務官僚はいないのだろうか 「文在寅が「慰安婦問題」で大博打へ…!日本からの「報復ブーメラン」で、いよいよ万事休すか」 追い詰められた文在寅 文在寅氏が日韓関係改善の意向を固める最大の要因となったのが、バイデン氏の大統領当選とこれに続く新政権の成立である」、日本にとっても、いいチャンスだったのに、見逃したのは残念だ 文在寅に正義連を捨てる「覚悟」はあるのか 「正義連・挺対協と手を切る覚悟ができた時に、問題の外交的解決の道も見えてくるであろう」、これは明確なメッセージとして伝えておくべきだろう 日本からの「報復」 中央日報に書かれた「問題の核心」 慰安婦問題はこれまで何度も解決する機会があったが、これをことごとく妨害してきたのが、正義連とその前身である挺対協なのである』、「正義連」は確かに困った存在だ 日韓合意を「妨害」する人たち 「正義連」の活動の実態を韓国民はどの程度知っているのだろうか 文在寅の「卑屈」な姿勢 「韓国政府」が「正義連」に厳しい姿勢を取れないのは何故なのだろう 「武藤」氏がやや反韓国的なのは、在韓国大使時代に苦労させられたためかも知れないが、私はむしろ冒頭の田中氏の考え方に同意する
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RCEP(東アジア地域包括的経済連携)(その1)(RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破 米国に対抗する「次の一手」とは、中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」 日本はどう振る舞うべきか、RCEPが日韓の関係改善を後押し 日韓貿易の83%で関税撤廃へ) [外交]

今日は、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)(その1)(RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破 米国に対抗する「次の一手」とは、中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」 日本はどう振る舞うべきか、RCEPが日韓の関係改善を後押し 日韓貿易の83%で関税撤廃へ)を取上げよう。

先ずは、11月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家・ジャーナリストぼ莫 邦富氏による「RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破、米国に対抗する「次の一手」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/254732
・『世界最大規模の自由貿易経済圏の誕生、中国はどう見たか  先日、「東アジア地域包括的経済連携(=RCEP)」の首脳会議が開かれ、日本や中国をはじめ15カ国がこの「RCEP」の協定に署名した。新型コロナウイルスによって世界経済が大きな打撃を受けて四苦八苦している2020年で、最も素晴らしい経済関連のニュースと言っていいと思う。 世界の人口やGDPのおよそ3割もカバーするこの協定は、世界最大規模の自由貿易経済圏の誕生として受け止められ、大きく注目されているが、中国での評価は一味も二味も違う。 まず、李克強首相は「RCEPの署名は多国間主義と自由貿易の勝利であり(中略)、人々に曇りの中で光明と希望を見いださせた」と評価した。「勝利」「光明」「希望」という3つの言葉は中国側の興奮と喜びを余すことなく表している。 中国国内では、「ある意味では、他の14カ国と一緒にRCEPに署名することは、中国にとってWTOに加盟した出来事に相当する大きな事件だ」と受け止める専門家が多い』、「中国にとってWTOに加盟した出来事に相当する大きな事件だ」、とは大げさな感じもするが、正直な感想なのだろう。
・『脅威だったTPP包囲網を突破できた中国  オバマ政権が推し進めていたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、米国の12カ国間を束ねた経済連携協定だが、このグループの最大の特徴は、環太平洋地域国なら、中国以外のどの国でも参加できるとしていることだ。 このTPPが実現すれば、経済規模は世界の40%を占め、アメリカ合衆国とヨーロッパ連合を結ばせた北大西洋版TPPともいえるTTIP(大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定)を加えると、2つのグループが世界経済の60%以上を占めるほどの勢力圏を誇ることになる。 つまりTPPが実現すれば、中国を残りの40%という世界経済圏の中に孤立させることに成功することを意味していた。 このTPPは明らかに中国を包囲するための経済協定だと、中国は警戒していた。しかし、蚊帳の外に置かれた中国には、その包囲網を打ち破る方法はない。予想外なことにトランプ政権時代の2017年1月、アメリカ合衆国は自らの意思でTPPを離脱した。オバマ政権時代、アメリカがあれだけ苦労して敷いた中国包囲網は、こうしてトランプ政権に軽々と破って捨てられたのだ。 しかし、バイデン政権が誕生したら、米国が再びTPPを担ぎ出す恐れがある。そのバイデン政権が誕生する直前に、米国を蚊帳の外に置くことに成功したRCEP協定の成立は、中国にとっては中国包囲網を突破した一大勝利だけではなく、米国に対抗するには欠かせないツールの一つでもあると見ていい』、「オバマ政権時代、アメリカがあれだけ苦労して敷いた中国包囲網は、こうしてトランプ政権に軽々と破って捨てられたのだ。 しかし、バイデン政権が誕生したら、米国が再びTPPを担ぎ出す恐れがある」、「トランプ」は何でも「オバマ」の成果を否定することを優先するの余り、「中国」を結果的に利したとはお粗末だ。
・『中国が次に目指すのは「日中韓自由貿易圏」  中国の世論では、将来、米国が主導するTPPに対抗するには、RCEP1つだけでは不十分との声もある。RCEPは15カ国の集合体なので、中国のような人口大国もあれば、ブルネイのような小国もあり、日本のような先進国もあれば、カンボジアのような貧しい国もある。これらの国々を束ねるには、言うまでもなくさまざまな妥協と譲歩が必要だ。 その意味では、日中韓自由貿易圏の成立はより大きな実益につながる。日本と韓国にとって、中国は最大の貿易国である。そして中国にとって、日本と韓国はそれぞれ第2位と第3位の貿易パートナーであり、第1位と第2位の輸入相手国でもある。 また3カ国間の貿易往来も頻繁だ。日本は豊富な資本と先端科学技術を有しており、韓国は半導体分野で優位性をもっている。一方、中国は製造大国だ。その3カ国の産業と経済は相互補完関係にあり、産業融合度も高い。自由貿易圏を構築することで、互いにウィンウィンの関係を実現することができる。日中韓自由貿易圏が形成されると、この3カ国も世界の他の大国との交渉により多くのカードを使えることになり、その意義は計り知れない。 だから、日中韓自由貿易圏、ヨーロッパと中国の自由貿易圏も早急に成立しなければならないと中国国内の世論は推しているのだ』、「日中韓自由貿易圏」はどうなっているのだろう。
・『米国とのバランスをどう取るか  2002年に、すでに日中韓自由貿易圏構想が出来上がり、当事者3カ国もその成立を期待している。しかし、これまで16回の交渉が行われてきたが、まだ着地できていない。いつも協定の機運が高まったところで、何らかの国際紛争が発生し、その協議が一時停止に追いやられてしまう。尖閣諸島(中国名は釣魚島)国有化事件、地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)配備事件、日韓貿易戦争などがその典型例だ。3カ国の異なる国益が3者協議の決着を阻んでいる。 今回のRCEPの締結は、アジア太平洋自由貿易圏の枠組みの形成に大きな一歩を踏み出したと評価していいだろうが、もう一つ、強調しなければならないポイントがある。日本、中国、韓国にとっては東アジアで初の自由貿易協定(FTA)となるため、3カ国間をまたいで事業展開する企業にとってのインパクトはもちろん大きいとみられるが、日中韓自由貿易圏の成立にも重要な推進力になるだろう。特に日中韓自由貿易圏が成立すれば、山東省や遼寧省などが最大の受益者となり、経済成長が困難に陥っている東北地域には大きな励ましになる。東北地域と山東省が寄せる関心は並々ならぬものがある。 米国と日本は最近、しきりに「インド太平洋時代」をアピールしている。中国は表向きには、それに対して反対または批判の声を上げていないが、内心は穏やかでない。しかし、今回のRCEPに対して、インドは自ら参加を断った。中国国内からは「正直に言うと、むしろほっとした。これで中国がリーダーシップをより取りやすいアジア太平洋時代を迎えられる」という声が聞こえてきている。 ニューズウィーク誌は、次のように報道している。「アジア太平洋圏でのアメリカの立場は、TPPがアメリカ抜きで批准された時点で既に打撃を受けている。(中略)トランプ政権はアメリカと中国の経済を切り離し、製造業の多国籍企業を中国から撤退させようとしている。だがRCEPはアジア域内の経済統合を促進し、アジアを経済的にも戦略的にも今まで以上にアメリカから隔絶するものになりそうだ」(「アジア版自由貿易協定『RCEP』の長所と短所」より) RCEPを見る米国の複雑な心境を語ったこの記事の指摘のように、米国とのバランスをどう取るべきかというのは、RCEPの参加国、特に中国と日本にとっては大きな課題だ』、「日中韓自由貿易圏構想」については、「日中韓FTA交渉は、RCEPを上回る付加価値をどれだけ付与できるかが焦点」(外務省)のようだ。バイデン次期大統領がどう出てくるか、注目したい。

次に、11月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」、日本はどう振る舞うべきか」を紹介しよう。
・『わが国を含め15カ国がRCEP協定に署名  11月15日、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、およびアセアン10カ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)の計15カ国が「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定」に署名した。 インドは国内事情から参加しなかったものの、世界のGDPの約30%を占める大貿易圏構想が形になったことの意義は大きい。特に、わが国にとって最大の輸出先である中国、第3位の韓国を含む大型の自由貿易協定(FTA)が合意に至ったことは重要だ。 今回のRCEP形成の陰には中国の思惑が強く影響している。国際社会において孤立が目立つ中国は、RCEPを一つのきっかけにアジア地域での存在感を高め、米国に対抗する力をつけたいと考えているはずだ。中国にとってRCEPは自国経済の成長を目指し、共産党政権の体制を強化する有力な手段だ。 また、経済面で中国を重視してきた文在寅(ムン・ジェイン)大統領にとって、中国が関税撤廃を重視することは都合がよい。韓国はTPPには参加せず、中国が重視するRCEPには参加する。RCEP署名によって文政権は、米中に対してうまく振る舞い、より有利なポジション取りを華南が得ているのだろう。韓国にはRCEPを通してわが国に接近する意図もあるだろう。 今後、わが国に求められることは、RCEPを足掛かりにして世界経済の成長の源泉として重要性高まるアジア新興国との関係を強化することだ。それは、わが国が、RCEP参加を見送ったEUや米国、インドとの経済連携を強化するために欠かせない。中長期的に考えた場合、わが国が自力で親日国を増やし経済連携の強化を目指すことが国益に合致する』、その通りだ。
・『RCEPの全体像と署名成立の重要性  わが国をはじめ中韓など15カ国が参加するRCEPの意義は、アジア地域に世界最大規模の自由貿易経済圏が誕生することだ。まず、その全体像を把握しよう。RCEPはGDPだけでなく、貿易総額や人口の約3割、わが国の貿易総額のうち約5割を占める地域をカバーする。その規模は世界のGDPの約13%をカバーする「TPP11」を上回る。わが国の工業製品の輸出に関して、14カ国で約92%の品目の関税が段階的に撤廃される。 米国とEUはRCEP参加を見送った。その一方、わが国は米国とはFTAを、EUとはEPA(経済連携協定)を結んでいる。RCEP署名によって、わが国には世界の自由貿易を促進する“ハブ”としての機能を発揮することへの期待が高まったといってよい。英国の経済学者であったリカードは比較優位の理論を提唱して自由貿易の促進が経済成長に資すると説いた。その理論に基づいて世界経済は成長してきた。わが国はより多くの国・地域を巻き込んだFTAおよびEPAを目指すべきだ。 足元の世界経済の環境を踏まえると、米中対立が激化し、米国の大統領選挙が終了したタイミングでRCEP署名が行われたインパクトは大きい。 そう考える要因の一つとして、米国のトランプ政権の政策がある。2017年1月20日にドナルド・トランプ氏が米国の大統領に就任した後、米国は対中制裁関税などを発動し、世界のサプライチェーンは混乱し、貿易量は減少した。また、トランプ大統領は点数稼ぎ(トランプ・ファーストの政策)のために中東政策を重視し、アジア地域を軽視したといえる。 2020年11月の米大統領選挙で国際協調を重視する民主党のジョー・バイデン氏が当選を確実とした直後のタイミングでのRCEP署名は、今後の米国の通商政策に無視できない影響を与えるだろう。バイデン氏はインド太平洋地域の安定を重視し、アジア政策を強化するとみられる。そして制裁関税とは異なる方策(人権問題や知的財産と技術の保護強化)などによって、対中強硬姿勢を強めるだろう。安全保障や経済運営面で、米国にとってアジア地域の重要性は高まる。バイデン氏がTPP復帰に言及していない中、RCEPが米国の外交・通商政策とどのような化学反応を起こすかが注目される』、同感である。
・『RCEPに込められた中国と韓国の思惑  また、わが国とFTAを締結してこなかった中国と韓国がRCEPに参加することも重要だ。これまで、中国は貿易の自由化に積極的ではなかった。本来であれば中国は、関税引き下げが伴う自由貿易よりも、補助金政策などの強化によって自国産業を保護し、その競争力の向上を優先しなければならない。 しかし、足元の中国は、米中対立に加えて、インド、台湾、オーストラリア、EUなどとの関係の冷え込みに直面し、国際社会から孤立している。中国は関税引き下げを受け入れることでRCEP参加国にある意味で譲歩し、孤立を食い止め、アジア地域での存在感を高めたい。中国のRCEP参加は、共産党指導部の焦りの裏返しといえる。 中国のメガFTA参加は、国際通商体制が大きな転換点を迎えたことを意味する。RCEPによって、わが国の工業製品の対中輸出にかかる関税の86%が撤廃される見込みだ。アジア地域における中国経済の重要性は一段と高まるだろう。 それと引き換えに、中国は様々な要求を参加国に突き付け、アジア地域での足場を固めようとするはずだ。長めの目線で考えると、RCEP加盟国の一部において中国の“デジタル人民元”を用いた資金の決済が行われるなどし、米ドルの信認に支えられた国際通貨体制に揺らぎが生じる展開は排除できない。国家資本主義体制を強化して一党支配体制をつづけるために、共産党政権がRCEPをどう活用するかは重要な論点だ。対中輸出の増加は重要な一方で、RCEP参加国における中国の影響力拡大のリスクをどう防ぐか、わが国は方策を各国と練らなければならない。 経済面で中国との関係を重視してきた、韓国の文在寅大統領にとってRCEPの意義は大きい。それによって文大統領は、中小企業などに対中輸出増加の活路を提供したいだろう。また、韓国はわが国との貿易に関しては産業への打撃を警戒し、自動車や機械の関税撤廃は見送った。その一方で、韓国にはRCEPによってわが国の高純度素材などを輸入しやすくなるとの目論見もあるだろう。そう考えると、RCEPは韓国が経済面での中国への依存を一段と高めるとともに、わが国に近づく重要な契機になる可能性がある。わが国は韓国に対して引き続き毅然とした態度で臨めばよい』、「RCEP参加国における中国の影響力拡大のリスクをどう防ぐか、わが国は方策を各国と練らなければならない」、その通りだ。
・『自由貿易推進に向けたわが国の役割期待  ワクチンの国際供給体制の確立を含めコロナショックから世界経済が立ち直るために、FTAやEPA推進の重要性は高まっている。それによって各国は自国の得意な分野を伸ばし、雇用の創出などを目指すことができる。 わが国はTPP11、日米貿易協定、日・EU、日印のEPA、さらにはRCEPなどを通して、直接的、間接的に各国と国際貿易体制の強化に取り組んでいる。自由貿易の推進によって経済の安定と成長を目指すという点において、国際社会の中でわが国の立場は相対的に良いといえる。RCEPが署名された今、自由貿易推進の旗手としてのわが国の役割、期待は高まっていると考えるべきだ。 今後、わが国に求められるのは、中国の進出に直面するアジア新興国との連携強化だ。公衆衛生や環境、安全な上水道の整備といったインフラ整備支援などをわが国は迅速に実行し、アジア新興国の信頼を獲得しなければならない。そのためには、着実な実行力が欠かせない。インドとの関係強化も重要だ。経済成長の限界を迎え労働コストが上昇する中国からインドなどに生産拠点を移す各国企業は増えている。 このように、世界経済のダイナミズムの源泉として、アジア新興国地域の重要性は一段と高まっている。わが国がアジア新興国との関係を強化することは、わが国と欧州各国との関係強化に不可欠だ。それができれば、わが国が米国のバイデン次期政権にTPP復帰を促すことも可能だろう。 つまり、わが国は自力で国際世論を味方につけ、自由資本主義の考えに則った、より高次元の(競争やデータ管理などのルールの統一化を伴った)経済連携を目指し、それに米国を巻き込むべきだ。突き詰めて考えれば、それが、わが国が自力で自国経済の安定を目指し、国家資本主義体制の強化のために海外進出を目指す中国への包囲網を形成することにつながる。 わが国政府は国内企業の強み(精密な製造技術や高品位の素材開発力)の向上をより積極的にサポートし、アジア新興国や米中から必要とされる存在を目指すべきだ。政府がRCEP署名成立をアジア新興国向けの経済外交の推進に生かすことを期待したい』、「わが国は自力で国際世論を味方につけ、自由資本主義の考えに則った、より高次元の(競争やデータ管理などのルールの統一化を伴った)経済連携を目指し、それに米国を巻き込むべきだ」、同感である。

