SSブログ

ミャンマー(その5)(日本ミャンマー協会会長が国軍司令官と会談へ 混迷する情勢に両国間の対応協議か、「日本ミャンマー協会会長がクーデター軍リーダーと2回会談」 現地メディアが報道、5000億円を踏み倒したミャンマー国軍に「配慮」し続ける日本の政官財トライアングル 日本のODAが市民を苦しめている) [外交]

ミャンマーについては、4月30日に取上げた。今日は、(その5)(日本ミャンマー協会会長が国軍司令官と会談へ 混迷する情勢に両国間の対応協議か、「日本ミャンマー協会会長がクーデター軍リーダーと2回会談」 現地メディアが報道、5000億円を踏み倒したミャンマー国軍に「配慮」し続ける日本の政官財トライアングル 日本のODAが市民を苦しめている)である。

先ずは、5月14日付けNewsweek日本版が日刊ベリタを転載した「日本ミャンマー協会会長が国軍司令官と会談へ 混迷する情勢に両国間の対応協議か」を紹介しよう。ただし、出所を示す注記は省略
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/05/post-96281.php
・『<対ミャンマーODAビジネスの「黒幕」が昨夜、ヤンゴンに飛んだ。ミャンマー国軍の司令官と会う予定だという。出国直後にジャーナリストの北角氏が解放されたのも偶然ではない可能性がある> クーデターの首謀者であるミャンマー国軍のミンアウンフライン総司令官と親密な関係にある、央日本ミャンマー協会の渡邉秀会長が5月13日深夜、ミャンマーに向かった。独立系メディア「民主ビルマの声」(DVB)によると、渡邉氏は首都ネピドーで国軍司令官と会う予定という。「国軍司令官」が誰を指すかは不明だが、同氏はクーデター直前の1月19日にも総司令官と会談している。日本政府のいう「独自のパイプ」の一つと見られる渡邉氏は今回の会談で、混迷を深める同国情勢の中での日本との関係について協議するものとみられる。 目撃者によると、渡邉氏は同日午後11時、成田空港の全日空ヤンゴン直通便の出国カウンターで搭乗手続きをした。 渡邉会長とミャンマーとの関係については、ODA(政府開発援助)ビジネスの黒幕的存在、自衛隊と国軍の将官級交流プログラム、国軍トップとの合弁事業を本サイトでで取り上げてきた。クーデター後、同氏は沈黙を続けてきたが、4月に発行された日本ミャンマー協会の会員向け協会情報誌「MYANMAR FOCUS」第35号では、国営メディアが発表したクーデター後の3月30日のミンアウンフライン国軍司令官の演説内容をそのまま掲載している。今回の訪問は、クーデター後はじめてとなる。 今回の訪問目的は明らかにされていないが、最近の同協会周辺では、いくつかの奇妙な出来事が観測されている』、「渡邉会長」は日本側の有力な黒幕のようだ。
・『前兆はあった?  第一に、協会ホームぺージに載っていた役員や会員企業のリストが削除されたことである。これまで、同協会が政財界とのつながりを積極的にアピールしてきたことをふまえると、非常に不可解な行動であると言わざるを得ない。 第二に、渡邉会長が将官級交流などで協力関係が強い日本財団の笹川陽平会長が、13日のブログで「沈黙の外交」と題する一文を記していることである。笹川氏は昨年11月のミャンマー総選挙で、日本政府が派遣した総選挙監視団の団長として同国を訪問し、「選挙は非常に公正に行われ、国軍も結果を受け入れている」とインタビューに答えていた。ところがその選挙結果を不正として国軍がクーデターを起こしたため、同氏の対応が注目されたが、沈黙を守ってきた。このため、4月22日には在日ミャンマー人らが日本財団前で抗議デモを行っていた。 このブログで笹川氏は、「今回の事態が発生した2月1日以降も人命尊重に向け、懸命の説得工作を重ねた。にもかかわらず極めて残念な事態に発展したミャンマーの現状は、痛恨の極みであり、悶々とした日々を過ごしている」とだけしか記していない。 第三に、13日の渡邉氏の出国直後、ミャンマー国営テレビが、クーデターへの抗議デモなどを取材していて「虚偽のニュースを広めた」としてミャンマー当局に逮捕・起訴されていたフリージャーナリスト北角裕樹氏が解放されたという速報を流したことである。これまで日本の外務省とミャンマー当局の間で、水面下で北角氏の解放交渉が進められてきたが、このタイミングでの発表は、今回の渡邉氏のミャンマー訪問に対する国軍側のサインとしても読み取ることができる。国軍幹部らとの北角氏の解放の見返りとして、何らかの約束が取り交わされる可能性は否定できない。 国営テレビは解放の理由として、ミャンマーと日本との友好関係が考慮されたと伝えた。 北角氏解放の前日12日には、同じようにクーデターへの抗議デモを取材中に逮捕されたDVBの記者に禁固3年の実刑判決が言い渡されている。 一連の動きをふまえると、5月の連休明けに日本政府を含めたミャンマー関係者間で、ミャンマー情勢に関するシナリオが決定されたと見ても不思議ではないだろう。軍事クーデターに関する日本政府の対応は依然としてあいまいなままだが、日本とミャンマーの両国民が知らないところで、事態は明らかに次のフェーズに移行しようとしているとみられる。このため、内外のミャンマー人は今後の協会と渡邉会長の動向に注目している』、「日本ミャンマー協会」は一般社団法人とはいえ、両国の幅広い範囲の交流を図るという準公的な性格も持っていることから、「協会ホームぺージに載っていた役員や会員企業のリストが削除された」というのは余りに不自然だ。「笹川氏は昨年11月のミャンマー総選挙で、日本政府が派遣した総選挙監視団の団長として同国を訪問し、「選挙は非常に公正に行われ、国軍も結果を受け入れている」とインタビューに答えていた」、「笹川氏」の立場は極めて苦しいものとなったが、何故か聞き分けがいいようだ。「日本とミャンマーの両国民が知らないところで、事態は明らかに次のフェーズに移行しようとしているとみられる」、こうした不透明さは、国際的にも日本の恥だ。

次に、その続報である6月4日付け日刊ベリタ「「日本ミャンマー協会会長がクーデター軍リーダーと2回会談」 現地メディアが報道」を紹介しよう。
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=202106041105215
・『「日本ミャンマー協会会長がクーデター軍リーダーと2回会談」と、独立系メディア「ビルマ民主の声」(DVB)が5月29日報じた。会長の渡邉秀央氏は、ミンアウンフライン総司令官はじめ国軍との親密な関係で知られる。また息子で協会事務総長の渡邉祐介氏は、「日本は西側の体制変革政策に盲目的に同調するより、タッマドー(国軍)と米国その他の民主主義国の橋渡し役としての姿勢を示さなければならない」との見解を、The Diplomat誌に投稿した』、興味深そうだ。
・『モン州の経済特区予定地を視察か  渡邉会長は5月13日にミャンマーに向かい、DVBは首都ネピドーで国軍司令官と会う予定と報じた。「国軍司令官」が誰を指すかは不明だったが、今回の続報で国軍トップであることが判明した。同氏はクーデター直前の1月19日にも総司令官と会談している。
 DVBは周辺から得た情報として、渡邊氏はミャンマー滞在中の2週間に2度、ミンアウンフライン総司令官と会談したと伝えている。会談の内容は明らかにされていないが、「秀央氏はミャンマーでティラワ経済特区プロジェクトの実現を支援した一人であり、クーデターが起きる数週間前にミャンマーを訪問していた」と指摘、今回の訪問で「モン州内に計画されている経済特区予定地を数日以内に(視察に)行くと聞いている」という。 渡邉氏とミャンマーの関係については、以下のように紹介されている。 「民間団体である日本ミャンマー協会は、最高顧問に現在の副首相麻生太郎氏、日本政府の元官僚ら、そして日本の一流企業の執行役員らと結成された組織である。 日本政府の内閣一員であった元大臣秀央はミャンマー軍と長年の付き合いがあり、現在のクーデター軍リーダーと親子のような関係性をもっている。日本ミャンマー経済界においても名の知れ渡った人間でもある。 日本ミャンマー協会は1988年以降、ミャンマー軍人を日本の防衛大学で高度な軍教育を学ばせることをしてきた組織でもある」』、「渡邊氏はミャンマー滞在中の2週間に2度、ミンアウンフライン総司令官と会談」、ずいぶん親密なようだ。「クーデターが起きる数週間前にミャンマーを訪問」、「クーデター」についても事前に知らされていた可能性がある』、「渡辺秀央」氏は、ビルマ連邦社会主義共和国(現・ミャンマー)の軍事政権の首脳が1987に東京を訪れた際に、内閣官房副長官としてビルマの要人を迎えたときから渡辺と同国との縁が生まれる(Wikipedia)。筋金入りのミャンマー通のようだ。
・『「日本は西側諸国に与するな」と協会事務総長  DVBは、秀央氏のミャンマー訪問とおなじ時期に息子で協会事務総長の渡邉祐介氏がThe Diplomat誌の意見コーナーに寄せた文章も簡単に紹介した。 祐介氏の文章は「ミャンマーに関して日本は率先垂範しなければならない」と題され、欧米の対ミャンマー政策に与することなく、日本は国軍と米国などの民主主義国との橋渡し役を主張する。 氏は、「日本は数十年にわたる経済協力をテコに、いまやタッマドーと直接力を合わせて中国の地理経済的影響をくつがえすことができる」とし、さらにミャンマーへのロシアの影響力増加も警告する。また、「日本はミャンマー軍事政府を導いて、自由で開かれたインド・太平洋に貢献させる歴史的使命を達成しなければならず、たとえその行動が米国その他の民主主義的同盟国の行動と異なろうともたじろいではならない」とされる。 同誌特集ページに載ったこの記事は、ロイター通信も報じ、日本ミャンマー協会と渡邉会長のミャンマーとの関係についてくわしく説明されている。 日本ミャンマー協会は、渡邉祐介の父で政治家の渡邉秀央がミャンマーに日本の投資の波を呼び込むために支持者を結集した民間団体である。協会には元官僚や企業役員、日本の大企業が会員となっている。 元閣僚の渡邉秀央は長年、両国経済関係の東京の先鋒として、ミャンマーの巨大開発事業ティラワ経済特区を後押しし、ミンアウンフラインをふくむ国軍との緊密な関係を築き上げてきた。 ロイター電はクーデター後の日本政府の姿勢にも触れ、日本は主要な援助供与国としてミャンマーと長い結びつきがあるが、米英などの諸国と異なり、ミャンマー軍部にはっきりした制裁は科していないとしている。日本政府はミャンマーへの新規援助の交渉は停止したものの、現行の援助プロジェクトは停止していない。 ロイターは、ミャンマー国軍との急激な関係切断は中国の影響力のさらなる増強をまねく結果になるという、クーデター後の2月に日本政府高官がロイターに語った見解も紹介している』、「日本は西側諸国に与するな」と主張する割には、「ミャンマー軍部」の暴力的な圧制は酷くなる一方だ。
・『免許剥奪でも報道をつづける「ビルマ民主の声」  DVB(Democratic Voice of Burma)は非営利メディア団体で、軍事政権時代にノルウェーのオスロで登録し、活動の本拠地となっていたが、2011年以降の民主化の進展とともにミャンマー国内でも活動可能となった。今年2月1日の国軍クーデター後は、国民の民主化回復運動を積極的に伝えてきたが、軍(情報省)は3月8日付けでDVBの免許を剥奪、他の4メディアも免許剥奪された。現在、免許を剥奪されたメディア機関は8社に上り、80名以上の記者が不当に拘束・逮捕・訴訟されているが、各メディアは軍の監視の目をかいくぐり、拠点を移しながら報道をつづけている』、「ビルマ民主の声」には上手く立ち回ってほしいものだ。

第三に、6月2日付けPRESIDENT Onlineが掲載した東京外国語大学教授の篠田 英朗氏による「5000億円を踏み倒したミャンマー国軍に「配慮」し続ける日本の政官財トライアングル 日本のODAが市民を苦しめている」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/46504
・『ミャンマー国軍のクーデターを世界中が批判するなか、日本政府は正面からの批判を避け続けている。なぜなのか。東京外国語大学の篠田英朗教授は、ミャンマーの軍事政権に対するODA(政府開発援助)は日本が世界一多く、一度約5000億円の円借款債務を取り消したうえでさらに援助をしてきていると指摘。「過去はともかく、今後もなお、クーデターを起こして市民を虐殺している国軍の誠実を信じて資金を貸し付け続けるのは、不適切すぎる」という――』、事実上の債務免除までしたとは初めて知った。
・『情報封鎖のもとで続く市民への弾圧  ミャンマーの混乱は続いている。国軍が、インターネット回線の遮断を含めて市民の国外への情報発信を妨害しているため、以前ほどの情報は流れてこなくなった。それでもクーデターに反対する職場放棄などの不服従運動やデモはやんでいない。そして、国軍による拘留・拷問を含めた抑圧も続いている。 自由主義諸国による一連のミャンマー国軍非難の共同声明に対して、日本は参加を避け続けている。アメリカの同盟国で加わっていないのは、日本くらいだ。日本が参加したことがあるのは、各国の参謀長による共同声明くらいで、つまり防衛省管轄のときだ。つまり日本の外務省は、一貫して、ミャンマー国軍を非難する国際的な共同声明への参加を拒み続けているわけである』、なるほど。
・『自由主義諸国の協調に背を向ける外務省  なぜ日本の外務省は、唯一の同盟国・アメリカが「民主主義vs専制主義」の世界観で米中対立の時代を多国間主義で乗り切ろうとしている最中において、徹底して自由主義諸国の協調に背を向け、ミャンマー国軍に配慮し続けようとするのか。 「日本独自の外交を進める」といった抽象的な説明は、中身がなく、的を射ない。「国軍に忖度そんたくしないとミャンマーがいっそう中国寄りになる」といった話も流布させているが、自由主義諸国の共同声明に参加したくらいで消滅してしまうような影響力であれば、多少の忖度をしたからといって、中国に対抗できるはずがない。 実質的な問題は、やはり政府開発援助(ODA)であろう。在日のミャンマーの人々や市民社会組織の方々は、国軍の利益につながっているODAの停止を求めている。だが外務省の反応は鈍い』、「自由主義諸国の共同声明に参加したくらいで消滅してしまうような影響力であれば、多少の忖度をしたからといって、中国に対抗できるはずがない」、その通りだ。
・『ODA打ち切りのインパクトは大きいが  巨額のODA案件の全てを打ち切る措置は、非常に大きなインパクトを、日本の企業などに与える。政府の役人のキャリアにも響くだろう。どうしても続けたい、と思う気持ちはわからないではない。だがただ祈り続けているだけでは、袋小路に陥っていくだけだ。 本稿では、あらためて日本のミャンマー向けODAの状況を概観するとともに、何を検討していくべきなのかについて、考察を加えることを試みてみたい』、興味深そうだ。
・『日本のミャンマー向けODAの概観  日本は、毎年1000億円以上のODAをミャンマーに提供し続けている。2019年の経済協力開発機構(OECD)のデータでいうと、日本の拠出金額は6億4690万ドルで、2位の世界銀行2億2080万ドル、3位のアメリカ1億4640万ドルに大きく差をつけて首位である(図表1。ただし統計データを提供していない中国が、実際には日本を大きく上回っていると見られている)。 ミャンマー向けODA拠出額上位10(2018~2019年度)出所=OECD資料を参考に筆者が作成 これだけを見ると、日本の外務省が国内メディアに説明していたように、日本のODA額は圧倒的であり、ミャンマー政府関係者に対する日本の影響力は他のドナーよりも大きいように見える(もっともODA額が大きくて影響力もあるため、日本は他のドナーよりもいっそう慎重に国軍に配慮をしなければならないという説明には説得力がないのだが)。 そこでもう少し日本のODAの内訳を見てみることにしよう。まず気づくのは、圧倒的な円借款の比率の高さである。2019年度を例にとれば、ODA総額の9割以上が円借款である(図表2、3)』、日本の「ODA」はダントツの1位だが、「統計データを提供していない中国が、実際には日本を大きく上回っていると見られている」、やはりそうか。
・『実質5000億円の債務を取り消し  ミャンマーでまだ円借款の返還がなされていない事情を説明するためには、償還期限が来ていない、という技術論的な答えだけでは不十分である。償還期限が来ていないのは、それまで累積していた未返還の貸付金のうち1989億円を、新規貸し付けと抱き合わせで形式的に即時返還させたからである。さらに残りの債務についても、図表2にあるように、2012年には1149億円、2013年に1886億円分の債務の免除を行った。両者を合わせると、総額約5000億円の債務を新規借り換え、および債務免除によって一度帳消しにした格好になる。 1988年の国軍による苛烈な市民弾圧の後、ミャンマーは国際的に孤立した。しかし2010年代に入り、国軍は経済的苦境から逃れるため、民主化の兆しを見せることにした。ミャンマーに食い込みたい日本は、そこで回復する国際援助の潮流に乗るため、新規援助の障害となっていた累積債務を上記のスキームで解消させたのである。 国軍出身のテイン・セイン前大統領と、その後にミンアウンフライン国軍司令官と24回にわたって会談したという、日本ミャンマー協会の渡邊秀央会長が暗躍していたとされるのは、そのときである(永井浩「利権がつなぐ日本とミャンマー『独自のパイプ』 ODAビジネスの黒幕と国軍トップがヤンゴン商業地開発で合弁事業」日刊ベリタ 2021年5月7日)』、「総額約5000億円の債務を新規借り換え、および債務免除によって一度帳消しにした格好になる」、「回復する国際援助の潮流に乗るため」、ということであれば、「ミャンマー」側は有難さをそれほど感じなかった可能性がある。
・『大型事業の発注先は全て日本企業  日本の円借款が、日本企業のアジア進出の足掛かりとしての意味を持つものであったことは、よく知られている。ミャンマー向けの円借款も同じような意味を持たされている。公開されている10億円以上のミャンマー向けの大型案件の契約者は、全て日本企業である』、「円借款」は納入企業などは全て予め決まったヒモ付きのようだ。
・『協会の公式サイトから役員一覧が消えた  なおこの点は前回の記事でもふれたのだが、その際に、私は、「日本ミャンマー協会の役員には、政・財・官界の大物がずらっと並ぶ。(中略)ODA契約企業リストにも登場する財閥系の企業名が目立つ」、と書いた(「日本政府が『ミャンマー軍の市民虐殺』に沈黙を続ける根本的理由」プレジデントオンライン2021年4月27日)。するとその後、日本ミャンマー協会のウェブサイトの役員一覧は空欄になってしまった。もっともちょうど同じときに、「Tansa」の渡辺周氏も記事で同一覧を取り上げていた。(「国軍所有地に年2億円支払い/日本政府系銀行「JBIC」の融資プロジェクト(1)」) 前回の記事が出る前のミャンマー日本協会の役員一覧前回の記事が出る前のミャンマー日本協会の役員一覧 その後空欄になってしまった役員一覧その後空欄になってしまった役員一覧』、本来は開示すべきものを、「ウェブサイト」からこっそり削除するとは、余りの姑息さに驚かされた。
・『顕在化した投資リスクを認めたがらない人々  日本は、返済不能になったというので借金を取り消してあげた相手に、さらに追加的に巨額の借金を貸し出し続けているわけである。常識で考えれば、かなりリスクの高い行動だといわざるを得ない。他のドナーが日本のように貸付金中心の巨額のODAをミャンマーに投入していないのは、投資家の視点で、そのようにリスク計算しているからだともいる。 日本政府は、リスクを承知で、ミャンマーを「アジア最後のフロンティア」と見込んで大規模な円借款を投入し続けたはずであり、それは元大臣が会長を務める協会で政府とつながりながらODA事業に次々と参入した日本企業にとっても同じはずである。 こうした動きに関係した人々が、今年2月のクーデターによってリスクが顕在化したことを認めたくない心理を働かせ、ODAを停止せずに何とか危機が立ち去ってくれないか、と祈るような気持ちになるのも当然かもしれない。だがそれは、無責任な現実逃避以外の何ものでもない』、「現実逃避」は日本の政府・企業のお箱だ。
・『このまま円借款を続けていいのか  この機会に、これまでの日本のミャンマー向けODAのあり方について考え直して見るべきなのは、当然ではないかと思う。その際にポイントとなるのは、円借款の比率、連邦制に向けた少数民族地域向けの配慮。そしてもちろん国軍の蛮行を食い止めるための運用であろう。 第一に、円借款の比率が大きいことについては、すでに見た通りである。これがミャンマーの実情を見て適切だったかどうかは、大きな検討課題である。結果論でいえば、クーデター後の情勢において、円借款の形態がリスク対応には不都合な仕組みであることが日本外交の足かせになっている。 経済的な観点から見て、今のミャンマーは危機に陥っている。市民の不服従運動が拡大して経済活動が停滞し、銀行は引き出し制限をしている。食糧危機も訪れており、世界食糧計画(WFP)は、ミャンマー国内で数百万人が食糧不足に直面すると警告している。それにもかかわらず、必ず回収するといいながら延々と貸付金を流し続けることが、果たして本当に適切だろうか。 国軍報道官は、4月に当局が拘束したジャーナリストの北角祐樹氏を、『笹川陽平ミャンマー国民和解担当日本政府代表の要請』で5月14日に解放した、と明言している。同時期、渡邊秀央会長がミンアウンフライン国軍司令官と極秘会談をしたとも報道された。その同じ5月14日、日本政府がヤンゴン市民への食糧援助を支援するため、WFPに400万ドルの寄付を行うと発表したことは、波紋を呼んだ。 市民への人道支援は良いことだが、「一回限り」「ヤンゴン向け」だけでは、直接ミャンマー当局にではなくWFPへの寄付とはいえ、国軍に配慮したように見えてしまう。日本政府は、国軍管轄下ではない地域のミャンマー市民も対象に含めた「緊急人道援助」を今後も継続的に行っていく道義的義務を負ったと考えるべきだろう』、「経済的な観点から見て、今のミャンマーは危機に陥っている」、経済は破綻状態にあるのに、経済が理解できない「軍部」には危機感が薄いようだ。
・『「借金」の拡大を拒否していたアウンサンスーチー氏  さらに、800人以上の市民を虐殺し、4000人以上を不当に拘束し続けながら、悪いのは全てアウンサンスーチー氏だといった類いのうそを垂れ流している国軍が権力を握っている。この状況でなお、「ミンアウンフライン国軍司令官は、たとえ人殺しをしても日本への借金の返済だけは絶対に行う」と主張する準備のある人は、よほどのお人よしか、さもなくば単なるうそつきだろう。 もともと国家顧問としてのアウンサンスーチー氏は、「借金は嫌だ」という意思表明をし続けていた。NLD政権は、円借款以外の方法での援助を繰り返し要請していた。それに対して、国策として決定していることなので変更できない、とかたくなな態度をとり続けたのは、日本の側であった。 渡辺周氏は前出のTansaの記事の中で、アウンサンスーチー氏は2012年の債務取り消しの際にも「5000億円の帳消しはやめてください。現政権を応援することになります」と迫った、と伝える。それに対して、当時の民主党政権で官房長官を務めていた仙谷由人氏(2012年の日本ミャンマー協会の発足時から副会長・理事長代行として運営に深く関与)は、「喜んで受ければいい話ではないでしょうか」と強く反論したという』、「アウンサンスーチー氏は2012年の債務取り消しの際にも「5000億円の帳消しはやめてください。現政権を応援することになります」と迫った」、「それに対して、当時の民主党政権で官房長官を務めていた仙谷由人氏」「は、「喜んで受ければいい話ではないでしょうか」と強く反論」、なんと民主党政権も1枚噛んでいたとは情けない。
・『無責任を通り越して日本の国益に反する  このように民主化支援を名目にしながら、民主化の旗頭であったアウンサンスーチー氏の反対を押し切り、国軍との協議のうえで、巨額の債務の取り消しと引き続きの巨額の円借款を進めてきたのが、日本である。今、明白な民主化の破綻を目の前にして、「状況が変わったのはミャンマー側のせいだ。国軍が改心しないなら、市民が抵抗をやめればいいじゃないか」と言わんばかりの態度をとっているという印象を国際的に広めるのは、無責任を通り越して、日本の国益に反する。 とはいえ、今債務の帳消しをするわけにはいかない。人をだますことなど何とも思っていない国軍幹部にだまされ続けた後で、国軍の利益になる形で、ただ日本の納税者に全ての泥をかぶせて、また債務帳消しにするしかなくなったら、最悪である。 リスクを承知で民主化の後押しをする貸し付けをしたということ自体を責めるべきではないかもしれない。だがその言い訳は、今はもう通用しないのだ。 過去はともかく、今後もなお、クーデターを起こして市民を虐殺している国軍の誠実を信じて資金を貸し付け続けるのは、不適切すぎる。円借款であっても、リスクに迅速に対応する措置をとる政治判断の是非について真剣に検討すべきだ』、その通りだ。
・『連邦制と民主化の合体こそミャンマーが進むべき道  第二に、ミャンマーの真の民主化の定着を日本のODAが助けてきたのか、検証が必要だろう。 今回の騒乱の中で、昨年の選挙で当選した議員たちが国軍の迫害を逃れながらバーチャル空間に国民統一政府(NUG)を立ち上げた。そして本格的な連邦制を導入する新憲法の設置を目指すことを表明し、市民勢力や少数民族勢力から熱烈な歓迎を受けた。この流れの中で、数多くのビルマ人系の組織等から、ロヒンギャ迫害の際に沈黙していたことを悔いる声明などが相次いで出されたことも注目に値する。 ミャンマーの紛争の構造を考えれば、平和構築の道筋が、この方向性にあることは確かだ。NUGが掲げる連邦制のビジョンは、あらためて必要不可欠な平和構築の方向性を模索する決意表明であるといってよい。「連邦制」の目標が、「民主化」勢力によって掲げられていることの意味は大きい。「連邦制」と「民主化」の強固な合体こそが、ミャンマーが進むべき道である』、その通りなのかも知れない。
・『民主化勢力が描く正しい道筋を支援すべきだ  連邦制の考え方自体は建国時から存在していた。それが「ビルマ建国の父」として敬愛されたアウンサンの暗殺と、その後の国軍による権力掌握によって、立ち消えになってしまっただけなのだ。国軍支配下で、民主化が進んでいたはずの2010年代ですら、中央政府と少数民族勢力との間には不協和音が絶えなかった。NUGは、ミャンマーの未来にとって正しいビジョンを打ち出している。 日本のODAは、こうした正しい道筋を支援するものであるべきだ。ビルマ人が多数派の大都市を結ぶヤンゴン・マンダレー鉄道の建設、ヤンゴン都市圏浄水整備、日本企業が多数参加するヤンゴン郊外のティラワ経済特別区開発・関連インフラ整備などは「民主化と連邦制を合体させた平和構築」のビジョンから見れば、関連度が薄い。初等教育カリキュラム改善事業などについても、「国際的な援助の潮流に合わせて」「ミャンマー政府の主導で」行うことに邁進まいしんするあまり、少数民族地域の教育の底上げという課題を軽視するものになっていなかったかどうか、検証すべきだ』、冷徹な立場で「検証すべきだ」。
・『長期的国益を見据え「標的制裁」に参加せよ  およそ「民主化支援」をうたうのであれば、クーデター後は国軍の利益になる行為を慎むのでなければ、一貫性がない。ただしそれが数千億円規模のODAの全面停止であるのかどうかは、影響をこうむる人々の数の多さを考えれば、悩ましいのは確かである。だが悩ましいからといって、「このことについてはなるべく表で議論しないようにする」、という態度をとるだけで「調整した」ことにするわけにはいかない。 悪いのが国軍である以上、欧米諸国が主導する「標的制裁」に参加し、国軍幹部および国軍系企業に対する狙いを定めた制裁を行うのが、正しい。現在、有志の国会議員が、日本として人権侵害を行った者に対して制裁を加えることを可能にする「日本版マグニツキー法」を制定しようとしている。実効性のある法律制定を目指すと同時に、ODAにも影響が及ぶことを、当然のこととして受け入れて準備をするべきだ。 国会議員らは、「外務省が最大の抵抗勢力」と公言している。「面倒な法律は作らないでほしい、少なくとも私が担当から外れた後にしてほしい」、という官僚機構の態度は、国益を危うくする。そうした怪しい態度のままでは、「ODAを続けるか全面中止か」「北風か太陽か」といった、袋小路が約束されている選択肢だけを迫られるので、逃げ回るしか手がなくなってしまう。 議論すべきは、ODAを全面中止にせずとも実施できる標的制裁の方法である。その研究こそが、長期的にはODAに携わる善良な人々を救っていく。 もちろん立法措置は、JICAの仕事でも、外務省の仕事でもない。不穏な抵抗勢力を排して長期的な国益の確保を見据えた政策を導入する責務を持つ政治家の仕事だ。政治的なリーダーシップが求められている』、「長期的国益を見据え「標的制裁」に参加せよ」、同感である。
タグ:ミャンマー PRESIDENT ONLINE Newsweek日本版 篠田 英朗 (その5)(日本ミャンマー協会会長が国軍司令官と会談へ 混迷する情勢に両国間の対応協議か、「日本ミャンマー協会会長がクーデター軍リーダーと2回会談」 現地メディアが報道、5000億円を踏み倒したミャンマー国軍に「配慮」し続ける日本の政官財トライアングル 日本のODAが市民を苦しめている) 日刊ベリタ 「日本ミャンマー協会会長が国軍司令官と会談へ 混迷する情勢に両国間の対応協議か」 日本ミャンマー協会の渡邉秀会長が5月13日深夜、ミャンマーに向かった 国軍司令官と会う予定 「渡邉会長」は日本側の有力な黒幕のようだ。 「日本ミャンマー協会」は一般社団法人とはいえ、両国の幅広い範囲の交流を図るという準公的な性格も持っていることから、「協会ホームぺージに載っていた役員や会員企業のリストが削除された」というのは余りに不自然だ。 「笹川氏は昨年11月のミャンマー総選挙で、日本政府が派遣した総選挙監視団の団長として同国を訪問し、「選挙は非常に公正に行われ、国軍も結果を受け入れている」とインタビューに答えていた」、「笹川氏」の立場は極めて苦しいものとなったが、何故か聞き分けがいいようだ。「日本とミャンマーの両国民が知らないところで、事態は明らかに次のフェーズに移行しようとしているとみられる」、こうした不透明さは、国際的にも日本の恥だ 「「日本ミャンマー協会会長がクーデター軍リーダーと2回会談」 現地メディアが報道」 「渡邊氏はミャンマー滞在中の2週間に2度、ミンアウンフライン総司令官と会談」、ずいぶん親密なようだ。「クーデターが起きる数週間前にミャンマーを訪問」、「クーデター」についても事前に知らされていた可能性がある』、「渡辺秀央」氏は、ビルマ連邦社会主義共和国(現・ミャンマー)の軍事政権の首脳が1987に東京を訪れた際に、内閣官房副長官としてビルマの要人を迎えたときから渡辺と同国との縁が生まれる(Wikipedia)。筋金入りのミャンマー通のようだ 「日本は西側諸国に与するな」と主張する割には、「ミャンマー軍部」の暴力的な圧制は酷くなる一方だ 「ビルマ民主の声」には上手く立ち回ってほしいものだ。 「5000億円を踏み倒したミャンマー国軍に「配慮」し続ける日本の政官財トライアングル 日本のODAが市民を苦しめている」 事実上の債務免除までしたとは初めて知った。 日本の外務省は、一貫して、ミャンマー国軍を非難する国際的な共同声明への参加を拒み続けているわけである』、なるほど 「自由主義諸国の共同声明に参加したくらいで消滅してしまうような影響力であれば、多少の忖度をしたからといって、中国に対抗できるはずがない」、その通りだ。 日本のミャンマー向けODAの概観 日本の「ODA」はダントツの1位だが、「統計データを提供していない中国が、実際には日本を大きく上回っていると見られている」、やはりそうか 「総額約5000億円の債務を新規借り換え、および債務免除によって一度帳消しにした格好になる」、「回復する国際援助の潮流に乗るため」、ということであれば、「ミャンマー」側は有難さをそれほど感じなかった可能性がある。 「円借款」は納入企業などは全て予め決まったヒモ付きのようだ。 本来は開示すべきものを、「ウェブサイト」からこっそり削除するとは、余りの姑息さに驚かされた。 「現実逃避」は日本の政府・企業のお箱だ。 「経済的な観点から見て、今のミャンマーは危機に陥っている」、経済は破綻状態にあるのに、「軍部」には危機感が薄いようだ。 「アウンサンスーチー氏は2012年の債務取り消しの際にも「5000億円の帳消しはやめてください。現政権を応援することになります」と迫った」、「それに対して、当時の民主党政権で官房長官を務めていた仙谷由人氏」「は、「喜んで受ければいい話ではないでしょうか」と強く反論」、なんと民主党政権も1枚噛んでいたとは情けない。 「連邦制」と「民主化」の強固な合体こそが、ミャンマーが進むべき道である』、その通りなのかも知れない 冷徹な立場で「検証すべきだ」 「長期的国益を見据え「標的制裁」に参加せよ」、同感である。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

日本の外交政策(その9)(出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は 世界に3つだけ」、ミャンマー ウイグル 香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応、「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果) [外交]

日本の外交政策については、昨年10月16日に取上げた。今日は、(その9)(出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は 世界に3つだけ」、ミャンマー ウイグル 香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応、「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果)である。

先ずは、本年3月2日付け日経ビジネスオンラインが掲載した立命館アジア太平洋大学(APU)学長の 出口 治明氏による「出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は、世界に3つだけ」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00087/022500177/
・『「知の巨人」と呼ばれる出口治明さんが、「教養としての地政学」を、分かりやすい言葉で説き起こすシリーズ連載。 第1回の前々回と、第2回の前回は、「地政学」の定義と枠組みを振り返った。 今回からは、日本が今、国際社会のなかで置かれている現実を、出口さんが地政学的に解説する。日本列島の地理的な特殊性に、経済規模などを加味すると、「日本が実効性のある軍事同盟を結べる国は、世界に3つしかない」と喝破する。その3カ国とはどこ? そして、なぜ? 出口さんの新刊『教養としての「地政学」入門』の刊行を記念した企画。 日本は島国です。そのため陸上の国境で接している隣国はありません。海を経て接しているのは、太平洋を挟んで遠い向こう側にあるアメリカとカナダを除けば、ロシア、北朝鮮、韓国、中国、台湾という、四カ国とひとつの地域です。 このうち、北朝鮮とは正式の国交が成立していません。加えて残りすべての国や地域と領土上の懸案を抱えています。ロシアとは北方領土、韓国とは竹島、中国や台湾とは尖閣諸島です。 日本の置かれている現状は、住宅地に家を買ったけれど、向こう三軒両隣との境界線争いを同時に背負い込んでしまった。そういう状況です。これでは落ち着けませんよね。 世界史的に見れば、周囲の国とトラブルを抱えていたら、せめて一カ国か二カ国とは仲良くしようと考えるのが普通です。それが常識的な発想です。 けれど、日本は五軒のお隣さんと角(つの)を突き合わせているのに、平然としているように見えます。 それはなぜなのか? おそらく少し離れてはいるけれど太平洋の向こう側にアメリカという世界最強国家があって、そこと軍事同盟を結んでいるから、そのことが大きな安心材料になっているのでしょう』、「日本」が隣接する北朝鮮を除く三カ国とひとつの地域と「領土上の懸案を抱えています」、確かに不安定だが、海が隔てているのがせめてもの幸いだ。ただ、陸で接している多くの国は、隣の国とは国境問題を抱えるケースは多いのではなかろうか。
・『隣国すべてと火種を抱える日本は、異常である  しかし周囲のすべての国と火種を抱えている現実は、ただならぬ事態だと、まともに受け止める必要があります。アメリカの存在に頼りすぎて、現実のトラブルを軽視するのは危険ですし、そもそもアメリカが永遠に強力な同盟相手であり続けるのかどうかは、神のみぞ知ることですから。 そのことをクールに認識することから、今日の日本における地政学は始まるのだ、と考えざるを得ません。 世界地図を南半球を上にして、ユーラシア大陸と日本列島、そして太平洋との位置関係を眺めてみてください。 ロシアや中国の立場に立ってみると、海路で太平洋に出ようとしたら、日本列島がとてつもなく邪魔な存在になっていることが一目瞭然です。日本列島から沖縄まで続く南西諸島が、連続して太平洋への出口をふさいでいる形となっています。 このような場所に存在することが、日本の地政学的な特徴を形成してきました』、確かにロシアや中国にとっては、「日本」は太平洋に出る際の邪魔な存在なのだろう。
・『日本列島は実に絶妙な位置にある  ロシアや中国を封じ込めようとしたら、日本列島の有する戦略的な位置は絶妙です。 東西対立から冷戦の時代、まさに日本列島が西側の不沈空母の役割を果たしていたのは記憶に新しいところです。日本列島に資源と呼ぶべきものは、ほとんどありません。例えば産業革命の三要素と呼ばれている化石燃料も鉄もゴムもありません。日本の特徴といえるのは、ユーラシア大陸の東側に障害物のように存在する列島である――それがすべてです。 ですから日本という国を、地政学的な現実だけから定義づけると、次のようになるのではないでしょうか。 「周辺の国々のすべてとトラブルの火種を抱えている歴史上稀(まれ)な国で、ロシア、中国という大陸の二大国家が太平洋に出ていく障害となる、絶妙な位置に列島が連なっている島国である」 日本は国内総生産(GDP)で見れば、世界三位もしくは四位の経済大国です。四位というのは購買力平価で計算するとインドに負けているからです。名目では三位です。 このように日本は経済的にはとても大きな国です。ということは、潜在的には軍事大国になる可能性を持っているのですね。自衛隊は高性能の航空機や艦艇をたくさん所有しています。その軍事力は相当に強大です。 ローマ時代の政治家であり哲学者だったキケロ(BC106―BC43)は、「戦争とは金だ」と一言でその本質を喝破しています。総力戦の時代に入った今日では、長い目で見ると経済力に勝る国が戦争に勝ちます。兵士に食べさせる食料も、一丁の小銃も、すべてお金がなければ買えません。 それでは日本が、どこかの国と軍事同盟を結ぶとしたら、可能性のある国はどこでしょうか』、「戦争とは金だ」とは言い得て妙だ。
・『自分より貧しい国に、助けを求めるのか?  経済的にも軍事的にも、日本は小国ではありません。かなり大きい国です。大きい国を守るのですから、同盟相手の国は日本より小さい国では不可能です。日本より貧しい国に「守ってくれ」といったらどうなるか。「じゃあ、お金をくれ」という話になるしかありません。発展途上国や日本より小さい国との同盟で、日本の安全保障を求めることは難しいのです。 そのように考えていくと、実効性のある軍事同盟を結べる国は、世界に三つしかないということがわかります。 アメリカ、中国、欧州連合(EU)です。 EUを構成する国々は小さいのですが、全体としての経済規模は、さほどアメリカに劣りません。また、日本は日英同盟の経験がありますから、ヨーロッパと同盟関係を結ぶことも決して唐突ではありません。 経済力と軍事力において自国と同等以上の水準を有する国をパートナーに選ばないと、安全保障条約を結んでも実効性を欠くことになりがちです。大国になると、理想的なパートナーを探すことはかなり難しくなってくるのです』、小国からみれば贅沢な悩みなのかも知れない。

