中国経済(その20)(人民元建て「点心債・熊猫債」の発行が急増の背景 資金調達コスト低下と利便性向上が追い風に、中国・北京の賃貸オフィス「空室率20%」の憂鬱 賃料下げても企業は借り増し・借り換えに慎重、「リーマンより厳しい」中国不動産バブル崩壊の惨状 習近平政権の「ズレてる」政策で不況悪化か) [世界経済]
中国経済については、本年2月11日に取上げた。今日は、(その20)(人民元建て「点心債・熊猫債」の発行が急増の背景 資金調達コスト低下と利便性向上が追い風に、中国・北京の賃貸オフィス「空室率20%」の憂鬱 賃料下げても企業は借り増し・借り換えに慎重、「リーマンより厳しい」中国不動産バブル崩壊の惨状 習近平政権の「ズレてる」政策で不況悪化か)である。
先ずは、本年1月18日付け東洋経済オンラインが転載した財新 Biz&Tech「人民元建て「点心債・熊猫債」の発行が急増の背景 資金調達コスト低下と利便性向上が追い風に」を紹介しよう。
・『人民元建ての外債の発行額が中国内外の市場で大幅に増加している。中国の金融緩和に伴う資金調達コストの低下や、発行市場における制度面の改善が背景だ。 イギリスのスタンダード・チャータード銀行がまとめたデータによれば、中国本土外の(オフショア)市場で発行される人民元建て債券、いわゆる「点心債(ディムサム債)」の2023年の新規発行額は5990億元(約12兆4179億円)に上り、前年比44%も増加した。 償還額を差し引いた純増(ネット)ベースの発行額は3250億元(約6兆7376億円)と、同68%の増加を記録。点心債の発行額は2018年から6年連続で増加しており、2023年は発行ペースがさらに加速した』、「中国本土外の(オフショア)市場で発行される人民元建て債券、いわゆる「点心債(ディムサム債)」の2023年の新規発行額は5990億元(約12兆4179億円)に上り、前年比44%も増加した・・・点心債の発行額は2018年から6年連続で増加しており、2023年は発行ペースがさらに加速した」、なるほど。
・『米長期金利は16年ぶり高水準 点心債だけでなく、中国本土外の企業や金融機関が中国本土の債券市場で発行する人民元建て債券、いわゆる「熊猫債(パンダ債)」の発行額も急増している。 中国銀行間市場交易商協会(訳注:インターバンク取引の業界団体)のデータによれば、2023年の熊猫債の新規発行額は1335億元(約2兆7676億円)と、前年の806億元(約1兆6709億円)から6割以上も増えた。 人民元建て債券の発行増加を支えるのは、(アメリカドルと比べた)資金調達コストの相対的な低下だ。アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は2023年に4回の利上げを実施。その結果、アメリカの(長期金利の指標となる)10年物国債の利回りは2023年10月に一時5%を超え、約16年ぶりの高さに上昇した。) アメリカとは反対に、中国の金融政策は緩和局面にある。中国人民銀行(中央銀行)は2023年に2回の利下げを実施し、政策金利を合計で0.25ポイント引き下げた。それに伴う長期金利の低下により、人民元建て債券の発行を通じた資金調達に割安感が生じた。 それだけではない。人民元の国際化を推進する中国金融当局の政策対応により、国境を跨いだ投資の利便性が年々改善されていることも、人民元建て債券市場の拡大に寄与している』、「中国人民銀行(中央銀行)は2023年に2回の利下げを実施し、政策金利を合計で0.25ポイント引き下げた。それに伴う長期金利の低下により、人民元建て債券の発行を通じた資金調達に割安感が生じた。 それだけではない。人民元の国際化を推進する中国金融当局の政策対応により、国境を跨いだ投資の利便性が年々改善されていることも、人民元建て債券市場の拡大に寄与」、なるほど。
・『人民元の国際化をさらに推進 「中国は金融市場の対外開放を引き続き進めている。人民元建て債券は(ボラティリティが小さく)価値が安定した金融資産として、海外投資家にとっての魅力が高まっている」。中国人民銀行総裁の潘功勝氏は、2024年1月の記者会見で、そう述べた。 中国人民銀行は今後も、オフショア人民元市場の発展(を通じた人民元の国際化)を積極的に支援する方針だ。副総裁の朱鶴新氏は上述の記者会見のなかで、オフショア人民元市場のハブとして香港市場の機能を強化する必要性を強調した』、「人民元建て債券は(ボラティリティが小さく)価値が安定した金融資産として、海外投資家にとっての魅力が高まっている」。中国人民銀行総裁の潘功勝氏は、2024年1月の記者会見で、そう述べた。 中国人民銀行は今後も、オフショア人民元市場の発展(を通じた人民元の国際化)を積極的に支援する方針」、なるほど。
次に、5月9日付け東洋経済オンラインが転載した財新 Biz&Tech 「中国・北京の賃貸オフィス「空室率20%」の憂鬱 賃料下げても企業は借り増し・借り換えに慎重」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/750773
・『中国の首都の北京市で、賃貸オフィスビルの空室率上昇と賃料下落が続いている。ビルオーナーは既存テナントの引き留めと新規テナントの勧誘に必死だが、それがさらなる賃料下落を招く悪循環に陥っている。 不動産サービス大手のジョーンズ・ラング・ラサールがまとめた2024年1~3月期のデータによれば、北京市のAクラスオフィスビルの平均賃料は1平方メートル当たり月額287元(約6069円)と、直前の2023年10~12月期より4.3%下落した』、「2024年1~3月期のデータによれば、北京市のAクラスオフィスビルの平均賃料は1平方メートル当たり月額287元(約6069円)と」、前期比「4.3%下落」、なるほど。
・『過去13年で最悪の空室率 北京市のオフィス賃料は5年前の2019年をピークに下がり続けており、2022年から下落のペースが加速した。それまで様子見していたビルオーナーの間でも、賃料値下げを自ら顧客に提示する動きが相次ぎ、テナント争奪戦が過熱している。 背景には(需給バランスの悪化で)高まり続ける空室率がある。不動産サービス大手のサヴィルズのデータによれば、北京市のAクラスオフィスビルの空室率は2023年末時点で20.4%と、過去13年間で最悪を記録した。 空室率の貸し出された面積から退去により返却された面積を差し引いた「純吸収面積」は、北京市内の5大オフィス街でも北京市全体でもマイナスだった。 賃貸オフィスの空室率が上がり続ける中、北京ではなお大規模開発が進む。写真は北京市政府が建設を進める副都心地区(北京市通州区政府のウェブサイトより) なお、一部の企業がオフィスの借り増しや引っ越しを2024年1~3月期に実施したため、同四半期の北京市の純吸収面積は3万1000平方メートルのプラスに転じた。 これは主に国有企業を中心とする中国資本の動きだ。ジョーンズ・ラング・ラサールの調査によれば、1~3月期に成約した賃貸契約の9割以上が中国資本によるもので、外資系はごく一部だった』、「北京市のAクラスオフィスビルの空室率は2023年末時点で20.4%と、過去13年間で最悪を記録した・・・1~3月期に成約した賃貸契約の9割以上が中国資本によるもので、外資系はごく一部だった」、なるほど。
・『需要不足で停滞が長期化 サヴィルズのデータによれば、1~3月期の純吸収面積の増加により、北京市のAクラスオフィスビルの3月末時点の空室率は(2023年末時点より)0.2ポイント改善して20.2%となった。とはいえ、20%を超える空室率が歴史的高水準であることに変わりはない。 中国の景気の先行きが不透明な中、企業は総じて賃貸オフィスの新規契約や借り増し、借り換えに慎重だ。不動産サービス大手のコリアーズ・インターナショナルで調査部門の責任者を務める陸明氏は、財新記者の取材に対して次のような見方を示した。 「賃貸オフィスに対する有効需要の不足が、今後も長期にわたって北京のオフィスビル市場を停滞させるだろう。空室率は20%を超える状況が当分続きそうだ」(財新記者:牛牧江曲)』、「「賃貸オフィスに対する有効需要の不足が、今後も長期にわたって北京のオフィスビル市場を停滞させるだろう。空室率は20%を超える状況が当分続きそうだ」、これは大変だ。
第三に、9月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「「リーマンより厳しい」中国不動産バブル崩壊の惨状、習近平政権の「ズレてる」政策で不況悪化か」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/349785
・『中国の不動産価格下落に歯止めがかからない。かつて中国の不動産投資はGDPの約29%に達した。鉄鋼やセメント、建設機械や家電、自動車などの関連需要が増え、小売りや飲食、宿泊、交通などのサービス業も成長した。地方政府も潤い、まさに不動産を中心に経済が好循環していた。しかし、今はそれが逆回転している状況だ。政府は国有・国営企業に補助金を出し、低価格のモノを大量生産して景気回復を試みている。が、中国宝武鋼鉄集団のトップは、「リーマンショック時よりも状況は厳しい」という。中国にまず必要な政策とは何か』、「「リーマンショック時よりも状況は厳しい」、とは本当に深刻そうだ。
・『かつて不動産投資はGDPの3割に達したが… 下落が続く中国の不動産市場 8月15日、中国の国家統計局は不動産関連の経済指標を発表した。主要70都市の新築住宅価格は、単純平均で前月比0.6%、中古住宅価格は前月比0.8%下落した。不動産価格は下落傾向を脱していない。 23年1月にゼロコロナ政策が終了した後、一時的に、不動産市況も幾分か上向くかに思われた。しかし、政府の融資規制でエバーグランデや碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)などの大手デベロッパーの業績は悪化。それに伴い、未完成のまま放置されるマンションは増えた。23年6月から新築住宅価格は下落傾向で、7月は主要70都市のうち66都市で前月から下落した。 地方だけでなく、北京、上海、広州、深センなどの都市部でも住宅市場は悪化傾向にあるようだ。都市の規模が小さいほど、価格下落率は高い。中国の不動産市場では価格下落に対する恐怖感が高まり、不動産購入に消極的なスタンスが続いている。 1~7月の累計で、不動産開発投資は前年同期比10.2%減少した。同じ期間、新築不動産の販売面積は同18.6%減少し、新規着工は前年比23.2%減だった(販売、着工とも床面積ベース)。デベロッパーは債務の返済や住宅の完成に向けて資金調達を急がなければならないが、資金調達額は21.3%減少している。状況はかなり厳しい。 過去のピーク時、中国の不動産投資はGDPの約29%に達したとの試算もあった。マンションなどへの不動産投資が増加したことで鉄鋼やセメント、建設機械や家電、自動車などの需要は増え、インフラ関連の投資を増やすこともできた。それに伴い、小売りや飲食、宿泊、交通などのサービス業も成長し、雇用・所得機会が向上した。地方政府はデベロッパーに土地の利用権を譲渡して歳入を確保し、産業補助金なども確保することが可能になった。まさに、不動産投資を中心に経済が好循環していた』、「1~7月の累計で、不動産開発投資は前年同期比10.2%減少した。同じ期間、新築不動産の販売面積は同18.6%減少し、新規着工は前年比23.2%減だった(販売、着工とも床面積ベース)。デベロッパーは債務の返済や住宅の完成に向けて資金調達を急がなければならないが、資金調達額は21.3%減少している。状況はかなり厳しい・・・過去のピーク時、中国の不動産投資はGDPの約29%に達したとの試算もあった」、なるほど。
・『中国の不動産バブル崩壊は過去30年間で世界最大 2020年8月、中国政府の不動産開発会社の借り入れ規制(3つのレッドライン)をきっかけに、中国の不動産市場に変調が発生した。そこから4年が経過したが、不動産価格の下落になかなか歯止めがかからない。7月にも新築の住宅価格が下落し、地方政府の財政悪化に対する懸念が高まっている。 最近、国際通貨基金(IMF)は、「中国の不動産バブル崩壊は、過去30年間で世界最大レベル」と指摘した。中国の大手デベロッパー恒大集団(エバーグランデ・グループ)の粉飾決算問題もあり、今のところ、不動産関連の債務規模の実体すらよく見えない。中国経済の停滞への懸念から、中国から脱出する個人や企業が増えている。 中国政府の政策も、人々の安心感を取り戻すには至っていない。不動産価格の下落に歯止めがかからないため、家計の節約志向は高まり個人消費は伸び悩み気味だ。また、政府が国有・国営企業の業容拡大を優先する結果、鉄鋼業界などの主要分野で価格下落に拍車がかかっている。 中長期的に、中国の人口は減少する。民間企業の生産性が向上しないと、中国経済の実力=潜在成長率は低下する。不良債権処理の先送り、国有企業重視の政策方針が変わらないと、不動産市況の悪化は鮮明化しデフレ圧力が高まることも考えられる』、「国際通貨基金(IMF)は、「中国の不動産バブル崩壊は、過去30年間で世界最大レベル」と指摘した。中国の大手デベロッパー恒大集団(エバーグランデ・グループ)の粉飾決算問題もあり、今のところ、不動産関連の債務規模の実体すらよく見えない。中国経済の停滞への懸念から、中国から脱出する個人や企業が増えている・・・中長期的に、中国の人口は減少する。民間企業の生産性が向上しないと、中国経済の実力=潜在成長率は低下する。不良債権処理の先送り、国有企業重視の政策方針が変わらないと、不動産市況の悪化は鮮明化しデフレ圧力が高まることも考えられる」、なるほど。
・『若年層を中心に雇用環境は悪化 16~24歳の失業率は17.1%に上昇 しかし、不動産投資に依存した経済成長は限界に来ている。マンション建設など投資機会の減少により、需要は縮小気味だ。特に、深刻なのは若年層の失業である。 23年6月、16~24歳の失業率は21.3%で過去最悪の水準に上昇した。その後、国家統計局は調査手法を修正するとして公表を一時停止し、24年1月から再開した。7月、16~24歳(学生を除く)の失業率は17.1%だった。6月の13.2%から3.9ポイントの上昇である。 中国では例年6月に大学生が卒業する。今年は4月中旬時点で新卒大学生の内定獲得割合が50%を下回ったとの報道もあった。バブル崩壊の影響で新卒の就職が難しくなり、失業率は上昇したと考えられる。全体の失業率も5.2%で、6月から0.2ポイント上昇した。 19年の中国人民銀行の調査によると、中国の家計が保有する資産の59.1%は不動産だった。マンションの価格下落に加え、上海総合指数など本土の株価も不安定な展開だ。逆資産効果は高まらざるを得ない。しかも中国では、不動産の完成前に売買契約を結び住宅ローンの返済が始まる「予約販売」方式が多い。購入したマンションが未完成で放置されてもローンの支払いはなくならない。 債務を減らすために、消費や投資を減らす個人が増加し、個人消費は停滞気味だ。7月の個人消費は前年同月比2.7%増だったが、コロナ禍が発生する直前の水準(7%前後)と比較すると、消費の勢いは弱い。 需要の停滞は企業の設備投資の減少につながり、固定資産投資も鈍化した。度重なる金融緩和にもかかわらず7月の新規人民元建て銀行融資は前月比約88%減少し、15年ぶりの水準に落ち込んだ。 現在、中国政府は、市中の商業銀行に不動産や国有企業などに対する融資を増やすよう指導している。しかし、不動産市場の底が見えないため、民間企業は人員採用や設備投資を増やすことが難しい。若年層を中心に中国の雇用・所得環境の悪化懸念は高まっている』、「中国では、不動産の完成前に売買契約を結び住宅ローンの返済が始まる「予約販売」方式が多い。購入したマンションが未完成で放置されてもローンの支払いはなくならない。 債務を減らすために、消費や投資を減らす個人が増加し、個人消費は停滞気味だ・・・度重なる金融緩和にもかかわらず7月の新規人民元建て銀行融資は前月比約88%減少し、15年ぶりの水準に落ち込んだ」、なるほど。
・『中国宝武鋼鉄集団のトップ発言「リーマンショック時よりも状況は厳しい」 不動産価格の下落に歯止めがかからないため、最近では国債を選好する投資家が増えている。中国政府は、銀行に国債購入を控えるよう呼びかけているものの、今のところ目立った効果は出ていない。 今後は地方政府の財政悪化により、年金や医療などの給付が減る可能性も大変な懸念事項だ。また、デベロッパーが破綻することへの懸念を反映し、不良債権も増加傾向で推移するはずだ。個人、企業のリスクテイクは難しくなり、銀行の利ざや低下に対するプレッシャーが高まると予想される。 バブルが崩壊したことによる不良債権の増加、さまざまなモノやサービスの需要減少が連鎖する環境下、金融緩和で景気の本格的な回復を目指すことは難しい。中国にとって必要な政策は、まず、財政出動によって不良債権の処理にめどをつけることである。それと同時に、財政支出で経済全体に需要を喚起する。債務問題が深刻な金融機関などに公的資金を注入し、経営再建を支えることが必要だ。 ところが、現在の中国政府は、供給サイドの支援を最優先事項に据えているようだ。7月の「3中全会」(中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議)で、政府は国有・国営企業の世界シェア拡大を目指す「国進民退」を改めて示した。 その後、地方政府の債券発行枠も増やした。鉄鋼、電気自動車、車載用バッテリーなどの分野に補助金を出し、低価格のモノを生産し輸出競争力を高める方針だ。 しかし、すでに鉄鋼業界では生産能力が過剰で、企業の収益状況が悪化しているようだ。世界最大手の国有企業の中国宝武鋼鉄集団のトップは、「リーマンショック時よりも状況は厳しい」との認識を示している。不動産市況の下落が続く間、中国の本格的な景気回復へのプロセスは見えてこない』、「バブルが崩壊したことによる不良債権の増加、さまざまなモノやサービスの需要減少が連鎖する環境下、金融緩和で景気の本格的な回復を目指すことは難しい。中国にとって必要な政策は、まず、財政出動によって不良債権の処理にめどをつけることである。それと同時に、財政支出で経済全体に需要を喚起する。債務問題が深刻な金融機関などに公的資金を注入し、経営再建を支えることが必要だ。ところが、現在の中国政府は、供給サイドの支援を最優先事項に据えているようだ。7月の「3中全会」(中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議)で、政府は国有・国営企業の世界シェア拡大を目指す「国進民退」を改めて示した・・・世界最大手の国有企業の中国宝武鋼鉄集団のトップは、「リーマンショック時よりも状況は厳しい」との認識を示している。不動産市況の下落が続く間、中国の本格的な景気回復へのプロセスは見えてこない」、さて中国政府はどう立て直すのだろうか。お手並み拝見だ。
先ずは、本年1月18日付け東洋経済オンラインが転載した財新 Biz&Tech「人民元建て「点心債・熊猫債」の発行が急増の背景 資金調達コスト低下と利便性向上が追い風に」を紹介しよう。
・『人民元建ての外債の発行額が中国内外の市場で大幅に増加している。中国の金融緩和に伴う資金調達コストの低下や、発行市場における制度面の改善が背景だ。 イギリスのスタンダード・チャータード銀行がまとめたデータによれば、中国本土外の(オフショア)市場で発行される人民元建て債券、いわゆる「点心債(ディムサム債)」の2023年の新規発行額は5990億元(約12兆4179億円)に上り、前年比44%も増加した。 償還額を差し引いた純増(ネット)ベースの発行額は3250億元(約6兆7376億円)と、同68%の増加を記録。点心債の発行額は2018年から6年連続で増加しており、2023年は発行ペースがさらに加速した』、「中国本土外の(オフショア)市場で発行される人民元建て債券、いわゆる「点心債(ディムサム債)」の2023年の新規発行額は5990億元(約12兆4179億円)に上り、前年比44%も増加した・・・点心債の発行額は2018年から6年連続で増加しており、2023年は発行ペースがさらに加速した」、なるほど。
・『米長期金利は16年ぶり高水準 点心債だけでなく、中国本土外の企業や金融機関が中国本土の債券市場で発行する人民元建て債券、いわゆる「熊猫債(パンダ債)」の発行額も急増している。 中国銀行間市場交易商協会(訳注:インターバンク取引の業界団体)のデータによれば、2023年の熊猫債の新規発行額は1335億元(約2兆7676億円)と、前年の806億元(約1兆6709億円)から6割以上も増えた。 人民元建て債券の発行増加を支えるのは、(アメリカドルと比べた)資金調達コストの相対的な低下だ。アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は2023年に4回の利上げを実施。その結果、アメリカの(長期金利の指標となる)10年物国債の利回りは2023年10月に一時5%を超え、約16年ぶりの高さに上昇した。) アメリカとは反対に、中国の金融政策は緩和局面にある。中国人民銀行(中央銀行)は2023年に2回の利下げを実施し、政策金利を合計で0.25ポイント引き下げた。それに伴う長期金利の低下により、人民元建て債券の発行を通じた資金調達に割安感が生じた。 それだけではない。人民元の国際化を推進する中国金融当局の政策対応により、国境を跨いだ投資の利便性が年々改善されていることも、人民元建て債券市場の拡大に寄与している』、「中国人民銀行(中央銀行)は2023年に2回の利下げを実施し、政策金利を合計で0.25ポイント引き下げた。それに伴う長期金利の低下により、人民元建て債券の発行を通じた資金調達に割安感が生じた。 それだけではない。人民元の国際化を推進する中国金融当局の政策対応により、国境を跨いだ投資の利便性が年々改善されていることも、人民元建て債券市場の拡大に寄与」、なるほど。
・『人民元の国際化をさらに推進 「中国は金融市場の対外開放を引き続き進めている。人民元建て債券は(ボラティリティが小さく)価値が安定した金融資産として、海外投資家にとっての魅力が高まっている」。中国人民銀行総裁の潘功勝氏は、2024年1月の記者会見で、そう述べた。 中国人民銀行は今後も、オフショア人民元市場の発展(を通じた人民元の国際化)を積極的に支援する方針だ。副総裁の朱鶴新氏は上述の記者会見のなかで、オフショア人民元市場のハブとして香港市場の機能を強化する必要性を強調した』、「人民元建て債券は(ボラティリティが小さく)価値が安定した金融資産として、海外投資家にとっての魅力が高まっている」。中国人民銀行総裁の潘功勝氏は、2024年1月の記者会見で、そう述べた。 中国人民銀行は今後も、オフショア人民元市場の発展(を通じた人民元の国際化)を積極的に支援する方針」、なるほど。
次に、5月9日付け東洋経済オンラインが転載した財新 Biz&Tech 「中国・北京の賃貸オフィス「空室率20%」の憂鬱 賃料下げても企業は借り増し・借り換えに慎重」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/750773
・『中国の首都の北京市で、賃貸オフィスビルの空室率上昇と賃料下落が続いている。ビルオーナーは既存テナントの引き留めと新規テナントの勧誘に必死だが、それがさらなる賃料下落を招く悪循環に陥っている。 不動産サービス大手のジョーンズ・ラング・ラサールがまとめた2024年1~3月期のデータによれば、北京市のAクラスオフィスビルの平均賃料は1平方メートル当たり月額287元(約6069円)と、直前の2023年10~12月期より4.3%下落した』、「2024年1~3月期のデータによれば、北京市のAクラスオフィスビルの平均賃料は1平方メートル当たり月額287元(約6069円)と」、前期比「4.3%下落」、なるほど。
・『過去13年で最悪の空室率 北京市のオフィス賃料は5年前の2019年をピークに下がり続けており、2022年から下落のペースが加速した。それまで様子見していたビルオーナーの間でも、賃料値下げを自ら顧客に提示する動きが相次ぎ、テナント争奪戦が過熱している。 背景には(需給バランスの悪化で)高まり続ける空室率がある。不動産サービス大手のサヴィルズのデータによれば、北京市のAクラスオフィスビルの空室率は2023年末時点で20.4%と、過去13年間で最悪を記録した。 空室率の貸し出された面積から退去により返却された面積を差し引いた「純吸収面積」は、北京市内の5大オフィス街でも北京市全体でもマイナスだった。 賃貸オフィスの空室率が上がり続ける中、北京ではなお大規模開発が進む。写真は北京市政府が建設を進める副都心地区(北京市通州区政府のウェブサイトより) なお、一部の企業がオフィスの借り増しや引っ越しを2024年1~3月期に実施したため、同四半期の北京市の純吸収面積は3万1000平方メートルのプラスに転じた。 これは主に国有企業を中心とする中国資本の動きだ。ジョーンズ・ラング・ラサールの調査によれば、1~3月期に成約した賃貸契約の9割以上が中国資本によるもので、外資系はごく一部だった』、「北京市のAクラスオフィスビルの空室率は2023年末時点で20.4%と、過去13年間で最悪を記録した・・・1~3月期に成約した賃貸契約の9割以上が中国資本によるもので、外資系はごく一部だった」、なるほど。
・『需要不足で停滞が長期化 サヴィルズのデータによれば、1~3月期の純吸収面積の増加により、北京市のAクラスオフィスビルの3月末時点の空室率は(2023年末時点より)0.2ポイント改善して20.2%となった。とはいえ、20%を超える空室率が歴史的高水準であることに変わりはない。 中国の景気の先行きが不透明な中、企業は総じて賃貸オフィスの新規契約や借り増し、借り換えに慎重だ。不動産サービス大手のコリアーズ・インターナショナルで調査部門の責任者を務める陸明氏は、財新記者の取材に対して次のような見方を示した。 「賃貸オフィスに対する有効需要の不足が、今後も長期にわたって北京のオフィスビル市場を停滞させるだろう。空室率は20%を超える状況が当分続きそうだ」(財新記者:牛牧江曲)』、「「賃貸オフィスに対する有効需要の不足が、今後も長期にわたって北京のオフィスビル市場を停滞させるだろう。空室率は20%を超える状況が当分続きそうだ」、これは大変だ。
第三に、9月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「「リーマンより厳しい」中国不動産バブル崩壊の惨状、習近平政権の「ズレてる」政策で不況悪化か」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/349785
・『中国の不動産価格下落に歯止めがかからない。かつて中国の不動産投資はGDPの約29%に達した。鉄鋼やセメント、建設機械や家電、自動車などの関連需要が増え、小売りや飲食、宿泊、交通などのサービス業も成長した。地方政府も潤い、まさに不動産を中心に経済が好循環していた。しかし、今はそれが逆回転している状況だ。政府は国有・国営企業に補助金を出し、低価格のモノを大量生産して景気回復を試みている。が、中国宝武鋼鉄集団のトップは、「リーマンショック時よりも状況は厳しい」という。中国にまず必要な政策とは何か』、「「リーマンショック時よりも状況は厳しい」、とは本当に深刻そうだ。
・『かつて不動産投資はGDPの3割に達したが… 下落が続く中国の不動産市場 8月15日、中国の国家統計局は不動産関連の経済指標を発表した。主要70都市の新築住宅価格は、単純平均で前月比0.6%、中古住宅価格は前月比0.8%下落した。不動産価格は下落傾向を脱していない。 23年1月にゼロコロナ政策が終了した後、一時的に、不動産市況も幾分か上向くかに思われた。しかし、政府の融資規制でエバーグランデや碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)などの大手デベロッパーの業績は悪化。それに伴い、未完成のまま放置されるマンションは増えた。23年6月から新築住宅価格は下落傾向で、7月は主要70都市のうち66都市で前月から下落した。 地方だけでなく、北京、上海、広州、深センなどの都市部でも住宅市場は悪化傾向にあるようだ。都市の規模が小さいほど、価格下落率は高い。中国の不動産市場では価格下落に対する恐怖感が高まり、不動産購入に消極的なスタンスが続いている。 1~7月の累計で、不動産開発投資は前年同期比10.2%減少した。同じ期間、新築不動産の販売面積は同18.6%減少し、新規着工は前年比23.2%減だった(販売、着工とも床面積ベース)。デベロッパーは債務の返済や住宅の完成に向けて資金調達を急がなければならないが、資金調達額は21.3%減少している。状況はかなり厳しい。 過去のピーク時、中国の不動産投資はGDPの約29%に達したとの試算もあった。マンションなどへの不動産投資が増加したことで鉄鋼やセメント、建設機械や家電、自動車などの需要は増え、インフラ関連の投資を増やすこともできた。それに伴い、小売りや飲食、宿泊、交通などのサービス業も成長し、雇用・所得機会が向上した。地方政府はデベロッパーに土地の利用権を譲渡して歳入を確保し、産業補助金なども確保することが可能になった。まさに、不動産投資を中心に経済が好循環していた』、「1~7月の累計で、不動産開発投資は前年同期比10.2%減少した。同じ期間、新築不動産の販売面積は同18.6%減少し、新規着工は前年比23.2%減だった(販売、着工とも床面積ベース)。デベロッパーは債務の返済や住宅の完成に向けて資金調達を急がなければならないが、資金調達額は21.3%減少している。状況はかなり厳しい・・・過去のピーク時、中国の不動産投資はGDPの約29%に達したとの試算もあった」、なるほど。
・『中国の不動産バブル崩壊は過去30年間で世界最大 2020年8月、中国政府の不動産開発会社の借り入れ規制(3つのレッドライン)をきっかけに、中国の不動産市場に変調が発生した。そこから4年が経過したが、不動産価格の下落になかなか歯止めがかからない。7月にも新築の住宅価格が下落し、地方政府の財政悪化に対する懸念が高まっている。 最近、国際通貨基金(IMF)は、「中国の不動産バブル崩壊は、過去30年間で世界最大レベル」と指摘した。中国の大手デベロッパー恒大集団(エバーグランデ・グループ)の粉飾決算問題もあり、今のところ、不動産関連の債務規模の実体すらよく見えない。中国経済の停滞への懸念から、中国から脱出する個人や企業が増えている。 中国政府の政策も、人々の安心感を取り戻すには至っていない。不動産価格の下落に歯止めがかからないため、家計の節約志向は高まり個人消費は伸び悩み気味だ。また、政府が国有・国営企業の業容拡大を優先する結果、鉄鋼業界などの主要分野で価格下落に拍車がかかっている。 中長期的に、中国の人口は減少する。民間企業の生産性が向上しないと、中国経済の実力=潜在成長率は低下する。不良債権処理の先送り、国有企業重視の政策方針が変わらないと、不動産市況の悪化は鮮明化しデフレ圧力が高まることも考えられる』、「国際通貨基金(IMF)は、「中国の不動産バブル崩壊は、過去30年間で世界最大レベル」と指摘した。中国の大手デベロッパー恒大集団(エバーグランデ・グループ)の粉飾決算問題もあり、今のところ、不動産関連の債務規模の実体すらよく見えない。中国経済の停滞への懸念から、中国から脱出する個人や企業が増えている・・・中長期的に、中国の人口は減少する。民間企業の生産性が向上しないと、中国経済の実力=潜在成長率は低下する。不良債権処理の先送り、国有企業重視の政策方針が変わらないと、不動産市況の悪化は鮮明化しデフレ圧力が高まることも考えられる」、なるほど。
・『若年層を中心に雇用環境は悪化 16~24歳の失業率は17.1%に上昇 しかし、不動産投資に依存した経済成長は限界に来ている。マンション建設など投資機会の減少により、需要は縮小気味だ。特に、深刻なのは若年層の失業である。 23年6月、16~24歳の失業率は21.3%で過去最悪の水準に上昇した。その後、国家統計局は調査手法を修正するとして公表を一時停止し、24年1月から再開した。7月、16~24歳(学生を除く)の失業率は17.1%だった。6月の13.2%から3.9ポイントの上昇である。 中国では例年6月に大学生が卒業する。今年は4月中旬時点で新卒大学生の内定獲得割合が50%を下回ったとの報道もあった。バブル崩壊の影響で新卒の就職が難しくなり、失業率は上昇したと考えられる。全体の失業率も5.2%で、6月から0.2ポイント上昇した。 19年の中国人民銀行の調査によると、中国の家計が保有する資産の59.1%は不動産だった。マンションの価格下落に加え、上海総合指数など本土の株価も不安定な展開だ。逆資産効果は高まらざるを得ない。しかも中国では、不動産の完成前に売買契約を結び住宅ローンの返済が始まる「予約販売」方式が多い。購入したマンションが未完成で放置されてもローンの支払いはなくならない。 債務を減らすために、消費や投資を減らす個人が増加し、個人消費は停滞気味だ。7月の個人消費は前年同月比2.7%増だったが、コロナ禍が発生する直前の水準(7%前後)と比較すると、消費の勢いは弱い。 需要の停滞は企業の設備投資の減少につながり、固定資産投資も鈍化した。度重なる金融緩和にもかかわらず7月の新規人民元建て銀行融資は前月比約88%減少し、15年ぶりの水準に落ち込んだ。 現在、中国政府は、市中の商業銀行に不動産や国有企業などに対する融資を増やすよう指導している。しかし、不動産市場の底が見えないため、民間企業は人員採用や設備投資を増やすことが難しい。若年層を中心に中国の雇用・所得環境の悪化懸念は高まっている』、「中国では、不動産の完成前に売買契約を結び住宅ローンの返済が始まる「予約販売」方式が多い。購入したマンションが未完成で放置されてもローンの支払いはなくならない。 債務を減らすために、消費や投資を減らす個人が増加し、個人消費は停滞気味だ・・・度重なる金融緩和にもかかわらず7月の新規人民元建て銀行融資は前月比約88%減少し、15年ぶりの水準に落ち込んだ」、なるほど。
・『中国宝武鋼鉄集団のトップ発言「リーマンショック時よりも状況は厳しい」 不動産価格の下落に歯止めがかからないため、最近では国債を選好する投資家が増えている。中国政府は、銀行に国債購入を控えるよう呼びかけているものの、今のところ目立った効果は出ていない。 今後は地方政府の財政悪化により、年金や医療などの給付が減る可能性も大変な懸念事項だ。また、デベロッパーが破綻することへの懸念を反映し、不良債権も増加傾向で推移するはずだ。個人、企業のリスクテイクは難しくなり、銀行の利ざや低下に対するプレッシャーが高まると予想される。 バブルが崩壊したことによる不良債権の増加、さまざまなモノやサービスの需要減少が連鎖する環境下、金融緩和で景気の本格的な回復を目指すことは難しい。中国にとって必要な政策は、まず、財政出動によって不良債権の処理にめどをつけることである。それと同時に、財政支出で経済全体に需要を喚起する。債務問題が深刻な金融機関などに公的資金を注入し、経営再建を支えることが必要だ。 ところが、現在の中国政府は、供給サイドの支援を最優先事項に据えているようだ。7月の「3中全会」(中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議)で、政府は国有・国営企業の世界シェア拡大を目指す「国進民退」を改めて示した。 その後、地方政府の債券発行枠も増やした。鉄鋼、電気自動車、車載用バッテリーなどの分野に補助金を出し、低価格のモノを生産し輸出競争力を高める方針だ。 しかし、すでに鉄鋼業界では生産能力が過剰で、企業の収益状況が悪化しているようだ。世界最大手の国有企業の中国宝武鋼鉄集団のトップは、「リーマンショック時よりも状況は厳しい」との認識を示している。不動産市況の下落が続く間、中国の本格的な景気回復へのプロセスは見えてこない』、「バブルが崩壊したことによる不良債権の増加、さまざまなモノやサービスの需要減少が連鎖する環境下、金融緩和で景気の本格的な回復を目指すことは難しい。中国にとって必要な政策は、まず、財政出動によって不良債権の処理にめどをつけることである。それと同時に、財政支出で経済全体に需要を喚起する。債務問題が深刻な金融機関などに公的資金を注入し、経営再建を支えることが必要だ。ところが、現在の中国政府は、供給サイドの支援を最優先事項に据えているようだ。7月の「3中全会」(中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議)で、政府は国有・国営企業の世界シェア拡大を目指す「国進民退」を改めて示した・・・世界最大手の国有企業の中国宝武鋼鉄集団のトップは、「リーマンショック時よりも状況は厳しい」との認識を示している。不動産市況の下落が続く間、中国の本格的な景気回復へのプロセスは見えてこない」、さて中国政府はどう立て直すのだろうか。お手並み拝見だ。
中国経済(その19)(「中国政府が救う神話」崩壊の衝撃!中国“影の銀行”が債務超過5兆円で破綻…波紋は?、中国「5%成長達成」の裏で習近平が金融界に戒厳令 空振りの「GDPフライング発表」に映る切実、IMFが指摘する中国経済衰退の「深刻な現実」…習近平体制が立たされている「ヤバい岐路」) [世界経済]
中国経済については、昨年8月31日に取上げた。今日は、(その19)(「中国政府が救う神話」崩壊の衝撃!中国“影の銀行”が債務超過5兆円で破綻…波紋は?、中国「5%成長達成」の裏で習近平が金融界に戒厳令 空振りの「GDPフライング発表」に映る切実、IMFが指摘する中国経済衰退の「深刻な現実」…習近平体制が立たされている「ヤバい岐路」)である。
先ずは、本年1月16日付け東洋経済オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「「中国政府が救う神話」崩壊の衝撃!中国“影の銀行”が債務超過5兆円で破綻…波紋は?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337271
・『能登半島地震の発生とその報道で日本国内が動揺する一方、中国では史上最大級の破綻劇が起きていた。1月5日、中国のシャドーバンク(影の銀行)大手、中植企業集団が破産したのだ。ピーク時の運用資産が20兆円を超えた巨大企業は、不動産バブルの崩壊にのまれ、急激に経営が悪化。これまで“政府保証”を信じてきた国民心理や中国の株式市場は、不安定さを増している』、興味深そうだ。
・『中国国民が信じてきた“政府保証”が崩壊か 1月5日、中国のシャドーバンク(影の銀行)大手、中植企業集団(中植)が北京市第一中級人民法院に破産清算を申請し受理された。中国で史上最大級、債務超過は5兆円規模とみられる今回の破産は、経済に大きな負の影響をもたらすと考えられる。8日以降、投資家の中国株売却は増加したとみられ、株価は不安定な展開になっている。 中植の破産をきっかけに、人々が信じていた“暗黙の政府保証”は崩れ始めたとの見方もある。これまで中国では、主要な企業の債務不履行(デフォルト)などが起きても、「政府が救済に動くから投資家に損失は及ばない」との一種の思い込みがあった。2023年8月に中植集団の債務超過が表面化しても大きな混乱にはならなかったのは、そのためだ。 しかし、中国政府は、投資家の保護や金融システムの健全化などを強化しなかった。その結果、中植は破産に追い込まれた。政府の経済政策、金融行政に対する国民の不安は高まり、景気の本格的な回復には相当の時間が必要との懸念が、一段と上昇した。 今後、中国では、「信託商品」(不動産向けローンなどを投資信託に仕立てた金融商品)と呼ばれる、高利回りの投資商品を売却する投資家が増加するだろう。バブル膨張期と反対に、「売るから下がる、下がるから売る」という負の連鎖が加速する可能性があり、投資に依存してきた中国経済は一段と厳しくなるはずだ』、「中国政府は、投資家の保護や金融システムの健全化などを強化しなかった。その結果、中植は破産に追い込まれた。政府の経済政策、金融行政に対する国民の不安は高まり、景気の本格的な回復には相当の時間が必要との懸念が、一段と上昇した。 今後、中国では、「信託商品」(不動産向けローンなどを投資信託に仕立てた金融商品)と呼ばれる、高利回りの投資商品を売却する投資家が増加するだろう。バブル膨張期と反対に、「売るから下がる、下がるから売る」という負の連鎖が加速する可能性があり、投資に依存してきた中国経済は一段と厳しくなるはずだ」、なるほど。
・『シャドーバンク大手・中植はなぜ破産したのか シャドーバンク大手である中植の破産は、中国の不動産バブル崩壊が、金融部門の一部であるシャドーバンキングセクターに波及していることを示している。 リーマンショック後の中国経済では、マンション建設など不動産投資が大幅に増えた。政府が、不動産投資によって景気を下支えし、経済の成長率を引き上げようと狙ったのだ。地方政府は、碧桂園(カントリーガーデン)など大手デベロッパーに土地を売却し、デベロッパーは、シャドーバンクなどの金融機関から資金を調達し、マンション建設を急速に増やした。国民の投機熱の高まりもあり、マンション価格は上昇し続け、不動産バブルは膨張した。 それと同時に、富裕層から一般の個人投資家に至るまで、中植グループなどが設定する信託商品への需要も急増した。ピーク時、信託商品への資金流入が増加したことで、中植の運用資産規模は約20兆円に膨れ上がった。群集心理が膨張する中、中植は、不動産市況の上昇でビジネスを拡大できると“コントロール・イリュージョン”(自分たちがマーケットを支配しているという過度な全能感)を強めた。 20年8月、中国政府が財務指針「3つのレッドライン」を実施すると、デベロッパーの資金繰りは悪化し、不動産バブルは崩壊に向かった。中植傘下の中融国際信託は、不動産関連の債券の価格が“割安”と判断し、経営が悪化した不動産企業への貸し付けを増やした。中融国際は、急速に経営状態が悪化した中国恒大集団(エバーグランデ・グループ)などからも資産を買い取った。 しかし、中植の予想に反して中国の不動産市況は悪化した。中植の不良債権は急増し、資金繰りは急速に悪化。グループ企業が設定・運用した信託商品のデフォルトも発生し、23年8月、一部顧客は返金を求める抗議活動を起こした』、「ピーク時、信託商品への資金流入が増加したことで、中植の運用資産規模は約20兆円に膨れ上がった。群集心理が膨張する中、中植は、不動産市況の上昇でビジネスを拡大できると“コントロール・イリュージョン”(自分たちがマーケットを支配しているという過度な全能感)を強めた・・・中植傘下の中融国際信託は、不動産関連の債券の価格が“割安”と判断し、経営が悪化した不動産企業への貸し付けを増やした。中融国際は、急速に経営状態が悪化した中国恒大集団(エバーグランデ・グループ)などからも資産を買い取った。 しかし、中植の予想に反して中国の不動産市況は悪化した。中植の不良債権は急増し、資金繰りは急速に悪化。グループ企業が設定・運用した信託商品のデフォルトも発生し、23年8月、一部顧客は返金を求める抗議活動を起こした」、なるほど。
・『大手生命保険会社とシャドーバンクの関係 中植の破産によって、信託商品などに“暗黙の政府保証”が付いているという思い込みは低下したはずだ。 中国の金融業界では、4大国有銀行など大手行は、相対的に信用力が高い国有・国営企業への融資を優先する傾向が強い。一方、信用力が低い中小企業、民間企業、地方政府傘下の融資平台などに貸し出しを行ってきたのがシャドーバンクだ。 シャドーバンキングとは一般的に、通常の銀行融資を受けられない相手に、高金利で貸し付けたり、投資したりする手法をいう。資金源は、銀行が販売する金融商品であり、商品の多くが短期間で償還を迎える。 中国ではシャドーバンクの重要性が高まるにつれ、信託商品などの元利金支払いが遅れると、「政府が支払いを保証するはずだ」との希望的観測が増えた。リーマンショック後はさらに、暗黙の政府保証への期待が高まった。 その典型例が、中国の大手生命保険会社だ。18年以前は、信託商品のリスクの高さ、投資先企業の事業内容の不透明さなどを理由に、シャドーバンクに資金を貸し付ける生命保険会社は少なかったといわれる。ところが、18年頃から徐々に大手生保はシャドーバンクへの投資を増やした。信託商品などのデフォルト懸念が高まれば、政府が救済に動くという思い込みがあったのかもしれない。 しかし、中植の破産によって、暗黙の政府保証はあくまでも思い込みにすぎなかったことが明確になった。北京の裁判所は、「中植は“明らかに”返済能力を欠いた」と厳しく指摘している。 23年11月の時点で、中国の不動産やシャドーバンクの専門家の間では、中植の不良債権問題に起因する投資家の損失額がおよそ560億ドル(8兆1200億円)に達するとの見方があった。 一方、中国政府も無策だったわけではない。23年11月、国家金融監督管理総局(NFRA)は信託会社などへの監督を厳格化した。 ただ、中国政府は、資金繰りが悪化したシャドーバンク企業に公的資金を注入し、投資家を守るところまでは踏み込まなかった。中植の顧客の多くが富裕層であったため、同社の破産は金融システムに深刻な影響を与えないと判断したのかもしれない。 中植は、返済能力を欠いたまま放置された。破産をきっかけに、暗黙の政府保証への懸念は高まった。政府の対応の遅さを改めて認識する主要投資家は増えている』、「国家金融監督管理総局(NFRA)は信託会社などへの監督を厳格化した。 ただ、中国政府は、資金繰りが悪化したシャドーバンク企業に公的資金を注入し、投資家を守るところまでは踏み込まなかった。中植の顧客の多くが富裕層であったため、同社の破産は金融システムに深刻な影響を与えないと判断したのかもしれない。 中植は、返済能力を欠いたまま放置された。破産をきっかけに、暗黙の政府保証への懸念は高まった。政府の対応の遅さを改めて認識する主要投資家は増えている」、なるほど。
・『深刻化する中国の景気低迷への懸念 現在、中国の不動産市況が下げ止まる兆しは見られない。今後、中植の破産によって信託商品の返金を求める投資家は増え、信託会社などは資産売却を急ぐことになるだろう。不動産分野から流出する資金は増え、実体経済の下振れ懸念も高まる。株価の下落リスクは上昇し、海外への資金流出も勢いづくと予想される。 マンション建設の停滞感は中国全土でいっそう深刻化するはずだ。土地の需要は追加的に低下し、地方政府の主要財源である土地譲渡益も減少する。経済成長率の低下によって税収に下押し圧力がかかり、財政破綻リスクが上昇する地方政府も増えるだろう。 中国の景気対策は地方政府が担うことが多い。財政悪化によって、中国がインフラ投資を積み増して景気対策を講じることは難しくなる。基礎資材や建設機械などの需要も減少し、生産活動や設備投資を抑制する企業は増えるだろう。 それに伴い、若年層を中心に雇用・所得環境の悪化も加速すると予想される。消費者心理の悪化も避けられない。中国ではマンションが完成する前に購入契約を締結し、ローンの返済を始めることが多い(予約販売)。購入したのに遅々として完成しない状況が続けば、返済を拒否する個人は増える。債務返済を急ぎ支出を減らす家計や企業も増え、デフレ圧力は追加的に高まる恐れが高い。 中国経済が負の連鎖から本格的に脱却することは当面、難しいだろう。中央銀行による資金供給などを支えに、中国の23年の新規融資は前年比6.8%増の22兆7500億元(約464兆円)だった。増加した融資の多くは、国有・国営企業などの目先の資金繰り確保などに回ったようだ。 例えば鉄鋼業界では生産能力の過剰が明らかであり、そうした中で融資を積み増すことは経済運営の効率性を高めるよりも、むしろ将来の不良債権予備軍になる恐れが高い。シャドーバンク大手である中植の破産により、投資に依存した中国経済のメカニズムの“逆回転”が加速したと考えられる』、「中国ではマンションが完成する前に購入契約を締結し、ローンの返済を始めることが多い(予約販売)。購入したのに遅々として完成しない状況が続けば、返済を拒否する個人は増える。債務返済を急ぎ支出を減らす家計や企業も増え、デフレ圧力は追加的に高まる恐れが高い。 中国経済が負の連鎖から本格的に脱却することは当面、難しいだろう・・・中国の23年の新規融資は前年比6.8%増の22兆7500億元(約464兆円)だった。増加した融資の多くは、国有・国営企業などの目先の資金繰り確保などに回ったようだ。 例えば鉄鋼業界では生産能力の過剰が明らかであり、そうした中で融資を積み増すことは経済運営の効率性を高めるよりも、むしろ将来の不良債権予備軍になる恐れが高い。シャドーバンク大手である中植の破産により、投資に依存した中国経済のメカニズムの“逆回転”が加速したと考えられる」、大変厳しい事態だ。
次に、1月18日付け東洋経済オンライン「中国「5%成長達成」の裏で習近平が金融界に戒厳令 空振りの「GDPフライング発表」に映る切実」を紹介しよう。
・『不動産不況の長期化やデフレ傾向が懸念された2023年の中国経済。その総仕上げとなるGDP(国内総生産)統計が1月17日の午前11時(日本時間)に公表された。最大の注目点が、実質成長率が「前年比5%前後」という政府目標を超えるかどうかだった。2024年に政府が景気対策にどれだけ踏み込むかの判断材料になるからだ』、「最大の注目点が、実質成長率が「前年比5%前後」という政府目標を超えるかどうかだった」、結果はどうだったのだろう。
・『発表前日に統計データをポロリ ところが、発表前日に思わぬ「フライング」があった。スイスのダボス会議で、李強首相が「中国経済は全般的に回復・改善し、2023年の成長率は5.2%前後になる」とあっさり明かしてしまったのだ。 統計数字の事前流出が望ましくないのは中国でも同じだ。2011年には、国家統計局の官僚が発表前の統計データを漏洩した疑いで取り調べを受けたことが報じられている。「目標は達成できる見通し」とほのめかす程度ならともかく、国家指導者が数字そのものを事前に明かすのは異例だ。 それだけ「超過達成」をアピールしたかったのだと思われる。李首相は大規模な景気刺激策に頼ることなく目標を達成したことを強調し、中国経済は「着実な進歩」を遂げているとした。今後の方向性については「高質量(質の高い)」成長を目指すという。「高質量」は習近平国家主席が最近強調している経済政策のキーワードだ。) 李首相は、ダボス会議に集まった世界の経営者に向かって対外開放政策の継続を約束した。そのうえで、「過去5年間、対中直接投資の収益率は約9%だった。これは国際的にも比較的高い水準にある。中国市場を選択することはリスクではなく、チャンスだ」と強調してみせた。 理由としては、中国の市場の潜在力の高さがあるという。李首相は「中国の中所得層は現在4億人であり、今後10年程度でその数は2倍の8億人になる」「中国の都市化率はまだ先進国の平均より10ポイント以上低い。また、3億人近い農民工が市民権を得るプロセスを加速させており、住宅、教育、医療などに大きな需要をもたらす」などと好材料を列挙してみせた。 中所得層の拡大も都市化率の向上も、中国政府の「営業トーク」の定番だ。いま中国は海外からの投資を切実に求めている。中国の対内直接投資は2023年7~9月期に統計開始以来初めてマイナスを記録した。李首相としては、成長率の「目標達成」を手がかりに中国経済への期待値を上げたいという思惑があったのだろう。 2023年12月中旬に行われた中央経済工作会議では、2024年の方針の一つとして「経済宣伝、世論の誘導を強化し、『中国経済光明論(中国経済の先行き楽観論)』を高らかに謳う」ことが打ち出された。習主席の側近中の側近として知られる李首相は、統計のフライング発表というかたちで世界に向かって「光明」を謳い上げた。 そのメッセージがダボスに集った経営者にどれだけ響いたかはわからないが、株式市場は冷淡だった。中国の代表的な株式指数である上海総合指数は17日の終値で2833.6ポイントと、前日より2%あまり下落した。 GDP統計と同時に公表された2023年1〜12月の不動産開発投資は前年同期比9.6%減となり、1〜11月から下落幅が広がった。成長率の超過達成くらいでは、不動産不況をめぐる投資家の不安はぬぐえない。IMFは2024年の中国経済の成長率を4.2%と予想しており、2025年以降も成長率の低下を見込んでいる』、「李首相は、統計のフライング発表というかたちで世界に向かって「光明」を謳い上げた。 そのメッセージがダボスに集った経営者にどれだけ響いたかはわからないが、株式市場は冷淡だった。中国の代表的な株式指数である上海総合指数は17日の終値で2833.6ポイントと、前日より2%あまり下落した。 GDP統計と同時に公表された2023年1〜12月の不動産開発投資は前年同期比9.6%減となり、1〜11月から下落幅が広がった。成長率の超過達成くらいでは、不動産不況をめぐる投資家の不安はぬぐえない。IMFは2024年の中国経済の成長率を4.2%と予想しており、2025年以降も成長率の低下を見込んでいる」、なるほど。
・『習近平主席が異例の会議を招集 李首相が対外的な広告塔としての役割を果たしていたのとまさに同じ日。習主席の姿は北京の中央党校にあった。共産党の幹部候補を育成するための学校で、習主席も国家副主席時代には校長を兼務していた。 「金融の高質量な発展を推進するための勉強会」と銘打たれたセミナーの開催はGDP関連報道の陰で目立たなかった。だが、集まった顔ぶれは内外の中国金融ウオッチャーを驚かせた。閣僚・省指導者レベル以上の共産党幹部が勢ぞろいする、異例の規模だったからだ。) ひな壇には習主席のほか、共産党最高指導部である常務委員会メンバーが外遊中の李首相をのぞいて全員集合した。金融のような専門性の高い分野で、これほどの動員がかかることは珍しい。 その開幕式で習主席は「中国の金融には国情に適した特色があるべきで、西側の金融モデルとは根本的に異なる」「金融リスク、特にシステミック・リスクの予防と解決に努めるべきだ。金融監督には長い牙とトゲが必要だ」と演説した。尖った言葉づかいから、習主席の危機感の強さが伝わってくる』、「「金融の高質量な発展を推進するための勉強会」と銘打たれたセミナーの開催は・・・だが、集まった顔ぶれは内外の中国金融ウオッチャーを驚かせた。閣僚・省指導者レベル以上の共産党幹部が勢ぞろいする、異例の規模だったからだ・・・「金融リスク、特にシステミック・リスクの予防と解決に努めるべきだ。金融監督には長い牙とトゲが必要だ」と演説した」、なるほど。
・『1100兆円の隠れ債務が大問題 中国経済の矛盾は金融に集約されている。地方政府は不動産(土地使用権)の売却収入で財政をやりくりし、景気対策のためのインフラ投資の原資にもあててきた。その結果、地方政府の資金調達機関である「融資平台」の債務は増加の一途だ。 中国では地方政府の「隠れ債務」といわれるが、その規模はIMF(国際通貨基金)の推計では2022年の時点で57兆元(約1100兆円)に及ぶ。不動産の値下がりは、こうした構造を根底から揺るがすことになる。 不動産不況のもとで金融リスクが拡大しているなか、習政権は国務院(内閣)から権限を奪って共産党への一極集中体制を築き、危機管理を強化しようとしている。党側には、金融リスクの管理に当たるべき専門家への不信もあるようだ。2023年には金融当局や国有銀行幹部の汚職摘発が続いた。 2023年10月には習主席の肝いりで中央金融工作会議が開催され、「金融強国」の建設に向けて共産党の指導を強化する方針が示された。12月の中央経済工作会議を経て、1月には中国人民銀行(中央銀行)も党の方針にしたがって金融緩和とリスク削減を進めると表明している。金融分野へのグリップの強化ぶりは「戒厳令」とでも形容すべきものだ。) 方向性は決まったはずなのに、わざわざ全国から幹部を集めたのは、なぜなのか。中国の金融に詳しい大阪経済大学の福本智之教授(元日本銀行国際局長)は、その意義付けについて「中央金融工作会議の延長線上だが、攻めと守りで金融を強くして、システミックリスクを起こさせないのだというメッセージを伝えたかったのではないか」と分析する。 「攻め」と「守り」のうち、より優先度が高いのは「守り」だろう。「攻め」の内容は中央金融工作会議で宣言された金融強国の建設だ。究極的には、基軸通貨であるドルを握るアメリカに経済の首根っこを押さえられている現状を打破するのが目的だとみられる。かなり長い時間軸での取り組みだ。 一方「守り」では、監督管理の強化とリスク処理メカニズムの確立に強いメッセージを出している。不動産のリスク処理に対してはまだ目立った動きはないが、地方債務への対応に加え、2023年秋から地方金融機関の合併再編が加速している。まさに「いまそこにある危機」を見据えた内容だ』、「中央金融工作会議」で「「守り」では、監督管理の強化とリスク処理メカニズムの確立に強いメッセージを出している。不動産のリスク処理に対してはまだ目立った動きはないが、地方債務への対応に加え、2023年秋から地方金融機関の合併再編が加速している。まさに「いまそこにある危機」を見据えた内容だ」、なるほど。
・『金融リスクの処理は待ったなし 習政権は、金融リスクの処理は待ったなしという意識を強めているとみられる。2024年には地方政府の債務のリストラ、中小金融機関の清算と合併などが一層進む可能性がある。 習主席のリーダーシップのもと、共産党に権限を一元化することで問題処理のスピード感は増しそうだ。ただ、「西側の金融モデルとは根本的に異なる」部分を強調しすぎて市場メカニズムを活かせなくなれば、経済効率の低下を招くだろう。 金融関連で繰り返し同趣旨の会議を開いている裏には、習指導部に対する国務院や地方の抵抗がありそうだ。水面下での主導権争いの激しさをうかがわせる。中長期での経済政策を定める共産党の重要会議「3中全会」は、2023年中に開かれるとみられていたが、まだ開催のメドがたっていない。 外資を呼び込むための「対外開放」の旗印と、危機管理を大義名分とした強権発動を両立できるのか。ダボスで李首相が語った明るい未来と、習主席が示した厳しい現状認識のコントラストは象徴的である。2024年は中国経済にとって大きな分岐点になりそうだ』、「金融関連で繰り返し同趣旨の会議を開いている裏には、習指導部に対する国務院や地方の抵抗がありそうだ。水面下での主導権争いの激しさをうかがわせる・・・外資を呼び込むための「対外開放」の旗印と、危機管理を大義名分とした強権発動を両立できるのか。ダボスで李首相が語った明るい未来と、習主席が示した厳しい現状認識のコントラストは象徴的である。2024年は中国経済にとって大きな分岐点になりそうだ」、さて現実に採用されるのは、どちらなのだろう。
第三に、2月6日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの町田 徹氏による「IMFが指摘する中国経済衰退の「深刻な現実」…習近平体制が立たされている「ヤバい岐路」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/123890?imp=0
・『深刻な下振れリスク 昨年(2023年)の5.4%から転げ落ちるように減速して、28年には3.4%に落ち込む見通しだ――。 国際通貨制度を安定させて世界経済の成長を促すことが目的の国際機関・国際通貨基金(IMF)は先週金曜日(2月2日)、IMF協定の4条に基づく中国との年次協議に関する報告書を公表し、その中で、中国経済が深刻な下振れリスクに直面していると警鐘を鳴らした。 最大の問題点としたのは、遅々として進まない大手不動産デベロッパーの債権処理だ。かねて中国バブル崩壊の火種と目されてきた恒大集団(エバーグランデ)などを念頭に、この部門は「予想を上回る信用収縮を引き起こす懸念があり、民間の需要不足や地方政府の財政ひっ迫といった副作用を招く」というのである。 IMFが描いた中国経済の転落のシナリオと現状をみておきたい。 冒頭でも記したように、本コラムで取り上げる4条協議は、IMF協定の第4条に規定されているルールだ。 経済や金融不安の火種がないか点検するために、通常は年に1回、IMFが、スタッフを加盟各国に派遣して、当該国の経済と金融の情勢をモニタリングすることになっている。その結果を当該国と協議のうえで、採るべき政策を助言するという手続きなのだ。 ただ、協議結果は、スタッフによって4条協議報告書としてまとめられ、IMF理事会に提出される。この理事会で討議され、理事会の公式見解となったものが、当該国の政府に送られるだけでなく、IMFのホームページでもプレスリリースされる仕組みなのだ』、「IMF」は「4条にもとづく年次協議」で、「中国経済が深刻な下振れリスクに直面していると警鐘を鳴らした。 最大の問題点としたのは、遅々として進まない大手不動産デベロッパーの債権処理だ。かねて中国バブル崩壊の火種と目されてきた恒大集団(エバーグランデ)などを念頭に、この部門は「予想を上回る信用収縮を引き起こす懸念があり、民間の需要不足や地方政府の財政ひっ迫といった副作用を招く」というのである」、なるほど。
・『地政学的なリスクも 今回の対中・4条協議報告書はなかなか衝撃的だ。興味のある人は一読してほしい。 今回の要点をまとめておくと、IMFは、去年の中国経済のパフォーマンスについて「新型コロナウイルス感染症危機から脱却して回復軌道を辿り、実質GDPは国家目標の5.4%成長をほぼ達成した」と一定の評価を与えた。その回復の原動力は、「主に内需、特に民間消費であり、金融緩和や法人と家計に対する減税、災害に伴う財政の救済策なども後押しした」と説明している。 半面、今年(2024年)以降の先行きについては、「不確実性が高い。既存の不均衡と関連する脆弱性があり、特に注意が必要だ」と強く警鐘を鳴らした。リスク要因としては、「不動産セクターでの予想以上の収縮が、さらなる民間需要の減少や、地方政府の財政のひっ迫」などを招きかねないと強調した。中国の高齢化のほか、「(米中摩擦に伴う)外需の低迷や、(台湾海峡などの)地政学的な緊張の高まりなども大きな下方リスクをもたらす」とも記したのである。 こうした前提に基づき、不動産セクターの債権処理の加速によって、リスクの現実化を回避したうえで、民間の設備投資などの刺激に繋げていくよう迫っている。 ちなみに、4条協議報告書に記された試算によると、中国の実質GDPの成長率は。2024年が4.6%、25年が4.0%、26年が3.8%、27年が3.6%、28年が3.4%と5年連続で急ピッチに低下していくことになっている』、「中国の実質GDPの成長率は。2024年が4.6%、25年が4.0%、26年が3.8%、27年が3.6%、28年が3.4%と5年連続で急ピッチに低下していくことになっている」、なるほど。
・『「失われた30年」を彷彿 今回の対中・4条協議報告は、既視感のあるシナリオだ。1989年末の証券・不動産バブル崩壊に伴って膨れ上がった銀行の不良債権の処理に手間取り、「失われた30年」などと呼ばれた長い経済不振を経験してきた日本の経済史を彷彿させるからだ。 とはいえ、あのIMFが、このタイミングで、中国経済が依然として歴史的な窮地を抜け出していないという危機感を露わにしたことも見逃せない。 ここで、視点を、中国の不動産デベロッパーの現状に移してみよう。外電によると、香港の高等法院(高裁)は先月(1月)29日、経営再建中の不動産デベロッパー大手「中国恒大集団」に対し、実質的な法的整理命令に当たる「清算命令」を発出した。 振り返れば、中国恒大の経営破綻が浮き彫りになったのは2021年9月のことだ。経営が自ら「未曽有の危機にある」と破綻寸前に陥っていることを認めたのを手始めに、同年末には広東省が監視チームを会社に送ったり、同じ時期に米ドル建て債の利息を支払えず、格付け会社が相次いで「部分的債務不履行」(デフォルト)に陥ったと認定したりもした。中国政府が経営への全面的な関与を打ち出して破綻そのものは回避してきたものの、膨大な債務の整理は遅々として進まず、2年4カ月ほどの月日は無駄に流れた。その間に、事態は深刻さ増してきたのだ。 香港高等法院に「清算命令」の発出を求めたのも、債権処理の遅れに苛立った海外の債権者(投資ファンド)だった。申し立ては2022年6月のことだったが、会社が命令を回避しようと、判決の期日が近付くと新たな債務再編案の提示を繰り返し、裁判所に結論を先送りさせてきた。 今回は万策尽きたと裁判所がついに判断した。今後は、裁判所が任命する管財人のもとで債務の整理が始まることになる。 とはいえ、事態は流動的だ。一般的に、香港は中国本土より債務の整理が進みやすいとされている。中国本土は、法的な債務の整理制度が十分に整備されていないうえ、司法判断そのものが当局の意向に振り回されがちだからだ。これが、海外債権者が香港での手続きを切望した理由でもある。 しかし、恒大集団の資産の9割は中国本土にあるとされている。当局の姿勢も不明確だ。今回も手続きが難航して時間を浪費する懸念は強い。そうなれば、会社が解散になり、再建の道が完全に閉ざされるリスクもある』、「債権処理の遅れに苛立った海外の債権者(投資ファンド)だった。申し立ては2022年6月のことだったが、会社が命令を回避しようと、判決の期日が近付くと新たな債務再編案の提示を繰り返し、裁判所に結論を先送りさせてきた。 今回は万策尽きたと裁判所がついに判断した。今後は、裁判所が任命する管財人のもとで債務の整理が始まることになる。 とはいえ、事態は流動的だ。一般的に、香港は中国本土より債務の整理が進みやすいとされている。中国本土は、法的な債務の整理制度が十分に整備されていないうえ、司法判断そのものが当局の意向に振り回されがちだからだ。これが、海外債権者が香港での手続きを切望した理由でもある・・・恒大集団の資産の9割は中国本土にあるとされている。当局の姿勢も不明確だ。今回も手続きが難航して時間を浪費する懸念は強い。そうなれば、会社が解散になり、再建の道が完全に閉ざされるリスクもある」、なるほど。