第三に、11月30日付けNewsweek日本版が掲載した韓国経済研究所学術研究部長のカイル・フェリア氏による「RCEPが日韓の関係改善を後押し、日韓貿易の83%で関税撤廃へ」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/11/post-95098_1.php
・<東アジア地域包括的経済連携への加盟で特に大きな恩恵を受けるのは、歴史問題が経済交渉に影を落とす日韓両国だ> 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉が成功したことは、日本と韓国にとって大きな前進となった。日韓関係が歴史問題で膠着している最中に、両国が初めて同じ自由貿易協定(FTA)に参加することは、少なくともこれ以上の関係悪化を防ぐ手助けになるかもしれない。 この数十年、日本と韓国は歴史問題をめぐり見解の衝突を繰り返してきた。それでもいわゆる徴用工問題がこじれるまでは、政治的緊張が高まっても経済活動や消費者の行動に大きな影響はなかったと、メーン大学のクリスティン・ベカシとデラウェア大学のジウォン・ナムは指摘する。 しかし、近年の政治的緊張は、2003年末に始まった日韓FTAの交渉が膠着状態に陥っている理由の1つであり、2015年に日韓通貨スワップ協定が終了し、再開に向けた協議も打ち切られた直接の原因でもある。 RCEPが多国間の枠組みであることは、日韓双方にとって、同じ貿易協定に参加する上で重要な要素になったと思われる。この経済統合がさらに拡大する可能性は、日韓双方が政治的緊張に懲罰的な貿易措置で対応することをためらわせるきっかけになるだろう。 世界のGDPの約30%を占めるRCEP加盟15カ国の中でも、日本と韓国は特に恩恵を受けるとみられる。その大きな理由は、互いの経済へのアクセス拡大だ。 経済学者のピーター・ペトリとマイケル・プラマーの予測によると、RCEPの影響として、日本と韓国の実質所得は2030年までに1%増加する。これは他の全ての加盟国より大きな数字だ。さらに、日韓貿易の83%で関税が撤廃されることになる。 2017年1月にアメリカがTPP(環太平洋経済連携協定)から離脱した後、日本はより野心的な貿易や投資のルールを盛り込もうと取り組んだ。さらには包括的かつ先進的TPP協定(CPTPP、いわゆるTPP11)を実質的に先導してきた。韓国はCPTPPに加盟していないが、日本がアメリカ抜きでも協定を推進してきた理由と同じ視点から、加盟に関心を示している。より安定した日韓関係は、日中韓FTAの今後の可能性と同様に、CPTPPへの加盟についても韓国を後押しするはずだ』、「RCEPの影響として、日本と韓国の実質所得は2030年までに1%増加する。これは他の全ての加盟国より大きな数字だ。さらに、日韓貿易の83%で関税が撤廃されることになる」、「2030年までに1%増加」とは意外に少ないようだ。
・『中国との交渉で協調も  中国はRCEPの締結が、近年停滞している日中韓FTAの交渉を結実させる機運になると期待している。ただし、日本と韓国は、それぞれ中国との交渉で同じ懸念を抱いている可能性が高い。 韓国は既に中国と貿易協定を結んでいるが、貿易の自由化に対する中国の遅々とした漸進的なアプローチのせいで、その範囲はかなり限定的だ。同じ問題が日中の貿易交渉の進展も阻んでいる。 知的財産権の保護や、中国の巨大国有企業の輸出を規制するルールなど、中国経済へのアクセスを可能な限り確保することは日韓共通の利益になる。これらの問題について両国が緊密に協力できれば、より大きな成果につながるだろう。 もっとも、貿易における日韓のさらなる協力が、歴史問題に対処するための効果的な手段になるわけではない。それでも双方の指導者にとって、貿易の相互依存を交渉の武器にしないことを含め、関係悪化の悪循環を回避しようというインセンティブになるかもしれない。 大した前進には思えないかもしれない。しかし、日韓関係の緊張が続く今、ほんの少しでも役に立つのではないだろうか』、「知的財産権の保護や、中国の巨大国有企業の輸出を規制するルールなど、中国経済へのアクセスを可能な限り確保することは日韓共通の利益になる。これらの問題について両国が緊密に協力できれば、より大きな成果につながるだろう」、「もっとも、貿易における日韓のさらなる協力が、歴史問題に対処するための効果的な手段になるわけではない。それでも双方の指導者にとって、貿易の相互依存を交渉の武器にしないことを含め、関係悪化の悪循環を回避しようというインセンティブになるかもしれない」、現実的な見方だ。
タグ:ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 RCEP Newsweek日本版 莫 邦富 (東アジア地域包括的経済連携) (その1)(RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破 米国に対抗する「次の一手」とは、中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」 日本はどう振る舞うべきか、RCEPが日韓の関係改善を後押し 日韓貿易の83%で関税撤廃へ) 「RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破、米国に対抗する「次の一手」とは」 世界最大規模の自由貿易経済圏の誕生、中国はどう見たか 中国にとってWTOに加盟した出来事に相当する大きな事件だ 脅威だったTPP包囲網を突破できた中国 「トランプ」は何でも「オバマ」の成果を否定することを優先するの余り、「中国」を結果的に利したとはお粗末だ 中国が次に目指すのは「日中韓自由貿易圏」 米国とのバランスをどう取るか 日中韓自由貿易圏構想 日中韓FTA交渉は、RCEPを上回る付加価値をどれだけ付与できるかが焦点」(外務省) バイデン次期大統領がどう出てくるか、注目したい 「中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」、日本はどう振る舞うべきか」 わが国を含め15カ国がRCEP協定に署名 中長期的に考えた場合、わが国が自力で親日国を増やし経済連携の強化を目指すことが国益に合致する RCEPの全体像と署名成立の重要性 バイデン氏がTPP復帰に言及していない中、RCEPが米国の外交・通商政策とどのような化学反応を起こすかが注目される RCEPに込められた中国と韓国の思惑 RCEP参加国における中国の影響力拡大のリスクをどう防ぐか、わが国は方策を各国と練らなければならない 自由貿易推進に向けたわが国の役割期待 わが国は自力で国際世論を味方につけ、自由資本主義の考えに則った、より高次元の(競争やデータ管理などのルールの統一化を伴った)経済連携を目指し、それに米国を巻き込むべきだ カイル・フェリア 「RCEPが日韓の関係改善を後押し、日韓貿易の83%で関税撤廃へ」 東アジア地域包括的経済連携への加盟で特に大きな恩恵を受けるのは、歴史問題が経済交渉に影を落とす日韓両国だ RCEPの影響として、日本と韓国の実質所得は2030年までに1%増加する。これは他の全ての加盟国より大きな数字だ。さらに、日韓貿易の83%で関税が撤廃されることになる 「2030年までに1%増加」とは意外に少ないようだ 中国との交渉で協調も もっとも、貿易における日韓のさらなる協力が、歴史問題に対処するための効果的な手段になるわけではない。それでも双方の指導者にとって、貿易の相互依存を交渉の武器にしないことを含め、関係悪化の悪循環を回避しようというインセンティブになるかもしれない
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尖閣諸島問題(その6)(米軍は「尖閣を守る根拠なし」 日米安保条約を巡る初歩的な勘違いと危うさ、「尖閣」陥落は秒読み? とっくに“レッドゾーン”に突入している「日本の安全保障」) [外交]

尖閣諸島問題については、10月4日に取上げた。今日は、(その6)(米軍は「尖閣を守る根拠なし」 日米安保条約を巡る初歩的な勘違いと危うさ、「尖閣」陥落は秒読み? とっくに“レッドゾーン”に突入している「日本の安全保障」)である。