次に、4月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元外務審議官で日本総合研究所国際戦略研究所理事長の田中 均氏による「ミャンマー、ウイグル、香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応」を紹介しよう。
・『「対話と協力」が基本の日本 「制裁」アプローチには一線画す  ミャンマーでは軍事クーデターに対する抗議デモへの治安当局の発砲などの呵責なき弾圧で数百人が死亡し、新疆ウイグル自治区では、米国が「ジェノサイド(集団殺害)」と呼ぶウイグル族への弾圧に国際社会の批判が高まっている。 香港では「一国二制度」の下で認められてきた高度な自治が損なわれ、自由が抑圧される「香港の中国化」が進んでいる。 米国のバイデン大統領は民主党の伝統的な人権外交を進め、日米首脳会談でも日本に中国の人権問題に対する協調を求めた。 日本はこれまで、欧米諸国の「制裁」アプローチとは一線を画し、ODA(政府開発援助)などを使って「対話と協力」で相手国政府に向き合うことを基本にしてきた。 人権の侵害に対して国家としてどう対処するか、改めて日本社会でも議論を深める必要がある』、「改めて日本社会でも議論を深める必要がある」、今さら「議論を深める」のではなく、行動が求められている筈だ。
・『戦後、対照的な道を歩んだ日独 日本の人権外交の背景にあるもの  人権の侵害にどう対応するかでは、ともに第二次世界大戦の敗戦国であり、人権の侵害で厳しく糾弾されたドイツと日本では対照的な道をたどった。 1990年代後半、ドイツが憲法の解釈を変更し、敗戦後初めて、連邦軍の海外派遣を決定したきっかけは、ユーゴ紛争だった。 コソボでアルバニア系の人々がセルビアにより虐殺された問題で、ドイツは初めてNATOの空爆に参加した。NATOの介入は国連の決議なく行われ、先導した米国のクリントン大統領は「人道的介入」と呼んだ。 ドイツはその後もアフガニスタンなどにNATOの一員として軍の派遣に参加している。 ドイツにとっては、ナチスの非人道的な行為に対する反省に立てば、近隣のコソボで人道に対する犯罪が行われているのに、黙視するわけにはいかないという意識が、長い間、海外で軍事的役割を果たすことに慎重だったドイツの殻を破ったといえる。 一方で日本は、戦闘目的での自衛隊の海外派遣は認められないとの憲法解釈を堅持し、もともと他国の人権問題に口を出すことには相当慎重な態度をとってきた。 特に中国など近隣諸国の人権問題には慎重だ。 これにはいくつかの理由が挙げられる。第一には、やはり戦前の日本軍の行動が中国や韓国、東南アジアの国々に爪痕を残し、日本がこれら諸国の人権問題について声を大に叫ぶことは、日本自身に跳ね返ってくるのではという思いを抱いてしまうことがある。 国際社会が協調して制裁を科す場合には同調することは多いが、制裁が問題を解決するとは考えているわけではないこともある。 従って制裁よりも対話による解決を目指してきた。中国の天安門事件の後、真っ先に制裁解除に踏み切ったのは日本だった。 国際社会でも、著しい人権侵害があり人道上の危機に際してどういう行動をとるべきかについては、これまでもさまざまな議論が行われてきた。 国連では、自国民を保護する責任はその国家が負うべきものだが、その責任を果たせない国家については、国際社会がそれらの人々を「保護する責任」が国連決議でも成立している。 しかし、コソボ紛争やソマリア内戦でも多くの犠牲者を出したように、いかに人道的介入といっても紛争解決をもたらすのは容易なことではない。 むしろ泥沼化する危険性を秘めており、国際社会が「保護する責任」を具体化するのは容易ではない』、「日本がこれら諸国の人権問題について声を大に叫ぶことは、日本自身に跳ね返ってくるのではという思いを抱いてしまうことがある」、言い訳に過ぎないと思う。
・『北朝鮮には圧力と対話 ミャンマーは粘り強く説得を  日本は具体的な人権問題にどう行動するのか。 北朝鮮による日本人拉致事件は、日本の国家主権が侵害され個人の人権が著しく侵害された事例だ。 だがこの問題は対話のみで解決が図れるわけではない。 北朝鮮が拉致を認め謝罪し、被害者を帰国させた背景には米国などの強い圧力があったことも事実だろう。 2001年に発足した米国ブッシュ政権は「ネオコン」と呼ばれた保守勢力の力が強く、イラク・イラン・北朝鮮を「悪の枢軸」と呼び、アフガニスタンのアルカイダ勢力の掃討に乗り出すなど、「ならず者国家は武力で崩壊させる」ことを実践していった。 北朝鮮は自国が攻撃される危機と考え米国の緊密な同盟国である日本との関係改善に利益を見いだしたのだろう。 さらに日朝の交渉で日本との関係正常化に伴う経済援助など、拉致問題解決が北朝鮮にも利益をもたらす「ウィン・ウィン」の絵を描いたことが、北朝鮮を動かしたのだと思う。 対北朝鮮の問題では背後に圧力があるという形が対話で結果を生みやすいといえるかもしれない。 一方でミャンマーで日本が一貫して追求してきたのは、90年の選挙で勝利した国民民主連盟(NLD)と国軍との関係の橋渡しだ。 それが長い時間をかけ、スー・チー国家最高顧問を事実上の長とするNLD政権という民主主義的な手続きによる政権誕生につながった。 日本は民主化を支援する最大の援助国であり、民間直接投資も急増した。今回の軍事政権のクーデターや人権抑圧に対しても、日本は欧米諸国のように正面切った制裁のアプローチをとるのではなく、ODAの新規供与は控えつつ、国軍との対話を模索し民主化の軌道に戻す道筋をつけようとしているのだろう。 ミャンマーを巡っては、関係諸国の思惑は異なり、国際社会が一致して国軍に圧力をかけるという姿にはなりにくい。 米欧にとってミャンマーは地理的だけではなく政治的にも経済的にも遠い国だ。一定の制裁は実施しても自らが主導して問題解決に乗り出すわけではない。 中国はミャンマーを抜けベンガル湾に至る石油ガスパイプラインがマラッカ海峡を通らずに済む戦略的重要性を持つので、このパイプラインを守ることを第一と考えている。 必ずしも国軍の統治が好ましいと思っているわけではないが、NLDを支援することはない。 ASEANも一枚岩ではない。度々軍によるクーデターで政権が作られてきたタイなどはミャンマー情勢に介入しようとは考えないだろう。 日本はASEANの中では民主主義が定着しているインドネシアやミャンマーに多額の投資をしているシンガポールとよく協議しつつ、一刻も早く民主化のプロセスに戻るよう説得を重ねるべきだろう。 ミャンマーの軍事政権も新型コロナ感染問題による経済停滞に加え、海外からの投資の激減による経済停滞に長く耐えられるわけではない』、日本が強い態度に出れば、軍部も聞かざるを得ない筈なのに、「一刻も早く民主化のプロセスに戻るよう説得を重ねるべきだろう」、と極めて慎重だ。
・『新疆ウイグル、香港問題は対中戦略全体の中で解決を模索  新疆ウイグルや香港の人権問題は、急速に国力を高めている中国を相手にするだけに、さらに難しい要素を内包している。 新疆ウイグルは共産党支配の下、漢族を超える人口を持つウイグル族への弾圧が激しい。中国は「核心的利益」として外国の介入は許さないとする。 この問題で、欧米諸国はウイグル族への人権抑圧に責任がある当局者に対し資産凍結などの制裁を科し、中国はそれへの報復として欧米の当局者へ制裁を科した。 制裁という強いアプローチは中国の報復を招き、事態が改善されているわけではない。 同様のことが香港問題についてもいえる。 香港の民主化に対する中国の弾圧に対して、米国は香港優遇措置を停止するとともに、香港政府や国の当局者に対して制裁を科している。 しかし、これらの制裁措置は立場の明確な表明という意味はあるが、実効的な効果を上げているわけではない。 むしろその後、中国は香港に国家安全維持法導入に続いて、選挙法を改定して「愛国者」という概念の下に親中国派を立法会選挙の候補者とするような仕組みを導入しようとしている。高度な自治と自由な資本主義を認める「一国二制度」は崩壊したといえる。 新疆ウイグル問題も香港問題も人権など民主主義的価値が大きく損なわれているが、問題の解決は中国との関係への全般的アプローチの中で考えていかざるを得ない。 中国に対して問題の改善に向けて強い圧力をかけられるとすれば、おそらくG7、さらにはQUAD(日米豪印戦略対話)の枠組みだろう。 しかし中国は安保理の常任理事国であり、また経済の面でも世界の中で巨大な市場を持つ国だ。G7といえども従来持っていたような強力なてこがあるわけではない。 米国は同盟国と連携して中国に圧力をかけていくアプローチをとるが、中国も「一帯一路」やワクチン外交などを通じて特に途上国への影響力は飛躍的に拡大している。 事態が早急に改善する見通しは持ちにくいが、米国はハイテク分野などで中国との市場分離(デカップリング)を進めているし、今は外国企業も中国国内への投資を増やすことを躊躇している状況もある。 このような動きが中国の経済成長に著しい障害となってくれば、中国政府は姿勢を変える可能性はあるのだろう。 政治的自由が制約されている共産党体制では経済成長が人々の不満を吸収している。いわば共産党統治の安定と直結しているので、経済成長が続くのかどうかは、新疆ウイグルや香港の人権問題の今後の動きを左右する大きな要素だ』、「「一国二制度」は崩壊した」、というよりも、中国はその国際公約を破ったという方が、実態に近い。ただ、「中国は安保理の常任理事国であり、また経済の面でも世界の中で巨大な市場を持つ国」、なので、「経済成長に著しい障害となってくれば、中国政府は姿勢を変える可能性はある」、のに僅かに期待するほかないようだ。
・『「ESG」や「SRI」は企業に真剣な検討を求めている  現状ではミャンマーや新疆ウイグル、香港の問題で人権外交が解決に向けて早急に成果を上げられることはなかなか見通せない。 ただその中で、民間企業の間でも、投資の評価基準として「ESG(環境・社会・ガバナンス)」や「SRI(社会的責任投資)」といった概念が強まっていることは注目される。 企業にとっても直接投資や取引の相手が人権問題にどう絡んでいるかは無視できない要素となっているからだ。 今後、企業はESGやSRIの観点からもミャンマーや新疆ウイグル、香港での活動には改めて長短両面から検討をせざるを得ないのだろう。 ミャンマーでの国軍関連企業との取引は企業価値を損ないかねない。香港の民主化支援企業との取引は中国本国で製品購入のボイコットを生みかねないが、一方でSRIを重視する投資家から支持されるだろう。 中国政府がウイグル自治区の少数民族に強制労働で作らせているとされている「新疆綿」の使用している企業は、人権侵害を容認、助長していると批判を受け、企業価値を損ないかねないし、逆に使用を停止すれば中国政府からなんらかの制裁をされる可能性がある。だがそれを覚悟で人権問題を優先するのか。 企業も今後は人権問題に対してどう振る舞うべきか、企業ガバナンスの観点から真剣な検討が必要になるだろう』、「「ESG」や「SRI」」が「企業に真剣な検討を求めている」ようになったのはいいことだ。「真剣」に「検討」してほしいものだ。我々も投資家の立場で、企業を厳しく評価してゆくべきだ。

第三に、3月11日付け東洋経済オンラインが掲載した東京大学名誉教授の北岡 伸一氏による「「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/413415
・『第2次安倍内閣は2012年12月に成立し、2020年9月まで2822日、7年8カ月あまり続いた。これは1964年から1972年にかけての佐藤榮作内閣の2798日を超える憲政史上最長記録であり、また第1次と合わせて通算3188日(8年8カ月あまり)というのは、明治大正期における桂太郎の三度の内閣を超える最長記録である。 この安倍政権の成果を、外交安保政策について振り返り、評価することが、本稿の課題である。経済、社会などの政策や、政治運営の手法などは対象としない。 あらかじめ述べておけば、私は、安倍政権の最大の成果は、2015年の平和安全保障法制と戦後70年談話、および2016年における自由で開かれたインド太平洋構想の提唱であって、それは近年の日本外交の中でも特筆すべきものだと考える。 筆者は、このうちとくに最初の2つに深く関与していたので、十分客観的な評価が可能かどうか、疑問がないわけではない。しかし、関与したゆえに知りえたこともあり、それを差し支えない範囲で明らかにすることは、義務でもあろうと思う』、確かに当事者だったのであれば、客観性は期待できない。
・『NSCから安保法制へ 特定秘密保護法  安倍内閣は、特定秘密保護法を2013年10月の国会に提出し、12月、これを成立させた。日本は秘密漏洩に対する処罰が緩く、かつてスパイ天国と言われたものであった。同盟国、友好国との安全保障上の提携を強化するためには、こうした法律が必要だった。 しかし、野党とメディアの多くは、この法案を民衆の権利を弾圧するものとして批判した。そのため安倍内閣の支持率は10ポイントほど下がり、50%を切ったが、安倍首相は、ためらうことなく立法を進めた。のちに、内閣に対する支持は回復した』、私もこれらの法制には反対した。
・NSCとNSS  また、この2013年には、国家安全保障会議(NSC)とその事務局(NSS:National Security Secretariat)が作られた。NSCは、2007年、第1次安倍内閣で着手され、首相の辞職によって中断されていた。安倍内閣はあらためて立法に着手し、NSC/NSSを成立させたのである。それまでは、国防会議という名目的な会議体しかなかったのが、ようやく外交と防衛を総合的に担当する組織が成立したのである。 このNSCについては、それくらいでは日本の縦割り行政は解消されないとか、情報収集機関が不十分なので役に立たないなどというシニカルな批判が、専門家の間にも見られたが、成立以後、肯定的な評価が定着している。 他方で、これが十分だというわけではない。日本独自の情報機関という課題は残っているし、近年の米中貿易紛争を見ても、経済安全保障についての役割がさらに期待されている。) 国家安全保障戦略:National Security Strategy(また2013年12月には、国家安全保障戦略の策定がなされた。日本の基本的な安全保障戦略を策定することは、対外的な安定性の点でも、国内の啓蒙、政策的統一のために、きわめて必要なものであるが、日本にはそれがなかった。 わずかに、1957年5月、岸内閣策定にかかる国防の基本方針があったが、かなり古く、また極めて簡潔なもので、政策指針としては十分ではなかった。戦前の日本でも、外交と軍部の対立は根深く、陸軍と海軍の対立も深刻だった。その意味で、外交と防衛をカバーする国家安全保障戦略の制定は、日本にとって画期的なものだった。 その中心は、自由で安定した国際秩序の維持が日本の基本的な国益であり、その維持強化のために、日本は積極的な役割を果たすべきだということであり、これを積極的平和主義と呼んだ。具体的には、自衛力の強化、日米安保の強化のみならず、国際平和活動、ODA(政府開発援助)、外交による平和構築にも、より積極的に取り組むべきだという内容だった。 これに対しても、一部から、政府は世界中に自衛隊を進出させようとしているという批判があったが、これらは、まったく事実無根であって、以下に述べるとおり、安倍内閣はPKOなどについてはきわめて慎重で、むしろ臆病なほどであった』、確かに「国家安全保障戦略の制定」は画期的だった。
・『防衛装備品輸出三原則  2014年4月、国家安全保障戦略に基づいて、防衛装備品輸出三原則が定められた。元来、日本は武器の輸出を極めて厳格に制限していた。1970年代半ばまでは、共産主義国、国連で制裁を受けている国、紛争当事国には武器を輸出しないという方針だったが、1974年、三木内閣において、原則として武器は輸出しないという方針に転じた。 のち、1983年、中曽根内閣は方針を転換し、同盟国アメリカへの武器技術輸出は可能だとしたが、それ以外は依然として原則的に禁止だった。 もちろん、他国を侵略したり、国内で国民を弾圧したりするような国には、武器を輸出すべきではない。しかし世界には他国の脅威にさらされて防衛力を強化しようとしている国もある。そういう国々に対しては、日本は資金等の援助などをすることがある。) それゆえ、そうした国々に対しては、武器の輸出は一切禁止とするのではなく、一定の範囲で防衛装備品の輸出は可能とすべきだとして、新しい原則が立てられたのである。 これまで、武器輸出三原則(事実上の禁止)の結果、日本の防衛産業は海外に市場を持たず、国内の自衛隊だけを顧客とせざるをえなかった。 その結果、日本の武器産業は高価で競争力を持たなくなった。また、現代の武器はきわめて高価で、国際共同生産となることが多いが、この原則により、国際共同生産に参加することもできなかった。そうした禁止をなくしたことは、より柔軟な防衛政策が可能となることを意味した。 ただ、すぐにこれが効果をあげたわけではない。オーストラリアに対する潜水艦の売り込みに、日本は失敗したが、経験不足は否めなかった。しかし、日本の武器が求められ、それが防衛用に使われ、日本の防衛産業が一息つけるなら、今後とも進められるだろう』、「オーストラリアに対する潜水艦の売り込みに、日本は失敗」、失敗したのは残念だが、コストが高目だったのではなかろうか。
・『開発協力大綱改定と「国益」 開発協力大綱(2015年2月には開発協力大綱が改定された。 そこで大きな話題となったのは、まず、国益という言葉が登場したことである。これは確かにODAの世界ではあまり見かけない言葉である。 しかし、途上国の発展に貢献する中で、援助国の側の利益をも目指すことは、これまでも普通に行われていた。この開発協力大綱に言う国益は、国家安全保障戦略が、日本にとって、平和的国際環境の維持が最も重要な国益であると述べていることを踏まえたものである。 このように国益を定義すれば、国税を使って支援をする以上、開発協力が日本の利益を目指すのは自然なことである。 また、この大綱において、軍に対する協力も、非軍事的なものならば可能となった。例えば、軍人の留学生を受け入れることが可能となった。戦前の日本では、軍人に対する教育が偏狭なものであったことが致命的だった。 それゆえ現在の防衛大学校では、幅広い見識と視野を持つ人材育成を目指している。外国の軍人に対しても、こうした教育を提供することは、国際協力の範囲で考えて構わないだろう。) 安保法制懇談会報告と平和安全法制(こうした政策の延長上に行われたのが、2014年5月の安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)の再開と報告書の提出、この報告書に基づく7月の閣議決定、そして2015年9月の平和安保法制の成立である。 まず、安保法制懇は、第1次安倍内閣において活動していた懇談会(2007年5月設立)を、ほぼ同一のメンバーで再度立ち上げた。座長は柳井俊二国際海洋裁判所判事が、座長代理は私が務めた。 その提言は、日本国憲法9条2項は必要最小限度の自衛力までも禁止はしていないという1954年解釈と、これを支持した1959年最高裁判所の判決に基づき、現代においては集団的自衛権の部分的行使は必要最小限度のうちに入ると考えるべきであって、集団的自衛権行使を不可とした1972年法制局解釈を修正すべきだとした。 それ以外に9条1項の「武力の行使による国際紛争解決の禁止」は、日本を当事者にする国際紛争に関するものであって、日本が当事者でないPKOなどにおいて、武力の行使ならぬ「武器の使用」まで禁止されているという従前の解釈は国際常識に反するとして、改めるように提言した』、なるほど。
・『2015年安保法制の成立と海外の反応  これに対し政府は、日本周辺における米軍などとの共同活動について、集団的自衛権の行使は可能と判断したが、憲法9条1項に関する懇談会の提言については受け入れず、これを7月の閣議決定とした。 これを盛り込んだ法律は2015年に提出され、異例の長い審議を経て、成立した。日本の憲法学者の多くは反対し、国会審議に際しては、多くのデモが国会を取り囲んだ。 しかし、日本の憲法学者の多数派の議論はきわめて特異なものであることには留意が必要である。そもそも憲法は国家の運用のルールであり、国家が国際競争の中で活動することを前提としているのにもかかわらず、日本の憲法学者は国際法や国際政治にほとんど関心を持たず、ただ成文憲法に合致しているかどうかだけを判断するのである。 2015年安保法制の成立は、海外の多くの国々によって歓迎された。かつて日本が安全保障政策を強化すると、野党やメディアの一部はこれに反対し、アジア諸国は不安を覚えると言うことが普通だった。しかし、今回は、中国、韓国、北朝鮮からも強い反対はなく、東南アジア諸国は安保法制の成立を歓迎した。彼らは中国の脅威にさらされているのであって、当然の反応だった。) さらに興味深いことに、安保法制成立から5年を経た今、反対論は著しく後退している。反対論の拠点であった朝日新聞の2020年12月18日の記事によれば、安保法制を支持する人は反対論を明白に上回っている。 ここで想起したいのは、トランプ大統領が繰り返し、「米兵が日本を守るために血を流して戦い、日本人はそれをソニーのテレビで見る。アンフェアーだ」と言っていたことである。このトランプ発言は、現在では誤りであって、日本の防衛のために行動している米軍が危険に遭遇したときは、日本はともに戦うことになっている。しかし、安保法制が成立するまでは、トランプ発言のとおりの状態だったのである。 事実として、安保法制成立以後、日本とアメリカの間では飛躍的に情報の共有が進んでいる。ともに危険を負担する間でなければ機微な情報を共有しないのは当然のことであって、安保法制はその意味でも大きかったのである』、「飛躍的に情報の共有が進んでいる」、のは確かにプラスの効果だ。
・』PKOの現状とその他の課題  PKOの現状(しかし、憲法9条1項に関する懇談会提言を受け入れなかったように、安倍内閣の国際平和協力に対する姿勢は十分ではなかった。2016年、南スーダンのジュバで内戦が起こったあと、政府は、PKOに参加している他国の部隊や一般市民が襲撃を受けたときは、自衛隊が助けに行けるよう、「駆け付け警護」という世界に例のない法律を作った。 国連平和維持活動においては、そうした友軍支援や市民保護は、明文に規定していなくても、当然の義務であるが、自衛隊は法的根拠を必要とした。しかし、それから間もなく、南スーダンの自衛隊は引き上げてしまったのである。 その他の課題(ともあれ、PKOを別として、安倍内閣のもとで安全保障政策は強化された。それでも、中国の軍事的膨張は急速であり、尖閣諸島周辺での行動も一段と活発化しており、海上警察の組織や役割も変更して強化している。日本の安全保障がこれで十分であるとは到底言えない状況である。 その1つは、ミサイル防衛の不備である。2019年、陸上イージスの配備が中止されることとなった。それは、ミサイルからの落下物の安全が保障されていないという理由であったが、ミサイル防衛の限界を示したものだった。 中国はもとより、北朝鮮のミサイルが著しく発展した今、ミサイル防衛によって本当に日本の安全を守れるか、疑問である。しかも、性能や価格を十分吟味しないで購入を決定していた疑いが濃い。) いずれにせよ、ミサイル防衛を中心とする防衛政策や、その基底にある専守防衛という原則自体が、不可能になりつつあるが、まだ有効な対処はなされていない。 2020年には新型コロナが世界を直撃した。日本の感染者は相対的に少なかったが、検査の数にせよ、病院の準備にせよ、ワクチンの開発にせよ、資金の給付にせよ、多くの欠陥が明らかになった。パンデミックは、いわゆる非伝統的安全保障と呼ばれるものの1つであるが、これにおいて日本の対応は失敗だった。有事において政府が強い権限を行使し、国民の安全と福祉を守るという仕組みが、根付いていないことが明らかになったのである』、「陸上イージス・・・性能や価格を十分吟味しないで購入を決定していた疑いが濃い」、お粗末な騒動だった。「中国はもとより、北朝鮮のミサイルが著しく発展した今、ミサイル防衛によって本当に日本の安全を守れるか、疑問である:、その通りだ。
・『歴史認識問題  次に、いわゆる歴史認識の問題に移りたい。これも、外交の大きな制約要因になりうるので、外交安全保障政策の一環だと考えるべきである。 安倍首相が2013年12月末に靖国神社を訪問すると、中国、韓国は激しくこれを批判し、同盟国のアメリカまで、失望したというコメントを発表した。 これは、同盟国としては、やや行きすぎた反応だったと思う。なぜなら、歴代の首相は、日本は侵略したことを認め、A級戦犯には責任があると述べ、しかし祖国のために生命をささげた一般兵士のために参拝すると言ってきた。今回も同様だった。これに対して中国や韓国が批判するのはそれなりの意図があってのことであり、ある程度は理解できるが、アメリカが批判するのは行きすぎだと私は考える。 しかし安倍は右翼だとする論調が欧米、とくにアメリカのリベラル系の学者に多かったことは事実である。 2014年にはマグロウヒル社の教科書に、「日本軍は14〜20歳の女性を、20万人も強制的に徴用し、……『慰安所』……で働かせた」と記されていることが判明し、日本の外務省が訂正を求めたところ、2015年5月、アメリカの学者グループはこれを歴史に対する検閲であるとして抗議書簡を発出した。) しかし、今日明らかになっているところでは、「慰安婦」のほとんどは成人であり、その中には日本人が多く、朝鮮人が多数ではなかった。また朝鮮では新聞広告や業者の勧誘によって応募した女性が多く、強制的に徴用した証拠は見つかっていない(強制的に慰安婦にされた人は、旧オランダ領インド〈現在のインドネシア〉における少数のオランダ人女性などがあった。しかし、朝鮮半島においては、強制連行されたという証拠は見つかっておらず、大部分は新聞記事を見たり、ブローカーの紹介によって応募した成人女性だった。かつて朝鮮半島で強制連行があったと報道した朝日新聞は、2014年8月、誤りであったとして取り消し、謝罪した。なお、上記オランダ人元慰安婦に対しては、日本政府は謝罪補償を行っている)。 また慰安婦の総数についても、日本の中で最も韓国側に近い立場の研究者でも4万5000人という数字をあげており、20万人というのが甚だ誇張されたものであることは明らかである。さらに、日本の外務省はアメリカの学者や出版社に対して何らの権力を有しておらず、事実に反するとの指摘や訂正の要求が検閲というのは、これまた荒唐無稽な話であった。 日本ではこの問題に対し、慰安婦問題を専門とする学者を代表して、2名の有力教授が共同で記者会見をした。その1人、左派と目されている大沼教授すら、アメリカの学者の動きを批判して、自分がそういう指摘を受け取ったら、自分の誤りを気づかせてくれたかもしれないので、まずお礼の手紙を書くと述べた。 しかし、アメリカの世論はそのようなものではなく、事実に即さない感情的なものだった。ちなみに、こうした行きすぎたリベラルに対するアメリカ国内の反感が、2016年におけるトランプ候補の大統領当選の大きな背景だったように思われる。 70年談話の焦点(安倍首相はこうした背景に、アメリカの理解を得ることが最も重要だと考え、2014年、オーストラリアのキャンベラにおけるスピーチで、率直に戦争について謝罪して、歓迎を受けた。それから、2015年4月、ワシントンにおいて、連邦上下両院議員合同会議で演説を行い、大喝采を浴びた。 国内では、20世紀における日本のあり方を考え、21世紀の世界と日本を考える懇談会(21世紀構想懇談会)を組織した。座長が西室泰三東芝相談役、私が座長代理を務めた。世間の関心は侵略という言葉を使うかどうかに収斂していた。) 懇談会報告は、20世紀初頭の世界から説き起こし、世界が植民地主義に覆われていて、日本もその一員であったこと、しかし第1次大戦後、国際協調体制が成立していたのにもかかわらず、それに最初に大きな打撃を与えたのは満州事変であって、日本の責任はとくに重いとして、その責任を改めて想起し、戦後の日本は国際協調体制の推進に力を入れてきたことを述べている。 また、日本は戦争と植民地統治について何度も謝罪し、相当の補償も行っているのであり、これ以上、国民が謝り続ける必要はない、ただ、こういう歴史があったことを忘れないという責任のみが残っている、という趣旨を述べた。 安倍首相の談話は基本的にこの線で書かれた。その結果、侵略という言葉を使うことに反対していた右派(例えば渡部昇一上智大学名誉教授)もこれを支持し、侵略という言葉を使うことを強く求めていた左派の知識人およびメディアも、一部の例外を除いて、おおむね賛成ないし黙認するに至った。 これで、ともあれ、長く続いた歴史認識問題は一応の決着となった。懇談会は当然の事実を述べたにすぎない。しかしこれを70年談話という注目度の高いところで述べたことが、広く納得を得たのである』、「長く続いた歴史認識問題は一応の決着となった」、のはいいことだ。
・『日韓慰安婦に関する合意が成立したが  そして、その延長線上に、12月、日韓慰安婦に関する最終合意が成立した。 そもそも、慰安婦問題については、1995年に村山首相当時、政府と民間の合同でアジア女性基金が作られ、首相の謝罪の手紙と償い金を渡した。朝鮮以外の元慰安婦はこれを受け取り、韓国で認定されていた200名あまりの元慰安婦のうち、61名は、これを受け取った。 それ以上に、2015年12月には、日本の拠出によって韓国に新たな基金を作り、これを持って慰安婦問題は終わりとするという合意が、両国の間に成立したのである。生存している元慰安婦のうち46人のうち36人がこれを承認し、資金を受け取った。 ところが、朴槿恵大統領のあとに大統領となった文大統領は、この合意は元慰安婦の声を十分反映していないとして、問題を蒸し返した。) あわせて、戦時中のいわゆる徴用工に対する補償問題が蒸し返され、韓国の裁判所は請求権を認める判決を下している。 しかし、徴用工の請求権は1965年の日韓基本条約において、明示的に、解決されている。韓国の政策は、従来の基本的合意を一方的に変更するもので、日本としては受け入れることができない。これは日本では、野党もメディアも一致するところである。外交安全保障上、隣国との関係が順調でないのは遺憾なことであるが、すべては韓国の責任である。 その後、慰安婦問題で影響力を持っていた団体が、資金の不正使用をしてきたことが明らかになっており、また事実に即した研究も少しずつ増えてきていて、いわゆる慰安婦問題はやや下火になっている。しかし、韓国でまた火が付く可能性はないとは言えない。中国とアメリカとの関係が厳しくなっている現在、なお懸念の残る問題である』、「韓国」が反日を政権浮揚の手段にしているのは、困ったことだ。
・自由で開かれたインド太平洋(FOIP)  TPP11(TPPは2005年に結ばれたシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドによる環太平洋戦略的経済連携協定に始まる。 これに2008年、日米などが協議に参加し、2015年10月、上記4カ国に、オーストラリア、カナダ、日本、マレーシア、メキシコ、ペルー、アメリカ、ベトナムが加わった12カ国が、環太平洋パートナーシップ(TPP)の締結について、大筋合意に至り、翌2016年2月、署名するに至った。これは高い水準の野心的、包括的な経済連携協定で、事実上は中国に対抗する意味を持つものと思われていた。 2017年1月、トランプ大統領は、政権発足と同時にTPPからの脱退を宣言した。しかし残り11カ国は内容を修正して新たな協定(TPP11)を締結し、2018年末、協定は発効した。このTPP11を実現するにあたって、安倍首相のリーダーシップは大きかった。 FOIPの提唱(2016年8月には、安倍首相はケニアのナイロビで開かれたTICADⅥ(第6回アフリカ開発会議)において、自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP、のちに自由で開かれたインド太平洋「構想」と言い換えている)を提唱した。) FOIPは、2013年に中国が提唱した一帯一路と対抗するもののように言う人がいる。しかし、むしろ逆である。日本の戦後の復興と発展は、東南アジアからインドに及び、また日本は1970年代からODAなどで中東にも関与するようになっていた。そして1993年からTICADを開催している。つまり、日本の発展が自由で開かれたインド太平洋の成立を促してきたのであって、むしろ、そこに挑戦してきたのが中国の一帯一路だったのである。 FOIPは、それは単に経済連携の構想ではなく、法の支配や航海の自由という普遍的原則と不可分であり、民主主義という価値とも結び付いている。 FOIPの不可欠の一部が、例えば集団的自衛権の部分的行使容認を含む日米関係の強化だった。また、安倍首相はインドのモディ首相ととくに親しい関係を結び、これがFOIPの骨格となっていることはあらためていうまでもない』、「FOIP」は中国が覇権主義的性格を強めているなかで、1つの対抗手段だ。TPPに米国を復帰させるのも重要な課題だ。
・『大阪G20で合意されたインフラ投資原則  2017年6月5日、しかし安倍首相は日経新聞の会議で講演し、中国の一帯一路とむやみに対立するのではなく、事業に開放性、透明性、経済性があり、また対象国の債務健全性に配慮するものならば、協力が可能だと述べた。 これは、2018年大阪におけるG20の成果文書に取り入れられた。やや異なった表現ではあるが、インフラ建設において以上の4原則、それに環境配慮などの原則を守ることが合意された。中国はG20の一員であるから、この原則にコミットすることになったのである。 FOIPという言葉は、その後、アメリカも使うようになった。トランプ政権の間に日米印豪の間の安全保障協力(QUAD)が進むようになったが、これもFOIPの一部をなすと考えられる。中国の南シナ海支配に抗議する航海の自由作戦も、その一部である。) FOIPの内容に、日米の間で完全な合意があるわけではない。バイデン政権のコミットについても、まだ不明なことも多い。しかし、安倍政権が自由で開かれたインド太平洋構想を打ち出し、広めていったことには、誰も異論のないところであろう』、「大阪G20で合意されたインフラ投資原則」は、中国への一定の歯止めになる可能性もあり、確かに成果だ。
・『安倍内閣の外交安保における成果  広く外交安保に関係するもので、安倍首相が重要政策として挙げたもののうち、憲法改正には手が届かなかったし、日露領土問題でも拉致問題でも前進はなかった。 しかし、憲法改正について言えば、安倍首相の打ち出した現行の9条を維持して第3項を付け加えるというやり方は、戦力不保持を定めた第2項を維持するということであり、どれほど日本の安全に寄与しうるかは、やや疑問の残るところである。日本の安全にただちに役に立つという点では、安保法制のほうが、明らかに意味があった。 また、拉致問題が解決しなかったことは遺憾だったが、もし解決しても北朝鮮の核とミサイルの脅威まで除去はできなかっただろう。ロシア問題については、交渉の内実が明らかになっていないので、コメントは控えておきたい。 安倍首相の外交安保における成果は、本稿冒頭で在任期間を比較した佐藤榮作の沖縄返還や、桂太郎の日露戦争などとは、比べられるようなものではない。 しかし、中国の経済的・軍事的膨張と、強圧的な対外政策を前に、日本に根深い原理主義的な平和主義を考えるとき、相当の成果を挙げたと言って過言ではないだろう。 同盟国のアメリカでは、オバマ政権からトランプ政権へと大きな転換があった。その中で安倍首相はワシントンの連邦議会で演説(2015年4月)し、オバマ大統領の広島訪問(2016年5月)を実現させ、さらに真珠湾を訪問(2016年12月)し、かつ、トランプ大統領との間で信頼関係を築いた。これは、重要な成果であったと言ってよいだろう。 ただ、安倍内閣の成果が本当に実のあるものとして定着するには、これからの歴代政府の努力にかかっていると言ってよいであろう』、「北岡」氏安部外交への評価は、当事者だっただけに、予想通り異常に高い。それでも、安部外交を締めくくる意味でも、取上げた次第である。
タグ:東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 出口 治明 田中 均 日本の外交政策(その9)(出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は 世界に3つだけ」、ミャンマー ウイグル 香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応、「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果) 「出口治明氏「日本が軍事同盟を結べる国は、世界に3つだけ」 『教養としての「地政学」入門』 確かにロシアや中国にとっては、「日本」は太平洋に出る際の邪魔な存在なのだろう。 「戦争とは金だ」とは言い得て妙だ。 小国からみれば贅沢な悩みなのかも知れない。 「ミャンマー、ウイグル、香港…国際社会で試される日本の「人権問題」対応」 「改めて日本社会でも議論を深める必要がある」、今さら「議論を深める」のではなく、行動が求められている筈だ。 「日本がこれら諸国の人権問題について声を大に叫ぶことは、日本自身に跳ね返ってくるのではという思いを抱いてしまうことがある」、言い訳に過ぎないと思う。 日本が強い態度に出れば、軍部も聞かざるを得ない筈なのに、「一刻も早く民主化のプロセスに戻るよう説得を重ねるべきだろう」、と極めて慎重だ。 「「一国二制度」は崩壊した」、というよりも、中国はその国際公約を破ったという方が、実態に近い。ただ、「中国は安保理の常任理事国であり、また経済の面でも世界の中で巨大な市場を持つ国」、なので、「経済成長に著しい障害となってくれば、中国政府は姿勢を変える可能性はある」、のに僅かに期待するほかないようだ。 「「ESG」や「SRI」」が「企業に真剣な検討を求めている」ようになったのはいいことだ。「真剣」に「検討」してほしいものだ。我々も投資家の立場で、企業を厳しく評価してゆくべきだ。 北岡 伸一 「「外交と安全保障」に安倍内閣が残したレガシー 「安保法制」「戦後70年談話」「FOIP」という成果」 確かに当事者だったのであれば、客観性は期待できない。 私もこれらの法制には反対した 確かに「国家安全保障戦略の制定」は画期的だった 「オーストラリアに対する潜水艦の売り込みに、日本は失敗」、失敗したのは残念だが、コストが高目だったのではなかろうか。 「飛躍的に情報の共有が進んでいる」、のは確かにプラスの効果だ。 「陸上イージス・・・性能や価格を十分吟味しないで購入を決定していた疑いが濃い」、お粗末な騒動だった 「中国はもとより、北朝鮮のミサイルが著しく発展した今、ミサイル防衛によって本当に日本の安全を守れるか、疑問である:、その通りだ。 「長く続いた歴史認識問題は一応の決着となった」、のはいいことだ。 「韓国」が反日を政権浮揚の手段にしているのは、困ったことだ 「FOIP」は中国が覇権主義的性格を強めているなかで、1つの対抗手段だ。TPPに米国を復帰させるのも重要な課題だ 「大阪G20で合意されたインフラ投資原則」は確かに大きな成果だ。 「大阪G20で合意されたインフラ投資原則」は、中国への一定の歯止めになる可能性もあり、確かに成果だ 「北岡」氏安部外交への評価は、当事者だっただけに、予想通り異常に高い。それでも、安部外交を締めくくる意味でも、取上げた次第である。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

ミャンマー(その4)(繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇、市民を虐殺するミャンマー国軍 日本政府・企業は軍と国民 どちらに立つのか?、ミャンマー市民が頼るのは 迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望、日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠) [外交]

ミャンマーについては、3月24日に取上げた。今日は、(その4)(繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇、市民を虐殺するミャンマー国軍 日本政府・企業は軍と国民 どちらに立つのか?、ミャンマー市民が頼るのは 迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望、日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠)である。

先ずは、4月5日付けNewsweek日本版が掲載した毎日新聞記者の永井浩氏による「繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/04/post-95986_1.php
・『ミャンマー軍に対する厳しい制裁に踏み切れない日本政府は軍政の「共犯者」だ> ミャンマーの国軍クーデターから2ヶ月。この政変が起きた2月1日の本サイトで、私は「日本政府は今度こそ民主化支援を惜しむな」と書いた。政府はこれまで、同国の民主化を支援するという空念仏を唱えるだけで、事実上軍政の延命に手を貸してきた事実を知っていたからである。だが、私の期待は裏切られたようだ。民主化運動への国軍の弾圧は残虐化するいっぽうなのに、「民主国家」日本の政権担当者は国軍「非難」の談話などを出すだけで、欧米諸国のような制裁には踏み切れない。なぜなのかを理解するために、私は古い取材メモなどをあらためて引っ張り出してみようと思った』、「日本政府は軍政の「共犯者」、とは手厳しいが、具体的なポイントをみてみよう。
・『スーチー氏「解放」の実態  私がミャンマーの民主化について取材をはじめたのは、民主化運動指導者のアウンサンスーチー氏が6年間におよぶ自宅軟禁から解放された1995年7月から間もなくしてからだった。彼女の解放を喜ぶとともに、依然として軍政がつづく同国の現状と今後の見通しについていろいろ聞きたいジャーナリストが、世界各地から最大都市ヤンゴンのスーチー邸に殺到した。毎日新聞記者の私もその一人だった。 日本政府は彼女の解放を民主化への前進と評価し、欧米諸国にさきがけて、軟禁下で凍結されていた経済援助の再開を表明した。では「解放」の実態とはどのようなものだったのか。多くのジャーナリストの取材申し込みのウエイティングリストの後ろのほうに載っていた私が、やっとスーチー邸の門をくぐったのは9月2日だった。 まだ雨季なので、足元はぬかるんでいた。訪問客は、邸内に設けられた受付で姓名、所属団体、外国人ならパスポート番号を書くようにもとめられる。これは、軍事政権「国家法秩序回復評議会」(SLORC)がスーチー氏の「警護」のために取っている措置とされるが、彼女の側からの自発的要請にもとづくものではない。外国人には、公安当局がカメラのフラッシュを浴びせる。 解放直後は、祝福のお土産をかかえて国内各地から駆けつけた、彼女の率いる「国民民主連盟」(NLD)の支持者たちがひきもきらなかった邸内は、だいぶ落ち着きを取りもどした。軟禁中は手入れができず、「まるでジャングルみたいだった」と彼女が述懐する庭もこざっぱりした。 しかし、日常の活動はいまだに大きな制約を受けている。電話は通話可能になったものの、側近によれば「盗聴されている疑いが強い」。コピー機とファックスの設置には政府の許可が必要だが、申請してもいまだに許可が下りていない。共産主義政権が倒れるまでのソ連・東欧諸国のような言論統制だ。私信はまず届かないとみた方が確実だ。私もインタビュー掲載紙と書留を日本から送ったが、二通とも届いていないことがその後わかった。 スーチー氏以外の多くの党員や支持者は投獄されたままだ。5人以上の集会は事実上禁じられているために、彼女は自宅前に集まった市民に話しかける「対話フォーラム」をはじめた。軍事政権は記者会見を自由に開き、国営の新聞・テレビで自分たちの意見や宣伝を流すことができるが、NLDには自分たちの活動を伝える印刷物さえ許されない。 これが「解放」の実態なのだが、日本政府はそれを民主化進展のあかしととらえた。ヤンゴンの日本大使館関係者は、軍事政権による表現の自由の抑圧ではなく、スーチー氏がNLD書記長に復帰したことを「予想外の強硬な態度」と評した。彼らにとっては、日本のODA(政府開発援助)大綱に定められた基本的人権や自由の保障とは、この程度の意味しかもっていないようだった』、クーデター前でも「スーチー氏」の状態は、事実上の自宅軟禁だったようだ。「日本大使館関係者」の「基本的人権や自由の保障」の認識の浅さには改めて驚かされた。
・『「経済発展に民主化は不可欠」  スーチー氏が私のインタビューで最も強調したのは、「経済発展には民主化が不可欠」という点だった。軍事政権が進める市場経済化政策に応じて日本など外国からの対ミャンマー投資が増えていることについて、「国民の政治に対する信頼がなければ長期的に安定した経済発展は望めません」として、民主化運動のために闘いつづける決意をあらたにした。それなしには、経済開発は軍人を頂点とする一握りの特権層のふところを富ませるだけで、貧富の格差をさらに広げることになってしまうからだ。 彼女はまた、日本人ジャーナリストの私に問いかけるように言った。「日本人は、戦後の繁栄と平和がどうして達成されたかを忘れないでほしい。それは、軍国主義から解放されて民主主義を手に入れたおかげではないでしょうか」。そのような歴史認識が日本の政府と国民に定着しているなら、私たちの民主化運動を正しく理解してくれるはずではないか、という意味であろう。 彼女はそれ以上言わなかったが、その日本軍国主義は第二次大戦中にビルマ(ミャンマー)を侵略し、この国の人びとの命と土地、財産、文化を踏みにじったことをミャンマー国民は忘れていない。彼女の父アウンサンは、英国からの独立をかちとるためにはじめは日本軍の支援を受けながら、日本の敗色が濃くなった戦争末期に抗日蜂起に立ち上がった「独立の英雄」である。 スーチー氏はさらに、「ビルマも1960年代に軍部が実権を握るまでは、民主政治の下で、アジアで最も発展の早い国でした」と指摘した。 私は日本のODA再開決定をどう思うかとたずねた。 「日本政府はビルマの民主化の進展に応じて、という条件をつけているというが、私は真の民主化の進展を条件にしてほしい。私一人の釈放だけでは不十分です。経済援助や投資を個人のためにではなく、国民全体の利益にむすびつくかたちで進めてほしい」 こう答えた彼女は、欧米とは異なる日本の対ミャンマー援助をやんわり批判した。欧米諸国は人権と経済援助をからめる「北風」路線をとっているのに対して、日本は経済援助を段階的に増やしながら軍政に民主化の促進をうながしていく「太陽」路線の優位を主張していたが、スーチー氏は「太陽は暑すぎて快適ではありません。これ以上太陽が暑くなると着ているものすべて脱がされてしまいます」というのだ。 日本のODA再開が彼女の軟禁からの解放に貢献したかのような見方にも、スーチー氏は反発した。「だれが私の解放をもっとも助けてくれたかは、歴史が明らかにすることです。その歴史を、本当の民主化を進めていくなかで、私たちはつくっていきたい」』、「日本政府はビルマの民主化の進展に応じて、という条件をつけているというが、私は真の民主化の進展を条件にしてほしい。私一人の釈放だけでは不十分です」、「日本政府」への痛烈な批判だ。
・『なぜ『ビルマからの手紙』なのか  初対面の私がスーチー氏に対していだいた印象は、東南アジア各地の沼などでよく見かけるハスの花のイメージである。花は、凛として気品と優しさをたたえている。私はそのような美しい花を浮かべる水面の下がどうなっているのかを知りたくなった。 軍事政権や一部の日本人からは、欧米生活の長かった彼女には、自国の現実がよくわかっていないという批判が投げかけられていた。そのいっぽうで、欧米的な民主主義や人権の概念をあてはめ、彼女をミャンマー民主化の旗手にまつりあげる西側世論がある。だがそのような外部の一面的な見方だけでは、国民の圧倒的なアウンサンスーチー人気の秘密はわからない。でもかぎられたインタビューの時間では、その土壌がわからない。そこで私は、彼女に頼んでみた。 「ビルマの民主化を本当に理解するには、この国の歴史、文化、社会への多面的なアプローチが必要だと思う。それを毎日新聞にお書きいただけないだろうか」。彼女は「私もぜひ書いてみたい」と端正な顔をほころばせながら快諾してくれ、「ただ、いまはとても忙しいし、NLDの承認も受けなければなりませんので、正式の返事は2,3日待っていただけませんでしょうか」とのことだった。もちろん党のOKもでた。 こうして、スーチー氏の連載エッセイ『ビルマからの手紙』が11月末から週一回、毎日新聞の紙面を飾りはじめた。 私は、ミャンマー民主化運動の同時進行ドキュメントであるこの文章を日本の読者が読むことで、彼女たちの闘いを支援せよ、などと主張するつもりはなかった。また冷戦後の民主主義と人権の普遍性が強調される風潮のなかで、アウンサンスーチー=天使、軍事政権=悪魔といった安易な図式をあてはめて、アジアの隣人たちの闘いを論じることを避けたかった。「歴史の正しい証人」であることがジャーナリストの使命であるなら、まず言論の自由を奪われた国の人びとの声をできるだけ広く国際社会に伝えなければならない。民主主義の国の一員として享受している言論の自由を、その基本的権利を奪われた国の自由のために行使しなければならいだろう。その情報をどう判断するかは、読者にまかせればよいことである。 毎日新聞は日本語の新聞だが、スーチー氏の原文は英語なので、英語版のザ・デイリー・マイニチに掲載された"Letters From Burma"が目にとまれば、国際的な情報ネットワークをつうじてなんらかの形で世界にも流れる可能性があるだろう。連載開始後、まずAPなどの西側通信社が連載のなかからニュース性の高い情報をとりだして<東京発>で世界に配信しはじめた。ミャンマーの民主化運動を支援している日本の市民グループがザ・デイリー・マイニチの英文をインターネットで世界の市民ネットワークに流しはじめた。米国最大の独立系ニュース・シンジケート「ユニバーサル・プレス・シンジケート」がアジア、欧州、米国、中南米の新聞、雑誌に同時掲載する契約を申し出て、世界15か国で同時掲載されるようになった。 『手紙』のミャンマー国内への持ち込みは難しかったが、在日ミャンマー人の民主化支援グループがビルマ語に翻訳し、自分たちの発行する週刊紙に載せて、1988年のクーデター後に世界に逃れた同胞や、軍事政権に追われてタイ国境の難民キャンプで暮らすビルマ人やカレン人に送った。米国の「自由アジア放送」は、毎日1時間のビルマ語番組で『手紙』を流しはじめた。英国のBBCが『手紙』の一部を放送する計画との知らせも入った。タイの英字紙、タイ語週刊誌からの転載申し入れもつづいた』、「スーチー氏の連載エッセイ『ビルマからの手紙』については、初めて知ったが、毎日新聞としては大ヒットだったろう。
・『日本政府は軍政の「共犯者」  ところが、『ビルマからの手紙』に対する日本政府の反応は驚くべきものだった。池田行彦外相は「スーチーさんは外国ばかりでなく自国民にももっと直接話しかけたらどうか」と、彼女の国の現実を無視した、民主主義国の外相としての見識を疑わせるような発言をした。この拙文の冒頭にあげた「日本政府は今度こそ民主化支援を惜しむな」ですでにあきらかにしたように、外務省は「日本・ミャンマー関係がこじれる。ひいては日中関係にも悪影響を及ぼす」と、再三にわたって毎日新聞に連載の中止を要請してきた。木戸湊編集局長は「『毎日』は民主主義を大切にする新聞である」と言って、彼らの要求を突っぱねた。駐日中国大使館員もパーティーなどで木戸と顔を合わせると、『手紙』に難癖をつけてきたという。ミャンマー大使館はザ・デイリー・マイニチに例年出していた広告の引き下げを通告してきた。軍事政権はしばらくして、「アウンサンスーチーは米国のCIAと日本の毎日新聞から資金提供をうけている」と発表した。 日本政府のミャンマーとの関係とは、軍事政権とのものでしかなく、国民は視野に入っていなかった。外務省は、民主主義の否定という点では軍政と「共犯者」といっても過言ではなかった。そしてこの体質は、現在にいたるまで基本的に変わらなかった。 軍政が国際社会からどのような批判を浴びる仕打ちを自国民に繰り返そうと、日本政府はつねに民主化運動を弾圧する側に寄りそいつづけた。1988年の民主化運動を今回のクーデター後とおなじように市民への無差別銃撃によって血の海に沈めたあと、90年の総選挙の結果を尊重する公約しながら、ふたを開けてみるとNLDの圧勝という結果になると、公約を反故にして権力の座に居座りつづけた非合法政権に対して、である。そして、2020年11月の総選挙でまたNLDが圧勝すると、国軍はクーデターで国民の圧倒的支持を得た合法政権を葬ろうとした。クーデターに反対する「市民不服従運動」が全国的な高まりを見せると、国軍はなりふり構わず子どもたちにまで発砲をつづける。 ミャンマーの悲劇に一刻も早く終止符を打たねばならないとする国際世論をうけて、米国、EUなどの政府は国軍への制裁措置をつぎつぎに打ち出している。日本政府は同盟国米国の顔色をうかがいつつ、国軍とのしがらみを断ち切れないまま、「われわれは民主化をもとめるミャンマー国民の側に立つ」との明確な意思を打ち出せず右往左往するだけである。 「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」とは、マルクスの有名な言葉である。ミャンマーの国軍は、自国民を悲劇に陥れる蛮行を繰り返そうとして、「王様は裸である」と叫ぶ圧倒的多数の国民の声に耳をふさぐ喜劇の主人公を演じている。王様の親友であることで「民主主義国」という自らの看板を汚す悲喜劇を演じてきた日本政府は、いつまで国際社会の物笑いとなるような役回りをつづければ気がすむのだろうか。 *この記事は、日刊ベリタからの転載です』、「池田行彦外相」や「外務省」が毎日新聞に圧力をかけるとはとんでもないことだ。「日本政府のミャンマーとの関係とは、軍事政権とのものでしかなく、国民は視野に入っていなかった。外務省は、民主主義の否定という点では軍政と「共犯者」といっても過言ではなかった。そしてこの体質は、現在にいたるまで基本的に変わらなかった」、情けなく、国際的にも恥ずかしいことだ。

