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鉄道事故(その1)(京急事故の背景に「安全意識のマズさ」 再発防止策からも浮き彫りに、ラッシュ時に電車を遅延させた人・親族の末路 鉄道事故裁判に詳しい弁護士の佐藤健宗氏に聞く) [社会]

今日は、鉄道事故(その1)(京急事故の背景に「安全意識のマズさ」 再発防止策からも浮き彫りに、ラッシュ時に電車を遅延させた人・親族の末路 鉄道事故裁判に詳しい弁護士の佐藤健宗氏に聞く)を取上げよう。

先ずは、鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏が昨年11月14日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「京急事故の背景に「安全意識のマズさ」、再発防止策からも浮き彫りに」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/220475
・『9月にトラックと電車が衝突した京急電鉄は12日、暫定的な再発防止策を発表した。この発表資料を読み解くと、京急の安全意識が十分なレベルでなかったことが垣間見える』、どういうことだろう。
・『再発防止策に垣間見える安全意識のマズさ  今年9月、京急電鉄神奈川新町~仲木戸間の神奈川新町第1踏切で発生したトラックとの衝突事故。京急は12日、暫定的な再発防止策として、踏切支障報知装置が支障物を検知時した際に作動する発光信号機の増設と、発光信号機を確認した際のブレーキ取り扱い基準を見直すと発表した。しかし、この発表を見てもなお筆者は、京急の安全意識に疑問符を付けざるを得ない。 鉄道に関する技術上の基準を定める省令は、踏切支障報知装置の発光信号機について、踏切の支障個所までに停止できる地点に設置することとしている(詳細は「京急踏切事故で垣間見える安全対策の問題点、他の私鉄と何が違ったか」参照)。 しかし今回の事故では、遮断機が閉まる前に支障報知装置が作動していたにもかかわらず、踏切内で立ち往生していたトラックと衝突してしまった。そうなると事故原因は「発光信号機の視認が遅れた」か「運転士のブレーキ操作が遅れた」かのどちらかということになる。 京急は事故後、筆者の取材に対して、運輸安全委員会の調査報告と神奈川県警の捜査結果を待つとして、事故原因への言及を避けたが、今回発表した暫定的な対策に「発光信号機の視認性」と「運転士のブレーキ操作」の両方の改善が含まれていたことからも、京急もこの2点が問題の核心であると考えているとみて間違いないだろう。では、京急の対策はこれで十分なのだろうか。 1つ目の論点は発光信号機の視認性だ。京急は当初、遠方発光信号機(踏切から最も遠い位置にある発光信号機)は踏切中心位置から約340mの位置に設置されており、踏切の600m手前から視認できると説明していた。ところが今回の発表では、遠方発光信号機の設置位置は約390m地点で、実際に視認可能な距離は570mであったと訂正している。 また遠方発光信号機の設置基準についても「600m手前から視認できる個所」ではなく「進路を支障する個所までに停止することができる距離(時速120キロの場合、停止距離517.5メートル)」に訂正した』、自動ブレーキ(ATS)をあえて採用しなかったのは何故だろう。
・『「余裕がなさすぎる踏切」になった理由はどこに?  事故現場の遠方発光信号機。左側の電柱の合間に少しだけ見えている赤い光がそれで、見えやすいとは言い難い 訂正後の設置基準は前述の省令に準じた内容であるが、制動距離(ブレーキをかけてから実際に停止できるまでの距離)が約520メートルであることを踏まえると、遠方発光信号機を視認できる地点が570メートル手前というのは、余りにも余裕がなさすぎる。しかも京急が公表した現地写真によれば、左カーブの左側遠方に設置されている信号機は、電柱の合間に一瞬見えるだけだ。 同社は遠方発光信号機を省令や社内基準に沿って設置し、運転関係者も実地で確認をしたと説明する。しかし、そうであればなぜ、ここまで余裕のない設計になってしまっていたのだろうか。 京急によると、この踏切に支障報知装置と発光信号機が設置されたのは1981年。以降、位置の変更や信号の増設はしていないという。設置当時は法令上に支障報知装置に関する規程はなかったが、同年の運輸省鉄道監督局(当時)の通達「踏切支障報知装置の構造基準」に定められた、停止を指示する信号機は列車が踏切までに停止できる距離以上の地点から確認できる位置に設置するという基準を満たす設備として位置づけられた。つまり、設置条件は1981年から変わっていないことになる。 ところが京急が現行の時速120キロ運転を開始したのは1995年4月のこと。1981年時点の最高速度は時速105キロであった。時速105キロの場合、減速度を時速4.5キロ毎秒、空走時間を2秒としたときの停止距離は約400メートルだ。 そうなると、遠方発光信号機が踏切の390メートル手前に設置されているのは、当時の運転速度を前提としたもので、その後のスピードアップに応じた適切な見直しがされていなかったのではないかという疑念が生じてくる。本社と現場が共にこの問題を見過ごしてしていたのだとしたら、京急社内の安全に対する認識に大きな問題があったと言わざるを得ないだろう。 もうひとつの論点がブレーキ操作である。京急は発光信号機を確認した際のブレーキ取り扱いについて、これまでは常用ブレーキを原則とし、停止位置までに停止することができない場合は非常ブレーキを使用するとの規程を定めていたが、これを10月17日から「直ちに非常ブレーキを操作」に見直したという。 常用ブレーキを基本としていた理由について、京急は「非常ブレーキで停止すると火災現場やトンネル、橋梁など避難誘導が難しい箇所に停止する可能性がある。そのリスクを避けるため」と説明するが、これは本末転倒というよりほかにない。鉄道事故の被害軽減にあたって最も重要なことは速やかに減速し、事故時に生じるエネルギーを低減することである。避難の心配はその次に考えるべきことだ』、「(遠方発光)信号機は、電柱の合間に一瞬見えるだけ」、「遠方発光信号機が踏切の390メートル手前に設置されているのは、当時の運転速度を前提としたもので、その後のスピードアップに応じた適切な見直しがされていなかったのではないかという疑念」、「常用ブレーキを基本」、安全意識が希薄な割に、「時速120キロ運転」とは恐れ入る。
・『「ダイヤ乱れ」を避けたい? 非常ブレーキを嫌った本音はどこに  また、そもそも遠方発光信号機の視認距離の前提となっている、踏切までに停止できる距離は、非常ブレーキ使用時の制動距離で算出されているのだから、これも整合しない。京急の車両は常用ブレーキの減速度が時速4.0キロ毎秒に対し、非常ブレーキは時速4.5キロ毎秒で、制動距離には50メートル以上の差が生じる。 つまり、常用ブレーキ使用を基本として定めていたのだから、京急が想定していた以上に余裕はなかったことになる。この規程を制定する際に、踏切を担当する信号通信部門と、運転部門で意思の疎通はできていたのだろうか。 実際、規程を変更して約1ヵ月、非常ブレーキを扱うことによる問題は生じていないという。そうであれば、なぜそこまで常用ブレーキ使用にこだわる必要があったのか。常用ブレーキと非常ブレーキのもうひとつの違いは、非常ブレーキは使用したら停止するまで解除することができない点にある。踏切直前横断で発光信号機が点滅するたびに、列車を非常停止させてダイヤが乱れるのを避けたいという、もうひとつの狙いがあったのではと疑われても仕方ないだろう。 事故原因の究明は、施設面の不備と運転士の運転操作の両面から進められている。2015年2月にJR山陽線で発生した踏切事故では、時刻表の確認に気を取られてブレーキが遅れたとして、電車の運転士が業務上過失傷害の疑いで書類送検されている。今回の事故でも、運転士のブレーキ操作が遅れたことで衝突に至ったとなれば、運転士が罪に問われる可能性がある。鉄道の運転士とは、それだけ責任が重大な仕事である。 しかし、遠方発光信号機の視認性の悪さや、常用ブレーキで停車するという内規の問題からみても、責任を運転士だけに帰する事故ではないことは明らかだろう。 京急は事故後、他の踏切についても発光信号機の視認性をチェックし、問題がないことを確認したと説明した。また踏切支障報知装置とATS(自動列車停止装置)との連動化も含めて、多角的に恒久的な再発防止策の検討を進めているという。だが、安全は設備とルールだけでは成り立たない。何より、本社と現場両方の社員の安全に対する感度を高めることから取り組んでもらいたい』、今回の事故は、「運転士」だけでなく、会社の安全性軽視の体質にもありそうだ。裁判ではどこまで明らかにされるのだろう。

次に、12月7日付け日経ビジネスオンライン「ラッシュ時に電車を遅延させた人・親族の末路 鉄道事故裁判に詳しい弁護士の佐藤健宗氏に聞く」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/interview/15/238739/112200273/?P=1
・『その劣悪さで世界最悪と言われる日本のラッシュアワー。ただでさえ高い通勤者のストレスを一段と高めるのが列車の遅延だ。信号の故障など鉄道会社に非があるケースもある一方で、喧嘩や飛び込み自殺など利用者が原因となって起きる遅延も少なくない。 人それぞれ事情があるのは事実。だが鉄道会社に対してはもちろん、何の落ち度もない多くの人々に迷惑をかける遅延行為が、決して褒められる行為ではないのもまた明らかだ。大事な商談や受験など重要な局面が台無しになり、人生を狂わされる人も出かねない。 そんな事態を防ぐ抑止効果になってきたと思われるのが、昔からネット上などで囁かれて来た「列車を大きく遅延させると、鉄道会社から億単位の莫大な賠償金が本人や遺族に請求される」という噂だ。あれは都市伝説なのか、それとも真実なのか。専門家に聞いた(Qは聞き手の質問)』、本当のところはどうなのだろう。
・『Q:結論からお聞きします。ラッシュの時にトラブルを起こして電車を大きく遅延させると、本人あるいは親族が鉄道会社から巨額の賠償金を請求される、というのは本当なんでしょうか。 佐藤:私も弁護士になって随分たちますが、10年ほど前までその答えを知りませんでした。都市伝説なのか真実なのか、皆さんと同じように疑問に思っていたんです。実情を知ったのは、1991年に発生した信楽高原鉄道列車衝突事故の遺族側の代理人となったことを機に、鉄道事故裁判という分野に本格的に関わるようになってからです』、弁護士でも事案を担当するまでは、「答えを知りませんでした」、そんなものなのだろう。
・『連日起きる顧客トラブル。弊社女性社員もあわや流血  Q:2005年のJR西日本福知山脱線事故の遺族側の代理人も務められています。 佐藤:鉄道事故を扱うには、まずは鉄道事故訴訟の実情を知ることが必要だという話になって、ある時、大阪の裁判所に調査に行ったんです。裁判所に行けば、どんな訴状を受理したのかや、原告や被告、事件番号などが載った一覧表が見られるんですよ。それを見ていくと、少なくとも私が確認した一定期間、地元のJR西日本が原告になった裁判は一件もありませんでした。 Q:一件も  佐藤:そう、これはとても不思議なことです。というのもJR西日本管内では少なくとも1週間に1度くらいは大きな遅延が起きているはずだからです。首都圏だったらほぼ毎日のように、遅延を伴う電車トラブルがありませんか。 Q:あると思います。先日も、弊社女性社員が千代田線の女性専用車両で、雨の日にOLと女子高生が傘のしずくが当たった当たらないで口論になり互いに傘を振り回し、その巻き添えで傘が無関係の彼女の頭部に振り下ろされる、という事案に遭遇しました。遅延までは至らなかったとのことですが、「女性専用車両は男性の目がない分、女性同士の小競り合いが想像以上に多く、なるべく乗りたくない」と申しています。 佐藤:それだけ様々な顧客トラブルが起きているにもかかわらず、関西圏で長期間、鉄道会社が原告になった裁判がないということは、鉄道会社は電車を遅延させた本人あるいは親族に対して裁判をほぼ起こしていない、ということだと私は解釈しています。私の知る限り、鉄道会社による裁判は、2016年に鉄道会社側の敗訴が確定した「JR東海認知症事故訴訟」のみです。 Q:愛知県で認知症男性が徘徊中に電車にはねられ死亡し、鉄道会社が家族に賠償請求した事件ですよね。 佐藤:後ほど触れますが、あの裁判は特殊な事例です。やはり原則として、鉄道会社は電車を遅延させた本人や遺族への裁判はやらない、と見ていいと思います。 Q:となると、言い方に語弊があるかもしれませんが、ラッシュ時に電車を遅延させても、基本的には“お咎めなし”、と? 佐藤:いえ、そうではありません。例えば、飛び込み自殺によって大幅な遅延が生じた場合、鉄道会社は大抵、遺族に接触はしているはずです。具体的には、「今回の件でこれだけの損害が発生しました。どうしましょう」と遺族側へ打診する。なぜそう言えるかと言えば、「親族が鉄道自殺し鉄道会社から話し合いたいと連絡が来たが、どうすればいいか」という相談が実際に私のところに来るからです』、「原則として、鉄道会社は電車を遅延させた本人や遺族への裁判はやらない、と見ていいと思います」、しかし、「鉄道会社は大抵、遺族に接触はしているはずです。具体的には、「今回の件でこれだけの損害が発生しました。どうしましょう」と遺族側へ打診する」、裁判こそやらないが、打診はしているらしい。
・『鉄道事故の賠償金、億単位は本当か?  Q:賠償請求額はネットで言われているように億単位? 佐藤:それはケースバイケースでばらつきがありますが、結論から言うと私が知る事例は数百万円単位。仮に増えても1000万円単位ではないかと推察されます。鉄道事故の賠償金がどのように計算されるか考えてみると、まず、①車両の修理代があります。また、特急などの場合は②遅延による払い戻し代も発生します。さらに、③現場の清掃のためのコストが掛かります。④他の鉄道会社やバス会社に払う振替輸送代も必要です。このため、合計額がいくらになるかは、遅延させた時間がラッシュか、輸送量の少ない昼かでも違ってきます。 Q:先生が担当したケースでは、いくらくらいでしたか。 佐藤:例えば、昼に発生した鉄道事故で遺族から相談を受けたことがありますが、その時は、数百万円単位でした。さきほど挙げた賠償金の内訳に照らし合わせても妥当だと思われる額で、このケースでは遺族と相談した上で全額払いました。ただ、場所が首都圏で、ラッシュ時に生じた遅延で何十万人の足が止まったなら、損害額が1000万円単位になってもおかしくないとは思います。 Q:そうなった場合、賠償金を払える経済状況でない家庭はどうなるのでしょう。 佐藤:そういう家庭からの相談も受けたことがあります。その時は、相続放棄をお勧めしました。亡くなられた方が若い方でほとんど遺産がなかったからです。鉄道会社の裁判は、電車遅延の原因を作った本人は亡くなっているので、相続人に対し、故人の遺産から賠償金を払うよう民事訴訟をすることになります。 Q:すべての相続人が相続放棄をしてしまえば、それで賠償請求に応じる義務はなくなります。 佐藤:裁判をやっても意味はありませんから、鉄道会社はここで諦めざるを得ません。相続放棄をすれば裁判所から受理証明書が出ますからそれを鉄道会社へ持って行って、全て終了でした。 となると、まず「ラッシュの時にトラブルを起こして電車を大きく遅延させると、本人あるいは親族が鉄道会社から億単位の巨額の賠償金を請求される」というのは都市伝説なんですね。 佐藤:億というのは滅多にないと思います。 Q:さらに多くの場合は、賠償請求の交渉は裁判に至る前に決着する、と。自殺の場合、交渉の段階で親族側は故人の遺産から払える額なら払えばいいし、払えなければ相続放棄をすればいい。いずれにせよ、遺族として、遺産以上の損害賠償責任を負う事はない、と。 佐藤:そういう理解でいいと思います。ただ、損害賠償の責任があることは頭に入れてほしいです』、「自殺の場合、交渉の段階で親族側は故人の遺産から払える額なら払えばいいし、払えなければ相続放棄をすればいい」、なるほど「相続放棄」されてしまえば、鉄道会社としては打つ手なしだ。
・『鉄道会社が裁判を起こそうとしない理由  Q:故人の遺産から賠償金を払えるにもかかわらず支払いを拒否したり、相続放棄をしなかったりすれば、鉄道会社は訴えるしかなくなると思いますが。 佐藤:論理的にはそうですが、実際にはそこまで行かないでしょう。まず弁護士に相談すれば、まず間違いなく、遺族は相続放棄か示談を薦められます。そもそも、列車を遅延させる行為は、民法709条の不法行為に該当し、故意または過失によって第三者の権利や利益を侵害した時は、行為者はその損害を賠償する責任があると法律には定められています。それに人身事故は運転事故ではなく、鉄道会社の方には一切の非はないんです。 Q:鉄道会社に非がない以上、普通に訴訟になれば遺族は負ける。だから、弁護士も示談か相続放棄をする戦術を取るのが一般的だ、と。 佐藤:一方、鉄道会社側も、なるべく訴訟を避けようとします。理由は簡単で、鉄道自殺の場合、仮に裁判に勝っても賠償金を取れる確率は高くないからです。というのも、鉄道に飛び込んで自殺をする人の中には、経済的に困窮している方もおられるでしょう。鉄道会社側も、賠償金を払える遺産があるのか調査するはずです。裁判をやって勝っても賠償金は取りようがないと判断すれば、無用な訴えは起こさないと思います。 Q:だとすれば、裁判をやる価値があるとすれば、故人に多額の賠償金を払えるだけの遺産があるのに遺族が応じないといったケースのみになります。 佐藤:そういう事例は極めてレアケースと言えるでしょう。 Q:とすれば、JR東海の裁判はどう取れえればよいのでしょう。 佐藤:JR東海の裁判は、電車にはねられ死亡した本人は認知症で、民法709条での責任を問えない可能性が高いと思われます。実際、裁判の争点も、認知症などで責任能力がない人が損害を与えた際、「監督義務者」がその責任を負うとする民法714条を巡るものでした。今後、高齢化社会が進展すれば、同様の事故が多発しかねません。JR東海は、賠償金目的というより、認知症者による鉄道事故の責任を誰が負うべきか社会に訴えかけるため、この裁判を起こしたとも考えられます。 Q:なるほど、よく分かりました。考えてみれば、鉄道自殺の場合、ただでさえ大切な人をなくして打ちひしがれて遺族に裁判を起こすのは、鉄道会社としても気が引けるのでしょうね。 佐藤:社会的なイメージもありますからね』、「鉄道会社」も「社会的なイメージ」を気にするのは当然だろう。
・『抑止力として都市伝説には意味がある  Q:それに、喧嘩による遅延などはどちらが本当に悪かったのか、見極めにくくはありませんか。以前、JR東海道線で車内で目が合って喧嘩を始めた2人の中年男性がホームに降り立った後、もんどりうって共に電車に接触し、両方死亡して電車が止まった事件がありました。これなど、2人とも死んでしまった後となっては責任の所在をなかなか追及しにくいです。 佐藤:ただ一方で、私は、「列車を大きく遅延させると、鉄道会社から億単位の莫大な賠償金が本人や遺族に請求される」という考えは、鉄道自殺の抑止効果という意味で、それはそれで意味があったと思うんです。鉄道事故の処理は本当に大変なんです。条件次第では何十万人に影響を与えます。ご遺体の扱いも想像を超える大変な仕事です。しかも一刻も早く運行を再開せよと言われます。 Q:実際、相当なスピードで復旧するケースもよく見かけます。 佐藤:加えて、鉄道事故は多くの人に迷惑をかける。経済に影響を与えたり、場合によってはそれによって人生が台無しになる人もいるかもしれない。ですから、社会のためにも、大切な家族のためにも、そしてご自身のためにも、安易に鉄道に飛び込んで自殺をするのは何とか思いとどまってほしい、と切に願います。その抑止力になるなら、「列車を大きく遅延させると、鉄道会社から億単位の莫大な賠償金が本人や遺族に請求される」と、世間でまことしやかに語られ続けているほうがいいと思っています』、「抑止力として都市伝説には意味がある」、確かにこれにより自殺が抑制されているのであれば、大いに意味がある。
・『では、航空機のトラブルはどうなのか?  Q:よく分かりました。今回は鉄道の遅延がテーマでしたが、最後に飛行機の遅延についても、見解を伺いたいんですが。飛行機では自殺による遅延はないものの、「酒を飲んで暴れる」「キャビンアテンダントにゴミを“爆弾”だと言って渡す」「化粧室に閉じこもりタバコを吸う」「ナッツリターン」などによる遅延や引き返しは起きています。 佐藤:トラブルを引き起こした人への基本的な対応は、鉄道事故と変わりません。れっきとした不法行為ですし、代替機材の手配や引き返した場合の燃料代、客の宿泊代などを考えると、賠償額も鉄道の遅延以上になる可能性はあります。 Q:それに、鉄道での自殺事故などと違って、航空機のトラブルは本人は健在です。場合によっては鉄道トラブル以上に深刻な結果につながりかねないわけですから、こってり絞られて然るべきだと思われますが。鉄道事故と異なり、国際線を乗り回しているような人の中には、賠償金を払う余裕のある人も多そうです。 佐藤:裁判にするかはともかく、責任はしっかり追及されているはずです』、「鉄道での自殺事故などと違って、航空機のトラブルは本人は健在です。場合によっては鉄道トラブル以上に深刻な結果につながりかねないわけですから、こってり絞られて然るべきだ」、新聞のニュースなどで見る限り、アメリカの航空会社の対応は厳しいようだ。
タグ:鉄道事故 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 枝久保達也 (その1)(京急事故の背景に「安全意識のマズさ」 再発防止策からも浮き彫りに、ラッシュ時に電車を遅延させた人・親族の末路 鉄道事故裁判に詳しい弁護士の佐藤健宗氏に聞く) 「京急事故の背景に「安全意識のマズさ」、再発防止策からも浮き彫りに」 再発防止策に垣間見える安全意識のマズさ 遮断機が閉まる前に支障報知装置が作動していたにもかかわらず、踏切内で立ち往生していたトラックと衝突 「余裕がなさすぎる踏切」になった理由はどこに? 信号機は、電柱の合間に一瞬見えるだけだ この踏切に支障報知装置と発光信号機が設置されたのは1981年 現行の時速120キロ運転を開始したのは1995年4月のこと。1981年時点の最高速度は時速105キロであった これまでは常用ブレーキを原則とし、停止位置までに停止することができない場合は非常ブレーキを使用するとの規程 「ダイヤ乱れ」を避けたい? 踏切支障報知装置とATS(自動列車停止装置)との連動化も含めて、多角的に恒久的な再発防止策の検討を進めている 「ラッシュ時に電車を遅延させた人・親族の末路 鉄道事故裁判に詳しい弁護士の佐藤健宗氏に聞く」 「列車を大きく遅延させると、鉄道会社から億単位の莫大な賠償金が本人や遺族に請求される」という噂だ。あれは都市伝説なのか 連日起きる顧客トラブル。弊社女性社員もあわや流血 鉄道会社による裁判は、2016年に鉄道会社側の敗訴が確定した「JR東海認知症事故訴訟」のみ 鉄道会社は大抵、遺族に接触はしているはずです。具体的には、「今回の件でこれだけの損害が発生しました。どうしましょう」と遺族側へ打診する 原則として、鉄道会社は電車を遅延させた本人や遺族への裁判はやらない、と見ていいと思います 鉄道事故の賠償金、億単位は本当か? 故人の遺産から賠償金を払うよう民事訴訟をする すべての相続人が相続放棄をしてしまえば、それで賠償請求に応じる義務はなくなります 自殺の場合、交渉の段階で親族側は故人の遺産から払える額なら払えばいいし、払えなければ相続放棄をすればいい 鉄道会社が裁判を起こそうとしない理由 社会的なイメージ 抑止力として都市伝説には意味がある では、航空機のトラブルはどうなのか? 鉄道での自殺事故などと違って、航空機のトラブルは本人は健在です。場合によっては鉄道トラブル以上に深刻な結果につながりかねない こってり絞られて然るべき
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情報セキュリティー・サイバー犯罪(その5)(あなたのPCに勝手に侵入 政府が“違法ハッカー”になる日、ネットバンキング 崩れた安全防壁 偽サイト使い「ワンタイムパス」破られる、三菱電機に中国系?サイバー攻撃 人材情報奪取の裏に「恐るべき意図」、三菱電機 NECへのサイバー攻撃で露呈した防衛体制の「徒手空拳」) [社会]

情報セキュリティー・サイバー犯罪については、2018年6月3日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その5)(あなたのPCに勝手に侵入 政府が“違法ハッカー”になる日、ネットバンキング 崩れた安全防壁 偽サイト使い「ワンタイムパス」破られる、三菱電機に中国系?サイバー攻撃 人材情報奪取の裏に「恐るべき意図」、三菱電機 NECへのサイバー攻撃で露呈した防衛体制の「徒手空拳」)である。

先ずは、昨年1月29日付け日刊ゲンダイ「あなたのPCに勝手に侵入 政府が“違法ハッカー”になる日」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/246373
・『東京五輪を“言い訳”にすれば何でもやりたい放題だと勘違いしているのではないか。政府が近く、サイバー攻撃対策として、企業や家庭のパソコンやスマホといった「IoT機器」に対し、無差別に侵入する調査に乗り出すと報じられ、ネット上で「安倍政権による違法ハッカー行為」と大騒ぎになっている。 調査は、企業や家庭などにあるルーターやウェブカメラなどの「IoT機器」を無作為に選んで侵入。セキュリティー対策に問題がある機器を見つけた場合、ユーザーに注意を促す――という。政府は昨年5月に電気通信事業法を改正。2024年3月末までの5年間、総務省所管の「情報通信研究機構」が調査業務を行うことを決めた。 改正法で、機構は「認定送信型対電気通信設備サイバー攻撃対処協会」に業務委託できるとされ、今月8日に「一般社団法人ICT―ISAC」(東京)が協会認定を受けたばかり。同法人には大手携帯電話会社をはじめ、NHKや民放などがズラリと名を連ねているから、恐らく国内にある「IoT機器」はほとんどが調査対象に含まれるということだ』、大きなお世話だとの印象を拭えない。
・『セキュリティー対策を口実に不正アクセス  総務省や機構の担当者は、東京五輪対策を理由に挙げて「国民の皆さまにはご理解いただきたい」なんて言っているらしいが、どのように説明しようが、セキュリティー対策を口実にした政府の「不正アクセス行為」だろう。 アクセスの際に得られるウェブカメラの映像や保存データを政府機関がどう扱うのか、国民が不安を抱くのも当然だ。まして調査するのが、不正統計や公文書偽造を繰り返している霞が関の官庁であり、バックにいるのが、やりたい放題の安倍政権だ。盗聴や盗撮など恣意的な運用の可能性も十分あり得るのだ。昨年の国会審議で、侵入調査を「国民に対する政府機関によるハッキング」と断じていた立憲民主の小川淳也議員は、こう指摘していた。「国民の政府や政府系機関の情報管理に対する信頼度は高くありませんよ。それがどういう形で流出するのか、どういう形で悪用される恐れがあるのか。国民の政府や政府機関に対する情報管理の信頼度は極めて低い」 その通りだ。国民に平気でウソをつき、バレたら開き直って言い訳し、グウの音も出なくなっても論点をすり替える。そんなアベ政治と言いなりの行政機関を誰が信用するのか。自由に国民の懐に手を突っ込める状況を許せば、憲法で保障された「通信の秘密」もプライバシー保護もあったもんじゃない』、「国民の政府や政府機関に対する情報管理の信頼度は極めて低い」、なかででの「政府機関によるハッキング」は確かに大いに問題だ。
・『ITジャーナリストの井上トシユキ氏はこう言う。「現実の世界でいえば、玄関の扉をコンコンと叩いて『戸締まりに気を付けて』というのではなく、いきなり扉を開けて家の中に入り込み、家人に注意を促すのに等しい。調査するのであれば、どういう手順で、いつから実施し、何らかの個人情報が漏れた場合は厳罰に処す、などの罰則規定を公表するべきです。そうでなければ、国民も信用できないでしょう」 こんな重大な調査を改正法でやろうなんて、政権がコトの重要性を考えていないか、国民をなめ切っているということ。怒らない方が異常だ』、一般のマスコミが安部政権に「忖度」して、問題点を殆ど報じなかったのも残念だ。

次に、本年2月7日付け日経新聞「ネットバンキング 崩れた安全防壁 偽サイト使い「ワンタイムパス」破られる」を紹介しよう。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO55341750W0A200C2EA1000/
・『インターネットバンキングの口座から不正送金される被害が2019年秋ごろから急増している。大きな要因は、手続きのたびに使い捨ての「ワンタイムパスワード」を発行する2要素認証を破る手口が編み出されたことだ。ネットバンキングの安全性を支える防壁の一端が崩れた形で、金融機関は送金できる額を制限するなどの対策を急いでいる。 確認されている主な手口はこうだ。 銀行に預金口座を持つ利用者のスマートフォンに「カード・通帳の利用停止、再開のお手続きの設定してください」とSMS(ショートメッセージサービス)が届き、記載されたURLを押すと銀行のサイトが現れる。 指示に従ってネットバンキングのIDとパスワードを入力すると、銀行からスマホに届いたワンタイムパスワードをさらに打ち込むよう求められ、入力すると「処理完了」と表示が出る。 だが、SMSが誘導するのは銀行を装う偽サイトで、犯人は偽サイトに打ち込まれたIDとパスワードをすぐに正規のサイトに入力している。利用者にワンタイムパスワードが届き、偽サイトに打ち込まれたら、それもすぐ正規サイトに入力してログインし、預金を外部の偽名口座などに振り込んでしまう。 偽サイトでIDなどを盗み取る「フィッシング」の手口は以前からあるが「利用者が偽サイトにアクセスしている間に、並行して正規サイトにログインすることでワンタイムパスワードを破る点が新しい」と警察関係者は指摘する。 セキュリティー大手、トレンドマイクロ(東京)によると、こうした偽サイトの確認件数は19年1~8月には月間10~40件だったが、9月は94件、11月は114件と急増した。メガバンクだけでなく地方銀行や信用金庫など、標的は幅広い。 警察庁のまとめによると、19年のネットバンキングの不正送金被害は前年比4.4倍の20億3200万円に上った』、安全とされてきた「ワンタイムパスワード」を、見事に破った悪知恵には驚くほかない。本来、銀行側から「「カード・通帳の利用停止、再開のお手続きの設定してください」とSMS」を送ることは絶対ない筈だが、送られてくると、つい応じてしまう「利用者」の心の隙が突かれた形だ。
・『犯人側は不特定多数の利用者に大量のSMSを送りつけており、セキュリティー専門家は「SMSの送信から不正ログイン、不正送金までの一連の作業を自動的に処理するシステムを構築している」とみる。 トレンドマイクロが偽サイトの構造を解析したところ、特徴的な文字列が複数のサイトで共通して使われていたことから、同社の担当者は「サイトを量産するためのツールが出回っている可能性もある」としている。 認証の仕組みに詳しいIT企業、セキュアスカイ・テクノロジー(東京)の長谷川陽介CTOは「顔や指紋といった生体認証を使うサービスもあるが、スマホなどを使うワンタイムパスワードは比較的手軽で、多くのサービスで採用されている」と話す。 不正送金の急増を受け、三井住友銀行は19年10月から、被害が大きくならないようネットバンキングで振り込める上限額を1日50万円に下げた。それまでの初期設定は上限100万円だった。加えて同年11月からは、不審な振り込みをシステムなどで検知した場合に実際の入金まで数分から数十分かかるようにした。手続きを止める時間を確保しているとみられる。 三菱UFJ銀行は、スマホアプリのログイン時にスマホの所有者とアプリの利用者が対応しているかを厳重に確認する。 情報セキュリティー関連企業などでつくるフィッシング対策協議会の吉岡道明氏は「個人預金を狙うフィッシングは年々巧妙になっている。SMSに書かれたURLに直接アクセスしないことはもちろん、1回あたりの送金の上限額を定めておくなどの対策も重要だ」と話している』、「サイトを量産するためのツールが出回っている可能性もある」、とは恐ろしい話だ。大いに気を付けたい。

第三に、ノンフィクションライターの窪田順生氏が1月23日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「三菱電機に中国系?サイバー攻撃、人材情報奪取の裏に「恐るべき意図」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/226595
・『三菱電機が昨年6月に、サイバー攻撃を受けていたことを明らかにした。関与が取りざたされているのは、中国系のハッカー集団。防衛や社会インフラに関する重要機密は流出していない、と発表されたが、これで安心するのは早計。彼らが「人材」に関する情報を抜き取ったのには、重要な意図がある可能性が高いからだ』、どんな「意図」があるのだろう。
・『「防衛機密」の漏洩なしでも安心できない理由  三菱電機が昨年6月、サイバー攻撃を受けていたことを公表した。関与が取りざたされているのは、中国系ハッカー集団「Tick」だ。 同社の社内調査や、菅義偉官房長官の会見によれば、防衛装備品の情報や、電力・鉄道など社会インフラなどの重要機密情報の流出はないというが、社員や退職者約6100人分の個人情報と、採用応募者約2000人分の情報が外部に漏れた恐れがある。 マサチューセッツ工科大学でサイバーテロの研究を行い、近著「世界のスパイから喰いモノにされる日本」(講談社α新書)でも中国のサイバー攻撃の手口を紹介している、ジャーナリストの山田敏弘氏はこのように語る。 「Tickはかねてより、日本の役所や企業を狙っている政府系ハッカー集団。中国政府系のサイバー攻撃の特徴は破壊工作をせず、防衛機密か知的財産の2つを抜いていく。その際にはその国のインフラを担う企業を狙うのが定番。ターゲットになったのが三菱電機ということ、そしてこの手口からしても、中国政府の関与は間違いないでしょう」 という話を聞くと、「とりあえず防衛などの重要機密を中国に盗まれなかった不幸中の幸いだな」とホッと胸をなでおろす方も多いかもしれないが、筆者の感想はちょっと違う。 日本有数のものづくり企業で働く人々の細かな情報があちらの手に渡った、というのはかなりマズい。目下、中国が国をあげてゴリゴリ進めている「人材引き抜き戦」に利用されてしまうからだ。 昨年12月3日、韓国貿易協会が公表した「中国、人材のブラックホール-中国への人材流出分析」という報告書がある。それによれば、韓国のバッテリー、半導体、航空という分野で働く技術者たちが中国企業に高待遇をちらつかせられ、次々と引き抜かれているという。 どのような手口なのかを、この報告書を紹介した「ハンギョレ新聞」(2019年12月4日)から引用しよう。〈バッテリー業界の場合、世界1位企業の中国CATLが7月に大規模採用をする中で、部長級責任者の場合には手取り3億ウォン(約2800万円)程度の高い年俸を提示した。中国の代表的電気自動車メーカーのBYDは、2017年には年俸の他に成果給、自動車、宿舎提供などを条件として提示し、韓国のバッテリー人材を採用した。(中略)半導体業種では、福建晋華(JHICC)が今年4月、人材採用公告を出し「10年以上サムスン電子、SKハイニックスでエンジニアとして勤めた経歴者優待」を明示した〉』、日本の電機メーカーではリストラもしているので、ヘッドハントは韓国企業以上にやり易いだろう。
・『韓国や台湾の産業が中国に吸い取られている現実  「優秀な人材が国家にこだわらず、好条件のところで働くのは当然だ」という人もいるかもしれない。その点は筆者もまったく同感だが、問題はこの「ブラックホール」に吸い込まれているのが、韓国だけではないということだ。 例えば、昨年12月9日に「日本経済新聞」が報じた「中国、台湾人材3000人引き抜き 半導体強化」というニュースがわかりやすい。 今、台湾では半導体業界を中心に、中国からの人材引き抜きが加速しており、世界市場でも存在感のある台湾積体電路製造(TSMC)の経営幹部から現場の技術者に至るまでが、次々と高待遇をちらつかせられ、大陸へ渡っているという。台湾の経済誌「商業周刊」によれば、その数は3000人にも及ぶという。これだけ多くの優秀な技術者が流出すれば当然、「台湾の強み」は中国へ奪われてしまうというのは説明の必要はないだろう。 〈例えば、台湾が得意としてきた半導体メモリー。20年には中国の国策会社である長〓存儲技術(CXMT、〓の文字は金を三つ三角形に重ねる)、長江存儲科技(長江メモリー・テクノロジーズ)が相次ぎ本格量産を始める見通しで、台湾勢は間もなく中国勢にあっさりと抜き去られる恐れがある〉(日本経済新聞2019年12月9日) つまり、中国という「人材ブラックホール」によって、韓国と台湾は国内産業の競争力まで吸い込まれてしまっているというわけだ。韓国と台湾がこれだけ狙われている中で、日本だけがお目こぼしになる、と考えるのは無理がある。 ご存じのように、三菱電機は、今やすっかり世界で存在感をなくしてしまった「日の丸半導体」の中ではかなり奮闘している方で、代表的なパワー半導体であるIGBTモジュールにおいては世界シェアでトップクラスを誇っている。 サムスン、SKハイニックス、TSMCの人材が狙われている以上、三菱電機の人材も狙われる可能性は十分すぎるほどあるのだ』、「人材ブラックホール」とは言い得て妙だ。今回の「三菱電機」からの情報流出は、人材引き抜きに活用されるのは間違いないだろう。
・『習近平の肝いりで半導体市場の覇権を狙う中国  なぜそこまで中国が半導体メーカーから必死に人材を引き抜いているのかというと、「国策」のためだ。半導体市場の覇権を握るというのは、習近平肝いりの産業政策「中国製造2025」の大黒柱なのだ。 「中国製造2025」とはわかりやすくいえば、中国を世界一のものづくり国家するという野望を達成するためのロードマップだ。以下のような3つの段階に分かれている。 (1)2025年~2035年で「製造強国」への仲間入りを果たす (2)2035年までに世界の「製造強国」の中等レベルへ到達する (3)2049年(中国建国100周年)までに製造大国の地位を固め、製造強国のトップとなる この中の最初の目標を達成するために必要不可欠とされているのが、2025年までに中国国内の半導体自給率を70%にするという目標である。もちろん、半導体ビジネスはそんなに甘いものではない。海外の専門家からは「無謀」「成功は絶望的」と厳しい声が上がっているが、「国策」に逆らえない中国企業は口が裂けても「頑張ったけど無理でした」などは言えない。 つまり、今回の三菱電機へのサイバー攻撃は、あと5年で半導体自給率70%にするというミッションインポッシブルのため、日本の優秀な人材を引き抜くという作戦のもと、そこで必要になるターゲット人材の詳細なプロフィールを収拾するために行った可能性も否めないのだ。 ちなみに、三菱電機は2018年7月、「中国製造2025」の実現に向けて、中国政府直轄の機械工業儀器儀表綜合技術経済研究所と戦略的パートナーシップ契約を交している。中国にとって三菱電機は国策遂行ため必要不可欠な「外国企業」なのだ。そこの人材を自国企業で囲い込みたいというのは極めて自然な発想だ。 と聞くと、「いやいや、だったら高待遇の求人を出せばいいだけの話だ。いくら中国でもわざわざサイバー攻撃などするわけがない」と思う方もいるかもしれないが、そうせざるを得ない日本特有の事情がある。 それは「離職率の低さ」だ。 「最近の若者はすぐに辞める」と嘆く人事担当者も多いだろうが、実は日本の電機メーカーは離職率がそれほど高くない。新卒3年で辞める割合が20%という業界もある中で5%程度なのだ。この傾向はベテランも同様で、「カネがもらえるなら世界のどこへでも行きまっせ」という人はそれほど多くないのだ』、相次ぐリストラを繰り返してきた「日本の電機メーカー」の社員のローヤリティ(忠誠心)は実際には低くなっていると見るべきだろう。
・『日本企業のサイバーセキュリティーは安心できる水準ではない  そんな保守的な日本企業から人材を引き抜こうと中国政府が考えた時、高待遇の求人広告を出せばいいや、となるだろうか。「ビズリーチ」を利用すれば、「こんな待遇で!」と技術者が自分からホイホイやってくると思うだろうか。 思うわけがない。 そうなると方法は一つしかない。三菱電機で働く人、あるいはここで働きたいと採用に応募をしてきた人材にダイレクトに接触をしてスカウトするのだ。 社内の資料ならば、家族構成や年収、これまで何をしてきたのか、どんな仕事をちらつかせれば心が動くのかなどもわかる。つまり今回、三菱電機のサーバーに忍び込んで盗んだ約8100人の個人情報というのは、その「工作」の下資料なのではないか。 もちろん、背後に中国政府という国家がいると推測される以上、どこまで行っても「真相」はわからない。国防に関する機密を盗みにきたが、セキュリティが厳しくて、しかたなく個人情報だけ盗んだ。だから引き抜きだなんだというのは考えすぎだ、と楽観的に見ることもできる。 ただ、前出のジャーナリスト・山田氏によれば、中国の政府系ハッカーが日本企業から情報を抜き取っている現状は、我々が思っているよりも、はるかに深刻だという。 「三菱電機は氷山の一角ですね。ほとんどの日本企業のサイバーセキュリティは安心とは言い難く、これまでも中国から、かなりのサイバー攻撃を受けて情報を抜き取られている。しかし、ほとんどの企業は公表しません。三菱電機は近年、パワハラなどの問題が多発して内部からマスコミへのリークが多い。だから今回も内部リークを受けた『朝日新聞』が一報を報じました。たまたま今回はこのような形で明らかにされましたが、既にもう重要機密が漏れている可能性もある」 実際、山田氏が某国の諜報機関の人間から入手した情報では、「東京2020」でも重要な役割を果たす国内ハイテク企業の重要機密に、中国系ハッカーがアクセスしているという話もある。 山田氏は、近著「世界のスパイから喰いモノにされる日本」の中で、このように警鐘を鳴らしている。「選挙だろうがテロだろうが、世界的なスポーツイベントだろうが、各国はサイバー工作を駆使しながら、自分たちの利害を追求している。(中略)対外情報機関も、国境を越えて動けるサイバー部隊も持たない日本は、これからの時代に本当に世界に伍していけるのだろうか。一刻も早く、その問いについて真剣に検討し、何をすべきかと議論すべきなのである。性善説は通用しない」 本当の「脅威」は音もなく忍び寄る。日本を代表するものづくり企業がサイバー攻撃を受けたのに、「機密は流出してないようだからひと安心」なんて呑気なことを言っているこの国は、かなり危機的な状況だ。 気がつけば「中国の下請け」になっていましたーーなんて恐ろしい未来にならぬことを祈りたい』、全く同感である。