先ずは、11月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏による「米軍は「尖閣を守る根拠なし」、日米安保条約を巡る初歩的な勘違いと危うさ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/254873
・『菅義偉首相は11月12日、バイデン次期大統領と電話会談を行い、「バイデン次期大統領からは、日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明があった」とコメントしている。そもそも「5条」の意味するところは何か、それで尖閣が守られるのか』、興味深そうだ。
・『安倍政権や菅政権がこだわる日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用(米国大統領選挙の結果、民主党候補であるバイデン前副大統領が次期大統領に選出されたとされている。「されている」というのは、共和党候補であるトランプ現大統領がバイデン候補の勝利を認めず、「不正があった」として選挙の無効を主張するとともに、法廷闘争に持ち込む可能性を示唆していることによる。 そうした中、菅義偉首相は、11月12日にバイデン次期大統領(便宜上そう記載する)と電話会談を行っている。その詳細な中身は明らかではないが、首相官邸のサイトに掲載された情報によると、以下のとおりとのことである(※カッコ内は筆者追記)。) 「私(菅総理)から、日米同盟は、厳しさを増すわが国周辺地域、そして国際社会の平和と繁栄にとって不可欠であり、一層の強化が必要である。その旨、また、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、日米で共に連携していきたい、こうした趣旨を申し上げました。 バイデン次期大統領からは、日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明があり、日米同盟の強化、また、インド太平洋地域の平和と安定に向けて協力していくことを楽しみにしている旨の発言がありました。 また、コロナ対策や気候変動問題といった国際社会共通の課題についても、日米で共に連携していくことで一致しました。 拉致問題への協力も、私から要請いたしました」 いつまで「日米同盟」という意味不明の呼称を使い続けるのかという点や、その強化とは何を意味するのかこの人は理解できているのだろうか、といった点は脇に置いておくとして、本稿で取り上げたいのは、「日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明があり」という部分。 安倍政権においても米国大統領の訪日の際に確認が行われ、それを言ってもらうために貿易協定等において大幅譲歩(というより献上と表現した方がいいか)が行われたようであるが、いずれにせよ、安倍、菅両政権ともこの点を相当重要視しているようである。 加えて、野党からも、例えば国民民主党の玉木雄一郎代表も、この点が確認されたことを積極的に評価している』、「「日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明・・・安倍政権においても米国大統領の訪日の際に確認が行われ、それを言ってもらうために貿易協定等において大幅譲歩・・・が行われた」、これしきの発言を引き出すため、「貿易協定等において大幅譲歩」、とは正気の沙汰とは思えない。「国民民主党の玉木雄一郎代表も、この点が確認されたことを積極的に評価」、情けない話だ。
・『日米安全保障条約第5条の意味するところは?  本件のポイントは、日米安全保障条約第5条の意味するところ、そしてその適用範囲如何である。 まず第5条の意味についてであるが、同条前段は以下のとおり規定されている。 「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」 この条文のこの部分をもって、アメリカに日本防衛義務があるなどと言われることがあり、そのように説明するメディアや政治家は少なくない。 しかし、この条文をよく読めば、「防衛義務」という言葉もなければ、その根拠となりうる記載も見当たらない。あくまでも日米それぞれが、それぞれの国の憲法の規定及び手続きに従って対処するよう行動すると書いてあるだけであり、その中身が米国にあっては日本を防衛する軍事行動、物理的力の行使であることが一義的に明らかなわけでもない。従って単に非難するだけかもしれない。 あくまでもそれを「宣言」しているだけである。 本条約は日英両語で作成されたものがそれぞれ正文(正式な文書)であるので、英文の同じ箇所を抜き出せば以下のとおりである。 「Each Party recognizes that an armed attack against either Party in the territories under the administration of Japan would be dangerous to its own peace and safety and declares that it would act to meet the common danger in accordance with its constitutional provisions and processes.」  「would」が使われていることからしても、いかなる義務も導き出すことは困難である。 つまり、あくまでも各国の国内手続きに従って、「各国の判断で対処するとされているだけである」ということである。それを「日本防衛義務がある」などとするとは、拡大解釈も甚だしく、「妄想幻想の世界」もいいところである』、「「日本防衛義務がある」などとするとは、拡大解釈も甚だしく、「妄想幻想の世界」もいいところである」、というのは確かだ。
・『日米安全保障条約第5条は尖閣諸島に関する限り「空文」と化すことも  次に、適用範囲如何について、焦眉の課題は尖閣諸島への適用如何ということのようであるが、日米安全保障条約では「日本国の施政の下にある領域における」とされている。尖閣諸島については日本の領土である旨、政府はかねてから主張してきており、少なくとも日本の実効支配下にある。従って、当然に日米安全保障条約第5条の適用範囲に含まれると考えるのが適当である。 ただし、曲者なのは「施政下にある」という表現。「領土」や「領海」という表現は使われていない。この点については11月12日午前6時25分公開のBloombergの記事においても次のとおり指摘されている。 「The U.S. recognizes the disputed islands as administered by Japan, rather than saying they are part of the country.」 つまり、米国からすれば、尖閣諸島は日中両国による「係争地」であり、いずれの領土であるとも認識せずに、ただ単に日本の施政下にあるということだけを認識しているということであり、日米安全保障条約第5条における規定もそうした考え方に基づくか、そうした考え方を反映したものであるということである。 ということは、仮に中国軍の艦船なり、中国の海上保安庁に当たる海警の船舶が、間隙を突いて尖閣諸島に接岸し、上陸して実効支配を始めた場合は、日本の施政下からは外れたことになりえるので、日米安全保障条約第5条の適用範囲から外れることにもなりかねない。 そうなった場合、日米安全保障条約第5条は、尖閣諸島に関する限り「空文」と化すことになる。 「そんなことをさせない、そうならないためにも日米安全保障条約第5条の確認なのだ」といった反論が返ってきそうだが、米国に日本防衛義務がない以上、そして「米国の国益」にとってプラスとならないのであれば、米国軍は尖閣諸島防衛のために何ら行動することはないだろう』、「仮に中国軍の艦船なり、中国の海上保安庁に当たる海警の船舶が、間隙を突いて尖閣諸島に接岸し、上陸して実効支配を始めた場合は、日本の施政下からは外れたことになりえるので、日米安全保障条約第5条の適用範囲から外れることにもなりかねない。 そうなった場合、日米安全保障条約第5条は、尖閣諸島に関する限り「空文」と化すことになる」、驚くべきことだが、確かに米国がそのように解釈しても文句は言えないようだ。。
・『「脱ハンコ」や「携帯料金の引き下げ」の方が安全保障よりも優先すべき課題なのか  要するに日本が「自ら何とかするしかない」「自力で守るしかない」ということなのだが、日米安全保障条約の尖閣諸島への適用について確認することに執心する一方で、中国の海警による尖閣諸島海域への侵入が繰り返されているにもかかわらず、何ら具体的かつ積極的な行動を起こしていないのが実態である。 その背景には、緊縮財政で海上保安庁が十分な人員や艦船などの装備が保有できていないことと、その積極的活動を担保する法制が不十分であることがある(本稿の目的は問題点の指摘にあるので、こうした点についての詳細な解説は別稿に譲ろう)。 いつ「絵に描いた餅」に化するか分からない空文に、後生大事にしがみついている暇があったら、海上保安庁の体制強化のための歳出の拡大と、領域警備法等の関連法性の整備を急ぐべきである。 それよりも「脱ハンコ」や「携帯料金の引き下げ」、「インバウンド」に「カジノ」が優先と言うのであれば、菅首相は具体的かつ物理的にわが国の領土を失った戦後最初の首相として、歴史にその名を刻むことになるだろう』、「日米安全保障条約」の重要部分の解釈で国民に嘘をついているとは罪が深い。「海上保安庁の体制強化のための歳出の拡大と、領域警備法等の関連法性の整備を急ぐべき」、同感である。

次に、12月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経産省出身の評論家の中野剛志氏による「「尖閣」陥落は秒読み? とっくに“レッドゾーン”に突入している「日本の安全保障」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256426
・『11月24日の日中外相共同記者会見における王毅外相の「尖閣諸島」に関する発言と、その場で反論しなかった茂木外相に対する強い批判が巻き起こったのは当然のことだった。しかし、問題の本質はそこにはない。直視しなければならないのは、中国が爆発的に軍事力を強化した結果、東アジアにおける軍事バランスが完全に崩壊したことだ。アメリカが、東アジアにおける軍事的プレゼンスを維持する「能力」と「意志」を失いつつある今、この10年を無策のまま過ごしてきた日本の「地政学リスク」は、明らかにレッドゾーンに突入した。日本は、あまりに過酷な現実に直面している』、「王毅外相」の発言は、「日本の漁船が絶えず釣魚島(尖閣諸島の中国名)周辺の敏感な水域に入っている」と述べた。日本側が「事態を複雑にする行動」を避けるべきだとも主張」、「先に発言した茂木氏は「中国側の前向きな行動を強く求めた」と強調。「外務省は「ルールとして反論するような場ではなかった」と説明」(日経新聞11月26日)。「中国が爆発的に軍事力を強化した結果、東アジアにおける軍事バランスが完全に崩壊したことだ。「アメリカが、東アジアにおける軍事的プレゼンスを維持する「能力」と「意志」を失いつつある今、この10年を無策のまま過ごしてきた日本の「地政学リスク」は、明らかにレッドゾーンに突入した」、厳しい現状認識だ。
・『すでに絶望的なまでに広がった、日本と中国の「軍事力の差」  2020年は、パンデミックにばかり注目が集まっている。しかし、後世の歴史家は、この年を、東アジアにおける国際秩序の転換点として記録することだろう。 2020年5月、東アジアの軍事情勢研究の権威であるトシ・ヨシハラが、「過去十年間で、中国海軍は、艦隊の規模、総トン数、火力等で、海上自衛隊を凌駕した」とする重要な分析を公表した。 その中で、ヨシハラは、「今日の中国の海軍力は十年前とは比較にならない。中国海軍に対する従来の楽観的仮定はもはや維持不可能である」と指摘した。 ヨシハラは、日中の戦力を詳細に比較しているが、一例をあげると、図のように、中国の軍事費は日本の5倍にもなっている。この結果、中国の政治家や軍の指導者は、自国の軍事的優位に自信をもつに至った。今後、中国は、尖閣諸島など局地的な紛争において攻勢的な戦略を採用するであろうとヨシハラは論じた。 要するに、東アジアの国際秩序を支えてきた軍事バランスが崩壊しつつあるというのだ。 どうして、こうなってしまったのか。先ほどの図を見れば一目瞭然であろう。中国はこの20年間、軍事費を急増させてきたが、日本の防衛費はほぼ横ばいである。これでは、軍事バランスが崩れるのも当然である』、「中国はこの20年間、軍事費を急増させてきたが、日本の防衛費はほぼ横ばいである。これでは、軍事バランスが崩れるのも当然である」、やむを得ないが、日本としての対応はますます難しくなる。
・『この10年の「日本」の過ごし方が、「致命的」であった理由  特に、ヨシハラも言うように、過去10年間が決定的であった。 ちょうど10年前、ヨシハラは、ジェームズ・ホームズ海軍大学教授とともに『太平洋の赤い星』(バジリコ刊)という著作を発表した。 その中で、二人は、中国の戦略研究家たちが鄧小平の「改革開放」以降、海洋戦略家アルフレッド・T・マハンへの関心を強めてきたことに着目した。マハンに学んだ中国の戦略研究家たちは、国際貿易や経済発展のためには海洋進出が必要であり、そのためにはシーレーンの支配が必要だと考え、強力な海軍の建設を目指しているというのである。 冷戦終結後の世界では、グローバル化が進展することで国家は後退し、領土をめぐる国家間の紛争は無意味になるという楽観論が支配していた。日本もこの楽観論を信じた。ところが、中国は、グローバル化が進むからこそ海軍力が必要になるという、日本とはまったく逆の戦略的思考に立っていたのである。 ヨシハラとホームズは、警告を発した。 「今日の西側の研究者たちは、地政学に注意を払わず、グローバル化と相互依存の時代には、絶望的に時代遅れで無関係なものとみなしている。彼らは、国際政治における地理の役割を軽視し、その過程で、自分たちの世界観を他の大国にも当てはめる。しかし、中国の学界の大多数は、まさに正反対の方向に向かっているのは、文献から明らかだ。」 なお、ホームズは、2012年、日中間で尖閣諸島をめぐる軍事衝突が起きた場合のシミュレーションを考察し、日本は、米軍の支援が得られれば、苦戦しつつも勝利するだろうと結論した。つまり、当時はまだ、日本はぎりぎり領土を守れたのだ。 しかし、それから今日までに、中国は軍事費を1.5倍以上にしたというのに、日本の防衛費は微増に過ぎなかった。 この決定的な10年間、日本はいったい何をやってきたのか。 安倍前政権は、TPP(環太平洋経済連携協定)など自由貿易を推進し、集団的自衛権の行使を認める法整備を推進してきた。要するに、グローバル化と日米同盟の強化が、外交戦略の柱だったのだ。 しかし、ヨシハラとホームズが警告したように、中国はグローバル化と共に海軍力を強化していた。したがって、グローバル化は、中国の軍事的な脅威の増大を招くものと認識すべきだった。ところが、日本はその認識を欠き、防衛力の強化を怠った』、「中国はグローバル化と共に海軍力を強化していた。したがって、グローバル化は、中国の軍事的な脅威の増大を招くものと認識すべきだった。ところが、日本はその認識を欠き、防衛力の強化を怠った」、中国に対抗して「防衛力の強化」をするには、膨大な防衛費が必要になるので、「防衛力の強化を怠った」のはやむを得ない。
・『米国に「守ってもらえる」時代は終焉を迎えた  他方で、日本は日米同盟の強化に努めてはきた。しかし、問題は、肝心の米国の軍事的優位が、この10年間で失われたことにある。 10年前、米国の軍事費は中国の5倍あった。それが、今では3倍程度しかないのだ。「3倍もあるではないか」と楽観するのは間違っている。中国は自国の周辺に戦力を展開しさえすればいいが、米国は太平洋を越え、あるいはグアムや沖縄など点在する基地から戦力を投射しなければならない。この地政学的不利を考慮すると、米中の軍事バランスはもはや崩れたと言うべきだ。 実際、2018年、米議会の諮問による米国防戦略委員会の報告書は、もし米国が台湾を巡って中国と交戦状態になったら敗北するだろうと述べている。また、2020年の米国防省の年次報告書は、中国の軍事力がいくつかの点で米国を凌駕したと認め、その一例として、中国が、すでに米国より多くの戦艦等を有する世界最大の海軍国家であると指摘している。 米国は、中国の侵略を抑止する能力だけでなく、その意志も失いつつある。昨年のある調査によると、「近年の中国のパワーと国際的な影響力の著しい増大に対して、米国の対中政策はどうあるべきか」という問いに対して、米国民の57.6%が「アジアの軍事プレゼンスを削減すべき」と回答している。 しかも、2020年は大統領選で国が分断され、政権移行で混乱し、さらにコロナ禍によって現時点で27万人以上もの死者を出している。こんな状態の米国が、尖閣諸島をめぐる日中の軍事衝突が起きた場合に、日本を支援する能力そして意志がどれだけあるというのか。 菅義偉首相は、11月12日、バイデン次期米大統領との電話会談で、日米安保条約が尖閣諸島に適用されることを確認した。しかし、バイデン政権移行チームからの発表には、「尖閣」の文字はなかった。 2020年――。 それは、日本が米国に守ってもらえた時代の終わりが始まった年なのである』、「米国民の57.6%が「アジアの軍事プレゼンスを削減すべき」と回答」、しているような状況では、「日米安保条約」で尖閣奪還してもらおうと期待するのは無理なようだ。日本として、核保有国の中国に如何に対抗すべきかについては、極めて難しい問題なので、今日のところは回答を留保したい。
タグ:ダイヤモンド・オンライン 尖閣諸島問題 中野剛志 トシ・ヨシハラ 室伏謙一 (その6)(米軍は「尖閣を守る根拠なし」 日米安保条約を巡る初歩的な勘違いと危うさ、「尖閣」陥落は秒読み? とっくに“レッドゾーン”に突入している「日本の安全保障」) 「米軍は「尖閣を守る根拠なし」、日米安保条約を巡る初歩的な勘違いと危うさ」 日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用 日米安保条約第5条の尖閣諸島への適用についてコミットメントをする旨の表明があり それを言ってもらうために貿易協定等において大幅譲歩 国民民主党の玉木雄一郎代表も、この点が確認されたことを積極的に評価している 日米安全保障条約第5条の意味するところは? あくまでも日米それぞれが、それぞれの国の憲法の規定及び手続きに従って対処するよう行動すると書いてあるだけであり、その中身が米国にあっては日本を防衛する軍事行動、物理的力の行使であることが一義的に明らかなわけでもない。従って単に非難するだけかもしれない。 あくまでもそれを「宣言」しているだけである 「「日本防衛義務がある」などとするとは、拡大解釈も甚だしく、「妄想幻想の世界」もいいところである」 日米安全保障条約第5条は尖閣諸島に関する限り「空文」と化すことも 仮に中国軍の艦船なり、中国の海上保安庁に当たる海警の船舶が、間隙を突いて尖閣諸島に接岸し、上陸して実効支配を始めた場合は、日本の施政下からは外れたことになりえるので、日米安全保障条約第5条の適用範囲から外れることにもなりかねない。 そうなった場合、日米安全保障条約第5条は、尖閣諸島に関する限り「空文」と化すことになる 「脱ハンコ」や「携帯料金の引き下げ」の方が安全保障よりも優先すべき課題なのか 海上保安庁の体制強化のための歳出の拡大と、領域警備法等の関連法性の整備を急ぐべき 「「尖閣」陥落は秒読み? とっくに“レッドゾーン”に突入している「日本の安全保障」」 アメリカが、東アジアにおける軍事的プレゼンスを維持する「能力」と「意志」を失いつつある今、この10年を無策のまま過ごしてきた日本の「地政学リスク」は、明らかにレッドゾーンに突入した すでに絶望的なまでに広がった、日本と中国の「軍事力の差」 「今日の中国の海軍力は十年前とは比較にならない。中国海軍に対する従来の楽観的仮定はもはや維持不可能である」 今後、中国は、尖閣諸島など局地的な紛争において攻勢的な戦略を採用するであろうとヨシハラは論じた 中国はこの20年間、軍事費を急増させてきたが、日本の防衛費はほぼ横ばいである。これでは、軍事バランスが崩れるのも当然である この10年の「日本」の過ごし方が、「致命的」であった理由 中国はグローバル化と共に海軍力を強化していた。したがって、グローバル化は、中国の軍事的な脅威の増大を招くものと認識すべきだった。ところが、日本はその認識を欠き、防衛力の強化を怠った 中国に対抗して「防衛力の強化」をするには、膨大な防衛費が必要になるので、「防衛力の強化を怠った」のはやむを得ない 米国に「守ってもらえる」時代は終焉を迎えた 米国民の57.6%が「アジアの軍事プレゼンスを削減すべき」と回答 「日米安保条約」で尖閣奪還してもらおうと期待するのは無理なようだ 日本として、どうすべきかについては、極めて難しい問題なので、今日のところは回答を留保したい
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日韓関係(その12)(日韓が「歴史問題」でわかり合えない根本理由 議論すべきは「歴史の実証」か「歴史認識」か、韓国の大統領・首相からの書簡を「菅義偉首相」が“スルー”した理由、日韓歴史問題解決の切り札は在韓米軍撤退 米有力シンクタンク 国務省見解を代弁する提言) [外交]