次に、4月12日付けYahooニュースが掲載した弁護士で国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子氏による「市民を虐殺するミャンマー国軍。日本政府・企業は軍と国民、どちらに立つのか?」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/itokazuko/20210412-00232215/
・『エスカレートする国軍(ミャンマーのクーデター後、国軍の暴力がエスカレートしています。 国軍の虐殺で、すでに子どもや若者を含む700人以上が犠牲になっていると報じられています。 国軍はこれまで少数民族であるロヒンギャやカチンにも残虐行為の限りを尽くしてきましたが、今や抵抗するすべての者を標的にしています。 10日にはバゴーで、軍が80人を超える住民を虐殺したと報じられています。 (ミャンマーメディアの「ミャンマー・ナウ」は10日、中部の古都バゴーで9日に治安部隊がデモ隊を攻撃し、市民82人が死亡したと報じた。治安部隊は機関銃や迫撃砲など戦闘用の武器を使用したという。現地では夜間の電力供給が遮断された。多数が行方不明との情報もある。死者数がさらに膨らむ恐れもある。日経)  そもそも軍のクーデターは合法性が認められず、権力行使はいかなる正当性もありません。 そして、あろうことか市民に対し、機関銃や迫撃砲など戦闘用の武器を使用するなど、「治安維持」によって正当化される範疇ではありません。 民間人に対する軍の攻撃は、国内の事態であっても「戦争犯罪」に該当するのであり、国軍の行為は国際法上いかなる観点からも擁護できるものではありません。 軍は、抗議活動を行う市民らを念頭に「木を育てるためには、殺虫剤をまいてでも雑草を根絶やしにしなければならない」と述べたとされ、さらに強権的な弾圧で人々を犠牲にする可能性が高いと言えるでしょう。事態は甚大です。 なぜそれでも戦うのか。 こうしたなかでも、驚くべきことに市民は屈することなく、抗議行動を続けています。殺されるかもしれないのに、なぜ、巨大な敵に挑むのか。 2016年の「民主化」まで、ミャンマーは軍事独裁政権下で、人々は自由のない暗黒の時代を耐え忍んでいました。ようやく民主化と自由を手に入れたいま、絶対に暗黒時代に後戻りしないという固い決意があるのです。特に、Z世代と言われる若者が強い意志で立ち上がっています。 しかし、象とアリのようなミャンマーの市民の戦いで市民が勝利するには、国際的な支援が必要です』、「9日に治安部隊がデモ隊を攻撃し、市民82人が死亡したと報じた。治安部隊は機関銃や迫撃砲など戦闘用の武器を使用したという」、国民に「戦闘用の武器を使用」、国軍が国民に対し残虐行為をするとは信じ難い。市民の側は「ようやく民主化と自由を手に入れたいま、絶対に暗黒時代に後戻りしないという固い決意があるのです。特に、Z世代と言われる若者が強い意志で立ち上がっています」、よくぞやるものだと頭が下がる。
・『曖昧 問われ、失望される日本  特に、ミャンマーに影響力の強い日本の行動は問われています。 「日本政府は国軍と国民どちらの立場に立つのか?」 4月2日に議員会館で開催された院内集会で、在日ミャンマー人の若者は日本政府に強く迫りました。 外務省は、クーデター後、以下のような声明を公表して国軍を批判しています。 平和的に行われるデモ活動に対して実弾が用いられることは断じて許されません。日本政府は、ミャンマー国軍が、市民に対する暴力を直ちに停止し、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問を始めとする被拘束者を速やかに解放し、民主的な政体を早期に回復することを改めて強く求めます。 しかし、日本の態度は、「口だけ」と批判されています。具体的には何をしているのか、しようとしているのか。 在日ビルマ人とヒューマンライツ・ナウは3月、連名で、日本政府に対し公開質問状を出し、4月2日にその回答が示されました。 しかし、その内容は極めてあいまいなもので、在日ミャンマー人を絶望させるものでした。 例えば、 質問4.日本政府は2020年総選挙によって国民に選ばれていた国会議員らによって構成される連邦議会代表委員会(CRPH)を、ミャンマー国の正式な国家機関として認めているか。認めないとするならその理由は何か。 回答: 〇我が国としては、ミャンマー国軍に対して、①民間人に対する暴力の即時停止、②拘束された関係者の解放、③民主的な政治体制の早期回復、の3点を強く求めてきている。 〇ミャンマー側とは、様々な主体とやり取りを行い、また、働きかけをしてきているが、その具体的内容については、現地の情勢が緊迫する中で、今後の対応や関係者の安全に影響を与え得るためお答えを差し控えたい。 この点は、質問に対する答えになっていません。ミャンマー側とは、様々な主体とやり取りを行い、また、働きかけをしてきている、などとしていますが、違法なクーデターをしている軍を正式な交渉相手として認めることは一切あってはならないはずです。 アウンサンスーチー氏が率いる与党NLDの議員らは、クーデター後、「連邦議会代表委員会(CRPH)」を結成しました。市民の支持を得て活動しており、正当な政府としての承認を求めています。 日本はクーデターを認めない証として、CRPHを正式な代表と認め、交渉をすべきです。 では、今後具体的に何をするか、についても質問に答えません。 質問10.ミャンマー国内では市民の反中感情が高まっており、不買運動も展開されるなど、国軍が中国に頼れば更なる反発を受ける状況にあるとされる。日本政府が国軍に対して、非武装の市民への実力行使について、経済制裁を含む強く非難するメッセージを送ることで、国軍が中国を頼ることになるとの根拠は何か。国軍との「独自のパイプ」があり、一定の信頼関係があるのであればこそ、日本政府が、国軍の過ちを正し、民主主義の回復に向けた変化を促す強いメッセージを発信するべきではないか。 回答:〇我が国は事案発生当日から、ミャンマー国軍に対して、①民間人に対する暴力の即時停止、➁拘束された関係者の解放及び③民主的な政治体制の早期回復を強く求めてきている。3月28日にも、外務大臣談話においてミャンマーで多数の死傷者が発生し続けている状況を強く非難した。 〇その上で、制裁を含む今後の対応については、事態の推移や関係国の対応を注視し、何が効果的かという観点から検討していく。 すでにクーデターから2か月が経過し、700人も貴重な命が奪われたのに、いまだに「制裁を含む今後の対応については、事態の推移や関係国の対応を注視し、何が効果的かという観点から検討していく」 つまりまだ検討中だというのは怠慢ではないでしょうか?口だけだと言われても仕方がないでしょう。 さらに、あまりに誠意がないのがこの回答です。 質問11.国際協力機構(JICA)が現在実施している対ミャンマー政府開発援助(ODA)事業や、国際協力銀行(JBIC)や海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)がミャンマー関連で現在融資・出資している事業について、国軍の資金調達の支援に繋がっているとの指摘がある。このような指摘に対し、日本政府は、人道目的のものを除く全ての支援・事業をいったん停止した上で、国軍と関連する企業が事業に関与していないか、または、事業の実施が国軍に経済的利益をもたらしていないかという点について事実調査を実施しているか。実施しているとすればその調査結果を公表するか。実施・公表しないとすればその理由は何か。 回答:〇日本政府は、事業の円滑な実施のため、必要に応じ、各関係機関等と連携しつつ、御指摘の点について適切に確認をしている。 「適切に確認をしている」とはいったい何を意味するのでしょうか? 国軍の資金源となるプロジェクトを継続することは、人権弾圧や虐殺を助長するものです。国軍や関連企業に関わるODA事業はすべて凍結するべきであり、漫然と資金供与を続けることは、共犯になることにほかなりません。 ところが、このように重要なことに対し、イエスともノーとも答えない、これではミャンマーの人たちが愕然とするのも当然です』、「国軍の資金源となるプロジェクトを継続することは、人権弾圧や虐殺を助長するものです。国軍や関連企業に関わるODA事業はすべて凍結するべき」、その通りだ。
● 日本政府がいますべきこと  在日ミャンマー人の若者は、「国民が毎日殺され、放火されている。どうかミャンマー国民を助けてほしい」と切実に訴えました。 違法なクーデターに基づき権限行使する軍の行動はそもそも合法性がないうえ、住民虐殺という戦争犯罪に該当する行為を行っている軍の行為が明らかにレッドラインを超えていることは明らかです。CRPHが国軍を「テロ団体」とみなすことを国際社会に訴えており、これはうなづけます。こうしたなか、日本は「軍とのパイプ」を理由に軍と話し合って解決する宥和路線を取るべきではありません。 日本政府には、 1 CRPHを正式なミャンマーの代表と認め、軍による政権掌握を一切承認しないこと、2 軍に利益をもたらす経済援助を一切やめること  がいまこそ求められています。さらに、3 欧米諸国とともに、ミャンマー国軍関係者や国軍系企業(米国の制裁対象はミャンマー・エコノミック・ホールディングス・リミテッド(MEHL)と、ミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)など)に対し、ターゲット制裁を発動したり、軍の資金源となっている主要な産品の取引を制限するなどの措置を真剣に検討すべきでしょう』、同感である。
● 企業も軍系企業との取引を断つべき  政府だけではありません。ミャンマーに進出し、ミャンマー国軍系企業と深い取引関係にある日本の著名企業が存在します。クーデター前から国軍がカチン、ロヒンギャなどの少数民族への人権侵害を尽くしていたため、その軍とつながりの深い日本企業は国際的にも問題視されてきました。 しかし、いまや軍の暴力が可視化され、犠牲が増え続けるなか、これ以上取引関係を続けることは人権侵害に資金提供しているようなものです。血塗られたビジネスをこれ以上続け、軍の資金源となり続けるかが問われます。 ヒューマンライツ・ナウは4月5日付で調査報告書を公表、特に深刻な影響のあるミャンマーでの事業とこれに関連している日本企業を公表しました。 関連している企業は、東芝、小松製作所、キリンホールディングス、TASAKI、KDDI、住友商事、Yコンプレックス事業(東京建物 、 オークラ、みずほ銀行 、三井住友銀行、 JOIN 、フジタ) です。 これら企業も、を貫くのでなく、説明責任を果たし、軍に資金を提供し、軍を利するような事業は一切手を引くべきです』、「キリン」が態度表明したが、他は「沈黙」を続けており、態度を明確化すべきだ。
● 市民を応援するために  ミャンマーで起きていること、それは日本と無縁ではありません。もし、日本が欧米その他、ミャンマーの市民を応援する側に加わり共同歩調を取れば、クーデターを失敗に終わらせることができるかもしれません。 日本政府や日本企業の行動次第で事態は変わり得ます。 表面だけ軍を非難しても何ら行動しなければ、それは、命懸けで戦うミャンマー市民を見殺しにすることにほかなりません。 政府と企業には、言葉だけでない明確な態度、クーデターに抵抗する市民の側に立つ覚悟と明確な行動が求められます。 私たちも心を痛めてニュースを見守るだけでなく、政府と企業に責任ある行動をとるよう声を上げることができます。ミャンマーの人たちは私たちのそうした行動を切望し、注視しています。(了)』、同感である。

第三に、4月13日付けNewsweek日本版「ミャンマー市民が頼るのは、迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/04/post-96059_1.php
・『<国際社会に幻滅した市民らが一縷の望みを託す「少数民族連合軍vs国軍」の構図。当事者たちが語るその可能性> 国軍による弾圧が激しさを増すミャンマー(ビルマ)で抵抗手段を奪われた国民たちは今、少数民族の軍隊と国軍との全面戦争を求め始めている。かつては敵視すらしていた少数民族を救世主扱いするほど期待は高いが、どれくらい現実味がある戦略なのか。ミャンマーのエリート軍家系出身で民主活動家のモンザルニ、少数民族であるカチン民族機構(KNO)ロンドン本部のクントイラヤン事務局長、在日ビルマ・ロヒンギャ協会のゾーミントゥット副代表の3人に、本誌・前川祐補が聞いた。 Q:少数民族軍連合vs国軍という対立構図が浮上した経緯を教えてほしい。 モンザルニ:デモを行っていた市民らは当初、諸外国からの外圧を期待していた。軍事的圧力でなくとも、国軍が弾圧から手を引くような効果的な懲罰を求めていた。だが(アメリカなどが部分的に制裁を発動したものの)ミャンマー国民を満足させるような動きは起きていない。国軍への制裁を決議できなかった国連安全保障理事会も含めて国民は外圧に幻滅し、よりどころを少数民族の軍隊にシフトさせた。国民の中には少数民族軍を救世主と呼ぶ者もいる。 クントイラヤン:われわれカチン族は都市部でのデモ弾圧とは別に国軍から攻撃を受け、彼らを返り討ちにした「実績」もあった。 Q:少数民族軍の連合はどのように形成されるのか。 モンザルニ:1つは、「統一政府」の樹立を目指す民主派議員らで構成する連邦議会代表委員会(CRPH)が、少数民族の軍隊を「連邦軍」として取りまとめる方法だ。だが、少数民族側はCRPHの中心にアウンサンスーチーや彼女が率いる国民民主連盟(NLD)を据えることに対して非常に否定的だ。彼らはクーデターを防ぐこともできず、その後の対応でも失敗したからだ。CRPHは国民の支持を得ているが、将来的な政府組織においてスーチーとNLDの影響力をどれだけ排除できるかがカギになる。 クントイラヤン:少数民族の間では、CRPH憲章は現在の憲法から国軍の議会枠(国会議員定数の4分の1は軍人)を定めた条項を取り除いただけ(つまりNLDの影響力が色濃く残る)との批判が多い。私たちはこれまで少数民族に差別的だった「ビルマ人愛国主義者」たちへの警戒を解いておらず、NLDに対する不信感も根強い』、主要な「少数民族」「代表者」の見解とは興味深い。「私たちはこれまで少数民族に差別的だった「ビルマ人愛国主義者」たちへの警戒を解いておらず、NLDに対する不信感も根強い」、確かにこれまでの経緯も無視できないだろう。
・『Q:統一政府の将来像は時間のかかりそうな議論だ。CRPHと少数民族の交渉がまとまらなければ全面戦争のシナリオは消える? モンザルニ:そうでもない。既にCRPHを抜きにした少数民族による「連合軍」構想が持ち上がっている。実際、シャン州軍の創設者であるヨートスックが、ワ州連合軍などと共に独自の連合軍の立ち上げを呼び掛けている。 クントイラヤン:CRPHが少数民族の要求を断ったところで軍事的には空っぽの政府組織が生まれるだけだ。連邦軍は構想段階だが、カチン族だけでなくカレン族の居住地域を含めて局地的には既に戦いが始まっている。 ゾーミントゥット:国民は、これまでさげすんできたアラカン・ロヒンギャ救世軍ですら歓迎している。CRPHがどう判断するかは分からないが、何らかの形で内戦が始まるのは不可避だと思う。 Q:「連邦軍」であれ「連合軍」であれ、国軍と対峙する軍事力はあるのか? モンザルニ: 少数民族の武装勢力は最大で14ほどが参加し得るが、それでも「通常の戦闘」を想定するなら国軍を打ち破ることは難しいだろう。兵力の差は数字以上に大きい。 だが少数民族軍の戦略はいわゆるpositional war(陣地戦)ではなく都市型ゲリラ戦だ。例えばヤンゴンには軍事訓練を受けた「見た目は普通の人」が数千人もいるとされる。彼らは特定の日時に集まり、標的とする軍事施設に攻撃を加える準備ができている。連合軍の戦いは内戦と言うよりは革命抗争だ。革命軍はたいてい武器に乏しく兵士の数も少ない。キューバ革命の時、フィデル・カストロはわずか82人の同志を率いて革命抗争を始めた。数の比較で戦闘を考えると展望を見誤る。 クントイラヤン:ミャンマーの内戦にアメリカが軍隊を派遣することはないだろうが、資金提供やロジスティクスなどの側面支援は交渉可能なはずだ。それができれば、カチンやカレンの軍隊は地上戦で国軍をしのぐことができる。「統一政府」の議論がまとまらないにせよ、国軍による虐殺を止めるためにCRPHの国連大使に選ばれたササは早急に欧米諸国へ支援要請をするべきだ』、「少数民族軍の戦略はいわゆるpositional war(陣地戦)ではなく都市型ゲリラ戦だ。例えばヤンゴンには軍事訓練を受けた「見た目は普通の人」が数千人もいるとされる」、それでも「キューバ革命」を引き合いに出すのは無理がある。「「統一政府」の議論」がまとまってほしいものだ。
・『Q:少数民族はこれまで差別や迫害を受けてきた。少数民族の軍隊に期待する国民は今だけ軍事力にすがり、後で裏切るという懸念はないのか? ゾーミントゥット:今回のクーデターに対して抵抗を続ける中心はZ世代と呼ばれる若者世代だ。彼らは1988年のクーデターを戦った当時の若者世代とは違い、教育水準も高く多様性に対して寛容だ。実際、クーデターが勃発してからこんなことがあった。ある商業系と医科系の大学の学生自治会が、過去のロヒンギャ弾圧に対して公に謝罪声明を発表したのだ。虐殺を知りながら声を上げなかったことへの謝罪だ。自らも軍の弾圧の犠牲者となって初めてロヒンギャの置かれた状況を知ったからなのかどうか経緯は分からないが、彼らの謝罪は誠実なものと受け止めている。 (編集部注:CRPHで広報担当も務めるササはCRPHの国家構想でロヒンギャを国民として認めると4月9日の記者会見で断言した) クントイラヤン:同じ思いだ。繰り返すが、われわれ少数民族はこの状況下でも愛国主義的ビルマ人への警戒心は強い。それでもZ世代への期待は大きい。弾圧を受け行き場を失った若者世代は今、少数民族軍を支持するだけでなく自ら参加しようとしている。実際、カチン軍は彼らに対する軍事訓練を行っており、(カチン)軍幹部の話によれば訓練し切れないほどの若者たちが集まっている。 Q:周辺国は内戦に対してどう反応するだろうか? モンザルニ:中国、インド、タイがその中心だが、彼らは基本的にミャンマー国軍を支持しているので懸念するだろう。だが彼らはあくまで勝ち馬に乗るはずだ。今のところ国軍に賭けているが、「革命抗争」で少数民族軍連合やCRPHが優位な立場になれば、考えを変える可能性はある。周辺国とミャンマー国軍の関係に定まった「方程式」は存在せず、流動的だ。 クントイラヤン:カチン族の主な居住地域は中国と国境を接しているが、今回の騒乱はカチン族が引き起こしたのではない。中国がミャンマーで安定した経済活動を行いたいのなら、彼らが国軍を支援し続けるのは得策でないはずだ。 モンザルニ:CRPHは「連邦軍」構想を進めると同時に、国軍に影響を及ぼす中国に対して立場を表明するべきだ。つまり、CRPHは中国を重要な国家として認めると。その上で、現在の国軍に対する無条件の支援をやめるよう求めるのだ。中国が応じなければ、世論の圧倒的支持を受けるCRPHが実質的な政権を取ったときに、ミャンマーはアメリカや日米豪印らで構成するクアッドに強く傾倒し、中国がこれまでミャンマーで進めていた石油のパイプライン事業をはじめとする経済活動が思うようにいかなくなるという「警告」も忘れずにだ』、「CRPHは中国を重要な国家として認めると。その上で、現在の国軍に対する無条件の支援をやめるよう求めるのだ」、なかなか面白そうな戦略だ。
・『Q:内戦や革命抗争はミャンマーにとって本当に望ましいシナリオなのだろうか? モンザルニ:望ましいシナリオでもなければ、最も前向きな目標でもない。だが今のミャンマーには連邦軍(やその他の連合軍)構想以外にいいシナリオがない。国民はデモに参加しようが家でおとなしくしていようが殺されている。5400万人の国民が人質になっているというのが現実で、「向こう側」を殺すしかないという機運が高まっている。 クントイラヤン:今の状況を変えるためには、国民は国軍に対して強いメッセージを出す必要がある。軍幹部らに対して弾圧から手を引くことを促すような、強固な心理戦を展開する必要がある。少数民族連合軍による「宣戦布告」はその意味で強いメッセージになる。軍幹部が動じずとも、兵士らを可能な限り多く投降させることができれば弾圧を弱める効果は期待できる。 モンザルニ:投降した兵士らを受け入れる新しい軍組織がなければ、ミャンマーはサダム・フセイン亡き後のイラクになり、兵士らは過激派イスラム組織「イスラム国」(IS)のようになってしまう。その意味でも連邦軍は必要だ。 ゾーミントゥット:革命抗争は起きた後の状況が懸念されるが、不可避だと思う。そのなかで望むとすれば、CRPHはできるだけ構成民族に共通認識を持たせてほしい。 Q:非常に複雑な思いだ。 モンザルニ:それは私たちも同じだ。残念ながら、どんな道を選んでもミャンマーを待つのは血まみれの未来だ。 【関連記事】スー・チー拘束でも国際社会がミャンマー政変を「クーデター」と認めたくない理由  ジェノサイドで結ばれる中国とミャンマーの血塗られた同盟』、「投降した兵士らを受け入れる新しい軍組織がなければ、ミャンマーはサダム・フセイン亡き後のイラクになり、兵士らは過激派イスラム組織「イスラム国」(IS)のようになってしまう。その意味でも連邦軍は必要だ」、同感である。

第四に、4月27日付けPRESIDENT Onlineが掲載した東京外国語大学教授の篠田 英朗氏による「日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/45524
・『ミャンマー情勢が緊迫している。欧米諸国が経済制裁などに動く一方、日本政府の動きは鈍い。東京外国語大学の篠田英朗教授は「ミャンマー問題は、さまざまな日本の外交問題を照らし出している。日本の外交スタイルは世界標準からかけ離れている」と指摘する――』、「日本の外交スタイルは世界標準からかけ離れている」とは痛烈な批判だ。
・『強調される「独自のパイプ」とは何なのか  緊迫するミャンマー情勢に直面し、歯切れの悪い日本外交の姿が露呈している。「日本はミャンマーに独自のパイプがある」といった、言語明瞭・意味不明の言説が頻繁に語られている。しかし2月1日のクーデター勃発から3カ月がたち、これらの言説に実行が伴っていないことは明らかになってきている。そもそもこれらの言説は、具体的にはいったい何を意味しているのか。 4月9日に、駐ミャンマーの15大使が共同声明の形で公表したミャンマー軍を非難する共同声明に、日本は加わらなかった。アメリカの同盟国で加わらなかったのは、日本と、エルドアン大統領のトルコやドゥテルテ大統領のフィリピンくらいであった。 「日本は軍の利益になる援助を止めろ」、といった国内外からの声に対して、日本の外交当局が「対応は検討中です」とだけ述べて、あとはじっと無言で耐え続ける、という図式が続いている。茂木外相が「北風がいいか、太陽がいいか」といったナゾナゾのようなことを国会答弁で述べたことは、日本の奇妙な外交スタイルとして国際的にも広く報じられた。 こうしたすっきりしないやり取りの中で頻繁に語られているのが、「パイプ」という謎の概念だ。日本の外交当局が「パイプ」なるものに異様なまでのこだわりを見せている。しかしそれが何なのかは、一切語ろうとはしない。 いったい「パイプ」とは何なのか。 ここでは「金」の面から、日本が持つ「パイプ」について考えてみたい』、「何なの」だろう。
・『「援助」と言いつつ実態は「投資」  日本のメディアは、同じ情報源から聞いてきたことをそのまま各社が引用しているかのように、「日本はミャンマーに巨額の援助をしているので影響力がある」、と伝え続けている。残念ながら、そのような報道は海外メディアでは見ることがない。日本の存在は、上述の「北風か太陽か」自問自答のように茶化されたりする文脈で報道されることはあっても、真面目にミャンマー軍に影響力を行使できるパワーとしては扱われない。 実際に、日本がミャンマー軍に影響力を行使しているような様子は全く見られない。それでは、どれだけ日本のメディアが日本において日本語で日本人向けに「日本は影響力がある」と主張してみたところで、海外では全く相手にされていないのは仕方がない。 (図表1 ミャンマー向け有償資金協力例はリンク先参照) なぜなのか。その理由は、援助の中身を見れば、推察できる。日本は毎年1000億円を超える額のODAをミャンマーに投入し続けているが、そのほとんどは円借款である。これはつまり投資である。これは0.01%の40年償還という好待遇であるとはいえ、貸付金である。他の東南アジア諸国のように経済発展が進むと、円借款の金額は返還されてきて、むしろ日本は利息分の利潤すら得ることになる』、「毎年1000億円を超える額のODAをミャンマーに投入し続けている」、こんなにも「投入」しているとは、初めて知った。
・『「アジア最後のフロンティア」の夢  日本はミャンマーを「アジア最後のフロンティア」と見込んで、官民一体になったいわば旧来型の護送船団方式の経済進出を行ってきている。円借款を実施するプロジェクトを日本企業に受注させ、それを梃子にして日本が抱え込んでいる経済特区に集中的に日本企業を進出させる、といった具合である。それがミャンマーに対する戦略的計算だけでなく、他の東南アジア諸国における成功モデルの再現を期待する経済的願望による行動でもあることは当然だろう。 果たしてこの護送船団方式のODAを媒介にした経済進出は成功したのか。実情としては、まだ成果が出ていない。日本が集中的に進出した「ティラワ経済特区」を例に取れば、多数の企業の進出に耐えられるインフラの不足が解決されておらず、電力網の整備などを日本のODAを通じて実施している段階だ。当然ながら、数千億円にのぼる貸付金は、まだ全く返還されてきていない』、「護送船団方式のODAを媒介にした経済進出は成功したのか。実情としては、まだ成果が出ていない」、今回のクーデターも踏まえると、返済は難しくなりそうだ。
・『2013年には4000億円の債務を帳消しに  実は日本ほどではないとはいえ、他の諸国も、2011年の民主化プロセスの開始後、ミャンマーに対する援助額を増加させてはいた。他国と同様に、軍政期には援助額を停滞気味にさせていた日本は、他を圧倒するようなODAの増額を果たすために、それまで累積していたミャンマー向けの貸付金を一気に帳消しにするという作戦に出た。多額の未払金が残ったままでは、新規の援助の大幅増額が困難だったからだ。 そこで2013年に、約2000億円の債権放棄を行った。さらに手続き上の理由から債権放棄ができなかった約2000億円について、同額の融資を一気に行い、それを原資にして即座の名目的な返還を果たさせるという離れ技まで行った。 つまり日本政府は、ミャンマーで焦げ付いていた約4000億円の貸付金を、日本の納税者に負担させる形で一気に帳消しにして、さらなる融資の工面に乗り出した。それもこれも全て、ミャンマーを「アジア最後のフロンティア」と見込んだ経済的願望があればこそであった』、「ミャンマーで焦げ付いていた約4000億円の貸付金を、日本の納税者に負担させる形で一気に帳消しにして、さらなる融資の工面に乗り出した」、初耳だが、「日本政府」も説明責任をきちんと果たすべきだ。
・『軍部を擁護してきたかいはあったのか  その後もODAという名目でミャンマーに貸し付けた資金は回収されていない。むしろ今回の事件で回収が困難になってきたという印象は否めない。そもそも市民を殺戮してまで権力にしがみつくミャンマー軍幹部が、日本から借りたお金をコツコツと返却するために努力するような人物であるようには見えない。借金は返還できなければ、以前のように踏み倒すだけだろう。 国家と国家の間の貸し借りで、返還がなかったからといって、差し押さえなどの措置を取ることはできない。日本ができるのは、市民に銃を向けて殺戮している虐殺者たちに、ただただひたすら返金をお願いする陳情をすることだけだ。それどころか、以前にように、新たな融資でとりあえず名目的に補塡ほてんさせるしか手がないなどといったことになれば、再び日本の納税者を借金地獄に引き込むしか手がなくなるだろう。 現在、ミャンマー軍幹部に標的制裁をかけている欧米諸国に対して、日本では「欧米はミャンマーと付き合いが浅いから簡単にそういうことができる」といった言い方をする方が多い。しかしこれは見方を変えれば、ミャンマー軍が権力を握り続けた民主化プロセスに懐疑的だった欧米諸国に対して、事あるごとにミャンマーを擁護する立場をとり続けてきた日本のリスク管理の甘さが問われている事態だとも言えるわけである。 このような事情を持つ「金」で成立している「パイプ」を、いかに日本人が日本国内で日本語で日本人向けに誇示しようとも、国際的には同じようには認められないのは、致し方のないところもある』、日本のマスコミや野党が外務省の説明を鵜呑みにしているのも、情けない。もっと実態を明らかにすべきだ。
・『在日ミャンマー人が「日本ミャンマー協会」前でデモをする意味  現在、日本にいるミャンマーの人たちを含む人々が、「日本ミャンマー協会」の前でデモを行ったりしている。市民を虐殺している軍を利する「パイプを断て」、と要請している(*1)。 「日本ミャンマー協会」とは何か。同協会の会長である渡邉秀央氏は、ミャンマー軍との間に特に「太いパイプ」を持ち、軍司令官であるミン・アウン・フライン氏とも過去に24回会っているという緊密な関係を続けている。渡邉氏がキーパーソンなのは、日本のODA業界にミャンマー向け巨額円借款の恒常化を実現した人物だからだ(*2)。 元郵政大臣である渡邊氏は、当然ながら日本のエスタブリシュメント層に「太いパイプ」を持ち、日本ミャンマー協会の役員には、政・財・官界の大物がずらっと並ぶ。「最高顧問」の麻生太郎副総理をはじめとする大物政治家のみならず、ODA契約企業リストにも登場する財閥系の企業名が目立つ(*3)。 仮にミャンマー向けの円借款が焦げ付いて日本の納税者が負担を強いられるとしても、契約企業が損失を受けるわけではない。これに対して、ミャンマー軍が市民を虐殺しているからといって実施中のODAまで止めてしまっては、これらの迷惑をかけてはいけないところに多大な迷惑がかかってしまう。日本の外交当局が「対応策を慎重に検討する」のも無理もないということは、こうしたリストを見るだけでも容易に推察できるだろう』、「ODA]が「契約企業」の既得権になってしまい、「ミャンマー」との交渉材料に使えないのも逆立ちした話だ。
・『「選挙は公正だった」となぜ言えないのか  なお在日のミャンマーの方々を含む人々は、日本財団ビルの前でもデモを行ったりする。「ミャンマー国民和解担当日本政府代表」の肩書も持つ笹川陽平氏が、同財団の会長を務めているからだ。笹川氏は、日本政府代表として、日本政府の予算で、昨年11月のミャンマー選挙の監視団を率いた。選挙直後こそ、選挙は公正に行われた、と発言していた。しかしミャンマー軍が「選挙には不正があった」と主張してクーデターを起こしてからは、沈黙を保っている。 デモをしている人々は、「せめて選挙は公正だったので、クーデターは認められないと発言してほしい」と懇願しているのだが、笹川氏は反応していない。言うまでもなく、笹川氏も、ミャンマーに深く関わる日本社会の大物だ』、「笹川氏は、日本政府代表として、日本政府の予算で、昨年11月のミャンマー選挙の監視団を率いた」、のであれば、「クーデターを起こしてからは、沈黙を保っている」というのは卑怯で、責任の放棄だ。
・『「パイプ」の論理にだけ身を委ねていいのか  日本は、ミャンマー軍幹部らと「パイプ」を持つ。ただそれを、外交官が秘密の外交術で特殊技能を発揮して海外で作り出したパイプ、といったふうに勝手にロマン主義的に捉えるとすると、状況を見間違えるかもしれない。「パイプ」は、個々の外務省職員のような存在を超えて、日本国内各所に「金」とともに太く縦横無尽に伸びている。「パイプ」とは、個々の外交官が、個人的意見で論じていい政策論を超えたものなのである。 だが果たして、だからといって「パイプ」の論理にだけ身を委ねていれば、日本は絶対に安泰だろうか。日本の納税者が不当に損をする事態は絶対発生しない、と保証している人物がどこかにいるだろうか。 ミャンマー問題は、さまざまな日本の外交問題を照らし出している。旧来型の護送船団方式のODAの「パイプ」のあり方も、その問題の一つであろう。 (*1)東洋経済ONLINE「沈黙する『日本ミャンマー協会』が抗議浴びる訳」(尾崎孝史、2021年4月22日) (*2)ロイター「特別リポート:急接近する日本とミャンマー、投資加速の舞台裏」(2012年10月5日) (*3)「日本ミャンマー協会 役員名簿」』、いい加減な「パイプの論理」などに惑わされないよう、「ODA]のあり方を原点から見直すべきだ。
タグ:ミャンマー yahooニュース PRESIDENT ONLINE Newsweek日本版 伊藤和子 (その4)(繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇、市民を虐殺するミャンマー国軍 日本政府・企業は軍と国民 どちらに立つのか?、ミャンマー市民が頼るのは 迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望、日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠) 永井浩 「繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇」 ミャンマー軍に対する厳しい制裁に踏み切れない日本政府は軍政の「共犯者」だ クーデター前でも「スーチー氏」の状態は、事実上の自宅軟禁だったようだ。「日本大使館関係者」の「基本的人権や自由の保障」の認識の浅さには改めて驚かされた。 「日本政府はビルマの民主化の進展に応じて、という条件をつけているというが、私は真の民主化の進展を条件にしてほしい。私一人の釈放だけでは不十分です」、「日本政府」への痛烈な批判だ スーチー氏の連載エッセイ『ビルマからの手紙』については、初めて知ったが、毎日新聞としては大ヒットだったろう 「池田行彦外相」や「外務省」が毎日新聞に圧力をかけるとはとんでもないことだ。 外務省は、民主主義の否定という点では軍政と「共犯者」といっても過言ではなかった。そしてこの体質は、現在にいたるまで基本的に変わらなかった」、情けなく、国際的にも恥ずかしいことだ。 「市民を虐殺するミャンマー国軍。日本政府・企業は軍と国民、どちらに立つのか?」 「9日に治安部隊がデモ隊を攻撃し、市民82人が死亡したと報じた。治安部隊は機関銃や迫撃砲など戦闘用の武器を使用したという」、国民に「戦闘用の武器を使用」、国軍が国民に対し残虐行為をするとは信じ難い。 市民の側は「ようやく民主化と自由を手に入れたいま、絶対に暗黒時代に後戻りしないという固い決意があるのです。特に、Z世代と言われる若者が強い意志で立ち上がっています」、よくぞやるものだと頭が下がる 「国軍の資金源となるプロジェクトを継続することは、人権弾圧や虐殺を助長するものです。国軍や関連企業に関わるODA事業はすべて凍結するべき」、その通りだ。 日本政府がいますべきこと 欧米諸国とともに、ミャンマー国軍関係者や国軍系企業 に対し、ターゲット制裁を発動したり、軍の資金源となっている主要な産品の取引を制限するなどの措置を真剣に検討すべき 「キリン」が態度表明したが、他は「沈黙」を続けており、態度を明確化すべきだ。 私たちも心を痛めてニュースを見守るだけでなく、政府と企業に責任ある行動をとるよう声を上げることができます 「ミャンマー市民が頼るのは、迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望」 国際社会に幻滅した市民らが一縷の望みを託す「少数民族連合軍vs国軍」の構図。当事者たちが語るその可能性 主要な「少数民族」「代表者」の見解とは興味深い 「私たちはこれまで少数民族に差別的だった「ビルマ人愛国主義者」たちへの警戒を解いておらず、NLDに対する不信感も根強い」、確かにこれまでの経緯も無視できないだろう 少数民族軍の戦略はいわゆるpositional war(陣地戦)ではなく都市型ゲリラ戦だ。例えばヤンゴンには軍事訓練を受けた「見た目は普通の人」が数千人もいるとされる」、それでも「キューバ革命」を引き合いに出すのは無理がある。「「統一政府」の議論」がまとまってほしいものだ 「CRPHは中国を重要な国家として認めると。その上で、現在の国軍に対する無条件の支援をやめるよう求めるのだ」、なかなか面白そうな戦略だ。 「投降した兵士らを受け入れる新しい軍組織がなければ、ミャンマーはサダム・フセイン亡き後のイラクになり、兵士らは過激派イスラム組織「イスラム国」(IS)のようになってしまう。その意味でも連邦軍は必要だ」、同感である 篠田 英朗 「日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠」 「日本の外交スタイルは世界標準からかけ離れている」とは痛烈な批判だ 「何なの」だろう。 「毎年1000億円を超える額のODAをミャンマーに投入し続けている」、こんなにも「投入」しているとは、初めて知った。 「護送船団方式のODAを媒介にした経済進出は成功したのか。実情としては、まだ成果が出ていない」、今回のクーデターも踏まえると、返済は難しくなりそうだ。 「ミャンマーで焦げ付いていた約4000億円の貸付金を、日本の納税者に負担させる形で一気に帳消しにして、さらなる融資の工面に乗り出した」、初耳だが、「日本政府」も説明責任をきちんと果たすべきだ 日本のマスコミや野党が外務省の説明を鵜呑みにしているのも、情けない。もっと実態を明らかにすべきだ。 「ODA]が「契約企業」の既得権になってしまい、「ミャンマー」との交渉材料に使えないのも逆立ちした話だ 「笹川氏は、日本政府代表として、日本政府の予算で、昨年11月のミャンマー選挙の監視団を率いた」、のであれば、「クーデターを起こしてからは、沈黙を保っている」というのは卑怯で、責任の放棄だ。 いい加減な「パイプの論理」などに惑わされないよう、「ODA]のあり方を原点から見直すべきだ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

