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日本の構造問題(その27)(「絶滅する組織」と「生き残る組織」の違い 世界トップ2に選出された経営学者が徹底解説! リタ・マグレイス教授(コロンビア大学ビジネススクール)インタビュー(前編、終身雇用とイエスマン人生 米著名経営学者が「日本企業のジレンマ」を徹底分析! リタ・マグレイス教授(コロンビア大学ビジネススクール)インタビュー(後編)、岸田ブレーンが語る日本経済低迷の「真犯人」 村井英樹首相補佐官が語る「岸田政策」の裏側) [経済政治動向]

日本の構造問題については、5月27日に取上げた。今日は、(その27)(「絶滅する組織」と「生き残る組織」の違い 世界トップ2に選出された経営学者が徹底解説! リタ・マグレイス教授(コロンビア大学ビジネススクール)インタビュー(前編、終身雇用とイエスマン人生 米著名経営学者が「日本企業のジレンマ」を徹底分析! リタ・マグレイス教授(コロンビア大学ビジネススクール)インタビュー(後編)、岸田ブレーンが語る日本経済低迷の「真犯人」 村井英樹首相補佐官が語る「岸田政策」の裏側)である。

先ずは、5月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したニューヨーク在住ジャーナリストの肥田美佐子氏による「「絶滅する組織」と「生き残る組織」の違い、世界トップ2に選出された経営学者が徹底解説! リタ・マグレイス教授(コロンビア大学ビジネススクール)インタビュー(前編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/303242
・『ベストセラー『競争優位の終焉』の著者で、NYのコロンビア大学ビジネススクール教授であるリタ・マグレイス氏。「世界の経営思想家トップ50」の常連であり、2021年にはトップ2に選ばれた。競争優位とイノベーションの権威であるマグレイス教授は、『Seeing Around Corners: How to Spot Inflection Points in Business Before They Happen』(『曲がり角の先を見通す――ビジネスの変曲点を事前に見いだす』未邦訳、2019)の中で、企業の命運は「変曲点」を予見できるかどうかにかかっていると指摘。変曲点を見損なうと「破滅的結末」を迎える、と警告する同教授に話を聞いた(Qは聞き手の質問)、「ビジネスの変曲点を事前に見いだす」とは興味深そうだ。
・『「曲がり角の先」を見通せるリーダーだけが現代の市場で成功を手にできる  Q:教授のベストセラー『競争優位の終焉――市場の変化に合わせて、戦略を動かし続ける』(日本経済新聞出版)の原書が出版されてから約9年。テック企業による既存の業界の「破壊」やパンデミックによって、企業を取り巻く環境は過酷さを増しています。 2019年9月に上梓した『Seeing Around Corners』(『曲がり角の先を見通す』/未邦訳。企業におけるイノベーション研究における第一人者、故・クリステンセン教授が序章を担当した)では、「変曲点」が訪れる前にそれを予見し、その破壊的影響力を生かして自社の戦略的優位を築くことの重要性を、あなたは説いていますね。 (マグレイス氏の略歴はリンク先参照) この変曲点を見いだせるかどうかで、米アマゾン・ドット・コムや米ネットフリックスのように、既存の業界を「破壊」する企業になれるかどうかが決まる、と。変曲点を見いだせなければ、2010年に経営破綻した米ビデオレンタル大手・ブロックバスターのように「破滅的結末」を迎えることになると、あなたは警告しています。「曲がり角の先」を見通せるリーダーだけが、現代の市場で成功を手にできる、と。 ずばり、絶滅しそうな企業の特徴とは何でしょうか? リタ・マグレイス(以下、マグレイス) まず、「変曲点」とは、それまで当然だと思っていた状況が変化し、10倍の影響力を生み出すような大変革が起こる転換点のことです。長期的視野に立った投資に二の足を踏み、短期的視野でしか物事を見ていない企業は、変曲点に気づくことができません。 短期的視野が引き起こす弊害は2つ。まず、市場に出せるようなイノベーションを起こせないこと。次に、短期的視野に立った、間違っている前提に基づく投資決定を招くことです。苦境に陥っている企業は、代案を検討する時間を惜しむものです。 その典型的な例が、米ゼネラル・エレクトリック(GE)です。同社はかつて世界で最も称賛される企業でしたが、四半期ごとの決算を超えた視点に欠けていました。 GEは2015年11月、フランスの重電大手・アルストムのエネルギー事業を買収しました。向こう20年間は、再生エネルギーがコスト競争力のあるエネルギー源にはならないという見通しを立て、化石燃料がエネルギー源として持ちこたえられるという、誤った前提に賭けたのです。世界中の発電所にサービスを提供するというアイデアに基づく、大規模な買収でした。 ところが、GEの見立ては外れ、再生エネルギーの価格は下がり、気候変動対策が一大問題になりました。これは、企業が、到来する「変曲点」を見損なった代表例です。 次に、メディア企業を例に取りましょう』、「変曲点を見いだせるかどうかで、米アマゾン・ドット・コムや米ネットフリックスのように、既存の業界を「破壊」する企業になれるかどうかが決まる、と。変曲点を見いだせなければ、2010年に経営破綻した米ビデオレンタル大手・ブロックバスターのように「破滅的結末」を迎えることになると、あなたは警告」、「GEは2015年11月、フランスの重電大手・アルストムのエネルギー事業を買収」、「向こう20年間は、再生エネルギーがコスト競争力のあるエネルギー源にはならないという見通しを立て、化石燃料がエネルギー源として持ちこたえられるという、誤った前提に賭けた」、「「変曲点」を見損なった代表例」、なるほど。
・『既存の業界を「破壊する企業」と「破壊される企業」の3つの違い  私がコロンビア大学ビジネススクールで教え始めたのは1993年ですが、当時、ビデオメッセージを1億人に届けようと思ったら、大変な労力が必要でした。何人ものスタッフがアナログカメラで撮影し、テープを世界中に郵送しなければなりませんでした。まだデジタル化のはしりで、高速ブロードバンドのインターネット回線などなかったからです。 でも今や、ティーンエージャーが持っている安価な携帯電話にもメッセージを届けられる時代です。メディア企業にとって、ネットに接続できる誰もがライバルと化したのです。 30~40年前、大手テレビ局は1つの番組で60万~70万人の視聴者を魅了したものですが、状況は激変しました。コンテンツの数が増える一方で、視聴者層は、はるかに小規模化しています。人気のある番組でも、もはや60万人の視聴者を獲得することなどできません。 メディア事業全体の「経済学」が一変したのです。 Q:既存の業界を「破壊する企業」と「破壊される企業」の違いは何でしょうか? マグレイス 3つの大きな違いがあります。最大の違いは、「マインドセット」(発想・考え方)です。 2つ目は、リーダー層が、未知の実験に挑む度胸を持っていないことです。 現況はうまくいっていても、挑戦を怠るような「怠け者にはなるまい」という気概が大切です。新しいことを試し続けなければ、と駆り立てられるような「健全なパラノイア」精神とでも言ったらいいでしょうか。 リーダー層のあり方は極めて重要です。成功している企業では、リーダー層が、自分自身の利益と自社の利益のバランスをうまく取っています。でも、多くの企業のリーダー層は、そうではありません。自分たちの利益に固執する一方で、自社がうまくいっているか? 健全か? ということには無頓着です。 3つ目の大きな違いは、自社が属しているエコシステムとの関係をどのようにかじ取りするか? ということです。 多くの企業は、エコシステムとの関係など頭になく、自社のことだけを考えて計画を立てます。エコシステムが付加価値を与えてくれるとは考えないのです。 Q:企業を取り巻く環境が変化にさらされる中、経営陣は、手遅れになるまで問題の存在を認めないことが多いそうですね。経営陣が問題を頑(がん)として認めず、過去の競争優位にしがみつき、最悪の場合、自社を破滅的な結末に至らせるのはなぜでしょう? マグレイス 経営陣が変化の到来を認めたがらない理由はたくさんありますが、第1の理由は、「人間の特性」からくるものです。システムの刷新には「変革」という難題が伴い、新しいスキルや能力が必要になるからです。 2つ目の理由は、多くのリーダーが長期的視野で経営に臨んでいないことです。米国では、最高経営責任者(CEO)の在任年数は5年以下であることが多いため、在任期間以降も続くような変革には挑もうという気にならないのです。 本物の変革は長い年月を要します。5年で交代することが多いCEO には、10年かかるような変革への意欲など湧きません』、「メディア企業にとって、ネットに接続できる誰もがライバルと化したのです。 30~40年前、大手テレビ局は1つの番組で60万~70万人の視聴者を魅了したものですが、状況は激変しました。コンテンツの数が増える一方で、視聴者層は、はるかに小規模化しています。人気のある番組でも、もはや60万人の視聴者を獲得することなどできません」、「米国では、最高経営責任者(CEO)の在任年数は5年以下であることが多いため、在任期間以降も続くような変革には挑もうという気にならないのです。 本物の変革は長い年月を要します。5年で交代することが多いCEO には、10年かかるような変革への意欲など湧きません」、なるほど。
・『企業に求められるのは、許可不要の組織づくりと「ジグザグのキャリア」を持つリーダー  Q:『競争優位の終焉』や、「ハーバード・ビジネス・レビュー」2012年1~2月号に寄稿した「10年連続で好業績を続ける秘訣」(邦訳版はダイヤモンド社2013年1月号)で、あなたは、世界の企業4793社を対象にした研究を紹介しています。 2000~2009年にかけて、10年連続で純利益が年率5%以上増加するという異例の高成長を遂げた「アウトライヤー(外れ値)企業」は10社とのこと。日本企業では、ヤフー株式会社(当時)が入っていました。アウトライヤー企業の特徴として、リーダーシップと企業の価値観が安定していること、そして、たゆまぬイノベーションを挙げていますね。 マグレイス カギは、安定と、未来を見据えたイノベーションの組み合わせです。 絶えず何かを見直すことに、労力を費やす必要はありませんが、イノベーションの追求にどれだけ予算を組むかというダイナミックさも求められます。このバランスの取り方が難題なのです。 秘訣は、「過剰な変革を避けつつも、環境の変化に対応する」ことです。 リーダーは、従業員がイノベーションを目指して行動できるよう、(過剰な変化を抑えて)不確実性を和らげつつ、同時に、さらなる探求を奨励することが必要です。この2つのうち、いずれかを選べばいいという話ではないところがジレンマなのです。 不確実性のレベルが高まるにつれ、従業員が不確実性に立ち向かう後押しをし、「ある程度の確実性」を確保しなければなりません。 Q:不確実性が増す中、成功する企業に求められるものも変わりましたか? マグレイス この目まぐるしく変わるダイナミックな環境の下でうまくやっている企業のリーダーは、彼ら自身も往々にして、異なる環境下での経験が豊富です。 例えば、業務運営でキャリアをスタートさせ、マーケティングの分野に移り、またほかの分野に移行するといった具合です。機能的な理解の深さよりも、「ジグザグのキャリア」で体得した能力やスキルのほうが目立っています。 2つ目のポイントは、言わずもがな、デジタル全般に関する知識です。デジタル化により、人々の協働の仕方がどれだけ変わったかを理解していなければなりません。 3つ目のポイントが、迅速な意思決定を可能にする、「許可不要」の組織づくりです。組織構造自体が「競争優位」の源泉になり得るからです。 組織が多層構造から成り、上司から逐一、承認を得なければならないと、意思決定に時間がかかり、何か起こったとき、素早く対応できません。「許可不要の組織」を目指し、報告体制を刷新できれば、迅速な意思決定が可能です。 しかし、そのためには、戦略や目標を百パーセント明確にしておかねばなりません。上司の許可が要らない組織をつくるには、多くの条件を整え、その基盤を構築する必要があります。 例えば、アマゾンでは、意思決定の種類により、プロセスが異なります。 その決定が、重要な結果と高コストを招くものを「タイプ1の決定」とし、検討を重ねます。撤回できないため、時間をかけての、慎重な意思決定モデルです。 一方、「タイプ2の決定」は撤回が可能です。失敗しても、経営破綻に陥るような深刻な結果を招かないため、タイプ1のように時間をかけません。 ひるがえって多くの企業は、あらゆる意思決定を「タイプ1」として扱いがちです。5万ドルの実験の是非を問うプロセスも、6000万ドルの資本投資を決めるプロセスも同じなのです。 Q:米動画配信最大手ネットフリックスでも、上司の承認が要らないそうですね。 マグレイス そのとおりです。まず、有能な人材を雇い、同社が言うところの「能力密度を高める」企業文化を築き、何をなすべきかという指針を明確にし、裁量を与えるのがネットフリックスのやり方です。そうすれば、従業員が自ら状況の変化に適応してくれます。いわゆる「自由と責任」(F&R)文化です。 いちいち上司の承認を得る必要がない企業では、従業員が状況の変化に応じ、自ら戦略などを変えたりすることで、異なるチャンスが生まれます。そのため、多くの難題に直面しても、うまく乗り切れます。難局への対処法を熟知しているからです。 Q:アウトライヤー企業は、製薬からビール、建設、銀行まで、幅広い業界に及んでいます。 マグレイス 『競争優位の終焉』出版以降、競争が激しい分野について研究を重ねたところ、業界の垣根を超越した競争が繰り広げられていることが明らかになりました。アマゾンが好例です。 小売り企業でありながら、(米高級食品スーパーのホールフーズ・マーケット買収で)食品業界に進出し、(AWSなど)企業向けのサービスも展開し、ヘルスケア業界にまで事業を拡大しています。 つまり、今や企業を産業別にくくることなどできないのです。従来の企業戦略や、企業パフォーマンスの主要な決定要因としての「産業」という概念など、もはや通用しないのです。(後編へ続く)』、「まず、有能な人材を雇い、同社が言うところの「能力密度を高める」企業文化を築き、何をなすべきかという指針を明確にし、裁量を与えるのがネットフリックスのやり方です。そうすれば、従業員が自ら状況の変化に適応してくれます。いわゆる「自由と責任」(F&R)文化です。 いちいち上司の承認を得る必要がない企業では、従業員が状況の変化に応じ、自ら戦略などを変えたりすることで、異なるチャンスが生まれます。そのため、多くの難題に直面しても、うまく乗り切れます」、「「自由と責任」(F&R)文化」が出来上がれば、あとは楽だが、出来上がるまでには相当の困難もあるのだろう。

次に、6月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したニューヨーク在住ジャーナリストの肥田美佐子氏による「終身雇用とイエスマン人生、米著名経営学者が「日本企業のジレンマ」を徹底分析! リタ・マグレイス教授(コロンビア大学ビジネススクール)インタビュー(後編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304675
・『ベストセラー『競争優位の終焉』の著者で、NYのコロンビア大学ビジネススクール教授であるリタ・マグレイス氏。「世界の経営思想家トップ50」の常連であり、2021年にはトップ2に選ばれた。競争優位とイノベーションの権威である同教授は、日本企業をどう見ているのか? 日本企業がポストコロナ時代を乗り切るには? パーパスやESG、従業員のウェルビーイングに無頓着な企業の末路は? リスクをチャンスに変える企業の特徴は? 落ち着いた口調と冷静な分析が印象的な経営学者、マグレイス氏が日本企業のリスクと強みを語る』、興味深そうだ。 
・『ダイバーシティが欠如する企業は現地市場の顧客のニーズを理解しにくい  Q:(前編から)大きな変化が到来する「変曲点」を事前に見いだせるかどうかで企業の命運が決まる、ということですが、教授の目から見て、存続が危ぶまれる日本企業はありますか? リタ・マグレイス(以下、マグレイス) 日本の金融システムに照らしてみると、企業は、自社の意思決定が引き起こす最悪の結果から守られることが多いように見えます。 とはいえ、日本企業は大きな問題を抱えています。それは、スピードが非常に重要な時代にあって、(意思決定などの)動きが遅いことです。 また、意思決定グループにダイバーシティ(多様性)がない点も、最も大きな問題の1つです。日本企業では、依然として、女性や日本文化に属していないアウトサイダーが発言権を持つのは至難の業でしょう? 意思決定者が日本人男性ばかりでは、例えば中南米やアフリカで製品を売ろうと思っても、まったくお門違いの品ぞろえになってしまいます。ダイバーシティの欠如により、多くの日本企業は、海外市場において現地の顧客のニーズを理解しにくいという、多大なリスクを抱えています。 一方、日本企業には強みもあります』、「日本企業では」、「意思決定グループにダイバーシティ(多様性)がない点も、最も大きな問題の1つです」、「多くの日本企業は、海外市場において現地の顧客のニーズを理解しにくいという、多大なリスクを抱えています」、なるほど。
・『日本が誇る「クオリティ」は他国に追い付かれつつある  意思決定に時間がかかる分、計画が熟考され周到に練られているため、いざ実行の段階になると、素晴らしい手腕を発揮します。日本企業にはもう希望がない、などとは決して思いません。 Q:『フォーブスジャパン』2015年5月号でインタビューした際、教授は日本企業について、コンセンサスの形成や質の高い製品・サービス、仕事の正確さといった、大きな長所があると称賛しました。一方で、そうした強みは遂行に時間を要するものばかりだと指摘しています。変化の速度が加速する中、それこそが「日本企業のジレンマ」だと。 また、日本企業には「イノベーション」への障壁が多すぎると分析。ベテランの男性社員が恩恵を受ける終身雇用制度や、厳格なヒエラルキーは、女性の進出にとってマイナスだ、という指摘もしています。現在も、日本企業に関する教授の分析は変わりませんか? マグレイス そうした日本企業の構造は、ちょっとやそっとでは変わらないと思います。変わるとしても、ごくゆっくりとしたペースでしょう。 一方、日本市場は依然として大規模であり、国内市場ではうまくやっています。その点で、日本企業にもまだ優位性があるのは間違いありません。ただ、日本は、かつて世界の企業を圧倒していた「クオリティー」の点で、他国に追い付かれつつあります。 その意味で、日本企業は、次に競争優位を築ける領域を探さなければなりません。 Q:イノベーションには、平均して数年~7年を要するといわれています。従業員の勤続年数が短い米国企業と違い、長期勤続が前提の日本企業は、従業員が腰を落ち着けてイノベーションに取り組めるという点で有利でしょうか? マグレイス そう思います。終身雇用制度は、柔軟性の欠如や従業員がリスクを取ろうとしないことなど、多くの問題がある一方で、長い年月をかけて知識や能力を高めることができるという良い面もあります。会社から会社へと転職していては、そうしたことは困難です。 ただ、終身雇用制度には、同制度特有のヒエラルキーに従わなければならないという、イノベーションの阻害要因があります。そのため、変化を起こしにくいのです。 Q:大企業の終身雇用制度には、イノベーションにとってマイナスな、硬直性や惰性・怠惰を招くリスクもあります。 マグレイス 別に意地悪な見方をしているわけではありませんが、終身雇用制度の下では、チーム内のメンバーに失礼な言い方をしたり、本当の意味で信頼に足る行動を取ったりといったことを避けがちです。そうした行動を取らないことで、初めてチームの一員として歓迎される、という恩恵を得られるからです。 社内で悪いニュースを察知しても見て見ぬふりをする傾向があり、嘘をついているとまでは言いませんが、真実を言わないことに対し、おとがめも受けません。「社内の人間関係と調和」が重視されるからです。 ずっと同じ会社でやっていかなければならないため、ことのほかこうした社内政治への気配りが、(出世などの点で)大きな利点につながってしまうんですね。 同じ会社で何十年も勤め上げるということには、悲しいかな、そうした側面があります。従業員は、会社という「社会」に適応することにひたすら心を砕くのです。1社で生涯やっていくには、気難しい人だと思われたり、何かと反論してくる人だと思われたり、不愉快な人だと煙たがられたりしたら、まずいからです。 その結果、何が起こるのか? 自分のキャリアに枠がはめられ、できることが限られ、誠実な言動も、お互いに異を唱え合うこともままならず、常に「イエス」を繰り返すばかりの仕事人生になりがちです。危険人物だと見なされないように、です』、「社内で悪いニュースを察知しても見て見ぬふりをする傾向があり、嘘をついているとまでは言いませんが、真実を言わないことに対し、おとがめも受けません。「社内の人間関係と調和」が重視されるからです。 ずっと同じ会社でやっていかなければならないため、ことのほかこうした社内政治への気配りが、(出世などの点で)大きな利点につながってしまうんですね。 同じ会社で何十年も勤め上げるということには、悲しいかな、そうした側面があります」、こうしたマイナス面があることも確かだ。
・『EVによる「アーキテクチャの変更」で日系グローバル企業の優位性が危ぶまれる恐れ  Q:現在も世界の市場で大きな成功を収めている唯一の主要日系グローバル企業、トヨタ自動車でさえ、「電気自動車(EV)時代を生き残れるのか? 」という声も聞かれます。 マグレイス トヨタが膨大なリソースと極めて有能な人材を抱えていることを考えると、大丈夫だとは思いますが、今後、テクノロジーで後れを取れば、どのような事態も起こり得ます。 というのも、EVは「アーキテクチャの変更」と言われる抜本的な構造変化をもたらしたからです。 例えば、ガソリン車などに比べ、メンテナンスが楽になりました。その結果、トヨタが長年誇ってきた自動車のクオリティーという大きな優位性が損なわれる可能性があります。 これまでは、車のクオリティが低いと、予想外の修理やメンテナンスにお金がかかりましたが、EVは部品の数自体が少ないため、従来の車ほどメンテナンスにコストがかかりません。ひとたびEVが自動車市場で主役を占めるようになったら、内燃エンジン車が主流だった時代に比べ、市場全体で修理の必要性が大幅に減るとみられています。 つまり、「うちの車を買えば、修理は不要ですよ」という、トヨタの売りや優位性がなくなる恐れがあります。それを避けるためには、テクノロジーへの投資が必須です。トヨタのことですから、すでに注力していると思いますが。 Q:日本企業がポストコロナ時代を乗り切るには、どうすればいいでしょうか? マグレイス もっとも重要なことは、企業のリーダーがどのようなアジェンダ(課題/計画)を持っているかです。 イノベーションや自社の成長、変革をアジェンダのトップに掲げることなく、「何でも自分で解決しなければ」というマインドセット(考え方)で日常の短期的な業務に忙殺されているようでは、リーダーとして有用な仕事をしているとは言えません。 重要なアジェンダに十分な時間を割くことができず、「未来」のために必要な投資を怠ることになるからです。 Q:リスクをチャンスに変える企業の特徴は? マグレイス 積極的に小さなリスクを取ろうとすることです。「答えは見えないが、小さな実験を重ね、そこから価値を見いだし、それをフルに生かそう」とする姿勢が大切です。小さなリスクを取って、そこから何かを学ぼうとする企業が成功を手にできます。 実験が失敗に終わり、思うような結果が得られなくても、その失敗が会社にとって許容範囲内で済むような、小さな実験を重ねることです。 成功している企業は最初から大きなリスクを取っていると考えがちですが、実際は違います。小さなリスクを数多く取って、実験やイノベーションを重ねることで成功をつかんだあと、大きなリスクを取ろうという決断に至るのです。 Q:小さなリスクを取って成功した企業の具体例を教えてください。 マグレイス 例えば、ブラインド販売専門の米EC(電子商取引)企業、Blinds.comが好例です(注:1996年創業のブラインズ・ドット・コムはテキサス州ヒューストンが本社で、もともとはカスタムメイドのブラインドを販売するスタートアップ系通販企業だったが、世界最大のブラインドEC企業に成長。米ホームセンター最大手のホーム・デポへ売却した)。 創業者で最高経営責任者(CEO)だったジェイ・スタインフェルド氏が折に触れて話していますが、彼はむしろリスク回避型で、小さな実験をたくさん行ったそうです。 「大きなリスクを取るタイプではない。大きな意思決定を迫られるような段階に至るまでには、数多くの小さなリスクを取るという経験を積んでいた」と。 スタインフェルド氏の新刊『Lead from the Core: The 4 Principles for Profit and Prosperity』(『基本理念にのっとって会社を率いる――利益と繁栄の4原則』未邦訳)にもあるように、彼はクレイジーで大きなリスクは取らず、用意周到に準備し、小さなリスクをいくつも取ったそうです』、「EVによる「アーキテクチャの変更」で日系グローバル企業の優位性が危ぶまれる恐れ」、由々しいことだ。「小さなリスクを数多く取って、実験やイノベーションを重ねることで成功をつかんだあと、大きなリスクを取ろうという決断に至るのです」、堅実なやり方だ。
・『利益一辺倒の組織はもはや生き残れない  Q:脱炭素戦略や気候変動への取り組みなど、企業のパーパス(存在意義)が重視されるようになりました。消費者を含めたステークホルダー(利害関係者)が企業にパーパスを求める中、利益一辺倒の組織は、もはや生き残れない時代になるのでしょうか? マグレイス そう思います。例えば、インスリン製剤を扱う米製薬会社は、企業の強欲が常軌を逸してしまった典型的な例です。(医療保険に入っていても)薬価の自己負担額が高すぎ、インスリンを買えず、(糖尿病患者などが)命を落とすケースも出ています。 その一方で、製薬会社は自社株を買い戻して株価を上げ、株主に大きな便益を図っています。もはや、非倫理的なボーダーラインを越えてしまっているのです。そうした企業は今後、人材の獲得やフランチャイズ事業の維持などに苦労することになるでしょう。 Q:パンデミックで社会や人々の価値観が急速に変わる中、最優良企業でさえ、パーパスや企業倫理、ESG(環境・社会・ガバナンス)、従業員のウェルビーイング(幸福/心身の健康)などに無頓着だと、今後は衰退の一途をたどることになるのでしょうか? マグレイス そうですね。企業は、社会に対して筋の通った行いをすることを前提に、事業を許可されているのですから、その基準にかなわない企業は衰退を余儀なくされます。   例えば、米国の電子たばこ会社は未成年の若年層をターゲットに大いにもうけるつもりでしたが、米政府が規制し、基本的に高収益を上げる道が閉ざされてしまいました。(社会問題化している)麻薬性鎮痛剤オピオイドの蔓延(まんえん)を引き起こした米製薬会社も同じです。 これらは、社会に有害な企業の行動を示す極端な例ですが、人々が耐えられないようなコストを課すような企業は、衰退の一途をたどるしかありません』、「企業は、社会に対して筋の通った行いをすることを前提に、事業を許可されているのですから、その基準にかなわない企業は衰退を余儀なくされます」、その通りだ。

第三に、6月25日付け東洋経済オンライン「岸田ブレーンが語る日本経済低迷の「真犯人」 村井英樹首相補佐官が語る「岸田政策」の裏側」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/599204
・『6月22日、参院選が公示され、7月10日の投開票日に向けた選挙戦が始まった。 岸田文雄政権が発足してから約8カ月が経過した。岸田首相の経済ブレーンとして知られ、国内経済その他特命事項担当の首相補佐官を務めてきたのが村井英樹議員だ。 官邸での経験から、日本の課題の根幹がどこにあると見定めたのか。出身元である財務省など霞が関への注文を含め、今後の政権運営を占ううえで重要となる考え方について聞いた(Qは聞き手の質問、Aは村井氏の回答)』、「首相補佐官を務めてきたのが村井英樹議員」、初めて知った。
・『最大の課題は「将来不安の軽減」  Q:物価上昇への批判などから足元では若干低下傾向にありますが、各種世論調査における内閣支持率は50〜60%程度と比較的高い水準を維持しています。7月10日の参院選後は、しばらく国政選挙の予定がなく、政治的に安定した「黄金の3年」になるとも言われています。 A:メディアの方は「黄金の3年」とおっしゃるが、そういう感覚はあまり持っていない。まずは、参院選をしっかりと戦うことが大前提だ。 政権運営の一端を担っている側からすれば、安全保障やコロナ対策、経済や社会保障の問題などの課題に、とにかく日々懸命に対応しているというのが正直なところだ。私は官邸の末席に名を連ねているが、それでも政権発足後の8カ月は、人生の中で最も長く感じた8カ月だった。 過去の政権を振り返っても、政権や政局が落ち着いている時期というものは本当にあったのかというのが、偽らざる実感だ。「永田町は、一寸先は闇」。参院選投開票日までのわずかの間も含めて、気を引き締めていかなければならないと日々感じている。 (村井氏の略歴はリンク先参照) Q:首相補佐官として、広く経済政策を担当してきました。日本経済の最大の課題はどこにあるのでしょうか。 A:一言でいうと、将来不安だ。日本においては、企業収益が増加しているにもかかわらず、その果実が成長分野への投資や賃金引き上げに十分に回らず、また、家計においても消費が低迷してきた。その根本には将来不安がある。 企業が将来の市場の不透明感から投資や賃上げを躊躇し、個人は将来不安から消費を控えてしまう。それが日本経済の長期低迷の原因だと思う。 Q:マインドを変えるのはなかなか難しい。どんな手を打ちますか。 A:将来の市場の不透明感に対しては、岸田首相もたびたび言及しているが、官か民かではなく、官が呼び水となって、民間の投資や消費を促すことが重要だ。例えば、グリーン分野では、10年間で150兆円の投資を実現するべく、政府が20兆円規模の大胆な政策支援を行うことを決めた。 また、賃上げについても、賃上げ税制の抜本的拡充や看護・保育士など公的に決まる賃金を引き上げることで、賃上げを促す環境を作ってきた。実際、今年の春闘の賃上げ率は現時点で2.09%と、ここ数年の低迷が一気に反転上昇した』、「将来の市場の不透明感に対しては、岸田首相もたびたび言及しているが、官か民かではなく、官が呼び水となって、民間の投資や消費を促すことが重要だ。例えば、グリーン分野では、10年間で150兆円の投資を実現するべく、政府が20兆円規模の大胆な政策支援を行うことを決めた」、なるほど。
・『年金を「見える化」し、不安を解消  Q:個人の将来不安を軽減するためには、どのような施策を考えていますか。 A:難しい課題だが、私はまずは「年金の見える化」が大切だと考えている。老後の生活の柱は公的年金だ。公的年金については、「どうせ将来もらえない」という方も依然として多いが、将来の年金受給の予定額をお知らせすると、実は多くの方、特に厚生年金加入の方からは「思ったより多いね」という反応がある。 将来不安解消に向けて、まずは公的年金について、できるだけ正しく認識していただくことが大切だと思う。 Q:3年前には「老後に2000万円が不足する」という金融庁の審議会報告書(その後、事実上撤回)が炎上しました。確かに乱暴な試算でミスリーディングなものでしたが、いずれにしても個人の老後不安は蔓延しています。 A:この問題の背景には、多くの方にとって、自分自身が将来どれくらい公的年金を受給できるかわからないということがあった。老後の生活の柱である公的年金が具体的にいくら受給できるかわからない中で、政府から「年金の制度は安心です、100年安心です」と言われても、将来不安が解消されないのは無理もない。 そのため、2022年4月に「公的年金シミュレーター」を公開した。これを使っていただければ、皆さんの将来の公的年金額が簡便にわかる。是非活用してほしい。) 加えて、岸田政権は今春、資産所得倍増を打ち出した。 所得には、大きく労働所得と資産所得がある。先ほど申し上げたとおり、労働所得を押し上げていくことはもちろんだが、資産所得も併せて増やすことが必要だ。 わが国個人の金融資産は約2000兆円と言われているが、その半分以上が預現金で保有されている。この結果、過去20年間でアメリカの家計金融資産が3倍、イギリスでは2.3倍になったのに対し、日本は1.4倍にとどまっている』、「「公的年金シミュレーター」を公開した。これを使っていただければ、皆さんの将来の公的年金額が簡便にわかる。是非活用してほしい」、「シミュレーター」を一度試してみたい。
・『国民運動で資産所得を倍増  Q:その差は、この間の経済成長力の差の結果と言ってしまえばそれまでですが、あえて資産所得倍増を打ち出した背景には「老後不安」の軽減という狙いもある? A:まずは、公的年金シミュレーターを多くの方に活用していただき、それをきっかけに老後の生活設計・資産形成に一歩足を踏み出していただきたい。 また、年末には、NISA(少額投資非課税制度)の拡充などを含めた「資産所得倍増プラン」を策定することとなっている。こうした施策を積み重ね、民間も巻き込んだ国民運動を展開することで、資産所得の倍増につなげていきたい。 Q:日本の企業や組織における課題も強調されていますね。 A:二極化が進んできているように思う。柔軟な組織構造を取り入れて、社員のやる気と挑戦を引き出しどんどん伸びる企業と、硬直的な組織文化を維持して、閉塞感にあえぐ組織だ。日本経済社会にとっては、前者のような企業を応援するとともに、後者のような組織に変革を促すことが重要だと思う。 私は、さいたま市で3人の息子を育てているが、子育て仲間のパパ友との話が非常におもしろい。伸びているベンチャー企業に勤めているようなお父さんは、なぜか時間に余裕があり、子育てにも積極的に参加していることが多い。 他方、役所や古式ゆかしい企業にお務めのお父さんは、なぜか帰りが遅く、子育ては「週末だけ」といったケースが多い。 Q:よくありがちな話ですが、企業の子育て支援とイノベーションの関係など、今後の政策を考えると興味深い話ですね。 A:よくよく聞いてみると、前者の企業は、時短・テレワークなど多様な働き方を積極的に認める、年齢・役職に関係なくおもしろいアイデアを採用するといったようなことをしており、働く側の満足度も総じて高い。 他方で、後者の企業は、年功序列を維持するなど、硬直的な組織になっていることが多いようだ。 民間に活性化を促す国の省庁自体が変わっているのか? Q:村井さんは、財務省出身ですが、やはり後者の組織になりますか。 A:残念ながら、後者の代表選手だと思います(笑)。昭和60年入省の財務省事務次官(事務方トップ)が退官するので、その次は昭和61年入省の人が財務事務次官といった、厳格な年功序列人事を、若手に至るまで、毎年やり続けている。 こうしたことをやる組織は、不思議と働き方も社員目線になっていない。実は最近、財務省時代の後輩から、民間企業で働くと連絡があった。非常に優秀な方だが、財務省的な働き方に疑問を感じたのも偽らざるところのようだ。 Q:霞が関は、全体として組織が硬直的ですね。 A:おっしゃるとおりだ。ただ実は、霞が関の中でも、働き方改革の進捗度・組織の硬直度は違いがあるように感じる。こうした組織改革は簡単ではないし、変に政治が出しゃばるとマイナスも大きいが、変革に向けた刺激を与え続けていきたいと思う。また、国会改革などを実行に移し、永田町が霞が関の働き方改革の足を引っ張っている部分を解消していかなければならない。 Q:冒頭で「黄金の3年」は否定されましたが、いずれにしろ課題は山積ですね。 A:何といっても、岸田政権を安定政権として、内憂外患ともいえるさまざまな課題に1つひとつ結果を出していくことだ。21世紀になって、森喜朗政権から、菅政権まで10の政権があったが、1年以上安定して政権運営できたのは、小泉純一郎政権と第2次安倍晋三政権の2つだけだ。それくらい、安定政権として腰を据えて政策課題に臨むことは簡単ではない。岸田首相を中心に、できるだけ多くの成果を上げていきたい』、「変革に向けた刺激を与え続けていきたいと思う。また、国会改革などを実行に移し、永田町が霞が関の働き方改革の足を引っ張っている部分を解消していかなければならない」、「霞が関の働き方改革」に向けた活躍を期待したい。
タグ:日本の構造問題 (その27)(「絶滅する組織」と「生き残る組織」の違い 世界トップ2に選出された経営学者が徹底解説! リタ・マグレイス教授(コロンビア大学ビジネススクール)インタビュー(前編、終身雇用とイエスマン人生 米著名経営学者が「日本企業のジレンマ」を徹底分析! リタ・マグレイス教授(コロンビア大学ビジネススクール)インタビュー(後編)、岸田ブレーンが語る日本経済低迷の「真犯人」 村井英樹首相補佐官が語る「岸田政策」の裏側) ダイヤモンド・オンライン 肥田美佐子氏による「「絶滅する組織」と「生き残る組織」の違い、世界トップ2に選出された経営学者が徹底解説! リタ・マグレイス教授(コロンビア大学ビジネススクール)インタビュー(前編)」 「ビジネスの変曲点を事前に見いだす」とは興味深そうだ。 「変曲点を見いだせるかどうかで、米アマゾン・ドット・コムや米ネットフリックスのように、既存の業界を「破壊」する企業になれるかどうかが決まる、と。変曲点を見いだせなければ、2010年に経営破綻した米ビデオレンタル大手・ブロックバスターのように「破滅的結末」を迎えることになると、あなたは警告」、「GEは2015年11月、フランスの重電大手・アルストムのエネルギー事業を買収」、「向こう20年間は、再生エネルギーがコスト競争力のあるエネルギー源にはならないという見通しを立て、化石燃料がエネルギー源として持ちこたえ 「メディア企業にとって、ネットに接続できる誰もがライバルと化したのです。 30~40年前、大手テレビ局は1つの番組で60万~70万人の視聴者を魅了したものですが、状況は激変しました。コンテンツの数が増える一方で、視聴者層は、はるかに小規模化しています。人気のある番組でも、もはや60万人の視聴者を獲得することなどできません」、「米国では、最高経営責任者(CEO)の在任年数は5年以下であることが多いため、在任期間以降も続くような変革には挑もうという気にならないのです。 本物の変革は長い年月を要します。5年で交 「まず、有能な人材を雇い、同社が言うところの「能力密度を高める」企業文化を築き、何をなすべきかという指針を明確にし、裁量を与えるのがネットフリックスのやり方です。そうすれば、従業員が自ら状況の変化に適応してくれます。いわゆる「自由と責任」(F&R)文化です。 いちいち上司の承認を得る必要がない企業では、従業員が状況の変化に応じ、自ら戦略などを変えたりすることで、異なるチャンスが生まれます。そのため、多くの難題に直面しても、うまく乗り切れます」、「「自由と責任」(F&R)文化」が出来上がれば、あとは楽だが、 肥田美佐子氏による「終身雇用とイエスマン人生、米著名経営学者が「日本企業のジレンマ」を徹底分析! リタ・マグレイス教授(コロンビア大学ビジネススクール)インタビュー(後編)」 『競争優位の終焉』 「日本企業では」、「意思決定グループにダイバーシティ(多様性)がない点も、最も大きな問題の1つです」、「多くの日本企業は、海外市場において現地の顧客のニーズを理解しにくいという、多大なリスクを抱えています」、なるほど。 「社内で悪いニュースを察知しても見て見ぬふりをする傾向があり、嘘をついているとまでは言いませんが、真実を言わないことに対し、おとがめも受けません。「社内の人間関係と調和」が重視されるからです。 ずっと同じ会社でやっていかなければならないため、ことのほかこうした社内政治への気配りが、(出世などの点で)大きな利点につながってしまうんですね。 同じ会社で何十年も勤め上げるということには、悲しいかな、そうした側面があります」、こうしたマイナス面があることも確かだ。 「EVによる「アーキテクチャの変更」で日系グローバル企業の優位性が危ぶまれる恐れ」、由々しいことだ。「小さなリスクを数多く取って、実験やイノベーションを重ねることで成功をつかんだあと、大きなリスクを取ろうという決断に至るのです」、堅実なやり方だ。 「企業は、社会に対して筋の通った行いをすることを前提に、事業を許可されているのですから、その基準にかなわない企業は衰退を余儀なくされます」、その通りだ。 東洋経済オンライン「岸田ブレーンが語る日本経済低迷の「真犯人」 村井英樹首相補佐官が語る「岸田政策」の裏側」 「首相補佐官を務めてきたのが村井英樹議員」、初めて知った。 「将来の市場の不透明感に対しては、岸田首相もたびたび言及しているが、官か民かではなく、官が呼び水となって、民間の投資や消費を促すことが重要だ。例えば、グリーン分野では、10年間で150兆円の投資を実現するべく、政府が20兆円規模の大胆な政策支援を行うことを決めた」、なるほど。 「「公的年金シミュレーター」を公開した。これを使っていただければ、皆さんの将来の公的年金額が簡便にわかる。是非活用してほしい」、「シミュレーター」を一度試してみたい。 「変革に向けた刺激を与え続けていきたいと思う。また、国会改革などを実行に移し、永田町が霞が関の働き方改革の足を引っ張っている部分を解消していかなければならない」、「霞が関の働き方改革」に向けた活躍を期待したい。
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日本の構造問題(その26)(大前研一がトップだったマッキンゼーに見た「会社滅びてコンサル栄える」、日本だけ給料が上がらない謎...「内部留保」でも「デフレ」でもない本当の元凶、日本はなぜ「成長を諦めた国」になっているのか 過剰なコロナ対策も購買力を大きく削いでいる) [経済政治動向]