第四に、元通商審議官の荒井寿光氏が2月12日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「三菱電機、NECへのサイバー攻撃で露呈した防衛体制の「徒手空拳」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/228393
・『氷山の一角にすぎない民間企業への攻撃  三菱電機やNECなど日本の大手企業への大規模なサイバー攻撃が相次いで明るみに出た。 三菱電機では、自社の情報や8000人分の個人情報だけでなく、取引先の政府や民間企業数十社の情報が不正にアクセスされ、機密性の高い防衛関連や、電力、鉄道などの社会インフラに関する情報が流出した可能性がある。 犯人は中国系のサイバー攻撃集団「Tick」であり、三菱電機の中国子会社のシステムから、三菱電機本社の120台超のパソコンや40台超のサーバーにアクセスしたものと見られている。 NECもサイバー攻撃を受け、2万7000件のファイルに不正アクセスがあったことが明らかになった。 三菱電機とNECは、政府や民間のサイバー防衛を支援するビジネスをしている、いわばサイバー分野における「ガードマン会社」であり、また秘密管理の厳しい防衛産業の有力企業だ。 だが日本のサイバー防衛体制には“致命的な欠陥”がある。 日本のサイバー防衛分野の最先端企業が侵入されたことは、関係者にショックを与えたが、実は、これは氷山の一角だ。 外国政府が関与して日本をサイバー攻撃したものとして、2011年の三菱重工への攻撃、衆議院のコンピューターシステムへの侵入、2015年の日本年金機構からの125万件の個人情報の流出、2016年のJTBから679万人の顧客情報の流出、中国系サイバー攻撃集団「APT10」による民間企業、学術機関等に対する長期的な攻撃などが明らかになっている。 しかもその対象や手法は、年々、多様化している』、前の記事では、「三菱電機では、自社の情報や8000人分の個人情報」が流出としていたが、「取引先の政府や民間企業数十社の情報が不正にアクセスされ、機密性の高い防衛関連や、電力、鉄道などの社会インフラに関する情報が流出した可能性がある」、時間が経つにつれ被害が拡大したようだ。「三菱電機とNEC」は「サイバー分野における「ガードマン会社」であり、また秘密管理の厳しい防衛産業の有力企業」であるにも拘らず、攻撃に無力だったとは情けない限りだ。
・『多様化する攻撃対象や手段 工場停止や停電、選挙妨害まで  サイバー攻撃の最初は個人の「愉快犯」が多かった。不特定多数のコンピューターにウイルスをまき散らかすものだ。 その後、「サイバースパイ」が誕生した。 従来、産業スパイや軍事スパイ、外交スパイは人間が機密情報を盗んでいたが、インターネットの発達に伴い、2007年頃から、政府系のサイバー攻撃集団がコンピューターを使ってスパイ活動するようになった。 今回の三菱電機事件は、この一例だ。 最近は「サイバーテロ」による施設やインフラの物理的な破壊が行われている。 サイバー攻撃は、コンピューター制御システムを使っている原子力発電所や化学プラントを爆発させたり、電力や水道を止めたりして市民生活を大混乱に陥れることができる。 実際に次のようなサイバー攻撃による事例が報道されている。 2008年にはトルコのパイプラインが爆破され(ロシアが関与の可能性)、2010年にはイランの核開発施設が無力化(イスラエルと米国が関与の可能性)、2014年にはドイツの製鉄所が操業停止に陥った。 2015年と2016年にはウクライナで大規模停電が起きた(ロシアが関与の可能性)。 また、サイバー攻撃の「グローバル化」も進んでいる。 2017年には、英国各地の病院で大規模なサイバー攻撃があり、手術などの医療サービスが中断したほか、日産自動車のイギリス工場の停止を含め多くの被害が発生した。 この時、日本でもホンダの狭山工場が操業停止に追い込まれ、ロシア、フランス、英国、米国などを含む世界150カ国で被害が確認された。 これは北朝鮮が外貨獲得のため他国のコンピューターをウイルスでダウンさせ、コンピューターを回復するために仮想通貨を振り込ませて数十億ドルの外貨を稼いだといわれる。 コンピューターを「人質」にして身代金を要求した新しい手口で世界が驚いた。 最近は、自国に有利な候補者を当選させるための「選挙介入型」も頻発している。 選挙運動がツイッターやフェイスブックなどのSNSを利用するようになったので、相手国の選挙の際、フェイクニュースを流したり、自国に不利な候補者が困る機密情報を意図的に公開したりして、外国の選挙に介入することが増えている。 2016年の米国の大統領選挙の際、民主党候補を不利にするためロシアが米国民主党全国委員会に対するサイバー攻撃をしたとされる。 また2017年にはフランスの大統領選挙の際、マクロン候補の陣営に大規模なサイバー攻撃があり、大量のメールや会計文書の情報がネット上に流出したり、今年1月の台湾総統選挙の際、中国の集団が台湾独立を主張する蔡総統について、「博士号を取得していない」などのフェイクニュースを流したりしたことが報道されている』、「北朝鮮が・・・コンピューターを「人質」にして身代金を要求した新しい手口で世界が驚いた」、記憶に新しいところだが、被害企業の多くは密かに「身代金」を支払って済ませたのだろう。確かに「多様化する攻撃対象や手段」は悩ましいことだ。
・『「犯人」の特定難しく「被害」気付かず 破壊力や脅威は年々拡大  サイバー攻撃は従来の軍事行動やテロなどと違う特殊な性格を持っている。 第1に、サイバーはデジタル化されていて形がない。このため侵入されたり、コピーして情報を持ち出されたりしても気付かないことが多い。 サイバー攻撃は通常の軍事攻撃と異なり、証拠が残らず「犯行声明」を出さないため、「犯人」の特定は難しい。 第2に、インターネットは世界中でクモの巣のように張り巡らされている。このため、攻撃者がどこにいて、どこを経由して侵入してきたのかを割り出すのが難しい。 また侵入したコンピューターシステムを踏み台にして他に侵入することが多いので、自分に被害がないからと安心してはいけない。 第3に、サイバー攻撃の物理的な破壊力の脅威は年々大きくなっている。 全ての社会システムはコンピューターにより制御されている。このため、コンピューターを乗っ取り、原子力発電所を爆発させたり、新幹線を暴走させたりすることができる。 サイバー攻撃を単なる情報システムの問題と捉えていてはいけない。 第4に、サイバー攻撃の技術は年々進歩している。このためサイバー防衛も年々技術を向上させなければならない。いたちごっこは続く。 サイバー攻撃で自国にとって有益な相手国の産業技術や軍事情報を手に入れたり、社会インフラに侵入して相手国の経済や国家の機能をマヒさせ、軍事施設を破壊したりすることができるようになったため、軍隊や国家機関による大掛かりなサイバー攻撃が増えている。 このような性格のため、サイバー防衛は従来の常識を超えた取り組みが必要なのだ』、確かにその通りだろう。
・『軍が主体の「第5の戦闘領域」に 世界はサイバー戦争の時代  このため、今やサイバー空間は、軍事的に陸・海・空・宇宙と並ぶ第5の「戦闘領域」と位置付けられており、各国ともサイバー軍による攻撃や防衛の時代に入っている。 米国は、2018年にサイバー軍を国防長官直轄の統合軍に格上げし、年間約7500億円の予算を使い、約6300人体制で運用しているといわれている。 中国はサイバー戦力の建設を加速しており、サイバー戦用の「61398部隊」は英語に堪能な数百から数千人の隊員がいる。 ロシアはサイバー軍を作りサイバー攻撃活動に力を入れているとの報道がある。 北朝鮮の偵察総局には121局と180局に6000人の隊員が従事し、外国のインフラ破壊と外国要人や科学技術情報及び外貨の窃取を任務としていて、2016年にはバングラデシュ中央銀行から8100万ドル(約91億円)を盗み取ったと報道されている。 他国のこうした体制に比べると、日本は大幅に遅れている。 日本では2014年に自衛隊にサイバー防衛隊が作られたが、隊員の数はわずか220人。予算も2019年度で約223億円にすぎず、外国に比べ隊員数や予算はいかにも少ない。 しかも任務は自衛隊のシステムを守ることなので、民間企業は他国の軍からの攻撃に自力で自らのシステムを守らないといけないのが実情だ』、なるほど。
・『民間が自力で守るしかない日本 官民一体の防衛体制整備が急務  日本は2014年に「サイバーセキュリティ基本法」を制定し、内閣に「サイバーセキュリティ戦略本部」「内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)」を設置した。 内閣が基本戦略を作り、政府機関と民間が独立してそれぞれのコンピューターシステムを守る体制だ。 電力・鉄道・通信・金融などの社会の重要インフラでさえも、民間企業が持っているので、民間企業の自己防衛が基本となっている。 外国の攻撃側は軍隊や国家機関のサイバー攻撃の専門家集団だ。これに対して日本は民間企業が本来のビジネスの片手間にサイバー防衛をしている。外国の軍隊や国家機関が攻め、日本の民間企業が守るのでは、サイバー技術に関する設備や開発能力、マンパワー、相手に関する情報収集能力など、全ての面でかなわない。 しかも、日本には外国と違い、国全体のコンピューターシステムを守る国家機関がない。 自衛隊は自分のコンピューターシステムを守るだけであり、国全体のコンピューターシステムを守る任務がなく、実際に任務にないから国全体を守っていない。 だが、サイバー戦争はもはや政府と民間が一体となって防衛をしなければ被害を防げない局面になっている。 このため、第1に、自衛隊法を改正して、自衛隊に国全体のコンピューターシステムを防衛する任務を付与することが必要だ。 国民の生命・財産・社会活動・国土を守るためには、サイバー防衛を災害派遣と同じように自衛隊の任務に位置付け、隊員や予算を思い切って増やすことだ。 第2に、民間の責務を明確にする必要がある。 現在のサイバーセキュリティ基本法では、重要なインフラ事業者もサイバー事業者も、国の施策に「協力するよう努めるものとする」(法6条、7条)ことしか求められていない。攻撃を受けた時の政府への報告義務もない。 民間は自己防衛に努めることはもちろんだが、サイバー攻撃を受けたときは、直ちに内閣と自衛隊に報告することを義務付ける。そうすれば何らかの形でつながっている他のコンピューターへの被害の拡大を防ぐことができる。 第3に、積極的なサイバー防衛を実践することだ。 サイバー攻撃はスピードが速く攻撃されたらおしまいだ。 各国ともいろいろな手段でサイバー情報を収集し、疑わしい相手国のコンピューターシステムをチェックして攻撃側の意図をくじくような牽制活動をして自国への攻撃を未然に防止している。 だが日本ではこのような牽制活動は、自衛隊のサイバー防衛隊にも認められていない。 またサイバー攻撃や防衛の演習も実際にインターネット環境を利用して行うことは不正アクセス防止法により禁じられている。これではサイバー防衛能力は上がらない。 日本は外国並みに積極的なサイバー防衛活動ができるように法改正をすべきだ。 日本は「スパイ天国」「サイバー攻撃天国」といわれている。この汚名を返上するため、今回の事件を教訓として、外国並みのサイバー防衛体制を作り上げることが急務だ』、いくら「サイバー戦争の時代」とはいえ、「自衛隊法を改正して、自衛隊に国全体のコンピューターシステムを防衛する任務を付与することが必要」、自衛隊は逆立ちしてもそんなことが可能とは思えない。「国全体のコンピューターシステムを守る国家機関がない」のであれば、「NISC」を強化する方が筋なのではなかろうか。米国では、「国全体のコンピューターシステムを守る」のは国土保全省であり、サイバー軍と文民部門の協力・協働体制についても、様々な考え方があるようだ(Wikipedia:下記)。荒井氏が、サイバー防衛を自衛隊のような軍事組織に任せれば上手くいくような幻想を持っているようなのは、残念でならない。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%BC%E8%BB%8D
タグ:三菱電機 北朝鮮 日経新聞 情報セキュリティー 日刊ゲンダイ サイバー犯罪 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 (その5)(あなたのPCに勝手に侵入 政府が“違法ハッカー”になる日、ネットバンキング 崩れた安全防壁 偽サイト使い「ワンタイムパス」破られる、三菱電機に中国系?サイバー攻撃 人材情報奪取の裏に「恐るべき意図」、三菱電機 NECへのサイバー攻撃で露呈した防衛体制の「徒手空拳」) 「あなたのPCに勝手に侵入 政府が“違法ハッカー”になる日」 政府が近く、サイバー攻撃対策として、企業や家庭のパソコンやスマホといった「IoT機器」に対し、無差別に侵入する調査に乗り出す 「安倍政権による違法ハッカー行為」 認定送信型対電気通信設備サイバー攻撃対処協会」 一般社団法人ICT―ISAC」 「IoT機器」 セキュリティー対策を口実に不正アクセス 国民の政府や政府機関に対する情報管理の信頼度は極めて低い 「通信の秘密」もプライバシー保護もあったもんじゃない 政府機関によるハッキング 何らかの個人情報が漏れた場合は厳罰に処す、などの罰則規定を公表するべき 「ネットバンキング 崩れた安全防壁 偽サイト使い「ワンタイムパス」破られる」 利用者が偽サイトにアクセスしている間に、並行して正規サイトにログインすることでワンタイムパスワードを破る点が新しい 「サイトを量産するためのツールが出回っている可能性もある」 「三菱電機に中国系?サイバー攻撃、人材情報奪取の裏に「恐るべき意図」」 「防衛機密」の漏洩なしでも安心できない理由 社員や退職者約6100人分の個人情報と、採用応募者約2000人分の情報が外部に漏れた恐れ Tick 中国が国をあげてゴリゴリ進めている「人材引き抜き戦」に利用されてしまう 韓国や台湾の産業が中国に吸い取られている現実 中国という「人材ブラックホール」によって、韓国と台湾は国内産業の競争力まで吸い込まれてしまっている 習近平の肝いりで半導体市場の覇権を狙う中国 日本企業のサイバーセキュリティーは安心できる水準ではない 三菱電機は氷山の一角 荒井寿光 「三菱電機、NECへのサイバー攻撃で露呈した防衛体制の「徒手空拳」」 氷山の一角にすぎない民間企業への攻撃 自社の情報や8000人分の個人情報だけでなく、取引先の政府や民間企業数十社の情報が不正にアクセスされ、機密性の高い防衛関連や、電力、鉄道などの社会インフラに関する情報が流出した可能性 サイバー分野における「ガードマン会社」であり、また秘密管理の厳しい防衛産業の有力企業 多様化する攻撃対象や手段 外貨獲得のため他国のコンピューターをウイルスでダウンさせ、コンピューターを回復するために仮想通貨を振り込ませて数十億ドルの外貨を稼いだ コンピューターを「人質」にして身代金を要求した新しい手口 「犯人」の特定難しく「被害」気付かず 破壊力や脅威は年々拡大 軍が主体の「第5の戦闘領域」に 世界はサイバー戦争の時代 民間が自力で守るしかない日本 官民一体の防衛体制整備が急務 「サイバーセキュリティ戦略本部」「内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)」 サイバー防衛を災害派遣と同じように自衛隊の任務に位置付け、隊員や予算を思い切って増やす 米国では、「国全体のコンピューターシステムを守る」のは国土保全省であり、サイバー軍と文民部門の協力・協働体制についても、様々な考え方があるようだ(Wikipedia 荒井氏が、サイバー防衛を自衛隊のような軍事組織に任せれば上手くいくような幻想を持っているようなのは、残念でならない
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天皇制度(その1)(新天皇の「お言葉」で「日本国憲法」尊重姿勢が弱まった理由は…背景に安倍首相による取り込みと官邸の圧力、なぜ「次の天皇」が女性ではいけないのか "雅子皇后の苦しみ"を繰り返すのか、なぜ「女系・女王」をイギリスは容認してきたか 「男系・男子」に限る日本との歴史的な違い、反対の声の中、55万人に恩赦…小林節氏「時代錯誤だ。天皇陛下に成り代わり、総理がお仲間の公選法違反を赦すことになる」) [国内政治]

これまで、天皇陛下退位問題(その3)として取上げてきたが、新天皇の即位も終わったので、天皇制度(その1)(新天皇の「お言葉」で「日本国憲法」尊重姿勢が弱まった理由は…背景に安倍首相による取り込みと官邸の圧力、なぜ「次の天皇」が女性ではいけないのか "雅子皇后の苦しみ"を繰り返すのか、なぜ「女系・女王」をイギリスは容認してきたか 「男系・男子」に限る日本との歴史的な違い、反対の声の中、55万人に恩赦…小林節氏「時代錯誤だ。天皇陛下に成り代わり、総理がお仲間の公選法違反を赦すことになる」)として取上げることにした。

先ずは、昨年5月3日付けLITERA「新天皇の「お言葉」で「日本国憲法」尊重姿勢が弱まった理由は…背景に安倍首相による取り込みと官邸の圧力」を紹介しよう。
https://lite-ra.com/2019/05/post-4697.html
・『5月1日朝、即位した徳仁天皇が「即位後朝見の儀」の「お言葉」で、憲法の尊重に言及した。 「常に国民を思い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり、日本国および日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓い、国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望いたします」 日本国憲法は、天皇に憲法を尊重し擁護する義務を課しており、明仁上皇も天皇即位の際、「即位後朝見の儀」の「お言葉」で「皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓い、」と宣言をしていた。 そう考えれば、今回も憲法を尊重する言葉があるのは当たり前なのだが、しかし、その“当たり前”に、一部で安堵の声が上がっている。というのも、この間、安倍政権が「新天皇のお言葉」から憲法のくだりを削除しようと圧力をかけているとの情報が流れていたからだ。宮内庁担当記者が語る。 「天皇陛下は、上皇陛下の姿勢を受け継ぎ、同じように日本国憲法を守ることを宣言する姿勢を見せており、上皇陛下もそれを強く望まれていました。ところが、官邸は『新しい時代にふさわしいお言葉を』と、暗に護憲色を抑えることを宮内庁に求めていたようです。官邸の代理人とも言われる警察官僚出身の西村泰彦次長が、東宮を通じて陛下を説得したという情報も流れましたし、この間、宮内庁内部でお言葉を巡ってせめぎあいがあったことは間違いない」 しかし、実際に発せられた「お言葉」には「世界の平和と国民の幸せを願われ、いかなる時も国民と苦楽を共に」など、上皇の姿勢をたたえる言葉がふんだんに盛り込まれ、「憲法にのっとり」という文言もあった。そのため、「新天皇が安倍政権の圧力を押し返した」「平和と民主主義を守る上皇陛下の姿勢を引き継ぐことを力強く宣言された」という評価になったらしい。 だが、この「お言葉」、ほんとうにそう楽観できるものなのだろうか。というのも、明仁上皇の国民に寄り添う姿勢を受け継ぐ決意がきちんと盛り込まれている一方で、「憲法」への言及は明らかに弱くなっているからだ。 明仁上皇の天皇即位の際の「お言葉」は前述したように、「皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たす」というものだった。ところが、今回の徳仁天皇の場合は「憲法にのっとって」と言っただけ。明仁天皇の国民と同じ目線に立った護憲の決意はなくなり、「日本国憲法」も「憲法」に省略されていた。ベテラン皇室ジャーナリストはこう分析する。 「率直に言って、あのお言葉には、妥協の印象を強く受けますね。上皇陛下の業績を最大限にたたえ、その姿勢を受け継ぐことは押し通すことができたものの、憲法のところでは安倍政権に配慮し、必要最小限にとどめられたんじゃないでしょうか。実際、官邸側から見ると、あの表現なら御の字。この間の働きかけが実ったと喜んでいるはずです」 そう、今回のお言葉は、新天皇が官邸の働きかけに屈した結果、とも読み取れるのだ』、「安倍政権が「新天皇のお言葉」から憲法のくだりを削除しようと圧力をかけているとの情報が流れていた」、「憲法のところでは安倍政権に配慮し、必要最小限にとどめられた」、安倍政権がここまで策謀するとは、改めて驚かされた。
・『安倍首相が元号決定前、新天皇に最終6案を伝えていた! 憲法違反の可能性  実際、明仁天皇の戦後民主主義や憲法を守る姿勢を嫌い、陰に陽に圧力をかけてきた安倍首相だが、生前退位が決まってからは、ターゲットを新天皇になる徳仁皇太子に移し、この間、しきりに取り込み工作を展開してきた。 極めつきが、2月22日、3月29日、4月8日と3度にわたる皇太子との面会だろう。総理大臣が天皇に国内外の情勢を報告する「内奏」は年に数回ほどおこなわれているが、現役の首相が皇太子と一対一で面会をするのは前代未聞。それを約1カ月ちょっとのあいだに3度もおこなったのだ。 しかも、そのうちの1回は、衝撃的な内容の会談をしていたことが明らかになった。朝日新聞がスクープしたのだが、3月29日、2回目に皇太子に面会した際、安倍首相は「令和」を含む新元号候補である6案を事前に説明していたというのである。 言わずもがな、憲法4条で「天皇は国政に関する権能を有しない」と定められており、新元号の事前選定に関わっていれば、明白な憲法違反だ。「平成」への代替わりのときも、即位したばかりの新天皇に新元号を伝えたことが問題になったが、これは閣議決定する直前に「平成」という最終案を伝えただけだった。ところが、今回の安倍首相の行動は、6案を提示して、次期天皇に元号選定にかかわらせるかたちをとったのだ。 「慎重な皇太子殿下のことですから、元号選定に意思を示すようなことはしておられないでしょうが、『陛下のことをこんなに尊重申し上げている』ことを示そうとした安倍首相のアピールにはなったはず。今回、陛下が“お言葉”で憲法に踏み込めなかったのは、その影響がなかったとは言えません」(前出・ベテラン皇室ジャーナリスト) なんとも暗澹とする話だが、安倍首相の新天皇取り込みはまだ始まったばかりだ。安倍首相はこれから、年に数回は「内奏」などで面談するが、その機会を利用してどんどん国家主義的な考え方を吹き込み、政治利用を強めていくだろう。 「表からのアプローチだけでなく、裏からの工作も激化するでしょう。すでに官邸は宮内庁だけでなく、皇后陛下にも、古巣である外務省を通じて働きかけをおこなっている。皇后陛下が外交に興味をもっていることを利用して“これまで以上に皇室外交にご尽力を”などのメッセージを伝え、取り込みを図っているようです」(全国紙政治部記者) もっとも、一方では、疎遠になっていた明仁上皇と徳仁天皇がここ数年、再び結びつきを強くし、明仁上皇が平和と憲法、民主主義を守る自分の姿勢を受け継いでほしいということを強く伝えているとも聞く。実際、その頃から徳仁皇太子も憲法について口にするようになり、明仁天皇・皇后が護憲姿勢を明確にしたすぐ後の2014年の誕生日会見では、徳仁皇太子も「今日の日本は、戦後、日本国憲法を基礎として築き上げられ、現在、わが国は平和と繁栄を享受しております」などと語っていた。 新天皇は明仁上皇の護憲の意思を継ぐのか。それとも、安倍政権に取り込まれていくのか。明日4日は、新天皇の一般参賀がおこなわれ、国民に向けて再び「お言葉」を出す予定だ。その内容が今後を占う鍵になるかもしれない』、「「内奏・・・を約1カ月ちょっとのあいだに3度もおこなった」、ここまでミエミエで取り込みを図ろうとは酷い。「新元号の事前選定に関わっていれば、明白な憲法違反だ」、天皇を取り込むためとはいえ、安部首相がここまでやるとは恐れ入った。「皇后陛下にも、古巣である外務省を通じて働きかけをおこなっている」、官邸がここまで組織的に取り込み工作をやっているとは、初めて知ったが、改めて怒りを感じる。なお、4日の「新天皇の一般参賀」では、憲法には触れられなかったようだ。

次に、ジャーナリストの元木 昌彦氏が5月6日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「なぜ「次の天皇」が女性ではいけないのか "雅子皇后の苦しみ"を繰り返すのか」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/28569
・『二度と戦争は起こしてはならないという強い決意  平成から令和になったが、私には何の感慨もわかない。 改元についての番組をNHKは3日間で33時間も放送したという。平成から令和へと変わる5月1日の午前0時、渋谷のスクランブル交差点を含めて、年明けのようなお祭り騒ぎが全国で繰り広げられた。 アベノミクスが失敗して景気が落ち込み、北方領土返還もプーチン大統領に無視され、万策尽きた安倍政権が、改元をお祭りにするという策を弄(ろう)したのかもしれない。その目論見はひとまず功を奏したということだろうか。 私は、明仁上皇が生前退位したことはよかったと思っている。第二次世界大戦で戦死した日本軍の激戦地を訪問する慰霊の旅を続けてこられたことに、尊敬の念を禁じ得ない。 天皇皇后が激戦地跡にたたずみ、深く首を垂れる姿には、二度と戦争は起こしてはならないという強い決意がにじみ出ていた。 長い旅を終えられ、体力の限界を感じた明仁上皇が、202年ぶりといわれる譲位を決断されたのは、よくよく考えてのことであったのだろう』、「改元をお祭りにするという策」は見事に功を奏したようだ。
・『「国民と共に憲法を守ることに努めていきたい」  皇太子徳仁親王が126代天皇の位に就かれた。5月1日、新天皇が即位後の朝見の儀で述べる「おことば」に注目が集まった。 昭和天皇が崩御して天皇に即位した明仁天皇は、そこでこう述べられた。 「皇位を継承するに当たり、大行天皇の御遺徳に深く思いをいたし、いかなるときも国民とともにあることを念願された御心を心としつつ、皆さんとともに日本国憲法を守り、これに従って責務を果たすことを誓い、国運の一層の進展と世界の平和、人類福祉の増進を切に希望してやみません」 また、その後の記者会見でも、陛下の憲法への思いをお聞かせくださいといわれて、「憲法は、国の最高法規ですので、国民と共に憲法を守ることに努めていきたいと思っています」と答えている。 「憲法を順守する」という強い決意を表明したのである』、「明仁天皇」の発言には確かに「強い決意」を感じた。
・『「憲法を守る」と「憲法にのっとり」の大きな違い  新天皇はどういわれたのか。 「憲法にのっとり、日本国及び日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓い、国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望いたします」 毎日新聞(5月2日付)は社説で、「言葉遣いはやや変わっても、基本姿勢は同じとみられる」と書き、やや疑問を呈した。 朝日新聞(5月2日付)は、おことばは、「内容は似ているが、異なる点もあった」とし、古川隆久日大教授は、「憲法を『守り』は、改憲しないとの意図が感じられる。『のっとり』にはそのニュアンスはなく、改憲もありうるという内閣の考え方が反映されたようにみえる」と語っている。 さらに、天皇のおことばは、閣議決定を経ることになっていて、今回も閣議決定で決まったものだと、何らかのチェックが入ったのではないかとにおわせる。 のっとりという言葉を辞書で引くと、基準やルールを基準にし、従うという意味だと出ている。 われわれ国民も、憲法に定められていることに従って生活しているが、その憲法が改悪されたら、嫌でも、それに従わなければならない』、「天皇のおことばは、閣議決定を経ることになっていて、今回も閣議決定で決まった」、安部政権は何でも「閣議決定」にしているが、「天皇のおことば」までその対象にしているとは驚きだ。
・『天皇・皇族にとっての「自己実現」とは何か  だが、現憲法を守るというと、そこには憲法の三原則である国民主権、平和主義、基本的人権を堅持していく、それを改悪することは許さないという積極的な意味を持つことになるはずだ。 消極的な憲法護持と積極的に憲法を肯定し、それを遵守することの間には、かなりの隔たりがあると思うのは、私だけだろうか。 「国政に関する機能を持たない天皇に、国民が多くを期待することは健全ではない」という成城大学森暢平教授(朝日新聞5月2日付)の考え方もわかるが、森教授もいっているように、「国家システムとして求めているのは、あくまで記号としての天皇」だが、実際には記号ではなく人間である。「天皇・皇族にとっても、自己実現とは何か、何を為して生きるべきかは、最大の難関だと思います」(森教授) 新しい時代の天皇への国民の期待は大きい。平成の時代、天皇皇后が行動で示してきた平和を守るという意志を、どういう形で見せてくれるのか。国民の一人として見守りたい』、「国家システムとして求めているのは、あくまで記号としての天皇」だが、実際には記号ではなく人間である。「天皇・皇族にとっても、自己実現とは何か、何を為して生きるべきかは、最大の難関だと思います」、確かに難しい問題だ。
・『週刊新潮は令和時代の「壬申の乱」を危惧  一見、令和の幕開けは順調のように見えるが、多くの難問が前途に控えているといわれる。 その一つは、皇位継承順位第1位の「皇嗣」となり、長男の悠仁さんが同第2位になられた弟君、秋篠宮文仁親王の最近の言動である。 4月21日付の朝日新聞朝刊が、秋篠宮が「兄が80歳のとき、私は70代半ば。それからはできないです」といったと報じた。 この発言が物議を醸している。週刊誌はいち早くこのことを取り上げ、週刊新潮(5/2・9号)は、秋篠宮は自分が天皇を継ぐことになるのなら、できるだけ早くやりたいと考えている。自分の代は短くてもいいから、早く悠仁に継がせたいという思いが出ているのではないかと報じている。 しかし、兄が新天皇になる直前に、弟が皇位を早く譲ってほしいと急(せ)かせるような発言をするだろうか。もしそうだとしたら、新潮は令和時代の「壬申の乱」になるかもしれないと危惧している』、兄弟の関係も「皇位」が絡むと難しいようだ。
・『「皇嗣としての自覚があるのか」と問うている  週刊文春(5/2・9号)は、秋篠宮の発言の真意は「自分は天皇になるつもりはない」というもので、皇位継承順位第一位の秋篠宮が即位をしないためには、皇室典範の改正や特例法の制定が必要となるから、皇嗣になって同様の発言をすると、政治的な発言だと批判を浴びかねない。そのためギリギリのタイミングで自分の考えを朝日に書かせたのではないかと、河西秀哉名古屋大学大学院准教授の見解を掲載している。 しかし、これが秋篠宮の即位拒否だとすれば、今後も退位が繰り返され、短期間での退位や新天皇の即位拒否が繰り返され、天皇が空位になる可能性もある、という保守派の八木秀次麗澤大教授のような意見もある。 文春はその前の号で、皇太子(当時)が秋篠宮に対して、「もっと大きな志を持ってほしい」「(新天皇となる)自分の思いを理解してほしい」と知人に漏らしていたと報じていた。 秋篠宮に皇嗣としての自覚があるのかと問うているのである』、なるほど。
・『タイの新国王の戴冠式に出かけようとしていた秋篠宮  たとえば、5月4日には新しい天皇皇后と秋篠宮夫妻が初めて国民と対面する一般参賀が行われたが、秋篠宮は2日か3日にしてほしいと希望していたそうだ。 4日に、彼と親しいタイの新国王の戴冠式があり、それに出席したいと望んでいたからだという。結局、タイ側が、外国から賓客を招かないことになって事なきを得たそうだが。 私は、自由奔放な秋篠宮らしいと思うのだが、皇室にいる人間たちはそうは考えないようだ。 このたび皇太子が不在になるため、秋篠宮の役割はさらに重要になる。さらに、秋篠宮家は、長女眞子さんと小室圭さんとの結婚という深刻な問題を抱えている。 次女の佳子さんは、大学を卒業するにあたり記者の質問に答えて、姉の眞子さんの結婚を望んでいると発言し、さらに、姉と小室圭に関するマスコミ報道を真っ向から批判した』、「タイ側が、外国から賓客を招かないことになって事なきを得た」、日本側からの水面下の働きかけもあったのではなかろうか。
・『雅子妃ほど「バッシング」を受けた皇太子妃はいなかった  週刊誌報道によれば、姉と妹は母親の秋篠宮紀子さんと意思の疎通が行えない状態だといわれている。そうしたこともあって、秋篠宮はこの頃痩せて、薬を服用しているという報道まである。 天皇を支える立場の秋篠宮との関係、秋篠宮家の問題が、何らかの形で波風が立つようにでもなれば、徳仁天皇の前途にやや不安が残るかもしれない。 二つ目は雅子皇后の体調問題である。5月1日にティアラとローブデコルテを身につけて即位の儀式に臨む雅子皇后の晴れやかな笑顔を見て、私も含めて、かつて外交官として世界を舞台に活躍していた雅子妃のことを思い出した人は多かったのではないか。 雅子妃ほど、皇太子妃になられて、メディアや宮内庁の人間からバッシングされた女性はいなかったであろう。 初の平民出身の美智子皇太子妃(当時)も、お付きの人から厳しいことをいわれた、皇后との嫁姑戦争があったと報じられたことがあったが、雅子妃のそれは、その比ではなかった』、皇太子が「雅子」さんへの「バッシング」の酷さについて言及したのも記憶に新しいところだ。
・『「結婚に消極的な姿勢は一貫していた」  ハーバード大学を出て東大法学部に入った小和田雅子さんが、国家公務員試験に受かり、中退して外務省入りしたのは24歳の時だった。 父親は外交官で、旧ソ連でも過ごしたからロシア語も堪能だそうだ。皇太子・浩宮に誘われて御所で何度か会ったようだが、「陛下に好意は抱いていたようだが、『やりたいことがあって外務省に入ったのだから』と結婚に消極的な姿勢は一貫していた」と、当時親しく付き合っていた斎藤智子記者が朝日新聞デジタル(5月1日12時00分)に書いている。 この頃、プロポーズまで発展しなかったのは、彼女の祖父が水俣病を出したチッソの社長・会長を歴任したことがあり、宮内庁の中からだろう、反対の声があったという。 その後、イギリスのオックスフォード大学に留学したが、皇太子妃候補ということで留学先まで記者たちが追いかけてきた。 だが、浩宮の熱い思いに打たれ、92年に雅子さんが結婚を承諾したのである』、「皇太子妃候補ということで留学先まで記者たちが追いかけてきた」、マスコミも因果な商売だ。
・『結婚8年でやっと授かったのは「女の子」だった  婚約会見で、「皇太子殿下からプロポーズにあたり『雅子さんのことは僕が一生全力でお守りします』といわれたと、彼女が明かした。 その言葉にウソはなかった。しかし、皇太子妃になった雅子妃を待ち受けていたのは、あまりにも苛烈な日々であった。 宮内庁職員からの厳しい言葉もあったのだろう。だが彼女を一番苦しめたのは子どもをつくれ、男の子を産めというプレッシャーであったことは間違いない。 結婚して8年、やっと授かった子どもは女の子であった。周囲は素直に喜んではくれず、彼女は深く傷ついた。 その頃、宮内庁の人間から秋篠宮紀子さんに、男の子を産んでくださいという話があったといわれている。 幸福感に満ちあふれていたはずの愛子さんの誕生会見の席で、「私の胸元に連れてこられる生まれたての子供の姿を見て、本当に生まれてきてありがとうという気持ちで一杯になりました」といいながら、絶句した雅子妃に、そっと手を差し伸べられた皇太子の姿が忘れられない』、「宮内庁職員からの厳しい言葉」、守るべき立場をどう考えているのだろう。
・『まるで公務を怠けているかのような情報操作  2004年5月10日、皇太子が欧州歴訪前の会見で、「それまでの雅子のキャリアや、そのことに基づいた雅子の人格を否定するような動きがあったことも事実です」と明言したのは、プロポーズの時、「あなたを全力で守る」といった言葉が真であったことを示す、皇太子の覚悟の現れであったのだろう。 事の重大さに驚いた宮内庁は、雅子妃に説明に上がりたいと申し出たが、雅子妃は「それなら私は皇太子妃を辞めます」と答えたと、当時の週刊誌に報じられている。 皇太子の深い愛に包まれていたものの、雅子妃の体調は次第に悪化していった。 帯状疱疹、適応障害などで公務もままならない日々が続いた。メディア、特に週刊誌は、公務に行かないのに、家族とは会って食事をたびたびしていると、心無い報道を続けた。 愛子さんの学校に付き添い、合宿にも一緒に行き、雅子妃だけがホテルをとって高額な部屋に泊まったことまで報じ、まるで公務を怠けているかのような印象を国民に流し続けたのである』、こうした「情報操作」は、「メディア」だけの責任ではなく、背後に「宮内庁」の影がありそうだ。
・『「女性天皇を認めること」に賛成は79.6%、反対は13.3%  だが、長い時間がかかったが、皇太子と並んで、公務や被災地を訪れる雅子妃の姿が見られるようになってきた。 皇后陛下になられた雅子妃を見ていると、そんな苦労の日々はなかったかのような晴れやかな表情をしている。これだけの苦労をしてきた雅子皇后だからこそできることがあると思う。これからも無理をせず、公務に家族団欒にと有意義な時間を過ごしてほしいと思う。 共同通信社の世論調査(5月1~2日実施)によると、新天皇陛下に「親しみを感じる」と回答した人は82.5%もいるという。それに皇室典範で「男系男子」に限るとしている皇位継承についても、女性天皇を認めることに賛成は79.6%、反対は13.3%しかなかった。 新しい天皇即位によって、皇位継承権のある男系男子は3人だけになってしまった。再び、雅子妃のようなことがあってはならない。そのためには、愛子さんが天皇に即位できるよう皇室典範を改正すべきであろう。 女系天皇にまで踏み込まずとも、歴史上、女性天皇はこれまで何人もいる。政権が、皇室の繁栄を本心から願うなら、すぐに手をつけるべきだと、私は思う。(文中敬称略)』、その通りだが、安部政権はやる気がなさそうだ。