日韓関係については、8月14日に取上げた。今日は、(その12)(日韓が「歴史問題」でわかり合えない根本理由 議論すべきは「歴史の実証」か「歴史認識」か、韓国の大統領・首相からの書簡を「菅義偉首相」が“スルー”した理由、日韓歴史問題解決の切り札は在韓米軍撤退 米有力シンクタンク 国務省見解を代弁する提言)である。

先ずは、8月19日付け東洋経済オンラインが掲載した立命館大学グローバル教養学部教授の前川 一郎氏ら4人の気鋭の研究者による座談会「日韓が「歴史問題」でわかり合えない根本理由 議論すべきは「歴史の実証」か「歴史認識」か」を紹介しよう。
・『慰安婦問題や徴用工問題など、日韓間で幾度も繰り返される歴史認識問題。さらには自国に都合よく歴史を捉える歴史修正主義も蔓延している。 これらの歴史問題が炎上する背景には何があるのか。また、アカデミズム、メディア、そして社会は、歴史問題にどう向き合えばよいのか。このたび『教養としての歴史問題』を上梓した、前川一郎、倉橋耕平、呉座勇一、辻田真佐憲の4人の気鋭の研究者による同書の座談会部分を抜粋してお届けする』、興味深そうだ。
・『歴史修正主義が台頭した背景  前川:まず、歴史修正主義の台頭について、あらためて皆さんの認識を伺わせてください。『教養としての歴史問題』ではそれぞれ異なる角度で論じているわけですが、議論の前提には、1990年代以降に歴史修正主義が社会への影響力を強めてきたことに対する危機感がありました。 倉橋:これは歴史学だけの問題ではないと認識しています。歴史修正主義の問題は、歴史学のなかでのイデオロギーの左右対立の問題と捉えられるのが一般的ですが、そもそも左右というラベル自体がわかりづらくなっているという現状があります。 歴史修正主義には、日本人の誇りに関心があるから史実はあまり重視しないという特徴があります。それが社会に一定の影響力を持っているのは、社会に対する不安や不満を持つ人々の心情と親和性があるからだとも考えられます。 つまり、対立軸は左右のイデオロギーだけが問題なのではなく、階層対立だという可能性です。現状を認識するには、左右の対立に覆い隠されてしまっている、本当の対立軸をすくい取るといった視点が必要だと思います。 呉座:同感です。左右では分けられない問題も多いと思います。倉橋さんの論考で、右派とスピリチュアル系の親和性が指摘されていましたが、一方で左派であるエコロジー・環境問題の運動家のなかにもスピリチュアル系と結び付く人がいますよね。 辻田:右左は、ほとんど「これは右」「これは左」と分類するラベルになっていると思います。対立軸のもと整理することで、複雑な現実をすっきりと見えた気にさせてくれるわけです。 ただ、日々の生活に忙しい人々に社会の問題をわかりやすく発信することは必要ですけれども、やりすぎると互いに相手にラベルを貼り合い、敵と味方を作って終わりという不健全な振る舞いになってしまいます。ですから、社会の捉え方をバージョンアップしていくという意識をつねに持たなければいけません。そうすることで、硬直した左右の対立図式を乗り越える道も見えてくるのではないでしょうか。 前川:そもそも左とは何か、右とは何かが曖昧になってきていますね。私が書いた植民地主義や「歴史認識」の問題に関して言うと、植民地主義の歴史を持つ国々では、それを否定すると現体制の正当性まで問われることになりかねないため、国として「歴史認識」を考え直そうということにはなかなかならないわけですが、もしかしたらそうした国の姿勢に対する距離感で左右が分かれるかもしれません。あえて言うならば、国にべったり寄っているのが右派で、批判的な立場が左という感じです。 辻田:前川さんはイギリスがご専門ですが、イギリスにも左右の対立はあるのですか』、「歴史修正主義には、日本人の誇りに関心があるから史実はあまり重視しないという特徴があります。それが社会に一定の影響力を持っているのは、社会に対する不安や不満を持つ人々の心情と親和性があるからだとも考えられます」、「植民地主義の歴史を持つ国々では、それを否定すると現体制の正当性まで問われることになりかねないため、国として「歴史認識」を考え直そうということにはなかなかならないわけですが、もしかしたらそうした国の姿勢に対する距離感で左右が分かれるかもしれません」、なるほど。
・『イギリスの論壇の基本は中道  前川:政治に関しては曖昧ですね。保守党と労働党の二大政党制ですから、保革の対立のような印象があるかもしれませんが、明らかに右を標榜する国民党などを除けば、保守党も労働党も、左右というよりは基本は中道なんです。あえて言えば、保守党は中道右派、労働党は中道左派といったところでしょうか。ですが、保守党のなかにも左寄りの人はいるし、労働党のなかにも右派的な人はいる。ですから、明確な左右の対立は見えにくい。 (前川一郎氏の略歴はリンク先参照) 政治の対立軸は、左右というより、サッチャー改革の是非として表れています。要するに、新自由主義に対する姿勢です。 最近も、「新自由主義の申し子」と言われたボリス・ジョンソンが、自分が新型コロナウイルスに感染して、国民保健サービス(NHS)をサポートする気になったのか、あるいは何かのパフォーマンスか知りませんが、「社会というものがまさに存在する(there really is such a thing as society)」と発言しましたね。これは、知ってのとおり、サッチャーの「社会なんてものはない(there is no such thing as society)」という言葉、つまりは新自由主義哲学の否定になります。ジョンソンの口からそんな言葉が出てきたのは驚きだと、世間の注目を集めたわけです。その真意はつかみかねますが. 一方、イギリスでは、論壇と言っていいかわかりませんが、例えばタブロイドと言われる大衆紙には右の新聞が見られますし、高級紙は『ガーディアン』紙のような左やリベラルを標榜する新聞があります。でも、私の印象では、左右双方に論壇誌があって鋭角に対峙しているという感じではない。政治の話ではないですが、やはり中道なんですよね。 そこで、倉橋さんに伺いたいのですが、社会学的な視点でいうと、そもそも日本では右と左の概念はどのように受け止められているのでしょうか。 倉橋:一般的な定義として知られるものは、右とか右翼と言われるのは、基本的には国家を中心に考える人たちだと言っていいと思います。日本だと天皇を中心に国家を考えます。さらに非常に復古的なイデオロギーです。保守と言うときには、変革には慎重で、過去から現在へと続いてきた秩序を支持する人たちだと言えます。 一方、左派はドラスティックな改革を進め、社会主義や共産主義を標榜する人たちのことをいう場合が多く、リベラルは革新的で社会を変革しながらいい方向を目指す人々と語られます。ですが、もちろん、左右は相対的な概念で、(いま前川さんがイギリスの状況を説明してくださったように)時代や社会によって概念のなかに入れられる要素は異なります。 辻田さんのご指摘どおり、ラベリングに使われることも多く、例えば、歴史修正主義者は、それに反対する人たちをひとくくりにして、共産主義者だとかリベラル勢力だと批判します。フェミニズムに対しても、マルクス主義だ、コミンテルンだ、とレッテルを貼ります。しかし、実際は、歴史修正主義に反対する人たちにも、左翼や共産主義ではない人も大勢いるわけです。こうしたラベリング的な要素がある以上、反対のことは左派による右派批判にも起こりえます。) 辻田:よく指摘されるように、ソ連が崩壊した後、右左の違いがわかりづらくなったという状況があります。日本の論壇には、右左を分かつ思想的な根拠は見いだしにくく、主張のパッケージというか、何か束のようなものがあって、それが“右”“左”と呼ばれている印象です。 例えば、原発は推進で、基本的に自民党を支持し、女性の社会進出や夫婦別姓、ジェンダー問題などには消極的でといった束が右派や保守で、その反対が左派やリベラルであるというような感じになっている。けれど、例えば、原発に関して、右派であるから賛成なのだという思想的な根拠がかならずしもあるわけではない。もっと言えば、右翼とは「反左翼」で、左翼は「反右翼」でしかなくなっているとさえ思います』、「ジョンソン首相」が、NHSを再評価するような発言をしたとは初めて知った。コロナに感染したことが影響したのだろうか。
・『左派が権威、右が挑戦者という嘘の構図  呉座:左右の対立について、〈左派が日本の歴史認識や社会規範を支配しており、右派は庶民に寄り添ってその権威に対抗しているのだ〉という言説が、右派によってしきりに喧伝されています。つまり、左派は押しつけがましい権威主義的なインテリであって、右派は大衆を代表して左派の知的権威に挑戦しているのだ、という構図です。右派が一定の共感と支持を獲得しているのは、この戦略に拠るところが大きい。 (呉座勇一の略歴はリンク先参照) けれど、左派が権威で右派が挑戦者という構図はかならずしも実態に即しておらず、レッテル貼りのようなところがあります。戦後のほとんどの時期において保守勢力が政権を担ってきましたし、現在も保守派の代表と言える人が長期にわたり首相を務めています。霞が関の官僚や一流企業の社員など社会の上層にも右寄りの考え方の人は多い。 にもかかわらず、左が体制側で右が改革者という図式は信じられてしまっています。辻田さんが指摘されている右派が提示する「物語」とも関連すると思いますが、この辺りも、右派は非常に巧妙だと思います。 辻田:いまの日本では、いかに刺激的な記号を配置して、人々の注目を集め、動員や利益につなげるかというゲームがあちこちで展開されています。歴史修正主義の運動も、そういう時代の流れのなかで捉えたほうがわかりやすいかもしれません。 前川:私も歴史修正主義の問題を右派だの左派だのといった次元で捉えることには違和感があります。歴史修正主義者はいろいろと言っていますが、その動機はさまざまであるにせよ、要するに彼らが口にするのは、戦争や植民地主義などが刻印した過去の「不正」について、「モノ言う弱者」と彼らが思い込んでいる人たちからとやかく責め立てられることへの反発やいら立ちです。「本当の対立軸」ということであれば、その1つは「過去の克服」に向き合うか否かということであって、もとより右とか左とかという話ではありません。) 前川:さて、ここからは視点を変えて、「事実と物語」に関する議論に移らせてください。実証主義に基づく歴史学の視点で見れば笑止としか言いようのない歴史修正主義が、これほど社会に浸透してしまったのはなぜか。これを、「歴史学の敗北」という観点から言うとどうなるか。もっとも、このフレーズ、歴史研究者から見ればちょっとショッキングなわけですが……。 それでも、「歴史学の敗北」と言うとき、そこには、歴史修正主義者の問題提起に対して、歴史学の側が自陣に閉じこもってきたという問題があるんだと思います。呉座さんが指摘されたとおりです。この辺りの問題について、皆さんのご意見を伺いたいと思います。 辻田:歴史修正主義の蔓延を無視していると、最終的に、アカデミズムにも悪い影響を与えてしまいます。例えば、「歴史学会は反日勢力に支配されている」という暴論が売れて、与党の政治家などに支持されてしまうと、人文系学部の予算削減などにつながりかねないわけですよね。実際、そうなっている部分もあるのではないでしょうか。 歴史学者が自分たちは社会とは関係ないと思っていても、そう簡単にはいきません。研究をほっぽり出して社会運動をしてくれと言いたいわけではありませんが、そういう認識は必要だと思いますね』、「左派が権威、右が挑戦者という嘘の構図」、よくぞこんな見えすいた「嘘」が通用するものだ。「歴史修正主義の蔓延を無視していると、最終的に、アカデミズムにも悪い影響を与えてしまいます」、その通りだ。
・『日韓歴史共同研究が挫折する理由  倉橋:前川さんが、歴史修正主義の“物語”が社会に広く受け入れられているという現実は、裏を返すと、国民の歴史や物語の意味を問い直しているのだというようなことを指摘されていますが、それは重要な視点だと思います。 (倉橋耕平氏の略歴はリンク先参照) 歴史学は当然のこととして、歴史で何が、なぜ起こったかを実証的に解明しようとしますが、一方で、その歴史をどのように認識するかという評価も大切なはずです。そこの部分を、学問としては非常にずさんな歴史修正主義にうまくかすめ取られてしまっているという感覚があります。 そこで思い出したのは日韓歴史共同研究です。2002年に日韓で共通の歴史教科書を作ることを目指した日韓歴史共同研究が開始されましたが、結局挫折しました。政治学者の木村幹さんによると、その原因は議論すべき事柄について共通認識が得られなかったからだそうです。つまり、議論すべきは、歴史の実証なのか、歴史認識かという違いです。 歴史認識問題は、戦後私たちが「過去」をどのように議論したり、理解したりしてきたか、に関わる問題であって、歴史学は日韓双方でこの向き合い方が異なったわけです。他方、歴史修正主義は「過去」をどのように議論するかという点に「国民の物語」をすっぽり入れられた。それは実証主義でなくてもよいわけですね、向き合い方なので。ここにも同じ構造がありました。 呉座:よく指摘されていることですけど、ソ連の崩壊によって、マルクス主義の権威が失墜したことで、歴史学は「世界史の基本法則」というグランドセオリーを失ってしまいました。そのため、歴史学は実証主義にアイデンティティーを求めるようになったという問題があります。 日韓歴史共同研究がかみ合わなかったことには、そうした背景があるのだと思います。韓国側に植民地主義を清算するという歴史認識問題が軸にあるのに対し、日本側にはとくに軸はないので実証的に研究するという意識が前面に出る。目的意識が違うので議論がすれ違ってしまう。 一例を挙げますと、日韓併合は韓国側から見れば一片の正当性もない侵略ですが、日本側は道義的には問題があったけれども当時の国際法では合法でした、という論理を組み立てるわけです。韓国側には詭弁に聞こえるのでしょうが、実証主義に立脚した場合は間違っているとは言えない。植民地統治にしても、日本側はイデオロギー的評価を脇に置いて実態を見ていこうというスタンスなので、収奪一色ではなく近代化が進んだ面もある、と指摘したりする。植民地支配を肯定しているわけではありませんが、韓国側にはそう映ることもある。 そういう意味で、日本の歴史学は、物語というか、歴史を概観する大きな見取り図を描けなくなって、日本の歴史はこうだったと、積極的に市民や社会に示すものがなくなってしまったために、どんどん内向きになって、実証主義の職人として学会でアピールするしかなくなっているという問題があると思います。かと言って、実証主義を軽視してしまっては、歴史修正主義と差別化できなくなるので、なかなか悩ましい』、「日韓歴史共同研究」、は始める前から私は失敗すると予想していたが、その通りになったのは当然である。「日本の歴史学は、物語というか、歴史を概観する大きな見取り図を描けなくなって、日本の歴史はこうだったと、積極的に市民や社会に示すものがなくなってしまったために、どんどん内向きになって、実証主義の職人として学会でアピールするしかなくなっているという問題がある」、その通りなのだろう。
・『なぜ「新しい物語」が必要なのか  前川:辻田さんは「新しい物語」が必要だと指摘されていますが、いかがですか。 辻田:市場では歴史に強い需要があって、本も売れますし、テレビ番組もよく見られます。 (辻田真佐憲氏の略歴はリンク先参照) とはいえ、そこで求められているのはかならずしも学知そのものではないわけです。そのため、ある種の「翻訳」をしなければいけないのですが、呉座さんがおっしゃったような事情もあり、それがうまく機能していませんでした。 歴史修正主義者は、その虚をついたところもあったのではないでしょうか。学知だけではなく、それをベースにしたより「まともな」物語が必要だと述べた理由もここにあります。 前川:市場や商業主義に関しては倉橋さんが社会の問題として議論されています。 いきなり大きな質問からになりますが、結局のところ、社会は学知に何を求めているのでしょうか。つまり、社会における知とは何なのでしょうか。そもそも、社会は専門知を必要としているのでしょうか。 倉橋:非常に難しい問題ですけど、もちろん、専門知は社会にとって必要不可欠だと思います。けれど、専門知に対する評価は非常に低くなり、信頼されなくなっているという現状があるのも事実です。その辺りは、トム・ニコルズというアメリカの研究者が深く分析し、一般向けの著書を出版し、専門知が軽んじられる状況を「反知性主義」という言葉で説明しています。彼の分析はかなり悲観的ですが、世界的な災害や危機が生じたとき、その状況はひっくり返る可能性があるとも指摘していました。 その邦訳(『専門知は、もういらないのか』)が日本で発売された半年後にコロナの問題が起こりました。政府が「専門家会議」を作って助言を求める姿が繰り返し報道されています。それで信頼がどの程度回復するかはわかりませんが、「専門知」が見直されるきっかけとはなったのではないでしょうか。歴史学の問題に関しては、呉座さんが「権威」という言葉を使われましたが、それに対する反発が社会には広がっていて、それが専門知を揺るがしているのではないかと考えています。 反知性主義の背景には「平等観」があるのだと思います。すなわち、専門知という権威を引き下げ、俗説を引き上げるというトレンドがあり、知は専門家だけのものではなく、もっとフラットなものなのだという感覚でしょうか。そういう感覚が社会に広がっている。とくにネットのやり取りを見ているとそんな感じがします』、安部・菅政権は「反知性主義」的色彩がみられる。コロナ対応の「専門家会議」も政治家の責任逃れのためという感じが濃厚だ。
・『現代社会の真の対立軸  辻田:現代美術家の村上隆さんが、かつて「スーパーフラット」という言葉を使いました。すべてが真っ平らだというポストモダンの価値観をよく言い表したものだと思いますが、学校だと、教える側も教えられる側もフラットで平等なのだという感覚なのでしょう。 最初に右左の対立軸の話がありましたけども、もし今、本当に対立軸があるとすれば、それは、すべてがフラットだというポストモダン的な価値観の人たちと、社会にはある種の階層や秩序があると考える(近代的な?)価値観の人たちとの間にあるような気がします。これはどちらが一概にいいとは言いにくいのですが……。 倉橋:その点については、私も同感で、危惧していると言ってもいい。実際に現実にも発せられる言語にも権力勾配や権力格差はつねに付きまとい、それがなくなったことなど歴史上一度もないのに、もはや解消したもののように扱われるという知的現象は数多く見られます。 「男性差別」「在日特権」「日本人ヘイト」といったマジョリティーこそ被害者であるといった言説は、平等あるいは立場のフラットをベースにしたところから語られる権力勾配無視の発想があると思います。歴史修正主義者がそうしたフラットな状況を作り出すために「ディベート」のような言論ゲームを持ち出したのもその延長線上にあると思います』、「歴史修正主義者がそうしたフラットな状況を作り出すために「ディベート」のような言論ゲームを持ち出したのもその延長線上にあると思います」、これからの議論をみていく上で、参考になりそうだ。ただ、肝心の日韓関係とはたいぶ離れてしまったようだ。なお、この座談会の第2回、第3回は、9月29日付け「歴史問題13」で既に取上げた。

