SSブログ
前の10件 | -

情報セキュリティー・サイバー犯罪(その11)(世界中で発生、Windows「画面が真っ青」の原因 850万台に及ぶシステム障害はなぜ起きたのか、サイバー攻撃を受けて「身代金を払ってしまった企業」は一体どうなるのか?、「デンソーの最高機密」はこうして中国人の手に渡った…パソコン破壊の痛恨事態はなぜ起きた?) [社会]

情報セキュリティー・サイバー犯罪については、本年6月21日に取上げた。今日は、(その11)(世界中で発生、Windows「画面が真っ青」の原因 850万台に及ぶシステム障害はなぜ起きたのか、サイバー攻撃を受けて「身代金を払ってしまった企業」は一体どうなるのか?、「デンソーの最高機密」はこうして中国人の手に渡った…パソコン破壊の痛恨事態はなぜ起きた?)である。

先ずは、本年7月22日付け東洋経済オンラインが掲載したウェブライターのタニグチ ムネノリ氏による「世界中で発生、Windows「画面が真っ青」の原因 850万台に及ぶシステム障害はなぜ起きたのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/782101
・『飛行機のフライトが中断され、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンも窓口でのチケットの販売を一時中止するなど広範囲に影響が及んでいる世界規模のコンピューター障害。なぜこのような大問題が発生したのだろうか。 7月19日、世界中の、主に業務システムに使われているWindowsコンピューターで画面が真っ青になるエラーが発生し、世の中を大混乱に陥れた。この問題は、コンピューターの歴史において過去最大と言われるまでに影響範囲が拡大している』、興味深そうだ。
・『ブルースクリーン表示の意味  世界中のコンピューターで最も多く使用されている基本ソフトウェア(オペレーティングシステム。OSと略される)であるWindowsは、OSとしての機能続行ができないほどの障害が発生したときに、青い背景に白字でエラーに関する情報を表示するBSoDとよばれる画面を表示して、機能を停止するようになっている。 BSoDは「Blue Screen of Death」の頭文字を取った略称で、直訳すると「死の青画面」となる。日本では単に「ブルースクリーン」と呼ばれることが多いこの画面の本来の役割は、開発者に対し、発生した不具合に関する情報を表示することだ。) 今回、世界中で発生したBSoDの問題は非常に広範囲に及んでおり、空港を含む各種交通機関や医療機関、金融機関、スターバックスなどの飲食店、さらに、日本国内ではテーマパークのユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどもその影響を受けた。BSoDが発生した企業や組織は一時的にサービス提供や各種業務を中断せざるをえない状況になり、記事執筆時点(7月21日)においても、まだ問題から回復できていないシステムやサービスもあるようだ』、「BSoDは「Blue Screen of Death」の頭文字を取った略称で、直訳すると「死の青画面」となる。日本では単に「ブルースクリーン」と呼ばれることが多いこの画面の本来の役割は、開発者に対し、発生した不具合に関する情報を表示することだ・・・BSoDの問題は非常に広範囲に及んでおり、空港を含む各種交通機関や医療機関、金融機関、スターバックスなどの飲食店、さらに、日本国内ではテーマパークのユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどもその影響を受けた。BSoDが発生した企業や組織は一時的にサービス提供や各種業務を中断せざるをえない状況になり、記事執筆時点(7月21日)においても、まだ問題から回復できていないシステムやサービスもあるようだ」、大変だ。
・『コンピューターウイルスではない  コンピューターに障害が起きる原因は多々あるが、そのひとつには、コンピューターウイルスなど不正プログラムの侵入が挙げられる。最近では、悪意ある者がコンピューターの脆弱性を突いて企業や各種機関に不正プログラムを侵入させ、その組織内のコンピューターを一斉に暗号化、ロックがかかった状態にしてしてしまい、困り果てたターゲット企業に解除キーを購入させようとする、ランサムウェア(身代金要求ソフトウェア)の被害が拡大している。 しかし、7月19日に世界中で一斉に業務システムにBSoDを引き起こしたのはランサムウェアではなく、問題を引き起こすコンピューターウイルスなどの侵入を防止するために導入されている、企業向けのセキュリティソフトウェアで発生した不具合が原因であることがわかっている。 問題となったのはクラウドストライク(CrowdStrike)社のセキュリティ対策ソフトウェア『Falcon プラットフォーム』のWindows版だ。このソフトは「Falcon Sensor」と称するプログラムを用いて、組織内のネットワークに接続されているコンピューター端末の状態を収集・監視し、ウイルスやサイバー攻撃とみられる不審な挙動を検知したときに、管理下にあるコンピューターを保護する機能を提供する。 コンピューターウイルスは、日々新しいものが作り出されており、人々に知られていない未知の脆弱性を突いてシステムに侵入を試みることが多い。そのため、セキュリティ対策ソフトウェアも定期的にウイルスなどの情報を更新して提供することで、つねに最善の対策環境を維持する。ところが、7月19日の朝(日本時間)にクラウドストライクが配信したアップデートファイルには「Falcon Sensor」に関する重大な欠陥が含まれており、これを適用したシステムが実行不可能になる不具合を引き起こした結果、人々が呆然とBSoDを眺める状況を作り出した。) インターネット上の各種サービスの稼働状況を伝えるウェブサイトDowndetector.comでは、日本時間19日午前8時40分前後から、Microsoft Storeや業務向けのMicrosoft 365サービスについての問題が報告され始めた。また、その約1時間後にはマイクロソフトもこの問題を認識していることをX (旧Twitter)で報告した。 また、マイクロソフトのステータスページでは、業務用クラウドサービスであるMicrosoft Azureが影響を受けているとし「クラウドストライク Falconエージェントを実行しているWindowsクライアントおよびWindows Serverを実行中の仮想マシンに影響する問題が確認されており、バグチェック画面(BSoD)が発生し、再起動中の状態でシステムが停止してしまう可能性がある」と記載されていた』、「7月19日の朝(日本時間)にクラウドストライクが配信したアップデートファイルには「Falcon Sensor」に関する重大な欠陥が含まれており、これを適用したシステムが実行不可能になる不具合を引き起こした結果、人々が呆然とBSoDを眺める状況を作り出した・・・セキュリティ対策ソフトウェアでの」不具合とは皮肉なものだ。
・『クラウドストライクの説明は?  クラウドストライクのジョージ・カーツCEOは、日本時間7月19日午後6時45分に、この問題に関して「これはセキュリティに関する問題やサイバー攻撃ではない。すでに問題は特定・分離され、修正プログラムを配布している」とXを通じて発表した。 また、同社のブログにもより詳しい情報を提供しつつ、ユーザー企業に対し「悪意のある人たちがこのような事象を悪用しようとする」可能性があるため警戒を怠らず、クラウドストライクの「正規の担当者」と連絡を取り合うよう呼びかけた。 これは、問題がクラウドストライクのソフトウェアによるものだとの報道が報じられるなかで、顧客企業に対してクラウドストライクのスタッフになりすました人物から電話がかかってきたり、セキュリティの専門家を自称する人物が、サイバー攻撃に狙われている証拠があると主張してコンタクトを取ってくる事例が報告されるようになってきたからだ。 中には、今回発生した問題を自動的に修復するスクリプト(プログラムコードの一種)を有償で提供すると持ちかけるものさえあるとのことだ。もちろん、そんな出所不明のスクリプトを適用して、その結果コンピューターウイルスやランサムウェアを仕込まれたりすれば、目も当てられない惨事になりかねないので、うかつに信用してはいけない。) 一方、Windowsを提供するマイクロソフトのサティア・ナデラCEOも、日本時間7月20日午前1時ごろに「我々はこの問題を認識しており、クラウドストライクおよび業界全体と緊密に協力し、顧客のシステムを安全にオンラインに戻すための技術的なガイダンスとサポートを提供している」と述べた』、「クラウドストライクのジョージ・カーツCEOは、日本時間7月19日午後6時45分に、この問題に関して「これはセキュリティに関する問題やサイバー攻撃ではない。すでに問題は特定・分離され、修正プログラムを配布している」とXを通じて発表した。 また、同社のブログにもより詳しい情報を提供しつつ、ユーザー企業に対し「悪意のある人たちがこのような事象を悪用しようとする」可能性があるため警戒を怠らず、クラウドストライクの「正規の担当者」と連絡を取り合うよう呼びかけた」、賢明な措置だ。
・『シェアの高さが仇に  クラウドストライクFalcon SensorにはMac版やLinux版もあるが、今回の問題はWindows版に提供されたアップデートファイルに問題が含まれていたことで発生した。本来なら、コンピューターウイルスなどの悪意あるソフトウェアがシステムに侵入することで引き起こす不具合を、その対策ソフトウェアが引き起こしてしまったというのは皮肉な話だ。 これほどまでに広範囲に影響が及んだのは、クラウドストライクがこの分野で最も人気の高いソフトウェアだったからでもある。IT専門の調査会社IDCが2023年2月に発表したレポートによれば、コンピューターシステム端末用セキュリティ対策ソフトウェアの市場シェアは、クラウドストライクが17.7%を占めている。これは、マイクロソフトが自社で提供するソリューションの16.4%を抑える、首位の成績だ。 すでに問題を修正しシステムを再び正常に戻す方法は公開されており、今後この問題は終息に向かうはずだ。また、クラウドストライクは問題に遭遇した顧客に対し、システムを修復するための対策ガイダンスなどを提供する情報ハブとなるページを新たに作成、同社ウェブサイト上に公開した。 マイクロソフトは、約850万台のWindowsコンピューターがクラウドストライクの障害により影響を受けたと発表した。この数字は全世界で稼働するWindowsコンピューターの約1%未満だとされている。マイクロソフトのエンタープライズおよびOSセキュリティ担当副社長デビッド・ウェストン氏は「(影響を受けたデバイスの)割合こそ小さいものの、多くの重要なサービスを運営する企業がクラウドストライクを使用していることが、広範囲にわたる経済的、社会的影響を反映した」と述べた。) では、企業や組織の情報システム管理者の立場から、このようなシステム障害が再び起こるのを避けるにはどうすればいいだろうか。 考えられる方法としては、定期的なソフトウェアのアップデートを段階的に適用することが挙げられる。この方法はまず最初に、一部の影響の少ない端末にのみアップデートを導入し、たとえば24時間なり、ある程度様子を見る時間を経てから、他の端末にもアップデート作業を展開するやり方だ。 この方法が適用可能か、また妥当か否かは個々のシステムで事情が異なるはずなので前もって検討が必要だが、これならアップデートに欠陥があったとしても被害は最小限に抑えられるだろう。もちろん、セキュリティ対策ソフトウェアのメーカーが緊急性を訴えている場合などに速やかな対応が可能な体制も必要となる』、「このようなシステム障害が再び起こるのを避けるにはどうすればいいだろうか。 考えられる方法としては、定期的なソフトウェアのアップデートを段階的に適用することが挙げられる。この方法はまず最初に、一部の影響の少ない端末にのみアップデートを導入し、たとえば24時間なり、ある程度様子を見る時間を経てから、他の端末にもアップデート作業を展開するやり方だ」、賢明だ。
・『6月のイベントで語っていたこと  クラウドストライクのプライバシーおよびサイバー ポリシー担当副社長兼顧問のドリュー・バグリー氏は、6月に開催されたサイバーセキュリティに関するワシントン・ポスト主催のイベントで「デジタルリスク」に対し回復力のあるITシステムを構築する必要性を語っていた。 同氏はこのイベントにおける講演で「我々は安全な方法でコードを開発し、その成果物を検証しなければならない」とし、「デジタルエコシステムにおけるリスクを増やすのではなく減らすような、回復力のある方法でソフトウェアを展開することが、非常に重要だ」と述べていた。いま、その言葉をしみじみとかみしめているのは、クラウドストライクの人々かもしれない』、「「デジタルエコシステムにおけるリスクを増やすのではなく減らすような、回復力のある方法でソフトウェアを展開することが、非常に重要だ」、確かにその通りだが、「クラウドストライク」こそが最もかみしめるべきだろう。

次に、7月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したやさしいビジネススクール学長の中川功一氏による「サイバー攻撃を受けて「身代金を払ってしまった企業」は一体どうなるのか?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/347710
・『KADOKAWAが大規模なサイバー攻撃を受けた。システム障害や情報漏えいなど被害は広範囲にわたるが、まだ全容は分かっていない。今回のニュースによって、サイバー攻撃の恐ろしさを実感した人も多いのではないだろうか。われわれがこの事例を踏まえて学ぶべきこととは何か、考えてみたい』、興味深そうだ。
・『KADOKAWAハッカー攻撃から1カ月 いまだ完全復旧には至らず  出版やアニメ、教育など多様な事業を手掛ける大手エンターテインメント企業、KADOKAWAが受けた大規模なハッカー攻撃の被害が、日がたつにつれて明らかになってきた。 子会社ドワンゴが手掛ける「ニコニコ動画」がサービス停止となったり、出版流通システムにも影響が出たりするなど、幅広い領域で打撃を受けた。加えて、KADOKAWAの発表によれば、従業員や一部の取引先などの個人情報が流出した可能性が高い。 ただ、ハッカーによる攻撃から1カ月以上が過ぎた今も、完全復旧には至っておらず、全容解明には至っていない。 このニュースは、決して人ごとではない。 サイバーセキュリティー大手の米プルーフポイントが発表したレポート「State of the Phish 2024」によると、2023年の1年間でランサムウエア(KADOKAWAが感染したものと同種の、データを人質にするウイルスソフト)の感染を経験した日本の組織は、実に38%にも上る。これでも日本は諸外国よりはるかに状況は良い方で、世界平均では69%となっている。 では、もし攻撃の対象者となってしまったら、われわれはどのように対応すればいいのだろうか』、「ハッカーによる攻撃から1カ月以上が過ぎた今も、完全復旧には至っておらず、全容解明には至っていない」、「1カ月以上が過ぎた今も」こうした状態とは深刻だ。
・『情報セキュリティーは「企業価値」の重要構成要素だ  KADOKAWAが受けたサイバー攻撃は、ランサムウエアという手口のものだ。データを暗号化して見えないようにしたり、動作不能にしたりした後、状態を回復するために身代金を要求する。 良くも悪くもそれに備えるための損害保険までが用意されているため、企業側も容易に身代金を払ってしまう。かくして、反社会勢力にとっては比較的容易かつ安全に資金獲得ができる手段として、ランサムウエアは世界的に流行している。 KADOKAWAの事例から第一に学ぶべきことは、今日、企業価値というものは、高い競争力の事業だけでなく、それを取り巻く何重もの“防護膜”によってできあがっているということだ。つまり、事業そのものだけでなく、情報セキュリティーをはじめとする事業のサステナビリティーを高める取り組みの重要性が、過去に例を見ないほどに高まっているということである。すばらしい事業はそれだけでは成り立たない。それを維持していくことができる仕組みづくりが、重要な鍵を握る』、「情報セキュリティーをはじめとする事業のサステナビリティーを高める取り組みの重要性が、過去に例を見ないほどに高まっている」、なるほど。
・『身代金支払いに応じるべきか 最善の選択は?  そしてもう一つ学ぶべきなのは、犯罪集団から身代金を要求された際の基本的なベストチョイスは、「毅然として要求をはねつける」ということだ。 KADOKAWAへの攻撃について犯行声明を行ったハッカー集団は、同社と身代金交渉を行ったことをほのめかした。今回、実際支払いがあったか否かは明らかになっていないが、海外では支払いに応じるケースも少なくないという。 ただ、先述の通り、最善の選択は支払わないことだと筆者は考える。 1970年代までは世界中で頻発していた飛行機のハイジャックは、現代ではほとんど起こらなくなった。その理由は、1978年に採択された「航空機ハイジャックに関する声明(ボン声明)」である。航空機ハイジャックの要求には決して応じず、徹底的に鎮圧することが、世界の主要国間で決議された。その結果、ハイジャックはリターンの可能性が限りなく低く、リスクの大きな行為であるとして、避けられるようになった。 日本企業のランサムウエア被害が諸外国に比べて少ないのも、実はまったく同じ構造にある。日本企業はこれまで、諸外国と比較して、ランサムウエアによる身代金要求にあまり応じてこなかった。反社会勢力に資金提供することが、どのような事情においても法律に違反することになるほか、社会規範としても忌避されるためである(皆さんも「そもそもメールを開くな」と会社から指導されているはずだ)。 また、日本は災害多発国であることから、バックアップを取る文化があり、仮にデータが暗号化されても復旧することができるのが一般的となっていることも大きい。 日本企業が交渉のテーブルに着かないことは、世界の反社会ハッカー集団に広く知られていた。組織的な犯罪を抑止するには、犯罪行為のリターンを限りなく小さくすることが効果的だ。これは、社会学・政治学・経済学などで広く知られている事実だ』、「日本企業はこれまで、諸外国と比較して、ランサムウエアによる身代金要求にあまり応じてこなかった。反社会勢力に資金提供することが、どのような事情においても法律に違反することになるほか、社会規範としても忌避されるためである」、なるほど。
・『身代金の支払いに応じてもデータが復旧する可能性は低い  では、もし身代金を払うとどうなるのか。 前述のプルーフポイントの調査によれば、日本企業の場合、1回目の身代金支払いでデータやシステムが復旧した企業はわずか17%に過ぎない。それ以外の企業では、その後に追加要求が行われているという。 その理由は、ストレートに言って足元を見られるからだ。日本企業は、一般的には交渉のテーブルにつかない。そんな中で、交渉に乗ってくる企業がいたとすれば、犯罪集団側は「この会社は相当に困っているに違いない」と認識する。それゆえ、足元を見られてもっと要求されてしまう。 相手は反社会組織だ。要求に応えたとて、約束通りにデータが復旧する保証はどこにもない。皆さんは、「反社会勢力の要求に応じて、良い方向に転がることはない」ということを肝に銘じておいてもらいたい。 再三の指摘となるが、KADOKAWAの事例は人ごとではない。われわれはもう一度、自社の姿勢を振り返り、学びを得る必要がある。サイバーセキュリティーの重要性を再認識し、反社会勢力の脅しには屈しないこと。いずれも、事業のサステナビリティーを高めるという意味で、現代ビジネスに欠かせない重要論点と認識しておきたい』、「相手は反社会組織だ。要求に応えたとて、約束通りにデータが復旧する保証はどこにもない。皆さんは、「反社会勢力の要求に応じて、良い方向に転がることはない」ということを肝に銘じておいてもらいたい。 再三の指摘となるが、KADOKAWAの事例は人ごとではない。われわれはもう一度、自社の姿勢を振り返り、学びを得る必要がある。サイバーセキュリティーの重要性を再認識し、反社会勢力の脅しには屈しないこと。いずれも、事業のサステナビリティーを高めるという意味で、現代ビジネスに欠かせない重要論点と認識しておきたい」、その通りだ。

第三に、9月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した株式会社ラックのナショナルセキュリティ研究所のシニアコンサルタントの上田篤盛氏と、日本カウンターインテリジェンス協会代表理事・外交・安全保障アカデミーOASISフェローの稲村 悠氏による「「デンソーの最高機密」はこうして中国人の手に渡った…パソコン破壊の痛恨事態はなぜ起きた?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/349910
・『無形の「知識」の獲得が目的のため、摘発が困難とされる中国人スパイ。かつてのような工作員の外交官への偽装がなくなったことで、背後に潜んでいる大きな組織を見えにくくさせた不気味な「千粒の砂」戦略に追った。本稿は、上田篤盛・稲村 悠『カウンターインテリジェンス 防諜論』(育鵬社)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『中国の軍関係者が防衛省元技官に接近?  中国の諜報活動は、その国家的関与が強く疑われながらも明確に立証されない、むしろ明確に立証させない巧妙さが特徴だ。 2000年2月、防衛庁(現防衛省)の元技官が、潜水艦の船体に使われる特殊鋼材「高張力鋼」に関する資料を持ち出し、元技官の知人である埼玉県の食品輸入業者に渡していた。 この業者は、在日中国大使館の武官らと密接なつながりがあり、中国国家当局との緊密な関係性が窺えたとされる。また元技官は、この知人に誘われて現職中に中国への渡航を約30回も行っていたことが判明している。 この事件は警視庁公安部が2007年2月、窃盗容疑で元技官を書類送検したが、背景には深刻な事情があることが明らかになってきた。 元技官は資料を持ち出した後、現職時に業者とともに北京に渡航。業者が「あなたに来てもらわないと困る」と強く言って北京に誘った。元技官は渡航中に北京のホテルで素性の分からない中国人と面会している。 元技官は、「中国政府関係者だと思った」と供述。その中国人は、中国軍人民解放軍等軍事関係者だった可能性がある。(中略) 業者の自宅を捜索したところ、潜水艦に使うゴム材の資料が見つかり、別の元技官が「自分の研究内容を書き直して業者に渡した」と認めた。その業者も「中国に渡航して、資料の大半を軍関係者に渡した」と話していた。 業者の自宅には、防衛庁が進める装備近代化に関する資料も残されていた。資料には最近の研究テーマや目的、予算額などが書かれていた。2人以外にも、中国のスパイになった人物がいた可能性があるということだ。(北村滋『経済安全保障異形の大国、中国を直視せよ』中央公論新社、2022年)) この事件は、中国軍が元技官の保有する軍事技術に狙いをつけて、エージェントの食品業者を使い、元技官を中国に連れ出して親中感情を醸成し、日本当局が立件できない中国において情報の授受を行うという巧妙さが光っている』、「元技官は、この知人に誘われて現職中に中国への渡航を約30回も行っていたことが判明」、こんなに親中国の人物が機密に関わる業務をしていたこと自体が、驚きだ。
・『最新技術を狙う中国人エンジニア  2007年3月には、大手自動車部品メーカー「デンソー」の中国人技術者の楊魯川(当時41歳)が、自動車関連製品の図面を大量にダウンロードし、無断で持ち出すという事件があった。 報道によれば、持ち出されたデータは、産業用ロボットや各種センサー、ディーゼル燃料の噴射装置などのデータで、このうち約280種類はデンソーの最高機密とされる最先端技術に関するものも含まれていたが、この中国人技術者が同社のデータを入手している時期に、中国に複数回帰国していた。 楊は1986年に中国の大学を卒業後、ミサイル等を開発・製造する中国国営の中国航天工業総公司(当時)に就職。その後、1990年に来日し、都内の工業系大学への留学を経て、2001年にデンソーに入社した。 また、楊は会社に無断で、日本の自動車業界企業に所属する中国籍のエンジニアや留学生らが作った団体「在日華人汽車工程師協会」の副会長も務め、中国地方政府等の訪日団のアテンドを務めたり、同会総会を駐日中国大使館で開催したりしていた。 この事件の教訓は、初動対応の甘さが主因となり、楊の逮捕が見送られた点にある。報道によれば、デンソーの調査担当社員が楊の自宅に同行し、会社のパソコンの返却と私有パソコンの提出を求めたが、担当社員は外で待たされ、約1時間後に部屋に入ると、私有パソコンが破壊されていたという。 その後、会社側は愛知県警に相談したが、証拠が不十分だったため、名古屋地検は楊を処分保留で釈放した。証拠が隠滅されたことで、事実関係が解明されず、立件が不可能と判断されたのである。 日本国内では、民間企業や大学、独立行政法人で働く中国人が増加している。日本の大学には多くの中国人留学生が学んでおり、彼らが卒業後に日本の民間企業などに直接入社すれば、警戒感が薄れることになるかもしれない。 しかし、中国情報機関の統制下で情報活動に加担している者も存在する可能性があることには要注意である』、「中国情報機関の統制下で情報活動に加担している者も存在する可能性があることには要注意である」、その通りだ。「私有パソコンの提出を求めたが、担当社員は外で待たされ、約1時間後に部屋に入ると、私有パソコンが破壊されていたという」、明確な書庫隠滅で起訴できなかったのだろうか。
・『工作員が不要の「千粒の砂」作戦とは  中国による諜報事件は、ロシアや北朝鮮による諜報事件と比較して検挙件数が少ないのが実態である。その理由としては、中国の諜報活動は日中交流関係や経済活動を隠れ蓑にして行われており、それら一般的な活動と諜報活動が混然一体となっているからだ。 2022年7月に、米連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ長官と英国防諜機関MI5のケン・マッカラム長官がロンドンで史上初めての合同記者会見を行い、「中国共産党は、かつてのように外交官を偽装する工作員を使わない。『千粒の砂』と呼ぶ戦略で、さまざまなチャネルを通じて情報を集める」と指摘している。 中国のスパイ活動は、従来、ロシアの手法とは異なる。ロシアは「1人のエージェントがバケツ一杯の砂を運ぶ」のに対し、中国は「1人の収集員が砂1粒を運び、人海戦術によって砂をバケツ一杯にする」とされてきた。 最近の西側の説明では、「ロシアは夜間に潜水艦から少数の人員で行動するのに対し、中国は多数の人員で明るい時間帯に活動する」と表現されている。 中国はリスクを回避しつつ、軍民官学を問わず、合法と非合法を問わず、さまざまな階層や企業パートナーを通じてあらゆる情報を収集している。 このスパイ活動は一見非効率的であり、同じターゲットに複数のスパイが接触することで混乱が生じる可能性もあるが、全体的には安全で効果的な手法だと見られている。 米国は、中国のスパイ活動に対して、FBIによる司法的逮捕・拘束といった冷戦時代のソ連スパイへの対処方法では通じないと考えている。なぜなら、中国においてはスパイ行為自体が曖昧であり、その法的認定や容疑者の特定が容易ではないからである。) 中国は機密情報を獲得するという考え方も異なる。ロシアが政治・軍事に関する文書や特定の軍事技術といった「現物」の獲得を重視するのに対し、中国スパイは政治的な影響力の行使や民間の経済・技術の情報収集など、幅広い目的を持つ。 中国は、対象が有する秘密に関連する「知識」の獲得を重視する。知識は無形であるので摘発が難しく、摘発されたとしても証拠が不十分であるため、立件は容易ではない。 一方で、現在ではサイバー空間上に多くの情報が存在するため、中国の「千粒の砂」戦略は本当に有効なのかという議論もあるようだ』、「中国は、対象が有する秘密に関連する「知識」の獲得を重視する。知識は無形であるので摘発が難しく、摘発されたとしても証拠が不十分であるため、立件は容易ではない」、中国側は日本企業の駐在員をスパイ容疑で逮捕するケースが増えている。日本も交換用にもう少し幅広くスパイ容疑で逮捕してもよいのではないか。
・『金銭面や精神面の支援などで対象者の政治家を依存させる  中国の諜報活動の手法について、元公安調査庁金沢事務所長の藤谷昌敏氏は、「中国情報機関によるアセット(協力者)獲得の特徴は、例えば、展示会等における商用を機会とした接触、趣味や飲食の場で偶然を装う接触などを端緒として、その後、ターゲットと1対1で面談し、相手の性格、嗜好、弱点や不満等を聞き出す。 そして最初は製品のパンフレットの入手程度の軽い仕事を頼んで反応を見、次第に要求する情報のレベルを上げていく。相手が給与や人事の不満を抱えていることが分かれば、金銭の授受や有利な条件での転職を勧めてくる」(日本戦略研究フォーラムウェブサイト「経済安全保障を積極的に推進する日本政府、公安調査庁との連携に期待」)としている。) この手法はロシアのリクルート手法と大差はない。中国も、基本的には金銭的に依存させるほか、イデオロギーの部分で共鳴する者を取り込む。「脅迫」することもあろうが、それでは継続性が得られない可能性も残るほか、特に組織を裏切るというリスクが大きくなる。 中国の政治工作の例では、政治工作部門が、対象者である政治家の金銭的不安定を「弱み」とし、そこに付け込んで脅迫するのではなく、金銭的・政治的・精神的支援をすることで依存させ長期運営を果たしているケースもある。 「デンソーの最高機密」はこうして中国人の手に渡った…パソコン破壊の痛恨事態はなぜ起きた? また、必ずしも工作活動によってイデオロギーを共鳴させるのではなく、既に同じ方向性のイデオロギーを持つ人物にアプローチし、イデオロギー上でいわば協力関係を結ぶほか、支援するといった手法もとられる。 一方で、ロシア機関員と大きく異なるのは、中国機関員は日本人と容貌が似ており、しかも、日本国内に多くの中国人コミュニティを持ち、広大な人的ネットワークを有していることだ。それを活用し、「千粒の砂」戦略により多様なチャネルから情報を収集する。 そのため、個々人の動機による活動と中国の諜報活動によるものが混在し、明確に中国国家による諜報活動だと指摘できない。むしろその状況こそが脅威となっている』、「個々人の動機による活動と中国の諜報活動によるものが混在し、明確に中国国家による諜報活動だと指摘できない。むしろその状況こそが脅威となっている」、同感である。
タグ:「「デジタルエコシステムにおけるリスクを増やすのではなく減らすような、回復力のある方法でソフトウェアを展開することが、非常に重要だ」、確かにその通りだが、「クラウドストライク」こそが最もかみしめるべきだろう。 「このようなシステム障害が再び起こるのを避けるにはどうすればいいだろうか。 考えられる方法としては、定期的なソフトウェアのアップデートを段階的に適用することが挙げられる。この方法はまず最初に、一部の影響の少ない端末にのみアップデートを導入し、たとえば24時間なり、ある程度様子を見る時間を経てから、他の端末にもアップデート作業を展開するやり方だ」、賢明だ。 「クラウドストライクのジョージ・カーツCEOは、日本時間7月19日午後6時45分に、この問題に関して「これはセキュリティに関する問題やサイバー攻撃ではない。すでに問題は特定・分離され、修正プログラムを配布している」とXを通じて発表した。 また、同社のブログにもより詳しい情報を提供しつつ、ユーザー企業に対し「悪意のある人たちがこのような事象を悪用しようとする」可能性があるため警戒を怠らず、クラウドストライクの「正規の担当者」と連絡を取り合うよう呼びかけた」、賢明な措置だ。 「7月19日の朝(日本時間)にクラウドストライクが配信したアップデートファイルには「Falcon Sensor」に関する重大な欠陥が含まれており、これを適用したシステムが実行不可能になる不具合を引き起こした結果、人々が呆然とBSoDを眺める状況を作り出した・・・セキュリティ対策ソフトウェアでの」不具合とは皮肉なものだ。 BSoDが発生した企業や組織は一時的にサービス提供や各種業務を中断せざるをえない状況になり、記事執筆時点(7月21日)においても、まだ問題から回復できていないシステムやサービスもあるようだ」、大変だ。 「BSoDは「Blue Screen of Death」の頭文字を取った略称で、直訳すると「死の青画面」となる。日本では単に「ブルースクリーン」と呼ばれることが多いこの画面の本来の役割は、開発者に対し、発生した不具合に関する情報を表示することだ・・・BSoDの問題は非常に広範囲に及んでおり、空港を含む各種交通機関や医療機関、金融機関、スターバックスなどの飲食店、さらに、日本国内ではテーマパークのユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどもその影響を受けた。 タニグチ ムネノリ氏による「世界中で発生、Windows「画面が真っ青」の原因 850万台に及ぶシステム障害はなぜ起きたのか」 東洋経済オンライン (その11)(世界中で発生、Windows「画面が真っ青」の原因 850万台に及ぶシステム障害はなぜ起きたのか、サイバー攻撃を受けて「身代金を払ってしまった企業」は一体どうなるのか?、「デンソーの最高機密」はこうして中国人の手に渡った…パソコン破壊の痛恨事態はなぜ起きた?) 情報セキュリティー・サイバー犯罪 ダイヤモンド・オンライン 中川功一氏による「サイバー攻撃を受けて「身代金を払ってしまった企業」は一体どうなるのか?」 「ハッカーによる攻撃から1カ月以上が過ぎた今も、完全復旧には至っておらず、全容解明には至っていない」、「1カ月以上が過ぎた今も」こうした状態とは深刻だ。 「情報セキュリティーをはじめとする事業のサステナビリティーを高める取り組みの重要性が、過去に例を見ないほどに高まっている」、なるほど。 「日本企業はこれまで、諸外国と比較して、ランサムウエアによる身代金要求にあまり応じてこなかった。反社会勢力に資金提供することが、どのような事情においても法律に違反することになるほか、社会規範としても忌避されるためである」、なるほど。 「相手は反社会組織だ。要求に応えたとて、約束通りにデータが復旧する保証はどこにもない。皆さんは、「反社会勢力の要求に応じて、良い方向に転がることはない」ということを肝に銘じておいてもらいたい。 再三の指摘となるが、KADOKAWAの事例は人ごとではない。われわれはもう一度、自社の姿勢を振り返り、学びを得る必要がある。 サイバーセキュリティーの重要性を再認識し、反社会勢力の脅しには屈しないこと。いずれも、事業のサステナビリティーを高めるという意味で、現代ビジネスに欠かせない重要論点と認識しておきたい」、その通りだ。 上田篤盛氏 稲村 悠氏 「「デンソーの最高機密」はこうして中国人の手に渡った…パソコン破壊の痛恨事態はなぜ起きた?」 上田篤盛・稲村 悠『カウンターインテリジェンス 防諜論』(育鵬社) 「元技官は、この知人に誘われて現職中に中国への渡航を約30回も行っていたことが判明」、こんなに親中国の人物が機密に関わる業務をしていたこと自体が、驚きだ。 「中国情報機関の統制下で情報活動に加担している者も存在する可能性があることには要注意である」、その通りだ。「私有パソコンの提出を求めたが、担当社員は外で待たされ、約1時間後に部屋に入ると、私有パソコンが破壊されていたという」、明確な書庫隠滅で起訴できなかったのだろうか。 「中国は、対象が有する秘密に関連する「知識」の獲得を重視する。知識は無形であるので摘発が難しく、摘発されたとしても証拠が不十分であるため、立件は容易ではない」、中国側は日本企業の駐在員をスパイ容疑で逮捕するケースが増えている。日本も交換用にもう少し幅広くスパイ容疑で逮捕してもよいのではないか。 「個々人の動機による活動と中国の諜報活動によるものが混在し、明確に中国国家による諜報活動だと指摘できない。むしろその状況こそが脅威となっている」、同感である。
nice!(0)  コメント(0) 

金融政策(その48)(「断捨離」をした日銀は7月末にどう動くのか 渡辺努・東大教授の「物価理論」を解説しよう、日銀は為替を金融政策の対象に入れるべきだ このままでは金融政策への信頼が失われる懸念、日経平均の大暴落は「超円安」依存経済への警鐘だ…!市場を大パニックに陥れた「予想外の原因」、日本株を襲うもうひとつの「不都合な真実」…日銀利上げで「円高デフレ大逆流」が招く「日経平均2万8000円台」の悪夢のシナリオ、まさか日銀で「植田総裁vs.内田副総裁」バトル勃発か…つぎの日銀会合は「円高急進」を覚悟せよ!) [経済政策]

金融政策については、本年7月10日に取上げた。今日は、(その48)(「断捨離」をした日銀は7月末にどう動くのか 渡辺努・東大教授の「物価理論」を解説しよう、日銀は為替を金融政策の対象に入れるべきだ このままでは金融政策への信頼が失われる懸念、日経平均の大暴落は「超円安」依存経済への警鐘だ…!市場を大パニックに陥れた「予想外の原因」、日本株を襲うもうひとつの「不都合な真実」…日銀利上げで「円高デフレ大逆流」が招く「日経平均2万8000円台」の悪夢のシナリオ、まさか日銀で「植田総裁vs.内田副総裁」バトル勃発か…つぎの日銀会合は「円高急進」を覚悟せよ!)である。