・『「不良債権処理に100兆円」 以前にも本コラムで指摘したが、中国にとって厄介なのは、恒大集団が氷山の一角に過ぎないことだ。 不動産デベロッパー各社の負債額は、文字通り、天文学的なレベルに膨らんでいる。いずれも2022年末の数字だが、最も負債の多い恒大が2兆4374億元(約48兆7480億円)を抱えて、債務超過に喘いでいる。以下、主な大手デベロッパーの負債額は、多い順に、碧桂園が1兆4349元(約28兆6980億円)、万科企業が1兆3521元(約27兆0420億円)、緑地控股が1兆2010元(約24兆0200億円)、保利発展控股集団が1兆1483元(約22兆9660億円)といった具合だ。 バブル崩壊後、日本の銀行は2005年3月期までの12年間に、不良債権処理に実に96兆4199億円を費やした。俗に、「不良債権処理に100兆円」と言われた所以だ。 これに対し、中国の不動産デベロッパーは大手6社だけで150兆円を超す負債を抱えている。全体でどれぐらいの負債が不良債権化しているのかは、信頼に足るデータがなお提供されておらず、見当もつかないのが現状だ。 ただ、6社では、恒大集団に続き、上海市政府系の緑地控股集団が昨年7月、碧桂園が昨年10月にそれぞれ、米ドル建て債で債務不履行を引き起こした。 いずれにせよ、中国の不動産デベロッパー大手が揃って大規模な債務整理を余儀なくされていることは間違いない。 あわせて、決して見逃すことができないのは、不動産デベロッパーに巨額の資金のつなぎ融資をしてきた金融セクター、特にシャドウバンキング(影の銀行)の経営への影響だ。シャドウバンキングが、短期金融商品の体裁で富裕層や法人顧客から集めた資金の利払いや償還が滞り、消費や投資の足を引っ張る信用収縮を招いている。 また、不動産デベロッパーの不振が地方政府の財政を圧迫してきた問題も深刻だ。というのは、お国柄だが、土地の私有を認めていない中国では、地方政府にとって土地使用権の売却収入が税収と並ぶ収入の柱になってきたからだ。この財政ひっ迫は、地方のインフラ投資資金を細らせるほか、行政サービスの低下や地方振興策の停滞に繋がっている。 一連の惨状を見れば、IMFが今回の対中・4条協議報告書で迫った不動産デベロッパーセクターに対する「断固たる政策行動」が今後の中国経済の行方を左右するポイントであることは明らかだ。 中国の習近平体制は当初、拡大した貧富の格差を是正すると主張、銀行による不動産デベロッパー向け融資規制を強化するなど中国版バブル潰しに動いた。 ところが、事態が深刻化すると、一転して不動産デベロッパーに対する政府の管理を強め、延命に走り、結果として抜本的な債務整理の断行を阻んできた。 こうした混乱の背景には、断固たる債務整理が短期的に大きく景気の足を引っ張る懸念があるうえ、居住目的で住宅用不動産を購入した消費者が物件の引き渡しを受けられない事態が頻発すれば、共産党の統治に対する国民の反発が高まりかねないとの判断があるという。 しかし、IMFが改めて指摘したように、断固たる措置をとらずに中途半端な不動産デベロッパーの延命を続ければ、中期的な経済成長率の大幅鈍化は避けられない。中国経済は岐路に直面している』、「IMFが改めて指摘したように、断固たる措置をとらずに中途半端な不動産デベロッパーの延命を続ければ、中期的な経済成長率の大幅鈍化は避けられない。中国経済は岐路に直面している」、確かに舵取りが難しい「岐路」に「直面」しているようだ。
先ずは、本年1月16日付け東洋経済オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「「中国政府が救う神話」崩壊の衝撃!中国“影の銀行”が債務超過5兆円で破綻…波紋は?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337271
・『能登半島地震の発生とその報道で日本国内が動揺する一方、中国では史上最大級の破綻劇が起きていた。1月5日、中国のシャドーバンク(影の銀行)大手、中植企業集団が破産したのだ。ピーク時の運用資産が20兆円を超えた巨大企業は、不動産バブルの崩壊にのまれ、急激に経営が悪化。これまで“政府保証”を信じてきた国民心理や中国の株式市場は、不安定さを増している』、興味深そうだ。
・『中国国民が信じてきた“政府保証”が崩壊か 1月5日、中国のシャドーバンク(影の銀行)大手、中植企業集団(中植)が北京市第一中級人民法院に破産清算を申請し受理された。中国で史上最大級、債務超過は5兆円規模とみられる今回の破産は、経済に大きな負の影響をもたらすと考えられる。8日以降、投資家の中国株売却は増加したとみられ、株価は不安定な展開になっている。 中植の破産をきっかけに、人々が信じていた“暗黙の政府保証”は崩れ始めたとの見方もある。これまで中国では、主要な企業の債務不履行(デフォルト)などが起きても、「政府が救済に動くから投資家に損失は及ばない」との一種の思い込みがあった。2023年8月に中植集団の債務超過が表面化しても大きな混乱にはならなかったのは、そのためだ。 しかし、中国政府は、投資家の保護や金融システムの健全化などを強化しなかった。その結果、中植は破産に追い込まれた。政府の経済政策、金融行政に対する国民の不安は高まり、景気の本格的な回復には相当の時間が必要との懸念が、一段と上昇した。 今後、中国では、「信託商品」(不動産向けローンなどを投資信託に仕立てた金融商品)と呼ばれる、高利回りの投資商品を売却する投資家が増加するだろう。バブル膨張期と反対に、「売るから下がる、下がるから売る」という負の連鎖が加速する可能性があり、投資に依存してきた中国経済は一段と厳しくなるはずだ』、「中国政府は、投資家の保護や金融システムの健全化などを強化しなかった。その結果、中植は破産に追い込まれた。政府の経済政策、金融行政に対する国民の不安は高まり、景気の本格的な回復には相当の時間が必要との懸念が、一段と上昇した。 今後、中国では、「信託商品」(不動産向けローンなどを投資信託に仕立てた金融商品)と呼ばれる、高利回りの投資商品を売却する投資家が増加するだろう。バブル膨張期と反対に、「売るから下がる、下がるから売る」という負の連鎖が加速する可能性があり、投資に依存してきた中国経済は一段と厳しくなるはずだ」、なるほど。
・『シャドーバンク大手・中植はなぜ破産したのか シャドーバンク大手である中植の破産は、中国の不動産バブル崩壊が、金融部門の一部であるシャドーバンキングセクターに波及していることを示している。 リーマンショック後の中国経済では、マンション建設など不動産投資が大幅に増えた。政府が、不動産投資によって景気を下支えし、経済の成長率を引き上げようと狙ったのだ。地方政府は、碧桂園(カントリーガーデン)など大手デベロッパーに土地を売却し、デベロッパーは、シャドーバンクなどの金融機関から資金を調達し、マンション建設を急速に増やした。国民の投機熱の高まりもあり、マンション価格は上昇し続け、不動産バブルは膨張した。 それと同時に、富裕層から一般の個人投資家に至るまで、中植グループなどが設定する信託商品への需要も急増した。ピーク時、信託商品への資金流入が増加したことで、中植の運用資産規模は約20兆円に膨れ上がった。群集心理が膨張する中、中植は、不動産市況の上昇でビジネスを拡大できると“コントロール・イリュージョン”(自分たちがマーケットを支配しているという過度な全能感)を強めた。 20年8月、中国政府が財務指針「3つのレッドライン」を実施すると、デベロッパーの資金繰りは悪化し、不動産バブルは崩壊に向かった。中植傘下の中融国際信託は、不動産関連の債券の価格が“割安”と判断し、経営が悪化した不動産企業への貸し付けを増やした。中融国際は、急速に経営状態が悪化した中国恒大集団(エバーグランデ・グループ)などからも資産を買い取った。 しかし、中植の予想に反して中国の不動産市況は悪化した。中植の不良債権は急増し、資金繰りは急速に悪化。グループ企業が設定・運用した信託商品のデフォルトも発生し、23年8月、一部顧客は返金を求める抗議活動を起こした』、「ピーク時、信託商品への資金流入が増加したことで、中植の運用資産規模は約20兆円に膨れ上がった。群集心理が膨張する中、中植は、不動産市況の上昇でビジネスを拡大できると“コントロール・イリュージョン”(自分たちがマーケットを支配しているという過度な全能感)を強めた・・・中植傘下の中融国際信託は、不動産関連の債券の価格が“割安”と判断し、経営が悪化した不動産企業への貸し付けを増やした。中融国際は、急速に経営状態が悪化した中国恒大集団(エバーグランデ・グループ)などからも資産を買い取った。 しかし、中植の予想に反して中国の不動産市況は悪化した。中植の不良債権は急増し、資金繰りは急速に悪化。グループ企業が設定・運用した信託商品のデフォルトも発生し、23年8月、一部顧客は返金を求める抗議活動を起こした」、なるほど。
・『大手生命保険会社とシャドーバンクの関係 中植の破産によって、信託商品などに“暗黙の政府保証”が付いているという思い込みは低下したはずだ。 中国の金融業界では、4大国有銀行など大手行は、相対的に信用力が高い国有・国営企業への融資を優先する傾向が強い。一方、信用力が低い中小企業、民間企業、地方政府傘下の融資平台などに貸し出しを行ってきたのがシャドーバンクだ。 シャドーバンキングとは一般的に、通常の銀行融資を受けられない相手に、高金利で貸し付けたり、投資したりする手法をいう。資金源は、銀行が販売する金融商品であり、商品の多くが短期間で償還を迎える。 中国ではシャドーバンクの重要性が高まるにつれ、信託商品などの元利金支払いが遅れると、「政府が支払いを保証するはずだ」との希望的観測が増えた。リーマンショック後はさらに、暗黙の政府保証への期待が高まった。 その典型例が、中国の大手生命保険会社だ。18年以前は、信託商品のリスクの高さ、投資先企業の事業内容の不透明さなどを理由に、シャドーバンクに資金を貸し付ける生命保険会社は少なかったといわれる。ところが、18年頃から徐々に大手生保はシャドーバンクへの投資を増やした。信託商品などのデフォルト懸念が高まれば、政府が救済に動くという思い込みがあったのかもしれない。 しかし、中植の破産によって、暗黙の政府保証はあくまでも思い込みにすぎなかったことが明確になった。北京の裁判所は、「中植は“明らかに”返済能力を欠いた」と厳しく指摘している。 23年11月の時点で、中国の不動産やシャドーバンクの専門家の間では、中植の不良債権問題に起因する投資家の損失額がおよそ560億ドル(8兆1200億円)に達するとの見方があった。 一方、中国政府も無策だったわけではない。23年11月、国家金融監督管理総局(NFRA)は信託会社などへの監督を厳格化した。 ただ、中国政府は、資金繰りが悪化したシャドーバンク企業に公的資金を注入し、投資家を守るところまでは踏み込まなかった。中植の顧客の多くが富裕層であったため、同社の破産は金融システムに深刻な影響を与えないと判断したのかもしれない。 中植は、返済能力を欠いたまま放置された。破産をきっかけに、暗黙の政府保証への懸念は高まった。政府の対応の遅さを改めて認識する主要投資家は増えている』、「国家金融監督管理総局(NFRA)は信託会社などへの監督を厳格化した。 ただ、中国政府は、資金繰りが悪化したシャドーバンク企業に公的資金を注入し、投資家を守るところまでは踏み込まなかった。中植の顧客の多くが富裕層であったため、同社の破産は金融システムに深刻な影響を与えないと判断したのかもしれない。 中植は、返済能力を欠いたまま放置された。破産をきっかけに、暗黙の政府保証への懸念は高まった。政府の対応の遅さを改めて認識する主要投資家は増えている」、なるほど。
・『深刻化する中国の景気低迷への懸念 現在、中国の不動産市況が下げ止まる兆しは見られない。今後、中植の破産によって信託商品の返金を求める投資家は増え、信託会社などは資産売却を急ぐことになるだろう。不動産分野から流出する資金は増え、実体経済の下振れ懸念も高まる。株価の下落リスクは上昇し、海外への資金流出も勢いづくと予想される。 マンション建設の停滞感は中国全土でいっそう深刻化するはずだ。土地の需要は追加的に低下し、地方政府の主要財源である土地譲渡益も減少する。経済成長率の低下によって税収に下押し圧力がかかり、財政破綻リスクが上昇する地方政府も増えるだろう。 中国の景気対策は地方政府が担うことが多い。財政悪化によって、中国がインフラ投資を積み増して景気対策を講じることは難しくなる。基礎資材や建設機械などの需要も減少し、生産活動や設備投資を抑制する企業は増えるだろう。 それに伴い、若年層を中心に雇用・所得環境の悪化も加速すると予想される。消費者心理の悪化も避けられない。中国ではマンションが完成する前に購入契約を締結し、ローンの返済を始めることが多い(予約販売)。購入したのに遅々として完成しない状況が続けば、返済を拒否する個人は増える。債務返済を急ぎ支出を減らす家計や企業も増え、デフレ圧力は追加的に高まる恐れが高い。 中国経済が負の連鎖から本格的に脱却することは当面、難しいだろう。中央銀行による資金供給などを支えに、中国の23年の新規融資は前年比6.8%増の22兆7500億元(約464兆円)だった。増加した融資の多くは、国有・国営企業などの目先の資金繰り確保などに回ったようだ。 例えば鉄鋼業界では生産能力の過剰が明らかであり、そうした中で融資を積み増すことは経済運営の効率性を高めるよりも、むしろ将来の不良債権予備軍になる恐れが高い。シャドーバンク大手である中植の破産により、投資に依存した中国経済のメカニズムの“逆回転”が加速したと考えられる』、「中国ではマンションが完成する前に購入契約を締結し、ローンの返済を始めることが多い(予約販売)。購入したのに遅々として完成しない状況が続けば、返済を拒否する個人は増える。債務返済を急ぎ支出を減らす家計や企業も増え、デフレ圧力は追加的に高まる恐れが高い。 中国経済が負の連鎖から本格的に脱却することは当面、難しいだろう・・・中国の23年の新規融資は前年比6.8%増の22兆7500億元(約464兆円)だった。増加した融資の多くは、国有・国営企業などの目先の資金繰り確保などに回ったようだ。 例えば鉄鋼業界では生産能力の過剰が明らかであり、そうした中で融資を積み増すことは経済運営の効率性を高めるよりも、むしろ将来の不良債権予備軍になる恐れが高い。シャドーバンク大手である中植の破産により、投資に依存した中国経済のメカニズムの“逆回転”が加速したと考えられる」、大変厳しい事態だ。
次に、1月18日付け東洋経済オンライン「中国「5%成長達成」の裏で習近平が金融界に戒厳令 空振りの「GDPフライング発表」に映る切実」を紹介しよう。
・『不動産不況の長期化やデフレ傾向が懸念された2023年の中国経済。その総仕上げとなるGDP(国内総生産)統計が1月17日の午前11時(日本時間)に公表された。最大の注目点が、実質成長率が「前年比5%前後」という政府目標を超えるかどうかだった。2024年に政府が景気対策にどれだけ踏み込むかの判断材料になるからだ』、「最大の注目点が、実質成長率が「前年比5%前後」という政府目標を超えるかどうかだった」、結果はどうだったのだろう。
・『発表前日に統計データをポロリ ところが、発表前日に思わぬ「フライング」があった。スイスのダボス会議で、李強首相が「中国経済は全般的に回復・改善し、2023年の成長率は5.2%前後になる」とあっさり明かしてしまったのだ。 統計数字の事前流出が望ましくないのは中国でも同じだ。2011年には、国家統計局の官僚が発表前の統計データを漏洩した疑いで取り調べを受けたことが報じられている。「目標は達成できる見通し」とほのめかす程度ならともかく、国家指導者が数字そのものを事前に明かすのは異例だ。 それだけ「超過達成」をアピールしたかったのだと思われる。李首相は大規模な景気刺激策に頼ることなく目標を達成したことを強調し、中国経済は「着実な進歩」を遂げているとした。今後の方向性については「高質量(質の高い)」成長を目指すという。「高質量」は習近平国家主席が最近強調している経済政策のキーワードだ。) 李首相は、ダボス会議に集まった世界の経営者に向かって対外開放政策の継続を約束した。そのうえで、「過去5年間、対中直接投資の収益率は約9%だった。これは国際的にも比較的高い水準にある。中国市場を選択することはリスクではなく、チャンスだ」と強調してみせた。 理由としては、中国の市場の潜在力の高さがあるという。李首相は「中国の中所得層は現在4億人であり、今後10年程度でその数は2倍の8億人になる」「中国の都市化率はまだ先進国の平均より10ポイント以上低い。また、3億人近い農民工が市民権を得るプロセスを加速させており、住宅、教育、医療などに大きな需要をもたらす」などと好材料を列挙してみせた。 中所得層の拡大も都市化率の向上も、中国政府の「営業トーク」の定番だ。いま中国は海外からの投資を切実に求めている。中国の対内直接投資は2023年7~9月期に統計開始以来初めてマイナスを記録した。李首相としては、成長率の「目標達成」を手がかりに中国経済への期待値を上げたいという思惑があったのだろう。 2023年12月中旬に行われた中央経済工作会議では、2024年の方針の一つとして「経済宣伝、世論の誘導を強化し、『中国経済光明論(中国経済の先行き楽観論)』を高らかに謳う」ことが打ち出された。習主席の側近中の側近として知られる李首相は、統計のフライング発表というかたちで世界に向かって「光明」を謳い上げた。 そのメッセージがダボスに集った経営者にどれだけ響いたかはわからないが、株式市場は冷淡だった。中国の代表的な株式指数である上海総合指数は17日の終値で2833.6ポイントと、前日より2%あまり下落した。 GDP統計と同時に公表された2023年1〜12月の不動産開発投資は前年同期比9.6%減となり、1〜11月から下落幅が広がった。成長率の超過達成くらいでは、不動産不況をめぐる投資家の不安はぬぐえない。IMFは2024年の中国経済の成長率を4.2%と予想しており、2025年以降も成長率の低下を見込んでいる』、「李首相は、統計のフライング発表というかたちで世界に向かって「光明」を謳い上げた。 そのメッセージがダボスに集った経営者にどれだけ響いたかはわからないが、株式市場は冷淡だった。中国の代表的な株式指数である上海総合指数は17日の終値で2833.6ポイントと、前日より2%あまり下落した。 GDP統計と同時に公表された2023年1〜12月の不動産開発投資は前年同期比9.6%減となり、1〜11月から下落幅が広がった。成長率の超過達成くらいでは、不動産不況をめぐる投資家の不安はぬぐえない。IMFは2024年の中国経済の成長率を4.2%と予想しており、2025年以降も成長率の低下を見込んでいる」、なるほど。
・『習近平主席が異例の会議を招集 李首相が対外的な広告塔としての役割を果たしていたのとまさに同じ日。習主席の姿は北京の中央党校にあった。共産党の幹部候補を育成するための学校で、習主席も国家副主席時代には校長を兼務していた。 「金融の高質量な発展を推進するための勉強会」と銘打たれたセミナーの開催はGDP関連報道の陰で目立たなかった。だが、集まった顔ぶれは内外の中国金融ウオッチャーを驚かせた。閣僚・省指導者レベル以上の共産党幹部が勢ぞろいする、異例の規模だったからだ。) ひな壇には習主席のほか、共産党最高指導部である常務委員会メンバーが外遊中の李首相をのぞいて全員集合した。金融のような専門性の高い分野で、これほどの動員がかかることは珍しい。 その開幕式で習主席は「中国の金融には国情に適した特色があるべきで、西側の金融モデルとは根本的に異なる」「金融リスク、特にシステミック・リスクの予防と解決に努めるべきだ。金融監督には長い牙とトゲが必要だ」と演説した。尖った言葉づかいから、習主席の危機感の強さが伝わってくる』、「「金融の高質量な発展を推進するための勉強会」と銘打たれたセミナーの開催は・・・だが、集まった顔ぶれは内外の中国金融ウオッチャーを驚かせた。閣僚・省指導者レベル以上の共産党幹部が勢ぞろいする、異例の規模だったからだ・・・「金融リスク、特にシステミック・リスクの予防と解決に努めるべきだ。金融監督には長い牙とトゲが必要だ」と演説した」、なるほど。
・『1100兆円の隠れ債務が大問題 中国経済の矛盾は金融に集約されている。地方政府は不動産(土地使用権)の売却収入で財政をやりくりし、景気対策のためのインフラ投資の原資にもあててきた。その結果、地方政府の資金調達機関である「融資平台」の債務は増加の一途だ。 中国では地方政府の「隠れ債務」といわれるが、その規模はIMF(国際通貨基金)の推計では2022年の時点で57兆元(約1100兆円)に及ぶ。不動産の値下がりは、こうした構造を根底から揺るがすことになる。 不動産不況のもとで金融リスクが拡大しているなか、習政権は国務院(内閣)から権限を奪って共産党への一極集中体制を築き、危機管理を強化しようとしている。党側には、金融リスクの管理に当たるべき専門家への不信もあるようだ。2023年には金融当局や国有銀行幹部の汚職摘発が続いた。 2023年10月には習主席の肝いりで中央金融工作会議が開催され、「金融強国」の建設に向けて共産党の指導を強化する方針が示された。12月の中央経済工作会議を経て、1月には中国人民銀行(中央銀行)も党の方針にしたがって金融緩和とリスク削減を進めると表明している。金融分野へのグリップの強化ぶりは「戒厳令」とでも形容すべきものだ。) 方向性は決まったはずなのに、わざわざ全国から幹部を集めたのは、なぜなのか。中国の金融に詳しい大阪経済大学の福本智之教授(元日本銀行国際局長)は、その意義付けについて「中央金融工作会議の延長線上だが、攻めと守りで金融を強くして、システミックリスクを起こさせないのだというメッセージを伝えたかったのではないか」と分析する。 「攻め」と「守り」のうち、より優先度が高いのは「守り」だろう。「攻め」の内容は中央金融工作会議で宣言された金融強国の建設だ。究極的には、基軸通貨であるドルを握るアメリカに経済の首根っこを押さえられている現状を打破するのが目的だとみられる。かなり長い時間軸での取り組みだ。 一方「守り」では、監督管理の強化とリスク処理メカニズムの確立に強いメッセージを出している。不動産のリスク処理に対してはまだ目立った動きはないが、地方債務への対応に加え、2023年秋から地方金融機関の合併再編が加速している。まさに「いまそこにある危機」を見据えた内容だ』、「中央金融工作会議」で「「守り」では、監督管理の強化とリスク処理メカニズムの確立に強いメッセージを出している。不動産のリスク処理に対してはまだ目立った動きはないが、地方債務への対応に加え、2023年秋から地方金融機関の合併再編が加速している。まさに「いまそこにある危機」を見据えた内容だ」、なるほど。
・『金融リスクの処理は待ったなし 習政権は、金融リスクの処理は待ったなしという意識を強めているとみられる。2024年には地方政府の債務のリストラ、中小金融機関の清算と合併などが一層進む可能性がある。 習主席のリーダーシップのもと、共産党に権限を一元化することで問題処理のスピード感は増しそうだ。ただ、「西側の金融モデルとは根本的に異なる」部分を強調しすぎて市場メカニズムを活かせなくなれば、経済効率の低下を招くだろう。 金融関連で繰り返し同趣旨の会議を開いている裏には、習指導部に対する国務院や地方の抵抗がありそうだ。水面下での主導権争いの激しさをうかがわせる。中長期での経済政策を定める共産党の重要会議「3中全会」は、2023年中に開かれるとみられていたが、まだ開催のメドがたっていない。 外資を呼び込むための「対外開放」の旗印と、危機管理を大義名分とした強権発動を両立できるのか。ダボスで李首相が語った明るい未来と、習主席が示した厳しい現状認識のコントラストは象徴的である。2024年は中国経済にとって大きな分岐点になりそうだ』、「金融関連で繰り返し同趣旨の会議を開いている裏には、習指導部に対する国務院や地方の抵抗がありそうだ。水面下での主導権争いの激しさをうかがわせる・・・外資を呼び込むための「対外開放」の旗印と、危機管理を大義名分とした強権発動を両立できるのか。ダボスで李首相が語った明るい未来と、習主席が示した厳しい現状認識のコントラストは象徴的である。2024年は中国経済にとって大きな分岐点になりそうだ」、さて現実に採用されるのは、どちらなのだろう。
第三に、2月6日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの町田 徹氏による「IMFが指摘する中国経済衰退の「深刻な現実」…習近平体制が立たされている「ヤバい岐路」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/123890?imp=0
・『深刻な下振れリスク 昨年(2023年)の5.4%から転げ落ちるように減速して、28年には3.4%に落ち込む見通しだ――。 国際通貨制度を安定させて世界経済の成長を促すことが目的の国際機関・国際通貨基金(IMF)は先週金曜日(2月2日)、IMF協定の4条に基づく中国との年次協議に関する報告書を公表し、その中で、中国経済が深刻な下振れリスクに直面していると警鐘を鳴らした。 最大の問題点としたのは、遅々として進まない大手不動産デベロッパーの債権処理だ。かねて中国バブル崩壊の火種と目されてきた恒大集団(エバーグランデ)などを念頭に、この部門は「予想を上回る信用収縮を引き起こす懸念があり、民間の需要不足や地方政府の財政ひっ迫といった副作用を招く」というのである。 IMFが描いた中国経済の転落のシナリオと現状をみておきたい。 冒頭でも記したように、本コラムで取り上げる4条協議は、IMF協定の第4条に規定されているルールだ。 経済や金融不安の火種がないか点検するために、通常は年に1回、IMFが、スタッフを加盟各国に派遣して、当該国の経済と金融の情勢をモニタリングすることになっている。その結果を当該国と協議のうえで、採るべき政策を助言するという手続きなのだ。 ただ、協議結果は、スタッフによって4条協議報告書としてまとめられ、IMF理事会に提出される。この理事会で討議され、理事会の公式見解となったものが、当該国の政府に送られるだけでなく、IMFのホームページでもプレスリリースされる仕組みなのだ』、「IMF」は「4条にもとづく年次協議」で、「中国経済が深刻な下振れリスクに直面していると警鐘を鳴らした。 最大の問題点としたのは、遅々として進まない大手不動産デベロッパーの債権処理だ。かねて中国バブル崩壊の火種と目されてきた恒大集団(エバーグランデ)などを念頭に、この部門は「予想を上回る信用収縮を引き起こす懸念があり、民間の需要不足や地方政府の財政ひっ迫といった副作用を招く」というのである」、なるほど。
・『地政学的なリスクも 今回の対中・4条協議報告書はなかなか衝撃的だ。興味のある人は一読してほしい。 今回の要点をまとめておくと、IMFは、去年の中国経済のパフォーマンスについて「新型コロナウイルス感染症危機から脱却して回復軌道を辿り、実質GDPは国家目標の5.4%成長をほぼ達成した」と一定の評価を与えた。その回復の原動力は、「主に内需、特に民間消費であり、金融緩和や法人と家計に対する減税、災害に伴う財政の救済策なども後押しした」と説明している。 半面、今年(2024年)以降の先行きについては、「不確実性が高い。既存の不均衡と関連する脆弱性があり、特に注意が必要だ」と強く警鐘を鳴らした。リスク要因としては、「不動産セクターでの予想以上の収縮が、さらなる民間需要の減少や、地方政府の財政のひっ迫」などを招きかねないと強調した。中国の高齢化のほか、「(米中摩擦に伴う)外需の低迷や、(台湾海峡などの)地政学的な緊張の高まりなども大きな下方リスクをもたらす」とも記したのである。 こうした前提に基づき、不動産セクターの債権処理の加速によって、リスクの現実化を回避したうえで、民間の設備投資などの刺激に繋げていくよう迫っている。 ちなみに、4条協議報告書に記された試算によると、中国の実質GDPの成長率は。2024年が4.6%、25年が4.0%、26年が3.8%、27年が3.6%、28年が3.4%と5年連続で急ピッチに低下していくことになっている』、「中国の実質GDPの成長率は。2024年が4.6%、25年が4.0%、26年が3.8%、27年が3.6%、28年が3.4%と5年連続で急ピッチに低下していくことになっている」、なるほど。
・『「失われた30年」を彷彿 今回の対中・4条協議報告は、既視感のあるシナリオだ。1989年末の証券・不動産バブル崩壊に伴って膨れ上がった銀行の不良債権の処理に手間取り、「失われた30年」などと呼ばれた長い経済不振を経験してきた日本の経済史を彷彿させるからだ。 とはいえ、あのIMFが、このタイミングで、中国経済が依然として歴史的な窮地を抜け出していないという危機感を露わにしたことも見逃せない。 ここで、視点を、中国の不動産デベロッパーの現状に移してみよう。外電によると、香港の高等法院(高裁)は先月(1月)29日、経営再建中の不動産デベロッパー大手「中国恒大集団」に対し、実質的な法的整理命令に当たる「清算命令」を発出した。 振り返れば、中国恒大の経営破綻が浮き彫りになったのは2021年9月のことだ。経営が自ら「未曽有の危機にある」と破綻寸前に陥っていることを認めたのを手始めに、同年末には広東省が監視チームを会社に送ったり、同じ時期に米ドル建て債の利息を支払えず、格付け会社が相次いで「部分的債務不履行」(デフォルト)に陥ったと認定したりもした。中国政府が経営への全面的な関与を打ち出して破綻そのものは回避してきたものの、膨大な債務の整理は遅々として進まず、2年4カ月ほどの月日は無駄に流れた。その間に、事態は深刻さ増してきたのだ。 香港高等法院に「清算命令」の発出を求めたのも、債権処理の遅れに苛立った海外の債権者(投資ファンド)だった。申し立ては2022年6月のことだったが、会社が命令を回避しようと、判決の期日が近付くと新たな債務再編案の提示を繰り返し、裁判所に結論を先送りさせてきた。 今回は万策尽きたと裁判所がついに判断した。今後は、裁判所が任命する管財人のもとで債務の整理が始まることになる。 とはいえ、事態は流動的だ。一般的に、香港は中国本土より債務の整理が進みやすいとされている。中国本土は、法的な債務の整理制度が十分に整備されていないうえ、司法判断そのものが当局の意向に振り回されがちだからだ。これが、海外債権者が香港での手続きを切望した理由でもある。 しかし、恒大集団の資産の9割は中国本土にあるとされている。当局の姿勢も不明確だ。今回も手続きが難航して時間を浪費する懸念は強い。そうなれば、会社が解散になり、再建の道が完全に閉ざされるリスクもある』、「債権処理の遅れに苛立った海外の債権者(投資ファンド)だった。申し立ては2022年6月のことだったが、会社が命令を回避しようと、判決の期日が近付くと新たな債務再編案の提示を繰り返し、裁判所に結論を先送りさせてきた。 今回は万策尽きたと裁判所がついに判断した。今後は、裁判所が任命する管財人のもとで債務の整理が始まることになる。 とはいえ、事態は流動的だ。一般的に、香港は中国本土より債務の整理が進みやすいとされている。中国本土は、法的な債務の整理制度が十分に整備されていないうえ、司法判断そのものが当局の意向に振り回されがちだからだ。これが、海外債権者が香港での手続きを切望した理由でもある・・・恒大集団の資産の9割は中国本土にあるとされている。当局の姿勢も不明確だ。今回も手続きが難航して時間を浪費する懸念は強い。そうなれば、会社が解散になり、再建の道が完全に閉ざされるリスクもある」、なるほど。
・『「不良債権処理に100兆円」 以前にも本コラムで指摘したが、中国にとって厄介なのは、恒大集団が氷山の一角に過ぎないことだ。 不動産デベロッパー各社の負債額は、文字通り、天文学的なレベルに膨らんでいる。いずれも2022年末の数字だが、最も負債の多い恒大が2兆4374億元(約48兆7480億円)を抱えて、債務超過に喘いでいる。以下、主な大手デベロッパーの負債額は、多い順に、碧桂園が1兆4349元(約28兆6980億円)、万科企業が1兆3521元(約27兆0420億円)、緑地控股が1兆2010元(約24兆0200億円)、保利発展控股集団が1兆1483元(約22兆9660億円)といった具合だ。 バブル崩壊後、日本の銀行は2005年3月期までの12年間に、不良債権処理に実に96兆4199億円を費やした。俗に、「不良債権処理に100兆円」と言われた所以だ。 これに対し、中国の不動産デベロッパーは大手6社だけで150兆円を超す負債を抱えている。全体でどれぐらいの負債が不良債権化しているのかは、信頼に足るデータがなお提供されておらず、見当もつかないのが現状だ。 ただ、6社では、恒大集団に続き、上海市政府系の緑地控股集団が昨年7月、碧桂園が昨年10月にそれぞれ、米ドル建て債で債務不履行を引き起こした。 いずれにせよ、中国の不動産デベロッパー大手が揃って大規模な債務整理を余儀なくされていることは間違いない。 あわせて、決して見逃すことができないのは、不動産デベロッパーに巨額の資金のつなぎ融資をしてきた金融セクター、特にシャドウバンキング(影の銀行)の経営への影響だ。シャドウバンキングが、短期金融商品の体裁で富裕層や法人顧客から集めた資金の利払いや償還が滞り、消費や投資の足を引っ張る信用収縮を招いている。 また、不動産デベロッパーの不振が地方政府の財政を圧迫してきた問題も深刻だ。というのは、お国柄だが、土地の私有を認めていない中国では、地方政府にとって土地使用権の売却収入が税収と並ぶ収入の柱になってきたからだ。この財政ひっ迫は、地方のインフラ投資資金を細らせるほか、行政サービスの低下や地方振興策の停滞に繋がっている。 一連の惨状を見れば、IMFが今回の対中・4条協議報告書で迫った不動産デベロッパーセクターに対する「断固たる政策行動」が今後の中国経済の行方を左右するポイントであることは明らかだ。 中国の習近平体制は当初、拡大した貧富の格差を是正すると主張、銀行による不動産デベロッパー向け融資規制を強化するなど中国版バブル潰しに動いた。 ところが、事態が深刻化すると、一転して不動産デベロッパーに対する政府の管理を強め、延命に走り、結果として抜本的な債務整理の断行を阻んできた。 こうした混乱の背景には、断固たる債務整理が短期的に大きく景気の足を引っ張る懸念があるうえ、居住目的で住宅用不動産を購入した消費者が物件の引き渡しを受けられない事態が頻発すれば、共産党の統治に対する国民の反発が高まりかねないとの判断があるという。 しかし、IMFが改めて指摘したように、断固たる措置をとらずに中途半端な不動産デベロッパーの延命を続ければ、中期的な経済成長率の大幅鈍化は避けられない。中国経済は岐路に直面している』、「IMFが改めて指摘したように、断固たる措置をとらずに中途半端な不動産デベロッパーの延命を続ければ、中期的な経済成長率の大幅鈍化は避けられない。中国経済は岐路に直面している」、確かに舵取りが難しい「岐路」に「直面」しているようだ。
タグ:東洋経済オンライン (その19)(「中国政府が救う神話」崩壊の衝撃!中国“影の銀行”が債務超過5兆円で破綻…波紋は?、中国「5%成長達成」の裏で習近平が金融界に戒厳令 空振りの「GDPフライング発表」に映る切実、IMFが指摘する中国経済衰退の「深刻な現実」…習近平体制が立たされている「ヤバい岐路」) 中国経済 真壁昭夫氏による「「中国政府が救う神話」崩壊の衝撃!中国“影の銀行”が債務超過5兆円で破綻…波紋は?」 「中国政府は、投資家の保護や金融システムの健全化などを強化しなかった。その結果、中植は破産に追い込まれた。政府の経済政策、金融行政に対する国民の不安は高まり、景気の本格的な回復には相当の時間が必要との懸念が、一段と上昇した。 今後、中国では、「信託商品」(不動産向けローンなどを投資信託に仕立てた金融商品)と呼ばれる、高利回りの投資商品を売却する投資家が増加するだろう。 バブル膨張期と反対に、「売るから下がる、下がるから売る」という負の連鎖が加速する可能性があり、投資に依存してきた中国経済は一段と厳しくなるはずだ」、なるほど。 「ピーク時、信託商品への資金流入が増加したことで、中植の運用資産規模は約20兆円に膨れ上がった。群集心理が膨張する中、中植は、不動産市況の上昇でビジネスを拡大できると“コントロール・イリュージョン”(自分たちがマーケットを支配しているという過度な全能感)を強めた・・・中植傘下の中融国際信託は、不動産関連の債券の価格が“割安”と判断し、経営が悪化した不動産企業への貸し付けを増やした。中融国際は、急速に経営状態が悪化した中国恒大集団(エバーグランデ・グループ)などからも資産を買い取った。 しかし、中植の予想に反して中国の不動産市況は悪化した。中植の不良債権は急増し、資金繰りは急速に悪化。グループ企業が設定・運用した信託商品のデフォルトも発生し、23年8月、一部顧客は返金を求める抗議活動を起こした」、なるほど。 「国家金融監督管理総局(NFRA)は信託会社などへの監督を厳格化した。 ただ、中国政府は、資金繰りが悪化したシャドーバンク企業に公的資金を注入し、投資家を守るところまでは踏み込まなかった。中植の顧客の多くが富裕層であったため、同社の破産は金融システムに深刻な影響を与えないと判断したのかもしれない。 中植は、返済能力を欠いたまま放置された。破産をきっかけに、暗黙の政府保証への懸念は高まった。政府の対応の遅さを改めて認識する主要投資家は増えている」、なるほど。 「中国ではマンションが完成する前に購入契約を締結し、ローンの返済を始めることが多い(予約販売)。購入したのに遅々として完成しない状況が続けば、返済を拒否する個人は増える。債務返済を急ぎ支出を減らす家計や企業も増え、デフレ圧力は追加的に高まる恐れが高い。 中国経済が負の連鎖から本格的に脱却することは当面、難しいだろう・・・中国の23年の新規融資は前年比6.8%増の22兆7500億元(約464兆円)だった。増加した融資の多くは、国有・国営企業などの目先の資金繰り確保などに回ったようだ。 例えば鉄鋼業界では生産能力の過剰が明らかであり、そうした中で融資を積み増すことは経済運営の効率性を高めるよりも、むしろ将来の不良債権予備軍になる恐れが高い。シャドーバンク大手である中植の破産により、投資に依存した中国経済のメカニズムの“逆回転”が加速したと考えられる」、大変厳しい事態だ。 東洋経済オンライン「中国「5%成長達成」の裏で習近平が金融界に戒厳令 空振りの「GDPフライング発表」に映る切実」 「最大の注目点が、実質成長率が「前年比5%前後」という政府目標を超えるかどうかだった」、結果はどうだったのだろう。 「李首相は、統計のフライング発表というかたちで世界に向かって「光明」を謳い上げた。 そのメッセージがダボスに集った経営者にどれだけ響いたかはわからないが、株式市場は冷淡だった。中国の代表的な株式指数である上海総合指数は17日の終値で2833.6ポイントと、前日より2%あまり下落した。 GDP統計と同時に公表された2023年1〜12月の不動産開発投資は前年同期比9.6%減となり、1〜11月から下落幅が広がった。成長率の超過達成くらいでは、不動産不況をめぐる投資家の不安はぬぐえない。IMFは2024年の中国経 済の成長率を4.2%と予想しており、2025年以降も成長率の低下を見込んでいる」、なるほど。 「「金融の高質量な発展を推進するための勉強会」と銘打たれたセミナーの開催は・・・だが、集まった顔ぶれは内外の中国金融ウオッチャーを驚かせた。閣僚・省指導者レベル以上の共産党幹部が勢ぞろいする、異例の規模だったからだ・・・「金融リスク、特にシステミック・リスクの予防と解決に努めるべきだ。金融監督には長い牙とトゲが必要だ」と演説した」、なるほど。 「中央金融工作会議」で「「守り」では、監督管理の強化とリスク処理メカニズムの確立に強いメッセージを出している。不動産のリスク処理に対してはまだ目立った動きはないが、地方債務への対応に加え、2023年秋から地方金融機関の合併再編が加速している。まさに「いまそこにある危機」を見据えた内容だ」、なるほど。 ・『金融リスクの処理は待ったなし 習政権は、金融リスクの処理は待ったなしという意識を強めているとみられる。2024年には地方政府の債務のリストラ、中小金融機関の清算と合併などが一層進む可能性がある。 習主席のリーダーシップのもと、共産党に権限を一元化することで問題処理のスピード感は増しそうだ。ただ、「西側の金融モデルとは根本的に異なる」部分を強調しすぎて市場メカニズムを活かせなくなれば、経済効率の低下を招くだろう。 金融関連で繰り返し同趣旨の会議を開いている裏には、習指導部に対する国務院や地方の抵抗がありそうだ。水面下での主導権争いの激しさをうかがわせる。中長期での経済政策を定める共産党の重要会議「3中全会」は、2023年中に開かれるとみられていたが、まだ開催のメドがたっていない。 外資を呼び込むための「対外開放」の旗印と、危機管理を大義名分とした強権発動を両立できるのか。ダボスで李首相が語った明るい未来と、習主席が示した厳しい現状認識のコントラストは象徴的である。2024年は中国経済にとって大きな分岐点になりそうだ』、「金融関連で繰り返し同趣旨の会議を開いている裏には、習指導部に対する国務院や地方の抵抗がありそうだ。水面下での主導権争いの激しさをうかがわせる・・・外資を呼び込むための「対外開放」の旗印と、危機管理を大義名分とした強権発動を両立できるのか。ダボスで李首相が語った明るい 未来と、習主席が示した厳しい現状認識のコントラストは象徴的である。2024年は中国経済にとって大きな分岐点になりそうだ」、さて現実に採用されるのは、どちらなのだろう。 現代ビジネス 町田 徹氏による「IMFが指摘する中国経済衰退の「深刻な現実」…習近平体制が立たされている「ヤバい岐路」」 「IMF」は「4条にもとづく年次協議」で、「中国経済が深刻な下振れリスクに直面していると警鐘を鳴らした。 最大の問題点としたのは、遅々として進まない大手不動産デベロッパーの債権処理だ。かねて中国バブル崩壊の火種と目されてきた恒大集団(エバーグランデ)などを念頭に、この部門は「予想を上回る信用収縮を引き起こす懸念があり、民間の需要不足や地方政府の財政ひっ迫といった副作用を招く」というのである」、なるほど。 「中国の実質GDPの成長率は。2024年が4.6%、25年が4.0%、26年が3.8%、27年が3.6%、28年が3.4%と5年連続で急ピッチに低下していくことになっている」、なるほど。 「債権処理の遅れに苛立った海外の債権者(投資ファンド)だった。申し立ては2022年6月のことだったが、会社が命令を回避しようと、判決の期日が近付くと新たな債務再編案の提示を繰り返し、裁判所に結論を先送りさせてきた。 今回は万策尽きたと裁判所がついに判断した。今後は、裁判所が任命する管財人のもとで債務の整理が始まることになる。 とはいえ、事態は流動的だ。一般的に、香港は中国本土より債務の整理が進みやすいとされている。 中国本土は、法的な債務の整理制度が十分に整備されていないうえ、司法判断そのものが当局の意向に振り回されがちだからだ。これが、海外債権者が香港での手続きを切望した理由でもある・・・恒大集団の資産の9割は中国本土にあるとされている。当局の姿勢も不明確だ。今回も手続きが難航して時間を浪費する懸念は強い。そうなれば、会社が解散になり、再建の道が完全に閉ざされるリスクもある」、なるほど。 「IMFが改めて指摘したように、断固たる措置をとらずに中途半端な不動産デベロッパーの延命を続ければ、中期的な経済成長率の大幅鈍化は避けられない。中国経済は岐路に直面している」、確かに舵取りが難しい「岐路」に「直面」しているようだ。
中国経済(その19)(中国が臭いものにフタ?若年失業率の公表「突然中止」で中国経済不信が止まらない、習近平 まさかの「愚策」…!ついに政府が認めた「不動産バブル」のヤバすぎる実態と「経済見殺し政策」の悲惨な中身、習近平の悪手が止まらない…!悲惨さを増す「EV墓場」の実態と 「中国大恐慌」のトリガーを引く「経済見殺し政策」のヤバすぎる中身) [世界経済]
中国経済については、本年8月31日に取上げた。今日は、(その19)(中国が臭いものにフタ?若年失業率の公表「突然中止」で中国経済不信が止まらない、習近平 まさかの「愚策」…!ついに政府が認めた「不動産バブル」のヤバすぎる実態と「経済見殺し政策」の悲惨な中身、習近平の悪手が止まらない…!悲惨さを増す「EV墓場」の実態と 「中国大恐慌」のトリガーを引く「経済見殺し政策」のヤバすぎる中身)である。
先ずは、9月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「中国が臭いものにフタ?若年失業率の公表「突然中止」で中国経済不信が止まらない」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328656
・『人民元の下落が止まらない。一部では「年末までにさらに下落し、歴史的安値になる」との観測も。中国人民銀行は、為替介入などで対策しているものの、今のところ目立った効果はない。8月、共産党政権は推計方法の改善を理由に、若年層の失業率の公表を一時中止したが、「公表できないほど中国経済は悪化している」との見方が広まった。中国経済の構造問題を、世界の投資家はシビアに見ている』、「若年層の失業率の公表を一時中止」、やはり中国経済の実態は予想以上に酷いようだ。
・『中国・人民元の下落に歯止めがかからない 8月以降、人民元の下落に歯止めがかからない。中央銀行である中国人民銀行は、為替介入などで人民元安に歯止めをかけようとしているものの、今のところ目立った効果はない。共産党政権が人民元安を食い止める姿勢は強いとの見方がある一方、足元では海外投資家の売りによって人民元に先安観があり、不安定さは払拭できていない。 人民元下落の背景には、中国経済の閉塞感が日増しに強くなっていることがある。中国経済の高成長を支えたメカニズム(経済構造)は限界を迎えている。不動産バブルは崩壊に向かいつつあり、それに伴い、高金利の信託商品や理財商品のデフォルト懸念が上昇している。 また、半導体分野における米中対立や地政学リスクの上昇、人件費上昇など複数の要因が絡み合い、中国が誇った「世界の工場」としての地位は低下した。 習近平政権は、何よりもまず不良債権処理を進める必要があるはずだが、今のところ、当該分野での進展は限定的だ。これでは、成長期待の高い分野にヒト・モノ・カネをうまく回すことは難しい。習政権にとって、中国経済の構造問題を解決に向かわせることが喫緊の課題であり、何よりそのスピード感が求められる。今後の展開次第では、人民元の下落が一段と進み、中国発の世界的なリスクオフが進むことも考えられる』、「人民元下落の背景には、中国経済の閉塞感が日増しに強くなっていることがある。中国経済の高成長を支えたメカニズム(経済構造)は限界を迎えている。不動産バブルは崩壊に向かいつつあり、それに伴い、高金利の信託商品や理財商品のデフォルト懸念が上昇している。 また、半導体分野における米中対立や地政学リスクの上昇、人件費上昇など複数の要因が絡み合い、中国が誇った「世界の工場」としての地位は低下した」、なるほど。
・『若年層失業率を公表できないほど経済悪化? 2023年初来からの人民元の推移を振り返ってみよう。2月頃までは米金利の上昇によって、人民元への売り圧力が高まったとみられる。その後、ドル金利の上昇だけで説明が付きにくい人民元売りが続き、5月上旬から6月下旬にかけて人民元は1ドル=6.9ドル台から7.26元台に下落した。 7月、共産党政権は通貨安に対応するため、中国人民銀行の総裁に潘功勝氏を任命した。同氏は、易綱前総裁と同じく党内の序列は低いものの、海外の金融機関での勤務経験を持ち海外投資家の動向に明るいとみられていた。習政権は、相対的に海外経験が豊富でグローバルな金融実務に精通した人物を中銀トップに置き、主要投資家への配慮を示そうとしたのだろう。新総裁の金融政策を見極めたいとの思惑も加わり、7月上旬、人民元の売り圧力はやや弱まった。 しかし、それはごく一時的だった。7月下旬以降、人民元の下落圧力は強まった。不動産開発大手の碧桂園(カントリー・ガーデン)や、恒大集団(エバーグランデ)の経営不安が上昇したからだ。債務不履行への懸念が、信託商品や理財商品のデフォルトリスクを急上昇させた。一部の信託商品は実際にデフォルトしデモも起きた。 8月15日、共産党政権は推計方法の改善を理由に、若年層の調査失業率の公表を一時中止すると発表した。「公表できないほど中国経済は悪化し、かなり厳しい状況に追い込まれている」との見方が広まり、同日、人民元は1ドル=7.30元台に下落した。 その後、習政権は国有銀行に為替介入(人民元の買い支え)を強化するよう指示した。一部の銀行に対し、海外投資を控えるよう指導したとも報じられた。売り圧力は中国の共産党政権が影響力を強める香港ドルにも波及した』、「7月下旬以降、人民元の下落圧力は強まった。不動産開発大手の碧桂園・・・や、恒大集団・・・の経営不安が上昇したからだ。債務不履行への懸念が、信託商品や理財商品のデフォルトリスクを急上昇させた。一部の信託商品は実際にデフォルトしデモも起きた)、なるほど。
・『深刻化する中国経済が抱える構造問題 人民元下落の背景として、経済成長を支えたメカニズムの機能不全が起きていることがある。中国のGDPの需要項目を見ると、投資(総資本形成)の割合は、個人や政府の消費を上回る。これまで、中国経済は投資の増加によって高い成長を実現してきた。 ところが、不動産バブルが崩壊に向かい不動産投資による成長は難しくなった。これまで地方政府は、不動産開発業者に土地の利用権を売却し、歳入を確保してきたし、共産党政権もマンションの供給増加を支援してきた。世界的な低金利の長期化も、不動産価格上昇への期待を支えた。投機熱も盛り上がり、カントリー・ガーデンなどの開発企業は借り入れによって建設を増やした。 こうした不動産投資の増加が、生産、雇用と所得の機会、地方政府の税収などを支えた。産業補助金政策も強化され、企業の設備投資が活発になり、インフラ投資も増えた。コロナ禍が発生するまで、投資を出発点に中国経済は高い成長を実現してきたわけだ。 中国全土の工業化も00年代以降、加速した。農村部から沿海部の工業地帯へ、安価で豊富な労働力が供給された。海外企業からの技術移転も加速し、中国は世界の工場の地位を確立。リーマンショック後は、世界最大の消費市場としての重要性も高まり、海外からの対中直接投資も増えた。 しかし、20年8月の「3つのレッドライン」(注)をきっかけに、不動産バブルは崩壊に向かい始めた。不動産業界、地方政府の債務問題は深刻化し、理財商品などがデフォルトする懸念が高まった。「理財商品には政府の“暗黙の保証”が付いている」といった個人投資家の思い込みは強く、それもあってなおさら理財商品や信託商品市場の悪化が、共産党政権の求心力の低下につながるとみられている。 また、米中対立や、台湾辺境の緊迫感が上昇するなどの地政学リスク、人件費高騰などを背景に、グローバル企業は脱中国の動きを見せるようになった。産業支援策が強化されている別の国や、人件費が安いインドやベトナムなどに生産拠点を移す多国籍企業が増えている。この点も、中国の雇用や所得環境の悪化につながっている』、「20年8月の「3つのレッドライン」をきっかけに、不動産バブルは崩壊に向かい始めた。不動産業界、地方政府の債務問題は深刻化し、理財商品などがデフォルトする懸念が高まった。「理財商品には政府の“暗黙の保証”が付いている」といった個人投資家の思い込みは強く、それもあってなおさら理財商品や信託商品市場の悪化が、共産党政権の求心力の低下につながるとみられている」、なるほど。
(注)3つのレッドライン:中国政府が2020年8月、不動産大手企業に対し、財務指標で規制(エコノミストOnline)。
・『高まる中国発の世界的なリスクオフの懸念 8月25日、米ジャクソンホール会合での講演で、FRBのパウエル議長が「インフレ率は高すぎ、追加利上げの用意がある」と発言した。目先、米中の金利差の拡大などを背景に、人民元の為替レートの不安定感は高まる可能性がある。 共産党政権の政策スタンスも懸念材料だ。現在、中国の年金や医療など、社会保障制度に対する国民の不安は徐々に高まっているようだ。そうした状況下、習政権は金融緩和によって不動産企業や、地方政府傘下の融資平台(LGFV)などの投資会社の借り入れを支援し、経済環境の悪化を食い止めようとしている。 今のところ、金融緩和政策の効果は顕在化していない。むしろ、債務問題は深刻化しそうだ。習政権は不良債権処理や構造改革に関する踏み込んだ政策を発表していない。経済よりも政治基盤の強化を重視しているようにもみえる。 債務問題が深刻化すると、支出を減らして負債の返済を急ぐ企業や国民が増えるだろう。バランスシート調整(資産価格が大幅に下落した場合、その後の経済主体の支出活動が抑圧されるプロセスのこと)へのプレッシャーが強まり、デフレ経済が深刻化する可能性は高い。 それが現実になると、わが国やドイツ、アジア新興国などの対中輸出に少なからぬ影響が出るだろう。世界全体でも、経済成長率が低下する懸念が高まる。主要投資家も企業経営者も、リスク回避的な行動を取るようになるだろう。 そのタイミングで、中国経済が一段と低迷するようだと、中国株を売却する主要投資家は増え、人民元はさらに下落することが想定される。そして今後の展開次第では、世界の株式、低格付けを中心とする債券、米国の商業用不動産、新興国通貨、中国が一定需要を占める銅や鉄鉱石、原油などの価格が下落する恐れが高まる。そうなると世界経済の先行き不透明感は急上昇する。 人民元の下落をきっかけに、世界的にリスクオフが発生する可能性は無視できない』、「現在、中国の年金や医療など、社会保障制度に対する国民の不安は徐々に高まっているようだ。そうした状況下、習政権は金融緩和によって不動産企業や、地方政府傘下の融資平台(LGFV)などの投資会社の借り入れを支援し、経済環境の悪化を食い止めようとしている。 今のところ、金融緩和政策の効果は顕在化していない。むしろ、債務問題は深刻化しそうだ。習政権は不良債権処理や構造改革に関する踏み込んだ政策を発表していない。経済よりも政治基盤の強化を重視しているようにもみえる・・・債務問題が深刻化すると、支出を減らして負債の返済を急ぐ企業や国民が増えるだろう。バランスシート調整・・・へのプレッシャーが強まり、デフレ経済が深刻化する可能性は高い・・・人民元の下落をきっかけに、世界的にリスクオフが発生する可能性は無視できない」、恐ろしいシンリオだ。
次に、10月10日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「習近平、まさかの「愚策」…!ついに政府が認めた「不動産バブル」のヤバすぎる実態と「経済見殺し政策」の悲惨な中身」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/117447?imp=0
・『中国の長期停滞は、マジでヤバい 中国が日本の「失われた30年」のように長期停滞へ入ろうとしている。 それは、世界の経済学者から「日本化だ」と指摘されるが、ここにきて「日本化」どころではない、さらにひどい状況に陥りそうだと言われ始めている。 日本では、80年代バブルの崩壊後に長期停滞入りしデフレに見舞われた。しかし、低成長期には物価が安定し、ロストジェネレーションと呼ばれる世代を生みだしたとはいえ、社会は比較的混乱の少ない時代だった。 一方の中国では日本のようなデフレ耐性がなく、社会混乱を招くと懸念されている。 昨今ようやく改善が見えはじめた経済指標だが、それでも不安は尽きないのだ』、「世界の経済学者から「日本化だ」と指摘されるが、ここにきて「日本化」どころではない、さらにひどい状況に陥りそうだと言われ始めている・・・中国では日本のようなデフレ耐性がなく、社会混乱を招くと懸念されている」、恐ろしいことだ。
・『経済指標の改善は「期待外れ」に終わる 景気後退の懸念が高まる中国だが、このところ経済指標の改善が続いている。 中国国家統計局が9月30日に発表した9月の製造業購買担当者指数(PMI)は50.2となり、景気拡大・悪化の分かれ目となる50を6が月ぶりに上回った。8月の工業利益も大幅に増加し、輸出のマイナス幅も縮小した。消費者物価指数(CPI)も前年比0.1%増となり、デフレ圧力が若干緩和したと言われている。 不動産市場にも改善の兆しが出ている。 民間不動産調査企業によれば、政府の支援策の効果もあって、9月の新築住宅価格は5ヵ月ぶりに上昇し、住宅販売額の減少率も縮小したという。 これらを受けて市場関係者の間では「中国経済は最悪期を脱した」との観測が出ているが、筆者は「期待外れに終わる可能性が高い」と考えている。 中国経済の屋台骨を担ってきた不動産市場の闇が、とてつもなく深いからだ』、「市場関係者の間では「中国経済は最悪期を脱した」との観測が出ているが、筆者は「期待外れに終わる可能性が高い」と考えている。 中国経済の屋台骨を担ってきた不動産市場の闇が、とてつもなく深いからだ」、なるほど。
・『中国「不動産バブル」が長期停滞のトリガー 中国国家統計局の元高官は9月23日「(現在国内にあるマンションの空室や空き家について)中国の人口14億人でさえ全てを埋めることが不可能だ」との見方を示した。 中国における不動産の過剰供給はかねてから知られていたが、政府関係者がこのことを追認したことの意味は大きいだろう。不動産業界全体を苦境に陥れた中国恒大集団の再建の道筋もいまだ立っていない。 それどころか、創業者の許家印会長が犯罪に関与した疑いで警察の監視下に置かれるという異常事態となっている。 「中国経済の日本化」という指摘は、不動産バブルの崩壊が災いして長期不況に陥るリスクが生じているという懸念から生じたものだ。だが、ここに来て「『日本化』すら達成できないのではないか」との危惧の念が高まっている』、「「中国経済の日本化」という指摘は、不動産バブルの崩壊が災いして長期不況に陥るリスクが生じているという懸念から生じたものだ。だが、ここに来て「『日本化』すら達成できないのではないか」との危惧の念が高まっている」、なるほど。
・『「日本より、もっと悪くなる」 このことを最初に述べたのはノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏だ。同氏は7月25日に公開されたニューヨーク・タイムズへの寄稿文の中で「中国は日本のようにはならない。もっと悪くなるだろう」と述べている。 日本経済を長年ウオッチしてきたイエスパー・コール氏も同意見だ。 「バブル崩壊後の日本は高成長を続ける中国への輸出拡大で恐慌を回避できたが、今の中国には輸出拡大が期待できる国が見当たらない」というのがその理由だ(9月29日付日本経済新聞)。 膨大な需要が高まり輸出で自国経済を維持する装置が中国には見当たらない…。事態は最悪の状況に向かいつつある。) しかし、筆者はこうした状況を放置し、景気対策に後ろ向きな中国政府の姿勢に、長期停滞の最大の要因があると考えている。 それは「経済見殺し政策」と言っても過言ではない最低の悪手である。 後編『習近平の悪手が止まらない…!悲惨さを増す「EV墓場」の実態と、「中国大恐慌」のトリガーを引く「経済見殺し政策」のヤバすぎる中身』にて、その状況をじっくりと解説していこう』、「「バブル崩壊後の日本は高成長を続ける中国への輸出拡大で恐慌を回避できたが、今の中国には輸出拡大が期待できる国が見当たらない」というのがその理由だ(9月29日付日本経済新聞)」、なるほど。「筆者はこうした状況を放置し、景気対策に後ろ向きな中国政府の姿勢に、長期停滞の最大の要因があると考えている。 それは「経済見殺し政策」と言っても過言ではない最低の悪手である」、同感である。
第三に、この続きを、10月10日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「習近平の悪手が止まらない…!悲惨さを増す「EV墓場」の実態と、「中国大恐慌」のトリガーを引く「経済見殺し政策」のヤバすぎる中身」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/117448?imp=0
・・・・『習近平のヤバすぎる「妄想」 1990年代の日本政府は、景気下支えのために大規模な景気刺激策を打ち続けたが、中国政府は需要を喚起する景気刺激策を講ずる気配を一向に見せていない。 政府関係者の間でも、「大規模な財政出動が必要」との声が出てきている(9月19日付日本経済新聞)のにもかかわらずに、である。 その原因として挙げられるのは、「習近平国家主席が2008年に実施された4兆元規模の景気刺激策のことを苦々しく思っている」との見立てだ。 習氏の景気刺激策に対する評価は、「中国の国民は苦労せずに資金を得ることばかりを考える『パラサイト(寄生虫)』になった。社会全体に浪費と汚職が蔓延し、巨額の債務だけが残った」という散々なものだからだ(9月27日付ニューズウイーク日本版)。) 輸出拡大も期待できず、政府の下支えがなければ、中国経済が深刻なデフレに陥るのは時間の問題だろう。 日本は長期にわたりデフレに苦しんだが、賃金が上がらなくても労働意欲の目立った低下はなく、幸いなことに、社会全体に深刻な混乱が起きることはなかった。日本には「デフレ耐性」があったというわけだが、中国にこのような耐性があるとは思えない(9月28日付日本経済新聞)』、「習氏の景気刺激策に対する評価は、「中国の国民は苦労せずに資金を得ることばかりを考える『パラサイト(寄生虫)』になった。社会全体に浪費と汚職が蔓延し、巨額の債務だけが残った」という散々なものだからだ・・・。) 輸出拡大も期待できず、政府の下支えがなければ、中国経済が深刻なデフレに陥るのは時間の問題だろう・・・日本には「デフレ耐性」があったというわけだが、中国にこのような耐性があるとは思えない」、なるほど。
・『中国「EV墓場」問題がさらに深刻になる 足元の動向で気になるのは、資金繰りに窮した地方政府が庶民の懐を圧迫し始めていることだ。地方政府は資金の確保に焦るあまり、意味不明の罰金や違反切符を科していることが問題になっている(9月27日付BUSINESS INSIDER JAPAN)。 筆者は以前のコラムで「電気自動車(EV)の大量廃棄(EV墓場)」を取り上げたが、この問題はさらに深刻化しそうな気配だ。) 9月21日付中国新聞週刊は「中国各地のEV充電スタンドの料金が2倍となり、EVを手放す所有者が出始めている」と報じた。値上げの原因は、電気料金そのものではなく、充電サービスのための料金だ。 充電サービス料金は「設備の運営費用を賄うために充当される」とされているが、カネ不足に悩む地方政府が「取れるところから取る」とばかりに理不尽な値上げを実施しているのかもしれない。 日々の生活が苦しくなっている中、「お上」の搾取にあえぐ人々の不満は高まるばかりだろうが、これに対し、中国政府は思想や行動に対する「引き締め」のさらなる強化で乗り切ろうとしている』、「「中国各地のEV充電スタンドの料金が2倍となり、EVを手放す所有者が出始めている」と報じた。値上げの原因は、電気料金そのものではなく、充電サービスのための料金だ。 充電サービス料金は「設備の運営費用を賄うために充当される」とされているが、カネ不足に悩む地方政府が「取れるところから取る」とばかりに理不尽な値上げを実施しているのかもしれない・・・カネ不足に悩む地方政府が「取れるところから取る」とばかりに理不尽な値上げを実施しているのかもしれない。 日々の生活が苦しくなっている中、「お上」の搾取にあえぐ人々の不満は高まるばかりだろうが、これに対し、中国政府は思想や行動に対する「引き締め」のさらなる強化で乗り切ろうとしている』、「経済」を軽視する「習近平」ならやりかねない。
・『犯罪の増加が止まらない…! 中国政府は「我が国の犯罪率は世界最低水準だ」と豪語しているが、刑事裁判で審理された人数が2001年の約74万人から2021年には170万人超に急増したという「不都合な真実」がある。 中国政府は近年、国防費を上回る予算を社会秩序維持のために投じているが、犯罪者数の増加は止まらない。刑務所も過密化し、再犯を防ぐ更生の役割を果たせていない有様だ(9月30日付共同通信)。 治安悪化に歯止めがかからない状態の下で深刻なデフレが発生すれば、耐性を持たない中国社会は大混乱に陥ってしまうのではないだろうか。 さらに連載記事『習近平、打つ手なし…!中国製EVが「バカ売れ」するウラで、中国で「EV墓場」が大問題になっていた!』では、EV先進国と称される中国が抱える本当の姿を詳しくお伝えしよう』、「刑事裁判で審理された人数が2001年の約74万人から2021年には170万人超に急増したという「不都合な真実」がある・・・治安悪化に歯止めがかからない状態の下で深刻なデフレが発生すれば、耐性を持たない中国社会は大混乱に陥ってしまうのではないだろうか」、「経済」音痴の「習近平」の自業自得ともいえるが、隣国の日本としては「大混乱」は何とか回避してほしいところだ。
先ずは、9月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「中国が臭いものにフタ?若年失業率の公表「突然中止」で中国経済不信が止まらない」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328656
・『人民元の下落が止まらない。一部では「年末までにさらに下落し、歴史的安値になる」との観測も。中国人民銀行は、為替介入などで対策しているものの、今のところ目立った効果はない。8月、共産党政権は推計方法の改善を理由に、若年層の失業率の公表を一時中止したが、「公表できないほど中国経済は悪化している」との見方が広まった。中国経済の構造問題を、世界の投資家はシビアに見ている』、「若年層の失業率の公表を一時中止」、やはり中国経済の実態は予想以上に酷いようだ。
・『中国・人民元の下落に歯止めがかからない 8月以降、人民元の下落に歯止めがかからない。中央銀行である中国人民銀行は、為替介入などで人民元安に歯止めをかけようとしているものの、今のところ目立った効果はない。共産党政権が人民元安を食い止める姿勢は強いとの見方がある一方、足元では海外投資家の売りによって人民元に先安観があり、不安定さは払拭できていない。 人民元下落の背景には、中国経済の閉塞感が日増しに強くなっていることがある。中国経済の高成長を支えたメカニズム(経済構造)は限界を迎えている。不動産バブルは崩壊に向かいつつあり、それに伴い、高金利の信託商品や理財商品のデフォルト懸念が上昇している。 また、半導体分野における米中対立や地政学リスクの上昇、人件費上昇など複数の要因が絡み合い、中国が誇った「世界の工場」としての地位は低下した。 習近平政権は、何よりもまず不良債権処理を進める必要があるはずだが、今のところ、当該分野での進展は限定的だ。これでは、成長期待の高い分野にヒト・モノ・カネをうまく回すことは難しい。習政権にとって、中国経済の構造問題を解決に向かわせることが喫緊の課題であり、何よりそのスピード感が求められる。今後の展開次第では、人民元の下落が一段と進み、中国発の世界的なリスクオフが進むことも考えられる』、「人民元下落の背景には、中国経済の閉塞感が日増しに強くなっていることがある。中国経済の高成長を支えたメカニズム(経済構造)は限界を迎えている。不動産バブルは崩壊に向かいつつあり、それに伴い、高金利の信託商品や理財商品のデフォルト懸念が上昇している。 また、半導体分野における米中対立や地政学リスクの上昇、人件費上昇など複数の要因が絡み合い、中国が誇った「世界の工場」としての地位は低下した」、なるほど。