次に、9月20日付けデイリー新潮「韓国の大統領・首相からの書簡を「菅義偉首相」が“スルー”した理由」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/09201700/?all=1
・『戦後最悪とされる日韓関係。その原因は従軍慰安婦や徴用工などに関する歴史認識問題だ。なぜ歴史認識が日韓で乖離し、対立を生んだのか。その軌跡を、歴史家が丹念に追う。『歴史認識はどう語られてきたか』を書いた神戸大学大学院の木村幹教授に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは木村氏の回答)』、興味深そうだ。
・『「河野談話」もすでに歴史  Q:解決不可能と思えるほど、日韓関係は悪いままです。 A:解決をいう前に、われわれが双方の現代史をきちんと把握し、理解しているのかどうか。歴史認識とは、過去の歴史的事実そのものをめぐる問題というよりも、過去の歴史的事実をそれぞれの時代に生きる人々がどのように考え、どの部分にどのような重要性を見いだすかという問題です。この点が、きちんと理解されていません。 Q:確かに「そうだろう」「そうだったはずだ」といった思い込みで語られがちですね。 A:太平洋戦争中の問題である慰安婦問題を、「当時の人は慰安婦なんて知らなかった」として語る人がいます。戦後75年といいますが、その時間幅は奈良時代(710〜94年)とほぼ変わらず、明治維新(1867年)から太平洋戦争終結(1945年)までに匹敵する「一時代」なのです。でも、現代史なので自分たちから遠くないとの感覚があり、「知ってるよ」と安易に判断して語りがちです。 Q:慰安婦への日本軍の関与を認めた1993年の「河野談話」の是非が問題になることがありますが、その実、河野談話で何が語られたのかは知られていません。 A:27年前のことですが、きちんと理解されているかどうか。河野談話もすでに歴史であり、だからこそきちんと確認して議論する必要があるのですが、多くの人はそうは考えません。1982年の教科書問題や1980〜90年代から広がった慰安婦・徴用工問題は、それぞれの時代でどのように、どういった状況で語られ、あるいは認識されていたのか。そういった歴史の変化を追い、それを残せるか。歴史家は、歴史に振り切られないようにすべきです。 Q:韓国ではとくに、1987年の民主化をはじめ1980年代に激動の時代を迎えました。 (木村 幹氏の略歴はリンク先参照) 日本は海外から「安定した国でいいですね」と言われます。生活が安定し平和であるのはいいことですが、そのぶん対外的な変化に鈍感です。日本の外には激しい変化の生じている国があり、韓国はその1つです。外国とのギャップに、もっと留意すべきでしょう。 例えば安倍晋三前首相は、2015年の慰安婦合意など韓国に対して積極的でした。祖父・岸信介元首相から彼の時代の韓国の話を聞き、それが安倍氏の対韓認識を形成したゆえかもしれません。 しかし、岸氏が在任した1950年代末からはもちろん、安倍氏の在任期間中にも朴槿恵(パククネ)、文在寅(ムンジェイン)政権下で韓国は大きく変化しました。その変化を安倍氏はきちんと読み取れていたでしょうか。もちろん、これは韓国の政権も同じで、この10年間の日本の対韓国世論の急速な悪化は、彼らにとってもついていくのが大変な現象でしたからね』、「戦後75年といいますが、その時間幅は奈良時代(710〜94年)とほぼ変わらず、明治維新(1867年)から太平洋戦争終結(1945年)までに匹敵する「一時代」なのです」、その重みを再認識した。「河野談話で何が語られたのかは知られていません」、「それぞれの時代でどのように、どういった状況で語られ、あるいは認識されていたのか。そういった歴史の変化を追い、それを残せるか」、は歴史家もさることながら、ジャーナリストにも責任があると思う。
・『80年代の変化に日本は気がつかなかった  Q:歴史認識が大きな外交懸案となったのは1980〜90年代以降です。これには、韓国の歴史研究者の世代交代も影響したのですか。 A:植民地時代の歴史研究は、朝鮮半島では日本人研究者が主導しました。韓国人の研究者が本格的に養成されるようになったのは、植民地支配の末期からです。だから、日本支配が終わった当時の歴史研究者の大半はまだ20代で、彼らがそのまま教授として主要大学のポストに就いた。それから約30年間、彼らは退職するまで学界の要職を占め続けました。 1980年代に入り、韓国の経済成長と国際環境の変化などを背景に、従来の研究とは一線を画す歴史研究を主張する研究者が出現しました。日本語で教育を受けた世代が徐々に退場し、「民族史観」が打ち立てられるなど歴史研究の大きなパラダイムシフトが生じました。この変化が、その後の歴史認識問題の下地となるのですが、この大きな変化に当時の日本人は気づきませんでした。 Q:2018〜19年には旭日旗への韓国世論の反発や韓国艦艇による自衛隊機レーダー照射、日本の輸出規制管理強化などの問題が発生して日韓対立がさらに深まりました。 A:慰安婦・徴用工問題とは明らかに違う、韓国発の新たなイシューが頻発しています。とくに旭日旗問題は、従来の慰安婦や徴用工といった問題とは、具体的な当事者がいない点で、性質が異なります。 問題が大きくなったのは、2018年に韓国で予定されていた国際観艦式を前に、参加を予定していた海上自衛隊に対し韓国海軍が旭日旗の使用自粛を実質的に要請したことに海自が反発、参加を取りやめたからでした。背景には、旭日旗は日本軍国主義の象徴であり「戦犯旗」だとの認識がすでに確立していたことがありました』、こうしたことは、第一義的には外務省の韓国担当部署やジャーナリストの責任の筈だ。
・『日本のプレゼンスは韓国で低くなった  この認識が韓国で急速に影響力を持ったのは、人々が歴史の具体的な事実に関心を失い、植民地支配=悪であり違法、とする単純な理解に頼るようになったからです。この植民地支配=悪であり違法、とする考え方は、大韓民国建国上の「建前」でもあり、韓国では誰も抵抗できない。だから例えばインターネットで、他人を批判する際にはものすごく便利だったりします。そして、これに対して大統領など政府要人らもわざわざ火消しに動こうとしない。 かつて、日本との関係が強い時代には国内の対日反発は要人らが必ず抑えようとしました。しかしこの20年間、韓国での日本の政治的・経済的プレゼンスが低下し、相対的に重要性が低くなりました。ゆえに、無理に火消しに走ろうというインセンティブが要人らに生じない。となれば、旭日旗問題のような「建前」に関わる問題が今後も簡単に起こるようになります。 Q:文政権は日本に関心がないとの指摘もよく聞きます。 A:重要性が低いので関心も低くなる。日韓関係での「イデオロギーガバナンス」、国家としての建前に関わるナショナリズムを統制するシステムが利かなくなっています。建前を抑え、関係改善のために「火中の栗を拾う」エリート層がいなくなれば、現場での日本への対応に配慮がなくなります。レーダー照射のような緊張感のない事態が発生しやすくなるでしょう』、日本にとって「日韓関係」はやはり重要なので、日本側から能動的に如何に働きかけてゆくか、真剣に戦略を練り直すべきだろう。