先ずは、本年7月13日付け東洋経済オンラインが掲載した慶応義塾大学大学院教授の小幡 績氏による「「断捨離」をした日銀は7月末にどう動くのか 渡辺努・東大教授の「物価理論」を解説しよう」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/776645
・『先日、物価に関する日本一、いや世界一の研究家である、東京大学大学院経済学研究科の渡辺努教授にインタビューさせていただく機会があった。 それは「東洋経済オンライン」で2つの記事になった(前編「『物価が上がらなければいいのに』と嘆く人たちへ」、後編「日銀は『円安』『国債の山』『次の緩和』をどうするか」)。だが、インタビュアーの未熟さにより、インタビューの解説が必要だと感じたので、今回は筆者の理解する「渡辺物価理論」を独自に補足解説したい』、興味深そうだ。
・『なぜ「機能不全」を解消しなければいけないのか  この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています【2024年1月5日編集部追記】2024年1月1日、山崎元さんは逝去されました。心から哀悼の意を捧げ、ご冥福をお祈りします)。記事の一覧はこちら まず、渡辺理論の主張の中核は、以下のひとことに尽きる。 『物価とは何か』では、ミクロの価格を蚊に、マクロの物価を蚊柱にたとえていますが、蚊が死んでしまったので、蚊柱の動きも止まったというのが私の理解です。物価安定と見間違えてはいけない」。 えっ?これだけでは、わからない? では、もう少しかみ砕こう。渡辺教授の理論体系とは以下の1~6からなる。  1日本では1995年以降、企業が自分の製品の価格を決める力を失った  2その結果、市場経済の中核である「価格メカニズム」が機能不全に陥 った  3このコストはとてつもなく大きい。これが長期に定着すれば、実体経済へのダメージはさらに拡大、長期化する  4だから、かなりの副作用があったとしても、価格メカニズムの機能不全を解消しないといけない  5そのためには、社会全体、経済全体の認識を変えるために、マクロの 政策変更が必要であり、有効である可能性がある  6そのためには、ショック療法的な手段も試してみる価値はあるし、試すべきだ) ちなみに、筆者は1から3まで120%渡辺理論に賛成で、渡辺理論の世界一の理解者であると同時に、世界一、渡辺理論に近い意見を持っているのが小幡績である。しかし、筆者は4から6には強く反対で、ここが渡辺・小幡の大きな対立点である。目指すゴールは一緒、問題認識も一緒、しかし、アプローチが180度(いや90度かな?)異なる』、「筆者は1から3まで120%渡辺理論に賛成で、渡辺理論の世界一の理解者であると同時に、世界一、渡辺理論に近い意見を持っているのが小幡績である。しかし、筆者は4から6には強く反対で、ここが渡辺・小幡の大きな対立点である。目指すゴールは一緒、問題認識も一緒、しかし、アプローチが180度(いや90度かな?)異なる」、なるほど。
・『「渡辺チャート」が可視化した「日本企業の停滞」  順番に、少し詳しく見てみよう。 1の「企業が自分の製品価格を決める力を失ったこと」に関しては、渡辺教授が長年にわたって、研究、主張してきた。それを象徴的に可視化したものは、渡辺チャートと呼ばれている。日本の消費者物価を構成する600品目の個別のインフレ率(前年同月比の変化率)を計算し、頻度分布をグラフにしたものだ。日本の個別品目の価格変動が1995年以降一気に減少し、ゼロ付近の頻度が極端に高まったことが可視化されたのである。 近年では、日本企業が価格変更できないから量を減らす「ステルス値上げ」などの対応を迫られたことが有名になった。しかも、コロナ禍後では、アメリカをはじめ世界にも広がり、「シュリンケーション」(シュリンク=縮むとインフレーションをかけた言葉)という言葉が生まれた。しかし、それでもアメリカでは、価格変更のグラフが日本のようにゼロに集中することはなかった。 これは、まったく私も賛成で、企業の度胸のなさは、この連載でも何度か指摘したところである。さらに、ビジネススクール的な文脈でいうと、日本の企業は、価格設定を経営の戦略変数に入れていないことがほとんどで、本当に駄目だ。これこそ利益率が低い理由であり、ひいては日本の生産性やGDP(付加価値率)が伸びない理由であるとも指摘してきた。要は「ぼったくり」とまではいわないが、消費者からむしり取ってでも儲けようという意欲、気概、力が足りないのである。 2については、「価格メカニズム」は、市場経済の中核、経済理論の中核であり、ミクロ経済学では最重要のところである。最近はゲーム理論ばかり教えるから重要性の認識が低下しているが、市場における一般均衡、それを達成する価格メカニズムが市場経済の最重要要素、ほぼすべてである。 だから、これが危機に陥るとは、市場経済の終わりである。渡辺教授も以下のように言っている。「2年前ぐらいから僕が使っているのが、旧ソ連の例です。旧ソ連の経済システムは価格というシグナルそのものがなく、生産量を割り当てていましたが、やっぱり失敗する。日本では価格はありますが、動いていなければ価格メカニズムがないに等しい。その結果として資源配分が歪んできた」。 これには筆者も200%賛成だ。したがって、渡辺理論の日本の物価への懸念はミクロ経済学的な資源配分の歪み、ということに尽きるのである。個々の蚊が死んでしまったこと、あるいは仮死状態になってしまったことがすべてで、彼らを仮死状態から生き返らせることが、何よりも重要なのである。それは個々の蚊(個々の製品、個々の企業)が死んでしまい、それが蚊柱全体(市場経済全体)を殺してしまうことになりかねないからである。 これを理解していれば、多くはアメリカで教育を受けてきたマクロ経済学者、マクロ金融学者を驚愕させる「渡辺発言」も、何ら驚きでないどころか、なるほどと合点がいくのである』、「1については」「日本の企業は、価格設定を経営の戦略変数に入れていないことがほとんどで、本当に駄目だ。これこそ利益率が低い理由であり、ひいては日本の生産性やGDP(付加価値率)が伸びない理由であるとも指摘してきた。要は「ぼったくり」とまではいわないが、消費者からむしり取ってでも儲けようという意欲、気概、力が足りないのである・・・2については・・・日本では価格はありますが、動いていなければ価格メカニズムがないに等しい。その結果として資源配分が歪んできた」。 これには筆者も200%賛成だ。したがって、渡辺理論の日本の物価への懸念はミクロ経済学的な資源配分の歪み、ということに尽きるのである」、なるほど。
・『物価は動きすぎてもいけないが、動かないのもいけない  「日本では、平均的な物価の上昇率が0とかマイナス1%になったこと以上に、『個々の価格が動かなくなったこと』が問題だった」「実はトータルの物価上昇(インフレ)率は1%でも2%でも、5%でもいいんです」「行きすぎたインフレがなぜいけないのかというと、不確実性が高すぎて資源配分が歪むからです。10%や20%まで上がると明らかに歪みが起きます。 つまり、資源配分の歪みがいけない。価格が動きすぎても不確実性が高まることにより歪む。一方、動かなすぎても、配分が変わらず歪んでしまう。物価は動きすぎてもいけないが、動かないのも同様に悪い、ということなのだ。 その結果が、3の「価格の機能不全のコスト負担と実態経済へのダメージ拡大、長期化懸念」という主張になる。1と2の現象は、日本に長年根付いてきたものではない。1990年のバブル崩壊後、急速に生まれたものだ。だから、1990年代後半にいち早く手を打っておけば、こんな事態にはならなかった。30年も定着することはなかったはずである。遅くても遅すぎるということはない。今こそ、最後のチャンスだ。だから4~6の主張になるのである。) 確かに価格の機能不全のコストは大きい。だから、筆者は3については80%賛成できる。ただ、その中身は、渡辺教授と筆者では少し違う。渡辺教授はこう言う。 「企業は通常、価格を決めるパワーを持っているわけですが、それが奪われてしまった。そうすると企業は、何か新しい商品を作るために投資して、高い価格をつけて儲けることができません。最初からいい商品を作ることをあきらめる。価格をコントロールできない環境では、企業はアグレッシブな行動ができなくなってしまう。それでも当然、収益を上げなければいけないので、じゃあコストカットとなって、経済がどんどん後ろ向きに回ってしまう。これがデフレの最大の弊害だと思っています」。 筆者は違うと思う。これは企業がデフレを言い訳にして何もしていないだけだ。新しい製品なら新しい価格が付く。既存の製品の価格が変えられないからこそ、アグレッシブに新しいことをする。不況こそが次への脱皮を促す。だから、原因はデフレではなく、個々の企業が原因だと思う』、「筆者は3については80%賛成できる。ただ、その中身は、渡辺教授と筆者では少し違う。渡辺教授はこう言う。 「企業は通常、価格を決めるパワーを持っているわけですが、それが奪われてしまった。そうすると企業は、何か新しい商品を作るために投資して、高い価格をつけて儲けることができません。最初からいい商品を作ることをあきらめる。価格をコントロールできない環境では、企業はアグレッシブな行動ができなくなってしまう。それでも当然、収益を上げなければいけないので、じゃあコストカットとなって、経済がどんどん後ろ向きに回ってしまう。これがデフレの最大の弊害だと思っています」。 筆者は違うと思う。これは企業がデフレを言い訳にして何もしていないだけだ。新しい製品なら新しい価格が付く。既存の製品の価格が変えられないからこそ、アグレッシブに新しいことをする。不況こそが次への脱皮を促す。だから、原因はデフレではなく、個々の企業が原因だと思う」、なるほど。
・『大きくなった「為替の歪み」をどうすべきか  さらに、4「かなりの副作用があったとしても、価格メカニズムの機能不全を解消しないといけない」 5「そのためには、社会全体、経済全体の認識を変えるために、マクロの政策変更が必要であり、有効である可能性がある」 6「そのためには、ショック療法的な手段も試してみる価値はあるし、試すべきである」という4~6の主張に対しては、前出のとおり、筆者の賛成率は0%である。大反対だ。 4から6は一体となっている主張だが、筆者はそれぞれ反対するところがある。まず、4だ。渡辺教授はこう言っている。 「僕は、価格が動かないことで実体経済が歪むコストが大きいから、金融市場では少々のことが起きても仕方がないと思っています。 少々のこと、というのがどの程度か、ということが問題だが、この文脈では、金融市場とは為替の話だった。筆者としては、為替の歪みはとてつもなく大きく、かつ金融政策により生じてしまった責任があると思うし(つまりやるべきでなかった)、一方で、今後円安を止める力もあると思っている。) そして5は、もっとも意見が異なる。渡辺教授は、このように主張する。「社会全体が共通の認識として「価格は変わらないもの」と信じてしまっていて、個々の企業が解決できる問題じゃなかったんです」。 つまり、この価格メカニズム機能不全現象が、個々の企業ではどうしようもない。消費者を中心として社会全体が、価格は変わらない、と思ってしまっているから、マクロで社会全体の意識を変えなければいけない、と思っている。 一方、筆者の意見は、企業も消費者もみんなが萎縮した形で均衡しているのだから、マクロの金融政策では抜け出せず、企業が行動を変えるようなインセンティブを与えるとか、ミクロ政策を打ち出さないと効かないのでは、というものだ』、「4から6は一体となっている主張だが、筆者はそれぞれ反対するところがある。まず、4だ。渡辺教授はこう言っている。 「僕は、価格が動かないことで実体経済が歪むコストが大きいから、金融市場では少々のことが起きても仕方がないと思っています。 少々のこと、というのがどの程度か、ということが問題だが、この文脈では、金融市場とは為替の話だった。筆者としては、為替の歪みはとてつもなく大きく、かつ金融政策により生じてしまった責任があると思うし(つまりやるべきでなかった)、一方で、今後円安を止める力もあると思っている。) そして5は、もっとも意見が異なる。渡辺教授は、このように主張する。「社会全体が共通の認識として「価格は変わらないもの」と信じてしまっていて、個々の企業が解決できる問題じゃなかったんです」。 つまり、この価格メカニズム機能不全現象が、個々の企業ではどうしようもない。消費者を中心として社会全体が、価格は変わらない、と思ってしまっているから、マクロで社会全体の意識を変えなければいけない、と思っている。 一方、筆者の意見は、企業も消費者もみんなが萎縮した形で均衡しているのだから、マクロの金融政策では抜け出せず、企業が行動を変えるようなインセンティブを与えるとか、ミクロ政策を打ち出さないと効かないのでは、というものだ」、なるほど。
・『ミクロで解決すべきか、マクロで解決すべきか  180度違うというよりは、ミクロで解決すべきかマクロか、という話。実際、価格メカニズムが死んでいるというのが問題、という点は、120%一致している。対談でも以下のようなやりとりがあった。 小幡「(機能不全の)状況を壊さなければいけないことはわかるんです」。 渡辺「問題は、マクロの金融政策で壊れるかどうか、ですね」。 小幡「ここ数年でわかったのは、『円安で輸入価格が上がったのは目に見えるから、値上げせざるをえないとわかれば皆、受け入れる』ということだと思う」。 渡辺「異次元緩和は実は、それと似たことを政策的にやりたかったけれど、消費者や企業経営者に影響を与えるようなメッセージは出せませんでした。人間が行う政策よりも、パンデミックや戦争のほうが定常状態を変える力としては強いんだろうなと思います」 筆者の感想としては、そう思っているなら、なぜそれでも金融政策に、価格メカニズム復活のきっかけを期待するのか、という疑問が残る。) しかし、渡辺教授は、何とか価格メカニズム復活のために、現状の委縮均衡の完全なる破壊に執念を燃やしている、あるいは、今が、最後の最大のチャンスだと思っているようだ。 「今は同調だろうがなんだろうが、価格が動いてくれればもうけもの。スーパーなどの販売価格をPOSデータでみても、これまで価格が動かない商品の割合が7割だったのが減ってきています。顕著に減ってきています。価格も賃金も動かない状態からとにかく脱出する。そうなりつつあるから、しっかり固めるときだと思います」』、「渡辺教授は、何とか価格メカニズム復活のために、現状の委縮均衡の完全なる破壊に執念を燃やしている、あるいは、今が、最後の最大のチャンスだと思っているようだ。 「今は同調だろうがなんだろうが、価格が動いてくれればもうけもの。スーパーなどの販売価格をPOSデータでみても、これまで価格が動かない商品の割合が7割だったのが減ってきています。顕著に減ってきています。価格も賃金も動かない状態からとにかく脱出する。そうなりつつあるから、しっかり固めるときだと思います」、なるほど。
・『日銀は「断捨離後」の「次の一手」をどうするのか?  6については、結果的には意見は一致した。異次元緩和、「黒田緩和」が始まったときは、渡辺教授は、こう思っていた。 「実は、2013年に異次元緩和を始めた黒田東彦前総裁も(デフレが何らかの弊害をもたらしたか否か、という論点を)説明したことがないんですよ。僕はこう解釈しました。消費者や価格をつける企業の人たちのマインドを『価格というのは上がるもの』に変えようとしているんだと」。 そして、今の渡辺教授の見解は、こうだ。 「(異次元緩和は)事実として全然うまくいかなかったから、失敗したとは思います。2016年1月に導入したマイナス金利の評判が悪かった頃からそう思い始めました。効いてほしかったですが、結果的に効かなかったのだから、明らかに無用の長物です」。 しかし、今後については、私とは意見が異なるようだ。 「3月の日銀の決定は、要らないモノを捨てる『断捨離』なんだと説明しています。断捨離のポイントは、要るモノと要らないモノを区別することです。要るモノとして残したのが、バランスシートです。バランスシートが大きい状態はやっぱり望ましいんですよ」。 さあ、7月30~31日の金融政策決定会合で、植田和男・日銀総裁は、どの程度国債買い入れを減らすのか。そして、それはバランスシートのサイズを意識したものになるのか、それとも、毎月の購入額というフローの額を重要視するのか。注目だ。 今後も、渡辺理論の発展を願うし、再び、議論の機会を持てるのを楽しみにしている(本編はここで終了です。この後は競馬好きの筆者が競馬論や週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「6については、結果的には意見は一致・・・しかし、今後については、私とは意見が異なるようだ。 「3月の日銀の決定は、要らないモノを捨てる『断捨離』なんだと説明しています。断捨離のポイントは、要るモノと要らないモノを区別することです。要るモノとして残したのが、バランスシートです。バランスシートが大きい状態はやっぱり望ましいんですよ」。 さあ、7月30~31日の金融政策決定会合で、植田和男・日銀総裁は、どの程度国債買い入れを減らすのか。そして、それはバランスシートのサイズを意識したものになるのか、それとも、毎月の購入額というフローの額を重要視するのか。注目だ」、さあ、どうなるだろう。

次に、7月31日付け東洋経済オンラインが掲載した慶応義塾大学大学院教授の小幡 績氏による「日銀は為替を金融政策の対象に入れるべきだ このままでは金融政策への信頼が失われる懸念」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/787795?display=b
・『日本銀行は、「金融政策は為替を対象としていない」と繰り返している。これだけ円安に国民や政治家が悲鳴を上げても、その説明はまったく変わらない。しかし、これは本当に本音なのか、それとも建前なのか? エコノミストやメディアの人々のほとんどは、これは日銀の建前だと思っている。だから、円安が進むと、日銀の利上げが早まるかもしれない、という日銀ウォッチャーやエコノミストのコメントがメディアにあふれ出す』、興味深そうだ。
・『「為替は金融政策の対象でない」は日銀の「信念」?  しかし、私は、これは日銀の本音であると思っている。それどころか、信念であり、絶対に譲れない、譲ってはいけないと信じているのではないか、と推測している。そして、それが現代の中央銀行の問題であり、とりわけ日銀にとっては致命的なものになりうると考えている。 なぜか。説明しよう。 まず「為替は金融政策の対象でない」という考え方は、成熟国における現代の中央銀行の役割としては教科書的なものだ。 実際、植田和男日銀総裁もそう繰り返し述べる。例えば、2024年3月27日の衆議院財務金融委員会で、植田総裁は、「金融政策は為替相場を直接コントロールの対象としていない」「為替政策は財務省の所管と理解している」と答え、そして、為替は「経済、物価に重要な影響を及ぼすひとつの要因」と述べた。これは、まさに現在の日銀の模範的な回答だ。 つまり、金融政策の目的は、経済、物価であり、為替はその経済と物価に影響を及ぼすから、アメリカの経済が日本経済に影響を与えるのと同様に、重要な要因だが、金融政策の決定においてはあくまで外部的な環境要因として扱うということである。) 実は、この議論の構造は、金融政策の対象である経済と物価の関係に似ている。よく知られているように、FED(アメリカ中央銀行)には、物価の安定と雇用の最大化という2つの使命(デュアルマンデート)がある』、「金融政策の目的は、経済、物価であり、為替はその経済と物価に影響を及ぼすから、アメリカの経済が日本経済に影響を与えるのと同様に、重要な要因だが、金融政策の決定においてはあくまで外部的な環境要因として扱うということである」、なるほど。
・『日銀にとっての金融政策は「物価一辺倒」  一方の日本は「物価の安定を通じて経済の健全な発展に資する」という建て付けになっている。となると、日銀にとって、金融政策は、景気の微調整ではなく、あくまで物価、一義的には物価一辺倒になる。 そうなると、金融政策における経済の位置づけは難しくなる。なぜなら、21世紀に入ってから、コロナショックで物価が急上昇するまでは、インフレ率が低い水準で安定していたから、景気刺激を金融緩和で行うことができた。つまり、金融政策は景気刺激を目的と、インフレ率は、単なる制約条件となり、インフレ率が大幅に上がらなければ、金融緩和をいつまでも存分にやっていい、というような状況となった。 これは、日本に限らず、アメリカも同じような雰囲気だった。アメリカでは、コロナで景気が悪くなることを懸念したから、日本をはるかに上回る大規模財政出動と合わせて、大幅な金融緩和を行い、それを継続した。 コロナ禍によるサプライチェーンの大混乱に加え、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー価格が急騰し、その結果、インフレ率が上昇しても、あまり警戒せず「需要の過熱による物価上昇ではないから、これは一時的であり、金融引き締めは不要」としたため、利上げが大幅に遅れ、その結果、高い短期金利の継続を余儀なくされた。 一方、日本では、21世紀に入ってからは、バブル処理が終わった後も、財政、金融ともにひたすら景気対策に動員された。財政赤字が拡大していたこともあって、金融政策は、つねに緩和可能な最大限を行うことが求められ、継続された。 その結果、ゼロ金利の限界を超えて量的緩和、異次元緩和、イールドカーブコントロール(長短金利操作)と、次々とイノベイティブな金融政策が日銀によって発明された。) また、株式の買い入れという異常な(不可解な)政策まで動員された。日本では物価がほとんど上昇しなかったから、人々は、金融緩和を拡大しない日銀は、ケチでやる気がなく無能力であるかのように思った。 デフレ脱却を合言葉にしたアベノミクスにおける異次元緩和は、とにかく物価を上げること、インフレを起こすことが目的となり、リフレ政策と呼ばれたが、日銀の制度上の建て付けからは、とにかくインフレの目標(メドであろうが目標であろうが)を達成することが、一義的な目的であるから、景気とは無関係に物価が動かなすぎるのであれば、動かすことが目的となり、それでも動かなければ、日本経済が一時的にどうなろうと、物価を優先させるということは、原理的に間違っているわけではなかった。 しかし、アベノミクスや異次元緩和に賛成していたほとんどの人々は、そういう物価原理主義とは無関係に、景気がよくなるに越したことはないし、金融緩和の弊害がインフレということなら、日本でインフレが起きるはずがないから、どんどん緩和すればいい、というだけの気持ちだった』、「日本」では、「金融政策は、つねに緩和可能な最大限を行うことが求められ、継続された。 その結果、ゼロ金利の限界を超えて量的緩和、異次元緩和、イールドカーブコントロール(長短金利操作)と、次々とイノベイティブな金融政策が日銀によって発明された。) また、株式の買い入れという異常な(不可解な)政策まで動員された。日本では物価がほとんど上昇しなかったから、人々は、金融緩和を拡大しない日銀は、ケチでやる気がなく無能力であるかのように思った・・・アベノミクスや異次元緩和に賛成していたほとんどの人々は、そういう物価原理主義とは無関係に、景気がよくなるに越したことはないし、金融緩和の弊害がインフレということなら、日本でインフレが起きるはずがないから、どんどん緩和すればいい、というだけの気持ちだった」、なるほど。
・『インフレ上昇、金融引き締め局面では「大きな分断」  この日米の状況が、インフレ率上昇後の金融政策を難しくしている。そして、永遠に人々に誤解されたまま、その誤解が放置され、金融政策は将来にわたって、永遠に中央銀行と市場(エコノミスト、政治家、メディア、一般の人々も含む)との意思疎通ができないままとなり、つねに誤解から、市場は混乱し、中央銀行は責められ、経済に大きな障害となっていく恐れがある。 なぜなら、緩和局面は誤解があっても、同床異夢であり、金融緩和はだれにとっても歓迎だったから、軋轢は表面化しなかったが、インフレ上昇、金融引き締め局面では、大きな分断が、中央銀行とそのほかの世界の間に生じてしまうからだ。 現在、アメリカ中央銀行が強烈な金融引き締め、高金利を継続しているのは、景気に配慮して行っているのではない。物価だけを考えてやっている。しかし、このまま物価が十分に下がらず、景気も悪化し始めると、なぜ早く利下げしないのだ、という圧力がかかり始める。 物価は高いままだが、インフレ率は低くはないが、上昇は止まっている。そして、景気はこれから悪化しそうだ。それなら、物価と景気のバランスをとって、利下げするべきだ、というのが外野の主張、要求となる。) しかし、中央銀行にとっては、物価と景気が対立したら、それは物価が当然優先されるのだ。長期的にインフレ率が高止まりすれば、それは長期的に経済に大きな悪影響を与える。だから、物価をとにかく下げることが優先される。物価と景気のバランスは二の次になる。 ここで問題なのは、金融引き締めを行っても、インフレ率がそれによって低下するわけではないことだ。なぜなら、インフレの要因のほとんどが供給側にあり、金融引き締めで需要を抑制しても、人手不足からの賃金上昇によるコスト高によるインフレだから、ほとんど効果はない。 それでも、中央銀行としては、インフレ率を下げるためには、需要抑制以外の手段はない。コスト高であったとしても、需要が増えれば、インフレは加速する可能性があり、効果がほとんどないとしても、金融引き締めをやめるわけにはいかないからだ。 この結果、人々の中央銀行への信頼、評価が下がり、長期的に、金融政策の効果が阻害される。金融緩和の局面になっても「緩和に後ろ向きだ、抑制気味だ」という批判が(印象によるものにすぎないのだが)続くことになる』、「インフレの要因のほとんどが供給側にあり、金融引き締めで需要を抑制しても、人手不足からの賃金上昇によるコスト高によるインフレだから、ほとんど効果はない。 それでも、中央銀行としては、インフレ率を下げるためには、需要抑制以外の手段はない。コスト高であったとしても、需要が増えれば、インフレは加速する可能性があり、効果がほとんどないとしても、金融引き締めをやめるわけにはいかないからだ。 この結果、人々の中央銀行への信頼、評価が下がり、長期的に、金融政策の効果が阻害される。金融緩和の局面になっても「緩和に後ろ向きだ、抑制気味だ」という批判が・・・続くことになる」、なるほど。
・『日銀と人々が分断、政策への信頼が永久に失われる懸念  日本においては、これが為替相場、円安について起きている。人々は、異次元緩和、大規模金融緩和を支持した。それは景気にプラスだし、株価が上がったし、それだけのことだった。物価への理念など関係ない。金融政策とは、景気と株価のためにやっていると思っていたし、今も思っている。株式や不動産のETF(上場投資信託)の買い入れも、株価を支えるのが金融政策の役目であると思ったし、今も思っている。 そこへ、物価高がやってきた。そして、強烈な円安がやってきた。「貧しい日本」と言われだした。電気代もガソリンも円安のせいだ。日銀は、金融政策で経済をよくする、景気をよくするはずで、消費者が生活に困る円安は当然止めてくるものと人々は思った。 しかし、実際はまったく逆で、物価がまだ十分上がらないから、もっと物価を上げると言っている。そして、円安はわれわれ中央銀行には関係ない、金融政策の目的ではない、と繰り返す。メディアでは、日米の金利差が円安の要因と言っている。要は、世界で日本だけ金利が低いから円安なのか。日銀の責任じゃないか。「日銀は意味不明だ。何をやっているんだ」ということになる。) しかし、これは、日銀の人々には響かない。「われわれの目的は物価だ。そして、物価は悲願のインフレ率2%定着の最後のチャンスだ。ここで逃しては、この20年の戦いが無駄になる」ということで、人々と日銀の分断は、日本でも永久に残り、将来の金融政策への人々の信頼は永久に失われてしまうだろう。 「『物価が上がらなければいいのに』」と嘆く人たちへ」「日銀は『円安』『国債の山』『次の緩和』をどうするか」(7月8~9日配信)での、渡辺努教授との対談記事でも明らかだが、日銀および金融政策の学問的な専門家は、物価というものを最優先に考えていることがわかる。 この数年の日銀の動き、植田総裁の金融政策のスタンスを、われわれ一般人の生活感や常識にとらわれずに観察してみると、物価最優先というのが建前ではなく、本音であることがわかるはずだ。これは、30~31日の日銀政策決定会合においても、アメリカの中央銀行の決定会合(FOMC=公開市場委員会)後の声明文を読んでも、再確認されるだろう』、「メディアでは、日米の金利差が円安の要因と言っている。要は、世界で日本だけ金利が低いから円安なのか。日銀の責任じゃないか。「日銀は意味不明だ。何をやっているんだ」ということになる。) しかし、これは、日銀の人々には響かない。「われわれの目的は物価だ。そして、物価は悲願のインフレ率2%定着の最後のチャンスだ。ここで逃しては、この20年の戦いが無駄になる」ということで、人々と日銀の分断は、日本でも永久に残り、将来の金融政策への人々の信頼は永久に失われてしまうだろう」、なるほど。
・『「実体経済にひずみをもたらさない為替」を目標にすべき  そして、実は、こうした物価最優先の考え方は理論的にも間違っている。とりわけ日銀においてそうだ。 なぜなら、21世紀の成熟国の経済においては、金融政策は金融市場、つまり、株式や債券などのリスク資産市場と為替市場に直接大きな影響を与え、実体経済には間接的にしか影響しない。それが、日銀の異次元緩和で得た教訓だ。 期待では物価は動かない。そうであれば、直接影響を与える市場にターゲットを絞って、それを安定化させる、コントロールすることで、間接的に実体経済を安定化させ、健全な経済発展を導く。それが、合理的なはずだ。 物価安定を通じて経済を発展させることが、実体経済の変動が経済変動の中心で、需要増加がインフレに直結する20世紀後半にはそうだったのだから、21世紀には、金融市場の動向が主導して実体経済に影響を与えるのだから、金融市場を直接の目標とすべきだ。 つまり、為替をターゲットとし、実体経済にひずみをもたらさない為替を目標とする。「2%のインフレ率を目標とする」のように、経済主体の行動が、ファンダメンタルズではなく為替水準およびその変動から影響を受けないような為替水準にとどまるように、という目標を設定する。インフレ率の変動が実体経済に影響を与えないようにする、のとまったく同じ精神だ。 そして、「景気安定」という目標を「株式市場や債券市場の安定」(つまりファンダメンタルズから大きく乖離しない、過度に変動しない)という目標に置き換え、これが実体経済に連動した形になるように安定化を図るべきなのだ。 なぜ、そのような自然なことができないのか。それは、「金融政策に為替や株価は関係ない、物価に集中」という過去の原理原則を忠実に心の底から正しいといまだに信じているからなのだ。そして、それは、日銀を日本社会から孤立させ、今後の通貨波乱のときに、日銀が力が発揮できない大きな要因となるであろう。 (当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)』、「物価最優先の考え方は理論的にも間違っている。とりわけ日銀においてそうだ。 なぜなら、21世紀の成熟国の経済においては、金融政策は金融市場、つまり、株式や債券などのリスク資産市場と為替市場に直接大きな影響を与え、実体経済には間接的にしか影響しない。それが、日銀の異次元緩和で得た教訓だ。 期待では物価は動かない。そうであれば、直接影響を与える市場にターゲットを絞って、それを安定化させる、コントロールすることで、間接的に実体経済を安定化させ、健全な経済発展を導く。それが、合理的なはずだ・・・21世紀には、金融市場の動向が主導して実体経済に影響を与えるのだから、金融市場を直接の目標とすべきだ。 つまり、為替をターゲットとし、実体経済にひずみをもたらさない為替を目標とする。「2%のインフレ率を目標とする」のように、経済主体の行動が、ファンダメンタルズではなく為替水準およびその変動から影響を受けないような為替水準にとどまるように、という目標を設定する。インフレ率の変動が実体経済に影響を与えないようにする、のとまったく同じ精神だ。 そして、「景気安定」という目標を「株式市場や債券市場の安定」・・・という目標に置き換え、これが実体経済に連動した形になるように安定化を図るべきなのだ」、金融政策の革命的な転換を主張している。

第三に、8月6日付け現代ビジネスが掲載した一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「日経平均の大暴落は「超円安」依存経済への警鐘だ…!市場を大パニックに陥れた「予想外の原因」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/135083
・『今回の株価大暴落を引き起こした原因は、為替レートが今後円高に転じる可能性が強くなったとの予想だ。これまでの日本の株価上昇を支えてきたのは、円安による企業利益の増大だったが、その状況が大きく変わる』、興味深そうだ。
・『大暴落の原因:重要なのは予想外のニュース  8月2日に、日経平均株価が大暴落した。週明けの5日も続落でマーケットが始まり、日経平均株価は終値は3万1458円となり、年初の終値3万3288円を下回った。7月11日につけた終値4万2224円に比べると、1万0766円(25.5%)の下げ、史上最大の暴落を記録した。 今後を考えるには、何が暴落の原因だったのかを明らかにしておく必要がある。考えられるものとしては、つぎの3つがある。 1) 日本銀行による利上げ 2) FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)による利下げ予告 3) アメリカ景気指標の悪化 結論を言えば、1、2ではなく、3が主因だった。ただし、それが直接に影響したのでなく、「それによって、FRBの利下げ幅が大きくなり、円高が進む。それが日本企業の収益を低下させる」という予想が広がったためだと考えられる。 ここで重要なのは、「何が予想外のニュース(サプライズ)だったか?」という点だ。予測されていたことは、すでに株価に織り込み済みになっているはずだからである。株価を動かすのは、予想外のニュースだ』、「ここで重要なのは、「何が予想外のニュース(サプライズ)だったか?」という点だ。予測されていたことは、すでに株価に織り込み済みになっているはずだからである。株価を動かすのは、予想外のニュースだ」、その通りだ。
・『日銀利上げやFRB利下げ予告は大きな原因でない  まず、何が起きたかを時系列的に整理しておこう。7月の30、31日に日銀が政策決定会合を開いた。ここでの決定は国債購入の減額だけで、利上げの決定は行われないと考えられていたのだが、急にそれが議題になるとの情報が伝わり、31日(水)の午前から円高が進み、日経平均株価が下落した。 15時過ぎに植田総裁の記者会見があり、円高が進んだ。午前中は1ドル=153円程度であったものが、150~151円程度にまでの円高になった。しかし、株価は午後になって午前中の下落を取り戻し、終値は3万9140円と、前日より高くなった。つまり、日銀の利上げ決定はサプライズであったにもかかわらず、株価にはあまり大きな影響を与えなかったのだ。 続いて7月31日(日本時間では、8月1日の午前3時)に、FRBのパウエル議長が9月の利下げを示唆した。 これを受けて、ニューヨーク証券取引市場では、買いが先行して取引が始まった。利下げは株価に好影響を与えるから、当然の反応だ。 ここまではほぼ予測されていた展開だったのだが、その後、様々な経済統計が予想以上に米景気が悪化していることを示し始めた。特に失業率が上昇していることや、製造業の景況感指数が予想を下回る数字だったことが大きかった。 これを受けて、ダウ平均株価が急落し、1時は下げ幅が700ドルを超えた。 日本時間の8月1日午前9時頃から急激な円高が進み、それまで1ドル=150円程度であったものが、146円程度になった。 これを受けた8月1日の東京市場では、日経平均株価が寄り付きから値下がりし、終値は3万8083円となった。つまり、前日から1057円下落した。 日経平均株価は、8月2日(金)も寄り付きから下落し、前日終値から2216円安い3万5909円となった。そして週明けの8月5日(月)、終値は前営業日比で4451円安い3万1458円。史上最大の下落となった。7月11日につけた終値4万2224円に比べると、1万0766円(25.5%)の下げだ』、「8月5日(月)、終値は前営業日比で4451円安い3万1458円。史上最大の下落となった。7月11日につけた終値4万2224円に比べると、1万0766円(25.5%)の下げだ」、なるほど。
・『なぜ日本株が下落したのか?  「アメリカの経済指標が悪化したから、アメリカの株価が下落した」というのはよくわかる。とりわけ大きな影響を与えたのは、失業率が急上昇したことだった。 また、半導体製造会社インテルの業績が悪化して人員削減計画を発表し、株価が1日で4分の3に目減りするという「インテルショック」が生じた。これにつられて、TSMCやAmazon.comの株価も下落した。 理解しにくいのは、なぜ日本の株価が下落したかだ。日本の輸出が影響を受ける面もなくはないのだが、あまり大きな影響ではない。 最も大きな要因は、円高が進んだことだ。今年に入ってから日本企業の業績が好調だったが、それは円安によるものだったのだ。それがこれから大きく変化するという予想で、日本の株価が下がったのだ』、「今年に入ってから日本企業の業績が好調だったが、それは円安によるものだったのだ。それがこれから大きく変化するという予想で、日本の株価が下がったのだ」、なるほど。
・『そして、なぜ円高になったのか?  では、なぜ為替レートの動向に大きな変化が生じたのか? 為替レートは日米の金利差によって大きな影響を受けるから、日米の金利政策が関連しているはずだ。しかし、これまで見てきたように、パウエル議長の会見直後までは、大きなサプライズはなかった。 急激な円高が進んだのは、FRBによる9月の金利引き下げ幅が大きくなるという予想ではないだろうか? 市場では、FRBの利下げが遅すぎるのではないとの考えが強まっていた。FRBは、今回のインフレを重大視せず、利上げに踏み切るのが遅すぎたと批判されている。そして、いま、利下げに踏み切るのも遅すぎるとの批判が強まっているのだろう。 アメリカの利下げが、今後どのようなタイミングと規模で進行するのかはまだわからないが、株価下落の影響で、これまで考えられていたよりも利下げ幅が大きくなる可能性は十分にある。市場では、9月に通常の2倍の利下げに踏み切るとの見方が広まっているようだ。 仮にそうなれば、日米金利は一挙に大きく縮小することになり、為替レートに対して大きな影響が及ぶ。つまり、本格的な円高が進む可能性がある。実際にそうなれば、日本株に対する影響も簡単には元に戻らないものになるだろう』、「9月に通常の2倍の利下げに踏み切るとの見方が広まっているようだ。 仮にそうなれば、日米金利は一挙に大きく縮小することになり、為替レートに対して大きな影響が及ぶ。つまり、本格的な円高が進む可能性がある。実際にそうなれば、日本株に対する影響も簡単には元に戻らないものになるだろう」、なるほど。
・『新NISAで株式投資を始めた人には大ショック  今年の初めに、日本では新NISAが導入された。それとタイミングを合わせるように、円安が進み、株価が上昇したことから、新しく株式投資を始める人が増えた。その多くが海外投資に向かった。 これらの人たちにとって、今回の暴落は大きなショックだったに違いない。 とりわけ海外投資の場合には、株価の下落だけではなく、円高(=外国通貨安)による影響があるので、日本円で見た資産額は大きく減ったはずだ。 もともと株式投資は極めてリスクが高いものだ。それに加えて、外国株への投資には為替レートのリスクもある。だから、極めてリスクが高い。これは当然のことなのだが、今年初めから株価が上昇し、為替レートも円安に進んでいたので、リスクの大きさが十分に認識されていなかったのではないだろうか。そのうえ、インフレ下では株式投資で資産を安全に運用できるとする考えが広がっていた。そうしたことを信じて投資をした人は、ショックだったに違いない。 政府も、これまで「貯蓄から投資へ」というスローガンの下に、銀行預金から株式投資などのリスク投資を勧めてきた。今回の暴落で資産を失った人から苦情が寄せられた場合、どのように対応できるだろうか?』、「新NISAで株式投資を始めた人には大ショック」、政府としては何ら対応できないだろう。
・『確実に利益が上がる投資法など存在しない  今回の大暴落の原因究明は、知的好奇心を満たすためには格好の材料だ。私がこの問題を考えているのは、そのためだ。 しかしいくら探求したところで、それによって株式投資で利益を得られるわけではない。私がやっているのは、後講釈であって、将来の予測ではないからだ。私が将来について述べているのは、「仮にこうなれば、こうなる」という条件付きの予測にすぎない。 「将来の株価や為替レートを予測することはできない」とは、どんなに優れた分析能力を持つ人が、どんなに大量のデータを分析してやったとしても、同じことである。これは、ファイナンス理論で「効率的市場仮説」と呼ばれる考えだ。 「金融リテラシーを身につけることが重要」とよく言われる。そのとおりだが、もっとも重要なのは、株価を予測する手法を学ぶことではない。「株式投資で確実に利益を上げる投資法は存在しない」と認識することだ』、「将来の株価や為替レートを予測することはできない」とは、「ファイナンス理論で「効率的市場仮説」と呼ばれる考えだ・・・もっとも重要なのは、株価を予測する手法を学ぶことではない。「株式投資で確実に利益を上げる投資法は存在しない」と認識することだ」、同感である。

第四に、8月6日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの鷲尾 香一氏による「日本株を襲うもうひとつの「不都合な真実」…日銀利上げで「円高デフレ大逆流」が招く「日経平均2万8000円台」の悪夢のシナリオ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/135107?imp=0
・植田・日銀が犯した「3つの過ち」  8月5日の日本株の大暴落で、岸田文雄首相や植田総裁は日本版「ブラックマンデー」を演出した戦犯として歴史に刻まれることとなった。 前編『「日本株大暴落」戦犯たちの憂鬱と個人投資家の阿鼻叫喚…なにが日本版ブラックマンデーの引き金を引いたのか』で紹介したとおり、日本株暴落の引き金を引いた日本銀行の政策決定会合である。日銀と政府は大きな3つの間違いを犯した。 ひとつは、利上げと量的金融緩和策として行われていた長期国債の買入額の減額を同時に発表したこと。次に植田総裁がさらなる利上げに言及したこと。そして、米国FOMCの動向を読み間違えたことだ。 これによって、日本株は過去最大の下げ幅を記録したのだった』、なるほど。
・『しょせんは円安による株高だった…  直近の経過を振り返ろう。日経平均株価の終値は、日銀が利上げを発表した7月31日の3万9101円から翌8月1日には3万8126円に975円下落した。 しかし、米国の経済統計により、景気減速観が強まると、米国株の大幅な下げと相まって、8月2日には日経平均株価の終値は前日比2216円安の3万5909円と、下げ幅はブラックマンデー翌日の1987年10月20日(3836円安、14.9%安)以来およそ36年10ヵ月ぶりの大きさで、史上2番目の下げ幅となった。 さらに、8月2日発表の米国の7月雇用統計が非農業部門雇用者数11万4000人増と予想を下回り、失業率の前月比が21年9月以来約3年ぶりの高水準となる4.3%に上昇したことで米国の景気減速懸念が強まり、週明けの8月5日の日経平均株価は前週末比4451円安の3万1458円と史上最大の下げとなった。 7月31日に1ドル=153円台だった為替レートは8月5日には141円台まで円高が進行。わずか4営業日で10円以上という急激な円高となった。 日経平均株価の上昇は、円安進行を背景に進んできたといっても過言ではない。1ドル=136円台前半だった23年2月の日経平均株価は2万7446円だった。その後、円安の進行とともに、日経平均株価は上昇を続けたのである。 となれば、どの程度、円高がすすめば株価がどうなるかは見えてくる』、「1ドル=136円台前半だった23年2月の日経平均株価は2万7446円だった。その後、円安の進行とともに、日経平均株価は上昇を続けたのである」、なるほど。
・『日経平均は正念場「2万8000円台を覚悟せよ」  今回の日銀の利上げを受けた為替相場、日経平均株価の動きを見ると、日経平均株価が3万6000円に下落した8月2日の為替レートは148円だ。そして、日経平均株価が4000円を超える史上最大の下げとなり、3万1000円台に下落した8月5日の為替レートは142円付近だった。 これは、多少のブレはあるものの、過去の日経平均株価の水準と為替レートの水準の関係に非常に近い。 植田総裁が「次のステップに行く」と明言したように、さらなる利上げがあるとすれば、パウエルFRB議長の「9月の利下げ開始もありうる」との発言と相まって、日本の利上げ、アメリカの利下げにより、円高はさらに進行することになる。市場では、すでに次の日銀の利上げ時期を12月との見方が強まっている。 となれば、円高が140円まで進めば、日経平均株価は3万円割れとなる可能性が大きい。場合によっては、2万8000円台まで下落する可能性すらある』、「円高が140円まで進めば、日経平均株価は3万円割れとなる可能性が大きい。場合によっては、2万8000円台まで下落する可能性すらある」、なるほど。
・『「物価高」は落ち着いてきている  問題は、実は日銀が利上げの根拠とする「物価の上振れリスク」には、すでに陰りが見えていることだ。 為替レートの動きと生鮮食品を除く消費者物価指数を並べてみると、見事なまでに円安進行が輸入物価の上昇を通して、国内物価高を演出していたことがわかる。 23年2月の為替レートが136円だった時、消費者物価指数は103.6だった。それが、24年6月に160円まで円安が進むと、消費者物価指数は107.8まで上昇している。この点では、確かに円安を止め、円高にすることで物価高を抑えることができる可能性は高い。 しかし、生鮮食品を除く消費者物価指数が前年同月比で上昇に転じたのは、21年9月からで23年1月には4.2%という高い伸びとなったが、その後は伸び率が低下基調をたどり、直近の6月には2.6%にまで低下している。) その上、上昇要因となっているのは、円安を踏まえたエネルギー価格の上昇だ。 生鮮食品およびエネルギーを除く消費者物価指数は、23年4~10月の半年間は4%台と高い伸びだったが、直近の6月には2.2%まで低下している。 日銀は物価上振れリスクの要因のひとつとして、エネルギー価格の上昇に対する政府の補助が終了することをあげているが、エネルギーを除けば、輸入物価上昇ペース鈍化の影響から物価上昇は収まりつつあり、為替円高が進めば、日銀が掲げる2%の物価目標の達成は危ういものとなる。 今回の急激な円高進行により物価が下落に転じた場合、日銀は果たしてどのような金融政策を選択するのであろうか』、「エネルギーを除けば、輸入物価上昇ペース鈍化の影響から物価上昇は収まりつつあり、為替円高が進めば、日銀が掲げる2%の物価目標の達成は危ういものとなる」、なるほど。
・『やっぱり露呈した「稚拙な市場との対話」  そもそも、生鮮食品を除く消費者物価指数が前年同月比で4%を超える上昇となった23年初めには、日銀は利上げを強く否定していた。それが、物価高が落ち着き始めている今になって、根拠の薄い上振れリスクを理由に利上げに踏み切ったのは、不可解ほかならない。 物価上昇が厳しかった時から、緩やかに小幅な利上げを行っていれば、今回のような日経平均株価の大暴落という事態を引き起こすことはなかったはずだ。 以前から筆者は、日銀はフォワードガイダンスが致命的に下手だと指摘している。 アメリカでは、FRBがFOMCで9月の利下げを示唆するなど、市場が利下げに対して用意周到な準備ができるようにしている。日銀も利上げの方針を事前に市場に浸透させていくことができたはずだ。 日経平均株価の史上最大の下落は、日銀の稚拙な金融政策が原因にほかならない。 連載記事『ドル円147円割れで「株価下落」が始まった…!日銀・植田総裁が引き金を引く「日本株3万円割れ」に警戒せよ!』では、4ヵ月ほど前の日銀政策の状況について論じているのでこちらも参考としてほしい』、「日銀も利上げの方針を事前に市場に浸透させていくことができたはずだ。 日経平均株価の史上最大の下落は、日銀の稚拙な金融政策が原因にほかならない」、同感である。