バイデンと日米関係(その1)(周到準備の日米首脳会談で菅政権が背負う「重い宿題」、日米首脳会談に強烈な不満の中国こそ 戦前日本の失敗を学ぶ時、「中国激怒」の日米共同声明、それでも台湾を守る理由とは) [外交]

今日は、バイデンと日米関係(その1)(周到準備の日米首脳会談で菅政権が背負う「重い宿題」、日米首脳会談に強烈な不満の中国こそ 戦前日本の失敗を学ぶ時、「中国激怒」の日米共同声明、それでも台湾を守る理由とは)を取上げよう。

先ずは、4月19日付け日経ビジネスオンラインが掲載した明星大学経営学部教授(元経済産業省通商政策局米州課長)の細川昌彦氏による「周到準備の日米首脳会談で菅政権が背負う「重い宿題」」を紹介しよう。
・『菅義偉首相とバイデン米大統領による初の対面での日米首脳会談は“成功”で終わった。両首脳ともに外交当局同士による事前のよく練られたシナリオ通りに、地味ながら堅実に対応したようだ。まさに「周到準備の首脳会談」だった。予測可能性のないトランプ前大統領の際の「出たとこ勝負の首脳会談」とは予想通り様変わりだ。 日米ともに「トップダウン」から「ボトムアップ」に変わった。事前に見通した前稿「日米首脳会談へ、『人権』対『グリーン』の駆け引き」で首脳会談の全体像を指摘したが、大方は予想通りの展開だった。 ポイントはこうだ。(1)米国は対中国で日本に腰を入れた対応を求めて、日米首脳会談を対中戦略の重要な場と位置付けている。(2)3月の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)はその前哨戦だった。(3)「台湾」と「人権」が菅政権の対中姿勢を問う“踏み絵”としてメインテーマとなる。 そしてさらに付け加えたのが、「米国から難題が投げかけられたとき、日本は様々な分野で日米の協力案件を用意して、そこだけに焦点が当たるのを避けてきた。それがこれまでの対米外交の常とう手段だ」ということだ。 今回の場合、日本が二の足を踏む「台湾」と「人権」にばかり焦点が当たるのを避けて、日本側で周到に用意されたのが、「気候パートナーシップ」と「競争力・強靭(きょうじん)性パートナーシップ」だ。米国側も受け入れそうなものを仕立てたものだ。その詳細は省くが、この書きぶりを見ると、その原案、たたき台は日本側が詳細に書き込んで用意したことが私の経験から一見して分かる。 日本のメディアの事前報道でも、これらが報じられていたが、必ずしも米国の関心のプライオリティと合致しているわけではない。日本では、バイデン政権が気候変動問題を重視していることから、あたかもこれが日米のメインテーマの一つであるかのように報道されるが、そうではない。米国の報道を見ても米国の世論の関心は気候変動には向けられていないことがわかる』、「「周到準備の首脳会談」だった。予測可能性のないトランプ前大統領の際の「出たとこ勝負の首脳会談」とは予想通り様変わりだ。 日米ともに「トップダウン」から「ボトムアップ」に変わった」、的確な表現だ。
・『本丸は「台湾」と「人権」  あくまでも今のバイデン政権にとっての「本丸」は台湾と人権であった。米国にとって今回の首脳会談は「中国対抗のための首脳会談」だ。その対中政策の中核であるにもかかわらず、日本側の腰が引けているからこそ、よく言えば「すり合わせする」、悪く言えば「追い込む」。そこに今回の首脳会談の目的があった。 3月の2プラス2から周到に仕掛けていくシナリオは、さすがに実務重視のバイデン政権の真骨頂だ。米国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官に任命されたカート・キャンベル氏が仕切ったようだ。 仕上がった共同声明だけを表面的に読んでも、そうした本質は見えてこない。当然のことながら、事前準備で最後まで共同声明の文言づくりで難航したのが、この2つの本丸案件だった。 台湾問題では、米国は2プラス2の共同文書で日本に飲ませた「台湾海峡の平和と安定の重要性」という文言をさらに一歩踏み込んで強めようとした。他方、日本は中国の反発を恐れて2プラス2どまりの表現で踏みとどまろうとした。そうした綱引きの妥協の産物が最終の文言になった。 人権もそうだ。2プラス2の共同文書の「深刻な懸念の共有」の文言もさらに踏み込むことを米国は要求したが、日本は抵抗し切ったようだ。欧米諸国が制裁に踏み出しているのとは一線を画して、伝統的な“対話路線”にこだわった。 今回の共同声明の文言では米国は妥協したが、これで終わりではない。忘れてはならないのが人権重視の欧州の存在だ。6月の英国での主要7カ国首脳会議(G7サミット)において日本は孤立しかねない』、外交交渉の経験が長い「細川」氏ならではの深い分析だ。確かに「6月の・・・G7サミット)において日本は孤立しかねない」、ことも要注目だ。
・『重い宿題にどう対応するか  とりあえず共同声明の文言は合意したが、問題はこれからだ。ある意味、首脳会談はキックオフだ。菅首相はこの2つの問題で大きな宿題を背負って日本に帰国した。 台湾問題では日本が日米での抑止力強化のために主体的に何ができるかが問われる。具体論として、中距離ミサイルの配備問題を巡る議論は避けて通れないだろう。さらにもっと大事なのは、台湾有事において後方支援だけにとどまらず、限定的な集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」に当たるのかどうかといった議論も不可避の重いテーマだ。 人権では共同声明は「深刻な懸念」で済ませても、何らかの“行動”あるいは“行動の用意”も必要になってこよう。国内では親中派の反対で国会決議もできない状況だ。国会決議は日米首脳会談で米国に押し込まれてから行う予定のようだ。 制裁の根拠となる法律がないことを理由にしているが、欧米からは言い逃れにすぎないと見られている。発動するかどうかは別にして、せめて“行動の用意”ぐらいはあるべきではないか。「人権侵害制裁法」の制定を目指した超党派の議員連盟も本気度が問われる』、「制裁の根拠となる法律がないことを理由にしているが、欧米からは言い逃れにすぎないと見られている。発動するかどうかは別にして、せめて“行動の用意”ぐらいはあるべきではないか」、その通りだ。
・『日本企業も他人事では済まされない  さらにもう一つの深刻な問題は企業の行動も問われようとしていることだ。米国は強制労働で作られた製品の排除を目指した通商政策を考えている。欧州も企業に人権問題を厳しくチェックすることを義務付けようとしている。 米欧が共鳴する中で、日本企業も他人事では済まされない。他方でこうした動きに危機感を抱いた中国は反発して、企業に対して不買運動などでけん制している。日本企業にとってまさに「前門の虎、後門の狼(おおかみ)」の状況だ。 中国は早速、「強烈な不満と断固反対を表明する」との談話を出して反発した。台湾問題も香港・新疆ウイグル自治区の人権問題も中国にとって核心的利益としているので、ある意味当然だろう。しかし中国の反発は織り込み済みだ。3月の2プラス2の共同文書に盛り込んだ段階で、中国の反発の瀬踏みはされている。むしろ、今の中国に対しては反発がないような共同声明では意味がない。 今後、中国は日本に対して、硬軟織り交ぜて揺さぶりをかけてくるだろう。中国からは日本は揺さぶりやすい相手と見られていても仕方がない。中国ビジネスを人質にとられた産業界や親中派の政治家への働きかけも強まろう。逆にいくつか見せしめ的にターゲットとされる企業が出てくる可能性さえある。 そうした揺さぶりに腰が定まった対応ができるかどうかだ。ここまで対中姿勢を鮮明にさせられたことがなかっただけに、これから菅政権は正念場を迎えことになる。 追記:前稿の追記でこう指摘した 「日米首脳会談が直前になって1週間延期という異例の事態となった。表向きは「コロナ対応など準備に万全を期するため」と日本政府は説明するが、額面通りに受け取る者はいない。(中略)ワシントンの事情通の間では、ケリー米大統領特使(気候変動問題担当)の外遊日程との関係がささやかれている。米国主催の気候変動問題サミットの根回しに奔走しているケリー特使の訪中説も浮上している」 これも推測通りだった。恐らく共同声明に対する中国の反発が当然予想されるので、ケリー特使の訪中前に共同声明が出ることを避けるように米側でスケジュール調整された結果だろう』、「中国ビジネスを人質にとられた産業界や親中派の政治家への働きかけも強まろう。逆にいくつか見せしめ的にターゲットとされる企業が出てくる可能性さえある」、ただ、「中国」としては「日本」を完全に「米国の側」に追いやらない範囲で、今後圧力をかけてくる懸念がありそうだ。

次に、4月20日付け日経ビジネスオンラインが掲載した元外務省官房参事官でキヤノングローバル戦略研究所 研究主幹の宮家 邦彦氏による「日米首脳会談に強烈な不満の中国こそ、戦前日本の失敗を学ぶ時」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/042000252/
・『バイデン米政権が発足して初の日米首脳会談。事前の推測記事はさまざまだったが、終わってみれば、「まずまず合格点」ではなかろうか。ジョー・バイデン大統領が初めて対面で会う外国首脳として、アジアの同盟国・日本の菅義偉首相を選んだこと自体、今後の米外交の方向性を暗示する重要な動きである。アジアはもちろん、欧州や中東の各国も注目したに違いない。今回の首脳会談は新たな時代の外交の始まりを予感させるものだった。 一方、批判がないわけではない。本邦の一部有力紙には、「日本の受け身外交」「米国に踏み絵を踏まされる」「対中戦略は主体的に」といった論調が散見された。昭和30年代ならいざ知らず、2021年の成熟した日米関係に対し、旧態依然の「対米追随論」を繰り返すのはいかがなものか。これでは「日本は米国の戦略的属国で、対中関係の破壊をもくろんでいる」とする中国外交部のプロパガンダと大差ない。論ずべき問題の本質は別にあると見るべきだ。 一連の行事が終了した後、ワシントンの中国大使館ウェブサイトは次のような報道官声明を掲載した。 ●台湾、香港及び新疆の問題は中国の内政であり、東シナ海及び南シナ海は中国の領土主権と海洋権益に関わる。これらの問題は、中国の根本的利益に関わるものであり、干渉は受け入れられない。我々は、日米首脳による共同声明と関連する表明に強烈な不満と断固たる反対を表明する。 ほぼ同時期に、東京の中国大使館ウェブサイトも次のメッセージを掲載した。 ●日米双方が首脳会談および共同声明において、中国に対し、言われ無き指摘をし、中国の内政に乱暴に干渉し、中国の領土主権を侵犯したことに対し、中国側は強い不満と断固たる反対を表す。 中国側の「不満」と「反対」は、常に「強烈」で「断固」たるものだから、こうした反応自体に驚きはない。むしろ、中国がかかる立場を表明せざるを得ない背景を分析することで、今回、日米共同声明が言及した「中国との率直な対話」や「中国との協働」の可能性を模索できるのではないか。筆者の問題意識はここにある。日米から見た首脳会談の意義に関する論評はほぼ出尽くした感がある。されば、本稿では中国から見た日米共同声明の問題点を書こう』、「中国から見た日米共同声明の問題点を書こう」、とは興味深そうだ。
・『中国を「名指し」批判し、台湾・人権にも言及  今回の日米共同声明は中国を厳しく批判している。改めて該当部分をここに紹介しよう。 ●菅総理とバイデン大統領は、インド太平洋地域及び世界の平和と繁栄に対する中国の行動の影響について意見交換するとともに、経済的なもの及び他の方法による威圧の行使を含む、ルールに基づく国際秩序に合致しない中国の行動について懸念を共有した。 ●日米両国は、東シナ海におけるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対する。 ●日米両国は、南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張及び活動への反対を改めて表明するとともに、国際法により律せられ、国連海洋法条約に合致した形で航行及び上空飛行の自由が保証される、自由で開かれた南シナ海における強固な共通の利益を再確認した。 対中批判はこれだけではない。今回の共同声明は、従来言及したことのない「台湾」や中国国内の「人権問題」にも、以下の通り、あえて触れている。 ●日米両国は、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す。(中略)日米両国は、中国との率直な対話の重要性を認識するとともに、直接懸念を伝達していく意図を改めて表明し、共通の利益を有する分野に関し、中国と協働する必要性を認識した。 ●日米両国は、香港及び新疆ウイグル自治区における人権状況への深刻な懸念を共有する。 当然、誇り高き中国は今回の日米共同声明に怒り心頭だろう。「国際秩序に合致しない中国の行動」「南シナ海における、中国の不法な海洋権益に関する主張」などと中国が「公然」かつ「名指し」で批判されたからだ。では、中国は今回、不意打ちを食らったのだろうか。そう問われれば、答えは「ノー」だ。こうした対中「名指し」批判を含む表現は、本年3月に東京で開かれた日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)の共同文書にたっぷりと書き込まれていたではないか。 「もしかしたら、バイデン・菅の首脳レベルでは、表現ぶりで中国に配慮するのではないか」。中国側がこうしたいちるの望みを抱いた可能性はあるだろう。ところが、日米首脳会談の結果は予想通り、中国にとって最悪となった。されば、今さら日米に再び秋波を送っても効果は見込めないと踏んだのだろう。これが、中国側が今回「強烈な不満と断固たる反対を表明」した理由だと筆者は考える。少なくとも、当たらずといえども遠からず、だろう』、「日米首脳会談の結果は予想通り、中国にとって最悪となった」ので、「強烈な不満と断固たる反対を表明」せざるを得なくなったようだ。
・『かなり前から練られたとみられる中国側の反応  そもそも、日米2プラス2の共同文書の内容を首脳レベルの共同声明で踏襲しなければ、それ自体が間違ったメッセージになる。中国側も当然、今回の日米共同声明が同様の対中批判を繰り返すことぐらいは事前に覚悟していただろう。案の定、先ほどご紹介した東京の中国大使館ウェブサイトは、次のような表現で中国側の「強烈な不満と断固たる反対」を正当化した。それなりに練られた文章であり、かなり前から準備したものだろうと推察する。 ●日米は冷戦思考にしがみつき、排他的な小さいサークルを作り上げ、政治的対立を煽(あお)り立てて完全に時代の流れに逆走する動きをしており、地域諸国が平和を求め、発展を図り、協力を推し進める期待に背き、その企みは必ず成り立たない。 ●中国は関連国家が陳腐で、時代遅れのゼロサムゲーム思考を放棄し、中国への言われ無き指摘、そして中国への内政干渉を止め、実際の行動で二国関係および地域の平和と安定の大局を維持することを求める。 ●最近、日本側は中国関連の問題において、たびたび消極的な行動をとり、双方の政治的相互信頼を深刻に損ない、双方が関係を発展させる努力を妨害している。日本側が中日間の四つの政治文書の原則および関連の約束を厳守し、中日関係がごたつかず、滞らず、後退せず、大国対抗に巻き込まれないことを確保するよう忠告する。 申し訳ないが、日米には「冷戦思考」などない。目指すは「排他的な小サークル」どころか、開かれた大グループである。また、香港やウイグルへの関心は、内政干渉というより、人道的要素が大きい。さらに、日中関係が最近悪化したのは、日米の「妨害」が理由ではなく、むしろ従来とは異なるレベルの中国の対外強硬姿勢が原因である。これらすべてに共通するのは、力を使うこともいとわない中国の「現状変更志向」だ』、「日米には「冷戦思考」などない。目指すは「排他的な小サークル」どころか、開かれた大グループである。また、香港やウイグルへの関心は、内政干渉というより、人道的要素が大きい」、「さらに、日中関係が最近悪化したのは、日米の「妨害」が理由ではなく、むしろ従来とは異なるレベルの中国の対外強硬姿勢が原因である。これらすべてに共通するのは、力を使うこともいとわない中国の「現状変更志向」だ」、スッキリする反論だ。
・『中国はどこまで報復するか  さて、日米首脳会談が終わった今、日本側、特に経済界が懸念するのは、中国側が報復する可能性だろう。日米首脳会談が開催される前、4月16日の中国外交部定例記者会見で同部報道官は次の通り述べているからだ。 ●現在の米中関係、日中関係は、いずれも重要な分岐点にあり、国際社会は(菅総理による)今次の訪問において対外的に何を発信するかについて高い関心を持っている。 ●日米は、中国側の懸念と要求を真剣に受け止めるべきであり、中国の内政に干渉したり、中国の利益を損なうような言動をとったり、中国に狙いを定めた小グループをつくってはならない。中国側は状況に応じて、必要な対応をとるだろう。 さらに、4月17日付の環球時報ネット版社説は、「日米同盟はアジア太平洋の平和を危うくする枢軸国になりつつある」との見出しで次の通り主張した。日本が台湾問題に介入した場合の報復までほのめかしているようにみえる。関連部分をここに紹介しよう。 ●中国の強大な発展のエネルギーに対する羨望と嫉妬こそが、対中問題における日米両国の最大の「共通の価値」である。 ●日本は近代以降、中国に何度も危害を加えてきたことを忘れてしまったのだろうか。 ●日米同盟は、かつてのドイツ、イタリア、日本の枢軸国と同様に、アジア太平洋の平和に致命的な破壊をもたらす枢軸国に変わっていく可能性が高い。 ●数年前、日本は一度中国に向き合って距離を縮め、日中関係を緩やかに正しい軌道に戻そうとしていた。現在、日本は再び路線を変え、米国の中国抑止戦略に加わり、日中関係改善の機運を断ち切った。 ●我々は日本に台湾問題から少し離れるようにと忠告する。他(の問題)では、外交手腕を弄んだり、策を用いて連合や分裂を図ったりも可能だが、もし台湾問題に関われば、最後は自ら身を滅ぼすだろう。その関与の度合いが深いほど、支払うべき代償も大きくなる。 日米同盟を日独伊三国同盟と比較するこの歴史観は滑稽ですらある。それを言うなら、今の中国を1930年代の日本と比較すべきだろう。「東アジアの新興国」が「シビリアンコントロール」を失い、「不健全なナショナリズム」の下で、「力による現状変更」を目指し、西太平洋で「海洋権益を拡大」し、「国際社会に挑戦」している。中国の外交部も戦前の日本の外務省に似ているのだろうか。「歴史は繰り返さないが、時に韻を踏む」(注)という言葉を思い出す。 普通なら、外交部報道官レベルの発言や環球時報の社説に一喜一憂する必要はないのだが、今回はもう少し分析が必要だ。中国指導者のDNAには古(いにしえ)の大帝国の感覚が刷り込まれているのか、彼らの外交には「大国」と「小国」を厳然と区別する傾向がある。「大国」には一定の配慮をするが、「小国」となれば、明確に差別し、見下し、公然と脅しをかけるのだ。その典型例が、オーストラリアに対して中国が最近発動した「言われ無き」制裁だろう。 中国はオーストラリアに対し貿易制限措置を相次いで発動した。豪州産の牛肉、大麦、石炭、ロブスター、ワイン、木材を対象とした輸入制限をさまざまな形態で導入している。理由は、豪州首相が昨年4月、新型コロナウイルスの発生源や感染拡大に関する中国国内での調査を国際社会に訴え始めたためだ、といわれる。これ以外にも、中国がこの種の報復措置を他の「小国」に発動した例は枚挙に暇(いとま)がない。 それでは、日本に対する報復はあるのだろうか。その可能性がゼロとは言えない。実際に、2012年には中国で日本製品不買運動が起きている。ただし、その実態は中国民衆の対日不満というより、尖閣問題をめぐって中国政府が日本政府に対してかけた圧力であった。されば今後、中国政府がその種の圧力を再び仕掛けてくる可能性は否定できない。当然、日本政府もそうした懸念は織り込み済みと思われる。 されば、中国側の言う「必要な対応」「支払うべき代償」とは何を意味するのか。仮に日本企業に対し制裁を発動すれば、短期的には脅しとしてある程度有効だとしても、中長期的には逆効果だろう。2021年の今、日本企業に報復措置をとれば、日本企業による中国離れの連鎖が始まるだろう。日米が現在進めている「中国デカップリング」「サプライチェーン見直し」「ハイテク製品の国産化」という流れを中国が自ら促進することにもなりかねない。 それが中国にとって真の国益なのか。そんなことをすれば、日本企業の中国デカップリングが加速し、日本からの対中投資や技術移転も縮小し、中国経済自体が孤立して、最悪の場合、縮小再生産に陥る可能性が高まるだけだ。それが中国にとっての長期的利益とは到底思えない。いくら巨大な人口を抱える大市場とはいえ、現在の中国経済が、投資や技術開発などの面で自立可能となるにはまだ相当の時間がかかるだろう。 中国側の発言の揚げ足を取るならば、「重要な分岐点」にあり「対外的に何を発信するかについて国際社会が高い関心を持っている」のは日米ではなく、むしろ中国である。今後数カ月のうちに中国側が日米に対し取る措置次第では、今後数十年間のインド太平洋地域の安定と繁栄に重大な影響が及ぶだろう。中国の賢明な指導者たちにはぜひとも、1930年代の日本の失敗とその教訓を正確に学んでいただきたいものである』、「日米同盟を日独伊三国同盟と比較するこの歴史観は滑稽ですらある。それを言うなら、今の中国を1930年代の日本と比較すべきだろう。「東アジアの新興国」が「シビリアンコントロール」を失い、「不健全なナショナリズム」の下で、「力による現状変更」を目指し、西太平洋で「海洋権益を拡大」し、「国際社会に挑戦」している。中国の外交部も戦前の日本の外務省に似ているのだろうか」、「今の中国を1930年代の日本と比較すべき」とは痛烈な批判だ。「仮に日本企業に対し制裁を発動すれば、短期的には脅しとしてある程度有効だとしても、中長期的には逆効果だろう。2021年の今、日本企業に報復措置をとれば、日本企業による中国離れの連鎖が始まるだろう。日米が現在進めている「中国デカップリング」「サプライチェーン見直し」「ハイテク製品の国産化」という流れを中国が自ら促進することにもなりかねない」、同感である。
(注)「歴史は繰り返さないが、時に韻を踏む」:米国作家マーク・トウェインの言葉(Wikiquote)

第三に、4月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した評論家・翻訳家の白川 司氏による「「中国激怒」の日米共同声明、それでも台湾を守る理由とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/269162
・『日米両政府は首脳会談の共同声明で「台湾海峡の平和と安定の重要性」を明記した。中国の猛反発が必至の台湾問題を盛り込んだ背景には何があったのか』、なんだろう。
・『アメリカのメディアでは注目されなかった首脳会談  日本ではかなり注目されてメディアでも大きく日米首脳会談だが、アメリカでの報道は驚くほど少なかった。それはこの会談がアメリカの内政に与える影響がほとんどなかったからだ。 実際、主要テーマである「自由で開かれたインド太平洋」における日米連携はすでに進んでいる。ほかの課題についても、新型コロナウイルス対策、気候変動対策、サプライチェーンにおける脱中国連携などもすでに進行中であり、ミャンマー制裁についても確認程度で、いずれの課題もすでに合意ができているか方向性が決まっているものばかりである。 また、尖閣諸島に安保条約第5条を適用することもオバマ政権から繰り返し確認されてきた。さらに、「バイデン大統領が東京オリンピックを支持」という報道がされたが、「実現を支持」ではなく、「努力を支持」という文言にとどまっている。日本側はアメリカからはほとんど果実を引き出せなかったというべきだろう。  今回の首脳会談を切実に求めていたのはアメリカ側であり、その意図は日本を米中貿易戦争においてアメリカ側に引き入れることにあった。ただし、そのことをおくびにも出さずに、日本側に妥協しない点がアメリカ外交のしたたかさである』、「首脳会談」が「アメリカのメディアでは注目されなかった」、大いにありそうな話だ。「今回の首脳会談を切実に求めていたのはアメリカ側」にも拘わらず、「日本側に妥協しない点がアメリカ外交のしたたかさである」、その通りだ。
・『日米首脳の共同声明に台湾が盛り込まれた意義  一連の課題の中で、意外な結果だったことが一つだけある。それは、半導体製造や次世代通信技術(6G)開発において日米共同を確かめる流れで、52年ぶりに「台湾」の項目が作られたことだ。 これは、アメリカ側が日本に求めたものと考えるが、日本は「アメリカか中国か」の選択ですでに立場を明確にすべき時期にさしかかっている。だが、日本国内はまだまだ親中派の力が強く、「台湾」を明記して立場を明確にしたのは、「外圧を利用した政策決定」だと言っていいだろう。 アメリカやオーストラリアなどが対中強硬姿勢を続ける中、日本はアメリカに寄り添いながらも中国とも明確に対抗しないというスタンスを取り続けてきており、それは中国などが「右翼的」と見ていた安倍政権でも根本的には変わっていなかった。実現こそしなかったものの、安倍政権は習近平主席を国賓で迎えるつもりであったわけであるし、本気で対抗する気がなかったのは明らかだろう。 「アメリカか中国か」の選択肢は、最終的に台湾を中国の一部だと認めるかどうかにかかっており、「台湾の独立を守る」と明言すれば、それは中国に政治的に対抗すると宣言することと同意である。 ただし、日本側は台湾問題を「両岸問題」と表現しており、中国側の主張する「1つの中国」に対して最低限の配慮は示している。それでも、共同声明に台湾海峡について言及したことは、日本外交の転換点だと見るべきだろう』、「日本側は台湾問題を「両岸問題」と表現」、初めて知った。苦肉の策なのだろうが、「日本側の自己満足」といった印象も拭えない。
・『日本とアメリカの対中姿勢の違い  アメリカの対中強硬姿勢は、2016年に蔡英文氏が台湾総統選に圧勝したとき、トランプ大統領が蔡氏を「台湾のプレジデント(大統領)」と表現して祝辞を送り、電話会談まで実施したことから始まっている。トランプ政権は「一つの中国」をあからさまに否定していないものの、それを無視するような行動を繰り返してきた。言い換えると、トランプ政権はオバマ政権のスタンスを変更して、中国に対抗する姿勢を明確に見せたと言っていいだろう。 だが、台湾は中国にあまりに近く、経済力・軍事力で圧倒的に劣勢に立たされている。また、経済において中国と密接に関係しているだけでなく、台湾内での親中派の力はかなり強い。中国の強い軍事的圧力を受けながらも、あからさまに中国と敵対できない立場にある。 トランプ大統領はこうした台湾の立場を尊重しながらも、2018年に事実上の領事館である米国在台協会の新庁舎を完成、同年にアメリカ政治当局の台湾での会談を可能にする台湾旅行法が成立する一方で、地対空ミサイルなど先端兵器の売却を決めるなど、米台関係を着実に強めてきた。バイデン政権の外交の要であるブリンケン国務長官もその点は評価しており、東アジアにおいてはトランプ外交を継承している。 それに対して、前述したように、日本は安倍政権になっても台湾へのスタンスは根本的には変わらなかった。それは政権中枢に親中派の二階俊博幹事長が、大きな影響力を持ち続けていることからも明らかだ。日本企業も中国経済に大きく依存していることから、中国との太いパイプがある二階氏が必要とされており、いきおい二階氏をはじめとする親中派の影響力は大きかったのである。 日本はアメリカの意向を酌みながらも、台湾同様、中国とまともに敵対はできない立場にあった。その難しい状況を安倍晋三首相は対中包囲網であるTPPやインド太平洋構想を実現させる一方で、あからさまに中国とは敵対しないで巧妙に乗り切った。 菅首相は「安倍政権の継承」をうたっていたものの、中国に対してどういう方針で臨むつもりなのかは明確ではなかった。二階氏は引き続き中枢に残っていることから、従来と同じようなベクトルで臨むというのが、最も考えられるシナリオだった』、「台湾は中国にあまりに近く、経済力・軍事力で圧倒的に劣勢に立たされている。また、経済において中国と密接に関係しているだけでなく、台湾内での親中派の力はかなり強い。中国の強い軍事的圧力を受けながらも、あからさまに中国と敵対できない立場にある」、共産党革命時に大陸から逃げてきた外省人が国民党の基盤となった。
・『菅首相の決断により対中姿勢は次の段階に  ところが、今回の日米首脳による共同声明に台湾問題が明記されたことで、中国に対抗することが明確になった。これまで中国の立場を守ってきた二階氏も、今回は了承せざるを得なかったということになる。 その予兆はあった。二階氏は4月15日に収録されたCS番組内で、東京五輪について「これ以上とても無理だということだったらこれはもうスパッとやめなきゃいけない」と述べて、「オリンピックでたくさんまん延させたということになったら、何のためのオリンピックかわからない」と新型コロナウイルス感染拡大による五輪中止の可能性に言及したのである。 これは大きなニュースとなり、海外メディアの一部も「日本の有力政治家が五輪中止の可能性を示唆」と大きく扱っている。 それもそのはず、二階氏はこれまで一貫して五輪の実行を明言してきた政権の姿勢に異を唱えて、わざわざ「政府・与党間の不一致」を演出したわけである。 これは菅政権内で、親中派の二階幹事長が「気にくわないこと」が行われたことの表れではないだろうか。あくまで筆者の考えにすぎないが、今回の共同声明に先立ち、台湾問題の明記を認めざるを得なかったことへの「腹いせ」のように思われる。実際、二階氏は過去においても不満があると表に出すことが多かったからである。 あるいは、東京五輪をいったん否定することは、中国に太いパイプがあることを自負する二階氏にとって、中国への何らかのサインを送ることになるのかもしれない。 ただし、二階氏も「何が何でも開催するのかと問われれば、それは違うという意味で申し上げた。安全・安心な大会の開催に向け、しっかり支えていくことに変わりはありません」と文書で述べて、CS番組内の発言は本意ではなかったと釈明している。) だが、この発言の余波は小さくはなかった。これまで五輪開催への機運を作ろうと連立与党で一致団結してきたのに、水を差す形になったからである。当然、政権内でも反発があるはずで、二階氏の影響力低下に拍車がかかる可能性もある。 そのような不協和音はありながらも、菅首相がアメリカと連携して台湾を守る姿勢を見せたことで、これまで曖昧だった日本の対中姿勢を一段階進めることとなった』、「二階幹事長」の「新型コロナウイルス感染拡大による五輪中止の可能性に言及」は、「「気にくわないこと」が行われたことの表れではないだろうか」、穿った見方だが、当たっている可能性もありそうだ。
・『中国にとって台湾が決定的に重要な理由  中国における台湾は、地政学的な要地、あるいは「一つの中国」という象徴をはるかに超える重要な存在になりつつある。それは、米中貿易戦争は、煎じ詰めると半導体の争いに行きつくからである。 半導体ファウンドリ(受託生産)として世界的企業である台湾のTSMCは、韓国のサムスンやアメリカのインテルと技術力で大きく水をあけており、世界の半導体生産受注の分野ではすでに圧倒的な存在となっている。 中国は一連のトランプ制裁で先端半導体を入手しづらくなっており、南京にTSMCの工場は有するものの、TSMCの大型工場のある台湾は、文字どおり喉から手が出るほど欲しいはずだ。台湾有事の可能性がこれまでとは比較にならないほど高まっているのは、まさに台湾が半導体生産の中心になってしまったからにほかならない。 私たちは台湾有事の可能性を、「近未来」から「いつでもありうること」に変更して、その時に備える必要がある。日本は今回の日米首脳会談で中国政策を大きく転換して、これからは尖閣のみならず、台湾防衛についてもコミットしなければならなくなったと考えるべきだろう。 ただし、この問題は言うほど簡単ではない。というのは、台湾自体も日本依存から徐々に中国シフトを始めており、また、台湾政府は尖閣の領有権を主張していることから、日米側に簡単に荷担できる立場ではないからだ。 そもそもTSMCをこのまま日米側にとどめておけるかどうかも決定しているわけではないだろう。 確かにトランプ政権ではアメリカに大型投資をして、大幅にアメリカシフトを見せたが、そもそもアメリカという国は、工場投資に向いているとはいえないのである。台湾や中国と比べると人件費は圧倒的に高い割に生産性が高いわけでもない。投資効率の悪さを知った上での投資であり、TSMCにとっては妥協にすぎない。 また、TSMCとしても、経済成長を続ける中国市場を簡単に捨てられるはずもない。TSMCがアメリカを切って中国側に行くことはないにしても、なんとか両てんびんにかけられないかと考えるのは当然である。 それでもTSMCが完全に中国を切ってアメリカを取れば、半導体技術が欲しい中国による台湾併合のモチベーションは決定的に高まっていくだろう。アメリカが貿易戦争に勝つためには、TSMCをアメリカ側にとどめると同時に、台湾を中国に併合されないことが必須になってしまったわけである。 日米首脳会談のアメリカ側の目的は、台湾防衛に日本を巻き込むことであったと考えるべきだろう。もちろん、日本としても、対中姿勢に覚悟を決めるべき時期にきており、その点でも共同声明に「台湾」という項目を入れて、スタンスを明確にした意義は大きい。それは、日本に経済面だけでなく、安全保障面でも強い覚悟が求められていることを意味している』、「台湾自体も日本依存から徐々に中国シフトを始めており、また、台湾政府は尖閣の領有権を主張していることから、日米側に簡単に荷担できる立場ではない・・・TSMCをこのまま日米側にとどめておけるかどうかも決定しているわけではない」、難しい問題のようだ。
タグ:日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 細川昌彦 白川 司 バイデンと日米関係 (その1)(周到準備の日米首脳会談で菅政権が背負う「重い宿題」、日米首脳会談に強烈な不満の中国こそ 戦前日本の失敗を学ぶ時、「中国激怒」の日米共同声明、それでも台湾を守る理由とは) 「周到準備の日米首脳会談で菅政権が背負う「重い宿題」」 「「周到準備の首脳会談」だった。予測可能性のないトランプ前大統領の際の「出たとこ勝負の首脳会談」とは予想通り様変わりだ。 日米ともに「トップダウン」から「ボトムアップ」に変わった」、的確な表現だ。 外交交渉の経験が長い「細川」氏ならではの深い分析だ。確かに「6月の G7サミット)において日本は孤立しかねない」、ことも要注目だ。 「制裁の根拠となる法律がないことを理由にしているが、欧米からは言い逃れにすぎないと見られている。発動するかどうかは別にして、せめて“行動の用意”ぐらいはあるべきではないか」、その通りだ。 「中国ビジネスを人質にとられた産業界や親中派の政治家への働きかけも強まろう。逆にいくつか見せしめ的にターゲットとされる企業が出てくる可能性さえある」、ただ、「中国」としては「日本」を完全に「米国の側」に追いやらない範囲で、今後圧力をかけてくる懸念がありそうだ。 宮家 邦彦 「日米首脳会談に強烈な不満の中国こそ、戦前日本の失敗を学ぶ時」 「中国から見た日米共同声明の問題点を書こう」、とは興味深そうだ 「日米首脳会談の結果は予想通り、中国にとって最悪となった」ので、「強烈な不満と断固たる反対を表明」せざるを得なくなったようだ。 「日米には「冷戦思考」などない。目指すは「排他的な小サークル」どころか、開かれた大グループである。また、香港やウイグルへの関心は、内政干渉というより、人道的要素が大きい」 「さらに、日中関係が最近悪化したのは、日米の「妨害」が理由ではなく、むしろ従来とは異なるレベルの中国の対外強硬姿勢が原因である。これらすべてに共通するのは、力を使うこともいとわない中国の「現状変更志向」だ」、スッキリする反論だ 「日米同盟を日独伊三国同盟と比較するこの歴史観は滑稽ですらある。それを言うなら、今の中国を1930年代の日本と比較すべきだろう。「東アジアの新興国」が「シビリアンコントロール」を失い、「不健全なナショナリズム」の下で、「力による現状変更」を目指し、西太平洋で「海洋権益を拡大」し、「国際社会に挑戦」している。中国の外交部も戦前の日本の外務省に似ているのだろうか」、 「今の中国を1930年代の日本と比較すべき」とは痛烈な批判だ。「仮に日本企業に対し制裁を発動すれば、短期的には脅しとしてある程度有効だとしても、中長期的には逆効果だろう。2021年の今、日本企業に報復措置をとれば、日本企業による中国離れの連鎖が始まるだろう。日米が現在進めている「中国デカップリング」「サプライチェーン見直し」「ハイテク製品の国産化」という流れを中国が自ら促進することにもなりかねない」、同感である。 「「中国激怒」の日米共同声明、それでも台湾を守る理由とは」 「首脳会談」が「アメリカのメディアでは注目されなかった」、大いにありそうな話だ。「今回の首脳会談を切実に求めていたのはアメリカ側」にも拘わらず、「日本側に妥協しない点がアメリカ外交のしたたかさである」、その通りだ 「日本側は台湾問題を「両岸問題」と表現」、初めて知った。苦肉の策なのだろうが、「日本側の自己満足」といった印象も拭えない 「台湾は中国にあまりに近く、経済力・軍事力で圧倒的に劣勢に立たされている。また、経済において中国と密接に関係しているだけでなく、台湾内での親中派の力はかなり強い。中国の強い軍事的圧力を受けながらも、あからさまに中国と敵対できない立場にある」、共産党革命時に大陸から逃げてきた外省人が国民党の基盤となった 「二階幹事長」の「新型コロナウイルス感染拡大による五輪中止の可能性に言及」は、「「気にくわないこと」が行われたことの表れではないだろうか」、穿った見方だが、当たっている可能性もありそうだ 「台湾自体も日本依存から徐々に中国シフトを始めており、また、台湾政府は尖閣の領有権を主張していることから、日米側に簡単に荷担できる立場ではない TSMCをこのまま日米側にとどめておけるかどうかも決定しているわけではない」、難しい問題のようだ
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

米中経済戦争(その15)(もし米中戦争起きたら…米国は地上戦で大損害必至?日本も中国市場失い致命的打撃、「米中半導体戦争」が本格化 日本が急速な構造変化を生き残る道、「過去に例を見ないほどの怒り」米中・新冷戦の狭間で日本がとるべき行動とは) [外交]

米中経済戦争については、昨年12月12日に取上げた。今日は、(その15)(もし米中戦争起きたら…米国は地上戦で大損害必至?日本も中国市場失い致命的打撃、「米中半導体戦争」が本格化 日本が急速な構造変化を生き残る道、「過去に例を見ないほどの怒り」米中・新冷戦の狭間で日本がとるべき行動とは)である。

先ずは、本年1月9日付けAERAdot.が掲載した軍事ジャーナリストの田岡俊次氏による「もし米中戦争起きたら…米国は地上戦で大損害必至?日本も中国市場失い致命的打撃」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/aera/2020122300006.html?page=1
・『日本と豪州が、他国の攻撃から相手国の艦船などを守るといった内容で合意した。事実上の同盟関係と言えるが、対中紛争のリスクなどの議論は置き去りだ。AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号では、そのリスクについて取り上げた。 安倍晋三前首相は中国との友好関係を望む一方で「自由で開かれたインド・太平洋」を旗印とし、対中包囲網に事実上参加した。 海上自衛隊は07年から米国、インドの海軍共同演習「マラバール」に参加したほか、米、豪海軍との演習も行ってきた。今年11月、インド東方のベンガル湾とアラビア海で行われた「マラバール2020」には豪州海軍が参加。初めて米印日豪4カ国の合同演習となり、中国に対抗する「アジア版NATO」結成の様相を示した。 この4カ国は、中国が「一帯一路」の要所としてスリランカのハンバントタ港、パキスタンのグワーダル港の拡張、整備を援助しているのは軍事的拠点にするためと警戒している。 だが米海軍は中国海軍に対し質、数ともに圧倒的優勢なため、もし米中で武力紛争が起きれば、遠隔地の港にいる中国軍艦は出港すれば撃沈される。日露戦争で旅順港を基地としていたロシア太平洋艦隊が「引き籠もり状態」になったのと同様だ。従って、中国は軍事よりは経済上の目的で港の建設を援助していると見る方が自然だろう』、「中国は軍事よりは経済上の目的で港の建設を援助していると見る方が自然」、説得力ある見方だ。
・『もし米中関係がさらに険悪化すれば、米海軍は海上自衛隊、豪州海軍を伴って中国沿岸の封鎖をすることは可能だ。だが中国の食料自給率はほぼ100%で輸入しているのは大豆だけ。石炭が豊富だからエネルギーの自給率も80%に近く、ロシアからのパイプラインもあり、中国が封鎖に屈する公算は低い。 核を使うと共倒れになるから通常弾頭のミサイルや、航空攻撃で都市や軍事拠点の破壊はできても、支配するには地上部隊による占領が必要だ。 黄海最奥部の天津付近から北京へは約180キロ。大損害を覚悟すれば米軍が北京に到達することは可能だろう。だが日中戦争では、首都南京を失った蒋介石は重慶に籠って抗戦を続け、日本軍は最大140万人を投入したが点と線しか確保できなかった。米軍が9年間苦戦して敗退したベトナムは、南北合わせて面積は中国の28分の1、人口は15分の1だった。 米中が戦争となれば日本は輸出の19.1%(香港を合わせると約24%)を占める中国市場を失い、致命的打撃となる。さらに中国が米軍の攻撃に対抗し、その拠点である在日米軍、自衛隊の基地や都市をミサイルで攻撃してくることも当然あり得る。 日本の安全保障にとり、米中の対立を激化させず、戦争を阻止することは必須だ。オーストラリアと同盟して中国包囲網に加わり、米国の背中を押してドロ沼に落とすようなことは、菅氏が討論会で言った通り「戦略的に正しくない」だろう』、親中派の二階幹事長までいるとなれば、「日本」が「米国の背中を押」す可能性が低そうなのが救いだ。