第三に、著作家の宇山 卓栄氏が6月9日付け東洋経済オンラインに掲載した「なぜ「女系・女王」をイギリスは容認してきたか 「男系・男子」に限る日本との歴史的な違い」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/285588
・『日本とイギリスでは何が異なるのか?  先月、令和の時代が幕開けました。新天皇の御即位とともに、皇位継承に関する報道なども増え、この問題に注目が集まっています。 現在、わが国では、皇室典範の規定により、男系男子にしか皇位継承を認めていません。男系で、かつ男子の皇位継承者を永続的に多人数、確保することは容易ではないため、男系男子以外にも皇位継承権を広げるかどうかという問題提起や議論がなされています。 なお女系天皇は、母のみが皇統に属する天皇を指します。天皇個人の性別についての「女性天皇」とは異なる概念です。つまり男系男子とは、父が皇統に属し、かつ天皇個人の性別が男性であるということです。 先般もある通信社の世論調査によると、「女系・女性天皇に賛成7割」という結果が出ました。 この問題を考えるうえで、イギリス王室の例がよく引き合いに出されます。「イギリスにはエリザベス女王がおられるのに、なぜ、日本では女性天皇が認められないのか」「チャールズ皇太子が即位すれば女系王になる、なぜ、日本では女系天皇が認められないのか」などの声があります。 イギリス王室と日本皇室とでは、歴史背景、文化・伝統、制度・政治などすべてが異なり、単純比較することはできません。それでも、イギリス王室が歴史的に女王や女系王を認めたという事実や経緯を知ることは、日本皇室との違いを認識するうえで役立ちます。 12世紀、イギリスで初めて女王が出ました。イングランド王ヘンリー1世は男子の継承者がなく、娘のマティルダを王位継承者としたのです。しかし、マティルダは従兄との王位継承戦争に巻き込まれたため、父王の死後、ほんのわずかな期間、在位したにすぎず、追い出されてしまいます。 マティルダはフランス貴族のアンジュー伯と結婚しており、男子がいました。このマティルダの子が力をつけ、イギリスに攻め込み、イギリスの王位継承権を獲得、1154年、イギリス国王ヘンリー2世となります。ヘンリー2世は女系王として、プランタジネット朝を創始します。 こうして、イギリスでは、女王(マティルダ)と女系王(ヘンリー2世)の前例がつくられました。この前例から派生したイギリスの王族子孫らは、女王や女系王を否定することができなくなります。それでも、王位継承の男子優先という原則が守られたため、その後、しばらく女王は出ませんでした』、「イギリス」では「女系・女性」は認められているが、「王位継承の男子優先という原則」があるとは初めて知った。
・『女系で広がった王位継承権の拡大  14世紀、フランス王シャルル4世が継承者を残さず没すると、イギリス王エドワード3世は自らの母がフランス王家の出身であることを理由にフランス王位を要求します。フランスはこれを認めず対立、百年戦争がはじまります。 エドワード3世はフランスにおいては女系になります。イギリスでは、女系にも王位継承権が認められていたので、エドワード3世はフランス王位継承権を自らの権利であると主張したのです。 イギリスのように、女系王容認という立場であれば、母が外国からやってきた場合、その子には母の出身国の王位継承権があるということになります。母、祖母、祖々母とさかのぼって、母系の出身国のすべてに、王位継承権があるという理屈になります。 そして、ここが非常に大事なところなのですが、逆に、他国に嫁いだイギリス王族女性の子にも、王位継承権があるということです。例えば、スペイン王に嫁いだイギリス王族出身の女性から生まれた子孫はすべて、女系子孫として、イギリス王位継承権があるということになります。つまり、その場合、スペイン王族がイギリス王位継承権を主張することができるわけです。このように、女系継承により、際限なく、王位継承者が広がるのです。 実際、現在のイギリスの王位継承者は約5000人もいます。その中には他国の王も含まれます。 主な継承者とその順位の例として、ノルウェー国王ハーラル5世は第68位、プロイセン王家家長ゲオルク・フリードリヒ・フェルディナントは第170位、スウェーデン国王カール16世グスタフは第192位、デンマーク女王マルグレーテ2世は第221位、ギリシャ王妃アンナ=マリアは第235位、ギリシャ国王コンスタンティノス2世は第422位、オランダ前女王ベアトリクスは第812位、オランダ国王ウィレム=アレクサンダーは第813位となっています。 男系家系の派生範囲は限定的であるけれども、そこに女系が加わるとその範囲は膨大になります。このような継承者の範囲拡大を防ぐため、日本皇室では、皇族女性が嫁いだ際には、皇籍を離脱させます。女系継承を認めないという皇室の原理は天皇家の外に対しては際限のない継承者拡大を防ぐためであり、天皇家の内に対しては王朝の断絶を防ぐためであるのです(女系王即位による王朝断絶については、具体的にはヴィクトリア女王の子が即位したときに起りましたが、後段で改めて紹介します)。) 16世紀前半に絶対君主として、ヘンリー8世(テューダー朝)が君臨しました。ヘンリー8世の死後、嫡男のエドワード6世が王位を継ぎますが、病弱であったため、15歳で逝去します。ヘンリー8世の子は、エドワード6世以外は女子であったため、メアリー1世とエリザベス1世の姉妹が王位を継ぎます。 メアリー1世とエリザベス1世の2人の女王には子がなかったため、女系王はこの時代、誕生しませんでした。2人の女王は国内外の政治的事情が複雑に絡み、結婚できませんでした。エリザベス1世は「私は国と結婚した」という有名な言葉を残しています。ただし、レスター伯をはじめ愛人とされる男は多くいました。それでも、子に恵まれず、テューダー朝は断絶します。 次のステュアート朝でも、17世紀末から18世紀初頭、メアリー2世とアンの姉妹が王位を継ぎますが、後継者に恵まれず、断絶します。やはり、ここでも女系王は誕生しませんでした』、「女系継承を認めないという皇室の原理は天皇家の外に対しては際限のない継承者拡大を防ぐため」、一定の意味はありそうだが、一代限りで「女系」を認めてもいいのではなかろうか。
・『女系継承容認という価値観が国民にも共有されてきた  そして、19世紀に登場する女王がヴィクトリア(ハノーヴァー朝)です。ヴィクトリア女王は大英帝国の最盛期を担い、1837~1901年の64年間にわたり、君臨しました。ヴィクトリア女王は1840年、ザクセン=コーブルク=ゴータ家のアルバート公と結婚します。ザクセン=コーブルク=ゴータ家はドイツのザクセン家という有名な貴族の家系から派生した分家です。 コーブルク(ドイツ、バイエルン州北部の都市)とゴータ(テューリンゲン州の郡)を領有していたため、このような家名で呼ばれます。この家系が1831年以降、新たに独立したベルギー王位を世襲し、今日のベルギー王室に至っています。 ヴィクトリア女王が逝去すると、アルバート公との間に生まれた長男のエドワード7世が即位します。エドワード7世は女系王です。女系王であるため、父の家名に変更され、イギリスはザクセン=コーブルク=ゴータ朝(英語読みでサクス=コバータ=ゴータ朝)となります。つまり、ハノーヴァー朝の断絶です。 しかし、イギリスでは、女系継承容認の立場から、ヴィクトリア女王の直系血筋が断絶したわけでないため、ハノーヴァー朝の継続を主張する人もいます。また、ハノーヴァー=サクス=コバータ=ゴータ朝という折衷名が使われることもあります。 現在のイギリスはウィンザー朝です。エリザベス女王の後を、チャールズ皇太子が継ぐと、エリザベス女王の夫で、チャールズ皇太子の父であるエジンバラ公の家名を加えたマウントバッテン=ウィンザー朝と家名を変える予定です。 マウントバッテン朝ではなく、マウントバッテン=ウィンザー朝という折衷名にするのはやはり、ヴィクトリア女王の時代と同じく、エリザベス女王の直系血筋が絶えるわけではないという考え方で、ウィンザー朝の継続というニュアンスを出すために、この王朝名を引き続き使おうとしていると考えられます。 このように、女系継承容認というのがイギリス王室の歴史的文化・原理として長い間培われ、国民にもその価値観が共有されてきたのです。 イギリス王室はその歴史背景において、日本皇室とまったく異なります。その差異がどのようなものであるかを再認識することによって、皇室の歴史文脈の独自性が色濃く浮かび上がります。皇位継承問題を考えるにあたり、こうした観点は有用な視座を与えてくれるものであると思います』、安部政権は、この問題を取上げるのには後ろ向きだが、皇位継承の安定性を考慮すると、今から議論しておくべきだろう。

第四に、10月20日付けAbemaTIMES「反対の声の中、55万人に恩赦…小林節氏「時代錯誤だ。天皇陛下に成り代わり、総理がお仲間の公選法違反を赦すことになる」」を紹介しよう。
https://times.abema.tv/posts/7024482
・『政府は18日、天皇陛下が即位を国内外に宣言される「即位礼正殿の儀」に合わせ「恩赦」を実施することを閣議決定した。 国としてのお祝いや、悲しい出来事があった際に、罪を犯した人々の刑を軽くしたり、刑罰そのものを無効、つまり判決の効力を変更したりする恩赦は、世界各国で行われており、アメリカではオバマ前大統領は恩赦により終身刑の受刑者550人以上を釈放、話題となった。日本では昭和天皇の「大喪の礼」(1989年)の際に1000万人、上皇さまの即位礼正殿の儀(1990年)で250万人、そして直近で両陛下がご結婚された際(1993年)に実施されている。 今回、恩赦の対象は軽微な犯罪に限定、自民党の鈴木総務会長は15日の会見で対象が約55万人であるとしているが、「罪を犯したら相応の罰を受けるのが当然では?赦される意味がわからない」「三権分立してなくね」「冤罪なら救済になるけど、犯罪者が恩恵を受けるのは納得いかん」「象徴であるはずの天皇が政治利用されるじゃん」などの疑問の声も多い。こうした意見に対し、法務省は「有罪判決を受けた人にとって更正の励みとなり、再犯防止の効果も期待でき、犯罪のない安全な社会を維持するために重要な役割を果たしている」との声明を出している。 17日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、慶應大学名誉教授(憲法学)で弁護士の小林節氏に話を聞いた』、「55万人に恩赦」とは納得できない。
・『「制度はあるが使わないのが一番良い」  恩赦について、憲法では「恩赦は天皇の国事行為と規定」(7条)「内閣の職務として規定」(73条)と定めている。 小林氏は「そもそも恩赦という言葉には、“大御心”という意味が含まれている。天皇陛下のお気持ちで、まとめて赦してやるということだが、それは時代錯誤だ。神話の世界というか、法の世界の話ではない。また、現憲法下では天皇は象徴であり、天皇の名で政府が実施するということは、総理大臣が天皇陛下に成り代わり、3年前までのお仲間の公職選挙法違反、政治資金規正法違反を赦すということになる。こうした点を自民党の議員や党本部の職員に聞いてみても、あまり深く考えておらず、惰性でやっているように感じる。先例というものは時代状況によって変わっていくものだが、変えようという勇気がないと思う」と話す。 「今の日本は民主国家で、三権分立の法治国家だ。国民の代表が国会で“こういうことをしたらこういう犯罪になり、こういう刑罰がついてくる”ということを前もってリストにして皆に見せる。でもやってしまう人に対しては行政の一環として警察が摘発し、検察が起訴する。そして独立した裁判所が判断して個別に刑を決め、法務省に戻ってきて処遇されていく。そうやって世の中を回しているものを突然、せっかくのめでたい天皇の代替わりだからと変えてしまうということだ。メリットはない。政府の文書によれば、3年前までに罰金を食らって、医師・看護師免許や公職選挙の立候補資格などが停止されていた人々について、簡単にいえば“2年早く赦してやる”ということ。また、スピード違反、痴漢、未成年者買春、盗撮の類も赦されるだろう。 今回は様々な議論があり、評判が悪そうだからということで、かなり工夫をしてこれまでに比べて対象者を減らしているが、それでも私は納得していない」。 実際、共同通信による全国電話世論調査では、今回の恩赦について賛成が24.8%だったのに対し、反対は60.2%に上っている。また、海外に目を向けてみると、アメリカでは大統領と州知事が恩赦権を持っており、先述のとおりオバマ前大統領は過去1700件以上の恩赦を与えている。また、韓国では度々実施されており、朴槿恵政権下では実刑判決を受けた財閥オーナーにも恩赦を与えている。一方、イギリスでは国王が恩赦権を持っているものの、一律の恩赦は1930年代以降行われていない。 海外では死刑囚さえも恩赦になるケースがあることについて、小林氏は「我々日本人から見れば、アメリカは緻密な国ではなく、急ごしらえの開拓民の世界だ。元々はヨーロッパの王国と喧嘩別れしてできた国なので、王政に付随する恩赦などというものをきちんと受け継いで使えるはずがない。だから法の世界だと割り切って、お友達を許してさよなら、と。韓国も利害関係で同じようなことをしている。政治家によるこのような特権的な使い方は間違っている。逆にイギリスでは形骸化していて、女王が店じまいしたため、ほとんど“抜かずの刀”になっている。制度はあるが使わない。これが一番良い。やはり民度の問題で、世論調査で賛成が30%いなかったということは、これは決まりだ」と述べた』、仮に「恩赦」をするとしても、正々堂々と議論した上で、決めるべきなのに、今回は、議論抜きに陰で決められた不透明な印象だ。
・『「被害者に救いを与えることこそすべきではないか」  ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「SNSで情報が流通するようになって、慣例に対して疑問を呈しやすくなっているし、過度に公正さを求める人が増えているという時代状況もある。厳罰化も進む中、“恩赦はけしからん”となるというのは、少し嫌な感じがする。三権分立という中、天皇陛下が即位されたから赦しましょうというだけでは多くの人は納得しないのは確かだ。それでも公正さの保たれた恩赦というものはあり得ると思う。例えば長年にわたって再審が始まらない高齢の死刑囚などは特例的に釈放してもよいのではないか。あるいは大麻が合法化されたとしたら、それまでに逮捕されて服役している人を釈放するといったこともありえるのではないか」と問題提起。 これに対して小林氏は「死刑に関しては中央更正保護審査会が活動しているし、高裁がコントロールしている。そうしたバランスをとるのは恩赦ではないし、法律を変えればいい。あるいは法務省での処遇を科学的に高めていくことだ。私も弁護士として関わった場合は個別恩赦、特赦あるいは減刑を申請する手伝いはする。だがそれは法務省で行っている個別の処遇に関する行政処分の問題であって、天皇陛下の大御心の問題ではないと思う」とコメント。 「ハグ屋」「えろ漫画家」のピクピクン氏は「僕は国民として陛下が好きだ。その陛下の名の下に犯罪者を赦してしまえば、犯罪者は救われても被害者に救われない。お祝いという大義名分なのであれば、むしろ被害者に何らかの救いを与えることこそ、イメージもセンスも良いと思う」と提案。これに対し、小林氏は「全く同感で、専門家である私が教えられたような感じがする」とした上で、「だからこそ、一見して被害者のいない公職選挙法違反や、スピード違反などを対象に選んでいる。ところがスピード違反は全ての人が被害者だと言っていいし、公職選挙法違反も直接ではないが国民が共有する被害であり、国政の根本が疑わしくなるものだ。分かりにくいから、反発がこないからと思っているのだろう」と指摘した。さらにピクピクン氏「僕の職業で言えばモザイク規制を緩くし、カルチャーを発展させるようなものこそが赦しだ。今回、恩赦に賛成した国会議員はきちんと名前を出して言ったのか」と畳み掛けた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)』、「恩赦に賛成した国会議員は・・・」とあるが、今回は国会に諮ったわけではなく、政令一本で恩赦することになる。「公職選挙法違反や、スピード違反」であっても、恩赦でなかったことにするというのは、天皇の名を汚すことにもなり、極めて残念な決定だ。
タグ:東洋経済オンライン 天皇制度 PRESIDENT ONLINE litera 元木 昌彦 (その1)(新天皇の「お言葉」で「日本国憲法」尊重姿勢が弱まった理由は…背景に安倍首相による取り込みと官邸の圧力、なぜ「次の天皇」が女性ではいけないのか "雅子皇后の苦しみ"を繰り返すのか、なぜ「女系・女王」をイギリスは容認してきたか 「男系・男子」に限る日本との歴史的な違い、反対の声の中、55万人に恩赦…小林節氏「時代錯誤だ。天皇陛下に成り代わり、総理がお仲間の公選法違反を赦すことになる」) 「新天皇の「お言葉」で「日本国憲法」尊重姿勢が弱まった理由は…背景に安倍首相による取り込みと官邸の圧力」 安倍政権が「新天皇のお言葉」から憲法のくだりを削除しようと圧力をかけているとの情報が流れていた 官邸は『新しい時代にふさわしいお言葉を』と、暗に護憲色を抑えることを宮内庁に求めていた 宮内庁内部でお言葉を巡ってせめぎあいがあったことは間違いない 「憲法」への言及は明らかに弱くなっている 憲法のところでは安倍政権に配慮し、必要最小限にとどめられたんじゃないでしょうか 今回のお言葉は、新天皇が官邸の働きかけに屈した結果 安倍首相が元号決定前、新天皇に最終6案を伝えていた! 憲法違反の可能性 「内奏」 約1カ月ちょっとのあいだに3度もおこなった 「なぜ「次の天皇」が女性ではいけないのか "雅子皇后の苦しみ"を繰り返すのか」 二度と戦争は起こしてはならないという強い決意 「国民と共に憲法を守ることに努めていきたい」 「憲法を守る」と「憲法にのっとり」の大きな違い 天皇・皇族にとっての「自己実現」とは何か 週刊新潮は令和時代の「壬申の乱」を危惧 秋篠宮文仁親王の最近の言動 「皇嗣としての自覚があるのか」と問うている タイの新国王の戴冠式に出かけようとしていた秋篠宮 雅子妃ほど「バッシング」を受けた皇太子妃はいなかった 「結婚に消極的な姿勢は一貫していた」 結婚8年でやっと授かったのは「女の子」だった まるで公務を怠けているかのような情報操作 「情報操作」は、「メディア」だけの責任ではなく、背後に「宮内庁」の影 「女性天皇を認めること」に賛成は79.6%、反対は13.3% 宇山 卓栄 「なぜ「女系・女王」をイギリスは容認してきたか 「男系・男子」に限る日本との歴史的な違い」 日本とイギリスでは何が異なるのか? 女系で広がった王位継承権の拡大 現在のイギリスの王位継承者は約5000人 男系家系の派生範囲は限定的であるけれども、そこに女系が加わるとその範囲は膨大になります。このような継承者の範囲拡大を防ぐため、日本皇室では、皇族女性が嫁いだ際には、皇籍を離脱させます 女系継承を認めないという皇室の原理は天皇家の外に対しては際限のない継承者拡大を防ぐため 女系継承容認という価値観が国民にも共有されてきた AbemaTIMES 「反対の声の中、55万人に恩赦…小林節氏「時代錯誤だ。天皇陛下に成り代わり、総理がお仲間の公選法違反を赦すことになる」」 「即位礼正殿の儀」に合わせ「恩赦」を実施することを閣議決定 オバマ前大統領は恩赦により終身刑の受刑者550人以上を釈放 昭和天皇の「大喪の礼」(1989年)の際に1000万人、上皇さまの即位礼正殿の儀(1990年)で250万人、そして直近で両陛下がご結婚された際(1993年)に実施 今回、恩赦の対象は軽微な犯罪に限定、自民党の鈴木総務会長は15日の会見で対象が約55万人 制度はあるが使わないのが一番良い 慶應大学名誉教授(憲法学)で弁護士の小林節氏 賛成が24.8%だったのに対し、反対は60.2% イギリスでは国王が恩赦権を持っているものの、一律の恩赦は1930年代以降行われていない
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今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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介護(その4)(複雑化する「老老介護」と90歳認知症医師の孤独、「私の家でない」改造が裏目に認知症介護の苦悩 認知症の人ための「住宅リフォーム」を考える、89歳の要介護女性がヤマトの荷物運ぶ深い理由 「要介護者に活動の場を」大牟田市の挑戦) [社会]

介護については、昨年10月23日に取上げた。今日は、(その4)(複雑化する「老老介護」と90歳認知症医師の孤独、「私の家でない」改造が裏目に認知症介護の苦悩 認知症の人ための「住宅リフォーム」を考える、89歳の要介護女性がヤマトの荷物運ぶ深い理由 「要介護者に活動の場を」大牟田市の挑戦)である。

先ずは、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が本年1月21日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「複雑化する「老老介護」と90歳認知症医師の孤独」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00059/?P=1
・『なんとも痛ましい事件が、また起きてしまった。 88歳の母親が寝たきり状態の70歳の娘を刃物で刺し、無理心中を図った。パーキンソン病の娘を母親が介護する「逆・老老介護」。88歳の母親は、70歳の娘の車いすを押し、おむつ替えや着替えなどの身の回りの世話をしていた。 親子は「サービス付き高齢者向け住宅」で暮らし、母親は周囲に「このまま介護を続けていくにはどうしたらいいのか。お金も大丈夫かしら」と、事件の1カ月ほど前から、漏らすようになったと報じられている。 親子が暮らしていたサービス付き高齢者向け住宅は、「自立して生活できる高齢者」が安心して暮らせることを目的に、「地域包括ケアシステム」拡充の施策として2011年に創設された。立地場所や、サービス内容によって家賃は大きく異なり5万~30万円超。安否確認や生活相談はあるけど、介護サービスを受けるには外部の在宅介護サービスを利用する必要がある。 ただ、24時間介護してくれる公共の特別養護老人ホームが、常に満員で入れない状況があるため、手厚い介護が必要な高齢者が、低家賃のサービス付き高齢者向け住宅に入居する場合がある。 88歳の親子がどういった経緯で高齢者向け住宅に住んでいたかは不明だが、サービス付き高齢者向け住宅では2015年1月から1年半の間に、死亡や骨折など少なくとも3000件以上の事故が報告されている』、この母娘が「サービス付き高齢者向け住宅」に入居せざるを得なかったところから、無理があったようだ。
・『超高齢化社会が進み複雑化する介護問題  また、「逆・老老介護」という言葉について、介護関係者に聞いたところ「ここ最近使うことが増えた」とのこと。引きこもり状態にある50代が80代の親とともに暮らす「8050問題」が注目されているが、「引きこもりの子供が病気がちだったり、体が弱かったりすることが少なくない。80歳を超えた親が、50歳の子供の身の回りの世話をしているケースはある」と話してくれた。 「逆・老老介護」を夫婦間の介護について使う場合もあり、「90歳を過ぎた高齢者が80歳前後の配偶者を介護する例はこの数年で急激に増えた」(介護関係者)。 厚生労働省の国民生活基礎調査でも、同居の主な介護者が80歳以上というケースは、2001年の6%から20016年は16%に増加している。2018年に公開されて話題となったドキュメンタリー映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」でも、認知症の90歳の妻を介護するのは、98歳の夫だった。 寿命が延び、90歳を過ぎても元気な高齢者が珍しくない一方で、パーキンソン病は50歳過ぎ、アルツハイマー病では65歳を過ぎると発症する人が増える。超高齢化社会では介護問題は喫緊の課題なのに、問題解決する間もなく新たな問題が生まれ、状況はさらに複雑になっている。 88歳の母親の日々を想像するだけで、胸が詰まる……。介護は元気な中年でも精神的にも、肉体的にも負担が大きいし、はたからはどんなに元気で、しっかりしているように見える人でも、年齢には勝てない。老いには個人差があるが、誰もが例外なく老いる。それは「昨日までできていたことができなくなる」というリアルだ。 これまでも介護問題については、さまざまな角度から取り上げてきたけれど、「老いる」ということへの理解の乏しさを痛感させられる出来事が増えた。 つい先日も、スーパーでおばあさんが支払いに時間がかかっていると、後ろの男性が「チッ、早くしろよ!」と声を荒らげていた。こういった光景は以前からあったので、私はレジに並ぶときは高齢者の後ろに並ぶようにしていたのだが、声を荒らげたのは私の後ろにいた人。ついにらんでしまったら、男性はバツが悪そうに貧乏ゆすりをし……、ちょっと怖かった。 デパートや駅のエスカレーターでは、いまだに左側に寄ってないことにいら立つ人がいる。「そんなに急いでいるなら階段を使え!!」と思うのだが、エスカレーターに乗っている人に接触する勢いで駆け下りていくのは本当に危険だ。 間違えて子供用の切符を買ってしまったおばあさんに、ひたすら「手数料がかかるけどいいですか?」と迫る駅員を見たときには怒りすら覚えた。 おばあさんと駅員の会話によれば、孫を連れていたおばあさんは間違えて子ども用のボタンで2枚分買ってしまったらしい。 で、それを「大人用に変えてほしい」とおばあさんが言っているのに対し、駅員さんは「一度買った切符は変えられない。手数料がかかる」の一点張り。 おばあさんはちょっと押し間違えただけなので、なぜ、手数料がかかるのかが理解できない。おばあさんに分かるように、ゆっくり丁寧に言えばいいのに、駅員はどんどんと高圧的になり、おばあさんは「ごめんなさい。押し間違えちゃって」と謝り続けた。 見かねた通りすがりの男性が、「押し間違えただけなのに、手数料がかかるんですか?」と駅員に尋ねると「はい。規則なんで」。その態度は悲しくなるほど機械的で。「なんでこんなに高齢者に冷たいんだ」と私の脳内のサルは大騒ぎだった』、「同居の主な介護者が80歳以上というケースは、2001年の6%から20016年は16%に増加」、「逆・老老介護」がここまで増えているとは改めて考えさせられた。「駅員」の「機械的」対応は、自動化が進んだ鉄道会社の問題だ。
・『認知機能低下は老いれば普通のこと  老いる──。年を取っていく親と日常頻繁に接していると、「年を取るって、大変なことなんだなぁ」とつくづく思う。 視力一つ取ってみても、視野が狭くなる、色の識別が難しくなる、明るいところから暗いところに入ると見えなくなるといった自然な老いに加え、緑内障になると視野の一部が欠けるため、足元が見えづらくなったりもする。 聴力の低下というと、単純に「耳が聞こえない」状態をイメージするかもしれないけれど、通常の聴力がある高齢者でも「初めて話す人」の話や、外出して緊張していると聞こえづらくなる。「転ばないようにしなきゃ!」と歩くことに集中するあまり、車の音さえ耳に入らなくなる。 どんなに気持ちが元気な高齢者でも、体力と認知機能の低下から逃れるのはムリ。ちょっとでも疲れると、ますます認知機能は低下するし、高齢になると思い込みも激しくなる。周りがせかすと焦り、余計にできなくなったりすることもある。 つまるところ、「見えづらい、聞こえづらい、忘れやすい、勘違いしやすい、覚えられない、思い込みが激しくなる」という現実の繰り返しが老いることだ。 ところが、高齢者のこういった言動は、すぐ「認知症」に直結させられてしまう。この短絡的な解釈が、どれだけ高齢者やその家族を生きづらくしていることか。高齢の親と接する機会が多い人には、私が何を言いわんとしているかが分かると思う。 そもそも「認知症=病気」ではない。「認知症=何もできない」わけでもない。 認知症とは、「物忘れや認知機能の低下が起こり、日常生活に支障をきたしている状態」である。 例えば、頭痛がさまざまな病気で引き起こされるように、認知機能の低下にも多種多様の原因がある。アルツハイマー病やレビー小体症などが認知症につながるとされているけど、その原因はすべて数えると70種類以上にもなる。原因が特定できない場合もある。さらに障害の種類や重さ、症状は個人差があり千差万別だ。 しかも、たとえ認知症につながる病気になっても、症状の進行度合いは人によって違うし、生活に支障がない範囲であれば「認知症」とは診断されないのだ。 2019年、認知症対策を強化するための「数値目標」なるものが、政府の有識者会議で提示され、物議をかもしたのを覚えているだろうか。批判がやまなかったことから最終的に取り下げられたが、当初は「6年間で6%減」という数値目標を掲げていた。 70代の発症を10年間で1歳遅らせると、70代の認知症の人の割合を約1割減少させることができるという試算に基づき、2025年までの6年間で70代人口に占める認知症の人の割合を6%減らすとしていたのである』、「そもそも「認知症=病気」ではない・・・認知機能の低下にも多種多様の原因がある・・・その原因はすべて数えると70種類以上にもなる。原因が特定できない場合もある。さらに障害の種類や重さ、症状は個人差があり千差万別だ」、「認知症」の奥の深さを再認識させられた。
・『「老い」に絶対的な予防法はない  数値目標が掲げられた背景には、超高齢化社会で増え続ける社会保障費の問題があるわけだが、認知症は生活習慣病のように生活習慣を改めれば改善できるものでもなければ、ましてや、科学的根拠のある治療法や予防法が確立されているものでもない。 もちろん「運動習慣のある人の方がなりづらい」「健康的な食生活をしている人の方がなりづらい」「浴槽につかる習慣のある人の方がなりづらい」「おしゃべりな人の方がなりづらい」といった調査結果はある。 しかしながら、あくまでも「確率」の問題であり、絶対的な予防法ではない。「これをやっていれば大丈夫!」というわけでもない。 誤解のないように断っておくが、予防に努めるのはとても有意義だし、大切なこと。国が積極的に取り組むことで、多くの自治体が高齢者に無料で体操教室を開催したり、食事教育を行ったり、多くの高齢者が楽しむ「場」が増えたりすることには大賛成だ。 私の母も近くの高齢者交流館に、「それ体操教室だ!」「それコーラスだ!」と毎日楽しそうに通っているし、それは家族にとっても本当に有り難いことだ。 しかしながら、「認知症」という言葉をまるで病名のように使い、「予防すれば認知症にならない」というイメージを助長するような取り組みは、高齢者を逆に追い詰める。 「迷惑をかけてしまって申し訳ない」「なんでこんなバカになってしまったのか」「一生懸命努力しているんだけどね……」「こんなになってしまって恥ずかしい」「認知症になって子に恥をかかせたくない」etc.etc. これらは年を取り、「今までできていたことができなくなった」高齢者が、こぼす言葉だ。 しかも、たとえどんなに予防に積極的に取り組んでいても、「喪失体験」がつきまとう高齢者の日常では、ある出来事をきっかけに認知症になってしまうことがある。 配偶者が亡くなったり、病気になり入院生活を余儀なくされたり。あるいは子供と同居するために引っ越しをするなど、生活環境が変化するだけでも認知機能は著しく低下する』、「「認知症」という言葉をまるで病名のように使い、「予防すれば認知症にならない」というイメージを助長するような取り組みは、高齢者を逆に追い詰める」、健常者が大いに気を付けるべきことだろう。
・『老いの表れ方は一様ではない  繰り返すが認知症は「物忘れや認知機能の低下が起こり、日常生活に支障をきたしている状態」であって病気ではない。であるからして、生活環境の変化に起因する「認知症」は、時間の経過や、また、笑いや喜びのある生活によって、おしゃべりできる友人ができたり、一緒に楽しめるコミュニティができたりすると、治る。そう、治る場合があるのだ。 ただし、「老いている」ことに変わりはないので、「ん?」と思う言動がなくなるわけじゃない。 つまり、それが「老いる」ということ。中年期でも調子のいい時と悪い時、さえている時とさえない時があるのと同じだ。その度合いが高齢期になると強まり、環境の影響も大きくなり、個人差も目立つというだけだ。 認知症の判断基準になっている「長谷川式認知症スケール」を作成し、2018年に自らも認知症であることを告白した精神科医の長谷川和夫先生(90歳)は、「認知症にならないのは1割しかいない。超エリートなんだよ」と常々話していた。 ご自身が嗜銀顆粒性(しぎんかりゅうせい)認知症になってからは、「認知症になって人が変わるわけではない。『いつもの自分だ。大丈夫だ』と思えるときがある。認知症になっても、すべてなくなるわけじゃない。認知症は変動する。これほどまでにいい時があるとは、自分がなるまで分からなかった」とおっしゃっていた。 医師として、患者として、経験を一人でも多くの人に伝えたいという思いから、今も講演活動を続けている。その様子を、先日NHKがドキュメンタリーで報じていたが、私は娘さんの気持ちが自分とクロスして、涙が止まらなかった。 私も高齢者向けのプログラムを開発したり、講演をしたりすることがあるが、研究者の端くれとして「どんな雨も自分が降られてみないと、その雨の冷たさは分からない」のだなぁと痛感させられた。 認知症が、徐々に、そして確実に進行する長谷川先生のケアをする、81歳の奥さんの負担は日に日に増し、長谷川先生は奥さんの負担軽減のためにトライアル的にグループホームに宿泊することを決意。予定では2泊3日だった。ところが1泊で帰ってきてしまったのだ』、「生活環境の変化に起因する「認知症」は、時間の経過や、また、笑いや喜びのある生活によって、おしゃべりできる友人ができたり、一緒に楽しめるコミュニティができたりすると、治る。そう、治る場合がある」、なるほど。「長谷川先生」の「NHKドキュメンタリー」は私も観たが、いい番組で、特にケアをしている娘さんには感心した。
・『「老い」は一人ひとり違う  「何をしたいのか?と聞いてほしかった。あそこにいくと自分は孤独だった」──。 こう話す長谷川先生は、自分が考案したグループホームで全く楽しめなかった。 グループホームは長谷川先生が認知症の研究をする中で、「認知症になった高齢者がみんなと楽しく笑えるように」という思いから、1980年代にスタートしたものだった。 にもかかわらず、実際に自分が認知症になり参加したグループホームで長谷川先生は「孤独」だった。カメラに映し出される長谷川先生のまなざしは、悲しくて、つまらなくて、さみしそうで。みんなで歌ったり、輪投げをしたりするときの表情は気の毒なほどだった。 1日早く帰宅し、まっしぐらに自分の書斎に向かった長谷川先生。書斎は何十年も、認知症になってからも、毎日、自分がそこで学び、仕事をした場所だ。私の父も、最後の最後まで自分の書斎にいる時間を、何もしない、何もできない状況になっても「手放さなかった」。 私たちがそうであるように、年をとっても認知症になっても、誰もが「私」でいたい。「高齢者」とか「認知症」とか、ひとくくりにされたくない。「人」として向き合って欲しいのだ。 「君が認知症になって、初めて君の認知症研究は完結する」と長谷川先生は、先輩の医師に言われたそうだが、まさにその通りだったのである。 先の政府の指針には「尊厳を守り共生する」ことが掲げられている。……実に美しい言葉だ。 「共生」とは、スタンダードを変えること。階段の手すり、大きな文字、大きなスイッチ、見分けやすい色などのハード面に加え、私たちのマインド、つまりソフト面のスタンダードも高齢化社会に合わせることだ。 以前、日経ビジネス電子版で取り上げられていた記事「認知症対策、イオン、ヨーカ堂が育てた『大規模サポーター』の効果」のような取り組みをする企業や社会が当たり前になればいいなと心から思う。できれば「認知症サポーター」ではなく、「高齢者サポーター」にしていただきたいけど』、「「君が認知症になって、初めて君の認知症研究は完結する」と長谷川先生は、先輩の医師に言われた」、「先輩の医師」の洞察力の深さには、頭が下がるほかない。