日本の構造問題については、3月1日に取上げた。今日は、(その26)(大前研一がトップだったマッキンゼーに見た「会社滅びてコンサル栄える」、日本だけ給料が上がらない謎...「内部留保」でも「デフレ」でもない本当の元凶、日本はなぜ「成長を諦めた国」になっているのか 過剰なコロナ対策も購買力を大きく削いでいる)である。

先ずは、3月22日付け日刊ゲンダイが掲載した評論家の佐高信氏による「大前研一がトップだったマッキンゼーに見た「会社滅びてコンサル栄える」」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/302758
・『マッキンゼーなどに頼む経営者は経営者失格なのではないかと私は思う。大前研一がトップだったころのマッキンゼーで喜劇的なことが起こったからだ。本質的には喜劇ではなく悲劇である。 ワンマンの磯田一郎が君臨した住友銀行やドンの川上源一が支配したヤマハがマッキンゼーにコンサルタントを依頼したが、腐敗や衰退の最大の元凶である磯田や川上にはまったく触れずに”改革”を進めたために、「向こう傷を恐れるな」という磯田イズムが住銀では温存され、イトマン・スキャンダルを結果した。また、ヤマハでも社長世襲の問題は棚上げしたために、若社長が”職場放棄”することになった。 磯田や川上が頼んでいるのだから、彼らの害を追及できるわけがない。本当はそこに踏み込んでこそのコンサルタントだろう。 大前の唱える「維新」が、サラリーマンにとっても、ためになるどころか有害なものであることは、彼を支持する経営者に京セラの稲盛和夫がいることでもわかる。 稲盛は大前をこう持ち上げた。 「大前さんのやろうとしていることが大きな実験であることは間違いない。この国は真の民主主義が定義できる国なのか。借り物の民主主義、えせ民主主義で終わるのか。それを証明する機会だと思う。一般の国民の間、一般社員の間では民主主義になっているが、会社も役所も上に行くほど民主主義ではないという不思議な国だ。大前さんの問いは官僚組織よりも国民一人一人に向けられているのだという自覚が、国民の間にどれくらいあるかが肝心だ。大前さんには冷静に、勇気を持って、初心を忘れずに、常に一歩控えめに事を進めてほしい」 こう言っている稲盛の京セラには「京セラ従業員の墓」という気持ち悪いものがある。そんな京セラならぬ狂セラに「借り物」だろうが、「えせ」だろうが、民主主義がないことははっきりしているが、稲盛にはその自覚がないのだろう。 もし、大前が民主主義の使徒なら、コンサルタントを頼まれた住銀やヤマハで、磯田や川上にレッドカードを突き付けたのではないか。マッキンゼーだけでなく、堀紘一のいたボストン・コンサルティングでも、そこまで徹底してコンサルタント会社が改革案を出した例を私は知らない。だから、これらは新しさを好む経営者が化粧代わりに使っているもので、まさに無用の長物なのである。皮肉を言えば、会社滅びてコンサル栄えるだ。 大前は日本の漁村の港が漁師しか使えないことを批判し、税金で立派にしたのに「一部の人だけの特権になっている」とわめいている。「レジャーボートなんか、とても置かせてもらえない」「これはどう考えてもおかしい」と言うのだが、レジャーボートを置こうとする大前のような人間の方が「一部の人」であることは明らかではないか』、「住友銀行」では「磯田イズムが住銀では温存され、イトマン・スキャンダルを結果した」、「ヤマハでも社長世襲の問題は棚上げしたために、若社長が”職場放棄”」、「コンサルタント会社」はトップの意向を受けてコンサルティングする制約が出たのだろう。「大前」が「「レジャーボートなんか、とても置かせてもらえない」「これはどう考えてもおかしい」」、などと批判したというのは墓穴を掘ったようなものだ。

次に、4月1日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「日本だけ給料が上がらない謎...「内部留保」でも「デフレ」でもない本当の元凶」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2022/04/post-180_1.php
・『<順調に給料が上昇する諸外国と比べて、日本の賃金低迷はいよいよ顕著に。企業への賃上げ要求では解決不可能な根深い原因とその処方箋> 日本人の賃金が全くといってよいほど上昇していない。賃金の低下は今に始まったことではないが、豊かだった時代の惰性もあり、これまでは見て見ぬふりができた。だが諸外国との賃金格差がいよいよ顕著となり、隣国の韓国にも抜かれたことで、多くの国民が賃金の安さについて認識するようになっている。 OECD(経済協力開発機構)によると、2020年における日本の平均賃金(年収ベース:購買力平価のドル換算)は3万8515ドルと、アメリカ(6万9392ドル)の約半分、ドイツ(5万3745ドル)の7割程度。00年との比較では、各国の賃金が1.2倍から1.4倍になっているにもかかわらず、日本はほぼ横ばいの状態であり、15年には隣国の韓国にも抜かされた<参考グラフ:各国の平均賃金(年収)の推移>。 諸外国の賃金が上昇しているということは、それに伴って物価も上がっていることを意味する。食品など日本人が日常的に購入している商品の多くは輸入で支えられており、諸外国の物価が上昇すれば、当然の結果として輸入品の価格も上がる。日本人の賃金は横ばいなので、諸外国に対して買い負けすることになり、日本人が買えるモノの量は年々減少している。 日本の大卒初任給が20万円程度で伸び悩む一方、アメリカでは50万円を超えることも珍しくない。日本人に大人気のiPhoneは、高いモデルでは約15万円もするが、月収20万円の日本人と50万円のアメリカ人とでは負担感がまるで違う。このところ日本が貧しくなったと実感する人が増えているのは、こうした内外価格差が原因である』、「日本人の賃金」の伸び悩みは確かに深刻だ。なお、この記事でのグラフなどのリンクは記事にはない。
・『日本企業の内部留保は異様な水準  では、なぜ日本人の賃金は全くといってよいほど上がらないのだろうか。ちまたでよく耳にするのは、企業が内部留保をため込んでおり、社員の給料に資金を回していないという指摘である。21年3月末時点において日本企業が蓄積している内部留保は467兆円に達しており、異様な水準であることは間違いない。 だが内部留保というのは、賃金を含む全ての経費や税金を差し引いて得た利益(当期純利益)を積み上げたもので、本来は先行投資などに用いる資金である。内部留保が過剰に積み上がっているのは企業が先行投資を抑制した結果であって、内部留保を増やすために賃金を引き下げたわけではない。政府は企業に対して内部留保を賃金に回すよう強く求めたことがあったが、これは企業会計の原則を無視した議論であり、企業が応じることは原則としてあり得ない。 内部留保と並んでよく指摘されるのが、デフレマインドというキーワードに代表される日本人の価値観である。アベノミクス以降、デフレが日本経済低迷の元凶であり、デフレから脱却すれば経済は成長するという考え方が広く社会に浸透した。だが、この議論も先ほどの内部留保と同様、原因と結果を取り違えたものといってよいだろう。 一部の特殊なケースを除き、デフレ(物価の下落)というのは基本的に不景気の結果として発生する現象であり、デフレが不景気を引き起こしたわけではない。不景気でモノが売れず、企業は安値販売を余儀なくされ、これがさらに物価と賃金を引き下げている。高く売ることができる商品をわざわざ安く売っていたわけではない点に注意する必要がある。 一部の論者は最低賃金が低すぎるなど、制度に問題があると指摘している。日本の最低賃金が低すぎるのは事実であり、筆者も改善の余地があると考えているが、これが低賃金の直接的な原因になっているわけではない。ドイツではつい最近まで最低賃金制度が存在していなかったが、賃金は日本よりも圧倒的に高く推移してきた。 まともな賃金を払わない企業には人材が集まらないので、企業の側にも賃上げを行うインセンティブが存在する。企業が十分な利益を上げているのなら、最低賃金制度がなくても企業は相応の賃金を労働者に支払うはずだ』、「まともな賃金を払わない企業には人材が集まらないので、企業の側にも賃上げを行うインセンティブが存在する」、多くの企業が「賃上げ」を抑制しているなかでは、「インセンティブ」の「存在」は疑わしい。「企業が十分な利益を上げているのなら、最低賃金制度がなくても企業は相応の賃金を労働者に支払うはずだ」、も同様に疑わしい。「最低賃金」の引上げもプラスの効果を持つ筈だ。
・『低収益によって賃金が低迷する悪循環  以上から、日本企業は何らかの原因で十分に利益を上げられない状況が続いており、これが低賃金と消費低迷の原因になっていると推察される。収益が低いので高い賃金を払えず、結果として消費も拡大しないため企業収益がさらに低下するという悪循環である。そうだとすると、政府が取り組んでいる賃上げ税制も十分な効果を発揮しない可能性が高い。 岸田政権は企業に対して賃上げを強く要請するとともに、賃上げを実施した企業の法人税を優遇する措置を打ち出した。政府からの要請を受けて、企業が賃金を上げたとしても、企業の収益が拡大しない状況では確実に減益になる。企業は品質の引き下げや下請けへの値引き要求など別なところで利益を確保しようと試みるので、賃上げ分は相殺されてしまう。最初から賃上げをする予定だった企業が、節税目的で制度を利用するという、本来の趣旨とは異なる使われ方もあり得るだろう。) 法人税が高い状態であれば、減税もある程度の効果を発揮するかもしれないが、安倍政権は経済界の要請を受け、在任中に3回も法人減税を実施した。日本の法人税は度重なる減税によって大幅に下がっており、企業にとって減税は魅力的に映らない。というよりも、低収益に苦しむ経済界が政府に減税を強く要請したという図式であり、背後には慢性的な低収益という問題が存在している。 結局のところ日本企業が十分な収益を上げられず、これが長期的な低賃金の原因になっているのはほぼ間違いない。では日本企業というのはどの程度、低収益なのだろうか。 一般的に企業の収益力は当期純利益など最終的な利益率で比較されるが、これは賃金を支払った後の数字。人件費を極端に削減すれば利益を上げることができてしまうため、賃金について議論する場合、この指標を使うのは適切ではない。企業がどの程度、賃金を支払う能力があるのかは、企業が直接的に生み出す付加価値を比較することが重要である。 企業というのは、商品を仕入れ、それを顧客に販売して利益を得ている。製造業の場合には原材料などを仕入れ、組み立てを行って製品を顧客に販売している。 販売額と仕入れ額の差分が全ての利益の源泉であり、この根源的な利益のことを企業会計では売上総利益と呼ぶ。商売の現場では粗利(あらり)という言い方が一般的だが、経済学的に見た場合、企業が生み出す付加価値というのは、この粗利のことを指している。企業は付加価値の中から人件費や広告宣伝費などを捻出するので、付加価値が高まらないと賃金を上げることができない』、「付加価値」のなかで「人件費」が占める割合が低いのではなかろうか。
・『全業種で付加価値が低い日本  日本とアメリカ、ドイツにおける部門(業種)ごとの付加価値(従業員1人当たり)の違いを比較すると、その差は歴然としている。図2のグラフ<参考:日米独の部門(業種)ごとの付加価値の違い>は日本企業の付加価値を1としたときの相対値だが、アメリカは全ての部門において、ドイツもほぼ全ての部門において日本よりも付加価値が高い(つまり儲かっている)。日本企業の付加価値が低く推移している以上、日本企業は賃金を上げられないのが現実だ。 では、なぜ日本企業は高い付加価値を得られないのだろうか。会計的に言えば、付加価値(粗利)を増やすには、①売上高を拡大する、②価格を引き上げる、③仕入れ価格を引き下げる、という3つの方法しかない。このうち③の仕入れ価格の引き下げは、品質の低下や取引先企業への悪影響といったデメリットをもたらすので、積極的には選択されない。結局のところ、付加価値を増やすためには売上高を増やすか、価格を引き上げるかの2択となる。) 図3のグラフ<参考:日米の企業売上高の推移>は日本とアメリカの企業全体の売上高の推移を示したグラフである(80年を100としたときの相対値)。アメリカ企業はリーマン・ショックなどの例外を除けば、基本的にほぼ毎年、売上高を拡大しており、過去40年間でアメリカ企業の売上高は7倍近くに増えた。 売上総利益率(売上高に対する売上総利益の割合)は大きく変わらないので、売上高の絶対値が増えれば、その分だけ付加価値の絶対額も大きくなり、賃金を捻出する原資が増える。一方、日本は90年代以降、むしろ売上高を減らしている。売上高が増えていない以上、仕入れ価格を極端に下げるか、販売価格を引き上げない限り、付加価値は増えない。 では価格の推移はどうだろうか。経済圏全体で販売されている全ての製品価格を調べることは不可能だが、輸出に関しては統計的に価格の推移を追うことができる。日本の輸出品目の価格は80年を境に一貫して低下が続いている。国内でもファストフード・チェーンが過度な低価格競争を繰り返してきたことは多くの人が理解しているだろう。 結局のところ、日本企業は売上高を拡大することができず、価格を引き上げることもできていないという状況であり、これが低賃金の元凶となっている。売上高も価格も変えられないということは、企業の競争力そのものに問題があるとの結論にならざるを得ない』、「企業の競争力そのものに問題がある」、その通りなようだ。
・『なぜ日本企業の国際競争力は低いのか  では日本企業の競争力はなぜ諸外国と比較して低く推移しているのだろうか。国により主力となる産業は異なるのでタイプ別に考えてみたい。 昭和の時代まで、日本は輸出主導で経済を成長させてきた。輸出主導型経済において成長のカギを握るのは、輸出産業の設備投資である。海外の需要が拡大すると輸出産業は増産に対応するため工場などに設備投資を行い、これが国内所得を増やし、消費拡大の呼び水となる。 一方、アメリカのような消費主導型経済の場合、成長のエンジンとなるのは国内消費そのものである。消費が拡大すると、国内企業が商業施設などへの設備投資を増やし、これが所得を増やして消費を拡大させるという好循環が成立する。 GDPの支出面における比率を見ると、アメリカは個人消費が67.9%もあるが、日本は55.4%となっており、日本はアメリカと比較して消費の割合が低い。だが、ドイツやスウェーデン、韓国など、日本よりもさらに消費の割合が低い国はたくさんある。ドイツは今も昔も製造業大国であり、輸出産業の設備投資が経済に大きな影響を与えている。) 同じく製造業が強いスウェーデンに至っては個人消費の比率はわずか44.7%しかない。これらの国々はまさに輸出主導型経済と言ってよく、日本はどちららかというと輸出主導型経済と消費主導型経済の中間地点と見なせるだろう。 加えて言うと、同じ輸出主導型経済であっても、典型的な福祉国家のスウェーデンと、日本と同じく自助努力が強く求められ社会的弱者の保護に消極的な韓国とでは、政府支出の比率が大きく異なる。スウェーデンは、韓国よりも製造業の付加価値が高く、余力を社会保障に充当しているという図式であり、これが政府支出という形で経済に貢献している。 韓国はかつては外貨の獲得に苦しみ、海外への利払いや返済が企業経営の重荷となってきたが、リーマン・ショック以降、輸出が大幅に増え、国際収支は近年、劇的に改善している。企業資金需要の多くを国内貯蓄で賄えるようになり、豊かだった日本に近い状態となりつつある。 日本以外の先進諸外国は、日本がゼロ成長だった過去30年、順調に成長を続けることができたが、それは各国企業がそれぞれの経済構造に合致した形で、業績拡大の努力を続けたからである』、なるほど。
・『グローバル基準でも大手だった日本企業の現状  消費主導型経済であるアメリカの場合、経済をリードする企業はウォルマートやホーム・デポといった小売店、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に代表される生活用品メーカーなどであり、一方、輸出主導型経済において成長のエンジンとなっているのは電機や機械、化学など典型的な製造業だ。 ドイツにはシーメンスやバイエルなど、グローバルに通用する巨大メーカーがたくさんあり、スウェーデンは小国でありながら、エリクソン、ボルボ、イケア、H&M、スポティファイといった著名企業がそろっている。韓国はサムスンとLGが有名である。 日本の大手企業は80年代まではグローバル基準でも大手だったが、30年間で様子は様変わりした。各国企業が軒並み売上高を拡大する中、日本企業だけが業績の横ばいが続き、多くが相対的に中堅企業に転落した。グローバル基準でも大手といえるのは、もはやトヨタや日立、ソフトバンクグループなどごくわずかである。 日本企業の凋落は全世界の輸出シェアを見れば一目瞭然だ。日本は80年代までは順調に世界シェアを拡大し、一時はドイツと拮抗していた。ところが90年代以降、日本企業はみるみるシェアを落とし、今では4%を割るまでになっている。) 90年代といえば全世界的にデジタル化とグローバル化が進んだ時代であり、日本メーカーはこの流れについていけず、競争力を大きく低下させた。かつては世界最強と言われた半導体産業がほぼ壊滅状態に陥ったのも、全世界的なデジタル・シフトに対応できなかったことが原因である。結果として日本の製造業の売上高は伸びず、単価が下がったことで収益力が低下し、賃金が伸び悩んだと考えられる。 豊かな先進国は通常、製造業の競争力が低下しても、国内の消費市場を活用して成長を維持できる。日本はアメリカほどではないが、相応の国内消費市場が存在しているので、容易に消費主導型経済に転換できたはずだが、国内産業も製造業と同様、業績を拡大できなかった。主な原因はやはりデジタル化の不備にある。 80年代から90年代前半にかけて、日本におけるIT投資の金額(ソフトウエアとハードウエアの総額)は、先進諸外国と同じペースで増加していた。ところが95年以降、その流れが大きく変化し、日本だけがIT投資を減らすという異常事態になっている(OECDの統計を基に筆者算定)。この間、アメリカはIT投資額を3.3倍に、スウェーデンは3.0倍に拡大させた<参考グラフ:各国のIT投資の水準>。 ITは企業の限界コスト(生産を1単位増やすために必要な追加投資の額)を引き下げる効果を持つので、デジタル化時代においてITを積極的に導入しない企業は経営効率が著しく低下する。日本企業の多くはITを活用した業務プロセスの見直しを実施せず、生産性が伸び悩んだ可能性が高い。生産性と賃金は比例するので、生産性が伸び悩めば当然、賃金も下がってしまう』、「日本企業の多くはITを活用した業務プロセスの見直しを実施せず、生産性が伸び悩んだ可能性が高い」、こうした「デジタル化投資」の遅れは生産性向上に致命的だ。
・『企業業績が拡大しないと賃金は上がらない  これまでの議論を整理すると、賃金というのは企業の付加価値が源泉であり、企業の業績が拡大しないと賃金は上がらないということが分かる。付加価値が低迷している状態で、無理なコスト削減(非正規労働者の拡大や、低賃金の外国人労働者の受け入れなど)を実施すると、さらに賃金が下がるという悪循環に陥ってしまう。 こうした状態から脱却するためには、企業の経営環境を根本的に見直す必要がある。意外に思うかもしれないが、日本は先進諸国の中で最も大手企業の経営者を甘やかす社会である。 アメリカはもともと株主の意向が強く、利益を上げられない経営者は容赦なく追放される。ドイツも90年代、当時のシュレーダー首相が中心となって企業経営改革を行い、企業は外部に対し明確な説明責任を負うようになった。ドイツの法律では債務超過を一定期間以上放置すると罰則が適用されるなど、経営者の甘えを許さない仕組みになっている。 債務超過に陥ったいわゆるゾンビ企業を税金を使って延命させたり、粉飾決算を行った経営者を処罰しない日本とは雲泥の差といってよいだろう』、「日本は先進諸国の中で最も大手企業の経営者を甘やかす社会である」、同感である。
・『日本の中小企業は大企業の隷属的な下請け  日本でも徐々にコーポレートガバナンス改革が強化されつつあるが、いまだに企業間の株式の持ち合いが行われているほか、経営能力があるのか疑わしい単なる著名人を社外役員に迎えるケースが散見されるなど、ガバナンスについて疑問視せざるを得ない企業が多い。揚げ句の果てには、政府が大手企業から要請を受け、株主総会に不正介入した疑惑まで指摘されるなど、先進国としてはあってはならない事態も起こっている。 日本では中小企業の多くが大企業の隷属的な下請けとなっており、慢性的な低収益に苦しんでいるが、これも先進諸外国ではあまり見られない光景である(アメリカやドイツの中小企業の利益率は大企業とほとんど変わらない)。 ガバナンスが不十分な社会では、企業経営者は非正規労働者の拡大や下請けへの圧迫など安易なコスト削減策に走りやすい。日本の社会システムは大手企業経営者を過度に甘やかす一方で、中小零細企業の経営者には事実上の無限責任を課すなど、中小企業の行動を大きく制約している。 上場企業に対するガバナンスを諸外国並みに強化し、中小企業の自立を促す金融システム改革を進めれば、日本企業の収益は大きく改善すると考えられる。同時並行で、あらゆる企業がITを導入せざるを得なくなるよう、政策誘導することも重要だ。一連の改革を実施し企業が自律的に成長できるフェーズに入れば、企業が生み出す付加価値は増えるので賃金も上昇していくだろう。最大の問題はこの改革をやり抜く覚悟が日本社会にあるのかどうかである』、「上場企業に対するガバナンスを諸外国並みに強化し、中小企業の自立を促す金融システム改革を進めれば、日本企業の収益は大きく改善する」、同感である。「あらゆる企業がITを導入せざるを得なくなるよう、政策誘導することも重要だ」、ただ、システム投資をベンダーへ丸投げするのではなく、中核的部分は出来るだけ自社でやるようにすべきだ。

第三に、5月25日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「日本はなぜ「成長を諦めた国」になっているのか 過剰なコロナ対策も購買力を大きく削いでいる」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/591513
・『5月18日、内閣府から公表された2022年1~3月期の実質GDP(国内総生産)成長率(1次速報値)は前期比年率マイナス1.0%(前期比マイナス0.2%)と、高成長(前期比年率プラス3.8%、2次速報後改訂)の2021年12月期から一転してマイナス成長に転落した。2021年1~3月期から1四半期ごとに成長率はプラスとマイナスを繰り返しており、日本経済がパンデミック局面から抜け出せずに足掻い(あがい)ている様子がよくわかる』、興味深そうだ。
・『脱コロナを望まず、成長を諦める国民  もっとも、足掻いているという表現は適切ではないかもしれない。いまだに新規感染者の絶対水準に拘泥し、マスクの手放せない生活を続けていることは、世界的に見れば異様な光景だが、日本では日常だ。もちろん、マスクがあるから低成長なのではなく、マスクが象徴する過剰な防疫意識が消費や投資の意欲を削いでいることが重要である。 過去2年間、「経済より命」路線は確実に実体経済を破壊し続けているが、岸田政権の支持率から判断するかぎり、この状況を大多数の国民が肯定している。悪化ペースが緩やかなので、今を生きる人々が実感しにくいのかもしれない。現在と先行きの経済よりも健康を重視しがちな高齢者の割合が高いことも影響しており、結果的に政権は若者よりも高齢者を重視しているのだろう。後述するように、日本経済が置かれている状況は客観的に見て、先進国の中でそうとう劣後しているのだが、「成長を諦めた国」は国民が望んだ結果とも言える。 1~3月期のマイナス成長はオミクロン変異株の感染拡大を受けて再び政府が行動制限に踏み切ったためだが、個人消費はマイナスではなく横ばいにとどまり、今期の落ち込みをやや抑制した。これは意外であるが、オミクロン変異株の感染拡大は1~2月がピークだたっため、3月以降は行動制限解除を視野に個人が消費を回復させた可能性はある。 「もう、ポーズだけの行動制限措置にすぎない」と達観した人々が以前より自粛に協力しなくなっているという可能性もあろう。まん延防止等重点措置の期間も人出が減らないという報道が散見された。実際、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局が提供する地域経済分析システム(RESAS)のデータを見ると、オミクロン変異株の感染者数急増とともにまん延防止等重点措置を発出したにもかかわらず、人流が顕著に抑制されていない現実も確認できる。 なお、5月16日には大手飲食チェーン店が時短命令をめぐり、東京都に損害賠償を求めていた裁判で、「命令は特に必要と認められず、違法」との判決が出ている。飲食店への時短命令も行動制限措置の一環だが、違法な命令を下してまで効果の薄い防疫政策を打つことを、東京都が今後は自重することに期待したい』、「オミクロン変異株の感染拡大は1~2月がピークだたっため、3月以降は行動制限解除を視野に個人が消費を回復させた可能性はある」、その通りだ。
・『過剰な防疫対策で経済の自滅が続く  周知のとおり、まん延防止等重点措置は3月下旬に全面解除され、5月のゴールデンウィーク中の人出はかなりの程度回復した。GW前に警告が見られた「2週間後の感染拡大」は現時点では見られておらず、人流と感染拡大の因果関係はかなり怪しいものだと言わざるをえない。 このままいけば4~6月期は個人消費に牽引され、高い成長率に復帰できるだろう。エコノミストのコンセンサス予想である日本経済研究センターの「ESPフォーキャスト」によれば4〜6月期は前期比年率プラス5.18%まで加速する。 しかし、日本の過剰な防疫意識を前提にすれば、成長軌道はこの先も安定しないことになる。過去2年のパターンに従えば、仮に7~9月期以降に感染拡大が見られた場合、4~6月期の高成長を「気の緩み」と指差し、再び自滅的な低成長(行動制限)を選択する流れが想定される。その悪循環を脱却すべく現実的な政策を打つべきだが、「経済より命」路線に対する根強い国民の支持を踏まえれば、政府・与党もこの方針を変える理由がなく、同じことが繰り返される可能性は否定できない。 人々は感染対策のために生きているわけではないはずだ。だが、日本ではそうなってしまっている。主要国の実質GDP水準の推移を、2019年7~9月期を100として見てみよう。10~12月期ではなく7~9月期としているのは、10月に日本では消費増税と台風19号による大きな下押し圧力を受けており、その影響を除いて比較したいためだ。日本は当時の水準に対して依然としてマイナス4%ほど届いていない。これがいかに異様な姿なのかは下図を一瞥すればわかるだろう。 「成長を諦めた国」というのは大げさな形容ではなく、純粋な事実である。円が実効ベースで急落し、日経平均株価がその他主要国の株価指数にはっきり劣後している状況と無関係とは思えない。 なお、今の日本経済の実情をより正確に映し出すのは実質GDP(国内総生産)に交易条件の変化(=交易利得・損失)を加えた実質GDI(国内総所得)である。1~3月期の実質GDPが前期比年率マイナス1.0%であったのに対し、実質GDIは同マイナス2.7%と3倍弱の落ち込みになっている。 資源価格の高騰および円安によってそれだけ海外への所得流出が進み、日本経済としての購買力が失われたことを意味している。これまでも述べてきたように、実質GDPはプラスとマイナスを交互に繰り返しており「停滞」という形容が当てはまるが、実質GDIは「悪化」の一途をたどっている』、「成長を諦めた国」とは言い得て妙だ。
・『外部環境は厳しい、せめて国内の足枷を外せ  この間、円の実質実効為替相場(複数の通貨間の実力を見たもので、物価の影響を除く)が半世紀ぶりの円安を記録し「安い日本」の象徴として取りざたされたことは周知のとおり。実質GDIも「安い日本」ないし「貧しい日本」の一端を示すデータと言える。巷間言われる「悪い円安」論は結局、家計部門のコスト負担を端的に述べた議論だが、そうした現状を把握するには、国内の生産実態を捕捉する実質GDPよりも、所得実態を捕捉する実質GDIのほうが向いている。 問題は、過剰な防疫政策が修正され、何の行動規制も入らない状態になれば実質GDPは相応に回復しそうだが、高止まりする資源価格に起因する実質GDIの低迷は出口が見当たらないということだ。少なくともウクライナ危機に伴う資源価格上昇は2月下旬以降であり、交易損失拡大の影響がフルに顕現化するのは4~6月期以降の国民経済計算統計なのだろう。 今後の実質GDIは低迷し、結果として家計部門の消費・投資意欲は委縮しやすくなる。おそらく実質GDPの足枷にもなるはずだ。資源高に象徴される国外環境は不可抗力だが、せめて国内環境くらいは足枷をはめるような行為を止めてほしいと願うばかりである』、「「悪い円安」論は結局、家計部門のコスト負担を端的に述べた議論だが、そうした現状を把握するには、国内の生産実態を捕捉する実質GDPよりも、所得実態を捕捉する実質GDIのほうが向いている。」、「今後の実質GDIは低迷し、結果として家計部門の消費・投資意欲は委縮しやすくなる。おそらく実質GDPの足枷にもなるはずだ。資源高に象徴される国外環境は不可抗力だが、せめて国内環境くらいは足枷をはめるような行為を止めてほしいと願うばかりである」、同感である。
タグ:佐高信氏による「大前研一がトップだったマッキンゼーに見た「会社滅びてコンサル栄える」」 日刊ゲンダイ 「住友銀行」では「磯田イズムが住銀では温存され、イトマン・スキャンダルを結果した」、「ヤマハでも社長世襲の問題は棚上げしたために、若社長が”職場放棄”」、「コンサルタント会社」はトップの意向を受けてコンサルティングする制約が出たのだろう。「大前」が「「レジャーボートなんか、とても置かせてもらえない」「これはどう考えてもおかしい」」、などと批判したというのは墓穴を掘ったようなものだ。 「企業の競争力そのものに問題がある」、その通りなようだ。 「付加価値」のなかで「人件費」が占める割合が低いのではなかろうか。 「上場企業に対するガバナンスを諸外国並みに強化し、中小企業の自立を促す金融システム改革を進めれば、日本企業の収益は大きく改善する」、同感である。「あらゆる企業がITを導入せざるを得なくなるよう、政策誘導することも重要だ」、ただ、システム投資をベンダーへ丸投げするのではなく、中核的部分は出来るだけ自社でやるようにすべきだ。 (その26)(大前研一がトップだったマッキンゼーに見た「会社滅びてコンサル栄える」、日本だけ給料が上がらない謎...「内部留保」でも「デフレ」でもない本当の元凶、日本はなぜ「成長を諦めた国」になっているのか 過剰なコロナ対策も購買力を大きく削いでいる) 「まともな賃金を払わない企業には人材が集まらないので、企業の側にも賃上げを行うインセンティブが存在する」、多くの企業が「賃上げ」を抑制しているなかでは、「インセンティブ」の「存在」は疑わしい。「企業が十分な利益を上げているのなら、最低賃金制度がなくても企業は相応の賃金を労働者に支払うはずだ」、も同様に疑わしい。「最低賃金」の引上げもプラスの効果を持つ筈だ。 「日本人の賃金」の伸び悩みは確かに深刻だ。なお、この記事でのグラフなどのリンクは記事にはない。 「「悪い円安」論は結局、家計部門のコスト負担を端的に述べた議論だが、そうした現状を把握するには、国内の生産実態を捕捉する実質GDPよりも、所得実態を捕捉する実質GDIのほうが向いている。」、「今後の実質GDIは低迷し、結果として家計部門の消費・投資意欲は委縮しやすくなる。おそらく実質GDPの足枷にもなるはずだ。資源高に象徴される国外環境は不可抗力だが、せめて国内環境くらいは足枷をはめるような行為を止めてほしいと願うばかりである」、同感である。 加谷珪一氏による「日本だけ給料が上がらない謎...「内部留保」でも「デフレ」でもない本当の元凶」 「日本は先進諸国の中で最も大手企業の経営者を甘やかす社会である」、同感である。 順調に給料が上昇する諸外国と比べて、日本の賃金低迷はいよいよ顕著に。企業への賃上げ要求では解決不可能な根深い原因とその処方箋 Newsweek日本版 「成長を諦めた国」とは言い得て妙だ。 「日本企業の多くはITを活用した業務プロセスの見直しを実施せず、生産性が伸び悩んだ可能性が高い」、こうした「デジタル化投資」の遅れは生産性向上に致命的だ。 「オミクロン変異株の感染拡大は1~2月がピークだたっため、3月以降は行動制限解除を視野に個人が消費を回復させた可能性はある」、その通りだ。 唐鎌 大輔氏による「日本はなぜ「成長を諦めた国」になっているのか 過剰なコロナ対策も購買力を大きく削いでいる」 東洋経済オンライン 日本の構造問題
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東京一極集中(その1)(東京23区の人口減「テレワークで移住説」は本当か 25年ぶりに23区の「日本人人口」が転出超過に、「東京一極集中が日本を救っている」といえる理由 「東京が潤えば地方も栄える」の仕組みを解説) [経済政治動向]

今日は、東京一極集中(その1)(東京23区の人口減「テレワークで移住説」は本当か 25年ぶりに23区の「日本人人口」が転出超過に、「東京一極集中が日本を救っている」といえる理由 「東京が潤えば地方も栄える」の仕組みを解説)を取上げよう。

先ずは、本年2月16日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの山田 稔氏による「東京23区の人口減「テレワークで移住説」は本当か 25年ぶりに23区の「日本人人口」が転出超過に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/511572
・『コロナ禍が長期化するなかで、東京の人口に異変が起きている。総務省が発表した2021年人口移動報告と東京都の住民基本台帳による世帯と人口(2021年1月1日現在)でみると、東京23区はついに年間の転出者が転入者を上回る転出超過となり、年間で人口が2万人以上も減少した。いったい、何が起こっているのだろうか』、興味深そうだ。
・『「脱23区」はファミリー層に多い  まずは、総務省の2021年人口移動報告をみてみよう。日本人のデータでみると、東京都の転入超過数は1万815人で、前年から半減だ。コロナ前の2019年は8万6575人だったから、87%もの大幅減である。それでも転入超過は続いている。 大きな異変が起きたのは東京都特別区部(23区)の転出入だ。外国人を含めた数値では、1万4828人の転出超過となり、外国人を含めた集計を開始した2014年以降初めて転出超過となった。日本人に限っても7983人の転出超過で、こちらは1996年以来25年ぶりだという。ちなみに23区の転出超過を世代別(日本人)にみると、30ー44歳の「子育て世代」が3万372人、0-14歳の「子ども世代」が16434人でボリュームゾーンを形成している。 それでは、区ごとの状況はどうだろうか。 転入超過は12区、転出超過は11区と半々だ。転入超過が多いのは ①足立区2224人②台東区1494人③葛飾区1258人 逆に転出超過が多いのは、①江戸川区3330人②世田谷区2755人 ③目黒区2581人 だった。 死亡数と出生数を加味した人口増減はどうか。東京都の日本人人口データ(2022年1月1日現在)で見ると、23区全体では21年の1年間で2万3462人の減少だ。20年は年間3万1248人の増加だったから、逆転現象が起きている。増加したのは中央区(0.66%増)、台東区(0.51%増)など6区だけで、17区は減少だ。減少数が多いのは江戸川区(4856人)、大田区(3949人)などだ。 ちなみに23区の人口増減をコロナ禍直前の20年1月1日時点と比較すると、それでも7786人の増加となっている。) では、23区が転出超過となった背景に何があったのか。今回のニュースを伝える多くのメディアは「コロナ禍でテレワーク移住進む」「テレワーク普及で近隣県への転出が増加」などと伝えている。本当にテレワークが最大の要因なのだろうか。 筆者の周辺で昨年、都心から転居した3家族の転居理由は、「自然豊かな環境で暮らしたい」(23区内から房総)、「転職」(23区郊外から神戸)、「子育てのため実家で父母と同居」(23区内から九州)だった。逆に週の半分程度がテレワークという知人の多くは23区内から動いていない。 テレワークで地方移住、郊外転居を実行した人が、いったいどれだけいるのだろうか。テレビでは、23区から千葉県流山市や神奈川県小田原市に引っ越した若い夫婦2組のケースを紹介していた。共にリモートワークだというが、2組ともにIT関連企業勤務だった。職場環境が恵まれているケースだ。毎日、現場に向かわなければならないエッセンシャルワーカーの方々には無縁の世界である。 コロナ禍は3年目に突入したが、テレワークの実施状況はどうなっているのか。東京都のテレワーク実施率調査(1月7日発表)によると、2021年12月の都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は56.4%で、前月比で0.8ポイントの減少だった。「週3日以上」は45.6%で同0.4ポイントの減少。もっとも多いのは「週1日」で35.3%で、「週5日」は16.6%にとどまっている。日本生産性本部の最新の調査(1月)では、首都圏1都3県の実施率は26.8%で10月調査よりも10.1ポイントも下がっている』、「東京都のテレワーク実施率」はいずれの調査でも低下したようだ。
・『マンション高騰も「脱出」原因か  こうした数字をみる限り、「テレワークで移住進む」はどうにも説得力に欠ける。楽観的過ぎるのだ。むしろ、他の要因があるのではないか。そこで住宅環境を調べてみると、仰天の事実が浮上してきた。東京23区の新築マンション価格の高騰である。 不動産経済研究所の「新築分譲マンション市場動向2021年のまとめ」によると、首都圏の発売戸数は3万3636戸、前年比23.5%増で、東京23区は1万3290戸(シェア39.5%)だった。気になる23区の平均価格は8293万円(1㎡当たり128.2万円)で前年比7.5%アップ。首都圏全体平均の6260万円よりも2000万円以上も高い。東京都下5061万円、神奈川県5270万円、埼玉県4801万円、千葉県4314万円と、23区の突出ぶりが分かる。 では、賃貸はどうか。不動産情報サービスのアットホーム株式会社が毎月公表している「全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向」を見てみよう。 コロナ直前の2020年1月の23区の「ファミリー向き(50~70㎡)」物件の平均家賃は186944円だったが、最新の2021年12月では191863円となっている。家賃は景気動向に左右されにくいと言われるだけあって、その差は5000円弱、上昇率は2.6%ほどだが、終わりの見えないコロナ禍において、都心に住む必要性のなくなった人たちにとっては受け入れがたいものだろう。 「都心部の住宅コストは高騰し過ぎています。一方、サラリーマン世帯の所得はそう増えていませんから、一握りの富裕層や資産家しか購入できないし、業者も購買層を絞っています。23区が転出超過になった要因が「テレワークの普及」というのはあくまでサブの話で、根本的には住宅コストが上がり過ぎて住めなくなってきているため郊外へ転出しているとみています」(不動産専門のデータ会社・東京カンテイの市場調査部の担当者)。 新築マンションが8000万円超、賃貸の家賃ですら上昇傾向。子育て世代には、今の23区の住宅環境は厳し過ぎる。子育てのための住宅購入を機に地方や郊外へ引っ越す。そんなサラリーマン世帯の姿が目に浮かぶようである。テレワークが引き金となったかもしれないが、やはり住宅価格の高騰が転出超過・人口減の最大の要因ではないだろうか』、「子育て世代には、今の23区の住宅環境は厳し過ぎる。子育てのための住宅購入を機に地方や郊外へ引っ越す」、「やはり住宅価格の高騰が転出超過・人口減の最大の要因」、なるほど。
・『都内の「休廃業・解散」した企業は大幅減  もう一つ、気になる現象がある。コロナ禍での〝不況〟である。帝国データバンクが発表した『全国企業「休廃業・解散」動向調査』の結果によると、意外にも休廃業・解散した企業数はコロナ前に比べて大幅に減少している。しかしその内実は、政府系・民間金融機関による資金提供やコロナ対応の補助金が貢献した結果で、実際、東京都に限ってみれば、1万2123件と前年より増え、全国で唯一1万件を超えている。 2021年12月の東京都の有効求人倍率(就業地別)は0.90倍で、年間を通じて1倍を下回った。一方、東京都の失業率は2021年7-9月平均で3.1%と全国 平均の2.8%を上回っている。コロナ前の2019年7-9月は同2.2%だったことを踏まえると、コロナ禍の経済状況悪化でリストラされたり、職を失ったりした人たちが東京から去っていった。そんなケースも相当数あるのではないだろうか。 データ上はもっとも23区への転入が多い若者層でも「大学がオンライン授業ばかりになったからアパートを解約して実家に帰った」とか、「バイトがなくなり23区内から私鉄沿線の郊外に引っ越した」といった声も聞く。このほかにも都心からの転居には、さまざまな事情があるだろう。 2021年1年間に東京23区から人口が流出したのは紛れもない事実だ。しかし、その一方でタワマンをはじめ新築マンションが年間に1万3000戸以上も販売され、22年の予測はそれを上回る。そして結果として、コロナ前と比べた23区の日本人人口は、依然として減少には至っていない。今年に入り感染拡大が続くなかでも、テレワーク実施率は低下傾向にある』、「コロナ禍の経済状況悪化でリストラされたり、職を失ったりした人たちが東京から去っていった。そんなケースも相当数あるのではないだろうか。 データ上はもっとも23区への転入が多い若者層でも「大学がオンライン授業ばかりになったからアパートを解約して実家に帰った」とか、「バイトがなくなり23区内から私鉄沿線の郊外に引っ越した」といった声も聞く」、確かにこれらが「23区の人口」への減少圧力になっているのだろう。
・『「都心を去る人」には2種類ある  「テレワークで移住進む」といった分析は、働き方改革や東京一極集中是正を掲げる政府にとっては、なんとも耳当たりのいいものである。しかし、現実はそんなに甘くはない。テレワーク環境が整備された企業で働き、都心から離れても生活できる人と、もはや暮らしていけないから都心を離れざるを得ない人のどちらが多いのか。今後の人口対策、少子化対策のためにもきちんとした分析、検証が必要だろう』、確かに「今後の人口対策、少子化対策のためにもきちんとした分析、検証が必要」、同感である。