次に、1月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「「米中半導体戦争」が本格化、日本が急速な構造変化を生き残る道」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/259402
・『台湾TSMCはかつてのインテル? 様変わりする世界の半導体産業  日本企業は半導体関連の部材分野で世界的なシェアを持つ。しかし今、世界の半導体産業が、急速な構造変化の局面を迎えているのである。 構造変化の大きな特徴の一つが、半導体の「設計・開発」と「生産」を分離する傾向が鮮明化していることだ。 例えば、米国の大手半導体企業は「設計・開発」を担い、実際の「生産」をファウンドリー(受託製造)である台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)などに委託するケースが多くなっている。半導体の開発・設計と生産の分離(垂直分業)が加速しているのである。 その結果、ファウンダリーの地位が高まり、TSMCは最先端の5ナノ(10億分の1)メートルの生産ラインを確立するなど、製造面での優位性を発揮している。かつて、米インテルが果たしていたマーケットリーダーの役割を、今やTSMCが担っているともいえるだろう。それほど、世界の半導体産業の様相は様変わりしている。 こうした変化は、米中対立にも非常に重要な影響を与えているのである』、確かに「ファウンダリーの地位が高まり」は、目ざましい。
・『半導体産業で優位性を高めたい中国と制裁でそれを阻止する米国  中国は「中国製造2025」によって、先端の半導体産業でさらに優位性を高めたいと考えている。一方、世界の基軸国家である米国は、何とかしてそれを阻止すべく手を打っている。具体的には、米国は中国の通信機器大手であるファーウェイに続いて、大手ファウンドリーであるSMIC(中芯国際集成電路製造)を事実上の禁輸対象に指定した。 これによって一時的に、中国半導体産業の成長は遅れるだろう。ただ、米国が制裁によってIT先端分野での中国の台頭を抑えることは容易ではない。やや長めの視点で考えると、中国は徐々に半導体の製造関連の技術を習得し、米国を追い上げる可能性が高い。 今後、半導体関連の部材分野で世界的なシェアを持つわが国企業は、そうした構造変化からより多くのメリットを享受できるよう、戦略を巡らせることが求められる。そのためには、各企業の技術力向上などに加えて、政府のきめ細かい産業政策が必要だ。政府の対応を期待したい』、「米国が制裁によってIT先端分野での中国の台頭を抑えることは容易ではない」、確かにその通りだろう。
・『米国が世界の覇権を維持するため存在感が高まるTSMC  半導体の「設計・開発」と「生産」の分離の重要性が高まっていることは、2020年の世界の主要な半導体企業の業績を分析すると確認できる。このような変化の中で、有力企業は「設計・開発」に特化するか、「生産」も併せて行うかの選択を迫られているようだ。 生産工場を持たないファブレス化が重視される要因として、半導体の回路線幅を小さくする「微細化」がある。 どういうことかというと、回路線幅が細くなるほど、半導体の面積当たりの処理能力は高まるが、一方で、製造技術の開発や設備投資の負担は増す。一つの半導体企業が「設計・開発」→「生産」までを貫徹することは難しくなっているのだ。 2020年7月23日、インテルのボブ・スワンCEOが、7ナノメートルのCPU生産ライン立ち上げの遅れを公表したことは、それを確認する良い機会だった。微細化のつまずきへの解決策として、インテルは外部のファウンドリーの活用も視野に入れると表明した。その後、昨年12月には、自社で製造を行う体制を見直すよう、米国のアクティビスト投資家がインテルに求めた。 世界の半導体関連テクノロジーのロードマップを描いてきたインテルだが、彼らが重視した垂直統合のビジネスモデルは大きな転換点を迎えているのである』、「インテル」ですら「外部のファウンドリーの活用も視野に入れる」とは、時代も変わったものだ。
・『TSMCに生産を委託することで変化への対応力を高めた米IT先端企業  インテルと対照的に、「設計・開発」に注力してきた米NVIDIAは、TSMCとの関係を重視し、微細かつ高機能なチップを生み出した。昨年7月にNVIDIAの時価総額がインテルを上回った理由は、両社の成長期待の差が拡大したからだ。NVIDIAは英Armの買収によって設計・開発力にさらなる磨きをかけようとしている。また、グーグルやアップル、マイクロソフトが、自社での半導体の設計や開発を強化している。 TSMCは、最先端から既存分野まで総合的な生産ラインを確立し、各企業のニーズに的確に応える生産体制を整えた。TSMCに生産を委託することによって、米IT先端企業は知識集約的な半導体の設計・開発体制を強化し、変化への対応力を高めることができる。そうした発想がファブレス化を勢いづけた。 なお、韓国のサムスン電子は、どちらかといえば「設計・開発」から受託事業を含む「生産」までの統合を重視しているようだ。 いずれにせよ、世界経済が「データの世紀」を迎える中、米国が世界の覇権を維持するために、TSMCの重要性は高まっている』、その通りのようだ。
・『中国の半導体製造技術は米国依存 SMICは米国の制裁にどう対応するか?  一方で中国のSMICの製造能力は、台湾のTSMCに比べて3世代ほど遅れているといわれている。 半導体の自給率向上を目指す中国共産党政権にとって、SMICは欠かせない企業だ。しかし、中国の半導体の製造技術というのは、米国に依存している現状がある。 昨年9月のファーウェイへの制裁に加えて、12月に米国がSMICを事実上の禁輸対象に指定したのは、製造技術面での中国の弱みをたたき、IT先端分野を中心とする覇権強化を阻止するためだ。 一部では米商務省のSMIC制裁には抜け穴があるとの指摘があるが、主要先進国の企業は制裁違反を避けるために、中国向けの半導体および関連部材などの輸出に慎重にならざるを得ない。短期的に、中国の半導体自給率向上への取り組みは鈍化するだろう。  注目されるのが、SMICが米国の制裁にどう対応するかである。米国が制裁を強化する中にあっても、SMICは政府系ファンドと連携して工場の新設に取り組んでいる。また、SMICは4人からなる経営陣のうち3人をTSMCなどの台湾半導体産業出身のプロで固め、微細化をはじめとする生産能力の向上に取り組む意向だ。 中長期的に考えた場合、共産党政権は多種多様な方法を用いてSMICの総合的な生産能力の向上に取り組むはずだ。事実、共産党政権は、企業への補助金や土地の提供、海外企業からの技術移転、人材獲得などによって、半導体の開発力を高めた。それが、フィンテックやドローン、軍事関連技術の高度化など中国の覇権強化を支えた。時間がかかったとしても、中国はSMICの生産能力向上をあきらめないだろう。 現時点で、製造技術で米国に一日の長があることは確かだ。しかし、中国経済のダイナミズムを支える「アニマルスピリッツ」や、テクノクラート(技術官僚)の政策運営力を基に考えると、米国が半導体分野における中国の技術革新を食い止めることは容易ではない。短期的に厳しい状況に直面したとしても、中長期的には、世界経済における中国の半導体産業の重要性は高まる可能性がある』、「中長期的には、世界経済における中国の半導体産業の重要性は高まる可能性がある」、異論はない。
・『日本の半導体関連部材の技術は日本経済の宝  わが国の半導体部材関連の企業にとって、中国市場の重要性は高まるだろう。半導体関連部材の市場において、信越化学工業のシリコンウエハーや、村田製作所のセラミックコンデンサなど、わが国企業のシェアは高い。 その理由は、分解できず、簡単にまねができないからだ。各企業は、原材料のレベルから高純度かつ微細な素材(製品)を生み出すことに取り組み、世界各国の企業から必要とされる立場を確立してきた。半導体関連部材の企業の実力は、わが国経済の宝といえる。 半導体部材関連の企業が、米国からも中国からも必要とされ、より多くの収益を獲得するためには、わが国政府の能動的な取り組みが必要だ。なぜならわが国企業を取り巻く事業環境は、米中の覇権争いをはじめ、各国政府の利害に大きく影響される側面が強まっているからである』、異論はないが、「政府の能動的な取り組み」とは何なのだろう。
・『米中の激突が先鋭化する中、日本はどうすべきか?  今後、米国は、中国の半導体自給率の向上を食い止めるために、制裁を強化する可能性がある。米国の圧力を跳ね返すために、中国はSMICなどへの支援を強化し、国家資本主義体制を強化するはずだ。また、中国は国際社会における孤立を防ぐためにEU(欧州連合)との包括的投資協定を結ぶなど、既成事実をつくろうとしている。 米国の自由資本主義体制と、中国の国家資本主義体制の激突が先鋭化していく中で、わが国はどうすべきか。まずは、安全保障体制の確立のために、米国との信頼関係を強化し、その上で、アジア新興国やEUとの関係を重視しなければならない。 経済面では、多国間の連携を強化することが長期の社会と経済の安定に必要、との見解を共有すべきだ。特に、わが国が過度な補助金や、技術の強制移転の禁止をはじめ、TPPの考えをより多くの国と共有することは、経済面からの「対中包囲網」を整備することにつながるだろう。 新型コロナウイルスの感染再拡大によって、国内外の社会と経済はかなり厳しい状況を迎えている。わが国政府は集中した感染対策によって国民の安全を守り、さらにはワクチンの供給体制を整えることで、感染の克服と景気回復を目指さなければならない。 その状況下、口で言うほど容易なことではないが、わが国政府が相応のスピード感をもって国際世論との連携強化を目指すことができるか否かが、半導体関連部材の需要取り込みをはじめ、わが国の社会と経済の先行きに無視できない影響を与えるだろう』、同感である。

第三に、3月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した上記と同じ真壁昭夫氏による「「過去に例を見ないほどの怒り」米中・新冷戦の狭間で日本がとるべき行動とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/266873
・『3月18〜19日、米アラスカ州のアンカレッジで開催された米中外交トップ協議では、両国の対立が鮮明だった。外交の専門家が「中国側は過去に例を見ないほど怒りを示した」と指摘するほどだ。「新しい冷戦」とも呼ばれる米中対立は激化の一途をたどっている。両国のはざまで日本が取るべき行動とは?』、わざわざ小雪が降る「アンカレッジ」を選んだとは、バイデン政権もなかなかやるものだ。
・『米中対立は激化の一途 中国は「国家資本主義体制」を強化  米バイデン政権の本格的な活動開始に伴い、米国と中国の対立が一段と鮮明化している。 3月18日に米アラスカ州で行われた、米中の外交高官による協議(以下、米中外交トップ協議)でも、両国はいずれも強硬なスタンスで一歩も譲る気配は見えなかった。今後も両国の対立はより先鋭化するだろう。世界の政治・経済・安全保障といったさまざまな面であつれきが顕在化するとみられる。 コロナショックの前までは、人々の自由な発想と活動を重視する米国の体制は、国家主導での経済成長を目指す中国の体制よりも、優れていると考えられていた。 しかし、コロナ禍の中で、中国のこうした「国家資本主義体制」は、予想外の強い一面を見せている。そのことは、昨年(2020年)4月以降の中国経済の回復が示しており、その結果、中国市場を重視する主要先進国企業は増加している。 基軸国家として世界経済の成長を支え、そのベネフィットを得てきた米国にとって、その状況は容認できない。米国は、人権問題や領土問題などの側面から中国への圧力を強めている。 今後、バイデン政権は、欧州各国や日・豪・印など、国際社会との連携を強化し、対中包囲網の整備を目指す。一方、中国共産党政権は、求心力を維持するためにより一層、米国に対抗することになるだろう。 両国の狭間でわが国が取るべき行動は2つだ』、何なのだろう。
・『米ソの冷戦とは異質の「新しい冷戦」へ突入した  3月18〜19日、米アラスカ州のアンカレッジで開催された米中外交トップ協議では、両国の対立が鮮明だった。 中国は、米国が主張した国際社会のルールに従うことに強く反発。外交の専門家が「中国側は過去に例を見ないほど怒りを示した」と指摘するほどだ。「新しい冷戦」とも呼ばれる米中対立は激化の一途をたどっている。 米ソの冷戦では、両国が関係を絶った。しかし、米中の対立はそれとは異質だ。経済面で米中の関係は深まっているのである。その一方で、米国は人権、領土、知財などの面から中国に圧力をかけ、自国が整備してきた国際社会のルールに従うよう、中国に求めている。それは米国の覇権維持に欠かせない。そのためにバイデン政権は、国際連携に基づいた対中包囲網の整備に取り組んでいる。EU、米国、英国、カナダが足並みをそろえ、ウイグル人権問題で対中制裁を発表したのはその象徴だ。 ただし、バイデン政権の対中政策が短期間で効果を表すとは考えづらい。なぜなら、コロナショックを境に世界経済にとっての中国経済の重要性、相対的な強さが一段と高まったからだ。日米欧などで中国での収益獲得をより重視する企業は多い。 逆に言えば、バイデン大統領に求められるのは、経済面で中国に対する米国の優位性を世界に示し、国際世論の支持を得ることだ。そのために同氏は、インフラ投資など経済対策を強化して米国の雇用環境を回復させ、社会の分断の修復を目指している。その上で、多様性を尊重し、イノベーションが発揮されやすい経済環境を実現しなければならない。 足元、懸念すべき「変異株」の出現など、新型コロナウイルス感染の影響はまだまだ軽視できない。雇用を中心に米国経済には弱さが残るし、アジア系住民などへの差別も深刻だ。 バイデン政権がスピード感を持って、実効性の高い政策を進めることができるか否かは、対中政策に無視できない影響を与える』、なるほど。
・『「国家資本主義体制」の強化で米国に対抗する中国  中国の共産党政権は、米国からの批判や圧力に対して弱腰になることはできない。共産党指導部が恐れるのは、国内の社会心理の悪化だ。 1989年に天安門事件が発生した時、西側の経済の専門家の多くが「これで中国は民主主義に向かい、自由資本主義陣営への仲間入りを目指す」と考えた。 しかし、そうはならなかった。中国共産党指導部は経済運営の指針を定め、海外からの技術移転や金融市場の育成によって工業化、および先端分野への生産要素の再配分を進めて経済成長を実現した。 つまり、中国共産党政権は「党に従えば豊かになれる」というイデオロギーを社会心理に根付かせることによって、求心力を発揮したのである。コロナショック後の中国経済の回復スピードの早さは、こうした国家主導による経済運営体制の強さを世界に示したといえる。 ただ、景気回復の一方で、中国では人口減少と雇用への不安が高まっている。 共産党政権は、中長期的な経済運営への不安、あるいは焦りを強めているだろう。長期の支配体制を目指す習近平国家主席は、より強固に米国に対抗し、強さを誇示しなければならない。フィリピン海域への約220隻の中国船籍の集結や、人権問題をめぐるEUへの対抗措置はその一例だ。 経済運営に関して、求心力維持のために、共産党政権は経済成長を実現しなければならない。 そのため共産党政権は、国内では高速鉄道や道路の延伸などのインフラ投資に加え、産業補助金や海外企業からの技術の強制移転を進める。インフラ投資の結果として、債務問題は深刻化するだろう。 対外的には、「一帯一路」や「地域的な包括的経済連携(RCEP)協定」に基づき、アジア・アフリカ新興国各国との関係を強化し、需要の取り込みを目指す。それは中国にとって、経済成長だけでなく、国際社会における孤立回避にも重要なのである』、「インフラ投資の結果として、債務問題は深刻化するだろう」、過剰な「インフラ投資」は工事完成後の運営コストを押し上げるので、毎年の膨大な赤字が、建設費に加わってくる。そのため、「債務問題」はさらに「深刻化」する可能性がある。
・『米中の対立が激化する中 日本が取るべき2つの対応  今後、米中の対立は激化するだろう。短期的に、中国経済は成長を実現し、その恩恵に浴したい国や企業は増えていくだろう。ただし、長期の視点で考えると、中国経済の不安定感は高まる可能性がある。特に債務問題は軽視できない。 米国はそうした長期の展開を念頭に、対中政策を進めようとしているようにみえる。中国の最先端の製造技術は十分ではない。そのような中国の弱みをたたくため、まずはジーナ・レモンド米商務長官とキャサリン・タイ米通商代表部(USTR)代表は、トランプ前政権の対中禁輸措置や制裁関税などを継続する。半導体関連に加えて、気候問題への対応に必要な水素や脱炭素関連の分野でも、米国は同盟国と連携し、中国に対する関税・非関税障壁を強化する可能性がある。 次に米国政府は、補助金などを用いて自国企業の競争力を高めたい。3月23日には米インテルが200億ドル(約2.2兆円)を投じて、アリゾナ州に工場を建設すると発表。同社は、半導体の受託製造(ファウンドリー)事業にも参入する。それは、バイデン政権が目指す、米国の半導体生産能力強化への取り組みに従ったものだ。アリゾナ州には台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company/台湾積体電路製造)も工場を建設する。それがインテルの競争力にどう影響するかが注目される。 ポイントは、中国の国家資本主義との覇権争いの長期化に備え、米国経済における「政府の役割」が増すことだ。先端分野を中心に、米国の自由資本主義体制には変化が生じているといえる。 米中の対立が激化し、その影響が長期にわたって続く展開が予想される中、わが国が取るべき対応は2つだ。 一つ目は、安全保障面で米国との関係を強固にすること。ニつ目は、先端分野での技術開発をスピード感を持って進めて、米中双方から必要とされる立場を目指すこと。こうした対応が、わが国が中国に是々非々の姿勢で臨むことを支え、国際世論からの信頼を獲得することにつながるだろう』、「わが国が取るべき対応は2つ」、の中身は同感である。
タグ:ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 田岡俊次 AERAdot 米中経済戦争 「中国製造2025」 (その15)(もし米中戦争起きたら…米国は地上戦で大損害必至?日本も中国市場失い致命的打撃、「米中半導体戦争」が本格化 日本が急速な構造変化を生き残る道、「過去に例を見ないほどの怒り」米中・新冷戦の狭間で日本がとるべき行動とは) 「もし米中戦争起きたら…米国は地上戦で大損害必至?日本も中国市場失い致命的打撃」 「中国は軍事よりは経済上の目的で港の建設を援助していると見る方が自然」、説得力ある見方だ。 親中派の二階幹事長までいるとなれば、「日本」が「米国の背中を押」す可能性が低そうなのが救いだ。 「「米中半導体戦争」が本格化、日本が急速な構造変化を生き残る道」 確かに「ファウンダリーの地位が高まり」は、目ざましい 「米国が制裁によってIT先端分野での中国の台頭を抑えることは容易ではない」、確かにその通りだろう 「インテル」ですら「外部のファウンドリーの活用も視野に入れる」とは、時代も変わったものだ。 「中長期的には、世界経済における中国の半導体産業の重要性は高まる可能性がある」、異論はない。 異論はないが、「政府の能動的な取り組み」とは何なのだろう わが国政府が相応のスピード感をもって国際世論との連携強化を目指すことができるか否かが、半導体関連部材の需要取り込みをはじめ、わが国の社会と経済の先行きに無視できない影響を与えるだろう 「「過去に例を見ないほどの怒り」米中・新冷戦の狭間で日本がとるべき行動とは」 わざわざ小雪が降る「アンカレッジ」を選んだとは、バイデン政権もなかなかやるものだ。 「インフラ投資の結果として、債務問題は深刻化するだろう」、過剰な「インフラ投資」は工事完成後の運営コストを押し上げるので、毎年の膨大な赤字が、建設費に加わってくる。そのため、「債務問題」はさらに「深刻化」する可能性がある。 「わが国が取るべき対応は2つ」、の中身は同感である。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

ミャンマー(その3)(抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」、「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由、ミャンマー政変 にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”) [外交]

ミャンマーについては、本年2月28日に取上げた。今日は、(その3)(抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」、「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由、ミャンマー政変 にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”)である。

先ずは、3月17日付け日経ビジネスオンライン「抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00118/031700044/
・『2月1日の国軍によるクーデターはミャンマーを窮地に追いやった。多くの市民が国軍の支配に不服従を貫き、毎日休みなく全国各地で厳しい抗議デモが起きている。ゼネストも広がり、経済は立ち行かなくなりつつある。だが国軍による弾圧は苛烈になる一方だ。報道によれば、3月16日までに少なくとも180人を超える犠牲者が出ている。なぜ国軍はクーデターを起こしたのか。先行きが不透明な状況はいつまで続くのか。ミャンマー政府と少数民族武装勢力との和平に貢献し、ミャンマーの政治・軍関係者とのつながりも深い日本経済大学の井本勝幸・特命教授に話を聞いた(Qは聞き手の質問)。 Q:国軍による弾圧がエスカレートしており、状況は悪化する一方です。 日本経済大学の井本勝幸・特命教授(以下、井本氏):わずか1カ月でミャンマーという国はボロボロになってしまいました。国軍は人々に銃口を向け、通信は断続的に遮断され、夜陰に紛れた誘拐まがいの拘束が横行している。刑務所でもひどい事態が起きていると聞いています。 治安部隊はデモで負傷した人を手当てする医療ボランティアにまで暴行を加えている。弾圧は厳しくなる一方で、もう尋常ではありません。私は国軍とも長い付き合いがありますが、ここまでバカな連中だとは思わなかったというのが正直な思いです。 このままではもっと悲惨なことになります。ですから私はCRPH(注:「連邦議会代表委員会」、国軍に対抗するためアウン・サン・スーチー氏率いる国民民主連盟のメンバーが中心となって設立した組織。事実上の臨時政府)のメンバーに「(国軍との)戦い方を変えたほうがいいのではないか」と伝えました。 人々の国軍を許さないという思いは十分に分かる。ただ路上に出てデモ活動をすれば命を失います。これ以上、犠牲者を増やさないためにも、今後はゼネストなどを中心に対抗していくべきだと考えています。CRPHのメンバーも危ない。今、国軍は関係者を血眼になって探しています。彼らは今、捕まったら最後という状況で活動しているのです。 クーデターの数週間後に元国軍関係者と話をしたところ、彼は「国軍はルーズ・オア・ウィン・タクティクスに入っている」と言いました。勝つか負けるか、どちらかしかないということですね。もちろん相手は民衆です。武装勢力ならまだしも、丸腰の民衆相手に、何が「ルーズ・オア・ウィン」だと個人的には思います。国軍はここまで民衆の反発が強いとは想定していなかったのです。文句を言いつつもクーデターや国軍の支配を結局は受け入れるだろうと浅読みしていたのです。現実が想定と大きく違っていたものだから、追い詰められて強硬な姿勢を取らざるを得なくなってしまった。 Q:人々は治安当局の弾圧に屈することなく抗議を続けています。現状では着地点が見えません。 井本氏:民衆は今のところ国軍に一歩も引く気はありません。国軍側は国民民主連盟(NLD)が大勝した2020年11月の総選挙で大規模な不正があったとし、選挙をやり直す方針を示していますが、一方で多くの人々はクーデター以前の状況に戻せという。 国軍に対する反発は本当に根強いものがあります。ミャンマーの民政化はまだ途上で、これまで約半世紀にわたって軍事政権が続いてきました。ここでクーデターを認めてしまっては、また暗黒の時代に逆戻りする。ミャンマーの人々はこう考えています。彼らからすれば、今回は国軍との最後の戦いなのです。だからたとえ命を落としても、経済が立ち行かなくなり生活ができなくなったとしても、絶対に軍政を認めないという姿勢を示しています』、「国軍はここまで民衆の反発が強いとは想定していなかったのです。文句を言いつつもクーデターや国軍の支配を結局は受け入れるだろうと浅読みしていたのです。現実が想定と大きく違っていたものだから、追い詰められて強硬な姿勢を取らざるを得なくなってしまった」、それにしても、国民に銃を向けるとは酷いものだ。
・『難民が発生する恐れ  対立は深まるばかりです。国軍による弾圧が激化すれば、生活できなくなる人が大量に出て難民化します。1988年に起きた民主化運動でも多くの難民が発生し、タイに逃れました。国内外の難民を誰が救うのか。国際社会は軍政を動かしてでも彼らを守らなければなりません。 もっとも、抗議運動にしても、いつまでも続けられるわけではありません。後述するように国際社会からの介入がない限り、どこかに落としどころを見つける必要はあります。一方で、反軍政を貫こうとする人々は活動を先鋭化させていくでしょう。彼らが行き着く先は少数民族武装勢力です。これもまた88年の民主化運動で見られた動きです。 例えば当時の軍事政権に武力闘争を挑んだ全ビルマ学生民主戦線(ABSDF)は国軍に追い詰められ、少数民族武装勢力のカレン民族同盟(KNU)を頼りました。それしか道がなかったのです。そして今回もまた同じような動きが出ると思います。本当に残念なことですが、国軍は同じ歴史を繰り返そうとしているのです。 Q:なぜ国軍はそもそもクーデターに踏み切ったのか。またスー・チー氏やNLD側に防ぐ手立てはなかったのでしょうか。 井本氏:国軍は軍政時代の2003年に民主化へのロードマップを公表し、これに従って民政移管を進めてきました。国軍は「民主化の主役はあくまで自分たち」であると思っていましたし、これを主導することで国民から尊敬されたかったのです。 ただ現実は異なりました。「愛される国軍」になりたかったのに、国民からはそっぽを向かれてしまった。象徴的なのが2015年の総選挙です。この選挙で国軍出身のテイン・セイン大統領率いる軍系政党(連邦団結発展党、USDP)は、スー・チー氏率いるNLDに大敗を喫しました。 テイン・セイン氏は軍出身ながら民主化を積極的に推し進め、少数民族武装勢力との停戦も実現し、さらに経済的にも多くの改革に着手してきた。国軍内部で「テイン・セイン氏は(民主化に)前のめりになりすぎている。やりすぎだ」という声が出ていたほどです。それなのに、国民の支持はスー・チー氏に集中した。結局、民主化の主役は国軍ではなくスー・チー氏であることを、まざまざと見せつけられたのです。「スー・チー氏さえいなければ」という思いが、国軍にはくすぶり続けました。 さらに2020年の総選挙ではスー・チー氏率いるNLDは前回を上回る勝利を収め、USDPは前回よりもひどい大敗を喫しました。「スー・チー氏さえいなければ」という思いはより強くなり、自らの存在が脅かされるとの危機感が国軍をクーデターに駆り立ててしまった。 クーデターで全権を握ったのは国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官です。ただ関係者の間では、今回のクーデターを主導したのは彼だけではないという見方があります。たとえばCRPHの関係者は「日本が交渉に乗り出すとすれば、相手はタン・シュエ氏だ」と話しています(注:タン・シュエ氏は旧軍政トップとして独裁体制を敷いた人物。2011年、後継としてテイン・セイン氏を政治トップに、ミン・アウン・フライン氏を国軍トップに指名し一線から退いたといわれている)。ミン・アウン・フライン氏はどちらかといえば穏健派として知られていましたが、その周囲にいる国軍幹部はタン・シュエ氏子飼いの強硬派が多いと聞いています。 タン・シュエ氏はミン・アウン・フライン氏にその地位を譲る際、「必要とされる場合は再び軍が実権を握る」と予言していました。そのタイミングが今だったということでしょう。ただ国軍の一部関係者からは、現状について戸惑いの声が上がっているのも事実で、(民衆への弾圧について)やりすぎていると冷静に見る向きもあります。でも軍の命令には怖くて逆らえません。私はかつて国軍の兵舎を訪ねたことがありますが、そこではいじめが横行しており、上官はやりたい放題でした。あそこにいたら誰だって恐怖心でいっぱいになり、上官の命令には逆らえなくなります。知り合いの国軍関係者に対しては「このままでは国軍は国民からも国際社会からも相手にされなくなる。再革命が必要なんじゃないか」と話していますが、今のところ、その可能性はありません。 一方のスー・チー氏やNLD側も今回は国軍の動きを見誤りました。国軍は2020年11月の総選挙について検証するよう再三迫っていましたが、NLDは聞き入れなかった。しかもNLD側はぎりぎりまで、国軍によるクーデターの動きを把握できていなかった。最初から対応しておけば、ここまで国がボロボロになるような事態にはならなかったかもしれません』、「国軍トップ」の「ミン・アウン・フライン氏はどちらかといえば穏健派として知られていましたが、その周囲にいる国軍幹部はタン・シュエ氏子飼いの強硬派が多い」、なるほど。
・『主要な少数民族武装勢力は反軍政に  今、課題になっているのはNLDやCRPHのリーダーの不在です(注:国軍はクーデター以来、スー・チー氏を拘束している)。国軍と対等に話ができる人がいないのです。CRPHの関係者とも話していますが、結局、これまで何もかもスー・チー氏頼みだったのは問題でした。NLD政権内ではスー・チー氏の顔色をうかがいながら仕事をするような雰囲気ができてしまい、彼女の耳に入る前に案件が握りつぶされてしまうこともありました。もっとも、スー・チー氏は75歳になっています。現実的に考えれば次の5年が(国のトップとして仕事をする)最後のタイミングだったでしょう。こんな事態になる前から、新しいリーダーを育てておく必要はあったと思います。 Q:ミャンマーの少数民族武装勢力は今回のクーデターにどう反応しているでしょうか。 井本氏:ミャンマー政府との停戦協定に署名していた10の少数民族武装勢力は国軍の弾圧を非難し、軍との和平交渉を打ち切りCRPH支持を表明しています。さらに、停戦に応じていなかったカチン独立軍(KIA)も 市民の抗議運動を保護する姿勢を示し、国軍と衝突しました。 当初、CRPHは一部の少数民族武装勢力としか接触していなかったため、それではだめだと私は伝えました。結果、CRPHは各民族との交渉に乗り出しました。高度な自治を約束し、さらに民主主義に基づいて国軍を解体し、武装勢力と統合して新たに連邦軍を作ると明言しています。これは画期的な動きだったと思います。少数民族武装勢力との和平を進めるという点では、国軍は一度解体されることが避けられないのです(注:一方で国軍はNLD政権がテロリスト団体に指定していた少数民族武装勢力アラカン軍のテロ団体指定を解除した)。 関係者によれば国軍は「ここで自分たちが倒れたら、ミャンマーはシリアのようになる」と本気で考えているそうです。ただ、現状ではCRPH・少数民族武装勢力と国軍とが内戦状態になることは考えにくいと思っています。CRPHは武器を持ちませんし、少数民族武装勢力は自分たちの支配が及ぶエリアを守ることが第一で、エリアを出て戦闘することは基本的にはないからです。また今回の問題について、あくまでビルマ族内の主導権争いだと冷めた目で見る向きもあります。Q国際社会は、日本はどう対応すべきでしょうか。 井本氏:国際社会がミャンマーの人々を「保護する責任(R2P、Responsibility to Protect )」はあると思います。国に人々を守る意思がないのですから。本来であれば、国際社会がPKO(国連平和維持活動)のような形を取って介入すべきでしょう。そうすれば少なくとも弾圧はなくなるでしょうし、対立する双方が対話する機会ができます。ただ国連などの介入は現状では望めません。国連安全保障理事会では中国やロシアが慎重な見方を崩さず、結局、議長声明しか出すことができませんでした。米国などは経済制裁を打ち出していますが、経済制裁で問題が解決した例を私は知りません。 ミャンマー国内では、「中国が国軍を支援している」との見方が強まっており、反中デモも行われています。ただ状況はもっと複雑だと思います。中国とべったりだったのは、むしろスー・チー政権でした。国軍は中国の影響力の増大には危機感を強めていたのです。中国は一部の少数民族武装勢力の後ろ盾にもなっていましたから。そこで国軍は近年、中国ではなくロシアから兵器を購入していました。しかもクーデターの数日前にはロシアの国防相がミン・アウン・フライン総司令官と会談しています。国軍は中国とロシア、そして中国の進出に神経をとがらせる隣国、インドとのバランスをうまく取りながら、難局を乗り越えていこうという腹ではないかと思います。 有効な手が打てない国際社会ですが、それでも手をこまぬいている場合ではないでしょう。国軍は前回の総選挙で大規模な不正があったと主張しています。ならば国際社会が調査団を入れて、改めて票の数え直しをするとか、選挙をするにしても軍政の都合のいいものにするのではなくて、国際社会が責任を持って11月と同じ顔ぶれで実施させるなど、やれることはあるはずです。 日本は国軍とのチャンネルがあります。それを生かし、改めて民主化を促していくという立場でいいと思います。国際社会からは批判を受けるかもしれませんが、独自のカードを用意して交渉していくのです。例えば人道支援は止めないけれども、弾圧が続く限り大きなプロジェクトは支援しないといったように、是々非々でやっていくしかない。かつての軍政時代から日本はミャンマーへの支援を続けてきました。投資も多く、日本人もたくさん住んでいます。今ここで関係を断ち切ってしまっては、もう二度とミャンマーに入れないでしょう。今、国軍は日本の声に耳を貸そうとしませんが、粘り強く働きかけていくしかないと思います。 この記事はシリーズ「東南アジアの現場を歩く」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます』、「日本は国軍とのチャンネルがあります。それを生かし、改めて民主化を促していくという立場でいいと思います」、手ぬる過ぎる。毎日、大勢が殺されているなかで、もう悠長なことを言っているヒマはない筈だ。

次に、3月23日付けWedge「「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由」を紹介しよう。
・『我々日本人自ら「親日国」と形容することも多いミャンマ――。ミャンマーのクーデターから1カ月が経過するなか、俄かにその風向きに微かな異変が起きつつある』、「微かな異変」とは何なのだろう。
・『丸山大使の「外相」発言に猛反発  政府をはじめとした日本側の対応に不満を抱えているミャンマー国民の声が、ソーシャルメディア上を中心に急速に目立つようになってきている。事の発端は今月8日、国軍と太いパイプを持つと言われている丸山市郎・駐ミャンマー大使が、国軍が「外相」に指名したワナ・マウン・ルウィン氏と首都ネピドーで会談した際のこと。 丸山大使は、クーデター後の状況に対して「重大な懸念」を表明すると同時に、ミャンマー市民への一切の暴力停止、アウン・サン・スー・チー氏らの早期解放、民主的な体制の速やかなる回復といった3点を要求した。独自に築いてきた軍政とのパイプを生かしながらの外交が行われた形だが、その夜に在ミャンマー日本大使館がフェイスブック上で、ワナ・マウン・ルウィン氏について「外相」と表記した上で、上記事項を申し入れたとビルマ語、英語、日本語で投稿。 すると、瞬く間にミャンマー市民から非難の声が殺到。「日本政府の弱気な態度に失望しています」、「日本はミャンマー国民の声を聞かず、軍人を認めるつもりなのか?」、「ワナ・マウン・ルウィン氏は、外務大臣ではありません。誰も認めてはいけませんし、このような言葉使いをやめて頂きたい。ミャンマー国民としては強く非難します」など、痛烈なコメントが怒涛のような勢いで相次いでしまったのだ。 これを受けて、加藤勝信官房長官は10日に行われた記者会見で、ミャンマー国軍が任命したワナ・マウン・ルウィン氏を日本政府が「外相」と呼んだことについて、「〝外相〟と呼称はしているが、呼称によって国軍によるクーデターの正当性やデモ隊への暴力を認めることは一切ない」と強調。その上で、「ミャンマー側の具体的な行動を求めていくうえで、国軍と意思疎通を継続することは不可欠で、これまで培ってきたチャンネルをしっかり活用して働きかけを続けることが重要だ」と日本政府の姿勢を説明する対応に追われた。 茂木敏充外相も、丸山大使が会談した翌日9日の記者会見では、ワナ・マウン・ルウィン氏を「外相」と呼んでいたものの、10日の衆院外務委員会の途中から、ミャンマー市民の心情や国際世論への配慮からか「当局によって指名されている外相と言われる人」との表現を使い、軌道修正した。 2日に開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)の非公式外相会議では、内政不干渉を原則として加盟国の国内政治事情などに対し介入を避けてきたなかで、各国から批判の声が相次ぐなど異例とも言える事態となり、インドネシアとシンガポールの外相がワナ・マウン・ルウィン氏に対して「外相」という呼称を使わなかったことが報じられた経緯もある。こうしたなかで、最大のODA支援国である日本が「外相」という言葉を堂々と使用したことにミャンマー市民は強く反応したというわけだ』、呼称は極めて重要な問題なのに、「日本」の外務省がここまでセンスがないとは驚かされた。
・『「治安部隊」の呼称を使い続ける日本メディアに非難  さらに、日本の各メディアへの非難も高まる事態となっている。主たる引き金は「治安部隊」という表現だ。今、スーチー氏の解放と民主化を掲げて声を上げているミャンマー市民らは、国軍を「テロリスト」と呼び始めている。事実、武器を持たずに「非暴力」で立ち向かおうとする市民に対して発砲して多くの犠牲者を出したり、不服従運動に参加する公務員やメディア関係者らを夜中に逮捕・拘束、さらには戒厳令下での死刑もちらつかせるなど、次第にその手口は過激化している。 国軍に対しては、国内外から急速に批判が高まっており、もはや「治安」を守る部隊ではなく暴力を煽り人を殺す「テロリスト」なのだ、というのがミャンマー市民の理屈だ。ソーシャルメディア上ではもはや、ミャンマー市民らによる「国軍テロリスト」という呼称は定着しているような状況だ。 「治安部隊」という表現に対して、ミャンマー市民からの反発に火がついた一つのきっかけが、第2の都市マンダレーでデモ隊への銃撃によって犠牲となった19歳のチェ・シンさんの死だ。歌と踊りが趣味で「エンゼル」(天使)という愛称で親しまれ、銃撃される前の姿を捉えた写真やイラストは抗議運動で掲げられるなど、象徴的な存在となったチェ・シンさん。 しかし、ミャンマーの国営テレビでは、警察がマンダレー郊外の墓から遺体を掘り起こして検視を行った結果、チェ・シンさんの頭から摘出された銃弾は警察のものではなく、さらに警察がいた方向からは撃たれていないなどと報じた。ソーシャルメディア上では「遺体を掘り起こすなどなんておぞましい行為だ」「こんな虚偽報告を信じるものなどいない」などの書き込みが相次ぐ事態となったわけだが、日本のメディアでは、ミャンマー国営テレビが「警察が裁判所の許可を得て遺体を掘り起こし検視を行なった」と伝えたことを報道。 すると、テレビのタイトル字幕を撮影した画面がソーシャルメディア上で一気に拡散されていき、「日本のメディアは捏造報道ばかりでフェイクを垂れ流している」「なぜ軍事独裁政権の嘘ばかりを配信するミャンマーの国営テレビを信じるの? 人殺しであるミャンマー軍事政権と同じだ」「テロリスト集団を応援するような報道しか出来ないのですか」などとあっという間に非難の声が広がってしまった。 きちんと放送全体を見れば決して国軍の肩を持つような内容にはなっておらず、あくまで国営テレビではこう報じられたものの市民からは反発が上がっている、として右上のサイドタイトルには「犠牲者の遺体掘り起こし ミャンマー当局に非難の声」とも書かれている。 さらに、ソーシャルメディア上での「誰がこのような(当局の)うその報告を信じるだろうか」という市民の言葉も併せて紹介されており、放送全体のニュアンスからすればむしろ市民による当局への非難を伝えている内容になっている。しかし、ミャンマーの国営テレビで伝えられた内容を引用で報じたことに対して「国軍の言うことを信じて肩を担ぐのか」とあたかも肩棒を担いでしまったかのように怒りを買う結果となった。 今や、日本メディアへのミャンマー市民の目線は非常に厳しいものとなり、あらゆるニュースについての文言が取り沙汰され、様々な非難が止まない状況だ。 このようにミャンマー市民の不信感が募る背景には、欧米諸国が先んじて国軍関係者らを対象にした強硬な制裁措置などを打ち出してきたなか、日本政府は協調路線を取っておらず、独自の外交を行なっていることが挙げられる。軍政時代からの「独自の国軍とのパイプ」を生かした外交が謳われ、これまで民主化を後押ししてきた経緯があるが、これほどまでに市民の犠牲が出て国際社会からも制裁を求める声が強まるなか、果たして国軍側との「対話と協力」を維持して慎重に対応する姿勢が依然として通用する事態なのか――既に多数の犠牲者が出ている緊迫した情勢下、ミャンマー市民にとっては「及び腰」「口だけで行動が伴わない」などと捉えられる結果を招いている』、「欧米諸国が先んじて国軍関係者らを対象にした強硬な制裁措置などを打ち出してきたなか、日本政府は協調路線を取っておらず、独自の外交を行なっていることが挙げられる・・・これほどまでに市民の犠牲が出て国際社会からも制裁を求める声が強まるなか、果たして国軍側との「対話と協力」を維持して慎重に対応する姿勢が依然として通用する事態なのか」、少なくとも「国軍側」にもっと強い姿勢で取っていることが「ミャンマー市民」にも分かる程度までは、圧力を強めるべきだ。
・『日本政府が表明した「ロヒンギャ支援」にも反発  さらに、日本政府による人道支援も、非難の的となった。政府は9日、ミャンマー国内やバングラデシュに流入したイスラム教徒少数民族ロヒンギャ難民らへの医療用品や食糧支援などの名目で1900万ドル(約20億9000万円)の緊急無償資金協力を行うことを決定した。クーデターが起きた2月以降、日本政府が発表した初めてのミャンマー関連の支援で、赤十字国際委員会(ICRC)や国連世界食糧計画(WFP)などの国際機関を通じて、約60万人に対する食料支援やシェルターの改修、医療用品の提供などが実施されるとされた。 国軍との交換公文の署名などは行わず、茂木敏充外相は会見で「ミャンマーの国民が困るような事態については人道上の問題で支援を続けねばならない」と、あくまで経済支援は行わない構えだが、人道支援の継続を表明した形だ。 しかし、このロヒンギャへの支援が報じられると、再びミャンマー市民からの不満、非難が続出。ソーシャルメディア上では、「日本政府には呆れます」「この支援金が誰に手渡されるのかが気になります。軍に渡したところで、難民支援に使うと約束したとしても口約束で行かない。大半は軍の懐にいくでしょう」などの非難が相次いだ。なかには、「間違えないでください、国軍に支援金が渡るのではなく、赤十字などを通してロヒンギャに支援されるのです」と冷静に支援の意図を正す投稿も見られたが、それに対しても「国軍に渡る可能性がないと言い切れるのか」などと強い反発の声が散見される。 ソーシャルメディア上に溢れる、ミャンマー市民たちの声は、国際社会が制裁に舵を切るなか、期待していた日本政府の対応への失望感への表れでもある。 独自の外交を貫いてきた日本政府は今、厳しい舵取りを迫られている』、「ミャンマー市民たちの声は、国際社会が制裁に舵を切るなか、期待していた日本政府の対応への失望感への表れでもある」、「日本政府としても、前述の通り、「国軍側」に圧力を強めるべきだ。