次に、ノンフィクション作家の奥野 修司氏が2月10日付け東洋経済オンラインに掲載した「「私の家でない」改造が裏目に認知症介護の苦悩 認知症の人ための「住宅リフォーム」を考える」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/327632
・『高齢化がますます進み、近い将来、5人に1人が認知症になる時代がやってくる。家族の将来を考えてバリアフリー化などリフォームを考える人は多いが、実は間違ったリフォームはかえって症状を悪くする可能性がある。例えば、あらゆる段差をなくし、ケガをしないように「バリア」のない住居にする。一見、いいことに思えるが、自宅のバリアフリー化は元気なうちから先回りしすぎると逆効果になるという。日常的に接するバリアが身体を鍛え、健康を維持するのに役立つという側面があるからだ。またリフォームの内容やタイミングによっては、慣れ親しんだ家が自宅に思えなくなる可能性もあるという。 ノンフィクション作家の奥野修司氏は、これまで多くの認知症当事者や家族を取材することで、リアルな実情、そして問題点を見つめてきた。家族がよかれと思ってした選択が、結果的に当事者や家族を不幸にしてしまう例もある。今回は、リフォームの問題点について、最新の著書『なぜか笑顔になれる認知症介護』より抜粋して紹介する。当然のことながら個別の事情や症状によっても異なるのであくまで一例として参考にしていただきたい』、「日常的に接するバリアが身体を鍛え、健康を維持するのに役立つという側面がある」、「慣れ親しんだ家が自宅に思えなくなる可能性もある」、言われてみればその通りで、ハウスメーカーやリフォーム業者が宣伝する「バリアフリー化」の落とし穴に気づかせてくれた。
・『リフォームは当事者の目線で!  「認知症の母の将来を考えてリフォームしたのに、なぜか『家に帰りたい、家に帰りたい』とばかり言う。こんなことならリフォームなんてしなければよかった」「せっかくバリアフリーにしたのに、認知症の父は歩きにくそう。どうして?」 リフォームに関してこんな悩みを聞くことがある。間違ったリフォームのためにかえって症状を悪くする場合があるというが、どういった点に気をつければいいのだろうか。認知症当事者の平みきさんと、デイサービス「DAYS BLG!」を運営する前田隆行さんに伺ってみた。 一口にリフォームといっても、内容以前に時期も重要な要素である。例えば、(1)認知症ではない時期 (2)軽度の認知症と診断された時期 (3)症状が進行し始めた時期 などが考えられるが、(3)は冒頭で紹介した「家に帰りたい」ケースで、「ある程度早い段階でリフォームするのはいいが、認知機能が落ちてからリフォームすると、症状がさらに進みます。やるべきではない」と平さんは言う。 都会に住んでいた娘が、認知症になった母親を引き取ったら、逆に認知機能が下がってしまったというケースもある。また、親が認知症になったのでリフォームしたら、「ここは俺の家ではない」と言い張るので困っているという方もいた。リフォームなどで環境が大きく変わると、住環境の連続性が断たれてしまう。よかれと思ってしたことが、裏目に出ることもあるのだ。 考えられるのは(1)認知症ではない時期と(2)軽度の認知症と診断された時期だが、まだ元気なうちにリフォームするにはどこに気をつけたらいいのか、平さんに尋ねてみた。 「リフォームのポイントはいくつかありますが、まず玄関は車いすが入れられる広さにし、廊下も広めに取ることです。手すりは両側に取り付けたほうが楽です。トイレ、風呂、脱衣所も介助者が一緒に入れる広さがあったほうが使い勝手がいい。脱衣所は狭いとだめです。風呂場は内開きのドアより、引き戸のほうが移動は楽です。毎日使うところはできるだけ動線を広く取ること。階段はなるべく直線ではなく、曲がってもいいから傾斜を緩やかにしてください」』、「都会に住んでいた娘が、認知症になった母親を引き取ったら、逆に認知機能が下がってしまった」、田舎の人付き合いが切れてしまったのも原因かも知れない。
・『全自動トイレはNG?  もし4LDKの一軒家があったとすると、3LDKにして風呂、トイレ、廊下は広くしたほうがいいという。 「最近はトイレも全自動になっていますが、これはやめたほうがいいです。トイレっていろんな種類があるんです。トイレによっては水を流す位置も違うし、機能も違います。全自動で全部流すことが習慣になると、認知症になったときに外でトイレを使っても流さなくなることが多いんです」 実際に全自動のトイレで生活していた女性が認知症になった際に、旅館のトイレで大便をしたままお尻も拭かずに出てきたことがあった。トイレを使う手続き記憶(経験の繰り返しによって獲得された記憶)から、お尻を拭いて流すという記憶が欠落してしまったからだろう。こんな失敗が続くと、本人も家族も外出を敬遠する。日常生活の楽しみである外出がなくなると、ストレスが溜まる一方だろう。やがて爆発しないとも限らない。 平さんは、バリアフリーも考えものだという。 「完全なバリアフリーは、足を上げるという機能をなくしてしまいます。段差があるという認識がなくなり、ちょっとした段差でもつまずいてしまうんです。相当に症状が進んだ人でなければ、普段から足を上げることを認識させれば、バリアフリーにしなくても大丈夫です。不安なら、階段のところに白いテープを貼って『段差だよ』と教えてあげればいいのです。そうすれば段差とわかるし、絶対に学習します。転んだら痛いですから」 症状が軽い段階なら、段差でつまずかないように足を鍛えればいい。人に頼らない生活を望むなら、本人も努力するしかないのだ。 前田さんが運営するBLGの建物も典型的な非バリアフリーで段差だらけだ。それでも段差につまずいて倒れた利用者はいないという。 「バリアフリーにすると安全だと思うでしょう?実は転ぶんです。段差があるほうが転ばないんです。視空間認識に障害が出た人は、床板の継ぎ目の黒い線でも段差に見えることがあります。普段、家の中に段差がない生活をしていると、急に段差があらわれたら足が動かず、バランスを崩して転びます。普段から段差がある生活だと、段差が見えてもさっと跨ぐなりして体をうまく動かせるんです」 視空間認識に障害があると、暗い部分が落ち込み、明るい部分との境目が段差に見える。市松模様や縞模様がデコボコに見え、慌ててバランスを崩すことも。完全なバリアフリーより、段差に見えない工夫のほうが先決かもしれない。 前田さんは、元気なときのリフォームは別として、認知症になったら大幅なリフォームはしないほうがいいと言う。 「段差が危ないからバリアフリーにするというのは、家族の考えなんです。何十年もその家で生活してきた人には頭の中に地図があって、それに基づいて体が動くから、段差があっても体は動きます。それが前に記憶していた部屋と違うと、体がついていけないこともあるんです。 認知症の症状はその人によってさまざまです。途中で変わることもあるのに、先に先にとリフォームすると、体がついていきません。そのうえ、玄関が移動したり、部屋が変わったりしたとき、 前に記憶していた部屋と違うと認識すれば、自分の居場所じゃないと感じることもあります」』、「全自動のトイレ」は私でも途中で水が流れ、腹が立つことがあり、嫌いだ。「何十年もその家で生活してきた人には頭の中に地図があって、それに基づいて体が動くから、段差があっても体は動きます。それが前に記憶していた部屋と違うと、体がついていけないこともあるんです」、慣れとはずいぶん体に染みついているもののようだ。
・『介護用ベッドを借りる人が多いが……  認知症になって介護保険サービスが受けられると、介護用ベッドを借りるケースが多いが、これも本人の状態に応じて借りるべきだという。 「今まで畳で寝起きしていた人が介護保険を利用すると、ケアマネは介護用ベッドを勧めます。すると起き上がる力が奪われ、夜間にトイレで目が覚めたとき、逆に転んでしまうことがあります。畳で寝起きしていたのなら、何もベッドに替えなくても畳で寝起きしたらいいんです。介護用具を勧めるのは、認知症の人に利用してもらえばもらうほど、ケアマネと福祉業者が儲かるからです」 認知症と診断されたらリフォームと考えるのは、認知症に対する誤解があるからではないか。前田さんは言う。 「将来を考えて、最新型の設備を備えたい気持ちはわからなくもありませんが、本人が描くイメージに合わせて環境を変えるなら、頭も体もついていきますが、家族が勝手に先手を打ってリフォームすると、本人はついていけません。部分的なリフォームは症状が現れてから考えればいいのです」 そのときはもちろん間取りなどは変えないこと。ドアが壁と一体化して見えにくいなら、リフォームしなくても、ドアの周囲に白いテープを張っただけでドアだと認識できる。大柄の模様が入ったカーテンは誤認される可能性があって避けるべきだとされるが、誤認しない人も結構いる。 前田さんが「リフォームは、家族が先手を打ってやると必ず失敗します」というのは、家族の目線ではなく、認知症になった本人の目線で考えろということだ。これは平さんも同じ意見だろう。個別の事情や症状によっても変わってくるが、健康なときならいざ知らず、認知症と診断されてからのリフォームは、最小限にとどめたほうがいいのかもしれない』、「介護用具を勧めるのは、認知症の人に利用してもらえばもらうほど、ケアマネと福祉業者が儲かるからです」、介護保険の仕組みにもこんな落とし穴があったとは、驚かされた。

第三に、フリーライター・エディターの佐々木 恵美氏が昨年12月10日付け東洋経済オンラインに掲載した「89歳の要介護女性がヤマトの荷物運ぶ深い理由 「要介護者に活動の場を」大牟田市の挑戦」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/318162
・『11月のよく晴れた昼下がり、福岡県大牟田市の介護施設「てつお」を訪れると、ヤマト運輸のゼッケンを着てリビングで談笑する内田アケ子さん(89歳)の姿があった。 「てつお」施設管理者の浦幸寛さんが「内田さん、行きましょうか」と声をかけると、ほかの利用者やスタッフから「行ってらっしゃい」「頑張って」と励まされ、うれしそうに玄関へ。1時間ほどかけて、近所の病院や個人宅などに荷物を届けてまわる。 「メール便はポストに入れればいいけど、内田さんの顔を知ってもらうためにできるだけ手渡しするようにしています」と浦さん。 内田さんは元気に歩きながら、「次はどこかな」「あのお宅は最近行ってないね」などと浦さんに話しかける。道では多くの人から「お疲れさま」「頑張ってますね」と声をかけられ、笑顔で応じる内田さん。 「外を歩くと風景が変わって、人にも会えるから楽しいですよ。ずっと続けていきたい」と満面の笑みで語る』、こんな「高齢者」活用があるとは、初めて知って驚かされた。ただ、付き添う「施設管理者」には負担だろう。
・『ヤマト運輸のDMを高齢者が配達し手当を支給  ヤマト運輸(東京都)と大牟田市の介護施設「てつお」は業務委託契約を結び、2019年2月から施設の利用者がダイレクトメールの配達を始めた。施設に週1回通う内田さんは、長く美容師をしていたが、高次脳機能障害で認知機能が低下しており、自宅から外出して何度か行方不明になったこともある。 「内田さんはいつも笑顔で明るく外出が好きなので、配達にピッタリだと思い声をかけました」と浦さん。約20通のダイレクトメールを職員と一緒に歩いて近所に届ける。 1通当たりの単価が設定されており、月1000~2000円の手当はすべて内田さんに入る仕組みだ。 人手不足のヤマト運輸にとっては貴重な働き手で、住宅街を歩いて届けてもらうことで車事故の心配がなく環境にも優しい。 福祉事業者としては、利用者の自立支援につながり、認知症の方を地域で知ってもらう機会になる。 浦さんはこう話す。「配達がリハビリになり、内田さんのやりがいにもなっています。地域の人と顔見知りになれば、内田さんが一人で外出したときも見守ってもらえます。 内田さんに触発されたのか、ほかの利用者さんが施設にエプロンを持ってきて手伝ってくれたり、自宅で家事を始めて『家にいてもらうと助かる』と家族に喜ばれたり、要介護度が下がった人もいるんですよ。 介護されるようになっても、人の役に立つことは心身に大きな効果があるのだと思います。利用者さん一人ひとりがやりたいことを一緒に見つけていきたい」 荷物の配達だけでなく、大牟田市では要介護の高齢者が市内の企業や事業所で働くという取り組みが広がっている。業務内容は、カーディーラーでの洗車、コインランドリーの清掃、農家の手伝いなどさまざまだ』、「介護されるようになっても、人の役に立つことは心身に大きな効果がある」、その通りだろう。「大牟田市」の意欲的な取り組みは、大したものだ。他の自治体も見習ってほしい。
・『企業と介護施設連携の仕掛け人  企業と介護施設の連携を実現すべく、奮闘する人がいる。社会福祉士・介護支援専門員の猿渡進平さん(38歳)。大牟田市で生まれ育ち、患者の平均年齢86歳の白川病院で地域連携室長を務めつつ、大牟田市のよろず相談員という顔も持つ。 猿渡さんは、誰もが地域で暮らし続けられるように、さまざまな組織の設立や運営などに尽力。要介護高齢者が働くことに賛同してくれる介護事業者と企業を探すために60件以上を訪問してきた。 「前例がない」「フォローする人手が足りない」などの理由で断られても、「誰かが突破しなければ」と粘り強く探してきた。ヤマト運輸にとって介護事業者との連携は初の試みだったが、今では市内いくつかの事業者に広がっている。 ホンダカーズ大牟田北手鎌店では、デイサービスの利用者が展示車の洗車を担当する。「親の介護を経験した社長が賛同してくれて、主に車好きな高齢者が働いています。60代の男性は、妻に迷惑をかけてきたからと洗車の賃金でジャムパンを買って帰ったところ、『私がジャムパンを好きって覚えててくれたの?ありがとう』と感激されたそうです。働くことは、賃金以上の価値を生みますよね」と猿渡さん。 断られ続けても、猿渡さんが精力的に行動する原動力は何だろう。 「僕が高校生のとき、同居の祖母が認知症になり、必死に介護していた母が体調を崩して入院したため、祖母は施設に入りました。施設に行くと、高齢者がみんな何もせずボーッと過ごしていて、強い違和感があった。祖母はいつも『帰りたい』と嘆き、僕も帰ってきてほしかったけれど、自宅では介護できないので、祖母は施設で最期を迎えました。本当は自宅で生活させてあげたかった……その思いがずっと心の奥にあります」 かつて炭鉱の町として栄えた大牟田市。 1960年には約21万人が暮らしていたが、現在11万人まで減少。そのうち高齢者は5万人弱で、全世帯のうち高齢者のいる世帯が54.1%、高齢者の一人暮らし世帯が25.8%に上る。 「高齢化が進む日本の20年先の姿」とされる大牟田市は、認知症に関する取り組みにいち早く着手。 2002年に市を事務局とする官民共同の「認知症ケアコミュニティ推進事業」を始め、「地域全体で認知症の理解を深め、認知症になっても誰もが安心して暮らし続けられるまちをつくろう」と多様な活動を進めてきた』、「大牟田市」の活動には、推進した「猿渡さん」というスーパーマンに支えられた部分が大きそうだ。「原動力」は、高校生時代の「同居の祖母が認知症」とはさすがだ。
・『高齢者が増える日本がどんな社会であってほしいのか  2004年から毎年続けている「認知症SOSネットワーク模擬訓練」は認知症の人が行方不明になったという設定のもと、住民と行政、警察などが連携して探し保護する訓練で、近年は3000人以上が参加している。もともと「徘徊SOS~」だった名称を変更したのは「本人にとっては徘徊ではなく、目的があって出かけているから」という。 模擬訓練は小学校区ごとに行われ、校区の実情や課題に応じた取り組みへと発展。白川校区ではNPO法人「しらかわの会」を設立し、買い物運送バスやサロンの運営、外国人への日本語教室、障害児の登下校支援など、誰でも安心して住めるまちづくりを進めている。 人は誰しもいつか高齢者になり、自身や家族が認知症になるかもしれない。認知症は決してひとごとではないのだ。そんなとき、どんな社会であってほしいのか。大牟田市は理想のモデルを模索し挑戦を続けている』、「猿渡さん」に支えられているとはいえ、「大牟田市」の取り組みを今後も注目したい。
タグ:介護 東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン 原動力 長谷川式認知症スケール 河合 薫 サービス付き高齢者向け住宅 長谷川和夫先生 (その4)(複雑化する「老老介護」と90歳認知症医師の孤独、「私の家でない」改造が裏目に認知症介護の苦悩 認知症の人ための「住宅リフォーム」を考える、89歳の要介護女性がヤマトの荷物運ぶ深い理由 「要介護者に活動の場を」大牟田市の挑戦) 「複雑化する「老老介護」と90歳認知症医師の孤独」 88歳の母親が寝たきり状態の70歳の娘を刃物で刺し、無理心中を図った。パーキンソン病の娘を母親が介護する「逆・老老介護」 超高齢化社会が進み複雑化する介護問題 同居の主な介護者が80歳以上というケースは、2001年の6%から20016年は16%に増加 認知機能低下は老いれば普通のこと そもそも「認知症=病気」ではない 認知症とは、「物忘れや認知機能の低下が起こり、日常生活に支障をきたしている状態」 認知機能の低下にも多種多様の原因 その原因はすべて数えると70種類以上 原因が特定できない場合もある さらに障害の種類や重さ、症状は個人差があり千差万別だ 「老い」に絶対的な予防法はない 認知症は生活習慣病のように生活習慣を改めれば改善できるものでもなければ、ましてや、科学的根拠のある治療法や予防法が確立されているものでもない 予防すれば認知症にならない」というイメージを助長するような取り組みは、高齢者を逆に追い詰める 老いの表れ方は一様ではない 「認知症にならないのは1割しかいない。超エリートなんだよ」 NHKがドキュメンタリー 生活環境の変化に起因する「認知症」は、時間の経過や、また、笑いや喜びのある生活によって、おしゃべりできる友人ができたり、一緒に楽しめるコミュニティができたりすると、治る。そう、治る場合がある 「老い」は一人ひとり違う グループホームで長谷川先生は「孤独」だった 「君が認知症になって、初めて君の認知症研究は完結する」と長谷川先生は、先輩の医師に言われた 奥野 修司 「「私の家でない」改造が裏目に認知症介護の苦悩 認知症の人ための「住宅リフォーム」を考える」 間違ったリフォームはかえって症状を悪くする可能性 自宅のバリアフリー化は元気なうちから先回りしすぎると逆効果に 日常的に接するバリアが身体を鍛え、健康を維持するのに役立つという側面があるからだ 慣れ親しんだ家が自宅に思えなくなる可能性もある なぜか笑顔になれる認知症介護』 リフォームは当事者の目線で! 認知症ではない時期 軽度の認知症と診断された時期 症状が進行し始めた時期 よかれと思ってしたことが、裏目に出ることもあるのだ 都会に住んでいた娘が、認知症になった母親を引き取ったら、逆に認知機能が下がってしまった 全自動トイレはNG? 介護用ベッドを借りる人が多いが…… 介護用具を勧めるのは、認知症の人に利用してもらえばもらうほど、ケアマネと福祉業者が儲かるからです 佐々木 恵美 「89歳の要介護女性がヤマトの荷物運ぶ深い理由 「要介護者に活動の場を」大牟田市の挑戦」 ヤマト運輸のDMを高齢者が配達し手当を支給 ヤマト運輸(東京都)と大牟田市の介護施設「てつお」は業務委託契約 施設の利用者がダイレクトメールの配達 職員と一緒に歩いて近所に届ける 月1000~2000円の手当 介護されるようになっても、人の役に立つことは心身に大きな効果がある 大牟田市では要介護の高齢者が市内の企業や事業所で働くという取り組みが広がっている。業務内容は、カーディーラーでの洗車、コインランドリーの清掃、農家の手伝いなどさまざまだ 企業と介護施設連携の仕掛け人 社会福祉士・介護支援専門員の猿渡進平さん 要介護高齢者が働くことに賛同してくれる介護事業者と企業を探すために60件以上を訪問 僕が高校生のとき、同居の祖母が認知症になり、必死に介護していた母が体調を崩して入院したため、祖母は施設に入りました。施設に行くと、高齢者がみんな何もせずボーッと過ごしていて、強い違和感があった 「認知症ケアコミュニティ推進事業」 高齢者が増える日本がどんな社会であってほしいのか 大牟田市は理想のモデルを模索し挑戦を続けている
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薬物(その2)(芸能人の逮捕、続々…ゼロからわかる「薬物依存症」超入門、芸能人「10年以上前から薬物」報道…一体どれくらいの依存度なのか ゼロからわかる「薬物依存症」(後編)、合法的な薬物依存「デパス」の何とも複雑な事情 ズルズルと飲み続ける患者を生んでしまった、「魔法のような薬」デパスの減薬に立ち塞がる壁 一筋縄ではいかない常用量依存に苦しむ患者) [社会]

薬物については、昨年3月19日に取上げた。今日は、(その2)(芸能人の逮捕、続々…ゼロからわかる「薬物依存症」超入門、芸能人「10年以上前から薬物」報道…一体どれくらいの依存度なのか ゼロからわかる「薬物依存症」(後編)、合法的な薬物依存「デパス」の何とも複雑な事情 ズルズルと飲み続ける患者を生んでしまった、「魔法のような薬」デパスの減薬に立ち塞がる壁 一筋縄ではいかない常用量依存に苦しむ患者)である。

まずは、筑波大学教授の原田 隆之氏が昨年12月1日付け現代ビジネスに掲載した「芸能人の逮捕、続々…ゼロからわかる「薬物依存症」超入門 違法薬物とは何か、なぜ依存するのか」を紹介しよう。なお、脚注は省略した。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68820
・『薬物問題とわれわれの社会  このところ、次々と芸能人の薬物問題が起き、世間は大騒ぎとなっている。しかし、一昔前の「ダメ絶対!」一辺倒だった頃と違って、最近では「治療も大事」「バッシングして排除するのは良くない」などという論調も目立つようになってきた。 大前提として、違法薬物使用は法律違反であり、犯罪である。しかし、依存性薬物の恐ろしいところは、厳罰を与えればそれに懲りてやめられるという単純なものではないということだ。 また、薬物使用者を排除し、孤立させてしまうことは、問題をさらに深めるだけで、解決にはならない。これらは、単に人道的な見地からのみ述べているのではなく、科学的エビデンスに基づいた事実である。 したがって、単なる末端の使用者に対しては、できるだけ治療や福祉などのヒューマンサービスを優先し、警察や麻薬取締当局は、薬物の密輸や密売を行っている者の摘発に力を傾けることが、世界的な潮流であり、薬物に関する社会的コストを最低限に抑えることができる方法である。 その一方で、われわれは社会とわれわれ自身を守るために、薬物問題について正しい知識を持っておくことが大事である。 「自分には関係ないから」と思い込み、あやふやな知識しか持っていないと、「大麻には害がない」「MDMAくらいなら大丈夫」などという誘惑に惑わされてしまったり、逆にいたずらに害や不安を煽って薬物使用者をバッシングしたり、医療目的などの適切な使用さえ手控えてしまうことにつながりかねない』、一般的なマスコミ情報では、断片的な知識だけなので、体系的に整理してくれるとは有り難い。
・『違法薬物とは  現在、さまざまな薬物が条約や法律で規制されている。一時「危険ドラッグ」のブームがあったように、その種類は増えるばかりである。違法薬物のなかには、かつては合法的に使用されていたものもあるし、合法な薬物でも違法薬物に優るとも劣らない害があるものもある。 どの薬物が違法で合法化を決めるのは、もちろん法律である。そしてその法律の根拠となるのが薬物に関する2つの国際条約であり、いずれも国連条約である。 1つは、「麻薬に関する単一条約」である。これは、それまで乱立していた薬物に関する条約を一本化したもので、主に植物由来の「伝統的な」薬物を規制するものである。ケシの樹液から作られるアヘン、それを精製したり化学的に合成したモルヒネやヘロイン、麻の一種である大麻(葉や蕾を乾燥させたものはマリファナ、樹脂はハシシと呼ばれる)、南米アンデス地方にしか生えないコカという木からつくられるコカインなどが代表的なものである。 もう1つは、「向精神薬に関する条約」で、これは化学的に合成された比較的新しい薬物を規制するものであり、覚せい剤、LSD、MDMAなどが含まれる。覚せい剤には、主にアンフェタミンとメタンフェタミンがあり、後者は日本人薬学者が世界で初めて合成したものである。 世界で最も多く乱用されている薬物は大麻であるが、それは世界中に自生しているし、栽培が容易であるから、入手しやすいことが大きな原因である。国連の報告を見ると、世界で約1億9千万人が乱用しているとされている。 2番目に乱用が多いのは、かつてはヘロインであったが、近年覚せい剤が2番目となっている。乱用人口は3,400万人と推計されている。これは、やはり比較的入手しやすい化学物質から容易に密造できるという理由が大きい。 90年代以前は、ほぼ日本でしか乱用されていなかったものが、アジア、オセアニア、西ヨーロッパ、アメリカなどに一気に乱用が広がってしまった』、「植物由来の「伝統的な」薬物を規制する」「麻薬に関する単一条約」と、「化学的に合成された比較的新しい薬物を規制する」「向精神薬に関する条約」の2つがあるとは初めて知った。
・『薬物の作用  これらの薬物は、その作用の違いによって大きく2つに分けることができる。1つは中枢抑制作用であり、もう1つは刺激作用である。俗に「ダウナー」「アッパー」などと呼ぶこともあるが、脳や神経系の働きを抑制するのが「ダウナー」であり、刺激するのが「アッパー」である。 抑制系の薬物を摂取すると、覚醒レベルが下がり、陶酔感を抱き、最後は眠りに落ちる。代表的なものが、ヘロインや大麻である。違法薬物ではないが、アルコールにも抑制作用がある。 刺激系の薬物は、覚醒作用を有し、気持ちがシャッキリとし、ハイな気分になる。文字通り覚せい剤はこのような作用を有する。コカインや少量のアルコール、タバコ(ニコチン)、カフェインも中枢刺激剤である。 また、幻覚作用が前面に出やすい薬物もあり、LSD、大麻、MDMAなどが含まれる。 これらの薬物に共通するのは、快感や多幸感をもたらし、依存性があるということである。薬物の摂取によって、ドーパミンという神経伝達物質が多量に分泌され、それが快感を生みだす。それが作用する脳の部位は、大脳辺縁系という「古い脳」にある側坐核を中心とした「報酬系」と呼ばれる神経回路である。 ドーパミンは、薬物を摂取したときだけでなく、われわれが快感を抱いたときは、必ず分泌されている。逆に言うと、ドーパミンが分泌されたから、われわれは主観的体験として快感を抱くのである。たとえば、うれしいことや楽しいことがあったとき、食事、スポーツ、セックスなどの際には、ドーパミンが分泌されている。 しかし、違法薬物、たとえば覚せい剤を摂取したときは、これら自然なドーパミン分泌量と比べると、何十倍から百倍近い量が一気に分泌される。したがって、強烈な快感を抱くが、その後ドーパミンが枯渇してしまうため、大きな不安、抑うつ、焦燥感、イライラ、疲労感などに苛まれることがある。いわゆる禁断症状(離脱症状)である。 このような快と不快の繰り返しによって、脳は不快を避け、快を求めるようになり、薬物使用が反復され、依存症が進行していく。 さらに、同じ薬物を使っても、依存症になりやすい人となりにくい人がいる。たとえば、ちょっとしたことで落ち込んだり不安になったり、ストレスを感じたりしやすい人は、アルコールや薬物の力を借りてそうした不快感情を紛らわせようとしやすい。 さらに、そうした状況にあって、対処スキル(たとえば、友達に相談する、体を動かす、趣味の活動をする)が欠乏している人も、薬物の力にすがろうとして、依存症になりやすいと言われている。遺伝的な基盤があるという知見も報告されている。(つづく)』、「脳や神経系の働きを抑制するのが「ダウナー」であり、刺激するのが「アッパー」である」、「違法薬物、たとえば覚せい剤を摂取したときは、これら自然なドーパミン分泌量と比べると、何十倍から百倍近い量が一気に分泌される。したがって、強烈な快感を抱くが、その後ドーパミンが枯渇してしまうため、大きな不安、抑うつ、焦燥感、イライラ、疲労感などに苛まれることがある。いわゆる禁断症状(離脱症状)である」、「違法薬物」の恐ろしさが幾分、理解できた気がする。

次に、この続き、12月2日付け現代ビジネス「芸能人「10年以上前から薬物」報道…一体どれくらいの依存度なのか ゼロからわかる「薬物依存症」(後編)」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68825
・・・『依存症の診断  一般に、強い依存性のある物質を、大量に長い期間使用していればいるほど、依存症は重症になると考えられるし、多種多様の薬物を乱用しているほど、心身への害は大きくなる。 実際、芸能人の薬物報道などでは、「10年以上もの期間、大麻、コカイン、MDMAなどを用いていたから、依存症が深刻だ」などと報道されることもあるし、裁判でもそのように判定されることがある。 とはいえ、事はそう単純ではない。人によって依存症になりやすい脆弱性は異なるし、長い期間乱用していたといっても、使用の方法(注射か、吸引かなど)や頻度によっても違ってくる。 したがって、依存症の程度を正確に判定するには、国際的な診断基準に則って専門医が正しく診断する必要がある。 診断基準には、使用頻度や量の増加、耐性の存在(昔の量では効果がなくなり量が増えること)、渇望や離脱症状があること、やめようとする努力が失敗に終わっていること、社会生活や職業生活に害が出ていること、そしてそれでもやめられないことなどが含まれている。 さらに、重症度の判定には、科学的に妥当性が検証されたツールを用いることが必要である。世界中で最も広く用いられているのが、嗜癖重症度指標(Addiction Severity Index: ASI)という包括的質問紙である。 しかし、これは項目数が多く、網羅的かつ専門的なので、より簡便な質問紙もいくつか開発されている。こうした専門的なツールで、使用薬物の種類、量や頻度、使用方法、社会的な機能の障害などを判定する必要がある』、なるほど。
・『薬物の依存性と害の大きさ  薬物の依存性の強さや害の大きさを比較することは難しい。それは、これらの薬物はみな作用も性質も違うからである。しかし、研究者はさまざまな方法を工夫して、それらを比較しようとしている。 たとえば、イギリスのナットらは、合法・違法含めて20種類の薬物の依存性の強度と害の大きさを数値化している。これは世界で最も権威がある医学雑誌ランセットに発表された論文である。 図-1は、縦軸に依存性の強度、横軸に害の大きさを表したものである。どちらも最も大きいのがヘロインであり、ヘロインは最悪の薬物であると言える。依存性がきわめて強いうえ、致死量が小さいので、欧米では過剰摂取による死亡が絶えない。 ヘロインの依存性は、最大の3.00である。それに次ぐのがコカインの2.39、そして第3位はタバコの2.21である。アルコールは1.91、覚せい剤は1.67である。タバコやアルコールの依存性が、他の違法薬物に引けをとらないどころか、大きく凌いでいることに驚かされる。 害については、同じくナットを中心とする研究者のグループが、より細かく分析している(図-2)。これもランセットに発表されたものであるが、自分に対する害と社会に対する害を分けて数値化したものである。 20種類の代表的な薬物のうち、最も害が大きいのは、何とアルコールであり、数値は72ポイントとなっている。これは、アルコールが合法であり、入手しやすいこと、広く用いられていることが大きく影響している。 2番目以下は、ヘロイン(55ポイント)、クラックコカイン(54ポイント)、メタンフェタミン(覚せい剤)(54ポイント)、コカイン(27ポイント)、タバコ(26ポイント)、アンフェタミン(覚せい剤)(23ポイント)、大麻(20ポイント)と続く。 大麻は害がないなどという根拠のない噂が広がっているが、20種類の薬物のなかで、8番目に害が大きいし、使用頻度や期間などによっては一層害が大きくなる。 ナットは、論文のなかで、「スコアが小さいからといって、それは害が小さいという意味ではない。これらのドラッグは、状況によってはすべて害のあるものだ」と警告している。 害の種類を細かく分けてみると、アルコールは、外傷、犯罪、家族への害、経済的損失が大きく抜きんでている。一方、致死性の害が最も大きいのがヘロインとタバコである。たとえば、わが国のタバコ関連死は、年間20万人と見積もられている。 覚せい剤は、精神的な害が大きく、幻覚妄想状態などを引き起こしやすく、これは覚せい剤精神病と呼ばれる。また、大麻はどの種類の害も平均的に大きい(死亡、精神異常、犯罪、家族、経済的損失など)』、「タバコやアルコールの依存性が、他の違法薬物に引けをとらないどころか、大きく凌いでいる」、「20種類の代表的な薬物のうち、最も害が大きいのは、何とアルコール」、「致死性の害が最も大きいのがヘロインとタバコ」、とはショッキングだ。
・『有効な薬物依存対策  このように、依存性のある薬物は、合法、違法問わず、使用者本人と社会に大きな害をもたらすものである。アルコールとタバコは合法であるが、これは歴史上早くから使用されていた薬物であり、近代社会になる前にすでに広く蔓延していたからにすぎない。合法か違法かの線引きに、科学的で合理的な根拠があるわけではない。 したがって、これ以上他の薬物を合法化することは、賢明な選択ではないし、本人や社会への害を減らすためには、現在合法であるものも含めて、できる限り使用を減らしていくべきである。 ナットは、結論として「公衆衛生の問題として対処すること」の重要性を強調している。つまり、繰り返しになるが、使用者への処罰や社会的排除では解決とはならず、予防、治療、教育などのヒューマンサービスこそが有効な対処だということだ。 有名人が逮捕されるたびに、その個人をいくらバッシングしても、懲らしめても、何の問題の解決にならないのは明らかである。われわれ社会全体の問題として、科学的エビデンスに基づいた医療や公衆衛生の力を総動員し、効果のある対策を取る必要がある』、説得力に溢れた主張で、その通りだろう。「アルコールとタバコは合法であるが、これは歴史上早くから使用されていた薬物であり、近代社会になる前にすでに広く蔓延していたからにすぎない。合法か違法かの線引きに、科学的で合理的な根拠があるわけではない」、なるほどと納得した。