次に、5月6日付け東洋経済オンラインが掲載した明治大学名誉教授 の市川 宏雄氏と不動産コンサルタントの 宮沢 文彦氏による「「東京一極集中が日本を救っている」といえる理由 「東京が潤えば地方も栄える」の仕組みを解説」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/582711
・『コロナ禍においても、都内各地の再開発プロジェクトの多くは進行しており、懸念されていた人々の地方移住も限定的で、「東京一極集中」の状態は続いています。東京にはなぜ、それほどのパワーがあるのか。そして東京には、これから先どんな未来が待ち受けているのか。 明治大学名誉教授の市川宏雄氏、株式会社ボルテックス代表取締役社長兼CEOの宮沢文彦氏の新刊『2030年「東京」未来予想図』から、東京の現在と未来を3回にわたって紹介します。 人口が東京に一極集中すること、その結果、ヒトだけでなくモノ・カネ・情報がすべて東京に集中してしまうことは、これまで社会の在り方として不健全だと考えられてきました』、「東京一極集中」を評価するとは、興味深そうだ。
・『ヒト・モノ・カネ・情報が集まる東京圏  地方に暮らす人々から見ると、東京圏にばかりヒト・モノ・カネ・情報が集まるのは、確かに不公平のように思えます。特に2000年代以降、「限界集落」や「地方消滅」といった問題が広く取り沙汰されるようになってからは、「東京一極集中こそが諸悪の根源」のようにもいわれてきました。 しかし1990年代以降、出口の見えないデフレ不況に突入し、きわめて低い経済成長率しか達成できていない日本が今日でも先進国の一員でいられるのは、実は"東京一極集中のおかげ"ともいえるのです。ヒト・モノ・カネ・情報が今のように東京に集中していなければ、日本はどこかの時点で、G7(主要先進7カ国)から脱落していたかもしれません。多少オーバーな言い方をすれば、東京一極集中こそが日本を救っているのです。 なぜ、そういう理屈になるのか。それは、現代が第3次産業全盛の時代であり、第3次産業は大都市でこそ繁栄する産業だからです。 自然界に直接働きかける産業を第1次産業といいます。具体的には農業・漁業・林業がこれにあたり、第1次産業で製品(収穫物・漁獲物)を生産(収穫・採取)するために必要な場所は、耕作地・漁場・山林になります。第1次産業で得た製品を使って加工する産業を第2次産業といいます。製造業・建設業がこれにあたり、第2次産業で製品を生産するために必要な場所は工場・一定の広さの土地になります。 では、第3次産業で製品を生産するために必要な場所とはどこでしょうか。第1次産業、第2次産業に含まれないすべての産業を第3次産業と呼びます。 具体的には、電気・ガス・水道業、情報・通信業、運輸業、卸売・小売業、飲食業、金融・保険業、不動産業、サービス業、公務など。第3次産業で生産される製品(サービス)は非常に多岐にわたりますが、その製品が生産される場所は明確です。人と人が自由に行き来でき、交流し合えるところ。つまり、交通網と情報網が整備され、多くの人々が居住しているところ、すなわち都市になります。 すべての産業をこのように第1次から第3次までに分類したのは、イギリスの経済学者コーリン・クラーク。彼はペティ=クラークの法則でも知られています。) この法則とは、一国の産業構造は経済発展の進度によって、第1次産業から第2次、第3次へと比重が移っていくというもの。 わが国の経済発展の歴史もまさにそのとおりで、産業別の就業者人口を1968年と50年後の2018年で比較してみると、第1次産業は19.8%から3.4%に、第2次産業は34.0%から23.5%に減少しているのに比べ、第3次産業は46.3%から73.0%へと大きく増加。いまや、日本で働いている人の10人のうち7人は第3次産業に従事しており、その大部分が都市部で暮らしていると推察できます。 この第3次産業に特徴的なのは、人口が集積すればするほどスケールメリットが働き、指数関数的に経済がより巨大に発展していくということ。人が集まれば集まるほど、そのニーズは多様化かつ巨大化していき、新たな市場が同時多発的に増殖されていくからです。 人口100万都市が生み出す経済的価値=都市GDPを10倍しても、人口1000万都市1個分の都市GDPには遠く及びません。人口1000万都市の都市GDPは、人口100万都市のGDPの20倍にも30倍にもなるからです』、「ヒト・モノ・カネ・情報が今のように東京に集中していなければ、日本はどこかの時点で、G7・・・から脱落していたかもしれません。多少オーバーな言い方をすれば、東京一極集中こそが日本を救っているのです」、一見したところ、もっともらしいが、首都圏への「集中」は、他の先進国に比べても日本では著しいので、もっと丁寧な説明が必要だ。
・『東京の経済規模はオランダGDP以上  たとえば、2019年度の世界各国のGDPを見ると、日本は5兆45億ドルで世界第3位ですが、驚くべきことに、東京都の巨大な経済規模は日本のGDPの約19%にあたる9654億ドル(都民経済計算平成30年度年報)に上り、オランダ、イラン、スイス、トルコといった国々のGDPを凌駕しています。一極集中によって巨大化した東京の経済力が、今日の日本経済を支えているといえるでしょう。 また東京には、地方都市では成立しにくいビジネスがいくつも成立しています。その良い例が、猫カフェ、ハリネズミカフェ、フクロウカフェなどの動物カフェでしょう。 それぞれ、その店に行けば猫、ハリネズミ、フクロウに触れ合えることがウリで、利用料金はハリネズミカフェで1人30分1500円程度。こうした動物カフェのような隙間ビジネスはそもそも、人口の少ない都市では成立しません。人口1400万人を有する東京だからこそ、「ハリネズミと触れ合いたい」と思う人々が一定数存在し、それらの人々を相手に商売することができるわけです。ちなみに、ハリネズミカフェは現在、東京都内に10店舗以上あるそうです。 秋葉原電気街、神田古書店街、かっぱ橋道具街など多くの専門店街が成立しているのも、巨大都市である東京ならでは。飲食店にしても、焼き芋専門店、マッシュルーム専門店、ポテトサラダ専門店、かつお節専門店、りんご飴専門店など、特定の食材や料理に特化したメニューだけを提供する店が数多く存在します。 さらに2021年6月から、飲食店デリバリーサービスのUber Eats(ウーバーイーツ)が東京都区内で徒歩配達をスタートさせました。徒歩によるデリバリーサービスがビジネスとして成立するのも、巨大な人口密集地である東京なればこそといえるでしょう。 もちろん私自身、「東京一極集中」を100%肯定的にとらえているわけではありません。人口が狭い地域に集中することは、ときに、さまざまなストレスや軋轢の要因となりえます。特に2020年に発生したコロナ禍においては、東京の過密さが感染拡大の大きなリスク要因になってしまいました。東京一極集中のデメリットは確かに存在します。 しかし、そのメリットもまた無視できないほど大きいものであるのも事実。私たちはそろそろ、東京一極集中のメリットについても真剣に語り合うべきではないでしょうか。 先ほど、東京にはヒト・モノ・カネ・情報が集積していると述べましたが、東京は、いわゆる大企業が集積していることでも知られています。 たとえば、「フォーチュングローバル500」(2020年)のデータによれば、世界で売上高上位500社に入るグローバル企業のうち、東京都に本社を置く企業は37社。これは北京市55社に次ぐ世界第2位の多さであり、3位のパリ市、ニューヨーク州16社を大きくリードしています』、「私たちはそろそろ、東京一極集中のメリットについても真剣に語り合うべきではないでしょうか」、なるほど。
・『東京の税収はスウェーデンの国家予算並み  また、日本の従業員数100人以上の事業所所在地を見ると、全体の37.0%が東京都に集まっています。以下、大阪府9.2%、愛知県5.9%、神奈川県4.7%の順。東京圏1都3県を合計すると、日本全体の46.9%が東京圏に集中している計算になります。 それだけに、東京都が毎年得ることのできる法人税などの税収は膨大であり、例年の予算規模約15兆円はスウェーデンの国家予算を上回ります。東京都が受け取るこうした莫大な税収の一部は、実は地方へも還元されます。本来、「東京などの大都市」と「地方」と「中央政府」の関係は、以下のようなものでした。 ○「地方」は「東京などの大都市」に労働力となる「人」を提供 ○「東京などの大都市」は企業による経済活動で税収を得て、「中央政府」に税を納付 ○「中央政府」は東京などが納めた税金から「地方」に地方交付税などの補助金を分配 ところが、1990年代前半にバブル経済が崩壊してから、この3者の関係は大きく変化しました。ごく大雑把にいえば、企業の業績悪化や不良債権問題で東京など大都市の税収が激減。中央政府の税収も激減しましたが、地方に補助金を支給しないと地方経済が破綻してしまうため、赤字国債を大量発行して急場をしのぎます。 しかし、そんな自転車操業がいつまでも続けられるわけもなく、中央政府は「平成の大合併」で全国3232市町村を1727市町村にまで削減。補助金の総量を減額すると同時に、「地方法人特別税」の制度を導入。制度の変更もありながら、現在は、東京都の法人事業税、法人住民税の税収のうち、9000億円超が地方に再分配されています。 このようにして、東京が一極集中によって得られた富は、直接的または間接的に、地方の各都市に配分されています。つまり、東京が潤えば地方も栄えるのです』、「東京が一極集中によって得られた富は、直接的または間接的に、地方の各都市に配分されています」、これは地方交付税の仕組みそのものだ。こんなことで、「東京が潤えば地方も栄える」とは間違えではないとはいえ、新たに発見した関係であるかのように誇らしげに強調するとは、お粗末だ。こんな記事を取上げるとは、東洋経済も落ちたものだ。私も、ざっと読んだ段階では、気づかなかったため、このブログの読者を巻き込んでしまったことを、ここに深くお詫びしたい。
タグ:東京一極集中 (その1)(東京23区の人口減「テレワークで移住説」は本当か 25年ぶりに23区の「日本人人口」が転出超過に、「東京一極集中が日本を救っている」といえる理由 「東京が潤えば地方も栄える」の仕組みを解説) 東洋経済オンライン 山田 稔氏による「東京23区の人口減「テレワークで移住説」は本当か 25年ぶりに23区の「日本人人口」が転出超過に」 「東京都のテレワーク実施率」はいずれの調査でも低下したようだ。 「子育て世代には、今の23区の住宅環境は厳し過ぎる。子育てのための住宅購入を機に地方や郊外へ引っ越す」、「やはり住宅価格の高騰が転出超過・人口減の最大の要因」、なるほど。 「コロナ禍の経済状況悪化でリストラされたり、職を失ったりした人たちが東京から去っていった。そんなケースも相当数あるのではないだろうか。 データ上はもっとも23区への転入が多い若者層でも「大学がオンライン授業ばかりになったからアパートを解約して実家に帰った」とか、「バイトがなくなり23区内から私鉄沿線の郊外に引っ越した」といった声も聞く」、確かにこれらが「23区の人口」への減少圧力になっているのだろう。 確かに「今後の人口対策、少子化対策のためにもきちんとした分析、検証が必要」、同感である。 市川 宏雄 宮沢 文彦 「「東京一極集中が日本を救っている」といえる理由 「東京が潤えば地方も栄える」の仕組みを解説」 「東京一極集中」を評価するとは、興味深そうだ。 「ヒト・モノ・カネ・情報が今のように東京に集中していなければ、日本はどこかの時点で、G7・・・から脱落していたかもしれません。多少オーバーな言い方をすれば、東京一極集中こそが日本を救っているのです」、一見したところ、もっともらしいが、首都圏への「集中」は、他の先進国に比べても日本では著しいので、もっと丁寧な説明が必要だ。 「私たちはそろそろ、東京一極集中のメリットについても真剣に語り合うべきではないでしょうか」、なるほど。 「東京が一極集中によって得られた富は、直接的または間接的に、地方の各都市に配分されています」、これは地方交付税の仕組みそのものだ。こんなことで、「東京が潤えば地方も栄える」とは間違えではないとはいえ、新たに発見した関係であるかのように誇らしげに強調するとは、お粗末だ。こんな記事を取上げるとは、東洋経済も落ちたものだ。私も、ざっと読んだ段階では、気づかなかったため、このブログの読者を巻き込んでしまったことを、ここに深くお詫びしたい。
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経済学(その5)(『人新世の「資本論」』30万部の斎藤幸平 若き経済思想家の真意、リーマン危機から世界を”救った”男:独占インタビュー①ケインズ経済学の神髄 宇沢弘文氏の教えから昇華、清滝教授の「独自モデル」、ビジネススクールでも教えてくれない 武器としての経済学) [経済政治動向]

経済学については、昨年5月16日に取上げた。今日は、(その5)(『人新世の「資本論」』30万部の斎藤幸平 若き経済思想家の真意、リーマン危機から世界を”救った”男:独占インタビュー①ケインズ経済学の神髄 宇沢弘文氏の教えから昇華、清滝教授の「独自モデル」、ビジネススクールでも教えてくれない 武器としての経済学)である。

先ずは、昨年6月16日付け日経ビジネスオンライン「『人新世の「資本論」』30万部の斎藤幸平 若き経済思想家の真意」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00290/061000005/
・『経済思想家・斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』(集英社新書)が30万部超の異例のヒットとなっている。 人類の経済活動が地球全体に影響を及ぼす時代=「人新世」。現代の環境危機の解決策を、マルクスの新解釈の中に見いだすという硬派な内容ながら、コロナ禍にあって売れ続けている。1987年生まれの若き思想家が本書を執筆した背景とは(Qは聞き手の質問、Aは斎藤氏の回答)。 (斎藤幸平 氏の略歴はリンク先参照) Q:ベストセラーとなっている『人新世の「資本論」』。ヒットの理由を著者としてどのように分析していますか。 A:これほど多くの人に手に取ってもらえたのは、「このままの生活を、将来にわたって維持することは可能なのか」という問題から、誰もが目をそらせなくなってきたからだと思います。 今の私たちが享受している豊かさは、環境負荷や劣悪な労働環境を途上国に押し付け、外部化することで成り立ってきました。しかし、気候変動の問題一つをとってみても、近年は日本も、スーパー台風や集中豪雨、夏の酷暑など、様々な形で危機に直面するようになりました。新型コロナなど未知のウイルスによる感染症の拡大も、元をたどれば、森林などを乱開発した資本主義に原因があります。「これはまずいんじゃないのか?」という気配が高まったことと、本書の発売のタイミングが合致したのは大きいと思います。 タイトルにある「人新世」という言葉が示す通り、現代はグローバル資本主義の下で人類の活動が地球全体にインパクトを与える時代です。新型コロナウイルスが物流や人の流れに乗り、極めて短期間で世界全体に広まっていったように、さらに問題のスケールが大きい気候変動についても同じことが生じている。先進国で排出された二酸化炭素や温室効果ガスの影響は、地球上のあちこちで山火事や水不足を引き起こし、被害は今のままでは拡大の一途です。 そうした環境危機を目の当たりにして、「資本主義そのものに緊急ブレーキをかける必要がある」という本書の主張を、頭ごなしに否定はできない時代になってきた。多くの人が時代の変化や問題の深刻化を意識し始めたことが、反響につながったと考えています』、出版不況のなかで、「30万部超の異例のヒット」とは大したものだ。「気候変動の問題一つをとってみても、近年は日本も、スーパー台風や集中豪雨、夏の酷暑など、様々な形で危機に直面するようになりました。新型コロナなど未知のウイルスによる感染症の拡大も、元をたどれば、森林などを乱開発した資本主義に原因があります。「これはまずいんじゃないのか?」という気配が高まったことと、本書の発売のタイミングが合致したのは大きいと思います」、なるほど。
・『エコロジストとしてのマルクスの発見  Q:マルクスの思想の中に、実は現在の環境問題にも応用可能なエコロジストの視点があったのだという、本書の柱になっているこのアイデアは、どのようなきっかけで見つけたのでしょう? マルクスというと、とりわけ一定年齢層以上の人にとっては、ソ連やスターリン主義、冷戦構造の中での共産主義の暗いイメージが強くありますよね。ソ連崩壊後、マルクス経済学は、大学でも教えるところが少なくなってきました。しかし一方で、その後もマルクス研究を続けていた人たちは、「ようやくソ連や冷戦から解放され、マルクスをマルクスとして純粋に読むことができるようになった」と、彼の思想を捉え返そうとしたんです。 そうした動きと並行する形で、近年「メガ」(MEGA=Marx-Engels-Gesamtausgabe)と呼ばれる新たな『マルクス・エンゲルス全集』の編纂が進められ、私も含め世界各国の研究者が参加するこの国際的全集プロジェクトによって、これまで埋もれていた手稿や研究ノートの読解作業が行われています。 その新資料をひもといていくことで、20世紀のマルクスの読まれ方というのは、ソ連のスターリン主義にどっぷり浸かってゆがめられたものであり、本来マルクスが考えていた思想から乖離していたことも分かってきました。また、マルクスの死後にエンゲルスが『資本論』の編集過程で切り捨てた部分も明らかになった。そうして見えてきた「本来のマルクス」の持っていた考えの一つが、環境と資本主義との関係に対する関心です。実はマルクスは、環境破壊に対して深い問題意識を持ち、自然科学を熱心に学んでいました。 今まで知られてこなかった、そうしたエコロジストとしてのマルクスの思想を掘り起こすことは、単に新たなマルクス像を示すばかりでなく、「人新世」の環境問題、つまり人類は資本主義の下での技術革新と経済成長だけで環境危機を突破できるのか、という最大の問題に対し、非常に重要な視点を与えてくれると私は考えました。 こうしたドイツでの「MEGA」の編纂を通じた発見を経て、帰国後はマルクスの研究を現代の文脈にどう生かしていくべきなのかという課題に取り組み、その中で『人新世の「資本論」』の執筆に取りかかったのです。) Q:マルクスを研究対象として選んだ経緯は? A:米国の大学に入ってすぐ、ハリケーン・カトリーナの被災地でボランティアをする機会がありました。そこで格差問題の深刻さを目の当たりにし、その頃からマルクスに傾倒し始めました。もう一つのきっかけは、ベルリンの大学院に入った直後に起きた東日本大震災と原発事故です。当時、ベルリンでも数十万人規模の反原発デモが起き、それを見ながら資本主義とエコロジーの問題を考えたいと思うようになりました。 Q:今、研究や執筆の最大の原動力となっているものは何でしょう。 A:真面目に働いているのに、生活が立ち行かないほど追い込まれてしまう人が大勢いる社会は、端的に言っておかしいですよね。一部の人たちが、本来不要なものをどんどん消費する一方で、必要なものにも事欠く人たちが大勢いる。しかもその無駄な消費のための労働で、地球環境を破壊し続けている。そうした矛盾した社会構造を生み出してしまう資本主義とは、本当に合理的なのか、問題提起をしていきたい。このような社会や経済を変えなければならないと強く思っているんです。 つまり、不合理に対する違和感や怒りが研究の原動力ですね。ドイツでは、先ほどお話しした大規模な反原発デモの後、メルケル首相が2022年までに国内の原発を止めると宣言しました。人々がデモによって社会を変えていく姿を目の前で見て、それが民主主義のあり方であり、力だと実感しました。私は理論の面から人々の運動を下支えしたいのです。 日本では民主主義というと、議会制民主主義のことしか思い浮かばないかもしれませんが、議会政治には限界があります。例えば、気候変動の問題で最も影響を受ける子どもたちや途上国の人たちは、自分たちの未来を左右する米国の意思決定のプロセスからは排除されている。だから、私たちは議会民主主義だけを民主主義だと捉えてはならず、民主主義を拡張していくためにも、デモや学校ストライキや、様々なアクションを起こして、政治家や企業を動かさなければならない。それこそが民主主義なんです。 A:大学で学生たちに教える中で、いわゆる「Z世代」(1990年代後半から2010年代にかけて生まれた世代)の中に、先行世代とは異なる新しい価値観が根付きつつあると感じることはありますか。 A:ハンガーストライキや環境危機を訴えるライブを開催するなど、実際にアクションを起こしている高校生・大学生が日本でも増えてきました。ただし、日本の若者たちがすべて、スウェーデンの環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんのような考え方を持っているかと言えば、無論そんなことはなく、彼らの多くはファストファッションやファストフードに囲まれて育ち、それが当たり前だと思ってきた者たちです。でもそれは、今まで深く考える機会がなかったから。私のゼミでも、学んでいく過程で、少なからぬ学生が気候変動や格差社会といった問題を「自分ごと」として考え始めています』、「実はマルクスは、環境破壊に対して深い問題意識を持ち、自然科学を熱心に学んでいました。 今まで知られてこなかった、そうしたエコロジストとしてのマルクスの思想を掘り起こすことは、単に新たなマルクス像を示すばかりでなく、「人新世」の環境問題、つまり人類は資本主義の下での技術革新と経済成長だけで環境危機を突破できるのか、という最大の問題に対し、非常に重要な視点を与えてくれると私は考えました」、「議会民主主義だけを民主主義だと捉えてはならず、民主主義を拡張していくためにも、デモや学校ストライキや、様々なアクションを起こして、政治家や企業を動かさなければならない。それこそが民主主義なんです」、なるほど。
・『SDGsは批判してはいけないという空気があった  Q:本の冒頭で、現在多くの企業が取り組むSDGs(持続可能な開発目標)について、気候変動に対して本質的な効果は無く、むしろ危機的な状況から目を背けさせる有害な「アリバイ作り」だと断じています。 この1年ほど、SDGsに代表されるように「環境問題に配慮しないとまずいよね」「途上国の人権問題についても、企業は責任を持たなければならないよね」といった考えが“ブーム”で、SDGsは批判しちゃいけないものだという空気になっている。けれど実際には、本書でもエビデンスを挙げて指摘したように、とりわけ今の日本で広まっているレベルのSDGsの認識では、気候変動に対して効果は無いんです。 むしろ、マルクスがかつて、宗教を資本主義が引き起こす苦悩を和らげる「大衆のアヘン」だと批判したように、「これをやっていれば大丈夫」という誤った認識を持ち、真に必要な大きなアクションから目を背けさせてしまう。 私が投げかけたやや挑発的な批判に対し、SDGsにうすうす疑問を抱いていた人は「ああ、やっぱりそうか」と納得し、SDGsの効果を信じていた人にとっては、認識が崩れるショックや憤りもあったでしょう。普段はマルクスの話には興味の無い読者層も含め、多くの方に手に取っていただけるきっかけとなったと思います。 Q:では、企業はSDGsに取り組まない方がいい……? 企業にいるビジネスパーソンは、自分の仕事として何をすべきだと考えますか。 A:SDGsをビジネスの商機と捉えている程度では、問題は全く解決しません。企業が今すぐにでも行うべきなのはむしろ、供給過剰の是正です。具体的には、生産量そのものを3割減らす。食品であっても衣料品であっても、現代ではあらゆる企業が過剰な在庫を抱えています。それを3割減らすだけでも、環境危機に対処するための時間稼ぎになる。本来不要なものを減らすわけですから、消費者に大きな影響は無いばかりか、技術革新も特に必要ない。今すぐにでも始められる取り組みです』、「今の日本で広まっているレベルのSDGsの認識では、気候変動に対して効果は無いんです」、「むしろ、「これをやっていれば大丈夫」という誤った認識を持ち、真に必要な大きなアクションから目を背けさせてしまう」、その通りだ。
・『技術の力のみで社会は変えられない  Q:フリマアプリ「メルカリ」のように不用品を手軽に売れるサービスや、ものを所有しないシェアリングエコノミーなど、そうした新たな消費の形について、エコロジーの観点からどう思いますか。 A:転売を簡単にするサービスが普及すると、「数回使ったら売って、また次のものを買おう」というマインドを醸成し、消費することへのハードルが下がっていきます。場合によっては、これまで以上に短いスパンで様々なアイテムが消費されていく原動力になり、結果として消費量や輸送量が増えていく。エコロジー的な視点から言えば逆効果とも言えます。 シェアリングエコノミーについては、確かに効率化や資源の有効活用ができて良い面もある。ただし、どのような社会関係の下で運用されるかによって、生み出される結果は大きく異なります。 極端な例を挙げると、プライベートジェットをシェアするサービスもある。飛行機を維持管理するのは高コストなので、資産家同士で共同所有しようというわけです。このようなサービスが普及し、個人が気軽にジェット機を飛ばせるようになれば、当然ながらさらに環境負荷は膨らみ、資源の有効活用とは真逆の結果を生み出します。また、Uberの配達員システムのような労働力のシェアの形が、格差社会を拡大している面もある。 シェアリングエコノミーはネット社会の中で発達したある種の「技術」であり、肝心なのは、技術によって資本主義の抱える問題の本質を変えられるわけではないということです。むしろ、気候変動や格差社会化を加速させる結果すら生む。技術の力のみで社会を変えていけるという技術信仰には、常にそうした落とし穴があります。 Q:別の社会システムに今すぐ移行できない以上、私たちは将来的にまだ資本主義社会を生きていかなければなりません。企業人としてはどうすべきか。 A:資本主義を一朝一夕にストップするのは不可能だと、もちろん私も思います。ただし、それは資本主義の抱える問題を、今すぐ是正しなくていいということではありません。今の社会では、大手企業で働いていても「毎日イケイケで楽しい!」という人たちはどんどん減って、多くの人が「つらいなぁ」と日々思いながら長時間労働をしたり、劣悪な雇用条件に不安を覚えたりしている。それを改善するためにも、企業の中にいてこそ変えていけることが多くある。その最も分かりやすい例として、労働組合が担うべき役割は今でもあるんです。 ところが今、労働組合の多くは、男性正社員たちの既得権益擁護団体のようなものになってしまっている。そうでなく、自分たちの製品の環境への影響や、同じ職場で働いている非正規雇用者、女性の待遇の不均衡といった問題に対して声を上げるべきです。資本主義社会の抱える問題は、そうした働き方も含め、互いにクロスしている。気候変動問題も、単に二酸化炭素や温室効果ガスを削減するというテクニカルな話だけではなく、それに付随する長時間労働やジェンダー差別、途上国への劣悪な労働の押し付けを同時に是正していかなければ、二酸化炭素がいくら減ったところで、よい社会にはなりません。 アクションを起こせば、最初はコンフリクト(衝突、対立、不一致)を生みますが、これからの時代に企業を生き残らせるためにも、立ち上がって価値観をアップデートすることは必要です。グレタさんたちの世代が、これから消費者となり、経営者となり、20~30年後には政治のリーダーになっていく。今の日本は、それでも昔の方法にしがみつこうとしていますが、世界的な潮流に取り残されないためには、そうした大きなトレンドの変化を押さえておかなければなりません。 著者が薦める本 カール・マルクス『資本論』 (国民文庫) 私自身の研究のモチベーションと同様、マルクス自身も現実の問題にコミットして研究を続けた学者でした。そうした彼の生きざまにも影響を受けました。資本主義の矛盾や、資本主義に代わり得る社会のビジョンをこれほど深く考え抜いた本は他に無い。19世紀に書かれた本でありながら、現代でも様々な問題を考えるうえで、まずはここに立ち返り、さらに思考を発展させていく土台となる座右の書です。(斎藤氏)技術の力のみで社会は変えられない Q:フリマアプリ「メルカリ」のように不用品を手軽に売れるサービスや、ものを所有しないシェアリングエコノミーなど、そうした新たな消費の形について、エコロジーの観点からどう思いますか。 A:転売を簡単にするサービスが普及すると、「数回使ったら売って、また次のものを買おう」というマインドを醸成し、消費することへのハードルが下がっていきます。場合によっては、これまで以上に短いスパンで様々なアイテムが消費されていく原動力になり、結果として消費量や輸送量が増えていく。エコロジー的な視点から言えば逆効果とも言えます。 シェアリングエコノミーについては、確かに効率化や資源の有効活用ができて良い面もある。ただし、どのような社会関係の下で運用されるかによって、生み出される結果は大きく異なります。 極端な例を挙げると、プライベートジェットをシェアするサービスもある。飛行機を維持管理するのは高コストなので、資産家同士で共同所有しようというわけです。このようなサービスが普及し、個人が気軽にジェット機を飛ばせるようになれば、当然ながらさらに環境負荷は膨らみ、資源の有効活用とは真逆の結果を生み出します。また、Uberの配達員システムのような労働力のシェアの形が、格差社会を拡大している面もある。 シェアリングエコノミーはネット社会の中で発達したある種の「技術」であり、肝心なのは、技術によって資本主義の抱える問題の本質を変えられるわけではないということです。むしろ、気候変動や格差社会化を加速させる結果すら生む。技術の力のみで社会を変えていけるという技術信仰には、常にそうした落とし穴があります。 Q:別の社会システムに今すぐ移行できない以上、私たちは将来的にまだ資本主義社会を生きていかなければなりません。企業人としてはどうすべきか。 A:資本主義を一朝一夕にストップするのは不可能だと、もちろん私も思います。ただし、それは資本主義の抱える問題を、今すぐ是正しなくていいということではありません。今の社会では、大手企業で働いていても「毎日イケイケで楽しい!」という人たちはどんどん減って、多くの人が「つらいなぁ」と日々思いながら長時間労働をしたり、劣悪な雇用条件に不安を覚えたりしている。それを改善するためにも、企業の中にいてこそ変えていけることが多くある。その最も分かりやすい例として、労働組合が担うべき役割は今でもあるんです。 ところが今、労働組合の多くは、男性正社員たちの既得権益擁護団体のようなものになってしまっている。そうでなく、自分たちの製品の環境への影響や、同じ職場で働いている非正規雇用者、女性の待遇の不均衡といった問題に対して声を上げるべきです。資本主義社会の抱える問題は、そうした働き方も含め、互いにクロスしている。気候変動問題も、単に二酸化炭素や温室効果ガスを削減するというテクニカルな話だけではなく、それに付随する長時間労働やジェンダー差別、途上国への劣悪な労働の押し付けを同時に是正していかなければ、二酸化炭素がいくら減ったところで、よい社会にはなりません。 アクションを起こせば、最初はコンフリクト(衝突、対立、不一致)を生みますが、これからの時代に企業を生き残らせるためにも、立ち上がって価値観をアップデートすることは必要です。グレタさんたちの世代が、これから消費者となり、経営者となり、20~30年後には政治のリーダーになっていく。今の日本は、それでも昔の方法にしがみつこうとしていますが、世界的な潮流に取り残されないためには、そうした大きなトレンドの変化を押さえておかなければなりません。 著者が薦める本 カール・マルクス『資本論』 (国民文庫) 私自身の研究のモチベーションと同様、マルクス自身も現実の問題にコミットして研究を続けた学者でした。そうした彼の生きざまにも影響を受けました。資本主義の矛盾や、資本主義に代わり得る社会のビジョンをこれほど深く考え抜いた本は他に無い。19世紀に書かれた本でありながら、現代でも様々な問題を考えるうえで、まずはここに立ち返り、さらに思考を発展させていく土台となる座右の書です。(斎藤氏)』、「フリマアプリ「メルカリ」のように不用品を手軽に売れるサービスや、ものを所有しないシェアリングエコノミーなど」、「技術の力のみで社会は変えられない」、「労働組合が担うべき役割は今でもあるんです。 ところが今、労働組合の多くは、男性正社員たちの既得権益擁護団体のようなものになってしまっている。そうでなく、自分たちの製品の環境への影響や、同じ職場で働いている非正規雇用者、女性の待遇の不均衡といった問題に対して声を上げるべきです」、その通りだろう。「人新世の「資本論」が売れているということは、日本もまだ捨てたものでもないのかも知れない。

次に、9月15日付け東洋経済Plus「リーマン危機から世界を”救った”男:独占インタビュー①ケインズ経済学の神髄 宇沢弘文氏の教えから昇華、清滝教授の「独自モデル」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/575314
・『世界的な金融危機が発生したあのとき、アメリカで1人の経済学者が重要な役割を果たした。希代の理論家が語った白熱の100分を全5回で配信。 中央銀行が大規模な金融資産の購入を通じてマーケットの流動性を高める「非伝統的な金融政策」。その理論化を主導し、2008年のリーマンショックの鎮火に貢献したのが、プリンストン大学の清滝信宏教授だ。 日本人初のノーベル経済学賞受賞も期待されている清滝氏が、恩師である宇沢弘文氏と自身の理論のつながり、アメリカ当局との関わり、そして日本経済への提言まで、すべてを語った(Qは聞き手の質問、Aは清滝氏の回答)。 Q:清滝さんにとって、経済学の研究はどのような問題意識から始まったのですか? A:よく「社会的分業」と呼ばれるが、私たち一人ひとりの生活は、ほかの人の経済活動に大きく依存している。 一人ひとりは、消費や生産を行うとき、自分の利益や周囲のことだけを考えてバラバラに決めているのに、社会的分業はこうした利己的で分権的な個人の決定とうまく調和している。これは考えれば考えるほど不思議で、アダム・スミス以来の大きなテーマだ。 【ワンポイント解説】アダム・スミス(1723〜1790年)イギリスの道徳哲学者、経済学者。当時の重商主義(輸出入関係の商人を重視)を批判し、年々の労働の生産物こそが国富であるとして、個々人の活動が「見えざる手」(市場機構)に導かれて生産の増大をもたらす過程を、社会的分業の観点から分析した。主著は「国富論」「道徳感情論」。 通常の経済学では、市場経済における価格メカニズムが、個々の主体が選択した多数の財の需要と供給を同時に均衡するように調整しているため、分権的な決定と社会的分業は両立すると考えている。 ところが、これを「異時点間」、資金の貸し借りを含めた、現在と将来の財(商品・サービス)の交換という場面まで拡張すると、市場経済はもっと微妙で複雑な動きをしているのではないかというのが、そもそもの問題意識だった。 Q:時間という要素が入ると、不確実性が生じて単純な話ではなくなりますね。 A:現在だけを対象にするなら、いま財を交換して取引は終わる。一人ひとりの意思決定を阻害する要因は入りづらい。 これに対して、資金の貸し借りは、現在の財と将来の財に対する請求権を交換することを意味するが、将来、資金を返す段階になって状況が変わったり気が変わったりすると、返済しないことがある。そうなると、現在と将来の財の交換を歪ませる要因になる。 現実の経済では、担保を取ることでこの問題にある程度対応している。もし返済が滞れば、借り手は担保資産を失う、あるいは担保資産によって借金を返済する。この担保資産は、土地や建物、機械などの有形資産であったり、評判などの無形資産であったりする。こういった要素が、個々の主体の決定と社会的分業を調和させるうえで重要な役割を持つようになる。 Q:通常の経済学より、もっと考えなければならない要素が増えると。 A:さまざまな資産(担保)価値、そしてその資産価値を左右する「将来の期待」が入ってくる。うまくいっているときは、普通の価格理論よりもっと精巧な動き方をしている姿を描き出せるし、逆に、それは複雑で微妙な仕組みだから、時にはうまくいかなくなることもある。 実は、貨幣理論も同じような構図にある。もし信用が完璧でみなが確実に約束を守るなら、お互いの財の貸し借りだけで済んでしまい、別に貨幣はなくてもよい。 しかし、みなが必ずしも約束を守らないので信用が制約されると、将来の必要時に備えてお金を貯めておくとか、借り入れが難しければ貯めたお金で賄うといった行動が出てくる。だから貨幣経済というのは、信用の制約と強く結びついているわけだ』、単純な経済モデルに、現実的な要素を入れることで現実に近づけようとする意欲的な取り組みだ。
・『宇沢弘文先生に大きな影響を受けた  Q:それはまさにケインズ経済学の神髄といった感じですが、大学生のときから、このような問題意識を持っていたのですか。 宇沢弘文先生のゼミに入っていた影響が大きい。宇沢先生のやり方は少し変わっていて、学生にケインズの『雇用、利子および貨幣の一般理論』を読ませたうえで、「そのモデルを作れ」と言う。 【ワンポイント解説】宇沢弘文(1928〜2014年) 日本を代表する数理経済学者。世界的に評価の高い経済成長理論の2部門モデルなど多数の功績を残し、「社会的共通資本」の概念も提唱。後年は公害など社会問題にも取り組んだ。 普通、大学の学部生がそんなことをしても大抵うまくいかない。僕らはうんうんうなりながら、いろいろと一貫性のあるモデルを作ろうと努力した。そのときはほとんど失敗したが、「どうもケインズの理論は、完全競争モデルではなく、不完全競争モデルのほうが相性がいいのではないか」といった感じで、あの時期はとても多くのことを考えた。 【ワンポイント解説】ジョン・メイナード・ケインズ(1883〜1946年) 20世紀を代表するイギリスの経済学者。不確実性を基礎とした有効需要論を打ち立て、政府の金融・財政政策を支持した。その学説は1970年代以降、完全雇用を前提とする新古典派の復活でいったん下火になったが、リーマン危機以後は人気を取り戻した。 Q:清滝さんは「独占的競争」についても有名な論文を書かれていますが、それも当時からの問題意識によるものなのですね。 A:そうだ。独占的競争を想定すると、需要の制約が比較的すんなりと出てくる。 【ワンポイント解説】独占的競争 完全競争市場と独占市場の中間に位置する状態の1つ。①競合する多数の生産者がいる、②製品は差別化されている、③長期的には参入と退出は自由、の3つの条件で定義される。現実の多くの市場構造と近いと考えられる。 それと同時にあの時代に考えていたのは、「ケインズ理論とは価格が即座には調整されない価格硬直性を前提としたものだ」というアメリカ流のケインズ経済学の認識はどうも不十分だということ。 僕たちは、「金融と実物生産・雇用の間に密接な相互連関がある」とするところに、ケインズ理論の本質があると議論していた。当時のモデル作りはほとんど失敗したが問題意識は残っていて、アメリカに行ってから、「もっとうまく(ケインズ的な)モデルを作れないか」という思いが再び湧き上がってきた。そうした意味で、僕は宇沢先生にものすごく影響を受けた。) Q:アメリカ留学では、ハーバード大学の博士課程でオリヴィエ・ブランチャード教授などが指導教員になりました。 【ワンポイント解説】オリヴィエ・ブランチャード 1948年生まれ。フランス生まれのアメリカ経済学者。マクロ経済学の代表的な教科書を記し、2008〜2015年にはIMF(国際通貨基金)のチーフエコノミストとしても活躍した。現在はピーターソン国際経済研究所シニアフェロー。 ブランチャード先生から「おまえは何をやりたいのか」と聞かれ、私は「今のマクロ経済学に銀行や金融の制約という要素を入れて研究してみたい」と言った。すると、「そんなことできっこない。だいたい、おもしろいかどうかもわからない」と言われましたね(笑)。 ブランチャード先生はそのころ、私の関心に否定的だったが、おそらく「できっこない」というのは正しかったと思う。1980年代初めに、もし大学院生がそんなことをやったら、たぶんうまくいかなかっただろう。 代わりに取り組んだのが独占的競争の研究だ。このアプローチでケインズ理論を考えることは、当時のアメリカでもオリバー・ハートやマーティン・ワイツマンなどがやり始めていた。日本から持って行った問題意識と、アメリカで学んだ道具を一緒に合わせて博士論文を書き上げた。 Q:本当にやりたいことは、すぐにはできなかったのですね。 A:しばらく経って、やっぱりやるべきことはこれだけではないなと思い立ち、金融や借り入れの制約を取り入れた研究を始めたり、貨幣理論に取り組んだりした。それが、ランドル・ライト(現ウィスコンシン大学ビジネススクール教授)との仕事だ。 【ワンポイント解説】清滝=ライトモデル 清滝教授が共同研究で構築した貨幣理論の1つ。従来の経済学では明確に説明できなかった「貨幣が社会的に信用されるとそれがなぜ流通し、交換・生産・消費を活発にするのか」をサーチ理論を用いて数理モデルで説明した。 当時、僕が(助教授として)働いていたのがウィスコンシン大学で、そこにはマーク・ガートラー(現ニューヨーク大学教授)やケネス・ロゴフ(現ハーバード大学教授)らもいて、いろいろ議論できた。 さらにその後渡英して、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスに行き、ジョン・モーア(現エディンバラ大学教授)と一緒に仕事をした。最初は「清滝=ライトモデル」を拡張するつもりだったが、そのうちに拡張するよりもっと信用のところに焦点を当ててモデルを作ろうということになった。 ただ、それはロンドンにいる間にはできず、僕がミネソタ大学に移ってから、モーアがミネソタに来たり、僕がロンドンに行ったりしながら共同研究を進めた。そうして1990年代初めにできたのが、いわゆる「清滝=モーアモデル」だ』、「宇沢弘文先生」が「ゼミ」で「学生にケインズの『雇用、利子および貨幣の一般理論』を読ませたうえで、「そのモデルを作れ」と言う」、「僕らはうんうんうなりながら、いろいろと一貫性のあるモデルを作ろうと努力した。そのときはほとんど失敗したが、「どうもケインズの理論は、完全競争モデルではなく、不完全競争モデルのほうが相性がいいのではないか」といった感じで、あの時期はとても多くのことを考えた」、「やっぱりやるべきことはこれだけではないなと思い立ち、金融や借り入れの制約を取り入れた研究を始めたり、貨幣理論に取り組んだりした。それが、ランドル・ライト・・・との仕事だ」、さすが宇沢氏の指導は「清滝」氏に大きな影響を与えたようで、さすがだ。
・『信用と資産価値の相互作用を理論化  Q:清滝=モーアモデルは、清滝さんの論文の中でも最も注目されているものの1つです。詳しく教えてください。 標準的な経済学では、土地や建物、機械などの資産は生産要素としてだけ扱われてきた。しかし、「人は必ずしも約束を守らない」といった信用の制約がある経済では、そうした資産は担保としても有用だ。 すると、資産(担保)の価格が上がれば上がるほど、信用も大きくなると同時に、信用が大きくなればなるほど、市場を通じて資産価値にも影響を与えるという相互作用が生まれる。これを何とか理論化しようした。 具体例を挙げたほうがわかりやすいだろう。たとえば日本では、1980年代後半に円高不況を受けて金融緩和が進み、同時に日本経済の将来に関して楽観的な期待が広がり、株や不動産などの資産価格が上昇を続けた。そうすると、お金を借りている人は資産(担保)価値が上がれば信用枠が大きくなるため、よりたくさんのお金を借りられるようになった。 一方で「負債のテコ作用」というものもある。たとえば、資産の50%を借金で賄っている人は、資産価値が10%上がると、負債を除いた純資産価値(資産−負債)は大体20%上がることになる(金利を無視すれば負債価値は一定のため)。 通常の経済学では、価格が上がれば需要は減るのだが、以上の2つの作用(担保価値の上昇による信用力の向上と負債のテコ作用)から、資産価格が上がると、純資産価値はそれ以上に増えてもっと借りられるようになるので、信用枠いっぱいまで借りている主体では「価格が上がると、需要は増える」という逆説的なことが起こる。 そういう企業や家計が借り入れをして資産をどんどん購入すると、純資産価値は今期だけでなく、来期も再来期も増えるだろうという予想が生まれてくる。そして、それが今期の資産価格にさらに跳ね返ってくるという増幅作用が働く。こうしたことを理論化したのが、清滝=モーアモデルだ。) Q:このモデルは、資産デフレの説明にも使えますね。 A:上昇にも使えるし、収縮にも使える。たとえば、日本銀行がバブル経済に対応して1990年から金融引き締めを本格化すると、(価格上昇から価格下落へ)逆回転を始めた。 資産価格の上昇のことを「バブル」と考える人がいるが、先ほど話したように、僕たちはそれを増幅作用と、資産に担保価値が乗っているという形で考える。そして、信用枠いっぱいまで借りている主体の純資産が一度増えると、資産需要増が続くため、景気が持続する面もある。 それがマイナス方向の場合には、いったん信用を制約された主体の資産需要が縮小すると、回復に時間がかかる。資産需要の停滞が長引くと予想されると、信用の制約のない主体(たとえばウォーレン・バフェットなど)も価格が低くなければ買わないので、現在の資産価格は大きく下落する。 借り手の純資産はテコ作用でさらに大きく減少するため、資産価値の下落、信用や生産の縮小が進行してしまう。多分、日本の人々にはなじみが深いのではないか。 Q:いやというほど味わいました……。 A:(著名な官庁エコノミストの)香西秦さんには、「昔、自分がこうした話をすると理論に基づいていないと文句を言われたものだが、こうしてきちっと理論化してくれたのでとても助かる」と言っていただいたことがある。 今まで直感的に理解していたことを、目に見える形にして、何が前提条件でどこが肝心のメカニズムなのかということを示すのが重要だ。その分析を数式で表現し、理論的に整合的に説明したことが僕たちの貢献だと思う』、「バブル」は通常の経済学では説明がつかないが、「清滝=モーアモデル」なら説明できるというのは画期的だ。まさに、今後のノーベル経済学賞候補にふさわしいようだ。