第五に、9月12日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの鷲尾 香一氏による「まさか日銀で「植田総裁vs.内田副総裁」バトル勃発か…つぎの日銀会合は「円高急進」を覚悟せよ!正副総裁「意見の違い」で鮮明になった「ふたりの溝」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/137104?imp=0
・『7月大暴落、日銀の犯した罪  まもなく、日銀の金融政策決定会合が開催される。この会合の最大の注目点は、植田和男総裁の記者会見となるだろう。もしかしたら、この会見で相場に一波乱ということもあるかもしれない。今回は、その理由を説明していこう。 8月23日、植田総裁は衆議委員の財政金融委員会に出席した  前回、7月の日銀政策決定会合での利上げによって、為替相場は円安から円高基調に転換した。だが、それは株価の大暴落という大きな痛みを伴うものとなり、株式市場は今なお、不安定な状況にある。 円高転換で、たしかに輸入物価上昇は抑制されつつあるが、想定外の“令和の米騒動”があって米価は急上昇した。国民生活はなお大きな負担を強いられている。 筆者は8月6日に寄稿した『日本株大暴落」戦犯たちの憂鬱と個人投資家の阿鼻叫喚…なにが「日本版ブラックマンデー」の引き金を引いたのか』で、日銀は大きな3つのまちがいを犯したと指摘した。 1点目は、利上げと量的金融緩和策として行われていた長期国債の買入額の減額を同時に発表したこと。2点目は植田総裁がさらなる利上げに言及したこと。そして3点目は米国の動向を読みちがえたことだ。 しかも、その後の市場の混乱の火消しをする際に、植田総裁と内田眞一副総裁がそれぞれ異なる説明をしており、これはさらなる不安要素となるかもしれない』、「1点目」、「2点目」は間違いとは思わない。
・『植田総裁と内田副総裁の「意見の食いちがい」  7月の利上げ決定後の記者会見で、植田総裁は先行きについて「経済・物価情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく方針」を示している。 利上げが遅れれば、あとの利上げ幅が大幅なものになり、経済の安定を損ねるという「ビハインド・ザ・カーブ」(政策が後手に回る)リスクがあるからだと説明したのである。 ところが、8月7日に函館市で行われた金融経済懇談会で、次期総裁の有力候補とされる内田副総裁は「金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはありません」と述べた。これは為替が急激に円高に振れ、株式相場が大混乱に陥っていたことを受けた火消しではあるが、筆者は内田副総裁が利上げしない理由としてあげたことが気になっている。 それは「円安が修正された結果、物価上昇上振れリスクが小さくなった」こと、また「円安修正は政策運営に影響する」という2点である。 つまり、利上げによって円高が進行したことで、さらなる利上げの必要性が低下したと言っているように聞こえるのだ。 さらに、内田副総裁は「わが国の場合、一定のペースで利上げをしないとビハインド・ザ・カーブに陥ってしまうような状況ではありません」と述べ、金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはないと明言した。この内田副総裁の発言は、植田総裁の発言を180度ひっくり返すものだ』、「内田副総裁」の発言は、あくまで「株式相場が大混乱に陥っていたことを受けた火消し」であって、「植田総裁」と意見が根本的に食い違っているとみるのは誤りだと思う。
・『意見の食い違いから起こる市場の混乱  正副総裁の方針の違いは、市場が日銀のフォワードガイダンスを信用できなくなり、大きな混乱の要因となる。 ところが、二人の意見の食い違いを裏づけるように、8月23日に国会閉会中審査の衆院・財政金融委員会に出席した植田総裁は、内田副総裁の発言を否定する姿勢を示したのである。 まず、7月の利上げ後に株価が大暴落した点について、「8月2日の米国7月分雇用統計が予想以上に下振れたことによるもの」と答弁し、日銀の利上げが要因ではないとの姿勢を貫いた。 さらに、「現在の実質金利は非常に低く、強い緩和環境を作っている」、また、「経済に大きな悪影響を与えずに追加利上げを進めることが妥当」との考えを示して、さらなる利上げに対する姿勢を変えなかった。 当然、委員からは植田総裁と内田副総裁の発言が食い違っていることについて、説明を求める質問がなされたが、なんと植田総裁は明確な答弁をしなかった。説明が行われなかったことで、かえって両者の間の溝が鮮明となってしまったのだ。 繰りかえすが、方針が明確でない金融当局の動きは、市場が見通しを立てるのを阻害し、混乱のひとつの要因ともなりえる。 では、こうした不安要素をかかえながら、9月19・20日の金融政策決定会合ではどのような決定が行われるのだろうか。 筆者の分析については、つづく後編記事『つぎの「日銀会合」でまた波乱か…!「植田総裁vs.内田副総裁」バトル勃発で、いま注目が集まっている「植田発言」』でじっくりとお伝えしていこう』、「内田副総裁」が「植田総裁」では言えないことも補足的に説明するのは、「副総裁」としての当然の責務だ。それを根本的な見解が食い違っているかのように捉えるのは、筆者の常識を疑いたくなる。
タグ:金融政策 (その48)(「断捨離」をした日銀は7月末にどう動くのか 渡辺努・東大教授の「物価理論」を解説しよう、日銀は為替を金融政策の対象に入れるべきだ このままでは金融政策への信頼が失われる懸念、日経平均の大暴落は「超円安」依存経済への警鐘だ…!市場を大パニックに陥れた「予想外の原因」、日本株を襲うもうひとつの「不都合な真実」…日銀利上げで「円高デフレ大逆流」が招く「日経平均2万8000円台」の悪夢のシナリオ、まさか日銀で「植田総裁vs.内田副総裁」バトル勃発か…つぎの日銀会合は「円高急進」を覚悟せよ!) 東洋経済オンライン 小幡 績氏による「「断捨離」をした日銀は7月末にどう動くのか 渡辺努・東大教授の「物価理論」を解説しよう」 「筆者は1から3まで120%渡辺理論に賛成で、渡辺理論の世界一の理解者であると同時に、世界一、渡辺理論に近い意見を持っているのが小幡績である。しかし、筆者は4から6には強く反対で、ここが渡辺・小幡の大きな対立点である。目指すゴールは一緒、問題認識も一緒、しかし、アプローチが180度(いや90度かな?)異なる」、なるほど。 「1については」「日本の企業は、価格設定を経営の戦略変数に入れていないことがほとんどで、本当に駄目だ。これこそ利益率が低い理由であり、ひいては日本の生産性やGDP(付加価値率)が伸びない理由であるとも指摘してきた。要は「ぼったくり」とまではいわないが、消費者からむしり取ってでも儲けようという意欲、気概、力が足りないのである・・・2については・・・日本では価格はありますが、動いていなければ価格メカニズムがないに等しい。その結果として資源配分が歪んできた」。 これには筆者も200%賛成だ。したがって、渡辺理論の日本の物価への懸念はミクロ経済学的な資源配分の歪み、ということに尽きるのである」、なるほど。 「筆者は3については80%賛成できる。ただ、その中身は、渡辺教授と筆者では少し違う。渡辺教授はこう言う。 「企業は通常、価格を決めるパワーを持っているわけですが、それが奪われてしまった。そうすると企業は、何か新しい商品を作るために投資して、高い価格をつけて儲けることができません。最初からいい商品を作ることをあきらめる。価格をコントロールできない環境では、企業はアグレッシブな行動ができなくなってしまう。 それでも当然、収益を上げなければいけないので、じゃあコストカットとなって、経済がどんどん後ろ向きに回ってしまう。これがデフレの最大の弊害だと思っています」。 筆者は違うと思う。これは企業がデフレを言い訳にして何もしていないだけだ。新しい製品なら新しい価格が付く。既存の製品の価格が変えられないからこそ、アグレッシブに新しいことをする。不況こそが次への脱皮を促す。だから、原因はデフレではなく、個々の企業が原因だと思う」、なるほど。 「4から6は一体となっている主張だが、筆者はそれぞれ反対するところがある。まず、4だ。渡辺教授はこう言っている。 「僕は、価格が動かないことで実体経済が歪むコストが大きいから、金融市場では少々のことが起きても仕方がないと思っています。 少々のこと、というのがどの程度か、ということが問題だが、この文脈では、金融市場とは為替の話だった。筆者としては、為替の歪みはとてつもなく大きく、かつ金融政策により生じてしまった責任があると思うし(つまりやるべきでなかった)、一方で、今後円安を止める力もあると思っている。 ) そして5は、もっとも意見が異なる。渡辺教授は、このように主張する。「社会全体が共通の認識として「価格は変わらないもの」と信じてしまっていて、個々の企業が解決できる問題じゃなかったんです」。 つまり、この価格メカニズム機能不全現象が、個々の企業ではどうしようもない。消費者を中心として社会全体が、価格は変わらない、と思ってしまっているから、マクロで社会全体の意識を変えなければいけない、と思っている。 一方、筆者の意見は、企業も消費者もみんなが萎縮した形で均衡しているのだから、マクロの金融政策では抜け出せず、企業が行動を変えるようなインセンティブを与えるとか、ミクロ政策を打ち出さないと効かないのでは、というものだ」、なるほど。 「渡辺教授は、何とか価格メカニズム復活のために、現状の委縮均衡の完全なる破壊に執念を燃やしている、あるいは、今が、最後の最大のチャンスだと思っているようだ。 「今は同調だろうがなんだろうが、価格が動いてくれればもうけもの。スーパーなどの販売価格をPOSデータでみても、これまで価格が動かない商品の割合が7割だったのが減ってきています。顕著に減ってきています。価格も賃金も動かない状態からとにかく脱出する。そうなりつつあるから、しっかり固めるときだと思います」、なるほど。 「6については、結果的には意見は一致・・・しかし、今後については、私とは意見が異なるようだ。 「3月の日銀の決定は、要らないモノを捨てる『断捨離』なんだと説明しています。断捨離のポイントは、要るモノと要らないモノを区別することです。要るモノとして残したのが、バランスシートです。バランスシートが大きい状態はやっぱり望ましいんですよ」。 さあ、7月30~31日の金融政策決定会合で、植田和男・日銀総裁は、どの程度国債買い入れを減らすのか。そして、それはバランスシートのサイズを意識したものになるのか、それとも、毎月の購入額というフローの額を重要視するのか。注目だ」、さあ、どうなるだろう。 小幡 績氏による「日銀は為替を金融政策の対象に入れるべきだ このままでは金融政策への信頼が失われる懸念」 「金融政策の目的は、経済、物価であり、為替はその経済と物価に影響を及ぼすから、アメリカの経済が日本経済に影響を与えるのと同様に、重要な要因だが、金融政策の決定においてはあくまで外部的な環境要因として扱うということである」、なるほど。 「日本」では、「金融政策は、つねに緩和可能な最大限を行うことが求められ、継続された。 その結果、ゼロ金利の限界を超えて量的緩和、異次元緩和、イールドカーブコントロール(長短金利操作)と、次々とイノベイティブな金融政策が日銀によって発明された。) また、株式の買い入れという異常な(不可解な)政策まで動員された。日本では物価がほとんど上昇しなかったから、人々は、金融緩和を拡大しない日銀は、ケチでやる気がなく無能力であるかのように思った・・・ アベノミクスや異次元緩和に賛成していたほとんどの人々は、そういう物価原理主義とは無関係に、景気がよくなるに越したことはないし、金融緩和の弊害がインフレということなら、日本でインフレが起きるはずがないから、どんどん緩和すればいい、というだけの気持ちだった」、なるほど。 「インフレの要因のほとんどが供給側にあり、金融引き締めで需要を抑制しても、人手不足からの賃金上昇によるコスト高によるインフレだから、ほとんど効果はない。 それでも、中央銀行としては、インフレ率を下げるためには、需要抑制以外の手段はない。コスト高であったとしても、需要が増えれば、インフレは加速する可能性があり、効果がほとんどないとしても、金融引き締めをやめるわけにはいかないからだ。 この結果、人々の中央銀行への信頼、評価が下がり、長期的に、金融政策の効果が阻害される。金融緩和の局面になっても「緩和に後ろ向き だ、抑制気味だ」という批判が・・・続くことになる」、なるほど。 「メディアでは、日米の金利差が円安の要因と言っている。要は、世界で日本だけ金利が低いから円安なのか。日銀の責任じゃないか。「日銀は意味不明だ。何をやっているんだ」ということになる。) しかし、これは、日銀の人々には響かない。「われわれの目的は物価だ。そして、物価は悲願のインフレ率2%定着の最後のチャンスだ。ここで逃しては、この20年の戦いが無駄になる」ということで、人々と日銀の分断は、日本でも永久に残り、将来の金融政策への人々の信頼は永久に失われてしまうだろう」、なるほど。 「物価最優先の考え方は理論的にも間違っている。とりわけ日銀においてそうだ。 なぜなら、21世紀の成熟国の経済においては、金融政策は金融市場、つまり、株式や債券などのリスク資産市場と為替市場に直接大きな影響を与え、実体経済には間接的にしか影響しない。それが、日銀の異次元緩和で得た教訓だ。 期待では物価は動かない。そうであれば、直接影響を与える市場にターゲットを絞って、それを安定化させる、コントロールすることで、間接的に実体経済を安定化させ、健全な経済発展を導く。 それが、合理的なはずだ・・・21世紀には、金融市場の動向が主導して実体経済に影響を与えるのだから、金融市場を直接の目標とすべきだ。 つまり、為替をターゲットとし、実体経済にひずみをもたらさない為替を目標とする。「2%のインフレ率を目標とする」のように、経済主体の行動が、ファンダメンタルズではなく為替水準およびその変動から影響を受けないような為替水準にとどまるように、という目標を設定する。インフレ率の変動が実体経済に影響を与えないようにする、のとまったく同じ精神だ。 そして、「景気安定」という目標を「株式市場や債券市場の安定」・・・という目標に置き換え、これが実体経済に連動した形になるように安定化を図るべきなのだ」、金融政策の革命的な転換を主張している。 現代ビジネス 野口 悠紀雄氏による「日経平均の大暴落は「超円安」依存経済への警鐘だ…!市場を大パニックに陥れた「予想外の原因」」 「ここで重要なのは、「何が予想外のニュース(サプライズ)だったか?」という点だ。予測されていたことは、すでに株価に織り込み済みになっているはずだからである。株価を動かすのは、予想外のニュースだ」、その通りだ。 「8月5日(月)、終値は前営業日比で4451円安い3万1458円。史上最大の下落となった。7月11日につけた終値4万2224円に比べると、1万0766円(25.5%)の下げだ」、なるほど。 「今年に入ってから日本企業の業績が好調だったが、それは円安によるものだったのだ。それがこれから大きく変化するという予想で、日本の株価が下がったのだ」、なるほど。 「9月に通常の2倍の利下げに踏み切るとの見方が広まっているようだ。 仮にそうなれば、日米金利は一挙に大きく縮小することになり、為替レートに対して大きな影響が及ぶ。つまり、本格的な円高が進む可能性がある。実際にそうなれば、日本株に対する影響も簡単には元に戻らないものになるだろう」、なるほど。 「新NISAで株式投資を始めた人には大ショック」、政府としては何ら対応できないだろう。 「将来の株価や為替レートを予測することはできない」とは、「ファイナンス理論で「効率的市場仮説」と呼ばれる考えだ・・・もっとも重要なのは、株価を予測する手法を学ぶことではない。「株式投資で確実に利益を上げる投資法は存在しない」と認識することだ」、同感である。 鷲尾 香一氏による「日本株を襲うもうひとつの「不都合な真実」…日銀利上げで「円高デフレ大逆流」が招く「日経平均2万8000円台」の悪夢のシナリオ」 「1ドル=136円台前半だった23年2月の日経平均株価は2万7446円だった。その後、円安の進行とともに、日経平均株価は上昇を続けたのである」、なるほど。 「円高が140円まで進めば、日経平均株価は3万円割れとなる可能性が大きい。場合によっては、2万8000円台まで下落する可能性すらある」、なるほど。 「エネルギーを除けば、輸入物価上昇ペース鈍化の影響から物価上昇は収まりつつあり、為替円高が進めば、日銀が掲げる2%の物価目標の達成は危ういものとなる」、なるほど。 「日銀も利上げの方針を事前に市場に浸透させていくことができたはずだ。 日経平均株価の史上最大の下落は、日銀の稚拙な金融政策が原因にほかならない」、同感である。 鷲尾 香一氏による「まさか日銀で「植田総裁vs.内田副総裁」バトル勃発か…つぎの日銀会合は「円高急進」を覚悟せよ!正副総裁「意見の違い」で鮮明になった「ふたりの溝」」 「1点目」、「2点目」は間違いとは思わない。 「内田副総裁」の発言は、あくまで「株式相場が大混乱に陥っていたことを受けた火消し」であって、「植田総裁」と意見が根本的に食い違っているとみるのは誤りだと思う。 「内田副総裁」が「植田総裁」では言えないことも補足的に説明するのは、「副総裁」としての当然の責務だ。それを根本的な見解が食い違っているかのように捉えるのは、筆者の常識を疑いたくなる。
nice!(0)  コメント(0) 

今日は更新を休むので、明日にご期待を!

今日は更新を休むので、明日にご期待を!
nice!(0)  コメント(0) 

ロシア(その3)(3月モスクワのテロ事件はイスラム国の仕業だ! アメリカの警告を受け入れなかったプーチンのミス、ハバナ症候群 原因は音響兵器で実行部隊はロシア軍秘密機関「29155部隊」だった?、プリゴジン死亡で「ワグネル利権」の乗っ取りを狙う民間軍事会社の名前) [世界情勢]

ロシアについては、2018年7月28日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)(3月モスクワのテロ事件はイスラム国の仕業だ! アメリカの警告を受け入れなかったプーチンのミス、ハバナ症候群 原因は音響兵器で実行部隊はロシア軍秘密機関「29155部隊」だった?、プリゴジン死亡で「ワグネル利権」の乗っ取りを狙う民間軍事会社の名前)である。

先ずは、本年3月29日付け東洋経済オンラインが掲載した新聞通信調査会理事・共同通信ロシア・東欧ファイル編集長の吉田 成之氏による「3月モスクワのテロ事件はイスラム国の仕業だ! アメリカの警告を受け入れなかったプーチンのミス」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/744531
・『2024年3月22日に、モスクワ郊外のコンサートホールで140人以上の死者を出す銃撃テロ事件が起きてから約1週間が経過した。事件発生を聞いた瞬間、筆者の脳裏に、ある生々しい情景が浮かんだ。 1999年9月半ば、モスクワの巨大アパートで起きた爆破テロの現場の情景だ。当時、共同通信モスクワ支局長だった筆者は現場に足を踏み入れた瞬間、息を飲んだ』、興味深そうだ。
・『1999年のテロ事件  大きなビルの一角が上から下まで、ナイフでケーキの一部がきれいに切り取られたように、そこだけ完全に崩壊していたからだ。100人以上の住民が死亡した。 当時この事件を含めモスクワなど各地で4件の爆破テロが起き、計300人以上が死亡し、ロシア社会は騒然としていた。 当時首相になったばかりのプーチン氏は、この一連の爆破事件についてチェチェンのイスラム過激派の仕業と断定。第2次チェチェン戦争を開始して、独立運動を力で抑え込んだ。これによって国民から圧倒的支持を受けたプーチン氏は翌年春、大統領選で初当選した。 筆者はこの連続爆破テロ事件の真相について、旧ソ連国家保安委員会(KGB)のスパイだったプーチン氏が世論の支持を集めるために仕組んだ自作自演の謀略事件だったと当時も今も思っている。当時のロシア独立系メディアやモスクワにいた多くの西側記者仲間もそう思っていた。 この連続爆破事件は、戦争やテロといった流血の事態を起こす一方で、国内では政治的安定をもたらしてきた「プーチン時代」の血なまぐさい幕開けを告げる出来事だったと言える。) あれから四半世紀。今回のモスクワ郊外での銃撃テロ事件についても、当初、筆者はクレムリンによる自作自演ではないかとの疑いを持って情報分析を行った。 事件直前に行われた大統領選で5選を決めたばかりのプーチン氏としては、テロへの恐怖を再度国民に植え付けることで、国内を引き締め、自らの求心力を高めるという25年前と同じ構図ではないかと疑ったのだ。 しかし、情報を収集した結果、今回のテロは自作自演ではない、との判断に至った。すでに犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)の仕業と見るのが妥当だと考えている』、「1999年のテロ事件・・・モスクワなど各地で4件の爆破テロが起き、計300人以上が死亡し、ロシア社会は騒然としていた・・・当時首相になったばかりのプーチン氏は、この一連の爆破事件についてチェチェンのイスラム過激派の仕業と断定。第2次チェチェン戦争を開始して、独立運動を力で抑え込んだ。これによって国民から圧倒的支持を受けたプーチン氏は翌年春、大統領選で初当選した。 筆者はこの連続爆破テロ事件の真相について、旧ソ連国家保安委員会(KGB)のスパイだったプーチン氏が世論の支持を集めるために仕組んだ自作自演の謀略事件だったと当時も今も思っている。当時のロシア独立系メディアやモスクワにいた多くの西側記者仲間もそう思っていた・・・すでに犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)の仕業と見るのが妥当だと考えている」、なるほど。
・『ISとタリバン暫定政権との対立  ISはアフガニスタンのイスラム主義組織タリバン暫定政権との間で対立を深めている。ロシアは、そのタリバンにとって、数少ない事実上の「同盟国」と呼ばれており、ISが敵愾心を高めているからだ。 ロシアを標的にした事件はすでに起きていた。2022年9月、アフガニスタン・カブールのロシア大使館前で爆発があり、ロシア大使館の職員2人が死亡。ISが犯行声明を出したのだ。ISは、プーチン政権がアサド政権側に立ってシリア内戦に軍事介入したことにも強く反発している。 ある西側外交官は今回のテロ事件後、筆者に対しこう語った。「モスクワの事件がISの犯行であることは間違いない。それどころか、ISが世界各地で同様のテロを起こす可能性が出ている。アメリカ本土でも起きることを心配している」。 この外交官の発言の背景には、当然ながら、アメリカのバイデン政権がISによるテロ準備の動きを把握していたことがある。この事件が起こる直前、2回にわたってロシア政府に海外の過激派によるテロが起こる可能性を伝え、2回目ではISの可能性も伝えていたといわれる。) なぜウクライナ侵攻でプーチン政権と間接的に軍事的に対峙するバイデン政権が、テロ切迫の情報をモスクワに伝えたのか。それは、外国で犠牲者が出るような危険なテロが切迫しているとの情報を入手した場合、アメリカ政府は当該の外国政府に通告するという原則を定めているからだ。 このため、アメリカは対立するイランに対しても、2024年1月、イラン国内でのテロ情報を伝えている。 ロシア政府はこうしたアメリカの外交原則を承知していた。前例がすでにあったからだ。2019年12月、プーチン氏はロシアでのテロ情報が提供され、事件を未然に防ぐことができたと当時のトランプ大統領に対し、謝意を電話で伝えている』、「ウクライナ侵攻でプーチン政権と間接的に軍事的に対峙するバイデン政権が、テロ切迫の情報をモスクワに伝えたのか。それは、外国で犠牲者が出るような危険なテロが切迫しているとの情報を入手した場合、アメリカ政府は当該の外国政府に通告するという原則を定めているからだ・・・アメリカは対立するイランに対しても、2024年1月、イラン国内でのテロ情報を伝えている・・・2019年12月、プーチン氏はロシアでのテロ情報が提供され、事件を未然に防ぐことができたと当時のトランプ大統領に対し、謝意を電話で伝えている」、なるほど。
・『テロ情報を信用しなかったプーチン  しかしプーチン氏は今回、ワシントンからのテロ情報を信用しなかった。テロ発生の3日前、対テロ作戦の中核である連邦保安局(FSB)での会議に出席したプーチン氏はこう警告をはねのけた。 「これは、あからさまな脅迫である。ロシア社会を脅し、不安定化を狙ったものだ」 なぜプーチン氏は今回、アメリカの警告を受け入れなかったのか。やはり、ウクライナ侵攻で間接的にロシアと対峙するバイデン政権への反発があったと思われる。実際に、事件当夜のコンサートホール周辺の状況を見ると、厳重な警戒態勢をとっていたとは言えない。 これは、明らかにプーチン政権の手落ちである。西側であれば、テロ警備上で大きなミスを犯したとして、政権への批判の大合唱が起きるところだが、ロシアではそうはならない。真の野党も、報道の自由もないからだ。) 逆にプーチン政権は、この事件をウクライナや米欧への攻撃材料として利用している。プーチン氏は「過激なイスラム主義者」の犯行とする一方で、ウクライナの関与の可能性に触れた。 大統領の側近でもあるボルトニコフFSB長官に至っては、ウクライナとともに米英両国の情報機関が関与している可能性が高いとの見方も示した』、なるほど。
・『説得力に乏しいロシア側の主張  しかし、上記したようにテロ情報を提供したアメリカはもちろん、ウクライナも、ロシア本土への攻撃に際しては、民間人を対象としないという原則を掲げている。ロシア側の主張はいかにも説得力に乏しい。 筆者は2024年3月22日付「大統領選『5勝』のプーチンが乗り出す世界戦略」の中で、プーチン政権が、西側的法治主義を形式的に取り入れた従来の「ハイブリッド民主主義」をやめ、米欧的価値観を一切拒否する「反西側要塞国家」としての純化を始めたと報告した。 今回の事件でも、このプーチン政権の一層の強権化を象徴する場面があった。 事件の実行犯として逮捕された4人のタジキスタン人が法廷に連行された際、明らかに治安当局の取り調べを受けた際に拷問を受けていた痕跡があったのだ。 このうち、一人は片耳を切断され、別の一人は意識がないまま、車イスに乗せられていた。プーチン氏は2022年に拷問を禁止、厳罰の対象とすることをうたった拷問禁止法を成立させた。しかし、人権活動家によると、ロシアはこの法成立後も取り調べで実際には拷問は行われていたが、当局は隠そうとしていた。これが今や、隠そうともしなくなったのだ。 国際的注目を集めていた、反政権派指導者、ナワリヌイ氏の先日の収監中での事実上の殺害が象徴するように、今のプーチン政権には米欧からの違法行為批判を気にする気配はさらさらない。) こうしたプーチン政権の強権化を加速させているのが、3年目に入ったウクライナ侵攻だ。侵攻開始直後から、ロシア兵がウクライナ兵捕虜を殺害したり、ロシアの民間軍事会社ワグネル幹部が脱走した傭兵を殺害したとする動画がネット上に出回わっている』、「筆者は2024年3月22日付・・・の中で、プーチン政権が、西側的法治主義を形式的に取り入れた従来の「ハイブリッド民主主義」をやめ、米欧的価値観を一切拒否する「反西側要塞国家」としての純化を始めたと報告した。 今回の事件でも、このプーチン政権の一層の強権化を象徴する場面があった。このうち、一人は片耳を切断され、別の一人は意識がないまま、車イスに乗せられていた・・・プーチン政権の強権化を加速させているのが、3年目に入ったウクライナ侵攻だ。侵攻開始直後から、ロシア兵がウクライナ兵捕虜を殺害したり、ロシアの民間軍事会社ワグネル幹部が脱走した傭兵を殺害したとする動画がネット上に出回わっている」、恐ろしいことだ。
・『非人道的な残虐行為を犯すプーチン政権  プーチン政権は明らかに非人道的な残虐行為への感覚がマヒしている。ロシア社会全体の人権感覚も一層鈍くなっている。 こうした社会の大きな変化を背景に、先述の被疑者への当局による追及は今後さらに過酷になるだろう。 ロシアの人権活動家の間では、容疑者が、今後の取り調べの中で、ウクライナとの関わりを認める虚偽の自白を強制されたり、当局に協力しない場合、殺される事態を懸念する声も出ている。 この面で今回の捜査の行方は、今後の「プーチン・ロシア」全体の動向を占うひとつの試金石になるだろう』、「プーチン政権は明らかに非人道的な残虐行為への感覚がマヒしている。ロシア社会全体の人権感覚も一層鈍くなっている。 こうした社会の大きな変化を背景に、先述の被疑者への当局による追及は今後さらに過酷になるだろう。 ロシアの人権活動家の間では、容疑者が、今後の取り調べの中で、ウクライナとの関わりを認める虚偽の自白を強制されたり、当局に協力しない場合、殺される事態を懸念する声も出ている。 この面で今回の捜査の行方は、今後の「プーチン・ロシア」全体の動向を占うひとつの試金石になるだろう」、なるほど。

次に、4月2日付けNewsweek日本版「ハバナ症候群、原因は音響兵器で実行部隊はロシア軍秘密機関「29155部隊」だった?」を紹介しよう。
・『<世界各国でアメリカ政府職員を襲った耳鳴り、不眠などの症状はかねてから、エネルギー兵器か音響兵器による攻撃が原因ではないかと言われてきたが> いわゆる「ハバナ症候群」について、新たな調査報告が発表された。その背後に、エネルギー兵器を使用するロシア情報機関の工作員が存在していた可能性があるという内容だ。ハバナ症候群とは、キューバに駐在していたアメリカ政府職員を襲った、身体の衰弱を伴う謎の健康被害を指す。 『ハバナ症候群』の呼称で知られる原因不明の健康被害は、ロシアの対外軍事情報機関であるロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)によって用いられた「指向性のエネルギー兵器の使用が発端となっていた可能性がある」と、ロシア語の独立系メディア「ザ・インサイダー」と、米CBSのドキュメンタリー番組「60ミニッツ」、ドイツの「デア・シュピーゲル」誌の合同調査報告は伝えた。 今回の報告は、攻撃主体として「29155部隊」と呼ばれるロシア軍秘密機関も名指ししている。 特異な症状が最初に確認されたのは2016年、ハバナの大使館に駐在するアメリカ政府職員の訴えからだ。「ハバナ症候群」に罹患すると、記憶の喪失、耳鳴り、不眠、脳損傷のような兆候など、幅広い症状が表れた。アメリカの国内外で生活する1000人以上の人が、この「ハバナ症候群」にかかったとされている。なお、アメリカの情報機関では、この症候群を公式には「特異な健康事案」と呼んでいる。) 報告書によると、この「攻撃」の最初の事例は、2014年にドイツのフランクフルトで記録されていた可能性があるという』、「特異な症状が最初に確認されたのは2016年、ハバナの大使館に駐在するアメリカ政府職員の訴えからだ。「ハバナ症候群」に罹患すると、記憶の喪失、耳鳴り、不眠、脳損傷のような兆候など、幅広い症状が表れた。アメリカの国内外で生活する1000人以上の人が、この「ハバナ症候群」にかかったとされている」、なるほど。
・『異変の現場にいた部隊  報告書は次のように言う。調査を行った3つの報道機関は、「29155部隊が兵器化された技術で実験を行っていたことを裏付ける証拠書類を発見した。この技術は、謎の症状の原因である可能性が高いと専門家が示唆しているものだ」 29155部隊の幹部は、「非致死性の音響兵器」に関する作戦遂行によって評価され、褒賞を受けた、とザ・インサイダーは記している。29155部隊に属する工作員たちが、「報告されている特異な健康事案の発生直前、あるいは発生時に、世界各地の拠点に駐在していたことが位置情報で確認されている」。 キューバをはじめ各国に駐在していたアメリカ政府職員が訴えたさまざまな症状については、かねてから、何らかのエネルギー兵器か音響兵器が原因ではないかとの臆測があり、注目を集めてきた。 スタンフォード大学医学部のデビッド・レルマン教授は2022年2月の時点でCBSニュースに対し、これらの症状に関する研究から、「脳の聴覚系および前庭系に損傷が起きていることを示す明確な証拠」が浮かび上がったと証言していた。 ハバナ症候群については、米国立衛生研究所(NIH)も2024年3月に研究結果を公表したが、健康被害の原因について新たな知見は見つからなかった。 2023年3月には、アメリカの情報機関による調査報告書が、外国の敵対勢力がこれらの症状の原因である「可能性は非常に低い」と結論づけていた』、「スタンフォード大学医学部のデビッド・レルマン教授は2022年2月の時点でCBSニュース」に語った証言と、「2023年3月には、アメリカの情報機関による調査報告書が、外国の敵対勢力がこれらの症状の原因である「可能性は非常に低い」と結論づけていた」というのでは全く逆の結論のようだ。未だに真相は霧の中のようだ。