第三に、3月23日付けデイリー新潮が掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤和彦氏による「ミャンマー政変、にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/03230602/?all=1
・『2月1日にクーデターが起きたミャンマー情勢はますます混迷の度を深めている。 クーデターを起こした国軍が、デモ制圧を続ける姿勢を示し、全権掌握の既成事実づくりを頑なに進める一方、民主化勢力は「臨時政府」を立ち上げ、統治の正統性を主張する。 混乱状態が長期化しつつある中で、ミャンマーではこのところ「国軍を支援している」として中国に対する批判の声が高まりつつある。 中国側は否定しているが、3月11日、ヤンゴンで国軍のクーデターに抗議する数百人のデモ隊が中国大使館に対する抗議活動を行った。中国製品の不買運動を呼びかける声も上がっていたが、その矢先の14日、ヤンゴンにある複数の中国系の工場が何者かの襲撃を受け、多くの中国人従業員が怪我をするという事案も発生した。 ミャンマーにおける中国のプレゼンスは大きい。中国にとってミャンマーは手放すことが出来ない要衝の地である。中国はミャンマーが民主化プロセスを進める中、同国のインフラ整備などに巨額の資金を投じてきた(総額1000億ドル)。「一帯一路」の旗頭の下でミャンマーとの物流ルート「中国・ミャンマー経済回廊」の建設を進めており、完成すれば中国は内陸部からインド洋に抜ける大動脈と海洋進出の足がかりを得ることになる。原油・天然ガス輸送におけるマラッカ海峡の依存度を低下させるため、ミャンマーのチャウピュー港から中国雲南省につながる原油・天然ガスパイプラインも整備してきたが、クーデターによる政情不安が、中国の「虎の子」である資産にとって脅威になるとの懸念を強めている(3月10日付日本経済新聞)。 中国はアウンサンスーチー国家顧問率いる国民民主連盟(NLD)政権との関係は良好だったが、国軍は「NLDが中国と近すぎる」として警戒感を強めた。このことが今回のクーデターの一因であるとされている。 中国は国軍に対しても軍事協力を提案してきたが、国軍は中国と協力しながらもその影響力拡大に対する警戒を怠ることはなかった。中国は海洋輸送路確保に向けた「真珠の首飾り戦略」の一環として、ミャンマーの主要な港湾に海軍の駐留を望んできたが、ミャンマー軍は外国軍の駐留を禁止した憲法を盾にこれを拒否してきた経緯がある』、「国軍は「NLDが中国と近すぎる」として警戒感を強めた」「中国は海洋輸送路確保に向けた「真珠の首飾り戦略」の一環として、ミャンマーの主要な港湾に海軍の駐留を望んできたが、ミャンマー軍は外国軍の駐留を禁止した憲法を盾にこれを拒否してきた」、「中国」は「クーデター」の黒幕ではないようだ。
・『インド・中国両国間の代理戦争の場に  その背景には根深い反中感情がある。1990年代の軍事独裁時代に中国資本がミャンマーに流入、これにより凶悪犯罪が多発したという苦い思いがある。「中国系少数民族の武装解除がうまくいっていないのは中国の支援があるからだ」との苛立ちもある。 「中国との関係を取り仕切るのが自分たちの役割だ」と考える国軍だが、2月下旬に中国との間で非公開で行った会議内容が外部に流出した(3月13日付産経新聞)。地元メデイアによれば、国軍との会議で中国側は、雲南省とミャンマー西部のチャウピューを結ぶ内陸部の天然ガス・原油パイプラインの戦略的重要性を強調し、警備の強化を求めてきた。デモ隊が中国に資源を送るパイプラインへの攻撃を主張していたからである。中国側はさらにミャンマーでの反中感情を抑えるため、国内メデイアに圧力をかけることも要求したという。中国側の要求に対する国軍の回答は明らかになっていないが、国軍の後ろ盾は中国だけではない。近年インドとの関係を強化している。2019年のミャンマーのインドからの武器購入額は1億ドルとなり、中国からの武器購入額(4700万ドル)を凌駕している。インドは昨年ミャンマー軍に潜水艦を贈与した。 インドにとってもミャンマー軍は欠かせない存在になりつつある。インドの北東部の国境地帯では中国の支援を受けているとされる少数民族武装勢力が活動しており、インドの要請でミャンマー軍は過去2年間、武装勢力を排除する作戦を行ってきた。 「中国問題」のウエイトが高まるミャンマーでは、「少数民族の取り込み」も大きな争点になりつつある。135の少数民族が住んでいるとされるミャンマーでは1948年の独立以来、人口の約7割を占めるビルマ族による支配に不満を抱く少数民族が活動を続けてきた。国軍は少数民族の平定を担う役割を有していることを根拠に連邦議会の議席の4分の1を無条件で割り振られる特権を正当化してきた。 クーデターで実権を握った国軍は少数民族の取り込みを進めている(2月8日付産経新聞)。新設された最高意志決定機関「行政評議会」メンバーの一人に西部ラカイン州の少数民族「アラカン族」出身者を起用した。背景にはNLDが実現できなかった和平を推進したい思惑があるが、NLDも3月に入り、南東部のカイン州で自治拡大を求めて国軍と衝突してきたカレン族の武装組織などに接近し始めた(3月12日付日本経済新聞)。 そのせいだろうか、南部のタニンダーリ地域の町ミッタでは8日、この地域に影響力がある少数民族武装勢力が銃を携え、約2000人のデモ隊の警護に当たった(3月9日付NHK)。当該地域の少数民族はカレン族と中国南部の貴州省や雲南省などの山岳地帯に住むミャオ族の支系とされるモン族である。 これを契機に中国系武装勢力と国軍が衝突する事態になれば、ミャンマー情勢を憂慮してきた中国が「自国民保護」を名目に実力行使に出る可能性が出てくるだろう。そうなれば中国と同様、ミャンマー情勢を静観していたインドも黙っていない。北東部のアルナチャルプラデシュ州を巡り中国との領土問題を抱えるインドにとって、北東部と国境を接するミャンマーが中国の勢力下に入ることはなんとしてでも阻止しなければならない。 国軍はこれまで「対応を誤れば、同国がインド・中国両国間の代理戦争の場になる」ことを恐れてきたが、自らが起こしたクーデターによりその懸念がにわかに現実味を帯びてきた。なんとも皮肉な話である』、「国軍はこれまで「対応を誤れば、同国がインド・中国両国間の代理戦争の場になる」ことを恐れてきたが、自らが起こしたクーデターによりその懸念がにわかに現実味を帯びてきた。なんとも皮肉な話である」、インドまでは「国軍」の背後にあるとは、何とも複雑な構図だ。いずれにしても、日本政府は国軍にもっと影響力を行使して、平和的解決に努めるべきだ。
タグ:ミャンマー 日経ビジネスオンライン WEDGE デイリー新潮 (その3)(抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」、「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由、ミャンマー政変 にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”) 「抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」」 日本経済大学の井本勝幸・特命教授 「国軍はここまで民衆の反発が強いとは想定していなかったのです。文句を言いつつもクーデターや国軍の支配を結局は受け入れるだろうと浅読みしていたのです。現実が想定と大きく違っていたものだから、追い詰められて強硬な姿勢を取らざるを得なくなってしまった」、それにしても、国民に銃を向けるとは酷いものだ 「国軍トップ」の「ミン・アウン・フライン氏はどちらかといえば穏健派として知られていましたが、その周囲にいる国軍幹部はタン・シュエ氏子飼いの強硬派が多い」、なるほど 「日本は国軍とのチャンネルがあります。それを生かし、改めて民主化を促していくという立場でいいと思います」、手ぬる過ぎる。毎日、大勢が殺されているなかで、もう悠長なことを言っているヒマはない筈だ 「「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由」 丸山大使の「外相」発言に猛反発 呼称は極めて重要な問題なのに、「日本」の外務省がここまでセンスがないとは驚かされた。 「欧米諸国が先んじて国軍関係者らを対象にした強硬な制裁措置などを打ち出してきたなか、日本政府は協調路線を取っておらず、独自の外交を行なっていることが挙げられる・・・これほどまでに市民の犠牲が出て国際社会からも制裁を求める声が強まるなか、果たして国軍側との「対話と協力」を維持して慎重に対応する姿勢が依然として通用する事態なのか」、少なくとも「国軍側」にもっと強い姿勢で取っていることが「ミャンマー市民」にも分かる程度までは、圧力を強めるべきだ 「ミャンマー市民たちの声は、国際社会が制裁に舵を切るなか、期待していた日本政府の対応への失望感への表れでもある」、「日本政府としても、前述の通り、「国軍側」に圧力を強めるべきだ 藤和彦 「ミャンマー政変、にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”」 「国軍は「NLDが中国と近すぎる」として警戒感を強めた」「中国は海洋輸送路確保に向けた「真珠の首飾り戦略」の一環として、ミャンマーの主要な港湾に海軍の駐留を望んできたが、ミャンマー軍は外国軍の駐留を禁止した憲法を盾にこれを拒否してきた」、「中国」は「クーデター」の黒幕ではないようだ インド・中国両国間の代理戦争の場に 「国軍はこれまで「対応を誤れば、同国がインド・中国両国間の代理戦争の場になる」ことを恐れてきたが、自らが起こしたクーデターによりその懸念がにわかに現実味を帯びてきた。なんとも皮肉な話である」、インドまでは「国軍」の背後にあるとは、何とも複雑な構図だ。いずれにしても、日本政府は国軍にもっと影響力を行使して、平和的解決に努めるべきだ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

尖閣諸島問題(その7)(中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的、中国「海警法」への過剰反応が かえって武力衝突リスクを高める理由) [外交]

尖閣諸島問題については、昨年12月11日に取上げた。今日は、(その7)(中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的、中国「海警法」への過剰反応が かえって武力衝突リスクを高める理由)である。

先ずは、3月18日付け日経ビジネスオンライン「中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00179/031600044/
・『Q:中国が2月、海警局に「武器使用」を認めたことに耳目が集まる。日本政府は与党に対し、海警局が尖閣諸島への上陸を強行するなら、兇悪犯罪と見なして危害射撃を加える場合があると説明した。「やられたら、やり返す」と聞こえる。これに対して、日本の防衛政策や現場に詳しい香田洋二・元自衛艦隊司令官(海将)は、「国際法をないがしろにしかねない。竹島や北方領土の周辺を航行する海上保安庁の巡視船や、南シナ海で航行の自由作戦を展開する米海軍の艦船を危険にさらす恐れさえある」と指摘する。果たしてそれはなぜか。 中国が海警法を2月1日に施行しました。海上警備に当たる海警局に武器使用を認めたことが注目されています。例えば第22条で「国家の主権、主権及び管轄権が不法に侵害され、または不法に侵害される危険が差し迫っているとき」は「その侵害を停止し、危険を除去するために、武器の使用を含むあらゆる必要な措置を講ずる権利を有する」との趣旨を定めています。 例えば海警船が以下の行動に出る懸念が浮上してきました。 ケース1:尖閣諸島周辺の日本の領海内で操業している漁船に対し、違法操業だとして停船命令を出す。拿捕(だほ)されることを恐れて、網やロープを流し、あるいは船体を破損する強度の装備品などを海警船の進路上に投入するなどして追跡を妨害しながら逃げようとする漁船に対して武器を使用する。 ケース2:日本の海上保安庁の巡視船に対して強制退去を命じる。 海警法第21条は、外国の軍艦もしくは公船が中国の法令に違反した場合、退去させるための必要な措置を取れるとし、さらに、退去を拒否する場合は強制撤去、強制えい航の措置が取れると定めている。「武器使用が可能」と明記してはいない、「強制撤去」は武器使用を含むと解釈できる。この場合、武器使用のための要件解釈と決断をするのは中国であり、海警局が日本側の言い分や都合に合わせて武器使用の判断をすることはない。 香田:私は日本政府やメディアをはじめとする人々の目が武器使用にのみ集まっていることを強く危惧しています。中国海警局による武器使用は海警法の本質ではありません。この本質は、海警局の船が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動を取る可能性が高まったことです。このことを理解し、尖閣諸島をいかにして守るのかをきちんと考えるべきです。 武器については、日本の海上保安庁も一定の条件を満たせば警察官職務執行法を準用して使用することが認められています。言及されたケース1もケース2も、同法が正当防衛、緊急避難のための危害射撃を許しているので、これを適用すれば事足りる話です。武器使用の規定があることをもって海警法を非難したり、恐れたりすることは問題の本質を見失います。武器使用について申し上げれば、その問題は、海警法が定める武器使用の条件と程度が警察官職務執行法のそれと同等か否かです。 (武器の使用)第七条 警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。但し、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条(正当防衛)若しくは同法第三十七条(緊急避難)に該当する場合又は左の各号の一に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。(後略) 関連してお話しすると、「中国海警局の船が軍艦並みの武器を備え始めている」と懸念する声も、現時点においては公平を欠くと思います。76mm速射砲を装備するといわれる海警局の船は最近建造されたタイプです。海上保安庁の発表によく出てくる、尖閣諸島周辺で一団となって行動する4隻からなるグループの多くはそれ以前の無武装タイプであり、武装しているのは1隻というケースがほとんどです。中国はこのグループを3~4セット配備して、尖閣諸島周辺の海域を交代制で24時間365日航行する体勢を取っているものとみられます。 これに対して海上保安庁は沖縄県石垣島に尖閣諸島専従として10隻の巡視船を配備しています。それぞれの性能は世界最高水準でいずれも20~40mmの機関砲を装備しています。将来は分かりませんが、現時点においては、隻数ではやや劣るものの全体として中国にひけを取るものではありません。 よって、中国が海警法を施行したのを奇貨として我々が考えるべきは、武器使用という「木」ではなく尖閣諸島をいかに守るかという「森」なのです』、「中国海警局による武器使用は海警法の本質ではありません。この本質は、海警局の船が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動を取る可能性が高まったことです」、「武器については、日本の海上保安庁も一定の条件を満たせば警察官職務執行法を準用して使用することが認められています」、「中国が海警法を施行したのを奇貨として我々が考えるべきは、武器使用という「木」ではなく尖閣諸島をいかに守るかという「森」なのです」、さすがプロらしい適格な指摘だ。
・『海警局による尖閣諸島への上陸強行も  Q:「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動として、具体的にはどのような行動があり得るのでしょうか。 香田:海警の船が尖閣諸島への「近接」「上陸」「占拠」「奪還」という行為に及ぶ恐れがあります。 中国共産党は海警法の施行のほかにもその布石を打ってきました。例えば海警局はもともと政府の下にある法執行機関でした。海上保安庁と同じ存在だったわけです。しかし2018年の組織改正で政府を離れ、中国共産党中央軍事委員会の指導下に入りました。軍事行動の先兵になり得るということです。 最近でも、中国共産党ナンバー3の栗戦書(リー・ジャンシュー)全国人民代表大会(全人代)常務委員長(日本の国会議長に相当)が海警法の狙いを「習近平(シー・ジンピン)強軍思想を徹底し、新時代の国防と軍隊建設の需要に応える」ことと説明して世界の耳目を集めました』、「「習近平強軍思想を徹底し、新時代の国防と軍隊建設の需要に応える」、穏やかではなさそうだ。
・『「侵略」を「犯罪」とする対処案、対応誤れば国際法違反  香田:これに対して日本政府は、国内の政治事情にとらわれており適切な対応を取れていません。自民党の国防部会・安全保障調査会に対し、外国公船が尖閣諸島への上陸を強行したなら「兇悪犯罪と認定して武器使用により相手の抵抗を抑える『危害射撃』が可能になる場合がある」と説明しました。 政府によるこの説明は2つの大きな問題をはらんでいます。1つは、危害射撃が可能とするその理由です。 先ほど触れた警察官職務執行法第7条には続きがあり、「兇悪な罪」に臨んだときには武器を使用して危害を加えることを容認しています。 一 死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁こにあたる兇悪な罪を現に犯し、若しくは既に犯したと疑うに足りる充分な理由のある者がその者に対する警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕するために他に手段がないと警察官において信ずるに足りる相当な理由のある場合。 政府の説明はこの条項を使って、海警局の艦船が尖閣諸島への上陸を強行するなら「兇悪な罪」と見なすということです。果たして中国が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行為は、日本の法律で裁くことができる犯罪なのでしょうか。 Q:私も政府の説明を知って、海警局の艦船がどんな行動を取ったら刑法の何条に違反するのだろうと疑問に思っていました。「国家の意志に基づいて中国が主張する自国の領土である尖閣諸島を奪取する」行為は日本の刑法が定める「犯罪」ではなく、日本にとっては「主権(領土)侵害」すなわち「侵略」です。 香田:そうなのです。外国による国家の意志に基づく行動に対して、刑法という日本の国内法を適用することは不適切です。関連していうと、軍艦と公船は治外法権を持つとする国際ルールがあります。外国の法の適用は受けないということです。 であるにもかかわらず、海警局の艦船が取る行動に日本の法律を「適用できる」と強弁すれば、国際法をないがしろにすることになります。中国が南シナ海において「九段線内に中国の主権が及ぶ」と主張するのと同じことになります。今回の説明がそれほど重大な意味を持つことに政府は気づいていないのでしょうか。恐らく専門家が検討したのでしょうが、今ここで述べた点に言及できない背景があったと考えざるを得ません。 加えて、海警船による尖閣諸島への強行上陸を犯罪と見なすということは、政府がこれを「一過性」の事態とみていることを示します。果たして一過性ですむでしょうか。「国家の意志に基づいて中国の領土である尖閣諸島を奪取する」という国家の任務を遂行するのですから、海上保安庁による抵抗が強く計画通りの奪還作戦ができない場合、海警局が後詰めの部隊を連続して投入してくることは戦理の常です。上陸行動を波状的に繰り返すことも考えられるでしょう。 海上保安庁の人員に被害が生じる可能性も覚悟する必要があります。先ほど言及したように、尖閣諸島周辺の海域における海上保安庁の装備は、現時点においては、中国海警局の装備に見劣りするものではありません。しかし、「国家の意志に基づいて中国の領土である尖閣諸島を奪取する」任務行動ですから、当然、海上保安庁の抵抗を排除し得る性能の装備を拡充して臨んでくることを想定しなければなりません。 海警局はこれまでも着々と装備を拡充していますね。2010~20年に大型船を約60隻から130隻以上に拡充したと報じられています。1万トン級の大型船の配備も進んでおり、尖閣諸島周辺の海域に長期間居座ることができるようになりました。海上保安庁の関係者が「中国海警局の艦船がロケットランチャーを装備したら対応できない」と発言したと聞いたことがあります』、「軍艦と公船は治外法権を持つとする国際ルールがあります。外国の法の適用は受けないということです。 であるにもかかわらず、海警局の艦船が取る行動に日本の法律を「適用できる」と強弁すれば、国際法をないがしろにすることになります。中国が南シナ海において「九段線内に中国の主権が及ぶ」と主張するのと同じことになります」、日本政府の現在の解釈は、国際法からみても極めて問題が多いようだ。
・『航行の自由作戦を遂行する米軍が撃たれる  日本政府の説明がはらむもう1つの問題は、第1の問題と密接に関連します。兇悪な罪に関わるとする外国の公船や軍艦を危害射撃の対象としたことです。国際法上、平時には警告しか認められていません。外国公船や軍艦への危害射撃(攻撃)は通常、戦闘行為を意味します。この解釈に至る検討は相当に慎重であるべきでした。結果的に、我が国政府による今回の説明は同盟国である米国の軍事行動にも負の影響を与えかねません。 Q:米国の軍事行動にも影響するのですか。 香田:そうです。例えば米海軍は南シナ海において航行の自由作戦を展開しています。これにはいくつかケースがありますが、米国による航行の自由作戦そのものを認めない中国がこの米艦の活動を国内法違反と強弁することは十分にあり得ます。日本政府の今回の説明を援用すれば、中国は「米海軍の軍艦が中国の法律に違反したので危害射撃を加えてもよい」と主張できることになります。 最悪の場合、中国海警船が米艦のスキを突いて不意の危害射撃をする事態があり得るのです。先にも申しましたように、国内法違反の有無と武器使用の判断をするのは中国なのですから。米国が注意を促しても、あるいは抗議をしても、中国は「米国が最も信頼する同盟国である日本が同様の主張をしている」とさらに反論するでしょう。 結果的であるにせよ、米国の行動の選択肢を狭め、米軍を危機にさらすリスクが増大することは事実です。日本政府がこのような状況をつくるのは賢明ではありません。 航行の自由作戦は、中国が領海と主張する海域を米海軍の艦船が航行することで「中国の主張を認めない」との意志を示す行動ですね。米イージス巡洋艦「ラッセン」が南シナ海にあるスビ礁の周辺12カイリ内を2015年10月に航行したときから注目を集めるようになりました。 中国は同礁を自国の領土と見なしており周辺12カイリを領海と主張しています。もともと低潮高地であった同礁を埋め立てて人工島を形成し、滑走路などの軍事施設を建設しました。しかし、国連海洋法条約は低潮高地に対して領海を認めていません。よって米国はこの海域を中国の領海ではなく公海と見なしラッセンを航行させました。加えて中国はその領海法で「外国の軍艦が中国領海内を航行する場合には事前に許可を得る」と定めていますが、これも無視しました。 香田:よって、ラッセンが取った行為は、中国からすれば領海法という中国の国内法に違反する行為に当たります。米艦船が今後行う同様の行為に対して中国海警船が危害射撃を加えてもかまわないと主張する根拠というか「お墨付き」を、今回の日本政府の主張により中国に与えることになってしまったのです』、「日本政府の今回の説明を援用すれば、中国は「米海軍の軍艦が中国の法律に違反したので危害射撃を加えてもよい」と主張できることになります」、日本政府の法解釈は余りにお粗末だ。
・『竹島や北方領土で海保の巡視船が撃たれかねない  Q:竹島や北方領土の状況にも影響が及びそうですね。 香田:その通りです。例えば、韓国政府が日本政府による今回の説明を援用すればどうなるでしょうか。竹島周辺の排他的経済水域(EEZ)を航行する海上保安庁の巡視船が韓国国内法に違反しているとして、韓国海洋警察庁の船艇が発砲する事態が起こり得るのです。 韓国の国内法にどのような規定があるのか、そのすべてを我々は知っているわけではありません。また、この場合も判断は韓国側が実施することから、日本側には何がどうなっているのか全く分からないまま事態が進行することがあり得るのです。よって、こうした懸念やリスクが存在することは、日本の行動をしばるとともに韓国の行動の選択肢を広げることにつながります。 EEZにおいて何が許されて何が許されないのか、国連海洋法条約がそれを定めています。そして、同条約はどの国も内容を理解している。だからこの条約の範囲内で解決を図るべきなのです。そこに国内法を持ち込めば収拾がつかなくなってしまいます。 海上において海員は、(1)国連海洋法条約、(2)海上衝突予防法、(3)国際信号書さえ知っていればどこでも航行できるというのが現行の国際ルールの大原則です。これらに加えてさらに周辺国の国内法の規定まで知っていなければ安全な航行ができない、という環境を、国の生存を海洋に大きく依存する日本がつくるべきではありません』、「EEZにおいて何が許されて何が許されないのか、国連海洋法条約がそれを定めています。そして、同条約はどの国も内容を理解している。だからこの条約の範囲内で解決を図るべきなのです。そこに国内法を持ち込めば収拾がつかなくなってしまいます」、確かに「国連海洋法条約」「の範囲内で解決を図るべき」。
・『本来なら防衛出動を発令し自衛隊が対処すべきだが…  Q:日本政府はなぜ、ご指摘のような問題をはらむ説明をしたのでしょう。「国家の意志に基づいて中国の領土である尖閣諸島を奪取する」侵略行動に対しては、自衛隊が対処すべきではありませんか。 香田:これが冒頭述べた政府解釈の背景に関連するものです。1つには、憲法9条の解釈をめぐる長年の問題が影響していると考えます。ご指摘のように、主権(領土)侵害行為すなわち侵略に対しては、政府が防衛出動を発令し自衛隊が克服すべきです 。しかし、これまでの経緯から防衛出動の発令には厳しい条件が課されており、発令のハードルは非常に高いのが現状です。 Q:武力行使の新三要件ですね。 (1)わが国に対する武力攻撃が発生したこと、又はわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること(存立危機事態) (2)これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと (3)必要最小限度の実力行使にとどまること  香田:政府は(1)の「武力攻撃」について、「一般に、一国に対する組織的計画的な武力の行使をいう」と国会で答弁しています。政府は、海警船による尖閣諸島への強行上陸をこの武力行使と判断するでしょうか。これまで国会でなされてきた論議に鑑みると、非常に難しい気がします。 加えて、中国が海警法で「海上警察機関」と表現する海警局の艦船に対して、日本が海上自衛隊の護衛艦を出動させれば、中国は「日本が先に武力行使に踏み切った」と言い立てる懸念があります。 Q:政府はこうした材料を中国に与えかねないことも考慮しているようですね。 香田:その通りです。しかし、こうした環境であっても目の前の現実に対処しなければなりません。そこで、今までの政府の立場の延長に立つ理屈として、海警局の行為を兇悪な罪と見なし、海上保安庁に対処させようと考えたのだと思います。 この対応は、先ほどお話ししたように、中国による九段線の主張と変わるところがありません。憲法9条の解釈をめぐる国内事情に気を配るあまり、肝心の尖閣諸島防衛と国際ルールの順守が脇に追いやられているのです。 また、海上自衛隊部隊の投入に対するためらいは、中国の行動の本質が我が国の主権侵害であるという事実を、我が国政府が世界に堂々と発信することにより対処すべきです。自衛隊の投入遅れにより尖閣諸島を奪取されることがあってはなりません。そして、我が国のこの措置は、時宜を得た明確なものであれば、多くの国に理解されると考えます。もちろん、政府の広報戦への備えが必要なことは言うまでもありません』、「憲法9条の解釈をめぐる国内事情に気を配るあまり、肝心の尖閣諸島防衛と国際ルールの順守が脇に追いやられているのです」、困ったことだ。
・『海上保安庁に「防衛」の任務を付与する  Q:政府の今回の説明が適切でないならば、日本はどうしたらよいでしょう。 香田:3つの案があります。これらをすべて実行することが望ましいと考えます。中国が海軍および海警局の装備を急速に拡充している現状に鑑みて、海上保安庁と自衛隊が持つアセット、つまり我が国の海洋力を総合的にフル活用して事に当たる体勢を整える案です。 第1は、防衛出動を発令する要件を緩和すること。その論拠としている国連憲章との関係も考慮すれば「一般に、一国に対する組織的計画的な武力の行使をいう」という表現を変えるのは難しいでしょう。しかし、「組織的」「計画的」をゆるくとらえ、ハードルを下げることは可能ではないでしょうか。 主権侵害に対処する任務を一義的に付与されているのは自衛隊です。自衛隊が事態に遅れることなくその任務を果たせるよう環境を整えるのが、政府の本来あるべき姿であり、施策だと考えます。 国民感情などを踏まえるとこれは容易ではないかもしれません。ただ、我が国政府には今までの政府解釈の墨守だけでなく、我が国を取り巻く安全保障環境の激変に対応した実利的な検討をする責任があることも事実です。これを実施しなかった結果として尖閣諸島を喪失する事態など決して許してはなりません。 といっても、防衛出動を発令する要件の緩和には時間がかかることも事実でしょうから、第2として、海上保安庁法を改正し、防衛出動が発動されるまで現場にいる海上保安庁の巡視船と海上保安官が自衛隊の代わりに主権を守るための防衛行動を取れると明記するのです。) 海上保安庁の現在の任務は、海上保安庁法第2条が以下と定めています。(1)海難救助、(2)海洋汚染等の防止、(3)海上における船舶の航行の秩序の維持、(4)海上における犯罪の予防及び鎮圧、(5)海上における犯人の捜査及び逮捕、(6)海上における船舶交通に関する規制、水路、航路標識に関する事務その他。同庁は「主権等を確保するための領海警備等」に取り組んでいると言いますが、第2条はそれを明示していません。 また海上保安庁法は第25条で「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」と定め、軍隊として行動することを禁じています。この条文は、日本がまだ占領下にあった1948年に海上保安庁が活動を始める際、「大戦中に暴れまくった連合艦隊を再びつくるものではない」という意志を国内外に示すために挿入した条文です。今日ではその役割を既に終えています。 よって、この第2条と第25条を改正し、海警局の船が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動に出たときには例外的に、海上保安庁が防衛組織として領域の警備に当たれるようにすると明記するのです。ただし、海上保安庁の国防組織としての任務がこのような事態に厳格に限られることは当然です。通常の海上法執行機関としての海上保安庁の活動のほとんどは今まで通りとなります。 第3は、海上自衛隊が平時において警戒監視の任務を担えるようにすることです。これを自衛隊法に明記する必要があります。 巡視船をはじめとする海上保安庁の装備は、世界トップの中国海警に次ぐ優秀さを備えています。特に海上保安官は世界一の任務遂行能力を有しているといえます。しかし、パラシュート部隊が空から降下して尖閣諸島に上陸するとか、ダイバーが潜航して尖閣諸島に近づき夜間に上陸するといった行動に対処する装備と能力は保有していません。 現在の特殊パラシュートは機能が高く、西風が強いときに尖閣諸島西方上空で降下すれば数十km飛ぶことができます。仮に50人の特殊要員がこれに取り組めば、到達率50%でも25人が探知されずに上陸・占拠できます。水中のダイバーが、尖閣諸島の10カイリほど沖で潜水艦から水中航行機器を使用して近接する場合、潜ったまま近づいて来れば巡視船は探知することはできません。朝、目が覚めたら、尖閣諸島に中国の国旗である五星紅旗が翻っていたということがあり得るのです。 これは荒唐無稽な話ではありません。去る2月11日に特殊部隊展開能力を有する米海軍原子力潜水艦「オハイオ」が沖縄近海を航行しました。これはその種の訓練を実施したものと推察されます。中国も同等の能力を持ちつつある、あるいは既に保有していると考えるべきなのです。 海上保安庁が尖閣諸島の「主権等を確保するための領海警備等」を現行法と体制で実施可能としているのは、海警船に対して「のみ」ということです。我が国政府がなすべきは、あらゆる種類の尖閣諸島奪還活動への備えです。その意味において、我が国は現在、想定される事態の一部に対する備えしかないのです。 一方、海上自衛隊はこれらに対処する十分な対空・対潜警戒能力を備えています。なので、自衛隊が警戒監視に当たってこうした脅威の兆候をいち早く察知し、海上保安庁の巡視船はもちろん、警察など関係機関に知らせ、必要な行動が迅速に取れるようにする。例えば警察特殊部隊をヘリで尖閣諸島に運び中国海警局の要員による上陸に備えることができるでしょう。現在持っているアセットをフルに生かすのです。自衛隊の投入が可能な場合には陸上自衛隊部隊の緊急空輸もなされるべきです。 現在の自衛隊法には平時の「警戒・監視」が任務として定められていないという瑕疵(かし)があります(関連記事「自衛隊の中東派遣をめぐる議論が示した安保法制の瑕疵」)。これを改めることは、尖閣諸島を守るための必須要件です。情報収集を含む「警戒・監視」はすべての防衛行動の基礎となるものですから』、「自衛隊法には平時の「警戒・監視」が任務として定められていない」のは、警察の任務だからで、あえて「自衛隊」が乗り出す必要はない。
・『法律論では、尖閣を中国の奪還作戦から守れない  警察官もしくは海上保安官、陸上自衛隊の部隊を尖閣諸島に常駐させる案が時々浮上します。実現できれば尖閣諸島防衛の確実度を高めることができますが、その半面、中国を強く刺激する懸念があります。中国が海警法第20条で「外国が中国の管轄区域で承認を得ることなく建築物を建設した場合は撤去を命じることができ、それを拒むときには強制的に撤去できる」との趣旨を定めたのは、日本がこうした措置を取るのを予想してのことだと考えられます。 仮に、我が国が施設を作り、政府職員、警察官あるいは陸上自衛隊の部隊を常駐させるとするなら、予測される中国の熾烈(しれつ)な奪還作戦に対処する防衛出動をいつでも出す覚悟と制度の整備をもって取り組む必要があるでしょう。この体制を採らない、この案は実施時を失してしまったということです。 繰り返しになりますが、中国が“自国の領土”を奪還すべく海警局を先兵として尖閣諸島に侵攻するシナリオは荒唐無稽な話ではありません。そして、いったん着手すれば、その意志を放棄する可能性は極めて小さいでしょう。我々は憲法9条の解釈をめぐる神学論争を脇に置き、国際ルールを順守した尖閣諸島のあるべき防衛態勢を実現すべく今こそ真剣に考えるべきです。 憲法解釈を含む法律論で、尖閣諸島を中国の奪還作戦から守ることはできません。中国の具体的な活動に対処する体制をわが国の総力を挙げて整備する、加えて、政府と国民が確固たる防衛意志を持つことこそ、中国を抑止する原点です。この原点がしっかりしていれば、不幸にして抑止が崩れた場合でも、我が国の力により中国の奪回作戦を排除することができる。そして米国は、我が国のこの取り組みを見て初めて我が国を真の同盟相手と認知し、必要な際に安保条約5条を発動するのです。 この記事はシリーズ「森 永輔の世界の今・日本の将来」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます』、「憲法9条の解釈をめぐる神学論争を脇に置き、国際ルールを順守した尖閣諸島のあるべき防衛態勢を実現すべく今こそ真剣に考えるべき」、その通りだ。

次に、3月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した軍事ジャーナリストの田岡俊次氏による「中国「海警法」への過剰反応が、かえって武力衝突リスクを高める理由」を紹介しよう。
・『尖閣問題で懸念高まる海保の武器使用拡大の声  中国は2月1日、海上警備に当たる海警局を従来の国家海洋局から分離し、中央軍事委員会傘下の武装警察部隊に編入し、既存の国際法にはない中国独自の線引きをした「管轄下の海域(管轄海域)」で、「主権、主権的権利が侵害されれば武器を含めた全ての必要な措置を取る」などの内容の海警法を施行した。 中国は尖閣諸島を自国領と主張しているから、その付近を「管轄海域」とし、そこでの権益を“侵害”する日本の艦船に対して武器使用をする構えを示したと、日本では受け止める向きが多い。 自民党内などで、「海上保安庁の武器使用の要件を拡大すべきだ」との声が出るのはある意味、当然の動きだ。 だがここは冷静に考えたほうがいい。大騒ぎするほど、むしろ本当の武力衝突につながりかねない危険が強まる』、どうすればいいのだろう。
・『海警局の巡視船に武器使用を含む強力な権限  海警法は習近平体制の下で態勢が強化されてきた海警局の役割と権限を改めて明確にしたものだ。 22条では、「国家主権、主権的権利や管轄権が……違法に侵害された場合、または窮迫した違法な侵害に直面した場合、……武器を含む全ての必要な措置をとる」として、海警局の巡視船などに武器使用を含む強力な権限を与えた。 外国軍艦・公船にも退去命令や必要に応じて強制措置が取れるとされ、防衛活動にも参加できる準軍事組織との位置づけだ。 さら「管轄海域」という定義の曖昧な用語で境界を引き支配が及ぶとした。 国連海洋法条約では、海域を「領海」や「接続水域」、「排他的経済水域」などに分類し、沿岸国の権利や航行のルールなどが決められているが、「管轄海域」という曖昧な言い方が多用され、中国に都合のいい恣意的な運用が行われる可能性がある。 尖閣諸島周辺での中国船の領海侵入が繰り返される状況で、日本でも「危機感」が強まるのはやむを得まい。 だが何が本当は危険なのかを考える必要がある』、「何が本当は危険なのか」、どういうことだろう。
・『すでに海上保安庁は自衛隊との共同訓練も  日本ではすでに1954年制定の自衛隊法80条で、自衛隊が防衛出動、治安出動するような有事の際には防衛大臣が海上保安庁を指揮するよう、総理大臣が命じることができるようになっている。 だが他方、48年に制定された海上保安庁法第25条では、「この法律のいかなる規定も海上保安庁又はその職員が軍隊として組織され、訓練され、又は軍隊の機能を営むことを認めるものとこれを解釈してはならない」と定めている。 海上保安庁が生まれた48年は戦後3年、憲法施行の翌年だった。 当時の米国は日本の「再軍備」を封じようとしていたが、戦争中に米軍が投下した機雷の除去や密輸の阻止、密航者によるコレラの蔓延防止などに海上警備は不可欠だったから、小型で低速の船艇による海上保安庁の設立を認め、それが海軍に発展することがないようこの条文を入れたのだ。 ところが50年に朝鮮戦争が勃発すると、米国は態度を一転、警察予備隊を急ぎ作らせ、それが54年に陸・海・空自衛隊に発展した。 米国の沿岸警備隊が米海軍の補助部隊であるのと同様に、有事の際には海上保安庁を防衛庁長官の指揮下に動員できる条文を自衛隊法に入れたのだ。 米軍は海上保安庁に中古の3インチ(76ミリ)砲を多数供与し、巡視船を武装させた。 こうして、海上保安庁法と自衛隊法には矛盾が生じ、憲法9条と自衛隊との不整合のミニチュア版のような形となった。 それだけではなく、先にできた海上保安庁と、後に生まれて急速に拡大した海上自衛隊の間には感情的な対立も生じた。 だが近年日本近海への朝鮮の工作船の出没や尖閣諸島を巡る中国海軍や海警局の艦船の行動に共同に対処する機会が増えて“和解”が進んだ。 今では海上自衛隊と海上保安庁は密接に情報を交換し、共同訓練をする仲になり「軍隊として訓練されてはならない」という海上保安庁法の第25条は半ば死文と化した感がある』、「海上保安庁」と「海上自衛隊」は「共同に対処する機会が増えて“和解”が進んだ」、結構なことだ。
・『軍隊と区別する「知恵」 過剰な対応は新たな火種に  海警法を警戒する論者からはこの際、「25条を削除すればよい」という声も出てきそうだが、海上保安庁自身がそれには激しく抵抗するだろう。 独自性を失い、事実上、海上自衛隊の補助部隊化することになってしまうからだ。 海上保安庁を管轄する国土交通省も賛成しないだろう。 欧州の大陸諸国は陸軍とは別に軽装備の国境警備隊を設けていることが多い。 国境付近に戦車や砲兵などを備えた陸軍部隊を展開すれば、相手も陸軍を出して対抗し、小さな事案が重大な結果を招きかねないからだ。 国境警備隊や海上警察などを軍隊と区別することが、安全保障上の一つの知恵になっているといってもいい。 課題はあるにしても、すでに海上保安庁と自衛隊との連携体制が相当できているなかで大きな火種を作りかねない過剰な対応は避けるべきだろう』、「国境警備隊や海上警察などを軍隊と区別することが、安全保障上の一つの知恵になっているといってもいい。 課題はあるにしても、すでに海上保安庁と自衛隊との連携体制が相当できているなかで大きな火種を作りかねない過剰な対応は避けるべきだろう」、同感である。
・『一定の武器使用も可能に 北朝鮮工作船事件を機に法改正  武器使用についても、2001年に海上保安庁法20条が改正され、外国船(軍艦、公船を除く)が日本領海内で、無害航行が疑われたり、重大凶悪犯罪を行っている疑いがあったりする場合には、その船を停止させるため武器使用が認められている。 それまでは人に危害を与える武器使用は警察官職務執行法の規定を準用する形で、正当防衛、緊急避難、凶悪犯の抵抗などの場合に限られていた。 だが99年3月、能登半島沖(佐渡島の西方18キロの日本領海内)にいた北朝鮮の工作船2隻を海上自衛隊の護衛艦と海上保安庁の巡視船が追跡、威嚇射撃をしたが、高速の工作船に逃げ切られた事件があり、海上保安庁法を改正し武器使用を定めた。 国連海洋法条約では、どこの国の船舶も他国の「領海」を通過する権利が認められているが、武力による威嚇や武力行使、兵器を使う訓練、沿岸国の防衛・安全を害する情報収集や測量、通関の法令に反する物品や軍事機器の積み降ろし、漁業などの行為は禁じられている。 こうした有害な行為を防止するために沿岸国は自国の「領海」内で必要な措置を取ることができる。 ただし海洋法条約は軍艦が沿岸国の法令を守らず、順守の要請を無視した場合には「沿岸国はその軍艦に対し領海から直ちに退去することを要求できる」と定められているだけだ。 軍艦を拿捕すれば戦争になる公算が高いためだろう。 海上保安庁の武器使用や執行権限もこうした海洋法条約に準じて定められている』、なるほど。
・『「国際法違反」だが中国側に反論の余地なくもない  一方で海警法の場合は、軍艦に対しても「退去の命令」だけでなく必要に応じ「強制措置」をとることができると解釈される。 さらに、中国の「管轄海域」は、「領海」内だけでなく、陸地から200海里の「排他的経済水域」内や、中国(当初は蒋介石治下の中華民国)が管轄権を主張してきた、南シナ海ほぼ全域で、中国国内法で違法となる行為に対して武器使用をする可能性もある。 こうしたことから「中国の海警法は国際法違反」と日本を含めて多くの国では受け止められている。 だが、2001年に起きた九州西方海域での北朝鮮工作船撃沈事件では、海上保安庁も国際法違反と批判されてもおかしくないことをしている。 この時には、北朝鮮の工作船は日本の領海には全く入っておらず、海上保安庁は工作船の発見当初から「漁網を積んでいない。不審船だ」と発表し、巡視船は追跡して射撃し、相手が反撃すると「正当防衛」として、20ミリ機関砲弾187発を撃ち込んだ。工作船は自沈、約20人の乗組員全員が死亡した。 政府は「日本の排他的水域内で漁業をしている漁業法違反の疑いがあるため停船を命じたが、逃走したため船体射撃を行った」と説明した。 だが初めから「漁船ではない」と言いながら、追跡して公海上で射撃、撃沈したのは、国連海洋法条約と海上保安庁法に違反する疑いがある行動だった。 おそらく中国側は、仮に海警法の下で「管轄地域」を航行する日本の船舶を、武器を使用して拿捕しても、「貴国もかつて同じことをし、合法と言ったではないか」と反論するのではないか』、「北朝鮮工作船撃沈事件
」はこの記事で思い出したが、確かに日本側の行動には行き過ぎもあったようだ。「中国側」が正当化の根拠に引用する口実を与えたのは、まずかった。
・『巡視船の「強弱」を論じる無意味 戦いになれば軍隊の出番  2010年9月尖閣諸島海域での中国漁船と海上保安庁の巡視船の衝突は、事件以降、日中関係は悪化し、巡視船の建造競争の様相を呈している。 中国海警局が保有する船艇は大小合わせて523隻で、うち外洋用巡視船は87隻(12隻は海軍から払い下げの中古)、海上保安庁は大小373隻でうち外洋用巡視船は57隻だ。 米国の沿岸警備隊は大小340隻で外洋用の巡視船は25隻しかない。海上自衛隊の護衛艦は48隻だ。中国と日本は他国とは段違いの規模の海上警察隊を持つことになっている状況だ。 建造される巡視船は次々と大型化し、中国の最新型2隻は米海軍の「タイコンデロガ」級巡洋艦(満載1万117トン)をしのぐ1万2500トンの巨大巡視船だ。 日本も6000トンないし7300トン級の新鋭大型巡視船を6隻持ち、さらに3隻を建造中だ。 中国の大型巡視船は射程10キロの3インチ(76ミリ)砲1門を装備している。それを日本では新たな脅威のように言う人もいるが、日本の大型巡視船はそれに匹敵するスウェーデン製の40ミリ機関砲2門と20ミリ機関砲2門を装備している。 40ミリ機関砲の有効射程は10キロで、1分間に330発を発射できる。目標の動きを追って砲が自動的に目標に向かい、命中弾を浴びせ続ける火器管制システムもあるから、76ミリ砲1門の中国の超大型巡視船と優劣はつけがたい。 中国が巡視船を超大型化しても砲1門では東シナ海での戦力バランスを大きく変える実効はありそうにない。 超大型巡視船を建造したのは、大量の燃料などを積んでソマリア沖の海賊対処など遠隔地に派遣して世界に力を誇示するためかと思われる。) そもそも日中が巡視船の増強をしても、万が一、日中の巡視船が交戦する事態になれば、中国側は海軍や空軍が、日本側は海・空自衛隊が出動するだろう。場合によっては日米安保条約(5条)によって米軍が加わる可能性もある。 日本と中国の巡視船だけが戦闘することを想定して強弱を論じるのは無意味だ』、「日本と中国の巡視船だけが戦闘することを想定して強弱を論じるのは無意味だ」、その通りだ。
・『重要なのは日中で紛争拡大を防ぐ取り組み  日中の軍と軍が衝突する事態となれば、日中ともが大きな打撃を受ける。 世界最大の貿易国である中国にとり、太平洋・インド洋の航行の自由はまさに「死活的利益」であり、その確保のためには日本、米国との軍事衝突は避けたいのが本音だろう。 14年11月10日、当時の安倍首相は北京で習近平国家主席と会談した。 その3日前に尖閣諸島を巡って双方が「異なる見解」を持つのを認め合う合意事項を発表、玉虫色の表現で事実上の棚上げをし、「戦略的互恵関係」に戻ることで合意した。 東シナ海で日中の巡視船や艦船の偶発的な衝突が起きるなどの不測の事態に備え「海上連絡メカニズム」の運用開始を進めることも決まった。 だがいまだにそれは完成していない。そうした紛争拡大を防ぐ冷静な取り組みが優先されるべきだ。 中国と日本が巡視船の増強を競い、強硬な法令を制定し合って対立を激化させるのは、お互いの安全保障にも逆行すると案じざるを得ない』、「海上連絡メカニズム」のような「紛争拡大を防ぐ冷静な取り組みが優先されるべきだ」、同感である。
タグ:日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 尖閣諸島問題 田岡俊次 (その7)(中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的、中国「海警法」への過剰反応が かえって武力衝突リスクを高める理由) 「中国海警法への日本の対応は国際法違反の恐れ~九段線より独善的」 香田洋二・元自衛艦隊司令官(海将) 「中国海警局による武器使用は海警法の本質ではありません。この本質は、海警局の船が「国家の意志に基づいて、中国が領土と主張する尖閣諸島を奪取する」行動を取る可能性が高まったことです」、 「武器については、日本の海上保安庁も一定の条件を満たせば警察官職務執行法を準用して使用することが認められています」、 「中国が海警法を施行したのを奇貨として我々が考えるべきは、武器使用という「木」ではなく尖閣諸島をいかに守るかという「森」なのです」、さすがプロらしい適格な指摘だ 「習近平強軍思想を徹底し、新時代の国防と軍隊建設の需要に応える」、穏やかではなさそうだ。 「軍艦と公船は治外法権を持つとする国際ルールがあります。外国の法の適用は受けないということです。 であるにもかかわらず、海警局の艦船が取る行動に日本の法律を「適用できる」と強弁すれば、国際法をないがしろにすることになります。中国が南シナ海において「九段線内に中国の主権が及ぶ」と主張するのと同じことになります」、日本政府の現在の解釈は、国際法からみても極めて問題が多いようだ 「日本政府の今回の説明を援用すれば、中国は「米海軍の軍艦が中国の法律に違反したので危害射撃を加えてもよい」と主張できることになります」、日本政府の法解釈は余りにお粗末だ 「EEZにおいて何が許されて何が許されないのか、国連海洋法条約がそれを定めています。そして、同条約はどの国も内容を理解している。だからこの条約の範囲内で解決を図るべきなのです。そこに国内法を持ち込めば収拾がつかなくなってしまいます」、確かに「国連海洋法条約」「の範囲内で解決を図るべき」 「憲法9条の解釈をめぐる国内事情に気を配るあまり、肝心の尖閣諸島防衛と国際ルールの順守が脇に追いやられているのです」、困ったことだ 「自衛隊法には平時の「警戒・監視」が任務として定められていない」のは、警察の任務だからで、あえて「自衛隊」が乗り出す必要はない 「憲法9条の解釈をめぐる神学論争を脇に置き、国際ルールを順守した尖閣諸島のあるべき防衛態勢を実現すべく今こそ真剣に考えるべき」、その通りだ 「中国「海警法」への過剰反応が、かえって武力衝突リスクを高める理由」 「何が本当は危険なのか」、どういうことだろう。 「海上保安庁」と「海上自衛隊」は「共同に対処する機会が増えて“和解”が進んだ」、結構なことだ。 「国境警備隊や海上警察などを軍隊と区別することが、安全保障上の一つの知恵になっているといってもいい。 課題はあるにしても、すでに海上保安庁と自衛隊との連携体制が相当できているなかで大きな火種を作りかねない過剰な対応は避けるべきだろう」、同感である 「北朝鮮工作船撃沈事件 」はこの記事で思い出したが、確かに日本側の行動には行き過ぎもあったようだ。「中国側」が正当化の根拠に引用する口実を与えたのは、まずかった。 「日本と中国の巡視船だけが戦闘することを想定して強弱を論じるのは無意味だ」、その通りだ。 「海上連絡メカニズム」のような「紛争拡大を防ぐ冷静な取り組みが優先されるべきだ」、同感である。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