第三に、本年5月2日付け日経ビジネスオンラインが掲載した大阪大学大学院経済学研究科准教授の安田 洋祐氏による「ビジネススクールでも教えてくれない、武器としての経済学」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00448/042500003/
・『最新の経済学は、米グーグルや米アマゾン・ドット・コムをはじめ、多くの米国企業で導入されています。しかし日本に目を向けてみれば、直感、場当たり的、劣化コピー、根性論で進められている仕事も少なくありません。なぜ米国企業は、経済学を積極的に採用しているのか。本当に経済学はビジネスの役に立つのか。役立てるにはどうしたらいいのか。『そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。 仕事の「直感」「場当たり的」「劣化コピー」「根性論」を終わらせる』 から一部を抜粋し、著者の1人、安田洋祐氏がビジネスと経済学の掛け合わせによる新しい可能性を探ります。1回目は、従来、近くて遠い存在であった経済学とビジネスの新しい可能性について』、「ビジネスと経済学の掛け合わせによる新しい可能性」とは興味深そうだ。
・『経済学は、本当は仕事に役立つ学問  「経済学」という学問は、今、日本社会で活用されている以上に、本当はもっとビジネスに役立つ学問です。ただもしかしたら、みなさんの中には「学問は、ビジネスにはほとんど役に立たない」──もっというと「学問は、暮らしや社会には、直接的にも間接的にもほとんど関わりがない」と感じている方もいるのではないでしょうか。 特に、人文科学や社会科学の場合は、何かしらの学問分野を学び、「賢くなった」「ものの見方や考え方が変わった」という形で、得るものはあっても、それで自分の仕事がうまくいったり、日々の暮らしがよくなったりすることはないんじゃないか。そう感じる方も少なくないと思います。 学問というのは、机上で学ぶだけでなく、学んだことを実社会のなかで使ってこそ、その真価は発揮されます。一方で、多くの学問について、学んだ内容を役立てるために欠かせない、肝心な使い方まではきちんと伝わっていないようにも感じます。とりわけ、わたしが専門とする経済学は「実社会において非常に役立つ武器であるにもかかわらず、その真価をあまり発揮できていない学問」の最たるものではないか。そう強く感じています。 ここであえて「武器」という強い言葉を使いましたが、それはもちろん、他人を攻撃したり、何かを破壊したりするという意味ではありません。真意は「暮らしの改善や利益の拡大に役立つ心強いツール」ということです。あと、本物の武器と同じように、ライバルより先に使うと有利になるという意図も込められています』、「経済学は「実社会において非常に役立つ武器であるにもかかわらず、その真価をあまり発揮できていない学問」の最たるものではないか。そう強く感じています」、経済学者の責任でもあるのではなかろうか。
・『「経済学は役に立たない」と言われる理由  武器は、その仕組みや、それが何に使えるのかを知っているだけでは、役に立ちません。当たり前ですが、実際に使ってみて初めて役に立ちます。 この「使う」という視点は、経済学の教育で乏しいように思います。「知る」とか「理解する」でとどまっているのですね。経済データの扱い方を知るとか、市場の仕組みを理解するというように。いわば教科書できれいなサイエンスを学ぶことで止まっている。そこから一歩踏み込んで、現実の問題を解決していく。実は、経済学はそれができる段階にとっくに達しています。 もちろん現実で起こる出来事は、教科書に書かれていることと同じではありません。似ているものはあっても、完全に同じものはない。きれいなサイエンスは、現実を把握するための物差しとしては非常に有用ですが、それだけでは対処できないのです。 例えば、わたしはある野菜の市場設計に携わったことがあります。教科書の市場理論は、もちろん役に立ちます。しかし教科書のなかでは、どんな商品も一緒くたに「財」として扱われてしまう。野菜もボールペンも、どれも「財」として抽象的に扱われるのです。 しかし野菜の市場設計を考えるためには、野菜ならではの難しさを考慮しなければいけません。具体的には、野菜は放置すると腐るから、受け渡し場所は冷蔵施設があるところにしようとか。決められた納期を守るために、物流もきちんと確保しなければいけないとか。農家のなかにはIT機器の操作に慣れていない人もいるので、ごく簡単な操作で、それなりによい取引ができるルールにしようとか。 つまり、個別の問題に向き合って解決していく必要があるわけです。これはサイエンスというよりは、エンジニアリングという言葉のほうがしっくりきます。「サイエンスで問題に接近していき、エンジニアリングで解決する」というイメージですね。 現在の大学の経済学教育では、このエンジニアリングに関する要素が決定的に欠けているように感じます。ほとんど教えていない、という大学も少なくないでしょう。サイエンスは大切ですが、それだけではバランスがよくありません。 経済学を実社会において役立てるためには、「サイエンス」と「エンジニアリング」の両方が必須です。そして、経済に関する「サイエンス」と「エンジニアリング」を合わせたものが「武器としての経済学」なのです』、「経済に関する「サイエンス」と「エンジニアリング」を合わせたものが「武器としての経済学」なのです」、経済にも「エンジニアリング」があるとは初めて知った。
・『日本企業はなぜ経済学者を雇わないのか  自然科学では、エンジニアリングの重視は当たり前です。経済学は歴史が浅く、本格的に科学となったのはおそらく20世紀半ばくらいでしょうか。最近ようやくエンジニアリングを重視できる段階に入ったのだと思います。 細かいことをいうと、2002年にアルヴィン・ロス氏という学者が「The Economist as Engineer」という論文を公刊し、それが学界のムードを変えました。 「えっ、ムードってなに?」と思われるかもしれませんが、雰囲気って大切なんですよ。学問は人間がつくっているもので、自分はどういうものをつくるか、他者がつくったどういうものを評価するかに、学界のムードは大きく影響するんですね。 ロス自身、エンジニアリングな経済学を発展させてきた人です。彼は腎移植マッチングや研修医制度の設計などで多大な貢献をして、2012年にノーベル賞を授与されています。 話を戻しましょう。エンジニアリングな経済学の歴史はまだ若いです。特にいま日本社会の中枢にいる年代の人は、よほど学び続けている方でない限り、エンジニアリングな経済学をほぼご存じないでしょう。経済学部出身の方でも、ほとんどキャッチアップできていないのではないでしょうか。厳しい言い方になってしまうかもしれませんが、だからこそ、いまだに経済学が日本企業の武器になっていないのです。 わたしが残念に思うのは、もし企業が経済学博士を積極的に雇用したり、ビジネスパーソンと経済学者が幅広く人事交流する機会があったりしたら、エンジニアリングな経済学はもっと早く日本社会に広まっていたであろうことです。 もちろん、こうした流れを生み出せなかった責任は、サイエンス教育にばかり特化して、エンジニアリングを疎(おろそ)かにしてきた大学にもあります。この点では、日本は米国に少なくとも20年は後れをとっています。では、この状況を変えるためにどうすればよいのでしょうか』、「責任は、サイエンス教育にばかり特化して、エンジニアリングを疎(おろそ)かにしてきた大学にもあります。この点では、日本は米国に少なくとも20年は後れをとっています」、「米国に少なくとも20年は後れ」とは致命的だ。
・『まずは「ざっくりとした知識」で十分  このようにお伝えすると、「経済のサイエンスとエンジニアリングをいまから勉強する、の……?」と思って、ゲンナリされた方もいるかもしれません。 ですが、ご安心ください。足りなければ、すでに経済学のサイエンスとエンジニアリングを身につけている仲間を加えればいいのです。「経済学の父」とも呼ばれるアダム・スミスが説いた「分業の利益」を思い出してください。1人で、あるいは自社で全部行う必要はありませんし、それは多くの場合、むしろ非効率でしょう。「サイエンス」と「エンジニアリング」の両面から経済学をビジネスに役立てる、そのために経済学者がいるのです。 手前味噌に聞こえるかもしれませんが、経済学者を事業チームに引き入れるのは、現状を変える有効な手段です。役に立つ武器をもっている専門家を仲間にして、自分たちで使っていくわけですね。 その際には、経済学だけでなく、経済学者をうまく使うことが大切です。例えば、『そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。』の共著者のうち、唯一のビジネスパーソンで、わたしを含む多くの経済学者を使ってきた今井さんは、経済学者とビジネスパーソンとで、「先生と生徒」の関係にならないことが重要だと強調していました。つい経済学者を「先生」のようなポジションに置いてしまいがちですが、そうすると「生徒」側はビジネスの事情や性質を「先生」に教えにくくなってしまうといいます。 ビジネスパーソンに求められるのは、経済学や経済学者が、個別のビジネス課題に対して、どのような形で役に立つのか、そのざっくりとしたイメージをつかむこと。それができていれば、ニーズが生じたときに、適切な経済学者を見つける「仲間さがし」もきっとうまくいくはずです。 経済学がビジネスにとってどんな武器となり得るのか、経済学者がビジネスにどんな価値を提供できるのか、という少し具体的な提案は、これからのこの連載で、お伝えしたいと思います』、「経済学者とビジネスパーソンとで、「先生と生徒」の関係にならないことが重要だと強調していました。つい経済学者を「先生」のようなポジションに置いてしまいがちですが、そうすると「生徒」側はビジネスの事情や性質を「先生」に教えにくくなってしまうといいます」、なるほど。 「ビジネスパーソンに求められるのは、経済学や経済学者が、個別のビジネス課題に対して、どのような形で役に立つのか、そのざっくりとしたイメージをつかむこと」、「少し具体的な提案は、これからのこの連載で、お伝えしたいと思います」、今後の展開が楽しみだ。
タグ:「経済学は「実社会において非常に役立つ武器であるにもかかわらず、その真価をあまり発揮できていない学問」の最たるものではないか。そう強く感じています」、経済学者の責任でもあるのではなかろうか。 「責任は、サイエンス教育にばかり特化して、エンジニアリングを疎(おろそ)かにしてきた大学にもあります。この点では、日本は米国に少なくとも20年は後れをとっています」、「米国に少なくとも20年は後れ」とは致命的だ。 「経済に関する「サイエンス」と「エンジニアリング」を合わせたものが「武器としての経済学」なのです」、経済にも「エンジニアリング」があるとは初めて知った。 「ビジネスと経済学の掛け合わせによる新しい可能性」とは興味深そうだ。 安田 洋祐氏による「ビジネススクールでも教えてくれない、武器としての経済学」 出版不況のなかで、「30万部超の異例のヒット」とは大したものだ。「気候変動の問題一つをとってみても、近年は日本も、スーパー台風や集中豪雨、夏の酷暑など、様々な形で危機に直面するようになりました。新型コロナなど未知のウイルスによる感染症の拡大も、元をたどれば、森林などを乱開発した資本主義に原因があります。「これはまずいんじゃないのか?」という気配が高まったことと、本書の発売のタイミングが合致したのは大きいと思います」、なるほど。 単純な経済モデルに、現実的な要素を入れることで現実に近づけようとする意欲的な取り組みだ。 もし信用が完璧でみなが確実に約束を守るなら、お互いの財の貸し借りだけで済んでしまい、別に貨幣はなくてもよい。 しかし、みなが必ずしも約束を守らないので信用が制約されると、将来の必要時に備えてお金を貯めておくとか、借り入れが難しければ貯めたお金で賄うといった行動が出てくる。だから貨幣経済というのは、信用の制約と強く結びついているわけだ 日経ビジネスオンライン プリンストン大学の清滝信宏教授 東洋経済Plus「リーマン危機から世界を”救った”男:独占インタビュー①ケインズ経済学の神髄 宇沢弘文氏の教えから昇華、清滝教授の「独自モデル」」 「フリマアプリ「メルカリ」のように不用品を手軽に売れるサービスや、ものを所有しないシェアリングエコノミーなど」、「技術の力のみで社会は変えられない」、「労働組合が担うべき役割は今でもあるんです。 ところが今、労働組合の多くは、男性正社員たちの既得権益擁護団体のようなものになってしまっている。そうでなく、自分たちの製品の環境への影響や、同じ職場で働いている非正規雇用者、女性の待遇の不均衡といった問題に対して声を上げるべきです」、その通りだろう。「人新世の「資本論」が売れているということは、日本もまだ捨てたも 「今の日本で広まっているレベルのSDGsの認識では、気候変動に対して効果は無いんです」、「むしろ、「これをやっていれば大丈夫」という誤った認識を持ち、真に必要な大きなアクションから目を背けさせてしまう」、その通りだ。 「実はマルクスは、環境破壊に対して深い問題意識を持ち、自然科学を熱心に学んでいました。 今まで知られてこなかった、そうしたエコロジストとしてのマルクスの思想を掘り起こすことは、単に新たなマルクス像を示すばかりでなく、「人新世」の環境問題、つまり人類は資本主義の下での技術革新と経済成長だけで環境危機を突破できるのか、という最大の問題に対し、非常に重要な視点を与えてくれると私は考えました」、「議会民主主義だけを民主主義だと捉えてはならず、民主主義を拡張していくためにも、デモや学校ストライキや、様々なアクション 「経済学者とビジネスパーソンとで、「先生と生徒」の関係にならないことが重要だと強調していました。つい経済学者を「先生」のようなポジションに置いてしまいがちですが、そうすると「生徒」側はビジネスの事情や性質を「先生」に教えにくくなってしまうといいます」、なるほど。 「ビジネスパーソンに求められるのは、経済学や経済学者が、個別のビジネス課題に対して、どのような形で役に立つのか、そのざっくりとしたイメージをつかむこと」、「少し具体的な提案は、これからのこの連載で、お伝えしたいと思います」、今後の展開が楽しみだ。 「バブル」は通常の経済学では説明がつかないが、「清滝=モーアモデル」なら説明できるというのは画期的だ。まさに、今後のノーベル経済学賞候補にふさわしいようだ。 「宇沢弘文先生」が「ゼミ」で「学生にケインズの『雇用、利子および貨幣の一般理論』を読ませたうえで、「そのモデルを作れ」と言う」、「僕らはうんうんうなりながら、いろいろと一貫性のあるモデルを作ろうと努力した。そのときはほとんど失敗したが、「どうもケインズの理論は、完全競争モデルではなく、不完全競争モデルのほうが相性がいいのではないか」といった感じで、あの時期はとても多くのことを考えた」、「やっぱりやるべきことはこれだけではないなと思い立ち、金融や借り入れの制約を取り入れた研究を始めたり、貨幣理論に取り組んだ 貨幣理論も同じような構図にある さまざまな資産(担保)価値、そしてその資産価値を左右する「将来の期待」が入ってくる。 (その5)(『人新世の「資本論」』30万部の斎藤幸平 若き経済思想家の真意、リーマン危機から世界を”救った”男:独占インタビュー①ケインズ経済学の神髄 宇沢弘文氏の教えから昇華、清滝教授の「独自モデル」、ビジネススクールでも教えてくれない 武器としての経済学) 経済学 経済思想家・斎藤幸平 日経ビジネスオンライン「『人新世の「資本論」』30万部の斎藤幸平 若き経済思想家の真意」
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日本型経営・組織の問題点(その13)(見えない価値「非財務資本」こそが生死を分ける 日本企業がGAFAMの足元にも及ばない真の理由、「日本型経済システム」の成立条件が 完全なる終焉を迎えつつある根拠 『比較制度分析序説――経済システムの進化と多元性』(青木昌彦著)で読み解く、似た者同士で群れる日本人 リーダー量産するインド人とどう違う?) [経済政治動向]

日本型経営・組織の問題点については、昨年12月25日に取上げた。今日は、(その13)(見えない価値「非財務資本」こそが生死を分ける 日本企業がGAFAMの足元にも及ばない真の理由、「日本型経済システム」の成立条件が 完全なる終焉を迎えつつある根拠 『比較制度分析序説――経済システムの進化と多元性』(青木昌彦著)で読み解く、似た者同士で群れる日本人 リーダー量産するインド人とどう違う?)である。

先ずは、本年1月17日付け東洋経済オンライン「見えない価値「非財務資本」こそが生死を分ける 日本企業がGAFAMの足元にも及ばない真の理由」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/503177
・『「ウチの株価、どうしてこんなに低いんでしょうか。足元の業績も悪くないし、成長もしている。自己株買いだってやっているのに」――。ある東証1部上場企業のCFO(最高財務責任者)は、業績の良さとは裏腹に低迷する株価をみてうなだれる。 コロナ禍の大規模な金融緩和もあって、日本企業の株価はバブル期以降の低迷期を脱したようにみえる。しかし、足元では日経平均株価が3万円に届かないまま行ったり来たり。半導体や自動車のメーカーを中心に企業の業績は良くなっているのに、なぜか株価が思ったほど上がらない。 一方、株価が上昇し続けているのがアメリカの市場だ。GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック(現メタ)、アマゾン、マイクロソフト)など、巨大IT企業の株価が牽引し右肩上がりが続く。コロナショックからの回復期を経て、S&P500などアメリカ市場の代表的な株価指数はまだまだ最高値を更新し続けている。 アメリカ株の上昇を「バブルだ」と片付けてしまうのは簡単だ。しかし、日本株が低迷してきた過去30年間でも、アメリカ株は中長期で見て上昇基調を維持している。日米の企業価値の差は歴然である』、興味深そうだ。
・『過去の業績では株価は動かない  1月17日(月)発売の『週刊東洋経済』1月22日号(1月17日発売)では「企業価値の新常識」を特集。「非財務資本」を巡る、企業の混乱と対処法について、まとめている。 企業会計の専門家たちは、近年、時価総額が財務諸表に載っている業績データで説明できなくなってきていると指摘する。財務諸表に載っていない、見えない価値を説明するために出てきたのが、「非財務資本」という概念だ。 産業の中心が製造業だった時代には、工場の生産能力から将来生み出される製品の量が予測でき、そこから未来の企業業績を比較的簡単に計算できた。まさに財務諸表全盛期だ。 しかし、現在では産業の中心がITを活用したサービス産業に移行している。とくにネット系のビジネスではユーザーの数や顧客満足度が将来の稼ぎに大きく影響するが、こうした情報は財務諸表にはほとんど載っていない。 サービス産業への移行にうまく適応したのがアメリカの企業だった。 GAFAMを代表とするIT企業群は、ソフトウェアや優秀なエンジニア、働きやすい環境作りなどに積極的に投資し、財務諸表に載らない「非財務資本」をうまく蓄積してきた。 翻って、日本の企業は環境変化への対応や人材への投資を怠ってきた、と言わざるをえない。例えば人材への投資という点では、入社時や昇進時に数日程度の研修を行うことはあっても、従業員のスキルアップにつながるような投資を地道にしてきただろうか。 あるいはDX(デジタルトランスフォーメーション)が近年話題にはなってきたものの、単純な業務の「デジタル化」にとどまっている例は枚挙にいとまがない。インターネットやさらにその先の革新的な技術による新たな事業の創出に結びつくことは稀ではないだろうか。 数字からも日本企業の出遅れ感は明らかだ。PBR(株価純資産倍率)は、倍率が高いほど「非財務資本」が大きいことを表すが、日本企業のPBRは1倍付近で停滞している。アメリカの上場企業平均が約3倍なのに対し、明確に低い水準だ。東証1部でも1000社以上がPBR1倍を下回る、すなわち時価総額が純資産より少ない状態にある』、「従業員のスキルアップにつながるような投資を地道にしてきただろうか。 あるいは「DX」も「単純な業務の「デジタル化」にとどまっている例は枚挙にいとまがない」、こうした「日本企業の出遅れ感」が、「日本企業のPBRは1倍付近で停滞・・・アメリカの上場企業平均が約3倍なのに対し、明確に低い水準」、その通りだ。
・『企業価値を高める秘策とは何か  では企業価値を高めるにはどうすればよいか。いきなり非財務資本を高めよと言われても難しい。ただし、手がかりはある。 例えば、気候変動関連の開示への対応を進めること。足元で国際的な枠組みの策定が進み、4月にスタートするプライム市場の企業には、新たな枠組みでの開示が求められる。開示対応には2つのメリットがある。 まず、こうした開示への要求に積極的に対応すれば、投資家から再評価される可能性があることだ。預かった資産を中長期で安定して運用する責任のある機関投資家にとって気候変動のリスクは大きい。適切な開示を行う企業には、投資家が安心して資金を投じる可能性が高い。 また、新しい開示の枠組みに対応しようとすれば、例えば「2100年に地球全体の気温が産業革命以前と比べて4度上昇するとき、あなたの会社のビジネスにはどのような財務影響がありますか?」といった難しい質問にも、答えていることになる。少なくともそうした問題意識を持ち、取り組んでいる姿勢を投資家に示していると、評価されやすい。 投資家のためだけでなく、自社のためにもなる。こうした新しい開示の枠組みに少しずつでも対応していくことで、中長期で自社のビジネスモデルや戦略を見直すきっかけにもなるというわけだ。 企業価値を巡る考え方は、実体のあるモノをどれだけたくさん抱えているかということから、人材やノウハウ、ブランド、顧客満足度など、数えたり測ったりできない対象へ主眼が移っている。 こうした新しい企業価値の考え方に基づいた開示を行っている企業もある。エーザイ、キリンホールディングス、伊藤忠商事などだ。まずはこうした先行企業の事例から学び、企業価値の向上につなげてほしい』、「企業価値を巡る考え方は、実体のあるモノをどれだけたくさん抱えているかということから、人材やノウハウ、ブランド、顧客満足度など、数えたり測ったりできない対象へ主眼が移っている。 こうした新しい企業価値の考え方に基づいた開示を行っている企業もある」、「こうした先行企業の事例から学び、企業価値の向上につなげてほしい」、同感である。

次に、3月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したプリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役の秋山進氏による「「日本型経済システム」の成立条件が、完全なる終焉を迎えつつある根拠 『比較制度分析序説――経済システムの進化と多元性』(青木昌彦著)で読み解く」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/299512
・『日本経済の停滞ぶりが「失われた○○年」と形容され、「日本は変わらなければならない」と言われ続けて久しい。「変わらなければ」論者は、あるときは、資本主義社会においてより普遍的といわれているアメリカ型の組織やシステムを、またあるときは、先ごろまでは好調だった中国経済を対象に現象面を比較し、異なる点を見つけては、日本のあり方は間違っている、遅れていると自虐的に指弾する。 そうした「反省」に基づいて、さまざまな改革が実際に試みられた。コーポレート・ガバナンス改革、DX改革、ROE重視の経営や、ジョブ型雇用……。日本経済が遅れていて、ガラパゴスだという論は果たして100%正しいのか。それとも改革は流行に流されていて、意味のないものなのか。あるべき姿とはどのようなものなのか――。疑問を持つ人は多いに違いない。 これらの疑問への多大なヒントを与えてくれるのが、ノーベル経済学賞候補に名を連ねたこともあり、スタンフォード大学でCIA(比較制度分析)の講座を立ち上げた、青木昌彦氏の著書『比較制度分析序説――経済システムの進化と多元性』である。丁寧に解説していきたい』、興味深そうだ。
・『日本経済が脅威であった時代にいち早く提言された日本企業の課題  本書の単行本が出版されたのは1995年。バブル崩壊後、いまだ日本経済が他国にとっての脅威であり、日本異質論に対応して日本の経済システムを他の先進国と同様のものに変えなければならない、という外圧が強かった頃である。 本書は、当時経済分析のツールとして機能し始めた情報の経済学、ゲームや契約の理論などの分析言語を使って、新たな視点から一国経済を分析し、多くの人が普遍的だというアメリカ型の経済システムも、特殊だといわれた日本型の経済システムも、多様な均衡解(さまざまな状況や条件が重なって暫定的に最適解のように収まっている状態)のひとつであり、状況によっては均衡解でなくなることを、一般向けに解説している。 経済システムの多様な在り方や日本の経済システムの原型を理解することで、現在のシステムのゆらぎの把握や、この先に(少なくとも理論上は)あるはずのよりよい均衡点(よりよいシステムの在り方)への展開を感じることができる。それはマクロな国家の経済システムとミクロな組織と人の在り様の両方を接続して考えるうえで、非常に大きなヒントになる。 本書の基本的な考え方は、以下のようなものである。 経済主体の合理性の限界、人々のあいだでの情報の分配の非対称性、市場の不完全性などのゆえに、時空を超えて普遍的な規範的価値を持った経済システムなどというものは本来ありえない」(『経済システムの進化と多元性―比較制度分析序説』(青木昌彦、講談社学術文庫、以下引用はすべて同書) 人も企業も完全に合理的な意思決定はできない。また、人々の間には情報格差がある。さらには現在の市場は、欲しいものを欲しい人が適正な価格で得られるような完璧に合理的な売買ができるように動いてはいない。だから、いつ誰にとっても合理的で完璧な経済システムというのはあり得ない、と言っている』、「時空を超えて普遍的な規範的価値を持った経済システムなどというものは本来ありえない」、「いつ誰にとっても合理的で完璧な経済システムというのはあり得ない」、との考え方は納得できる。
・『炙り出された企業の生産性を左右する要素  青木はその前提に立って、企業組織が実際にどのように運営されているかを分析した。その結果、企業の生産性は、企業の業務や生産に携わる人々が持つ情報の量や質と、その情報を基にした決定の権限や義務の組織的配置に依存しているということを明らかにした。 企業で働く人の情報量と質がどんなものであるかということと、それを基に誰が何を決められるかによって生産性が変わるというのである。そして組織の基本型は、ある職場や組織のシステム全体の活動のコストや売り上げに影響を与えるシステム環境パラメータと、それぞれの職場の活動のコストや売り上げに個別に影響を与える個別環境パラメータの2つの視点で分けることができると考えた。 「企業組織のコーディネーションには五つの基本型(※)がありうることを示す。それらは、古典的・機能分権的・水平的ヒエラルキーと情報同化型、情報異化型である。(中略)そしてもっとも重要なことは、これらのタイプのどれが最も(情報)効率的であるかは、組織環境の活動のあいだの技術的・確率的関連性、社会に存在する個人の情報処理能力(技能)のタイプと水準の分布などに依存するのである」 ※2003年の青木の『比較制度分析に向けて』では、その後の研究では3つの基本型に収斂している。ヒエラルキー分割、情報同化、情報カプセル化である。 2つのパラメータを使って、5つの基本型が導き出される論理展開は大変興味深い。たとえば、アメリカの典型的な産業である石油化学工業と日本の典型的な産業である自動車産業における企業の意思決定では、最終製品の販売や個別の部品に関する直近の情報がどれだけ生かされる仕組みになっているか(システム環境パラメータ)、現場にどれだけ裁量があり、全体の状況から独立してどれだけ自由に意思決定できるか(個別環境パラメータ)の、2つ観点による違いが明確にされる。 ある事業で、どのような組織運営がふさわしいか(どのような情報をどのように生かすしくみにするか、ある事柄についての意思決定がどのように決まるのか――現場の裁量で行われるのか、中央で統一的に決めるのか)は、産業構造によって決まるということが証明されていく。 さらにそこに影響を与えるのが、産業勃興時の初期条件である。たとえばアメリカでは、第二次世界大戦中の軍需生産で生産性が増大し、科学的なシステマティックな経営管理が導入され、労働者を組織的に訓練し、明確に職務を切り分けて、職務ごとにマニュアルに沿って運営する分権的ヒエラルキーが精緻化されていた。一方、同時期に日本では、大量の徴兵で労働力が不足し、仕事を専門化することが不可能になったため、労働者と工場長などの職長、ブルーカラーとホワイトカラーの身分差別が急速に消失し、互いに情報共有する傾向が飛躍的に高まった』、「産業勃興時の初期条件」の日米の違いは、納得できる。
・『分権型の経営が得意な米国と水平型の経営が浸透する日本  アメリカでは「仕事の種類を切り分けて権限移譲する分権的ヒエラルキー」的要素が、日本では「みんなで情報共有する水平的ヒエラルキー」的な要素が組織の中に浸透していたのである。 その結果、日本においては産業構造的に水平的なすり合わせ(情報共有)を必要とすることで優位性を発揮できる(水平的な)、自動車産業、工作機械、電気機械などが優勢になった(下請けの部品工場がサイバーアタックを受けたら、グローバルで全社的な生産まで止まってしまうような自動車産業は、その典型的な例であろう)。 一方、すり合わせなしでも意思決定できる(分権的な)、アメリカが得意な石油化学工業などは、競争力を持たなかった。石油化学は買ってきた原油を集めて、一旦ナフサや重油や軽油に分ければ、あとは、ナフサ部門、重油部門、軽油部門などから細かく何十、何百もの部門に派生していって、それぞれの部門で複雑な製品の製造を行うので、分かれたあとには横の連携はほぼないのだ。 このように、産業ごとにふさわしい組織型は異なる。したがって本来は、産業ごとに水平的、分権的など、マッチした組織の型を採用して運営すればよい。しかし、そうはならないのである。 「ある経済では、いずれかの基本型が支配的になっている。たとえば、日本では情報共有型あるいはその進化型としての水平ヒエラルキーが支配的であるし、アメリカでは従来、分権的ヒエラルキーが支配的であった」) なぜそうなるのか。それは経済主体(人や組織)が市場の支配的な組織の型に合わせて、自己の投資戦略を決めるからである。たとえば日本にいれば、日本に多いタイプの組織で必要な能力を身に着けておいたほうが出世するし賃金も上がるから、その技能を身に付けようとするということである。 「各経済主体は、企業組織に参加する前に(すなわち企業を興すか、雇用される以前に)、情報処理能力の形成の方向性に関して選択を行わねばならない。ひらたくいえば、教育、技能訓練などによって、一定の方向性を持った技能への投資を行わねばならない。たとえば、どのような組織においても通用するような特殊機能の技能(機能的技量)に投資するか、あるいは特定の企業組織参加後にその文脈で有用な技能(文脈的技能)に磨きをかけるという展望を持って、まずは一般的な問題処理能力や組織的コミュニケーションの能力(可塑的技能)に投資しておくか、の二つの選択肢がありえよう」』、「産業勃興時の初期条件」の日米の違いから、「分権型の経営が得意な米国と水平型の経営が浸透する日本」に分かれたというのも、説得力がある。
・『機能的技量と可塑的技量ではどちらの投資リターンが高いか  機能的技量の投資のほうがリターンを得られる可能性が高い地域では機能的技量が、可塑的技量への投資のほうが高いリターンが得られる可能性が高い地域では可塑的技量を高める選択することが、合理的な戦略になるのだ。おおざっぱにいえば、特殊機能の技能(機能的技量)とは、日本の会社における専門職で必要な技能、文脈的技能、可塑的技能は、総合職で必要な能力と考えておけばいいだろう。 学生時代に特殊機能的な技能を習得し、そうした仕事を得てその領域で生きていくことが前提とされている社会では、戦略的に特殊機能的な技能への投資が行われるが、入社した後に何をするか、どのようなキャリアを歩むのかなどが予測できない場合は、一般的な問題処理能力やコミュニケーション能力といった文脈的技能、可塑的技能への投資を人は選択するのである。 専門的なスキルを磨いたほうが就職しやすく、その後の収入も保証されているなら、人は学生時代にそのような勉強をするし、新卒で有名企業に総合職で入れば一生安泰という二昔くらい前の日本であれば、新卒を一括採用する大手有名企業の内定を取るため(入試の学力試験が問題処理能力には直結しないとはいえ)5教科を勉強し、より偏差値の高い大学に入り、アルバイトやサークル活動で「コミュ力」を磨こうとするのである。 個々の経済主体(個人)の間で、文脈的技能の獲得が支配的になれば、本来は機能的技能を優先すべき石油化学産業にあっても、文脈的技能を重視する組織運営が支配的になってしまう(これは進化ゲームという分析によって明らかになる)。) どちらが先なのかわからない、鶏と卵のような話でもあるが、学生が偏差値的学力やコミュ力を磨くことが一般的になれば、専門スキルを重視すべき業界でも、偏差値的学力とコミュ力を企業は重視するようになる。事実、日本企業が新卒採用時に最も重視するのは専門的なスキルや知識(機能的技能)ではなく、問題処理能力、コミュニケーション能力や主体性(文脈的技能、可塑的技能)であり、日本の石油化学産業にもそうした能力が高い人材が送り込まれることになった。 さらに本書では、このような雇用システムに加え、他のシステム(メインバンクによるガバナンスと内部者による会社の支配など)が補完的に機能し合い、日本型の経済システムが構築され機能してきたと説明されている。個々のシステムが相互拘束し合い、一連の強固なシステムとして機能し始めると、多少一部でルールや制度が変わろうと、経済システムや組織運営方法の基本型は変化することなく継続する。 メインバンクや系列企業同士で株を持ち合って、お互いにがっちり縛り合い、どこかの制度を少しいじって表面的に成果給を入れてみたり、「株主による経営者の監視(コーポレートガバナンス)をこれからはしっかりしてください」と規則を厳しくしたりする程度の変革では、びくともしない日本型経済システムの体系が作り上げられたということなのである』、「新卒を一括採用する大手有名企業の内定を取るため(入試の学力試験が問題処理能力には直結しないとはいえ)5教科を勉強し、より偏差値の高い大学に入り、アルバイトやサークル活動で「コミュ力」を磨こうとするのである。 個々の経済主体(個人)の間で、文脈的技能の獲得が支配的になれば、本来は機能的技能を優先すべき石油化学産業にあっても、文脈的技能を重視する組織運営が支配的になってしまう」、「個々のシステムが相互拘束し合い、一連の強固なシステムとして機能し始めると、多少一部でルールや制度が変わろうと、経済システムや組織運営方法の日本型は変化することなく継続する」、道理で「日本的経済システム」が「強固」なわけだ。
・『偏差値的学力向上と「コミュ力」磨きが成功への近道だった日本の学生  このようなことから、多くの外圧、内圧に晒され、部分的な手直しが多発しながらも、日本的経済システムの基底はこれまでなかなか変わらなかった。最も重要なことは、すり合わせを中心とする水平型の組織運営こそが競争力の源泉である産業がビジネス界の中核にあり、そのため経済主体(個人)は可塑的技能に投資することが合理的であり、またそれが当たり前であると信じて疑わない人が、組織運営の中核を担ってきた。 カンバン方式、ジャストインタイムなどの自動車産業のように、水平的に緊密に連携し合うチームワークの組織こそが、ものづくりの素晴らしい組織だと神格化され、そういう社会で育った学生たちも、専門スキルよりは偏差値的学力向上と「コミュ力」を磨くことに力を入れることが、人生での「成功」の近道であり、それが当たり前だ思う人たちが、日本経済の中心にいたということである。 しかしながら、このように強固であった日本型の経済システムも、とうとう分水嶺をこえて、まだ姿の見えない新たなシステムに向けて、流動する時代に突入してしまったのではないかと思われるのである。 すでに、これまでも日本の大企業(上場企業)は、メインバンクによるモニタリングから、株主によるガバナンスの方向へと舵が切られ続けてきたし、その方向性はますます強まっている。メインバンクによるガバナンスのシステムは、企業が不振になり銀行の債権が脅かされない限りは、利益創出にそれほどこだわらない。 銀行さえ損をしなければ、企業の運営がどうなろうと知ったことではないのであるが、一方、株主ガバナンスは常に企業価値の向上を求める。時代の変化に合わず、価値を創出できない組織運営は許容されない。株主が求めるような利益を上げられない会社は、株主からノーと言われる。) 産業構造においては、エレクトロニクスやIT産業でソフトウェアのアプリケーションひとつで性能を変えられるような、入れ替え可能なモジュール化が進み、自動車産業においてもEVに切り変わっていく中で、これまでのすり合わせ(水平ヒエラルキー)重視の組織や組織間の関係が過去ほどの優位性を持てなくなり、利益創出がピンチを迎えている。 さらに、もうすぐIoTの時代に入るから、系列を超えて誰とでもどことも繋がることを前提にした、これまでとは異なる規格に基づいたオープンな情報コーディネーションの時代に入る。 さらには、日本発のグローバル大企業においては、すでに製造拠点の多くは日本になく、研究や開発、商品企画などにおいても日本国内でのみ行われるわけではなくなっている。外国の自社社員との協働も当たり前である。このような状況下にあっては、いまだに日本においてのみ水平的ヒエラルキーを前提に、可塑的技能(総合職的な問題処理力とコミュ力)への投資が支配的な人事制度を維持しているデメリットが大きい』、「強固であった日本型の経済システムも、とうとう分水嶺をこえて、まだ姿の見えない新たなシステムに向けて、流動する時代に突入してしまったのではないか」、「エレクトロニクスやIT産業でソフトウェアのアプリケーションひとつで性能を変えられるような、入れ替え可能なモジュール化が進み、自動車産業においてもEVに切り変わっていく中で、これまでのすり合わせ・・・重視の組織や組織間の関係が過去ほどの優位性を持てなくなり、利益創出がピンチを迎えている」、「IoTの時代に入るから、系列を超えて誰とでもどことも繋がることを前提にした、これまでとは異なる規格に基づいたオープンな情報コーディネーションの時代に入る」、「日本発のグローバル大企業においては、すでに製造拠点の多くは日本になく、研究や開発、商品企画などにおいても日本国内でのみ行われるわけではなくなっている。外国の自社社員との協働も当たり前である。このような状況下にあっては、いまだに日本においてのみ水平的ヒエラルキーを前提に、可塑的技能・・・への投資が支配的な人事制度を維持しているデメリットが大きい」、「日本型の経済システムも」「新たなシステムに向けて、流動する時代に突入」、いよいよ変化しつつあるようだ。
・『水平型ヒエラルキー的な働き方にダメ押しをしたリモートワークの定着  具体的に言うと、高い専門スキルを持った外国人エキスパートを、総合職的な能力重視で深い専門的技能を持っていない上司は、マネジメントできないのである。また、職務ごとに市場価格が定められる労働市場において、高い給与を出せないと優秀な人も採用できない状況に追い込まれるのである。そのようなことから、過去のように建前としてではなく、必要に迫られて機能的技能(専門的スキル)が重要視されるジョブ型雇用に転換する大企業が出現しているのである。 皆がいつも顔を合わせて、なんでも”ホウレンソウ“しながら決めていく水平型ヒエラルキー的な日本企業の仕事の進め方は、これまでも長時間労働の温床であるため、効率的な運用に変えることが求められてきた。さらには、有給休暇も消化し切ることが普通になり、残業時間も厳しく制限されるようになってきている。 そこに、コロナ禍によるリモートワークの定着である。皆が顔を合わせる時間は大幅に減り、自分の仕事を明確に定め、他の同僚や他部署との接続部分においてのみ仕事上のコミュニケーションを重点的に行う仕組みに、変えざるを得ない。この状況下では、その分野に高い能力を持つ上司が、仕事を適切に切り分けモジュール化して、個々人に分権的に仕事を割り振りながら、必要なところだけ互いの業務を調節する仕組みに変えたほうが、圧倒的に効果的かつ効率的である。従来の水平型のコミュニケーションを促進し、調整の場だけをつくって合意を形成する能力(可塑的能力)だけが高い非専門家の上司は、不要なのである。) このような大きないくつもの変化を背景に(コーポレートガバナンスの形式を整えるといった制度的な小手先の変革でなく)、企業の組織運営システム(水平型なのか分権型なのか、それ以外なのか)の在り方と、経済主体(人や組織)の意思決定そのものが変わらざるを得なくなりつつある。水平型を前提とした個人の可塑的技能への投資は、大きく変化するだろう。つまり総合職人材を育てる企業は少なくなるということである。 「ある一つの進化的均衡から他の進化的均衡への移行のために最低限必要な、突然変異の総人口に占める比率を、前者から後者への『移行費用』と呼ぶ。一つの進化的均衡から他の進化的均衡への移行はかなりのサイズを以って一塊の集団(critical mass)による『同時的』変異によってもたらされる」 あるシステムから別のシステムへの変更には、それなりの人数がそのシステムに一斉に鞍替えしなければ行われない(この一斉の鞍替えを移行費用という)。グローバル化によるジョブ型の導入とリモートワーク時代の到来という2つの力が同時に加わり、クリティカルマスは超えられた、つまり社会が変わるのに必要な程度の大多数の人がシステムの鞍替えをしようとしているのではないか』、「グローバル化によるジョブ型の導入とリモートワーク時代の到来という2つの力が同時に加わり、クリティカルマスは超えられた、つまり社会が変わるのに必要な程度の大多数の人がシステムの鞍替えをしようとしているのではないか」、あり得る話だ。
・『最適な均衡点はどこか? 模索が続く日本の経済システム  ただ、この先どのような均衡点に移動するのかは、まだ見えていない。本書では、旧来のアメリカ型でもなく、日本型でもないところに、どの産業セクターにとっても良いP均衡(パレート最適)と呼ばれる均衡点、すなわち、ちょうどよい状態の経済やシステムの状態が、理論上は存在していることが示されてはいる。 過去の均衡点からどこか別の均衡点に移動し落ち着くまでの間、日本の経済システムは相当大きな混乱に陥ることになるだろう。ただ、その混乱は政府の政策がまずいからでも、外国の陰謀でもなく、システムが形を変えて生き残るために避けては通れない道であり、肯定的に評価できるものなのである』、「旧来のアメリカ型でもなく、日本型でもないところに、どの産業セクターにとっても良いP均衡・・・と呼ばれる均衡点、すなわち、ちょうどよい状態の経済やシステムの状態が、理論上は存在していることが示されてはいる」、「P均衡」がどこに着地するのか大いに注目される。