第三に、メディカルジャーナリズム勉強会が11月29日付け東洋経済オンラインに掲載した「合法的な薬物依存「デパス」の何とも複雑な事情 ズルズルと飲み続ける患者を生んでしまった」を紹介しよう(訂正についての記述は省略)。
https://toyokeizai.net/articles/-/316514
・『「合法薬依存」と聞いたときに、どんな状況をイメージするだろうか?一時期大きな話題となった、いわゆる「脱法ドラッグ」のことではない。医療機関やドラッグストアで普通に手に入る、完全に合法な医薬品――それによって、薬物依存に陥り、生活に大きな問題を抱えてしまう。そんなケースが少なくないのだ。 メディア関係者と医療者の有志で構成するメディカルジャーナリズム勉強会がスローニュース社の支援のもとに立ち上げた「調査報道チーム」が、全5回にわたる連載でこの合法薬依存の深い闇に斬り込む。 タレントの田代まさしの覚せい剤取締法違反、同じく沢尻エリカの合成麻薬MDMA所持による麻薬及び向精神薬取締法違反など芸能人の違法薬物問題が昨今、世間をにぎわせている。とりわけ田代まさしの覚せい剤取締法違反による逮捕は4度目で違法薬物からの離脱の難しさがクローズアップされている。 もっとも薬物依存と呼ばれるものの中で、覚せい剤、大麻、コカイン、ヘロインなどに代表される違法薬物は、田代まさしのようなケースはあるにしても比較的使用者が離脱しやすいとの指摘も少なくない。こうした違法薬物は使用そのものだけではなく、製造、所持、輸出入、譲渡、譲受のすべてが違法であるため、この一連の流通ルートがつねに取り締まりで脆弱化される恐れが高いからだ。 ここで厚生労働省の厚生労働科学研究費補助金による「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査(研究分担者:松本俊彦・国立精神神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長)」という研究報告書を例示する。これは全国の入院機能を持つ精神科の医療施設を対象に薬物を乱用して急性中毒や依存、精神障害などの治療を受けた患者の実態をまとめたものである。 1987年から隔年で行われてきた同調査の最新版である2018年版は246施設から2609例の実態を集計したものだ。この薬物関連の精神疾患の原因となった薬物をグラフにまとめると下図のようになる』、「合法薬依存」とは初耳だが、何故、発生してしまうのだろう。
・『「逮捕されない薬物乱用」が4分の1  やはり最も多いのは過半数を占める覚せい剤だ。そして2番手は「睡眠薬・抗不安薬」である。これは医療機関で処方されている医療用医薬品で基本的には合法のもの。3番手がいわばシンナーなどの「揮発性溶剤」、4番手が風邪薬や頭痛薬などの「市販薬」となる。 概説すれば、この報告において医療機関での処方や市販薬など非合法でない薬物は約4分の1を占める。この報告にカウントされた睡眠薬・抗不安薬、市販薬などは定められた用法・用量を超える量を服用する「乱用」により関連精神疾患となった状態を指す。違法薬物の場合は入手、所持自体が摘発されるが、これら合法薬物は「逮捕されない薬物乱用」ともいえる。 この「睡眠薬・抗不安薬」にはどんな薬が含まれているのか?報告書では内訳が明らかにされている(下表)。 不眠や精神疾患によって医療機関で薬を処方された経験がある人ならば名前を聞いたことがある薬もあるだろう。この中では精神安定薬の成分名(一般名)で「エチゾラム」という薬の乱用が多いことが目立つ。この「エチゾラム」の乱用は報告書に集計された全症例の9.3%。実に乱用で問題がある人の約10人に1人はこの薬が原因なのだ。 しかし、そもそも医師の適切な診察のもと処方されているはずの薬で、なぜ依存や乱用が引き起こされているのか?この問いに対する答えを探すのは、実は非常に難しい。患者、医師、そして製薬企業それぞれの事情などが複雑に絡み合っているからだ。 今回、わたしたちはスローニュース社の支援のもと、この「合法的に処方・販売されている薬」によって依存症が引き起こされる背景を探った。国が公開しているデータや依存・乱用の実態を示す報告書を調べ、そして患者・医師・薬剤師などさまざまなステークホルダーたちから証言を得た。 見えてきたのは、医療現場において、依存のリスクを軽視した「気軽な」処方が行われたケースがあること。そしてひとたび依存症となった当事者に対しては「違法ではない」がゆえに支援の手が差し伸べられにくい、という皮肉な事態が起きていることも見えてきた。 「薬物はダメ、ゼッタイ」という単純なロジックでは捉えきれない複雑な事情。その闇の中を丁寧にのぞき込むことで、『合法薬物依存』が起きる背景に光を当ててみたい』、「闇の中を丁寧にのぞき込む」とは興味深そうだ。
・『発売から35年、成分名は「エチゾラム」  エチゾラムは1984年3月の当時の吉富製薬(現・田辺三菱製薬)が「デパス」という商品名で発売した歴史のある薬だ。医薬品の場合は、発売された新薬が一定期間を経ると特許が切れ、これと同一成分でより安価な薬、いわゆるジェネリック医薬品が発売されることはよく知られている。発売から35年を経たデパスもすでに1990年代前半からジェネリック医薬品が登場し、現在10社を超える製薬企業がジェネリック医薬品を発売している。 ちなみに本来複数の製薬企業から同一成分の薬が発売されている際の表記では、成分名のエチゾラムを使うのが一般的である。しかし、服用患者も含め世間一般では簡単に覚えやすい「デパス」でその名が広く知られていることが多い薬である。このため以後はエチゾラムではなく「デパス(エチゾラム)」と表記することをあらかじめお断りしておく。 デパス(エチゾラム)は薬学的にはベンゾジアゼピン受容体作動薬と称されるグループに属する。国内で厚生労働省が承認しているベンゾジアゼピン受容体作動薬はデパス(エチゾラム)を含め実に30種類を超える。 このベンゾジアゼピン受容体作動薬は、ヒトの神経細胞の間で情報伝達を行う神経伝達物質で興奮状態を抑えるγ-アミノ酪酸、通称GABA(ギャバ)の働きを強めることで、神経を鎮静化し、不安や緊張を取り除くという作用を示す薬だ。また、この作用の一環としてベンゾジアゼピン受容体作動薬では、脳内を鎮静化させて眠りを導く「催眠作用」、筋肉の緊張をほぐす「筋弛緩作用」、けいれんを抑える「抗けいれん作用」などがある。 現在、デパス(エチゾラム)が保険診療で認められている適応は次のとおりだ。 +神経症における不安・緊張・抑うつ・神経衰弱症状・睡眠障害 +うつ病における不安・緊張・睡眠障害 +心身症(高血圧症, 胃・十二指腸潰瘍)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ・睡眠障害 +統合失調症における睡眠障害 +頸椎症、腰痛症、筋収縮性頭痛での不安・緊張・抑うつ) ざっと見ればわかるとおり、不安、緊張、抑うつ、睡眠障害がキーワードになるが、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の中でもデパス(エチゾラム)は筋弛緩作用が比較的強いと言われるためか、保険適応にもあるとおり頸椎症、腰痛症、筋収縮性頭痛などにも効果があるとされる。処方される診療科としては、精神科、神経内科、心療内科にとどまらず、整形外科、脳神経外科でも比較的よく使われる。 また、デパス(エチゾラム)のように睡眠障害に保険適応を持つ薬は、精神科系診療科だけでなく、市中の一般内科でもよく処方される。これは不眠を感じる患者はまずそれだけで精神科などを受診しない傾向が強く、さらには糖尿病、高血圧などの生活習慣病などの診療を受けている患者が「最近よく眠れない」などと訴える時などに処方されがちだからだ。 このため睡眠障害に使われる薬は、業界関係者の間では主な病気で受診中についでに訴えると処方されることを揶揄して「ついでの薬」と呼ばれることがある。 ところでなぜデパス(エチゾラム)での乱用・依存がとりわけ目立つのか?それについてはいくつかの理由が考えられる』、「デパス」がずいぶん広範な症状に処方されているのには、驚かされる。余程よく「効く」薬なのだろう。
・『服用後の効果出現が早く明確だが時間は短い  一般に乱用・依存を来しやすい薬物は、服用後の効果出現が早く明確で、かつ効果持続時間が短いという特徴があると言われる。この種の薬は服用者にとって効果が感じられやすい分、効果切れも実感できてしまう。だから再び薬に手を伸ばす。次第に服用者は薬に依存し、それが極端になると規定の用法・用量を超えた乱用に至ってしまう。 下表は国内で発売されている主なベンゾジアゼピン受容体作動薬の作用時間の長短を示したものだ。デパス(エチゾラム)はまさに作用時間が短い短時間作用型と分類される。ちなみに前述の内訳表で示した乱用原因となっている睡眠薬・抗不安薬の中で、ハルシオンは超短時間作用型、マイスリーはデパス(エチゾラム)と同じく短時間作用型である。 ちなみにデパス(エチゾラム)に次いで乱用が多いサイレースは中間作用型で、効果持続時間が長い点ではやや異なるが、効果が強いことで知られ、また違法薬物であるヘロインやコカインと併用することでいわば「トリップ」作用を強めるという使用や、覚せい剤の使用でハイになってしまい眠れなくなったときの不眠解消などを目的に乱用されることが従来から国内外で知られている。 それでも同じ作用時間が短いハルシオンやマイスリーに比べ、デパス(エチゾラム)の乱用が突出して目立つ理由を簡単に言うならば、服用している患者が多いからである。 こうした抗不安薬など合法的な薬での乱用は、「治療で服用⇒常用量依存⇒乱用」というルートをたどる。ちなみに常用量依存とはおおむね定められた用法・用量の範囲で使用している中で、薬が必要な症状がもはやないにもかかわらず、薬を止めることができないケースである。 前述の流れに沿うならば、同程度の依存性を持つ薬ならば、乱用の分母ともいえる治療で服用している人の数が多ければ多いほど、最終的な乱用患者も多くなる可能性が高い。 この点で考えるとハルシオンは保険適応が不眠と麻酔前投薬、マイスリーは不眠のみであり、前述のように5種類の適応を持ち幅広い診療科で使われるデパス(エチゾラム)は必然的に処方される患者数が多くなる。 加えて法的規制の問題もあった。国内では麻薬や向精神薬の乱用防止、中毒者への必要な医療提供、生産や流通の規制を目的に「麻薬及び向精神薬取締法」という法律がある。 同法では合法的な精神疾患の薬なども別途政令で具体的な薬剤名を挙げて指定し、この指定を受けた薬は厚生労働大臣あるいは都道府県知事から免許を受けた者しか取り扱いできず、厳格な保管や在庫記録の管理などが求められ、医療機関同士や保険薬局同士でも一部を除き譲渡・譲受はできない。ある薬が同法に基づく政令での指定を受けていることについては医療現場でいくつかの意味をもつ。 まず、指定を受けた薬剤は処方日数の上限が定められる。これは効果や副作用などの安全性の確認や患者が正しく使えているかなどを定期的にチェックすることが必要になるからだ。一般に向精神薬の指定を受けたものの多くは処方日数上限が30日となる。これにより患者の乱用へのハードルは高くなる。 また、この指定を受けることは医師に対する「警告」的な効果も大きいとされる。指定を受けると、とくに精神科などの専門医以外の医師にとっては「注意が必要な薬だ」というイメージが定着し、専門医以外は処方を躊躇しやすい、つまり安易な処方は防げる可能性が高まるというものだ。 デパス(エチゾラム)も2016年9月に指定を受けている。しかし、その指定は発売から実に30年以上と、医療従事者の間でもいぶかしげに思う人が少なくないほど、発売から指定までの期間が空いている。 つまるところ依存を生みやすい薬剤特性がありながら、幅広い診療科で処方され、服用者の裾野が広く、なおかつ法的な規制が緩かったというのがデパス(エチゾラム)が乱用されやすい原因と考えられる』、「抗不安薬など合法的な薬での乱用は、「治療で服用⇒常用量依存⇒乱用」というルートをたどる」、大いにありそうなことだ。にも拘わらず、「デパス」の「向精神薬の指定」が、「発売から実に30年以上」、その遅さには確かに首を傾げざるを得ない。
・『高齢になればなるほど処方量は増加  このデパス(エチゾラム)の国内での処方実態の一端をうかがわせるデータがある。厚生労働省は、医療機関が保険診療に際して市町村や健康保険組合に対して患者負担分以外の医療費の支払いを求める明細書(通称・レセプト)の集計結果を2015年分からNDB(ナショナル・データベース)オープンデータという名称で公開している。 NDBオープンデータでは医療に関わる各種技術料や薬剤を項目別に全国集計し、都道府県、年齢階層別でデータが公開されている。 このデータからデパス(エチゾラム)の処方量を人口統計の各年齢層の人口で割り算し、1000人当たりの平均処方量をまとめたものが下図になる。一見するとわかるが、高齢になればなるほど処方量は増加し、最も多いのは80代である。 繰り返しになるが精神神経系の薬の乱用の場合、そこに至るルートは、「治療のための服用⇒常用量依存⇒乱用」のことが多い。となればデパス(エチゾラム)の乱用も高齢者が多くてしかるべきだ。前述の全国調査では各原因薬物内での年齢データは存在しない。しかし、全国調査で報告された全症例における年齢階層別で70代以上は3.3%しかいない。 どういうことか?実はデパス(エチゾラム)をはじめとするベンゾジアゼピン受容体作動薬では、前述の全国実態調査には出てこないまさに一歩手前の「常用量依存」の患者が多いのではないかという指摘は医療従事者の中ではかなり多い。 前述の全国調査の研究分担者でもある精神科医で国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長の松本俊彦氏は、次のように語る。 「まず断っておくと、継続服用患者=常用量依存者ではありません。問題は、長期服用者のデータはあっても、常用量依存の実態に関するデータは存在しない、ということです。常用量依存の定義は、治療すべき症状が改善してもその治療薬をやめることができない状態。だから常用量依存を確認するためには、とにかく一定期間、薬をやめても、それで症状がぶり返さないことを確認しなければなりません。 ところが実際の臨床現場でそれができないし、患者さんたちも嫌がります。だからずるずる飲み続けて、常用量依存かもしれないし、不眠とかあるいは治療を要する水準の不安が持続しているのかの区別がつかないのです。これでは、常用量依存の実態はわかりません」 では「常用量依存は薬物依存症なのか」?松本氏の考えは違うという。 「いろいろ論議はありますが、私の答えは『薬物依存症ではない』というものです。精神科医が依存症と判断する際に重視するのは、身体依存(身体が薬に慣れてしまい、急な中断で離脱症状が出現する状態)ではなく、精神依存(渇望、なりふり構わない薬物探索行動)の存在です。 本来の自分の価値観をかなぐり捨ててでもその薬を欲しくなり、正直者で有名だった人が『薬なくしちゃいました。もう1回処方して下さい』とうそを言う、並行して複数の医療機関からお薬をもらってくる、医者にすごくごねたり恫喝したりとかして処方を要求したりとかする人たち、あるいは、大切な家族を裏切り、仕事を犠牲にしても薬物を使い続ける人たち、それが私たちが日々、依存症専門外来で診ているベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存症なんです。 常用量依存の人には、身体依存はありますが、精神依存はありません。医者から言われたとおりきちんと病院に行って薬を飲んでいるものの、本人は薬をやめたいと思っている。でも、いざやめようとするとやめられない。その理由が、病気の症状がまだ改善していないからなのか、身体依存が生じてしまっているのかがわからない。だから、本当にその人が常用量依存に陥っているのかどうかがわからないのです。 しかし、誤解しないでいただきたいのですが、私は、常用量依存は薬物依存症ではないから大した問題ではないなどとは考えていません。やはり漫然と飲んでいて高齢になると、若いときには出なかった副作用が急に出てくるものなのです。ですから、とくにデパスのような即効性のあるベンゾジアゼピン受容体作動薬を漫然と処方し続けることは、到底推奨できるものではありません」』、「デパスのような即効性のあるベンゾジアゼピン受容体作動薬を漫然と処方し続ける」、こうした医師の無責任さは大いに問題だ。
・『事故につながりかねない副作用はある  デパス(エチゾラム)の場合、発生頻度はいずれも5%にも満たないが、主な副作用として眠気、ふらつき、倦怠感、脱力感などが報告されている。これらはいずれもぱっと見はそれほど重大なものには思えないかもしれない。 しかし、もし眠気が自動車の運転中や大きな作業中に起これば、人の命が失われる重大な事故につながる可能性もある。また、高齢者ではふらつき、倦怠感、脱力感は転倒による骨折などにもつながる。高齢者の場合、転倒による骨折はその後の寝たきりやその結果に伴う認知症の進行や日常活動の低下などに行き着くこともある。 実際、高齢者医療の専門医が集まる日本老年医学会では、薬による副作用が出やすい高齢者での治療の際に注意すべきことなどをまとめた医師向けの「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」を作成し、この中で副作用の危険性から75歳以上の高齢者や75歳未満でもフレイルと呼ばれる身体が虚弱な状態、あるいは要介護状態の人に対して「特に慎重な投与を要する薬物リスト」を公表している。この中にはデパス(エチゾラム)をはじめとするベンゾジアゼピン受容体作動薬すべてが含まれている。 乱用にまで至らなくとも、事故などにつながる可能性をもつ常用量依存。しかしその実態は把握されず、もしふらつきによる転倒が起きたとしても、それが薬のせいなのかそうでないのかは見分けがつきにくい。それを許容すべきなのかは議論の余地が残ると言えるだろう』、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」は、「高齢者医療の専門医が集まる日本老年医学会」が作成したのはいいが、「デパス」を使う他の科目の医師にも周知徹底するべく、もっと広い学会でも取上げるべきだろう。

第三に、この続きである本年1月17日付け東洋経済オンライン「「魔法のような薬」デパスの減薬に立ち塞がる壁 一筋縄ではいかない常用量依存に苦しむ患者」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/324565
・『メディア関係者と医療者の有志で構成するメディカルジャーナリズム勉強会がスローニュース社の支援のもとに立ち上げた「調査報道チーム」が、全6回にわたる連載で追っている「合法薬物依存」。最終回となる第7回は、一筋縄ではいかないデパス(エチゾラム)の減薬・中止について、現役の医師や薬剤師に話を聞いた。 第1回:合法的な薬物依存「デパス」の何とも複雑な事情(2019年11月29日配信) 第2回:20年間「デパス」を飲み続ける彼女の切実な事情(2019年12月3日配信) 第3回:薬剤師が見たデパス「気軽な処方」が招いた実態(2019年12月6日配信) 第4回:「デパス」に患者も医者も頼りまくる皮肉な実態(2019年12月10日配信) 第5回:田辺三菱製薬「デパス」製造者の知られざる歩み(2019年12月27日配信) 第6回:デパスの取り締まりが「遅すぎた」と言われる訳(2019年12月31日配信) ※本来複数の製薬企業から同一成分の薬が発売されている際の表記では、成分名のエチゾラムを使うのが一般的である。しかし、服用患者も含め世間一般では簡単に覚えやすい「デパス」でその名が広く知られていることが多い。このため以後はエチゾラムではなく「デパス(エチゾラム)」と表記することをあらかじめお断りしておく。 「一度、デパス(エチゾラム)依存になってしまうと離脱はかなり困難になる」精神科医の多くが口をそろえて言う言葉だ。もっとも、デパス(エチゾラム)を含むベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性については、以前と比べ医療従事者への注意喚起も盛んに行われていることもあり、最近では精神科医以外でも新規処方は避けたがる傾向が強いと関係者は口にする。 また、高齢者では数多くの薬を服用する多剤併用により副作用のリスクが高まるという研究報告も多くなり、ベンゾジアゼピン受容体作動薬も含め、漫然と投与が続いている薬は減薬・中止のターゲットになりやすい。ただ、デパス(エチゾラム)の場合、それが一筋縄ではいかないことが多いという。ある若手医師は次のように語る』、「減薬・中止」が「一筋縄ではいかない」とはどういうことなのだろう。
・『医師や薬剤師も苦労するデパス(エチゾラム)の減薬  「多剤併用問題がメディアで報じられることが増えたせいか、高齢の患者さんに減薬を提案すると、多くの場合、基本的には同意してくれます。ところが減薬に同意したはずの患者さんでも、デパス(エチゾラム)を服用している場合にその減薬を提案すると、一気に険しい表情になって『いや、先生、この薬だけは……』となることが多いのが現実です。それまでの和やかな雰囲気が一変して緊迫することすらあります。ああ、これが常用量依存なのだ、と実感する瞬間です。このためデパス(エチゾラム)の減薬・中止は、日常診療で十分な関係が構築されてからでないと提案すらできません」 また、高齢者が入所する介護施設に医師と同行して服薬指導に従事する薬剤師からもデパス(エチゾラム)の減薬・中止には苦労するという声を耳にする。 「デパス(エチゾラム)の減薬・中止を提案すると、ご家族の方から『この薬だけは続けさせてください』と哀願されることもあります。よくよくお話を聞くと、そのご家族がデパス(エチゾラム)を長年服用している半ば常用量依存だったということもあります」(都内の薬局勤務の薬剤師)) 本連載第4回での証言のように高齢者の一部では、あえてデパス(エチゾラム)を減薬・中止はしない現実もある。ただ、デパス(エチゾラム)を含むベンゾジアゼピン受容体作動薬は、長年服用している高齢者では副作用とみられる症状の原因として有力視される種類の薬でもある。 2016年に大阪薬科大学教授の恩田光子氏らが在宅医療に取り組む薬局1890件での約5500人の患者で薬の副作用の状況を調査した結果、副作用の原因として疑われた薬の筆頭は、やはりベンゾジアゼピン受容体作動薬の多くが含まれる睡眠導入薬・抗不安薬の17.9%だった。 また、2005年にイギリス医師会雑誌に掲載された研究では、平均年齢60歳以上の高齢者で不眠症状に対してベンゾジアゼピン受容体作動薬を服用した人とプラセボ(薬効がない偽薬)を服用した人を比較した複数の臨床試験を分析し、プラセボの人に比べ、ベンゾジアゼピン受容体作動薬を服用している人では転倒の危険性が2.6倍、日中の疲れ(倦怠感)を感じることが3.8倍高いとわかった。さらに認知機能障害の危険性が4.6倍も高いとも報告された。 このようなことを鑑みれば、高齢者でも可能ならば、デパス(エチゾラム)のようなベンゾジアゼピン受容体作動薬の減薬・中止に取り組む意義は少なくないだろう。実際、高齢者施設の往診に同行して服薬指導や処方提案を行っている「みんなの薬局東中野駅前店」に勤務する薬剤師の杉本進悟氏は、デパス(エチゾラム)の減薬について次のように語る。 「デパス(エチゾラム)は適応症が多い薬なので、手始めは服用し始めた経緯を確認し、肩こりや腰痛などで服用し始めた場合は痛みの状態、不眠の場合は夜間の睡眠状態などをチェックします。服用開始に至った症状が落ち着いていれば、転倒などのリスクがあることを説明したうえで医師に中止を提案し、同意が得られればそのまま患者さんにも医師あるいは薬剤師から減薬・中止を提案します」』、「2005年にイギリス医師会雑誌に掲載された研究」では、副作用としての「危険性」の高さが顕著だ。厚労省ももっと積極的に動くべきだろう。
・『慎重に減薬を進める介護施設の事情  ただ、介護施設に居住する高齢者でのデパス(エチゾラム)の服用中止を提案する場合はそこで働くスタッフの事情などにも考慮が必要だと杉本氏は語る。 「例えば認知症が進行している高齢者で、睡眠導入薬としてデパス(エチゾラム)を服用している場合、もしその方が減薬で眠れなくなってしまうと、ほかの入所高齢者へのケアができない状況になってしまうこともあります。その場合は、減薬・中止の相談はしにくくなります。 ただ、そのような場合でも長期的に患者さんの様子を見ていくと、『最近は夜間眠れている』、『傾眠(薬の副作用である昼間のうたた寝)傾向がみられる」という状況変化が報告されることはしばしばあります。こうした報告があったときには、すかさず減量・頓服への変更・中止を提案するようにしています」 デパス(エチゾラム)の服用原因となった症状が落ち着いていて、患者の同意が得られた際の減薬・中止手順は、痛みや不安症状で朝昼夕の毎食後に合計1日3回服用している場合は、まずは朝夕の食後のみに減量し、その後は朝の食後のみ、最終的に中止と徐々に行うことが多いという。 また、就寝前の睡眠導入薬として頓服となっていてなおかつ睡眠状態に問題ない場合は、患者本人が不眠症の自覚を持って服用しているかどうかで対応を変える。 「認知症などで何を服用しているか本人がよくわかっていないような状況では単純に中止することもあります。睡眠導入薬服用の自覚があり、睡眠状態も良好ならば、転倒などの危険性など話して減薬を提案しますが、患者さんが同意しない場合もあります。 この場合は医師、看護師、施設スタッフの了解のもと、転倒リスクなどを評価したうえで形状が似たプラセボに変更します。プラセボの場合は副作用は起きないことが前提なので、患者さんのご家族への連絡は事後報告になることが多いですね。 これで問題がなければ、そのままプラセボを服用してもらいながらその中止を目指しますが、実際にはプラセボのまま服用が続くケースは少なくありません。プラセボ変更後に不眠症状が表れてしまう場合は頓服として戻すか、筋弛緩作用の弱いほかの睡眠導入薬に変更するなどの対応をするようにしています」 ちなみに杉本氏によると、プラセボを服用していた患者に対して後に「あれはプラセボでした」と明らかにすることはないという。薬の服用を必要とする症状がないのにデパス(エチゾラム)をやめられない常用量依存について、医師や薬剤師はよく「患者さんにとっては薬が『お守り』状態になっている」と表現する。気づかない間に中身のないプラセボに変更されても服用を続ける人が存在する現実は、まさにこの問題の深刻さを物語っているともいえるだろう。 今回の取材で当事者からはさまざまな声が飛び交った。 「実態がわからない薬物依存症とは必ずしも言いがたい常用量依存」「依存しつつもこの薬で命をつないでいる」「患者はなんでも薬で解決しようとする」「『必要悪』のような薬」 ここでいう「当事者」とは、不眠や痛みを早く改善したい患者だけを指すのではない。症状に苦しむ患者を何とか早く改善してあげたいと考える医療従事者、薬効の高い薬を世に出してブランド力を高めたい製薬企業、発売後に本格化した法規制を担った厚生労働省。 これらステークホルダーたちが、みな課題を解決したいという「善意」を持ちながらも、それぞれに抱える「事情」との兼ね合いの中でどうしても埋められない「空隙」が生まれていた。その空隙を、魔法のように埋めてくれるように見えたのがデパス(エチゾラム)という薬だったのではないか。しかし埋められたように見えたのはうわべだけで、実は、空隙はより深くなってしまっているのかもしれない。 まさに「地獄への道は善意で舗装されている」かのごときだ。この構図の中には、絶対的にも相対的にも正義の味方も悪の化身もいるようには見えない』、「デパス」を黙って「プラセボ」に替えるというのはなかなかいい手のようだ。「地獄への道は善意で舗装されている」とは言い得て妙だ。
・『松本俊彦医師との一問一答  そこで最後にこの問題に長く向き合ってきた国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部長の松本俊彦氏との一問一答で本稿を締めくくりたい(Qは聞き手の質問、Aは松本医師の回答)。 Q:正直、これだけ問題があるデパス(エチゾラム)がなぜ1980年代に発売されてから最近まで30年間も向精神薬の指定を受けずに放置されてきたのかは不思議に思います。 A:やっぱり発売当初は「いいお薬だ」とみんなが思っていたと思います。医師でも飲んでる人が多かった、「夢の薬」でした。頭がぼーっとしないし、肩こりが取れてスッキリして、切れ味がいい薬として重用されていました。筋肉を弛緩させてくれるから、頭痛の中で多い筋緊張性頭痛とか、ある種の腰痛症とか、肩こりとかの症状も和らげてくれます。精神科だけではなく整形外科や内科などいろいろな診療科で処方したいというニーズがありました。 薬を出すと患者さんからも喜ばれる。「あの先生が出してくれた薬はよかった」と、いいお医者さんと見られます。ある意味で医療機関として安定した顧客を得ることができるというところもあったと思います。 「デパス(エチゾラム)まずいよね」というコンセンサスが出始めたのは1990年代の終わりから2000年くらい。一部の医者は内心でそう思ってなんとなく使用を避けていました。公式にデパス(エチゾラム)のことをまずいよねって言い始めたのは多分、私たちが調査データを公表した2010年くらいだと思います。そしてようやく向精神薬指定を受けたということだと思います。 Q:このデパス(エチゾラム)問題は具体的にどのように対処していけばよいのでしょう? A:私は一般内科の医師の研修会などでデパス(エチゾラム)の危険性について話すときに「新規処方はやめましょう」と言いますが、「デパス(エチゾラム)をすでに飲んでる人に処方するな」とは言わなくなっています。これまで診察が5分で終わっていた患者さんが、薬をやめる話をすると1時間も長引いて、結局、薬を出してくれる優しいお医者さんのところに行ってしまう。何も問題が解決しないのです。だから新規に処方しないことしかないかなと思うことがあります。) Q:では現在高齢で服用し続けている常用量依存の可能性のある人についてはどう考えるべきなのでしょう? A:年齢を重ねてさまざまな弊害が出てくる可能性が高まることも事実ですが、デパス(エチゾラム)を服用しながら何のトラブルもなく人生を普通に送っている人もいます。それを若い医師が頑張って薬をやめさせようとしたら、これまでできたことができなくなったとかの事態も生じているのです。 今後は新規に出さないけれども、今飲んでトラブルが出てない人に関しては、もうとやかく言うのはやめようと、私自身は思い始めています。何か問題が生じたときにしっかり関わろうと思っています。実際、この薬は本当に止めづらいのです。 Q:どの程度止めづらいものなのでしょう? A:薬物依存の治療の中で覚せい剤の治療はほとんど入院せずに外来診療できます。しかし、デパス(エチゾラム)のようなベンゾジアゼピン受容体作動薬依存の人は1~2カ月間の入院が必要になります。根気よく薬の量を少しずつ減らし、退院後も外来での治療を継続していきます。 高齢でデパス(エチゾラム)の常用量依存が疑われる人の場合ならば、何か大きな病気をして入院したり手術を受けたりのときはチャンスなんですよ。「ちょっといろいろあるし、麻酔もかけるからお薬整理しようね」と話してデパス(エチゾラム)を整理していくのです。 中には元気になって「また前の薬」って言う人もいますが、「もう歳もとったし実際飲まないで何日間もやれたじゃないですか」など話をして止めるという手法を使っている医師は少なくないと思います』、「「夢の薬」でした。頭がぼーっとしないし、肩こりが取れてスッキリして、切れ味がいい薬として重用されていました。筋肉を弛緩させてくれるから、頭痛の中で多い筋緊張性頭痛とか、ある種の腰痛症とか、肩こりとかの症状も和らげてくれます。精神科だけではなく整形外科や内科などいろいろな診療科で処方したいというニーズがありました。 薬を出すと患者さんからも喜ばれる。「あの先生が出してくれた薬はよかった」と、いいお医者さんと見られます。ある意味で医療機関として安定した顧客を得ることができるというところもあった」、しかし、依存症を治療するには、「デパス(エチゾラム)のようなベンゾジアゼピン受容体作動薬依存の人は1~2カ月間の入院が必要になります。根気よく薬の量を少しずつ減らし、退院後も外来での治療を継続していきます」、恐ろしい魔法の薬のようだ。
・『「治療を短期的な成果だけで考えてはいけない」  Q:そのほかにデパス(エチゾラム)を減らすアプローチは何かありますか? A:実は内科などでデパス(エチゾラム)を出している医師の多くは、より効果が早い薬で症状を改善してあげたいという患者さん思いの優しい先生で、近所でも評判だったりすると思います。その意味ではデパス(エチゾラム)を服用している患者さんの話をもっと丁寧に聞いてあげるとか、本人が困っている問題に関心を持って毎回触れてあげて「頑張ってるね」とねぎらってあげるとかしたらどうでしょう。 患者全員が精神科の認知行動療法を必要としているわけではないのですが、患者さんはちゃんとわかってほしい、認められたいと思っていて、そういう場があれば、薬は減らせると私は思っているのです。ただ、そうなると診察時間が長くなります。たくさんの人が関わっていろんな形で多職種がアプローチすると本当に薬は減りますよ。 Q:私たち患者になりうる立場の人たちも薬への向き合い方が問われるのでしょうか? A:私は新規の患者さんにデパス(エチゾラム)を処方することはありません。その理由はデパス(エチゾラム)がいい薬すぎるから。切れ味がよくて、患者さんの満足度が高い薬なのです。しかし、薬でこんなに楽になる体験をするのは、罪深い気がするのです。薬はいい部分もあるけど悪い部分もたくさんあります。 だから魔法のような薬で夢を見させてしまって、患者さんが薬に幻想を持つようにならないほうが、「しょせん薬はこんなもんですよ」という諦めを持ってもらったほうがいい気がします。同時に私たちは治療を短期的な成果だけで考えてはいけないのだろうと思います。薬を出してこの人はどのようにこの薬から卒業していくんだろうかというイメージを持って薬を出さなければいけない時代になってきていると思います』、常習性のある薬とは、本当に恐ろしいものだ。安易に薬を出す医師には気をつけたいものだ。
タグ:東洋経済オンライン デパス 薬物 現代ビジネス 原田 隆之 (その2)(芸能人の逮捕、続々…ゼロからわかる「薬物依存症」超入門、芸能人「10年以上前から薬物」報道…一体どれくらいの依存度なのか ゼロからわかる「薬物依存症」(後編)、合法的な薬物依存「デパス」の何とも複雑な事情 ズルズルと飲み続ける患者を生んでしまった、「魔法のような薬」デパスの減薬に立ち塞がる壁 一筋縄ではいかない常用量依存に苦しむ患者) 「芸能人の逮捕、続々…ゼロからわかる「薬物依存症」超入門 違法薬物とは何か、なぜ依存するのか」 薬物問題とわれわれの社会 単なる末端の使用者に対しては、できるだけ治療や福祉などのヒューマンサービスを優先し、警察や麻薬取締当局は、薬物の密輸や密売を行っている者の摘発に力を傾けることが、世界的な潮流であり、薬物に関する社会的コストを最低限に抑えることができる方法 違法薬物とは 「麻薬に関する単一条約」 主に植物由来の「伝統的な」薬物を規制するもの 「向精神薬に関する条約」 化学的に合成された比較的新しい薬物を規制するもの 薬物の作用 脳や神経系の働きを抑制するのが「ダウナー」 刺激するのが「アッパー」 違法薬物、たとえば覚せい剤を摂取したときは、これら自然なドーパミン分泌量と比べると、何十倍から百倍近い量が一気に分泌される その後ドーパミンが枯渇してしまうため、大きな不安、抑うつ、焦燥感、イライラ、疲労感などに苛まれることがある。いわゆる禁断症状(離脱症状) 「芸能人「10年以上前から薬物」報道…一体どれくらいの依存度なのか ゼロからわかる「薬物依存症」(後編)」 依存症の診断 国際的な診断基準 依存症の程度を正確に判定するには 嗜癖重症度指標(Addiction Severity Index: ASI)という包括的質問紙 より簡便な質問紙もいくつか開発 薬物の依存性と害の大きさ ヘロインの依存性は、最大の3.00である。それに次ぐのがコカインの2.39、そして第3位はタバコの2.21である。アルコールは1.91、覚せい剤は1.67 20種類の代表的な薬物のうち、最も害が大きいのは、何とアルコールであり、数値は72ポイントとなっている。これは、アルコールが合法であり、入手しやすいこと、広く用いられていることが大きく影響し アルコールは、外傷、犯罪、家族への害、経済的損失が大きく抜きんでている。一方、致死性の害が最も大きいのがヘロインとタバコ 有効な薬物依存対策 有名人が逮捕されるたびに、その個人をいくらバッシングしても、懲らしめても、何の問題の解決にならないのは明らかである。われわれ社会全体の問題として、科学的エビデンスに基づいた医療や公衆衛生の力を総動員し、効果のある対策を取る必要がある メディカルジャーナリズム勉強会 「合法的な薬物依存「デパス」の何とも複雑な事情 ズルズルと飲み続ける患者を生んでしまった」 「合法薬依存」 「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査 「逮捕されない薬物乱用」が4分の1 発売から35年、成分名は「エチゾラム」 神経を鎮静化し、不安や緊張を取り除くという作用を示す薬だ。また、この作用の一環としてベンゾジアゼピン受容体作動薬では、脳内を鎮静化させて眠りを導く「催眠作用」、筋肉の緊張をほぐす「筋弛緩作用」、けいれんを抑える「抗けいれん作用」などがある 精神科、神経内科、心療内科にとどまらず、整形外科、脳神経外科でも比較的よく使われる 服用後の効果出現が早く明確だが時間は短い 高齢になればなるほど処方量は増加 事故につながりかねない副作用はある 「「魔法のような薬」デパスの減薬に立ち塞がる壁 一筋縄ではいかない常用量依存に苦しむ患者」 一度、デパス(エチゾラム)依存になってしまうと離脱はかなり困難になる 高齢者では数多くの薬を服用する多剤併用により副作用のリスクが高まる 減薬・中止 一筋縄ではいかない 医師や薬剤師も苦労するデパス(エチゾラム)の減薬 慎重に減薬を進める介護施設の事情 松本俊彦医師との一問一答 「夢の薬」でした。頭がぼーっとしないし、肩こりが取れてスッキリして、切れ味がいい薬として重用されていました。筋肉を弛緩させてくれるから、頭痛の中で多い筋緊張性頭痛とか、ある種の腰痛症とか、肩こりとかの症状も和らげてくれます。精神科だけではなく整形外科や内科などいろいろな診療科で処方したいというニーズがありました。 薬を出すと患者さんからも喜ばれる。「あの先生が出してくれた薬はよかった」と、いいお医者さんと見られます。ある意味で医療機関として安定した顧客を得ることができるというところもあった 依存症を治療するには、「デパス(エチゾラム)のようなベンゾジアゼピン受容体作動薬依存の人は1~2カ月間の入院が必要になります。根気よく薬の量を少しずつ減らし、退院後も外来での治療を継続していきます」 「治療を短期的な成果だけで考えてはいけない」 薬を出してこの人はどのようにこの薬から卒業していくんだろうかというイメージを持って薬を出さなければいけない時代になってきている
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自殺(その1)(絶望の国 日本は世界一「若者自殺者」を量産している、若者に自殺を考えさせる多くの原因は「いじめ」 「不登校」経験も強く関連 そのとき相談する相手は誰?、若者の死因1位が「自殺」の日本 なぜそんなに生きるのが「辛い」のか) [社会]

今日は、自殺(その1)(絶望の国 日本は世界一「若者自殺者」を量産している、若者に自殺を考えさせる多くの原因は「いじめ」 「不登校」経験も強く関連 そのとき相談する相手は誰?、若者の死因1位が「自殺」の日本 なぜそんなに生きるのが「辛い」のか)を取上げよう。

先ずは、やや古いが、全貌を分かり易く解説したものとして、教育社会学者の舞田 敏彦氏が2016年1月12日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「絶望の国 日本は世界一「若者自殺者」を量産している」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/17058
・『「失われた20年」で若者の自殺が増加  年明け早々物騒な話ですが、日本は自殺大国といわれます。2012年の自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)は23.1で、172カ国で9位です。社会的な統制が強い旧共産圏の国々ほどではないにせよ、先進国の中ではダントツです。 私は、社会病理学を専攻しています。 簡単にいうと、社会の健全度(逆にいうと病気度)を診断しようという学問です。人間の場合、病気かどうかを判断する指標として体温や血糖値などがありますが、社会の健康診断の指標としては、犯罪率や自殺率などがよく使われます。 犯罪率は警察の取り締まりの姿勢によって大きく左右されますので、私は、後者の自殺率がよいと考えています。自殺の原因は個々人で多様ですが、国民のうち自殺者がどれほどいるかという「自殺率」は、まぎれもなく社会の問題を反映しています。 エミール・デュルケムが名著『自殺論』において、自殺率を指標として、19世紀のヨーロッパ社会の病理をえぐり出したことはよく知られています。 さて日本の自殺率ですが、冒頭で述べたように国際的に高い水準にあります。しかし時系列でみると、2003年の25.5をピークとして減少傾向にあり、2014年では19.5まで下がっています(厚労省『人口動態統計』)。近年の自殺防止施策の効果もあるでしょう。 このように国民全体の自殺率は低下しているのですが、年齢層別にみると、これとは反対に上昇しているグループがあります。 それは若年層です。 15~24歳の自殺率は、90年代以降ずっと上がり続けています。しかもそれは、日本の特徴のようです。図1をご覧ください。 日本の若者の自殺率は、この20年間でトップにのしあがっています。欧米諸国は減少傾向にあるのに対し、日本はその逆だからです。お隣の韓国も、似たような傾向を呈しています。「失われた20年」の困難は、若年層に凝縮されてきたといってもよいでしょう』、少子化に悩む日本で「若者の自殺率」の高さは確かに深刻な大問題だ。
・『50代の自殺者は景気回復の影響で減少  大学生の就職失敗自殺、雇用の非正規化、果ては若者を使いつぶすブラック企業の増殖など、上記のデータを解釈する材料は数多くあります。 ちなみに2014年の20代の自殺原因上位3位は、うつ病、統合失調症、仕事疲れ、となっています(警察庁『2014年中における自殺の状況』)。いずれも、将来展望閉塞や過重労働の蔓延といった社会状況と無関係ではないと思われます。 それは多かれ少なかれ他の年齢層も同じですが、今世紀になって自殺率が上がっているのは若年層だけです。この点を可視化してみましょう。図2は、各年齢の自殺率を折れ線でつないだ、自殺率の年齢曲線です。1999年と2014年のカーブが描かれています。 前世紀の末では、50代の自殺率がべらぼうに高い水準にありました。 97年から98年にかけてわが国の経済状況は急激に悪化し(98年問題)、年間の自殺者が3万人に達したのですが、その多くがリストラの憂き目に遭った中高年男性でした。近年では景気回復もあってか、この山が低くなっています。高齢者の自殺率が減少しているのは、この層に重点を置いた自殺防止施策の効果だと思います。 しかし、現在は若者の自殺だけは増えています。 今後は、自殺防止対策の重点を若年層にシフトする必要があります。雇用機会の拡充をはじめとした自立支援がメインとなるでしょうが、若者の場合、それとは違った視点も求められます。 想像がつくと思いますが、自殺率は失業率と非常に強く相関しています。過去半世紀の時系列データでみると、40~50代男性の自殺率は、失業率と+0.9を超える相関関係にあります。 ところが若年層では、「これから先、生活が悪くなっていく」という意識の割合(希望閉塞率)のほうが、自殺率と強く関連しているのです(拙稿「性別・年齢層別にみた自殺率と生活不安指標の関連」『武蔵野大学政治経済学部紀要』2009年)』、「若者」では「希望閉塞率」が「自殺率と強く関連」、とは興味深い指摘だ。
・『「希望」がなければ、自殺はもっと増える  若者は先行きを展望して生きる存在ですが、それが開けていないことは、大きな苦悩の源泉となるでしょう。このような事実を踏まえるなら、彼らが希望を持てる社会を構築することが重要となります。 凍てつく冬の時期ですが、あと3カ月もすれば桜が咲き、各地で入社式が行われます。そこに出席する新入社員は、さぞ希望に満ち溢れることでしょう。 しかし、そうでない若者もいます(不幸にして就職活動に失敗した者、既卒の非正規雇用者など)。まさに「希望格差」です。自殺に傾きやすいのは、後者であることは言うまでもありません。この層が「やり直し」を図れるようにするのも、重要なことです。 少子高齢化による人材不足もあり、新卒だけでなく第二新卒にも目を向ける企業が増えていると聞きます。新卒だろうが、既卒だろうが、われわれのようなロスジェネだろうが、同じ人間。何も違うところはありません。22歳で全てが決まる「新卒至上主義」のような慣行は、まずもって是正していただきたいものです。 今後、自殺防止対策を打ち出すに際しては、「希望」がキーワードとなるでしょう。2016年が始まりましたが、若者にとって展望が開けた年になることを願います』、「新卒至上主義」は薄らいだようだが、「若者」の自殺は減ってはいないようだ。