韓国(文在寅大統領)(その8)(韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ、韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練 元駐韓大使が解説、レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論) [外交]

韓国(文在寅大統領)については、昨年12月26日に取上げた。今日は、(その8)(韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ、韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練 元駐韓大使が解説、レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論)である。

先ずは、本年2月3日付け東洋経済オンラインが転載したソウル新聞「韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/409182
・『1997年3月。韓国海軍が日本と対等な軍事力を持つために野心を持って準備していた「韓国型航空母艦」導入計画は、韓国国防省と合同参謀本部の反対に直面した。当時の金泳三大統領は、韓国の海軍戦力が日本の10%にすぎないため、基準排水量で2万トン級の軽空母と6隻の駆逐艦からなる空母戦団を編成するよう指示していた(日本の海上自衛隊護衛艦「いずも型」の基準排水量は1万9950トン)。 合同参謀本部などが空母建造に反対した表面的な理由は、「周辺国の軍備増強を引き起こし、地域の安全保障を揺るがしかねない」というものだった。ところが、軍首脳部のホンネは、陸軍中心の合同参謀本部は「当面は北朝鮮に対応する方向で軍事力建設を集中すべき」だった。そのため、空母建造に強く反対した。このとき出たのが、「朝鮮半島不沈空母論」だった』、「韓国型航空母艦」導入計画が「1997年」に出ていたとは初めて知った。「朝鮮半島不沈空母論」とは何なのだろう。
・『23年前の「不沈空母論」が開発のネックに  一方、中国と日本は周辺国が反対するにもかかわらず、空母建造計画を進めていた。とくに中国は、「遼寧」(基準排水量5万3000トン)「山東」(同推定5万5000トン)の2隻の空母を建造し、今や3隻目の空母を準備中だ。これまでアメリカが支配していた太平洋において、力の均衡を崩そうというものだ。中国はアメリカと対等な軍事力を確保するため、4つの空母戦団を編成する方針だ。 2020年12月11日、韓国国会の国防委員会予算審査小委員会。韓国型空母の設計費101億ウォン(約9億4500万円)の代わりに、着手金10億ウォン(約9400万円)だけを確保してほしいとする海軍と防衛事業庁の要請に野党側が強く反対した。「高い維持費に見合うだけの北朝鮮に対する抑止力を持たない」「朝鮮半島は不沈空母だ」という論理が出されたのだ。23年前と同じ論理が出されたことになる。 さらには、「韓国を取り巻く安全保障の現実からいえば必要がない」という意見まで出た。これには海軍が衝撃を受けた。与党内でも一部反対の声が出てしまい、結局、2021年の空母関連予算は1億ウォン(約940万円)にまで減額されてしまった。 ところが、状況は一気に反転する。合同参謀本部は2020年12月30日に合同参謀会議を開き、韓国型空母建造事業について研究開発、または購入するという決定を下した。軍首脳部は軽空母を建造するという計画について「安保上のリスクに対応する未来の合同戦力」と評価し、事業推進を決めた。) これにより、2021~2025年の国防中期計画に韓国型空母建造事業が含まれる可能性が高まった。2021年、防衛事業庁はこの事業の妥当性の分析を、海軍は空母建造と艦載機となるF35B導入に対する細部計画を準備する。事業が順調に進めば、来年2022年に基本設計が始められる。 海軍は23年前の経験を踏まえ、合同参謀本部をどのように説得したのだろうか。海軍は予算の大幅削減でショックを受けたものの、歴史的偉人を利用し反論した。一人は儒学者の李珥(イ・イ、1536~1584年)、もう一人は李朝の宰相だった柳成龍(リュ・ソンリョン、1542~1607年)だ。 李は1592年の文禄の役(~1593年)が始まる10年前に、「10万人の兵士を育成すべきだ」と主張した人物だった。しかし、「国がこれだけ平和なのに戦争なんて起きるものか」と大批判を受けた。また柳は豊臣軍に抵抗して戦功をなした人物であり、その史書「懲毖録」(ちょうひろく)で「事前に戦争を防ぐことができなかったことを反省すべきだ」と書いている』、「海軍は予算の大幅削減でショックを受けたものの、歴史的偉人を利用し反論」、歴史sw反論するとは巧みだ。
・『史実を利用して開発計画を承認させた海軍  中国と日本の海軍力は韓国より優位に立つ。海軍首脳部は「周辺大国レベルまで到達するのは難しいが、少なくとも抑止力は保有すべき」と訴えた。20年超の空母建造反対の理由とされていた「朝鮮半島不沈空母論」も、積極的に賛成理由として利用したという。1950年の朝鮮戦争の経験を取り上げたという。 戦争当初、韓国での飛行場運用は事実上不可能な状況であり、空軍戦闘機は日本から出撃していた。しかし、1時間超の時間をかけて対馬海峡を越えてきた戦闘機の作戦時間は、わずか15分だった。一方、アメリカ海軍の空母から出撃した戦闘機は出撃して5~10分で地上軍支援が可能だった。 韓国のF15K戦闘機の作戦時間は、竹島(韓国名・独島)の上空まで30分、中韓で所有権を争う離於(イオ)島(中国名・蘇岩礁)で20分だ。KF16戦闘機の場合、それぞれ10分と5分にすぎない。空中給油機を導入した場合、F15Kであれば竹島上空での作戦時間が90分程度に増え、最新戦闘機となるF35Aの導入も決定されているが、これ以上の空中戦力の追加は限界がある。これを補うことができる未来の戦力が空母なのだと海軍は主張した。 韓国政界では、原子力潜水艦を導入せよとの声が高まっている。しかし、これには韓米原子力協定が先決条件となり、軽空母とは作戦上の性格が違うと海軍は説明する。例えば戦車と自走砲の性格が違うように、原子力潜水艦と空母は目標がまったく違うということだ。とくに空母は、存在自体が戦争抑止力と外交力の確保につながるのだと海軍は説明する。 一方で、韓国の国力に軽空母は浪費と反対する声もある。しかし、韓国より軍事力や経済力が低いとされるイタリアやブラジル、タイなどがすでに軽空母を保有している。海軍は合同参謀本部に「空母建造には10年以上かかる。建造費を分散させれば、国防予算内で十分に支援できる」と積極的に説明しているようだ。(韓国「ソウル新聞」2021年1月29日)』、無駄な装備の典型で、軍人のおもちゃだ。しかし、「イタリアやブラジル、タイなどがすでに軽空母を保有」というのが、保有論への後押しとなるのだろう。「空母」の仮想敵国は、日本なのではあるまいか。自衛隊にはヘリコプター空母であり護衛艦として、ひゅうが型、いずも型があるが、戦闘機搭載可能に改装するのだろうか。日本にとっても、無駄だ。

次に、3月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練、元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/265163
・『約5年ぶりに米韓2+2が実現  米国のトニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースティン国防長官は3月15~17日の日程で訪日した後、17日から1泊2日の日程で韓国を訪問することで日程調整しているという。韓国では鄭義溶(チョン・ウィヨン)外相、徐旭(ソ・ウク)国防相と「2+2(外務・国防相)会議」が実現する見込みである。米韓による2+2は2016年10月にワシントンで開催されたのが最後であり、約5年ぶりのことである。 中国や北朝鮮などの「レッドチーム」入りを言われている韓国は、これまで日本ばかりでなく米国からもスルーされてきており、日米豪印の4カ国首脳会談にも参加しない見通しである。そうした中で、2+2が開かれる見込みとなったことで、文在寅政権はホッと胸をなで下ろしていることであろう。) 米韓関係では、さらに良いニュースが飛び込んできた。米国務省のプライス報道官は8日の定例会見で「昨日、米国と韓国との交渉団は6年分の新たな防衛費分担金特別協定(SMA)の草案に対して合意に至った」と発表した。同報道官は、米国はトランプ政権の時のような要求はしないのかと問われ、「韓国はわれわれの同盟、過酷な要求はしない」と述べた。 国防総省のカービー報道官も分担金交渉の妥結が「同盟と共同防衛を強化するものと期待する」と述べた。さらに「今回の合意は自由で開かれたインド太平洋地域と北東アジアで、米韓同盟が平和と安保、安定の核心軸(linchpin)であるという事実を再確認するものだ」と述べ、この合意を歓迎した。 しかし、米韓関係が平穏な方向に向かっているように思われる出来事は、むしろ米国が韓国に対し、同盟としての役割を高めることを求める最初のステップだと考えていいのではないか。 それはカービー報道官の「米韓同盟がインド太平洋と北東アジアの平和と安保、安定の核心軸」という言葉に反映されている』、「米韓による2+2は・・・約5年ぶり」、とはずいぶん冷え切っていたようだ。「米国が韓国に対し、同盟としての役割を高めることを求める最初のステップ」、とはさすが深い読みだ。
・『米国の北朝鮮政策の再検討に 文政権はついていけない  米バイデン政権は北朝鮮への対応の再検討を行っている。これまでの対応では北朝鮮の核・ミサイル開発を抑制することはできなかった。これまで手をこまねいている間に北朝鮮の核・ミサイル開発は後戻りできないほどに進んでしまった。そうした北朝鮮に対して、いかに圧力を高めていくか極めて難しい選択になるだろう。 半面、北朝鮮の経済は極めて困難な状況にある。1995年前後に100万人ともいわれる餓死者が出た状況に酷似しているとさえいわれる。北朝鮮経済が正常化するためには核・ミサイル開発を放棄し、劣悪な国内の人道問題を改善することで、国際社会の支援を引き出す以外ない。 北朝鮮のひっ迫した状況は、外部からの圧力に対する抵抗力を弱めているであろう。したがって日米韓はそこに問題解決の可能性を見いだしたい。同時に金正恩総書記は政権の崩壊を恐れ、外部からの圧力の強化にどのような形で反発してくるか、予測が難しく、軍事的衝突に発展する可能性も排除できないかもしれない。こうした命題に対処し、北朝鮮の行動を抑制するためには、日米韓の極めて緊密な連携と協力が必要である。 しかし、韓国は相変わらず、北朝鮮は非核化する意思がある、などと非現実的なことを言い、世界を惑わしている。また、トランプ大統領と金正恩総書記が行ったシンガポール首脳会談の状況に立ち戻り、米朝関係を再構築することを求めている。だが、シンガポール会談は、北朝鮮に核・ミサイル開発の時間稼ぎをさせただけで、失敗であった。 それでも韓国としては、北朝鮮を支援することで、当面の衝突を回避し、あわよくば両国の協力関係を強化することを狙っているようだ。 こうしたデリケートな問題を、今回の米韓2+2でどこまで議論できるか。おそらく韓国には米国の求める方向での議論の用意はできていない可能性が高い。特に文政権は、今年4月のソウル市長選挙はじめ国内の腐敗、土地政策、雇用問題にかかりっきりであり、北朝鮮が強く反発する問題に応じることはできないであろう。 こうした韓国の姿勢に米国はどこまで我慢ができるのだろうか』、「バイデン政権」は「トランプ」よりは忍耐強いだろうが、それでも限界がある筈だ。
・『米韓関係は軍事的にも手詰まり感  米韓連合軍は8日から今年上半期の合同演習を開始した。しかし、今年も実際の兵力や装備を大掛かりに動員する野外演習(FTX)ではなく、コンピューターシミュレーションによる指揮所訓練(CPX)となる。韓国軍は、訓練が始まったことは公表したが、「同盟」などの言葉が含まれた訓練の正式名称を含む具体的な進行状況などについては一切公表せず、関連する写真も配布しなかった。 これとは対照的に米国と日本は大規模機動訓練の頻度を大幅に増やしている。米国のインド太平洋軍によると、米海軍の空母「セオドア・ルーズベルト」を中心とする空母艦隊は、グアム沖合の西太平洋で日本の海上自衛隊と機動訓練を行った。自衛隊は1年で合計38回、延べ日数としては406日間米軍と共同訓練を行った。 韓国軍は訓練規模が縮小した理由としてコロナを挙げているが、日米の訓練を見るとそれはあくまでも口実にすぎないことがよくわかる。韓国統一部は「韓米合同訓練が柔軟かつ最小限の形で行われているだけに、北朝鮮もわれわれのこのような努力に相応する態度を示してほしい」と述べ、これが北朝鮮の顔色をうかがったものであることを明らかにしている。 米韓間で大規模な合同野外演習は2年間行われていない。韓国の徴兵された兵士の任期が1年半であり、在韓米軍の兵士の任期が1年であることから、既に米韓連合軍の実戦能力が低下していることは避けられないだろう。韓国の態度は米国が求める「北東アジアで米韓同盟が平和と安保、安定の核心軸」にはとても及ばない。 米韓は合同訓練を調整する過程では終盤まで隔たりがあり、先週半ばには全体の日程を確定できなかったほどだという。 先述の通り、今年上半期の合同演習が指揮所訓練方式で行われることになり、韓国軍の米韓合同軍の指揮能力に対する評価が今年下半期に延期された。これによって文在寅大統領の任期である来年5月までに戦時作戦統制権の韓国軍への移管手続きを終えることが現実的に不可能になったとして、8日付中央日報は、「文政権での戦時作戦統制権の移管が事実上白紙になった」と報じている』、「韓国の徴兵された兵士の任期が1年半であり、在韓米軍の兵士の任期が1年」、「米韓間で大規模な合同野外演習は2年間行われていない」、とすると、現在の米韓軍は「大規模な合同野外演習」、を全く経験してないことになり、戦力低下したことになる。
・『弱腰の韓国に中国は一層の圧力  バイデン政権はインド太平洋で対中ミサイル網の構築を進めている。これは対中包囲網が軍事分野にも本格的に拡大されることを意味する。専門家は、「中国のけん制のため日米韓協力が強調されており、米国のミサイル包囲網に韓国の参加を公式要請する可能性がある」という見方を示している。この場合、中国の反発は、THAAD(高高度ミサイル防衛システム)を配備した時よりもはるかに強いものになるだろう。 中国は1980年代から太平洋上の島と島を結ぶ「列島線」を引いて段階的に米軍などの活動領域を狭めようとする戦略「接近阻止・領域拒否」を進めてきた。第1列島線は沖縄-フィリピン-マラッカ海峡を、第2列島線はグアム-サイパン-パプアニューギニアを結ぶ線である。 中国は2020年代初頭までに第2列島線までを事実上「自分たちの庭」にしようとしてきた。米軍は第2列島線までの中国の進出を制止するため、第1列島線に沿って中国に対する精密攻撃ネットワークを構築しようとしている。 ブリンケン国務長官は「中国は21世紀最大の地政学上の宿題」と語り、「持ちうるすべての手段の動員」を公言した。2+2の会合時に対中ミサイル網への参加問題に焦点が当たる可能性もある。 文政権は中国から「三不政策」を約束させられている。「米国のミサイル防衛網への参加、THAAD追加配備、日米韓軍事同盟を行わない」というものである。中国とすれば、日米韓が一体となって対中包囲網を構築することは防ぎたい。そのため、最も弱い柱である韓国に集中的に圧力を加えてくる可能性が高い。 これまで、米中の間で方向性の定まらない態度を示した韓国。米国の対中政策の硬化は一層強い難題を突き付けることになった』、「文政権は中国から「三不政策」を約束させられている」、先ずはこの「約束」をホゴにさせることから始める必要がありそうだ。
・『米国は日本に対し日韓関係の改善を要求  米国の国務長官、国防長官が日本に次いで韓国を訪問するのは、日米韓の協力体制を立て直そうとする意図が背景にあるだろう。日韓では茂木敏充外相はいまだに鄭義溶外相と電話会談すら行っておらず、姜昌一(カン・チャンイル)新駐日大使は菅義偉首相ばかりか茂木外相とも面会していない。 こうした状況で一気に日米韓外相会談、国防相会談を行う機は熟していないが、今回米国側は日韓の橋渡し役を果たそうとするであろう。日本は米国と緊密に協力しているのに対し、韓国はふらふらしている。米国はまず日本に関係の立て直しを求めてくるだろう。そしてその返答をもって韓国の説得に当たるだろう。 日本としては、韓国の現在の国際法違反の状況を受け入れることはできず、歴史問題は韓国国内で処理するよう求めていくことを、改めて米国に伝えるべきであろう。ただ、米国の求める日米韓協力に対してゼロ回答もできないのではないか。 その場合、韓国が北朝鮮への無見識な歩み寄り姿勢を改め、日米韓協力に前向きであれば、日本は韓国と歴史問題でも話し合いを行う用意があることを米側に伝えることが一案として考えられるかもしれない。 日本にとって最悪なシナリオは、韓国が困窮極まりない北朝鮮に助け舟を出すことで生き返らせ、核・ミサイル開発を一層進めることである。日本は米国と共に、このような韓国の姿勢を改めさせるべきであり、それこそが国益にかなうと考える。 日本としては、中国、北朝鮮という2大脅威にいかに向き合っていくか、ということが地政学上の最大の課題である。韓国に対して、無意味な譲歩はすべきではないが、日本の置かれた状況を冷静に分析し対応することが求められている。それは日米韓協力に韓国をコミットさせることである』、「韓国」との関係を含め全面的に同意したい。

第三に、3月9日付けJBPressが掲載したフリージャーナリストの金 愛氏による「レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64395
・『文在寅政権後の有力な次期大統領候補の1人である与党「共に民主党」の李洛淵(イ・ナギョン)代表が、3月5日、江原道春川(チュンチョン)市の中央市場で、卵を投げつけられた。このニュースに接した国民はSNSで文政権と李代表を嘲笑い、「ざまを見ろ」「痛快だ」という反応を見せた。 2022年3月に大統領選挙を控える韓国。文大統領は任期最後の年に、国政掌握に失敗した「レームダック(死に体)化」をさらしている。世論調査で文大統領と共に民主党の支持率はかろうじて30%を超える程度で、文大統領を支持してきた30~40代の政権離れが顕著である。 支持率低下に対応するため、文大統領は外に向かって反日を叫び、国内では抗日を掲げて政権を掌握しようとしている。一方、日韓関係改善の「出口戦略」を目指す文大統領は今年になって日本への対話を申し入れると同時に、共に民主党は「親日派の所有する土地を没収する」という手口で「親日派狩り」を続けている。「二枚舌」と「嘘」を直す気は毛頭ないらしい。 李洛淵代表は、3月5日午後4時29分頃、春川市中央路にある中央市場に入った途端、待ち構えていた「春川中島遺跡保護本部」の女性会員Aさん(50代)に卵を投げつけられた。李代表の白いマスクに卵黄がべたりと付き、着ていたスーツにも卵液が飛び散った。李代表は足を止めてハンカチで卵液を拭くと、マスクを替え、上着を着替えた。 李代表に卵を投げたAさんは、「古代遺跡のある土地に観光地を作る」という計画に反対する団体に所属していることが明らかになった。Aさんは李代表が処罰を望まなかったため現行犯逮捕を免れた。韓国メディアがこのニュースを報道すると、国民はSNSで「ダチョウの卵を投げつけてほしかった」「文大統領に当たればよかったのに」「久しぶりに国民の鬱憤が晴れた」などの反応を見せた。おおむね「卵投げつけ事件」を歓迎するムードである』、なるほど。
・『文在寅政権が犯した失政の数々  李代表は韓国国会300議席中180近い議席を有する与党の代表で、有力な次期大統領候補でもある。李代表は元記者で東京特派員を経験し、国会議員時代には長年、日韓議員連盟で活動した。日本語を流暢に話し、日韓議員連盟の副会長を歴任するなど、“知日派”議員として知られている。2019年には文大統領が、李代表を対日特使に任命、悪化の一途をたどる対日関係の改善を直々に頼んでいる。その李代表に対する「卵投げつけ事件」が国民の注目を浴びている理由は何か。 現在、文政権に対する国民の怒りは極限に達していると言っても過言ではない。2021年3月、世論調査機関リアルメーター(Realmeter)は、文大統領の支持率が史上最低の34.1%と発表した。共に民主党の政党支持率も28.7%で最低値を更新。国民の心はすでに冷え、現政権を見限ろうとしているのだ』、「文大統領の支持率が史上最低の34.1%」、とは想像以上に底堅いようだ。
・『文政権が誕生して以降、韓国人の生活はより一層厳しさを増した。文大統領は2017年5月10日の大統領就任の辞で「国らしい国、一度も経験したことのない国を作る」と公約し、さらに「機会は平等、過程は公正、結果は正義の側に寄る」と宣言した。しかし、何ひとつ実現していない。 国民は経済的に貧窮し、公正や正義は高官たちの不正腐敗で跡形もなく消えた。新型コロナウイルスの拡散を防ぐ名目で、小さな店舗にも営業時間の短縮を強制し、自営業者を廃業に追い込んだ。また「積弊」と名付けた、朴槿恵前政権の時に日韓関係の改善を進めた人々に対する厳格な捜査を行った。 現に、徴用工訴訟の判決を引き延ばした容疑などでヤン・スンテ前最高裁判所長官を、慰安婦合意を主導した李丙琪(イ・ビョンギ)元駐日大使等を次々と逮捕した。さらに、釈放を求める世論が勢いを増しているが、反文在寅を掲げる保守党の李明博元大統領と朴槿恵前大統領をいまだ収監したままである。 ほかにも以下の失策が挙げられる。 ▲左派の雇用を無理やり創出、新規採用枠が激減し、20年ぶりに1カ月の失業者数が過去最高の157万人を記録  ▲憲法違反ではないかと批判を浴びている月城(ウォルソン)原子力発電所1号機の早期閉鎖と、産業通商資源部の「北朝鮮地域での原発建設推進方案」ファイルの削除  ▲文政権発足の一翼を担った活動家や左派たちが独占する太陽光事業  ▲所得主導型成長戦略とは真逆の最低水準となった所得分配と、経済二極化の加速  ▲税金増額につながると懸念されている共産主義的な医療政策「健康保険の保障性強化対策」、いわゆる「文在寅ケア」  ▲北朝鮮に過度な「屈辱外交」を行い、次の段階で徹底的に無視される  ▲24回にも及ぶ不動産対策を打ち出して不動産市場の混乱が加速、全国的な不動産価格が高騰』、これでは支持率低下は当然だ。
・『既成事実化しているコリア・パッシング  日韓関係に加えて、米韓同盟も危機に瀕している。外交関係者らの中には、当事者であるはずの韓国が議論から外される「コリア・パッシング(Korea passing)」が既成事実化していると考える人が多いようだ。 文政権は発足後、「2015年の慰安婦問題韓日合意破棄」「2018年韓国大法院(最高裁判所)のいわゆる元徴用工への賠償命令判決」「2019年日本製品不買運動」「2020年ソウル中央地方法院(裁判所)の元慰安婦への賠償命令判決」などで立て続けに日本を挑発し、「親日派のあぶり出し」と「親日派狩り」を続けてきた。菅義偉政権はこうした文政権を徹底的に無視している。 2021年に大統領に就任したジョー・バイデンと米国政府も北朝鮮と中国におもねる韓国を外して、日本との外交や安全保障協力、太平洋戦略の再編に注力している。日本が提唱し、米国が主導した「日米豪印戦略対話(クアッド)」の中国包囲網から韓国を除外した事実もコリア・パッシングを示していると言えるだろう。 韓国では、日米韓同盟関係が悪化の一途を辿れば、駐韓米軍の撤収という最悪のシナリオにつながりかねない懸念が広がっている。米韓同盟をないがしろにし、北朝鮮が望む「終戦協定」と「在韓国連軍の解体」に賛同してきた文政権を米国は無視しているのだ。 日米との関係を回復するため、どれほどの努力をしても足りない状況だが、その文政権の「親日派狩り」はとどまるところを知らない。3月1日には親日派の子孫たちが所有する土地を没収すると脅しをかけた。一方、韓国ではおよそ数万人の公務員が土地投機をした疑惑が持ち上がっているが、これに対するお咎めはない。親日派狩りで反日を煽る一方、身内が私腹を肥やすのは黙認する。ここにも文政権の二面性が垣間見られる』、「親日派の子孫たちが所有する土地を没収」、韓国の法律ではそんあことが可能なのだろうか。
・『文在寅政権は災いそのもの  「一度も経験したことのない国」。今、韓国人は文政権に対する挫折感と憤りで溢れている。ある国民は「文政権は、問題解決策を提案するどころか災いそのものだ」と非難する。 文政権は、大衆を反日に扇動し、北朝鮮や中国にすり寄って韓国を左傾化させながら、国内経済を破綻に導き、経済の二極化を加速させた。そして、これらの結果はすべてコロナのせい、前の保守政権のせい、親日派と日本のせいだと、「人のせい」にし続けている。李洛淵代表への「卵投げつけ事件」を歓迎する韓国人の姿を見ても、いま韓国は、まさに「反日」から「反文在寅」へ流れが変わっているといえそうだ』、「いま韓国は、まさに「反日」から「反文在寅」へ流れが変わっている」、事実であれば、喜ばしいことだ。
タグ:韓国 東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン JBPRESS ソウル新聞 武藤正敏 (文在寅大統領) (その8)(韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ、韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練 元駐韓大使が解説、レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論) 「韓国が「空母」建造に乗り出した歴史的理由 23年前に断念、妥当性分析し来年にも設計へ」 「韓国型航空母艦」導入計画 「韓国型航空母艦」導入計画が「1997年」に出ていたとは初めて知った。「朝鮮半島不沈空母論」とは何なのだろう 23年前の「不沈空母論」が開発のネックに 「海軍は予算の大幅削減でショックを受けたものの、歴史的偉人を利用し反論」、歴史sw反論するとは巧みだ 史実を利用して開発計画を承認させた海軍 無駄な装備の典型で、軍人のおもちゃだ。しかし、「イタリアやブラジル、タイなどがすでに軽空母を保有」というのが、保有論への後押しとなるのだろう 「空母」の仮想敵国は、日本なのではあるまいか。自衛隊にはヘリコプター空母であり護衛艦として、ひゅうが型、いずも型があるが、戦闘機搭載可能に改装するのだろうか。日本にとっても、無駄だ 「韓国文大統領が直面する「米国務・国防長官訪韓」の試練、元駐韓大使が解説」 「米韓による2+2は・・・約5年ぶり」、とはずいぶん冷え切っていたようだ 「米国が韓国に対し、同盟としての役割を高めることを求める最初のステップ」、とはさすが深い読みだ 米国の北朝鮮政策の再検討に 文政権はついていけない 「バイデン政権」は「トランプ」よりは忍耐強いだろうが、それでも限界がある筈だ。 米韓関係は軍事的にも手詰まり感 「韓国の徴兵された兵士の任期が1年半であり、在韓米軍の兵士の任期が1年」、 「米韓間で大規模な合同野外演習は2年間行われていない」、とすると、現在の米韓軍は「大規模な合同野外演習」、を全く経験してないことになり、戦力低下したことになる 弱腰の韓国に中国は一層の圧力 「文政権は中国から「三不政策」を約束させられている」、先ずはこの「約束」をホゴにさせることから始める必要がありそうだ 米国は日本に対し日韓関係の改善を要求 「韓国」との関係を含め全面的に同意したい 金 愛 「レームダック化する文在寅政権下で起きたある事件 政権末期に「反日」から「反文在寅」に変わりつつある韓国世論」 文在寅政権が犯した失政の数々 「文大統領の支持率が史上最低の34.1%」、とは想像以上に底堅いようだ これでは支持率低下は当然だ 既成事実化しているコリア・パッシング 「親日派の子孫たちが所有する土地を没収」、韓国の法律ではそんあことが可能なのだろうか。 文在寅政権は災いそのもの 「いま韓国は、まさに「反日」から「反文在寅」へ流れが変わっている」、事実であれば、喜ばしいことだ
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

日韓関係(その13)(日韓関係「再出発」の時 日本が兄貴分の時代は終わった、菅首相が離任する韓国大使との面会を拒否?後任大使も「外交欠礼」と驚き、文在寅が「慰安婦問題」で大博打へ…!日本からの「報復ブーメラン」で いよいよ万事休すか) [外交]

日韓関係については、昨年11月3日に取上げた。今日は、(その13)(日韓関係「再出発」の時 日本が兄貴分の時代は終わった、菅首相が離任する韓国大使との面会を拒否?後任大使も「外交欠礼」と驚き、文在寅が「慰安婦問題」で大博打へ…!日本からの「報復ブーメラン」で いよいよ万事休すか)である。

先ずは、11月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元外務審議官で日本総合研究所国際戦略研究所理事長の田中 均氏による「日韓関係「再出発」の時、日本が兄貴分の時代は終わった」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/254601
・『新政権の発足は外交関係修復のチャンス  新政権の発足は新しい政策を展開する大きな機会だ。 特に外交では首相交代期は、これまでの外交路線を吟味し、うまくいっていないと思われる政策について修正していく重要な契機になる。 典型が中曽根首相の訪韓だった。1983年1月首相に就任した直後、中曽根首相は電撃的訪韓をし、歴史教科書問題や韓国に対する政府借款供与の問題で悪化していた日韓関係を劇的に改善させた。 日韓関係は1965年の正常化以降最悪だといわれるが、日韓はともに東アジアで民主主義が根付き、米国との安全保障条約で結ばれている。日本にとって、韓国は18年連続で中国・米国に次ぐ第三の貿易相手国であり、また両国間の往来人数は1000万人を超える隣国だ。 最も重要な国の一つであることに疑問の余地はなく、菅政権の発足を日韓関係の再出発とする機会としなければならない』、反韓国の論調が多いなかで、「菅政権の発足を日韓関係の再出発とする機会としなければならない」との提言は貴重で、同感である。
・『文政権と安倍政権の相克 双方に信頼関係が欠落  日韓関係がここまで悪化した原因は何なのか。 最大の要因の一つは、文在寅政権と安倍晋三前政権の基本的な思想の違いだろう。 特に文大統領の支持基盤といわれる「86世代」(80年代の民主化運動に携わった60年代生まれの年代)は、分断された南北朝鮮の統一への思い入れがあり親北朝鮮、反米・反日の傾向が強い。 文政権はこのような世代の支持を受け、支持率が低下しても40%台の支持率を恒常的に確保している。 一方、安倍政権は「戦後体制からの脱却」「美しい国日本」を首相が標榜した保守政権であり、歴史問題などでも日本も主張すべきは主張しようという傾向が強い。 若い人々を中心に支持率は堅固で、選挙で勝ち続けた政権だった。 いつの間にか、日韓ともにお互い、強い主張をぶつけるべき相手となっていた』、確かに「文政権」と「安倍政権」では左派VS右派、と好対照だ。
・『個別案件が不信感に火を注いだ 被害者意識が時に強い反発に  日韓首脳のイデオロギー上の相克はあったものの、日韓の信頼関係が決定的に崩れたのは、2015年以降の慰安婦合意とその事実上の破棄、徴用工問題での韓国大法院判決、そして日本による半導体材料の対韓輸出管理の厳格化、それを受けた韓国側のGSOMIA廃棄問題を巡ってだ。 2015年の慰安婦合意については、日本国内では安倍首相の個人的な心情からすればよく踏み切ったものだという評価がされていたが、これが履行されず、事実上、崩壊することとなったことへの不満は強い。 元徴用工への大法院判決についても、韓国政府が、司法権には介入できないと判決を受け入れるかのような姿勢をとっているだけではなく、これまで一貫して日韓基本条約・請求権協定で「解決済み」としてきた立場を翻したものだという批判が強い。 日本政府内には、政府間の約束を守らずゴールポストを動かして条約の法的基礎を一方的に崩した韓国政府を相手にする必要はないという感情が充満した。 国民世論のベースでも、韓国に「良くない」イメージを持つ国民は2015年以降ほぼ一定で高いレベルに達している。 一方で韓国の対日感情も、もともと良くはなかったものの、2019年からこの1年間では急速に悪化の一途をたどっている。 おそらく同年7月の日本による半導体材料の対韓輸出制限措置が、政府だけでなく国民世論ベースにも大きな影響を与えたということだろう。 歴史的な経緯もあり、韓国では「“強い日本”からいじめられている」という意識があり、時にそれが日本に対する強い反発を生む。 日本政府は韓国の輸出管理が十分でないことを輸出規制の根拠に挙げているが、徴用工問題を巡る日本の報復措置だという印象を多くの韓国国民に植え付けたといってよい』、「半導体材料の対韓輸出制限措置」は経産省の思い付きだろうが、実効性に乏しく、自己満足的だったようだ。
・『「プロフェッショナルな外交」見られず 政権や一部勢力の反発を慮る  外交当局の間でも相互不信は強まっている。 韓国側の対応に起因することだと推察するが、日本の外務省ですらも韓国への嫌悪感を隠していない。 『外交青書』上の韓国に対する表現も、長年にわたり「価値や戦略的利益を共有する重要な隣国」という趣旨が盛られていたものが、ここ数年は単なる「隣国」あるいは「重要な隣国」という表現に留められている。 一方で、韓国側も「それなら我々は態度を改めよう」とはなっていない。むしろ現状では韓国側の日本に対する遺恨の念がますます深まってゆくことは想像に難くない。 プロフェッショナルな外交とは、国内世論が喝采する主張を発することではなく、国益にかなう結果を作り出す作業だ。 しかし残念ながら、今の日韓関係はそれぞれ外交当局が国内の反発などを慮り、いわば国内事情を人質にとられている状況で関係改善の動きがとられていない状況だ。 大統領制の韓国で大統領が持つ権威は大きいが、前述したように86世代を支持基盤にする文政権は日本に歴史問題で少しでも譲歩するような姿を示すことに抵抗が強い。 近年、政策決定プロセスにおける青瓦台(大統領官邸)の力は外交問題でも圧倒的となっており、外交通商部によるプロフェッショナルな意見具申は通りにくく、国内政治的な力学が強く働くと言ってもよいだろう。 議院内閣制の日本でも、近年、官邸の力が強まり、霞が関の幹部人事も差配されるようになっている。 そういう状況である以上、外務省は官邸と異なる意見を具申することには臆病にならざるを得ないということなのだろうか。それだけではなく、官邸の方針を忖度(そんたく)する結果、関係改善のため知恵を出して動くといった姿勢も感じられない』、「政策決定プロセスにおける青瓦台(大統領官邸)の力は外交問題でも圧倒的となっており、外交通商部によるプロフェッショナルな意見具申は通りにくく」、「日本でも、近年、官邸の力が強まり、霞が関の幹部人事も差配されるようになっている。 そういう状況である以上、外務省は・・・官邸の方針を忖度(そんたく)する結果、関係改善のため知恵を出して動くといった姿勢も感じられない」、日韓とも通常の外交チャネルが機能不全となっているようだ。
・『日韓共同世論調査では関係改善を求める声が多数  ところが興味深いのは、2020年の言論NPOと韓国東アジア研究院の共同世論調査では、韓国国民の82%、日本は約48%が「日韓関係は重要だ」としていることだ。 「重要でない」とするのは韓国の13%、日本の21%に過ぎず、関係改善に努力すべきという声が多数を占めている。 このことから思うのは、むしろ青瓦台や首相官邸が関係改善に向けて動くことは国内支持率を下げてしまうという思い込みが強すぎるのでは、ということだ。 あるいは世論全体の雰囲気というより、韓国の左派勢力、日本の保守勢力を慮るゆえに、両国政府が動くのにちゅうちょしているのではないか』、「日韓関係は重要だ」とする「国民はやはり「韓国」の方が多いようだ。
・『等身大で相手を見なければならない協力の可能性を示す「Nizi Project」  私が外務省のアジア大洋州局長だった2002年に韓国はGDP(国内総生産)で日本の7分の1だったが、今はその差が3分の1程度まで縮小し、1人当たり国民所得では肩を並べる存在となった。 企業も、例えばサムスンやLG、現代自動車といった韓国の大手企業は高い競争力を持つ世界のグローバル企業に育っている。従来のように日本がほぼすべての経済指標で優位に立ち、「兄貴分」として振る舞った時代は終わったのだ。 経済で言えば、今、求められる日韓関係とは双方がしのぎを削って競争するという図式ではなく、相互を補完し協力してグローバルに進出していくという図式なのだろう。 実際に日韓の第三国における共同プロジェクトは近年、飛躍的に増え、日本の精緻な素材生産技術と韓国の優れた商品化能力は協力し合い世界的トップの製品を生み出している。 また韓国の大企業はグローバルに展開する際、日本の銀行からも融資を受け日本の信用力を支えにしている。 エンターテインメントの世界でも日韓協力の可能性を示すプロジェクトが始まっている。 韓国の世界的な歌手・ダンサーであるJ.Y. Park氏らが企画した「Nizi Project」は日本各地でおよそ1万人の応募者の中から13人を選抜し、韓国で6カ月間の研修を実施し、最終的に9人のガールズ・グループをデビューさせるというプロジェクトだ。 日本の集団として“和”を重視する傾向と、徹底して“個”を磨こうとする韓国のアプローチが相互に作用し、世界に通用するグループを育成できるというわけだ。 韓国は国内マーケットが必ずしも十分大きいわけではないので、最初から世界に通用する人材を育てようとするし、日本はそれなりに大きな国内マーケットなので、むしろ和を乱さない人材を育成しようとする。 そうした日韓のマーケットや文化性の違いから、これまでのアーティストとは違う二国の良さを取り入れた新グループ“NiziU(ニジュー)”として、12月にメジャーデビューするという。 今後このグループが日韓双方で、また世界でどう評価されるのかは楽しみだ』、「1人当たり国民所得では肩を並べる存在となった」以上、「日本が」「兄貴」風を吹かす訳にはいかなくなった。対等の立場で、お互いの強味を生かして協力してゆくべきだろう。
・『日韓関係を再出発させる時期が来た コロナでの協力や東京五輪開催を契機に  日韓が信頼関係をとり戻すには、まずは相手を等身大で見て、日韓双方が相手の粗探しをするのではなく、優れた点を評価する姿勢を持つことだ。 新型コロナウイルス感染拡大でも韓国は早期の感染防止に成功したといわれ、日本も欧米などに比べれば感染者・死者ともに圧倒的に少ない。両国ともコロナ感染防止をしつつ経済回復を図るという難しい局面に来ているが、もし日韓がこの難しいプロセスを加速化するための協力ができれば、おそらく国際社会からは、その日韓関係を新たな「東アジアの奇跡」と評されることになるのだろう。 コロナだけでなく、2021年夏に開催される東京オリンピック・パラリンピックもそうした日韓の信頼関係回復の機会になり得る。 考えてみれば、1988年ソウル五輪、2018年平昌(ピョンチャン)冬季五輪はいずれも世界史に残る五輪になった。ソウル五輪は韓国を国際社会の中の揺るぎない存在とするきっかけとなったし、平昌冬季五輪は南北首脳会談、米朝首脳会談に道を開いた。 ソウル五輪の時に私は外務省の担当課長として日韓のテロ対策チームを立ち上げ、金大中拉致事件以降関係を断っていた日韓の治安当局の協力が実現したことが思い出される。 来年の東京五輪が、日韓両国政府の協力関係再出発の契機となることを心から期待したい。 年内中の開催がいわれている韓国での日中韓サミットに菅首相は参加するべきだし、首脳レベルでの日韓関係の重要性・将来に向けての揺るぎない協力関係の再確認ができれば、個々の懸案解決は決して難しいことではない。 双方の外交当局もお互いを満足させるような解決策を導き出す知恵を持っているはずだ』、日韓がいがみ合っている様子は欧米諸国には理解し難い筈だ。「東京五輪が、日韓両国政府の協力関係再出発の契機となることを心から期待したい」、同感である。