第三に、4月28日付け日経ビジネスオンライン「似た者同士で群れる日本人 リーダー量産するインド人とどう違う?」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00351/042600027/
・『中国出身の気鋭の経営学者、ジャクソン・ルー米マサチューセッツ工科大学(MIT)准教授は、日本人、中国人、韓国人といった東アジア系は、インド人のような南アジア系に比べ米国の組織でリーダーになりづらい理由を深く探ってきた。東アジア系の人々は他の人種よりも強く同質性を好むため、リーダーになりづらいと主張する。ルー氏に解説してもらった(Qは聞き手の質問)。 Q:東アジア系が米国の中で出世しづらいという「竹の天井」を検証した研究(注:2020年7月17日掲載「米国で東アジア系がインド人より出世できない理由」参照)の続編(注)を発表したそうですね。エスニックホモフィリー(同じ民族同士でつながりたがる傾向)が、東アジア系の人は南アジア系の人をはじめほかの民族より相対的に強いということです。これはどういうことですか。 ジャクソン・ルー米マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院准教授(以下、ルー氏):英語にこんなことわざがあります。「類は友を呼ぶ」(Birds of a feather flock together)。古くからある言葉で、社会学研究でよく使われる概念です。つまり、人には住んでいる場所を問わず、自分と同類だと感じる人間同士で集まる傾向があるということです。 注:Lu, J. G. (2021). "A social network perspective on the bamboo ceiling: Ethnic homophily explains why East Asians but not South Asians are underrepresented in leadership in multiethnic environments.", Journal of personality and social psychology.』、「東アジア系が米国の中で出世しづらいという「竹の天井」を検証した研究」、とは興味深い。「竹の天井」とは初耳だ。
・『人間なら誰にでもある「似た者同士で群れる傾向」  ですからエスニックホモフィリーは、東アジア系だけの特徴というわけではありません。人種の多様性の高い環境、例えば米国のような環境では、どこに行っても多様な人種が暮らしています。見た目で黒人、白人、東アジア系の人、南アジア系の人と大体分かります。(ジャクソン・ルー氏の略歴はリンク先参照) 人種を問わず、人は見た目が似ている人を見かけると、ひょっとしたら自分に対して親切にしてくれるのではないかと無意識に反応して、その人に近づく傾向があるのです。 白人は白人同士で親しくなりやすい傾向がありますし、黒人はもちろん、南アジア出身の人も南アジア系の人と友達になりやすい。すべての人種にそうした傾向があるのですが、東アジア系の人はその傾向が一番強いということが、私の研究で確かめられたのです。 Q:確かに、日本、韓国、中国と自国にいるときは互いに距離があるのに、国外に住んでいると国籍を超えて東アジア系だけで集まるのが不思議な気はしていました。アジアの物を扱う小売店や市場でも、東アジアの様々な国の商品がごちゃごちゃで売っていたりとか。 ルー氏:例えばあなたが、MITスローン経営大学院のような米国のビジネススクールに入学し、初登校したとしましょう。あなたは、キャンパスに1人も知り合いがいない。そこでアジア系の学生を見かけると、見た目が似ているから、あの人なら私の考え方などを理解してくれそうだ、友達になろう、と無意識に行動するのです。 米国のような多様性の高い環境では当然ながら、リーダーになるためには自分と違う人種の人々ともしっかりつながる必要があります。エスニックホモフィリーが強く、仲間内だけでつながっているような人では、グループ全体の利益の代表になれないのです。 だから米国では選挙のときも、候補者は自分がたとえ白人であっても必死にスペイン語を使い、自分はラテンアメリカ人の利益に関心を持っているという姿勢をアピールするのです。 Q:すると今回の研究は、東アジア系のエスニックホモフィリーが米国で出世、あるいはリーダーになる上で妨げになっているという結論ですか。 ルー氏:その通りです。例えば特にビジネススクールなどの学校では、東アジア系の人が好んで集まっている様子が目に付くのです。学校以外でも、例えば米国や英国でも中華街のような地域がたくさんありますよね。一方、インドタウンのような地域はあまり見られません。 英語能力のレベルや出生地を統計的にコントロールして、2世である場合などの影響を勘案して分析しても、つまり米国で生まれ育った東アジア系の人であったとしても、やはりエスニックホモフィリーが高いという結果が出ました。) Q:東アジア系の人は人種的な仲間意識の度合いが他の人種よりも強いため、リーダーになりにくいということですね。これはイノベーションが起こせるかどうかの話にもつながりそうです。一匹おおかみの方が破壊的なイノベーションを起こしやすいと指摘する著名経営学者の話を聞いたことがあります。日本人は群れたがるから破壊的なイノベーションを起こせないという仮説も成り立ちそうな気がします。 ルー氏:東アジア文化圏の集団主義も(破壊的なイノベーションが起こしづらい)理由の1つだと思います。例えば日本では統計的に99%の人は同じ民族です。同様に韓国でも99%の人は同じような顔をしていますし、中国も92%は漢民族です。一方、南アジア、例えばインドとかパキスタンは、非常に多様な国です。 インドには公用語が22もあります。子供のころからそうした環境で育った人は、自分と見た目や習慣、育った環境の違う人と接することに慣れています。自分と違う人とつながる練習を積んでいます。だから、米国のような多様性の高い環境に移っても「よそ者」とのコミュニケーションに全く支障がありません』、「東アジア系」は「国外に住んでいると国籍を超えて東アジア系だけで集まる」傾向が強いようだ。「破壊的なイノベーションを起こせない」、というのも寂しい傾向だ。「日本では統計的に99%の人は同じ民族です。同様に韓国でも99%の人は同じような顔をしていますし、中国も92%は漢民族です。一方、南アジア、例えばインドとかパキスタンは、非常に多様な国です」、「インドには公用語が22もあります。子供のころからそうした環境で育った人は、自分と見た目や習慣、育った環境の違う人と接することに慣れています。自分と違う人とつながる練習を積んでいます。だから、米国のような多様性の高い環境に移っても「よそ者」とのコミュニケーションに全く支障がありません」、「「インドには公用語が22」、何と非効率だと思っていたが、「米国のような多様性の高い環境に移っても「よそ者」とのコミュニケーションに全く支障がありません」、と思わぬ効用があるようだ。
・『東アジア人同士の「圧」  一方、中国人や日本人は安全地帯から飛び出して、自分と違うタイプの人とコミュニケーションすることが苦手です。 米国で東アジア系の人同士が使う俗語で「バナナ」という表現をご存じですか。バナナの外皮は黄色い、でも中身は白いですね。東アジア系の人が白人社会に溶け込んでいる様子を見たとき、東アジア系のコミュニティーで、彼、彼女は東アジア系の顔をしているのに白人とばかり付き合っている、と言ったりする。 そこで登場するのが、この俗語です。これが日本人であれば、見た目は日本人なのになぜ日本人と付き合っていない、なぜ日本人とまず友達になれないのか、なぜ、白人と友達になるんだと皮肉を言うわけです。 文化的には、東アジア系であればコミュニケーションや文化の違いだけでなく、そうした周囲の目というプレッシャーもある。東アジア系だからまず東アジア系と友達になれ、そうでなければ裏切り者だ、といった「圧」ですね。だからこそバナナという表現が生まれるのです。 そのようなプレッシャーがあって、新しいグループや新しい環境にもう1人東アジア系の人がいると、では私たちがまず友達になりましょうという流れになるわけですね。) Q:ところで、東アジア出身の人が、実力があっても米国企業などで出世できないという「竹の天井」という言葉ですが、これは05年につくられた言葉ですね。女性が出世できないことを指す「ガラスの天井」から派生したものであると。 ルー氏:そうです、Jane Hyun氏が、『Breaking the Bamboo Ceiling: Career Strategies for Asians』という本を書いたのが始まりです。 言っていることは面白いし納得感があるのですが、研究に基づいて出した洞察ではありませんでした。そうした、納得はするけれどもエビデンスで検証されていないことを深掘りするのが、私たち研究者の役目です。 竹の天井の含意としては、東アジア系は自国民同士や同じ人種の仲間内だったらリーダーを目指せるけれど、多様な環境に入った途端に弱くなるということですね。仲間内の論理では強い。 ルー氏:そうですね。多様性の高い環境でリーダーになるには、いろいろな人とつながる力がないと難しいです。米国で面接すると、東アジア系の人はなぜみんないつも一緒にランチを食べるのですか、とよく聞かれます。 東アジア系は得てしてネットワークも内輪だけにとどまり、いつも同質なグループの人とばかり遊び、食事している。だから人事部門がリーダーとして候補に挙げにくいのです。 Q:そして今回の研究の結論もまた、以前の研究同様、多様性のある組織のリーダーはインド人などの南アジア系である、ということなわけですね。インド人は人口も多いですが、それも関係がありますか。 ルー氏:いえ、人口の問題ではないと思います。米国内でいえば、インド出身者の人口は東アジア系の人口の半分程度ではないですか。でも米ツイッターのCEO(最高経営責任者)も、仏シャネルのCEOもインドの方です。米マイクロソフト、グーグルを傘下に持つ米アルファベットもそう』、「米国内でいえば、インド出身者の人口は東アジア系の人口の半分程度」にも拘らず、有名企業のCEOになっているのは、確かに圧倒的だ。
・『東アジア系に立ちはだかる世界の壁  Q:東アジア系はどうすればリーダーになれるのでしょう。 ルー氏:多様性の高い環境でリーダーになるためには、自分とは違うタイプの人とつながることが大事です。 組織側の努力も必要です。東アジア系の人々が、米国の組織でリーダーになるハードルが傾向として高いということを認識した上で、じゃあ、どうすればサポートできるかと考えることです。多様な背景を持つ人々がつながる機会をつくることなどが考えられます。 米国の多様性を重視する大手企業では、東アジア系の人だからと東アジア系のメンターを付けたりはしないと聞いています。その代わりにもっと外から働きかける機会をつくります。 日本人なら日本人同士で毎日ランチを食べるのではなく、組織的にフリーランチなどの機会を設けて、東アジア系の人を他の人種の人と一緒にするなど、意図的につながる場をセッティングするのです。 Q:機会をつくって意図して訓練を重ねる。そうするとインド人のようにチャンスを得られるかもしれません。 ルー氏:人間というのは基本的に怠け者で、より楽で簡単な方を選ぼうとしてしまいます。心理的には、自分と同じ言語を話す人、自分と似た者同士と友達になりやすいのです。 その壁を乗り越えるには、やはり外からの強制が必要なときもあるのではないでしょうか。 Q:ところで、研究では東アジア系がリーダーになりづらいほかの理由の中に、アサーティブネス(自己主張)が足りないという指摘がありました。エスニックホモフィリーの克服とアサーティブネスの力を鍛えることは両立するのですか。両方を訓練して克服すれば東アジア系がリーダーになれる可能性があるということでしょうか。 ルー氏:東アジア系の人は、南アジア系の人と比べても集団の中で埋もれやすいということが研究でも分かっていますが、エスニックホモフィリーの強さとアサーティブネスの弱さはつながっていると思うのです。 アサーティブネスはコミュニケーションのスタイルの1つです。確かに、東アジア系の人はコミュニケーションするとき、あまり主張しない傾向があります。それも恐らく、エスニックホモフィリーが強い理由の1つなのだと思います。コミュニケーション上、アサーティブネスが低い人、つまりほかの東アジア系の人とより付き合いたい気持ちになってしまいやすいのです。 いずれにせよ、米国の企業や組織に東アジア系のリーダーは少なく、その一方でインド人のリーダーはたくさんいるという理由や背景を探る研究はまだまだ続けます。また、研究が完成したらお話ししたいと思います』、今後の「研究」の進展が楽しみだ。
タグ:日本型経営・組織の問題点 (その13)(見えない価値「非財務資本」こそが生死を分ける 日本企業がGAFAMの足元にも及ばない真の理由、「日本型経済システム」の成立条件が 完全なる終焉を迎えつつある根拠 『比較制度分析序説――経済システムの進化と多元性』(青木昌彦著)で読み解く、似た者同士で群れる日本人 リーダー量産するインド人とどう違う?) 東洋経済オンライン「見えない価値「非財務資本」こそが生死を分ける 日本企業がGAFAMの足元にも及ばない真の理由」 「従業員のスキルアップにつながるような投資を地道にしてきただろうか。 あるいは「DX」も「単純な業務の「デジタル化」にとどまっている例は枚挙にいとまがない」、こうした「日本企業の出遅れ感」が、「日本企業のPBRは1倍付近で停滞・・・アメリカの上場企業平均が約3倍なのに対し、明確に低い水準」、その通りだ。 「企業価値を巡る考え方は、実体のあるモノをどれだけたくさん抱えているかということから、人材やノウハウ、ブランド、顧客満足度など、数えたり測ったりできない対象へ主眼が移っている。 こうした新しい企業価値の考え方に基づいた開示を行っている企業もある」、「こうした先行企業の事例から学び、企業価値の向上につなげてほしい」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 秋山進氏による「「日本型経済システム」の成立条件が、完全なる終焉を迎えつつある根拠 『比較制度分析序説――経済システムの進化と多元性』(青木昌彦著)で読み解く」 「時空を超えて普遍的な規範的価値を持った経済システムなどというものは本来ありえない」、「いつ誰にとっても合理的で完璧な経済システムというのはあり得ない」、との考え方は納得できる。 「産業勃興時の初期条件」の日米の違いは、納得できる。 「産業勃興時の初期条件」の日米の違いから、「分権型の経営が得意な米国と水平型の経営が浸透する日本」に分かれたというのも、説得力がある。 「新卒を一括採用する大手有名企業の内定を取るため(入試の学力試験が問題処理能力には直結しないとはいえ)5教科を勉強し、より偏差値の高い大学に入り、アルバイトやサークル活動で「コミュ力」を磨こうとするのである。 個々の経済主体(個人)の間で、文脈的技能の獲得が支配的になれば、本来は機能的技能を優先すべき石油化学産業にあっても、文脈的技能を重視する組織運営が支配的になってしまう」、「個々のシステムが相互拘束し合い、一連の強固なシステムとして機能し始めると、多少一部でルールや制度が変わろうと、経済システムや組織 「強固であった日本型の経済システムも、とうとう分水嶺をこえて、まだ姿の見えない新たなシステムに向けて、流動する時代に突入してしまったのではないか」、「エレクトロニクスやIT産業でソフトウェアのアプリケーションひとつで性能を変えられるような、入れ替え可能なモジュール化が進み、自動車産業においてもEVに切り変わっていく中で、これまでのすり合わせ・・・重視の組織や組織間の関係が過去ほどの優位性を持てなくなり、利益創出がピンチを迎えている」、「IoTの時代に入るから、系列を超えて誰とでもどことも繋がることを前提に 「日本発のグローバル大企業においては、すでに製造拠点の多くは日本になく、研究や開発、商品企画などにおいても日本国内でのみ行われるわけではなくなっている。外国の自社社員との協働も当たり前である。このような状況下にあっては、いまだに日本においてのみ水平的ヒエラルキーを前提に、可塑的技能・・・への投資が支配的な人事制度を維持しているデメリットが大きい」、「日本型の経済システムも」「新たなシステムに向けて、流動する時代に突入」、いよいよ変化しつつあるようだ。 「グローバル化によるジョブ型の導入とリモートワーク時代の到来という2つの力が同時に加わり、クリティカルマスは超えられた、つまり社会が変わるのに必要な程度の大多数の人がシステムの鞍替えをしようとしているのではないか」、あり得る話だ。 「旧来のアメリカ型でもなく、日本型でもないところに、どの産業セクターにとっても良いP均衡・・・と呼ばれる均衡点、すなわち、ちょうどよい状態の経済やシステムの状態が、理論上は存在していることが示されてはいる」、「P均衡」がどこに着地するのか大いに注目される。 日経ビジネスオンライン「似た者同士で群れる日本人 リーダー量産するインド人とどう違う?」 「東アジア系が米国の中で出世しづらいという「竹の天井」を検証した研究」、とは興味深い。「竹の天井」とは初耳だ 「東アジア系」は「国外に住んでいると国籍を超えて東アジア系だけで集まる」傾向が強いようだ。「破壊的なイノベーションを起こせない」、というのも寂しい傾向だ。「日本では統計的に99%の人は同じ民族です。同様に韓国でも99%の人は同じような顔をしていますし、中国も92%は漢民族です。一方、南アジア、例えばインドとかパキスタンは、非常に多様な国です」、 「インドには公用語が22もあります。子供のころからそうした環境で育った人は、自分と見た目や習慣、育った環境の違う人と接することに慣れています。自分と違う人とつながる練習を積んでいます。だから、米国のような多様性の高い環境に移っても「よそ者」とのコミュニケーションに全く支障がありません」、「「インドには公用語が22」、何と非効率だと思っていたが、「米国のような多様性の高い環境に移っても「よそ者」とのコミュニケーションに全く支障がありません」、と思わぬ効用があるようだ。 「米国内でいえば、インド出身者の人口は東アジア系の人口の半分程度」にも拘らず、有名企業のCEOになっているのは、確かに圧倒的だ。 今後の「研究」の進展が楽しみだ。
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日本の構造問題(その25)(「成績良ければ医学部目指せ」が日本経済を悪化させる意外な理由、コロナで露呈した日本社会の欺瞞と脆弱性、上級国民が唱える「バラマキ立国論」では 庶民の賃金が上がらないシンプルな理由) [経済政治動向]

日本の構造問題については、1月17日に取上げた。今日は、(その25)(「成績良ければ医学部目指せ」が日本経済を悪化させる意外な理由、コロナで露呈した日本社会の欺瞞と脆弱性、上級国民が唱える「バラマキ立国論」では 庶民の賃金が上がらないシンプルな理由)である。

先ずは、2月3日付けダイヤモンド・オンライン「「成績良ければ医学部目指せ」が日本経済を悪化させる意外な理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/294257
・『「日本における医学部偏重は、経済悪化の一因になっているんです」。著書『お金のむこうに人がいる』で、「お金の流れ」ではなく「人の動き」で経済を見直す経済観を提示した元ゴールドマン・サックス金利トレーダーの田内学氏がある日、そうつぶやきました。「え? それどういうこと?」と、本人に訊きました。(構成:編集部/今野良介) 「諸君は国から4億円近くの出資を受けて医者になるのだ。コスパ最高とかラッキーで得したと思ってないか?(中略)そんな腐った根性の人間は医師になる資格がない。さっさと退学しろ」 これは、「グランドジャンプ」に連載中の漫画『Dr.Eggs ドクターエッグス』(三田紀房・作)の中のセリフです。 「成績が良い」という理由だけで国立大学医学部を受験し、見事入学を果たした医師の卵である主人公が、真の医師になるまでのリアルな学生生活を描いたマンガです。第一話では大学初日のオリエンテーションで、指導教官である古堂というキャラクターから、このきついセリフを投げかけられます。 『ドラゴン桜』で有名な三田紀房節とでも言いたくなるインパクトの強いこのセリフ。マンガでは主人公の覚悟を促すために使われていますが、私はこのセリフを見て、現在の日本社会における「優秀な人のタイトルコレクションによる経済損失」の問題をひと言で表していると感じました』、「優秀な人のタイトルコレクションによる経済損失」とは言い得て妙だ。
・『「医学部進学」という日本特有の勲章  日本は異常なまでの医学部偏重主義が蔓延していると言われています。多くの学校の先生が、成績の良い子にはとりあえず医学部を行かせようとしますし、医学部に進学する生徒数が多い高校ランキングなんかも発表されています。東大理三(主に医学部に進む)にでも合格しようものなら、子どもも親も勲章でも授かったかのような扱われ方をします。 「人を助けたい」という思いから医者を目指す学生がほとんどだと信じたいですが、周りからの評価を気にして医学部を目指す学生がいるのも事実です。そうした学生たちは、漠然と医者を目指しているために、医者ではない道に進むこともしばしばです。そして彼らの中には、次の勲章探しにと、医者にならずに就職活動を始める人たちもいます。 僕がゴールドマン・サックスのトレーダーだった当時、デスクの採用担当もしていたので、毎年多くの学生のエントリーシートを読みました。驚いたことに、たった100人しかいない東大医学部の学生のうちの数人が、毎年、ゴールドマン・サックスという一企業に就職を希望しました。 冒頭のセリフにもあるように、医学部で医者一人を育てるには多額のお金がかかると言われています。これには学生が支払う授業料だけでなく、国などからの援助も含まれています。 税金を使って医者の卵を育てても、医者にならずに別の道に進む人は毎年たくさんいることがしばしば問題として取り上げられ、「税金のムダ遣いだ」と言われることがあります。「さっさと退学しろ」と先生が言いたくなったとしても、無理はないでしょう』、確かに近年の「医学部」選好の高まりは異常だ。私の学生時代はここまで偏重してなかったと思う。
・『「ムダ遣い」は税金だけの話ではない  これは、税金が投入されている国立大学だけの問題ではありません。 私立大学の医学部であっても、「先生、医学部卒業したけど、僕は外資系金融で働きます」という学生に、「そうか! バリバリ稼いでこいよ!」と言える先生はなかなかいないのではないでしょうか。 せっかく手塩にかけて6年間育てた学生が医者にならなかったときに、「自分の労力がムダになったのではないか」と寂しく感じる。これは、国立私立関係なく同じだと思います。 医者を育てるときに必要なのは、4億円(金額については諸説あり)というお金ではありません。その金額が表しているのは、さまざまな人の労力の集合です。たとえば、学生を直接指導する先生や医療関係者の人件費。テキストや機材などの物の購入にもまた、その生産活動に携わる人すべてにお金が支払われています。 「経済」というと「お金の流れ」だけに目が行きがちですが、重要なのは、お金によって費やされた誰かの労力やその生産物が、社会にとって有効に使われるかどうかです。 そして、働く人がいなければ、お金を流す量を増やしてもどうにもなりません。昨年、医療サービスの提供が滞ったとき、どれだけ政府が予算を増やしても、医療従事者の人数を急に増やすことはできませんでした。 私は、昨年9月に『お金のむこうに人がいる』という本を書きました。実体経済を正しく把握するためには、お金の流れだけを見るのではなく、その向こう側にいる「人」に注目する必要があります。お金が流れていても、労力を有効に使えなければ、私たちの生活が豊かになることはないからです。 これから少子高齢化で働く人の数は減っていきます。労力を無駄にしないことや、未来の社会に必要な人材を育てることがますます必要になっていくと思います。 「税金がもったいない」「お金がもったいない」だけではなく、「労力がもったいない」と一人ひとりが思って行動を変えないと、社会全体がますます困窮していきます。 もちろん、医者を目指した人が、結果的に他の道に行くこと自体は悪いことではありません。目指す過程の中で、別のモチベーションが生まれることもあると思います。ただ、医学部の教職員の労力や、そこで学んだことをなるべく無駄にしないようにキャリアを積み上げられた方が、社会にとっても、自分にとっても幸せなことだとわたしは思います。 かくいう私自身、情報工学を専攻しながら、金融の世界に進みました。しかし、プログラミングで鍛えた論理的思考力が金融での仕事に活かされましたし、「社会のために役立つ仕事に就いてほしい」という教授の想いが、『お金のむこうに人がいる』という本を書く動機につながりました。S教授、ありがとうございました』、「情報工学」と「金融」は、金融工学が出現したように極めて近い領域だ。
・『「お金のむこうに人がいる」ことを考えた理由  お金のむこうに人がいる』という本では、お金にまつわる11個の「謎」を解いていきます。初めは自分の財布の中のお金について考え、徐々に財布を大きくしていきます。財布を社会全体まで広げたときに、新たな「謎」に気づきます。 この謎こそが、今の私たちが、社会を構成する一人ひとりが解かなければならない謎です。 【第1部】「社会」は、あなたの財布の外にある。 第1話 なぜ、紙幣をコピーしてはいけないのか? 第2話 なぜ、家の外ではお金を使うのか? 第3話 価格があるのに、価値がないものは何か? 第4話 お金が偉いのか、働く人が偉いのか? 【第2部】「社会の財布」には外側がない。 第5話 預金が多い国がお金持ちとは言えないのはなぜか? 第6話 投資とギャンブルは何が違うのか? 第7話 経済が成長しないと生活は苦しくなるのか? 【第3部】社会全体の問題はお金で解決できない。 第8話 貿易黒字でも、生活が豊かにならないのはなぜか? 第9話 お金を印刷し過ぎるから、モノの価格が上がるのだろうか? 第10話 なぜ、大量に借金しても潰れない国があるのか? 最終話 未来のために、お金を増やす意味はあるのか? おわりに 「僕たちの輪」はどうすれば広がるのか?)(田内学氏の略歴はリンク先参照)』、なかなかよく練られた内容のようだ。

次に、2月23日付け日刊ゲンダイが掲載した東大名誉教授の養老孟司氏と、精神科医の名越康文氏の対談「コロナで露呈した日本社会の欺瞞と脆弱性」を紹介しよう』、興味深そうだ。
・『【東大理Ⅲ信仰」の危うさが引き起こした悲劇  コロナ禍が3年目に突入し、今なお31都道府県が「まん延防止等重点措置」の適用下にある。この間、さまざまな事件、現象があり、あらためて現代社会が抱える諸問題が浮き彫りになった。賢者のおふたりにコロナ禍を振り返りながら、日本社会の本質について語り合っていただいた(Qは聞き手の質問)。 Q:昨年の秋以降、「京王線刺傷事件」「大阪クリニック放火殺人事件」「東大前刺傷事件」と、他人を巻き込んで自殺を図ろうとする事件が相次ぎました。 名越 事件後、いろんな人に「先生、取材が殺到して、大変でしょ」と言われるんですよ。ところが、最近は一切ないんですね。かつては異常な事件があると、精神科医に話を聞くということが当たり前でしたが、それがなくなってきている。なんか、地続き感というか、日常的な感じになってきていますね。 養老 東大前の事件でいうと「東大理Ⅲ信仰」みたいなものは、僕が現役(教授)のころから非常に気になっていましてね。要するに成績がある程度良い子は理Ⅲに行けるということで、そういう学生が入ってくるようになったんです。医者に適性があるとかないとか、関係ないんですよ。成績が良いからと。僕なんか生き物が好きだから医学部に行っているんだけれども、そうじゃない。で、どうなるかというと、物理とか化学とかは非常にできる。でも医学は物理や化学と違ってややこしくて、とくに解剖なんかは暗記ものばっかりですから、気の利いた学生はあまり評価しない。そんな子が増えちゃったから、「こんなところでやってけねえよ」と思うようになりましたね。 Q:最近はテレビ番組でも東大生をブランド化している風潮があります。 養老 なぜか知らないけど、理Ⅲは特別なものだってことになっている。今度の事件に関していえば、(東大を目指す受験勉強の中で)高2ぐらいからちょっとおかしくなってくるというのは、ごく普通にあるわけです。中学、高校でおとなしい優等生というのは一番気をつけなきゃいけない。ただ、僕らのころだと入学してから問題を起こしていました。今は入学する前になってしまっている。 名越 知識の集積を競う方法は、AIが社会を動かそうとしている現代において、もうかなり、むなしさが漂ってきている気がします。そもそも考えるとは何かとか、人生において意味のある発想の持ち方とは何か、ということを考えることで人間として自立していく、という過程が必要な気がします』、「僕らのころだと入学してから問題を起こしていました。今は入学する前になってしまっている」、なるほど。
・『コロナ禍で多用される「科学的根拠」の信憑性  Q:コロナ禍では専門家の方々、あるいは政治家の口から「科学的根拠」という言葉が頻繁に聞かれました。それを真に受ける人も少なくないと思いますが。 名越 コロナは怖い病気ということを論説している人もいれば、恐れる必要はないということを論説している人もいます。本当に同じ病気の解説なのかと思うぐらい内容が違うんですよ。普通だったら6割ぐらいはかぶるだろうに、もう本当にバラバラで、それ自体、十分興味深い現象が起きています。 養老 いま言われた「科学的根拠」というものが入ってきたら絶対に信用しない(笑い)。 名越 僕もね、いろいろ読んでたんですけど、だんだんと自分の頭が割れそうになってきて。これはもう、まとめたり単純化して統一しようとすると誤るなと思うしかないわけです。 Q:メディアの報じ方はいかがでしょうか。 名越 テレビに出ていて思ったのは、それまで一貫性がないことがメディアであって、だからこそ日に日に変わる情報の中で中立でいられるわけですし、我々も冷静でいられたのですが、コロナに関してはまったく反対で、一貫しなければならないという強迫性を感じます。たとえば、副反応という言葉。最初のころは「副作用」と言う人もいましたが、協定も結ばれていないのに1週間ぐらいですべてのテレビが「副反応」と呼びだしたという印象です。 養老 副作用だと薬についてということになる。副反応だと患者のせいだということになるからです。体が勝手に反応したんだ、薬のせいじゃないんだということです。これは裏がありますね。 名越 明らかに操作的ですね。 Q:科学的真実はどこにあるのか、どうやったら見極められるのでしょうか。 養老 分野によると思いますね。何もかも一緒にして科学的とやろうとするから、できない。「おまえ、科学的に生きているか」と聞かれたら、どう答えますか。私が若いときに一番悩んだ問題です。基礎科学をやっていたから生き方も科学的でなければならない。ところが現実は全然違う原理で生きているわけです。それを上手に割り切ることができる人、あるいは二重基準で生きられればいいのでしょうが、僕は不器用でそこはできない。そのストレスの中でほとんど暮らしてきたようなもので、そのストレスがいろんな本を生み出したのです。 「科学的根拠」をふりかざす日本社会の欺瞞と脆弱性が次々と露呈してきている。(つづく)(養老孟司氏の略歴はリンク先参照) (名越康文氏の略歴はリンク先参照)』、「副作用だと薬についてということになる。副反応だと患者のせいだということになるからです。体が勝手に反応したんだ、薬のせいじゃないんだということです」、「明らかに操作的ですね」、「副反応」にそんな意味があったとは初めて知った。続編はまだ公開されてないが、公開され次第、紹介するつもりである。