第三に、10月5日付けJBPressが掲載した在米ジャーナリストの高濱 賛氏による「日韓歴史問題解決の切り札は在韓米軍撤退 米有力シンクタンク、国務省見解を代弁する提言」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62365
・『文大統領にとり最高裁判断は「盾と矛」  菅義偉首相は9月29日、韓国の文在寅大統領と首相就任後初めて電話会談した。韓国側の申し入れで行われた。 日韓の最大の懸案になっている元徴用工問題について首相が「このまま放置してはならない」と述べたのに対し、文大統領は従来通りの主張を繰り返した。 「両政府とすべての当事者が受け入れ可能で最適な解決策を共に模索することを望む」 そんな解決策はない。 しかもそうした解決策を自分から率先して模索するのではなく、誰か(つまり日本側が)が模索することを「望む」と、どこまでも第三者的スタンスに終始している。 日韓関係がここまで冷え込んでしまった「元凶」は、2018年、韓国の最高裁が元徴用工訴訟で新日鉄住金(現日本製鉄)に賠償を命じたことにある。 日本政府は、元徴用工問題は1965年の日韓請求権協定(これは国際法だ)で「完全かつ最終的に解決済み」と主張、一歩も引かない。 文在寅大統領は、この最高裁の司法判断を金科玉条のように尊重する姿勢を崩そうとしていない。 長年にわたり、日韓関係を定点観測してきた米シンクタンクの上級研究員N氏は、ずばり言い切っている。 「その背景には文在寅大統領を選び、支えてきた朝鮮民族第一主義(コリアン・ナショナリズム)があり、それに逆らえば政権が吹っ飛んでしまうからだろう」 「最高裁の判断は、韓国では国際法よりも重要であり、バイブルよりも権威ある存在になってしまっている」 「文大統領にとっては司法判断は自分を守ってくれる盾であり、矛になってしまった」) (韓国から見れば)強硬派の安倍晋三氏が首相の座を降り、「実用主義者」の菅首相が登場したことで「日本側の出方も変化しうる」(李元徳・国民大学教授)と楽観視する向きもあるようだ。 しかし、冒頭の電話会談のやり取りをみる限り、こうした見方は的外れだった。菅政権でも膠着状態は続きそうだ。 しかも日韓関係改善には唯一の「仲介役」になり得るドナルド・トランプ米大統領がついに新型コロナウイルスに感染し、米政治は暗転してしまった。 1か月を切った大統領選がどうなるのか。誰も予測すらできなくなってきた。 米国にとって日韓関係などはレーダーサイトから消えてしまいそうだ。 そうした中、マイク・ポンペオ国務長官が10月4日から6日まで訪日する。対中包囲網構築に向けた日本、オーストラリア、インドとの4か国外相会合に出席するのが主目的だが、菅首相とも就任後初会談する。 当初は韓国、モンゴルも歴訪する予定だったが、トランプ大統領の容体が予断を許さないためキャンセルされた。 新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大してから、日本を訪問するのは初めて。 実務外遊というよりも「国家の危機」に際しても、米国が太平洋地域の盟主であることを中ロに見せつけるシンボリックな歴訪と言えそうだ。 むろん北朝鮮に睨みを利かせる狙いもある。 菅首相との会談では、元徴用工問題がアジェンダとして取り上げられるのは必至だ。 トランプ大統領夫妻の感染が公表されて以降、大統領に同行したり、濃厚接触していた側近や政治家が次々陽性反応を示している。 最側近のポンペオ国務長官は一応陰性反応が出たようだが、まだ予断は許さない。 ▽新進気鋭の女性国際政治学者の予見(コロナウイルス感染が拡大する中で、日韓関係に関する注目すべきメモランダムが公になっている。 (https://www.nbr.org/publication/the-next-steps-for-u-s-rok-japan-trilateralism/) 東アジア専門に調査研究する米有力研究機関、「ナショナル・ビュロー・オブ・アジアン・リサーチ」(NBR)が公表した安倍首相退陣後の日韓関係を予測したメモランダムだ。 その予測とは一言で言うとこうだ。 「対韓強硬派の安倍首相が辞任しても日韓関係は好転はしない」「米国の長期的な軍事コミットメントに対する日韓両国の疑念が強まらない限り、歴史認識をめぐる双方の溝を埋めることはできないだろう」 このメモランダムは、東アジア問題研究で脚光を浴びているダートマス大学のジェニファー・リンド准教授とのインタビューを編集者がまとめたもの。 同准教授は、カリフォルリア大学バークレー校、同サンディエゴ校を経て、MIT(マサチューセッツ工科大学)で博士号を取得。 現在ハーバード大学ライシャワー日本研究所、英チャタムハウスにも特別研究員として籍を置く一方、米国防長官室、国防総省系シンクタンク「ランド研究所」のコンサルタントも兼務している。) 近年、早稲田大学やロンドン大学東洋アフリカ・スクール(SOAS)にも客員研究員として留学、東アジア情勢に関する最新情報を入手している。 高度のアカデミック研究に現実外交の実態分析を加味した同准教授の論文は、外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」、「ナショナル・インタレスト」にしばしば掲載され、外交専門家、特に米政府の外交政策立案者の間では高い評価を受けている。 2008年には戦争の記憶がその後の当事国同士の和解に与えるインパクトを分析した『Sorry States:Apologies in the International Politics』を上梓している。 (https://www.amazon.com/Sorry-States-Apologies-International-Politics/dp/0801476283)』、「米国の長期的な軍事コミットメントに対する日韓両国の疑念が強まらない限り、歴史認識をめぐる双方の溝を埋めることはできないだろう」、との「リンド准教授」の見解は興味深い。
・『反日は韓国人のアイデンティティ  今回取り上げたメモランダムで同准教授が指摘したのは以下の点だ。 一、韓国のアンチ・ジャパニズム(反日主義)は、韓国のナショナリズムの重要な要素で日本に対する怒りと屈辱は韓国人のアイデンティティの根幹になっている。 二、日本サイドのリベラル派は歴史認識問題については柔軟性を見せているが、保守派には根強い愛国主義が定着している。従って日本政府が韓国の主張に歩み寄る空気は希薄だ。 三、(米国内の)一部専門家は歴史認識問題を解決したうえで日韓は安保、経済的協力関係を改善するべきだと指摘している。だが私はこうした指摘には同意できない。 四、日韓関係改善に米国が仲介役を果たすべきだという指摘がある。だが米国が仲介するのは困難だ。関係改善するには日韓両国の官民各層が本気で取り組む以外にない。 五、現実的な予測をすれば、日韓関係の現状を打破するには、米国が在韓米軍撤収などで長期的な軍事コミットメントを変更させる以外にないかもしれない。 六、日韓両政府が米国の両国に対する軍事コミットメントを反故にするという疑念を深めた時、共通の脅威に対応するには歴史認識問題をめぐる対立を脇に置いて協力せねばならないという判断をせざるを得なくなるだろう。 リンド准教授の見解はワシントンではどう受け止められているか。 日韓とここ30年付き合ってきた米国務省関係者B氏は筆者にこうコメントしている。 「正直言って、リンド准教授の分析は妥当だ。私も同意する」「国務省はじめ外交国防政策に携わっているエリート官僚のコンセンサスを代弁している。同准教授の東アジア情勢分析は政府部内でも高い評価を受けている」』、「米国が仲介するのは困難」、なのは確かなようだ。やはり、「六、日韓両政府が米国の両国に対する軍事コミットメントを反故にするという疑念を深めた時、共通の脅威に対応するには歴史認識問題をめぐる対立を脇に置いて協力せねばならないという判断をせざるを得なくなるだろう」、が現実的なのだろう。
タグ:日韓関係 東洋経済オンライン JBPRESS デイリー新潮 ジョンソン首相 前川 一郎 (その12)(日韓が「歴史問題」でわかり合えない根本理由 議論すべきは「歴史の実証」か「歴史認識」か、韓国の大統領・首相からの書簡を「菅義偉首相」が“スルー”した理由、日韓歴史問題解決の切り札は在韓米軍撤退 米有力シンクタンク 国務省見解を代弁する提言) 4人の気鋭の研究者による座談会 「日韓が「歴史問題」でわかり合えない根本理由 議論すべきは「歴史の実証」か「歴史認識」か」 歴史修正主義が台頭した背景 歴史修正主義には、日本人の誇りに関心があるから史実はあまり重視しないという特徴があります。それが社会に一定の影響力を持っているのは、社会に対する不安や不満を持つ人々の心情と親和性があるからだとも考えられます 植民地主義の歴史を持つ国々では、それを否定すると現体制の正当性まで問われることになりかねないため、国として「歴史認識」を考え直そうということにはなかなかならないわけですが、もしかしたらそうした国の姿勢に対する距離感で左右が分かれるかもしれません イギリスの論壇の基本は中道 NHSを再評価 左派が権威、右が挑戦者という嘘の構図 左派が権威、右が挑戦者という嘘の構図」、よくぞこんな見えすいた「嘘」が通用するものだ。「歴史修正主義の蔓延を無視していると、最終的に、アカデミズムにも悪い影響を与えてしまいます 日韓歴史共同研究が挫折する理由 日本の歴史学は、物語というか、歴史を概観する大きな見取り図を描けなくなって、日本の歴史はこうだったと、積極的に市民や社会に示すものがなくなってしまったために、どんどん内向きになって、実証主義の職人として学会でアピールするしかなくなっているという問題がある なぜ「新しい物語」が必要なのか 現代社会の真の対立軸 歴史問題13 「韓国の大統領・首相からの書簡を「菅義偉首相」が“スルー”した理由」 木村幹教授 「河野談話」もすでに歴史 戦後75年といいますが、その時間幅は奈良時代(710〜94年)とほぼ変わらず、明治維新(1867年)から太平洋戦争終結(1945年)までに匹敵する「一時代」なのです 河野談話で何が語られたのかは知られていません」、「それぞれの時代でどのように、どういった状況で語られ、あるいは認識されていたのか。そういった歴史の変化を追い、それを残せるか ジャーナリストにも責任 80年代の変化に日本は気がつかなかった 日本にとって「日韓関係」はやはり重要なので、日本側から能動的に如何に働きかけてゆくか、真剣に戦略を練り直すべきだろう 「日韓歴史問題解決の切り札は在韓米軍撤退 米有力シンクタンク、国務省見解を代弁する提言」 文大統領にとり最高裁判断は「盾と矛」 米国の長期的な軍事コミットメントに対する日韓両国の疑念が強まらない限り、歴史認識をめぐる双方の溝を埋めることはできないだろう 反日は韓国人のアイデンティティ 米国が仲介するのは困難 日韓両政府が米国の両国に対する軍事コミットメントを反故にするという疑念を深めた時、共通の脅威に対応するには歴史認識問題をめぐる対立を脇に置いて協力せねばならないという判断をせざるを得なくなるだろう
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日本の外交政策(その8)(「最後は身動き取れなくなった」安倍政権の外交 「トップダウン」が裏目に〈AERA〉、菅外交が早々に迫られるいくつかの「重要な選択」、「外交初心者」の菅首相次第という日本外交の不透明 菅新政権の課題) [外交]

安倍外交については、8月27日に取上げた。今日は、タイトルを変更して、日本の外交政策(その8)(「最後は身動き取れなくなった」安倍政権の外交 「トップダウン」が裏目に〈AERA〉、菅外交が早々に迫られるいくつかの「重要な選択」、「外交初心者」の菅首相次第という日本外交の不透明 菅新政権の課題)である。なお、番号は旧来のものと連続させた。