次に、昨年3月29日付けで日本財団が掲載した「若者に自殺を考えさせる多くの原因は「いじめ」、「不登校」経験も強く関連。そのとき相談する相手は誰?」を紹介しよう。
https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2019/28707
・『この記事のPOINT!  +日本の若者の4人に1人が自殺念慮を抱え、10人に1人が自殺未遂を経験したことがある +自殺念慮や自殺未遂の原因の多くは「いじめ」、また「不登校」経験も強く関連 +困難に直面した若者に必要なのは、彼らの声にじっくり耳を傾ける姿勢  日本に暮らす18〜22歳の若者のうち、4人に1人が自殺を本気で考えたことがあり、10人に1人が自殺未遂を経験したことがある。そして、その原因の半数が学校問題を占め、さらにその半数は「いじめ」が原因であることが日本財団の調査により判明した。 未来を担う若者たちによる悲しい決断を止めるため、私たちにできることは何だろうか。調査結果をもとに現状をひもとき、解決の糸口を探りたい』、「4人に1人が自殺を本気で考えたことがあり、10人に1人が自殺未遂を経験したことがある。そして、その原因の半数が学校問題を占め、さらにその半数は「いじめ」が原因」、やはり「いじめ」は深刻な問題のようだ。
・『回答した30%の若者が本気で自殺を考えたことがある  日本における若者の死因で最も多いのが自殺ということをご存じだろうか。2018年には1年間で2万598人、1日にすると平均56人が自ら命を絶っている。これは、先進7カ国の中で突出して高く、若者の死因の1位が自殺であるのは日本のみ。この現状を受け、国は2016年に自殺対策基本法を大きく改正し、47都道府県と各市区町村による「自殺対策計画づくり」が義務化された。 そうした背景から、日本財団は長野県および東京都江戸川区と協力し、2016年より「日本財団いのちを支える自殺対策プロジェクト」を開始。自殺に追い込まれてしまう人を減らすための「自殺対策実践モデル」を構築し、実施している。今回は、このプロジェクトの一環として行っている「自殺意識調査」の2018年度における結果を「若者」の回答に絞ってご紹介したい。 まずは18〜22歳の若年層における「自殺念慮(本気で自殺したいと考えたことがあること)」と「自殺未遂(自殺未遂経験があること)」の状況から見ていこう。 男女平均で30%の人が「自殺念慮」を持ったことがあり、11%が「自殺未遂」の経験があると答えている。ただし男女別で結果を見ると、いずれも女性の方が多い。 彼ら、彼女らはなぜ、自殺念慮を持つに至ったのだろうか。その原因を複数回答および自由記述で回答してもらった結果、最も多かったのが「学校問題(48%)」と約半数近くの人が答えた。他には「家庭問題(33%)」「健康問題(24%)」が多く見受けられる。また男女別で結果を見ると、女性の方が12%多く「家庭問題」を原因として挙げている。 自殺未遂の原因を探ると、上位3つは自殺念慮と同様であった。ただし、女性に絞った場合は「家庭問題」が「学校問題」をわずかに上回った。 48%の若者が苦しんでいる「学校問題」とは、具体的に何を指しているのだろうか。自由記述で回答してもらったところ、49%が「いじめ」における他者からの身体的・精神的被害を原因としていた。自殺念慮を持ち、自殺未遂を経験している4人に1人が答えていることから、若者にとって「いじめ」問題は非常に深刻と言える。 続いて32%の若者が挙げる「家庭問題」においては、配偶者や両親、子ども、親戚などの親族や元親族など、 家庭に関わる人間関係の不和が原因であると65%が感じていた。若年層の5人に1人に対し自殺念慮や自殺未遂の影響を与えている。 若者にとって深刻な「いじめ」や「家庭不和」が、それだけの理由で自殺念慮や自殺未遂の原因となり得るのかを調べるため、複数の問題を挙げていた人を対象に「いじめ」「家庭不和」と他の問題との複合率を調査した。すると、「いじめ」に関しては複合率よりも単体率が高く22%となった。「いじめ」が若者に大きな影響を与えることが分かる。一方で「家庭不和」の単体率は7%にとどまり、「いじめ」との複合率が12%と最も高かったことも見逃せない。家族や親族との問題を抱えた若者は、学校での「いじめ」問題も同時に抱えているケースが多いと考えられる。) ▽自殺念慮・自殺未遂に強く関連しているのは「不登校経験」(若者にとって学校問題が自殺念慮や自殺未遂の原因の多くにつながることが分かった。そこで今度は、学校関連の出来事と自殺念慮や自殺未遂の関連性を掘り下げてみたい。 1年以内に限らず自殺念慮経験と、学校関連の出来事の関係を見てみよう。前述の通り、自殺念慮経験者は男女平均で30%だった。しかし「学業不振者」に絞れば49%、「学校での人間関係の不和経験者」においては51%と、それぞれ約半数もの若者が自殺念慮を持った経験がある。 さらに「いじめ経験者」の場合は58%、「不登校経験者」にいたっては68%もの若者が自殺を本気で考えたことがあるという。直近の経験のみならず、過去の学校関連のネガティブな経験が自殺念慮と深く結びついていることが分かる。 また自殺未遂の経験も、同様に学校関連のネガティブな経験との関連性が見受けられる。全体の数字で見れば自殺未遂経験者は11%にとどまっているが、「学業不振者」や「人間関係の不和経験者」に絞るとおよそ2倍の22%が自殺未遂を経験している。「いじめ経験者」は24%、「不登校経験者」は31%と、学校問題によってその数字は格段に上がる。 次に1年以上前に起きた学校関連のネガティブな経験と、同じく1年以上前に経験した自殺念慮や自殺未遂の関連性を確認する。すると、「不登校」の経験が自殺念慮、自殺未遂に多大な影響を及ぼすことが分かった。 「不登校」経験者は、経験したことがない若者に比べ、3.3倍の若者が本気で自殺を考えたことがあり、同様に2.5倍の若者が自殺未遂を経験している。 また、未経験者に比べて「いじめ」は2.2倍、「人間関係の不和」は1.5倍の若者が自殺念慮を抱え、自殺未遂に関しては「いじめ」が1.6倍、「人間関係不和」が1.9倍の若者が経験している。 以上のことから、学校関連のネガティブな経験と自殺念慮、自殺未遂の関連性は高く、中でも「不登校」による影響が大きく関係する。ただ、「不登校」そのものが必ずしも原因とは言い切れない。不登校になる背景には「いじめ」や「人間関係の不和」があることも考えられる。 とはいえ、不登校状態や不登校経験が、自殺念慮や未遂に対し高いリスクを背負っていることが分かった。そのような状況にある若者に対して適切な見守りや配慮を行うことで、最悪の結果を回避できる可能性も見えた。 また「転校」をした場合の自殺念慮、自殺未遂のリスクが低減していることにも注目したい。不登校状態の場合は無理に1つの学校に通わせるのではなく、別の学校もしくはそれに代わる居場所を提供するといった解決方法も有効と言えるだろう』、「不登校状態や不登校経験が、自殺念慮や未遂に対し高いリスクを背負っている」、「不登校状態の場合は無理に1つの学校に通わせるのではなく、別の学校もしくはそれに代わる居場所を提供するといった解決方法も有効」、その通りだろう。
・『追いつめられた若者が頼りたいのは、身近で大切な人たち  では実際に困難に直面した際、若者たちは誰に相談しているのだろう。男性は「両親や祖父母」、「学校(時代)の友人」、「恋人」、「カウンセラー・相談員」、「学校(時代)の先生」と続き、女性は「両親や祖父母」、「学校(時代)の友人」、「恋人」、「カウンセラー・相談員」、「学校以外の友人」と続いた。 「不特定多数がみれるサイト」と「会員制サイト」については、「不特定多数がみられるサイト」の相談率の方が高く、なおかつ10 代・20 代、特に女性の特徴的な相談先と言える。しかし、相談率自体は0〜4%であり、「学校(時代)の友人」、「恋人」、「学校(時代)の先生」、「カウンセラー・相談員」に比べるとかなり低かった』、「「不特定多数がみられるサイト」の相談率の方が高く、なおかつ10 代・20 代、特に女性の特徴的な相談先」、相談ではなく自殺を幇助する悪質なSNSの毒牙に若い女性がかかる事件も相次いでいる。
・『今後、若者の自殺対策に必要な取り組みとは?  これらの現状を踏まえ、日本財団では官民連携での協力体制を作り、若者を主とする自殺対策を検討している。その内容について、日本財団国内事業開発チームの児玉渚(こだま・なぎさ)さんにお話を伺った。 「東京都江戸川区では、『SOSの出し方教育』に力を入れています。恥ずかしいことじゃないから、辛くなったら誰かに相談してほしいと、子どもたちに伝える取り組みです」 具体的には、区立小中学校全校の子どもたちにはお守り型の「相談先一覧表」を配布。手渡す際に「相談先に迷ったら私に言ってね」と配布者が声を掛けることで、子どもたちが困難に直面した際に相談しやすい地域づくりに注力している。 また、長野県では県内の市町村長を対象に、自殺対策の必要性をアピールするキャラバンを開催した。 「自殺は鬱(うつ)が原因といったイメージが強いことが理由で、福祉分野が対応すべきだと思われることも多いんです。けれど自殺は、貧困や家庭環境のトラブルなど、社会全体で取り組むべき課題が要因にあることも多々あります」 自殺問題は、当事者意識を持って包括的に解決しなくてはならない。それを県のリーダーに理解してもらうことで、県全体で取り組みやすい環境をつくることが狙いであったと言う。 そんな活動を手掛ける児玉さんに、今後若者の自殺対策に必要な取り組みについて聞いたところ、「自殺未遂に関して言えば、まず傷ついた心身の治療を継続的に行える仕組みです。これまでの調査で分かったことの1つが、若年層に限らず、一度自殺未遂を経験している方はそれを繰り返している場合が多いということです。例えば薬物の過剰摂取で病院へ搬送されたとします。その際治療は施しても、自殺の原因までは対処されないため、自殺未遂を繰り返してしまうのです」と言う。 自殺まで追い込まれてしまう人のほとんどが、複数の原因を抱えているという。仕事に疲れて転職した先がブラック企業で、さらに借金を抱えてしまい…というように、さまざまな事柄が重なり、人は追い込まれるそうだ。 「そこで必要なのが、心身のサポートのノウハウを持ち合わせている訪問看護師などといった支援職の協力です。自殺未遂者の元へ通いながら、身体的なケアに加え、自殺を考える原因への対応を続けることで、自殺未遂の再発は防止できるかもしれません」 また調査の結果、自殺念慮のある若者が考える相談相手の大半が、身近な人物であったことも対策のヒントになったそうだ。 「友人や家族、恋人に『リストカットしてしまった』と相談された時、どのように接すれば良いのか分からない方も多いと思います。そこで、電話やチャットを活用して『相談を受ける側』へノウハウを伝授するサポート体制を構築できたらと思っています。学校問題に悩む若年層から相談を受けることの多い、先生などの支援職の方にも役立つはずです」 さらに「いじめ」や「不登校」を経験した若者がやり直せる社会をつくることも重要だと児玉さんは語る。 「学校へ行くことが苦痛になった子どもたちに、別の方法で社会と関われるセカンドチャンスを提供する。そんな居場所があれば、きっと多くの子どもの支えになると思うんです」 とは言え、最も必要なのはやはり周りにいる大人たちのサポートだ。 「悩みを相談されたら、とにかく共感して話を聞いてあげてください。一般常識を押し付けたり、助言をしたりするのではなく、じっくり声に耳を傾けること。自殺を考えるほど追い込まれている若者にとって、自分を分かってくれる存在がいると思えること、それが大きな支えになるのです」〈日本財団第3回自殺意識調査概要〉は紹介省略)』、「『相談を受ける側』へノウハウを伝授するサポート体制を構築できたらと思っています」、確かに重要なカギとなりそうだ。様々な自殺防止の試みが、広がることを期待したい。

第三に、ドイツ在住フリーライターの雨宮 紫苑氏が8月10日付け現代ビジネスに掲載した「若者の死因1位が「自殺」の日本、なぜそんなに生きるのが「辛い」のか ドイツからその「辛い」について考えてみた」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66433
・『日本では10歳~39歳までの死因1位は「自殺」(厚生労働省自殺白書H30年度版)であり、世界で比較してももロシア・韓国とともに「若者の死因自殺率」が高い(厚生労働省「諸外国における自殺の現状」)。 日本ではそんなに生きるのが「つらい」と感じてしまうのだろうか。それはなぜだろうか。 22歳まで日本に生まれ育ち、ドイツにわたった雨宮紫苑さんが自身の体験を踏まえて検証する』、興味深そうだ。
・『なんでそんなに「つらい」のか  ここ最近のトレンドなんだろうか。どうにも、「生きづらい」という言葉を見かけることが多い。「生きづらさを感じる人にエールを贈る」「生きづらい人のサポートをしたい」「生きづらさに負けずにがんばろう」……。 いたるところで気軽に使われている「生きづらい」という言葉は、改めて考えるとなかなか衝撃的だ。仕事がつらいとか人間関係がつらいとかそういうレベルを通り越して、「生きる」のが「辛い」のだから。 実際のデータでも、悲しいことに「生きづらさ」を抱える人の多さがうかがえる。たとえば厚生労働省の統計によると、15~39歳の各年代の死因第1位が自殺だ。 内閣府の『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』では、自分の将来のことについて心配している日本人は78.1%で、心配していない人は21.8%。ちなみにドイツは56.1%と43.9%、アメリカは63.4%と36.6%、スウェーデンは49.1%と50.9%。 『世界幸福度ランキング』では、156か国中日本は58番目。また、以前書いた記事でも紹介したとおり、自分の容姿への満足度は22ヵ国中最下位だ。 こういう統計を見ると、国民性もあるとはいえ、たしかに「人生楽しくてしょうがない!」「充実してる!」「自分が好き!」と迷わず言える人はかぎられているのだろうと思う。 では、いったいなにがそんなに日本人を生きづらくしているんだろう? それはたぶん、「こうすべき」という固定概念だ』、どういうことだろう。
・『日本に生まれ育った私が初めてドイツへ  大学2年生の夏休み、わたしははじめてドイツを訪れた。現地の大学が提供する1ヶ月のサマーコースに参加するためだ。 それまでわたしは、日本人両親のもとに生まれ、日本で育ち、日本語を母語とする日本人としか関わったことがなかった。わたし自身も日本生まれ日本育ちだ。そんなわたしが、ドイツ滞在の1ヵ月間で、世界中からやってきたいろいろな人と出会うこととなる。 就職回避のために片っ端から奨学金を申し込んで各国を留学ハシゴしているオーストラリア人。 5ヵ国語話せる中国人。 留学はカモフラージュで将来の出稼ぎ準備で来たルーマニア人。 留学中でも週末は実家に帰って恋人と会うフランス人。 家賃と生活費が安いドイツに留学するかたちをとって、大好きなスイス旅行に行きまくり授業にまったく来ないアメリカ人 テストに遅刻するのがイヤだから、大学の駐車場で車内泊をしたというチェコ人もいた。出身国を紹介する授業で「チェコのお酒をもってきました」と振舞ったお酒のアルコール度数は、なんと40%! 何気なく飲んだわたしは酔っ払って早退することに……。 そうそう、日本語がとても上手なブルガリア人女性とも仲良くなった。舌ピアス、葉巻を咥え、腕にはがっつりタトゥー。日本だったら絶対に関わらなかったであろうタイプだけど、なぜか気があったのだ。ブルガリアでは誕生日の人がまわりの人にプレゼントをする文化らしく、彼女の誕生日に手作りクッキーをもらった』、「ブルガリアでは誕生日の人がまわりの人にプレゼントをする」、面白い習慣の国もあったものだ。
・『世界は広かった!  年齢も、母語も、文化も、宗教観も、なにもかもがちがう人たち。そんな人たちと出会ったことで、わたしのなかの「こうあるべき」は、たった1ヵ月でことごとく崩れ去った。 なーんだ、大卒でそのまま就職しなくても死にはしないじゃん。海外でも住んでみりゃどうにかなるじゃん。年齢や偏差値なんて日本を出たらだれも気にしないじゃん。いろんな人がいて当然! そう思うようになったのだ。 サマーコースに参加する前のわたしは、「高校を卒業していい大学に行き、大手企業に就職し、結婚して子どもを産む」という未来を漠然と思い描いていた。 でも、世界は広い。そういう生き方だっていいけど、そうじゃない生き方だっていい。どうやって生きていくかは、自分で選ぶもの。大学2年生のわたしは、そんなことすら知らなかった。 日本にはわりと明確な人生の規定路線があって、気がづいたら「多数派」という流れるプールのなかでみんなと一緒に流されていくことが多い。 受験生なら塾に行って勉強しましょう。大学生は早いうちから就活をしましょう。新卒入社したらできるだけ3年は勤めましょう。わたしのようなアラサーの女性は、「結婚」「出産」という使命を果たすことを期待されることも少なくない。 そうやって「当然」を刷り込まれていくうちに、いつのまにかそれ以外の選択肢を削り取られてしまうのだ。まるで、ほかの選択肢なんて存在していないかのように』、殆どの日本の若者は、「「当然」を刷り込まれていくうちに、いつのまにかそれ以外の選択肢を削り取られてしまうのだ」、その通りなのだろう。
・『押し付けるの、やめませんか  日本は年功序列がいまだ根強く、学校生活から年齢による上下関係を叩き込まれる。そんななかでは、「一度勤めて大学に入りなおす」「40歳で転職、ゼロからキャリアをスタート」ということはむずかしい。 でも問題は、そういった制度的なことだけでなく、自分のなかの「こうあったほうがいい」を他人に対して「こうすべき」と押し付ける人が多いことだと思う。 たとえば学校の黒髪強制。「30代なのにミニスカートを履くなんてみっともない」と他人のファッションに口を出したり、「結婚したなら旦那さんにおいしい料理つくらないとかわいそうでしょ」と首を突っ込んだりするのもそうだ。 自分は多数派に所属するごくふつうの人間だから、自分の価値観は正しい。そう信じて疑わず、平気な顔で他人に「こうすべき」と言ってくる人が多すぎる! 「多様な価値観を認めます」というスタンスの人も、このご時勢だいぶ増えてきてはいる。でも、自分のなかの規格から外れた人をどう扱っていいかわからず持て余すことはあるだろう。 「60歳で東大合格」という見出しを見ればみんな「すごい!」と誉めそやすが、実際同じゼミにいる60歳の学生に声をかける人は少数ではないだろうか。小学生不登校youtuberを応援したとしても、採用面接で「ずっと不登校で動画を上げていました」と言われたら採用をしぶる人が大半じゃないだろうか。現実なんてそんなものだ。 「こうあるべき」論が強いから、そこからはみ出た人は異物として扱われ、浮いてしまう。だから少数派は、いつだって生きづらさを抱えることになる』、これは日本社会の強い同調圧力と言い換えることも出来、その通りだと思う。
・『「異端者」は「裏切者」じゃない  じゃあ多数派に所属すれば万々歳かというと、そうでもないのもまた問題だ。多数派に所属しているからって、仲間と手を繋いで仲良しこよし、というわけではない。「この場で自分は異物じゃないか?」と常に不安が付きまとう。 お互いを牽制しあって「異端者はいないか?」と目を光らせていることも結構ある。多数派という枠から飛び出すときは、よっぽどうまくやらないと「裏切り者」かのように言われがちだ。 だから、多数派からこぼれてしまわないよう、できるだけ目立たず平凡に生きようと、自分の自由を自分で縛らざるをえない。 というのも、ドイツで暮らすようになってから、「こうだったらいいのになぁ」と口だけで言う日本人がとても多いことに気がついたのだ。「もう少し若ければ」「お金があったら」「家事を手伝う夫と結婚していれば」「5キロやせていれば」「いい大学を出ていれば」……。 ドイツに移住後、「いいなー。わたしも海外住みたい!」となんどもなんども言われた。でも、「住めば?」というと「わたしには無理だよ」と言う。「フリーランスとして働けば楽しいだろうなぁ」と言う人に「じゃあ独立すれば?」と言えば、これまた「現実的には無理だけどね」と返される。 その気になれば実現しそうな理想ですら、「いやいや無理だよ~」「そこまで本気じゃないし(笑)」と諦めて、笑いながら「いいなぁ」と言い続ける。多数派への忖度に慣れすぎていて、自分の可能性を信じられない思考回路になっているみたいだ。 諦めることがあまりにも当然だから、「なんであいつは能天気に夢を追いかけているんだ」「そんなの失敗するに決まってるからやめておけ」と他人の可能性も奪いたくなるのかもしれない。自分だって諦めたんだから、お前も諦めろ、と。 だから多数派も少数派も、みんな息苦しい』、「息苦し」さをここまで具体的に掘り下げたのは、さすがだ。
・『他人と比較して「つらい」なんてナンセンス  ありきたりな着地点ではあるけど、やっぱり「こうあるべき」を減らすことが大切だと思う。というか、「こうありたい」ならともかく、「こうあるべき」なんてだいたいの場合が個人の好みや希望、気のせいでしかない。 世の中には、大学を中退して起業した人、20代半ばから大学に入り直した人、40歳で単身海外移住に挑戦した人がいる。もっと広い世界を見てみれば、自分の固定概念が幻想だとも気づけるのだ。 もちろん法律やら公衆道徳やらは気にしなければならないし、生まれ育った環境によって選択肢も変わるだろう。それでも未来はもっと柔軟に選べるものだと思うし、そうであってほしい。 青臭いかもしれないけど、20歳までまともに海外に行ったことがなく、出版社やメディア関係で働いたこともないわたしが、ドイツで文章を書いて生活できているのだ。ちょっと外に目を向ければ、自由に楽しくやってる人だって案外いるし、テレビで取り上げられるような「オモシロイ人生を送っている人」にあなたがなっちゃえばいい。 「生きづらい」が出発点の社会なんてまっぴらごめんだ。「こうすべき」とお互いの首を絞めてないで、「こういうのもありだよね」「こうなりたいな」という気持ちが尊重されるようになってほしいと思う』、強く同意したい。
タグ:自殺 日本財団 PRESIDENT ONLINE 現代ビジネス 雨宮 紫苑 (その1)(絶望の国 日本は世界一「若者自殺者」を量産している、若者に自殺を考えさせる多くの原因は「いじめ」 「不登校」経験も強く関連 そのとき相談する相手は誰?、若者の死因1位が「自殺」の日本 なぜそんなに生きるのが「辛い」のか) 舞田 敏彦 「絶望の国 日本は世界一「若者自殺者」を量産している」 「失われた20年」で若者の自殺が増加 国民全体の自殺率は低下 15~24歳の自殺率は、90年代以降ずっと上がり続けています 若者の自殺率は、この20年間でトップにのしあがっています。欧米諸国は減少傾向 50代の自殺者は景気回復の影響で減少 希望閉塞率 「希望」がなければ、自殺はもっと増える 「若者に自殺を考えさせる多くの原因は「いじめ」、「不登校」経験も強く関連。そのとき相談する相手は誰?」 日本の若者の4人に1人が自殺念慮を抱え、10人に1人が自殺未遂を経験したことがある 自殺念慮や自殺未遂の原因の多くは「いじめ」、また「不登校」経験も強く関連 困難に直面した若者に必要なのは、彼らの声にじっくり耳を傾ける姿勢 日本に暮らす18〜22歳の若者のうち、4人に1人が自殺を本気で考えたことがあり、10人に1人が自殺未遂を経験 その原因の半数が学校問題を占め、さらにその半数は「いじめ」が原因 回答した30%の若者が本気で自殺を考えたことがある 日本における若者の死因で最も多いのが自殺 先進7カ国の中で突出して高く、若者の死因の1位が自殺であるのは日本のみ 不登校状態や不登校経験が、自殺念慮や未遂に対し高いリスクを背負っている 不登校状態の場合は無理に1つの学校に通わせるのではなく、別の学校もしくはそれに代わる居場所を提供するといった解決方法も有効 追いつめられた若者が頼りたいのは、身近で大切な人たち 今後、若者の自殺対策に必要な取り組みとは? 『相談を受ける側』へノウハウを伝授するサポート体制を構築できたらと思っています 「若者の死因1位が「自殺」の日本、なぜそんなに生きるのが「辛い」のか ドイツからその「辛い」について考えてみた」 なんでそんなに「つらい」のか 日本に生まれ育った私が初めてドイツへ 世界は広かった! 「当然」を刷り込まれていくうちに、いつのまにかそれ以外の選択肢を削り取られてしまうのだ。まるで、ほかの選択肢なんて存在していないかのように 押し付けるの、やめませんか 日本は年功序列がいまだ根強く、学校生活から年齢による上下関係を叩き込まれる 自分のなかの「こうあったほうがいい」を他人に対して「こうすべき」と押し付ける人が多い 学校の黒髪強制 「こうあるべき」論が強いから、そこからはみ出た人は異物として扱われ、浮いてしまう。だから少数派は、いつだって生きづらさを抱えることになる 日本社会の強い同調圧力 「異端者」は「裏切者」じゃない 多数派も少数派も、みんな息苦しい 他人と比較して「つらい」なんてナンセンス 「こうすべき」とお互いの首を絞めてないで、「こういうのもありだよね」「こうなりたいな」という気持ちが尊重されるようになってほしい
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医療問題(その23)(精神病院に4年閉じ込められた彼女の壮絶体験 「入院は社会的制裁、市役所も児相も同意」、「精神病床数」が世界一レベルに多い日本の異様 精神疾患を持つ人の出口戦略を考えるべきだ、人権侵害が蔓延する「ブラック精神科」ついに患者たちの反撃が始まる 来春始動する「精神医療人権ネット」とは) [生活]

医療問題については、昨年11月14日に取上げた。今日は、(その23)(精神病院に4年閉じ込められた彼女の壮絶体験 「入院は社会的制裁、市役所も児相も同意」、「精神病床数」が世界一レベルに多い日本の異様 精神疾患を持つ人の出口戦略を考えるべきだ、人権侵害が蔓延する「ブラック精神科」ついに患者たちの反撃が始まる 来春始動する「精神医療人権ネット」とは)である。

先ずは、本年1月28日付け東洋経済オンライン「精神病院に4年閉じ込められた彼女の壮絶体験 「入院は社会的制裁、市役所も児相も同意」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/326880
・『精神疾患により医療機関にかかっている患者数は日本中で400万人を超えている。そして精神病床への入院患者数は約28万人、精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占めるとされる(数字は2017年時点)。人口当たりで見ても世界でダントツに多いことを背景として、現場では長期入院や身体拘束など人権上の問題が山積している。本連載では日本の精神医療の抱える現実をレポートしていく。 まずは精神科病院の「深い闇」に分け入っていきたい』、どんな「闇」なのだろう。
・『「2度とここから出られないと…」  世間では正月休みが明けたばかりの、1月6日午前10時。米田恵子さん(42歳)は東京都八王子市にある精神科病院「多摩病院」(持田政彦院長)から退院した。2016年2月の入院から、すでに4年近くの歳月が流れていた。 「まだ夢を見ているような感じで、日常のささいなことがすごく幸せです」 退院から10日ほどたった1月半ば。取材に応じた米田さんは、そう笑顔で話した。病院では週に1度しか食べられなかった好物の麺類を好きなときに食べたり、少し夜更かしをしてテレビを見たりすることに、幸せを覚える日々だという。「何よりいちばんの幸せは、家族や友人と自由に連絡が取れることです」。 「逆に今のほうが本当は夢で、目が覚めたらやっぱり現実は閉鎖病棟内のままだった、と想像すると、怖くなって泣き出しそうになります。入院しているときは外で生活しているイメージがまったくできなくて、声を上げても誰も助けてくれず、2度とここから出られないと思ったこともありましたから」 米田さんはそう振り返ったあと、語気を強める。 「この4年間、家族とは面会はおろか、声を聞くことすらかないませんでした。入院当時、中学1年生だった次男は今では高校生。すっかり声変わりしていて成長がうれしい半面、一緒にいられなかった悲しみもあります。人生の貴重な時間を奪った病院のことは、決して許せません」 30代から40代にかけての、この4年間。米田さんが長期入院を余儀なくされた背景にはいったい何があったのか。 米田さんには男の子2人、女の子5人の計7人の子どもがいた。そのうち長女と次女は離婚した夫が親権を有している。2013年1月、地元の八王子児童相談所は、生後数ヵ月の四女を保護した。米田さんがうつ傾向にあり、一時パニック障害を生じ通院していたことから養育が難しいと判断したとみられる。その数日後、四女が救急搬送された病院で急死したと児相職員から告げられた。「乳児突然死」だった。 入院の前年である2015年、彼女にとってショッキングな出来事が相次いだ。1月には生まれたばかりの五女が、ついで9月には三女が、八王子児相に保護されていった。つまり米田さんにとってみれば、その保護下で四女を亡くした児相に、三女と五女も奪われたことになる。 「娘のなかでも、一番長くママをさせてくれた三女が、小学2年生のかわいい盛りに奪われたショックは言葉にできません。このとき以来、自分を責め精神的に追い詰められてしまいました」 その結果、精神安定剤などをオーバードーズ(大量服薬)したことで、2016年2月に多摩病院へ入院することになった』、最近はやるべきことをしない「児童相談所」がやり玉に挙げられているが、本件はやり過ぎのケースのようだ。「四女」が「乳児突然死」、「児相に、三女と五女も奪われた」、となれば、普通の母親でも「精神的に」不安定になるのは当然のことだ。この段階での「多摩病院へ入院」自体はやむを得ないだろう。
・『「あなたのことを信用していません」  「入院当初はすぐに退院できるものだと思っていました」 米田さんは入院から数カ月後には、作業療法のプログラムに参加するなど順調に体調を戻していた。通常はそこから、院内散歩、院外散歩、そして外出、外泊へと少しずつ行動領域を広げ、3カ月程度で退院する患者が多かったためだ。ところが同時期に院内の関係者間で開かれた「退院支援委員会」に出席した彼女は、主治医の言葉に耳を疑った。 「何でも自分の思うとおりになると思わないでください。私はあなたのことを信用していません」 後日、手元に届いた通知には、退院の見通しが立つまで、まだ1年近くかかると記されており、院内散歩すら認められなかった。思った以上に長い入院計画に驚いたのは、入院に同意した米田さんの妹も同様だった。「せいぜい1~2カ月だろうと思ったのでサインしたのに、まさかこんなに長くなるとは思わなかった」。 入院からほぼ1年経つころ、妹は面談した主治医からこう告げられた。「お姉さんの入院は社会的制裁です。退院するとあなたや社会に迷惑をかけることになる。市役所も児童相談所もこれに同意しています」』、「入院は社会的制裁」で「市役所も児童相談所もこれに同意」、犯罪行為に走ったわけでもないのに、「社会的制裁」とは全く理解できない。残された子どもたちを虐待する恐れがある、と判断したのだとしても、そんな根拠薄弱な理由で退院を許可しないのは不当だ。
・『この主治医が米田さんに付けた診断名は「パーソナリティ障害」。実際、主治医からはたびたび、「あなたはほかの患者を支配する『操作性』がある」と指摘されていた。 「統合失調症や認知症の人のなかには、相手との意思疎通や自己主張がうまくできない人がいます。私は病院スタッフの代わりに相談に乗ったり、病院への不満も聞いてそれを伝えたりする役も担っていたので、それが操作的とみられたのかも」。米田さんに思い当たる節は、それしかないという。 「そもそもパーソナリティ障害では通常は入院の適応とはならない。よほど社会的不適応性が大きいとすれば別だが、だとしたら長期入院などできないはずなので、やはり一般的ではない」。以前、別の精神科病院の院長だった、ことぶき共同診療所の越智祥太医師はそう疑問を呈する。 米田さんは4年間のほとんどを、4人の相部屋の病室で過ごした。うち2人が統合失調症で夜中に大声を上げることも多く、不眠に悩まされていた。そうした状況を主治医に訴え睡眠薬の処方を依頼したところ、「あなたは病気ではないから、薬は出さない」と言われたという。 実際、彼女が入院中に服薬していたのは鉄剤と耳鳴りの漢方薬などで、頓服で出されていた精神安定剤は1度も用いることはなかった。向精神薬等の薬物治療は4年間いっさい受けておらず、一般的な作業療法以外の治療プログラムもとくになかった。そのため看護師たちからも「米ちゃん、なんでここにいるの?」「米ちゃん、ぜんぜん病気に見えないんだけど」と不思議がられたという。 「面談した主治医からは、彼女には薬物治療も治療プログラムもないとはっきり言われ、ではなぜ退院できないのかと尋ねたら、『この人は操作的なんです』『人を支配しようとする』と言われ、これではまったく話にならないと感じた」。米田さんの退院を支援してきた、佐々木信夫弁護士はそう振り返る』、『この人は操作的なんです』『人を支配しようとする』と診断する「主治医」こそ精神に異常があるとしか思えない。
・『「4年間で湯船につかったのは数回だけ  閉鎖病棟内の生活においては、制約が多岐にわたる。 入浴は火曜、金曜午前中の週2回だけ。しかも4人一組で入り、制限時間は15分だ。一時は要介護者の入浴介助を男性スタッフが行い、浴室内で鉢合わせすることすらあった。 また男女交代制でその間の湯の交換が途中からなくなったことや、要介護者が湯を汚してしまうこともあり、「家ではぬるま湯で1時間ぐらいリラックスするのが楽しみだったが、4年間で湯船につかったのは数回だけ。頭皮のかゆみが悪化して、せめて手のかからない自立の人だけでも、週3回にしてほしいと交渉したけど駄目でした」。 食事も同様だ。「好物の牛肉やパンはほとんどメニューに入らず、パサついた鶏肉が多くて、あまり口に合わなかった」。代わりに売店で売っているスナック菓子やせんべいなどで空腹を紛らわせることもよくあった。ただし、「開いているのは週3日。またアメやガムなどは職員用に制限されていた」。 夕食後はテレビを見て過ごしたが、それは21時の消灯までだ。「夜9時に寝るなんて小学生以来で、4年近く病院での生活が続いても最後まですぐには眠れませんでした」。 最もつらかったのが、この4年の間、ほとんど外部と連絡が取れなかったことだ。主治医の指示で、友人・知人はおろか、子どもや親族ともいっさいの面会、そして通話すらできなかった。スマートフォンの持ち込みも禁じられたため、メールやSNSでのやりとりもできず、唯一許された外部との通信手段は手紙だけだった。 「刑務所だって直接面会できるのに、それ以下の扱いですね」。妹が主治医にそう詰め寄ると、「そんなことはない」とかわされたという』、「4年間で湯船につかったのは数回だけ」、入浴は精神安定にいい筈だが、制限がひど過ぎる。家族との「面会、そして通話すらできなかった」、禁止に合理的な理由は見出し難く、やはり「制裁」が目的なのだろうか。
・『ごまんとあるケース  インターネットも使えないため、情報収集には苦労したが、それでも患者同士の口コミなどで精神障害者の当事者団体などを知り、めげずに手紙を出し続けたことで、佐々木弁護士ら支援者たちとつながることができた。弁護士との面会は、病院側も制限できない。 さらに米田さんにとって幸運だったのが、昨年春に主治医が代わったことだった。その後、昨年8月には唯一妹とだけは面会や電話が可能となり、9月には病院敷地内での外出、その後は院外外出も可能となるなど、入院から3年半止まっていた時間が、一気に動き出した。 昨年10月からは病院、役所、弁護士、そして米田さんを交えて退院に向けた面談が始まった。家族の元に帰りたいと訴える米田さんに対して、病院と役所はグループホームへの入居を提案するなど、退院こそ認めるものの、あくまで彼女を管理下に置き続けることを求めた。妹や弁護士のバックアップもあり、交渉の末、最終的には自宅への退院が認められた。 「米田さんは自分から声をあげることができたからよかったが、精神科に入院している場合、まず弁護士につながることが非常に難しい。今回弁護士が介入しても、病院側は『社会に迷惑をかける』などと極めて抽象的で法的に根拠のない理由を繰り返し、なかなか話が進まなかった。医師は『まだ不安定だ』などとも言うが、4年近く閉鎖病棟にいればむしろ不安定にならないほうがおかしい」。佐々木弁護士とともに米田さんを支援した佐藤暁子弁護士も、病院側とのやりとりをそう振り返る。 長年、精神障害者の支援活動を行ってきた佐々木弁護士は、「なぜ彼女をこれほど長期に入院させたのか。その理由がわからないという点では、これまで携わった中でも最もひどいケース。ただひどいケースではあるが、同時にごまんとあるケースでもある」と話す。米田さんも「4年間の入院生活でさまざまな患者と会ったが、なぜ入院させられているのかわからない人も少なくなかった」という。 薬物治療も特別な治療プログラムもない中での長期入院、そして「社会的制裁だ」などという主治医の発言、家族との面会も不許可など厳しい行動制限の理由と真意について、多摩病院に取材を申し込んだところ、持田政彦院長名で下記のような書面回答が届いた』、「弁護士のバックアップ」、を受けられたからよかったようなものの、それがなければ、入院が続いていたのだろう。「4年近く閉鎖病棟にいればむしろ不安定にならないほうがおかしい」、その通りだ。
・『病院も市役所も児相も取材拒否  「弊院に入院されていた患者様の件について取材のご依頼を頂きました。しかしながら、弊院では取材はお受けしておりませんので対応できかねます。ご諒解下さいますようお願い致します。」 八王子市役所と八王子児童相談所は、「特定の個人に関する情報は、第三者の方にはお答えできないことになっています」などと回答した。 次回は米田さんを4年にわたり社会から隔離した「元凶」ともいえる、精神科特有の入院制度、「医療保護入院」の問題点について検討していく。(第2回に続く)』、「第2回」は本日まで掲載されてないが、掲載され、内容的にも面白ければ紹介する予定。「病院も市役所も児相も取材拒否」、とは酷い話だ。「米田さん」は損害賠償を提訴できる筈だ。「弁護士」と相談して提訴すれば、事実は明らかになるだろう。