第三に、2月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「上級国民が唱える「バラマキ立国論」では、庶民の賃金が上がらないシンプルな理由」を紹介しよう。
・『「バラマキ」で上級国民だけが潤う  「とにかく今の日本はケチケチしないでカネをバラまきゃいいんだよ! 政府支出が増えれば経済は成長するってことが分かってるんだから」「その通り! 財政出動すればするほど、景気も良くなって自然と賃金も上がっていく! それを邪魔する財務省こそが日本のがんだ!」 そんな激アツの論争が今、永田町で盛んに交わされている。財政健全化なんてみみっちい話は忘れて、じゃんじゃん金を刷ってバラまけばあっという間に景気が上向いて、日本は再び黄金時代を迎える…と、言うなれば「バラマキ立国論」が空前のブームとなっているのだ。 きっかけは、昨年の自民党総裁選で「プライマリーバランス黒字化目標凍結」を掲げた、高市早苗政調会長である。昨年12月に財政政策検討本部を発足したことで、自民党内の「積極財政派」が一気に勢いづき、若手議員を中心に「責任ある積極財政を推進する議員連盟」も設立されている。 「バラマキ立国論」で唱えられている、日本復活シナリオは極めてシンプルだ。 政府がケチケチしないで金をバラまけば、公共事業やらさまざまな分野で需要が増す。それに対応する企業は設備投資をするので、生産性も上がる。そうなると黙っていても従業員の賃金も上がっていく。消費も活発になるので商品やサービスも値上げができる。それを受けてさらに賃上げという好循環が生まれて、あれよあれよという間に、「デフレ脱却、日本経済奇跡の復活」を果たして「めでたし、めでたし」というワケだ。 と聞くと、「なるほど! なんでこんな簡単な話に気づかなかったんだ!」と納得する方もいらっしゃるかもしれないが、残念ながらこのバラマキで潤うのは、ブームに熱狂している政治家をはじめほんのひと握りの「上級国民」の皆さんだけだ。われわれ一般庶民には、ほとんど恩恵はない』、「自民党内の「積極財政派」が一気に勢いづき、若手議員を中心に「責任ある積極財政を推進する議員連盟」も設立」、「きっかけ」は「高市早苗政調会長」のようだ。 
・『庶民は上級国民と反比例して貧しくなるのみ  まず、政治家にとってバラマキほどありがたいものはない、というのは先の衆院選を見れば明らかだろう。全国民への現金給付を公約に掲げた政党が多くあったように、バラマキは最強の選挙対策だ。また、バラマキは自治体や企業の間で熾烈な争奪戦になるので、「口利き」が本業である政治家は引く手あまたで、食いっぱぐれがない。 官僚や公務員にとってもバラマキは悪くない。公共事業や助成事業が増えれば、民間からの接待も増えるし天下りが拡大するからだ。会社経営者やコンサルタントもうれしい悲鳴が止まらない。国が中小企業への事業承継関連の補助金を増額したところ、中小企業経営者とこの分野のコンサルに“事業承継バブル”が起きたことからも分かるように、この手の人たちにとって、バラマキとは現金つかみ取りのボーナスタイムなのだ。 では、額に汗水垂らして働くわれら一般庶民もそんな恩恵を授かることができるのかというと、残念ながらほとんどの人は関係ない。 むしろバラマキによって、先進国最低レベルで韓国にまで抜かれてしまった低賃金が、これまで以上にビタッと「固定化」される恐れがある。「天からカネが降ってきた」とこの世の春を謳歌する「上級国民」の皆さんと対照的に、庶民はこれまで以上に、激安スーパーや激安グルメへ依存を強めて「安いニッポン」の深みへさらにハマってしまうのである。 なぜそんなことが断言できるのかというと、答えはシンプルだ。「バラマキによるバブルは末端の労働者の賃金にまで波及しない」というのは、さまざまなデータを見れば一目瞭然だからだ。 直近でわかりやすいのが、「協力金バブル」だろう。コロナ禍によって時短や休業を余儀なくされた飲食店を救済するという名目のバラマキで、このおかげで倒産を免れた事業者も多くいた。一方で平時の売り上げを軽く上回るほどの臨時収入となって、旅行や高級外車へ消えてしまったという話もあった。 では、そんな「協力金バブル」の恩恵は、飲食店で働く従業員まで届いたのかというと、賃金が上がったというデータもないように影響はほぼゼロだ。なぜかというと、従業員の生活のためにとバラまかれたはずのカネが、経営者のところでストップしてしまうからだ』、「バラマキによるバブルは末端の労働者の賃金にまで波及しない」、「「協力金バブル」の恩恵は、飲食店で働く従業員まで届いたのかというと、賃金が上がったというデータもないように影響はほぼゼロだ。なぜかというと、従業員の生活のためにとバラまかれたはずのカネが、経営者のところでストップしてしまうからだ」、なるほど。
・『コロナ禍で歴史的なバラマキも、庶民に還元なし  この構造的な問題の一端が分かるのが、20年11月に公表された野村総合研究所の調査だ。コロナで休業を経験した労働者がどれほど休業手当を受け取っていたのかを調べたところ、正社員(女性)は62.8%と、どうにか6割の人が休業手当を受け取れているのに対して、なんとパートやアルバイトで働く女性では、わずか30.9%にとどまっていることが分かったのである。 労働基準法では、企業に対して正規、非正規を問わず休業手当の支払いを義務付けている。新型コロナによる休業に関しても、事業者側が「コロナで客が減ったんで今月は給料払えないわ」と開き直らないよう、国が休業手当の一部を補償する雇用調整助成金や、中小企業で働く人向けの休業支援金・給付金という制度をつくって、金をバラまいた。 が、そのカネは経営者のところでストップして、パートやアルバイトで生計を立てる女性の7割は泣き寝入りをしていたというわけである。 断っておくが、これをもってして経営者側が「搾取」をしているなどと主張をしたいわけではない。 飲食店などの小さな事業者にとっては、とにかく「店をつぶさない」が最優先事項となる。なので、国から「このお金で従業員の賃金を上げてくださいね」とか「これで生産性向上に取り組んでくださいね」と金を渡されても、言われた通りの使い方にはならず、会社存続のための「運転資金」に消えてしまう。もしバラマキによって資金難を乗り越えて多少の余裕ができても、それは賃金には還元されない。現金給付を受けた国民の多くが「貯金」をしたように、飲食店などの零細事業者は、先行きが不安なので、何かあった時に備えておかなければいけないからだ。 つまり、事業者に対して行われるバラマキというのはどんなに注文をつけたところで、ほぼ100%、「会社存続」に注ぎ込まれるので、労働者には還」、「元されないものなのだ。 バラマキによって“死に体の事業者”が延命する一方で、そこで働く従業員の待遇はまったく改善されないという醜悪な現実は、2021年の「異常な倒産件数」を見ればよくわかる。 帝国データバンクによれば、なんと前年比23.0%減の6015件で、1966年に次いで過去3番目に少ない、歴史的な超低水準となったのだ。あれだけ経済が止まっていたのにこの結果ということは、歴史的なバラマキが行われたということだ。しかし、そのすさまじい額のカネは、末端の労働者にはゼロ還元だ。 厚生労働省が2月8日に発表した、2021年度の労働者1人当たりの平均現金給与総額は前年より0.3%増だったが、実質賃金指数は前年で横ばい。つまり、日本政府の歴史的なバラマキは、「つぶれそうな法人」を救っただけで、「低賃金にあえぐ個人」には何の恩恵もなかったのである』、「事業者に対して行われるバラマキというのはどんなに注文をつけたところで、ほぼ100%、「会社存続」に注ぎ込まれるので、労働者には還元されないものなのだ」、「日本政府の歴史的なバラマキは、「つぶれそうな法人」を救っただけで、「低賃金にあえぐ個人」には何の恩恵もなかったのである」、なるほど。
・『いざという時に、データを無視して論理が飛躍する日本  これは何もコロナ禍だけの話ではない。過去30年、政府は「日本企業の99.7%を占める中小企業が成長をすれば、日本経済も成長をする」というロジックで、中小企業に対して積極的なバラマキをしてきた。しかし、賃金は上がっていない。 中小企業白書2021年版の「企業規模別従業員一人当たりの付加価値額(労働生産性)の推移」を見てみても、中小企業の生産性は03年から19年まできれいに横ばいだ。この16年間、「ものづくり補助金」だなんだとさまざまなバラマキ政策を進めてきたのにもかかわらず、まったく効果が出ていない。 という話をすると、積極財政派の皆さんは「それはバラマキの量が足りないからだ! けた違いに金を刷って配れば経済成長する」というようなことを主張する。ほんのちょっとでも動きがあるのならまだ分かるが、これまで「効果ゼロ」なのに、なぜ「もっと増やせば効果がある」という話になるのかは理解に苦しむ。 そのあたりは、前政権の「経済ブレーン」も指摘している。バブル期の銀行アナリスト時代から30年にわたって、日本経済を分析してきたデービッド・アトキンソン氏は、人材への投資など明確な目標を持つ政府支出は必要だとしつつ、「インフレ率2%目標を達成するまで財政出動すべきだ」といった抽象的なバラマキ政策には賛同できないとして、このように述べている。 <1990年代に入ってから、日本政府は1000兆円以上の負債を増やしてきたにもかかわらず、GDPが横ばいで成長していない事実を深く考えるべきです。今まで政府支出を大きく増やしてきたのにGDPが成長していない中で、なぜ今「財政出動をすればGDPが成長する」と言えるのか、大変疑問に思います>(東洋経済オンライン22年2月3日) ただ、アトキンソン氏はご存じないかもしれないが、こういう論理の飛躍は、日本ではそれほど珍しくない。「国難」、を前にすると、それまで積み上げた客観的なデータがスコーンとどこかへ飛んでいって、どこからともなく、自分たちの都合のいい解釈が登場して、それにみんなが飛びついて大惨事――。ということが幾度となく繰り返されてきた』、「1990年代に入ってから、日本政府は1000兆円以上の負債を増やしてきたにもかかわらず、GDPが横ばいで成長していない事実を深く考えるべきです。今まで政府支出を大きく増やしてきたのにGDPが成長していない中で、なぜ今「財政出動をすればGDPが成長する」と言えるのか、大変疑問に思います」、との「アトキンソン氏」の主張はその通りだ。「「国難」を前にすると、それまで積み上げた客観的なデータがスコーンとどこかへ飛んでいって、どこからともなく、自分たちの都合のいい解釈が登場して、それにみんなが飛びついて大惨事――。ということが幾度となく繰り返されてきた」、「日本」の悪弊だ。
・『心地よいストーリーが好きな日本人、80年たっても変わらず  分かりやすいのが、太平洋戦争だ。開戦前、帝国陸海軍、そして政府のエリートたちが何度分析をしても、「アメリカにボロ負けをする」という結論は変わらなかった。アメリカの石油生産能力は日本の700倍、陸軍の「戦争経済研究班」も「対英米との経済戦力の差は20:1」と白旗を揚げていた。若手エリート官僚などを集めた「総力戦研究所」でも「緒戦は優勢ながら、徐々に米国との産業力、物量の差が顕在化し、やがてソ連が参戦して、開戦から3〜4年で日本が敗れる」とほぼ現実通りの敗戦シナリオまで読めていた。 しかし、この「日本必敗」の分析があるにもかかわらず、「先制攻撃をすれば勝てる」という主張が主流になっていく。真珠湾攻撃を立案した山本五十六は、海軍大臣への意見書でこう述べている。 〈日米戦争に於て我の第一に遂行せざるべからざる要項は開戦劈頭敵主力艦隊を猛撃撃 破して米国海軍及米国民をして救う可からざる程度に其の志気を喪失せしむること是なり〉(軍備に関する意見) 要は、「先制攻撃を仕掛けて壊滅的な被害を与えれば、アメリカ人は日本人と違って根性がないので、震え上がってすぐに降伏する」というわけだ。冷静に考えれば、なんともご都合主義で支離滅裂なロジックだが、これに軍部も政府も、そして国民もわっと飛びついた。 「何度シミュレーションしても日本は負ける」という話よりもはるかに単純明快で、明るい未来を抱けるので、心情的に支持しやすいからだ。 このように「科学的データより日本人にとって心地よいストーリーの方が好き」という国民性は80年たっても変わらない。 ということは、今の永田町のムードを見る限り、史上空前のバラマキ政策を掲げる積極財政派が自民党内で主導権を握れば、その勢いのまま参院選で大勝して、日本の「バラマキ立国論」をさらに加速していく可能性が高いということだ。 実際、岸田文雄首相との「冷戦」が伝えられる安倍晋三元首相も、「責任ある積極財政を推進する議員連盟」で講演を行うなど、党内の「反岸田勢力」が「積極財政」の旗のもとに続々と集結している。 「上級国民」の間でこういう「勢い」が出てきた政策は、もう誰も止められない。 対米戦争に関しても、当時のエリートたちは内心「負けるよなあ」と思いながら結局、誰にも止められなかった。戦後、昭和天皇は「私も随分、軍部と戦ったけれど勢いがああなった」(初代宮内庁長官・田島道治の『拝謁記』から)と振り返っている。 当時、陸海軍の最高指揮権を持っていた天皇でさえも食い止めることができないほど、心地よいストーリーに飛びついた時の日本人の「勢い」の暴走は恐ろしいものなのだ。 庶民には低賃金を固定化させるだけでなんのメリットもない「バラマキ立国論」だが、ここまで来るともはや覚悟を決めて受け入れるしかないのかもしれない』、「天皇でさえも食い止めることができないほど、心地よいストーリーに飛びついた時の日本人の「勢い」の暴走は恐ろしいものなのだ」、確かにその通りだ。
タグ:(その25)(「成績良ければ医学部目指せ」が日本経済を悪化させる意外な理由、コロナで露呈した日本社会の欺瞞と脆弱性、上級国民が唱える「バラマキ立国論」では 庶民の賃金が上がらないシンプルな理由) 「天皇でさえも食い止めることができないほど、心地よいストーリーに飛びついた時の日本人の「勢い」の暴走は恐ろしいものなのだ」、確かにその通りだ。 「1990年代に入ってから、日本政府は1000兆円以上の負債を増やしてきたにもかかわらず、GDPが横ばいで成長していない事実を深く考えるべきです。今まで政府支出を大きく増やしてきたのにGDPが成長していない中で、なぜ今「財政出動をすればGDPが成長する」と言えるのか、大変疑問に思います」、との「アトキンソン氏」の主張はその通りだ。「「国難」を前にすると、それまで積み上げた客観的なデータがスコーンとどこかへ飛んでいって、どこからともなく、自分たちの都合のいい解釈が登場して、それにみんなが飛びついて大惨事―― 「事業者に対して行われるバラマキというのはどんなに注文をつけたところで、ほぼ100%、「会社存続」に注ぎ込まれるので、労働者には還元されないものなのだ」、「日本政府の歴史的なバラマキは、「つぶれそうな法人」を救っただけで、「低賃金にあえぐ個人」には何の恩恵もなかったのである」、なるほど。 「バラマキによるバブルは末端の労働者の賃金にまで波及しない」、「「協力金バブル」の恩恵は、飲食店で働く従業員まで届いたのかというと、賃金が上がったというデータもないように影響はほぼゼロだ。なぜかというと、従業員の生活のためにとバラまかれたはずのカネが、経営者のところでストップしてしまうからだ」、なるほど。 「自民党内の「積極財政派」が一気に勢いづき、若手議員を中心に「責任ある積極財政を推進する議員連盟」も設立」、「きっかけ」は「高市早苗政調会長」のようだ。 窪田順生氏による「上級国民が唱える「バラマキ立国論」では、庶民の賃金が上がらないシンプルな理由」 ダイヤモンド・オンライン 「副作用だと薬についてということになる。副反応だと患者のせいだということになるからです。体が勝手に反応したんだ、薬のせいじゃないんだということです」、「明らかに操作的ですね」、「副反応」にそんな意味があったとは初めて知った。続編はまだ公開されてないが、公開され次第、紹介するつもりである。 「僕らのころだと入学してから問題を起こしていました。今は入学する前になってしまっている」、なるほど。 「コロナで露呈した日本社会の欺瞞と脆弱性」 名越康文 養老孟司 日刊ゲンダイ 「お金のむこうに人がいる」 「情報工学」と「金融」は、金融工学が出現したように極めて近い領域だ。 確かに近年の「医学部」選好の高まりは異常だ。私の学生時代はここまで偏重してなかったと思う。 「優秀な人のタイトルコレクションによる経済損失」とは言い得て妙だ。 ダイヤモンド・オンライン「「成績良ければ医学部目指せ」が日本経済を悪化させる意外な理由」 日本の構造問題
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日本の構造問題(その24)(「日本は負けた」系ニュースが急増しても事実を認めない人々の“負けパターン”、日本人は「円安」がもたらした惨状をわかってない 自ら危機意識を持って脱却する必要がある、日本が亡国の道を突き進む元凶 「やったふり」「先送り」キャリア形成の弊害) [経済政治動向]

日本の構造問題については、昨年12月1日に取上げた。今日は、(その24)(「日本は負けた」系ニュースが急増しても事実を認めない人々の“負けパターン”、日本人は「円安」がもたらした惨状をわかってない 自ら危機意識を持って脱却する必要がある、日本が亡国の道を突き進む元凶 「やったふり」「先送り」キャリア形成の弊害)である。

先ずは、12月16日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「「日本は負けた」系ニュースが急増しても事実を認めない人々の“負けパターン”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/290778
・『「日本は絶対に負けない!」と叫ぶほど負ける  最近、中国や台湾、さらには韓国にまで、日本が“負けた系ニュース”をやたらと多く見かけないだろうか。例えば、ざっと目についただけでもこんな調子だ。 ・『日本は「急速に力を失った」…韓国、台湾、中国に負ける“唯一最大の恐しい原因”』(幻冬舎ゴールドオンライン11月27日) ・『王者だった「ニッポン半導体」が負けた訳』(東洋経済オンライン12月1日) ・『日本は20年後に経済規模で韓国に追い抜かれる-その残念な理由とは』(現代ビジネス12月12日) ・『管理職の日韓給与比較」どの職種も大きく水をあけられ大敗北という現実』(プレジデントオンライン12月14日) 愛国心あふれる方たちからすれば、このような記事は「日本をおとしめたい反日マスゴミのデマ」ということなのだろうが、残念ながら、日本の経済力、技術力が衰退していることは、さまざまな客観的データが物語っている。 もちろん、世の中には「日本の賃金は安くない!中国や韓国からもたくさん労働者が来ているのがその証拠だ!」とか「労働生産性なんてのは欧米がつくった数字のトリックだ!」とか「中国や韓国の方が商売上手なだけで日本の技術は今も世界一だ!」なんて感じで、これらのデータ自体が捏造・デマだと主張される方たちもいらっしゃる。 人は自分が信じたいものを信じる。なので、このような考え方をされるのも自由だし、他人がとやかく言うことではない。が、「日本の国益」という視点では、「ジャパン・アズ・ナンバーワンだ!」というような考え方はあまりよろしくないのではないか。 歴史を振り返ると、日本という国はこれまで、自分たちに都合の悪い客観的なデータを否定して、「日本は絶対に負けない!」と叫べば叫ぶほど事態を悪化させるという「負けパターン」を繰り返してきたからだ』、「「日本は絶対に負けない!」と叫べば叫ぶほど事態を悪化させるという「負けパターン」を繰り返してきた」、困った悪弊だ。
・『10年前「自動車産業は負けない」と叫んでいた人たちと、今の現実  「日本は負けない!」と喉を枯らせば枯らすほど、現実逃避や問題先送りがおこなわれて大惨敗という皮肉な結果を招いてしまうというのが、日本のお決まりのパターンだ。 例えばわかりやすいのが、自動車産業である。実は今から10年ほど前、リーマンショックを受けた世界的な自動車販売台数の落ち込みや、中国など海外への生産・販売の依存が極端に高まってきたというデータを根拠に、一部のメディアから、そう遠くない未来、日本の自動車メーカーや関連産業はかなり厳しい環境に追いやられるのではないか、という悲観論が相次いだ。 しかし、愛国心あふれる方たちは、「マスコミってのは、日本がダメになるというストーリーが大好物で、不安ばかりをあおるバカだな」と鼻で笑った。ある研究者の方はネットメディアで「日本の自動車部品は絶対に負けない」と宣言し、世界的に、自動車産業は生産縮小を余儀なくされたとしも、高品質の日系部品メーカーには仕事がたくさん流れてきて、これから日本の大躍進の時代が来るとまで言い切った。 では、それから10年でどうなったか。 世界的な電気自動車(EV)シフトに加えて、中国など新興国でも国産自動車メーカーが着々と成長していることで、日本のお家芸だった自動車産業は窮地に追いやられている。特に深い傷を負っているのが、かつて「絶対負けない」と言われた自動車部品だ。EVシフトによる部品数減少で収益が悪化していたところにコロナ禍が直撃、「歴史ある2次サプライヤーが倒産、自動車部品業界の淘汰が加速か」(日刊自動車新聞20年9月15日)という動きも目立ってきている。10年前に「不安をあおるバカ」と罵られた側の警鐘が現実となりつつあるのだ』、「10年前に「不安をあおるバカ」と罵られた側の警鐘が現実となりつつある」、なるほど。
・『日本が誇る「白物家電」も、気づけば買収されていく有様  かつて世界一と言われた、「白物家電」もほぼ同じパターンだ。 2000年代前半、ハイアールなど中国の白物家電メーカーが海外進出を始めた時、日本の家電業界では、「日本が負けるわけがない」という“日本不敗論”が大多数を占めいていた。 一部の消費者は「中国製?まともに動くわけないじゃん?」と冷笑し、ジャーナリストたちも「日本メーカーのパクリ」などと完全に雑魚扱いしていた。 ところが、売り上げなどのデータで中国メーカーが成長していることが明確になったことで、一部からは「そろそろやばいんじゃない?」という不安の声が上がった。しかし、それでも日本の「不敗神話」が揺らぐことはなかった。 当時はまだ中国や韓国のブランドであっても、それらの家電の基幹部品は日本メーカーのものを使っていることも多かった、という実情もあって油断していたのだろう。肝心の技術の部分はこちらが握っているので、いくら「器」が売れたところで、「メイド・イン・ジャパン」の優位性が脅かされることはない、と高をくくっていたのである。 そして、評論家が「日本は技術力はすごいものがありますが、いかんせん売り方が下手なのです」なんて、のんきな解説をしている間に、海の向こうでは中国メーカーが完全に勝利して、ついに日本やアメリカのメーカーを買収できるようになってしまった。 2012年には、パナソニックがハイアールに三洋電機の洗濯機・冷蔵庫事業を売却。2016年には、東芝が白物家電事業をマイディア(中国)に売却、ハイアールが米・ゼネラル・エレクトリック(GE)の家電事業を買収した。また2018年には、東芝がテレビなど映像事業をハイセンス(中国)に売却した。 このような「負けパターン」は例を挙げればキリがない。鉄鋼、造船、映画、そして最近ではアニメなどもそうだが今、大慌てで国が支援をしている半導体などの場合、かなり早くから「日本の負け」が予見されていた』、「肝心の技術の部分はこちらが握っているので、いくら「器」が売れたところで、「メイド・イン・ジャパン」の優位性が脅かされることはない、と高をくくっていた」、こうした思い上がりは日本人の悪弊だ。
・『「日本の半導体は負ける」という28年前の警鐘をスルーしてきた  80年代、技術・売り上げともに世界一だった「日の丸半導体」は90年に入ると、インテルなど海外メーカーに抜かれていく。日本社会ではまだ「アメリカもやるじゃん」くらいだったが、半導体業界の良識ある人は「終わりのはじまり」を予感していた。93年には、名門・東芝の半導体技術研究システムLSI技術開発部の部長はこう述べている。 「日本企業は一度注文をもらったら製品は安定して供給することには秀でているが、独自の製品の開発は苦手だ。それでは生き残れない」(日経産業新聞1993年3月29日) 90年代初頭、現場の最前線にいた人には明確に「このままでは日本の半導体は惨敗だ」という悪い予感があった。しかし、そこで国も企業も何も効果的な手を打たなかった。 インテルなど海外勢が復活してきたとはいえ、まだ日本の世界シェアは40%もあったし、技術力にも自信があったからだ。「日本は負けない!」という大合唱が、先の部長のような警鐘をかき消して、「いたずらに不安をあおる人々」にしてしまったのだ。 だが、そこからの衰退はご存じの通りだ。現在、日の丸半導体の世界シェアは一桁台に落ち込み、2020年には東芝はLSI事業から撤退。政府は慌てて世界最大手「TSMC」に媚を売って、4000億円の税金を渡して熊本に工場を建設させているが、ここで開発される半導体は10年前の技術。台湾企業のグローバル戦略に利用されているだけで、「日の丸半導体復活」にはほとんど寄与しない。つまり、28年前に東芝の部長が「予言」していた通りのことが進行しているのだ』、「「日本は負けない!」という大合唱が、先の部長のような警鐘をかき消して、「いたずらに不安をあおる人々」にしてしまったのだ」、こうした楽観バイアスはやはり恐ろしいものだ。
・『「わかりきっている負け」に突っ込んだ日本  実は日本の組織には、こういう「負けパターン」が異様に多い。データなどから客観的に分析をすると、どうやっても「負け」が見えている場合、避けるためには、過去の成功体験をリセットして、従来の方法論や従来の組織をガラリと変えなくてはいけない。 しかし、そういう議論を始めるとどこからともなく、「待て!そんなことをしなくても日本が負けるわけがない!」という絶叫が聞こえてくる。従来の手法や組織を変えるということは、これまで投入してきた人やカネがすべて「ムダ」だったということを認めざるを得ないということだ。そんな屈辱を絶対に受け入れられない勢力との争いが勃発して、組織が機能不全に陥る。結局、何も決められず、何も変えられず、進退極まって「わかりきっていた負け」へと突っ込んでいく。 その代表が、ちょうど80年前の今頃起きている。そう、1941年12月7日にはじまった太平洋戦争だ。 ご存じのように、この戦争は始まるかなり前の段階から「日本の負け」はわかりきっていた。当時、アメリカの石油生産能力は日本の700倍、陸軍の「戦争経済研究班」も「対英米との経済戦力の差は20:1」と報告している。この国と戦争をしてもボロ負けする、というのは海軍、陸軍、内閣、そして天皇陛下まで共通の認識だった。 1941年4月、当時日本の若手エリート官僚などを集めた「総力戦研究所」で、データに基づいて客観的かつ科学的に分析しても「日本必敗」という結論は変わらなかった。しかも、「緒戦は優勢ながら、徐々に米国との産業力、物量の差が顕在化し、やがてソ連が参戦して、開戦から3〜4年で日本が敗れる」とほぼ現実通りの敗戦シナリオまで読めていた。 しかし、この8カ月後、日本は戦争を始める。そこでよく言われるのは、アジアの白人支配をもくろむ英米の謀略で、ABCD包囲網やハルノートという理不尽な要求を突きつけられたせいで、日本は戦争に突入させられた、という「日本、ハメられた説」だ。しかし、戦史・紛争史研究家の山崎雅弘氏が、「太平洋戦争は本当に避けることができなかったのか」で指摘しているように、歴史を客観的に検証すれば、それはかなりご都合主義的な解釈だ。 日本政府と軍上層部が消極的に開戦に流れたのは、「これまでやってきたことの否定」を最後まで嫌がり、その責任を押し付けあっているうち機能不全に陥ったからだ』、「日本政府と軍上層部が消極的に開戦に流れた」様子は、腹が立つ。
・『社会全体の「日本は負けない!」の絶叫で戦争へ  アメリカ側が日本に要求していた、「中国からの完全撤兵」は陸軍としては絶対にのめなかった。日中戦争で約20万人の兵士を失い、国家予算の7割を注ぎ込んできたのに「手ぶら」で撤退すれば、陸軍内の責任問題に発展するだけではなく、陸軍そのものの存在も危ぶまれる大失態だ。そこに加えて、撤退という決断を下してしまうと、「戦争を望む国民」から政府や軍の幹部は壮絶な吊し上げにあって、本人や家族の命の危険もあった。 よくドラマなどで、太平洋戦争の開戦が描かれると、「軍靴の音が聞こえる」的な暗い世相で、ヒロインなどは軍国主義に翻弄されながら嫌々戦争に巻き込まれていくようなストーリーも多い。しかし、これはこの時代の「常識」と大きくかけ離れている。 当時、東京・四谷で生まれたばかりの赤ちゃんを育てていた女性は、真珠湾攻撃が成功したというニュースを受けて、個人の日記にこうつづっている。 『血わき、肉躍る思いに胸がいっぱいになる。この感激!一生忘れ得ぬだろう今日この日!爆弾など当たらないという気でいっぱいだ』(NHKスペシャル 新・ドキュメント太平洋戦争 1941 第1回 開戦(前編)) この人は国粋主義者でもなんでもなく、当時のきわめてノーマルな国民感覚を持っている。実は多くの国民はこの当時、「アメリカに目にもの見せてやれ!」「なぜ戦争をしない!」と弱腰の政府や軍に不満を感じていた。そんな社会のムードを受けて、若い軍人たちもとにかく天皇陛下に早く開戦を決断していただきたいと「下」から突き上げていた。戦争の回避を主張することは「反日」であり、「国賊」だったのだ。 政府や軍の幹部、そしてエリートたちが国力や資源という客観的データをもとに分析をした「日本は負ける」という結論が、社会全体の「日本は負けない!」の絶叫によって見事にかき消されてしまった結果が、対米戦争の開戦なのだ』、「戦争の回避を主張することは「反日」であり、「国賊」だったのだ」、「政府や軍の幹部、そしてエリートたちが国力や資源という客観的データをもとに分析をした「日本は負ける」という結論が、社会全体の「日本は負けない!」の絶叫によって見事にかき消されてしまった結果が、対米戦争の開戦なのだ」、「社会全体の「日本は負けない!」の絶叫」を煽ったのはマスコミだ。
・『現場の危機意識を大事に…80年前に学ぶべき  これは他の「負けパターン」にも見事に共通する。先ほどの東芝の部長もそうだが、自動車産業でも白物家電メーカーでも、鉄鋼でも造船でも、現場の最前線で指揮を執っているようなリーダーたちは早くから「このままでは日本は負ける」という危機意識を抱くケースが多い。 しかし、いつの間にか沈黙をする。現場から離れたところにいる、専門家、評論家、そしてジャーナリストなどが、「日本は負けない」などと叫び始める。愛国心を刺激する主張なので、世論も支持しやすい。そして気がつけば、「負け」を口にするものは売国奴となって、「客観的なデータ」はないがしろにされ、数多の問題を先送りにしたまま「負け戦」に突っ込んでいく。こういうことを80年間繰り返してきた結果が、今の日本だ。 冒頭で触れたようなニュースが多いからかもしれないが最近やたらと、「日本は負けない!」的な主張が増えてきた。今こそ80年前の「負けパターン」に学ぶべき時ではないか』、「今こそ80年前の「負けパターン」に学ぶべき時ではないか」、同感である。

次に、1月10日付け東洋経済オンラインが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「日本人は「円安」がもたらした惨状をわかってない 自ら危機意識を持って脱却する必要がある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/500552
:中国の工業化に対処するため、日本は「安売り戦略」を志向し、円を著しく減価させた。その結果、輸出は増えたが、貿易収支は悪化した。また、賃金も上昇せず、企業も成長しなかった。 昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第60回。 韓国や台湾は、通貨を増価させた結果、貿易黒字が拡大した。それにより、経済成長率が高まり、賃金が上昇した。また、企業が成長した』、興味深そうだ。
・『中国工業化への対応:「安売り」か、「差別化」か  いま、韓国や台湾の賃金や1人あたりGDPが、日本に近づき、あるいは日本を追い越そうとしている。20年以上にわたる日本経済の停滞と、韓国・台湾の顕著な経済成長が、この結果をもたらすことになった。 なぜこうしたことが生じたのだろうか? それは中国の工業化への対処の違いによると考えられる。 1980年頃から始まった中国の工業化が、1990年代に本格化した。安い労働力を使って、それまで先進国の製造業が作っていた製品を、はるかに安い価格で作り、輸出を増大させた。 これによって、先進国の製造業は極めて大きな打撃を受けた。 中国の工業化に対応するのに、2つの方策がある。 第1は、輸出品の価格を切り下げて、中国の低価格製品に対抗することだ。これを「安売り戦略」と呼ぶことにしよう。 第2は、中国が作れないもの、あるいは中国製品より品質が高いものを輸出することだ。これを「差別化戦略」と呼ぼう』、なるほど。
・『日本は安売り戦略  日本は2000年頃以降、「安売り戦略」をとった。 国内の賃金を円ベースで固定し、かつ円安にする。これに「よって、ドル表示での輸出価格を低下させて、輸出を増大させようとした。) 十分に円安にすれば、輸出が増えるだけでなく、企業の利益を増やすことができる。 「ボリュームゾーン」と呼ばれた政策は、「安売り戦略」の典型だ。これは、新興国の中間層を対象に、安価な製品を大量に販売しようとするものだ。 この考えは、1996年度の『ものづくり白書』で取り上げられた。そして、2000年頃から顕著な円安政策が始まり、また、1990年代前半までは上昇していた賃金が頭打ちになった』、「日本」が「安売り戦略」を選択したのは、誤りで残念だ。「賃金が頭打ちに」なるのも当然だ。
・『韓国と台湾は、技術を高度化  この間に、韓国、台湾では国内の賃金が上昇した。また、為替レートが傾向的に減価することもなかった。 これは、少なくとも結果的に言えば、「差別化戦略」がとられたことを意味する。品質を向上させ、あるいは中国が生産できないものを輸出するか、新しいビジネスモデルを開発したのだ。 実際、下記の図に見られるように、韓国の場合、製造業輸出品に占めるハイテク製品の比率は、30%程度であり、最近では35%程度に上昇している。それに対して、日本の場合には20%程度であり、最近では低下している。 (外部配信先では図表や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) 台湾では、鴻海が、中国の安い賃金を活用して、電子製品の組み立てを行うビジネスモデルを開発した。また、TSMC(台湾積体電路製造)は、最先端の半導体製造技術を切り開いた』、「日本」は「安売り戦略」で、「韓国と台湾は、技術を高度化」、とは本来の立場からすると逆であるべきだ。
・『日本では貿易黒字が減少し、貿易赤字に  以上の政策がとられた結果、何が起こったか? 日本では、2000年頃から輸出が増えた。しかし、輸入額も増大した。 輸入品の中には、原油など、価格弾力性の低いものがある。これらは、輸入価格が上昇しても輸入量を減らすことができないため、通貨が安くなれば、輸入額がさらに増える。 このため、貿易黒字は減少する。 実際、日本の貿易黒字は2005年頃から減少に転じ、さらに貿易収支が赤字化した。 貿易収支悪化は、リーマンショック後に顕著になった。2012年頃の原油価格高騰期には、とくにそうだった。 日本ではサービス収支が恒常的に赤字なので、貿易サービス収支が悪化する(2011年以降、2016、2017、2018年を除けば、赤字)。これを所得収支(対外資産からの収益)で賄う形になった。 これは、家計で言えば、退職後の人々と同じパターンだ。給料を得られないので、それまで蓄積した資産の収益で生活を支えるパターンとなる。) 韓国、台湾では、輸出の増加が輸入増加を超えたので、貿易収支の黒字が拡大した。 もともと韓国、台湾では、輸出に対する依存度が大きいので、この拡大は経済に大きな影響を与えたと考えられる。 なお、2000~2007年頃、アメリカの輸入が増加し、アメリカの経常収支赤字が拡大した。これは、アメリカ国内で消費が増加したためだ。これも、日本や韓国などの輸出増大に寄与した。 しかし、リーマンショックによって、このメカニズムが崩壊した。その後、日本も韓国も、輸出の伸び率は低下している。 ただし、日本の輸出が2007年頃以降ほとんど停滞してしまったのに対して、韓国、台湾の輸出は増加を続けた。 そして、日本の貿易収支が2011年後以降2015年まで赤字化したのに、韓国の貿易収支は黒字を続けた』、「韓国の貿易収支は黒字を続けた」、競争力が強かったためだろう。
・『韓国では、企業の時価総額が増加  韓国企業の成長は、時価総額の増加に現れている。 下図は、日本と韓国の国内企業の時価総額合計額の推移を示す。 2000年から2020年の間に、日本では、3.157兆ドルから6.718兆ドルに、2.13倍になっただけだ。 これに対して、韓国企業の時価総額合計額は、同期間中に、0.171兆ドルから2.176兆ドルへと、実に12.7倍になった。 この期間に、韓国企業の利益が顕著に増加したことを示している』、韓国の競争力の強さは、「企業の時価総額合計額」の急増にも表れている。
・『韓国と台湾に登場した巨大時価総額企業:サムスンとTSMC  韓国や台湾には、時価総額が巨大な企業が登場している。 韓国のサムスンの時価総額は、現在、4419億ドルで、世界ランキング第16位だ。 台湾のTSMCは、6239億ドルで、世界ランキング第10位だ。 これらはいずれも、日本で時価総額トップの企業であるトヨタの時価総額(2567億ドル、世界第41位)より大きい。 2010年頃に、日本の電機メーカーから、「打倒サムスン」の声が起きた。 しかし、実際には、打倒されてしまったのは、日本のメーカーだった。) 当時の日本を代表する総合電機メーカーの現在の時価総額は、次の通りだ。 ソニー:1567億ドル、日立:516億ドル、富士通:340億ドル、三菱電機:271億ドル、東芝:178億ドル、NEC:126億ドル、パナソニック:110億ドル。 これらすべてを合わせても3108億ドルで、サムスンの7割にしかならない。 これらすべてにトヨタを加えても、TSMCに及ばない。 半導体も、かつては、DRAMの分野で、日本メーカーが世界を制覇した。 いまは、台湾のTSMCが、世界のどのメーカーも追随できない製品を作っている。 日本政府は先頃、工場建設費の6割を負担してこの工場を日本に誘致することを決めた。 確実でない。 とりわけ、米中貿易戦争の影響は大きいだろう。 実際、韓国の貿易収支黒字は、2018年ごろから頭打ちになっている。これによって、経済成長も頭打ち気味だ。 また、TSMCの急成長も、半導体不足という短期的現象で増幅されている面がある(TSMCの時価総額は、2000年からわずか2年間で3倍以上になった)』、「サムスンとTSMC」の「時価総額」は一時的要因の押し上げはあるとしても、日本の電機メーカーに比べ圧倒的大きさだ。
・『通貨安に対する民族記憶がある韓国と、ない日本  韓国が通貨安政策を求めず、通貨高を実現させたのは、1990年代末のアジア通貨危機の影響と思われる。 この時、韓国は、ウォンの暴落で国が破綻する瀬戸際まで追い詰められた。この時の経験が民族的な記憶となって、通貨政策に反映しているのであろう。 これに対して日本では、そのような経験がない。 しかし、それが以上で見たような、「亡国の円安」の進行を許す結果となった。 いま、異常なまでの円安が進んでいるにもかかわらず、国民が危機意識を持たないのは、日本は韓国のような経験をしていないためだ。 この状況から、何とかして脱却する必要がある』、日本には異常なまでの円高恐怖症があることも大きな要因だ。