・『若年層失業率を公表できないほど経済悪化? 2023年初来からの人民元の推移を振り返ってみよう。2月頃までは米金利の上昇によって、人民元への売り圧力が高まったとみられる。その後、ドル金利の上昇だけで説明が付きにくい人民元売りが続き、5月上旬から6月下旬にかけて人民元は1ドル=6.9ドル台から7.26元台に下落した。 7月、共産党政権は通貨安に対応するため、中国人民銀行の総裁に潘功勝氏を任命した。同氏は、易綱前総裁と同じく党内の序列は低いものの、海外の金融機関での勤務経験を持ち海外投資家の動向に明るいとみられていた。習政権は、相対的に海外経験が豊富でグローバルな金融実務に精通した人物を中銀トップに置き、主要投資家への配慮を示そうとしたのだろう。新総裁の金融政策を見極めたいとの思惑も加わり、7月上旬、人民元の売り圧力はやや弱まった。 しかし、それはごく一時的だった。7月下旬以降、人民元の下落圧力は強まった。不動産開発大手の碧桂園(カントリー・ガーデン)や、恒大集団(エバーグランデ)の経営不安が上昇したからだ。債務不履行への懸念が、信託商品や理財商品のデフォルトリスクを急上昇させた。一部の信託商品は実際にデフォルトしデモも起きた。 8月15日、共産党政権は推計方法の改善を理由に、若年層の調査失業率の公表を一時中止すると発表した。「公表できないほど中国経済は悪化し、かなり厳しい状況に追い込まれている」との見方が広まり、同日、人民元は1ドル=7.30元台に下落した。 その後、習政権は国有銀行に為替介入(人民元の買い支え)を強化するよう指示した。一部の銀行に対し、海外投資を控えるよう指導したとも報じられた。売り圧力は中国の共産党政権が影響力を強める香港ドルにも波及した』、「7月下旬以降、人民元の下落圧力は強まった。不動産開発大手の碧桂園・・・や、恒大集団・・・の経営不安が上昇したからだ。債務不履行への懸念が、信託商品や理財商品のデフォルトリスクを急上昇させた。一部の信託商品は実際にデフォルトしデモも起きた)、なるほど。
・『深刻化する中国経済が抱える構造問題 人民元下落の背景として、経済成長を支えたメカニズムの機能不全が起きていることがある。中国のGDPの需要項目を見ると、投資(総資本形成)の割合は、個人や政府の消費を上回る。これまで、中国経済は投資の増加によって高い成長を実現してきた。 ところが、不動産バブルが崩壊に向かい不動産投資による成長は難しくなった。これまで地方政府は、不動産開発業者に土地の利用権を売却し、歳入を確保してきたし、共産党政権もマンションの供給増加を支援してきた。世界的な低金利の長期化も、不動産価格上昇への期待を支えた。投機熱も盛り上がり、カントリー・ガーデンなどの開発企業は借り入れによって建設を増やした。 こうした不動産投資の増加が、生産、雇用と所得の機会、地方政府の税収などを支えた。産業補助金政策も強化され、企業の設備投資が活発になり、インフラ投資も増えた。コロナ禍が発生するまで、投資を出発点に中国経済は高い成長を実現してきたわけだ。 中国全土の工業化も00年代以降、加速した。農村部から沿海部の工業地帯へ、安価で豊富な労働力が供給された。海外企業からの技術移転も加速し、中国は世界の工場の地位を確立。リーマンショック後は、世界最大の消費市場としての重要性も高まり、海外からの対中直接投資も増えた。 しかし、20年8月の「3つのレッドライン」(注)をきっかけに、不動産バブルは崩壊に向かい始めた。不動産業界、地方政府の債務問題は深刻化し、理財商品などがデフォルトする懸念が高まった。「理財商品には政府の“暗黙の保証”が付いている」といった個人投資家の思い込みは強く、それもあってなおさら理財商品や信託商品市場の悪化が、共産党政権の求心力の低下につながるとみられている。 また、米中対立や、台湾辺境の緊迫感が上昇するなどの地政学リスク、人件費高騰などを背景に、グローバル企業は脱中国の動きを見せるようになった。産業支援策が強化されている別の国や、人件費が安いインドやベトナムなどに生産拠点を移す多国籍企業が増えている。この点も、中国の雇用や所得環境の悪化につながっている』、「20年8月の「3つのレッドライン」をきっかけに、不動産バブルは崩壊に向かい始めた。不動産業界、地方政府の債務問題は深刻化し、理財商品などがデフォルトする懸念が高まった。「理財商品には政府の“暗黙の保証”が付いている」といった個人投資家の思い込みは強く、それもあってなおさら理財商品や信託商品市場の悪化が、共産党政権の求心力の低下につながるとみられている」、なるほど。
(注)3つのレッドライン:中国政府が2020年8月、不動産大手企業に対し、財務指標で規制(エコノミストOnline)。
・『高まる中国発の世界的なリスクオフの懸念 8月25日、米ジャクソンホール会合での講演で、FRBのパウエル議長が「インフレ率は高すぎ、追加利上げの用意がある」と発言した。目先、米中の金利差の拡大などを背景に、人民元の為替レートの不安定感は高まる可能性がある。 共産党政権の政策スタンスも懸念材料だ。現在、中国の年金や医療など、社会保障制度に対する国民の不安は徐々に高まっているようだ。そうした状況下、習政権は金融緩和によって不動産企業や、地方政府傘下の融資平台(LGFV)などの投資会社の借り入れを支援し、経済環境の悪化を食い止めようとしている。 今のところ、金融緩和政策の効果は顕在化していない。むしろ、債務問題は深刻化しそうだ。習政権は不良債権処理や構造改革に関する踏み込んだ政策を発表していない。経済よりも政治基盤の強化を重視しているようにもみえる。 債務問題が深刻化すると、支出を減らして負債の返済を急ぐ企業や国民が増えるだろう。バランスシート調整(資産価格が大幅に下落した場合、その後の経済主体の支出活動が抑圧されるプロセスのこと)へのプレッシャーが強まり、デフレ経済が深刻化する可能性は高い。 それが現実になると、わが国やドイツ、アジア新興国などの対中輸出に少なからぬ影響が出るだろう。世界全体でも、経済成長率が低下する懸念が高まる。主要投資家も企業経営者も、リスク回避的な行動を取るようになるだろう。 そのタイミングで、中国経済が一段と低迷するようだと、中国株を売却する主要投資家は増え、人民元はさらに下落することが想定される。そして今後の展開次第では、世界の株式、低格付けを中心とする債券、米国の商業用不動産、新興国通貨、中国が一定需要を占める銅や鉄鉱石、原油などの価格が下落する恐れが高まる。そうなると世界経済の先行き不透明感は急上昇する。 人民元の下落をきっかけに、世界的にリスクオフが発生する可能性は無視できない』、「現在、中国の年金や医療など、社会保障制度に対する国民の不安は徐々に高まっているようだ。そうした状況下、習政権は金融緩和によって不動産企業や、地方政府傘下の融資平台(LGFV)などの投資会社の借り入れを支援し、経済環境の悪化を食い止めようとしている。 今のところ、金融緩和政策の効果は顕在化していない。むしろ、債務問題は深刻化しそうだ。習政権は不良債権処理や構造改革に関する踏み込んだ政策を発表していない。経済よりも政治基盤の強化を重視しているようにもみえる・・・債務問題が深刻化すると、支出を減らして負債の返済を急ぐ企業や国民が増えるだろう。バランスシート調整・・・へのプレッシャーが強まり、デフレ経済が深刻化する可能性は高い・・・人民元の下落をきっかけに、世界的にリスクオフが発生する可能性は無視できない」、恐ろしいシンリオだ。
次に、10月10日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「習近平、まさかの「愚策」…!ついに政府が認めた「不動産バブル」のヤバすぎる実態と「経済見殺し政策」の悲惨な中身」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/117447?imp=0
・『中国の長期停滞は、マジでヤバい 中国が日本の「失われた30年」のように長期停滞へ入ろうとしている。 それは、世界の経済学者から「日本化だ」と指摘されるが、ここにきて「日本化」どころではない、さらにひどい状況に陥りそうだと言われ始めている。 日本では、80年代バブルの崩壊後に長期停滞入りしデフレに見舞われた。しかし、低成長期には物価が安定し、ロストジェネレーションと呼ばれる世代を生みだしたとはいえ、社会は比較的混乱の少ない時代だった。 一方の中国では日本のようなデフレ耐性がなく、社会混乱を招くと懸念されている。 昨今ようやく改善が見えはじめた経済指標だが、それでも不安は尽きないのだ』、「世界の経済学者から「日本化だ」と指摘されるが、ここにきて「日本化」どころではない、さらにひどい状況に陥りそうだと言われ始めている・・・中国では日本のようなデフレ耐性がなく、社会混乱を招くと懸念されている」、恐ろしいことだ。
・『経済指標の改善は「期待外れ」に終わる 景気後退の懸念が高まる中国だが、このところ経済指標の改善が続いている。 中国国家統計局が9月30日に発表した9月の製造業購買担当者指数(PMI)は50.2となり、景気拡大・悪化の分かれ目となる50を6が月ぶりに上回った。8月の工業利益も大幅に増加し、輸出のマイナス幅も縮小した。消費者物価指数(CPI)も前年比0.1%増となり、デフレ圧力が若干緩和したと言われている。 不動産市場にも改善の兆しが出ている。 民間不動産調査企業によれば、政府の支援策の効果もあって、9月の新築住宅価格は5ヵ月ぶりに上昇し、住宅販売額の減少率も縮小したという。 これらを受けて市場関係者の間では「中国経済は最悪期を脱した」との観測が出ているが、筆者は「期待外れに終わる可能性が高い」と考えている。 中国経済の屋台骨を担ってきた不動産市場の闇が、とてつもなく深いからだ』、「市場関係者の間では「中国経済は最悪期を脱した」との観測が出ているが、筆者は「期待外れに終わる可能性が高い」と考えている。 中国経済の屋台骨を担ってきた不動産市場の闇が、とてつもなく深いからだ」、なるほど。
・『中国「不動産バブル」が長期停滞のトリガー 中国国家統計局の元高官は9月23日「(現在国内にあるマンションの空室や空き家について)中国の人口14億人でさえ全てを埋めることが不可能だ」との見方を示した。 中国における不動産の過剰供給はかねてから知られていたが、政府関係者がこのことを追認したことの意味は大きいだろう。不動産業界全体を苦境に陥れた中国恒大集団の再建の道筋もいまだ立っていない。 それどころか、創業者の許家印会長が犯罪に関与した疑いで警察の監視下に置かれるという異常事態となっている。 「中国経済の日本化」という指摘は、不動産バブルの崩壊が災いして長期不況に陥るリスクが生じているという懸念から生じたものだ。だが、ここに来て「『日本化』すら達成できないのではないか」との危惧の念が高まっている』、「「中国経済の日本化」という指摘は、不動産バブルの崩壊が災いして長期不況に陥るリスクが生じているという懸念から生じたものだ。だが、ここに来て「『日本化』すら達成できないのではないか」との危惧の念が高まっている」、なるほど。
・『「日本より、もっと悪くなる」 このことを最初に述べたのはノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏だ。同氏は7月25日に公開されたニューヨーク・タイムズへの寄稿文の中で「中国は日本のようにはならない。もっと悪くなるだろう」と述べている。 日本経済を長年ウオッチしてきたイエスパー・コール氏も同意見だ。 「バブル崩壊後の日本は高成長を続ける中国への輸出拡大で恐慌を回避できたが、今の中国には輸出拡大が期待できる国が見当たらない」というのがその理由だ(9月29日付日本経済新聞)。 膨大な需要が高まり輸出で自国経済を維持する装置が中国には見当たらない…。事態は最悪の状況に向かいつつある。) しかし、筆者はこうした状況を放置し、景気対策に後ろ向きな中国政府の姿勢に、長期停滞の最大の要因があると考えている。 それは「経済見殺し政策」と言っても過言ではない最低の悪手である。 後編『習近平の悪手が止まらない…!悲惨さを増す「EV墓場」の実態と、「中国大恐慌」のトリガーを引く「経済見殺し政策」のヤバすぎる中身』にて、その状況をじっくりと解説していこう』、「「バブル崩壊後の日本は高成長を続ける中国への輸出拡大で恐慌を回避できたが、今の中国には輸出拡大が期待できる国が見当たらない」というのがその理由だ(9月29日付日本経済新聞)」、なるほど。「筆者はこうした状況を放置し、景気対策に後ろ向きな中国政府の姿勢に、長期停滞の最大の要因があると考えている。 それは「経済見殺し政策」と言っても過言ではない最低の悪手である」、同感である。
第三に、この続きを、10月10日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「習近平の悪手が止まらない…!悲惨さを増す「EV墓場」の実態と、「中国大恐慌」のトリガーを引く「経済見殺し政策」のヤバすぎる中身」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/117448?imp=0
・・・・『習近平のヤバすぎる「妄想」 1990年代の日本政府は、景気下支えのために大規模な景気刺激策を打ち続けたが、中国政府は需要を喚起する景気刺激策を講ずる気配を一向に見せていない。 政府関係者の間でも、「大規模な財政出動が必要」との声が出てきている(9月19日付日本経済新聞)のにもかかわらずに、である。 その原因として挙げられるのは、「習近平国家主席が2008年に実施された4兆元規模の景気刺激策のことを苦々しく思っている」との見立てだ。 習氏の景気刺激策に対する評価は、「中国の国民は苦労せずに資金を得ることばかりを考える『パラサイト(寄生虫)』になった。社会全体に浪費と汚職が蔓延し、巨額の債務だけが残った」という散々なものだからだ(9月27日付ニューズウイーク日本版)。) 輸出拡大も期待できず、政府の下支えがなければ、中国経済が深刻なデフレに陥るのは時間の問題だろう。 日本は長期にわたりデフレに苦しんだが、賃金が上がらなくても労働意欲の目立った低下はなく、幸いなことに、社会全体に深刻な混乱が起きることはなかった。日本には「デフレ耐性」があったというわけだが、中国にこのような耐性があるとは思えない(9月28日付日本経済新聞)』、「習氏の景気刺激策に対する評価は、「中国の国民は苦労せずに資金を得ることばかりを考える『パラサイト(寄生虫)』になった。社会全体に浪費と汚職が蔓延し、巨額の債務だけが残った」という散々なものだからだ・・・。) 輸出拡大も期待できず、政府の下支えがなければ、中国経済が深刻なデフレに陥るのは時間の問題だろう・・・日本には「デフレ耐性」があったというわけだが、中国にこのような耐性があるとは思えない」、なるほど。
・『中国「EV墓場」問題がさらに深刻になる 足元の動向で気になるのは、資金繰りに窮した地方政府が庶民の懐を圧迫し始めていることだ。地方政府は資金の確保に焦るあまり、意味不明の罰金や違反切符を科していることが問題になっている(9月27日付BUSINESS INSIDER JAPAN)。 筆者は以前のコラムで「電気自動車(EV)の大量廃棄(EV墓場)」を取り上げたが、この問題はさらに深刻化しそうな気配だ。) 9月21日付中国新聞週刊は「中国各地のEV充電スタンドの料金が2倍となり、EVを手放す所有者が出始めている」と報じた。値上げの原因は、電気料金そのものではなく、充電サービスのための料金だ。 充電サービス料金は「設備の運営費用を賄うために充当される」とされているが、カネ不足に悩む地方政府が「取れるところから取る」とばかりに理不尽な値上げを実施しているのかもしれない。 日々の生活が苦しくなっている中、「お上」の搾取にあえぐ人々の不満は高まるばかりだろうが、これに対し、中国政府は思想や行動に対する「引き締め」のさらなる強化で乗り切ろうとしている』、「「中国各地のEV充電スタンドの料金が2倍となり、EVを手放す所有者が出始めている」と報じた。値上げの原因は、電気料金そのものではなく、充電サービスのための料金だ。 充電サービス料金は「設備の運営費用を賄うために充当される」とされているが、カネ不足に悩む地方政府が「取れるところから取る」とばかりに理不尽な値上げを実施しているのかもしれない・・・カネ不足に悩む地方政府が「取れるところから取る」とばかりに理不尽な値上げを実施しているのかもしれない。 日々の生活が苦しくなっている中、「お上」の搾取にあえぐ人々の不満は高まるばかりだろうが、これに対し、中国政府は思想や行動に対する「引き締め」のさらなる強化で乗り切ろうとしている』、「経済」を軽視する「習近平」ならやりかねない。
・『犯罪の増加が止まらない…! 中国政府は「我が国の犯罪率は世界最低水準だ」と豪語しているが、刑事裁判で審理された人数が2001年の約74万人から2021年には170万人超に急増したという「不都合な真実」がある。 中国政府は近年、国防費を上回る予算を社会秩序維持のために投じているが、犯罪者数の増加は止まらない。刑務所も過密化し、再犯を防ぐ更生の役割を果たせていない有様だ(9月30日付共同通信)。 治安悪化に歯止めがかからない状態の下で深刻なデフレが発生すれば、耐性を持たない中国社会は大混乱に陥ってしまうのではないだろうか。 さらに連載記事『習近平、打つ手なし…!中国製EVが「バカ売れ」するウラで、中国で「EV墓場」が大問題になっていた!』では、EV先進国と称される中国が抱える本当の姿を詳しくお伝えしよう』、「刑事裁判で審理された人数が2001年の約74万人から2021年には170万人超に急増したという「不都合な真実」がある・・・治安悪化に歯止めがかからない状態の下で深刻なデフレが発生すれば、耐性を持たない中国社会は大混乱に陥ってしまうのではないだろうか」、「経済」音痴の「習近平」の自業自得ともいえるが、隣国の日本としては「大混乱」は何とか回避してほしいところだ。
タグ:藤 和彦氏による「習近平、まさかの「愚策」…!ついに政府が認めた「不動産バブル」のヤバすぎる実態と「経済見殺し政策」の悲惨な中身」 現代ビジネス 経済よりも政治基盤の強化を重視しているようにもみえる・・・債務問題が深刻化すると、支出を減らして負債の返済を急ぐ企業や国民が増えるだろう。バランスシート調整・・・へのプレッシャーが強まり、デフレ経済が深刻化する可能性は高い・・・人民元の下落をきっかけに、世界的にリスクオフが発生する可能性は無視できない」、恐ろしいシンリオだ。 「現在、中国の年金や医療など、社会保障制度に対する国民の不安は徐々に高まっているようだ。そうした状況下、習政権は金融緩和によって不動産企業や、地方政府傘下の融資平台(LGFV)などの投資会社の借り入れを支援し、経済環境の悪化を食い止めようとしている。 今のところ、金融緩和政策の効果は顕在化していない。むしろ、債務問題は深刻化しそうだ。習政権は不良債権処理や構造改革に関する踏み込んだ政策を発表していない。 (注)3つのレッドライン:中国政府が2020年8月、不動産大手企業に対し、財務指標で規制(エコノミストOnline)。 「「中国各地のEV充電スタンドの料金が2倍となり、EVを手放す所有者が出始めている」と報じた。値上げの原因は、電気料金そのものではなく、充電サービスのための料金だ。 充電サービス料金は「設備の運営費用を賄うために充当される」とされているが、カネ不足に悩む地方政府が「取れるところから取る」とばかりに理不尽な値上げを実施しているのかもしれない・・・カネ不足に悩む地方政府が「取れるところから取る」とばかりに理不尽な値上げを実施しているのかもしれない。 「習氏の景気刺激策に対する評価は、「中国の国民は苦労せずに資金を得ることばかりを考える『パラサイト(寄生虫)』になった。社会全体に浪費と汚職が蔓延し、巨額の債務だけが残った」という散々なものだからだ・・・。) 輸出拡大も期待できず、政府の下支えがなければ、中国経済が深刻なデフレに陥るのは時間の問題だろう・・・日本には「デフレ耐性」があったというわけだが、中国にこのような耐性があるとは思えない」、なるほど。 「20年8月の「3つのレッドライン」をきっかけに、不動産バブルは崩壊に向かい始めた。不動産業界、地方政府の債務問題は深刻化し、理財商品などがデフォルトする懸念が高まった。「理財商品には政府の“暗黙の保証”が付いている」といった個人投資家の思い込みは強く、それもあってなおさら理財商品や信託商品市場の悪化が、共産党政権の求心力の低下につながるとみられている」、なるほど。 「「中国経済の日本化」という指摘は、不動産バブルの崩壊が災いして長期不況に陥るリスクが生じているという懸念から生じたものだ。だが、ここに来て「『日本化』すら達成できないのではないか」との危惧の念が高まっている」、なるほど。 「7月下旬以降、人民元の下落圧力は強まった。不動産開発大手の碧桂園・・・や、恒大集団・・・の経営不安が上昇したからだ。債務不履行への懸念が、信託商品や理財商品のデフォルトリスクを急上昇させた。一部の信託商品は実際にデフォルトしデモも起きた)、なるほど。 の藤 和彦氏による「習近平の悪手が止まらない…!悲惨さを増す「EV墓場」の実態と、「中国大恐慌」のトリガーを引く「経済見殺し政策」のヤバすぎる中身」 「人民元下落の背景には、中国経済の閉塞感が日増しに強くなっていることがある。中国経済の高成長を支えたメカニズム(経済構造)は限界を迎えている。不動産バブルは崩壊に向かいつつあり、それに伴い、高金利の信託商品や理財商品のデフォルト懸念が上昇している。 また、半導体分野における米中対立や地政学リスクの上昇、人件費上昇など複数の要因が絡み合い、中国が誇った「世界の工場」としての地位は低下した」、なるほど。 「世界の経済学者から「日本化だ」と指摘されるが、ここにきて「日本化」どころではない、さらにひどい状況に陥りそうだと言われ始めている・・・中国では日本のようなデフレ耐性がなく、社会混乱を招くと懸念されている」、恐ろしいことだ。 「市場関係者の間では「中国経済は最悪期を脱した」との観測が出ているが、筆者は「期待外れに終わる可能性が高い」と考えている。 中国経済の屋台骨を担ってきた不動産市場の闇が、とてつもなく深いからだ」、なるほど。 「若年層の失業率の公表を一時中止」、やはり中国経済の実態は予想以上に酷いようだ。 真壁昭夫氏による「中国が臭いものにフタ?若年失業率の公表「突然中止」で中国経済不信が止まらない」 ダイヤモンド・オンライン 「「バブル崩壊後の日本は高成長を続ける中国への輸出拡大で恐慌を回避できたが、今の中国には輸出拡大が期待できる国が見当たらない」というのがその理由だ(9月29日付日本経済新聞)」、なるほど。「筆者はこうした状況を放置し、景気対策に後ろ向きな中国政府の姿勢に、長期停滞の最大の要因があると考えている。 それは「経済見殺し政策」と言っても過言ではない最低の悪手である」、同感である。 「刑事裁判で審理された人数が2001年の約74万人から2021年には170万人超に急増したという「不都合な真実」がある・・・治安悪化に歯止めがかからない状態の下で深刻なデフレが発生すれば、耐性を持たない中国社会は大混乱に陥ってしまうのではないだろうか」、「経済」音痴の「習近平」の自業自得ともいえるが、隣国の日本としては「大混乱」は何とか回避してほしいところだ。 日々の生活が苦しくなっている中、「お上」の搾取にあえぐ人々の不満は高まるばかりだろうが、これに対し、中国政府は思想や行動に対する「引き締め」のさらなる強化で乗り切ろうとしている』、「経済」を軽視する「習近平」ならやりかねない。
中国経済(その18)(中国不動産市場“ゼロコロナ”撤廃後もズタボロで…中国経済の「V字回復」には程遠い「悲惨すぎる実情」、中国経済「不動産バブル崩壊」でついに終焉へ…わが国の「失われた30年」よりもヒドい時代に突入する、「投資制限」発表前から投資家は「撤退済み」...「中国の自爆」が引き起こした 25年ぶり「外国投資」低水準) [世界経済]
中国経済については、本年7月12日に取上げた。今日は、(その18)(中国不動産市場“ゼロコロナ”撤廃後もズタボロで…中国経済の「V字回復」には程遠い「悲惨すぎる実情」、中国経済「不動産バブル崩壊」でついに終焉へ…わが国の「失われた30年」よりもヒドい時代に突入する、「投資制限」発表前から投資家は「撤退済み」...「中国の自爆」が引き起こした 25年ぶり「外国投資」低水準)である。
先ずは、8月8日付け現代ビジネスが掲載した『現代ビジネス』編集次長の近藤 大介氏による「中国不動産市場“ゼロコロナ”撤廃後もズタボロで…中国経済の「V字回復」には程遠い「悲惨すぎる実情」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114425?imp=0
・『恒大物業の再上場で分かったこと(先週8月3日、香港証券取引所は、ある会社の「復牌」(フーパイ)に注目が集まった。「復牌」とは、再上場のことだ。 その会社とは、2021年秋に経営破綻が取り沙汰された中国第2位の不動産大手、中国恒大集団(チャイナ・エバグランデ・グループ)の一角を担う恒大物業(HK06666)である。グループ内で、不動産の建設や、管理などを行う会社だ。 いわば恒大集団の復活を賭けた「復牌」だった。だが記念すべき初日は、何と47.39%も値を下げてしまった。初日から早くも、大暴落に見舞われたのだ。 香港や中国の株式専門家たちは、「134億元問題」(1人民元≒19.9円、以下同)を原因に挙げていた。これは恒大物業が、親会社の恒大集団に、担保として取られている資金だ。 恒大物業自体は、経営にさほどの遜色はない。昨年の売上高は、前年比約10%減ではあるものの、118億900万元。粗利益は27億1900万元で、純利益も14億7800万元出している。総請負建築面積は8億1900万㎡、管理面積は約5億㎡で、中国国内の約330万戸の物件管理を行っている。 それでも、年間の売上高を超える額の担保を親会社に取られているので、市場が恒大物産を信用していないというのが、香港や中国の株式専門家の見立てだった。たしかに134億元は、昨年の売上高の約1.1倍以上だ。 だが私は、先週の暴落を、もっと大きな枠組みで捉えるべきだと思っている。すなわち、市場から信用されていないのは、単に恒大物流や恒大集団という一不動産会社もしくはグループではなくて、中国の不動産業界全体だということだ。中国の大手不動産会社は、いずれも「爆弾」を抱えていると言われるからだ。 例えば、恒大集団と同じ広東省に本社があり、「最大のライバル会社」と言われた碧桂園集団(カントリー・ガーデン・グループ HK02007)。昨年の売上高は、3574億元にも上る。中国全土で500万戸以上の不動産を提供し、約30万人の従業員を抱えている。8月2日に発表されたばかりの「2023年版 フォーチュン・グローバル500」では、世界206位につけている巨大企業だ。 この中国を代表する不動産会社の一角が、先月18日から、上場している香港市場で、社債を暴落させている。7月21日には関連の5社が2割以上暴落し、臨時取引停止措置が取られた。その後、取引は再開されたが、7月31日に再び、関連3社が2割以上暴落し、取引停止となった。 同日には、同社のHPで、今年上半期は純利益がマイナスになりそうだとの見解を示していた。2007年に上場を果たして以降、昨年初めて赤字に転落したものの、さらなる業績悪化が見込まれるため、市場が悲観的になったのだ。 中国メディアの報道によれば、7月31日までに公表された上場している中国の不動産企業52社中、31社が、今年上半期でマイナスの純利益を計上している。実に全体の約6割だ。 昨年までは、習近平政権のゼロコロナ政策によって、不動産企業の赤字は当然視されていた。だが、ゼロコロナ政策を完全にやめた昨年12月以降も、不動産業界は引き続き、沈滞しているのである』、「中国第2位の不動産大手、中国恒大集団・・・の一角を担う恒大物業・・・である。グループ内で、不動産の建設や、管理などを行う会社だ。 いわば恒大集団の復活を賭けた「復牌」だった。だが記念すべき初日は、何と47.39%も値を下げてしまった。初日から早くも、大暴落に見舞われたのだ」、「香港や中国の株式専門家たちは、「134億元問題」・・・を原因に挙げていた。これは恒大物業が、親会社の恒大集団に、担保として取られている資金だ」、「年間の売上高を超える額の担保を親会社に取られているので、市場が恒大物産を信用していないというのが、香港や中国の株式専門家の見立てだった。たしかに134億元は、昨年の売上高の約1.1倍以上だ。 だが私は、先週の暴落を、もっと大きな枠組みで捉えるべきだと思っている。すなわち、市場から信用されていないのは、単に恒大物流や恒大集団という一不動産会社もしくはグループではなくて、中国の不動産業界全体だということだ。中国の大手不動産会社は、いずれも「爆弾」を抱えていると言われるからだ」、なるほど。
・『国家統計局発表「不動産10大データ」 中国の不動産の沈滞ぶりは、先月17日に国家統計局が発表した今年上半期の経済統計にも、如実に表れている。「不動産10大データ」は、以下の通りだ。 1)全国不動産開発投資は、前年同期比(以下同)で-7.9%。そのうち住宅投資は-7.3%。 2)不動産開発企業家屋施工面積は-6.6%。そのうち住宅施工面積は-6.9%。 3)家屋新着工面積は-24.3%。そのうち住宅新着工面積は-24.9%。 4)家屋竣工面積は+19.0%。そのうち住宅竣工面積は+18.5%。 5)商品家屋販売面積は-5.3%。そのうち住宅販売面積は-2.8%。 6)商品家屋販売額は+1.1%。そのうち住宅販売額は+3.7%。 7)6月末時点での販売中商品家屋面積+17.0%。そのうち販売中住宅面積+18.0%。 8)不動産開発企業調達資金-9.8%。そのうち国内の借り入れ-11.1%、外資の利用-49.1%、自己資金-23.4%、預金及び前受け金-0.9%、個人住宅ローン+2.7%。 9)6月の不動産開発景気指数94.06(100が最適)。 10)6月の70大中都市の新築商品住宅販売価格指数(前月比)は、上昇31都市、不変1都市、下降38都市。前年同月比では、上昇27都市、不変1都市、下降42都市。 これらのデータから、中国の不動産の惨憺たる現状が見えてくる。以下、簡単に解説しよう。 まず、1)の不動産開発投資や、2)の施工面積、3)の着工面積、5)の販売面積がマイナスなのは、主に3つの理由による。 第一に、不動産会社の開発資金が枯渇していること。第二に、不動産を建てても売れないこと。第三に、新たな住宅やオフィスを建設する前に、いまある在庫の山を売ってしまわないといけないからだ。 逆に、4)の竣工面積がプラスなのは、昨年までのゼロコロナ政策によって、昨年まで工事が滞っていたからだ。6)の販売額のプラスも同様である。 不動産によらず、中国政府が「経済統計がこんなに伸びています」と喧伝する時は、だいたいこのパターンである。例えば、「第2四半期(4月~6月)のGDPは6.3%も伸びた」と誇ったが、昨年の第2四半期に何をしていたか? 最大の経済都市上海では、丸2ヵ月にわたってロックダウン(都市封鎖)し、昨年第2四半期の経済成長率は-13.7%。他の大都市も、ゼロコロナ政策によって経済活動は大いに滞っていた。そんな「前年同期」と比べて、たったの6.3%しか成長していないことの方が、むしろ問題である。) 次に、7)の販売中の家屋や住宅が+17%~18%と「成長が際立っている」のは、それだけ物件が売れ残っているという証だ。北京や上海のショッピングモールなどを見ても、客で賑わっているのはレストラン街だけだ。 コロナ前にもそうした傾向は見られたが、少なくとも都市部の繁華街のオフィスビルは、ある程度、活況を呈していた。だがいまや、どこへ行っても「有租房」(空き部屋あります)のオンパレードだ。各都市が「丸ごと不景気」という感じなのだ。 8)の不動産開発企業の調達資金も、-9.8%と枯渇している。うち外資の利用が-49.1%と、マイナスが突出しているのは、中国経済の先行きを悲観視している外資系企業が、「脱中国」を図っている表れだ。 それは日本も例外ではない。日本にとって中国は、昨年も全貿易額の20.3%と最大の貿易相手国ではあったが、「これから中国に大型投資します」という日本企業には、あまりお目にかからない。 実際、中国税関総署の統計によれば、今年上半期の日中貿易は、前年同期比で-4.9%と、5%近く落ちている。日本にとって中国からの輸入は+2.1%だが、これは前述のように、中国が1年前にゼロコロナ政策を取っていた要員が大きい。逆に、日本から中国への輸出は-11/1%で、これは明らかに日本企業が「脱中国」を図りつつあることを示している。 9)の不動産開発景気指数は、中国で不動産販売元年とも言える2000年を基点として作った指数だ。100が最適レベルで、100~105が適正レベルである。105以上は、住宅バブルの危険レベル。逆に95以下ならば、不況やデフレを示す危険レベルだ。 不動産開発景気指数は、昨年9月に95を割って以降、何と一度も95に達していない。それどころか、先月発表した今年6月分は94.06と、過去1年で最低を記録してしまった。5月の94.55から、1ヵ月で0.49ポイントも下落しているのだ。下落幅は、過去1年で最大。この傾向が続けば、7月は94を切ってしまうことになり、いよいよ危険水域突入だ。 こうした傾向は、10)の70大中都市の新築商品住宅販売価格指数にも、如実に表れている。上昇している都市は、前月比で見ると31都市、前年同期比で見ても27都市と、いずれも過半数割れしている。 前年同期比では、大連95.8、秦皇島95.9、温州95.9……と、本来なら経済発展の「優等生都市」である沿岸部の3都市が、一年で4%以上も価格を下げている。これは深刻である。 このように、習近平政権の「大本営発表」を分析しても、中国の不動産は惨憺たる事態に陥っていることが分かる。統計に表れない「陰の部分」も勘案すれば、さらに深刻だということが推察できる』、「不動産10大データ」は詳しい解説を合わせてみないとよく分からない。
・『発端は胡錦濤政権の「4兆元問題」だが 一体なぜこんなことになってしまったのか? それには、いくつかの大きな要因が考えられる。 第一に、前任の胡錦濤政権の責任である。2008年秋にリーマン・ショック(アメリカ発の金融危機)が起こった時、当時の胡錦濤政権は、北京夏季オリンピック・パラリンピックを成功させたばかりでイケイケドンドンだった。そこで、同年11月に初めてワシントンで行われたG20(主要国・地域)首脳会議で、4兆元(当時のレートで約58兆円)もの緊急財政支出を宣言した。 そのことで世界経済は救われたし、「米中2大国時代」と言われるようにもなった。ところが、中国の地方政府に重い財政負担を強いることとなったのだ。 中国で予算法が改正されて、地方政府が地方債を発行できるようになるのは、習近平時代になった2014年のことだ。地方政府としては、地方債という「抜け道」もないまま、高速鉄道建設を始めとする多額の負担を押しつけられたのである。 それでも、胡錦涛政権は割合まともな経済政策を取っていたし、欧米との関係も良好だった。そのため、「4兆元問題」がすぐに問題化することもなかった。 そして、中国は2013年3月から、習近平政権にバトンタッチした。ところが習近平という指導者は、それまでの鄧小平、江沢民、胡錦涛という3代の指導者たちとは、明らかに「異質」だった。 1992年以降の中国は、「社会主義市場経済」というシステムで国を運営してきたが、習近平主席は、ゴリゴリの「社会主義絶対主義者」だったのだ。同様の存在だった初代の毛沢東主席を崇拝していた。 歴史に「もしも」はタブーと言われるが、もしも2013年に習近平政権のナンバー2となった李克強首相がトップに立っていたなら、「4兆元の副作用」について配慮した国家運営を行っただろう。李首相は胡錦涛氏の長年の「弟分」だったからだ。 だが習近平主席は、「社会主義」「共産党」「国有企業」「安全」「強軍」といったスローガンを前面に押し立てた国家運営を行った。その一方で「市場経済」は、すっかり後回しにされた。 それでも、2014年に地方政府が地方債を発行できるようになり、今年は過去最高の3.8兆元(約75兆円)もの「専項債」(後に利益を回収できる見込みのあるものに投資する地方債)の予算が計上されている。「4兆元の副作用」に苦しむ地方政府は、こうした資金をもとに、主にインフラ投資のため、「陰の銀行」とも言うべき「地方融資平台」(LGFT)を次々に作っていった。 経済が悪化するほど、国有銀行(中国の銀行はほとんどが国有)は国有企業に優先的に融資した。そのため、本来なら経済の主力であるはずの民営企業は、すっかり先細っていった。これを「国進民退」と呼ぶ。 そこで民営企業が頼ったのが、「地方融資平台」だった。だが、高い利子を払えず倒産した民営企業は数知れず。その結果、中国で「公表」されている昨年末時点での「地方融資平台」の債務残額は59兆元。邦貨にして約1170兆円! これはいわば、中国の地方が抱えている「隠れ債務」だ。 このような状況下にあっては、中国の31地域のうち少なからぬ地域が、すでに「破綻状態」にあると言える。それでも「破綻」とならないのは、そもそも社会主義の中国では土地は国家のものだし(憲法10条規定)、膨大な国有企業などの資産もあるからだ。 だがそんな中で、全国各地の不動産が、健全に発展していくのは困難だ。不動産の停滞は、もともとは「4兆元の副作用」とは言え、明らかにこの10年あまりの習近平政権の経済失政によるところが大きい』、「発端は胡錦濤政権の「4兆元問題」、習近平主席は、「社会主義」「共産党」「国有企業」「安全」「強軍」といったスローガンを前面に押し立てた国家運営を行った。その一方で「市場経済」は、すっかり後回しにされた」、「中国で「公表」されている昨年末時点での「地方融資平台」の債務残額は59兆元。邦貨にして約1170兆円! これはいわば、中国の地方が抱えている「隠れ債務」だ。 このような状況下にあっては、中国の31地域のうち少なからぬ地域が、すでに「破綻状態」にあると言える。それでも「破綻」とならないのは、そもそも社会主義の中国では土地は国家のものだし(憲法10条規定)、膨大な国有企業などの資産もあるからだ」、なるほど。
・『習近平政権の「恐るべき鈍感力」 習近平氏は、2012年11月に共産党総書記に就任するや、その翌月に「八項規定」(贅沢禁止令)を出して、いきなり不動産市場を暴落させた。 その後、2015年9月には、国有企業を「焼け太り」させるような「国有企業改革」を発表し、翌2016年からは「供給側構造改革」という「5つの緊縮政策」を打ち出した。不動産の在庫整理はこの緊縮政策のトップであり、不動産市場は冷めていった。 続いて、同年12月の中央経済工作会議で、「家は住むためのもので、投機するためのものではない」(房子是用来住的、不是用来炒的)と唱えた。そして翌2017年から、不動産の購入を厳格化した。頭金や住宅ローン規制などを強めて、「2軒目」を買いにくくしたのだ。 さらに、2020年8月に打ち出した「3つのレッドライン」が、不動産業界を「自壊」させる要因となった。負債の対資産比率70%以下、純負債の対資本比率100%以下、手元資金の対短期負債比率100%以上という「3つのレッドライン」に従って、不動産会社を4分類し、それぞれの債務規模を制限するという政策だ。その上、銀行側にも不動産会社や住宅ローンに対する融資制限をかけた。 習近平政権はこのような経済政策を、新型コロナウイルスが蔓延した年に行ったのだ。まさに「恐るべき鈍感力」と言える。 こうしたことが重なって、2021年秋、中国第2位の不動産会社だった恒大集団の破綻騒動となったのだ。もっとも恒大集団に関しては、習近平主席の「政敵」だった「共青団」(中国共産主義青年団)の最大の後ろ盾企業だったから潰しにかかったという有力な説もあるが。 そして「決定打」となったのが、繰り返し述べている丸3年に及んだゼロコロナ政策である。不動産を売る企業の側も、買う国民の側も、そしてロックダウンやPCR検査などに膨大な予算と労力をかけさせられた地方政府も、誰もがボロボロになった。不動産市場は、ゼロコロナ政策を解除して半年やそこらでは、「回復」できないのである。 そして、中国政府や官製メディアは、このところしきりに中国経済の「V字回復」を強調しているが、GDPの10%~15%を牽引すると言われる不動産が低迷している限り、中国経済の「V字回復」も望めない。 実際のところは、「L字型」ではないか。いわゆる「落ちてから回復せず横ばい状態」だ。だが、この話を旧知の中国人経済学者にしたら、苦笑しながら言った。 「本当は『I字型』かもしれないぞ。ゼロコロナ政策によって経済はズドンと落ちたが、また何か別な政策が始まるかもしれないからだ。徹底した『共同富裕』政策などだ。ともかくいまの中国は、いくらマンション価格や住宅ローン金利が多少下がったからといって、安心して新たに一軒買おうなどというマインドにはない。いまの中国人の心情を漢字一文字で表すなら、『棄』(捨てる、諦める)だ」』、「「決定打」となったのが、繰り返し述べている丸3年に及んだゼロコロナ政策である。不動産を売る企業の側も、買う国民の側も、そしてロックダウンやPCR検査などに膨大な予算と労力をかけさせられた地方政府も、誰もがボロボロになった。不動産市場は、ゼロコロナ政策を解除して半年やそこらでは、「回復」できないのである」、「いまの中国人の心情を漢字一文字で表すなら、『棄』・・・だ。なるほど。
次に、8月14日付け現代ビジネスが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「中国経済「不動産バブル崩壊」でついに終焉へ…わが国の「失われた30年」よりもヒドい時代に突入する」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114635?imp=0
・『債務不履行の恐れも ここへ来て中国経済はかなり厳しい状況に追い込まれている。 不動産市況の悪化は鮮明だ。不動産関連分野はGDPの3割程度を占めるとの試算もあり、経済に与える負の影響は大きい。 価格の下落、住宅販売の減少によってデベロッパーの経営体力は低下し、債務不履行の恐れも高まっている。 土地譲渡益の減少によって地方財政も悪化した。 地方政府がインフラ投資などの景気刺激策を発動することは難しくなった。 雇用、所得環境は悪化し中国の需要は減少した。7月の主要経済指標から確認できる。 輸入は前年同月比12.4%減少した。川上の物価動向を示す生産者物価(PPI)は同4.4%、消費者物価指数(CPI)も同0.3%下落した』、興味深そうだ。
・『日本のバブル崩壊後を想起させる 自動車、家電、家賃などの価格は下落し、デフレ圧力は高まっている。かつて、わが国が経験した、バブル崩壊後のデフレ不況への道を歩んでいるようだ。 また、海外経済の環境の悪化や半導体など先端分野での米中対立の影響もあり、7月の輸出は前年同月比14.5%減少した。 共産党政権は経済成長率の低下を食い止めるため、不良債権処理を本格化し規制緩和などを進めることが必要だろう。中国経済の本格的な回復にはまだ時間がかかる。 足許、中国の経済全体で債務の返済を優先し、支出を抑制する個人や企業が増えている。 思い起こされるのは1990年代のわが国の状況だ。バブル崩壊による資産価格の急落によってわが国経済全体でバランスシート調整が進んだ。 消費や投資を減らし債務圧縮に取り組む家計が増えた。1990年後半にわが国はデフレ経済に突入し、“失われた30年”と呼ばれる長期の停滞に陥ってしまったのだ』、確かに「日本のバブル崩壊後を想起させる」ようだ。
・『地方政府の財政も悪化 中国経済もそうした環境に向かいつつあるように見える。きっかけは、2020年8月に共産党政権が“3つのレッドライン”と呼ばれる不動産融資規制を実施したことだった。 多くの市場参加者は、共産党政権が不動産バブルの抑制に真剣に取り組み始めたと急速に危機感を高めた。 結果、不動産の投機熱は冷めた。 不動産デベロッパーは資金繰り確保のために資産の切り売りを急いだ。中国の不動産市況全体で“売るから下がる、下がるから売る”という負の連鎖は鮮明化。マンションなどの価格は下落し、不動産業界全体で資金繰りに行き詰まる企業は増えた。 8月8日、碧桂園(カントリー・ガーデン)はドル建て社債の利払いを実施しなかったと報じられた。 マンションなどの建設は減少し、土地の需要も落ち込んだ。地方政府の重要な財源になってきた土地利用権の譲渡益は減少した。 地方政府の財政は悪化し、一部では財政破綻が懸念されるケースも増えている。経済対策として道路、鉄道などのインフラ投資を大規模に実行することは難しくなった。 投資に依存した経済運営は限界を迎えつつあると考えられる』、「マンションなどの建設は減少し、土地の需要も落ち込んだ。地方政府の重要な財源になってきた土地利用権の譲渡益は減少した。 地方政府の財政は悪化し、一部では財政破綻が懸念されるケースも増えている。経済対策として道路、鉄道などのインフラ投資を大規模に実行することは難しくなった。 投資に依存した経済運営は限界を迎えつつあると考えられる」、その通りだ。
・『若年層の失業率が46.5%に インフラ投資に用いられる基礎資材、建設機械などの需要も減少し、生産活動は停滞した。過剰生産応力は累積し、7月まで生産者物価指数は10ヶ月続けて下落した。 不動産や設備投資の減少などによって雇用、所得環境も悪化した。 アリババなどIT先端分野の企業に対する締め付け強化もあり若年層(16〜24歳)の失業率は46.5%に達したとの研究結果も報じられた。 個人消費の減少により7月の消費者物価指数も下落した。共産党政権は金融緩和を強化したが、目立った効果は出てい・・・・・ 習政権は景気の減速を食い止めるために財政支出を増やす考えも強調しているが、不動産分野や地方政府の債務問題が深刻であるため大規模な対策は打ち出しづらい。 消費者心理は悪化し、半導体、自動車部品など輸入も減少基調だ。 外需に関しても環境は厳しい。先端分野での米中対立、世界的なスマホやパソコンの出荷台数減少などによって、輸出減少は鮮明だ』、これでは打つ手はなさそうだ。
・『盛り返す展開は見えない また、労働コストの上昇や政策に関する不透明感の高まりなどを背景に、中国から脱出する海外企業も増えた。短期間で直接投資が盛り返す展開は期待できない。 当面、債務の返済を急ぐ中国の家計、企業などは増えるだろう。需要減少は勢いづき持続的に物価が下落するというデフレ環境が鮮明になる恐れは高まっている。 若年層を中心とする雇用、所得環境の悪化懸念を背景に、共産党政権が本格的に不良債権処理を進めることも容易ではない。 1990年代にわが国が経験した、あるいはそれ以上に厳しい環境に中国は向かいつつあるとみられる。・・・・・ さらに関連記事『中国不動産市場“ゼロコロナ”撤廃後もズタボロで…中国経済の「V字回復」には程遠い「悲惨すぎる実情」』では、いま起きている“もう一つの異変”について詳報しています』、この「関連記事」は第一の記事そのおのだ。「中国から脱出する海外企業も増えた。短期間で直接投資が盛り返す展開は期待できない。 当面、債務の返済を急ぐ中国の家計、企業などは増えるだろう。需要減少は勢いづき持続的に物価が下落するというデフレ環境が鮮明になる恐れは高まっている」、「1990年代にわが国が経験した、あるいはそれ以上に厳しい環境に中国は向かいつつあるとみられる」、その通りだ。
先ずは、8月8日付け現代ビジネスが掲載した『現代ビジネス』編集次長の近藤 大介氏による「中国不動産市場“ゼロコロナ”撤廃後もズタボロで…中国経済の「V字回復」には程遠い「悲惨すぎる実情」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114425?imp=0
・『恒大物業の再上場で分かったこと(先週8月3日、香港証券取引所は、ある会社の「復牌」(フーパイ)に注目が集まった。「復牌」とは、再上場のことだ。 その会社とは、2021年秋に経営破綻が取り沙汰された中国第2位の不動産大手、中国恒大集団(チャイナ・エバグランデ・グループ)の一角を担う恒大物業(HK06666)である。グループ内で、不動産の建設や、管理などを行う会社だ。 いわば恒大集団の復活を賭けた「復牌」だった。だが記念すべき初日は、何と47.39%も値を下げてしまった。初日から早くも、大暴落に見舞われたのだ。 香港や中国の株式専門家たちは、「134億元問題」(1人民元≒19.9円、以下同)を原因に挙げていた。これは恒大物業が、親会社の恒大集団に、担保として取られている資金だ。 恒大物業自体は、経営にさほどの遜色はない。昨年の売上高は、前年比約10%減ではあるものの、118億900万元。粗利益は27億1900万元で、純利益も14億7800万元出している。総請負建築面積は8億1900万㎡、管理面積は約5億㎡で、中国国内の約330万戸の物件管理を行っている。 それでも、年間の売上高を超える額の担保を親会社に取られているので、市場が恒大物産を信用していないというのが、香港や中国の株式専門家の見立てだった。たしかに134億元は、昨年の売上高の約1.1倍以上だ。 だが私は、先週の暴落を、もっと大きな枠組みで捉えるべきだと思っている。すなわち、市場から信用されていないのは、単に恒大物流や恒大集団という一不動産会社もしくはグループではなくて、中国の不動産業界全体だということだ。中国の大手不動産会社は、いずれも「爆弾」を抱えていると言われるからだ。 例えば、恒大集団と同じ広東省に本社があり、「最大のライバル会社」と言われた碧桂園集団(カントリー・ガーデン・グループ HK02007)。昨年の売上高は、3574億元にも上る。中国全土で500万戸以上の不動産を提供し、約30万人の従業員を抱えている。8月2日に発表されたばかりの「2023年版 フォーチュン・グローバル500」では、世界206位につけている巨大企業だ。 この中国を代表する不動産会社の一角が、先月18日から、上場している香港市場で、社債を暴落させている。7月21日には関連の5社が2割以上暴落し、臨時取引停止措置が取られた。その後、取引は再開されたが、7月31日に再び、関連3社が2割以上暴落し、取引停止となった。 同日には、同社のHPで、今年上半期は純利益がマイナスになりそうだとの見解を示していた。2007年に上場を果たして以降、昨年初めて赤字に転落したものの、さらなる業績悪化が見込まれるため、市場が悲観的になったのだ。 中国メディアの報道によれば、7月31日までに公表された上場している中国の不動産企業52社中、31社が、今年上半期でマイナスの純利益を計上している。実に全体の約6割だ。 昨年までは、習近平政権のゼロコロナ政策によって、不動産企業の赤字は当然視されていた。だが、ゼロコロナ政策を完全にやめた昨年12月以降も、不動産業界は引き続き、沈滞しているのである』、「中国第2位の不動産大手、中国恒大集団・・・の一角を担う恒大物業・・・である。グループ内で、不動産の建設や、管理などを行う会社だ。 いわば恒大集団の復活を賭けた「復牌」だった。だが記念すべき初日は、何と47.39%も値を下げてしまった。初日から早くも、大暴落に見舞われたのだ」、「香港や中国の株式専門家たちは、「134億元問題」・・・を原因に挙げていた。これは恒大物業が、親会社の恒大集団に、担保として取られている資金だ」、「年間の売上高を超える額の担保を親会社に取られているので、市場が恒大物産を信用していないというのが、香港や中国の株式専門家の見立てだった。たしかに134億元は、昨年の売上高の約1.1倍以上だ。 だが私は、先週の暴落を、もっと大きな枠組みで捉えるべきだと思っている。すなわち、市場から信用されていないのは、単に恒大物流や恒大集団という一不動産会社もしくはグループではなくて、中国の不動産業界全体だということだ。中国の大手不動産会社は、いずれも「爆弾」を抱えていると言われるからだ」、なるほど。
・『国家統計局発表「不動産10大データ」 中国の不動産の沈滞ぶりは、先月17日に国家統計局が発表した今年上半期の経済統計にも、如実に表れている。「不動産10大データ」は、以下の通りだ。 1)全国不動産開発投資は、前年同期比(以下同)で-7.9%。そのうち住宅投資は-7.3%。 2)不動産開発企業家屋施工面積は-6.6%。そのうち住宅施工面積は-6.9%。 3)家屋新着工面積は-24.3%。そのうち住宅新着工面積は-24.9%。 4)家屋竣工面積は+19.0%。そのうち住宅竣工面積は+18.5%。 5)商品家屋販売面積は-5.3%。そのうち住宅販売面積は-2.8%。 6)商品家屋販売額は+1.1%。そのうち住宅販売額は+3.7%。 7)6月末時点での販売中商品家屋面積+17.0%。そのうち販売中住宅面積+18.0%。 8)不動産開発企業調達資金-9.8%。そのうち国内の借り入れ-11.1%、外資の利用-49.1%、自己資金-23.4%、預金及び前受け金-0.9%、個人住宅ローン+2.7%。 9)6月の不動産開発景気指数94.06(100が最適)。 10)6月の70大中都市の新築商品住宅販売価格指数(前月比)は、上昇31都市、不変1都市、下降38都市。前年同月比では、上昇27都市、不変1都市、下降42都市。 これらのデータから、中国の不動産の惨憺たる現状が見えてくる。以下、簡単に解説しよう。 まず、1)の不動産開発投資や、2)の施工面積、3)の着工面積、5)の販売面積がマイナスなのは、主に3つの理由による。 第一に、不動産会社の開発資金が枯渇していること。第二に、不動産を建てても売れないこと。第三に、新たな住宅やオフィスを建設する前に、いまある在庫の山を売ってしまわないといけないからだ。 逆に、4)の竣工面積がプラスなのは、昨年までのゼロコロナ政策によって、昨年まで工事が滞っていたからだ。6)の販売額のプラスも同様である。 不動産によらず、中国政府が「経済統計がこんなに伸びています」と喧伝する時は、だいたいこのパターンである。例えば、「第2四半期(4月~6月)のGDPは6.3%も伸びた」と誇ったが、昨年の第2四半期に何をしていたか? 最大の経済都市上海では、丸2ヵ月にわたってロックダウン(都市封鎖)し、昨年第2四半期の経済成長率は-13.7%。他の大都市も、ゼロコロナ政策によって経済活動は大いに滞っていた。そんな「前年同期」と比べて、たったの6.3%しか成長していないことの方が、むしろ問題である。) 次に、7)の販売中の家屋や住宅が+17%~18%と「成長が際立っている」のは、それだけ物件が売れ残っているという証だ。北京や上海のショッピングモールなどを見ても、客で賑わっているのはレストラン街だけだ。 コロナ前にもそうした傾向は見られたが、少なくとも都市部の繁華街のオフィスビルは、ある程度、活況を呈していた。だがいまや、どこへ行っても「有租房」(空き部屋あります)のオンパレードだ。各都市が「丸ごと不景気」という感じなのだ。 8)の不動産開発企業の調達資金も、-9.8%と枯渇している。うち外資の利用が-49.1%と、マイナスが突出しているのは、中国経済の先行きを悲観視している外資系企業が、「脱中国」を図っている表れだ。 それは日本も例外ではない。日本にとって中国は、昨年も全貿易額の20.3%と最大の貿易相手国ではあったが、「これから中国に大型投資します」という日本企業には、あまりお目にかからない。 実際、中国税関総署の統計によれば、今年上半期の日中貿易は、前年同期比で-4.9%と、5%近く落ちている。日本にとって中国からの輸入は+2.1%だが、これは前述のように、中国が1年前にゼロコロナ政策を取っていた要員が大きい。逆に、日本から中国への輸出は-11/1%で、これは明らかに日本企業が「脱中国」を図りつつあることを示している。 9)の不動産開発景気指数は、中国で不動産販売元年とも言える2000年を基点として作った指数だ。100が最適レベルで、100~105が適正レベルである。105以上は、住宅バブルの危険レベル。逆に95以下ならば、不況やデフレを示す危険レベルだ。 不動産開発景気指数は、昨年9月に95を割って以降、何と一度も95に達していない。それどころか、先月発表した今年6月分は94.06と、過去1年で最低を記録してしまった。5月の94.55から、1ヵ月で0.49ポイントも下落しているのだ。下落幅は、過去1年で最大。この傾向が続けば、7月は94を切ってしまうことになり、いよいよ危険水域突入だ。 こうした傾向は、10)の70大中都市の新築商品住宅販売価格指数にも、如実に表れている。上昇している都市は、前月比で見ると31都市、前年同期比で見ても27都市と、いずれも過半数割れしている。 前年同期比では、大連95.8、秦皇島95.9、温州95.9……と、本来なら経済発展の「優等生都市」である沿岸部の3都市が、一年で4%以上も価格を下げている。これは深刻である。 このように、習近平政権の「大本営発表」を分析しても、中国の不動産は惨憺たる事態に陥っていることが分かる。統計に表れない「陰の部分」も勘案すれば、さらに深刻だということが推察できる』、「不動産10大データ」は詳しい解説を合わせてみないとよく分からない。
・『発端は胡錦濤政権の「4兆元問題」だが 一体なぜこんなことになってしまったのか? それには、いくつかの大きな要因が考えられる。 第一に、前任の胡錦濤政権の責任である。2008年秋にリーマン・ショック(アメリカ発の金融危機)が起こった時、当時の胡錦濤政権は、北京夏季オリンピック・パラリンピックを成功させたばかりでイケイケドンドンだった。そこで、同年11月に初めてワシントンで行われたG20(主要国・地域)首脳会議で、4兆元(当時のレートで約58兆円)もの緊急財政支出を宣言した。 そのことで世界経済は救われたし、「米中2大国時代」と言われるようにもなった。ところが、中国の地方政府に重い財政負担を強いることとなったのだ。 中国で予算法が改正されて、地方政府が地方債を発行できるようになるのは、習近平時代になった2014年のことだ。地方政府としては、地方債という「抜け道」もないまま、高速鉄道建設を始めとする多額の負担を押しつけられたのである。 それでも、胡錦涛政権は割合まともな経済政策を取っていたし、欧米との関係も良好だった。そのため、「4兆元問題」がすぐに問題化することもなかった。 そして、中国は2013年3月から、習近平政権にバトンタッチした。ところが習近平という指導者は、それまでの鄧小平、江沢民、胡錦涛という3代の指導者たちとは、明らかに「異質」だった。 1992年以降の中国は、「社会主義市場経済」というシステムで国を運営してきたが、習近平主席は、ゴリゴリの「社会主義絶対主義者」だったのだ。同様の存在だった初代の毛沢東主席を崇拝していた。 歴史に「もしも」はタブーと言われるが、もしも2013年に習近平政権のナンバー2となった李克強首相がトップに立っていたなら、「4兆元の副作用」について配慮した国家運営を行っただろう。李首相は胡錦涛氏の長年の「弟分」だったからだ。 だが習近平主席は、「社会主義」「共産党」「国有企業」「安全」「強軍」といったスローガンを前面に押し立てた国家運営を行った。その一方で「市場経済」は、すっかり後回しにされた。 それでも、2014年に地方政府が地方債を発行できるようになり、今年は過去最高の3.8兆元(約75兆円)もの「専項債」(後に利益を回収できる見込みのあるものに投資する地方債)の予算が計上されている。「4兆元の副作用」に苦しむ地方政府は、こうした資金をもとに、主にインフラ投資のため、「陰の銀行」とも言うべき「地方融資平台」(LGFT)を次々に作っていった。 経済が悪化するほど、国有銀行(中国の銀行はほとんどが国有)は国有企業に優先的に融資した。そのため、本来なら経済の主力であるはずの民営企業は、すっかり先細っていった。これを「国進民退」と呼ぶ。 そこで民営企業が頼ったのが、「地方融資平台」だった。だが、高い利子を払えず倒産した民営企業は数知れず。その結果、中国で「公表」されている昨年末時点での「地方融資平台」の債務残額は59兆元。邦貨にして約1170兆円! これはいわば、中国の地方が抱えている「隠れ債務」だ。 このような状況下にあっては、中国の31地域のうち少なからぬ地域が、すでに「破綻状態」にあると言える。それでも「破綻」とならないのは、そもそも社会主義の中国では土地は国家のものだし(憲法10条規定)、膨大な国有企業などの資産もあるからだ。 だがそんな中で、全国各地の不動産が、健全に発展していくのは困難だ。不動産の停滞は、もともとは「4兆元の副作用」とは言え、明らかにこの10年あまりの習近平政権の経済失政によるところが大きい』、「発端は胡錦濤政権の「4兆元問題」、習近平主席は、「社会主義」「共産党」「国有企業」「安全」「強軍」といったスローガンを前面に押し立てた国家運営を行った。その一方で「市場経済」は、すっかり後回しにされた」、「中国で「公表」されている昨年末時点での「地方融資平台」の債務残額は59兆元。邦貨にして約1170兆円! これはいわば、中国の地方が抱えている「隠れ債務」だ。 このような状況下にあっては、中国の31地域のうち少なからぬ地域が、すでに「破綻状態」にあると言える。それでも「破綻」とならないのは、そもそも社会主義の中国では土地は国家のものだし(憲法10条規定)、膨大な国有企業などの資産もあるからだ」、なるほど。
・『習近平政権の「恐るべき鈍感力」 習近平氏は、2012年11月に共産党総書記に就任するや、その翌月に「八項規定」(贅沢禁止令)を出して、いきなり不動産市場を暴落させた。 その後、2015年9月には、国有企業を「焼け太り」させるような「国有企業改革」を発表し、翌2016年からは「供給側構造改革」という「5つの緊縮政策」を打ち出した。不動産の在庫整理はこの緊縮政策のトップであり、不動産市場は冷めていった。 続いて、同年12月の中央経済工作会議で、「家は住むためのもので、投機するためのものではない」(房子是用来住的、不是用来炒的)と唱えた。そして翌2017年から、不動産の購入を厳格化した。頭金や住宅ローン規制などを強めて、「2軒目」を買いにくくしたのだ。 さらに、2020年8月に打ち出した「3つのレッドライン」が、不動産業界を「自壊」させる要因となった。負債の対資産比率70%以下、純負債の対資本比率100%以下、手元資金の対短期負債比率100%以上という「3つのレッドライン」に従って、不動産会社を4分類し、それぞれの債務規模を制限するという政策だ。その上、銀行側にも不動産会社や住宅ローンに対する融資制限をかけた。 習近平政権はこのような経済政策を、新型コロナウイルスが蔓延した年に行ったのだ。まさに「恐るべき鈍感力」と言える。 こうしたことが重なって、2021年秋、中国第2位の不動産会社だった恒大集団の破綻騒動となったのだ。もっとも恒大集団に関しては、習近平主席の「政敵」だった「共青団」(中国共産主義青年団)の最大の後ろ盾企業だったから潰しにかかったという有力な説もあるが。 そして「決定打」となったのが、繰り返し述べている丸3年に及んだゼロコロナ政策である。不動産を売る企業の側も、買う国民の側も、そしてロックダウンやPCR検査などに膨大な予算と労力をかけさせられた地方政府も、誰もがボロボロになった。不動産市場は、ゼロコロナ政策を解除して半年やそこらでは、「回復」できないのである。 そして、中国政府や官製メディアは、このところしきりに中国経済の「V字回復」を強調しているが、GDPの10%~15%を牽引すると言われる不動産が低迷している限り、中国経済の「V字回復」も望めない。 実際のところは、「L字型」ではないか。いわゆる「落ちてから回復せず横ばい状態」だ。だが、この話を旧知の中国人経済学者にしたら、苦笑しながら言った。 「本当は『I字型』かもしれないぞ。ゼロコロナ政策によって経済はズドンと落ちたが、また何か別な政策が始まるかもしれないからだ。徹底した『共同富裕』政策などだ。ともかくいまの中国は、いくらマンション価格や住宅ローン金利が多少下がったからといって、安心して新たに一軒買おうなどというマインドにはない。いまの中国人の心情を漢字一文字で表すなら、『棄』(捨てる、諦める)だ」』、「「決定打」となったのが、繰り返し述べている丸3年に及んだゼロコロナ政策である。不動産を売る企業の側も、買う国民の側も、そしてロックダウンやPCR検査などに膨大な予算と労力をかけさせられた地方政府も、誰もがボロボロになった。不動産市場は、ゼロコロナ政策を解除して半年やそこらでは、「回復」できないのである」、「いまの中国人の心情を漢字一文字で表すなら、『棄』・・・だ。なるほど。
次に、8月14日付け現代ビジネスが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「中国経済「不動産バブル崩壊」でついに終焉へ…わが国の「失われた30年」よりもヒドい時代に突入する」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114635?imp=0
・『債務不履行の恐れも ここへ来て中国経済はかなり厳しい状況に追い込まれている。 不動産市況の悪化は鮮明だ。不動産関連分野はGDPの3割程度を占めるとの試算もあり、経済に与える負の影響は大きい。 価格の下落、住宅販売の減少によってデベロッパーの経営体力は低下し、債務不履行の恐れも高まっている。 土地譲渡益の減少によって地方財政も悪化した。 地方政府がインフラ投資などの景気刺激策を発動することは難しくなった。 雇用、所得環境は悪化し中国の需要は減少した。7月の主要経済指標から確認できる。 輸入は前年同月比12.4%減少した。川上の物価動向を示す生産者物価(PPI)は同4.4%、消費者物価指数(CPI)も同0.3%下落した』、興味深そうだ。