第三に、6月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際政治アナリスト・危機管理コンサルタントの菅原 出氏による「プリゴジン死亡で「ワグネル利権」の乗っ取りを狙う民間軍事会社の名前」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/345730
・『ロシアの民間軍事会社のワグネルは、武装蜂起の失敗、そして創設者であるプリゴジン氏の死去で、一時代が終わった。しかし、ロシア国内ではワグネルの利権を得ようと新たなプレイヤーたちがうごめいているという。ワグネルのビジネスモデルの終焉とその後とは。※本稿は、菅原出著『民間軍事会社 「戦争サービス業」の変遷と現在地』(平凡社新書)を一部抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『新たな政府系露民間軍事会社と「ワグネル・ビジネスモデル」の終焉  8月26日、プーチン大統領は、ワグネルの戦闘員たちにロシア国家への忠誠を誓う署名を命じた。プーチンがワグネルや他の民間軍事会社の従業員に宣誓を要求したのは、こうした組織をより厳しい国家の管理下に置こうとする明確な動きだと言えるだろう。 クレムリンのウェブサイトに掲載されたこの政令は、軍のために仕事をしたり、モスクワがウクライナでの「特別軍事作戦」と呼ぶものを支援したりする者は誰でも、ロシアへの忠誠を正式に誓うことを義務づけている。またこの法令には、宣誓する者は指揮官や上級指導者の命令に厳格に従うことを約束するという一行が含まれている。 今後ロシア政府は、民間軍事会社を国家の管理統制下に置き、活用していくことになるのであろう。当然、ワグネルの利権は、ロシア軍及び軍傘下の別の民間軍事会社が乗っ取ることになるのだろう。 実際、プリゴジンの死亡が発表されると、ロシアの治安部隊やクレムリンに近いオリガルヒとつながりのある民間軍事会社が、数千人規模のワグネルの戦闘員を吸収しようと画策した。その中には、ロシア軍情報将校によって設立され、プーチンに近いオリガルヒが資金を提供し、国営企業によって管理されている会社もある。 その一つ、レドゥート(Redut)社は、中東で活動するロシア企業に警備を提供している。同社は2008年に元ロシア空挺部隊員や軍事情報部の将校たちによって設立された会社とされる。米政府は23年2月にこの会社を、「ロシア軍情報機関とつながりがある」として制裁対象にした。 ワグネルの元社員が23年7月に英国議会で行った証言によれば、レドゥートはプーチンと密接な関係を持つオリガルヒ、ゲンナジー・ティムチェンコが資金提供している会社だという。この人物は英国の議員たちに、シリアで展開するレドゥートの戦闘員は中東のロシア軍から弾薬の支援を受けていると証言した。 またレドゥートは、ワグネルと国防省が過去に敵対関係にあったことを理由に、国防省との契約を拒む元ワグネル戦闘員の受け皿になっていたという。 6月末にワグネルが反乱を起こした後、何人かのワグネルの上級指揮官は同社を見捨ててレドゥートに参加した』、「レドゥートはプーチンと密接な関係を持つオリガルヒ、ゲンナジー・ティムチェンコが資金提供している会社だという。この人物は英国の議員たちに、シリアで展開するレドゥートの戦闘員は中東のロシア軍から弾薬の支援を受けていると証言した。 またレドゥートは、ワグネルと国防省が過去に敵対関係にあったことを理由に、国防省との契約を拒む元ワグネル戦闘員の受け皿になっていたという。 6月末にワグネルが反乱を起こした後、何人かのワグネルの上級指揮官は同社を見捨ててレドゥートに参加」、なるほど。
・『プリゴジン個人のネットワークで回す ワグネルのビジネスモデル  もう一つの有力な会社がコンボイ社である。同社は、プリゴジンと決別する前にワグネルのアフリカ作戦を指揮していたコンスタンチン・ピカロフが率いる会社である。EUは2月にピカロフを制裁対象に指定し、彼が2018年7月に中央アフリカ共和国で3人のロシア人ジャーナリストの殺害を計画したと記している。 プリゴジンが亡くなる直前、ピカロフはコンボイ社がアフリカの8カ国で活動していることを明らかにしていた。「我々はアフリカの軍人に新しい武器を与え、その使い方を教える」と彼はロシアの調査サイト「iStories」に語っていた。 また23年8月21日に「テレグラム」に掲載された広告でコンボイ社は、アフリカでロシアの偵察・攻撃ドローンを指揮するボランティアを募集していると宣伝していた。 クレムリンを批判するロシアの富豪ミハイル・ホドルコフスキー氏が設立したロシアの調査機関「ドシエ・センター」によると、コンボイ社はオリガルヒでプーチンの側近であるアルカディ・ローテンベルクや国営VTB銀行から22年に数億ルーブルを受け取っていたという。 プリゴジンが亡くなる前日、ロシアのユヌス=ベク・イェフクロフ国防副大臣はリビアを訪問し、ワグネルがアフリカに進出した最初の国であるリビアの軍閥ハリファ・ハフタル将軍に会ったことが報じられた。米メディアによると、この時同国防副大臣は「ワグネルの部隊を別の民間軍事会社が引き継ぐ」と説明したという。民間軍事会社が戦闘員たちに給料を支払うが、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)の将校たちが厳しく管理することも同時に伝えられたという。 同紙によれば、この会談にはピカロフ氏も同席しており、彼のコンボイ社が北アフリカのワグネルの利権を引き継ぐ最有力候補になっていると伝えられた。 プリゴジンは様々な分野のビジネスを手掛けてきたが、ロシアの二つのスパイ機関、すなわち対外情報機関である対外情報庁(SVR)とGRUが、プリゴジン利権をめぐって争っているとの情報も飛び交った。 またSVRがワグネルのプロパガンダや外国をターゲットにしたネット上の偽情報発信を行ってきた情報関連のアセットを吸収し、国防省とGRUが民間軍事系のビジネス部門を取り込むことで「棲み分け」が出来た可能性も指摘された。この場合、GRUの管理下でレドゥートやコンボイといったロシアの民間軍事会社が活動する形になるのだろう。) いずれにしても、プリゴジンが自由に動き回りワグネルの利権を拡大させてきた時代は終わったと言える。プリゴジンの個人的なネットワークを通じて、違法な鉱山開発や資源取引でプロジェクトをファイナンスし、民間軍事会社のオペレーションを回すという“ワグネルのビジネスモデル”は、終焉を迎えたのである』、「プリゴジンは様々な分野のビジネスを手掛けてきたが、ロシアの二つのスパイ機関、すなわち対外情報機関である対外情報庁(SVR)とGRUが、プリゴジン利権をめぐって争っているとの情報も飛び交った。 またSVRがワグネルのプロパガンダや外国をターゲットにしたネット上の偽情報発信を行ってきた情報関連のアセットを吸収し、国防省とGRUが民間軍事系のビジネス部門を取り込むことで「棲み分け」が出来た可能性も指摘された。この場合、GRUの管理下でレドゥートやコンボイといったロシアの民間軍事会社が活動する形になるのだろう・・・プリゴジンが自由に動き回りワグネルの利権を拡大させてきた時代は終わったと言える。プリゴジンの個人的なネットワークを通じて、違法な鉱山開発や資源取引でプロジェクトをファイナンスし、民間軍事会社のオペレーションを回すという“ワグネルのビジネスモデル”は、終焉を迎えたのである」、なるほど。
・『警備、軍事訓練から政府の代理人までワグネルという規格外の民間軍事会社  ここまでワグネルの物語を主に述べてきたが、この「規格外」の会社を民間軍事会社の歴史にどう位置づけるか、その総括は容易ではない。ワグネルは、民間軍事会社の標準サービスである警備、警護や軍事訓練等を提供する場合もあれば、ヴィネル社のように「政府の代理人」としての役割も果たしていた。 またエグゼクティブ・アウトカムズのように戦闘サービスを請け負うだけでなく、途上国で資源開発にも携わり、密輸やマネーロンダリング等の国際犯罪にも手を染めた。ロシアという国家の裏仕事を手掛ける何でも屋として、一時期はその存在や活動を否定していたが、プリゴジンがワグネル設立を公に認めただけでなく、自らSNSで自分たちの活動を公表し、軍や政府を公然と非難し、最後は武装蜂起までしてしまったのである。 この背景にはプリゴジンという個性豊かな人物の存在があり、彼とプーチン大統領の個人的な関係が彼を大胆にさせた可能性を指摘出来るだろう。またそれに加え、プリゴジンがSNSを使って自らの情報を発信し、世界中にフォロワーを拡大させ、行き詰まりをみせるウクライナ戦争に対する人々の不満を背景に、ロシア軍上層部への批判を自らのパワーに変えていったという情報社会の時代的な側面があったことも見逃せない。 SNSがなければ、プリゴジンがこれほど効果的にロシア軍上層部を攻撃し、ロシア社会での影響力を強め、自身の力を過信することはなかったのではないか、と思われるからである。 そう考えてみると、今後の世界においては、生成AI、ディープフェイク、自律型ドローンのような、軍隊以外のアクターが容易に入手可能で兵器転用も可能な技術が、ワグネル以上に危険な民間軍事会社を生むおそれがあるのではないか、と思わざるを得ない。 いずれにしても、ワグネルは、プーチン・ロシアの対外戦略の暗部や、政治や軍事エリートたちの利権争い、そして、ロシア社会の閉塞感を反映する鏡のような存在だったと言えるのではないだろうか』、「今後の世界においては、生成AI、ディープフェイク、自律型ドローンのような、軍隊以外のアクターが容易に入手可能で兵器転用も可能な技術が、ワグネル以上に危険な民間軍事会社を生むおそれがあるのではないか、と思わざるを得ない・・・ワグネルは、プーチン・ロシアの対外戦略の暗部や、政治や軍事エリートたちの利権争い、そして、ロシア社会の閉塞感を反映する鏡のような存在だったと言えるのではないだろうか・・・SNSがなければ、プリゴジンがこれほど効果的にロシア軍上層部を攻撃し、ロシア社会での影響力を強め、自身の力を過信することはなかったのではないか、と思われるからである。 そう考えてみると、今後の世界においては、生成AI、ディープフェイク、自律型ドローンのような、軍隊以外のアクターが容易に入手可能で兵器転用も可能な技術が、ワグネル以上に危険な民間軍事会社を生むおそれがあるのではないか、と思わざるを得ない。 いずれにしても、ワグネルは、プーチン・ロシアの対外戦略の暗部や、政治や軍事エリートたちの利権争い、そして、ロシア社会の閉塞感を反映する鏡のような存在だったと言えるのではないだろうか」、ロシア独特のワグネルのような民間軍事組織は、今後どうなっていくのだろうか。
タグ:東洋経済オンライン ロシア (その3)(3月モスクワのテロ事件はイスラム国の仕業だ! アメリカの警告を受け入れなかったプーチンのミス、ハバナ症候群 原因は音響兵器で実行部隊はロシア軍秘密機関「29155部隊」だった?、プリゴジン死亡で「ワグネル利権」の乗っ取りを狙う民間軍事会社の名前) 吉田 成之氏による「3月モスクワのテロ事件はイスラム国の仕業だ! アメリカの警告を受け入れなかったプーチンのミス」 「1999年のテロ事件・・・モスクワなど各地で4件の爆破テロが起き、計300人以上が死亡し、ロシア社会は騒然としていた・・・当時首相になったばかりのプーチン氏は、この一連の爆破事件についてチェチェンのイスラム過激派の仕業と断定。第2次チェチェン戦争を開始して、独立運動を力で抑え込んだ。これによって国民から圧倒的支持を受けたプーチン氏は翌年春、大統領選で初当選した。 筆者はこの連続爆破テロ事件の真相について、旧ソ連国家保安委員会(KGB)のスパイだったプーチン氏が世論の支持を集めるために仕組んだ自作自演の謀略事件だったと当時も今も思っている。当時のロシア独立系メディアやモスクワにいた多くの西側記者仲間もそう思っていた・・・すでに犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」(IS)の仕業と見るのが妥当だと考えている」、なるほど。 「ウクライナ侵攻でプーチン政権と間接的に軍事的に対峙するバイデン政権が、テロ切迫の情報をモスクワに伝えたのか。それは、外国で犠牲者が出るような危険なテロが切迫しているとの情報を入手した場合、アメリカ政府は当該の外国政府に通告するという原則を定めているからだ・・・アメリカは対立するイランに対しても、2024年1月、イラン国内でのテロ情報を伝えている・・・2019年12月、プーチン氏はロシアでのテロ情報が提供され、事件を未然に防ぐことができたと当時のトランプ大統領に対し、謝意を電話で伝えている」、なるほど。 「筆者は2024年3月22日付・・・の中で、プーチン政権が、西側的法治主義を形式的に取り入れた従来の「ハイブリッド民主主義」をやめ、米欧的価値観を一切拒否する「反西側要塞国家」としての純化を始めたと報告した。 今回の事件でも、このプーチン政権の一層の強権化を象徴する場面があった。このうち、一人は片耳を切断され、別の一人は意識がないまま、車イスに乗せられていた・・・ プーチン政権の強権化を加速させているのが、3年目に入ったウクライナ侵攻だ。侵攻開始直後から、ロシア兵がウクライナ兵捕虜を殺害したり、ロシアの民間軍事会社ワグネル幹部が脱走した傭兵を殺害したとする動画がネット上に出回わっている」、恐ろしいことだ。 「プーチン政権は明らかに非人道的な残虐行為への感覚がマヒしている。ロシア社会全体の人権感覚も一層鈍くなっている。 こうした社会の大きな変化を背景に、先述の被疑者への当局による追及は今後さらに過酷になるだろう。 ロシアの人権活動家の間では、容疑者が、今後の取り調べの中で、ウクライナとの関わりを認める虚偽の自白を強制されたり、当局に協力しない場合、殺される事態を懸念する声も出ている。 この面で今回の捜査の行方は、今後の「プーチン・ロシア」全体の動向を占うひとつの試金石になるだろう」、なるほど。 Newsweek日本版「ハバナ症候群、原因は音響兵器で実行部隊はロシア軍秘密機関「29155部隊」だった?」 「特異な症状が最初に確認されたのは2016年、ハバナの大使館に駐在するアメリカ政府職員の訴えからだ。「ハバナ症候群」に罹患すると、記憶の喪失、耳鳴り、不眠、脳損傷のような兆候など、幅広い症状が表れた。アメリカの国内外で生活する1000人以上の人が、この「ハバナ症候群」にかかったとされている」、なるほど。 「スタンフォード大学医学部のデビッド・レルマン教授は2022年2月の時点でCBSニュース」に語った証言と、「2023年3月には、アメリカの情報機関による調査報告書が、外国の敵対勢力がこれらの症状の原因である「可能性は非常に低い」と結論づけていた」というのでは全く逆の結論のようだ。未だに真相は霧の中のようだ。 ダイヤモンド・オンライン 菅原 出氏による「プリゴジン死亡で「ワグネル利権」の乗っ取りを狙う民間軍事会社の名前」 菅原出著『民間軍事会社 「戦争サービス業」の変遷と現在地』(平凡社新書) 「レドゥートはプーチンと密接な関係を持つオリガルヒ、ゲンナジー・ティムチェンコが資金提供している会社だという。この人物は英国の議員たちに、シリアで展開するレドゥートの戦闘員は中東のロシア軍から弾薬の支援を受けていると証言した。 またレドゥートは、ワグネルと国防省が過去に敵対関係にあったことを理由に、国防省との契約を拒む元ワグネル戦闘員の受け皿になっていたという。 6月末にワグネルが反乱を起こした後、何人かのワグネルの上級指揮官は同社を見捨ててレドゥートに参加」、なるほど。 「プリゴジンは様々な分野のビジネスを手掛けてきたが、ロシアの二つのスパイ機関、すなわち対外情報機関である対外情報庁(SVR)とGRUが、プリゴジン利権をめぐって争っているとの情報も飛び交った。 またSVRがワグネルのプロパガンダや外国をターゲットにしたネット上の偽情報発信を行ってきた情報関連のアセットを吸収し、国防省とGRUが民間軍事系のビジネス部門を取り込むことで「棲み分け」が出来た可能性も指摘された。 この場合、GRUの管理下でレドゥートやコンボイといったロシアの民間軍事会社が活動する形になるのだろう・・・プリゴジンが自由に動き回りワグネルの利権を拡大させてきた時代は終わったと言える。プリゴジンの個人的なネットワークを通じて、違法な鉱山開発や資源取引でプロジェクトをファイナンスし、民間軍事会社のオペレーションを回すという“ワグネルのビジネスモデル”は、終焉を迎えたのである」、なるほど。 「今後の世界においては、生成AI、ディープフェイク、自律型ドローンのような、軍隊以外のアクターが容易に入手可能で兵器転用も可能な技術が、ワグネル以上に危険な民間軍事会社を生むおそれがあるのではないか、と思わざるを得ない・・・ ワグネルは、プーチン・ロシアの対外戦略の暗部や、政治や軍事エリートたちの利権争い、そして、ロシア社会の閉塞感を反映する鏡のような存在だったと言えるのではないだろうか・・・SNSがなければ、プリゴジンがこれほど効果的にロシア軍上層部を攻撃し、ロシア社会での影響力を強め、自身の力を過信することはなかったのではないか、と思われるからである。 そう考えてみると、今後の世界においては、生成AI、ディープフェイク、自律型ドローンのような、軍隊以外のアクターが容易に入手可能で兵器転用も可能な技術が、ワグネル以上に危険な 民間軍事会社を生むおそれがあるのではないか、と思わざるを得ない。 いずれにしても、ワグネルは、プーチン・ロシアの対外戦略の暗部や、政治や軍事エリートたちの利権争い、そして、ロシア社会の閉塞感を反映する鏡のような存在だったと言えるのではないだろうか」、ロシア独特のワグネルのような民間軍事組織は、今後どうなっていくのだろうか。
nice!(0)  コメント(0) 

小売業(一般)(その10)(ドンキ創業者・安田隆夫氏が語る人事論 毎年20%の支社長が降格、ドンキは2割降格でも社内が明るい 仕事を「ゲーム化」する4条件、ドンキ創業者・安田隆夫氏が「凱旋」会見 米国攻略へ3つの勝ち筋、ヨーカドー「33店舗閉店」で露見した"残酷な真実" 人も街も変化したのに なにも変われなかった) [企業経営]

小売業(一般)については、本年4月29日に取上げた。今日は、(その10)(ドンキ創業者・安田隆夫氏が語る人事論 毎年20%の支社長が降格、ドンキは2割降格でも社内が明るい 仕事を「ゲーム化」する4条件、ドンキ創業者・安田隆夫氏が「凱旋」会見 米国攻略へ3つの勝ち筋、ヨーカドー「33店舗閉店」で露見した"残酷な真実" 人も街も変化したのに なにも変われなかった)である。

先ずは、本年8月5日付けYahooニュースが転載した日経ビジネスオンライン「ドンキ創業者・安田隆夫氏が語る人事論 毎年20%の支社長が降格」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/af9549f428953720c9d2aadacc32ca21b3cc8523
・『破竹の進撃が止まらない。ディスカウントストア「ドン・キホーテ」(通称「ドンキ」)を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は、34期連続増収増益と波に乗る。『進撃のドンキ 知られざる巨大企業の深淵なる経営』を上梓(じょうし)した酒井大輔が、その強さの源泉を探る。 「はらわた力(りょく)」──。ドン・キホーテに脈々と伝わる造語である。 たとえ失敗して土壇場に追い詰められても、その経験を糧として勇猛果敢に立ち上がる。目の前の壁に跳ね返され、もがき苦しみながらも、不屈の闘志で最後に這い上がろうとする一念のことを指す。 はらわた力を思う存分鍛えられるよう、ドンキには失敗を容認する企業文化が浸透している。経営理念に掲げるのは「大胆な権限委譲」。仕入れ過ぎて在庫を大量に抱えてしまった、開発した商品が全く売れなかった、赤字を計上してしまった…そんなときも上司からとがめられることはない。ドンキでは誰もが派手にやらかしながら、一人前の商売人に育ってきたからだ。失敗による損失は、成功体験を積み重ねる礎と位置付けている。 社員全員が貪欲に成長を追い求める集団であり続けられれば、どれほど大きな企業になろうと安定志向に傾き、成長が鈍化することはない。「大企業病」になることなどない、はずだった。 しかし、売上高5000億円が近づいてきた2010年ごろから、創業者の安田隆夫氏に危機感が芽生え始めた。 増収率が鈍った時期に、創業者は何を考えたか? 増収率が鈍ってきた。意思疎通の遅れや、店舗の末端まで目が届かなかったことによる不正も起きた。この先も成長街道を突っ走るためには、社内の組織づくりも変えていく必要がある。安田氏がそう思案するようになったのは、この時期からだ(「ドンキ、35期連続増収増益に挑む カルト集団のごとき理念の徹底実践」参照)。 実際には増収増益は途切れることなく続き、10年代後半には、成長が再び加速する。19年にはユニーを完全子会社化し、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)というグループ全体で、ついに売上高1兆円を突破。07年の長崎屋買収に続く大型再編劇で、小売業界の台風の目に躍り出た。その半面、快進撃の反動なのか、大企業化による弊害も直視せざるを得ない状況に陥った』、「「はらわた力(りょく)」──。ドン・キホーテに脈々と伝わる造語である。 たとえ失敗して土壇場に追い詰められても、その経験を糧として勇猛果敢に立ち上がる。目の前の壁に跳ね返され、もがき苦しみながらも、不屈の闘志で最後に這い上がろうとする一念のことを指す。 はらわた力を思う存分鍛えられるよう、ドンキには失敗を容認する企業文化が浸透している。経営理念に掲げるのは「大胆な権限委譲」。仕入れ過ぎて在庫を大量に抱えてしまった、開発した商品が全く売れなかった、赤字を計上してしまった…そんなときも上司からとがめられることはない。ドンキでは誰もが派手にやらかしながら、一人前の商売人に育ってきたからだ。失敗による損失は、成功体験を積み重ねる礎と位置付けている。 社員全員が貪欲に成長を追い求める集団であり続けられれば、どれほど大きな企業になろうと安定志向に傾き、成長が鈍化することはない。「大企業病」になることなどない、はずだった・・・パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)というグループ全体で、ついに売上高1兆円を突破。07年の長崎屋買収に続く大型再編劇で、小売業界の台風の目に躍り出た。その半面、快進撃の反動なのか、大企業化による弊害も直視せざるを得ない状況に陥った」、「失敗を容認する企業文化が浸透」、日本企業には珍しいことだ。
・『支社を分割、究極の権限委譲へ  「1人の支社長が20店舗、30店舗と見るようになったんです。従業数にして1000人以上です。そもそも1人の人間が、集団を把握できる物理的な限界は140~150人という説がありますよね。そもそも支社として機能しているんですか、ということですよ」 15年に「勇退」を発表し、代表権のない創業会長兼最高顧問としてシンガポールに移住した安田氏が20年9月、ついに大なたを振るった。「ミリオンスター制度」という新たな人事評価システムを導入したのだ。 ドンキではもともと現場に権限を委譲する代わりに、しっかりと結果を出した従業員にはその努力をたたえ、昇給や昇進という形で報いる完全実力主義を掲げてきた。権限委譲と適切な評価、その両輪が回ることで組織の新陳代謝が図られ、ベンチャースピリットが保たれてきたのだ。しかし、支社長が目配りできないほどの店舗を統括していると、個店ごとの経営課題を十分にくみ取れないのはもちろん、そこで働く従業員一人ひとりの頑張りをきめ細かくフォローすることができない。人事評価の根幹が崩れてしまうのだ。 そこで「1ミリオン(100万)を単位に、(組織図を)大きく変えることにした」(安田氏)。目指したのは「究極」の権限委譲である。 それまで全国で20だった支社数を102に分割し、100万人(=1ミリオン)の商圏人口ごとに1人の「ミリオン支社長」を任命した。これにより、1人の支社長につき3~6店舗を管轄する体制に刷新。ミリオン支社長に上司はおらず、100万人の商圏、100億円の年商を持つエリアの“社長”として、完全に経営を任せる、という大胆なプランだ。 支社長ポストが大きく増えたことで、ドンキ初の女性支社長や、27歳の支社長(いずれも当時)が誕生した。ダイバーシティー(多様性)を推進しながら、実力のある人材はどんどん抜擢(ばってき)する、という姿勢を社内に見せつけたのだ』、「それまで全国で20だった支社数を102に分割し、100万人(=1ミリオン)の商圏人口ごとに1人の「ミリオン支社長」を任命した。これにより、1人の支社長につき3~6店舗を管轄する体制に刷新。ミリオン支社長に上司はおらず、100万人の商圏、100億円の年商を持つエリアの“社長”として、完全に経営を任せる、という大胆なプランだ。 支社長ポストが大きく増えたことで、ドンキ初の女性支社長や、27歳の支社長(いずれも当時)が誕生した。ダイバーシティー(多様性)を推進しながら、実力のある人材はどんどん抜擢(ばってき)する、という姿勢を社内に見せつけたのだ」、画期的だ。 
・『“入れ替え戦”で下位20%は自動降格  一人ひとりのミリオン支社長がそのエリアの収支に責任を持つことで、エリア全体の業績を高める“経営”に挑んでもらう。年間の利益貢献度で上位に入ったミリオン支社長は高額の報酬を手にできる一方で、下位20%に沈んだ場合、新たな支社長にとって代わられる。英国のプレミアリーグや日本のJリーグなどが取り入れる“入れ替え戦”の仕組みを、社内制度として導入したのだ。 安田氏は大相撲の番付になぞらえて、こう説明する。 「通年で下位20%のミリオン支社長は自動降格して幕下になる。上位になったら上位になったで、また新しい番付がその翌年から始まりますから、幕下に落ちないように頑張るしかないですね。もう一度、ゼロからやり直しですから」 荒療治に打って出たのは、好業績にあぐらをかくことなく、今一度原点を思い出してもらいたいからだ。「大企業病を排除して、(従業員)一人ひとりの個性、生きざまを把握しながら、みんなで一つの目的に向かっていける、有機的な結合を持った、いわばチームとしての組織をつくろうとしたんですよ」と安田氏は語る。 ミリオンスター制度には、支社長たるもの、部下の社員だけでなく、「メイトさん」と呼ぶアルバイト全員の名前まで、名札を見ずに言えないと失格だ──という安田氏の強い思いが反映されている。大企業になっても、駆け出しのスタートアップのように、仲間と互いに顔を突き合わせながら、難局を乗り越えていく。その積み重ねにより、店も個々人も成長していくという信念がそこにある。 ミリオンスター制度は、毎年全体の2割の支社長を入れ替えるという「劇薬」だけに、“副作用”も大きい。制度のひずみを正すため、新たな組織が設けられた。それが「アンサーマン本部」である。(次回に続く)』、「下位20%に沈んだ場合、新たな支社長にとって代わられる。英国のプレミアリーグや日本のJリーグなどが取り入れる“入れ替え戦”の仕組みを、社内制度として導入したのだ」、なるほど。

次に、8月7日付け日経ビジネスオンライン「ドンキは2割降格でも社内が明るい 仕事を「ゲーム化」する4条件」を紹介しよう。
・『この記事の3つのポイント 業績好調の「ドン・キホーテ」は、昇格も降格も活発だ 人事制度への不満などには「アンサーマン本部」が対応 完全実力主義をゲーム化する「競争の4条件」がある ディスカウントストア「ドン・キホーテ」(通称「ドンキ」)を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は、34期連続増収増益と波に乗る。完全実力主義で「ミリオンスター制度」の下、毎年2割の支社長が降格になる(前回「ドンキ創業者・安田隆夫氏が語る人事論 毎年20%の支社長が降格」)。厳しいようだが、不思議と社内は明るい。なぜか? 『進撃のドンキ 知られざる巨大企業の深淵なる経営』を上梓(じょうし)した酒井大輔が、謎に迫る。 PPIHのミリオンスター制度は、毎年全体の2割の支社長を入れ替えるという「劇薬」だけに、“副作用”も大きい。制度のひずみを正すため、新たな組織が設けられた。それが「アンサーマン本部」である。 常務執行役員でドン・キホーテ副社長と長崎屋社長を兼務する赤城真一郎氏の名刺を見ると「アンサーマン本部長兼人財本部長」と併記されていた。 「代表取締役」よりも前に「アンサーマン本部長」の肩書が出る、赤城真一郎氏の名刺(筆者撮影) 「アンサーマンってなんですか、ってよく言われるんですよ。一番上に書かれていますから」と赤城氏は笑う。確かに、名刺上では、ドンキや長崎屋の役員よりも「アンサーマン本部長」が前に出ている。それだけ社内で重要なポジションと目されているのだ。 「ミリオンスター制度って、とんでもないルールじゃないですか。結果を出せば、年収がザバーンと上がるという意味では(努力が報われる)画期的な制度ですが、一方で降格になる人も続出する。毎年毎年、制度の不備や文句が出てくるんですよ。それをサポートしていく部署が必要だよねということで、アンサーマン本部ができました」(赤城氏)。 降格された人の文句を聞くばかりではない。) アンサーマンとは、その名の通り「答える人」のこと。現場の悩みや不満、要望など「何でも聞いて、答えてあげる」任務を負う。 メンバーは赤城氏を本部長に、ドンキの取締役が「アンサーマン委員」として名を連ねる。「もっとかっこいい名前をいろいろ考えていたんですけど、『お前、本部がそんな偉そうな、仰々しい名前をつけてどうするんだよ。それで現場から(社内の)情報が集まると思っているのか。もっと考えろ』と安田から言われまして…」(赤城氏)。 なんでも相談室といった候補も挙がったというが、安田氏命名のアンサーマン本部に決まった。「これが業務サポート部とか一般的な名前だと、『何かのサポートをやっているんじゃないの』ぐらいの反応になっちゃうんですけど、アンサーマンだと『何ですか、それ』ってみんな興味を持つわけですよ。さすがだな、と思いましたね」と赤城氏は振り返る。アンサーマンに限らず、ドンキのユニークな制度が機能するのは、安田氏のネーミングセンスに負うところも大きい。 常務執行役員の赤城氏。もともとスポーツマンで、大学卒業後、しばらくは定職につかず、中途採用でドンキに入った(写真=古立 康三) ただし、競争にはルールが必要だ。ドンキにおける競争の4条件として、明確な勝敗の基準とタイムリミットを設け、プレーヤーに大幅な自由裁量権を与えて、ルールは最小限のシンプルなものにとどめるという方針を、安田氏は打ち出した。 実際のゲームもルールで縛り過ぎると、プレーしていて楽しくないだろう。工夫できる余地があるからこそ、どうやって攻略しようかとワクワクするものだ。そして勝敗の基準が明確であればこそ、負けても納得し、次は勝とうと前を向ける。 競争の面白さを最大限、引き出すルールと仕組みがあるから、完全実力主義を貫いても社内が回る。ミリオンスター制度は、とんでもない劇薬のように見えて、実はドンキらしさを突き詰めた究極のシステムともいえるのだ。 PPIHは、仕事をゲーム化する仕組みをつくり、社員のやる気を引き出すことにたけている。ゲームを持ち込むことで、仕事がもっと楽しくなる。ドンキが長年磨いてきたアミューズメント性の高い買い場(*)は、従業員自身がやりがいを胸に、楽しく仕事をしていることの裏返しでもある。 * 買い場:ドンキでは伝統的に売り場のことを「買い場」と呼ぶ。売り場は店側から見た言葉で、来店客からすれば商品を買う場所だからだ。 気づけば売上高2兆円。今や「セブン、イオン、ドンキ」として総合小売り3強の一角をなす。怒涛の34期連続増収増益を支える、逆張り戦略。アルバイト店員に商品の仕入れから値付け、陳列まで“丸投げ”する。現場が好き勝手やっているのに、利益が上がるのはなぜか? 知られざる巨大企業の強さに迫る1冊、2024年8月発売。 実は、かつてドンキの店舗には「アンサーマン」がいた。緑色のジャケットを着て、来店客の質問に答えるコンシェルジュ的な役割を果たしていた。アンサーマン本部=何かに答えてくれる部署として、現場にも違和感なく受け入れられるという皮算用もあった』、「降格になる人も続出する。毎年毎年、制度の不備や文句が出てくるんですよ。それをサポートしていく部署が必要だよねということで、アンサーマン本部ができました」(赤城氏)。 降格された人の文句を聞くばかりではない。) アンサーマンとは、その名の通り「答える人」のこと。現場の悩みや不満、要望など「何でも聞いて、答えてあげる」任務を負う。 メンバーは赤城氏を本部長に、ドンキの取締役が「アンサーマン委員」として名を連ねる・・・仕事をゲーム化する仕組みをつくり、社員のやる気を引き出すことにたけている。ゲームを持ち込むことで、仕事がもっと楽しくなる。ドンキが長年磨いてきたアミューズメント性の高い買い場(*)は、従業員自身がやりがいを胸に、楽しく仕事をしていることの裏返しでもある」、なるほど。
・『「数字至上主義」に走り過ぎていないか?  アンサーマン本部の仕事は、とにかく店舗に足を運び、店長や従業員の御用聞きに徹することだ。例えば、“番付”の上位に入るべく支社長が「数字至上主義」に走り、現場にむちゃを強いてはいないか。直属の上司にはなかなか直言できない問題点を、役員たちが直々に聞き取ることで、課題を把握し、早期の改善につなげるのが目的である。 赤城氏自身も全国のドンキの店舗を精力的に回り、「常務執行役員です、副社長ですじゃなくて、どこに行ってもアンサーマン本部ですと言うようにしている」という。ミリオンスター支社長から陥落してしまった社員もヒアリングの対象だ。当事者として辛酸をなめているからこそ、支社長としてもっとこうすればよかった、ミリオンスター制度のここを改善してほしいといった一家言を持っているからだ。 自動降格が発動し、ミリオンスター支社長の座を奪われても、金輪際チャンスが巡ってこないというわけではない。降格があるということは、昇格もある。実際、新たな支社長は社内の立候補者から選ばれ、その中には降格経験者も含まれている。PPIHの役員たち自身も、昇降格を繰り返しながら、着実にステップアップしてきた。 「敗者復活」の文化があるから、絶望することなく、捲土(けんど)重来を期して爪を研げる。“入れ替え戦”は己を見つめ直し、はらわた力(*)を蓄える絶好の機会になる。 * はらわた力:ドンキに脈々と伝わる造語。たとえ失敗して土壇場に追い詰められても、その経験を糧として勇猛果敢に立ち上がり、もがき苦しみながら、不屈の闘志で這い上がろうとする一念のことを指す。 ▽若くして“経営者”の経験を積める(ミリオンスター制度は見方によっては、恐怖政治のようだが、実力次第で誰にでもチャンスが与えられ、若くして“経営者”の経験を積めるというメリットがある。結果を出せば、待遇も良くなるため、モチベーションも上がりやすい。 この制度の導入以前は、支社長が長く変わらず、社内全体に硬直感が漂っていたという。それが今や、毎年20人ほどの新支社長の椅子を目指し、100人ほどが手を挙げる。「安定を求めている人にとっては、とんでもない制度なのかもしれないですが、うちの会社には安定という文字はないので」(赤城氏)。 完全実力主義を振りかざし過ぎると、社内がギスギスしそうなものだが、ドンキでは不思議とそうなっていない。いったい、何が違うのだろうか。 安田氏は、権限委譲によって、仕事が労働(ワーク)ではなく、競争(ゲーム)になる、と説く。企業理念をまとめた小冊子「源流」(「ドンキ、35期連続増収増益に挑む カルト集団のごとき理念の徹底実践」参照)にも、「仕事を『ワーク』ではなく『ゲーム』として楽しめ」という心得が記載されている』、「降格があるということは、昇格もある。実際、新たな支社長は社内の立候補者から選ばれ、その中には降格経験者も含まれている。PPIHの役員たち自身も、昇降格を繰り返しながら、着実にステップアップしてきた。 「敗者復活」の文化があるから、絶望することなく、捲土(けんど)重来を期して爪を研げる。“入れ替え戦”は己を見つめ直し、はらわた力(*)を蓄える絶好の機会になる・・・権限委譲によって、仕事が労働(ワーク)ではなく、競争(ゲーム)になる、と説く・・・「仕事を『ワーク』ではなく『ゲーム』として楽しめ」という心得が記載」、なるほど。

第三に、8月20日付け日経ビジネスオンライン「ドンキ創業者・安田隆夫氏が「凱旋」会見 米国攻略へ3つの勝ち筋」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00096/081900180/
・『この記事の3つのポイント 創業者の安田氏が9年ぶりに決算会見に登壇 米国市場の本格開拓への野望を語った 売上高2兆円突破や35期連続の増収増益は通過点 勇退した創業者が9年半ぶりに登壇――。ディスカウントストア「ドン・キホーテ」(通称「ドンキ」)を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の決算発表の場に安田隆夫氏が戻ってきた。35期連続の増収増益を達成した同社の会見に、なぜ安田氏が戻ってきたのか。その肉声に込められた思いと背景を、『進撃のドンキ 知られざる巨大企業の深淵なる経営』を上梓(じょうし)した酒井大輔が分析する。 9年半ぶりの“凱旋”だった。2024年8月16日、都内で開かれたPPIHの決算説明会。冒頭、壇上に立ったのは、ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を一代で巨大企業に押し上げた、創業会長兼最高顧問の安田隆夫氏だった。 15年6月期の中間決算説明会で「勇退する」と表明して以来のスピーチとなる。現在はシンガポールに居を構える安田氏が、なぜこの場にいるのか。本人も開口一番、自虐混じりにこう切り出した。 「なぜ後期高齢者である老体にムチを打ち、あえてこの場に出張ってきたか」』、興味深そうだ。 
・『「老体にムチ打ち」訴えたかったこと  それは、現場から頼み込まれたからだ、と続けた。「今年はドン・キホーテの開業35周年に当たる。節目とも言える年に売り上げ2兆円を突破した。ぜひ創業会長による記念スピーチを行ってほしい旨、経営陣から強い要請があったからにほかなりません」 ドンキを運営するPPIHは24年6月期、連結売上高が初めて2兆円を突破した。日本の小売業では史上5社目となる。売上高は前期比8.2%増の2兆950万円。営業利益は33.2%増の1401億円と大きく伸びた。 1989年、東京都府中市にドンキ1号店を開業して以来、売上高と営業利益は一貫して伸び続け、ついに35期連続増収増益を成し遂げたのだ。 特に利益面の躍進が目覚ましい。25年6月期までの中期経営計画で掲げた営業利益の目標は1200億円。それを1年前倒しで達成、それも目標額を約200億円上回る勢いだ。営業利益率は、前期の5.43%から6.69%へと高まった。セブン&アイ・ホールディングス(4.66%、24年2月期)、イオン(2.63%、24年2月期)という「小売り2強」をはるかに上回る水準だ。 インバンド(訪日外国人)客が急増し、ドンキの免税売上高が急伸しただけではない。業界では終わった業態と目されていた総合スーパー(GMS)事業が大きく利益貢献した。 PPIHは19年にGMS大手のユニーを完全子会社化。一部店舗をドンキに業態転換し、残る店舗「アピタ」「ピアゴ」にもドンキ流の個店経営を注入した。5年前と比べて営業利益は231億円増え、GMS事業の営業利益率は7.4%(24年6月期)まで上昇した。1%を下回るイオン、イトーヨーカ堂のGMS事業と比べると高収益ぶりが際立っている』、「営業利益率は、前期の5.43%から6.69%へと高まった。セブン&アイ・ホールディングス(4.66%、24年2月期)、イオン(2.63%、24年2月期)という「小売り2強」をはるかに上回る水準だ・・・PPIHは19年にGMS大手のユニーを完全子会社化。一部店舗をドンキに業態転換し、残る店舗「アピタ」「ピアゴ」にもドンキ流の個店経営を注入した。5年前と比べて営業利益は231億円増え、GMS事業の営業利益率は7.4%(24年6月期)まで上昇した。1%を下回るイオン、イトーヨーカ堂のGMS事業と比べると高収益ぶりが際立っている」、なるほど。 
・『マニフェストをことごとく有言実行  安田氏は、これまでの歩みから語り始めた。 「過去を振り返ってみますと、会社の業績計画を公表するこうしたIR(投資家向け広報)の場などにおいても、当社の証券コード7532を用いた『753(しちごさん)計画』『7532(しちごさんツー)計画』、あるいは『2×4(ツーバイフォー)計画』など各種経営数値目標を、アナリストの方々にマニフェストとしてお約束し、ここからが重要なのですが、区切られた期日までにすべて実現してまいりました」 753計画では01年6月期までに「売上高700億円」「経常利益50億円」「総店舗数30店舗」を目指し、その後繰り出した2×4計画では「売上高2000億円」「株主資本利益率(ROE)20%」の達成と「経常利益200億円」「年間新規出店数20店舗」体制の確立を掲げた。  続く7532計画では「経常利益率7%超」「1株当たり当期純利益(EPS)500円超」「売上高3年以内3000億円超」「2桁成長、20%成長」を目標とした。753計画は完遂し、2×4計画、7532計画はおおむね実現。20年6月期、25年6月期までの中期経営計画は、それぞれ1年前倒しで達成した』、「各種経営数値目標を、アナリストの方々にマニフェストとしてお約束し、ここからが重要なのですが、区切られた期日までにすべて実現してまいりました」、大したものだ。
・『マニフェストをことごとく有言実行  安田氏は、これまでの歩みから語り始めた。 「過去を振り返ってみますと、会社の業績計画を公表するこうしたIR(投資家向け広報)の場などにおいても、当社の証券コード7532を用いた『753(しちごさん)計画』『7532(しちごさんツー)計画』、あるいは『2×4(ツーバイフォー)計画』など各種経営数値目標を、アナリストの方々にマニフェストとしてお約束し、ここからが重要なのですが、区切られた期日までにすべて実現してまいりました」 753計画では01年6月期までに「売上高700億円」「経常利益50億円」「総店舗数30店舗」を目指し、その後繰り出した2×4計画では「売上高2000億円」「株主資本利益率(ROE)20%」の達成と「経常利益200億円」「年間新規出店数20店舗」体制の確立を掲げた。 続く7532計画では「経常利益率7%超」「1株当たり当期純利益(EPS)500円超」「売上高3年以内3000億円超」「2桁成長、20%成長」を目標とした。753計画は完遂し、2×4計画、7532計画はおおむね実現。20年6月期、25年6月期までの中期経営計画は、それぞれ1年前倒しで達成した。 「ここで私が何を申し上げたいかと言えば、当社は言ったことは必ずやり遂げる有言実行の企業であり、そのことに私は大いなる自信と自負を抱いております。すなわち、上げたアドバルーンが単なるアドバルーンで終わらず、常にきちんとした結果を出すということであり、グループ売上高2兆円はまさにそうした文脈の延長線上にあるわけでございます」 都内にドンキが数店舗しかなかった時代から、安田氏は全国で多店舗展開するビジョンを公言し、その通り、進撃に進撃を重ねた。目下、安田氏が大いなる野心を燃やすのは海外展開である。 「(15年に勇退し)国内の事業経営を後進に譲った後は、アジアと米国を主体に、海外での多店舗展開を内外に宣言し、現在進行形ではありますが、確実にそれを推し進めているところであります」 アジアでは、日本の産品に特化した業態「DON DON DONKI(ドンドンドンキ)」の展開を加速する。それに加えて「今後は重点的に米国を攻めてまいります」と言い切った。 シンガポールの「DONDONDONKI(ドンドンドンキ) オーチャードセントラル」は2017年12月にオープン 「言うまでもなく、米国はいまだ成長力の衰えない世界最大の市場であり、ここで一定のプレゼンスを得ないことには、社名である環太平洋(パン・パシフィック)制覇は絵に描いた餅と言わざるを得ません」 既に勝ち筋は描いている。大きな示唆を得たというのは、24年4月、米国本土攻略の「先兵」として開業した米グアム島の大型商業施設「VILLAGE OF DONKI(ヴィレッジオブドンキ)」だ。安田氏が「うれしい誤算」だったと語るのは、非食品がことのほか売れているという事実である。 「(アジアのドンドンドンキを通じて)食品がたくさん売れることは当初から分かっておりましたが、日用消耗品や生活雑貨などを含む日本の非食品がこれだけ売れるのなら、今の我が国流通業を苦しめている歴史的な円安を逆手に取れる大チャンスが、米国という、とてつもない巨大な市場に眠っていることになります。当社は全力を挙げ、それを顕在化させ、取りにまいります」』、「各種経営数値目標を、アナリストの方々にマニフェストとしてお約束し、ここからが重要なのですが、区切られた期日までにすべて実現してまいりました」・・・米国本土攻略の「先兵」として開業した米グアム島の大型商業施設「VILLAGE OF DONKI(ヴィレッジオブドンキ)」だ。安田氏が「うれしい誤算」だったと語るのは、非食品がことのほか売れているという事実である。 「(アジアのドンドンドンキを通じて)食品がたくさん売れることは当初から分かっておりましたが、日用消耗品や生活雑貨などを含む日本の非食品がこれだけ売れるのなら、今の我が国流通業を苦しめている歴史的な円安を逆手に取れる大チャンスが、米国という、とてつもない巨大な市場に眠っていることになります。当社は全力を挙げ、それを顕在化させ、取りにまいります」、なるほど。
・『ロスでトップセールス「世界商談会」を敢行へ  食品のみならず、非食品もキラーコンテンツにする。さらに他社をも巻き込んで、米国本土に乗り込むプランも明かした。8月末には取引先の大手メーカーや問屋とともに米ロサンゼルスで「世界商談会」を開催する予定だ。安田氏自らがロスに出向き、トップセールスをかけるという。 米国はレギュレーション(規制)が厳しいことで知られるが、「そのボトルネックを抜ければ、日本の自動車産業に匹敵するような未来が待っている可能性もございます。多くの仕入れ先パートナーの皆様と協力しながら、米国でロビー活動をやるべきではないでしょうか。商談会という名前はついておりますが、別に1個1個の商談をするわけではなく、気持ちを一つにして、これから未来に向かっていこう、と。その挑戦の決意を共有するための会が、世界商談会ということでございます」 米国の市場規模は、どれだけ大きいのか。安田氏はハワイを引き合いに出し、こう表現してみせた。 「今、ハワイの人口はだいたい140万人で、(PPIHは)年間1000億円近く売り上げているんですね。140万人というと、滋賀県と同じぐらいの規模ですよね。滋賀県で1000億円近い数字なんて上がりっこない。140万人で1000億円だったら、日本(の総人口)で言ったら8兆円ぐらいになる。日本よりハワイのほうが売っているんじゃないかという話ですよね」 米国本土のカリフォルニア州では日本食を軸とした「TOKYO CENTRAL(トーキョーセントラル)」を多店舗展開しているが、客単価は6000円を超えるという。 「米国では、食品が中心の店でも、それだけ買っていただける。そもそも顧客の購買力が全く違う。アジアとは比較にならないマーケットの大きさがあります。当然のことながら、米国を制すれば、ある面では地球を制すると言っても過言ではございません」』、「米国では、食品が中心の店でも、それだけ買っていただける。そもそも顧客の購買力が全く違う。アジアとは比較にならないマーケットの大きさがあります。当然のことながら、米国を制すれば、ある面では地球を制すると言っても過言ではございません」、なるほど。
・『今の苦戦は、将来への「成長痛」  ただ、もちろん課題もある。その最たる例が、店のオペレーション(運営)だ。ドンキ躍進の原動力となっているのは、現場への権限委譲である。社員はもちろん、メイトと呼ぶアルバイトにも、商品の仕入れから陳列、値付け、ポップの作成などあらゆる店内業務を委ねているのが特徴だ。それは海外店舗も同じである。 しかし、米国で働く現地の従業員は日本やアジアの店舗と異なり、リーダーシップとなる人材をつくり切れていないという。大きな壁は、言語にある。 「私どもには、そもそも従来、英語を話せる人材がほとんどいないんですよ。いくら日本で店をつくるのが達人のようにうまくても、英語が話せなければ話になりません。店をつくるのがうまくて、英語が話せる人材はほとんどいない。ただ、今、私たちはそうした人材をたくさんかき集めようとしております」) しかし、米国で働く現地の従業員は日本やアジアの店舗と異なり、リーダーシップとなる人材をつくり切れていないという。大きな壁は、言語にある。 「私どもには、そもそも従来、英語を話せる人材がほとんどいないんですよ。いくら日本で店をつくるのが達人のようにうまくても、英語が話せなければ話になりません。店をつくるのがうまくて、英語が話せる人材はほとんどいない。ただ、今、私たちはそうした人材をたくさんかき集めようとしております」 10代から20代半ばのZ世代には、英語を話せるメイトも多い。「こういう方たちを率先して、特別優遇措置をつけてたくさん雇用しようとしている最中」なのだという。 非食品を強化し、ロビー活動で規制を乗り越え、多言語人材を確保する。この3つの勝ち筋がうまくはまれば、「米国(事業)は今の日本を凌駕(りょうが)できる可能性も十二分にあるのではないかと私は確信しております」と説く。なぜなら「米国は、運営は大変だけど、販売はそんなに難しくない」と見るからだ。 現在は、店舗運営で苦戦しているが、「むしろこの苦戦は成長痛であり、ボトルネックであると感じております。このボトルネックをクリアすれば、むしろ一気に成長できます。これは、当社の日本のかつての姿を思い浮かべていただければご理解いただけるものと思います」と自信を込めた』、「店をつくるのがうまくて、英語が話せる人材はほとんどいない。ただ、今、私たちはそうした人材をたくさんかき集めようとしております」、これでは話にならない。当面、期待薄だ。
・『日本では縮小市場の「ラストマン」になる  どこまでも肥沃な市場が広がる海外事業に注力する一方、日本国内事業をおろそかにすることはもちろんない。日本において今後進めるのは「ラストマンスタンディング戦略」の総仕上げだ。 ラストマンスタンディングとは文字通り、最後まで立っている、つまり生き残り続けることを指す。「海外と違って国内市場は全体的にシュリンク(縮小)しておりますが、激烈な戦いを制することによって、逆に占拠率、シェアが大きく高まるという、ご褒美、果実がございます」(安田氏)。 生き馬の目を抜くような厳しい競争の世界だからこそ、その「レッドオーシャンの中で勝者になった後は、ほぼブルーオーシャンになる可能性」がある。「私どもはぜひそれを目指していきたい」と安田氏は意気込んだ。 人口が減っていく日本で、成長力を持続するのは容易ではないが、安田氏はどこまでも前のめりだ。 「我が国の小売総販売額は約140兆円ある。当社のシェアは現状ではわずか1.5%にも満たない。もちろん、私どもはこのレベルに安住する気持ちは毛頭ございません」 強気の発言を裏付けるのは、積み重ねてきた歴史にある。「長崎屋、ユニーというGMS事業を買収して見事に再生させたという、誰も否定できない圧倒的な実績とエビデンスがあるわけでございます」 24年3月、旧ダイエーの跡地に開業した「MEGAドン・キホーテ成増店」も「万年不振で(イオングループが)諦めた物件を、当社が超繁盛店へと生まれ変わらせた」と誇り、壇上からこう呼び掛けた。 「ポストGMSという我が国流通業界における歴史的課題を解決するのは、結局PPIHをおいて他にない。そろそろそんなお墨付きを、私どもがいただいてもよろしいのではないかと勝手に考えておりますが、皆さんはどのようにお考えでございましょうか」 「いずれにせよ、我が国のGMS業界は再編の最終章に入ったと認識しております。当社としては再編最終章に勝ち残り、ラストマンスタンディングの総仕上げにして、次のステージに駆け上がることを、皆様の前で宣言させていただきたいと思います」 売上高2兆円突破も、35期連続増収増益も金字塔には違いないが、それで満足することはない。海外市場を果敢に開拓し、国内では消耗戦の勝者になる。2兆円企業となったのは「私どもにとって来るべき未来に向けた一つの節目、いわば新たな出発点であり、今はそのスタート台に立ったのだと、私どもは認識しております」(安田氏)。 今期も売上高2兆2200億円、営業利益1500億円と、36期連続の増収増益を見込む。飽くなき挑戦は、終わらない』、米国での展開は人材面のネック解消は当分の間、期待出来ないので厳しいが、その他では今後も成長が期待できるだろう。