次に、 作家で元東京都知事の猪瀬 直樹氏が1月20日付け東洋経済オンラインに掲載した「「精神病床数」が世界一レベルに多い日本の異様 精神疾患を持つ人の出口戦略を考えるべきだ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/325075
・『日本で精神的な「居場所」を見つけられず、心の病を抱えたり、引きこもりになったりしている人は少なくない。こうした問題を抱えるひとは欧米にも多く存在するが、日本のように医療の世界に「閉じ込める」ことはしていない。病院の外でそれぞれにあった働き方をし、自らの力で社会に役立っている。 ならば日本も欧米先進国を参考にできないか――。『日本国・不安の研究―「医療・介護産業」のタブーに斬りこむ!』著者の猪瀬直樹氏が、医療業界の歪んだ構造にメスを入れ、精神的な病気を抱える人が、自力で社会での役割を担うための方策を提案する』、「猪瀬」氏の東京都知事としての活動は酷いものだったが、この問題ではどういったの「提案」をするのだろう。
・『精神病床数はダントツで世界一  高齢化した親と無職の引きこもり、で生活に行き詰まる現象は「8050(はちまるごーまる)問題」と呼ばれたりし始めている。内閣府が、40歳から60歳で引きこもりにあたる人が全国で61万人と発表したのは、昨年の3月だった。これまで15歳から39歳の引きこもり調査で54万人の推計を出したが、40歳から60歳を調査したのは初だった。 カリタス学園バス停の死傷事件、元農林事務次官の家庭内暴力の息子刺殺事件、吹田市の交番襲撃事件など、連続した3つの事件、さらには「京アニ事件」もそうだが、その背景は一様ではないが、自分の居場所がないがために起こされた事件としては共通項があった。 この内閣府調査で「通院・入院経験のある病気」としては「精神的な病気」を挙げる人が32%、また「関係機関に相談したことがある」が44%、そのうち半数が「病院・診療所」を挙げている。 こうした事件の背景にはさまざまな要因があるけれど、日本の精神医療システムがうまく対応しきれていないことも挙げられよう。図(人口1000人当たり精神病床数の推移・国際比較)をご覧いただきたい。主要な欧米の国々の折れ線グラフは右肩下がりである。) ところが日本は1960年代の高度経済成長の時代から極端な右肩上がりが始まり、まるで持ち家政策が発動されたのではないかと勘違いするような展開になっている。高度経済成長期以前にあった郊外の結核用サナトリウムの転用も一因だった。不治の病と恐れられた結核は抗生物質の発達で治療効果が上がり不必要で空院となり、精神科病棟へ転換して入院患者を埋めるようにした。私宅監置など座敷牢的な処遇からすれば、近代化のプロセスといえなくもない。 ところが入院病床数はそのまま減るどころか増え続けた。1980代から1990年代がピークでその後も微減でしかない。精神病床数(人口1000人当たり)はダントツで世界一なのだ。しかも平均在院日数は1カ月以内の先進国が多いが、日本だけが9カ月と、これもまたダントツである。異様な風景である。 現在、精神疾患による入院患者数は28万人(2017年厚労省調査)、1年以上の入院患者は6割・17万人、5年以上は3割・9万人もいる。明らかに日本独特の課題がある、と診断できる。日本には優秀な精神科医がたくさんいるはずなのに、なぜこうなってしまうのか』、確かに人口当たり「精神病床数」、「平均在院日数」とも「ダントツ」に多いのは異常だ。どんな「日本独特の課題」があるのだろう。
・『ベッド数を多くして稼ぐビジネスモデル  精神科病院に対する日本政府の政策としては「ハンセン病問題」と同根の考え方、19世紀から始まる隔離収容政策があった。ヨーロッパでもこうした隔離収容政策は存在した。だが、すでに図で示したように、入院患者数が激減し始めている。ではこの差はどこにあるのか。 NHK『クローズアップ現代』(2014年7月24日放映)で証言した男性は、1968年、16歳で上京したが職場での慣れない環境や人間関係のストレスから体調を崩し、妄想などの症状があらわれ統合失調症と診断され、都内の精神科病院に入院した。 22歳のときに福島の病院に転院して2011年の東日本大震災で被災するまで、40年間も隔離収容されていた。症状はほとんどない状態であるにもかかわらず、退院させてもらえなかった。これはほんの一例で、あたかも終身刑のような事例はしばしば耳にする。 精神科病院が増えていったのは患者に対する医師・看護師数の比率が低い特例基準があるため、また抗精神病薬などの開発が進み、患者が興奮して暴れるなどということが少なくなり、病床数を増やせば増やすほど経営的に利益が出やすい構造が生まれたのも一因ではある。 精神科病院側では自嘲的に「薄利多売」と評している。通常の一般医療なら月額入院費100万円のところ、精神科月額入院費は約45万円と保険点数が低い。ベッド数を多くして稼ぐビジネスモデルである。) 厚労省は精神科病院の長期入院を減らそうとはしてきた。2004年に「入院医療中心から地域生活中心へ」との理念が示されている。「精神保健医療福祉の改革ビジョン」で「受入条件が整えば退院可能な者約7万人について、10年後の解消を図る」としていたが、33万人が29万人に減ったにすぎない。7万人の目標の半分強、4万人減った程度だった。入院患者が微減に留まっているのは、受け皿がつくられていないからだ。 「精神療養病棟に入院する患者の退院の見通し」(2014年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査)によると、入院患者の半分が、在宅サービスの支援体制が整えば退院可能とされている。そうであるなら受け皿を用意しなければならない。欠けているのは出口戦略である』、「出口戦略」が「欠けている」のは事実だろうが、入院者を確保したい病院側の事情もあるのではなかろうか。
・『新しいスタイルのグループホーム  東京の通勤圏、千葉県八千代市の住宅街に新しいスタイルのグループホームが始まりかけていた。わおん障害者グループホーム(株式会社ケアペッツ)は全国各地にフランチャイズで展開中だが、八千代市の住宅街の空き家7軒で精神障害者、知的障害者などがそれぞれ3人から4人ずつ居住している。 ふつうの一般家庭と変わらない木造2階建ての家の玄関を入ると、犬が1匹、尻尾を振りながら出迎える。どこにでもある家の風景なのだ。玄関の脇に個室が1部屋、リビングとダイニングキッチン、風呂場、トイレ、これは共有スペース。階段を昇った2階に3部屋、ごくふつうの間取りだが、違いは、個室がすべて鍵付きであること、つまりその点はアパートのように独立している。 共有スペースのリビングに4人でいると孤独にはならないし、戻りたいときには各個室に鍵をかけて寝ればよい。男性棟と女性棟は別にしてある。こうした家が、住宅街の中にバラバラに7軒ある。その7軒全体の27人を管理しているサービス管理責任者が1人、生活支援員、世話人、夜間職員を含め7人がスタッフである。 サービス管理者はそれぞれの財布の管理や書類の作成などを生活支援員に手伝ってもらったりしながらこなしており、生活支援員は入居者の必要なサポートをする。世話人は料理や掃除など身の回りの暮らしの支え、夜間職員はダブルワークの会社員や学生が担当している。 生活支援員からつぎの言葉を聞いた。「病院に行きたい、市役所に行きたいという要求があれば同行します。知的障害があると文章が読めなかったり、窓口でうまく説明できなかったりします。書類を書いてあげたりもします」 入居者にはさまざまな障害者がいる。精神障害者、知的障害者、身体障害者、発達障害者。入居者の大半は一般企業の障害者雇用枠で就職している。 例えば宅配便の倉庫で、仕分け作業で就労している知的障害者の男性、また夫のDVで右足の身体障害を抱えているうえに、今度は20歳になった発達障害の息子の暴力で精神障害者(PTSD)となった女性は、就労支援施設に通い地域新聞のポスティングなど軽作業の仕事をしている。 費用の計算をしてみよう。このグループホーム入居の家賃3万7000円、食費2万5000円、日用品3000円、光熱費1万3000円、計7万8000円。家賃補助が国庫から1万円、地方自治体から1万円が利用者に支払われ、自己負担は5万8000円となる。しかし障害者年金6万5000円、就労による収入が別途あるので生活費には余裕が生じる。 グループホームは、利用者4人に対して職員1人の配置基準にしたがえば、7軒のホームに27人がいる場合は、職員数は7人となる。グループホームに支給される事業費は2000億円(「共同生活援助」サービス費)で、入居者27人に対して1人16万円給付されるので432万円、これがグループホームの運営費(人件費含む)である。人件費が月額20万円なら7人で140万円、30万円なら210万円、つまり他の支出を入れても高い利益率が確保できる』、「グループホームに支給される事業費」を払っても、精神病院などでかかる医療費よりは安くなるのだろう。「入居者の大半は一般企業の障害者雇用枠で就職している」、というのはよさそうだ。
・『犬と猫が果たしている大きな役割  グループホームなら精神科病院の入院患者は半分のコストで済む。だが退院がしっかりと社会への通路になっていないと、また舞い戻ってしまう。グループホームは孤独からの帰還のプロセスである。 玄関に犬が出迎えた、と書いた。1軒に1匹の犬がいる。アニマルセラピーによる障害者の癒やし効果がようやく証明されはじめた。このグループホームのリビングでは会話が得意でない精神障害者に対して犬がコミュニティーの中心になっていた。 わが国の人口1億2500万人に対し、全国に犬が約1000万頭、猫が約1000万頭いる。過剰ではないか。殺処分、犬1.6万頭、猫6.7万頭という現実がある。わおん障害者グループホームでは殺処分される前の保護犬・保護猫を動物保護センターから引き取って、各ホームに供給している。 首都圏や大都市圏の郊外には、かつての高度経済成長の時代に造られた庭付き一戸建ての住宅が余っている。八千代市のグループホームはかつてサラリーマンが夢見た小奇麗なマイホームだった。いま空き家は売れない。売れても安く買いたたかれる。そのままだと固定資産税の負担が残る。家賃12万円ほどもらえれば家主は喜んで貸したい心境になる。 医療費削減だけでなく、障害者も健常者も共存できるノーマライゼーションの社会、就労促進、空き家対策、ペット殺処分対策とあわせて、課題先進国・日本の処方箋のひとつがここにある。一石二鳥どころか三鳥、四鳥は、市場の力を借りて成し遂げていけばよいのだ』、説得力に溢れた主張で、同意したい。

第三に、ジャーナリストの佐藤 光展氏が昨年12月15日付け現代ビジネスに掲載した「人権侵害が蔓延する「ブラック精神科」ついに患者たちの反撃が始まる 来春始動する「精神医療人権ネット」とは」を紹介しよう』、どんなものなのだろう。
・『精神医療で傷ついた人々が立ち上がる  患者たちの反撃が始まる──。過剰な投薬や強制入院、身体拘束などで、当然のように人権を侵害されてきた精神疾患の患者たちが、人として当たり前の権利や自由を守るために、自ら立ち上がろうとしているのだ。 舞台は375万都市、横浜。福祉現場でスタッフやボランティアとして働く約300人の患者(ピアサポーター)を核とした患者支援組織「横浜精神医療人権ネット(Yネット)」=仮称=が、来春活動を開始する。 市内の精神科病院を巡回して、入院患者と友達のような関係で接し、医師や家族には言えない悩みを把握する。退院促進や、退院後も患者を孤立させないためのきめ細かな支援を行っていく。また、患者の通報によって不適切な医療行為や人権侵害が発覚した場合は、協力関係にある精神科医や弁護士と連携して、医療機関に説明や改善を求める。 ピアサポーター主体の同種の組織は前例がなく、全国への波及効果が期待される。来年1月26日にはプレイベントとして、「医療者に身体拘束の苦しみを味わってもらう体験会」を計画している。 Yネットは、横浜ピアスタッフ協会(YPS)の組織をベースに誕生する。同協会の約300人のピアサポーターたちは、作業所で通所者を支援する活動などに従事する患者で、現在は病状は安定、寛解しているが、その多くは、回復までの間に精神医療によって著しく傷つけられた経験を持っている。 医師や看護師から暴力や暴言を浴びせられたり、暴れてもいないのに隔離や身体拘束をされたり、誤診や過剰投薬で病状をますます悪化させられたりしたことがあるのだ』、「ピアサポーターたちは、作業所で通所者を支援する活動などに従事する患者で、現在は病状は安定、寛解している」、のであれば、「患者」というより「元患者」のようだ。
・『人権侵害を信じてもらえず…  このような経験や悩みを、患者が行政の相談窓口などに伝えても、「被害妄想」などと症状のせいにされて信じてもらえなかったり、攻撃的な性格だと誤解されて「パーソナリティ障害」という新たなレッテルを貼られたり、「医師の裁量権には踏み込めない」と匙を投げられたりして、著しい人権侵害すらも顕在化しない状態が続いてきた。 これに危機感を抱いたYPSのピアサポーターたちは、患者同士が密接な連携を図り、病院や行政に対して団結し改善を求めることが不可欠だと考えて、専門組織の立ち上げを決めた。 Yネットの設立準備を中心的に進めるピアサポーターの堀合研二郎さん(39)は、大学在学中の22歳の時、被害妄想が表れて精神科を受診した。すると、すぐに統合失調症と診断された。 「当時は、皮膚疾患の影響で眠れない状態が続いていました。今から思えば、極度の疲労で一時的な精神症状が現れたのだと思います」 しかし、この時の主治医は「統合失調症」と決めつけて投薬を続けた。やがて、薬を減らすと症状が強まるようになり、服薬をやめられなくなった。 こうした不適切な診療が原因で、堀合さんは心身の不調が続いて就労できず、精神科病院への入退院を34歳までに4度繰り返した。その過程で、医療スタッフによる度重なる暴言や、安易な身体拘束、薬漬けの苦しみ、任意入院なのに退院できない理不尽さ、などを次々と味わった。 回復のきっかけは、今の主治医と交渉して減薬に成功したことと、それによって副作用が減り、30代半ばにして仕事ができるようになったことだった。仕事を通して多くの仲間ができ、なんでも話せるようになった。すると心が楽になり、1種類の薬で安定して過ごせるようになった』、「主治医」が変わったのは幸運だが、変わらなければ地獄の日々が続いたことになる。健康保険連合会などが、診断書をチェックするようにすれば、無駄な医療費削減、患者の幸福にもつながる筈だ。
・『精神科は「収容所」ではない  堀合さんは現在、作業所スタッフとして働く傍ら、精神科病院の訪問活動も積極的に続けている。「医療職や福祉職は立場上、患者と友達関係になれません。私たちにはそれができる」と堀合さん。野球などのレクリエーションで長期入院の患者と親しくなるうちに「本当は退院したい」という思いを打ち明けられたこともある。働く場所や家を確保して、退院につなげた。この患者は現在、元気に働いている。 「病院を訪問すると、提供しているサービスの質がすぐにわかります。医療スタッフが私たちにもひどい言葉を浴びせてくる病院もある。そういう施設が患者をどのように扱っているか、推して知るべしです」 退院促進というと、症状は安定しているのに地域の受け皿がなく、数十年入院している高齢患者を想像しがちだが、「若くて元気で、入院の必要性など感じないのに、入院期間が数年に及んでいる人も少なくない」と堀合さんは語る。 そのようなケースは、複雑な家庭環境などの環境要因が患者の背景にあることが多く、本来は長期的な入院医療の対象ではない。それなのに精神科病院が、いわば「収容所」として便利使いされているのだ。Yネットでは、こうしたケースについても問題提起を行う方針だ。 プレイベント「医療者に身体拘束の苦しみを味わってもらう体験会」は、精神科医療の身体拘束を考える会(代表・長谷川利夫杏林大学教授)と連携して、来年1月26日、横浜市での開催を計画している。看護師の指導のもと、精神科病院で頻繁に使われるマグネット式拘束具を用いて、医療職や福祉職の希望者に、身体拘束の苦しみや、そのまま放置される恐怖を体験、想像してもらう』、「医療者に身体拘束の苦しみを味わってもらう体験会」は効果がありそうなイベントだ。
・『病院とも良好な関係を築く  Yネットの活動開始は2020年4月を予定している。NPO法人横浜市精神障害者地域生活支援連合会や、弁護士グループなどとの連携も図る。 専用の相談電話を開設し、横浜市内の全精神科医療機関に電話番号の院内掲示を依頼するほか、病院訪問や患者の退院支援を積極的に進める。各病院の対応をネットで公開する計画もある。主な活動資金は、Yネットに関心を寄せる財団などからの助成金で賄う方針だ。 堀合さんは「患者の人権を守り、病状や生活環境を良くしたいという思いは、我々も精神科病院も変わらないはず。病院とは敵対関係ではなく、良好な関係を築きながら、精神医療の改善を求めていきたい」と話している』、今後の活動に期待したい。
タグ:医療問題 東洋経済オンライン 主治医 四女 猪瀬 直樹 現代ビジネス (その23)(精神病院に4年閉じ込められた彼女の壮絶体験 「入院は社会的制裁、市役所も児相も同意」、「精神病床数」が世界一レベルに多い日本の異様 精神疾患を持つ人の出口戦略を考えるべきだ、人権侵害が蔓延する「ブラック精神科」ついに患者たちの反撃が始まる 来春始動する「精神医療人権ネット」とは) 「精神病院に4年閉じ込められた彼女の壮絶体験 「入院は社会的制裁、市役所も児相も同意」」 精神科病院の「深い闇」 「2度とここから出られないと…」 精神科病院「多摩病院」 入院当時、中学1年生だった次男は今では高校生。すっかり声変わりしていて成長がうれしい半面、一緒にいられなかった悲しみもあります。人生の貴重な時間を奪った病院のことは、決して許せません 「乳児突然死」 五女が、ついで9月には三女が、八王子児相に保護 精神安定剤などをオーバードーズ(大量服薬) 多摩病院へ入院 「あなたのことを信用していません」 「お姉さんの入院は社会的制裁です。退院するとあなたや社会に迷惑をかけることになる。市役所も児童相談所もこれに同意しています 診断名は「パーソナリティ障害」 なぜ退院できないのかと尋ねたら、『この人は操作的なんです』『人を支配しようとする』と言われ、これではまったく話にならないと感じた」 「4年間で湯船につかったのは数回だけ 面会、そして通話すらできなかった ごまんとあるケース 4年近く閉鎖病棟にいればむしろ不安定にならないほうがおかしい 病院も市役所も児相も取材拒否 「「精神病床数」が世界一レベルに多い日本の異様 精神疾患を持つ人の出口戦略を考えるべきだ」 『日本国・不安の研究―「医療・介護産業」のタブーに斬りこむ!』 精神病床数はダントツで世界一 カリタス学園バス停の死傷事件、元農林事務次官の家庭内暴力の息子刺殺事件、吹田市の交番襲撃事件など、連続した3つの事件、さらには「京アニ事件」もそうだが、その背景は一様ではないが、自分の居場所がないがために起こされた事件としては共通項があった 平均在院日数は1カ月以内の先進国が多いが、日本だけが9カ月と、これもまたダントツ ベッド数を多くして稼ぐビジネスモデル 新しいスタイルのグループホーム 犬と猫が果たしている大きな役割 グループホームなら精神科病院の入院患者は半分のコストで済む 佐藤 光展 「人権侵害が蔓延する「ブラック精神科」ついに患者たちの反撃が始まる 来春始動する「精神医療人権ネット」とは」 精神医療で傷ついた人々が立ち上がる 横浜精神医療人権ネット(Yネット) 福祉現場でスタッフやボランティアとして働く約300人の患者(ピアサポーター)を核 人権侵害を信じてもらえず 精神科は「収容所」ではない 病院とも良好な関係を築く
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パンデミック(感染症流行)(その1)(「お友達内閣の脆弱さ明らかに」新型肺炎で舛添氏、武漢肺炎「元凶は中国がカナダから盗んだコロナウイルス」説を追う 実験施設からの流出か、「新型肺炎対策」が中国で大きく出遅れた事情 習近平総書記の責任論押さえ込みに躍起) [社会]

今日は、パンデミック(感染症流行)(その1)(「お友達内閣の脆弱さ明らかに」新型肺炎で舛添氏、武漢肺炎「元凶は中国がカナダから盗んだコロナウイルス」説を追う 実験施設からの流出か、「新型肺炎対策」が中国で大きく出遅れた事情 習近平総書記の責任論押さえ込みに躍起)を取上げよう。特に、第二の記事は日本の新聞には出ないような驚くべき内容である。

先ずは、1月31日付け日刊スポーツ「「お友達内閣の脆弱さ明らかに」新型肺炎で舛添氏」を紹介しよう。
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202001310000193.html
・『舛添要一前東京都知事(71)が、新型コロナウイルス拡大にともなう日本政府の対応を厳しく批判し、「お友達内閣の脆弱さを明らかにした」と私見を述べた。 舛添氏は30日、中国・武漢から29日にチャーター機の第1便で帰国した日本人のうち、2人がウイルス検査を拒んだ件についてツイッターで言及し、「ウイルス検査を拒否した乗客に法的には強制できないという安倍首相の答弁は間違っている。『公共の福祉』という憲法の規定がある。法律より憲法のほうが上だ。政府の新型肺炎対応は甘すぎ、感染症の危機管理としては失格だ。厚労相がもっと全体を指揮すべきで、危機管理の素人に任せたらカオスになる」と指摘した。 31日には、「日本が生き残るために、検査を受けないなどという不届き者を許さない政府の姿勢が必要だ。検査を法的に強制できないという安倍答弁を書いた役人は罷免ものだ」と、政府の対応を非難。「新型肺炎は、お友達内閣の脆弱さを明らかにした。嫌いでも能力があれば登用するという才覚があれば、今のような杜撰な対応はなかったはずだ。ゴマすり大臣ばかりでは駄目である。大臣以下、厚労省には危機感がなさすぎる。統一もできない非力な野党に代わって、天が安倍政権に反省を迫っているようだ」とつづった』、憲法の『公共の福祉』を持ち出して、「安倍首相の答弁は間違っている」、さすがだ。マスコミもこうした観点を指摘できなかったのは、情けない。自民党の一部には、緊急事態条項を盛り込むためにも憲法改正を、などと悪乗りする向きもあるようだが、現行憲法の規定も活かせずによくぞ勝手なことを言うものだと、呆れ果てるほかない。

次に、中国鑑測家・中央大学政策文化総合研究所客員研究員の北村 豊氏が2月4日付け現代ビジネスに掲載した「武漢肺炎「元凶は中国がカナダから盗んだコロナウイルス」説を追う 実験施設からの流出か」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70210
・『武漢にはもともとコロナウイルスがあった  武漢市は湖北省の東部に位置し、長江とその最大支流である漢江の合流点にあり、漢口、漢陽、武昌の三鎮(3つの町)から構成されていることから、かつては武漢三鎮と総称されていた。 武漢市統計によれば、2018年末時点における武漢市の常住人口は1108万人で、そのうちの都市部人口は890万人に上り、都市化率は80.3%に達している。常住人口1108万人は全国都市別人口の第8位で、第7位の深?市(1303万人)に次ぐ地位を占めている。 さて、その1108万人もの人口を擁する武漢市の市街区から直線距離でわずか15キロ程の地に、エボラ出血熱のウイルスを含む自然免疫原性ウイルスや、その他新たに発見されたウイルスの研究を行う、中国科学院の「武漢国家生物安全実験室(National Biosafety Laboratory, Wuhan)」(以下「武漢NBL」)が存在するのである。 武漢NBLは、武漢市江夏区に所在する中国科学院病毒(ウイルス)研究所鄭店園区内にあり、西を野湖と青菱湖に、北を黄家湖に、東を湯遜湖に、南を小高い山によって囲まれた場所にあるが、その周囲には多数の村落が存在している。 こうした危険なウイルスを扱う研究施設を人口1000万人超の大都市近郊に建設するということは通常では考えられないことだが、これがまかり通るのが中国という国の現実なのである。 今や武漢市では新型コロナウイルスに起因すると言われる肺炎、通称「武漢肺炎」が蔓延しており、中国政府は人口1108万人の武漢市を封鎖して、武漢肺炎の国内外への感染拡大を抑制しようと懸命な戦いを繰り広げている。 本稿を執筆している2020年1月31日時点における中国政府の公式発表では、中国国内の感染者は9782人、死亡者は213人となっているが、その隠蔽体質から考えて実際の感染者が10万人規模に達している可能性は否定できない。なお、中国国外では25の国・地域において153人の感染者が判明しているが、幸いにも未だに死亡者は発生していない。 ところで、武漢肺炎を引き起こした新型コロナウイルスが発生した場所として疑われているのは、武漢市江漢区にある武漢華南海鮮卸売市場(以下「華南海鮮市場」)で、ここで水産物と並んで販売されていた“野味(野鳥や野獣を使った料理)”の食材である“タケネズミ(竹鼠)”、アナグマや蛇などが新型コロナウイルスを媒介して人に感染させたものと考えられている。 しかし、この華南海鮮市場は上述した武漢NBLの所在地から直線距離で25キロメートル未満の場所にあり、武漢NBL内において、誤って新型コロナウイルスと接触したことで感染した職員が、華南海鮮市場を訪れたことも考えられる。 これはあくまで可能性の話だが、新型コロナウイルスに感染した武漢NBLの職員が華南海鮮市場を訪れて同市場関係者に接触したことにより、市場関係者が新型コロナウイルスに感染し、その人物を介在する形で新型コロナウイルスが人から人へと感染を拡大していったのではないか、という疑いが世界中でもたれている』、「武漢市の市街区から直線距離でわずか15キロ程の地」に「武漢NBL」を建設したというのは、さすが情報統制が行き届いた中国らしい。
・『前例もある  この事は確たる証拠がなく、飽くまで推測の域を出ない話である。しかし、その疑いをもたれるだけの前例が中国にはある。 2002年11月に中国で発生した「重症急性呼吸器症候群(SARS: severe acute respiratory syndrome)」は、当時の新型コロナウイルスによって発症し、2003年7月に終結宣言が出されるまでの約9か月間にわたって、有効なワクチンも治療法もない感染症として世界中を恐怖に陥れた。 2004年4月には、北京市や安徽省でSARSに類似した症状の患者が複数回発生したことがあったという。その詳細は公表されていないが、中国政府「衛生部」は2004年7月に「学生の規則違反によりSARSウイルスが実験室から流出したことが原因だった」との調査結果を発表している。 2003年7月にSARSの終結宣言が出された前後に、当時の武漢市長であった李憲生と中国科学院副院長の陳竺が、細菌やウイルスなどの微生物・病原体などを取り扱う実験室や施設の最高レベルであるバイオセーフティレベル4(BSL-4: biosafety level-4)(以下「BSL-4」)の「生物安全実験室」を建設する計画にゴーサインを出し、中国初のBSL-4実験室を持つウイルス研究施設を武漢市に建設することが決定された。 2004年10月に訪中したフランスのシラク大統領は武漢NBLと命名されたBSL-4ウイルス研究施設の建設を支援する協議書に調印したが、フランスでは、中国がフランスの提供する技術を使って生物兵器を作るのではないかとの反対意見が出されたし、国家情報部門も政府に対して警告を行ったのだった。 この武漢NBLの建設は種々の要因によって先延ばしされたが、フランスと中国が設計を共同で行い、技術と設備をフランスから導入し、建設を中国が担当する形で、2015年1月31日に武漢NBLは竣工した。 2017年2月23日には武漢市を訪問したフランス首相のベルナール・カズヌーヴ(Bernard Cazeneuve)が武漢NBLの開所式に出席してテープカットを行い、2018年1月5日に国家認証を取得したことによって武漢NBLは運営を開始した。 2017年2月23日付の英科学誌「ネイチャー(Nature)」は開所式を控えた武漢NBLについて報じた記事を掲載し、先に述べたSARSウイルスの流出事故や、中国の官僚主義的な隠蔽体質を理由として、武漢NBLが運用開始後に何らかの人的ミスにより毒性を持つウイルスがBSL-4実験室から流出して中国社会にウイルス感染が蔓延し、大規模な混乱が引き起こされる可能性を懸念していたのだ。 現在の武漢肺炎がパンデミックの状況にあることを考えると、この3年前の予測は的中したということになる』、「英科学誌「ネイチャー」」の警告が現実化するとは・・・。
・『コロナウイルスと武漢をつなぐ線  さて、ここで登場するのはカナダ在住のウイルス学者で中国国籍の邱香果である。中国で1964年に生れた邱香果は現在55歳である。学業成績が極めて優秀であった邱香果は1980年に飛び級により16歳で河北医科大学に入学した。1985年に河北医科大学を卒業して医学学士となった彼女は、天津医科大学の大学院へ進み、1990年に同大学院の免疫学修士号を取得した。 1996年に訪問学者として米国へ留学した邱香果は、テキサス州ヒューストンにあるテキサス大学附属MDアンダーソンがんセンターで研究に従事したが、その翌年の1997年にはカナダのマニトバ州へ移動し、マニトバがん治療センターの研究助士になった。 その後、彼女はカナダの国立微生物研究所(National Microbiology Laboratory<略称:NML>)で特殊病原体計画のワクチン開発と抗ウイルス治療部門の責任者になり、これと同時期にマニトバ大学医学・微生物学部の教授を兼任することになった。 こうしてウイルス学者として20年程をNMLで過ごした邱香果は、2018年にNMLの同僚であるゲイリー・コビンジャー(Dr. Gary Kobinger)と共同でエボラ出血熱の治療薬であるZMappを開発し、カナダ総督技術革新賞(GGIA)を受賞した。こうした輝かしい経歴を持つ邱香果はウイルス学者としては世界的に名を知られた存在であるということができる。 ところで、2020年1月末時点では、バイオセーフティレベル4(BSL-4: biosafety level-4)の生物安全実験室は世界24ヵ国・地域に59ヵ所以上が存在しているというが、中国には上述した武漢NBLと中国農業科学院ハルビン獣医研究所の2カ所がある。 BSL-4実験室の運用開始時期は、前者が2018年1月であるのに対して、後者は2018年8月となっている。ちなみに、日本には国立感染症研究所(東京都武蔵村山市)、理化学研究所筑波研究所(茨城県つくば市)の2カ所があり、3カ所目の長崎大学感染症共同研究拠点(長崎県長崎市)は建設中で2021年7月末の竣工予定となっている。 邱香果が所属するNMLは、マニトバ州ウィニペグ市に所在するカナダで唯一のBSL-4の生物安全実験室で、世界的にも知られた権威ある研究所であり、エボラウイルスやエイズウイルス、炭疽菌などを含む人類や動物にとって極めて致命的は(注:正しくは「な」)ウイルスを保管・研究している。 コロナウイルスについても世界的な研究センターである。2012年6月にサウジアラビアの男性(60歳)が発熱、咳(せき)、痰(たん)、呼吸が荒くなるなどの症状を示して、ジェッダ市内の医院で診察を受けた。同医院では病気を特定できなかったが、エジプトのウイルス学者であるアリ・モハメッド・ザキ(Ali Mohamed Zaki)が患者の肺から摘出したサンプルを検査した結果、今まで見たことのないコロナウイルスであることが判明した。 ザキ氏はこのウイルスをオランダのエラスムス大学医学部付属医療センターのウイルス学者であるロン・フーチェ(Ron Fouchier)に提供して見解を求めたが、フーチェ氏は当該ウイルスをカナダのNMLに回して分析を依頼した。これはNMLが長年にわたってコロナウイルスの検査サービスを展開していたからであった』、「邱香果」は確かに世界的な「ウイルス学者」のようだ。
・『昨年起きたウイルス・スパイ密輸事件  2019年7月14日、カナダのメディアは「7月5日に中国出身の著名なウイルス学者である邱香果(Dr. Xiangguo Qiu)とその夫で研究者の成克定(Keding Chang)および中国人留学生1名が王立カナダ騎馬警察(カナダの国家警察)によって、規約違反(policy breach)の疑いでNMLから連行された」と報じた。 2018年12月1日に中国企業「華為技術(ファーウェイ)」の副会長で最高財務責任者(CFO)の孟晩舟は対イラン経済制裁違反の容疑で、米国の要請を受けたカナダ当局によって逮捕されたが、孟晩舟に続く邱香果の逮捕はカナダと中国の外交関係に影響を及ぼす可能性が否定できないとメディアは大きく報じた。 本件に関してカナダのメディアが報じた内容を整理すると、以下の通りになる。 (a) 2019年3月31日、NMLの科学者がカナダ航空会社「エア・カナダ(Air Canada)」の航空機でエボラウイルス、ヘニパウイルス(注:コウモリ由来のウイルスで人に感染する)などが入った貨物を秘密裏に中国・北京市宛に送付した。 (b)2019年5月24日、カナダ政府「保健省」から上記貨物に関する通報を受けたマニトバ州警察当局が、邱香果と夫の成克定に対し捜査を開始した。 (c)上述した7月5日の連行劇を踏まえて、王立カナダ騎馬警察はNMLの職員に対して、「邱香果夫婦はNMLを一定期間離れて休暇を取る」と通告し、同僚たちに彼らと連絡を取らないように警告を与えた。一方、匿名のNML職員によれば、NMLは邱香果夫婦と中国人留学生1名に対し、BSL-4実験室への通行証を取り消した。これより早く、NMLのコンピューター技術者が邱香果の事務室へ入り、彼女のコンピューターを交換した。また、邱香果は定期的に訪問していた中国への旅行日程を取り消した。 (d)この後、NBLは邱香果夫婦を解雇した模様だが、邱香果夫婦および中国人留学生1名が「連行」後にどうなったのかは何も報道がない。「逮捕」というのも一部のメディアが報じたものであり、実際に逮捕されているのか、取調べを受けているのか不明である。なお、定期的に訪中していた際に、邱香果が度々武漢NBLを訪問していたことは間違いのない事実である。 王立カナダ騎馬警察が邱香果夫婦と中国人留学生1名をNMLから連行した表向きの容疑は「規約違反」となっているが、実際は感染力が強く、致死率の高いウイルスや病原体などを中国へ密輸した容疑であり、彼ら3人は中国のためにスパイ行為を働いていたと考えられる。なお、上述したサウジアラビアの男子から採取されて、オランダ経由でNMLに送られて来たコロナウイルスも、邱香果夫婦によって中国へ密輸されたウイルス類の中に含まれた可能性は否定できない』、中国側の狙いは、生物兵器の開発にあるのかも知れないが、それにしても、何故、「邱香果」ともあろう超一流の学者が、密輸に関わったとは不思議だ。
・『人災としてのパンデミック  それではカナダから中国・北京市宛てに航空便で送付された危険な貨物はどこへ行ったのか。カナダ当局は危険な貨物の宛名を把握しているはずだが、この点については無言を貫いている。ただし、受領した貨物の危険性を考えれば、貨物の受領者は速やかに貨物を安全な場所へ送るはずである。 中国国内でこうした感染力が強く、致死率が高いウイルスや病原体などを収容する場所として考えられるのは、上述した武漢NBLと中国農業科学院ハルビン獣医研究所の2カ所しかないが、優先的に考えられるのは中国科学院傘下の武漢NBLであろう。 こう考えると、邱香果夫婦によってカナダNMLから盗まれた危険なウイルスや病原菌などは、北京市から武漢NBLへ送られ、厳重に保管すると同時に研究されていたものと思われる。 それが武漢NBL職員による何らかのミスによりコロナウイルスの一部が外部へ流出し、人から人への感染によって急速に拡大して武漢市全体をパニックに陥れ、武漢市を起点として中国の国内外へ感染を拡大していると考えれば何となく辻褄が合うように思える。 2002年11月から始まったSARS騒動の際も、ウイルスの元凶は広東人が“野味”の食材とするハクビシンだという説が流れ、相当多数のハクビシンが殺処分された。しかし、その後の調査でハクビシンの元凶説は否定され、ハクビシンの「潔白」が証明された。 今回の武漢肺炎でもタケネズミ、アナグマ、蛇などが元凶の容疑をかけられているが、”野味“料理は中国で古くから伝統的に食べられて来たもので、彼らが武漢肺炎を引き起こしたコロナウイルスの元凶とは思えないのである。 上述した仮説が正しいかどうかは永遠に解明されないと思うが、もしも人為的なミスにより新型コロナウイルスが武漢NBLのBSL-4実験室から外部へ流出したというのであれば、全世界の人々に大きな犠牲を払わせる極めて悲しい出来事ということができよう。 それにしても、中国政府の顔色をうかがい、新型コロナウイルスの感染拡大に対する「緊急事態」宣言を1月30日まで先送りした世界保健機構(WHO)の責任は重い。その最大の責任者は元エチオピア保健相のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長だが、出身国のエチオピアに対する中国の巨額援助がWHO事務局長としての判断を狂わせ、武漢肺炎の蔓延を助長するのであれば、早々に自ら事務局長の職を辞任すべきではないだろうか』、「出身国のエチオピアに対する中国の巨額援助がWHO事務局長としての判断を狂わせ」、「WHO事務局長」が中国に遠慮した理由が理解できた。中国政府の面子にかけて秘密を守らせるので、「上述した仮説が正しいかどうかは永遠に解明されないと思う」、というのは残念ながらその通りだろう。