・『日本のバブル崩壊後を想起させる 自動車、家電、家賃などの価格は下落し、デフレ圧力は高まっている。かつて、わが国が経験した、バブル崩壊後のデフレ不況への道を歩んでいるようだ。 また、海外経済の環境の悪化や半導体など先端分野での米中対立の影響もあり、7月の輸出は前年同月比14.5%減少した。 共産党政権は経済成長率の低下を食い止めるため、不良債権処理を本格化し規制緩和などを進めることが必要だろう。中国経済の本格的な回復にはまだ時間がかかる。 足許、中国の経済全体で債務の返済を優先し、支出を抑制する個人や企業が増えている。 思い起こされるのは1990年代のわが国の状況だ。バブル崩壊による資産価格の急落によってわが国経済全体でバランスシート調整が進んだ。 消費や投資を減らし債務圧縮に取り組む家計が増えた。1990年後半にわが国はデフレ経済に突入し、“失われた30年”と呼ばれる長期の停滞に陥ってしまったのだ』、確かに「日本のバブル崩壊後を想起させる」ようだ。
・『地方政府の財政も悪化 中国経済もそうした環境に向かいつつあるように見える。きっかけは、2020年8月に共産党政権が“3つのレッドライン”と呼ばれる不動産融資規制を実施したことだった。 多くの市場参加者は、共産党政権が不動産バブルの抑制に真剣に取り組み始めたと急速に危機感を高めた。 結果、不動産の投機熱は冷めた。 不動産デベロッパーは資金繰り確保のために資産の切り売りを急いだ。中国の不動産市況全体で“売るから下がる、下がるから売る”という負の連鎖は鮮明化。マンションなどの価格は下落し、不動産業界全体で資金繰りに行き詰まる企業は増えた。 8月8日、碧桂園(カントリー・ガーデン)はドル建て社債の利払いを実施しなかったと報じられた。 マンションなどの建設は減少し、土地の需要も落ち込んだ。地方政府の重要な財源になってきた土地利用権の譲渡益は減少した。 地方政府の財政は悪化し、一部では財政破綻が懸念されるケースも増えている。経済対策として道路、鉄道などのインフラ投資を大規模に実行することは難しくなった。 投資に依存した経済運営は限界を迎えつつあると考えられる』、「マンションなどの建設は減少し、土地の需要も落ち込んだ。地方政府の重要な財源になってきた土地利用権の譲渡益は減少した。 地方政府の財政は悪化し、一部では財政破綻が懸念されるケースも増えている。経済対策として道路、鉄道などのインフラ投資を大規模に実行することは難しくなった。 投資に依存した経済運営は限界を迎えつつあると考えられる」、その通りだ。
・『若年層の失業率が46.5%に インフラ投資に用いられる基礎資材、建設機械などの需要も減少し、生産活動は停滞した。過剰生産応力は累積し、7月まで生産者物価指数は10ヶ月続けて下落した。 不動産や設備投資の減少などによって雇用、所得環境も悪化した。 アリババなどIT先端分野の企業に対する締め付け強化もあり若年層(16〜24歳)の失業率は46.5%に達したとの研究結果も報じられた。 個人消費の減少により7月の消費者物価指数も下落した。共産党政権は金融緩和を強化したが、目立った効果は出てい・・・・・ 習政権は景気の減速を食い止めるために財政支出を増やす考えも強調しているが、不動産分野や地方政府の債務問題が深刻であるため大規模な対策は打ち出しづらい。 消費者心理は悪化し、半導体、自動車部品など輸入も減少基調だ。 外需に関しても環境は厳しい。先端分野での米中対立、世界的なスマホやパソコンの出荷台数減少などによって、輸出減少は鮮明だ』、これでは打つ手はなさそうだ。
・『盛り返す展開は見えない また、労働コストの上昇や政策に関する不透明感の高まりなどを背景に、中国から脱出する海外企業も増えた。短期間で直接投資が盛り返す展開は期待できない。 当面、債務の返済を急ぐ中国の家計、企業などは増えるだろう。需要減少は勢いづき持続的に物価が下落するというデフレ環境が鮮明になる恐れは高まっている。 若年層を中心とする雇用、所得環境の悪化懸念を背景に、共産党政権が本格的に不良債権処理を進めることも容易ではない。 1990年代にわが国が経験した、あるいはそれ以上に厳しい環境に中国は向かいつつあるとみられる。・・・・・ さらに関連記事『中国不動産市場“ゼロコロナ”撤廃後もズタボロで…中国経済の「V字回復」には程遠い「悲惨すぎる実情」』では、いま起きている“もう一つの異変”について詳報しています』、この「関連記事」は第一の記事そのおのだ。「中国から脱出する海外企業も増えた。短期間で直接投資が盛り返す展開は期待できない。 当面、債務の返済を急ぐ中国の家計、企業などは増えるだろう。需要減少は勢いづき持続的に物価が下落するというデフレ環境が鮮明になる恐れは高まっている」、「1990年代にわが国が経験した、あるいはそれ以上に厳しい環境に中国は向かいつつあるとみられる」、その通りだ。
タグ:中国経済 (その18)(中国不動産市場“ゼロコロナ”撤廃後もズタボロで…中国経済の「V字回復」には程遠い「悲惨すぎる実情」、中国経済「不動産バブル崩壊」でついに終焉へ…わが国の「失われた30年」よりもヒドい時代に突入する、「投資制限」発表前から投資家は「撤退済み」...「中国の自爆」が引き起こした 25年ぶり「外国投資」低水準) 現代ビジネス 近藤 大介氏による「中国不動産市場“ゼロコロナ”撤廃後もズタボロで…中国経済の「V字回復」には程遠い「悲惨すぎる実情」」 「中国第2位の不動産大手、中国恒大集団・・・の一角を担う恒大物業・・・である。グループ内で、不動産の建設や、管理などを行う会社だ。 いわば恒大集団の復活を賭けた「復牌」だった。だが記念すべき初日は、何と47.39%も値を下げてしまった。初日から早くも、大暴落に見舞われたのだ」、 「香港や中国の株式専門家たちは、「134億元問題」・・・を原因に挙げていた。これは恒大物業が、親会社の恒大集団に、担保として取られている資金だ」、「年間の売上高を超える額の担保を親会社に取られているので、市場が恒大物産を信用していないというのが、香港や中国の株式専門家の見立てだった。たしかに134億元は、昨年の売上高の約1.1倍以上だ。 だが私は、先週の暴落を、もっと大きな枠組みで捉えるべきだと思っている。すなわち、市場から信用されていないのは、単に恒大物流や恒大集団という一不動産会社もしくはグループでは なくて、中国の不動産業界全体だということだ。中国の大手不動産会社は、いずれも「爆弾」を抱えていると言われるからだ」、なるほど。 「不動産10大データ」は詳しい解説を合わせてみないとよく分からない。 「発端は胡錦濤政権の「4兆元問題」、習近平主席は、「社会主義」「共産党」「国有企業」「安全」「強軍」といったスローガンを前面に押し立てた国家運営を行った。その一方で「市場経済」は、すっかり後回しにされた」、 「中国で「公表」されている昨年末時点での「地方融資平台」の債務残額は59兆元。邦貨にして約1170兆円! これはいわば、中国の地方が抱えている「隠れ債務」だ。 このような状況下にあっては、中国の31地域のうち少なからぬ地域が、すでに「破綻状態」にあると言える。それでも「破綻」とならないのは、そもそも社会主義の中国では土地は国家のものだし(憲法10条規定)、膨大な国有企業などの資産もあるからだ」、なるほど。 「「決定打」となったのが、繰り返し述べている丸3年に及んだゼロコロナ政策である。不動産を売る企業の側も、買う国民の側も、そしてロックダウンやPCR検査などに膨大な予算と労力をかけさせられた地方政府も、誰もがボロボロになった。不動産市場は、ゼロコロナ政策を解除して半年やそこらでは、「回復」できないのである」、「いまの中国人の心情を漢字一文字で表すなら、『棄』・・・だ。なるほど。 真壁 昭夫氏による「中国経済「不動産バブル崩壊」でついに終焉へ…わが国の「失われた30年」よりもヒドい時代に突入する」 確かに「日本のバブル崩壊後を想起させる」ようだ。 「マンションなどの建設は減少し、土地の需要も落ち込んだ。地方政府の重要な財源になってきた土地利用権の譲渡益は減少した。 地方政府の財政は悪化し、一部では財政破綻が懸念されるケースも増えている。経済対策として道路、鉄道などのインフラ投資を大規模に実行することは難しくなった。 投資に依存した経済運営は限界を迎えつつあると考えられる」、その通りだ。 これでは打つ手はなさそうだ。 この「関連記事」は第一の記事そのおのだ。「中国から脱出する海外企業も増えた。短期間で直接投資が盛り返す展開は期待できない。 当面、債務の返済を急ぐ中国の家計、企業などは増えるだろう。需要減少は勢いづき持続的に物価が下落するというデフレ環境が鮮明になる恐れは高まっている」、 「1990年代にわが国が経験した、あるいはそれ以上に厳しい環境に中国は向かいつつあるとみられる」、その通りだ。
中国経済(その17)(「高学歴層が増える中国」が迎えうる"意外な未来" "現代最高の知性"が予言する「新しい全体主義」、中国は人口減による衰退論に猛反発 本当は他国に触れられたくない“縮みの現実”とは、中国でなぜ「巨大な赤ちゃん」が増えているのか?炎上が相次ぐ異常なワガママぶりの背景、中国経済を見限り「日本株」にマネーを投下する海外投資家が増えている理由) [世界経済]
中国経済については、本年3月19日に取上げた。今日は、(その17)(「高学歴層が増える中国」が迎えうる"意外な未来" "現代最高の知性"が予言する「新しい全体主義」、中国は人口減による衰退論に猛反発 本当は他国に触れられたくない“縮みの現実”とは、中国でなぜ「巨大な赤ちゃん」が増えているのか?炎上が相次ぐ異常なワガママぶりの背景、中国経済を見限り「日本株」にマネーを投下する海外投資家が増えている理由)である。
先ずは、本年4月4日付け東洋経済オンラインが掲載した歴史家・文化人類学者・人口学者のエマニュエル・トッド氏による「「高学歴層が増える中国」が迎えうる"意外な未来" "現代最高の知性"が予言する「新しい全体主義」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/660407
・『「世界最高の知性」の一人と言われるエマニュエル・トッド氏。「ソ連崩壊」から「金融危機」まで数々の歴史的出来事を予言してきた彼が、パンデミックにおける中国のあり方をどう分析したのか?『2035年の世界地図──失われる民主主義 破裂する資本主義』に収録されたトッド氏の新たな予言を特別に公開する(Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『「新しい種類の全体主義」の可能性 Q:パンデミックの危機は、特に先進国において、分断を加速させるような形で民主主義の危機をもたらしている。そうお考えのあなたに、中国についてもお伺いしたいと思います。 エマニュエル・トッド:(Q:パンデミックへの対処において、中国共産党による事実上の独裁である権威主義体制が民主主義より優れている、という中国の主張についてどう思われますか?) 私たちが見てきたのは、新しい種類の全体主義システムの可能性です。 中国という国家、つまり共産党や警察部門、主語をどう表現すべきかは迷ってしまいますが、たしかに彼らはロックダウンなどの実行に成功しました。ある意味、信じられないことです。 興味深いのは、ロシアで起きたことは、中国と正反対だったことです。どちらも権威主義の伝統を持っていますが、コロナに関する限り、ロシア政府は国民をまったく制御できませんでした。) 教育の動きについてお話ししたとき、私は先進国社会における一種の普遍的モデルに言及しました。識字能力があまねく社会で共有された後、高等教育が広がり、階層化し、そして社会を断片化するという諸段階です。 これはすべての国に当てはまりますね。しかし、考慮しなければならない要素がもう1つあります。 すべての先進国の制度を寡頭制的とも表現できる、ということです。さまざまな種類の民主主義があるのと同様、今やさまざまな種類の寡頭制があります』、「ロシアで起きたことは、中国と正反対だったことです。どちらも権威主義の伝統を持っていますが、コロナに関する限り、ロシア政府は国民をまったく制御できませんでした」、「コロナに関する限り、ロシア政府は国民をまったく制御」する気がなかった方が適切な気がする。
・『「家族制度」から見た日本と中国 私の研究テーマでもある「家族制度の重要性」、永続的な家族の価値の重要性といったことに関係しています。 つまり、組織化された社会で続く家族の価値であり、それは伝統的な農民家族が消失した後も存続するのです。中国の家族、伝統的な中国の農民の家族は、権威主義的であり、非常に強い父親がいますが、同時に兄弟間で平等に相続するというルールを持つ平等主義でもあります。それは強い父系でした。女性に比べて、男性を非常に重視します。 一方で、日本の伝統的な家族制度は直系家族制と呼ばれ、伝統的に長男の相続でした。中国ほどではないが、権威主義的でした。これは社会人類学者が常に指摘することですが、中国の家族よりも権威的ではないものの非平等主義です。日本の家庭では、兄弟は同じ価値ではありません。 これは両国の社会の権威主義的傾向を説明するとともに、中国が権威主義的で平等主義的な共産主義を生み出したという事実と、日本が移行に際して階層社会を生み出したことを説明できます。 日本は近代工業社会やポスト工業社会に、より容易に適応しました。 今、中国にあるのは、国民を制御するための最新の技巧です。顔認証があり、インターネットがあり、最先端のあらゆるツールがあります。しかし同時に、中国には、権威主義的および平等主義的な家族の価値が存続していて、彼らの社会的価値にもつながっています。) 中国について考えるとき、中国が経済的に成功したせいで、中国は極めて同質的であると考えるかもしれません。また、中国は完璧な権威主義システム、または世界で最も権威主義的なシステムとも表現されるでしょう。しかし、中国の指導者たちはそう見ていません』、「今、中国にあるのは、国民を制御するための最新の技巧です。顔認証があり、インターネットがあり、最先端のあらゆるツールがあります。しかし同時に、中国には、権威主義的および平等主義的な家族の価値が存続していて、彼らの社会的価値にもつながっています」、なるほど。
・『権威主義的な中国で人々が決起する? 彼らは中国が強い平等主義の価値観に基づいて、共産主義革命を起こしたことを覚えています。これらの平等主義的な価値観がまだそこにあることを知っています。 中国の社会には公正を求める要素があります。中国の指導者たちは常に、人々の決起の可能性を考慮に入れておかなければなりません。 これは、中国を統治することが非常に厳しい理由の1つだと思います。それは内向きのもろさがあります。 もう1つ、付け加えておきましょう。中国はすでに、人口の中に相当数の高学歴層がいるということです。この状況は西洋のどこにおいても、伝統的イデオロギーの解体をもたらしました。多くの人は知らないでしょうが、私は高等教育を受けた人々が人口のうちの25%を占めたことが、ソ連で共産主義が崩壊した本当の理由だと考えています。 私は1988年のデータを持っています。当時のソ連の国勢調査によると、高等教育を受けた者の割合が25%に達していました。そして、1990年にシステムが崩壊したのです。 中国は、今のところまだこの水準(25%)には達していませんが、中国の将来について考えると、政治的バランスと民主主義の将来という観点から相反する2つの力があると思います。 一方には、中国の文化と革命の伝統として、平等主義の要素があります。もう一方で、高等教育を受けた人々が増えています。中産階級と呼ばれる層です。この階層の比率が、共産主義崩壊直前のソ連と同じ水準に達しようとしているのです』、「中国の社会には公正を求める要素があります。中国の指導者たちは常に、人々の決起の可能性を考慮に入れておかなければなりません。 これは、中国を統治することが非常に厳しい理由の1つだと思います」、「一方には、中国の文化と革命の伝統として、平等主義の要素があります。もう一方で、高等教育を受けた人々が増えています。中産階級と呼ばれる層です。この階層の比率が、共産主義崩壊直前のソ連と同じ水準に達しようとしているのです」、「中国」でも「中産階級」が25%、と「共産主義崩壊直前のソ連と同じ水準に達しようとしている」、「「中国」で「中産階級」が25%」になったとしても、「共産主義崩壊直前のソ連」のようなことにはならないのではなかろうか。
次に、5月1日付けデイリー新潮が掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤和彦氏による「中国は人口減による衰退論に猛反発 本当は他国に触れられたくない“縮みの現実”とは」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05011118/?all=1
・『足元の最大の不安材料はデフレ懸念 国連経済社会局は4月24日、「インドの人口が4月末までに中国を追い抜き、世界最多となる」との予測を発表した。今後の見通しについても「インドで数十年にわたり人口が増加し続けるのに対し、中国は今世紀末までに10億人を割り込む」としている。 国連の予測は19日に国連人口基金が公表したデータに基づく客観的なものだ。だが、中国政府は「西側メディアが中国を中傷するため、人口減少による中国衰退論を意図的に喧伝している」と猛反発している。 中国の今年第1四半期の経済成長率は前年比4.5%増となり、昨年第4四半期の2.9%増から加速した。これを受けて、米国の大手金融機関は中国の経済成長率を相次いで上方修正しており、国際通貨基金(IMF)も「中国はインドともに今年の世界経済を牽引する」と予測している。 「ゼロ・コロナ政策を解除した中国の景気は回復する」との見方が出ているのにもかかわらず、なぜ中国政府は「衰退論」に過剰反応しているのだろうか。 中国経済にとって足元の最大の不安材料はデフレ懸念だ。成長率が上振れしているのにもかかわらず、物価の下落傾向が強まっている。 不動産バブルの崩壊により、で生産者物価指数(PPI)は昨年後半以降、マイナスの状態が続いている。消費者物価指数(CPI)も3月、前年比0.7%増にまで低下している。 中国政府は「デフレは起きていない」と主張しているが、専門家は「中国経済の深い部分にまでデフレ圧力が浸透している」と分析している(4月19日付ロイター)』、「専門家は「中国経済の深い部分にまでデフレ圧力が浸透している」と分析」、これは深刻だ。
・『若者のキャリア・パスにも「縮み」の現象が デフレとは「物価が持続的に下落している現象」であり、日本語では「経済収縮」と訳される。平たく言えば「経済が持続的に縮んでいく」ことだが、中国経済は至るところで「縮み」傾向が目立つようになっている。 この傾向が最も顕著なのは個人消費だ。日本を始め先進国の国内総生産に占める個人消費の割合は5割を超えるが、中国の比率は4割に満たない。このことは中国経済が抱える構造的な弱点とされてきたが、足元の状況はむしろ悪化している感がある。 不動産バブルの崩壊がもたらす資産デフレが悪影響を与えており、中国の家計は将来のリスクに備えて貯蓄を大幅に増やしている。中国の家計貯蓄は昨年、17兆8000億元増と過去最大の伸びを示した。今年第1四半期にさらに9兆9000億元増加し、増加幅は2021年通年の伸びに匹敵する。 この大きく膨らんだ貯蓄を消費などに振り向けるため、中国政府は銀行に対して預金金利をさらに引き下げるよう指示しているが、成果が上がるとは思えない。3月の失業率は16歳から24歳までが19.6%と記録的な水準に達しており、雇用不安が続く状況で中国人の貯蓄志向が変わるとは思えないからだ。 中国の若者のキャリア・パスに「縮み」の現象が生じていることも気になるところだ。 高学歴の若者たちが高給取りの仕事を捨て、低賃金の肉体労働の仕事に転職して慎ましく生きていくという選択を取り始めている(「クーリエ・ジャポン」4月20日配信記事)。若者がキャリア・ダウンを志向するのは「ラットレース(ハードワークをしても豊かになれない状態)は意味がない」との認識が広まっているからだという。 「縮み」傾向の下、中国の海外旅行者の数もピーク時の水準を大きく下回っており(「ロイター」4月19日配信記事)、中国人観光客の増加による日本のインバウンド需要の拡大は期待外れに終わってしまうのかもしれない』、「若者がキャリア・ダウンを志向するのは「ラットレース(ハードワークをしても豊かになれない状態)は意味がない」との認識が広まっているからだという」、「「若者がキャリア・ダウンを志向する」とは由々しいことだ。
・『足かせは中国を巡る地政学リスク 中国経済を牽引していた輸出も「縮み」始めている。 予想に反し、中国の3月の輸出は増加に転じた。6カ月ぶりのことだが、「コロナ以前の水準にまで回復することは難しい」との予測が一般的だ。 その要因の1つとして、中国の人件費上昇がある。これを受けて、製造業の生産拠点が東南アジアに多く移転した。 今年4月、中国最大の貿易見本市である広州交易会が4年ぶりに開催されたが、出展した中国の輸出企業は環境の激変ぶりを痛感しており、今後、輸出部門で大幅なリストラが実施されるのは必至の情勢だ。 中国経済の成長に貢献してきた海外からの投資マネーも縮んでいる。 習近平国家主席を筆頭に中国の当局者らが異口同音に中国経済の復活を宣言し、規制強化で招いたダメージの修復に取り組んでいるが、中国ハイテク企業からの投資の引き揚げが止まらない(「Bloomberg」4月14日配信記事)。 足かせとなっているのは中国を巡る地政学リスクだ。外国勢の資金引き揚げが進み、中国株の下落が続いている。 「Bloomberg」の記事はモルガン・チェースの調査を引用し、投資家が「最も撤退する可能性が高い新興国」として挙げたのは中国だったとしている。中国経済は回復しつつあっても、「投資家の頭に浮かぶのは米中関係や台湾問題」だからだ。 中国の科学技術分野の論文発表数は米国に次いで世界第2位となり、「科学技術大国」のイメージが強まっているが、実態は違うようだ。 研究の不正が横行し、中国の研究者たちが「偽造論文」を世界中にまき散らしている実態が明らかになっており(「クーリエ・ジャポン」4月23日配信記事)、「科学技術大国」中国に対する期待も今後、大きく縮むことになるだろう。 このように、中国経済の縮み(衰退)は深刻だ。中国政府が声高に衰退論を否定するのは、このことを誰よりもよく知っているからではないだろうか』、「研究の不正が横行し、中国の研究者たちが「偽造論文」を世界中にまき散らしている実態が明らかになっており・・・「科学技術大国」中国に対する期待も今後、大きく縮むことになるだろう」、「中国政府が声高に衰退論を否定するのは、「中国経済の縮みは深刻」であることを、「誰よりもよく知っているからではないだろうか」、「中国経済」は想定以上に「深刻」なようだ。
第三に、6月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリージャーナリストの中島 恵氏による「中国でなぜ「巨大な赤ちゃん」が増えているのか?炎上が相次ぐ異常なワガママぶりの背景」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324172
・『交通機関で泣く子ども、学校に猛抗議するモンスターペアレント……日本でもよくある話だが、中国ではこれが思いがけない方向に展開して大騒動になることが珍しくない。日本人の目から見て、信じられないほど“わがままな大人”が多いためだ。なぜ中国では、公共の場でも気にせずわがままな振る舞いをする大人が増えているのか? 親子関係の問題も含め、改めて検証する』、興味深そうだ。
・『観光地や交通機関で「わがままな大人」が騒動を起こす 今年、中国のゴールデンウイークはコロナ禍前の水準に戻り、のべ2億7400万人が移動した。しかし、観光客でごった返す各地には、「わがままな子ども」だけでなく、「わがままな大人」が続出。SNSで炎上する事案が多発した。 4月下旬、中国の高速鉄道(日本の新幹線に相当)の車内で、2人の女性が激しい口論を繰り広げた。最初にケンカを売った女性は、後部座席の赤ちゃんの泣き声で自分の眠りが邪魔されたと言って、赤ちゃんの母親を大声で怒鳴り、母親もそれに応戦。口論する様子は数十分にわたって車内に響き渡り、乗務員が仲裁に入ってようやく収まった。 このときの動画がSNSに投稿されると、「公共の場で母親は子どもをおとなしくさせるべきだ」という意見と、「大人なら寛容になるべきだ」という意見が対立。炎上する騒ぎとなった。) 日本でも電車内で赤ちゃんが泣くことは珍しくないが、赤ちゃんが泣いていることに文句を言う大人はめったにいないし、それがきっかけで口論が始まることもほぼない。だが、中国では、赤ちゃんに限らず、ささいなことがきっかけで、公共の場で大ゲンカが起きることはよくある。 電車内で起きたことなら、自分が他の車両に“避難”すれば済むことだが、これが飛行機だとそうもいかない。たとえば、前の座席の人が突然背もたれを大きく倒す、後ろの座席の人が前の座席の上に足を乗せる、機内中に響き渡るほどの大音量で音楽を流す人がいる、といったトラブルはよく起こる。そのたびに騒動になり、多くの人々は、ごく一部の人の犠牲となる』、「中国では、赤ちゃんに限らず、ささいなことがきっかけで、公共の場で大ゲンカが起きることはよくある」、我慢することをせず、要求するだけの姿勢では、「公共の場で大ゲンカが起きることはよくある」、困ったことだ。
・『「動画を撮ってSNSにアップ→炎上」が事態を厄介に さらにここ数年、問題を厄介にさせているのは、誰かがすぐにその場で動画を撮影し、SNSに投稿してしまうことだ。中国では他の問題もそうだが、SNS上で賛否両論が巻き起こると、次第に本題を外れて、別の話題へと発展し、元ネタが何だったかわからなくなるほどの大ゲンカがSNS上で勃発する。そうした「第二次戦争」「代理SNS戦争」ともいえるような状態が近年激しくなっており、日本のメディアでもしばしば取り上げられるようになった。 そもそもなぜ中国では、公共の場で、そこまでわがままな振る舞いをする人が多いのか。 考えられるのは、やはり1979年末から始まり、30年以上も続いた一人っ子政策の影響だろう。子どもは1人と政府に決められ、子どもを溺愛する親が増えた。中には我が子に何でも買い与え、「小皇帝」という別名の通り、勉強以外、すべてのことを子どもの代わりにやってあげるという親もいる。同政策の実施後に生まれた世代の最年長は40歳を超えており、年齢的にはすでに立派な大人だが、自由奔放に育てられた結果、すべてにおいて自己中心的で、自分の思い通りにならないと癇癪(かんしゃく)を起こす、我慢ができない、悪態をつく、という人が増えた。 中国で2018~2019年頃に流行語となった言葉に「巨嬰症(ジュ―インジェン)」がある。「巨大な赤ちゃん病」、つまり、赤ちゃんのまま大人になった人を指す言葉だ。本当の病名ではなく、そのような状態になることをいう』、「1979年末から始まり、30年以上も続いた一人っ子政策の影響だろう。子どもは1人と政府に決められ、子どもを溺愛する親が増えた。中には我が子に何でも買い与え、「小皇帝」という別名の通り、勉強以外、すべてのことを子どもの代わりにやってあげるという親もいる。同政策の実施後に生まれた世代の最年長は40歳を超えており、年齢的にはすでに立派な大人だが、自由奔放に育てられた結果、すべてにおいて自己中心的で、自分の思い通りにならないと癇癪(かんしゃく)を起こす、我慢ができない、悪態をつく、という人が増えた」、「一人っ子政策」がこんな悪影響を及ぼしているとは驚かされた。「巨大な赤ちゃん病」とは言い得て妙だ。
・『「巨大赤ちゃん病」な大人の子どもは「熊孩子」 中国メディア「人民網」にも、「大人になっても精神年齢が赤ん坊のままな人。自己中心的でルールを守らず、予想外の事態が起きると情緒をコントロールできなくなり、幼児のような方法で抗議する。たとえば、泣いたりわめいたりして、他人に譲歩させ、自分の目的を果たす」とその説明が書かれているほどだ。 4月末、まさに、この説明に当てはまる事案が起きた。上海ディズニーランドで、ある男性が禁煙エリアでたばこを吸ったが、そのことをスタッフに注意されたことに逆ギレし、スタッフともみ合いになった男性は園内を逃走。挙げ句の果ては、開き直って「大の字」になって地面に寝そべった。そのことが大きく報道され、SNSにも投稿された。 ただ暴れるだけなら周囲もあきれて離れていくだけだが、問題は精神的な面でも未熟で、「巨嬰症」と思われる幼稚な言動を取る人が少なくないことである。会社内でもルールを守らなかったり、陰湿な手口で同僚や取引先をおとしめたりすることだ。一見するとわからないことも多く、立派なキャリアを歩むエリート層の中にも「巨嬰症」の人は潜んでいる。 また、そうした「子どものような大人」の子どもなのか、親がまったくしつけをしていないと思われる「熊孩子」(ションハイズ=熊のように落ち着きのない子ども)問題も起きている。 これも「巨嬰症」と同じく2018~2019年頃に流行した言葉で、関連して「熊家長」(ションジアチャン=熊のような子どもを注意せず、逆に、注意した他人に食ってかかるような親)という問題も起きた。「熊家長」は学校の教師にも理不尽な要求などをすることから、日本のモンスターペアレントのように表現され、社会問題にもなっている』、「上海ディズニーランドで、ある男性が禁煙エリアでたばこを吸ったが、そのことをスタッフに注意されたことに逆ギレし、スタッフともみ合いになった男性は園内を逃走。挙げ句の果ては、開き直って「大の字」になって地面に寝そべった。そのことが大きく報道され、SNSにも投稿された。 ただ暴れるだけなら周囲もあきれて離れていくだけだが、問題は精神的な面でも未熟で、「巨嬰症」と思われる幼稚な言動を取る人が少なくないことである」、「親がまったくしつけをしていないと思われる「熊孩子」」、「「熊家長」(ションジアチャン=熊のような子どもを注意せず、逆に、注意した他人に食ってかかるような親)」、問題児や親にも様々あるようだ。
・『日本とはレベルが違う「祖父母に預けっぱなし」事情 自分自身が親からしつけや家庭教育を受けていないため、自分の子どもをしつけられないのは当然といえば当然だが、そういう人が増えた背景には、考えられる要因がいくつかある。 その一つは両親が共働きで、子どもを自身の手で育てていないことがある。むろん、日本でも、共働き家庭で、子どもをしっかりしつけている親はいくらでもおり、共働きが直接の原因というわけではない。中国の都市部の場合、問題は、祖父母に育児のほとんどを任せっきりにしてしまう人がいることだ。 日本では、昼間は祖父母や保育施設に子どもを預けても、毎日夕方や夜には引き取り、夜は一緒に過ごすことが一般的だろう。だが中国では、近所に住む祖父母に平日ずっと(つまり週5日間)預けっぱなしということも珍しくない。祖父母と同居している場合は毎晩子どもと顔を合わせるが、「こちらはフルタイムで働いていて忙しいのだから、しつけも家事も祖父母の仕事」とばかりに、一切何もしない親も多い。祖父母を「無料のお手伝いさん」と思っている人もいるくらいだ。) また、祖父母に子どもを預けている安心感からか、退勤時間後に真っすぐ自宅に戻らず、遊びに行ってしまう親もいる。もちろん、幼い子どもがいるから夜遊びに行ってはいけないという意味ではない。それぞれの家庭によって事情は異なり、ケース・バイ・ケースだが、中国の場合、その頻度は日本よりもかなり多い。 農村の場合は、また違った事情がある。農村から都市部に出稼ぎに行く「農民工」の多くが、子どもを農村にいる祖父母に預けていく。出稼ぎは労働時間が長く、子どもを預けるところもなく、お金もないため、やむにやまれぬことなのだが、いったん出稼ぎに行けば、帰省できるのは年に1~2回だけだ。春節や国慶節などの大型連休のみで、それ以外は電話などで話す程度になり、親子のコミュニケーションは非常に少なくなる。 こうした子どもは「留守児童」と呼ばれ、自殺や精神不安の要因となっている。しつけや家庭教育は祖父母の役目となるが、祖父母は年を取っている上、自分の子ではないため、また「親と離れている孫がかわいそう」という気持ちもあって、子どもに甘くなってしまいがちだ』、「出稼ぎは労働時間が長く、子どもを預けるところもなく、お金もないため、やむにやまれぬことなのだが、いったん出稼ぎに行けば、帰省できるのは年に1~2回だけだ。春節や国慶節などの大型連休のみで、それ以外は電話などで話す程度になり、親子のコミュニケーションは非常に少なくなる。 こうした子どもは「留守児童」と呼ばれ、自殺や精神不安の要因となっている。しつけや家庭教育は祖父母の役目となるが、祖父母は年を取っている上、自分の子ではないため、また「親と離れている孫がかわいそう」という気持ちもあって、子どもに甘くなってしまいがちだ」、やむを得ないようだ。
・『中国政府から“しつけに関する法律”が出された もちろん、祖父母に立派に育てられた子どもも大勢いることは言うまでもない。だが、都市部でも、農村部でも、さまざまな事情によって、子どもをしつけられない親、そして、しつけられたことがない子ども、というのが、かなり大勢いることは確かだ。そうした親子2世代、あるいは3世代にわたる問題の結果、「巨嬰症」や「熊孩子」があちこちに出現し、社会を乱す要因になっていると考えられる。しかも、前述の通り、それがいちいちSNSに投稿される時代になったことにより、さらに別の社会問題を引き起こしている。 2021年、中国政府はしつけに関する法律「家庭教育促進法」を制定した。中国政府は、保護者が子どもの成績を重視するあまり、家庭で適切なしつけが行われていないことなどを問題視。法律に「高齢者や幼児を大切にし、勤勉節約に努めること、部屋の片づけを他人任せにしないこと」などを明記した。この法律に対し、家庭でのしつけにまで政府が介入するのか、といった意見もあったが、つまり、こういった法律が出るくらい、しつけや家庭教育の問題が社会全体で大きくなっており、政府にとって頭の痛い問題であることを表しているといえる』、「2021年、中国政府はしつけに関する法律「家庭教育促進法」を制定した。中国政府は、保護者が子どもの成績を重視するあまり、家庭で適切なしつけが行われていないことなどを問題視。法律に「高齢者や幼児を大切にし、勤勉節約に努めること、部屋の片づけを他人任せにしないこと」などを明記した」、「こういった法律が出るくらい、しつけや家庭教育の問題が社会全体で大きくなっており、政府にとって頭の痛い問題であることを表しているといえる」、法律まで出したとは問題が深刻なようだ。
第四に、7月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「中国経済を見限り「日本株」にマネーを投下する海外投資家が増えている理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/325908
・『最近は、中国経済を見限る投資家も増えているようだ。米ドルに対する人民元の下落は明らか。株式市場も、上海、深セン、香港ともに弱含み傾向だ。そうした状況下、中国株を売り、その資金を日本株に振り向ける海外投資家が増えている。背景にある中国経済のメカニズムを振り返るとともに、米国の金融政策が中国経済を下押しする可能性についても考察する』、興味深そうだ。
・『逆回転し始めた中国の高度経済成長のメカニズム 6月30日、中国国家統計局は、6月の購買担当者景況感指数(PMI、50を境に景気の拡大と減速を示す)を発表した。それによると、製造業の指数は49.0で、3カ月連続で50を下回った。一方、非製造業の飲食、宿泊、交通などサービス業の指数は、前月から低下し53.2だった。中国経済の停滞懸念は高まっている。 中国では過去、景気の先行き懸念が高まると、共産党政権は積極的な経済対策を実行してきた。その政策が、中国経済の高成長を支えてきたといえる。特に重要だったのが不動産投資だ。不動産価格が上昇する期待を背景に、不動産に対する投資は増え、国全体の景気を下支えした。地方政府の土地使用権の収入は増え、それを原資として刺激策を実施し経済成長率を押し上げることができた。 ところが今、かつての高成長のメカニズムが逆回転し始めている。不動産市況は悪化し、地方政府の歳入は減少。そのため、大規模な景気対策を打ち出すことが難しい。共産党政権による政権を維持するための指導部人事も、先行きを不透明にする要因になっている。そうした状況をかんがみた国内外の投資家が中国経済に見切りをつけ、わが国などに資金を振り向ける動きが目立ち始めてもいる』、「かつての高成長のメカニズムが逆回転し始めている。不動産市況は悪化し、地方政府の歳入は減少。そのため、大規模な景気対策を打ち出すことが難しい。共産党政権による政権を維持するための指導部人事も、先行きを不透明にする要因になっている。そうした状況をかんがみた国内外の投資家が中国経済に見切りをつけ、わが国などに資金を振り向ける動きが目立ち始めてもいる」、「不動産市況は悪化し、地方政府の歳入は減少。そのため、大規模な景気対策を打ち出すことが難しい」、「かつての高成長のメカニズムが逆回転し始めている」のは確かなようだ。
・『歯止めがかからない不動産市況の低迷 これまで、中国では地方政府が不動産デベロッパーなどに土地を売却し、その資金を固定資産投資などの景気対策に再配分して高い成長を実現してきた。マンション建設の増加は、企業の設備投資や生産、雇用も押し上げた。しかし、このメカニズムが限界を迎えている。 リーマンショック後、中国では、不動産価格が上昇した。2011年から20年頃まで新築住宅販売価格はほぼ倍に上昇した。内陸部での住宅供給増加など、共産党政権は不動産の建設(投資)を増やした。世界的な超低金利環境もあり、「住宅価格は上昇し続ける」といった“神話”により、強い成長期待が醸成された。 投機熱の高まりを背景に、地方政府の土地使用権譲渡収入は増えた。それを元手に、地方政府はインフラ投資や産業補助金政策を強化した。その結果、コロナショックが発生するまで、中国経済は6%台を上回る高い成長を実現した。習近平政権は、主に住宅購入者向けの規制を強化し、バブルの膨張、景気の過熱をコントロールして高成長を続けようとした。 しかし、コロナ禍の発生と、20年8月の不動産融資規制(三つのレッドライン)の実施により、不動産市況は急激に冷え込んだ。23年1月にゼロコロナ政策が終了した後、住宅価格が下げ止まるかに見える局面もあったが、価格上昇の勢いは弱い。年初来、不動産投資は減少基調である。 土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、融資平台(LGFV)の債務問題に対する懸念も高まっている。インフラ投資などの対策を打とうにも、財源不足から思い切った対策は打ち出しにくい』、「土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、融資平台(LGFV)の債務問題に対する懸念も高まっている。土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、融資平台(LGFV)の債務問題に対する懸念も高まっている』、「融資平台」「の債務問題に対する懸念も高まっている」のであれば、深刻だ。
・『経済よりも政権基盤維持が優先の習政権 最近、景気を下支えするため共産党政権が金融緩和を強化した。習政権は、銀行に融資を増やすよう要請を強めた。にもかかわらず、融資は伸びていない。中小企業を中心に資金繰りは逼迫(ひっぱく)し、その裏返しとして若年層を中心に、失業率が過去最高に上昇している。 その状況を根本的に克服するためには、習政権は不動産関連の不良債権の処理を本格的に進める必要がある。一時的に失業者や倒産企業を増やすことにはなるが、中・長期的な経済成長と社会の安定には避けて通れないバランスシート調整だ。それはバブル崩壊後のわが国経済からの教訓でもある。 ただ、最近の共産党政権の人事を見る限り、習政権が経済回復に必要な政策を着実に実行するとは思えない。習国家主席は、経済テクノクラート(技術官僚)として、半導体分野などでの米中対立時の交渉にあたった劉鶴副首相を退任させた。一方、上海のゼロコロナ政策を徹底した側近の李強氏を首相に指名している。 6月27日、李強氏は経済対策を強化する考えを強調したが、具体策には触れなかった。不動産市況の悪化が想定を上回るため、具体策を示すことができなかったとの見方もある。 また、たとえ具体策が示されたとしても、既視感のある策の強化に過ぎなかっただろうとの見方が多い。例えば、高速鉄道や高速道路の延伸などのインフラ投資、内陸部での電気自動車(EV)普及策だ。それでは、本格的な経済回復を期待することは難しいだろう。 中国のインフラ投資は、全般的には過剰になっているとみられる。国有企業である中国国家鉄路集団の22年最終赤字は、前年から拡大した。利払い費用も回収できないほど、インフラ投資プロジェクトの採算は悪化していることがうかがわれる。 現行の景気対策の効果は、一時的なものにとどまるだろう。不良債権問題の深刻さもさらに増すはずだ。それに伴い、銀行の貸し出し態度は厳格化し、中小企業を中心に資金繰りが逼迫。雇用、所得環境も悪化するだろう。財政破綻のリスクが高まる地方政府も増えることが懸念される』、「習国家主席は、経済テクノクラート・・・として、半導体分野などでの米中対立時の交渉にあたった劉鶴副首相を退任させた。一方、上海のゼロコロナ政策を徹底した側近の李強氏を首相に指名」、「経済」軽視はボディブローのように経済を悪化させる可能性が強い。
・『中国株を売った資金を日本株に振り向ける海外投資家 最近は、中国経済を見限る投資家も増えているようだ。外国為替市場では、米ドルに対する人民元の下落が鮮明となっている。6月27日、中国人民銀行はオフショア市場で人民元買い・米ドル売りの介入を実施したもようだ。 株式市場に目を向けると、22年以降、上海、深センともに本土の株価は多少の上下はあるものの、弱含み傾向だ。香港株式市場も同様である。対照的に、5月以降、主要先進国の株価は勢い良く上昇した。AI(人工知能)関連企業への成長期待や、依然として緩和的な金融環境などの影響は大きい。 そうした状況下、1990年代以降、あまり観察されなかった変化も起きた。上海や深センなどの市場で中国株を売り、その資金を日本株に振り向ける海外投資家が増えているのだ。90年代のバブル崩壊を機に、日本株を売る投資家は増えた(ジャパンパッシング)。日本株を売った投資家は、「世界の工場」として成長する中国に一部の資金を振り向けてきた。 現状、中国の不動産市況は大方の予想よりも低迷している。習政権は、民間企業の成長促進よりも、思想教育などをより重視しているように見える。台湾問題などの地政学リスクや生産年齢人口の減少は、グローバル企業が中国から生産拠点をシフトする要因になっている。いずれも、持続的な景気の回復を阻害するだろう。 一方、わが国が地政学リスクの上昇に直面するリスクは、米国との関係を基礎に、今のところ抑えられている。円安進行の影響で海外投資家からすると日本株には割安感がある。半導体分野において、わが国が産業政策を修正し始めたことも、日本株への資金流入を支えている。 米国の金融政策の動向も、中国経済を下押ししそうだ。米国の物価は2%を上回る状況が続いている。米FRBの金融引き締めは長引くだろう。米中の金利差が拡大し、中国から資金が流出する勢いは強くなる可能性が高い。 あるいは、いずれ米国株が下落し、中国株に売り圧力が波及する恐れもある。当面、チャイナリスクの削減に動く主要投資家は増えることになりそうだ』、「当面、チャイナリスクの削減に動く主要投資家は増えることになりそうだ」、同感である。
先ずは、本年4月4日付け東洋経済オンラインが掲載した歴史家・文化人類学者・人口学者のエマニュエル・トッド氏による「「高学歴層が増える中国」が迎えうる"意外な未来" "現代最高の知性"が予言する「新しい全体主義」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/660407
・『「世界最高の知性」の一人と言われるエマニュエル・トッド氏。「ソ連崩壊」から「金融危機」まで数々の歴史的出来事を予言してきた彼が、パンデミックにおける中国のあり方をどう分析したのか?『2035年の世界地図──失われる民主主義 破裂する資本主義』に収録されたトッド氏の新たな予言を特別に公開する(Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『「新しい種類の全体主義」の可能性 Q:パンデミックの危機は、特に先進国において、分断を加速させるような形で民主主義の危機をもたらしている。そうお考えのあなたに、中国についてもお伺いしたいと思います。 エマニュエル・トッド:(Q:パンデミックへの対処において、中国共産党による事実上の独裁である権威主義体制が民主主義より優れている、という中国の主張についてどう思われますか?) 私たちが見てきたのは、新しい種類の全体主義システムの可能性です。 中国という国家、つまり共産党や警察部門、主語をどう表現すべきかは迷ってしまいますが、たしかに彼らはロックダウンなどの実行に成功しました。ある意味、信じられないことです。 興味深いのは、ロシアで起きたことは、中国と正反対だったことです。どちらも権威主義の伝統を持っていますが、コロナに関する限り、ロシア政府は国民をまったく制御できませんでした。) 教育の動きについてお話ししたとき、私は先進国社会における一種の普遍的モデルに言及しました。識字能力があまねく社会で共有された後、高等教育が広がり、階層化し、そして社会を断片化するという諸段階です。 これはすべての国に当てはまりますね。しかし、考慮しなければならない要素がもう1つあります。 すべての先進国の制度を寡頭制的とも表現できる、ということです。さまざまな種類の民主主義があるのと同様、今やさまざまな種類の寡頭制があります』、「ロシアで起きたことは、中国と正反対だったことです。どちらも権威主義の伝統を持っていますが、コロナに関する限り、ロシア政府は国民をまったく制御できませんでした」、「コロナに関する限り、ロシア政府は国民をまったく制御」する気がなかった方が適切な気がする。
・『「家族制度」から見た日本と中国 私の研究テーマでもある「家族制度の重要性」、永続的な家族の価値の重要性といったことに関係しています。 つまり、組織化された社会で続く家族の価値であり、それは伝統的な農民家族が消失した後も存続するのです。中国の家族、伝統的な中国の農民の家族は、権威主義的であり、非常に強い父親がいますが、同時に兄弟間で平等に相続するというルールを持つ平等主義でもあります。それは強い父系でした。女性に比べて、男性を非常に重視します。 一方で、日本の伝統的な家族制度は直系家族制と呼ばれ、伝統的に長男の相続でした。中国ほどではないが、権威主義的でした。これは社会人類学者が常に指摘することですが、中国の家族よりも権威的ではないものの非平等主義です。日本の家庭では、兄弟は同じ価値ではありません。 これは両国の社会の権威主義的傾向を説明するとともに、中国が権威主義的で平等主義的な共産主義を生み出したという事実と、日本が移行に際して階層社会を生み出したことを説明できます。 日本は近代工業社会やポスト工業社会に、より容易に適応しました。 今、中国にあるのは、国民を制御するための最新の技巧です。顔認証があり、インターネットがあり、最先端のあらゆるツールがあります。しかし同時に、中国には、権威主義的および平等主義的な家族の価値が存続していて、彼らの社会的価値にもつながっています。) 中国について考えるとき、中国が経済的に成功したせいで、中国は極めて同質的であると考えるかもしれません。また、中国は完璧な権威主義システム、または世界で最も権威主義的なシステムとも表現されるでしょう。しかし、中国の指導者たちはそう見ていません』、「今、中国にあるのは、国民を制御するための最新の技巧です。顔認証があり、インターネットがあり、最先端のあらゆるツールがあります。しかし同時に、中国には、権威主義的および平等主義的な家族の価値が存続していて、彼らの社会的価値にもつながっています」、なるほど。
・『権威主義的な中国で人々が決起する? 彼らは中国が強い平等主義の価値観に基づいて、共産主義革命を起こしたことを覚えています。これらの平等主義的な価値観がまだそこにあることを知っています。 中国の社会には公正を求める要素があります。中国の指導者たちは常に、人々の決起の可能性を考慮に入れておかなければなりません。 これは、中国を統治することが非常に厳しい理由の1つだと思います。それは内向きのもろさがあります。 もう1つ、付け加えておきましょう。中国はすでに、人口の中に相当数の高学歴層がいるということです。この状況は西洋のどこにおいても、伝統的イデオロギーの解体をもたらしました。多くの人は知らないでしょうが、私は高等教育を受けた人々が人口のうちの25%を占めたことが、ソ連で共産主義が崩壊した本当の理由だと考えています。 私は1988年のデータを持っています。当時のソ連の国勢調査によると、高等教育を受けた者の割合が25%に達していました。そして、1990年にシステムが崩壊したのです。 中国は、今のところまだこの水準(25%)には達していませんが、中国の将来について考えると、政治的バランスと民主主義の将来という観点から相反する2つの力があると思います。 一方には、中国の文化と革命の伝統として、平等主義の要素があります。もう一方で、高等教育を受けた人々が増えています。中産階級と呼ばれる層です。この階層の比率が、共産主義崩壊直前のソ連と同じ水準に達しようとしているのです』、「中国の社会には公正を求める要素があります。中国の指導者たちは常に、人々の決起の可能性を考慮に入れておかなければなりません。 これは、中国を統治することが非常に厳しい理由の1つだと思います」、「一方には、中国の文化と革命の伝統として、平等主義の要素があります。もう一方で、高等教育を受けた人々が増えています。中産階級と呼ばれる層です。この階層の比率が、共産主義崩壊直前のソ連と同じ水準に達しようとしているのです」、「中国」でも「中産階級」が25%、と「共産主義崩壊直前のソ連と同じ水準に達しようとしている」、「「中国」で「中産階級」が25%」になったとしても、「共産主義崩壊直前のソ連」のようなことにはならないのではなかろうか。
次に、5月1日付けデイリー新潮が掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤和彦氏による「中国は人口減による衰退論に猛反発 本当は他国に触れられたくない“縮みの現実”とは」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05011118/?all=1
・『足元の最大の不安材料はデフレ懸念 国連経済社会局は4月24日、「インドの人口が4月末までに中国を追い抜き、世界最多となる」との予測を発表した。今後の見通しについても「インドで数十年にわたり人口が増加し続けるのに対し、中国は今世紀末までに10億人を割り込む」としている。 国連の予測は19日に国連人口基金が公表したデータに基づく客観的なものだ。だが、中国政府は「西側メディアが中国を中傷するため、人口減少による中国衰退論を意図的に喧伝している」と猛反発している。 中国の今年第1四半期の経済成長率は前年比4.5%増となり、昨年第4四半期の2.9%増から加速した。これを受けて、米国の大手金融機関は中国の経済成長率を相次いで上方修正しており、国際通貨基金(IMF)も「中国はインドともに今年の世界経済を牽引する」と予測している。 「ゼロ・コロナ政策を解除した中国の景気は回復する」との見方が出ているのにもかかわらず、なぜ中国政府は「衰退論」に過剰反応しているのだろうか。 中国経済にとって足元の最大の不安材料はデフレ懸念だ。成長率が上振れしているのにもかかわらず、物価の下落傾向が強まっている。 不動産バブルの崩壊により、で生産者物価指数(PPI)は昨年後半以降、マイナスの状態が続いている。消費者物価指数(CPI)も3月、前年比0.7%増にまで低下している。 中国政府は「デフレは起きていない」と主張しているが、専門家は「中国経済の深い部分にまでデフレ圧力が浸透している」と分析している(4月19日付ロイター)』、「専門家は「中国経済の深い部分にまでデフレ圧力が浸透している」と分析」、これは深刻だ。
・『若者のキャリア・パスにも「縮み」の現象が デフレとは「物価が持続的に下落している現象」であり、日本語では「経済収縮」と訳される。平たく言えば「経済が持続的に縮んでいく」ことだが、中国経済は至るところで「縮み」傾向が目立つようになっている。 この傾向が最も顕著なのは個人消費だ。日本を始め先進国の国内総生産に占める個人消費の割合は5割を超えるが、中国の比率は4割に満たない。このことは中国経済が抱える構造的な弱点とされてきたが、足元の状況はむしろ悪化している感がある。 不動産バブルの崩壊がもたらす資産デフレが悪影響を与えており、中国の家計は将来のリスクに備えて貯蓄を大幅に増やしている。中国の家計貯蓄は昨年、17兆8000億元増と過去最大の伸びを示した。今年第1四半期にさらに9兆9000億元増加し、増加幅は2021年通年の伸びに匹敵する。 この大きく膨らんだ貯蓄を消費などに振り向けるため、中国政府は銀行に対して預金金利をさらに引き下げるよう指示しているが、成果が上がるとは思えない。3月の失業率は16歳から24歳までが19.6%と記録的な水準に達しており、雇用不安が続く状況で中国人の貯蓄志向が変わるとは思えないからだ。 中国の若者のキャリア・パスに「縮み」の現象が生じていることも気になるところだ。 高学歴の若者たちが高給取りの仕事を捨て、低賃金の肉体労働の仕事に転職して慎ましく生きていくという選択を取り始めている(「クーリエ・ジャポン」4月20日配信記事)。若者がキャリア・ダウンを志向するのは「ラットレース(ハードワークをしても豊かになれない状態)は意味がない」との認識が広まっているからだという。 「縮み」傾向の下、中国の海外旅行者の数もピーク時の水準を大きく下回っており(「ロイター」4月19日配信記事)、中国人観光客の増加による日本のインバウンド需要の拡大は期待外れに終わってしまうのかもしれない』、「若者がキャリア・ダウンを志向するのは「ラットレース(ハードワークをしても豊かになれない状態)は意味がない」との認識が広まっているからだという」、「「若者がキャリア・ダウンを志向する」とは由々しいことだ。
・『足かせは中国を巡る地政学リスク 中国経済を牽引していた輸出も「縮み」始めている。 予想に反し、中国の3月の輸出は増加に転じた。6カ月ぶりのことだが、「コロナ以前の水準にまで回復することは難しい」との予測が一般的だ。 その要因の1つとして、中国の人件費上昇がある。これを受けて、製造業の生産拠点が東南アジアに多く移転した。 今年4月、中国最大の貿易見本市である広州交易会が4年ぶりに開催されたが、出展した中国の輸出企業は環境の激変ぶりを痛感しており、今後、輸出部門で大幅なリストラが実施されるのは必至の情勢だ。 中国経済の成長に貢献してきた海外からの投資マネーも縮んでいる。 習近平国家主席を筆頭に中国の当局者らが異口同音に中国経済の復活を宣言し、規制強化で招いたダメージの修復に取り組んでいるが、中国ハイテク企業からの投資の引き揚げが止まらない(「Bloomberg」4月14日配信記事)。 足かせとなっているのは中国を巡る地政学リスクだ。外国勢の資金引き揚げが進み、中国株の下落が続いている。 「Bloomberg」の記事はモルガン・チェースの調査を引用し、投資家が「最も撤退する可能性が高い新興国」として挙げたのは中国だったとしている。中国経済は回復しつつあっても、「投資家の頭に浮かぶのは米中関係や台湾問題」だからだ。 中国の科学技術分野の論文発表数は米国に次いで世界第2位となり、「科学技術大国」のイメージが強まっているが、実態は違うようだ。 研究の不正が横行し、中国の研究者たちが「偽造論文」を世界中にまき散らしている実態が明らかになっており(「クーリエ・ジャポン」4月23日配信記事)、「科学技術大国」中国に対する期待も今後、大きく縮むことになるだろう。 このように、中国経済の縮み(衰退)は深刻だ。中国政府が声高に衰退論を否定するのは、このことを誰よりもよく知っているからではないだろうか』、「研究の不正が横行し、中国の研究者たちが「偽造論文」を世界中にまき散らしている実態が明らかになっており・・・「科学技術大国」中国に対する期待も今後、大きく縮むことになるだろう」、「中国政府が声高に衰退論を否定するのは、「中国経済の縮みは深刻」であることを、「誰よりもよく知っているからではないだろうか」、「中国経済」は想定以上に「深刻」なようだ。
第三に、6月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリージャーナリストの中島 恵氏による「中国でなぜ「巨大な赤ちゃん」が増えているのか?炎上が相次ぐ異常なワガママぶりの背景」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324172
・『交通機関で泣く子ども、学校に猛抗議するモンスターペアレント……日本でもよくある話だが、中国ではこれが思いがけない方向に展開して大騒動になることが珍しくない。日本人の目から見て、信じられないほど“わがままな大人”が多いためだ。なぜ中国では、公共の場でも気にせずわがままな振る舞いをする大人が増えているのか? 親子関係の問題も含め、改めて検証する』、興味深そうだ。
・『観光地や交通機関で「わがままな大人」が騒動を起こす 今年、中国のゴールデンウイークはコロナ禍前の水準に戻り、のべ2億7400万人が移動した。しかし、観光客でごった返す各地には、「わがままな子ども」だけでなく、「わがままな大人」が続出。SNSで炎上する事案が多発した。 4月下旬、中国の高速鉄道(日本の新幹線に相当)の車内で、2人の女性が激しい口論を繰り広げた。最初にケンカを売った女性は、後部座席の赤ちゃんの泣き声で自分の眠りが邪魔されたと言って、赤ちゃんの母親を大声で怒鳴り、母親もそれに応戦。口論する様子は数十分にわたって車内に響き渡り、乗務員が仲裁に入ってようやく収まった。 このときの動画がSNSに投稿されると、「公共の場で母親は子どもをおとなしくさせるべきだ」という意見と、「大人なら寛容になるべきだ」という意見が対立。炎上する騒ぎとなった。) 日本でも電車内で赤ちゃんが泣くことは珍しくないが、赤ちゃんが泣いていることに文句を言う大人はめったにいないし、それがきっかけで口論が始まることもほぼない。だが、中国では、赤ちゃんに限らず、ささいなことがきっかけで、公共の場で大ゲンカが起きることはよくある。 電車内で起きたことなら、自分が他の車両に“避難”すれば済むことだが、これが飛行機だとそうもいかない。たとえば、前の座席の人が突然背もたれを大きく倒す、後ろの座席の人が前の座席の上に足を乗せる、機内中に響き渡るほどの大音量で音楽を流す人がいる、といったトラブルはよく起こる。そのたびに騒動になり、多くの人々は、ごく一部の人の犠牲となる』、「中国では、赤ちゃんに限らず、ささいなことがきっかけで、公共の場で大ゲンカが起きることはよくある」、我慢することをせず、要求するだけの姿勢では、「公共の場で大ゲンカが起きることはよくある」、困ったことだ。
・『「動画を撮ってSNSにアップ→炎上」が事態を厄介に さらにここ数年、問題を厄介にさせているのは、誰かがすぐにその場で動画を撮影し、SNSに投稿してしまうことだ。中国では他の問題もそうだが、SNS上で賛否両論が巻き起こると、次第に本題を外れて、別の話題へと発展し、元ネタが何だったかわからなくなるほどの大ゲンカがSNS上で勃発する。そうした「第二次戦争」「代理SNS戦争」ともいえるような状態が近年激しくなっており、日本のメディアでもしばしば取り上げられるようになった。 そもそもなぜ中国では、公共の場で、そこまでわがままな振る舞いをする人が多いのか。 考えられるのは、やはり1979年末から始まり、30年以上も続いた一人っ子政策の影響だろう。子どもは1人と政府に決められ、子どもを溺愛する親が増えた。中には我が子に何でも買い与え、「小皇帝」という別名の通り、勉強以外、すべてのことを子どもの代わりにやってあげるという親もいる。同政策の実施後に生まれた世代の最年長は40歳を超えており、年齢的にはすでに立派な大人だが、自由奔放に育てられた結果、すべてにおいて自己中心的で、自分の思い通りにならないと癇癪(かんしゃく)を起こす、我慢ができない、悪態をつく、という人が増えた。 中国で2018~2019年頃に流行語となった言葉に「巨嬰症(ジュ―インジェン)」がある。「巨大な赤ちゃん病」、つまり、赤ちゃんのまま大人になった人を指す言葉だ。本当の病名ではなく、そのような状態になることをいう』、「1979年末から始まり、30年以上も続いた一人っ子政策の影響だろう。子どもは1人と政府に決められ、子どもを溺愛する親が増えた。中には我が子に何でも買い与え、「小皇帝」という別名の通り、勉強以外、すべてのことを子どもの代わりにやってあげるという親もいる。同政策の実施後に生まれた世代の最年長は40歳を超えており、年齢的にはすでに立派な大人だが、自由奔放に育てられた結果、すべてにおいて自己中心的で、自分の思い通りにならないと癇癪(かんしゃく)を起こす、我慢ができない、悪態をつく、という人が増えた」、「一人っ子政策」がこんな悪影響を及ぼしているとは驚かされた。「巨大な赤ちゃん病」とは言い得て妙だ。
・『「巨大赤ちゃん病」な大人の子どもは「熊孩子」 中国メディア「人民網」にも、「大人になっても精神年齢が赤ん坊のままな人。自己中心的でルールを守らず、予想外の事態が起きると情緒をコントロールできなくなり、幼児のような方法で抗議する。たとえば、泣いたりわめいたりして、他人に譲歩させ、自分の目的を果たす」とその説明が書かれているほどだ。 4月末、まさに、この説明に当てはまる事案が起きた。上海ディズニーランドで、ある男性が禁煙エリアでたばこを吸ったが、そのことをスタッフに注意されたことに逆ギレし、スタッフともみ合いになった男性は園内を逃走。挙げ句の果ては、開き直って「大の字」になって地面に寝そべった。そのことが大きく報道され、SNSにも投稿された。 ただ暴れるだけなら周囲もあきれて離れていくだけだが、問題は精神的な面でも未熟で、「巨嬰症」と思われる幼稚な言動を取る人が少なくないことである。会社内でもルールを守らなかったり、陰湿な手口で同僚や取引先をおとしめたりすることだ。一見するとわからないことも多く、立派なキャリアを歩むエリート層の中にも「巨嬰症」の人は潜んでいる。 また、そうした「子どものような大人」の子どもなのか、親がまったくしつけをしていないと思われる「熊孩子」(ションハイズ=熊のように落ち着きのない子ども)問題も起きている。 これも「巨嬰症」と同じく2018~2019年頃に流行した言葉で、関連して「熊家長」(ションジアチャン=熊のような子どもを注意せず、逆に、注意した他人に食ってかかるような親)という問題も起きた。「熊家長」は学校の教師にも理不尽な要求などをすることから、日本のモンスターペアレントのように表現され、社会問題にもなっている』、「上海ディズニーランドで、ある男性が禁煙エリアでたばこを吸ったが、そのことをスタッフに注意されたことに逆ギレし、スタッフともみ合いになった男性は園内を逃走。挙げ句の果ては、開き直って「大の字」になって地面に寝そべった。そのことが大きく報道され、SNSにも投稿された。 ただ暴れるだけなら周囲もあきれて離れていくだけだが、問題は精神的な面でも未熟で、「巨嬰症」と思われる幼稚な言動を取る人が少なくないことである」、「親がまったくしつけをしていないと思われる「熊孩子」」、「「熊家長」(ションジアチャン=熊のような子どもを注意せず、逆に、注意した他人に食ってかかるような親)」、問題児や親にも様々あるようだ。
・『日本とはレベルが違う「祖父母に預けっぱなし」事情 自分自身が親からしつけや家庭教育を受けていないため、自分の子どもをしつけられないのは当然といえば当然だが、そういう人が増えた背景には、考えられる要因がいくつかある。 その一つは両親が共働きで、子どもを自身の手で育てていないことがある。むろん、日本でも、共働き家庭で、子どもをしっかりしつけている親はいくらでもおり、共働きが直接の原因というわけではない。中国の都市部の場合、問題は、祖父母に育児のほとんどを任せっきりにしてしまう人がいることだ。 日本では、昼間は祖父母や保育施設に子どもを預けても、毎日夕方や夜には引き取り、夜は一緒に過ごすことが一般的だろう。だが中国では、近所に住む祖父母に平日ずっと(つまり週5日間)預けっぱなしということも珍しくない。祖父母と同居している場合は毎晩子どもと顔を合わせるが、「こちらはフルタイムで働いていて忙しいのだから、しつけも家事も祖父母の仕事」とばかりに、一切何もしない親も多い。祖父母を「無料のお手伝いさん」と思っている人もいるくらいだ。) また、祖父母に子どもを預けている安心感からか、退勤時間後に真っすぐ自宅に戻らず、遊びに行ってしまう親もいる。もちろん、幼い子どもがいるから夜遊びに行ってはいけないという意味ではない。それぞれの家庭によって事情は異なり、ケース・バイ・ケースだが、中国の場合、その頻度は日本よりもかなり多い。 農村の場合は、また違った事情がある。農村から都市部に出稼ぎに行く「農民工」の多くが、子どもを農村にいる祖父母に預けていく。出稼ぎは労働時間が長く、子どもを預けるところもなく、お金もないため、やむにやまれぬことなのだが、いったん出稼ぎに行けば、帰省できるのは年に1~2回だけだ。春節や国慶節などの大型連休のみで、それ以外は電話などで話す程度になり、親子のコミュニケーションは非常に少なくなる。 こうした子どもは「留守児童」と呼ばれ、自殺や精神不安の要因となっている。しつけや家庭教育は祖父母の役目となるが、祖父母は年を取っている上、自分の子ではないため、また「親と離れている孫がかわいそう」という気持ちもあって、子どもに甘くなってしまいがちだ』、「出稼ぎは労働時間が長く、子どもを預けるところもなく、お金もないため、やむにやまれぬことなのだが、いったん出稼ぎに行けば、帰省できるのは年に1~2回だけだ。春節や国慶節などの大型連休のみで、それ以外は電話などで話す程度になり、親子のコミュニケーションは非常に少なくなる。 こうした子どもは「留守児童」と呼ばれ、自殺や精神不安の要因となっている。しつけや家庭教育は祖父母の役目となるが、祖父母は年を取っている上、自分の子ではないため、また「親と離れている孫がかわいそう」という気持ちもあって、子どもに甘くなってしまいがちだ」、やむを得ないようだ。