第四に、9月4日付け東洋経済オンラインが掲載したチェーンストア研究家・ライターの谷頭 和希氏による「ヨーカドー「33店舗閉店」で露見した"残酷な真実" 人も街も変化したのに、なにも変われなかった」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/821339
・『閉店する33店舗が決定、100店舗を割るヨーカドー  GMS大手のイトーヨーカドーが、再び世間を賑わせている。ヨーカドーといえば、今年の2月に東北地方を含む17店舗の閉店を発表。また、親会社のセブン&アイ・ホールディングスがスーパー事業を分離するという実質的な「見放し」も受け、自力での再建を求められている途中だ。 そんなヨーカドーだが、来年2月末までに閉店する33店舗の詳細が判明し、大きな話題となっている。報道によれば、茨城県で唯一の店舗であった竜ヶ崎店や埼玉の西川口店、千葉の姉崎店など、関東近郊圏での閉店も行われる。この縮小により、イトーヨーカドーは一気に93店にまで減ることになる。 閉店する店舗の中でも、話題を呼んだのが、9月に営業を終える津田沼店だ。閉店が決まった当初から、「悲しい」「あの津田沼店が……」という声が聞かれた。 【画像13枚】「悲しい」「あの津田沼店が…」46年の歴史に幕をおろす、イトーヨーカドー津田沼店の悲しすぎる現在の姿) そんな中で、筆者が「面白い」と感じたポストがある。一般ユーザーの投稿のため、直接引用することは控えるものの、そのポストではイトーヨーカドー津田沼店に「閉店」の2文字が掲げられるとは想像もできなかったと述べつつ、津田沼という街について、「ここ20年で一番、『行く』街から『住む』街に変化した街だと思う」と指摘していた。 何気ないポストに思えるが、チェーンストアや都市について執筆活動をしている筆者には、イトーヨーカドーが持っている、本質的かつ普遍的な問題が潜んでいると思えた。 そこで今回は、閉店する津田沼店を実際に訪れながら、街とヨーカドーの関係性について考えていきたい』、興味深そうだ。
・『津田沼店を訪れてみると…  ヨーカドー津田沼店は、新京成線の新津田沼駅から直結している。入り口のドアの前には、閉店のお知らせが貼ってあった。 中に入ると、顧客から店へのメッセージを募集するコーナーが。ポストイットにそれぞれの人が津田沼店の思い出を書いて貼っている。その数は膨大で、津田沼店が地域の人から愛されてきたことがわかる。 その横には、閉店までの店の陳列について説明するポスター展示があり、一歩踏み入れただけで、完全に「お別れモード」に包まれる。) 店内にも、至るところに「閉店売りつくし」と張り紙がしてある。いろんなものが安売りしていて、大量に積まれた商品が放り込まれたラックの周りには、ちらほら人がいる。 でも、ちらほら、だ。たくさんいるわけじゃない。そこがまた、一層悲しさを際立たせる。 もっとも「お別れモード」が強いのが、最上階。本来はレストランフロアなのだが、ほとんどのテナントが撤退していて、白い壁が広がっている。そのあまりの殺風景さを埋めるためか、「津田沼店の想い出」コーナーが展開されている。ヨーカドーの昔の写真の展示から、当時の資料、津田沼の歴史年表まで、ちょっとした博物館のようである。 入り口にもあった「津田沼店の想い出コーナー」はここにも広がっていて、無数のポストイットが貼られていた。これだけ愛されてるんだったら、なんで撤退なんて……。つい、そう思ってしまう』、「もっとも「お別れモード」が強いのが、最上階。本来はレストランフロアなのだが、ほとんどのテナントが撤退していて、白い壁が広がっている。そのあまりの殺風景さを埋めるためか、「津田沼店の想い出」コーナーが展開されている・・・これだけ愛されてるんだったら、なんで撤退なんて……。つい、そう思ってしまう」、なるほど。
・『「津田沼戦争」に参入したヨーカドー  津田沼店が撤退せざるを得ないのっぴきならない理由はなにか。 もちろん、それはイトーヨーカドー全体の業績が悪いことはいうまでもないが、津田沼という街ならではの理由もある。) もともと、津田沼店は1977年に誕生した。今年で46年目を迎える。 当時、津田沼には「西武津田沼ショッピングセンター」「丸井」「サンぺデック(ダイエー津田沼店)」「長崎屋」等の大型商業施設が多数立地していた。商業的な激戦が繰り広げられるさまは「津田沼戦争」とも呼ばれ、当時は勢いのあったヨーカドーがその戦争に参入した形となる。 戦争」ともなれば、本気を出さざるを得ない。売り場面積は当時としては最大。地下には「津田沼ファミリーワールド」という、さまざまな食料品を取り扱うモールのようなものもあり、食べ物であればなんでも揃った。こうした戦略が功を奏し、津田沼店はヨーカドー店舗の中でも売り上げ上位の店舗になる。 【2024年9月5日10時35分追記】初出時、記載の内容に誤りがありました。お詫びして修正致します。 前述したポストでは、「津田沼はかつて『行く』街だった」と述べられているが、まさにちょっと特別な場所としてヨーカドー津田沼店はあったのだ』、「津田沼店はヨーカドー店舗の中でも売り上げ上位の店舗になる・・・「津田沼はかつて『行く』街だった」と述べられているが、まさにちょっと特別な場所としてヨーカドー津田沼店はあったのだ」、なるほど。
・『商業エリアの中心が動いた  しかし、ここに強敵が現れる。津田沼店誕生の4年後に誕生した「ららぽーとTOKYO-BAY」である。津田沼店からはわずか4キロほどで、車で行けば10分かからない距離。津田沼の隣、船橋の臨海エリアに誕生した。ちなみに、元はと言えば、懐かしい人には懐かしい「船橋ヘルスセンター」がある場所だ。 ここは、今でこそ全国に増えた「ららぽーと」の1号店にして、現在でも日本最大級の面積を誇る大ショッピングモール。現在の敷地面積は約171,000平方メートルで、東京ドーム3.6個分。でかすぎる。 とはいえ、ららぽーとTOKYO-BAY、オープン当初は日本に本格的なショッピングモールがなかったこと、ららぽーと自体が初出店だったこともあって、先行きが不安視されていた。なにより、すぐ近くの津田沼は戦争中だ。そんな激戦区にあって、後発の業態がうまくいくはずがない、そう目されていた。 だが、その目論見は見事、外れる。オープン時には4万人が来場し、推定では25万人が来場したらしい。客の勢いは止まらず、このショッピングモールはさらにさらに面積を広げていく。 そこでの集客にあやかろうとしたのか、2000年には、この臨海エリアに、コストコやカルフール、三井アウトレットパーク幕張など数多くの商業施設が誕生。これには、2000年に大店法が改正され、大規模な小売店の出店が容易になった事情もある。明確に「行く」街は、この臨海エリアになったのである。) さて、そうなると大変なのが津田沼駅前にあった商業施設たちである。そこで戦争をしていると思ったら、予想しないところで客を取られてしまった。折しも時代は、GMSの時代からショッピングモールの時代へと移り変わっていくさなか。津田沼に数多くあった商業施設は、また一つまた一つと閉店していった。 その跡地に商業施設ができる場合があったが、そこには多くの場合、生活に密着したテナントが入る場合が多い。例えば、2007年に閉店した丸井津田沼店のあとにできた「mina津田沼店」には、ダイソーやJINS、AOKI、業務スーパーなど、さまざまなチェーンが入っている。まさに、特別感のあるラインナップというよりも、「住む」街として、そこに住んでいる人たちに特化したラインナップへと変わっていったのだ』、「2000年には、この臨海エリアに、コストコやカルフール、三井アウトレットパーク幕張など数多くの商業施設が誕生。これには、2000年に大店法が改正され、大規模な小売店の出店が容易になった事情もある・・・大変なのが津田沼駅前にあった商業施設たちである。そこで戦争をしていると思ったら、予想しないところで客を取られてしまった。折しも時代は、GMSの時代からショッピングモールの時代へと移り変わっていくさなか。津田沼に数多くあった商業施設は、また一つまた一つと閉店していった・・・その跡地に商業施設ができる場合があったが、そこには多くの場合、生活に密着したテナントが入る場合が多い。例えば、2007年に閉店した丸井津田沼店のあとにできた「mina津田沼店」には、ダイソーやJINS、AOKI、業務スーパーなど、さまざまなチェーンが入っている。まさに、特別感のあるラインナップというよりも、「住む」街として、そこに住んでいる人たちに特化したラインナップへと変わっていったのだ」、なるほど。
・『街の変化より、変化が遅かったヨーカドー  こうして津田沼の街は変化を続け、それに合わせて「津田沼戦争」も収束、街の形に合わせるようにして、商業施設も変化していった。 ところで、唐突だが、ここで思い出すのが、最近私が精力的に取り組んでいる「渋谷カフェ少なすぎ問題」である。これは、土日の渋谷では、どんなチェーンカフェも混んでいることを指摘したものだ。この要因には、コロナ禍を経てリモートで仕事をする人が増えたことや、都市自体に人がゆっくり休める場所が少ないことが原因だと考えている。 しかし、その大元にあるのは、「人の変化」と「チェーンストアや商業施設の変化」、さらには「街全体の変化」のスピードが、それぞれ異なっていることだ。 人間の流行は、わずか数年程度で移り変わっていくのがほとんどだ。それに対し、商業施設などは、すぐに出店できるものでもなく、本部による出店計画や工事などを経て、やっと出来上がる。人々の興味よりも変化のスピードが遅いのだ。もちろん、チェーンストアの入れ替わりも、人々の興味の変化に遅れて生じる。 そして、それらを包み込む街ともなれば、もっともっとその変化は遅い。渋谷の再開発は2012年から2027年まで、15年がかかっている(というか、それ以上になりそうでもある)。 一方で、コロナを経て、人々の変化は以前にも増して早くなっている。リモートワークが前提となり、若者の消費も「モノ消費」から「コト消費」へと変わった。 にもかかわらず、街自体はまだ変化の途中。都心にカフェが足りない問題もまた、こうしたサイクルの問題だと言えるのだ。 そして、これは、今見てきた津田沼でも同様である。近隣にショッピングモールができたことによって人々の行動パターンが変わり、他の商業施設は変わってきた。 しかし、イトーヨーカドーだけは、その変化のサイクルに乗り遅れてしまったのではないか』、「コロナを経て、人々の変化は以前にも増して早くなっている。リモートワークが前提となり、若者の消費も「モノ消費」から「コト消費」へと変わった。 にもかかわらず、街自体はまだ変化の途中。都心にカフェが足りない問題もまた、こうしたサイクルの問題だと言えるのだ。 そして、これは、今見てきた津田沼でも同様である。近隣にショッピングモールができたことによって人々の行動パターンが変わり、他の商業施設は変わってきた。 しかし、イトーヨーカドーだけは、その変化のサイクルに乗り遅れてしまったのではないか」、その通りだ。
・『改革はしているが、肝心の消費者を見られていない  イトーヨーカドーの「変化の遅さ」はこれまでも取り上げられてきた。日本経済新聞の社説でも「遅すぎた経営改革」として語られているぐらいだ。実際、同社の取り組みを見ていると、この「人の変化」に対応する、という意識が希薄なのではないか、と思ってしまうことにたびたび遭遇する。 私は以前、都内にあるイトーヨーカドーの全店舗をめぐって、その問題点を指摘したことがあるが、例えば顧客層が高齢者にもかかわらずセルフレジ化を進め、結果、有人レジが大混雑している様子など、そうした例は枚挙にいとまがない。 先ほども書いたように、ただでさえ、「街の変化」「商業施設の変化」「人の変化」はサイクルがバラバラで、とくに商業施設は、人の変化のスピード感に対応しなければならない。普段の努力がなければこの変化に対応することはできないのだ。 津田沼店は、結果として46年という長寿を全うした。 しかし、そこが長寿であることは、むしろ、津田沼店が「変化に対応しなかった」ということを表している。もっともゆっくり進む街の変化にも対応しなかったということなのである。なんという皮肉だろうか。今や、GMSを追いやったショッピングモールが、利益率の低下に苦しんでいる状況であり、決して安泰ではない。 こういった現実を考えれば考えるほど、津田沼店に貼ってあった、大量のポストイットも違った風景に見えてくる。 そこに書いてある「ヨーカドーが無くなって残念です」という内容は、むしろヨーカドーがいかに変化をしてこなかったかを逆に表しているのだ。そこに、残酷な真実が隠れている。 もはやイトーヨーカドーは、多くの人にとって「今」ではなく、「懐かしく、美しい記憶の中」に存在しているのだ。 関連記事:ヨーカドーが「第2のライフ」には多分なれない訳「消費者を見ない姿勢」は変化の妨げになる』、「なんという皮肉だろうか。今や、GMSを追いやったショッピングモールが、利益率の低下に苦しんでいる状況であり、決して安泰ではない。 こういった現実を考えれば考えるほど、津田沼店に貼ってあった、大量のポストイットも違った風景に見えてくる。 そこに書いてある「ヨーカドーが無くなって残念です」という内容は、むしろヨーカドーがいかに変化をしてこなかったかを逆に表しているのだ。そこに、残酷な真実が隠れている。 もはやイトーヨーカドーは、多くの人にとって「今」ではなく、「懐かしく、美しい記憶の中」に存在しているのだ」、同感である。
タグ:(その10)(ドンキ創業者・安田隆夫氏が語る人事論 毎年20%の支社長が降格、ドンキは2割降格でも社内が明るい 仕事を「ゲーム化」する4条件、ドンキ創業者・安田隆夫氏が「凱旋」会見 米国攻略へ3つの勝ち筋、ヨーカドー「33店舗閉店」で露見した"残酷な真実" 人も街も変化したのに なにも変われなかった) 小売業(一般) 「「はらわた力(りょく)」──。ドン・キホーテに脈々と伝わる造語である。 たとえ失敗して土壇場に追い詰められても、その経験を糧として勇猛果敢に立ち上がる。目の前の壁に跳ね返され、もがき苦しみながらも、不屈の闘志で最後に這い上がろうとする一念のことを指す。 はらわた力を思う存分鍛えられるよう、ドンキには失敗を容認する企業文化が浸透している。経営理念に掲げるのは「大胆な権限委譲」。 日経ビジネスオンライン「ドンキ創業者・安田隆夫氏が語る人事論 毎年20%の支社長が降格」 yahooニュース 仕入れ過ぎて在庫を大量に抱えてしまった、開発した商品が全く売れなかった、赤字を計上してしまった…そんなときも上司からとがめられることはない。ドンキでは誰もが派手にやらかしながら、一人前の商売人に育ってきたからだ。失敗による損失は、成功体験を積み重ねる礎と位置付けている。 社員全員が貪欲に成長を追い求める集団であり続けられれば、どれほど大きな企業になろうと安定志向に傾き、成長が鈍化することはない。「大企業病」になることなどない、はずだった・・・パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH )というグループ全体で、ついに売上高1兆円を突破。07年の長崎屋買収に続く大型再編劇で、小売業界の台風の目に躍り出た。その半面、快進撃の反動なのか、大企業化による弊害も直視せざるを得ない状況に陥った」、「失敗を容認する企業文化が浸透」、日本企業には珍しいことだ。 「それまで全国で20だった支社数を102に分割し、100万人(=1ミリオン)の商圏人口ごとに1人の「ミリオン支社長」を任命した。これにより、1人の支社長につき3~6店舗を管轄する体制に刷新。ミリオン支社長に上司はおらず、100万人の商圏、100億円の年商を持つエリアの“社長”として、完全に経営を任せる、という大胆なプランだ。 支社長ポストが大きく増えたことで、ドンキ初の女性支社長や、27歳の支社長(いずれも当時)が誕生した。ダイバーシティー(多様性)を推進しながら、実力のある人材はどんどん抜擢(ばってき) する、という姿勢を社内に見せつけたのだ」、画期的だ。 「下位20%に沈んだ場合、新たな支社長にとって代わられる。英国のプレミアリーグや日本のJリーグなどが取り入れる“入れ替え戦”の仕組みを、社内制度として導入したのだ」、なるほど。 日経ビジネスオンライン「ドンキは2割降格でも社内が明るい 仕事を「ゲーム化」する4条件」 『進撃のドンキ 知られざる巨大企業の深淵なる経営』を上梓(じょうし)した酒井大輔 「降格になる人も続出する。毎年毎年、制度の不備や文句が出てくるんですよ。それをサポートしていく部署が必要だよねということで、アンサーマン本部ができました」(赤城氏)。 降格された人の文句を聞くばかりではない。) アンサーマンとは、その名の通り「答える人」のこと。現場の悩みや不満、要望など「何でも聞いて、答えてあげる」任務を負う。 メンバーは赤城氏を本部長に、ドンキの取締役が「アンサーマン委員」として名を連ねる・・・ 仕事をゲーム化する仕組みをつくり、社員のやる気を引き出すことにたけている。ゲームを持ち込むことで、仕事がもっと楽しくなる。ドンキが長年磨いてきたアミューズメント性の高い買い場(*)は、従業員自身がやりがいを胸に、楽しく仕事をしていることの裏返しでもある」、なるほど。 「降格があるということは、昇格もある。実際、新たな支社長は社内の立候補者から選ばれ、その中には降格経験者も含まれている。PPIHの役員たち自身も、昇降格を繰り返しながら、着実にステップアップしてきた。 「敗者復活」の文化があるから、絶望することなく、捲土(けんど)重来を期して爪を研げる。“入れ替え戦”は己を見つめ直し、はらわた力(*)を蓄える絶好の機会になる・・・ 権限委譲によって、仕事が労働(ワーク)ではなく、競争(ゲーム)になる、と説く・・・「仕事を『ワーク』ではなく『ゲーム』として楽しめ」という心得が記載」、なるほど。 日経ビジネスオンライン「ドンキ創業者・安田隆夫氏が「凱旋」会見 米国攻略へ3つの勝ち筋」 1989年、東京都府中市にドンキ1号店を開業して以来、売上高と営業利益は一貫して伸び続け、ついに35期連続増収増益を成し遂げたのだ。 特に利益面の躍進が目覚ましい 「営業利益率は、前期の5.43%から6.69%へと高まった。セブン&アイ・ホールディングス(4.66%、24年2月期)、イオン(2.63%、24年2月期)という「小売り2強」をはるかに上回る水準だ・・・PPIHは19年にGMS大手のユニーを完全子会社化。一部店舗をドンキに業態転換し、残る店舗「アピタ」「ピアゴ」にもドンキ流の個店経営を注入した。5年前と比べて営業利益は231億円増え、GMS事業の営業利益率は7.4%(24年6月期)まで上昇した。 1%を下回るイオン、イトーヨーカ堂のGMS事業と比べると高収益ぶりが際立っている」、なるほど。 「各種経営数値目標を、アナリストの方々にマニフェストとしてお約束し、ここからが重要なのですが、区切られた期日までにすべて実現してまいりました」、大したものだ。 「各種経営数値目標を、アナリストの方々にマニフェストとしてお約束し、ここからが重要なのですが、区切られた期日までにすべて実現してまいりました」・・・米国本土攻略の「先兵」として開業した米グアム島の大型商業施設「VILLAGE OF DONKI(ヴィレッジオブドンキ)」だ。安田氏が「うれしい誤算」だったと語るのは、非食品がことのほか売れているという事実である。 「(アジアのドンドンドンキを通じて)食品がたくさん売れることは当初から分かっておりましたが、日用消耗品や生活雑貨などを含む日本の非食品がこれだけ売れるのなら、今の我が国流通業を苦しめている歴史的な円安を逆手に取れる大チャンスが、米国という、とてつもない巨大な市場に眠っていることになります。当社は全力を挙げ、それを顕在化させ、取りにまいります」、なるほど。 「米国では、食品が中心の店でも、それだけ買っていただける。そもそも顧客の購買力が全く違う。アジアとは比較にならないマーケットの大きさがあります。当然のことながら、米国を制すれば、ある面では地球を制すると言っても過言ではございません」、なるほど。 「店をつくるのがうまくて、英語が話せる人材はほとんどいない。ただ、今、私たちはそうした人材をたくさんかき集めようとしております」、これでは話にならない。当面、期待薄だ。 米国での展開は人材面のネック解消は当分の間、期待出来ないので厳しいが、その他では今後も成長が期待できるだろう。 東洋経済オンライン 谷頭 和希氏による「ヨーカドー「33店舗閉店」で露見した"残酷な真実" 人も街も変化したのに、なにも変われなかった」 「もっとも「お別れモード」が強いのが、最上階。本来はレストランフロアなのだが、ほとんどのテナントが撤退していて、白い壁が広がっている。そのあまりの殺風景さを埋めるためか、「津田沼店の想い出」コーナーが展開されている・・・これだけ愛されてるんだったら、なんで撤退なんて……。つい、そう思ってしまう」、なるほど。 「津田沼店はヨーカドー店舗の中でも売り上げ上位の店舗になる・・・「津田沼はかつて『行く』街だった」と述べられているが、まさにちょっと特別な場所としてヨーカドー津田沼店はあったのだ」、なるほど。 津田沼店誕生の4年後に誕生した「ららぽーとTOKYO-BAY」 2000年には、この臨海エリアに、コストコやカルフール、三井アウトレットパーク幕張など数多くの商業施設が誕生。これには、2000年に大店法が改正され、大規模な小売店の出店が容易になった事情もある。明確に「行く」街は、この臨海エリアになったのである 「2000年には、この臨海エリアに、コストコやカルフール、三井アウトレットパーク幕張など数多くの商業施設が誕生。これには、2000年に大店法が改正され、大規模な小売店の出店が容易になった事情もある・・・大変なのが津田沼駅前にあった商業施設たちである。そこで戦争をしていると思ったら、予想しないところで客を取られてしまった。 折しも時代は、GMSの時代からショッピングモールの時代へと移り変わっていくさなか。津田沼に数多くあった商業施設は、また一つまた一つと閉店していった・・・その跡地に商業施設ができる場合があったが、そこには多くの場合、生活に密着したテナントが入る場合が多い。例えば、2007年に閉店した丸井津田沼店のあとにできた「mina津田沼店」には、ダイソーやJINS、AOKI、業務スーパーなど、さまざまなチェーンが入っている。まさに、特別感のあるラインナップというよりも、「住む」街として、そこに住んでいる人たちに特化した ラインナップへと変わっていったのだ」、なるほど。 「コロナを経て、人々の変化は以前にも増して早くなっている。リモートワークが前提となり、若者の消費も「モノ消費」から「コト消費」へと変わった。 にもかかわらず、街自体はまだ変化の途中。都心にカフェが足りない問題もまた、こうしたサイクルの問題だと言えるのだ。 そして、これは、今見てきた津田沼でも同様である。近隣にショッピングモールができたことによって人々の行動パターンが変わり、他の商業施設は変わってきた。 しかし、イトーヨーカドーだけは、その変化のサイクルに乗り遅れてしまったのではないか」、その通りだ。 「なんという皮肉だろうか。今や、GMSを追いやったショッピングモールが、利益率の低下に苦しんでいる状況であり、決して安泰ではない。 こういった現実を考えれば考えるほど、津田沼店に貼ってあった、大量のポストイットも違った風景に見えてくる。 そこに書いてある「ヨーカドーが無くなって残念です」という内容は、むしろヨーカドーがいかに変化をしてこなかったかを逆に表しているのだ。そこに、残酷な真実が隠れている。 もはやイトーヨーカドーは、多くの人にとって「今」ではなく、「懐かしく、美しい記憶の中」に存在しているのだ」 、同感である。
nice!(0)  コメント(0) 

税制一般(その5)(令和の大増税は“江戸時代の五公五民”より過酷?「真の国民負担率」で見る不都合な真実、「定額減税」給与明細の記載義務化に輪をかけてボロ…税金ムダ遣いの“過剰支出”1150億円も!、日本の「金融所得課税」議論で圧倒的に欠けた視点 総裁選の争点だが、政争の具になっていないか) [経済政策]

税制一般については、昨年5月4日に取上げた。今日は、(その5)(令和の大増税は“江戸時代の五公五民”より過酷?「真の国民負担率」で見る不都合な真実、「定額減税」給与明細の記載義務化に輪をかけてボロ…税金ムダ遣いの“過剰支出”1150億円も!、日本の「金融所得課税」議論で圧倒的に欠けた視点 総裁選の争点だが、政争の具になっていないか)である。

先ずは、昨年12月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家・評論家の古谷経衡氏による「令和の大増税は“江戸時代の五公五民”より過酷?「真の国民負担率」で見る不都合な真実」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336693
・『現代の税負担率は江戸時代と同じなのか?  「増税メガネ」という言葉が流行語大賞のノミネートを逃したのが忖度かどうかはさておくとして、大増税による国民生活の窮乏は事実である。 増税の是非はともかく、国民負担率5割ともされる目下の租税公課負担は、よく江戸時代の「五公五民」に例えられている。つまり現在は江戸時代並みの過酷な重税にあえいでいるというわけだ。しかし現在の税負担率を江戸時代とほぼ同じと捉えるのは、端的に言って間違いではないか。 かつて、とりわけ戦後の歴史学の中には階級闘争史観が優位的であった。これは江戸時代の封建社会を、武士=支配階級、農工商その他を被支配階級と規定し、この二者が互いに対立・緊張状態にあったとしたものだ。 支配層は苛烈な重税による搾取を行って被支配階級を抑圧し、厳格な身分制のもと、圧政に耐えかねた被支配階級が時としてむしろ旗を立てて一揆を繰り返す。江戸期の庶民はとにかく重い税を搾り取られて生活に窮していた――。このような江戸時代の捉え方を「貧農史観」などと呼ぶが、近年、江戸時代の歴史研究が大きく進歩したことにより、このような概念は更新されつつある。 そもそも江戸時代の身分制度とされる士農工商その他は、明治国家が作成した壬申戸籍の記載をのちの時代の人々がなぞっただけで、実際には武士=支配階級のほかは一般市民、というくくりが実態に沿うとされ、士農工商の四分野での身分区分を引用した江戸時代の解説は、現在では、ほとんどの教科書から消滅している。 時代劇ではよく、江戸の町人の中に商人や職人がおり、身分の分け隔てなく酒をくみ交わしている描写があるが、その演出の良しあしを除くとしても、まあ正しいというふうに考えることもできる。農民が武士の次に偉く、さらにその次に職人(工)、末端に商人(商)という身分があり、あえて農民を武士の次としたのは、重税の不満をそらすためだったという説は、基本的に正しくない。なぜなら繰り返すようにそんな江戸時代の身分制自体が、虚妄に近かったと考えられてきたからである』、「農民が武士の次に偉く、さらにその次に職人(工)、末端に商人(商)という身分があり、あえて農民を武士の次としたのは、重税の不満をそらすためだったという説は、基本的に正しくない。なぜなら繰り返すようにそんな江戸時代の身分制自体が、虚妄に近かったと考えられてきたからである」、なるほど。
・『江戸時代中期の「国民」負担率は28.9%  さて、江戸時代の一般的な人々の税負担は実際のところどうであったのだろうか。「五公五民」といえば、収入(収穫)の半分が年貢として取られていた、ということを指すが、この表現も教科書からは消えつつあるのが実態である。 「ごまの油と百姓は、絞れば絞るほど出るものなり」 このような重税感は江戸時代イメージの常であったが、例えば「慶安のお触書」は、江戸時代の農民の重い税負担を表現したものだとされ、かつての教科書にはほぼ必ず登場したが、この記述も江戸時代研究が進むにつれて、現在の教科書からは削除の方向性が強くなっている。 江戸時代は大開発の時代であった。信長、秀吉、家康という戦国の三英傑の時代が終わり、幕藩体制が確立する17世紀初頭から、幕府や諸藩は新田開発にまい進した。農業生産の高進と、税収を増やすために各地で奨励されたもので、結果的に江戸時代最初の約100年という間に、全国の石高は倍になった。日本人の主食であるコメの生産が倍になったということは、その分だけ人口も倍になったというのが道理である。 戦国時代末期、日本の人口は約1500万人と推計されているが、幕府開闢から100年ほどが過ぎた元禄時代、つまりは「生類憐みの令」などで知られる五代綱吉の治世下の時、日本の人口はほぼ倍の2700万人~3000万人弱になったという推計が正しいようである。この約3000万人という人口は、明治時代まで多少の増減はあるものの、基本的に維持されるのである。 幕府や諸藩は新田開発を激しく奨励する見返りに、新たに開発された田畑には一定期間、年貢を見送るなどの措置を取った。現在でも、創業支援のために起業した会社には最初の数年間は特例などがある場合もあるが、新田への免税・減税措置はこのような短期間ではなく、場合によっては数十年という優遇もあった。 このような幕府などの政策は、江戸時代の人々の開墾精神を刺激し、彼らが続々と開発に参入したために、森林が過剰に切り開かれ、台風や長雨によって大きな洪水が起こり、幕府や諸藩は森林や河川域の過剰開発を防ぐ命令を出したほどであった。現在で言う環境破壊は、すでに17世紀から社会問題になっていたのである。 江戸時代中期、すなわち18世紀の初頭、五代将軍綱吉が死ぬや、六代将軍家宣、七代将軍家綱に仕えた新井白石は、その著書『折たく柴の記』の中で、この時代の実効税率を「二割八分九厘」と記述している。 つまり今風に言うと、28.9%がおおむね18世紀初頭の江戸時代の「国民」負担率だったということである。この記述は幕府財政の悪化を嘆く文脈の中に登場し、新井白石はこの実効税率をなんとか上昇させることで国庫を安定させることを目標とした。『折たく柴の記』は現代語訳が出版されているので、読んでみるとよい。 さて白石がこのように嘆いたのは、前掲の大開発が主な原因である。新田に対する優遇措置はあったにせよ、農地の拡大によって税収は増えると考えるのが普通である。しかし現在のような精緻な測量技術が全国に行き渡っていたわけではなく、また行政の徴税技術も未発達であった当時、幕府天領や全国の諸藩で、一元的に収穫を把握し、それに対し効率的な税を徴収するのは難しい状況であった。 加えて徳川の世になり、幕藩体制の安定のために幕府が儒教(朱子学)を官学として普及させたのが大きかった。儒教の世界観では、国を統治する支配者は高い徳を有するのであり、支配者には弱い者(女性や老人や子ども、病人など)を守る道徳的責任が強く課される、とされた。よってみだりに権力者が権威を振りかざして、被支配階級から搾取するのは「徳のある者がするべきでない行為」とされ、武士の道に反するという道徳観が出来上がったのである。 つまり、新田開発により収穫が増えているということは、当然幕府は把握しているものの、庶民の努力によって開発した新田などを隅々まで調査したうえで、そこに重い税金をかけて取り立てるのは、「支配者としてあるまじき行為」として認知されていたきらいがある。よって新田からの増収があっても、その部分は検地の際、意図的に見逃されたり、暗黙の了解として全部を課税の対象にしなかったり、などといういわゆる「おめこぼし」が多く存在していたのである』、「徳川の世になり、幕藩体制の安定のために幕府が儒教(朱子学)を官学として普及させたのが大きかった。儒教の世界観では、国を統治する支配者は高い徳を有するのであり、支配者には弱い者(女性や老人や子ども、病人など)を守る道徳的責任が強く課される、とされた。よってみだりに権力者が権威を振りかざして、被支配階級から搾取するのは「徳のある者がするべきでない行為」とされ、武士の道に反するという道徳観が出来上がったのである。 つまり、新田開発により収穫が増えているということは、当然幕府は把握しているものの、庶民の努力によって開発した新田などを隅々まで調査したうえで、そこに重い税金をかけて取り立てるのは、「支配者としてあるまじき行為」として認知されていたきらいがある。よって新田からの増収があっても、その部分は検地の際、意図的に見逃されたり、暗黙の了解として全部を課税の対象にしなかったり、などといういわゆる「おめこぼし」が多く存在していた」、なるほど。
・『税負担において歴史的な重税時代  このような寛容な幕府の姿勢は、むろん、それだけの財政的裏付けもあったからである。幕府は、関ヶ原の役の戦後処理において西軍大名の所領を没収し、諸大名を配置転換させたうえで広大な天領を保有するに至った。また2回に及ぶ大坂の陣で豊臣を滅ぼしたのち、当時の経済的要衝であった京、大坂とその周辺といった上方の支配体制を盤石とした。 それ以外にも、幕府は外国貿易をほとんど独占し、甲州や佐渡、石見などといった鉱山を独占的に開発、運営することにより、巨額の黒字を計上するに至った。現代風に言えば、幕府は超優良な国営企業を複数所有して、輸出入企業さえも独占していたのである。このような「打ち出の小づち」という裏付けがあったからこそ、庶民に対して厳しい徴税姿勢を取らなくて済んだともいえる。 これにより幕府は諸藩を圧倒する富裕となり、おおむね18世紀に入るまで積極財政を繰り返した。幕府の開祖、徳川家康をまつる日光東照宮への歴代将軍一行の参拝(日光社参)は、徳川の武威、威光を諸藩や庶民に知らしめる目的もあり、惜しみなく盛大に行われた。また参勤交代制度によって街道筋の宿場町は発展し、官主体の消費によって、道路と物流が大きく整備されることになった。 幕府(政府)が惜しみなく金を使うことによって、その需要に応える民間部門が急速に成長し、これがのち、明治以降の日本近代資本主義につながるブルジョワジー(資本家)の勃興に貢献したのである。 もっともこのような幕府の放漫財政は長く続かず、18世紀までに金を使いすぎた幕府の国庫は空になり、慢性的な赤字状況となって、幕府財政の改善を企図するいわゆる「三大改革」が実行される。 しかしいったん儒教的精神によって、庶民に対する寛容な姿勢を維持してきた幕府が、財政が悪いからといって180度転換して大増税を行ったとなると、徳川の威信は低下し、一揆や打ちこわしが激増するなどして社会不安を引き起こしかねない。 幕府は年貢の計算方式の変更や追加の検地などの諸改革を行うものの、幕府財政が徳川三代(家康、秀忠、家光)の時代の、潤沢な状況に戻ることは幕府滅亡までついぞなかった。 さらに時代が経るとともに、金鉱山からの産出量が過剰採掘で減少し、また、当時世界的に吹き荒れた天候不順(小氷期)や火山の噴火による農業生産の不振、相次ぐ大地震の復旧費、江戸や大坂などの大都市に流入する人々への対策、大火によって焼失した建物修繕費用なども増大し、国庫の悪化にさらなる追い打ちをかけることになる。こうして幕藩体制は徐々にだが確実に疲労し、徳川の権勢の低下とともに時代は明治維新に向かっていく。 といっても、少なくとも幕府直轄の天領において、税負担が「五公五民」つまり収入の50%が年貢、という状況は、例外こそあるものの、基本的に起きづらかったといえる。現在の「大増税」を江戸時代になぞらえるのは、このような事実からいっても間違いである。もちろん、江戸時代に全国一律の社会福祉や近代医療はないし、インフラは比べようもなく劣悪である。近代的な人権意識は育まれず、人々は非科学的な迷信に重きを置いていた。 しかし税負担という意味でいえば、確実に現代は江戸時代よりも過酷であり、よって日本史上まれに見る庶民生活の困苦が具現化しているといえよう。まさに歴史的な重税の時代を我々は生きているのである。 (作家/令和政治社会問題研究所理事長/日本ペンクラブ正会員 古谷経衡)』、「当時の経済的要衝であった京、大坂とその周辺といった上方の支配体制を盤石とした。 それ以外にも、幕府は外国貿易をほとんど独占し、甲州や佐渡、石見などといった鉱山を独占的に開発、運営することにより、巨額の黒字を計上するに至った。現代風に言えば、幕府は超優良な国営企業を複数所有して、輸出入企業さえも独占していたのである。このような「打ち出の小づち」という裏付けがあったからこそ、庶民に対して厳しい徴税姿勢を取らなくて済んだともいえる・・・幕府は諸藩を圧倒する富裕となり、おおむね18世紀に入るまで積極財政を繰り返した。幕府の開祖、徳川家康をまつる日光東照宮への歴代将軍一行の参拝(日光社参)は、徳川の武威、威光を諸藩や庶民に知らしめる目的もあり、惜しみなく盛大に行われた。また参勤交代制度によって街道筋の宿場町は発展し、官主体の消費によって、道路と物流が大きく整備されることになった。 幕府(政府)が惜しみなく金を使うことによって、その需要に応える民間部門が急速に成長し、これがのち、明治以降の日本近代資本主義につながるブルジョワジー(資本家)の勃興に貢献したのである・・・金鉱山からの産出量が過剰採掘で減少し、また、当時世界的に吹き荒れた天候不順(小氷期)や火山の噴火による農業生産の不振、相次ぐ大地震の復旧費、江戸や大坂などの大都市に流入する人々への対策、大火によって焼失した建物修繕費用なども増大し、国庫の悪化にさらなる追い打ちをかけることになる。こうして幕藩体制は徐々にだが確実に疲労し、徳川の権勢の低下とともに時代は明治維新に向かっていく。 といっても、少なくとも幕府直轄の天領において、税負担が「五公五民」つまり収入の50%が年貢、という状況は、例外こそあるものの、基本的に起きづらかったといえる。現在の「大増税」を江戸時代になぞらえるのは、このような事実からいっても間違いである」、なるほど。