第三に、2月6日付け東洋経済オンライン「「新型肺炎対策」が中国で大きく出遅れた事情 習近平総書記の責任論押さえ込みに躍起」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/328894
・『新型肺炎の震源地である湖北省武漢市が封鎖されてから10日後の2月2日。春節(旧正月)の長期休暇明けを待っていたかのように、浙江省温州市が新たに封鎖された。 「温州みかん」由来の土地とあって日本人にもなじみが深い。武漢と温州は900キロ近く離れているが、その街を封鎖せねばならないほど感染が広がっており、深刻な段階にあることがうかがえる。 武漢市当局が速やかに人から人への感染を認め、対策をとっていれば、ここまで感染は拡大しなかったという批判が中国の内外で高まっている』、「900キロ近く離れている」「温州市が新たに封鎖された」とは事態は深刻だ。
・『武漢市トップがテレビで「公開謝罪」  1月31日には国営中央テレビ(CCTV)に出演した武漢市のナンバーワン、共産党委員会書記である馬国強氏が、名物キャスターである白岩松氏の追及にさらされた。 マスクをつけて現れた馬氏は「もう少し早く厳しい措置をとっていれば、全国各地への影響も小さかったし、党中央や国務院(内閣)にここまで心配をかけずにすんだ」とひたすら謝罪。「習近平総書記、党中央が武漢の人民を忘れず、いつも心にかけ、愛してくださることこそ何にも勝る慰めだ」と結んだ。 地方政府が不手際をしでかした場合、行政のトップ(武漢市の場合は市長)が責任をとらされ、その上に立つ党書記は表に出てこないことが一般的だ。中国のすべてを指導する党は「全能無謬」の存在で、失敗はあってはならないからだろう。 馬氏は2018年に、世界2位の製鉄企業である宝武鋼鉄集団のトップから武漢市書記に転じた大物である。湖北省の党副書記も兼任している。彼が公開謝罪に追い込まれたのは、武漢市長による「問題発言」の影響が大きかったからと思われる。 武漢市の周先旺市長は1月27日、CCTVのインタビューで辞職する意向を示した。同時に「感染症に関する情報は法律上の手続きを経ないと公表できなかった」と述べたが、この言葉が、対策の遅れには中央政府の責任もあるという不満をこめたものだと受け止められたのだ。火の粉を党中央、すなわち習氏に飛ばすわけにはいかないので上司である馬氏が詰め腹を切らされたのだろう。 武漢市の隣に位置する黄岡市も同様に封鎖されているが、同市では予防対策に手抜かりがあったとして党幹部337人が処分を受けた。封鎖されている中で代わりの幹部がいるのだろうかと不安になるが、「現地の幹部に責任をとらせる」という中央の意思の表れとみられる』、「武漢市長による「問題発言」」、恐らく当初、市長が「中央政府」に相談しても、親身に相談に乗らなかった不満があったのだろう。
・『習氏との関係がすべてに優先する  武漢では、党書記がビジネス界出身の馬氏でなく、前任の陳一新氏であったら結果は違ったのではないかとの声があがっている。現在は司法・公安関係を統括する中央政法委員会の秘書長(事務局長)である陳氏は、習氏が浙江省書記であったときに政策ブレーンとして仕えた。 今も習側近の1人として知られ、彼の人脈があれば、中央との情報共有や政策の調整がずっとスムーズだったろうというのだ。これには、習氏とのつながりがすべてに優先する現在の中国の状況を映し出している。 2012年に共産党総書記になってから、習氏はあらゆる重要政策を自分が所管するようになった。重要政策を仕切るためのタスクフォース(領導小組)の組長は、前任の胡錦濤時代は複数の最高幹部に分散していたが、習氏は自ら主要なポストを独占した。 これが改革のスピードを上げると期待されたが、反面で習氏の判断を待たないと何も動かないシステムが出来上がってしまった。習氏との個人的パイプがある場合はスムーズに動くが、そうでないと何も動かない。武漢市で新型肺炎対策が遅れたのは、後者のケースだったとみられる。 では中央での新型肺炎対策が習氏の主導で進んでいるのかというと、少し様子が違う。全体の指揮をとるための「中央新型肺炎対策領導小組」が1月25日に成立したものの、組長はあらゆる権力を集中させてきた習氏でなく、なぜか李克強首相。武漢に現地視察に行ったのも李首相だった。 「新型肺炎対策領導小組」組長の李首相以下、メンバーは9人いる。そのうち3人が習氏の側近として知られる人物だ。丁薛祥・党総書記弁公室主任(習氏の上海市党書記時代の部下)、黄坤明・中央宣伝部長(同じく浙江省党書記時代の部下)、蔡奇・北京市党書記(同)である。 組長の李首相と、副組長の王滬寧氏の2人は共産党の最高指導部の一員である中央政治局常務委員。残りの7人も副首相クラスかそれ以上の高官という重量級の編成だ。メディア・言論統制の最高責任者である王氏がにらみをきかせ、公安部門のトップも加わる一方で、感染症の専門家や発生源である湖北省と関わりのある人物がいない。感染症封じ込めよりも、世論工作や治安の確保を優先している印象がぬぐえない』、「新型肺炎対策領導小組」に「感染症の専門家や発生源である湖北省と関わりのある人物がいない」、こんな段階になっても、政治を優先するとは救いがなさそうだ。
・『習氏は新型肺炎対策に不退転の決意  これはSARS(重症急性呼吸器症候群)が猛威を振るっていた2003年4月に、胡錦濤政権が編成したSARS対策チームのメンバーと比べるとはっきりわかる。このチームが発足する直前には情報隠蔽の責任をとらされて北京市長や衛生部長(大臣)が更迭された。新たに衛生部長を兼任した呉儀副首相を組長とし、残りの13人はそれ以下のランクのテクノクラートだった。その後のSARS退治で評価されたこのチームは極めて実務的なメンバー構成だったのだ。 中国批判の論調が鮮明な香港のアップルデイリー紙は、「習氏が自分で組長にならない、責任の所在があいまいなチームに地方政府の官僚を管理できるのか?呉儀氏が率いたチームにとても及ばないだろう」という識者のコメントを引用している。中国国内からも習氏の責任を問う声があがるが、徹底的に押さえ込まれている。 習氏は2月3日に党常務委員会を開き、これまでの対策の遅れに言及しつつ新型肺炎対策に不退転の決意を示した。一部では「初動対策の遅れを認めた」と報じられているが、中央の責任を明確に認めた言葉はなく、地方政府を引き締めるためのメッセージという印象が強い。これを報じた4日付の人民日報の1面は、新型肺炎との「人民戦争」を国民に呼びかける論説をセットで掲げている。 習氏は2022年に国家主席としての2期目の任期を終える。2018年の憲法改正によって国家主席の任期を撤廃した習氏には「3期目」もありうる。しかし、経済が減速しているなかで新型肺炎の流行を許したことで、必ずしも権力基盤が磐石ではなくなってきた。一極体制が機能不全に陥るリスクがある。 中国の世界経済における存在感は2003年と現在では比較にならない。統治機能の不全から新型肺炎対策が遅れるようなことがあれば、それは中国のみならず世界にとっても不幸としか言いようがない』、こんな有様では、「新型肺炎の流行」抑制は当面、期待できそうにない。日本はとりわけ大きな影響を被るにも拘らず、安倍政権の対応が付け焼刃的なのは残念でならない。
タグ:東洋経済オンライン SARS 日刊スポーツ パンデミック 現代ビジネス 感染症流行 (その1)(「お友達内閣の脆弱さ明らかに」新型肺炎で舛添氏、武漢肺炎「元凶は中国がカナダから盗んだコロナウイルス」説を追う 実験施設からの流出か、「新型肺炎対策」が中国で大きく出遅れた事情 習近平総書記の責任論押さえ込みに躍起) 「「お友達内閣の脆弱さ明らかに」新型肺炎で舛添氏」 日本人のうち、2人がウイルス検査を拒んだ件 ウイルス検査を拒否した乗客に法的には強制できないという安倍首相の答弁は間違っている。 『公共の福祉』という憲法の規定がある。法律より憲法のほうが上だ。政府の新型肺炎対応は甘すぎ、感染症の危機管理としては失格だ。厚労相がもっと全体を指揮すべきで、危機管理の素人に任せたらカオスになる 検査を法的に強制できないという安倍答弁を書いた役人は罷免ものだ 自民党の一部には、緊急事態条項を盛り込むためにも憲法改正を、などと悪乗りする向き 現行憲法の規定も活かせずによくぞ勝手なことを言うものだ 北村 豊 「武漢肺炎「元凶は中国がカナダから盗んだコロナウイルス」説を追う 実験施設からの流出か」 武漢にはもともとコロナウイルスがあった 中国科学院の「武漢国家生物安全実験室(National Biosafety Laboratory, Wuhan)」(以下「武漢NBL」) 武漢市の市街区から直線距離でわずか15キロ程の地 武漢NBL内において、誤って新型コロナウイルスと接触したことで感染した職員が、華南海鮮市場を訪れたことも考えられる 前例もある 学生の規則違反によりSARSウイルスが実験室から流出したことが原因だった」との調査結果を発表 技術と設備をフランスから導入し、建設を中国が担当する形で、2015年1月31日に武漢NBLは竣工 英科学誌「ネイチャー(Nature)」 ARSウイルスの流出事故や、中国の官僚主義的な隠蔽体質を理由として、武漢NBLが運用開始後に何らかの人的ミスにより毒性を持つウイルスがBSL-4実験室から流出して中国社会にウイルス感染が蔓延し、大規模な混乱が引き起こされる可能性を懸念 コロナウイルスと武漢をつなぐ線 カナダ在住のウイルス学者で中国国籍の邱香果 ウイルス学者としては世界的に名を知られた存在 2012年6月にサウジアラビアの男性(60歳)が発熱、咳(せき)、痰(たん)、呼吸が荒くなるなどの症状 今まで見たことのないコロナウイルスであることが判明 昨年起きたウイルス・スパイ密輸事件 邱香果 とその夫で研究者の成克定 および中国人留学生1名が王立カナダ騎馬警察(カナダの国家警察)によって、規約違反(policy breach)の疑いでNMLから連行 容疑は「規約違反」となっているが、実際は感染力が強く、致死率の高いウイルスや病原体などを中国へ密輸した容疑であり、彼ら3人は中国のためにスパイ行為を働いていたと考えられる 人災としてのパンデミック 邱香果夫婦によってカナダNMLから盗まれた危険なウイルスや病原菌などは、北京市から武漢NBLへ送られ、厳重に保管すると同時に研究されていた ”野味“料理は中国で古くから伝統的に食べられて来たもので、彼らが武漢肺炎を引き起こしたコロナウイルスの元凶とは思えない 「緊急事態」宣言を1月30日まで先送りした世界保健機構(WHO)の責任は重い 最大の責任者は元エチオピア保健相のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長だが、出身国のエチオピアに対する中国の巨額援助がWHO事務局長としての判断を狂わせ、武漢肺炎の蔓延を助長するのであれば、早々に自ら事務局長の職を辞任すべき 上述した仮説が正しいかどうかは永遠に解明されないと思う 「「新型肺炎対策」が中国で大きく出遅れた事情 習近平総書記の責任論押さえ込みに躍起」 浙江省温州市が新たに封鎖 武漢と温州は900キロ近く離れている 武漢市トップがテレビで「公開謝罪」 武漢市長による「問題発言」 対策の遅れには中央政府の責任もあるという不満をこめたものだと受け止められた 習氏との関係がすべてに優先する 「新型肺炎対策領導小組」組長の李首相以下、メンバーは9人いる 感染症の専門家や発生源である湖北省と関わりのある人物がいない 習氏は新型肺炎対策に不退転の決意 安倍政権の対応が付け焼刃的
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安倍内閣の問題閣僚等(その11)(萩生田文科相、選挙ポスターめぐる金の不可解 公費負担の仕事受けた業者が選挙時に限り献金、案里議員認めた1億5000万円「安倍マネー」を原資に不正か、小田嶋氏:大臣の謝罪で得をしたのは誰?) [国内政治]

安倍内閣の問題閣僚等については、昨年11月8日に取上げた。今日は、(その11)(萩生田文科相、選挙ポスターめぐる金の不可解 公費負担の仕事受けた業者が選挙時に限り献金、案里議員認めた1億5000万円「安倍マネー」を原資に不正か、小田嶋氏:大臣の謝罪で得をしたのは誰?)である。

先ずは、Frontline Pressが1月15日付け東洋経済オンラインに掲載した「萩生田文科相、選挙ポスターめぐる金の不可解 公費負担の仕事受けた業者が選挙時に限り献金」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/323883
・『選挙の際に立候補者のポスター代金を公費負担する制度をめぐり、「候補者側からの請求金額が過大だ」「水増し請求ではないか」といった疑念がつきまとっている。そのため、地方選挙では住民監査請求が引きも切らない。 この問題に関連し、2017年の衆議院選挙で東京都から選出された現職議員37人(小選挙区と比例復活)の実態を調べたところ、萩生田光一・文部科学相(24区・自民党)は2014、2017年の衆院選において、ポスター印刷を契約した業者からほぼ同時期に政治献金を受けていたことがわかった。 選挙制度に詳しい専門家は「業者と候補者が事前に何かを話し合っていたら詐欺罪になりかねない」と指摘している』、「文部科学相」になろうとする人物がなんとみみっちいことをするのか、と驚かされた。
・『萩生田氏のポスター本業「飲食店経営」が受注  「選挙ポスター公費負担『100万円超』への大疑問」(2020年1月11日配信)で既報のとおり、2017年の東京都から選出されている現職議員37人のうち9人は、公費負担制度で認められた限度額いっぱいを請求している。1枚当たりの単価も印刷枚数も規定の上限だった。 取材記者グループ「フロントラインプレス」が公表資料や情報開示請求で得た公文書を分析したところ、萩生田氏は2014、2017年の選挙の際、地元八王子市内のA社とポスター印刷の契約を結んだ。A社のホームページには事業内容として「デザイン・印刷広告」と記されているものの、本業はパブなど9店舗を経営する飲食業だ。 ところが、A社は実際に印刷をしておらず、この2回の選挙とも、同じ八王子市内の印刷業者B社にポスター印刷を“下請け”発注した。公職選挙法の規定では、法定ポスターには印刷責任者名をポスター表面に記載する必要があり、2014年も2017年も萩生田氏のポスターにはB社の社名が記されている。 このB社は毎年のように萩生田氏側からパンフレットやビラ、講演会ポスターなどの印刷を請け負っている業者だ。では、なぜ、この2度の選挙において萩生田氏側はポスター印刷をB社に直接発注せず、わざわざA社を介する形を取ったのか。 公開資料などによると、2014年の選挙時、A社は萩生田氏と交わした契約に沿って、制度上限額の99.9%に当たる111万9936円を東京都選挙管理委員会に請求した。さらに、2017年には上限額の100%に当たる115万1920円を請求。選挙後にそれぞれの代金は選管からA社に支払われている。 一方、萩生田氏が代表を務める政治団体「自民党東京都第24選挙区支部」には、選挙のあった2014年と2017年に限って、A社からの政治献金があった。2014年は投票日12月14日の5日前の同9日に10万円。2017年は投票日10月22日の3日前に10万円。また、実際のポスター印刷を“下請け”したかたちのB社も2014年と2017年、投票日の前後に計20万円を同じ政党支部に寄付している。 実際にポスターを印刷しない業者が「候補者からポスター印刷を請け負った」として選管に代金を請求する、その業者が選挙とほぼ同時期に候補者側に政治献金する――。こうした行為は法に抵触しないのか。さらに言えば、このケースでは、政治献金は、外形的にはポスター印刷を受注したことの“見返り”にも見える。 総務省選挙課の担当者はこう言う。 「公選法の規定では、国または地方公共団体と請負契約を結んでいる『会社や法人』は、当該選挙に関して寄付ができません。一方、請負契約の相手が『候補者』ならば、献金先がその候補者の政治団体であっても寄付を制限する規定はありません。ただし、公選法以外にも刑法なども当然、適用されるので、そちらに違反するものなら捜査の対象になるでしょう」』、明らかに「公選法の規定」の不備だが、刑法などに触れる可能性があるようだ。「わざわざA社を介する形を取ったのか」、不思議だ。
・『印刷業者からの献金に問題は?議員側「適正に処理」  萩生田氏のケースについて、関係資料を確認できたのは、2017年と2014年の衆院選のみである。それより前の資料は情報公開請求の対象外であり、ポスター印刷を請け負った業者名も確認できない。 ただ、政治団体の経理書類(政治資金収支報告書)を見ると、2012年の衆院選投票日の4日前にA社は10万円を、B社は社長名で計8万円を投票日前後に萩生田氏の政治団体に献金していた。 また衆院選のなかった2010、2011、2013、2015、2016、2018年については、A社とB社は共に衆院選萩生田氏の政治団体に献金したとの記載はなかった。 選挙ポスターの発注とA・B両社からの政治献金について、萩生田氏の事務所はこう回答した。 「選挙運動費用につきましては、法令に従い適正に処理し、その収支を選挙運動費用収支報告書に記載しているところです。また、政治資金につきましても同様に、法令に従い適正に処理し、その収支を報告しているところです」』、少なくとも「2012年」からやっていたようだ。
・『専門家「結託していれば詐欺罪の可能性」  「政治資金オンブズマン」共同代表を務める神戸学院大学法学部の上脇博之教授はこう指摘する。 「仮に候補者と印刷業者が意図的に寄付分を上乗せした高い金額でポスター制作の契約を交わしていた場合は、詐欺罪に該当する可能性もあります。(発注者である)候補者に公金がキックバックのような形で還流していると見えるだけでも、政治的・道義的に問題がある。寄付を受け取るべきではなかったでしょう」 政治資金・選挙資金問題に詳しい日本大学法学部の岩井奉信教授も「一般論として」と前置きしたうえで、こう語った。「仮に候補者と業者が結託し、不当な金額を乗っけて選管に請求して受け取っていたとしたら、詐欺罪に当たる。そもそも、当選議員の中で、税金で賄われるポスター代に4倍も5倍もの開きがあること自体に問題がある。適正な価格はいくらなのか。そこが不透明なままだとしたら、今後も(水増し請求などの)疑いが生まれる余地を残します」』、「ポスター代」は実費ではなく、一律の金額を候補者に渡すことにすれば、こうした不正はなくなる筈だ。

次に、1月24日付け日刊ゲンダイ「案里議員認めた1億5000万円「安倍マネー」を原資に不正か」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/268073
・『安倍首相の「私物化」や「身内びいき」が、ここにも表れている。 昨年7月の参院選で、ウグイス嬢に法定上限の倍額の報酬を支払った公選法違反容疑で広島地検が捜査している河井案里参院議員と河井克行前法相の夫婦の問題で、新たな事実が判明した』、興味深そうだ。
・『夫婦一帯で選挙違反の傍証か  選挙直前、河井夫妻それぞれの政党支部に自民党本部から7500万円ずつ振り込まれていたのだ。わずか3カ月で計1億5000万円。同じ広島選挙区で立候補していた自民党の溝手前参院議員への支給は1500万円というから、ケタ違いの巨額な選挙資金で優遇されていた。 案里議員は23日、1億5000万円もらったことを認め、「違法ではありません」と居直ったが、自民党内からも「聞いたことがない異常な額だ」と驚く声が上がっている。 「河井夫妻『買収』原資は安倍マネー1億5千万円だった」と報じた週刊文春によると、自民党関係者が「肩入れは安倍首相の意向があってこそ」「首相の後ろ盾は絶大で、案里氏は党本部からの『安倍マネー』を存分に使うことができた」などと証言。カネの面だけではなく、少なくとも4人の安倍事務所秘書が広島に入って案里議員の選挙を手伝うなど、案里議員の選挙は安倍首相丸抱えだったという』、法外な「1億5千万円」の他に、「少なくとも4人の安倍事務所秘書が広島に入って案里議員の選挙を手伝う」、とはまさに「安倍首相丸抱え」だ。
・『不正を奨励するような異常な金額  それにしても、1億5000万円ものカネは何に使ったのか。ウグイス嬢の買収だけでは、とても使い切れそうにない。 政治資金に詳しい神戸学院大教授の上脇博之氏が言う。 「選挙運動で使える金額は公選法で上限が定められていますが、1億5000万円は法定選挙費用を大幅に上回る。公示前の政党活動費は含まれないとはいえ、党側が法定選挙費用を上回る資金を振り込んだのは、裏ガネ、買収などなんでもアリの不正選挙を奨励しているようなものです。また、夫の政党支部に7500万円が振り込まれたことにも注目しています。この時期、同じように巨額資金が振り込まれた衆院議員は他にいるのでしょうか。夫婦一体の選挙で、克行氏が不正に関与した傍証になると考えられる。たしかに、党本部から支部への資金交付に上限はないが、政党交付金の原資は税金です。それが特定の候補者に集中して投入され、違法選挙に使われたのなら、自民党の安倍総裁にも説明責任がある。桜を見る会と同様に、政治や選挙の私物化は目に余ります」 河井前法相の「任命責任」だけでは済ませられない問題だ』、公職選挙法違反で立件されるのも時間の問題だろうが、自民党内でもここまでの恣意的な選挙資金配分には異論が強まるだろう。

第三に、コラムニストの小田嶋 隆氏が昨年11月1日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「大臣の謝罪で得をしたのは誰?」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00042/?P=1
・『先週は体調不良のため、おやすみをいただいた。 今週も体調はたいして改善していない。でも、今回は書かないといけないと思っている。自分のためだけではない。この国の未来ために……と、別に恩に着せるつもりはないのだが、おおげさなことを言ってしまった。忘れてください。 萩生田光一文部科学相の「身の丈」発言関連のニュースを眺めつつ、すでにうんざりしている人も少なくないことだろう。 なにしろ報道の量が多いし、その伝え方があまりにもカタにハマっている。そう思って大臣に同情を寄せている人もいるはずだ。 私自身、少なからずうんざりしている。 理由はいくつかある。 第一の理由は、萩生田発言をとらえて、自分が当欄に書くであろう原稿の内容が、あらかじめわかりきっているからだ。 いったいに、原稿を書く人間は退屈を嫌う。私も同じだ。自分が何を書くのかが、あらかじめ見えているタイプの原稿には、なるべくかかわりたくない。 できれば、脱稿するまで自分が何を書くのか見当がつかない原稿の方を書きたいと思っている。その方がずっと執筆意欲を刺激する。 むろん、書きながらあちこちに脱線するタイプのテキストは、そのまま失敗して終わるケースが少なくないのだが、それでも、書き手にとってはその種の扱いにくい原稿に取り組んでいる方がスリルを味わえることはたしかで、だから私は、この10年ほど、あえて自分ながら考えがまとまらないでいるネタをいじくりまわすことを選んでいたりする。 今回は違う。 書き始める前から、何を書くべきなのかが明瞭にわかっている。しかも、どうやって書き進めればよいのかについても手順が見えている。 つまり、執筆は手続きにすぎない。 となると、退屈してしまって、なかなか手をつけることができない。 おかげで、デッドラインが致死的な線に近づいてきている。逆に言えば、締め切りという物理的な圧力を借りないと書き始めることができなかったわけだ。 書くことがはっきりしている理由は、萩生田大臣の失言をめぐる論点が誰の目にも明白だからだ。 わざわざ自分が書くまでもないとさえ思う。誰だってわかっているはずじゃないか、と。 とはいえ、世間には、萩生田発言をめぐる明らかな論点をいまだにとらえきれていない人たちが依然として残っている。 今回はそういう人たちのために書く。 「なにをオダジマがわかりきったことを」と、そう思った人は、読み飛ばしていただいてかまわない。 そうでない人たち、たとえば安倍総理大臣閣下には、できれば熟読をお願いしたい。そして、萩生田発言の何が問題で、どうして人々があんなに憤っているのかについて、ぜひ考えてみてほしい』、「私は、この10年ほど、あえて自分ながら考えがまとまらないでいるネタをいじくりまわすことを選んでいたりする」、あえて困難な方を好むとは、コラムニストとはやはり常人とは違うようだ。
・『萩生田発言について書く前に、ほとんど同じ時期にメディアが取り上げた河野太郎防衛相による「雨男」発言に触れておく。 この二つの発言は相互に無関係なコメントでもあれば、意図にも効果にもほとんどまったく共通するところはないのだが、不幸なことに、ほぼ同じタイミングで「事件化」されたがために、一連の失言として扱われることとなった。 このこと(二つの別々の失言が「閣僚による相次ぐ失言」事案として一括処理されていること)は、事態を見えにくくしているばかりでなく、新聞読者やテレビ視聴者に不必要な腹部膨満感をもたらしている。 実にばかげた事態だと思う。 はじめから説明するのも面倒なので、以下、この2日ほどの間に投稿した自分のツイートを引用する。《河野防衛大臣の「雨男」発言を謝罪に追い込んだのは悪手だと思う。こんなゴミみたいなジョークの揚げ足を取っても、メディアの手柄にはならないし、野党の実績にもならない。ただただ政権側に「メディアの切り取りってウザいよね」という印象を広める絶好の宣伝機会を与えている。バカすぎる。午後6:38 ・ 2019年10月29日》 《河野防衛相の世にもくだらないジョークに鬼の首を取った的な反応を示した結果、同時期の萩生田文科相によるいわゆる「身の丈」発言への追及も同じ「揚げ足取り」と見られてしまっている。萩生田発言は「教育の機会均等」を全否定する深刻かつ重大な暴言だったのに、だ。午後6:47 ・ 2019年10月29日》 《考えの足りない調子ぶっこいた世襲のバカ大臣が、場違いなジョークをカマして赤っ恥をかいた案件と、文部科学行政全般に対して狂った予断を抱いている暴君志向のヤンキー大臣が、格差容認思想を露呈してみせた案件を一緒くたにしてはいけない。バカはバカ。悪は悪。きちんと分けて処理してほしい。午後6:55 ・ 2019年10月29日》 一連のツイートで私が言いたかったのは、単なる「口が滑った」カタチの失言に過ぎない河野防衛相のケースと、看過できない凶悪な本音を思わず露呈してしまった結果である萩生田文科相の暴言では、意味や重さが違うということだ。であるから、今回、これら二つの失言を「新任の大臣の不適切発言」という雑なタグにまとめて同一視して恥じなかったメディアの愚かさには心底から失望した。 河野大臣のスピーチについて申し上げるなら、たしかに、言葉の選び方において無神経だとは思う。 だが、それだけの話だ。「つまらないジョークだった」「センスがなかった」というツッコミも各方面から入っているし、私もたしかにその通りだとは思う。 だが、ジョークがスベった程度のことがいったい何の罪だというのだろうか。 ジョークはスベるものだ。 最高級に洗練されたジョークであっても、それが通じない聴衆の前ではスベることになっている』、「二つの失言を「新任の大臣の不適切発言」という雑なタグにまとめて同一視して恥じなかったメディアの愚かさには心底から失望した」、全く同感だ。悪質な「萩生田文科相の暴言」のインパクトを薄める狙いでは、と疑いたくもなる。
・『万人を爆笑させるジョークが原理的に存在し得ない以上、ジョークは必ずある局面においてスベるものなのであって、だとすれば、スベったことをとらえてジョークの発信者を断罪することは、野暮でしかない。 ばかばかしいにもほどがある。次に「不謹慎」という側面についてだが、たしかに、豪雨災害の当地に赴いた翌日に「雨男」というネタをカマしに行った大臣のチャレンジは、不謹慎と言われても仕方ないものだった。 しかし、では、不謹慎というのは、現職閣僚が記者の前で陳謝せねばならないほどの大罪なのだろうか。 それ以上に、あの場の大臣の不謹慎発言で、実際のところ、被災地の人間が本当に傷ついたのだろうか。 私は必ずしもそうは思わない。 どちらかといえば、記者が、例によって被害者の立場に立ったかのような語法で発言者を追い詰めにかかる常套手段を用いたに過ぎないように見える。 たしかに、河野防衛相のスピーチは適切でもなければ行き届いていたわけでもないし、面白くない上に厳粛でもなかった。 が、スピーチなどというものは、しょせんそんなものだ。 世界中が有意義で上品で目からウロコが落ちるようなスピーチだけで動いているわけでもあるまいし、たかが雨男程度のバカネタをどうして看過できないのだろうか。 本当のところを言うなら、河野大臣のスピーチより、先に引用した私のツイートの方が程度としてはずっとヒドい。何より失礼だし品がない。決めつけ方も一方的だし、表現に遠慮がなさすぎる。その私の罵詈雑言ツイートに比べれば、大臣のほんのちょっとスベったジョークの方がどれほどエレガントであることか、と、私は本心からそう思っている。 なのに、いちコラムニストの極悪卑劣な罵詈雑言はスルーされ、大臣のジョークは断罪される。 おどろくなかれ、「報道ステーション」は、この発言を伝えるにあたって、速報を打ってみせた。 大喜びで獲物に飛びつくサマが目に見えるようだ。 あんまりじゃないか。 新聞各紙も例によって 《河野太郎防衛相は28日、東京都内で開いた自身の政治資金パーティーで「私はよく地元で雨男と言われた。私が防衛相になってから既に台風は三つ」と発言した。災害派遣された自衛隊員らの苦労をねぎらう話の導入としての発言で、会場からは笑いも起こった。ただ相次いだ台風や大雨で多数の死者が出ただけに、発言は軽率だとの批判を浴びる可能性がある。─略─》てな調子で批判を煽りにかかった。 それにしても、「批判を浴びる可能性がある」「批判を呼びそうだ」という定番の記事文体は、新聞を読み慣れた人間の目には 「なあ、みんなで批判を浴びせようぜ」というふうにしか見えないはずなのだが、21世紀にもなって、あいも変わらずこんな書き方を採用していて、新聞社の中の人たちは、読者に見捨てられる可能性を多少とも考慮しないのだろうか』、メディアも表立って安倍政権批判が出来ないので、つまらない些事で、批判をした気になって自己満足に浸っているのだろうか。
・『でなくても、どうしてこういう見え透いた書き方の責任追及で仕事をしたつもりになれるのか、私にはそこのところがどうしてもわからない。 結果として、大臣に陳謝させることができたのだとして、いったい誰が得をするというのだ? 私の見るに、今回のケースでは、得をしたのはあきらかに政権側だ。 なぜというに、政府としては、河野防衛相がどうでもよい失言について潔く陳謝したことで、結果としてより深刻かつ重大な格差容認発言である萩生田文科相のケースの印象を薄めることに成功したからだ。 おそらく、河野大臣は大喜びで謝罪会見に臨んだはずだ。 実際、あの謝罪はたいした失点にならない。むしろ、素早い謝罪対応が得点になっている。 のみならず、 「あー、河野さんも重箱のスミばっかりつついているケツメドのちっちゃいメディアにあれこれいじめられて大変だよね」「野党ってこんなゴミみたいな追及しかできないわけ?」てな調子で、同情が集まる可能性さえ考えられる。 もちろん萩生田大臣も安堵しているはずだ。というのも、本来なら、自らの発言について、釈明と真意の説明を求められるはずのところを、撤回と謝罪という通り一遍の処置で逃げ切れたのは、同じ時期に弾除けになってくれる同僚の大臣がいてくれたおかげだからだ。 バカな話だ。 最後に、萩生田文科相の発言の悪質さについて説明しておく。 あれは、偶然の発言ではない。 テレビ出演の際の長尺の発言から一部を切り取った結果生じたニュアンスの変化による悪質さでもない。 萩生田文科相が、常々考えている自身の教育観をそのままテレビのカメラに向かって語って見せた、そのものズバリの格差容認発言そのものだ。 彼は、記事の中でこう言っている 「それを言ったら『あいつ予備校に通っていてずるいよな』というのと同じ」 そして、「裕福な家庭の子が回数受けてウオーミングアップできるみたいなことがもしかしたらあるのかもしれない」と、現状に経済的な格差による有利不利が存在していることを認めた上で、あらためて 「自分の身の丈に合わせて、2回をきちんと選んで勝負して頑張ってもらえれば」と述べている』、「萩生田文科相が、常々考えている自身の教育観をそのままテレビのカメラに向かって語って見せた、そのものズバリの格差容認発言そのものだ」、鋭い指摘で、その通りだ。
・『これは、どこをどう切り取ったところで、「すでに格差がある以上、これから導入する試験に格差があったところで大きな違いはない」 という格差容認論である点に違いはない。 いや、現実の世の中には、萩生田大臣と同じように、格差が実在することを認識することこそが「現実感覚」でありそれこそが「リアル」だと信じている人はたくさん(というか、日本人の半分以上は萩生田大臣に賛成でしょう)いる。それはわかっている。試験だったり入試だったりが、その格差を前提として実施されていることを「容認」している人間だって、決して少なくないはずだ。のみならず、これから導入される試験にしても、そりゃ当然富裕層に有利なものになるだろうさ、てな調子であらかじめあきらめている日本人も山ほどいるはずだ。 ただ、萩生田発言の問題点は、それを言ったのが、そこいらへんのスナックのカウンターに腰掛けているおっさんではなくて、文部科学行政のトップを担う役割の人間だったところにあるわけで、これはつまり、「軍隊なんだから兵隊が死ぬのは仕方ないよね」と言ったのが元帥閣下でしたみたいな、どうにもならない話であるわけです。 しかも、この話に救いがないのは、萩生田大臣の口吻の裏にうかがえる「格差容認」および「入試関連業務民営化」ならびに「大学入試基準の非学問化」あるいは「大学における研究ならびに学術教育の軽視と産業戦士育成過程の強化」といった諸要素が、そのまま現政権の主要メンバーがかねて抱いている共通の理念そのものだからだ。 いつだったかの当欄でご紹介した安倍首相によるスピーチを再掲しておく。この演説は、いまでも首相官邸のホームページに掲載されている。興味のある向きは全文を熟読してほしい。5年前の言葉だからこそ、いまになって気づかされる部分がいくつかあるはずだ。 平成26年5月6日 OECD閣僚理事会 安倍内閣総理大臣基調演説 平成26年の5月に開催されたOECDの閣僚理事会の席で、世界中のVIPを前に安倍首相は「ある調査では、大学の特許出願のうち、アメリカでは15%程度が新たなビジネスにつながっていますが、日本では0.5%程度しかない。 日本では、みんな横並び、単線型の教育ばかりを行ってきました。小学校6年、中学校3年、高校3年の後、理系学生の半分以上が、工学部の研究室に入る。こればかりを繰り返してきたのです。 しかし、そうしたモノカルチャー型の高等教育では、斬新な発想は生まれません。 だからこそ、私は、教育改革を進めています。学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育を行う。そうした新たな枠組みを、高等教育に取り込みたいと考えています。」と述べている。 「学術研究を深めるのではなく」と、彼は言い、さらに「もっと実践的な職業教育を」と言ってしまっている。 もしかして、現政権の中枢にある人々は、「学問」とか「学術教育」全般に対して憎悪に似た感情を持っているのかもしれない。 そういうふうに考えないと説明がつかない。 体調が良くないので、オチを付けずに終わることにする。 私は特段に学問のサイドに立っている人間ではないのだが、それでも、ここまで教育やら大学やらをコケにされるとやはり気持ちが良くない。 ではまた来週』、「現政権の中枢にある人々は、「学問」とか「学術教育」全般に対して憎悪に似た感情を持っているのかもしれない」、その通りで、嘆かわしいことだ。安倍政権の「高等教育」改革全般について、体系的な批判記事が見つかれば、紹介するつもりである。
タグ:10万円 東洋経済オンライン 週刊文春 日刊ゲンダイ 日経ビジネスオンライン 安倍内閣の問題閣僚等 小田嶋 隆 (その11)(萩生田文科相、選挙ポスターめぐる金の不可解 公費負担の仕事受けた業者が選挙時に限り献金、案里議員認めた1億5000万円「安倍マネー」を原資に不正か、小田嶋氏:大臣の謝罪で得をしたのは誰?) Frontline Press 「萩生田文科相、選挙ポスターめぐる金の不可解 公費負担の仕事受けた業者が選挙時に限り献金」 ポスター代金を公費負担する制度 萩生田氏のポスター本業「飲食店経営」が受注 2014、2017年の選挙の際、地元八王子市内のA社とポスター印刷の契約 本業はパブなど9店舗を経営する飲食業 この2回の選挙とも、同じ八王子市内の印刷業者B社にポスター印刷を“下請け”発注 選挙のあった2014年と2017年に限って、A社からの政治献金 B社も2014年と2017年、投票日の前後に計20万円を同じ政党支部に寄付 政治献金は、外形的にはポスター印刷を受注したことの“見返り” 印刷業者からの献金に問題は?議員側「適正に処理」 専門家「結託していれば詐欺罪の可能性」 「案里議員認めた1億5000万円「安倍マネー」を原資に不正か」 安倍首相の「私物化」や「身内びいき」 夫婦一帯で選挙違反の傍証か 挙直前、河井夫妻それぞれの政党支部に自民党本部から7500万円ずつ振り込まれていた 同じ広島選挙区で立候補していた自民党の溝手前参院議員への支給は1500万円というから、ケタ違いの巨額な選挙資金で優遇 自民党内からも「聞いたことがない異常な額だ」と驚く声 河井夫妻『買収』原資は安倍マネー1億5千万円だった 自民党関係者が「肩入れは安倍首相の意向があってこそ」 「首相の後ろ盾は絶大で、案里氏は党本部からの『安倍マネー』を存分に使うことができた」 少なくとも4人の安倍事務所秘書が広島に入って案里議員の選挙を手伝う 案里議員の選挙は安倍首相丸抱えだった 不正を奨励するような異常な金額 1億5000万円は法定選挙費用を大幅に上回る 公示前の政党活動費は含まれないとはいえ、党側が法定選挙費用を上回る資金を振り込んだのは、裏ガネ、買収などなんでもアリの不正選挙を奨励しているようなもの 「大臣の謝罪で得をしたのは誰?」 萩生田光一文部科学相の「身の丈」発言 河野太郎防衛相による「雨男」発言 ほぼ同じタイミングで「事件化」されたがために、一連の失言として扱われることとなった。 このこと(二つの別々の失言が「閣僚による相次ぐ失言」事案として一括処理されていること)は、事態を見えにくくしているばかりでなく、新聞読者やテレビ視聴者に不必要な腹部膨満感をもたらしている 二つの失言を「新任の大臣の不適切発言」という雑なタグにまとめて同一視して恥じなかったメディアの愚かさには心底から失望した 今回のケースでは、得をしたのはあきらかに政権側だ 萩生田大臣も安堵しているはずだ。というのも、本来なら、自らの発言について、釈明と真意の説明を求められるはずのところを、撤回と謝罪という通り一遍の処置で逃げ切れたのは、同じ時期に弾除けになってくれる同僚の大臣がいてくれたおかげだからだ 萩生田文科相が、常々考えている自身の教育観をそのままテレビのカメラに向かって語って見せた、そのものズバリの格差容認発言そのものだ 萩生田大臣の口吻の裏にうかがえる「格差容認」および「入試関連業務民営化」ならびに「大学入試基準の非学問化」あるいは「大学における研究ならびに学術教育の軽視と産業戦士育成過程の強化」といった諸要素が、そのまま現政権の主要メンバーがかねて抱いている共通の理念そのものだ OECD閣僚理事会 安倍内閣総理大臣基調演説 「学術研究を深めるのではなく」と、彼は言い、さらに「もっと実践的な職業教育を」と言ってしまっている 現政権の中枢にある人々は、「学問」とか「学術教育」全般に対して憎悪に似た感情を持っているのかもしれない
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