・『中国政府から“しつけに関する法律”が出された もちろん、祖父母に立派に育てられた子どもも大勢いることは言うまでもない。だが、都市部でも、農村部でも、さまざまな事情によって、子どもをしつけられない親、そして、しつけられたことがない子ども、というのが、かなり大勢いることは確かだ。そうした親子2世代、あるいは3世代にわたる問題の結果、「巨嬰症」や「熊孩子」があちこちに出現し、社会を乱す要因になっていると考えられる。しかも、前述の通り、それがいちいちSNSに投稿される時代になったことにより、さらに別の社会問題を引き起こしている。 2021年、中国政府はしつけに関する法律「家庭教育促進法」を制定した。中国政府は、保護者が子どもの成績を重視するあまり、家庭で適切なしつけが行われていないことなどを問題視。法律に「高齢者や幼児を大切にし、勤勉節約に努めること、部屋の片づけを他人任せにしないこと」などを明記した。この法律に対し、家庭でのしつけにまで政府が介入するのか、といった意見もあったが、つまり、こういった法律が出るくらい、しつけや家庭教育の問題が社会全体で大きくなっており、政府にとって頭の痛い問題であることを表しているといえる』、「2021年、中国政府はしつけに関する法律「家庭教育促進法」を制定した。中国政府は、保護者が子どもの成績を重視するあまり、家庭で適切なしつけが行われていないことなどを問題視。法律に「高齢者や幼児を大切にし、勤勉節約に努めること、部屋の片づけを他人任せにしないこと」などを明記した」、「こういった法律が出るくらい、しつけや家庭教育の問題が社会全体で大きくなっており、政府にとって頭の痛い問題であることを表しているといえる」、法律まで出したとは問題が深刻なようだ。
第四に、7月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「中国経済を見限り「日本株」にマネーを投下する海外投資家が増えている理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/325908
・『最近は、中国経済を見限る投資家も増えているようだ。米ドルに対する人民元の下落は明らか。株式市場も、上海、深セン、香港ともに弱含み傾向だ。そうした状況下、中国株を売り、その資金を日本株に振り向ける海外投資家が増えている。背景にある中国経済のメカニズムを振り返るとともに、米国の金融政策が中国経済を下押しする可能性についても考察する』、興味深そうだ。
・『逆回転し始めた中国の高度経済成長のメカニズム 6月30日、中国国家統計局は、6月の購買担当者景況感指数(PMI、50を境に景気の拡大と減速を示す)を発表した。それによると、製造業の指数は49.0で、3カ月連続で50を下回った。一方、非製造業の飲食、宿泊、交通などサービス業の指数は、前月から低下し53.2だった。中国経済の停滞懸念は高まっている。 中国では過去、景気の先行き懸念が高まると、共産党政権は積極的な経済対策を実行してきた。その政策が、中国経済の高成長を支えてきたといえる。特に重要だったのが不動産投資だ。不動産価格が上昇する期待を背景に、不動産に対する投資は増え、国全体の景気を下支えした。地方政府の土地使用権の収入は増え、それを原資として刺激策を実施し経済成長率を押し上げることができた。 ところが今、かつての高成長のメカニズムが逆回転し始めている。不動産市況は悪化し、地方政府の歳入は減少。そのため、大規模な景気対策を打ち出すことが難しい。共産党政権による政権を維持するための指導部人事も、先行きを不透明にする要因になっている。そうした状況をかんがみた国内外の投資家が中国経済に見切りをつけ、わが国などに資金を振り向ける動きが目立ち始めてもいる』、「かつての高成長のメカニズムが逆回転し始めている。不動産市況は悪化し、地方政府の歳入は減少。そのため、大規模な景気対策を打ち出すことが難しい。共産党政権による政権を維持するための指導部人事も、先行きを不透明にする要因になっている。そうした状況をかんがみた国内外の投資家が中国経済に見切りをつけ、わが国などに資金を振り向ける動きが目立ち始めてもいる」、「不動産市況は悪化し、地方政府の歳入は減少。そのため、大規模な景気対策を打ち出すことが難しい」、「かつての高成長のメカニズムが逆回転し始めている」のは確かなようだ。
・『歯止めがかからない不動産市況の低迷 これまで、中国では地方政府が不動産デベロッパーなどに土地を売却し、その資金を固定資産投資などの景気対策に再配分して高い成長を実現してきた。マンション建設の増加は、企業の設備投資や生産、雇用も押し上げた。しかし、このメカニズムが限界を迎えている。 リーマンショック後、中国では、不動産価格が上昇した。2011年から20年頃まで新築住宅販売価格はほぼ倍に上昇した。内陸部での住宅供給増加など、共産党政権は不動産の建設(投資)を増やした。世界的な超低金利環境もあり、「住宅価格は上昇し続ける」といった“神話”により、強い成長期待が醸成された。 投機熱の高まりを背景に、地方政府の土地使用権譲渡収入は増えた。それを元手に、地方政府はインフラ投資や産業補助金政策を強化した。その結果、コロナショックが発生するまで、中国経済は6%台を上回る高い成長を実現した。習近平政権は、主に住宅購入者向けの規制を強化し、バブルの膨張、景気の過熱をコントロールして高成長を続けようとした。 しかし、コロナ禍の発生と、20年8月の不動産融資規制(三つのレッドライン)の実施により、不動産市況は急激に冷え込んだ。23年1月にゼロコロナ政策が終了した後、住宅価格が下げ止まるかに見える局面もあったが、価格上昇の勢いは弱い。年初来、不動産投資は減少基調である。 土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、融資平台(LGFV)の債務問題に対する懸念も高まっている。インフラ投資などの対策を打とうにも、財源不足から思い切った対策は打ち出しにくい』、「土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、融資平台(LGFV)の債務問題に対する懸念も高まっている。土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、融資平台(LGFV)の債務問題に対する懸念も高まっている』、「融資平台」「の債務問題に対する懸念も高まっている」のであれば、深刻だ。
・『経済よりも政権基盤維持が優先の習政権 最近、景気を下支えするため共産党政権が金融緩和を強化した。習政権は、銀行に融資を増やすよう要請を強めた。にもかかわらず、融資は伸びていない。中小企業を中心に資金繰りは逼迫(ひっぱく)し、その裏返しとして若年層を中心に、失業率が過去最高に上昇している。 その状況を根本的に克服するためには、習政権は不動産関連の不良債権の処理を本格的に進める必要がある。一時的に失業者や倒産企業を増やすことにはなるが、中・長期的な経済成長と社会の安定には避けて通れないバランスシート調整だ。それはバブル崩壊後のわが国経済からの教訓でもある。 ただ、最近の共産党政権の人事を見る限り、習政権が経済回復に必要な政策を着実に実行するとは思えない。習国家主席は、経済テクノクラート(技術官僚)として、半導体分野などでの米中対立時の交渉にあたった劉鶴副首相を退任させた。一方、上海のゼロコロナ政策を徹底した側近の李強氏を首相に指名している。 6月27日、李強氏は経済対策を強化する考えを強調したが、具体策には触れなかった。不動産市況の悪化が想定を上回るため、具体策を示すことができなかったとの見方もある。 また、たとえ具体策が示されたとしても、既視感のある策の強化に過ぎなかっただろうとの見方が多い。例えば、高速鉄道や高速道路の延伸などのインフラ投資、内陸部での電気自動車(EV)普及策だ。それでは、本格的な経済回復を期待することは難しいだろう。 中国のインフラ投資は、全般的には過剰になっているとみられる。国有企業である中国国家鉄路集団の22年最終赤字は、前年から拡大した。利払い費用も回収できないほど、インフラ投資プロジェクトの採算は悪化していることがうかがわれる。 現行の景気対策の効果は、一時的なものにとどまるだろう。不良債権問題の深刻さもさらに増すはずだ。それに伴い、銀行の貸し出し態度は厳格化し、中小企業を中心に資金繰りが逼迫。雇用、所得環境も悪化するだろう。財政破綻のリスクが高まる地方政府も増えることが懸念される』、「習国家主席は、経済テクノクラート・・・として、半導体分野などでの米中対立時の交渉にあたった劉鶴副首相を退任させた。一方、上海のゼロコロナ政策を徹底した側近の李強氏を首相に指名」、「経済」軽視はボディブローのように経済を悪化させる可能性が強い。
・『中国株を売った資金を日本株に振り向ける海外投資家 最近は、中国経済を見限る投資家も増えているようだ。外国為替市場では、米ドルに対する人民元の下落が鮮明となっている。6月27日、中国人民銀行はオフショア市場で人民元買い・米ドル売りの介入を実施したもようだ。 株式市場に目を向けると、22年以降、上海、深センともに本土の株価は多少の上下はあるものの、弱含み傾向だ。香港株式市場も同様である。対照的に、5月以降、主要先進国の株価は勢い良く上昇した。AI(人工知能)関連企業への成長期待や、依然として緩和的な金融環境などの影響は大きい。 そうした状況下、1990年代以降、あまり観察されなかった変化も起きた。上海や深センなどの市場で中国株を売り、その資金を日本株に振り向ける海外投資家が増えているのだ。90年代のバブル崩壊を機に、日本株を売る投資家は増えた(ジャパンパッシング)。日本株を売った投資家は、「世界の工場」として成長する中国に一部の資金を振り向けてきた。 現状、中国の不動産市況は大方の予想よりも低迷している。習政権は、民間企業の成長促進よりも、思想教育などをより重視しているように見える。台湾問題などの地政学リスクや生産年齢人口の減少は、グローバル企業が中国から生産拠点をシフトする要因になっている。いずれも、持続的な景気の回復を阻害するだろう。 一方、わが国が地政学リスクの上昇に直面するリスクは、米国との関係を基礎に、今のところ抑えられている。円安進行の影響で海外投資家からすると日本株には割安感がある。半導体分野において、わが国が産業政策を修正し始めたことも、日本株への資金流入を支えている。 米国の金融政策の動向も、中国経済を下押ししそうだ。米国の物価は2%を上回る状況が続いている。米FRBの金融引き締めは長引くだろう。米中の金利差が拡大し、中国から資金が流出する勢いは強くなる可能性が高い。 あるいは、いずれ米国株が下落し、中国株に売り圧力が波及する恐れもある。当面、チャイナリスクの削減に動く主要投資家は増えることになりそうだ』、「当面、チャイナリスクの削減に動く主要投資家は増えることになりそうだ」、同感である。
タグ:「出稼ぎは労働時間が長く、子どもを預けるところもなく、お金もないため、やむにやまれぬことなのだが、いったん出稼ぎに行けば、帰省できるのは年に1~2回だけだ。春節や国慶節などの大型連休のみで、それ以外は電話などで話す程度になり、親子のコミュニケーションは非常に少なくなる。 ただ暴れるだけなら周囲もあきれて離れていくだけだが、問題は精神的な面でも未熟で、「巨嬰症」と思われる幼稚な言動を取る人が少なくないことである」、「親がまったくしつけをしていないと思われる「熊孩子」」、「「熊家長」(ションジアチャン=熊のような子どもを注意せず、逆に、注意した他人に食ってかかるような親)」、問題児や親にも様々あるようだ。 「上海ディズニーランドで、ある男性が禁煙エリアでたばこを吸ったが、そのことをスタッフに注意されたことに逆ギレし、スタッフともみ合いになった男性は園内を逃走。挙げ句の果ては、開き直って「大の字」になって地面に寝そべった。そのことが大きく報道され、SNSにも投稿された。 (その17)(「高学歴層が増える中国」が迎えうる"意外な未来" "現代最高の知性"が予言する「新しい全体主義」、中国は人口減による衰退論に猛反発 本当は他国に触れられたくない“縮みの現実”とは、中国でなぜ「巨大な赤ちゃん」が増えているのか?炎上が相次ぐ異常なワガママぶりの背景、中国経済を見限り「日本株」にマネーを投下する海外投資家が増えている理由) 中国経済 「一人っ子政策」がこんな悪影響を及ぼしているとは驚かされた。「巨大な赤ちゃん病」とは言い得て妙だ。 「1979年末から始まり、30年以上も続いた一人っ子政策の影響だろう。子どもは1人と政府に決められ、子どもを溺愛する親が増えた。中には我が子に何でも買い与え、「小皇帝」という別名の通り、勉強以外、すべてのことを子どもの代わりにやってあげるという親もいる。同政策の実施後に生まれた世代の最年長は40歳を超えており、年齢的にはすでに立派な大人だが、自由奔放に育てられた結果、すべてにおいて自己中心的で、自分の思い通りにならないと癇癪(かんしゃく)を起こす、我慢ができない、悪態をつく、という人が増えた」、 「中国では、赤ちゃんに限らず、ささいなことがきっかけで、公共の場で大ゲンカが起きることはよくある」、我慢することをせず、要求するだけの姿勢では、「公共の場で大ゲンカが起きることはよくある」、困ったことだ。 中島 恵氏による「中国でなぜ「巨大な赤ちゃん」が増えているのか?炎上が相次ぐ異常なワガママぶりの背景」 ダイヤモンド・オンライン 「中国政府が声高に衰退論を否定するのは、「中国経済の縮みは深刻」であることを、「誰よりもよく知っているからではないだろうか」、「中国経済」は想定以上に「深刻」なようだ。 「研究の不正が横行し、中国の研究者たちが「偽造論文」を世界中にまき散らしている実態が明らかになっており・・・「科学技術大国」中国に対する期待も今後、大きく縮むことになるだろう」、 「若者がキャリア・ダウンを志向するのは「ラットレース(ハードワークをしても豊かになれない状態)は意味がない」との認識が広まっているからだという」、「「若者がキャリア・ダウンを志向する」とは由々しいことだ。 「専門家は「中国経済の深い部分にまでデフレ圧力が浸透している」と分析」、これは深刻だ。 藤和彦氏による「中国は人口減による衰退論に猛反発 本当は他国に触れられたくない“縮みの現実”とは」 デイリー新潮 「一方には、中国の文化と革命の伝統として、平等主義の要素があります。もう一方で、高等教育を受けた人々が増えています。中産階級と呼ばれる層です。この階層の比率が、共産主義崩壊直前のソ連と同じ水準に達しようとしているのです」、「中国」でも「中産階級」が25%、と「共産主義崩壊直前のソ連と同じ水準に達しようとしている」、「「中国」で「中産階級」が25%」になったとしても、「共産主義崩壊直前のソ連」のようなことにはならないのではなかろうか。 「中国の社会には公正を求める要素があります。中国の指導者たちは常に、人々の決起の可能性を考慮に入れておかなければなりません。 これは、中国を統治することが非常に厳しい理由の1つだと思います」、 「今、中国にあるのは、国民を制御するための最新の技巧です。顔認証があり、インターネットがあり、最先端のあらゆるツールがあります。しかし同時に、中国には、権威主義的および平等主義的な家族の価値が存続していて、彼らの社会的価値にもつながっています」、なるほど。 「ロシアで起きたことは、中国と正反対だったことです。どちらも権威主義の伝統を持っていますが、コロナに関する限り、ロシア政府は国民をまったく制御できませんでした」、「コロナに関する限り、ロシア政府は国民をまったく制御」する気がなかった方が適切な気がする。 『2035年の世界地図──失われる民主主義 破裂する資本主義』 エマニュエル・トッド氏による「「高学歴層が増える中国」が迎えうる"意外な未来" "現代最高の知性"が予言する「新しい全体主義」」 東洋経済オンライン 「こういった法律が出るくらい、しつけや家庭教育の問題が社会全体で大きくなっており、政府にとって頭の痛い問題であることを表しているといえる」、法律まで出したとは問題が深刻なようだ。 「2021年、中国政府はしつけに関する法律「家庭教育促進法」を制定した。中国政府は、保護者が子どもの成績を重視するあまり、家庭で適切なしつけが行われていないことなどを問題視。法律に「高齢者や幼児を大切にし、勤勉節約に努めること、部屋の片づけを他人任せにしないこと」などを明記した」、 こうした子どもは「留守児童」と呼ばれ、自殺や精神不安の要因となっている。しつけや家庭教育は祖父母の役目となるが、祖父母は年を取っている上、自分の子ではないため、また「親と離れている孫がかわいそう」という気持ちもあって、子どもに甘くなってしまいがちだ」、やむを得ないようだ。 真壁昭夫氏による「中国経済を見限り「日本株」にマネーを投下する海外投資家が増えている理由」 「かつての高成長のメカニズムが逆回転し始めている。不動産市況は悪化し、地方政府の歳入は減少。そのため、大規模な景気対策を打ち出すことが難しい。共産党政権による政権を維持するための指導部人事も、先行きを不透明にする要因になっている。そうした状況をかんがみた国内外の投資家が中国経済に見切りをつけ、わが国などに資金を振り向ける動きが目立ち始めてもいる」、 「不動産市況は悪化し、地方政府の歳入は減少。そのため、大規模な景気対策を打ち出すことが難しい」、「かつての高成長のメカニズムが逆回転し始めている」のは確かなようだ。 「土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、融資平台(LGFV)の債務問題に対する懸念も高まっている。 土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、融資平台(LGFV)の債務問題に対する懸念も高まっている』、「融資平台」「の債務問題に対する懸念も高まっている」のであれば、深刻だ。 「習国家主席は、経済テクノクラート・・・として、半導体分野などでの米中対立時の交渉にあたった劉鶴副首相を退任させた。一方、上海のゼロコロナ政策を徹底した側近の李強氏を首相に指名」、「経済」軽視はボディブローのように経済を悪化させる可能性が強い。 「当面、チャイナリスクの削減に動く主要投資家は増えることになりそうだ」、同感である。
グローバル化(その2)(スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」、エマニュエル・トッドが「グローバル化の夢は死にかけている」と語る真意) [世界経済]
グローバル化については、2020年4月25日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」、エマニュエル・トッドが「グローバル化の夢は死にかけている」と語る真意)である。
先ずは、昨年6月14日付け日経ビジネスオンラインが掲載した米コロンビア大学教授のジョセフ E.スティグリッツ氏による「スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00351/060900031/
・『2年以上ぶりに開催された世界経済フォーラムは、1995年以来、私が参加してきたこれまでのダボス会議とは明らかに様子が違っていた。1月の明るい雪と晴天から一転、雪がないスキー場と、5月のどんよりとした霧雨に見舞われた、気候のことではない。 これまでのフォーラムは、グローバル化を擁護してきた。だが今回は、サプライチェーンの寸断、食料やエネルギー価格の高騰、一部の製薬会社が数十億の追加利益を得るために何十億もの人々が新型コロナウイルスワクチンを手にすることができない知的財産権(IP)体制などといった、グローバル化の失敗に主眼を置いていた。 こうした諸問題への対応策として提案されたのは、生産の「再集積」または「友好国化」、さらに「国の生産能力を高めるための産業政策」の制定だ。誰もが国境のない世界を目指しているように見えた時代は過ぎ去り、突然、誰もが少なくともいくつかの国の国境が経済発展と安全保障の鍵であることを認識するようになったのである。 かつて自由なグローバリゼーションの擁護者であった人々にとって、ダボスのこの方向転換は結果として明らかな不協和音をもたらした。「友好国化」と自由で無差別な貿易の原則を両立させることができず、ダボス会議に参加した実業界と政界のリーダーの大半は、ありふれた話に終始した。なぜこのような事態に陥ったのか、あるいは、グローバリゼーションが全盛の時代にまん延していた「欠陥のある超楽観主義的な論理」について、反省の色はほとんど見られなかった。 もちろん、問題はグローバリゼーションだけではない。市場経済全体にレジリエンス(回復力)が欠けているのだ。私たちは、基本的にはスペアタイヤのない車を作り、現在の価格を数ドル下げただけで、将来の緊急事態にはほとんど注意を払ってこなかった。 ジャストインタイムは、経済がわずかな変動にしか直面しない限りにおいては、素晴らしい革新的技術であった。だが、新型コロナウイルスによる操業停止に直面すると、例えばマイクロチップの不足が新車の不足を引き起こすなどといった供給不足の連鎖を引き起こし、大打撃を被ったのだ。 2006年に筆者が『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す(Making Globalization Work)』(徳間書店)で警告したように、市場はリスクの「値付け」をうまくできない(二酸化炭素の排出量に価格を付けないのと同じ理由だ)。例えばドイツは、明らかに信頼がおけない貿易相手国のロシアからガス供給を受け、依存することを選択した。今、ドイツは、予想され、かつ予測可能であった結果に直面している。 18世紀にアダム・スミスが見出したように、資本主義は独占へと自然に向かっていく傾向があるため、自助努力だけで成り立つシステムではない。しかし、米国のレーガン大統領と英国のサッチャー首相が「規制緩和」の時代を築いて以来、市場の集中が常態化し、電子商取引やソーシャルメディアなど注目される分野だけの現象ではなくなった。 今春、米国で起きた悲惨な粉ミルクの品不足は、それ自体が独占の結果であった。アボット・ラボラトリーズが安全性の問題で生産停止に追い込まれた後、米国人はすぐに、たった1社で米国の供給量の半分近くを占めていることに気づいたのである』、「これまでのフォーラムは、グローバル化を擁護してきた。だが今回は、サプライチェーンの寸断、食料やエネルギー価格の高騰、一部の製薬会社が数十億の追加利益を得るために何十億もの人々が新型コロナウイルスワクチンを手にすることができない知的財産権(IP)体制などといった、グローバル化の失敗に主眼を置いていた」、「こうした諸問題への対応策として提案されたのは、生産の「再集積」または「友好国化」、さらに「国の生産能力を高めるための産業政策」の制定だ。誰もが国境のない世界を目指しているように見えた時代は過ぎ去り、突然、誰もが少なくともいくつかの国の国境が経済発展と安全保障の鍵であることを認識するようになった」、「市場はリスクの「値付け」をうまくできない・・・例えばドイツは、明らかに信頼がおけない貿易相手国のロシアからガス供給を受け、依存することを選択した。今、ドイツは、予想され、かつ予測可能であった結果に直面している」、なるほど。
・『米国の偽善に冷ややかな新興国 今年のダボス会議では、グローバリゼーションの失敗が政治に与えた影響も存分に見られた。ロシアがウクライナに侵攻したとき、クレムリンは即座に、しかもほぼ全世界から非難を浴びた。しかしその3カ月後、新興国や途上国(EMDCs)はより曖昧な立場を取るようになった。多くの者が、2003年には偽りの口実でイラクに侵攻したにもかかわらず、ロシアの侵略に説明責任を求める米国の偽善を指摘している。 EMDCsはまた、欧州と米国による最近のワクチンナショナリズムの歴史も強調している。これは、30年前に押し付けられた世界貿易機関(WTO)のIP条項によって維持されてきたものだ。そして、食料とエネルギー価格の上昇の矢面に立たされているのが、EMDCsである。過去の不正義と相まって、こうした最近の動きは、民主主義と国際的な法の支配を提唱する欧米の信用を失墜させるものだ。 確かに、米国による民主主義擁護の支援を拒否する多くの国は、いずれにせよ民主的ではない。しかしほかの国々は民主的だ。この戦いをリードすべく立ち上がったように見える米国は、制度的な人種差別や権威主義者に媚(こ)びたトランプ政権から、投票を抑制して2021年1月6日の米国議会議事堂での暴動から有権者の注意をそらそうとする共和党の執拗な試みまで、自らの失敗によって立場を損なわれてきたのである。 米国にとって最善の方法は、食料とエネルギーのコスト高騰に対処できるよう支援することで、新興国に対してより大きな連帯感を示すことであろう。これは、富裕国の特別引き出し権(国際通貨基金の準備資産)を再配分し、世界貿易機関(WTO)で新型コロナウイルス関連の強力な知的財産権の放棄を支持すれば、可能になる。 さらに、食糧やエネルギー価格の高騰は、多くの貧困国で債務危機を引き起こし、このパンデミック(世界的大流行)による悲劇的な不公平をさらに悪化させる可能性がある。もし米国と欧州が真のグローバル・リーダーシップを発揮したいのであれば、各国が負担しきれないほどの債務を負うようそそのかした大銀行や債権者の味方をするのはやめるべきだ。 40年にわたりグローバリゼーションを擁護してきたダボス会議の面々は、明らかに舵(かじ)取りを誤った。ダボス会議は、先進国、途上国を問わず繁栄を約束してきた。しかし、北半球の巨大企業が豊かになる一方で、すべての人がより良くなるはずのプロセスは、代わりにあらゆる場所で敵を作っただけだった。「トリクルダウン経済学」とは、富裕層が豊かになれば、自動的にすべての人が恩恵を受けるというものだが、理論も根拠もない詐欺のようなものだ。 今年のダボス会議は、残念な結果に終わった。世界に今日のような状況をもたらした意思決定と政策について、真剣に考える機会であり得たはずだ。グローバリゼーションがピークに達した今、その衰退を管理することが、その隆盛を管理したときよりもうまくいくことを願うばかりである』、「米国にとって最善の方法は、食料とエネルギーのコスト高騰に対処できるよう支援することで、新興国に対してより大きな連帯感を示すことであろう。これは、富裕国の特別引き出し権(国際通貨基金の準備資産)を再配分し、世界貿易機関(WTO)で新型コロナウイルス関連の強力な知的財産権の放棄を支持すれば、可能になる」、「40年にわたりグローバリゼーションを擁護してきたダボス会議の面々は、明らかに舵(かじ)取りを誤った。ダボス会議は、先進国、途上国を問わず繁栄を約束してきた。しかし、北半球の巨大企業が豊かになる一方で、すべての人がより良くなるはずのプロセスは、代わりにあらゆる場所で敵を作っただけだった。「トリクルダウン経済学」とは、富裕層が豊かになれば、自動的にすべての人が恩恵を受けるというものだが、理論も根拠もない詐欺のようなものだ」、「グローバリゼーションがピークに達した今、その衰退を管理することが、その隆盛を管理したときよりもうまくいくことを願うばかりである」、同感である。
次に、本年3月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した歴史家・文化人類学者・人口学者のエマニュエル・トッド氏による「エマニュエル・トッドが「グローバル化の夢は死にかけている」と語る真意」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/318698
・『家族制度や識字率、出生率に基づき、現代政治や社会を分析し、「ソ連崩壊」から「米国の金融危機」などを予言した、フランスの歴史家エマニュエル・トッド。彼の分析では、現在起きている戦争の背景に「グローバル化」という私たちのかつての夢があると言います。その真意を、最新刊『2035年の世界地図』(朝日新聞出版)で語った民主主義の未来予想図から一部を抜粋・再編して大公開します(Qは聞き手の質問、Aはトッド氏の回答)』、興味深そうだ。
・『「グローバル化」という夢のあと Q:中国と米国の対立は深刻化し、両国ともに経済の相互依存を政治的に切り離すデカップリングを進める機運があります。以前、しきりに言われていた「世界がボーダーレスとなり、主権国家は重要性を失う」という言説はどうなったのでしょう。グローバル化は終わったのでしょうか。グローバル化の夢は潰えたのでしょうか。 A:グローバル化の夢は、死にかけています。 もはや人々はグローバル化を天国のようには考えていません。人々はそれが社会にとてつもない格差を生み出したことを知ってしまったからです。しかし一方で、先進国と途上国との間に一定の新たな平等を作り出しました。 私は2つ指摘しておきたい。まず、グローバル化がもたらした現実です。世界の労働者階級の多くは中国にいます。今、世界の労働者階級のおそらく25%は中国にいます。グローバル化の中で国際分業が進み、世界の生産を担っているのは、中国の人々なのです。 もう一つの大きな部分はインドなどです。欧米や日本といった先進国の経済は、工業(に伴う生産活動)から脱却し、サービスや研究などに集中しています。この構造から抜け出せないでしょう。先進国の国民は労働者として生産の現場へ戻れるでしょうか。) 私は、米国でトランプが政権を握ったという事実に大いに興味を持っています。彼は単に中国をやっつけようとしただけではありません。米国の工業生産能力の再構築を目指していたのです。だから、中国との貿易において保護主義的な措置をとりました。 もちろん、オバマ政権がやろうとしたことからの継続的な要素も多くありました。そして、バイデン政権もトランプのとった保護主義的な側面を持つ政策を捨て去ったわけではありません。 しかし、統計的にみると米国が工業での一定の自立を回復する兆しは見られません。 絶対的数値では、モノの取引における米国の赤字、サービスではなく、モノの貿易赤字は増えています。 先日の「ニューヨークタイムズ」の記事では、iPhoneを販売しているアップル社は、自らのサプライチェーンから中国の工場を外すことは不可能と判断した、と書いていました。実際に、iPhoneの付加価値に占める中国の割合は25%に達しています。中国はもはや、単に組み立てラインを担うだけではなく、価値を生み出す場になっているのです』、「世界の労働者階級のおそらく25%は中国にいます・・・もう一つの大きな部分はインドなどです」、「欧米や日本といった先進国の経済は、工業・・・から脱却し、サービスや研究などに集中」、「iPhoneの付加価値に占める中国の割合は25%に達しています。中国はもはや、単に組み立てラインを担うだけではなく、価値を生み出す場になっている」、なるほど。
・『サービス産業社会から工業社会に戻れるか 私たちはそう問われている その背後には、歴史的な問題があります。非常に重要な歴史的問題です。 西洋――この西洋の中には日本も含まれていますが――の歴史を見ると、農民社会から始まります。そして、農民社会から工業社会に移行します。農民が姿を消し、労働者が登場します。続いて、工業社会からポスト工業社会へ、サービス産業社会へと移行します。 サービス産業社会は多くの労働者を捨て去りますね。基本的な疑問は、この移行の旅には元に戻るための帰りのチケットはありますか、ということです。例えば、工業社会から農民社会へ元に戻すことは可能だと思いますか。答えはノーです。 私たちは、「それはできますか?」と問われています。「サービス産業社会から工業社会に戻ることはできますか?」と。 第三次産業にふさわしい教育を受けた労働者を製造現場の労働者階級に変えることはできますか? われわれには分かりません。いや実は残念ながら知っています。これが不可能であるということを。 この点で、米国の状況は興味をそそります。彼らは生産していないからです。 もちろん教育システムがあり、彼らはあらゆる種類の学位を持っています。しかし彼らは、十分なエンジニアを生み出していません。もはや数学者も十分には生み出しておらず、中国から「輸入」しなければなりません。 最大のジョークですよね? 米国のエンジニアの半数が「輸入」、そしてその大きな部分は中国から「輸入」されています。 米中間の相互依存があります。グローバル化は今も続いており、抜け出すのは非常に困難です。そして、グローバル化にはある要素があります。グローバル化を抽象的なものとして見ることはできません。国家に、そして強大な国家に関係なく存在するものとは見ることができません』、「第三次産業にふさわしい教育を受けた労働者を製造現場の労働者階級に変えることはできますか?」、「これが不可能である」、「もはや数学者も十分には生み出しておらず、中国から「輸入」しなければなりません・・・米国のエンジニアの半数が「輸入」、そしてその大きな部分は中国から「輸入」されています」、「米中間の相互依存があります。グローバル化は今も続いており、抜け出すのは非常に困難です」、なるほど。
・『最初のグローバル化は英国が 第二のグローバル化は米国が担った 最初のグローバル化は、1914年の第一次世界大戦の前でした。それは英国によるものでした。英国は、産業と金融で非常に進んでおり、強力な海軍を持っていました。 英国は最初のグローバル化のリーダーであり、主要なアクターでした。 第二のグローバル化は、まさに米国の力によるものでした。米国の力は現在、弱体化はしたものの、依然として存在します。 ですから、グローバル化から抜け出すということは、先進国、特に米国が労働者階級、つまり工業を担う階級を復活させることを意味します。 問題は、米国の人々にとっては生産の現場で働くより、強力な軍隊を持ち、基軸通貨であるドルを印刷するほうがよっぽど簡単だということです。 繰り返しますが、私は楽観的ではありません。 これが今、われわれが世界規模で直面する大きな戦いの背後にあることだと思います。米国にとって、グローバル化から抜け出すことは簡単ではありません。(エマニュエル・トッド氏の略歴はリンク先参照)』、「最初のグローバル化は、1914年の第一次世界大戦の前でした。それは英国によるものでした。英国は、産業と金融で非常に進んでおり、強力な海軍を持っていました。 英国は最初のグローバル化のリーダーであり、主要なアクターでした」、「第二のグローバル化は、まさに米国の力によるものでした。米国の力は現在、弱体化はしたものの、依然として存在します。 ですから、グローバル化から抜け出すということは、先進国、特に米国が労働者階級、つまり工業を担う階級を復活させることを意味します。 問題は、米国の人々にとっては生産の現場で働くより、強力な軍隊を持ち、基軸通貨であるドルを印刷するほうがよっぽど簡単だということ」、「基軸通貨であるドルを印刷」するといっても、必要以上に「ドルを印刷」すれば、「ドル」は安くなる筈で、全く自由に「印刷」できるわけではない。ただ、「米国の人々にとっては生産の現場で働く」ことに戻るとは考え難い。「米国が労働者階級、つまり工業を担う階級を復活させる」、「グローバル化から抜け出す」、ことも考え難い。
先ずは、昨年6月14日付け日経ビジネスオンラインが掲載した米コロンビア大学教授のジョセフ E.スティグリッツ氏による「スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00351/060900031/
・『2年以上ぶりに開催された世界経済フォーラムは、1995年以来、私が参加してきたこれまでのダボス会議とは明らかに様子が違っていた。1月の明るい雪と晴天から一転、雪がないスキー場と、5月のどんよりとした霧雨に見舞われた、気候のことではない。 これまでのフォーラムは、グローバル化を擁護してきた。だが今回は、サプライチェーンの寸断、食料やエネルギー価格の高騰、一部の製薬会社が数十億の追加利益を得るために何十億もの人々が新型コロナウイルスワクチンを手にすることができない知的財産権(IP)体制などといった、グローバル化の失敗に主眼を置いていた。 こうした諸問題への対応策として提案されたのは、生産の「再集積」または「友好国化」、さらに「国の生産能力を高めるための産業政策」の制定だ。誰もが国境のない世界を目指しているように見えた時代は過ぎ去り、突然、誰もが少なくともいくつかの国の国境が経済発展と安全保障の鍵であることを認識するようになったのである。 かつて自由なグローバリゼーションの擁護者であった人々にとって、ダボスのこの方向転換は結果として明らかな不協和音をもたらした。「友好国化」と自由で無差別な貿易の原則を両立させることができず、ダボス会議に参加した実業界と政界のリーダーの大半は、ありふれた話に終始した。なぜこのような事態に陥ったのか、あるいは、グローバリゼーションが全盛の時代にまん延していた「欠陥のある超楽観主義的な論理」について、反省の色はほとんど見られなかった。 もちろん、問題はグローバリゼーションだけではない。市場経済全体にレジリエンス(回復力)が欠けているのだ。私たちは、基本的にはスペアタイヤのない車を作り、現在の価格を数ドル下げただけで、将来の緊急事態にはほとんど注意を払ってこなかった。 ジャストインタイムは、経済がわずかな変動にしか直面しない限りにおいては、素晴らしい革新的技術であった。だが、新型コロナウイルスによる操業停止に直面すると、例えばマイクロチップの不足が新車の不足を引き起こすなどといった供給不足の連鎖を引き起こし、大打撃を被ったのだ。 2006年に筆者が『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す(Making Globalization Work)』(徳間書店)で警告したように、市場はリスクの「値付け」をうまくできない(二酸化炭素の排出量に価格を付けないのと同じ理由だ)。例えばドイツは、明らかに信頼がおけない貿易相手国のロシアからガス供給を受け、依存することを選択した。今、ドイツは、予想され、かつ予測可能であった結果に直面している。 18世紀にアダム・スミスが見出したように、資本主義は独占へと自然に向かっていく傾向があるため、自助努力だけで成り立つシステムではない。しかし、米国のレーガン大統領と英国のサッチャー首相が「規制緩和」の時代を築いて以来、市場の集中が常態化し、電子商取引やソーシャルメディアなど注目される分野だけの現象ではなくなった。 今春、米国で起きた悲惨な粉ミルクの品不足は、それ自体が独占の結果であった。アボット・ラボラトリーズが安全性の問題で生産停止に追い込まれた後、米国人はすぐに、たった1社で米国の供給量の半分近くを占めていることに気づいたのである』、「これまでのフォーラムは、グローバル化を擁護してきた。だが今回は、サプライチェーンの寸断、食料やエネルギー価格の高騰、一部の製薬会社が数十億の追加利益を得るために何十億もの人々が新型コロナウイルスワクチンを手にすることができない知的財産権(IP)体制などといった、グローバル化の失敗に主眼を置いていた」、「こうした諸問題への対応策として提案されたのは、生産の「再集積」または「友好国化」、さらに「国の生産能力を高めるための産業政策」の制定だ。誰もが国境のない世界を目指しているように見えた時代は過ぎ去り、突然、誰もが少なくともいくつかの国の国境が経済発展と安全保障の鍵であることを認識するようになった」、「市場はリスクの「値付け」をうまくできない・・・例えばドイツは、明らかに信頼がおけない貿易相手国のロシアからガス供給を受け、依存することを選択した。今、ドイツは、予想され、かつ予測可能であった結果に直面している」、なるほど。
・『米国の偽善に冷ややかな新興国 今年のダボス会議では、グローバリゼーションの失敗が政治に与えた影響も存分に見られた。ロシアがウクライナに侵攻したとき、クレムリンは即座に、しかもほぼ全世界から非難を浴びた。しかしその3カ月後、新興国や途上国(EMDCs)はより曖昧な立場を取るようになった。多くの者が、2003年には偽りの口実でイラクに侵攻したにもかかわらず、ロシアの侵略に説明責任を求める米国の偽善を指摘している。 EMDCsはまた、欧州と米国による最近のワクチンナショナリズムの歴史も強調している。これは、30年前に押し付けられた世界貿易機関(WTO)のIP条項によって維持されてきたものだ。そして、食料とエネルギー価格の上昇の矢面に立たされているのが、EMDCsである。過去の不正義と相まって、こうした最近の動きは、民主主義と国際的な法の支配を提唱する欧米の信用を失墜させるものだ。 確かに、米国による民主主義擁護の支援を拒否する多くの国は、いずれにせよ民主的ではない。しかしほかの国々は民主的だ。この戦いをリードすべく立ち上がったように見える米国は、制度的な人種差別や権威主義者に媚(こ)びたトランプ政権から、投票を抑制して2021年1月6日の米国議会議事堂での暴動から有権者の注意をそらそうとする共和党の執拗な試みまで、自らの失敗によって立場を損なわれてきたのである。 米国にとって最善の方法は、食料とエネルギーのコスト高騰に対処できるよう支援することで、新興国に対してより大きな連帯感を示すことであろう。これは、富裕国の特別引き出し権(国際通貨基金の準備資産)を再配分し、世界貿易機関(WTO)で新型コロナウイルス関連の強力な知的財産権の放棄を支持すれば、可能になる。 さらに、食糧やエネルギー価格の高騰は、多くの貧困国で債務危機を引き起こし、このパンデミック(世界的大流行)による悲劇的な不公平をさらに悪化させる可能性がある。もし米国と欧州が真のグローバル・リーダーシップを発揮したいのであれば、各国が負担しきれないほどの債務を負うようそそのかした大銀行や債権者の味方をするのはやめるべきだ。 40年にわたりグローバリゼーションを擁護してきたダボス会議の面々は、明らかに舵(かじ)取りを誤った。ダボス会議は、先進国、途上国を問わず繁栄を約束してきた。しかし、北半球の巨大企業が豊かになる一方で、すべての人がより良くなるはずのプロセスは、代わりにあらゆる場所で敵を作っただけだった。「トリクルダウン経済学」とは、富裕層が豊かになれば、自動的にすべての人が恩恵を受けるというものだが、理論も根拠もない詐欺のようなものだ。 今年のダボス会議は、残念な結果に終わった。世界に今日のような状況をもたらした意思決定と政策について、真剣に考える機会であり得たはずだ。グローバリゼーションがピークに達した今、その衰退を管理することが、その隆盛を管理したときよりもうまくいくことを願うばかりである』、「米国にとって最善の方法は、食料とエネルギーのコスト高騰に対処できるよう支援することで、新興国に対してより大きな連帯感を示すことであろう。これは、富裕国の特別引き出し権(国際通貨基金の準備資産)を再配分し、世界貿易機関(WTO)で新型コロナウイルス関連の強力な知的財産権の放棄を支持すれば、可能になる」、「40年にわたりグローバリゼーションを擁護してきたダボス会議の面々は、明らかに舵(かじ)取りを誤った。ダボス会議は、先進国、途上国を問わず繁栄を約束してきた。しかし、北半球の巨大企業が豊かになる一方で、すべての人がより良くなるはずのプロセスは、代わりにあらゆる場所で敵を作っただけだった。「トリクルダウン経済学」とは、富裕層が豊かになれば、自動的にすべての人が恩恵を受けるというものだが、理論も根拠もない詐欺のようなものだ」、「グローバリゼーションがピークに達した今、その衰退を管理することが、その隆盛を管理したときよりもうまくいくことを願うばかりである」、同感である。
次に、本年3月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した歴史家・文化人類学者・人口学者のエマニュエル・トッド氏による「エマニュエル・トッドが「グローバル化の夢は死にかけている」と語る真意」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/318698
・『家族制度や識字率、出生率に基づき、現代政治や社会を分析し、「ソ連崩壊」から「米国の金融危機」などを予言した、フランスの歴史家エマニュエル・トッド。彼の分析では、現在起きている戦争の背景に「グローバル化」という私たちのかつての夢があると言います。その真意を、最新刊『2035年の世界地図』(朝日新聞出版)で語った民主主義の未来予想図から一部を抜粋・再編して大公開します(Qは聞き手の質問、Aはトッド氏の回答)』、興味深そうだ。
・『「グローバル化」という夢のあと Q:中国と米国の対立は深刻化し、両国ともに経済の相互依存を政治的に切り離すデカップリングを進める機運があります。以前、しきりに言われていた「世界がボーダーレスとなり、主権国家は重要性を失う」という言説はどうなったのでしょう。グローバル化は終わったのでしょうか。グローバル化の夢は潰えたのでしょうか。 A:グローバル化の夢は、死にかけています。 もはや人々はグローバル化を天国のようには考えていません。人々はそれが社会にとてつもない格差を生み出したことを知ってしまったからです。しかし一方で、先進国と途上国との間に一定の新たな平等を作り出しました。 私は2つ指摘しておきたい。まず、グローバル化がもたらした現実です。世界の労働者階級の多くは中国にいます。今、世界の労働者階級のおそらく25%は中国にいます。グローバル化の中で国際分業が進み、世界の生産を担っているのは、中国の人々なのです。 もう一つの大きな部分はインドなどです。欧米や日本といった先進国の経済は、工業(に伴う生産活動)から脱却し、サービスや研究などに集中しています。この構造から抜け出せないでしょう。先進国の国民は労働者として生産の現場へ戻れるでしょうか。) 私は、米国でトランプが政権を握ったという事実に大いに興味を持っています。彼は単に中国をやっつけようとしただけではありません。米国の工業生産能力の再構築を目指していたのです。だから、中国との貿易において保護主義的な措置をとりました。 もちろん、オバマ政権がやろうとしたことからの継続的な要素も多くありました。そして、バイデン政権もトランプのとった保護主義的な側面を持つ政策を捨て去ったわけではありません。 しかし、統計的にみると米国が工業での一定の自立を回復する兆しは見られません。 絶対的数値では、モノの取引における米国の赤字、サービスではなく、モノの貿易赤字は増えています。 先日の「ニューヨークタイムズ」の記事では、iPhoneを販売しているアップル社は、自らのサプライチェーンから中国の工場を外すことは不可能と判断した、と書いていました。実際に、iPhoneの付加価値に占める中国の割合は25%に達しています。中国はもはや、単に組み立てラインを担うだけではなく、価値を生み出す場になっているのです』、「世界の労働者階級のおそらく25%は中国にいます・・・もう一つの大きな部分はインドなどです」、「欧米や日本といった先進国の経済は、工業・・・から脱却し、サービスや研究などに集中」、「iPhoneの付加価値に占める中国の割合は25%に達しています。中国はもはや、単に組み立てラインを担うだけではなく、価値を生み出す場になっている」、なるほど。
・『サービス産業社会から工業社会に戻れるか 私たちはそう問われている その背後には、歴史的な問題があります。非常に重要な歴史的問題です。 西洋――この西洋の中には日本も含まれていますが――の歴史を見ると、農民社会から始まります。そして、農民社会から工業社会に移行します。農民が姿を消し、労働者が登場します。続いて、工業社会からポスト工業社会へ、サービス産業社会へと移行します。 サービス産業社会は多くの労働者を捨て去りますね。基本的な疑問は、この移行の旅には元に戻るための帰りのチケットはありますか、ということです。例えば、工業社会から農民社会へ元に戻すことは可能だと思いますか。答えはノーです。 私たちは、「それはできますか?」と問われています。「サービス産業社会から工業社会に戻ることはできますか?」と。 第三次産業にふさわしい教育を受けた労働者を製造現場の労働者階級に変えることはできますか? われわれには分かりません。いや実は残念ながら知っています。これが不可能であるということを。 この点で、米国の状況は興味をそそります。彼らは生産していないからです。 もちろん教育システムがあり、彼らはあらゆる種類の学位を持っています。しかし彼らは、十分なエンジニアを生み出していません。もはや数学者も十分には生み出しておらず、中国から「輸入」しなければなりません。 最大のジョークですよね? 米国のエンジニアの半数が「輸入」、そしてその大きな部分は中国から「輸入」されています。 米中間の相互依存があります。グローバル化は今も続いており、抜け出すのは非常に困難です。そして、グローバル化にはある要素があります。グローバル化を抽象的なものとして見ることはできません。国家に、そして強大な国家に関係なく存在するものとは見ることができません』、「第三次産業にふさわしい教育を受けた労働者を製造現場の労働者階級に変えることはできますか?」、「これが不可能である」、「もはや数学者も十分には生み出しておらず、中国から「輸入」しなければなりません・・・米国のエンジニアの半数が「輸入」、そしてその大きな部分は中国から「輸入」されています」、「米中間の相互依存があります。グローバル化は今も続いており、抜け出すのは非常に困難です」、なるほど。
・『最初のグローバル化は英国が 第二のグローバル化は米国が担った 最初のグローバル化は、1914年の第一次世界大戦の前でした。それは英国によるものでした。英国は、産業と金融で非常に進んでおり、強力な海軍を持っていました。 英国は最初のグローバル化のリーダーであり、主要なアクターでした。 第二のグローバル化は、まさに米国の力によるものでした。米国の力は現在、弱体化はしたものの、依然として存在します。 ですから、グローバル化から抜け出すということは、先進国、特に米国が労働者階級、つまり工業を担う階級を復活させることを意味します。 問題は、米国の人々にとっては生産の現場で働くより、強力な軍隊を持ち、基軸通貨であるドルを印刷するほうがよっぽど簡単だということです。 繰り返しますが、私は楽観的ではありません。 これが今、われわれが世界規模で直面する大きな戦いの背後にあることだと思います。米国にとって、グローバル化から抜け出すことは簡単ではありません。(エマニュエル・トッド氏の略歴はリンク先参照)』、「最初のグローバル化は、1914年の第一次世界大戦の前でした。それは英国によるものでした。英国は、産業と金融で非常に進んでおり、強力な海軍を持っていました。 英国は最初のグローバル化のリーダーであり、主要なアクターでした」、「第二のグローバル化は、まさに米国の力によるものでした。米国の力は現在、弱体化はしたものの、依然として存在します。 ですから、グローバル化から抜け出すということは、先進国、特に米国が労働者階級、つまり工業を担う階級を復活させることを意味します。 問題は、米国の人々にとっては生産の現場で働くより、強力な軍隊を持ち、基軸通貨であるドルを印刷するほうがよっぽど簡単だということ」、「基軸通貨であるドルを印刷」するといっても、必要以上に「ドルを印刷」すれば、「ドル」は安くなる筈で、全く自由に「印刷」できるわけではない。ただ、「米国の人々にとっては生産の現場で働く」ことに戻るとは考え難い。「米国が労働者階級、つまり工業を担う階級を復活させる」、「グローバル化から抜け出す」、ことも考え難い。
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中国経済(その16)(政府が「経済成長せよ!」と叫ぶだけの中国が 根本的に分かっていないこと、習近平は「支配を正当化するための経済発展」すら放棄...突き進む「ソ連化」の道、水増しされていた中国の人口 「本当は10億人だった説」の衝撃──ハッキングでデータ流出) [世界経済]
中国経済については、本年2月8日に取上げた。今日は、(その16)(政府が「経済成長せよ!」と叫ぶだけの中国が 根本的に分かっていないこと、習近平は「支配を正当化するための経済発展」すら放棄...突き進む「ソ連化」の道、水増しされていた中国の人口 「本当は10億人だった説」の衝撃──ハッキングでデータ流出)である。特に3番目の記事は衝撃的だ
先ずは、本年2月15日付けNewsweek日本版が掲載した米クレアモント・マッケンナ大学教授のミンシン・ペイ氏による「政府が「経済成長せよ!」と叫ぶだけの中国が、根本的に分かっていないこと」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/02/post-100870_1.php
・『<ゼロコロナ政策から抜け出した中国が、本当に経済を成長路線に乗せるために必要なのは威勢のいい掛け声ではない> 中国政府の「経済成長」愛に再び火がついた。ゼロコロナ政策の長い闇から強引に、少なくとも数万の命を犠牲にして抜け出した今、あの国の指導者たちは異口同音に、いざ力強い経済を取り戻すぞと叫び始めた。だが号令だけでは何も変わらない。 昨年末に開かれた共産党の中央経済工作会議で、今年は経済成長を政府の最優先課題とすると定められた。こうした党中央の固い決意を受け、地方の党幹部や首長らも同じ言葉を繰り返し、民間の投資家や実業家らの期待をあおっている。コロナの時代には見られなかった光景だ。 こうした変化の政治的動機は明らかだ。国民が苛酷なゼロコロナ政策への不満を爆発させ、その廃止に伴う混乱にも失望している今は、一刻も早く党に対する信頼と支持を回復したい。だが成長賛歌の合唱だけでは不十分。大事なのは行動だ。 停滞する不動産業界へのテコ入れなど、小手先の対策では足りない。金融緩和やインフラ投資の拡大などの景気刺激策も、せいぜい短期の効果しかあるまい。 ゼロコロナ政策は中国経済に深い傷痕を残した。それ以前には中小零細企業が4400万社もあった。登記された民間企業の約98%を占め、国内の雇用(公務員を除く)の8割前後を支えていた。ほかに、自営業者も9000万人以上いた』、「共産党の中央経済工作会議で、今年は経済成長を政府の最優先課題とすると定められた・・・地方の党幹部や首長らも同じ言葉を繰り返し、民間の投資家や実業家らの期待をあおっている」、「国民が苛酷なゼロコロナ政策への不満を爆発させ、その廃止に伴う混乱にも失望している今は、一刻も早く党に対する信頼と支持を回復したい。だが成長賛歌の合唱だけでは不十分。大事なのは行動だ。停滞する不動産業界へのテコ入れなど、小手先の対策では足りない。金融緩和やインフラ投資の拡大などの景気刺激策も、せいぜい短期の効果しかあるまい」、その通りだ。
・『中国が再び経済成長するのに不可欠なもの だがゼロコロナ政策で事情は一変した。ロックダウン中も中小零細業者への資金援助はなかったから、多くが廃業に追い込まれた。 そこへ、地政学的な圧力が成長の阻害要因としてのしかかる。アメリカは中国が半導体を入手できないよう、これまで以上に力を入れている。オランダ企業ASMLが半導体製造装置を中国に売らないよう、同国政府に圧力をかけてもいる。米議会の下院で多数派となった共和党が、新たな経済制裁を打ち出す可能性もある。 ウクライナでの戦争に関して、今も中国はロシアを非難していない。当然、EUは腹を立てており、アメリカと同様に経済的なデカップリング(切り離し)を急ぐべきだとの声も上がっている。こんな政治的緊張が続く限り、経済の先は見えない。投資意欲は冷え、外国企業の撤退で製造業の雇用は確実に減っていく。 つまり、中国経済を再び成長軌道に乗せるには欧米諸国との関係改善が不可欠だ。しかし現時点で、米中関係は修復不能なほどに冷え込んでいる。どうすればいいか。プーチン政権下のロシアに対する支持を取り下げるのもいい。台湾に対する軍事的な威嚇をトーンダウンするのもいい。それだけでも投資家の心理は変わるだろう』、「こんな政治的緊張が続く限り、経済の先は見えない。投資意欲は冷え、外国企業の撤退で製造業の雇用は確実に減っていく。 つまり、中国経済を再び成長軌道に乗せるには欧米諸国との関係改善が不可欠だ。しかし現時点で、米中関係は修復不能なほどに冷え込んでいる」、打開は難しそうだ。
・『古典的な共産主義イデオロギーにこだわる習政権 一方で中国は、投資家の信頼を得られる改革に乗り出さねばならない。習近平(シー・チンピン)政権は古典的な共産主義イデオロギーにこだわり、社会と経済に対する党の支配を強化してきた。民間企業に党の支部を置き、貿易相手国への危険な挑発を繰り返したりするようでは、信頼回復など望めない。 本気で成長を取り戻したいなら、かつて鄧小平が推進した政治改革の路線に戻るべきだ。とりわけ大事なのは法治主義の貫徹と司法の独立。さもないと民間事業者が自分の命と財産を守れない。 経済政策では非効率な国有企業を民営化し、企業に優しい規制環境を整えること。中小零細企業に対する支援策も、成長の回復軌道を維持するには欠かせない。 しかし今のところ、中国政府がこうした改革に乗り出す気配はない。成長を口にするだけで、1979年に毛沢東の階級闘争理論と決別した鄧小平のような気概で国の進路を変える兆しは見えない。党の甘言に乗せられてはいけない。この先も当面は、中国経済の息は上がったままだ』、「習近平・・・政権は古典的な共産主義イデオロギーにこだわり、社会と経済に対する党の支配を強化してきた。民間企業に党の支部を置き、貿易相手国への危険な挑発を繰り返したりするようでは、信頼回復など望めない。 本気で成長を取り戻したいなら、かつて鄧小平が推進した政治改革の路線に戻るべきだ。とりわけ大事なのは法治主義の貫徹と司法の独立。さもないと民間事業者が自分の命と財産を守れない」、「習近平」は経済がある程度理解していた李克強を追い出し、イエスマンが首相にしたようでは、「当面は、中国経済の息は上がったままだ」。困ったことだ。
次に、2月16日付けNewsweek日本版が掲載したブルネル大学(ロンドン)ビジネススクール上級講師のティー・クオ氏と、スタンフォード大学中国経済制度センター上級研究員のチョンカン・シュイ氏による「習近平は「支配を正当化するための経済発展」すら放棄...突き進む「ソ連化」の道」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/02/post-100878_1.php
・『<共産党の「完全支配」復活を目指す習近平路線は、民間の活力を奪い、先進国市場を遠ざけ、土地バブルを崩壊させかねない> 中国共産党の第20回党大会(2022年10月開催)では、習近平(シー・チンピン)国家主席が今後5年間も政権を担うことが確認された。ただし、それが中国経済にとって何を意味するかは、3つの要素に左右される。国の制度、過去と現在の経済状況、そして指導者の政治的意図だ。 中国の最も基本的な制度は全体主義であり、経済を含む社会の全領域に共産党の独占的支配が及んでいる。全体主義型統制を支える党=国家の制度は、1949年にソビエト連邦から全面的に移植されたものだ。 ソ連型全体主義は30年前に経済の行き詰まりにより崩壊したが、中国は例外に見えた。いま問われているのは、中国独自の全体主義的実験が今後も長続きするかどうかだ。 この問いに答えるためには、「中国の特色ある全体主義」の構造を理解する必要がある。その重要な柱は政治・思想・人事における高度に中央集権化された全体主義型統制と、行政・経済政策の分権化を合体させた地域分権全体主義(RDT)だ。 この組み合わせはポスト毛沢東時代の改革開放政策の原動力だった。この時期に経済への中央集権的・全体主義的な統制は緩和され、RDTは地域分権権威主義(RDA)へと発展した。だが、習が権力を握った2012年以降は全体主義に回帰し、特に急成長する民間部門への統制を再び強めた。この逆流現象が、22年の急激な経済減速の主な理由だ。 毛の死後、共産党指導部は経済成長こそ生き残りの鍵だと考え、RDTを新たな改革開放政策の制度的基盤に据えた。この新モデルでは、地域経済の状況が地方の党=国家官僚の昇進を左右するため、一部の官僚は民間企業の違法行為を隠蔽したり、そうした企業を支援したりして、民間部門の急成長を促した。 民間企業の存在感が増すと、共産党は憲法を改正し、私有財産権を認める世界初の共産主義国家となった。この時点で統制はある程度緩和され、RDTはRDAに移行し始めた。 RDAモデルでは、共産党の政治面での独占に歯向かわない限り、民間部門や萌芽期の市民社会、非国営マスメディアの成長が許容されていた。加えて01年のWTO(世界貿易機関)加盟を機に外国から巨額の投資が流入し、輸出が飛躍的に伸びた。 だがRDAは、より長期的な問題の根本原因でもある。中国経済の持続的エネルギーは、土地と銀行部門の国家による独占、司法の独立性欠如、民間部門に対する差別、内需不足によって常に脅かされている。08年の世界金融危機は、党による完全支配を再び推進する口実となった。) 党=国家は膨大な債務を積み上げてインフラ整備を推し進め、少なくとも当面は高い経済成長を実現した。しかし、投資のほとんどは非効率で、中国は過剰借り入れと過剰設備の悪循環に陥った。さらに問題なのは、借金に頼った巨額の公共投資が民間部門を素通りしたことだ。 一方、土地の国有制と銀行の国家独占は、直接・間接的にGDPの約3分の1を占める不動産部門に深刻な問題を引き起こした。98年に始まった不動産の「市場化」は、国有地を地方政府の収入源に変えるのが狙いだった。この年の土地管理法改正の柱は、地方政府を管轄域内で唯一の土地所有者とすることにあった。 しかし、地方政府は土地から得られる利益を最大化するため、不動産の供給を絞って価格つり上げに走った。その結果、中国の不動産価格は平均世帯収入に対する比率で見ると、世界で最も高い水準に達した。中国全体の不動産価格はアメリカとEUの合計を上回ったが、この意図的に作られたバブルは今や崩壊寸前だ』、「中国の特色ある全体主義」、「の重要な柱は政治・思想・人事における高度に中央集権化された全体主義型統制と、行政・経済政策の分権化を合体させた地域分権全体主義(RDT)だ。 この組み合わせはポスト毛沢東時代の改革開放政策の原動力だった。この時期に経済への中央集権的・全体主義的な統制は緩和され、RDTは地域分権権威主義(RDA)へと発展した。だが、習が権力を握った2012年以降は全体主義に回帰し、特に急成長する民間部門への統制を再び強めた。この逆流現象が、22年の急激な経済減速の主な理由だ」、なるほど。「中国の不動産価格は平均世帯収入に対する比率で見ると、世界で最も高い水準に達した。中国全体の不動産価格はアメリカとEUの合計を上回ったが、この意図的に作られたバブルは今や崩壊寸前だ」、「中国全体の不動産価格はアメリカとEUの合計を上回った」、とはまさに「バブル」だ。
・『全体主義への回帰が鮮明に 土地と銀行の国家独占は金融・財政システムも不安定化させた。地方政府が土地を担保に国有銀行から巨額の借り入れを続けたこともあり、中国全体の対GDP比債務残高は19年第1四半期には300%に達した。 さらに深刻なのは、その大半が土地や金融商品を担保にした住宅ローンであることだ。経済が減速している今、景気の波を増幅させる効果があるこの種の債務の担保価値低下は経済システム全体の重荷になり始め、金融・財政危機を誘発しかねない。 こうした問題に拍車をかけているのが内需の弱さだ。かつての中国は輸出収入でそれを補えたが、先進国との関係が悪化している現在、輸出頼みの経済成長はもはや望めない。中国の民間消費の対GDP比は21年の時点で38.5%(アメリカは70%近く、日本は58%)。依然として世界最低レベルにとどまっている。 中国経済が新たに直面している最大の問題は、共産党の掲げる目標の変化だ。党の存続のための経済発展という従来の目標は、穏やかな政治の進化とカラー革命(民主化運動)の阻止に代わった。党指導部は12年以降、組織的に中国の政治経済を全体主義に引き戻そうとしている。 中国社会の多元主義的要素(民間企業、市民団体、独立系メディア)は依然として制限されているが、党指導部はこの狭い空間が反抗の拠点になることを恐れている。民間の大物起業家や非国有の大手IT企業は容赦なく弾圧された。こうした動きは民間部門を弱体化させ、先進国市場へのアクセスを低下させている。) 党大会を見る限り、今後の中国で全体主義型統制が強化されることは明らかだろう。穏健なテクノクラートの存在感は低下し、今後の経済政策は政治的に決定されることになる。民間企業と市場への締め付けは着実に強化されるだろう。 1980年代、購買力平価でみたソ連の1人当たりGDPはアメリカの約3分の1だったが、今の中国は4分の1をわずかに超える程度。しかも数十年続いた「一人っ子政策」の結果、人口は減少に転じ、人口構造から労働供給と内需の両面で問題のさらなる悪化が示唆されている。 50年代、共産党の有名なスローガンの1つに「ソ連の今日は私たちの明日」というものがあった。現在の党指導部は今日の中国を昨日のソ連に変えようとしている』、「党指導部は12年以降、組織的に中国の政治経済を全体主義に引き戻そうとしている。 中国社会の多元主義的要素・・・は依然として制限されているが、党指導部はこの狭い空間が反抗の拠点になることを恐れている。民間の大物起業家や非国有の大手IT企業は容赦なく弾圧された。こうした動きは民間部門を弱体化させ、先進国市場へのアクセスを低下させている」、「今後の中国で全体主義型統制が強化されることは明らかだろう。穏健なテクノクラートの存在感は低下し、今後の経済政策は政治的に決定されることになる。民間企業と市場への締め付けは着実に強化されるだろう」、その通りだ。
第三に、3月15日付けNewsweek日本版が掲載した香港出身の経済学者・コラムニストの練乙錚氏による「水増しされていた中国の人口、「本当は10億人だった説」の衝撃──ハッキングでデータ流出」を紹介しよう。これは、誠に驚くべき内容だ。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/03/post-101105_1.php