次に、本年5月24日付け日刊ゲンダイ「「定額減税」給与明細の記載義務化に輪をかけてボロ…税金ムダ遣いの“過剰支出”1150億円も!」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/340640
・『6月に実施されるというのに制度設計がややこしくて、岸田首相自ら「広報で発信を強める」「効果を周知徹底し知ってもらう」とアピールせざるを得なくなっている定額減税。給与明細に減税額の「明記」が義務化されていたことが直前になって“周知”され、SNSなどで大炎上しているが、これに続く驚きの事実がまだあった。 定額減税は1人当たり所得税3万円、住民税1万円の計4万円。本人と扶養家族が対象なので、4人家族なら16万円になる。所得税は6月分から減税されるが、1カ月分だけでは満額差し引けない場合、翌月に残りの減税額が繰り越して差し引かれる』、「給与明細に減税額の「明記」が義務化されていたことが直前になって“周知”され、SNSなどで大炎上しているが、これに続く驚きの事実がまだあった。 定額減税は1人当たり所得税3万円、住民税1万円の計4万円。本人と扶養家族が対象なので、4人家族なら16万円になる。所得税は6月分から減税されるが、1カ月分だけでは満額差し引けない場合、翌月に残りの減税額が繰り越して差し引かれる」、わざわざ「定額減税」の有難味を知らしめようとする姑息な手段だ。
・『満額減税できない人へ1万円単位の給付金  一方、納税額が少なく、繰り越しても満額を引き切れない場合は、市区町村からの給付金の形で補填されることになっている。これが、事務手続きの簡素化という理由で、1万円単位での支給なのだ。満額との差額が0円超~1万円以下なら一律1万円、1万円超~2万円以下なら2万円が給付されるので、例えば、年間の納税額が3万9999円の人は、4万円の満額にわずか1円満たないだけでも、1万円が給付されるのである。 本来の定額減税のルール以上に過剰に給付することになるわけで、もらえる当人は「ラッキー」と喜ぶだろうが、原資は税金だ。不公平感があるし、国の政策としてどうなのか』、「年間の納税額が3万9999円の人は、4万円の満額にわずか1円満たないだけでも、1万円が給付されるのである。 本来の定額減税のルール以上に過剰に給付することになるわけで、もらえる当人は「ラッキー」と喜ぶだろうが、原資は税金だ。不公平感があるし、国の政策としてどうなのか」、全く酷い話だ。
・『1回こっきりの減税に余計にかかる支出は1150億円!  この点について、23日の記者会見で立憲民主党の長妻昭政調会長が言及。地方自治体の職員からも疑問の声が届いているという。加えて、長妻政調会長が財務省に確認した上で試算したところ、本来の減税額より多く給付することによって余計にかかる支出は、ナント1150億円程度にもなるそうだ(対象者の2300万人に平均5000円を給付したとして推計)。 長妻政調会長は日刊ゲンダイの取材にこう言った。 「『4万円』をどうしてもやるなら、給付の方が事務的にも余計な予算がかからない。ところが、給料が上がったように見せかけたいから、岸田首相は減税にこだわる。『増税メガネ』を払拭するためにコストをかけるのは前代未聞。選挙対策であり、人気取りに振り回されている」 たった1回こっきりの減税に、経理担当者はシステム変更や事務手続きで余計な仕事が増える。そのうえ1000億円規模の税金ムダ遣い! 不人気首相の支持率対策だけの世紀の愚策だ』、「本来の減税額より多く給付することによって余計にかかる支出は、ナント1150億円程度にもなるそうだ・・・『増税メガネ』を払拭するためにコストをかけるのは前代未聞。選挙対策であり、人気取りに振り回されている」 たった1回こっきりの減税に、経理担当者はシステム変更や事務手続きで余計な仕事が増える。そのうえ1000億円規模の税金ムダ遣い! 不人気首相の支持率対策だけの世紀の愚策だ」、まるで悪政の見本だ。

第三に、9月9日付け東洋経済オンラインが掲載した経済アナリスト・認定テクニカルアナリストの馬渕 磨理子氏による「日本の「金融所得課税」議論で圧倒的に欠けた視点 総裁選の争点だが、政争の具になっていないか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/824332
・『自由民主党総裁選の争点として株式の売却益などへの金融所得課税が浮上している。金融所得課税の話題は必ずと言っていいほど注目が集まるものの、これに政治生命を賭けたい政治家はほぼいないといっていい。つまり、金融所得課税の議論は国民の関心をかき乱す「政争の具」として扱われかねない。本稿では金融所得課税の論点と焦点をまとめたうえで、安易な議論が国民への不信感につながる可能性を指摘したい』、興味深そうだ。
・『「金融所得課税」推進派と反対派の言い分  金融所得課税とは、投資信託、株式、預金などの金融商品から得た所得にかかる税金で、税率は所得に関わらず、原則として一律で20.3%となっている。もともと、金融所得課税の見直しは、2021年総裁選で岸田文雄首相が打ち出したが、その後、株価の大幅下落によって見送りを余儀なくされている。 そして今回、金融所得課税の強化をめぐっては、石破茂元幹事長が「実行したい」と語り、小泉進次郎元環境相、茂木敏充幹事長、小林鷹之前経済安全保障担当相、や河野太郎デジタル相、否定的な考えを表明。林芳正官房長官は状況を注視する姿勢を示している。 岸田首相や、石破茂元幹事長が金融所得課税を強化で狙うのは、総所得が1億円を超えると所得税の負担率が下がる「1億円の壁」の打破だ。富裕層は所得だけでなく、金融所得も多く保有してるため、20.3%の課税は税制上有利になっているという考えがもととなっている。経済成長の恩恵の分配によって格差是正を図りたいという思惑がある。) 国は格差是正のために社会保障を通じた再分配を行っている。しかし、現在の社会保障給付での再配分は、受給者が「高齢者」であり、財源である保険料は「現役世代」が負担している。構造的に日本では現役世代から高齢者への再配分となっている。このため、「高所得者」から「低所得者」への再配分を行うには、金融所得課税が適しているというのが推進派の考えだ。 これに対して、反対派は、そもそも富裕層の定義自体が曖昧なうえ、自民党として新NISA(少額投資非課税制度)の拡充などを進めてきたこととも逆行すると主張している。 一部の富裕層ではなく、多くの中間層が金融所得による所得増の恩恵を得られるよう取り組みを進めてきた流れで、金融所得課税を強化するというメッセージは誤解を持たれかねないほか、物価高に苦労する中間層に対する増税となりかねないとの意見が上がっている』、「金融所得課税を強化で狙うのは、総所得が1億円を超えると所得税の負担率が下がる「1億円の壁」の打破だ。富裕層は所得だけでなく、金融所得も多く保有してるため、20.3%の課税は税制上有利になっているという考えがもととなっている。経済成長の恩恵の分配によって格差是正を図りたいという思惑がある・・・社会保障給付での再配分は、受給者が「高齢者」であり、財源である保険料は「現役世代」が負担している。構造的に日本では現役世代から高齢者への再配分となっている。このため、「高所得者」から「低所得者」への再配分を行うには、金融所得課税が適しているというのが推進派の考えだ」、なるほど。
・『海外の金融所得税はどうなっている?  こうした議論の中で、参考になるのが海外の事例だ。財務省によれば、アメリカは7.1~34.8%、イギリスは10%または20%と、所得ごとに金融所得に対する適⽤税率が決定されている。ドイツは26.4%で一律。日本と同じ運用になっている。また、シンガポールの場合、株式、金融商品の売却益が課税対象にはならない。 金融所得課税は現時点で「再分配」という視点のみで議論されているが、税を優遇することによる「経済成長」の側面と両輪で議論されることが望ましい。日本が金融立国を目指すのであれば、アメリカ型なのか、シンガポール型なのか、日本独自の型で進むのか、こうしたグランドデザインの議論になれば総裁選の争点に値する。 では、日本はアメリカを参考にするべきなのだろうか。この議論をする上で必要なのは、日本が諸外国と同じように富裕層における「富の集中」が進んでいるかだろう。日本の富裕層の人口や保有資産から見てみたい。) フランスの経済学者トマ・ピケティは世界のトップ1%の超富裕層に富が集まっており、世界的に格差が拡大していると指摘しているが、日本国内ではどうだろうか。参考になるデータがある。2022年2月に日本証券業協会がまとめた「格差の国際比較と資産形成の課題について」と題して発表されたレポートだ。 それによると、日本における所得1億円超えの人口は約2万人で、労働力人口に占める割合は約0.04%である。アメリカで、所得100万ドル以上は53万件存在し、全体の0.4%と、日本の10倍の開きがある。 富裕層への富の集中度合について調査したOECDのデータでは、富の集中度合1位のアメリカでは上位1%の層に40%の富が偏っている。日本は、上位1%の層が保有する富の割合は11%で、これは、OECDが統計を公表している27カ国のうち2番目に低い。日本では、富裕層への富の集中度合いは相対的に低い水準となっているわけだ』、「アメリカは7.1~34.8%、イギリスは10%または20%と、所得ごとに金融所得に対する適⽤税率が決定されている。ドイツは26.4%で一律。日本と同じ運用になっている。また、シンガポールの場合、株式、金融商品の売却益が課税対象にはならない・・・日本はアメリカを参考にするべきなのだろうか。この議論をする上で必要なのは、日本が諸外国と同じように富裕層における「富の集中」が進んでいるかだろう。日本の富裕層の人口や保有資産から見てみたい。) フランスの経済学者トマ・ピケティは世界のトップ1%の超富裕層に富が集まっており、世界的に格差が拡大していると指摘しているが、日本国内ではどうだろうか。参考になるデータがある。2022年2月に日本証券業協会がまとめた「格差の国際比較と資産形成の課題について」と題して発表されたレポートだ。 それによると、日本における所得1億円超えの人口は約2万人で、労働力人口に占める割合は約0.04%である。アメリカで、所得100万ドル以上は53万件存在し、全体の0.4%と、日本の10倍の開きがある。 富裕層への富の集中度合について調査したOECDのデータでは、富の集中度合1位のアメリカでは上位1%の層に40%の富が偏っている。日本は、上位1%の層が保有する富の割合は11%で、これは、OECDが統計を公表している27カ国のうち2番目に低い。日本では、富裕層への富の集中度合いは相対的に低い水準となっているわけだ」、とすると「アメリカ」は必ずしも参考にはならないことになる。
・『日本と世界では富の集中構造が異なる  アメリカや世界で問題となっている富の集中構造は、一部の富裕層に圧倒的な資産が集中する構図だ。富を持つ数少ない人口が、より富を生み出し資産を拡大させている。 しかし、日本はどうやら構造が異なる。日本における資産が5億円以上の世帯は全体の0.2%で、その資産は97兆円(全体の6.2%)である。1億円以上の世帯は124万世帯で(全体の2.3%)、その資産は236兆円(全体の15.2%)だ。 一方で、3000万未満の世帯は4215万世帯で(全体の78%)、その資産は656兆円(42.2%)である。日本では、富裕層と呼ばれる層がそこまで資産が集まっているわけではない。中間層がいまだに多い国である。であれば、低所得者層から中間層に対して、金融教育を整えることで、国民全体の金融所得自体の底上げも可能ではないか。) では、日本のどこで格差が拡大しているのかというと、所得格差の度合いを測るために国際的に使われているジニ係数では、格差が広がっているのは高齢者世帯で、現役世帯の所得格差は比較的小さいことが確認できる。むしろ、日本の課題は高齢世代の低所得層にあると言える。 近年の傾向は、もともと存在していた一部の富裕層の資産が増えたのではなく、新たな富裕層が加わったことで富裕層の総資産が拡大している。株などの投資が普及したことで、これまで富裕層でなかった層が資産を形成しつつあるのだ。富める者だけがさらに富んだ、というわけではないのが日本の現状だ。 つまり、日本はアメリカなどとは富の集中構造が大きく異なり、海外における議論をそのまま当てはめることはできない。海外に比べると少ない富裕層の資産から出た運用益に5%や10%を割増課税したとしても、再分配に寄与する金額は限られたものになる』、「ジニ係数では、格差が広がっているのは高齢者世帯で、現役世帯の所得格差は比較的小さいことが確認できる。むしろ、日本の課題は高齢世代の低所得層にあると言える。 近年の傾向は、もともと存在していた一部の富裕層の資産が増えたのではなく、新たな富裕層が加わったことで富裕層の総資産が拡大している。株などの投資が普及したことで、これまで富裕層でなかった層が資産を形成しつつあるのだ。富める者だけがさらに富んだ、というわけではないのが日本の現状だ。 つまり、日本はアメリカなどとは富の集中構造が大きく異なり、海外における議論をそのまま当てはめることはできない」、なるほど。
・『日本で足りていないのは丁寧な議論と説明  金融所得課税の実現について語る際には、金融所得課税の対象を明確にし、課税によってどれくらい税収が見込めるのか、国民がきちんと理解できる形で丁寧に説明すべきだろう。むしろ、富裕層が国内で消費や投資をしやすい環境を作るほうが、経済を回し、消費税や法人税などの財源を増やす流れにつながる可能性もある。 もともと、金融所得課税の見直しは、2021年総裁選で岸田文雄首相が打ち出したが、その後、株価の大幅下落によって見送られた。しかし、岸田首相が退陣を決めた今でも、金融所得課税のネガティブな印象は深く一部の国民や個人投資家の心に突き刺さっている。岸田首相は「所得減税」という「減税」を断行したにもかかわらずだ。 未来に向けてどんなに前向きな議論や政策を論じようとしても、一度ついた印象を拭うのは容易ではない。デフレから脱却し、日本経済を前に進ませる時期に最も重要な視点は何か。それは、政治と国民との信頼関係を構築することであり、政治家には国民と同じ目線でコミュニケーションを図ることが求められる』、「岸田首相が退陣を決めた今でも、金融所得課税のネガティブな印象は深く一部の国民や個人投資家の心に突き刺さっている・・・未来に向けてどんなに前向きな議論や政策を論じようとしても、一度ついた印象を拭うのは容易ではない。デフレから脱却し、日本経済を前に進ませる時期に最も重要な視点は何か。それは、政治と国民との信頼関係を構築することであり、政治家には国民と同じ目線でコミュニケーションを図ることが求められる」、その通りだ。
タグ:「徳川の世になり、幕藩体制の安定のために幕府が儒教(朱子学)を官学として普及させたのが大きかった。儒教の世界観では、国を統治する支配者は高い徳を有するのであり、支配者には弱い者(女性や老人や子ども、病人など)を守る道徳的責任が強く課される、とされた。よってみだりに権力者が権威を振りかざして、被支配階級から搾取するのは「徳のある者がするべきでない行為」とされ、武士の道に反するという道徳観が出来上がったのである。 「農民が武士の次に偉く、さらにその次に職人(工)、末端に商人(商)という身分があり、あえて農民を武士の次としたのは、重税の不満をそらすためだったという説は、基本的に正しくない。なぜなら繰り返すようにそんな江戸時代の身分制自体が、虚妄に近かったと考えられてきたからである」、なるほど。 古谷経衡氏による「令和の大増税は“江戸時代の五公五民”より過酷?「真の国民負担率」で見る不都合な真実」 ダイヤモンド・オンライン 税制一般 (その5)(令和の大増税は“江戸時代の五公五民”より過酷?「真の国民負担率」で見る不都合な真実、「定額減税」給与明細の記載義務化に輪をかけてボロ…税金ムダ遣いの“過剰支出”1150億円も!、日本の「金融所得課税」議論で圧倒的に欠けた視点 総裁選の争点だが、政争の具になっていないか) つまり、新田開発により収穫が増えているということは、当然幕府は把握しているものの、庶民の努力によって開発した新田などを隅々まで調査したうえで、そこに重い税金をかけて取り立てるのは、「支配者としてあるまじき行為」として認知されていたきらいがある。よって新田からの増収があっても、その部分は検地の際、意図的に見逃されたり、暗黙の了解として全部を課税の対象にしなかったり、などといういわゆる「おめこぼし」が多く存在していた」、なるほど。 「当時の経済的要衝であった京、大坂とその周辺といった上方の支配体制を盤石とした。 それ以外にも、幕府は外国貿易をほとんど独占し、甲州や佐渡、石見などといった鉱山を独占的に開発、運営することにより、巨額の黒字を計上するに至った。現代風に言えば、幕府は超優良な国営企業を複数所有して、輸出入企業さえも独占していたのである。 このような「打ち出の小づち」という裏付けがあったからこそ、庶民に対して厳しい徴税姿勢を取らなくて済んだともいえる・・・幕府は諸藩を圧倒する富裕となり、おおむね18世紀に入るまで積極財政を繰り返した。幕府の開祖、徳川家康をまつる日光東照宮への歴代将軍一行の参拝(日光社参)は、徳川の武威、威光を諸藩や庶民に知らしめる目的もあり、惜しみなく盛大に行われた。また参勤交代制度によって街道筋の宿場町は発展し、官主体の消費によって、道路と物流が大きく整備されることになった。 幕府(政府)が惜しみなく金を使うことによって、その需要に応える民間部門が急速に成長し、これがのち、明治以降の日本近代資本主義につながるブルジョワジー(資本家)の勃興に貢献したのである・・・金鉱山からの産出量が過剰採掘で減少し、また、当時世界的に吹き荒れた天候不順(小氷期)や火山の噴火による農業生産の不振、相次ぐ大地震の復旧費、江戸や大坂などの大都市に流入する人々への対策、大火によって焼失した建物修繕費用なども増大し、国庫の悪化にさらなる追い打ちをかけることになる。 こうして幕藩体制は徐々にだが確実に疲労し、徳川の権勢の低下とともに時代は明治維新に向かっていく。 といっても、少なくとも幕府直轄の天領において、税負担が「五公五民」つまり収入の50%が年貢、という状況は、例外こそあるものの、基本的に起きづらかったといえる。現在の「大増税」を江戸時代になぞらえるのは、このような事実からいっても間違いである」、なるほど。 日刊ゲンダイ「「定額減税」給与明細の記載義務化に輪をかけてボロ…税金ムダ遣いの“過剰支出”1150億円も!」 「給与明細に減税額の「明記」が義務化されていたことが直前になって“周知”され、SNSなどで大炎上しているが、これに続く驚きの事実がまだあった。 定額減税は1人当たり所得税3万円、住民税1万円の計4万円。本人と扶養家族が対象なので、4人家族なら16万円になる。所得税は6月分から減税されるが、1カ月分だけでは満額差し引けない場合、翌月に残りの減税額が繰り越して差し引かれる」、わざわざ「定額減税」の有難味を知らしめようとする姑息な手段だ。 「年間の納税額が3万9999円の人は、4万円の満額にわずか1円満たないだけでも、1万円が給付されるのである。 本来の定額減税のルール以上に過剰に給付することになるわけで、もらえる当人は「ラッキー」と喜ぶだろうが、原資は税金だ。不公平感があるし、国の政策としてどうなのか」、全く酷い話だ。 「本来の減税額より多く給付することによって余計にかかる支出は、ナント1150億円程度にもなるそうだ・・・『増税メガネ』を払拭するためにコストをかけるのは前代未聞。選挙対策であり、人気取りに振り回されている」 たった1回こっきりの減税に、経理担当者はシステム変更や事務手続きで余計な仕事が増える。そのうえ1000億円規模の税金ムダ遣い! 不人気首相の支持率対策だけの世紀の愚策だ」、まるで悪政の見本だ。 東洋経済オンライン 馬渕 磨理子氏による「日本の「金融所得課税」議論で圧倒的に欠けた視点 総裁選の争点だが、政争の具になっていないか」 「金融所得課税を強化で狙うのは、総所得が1億円を超えると所得税の負担率が下がる「1億円の壁」の打破だ。富裕層は所得だけでなく、金融所得も多く保有してるため、20.3%の課税は税制上有利になっているという考えがもととなっている。経済成長の恩恵の分配によって格差是正を図りたいという思惑がある・・・ 社会保障給付での再配分は、受給者が「高齢者」であり、財源である保険料は「現役世代」が負担している。構造的に日本では現役世代から高齢者への再配分となっている。このため、「高所得者」から「低所得者」への再配分を行うには、金融所得課税が適しているというのが推進派の考えだ」、なるほど。 「アメリカは7.1~34.8%、イギリスは10%または20%と、所得ごとに金融所得に対する適⽤税率が決定されている。ドイツは26.4%で一律。日本と同じ運用になっている。また、シンガポールの場合、株式、金融商品の売却益が課税対象にはならない・・・日本はアメリカを参考にするべきなのだろうか。 この議論をする上で必要なのは、日本が諸外国と同じように富裕層における「富の集中」が進んでいるかだろう。日本の富裕層の人口や保有資産から見てみたい。) フランスの経済学者トマ・ピケティは世界のトップ1%の超富裕層に富が集まっており、世界的に格差が拡大していると指摘しているが、日本国内ではどうだろうか。参考になるデータがある。2022年2月に日本証券業協会がまとめた「格差の国際比較と資産形成の課題について」と題して発表されたレポートだ。 それによると、日本における所得1億円超えの人口は約2万人で、労働力人口に 占める割合は約0.04%である。アメリカで、所得100万ドル以上は53万件存在し、全体の0.4%と、日本の10倍の開きがある。 富裕層への富の集中度合について調査したOECDのデータでは、富の集中度合1位のアメリカでは上位1%の層に40%の富が偏っている。日本は、上位1%の層が保有する富の割合は11%で、これは、OECDが統計を公表している27カ国のうち2番目に低い。日本では、富裕層への富の集中度合いは相対的に低い水準となっているわけだ」、とすると「アメリカ」は必ずしも参考にはならないことになる。 「ジニ係数では、格差が広がっているのは高齢者世帯で、現役世帯の所得格差は比較的小さいことが確認できる。むしろ、日本の課題は高齢世代の低所得層にあると言える。 近年の傾向は、もともと存在していた一部の富裕層の資産が増えたのではなく、新たな富裕層が加わったことで富裕層の総資産が拡大している。株などの投資が普及したことで、これまで富裕層でなかった層が資産を形成しつつあるのだ。 富める者だけがさらに富んだ、というわけではないのが日本の現状だ。 つまり、日本はアメリカなどとは富の集中構造が大きく異なり、海外における議論をそのまま当てはめることはできない」、なるほど。 「岸田首相が退陣を決めた今でも、金融所得課税のネガティブな印象は深く一部の国民や個人投資家の心に突き刺さっている・・・未来に向けてどんなに前向きな議論や政策を論じようとしても、一度ついた印象を拭うのは容易ではない。デフレから脱却し、日本経済を前に進ませる時期に最も重要な視点は何か。それは、政治と国民との信頼関係を構築することであり、政治家には国民と同じ目線でコミュニケーションを図ることが求められる」、その通りだ。
nice!(0)  コメント(0) 

宇宙(その2)宇宙論基礎2題:このまま膨張し続けたら 宇宙はどうなってしまうのか…、「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?) [科学技術]

昨日に続いて、宇宙を(その2)宇宙論の基礎から捉えた(その2)宇宙論の基礎2題:このまま膨張し続けたら 宇宙はどうなってしまうのか…、「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?)を取上げよう。

先ずは、本年9月8日付け現代ビジネスが掲載した高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所による「このまま膨張し続けたら、宇宙はどうなってしまうのか…「最悪のシナリオ」と「人類に残された希望」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/136796
・『138億年前、点にも満たない極小のエネルギーの塊からこの宇宙は誕生した。そこから物質、地球、生命が生まれ、私たちの存在に至る。しかし、ふと冷静になって考えると、誰も見たことがない「宇宙の起源」をどのように解明するというのか、という疑問がわかないだろうか? 本連載では、第一線の研究者たちが基礎から最先端までを徹底的に解説した『宇宙と物質の起源』より、宇宙の大いなる謎解きにご案内しよう。 *本記事は、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所・編『宇宙と物質の起源 「見えない世界」を理解する』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです』、興味深そうだ。
・『宇宙全体の70%を占めるダークエネルギー  前の記事で述べたように、ダークエネルギーもしくは宇宙定数が現在の宇宙に占める割合は、観測から約70%です。このダークエネルギーの多さが、インフレーションと同様に、現在の宇宙で、宇宙の加速膨張を引き起こしています。 Ia型と呼ばれる超新星爆発からの光を観測すると、宇宙の大きさが1/3から1/2の昔と比べて、現在の宇宙年齢に近づけば近づくほど、加速膨張がどんどん激しくなってきていることがわかってきました。Ia型とは、恒星の終末期の1つの姿である白色矮星にガスが降り積もって臨界質量を超えることで爆発するタイプの超新星爆発です。1998年に同時に発表された宇宙の加速膨張を示す観測データの業績により、アメリカのソール・パールムッター博士たちと、オーストラリアのブライアン・シュミット博士とアメリカのアダム・リース博士たちの2つのグループに2011年、ノーベル物理学賞が与えられました。 ダークエネルギーは、現在では宇宙全体のエネルギーの70%と、大きな量となっています。しかし、本当に定数であることを仮定するならば、宇宙が生まれた宇宙初期では、ものすごく小さな量だったことを意味します。宇宙が始まったときに、なんらかの物理過程により、この小さな種が仕込まれたのではないかと考えられています。また、近い将来、ダークエネルギーが宇宙のエネルギーの100%を占めるようになり、完全に支配的になると予想されています。しかし、その小ささの起源は、現代物理学では説明できません。未解決であり、新しい物理学の理論の発見が必要だと考えられています。この章の最後に、唯一あり得る科学的ではない解決方法である、人間原理での解決方法を解説します。人間原理は、人間の存在がこの宇宙の性質を決めているかもしれないという不思議な概念です』、「ダークエネルギーが宇宙のエネルギーの「70%を占めているのが」、「近い将来」、「100%を占めるようになり、完全に支配的になると予想されています。しかし、その小ささの起源は、現代物理学では説明できません。未解決であり、新しい物理学の理論の発見が必要だと考えられています。この章の最後に、唯一あり得る科学的ではない解決方法である、人間原理での解決方法を解説します。人間原理は、人間の存在がこの宇宙の性質を決めているかもしれないという不思議な概念です」、なるほど。
・『宇宙は再び加速膨張期を迎えた  宇宙が誕生したエネルギーとされるプランク(質量)スケール(約1000京GeV)から、宇宙はさまざまな相転移を経験して、その相を変えてきました。それを水の3相に例えるならば、水蒸気、水、氷というように、温度が低くなるにつれて、エネルギーのより低い、まったく異なる相に変わってきたというものです。それらの相とは、大統一理論の相転移(1京GeV)、電弱相転移(100GeV)、量子色力学の相転移(100MeV)などです。その一方、ダークエネルギーのエネルギースケールは、0.002eVで、最も低いエネルギー状態の真空だと理解されています。この、ダークエネルギーのスケール(0.002eV)だけは、現在の物理学では説明できません。以下に説明するように、その数字をもつ物理量が存在しないのです。 大統一理論が正しいかどうかは、まだ実験では検証されていませんが、理論の整合性だけから、その存在の確からしさが予言されています。大統一理論の相転移後、1京GeVのエネルギースケールの真空のエネルギーが残っている可能性があります。また、電弱相転移を引き起こすヒッグス粒子は、2012年にCERNのLHC実験により発見されました。2013年にヒッグス粒子の存在を予言した2人の理論家、ヒッグス博士とアングレール博士にノーベル物理学賞が贈られています。電弱相転移により、100GeV程度の真空のエネルギーが残っている可能性があります。加えて、温度1兆度(100MeV)の火の玉宇宙の中で、大量のクォーク・反クォークが一斉に対消滅するうちに、約10億分の1個だけが陽子や中性子などの核子として残ります。この量子色力学の相転移の真空のエネルギーは、約100MeVのエネルギースケールだと考えられています。 つまり、現在の物理学における素粒子の標準理論では、ダークエネルギーのエネルギースケールの約0.002eVで起こる相転移は知られていません。約0.002eVのスケールの真空のエネルギーは、現在の物理学では理論的に説明不可能なのです。これは、重力を修正するようなエキゾチックなモデルを考えたとしても、加えてそのエネルギースケールをさらに仮定しなければならないことに変わりはありません。このことは、未発見の新しい物理法則の存在を予感させます。 その真空のエネルギーが支配的になりエネルギー密度が近似的に一定になると、アインシュタイン博士が唱えた宇宙項、つまり宇宙定数とまったく同じ働きをします。宇宙定数を含む、もっと広い概念としてダークエネルギーという、完全に定数でなくても緩やかな変化であればよいという考え方も、観測からは否定されていません。第7章で説明した通り、宇宙定数つまりダークエネルギーが支配的になると、宇宙の大きさは倍々ゲームのように再び加速膨張により時間発展していきます』、「現在の物理学における素粒子の標準理論では、ダークエネルギーのエネルギースケールの約0.002eVで起こる相転移は知られていません。約0.002eVのスケールの真空のエネルギーは、現在の物理学では理論的に説明不可能なのです。これは、重力を修正するようなエキゾチックなモデルを考えたとしても、加えてそのエネルギースケールをさらに仮定しなければならないことに変わりはありません。このことは、未発見の新しい物理法則の存在を予感させます。 その真空のエネルギーが支配的になりエネルギー密度が近似的に一定になると、アインシュタイン博士が唱えた宇宙項、つまり宇宙定数とまったく同じ働きをします。宇宙定数を含む、もっと広い概念としてダークエネルギーという、完全に定数でなくても緩やかな変化であればよいという考え方も、観測からは否定されていません」、なるほど。
・『ダークエネルギーとは何か?  宇宙定数を素粒子論の言葉で表現するなら、未知のスカラー場が、そのポテンシャルエネルギーの底に落ち着いている状況だと考えられています。ポテンシャルエネルギーとは、スカラー場が固有にもつ位置エネルギーのようなエネルギーのことで、低いエネルギー状態に行けば行くほど安定であることを意味します。ダークエネルギーとなる未知のスカラー場の正体は、実験的にも、観測的にも、まったく明らかになっていません。そのため理論上は、その存在を仮定して宇宙モデルをつくることになります。 ここでは、ダークエネルギーとなるスカラー場を「φ」と呼びましょう。このφのポテンシャルエネルギーの底のエネルギー密度の大きさが、重要なのです。エネルギースケールでは、約0.002eVです。ポテンシャルエネルギーもしくは、エネルギー密度で表すならば、約0.002eVの4乗、つまり約16eV⁴の1兆分の1となります。もっと想像をたくましくした場合、必ずしも、現在ポテンシャルエネルギーの底に落ち着いていなくてもよいという考え方も可能となります。つまり、ポテンシャルエネルギーの底では、特別なエネルギースケールなどはなくて、エネルギー密度は確かにゼロとするのです。 しかし、将来そこに落ち着けばよいと考えて、今はポテンシャルの途中をゆっくり転がり落ちていると解釈するのです。つまり、宇宙定数ではなく、動いているダークエネルギーというより広い概念を導入することになります。そして0.002eVの4乗は、ゼロに向かう過渡期のポテンシャルエネルギーの値と解釈します。そうすれば、現在の宇宙が偶然、このエネルギースケールをとっているだけで、新しいエネルギースケールを説明しなくてもよいという解釈となります。このスカラー場は、光子、ニュートリノ、バリオン物質、ダークマターとも違う、第5の成分という意味で「クインテッセンスモデル」とも呼ばれます。 そして、そのゆっくり動く度合いは、理論と観測から厳しい制限を受けます。ポテンシャルの式中にφの逆べき、1/φの項が現れる理論モデルの場合、宇宙膨張からくる摩擦力とポテンシャルを落ちていく力が釣り合ってゆっくり転がるモデルとなります。そのため、最も無理のない自然なモデルだと考えられました。これを「トラッカー場モデル」と呼びます。 しかし、最新の観測より、トラッカー場モデルは、ファイが速く動きすぎるとして棄却されました。現在では、その真空に落ち着く直前(フリージング)か、別の真空から動き始める瞬間(ソーイング)かの、2つのモデルが観測から許されています。 これまで、スカラー場のモデルと書いてきましたが、理論的には何一つ確定していません。強いて候補を挙げるなら、前述の軽いALP(正確な分類では、スピンの場ですが、鏡に映す変換により場の値の符号がマイナスになる擬スカラー場です)のような量子場かもしれません。しかし、その約0.002eVというエネルギースケールをもつポテンシャルについては、第一原理から導かれるわけではなく、仮定するしか、現在は方法がありません。前述のALPでも、理論的にはそのエネルギースケールが必然ではありません。また、繰り返しますが、重力を修正したとしても、このエネルギースケールのエネルギー密度を第一原理から自然に導出するわけではないので、さらにエネルギースケール自体について仮定を追加する必要があるというのが現状です。つまり、重力を修正しても解決されていないのです』、「最新の観測より、トラッカー場モデルは、ファイが速く動きすぎるとして棄却されました。現在では、その真空に落ち着く直前(フリージング)か、別の真空から動き始める瞬間(ソーイング)かの、2つのモデルが観測から許されています。 これまで、スカラー場のモデルと書いてきましたが、理論的には何一つ確定していません。強いて候補を挙げるなら、前述の軽いALP(正確な分類では、スピンの場ですが、鏡に映す変換により場の値の符号がマイナスになる擬スカラー場です)のような量子場かもしれません。しかし、その約0.002eVというエネルギースケールをもつポテンシャルについては、第一原理から導かれるわけではなく、仮定するしか、現在は方法がありません。前述のALPでも、理論的にはそのエネルギースケールが必然ではありません」、難し過ぎて到底理解できない。
・『宇宙の未来  次に、最低限の仮定の下、このままダークエネルギーのエネルギー密度がほぼ定数だとして、この宇宙の未来がどうなっていくのかを見ていきます。現代物理学の知識で予想する、標準的な宇宙の運命は以下のようです。 まず、このまま加速膨張が続けば、基本的に銀河団に属していない銀河と銀河の間の距離は遠ざかり、宇宙は、どんどん空っぽになってしまいます。約40億年後、われわれの銀河とアンドロメダ銀河が合体します。形成される超巨大銀河には「ミルコメダ」という名前がすでに付けられています。約50億年後、太陽が死を迎えます。そのとき、地球は肥大した太陽に飲み込まれるという説と、地球の公転軌道が広がって飲み込まれないという2つの説が唱えられています。いずれにしても人類は、そのままでは生き延びることは不可能でしょう。 約1400億年後、ミルコメダは、激しい加速膨張で独りぼっちの銀河となります。約1兆年後、われわれの銀河にある一番の長寿命の恒星である赤色矮星まで、すべての恒星が燃え尽きます。約1000京年後、すべての銀河はブラックホールだらけになります。 約10³⁴年後、つまり、約1000京年の1000兆倍後、大統一理論の予言により、宇宙のすべての陽子が陽電子などに崩壊します。原子や分子などの普通の物質はなくなることになります。そして、約10⁸³年後、つまり約1000京年の1000京倍の1000京倍の1000京倍の1000万倍後、それぞれの銀河の中心にある超巨大ブラックホールが蒸発します。それ以後、天体と呼ぶことのできる物体は、宇宙から消え去るでしょう。 さらに仮定することを増やすと、ダークエネルギーが時間とともにより多くなるエキゾチックなモデルで、ビッグリップと呼ばれるより激しい加速膨張によって未来にすべての天体が引き裂かれることを提案した研究者もいます。このシナリオはとても刺激的ですが、その理論を示唆する観測・実験結果は今のところ得られていません』、「このまま加速膨張が続けば、基本的に銀河団に属していない銀河と銀河の間の距離は遠ざかり、宇宙は、どんどん空っぽになってしまいます。約40億年後、われわれの銀河とアンドロメダ銀河が合体します。形成される超巨大銀河には「ミルコメダ」という名前がすでに付けられています。約50億年後、太陽が死を迎えます。そのとき、地球は肥大した太陽に飲み込まれるという説と、地球の公転軌道が広がって飲み込まれないという2つの説が唱えられています。いずれにしても人類は、そのままでは生き延びることは不可能でしょう・・・約1400億年後、ミルコメダは、激しい加速膨張で独りぼっちの銀河となります。約1兆年後、われわれの銀河にある一番の長寿命の恒星である赤色矮星まで、すべての恒星が燃え尽きます。約1000京年後、すべての銀河はブラックホールだらけになります。 約10³⁴年後、つまり、約1000京年の1000兆倍後、大統一理論の予言により、宇宙のすべての陽子が陽電子などに崩壊します。原子や分子などの普通の物質はなくなることになります。そして、約10⁸³年後、つまり約1000京年の1000京倍の1000京倍の1000京倍の1000万倍後、それぞれの銀河の中心にある超巨大ブラックホールが蒸発します。それ以後、天体と呼ぶことのできる物体は、宇宙から消え去るでしょう。 さらに仮定することを増やすと、ダークエネルギーが時間とともにより多くなるエキゾチックなモデルで、ビッグリップと呼ばれるより激しい加速膨張によって未来にすべての天体が引き裂かれることを提案した研究者もいます」、なるほど。
・『残された大問題  これまで、真空のエネルギースケール約0.002eVを説明する物理法則を探ることが、ダークエネルギー問題の科学的な解決であることを説明してきました。つまり、現在の宇宙は、なぜ放射(約0.01%)、見える物質(約5%)、ダークマター(約25%)、ダークエネルギー(約70%)と、すべての成分が数桁の範囲でだいたい同じ程度のエネルギー密度なのか? そして、ダークエネルギーの量は、定数だというのに、なぜ、理論物理の知られているあらゆるスケールと比べてこんなに小さいのか? という問題でした。その小ささには、大変なチューニングが必要で、その値がもし約1000倍でも大きい宇宙だったら、宇宙はもっと早くに速く膨張してしまい、銀河はできないし地球は生まれないことからも、極めて深刻であることがわかります。 実は、物理学ではなく、哲学的にこの問題を解く試みがあります。それが、フランスの哲学者ルネ・デカルト博士が提唱した「我思う、故に我あり」という考え方を人間原理に適用したものです。それを、宇宙論の文脈で言い換えると、「宇宙の法則がこうなっているからこそ、この問いを発する人間が(必然として)生まれてきたという原理」などとなります。「必然として」を入れると、強い人間原理と呼ばれます。われわれは、ダークエネルギー(宇宙定数)が小さい宇宙に住んでいます。実際、観測される約1meVのスケールから、自然なスケールである1TeVまでが約15桁、その4乗の約60桁も小さいのです。この60桁というずれの程度は、理論的に説明するためには、ゼロ点からのずれ具合がすさまじく小さい数を仮定してチューニングしなければならないことを意味します。 その異常さを、標準理論を例にとって見てみます。標準理論にも、さまざまな質量が現れます。しかし、例えば、ヒッグス粒子の質量のスケール(約100GeV)から、一番軽い素粒子である電子の質量のスケール(約500KeV)までの、そのずれ方は大きく見積もっても6桁くらいに収まっているのです。多くの素粒子物理学者は、この6桁くらいのずれ方はなんらかの理由により説明できると考えています。そのため、この6桁のずれ程度ならば、普段、標準理論のほころびだとはそれほど思っていないように思います。筆者が発表した理論モデルの1つに、ニュートリノ質量(単位meV)の4乗がダークエネルギーのエネルギー密度になるかもしれない、というものがあります。しかし正直に申し上げて、この場合でもスケールを手で置いているという範疇を出ないものです。将来の観測で筆者のモデルが正しいと証明されるか、それとも棄却されるか、個人的には楽しみにしています。ぜひ、若い方々も、この問題に科学で真っ向からトライしてみてください。 宇宙は唯一ではないとするマルチバースの考え方を採用するならば、われわれの宇宙は、唯一の宇宙ではなく、それこそ天文学的な大きな数字の数だけ生まれた宇宙の中のただの1つにすぎないのかもしれません。そして、それぞれの宇宙は、物理法則が違っている可能性すらあります。宇宙定数が約60桁小さい宇宙も、確率的には有り得ないほど低くても、天文学的数字のマルチバースの中では、偶然に、たった1つでも誕生する可能性があるかもしれません。そして、その宇宙は人間が生まれる条件が整っているのです。その場合、人間が生まれる条件に合った宇宙だけに、人間が生まれただけにすぎないのかもしれないのです。そして、その人間が、自分たちの宇宙は「なぜ、こんなにも自分たちに都合がよくできているのか?(宇宙定数が小さくなっているのか?)」という疑問を発しているという解決方法なのです。
このように、「宇宙定数問題」または「ダークエネルギー問題」を人間原理で解決する場合、驚くことに人間の存在が、その宇宙全体の性質を決めてしまっていることになってしまいます。つまり、人間が住む宇宙のみ人間に観測され得ると言っているのです。 人類は、古来より信じられてきた天動説を捨て、精密な観測データの蓄積により得られたコペルニクス原理を採用し、地動説を信じるようになってきました。さらに、宇宙は一様で等方だとする宇宙原理を信じて、われわれの銀河や太陽系が特別な場所ではないと受け入れてきたのです。現代の人類が、より観測技術が進んだことにより、われわれの住んでいる宇宙は例外的な宇宙だったと受け入れなければならない状況になってきているのは、大変皮肉なことです。  説明なしの原理の導入は、その背後に隠れているかもしれない未発見の物理法則の探究を止めてしまう可能性があるのですが、現在、エキゾチックな宇宙モデルを仮定する以外には、人間原理による解決方法しかあり得ないようにも思えます。しかし、科学的な問題に人間原理を適用することは、最終手段として取っておくべきものだと思われます。 つまり、これまで解決不可能とされてきた問題に対して、新しい物理学の法則を見つけることこそ、科学による勝利なのです。繰り返しますが、ダークエネルギー問題は、今のところ人間原理の適用以外に解く方法がないように見え、人間原理を適用する最初の例になるかもしれないという大変に面白い問題と言えるでしょう。人類は、宇宙誕生の秘密に迫る、最も根本的な科学の問題に直面しているのかもしれませんね。 さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする』、「ダークエネルギー問題は、今のところ人間原理の適用以外に解く方法がないように見え、人間原理を適用する最初の例になるかもしれないという大変に面白い問題と言えるでしょう。人類は、宇宙誕生の秘密に迫る、最も根本的な科学の問題に直面しているのかもしれませんね。 さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする」、確かに「スリリング」ではあるが、理解の限度を超えつつあるようだ。