次に、1月18日付けRecord China「菅首相が離任する韓国大使との面会を拒否?後任大使も「外交欠礼」と驚き」を紹介しよう。
https://www.recordchina.co.jp/b868067-s0-c10-d0058.html
・『2021年1月18日、韓国・世界日報は、菅義偉首相が離任する南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使との面会を「事実上拒否した」とし、「外交欠礼問題が浮上している」と伝えた。 記事によると、南大使は16日に韓国に帰国。菅首相が南大使の離任前に調整していた面会は見送られた。日本政府関係者は「慰安婦問題をめぐる韓国裁判所の賠償判決などを考慮し、面会が保留された」と説明したという。 一方、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は14日、離任する冨田浩司駐韓日本大使と面会し、日韓関係改善への意思を明らかにしていた。記事はこれについて「対照的な対応だ」と指摘している。安倍晋三前首相も2019年4月、離任する李洙勲(イ・スフン)韓国大使と面会した。南大使の後任に内定している姜昌一(カン・チャンイル)氏は17日にソウルで行われたオンライン記者懇談会で、「菅首相が南大使と面会しないことは外交欠礼だ」との指摘に対し「私もそう思う」とし、「なぜあいさつができなかったのか、面会できなかったの分からない」と述べたという。 これに韓国のネットユーザーからは「日本は器が小さい」「いくら嫌いでも外交の慣例なのに。本当に失礼」「こんな日本とはしばらく距離を置いた方がいい」など日本への批判の声が続出している。 一方で「『韓国とは親しくしたくない』という意思表示。これが現実だ」「日韓関係が最悪なのだから会ってくれなくて当然」「この程度で外交欠礼?。中国では文大統領が滞在中ずっと1人で食事をさせられたこともあった」「文政権が『未来志向的』と言うのは矛盾では?」などと指摘する声も寄せられている』、「菅義偉首相が離任する南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使との面会を「事実上拒否した」」、「一方、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は14日、離任する冨田浩司駐韓日本大使と面会し」、いくら「「慰安婦問題をめぐる韓国裁判所の賠償判決」などがあったとしても、明らかに「外交欠礼」だ。「菅首相」に外交プロトコルの基本をレクチャーする勇気がある 外務官僚はいないのだろうか。

第三に、1月27日付け現代ビジネスが掲載した元駐韓国特命全権大使で外交評論家の武藤 正敏氏による「文在寅が「慰安婦問題」で大博打へ…!日本からの「報復ブーメラン」で、いよいよ万事休すか」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/79631?imp=0
・『追い詰められた文在寅  韓国大統領の文在寅氏が日韓関係修復に乗り出した。その発端が昨年の国家情報院長訪日と韓日議連会長訪日時に関係改善の意思を伝えてきたことである。 その意思をさらに明確に示したのが、1月18日の年頭記者会見における慰安婦問題判決に関する判決に「困惑している」とする一連のコメントである。 文在寅氏が日韓関係改善の意向を固める最大の要因となったのが、バイデン氏の大統領当選とこれに続く新政権の成立である。バイデン氏への政権移行が進む中、明らかになったことは、バイデン氏はトランプ氏と異なり、非核化への展望なく金正恩氏とのトップ会談に応じることは考え難く、これを支えるスタッフは実務経験を積んで北朝鮮に対しては厳しい見方を持っているということである。 そうした中で文在寅氏は、短期間に朝鮮半島問題で成果を出すには米国の要求に応じ、米国と協力する姿勢を取るほかないとの状況認識を持つに至ったのであろう。 米国はアジア外交で最も重視する中国封鎖戦略にあたって日米韓の連携強化が必要と考えている。そのため文在寅氏としては、日本との関係修復は不可欠と考えたのであろう。米国のこうした戦略に乗り、米韓関係を強化する中で米朝関係にも取り組んでもらおうとしているのである』、「文在寅氏が日韓関係改善の意向を固める最大の要因となったのが、バイデン氏の大統領当選とこれに続く新政権の成立である」、日本にとっても、いいチャンスだったのに、見逃したのは残念だ。
・『文在寅に正義連を捨てる「覚悟」はあるのか  文在寅大統領は1月21日、自らが主宰した安全保障会議(NSC)で「朝鮮半島を含めたインド太平洋地域の秩序が急激な転換期に入りつつある」と述べた。米中に対して中立的な姿勢で臨んできたこれまでの姿勢の転換を示唆しているのかも知れない。 文在寅氏が日韓関係改善のシグナルを送っても、日本政府の姿勢は冷ややかである。文在寅氏はそれでも日本と慰安婦問題を外交的に解決しようとするであろう。ただ、その最大の障害が正義連・挺対協であることをいまだ認識していない。 これまで慰安婦問題解決の最大の妨げとなってきたのが正義連・挺対協である。文在寅氏が日本と妥協を図ろうとしても抵抗し、再び妨害するであろう。正義連・挺対協と手を切る覚悟ができた時に、問題の外交的解決の道も見えてくるであろう。 文在寅氏は1月18日の年頭記者会見で、慰安婦問題の判決に対して「正直困惑している」と述べ、2015年の合意についても政府間の公式合意であったことを認めて「(合意を土台にして)おばあさんたちも同意できる解決方法を探していけるよう韓日間で協議している」と述べた。 この発言は、文在寅氏の側から見れば、同合意を「真実と正義の原則に背き、内容と手続きも共に誤り」としていた見解からの大転換であり、韓国側の大幅な譲歩に応え、日本側も歩み寄ってほしいと考えていたのではないだろうか。 しかし、日本側は従来の姿勢を変えなかった』、「正義連・挺対協と手を切る覚悟ができた時に、問題の外交的解決の道も見えてくるであろう」、これは明確なメッセージとして伝えておくべきだろう。
・『日本からの「報復」  日本側は文在寅氏が2015年の合意を公式合意としたことは一歩前進と評価しつつも「問題解決に向けた具体策は示さなかった」「解決案を注視する」といった従来の主張を繰り返し、「具体的行動がなければ日韓関係の改善はない」と強調した。 日本の茂木外相は1月23日、慰安婦判決が確定した時点で「外務大臣談話」を発表して、「国際法上、国家主権を有し、互いに対等な存在であることから、原則として、外国の裁判権に服することはない」「(この判決は)極めて遺憾であり、断じて受け入れることはない。韓国に対し、国家として自らの責任で直ちに国際法違反の状態を是正するために適切な措置を講ずることを改めて求める」との日本政府の立場を明らかにした。 そのため韓国政府は、1月23日さらに一歩進んで「政府レベルでは日本に追加請求しない方針」と表明した。 その一方で日本に対しては、外交的論争が避けられない法的賠償の代わりに「自ら表明した責任痛感と謝罪反省の精神に立脚して被害者らの名誉・尊厳回復と心の傷の治癒に向けた真の努力を見せるべきだろう」と要請した。 日本政府がこの判決に基づき、元慰安婦に「賠償金」を支払うことはあり得ず、韓国が日本政府の資産を強制執行すれば、それ相応の報復をするはずである。韓国政府が「日本に追加請求しない」とするのは当然のことである』、なるほど。
・『中央日報に書かれた「問題の核心」  韓国政府が日本に改めて「謝罪や反省を求める」とする点についても、謝罪や反省はすでに何度も行ってきていることである。ただ、それが元慰安婦の人々に正確に伝わっていないのは、正義連・挺対協が間に入り、これを否定してきたからである。それを改めて日本側に求めてくるのは筋違いだろう。 中央日報は、アンチフェミニストとして『フェミニズムはどのようにして怪物になったのか』という本の共著者であるオ・セラビ氏(女性)のインタビュー記事を掲載している。 この本では、政治権力と結託したフェミニズムを批判している。具体的には、「586運動圏(現在50代、80年代の民主化運動にかかわった、60年代生まれの世代)権力と女性団体運動は出発が同じだ。上層部の女性運動家のほとんどが『韓国女性団体連合』から活動を始めた。これは民主化運動がはじまった87年だ。今までこの団体出身の首相、閣僚、国会議員が11人いる」という。 そして、「エリート女性運動家は大きな志を抱いて活動する一般の女性運動家と女性たちを道具として使い、名声を築いた。彼らを政治権力を得るためのルートとして利用する」と批判している。 さらにインタビューでは「韓国女性運動と、正義連・挺対協の運動は同じ幹だ」とし、「正義連は慰安婦問題が本当に解決したら、正義連の存在価値は消えるから、慰安婦問題を本当に解決するつもりがあるのか疑問を感じるのだ。慰安婦問題を一日でも早く解決するためには、正義連のような市民団体に任せるのではなく、最初から最後まで政府が直接責任を取ってやらなくてはならない」と痛烈に語っている。 このオさんの発言は、まさに問題の核心をついている。慰安婦問題はこれまで何度も解決する機会があったが、これをことごとく妨害してきたのが、正義連とその前身である挺対協なのである』、「正義連」は確かに困った存在だ。
・『日韓合意を「妨害」する人たち  日韓の最初の取り組みは、日本側が設立した「アジア女性基金」を通じた解決であった。 7人の韓国人元慰安婦が同基金からのおカネを受け取ると、当時の挺対協のトップは「アジア女性基金からおカネをもらう人は、自ら進んで出かけた娼婦であることを認めるのと同様だ」と元慰安婦を最も傷つける言葉でののしった。 しかし、後でわかったことは、アジア女性基金の代わりに韓国政府からおカネを受け取った人のうち54人がアジア女性基金からもおカネを受け取っていたということである。当時の挺対協が邪魔しなければ、より多くの元慰安婦がアジア女性基金からおカネと総理の謝罪を記した書簡を受け取り、この問題は解決していたということである。 2015年の慰安婦合意の際には、当時韓国政府が設立した和解・癒し財団の理事長がすべての元慰安婦にこの合意を説明し、理解を求めたところ、当時存命であった、46人の元慰安婦のうち36人(78%)が受け入れに同意した。しかし、挺対協の反対を受け、文在寅氏は国民的理解が得られないと同財団を解散させてしまった。 その正義連・挺対協がこれまで何をしてきたかというと、元慰安婦のための寄付金や政府補助金の一部しか元慰安婦のためには使わず、その多くを私的にあるいはその他不適切な形で使ってきたことが、元慰安婦李容洙(イ・ヨンス)氏の告発で明らかになった。ここから明らかなことは、正義連としても寄付金を集め続けるため、慰安婦運動の存続を望んでいたということである。 それでも文在寅政権は、「慰安婦問題の大義を失うことがあってはいけない」と正義連を庇っている。正義連の尹美香(ユ・ミヒャン)前理事長は国会議員を続け、最近では、コロナ禍にもかかわらず、元慰安婦の誕生日を口実にワインパーティを行うなど反省の色を見せていない』、「正義連」の活動の実態を一般の韓国国民はどの程度知っているのだろうか。
・『文在寅の「卑屈」な姿勢  正義連は、1月18日に文在寅大統領が記者会見で2015年の日韓合意が公式合意であったことを認めた際にも、理事長が「日本政府に卑屈に移るほど守勢的に対応したり完全な沈黙で一貫したりする理由は何か」と失望感を表明した。 文在寅政権のむしろ正義連に対する「卑屈」な姿勢を見ると、文氏の日韓関係改善の努力はまたしても正義連の妨害を受けるのではないだろうか。 慰安婦問題を解決したければ、このような正義連とはたもとを分かち、正義連の着服し、横領した金銭を回収して元慰安婦の人々が安らかな老後を送れるような環境を整備することである。正義連のいうことを聞いていてはいつまでたっても堂々巡りである。 韓国政府が関係の改善の姿勢を示しても、日本として原則を守る以外ない。韓国内に請求権協定に対する不満があろうとも、慰安婦合意に対し正義連が反対しようとも、それを無効にし、再度交渉するなどということはできない。 また、日本がこれまで歴史問題で再三、謝罪と反省の意を表明してきたことも事実である。正義連がこれを認めず、これは真の謝罪ではないというのは言いがかりである。日本が改めて謝罪することはこの原則に背くことになる。 今後日本ができることと言えば、これまで日本政府として誠意をもって反省し、謝罪してきたことを再度確認することであろう。それは正義連が言ってきたことが真実でないことを明らかにすることになるが、それによって元慰安婦が日本政府の反省と謝罪を受け入れることになれば意味がある。 わたくしは大使時代、必要であれば、自分が一人一人の元慰安婦にあってこれを伝えてもいいと考えていた。その機会はなかったが、元慰安婦の人々に日本政府の思いを正確に伝えるためには大使が出ていくのは良いのではないかと今でも考えている』、「韓国政府」が「正義連」に厳しい姿勢を取れないのは何故なのだろう。「武藤」氏がやや反韓国的なのは、在韓国大使時代に苦労させられたためかも知れないが、私はむしろ冒頭の田中氏の考え方に同意する。 
タグ:日韓関係 ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス Record China 田中 均 武藤 正敏 (その13)(日韓関係「再出発」の時 日本が兄貴分の時代は終わった、菅首相が離任する韓国大使との面会を拒否?後任大使も「外交欠礼」と驚き、文在寅が「慰安婦問題」で大博打へ…!日本からの「報復ブーメラン」で いよいよ万事休すか) 「日韓関係「再出発」の時、日本が兄貴分の時代は終わった」 新政権の発足は外交関係修復のチャンス 反韓国の論調が多いなかで、「菅政権の発足を日韓関係の再出発とする機会としなければならない」との提言は貴重で、同感である 文政権と安倍政権の相克 双方に信頼関係が欠落 個別案件が不信感に火を注いだ 被害者意識が時に強い反発に 「半導体材料の対韓輸出制限措置」は経産省の思い付きだろうが、実効性に乏しく、自己満足的だったようだ 「プロフェッショナルな外交」見られず 政権や一部勢力の反発を慮る 「政策決定プロセスにおける青瓦台(大統領官邸)の力は外交問題でも圧倒的となっており、外交通商部によるプロフェッショナルな意見具申は通りにくく」 日本でも、近年、官邸の力が強まり、霞が関の幹部人事も差配されるようになっている。 そういう状況である以上、外務省は 官邸の方針を忖度(そんたく)する結果、関係改善のため知恵を出して動くといった姿勢も感じられない 日韓とも通常の外交チャネルが機能不全となっているようだ 日韓共同世論調査では関係改善を求める声が多数 等身大で相手を見なければならない協力の可能性を示す「Nizi Project」 「1人当たり国民所得では肩を並べる存在となった」以上、「日本が」「兄貴」風を吹かす訳にはいかなくなった。対等の立場で、お互いの強味を生かして協力してゆくべきだろう 日韓関係を再出発させる時期が来た コロナでの協力や東京五輪開催を契機に 「東京五輪が、日韓両国政府の協力関係再出発の契機となることを心から期待したい」、同感である。 「菅首相が離任する韓国大使との面会を拒否?後任大使も「外交欠礼」と驚き」 菅義偉首相が離任する南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使との面会を「事実上拒否 「外交欠礼問題が浮上 「慰安婦問題をめぐる韓国裁判所の賠償判決などを考慮し、面会が保留された 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は14日、離任する冨田浩司駐韓日本大使と面会し、日韓関係改善への意思を明らかにしていた 「菅首相」に外交プロトコルの基本をレクチャーする勇気がある 外務官僚はいないのだろうか 「文在寅が「慰安婦問題」で大博打へ…!日本からの「報復ブーメラン」で、いよいよ万事休すか」 追い詰められた文在寅 文在寅氏が日韓関係改善の意向を固める最大の要因となったのが、バイデン氏の大統領当選とこれに続く新政権の成立である」、日本にとっても、いいチャンスだったのに、見逃したのは残念だ 文在寅に正義連を捨てる「覚悟」はあるのか 「正義連・挺対協と手を切る覚悟ができた時に、問題の外交的解決の道も見えてくるであろう」、これは明確なメッセージとして伝えておくべきだろう 日本からの「報復」 中央日報に書かれた「問題の核心」 慰安婦問題はこれまで何度も解決する機会があったが、これをことごとく妨害してきたのが、正義連とその前身である挺対協なのである』、「正義連」は確かに困った存在だ 日韓合意を「妨害」する人たち 「正義連」の活動の実態を韓国民はどの程度知っているのだろうか 文在寅の「卑屈」な姿勢 「韓国政府」が「正義連」に厳しい姿勢を取れないのは何故なのだろう 「武藤」氏がやや反韓国的なのは、在韓国大使時代に苦労させられたためかも知れないが、私はむしろ冒頭の田中氏の考え方に同意する
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

RCEP(東アジア地域包括的経済連携)(その1)(RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破 米国に対抗する「次の一手」とは、中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」 日本はどう振る舞うべきか、RCEPが日韓の関係改善を後押し 日韓貿易の83%で関税撤廃へ) [外交]

今日は、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)(その1)(RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破 米国に対抗する「次の一手」とは、中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」 日本はどう振る舞うべきか、RCEPが日韓の関係改善を後押し 日韓貿易の83%で関税撤廃へ)を取上げよう。

先ずは、11月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家・ジャーナリストぼ莫 邦富氏による「RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破、米国に対抗する「次の一手」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/254732
・『世界最大規模の自由貿易経済圏の誕生、中国はどう見たか  先日、「東アジア地域包括的経済連携(=RCEP)」の首脳会議が開かれ、日本や中国をはじめ15カ国がこの「RCEP」の協定に署名した。新型コロナウイルスによって世界経済が大きな打撃を受けて四苦八苦している2020年で、最も素晴らしい経済関連のニュースと言っていいと思う。 世界の人口やGDPのおよそ3割もカバーするこの協定は、世界最大規模の自由貿易経済圏の誕生として受け止められ、大きく注目されているが、中国での評価は一味も二味も違う。 まず、李克強首相は「RCEPの署名は多国間主義と自由貿易の勝利であり(中略)、人々に曇りの中で光明と希望を見いださせた」と評価した。「勝利」「光明」「希望」という3つの言葉は中国側の興奮と喜びを余すことなく表している。 中国国内では、「ある意味では、他の14カ国と一緒にRCEPに署名することは、中国にとってWTOに加盟した出来事に相当する大きな事件だ」と受け止める専門家が多い』、「中国にとってWTOに加盟した出来事に相当する大きな事件だ」、とは大げさな感じもするが、正直な感想なのだろう。
・『脅威だったTPP包囲網を突破できた中国  オバマ政権が推し進めていたTPP(環太平洋パートナーシップ協定)は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、米国の12カ国間を束ねた経済連携協定だが、このグループの最大の特徴は、環太平洋地域国なら、中国以外のどの国でも参加できるとしていることだ。 このTPPが実現すれば、経済規模は世界の40%を占め、アメリカ合衆国とヨーロッパ連合を結ばせた北大西洋版TPPともいえるTTIP(大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定)を加えると、2つのグループが世界経済の60%以上を占めるほどの勢力圏を誇ることになる。 つまりTPPが実現すれば、中国を残りの40%という世界経済圏の中に孤立させることに成功することを意味していた。 このTPPは明らかに中国を包囲するための経済協定だと、中国は警戒していた。しかし、蚊帳の外に置かれた中国には、その包囲網を打ち破る方法はない。予想外なことにトランプ政権時代の2017年1月、アメリカ合衆国は自らの意思でTPPを離脱した。オバマ政権時代、アメリカがあれだけ苦労して敷いた中国包囲網は、こうしてトランプ政権に軽々と破って捨てられたのだ。 しかし、バイデン政権が誕生したら、米国が再びTPPを担ぎ出す恐れがある。そのバイデン政権が誕生する直前に、米国を蚊帳の外に置くことに成功したRCEP協定の成立は、中国にとっては中国包囲網を突破した一大勝利だけではなく、米国に対抗するには欠かせないツールの一つでもあると見ていい』、「オバマ政権時代、アメリカがあれだけ苦労して敷いた中国包囲網は、こうしてトランプ政権に軽々と破って捨てられたのだ。 しかし、バイデン政権が誕生したら、米国が再びTPPを担ぎ出す恐れがある」、「トランプ」は何でも「オバマ」の成果を否定することを優先するの余り、「中国」を結果的に利したとはお粗末だ。
・『中国が次に目指すのは「日中韓自由貿易圏」  中国の世論では、将来、米国が主導するTPPに対抗するには、RCEP1つだけでは不十分との声もある。RCEPは15カ国の集合体なので、中国のような人口大国もあれば、ブルネイのような小国もあり、日本のような先進国もあれば、カンボジアのような貧しい国もある。これらの国々を束ねるには、言うまでもなくさまざまな妥協と譲歩が必要だ。 その意味では、日中韓自由貿易圏の成立はより大きな実益につながる。日本と韓国にとって、中国は最大の貿易国である。そして中国にとって、日本と韓国はそれぞれ第2位と第3位の貿易パートナーであり、第1位と第2位の輸入相手国でもある。 また3カ国間の貿易往来も頻繁だ。日本は豊富な資本と先端科学技術を有しており、韓国は半導体分野で優位性をもっている。一方、中国は製造大国だ。その3カ国の産業と経済は相互補完関係にあり、産業融合度も高い。自由貿易圏を構築することで、互いにウィンウィンの関係を実現することができる。日中韓自由貿易圏が形成されると、この3カ国も世界の他の大国との交渉により多くのカードを使えることになり、その意義は計り知れない。 だから、日中韓自由貿易圏、ヨーロッパと中国の自由貿易圏も早急に成立しなければならないと中国国内の世論は推しているのだ』、「日中韓自由貿易圏」はどうなっているのだろう。
・『米国とのバランスをどう取るか  2002年に、すでに日中韓自由貿易圏構想が出来上がり、当事者3カ国もその成立を期待している。しかし、これまで16回の交渉が行われてきたが、まだ着地できていない。いつも協定の機運が高まったところで、何らかの国際紛争が発生し、その協議が一時停止に追いやられてしまう。尖閣諸島(中国名は釣魚島)国有化事件、地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)配備事件、日韓貿易戦争などがその典型例だ。3カ国の異なる国益が3者協議の決着を阻んでいる。 今回のRCEPの締結は、アジア太平洋自由貿易圏の枠組みの形成に大きな一歩を踏み出したと評価していいだろうが、もう一つ、強調しなければならないポイントがある。日本、中国、韓国にとっては東アジアで初の自由貿易協定(FTA)となるため、3カ国間をまたいで事業展開する企業にとってのインパクトはもちろん大きいとみられるが、日中韓自由貿易圏の成立にも重要な推進力になるだろう。特に日中韓自由貿易圏が成立すれば、山東省や遼寧省などが最大の受益者となり、経済成長が困難に陥っている東北地域には大きな励ましになる。東北地域と山東省が寄せる関心は並々ならぬものがある。 米国と日本は最近、しきりに「インド太平洋時代」をアピールしている。中国は表向きには、それに対して反対または批判の声を上げていないが、内心は穏やかでない。しかし、今回のRCEPに対して、インドは自ら参加を断った。中国国内からは「正直に言うと、むしろほっとした。これで中国がリーダーシップをより取りやすいアジア太平洋時代を迎えられる」という声が聞こえてきている。 ニューズウィーク誌は、次のように報道している。「アジア太平洋圏でのアメリカの立場は、TPPがアメリカ抜きで批准された時点で既に打撃を受けている。(中略)トランプ政権はアメリカと中国の経済を切り離し、製造業の多国籍企業を中国から撤退させようとしている。だがRCEPはアジア域内の経済統合を促進し、アジアを経済的にも戦略的にも今まで以上にアメリカから隔絶するものになりそうだ」(「アジア版自由貿易協定『RCEP』の長所と短所」より) RCEPを見る米国の複雑な心境を語ったこの記事の指摘のように、米国とのバランスをどう取るべきかというのは、RCEPの参加国、特に中国と日本にとっては大きな課題だ』、「日中韓自由貿易圏構想」については、「日中韓FTA交渉は、RCEPを上回る付加価値をどれだけ付与できるかが焦点」(外務省)のようだ。バイデン次期大統領がどう出てくるか、注目したい。

次に、11月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」、日本はどう振る舞うべきか」を紹介しよう。
・『わが国を含め15カ国がRCEP協定に署名  11月15日、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、およびアセアン10カ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)の計15カ国が「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定」に署名した。 インドは国内事情から参加しなかったものの、世界のGDPの約30%を占める大貿易圏構想が形になったことの意義は大きい。特に、わが国にとって最大の輸出先である中国、第3位の韓国を含む大型の自由貿易協定(FTA)が合意に至ったことは重要だ。 今回のRCEP形成の陰には中国の思惑が強く影響している。国際社会において孤立が目立つ中国は、RCEPを一つのきっかけにアジア地域での存在感を高め、米国に対抗する力をつけたいと考えているはずだ。中国にとってRCEPは自国経済の成長を目指し、共産党政権の体制を強化する有力な手段だ。 また、経済面で中国を重視してきた文在寅(ムン・ジェイン)大統領にとって、中国が関税撤廃を重視することは都合がよい。韓国はTPPには参加せず、中国が重視するRCEPには参加する。RCEP署名によって文政権は、米中に対してうまく振る舞い、より有利なポジション取りを華南が得ているのだろう。韓国にはRCEPを通してわが国に接近する意図もあるだろう。 今後、わが国に求められることは、RCEPを足掛かりにして世界経済の成長の源泉として重要性高まるアジア新興国との関係を強化することだ。それは、わが国が、RCEP参加を見送ったEUや米国、インドとの経済連携を強化するために欠かせない。中長期的に考えた場合、わが国が自力で親日国を増やし経済連携の強化を目指すことが国益に合致する』、その通りだ。
・『RCEPの全体像と署名成立の重要性  わが国をはじめ中韓など15カ国が参加するRCEPの意義は、アジア地域に世界最大規模の自由貿易経済圏が誕生することだ。まず、その全体像を把握しよう。RCEPはGDPだけでなく、貿易総額や人口の約3割、わが国の貿易総額のうち約5割を占める地域をカバーする。その規模は世界のGDPの約13%をカバーする「TPP11」を上回る。わが国の工業製品の輸出に関して、14カ国で約92%の品目の関税が段階的に撤廃される。 米国とEUはRCEP参加を見送った。その一方、わが国は米国とはFTAを、EUとはEPA(経済連携協定)を結んでいる。RCEP署名によって、わが国には世界の自由貿易を促進する“ハブ”としての機能を発揮することへの期待が高まったといってよい。英国の経済学者であったリカードは比較優位の理論を提唱して自由貿易の促進が経済成長に資すると説いた。その理論に基づいて世界経済は成長してきた。わが国はより多くの国・地域を巻き込んだFTAおよびEPAを目指すべきだ。 足元の世界経済の環境を踏まえると、米中対立が激化し、米国の大統領選挙が終了したタイミングでRCEP署名が行われたインパクトは大きい。 そう考える要因の一つとして、米国のトランプ政権の政策がある。2017年1月20日にドナルド・トランプ氏が米国の大統領に就任した後、米国は対中制裁関税などを発動し、世界のサプライチェーンは混乱し、貿易量は減少した。また、トランプ大統領は点数稼ぎ(トランプ・ファーストの政策)のために中東政策を重視し、アジア地域を軽視したといえる。 2020年11月の米大統領選挙で国際協調を重視する民主党のジョー・バイデン氏が当選を確実とした直後のタイミングでのRCEP署名は、今後の米国の通商政策に無視できない影響を与えるだろう。バイデン氏はインド太平洋地域の安定を重視し、アジア政策を強化するとみられる。そして制裁関税とは異なる方策(人権問題や知的財産と技術の保護強化)などによって、対中強硬姿勢を強めるだろう。安全保障や経済運営面で、米国にとってアジア地域の重要性は高まる。バイデン氏がTPP復帰に言及していない中、RCEPが米国の外交・通商政策とどのような化学反応を起こすかが注目される』、同感である。
・『RCEPに込められた中国と韓国の思惑  また、わが国とFTAを締結してこなかった中国と韓国がRCEPに参加することも重要だ。これまで、中国は貿易の自由化に積極的ではなかった。本来であれば中国は、関税引き下げが伴う自由貿易よりも、補助金政策などの強化によって自国産業を保護し、その競争力の向上を優先しなければならない。 しかし、足元の中国は、米中対立に加えて、インド、台湾、オーストラリア、EUなどとの関係の冷え込みに直面し、国際社会から孤立している。中国は関税引き下げを受け入れることでRCEP参加国にある意味で譲歩し、孤立を食い止め、アジア地域での存在感を高めたい。中国のRCEP参加は、共産党指導部の焦りの裏返しといえる。 中国のメガFTA参加は、国際通商体制が大きな転換点を迎えたことを意味する。RCEPによって、わが国の工業製品の対中輸出にかかる関税の86%が撤廃される見込みだ。アジア地域における中国経済の重要性は一段と高まるだろう。 それと引き換えに、中国は様々な要求を参加国に突き付け、アジア地域での足場を固めようとするはずだ。長めの目線で考えると、RCEP加盟国の一部において中国の“デジタル人民元”を用いた資金の決済が行われるなどし、米ドルの信認に支えられた国際通貨体制に揺らぎが生じる展開は排除できない。国家資本主義体制を強化して一党支配体制をつづけるために、共産党政権がRCEPをどう活用するかは重要な論点だ。対中輸出の増加は重要な一方で、RCEP参加国における中国の影響力拡大のリスクをどう防ぐか、わが国は方策を各国と練らなければならない。 経済面で中国との関係を重視してきた、韓国の文在寅大統領にとってRCEPの意義は大きい。それによって文大統領は、中小企業などに対中輸出増加の活路を提供したいだろう。また、韓国はわが国との貿易に関しては産業への打撃を警戒し、自動車や機械の関税撤廃は見送った。その一方で、韓国にはRCEPによってわが国の高純度素材などを輸入しやすくなるとの目論見もあるだろう。そう考えると、RCEPは韓国が経済面での中国への依存を一段と高めるとともに、わが国に近づく重要な契機になる可能性がある。わが国は韓国に対して引き続き毅然とした態度で臨めばよい』、「RCEP参加国における中国の影響力拡大のリスクをどう防ぐか、わが国は方策を各国と練らなければならない」、その通りだ。
・『自由貿易推進に向けたわが国の役割期待  ワクチンの国際供給体制の確立を含めコロナショックから世界経済が立ち直るために、FTAやEPA推進の重要性は高まっている。それによって各国は自国の得意な分野を伸ばし、雇用の創出などを目指すことができる。 わが国はTPP11、日米貿易協定、日・EU、日印のEPA、さらにはRCEPなどを通して、直接的、間接的に各国と国際貿易体制の強化に取り組んでいる。自由貿易の推進によって経済の安定と成長を目指すという点において、国際社会の中でわが国の立場は相対的に良いといえる。RCEPが署名された今、自由貿易推進の旗手としてのわが国の役割、期待は高まっていると考えるべきだ。 今後、わが国に求められるのは、中国の進出に直面するアジア新興国との連携強化だ。公衆衛生や環境、安全な上水道の整備といったインフラ整備支援などをわが国は迅速に実行し、アジア新興国の信頼を獲得しなければならない。そのためには、着実な実行力が欠かせない。インドとの関係強化も重要だ。経済成長の限界を迎え労働コストが上昇する中国からインドなどに生産拠点を移す各国企業は増えている。 このように、世界経済のダイナミズムの源泉として、アジア新興国地域の重要性は一段と高まっている。わが国がアジア新興国との関係を強化することは、わが国と欧州各国との関係強化に不可欠だ。それができれば、わが国が米国のバイデン次期政権にTPP復帰を促すことも可能だろう。 つまり、わが国は自力で国際世論を味方につけ、自由資本主義の考えに則った、より高次元の(競争やデータ管理などのルールの統一化を伴った)経済連携を目指し、それに米国を巻き込むべきだ。突き詰めて考えれば、それが、わが国が自力で自国経済の安定を目指し、国家資本主義体制の強化のために海外進出を目指す中国への包囲網を形成することにつながる。 わが国政府は国内企業の強み(精密な製造技術や高品位の素材開発力)の向上をより積極的にサポートし、アジア新興国や米中から必要とされる存在を目指すべきだ。政府がRCEP署名成立をアジア新興国向けの経済外交の推進に生かすことを期待したい』、「わが国は自力で国際世論を味方につけ、自由資本主義の考えに則った、より高次元の(競争やデータ管理などのルールの統一化を伴った)経済連携を目指し、それに米国を巻き込むべきだ」、同感である。

第三に、11月30日付けNewsweek日本版が掲載した韓国経済研究所学術研究部長のカイル・フェリア氏による「RCEPが日韓の関係改善を後押し、日韓貿易の83%で関税撤廃へ」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/11/post-95098_1.php
・<東アジア地域包括的経済連携への加盟で特に大きな恩恵を受けるのは、歴史問題が経済交渉に影を落とす日韓両国だ> 東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉が成功したことは、日本と韓国にとって大きな前進となった。日韓関係が歴史問題で膠着している最中に、両国が初めて同じ自由貿易協定(FTA)に参加することは、少なくともこれ以上の関係悪化を防ぐ手助けになるかもしれない。 この数十年、日本と韓国は歴史問題をめぐり見解の衝突を繰り返してきた。それでもいわゆる徴用工問題がこじれるまでは、政治的緊張が高まっても経済活動や消費者の行動に大きな影響はなかったと、メーン大学のクリスティン・ベカシとデラウェア大学のジウォン・ナムは指摘する。 しかし、近年の政治的緊張は、2003年末に始まった日韓FTAの交渉が膠着状態に陥っている理由の1つであり、2015年に日韓通貨スワップ協定が終了し、再開に向けた協議も打ち切られた直接の原因でもある。 RCEPが多国間の枠組みであることは、日韓双方にとって、同じ貿易協定に参加する上で重要な要素になったと思われる。この経済統合がさらに拡大する可能性は、日韓双方が政治的緊張に懲罰的な貿易措置で対応することをためらわせるきっかけになるだろう。 世界のGDPの約30%を占めるRCEP加盟15カ国の中でも、日本と韓国は特に恩恵を受けるとみられる。その大きな理由は、互いの経済へのアクセス拡大だ。 経済学者のピーター・ペトリとマイケル・プラマーの予測によると、RCEPの影響として、日本と韓国の実質所得は2030年までに1%増加する。これは他の全ての加盟国より大きな数字だ。さらに、日韓貿易の83%で関税が撤廃されることになる。 2017年1月にアメリカがTPP(環太平洋経済連携協定)から離脱した後、日本はより野心的な貿易や投資のルールを盛り込もうと取り組んだ。さらには包括的かつ先進的TPP協定(CPTPP、いわゆるTPP11)を実質的に先導してきた。韓国はCPTPPに加盟していないが、日本がアメリカ抜きでも協定を推進してきた理由と同じ視点から、加盟に関心を示している。より安定した日韓関係は、日中韓FTAの今後の可能性と同様に、CPTPPへの加盟についても韓国を後押しするはずだ』、「RCEPの影響として、日本と韓国の実質所得は2030年までに1%増加する。これは他の全ての加盟国より大きな数字だ。さらに、日韓貿易の83%で関税が撤廃されることになる」、「2030年までに1%増加」とは意外に少ないようだ。
・『中国との交渉で協調も  中国はRCEPの締結が、近年停滞している日中韓FTAの交渉を結実させる機運になると期待している。ただし、日本と韓国は、それぞれ中国との交渉で同じ懸念を抱いている可能性が高い。 韓国は既に中国と貿易協定を結んでいるが、貿易の自由化に対する中国の遅々とした漸進的なアプローチのせいで、その範囲はかなり限定的だ。同じ問題が日中の貿易交渉の進展も阻んでいる。 知的財産権の保護や、中国の巨大国有企業の輸出を規制するルールなど、中国経済へのアクセスを可能な限り確保することは日韓共通の利益になる。これらの問題について両国が緊密に協力できれば、より大きな成果につながるだろう。 もっとも、貿易における日韓のさらなる協力が、歴史問題に対処するための効果的な手段になるわけではない。それでも双方の指導者にとって、貿易の相互依存を交渉の武器にしないことを含め、関係悪化の悪循環を回避しようというインセンティブになるかもしれない。 大した前進には思えないかもしれない。しかし、日韓関係の緊張が続く今、ほんの少しでも役に立つのではないだろうか』、「知的財産権の保護や、中国の巨大国有企業の輸出を規制するルールなど、中国経済へのアクセスを可能な限り確保することは日韓共通の利益になる。これらの問題について両国が緊密に協力できれば、より大きな成果につながるだろう」、「もっとも、貿易における日韓のさらなる協力が、歴史問題に対処するための効果的な手段になるわけではない。それでも双方の指導者にとって、貿易の相互依存を交渉の武器にしないことを含め、関係悪化の悪循環を回避しようというインセンティブになるかもしれない」、現実的な見方だ。
タグ:ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 RCEP Newsweek日本版 莫 邦富 (東アジア地域包括的経済連携) (その1)(RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破 米国に対抗する「次の一手」とは、中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」 日本はどう振る舞うべきか、RCEPが日韓の関係改善を後押し 日韓貿易の83%で関税撤廃へ) 「RCEP誕生で中国はTPP包囲網を突破、米国に対抗する「次の一手」とは」 世界最大規模の自由貿易経済圏の誕生、中国はどう見たか 中国にとってWTOに加盟した出来事に相当する大きな事件だ 脅威だったTPP包囲網を突破できた中国 「トランプ」は何でも「オバマ」の成果を否定することを優先するの余り、「中国」を結果的に利したとはお粗末だ 中国が次に目指すのは「日中韓自由貿易圏」 米国とのバランスをどう取るか 日中韓自由貿易圏構想 日中韓FTA交渉は、RCEPを上回る付加価値をどれだけ付与できるかが焦点」(外務省) バイデン次期大統領がどう出てくるか、注目したい 「中国と韓国がRCEPに込めた「真の狙い」、日本はどう振る舞うべきか」 わが国を含め15カ国がRCEP協定に署名 中長期的に考えた場合、わが国が自力で親日国を増やし経済連携の強化を目指すことが国益に合致する RCEPの全体像と署名成立の重要性 バイデン氏がTPP復帰に言及していない中、RCEPが米国の外交・通商政策とどのような化学反応を起こすかが注目される RCEPに込められた中国と韓国の思惑 RCEP参加国における中国の影響力拡大のリスクをどう防ぐか、わが国は方策を各国と練らなければならない 自由貿易推進に向けたわが国の役割期待 わが国は自力で国際世論を味方につけ、自由資本主義の考えに則った、より高次元の(競争やデータ管理などのルールの統一化を伴った)経済連携を目指し、それに米国を巻き込むべきだ カイル・フェリア 「RCEPが日韓の関係改善を後押し、日韓貿易の83%で関税撤廃へ」 東アジア地域包括的経済連携への加盟で特に大きな恩恵を受けるのは、歴史問題が経済交渉に影を落とす日韓両国だ RCEPの影響として、日本と韓国の実質所得は2030年までに1%増加する。これは他の全ての加盟国より大きな数字だ。さらに、日韓貿易の83%で関税が撤廃されることになる 「2030年までに1%増加」とは意外に少ないようだ 中国との交渉で協調も もっとも、貿易における日韓のさらなる協力が、歴史問題に対処するための効果的な手段になるわけではない。それでも双方の指導者にとって、貿易の相互依存を交渉の武器にしないことを含め、関係悪化の悪循環を回避しようというインセンティブになるかもしれない
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感