・『<労働人口が増え続ければ経済は栄える...。「14億人市場」という売り文句で海外からの投資を呼んできたが、中国の改ざん、捏造の流儀に目をつぶったほうも軽率> 多産多死の時代から多産少死の人口増加期を経て、やがて少産少死の安定期に入る。このプロセスを「人口転換」と呼ぶが、その後半では(今の日本のように)少子高齢化が顕著になり、やがて人口減少の危機を迎えかねない。 それが歴史の常であり、この人口転換からはどの国も逃れられない。まだ人口は増え続けると豪語していた中国政府も、ついにこの1月、従来は「2030年以降」とされていた人口減少が、実は昨年から始まっていたと認めた。 深刻な事態だが、もっと深刻なのは、その背景にある中国ならではの特殊事情だ。 なぜ想定より8年も早く、人口減が始まってしまったのか。中国の人口が「2030年以降」に減り始めるという想定は中国政府の発表してきた過去の公式統計に基づくもので、大多数の国際機関や外国政府もこれを信じ、これによって中国の将来性や国力を推定してきた。 そもそも平時には、一国の人口が激変する事態は考えにくい。しかるべき統計データがあれば、先の予想は十分に可能だ。なのに、なぜ8年も計算が違ったのか。 どう見ても不自然で、基のデータがおかしかったと考えざるを得ない。中国政府の発表する公式統計の信憑性には以前から疑問が提起されていたが、人口統計に関しては明らかに意図的な改ざんがあったと思われる。 かつて中国には「国家衛生計画生育委員会(計生委)」という組織があった。計生委は巨大な官僚機構で、1980年代に急激に力を付け、国民からは最も嫌われ、軽蔑される組織の1つとなった。 なぜか。1980年頃に始まる悪名高い「一人っ子政策」の実行部隊として、計生委は強制的に妊娠を規制し、2人目以降の妊娠に関しては人工中絶を強要してきたからだ。 一方で組織内には腐敗が蔓延し、無能な共産党幹部が違法出産を見逃す代わりに私腹を肥やしていた。一人っ子政策の下でも人口が増え続けるのは、計生委の指導下でのデータ改ざんが原因だった(こちらの記事参照、なお計生委は18年に廃止されている)』、「人口統計に関しては明らかに意図的な改ざんがあった」、「かつて中国には「国家衛生計画生育委員会(計生委)」という組織があった。計生委は巨大な官僚機構で、1980年代に急激に力を付け、国民からは最も嫌われ、軽蔑される組織の1つとなった。 なぜか。1980年頃に始まる悪名高い「一人っ子政策」の実行部隊として、計生委は強制的に妊娠を規制し、2人目以降の妊娠に関しては人工中絶を強要してきた」、「一人っ子政策の下でも人口が増え続けるのは、計生委の指導下でのデータ改ざんが原因」、酷い組織だったようだ。
・『共産党が神話を主導 だが党の指導者──最初は江沢民(チアン・ツォーミン)、次いで胡錦濤(フー・チンタオ)──が旗を振らなければ、データの改ざんがこれほど組織的に行われることはなかっただろう。 江沢民も胡錦濤も、中国経済の成長を支えるには外国資本の誘致が不可欠と考えていた。だから中国には今でも10億人を超える巨大市場があり、その規模は何十年も先まで拡大を続けるし、安価な労働力もたっぷりあるという「神話」をつくり上げた。 データの改ざんは習近平(シー・チンピン)体制になってからも続いた。「14億の民」という標語を振りかざせば、軍事面でも外交面でも虚勢を張り、諸外国を威圧することが可能だった。 しかし偽りの楽観的な人口統計に基づく経済成長は持続不能だ。だから習近平は、あの「ゼロコロナ政策」を放棄したときと同様、唐突に「30年以降の人口減少」説を放棄した。そして中国の人口は既にピークに達し、減少に転じていると認めた。 それでも中国は、全てを白状したわけではない。22年の人口総数は約14億1000万人だったと、今も主張し続けているが、ここ数年の人口データの修正から考えて、極めて疑わしい数字だ。 なお米ウィスコンシン大学の人口統計学者である易富賢(イー・フーシェン)は、水増しされる前の出生データを基に、中国のピーク人口は約12億8000万人だったと推定している(ちなみに彼の著書は、中国国内では発売を禁じられている)。 だが昨年起きたハッキング事件により、中国の人口は彼の推定値よりもずっと少ない可能性が出てきた』、「江沢民も胡錦濤も、中国経済の成長を支えるには外国資本の誘致が不可欠と考えていた。だから中国には今でも10億人を超える巨大市場があり、その規模は何十年も先まで拡大を続けるし、安価な労働力もたっぷりあるという「神話」をつくり上げた。 データの改ざんは習近平・・・体制になってからも続いた」、昔から「改ざん」を続けていたことに驚かされた。
・『データ流出で嘘が露呈? 昨年6月、中国は史上最悪のデータ流出事件に見舞われた。上海警察のデータベースがハッカー攻撃を受けたのだ。 ハッカー集団は、個人を特定できる最新の情報を含む10億人分(23テラバイト相当)のデータセットを盗み、それをダークウェブで1セット10ビットコイン(約20万ドル)で売りに出した。 これを購入した研究者たちが分析してみると、その数値は中国の実際の人口動態プロファイルと酷似していた。つまりデータは本物と考えていいのだが、統計処理に当たって総人口の70%(総数を14億とすれば10億)ものサンプルを使うことはあり得ない。 一般論として、そんな必要はないし、手間も費用もかかりすぎる。普通はどんなに多くても10%程度だ。中国政府は毎年、サンプル調査を基に人口の変動を推計しているが、その際に用いられるサンプル数は総人口の1%だ。 そう考えると、昨年のハッキングで流出したデータセットには(国民の70%ではなく)全国民の個人識別情報が含まれていた可能性が高い。つまり、中国の本当の人口は14億でも12億8000万でもなく、せいぜい10億人程度という可能性が出てくる。 この国の政治は依然として一枚岩のトップダウン型で、それがデータ改ざんを助長する体質を生んだ。人口の水増しを伴うようでは、中央政府の進める壮大な建設プロジェクトも無用なものとなろう。 高速道路や新幹線の建設を急ぎ、人口増を見込んで不動産を開発しても、入居者のいない新築物件のゴーストタウンを生み出すだけだ。関連業界も含め、収益性を欠く無用の事業ばかりで、今や不良債権が山積みされている。 統計偽装の弊害は高齢者の医療保険や年金にも及ぶ。1960年代に生まれたベビーブーム世代には、労働力の増加を前提として潤沢な支給が約束されていた。 ところが今、武漢などの大都市では「白髪革命」と呼ばれる抗議デモが起きている。医療保険の給付金減額に、高齢者が怒りの声を上げているのだ。 外交の分野では虚栄心に満ちた「一帯一路構想」が同じく持続不能となり、挫折しかけている。労働人口が増え続ければ経済は栄え、政府の資金も潤沢になる──。そんな前提で金をつぎ込んできたのだが、今や人口は減少に転じ、経済の先行きも暗い。 こういう展開は、同じような人口問題を抱える他の国々ではあり得ない。いわゆる計画経済に縛られていないから、誰も人口統計を改ざんする必要を感じないからだ。 しかし偽データの影響は他国にも及ぶ。外国の自動車メーカーや携帯電話の製造会社は、人口増という見込みがあればこそ中国に投資してきた。中国市場の拡大に期待し、安価な労働力を搾取して輸出品の生産もしてきた。これらも持続不能になる。) ブラジル、オーストラリア、カナダ、アメリカなどでは、中国を巨大な成長市場と信じて鉱業や農業の分野で生産規模を拡大してきた。これらの業界のもくろみも外れる。 だました中国が悪いとは言える。ただし長期プランを策定する際に中国の公式統計に頼ってきた企業側も、まあ自業自得だろう。 それは各国政府の罪でもあるかもしれない。改ざん・捏造といった、知らないわけではない中国の流儀に目をつぶっていたのは軽率だった。 習近平は最近、中国の人口危機に取り組むことを約束した。だが元紅衛兵ゆえに、かつての一人っ子政策より過激な政策に傾くかもしれない。今度は逆方向、つまり強制妊娠という方向へだ。 そんな発想は狂気の沙汰としか思えないが、世界では現に(毛沢東時代の中国と緊密な関係にあった)カンボジアのポル・ポト政権とルーマニアのチャウシェスク政権がそれを実行に移している。 参考となるのは1966年にルーマニアで制定された政令770号だろう。女性の月経を厳しく監視し、妊娠を中絶した者に厳罰を科した。望まない妊娠が増え、親に捨てられた子供たちで満杯の孤児院がいくつも出現している。習近平がそこまで愚かではないことを願おう。 (リアン・イーゼン氏の略歴はリンク先参照)』、「データ流出で嘘が露呈」、「中国の本当の人口は14億でも12億8000万でもなく、せいぜい10億人程度という可能性が出てくる」、ずいぶんサバを読んだものだ。「高速道路や新幹線の建設を急ぎ、人口増を見込んで不動産を開発しても、入居者のいない新築物件のゴーストタウンを生み出すだけだ。関連業界も含め、収益性を欠く無用の事業ばかりで、今や不良債権が山積みされている。 統計偽装の弊害は高齢者の医療保険や年金にも及ぶ。1960年代に生まれたベビーブーム世代には、労働力の増加を前提として潤沢な支給が約束されていた。 ところが今、武漢などの大都市では「白髪革命」と呼ばれる抗議デモが起きている。医療保険の給付金減額に、高齢者が怒りの声を上げているのだ」、国内での各種歪みは深刻だ。「偽データの影響は他国にも及ぶ。外国の自動車メーカーや携帯電話の製造会社は、人口増という見込みがあればこそ中国に投資してきた。中国市場の拡大に期待し、安価な労働力を搾取して輸出品の生産もしてきた。これらも持続不能になる。 ブラジル、オーストラリア、カナダ、アメリカなどでは、中国を巨大な成長市場と信じて鉱業や農業の分野で生産規模を拡大してきた。これらの業界のもくろみも外れる」、海外にも影響するとは・・・。「習近平は最近、中国の人口危機に取り組むことを約束した。だが元紅衛兵ゆえに、かつての一人っ子政策より過激な政策に傾くかもしれない。今度は逆方向、つまり強制妊娠という方向へだ。 そんな発想は狂気の沙汰としか思えないが、世界では現に(毛沢東時代の中国と緊密な関係にあった)カンボジアのポル・ポト政権とルーマニアのチャウシェスク政権がそれを実行に移している」、「強制妊娠」はやはり無理だろう。それにしても、迷惑な種を世界中に蒔いてくれたものだ。やれやれ・・・。
先ずは、本年2月15日付けNewsweek日本版が掲載した米クレアモント・マッケンナ大学教授のミンシン・ペイ氏による「政府が「経済成長せよ!」と叫ぶだけの中国が、根本的に分かっていないこと」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/02/post-100870_1.php
・『<ゼロコロナ政策から抜け出した中国が、本当に経済を成長路線に乗せるために必要なのは威勢のいい掛け声ではない> 中国政府の「経済成長」愛に再び火がついた。ゼロコロナ政策の長い闇から強引に、少なくとも数万の命を犠牲にして抜け出した今、あの国の指導者たちは異口同音に、いざ力強い経済を取り戻すぞと叫び始めた。だが号令だけでは何も変わらない。 昨年末に開かれた共産党の中央経済工作会議で、今年は経済成長を政府の最優先課題とすると定められた。こうした党中央の固い決意を受け、地方の党幹部や首長らも同じ言葉を繰り返し、民間の投資家や実業家らの期待をあおっている。コロナの時代には見られなかった光景だ。 こうした変化の政治的動機は明らかだ。国民が苛酷なゼロコロナ政策への不満を爆発させ、その廃止に伴う混乱にも失望している今は、一刻も早く党に対する信頼と支持を回復したい。だが成長賛歌の合唱だけでは不十分。大事なのは行動だ。 停滞する不動産業界へのテコ入れなど、小手先の対策では足りない。金融緩和やインフラ投資の拡大などの景気刺激策も、せいぜい短期の効果しかあるまい。 ゼロコロナ政策は中国経済に深い傷痕を残した。それ以前には中小零細企業が4400万社もあった。登記された民間企業の約98%を占め、国内の雇用(公務員を除く)の8割前後を支えていた。ほかに、自営業者も9000万人以上いた』、「共産党の中央経済工作会議で、今年は経済成長を政府の最優先課題とすると定められた・・・地方の党幹部や首長らも同じ言葉を繰り返し、民間の投資家や実業家らの期待をあおっている」、「国民が苛酷なゼロコロナ政策への不満を爆発させ、その廃止に伴う混乱にも失望している今は、一刻も早く党に対する信頼と支持を回復したい。だが成長賛歌の合唱だけでは不十分。大事なのは行動だ。停滞する不動産業界へのテコ入れなど、小手先の対策では足りない。金融緩和やインフラ投資の拡大などの景気刺激策も、せいぜい短期の効果しかあるまい」、その通りだ。
・『中国が再び経済成長するのに不可欠なもの だがゼロコロナ政策で事情は一変した。ロックダウン中も中小零細業者への資金援助はなかったから、多くが廃業に追い込まれた。 そこへ、地政学的な圧力が成長の阻害要因としてのしかかる。アメリカは中国が半導体を入手できないよう、これまで以上に力を入れている。オランダ企業ASMLが半導体製造装置を中国に売らないよう、同国政府に圧力をかけてもいる。米議会の下院で多数派となった共和党が、新たな経済制裁を打ち出す可能性もある。 ウクライナでの戦争に関して、今も中国はロシアを非難していない。当然、EUは腹を立てており、アメリカと同様に経済的なデカップリング(切り離し)を急ぐべきだとの声も上がっている。こんな政治的緊張が続く限り、経済の先は見えない。投資意欲は冷え、外国企業の撤退で製造業の雇用は確実に減っていく。 つまり、中国経済を再び成長軌道に乗せるには欧米諸国との関係改善が不可欠だ。しかし現時点で、米中関係は修復不能なほどに冷え込んでいる。どうすればいいか。プーチン政権下のロシアに対する支持を取り下げるのもいい。台湾に対する軍事的な威嚇をトーンダウンするのもいい。それだけでも投資家の心理は変わるだろう』、「こんな政治的緊張が続く限り、経済の先は見えない。投資意欲は冷え、外国企業の撤退で製造業の雇用は確実に減っていく。 つまり、中国経済を再び成長軌道に乗せるには欧米諸国との関係改善が不可欠だ。しかし現時点で、米中関係は修復不能なほどに冷え込んでいる」、打開は難しそうだ。
・『古典的な共産主義イデオロギーにこだわる習政権 一方で中国は、投資家の信頼を得られる改革に乗り出さねばならない。習近平(シー・チンピン)政権は古典的な共産主義イデオロギーにこだわり、社会と経済に対する党の支配を強化してきた。民間企業に党の支部を置き、貿易相手国への危険な挑発を繰り返したりするようでは、信頼回復など望めない。 本気で成長を取り戻したいなら、かつて鄧小平が推進した政治改革の路線に戻るべきだ。とりわけ大事なのは法治主義の貫徹と司法の独立。さもないと民間事業者が自分の命と財産を守れない。 経済政策では非効率な国有企業を民営化し、企業に優しい規制環境を整えること。中小零細企業に対する支援策も、成長の回復軌道を維持するには欠かせない。 しかし今のところ、中国政府がこうした改革に乗り出す気配はない。成長を口にするだけで、1979年に毛沢東の階級闘争理論と決別した鄧小平のような気概で国の進路を変える兆しは見えない。党の甘言に乗せられてはいけない。この先も当面は、中国経済の息は上がったままだ』、「習近平・・・政権は古典的な共産主義イデオロギーにこだわり、社会と経済に対する党の支配を強化してきた。民間企業に党の支部を置き、貿易相手国への危険な挑発を繰り返したりするようでは、信頼回復など望めない。 本気で成長を取り戻したいなら、かつて鄧小平が推進した政治改革の路線に戻るべきだ。とりわけ大事なのは法治主義の貫徹と司法の独立。さもないと民間事業者が自分の命と財産を守れない」、「習近平」は経済がある程度理解していた李克強を追い出し、イエスマンが首相にしたようでは、「当面は、中国経済の息は上がったままだ」。困ったことだ。
次に、2月16日付けNewsweek日本版が掲載したブルネル大学(ロンドン)ビジネススクール上級講師のティー・クオ氏と、スタンフォード大学中国経済制度センター上級研究員のチョンカン・シュイ氏による「習近平は「支配を正当化するための経済発展」すら放棄...突き進む「ソ連化」の道」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/02/post-100878_1.php
・『<共産党の「完全支配」復活を目指す習近平路線は、民間の活力を奪い、先進国市場を遠ざけ、土地バブルを崩壊させかねない> 中国共産党の第20回党大会(2022年10月開催)では、習近平(シー・チンピン)国家主席が今後5年間も政権を担うことが確認された。ただし、それが中国経済にとって何を意味するかは、3つの要素に左右される。国の制度、過去と現在の経済状況、そして指導者の政治的意図だ。 中国の最も基本的な制度は全体主義であり、経済を含む社会の全領域に共産党の独占的支配が及んでいる。全体主義型統制を支える党=国家の制度は、1949年にソビエト連邦から全面的に移植されたものだ。 ソ連型全体主義は30年前に経済の行き詰まりにより崩壊したが、中国は例外に見えた。いま問われているのは、中国独自の全体主義的実験が今後も長続きするかどうかだ。 この問いに答えるためには、「中国の特色ある全体主義」の構造を理解する必要がある。その重要な柱は政治・思想・人事における高度に中央集権化された全体主義型統制と、行政・経済政策の分権化を合体させた地域分権全体主義(RDT)だ。 この組み合わせはポスト毛沢東時代の改革開放政策の原動力だった。この時期に経済への中央集権的・全体主義的な統制は緩和され、RDTは地域分権権威主義(RDA)へと発展した。だが、習が権力を握った2012年以降は全体主義に回帰し、特に急成長する民間部門への統制を再び強めた。この逆流現象が、22年の急激な経済減速の主な理由だ。 毛の死後、共産党指導部は経済成長こそ生き残りの鍵だと考え、RDTを新たな改革開放政策の制度的基盤に据えた。この新モデルでは、地域経済の状況が地方の党=国家官僚の昇進を左右するため、一部の官僚は民間企業の違法行為を隠蔽したり、そうした企業を支援したりして、民間部門の急成長を促した。 民間企業の存在感が増すと、共産党は憲法を改正し、私有財産権を認める世界初の共産主義国家となった。この時点で統制はある程度緩和され、RDTはRDAに移行し始めた。 RDAモデルでは、共産党の政治面での独占に歯向かわない限り、民間部門や萌芽期の市民社会、非国営マスメディアの成長が許容されていた。加えて01年のWTO(世界貿易機関)加盟を機に外国から巨額の投資が流入し、輸出が飛躍的に伸びた。 だがRDAは、より長期的な問題の根本原因でもある。中国経済の持続的エネルギーは、土地と銀行部門の国家による独占、司法の独立性欠如、民間部門に対する差別、内需不足によって常に脅かされている。08年の世界金融危機は、党による完全支配を再び推進する口実となった。) 党=国家は膨大な債務を積み上げてインフラ整備を推し進め、少なくとも当面は高い経済成長を実現した。しかし、投資のほとんどは非効率で、中国は過剰借り入れと過剰設備の悪循環に陥った。さらに問題なのは、借金に頼った巨額の公共投資が民間部門を素通りしたことだ。 一方、土地の国有制と銀行の国家独占は、直接・間接的にGDPの約3分の1を占める不動産部門に深刻な問題を引き起こした。98年に始まった不動産の「市場化」は、国有地を地方政府の収入源に変えるのが狙いだった。この年の土地管理法改正の柱は、地方政府を管轄域内で唯一の土地所有者とすることにあった。 しかし、地方政府は土地から得られる利益を最大化するため、不動産の供給を絞って価格つり上げに走った。その結果、中国の不動産価格は平均世帯収入に対する比率で見ると、世界で最も高い水準に達した。中国全体の不動産価格はアメリカとEUの合計を上回ったが、この意図的に作られたバブルは今や崩壊寸前だ』、「中国の特色ある全体主義」、「の重要な柱は政治・思想・人事における高度に中央集権化された全体主義型統制と、行政・経済政策の分権化を合体させた地域分権全体主義(RDT)だ。 この組み合わせはポスト毛沢東時代の改革開放政策の原動力だった。この時期に経済への中央集権的・全体主義的な統制は緩和され、RDTは地域分権権威主義(RDA)へと発展した。だが、習が権力を握った2012年以降は全体主義に回帰し、特に急成長する民間部門への統制を再び強めた。この逆流現象が、22年の急激な経済減速の主な理由だ」、なるほど。「中国の不動産価格は平均世帯収入に対する比率で見ると、世界で最も高い水準に達した。中国全体の不動産価格はアメリカとEUの合計を上回ったが、この意図的に作られたバブルは今や崩壊寸前だ」、「中国全体の不動産価格はアメリカとEUの合計を上回った」、とはまさに「バブル」だ。
・『全体主義への回帰が鮮明に 土地と銀行の国家独占は金融・財政システムも不安定化させた。地方政府が土地を担保に国有銀行から巨額の借り入れを続けたこともあり、中国全体の対GDP比債務残高は19年第1四半期には300%に達した。 さらに深刻なのは、その大半が土地や金融商品を担保にした住宅ローンであることだ。経済が減速している今、景気の波を増幅させる効果があるこの種の債務の担保価値低下は経済システム全体の重荷になり始め、金融・財政危機を誘発しかねない。 こうした問題に拍車をかけているのが内需の弱さだ。かつての中国は輸出収入でそれを補えたが、先進国との関係が悪化している現在、輸出頼みの経済成長はもはや望めない。中国の民間消費の対GDP比は21年の時点で38.5%(アメリカは70%近く、日本は58%)。依然として世界最低レベルにとどまっている。 中国経済が新たに直面している最大の問題は、共産党の掲げる目標の変化だ。党の存続のための経済発展という従来の目標は、穏やかな政治の進化とカラー革命(民主化運動)の阻止に代わった。党指導部は12年以降、組織的に中国の政治経済を全体主義に引き戻そうとしている。 中国社会の多元主義的要素(民間企業、市民団体、独立系メディア)は依然として制限されているが、党指導部はこの狭い空間が反抗の拠点になることを恐れている。民間の大物起業家や非国有の大手IT企業は容赦なく弾圧された。こうした動きは民間部門を弱体化させ、先進国市場へのアクセスを低下させている。) 党大会を見る限り、今後の中国で全体主義型統制が強化されることは明らかだろう。穏健なテクノクラートの存在感は低下し、今後の経済政策は政治的に決定されることになる。民間企業と市場への締め付けは着実に強化されるだろう。 1980年代、購買力平価でみたソ連の1人当たりGDPはアメリカの約3分の1だったが、今の中国は4分の1をわずかに超える程度。しかも数十年続いた「一人っ子政策」の結果、人口は減少に転じ、人口構造から労働供給と内需の両面で問題のさらなる悪化が示唆されている。 50年代、共産党の有名なスローガンの1つに「ソ連の今日は私たちの明日」というものがあった。現在の党指導部は今日の中国を昨日のソ連に変えようとしている』、「党指導部は12年以降、組織的に中国の政治経済を全体主義に引き戻そうとしている。 中国社会の多元主義的要素・・・は依然として制限されているが、党指導部はこの狭い空間が反抗の拠点になることを恐れている。民間の大物起業家や非国有の大手IT企業は容赦なく弾圧された。こうした動きは民間部門を弱体化させ、先進国市場へのアクセスを低下させている」、「今後の中国で全体主義型統制が強化されることは明らかだろう。穏健なテクノクラートの存在感は低下し、今後の経済政策は政治的に決定されることになる。民間企業と市場への締め付けは着実に強化されるだろう」、その通りだ。
第三に、3月15日付けNewsweek日本版が掲載した香港出身の経済学者・コラムニストの練乙錚氏による「水増しされていた中国の人口、「本当は10億人だった説」の衝撃──ハッキングでデータ流出」を紹介しよう。これは、誠に驚くべき内容だ。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/03/post-101105_1.php
・『<労働人口が増え続ければ経済は栄える...。「14億人市場」という売り文句で海外からの投資を呼んできたが、中国の改ざん、捏造の流儀に目をつぶったほうも軽率> 多産多死の時代から多産少死の人口増加期を経て、やがて少産少死の安定期に入る。このプロセスを「人口転換」と呼ぶが、その後半では(今の日本のように)少子高齢化が顕著になり、やがて人口減少の危機を迎えかねない。 それが歴史の常であり、この人口転換からはどの国も逃れられない。まだ人口は増え続けると豪語していた中国政府も、ついにこの1月、従来は「2030年以降」とされていた人口減少が、実は昨年から始まっていたと認めた。 深刻な事態だが、もっと深刻なのは、その背景にある中国ならではの特殊事情だ。 なぜ想定より8年も早く、人口減が始まってしまったのか。中国の人口が「2030年以降」に減り始めるという想定は中国政府の発表してきた過去の公式統計に基づくもので、大多数の国際機関や外国政府もこれを信じ、これによって中国の将来性や国力を推定してきた。 そもそも平時には、一国の人口が激変する事態は考えにくい。しかるべき統計データがあれば、先の予想は十分に可能だ。なのに、なぜ8年も計算が違ったのか。 どう見ても不自然で、基のデータがおかしかったと考えざるを得ない。中国政府の発表する公式統計の信憑性には以前から疑問が提起されていたが、人口統計に関しては明らかに意図的な改ざんがあったと思われる。 かつて中国には「国家衛生計画生育委員会(計生委)」という組織があった。計生委は巨大な官僚機構で、1980年代に急激に力を付け、国民からは最も嫌われ、軽蔑される組織の1つとなった。 なぜか。1980年頃に始まる悪名高い「一人っ子政策」の実行部隊として、計生委は強制的に妊娠を規制し、2人目以降の妊娠に関しては人工中絶を強要してきたからだ。 一方で組織内には腐敗が蔓延し、無能な共産党幹部が違法出産を見逃す代わりに私腹を肥やしていた。一人っ子政策の下でも人口が増え続けるのは、計生委の指導下でのデータ改ざんが原因だった(こちらの記事参照、なお計生委は18年に廃止されている)』、「人口統計に関しては明らかに意図的な改ざんがあった」、「かつて中国には「国家衛生計画生育委員会(計生委)」という組織があった。計生委は巨大な官僚機構で、1980年代に急激に力を付け、国民からは最も嫌われ、軽蔑される組織の1つとなった。 なぜか。1980年頃に始まる悪名高い「一人っ子政策」の実行部隊として、計生委は強制的に妊娠を規制し、2人目以降の妊娠に関しては人工中絶を強要してきた」、「一人っ子政策の下でも人口が増え続けるのは、計生委の指導下でのデータ改ざんが原因」、酷い組織だったようだ。
・『共産党が神話を主導 だが党の指導者──最初は江沢民(チアン・ツォーミン)、次いで胡錦濤(フー・チンタオ)──が旗を振らなければ、データの改ざんがこれほど組織的に行われることはなかっただろう。 江沢民も胡錦濤も、中国経済の成長を支えるには外国資本の誘致が不可欠と考えていた。だから中国には今でも10億人を超える巨大市場があり、その規模は何十年も先まで拡大を続けるし、安価な労働力もたっぷりあるという「神話」をつくり上げた。 データの改ざんは習近平(シー・チンピン)体制になってからも続いた。「14億の民」という標語を振りかざせば、軍事面でも外交面でも虚勢を張り、諸外国を威圧することが可能だった。 しかし偽りの楽観的な人口統計に基づく経済成長は持続不能だ。だから習近平は、あの「ゼロコロナ政策」を放棄したときと同様、唐突に「30年以降の人口減少」説を放棄した。そして中国の人口は既にピークに達し、減少に転じていると認めた。 それでも中国は、全てを白状したわけではない。22年の人口総数は約14億1000万人だったと、今も主張し続けているが、ここ数年の人口データの修正から考えて、極めて疑わしい数字だ。 なお米ウィスコンシン大学の人口統計学者である易富賢(イー・フーシェン)は、水増しされる前の出生データを基に、中国のピーク人口は約12億8000万人だったと推定している(ちなみに彼の著書は、中国国内では発売を禁じられている)。 だが昨年起きたハッキング事件により、中国の人口は彼の推定値よりもずっと少ない可能性が出てきた』、「江沢民も胡錦濤も、中国経済の成長を支えるには外国資本の誘致が不可欠と考えていた。だから中国には今でも10億人を超える巨大市場があり、その規模は何十年も先まで拡大を続けるし、安価な労働力もたっぷりあるという「神話」をつくり上げた。 データの改ざんは習近平・・・体制になってからも続いた」、昔から「改ざん」を続けていたことに驚かされた。
・『データ流出で嘘が露呈? 昨年6月、中国は史上最悪のデータ流出事件に見舞われた。上海警察のデータベースがハッカー攻撃を受けたのだ。 ハッカー集団は、個人を特定できる最新の情報を含む10億人分(23テラバイト相当)のデータセットを盗み、それをダークウェブで1セット10ビットコイン(約20万ドル)で売りに出した。 これを購入した研究者たちが分析してみると、その数値は中国の実際の人口動態プロファイルと酷似していた。つまりデータは本物と考えていいのだが、統計処理に当たって総人口の70%(総数を14億とすれば10億)ものサンプルを使うことはあり得ない。 一般論として、そんな必要はないし、手間も費用もかかりすぎる。普通はどんなに多くても10%程度だ。中国政府は毎年、サンプル調査を基に人口の変動を推計しているが、その際に用いられるサンプル数は総人口の1%だ。 そう考えると、昨年のハッキングで流出したデータセットには(国民の70%ではなく)全国民の個人識別情報が含まれていた可能性が高い。つまり、中国の本当の人口は14億でも12億8000万でもなく、せいぜい10億人程度という可能性が出てくる。 この国の政治は依然として一枚岩のトップダウン型で、それがデータ改ざんを助長する体質を生んだ。人口の水増しを伴うようでは、中央政府の進める壮大な建設プロジェクトも無用なものとなろう。 高速道路や新幹線の建設を急ぎ、人口増を見込んで不動産を開発しても、入居者のいない新築物件のゴーストタウンを生み出すだけだ。関連業界も含め、収益性を欠く無用の事業ばかりで、今や不良債権が山積みされている。 統計偽装の弊害は高齢者の医療保険や年金にも及ぶ。1960年代に生まれたベビーブーム世代には、労働力の増加を前提として潤沢な支給が約束されていた。 ところが今、武漢などの大都市では「白髪革命」と呼ばれる抗議デモが起きている。医療保険の給付金減額に、高齢者が怒りの声を上げているのだ。 外交の分野では虚栄心に満ちた「一帯一路構想」が同じく持続不能となり、挫折しかけている。労働人口が増え続ければ経済は栄え、政府の資金も潤沢になる──。そんな前提で金をつぎ込んできたのだが、今や人口は減少に転じ、経済の先行きも暗い。 こういう展開は、同じような人口問題を抱える他の国々ではあり得ない。いわゆる計画経済に縛られていないから、誰も人口統計を改ざんする必要を感じないからだ。 しかし偽データの影響は他国にも及ぶ。外国の自動車メーカーや携帯電話の製造会社は、人口増という見込みがあればこそ中国に投資してきた。中国市場の拡大に期待し、安価な労働力を搾取して輸出品の生産もしてきた。これらも持続不能になる。) ブラジル、オーストラリア、カナダ、アメリカなどでは、中国を巨大な成長市場と信じて鉱業や農業の分野で生産規模を拡大してきた。これらの業界のもくろみも外れる。 だました中国が悪いとは言える。ただし長期プランを策定する際に中国の公式統計に頼ってきた企業側も、まあ自業自得だろう。 それは各国政府の罪でもあるかもしれない。改ざん・捏造といった、知らないわけではない中国の流儀に目をつぶっていたのは軽率だった。 習近平は最近、中国の人口危機に取り組むことを約束した。だが元紅衛兵ゆえに、かつての一人っ子政策より過激な政策に傾くかもしれない。今度は逆方向、つまり強制妊娠という方向へだ。 そんな発想は狂気の沙汰としか思えないが、世界では現に(毛沢東時代の中国と緊密な関係にあった)カンボジアのポル・ポト政権とルーマニアのチャウシェスク政権がそれを実行に移している。 参考となるのは1966年にルーマニアで制定された政令770号だろう。女性の月経を厳しく監視し、妊娠を中絶した者に厳罰を科した。望まない妊娠が増え、親に捨てられた子供たちで満杯の孤児院がいくつも出現している。習近平がそこまで愚かではないことを願おう。 (リアン・イーゼン氏の略歴はリンク先参照)』、「データ流出で嘘が露呈」、「中国の本当の人口は14億でも12億8000万でもなく、せいぜい10億人程度という可能性が出てくる」、ずいぶんサバを読んだものだ。「高速道路や新幹線の建設を急ぎ、人口増を見込んで不動産を開発しても、入居者のいない新築物件のゴーストタウンを生み出すだけだ。関連業界も含め、収益性を欠く無用の事業ばかりで、今や不良債権が山積みされている。 統計偽装の弊害は高齢者の医療保険や年金にも及ぶ。1960年代に生まれたベビーブーム世代には、労働力の増加を前提として潤沢な支給が約束されていた。 ところが今、武漢などの大都市では「白髪革命」と呼ばれる抗議デモが起きている。医療保険の給付金減額に、高齢者が怒りの声を上げているのだ」、国内での各種歪みは深刻だ。「偽データの影響は他国にも及ぶ。外国の自動車メーカーや携帯電話の製造会社は、人口増という見込みがあればこそ中国に投資してきた。中国市場の拡大に期待し、安価な労働力を搾取して輸出品の生産もしてきた。これらも持続不能になる。 ブラジル、オーストラリア、カナダ、アメリカなどでは、中国を巨大な成長市場と信じて鉱業や農業の分野で生産規模を拡大してきた。これらの業界のもくろみも外れる」、海外にも影響するとは・・・。「習近平は最近、中国の人口危機に取り組むことを約束した。だが元紅衛兵ゆえに、かつての一人っ子政策より過激な政策に傾くかもしれない。今度は逆方向、つまり強制妊娠という方向へだ。 そんな発想は狂気の沙汰としか思えないが、世界では現に(毛沢東時代の中国と緊密な関係にあった)カンボジアのポル・ポト政権とルーマニアのチャウシェスク政権がそれを実行に移している」、「強制妊娠」はやはり無理だろう。それにしても、迷惑な種を世界中に蒔いてくれたものだ。やれやれ・・・。
タグ:中国経済 (その16)(政府が「経済成長せよ!」と叫ぶだけの中国が 根本的に分かっていないこと、習近平は「支配を正当化するための経済発展」すら放棄...突き進む「ソ連化」の道、水増しされていた中国の人口 「本当は10億人だった説」の衝撃──ハッキングでデータ流出) Newsweek日本版 ミンシン・ペイ氏による「政府が「経済成長せよ!」と叫ぶだけの中国が、根本的に分かっていないこと」 「共産党の中央経済工作会議で、今年は経済成長を政府の最優先課題とすると定められた・・・地方の党幹部や首長らも同じ言葉を繰り返し、民間の投資家や実業家らの期待をあおっている」、「国民が苛酷なゼロコロナ政策への不満を爆発させ、その廃止に伴う混乱にも失望している今は、一刻も早く党に対する信頼と支持を回復したい。だが成長賛歌の合唱だけでは不十分。 大事なのは行動だ。停滞する不動産業界へのテコ入れなど、小手先の対策では足りない。金融緩和やインフラ投資の拡大などの景気刺激策も、せいぜい短期の効果しかあるまい」、その通りだ。 「こんな政治的緊張が続く限り、経済の先は見えない。投資意欲は冷え、外国企業の撤退で製造業の雇用は確実に減っていく。 つまり、中国経済を再び成長軌道に乗せるには欧米諸国との関係改善が不可欠だ。しかし現時点で、米中関係は修復不能なほどに冷え込んでいる」、打開は難しそうだ。 「習近平・・・政権は古典的な共産主義イデオロギーにこだわり、社会と経済に対する党の支配を強化してきた。民間企業に党の支部を置き、貿易相手国への危険な挑発を繰り返したりするようでは、信頼回復など望めない。 本気で成長を取り戻したいなら、かつて鄧小平が推進した政治改革の路線に戻るべきだ。 とりわけ大事なのは法治主義の貫徹と司法の独立。さもないと民間事業者が自分の命と財産を守れない」、「習近平」は経済がある程度理解していた李克強を追い出し、イエスマンが首相にしたようでは、「当面は、中国経済の息は上がったままだ」。困ったことだ。 チョンカン・シュイ氏による「習近平は「支配を正当化するための経済発展」すら放棄...突き進む「ソ連化」の道」 ソ連型全体主義は30年前に経済の行き詰まりにより崩壊したが、中国は例外に見えた。いま問われているのは、中国独自の全体主義的実験が今後も長続きするかどうかだ。 「中国の特色ある全体主義」、「の重要な柱は政治・思想・人事における高度に中央集権化された全体主義型統制と、行政・経済政策の分権化を合体させた地域分権全体主義(RDT)だ。 この組み合わせはポスト毛沢東時代の改革開放政策の原動力だった。 この時期に経済への中央集権的・全体主義的な統制は緩和され、RDTは地域分権権威主義(RDA)へと発展した。だが、習が権力を握った2012年以降は全体主義に回帰し、特に急成長する民間部門への統制を再び強めた。この逆流現象が、22年の急激な経済減速の主な理由だ」、なるほど。「中国の不動産価格は平均世帯収入に対する比率で見ると、世界で最も高い水準に達した。中国全体の不動産価格はアメリカとEUの合計を上回ったが、この意図的に作られたバブルは今や崩壊寸前だ」、「中国全体の不動産価格はアメリカとEUの合計を上回った」 、とはまさに「バブル」だ。 「党指導部は12年以降、組織的に中国の政治経済を全体主義に引き戻そうとしている。 中国社会の多元主義的要素・・・は依然として制限されているが、党指導部はこの狭い空間が反抗の拠点になることを恐れている。民間の大物起業家や非国有の大手IT企業は容赦なく弾圧された。こうした動きは民間部門を弱体化させ、先進国市場へのアクセスを低下させている」、 「今後の中国で全体主義型統制が強化されることは明らかだろう。穏健なテクノクラートの存在感は低下し、今後の経済政策は政治的に決定されることになる。民間企業と市場への締め付けは着実に強化されるだろう」、その通りだ。 練乙錚氏による「水増しされていた中国の人口、「本当は10億人だった説」の衝撃──ハッキングでデータ流出」 「人口統計に関しては明らかに意図的な改ざんがあった」、「かつて中国には「国家衛生計画生育委員会(計生委)」という組織があった。計生委は巨大な官僚機構で、1980年代に急激に力を付け、国民からは最も嫌われ、軽蔑される組織の1つとなった。 なぜか。1980年頃に始まる悪名高い「一人っ子政策」の実行部隊として、計生委は強制的に妊娠を規制し、2人目以降の妊娠に関しては人工中絶を強要してきた」、 「一人っ子政策の下でも人口が増え続けるのは、計生委の指導下でのデータ改ざんが原因」、酷い組織だったようだ。 「江沢民も胡錦濤も、中国経済の成長を支えるには外国資本の誘致が不可欠と考えていた。だから中国には今でも10億人を超える巨大市場があり、その規模は何十年も先まで拡大を続けるし、安価な労働力もたっぷりあるという「神話」をつくり上げた。 データの改ざんは習近平・・・体制になってからも続いた」、昔から「改ざん」を続けていたことに驚かされた。 「データ流出で嘘が露呈」、「中国の本当の人口は14億でも12億8000万でもなく、せいぜい10億人程度という可能性が出てくる」、ずいぶんサバを読んだものだ。 「高速道路や新幹線の建設を急ぎ、人口増を見込んで不動産を開発しても、入居者のいない新築物件のゴーストタウンを生み出すだけだ。関連業界も含め、収益性を欠く無用の事業ばかりで、今や不良債権が山積みされている。 統計偽装の弊害は高齢者の医療保険や年金にも及ぶ。1960年代に生まれたベビーブーム世代には、労働力の増加を前提として潤沢な支給が約束されていた。 ところが今、武漢などの大都市では「白髪革命」と呼ばれる抗議デモが起きている。医療保険の給付金減額に、高齢者が怒りの声を上げているのだ」、国内での各種歪みは深刻だ。「偽データの影響は他国にも及ぶ。外国の自動車メーカーや携帯電話の製造会社は、人口増という見込みがあればこそ中国に投資してきた。中国市場の拡大に期待し、安価な労働力を搾取して輸出品の生産もしてきた。これらも持続不能になる。 ブラジル、オーストラリア、カナダ、アメリカなどでは、中国を巨大な成長市場と信じて鉱業や農業の分野で生産規模を拡大してきた。これらの業界のもくろみも外れる」、海外にも影響するとは・・・。「習近平は最近、中国の人口危機に取り組むことを約束した。だが元紅衛兵ゆえに、かつての一人っ子政策より過激な政策に傾くかもしれない。今度は逆方向、つまり強制妊娠という方向へだ。 そんな発想は狂気の沙汰としか思えないが、世界では現に(毛沢東時代の中国と緊密な関係にあった)カンボジアのポル・ポト政権とルーマニアのチャウシェスク政権がそれを実行に移している」、「強制妊娠」はやはり無理だろう。それにしても、迷惑な種を世界中に蒔いてくれたものだ。やれやれ・・・。
中国経済(その15)(習近平が大ピンチ……!中国「ゼロコロナ大不況」が「世界金融危機」へと波及する悪夢のシナリオ、中国の医療・葬儀の修羅場 39℃の救急車運転手と38.5℃の医師が38℃の患者の元へ、中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と 中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」、これは宿命なのか・・・「習近平体制」に富裕層が海外逃亡!「先の見えた中国」に国民があいそをつかす日) [世界経済]
中国経済については、昨年2月19日に取上げた。今日は、(その15)(習近平が大ピンチ……!中国「ゼロコロナ大不況」が「世界金融危機」へと波及する悪夢のシナリオ、中国の医療・葬儀の修羅場 39℃の救急車運転手と38.5℃の医師が38℃の患者の元へ、中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と 中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」、これは宿命なのか・・・「習近平体制」に富裕層が海外逃亡!「先の見えた中国」に国民があいそをつかす日)である。
先ずは、一昨年12月26日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェロの藤 和彦氏による「習近平が大ピンチ……!中国「ゼロコロナ大不況」が「世界金融危機」へと波及する悪夢のシナリオ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/103701?imp=0
・『国民の大反発にあった習近平がついに「ゼロコロナ政策」を解除した。しかし、今これまで無菌室だった中国で、猛烈な感染拡大が懸念されている。 それは中国経済を「コロナ大不況」に陥れ、リーマンショック級の金融危機を誘発しかねない状況だ。世界は中国に対して決して警戒を怠ってはならないのだ。 前編「習近平の大誤算…!「ゼロコロナ」がいざなう、中国発「世界大不況」の巨大すぎるインパクト」に続き、詳報する』、「ゼロコロナ政策」に対する国民の不満が高まり、突如、「解除」したが、政策の振れの大きさには驚かされる。
・『すでに瀕死の「中国経済」 ゼロコロナ解除以前の中国経済は既にひどい状態だった。 中国経済の屋台骨と言える不動産投資は11月、前年比19.9%となり、2000年の統計開始以来、最大の落ち込みとなった。住宅価格も14か月連続で低下しており、「先行き悲観」の状況に変わりはない。 新築住宅販売は政府の支援策で持ち直しの兆しを見せていたが、新型コロナの感染拡大のせいで「元の木阿弥」になりつつある。 不動産不況のあおりを受けて、中国の11月の生産者物価指数は10月に続いてマイナスとなった(前年比1.3%減)。中国企業の景況感指数(調査期間は12月1日から16日)は2013年1月以来の低水準だった。 中でもサービス業の雇用指数は深刻な状態になっている。 中国の11月の小売売上高は前年比5.9%減と記録的な落ち込み幅となった。同じく輸出額も前年比8.7%減だった(対米輸出は約3割減少)。 中国のすべての経済指標が絶不調だったところに政府の大失政(ゼロコロナ解除)が猛烈な下押し圧力となって、経済は未曾有の危機に直面してしまうのではないだろうか』、中国のGDP成長率は、2022年は3.0%と目標の5.5%を大きく下回った。10-12月期は前年同期比2.9%と7-9月期の同3.9%より低くなった。
・『「ゼロコロナ」のヤバすぎる影響 ゼロコロナ解除の悪影響は早くも出ている。 市場参加者の間で新型コロナの感染が急拡大したことから、中国の金融市場の取引が低調になっており、好調だった新規株式公開(IPO)にも影響が及んでいる。事実上の「鎖国」状態が解かれたことで中国から大量の資金が流出するリスクも指摘されている。 一方、コロナ禍から抜け出したとされる米国経済にも暗い影が忍び寄っている。 米国の12月の購買担当者景気指数(PMI)は44.6と前月から1.8ポイント悪化し、好不況となる50を6ヶ月連続で下回った。 米国企業の収益はリーマンショック以降で最悪になる見込みだ(12月19日付ブルームバーグ)。 米国のインフレ率は高止まりの状況が続いているが、債券投資家は「来年のインフレ率はリーマンショック直後のペースまで鈍化する」と予想しており(12月13日付ブルームバーグ)、米ウオール街の心配は「インフレ」から「リセッション(景気後退)」にシフトしつつある(12月19日付ZeroHedge)。 米国の金融市場の関心がリセッションに集まる中、中国経済への期待は高まるばかりだ』、リーマン・ショック時は確かに「中国」がプラス成長で世界をリードしたが、もはやそんな底力はなさそうだ。
・『中国経済バブル崩壊の序曲 国際金融協会(IIF)は「来年の世界経済の成長率はリーマンショック後の2009年並みの低水準(1.2%増)となる。牽引役は中国だ」と予測している。 だが、中国が「コロナ大不況」となれば、来年の世界経済は21世紀初のマイナス成長になってしまい、米国の金融市場全体のセンチメントは急速に悪化すると言っても過言ではない。 リセッション懸念で米国の銀行株に対する売り圧力が既に生じているが、最も警戒すべきはリーマンショックの震源地となったクレジット市場だろう。クレジット市場とは信用リスク(資金の借り手の信用度が変化するリスク)を内包する金融商品が取引される市場のことだ。 クレジット商品には、貸出債権や社債など様々な信用リスクを加工して証券の形で売買する「証券化商品」や信用リスクを原資産とする派生商品である「クレジット・デリバテイブ」などが代表的だ』、ちなみに国債のデフォルト確率を示すクレジット・デフォルト・スワップのスプレッドは、米国、日本は低いが、中国、韓国は高水準である。
https://finance-gfp.com/?p=6447
・『「金融危機」への警戒感が高まっている 「米国のジャンク債(低格付け債)バブルが今後崩壊する」との警戒感が強まっており(12月16日付日本経済新聞)、米国消費者ローンの延滞率も来年13年ぶりの高水準になる見通しだ。足元が揺らぎ始めているクレジット市場に外的ショックが直撃すれば、金融市場に大きな混乱が起こる可能性は排除できない。 「金融危機が勃発する」と断言するつもりはないが、中国のコロナ大不況が米国の金融市場に与える負のインパクトを見逃してはならないのではないだろうか。 さらに連載記事「2022年エネルギー危機の正体…!プーチンが招いた「最悪のインフレ」と「原油高騰」がこれからも続く深刻なワケ」では、来年にかけてのエネルギー価格の状況についてレポートしていく』、「中国のコロナ大不況が米国の金融市場に与える負のインパクトを見逃してはならないのではないだろうか」、その通りだ。
次に、昨年2月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日中福祉プランニング代表の王 青氏による「中国の医療・葬儀の修羅場、39℃の救急車運転手と38.5℃の医師が38℃の患者の元へ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/317160
・『2022年12月に、ロックダウンなど厳しい行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策を突然解除した中国。それから約2カ月弱、「累計感染者数9億人」「1週間で6000人以上が死亡」など感染が急激に広がったことを示す数字やニュースが世界中で報じられている。実際のところ、中国の医療と葬儀の最前線はどうだったのか。上海の葬儀場や、大学付属病院に勤める友人たちに話を聞いた』、
・『突然のゼロコロナ政策解除から2カ月弱 中国で何が起こっていたのか 昨年12月、これまで約3年間厳格に実施されてきた中国のゼロコロナ政策が解除された。突然の政策転換で、感染者が爆発的に増え、医療機関は崩壊寸前だった。病院にあふれかえった患者の様子や、寒風の中、葬儀場にできた長蛇の列などを撮影した動画が広まり、世の中に衝撃を与えた。 12~1月にかけて、中国の医療や葬儀の現場ではどのようなことが起こっていたのか。今年の春節連休(1月22~28日)、筆者は日頃仕事で交流のある上海の医療業界や葬儀業界の関係者とオンラインで新年会を行った。そこで、第一線でコロナと戦う彼らが話していた、コロナ政策転換後約2カ月弱の間の体験談をご紹介したい』、興味深そうだ。
・『従業員が倒れて「減員厳重」、しかし「39℃以下なら勤務せよ」 話を聞かせてくれたのは、葬儀場に勤務の男性・呉輝さん(仮名、40代)と李海辰さん(仮名、40代)、大学付属病院で看護師として勤める女性・段玲さん(仮名、30代)、そして彼らの職場の友人数人である。 「ここにいる全員、(コロナに)感染したよ、ハハハ……」 オンライン新年会はそんな全員の笑い声から始まった。「今でこそ笑えるが、その時は死も覚悟した。うちの病院の職員の9割が感染した。病棟がいっぱいになったのはいうまでもなく、病院の入り口や廊下まで発熱患者であふれていた。簡易ベッドや点滴用の椅子で埋め尽くされ、病院中、足の踏み場もない状態。これだけ患者がどんどん増えている一方で、スタッフは厳しい減員となった」(段さん) 「減員厳重」――。これはゼロコロナ政策が緩和されて以来、中国でよく使われていた言葉である。つまり、爆発的に拡大した感染で従業員がバタバタと倒れ、働き手が極めて足りなくなった状況を指す。 このような状況下、国家衛生健康委員会(衛生と健康を担当する政府機関)は、「いかなる理由であれ、陽性患者の受け入れを拒否してはいけない。減員による診察の停止や欠勤は断固として禁止する」という通知を出した。そして医療従事者に「熱が39℃以下であれば、勤務を続けよ」と命じた。 そのため、「せき込む人や熱で真っ赤な顔をしている人、点滴の管をつったままの人など、極限状況で同僚たちは働き続けた。突然失神して地べたに倒れた人もいた。今思えば、まるで地獄だった」と段さんは振り返る』、「「いかなる理由であれ、陽性患者の受け入れを拒否してはいけない。減員による診察の停止や欠勤は断固として禁止する」という通知を出した。そして医療従事者に「熱が39℃以下であれば、勤務を続けよ」と命じた」、医療の世界でも強権的指導が一般化しているようだ。
・『39℃の救急車運転手が38.5℃の医者と看護師を乗せて38℃の患者を迎えに行く 中国のSNSでも、この話はブラックジョークの形で拡散されていた。「熱が39℃の救急車のドライバーが、38.5℃の医者と看護師を乗せて、38℃の患者を迎えに行っている」というのだ。そして、多くのネットユーザーは、「これは決してジョークではない。現実に起こっている話だ」と同意するのだった。 「この3年間、まともな休日はなかった。最長だと4カ月間1日も休めない時もあった。そして、ずっと防護服のままだった。病院内だけでなく、1年の半分以上はあちこちのPCR検査に出張した。そこでももちろん終日防護服。できるだけトイレへ行かないように、食事や水を極力控えめにしていた。ダイエットにはちょうどいいかもしれないね」と段さんは苦笑しながら話す』、「39℃の救急車運転手が38.5℃の医者と看護師を乗せて38℃の患者を迎えに行く」、「多くのネットユーザーは、「これは決してジョークではない。現実に起こっている話だ」と同意する」、なるほど。
・『年末年始を挟んだ2カ月弱、新型コロナで亡くなった人は約8万人? 1月28日に中国疾病予防センターは、1月20~26日の1週間で、新型コロナに感染し、国内の医療機関で死亡したのは6364人と発表した。感染対策が大幅に緩和された12月8日から1月26日までの2カ月弱の死者数は合わせて約8万人となったが、これには自宅で死亡した人は含まれておらず、実際にはもっと多いという指摘もあり、国内外のメディアやSNSではさまざまな臆測が飛び交っている。 この数字について、葬儀場の職員として働いている呉さんと李さんに尋ねてみた。「日本を含めて海外の多くのメディアは、中国では高齢者を中心にものすごい数の人が亡くなったと報道していた。それは本当? あと、葬儀場に長蛇の列ができている様子も報じられていたけど、あれはなぜ?」 呉さんの答えは、「自分の肌感覚では、例年同時期に比べると、2割ぐらい増えたと思う」というもの。「もともと12月下旬から春節までは、高齢者の死亡が一番多い時期。しかし、今回はオミクロン株の感染により、高齢者の死亡者数が例年を上回っていたのは事実だ」(呉さん) ちなみに、呉さんと李さんが勤める葬儀場は、年間3万近くの遺体を扱っている巨大な葬儀施設である。職員は300人以上おり、告別式用のホールは20以上、一番大きいホールは1000人以上が入る規模だ』、「自分の肌感覚では、例年同時期に比べると、2割ぐらい増えたと思う」、やはり、「例年同時期に比べると」、「増えた」ようだ。
・『葬儀場の前に長蛇の列ができていた理由は? 上海市では、人が亡くなると、親族から葬儀会社に連絡して、自宅や病院から遺体を引き取ってもらい、告別式までの間は葬儀場に安置される。親族は葬儀場と、告別式の詳細や火葬の日程について打ち合わせし、後日、告別式と火葬を行うというのが一般的な流れである。葬儀場で告別式が終わったら、遺体は火葬場に送られる。親族が火葬場に同行するかしないかは選択できるが、大概は同行しない。そのため、日本のように火葬後に親族による収骨という過程はない。お骨はその後葬儀場に戻り、親族が葬儀場でお骨を引き取り、納棺する。 「もともと一年でもっとも忙しい時期な上に、(昨年末から今年の春節にかけては)職員の3分の2が陽性になった。管理職から事務方、食堂の担当まですべての職員を現場に総動員し、みんな帰宅できず職場に泊まり込んでいた。それでも人手がまったく足りず、業務がたまりにたまって、まるで戦場のようだった。遺体を引き取りにいく人手が足りなくなったため、多くの遺体が病院の霊安室やご家庭に長く安置されていた。ネットで拡散されていた、病院の霊安室に遺体が重ねて安置されている写真はそのためだ。通常なら遺体の引き取りは電話一本で済むが、電話の対応もできなくなったので、手続きは葬儀場で行わなければならない。そのため、市民たちが夜中の1時から並び始めた。列が長い時には、200メートル以上先まで続いていたよ」(李さん) 「国のウィズコロナへの政策転換は賛成だが、緩和するタイミングをもうちょっと考えてほしかった。今回は葬儀場の職員が不在のため、告別式もできなくなった。親族がご遺体とまともなお別れができないままで、遺体が火葬された」(呉さん)』、「職員の3分の2が陽性になった。管理職から事務方、食堂の担当まですべての職員を現場に総動員し、みんな帰宅できず職場に泊まり込んでいた。それでも人手がまったく足りず、業務がたまりにたまって、まるで戦場のようだった。遺体を引き取りにいく人手が足りなくなったため、多くの遺体が病院の霊安室やご家庭に長く安置されていた。ネットで拡散されていた、病院の霊安室に遺体が重ねて安置されている写真はそのためだ。通常なら遺体の引き取りは電話一本で済むが、電話の対応もできなくなったので、手続きは葬儀場で行わなければならない」、大混乱のようだ。
・『「6歳の息子が、会えないまま火葬される」 路地裏で秘密裏に遺体と面会させてあげることも…… 「コロナ禍の3年間は、多くの家庭がこのような境遇だった。昨年4月から2カ月間のロックダウンの期間中も、たくさんの凄惨な状況を見てきた。その時は、病院で亡くなった人は火葬場に直送されていたので、入院中はもちろん、亡くなってからも親族との対面が許されなかった。 ある時、6歳の男の子が病院で亡くなったことがあった。両親も祖父母も、入院中ずっと会えずにいた。せめて火葬される前に一目会いたいと相談されて、遺体を火葬場に送る途中、事前に家族と約束したある路地裏でこっそりと会わせたのだ」(李さん) ロックダウン中はこうしたケースが珍しくなかったため「あまりに気の毒で、ロックダウンの間に、親族が遺体と対面したいという要望があれば、規定があるとしても、我々はできるだけ対応していた」と李さんは話す』、「あまりに気の毒で、ロックダウンの間に、親族が遺体と対面したいという要望があれば、規定があるとしても、我々はできるだけ対応していた」、やはり中国でも弾力的な対応をするようだ。
・『第一線の医療関係者に一時奨励金を支給 しかしそれよりも…… 彼らの体験談を聞いて、筆者は改めて心から尊敬の意を抱いた。この3年間、新型コロナウイルスと国の政策に翻弄されつつも、呉さんや李さん、段さんのように善良な人たちの献身的な支えがあったからこそ、中国の人々は救われていたのだ。 1月初旬、上海市政府は、コロナ感染治療にあたる第一線の医療関係者らに6000元(約12万円)を一時奨励金として支給した。これは、市民から絶大な支持を得た。「6000元は少ない。もっと差し上げるべきだ!」「医療従事者は我々の救いの神だ」などの声がSNSにあふれたのだ。そしてマスコミも、大きな災害の後、いつも第一線で大きな犠牲を払うこれらの人々に賛辞を惜しまない。「最美医生、最美睡姿」(もっとも美しい女医、もっとも美しい寝顔。あまりの疲れでつい寝てしまったという意味)など称賛の言葉が飛びかっていた。 その話をすると、新年会に出た人たちは皆、「そんなに感謝されなくて結構だ。私たちの仕事にケチをつけたり、差別したりしないで、理解してくれるだけで十分満足」と口をそろえていた。なぜなら中国では、葬儀や介護などの職種に対しての偏見が強く残っている。さらには病院を破壊したり、医師や看護師を襲って大けがを負わせたりといった事件まで起こっているからだ(参考記事:中国医療の過酷な現実、エリート中間層でも一寸先は医療費破産)。 中国における新型コロナウイルスの感染者数や死者数は12月末~1月上旬にピークとなり、春節を迎えるころにはかなり低いレベルに落ち着いた。新年会で話を聞かせてくれた友人だけでなく、中国中の医療従事者や葬儀場で働く人たちがゆっくり体を休めていることを願うばかりだ』、「中国における新型コロナウイルスの感染者数や死者数は12月末~1月上旬にピークとなり、春節を迎えるころにはかなり低いレベルに落ち着いた」、一安心だ。
第三に、2月6日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と、中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105564
・『絶対君主の習近平 ゼロコロナ政策の解除を機に、中国経済への期待が高まっているが、果たして本当だろうか。 中国は本格的な人口減少の時代に突入するなど構造的な問題を抱えており、中長期の見通しについて悲観的な見方を示す専門家もまた、増えているからだ。 中国は、肝心かなめの「統治のあり方」に疑問が呈されるようになっている。 このポリティカルリスクのネガティブインパクトは、想像以上に大きいようだ。 中国の習近平国家主席は昨年10月の第20回共産党大会で最高指導部の政治局常務委員に側近を引き上げた。常務委員会の総意による意志決定をやめ、毛沢東以来でもっとも強力な指導者になったと言われている。 習氏の経済分野への介入強化はかねてから懸念されていた』、「習氏」はどうみても「経済」に対する見識には欠けるようだ。
・『習近平で限界を迎えた中国型「全体主義」 「国内の情報の流れを把握するなど影響力を持ちすぎる」との警戒から民間IT企業を厳しく取り締まったことで、世界の投資家の中国に対する信頼が揺らいだ。 その結果、民間部門で最も効率的なセクターの時価総額が数兆ドル規模で消失した。 不動産市場の低迷など経済が悪化していることから、短期的には締め付けが緩和されるだろうが、抜本的な方針転換が図られるとの期待は薄い。 むしろ、習氏への権力集中に伴い、専門家の意見を聞かずに密室で決定される政策が増加し、経済への悪影響がさらに拡大すると危惧されている。 そもそも中国の統治制度はどのような特色を有しているのだろうか。 米スタンフォード大学の許成鋼客員研究員は、中国の統治制度を「地方分権的全体主義」と定義している(1月27日付日本経済新聞)。 中国共産党は1950年代初期、政治・経済を含むあらゆる分野の支配権を中央に集中させる全体主義の制度をソ連(当時)から導入したが、50年代半ば以降、「郡県制」という伝統的な統治手法を加え、その制度を改めた。 個人崇拝などで最高指導者の絶対的権威を確立する一方、行政の立案・運営の権限のほとんどを最高指導者が任命する地方の指導者に与えるものだ。 これにより、中国共産党はソ連より強固な一極集中の体制をつくり上げたことに成功した。 この制度の下に、地方の指導者は最高指導者の意向に沿った取り組みを競い、切磋琢磨してその実現に邁進したのだが、最高の成功事例は改革開放だったことは言うまでもない。 経済成長を巡る地方間の激しい競争が民間セクターの発展を可能にし、政治改革を伴わずに中国は高度成長を長年にわたり享受することができた。 しかし、こうした競争は環境破壊や所得格差の拡大、不動産バブルといった問題をもたらし、改革開放は今や負の側面の方が大きくなっている。 習近平の独裁下のネガティブインパクトはあまりにも大きいようだ。さらに後編記事『これは宿命なのか・・・「習近平体制」に富裕層が海外逃亡!「先の見えた中国」に国民があいそをつかす日』では、中国の政府不信の高まりについて、詳しくレポートする!』、以前は経済は李克強前首相が主に担当していた。現在は、「習氏」の部下だった李強氏が次期首相候補とされている。「習氏」の「独裁」が強化されるようだ。しかし、「独裁」の「強化」は、失政のリスクも高くなることを意味。
第四に、この続きを、2月7日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの 藤 和彦氏による「これは宿命なのか・・・「習近平体制」に富裕層が海外逃亡!「先の見えた中国」に国民があいそをつかす日」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105565
・『中国経済が復活するという楽観論が広がっているが、本当だろうか。 少なくとも中長期的には、ネガティブな情報にあふれている。 長らく「地方分権的全体主義」で機能して「改革開放」に成功した中国だが、いまや経済大失速が顕著になっている。習近平の独裁体制が始動したことで、さら(注)に数々のひずみが明らかとなった。 果たして、中国はこれからどうなってしまうのか。 前編『中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と、中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」』に続きレポートする』、興味深そうだ。
(注):「び」ではなく「に」
・『絶対権力者の「落とし穴」 現在、習近平体制が敷こうとしている統治制度の根本的な問題は、最高指導者と地方の間の意思疎通が迅速かつ正確に行われず、カリスマ化した最高指導者に対するチェック機能が働かないことだ。 広大な国土と世界最大級の人口を擁する中国では「鶴の一声」が往々にして極端な結果を招いた。) カリスマ化した前例である毛沢東統治下で起きた「大躍進」や「文化大革命」の悲劇はあまりに有名だ。1979年から実施された「1人っ子政策」でも極端な人口減少を生じさせる結果となった。 習金平のやり方は伝統的な統治制度を復活させた感が強いが、「ゼロコロナ政策の突然の解除によってもう一つの悲劇が生まれるのではないか」との不安が脳裏をよぎる。 習近平の歓心を得るため、これまでゼロコロナ政策を墨守してきた地方政府だが、不動産市場の低迷で土地売却収入が激減し、ゼロコロナ政策を維持するのに必要な巨額の資金を捻出することができなくなってしまった。 台所が「火の車」になった地方政府からの突然の悲鳴に驚いた習近平が、なんら対策を講じることなくゼロコロナ政策を解除してしまったのが内情だろう』、「地方政府だが、不動産市場の低迷で土地売却収入が激減し、ゼロコロナ政策を維持するのに必要な巨額の資金を捻出することができなくなってしまった。 台所が「火の車」になった地方政府からの突然の悲鳴に驚いた習近平が、なんら対策を講じることなくゼロコロナ政策を解除してしまった」、突然の解除の背景がよく理解できた。
・『国民は「政府発信」の情報が信じられない 中国政府は「新型コロナの感染は収束しつつある」と喧伝しているが、専門家の間では「中国の感染爆発は長期にわたって続く」との見方が有力だ。 農村部の高齢者の犠牲を防ぐことがゼロコロナ政策を正当化する根拠だったことから、中国では今後、農村部を中心に100万人以上の死者が出るかもしれない。 中国政府が「不都合な真実」を隠蔽する可能性が高いが、このような姿勢は「人民の安全を守る」という政府の最も重要な責任を放棄したとのそしりを免れないだろう。 ゼロコロナ政策の解除により、政府の存在感が急速に薄れているのが気になるところだ。 新型コロナの感染が急拡大する中、政府から支援を得られない都市部の住民は医薬品などを融通し、助け合いで生き抜こうとしている(1月19日付ブルームバーグ)。 新型コロナの治療についても、保健当局者の発言よりもソーシャルメデイアのインフルエンサーの意見に頼るようになっている(1月24日付ブルームバーグ) ゼロコロナ下で非常に大きな存在感を示していた政府は「今は昔」だ。人々は政府抜きの生活を実感していると言っても過言ではない』、「政府から支援を得られない都市部の住民は医薬品などを融通し、助け合いで生き抜こうとしている」、「新型コロナの治療についても、保健当局者の発言よりもソーシャルメデイアのインフルエンサーの意見に頼るようになっている」、「人々は政府抜きの生活を実感していると言っても過言ではない」、なるほど。