第三に、1月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「日本が亡国の道を突き進む元凶、「やったふり」「先送り」キャリア形成の弊害」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/292753
・『昨年は、コロナ禍によって「デジタル化の遅れ」をはじめ、日本社会のこれまであまり明らかになっていなかった問題が噴出した年だった。今後さらに新型コロナが感染拡大した場合、今の医療体制ではひとたまりもないことは明らかだが、政府は抜本的な医療改革には手をつけない。この日本の停滞の根源には、子どもの「受験」から始まる古いキャリア形成にあると考える』、興味深そうだ。
・『何事も動き出しが遅い日本はキャリアシステムに問題あり?  日本は政策が「Too Little(少なすぎる)」「Too Late(遅すぎる)」「Too Old(古すぎる)」だ(本連載第290回・p6)。  「コロナ禍」への対応では、感染拡大期に何度も医療崩壊の危機に陥った(第282回)。ワクチンについても、世界最先端の情報を得られず、諸外国に比べて確保も接種も初動が遅れてしまった(第279回・p3)。 後に、菅義偉首相(当時)の強い指揮でワクチン接種の遅れを取り戻し、感染者数・重症者数・死亡者数においては、欧米などと比べて低く抑えられている。だが、国民の政府のコロナ対策への評価は高くない。かろうじて医療崩壊を避けられても、今後強毒性の感染症のパンデミックが起こったら、今の医療体制ではひとたまりもないことは明らかだ。 だが政府は、抜本的な医療体制の改革には手を付けない。一体なぜなのか。 今回は、日本社会の「受験」「就職活動」から「年功序列」「終身雇用」の「日本型雇用システム」という、日本独特のキャリア形成のシステムに焦点を当てる』、「キャリア形成のシステム」がどのように問題を引き起こしているのだろう。
・『「学校では、塾通いを隠し、やったふりをしろ」が問題の原点  日本を動かしている政治家、官僚、財界人は、今の日本のキャリアシステムの頂点に君臨している人たちだ。 例えば、岸田文雄首相は「開成閥」とされている。開成高校の同窓である官僚、財界人が首相の脇を固めているというのだ。また、世襲議員や官界・財界の「麻布閥」が存在するともいわれてきた。 だが、このキャリアシステムが生み出したものは、「誰も結果を出そうとしない」社会だ。結果には「責任」が伴うが、それを嫌がり、誰も責任を取らない社会となっている。 まず、「受験」から考えてみたい。中学・高校・大学の「受験」は、学校の外部にある「塾」に通わなければ合格が難しい。学校で学ぶだけでは、難解な入試問題が解けないのだ。 私は子どもがいるので実際にみたことだが、親が子どもに「塾のことを学校でしゃべるな」という。学校の学びは塾より遅れていることが多く、子どもはすでに塾で学んだことを隠して、学校で勉強を「やったふり」をする。 運動会、学芸会などの学校行事も、受験勉強の妨げにならないように「やったふり」をする。親が、子どもをビデオ撮影する「思い出作り」の場となる。 学校では、塾通いを隠し、やったふりをしろ」という親の教えは、子どもに相当な悪影響がある。これが、「出るくいは打たれる」のを避けて、黙って静かに時が過ぎるのを待つ日本社会の風潮の原点になっていると思うのだ(第56回)。 これは、学校が「次のステップのためにいる場所」でしかないということを意味している。小学校は中学校の、中学校は高校の、高校は大学のためのステップだ。 大学も、就職のためのステップでしかない。あくまで「文系」の話と断っておくが、大学入学という「学歴」を得たら、1年生から就活(就職活動)の準備をするという学生が少なくない。 今の学生は、ゼミも、サークル活動も、ボランティアなど課外活動も、短期留学も、すべて就活のため、「履歴書」に記載するためだけにやっているように感じる。 私は大学で教員をしているが、ゼミやサークルでは「副リーダー」になりたがる学生がいる。履歴書に記載でき、実質的には何の責任がない役をやりたがるのだ。サークルは、4年間活動に没頭するよりも、就活に有利なところに籍を置くことを重視する。海外留学も「履歴書」でアピールできるものだ。短期のものが人気だが、それでは語学力がつかず、異文化も理解できない』、「ゼミも、サークル活動も、ボランティアなど課外活動も、短期留学も、すべて就活のため、「履歴書」に記載するためだけにやっているように感じる」、情けないが仕方ないのだろう。
・『無難に就職、無難な配属を選んで無難に「やったふり」  次に「就職活動」を考える。 自ら起業する学生が増えているというが、それは一握りにすぎない。結局、大多数の学生が「年功序列」「終身雇用」の会社に入社する。同じ会社に勤め続ければ、同期と横並びで出世していくシステムの中で、ローテーションでさまざまな業務を数年ずつ経験しながら、キャリアアップしていくことになる。 このシステムの特徴は、少なくとも表面的には、同期入社の出世は横並びということだ。ゆえに、何か問題が起きて、横並びの出世コースから外れると、元に戻るのが難しい。 だから、自分の担当部署が無難であることが何より重要になる。自分が担当の間、何か問題が起きても、それを解決するより、その問題をできるだけ隠して「先送り」し、別の部署に異動するときに、後任に渡そうとすることになる。 逆に、問題をわざわざ表沙汰にして、解決しようとしても評価されない。「先送り」をしてきた先人にとって都合が悪い。だから、そういう人は煙たがられる。組織の人事評価は、周囲と調和していく「穏健な人」が高く評価され、出世していく傾向になる。 要するに、学校から企業などに入社し、無事に定年退職まで勤め上げる間、成果を上げようとはしなくなる。静かに事を荒立てず、無難に「やったふり」をするのが出世の道なのだ』、「学校から企業などに入社し、無事に定年退職まで勤め上げる間、成果を上げようとはしなくなる。静かに事を荒立てず、無難に「やったふり」をするのが出世の道なのだ」、日本企業の生産性の低さにも大きく影響している筈だ。
・『海外では「公募」が基本、「やったふり」では生きられない  ところが、日本以外の社会では、「年功序列」「終身雇用」というシステムは基本的に存在しない。欧米だけではない。私の勤務校の大学院にはアジアの国々の公務員が留学しているが、彼らの国の制度では、公務員資格を持ち、さまざまな役所を渡り歩きながら、出世していくそうだ。 海外では、組織を移籍する時は、基本的に「公募」を使う。経営者でさえ「公募」で決まる。日本でいう「プロ経営者」だ。部長や課長なども、公募で決まる。内部昇格はあるが、「公募」を必ず行う。外部から応募してきた人材と比べて最適と審査された時のみ、内部昇格できる。要するに、役職に適合する人を組織内外に幅広く募り、最適な「専門家」を採用するのだ。 そういう社会で出世するには、「やったふり」で静かに待っているだけではいけない。「業績」を出し続けねばならないのだ。それを履歴書に載せて、次のポジションを求めて公募にチャレンジする。その繰り返しでキャリアアップしていくのだ。 日本と欧米の組織の違いを、官僚組織を事例に具体的に説明してみよう。 日本では、キャリア官僚は省庁で新卒一括採用される。「年功序列」「終身雇用」で、同じ省庁で退官するまで勤め続ける。その間、さまざまな部署をローテーションで経験し、ジェネラリストになっていく。 「政策」は、省庁内で対応可能な範囲内で立案されることになる。現在ある組織を前提にして、その枠を超える政策は作られない。他の省庁との協力も拒否する。複雑な問題は、「先送り」することになる(第183回)。 その端的な事例が、待機児童問題の解決策だった「幼保一体化」だ。厚生労働省の管轄する保育園と、文部科学省が管轄する幼稚園を一体化しようとしたが、厚労省と文科省の「縦割り」を打破することができず、待機児童問題の解決は「先送り」され続けている(第128回)。日本の行政では、適切な政策の実現よりも、各省庁の組織防衛が優先されるということだ。 一方、海外の官僚組織では、組織防衛よりも「政策」が優先される。既存の省庁で対応できない新しい政策課題は、新しい役所を設置し、専門的な人材を集めて政策立案をするのだ(第156回・p3)。 例えば、英国が2016年に「EU離脱」を決定した時、テリーザ・メイ首相が就任直後に、「EU離脱省」という新たな役所の設置を決断して、EUとの離脱交渉に臨むことにした。EU離脱によって生じる複雑な課題を、既存の省庁が個別に交渉するのではなく、新しい役所を設置し、専門家を新たに雇用して対応したのだ』、「既存の省庁が個別に交渉するのではなく、新しい役所を設置」、わざわざ新設までするかの是非は慎重に検討する必要がある。
・『コロナ禍で明らかになった日本の遅れ、根本に「先送り」  現在の、コロナ禍で明らかになった「デジタル化の遅れ」などの問題も、省庁、民間企業、政界で問題に真剣に取り組まず「やったふり」をして、解決を「先送り」し続けた結果ではないだろうか。 「デジタル庁」がようやく発足し、自民党は胸を張っているが、デジタル化は欧米から20年は遅れているのが現実だ(第202回)。 コロナ対策も問題だらけである。基本的に、コロナ対策を動かしているのは厚労省だ。政府の専門家会議、厚労省のアドバイザリーボードなど「審議会」に招集された御用学者は、省庁が決めた政策に「お墨付き」を与える存在でしかない。 だから、御用学者とは、現在世界の最先端の研究に取り組む若手ではない。すでに、第一線から引退状態の重鎮だ。彼らが「権威」として審議会に呼ばれ、政策に「お墨付き」を与え、省庁は政策の「正当性」を得る。 御用学者も、厚労省の官僚も、「学歴社会」「年功序列」「終身雇用」の日本社会の頂点に君臨する存在だ。その結果、コロナ対策は、「やったふり」「先送り」「縦割り」「組織防衛」ばかりの混乱状態となり、国民を不安に陥れた。 まず、ワクチンの入手・接種の遅れだ。専門家は、世界のワクチン開発の進捗を読み誤り、日本のワクチン入手は諸外国と比べて大幅に遅れた(第277回)。また、国内のワクチン利権を守ることが、ワクチン入手の障害になったという指摘もあった(選択12月号 『<<日本のサンクチュアリ>>国産ワクチンの「巨大利権」』)。 次に、何度も「緊急事態宣言」の発出を繰り返すことになった「医療体制崩壊の危機」だ。病床を確保するための議論は、専門家会議でほとんどなされなかった(第277回・p2)。それは、専門家会議に、感染症の専門家しかいなかったからだ。 彼らは感染症の予防・治療が専門でも、医療体制の確保は専門ではなかった。病床の確保は、他の疾病、糖尿病、心臓病、がん、脳卒中等の病床を分けてもらうしかない。だが、それらの疾病の専門家は会議にいないのだから、病床の確保の議論ができるわけがなかった。要するに、病床の確保は、医学界全体で取り組むべき課題だったが、医学界の「縦割り」が問題解決を妨げたのだ(第262回)。 結局、厚労省は「縦割り」「既得権」に手を付けないようにして、ひたすら国民に行動制限を求める対策に終始してしまったのではないだろうか。 私は、「受験」「就活」「年功序列」「終身雇用」の日本型のキャリアシステムそのものを変えていかなければ、今後も日本が直面するさまざまな課題について、その解決に正面から取り組まず、「やったふり」「先送り」が続くことになると考える。 日本の政界・官界・財界を動かす人たちは、このシステムの頂点にいるので、自らそれを変えることは難しい。彼らが組織内の論理で「やったふり」「結果を出さない」出世争いを続ける間に、世界は、日本を置き去りにして先に進んでいく。それは「亡国の道」である』、「日本の政界・官界・財界を動かす人たちは、このシステムの頂点にいるので、自らそれを変えることは難しい。彼らが組織内の論理で「やったふり」「結果を出さない」出世争いを続ける間に、世界は、日本を置き去りにして先に進んでいく」、外資系企業経営者、学者やジャーナリストなど、「このシステム」の周辺部にいる「人たち」が中心になって世界にキャッチアップしていく努力をするべきだ。
タグ:日本の構造問題 (その24)(「日本は負けた」系ニュースが急増しても事実を認めない人々の“負けパターン”、日本人は「円安」がもたらした惨状をわかってない 自ら危機意識を持って脱却する必要がある、日本が亡国の道を突き進む元凶 「やったふり」「先送り」キャリア形成の弊害) ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 「「日本は負けた」系ニュースが急増しても事実を認めない人々の“負けパターン”」 「「日本は絶対に負けない!」と叫べば叫ぶほど事態を悪化させるという「負けパターン」を繰り返してきた」、困った悪弊だ。 「10年前に「不安をあおるバカ」と罵られた側の警鐘が現実となりつつある」、なるほど。 「肝心の技術の部分はこちらが握っているので、いくら「器」が売れたところで、「メイド・イン・ジャパン」の優位性が脅かされることはない、と高をくくっていた」、こうした思い上がりは日本人の悪弊だ。 「「日本は負けない!」という大合唱が、先の部長のような警鐘をかき消して、「いたずらに不安をあおる人々」にしてしまったのだ」、こうした楽観バイアスはやはり恐ろしいものだ。 「日本政府と軍上層部が消極的に開戦に流れた」様子は、腹が立つ。 「戦争の回避を主張することは「反日」であり、「国賊」だったのだ」、「政府や軍の幹部、そしてエリートたちが国力や資源という客観的データをもとに分析をした「日本は負ける」という結論が、社会全体の「日本は負けない!」の絶叫によって見事にかき消されてしまった結果が、対米戦争の開戦なのだ」、「社会全体の「日本は負けない!」の絶叫」を煽ったのはマスコミだ。 「今こそ80年前の「負けパターン」に学ぶべき時ではないか」、同感である。 東洋経済オンライン 野口悠紀雄 「日本人は「円安」がもたらした惨状をわかってない 自ら危機意識を持って脱却する必要がある」 「日本」が「安売り戦略」を選択したのは、誤りで残念だ。「賃金が頭打ちに」なるのも当然だ。 「日本」は「安売り戦略」で、「韓国と台湾は、技術を高度化」、とは本来の立場からすると逆であるべきだ。 「韓国の貿易収支は黒字を続けた」、競争力が強かったためだろう。 韓国の競争力の強さは、「企業の時価総額合計額」の急増にも表れている。 「サムスンとTSMC」の「時価総額」は一時的要因の押し上げはあるとしても、日本の電機メーカーに比べ圧倒的大きさだ。 日本には異常なまでの円高恐怖症があることも大きな要因だ。 上久保誠人 「日本が亡国の道を突き進む元凶、「やったふり」「先送り」キャリア形成の弊害」 「キャリア形成のシステム」がどのように問題を引き起こしているのだろう。 「ゼミも、サークル活動も、ボランティアなど課外活動も、短期留学も、すべて就活のため、「履歴書」に記載するためだけにやっているように感じる」、情けないが仕方ないのだろう。 「学校から企業などに入社し、無事に定年退職まで勤め上げる間、成果を上げようとはしなくなる。静かに事を荒立てず、無難に「やったふり」をするのが出世の道なのだ」、日本企業の生産性の低さにも大きく影響している筈だ。 「既存の省庁が個別に交渉するのではなく、新しい役所を設置」、わざわざ新設までするかの是非は慎重に検討する必要がある。 「日本の政界・官界・財界を動かす人たちは、このシステムの頂点にいるので、自らそれを変えることは難しい。彼らが組織内の論理で「やったふり」「結果を出さない」出世争いを続ける間に、世界は、日本を置き去りにして先に進んでいく」、外資系企業経営者、学者やジャーナリストなど、「このシステム」の周辺部にいる「人たち」が中心になって世界にキャッチアップしていく努力をするべきだ。
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2022年展望(その3)(展望2022:日本株は堅調 最高値に迫る予想も 自動車は供給制約緩和に期待、2022年の視点:岸田首相の「安倍離れ」と日銀緩和縮小の思惑=上野泰也氏、日本経済のミイラ化が招く「21世紀の2.26事件」…それが2022年恐怖のシナリオ・・・ジャパンマネーの大エクソダス) [経済政治動向]

2022年展望については、1月2日に取り上げた。今日は、(その3)(展望2022:日本株は堅調 最高値に迫る予想も 自動車は供給制約緩和に期待、2022年の視点:岸田首相の「安倍離れ」と日銀緩和縮小の思惑=上野泰也氏、日本経済のミイラ化が招く「21世紀の2.26事件」…それが2022年恐怖のシナリオ・・・ジャパンマネーの大エクソダス)である。

先ずは、1月3日付けロイター「展望2022:日本株は堅調、最高値に迫る予想も 自動車は供給制約緩和に期待」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/outlook-2022-japan-stock-idJPKBN2J306W
・『2022年の日本株は堅調となり、日経平均は3万円を回復するとの見方が多い。主要国の中銀が金融政策の正常化に向かう中、世界経済の不透明感が強まるリスクがつきまとうが、日本株は出遅れからの見直しが進み、過去最高値に迫るとの予想もある。セクター別では、自動車関連が供給制約の緩和期待で有望視されている。インフレ下で上昇しやすい不動産にも関心が向かいそうだ。半導体関連は需要の継続力が注目点になる。 市場関係者の見方は以下の通り』、興味深そうだ。
・『堅調な年に、景気に自信深めれば日経平均3万2000円も<JPモルガン証券 チーフ株式ストラテジスト 阪上亮太氏>  来年の日本株は、アップサイドの余地が残る一方、下値は限定的で、堅調な年になりそうだ。世界経済が再開していく中で、企業業績は22年に11%、23年に7%の増益が見込まれる。1年先の株価収益率(PER)は、米国の21倍、グローバル平均の18倍に対し、日本は14倍弱と開きは大きく、出遅れ感のある日本株は見直されやすい。 FRBが利上げを実施する中でも世界景気の堅調が続き、市場が自信を深める局面では3万2000円に向けて上昇するだろう。 海外で日本株を保有する投資家は少なく、買い増しの余地がある。ファンダメンタルズの改善で主要国から遅れている日本株は、海外の株式市場がピークアウトしていく中で比較的堅調になるだろう。米国で利上げが始まれば、先行して上昇してきた米株から出遅れ国・地域への資金シフトが起こり得る。日本株は、新興国に次ぐ受け皿の候補になり得る。 セクター別では、自動車の業績とバリュエーションのバランスの良さに注目している。今後、供給網問題が緩和して業績の回復感も強まっていくだろう。不動産も有望だ。インフレとなる際に、株価が上がりやすい。経済再開の動きが強まればオフィス空室率もピークアウトするだろう。グローバルに利上げ局面に入る中で、金利感応度の高い銀行も買われそうだ。企業が抑制していた設備投資を再び拡大する中では、ITサービスの成長性も高い。 ただ、全体では大きく盛り上がる様子でもない。米国の金融政策正常化が進む中で米株安となれば、やはり日本株は上値を抑えられるリスクがつきまとう。日本では経済安全保障推進法の議論が浮上しており、日中関係への影響にも注意が必要だろう。参院選は重要イベントだが、現状では無風通過をメインシナリオとしている。 日経平均の2022年予想レンジ:2万8000―3万2000円』、なるほど。
・『年半ばに調整局面 テックサイクルのピークアウト感が頭抑える<大和証券 チーフテクニカルアナリスト 木野内栄治氏>  2022年の株式市場は、中盤にかけて調整局面が訪れるとみている。その大きな要因は、米国で春ごろにテックサイクルがいったんピークアウトするとみられること。これまで半導体関連株が相場をリードしてきたが、これらが調整することによって、株式市場は影響を受けることになりそうだ。 国内については、岸田政権が打ち出した「単年度予算」の弊害是正が進行するかが注目点となる。これが進行すれば、重要インフラの整備がより進むことに繋がるため、政策課題としては大きなポイントになりそうだ。22年は夏に参議院選挙を控えるが、この単年度予算の修正が進めば、与党が負けることはないだろう。 米金利については、テックサイクルの調整によって景気に不透明感が強くなれば、米金融当局も年後半にはハト派に傾斜するのではないか。一方、新型コロナウイルスに関しては完全に織り込むのは難しいだろう。日経平均は6月ごろに2万4000円までの調整がありそうだが、その後は上向き、来年度末の2023年3月には3万3000円を指向すると想定している。 物色面では、自動車、通信、電子部品などが考えられるが、5Gなど通信関連の設備投資に一巡感が出た場合、金融株に戻る可能性も出て来る。 日経平均の2022年予想レンジ:2万4000─3万1000円』、「米金利については、テックサイクルの調整によって景気に不透明感が強くなれば、米金融当局も年後半にはハト派に傾斜するのではないか」、心強い見方だ。
・『上昇基調を維持、懸念材料は時間の経過とともに和らぐ <三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト 市川雅浩氏>  来年のマーケットを取り巻く環境は、いくつかの注意すべき懸念材料があるものの、日本株は上昇基調を維持するとみている。底堅い企業業績とともに、株価は上向きに推移するだろう。日経平均の値がさ株やグロース株が引き続き日本株のけん引役になるとみている。 変異株の感染動向、世界的な供給制約、物価の高止まり、金融政策正常化などは、引き続き注視すべき材料ではあるものの、大きな波乱要因にはならない。オミクロン株を巡ってはコロナワクチンのブースター接種(3回目・追加接種)の効果が見え始めているほか、飲み薬の開発にも進展が見えており、重症化のリスクは抑制されている。 また、供給制約を巡っては、主要メーカーは調達の目途がついてきており、2022年半ばからは正常化するとみている。いったん目途がつくと、価格上昇に一服の兆しが見え始める。米連邦準備理事会(FRB)も景気が冷え込むほど速いペースで利上げを行うとは考え難く、いずれも時間の経過とともに脅威ではなくなるだろう。 注目すべきイベントは、夏に行われる参院選だ。自民・公明の与党が勝利するとなると、当面は国政選挙が行われない。岸田政権は長期安定政権に踏み出す布石として、早々に財政再建を進め、金融所得課税強化などといった株式市場が嫌気する政策を打ち出す可能性があるので、注意が必要だ。 日経平均の2022年予想レンジ:2万7300─3万5300円)』、「供給制約を巡っては、主要メーカーは調達の目途がついてきており、2022年半ばからは正常化するとみている。いったん目途がつくと、価格上昇に一服の兆しが見え始める」、インフレには強気の見方だ。
・『日経平均は見直し進む 反市場主義的スタンスに警戒も <マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木隆氏>  来年は日本株の見直しが進むとみている。主要な中銀が金融引き締めの方向に向かい、世界経済の成長は鈍化が見込まれる一方、回復で出遅れた日本経済は来年にかけて回復基調が鮮明になり、日銀による金融緩和の継続も相まって、相対的にファンダメンタルズ良好と評価されるだろう。 足元の日経平均PER13倍台は歴史的な低水準で、堅調な企業業績の織り込みはこれからといえる。よほどのショックがあれば瞬間的に下落する場面はあり得るが、下げ余地は大きくはない。国内の経済再開を受けて陸運、旅行関連は有望だろう。供給網の問題が解消に向かう自動車も期待できる。半導体関連も、5Gや電気自動車(EV)などで需要拡大が見込まれ堅調だろう。 新型コロナウイルスの感染拡大リスクはくすぶるが、人類はワクチン開発力や新たな生活様式の経験などを蓄えてきており、ネガティブなインパクトは抑制されるだろう。コロナ影響は沈静化に向かうというのがメインシナリオとなる。 日本企業の収益は今期、約5割の伸びが見込まれるが、来年は世界景気の鈍化を受けて6%程度に縮小しそうだ。1株利益(EPS)の伸びが限られる中、日経平均の株価収益率(PER)が歴史的な平均値である15倍程度に高まる中で、株価は3万8000円程度となるだろう。 ただ、日本株だけが選好されるような展開は想定しにくい。岸田文雄首相から金融所得課税や自社株買い規制への言及があった。成長戦略を欠くまま分配が強調されれば企業の活力が削がれ得る。反市場主義的なスタンスが続くようなら、外国人投資家は日本株を敬遠しかねない。 日経平均の2022年予想レンジ:2万9000─3万8000円)』、ここで紹介された「市場関係者の見方」はおしなべて強気なようだ。

次に、1月3日付けロイターが掲載したみずほ証券のマーケット・エコノミストの上野泰也氏による「2022年の視点:岸田首相の「安倍離れ」と日銀緩和縮小の思惑=上野泰也」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/outlook-2022-idJPKBN2J61C2
・『岸田文雄首相は、2022年夏の参院選が終わってしまうと「安倍離れ」を急速に進めるのか──。仮にそうなる場合、日銀の次期総裁・副総裁人事にどのような影響が及び、異次元緩和や政府・日銀共同声明に何らかの変化は生じるのか。2021年12月、都内の首相官邸で代表撮影(2022年 ロイター) 仮にそうなる場合、日銀の次期総裁・副総裁人事にどのような影響が及び、異次元緩和や政府・日銀共同声明に何らかの変化は生じるのか。さまざまな食品の値上げが22年1─3月期を中心に予定されており、エネルギー高に加わる家計への打撃が及ぶ中、「悪い円安」論に乗る形で、岸田首相が「異次元緩和は修正されるべきだ」と考え出すようなことはないのか。 落ち着いている円金利市場と異なり、為替市場の一部では、日銀の金融政策に関する思惑がくすぶっているようである。 ドル/円相場の行方を考える場合には当然のことながら、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策や米国株が主たるドライバーになる。利上げについてはその開始時期よりも利上げ局面の終着点(ターミナルレート)の水準の方が、はるかに重要である。 また、米国株は、利上げに関連して大幅な下落が続く場合、世界の金融市場を「リスクオフ」に傾けて、為替市場ではクロス円取引を中心に円買い圧力を増大させる要因となる。そうした点についてはコメントがすでに多数出ているので、ここでは視点を変えて、日銀の金融政策に何らかの変化が22年に生じる可能性について考えてみたい。 <アベノミクス修正はあるのか  岸田首相は12月23日に講演した際、日銀の金融政策に関し、物価目標2%の実現に向けて「努力すると期待している」と述べた。 この1カ月半ほど前、11月4日に首相官邸で黒田東彦総裁と会談した岸田首相は、内外の経済・金融情勢について意見交換した。物価目標2%を盛り込んだ13年1月の政府・日銀共同声明も話題になったという。安倍晋三内閣から菅義偉内閣に受け継がれたこの共同声明は、岸田内閣でも当面、そのまま維持される可能性が高い。 だが、仮に夏の参院選で自民党が勝利すれば、岸田首相の政治的求心力は強まる。すでに外相などの閣僚人選で安倍元首相の意向に反する動きが散見される岸田氏が「安倍離れ」を強めると、金融市場では冒頭にも述べた通り、「アベノミクス」の事実上の根幹である異次元緩和が何らかの形で縮小されるのではないかという思惑が浮上しやすくなる。 そうしたことを早めにけん制する狙いからなのかは不明だが、安倍元首相は12月26日のテレビ番組で、岸田内閣の経済政策について「根本的な進む方向をアベノミクスから変えることはすべきではない」「社会主義的な味付けになっていくのではないかととられると、市場も大変マイナスに反応する。成長から目を背けると思われないようにしないといけない」と述べた。 岸田内閣の「分配」重視路線は、海外の株式市場関係者の間では評判が良くないようである。「アベノミクス」を好感して海外勢が日本株を買い上げた経緯があるだけに、その修正を図る路線は、安倍元首相の言う通り、日本株の売り材料になる可能性が高い。 一方で、「アベノミクス」の下で拡大したとされる所得格差を岸田内閣が政策的に是正することを、少なからぬ有権者が期待している。内閣支持率を高めの水準に維持するために岸田首相は「成長あっての分配」と口にしつつも、「分配」に目配りした政策を断続的に打ち出す必要があるだろう。 このジレンマの中で、「分配」に関する政策では岸田首相に一種の「さじ加減」が求められてくる。だが、そうしたジレンマの中で、仮に岸田内閣が日銀の異次元緩和の修正を何らかの形で活用しようとしても、確たる成果は得られにくいように思う。 <日銀ステルステーパリグンの意味>  海外投資家から日銀の金融政策に関連する質問が寄せられた際に、あぜんとすることがある。日銀がやっていることの実情は、外国人にはあまり知られていない。 FRBのように日銀はいつ「テーパリング」するのか、という不思議な質問が寄せられることがある。言うまでもなく、16年1月にマイナス金利を導入した際、日銀はターゲットを「量」から「金利」へと明確に切り替えているので、長期国債買い入れの金額にノルマは存在しない。日銀当座預金の政策金利残高にマイナス0.1%、10年物国債利回りにゼロ%程度という長短金利ターゲットを設定したイールドカーブコントロール(YCC)の下で、それと整合的なイールドカーブが形成されるような長期国債の買い入れを実施している。 21年11月末に日銀が保有している長期国債残高は、前年同月末比プラス16兆3265億円。ターゲットがまだ「量」だった頃、この数字はプラス80兆円を超えていたので、実態としては「テーパリング」的なことはすでに相当進んでいるわけで、これを「ステルス(隠密)テーパリング」と呼ぶ向きもある。 ETF(上場投資信託)買い入れはどうか。21年3月に行った金融緩和策の「点検」の際に日銀は、ETFの買い入れ手法を「柔軟化」したという体裁をとりつつ、相場急落時以外の買い入れは行わない態勢に移行した。ETFの新規買い入れからは事実上「撤収」したと言っても過言ではあるまい。 日銀は現在の金融緩和策の柱の1つとして、「オーバーシュート型コミットメント」を掲げている。これは「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続することを約束するもの」である。 その一方、日銀は21年12月の金融政策決定会合で「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーション」(コロナオペ)のうち、民間債務担保分は22年3月末で終了し、制度融資分とプロパー融資分は半年間だけ延長することを決定した。コロナオペの残高は足元で80兆円を超えている。満期到来でこれが全部なくなれば、マネタリーベースが落ち込むことは避けられない。海外投資家の間で「日銀は金融緩和縮小に転じたのではないか」「YCC見直しがあるのではないか」といった思惑が生じる可能性が潜在している。 <緩和修正の思惑と円高>  この点について、日銀はどう説明して乗り切りを図るのだろうか。12月会合における主な意見には「昨春以降のマネタリーベースの増加は、感染拡大による流動性需要の高まりに日本銀行が潤沢な資金供給で応えてきた結果である。今回の措置により短期的にマネタリーベースが減少しても、長期的な増加トレンドは維持されるため、オーバーシュート型コミットメントとは矛盾しない」「特別プログラムを全て手仕舞いすることになったとしても、それはコロナ禍対応の終了であり、『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』のもとでの金融緩和の縮小を意味するものでは全くない」といった意見が出されたことが記されていた。 そうした日銀による説明(一種の言い訳)がどこまで為替市場で通用するかは見ものだが、それが本来的な意味での「異次元緩和の縮小」でないことは確かである。 このように、22年の日銀の金融政策に関しては、米国やユーロ圏の中央銀行のように「緩和の縮小」に動いているのではないかという思惑が為替市場で浮上する素地がある。 また、参院選が終了した後には、岸田首相の言動も市場の関心事になりやすい。FRBの利上げの限界が徐々に認識される中で、そうした日銀関連の思惑も加わると、ドル/円相場が110円ラインを越えてドル安・円高方向へと動く可能性が高まると、筆者はみている。 とは言え、結局のところ、日銀の異次元緩和は22年以降も淡々と続いていくことだろう。(上野泰也氏の略歴はリンク先参照)』、「22年の日銀の金融政策に関しては、米国やユーロ圏の中央銀行のように「緩和の縮小」に動いているのではないかという思惑が為替市場で浮上する素地がある」、「FRBの利上げの限界が徐々に認識される中で、そうした日銀関連の思惑も加わると、ドル/円相場が110円ラインを越えてドル安・円高方向へと動く可能性が高まる」、なるほど。

第三に、1月10日付け日刊ゲンダイが掲載した同志社大学教授の浜矩子氏による「日本経済のミイラ化が招く「21世紀の2.26事件」…それが2022年恐怖のシナリオ・・・ジャパンマネーの大エクソダス」を紹介しよう。
・『今年は過去にないほど先行きが見通せません。考えられる最も恐ろしいシナリオについてお話ししましょう。 世界中で突如としてインフレが再来しています。米FRB(連邦準備制度理事会)はこのインフレを一時的な現象と見るのをやめ、本格的な対応にシフトし始めました。英も利上げに踏み切り、EUもおおむね同様の方向です。それに対し、全く違う世界にいるのが日本。グローバルな展開からデカップリング(分離)してしまった日本に、これから何が起きるのか。とても気がかりですが、いよいよ日本経済がミイラ化する恐れがあると思います。 日本以外の国々がどんどん利上げに進めば、投資しても収益が上がらない日本から資金が国外へ逃げ出す。ジャパンマネーの大エクソダス(国外脱出)が起きれば、日本経済は金欠で干上がってしまう。すなわちミイラ化です。 それを阻止するために日本も金利を上げるとなれば、国債の利回りも上がって、国債価格は暴落する。政府の債務返済負担が一気に膨らみ、日本国政府の事実上の財政破綻状態があからさまになりかねません。だから現実には動けない。金融政策も財政政策もなす術なしです。 そこでどうするか。資本流出規制や金融鎖国をして財政と金融を一体運営し、統制経済下に置く。そうしなければ日本経済のミイラ化は防げないということです』、「日本以外の国々がどんどん利上げに進めば、投資しても収益が上がらない日本から資金が国外へ逃げ出す。ジャパンマネーの大エクソダス・・・が起きれば、日本経済は金欠で干上がってしまう。すなわちミイラ化です」、「それを阻止するために日本も金利を上げるとなれば、国債の利回りも上がって、国債価格は暴落する。政府の債務返済負担が一気に膨らみ、日本国政府の事実上の財政破綻状態があからさまになりかねません。だから現実には動けない。金融政策も財政政策もなす術なしです。 そこでどうするか。資本流出規制や金融鎖国をして財政と金融を一体運営し、統制経済下に置く。そうしなければ日本経済のミイラ化は防げないということです」、黒田総裁の罪はまことに深い。
・『賃上げしない大企業には懲罰を  「聞く力」=朝令暮改というフワフワ男のアホダノミクス(岸田首相)に対応力があるとは思えません。軟弱男に任せてはおけないと、自民党内の強硬派や、あるいは日本維新の会あたりが強権発動に動くかもしれません。 あたかも戦間期における軍部のようなヤカラが出てきて、厳しい経済運営をテコに、「軟弱なことを言っている場合じゃない」と憲法改正の議論も進んでいく。21世紀の2.26事件のような空恐ろしさを覚えるシナリオです。縁起でもありませんが、これを極論だと笑っているのは危うい。最悪シナリオを何としても避ける知恵が求められます。 まずは賃金が上がらないという閉塞状況からの脱却が急務でしょう。しかし、アホダノミクスの賃上げ政策はいただけない。「賃金を上げたら減税のご褒美」ではなく、「賃金を上げなければ罰金」と、大企業には懲罰的な迫り方をすべきです。もっと思い切った歯切れのいい政策を打ち出すべきなのです。 はやりのSDGs(持続可能な開発目標)やESG投資(環境、社会、ガバナンス重視の投資)では、「まともな賃金を払う」ことが重要なアジェンダになっています。これを盾に取って企業に賃上げを求めるという手もあるでしょう。賃上げをしなければ投資家に敬遠されたり、企業イメージがダウンしたりしますよ、という形で脅しをかけるのです。そうでもしないと、なかなか歪んだ経済実態をあるべき姿に戻していくことは難しいでしょう。異次元緩和がもたらした歪みは、異次元の対応をしなければ元には戻りません』、「「賃金を上げたら減税のご褒美」ではなく、「賃金を上げなければ罰金」と、大企業には懲罰的な迫り方をすべきです」、意欲的な案だ。「異次元緩和がもたらした歪みは、異次元の対応をしなければ元には戻りません」、言い得て妙だ。
タグ:2022年展望 (その3)(展望2022:日本株は堅調 最高値に迫る予想も 自動車は供給制約緩和に期待、2022年の視点:岸田首相の「安倍離れ」と日銀緩和縮小の思惑=上野泰也氏、日本経済のミイラ化が招く「21世紀の2.26事件」…それが2022年恐怖のシナリオ・・・ジャパンマネーの大エクソダス) ロイター 「展望2022:日本株は堅調、最高値に迫る予想も 自動車は供給制約緩和に期待」 堅調な年に、景気に自信深めれば日経平均3万2000円も<JPモルガン証券 チーフ株式ストラテジスト 阪上亮太氏> 年半ばに調整局面 テックサイクルのピークアウト感が頭抑える<大和証券 チーフテクニカルアナリスト 木野内栄治氏 「米金利については、テックサイクルの調整によって景気に不透明感が強くなれば、米金融当局も年後半にはハト派に傾斜するのではないか」、心強い見方だ。 上昇基調を維持、懸念材料は時間の経過とともに和らぐ <三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト 市川雅浩氏 「供給制約を巡っては、主要メーカーは調達の目途がついてきており、2022年半ばからは正常化するとみている。いったん目途がつくと、価格上昇に一服の兆しが見え始める」、インフレには強気の見方だ。 日経平均は見直し進む 反市場主義的スタンスに警戒も <マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木隆氏 ここで紹介された「市場関係者の見方」はおしなべて強気なようだ。 ロイターが掲載したみずほ証券のマーケット・エコノミストの上野泰也氏による「2022年の視点:岸田首相の「安倍離れ」と日銀緩和縮小の思惑=上野泰也」 「22年の日銀の金融政策に関しては、米国やユーロ圏の中央銀行のように「緩和の縮小」に動いているのではないかという思惑が為替市場で浮上する素地がある」、「FRBの利上げの限界が徐々に認識される中で、そうした日銀関連の思惑も加わると、ドル/円相場が110円ラインを越えてドル安・円高方向へと動く可能性が高まる」、なるほど。 日刊ゲンダイ 浜矩子 「日本経済のミイラ化が招く「21世紀の2.26事件」…それが2022年恐怖のシナリオ・・・ジャパンマネーの大エクソダス」 「日本以外の国々がどんどん利上げに進めば、投資しても収益が上がらない日本から資金が国外へ逃げ出す。ジャパンマネーの大エクソダス・・・が起きれば、日本経済は金欠で干上がってしまう。すなわちミイラ化です」、「それを阻止するために日本も金利を上げるとなれば、国債の利回りも上がって、国債価格は暴落する。政府の債務返済負担が一気に膨らみ、日本国政府の事実上の財政破綻状態があからさまになりかねません。だから現実には動けない。金融政策も財政政策もなす術なしです。 そこでどうするか。資本流出規制や金融鎖国をして財政と金融 「「賃金を上げたら減税のご褒美」ではなく、「賃金を上げなければ罰金」と、大企業には懲罰的な迫り方をすべきです」、「異次元緩和がもたらした歪みは、異次元の対応をしなければ元には戻りません」、言い得て妙だ
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インバウンド戦略(その14)(コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今、金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか、外国人消えたニセコ それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定) [経済政治動向]

インバウンド戦略については、2020年10月17日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その14)(コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今、金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか、外国人消えたニセコ それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定)である。

先ずは、2020年11月10日付けJBPressが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62800
・『秋の富士山麓で妙なホテルに出くわした。ホテルの看板はかかったままだが、フロントまでのアプローチには落ち葉が積り、広い庭も手入れされている気配がない。従業員や客の姿は1人も見当たらない。どうも“廃墟”と化しているようだ。 エントランスで資材を運搬する施行業者に「このホテルには泊まれますか」と聞いてみたのだが、何の反応もない。彼らは日本語を話せないアジア人のようだ。 近くの飲食店に入り、従業員に「あのホテルはどうしたんですか?」と尋ねると、「中国人が経営するホテルですが、いろいろな噂があるホテルです。支配人が1カ月ももたずに交代してしまうという噂を聞いたことがあります」と言う。 新型コロナウイルスでとどめを刺されたということなのだろうか。インターネットのホテル予約サイトで検索すると、予約の受付は中止されていた』、「インバウンドブーム」で投資したケースは極めて多そうだ。
・『インバウンドブームで宿泊施設が急増  山梨県と静岡県にまたがる富士山麓周辺には、多くの宿泊施設がある。山梨県では2014年以降、旅館は年々減少したが、ホテルや簡易宿所は反比例する形で増加した。富士山麓周辺でもホテルや簡易宿泊施設が次々に開業した。) 富士山麓の宿泊施設で特徴的なのは、企業が手放した保養所などを中国資本が買い取ってホテルに改装するケースが多いことだ。冒頭のホテルも、日本の某上場企業が手放した保養所を中国資本が買い取った施設のようだ。 実はもともと富士山麓は日本人の観光客が少ない場所であり、宿泊施設も多くはなかった。富士山は遠方からでも見えるため、わざわざ山麓まで行って眺めてみようという人は少ない。 ところが2010年代に入ってからのインバウンドブームで、中国人観光客に照準を当てたインバウンド専門の宿泊施設が急増した。富士山麓の宿泊施設で働くRさんに訊ねると、「このあたりに中国資本の宿泊施設は100カ所近くあるのではないか」と話していた』、「中国資本の宿泊施設は100カ所近くあるのでは」、予想を上回る多さに驚かされた。
・『職場はブラック、客へのもてなしも皆無  そうした中国資本の宿泊施設では一体どんな経営が行われているのだろうか。今回、中国資本の宿泊施設に勤務した経験を持つ日本人男性Kさんから事情を聞くことができた。 Kさんは、中国のツアー会社が毎日のように団体客を送り込んでくるホテルで、受け入れを中心とした業務を担当していた。) 「ある中国系のホテルで働きましたが、まったく休みが取れない日が3カ月続きました。勤務時間は朝6時から23時までです。ひどいときは朝4時まで働き、ナイトフロントも担当しました。中国人スタッフもいましたが、宿泊者とのトラブル解決はすべて私がやらされました」 初任給は23万円。その後、若干の上乗せがあったとはいえ、とても激務に見合うものではなく、Kさんは1年で退職した。Rさんに意見を求めると「日本の労働基準法を完全に無視しています。文句を言わない真面目な日本人がこき使われているとしか思えない」と語る。 そもそも中国資本の宿泊施設の一部は、日本の法令を遵守しようという意識が希薄である。たとえば客との金銭の授受は中国の決済アプリを利用して行い、「ここはホテルではなく自分の別荘だ」と言い張る経営者も少なくない。Rさんは「そうした施設には、納税も期待できない」と言う。 Kさんが勤務していたホテルは、建物の老朽化が進み、客へのもてなしも皆無に等しかったという。「館内にはこれといった施設もなく、中国人観光客はチェックインしたあとはただ寝るだけでした。ツアーの内容もひどいもので、客は夜には外でラーメンや牛丼を食べさせられ、朝食はコンビニでパンを買わされていました」と振り返る。 初めて訪れた日本でこんな扱いをされたら、期待を膨らませて訪日した中国人観光客も日本に幻滅してしまうだろう』、「ツアー」内容の余りの酷さに驚かされた。
・『中国の旅行会社も吹っ飛んだ  なぜ、そんな状況が生まれたのだろうか。背景にあるのはダンピング競争である。 2015年前後に急激に拡大した日本のインバウンド市場において、団体客を受け入れる宿泊施設は常に「コストとの戦い」を強いられてきた。 かつては1人1泊8000円で提供していた宿泊施設も、中国の旅行代理店からの度重なる減額要求で5000~6000円への値下げを余儀なくされた。その金額では、とても手厚いサービスは提供できない。 さらに売掛金の回収問題が宿泊施設に追い打ちをかけた。中国の旅行代理店が、宿泊料金(ツアー料金の中の宿泊施設側の取り分)を決められた期日までに支払ってくれないのだ。宿泊客を送り込んでくれる中国の旅行代理店は、なくてはならない存在だが、集金はきわめて骨が折れるという。催促の電話をしてもとぼけられたり、居留守を使われたりしてしまう。互いに中国資本であっても、まともな交渉にならないのが実態だ。 あるインバウンド専門ホテルの経営者は「中国の旅行会社は、調子がいいときも支払いが悪い。コロナ禍となればなおさらです」と語る。確かに中国の旅行会社の経営は青息吐息だ。上海の旅行代理店に状況を尋ねてみると、こう説明してくれた。「当社は、当面のあいだ海外旅行の需要はないだろうとの見込みから、ツアー商品を国内旅行に完全にシフトしました。コロナのせいで、中には海外旅行部門を解散させた代理店や、会社ごと吹っ飛んでしまった代理店もあります」。 2019年の訪日外国人旅行者は3188万人。そのうち中国から訪れたのは959万人だった。中国人客が全体の3割と高いシェアを占める中で、団体ツアーを受け入れる宿泊施設は「質ではなく価格」という大陸式のダンピング競争に呑み込まれていった。新型コロナウイルスの感染が拡大する前までは空前のインバウンドブームが続いており、たとえ劣悪なサービスの宿泊施設でも高稼働が続いていた。 だが、コロナ禍によって状況は一変した。日本を訪れる中国人旅行客は消え、ダンピング競争にストップがかかった。事業者にとって損失は計り知れないだろうが、「インバウンドはどうあるべきかを考え直す機会だ」と、これを天の配剤と受け止める事業者もいる。インバウンドの第2ラウンドでは、渦に呑み込まれない経営がカギとなりそうだ』、「コロナ禍」の終息にはまだ時間がかかりそうだが、これを機に「インバウンドはどうあるべきかを考え直す機会だ」と、戦略を再構築すべきだろう。