先ずは、9月9日付けAERAdot「「最後は身動き取れなくなった」安倍政権の外交 「トップダウン」が裏目に〈AERA〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/aera/2020090800017.html?page=1
・『思わぬ形で終わりを迎えることとなった安倍政権。韓国・北朝鮮関係では当初、「トップダウン外交」を武器に大胆な対応をみせたが、結果は振るわなかった。AERA 2020年9月14日号では、朝日新聞編集委員の牧野愛博さんがその外交手腕を振り返った。 「外交の安倍」を自任した安倍晋三首相の得意技は「トップダウン外交」だった。首相官邸が戦略を決め、首脳外交で合意を演出する。大胆な外交が可能になる半面、しばしば世論に流される結果を招く。韓国や北朝鮮との関係でも、当初は成果を出したが、最後は身動きが取れなくなった。 安倍首相は当初、日韓関係の改善に積極的だった。慰安婦問題の解決にこだわった朴槿恵(パククネ)政権に対し、2015年12月に日韓慰安婦合意を実現させた。合意当日、首相官邸前に右翼の街宣車が押しかけて抗議するなど、本来の支持層の反発を浴びてまでの決断だった。 安倍首相の決断の決め手は「世論」だった。当時、首相周辺は「慰安婦合意を実現すれば、右派に加えて中道左派までの支持を得られ、歴史に名を残す指導者になれます」と言いながら、安倍首相に決断を促したという』、「トップダウン外交」は世界の潮流でもあるようだ。「日韓慰安婦合意」は右派の「安倍首相」にとっては、確かに思い切った決断だったようだ。
・『慰安婦合意がやり玉に  だが、この思い切った外交は、17年5月に登場した文在寅(ムンジェイン)政権によって破壊される。文大統領は日本に強い関心があるわけではないが、韓国内の政治闘争の延長で朴槿恵前政権の政策を全面否定することに奔走した。そのやり玉に挙がったのが、日韓慰安婦合意だった。 文政権は18年11月、合意に基づく日本政府の拠出金でつくられた財団の解散を発表し、合意は崩壊した。 加えて18年10月、韓国大法院(最高裁)が日本企業に対し、元徴用工らへの損害賠償を命じた判決が、安倍首相の日韓関係改善への熱意を完全に消し去った。首相は判決前から、繰り返し、文大統領との首脳会談で、「賠償を命じる判決が出れば、関係の決定的な悪化を招く」と警告し、文氏も「重大な問題だと理解している」と語っていた。 安倍首相は当初、文氏に好感を抱いていたが、判決後には周囲に「文氏は言う事とやる事が全く違う」と漏らすなど、不信感を強めた。トップがやる気を失ったため、日韓外交は動かなくなった。 文政権の度重なる日本に配慮しない政策で、韓国に対する日本世論が極度に悪化したことも影響した。 同じ現象は、北朝鮮との関係でも見られた。 日本人拉致問題の解決を最重要課題に据えた安倍首相は、北朝鮮に接近し、14年に、北朝鮮が日本人拉致被害者らの再調査を行うなどとしたストックホルム合意を実現した。 ただ、北朝鮮に対する厳しい世論を意識した首相官邸は、北朝鮮が不十分な中間報告を提出することを警戒し、再調査は停滞。結局、日本政府は16年2月、再び独自制裁を決定。北朝鮮は再調査の中止と、拉致問題に関する特別調査委員会の解体を発表するに至った。 安倍首相は、18年に実現した南北や米朝の各首脳会談を受け、得意の「トップダウン外交」を目指したが、不信感を持った北朝鮮側が応じることはなかった。 次期首相が有力とされる菅義偉官房長官は、安倍政権の政策継承を唱える。自民党のベテラン議員の一人は「外交は恋愛とは違う。朝鮮半島に厳しい世論をみて、有権者の支持を得たいという誘惑に駆られる限り、次期政権でも朝鮮半島外交は何も変わらないだろう」と語った』、「次期政権でも朝鮮半島外交は何も変わらないだろう」、というの残念だ。「世論」に迎合的になりすぎるのも問題なのではなかろうか。

次に、9月16日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元外務審議官で日本総合研究所国際戦略研究所理事長の田中 均氏による「菅外交が早々に迫られるいくつかの「重要な選択」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/248724
・『菅新政権が16日、発足するが、向き合っていかなければならない外交課題も数多い。 コロナ危機により国際構造の変化は加速され、また、11月の米国大統領選挙ではトランプ大統領の再選可能性が低くなってきている。 単純に「安倍外交を継承する」では済まされない重要な選択を、早々に迫られることになる。 日本の国益を守るには大局観に基づく判断と精緻な戦略が必要だ』、興味深そうだ。
・『対米アプローチは見直し必要 「是々非々」でものを言う関係に  安倍外交に対する高い評価の一つはトランプ政権と盤石の関係を築いたことだ。 もちろん、そのためにトランプ大統領を喜ばせる行動に出たことも事実だろう。 ステルス戦闘機F-35の大量購入や、断念することにはなったが新型迎撃ミサイルシステム・イージス・アショアの配備などの膨大な武器の購入、米国がTPPから撤退した後、迅速に日米で貿易合意を締結したことなどについて、米国は安倍首相の努力と配慮を高く評価した。 しかしトランプ政権の対外政策の多くが日本の利益に合致していたわけではない。 TPPだけではなく、気候変動に関するパリ合意やイラン核合意など多国間協力からの撤退や「アメリカ・ファースト」を掲げる一方的行動は決して日本を利するものではない。 現在の情勢から見れば11月の大統領選挙でトランプ大統領が再選される可能性は低い。 コロナ対応に対する国民の一般的評価は低く、経済の急速な回復も望めない。人種差別反対より治安維持に重点を置いたような言動も批判を受けている。 2016年選挙でトランプ氏が勝利した要因の一つは、既成の政治とは縁のない未知の人物に対する期待票だったが、今回の選挙では知り尽くされた人物に対する批判票に直面することになる。 米国内では、コロナ禍での郵便投票の拡大で開票が混乱する恐れのほか、トランプ大統領は郵便投票には不正が伴うとして選挙結果を容易には認めないのではないかとの懸念も強い。 米国が大統領選挙結果を巡り混乱に陥ることは不可避かもしれない』、「大統領選挙結果を巡り混乱に陥ることは不可避かもしれない」、困ったことだ。
・『米国中心の求心力は低下 米国の政策を修正する努力を  トランプ大統領が再選されれば、これまでの日米蜜月的な雰囲気は継続されるだろうが、米国はさらに国際協調主義から遠のいていくだろうし、それは日本にとっても好ましいことではない。 バイデン大統領が選出されれば、伝統的に民主党政権は共和党政権ほど同盟国を重視することはないが、トランプ氏とは異なり、国際協力の道に立ち返るということになるのだろうか。 トランプ氏であれバイデン氏であれ、コロナ後の世界は米国を中心とした西側世界の求心力が低下していく難しい世界となる。 日本の米国への向き合い方も、対米配慮一辺倒というわけにはいかず、コロナ後の新たな情勢の展開に合わせて見直していく必要がある。 その基本は、日米同盟の中で安全保障面を含め日本の役割を増やしつつ、是々非々で米国にものを言い、米国の政策を修正する努力をするといったアプローチになるのではないか。 中でも対中関係が最も重要だ』、「日米同盟の中で安全保障面を含め日本の役割を増やしつつ、是々非々で米国にものを言い、米国の政策を修正する努力をするといったアプローチ」、なかなか難しそうだ。
・『米中対立には精緻な戦略で 守るべき「3つの基本的国益」  中国が新型コロナウイルスの最初の発生地でありながら感染防止にほぼ成功したと伝えられ、ほとんどの国で2020年は10%を超えるようなGDP(国内総生産)の落ち込みがある中で、唯一プラス成長を実現する可能性が高い。 急速に縮まってきた米中の国力の差は一層、縮まることになり、米中間の対立はさらに激化する。 米国の強硬な態度はトランプ再選戦略のための外交だと見る人も多いが、米中の対立は異なる体制間の覇権争いともいうべき構造的問題であり、対立は長く続く。 このまま推移すると、おそらく習近平国家主席が「中国の夢」として世界で突出する強国の実現を目標とする2049年(中華人民共和国創設100周年)に向けて、厳しい米中対峙は続くことになる。 バイデン民主党政権になればトランプ政権がとってきたハイテク分野での中国排除や中国との各種交流に対する制限をいったんは見直しするのだろうが、香港やウイグルでの人権問題に対する意識は高く、総じて対中姿勢が大きく変わることにはならないだろう。 日本にとっての守るべき基本的国益は次の三つだろう。 (1)自由民主主義体制を守るために、米国との同盟関係を通じ中国の覇権的行動を抑止する。 (2)貿易・投資・人の交流など中国との深い経済相互依存関係、並びに中国と密接な経済依存関係があるアジア諸国との経済相互依存体制は日本の繁栄のために失うことができない。 (3)この地域での米中軍事的衝突は日本に波及することは必至であり避けなければならない。軍事衝突の蓋然性が最も高いのは台湾を巡る問題だろう。 これら三つの基本的な国益が相互に矛盾しないよう緻密な戦略がなければならない。 まず必要なことは日本が米、中両国との間断なき戦略対話を行うことだ。 中国は米国との厳しい対立の継続を予想し日本との関係改善を望んでおり、例えば、香港問題では日本が静かに問題提起をし、中国の行動を変えさせていく余地はある。 第二に米中に共通の戦略的利益を見出すことだ。 米ソ冷戦時代に西側諸国と中国との関係が比較的、良好だったのはなぜか。 中国はソ連と国境紛争などを巡り関係が悪化しており、対ソ包囲網を作るうえで中国の存在は西側を利した。 だが現在では米中間には香港、台湾、南シナ海を含め共通の戦略的利益が存在しないことが対立激化の一つの理由だ。 その中で「北朝鮮非核化」は米中だけでなく日・韓・ロの共通利益であり、北朝鮮非核化問題を前進させることが米中対立を緩和させることにもなる』、「北朝鮮非核化」は中国、ロシアにとっては、米国などと「共通利益」と
するが、果たしてそうだろうか。両国が「北朝鮮」をコントロールできるのであれば、自陣営の対西側への対抗力は保持したい筈なのではなかろうか。
・『戦略的なパートナーシップづくりで「中国を変える」ことをめざす  第三に、パートナーシップづくりだ。 日本はASEAN諸国、豪、印、EU諸国などとの戦略的パートナーシップを強化すべきとともに、東アジアサミットやASEANプラス3などの中国を巻き込んだ地域協力を活性化するべきだろう。 もっともトランプ再選となれば米国は東アジアでの地域協力にも消極的な姿勢をとると思われる。 このように日本の戦略はやはり「中国を変える」ことを主目的にすることだ。 中国の成長率は、経済の成熟化や高齢化で今後、低下していかざるを得ず、国際社会との相互依存関係が希薄となっていけば、ますます低下していくことは自明だ。 そこに中国を変えていく鍵があるような気がする。 そのことを考えても、関係国との間断なき協議とパートナーシップづくりを続けることが重要だ』、天安門事件以降、「日本」は「中国を変える」ために、欧米よりソフトに接してきたが、反日教育の開始などで見事に裏切られてきた。同じ過ちを繰り返すのは愚の骨頂だ。少なくとも「中国を変える」などと思い上がった政策は採るべきではない。
・『拉致問題は包括的アプローチで 北朝鮮非核化と「一括解決」  安倍首相が辞任会見で、解決できず「痛恨の極み」と述べた北朝鮮拉致問題や、「断腸の思い」と語ったロシアとの平和条約については改めて考え方を整理する必要がある。 拉致問題については、安倍首相が初期の段階から強い想いを持ち続けた政治家の一人だし、政権のプライオリティとして取り組んできたのは間違いがない。 しかし北朝鮮は諸外国との懸案を自国の生存と関連付けて考えており、日本が拉致問題を核やミサイルという他の重要問題と切り離して解決しようとしても難しい。 一方で北朝鮮が望む経済協力や国交正常化も核やミサイル問題の解決なくしては実現できない。 従って拉致問題に必要なのは「包括的アプローチ」であり、北朝鮮の非核化の過程の中で一括解決するというアプローチをとらざるを得ない。 北朝鮮と恒常的な対話を行い包括的解決の糸口を見つけていかねばならないし、核問題解決のため日本は行動すべきだ。 また北朝鮮との問題を解決していくうえでも、韓国との関係は菅新政権のもとで「新たな出発」をしてもらいたいと思う。 韓国内の革新と保守の分断の激しさや「歴史を巡る反日」が文在寅大統領ほかの革新派の原点的な意味合いを持つが故に、徴用工や慰安婦問題の解決を困難にしている。 また文在寅政権は対北朝鮮融和に走り、日米韓の協力に熱心でない、あるいは中国との連携に走るという傾向がないわけではない。 しかしながら朝鮮半島の安定は日本の死活的利益であり、そのためには韓国との協力を捨象できるものではない』、「拉致問題は包括的アプローチで」、従来の姿勢を継続しろとのことだが、余りに硬直的過ぎて、これでは一歩も進まない。問題を分解して、妥協点を見出していく通常の「アプローチ」に変えることを検討すべきだ。
・『ロシアとは距離をとる必要 領土問題では進展見込めず  ロシアについては少し距離をとるアプローチが必要だ。 ここ数年、日ロの緊密な首脳同士の関係とは裏腹に領土問題についてのロシアの態度は硬化していく一方であり、ロシア側から前向きの姿勢が示されない限り、従来同様のアプローチを続けていくことは再考すべきと思う。 ロシアと欧米についてはサイバーによる選挙介入、ウクライナやベラルーシ問題、プーチン大統領政敵の暗殺を意図したといわれる事件などを通じ、関係は悪化する一方であり、国際社会における立場からいってもロシアにあまり寛容な態度をとるべきではない。 菅新政権はコロナ感染防止と経済回復、中長期的な経済財政構造、そして東京オリンピック・パラリンピック開催問題など山積する多様な国内課題に取り組まなければならないが、対外関係についてもコロナ後の新しい政治経済構造の中で幾つかの重要な選択を行わなければならない。 大局観をもって取り組んでもらいたいと思う』、同感である。