・『富裕層が逃げだした 政府がゼロコロナ政策に伴う渡航制限を解除したことで富裕層の海外移住の動きも加速している(1月26日付ブルームバーグ)。 共産党に楯を突かない限り、富を増やし続けられることができた富裕層は、習近平の経済活動への締め付けや「共同富裕」の動きに辟易としているからだ。 「政府による一党支配を受け入れる代わりに、国民の安全を維持し生活を向上させる」という、これまでの社会契約が無効になりつつある。 慣れ親しんできた統治制度を抜本的に見直すことは困難だ。 だが、そうしない限り、体制の危機が進んでしまうのではないだろうか。 さらに連載記事『習近平が大ピンチ……!中国「ゼロコロナ大不況」が「世界金融危機」へと波及する悪夢のシナリオ』では、負の側面があらわとなった中国経済の深層を詳しくレポートする』、「富裕層は、習近平の経済活動への締め付けや「共同富裕」の動きに辟易としている」、「渡航制限を解除したことで富裕層の海外移住の動きも加速」、「富裕層」が逃げ出すような「中国経済」には展望がなさそうだ。
先ずは、一昨年12月26日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェロの藤 和彦氏による「習近平が大ピンチ……!中国「ゼロコロナ大不況」が「世界金融危機」へと波及する悪夢のシナリオ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/103701?imp=0
・『国民の大反発にあった習近平がついに「ゼロコロナ政策」を解除した。しかし、今これまで無菌室だった中国で、猛烈な感染拡大が懸念されている。 それは中国経済を「コロナ大不況」に陥れ、リーマンショック級の金融危機を誘発しかねない状況だ。世界は中国に対して決して警戒を怠ってはならないのだ。 前編「習近平の大誤算…!「ゼロコロナ」がいざなう、中国発「世界大不況」の巨大すぎるインパクト」に続き、詳報する』、「ゼロコロナ政策」に対する国民の不満が高まり、突如、「解除」したが、政策の振れの大きさには驚かされる。
・『すでに瀕死の「中国経済」 ゼロコロナ解除以前の中国経済は既にひどい状態だった。 中国経済の屋台骨と言える不動産投資は11月、前年比19.9%となり、2000年の統計開始以来、最大の落ち込みとなった。住宅価格も14か月連続で低下しており、「先行き悲観」の状況に変わりはない。 新築住宅販売は政府の支援策で持ち直しの兆しを見せていたが、新型コロナの感染拡大のせいで「元の木阿弥」になりつつある。 不動産不況のあおりを受けて、中国の11月の生産者物価指数は10月に続いてマイナスとなった(前年比1.3%減)。中国企業の景況感指数(調査期間は12月1日から16日)は2013年1月以来の低水準だった。 中でもサービス業の雇用指数は深刻な状態になっている。 中国の11月の小売売上高は前年比5.9%減と記録的な落ち込み幅となった。同じく輸出額も前年比8.7%減だった(対米輸出は約3割減少)。 中国のすべての経済指標が絶不調だったところに政府の大失政(ゼロコロナ解除)が猛烈な下押し圧力となって、経済は未曾有の危機に直面してしまうのではないだろうか』、中国のGDP成長率は、2022年は3.0%と目標の5.5%を大きく下回った。10-12月期は前年同期比2.9%と7-9月期の同3.9%より低くなった。
・『「ゼロコロナ」のヤバすぎる影響 ゼロコロナ解除の悪影響は早くも出ている。 市場参加者の間で新型コロナの感染が急拡大したことから、中国の金融市場の取引が低調になっており、好調だった新規株式公開(IPO)にも影響が及んでいる。事実上の「鎖国」状態が解かれたことで中国から大量の資金が流出するリスクも指摘されている。 一方、コロナ禍から抜け出したとされる米国経済にも暗い影が忍び寄っている。 米国の12月の購買担当者景気指数(PMI)は44.6と前月から1.8ポイント悪化し、好不況となる50を6ヶ月連続で下回った。 米国企業の収益はリーマンショック以降で最悪になる見込みだ(12月19日付ブルームバーグ)。 米国のインフレ率は高止まりの状況が続いているが、債券投資家は「来年のインフレ率はリーマンショック直後のペースまで鈍化する」と予想しており(12月13日付ブルームバーグ)、米ウオール街の心配は「インフレ」から「リセッション(景気後退)」にシフトしつつある(12月19日付ZeroHedge)。 米国の金融市場の関心がリセッションに集まる中、中国経済への期待は高まるばかりだ』、リーマン・ショック時は確かに「中国」がプラス成長で世界をリードしたが、もはやそんな底力はなさそうだ。
・『中国経済バブル崩壊の序曲 国際金融協会(IIF)は「来年の世界経済の成長率はリーマンショック後の2009年並みの低水準(1.2%増)となる。牽引役は中国だ」と予測している。 だが、中国が「コロナ大不況」となれば、来年の世界経済は21世紀初のマイナス成長になってしまい、米国の金融市場全体のセンチメントは急速に悪化すると言っても過言ではない。 リセッション懸念で米国の銀行株に対する売り圧力が既に生じているが、最も警戒すべきはリーマンショックの震源地となったクレジット市場だろう。クレジット市場とは信用リスク(資金の借り手の信用度が変化するリスク)を内包する金融商品が取引される市場のことだ。 クレジット商品には、貸出債権や社債など様々な信用リスクを加工して証券の形で売買する「証券化商品」や信用リスクを原資産とする派生商品である「クレジット・デリバテイブ」などが代表的だ』、ちなみに国債のデフォルト確率を示すクレジット・デフォルト・スワップのスプレッドは、米国、日本は低いが、中国、韓国は高水準である。
https://finance-gfp.com/?p=6447
・『「金融危機」への警戒感が高まっている 「米国のジャンク債(低格付け債)バブルが今後崩壊する」との警戒感が強まっており(12月16日付日本経済新聞)、米国消費者ローンの延滞率も来年13年ぶりの高水準になる見通しだ。足元が揺らぎ始めているクレジット市場に外的ショックが直撃すれば、金融市場に大きな混乱が起こる可能性は排除できない。 「金融危機が勃発する」と断言するつもりはないが、中国のコロナ大不況が米国の金融市場に与える負のインパクトを見逃してはならないのではないだろうか。 さらに連載記事「2022年エネルギー危機の正体…!プーチンが招いた「最悪のインフレ」と「原油高騰」がこれからも続く深刻なワケ」では、来年にかけてのエネルギー価格の状況についてレポートしていく』、「中国のコロナ大不況が米国の金融市場に与える負のインパクトを見逃してはならないのではないだろうか」、その通りだ。
次に、昨年2月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日中福祉プランニング代表の王 青氏による「中国の医療・葬儀の修羅場、39℃の救急車運転手と38.5℃の医師が38℃の患者の元へ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/317160
・『2022年12月に、ロックダウンなど厳しい行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策を突然解除した中国。それから約2カ月弱、「累計感染者数9億人」「1週間で6000人以上が死亡」など感染が急激に広がったことを示す数字やニュースが世界中で報じられている。実際のところ、中国の医療と葬儀の最前線はどうだったのか。上海の葬儀場や、大学付属病院に勤める友人たちに話を聞いた』、
・『突然のゼロコロナ政策解除から2カ月弱 中国で何が起こっていたのか 昨年12月、これまで約3年間厳格に実施されてきた中国のゼロコロナ政策が解除された。突然の政策転換で、感染者が爆発的に増え、医療機関は崩壊寸前だった。病院にあふれかえった患者の様子や、寒風の中、葬儀場にできた長蛇の列などを撮影した動画が広まり、世の中に衝撃を与えた。 12~1月にかけて、中国の医療や葬儀の現場ではどのようなことが起こっていたのか。今年の春節連休(1月22~28日)、筆者は日頃仕事で交流のある上海の医療業界や葬儀業界の関係者とオンラインで新年会を行った。そこで、第一線でコロナと戦う彼らが話していた、コロナ政策転換後約2カ月弱の間の体験談をご紹介したい』、興味深そうだ。
・『従業員が倒れて「減員厳重」、しかし「39℃以下なら勤務せよ」 話を聞かせてくれたのは、葬儀場に勤務の男性・呉輝さん(仮名、40代)と李海辰さん(仮名、40代)、大学付属病院で看護師として勤める女性・段玲さん(仮名、30代)、そして彼らの職場の友人数人である。 「ここにいる全員、(コロナに)感染したよ、ハハハ……」 オンライン新年会はそんな全員の笑い声から始まった。「今でこそ笑えるが、その時は死も覚悟した。うちの病院の職員の9割が感染した。病棟がいっぱいになったのはいうまでもなく、病院の入り口や廊下まで発熱患者であふれていた。簡易ベッドや点滴用の椅子で埋め尽くされ、病院中、足の踏み場もない状態。これだけ患者がどんどん増えている一方で、スタッフは厳しい減員となった」(段さん) 「減員厳重」――。これはゼロコロナ政策が緩和されて以来、中国でよく使われていた言葉である。つまり、爆発的に拡大した感染で従業員がバタバタと倒れ、働き手が極めて足りなくなった状況を指す。 このような状況下、国家衛生健康委員会(衛生と健康を担当する政府機関)は、「いかなる理由であれ、陽性患者の受け入れを拒否してはいけない。減員による診察の停止や欠勤は断固として禁止する」という通知を出した。そして医療従事者に「熱が39℃以下であれば、勤務を続けよ」と命じた。 そのため、「せき込む人や熱で真っ赤な顔をしている人、点滴の管をつったままの人など、極限状況で同僚たちは働き続けた。突然失神して地べたに倒れた人もいた。今思えば、まるで地獄だった」と段さんは振り返る』、「「いかなる理由であれ、陽性患者の受け入れを拒否してはいけない。減員による診察の停止や欠勤は断固として禁止する」という通知を出した。そして医療従事者に「熱が39℃以下であれば、勤務を続けよ」と命じた」、医療の世界でも強権的指導が一般化しているようだ。
・『39℃の救急車運転手が38.5℃の医者と看護師を乗せて38℃の患者を迎えに行く 中国のSNSでも、この話はブラックジョークの形で拡散されていた。「熱が39℃の救急車のドライバーが、38.5℃の医者と看護師を乗せて、38℃の患者を迎えに行っている」というのだ。そして、多くのネットユーザーは、「これは決してジョークではない。現実に起こっている話だ」と同意するのだった。 「この3年間、まともな休日はなかった。最長だと4カ月間1日も休めない時もあった。そして、ずっと防護服のままだった。病院内だけでなく、1年の半分以上はあちこちのPCR検査に出張した。そこでももちろん終日防護服。できるだけトイレへ行かないように、食事や水を極力控えめにしていた。ダイエットにはちょうどいいかもしれないね」と段さんは苦笑しながら話す』、「39℃の救急車運転手が38.5℃の医者と看護師を乗せて38℃の患者を迎えに行く」、「多くのネットユーザーは、「これは決してジョークではない。現実に起こっている話だ」と同意する」、なるほど。
・『年末年始を挟んだ2カ月弱、新型コロナで亡くなった人は約8万人? 1月28日に中国疾病予防センターは、1月20~26日の1週間で、新型コロナに感染し、国内の医療機関で死亡したのは6364人と発表した。感染対策が大幅に緩和された12月8日から1月26日までの2カ月弱の死者数は合わせて約8万人となったが、これには自宅で死亡した人は含まれておらず、実際にはもっと多いという指摘もあり、国内外のメディアやSNSではさまざまな臆測が飛び交っている。 この数字について、葬儀場の職員として働いている呉さんと李さんに尋ねてみた。「日本を含めて海外の多くのメディアは、中国では高齢者を中心にものすごい数の人が亡くなったと報道していた。それは本当? あと、葬儀場に長蛇の列ができている様子も報じられていたけど、あれはなぜ?」 呉さんの答えは、「自分の肌感覚では、例年同時期に比べると、2割ぐらい増えたと思う」というもの。「もともと12月下旬から春節までは、高齢者の死亡が一番多い時期。しかし、今回はオミクロン株の感染により、高齢者の死亡者数が例年を上回っていたのは事実だ」(呉さん) ちなみに、呉さんと李さんが勤める葬儀場は、年間3万近くの遺体を扱っている巨大な葬儀施設である。職員は300人以上おり、告別式用のホールは20以上、一番大きいホールは1000人以上が入る規模だ』、「自分の肌感覚では、例年同時期に比べると、2割ぐらい増えたと思う」、やはり、「例年同時期に比べると」、「増えた」ようだ。
・『葬儀場の前に長蛇の列ができていた理由は? 上海市では、人が亡くなると、親族から葬儀会社に連絡して、自宅や病院から遺体を引き取ってもらい、告別式までの間は葬儀場に安置される。親族は葬儀場と、告別式の詳細や火葬の日程について打ち合わせし、後日、告別式と火葬を行うというのが一般的な流れである。葬儀場で告別式が終わったら、遺体は火葬場に送られる。親族が火葬場に同行するかしないかは選択できるが、大概は同行しない。そのため、日本のように火葬後に親族による収骨という過程はない。お骨はその後葬儀場に戻り、親族が葬儀場でお骨を引き取り、納棺する。 「もともと一年でもっとも忙しい時期な上に、(昨年末から今年の春節にかけては)職員の3分の2が陽性になった。管理職から事務方、食堂の担当まですべての職員を現場に総動員し、みんな帰宅できず職場に泊まり込んでいた。それでも人手がまったく足りず、業務がたまりにたまって、まるで戦場のようだった。遺体を引き取りにいく人手が足りなくなったため、多くの遺体が病院の霊安室やご家庭に長く安置されていた。ネットで拡散されていた、病院の霊安室に遺体が重ねて安置されている写真はそのためだ。通常なら遺体の引き取りは電話一本で済むが、電話の対応もできなくなったので、手続きは葬儀場で行わなければならない。そのため、市民たちが夜中の1時から並び始めた。列が長い時には、200メートル以上先まで続いていたよ」(李さん) 「国のウィズコロナへの政策転換は賛成だが、緩和するタイミングをもうちょっと考えてほしかった。今回は葬儀場の職員が不在のため、告別式もできなくなった。親族がご遺体とまともなお別れができないままで、遺体が火葬された」(呉さん)』、「職員の3分の2が陽性になった。管理職から事務方、食堂の担当まですべての職員を現場に総動員し、みんな帰宅できず職場に泊まり込んでいた。それでも人手がまったく足りず、業務がたまりにたまって、まるで戦場のようだった。遺体を引き取りにいく人手が足りなくなったため、多くの遺体が病院の霊安室やご家庭に長く安置されていた。ネットで拡散されていた、病院の霊安室に遺体が重ねて安置されている写真はそのためだ。通常なら遺体の引き取りは電話一本で済むが、電話の対応もできなくなったので、手続きは葬儀場で行わなければならない」、大混乱のようだ。
・『「6歳の息子が、会えないまま火葬される」 路地裏で秘密裏に遺体と面会させてあげることも…… 「コロナ禍の3年間は、多くの家庭がこのような境遇だった。昨年4月から2カ月間のロックダウンの期間中も、たくさんの凄惨な状況を見てきた。その時は、病院で亡くなった人は火葬場に直送されていたので、入院中はもちろん、亡くなってからも親族との対面が許されなかった。 ある時、6歳の男の子が病院で亡くなったことがあった。両親も祖父母も、入院中ずっと会えずにいた。せめて火葬される前に一目会いたいと相談されて、遺体を火葬場に送る途中、事前に家族と約束したある路地裏でこっそりと会わせたのだ」(李さん) ロックダウン中はこうしたケースが珍しくなかったため「あまりに気の毒で、ロックダウンの間に、親族が遺体と対面したいという要望があれば、規定があるとしても、我々はできるだけ対応していた」と李さんは話す』、「あまりに気の毒で、ロックダウンの間に、親族が遺体と対面したいという要望があれば、規定があるとしても、我々はできるだけ対応していた」、やはり中国でも弾力的な対応をするようだ。
・『第一線の医療関係者に一時奨励金を支給 しかしそれよりも…… 彼らの体験談を聞いて、筆者は改めて心から尊敬の意を抱いた。この3年間、新型コロナウイルスと国の政策に翻弄されつつも、呉さんや李さん、段さんのように善良な人たちの献身的な支えがあったからこそ、中国の人々は救われていたのだ。 1月初旬、上海市政府は、コロナ感染治療にあたる第一線の医療関係者らに6000元(約12万円)を一時奨励金として支給した。これは、市民から絶大な支持を得た。「6000元は少ない。もっと差し上げるべきだ!」「医療従事者は我々の救いの神だ」などの声がSNSにあふれたのだ。そしてマスコミも、大きな災害の後、いつも第一線で大きな犠牲を払うこれらの人々に賛辞を惜しまない。「最美医生、最美睡姿」(もっとも美しい女医、もっとも美しい寝顔。あまりの疲れでつい寝てしまったという意味)など称賛の言葉が飛びかっていた。 その話をすると、新年会に出た人たちは皆、「そんなに感謝されなくて結構だ。私たちの仕事にケチをつけたり、差別したりしないで、理解してくれるだけで十分満足」と口をそろえていた。なぜなら中国では、葬儀や介護などの職種に対しての偏見が強く残っている。さらには病院を破壊したり、医師や看護師を襲って大けがを負わせたりといった事件まで起こっているからだ(参考記事:中国医療の過酷な現実、エリート中間層でも一寸先は医療費破産)。 中国における新型コロナウイルスの感染者数や死者数は12月末~1月上旬にピークとなり、春節を迎えるころにはかなり低いレベルに落ち着いた。新年会で話を聞かせてくれた友人だけでなく、中国中の医療従事者や葬儀場で働く人たちがゆっくり体を休めていることを願うばかりだ』、「中国における新型コロナウイルスの感染者数や死者数は12月末~1月上旬にピークとなり、春節を迎えるころにはかなり低いレベルに落ち着いた」、一安心だ。
第三に、2月6日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と、中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105564
・『絶対君主の習近平 ゼロコロナ政策の解除を機に、中国経済への期待が高まっているが、果たして本当だろうか。 中国は本格的な人口減少の時代に突入するなど構造的な問題を抱えており、中長期の見通しについて悲観的な見方を示す専門家もまた、増えているからだ。 中国は、肝心かなめの「統治のあり方」に疑問が呈されるようになっている。 このポリティカルリスクのネガティブインパクトは、想像以上に大きいようだ。 中国の習近平国家主席は昨年10月の第20回共産党大会で最高指導部の政治局常務委員に側近を引き上げた。常務委員会の総意による意志決定をやめ、毛沢東以来でもっとも強力な指導者になったと言われている。 習氏の経済分野への介入強化はかねてから懸念されていた』、「習氏」はどうみても「経済」に対する見識には欠けるようだ。
・『習近平で限界を迎えた中国型「全体主義」 「国内の情報の流れを把握するなど影響力を持ちすぎる」との警戒から民間IT企業を厳しく取り締まったことで、世界の投資家の中国に対する信頼が揺らいだ。 その結果、民間部門で最も効率的なセクターの時価総額が数兆ドル規模で消失した。 不動産市場の低迷など経済が悪化していることから、短期的には締め付けが緩和されるだろうが、抜本的な方針転換が図られるとの期待は薄い。 むしろ、習氏への権力集中に伴い、専門家の意見を聞かずに密室で決定される政策が増加し、経済への悪影響がさらに拡大すると危惧されている。 そもそも中国の統治制度はどのような特色を有しているのだろうか。 米スタンフォード大学の許成鋼客員研究員は、中国の統治制度を「地方分権的全体主義」と定義している(1月27日付日本経済新聞)。 中国共産党は1950年代初期、政治・経済を含むあらゆる分野の支配権を中央に集中させる全体主義の制度をソ連(当時)から導入したが、50年代半ば以降、「郡県制」という伝統的な統治手法を加え、その制度を改めた。 個人崇拝などで最高指導者の絶対的権威を確立する一方、行政の立案・運営の権限のほとんどを最高指導者が任命する地方の指導者に与えるものだ。 これにより、中国共産党はソ連より強固な一極集中の体制をつくり上げたことに成功した。 この制度の下に、地方の指導者は最高指導者の意向に沿った取り組みを競い、切磋琢磨してその実現に邁進したのだが、最高の成功事例は改革開放だったことは言うまでもない。 経済成長を巡る地方間の激しい競争が民間セクターの発展を可能にし、政治改革を伴わずに中国は高度成長を長年にわたり享受することができた。 しかし、こうした競争は環境破壊や所得格差の拡大、不動産バブルといった問題をもたらし、改革開放は今や負の側面の方が大きくなっている。 習近平の独裁下のネガティブインパクトはあまりにも大きいようだ。さらに後編記事『これは宿命なのか・・・「習近平体制」に富裕層が海外逃亡!「先の見えた中国」に国民があいそをつかす日』では、中国の政府不信の高まりについて、詳しくレポートする!』、以前は経済は李克強前首相が主に担当していた。現在は、「習氏」の部下だった李強氏が次期首相候補とされている。「習氏」の「独裁」が強化されるようだ。しかし、「独裁」の「強化」は、失政のリスクも高くなることを意味。
第四に、この続きを、2月7日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの 藤 和彦氏による「これは宿命なのか・・・「習近平体制」に富裕層が海外逃亡!「先の見えた中国」に国民があいそをつかす日」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105565
・『中国経済が復活するという楽観論が広がっているが、本当だろうか。 少なくとも中長期的には、ネガティブな情報にあふれている。 長らく「地方分権的全体主義」で機能して「改革開放」に成功した中国だが、いまや経済大失速が顕著になっている。習近平の独裁体制が始動したことで、さら(注)に数々のひずみが明らかとなった。 果たして、中国はこれからどうなってしまうのか。 前編『中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と、中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」』に続きレポートする』、興味深そうだ。
(注):「び」ではなく「に」
・『絶対権力者の「落とし穴」 現在、習近平体制が敷こうとしている統治制度の根本的な問題は、最高指導者と地方の間の意思疎通が迅速かつ正確に行われず、カリスマ化した最高指導者に対するチェック機能が働かないことだ。 広大な国土と世界最大級の人口を擁する中国では「鶴の一声」が往々にして極端な結果を招いた。) カリスマ化した前例である毛沢東統治下で起きた「大躍進」や「文化大革命」の悲劇はあまりに有名だ。1979年から実施された「1人っ子政策」でも極端な人口減少を生じさせる結果となった。 習金平のやり方は伝統的な統治制度を復活させた感が強いが、「ゼロコロナ政策の突然の解除によってもう一つの悲劇が生まれるのではないか」との不安が脳裏をよぎる。 習近平の歓心を得るため、これまでゼロコロナ政策を墨守してきた地方政府だが、不動産市場の低迷で土地売却収入が激減し、ゼロコロナ政策を維持するのに必要な巨額の資金を捻出することができなくなってしまった。 台所が「火の車」になった地方政府からの突然の悲鳴に驚いた習近平が、なんら対策を講じることなくゼロコロナ政策を解除してしまったのが内情だろう』、「地方政府だが、不動産市場の低迷で土地売却収入が激減し、ゼロコロナ政策を維持するのに必要な巨額の資金を捻出することができなくなってしまった。 台所が「火の車」になった地方政府からの突然の悲鳴に驚いた習近平が、なんら対策を講じることなくゼロコロナ政策を解除してしまった」、突然の解除の背景がよく理解できた。
・『国民は「政府発信」の情報が信じられない 中国政府は「新型コロナの感染は収束しつつある」と喧伝しているが、専門家の間では「中国の感染爆発は長期にわたって続く」との見方が有力だ。 農村部の高齢者の犠牲を防ぐことがゼロコロナ政策を正当化する根拠だったことから、中国では今後、農村部を中心に100万人以上の死者が出るかもしれない。 中国政府が「不都合な真実」を隠蔽する可能性が高いが、このような姿勢は「人民の安全を守る」という政府の最も重要な責任を放棄したとのそしりを免れないだろう。 ゼロコロナ政策の解除により、政府の存在感が急速に薄れているのが気になるところだ。 新型コロナの感染が急拡大する中、政府から支援を得られない都市部の住民は医薬品などを融通し、助け合いで生き抜こうとしている(1月19日付ブルームバーグ)。 新型コロナの治療についても、保健当局者の発言よりもソーシャルメデイアのインフルエンサーの意見に頼るようになっている(1月24日付ブルームバーグ) ゼロコロナ下で非常に大きな存在感を示していた政府は「今は昔」だ。人々は政府抜きの生活を実感していると言っても過言ではない』、「政府から支援を得られない都市部の住民は医薬品などを融通し、助け合いで生き抜こうとしている」、「新型コロナの治療についても、保健当局者の発言よりもソーシャルメデイアのインフルエンサーの意見に頼るようになっている」、「人々は政府抜きの生活を実感していると言っても過言ではない」、なるほど。
・『富裕層が逃げだした 政府がゼロコロナ政策に伴う渡航制限を解除したことで富裕層の海外移住の動きも加速している(1月26日付ブルームバーグ)。 共産党に楯を突かない限り、富を増やし続けられることができた富裕層は、習近平の経済活動への締め付けや「共同富裕」の動きに辟易としているからだ。 「政府による一党支配を受け入れる代わりに、国民の安全を維持し生活を向上させる」という、これまでの社会契約が無効になりつつある。 慣れ親しんできた統治制度を抜本的に見直すことは困難だ。 だが、そうしない限り、体制の危機が進んでしまうのではないだろうか。 さらに連載記事『習近平が大ピンチ……!中国「ゼロコロナ大不況」が「世界金融危機」へと波及する悪夢のシナリオ』では、負の側面があらわとなった中国経済の深層を詳しくレポートする』、「富裕層は、習近平の経済活動への締め付けや「共同富裕」の動きに辟易としている」、「渡航制限を解除したことで富裕層の海外移住の動きも加速」、「富裕層」が逃げ出すような「中国経済」には展望がなさそうだ。
タグ:中国経済 (その15)(習近平が大ピンチ……!中国「ゼロコロナ大不況」が「世界金融危機」へと波及する悪夢のシナリオ、中国の医療・葬儀の修羅場 39℃の救急車運転手と38.5℃の医師が38℃の患者の元へ、中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と 中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」、これは宿命なのか・・・「習近平体制」に富裕層が海外逃亡!「先の見えた中国」に国民があいそをつかす日) 現代ビジネス 藤 和彦氏による「習近平が大ピンチ……!中国「ゼロコロナ大不況」が「世界金融危機」へと波及する悪夢のシナリオ」 「ゼロコロナ政策」に対する国民の不満が高まり、突如、「解除」したが、政策の振れの大きさには驚かされる。 中国のGDP成長率は、2022年は3.0%と目標の5.5%を大きく下回った。10-12月期は前年同期比2.9%と7-9月期の同3.9%より低くなった。 リーマン・ショック時は確かに「中国」がプラス成長で世界をリードしたが、もはやそんな底力はなさそうだ。 ちなみに国債のデフォルト確率を示すクレジット・デフォルト・スワップのスプレッドは、米国、日本は低いが、中国、韓国は高水準である。 https://finance-gfp.com/?p=6447 「中国のコロナ大不況が米国の金融市場に与える負のインパクトを見逃してはならないのではないだろうか」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 王 青氏による「中国の医療・葬儀の修羅場、39℃の救急車運転手と38.5℃の医師が38℃の患者の元へ」 「「いかなる理由であれ、陽性患者の受け入れを拒否してはいけない。減員による診察の停止や欠勤は断固として禁止する」という通知を出した。そして医療従事者に「熱が39℃以下であれば、勤務を続けよ」と命じた」、医療の世界でも強権的指導が一般化しているようだ。 「39℃の救急車運転手が38.5℃の医者と看護師を乗せて38℃の患者を迎えに行く」、「多くのネットユーザーは、「これは決してジョークではない。現実に起こっている話だ」と同意する」、なるほど。 「自分の肌感覚では、例年同時期に比べると、2割ぐらい増えたと思う」、やはり、「例年同時期に比べると」、「増えた」ようだ。 「職員の3分の2が陽性になった。管理職から事務方、食堂の担当まですべての職員を現場に総動員し、みんな帰宅できず職場に泊まり込んでいた。それでも人手がまったく足りず、業務がたまりにたまって、まるで戦場のようだった。遺体を引き取りにいく人手が足りなくなったため、多くの遺体が病院の霊安室やご家庭に長く安置されていた。ネットで拡散されていた、病院の霊安室に遺体が重ねて安置されている写真はそのためだ。通常なら遺体の引き取りは電話一本で済むが、電話の対応もできなくなったので、手続きは葬儀場で行わなければならない」、大 「あまりに気の毒で、ロックダウンの間に、親族が遺体と対面したいという要望があれば、規定があるとしても、我々はできるだけ対応していた」、やはり中国でも弾力的な対応をするようだ。 「中国における新型コロナウイルスの感染者数や死者数は12月末~1月上旬にピークとなり、春節を迎えるころにはかなり低いレベルに落ち着いた」、一安心だ。 藤 和彦氏による「中国「習近平体制」がもたらす「経済“大失速”の深層」と、中国型「全体主義」が限界をむかえる「あぶない兆候」」 「習氏」はどうみても「経済」に対する見識には欠けるようだ。 以前は経済は李克強前首相が主に担当していた。現在は、「習氏」の部下だった李強氏が次期首相候補とされている。「習氏」の「独裁」が強化されるようだ。しかし、「独裁」の「強化」は、失政のリスクも高くなることを意味。 藤 和彦氏による「これは宿命なのか・・・「習近平体制」に富裕層が海外逃亡!「先の見えた中国」に国民があいそをつかす日」 「地方政府だが、不動産市場の低迷で土地売却収入が激減し、ゼロコロナ政策を維持するのに必要な巨額の資金を捻出することができなくなってしまった。 台所が「火の車」になった地方政府からの突然の悲鳴に驚いた習近平が、なんら対策を講じることなくゼロコロナ政策を解除してしまった」、突然の解除の背景がよく理解できた。 「政府から支援を得られない都市部の住民は医薬品などを融通し、助け合いで生き抜こうとしている」、「新型コロナの治療についても、保健当局者の発言よりもソーシャルメデイアのインフルエンサーの意見に頼るようになっている」、「人々は政府抜きの生活を実感していると言っても過言ではない」、なるほど。 「富裕層は、習近平の経済活動への締め付けや「共同富裕」の動きに辟易としている」、「渡航制限を解除したことで富裕層の海外移住の動きも加速」、「富裕層」が逃げ出すような「中国経済」には展望がなさそうだ。
中国経済(その17)(中国で まさか「長江が干上った」…! 習近平が焦る「ヤバすぎる異常気象」の現実と “中国14億人”を襲う「恐ろしい悲劇」…!、習近平が ついに「禁じ手」…! 中国の「人工雨」と「地球環境破壊」の“ヤバすぎる真実”、「中国の経済成長神話は崩壊しつつある」と断言できるこれだけの理由) [世界経済]
中国経済については、8月27日に取上げた。今日は、(その17)(中国で まさか「長江が干上った」…! 習近平が焦る「ヤバすぎる異常気象」の現実と “中国14億人”を襲う「恐ろしい悲劇」…!、習近平が ついに「禁じ手」…! 中国の「人工雨」と「地球環境破壊」の“ヤバすぎる真実”、「中国の経済成長神話は崩壊しつつある」と断言できるこれだけの理由)である。
先ずは、9月4日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「中国で、まさか「長江が干上った」…! 習近平が焦る「ヤバすぎる異常気象」の現実と、“中国14億人”を襲う「恐ろしい悲劇」…!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/99269?imp=0
・『中国で、まさか「長江の水」が干上がった…! 世界で同時多発的に厳しい干ばつ被害が起きている。 欧州委員会は8月23日「欧州全土の6割以上が干ばつ被害を受けている。過去500年間で最悪レベルだ」との見解を示した。ライン川の水位が劇的に低下し、域内物流への影響が懸念されている。 米国でも「ホット・アンド・ドライ(高温乾燥)」と呼ばれる干ばつ型の異常気象が報告されているが、大変なことになっているのは中国である。 中国ではいま、観測史上最悪の熱波に見舞われているのだ。 そんな中国で最も深刻な打撃を受けているのは中部と南部を流れる長江流域だ。 約4億5000万人が生活している長江流域の今年の夏は、70日以上にわたって異常な高温と雨不足に襲われた。 上海のビルは一斉に明かりを消し、エアコンを使えない人々は涼を求めて地下壕に逃げたという。 さらに、長江の一部で川底が露呈するほど水位が下がったことで、600年前の仏様が発見されるなどの“異常事態”が相次いでいるのだ』、10月8日付け日経新聞でも、干ばつは続いているようだ。
・『工場停止、食糧危機…「危ない」のはこれからだ! 長江流域では電力不足で工場が操業停止に追い込まれるなど経済への悪影響がすでに出ている。 そこへきて、秋に収穫される農産物の被害が甚大になるとの危惧も生じている。 中国では秋に収穫される穀物が年間の穀物生産の75%を占めている。 中国の農業生産の3分の1を支える長江流域の不調は中国全体の食糧危機に直結すると言っても過言ではない。当然、習近平国家主席にとって頭痛の種になってきたわけだ。 さらに後編記事『習近平が、ついに「禁じ手」…! 中国の「人工雨」と「地球環境破壊」の“ヤバすぎる真実”』では、そうした中で中国が取り組み始めた「人口雨」とその危ない実態についてレポートしよう』、「中国では秋に収穫される穀物が年間の穀物生産の75%を占めている」のであれば、影響は極めて深刻だろう。
次に、この続きを、9月4日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「習近平が、ついに「禁じ手」…! 中国の「人工雨」と「地球環境破壊」の“ヤバすぎる真実”」を紹介しよう。
・『世界で同時多発的に厳しい干ばつ被害が起きている中で、いま中国が観測史上最悪の熱波に見舞われている。そんな中国で最も深刻な打撃を受けているのは中部と南部を流れる長江流域で、約4億5000万人が生活している長江流域では、今夏に70日以上にわたって異常な高温と雨不足に襲われた。 中国の農業生産の3分の1を支える長江流域の不調は中国全体の食糧危機に直結すると言っても過言ではない事態にあって、ここへきて中国がとんでもない「対策」に出始めた。それはなんと「人工降雨」を降らせるというもの――。 当然、気候を人工的に操作するために計り知れないリスクや影響が出る可能性もある。いまいったい、何が起きているのか。そしてリスクは……? その最前線をレポートしよう』、「人工降雨」にはどんなリスクがあるのだろうか。
・『中国で、まさか「人工降雨」で連日の豪雨…! 危機感を高める長江流域の地方政府は、長引く干ばつの影響を緩和するため、人工的に雨を降らせる取り組みを開始した。 その先鞭を切ったのは例年に比べ50%以上も降水量が減った四川省だ。 四川省は8月25日から29日にかけて人工降雨の取り組みに着手したのだ。 6000平方キロメートルに及ぶ範囲で大型ドローン2機がヨウ化銀を雨雲の中に散布した結果、「恵みの雨」が降ったが、皮肉なことに今度は連日の豪雨で洪水の発生が警戒されている』、「四川省」では、「「恵みの雨」が降ったが、皮肉なことに今度は連日の豪雨で洪水の発生が警戒されている」、なかなか思うようにはいかないようだ。
・『「ヨウ化銀」をばらまく… 雲の中にヨウ化銀を散布し人工的に雨を降らせる技術は、クラウドシーデイング(雲の種まき)と呼ばれている。雲の中に雨粒の種となるヨウ化銀をばらまき、周囲の小さな水の粒を集めて大きな雨粒に成長させ、雨を降らせるというものだ。 ヨウ化銀を使って雨を降らせる技術は、1960年代に米国のゼネラル・エレクトリックの化学者によって発明された。 中国は早くからこの技術に注目し、その習得に熱心に取り組んできた。北西部の広大な乾燥地帯にこの技術で雨を降らせ、耕作地を拡大することが狙いだった(2001年から実施された「西部大開発」の原動力となった)。 2008年の北京五輪で開会式の降雨を回避するために、中国政府がヨウ化銀を積んだ多数の砲弾を発射して周辺地域に人工的に雨を降らせたことでその存在は一躍有名となった。 世界規模での気候危機が今後も多発することが予想される中で、大規模な工学的手法で猛暑や干ばつに対処する必要性が生じているが、クラウドシーデイングを始め気候改変技術の利用に伴うリスクを十分に考慮しなければならないのは言うまでもない』、「北京五輪で開会式の降雨を回避するために、中国政府がヨウ化銀を積んだ多数の砲弾を発射して周辺地域に人工的に雨を降らせた」、記憶に新しいところだ。
・『「人工降雨」、本当に大丈夫なのか? まず、第一に挙げられるのは人体や環境への悪影響だ。 ヨウ化銀から発生する有毒な銀イオンが生態系を汚染し、人体を脅かす懸念がある。中国政府は「使用されるヨウ化銀の量はわずかであり、人体などに害はない」としているが、1回に散布されるヨウ化銀はわずかでも、特定の地域で繰り返しこの技術が使用すれば、安全な基準値を超える可能性は十分にある。 この技術はトータルの降水量を変えることはできないことから、ある地域に人工的に雨を降らせると、それによって周辺地域で降水量が減るという問題もある。 中国政府は「天候に影響を与えるのは短時間で非常に限定的である」と説明しているが、ここ数年、夏の豪雨災害に悩まされてきた中国が、今年は一変して極端な雨不足となっている。筆者は気象学の専門家ではないが、気候改変技術の濫用が大本の原因なのではないかと思えてならない。 「ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきが米テキサス州で竜巻を引き起こす」というバタフライ効果が指摘される気象の世界では、わずかな人為的介入によって状態が激変することがありうるからだ』、「ヨウ化銀から発生する有毒な銀イオンが生態系を汚染し、人体を脅かす懸念がある。中国政府は「使用されるヨウ化銀の量はわずかであり、人体などに害はない」としているが、1回に散布されるヨウ化銀はわずかでも、特定の地域で繰り返しこの技術が使用すれば、安全な基準値を超える可能性は十分にある」、「この技術はトータルの降水量を変えることはできないことから、ある地域に人工的に雨を降らせると、それによって周辺地域で降水量が減るという問題もある」、「トータルの降水量を変えることはできない」、というのは初めて知った。
・『「偏西風の蛇行」に影響か…? 21世紀に入り、世界で異常気象が多発しているが、その共通の原因は偏西風(北半球の上空を西から東へ吹くジェット気流)の蛇行だ。高気圧や低気圧の移動に大きな影響を与える偏西風が大きく蛇行することで世界各地に異常気象が発生している。 偏西風の蛇行の原因は解明されていないが、中国の気候改変技術が影響しているのかもしれない。その導入の規模があまりにも巨大だからだ。 中国政府は2012年から大量の資金を投入して気候改変プログラムの開発に取り組み、「2025年までに気候改変プログラムの対象地域を550万平方キロメートルに拡大する」との方針を明らかにしている。550万平方キメートルという規模は中国の国土面積の5割以上であり、日本の国土面積の10倍以上に相当する。 米軍がベトナム戦争で人工的に雨を降らせる作戦を展開したことが問題となり、1978年に「軍事的又はその他の敵対的な気候改変技術の使用禁止に関する国際条約」が発効した。 中国もこの条約を2005年に批准したが、軍事目的ではない同国内の気候改変技術の利用にはまったく歯止めがかかっていないのが現状だ』、「偏西風の蛇行の原因は解明されていないが、中国の気候改変技術が影響しているのかもしれない。その導入の規模があまりにも巨大だからだ」、「1978年に「軍事的又はその他の敵対的な気候改変技術の使用禁止に関する国際条約」が発効した。 中国もこの条約を2005年に批准したが、軍事目的ではない同国内の気候改変技術の利用にはまったく歯止めがかかっていないのが現状だ」、「中国の気候改変技術」はまだ多くの課題を抱えたままのようだ。ついては、「2025年までに気候改変プログラムの対象地域を550万平方キロメートルに拡大する」、とはいっても「拡大」は、効果を見極めつつ、徐々に広げてもらいたいものだ。
・『対岸の火事では済まされない 気候変動が中国国内にとどまるのであれば「自業自得」だろう。 が、世界全体の気候へ悪影響を及ぼしているのあれば「対岸の火事」では済まされない。 日本を始め世界の関係機関は中国の気候改変技術についてノーマークのようだが、その動向把握にもっと真剣に取り組むべきではないだろうか。 さらに連載記事『三峡ダム「大崩壊」の原因…? 中国政府がひっそり仕込む「気象兵器」のヤバすぎる中身』では、そんな中国の“気象兵器”をめぐる最前線をレポートしよう』、この「連載記事」は2021年10月12日付けの記事だが、やや陰謀論的色彩も濃いので、ここでは紹介を省略する。
第三に、9月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「「中国の経済成長神話は崩壊しつつある」と断言できるこれだけの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/310188
・『習近平主席は、台湾侵攻のチャンスをうかがっているようにも見える。それは地政学的リスクを高める要因だ。海外投資家にとって、下落リスクの高まる人民元を保有する意義は低下している。債券などの売却資金をドルに替える海外の投資家は急速に増えている。そうした傾向は、当面続くだろう』、興味深そうだ。
・『中国の経済成長神話は崩壊しつつある ここへ来て、人民元の下落に歯止めがかからない。最大の要因として、海外投資家が人民元建ての債券などを売却していることがある。それによって、投資資金が海外に流出している。 中国人民銀行(中央銀行)は、人民元の下落阻止のため人民元の買い支えを行っているとみられる。それに伴い8月の中国の外貨準備残高は予想以上に減少した。 それでも、人民元の下落は止まらない。9月中旬には、一時、共産党政権が防衛ラインとしてきた1ドル=7.00元を下回る水準まで人民元が売られた。 今後も資金流出に歯止めがかからないと、人民元の下落基調は続く可能性が高い。資金流出の背景には、不動産バブル崩壊の負の影響が深刻化し、中国経済が一時の信認を失っていることがある。 中国の経済成長神話は、崩壊しつつあるといっても過言ではないだろう。当面、海外投資家は人民元建ての金融資産を売却し、中国本土市場からの資本逃避はさらに加速する可能性が高い』、「オンショア人民元」相場は現在、7.19ドルまで持ち直しているようだが、これは後述の「外貨の預金準備率引き下げ」の効果の可能性がある。
・『海外投資家の債券売却で人民元安が加速 9月15日、オフショア人民元(CNH)は、2020年7月以来の1ドル=7元台を付けた。翌16日には、オンショア人民元(CNY)も7元台に下落した。中国本土市場の取引が終わりロンドン時間に入ると、オフショア人民元の下落が鮮明化する場面が増えた。人民元を手放そうとする海外投資家は増え、資本流出の動きが強まっている。 中国中央国債登記結算(CCDC)によると、22年2月から6月まで5カ月連続で、海外の投資家は中国の債券を売り越した。また、国際金融協会(IIF)によると、7月も中国の債券市場からは資金が流出した。人民元建てで発行された民間不動産会社などの社債、地方政府や傘下の投資会社が発行した債券、さらには中国の国債などを手放す外国人投資家は増えている。 海外投資家が人民元を売るのは、景気後退や台湾問題などの懸念が一段と高まって、中国経済に対する信認が大きく低下しているからだ。経済面では、不動産バブル崩壊、ゼロコロナ政策、IT先端企業への締め付け強化によって、中国経済の成長率の低下は鮮明だ。 特に、不動産セクターでは社債のデフォルト懸念が急速に高まっている。不動産市況の悪化にも歯止めがかからない。8月の不動産販売額は前年同月比で22.58%減少した。減少は13カ月連続だ。土地の譲渡益は減少し、財政運営の逼迫(ひっぱく)に直面する地方政府も増えた。 ゼロコロナ政策も継続され、個人消費の回復は弱い。世界的な物価高騰によって各国の需要は下押しされ、輸出の伸びも鈍化している。共産党政権はインフラ投資の積み増しなど景気刺激策を打ち出しているが、目立った効果は出ていない。 また、習近平主席は、台湾侵攻のチャンスをうかがっているようにも見える。それは地政学的リスクを高める要因だ。海外投資家にとって、下落リスクの高まる人民元を保有する意義は低下している。債券などの売却資金をドルに替える海外の投資家は急速に増えている。そうした傾向は、当面続くだろう』、確かに「海外投資家にとって、下落リスクの高まる人民元を保有する意義は低下している。債券などの売却資金をドルに替える海外の投資家は急速に増えている。そうした傾向は、当面続くだろう」、その通りだ。
・『人民元防衛に取り組む共産党政権 習近平政権は、資金流出に伴う人民元の下落に危機感を一段と強めているはずだ。共産党政権は、「外貨預金準備率引き下げ」「口先介入」「基準値の予想外引き上げ」「基準値から2%を超える元安阻止のドル売り」などによって人民元防衛を強化している。 まず、4月に続いて9月にも中国人民銀行は、市中銀行の外貨の預金準備率を引き下げた。9月15日から8%だった外貨の預金準備率は、6%に引き下げられる。こうした措置は、人民元の為替レート下支えにつながる可能性がある。 次に、口先介入に関して、中国国家外為管理局(SAFE)は、国有銀行などに人民元売りを自粛するよう求めると報じられている。事実上の元売り手控え指示といってもよい。特に、8月下旬に米ワイオミング州で開催されたジャクソンホール会合の後、米国の金利上昇観測が急速に高まった。 その一方、中国は景気下支えのため金融緩和を強化せざるを得ない。米中の金融政策の差は、これまで以上に明確になっている。それは米ドル高・人民元安の圧力を強める。それに歯止めをかけるため、SAFEは銀行に人民元の売りを控えるよう、より強く求めているようだ。 さらに、人民銀行は9月16日まで17営業日連続で、人民元の対ドル基準値を予想外に引き上げた。何としても、人民元安に歯止めをかけるとの共産党政権の危機感は強い。 しかし、そうした防衛策をとっても、足元の人民元の売りを抑えることは難しそうだ。苦肉の策として、人民銀行は、元の買い支えを行わざるを得ない状況だ。 そうした事情もあり、8月の中国の外貨準備残高は3兆549億ドル(約441兆円)と、18年10月以来の低水準に減少した。減少額は予想を上回った。共産党政権は外貨準備減少の主たる要因はドル安によるものと説明している。それに加えて、基準値から2%を超える元安進行を阻止するためにドル売り・元買いが増えているだろう』、「9月にも中国人民銀行は、市中銀行の外貨の預金準備率を引き下げた」「こうした措置は、人民元の為替レート下支えにつながる可能性がある」、「苦肉の策として、人民銀行は、元の買い支えを行わざるを得ない状況だ。 そうした事情もあり、8月の中国の外貨準備残高は3兆549億ドル(約441兆円)と、18年10月以来の低水準に減少した。減少額は予想を上回った」、なるほど。
・『さらに厳しい状況が懸念される中国経済 今後、中国の実質ベースの国内総生産(GDP)の成長率はさらに低下する可能性が高い。特に、不動産バブル崩壊の負の影響は大きい。 これまで共産党政権は、海外からの直接投資を誘致して不動産事業の拡張や工業化を進め、地方政府にGDPの成長目標を課した。そうしたメカニズムの中で、不動産価格上昇が経済成長に重要な役割を果たしてきた。不動産バブル膨張によって、地方政府の収入源である土地譲渡益は増え、高速鉄道などのインフラ投資が積み増され、経済成長率は人為的にかさ上げされてきた。不動産投資の増加は、中国の雇用・所得環境の安定と共産党による一党独裁体制の維持に決定的に重要だった。 しかし、不動産バブル崩壊によって、共産党政権の経済運営は困難な局面を迎えつつある。過剰投資によって、資本の効率性は低下している。家計、民間企業、地方政府、金融機関まで不良債権は増えている。 民間企業などのデフォルトはさらに増加すると予想される。ウクライナ危機の発生以降、台湾問題の緊迫化などの懸念も一段と高まった。中国の生産年齢人口の減少もインドやベトナムなどに生産拠点を移転する企業の増加要因になっている。その結果、中国に投資した資金を引き揚げる海外投資家は急増している。 今後、ネットベースで中国から流出する資金はさらに増える可能性が高い。資産価格のさらなる下落や規制強化など政策の不透明感を嫌い、人民元建ての債券などを売る海外投資家は増え、資金流出はより拡大することが想定される。財産を守るため、海外に資金を移そうとする中国の国民が増えることも考えられる。 状況によっては、急速に人民元安が進んで中国の外貨準備が減少し、中国経済の本格的な後退懸念が急速に高まる展開も否定できない。海外投資家による資本逃避などによって、中国経済がさらに厳しい状況を迎える恐れは高まっている』、「過剰投資によって、資本の効率性は低下している。家計、民間企業、地方政府、金融機関まで不良債権は増えている」、「中国の生産年齢人口の減少もインドやベトナムなどに生産拠点を移転する企業の増加要因になっている。その結果、中国に投資した資金を引き揚げる海外投資家は急増」、「海外投資家による資本逃避などによって、中国経済がさらに厳しい状況を迎える恐れは高まっている」、やはり「中国の経済成長神話は崩壊しつつある」ようだ。
先ずは、9月4日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「中国で、まさか「長江が干上った」…! 習近平が焦る「ヤバすぎる異常気象」の現実と、“中国14億人”を襲う「恐ろしい悲劇」…!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/99269?imp=0
・『中国で、まさか「長江の水」が干上がった…! 世界で同時多発的に厳しい干ばつ被害が起きている。 欧州委員会は8月23日「欧州全土の6割以上が干ばつ被害を受けている。過去500年間で最悪レベルだ」との見解を示した。ライン川の水位が劇的に低下し、域内物流への影響が懸念されている。 米国でも「ホット・アンド・ドライ(高温乾燥)」と呼ばれる干ばつ型の異常気象が報告されているが、大変なことになっているのは中国である。 中国ではいま、観測史上最悪の熱波に見舞われているのだ。 そんな中国で最も深刻な打撃を受けているのは中部と南部を流れる長江流域だ。 約4億5000万人が生活している長江流域の今年の夏は、70日以上にわたって異常な高温と雨不足に襲われた。 上海のビルは一斉に明かりを消し、エアコンを使えない人々は涼を求めて地下壕に逃げたという。 さらに、長江の一部で川底が露呈するほど水位が下がったことで、600年前の仏様が発見されるなどの“異常事態”が相次いでいるのだ』、10月8日付け日経新聞でも、干ばつは続いているようだ。
・『工場停止、食糧危機…「危ない」のはこれからだ! 長江流域では電力不足で工場が操業停止に追い込まれるなど経済への悪影響がすでに出ている。 そこへきて、秋に収穫される農産物の被害が甚大になるとの危惧も生じている。 中国では秋に収穫される穀物が年間の穀物生産の75%を占めている。 中国の農業生産の3分の1を支える長江流域の不調は中国全体の食糧危機に直結すると言っても過言ではない。当然、習近平国家主席にとって頭痛の種になってきたわけだ。 さらに後編記事『習近平が、ついに「禁じ手」…! 中国の「人工雨」と「地球環境破壊」の“ヤバすぎる真実”』では、そうした中で中国が取り組み始めた「人口雨」とその危ない実態についてレポートしよう』、「中国では秋に収穫される穀物が年間の穀物生産の75%を占めている」のであれば、影響は極めて深刻だろう。
次に、この続きを、9月4日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「習近平が、ついに「禁じ手」…! 中国の「人工雨」と「地球環境破壊」の“ヤバすぎる真実”」を紹介しよう。
・『世界で同時多発的に厳しい干ばつ被害が起きている中で、いま中国が観測史上最悪の熱波に見舞われている。そんな中国で最も深刻な打撃を受けているのは中部と南部を流れる長江流域で、約4億5000万人が生活している長江流域では、今夏に70日以上にわたって異常な高温と雨不足に襲われた。 中国の農業生産の3分の1を支える長江流域の不調は中国全体の食糧危機に直結すると言っても過言ではない事態にあって、ここへきて中国がとんでもない「対策」に出始めた。それはなんと「人工降雨」を降らせるというもの――。 当然、気候を人工的に操作するために計り知れないリスクや影響が出る可能性もある。いまいったい、何が起きているのか。そしてリスクは……? その最前線をレポートしよう』、「人工降雨」にはどんなリスクがあるのだろうか。
・『中国で、まさか「人工降雨」で連日の豪雨…! 危機感を高める長江流域の地方政府は、長引く干ばつの影響を緩和するため、人工的に雨を降らせる取り組みを開始した。 その先鞭を切ったのは例年に比べ50%以上も降水量が減った四川省だ。 四川省は8月25日から29日にかけて人工降雨の取り組みに着手したのだ。 6000平方キロメートルに及ぶ範囲で大型ドローン2機がヨウ化銀を雨雲の中に散布した結果、「恵みの雨」が降ったが、皮肉なことに今度は連日の豪雨で洪水の発生が警戒されている』、「四川省」では、「「恵みの雨」が降ったが、皮肉なことに今度は連日の豪雨で洪水の発生が警戒されている」、なかなか思うようにはいかないようだ。
・『「ヨウ化銀」をばらまく… 雲の中にヨウ化銀を散布し人工的に雨を降らせる技術は、クラウドシーデイング(雲の種まき)と呼ばれている。雲の中に雨粒の種となるヨウ化銀をばらまき、周囲の小さな水の粒を集めて大きな雨粒に成長させ、雨を降らせるというものだ。 ヨウ化銀を使って雨を降らせる技術は、1960年代に米国のゼネラル・エレクトリックの化学者によって発明された。 中国は早くからこの技術に注目し、その習得に熱心に取り組んできた。北西部の広大な乾燥地帯にこの技術で雨を降らせ、耕作地を拡大することが狙いだった(2001年から実施された「西部大開発」の原動力となった)。 2008年の北京五輪で開会式の降雨を回避するために、中国政府がヨウ化銀を積んだ多数の砲弾を発射して周辺地域に人工的に雨を降らせたことでその存在は一躍有名となった。 世界規模での気候危機が今後も多発することが予想される中で、大規模な工学的手法で猛暑や干ばつに対処する必要性が生じているが、クラウドシーデイングを始め気候改変技術の利用に伴うリスクを十分に考慮しなければならないのは言うまでもない』、「北京五輪で開会式の降雨を回避するために、中国政府がヨウ化銀を積んだ多数の砲弾を発射して周辺地域に人工的に雨を降らせた」、記憶に新しいところだ。
・『「人工降雨」、本当に大丈夫なのか? まず、第一に挙げられるのは人体や環境への悪影響だ。 ヨウ化銀から発生する有毒な銀イオンが生態系を汚染し、人体を脅かす懸念がある。中国政府は「使用されるヨウ化銀の量はわずかであり、人体などに害はない」としているが、1回に散布されるヨウ化銀はわずかでも、特定の地域で繰り返しこの技術が使用すれば、安全な基準値を超える可能性は十分にある。 この技術はトータルの降水量を変えることはできないことから、ある地域に人工的に雨を降らせると、それによって周辺地域で降水量が減るという問題もある。 中国政府は「天候に影響を与えるのは短時間で非常に限定的である」と説明しているが、ここ数年、夏の豪雨災害に悩まされてきた中国が、今年は一変して極端な雨不足となっている。筆者は気象学の専門家ではないが、気候改変技術の濫用が大本の原因なのではないかと思えてならない。 「ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきが米テキサス州で竜巻を引き起こす」というバタフライ効果が指摘される気象の世界では、わずかな人為的介入によって状態が激変することがありうるからだ』、「ヨウ化銀から発生する有毒な銀イオンが生態系を汚染し、人体を脅かす懸念がある。中国政府は「使用されるヨウ化銀の量はわずかであり、人体などに害はない」としているが、1回に散布されるヨウ化銀はわずかでも、特定の地域で繰り返しこの技術が使用すれば、安全な基準値を超える可能性は十分にある」、「この技術はトータルの降水量を変えることはできないことから、ある地域に人工的に雨を降らせると、それによって周辺地域で降水量が減るという問題もある」、「トータルの降水量を変えることはできない」、というのは初めて知った。
・『「偏西風の蛇行」に影響か…? 21世紀に入り、世界で異常気象が多発しているが、その共通の原因は偏西風(北半球の上空を西から東へ吹くジェット気流)の蛇行だ。高気圧や低気圧の移動に大きな影響を与える偏西風が大きく蛇行することで世界各地に異常気象が発生している。 偏西風の蛇行の原因は解明されていないが、中国の気候改変技術が影響しているのかもしれない。その導入の規模があまりにも巨大だからだ。 中国政府は2012年から大量の資金を投入して気候改変プログラムの開発に取り組み、「2025年までに気候改変プログラムの対象地域を550万平方キロメートルに拡大する」との方針を明らかにしている。550万平方キメートルという規模は中国の国土面積の5割以上であり、日本の国土面積の10倍以上に相当する。 米軍がベトナム戦争で人工的に雨を降らせる作戦を展開したことが問題となり、1978年に「軍事的又はその他の敵対的な気候改変技術の使用禁止に関する国際条約」が発効した。 中国もこの条約を2005年に批准したが、軍事目的ではない同国内の気候改変技術の利用にはまったく歯止めがかかっていないのが現状だ』、「偏西風の蛇行の原因は解明されていないが、中国の気候改変技術が影響しているのかもしれない。その導入の規模があまりにも巨大だからだ」、「1978年に「軍事的又はその他の敵対的な気候改変技術の使用禁止に関する国際条約」が発効した。 中国もこの条約を2005年に批准したが、軍事目的ではない同国内の気候改変技術の利用にはまったく歯止めがかかっていないのが現状だ」、「中国の気候改変技術」はまだ多くの課題を抱えたままのようだ。ついては、「2025年までに気候改変プログラムの対象地域を550万平方キロメートルに拡大する」、とはいっても「拡大」は、効果を見極めつつ、徐々に広げてもらいたいものだ。
・『対岸の火事では済まされない 気候変動が中国国内にとどまるのであれば「自業自得」だろう。 が、世界全体の気候へ悪影響を及ぼしているのあれば「対岸の火事」では済まされない。 日本を始め世界の関係機関は中国の気候改変技術についてノーマークのようだが、その動向把握にもっと真剣に取り組むべきではないだろうか。 さらに連載記事『三峡ダム「大崩壊」の原因…? 中国政府がひっそり仕込む「気象兵器」のヤバすぎる中身』では、そんな中国の“気象兵器”をめぐる最前線をレポートしよう』、この「連載記事」は2021年10月12日付けの記事だが、やや陰謀論的色彩も濃いので、ここでは紹介を省略する。
第三に、9月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「「中国の経済成長神話は崩壊しつつある」と断言できるこれだけの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/310188
・『習近平主席は、台湾侵攻のチャンスをうかがっているようにも見える。それは地政学的リスクを高める要因だ。海外投資家にとって、下落リスクの高まる人民元を保有する意義は低下している。債券などの売却資金をドルに替える海外の投資家は急速に増えている。そうした傾向は、当面続くだろう』、興味深そうだ。
・『中国の経済成長神話は崩壊しつつある ここへ来て、人民元の下落に歯止めがかからない。最大の要因として、海外投資家が人民元建ての債券などを売却していることがある。それによって、投資資金が海外に流出している。 中国人民銀行(中央銀行)は、人民元の下落阻止のため人民元の買い支えを行っているとみられる。それに伴い8月の中国の外貨準備残高は予想以上に減少した。 それでも、人民元の下落は止まらない。9月中旬には、一時、共産党政権が防衛ラインとしてきた1ドル=7.00元を下回る水準まで人民元が売られた。 今後も資金流出に歯止めがかからないと、人民元の下落基調は続く可能性が高い。資金流出の背景には、不動産バブル崩壊の負の影響が深刻化し、中国経済が一時の信認を失っていることがある。 中国の経済成長神話は、崩壊しつつあるといっても過言ではないだろう。当面、海外投資家は人民元建ての金融資産を売却し、中国本土市場からの資本逃避はさらに加速する可能性が高い』、「オンショア人民元」相場は現在、7.19ドルまで持ち直しているようだが、これは後述の「外貨の預金準備率引き下げ」の効果の可能性がある。
・『海外投資家の債券売却で人民元安が加速 9月15日、オフショア人民元(CNH)は、2020年7月以来の1ドル=7元台を付けた。翌16日には、オンショア人民元(CNY)も7元台に下落した。中国本土市場の取引が終わりロンドン時間に入ると、オフショア人民元の下落が鮮明化する場面が増えた。人民元を手放そうとする海外投資家は増え、資本流出の動きが強まっている。 中国中央国債登記結算(CCDC)によると、22年2月から6月まで5カ月連続で、海外の投資家は中国の債券を売り越した。また、国際金融協会(IIF)によると、7月も中国の債券市場からは資金が流出した。人民元建てで発行された民間不動産会社などの社債、地方政府や傘下の投資会社が発行した債券、さらには中国の国債などを手放す外国人投資家は増えている。 海外投資家が人民元を売るのは、景気後退や台湾問題などの懸念が一段と高まって、中国経済に対する信認が大きく低下しているからだ。経済面では、不動産バブル崩壊、ゼロコロナ政策、IT先端企業への締め付け強化によって、中国経済の成長率の低下は鮮明だ。 特に、不動産セクターでは社債のデフォルト懸念が急速に高まっている。不動産市況の悪化にも歯止めがかからない。8月の不動産販売額は前年同月比で22.58%減少した。減少は13カ月連続だ。土地の譲渡益は減少し、財政運営の逼迫(ひっぱく)に直面する地方政府も増えた。 ゼロコロナ政策も継続され、個人消費の回復は弱い。世界的な物価高騰によって各国の需要は下押しされ、輸出の伸びも鈍化している。共産党政権はインフラ投資の積み増しなど景気刺激策を打ち出しているが、目立った効果は出ていない。 また、習近平主席は、台湾侵攻のチャンスをうかがっているようにも見える。それは地政学的リスクを高める要因だ。海外投資家にとって、下落リスクの高まる人民元を保有する意義は低下している。債券などの売却資金をドルに替える海外の投資家は急速に増えている。そうした傾向は、当面続くだろう』、確かに「海外投資家にとって、下落リスクの高まる人民元を保有する意義は低下している。債券などの売却資金をドルに替える海外の投資家は急速に増えている。そうした傾向は、当面続くだろう」、その通りだ。
・『人民元防衛に取り組む共産党政権 習近平政権は、資金流出に伴う人民元の下落に危機感を一段と強めているはずだ。共産党政権は、「外貨預金準備率引き下げ」「口先介入」「基準値の予想外引き上げ」「基準値から2%を超える元安阻止のドル売り」などによって人民元防衛を強化している。 まず、4月に続いて9月にも中国人民銀行は、市中銀行の外貨の預金準備率を引き下げた。9月15日から8%だった外貨の預金準備率は、6%に引き下げられる。こうした措置は、人民元の為替レート下支えにつながる可能性がある。 次に、口先介入に関して、中国国家外為管理局(SAFE)は、国有銀行などに人民元売りを自粛するよう求めると報じられている。事実上の元売り手控え指示といってもよい。特に、8月下旬に米ワイオミング州で開催されたジャクソンホール会合の後、米国の金利上昇観測が急速に高まった。 その一方、中国は景気下支えのため金融緩和を強化せざるを得ない。米中の金融政策の差は、これまで以上に明確になっている。それは米ドル高・人民元安の圧力を強める。それに歯止めをかけるため、SAFEは銀行に人民元の売りを控えるよう、より強く求めているようだ。 さらに、人民銀行は9月16日まで17営業日連続で、人民元の対ドル基準値を予想外に引き上げた。何としても、人民元安に歯止めをかけるとの共産党政権の危機感は強い。 しかし、そうした防衛策をとっても、足元の人民元の売りを抑えることは難しそうだ。苦肉の策として、人民銀行は、元の買い支えを行わざるを得ない状況だ。 そうした事情もあり、8月の中国の外貨準備残高は3兆549億ドル(約441兆円)と、18年10月以来の低水準に減少した。減少額は予想を上回った。共産党政権は外貨準備減少の主たる要因はドル安によるものと説明している。それに加えて、基準値から2%を超える元安進行を阻止するためにドル売り・元買いが増えているだろう』、「9月にも中国人民銀行は、市中銀行の外貨の預金準備率を引き下げた」「こうした措置は、人民元の為替レート下支えにつながる可能性がある」、「苦肉の策として、人民銀行は、元の買い支えを行わざるを得ない状況だ。 そうした事情もあり、8月の中国の外貨準備残高は3兆549億ドル(約441兆円)と、18年10月以来の低水準に減少した。減少額は予想を上回った」、なるほど。