次に、9月8日付け現代ビジネスが掲載した高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所による「「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?「最有力候補」を科学的検証とともに一挙解説!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/136795
・『・・・どうやってダークマターを見つけるのか  先の記事で、理論的に予言されるダークマターの有力候補について、ちょっとだけご紹介しました。本記事では、それぞれについて詳しく説明してみたいと思います。 最も有力な候補と目されているのは、WIMPと呼ばれる未発見の素粒子です。「弱い相互作用をする重い粒子」という意味の英語の頭文字を取って、そうした性質をもつ粒子の総称として名付けられました。重さは、陽子の100倍(約100GeV)程度以上です。他の粒子との相互作用が弱すぎて散乱の頻度が低くて見つけられない粒子なのです。英語の単語wimp自体が弱虫という意味なので、名は体を表していますね。具体的な粒子としては、まだ仮説である超対称性理論に現れる光子、もしくは、Z粒子かヒッグス粒子の相棒の総称であるニュートラリーノが、WIMPの候補として注目されています。 ニュートラリーノの見つけ方は単純です。キセノン原子などの重い原子核を数トンも用意して、ニュートラリーノがぶつかってくるのを待つ方法が、最も有力とされています。キセノン原子の中の陽子や中性子との相互作用は弱いのですが、大量にキセノンを用意すれば、確率が上がって、直接検出できるという考え方です。しかし、これまでにニュートラリーノが確実に発見された、とする報告はありません。また、高エネルギー加速器研究機構(KEK)も参加するスイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での加速器実験でニュートラリーノがつくられると期待されていたのですが、見つかりませんでした。 その一方、宇宙観測を用いるアイデアもあります。銀河の中心など、ダークマターの密度が濃いところで、ダークマター同士がお互いに衝突して対消滅することが期待されています。対消滅した後、ニュートラリーノならば、光や電子、クォークなど見える粒子を対生成によりつくることが理論的に予想されています。そうした2次的につくられた見える粒子を検出し、間接的にWIMPを検出するのです。現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています。) 138億年前、点にも満たない極小のエネルギーの塊からこの宇宙は誕生した。そこから物質、地球、生命が生まれ、私たちの存在に至る。しかし、ふと冷静になって考えると、誰も見たことがない「宇宙の起源」をどのように解明するというのか、という疑問がわかないだろうか? 本連載では、第一線の研究者たちが基礎から最先端までを徹底的に解説した『宇宙と物質の起源』より、宇宙の大いなる謎解きにご案内しよう。 *本記事は、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所・編『宇宙と物質の起源 「見えない世界」を理解する』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです』、「これまでにニュートラリーノが確実に発見された、とする報告はありません。また、高エネルギー加速器研究機構(KEK)も参加するスイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での加速器実験でニュートラリーノがつくられると期待されていたのですが、見つかりませんでした・・・宇宙観測を用いるアイデアもあります。銀河の中心など、ダークマターの密度が濃いところで、ダークマター同士がお互いに衝突して対消滅することが期待されています。対消滅した後、ニュートラリーノならば、光や電子、クォークなど見える粒子を対生成によりつくることが理論的に予想されています。そうした2次的につくられた見える粒子を検出し、間接的にWIMPを検出するのです。現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています」、なるほど。
・『どうやってダークマターを見つけるのか  先の記事で、理論的に予言されるダークマターの有力候補について、ちょっとだけご紹介しました。本記事では、それぞれについて詳しく説明してみたいと思います。 最も有力な候補と目されているのは、WIMPと呼ばれる未発見の素粒子です。「弱い相互作用をする重い粒子」という意味の英語の頭文字を取って、そうした性質をもつ粒子の総称として名付けられました。重さは、陽子の100倍(約100GeV)程度以上です。他の粒子との相互作用が弱すぎて散乱の頻度が低くて見つけられない粒子なのです。英語の単語wimp自体が弱虫という意味なので、名は体を表していますね。具体的な粒子としては、まだ仮説である超対称性理論に現れる光子、もしくは、Z粒子かヒッグス粒子の相棒の総称であるニュートラリーノが、WIMPの候補として注目されています。 ニュートラリーノの見つけ方は単純です。キセノン原子などの重い原子核を数トンも用意して、ニュートラリーノがぶつかってくるのを待つ方法が、最も有力とされています。キセノン原子の中の陽子や中性子との相互作用は弱いのですが、大量にキセノンを用意すれば、確率が上がって、直接検出できるという考え方です。しかし、これまでにニュートラリーノが確実に発見された、とする報告はありません。また、高エネルギー加速器研究機構(KEK)も参加するスイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での加速器実験でニュートラリーノがつくられると期待されていたのですが、見つかりませんでした。 その一方、宇宙観測を用いるアイデアもあります。銀河の中心など、ダークマターの密度が濃いところで、ダークマター同士がお互いに衝突して対消滅することが期待されています。対消滅した後、ニュートラリーノならば、光や電子、クォークなど見える粒子を対生成によりつくることが理論的に予想されています。そうした2次的につくられた見える粒子を検出し、間接的にWIMPを検出するのです。現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています』、「現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています」、なるほど。
・『原始ブラックホール  3つ目の候補は、筆者の推しダークマターである原始ブラックホールです。通常のブラックホールが重い恒星の最期につぶれてつくられる天体であるのと異なり、原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トンの間と予想されています。つまり、太陽質量より桁違いに軽いのです。 これは筆者の研究で示したことなのですが、もし原始ブラックホールが約1000億トンより軽い場合、ホーキング輻射として知られているように、ガンマ線の熱輻射を出して蒸発してしまい、現在のガンマ線の観測で蒸発する様子が見えるはずです。しかし、これまでの観測からそうした現象は見られないので、原始ブラックホールがダークマターになっているなら、もっと重くないといけないということになります。 その一方、重さが約10京トンより重い場合というのは、すばる望遠鏡の観測により否定されてしまいます。すばる望遠鏡でアンドロメダ銀河の恒星をずっと観測していると、その恒星の前を原始ブラックホールが通り過ぎる場合があります。そのとき、原始ブラックホールによる重力レンズ効果で、恒星の明るさが増光することが期待されていました。しかし、実際は観測されなかったことから、重さ約10京トン以上の原始ブラックホールを完全に否定してしまいました。 将来、ガンマ線観測の感度が上がれば、残っている質量領域である、約1000億トンより重く、約10京トンより軽い原始ブラックホールが、ゆっくりと蒸発する様子が観測されるかもしれません。また、原始ブラックホールをつくる密度ゆらぎは、同時に非線形重力波をつくることが知られています。将来の感度の高い、レーザー干渉計宇宙アンテナLISAや0.1ヘルツ帯干渉計型重力波天文台DECIGOなど人工衛星での重力波観測で、その非線形重力波を観測できれば、原始ブラックホールのダークマター説が検証される可能性があります』、「原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トン「原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トンのの間と予想されています。つまり、太陽質量より桁違いに軽いのです・・・もし原始ブラックホールが約1000億トンより軽い場合、ホーキング輻射として知られているように、ガンマ線の熱輻射を出して蒸発してしまい、現在のガンマ線の観測で蒸発する様子が見えるはずです。しかし、これまでの観測からそうした現象は見られないので、原始ブラックホールがダークマターになっているなら、もっと重くないといけないということになります」、なるほど。
・『右巻きニュートリノ  4つ目の候補は、未発見の右巻きニュートリノです。 その質量についての条件として、すでに検出されている左巻きニュートリノの質量の30倍程度あれば、質量だけなら、ダークマターに十分足りるのです。しかし、その程度だと軽すぎて光のように飛び回るせいで、銀河をダークマターとしてつなぎ止められません。つまり、「冷たいダークマター」とはなりません。 要求される条件は、左巻きニュートリノの数万倍以上の重さ、つまり、数千eVの質量をもつ必要があります。重い右巻きニュートリノは、X線光子を出して崩壊することが理論的に予言されています。その光子を検出できれば、右巻きニュートリノがダークマターであると確定する可能性があります。また、大強度陽子加速器施設J‐PARCでのニュートリノ振動実験T2Kなどでは、ニュートリノが右巻きニュートリノに崩壊もしくは振動する痕跡も探っています。 KEKが参加するLiteBIRD衛星実験では、将来得られる詳細な宇宙マイクロ波背景放射の偏光のデータから、右巻きニュートリノダークマターを検出する可能性があります。 さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする』、「要求される条件は、左巻きニュートリノの数万倍以上の重さ、つまり、数千eVの質量をもつ必要があります。重い右巻きニュートリノは、X線光子を出して崩壊することが理論的に予言されています。その光子を検出できれば、右巻きニュートリノがダークマターであると確定する可能性があります」、まだまだ発展途上の学問のようだ。
タグ:宇宙 (その2)宇宙論基礎2題:このまま膨張し続けたら 宇宙はどうなってしまうのか…、「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?) 現代ビジネス 高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 「このまま膨張し続けたら、宇宙はどうなってしまうのか…「最悪のシナリオ」と「人類に残された希望」」 高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所・編『宇宙と物質の起源 「見えない世界」を理解する』(ブルーバックス) 「ダークエネルギーが宇宙のエネルギーの「70%を占めているのが」、「近い将来」、「100%を占めるようになり、完全に支配的になると予想されています。しかし、その小ささの起源は、現代物理学では説明できません。未解決であり、新しい物理学の理論の発見が必要だと考えられています。この章の最後に、唯一あり得る科学的ではない解決方法である、人間原理での解決方法を解説します。人間原理は、人間の存在がこの宇宙の性質を決めているかもしれないという不思議な概念です」、なるほど。 「現在の物理学における素粒子の標準理論では、ダークエネルギーのエネルギースケールの約0.002eVで起こる相転移は知られていません。約0.002eVのスケールの真空のエネルギーは、現在の物理学では理論的に説明不可能なのです。これは、重力を修正するようなエキゾチックなモデルを考えたとしても、加えてそのエネルギースケールをさらに仮定しなければならないことに変わりはありません。 このことは、未発見の新しい物理法則の存在を予感させます。 その真空のエネルギーが支配的になりエネルギー密度が近似的に一定になると、アインシュタイン博士が唱えた宇宙項、つまり宇宙定数とまったく同じ働きをします。宇宙定数を含む、もっと広い概念としてダークエネルギーという、完全に定数でなくても緩やかな変化であればよいという考え方も、観測からは否定されていません」、なるほど。 「最新の観測より、トラッカー場モデルは、ファイが速く動きすぎるとして棄却されました。現在では、その真空に落ち着く直前(フリージング)か、別の真空から動き始める瞬間(ソーイング)かの、2つのモデルが観測から許されています。 これまで、スカラー場のモデルと書いてきましたが、理論的には何一つ確定していません。強いて候補を挙げるなら、前述の軽いALP(正確な分類では、スピンの場ですが、鏡に映す変換により場の値の符号がマイナスになる擬スカラー場です)のような量子場かもしれません。 しかし、その約0.002eVというエネルギースケールをもつポテンシャルについては、第一原理から導かれるわけではなく、仮定するしか、現在は方法がありません。前述のALPでも、理論的にはそのエネルギースケールが必然ではありません」、難し過ぎて到底理解できない。 「このまま加速膨張が続けば、基本的に銀河団に属していない銀河と銀河の間の距離は遠ざかり、宇宙は、どんどん空っぽになってしまいます。約40億年後、われわれの銀河とアンドロメダ銀河が合体します。形成される超巨大銀河には「ミルコメダ」という名前がすでに付けられています。約50億年後、太陽が死を迎えます。そのとき、地球は肥大した太陽に飲み込まれるという説と、地球の公転軌道が広がって飲み込まれないという2つの説が唱えられています。いずれにしても人類は、そのままでは生き延びることは不可能でしょう・・・ 約1400億年後、ミルコメダは、激しい加速膨張で独りぼっちの銀河となります。約1兆年後、われわれの銀河にある一番の長寿命の恒星である赤色矮星まで、すべての恒星が燃え尽きます。約1000京年後、すべての銀河はブラックホールだらけになります。 約10³⁴年後、つまり、約1000京年の1000兆倍後、大統一理論の予言により、宇宙のすべての陽子が陽電子などに崩壊します。原子や分子などの普通の物質はなくなることになります。そして、約10⁸³年後、つまり約1000京年の1000京倍の1000京倍の1000京倍の1000万倍後、それぞれの銀河の中心にある超巨大ブラックホールが蒸発します。それ以後、天体と呼ぶことのできる物体は、宇宙から消え去るでしょう。 さらに仮定することを増やすと、ダークエネルギーが時間とともにより多くなるエキゾチックなモデルで、ビッグリップと呼ばれるより激しい加速膨張によって未来にすべての天体が引き裂かれることを提案した研究者もいます」、なるほど。 「ダークエネルギー問題は、今のところ人間原理の適用以外に解く方法がないように見え、人間原理を適用する最初の例になるかもしれないという大変に面白い問題と言えるでしょう。人類は、宇宙誕生の秘密に迫る、最も根本的な科学の問題に直面しているのかもしれませんね。 さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする」、確かに「スリリング」ではあるが、理解の限度を超えつつあるようだ。 「「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?「最有力候補」を科学的検証とともに一挙解説!」 「これまでにニュートラリーノが確実に発見された、とする報告はありません。また、高エネルギー加速器研究機構(KEK)も参加するスイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での加速器実験でニュートラリーノがつくられると期待されていたのですが、見つかりませんでした・・・宇宙観測を用いるアイデアもあります。銀河の中心など、ダークマターの密度が濃いところで、ダークマター同士がお互いに衝突して対消滅することが期待されています。 対消滅した後、ニュートラリーノならば、光や電子、クォークなど見える粒子を対生成によりつくることが理論的に予想されています。そうした2次的につくられた見える粒子を検出し、間接的にWIMPを検出するのです。現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています」、なるほど。 「現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています」、なるほど。 「原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トン「原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。 見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トンのの間と予想されています。つまり、太陽質量より桁違いに軽いのです・・・もし原始ブラックホールが約1000億トンより軽い場合、ホーキング輻射として知られているように、ガンマ線の熱輻射を出して蒸発してしまい、現在のガンマ線の観測で蒸発す る様子が見えるはずです。しかし、これまでの観測からそうした現象は見られないので、原始ブラックホールがダークマターになっているなら、もっと重くないといけないということになります」、なるほど。 「要求される条件は、左巻きニュートリノの数万倍以上の重さ、つまり、数千eVの質量をもつ必要があります。重い右巻きニュートリノは、X線光子を出して崩壊することが理論的に予言されています。その光子を検出できれば、右巻きニュートリノがダークマターであると確定する可能性があります」、まだまだ発展途上の学問のようだ。
nice!(0)  コメント(0) 

今日は更新を休むので、明日にご期待を!

今日は更新を休むので、明日にご期待を!
nice!(0)  コメント(0) 

宇宙(その1)(人間の身体は「星の爆発」から生まれた? 宇宙望遠鏡が教えてくれた「私たちはどこから来たのか」、直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?、宇宙ビジネスが活発なアメリカと日本の決定的差 「リスクを避ける組織文化」を乗り越えるには) [科学技術]

今日は、宇宙(その1)(人間の身体は「星の爆発」から生まれた? 宇宙望遠鏡が教えてくれた「私たちはどこから来たのか」、直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?、宇宙ビジネスが活発なアメリカと日本の決定的差 「リスクを避ける組織文化」を乗り越えるには)を取上げよう。

先ずは、昨年5月14日付けAERAdot「人間の身体は「星の爆発」から生まれた? 宇宙望遠鏡が教えてくれた「私たちはどこから来たのか」」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/articles/-/194728?page=1
・『1960年代以降、人類は100機以上の宇宙望遠鏡を打ち上げてきた。そしていま現在も20機以上の観測機が軌道上にあり、宇宙の謎を解き明かすデータを日々大量に送り続けている。 そもそも、なぜ望遠鏡を宇宙に打ち上げなければならないのか? それによって私たちは何を知ろうとしているのか? 国立天文台の縣秀彦氏に監修をいただいた拙著『宇宙望遠鏡と驚異の大宇宙』から、そのヒントを紹介したい。 私たちが星を観ようとするとき、それは夜に限られる。夜であっても天候が悪く、雲があれば見ることができない。また、揺らぐ大気によって星は瞬くため、望遠鏡を使用しても星の姿を鮮明に観測することは難しい。こうした制約から逃れる唯一の方法が、宇宙に望遠鏡を設置することだ。宇宙空間であればつねに星が観測でき、同じ光度で輝き続けるため、精度の高い観測が可能になる。 宇宙から天体を観測するもうひとつの理由として挙げられるのは、「電磁波の性質」の活用だ。 電磁波とは、医療機器にも使用される「ガンマ線」や「X線」、私たちの肌を痛める「紫外線」、ヒトが目で見ることができる「可視光線」、テレビのリモコンにも使用される「赤外線」、テレビやラジオに使用される「電波」に大別される。そして星々は、私たちが目視できる可視光線だけでなく、じつにさまざまな「光」や「電波」を発していて、これらを幅広く観測することで、その星の実体をより正確に知ることができるのだ。) では、それぞれの電磁波は何が違うのか。「波長の長さ」だ。 上のイラストを見ると、波長の短いガンマ線がいちばん左に描かれ、右にいくほど波長が長くなる。そして、宇宙から降り注ぐこれらの電磁波のうち、地上に到達しているのは主に「可視光線」と「電波」だけだ(マイクロ波は電波の一種)。つまり、それ以外のガンマ線やX線、紫外線、赤外線の大部分は、大気に吸収されて地上に届かず、地上からは十分に観測できない。 地上にも大型望遠鏡は数多くあるが、それらは「可視光線」を観測するための望遠鏡、または「電波望遠鏡」がほとんどだ。例外は、「近赤外線」。可視光線に近接する波長を持つ「近赤外線」は、可視光線に対して開かれた「大気の窓」をギリギリにかすめて地上に届く。そのため近赤外線を観測する望遠鏡も地上に建設されている。 天文観測において、もうひとつ面白い法則がある。星が放つ光や電波などの電磁波を観測すれば、その星がどんな成分で出来ているのかがわかるのだ。 ヒトの目に見える可視光線は、プリズムを通すと7色に分解できる。これを「分光」という。また、分光された光が虹のようにズラリと並んだものを「スペクトル」という。スペクトルが並ぶ順番はつねに決まっていて、その色の違いは、すなわち波長の違いを意味する。 ここで重要なのは、可視光線が虹のように分光できるのと同じように、ガンマ線、X線、紫外線、赤外線、電波もスペクトルに分解できるという点だ。 宇宙望遠鏡に搭載された主鏡は、星が発する光(電磁波)をレンズで集める。その光を「分光器」(スペクトロメータ)で波長ごとに分解し、そのデータを地上局に送る。こうした一連の作業が、宇宙望遠鏡に課せられた主な役割だ。望遠鏡や分光器の仕組みは電磁波の種類によって異なるため、多くの機体においては「X線観測機」や「赤外線宇宙望遠鏡」など、特定の光を観測する専用機として開発されることが多い。) 天文観測においてこの分光が重要なのは、何万光年も離れた星が発した電磁波を分光することにより、その天体を形成する物質の種類、量、比率のほか、天体の表面温度などが把握できる点にある。また、地球から遠ざかる星は赤く、近づく星は青く見えるため、その光の波長を調べることで、星の運動さえ分析することができる。 前述の国立天文台・縣氏監修の『宇宙望遠鏡と驚異の大宇宙』では、これらを詳細に解説しているが、ここでは簡単に、星の成分について紹介したい。 上のイラストは、ハッブルがとらえた「イータカリーナ星雲」のスペクトルを表したものだ。タテに白く見える線は「輝線」(きせん)と呼ばれ、とくに強い波長を示している。この輝線は、特定の物質によって生まれる。つまり、何万光年も離れた星が放った光を、分光器を通してスペクトルに分解し、どの波長が強く、どんな組み合わせで表れるかを調べれば、その星の構成元素を知ることができるのだ。このイータカリーナ星雲のスペクトルからは、Fe(鉄)やNi(ニッケル)が検出されていることがわかる。 138億年前にビッグバンが発生したが、その際に生まれた元素は、水素(H)とヘリウム(He)と、ほんのわずかなリチウム(Li)とベリリウム(Be)などだけ。つまり、「水兵リーベ」の冒頭に並ぶ軽い元素だけだ。しかし、私たちの身体は、主に酸素(O)、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、カルシウム(Ca)などからなり、微量元素としては鉄(Fe)、フッ素(F)、ケイ素(Si)なども含まれる。こうした多様な元素は、どこで生まれたのか? ビッグバンで生まれた水素やヘリウムは、ガスやチリとなって宇宙を漂っていた。やがてそれらは重力によって集積し、その結果、星が生まれた。その内部では核融合反応がはじまり、水素からヘリウムが合成され、ヘリウムからは炭素が合成され、さらに炭素は酸素、そしてケイ素などへと変容し、最後は鉄(Fe)が生成されていった。) その星が寿命を迎えて爆発すると、それら元素は拡散して宇宙を漂い、やがてその元素を材料にして、また新たな星が生まれる。こうした宇宙の営みが繰り返される間に、やがて生命が誕生した。つまり、私たちの身体は、かつてどこかに存在した恒星の内部で生成された元素でできているといえる。 宇宙望遠鏡がはじめて打ち上げられた1960年代以降、新たな星や天文現象が、急速な勢いで次々と発見されてきた。しかし、それは単なる天体の発見に留まらない。歴代の宇宙望遠鏡の観測から得られたデータを詳細に分析することによって、私たちはいま、「地球はどのように生まれたのか」「宇宙はなぜ誕生したのか」「私たちはどこから来たのか」ということさえ、知ろうとしているのだ』、「138億年前にビッグバンが発生したが、その際に生まれた元素は、水素(H)とヘリウム(He)と、ほんのわずかなリチウム(Li)とベリリウム(Be)などだけ。つまり、「水兵リーベ」の冒頭に並ぶ軽い元素だけだ・・・ビッグバンで生まれた水素やヘリウムは、ガスやチリとなって宇宙を漂っていた。やがてそれらは重力によって集積し、その結果、星が生まれた。その内部では核融合反応がはじまり、水素からヘリウムが合成され、ヘリウムからは炭素が合成され、さらに炭素は酸素、そしてケイ素などへと変容し、最後は鉄(Fe)が生成されていった・・・その星が寿命を迎えて爆発すると、それら元素は拡散して宇宙を漂い、やがてその元素を材料にして、また新たな星が生まれる。こうした宇宙の営みが繰り返される間に、やがて生命が誕生した。つまり、私たちの身体は、かつてどこかに存在した恒星の内部で生成された元素でできているといえる・・・歴代の宇宙望遠鏡の観測から得られたデータを詳細に分析することによって、私たちはいま、「地球はどのように生まれたのか」「宇宙はなぜ誕生したのか」「私たちはどこから来たのか」ということさえ、知ろうとしているのだ」、なるほど。

次に、昨年5月16日付けAERAdot「直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/articles/-/194734?page=1
・『自然科学の分野では、偶然によって新たな事実が発見されることがある。太陽の8倍以上の質量をもつ恒星が爆発するとき、極度にエネルギーが高い「ガンマ線バースト」が発せられる場合があるが、この天文現象はアメリカが打ち上げた軍事衛星によって偶然発見された。宇宙望遠鏡による天文観測は1960年代にはじまったが、その契機ともなったこの軍事衛星について、拙著『宇宙望遠鏡と驚異の大宇宙』をもとに紹介したい。 アメリカ、イギリス、旧ソ連は、1963年に「部分的核実験禁止条約」を締結した。これにもとづいて米国防総省は、各国が同条約を順守し、核実験を実施していないかを監視するため、「ヴェラ」と呼ばれる軍事衛星を打ち上げた。 ヴェラは、地球上のどこかで核爆発が起こると、そこから放射されるX線やガンマ線、中性子線などを軌道上で感知する。米国は1963年から1970年にかけ、AとBの2機からなるヴェラをワンセットにして、計6回、12機のヴェラを打ち上げた。 1967年4月28日に打ち上げられた「ヴェラ4号」がある日、奇妙なデータを補足する。ロスアラモス国立研究所の研究員が調査した結果、それは大気圏内からではなく、宇宙から飛来したガンマ線であることが判明。続いて打ち上げられた5号(1969年5月)と6号(1970年4月)も、同様のガンマ線を複数捕捉し、その発生源の位置を割り出すことに成功した。結果、それは人類にとって未知の天文現象である「ガンマ線バースト」から発せられたものであることが突き止められた。 ガンマ線バーストとは、恒星が爆発(超新星爆発)した際に、閃光(せんこう)のように放出される電磁波のこと。エネルギー量が極度に高く、その出力は太陽が100億年間に放出するエネルギーに匹敵するともいわれる。もしそのビームのような電磁波の直撃を受ければ、地球サイズの天体は瞬時に蒸発してしまうだろう。爆発した恒星の質量が太陽の8倍以上であれば中性子星になり、25倍以上の場合には、そこにブラックホールが誕生すると考えられている。) 謎のガンマ線が宇宙から降り注いでいることがヴェラによって判明すると、各国は本格的に天文観測衛星を打ち上げはじめた。1970年にNASAが打ち上げた世界初のX線観測衛星「SAS-A ウフル」もその一機だ。ガンマ線バーストやブラックホールなど、高エネルギーな電磁波が放出される天文現象では、ガンマ線のほかにX線などが放出される。それを検知する天文観測衛星である。 ウフルは、「はくちょう座」にある超巨星を重点的に観測した。この星は、ペアとなるもうひとつの恒星との共通の重心を周る「連星(双子星)」である。太陽の30倍もの質量を持つこの超巨星が、他の何者かによって、操られるかのように奇妙な軌道を描くからには、その相手の天体はさらに大きな質量を持っていると予想された。しかし、その星が見つからない。つまり、この超巨星とペアを組む相手は、見えないブラックホールである可能性が高い。 ウフルは、見えない相手(主星)がいると予想される領域を重点的に観測した。その結果、強いX線の放射を発見した。これが史上はじめて特定されたブラックホールの有力候補である。後日この天体は「はくちょう座X-1」と命名された。 1960年代、ヴェラによってガンマ線バーストが偶然発見され、1970年代にはウフルがブラックホールの候補を特定した。人類にとって未知であったそれらの天体を発見してから半世紀が過ぎた2019年には、ブラックホールの間接的撮影にも成功し、2021年からはブラックホールのマップ作製も開始されている。 宇宙望遠鏡による天文観測が進化した結果、いまでは宇宙に存在する全エネルギー量を計算することにも成功している。その23%をダークマター、73%をダークエネルギーが占めることも判明しているが、その両者の正体はいまだ謎のままだ。しかし、この半世紀で人類が明らかにした真実と、天文観測技術の劇的な進化を思えば、こうした宇宙の謎が解き明かされる日は、さほど遠くないに違いない』、「太陽の8倍以上の質量をもつ恒星が爆発するとき、極度にエネルギーが高い「ガンマ線バースト」が発せられる場合があるが、この天文現象はアメリカが打ち上げた軍事衛星によって偶然発見された・・・「部分的核実験禁止条約」を締結した。これにもとづいて米国防総省は、各国が同条約を順守し、核実験を実施していないかを監視するため、「ヴェラ」と呼ばれる軍事衛星を打ち上げた。 ヴェラは、地球上のどこかで核爆発が起こると、そこから放射されるX線やガンマ線、中性子線などを軌道上で感知する。米国は1963年から1970年にかけ、AとBの2機からなるヴェラをワンセットにして、計6回、12機のヴェラを打ち上げた。 1967年4月28日に打ち上げられた「ヴェラ4号」がある日、奇妙なデータを補足する。ロスアラモス国立研究所の研究員が調査した結果、それは大気圏内からではなく、宇宙から飛来したガンマ線であることが判明。続いて打ち上げられた5号(1969年5月)と6号(1970年4月)も、同様のガンマ線を複数捕捉し、その発生源の位置を割り出すことに成功した。結果、それは人類にとって未知の天文現象である「ガンマ線バースト」から発せられたものであることが突き止められた。 ガンマ線バーストとは、恒星が爆発(超新星爆発)した際に、閃光(せんこう)のように放出される電磁波のこと。エネルギー量が極度に高く、その出力は太陽が100億年間に放出するエネルギーに匹敵するともいわれる。もしそのビームのような電磁波の直撃を受ければ、地球サイズの天体は瞬時に蒸発してしまうだろう。爆発した恒星の質量が太陽の8倍以上であれば中性子星になり、25倍以上の場合には、そこにブラックホールが誕生すると考えられている・・・いまでは宇宙に存在する全エネルギー量を計算することにも成功している。その23%をダークマター、73%をダークエネルギーが占めることも判明しているが、その両者の正体はいまだ謎のままだ。しかし、この半世紀で人類が明らかにした真実と、天文観測技術の劇的な進化を思えば、こうした宇宙の謎が解き明かされる日は、さほど遠くないに違いない」、早く解明されることを期待する。

第三に、本年7月31日付け東洋経済オンラインが掲載した DigitalBlast 代表取締役CEOの堀口 真吾氏による「宇宙ビジネスが活発なアメリカと日本の決定的差 「リスクを避ける組織文化」を乗り越えるには」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/784154?display=b
・『小型ライフサイエンス実験装置の研究開発を行う会社や、企業のDXや宇宙ビジネスコンサルティングを行う会社の代表も務め、宇宙利用の拡大を目指している堀口真吾さんは、次のように話します。 「今、世界中で勢いを増す宇宙ビジネスの状況は、世界を変えたIT革命前夜と同じであるように感じます。まさに宇宙が社会を変える、『スペース・トランスフォーメーション』が起きつつあり、宇宙という場を利用していかに価値を生み出していくかが問われています」 今後ISSが退役し「ポストISS」といわれる時代になるに際し、どのような設備・機能・サービスがあればいいのか。また、宇宙にはどのような特徴があり、環境としてどのように使うことができるのかをつづった『スペース・トランスフォーメーション』より、一部抜粋・再構成してお届けします』、興味深そうだ。
・『日本の宇宙産業に求められる「民間開放」  宇宙産業は、産業育成という側面があまり重視されない期間が長く続きました。そのため、実績ある企業のみが継続して宇宙事業に取り組むこととなり、その結果、経験やノウハウの蓄積に偏りが生じて新規参入のハードルも高くなったことで、産業としての広がりが見られなかったのです。 実績のないスタートアップに投資し、一から育てた米国政府と違い、日本政府は民間を活用する事業を実施しようという場合に、まず「過去の実績」や「会社の規模」を問います。おそらく、「国民の税金を使うため、可能な限り失敗を避ける」ことを優先するためでしょう。 確かに、公共事業において、可能な限り失敗を避け、無駄な税金を使わないという考え方は重要です。しかし、新分野の産業を振興する際、政府がある程度の失敗を許容し、前進していく意識を持たなければ、民間の活力を生かして産業を発展させることは不可能です。) 政府は2023年11月、宇宙ビジネスの競争力を高めるため、10年で1兆円の「宇宙戦略基金」を創設することを決めました。宇宙領域のスタートアップ企業の育成や他分野からの参入の促進を狙いにしています。企業はこれを好機と捉え、「どうすれば官の資金を有効に使えるか」を考えていく必要があります』、「実績のないスタートアップに投資し、一から育てた米国政府と違い、日本政府は民間を活用する事業を実施しようという場合に、まず「過去の実績」や「会社の規模」を問います。おそらく、「国民の税金を使うため、可能な限り失敗を避ける」ことを優先するためでしょう・・・10年で1兆円の「宇宙戦略基金」を創設することを決めました。宇宙領域のスタートアップ企業の育成や他分野からの参入の促進を狙いにしています。企業はこれを好機と捉え、「どうすれば官の資金を有効に使えるか」を考えていく必要があります」、なるほど。
・『政府には「目利きの力」が必要  では、今後はどうすれば良いのか。政府はまず、新産業をもたらすチャレンジである宇宙産業については、一般の公共事業と一線を画し、日本にとって将来有益となる投資だという認識を持って、政策を立案、実行していく必要があります。 米国のように実績のない企業であっても入札などで選定できるようになるには、真の技術力や実行力を見抜く「目利きの力」が必要です。また、民間企業が投資できない、経済的効果に直接つながるわけではない宇宙基礎科学の分野に特化して資金を投入すべきです。持続的に科学振興を推進した結果、イノベーションが興り、経済活動の発展に結び付いた事例は多くあります。 米国はハッブル宇宙望遠鏡や火星探査機シリーズ、火星の表面を走破した無人探査機「スピリット」「オポチュニティ」など、宇宙科学分野で次々と成果を上げてきました。そうした積み重ねがあったからこそ、民間企業側から「宇宙旅行」「火星移住計画」といった目標が登場し、SpaceXをはじめとした企業が躍進して、経済活動と力強く結び付くに至ったのです。 民間企業はどうすれば良いのでしょうか。日本の宇宙産業はプレーヤーが限定された状態が長く続いてきました。まず、多くの企業が宇宙産業に自社が加わる可能性を検討し、宇宙産業の裾野を拡大して多様な挑戦を行う意欲を高めることが必要です。宇宙に関連した大規模な産業が創出されることを見据え、自社のサービス・製品を宇宙産業にどう生かすべきか、今こそ各企業が真剣に探索してほしいと願っています。) 現在、産業界の新潮流はIoT(Internet of Things)やAI(人工知能)、ビッグデータなどのデジタルビジネスです。日本はこの新潮流に乗り遅れています。デジタルビジネスは米国を中心に動いています。 なぜ、日本はデジタルビジネスに乗り遅れたのでしょうか。「もの売りビジネスからデジタルビジネス(サービス化)にシフトできなかった」「グローバル化の遅れ」など、さまざまな理由が挙げられますが、その根本にあるのは「リスクを避ける組織文化」にあると、私は考えます』、「米国はハッブル宇宙望遠鏡や火星探査機シリーズ、火星の表面を走破した無人探査機「スピリット」「オポチュニティ」など、宇宙科学分野で次々と成果を上げてきました。そうした積み重ねがあったからこそ、民間企業側から「宇宙旅行」「火星移住計画」といった目標が登場し、SpaceXをはじめとした企業が躍進して、経済活動と力強く結び付くに至ったのです・・・多くの企業が宇宙産業に自社が加わる可能性を検討し、宇宙産業の裾野を拡大して多様な挑戦を行う意欲を高めることが必要です。宇宙に関連した大規模な産業が創出されることを見据え、自社のサービス・製品を宇宙産業にどう生かすべきか、今こそ各企業が真剣に探索してほしいと願っています・・・デジタルビジネスは米国を中心に動いています。 なぜ、日本はデジタルビジネスに乗り遅れたのでしょうか。「もの売りビジネスからデジタルビジネス(サービス化)にシフトできなかった」「グローバル化の遅れ」など、さまざまな理由が挙げられますが、その根本にあるのは「リスクを避ける組織文化」にあると、私は考えます」、なるほど。
・『宇宙ビジネスというニューフロンティア  日本は国内市場がそれなりに大きいため、新たなビジネス展開や海外展開に打って出るよりも、既存ビジネスの延長線上でビジネスを広げることがリスクの最小化につながるという発想にとどまっています。 しかし現実には、日本はすでに人口減少が始まっていて、国内市場は中長期的な視点では決して安泰ではありません。それなのに、中長期的視点から新機軸のビジネス展開に取り組む動きは活発ではありません。 これは、かつてさまざまなイノベーションを起こしてきた日本企業の多くで創業者が引退し、成長に伴って組織が大きくなったことで意思決定のスピードが以前より遅くなったこと、過去の成功に基づいて収益を上げるための組織構造・組織文化が強固に出来上がっているからこそ、急激な社会・経済状況の変化に対応できてない面があるといえます。) こうした組織文化を変革するためにも、私は日本の大企業が宇宙ビジネスに目を向け、宇宙ビジネスをニューフロンティアと位置付けて真剣に取り組むことを期待しています』、「成長に伴って組織が大きくなったことで意思決定のスピードが以前より遅くなったこと、過去の成功に基づいて収益を上げるための組織構造・組織文化が強固に出来上がっているからこそ、急激な社会・経済状況の変化に対応できてない面があるといえます。) こうした組織文化を変革するためにも、私は日本の大企業が宇宙ビジネスに目を向け、宇宙ビジネスをニューフロンティアと位置付けて真剣に取り組むことを期待しています」、なるほど。
・『宇宙は本当にビジネスになるのか  株主などのステークホルダーからは「宇宙は本当にビジネスになるのか」といった疑問の声が出てくることでしょう。しかし、宇宙には「金のなる木」がいくらでも存在します。 例えば、太陽系には、地球上では希少で価値の高いレアアースを多く含むとみられる小惑星があります。月には常に太陽に面している場所があり、エネルギー創出の場として注目されています。 また、宇宙を舞台とした映画や広告の制作、宇宙旅行など、宇宙エンターテインメントも活発になるでしょう。つまり、発想次第で可能性は無限に広がるのです。 大企業が積極的に投資をすると、リスクは軽減されます。しかし、一度確立した組織文化を変えることは難しいため、少しずつ変革する必要があります。そのきっかけとして、既存事業とは別物で飛躍が必要な宇宙ビジネスを活用できるのではないでしょうか。 どんな企業でも、宇宙ビジネスは新規事業と位置付けることができます。それだけでなく、市場が国内に閉じていないため、最初からグローバルな視点で取り組むことになります。いきなりロケット開発や資源探査事業に参画するのは難しいかもしれませんが、まずは自社にとって身近な分野から段階的に始めるのが良いでしょう。GPSや衛星リモートセンシングなど、宇宙データの活用からスモールスタートを切る方法も一案だと思います』、「宇宙には「金のなる木」がいくらでも存在します。 例えば、太陽系には、地球上では希少で価値の高いレアアースを多く含むとみられる小惑星があります。月には常に太陽に面している場所があり、エネルギー創出の場として注目されています。 また、宇宙を舞台とした映画や広告の制作、宇宙旅行など、宇宙エンターテインメントも活発になるでしょう。つまり、発想次第で可能性は無限に広がるのです・・・既存事業とは別物で飛躍が必要な宇宙ビジネスを活用できるのではないでしょうか。 どんな企業でも、宇宙ビジネスは新規事業と位置付けることができます。それだけでなく、市場が国内に閉じていないため、最初からグローバルな視点で取り組むことになります。いきなりロケット開発や資源探査事業に参画するのは難しいかもしれませんが、まずは自社にとって身近な分野から段階的に始めるのが良いでしょう。GPSや衛星リモートセンシングなど、宇宙データの活用からスモールスタートを切る方法も一案だと思います」、その通りだ。
タグ:宇宙 (その1)(人間の身体は「星の爆発」から生まれた? 宇宙望遠鏡が教えてくれた「私たちはどこから来たのか」、直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?、宇宙ビジネスが活発なアメリカと日本の決定的差 「リスクを避ける組織文化」を乗り越えるには) AERAdot「人間の身体は「星の爆発」から生まれた? 宇宙望遠鏡が教えてくれた「私たちはどこから来たのか」」 「138億年前にビッグバンが発生したが、その際に生まれた元素は、水素(H)とヘリウム(He)と、ほんのわずかなリチウム(Li)とベリリウム(Be)などだけ。つまり、「水兵リーベ」の冒頭に並ぶ軽い元素だけだ・・・ビッグバンで生まれた水素やヘリウムは、ガスやチリとなって宇宙を漂っていた。やがてそれらは重力によって集積し、その結果、星が生まれた。その内部では核融合反応がはじまり、水素からヘリウムが合成され、ヘリウムからは炭素が合成され、さらに炭素は酸素、そしてケイ素などへと変容し、最後は鉄(Fe)が生成されてい った・・・その星が寿命を迎えて爆発すると、それら元素は拡散して宇宙を漂い、やがてその元素を材料にして、また新たな星が生まれる。こうした宇宙の営みが繰り返される間に、やがて生命が誕生した。つまり、私たちの身体は、かつてどこかに存在した恒星の内部で生成された元素でできているといえる・・・歴代の宇宙望遠鏡の観測から得られたデータを詳細に分析することによって、私たちはいま、「地球はどのように生まれたのか」「宇宙はなぜ誕生したのか」「私たちはどこから来たのか」ということさえ、知ろうとしているのだ」、なるほど。 AERAdot「直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?」 「太陽の8倍以上の質量をもつ恒星が爆発するとき、極度にエネルギーが高い「ガンマ線バースト」が発せられる場合があるが、この天文現象はアメリカが打ち上げた軍事衛星によって偶然発見された・・・「部分的核実験禁止条約」を締結した。これにもとづいて米国防総省は、各国が同条約を順守し、核実験を実施していないかを監視するため、「ヴェラ」と呼ばれる軍事衛星を打ち上げた。 ヴェラは、地球上のどこかで核爆発が起こると、そこから放射されるX線やガンマ線、中性子線などを軌道上で感知する。米国は1963年から1970年にかけ、AとBの2機からなるヴェラをワンセットにして、計6回、12機のヴェラを打ち上げた。 1967年4月28日に打ち上げられた「ヴェラ4号」がある日、奇妙なデータを補足する。ロスアラモス国立研究所の研究員が調査した結果、それは大気圏内からではなく、宇宙から飛来したガンマ線であることが判明。続いて打ち上げられた5号(1969年5月)と6号(1970年4月)も、同様のガ ンマ線を複数捕捉し、その発生源の位置を割り出すことに成功した。結果、それは人類にとって未知の天文現象である「ガンマ線バースト」から発せられたものであることが突き止められた。 ガンマ線バーストとは、恒星が爆発(超新星爆発)した際に、閃光(せんこう)のように放出される電磁波のこと。エネルギー量が極度に高く、その出力は太陽が100億年間に放出するエネルギーに匹敵するともいわれる。もしそのビームのような電磁波の直撃を受ければ、地球サイズの天体は瞬時に蒸発してしまうだろう。爆発した恒星の質量が太陽の8倍以上であれば 中性子星になり、25倍以上の場合には、そこにブラックホールが誕生すると考えられている・・・いまでは宇宙に存在する全エネルギー量を計算することにも成功している。その23%をダークマター、73%をダークエネルギーが占めることも判明しているが、その両者の正体はいまだ謎のままだ。しかし、この半世紀で人類が明らかにした真実と、天文観測技術の劇的な進化を思えば、こうした宇宙の謎が解き明かされる日は、さほど遠くないに違いない」、早く解明されることを期待する。 東洋経済オンライン 堀口 真吾氏による「宇宙ビジネスが活発なアメリカと日本の決定的差 「リスクを避ける組織文化」を乗り越えるには」 「実績のないスタートアップに投資し、一から育てた米国政府と違い、日本政府は民間を活用する事業を実施しようという場合に、まず「過去の実績」や「会社の規模」を問います。おそらく、「国民の税金を使うため、可能な限り失敗を避ける」ことを優先するためでしょう・・・10年で1兆円の「宇宙戦略基金」を創設することを決めました。 宇宙領域のスタートアップ企業の育成や他分野からの参入の促進を狙いにしています。企業はこれを好機と捉え、「どうすれば官の資金を有効に使えるか」を考えていく必要があります」、なるほど。 「米国はハッブル宇宙望遠鏡や火星探査機シリーズ、火星の表面を走破した無人探査機「スピリット」「オポチュニティ」など、宇宙科学分野で次々と成果を上げてきました。そうした積み重ねがあったからこそ、民間企業側から「宇宙旅行」「火星移住計画」といった目標が登場し、SpaceXをはじめとした企業が躍進して、経済活動と力強く結び付くに至ったのです・・・ 多くの企業が宇宙産業に自社が加わる可能性を検討し、宇宙産業の裾野を拡大して多様な挑戦を行う意欲を高めることが必要です。宇宙に関連した大規模な産業が創出されることを見据え、自社のサービス・製品を宇宙産業にどう生かすべきか、今こそ各企業が真剣に探索してほしいと願っています・・・デジタルビジネスは米国を中心に動いています。 なぜ、日本はデジタルビジネスに乗り遅れたのでしょうか。「もの売りビジネスからデジタルビジネス(サービス化)にシフトできなかった」「グローバル化の遅れ」など、さまざまな理由が挙げられますが、そ の根本にあるのは「リスクを避ける組織文化」にあると、私は考えます」、なるほど。 「成長に伴って組織が大きくなったことで意思決定のスピードが以前より遅くなったこと、過去の成功に基づいて収益を上げるための組織構造・組織文化が強固に出来上がっているからこそ、急激な社会・経済状況の変化に対応できてない面があるといえます。) こうした組織文化を変革するためにも、私は日本の大企業が宇宙ビジネスに目を向け、宇宙ビジネスをニューフロンティアと位置付けて真剣に取り組むことを期待しています」、なるほど。 「宇宙には「金のなる木」がいくらでも存在します。 例えば、太陽系には、地球上では希少で価値の高いレアアースを多く含むとみられる小惑星があります。月には常に太陽に面している場所があり、エネルギー創出の場として注目されています。 また、宇宙を舞台とした映画や広告の制作、宇宙旅行など、宇宙エンターテインメントも活発になるでしょう。つまり、発想次第で可能性は無限に広がるのです・・・ 既存事業とは別物で飛躍が必要な宇宙ビジネスを活用できるのではないでしょうか。 どんな企業でも、宇宙ビジネスは新規事業と位置付けることができます。それだけでなく、市場が国内に閉じていないため、最初からグローバルな視点で取り組むことになります。いきなりロケット開発や資源探査事業に参画するのは難しいかもしれませんが、まずは自社にとって身近な分野から段階的に始めるのが良いでしょう。GPSや衛星リモートセンシングなど、宇宙データの活用からスモールスタートを切る方法も一案だと思います」、その通りだ。
nice!(0)  コメント(0) 