第三に、10月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した朝日新聞編集委員の牧野愛博氏による「「外交初心者」の菅首相次第という日本外交の不透明 菅新政権の課題」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/250435
・『菅義偉政権が発足、7年8カ月ぶりの首相交代で、注目が集まっているのが日本外交の行方だ。 「トップダウン外交」を売り物にした安倍政権下では、外務省の影響力は薄れ、結果的に中国やロシアとの外交が迷走する結果になった。 9月21日の米・トランプ大統領との電話会談を皮切りに、中国・習近平国家主席、韓国・文在寅大統領と電話協議などが相次いで行われたが、首相自身の外交ビジョンも含め、米中「新冷戦」や戦後最悪の日韓関係などの状況で菅政権の外交はどうなっていくのか、見えないところが多い』、興味深そうだ。
・『「安倍外交」の残滓が色濃く対中関係は二階氏が影響力?  菅氏は官房長官時代、外交そのものに強い関心を示したことはほとんどなかった。 典型がロシア外交で、安倍政権が北方領土問題の解決に向けてさまざま政策を打ち出しても、菅氏が口を出すことはなかった。 ただ、国内政治との関係から外交政策に意見することがしばしばあったという。 例えば日中関係では、菅氏は安倍政権が進めた日中関係改善の流れをおおむね支持していたという。 政府関係者の1人は「おそらく、企業と二階さんが原因だろう」と語る。 官房長官を務めていた菅氏の元には、多数の日本企業から「日中関係が冷え込んで商売にならない」という陳情が多数届いていたという。一方、二階俊博自民党幹事長は、自他共に認める「親中派」だ。 二階氏は17日、石破派のパーティーで「中国とは長い冬の時代もあったが、今や誰が考えても春」と語り、日本政府が保留している習近平中国国家主席の訪日への期待感を示した』、「二階氏」はやはり「習近平中国国家主席の訪日」を実現させたいようだ。
・『訪中で託した親書 「官邸官僚」が書き換え  もともと、日中接近の道筋は、安倍政権の「トップダウン外交」が描いた作品だった。 2017年5月、安倍首相が、訪中する二階幹事長に習近平主席宛ての親書を託した。外務省は親書を作成するにあたり、中国が推進する「一帯一路」構想について、「自由と民主主義に貢献する一帯一路を支持する」といった「厳格な条件付き賛成」論を展開した。 谷内正太郎国家安全保障局長の決裁を受けたうえで、首相官邸に提出したが、二階氏に親書を託す直前になって、今井尚哉首相秘書官が「総理の思いを十分伝えていない」と、「条件」の部分を大幅に削減してしまった。 外務省が再び案を練る時間もなく、怒った谷内氏と今井氏が激しく論争する場面もあったという。 こうした、官邸官僚の「忖度政治」は、7年8カ月の首相在任中に秘書官をほとんど代えなかった安倍前首相の政治手法の副産物だった。 霞が関の各省庁幹部が安倍氏にブリーフィングを行う場合、今井氏やその政策を担当する首相秘書官らが、横から「それは総理の考えではない」などと口を差し挟み、最後は安倍氏も苦笑するという光景が日常的に繰り返されていたという。 菅氏の場合、官房長官の時は、官邸官僚が忖度をし横からあれこれ口を出したという話はほとんど聞かない。 ただ、菅氏は内閣人事局を通じた各省庁の幹部人事をもとに、霞が関を巧みにコントロールしてきた。総務相時代も、自らが進めていたふるさと納税制度に異論を唱えた局長を外すなどのこわもてぶりは官僚の間で伝わっている。 安倍政権の場合は、官邸官僚が強制的に首相の応答要領や国会答弁などを書き換えることもしていたが、菅政権になると、霞が関の官僚が菅首相の考えを自ら忖度しようとするかもしれない』、「外務省は親書を作成するにあたり、中国が推進する「一帯一路」構想について・・・「厳格な条件付き賛成」論を展開した。 谷内正太郎国家安全保障局長の決裁を受けたうえで、首相官邸に提出したが、二階氏に親書を託す直前になって、今井尚哉首相秘書官が「総理の思いを十分伝えていない」と、「条件」の部分を大幅に削減」、「今井尚哉首相秘書官」は凄い権勢を振るっていたようだ。
・『米中対立のはざまでバランス外交を踏襲か  それに中国に関する外交では、菅氏の政治的な志向は外務省と相通じる点もある。 中国を巡る国際情勢は今、トランプ米政権が11月の大統領選を前に、過激な対中政策を展開している。 従来、日本や欧州諸国など自由主義陣営は「南シナ海などで力による現状変更を迫る中国に反対する」という姿勢で結束してきた。 日本が唱える「自由で開かれたインド太平洋構想」はその象徴だ。だが同時に、経済分野で中国を完全に排除することは、日本も欧州の企業も望んでいない。 このため、外交当局が反対するのは「中国による現状変更」であり、中国共産党の支配や、中国が唱える「一つの中国」政策には異を唱えていない。 ところが、米国の場合、ポンペオ国務長官が7月にカリフォルニアで行った演説で「自由世界が共産主義の中国を変えなければ、中国が私たちを変えるだろう」と語るなど、中国共産党支配を許さないという姿勢を強めている。 9月には米国務省のクラック次官が台湾を訪問し、蔡英文総統と会談した。中国は激しく反発し、台湾海峡で軍事演習を行うなど、対立はエスカレートし続けている。 こうしてみると、米国の過激な政策をなだめ、日本や欧州などが唱える「穏健な中国との対立路線」に引き戻したい外務省の思惑は、もともと、米中の間でうまく立ち回りたい菅首相の考えと一致するところも多いようにみえる。 10月6日には来日したポンぺオ米国務長官が菅首相を表敬、夕方からは日米豪印四カ国による安全保障対話(QUAD)が行われた。こうした外交舞台を皮切りに、菅政権は米中対立のはざまでうまく立ち回る政策を追求していくことになりそうだ。 ただ、近年の日本外交は安全保障政策に大きく左右されるようになった。 日本周辺の安全保障が安定していた時代は、外務省が日本の国際貢献の一つとして、自衛隊の海外派遣を提案し、主導していた。 ところが、第2次安倍政権の時代、中国が大きく台頭し、尖閣諸島を含む東シナ海や台湾海峡、南シナ海などでの軍事的影響力を強めている。 日本も、中国との外交摩擦は覚悟のうえで、2017年から護衛艦を南シナ海に長期派遣するなど、安全保障を優先的に考えざるを得ない状況になっている。 菅政権も、日本の安全保障を守るため、米国により比重を置いた政策を展開せざるを得ないだろう』、その通りなのだろう。
・『対韓関係は厳しい展開に もともとは融和路線だった  一方、厳しい展開が予想されるのが日韓関係だ。 菅氏は当初、韓国に融和的な姿勢を見せており、2015年12月の日韓慰安婦合意についても、安倍首相の政治決断を促す役割を担っていた。 政府関係者によれば、これは当時の李丙琪駐日韓国大使やその後任の柳興洙大使との親交が大きく影響していた。菅氏は李氏や柳氏としばしば食事を共にし、意見を交換していた。 李丙琪氏は駐日大使時代、菅氏に「慰安婦問題を解決しないと日韓関係が改善できない。日韓局長協議をやりたい」と提案し、菅氏も喜んで応じた。 ただ、局長級協議では、安倍首相と朴槿恵大統領の顔色をうかがって原則論を展開する場面が続き、進展が見られなかった。 李氏は国家情報院長に就任した後の2014年秋、韓国の国家安全保障会議(NSC)で「局長級協議では限界がある。高位級に格上げすべきだ」と提案した。 朴大統領はこの提案を受け入れ、菅官房長官と親交があり、国家情報院長のカウンターパートである谷内正太郎国家安全保障局長とも親しい李氏を対日交渉の責任者に指名した。 当時は日韓双方に信頼関係があったため、「日本の法的責任」という言葉を単なる「責任」と置き換えた。 逆に、日本側が元慰安婦1人あたりの事業費を積み上げた総額は10億円に届かない額だったが、李氏が「自分がポケットマネーを出してもいいから、世論に訴えやすい10円にしてほしい’(注:「億」が抜けている)」と訴えたことで、10億円になったという。 こうした外交当局のやり取りを、菅氏は側面から支えていたという』、なるほど。
・『「李・元駐日大使逮捕」で冷淡に 文政権との関係好転の兆し見えず  菅氏の韓国に対する姿勢が変わったのは、2017年11月。韓国のソウル中央地方検察庁が李丙琪氏を、李氏の院長時代に国家情報院が大統領府に秘密資金を提供した疑いで緊急逮捕した事件がきっかけだった。 この時から菅氏の韓国に対する姿勢は明らかに冷淡になった。 外務省が日韓関係に関するブリーフィングをするときも、「韓国案件は聞きたくない」と言い放ったこともあった。 政府関係者の1人は「あれだけ日韓関係に心を砕いた李丙琪氏を逮捕して、刑務所に送った文在寅政権を許せなかったようだ」と語る。 菅氏は、文在寅政権下で2人目の駐日大使となる、南官杓大使とは2019年5月の着任以来、1度しか会食していない。唯一の会食の際も、2人はぎこちない態度に終始し、和気あいあいだった李丙琪氏や柳興洙氏との関係に比べて極めて冷ややかな空気が漂っていたという。 菅氏は自民党総裁選中に日韓関係についての考えを問われ、「1965年に締結された日韓請求権協定が日韓関係の基本だ」と語り、日本企業に元徴用工らへの損害賠償を命じた韓国大法院(最高裁)判決が、請求権協定を破壊することになるという安倍政権からの日本政府の主張を繰り返した。 24日に韓国側の求めで行われたという両首脳の電話協議でも、菅首相は協議後、「このまま放置してならない旨を伝えた」と語っただけだ。 外務省はこの会談結果について「韓国側において日韓関係を健全な関係に戻すきっかけを作ることを求めた」と説明し、「関係改善は韓国の対応次第」とする安倍政権の姿勢を引き継いだ。日韓関係が好転する兆しは見えない。 日本政府関係者の1人は「日本企業の韓国資産を現金化する動きが止まらない限り、菅首相の訪韓はないだろう」と話す。 韓国が議長国となって、年内の実現を目指す日中韓首脳会議の開催は難しいとの認識を示した』、「菅氏の韓国に対する姿勢は明らかに冷淡になった」契機が、「あれだけ日韓関係に心を砕いた李丙琪氏を逮捕して、刑務所に送った文在寅政権を許せなかったようだ」、案外、「菅氏」は情に厚いところがあるようだが、本来、外交には情は禁物な筈だ。
・『影を落とす外務省の凋落 政治にあわせ強硬論台頭  こうしたなか、永田町・霞が関で懸念する声が出ているのが、外務省の凋落だ。 外務省は「官邸トップダウン外交」を標榜した安倍政権下で、存在感を大幅に低下させてきた。 総合外交政策局は本来、日本政府の外交・安全保障政策のとりまとめ役だったが、今では2014年に内閣官房に設置された国家安全保障局の「ご用伺い機関」(政府関係者の1人)になってしまっている。 国家安全保障局が関係省庁から吸い上げた情報をまとめた後、各省庁に問題のない範囲で提供するため、関係省庁による情報共有は進んだが、外務省主導で政策を仕切る場面は格段に減った。 そして、トップダウン外交を掲げた安倍首相と官僚の統率に力を入れた菅官房長官が仕切った安倍政権時代、外務省内にはより政治家の顔色をうかがう風潮が強くなった。 外務省では過去、「我々の仕事は外国との友好関係を維持すること。外国を攻撃するのが仕事ではない」という意識が強かった。 冷戦時代は、この職業倫理の唯一の例外はソ連課だけだといわれた。当時を知る外務省OBは「ソ連課の連中だけは、ソ連をあからさまに嫌っていた。でも他の地域担当課はそんなことはなかった」と語る。 しかし、冷戦後、中国が新たに台頭するなかで政治家の間で「外務省のチャイナスクール(中国語研修を受けた官僚)は、日中友好に傾きすぎる」という声が強まり、チャイナスクール出身者以外を中国課長やアジア大洋州局長に起用するケースが相次いだ。 この傾向が最近は、韓国を担当する北東アジア1課にも及んでいるという。 北東アジア1課内には「文政権とは何を話しても意味がない」という意見がしばしば飛び交うという。 外務省内では定期的に、在外公館に出る幹部らに対して、韓国の市民団体が世界各地に建立している慰安婦を象徴する少女像の問題を含む歴史認識問題についてブリーフィングを行っているが、最近の研修では、韓国を一方的に糾弾する雰囲気が目立つという』、「外務」官僚には特定の国に肩入れすることなく、冷静で客観的な判断が求められる筈だ。
・『道を踏み外しても助言者のいない危うさ  こうした状況からも、菅政権外交の行方は一にも二にも、外交にはそれほど関心がないとされてきた菅首相その人の器量にかかっているといえそうだ。 もし、道を踏み外しても、それを忠告する勇気のある外交官はもはやほとんど残っていない』、「菅氏」がふるさと納税制度に異論を述べた総務省高官を更迭したように、異論を唱える官僚を切り捨て、忖度して言うことをきく官僚を重用するという狭い「器量」のやり方を続ける限り、「道を踏み外しても助言者のいない危うさ」が大いにつきまとうだろう。
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