次に、2021年2月27日付け東洋経済オンラインが掲載した三菱総合研究所研究員 の劉 瀟瀟氏による「金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/413599
・『世界でワクチン接種が始まっている今、オリンピックなど、観光産業の復興についての議論が再び視野に入ってきた。特に日本の観光産業を支えてきたと言っても過言ではないインバウンドはコロナ禍で一気に蒸発し、日本の観光産業に大きくダメージを与えている。 2014年からインバウンド、特に訪日中国人富裕層の動向を研究している筆者が知っている範囲でも、多くの企業や自治体が、消費金額と影響力が高い訪日中国人富裕層の誘致に取り組む予定だったのが、コロナ禍のため頓挫してしまい、「これからも来てくれるのか」と不安に思っている。 そこで今回は、中国の大都市に居住する若い富裕層(20~30代、世帯年収3000万円以上、資産2億円以上)9人にインタビューを実施。彼らは欧米への留学経験があるエリート層で、親日でもあり、日本の観光業にとっては欠かせない層である。さらにインタビューと合わせて、コロナが落ち着きつつある中国国内の観光事情も紹介する』、「中国の大都市に居住する若い富裕層」への「インタビュー」とは興味深そうだ。
・『コロナ前の状態に戻りつつある  日本ではまだまだ待ち遠しい「旅行」だが、中国では国内旅行が堅調で、回復傾向にある。春節で移動は制限されたものの、40日間で延べ17億人が移動したと報じられている。 今年の春節の移動者数はコロナ流行前の2019年と比べると4割程度少ないが、北京市の旅行収入は2020年の2.9倍になった。また、中国の真南に位置する海南島の離島免税品(中国国内にいながら買える免税品)売り上げは前年に比べ261%増の9億9700万元(約158億円)になった。徐々にコロナ前の状態に戻ってきていることがうかがえる。 富裕層たちへのインタビューによれば、昨年の初夏から今まで通りに国内旅行・出張をするようになったが、コロナ以前と比較すると大きく3つの変化が見られたようだ。 その1つ目は、中国国内のホテルや周辺の観光施設のレベルアップが著しいことだ。コロナ感染への心配もあり、最近の中国人はホテル内で楽しむ傾向が高い。上海や広州など大都市はもちろん、雲南省、四川省、福建省といった地方都市への関心もますます高くなっている。 富裕層を代表する旅行ブロガーのLulu氏は、「(仕事で世界中のいいホテル、リゾートに泊まっているが)この1、2年、国内のホテルのレベルアップは速い」と話す。特に中国国内のホテルのいちばんの弱点である「美意識」や「デザイン」が、近年海外でデザインの仕事をして帰国したデザイナーや、海外のデザインチームに発注することで改善されつつある。 中国人は世代と居住地の違いによって美意識に大きなギャップがある。50代以上の富裕層なら部屋の大きさなど貫禄あるデザインを好む。一方、無印良品のブランドを冠する「MUJIホテル」のような、「わびさび」の日本文化と美意識は若い世代に強く影響を与えている。そのため若い人たちは洗練されたデザイン(日本・先進国で称賛されたテイスト)を好む。「ミニマリズム」「シンプルで上品」そして「自然環境が良い」ホテルへのニーズが増えているのだ』、「若い人たちは洗練されたデザイン・・・を好む。「ミニマリズム」「シンプルで上品」そして「自然環境が良い」ホテルへのニーズが増えているのだ」、「50代以上の富裕層なら部屋の大きさなど貫禄あるデザインを好む」のとは大きな違いだ。
・『インテリアも購入できる高級ホテル  富裕層やブロガーの中で人気がある、雲南省のHyllaはその一例である。部屋から観光名所の玉龍雪山の絶景雲海が見えるよい立地にあるだけでなく、コンセプトからインテリアまで徹底的に若い世代の富裕層のニーズを意識して設計されている。 例えば、Hyllaにはアンティークの家具を扱うパートナーがいる。高価なSirocco chair、The Spanish Chair、ルイスポールセンのフロアランプ、イサム・ノグチのテーブル……、と、洗練された空間で宿泊客を魅了しているのだ。 なお、部屋ごとにデザインが異なり、気に入った家具・インテリアがあったら宿泊者は購入することも可能だ。 こうしたショールーム型のホテルは北欧や日本でも少しずつ増えている。高級で洗練されたセンスが良い家具やインテリアの使用感を試してみたい中国人富裕層にとっては嬉しいサービスである。 また、ホテルに泊まるたびにインテリアが販売されるため、部屋のデザインも変化している。そのためリピーターになりやすい。 つまり、週末や小旅行なら中国国内でも満足できそうな状況になりつつあるのだ。) 2つ目の変化は異国情緒が味わえる観光地が人気であることだ。その一例が、マカオである。マカオは感染者数が少なく、中国大陸の観光客を誘致するためにさまざまな策を講じている。例えば日本の「GoToトラベル」のような、一定額以上の買い物をすると、買い物券・旅行券はもちろん、フォーシーズンズなど高級ホテルの宿泊券がもらえるキャンペーンも行っている。 宿泊券の場合は、本人が3カ月以内にマカオを訪れなければいけない条件があるが、確実にリピーター育成につながる。実際、上海や北京に住んでいる若い富裕層は、中国国内でいちばん「異国情緒」を感じられるのはマカオだと認識しているようだ。インタビューでも月1回程度、飛行機でマカオに行くという話が多々聞こえてきた。 3つ目の変化は、ホテルだけではなく、中国国内でも海外並み、ないしはそれ以上のサービス・体験ができるようになっていることだ。数年前まで先進国でしか体験できなかったことが中国国内でもそれ以上にできるようになっている。 今回のインタビューで印象深かった一例は、高級ジュエリーのティファニーが手掛ける「ティファニーカフェ」だ。東京にもあるティファニーカフェだが、上海のほうが規模も大きくメニューも圧倒的に多い。 当初は中国人富裕層は国内しか遊びにいけないため、仕方がなく中国国内のコンテンツを楽しんでいたが、いまや中国国内のほうが国外よりも楽しめる状況になってきているのかもしれない』、「当初は中国人富裕層は国内しか遊びにいけないため、仕方がなく中国国内のコンテンツを楽しんでいたが、いまや中国国内のほうが国外よりも楽しめる状況になってきているのかもしれない」、これが事実であれば、「コロナ禍」終息後のインバウンド回復は盛り上がりを欠く可能性がある。
・『回復を下支えしている要因  こうした中国国内の観光業を下支えしているものは、2つあると考えられる。1つ目は全国規模の「健康QRコード」がコロナ感染の拡大をコントロールしていることである。 昨年3月の記事でもご紹介したとおり、ビッグデータを駆使している中国では、感染者との接触経歴、自己申告などに基づき、スマホに表示されるQRコードの色が変わる。どこにいってもよいのは「緑」で、緑であれば普通に生活・移動することができる。 「赤」「黄」では自宅などで隔離する必要がある。もちろん、現地の人からすれば不要だと思われる隔離政策もあるようだが、それでも「多少の不自由はあっても、トータルに考えたときに有効な方法だ」と考えている人々が大多数のようだ。 ちなみにインタビューした中国人富裕層は日本の新型コロナウイルス接触確認アプリのCOCOAの不具合や、感染者数のファックス送信や手動入力に仰天していたが、「自粛だけで感染をコントロールできてえらい、さすが日本」と感心もしていた。 2つ目の理由は最近のチャイナブームだ。日本にいると見方が違うかもしれないが、中国はコロナ感染状況を抑え込んだ国の1つでもある。 その結果、若い人たちには愛国心の高まりも見られつつある。また、国内のサービス業、ブランドは年々レベルアップしており、若者の中では「中国のよさを再発見しよう」という共通認識が形成されている。特にコロナ禍の観光では、今まであまり注目されなかった地方においても、センスがよいホテルも登場し、新しい人気スポットになっている』、「若者の中では「中国のよさを再発見しよう」という共通認識が形成」、「地方においても、センスがよいホテルも登場し、新しい人気スポットになっている」、多様化するのは望ましいことだ。
・『富裕層の日本に対する関心  中国国内の観光業はコロナ禍の中で、健康QRコードやチャイナブームといった相乗効果により、回復傾向にある。日本の観光業にとっては今まで相手にならなかったかもしれないが、今後「小旅行」「高級リゾート週末」などのジャンルにおいて、中国の観光業がライバルになる可能性がある。 ただその一方で、日本の観光業にとって希望が持てるデータも存在する。中国の旅行サイトCtripの調査では中国人が海外旅行解禁された後にいちばん行きたい国は日本だった。また、コロナが収束すれば、中国人の海外旅行は2022年にはコロナ前の2019年に戻るとの予測もある(中国出境游研究所)。 さらに今年の春節の中国で大ヒットになった映画『僕はチャイナタウンの名探偵3』(中国公開2021年2月12日、日本公開は延期)のロケ地は日本である。長澤まさみ、妻夫木聡など人気の俳優たちも参加し、中国版ツィッターのweiboで「はやく日本に行きたい」とのつぶやきもある。 前出のLulu氏の話を聞いても「周りの富裕層、ブロガーの友達は、今いちばん行きたいのはやはり日本だ」という。理由を聞くと、「中国国内の観光はハードの部分が急成長しているが、ソフトの部分はやはり日本にかなわない」ためだ。 「日本は近いし、食事もおいしいし、サービスが素晴らしい。細かいところまでデザイン性が高く、包装のレベルの高さにいつもドキドキする。ヨーロッパほどブランド品は安くはないが、本物だし、日本の化粧品のほうが中国人に合う」と話す。) それでは日本の政府、ないしは観光業はどうすればいいのか。まず考えられるのは、ワクチン接種が確認できるデジタルパスポートの検討だ。ワクチンを接種した人しか来日できないようにし、飲食店や店舗に入る際も提示を義務付けるなど、接客側と観光業者側双方に安心できる仕組みを検討するのは必須だと言える。ただ、より有効に機能させるためには、日本人にも同じような仕組みが必要だろう。 また、まだ日本に来られない富裕層や影響力が強いブロガーを取り込む策としては、「オンライン×オフライン」のサービスを検討する必要もあるだろう。コロナ禍ではリモート観光に取り組む事例も増えているが、例えば、観光コンシェルジュが中国人富裕層に日本の高級リゾートを案内しながら、体験してほしい商品も郵送するといった方法も考えられる。 子どもの短期留学をオンラインにして日本語や伝統文化が体験できるプライベートクラスを開催するのも1つの手だ。またM&Aなど富裕層の関心が高い案件(介護施設・健康関連への関心が高い)を紹介し、現地のオンライン訪問や、コーディネートをフォローするといったことも考えられそうだ』、「ワクチン接種が確認できるデジタルパスポート」、については国内の慎重論が優位を占めそうだ。
・『日本への旅行のニーズはまだまだ高い  日本の観光業者は、ポストコロナの訪日中国人富裕層へのアプローチを研究する際、上述の具体的な内容はもちろん、訪日中国人富裕層のニーズが変化しているというトレンドも忘れてはいけない。 以前、インバウンドで注目された商品など「モノ」の購入、そしてアクティビティーなどの「コト体験」は、今後海外旅行のニーズとしてますます顕著になるとみられる。 中国国内のデータ調査結果や今まで筆者が実施した富裕層へのインタビューからも、有名なレストランで食べて高いホテルに泊まるというニーズから、日本で食事・宿泊・観光することを通して文化・マナーの勉強をしたいというニーズへパラダイム・シフトが起きていることが見えてきている。 中国人観光客へのアプローチとして、スペインは、中国の海外旅行専門調査機関のビッグデータ分析サービス等を活用し、「地方」「自然」「小旅行」への対応を検討しているようだ。中国人の日本旅行へのニーズが高い今だからこそ、日本の観光業はコロナからの回復を待つだけではなく、富裕層のニーズ変化をとらえ、行動を起こす必要があるだろう』、「富裕層のニーズ」が、「中国の海外旅行専門調査機関のビッグデータ分析サービス等」にどの程度含まれるのかは疑問だが、何らかの方法で「富裕層のニーズ変化をとらえ、行動を起こす必要がある」。

第三に、8月21日付け東洋経済オンラインが掲載した ジャーナリストの山田 稔氏による「外国人消えたニセコ、それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/448634
・『7月中旬、北海道・ニセコを訪れた。ニセコは札幌から直線距離で南西に60kmほど離れた日本有数の国際リゾート地だ。 高級コンドミニアムやホテルが立ち並ぶ中心街(倶知安町のひらふエリア)に真夏の強い陽射しが照りつける。気温は30度を超えている。リゾート客でにぎわう冬とは様相が一変し、周囲は閑散としている。ゲレンデのふもとに設置されたトランポリンの遊具でオーストラリア人の親子が遊んでいるぐらいだ。タンポポが咲き誇る草むらの正面に見える羊蹄山の姿が美しい。 中心街をしばらく進むと、大型のコンドミニアムホテルの建設現場が見えた。数年前に訪れたときは「温泉調査中」の鉄塔が立っていたところだ。建設中の建物に近づいてみると、シンガポールの会社名と代表者の名前が記載されている。開発区域の面積は1万292㎡。工事着手は2018年10月、完了は2022年9月30日となっている。他の所でも建設中の物件や温泉の掘削が見られた。コロナ禍にもかかわらず、開発の手は緩んでいないようだ』、「コロナ禍にもかかわらず、開発の手は緩んでいないようだ」、外資系はさすが手堅い。
・『不動産広告を手に取ると…  国際リゾート地だけあり、このあたりの街並みの看板はほとんど英語表記だ。「REAL ESTATESALES」の立て看板の横にあるポストにFREE!と表示があり、ポストの中には物件情報誌が積み上げられていた。1冊入手してチェックする。気になる販売価格はどうなっているのか。 かけ流しの天然温泉風呂(内風呂、露天風呂)完備のヴィラ5億3800万円 茶室と専用ウッドデッキが備わった新築タウンハウスユニット3億6800万円 倶知安中心部国道5号線沿いの商業物件(1階は回転ずしエリアと厨房など、2階は事務所、居住エリア)1億4175万円 家具付き高級ブティック使用のコンドミニアム(1ベッドルーム)4890万円 こうした高額物件のオンパレードである。これがニセコエリアの不動産取引の一例だ。 国内外からの活発な投資を背景に、ニセコエリアの中心部にあたる倶知安町の2021年の公示地価は商業地、住宅地ともに上昇率が日本一となっている。商業地は4年連続、住宅地は3年連続というから突出した存在だ。香港を中心とするアジア人投資家の取引が活発な土地ならではの現象である。北海道を代表する札幌の繁華街・ススキノ地区の地価が前年比で下落したのとは対照的だ。 「世界的にコロナ感染が拡大してからは訪れるのは国内のお客さんだけですね。外国人も国内在住の方です。昨年の緊急事態宣言では、冬場だけ働いていていた外国人が帰国できず、〝コロナ難民〟と言われていたのですが、そのまま住み着いた人たちもいます」(地元観光業者) また、2030年度末に北海道新幹線が延伸し、新函館北斗~札幌間の約212㎞が開業予定だ。同区間にはニセコエリアの倶知安駅も含まれ、駅前が整備される予定だ。さらに、2030年札幌五輪誘致の動きもある。 「一時と比べて投資熱は落ち着いたものの、北海道新幹線延伸などを見越した海外富裕層の投資活動は続いています」(同)という。 実際、今年に入りマカオなどでカジノを運営する大手グループがニセコでホテル等を開発すると発表。投資金額は400億円との報道もあった。また、6月にはマレーシア企業のコンドミニアム建設も報じられている。 開発エリアも拡大中だ。かつては冒頭のひらふエリアが開発の中心だったが、最近は少し離れたエリアでも開発が盛んだ。 たとえば、昨年オープンした外資系高級ホテル、パークハイアットニセコHANAZONOや2023年開業予定の同じく外資系高級ホテルのアマンニセコが位置するエリアは、それぞれ4~6km程度離れている』、凄い建設ラッシュで、「開発エリアも拡大中」とは頼もしい。
・『最新のデータを読み解くと?  ニセコへの投資熱は当分陰りそうにないが、こうした外国資本による北海道を中心とした全国の土地の売買が活発になったのは平成の半ばごろからだ。リゾート用地の場合、その土地の利用区分が森林であることが多い。森林の売買情報は林野庁、北海道林務局がとりまとめており、最新の統計が8月3日に公表された。 2020年1月から12月までの「外国資本による森林買収に関する調査の結果について」(林野庁)をみると、居住地が海外にある外国法人又は外国人と思われるものによる買収事例は、全国で12件、森林面積は22haとなっている。12件中8件が北海道で、面積は20ha。残りは神奈川県箱根町2件、京都市2件。 これに加えて国内の外資系企業と思われる者による買収が、全国で26件404haある。つまり2020年中の外資による森林買収の合計は38件、424haということになる。 コロナ禍前の2019年1月から12月のデータを見てみよう。まず居住地が海外にある外国資本による買収は全国で31件、163ha。国内の外資系企業による買収が31件、288ha。合わせて62件、451haとなっている。 2020年はコロナ禍の影響で海外の不動産関係者らの来日がままならなかったこともあり、買収事例が大幅に減少したとみられる』、なるほど。
・『外資の手に渡り続ける「北海道の森林」  これまでの買収を含め、北海道の森林をめぐる外資の所有状況はどうなっているのだろうか。北海道林務局森林計画課がまとめたデータをご覧いただきたい。 道内でもやはりニセコ地域に集中しており、面積ベースで約3分の1を占める。 2020年12月末現在、海外資本等(海外資本と国内の外資系の合計)による森林所有面積は、北海道全体で3085haにも及ぶ(所有者数は233)。 あまりにも広大過ぎてピンとこないが、3085haは30.85?だから、東京ドームでいえば656個分、自治体で言うと東京都板橋区(32.22?)、埼玉県三郷市(30.13?)くらいである。 過去10年の推移を見ると、外資による急速な森林買収の実態がより鮮明に浮かび上がってくる。 この10年ほどの間に、面積ベースでほぼ3倍に拡大しているのだ。 では、北海道の森林を取得しているのはどこの国が多いのか。直近2年のデータを見てみよう。 2019、2020年の外資(海外法人・海外企業の日本法人)による森林取得はあわせて47件・252haで、21件が中国(香港)だった。 利用目的でもっとも多いのは「資産保有」だ。転売してビッグマネーを手に入れようという投資目的である。次に目に付くのが、法人の「別荘地開発」や個人の「別荘用地」。あとは「太陽光発電」「鉱物資源の調査等」で、「不明」「未定」も少なくない』、「海外資本等・・・による森林所有面積は、北海道全体で3085ha・・・東京ドームでいえば656個分、自治体で言うと東京都板橋区(32.22?)、埼玉県三郷市(30.13?)くらい」、かなり広い面積を保有しているようだ。
・『外資による土地買収の是非  7月1日に発表された路線価(国税庁が発表する相続税等の評価基準となる地価。公示地価の約8割)では、6年連続で上昇率ナンバー1を続けていた倶知安町の中心地(道道ニセコ高原比羅夫線通り)の価格は72万円/㎡で前年比横ばいだった。路線価が落ち着いたことで、外資による買収に一段と拍車がかかる可能性さえある。 外国人による土地買収については、6月、自衛隊の基地や原子力発電所といった、安全保障上重要な施設の周辺などの利用を規制する「重要土地利用規制法」が成立した。 しかし、防衛拠点に絡まない森林などは対象外だ。北海道は水源地を守るために、水源保全地域内の土地所有者の権利移転について事前届け出制を条例で定めている。 森林法による森林取得の際の届け出制もある。しかし、届け出がどこまで正確に行われているか分からず、日本企業をダミーにするといった案件もあると指摘されている。 外資の手に渡る土地は森林だけに限らない。ゴルフ場やスキー場などすでに開発済みの土地も含まれる。これらを加えたら、とても30?程度では済まない。使途が不明なケースも少なくない。リゾート買収をめぐっては、夕張市の夕張リゾートのように外資の手に渡った揚げ句、倒産といったケースも出ている。こんなことになっては街の再興もままならない。 急速な開発でスキー場の混雑や温泉の湯量減少などの影響が出ている倶知安町は、環境保全に向け、未開発地が多い地区での大型ホテルの建設制限など規制強化に向け、具体案の取りまとめを進めているが、外資の土地取得制限は別問題だ。 もちろん、バブル崩壊後元気をなくしていた観光地がよみがえり、雇用を生み地元経済を活性化させているというプラスの面も大きい。しかし、10年後、20年後を見据え、土地利用や開発のあり方、資源維持などの観点から十分な議論が必要なテーマだろう。 国全体でも、より踏み込んだ立法措置も含めて考える時期ではないだろうか』、確かに、「10年後、20年後を見据え、土地利用や開発のあり方、資源維持などの観点から十分な議論が必要」、同感である。
タグ:インバウンド戦略 (その14)(コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今、金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか、外国人消えたニセコ それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定) JBPRESS 姫田小夏 「コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今」 「インバウンドブーム」で投資したケースは極めて多そうだ。 「中国資本の宿泊施設は100カ所近くあるのでは」、予想を上回る多さに驚かされた。 「ツアー」内容の余りの酷さに驚かされた。 「コロナ禍」の終息にはまだ時間がかかりそうだが、これを機に「インバウンドはどうあるべきかを考え直す機会だ」と、戦略を再構築すべきだろう。 東洋経済オンライン 劉 瀟瀟 「金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか」 「中国の大都市に居住する若い富裕層」への「インタビュー」とは興味深そうだ。 「若い人たちは洗練されたデザイン・・・を好む。「ミニマリズム」「シンプルで上品」そして「自然環境が良い」ホテルへのニーズが増えているのだ」、「50代以上の富裕層なら部屋の大きさなど貫禄あるデザインを好む」のとは大きな違いだ。 「当初は中国人富裕層は国内しか遊びにいけないため、仕方がなく中国国内のコンテンツを楽しんでいたが、いまや中国国内のほうが国外よりも楽しめる状況になってきているのかもしれない」、これが事実であれば、「コロナ禍」終息後のインバウンド回復は盛り上がりを欠く可能性がある。 「若者の中では「中国のよさを再発見しよう」という共通認識が形成」、「地方においても、センスがよいホテルも登場し、新しい人気スポットになっている」、多様化するのは望ましいことだ。 「ワクチン接種が確認できるデジタルパスポート」、については国内の慎重論が優位を占めそうだ。 「富裕層のニーズ」が、「中国の海外旅行専門調査機関のビッグデータ分析サービス等」にどの程度含まれるのかは疑問だが、何らかの方法で「富裕層のニーズ変化をとらえ、行動を起こす必要がある」。 山田 稔 「外国人消えたニセコ、それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定」 「コロナ禍にもかかわらず、開発の手は緩んでいないようだ」、外資系はさすが手堅い。 凄い建設ラッシュで、「開発エリアも拡大中」とは頼もしい。 「海外資本等・・・による森林所有面積は、北海道全体で3085ha・・・東京ドームでいえば656個分、自治体で言うと東京都板橋区(32.22?)、埼玉県三郷市(30.13?)くらい」、かなり広い面積を保有しているようだ。 確かに、「10年後、20年後を見据え、土地利用や開発のあり方、資源維持などの観点から十分な議論が必要」、同感である。
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心理学(その1)(「損の影響は得の約2倍」 経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない、「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切) [経済政治動向]

今日は、心理学(その1)(「損の影響は得の約2倍」 経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない、「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切)を取上げよう。

先ずは、やや古い記事だが、2017年5月2日付け日経ビジネスオンラインが掲載した精神科医で臨床心理士の和田秀樹氏が「「損の影響は得の約2倍」、経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/report/16/122600095/042800008/
・『経営や政治に心理学者を重用するアメリカ  日本と比べるとアメリカでは、経営にも政治にもはるかに心理学者が重用されている。消費者心理の分析であれ、マネジメントでどうすれば従業員のやる気が増すかであれ、あるいは経済政策の立案であれ、外交問題における相手国の国民や指導者の心理分析であれ、心理学者のアドバイザーの活躍の場は多い(トランプの時代になってからのことは分からないが)。 実際、心理学を組み入れた経済学理論である「行動経済学」の代表的な研究者であるダニエル・カーネマンは、心理学(経済学部に異動したわけでない)の教授の肩書きのまま、2002年にノーベル経済学賞を受賞している。行動経済学が明らかにした(薄々は分かっていても定式化したと言っていいだろう)ものに、人間は得より損のほうに強く反応するということがある。 例えば、10万円のものを1万円まけてもらって得をした場合と、10万円で買ったものが近くの店で9万円で売っていることが分かり、1万円損をした気分になるのとでは、多くの人は、前者の得した気分より、後者の損をした気分のほうが強く感じるだろうし、後々まで尾をひく。心理学の実験では、損のインパクトは得のインパクトの2.25倍だそうだ。 こういうことを真面目に研究した行動経済学は、おそらくは「人々が合理的に判断する」という前提で想定された旧来型の経済学より、はるかにまともな行動予測が可能になり得る。 旧来型の経済学では、1万円の昇給が経済を好転させる効果と、1万円の減給が経済を悪化させる効果は同じということになる。ところが、行動経済学の考え方では、1万円給料が下がったショックは、2.25万円給料が上がった喜びと同等の心理的インパクトがあることになる。そして恐らくは、そのほうが現実の人間の行動予測に役立つ。 経済学に心理学が大きなインパクトを与えたように、経営学やマネジメントでも相当な影響力を持つようだ。アメリカのビジネススクールに留学した人たちに聞くと、心理学の講義や演習をかなりの時間、課せられるようだ』、「行動経済学の考え方では、1万円給料が下がったショックは、2.25万円給料が上がった喜びと同等の心理的インパクトがあることになる。そして恐らくは、そのほうが現実の人間の行動予測に役立つ」、「「人々が合理的に判断する」という前提で想定された旧来型の経済学」が余りに現実離れしていたのに比べ、大きな進歩だ。
・『減税より増税、経費の拡大で不景気解消  だから、昇給はすぐに消費に結びつかないが、減給はたちどころに財布のひもを締めさせるのはそういうメカニズムが働いているのだろう。これまでの長期不況で給料が下がり続けた時代の消費マインドを、少々のベースアップで変えることは困難だということになる。安倍首相が企業に昇給を求めても、企業は利益が減らない程度にしか昇給しないのでは、消費も増えないし、物価も上がらない。というか、不景気はちょっと給料が下がっただけで簡単に生じるが、景気を良くするのは難しいということになる。 このような心理特性(特に実験などで明らかになった心理特性)を知る心理学者を利用すれば、経済学者が考えるのとは別のソリューションが考えられるだろう。 私が、この理論を読んで考えたことは、減税には経済学者が考えるより景気浮揚効果がなさそうだということだ。 要するに減税で得をした喜びは想像されるほど大きなものではないので、それが消費には結び付きにくいということだ。心理学の実験を見る限り、アメリカ人でさえ、得にあまり反応しないのだから、もっと貯蓄傾向の強い日本人は、減税が消費より貯蓄につながってしまうことは大いに予想できる。 逆に増税というのは、損を恐れる効果を活性化させることになる。例えば、消費税の増税が決まると、その前にかけこみ需要がかなり生じるのは、上がった後でものを買って損をしたくないからだろう。ただし、この場合は、消費税を上げた後の、「損だから買わない」という反動が大きく出てしまう。 例えば、直接税を上げて、経費を認めるというのはどうだろうか? この場合は、税金を持っていかれるのは損という心理が働きやすいので、もっと経費を使うようになる効果が期待できる。実際、法人税や所得税が高かったころのほうが、中小企業や自営業者たちは、税金を払いたくない心理から接待費で豪遊していたり、高級車を買ったりする人が多かった。 所得税を増税する代わりに、サラリーマンにも洋服代どころか食費も働くための経費として認めたら、消費が活性化するかもしれない。政府のホストコンピューターにつながったレジから出たレシートは全部経費として認めるなどということができれば、そんなに実用化は困難でないし、レジの機械の会社も儲かるし、さらにいうと、商店からは売り上げの捕捉がしやすくなり、税逃れも防げる』、「サラリーマン」の場合は、給与所得控除があるので、経費を認めると、二重に優遇することになってしまう。
・『減税効果が長く続かない理由は?  得より損に反応するというのは、あくまで心理学を応用した経済学の一面に過ぎない。また、常に同じような行動をとるとは限らない。 例えば、今得をしている場合は、損をしたくないというリスク回避傾向に人間の心理は傾くが、損をしている場合は、損をするリスクをとっても大きく得をしたいという心理が働く。競馬などで負けがこんでくると、損をする確率が上がるのに大穴狙いをして負けを埋め合わせようとするのは、その一例だ。 また、人間というのは、絶対値より変化に過敏に反応することもある。年収100億円のAさんと年収300万円のBさんを比べれば、Aさんが幸せと思われるだろうが、Aさんの去年の年収が101億円で、Bさんの去年の年収が280万円だったとしたら、1億円収入が減ったAさんは不幸に感じるし、20万円収入が増えたBさんは幸せに感じるということになるだろう。 景気対策として減税をするのは簡単だが、税率を戻した時の不満が大きいので、減税をなかなか終えることができない。1999年に高額所得者の所得税率を50%から37%に下げた。その際には、金持ちが反応して、確かに株価は99年初頭の1万3000円から2000年には2万円を超えるまで上昇した。ところが、同じ税率のままだったのに、2003年には株価が7607円まで下がっている。 減税の効果は長く続かないし、お金持ちがさらにお金を持ったところで予想したほど投資には回らないということを明らかにする事例だと思う。その後、最高税率はわずかに上がったが、株価は元には戻らなかった。その間に国の借金が膨れ上がったのはご存知の通りだ』、株価は実体経済の影響を強く受けるので、それを度外視した説明には無理がある。
・『問題続出でも安倍一強は続く  話を変えて、政治情勢を心理学の観点から見てみよう。森友学園事件に始まって、夫人の関与が疑われたり、昔からの親友の学校に莫大な補助金が支払われていることなど、金銭にまつわる疑惑が高まっているうえに、大臣の失言が相次いだり、政務官の道徳的なスキャンダルまで暴露されているというのに、安倍政権の支持率はびくともせず、むしろ野党第一党の民進党の支持率のほうが低迷している。 この不思議な現象も心理学では説明がつく話だ。一つには、「現状維持バイアス」というものがある。 前述のように、人間というのは得をしている局面では、損失回避のほうに走る。賃金がどんどん下がっているとか、失業率が高い局面では、損をするかもしれなくても、新しい政治を求める(アメリカの場合は、一見景気が良さそうだが、賃金が下がり、失業率が高いラストベルトとされる地域の人によるトランプの支持が優勢だった)。しかし、少しずつではあるが、失業率が下がり、賃金も上がり出す局面になると、また野党にやらせて損をするより、今のままがいいという現状維持バイアスが働く。 損や得は主観的なものだから、ドルベースでは民主党時代より賃金が下がっているとか、非正規雇用が増えているとか、国の借金が増えていることより、目に見える賃金や失業率をみて、多くの人が得をしていると思っているのだろう。 さらに、緊迫する北朝鮮の状況もみて、被害を受けて損をしたくない心理が増しているのかもしれない。多少アメリカべったりでもこわもてで、アメリカによる防衛を確かなものにしてくれる政府のほうが損は避けられるという感覚だ。 もう一つは「同調心理」である。人間というものは、友達が増えるとか出世できるといった目に見える得がなくても、身近な人に同調するという不思議な心理特性がある。 アッシュという心理学者は、長さの違う棒を見せて、別の1本と長さが同じ棒を選ぶというテストを行った。周りに誰もいないところだと誰も間違えないのだが、3人ほどのサクラに間違えた答えを言わせると、3割くらいの人がそれにつられることを明らかにした。 人間はある一定の確率で放っておいても同調するのなら、政治においても支持率が高いほうに同調する人が増えても不思議でない。そういう点で、当面は、よほどの円高などが起こらない限り安倍政権は盤石とみるのだが、どうだろうか? この手の心理学を使った経済などの見方を知ったり、判断のバイアスを減らす参考にしてもらうために『「損」を恐れるから失敗する』(PHP新書)という本を上梓した。興味がある人は読んでほしい。多少は仕事や人生に役立つと信じている』、安部政権が長持ちした要因を心理学的に解明したのは、興味深い。

次に、12月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した 脳科学者の中野 信子氏による「「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/477279
・『2021年もインターネットを中心とした、炎上や誹謗中傷のニュースが数多く見られました。芸能人の不倫スキャンダルや不謹慎とされる言動など、さまざまな話題がありましたが、その中でよく聞かれるのが「許せない」という言葉です。 自分や自分の身近な人が直接不利益を受けたわけではなく、当事者と関係があるわけでもないのに、強い怒りや憎しみの感情が湧き、知りもしない相手に非常に攻撃的な言葉を浴びせ、完膚なきまでにたたきのめさずにはいられなくなってしまうというのは、「許せない」が暴走してしまっている状態です。 「許せない」の暴走である正義中毒や人を許せなくなる脳の仕組みについて、脳科学者の中野信子氏が監修を務めた『まんがでわかる正義中毒 人は、なぜ他人を許せないのか?』より一部抜粋、再構成してお届けします』、「正義中毒」はSNSなどで確かに増えている。
・『「我こそは正義」と確信した途端、人は「正義中毒」になる  人の脳は、裏切り者や社会のルールから外れた人といった、わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに快感を覚えるようにできています。他人に「正義の制裁」を加えると、脳の快楽中枢が刺激され、快楽物質である「ドーパミン」が放出されます。この快楽にはまってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまい、罰する対象をつねに探し求め、決して人を許せないようになるのです。 こうした状態を、私は正義に溺れてしまった中毒状態、いわば「正義中毒」と呼ぼうと思います。この構造は、いわゆる「依存症」とほとんど同じだからです。有名人の不倫スキャンダルが報じられるたびに、「そんなことをするなんて許せない」とたたきまくり、不適切な動画が投稿されると、対象者が一般人であっても、本人やその家族の個人情報までインターネット上にさらしてしまう。企業の広告が気に入らないと、その商品とは関係のないところまで粗探しをして、あげつらう』、「人の脳は、裏切り者や社会のルールから外れた人といった、わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに快感を覚えるようにできています。他人に「正義の制裁」を加えると・・・快楽物質である「ドーパミン」が放出されます。この快楽にはまってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまい、罰する対象をつねに探し求め、決して人を許せないようになるのです」、「こうした状態を、いわば「正義中毒」と呼ぼうと思います」、「「ドーパミン」が放出」、とは本物だ……
・『「間違ったことが許せない」  「間違っている人を、徹底的に罰しなければならない」 「私は正しく相手が間違っているのだから、どんなひどい言葉をぶつけても構わない」 このような思考パターンがひとたび生じると止められなくなる状態は、恐ろしいものです。本来備わっているはずの冷静さ、自制心、思いやり、共感性などは消し飛んでしまい、普段のその人からは考えられないような、攻撃的な人格に変化してしまうからです。特に対象者が、たとえば不倫スキャンダルのような「わかりやすい失態」をさらしている場合、そして、いくら攻撃しても自分の立場が脅かされる心配がない状況などが重なれば、正義を振りかざす格好の機会となります。) こうした炎上騒ぎを醒めた目で見ている方も多いと思います。しかし、正義中毒が脳に備わっている仕組みである以上、誰しもが陥ってしまう可能性があるのです。もちろん、私自身も同様に気をつける必要があると思っています。 また、自分自身はそうならなくても、正義中毒者たちのターゲットになってしまうこともありえます。何気なくSNSに載せた写真が見ず知らずの他人からケチを付けられ、「不謹慎だ」「間違っている」などとたたかれてしまうようなケースは、典型例だといえます。 正義中毒の状態になると、自分と異なるものをすべて「悪」と考えてしまうのです。自分とは違う考えを持つ人、理解できない言動をする人に「バカなやつ」というレッテルを貼り、どう攻撃するか、相手に最大級のダメージを与えるためには、どんな言葉をぶつければよいかばかりに腐心するようになってしまいます』、「正義中毒が脳に備わっている仕組みである以上、誰しもが陥ってしまう可能性があるのです」、「正義中毒の状態になると、自分と異なるものをすべて「悪」と考えてしまうのです。自分とは違う考えを持つ人、理解できない言動をする人に「バカなやつ」というレッテルを貼り、どう攻撃するか、相手に最大級のダメージを与えるためには、どんな言葉をぶつければよいかばかりに腐心するようになってしまいます」、恐ろしいことだ。
・『「正義中毒」を乗り越えるカギはメタ認知  「メタ認知」とは、自分自身を客観的に認知する能力のことで、脳の前頭前野の重要な機能です。もう少し詳しく説明すると、「自分が○○をしているとわかっている」「自分がこういう気持ちでいることを自覚している」ということです。「私は今こういう状態だが、本当にこれでいいのか?」と問いかけることができるのは前頭前野が働いているからであり、メタ認知が機能しているからなのです。 正義中毒に陥らないようにするためには、つねに自分を客観的に見る習慣をつけ、メタ認知を働かせることが大切です。メタ認知能力の高低には、もちろん遺伝的な要素もありますが、実はそれよりも大きく影響するのが環境要因です。この能力は、個人差はありますが、小学校低学年あたりから徐々に育ち始め、完成するまでには30歳ぐらいまでかかります。これは、脳の前頭前野の発達そのものであり、完成する30歳くらいまでの間はずっと、周囲からの影響を受け続けます。 人生において、若い頃、特に20代ぐらいの時期に付き合いのあった人、尊敬していた人の影響が大きいのはこうした背景があるからで、メタ認知のできている人と若いうちに出会うことには大きなメリットがあります。子どものメタ認知能力を育てるためには、幼少期から30歳くらいまでの時期にどんな人と出会い、どのような影響を受けてきたのかが、非常に大切になるわけです。) 人間は、自分が言い続けてきたこと、やり続けてきたこと、信じ続けてきたことをなかなか変えられません。そして、それまで見せてきた自分と矛盾しないように振る舞わなければいけないという根拠のない思い込みに、無意識に縛られています。この現象を、心理学では「一貫性の原理」と呼んでいます。 しかし、そもそも自分自身、そして他者にも一貫性を求めること自体、不可能なことなのです。人間である以上、言動に矛盾があるのは当たり前、過去の発言や振る舞いを覆してしまってもしょうがないのです。今は絶対的な真実と信じていることだって、いつかその間違いに気づく日が来るかもしれません。そのように「信じていたこと」を裏切られたと感じることこそ、摩擦やいざこざの原因にもなったりするわけですが、それを回避するいちばんいい方法は、他人に「一貫性」を求めること自体をやめることではないかと思います』、「正義中毒に陥らないようにするためには、つねに自分を客観的に見る習慣をつけ、メタ認知を働かせることが大切です」、「自分自身、そして他者にも一貫性を求めること自体、不可能なことなのです。人間である以上、言動に矛盾があるのは当たり前、過去の発言や振る舞いを覆してしまってもしょうがないのです」、その通りだ。
・『対立ではなく並列で考える  正義中毒から解放される最終的な方法は、あらゆる対立軸から抜け出し、何事も並列で処理することではないかと思います。 A国とB国、宗教Aと宗教B、男性と女性でもいいのですが、異なる人間同士が集まれば、対立軸はいくらでも発生します。そして、誰しもが、そのなかでいくつものグループに所属することが可能です。それぞれに視点や知見があり、議論が生じます。それ自体は健全なことです。 しかしここで正義中毒にかかってしまうと、どちらかが参ったと音を上げるまで死力を尽くして相手を攻撃し続けることになります。 「あいつはバカだ」「あいつはおかしい」と感じるその「あいつ」のなかにも、人格や感情、思考が必ず存在します。自分とは違うその何かを、すぐに拒絶してしまうのではなく、まずはいったん受け止める、包み込んでみる。相手の発信した内容を評価し否定する前に、まず、なぜ相手はそう発信したのか、そこから新しい知見が得られないかを考えてみる。 そうすることで、新しい、ポジティブな何かが得られるかもしれません。一度その感覚を体験できれば、自分こそが正義だとは考えにくくなるでしょう。私は、これこそが知性の光のように思えます。 人間は不完全なものであり、結局永遠に完成しないという意識が人間を正義中毒から解放するのではないでしょうか』、「自分とは違うその何かを、すぐに拒絶してしまうのではなく、まずはいったん受け止める、包み込んでみる。相手の発信した内容を評価し否定する前に、まず、なぜ相手はそう発信したのか、そこから新しい知見が得られないかを考えてみる。 そうすることで、新しい、ポジティブな何かが得られるかもしれません」、私はすぐに拒絶するクセがあるので、その克服の努力が必要なようだ 。包容力はこうして生まれるのかも知れない。
タグ:「「損の影響は得の約2倍」、経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない」 「行動経済学の考え方では、1万円給料が下がったショックは、2.25万円給料が上がった喜びと同等の心理的インパクトがあることになる。そして恐らくは、そのほうが現実の人間の行動予測に役立つ」、 日経ビジネスオンライン 和田秀樹 (その1)(「損の影響は得の約2倍」 経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない、「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切) 心理学 「「人々が合理的に判断する」という前提で想定された旧来型の経済学」が余りに現実離れしていたのに比べ、大きな進歩だ。 「サラリーマン」の場合は、給与所得控除があるので、経費を認めると、二重に優遇することになってしまう。 株価は実体経済の影響を強く受けるので、それを度外視した説明には無理がある 安部政権が長持ちした要因を心理学的に解明したのは、興味深い。 ダイヤモンド・オンライン 中野 信子 「「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切」 「正義中毒」はSNSなどで確かに増えている。 「人の脳は、裏切り者や社会のルールから外れた人といった、わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに快感を覚えるようにできています。他人に「正義の制裁」を加えると・・・快楽物質である「ドーパミン」が放出されます。この快楽にはまってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまい、罰する対象をつねに探し求め、決して人を許せないようになるのです」、 「こうした状態を、いわば「正義中毒」と呼ぼうと思います」、「「ドーパミン」が放出」、とは本物だ…… 「正義中毒が脳に備わっている仕組みである以上、誰しもが陥ってしまう可能性があるのです」、「正義中毒の状態になると、自分と異なるものをすべて「悪」と考えてしまうのです。自分とは違う考えを持つ人、理解できない言動をする人に「バカなやつ」というレッテルを貼り、どう攻撃するか、相手に最大級のダメージを与えるためには、どんな言葉をぶつければよいかばかりに腐心するようになってしまいます」、恐ろしいことだ。 「正義中毒に陥らないようにするためには、つねに自分を客観的に見る習慣をつけ、メタ認知を働かせることが大切です」、「自分自身、そして他者にも一貫性を求めること自体、不可能なことなのです。人間である以上、言動に矛盾があるのは当たり前、過去の発言や振る舞いを覆してしまってもしょうがないのです」、その通りだ。 「自分とは違うその何かを、すぐに拒絶してしまうのではなく、まずはいったん受け止める、包み込んでみる。相手の発信した内容を評価し否定する前に、まず、なぜ相手はそう発信したのか、そこから新しい知見が得られないかを考えてみる。 そうすることで、新しい、ポジティブな何かが得られるかもしれません」、私はすぐに拒絶するクセがあるので、その克服の努力が必要なようだ 。包容力はこうして生まれるのかも知れない。
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