ハラスメント(その26)(兵庫県知事問題4題:兵庫県知事の“パワハラ人格”が作られるまで 「いい奴」だったはずが、知事就任後は「周囲はドン引き」、兵庫・斎藤元彦知事を巡る「疑惑告発文書問題」で2人目の職員死亡…安倍政権下の森友事件のような展開に、自殺職員が詰問される“証拠音声”を入手!「なんでそれを知っとるんやって聞きよんやろが!」知事側近が高圧取り調べ…《斎藤元彦知事は公開拒否》、《女優さんのインスタみたいやな》斎藤元彦知事の“外見へのこだわり”「化粧室で1時間髪型チェック」「控え室がないとSAかコンビ [社会]

ハラスメントについては、本年6月30日に取上げた。今日は、(その26)(兵庫県知事問題4題:兵庫県知事の“パワハラ人格”が作られるまで 「いい奴」だったはずが、知事就任後は「周囲はドン引き」、兵庫・斎藤元彦知事を巡る「疑惑告発文書問題」で2人目の職員死亡…安倍政権下の森友事件のような展開に、自殺職員が詰問される“証拠音声”を入手!「なんでそれを知っとるんやって聞きよんやろが!」知事側近が高圧取り調べ…《斎藤元彦知事は公開拒否》、《女優さんのインスタみたいやな》斎藤元彦知事の“外見へのこだわり”「化粧室で1時間髪型チェック」「控え室がないとSAかコンビニに必ず立ち寄って…」次々に明らかになる調査結果、「経営者や記者から軒並み評判がよかったのに…」“おねだり&パワハラ知事”以前の斎藤元彦氏を知るジャーナリストが見た“豹変”の呆れるきっかけ)である。

先ずは、7月24日付けYahooニュースが転載したデイリー新潮「兵庫県知事の“パワハラ人格”が作られるまで 「いい奴」だったはずが、知事就任後は「周囲はドン引き」」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/bc30bbc3ec6f52799a693956d34a7fb65a3baf15
・『「パワハラ的な言動なんて見たことも聞いたこともない」(兵庫県の齋藤元彦知事(46)のパワハラや“おねだり体質”を告発した渡瀬康英元西播磨県民局長(60)が自死した問題。齋藤知事をよく知る同級生らに取材すると、意外な“素顔”が見えてきて……。 齋藤知事は、兵庫県神戸市須磨区の生まれ。実家はケミカルシューズ製造業だった。地元・神戸市立若宮小学校を卒業し、愛媛県松山市の私立愛光学園中学に入学したのだが、自身のHPで〈実は、私立中学入試で第一志望であった六甲中学校(神戸市灘区)を受験したのですが……〉と明かしている。 親元を離れて、中高6年間は愛光学園の寮で過ごしたという。同級生の一人が当時を振り返る。 「さいちゃん(齋藤氏)とは寮で一緒にご飯を食べたし、お風呂にも入った仲ですけど、いい奴としか言いようがないですよ。頭も良かったし、スポーツも全般的にできました」 別の同級生も、 「自分は寮生活でも部活のソフトボール部でも一緒に過ごした間柄ですが、彼のパワハラ的な言動なんて見たことも聞いたこともありません。体育祭なんかでも、中心になって活躍していたイメージ。そういう時にクラスをまとめる役割を果たしていましたから、やはりリーダー的な資質があったのでしょう」 などと褒めそやす。続けて明かすには、 「彼も入っている、愛光学園同級生のグループLINEがあります。今回のことで、そこに応援のメッセージを送ったんですよ。そしたら、彼からみんなに対して“感謝しています”という趣旨の返事が来て。大変な状況なのに律儀な奴だなって思いました」 意外にも、中高の同級生らから聞こえるのは、好意的な証言ばかりなのだ』、「親元を離れて、中高6年間は愛光学園の寮で過ごしたという。同級生の一人が当時を振り返る。 「さいちゃん(齋藤氏)とは寮で一緒にご飯を食べたし、お風呂にも入った仲ですけど、いい奴としか言いようがないですよ。頭も良かったし、スポーツも全般的にできました」、なるほど。
・『旧自治省系は「組織自体がパワハラの塊」  東大経済学部卒業後、総務省に入省。一貫して旧自治省畑を歩み、各県府庁の重要ポストに派遣された。 その古巣の総務省関係者に話を聞くと、先の同級生らと異なった見方を示す。 「プライドが高いタイプだと聞いたことはあります。経歴を見ると、30代中盤にして秘書課秘書専門官になっていますよね。これは結構、ポイントが高い。宮城県の財政課長なども歴任していますし、省内で出世街道を歩んでいたのは間違いない」 さらに続けて、 「旧自治省系は警察の次に上意下達の縦社会。組織自体がパワハラの塊です。加えて、総務省にカネを握られているものだから、各県庁の職員は中央から派遣されてくる総務官僚に文句を言えない雰囲気がある。若くして地方で重要なポストを務めることで、勘違いしてしまう人がいるんです」 総務省の独特な土壌が齋藤氏を形作ったと示唆するのだ』、「東大経済学部卒業後、総務省に入省。一貫して旧自治省畑を歩み、各県府庁の重要ポストに派遣された。 その古巣の総務省関係者に話を聞くと、先の同級生らと異なった見方を示す。 「プライドが高いタイプだと聞いたことはあります。経歴を見ると、30代中盤にして秘書課秘書専門官になっていますよね。これは結構、ポイントが高い。宮城県の財政課長なども歴任していますし、省内で出世街道を歩んでいたのは間違いない」 さらに続けて、 「旧自治省系は警察の次に上意下達の縦社会。組織自体がパワハラの塊です。加えて、総務省にカネを握られているものだから、各県庁の職員は中央から派遣されてくる総務官僚に文句を言えない雰囲気がある。若くして地方で重要なポストを務めることで、勘違いしてしまう人がいるんです」、「「旧自治省系は警察の次に上意下達の縦社会。組織自体がパワハラの塊です」、なるほど。
・『知事の椅子にしがみつく姿勢を崩さない齋藤氏  さる兵庫県議は齋藤氏をこう評する。 「齋藤知事は“コミュ障”なんですよ。コミュニケーションが取れないからか、知事はすぐに怒りだす。それだけならまだしも、“俺は怒ったことをすぐに忘れるんや、ハハハ”なんて自慢する。周囲はドン引きですよ」 2021年、大阪府の財政課長時代に自民党と日本維新の会に担がれて県知事選への出馬を決めた時には、すでに今の人格に仕上がっていたのだろう。 一連の疑惑に関して、齋藤氏は代理人を通じておおむね否定。その上で、 「県政の立て直し、信頼回復に向けて、日々の業務を一つ一つしっかりと遂行していくことが私の責任だと考えています」 と、知事の椅子にしがみつく姿勢を隠さないのだった――。7月25日発売の「週刊新潮」では、県知事の来歴を併せ、騒動の全容について報じる。 「週刊新潮」2024年8月1日号 掲載』、「齋藤知事は“コミュ障”なんですよ。コミュニケーションが取れないからか、知事はすぐに怒りだす。それだけならまだしも、“俺は怒ったことをすぐに忘れるんや、ハハハ”なんて自慢する。周囲はドン引きですよ」、「コミュ障”」で、「“俺は怒ったことをすぐに忘れるんや」とは質が悪い。

次に、7月25日付け日刊ゲンダイ「兵庫・斎藤元彦知事を巡る「疑惑告発文書問題」で2人目の職員死亡…安倍政権下の森友事件のような展開に」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/358156
・『不正を嫌った公務員が心身を壊した揚げ句、自死に追い込まれる。安倍政権下で起きた大阪・森友学園の国有地売買を巡る財務省の決算文書改ざん事件のような展開になってきた。 兵庫県の男性幹部職員が斎藤元彦知事(46)を巡る「違法行為」や「贈答品の受取」、「パワハラ」など7項目の疑惑について告発文書を作成していた問題のことだ。 この男性職員が自ら命を絶っていたと報じられたのに続き、告発文書の中で多忙な業務を理由に療養中と言及されていた元課長の男性職員も4月に死亡していたという。 共同通信などの報道によると、元課長の死因も自殺とみられ、職場の有志らが元課長の子どものために「遺児育英資金」を集めようとしたところ、県幹部が止めていたという。  県は個人情報保護を理由に元課長が亡くなったことを公表しておらず、斎藤知事も会見で「遺族の意向で公表していなかった」と説明。だが、公表の判断はともかく、職場有志らによる「遺児育英資金」を募る動きにストップをかけるのは不自然ではないか』、「元課長の死因も自殺とみられ、職場の有志らが元課長の子どものために「遺児育英資金」を集めようとしたところ、県幹部が止めていたという。  県は個人情報保護を理由に元課長が亡くなったことを公表しておらず、斎藤知事も会見で「遺族の意向で公表していなかった」と説明。だが、公表の判断はともかく、職場有志らによる「遺児育英資金」を募る動きにストップをかけるのは不自然ではないか」、酷い話だ。
・『今の政治家が口にする「責任」とは一体何なのか  告発文書の問題が判明したのは3月末。詳しい理由は分からないが、2人の職員が亡くなったのは事実であり、異様、異常と指摘せざるを得ないだろう。 常識的な感覚を持った政治家であれば、自身に対する数々の疑惑が指摘され、因果関係は分からないとはいえ、職員が相次いで不慮の死を遂げたことついて責任を感じて辞職するだろう。それが「責任を取る」ということだ。 ところが斎藤知事はそんな気はサラサラなし。会見でも記者の質問をはぐらかしつつ、「さまざまな指摘や批判がある一方で、心から応援してくれる人もいるので、感謝しながら、しっかり県政を担っていくのが私のやるべき責任だ」などと言い放つ始末だ。) こうした政治家が「居座り」続けるような姿勢に対し、SNS上ではこんな声がある。 《政治家が好き勝手なことをやり、その尻拭いをさせられる公務員はイエスマンになるか、責任を感じて自死する。森友事件と同じ構図》 《どんなに批判され、辞職を求められても辞めない。そのうち国民は忘れる、と思っているのが自民党国会議員。これが地方の首長にまで伝播している》 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件でも、岸田文雄首相(66)は「責任」を繰り返していたが、何もせず。今の政治家が口にする「責任」とは一体何なのか。 日刊ゲンダイでは7月12日配信の記事『兵庫・維新系パワハラ県知事の「犠牲者」はもう1人いる! 別の職員の自殺「隠蔽」の疑い』にて職員2人が亡くなっていたことを問題視していた。該当記事は、関連記事【もっと読む】にある。必読だ』、「《政治家が好き勝手なことをやり、その尻拭いをさせられる公務員はイエスマンになるか、責任を感じて自死する。森友事件と同じ構図》 《どんなに批判され、辞職を求められても辞めない。そのうち国民は忘れる、と思っているのが自民党国会議員。これが地方の首長にまで伝播している」、なるほど。

第三に、8月24日付け文春オンライン「《兵庫県知事パワハラ疑惑に新展開》自殺職員が詰問される“証拠音声”を入手!「なんでそれを知っとるんやって聞きよんやろが!」知事側近が高圧取り調べ…《斎藤元彦知事は公開拒否》」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/73007
・『斎藤元彦・兵庫県知事(46)のパワハラなどを告発する文書を作成した県職員X氏(故人)。そのX氏が受けていた県側の“事情聴取”の音声を「週刊文春」が入手した。 X氏が告発文書を作成し、7月7日に「死をもって抗議する」というメッセージを遺し自殺したことに端を発する県知事のパワハラ疑惑。県職員を対象に行われたアンケートでは、およそ4割が知事のパワハラを見聞きしたなどと回答したことが報じられ、大きな話題となった』、「県職員を対象に行われたアンケートでは、およそ4割が知事のパワハラを見聞きしたなどと回答」、なるほど。
・『自殺職員への“詰問音声”を入手  これまで「週刊文春」では兵庫県知事と県知事から重用されている幹部4人の「牛タン倶楽部」の面々が自殺した職員などに行ってきた個人攻撃や兵庫県知事に固執する斎藤氏の人柄、斎藤氏の不透明な事務所費などの政治資金の問題などを報じてきた。 そして、今回「週刊文春」が入手したのが、斎藤知事の指示を受けた片山安孝副知事(当時)がX氏に詰め寄る録音データだ。 音声データには斎藤知事の指示を受けた片山副知事によるX氏への取り調べが録音されており、中には「なんでそれを知っとるんやって聞きよんやろが!」などとX氏を強い口調で詰問する生々しい様子も残されていた。さまざまな言い方で詰め寄られたX氏はこの聴取を受けた約3か月後の7月7日、「死をもって抗議する」とのメッセージを遺して自殺した。 X氏への聴取の内容については8月20日の知事定例記者会見でも報道陣が追及したが……。 「知事は『噂話を集めて作成した』との文言以外は公表しないと強調し、音声データなどの公開を拒みました。知事にとって都合の良い文言だけを抜粋して公表する姿勢は『卑怯だ』と批判されています」(県庁担当記者) では、公開を拒んだ「音声データ」には何が残されていたのか。 現在配信中の「週刊文春電子版」では、音声データに残されたやりとりを詳しく報じている』、「「知事は『噂話を集めて作成した』との文言以外は公表しないと強調し、音声データなどの公開を拒みました。知事にとって都合の良い文言だけを抜粋して公表する姿勢は『卑怯だ』と批判されています』、「知事にとって都合の良い文言だけを抜粋して公表する姿勢は『卑怯だ』と批判されています」、その通りだ。

第四に、8月26日付けNEWSポストセブン「《女優さんのインスタみたいやな》斎藤元彦知事の“外見へのこだわり”「化粧室で1時間髪型チェック」「控え室がないとSAかコンビニに必ず立ち寄って…」次々に明らかになる調査結果」を紹介しよう。
・『兵庫県・斎藤元彦知事がパワハラ疑惑などを内部告発されるなか、職員2人が死亡した問題。兵庫県議会の「百条委員会(調査特別委員会)」は7月31日から県職員を対象に、「知事が贈与品を受け取っていること」「知事のパワーハラスメント」などについて聞いてアンケート調査を実施しており、8月23日にその「中間報告」が公表された。 斎藤知事は20日時点で定例記者会見でアンケート調査に触れており、「県庁においては仕事ですから、やはり厳しく、時には必要な注意というものは大事だと考えています」とコメントしていた。県庁で働くある男性職員は、「だんだんと職場が変な雰囲気になってますよ」と困惑気味に話す。 「僕は直接的に関わってないので、なんとも言えないですけど、元々パワハラとか、机を蹴ったとかそういう話は色んなところから聞こえていました。 最近、職員のあいだで、急に強い口調で喋ったりして、『厳しい指導は必要なんや』なんて言うのが流行ってるんです。もちろん冗談で、斎藤知事の真似をしてね。ジョークを飛ばすんですよ」 県庁職員の間では斎藤知事の話でもちきりのようだが、それもそのはず、前述のアンケート調査では県職員約9700人のうち約4割が、知事のパワハラについて見聞きしたことがあったと回答している。公表された中間報告には自由回答で寄せられた意見も多数掲載されたが、在阪マスコミ関係者は「斎藤知事の“ナルシストぶり”に言及する記述が多い」と話す。) 「マスコミやSNSで“知事の顔”を前面に押し出し、露出させることにこだわった一方、その“見栄え”にもすごくこだわっていたようです。イベント時、知事専用の控室、姿見、三面鏡が必須だったということは、複数の職員が言及しています。 本人のSNSを見ても、同じような表情の自撮り写真が目立ったり、イベントの時なんかは同じような場面で表情の違うカットを何枚も載せるんですよ。記者の間では“女優さんのインスタみたいやな”と噂になっていました」』、「県職員を対象に・・・アンケート調査・・・では約4割が、知事のパワハラについて見聞きしたことがあったと回答・・・自由回答で寄せられた意見も多数掲載されたが、在阪マスコミ関係者は「斎藤知事の“ナルシストぶり”に言及する記述が多い」、「ナルシストぶり」とは言い得て妙だ、
・『「専用の顔加工ソフトを使用」  アンケートの中間報告にも、斎藤知事が“見栄え”を気にするあまりに職員を困らせていたエピソードが記されていた。以下は自由記述からの抜粋である。 〈出張先では外見を確認するためのトイレ(鏡)が必須であり、秘書課や出張先の関係者が知事導線の確認等に多大な労力を費やしていると聞いたことがあります〉 〈トイレに入ると1時間ほど出てくることはなく、髪型のチェックをしている。途中で声をかけると、異常なほど不機嫌になる〉) 〈控室が用意出来ない現場に行くときに必ず高速道路の最後のSAやコンビニの洗面所に立ち寄る 後部座席からカーナビを覗き込んでナビの到着予定時間で予定より遅れそうになったら叱責された〉 〈広報に使う写真には常に専用の顔加工ソフトを使っており、広報課の職員は写真の出来が悪いと叱責されると聞いたことがあります〉 自身のXのプロフィール欄には《対話と現場主義を徹底し、「躍動する兵庫」の実現に向けて県政を前に進めていきます》と記している斎藤知事。“見栄え”を過度に気にして周囲に迷惑をかける姿は、「対話と現場主義を徹底」していると言えるのだろうか』、「〈出張先では外見を確認するためのトイレ(鏡)が必須であり、秘書課や出張先の関係者が知事導線の確認等に多大な労力を費やしていると聞いたことがあります〉 〈トイレに入ると1時間ほど出てくることはなく、髪型のチェックをしている。途中で声をかけると、異常なほど不機嫌になる〉 〈控室が用意出来ない現場に行くときに必ず高速道路の最後のSAやコンビニの洗面所に立ち寄る 後部座席からカーナビを覗き込んでナビの到着予定時間で予定より遅れそうになったら叱責された・・・〈広報に使う写真には常に専用の顔加工ソフトを使っており、広報課の職員は写真の出来が悪いと叱責される・・・“見栄え”を過度に気にして周囲に迷惑をかける姿は、「対話と現場主義を徹底」していると言えるのだろうか」、なるほど。
・『情報提供募集  「NEWSポストセブン」では、情報・タレコミを募集しています。情報提供フォームまたは、下記の「公式X」のDMまで情報をお寄せください。 ・情報提供フォーム:https://www.news-postseven.com/information XのDMは@news_postsevenまでお送りください!』、読者とのやり取りは重要だ。

第五に、9月3日付け文春オンライン「「経営者や記者から軒並み評判がよかったのに…」“おねだり&パワハラ知事”以前の斎藤元彦氏を知るジャーナリストが見た“豹変”の呆れるきっかけ」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/73199#goog_rewarded
・『兵庫県の斎藤元彦知事はなぜ辞めないのだろう? 最大の謎である。いや、辞めれば済むという話ではないのだが、例えばどういう気持ちになれば次の発言ができるのか。 『兵庫県の斎藤元彦知事、パワハラ体質問われ「過去取り戻せない」「もっといい知事に」…百条委員会の証人尋問』(読売新聞オンライン8月30日) 3月に斎藤知事をめぐる疑惑が浮上して以降、すでに2人の職員が死亡している(自死とみられる)。 そのうちの1人が、この春まで兵庫県で西播磨県民局長を務めていた男性職員のX氏だ(※以下「X氏」)。X氏は斎藤知事を告発した文書を報道機関などに送付したら寄ってたかって追い詰められ、処分された。「寄ってたかって」の部分は重要なので後半に詳しく書く。 X氏の告発には2023年11月23日に開催された阪神タイガースとオリックス・バファローズのリーグ優勝を記念したパレードもあった。文書には、兵庫県は「必要経費を補うため、信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせた」旨の告発もあった。 パレードを担当した課長は不正行為と難しい調整に精神がもたず、うつ病を発症したと記されていたが、4月に亡くなっていたことが7月末に公表された』、「阪神タイガースとオリックス・バファローズのリーグ優勝を記念したパレードもあった。文書には、兵庫県は「必要経費を補うため、信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせた」旨の告発もあった・・・ パレードを担当した課長は不正行為と難しい調整に精神がもたず、うつ病を発症したと記されていたが、4月に亡くなっていたことが7月末に公表された」、なるほど。
・『2人の職員が死亡...斎藤知事が言い放った“衝撃発言”  こうして2人の職員が亡くなっているのだが、百条委員会で斎藤知事は自身の振る舞いを問われて「過去は取り戻せない」「もっといい知事に」と平然と言ったのである。ゾッとする。 県議会の調査委員会が県職員に行ったアンケートの中間報告には「カニの持ち帰り」などのおねだり例やパワハラ疑惑も報告されていた。インパクトが強いエピソードの数々なのでそこに目が向けられるのもわかる。 しかし今回最も論じられなければいけないのは「公益通報つぶし」ではないか? X氏が告発文書を一部の報道機関や県議に送付すると、県はX氏が文書作成者だと断定し、X氏の公用PCを押収した。その2日後、斎藤知事は定例会見で「業務時間中に『嘘八百』を含め、文書を作って流す行為は公務員として失格だ」と述べた。 県はX氏を停職3カ月の懲戒処分にした。X氏は7月7日に急死。「死をもって抗議する」という文言を遺していた』、「今回最も論じられなければいけないのは「公益通報つぶし」ではないか? X氏が告発文書を一部の報道機関や県議に送付すると、県はX氏が文書作成者だと断定し、X氏の公用PCを押収した。その2日後、斎藤知事は定例会見で「業務時間中に『嘘八百』を含め、文書を作って流す行為は公務員として失格だ」と述べた。 県はX氏を停職3カ月の懲戒処分にした。X氏は7月7日に急死。「死をもって抗議する」という文言を遺していた」、「公益通報つぶし」は本当に酷い。
・『なぜ斎藤知事は責任を取らないのだろうか  こうした公益通報つぶしが明らかになっているのに、なぜ斎藤知事は責任を取らないのだろう。そう思った私は7月に大阪へある人の話を聞きに行った。元神戸新聞の記者で現在はノンフィクションライターの松本創氏である。 松本氏は維新政治を深く取材しており、著書には『誰が「橋下徹」をつくったか――大阪都構想とメディアの迷走』(140B/2016年度日本ジャーナリスト会議賞受賞)など多数。最新刊は編著で『大阪・関西万博 「失敗」の本質』(ちくま新書)がある。 実は、松本氏は斎藤元彦氏を以前から取材していたという。ではどんな人物だったのか。 「知事になる前から取材していましたが、ああいうキャラクターの片鱗も見せなかった。首長、議員、経営者、記者......軒並み評判がよかった。彼の人物像は兵庫県知事就任の前と後で、明らかな断絶があります 」』、「松本氏は斎藤元彦氏を以前から取材していたという。ではどんな人物だったのか。 「知事になる前から取材していましたが、ああいうキャラクターの片鱗も見せなかった。首長、議員、経営者、記者......軒並み評判がよかった。彼の人物像は兵庫県知事就任の前と後で、明らかな断絶があります 」、なるほど。
・『斎藤知事が「ああなってしまった」ワケ  なんと、今の姿は想像できないという。ではなぜああなってしまったのか。どう考えますか? 「彼の人生の目標は知事になること自体ではなかったか? というのが現時点での仮説です。だから自分は最大限に尊重されるべきだし、何でも言い分が通ると思っているのではないかと」 斎藤氏の「元彦」という名前は祖父が付けた。金井元彦・元兵庫県知事から取ったという。知事のイスに座ること自体が目標となった人物は目的を達成した瞬間に豹変したという見立てである。 松本氏は「彼は知事になって何をやりたいのかわからなかった」とも述べた。そして今回の問題の本質について次のように語った。 「あと、やはり斎藤氏個人の資質の問題と、それに乗じた4人組(牛タン倶楽部)のように兵庫県庁の組織的問題の両面があるということには留意しておきたい」 多くの報道がどうしても斎藤氏個人のエピソードに終始してる感があるが、兵庫県庁の上層部のありようにも問題があったという』、「彼の人生の目標は知事になること自体ではなかったか? というのが現時点での仮説です。だから自分は最大限に尊重されるべきだし、何でも言い分が通ると思っているのではないかと・・・斎藤氏の「元彦」という名前は祖父が付けた。金井元彦・元兵庫県知事から取ったという。知事のイスに座ること自体が目標となった人物は目的を達成した瞬間に豹変したという見立てである・・・4人組(牛タン倶楽部)のように兵庫県庁の組織的問題の両面があるということには留意しておきたい」、なるほど。
・『X氏が告発した“牛タン倶楽部”とはなにか?  問題の核心に入ってきた。ここでおさらいしよう。4人組(牛タン倶楽部)とは何か。松本氏に話を聞いた際に私の手元には「週刊文春」(7月25日号)があったのだが「この記事には兵庫問題が詳しく書かれている」というので引用する。 《そもそもX氏が告発したのは斎藤知事だけではない。片山副知事、県職員の総務部長、産業労働部長、若者・Z世代応援等調整担当理事の四人への言及がある》(7月25日号) ではこの4人はどこで知り合ったのか。) 2013~16年に当時総務官僚だった斎藤知事が宮城県に出向していたころ、東日本大震災の復興関連で、兵庫県も職員を派遣することが多かった。するとこの4人組と斎藤知事は仲良くなり、 《いつも仙台でつるんでいた。兵庫県庁では知事以下五人を『牛タン倶楽部』と陰で呼んでいます。》(県職員・7月25日号) 2021年に知事となった斎藤氏は「牛タン倶楽部」のメンバーを側近として重用した。 《県庁職員とのコミュニケーションを拒み、四人組への依存を深めていくばかり。敵対的と見なされた者は次々と排除された。最近は斎藤に意見できる職員は誰もいなくなっていた》(県OB・7月25日号)  ▽X氏の告発を「寄ってたかって」追い詰めた人々の正体(いかがだろうか。こうした状況下でX氏が告発したのだ。しかし、知事が勢い任せに「嘘八百」と口にしてしまったことで、県はあの文書を「嘘八百」と結論づけるための内部調査しかできなくなったという。  県はX氏のパソコンを押収し、私的な文章も見つけた。この文章は4人組によって県議や県職員に漏れたという。告発文書をめぐり、百条委員会の設置が求められると、今度は維新会派の県議たちの間にもX氏の私的な文章が流出したようで、 《維新の岸口実県議と増山誠県議が、百条委員会の場でX氏のPCに入っていた全てのファイルを公開するよう強く主張し始めた》(自民県議・7月25日号)  こうして知事、4人組、強硬な2人の維新県議に「寄ってたかって」追い詰められたX氏。公益通報とは何か、そして兵庫県政の実態をあらためて問うべきではないか。 斎藤氏が知事に当選した2021年の選挙では自民と維新が斎藤氏に相乗りした。出馬前は大阪府の財政課長で松井一郎・吉村洋文両知事の維新府政を3年間支えた。それゆえ「製造責任者」として維新に注目が集まるのだが維新関連ではこんな記事も出始めている。 『維新批判票? 初の現職市長落選 党幹部「完敗」に衝撃 大阪・箕面』(毎日新聞8月27日)  2010年の結党以来、維新公認の現職首長が落選するのは初めてだった。その要因に「大阪・関西万博」と「自民派閥の政治資金パーティー裏金問題を受けた政治資金規正法の改正を巡り、日本維新が『政策活動費』の領収書の10年後公開で自民と合意したこと」、そして「斎藤知事」問題が言われている。 兵庫県のパワハラ知事問題は維新問題であることがわかる。これで慌てて維新が斎藤批判に動き出したら、それもまた維新っぽい展開なのだが』、「2013~16年に当時総務官僚だった斎藤知事が宮城県に出向していたころ、東日本大震災の復興関連で、兵庫県も職員を派遣することが多かった。するとこの4人組と斎藤知事は仲良くなり、 《いつも仙台でつるんでいた。兵庫県庁では知事以下五人を『牛タン倶楽部』と陰で呼んでいます・・・知事が勢い任せに「嘘八百」と口にしてしまったことで、県はあの文書を「嘘八百」と結論づけるための内部調査しかできなくなったという。  県はX氏のパソコンを押収し、私的な文章も見つけた。この文章は4人組によって県議や県職員に漏れたという・・・知事、4人組、強硬な2人の維新県議に「寄ってたかって」追い詰められたX氏。公益通報とは何か、そして兵庫県政の実態をあらためて問うべきではないか・・・2010年の結党以来、維新公認の現職首長が落選するのは初めてだった。その要因に「大阪・関西万博」と「自民派閥の政治資金パーティー裏金問題を受けた政治資金規正法の改正を巡り、日本維新が『政策活動費』の領収書の10年後公開で自民と合意したこと」、そして「斎藤知事」問題が言われている」、やはり「維新」の命運を左右するほど重大な問題になってきた。当面、要注目だ。
タグ:ハラスメント (その26)(兵庫県知事問題4題:兵庫県知事の“パワハラ人格”が作られるまで 「いい奴」だったはずが、知事就任後は「周囲はドン引き」、兵庫・斎藤元彦知事を巡る「疑惑告発文書問題」で2人目の職員死亡…安倍政権下の森友事件のような展開に、自殺職員が詰問される“証拠音声”を入手!「なんでそれを知っとるんやって聞きよんやろが!」知事側近が高圧取り調べ…《斎藤元彦知事は公開拒否》、《女優さんのインスタみたいやな》斎藤元彦知事の“外見へのこだわり”「化粧室で1時間髪型チェック」「控え室がないとSAかコンビ yahooニュース デイリー新潮「兵庫県知事の“パワハラ人格”が作られるまで 「いい奴」だったはずが、知事就任後は「周囲はドン引き」」 「親元を離れて、中高6年間は愛光学園の寮で過ごしたという。同級生の一人が当時を振り返る。 「さいちゃん(齋藤氏)とは寮で一緒にご飯を食べたし、お風呂にも入った仲ですけど、いい奴としか言いようがないですよ。頭も良かったし、スポーツも全般的にできました」、なるほど。 「「旧自治省系は警察の次に上意下達の縦社会。組織自体がパワハラの塊です」、なるほど。 「齋藤知事は“コミュ障”なんですよ。コミュニケーションが取れないからか、知事はすぐに怒りだす。それだけならまだしも、“俺は怒ったことをすぐに忘れるんや、ハハハ”なんて自慢する。周囲はドン引きですよ」、「コミュ障”」で、「“俺は怒ったことをすぐに忘れるんや」とは質が悪い。 日刊ゲンダイ「兵庫・斎藤元彦知事を巡る「疑惑告発文書問題」で2人目の職員死亡…安倍政権下の森友事件のような展開に」 「元課長の死因も自殺とみられ、職場の有志らが元課長の子どものために「遺児育英資金」を集めようとしたところ、県幹部が止めていたという。  県は個人情報保護を理由に元課長が亡くなったことを公表しておらず、斎藤知事も会見で「遺族の意向で公表していなかった」と説明。だが、公表の判断はともかく、職場有志らによる「遺児育英資金」を募る動きにストップをかけるのは不自然ではないか」、酷い話だ。 「《政治家が好き勝手なことをやり、その尻拭いをさせられる公務員はイエスマンになるか、責任を感じて自死する。森友事件と同じ構図》 《どんなに批判され、辞職を求められても辞めない。そのうち国民は忘れる、と思っているのが自民党国会議員。これが地方の首長にまで伝播している」、なるほど。 文春オンライン「《兵庫県知事パワハラ疑惑に新展開》自殺職員が詰問される“証拠音声”を入手!「なんでそれを知っとるんやって聞きよんやろが!」知事側近が高圧取り調べ…《斎藤元彦知事は公開拒否》」 「県職員を対象に行われたアンケートでは、およそ4割が知事のパワハラを見聞きしたなどと回答」、なるほど。 「「知事は『噂話を集めて作成した』との文言以外は公表しないと強調し、音声データなどの公開を拒みました。知事にとって都合の良い文言だけを抜粋して公表する姿勢は『卑怯だ』と批判されています』、「知事にとって都合の良い文言だけを抜粋して公表する姿勢は『卑怯だ』と批判されています」、その通りだ。 NEWSポストセブン「《女優さんのインスタみたいやな》斎藤元彦知事の“外見へのこだわり”「化粧室で1時間髪型チェック」「控え室がないとSAかコンビニに必ず立ち寄って…」次々に明らかになる調査結果」 「県職員を対象に・・・アンケート調査・・・では約4割が、知事のパワハラについて見聞きしたことがあったと回答・・・自由回答で寄せられた意見も多数掲載されたが、在阪マスコミ関係者は「斎藤知事の“ナルシストぶり”に言及する記述が多い」、「ナルシストぶり」とは言い得て妙だ、 「〈出張先では外見を確認するためのトイレ(鏡)が必須であり、秘書課や出張先の関係者が知事導線の確認等に多大な労力を費やしていると聞いたことがあります〉 〈トイレに入ると1時間ほど出てくることはなく、髪型のチェックをしている。途中で声をかけると、異常なほど不機嫌になる〉 〈控室が用意出来ない現場に行くときに必ず高速道路の最後のSAやコンビニの洗面所に立ち寄る 後部座席からカーナビを覗き込んでナビの到着予定時間で予定より遅れそうになったら叱責された・・・ 〈広報に使う写真には常に専用の顔加工ソフトを使っており、広報課の職員は写真の出来が悪いと叱責される・・・“見栄え”を過度に気にして周囲に迷惑をかける姿は、「対話と現場主義を徹底」していると言えるのだろうか」、なるほど。 読者とのやり取りは重要だ。 文春オンライン「「経営者や記者から軒並み評判がよかったのに…」“おねだり&パワハラ知事”以前の斎藤元彦氏を知るジャーナリストが見た“豹変”の呆れるきっかけ」 「阪神タイガースとオリックス・バファローズのリーグ優勝を記念したパレードもあった。文書には、兵庫県は「必要経費を補うため、信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせた」旨の告発もあった・・・ パレードを担当した課長は不正行為と難しい調整に精神がもたず、うつ病を発症したと記されていたが、4月に亡くなっていたことが7月末に公表された」、なるほど。 「今回最も論じられなければいけないのは「公益通報つぶし」ではないか? X氏が告発文書を一部の報道機関や県議に送付すると、県はX氏が文書作成者だと断定し、X氏の公用PCを押収した。その2日後、斎藤知事は定例会見で「業務時間中に『嘘八百』を含め、文書を作って流す行為は公務員として失格だ」と述べた。 県はX氏を停職3カ月の懲戒処分にした。X氏は7月7日に急死。「死をもって抗議する」という文言を遺していた」、「公益通報つぶし」は本当に酷い。 「松本氏は斎藤元彦氏を以前から取材していたという。ではどんな人物だったのか。 「知事になる前から取材していましたが、ああいうキャラクターの片鱗も見せなかった。首長、議員、経営者、記者......軒並み評判がよかった。彼の人物像は兵庫県知事就任の前と後で、明らかな断絶があります 」、なるほど。 「彼の人生の目標は知事になること自体ではなかったか? というのが現時点での仮説です。だから自分は最大限に尊重されるべきだし、何でも言い分が通ると思っているのではないかと・・・斎藤氏の「元彦」という名前は祖父が付けた。金井元彦・元兵庫県知事から取ったという。知事のイスに座ること自体が目標となった人物は目的を達成した瞬間に豹変したという見立てである・・・4人組(牛タン倶楽部)のように兵庫県庁の組織的問題の両面があるということには留意しておきたい」、なるほど。 「2013~16年に当時総務官僚だった斎藤知事が宮城県に出向していたころ、東日本大震災の復興関連で、兵庫県も職員を派遣することが多かった。するとこの4人組と斎藤知事は仲良くなり、 《いつも仙台でつるんでいた。兵庫県庁では知事以下五人を『牛タン倶楽部』と陰で呼んでいます・・・知事が勢い任せに「嘘八百」と口にしてしまったことで、県はあの文書を「嘘八百」と結論づけるための内部調査しかできなくなったという。 県はX氏のパソコンを押収し、私的な文章も見つけた。この文章は4人組によって県議や県職員に漏れたという・・・知事、4人組、強硬な2人の維新県議に「寄ってたかって」追い詰められたX氏。公益通報とは何か、そして兵庫県政の実態をあらためて問うべきではないか・・・2010年の結党以来、維新公認の現職首長が落選するのは初めてだった。その要因に「大阪・関西万博」と「自民派閥の政治資金パーティー裏金問題を受けた政治資金規正法の改正を巡り、日本維新が『政策活動費』の領収書の10年後公開で自民と合意したこと」、そして「斎藤知 事」問題が言われている」、やはり「維新」の命運を左右するほど重大な問題になってきた。当面、要注目だ。
nice!(0)  コメント(0) 
前の10件 | -