・『さらに厳しい状況が懸念される中国経済 今後、中国の実質ベースの国内総生産(GDP)の成長率はさらに低下する可能性が高い。特に、不動産バブル崩壊の負の影響は大きい。 これまで共産党政権は、海外からの直接投資を誘致して不動産事業の拡張や工業化を進め、地方政府にGDPの成長目標を課した。そうしたメカニズムの中で、不動産価格上昇が経済成長に重要な役割を果たしてきた。不動産バブル膨張によって、地方政府の収入源である土地譲渡益は増え、高速鉄道などのインフラ投資が積み増され、経済成長率は人為的にかさ上げされてきた。不動産投資の増加は、中国の雇用・所得環境の安定と共産党による一党独裁体制の維持に決定的に重要だった。 しかし、不動産バブル崩壊によって、共産党政権の経済運営は困難な局面を迎えつつある。過剰投資によって、資本の効率性は低下している。家計、民間企業、地方政府、金融機関まで不良債権は増えている。 民間企業などのデフォルトはさらに増加すると予想される。ウクライナ危機の発生以降、台湾問題の緊迫化などの懸念も一段と高まった。中国の生産年齢人口の減少もインドやベトナムなどに生産拠点を移転する企業の増加要因になっている。その結果、中国に投資した資金を引き揚げる海外投資家は急増している。 今後、ネットベースで中国から流出する資金はさらに増える可能性が高い。資産価格のさらなる下落や規制強化など政策の不透明感を嫌い、人民元建ての債券などを売る海外投資家は増え、資金流出はより拡大することが想定される。財産を守るため、海外に資金を移そうとする中国の国民が増えることも考えられる。 状況によっては、急速に人民元安が進んで中国の外貨準備が減少し、中国経済の本格的な後退懸念が急速に高まる展開も否定できない。海外投資家による資本逃避などによって、中国経済がさらに厳しい状況を迎える恐れは高まっている』、「過剰投資によって、資本の効率性は低下している。家計、民間企業、地方政府、金融機関まで不良債権は増えている」、「中国の生産年齢人口の減少もインドやベトナムなどに生産拠点を移転する企業の増加要因になっている。その結果、中国に投資した資金を引き揚げる海外投資家は急増」、「海外投資家による資本逃避などによって、中国経済がさらに厳しい状況を迎える恐れは高まっている」、やはり「中国の経済成長神話は崩壊しつつある」ようだ。
タグ:(その17)(中国で まさか「長江が干上った」…! 習近平が焦る「ヤバすぎる異常気象」の現実と “中国14億人”を襲う「恐ろしい悲劇」…!、習近平が ついに「禁じ手」…! 中国の「人工雨」と「地球環境破壊」の“ヤバすぎる真実”、「中国の経済成長神話は崩壊しつつある」と断言できるこれだけの理由) 中国経済 現代ビジネス 藤 和彦氏による「中国で、まさか「長江が干上った」…! 習近平が焦る「ヤバすぎる異常気象」の現実と、“中国14億人”を襲う「恐ろしい悲劇」…!」 10月8日付け日経新聞でも、干ばつは続いているようだ。 「中国では秋に収穫される穀物が年間の穀物生産の75%を占めている」のであれば、影響は極めて深刻だろう。 藤 和彦氏による「習近平が、ついに「禁じ手」…! 中国の「人工雨」と「地球環境破壊」の“ヤバすぎる真実”」 「人工降雨」にはどんなリスクがあるのだろうか。 「四川省」では、「「恵みの雨」が降ったが、皮肉なことに今度は連日の豪雨で洪水の発生が警戒されている」、なかなか思うようにはいかないようだ。 「北京五輪で開会式の降雨を回避するために、中国政府がヨウ化銀を積んだ多数の砲弾を発射して周辺地域に人工的に雨を降らせた」、記憶に新しいところだ。 「ヨウ化銀から発生する有毒な銀イオンが生態系を汚染し、人体を脅かす懸念がある。中国政府は「使用されるヨウ化銀の量はわずかであり、人体などに害はない」としているが、1回に散布されるヨウ化銀はわずかでも、特定の地域で繰り返しこの技術が使用すれば、安全な基準値を超える可能性は十分にある」、「この技術はトータルの降水量を変えることはできないことから、ある地域に人工的に雨を降らせると、それによって周辺地域で降水量が減るという問題もある」、「トータルの降水量を変えることはできない」、というのは初めて知った。 「偏西風の蛇行の原因は解明されていないが、中国の気候改変技術が影響しているのかもしれない。その導入の規模があまりにも巨大だからだ」、「1978年に「軍事的又はその他の敵対的な気候改変技術の使用禁止に関する国際条約」が発効した。 中国もこの条約を2005年に批准したが、軍事目的ではない同国内の気候改変技術の利用にはまったく歯止めがかかっていないのが現状だ」、 「中国の気候改変技術」はまだ多くの課題を抱えたままのようだ。ついては、「2025年までに気候改変プログラムの対象地域を550万平方キロメートルに拡大する」、とはいっても「拡大」は、効果を見極めつつ、徐々に広げてもらいたいものだ。 この「連載記事」は2021年10月12日付けの記事だが、やや陰謀論的色彩も濃いので、ここでは紹介を省略する。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫氏による「「中国の経済成長神話は崩壊しつつある」と断言できるこれだけの理由」 「オンショア人民元」相場は現在、7.19ドルまで持ち直しているようだが、これは後述の「外貨の預金準備率引き下げ」の効果の可能性がある。 確かに「海外投資家にとって、下落リスクの高まる人民元を保有する意義は低下している。債券などの売却資金をドルに替える海外の投資家は急速に増えている。そうした傾向は、当面続くだろう」、その通りだ。 「9月にも中国人民銀行は、市中銀行の外貨の預金準備率を引き下げた」「こうした措置は、人民元の為替レート下支えにつながる可能性がある」、「苦肉の策として、人民銀行は、元の買い支えを行わざるを得ない状況だ。 そうした事情もあり、8月の中国の外貨準備残高は3兆549億ドル(約441兆円)と、18年10月以来の低水準に減少した。減少額は予想を上回った」、なるほど。 「過剰投資によって、資本の効率性は低下している。家計、民間企業、地方政府、金融機関まで不良債権は増えている」、「中国の生産年齢人口の減少もインドやベトナムなどに生産拠点を移転する企業の増加要因になっている。その結果、中国に投資した資金を引き揚げる海外投資家は急増」、 「海外投資家による資本逃避などによって、中国経済がさらに厳しい状況を迎える恐れは高まっている」、やはり「中国の経済成長神話は崩壊しつつある」ようだ。
中国経済(その16)(中国で「住宅ローン支払い拒否宣言」続出の理由 救済が待たれる事情とは、中国で「不動産バブル崩壊・失業」が深刻化 習近平政権は正念場に、中国の高度経済成長 予想より早く終わる可能性 成長を押し下げる中長期的構造要因と日本企業の対応策) [世界経済]
中国経済については、7月10日に取上げた。今日は、(その16)(中国で「住宅ローン支払い拒否宣言」続出の理由 救済が待たれる事情とは、中国で「不動産バブル崩壊・失業」が深刻化 習近平政権は正念場に、中国の高度経済成長 予想より早く終わる可能性 成長を押し下げる中長期的構造要因と日本企業の対応策)である。
先ずは、7月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーランスライターのふるまいよしこ氏による「中国で「住宅ローン支払い拒否宣言」続出の理由、救済が待たれる事情とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307181
・『中国各地で、建設途中のマンションで工事が止まったまま放置されるという事態が起きている。全国に300以上あるという未完成マンションの中でも多いのが、経営危機に陥った恒大グループが関わっている開発案件だという。できる見込みがないマンションでもローンは払わねばならず、補償もされないため、中には「不払い宣言」をする人も……中国の不動産界隈で何が起こっているのか』、「中国の不動産」事情に疎い我々にとっては興味深そうだ。
・『中国で300以上のマンションが、未完成のまま放置されている 中国で「爛尾楼」(らんびろう)騒ぎが拡大中だ。 「爛尾」とは「尾っぽ部分がずさん」という意味で、「爛尾楼」は「尻切れトンボ状態になった不動産」を指す。つまり、建設途中に開発業者の資金がショートしてしまい、未完成のまま放置されているマンションのことだ。そんな爛尾楼が、中国各地ですでに300以上あることが分かっている。 近年、中国政府も過熱が続く不動産ブームを抑制すべく、2軒目、3軒目購入には頭金を引き上げたり、銀行ローンに規制をかけたりしてきた。だが、それでもやすやすとそのハードルを超えたり、さらには住宅購入のためにわざわざ離婚手続きまでとって(元)家族が別々に不動産を購入したりするなど、文字通りの「上には政策、下には対策」※が展開されてきた。 ※「上有政策、下有対策」。中国のことわざで、政府がいかに政策を施行しても、庶民は何らかの対策を編み出して政策を骨抜きにする、という意味。 しかし同じタイミングでコロナ対策による都市封鎖や行動規制が繰り返されて、消費意欲が激減してしまった。慌てた政府は今年に入って積極的に不動産開発用地の競売を進めているが、当の不動産開発業者がここにきて青息吐息になっていることが報告されている』、「不動産開発業者がここにきて青息吐息になっている」、これではテコ入れは難しそうだ。
・『恒大グループの債務危機がきっかけに 香港の不動産王が中国市場から撤退するなどの動きから業界内では静かに「バブル崩壊」が長年語られ続けていたが、目に見える形で事態が人々の前に現れたのは、昨年一挙に噴き出した、不動産開発の大手「恒大グループ」の債務危機がきっかけだった。 恒大といえば、創設者でグループ会長の許家印氏は中国の富豪トップランキングの常連。ほんの数年前までは、国内の人気サッカークラブを所有し、一時はそのクラブとヨーロッパの名門サッカークラブ「レアル・マドリード」が提携するなど、本業以外にも派手なパフォーマンスで注目されていた。ところが昨年春からささやかれていた「恒大不安」が9月になって事実上のデフォルトへと発展、あっという間に大騒ぎになった。 現在「爛尾楼」物件としてリストアップされているマンションのうち、4分の1、あるいは3分の1が恒大グループの開発マンションという報道もある。こうした報道が引き起こした連鎖反応もさることながら、その他にもともと「あまり良いうわさのなかった開発業者」がコロナ対策期間中に資金崩れを起こしたのだ。 経済メディア「財新網」によると、分かっているだけで「爛尾楼」の総面積は2.31億平方メートル、今年上半期における全国住宅不動産市場の3.85%を占めている。さらにそんな「爛尾楼」関連のローン規模は0.9兆元(約18兆円)と、全国の金融機関ローン残高の1.7%に当たるとされる』、「「爛尾楼」の総面積は2.31億平方メートル、今年上半期における全国住宅不動産市場の3.85%を占めている」、比重が予想以上に大きいのには驚かされた。
・『被害者たちが「ローン不払い」宣言 爛尾楼の被害者たちはこれまでも、開発業者、銀行、地方政府に陳情を繰り返してきた。しかし何の進展もなく、逆に拘束されてしまうことも日常茶飯事だった。だが、とうとう不満を爆発させた江西省のマンション購入者たちがこの6月末に、「ローン不払い」声明を銀行や政府の不動産政策担当局に送りつけたことが報道されるや、またたくまに他の地区の爛尾楼被害者たちにも広がり、各地で「ローン不払い」宣言が行われた。 すると、それまで「爛尾楼」騒ぎに対して知らん顔をしてきた金融業界もにわかに慌て始め、それと同時に政府当局が対策に乗り出し始めたことで、やっと事態が注目を集めるようになったのだ』、腰の重い「金融業界」や「政府当局」を動かすには、「「ローン不払い」宣言」のようなショック療法も必要だったようだ。
・『原因は、中国ではおなじみの「住宅プレ販売」制度 爛尾楼騒ぎの根本的な原因は、中国ではすっかりおなじみの不動産販売手法になっている「住宅プレ販売制度」にある。開発業者は美麗なモデルルームと完成図で客を引き寄せ、まだ建設予定地は基礎工事も済んでいない状況から、熱心に販売を開始する。 一般的に、こうしたプレ販売でマンションを購入すると、現物購入(=完成後購入)よりも選択肢が広く、また希望の間取りや内装も簡単に実現でき、さらには10~20%安になるとうたわれているために、マイホーム、あるいは投機のための住宅購入を考える人たちは、さっさと頭金を払ってローンを組む。あとはローンを払いながら、1~2年後のマンションの完成を待つだけである。 開発業者はプレ販売に力を入れ、建物を建設する前にその売却金を先に手に入れることができる。手に入れた資金を元に次の建設予定地を買い付け、そこに建設するマンションの図面とモデルルームで再びプレ販売をし……という自転車操業が繰り返されてきた。 しかし、コロナがこの自転車のチェーンを叩き切った。社会的な不安や失業の懸念、収入の減少などから消費者の不動産購買欲が減退、大型消費を控え始めたことでプレ販売が進まず、予想された資金が開発業者に入らなくなり、そして資金がショートし、デフォルトを起こす。その結果、建設が止まった。 建設が止まっても、購入者は金融機関と交わした契約通り、でき上がるはずのマンションを夢見てローンを支払い続けなければならない。コロナの地区封鎖や強制隔離の影響で工事が遅れ、引き渡し時期がずれ込む程度ならまだ良いほうで、どう見ても現地の建設作業が止まっている場合、購入者たちは当然不安にかられる。開発業者に問い合わせてもらちが明かない、あるいはすでに開発業者と連絡が取れなくなっている……これが大規模な爛尾楼騒ぎへと発展した。 中にはもう、元の開発業者との対応を諦め、一方で自分の購入した物件・権利をどこか他の業者が買い取ったり、工事を続けたりしてくれないか探し求めるケースもあるという。もっと悲惨なのは、自分が購入した階や建物まで建設が進まないまま中断してしまったケースだ。毎月生活を切り詰めて契約通りにローンを支払い続けているのに、自分が買ったはずのマイホームは中空に浮いたまま……』、「プレ販売でマンションを購入すると、現物購入(=完成後購入)よりも選択肢が広く、また希望の間取りや内装も簡単に実現でき、さらには10~20%安になるとうたわれているために、マイホーム、あるいは投機のための住宅購入を考える人たちは、さっさと頭金を払ってローンを組む。あとはローンを払いながら、1~2年後のマンションの完成を待つだけである。 開発業者はプレ販売に力を入れ、建物を建設する前にその売却金を先に手に入れることができる」、「コロナがこの自転車のチェーンを叩き切った。社会的な不安や失業の懸念、収入の減少などから消費者の不動産購買欲が減退、大型消費を控え始めたことでプレ販売が進まず、予想された資金が開発業者に入らなくなり、そして資金がショートし、デフォルトを起こす。その結果、建設が止まった」、「建設が止まっても、購入者は金融機関と交わした契約通り、でき上がるはずのマンションを夢見てローンを支払い続けなければならない」、購入者保護の仕組みが殆どないリスキーな手法だ。
・『プレ販売制度は、都合のいい部分だけ香港から輸入された手法 こうしたプレ販売制度は本来、香港から導入されたシステムだったといわれる。だが、多くの報道が指摘するように、参考にされた香港の制度は「半分だけ」で、香港がかつての経験から培ったバックアップ体制の残り半分は中国には導入されなかった。 例えば、香港ではプレ販売で得た顧客側の支払いを、開発業者が直接、懐に入れることはできない。銀行と開発業者の間で信託基金が作られ、そこにプールされるのである。 もし業者が建設中に資金不足となれば、それをもとに銀行から融資を受けることができる。業者が不動産代金全額を手に入れられるのは、物件が完成し、正式な引き渡し完了が証明されたあと。開発業者は不動産建設の前にそれにふさわしい資金をもっていることが証明されなければ、香港政府が建設許可を出さない仕組みにもなっている。) また香港では開発業者は土地を手に入れた時点で、政府にその地代を全額一括で支払わなければならない。このため、中国のように土地の所在地である地方政府と使用権を得た開発業者が、「開発」を挟んで持ちつ持たれつの曖昧な関係を取ることはできない。 こうした爛尾楼防止策はすべて、中国への導入時には無視された。プレ販売した購入代金はそのままするりと開発業者の口座に入り、銀行は別途購入者と結んだローン契約に従って粛々とローンを回収するスタイルが一般化された。そのため、銀行側にも業者に対する責任感が非常に薄かった』、「こうした爛尾楼防止策はすべて、中国への導入時には無視された。プレ販売した購入代金はそのままするりと開発業者の口座に入り、銀行は別途購入者と結んだローン契約に従って粛々とローンを回収するスタイルが一般化された。そのため、銀行側にも業者に対する責任感が非常に薄かった」、香港の仕組みのうち、「ローン契約」者保護につながる部分が無視されて導入したとは、初めから欠陥のある制度だったようだ。
・『「ローン不払い」宣言には大きな危険が伴う 今回の「ローン不払い」運動は、そんな不良開発業者とローン提携を結んだことへの責任は銀行にあると突きつけたものだ。 だが、この「ローン不払い」を実行すると、購買者も大きな枷(かせ)を負う。というのも、今やデータによる「信用クレジット」が大きく生活に影響する中国で、「ローン踏み倒し」は間違いなくネガティブ評価になるからだ。そうなれば銀行業務以外にも、高速鉄道や飛行機のチケットすら買えなくなる恐れもある。 なぜそんな危険を冒してまで「ローンを踏み倒す」と宣言するのか? そこには、「生活を切り詰めて切り詰めて、やっと家を買ったと思ったら、それが爛尾楼だった。このままローン支払いで未来もない切り詰め生活を送り続けるのと、個人クレジットに黒がつくのとどっちが大変だと思う?」というギリギリの追い詰められた思いがあった』、「個人クレジットに黒が」ついてでも、「「ローン不払い」を実行」する覚悟でやっているようだ。
・『プレ販売に代わり、現物販売の導入が始まった 実は政府もこの爛尾楼問題にはとっくに気がついていたようだ。 というのも、すでに昨年あたりから各地方政府が、住宅用地競売参加条件に不動産開発業者に「現物販売」を義務付け始めていたことが、その後の報道から明らかになってきたからだ。 プレ販売に代わり最も早く「現物販売」が導入されたのは、中国最南端にある島まるごと新しく開発が進む海南省で、2020年3月から「新たに土地を取得して建設される商品不動産は現物販売制度とする」ことが不動産開発政策に明記されている。もちろん、現物とは水道、電気、ガス、通信設備がすべて揃った状態のことを指す。 だが、昨年4月に同様の義務付けを行った浙江省では、その数カ月後に不動産用地10地区の競売がすべて流札となったと大きく報道された。それでも、今後この方法は進められるはずで、北京市や杭州市などの住宅需要の高い大都市でも導入される予定だという。 そんなところに7月下旬、中国国務院(内閣に相当)が3000億元(約6兆円)を投じて政府肝いりの不動産基金を設立することを決めたと、ロイターがすっぱ抜いた。 記事によると、政府と中央銀行、そして中国建設銀行などの主要国有銀行がそれぞれ資金を出し合う形で約3000億元を集め、爛尾楼を買い取って完成させてから政府の賃貸住宅にするという。明らかに危機に瀕している主要不動産開発業者と銀行の共倒れ回避策だ。 しかし、この報道を読んで不安になった。そこにはマイホームの夢を見て、頭金を手渡し、ローンを支払い続けている人たちへの救済については触れられていない。またもや個人は見捨てられてしまうのか? 爛尾楼事件の今後が気がかりである』、「不動産基金」の行方、「爛尾楼事件」での「個人債務者」の動向を注視していきたい。
次に、8月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「中国で「不動産バブル崩壊・失業」が深刻化、習近平政権は正念場に」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307365
・『中国で不動産バブルの後始末が深刻化している。大手デベロッパーは資産売却を加速しているが、資産価格の下落スピードはそれを上回る。習近平政権は銀行に不動産業界向けの融資を増やすよう規制を緩めているが、相場底打ちの兆しが見えない。1~6月期の不動産開発投資は前年同期比5.4%減り、分譲住宅の売上高は同28.9%も減少した。懸念されるのが失業の増加だ。6月、中国の若年層(16~24歳)の調査失業率は19.30%に上昇、調査開始以来最高だった』、確かに「不動産バブルの後始末」は「深刻」なようだ。
・『深刻化する不動産バブル崩壊の後始末 企業業績が悪化、失業率は上昇する 中国経済が、かなり厳しい状況を迎えている。主因は不動産バブル崩壊だ。共産党政権の厳格な融資規制は、人々のリスク許容度を急低下させた。債務問題は悪化している。 加えて、ゼロコロナ政策は建設活動を停滞させている。他方、成長期待の高いIT先端企業の規制強化が先行き懸念をさらに高める。それらの結果として、若年層を中心に失業者が急増。ローンの返済を拒む住宅購入者も急増している。 地方政府の財政悪化も鮮明だ。債務返済の延期を銀行に求める地方政府まで、出現しはじめた。 中国の不動産バブルの後始末は拡大するだろう。今後、大手不動産デベロッパーの資金繰りはさらに行き詰まる可能性が高い。ゼロコロナ政策も続き、個人消費は減少基調で推移する。 他方、世界のインフレも深刻だ。中国企業のコストプッシュ圧力は一段と強まり、企業業績は悪化するだろう。生き残りをかけて多くの企業が雇用を削減せざるを得なくなり、若年層を中心に失業率は追加的に上昇するだろう。失業問題は、共産党政権にとって無視できない問題だ』、秋の共産党大会を控えて指導部もヒヤヒヤだろう。
・『長きにわたる不動産バブル膨張「三つのレッドライン」導入後の誤算 中国で不動産バブルの後始末が深刻化している。長い期間にわたって、中国では不動産バブルが膨張した。根底には、共産党の経済政策があった。 共産党指導部は地方政府に経済成長目標を課す。達成のために地方の共産党幹部は土地の利用権を中国恒大集団(エバーグランデ)などのデベロッパーに売却する。それは地方政府の主要財源となった。デベロッパーはマンションを建設する。建設活動の増加が、雇用を生み出し、建材の需要も増える。インフラ投資も加速する。 そうして地方政府はGDP成長率目標を達成し、幹部は出世を遂げた。中国全体で「党の指示に従えば豊かになれる」という価値観が形成され、「不動産価格は上昇し続ける」という神話が出来上がった。さらに、リーマンショック後は世界的なカネ余りが価格上昇を支えた。上がるから買う、買うから上がる、という根拠なき熱狂が不動産バブルを膨張させた。 しかし、いつまでも価格が上昇し続けることはない。2020年8月、共産党政権は「三つのレッドライン」を導入。金融機関は不動産デベロッパー向けの融資を減らし、デベロッパーは資産売却による資金捻出に追い込まれた。そうすることで共産党政権は経済全体での債務残高を削減し、資産価格の過熱を解消しようとした。 問題は、三つのレッドラインが想定以上の負の影響を経済に与えたことだ。急速な融資規制は神話を打ち壊し、不動産バブルは崩壊した。それ以降、売るから下がる、下がるから売るという負の連鎖が止まらない。 エバーグランデなどは資産売却を加速しているが、資産価格の下落スピードはそれを上回る。習近平政権は銀行に不動産業界向けの融資を増やすよう規制を緩めているが、相場底打ちの兆しが見えない。1~6月期の不動産開発投資は前年同期比5.4%減り、分譲住宅の売上高は同28.9%も減少した。不良債権問題が深刻化し始めている』、「習近平政権は銀行に不動産業界向けの融資を増やすよう規制を緩めているが、相場底打ちの兆しが見えない」、一旦、下落を始めたのを政策的にテコ入れしようとしても、上手くはいかないものだ。
・『企業・個人・地方政府に拡大する不良債権問題 不良債権問題を三つに分けて考えてみる。まず、企業に関して。エバーグランデなど大手のデフォルト(債務不履行)が相次いでいる。銀行セクターでは、ずさんなリスク管理の実態が浮上した。 河南省では41万人の銀行預金が凍結された。貸し倒れ、担保資産の価値急落によって、銀行の資金繰りが急激に悪化している。同省では3000人が参加して、預金の支払いを求めるデモが起きた。取り付け騒ぎだ。それを阻止しようとした当局との衝突も発生した。 中国の金融システムの現況は、わが国の1990年代中頃を想起させる。連鎖倒産が起き、不良債権は雪だるま式に増え、金融システムの不安定感が高まる一連の流れだ。 次に、個人(家計)について。住宅ローンの返済拒否が増加している。例えば江西省では、不動産デベロッパーが経営体力を失ったせいで、1年以上建設が止まったままのマンションがある。ゼロコロナ政策も拍車をかけて、建設現場に作業員が集まることすら難しい。一部の購入者は、10月までに工事が再開されない場合、翌月から返済を停止すると表明した。購入した住宅がいつ完成するのか、不安視する人が増えるのは当然だ。支払い拒否は、他の地域でも急増している。 最後に、地方政府の返済能力が低下している問題だ。一例として、貴州省政府は債務返済の先送りを金融機関に求め始めた。鉄道などインフラ事業の収益性は低く、土地利用権の売却収入も減っている。結果、同省政府は債務返済負担に耐えられなくなったようだ。 インフラ投資積み増しのために債権発行などを増やす地方政府が増えている。債権者に返済期間の延長、さらには一部債務減免(ヘアカット)を求める地方政府が急増する可能性が高まっている。 かくして、「灰色のサイ」と呼ばれる中国の債務問題は深刻化している』、「深刻」さは日本のバブル期の「債務問題」をはるかに上回るようだ。
・『失業問題の深刻化 貧富の格差拡大も避けられない 懸念されるのが失業の増加だ。6月、中国の若年層(16~24歳)の調査失業率は19.30%に上昇、調査開始以来最高だった。建国以来で見ても、新卒学生を取り巻く雇用環境は最悪だろう。中国人留学生の中には、帰国せず日本での就職を目指す者が多い。 今後、中国では銀行の貸しはがしや貸し渋りが増える。不動産をはじめ民間企業の資金繰りは切迫する。ウクライナ危機をきっかけに、世界全体でインフレも深刻だ。中国では生き残りをかけてリストラに踏み切る企業が増え、若年層を中心に失業率は上昇するだろう。となると、共産党政権に不満を持つ人が増える展開が予想される。 その展開を回避するために、習政権は高速鉄道などの公共事業を積み増すだろう。しかし、経済全体で資本効率性は低下基調にある。高速鉄道計画では、ほとんどの路線が赤字だ。追加のインフラ投資は、地方政府の借り入れ増を必要とする。結果として、経済対策は不良債権の温床になる。 強引なゼロコロナ政策の継続で、個人の消費や投資は減少せざるを得ない。他方、成長期待の高いIT先端企業の締め付けも強まる。8月からは改正版の独占禁止法が施行される。連鎖反応のように、中国全体で企業の業績は悪化するだろう。 逆に言えば、一時的な失業増を伴う構造改革の実行は容易ではない。今のところ、共産党政権は公的資金を注入し、エバーグランデなどを救済する姿勢も示していない。 中国では、追い込まれる企業・個人・地方政府が増える。その結果、資金流出が加速し、人民元の先安観は強まり、ドル建てをはじめ債務のデフォルトリスクは高まるはずだ。資産売却などリストラを強行せざるを得ない企業は、追加的に増えるだろう。 失業問題が深刻化することで、貧富の格差拡大も避けられない。中国は不動産バブル膨張によって、過剰な債務・雇用・生産能力が出現した。今後は、その整理が不可避だ』、何やら本当に深刻な調整局面が不可避のようだが、なるべく軽く済んでほしいものだ。
第三に、8月17日付けJBPressが掲載したキヤノングローバル戦略研究所 研究主幹の瀬口 清之氏による「中国の高度経済成長、予想より早く終わる可能性 成長を押し下げる中長期的構造要因と日本企業の対応策」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71411
・『1.高度成長時代の終焉を迎えている可能性 1989年6月の天安門事件の後、一時的に国家による経済統制が強化され、中国経済の市場経済化、自由競争導入の動きに急ブレーキがかかった。 そのため、1989~90年の中国経済は厳しい景気停滞に陥った。 先行きの不透明感が強まっていた状況下、1992年1~2月に鄧小平氏が南巡講話を行い、市場経済化推進の大方針を示した。 その後、朱鎔基総理のリーダーシップの下、市場メカニズムを積極的に導入していく経済政策運営により、従来の計画経済に基づく非効率な経済体制を改革し、様々な構造問題を克服していった。 それ以来約30年間、中国経済は多くの困難に直面しながらも市場経済化の推進をバネに高度成長を力強く持続した。 2009年後半に中国のGDP(国内総生産)の規模は日本に追いつき、2021年には日本の3.5倍に達した。 2010年の実質成長率は10.6%。2桁成長はこの年が最後となった。2010年代の中国経済は1978年以降の40年以上にわたる高度成長時代の終盤局面である。 そして今、いよいよ高度成長時代の終焉を迎えようとしている。 実質GDP成長率の40年間余りの推移(図表1参照)を見れば、現在の中国経済が置かれている局面がよく分かる。 2010年代は1桁台後半で推移する安定的な成長率下降局面だった。 1978年の改革開放政策開始後、年間成長率が5%を下回ったのは天安門事件の1989年(4.2%)と翌年の90年(3.9%)しかなく、2020年(2.2%)はそれ以来初めての5%割れである。 そして今年も5%に届かず、4%程度の成長率となる見通しである。 広い意味で高度成長と言えるのは実質成長率が平均的に5%を上回る期間と考えれば、中国経済は2020年を境にすでに高度成長時代に終わりを告げた可能性がある。 もちろん、今後、中国の成長率が再び数年間5%以上を保つ可能性があることは否定できないが、その可能性は低いと考えられる。 ただし、この話は数字の問題であり、筆者が中国国内の経済専門家、企業経営者などとの意見交換を通じて得ていた印象では、多くの有識者の認識は、昨年までは高度成長の延長線上にあったと感じていたように思われる。 大半の経営者もこれまでの高度成長が続くことを前提に経済活動を行っていたように見える。 しかし、今年に入りその前提が崩れ始めたように感じられる。 まだ高度成長時代の終焉が確定したわけではないが、中国経済の局面が変化したと感じさせるいくつかの要因が生じている。以下ではその点について整理してみたい。 (図表1:実質GDP成長率(単位・前年比%)の推移はリンク先参照)』、興味深そうだ。
・『2.足許の成長率を低下させた短期的要因 高度成長期と安定成長期の一つの大きな違いは期待成長率の差である。 人々が常に5~10%の経済成長を実現できると信じていれば、それに合わせて生産、投資、雇用などの計画を立てる。 しかし、成長率が5%に達しないという期待が広く共有されれば、生産計画は縮小し、投資規模も抑制され、賃金上昇率も低下し、購買意欲も低下する。 こうして経済は安定成長期に入る。 2020年以降の成長率の低下の原因が、短期的な特殊要因であれば、その要因が解消するとともに、再び5%台の成長に戻る可能性が高い。 そうした観点から足許の経済下押し要因を見ると、短期的な特殊要因であると考えられるものが2つある。 1つ目は、ゼロコロナ政策の有効性低下と経済への悪影響のリスクの高まりである。 2020年の第1四半期にも武漢を中心に厳しいロックダウンが実施され、経済が急落したが、その直後から厳格なゼロコロナ政策の徹底により、中国経済は急回復した。この時、人々は武漢のロックダウンが終われば、中国経済は再び元に戻ると信じていた。 2022年入り、感染力が強く無症状患者の比率が高いオミクロン株の感染拡大により、ゼロコロナ政策の有効性が低下した。 それでも中央政府はゼロコロナ政策を堅持したため、上海市は長期のロックダウンを余儀なくされ、その影響で中国経済全体が深刻な停滞に陥った。 2つ目は、若年層の失業率の増大である。 全体の失業率は2022年4月に6.1%に上昇したが、6月には5.5%に低下した。しかし、16~24歳の若年層の失業率は6月に19.3%に達した。 これは、第1に今年の大学卒業者数が1076万人と昨年に比べて一気に167万人も増加したこと。 第2に大卒者に人気があるIT、教育、不動産など比較的賃金が高い産業が、昨年の政府の締め付け強化などの要因から業績が悪化し、リストラが続いていること。 第3に、経済の先行きに対する不透明感の強まりから、企業の採用姿勢が慎重化していることなどが影響した。 以上2つの経済下押し要因は、いずれも短期的な特殊要因であるため、コロナに対する有効な対策の導入や大卒者の雇用機会の確保が実現すれば、下押し圧力が弱まる可能性が高い。 ただし、これらが短期的要因であるにもかかわらず、こうした問題が再び繰り返されるのではないかという不安を抱く人々が増えているという話を聞くことが多い。 これは中国国民が高度成長時代には当然のように共有していた経済のレジリアンスに対する自信がやや後退していることを反映していると解釈することもできる』、「16~24歳の若年層の失業率は6月に19.3%に達した」のは、今年の大学卒業者数が1076万人と昨年に比べて一気に167万人も増加したこと」による部分もあるとはいえ、やはり深刻だ。
・『3.中国の成長率を押し下げる中長期要因 中国経済の局面が変化したと感じさせる要因の中には、短期的な特殊要因とは言えないものが含まれており、しかもそれぞれが相互に関係し合っている。具体的には以下のとおりである。 第1に少子高齢化の加速。 2022年1月、国家統計局は、2021年末の人口が14億1260万人で、前年同期比48万人増にとどまったと発表した(図表2参照)。 これを受けて、従来人口のピークは2028年と予想されていたが、2022年がピークとなる可能性が指摘されている。 経済活動への影響が大きい生産年齢人口(中国の定義では15歳以上60歳未満)は2011年の9億4072万人をピークに緩やかに減少し始めており、2020年代後半に減少が加速する見通しであることは従来から指摘されていた。 第2に都市化のスローダウン。 北京、上海、広州、深圳などの1級都市やそれに準ずる2級都市への人口集中は今後も続くが、3~4級都市の多くは人口流入による人口の増加が期待できなくなっている。 第3に大規模インフラ建設投資の減少。 特に中央政府が不良債権増大リスク抑制のために公共事業の審査基準を厳しくしていることが、この傾向を加速している。 第4に不動産市場停滞の長期化。 これは中央政府の不動産投機抑制策の強化が直接的要因である。 それに加えて、人口減少予想や都市化のスローダウン予想などが将来の不動産需要下押し要因として意識されていることも影響している。 不動産市場の停滞長期化は、財政面では、地方財政の財源難と中央政府の負担増大をもたらす。 金融面では、地方の中小金融機関の不良債権問題を引き起こし、破綻金融機関救済のための各種金融・財政負担が増大する。 (図表2:総人口(単位・万人)の推移はリンク先参照) 第5に米中対立の長期化。 中国マクロ経済への直接的な影響はそれほど大きくないが、経済人に与える心理的影響は無視できない。 第6に期待成長率の下方屈折。 上述の要因が合わさって将来の経済に対する期待を弱気化させ、それが企業経営者の投資姿勢の慎重化と消費者の購買意欲の低下を招く。 第7に以上の要因を背景に成長率が低下すれば、経営効率の低い国有企業の業績が悪化し、中央・地方政府による赤字補填が拡大し、財政負担の増大を招く。 これらの中長期的要因は従来2025年前後から表面化すると予想されていた。 しかし、新たな統計データの発表や政府の政策運営の影響などから表面化の時期が3年ほど早まったように感じられる』、ということは、「表面化」は2022年から始まったようだ。
・『4.中国経済の下支え要因 以上のマイナス要因しかなければ中国経済の成長率は今後急速な低下を余儀なくされるはずである。 しかし、次のような下支え要因も存在するため、成長率の低下はいくぶん緩やかなものに留まると考えられる。 第1に外資企業の対中投資拡大の持続。 中国国民の急速な所得水準の上昇とともに高付加価値製品の需要が拡大し、中国国内市場の魅力はますます増大しつつある。 加えて、内需の伸び鈍化を懸念する中国政府が、優良外資企業に対する誘致姿勢を一段と積極化し、手厚いサポートを提供することも外資企業の投資拡大にとって追い風となる。 このため、グローバル市場で高い競争力を持つ日米欧主要企業の大部分は中国市場での積極姿勢を変えない方針。 第2に中国企業の国際競争力の増大。 大学卒業者数の急速な増加により高学歴人材が大幅に増加しつつある。 こうした豊富な高学歴人材の支えを背景に、EV、リチウム電池、太陽光パネル、半導体、PC、スマートフォンなどの分野における中国企業の競争力が着実に向上してきている。 今後も中国企業が優位性を持つ産業分野の拡大が続くことが予想される。 第3にアジア域内の発展途上国との経済交流の増加。 中国はこれまで一帯一路政策を強力に推進し、周辺の発展途上国、特にアジア域内の連携を強化してきた。 今後、中長期にわたり、ASEAN(東南アジア諸国連合)およびインドの長期的な経済発展が続く見通しであることから、それらの国々と中国経済との相互連携は一段と深まり、水平分業などの協力関係がさらに拡大していくことが予想される。 第4に大規模な不良債権問題の回避。 中国は日本の不動産バブルの経験を深く研究し、リスク回避のための政策を積み重ねてきた。 その成果は1~2級都市の不動産市場における投機抑制策の成功といった形で表れている。 こうした状況から見て、日本の1990年代のようなバブル経済崩壊に伴う国家経済全体の長期停滞は回避できる可能性が高いと見られている。 以上の要因から見て、2020年代に中国の経済成長率の低下が続く局面においても、日本および世界の企業にとって中国市場の魅力が急速に低下する可能性は低いと考えられる。 日本企業としては、経済成長率低下を強調するメディア報道などに振り回されず、中国市場の分野別の市場ニーズの変化を冷静かつ詳細に把握し、的確なマーケティングと迅速な経営判断により中国市場での競争に勝ち残る努力が不可欠である。 中国市場での競争相手は、一段と技術力を高めてきている中国企業とグローバル市場で高い競争力を保持する欧米・韓国台湾の一流企業である。 その厳しい競争の中で生き残るためには、高い専門能力を備えた高学歴人材の育成と、グローバル市場での競争に大胆にチャレンジする人材を生み出すリーダーシップ教育が今後の日本企業の生き残りのカギとなる』、「日本の1990年代のようなバブル経済崩壊に伴う国家経済全体の長期停滞は回避できる可能性が高いと見られている」、というのは甘過ぎるようで、もっと厳しくみるべきだろう。「厳しい競争の中で生き残るためには、高い専門能力を備えた高学歴人材の育成と、グローバル市場での競争に大胆にチャレンジする人材を生み出すリーダーシップ教育が今後の日本企業の生き残りのカギとなる」、同感である。
先ずは、7月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーランスライターのふるまいよしこ氏による「中国で「住宅ローン支払い拒否宣言」続出の理由、救済が待たれる事情とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307181
・『中国各地で、建設途中のマンションで工事が止まったまま放置されるという事態が起きている。全国に300以上あるという未完成マンションの中でも多いのが、経営危機に陥った恒大グループが関わっている開発案件だという。できる見込みがないマンションでもローンは払わねばならず、補償もされないため、中には「不払い宣言」をする人も……中国の不動産界隈で何が起こっているのか』、「中国の不動産」事情に疎い我々にとっては興味深そうだ。
・『中国で300以上のマンションが、未完成のまま放置されている 中国で「爛尾楼」(らんびろう)騒ぎが拡大中だ。 「爛尾」とは「尾っぽ部分がずさん」という意味で、「爛尾楼」は「尻切れトンボ状態になった不動産」を指す。つまり、建設途中に開発業者の資金がショートしてしまい、未完成のまま放置されているマンションのことだ。そんな爛尾楼が、中国各地ですでに300以上あることが分かっている。 近年、中国政府も過熱が続く不動産ブームを抑制すべく、2軒目、3軒目購入には頭金を引き上げたり、銀行ローンに規制をかけたりしてきた。だが、それでもやすやすとそのハードルを超えたり、さらには住宅購入のためにわざわざ離婚手続きまでとって(元)家族が別々に不動産を購入したりするなど、文字通りの「上には政策、下には対策」※が展開されてきた。 ※「上有政策、下有対策」。中国のことわざで、政府がいかに政策を施行しても、庶民は何らかの対策を編み出して政策を骨抜きにする、という意味。 しかし同じタイミングでコロナ対策による都市封鎖や行動規制が繰り返されて、消費意欲が激減してしまった。慌てた政府は今年に入って積極的に不動産開発用地の競売を進めているが、当の不動産開発業者がここにきて青息吐息になっていることが報告されている』、「不動産開発業者がここにきて青息吐息になっている」、これではテコ入れは難しそうだ。
・『恒大グループの債務危機がきっかけに 香港の不動産王が中国市場から撤退するなどの動きから業界内では静かに「バブル崩壊」が長年語られ続けていたが、目に見える形で事態が人々の前に現れたのは、昨年一挙に噴き出した、不動産開発の大手「恒大グループ」の債務危機がきっかけだった。 恒大といえば、創設者でグループ会長の許家印氏は中国の富豪トップランキングの常連。ほんの数年前までは、国内の人気サッカークラブを所有し、一時はそのクラブとヨーロッパの名門サッカークラブ「レアル・マドリード」が提携するなど、本業以外にも派手なパフォーマンスで注目されていた。ところが昨年春からささやかれていた「恒大不安」が9月になって事実上のデフォルトへと発展、あっという間に大騒ぎになった。 現在「爛尾楼」物件としてリストアップされているマンションのうち、4分の1、あるいは3分の1が恒大グループの開発マンションという報道もある。こうした報道が引き起こした連鎖反応もさることながら、その他にもともと「あまり良いうわさのなかった開発業者」がコロナ対策期間中に資金崩れを起こしたのだ。 経済メディア「財新網」によると、分かっているだけで「爛尾楼」の総面積は2.31億平方メートル、今年上半期における全国住宅不動産市場の3.85%を占めている。さらにそんな「爛尾楼」関連のローン規模は0.9兆元(約18兆円)と、全国の金融機関ローン残高の1.7%に当たるとされる』、「「爛尾楼」の総面積は2.31億平方メートル、今年上半期における全国住宅不動産市場の3.85%を占めている」、比重が予想以上に大きいのには驚かされた。
・『被害者たちが「ローン不払い」宣言 爛尾楼の被害者たちはこれまでも、開発業者、銀行、地方政府に陳情を繰り返してきた。しかし何の進展もなく、逆に拘束されてしまうことも日常茶飯事だった。だが、とうとう不満を爆発させた江西省のマンション購入者たちがこの6月末に、「ローン不払い」声明を銀行や政府の不動産政策担当局に送りつけたことが報道されるや、またたくまに他の地区の爛尾楼被害者たちにも広がり、各地で「ローン不払い」宣言が行われた。 すると、それまで「爛尾楼」騒ぎに対して知らん顔をしてきた金融業界もにわかに慌て始め、それと同時に政府当局が対策に乗り出し始めたことで、やっと事態が注目を集めるようになったのだ』、腰の重い「金融業界」や「政府当局」を動かすには、「「ローン不払い」宣言」のようなショック療法も必要だったようだ。
・『原因は、中国ではおなじみの「住宅プレ販売」制度 爛尾楼騒ぎの根本的な原因は、中国ではすっかりおなじみの不動産販売手法になっている「住宅プレ販売制度」にある。開発業者は美麗なモデルルームと完成図で客を引き寄せ、まだ建設予定地は基礎工事も済んでいない状況から、熱心に販売を開始する。 一般的に、こうしたプレ販売でマンションを購入すると、現物購入(=完成後購入)よりも選択肢が広く、また希望の間取りや内装も簡単に実現でき、さらには10~20%安になるとうたわれているために、マイホーム、あるいは投機のための住宅購入を考える人たちは、さっさと頭金を払ってローンを組む。あとはローンを払いながら、1~2年後のマンションの完成を待つだけである。 開発業者はプレ販売に力を入れ、建物を建設する前にその売却金を先に手に入れることができる。手に入れた資金を元に次の建設予定地を買い付け、そこに建設するマンションの図面とモデルルームで再びプレ販売をし……という自転車操業が繰り返されてきた。 しかし、コロナがこの自転車のチェーンを叩き切った。社会的な不安や失業の懸念、収入の減少などから消費者の不動産購買欲が減退、大型消費を控え始めたことでプレ販売が進まず、予想された資金が開発業者に入らなくなり、そして資金がショートし、デフォルトを起こす。その結果、建設が止まった。 建設が止まっても、購入者は金融機関と交わした契約通り、でき上がるはずのマンションを夢見てローンを支払い続けなければならない。コロナの地区封鎖や強制隔離の影響で工事が遅れ、引き渡し時期がずれ込む程度ならまだ良いほうで、どう見ても現地の建設作業が止まっている場合、購入者たちは当然不安にかられる。開発業者に問い合わせてもらちが明かない、あるいはすでに開発業者と連絡が取れなくなっている……これが大規模な爛尾楼騒ぎへと発展した。 中にはもう、元の開発業者との対応を諦め、一方で自分の購入した物件・権利をどこか他の業者が買い取ったり、工事を続けたりしてくれないか探し求めるケースもあるという。もっと悲惨なのは、自分が購入した階や建物まで建設が進まないまま中断してしまったケースだ。毎月生活を切り詰めて契約通りにローンを支払い続けているのに、自分が買ったはずのマイホームは中空に浮いたまま……』、「プレ販売でマンションを購入すると、現物購入(=完成後購入)よりも選択肢が広く、また希望の間取りや内装も簡単に実現でき、さらには10~20%安になるとうたわれているために、マイホーム、あるいは投機のための住宅購入を考える人たちは、さっさと頭金を払ってローンを組む。あとはローンを払いながら、1~2年後のマンションの完成を待つだけである。 開発業者はプレ販売に力を入れ、建物を建設する前にその売却金を先に手に入れることができる」、「コロナがこの自転車のチェーンを叩き切った。社会的な不安や失業の懸念、収入の減少などから消費者の不動産購買欲が減退、大型消費を控え始めたことでプレ販売が進まず、予想された資金が開発業者に入らなくなり、そして資金がショートし、デフォルトを起こす。その結果、建設が止まった」、「建設が止まっても、購入者は金融機関と交わした契約通り、でき上がるはずのマンションを夢見てローンを支払い続けなければならない」、購入者保護の仕組みが殆どないリスキーな手法だ。
・『プレ販売制度は、都合のいい部分だけ香港から輸入された手法 こうしたプレ販売制度は本来、香港から導入されたシステムだったといわれる。だが、多くの報道が指摘するように、参考にされた香港の制度は「半分だけ」で、香港がかつての経験から培ったバックアップ体制の残り半分は中国には導入されなかった。 例えば、香港ではプレ販売で得た顧客側の支払いを、開発業者が直接、懐に入れることはできない。銀行と開発業者の間で信託基金が作られ、そこにプールされるのである。 もし業者が建設中に資金不足となれば、それをもとに銀行から融資を受けることができる。業者が不動産代金全額を手に入れられるのは、物件が完成し、正式な引き渡し完了が証明されたあと。開発業者は不動産建設の前にそれにふさわしい資金をもっていることが証明されなければ、香港政府が建設許可を出さない仕組みにもなっている。) また香港では開発業者は土地を手に入れた時点で、政府にその地代を全額一括で支払わなければならない。このため、中国のように土地の所在地である地方政府と使用権を得た開発業者が、「開発」を挟んで持ちつ持たれつの曖昧な関係を取ることはできない。 こうした爛尾楼防止策はすべて、中国への導入時には無視された。プレ販売した購入代金はそのままするりと開発業者の口座に入り、銀行は別途購入者と結んだローン契約に従って粛々とローンを回収するスタイルが一般化された。そのため、銀行側にも業者に対する責任感が非常に薄かった』、「こうした爛尾楼防止策はすべて、中国への導入時には無視された。プレ販売した購入代金はそのままするりと開発業者の口座に入り、銀行は別途購入者と結んだローン契約に従って粛々とローンを回収するスタイルが一般化された。そのため、銀行側にも業者に対する責任感が非常に薄かった」、香港の仕組みのうち、「ローン契約」者保護につながる部分が無視されて導入したとは、初めから欠陥のある制度だったようだ。
・『「ローン不払い」宣言には大きな危険が伴う 今回の「ローン不払い」運動は、そんな不良開発業者とローン提携を結んだことへの責任は銀行にあると突きつけたものだ。 だが、この「ローン不払い」を実行すると、購買者も大きな枷(かせ)を負う。というのも、今やデータによる「信用クレジット」が大きく生活に影響する中国で、「ローン踏み倒し」は間違いなくネガティブ評価になるからだ。そうなれば銀行業務以外にも、高速鉄道や飛行機のチケットすら買えなくなる恐れもある。 なぜそんな危険を冒してまで「ローンを踏み倒す」と宣言するのか? そこには、「生活を切り詰めて切り詰めて、やっと家を買ったと思ったら、それが爛尾楼だった。このままローン支払いで未来もない切り詰め生活を送り続けるのと、個人クレジットに黒がつくのとどっちが大変だと思う?」というギリギリの追い詰められた思いがあった』、「個人クレジットに黒が」ついてでも、「「ローン不払い」を実行」する覚悟でやっているようだ。
・『プレ販売に代わり、現物販売の導入が始まった 実は政府もこの爛尾楼問題にはとっくに気がついていたようだ。 というのも、すでに昨年あたりから各地方政府が、住宅用地競売参加条件に不動産開発業者に「現物販売」を義務付け始めていたことが、その後の報道から明らかになってきたからだ。 プレ販売に代わり最も早く「現物販売」が導入されたのは、中国最南端にある島まるごと新しく開発が進む海南省で、2020年3月から「新たに土地を取得して建設される商品不動産は現物販売制度とする」ことが不動産開発政策に明記されている。もちろん、現物とは水道、電気、ガス、通信設備がすべて揃った状態のことを指す。 だが、昨年4月に同様の義務付けを行った浙江省では、その数カ月後に不動産用地10地区の競売がすべて流札となったと大きく報道された。それでも、今後この方法は進められるはずで、北京市や杭州市などの住宅需要の高い大都市でも導入される予定だという。 そんなところに7月下旬、中国国務院(内閣に相当)が3000億元(約6兆円)を投じて政府肝いりの不動産基金を設立することを決めたと、ロイターがすっぱ抜いた。 記事によると、政府と中央銀行、そして中国建設銀行などの主要国有銀行がそれぞれ資金を出し合う形で約3000億元を集め、爛尾楼を買い取って完成させてから政府の賃貸住宅にするという。明らかに危機に瀕している主要不動産開発業者と銀行の共倒れ回避策だ。 しかし、この報道を読んで不安になった。そこにはマイホームの夢を見て、頭金を手渡し、ローンを支払い続けている人たちへの救済については触れられていない。またもや個人は見捨てられてしまうのか? 爛尾楼事件の今後が気がかりである』、「不動産基金」の行方、「爛尾楼事件」での「個人債務者」の動向を注視していきたい。
次に、8月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「中国で「不動産バブル崩壊・失業」が深刻化、習近平政権は正念場に」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307365
・『中国で不動産バブルの後始末が深刻化している。大手デベロッパーは資産売却を加速しているが、資産価格の下落スピードはそれを上回る。習近平政権は銀行に不動産業界向けの融資を増やすよう規制を緩めているが、相場底打ちの兆しが見えない。1~6月期の不動産開発投資は前年同期比5.4%減り、分譲住宅の売上高は同28.9%も減少した。懸念されるのが失業の増加だ。6月、中国の若年層(16~24歳)の調査失業率は19.30%に上昇、調査開始以来最高だった』、確かに「不動産バブルの後始末」は「深刻」なようだ。
・『深刻化する不動産バブル崩壊の後始末 企業業績が悪化、失業率は上昇する 中国経済が、かなり厳しい状況を迎えている。主因は不動産バブル崩壊だ。共産党政権の厳格な融資規制は、人々のリスク許容度を急低下させた。債務問題は悪化している。 加えて、ゼロコロナ政策は建設活動を停滞させている。他方、成長期待の高いIT先端企業の規制強化が先行き懸念をさらに高める。それらの結果として、若年層を中心に失業者が急増。ローンの返済を拒む住宅購入者も急増している。 地方政府の財政悪化も鮮明だ。債務返済の延期を銀行に求める地方政府まで、出現しはじめた。 中国の不動産バブルの後始末は拡大するだろう。今後、大手不動産デベロッパーの資金繰りはさらに行き詰まる可能性が高い。ゼロコロナ政策も続き、個人消費は減少基調で推移する。 他方、世界のインフレも深刻だ。中国企業のコストプッシュ圧力は一段と強まり、企業業績は悪化するだろう。生き残りをかけて多くの企業が雇用を削減せざるを得なくなり、若年層を中心に失業率は追加的に上昇するだろう。失業問題は、共産党政権にとって無視できない問題だ』、秋の共産党大会を控えて指導部もヒヤヒヤだろう。
・『長きにわたる不動産バブル膨張「三つのレッドライン」導入後の誤算 中国で不動産バブルの後始末が深刻化している。長い期間にわたって、中国では不動産バブルが膨張した。根底には、共産党の経済政策があった。 共産党指導部は地方政府に経済成長目標を課す。達成のために地方の共産党幹部は土地の利用権を中国恒大集団(エバーグランデ)などのデベロッパーに売却する。それは地方政府の主要財源となった。デベロッパーはマンションを建設する。建設活動の増加が、雇用を生み出し、建材の需要も増える。インフラ投資も加速する。 そうして地方政府はGDP成長率目標を達成し、幹部は出世を遂げた。中国全体で「党の指示に従えば豊かになれる」という価値観が形成され、「不動産価格は上昇し続ける」という神話が出来上がった。さらに、リーマンショック後は世界的なカネ余りが価格上昇を支えた。上がるから買う、買うから上がる、という根拠なき熱狂が不動産バブルを膨張させた。 しかし、いつまでも価格が上昇し続けることはない。2020年8月、共産党政権は「三つのレッドライン」を導入。金融機関は不動産デベロッパー向けの融資を減らし、デベロッパーは資産売却による資金捻出に追い込まれた。そうすることで共産党政権は経済全体での債務残高を削減し、資産価格の過熱を解消しようとした。 問題は、三つのレッドラインが想定以上の負の影響を経済に与えたことだ。急速な融資規制は神話を打ち壊し、不動産バブルは崩壊した。それ以降、売るから下がる、下がるから売るという負の連鎖が止まらない。 エバーグランデなどは資産売却を加速しているが、資産価格の下落スピードはそれを上回る。習近平政権は銀行に不動産業界向けの融資を増やすよう規制を緩めているが、相場底打ちの兆しが見えない。1~6月期の不動産開発投資は前年同期比5.4%減り、分譲住宅の売上高は同28.9%も減少した。不良債権問題が深刻化し始めている』、「習近平政権は銀行に不動産業界向けの融資を増やすよう規制を緩めているが、相場底打ちの兆しが見えない」、一旦、下落を始めたのを政策的にテコ入れしようとしても、上手くはいかないものだ。
・『企業・個人・地方政府に拡大する不良債権問題 不良債権問題を三つに分けて考えてみる。まず、企業に関して。エバーグランデなど大手のデフォルト(債務不履行)が相次いでいる。銀行セクターでは、ずさんなリスク管理の実態が浮上した。 河南省では41万人の銀行預金が凍結された。貸し倒れ、担保資産の価値急落によって、銀行の資金繰りが急激に悪化している。同省では3000人が参加して、預金の支払いを求めるデモが起きた。取り付け騒ぎだ。それを阻止しようとした当局との衝突も発生した。 中国の金融システムの現況は、わが国の1990年代中頃を想起させる。連鎖倒産が起き、不良債権は雪だるま式に増え、金融システムの不安定感が高まる一連の流れだ。 次に、個人(家計)について。住宅ローンの返済拒否が増加している。例えば江西省では、不動産デベロッパーが経営体力を失ったせいで、1年以上建設が止まったままのマンションがある。ゼロコロナ政策も拍車をかけて、建設現場に作業員が集まることすら難しい。一部の購入者は、10月までに工事が再開されない場合、翌月から返済を停止すると表明した。購入した住宅がいつ完成するのか、不安視する人が増えるのは当然だ。支払い拒否は、他の地域でも急増している。 最後に、地方政府の返済能力が低下している問題だ。一例として、貴州省政府は債務返済の先送りを金融機関に求め始めた。鉄道などインフラ事業の収益性は低く、土地利用権の売却収入も減っている。結果、同省政府は債務返済負担に耐えられなくなったようだ。 インフラ投資積み増しのために債権発行などを増やす地方政府が増えている。債権者に返済期間の延長、さらには一部債務減免(ヘアカット)を求める地方政府が急増する可能性が高まっている。 かくして、「灰色のサイ」と呼ばれる中国の債務問題は深刻化している』、「深刻」さは日本のバブル期の「債務問題」をはるかに上回るようだ。
・『失業問題の深刻化 貧富の格差拡大も避けられない 懸念されるのが失業の増加だ。6月、中国の若年層(16~24歳)の調査失業率は19.30%に上昇、調査開始以来最高だった。建国以来で見ても、新卒学生を取り巻く雇用環境は最悪だろう。中国人留学生の中には、帰国せず日本での就職を目指す者が多い。 今後、中国では銀行の貸しはがしや貸し渋りが増える。不動産をはじめ民間企業の資金繰りは切迫する。ウクライナ危機をきっかけに、世界全体でインフレも深刻だ。中国では生き残りをかけてリストラに踏み切る企業が増え、若年層を中心に失業率は上昇するだろう。となると、共産党政権に不満を持つ人が増える展開が予想される。 その展開を回避するために、習政権は高速鉄道などの公共事業を積み増すだろう。しかし、経済全体で資本効率性は低下基調にある。高速鉄道計画では、ほとんどの路線が赤字だ。追加のインフラ投資は、地方政府の借り入れ増を必要とする。結果として、経済対策は不良債権の温床になる。 強引なゼロコロナ政策の継続で、個人の消費や投資は減少せざるを得ない。他方、成長期待の高いIT先端企業の締め付けも強まる。8月からは改正版の独占禁止法が施行される。連鎖反応のように、中国全体で企業の業績は悪化するだろう。 逆に言えば、一時的な失業増を伴う構造改革の実行は容易ではない。今のところ、共産党政権は公的資金を注入し、エバーグランデなどを救済する姿勢も示していない。 中国では、追い込まれる企業・個人・地方政府が増える。その結果、資金流出が加速し、人民元の先安観は強まり、ドル建てをはじめ債務のデフォルトリスクは高まるはずだ。資産売却などリストラを強行せざるを得ない企業は、追加的に増えるだろう。 失業問題が深刻化することで、貧富の格差拡大も避けられない。中国は不動産バブル膨張によって、過剰な債務・雇用・生産能力が出現した。今後は、その整理が不可避だ』、何やら本当に深刻な調整局面が不可避のようだが、なるべく軽く済んでほしいものだ。
第三に、8月17日付けJBPressが掲載したキヤノングローバル戦略研究所 研究主幹の瀬口 清之氏による「中国の高度経済成長、予想より早く終わる可能性 成長を押し下げる中長期的構造要因と日本企業の対応策」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71411
・『1.高度成長時代の終焉を迎えている可能性 1989年6月の天安門事件の後、一時的に国家による経済統制が強化され、中国経済の市場経済化、自由競争導入の動きに急ブレーキがかかった。 そのため、1989~90年の中国経済は厳しい景気停滞に陥った。 先行きの不透明感が強まっていた状況下、1992年1~2月に鄧小平氏が南巡講話を行い、市場経済化推進の大方針を示した。 その後、朱鎔基総理のリーダーシップの下、市場メカニズムを積極的に導入していく経済政策運営により、従来の計画経済に基づく非効率な経済体制を改革し、様々な構造問題を克服していった。 それ以来約30年間、中国経済は多くの困難に直面しながらも市場経済化の推進をバネに高度成長を力強く持続した。 2009年後半に中国のGDP(国内総生産)の規模は日本に追いつき、2021年には日本の3.5倍に達した。 2010年の実質成長率は10.6%。2桁成長はこの年が最後となった。2010年代の中国経済は1978年以降の40年以上にわたる高度成長時代の終盤局面である。 そして今、いよいよ高度成長時代の終焉を迎えようとしている。 実質GDP成長率の40年間余りの推移(図表1参照)を見れば、現在の中国経済が置かれている局面がよく分かる。 2010年代は1桁台後半で推移する安定的な成長率下降局面だった。 1978年の改革開放政策開始後、年間成長率が5%を下回ったのは天安門事件の1989年(4.2%)と翌年の90年(3.9%)しかなく、2020年(2.2%)はそれ以来初めての5%割れである。 そして今年も5%に届かず、4%程度の成長率となる見通しである。 広い意味で高度成長と言えるのは実質成長率が平均的に5%を上回る期間と考えれば、中国経済は2020年を境にすでに高度成長時代に終わりを告げた可能性がある。 もちろん、今後、中国の成長率が再び数年間5%以上を保つ可能性があることは否定できないが、その可能性は低いと考えられる。 ただし、この話は数字の問題であり、筆者が中国国内の経済専門家、企業経営者などとの意見交換を通じて得ていた印象では、多くの有識者の認識は、昨年までは高度成長の延長線上にあったと感じていたように思われる。 大半の経営者もこれまでの高度成長が続くことを前提に経済活動を行っていたように見える。 しかし、今年に入りその前提が崩れ始めたように感じられる。 まだ高度成長時代の終焉が確定したわけではないが、中国経済の局面が変化したと感じさせるいくつかの要因が生じている。以下ではその点について整理してみたい。 (図表1:実質GDP成長率(単位・前年比%)の推移はリンク先参照)』、興味深そうだ。
・『2.足許の成長率を低下させた短期的要因 高度成長期と安定成長期の一つの大きな違いは期待成長率の差である。 人々が常に5~10%の経済成長を実現できると信じていれば、それに合わせて生産、投資、雇用などの計画を立てる。 しかし、成長率が5%に達しないという期待が広く共有されれば、生産計画は縮小し、投資規模も抑制され、賃金上昇率も低下し、購買意欲も低下する。 こうして経済は安定成長期に入る。 2020年以降の成長率の低下の原因が、短期的な特殊要因であれば、その要因が解消するとともに、再び5%台の成長に戻る可能性が高い。 そうした観点から足許の経済下押し要因を見ると、短期的な特殊要因であると考えられるものが2つある。 1つ目は、ゼロコロナ政策の有効性低下と経済への悪影響のリスクの高まりである。 2020年の第1四半期にも武漢を中心に厳しいロックダウンが実施され、経済が急落したが、その直後から厳格なゼロコロナ政策の徹底により、中国経済は急回復した。この時、人々は武漢のロックダウンが終われば、中国経済は再び元に戻ると信じていた。 2022年入り、感染力が強く無症状患者の比率が高いオミクロン株の感染拡大により、ゼロコロナ政策の有効性が低下した。 それでも中央政府はゼロコロナ政策を堅持したため、上海市は長期のロックダウンを余儀なくされ、その影響で中国経済全体が深刻な停滞に陥った。 2つ目は、若年層の失業率の増大である。 全体の失業率は2022年4月に6.1%に上昇したが、6月には5.5%に低下した。しかし、16~24歳の若年層の失業率は6月に19.3%に達した。 これは、第1に今年の大学卒業者数が1076万人と昨年に比べて一気に167万人も増加したこと。 第2に大卒者に人気があるIT、教育、不動産など比較的賃金が高い産業が、昨年の政府の締め付け強化などの要因から業績が悪化し、リストラが続いていること。 第3に、経済の先行きに対する不透明感の強まりから、企業の採用姿勢が慎重化していることなどが影響した。 以上2つの経済下押し要因は、いずれも短期的な特殊要因であるため、コロナに対する有効な対策の導入や大卒者の雇用機会の確保が実現すれば、下押し圧力が弱まる可能性が高い。 ただし、これらが短期的要因であるにもかかわらず、こうした問題が再び繰り返されるのではないかという不安を抱く人々が増えているという話を聞くことが多い。 これは中国国民が高度成長時代には当然のように共有していた経済のレジリアンスに対する自信がやや後退していることを反映していると解釈することもできる』、「16~24歳の若年層の失業率は6月に19.3%に達した」のは、今年の大学卒業者数が1076万人と昨年に比べて一気に167万人も増加したこと」による部分もあるとはいえ、やはり深刻だ。
・『3.中国の成長率を押し下げる中長期要因 中国経済の局面が変化したと感じさせる要因の中には、短期的な特殊要因とは言えないものが含まれており、しかもそれぞれが相互に関係し合っている。具体的には以下のとおりである。 第1に少子高齢化の加速。 2022年1月、国家統計局は、2021年末の人口が14億1260万人で、前年同期比48万人増にとどまったと発表した(図表2参照)。 これを受けて、従来人口のピークは2028年と予想されていたが、2022年がピークとなる可能性が指摘されている。 経済活動への影響が大きい生産年齢人口(中国の定義では15歳以上60歳未満)は2011年の9億4072万人をピークに緩やかに減少し始めており、2020年代後半に減少が加速する見通しであることは従来から指摘されていた。 第2に都市化のスローダウン。 北京、上海、広州、深圳などの1級都市やそれに準ずる2級都市への人口集中は今後も続くが、3~4級都市の多くは人口流入による人口の増加が期待できなくなっている。 第3に大規模インフラ建設投資の減少。 特に中央政府が不良債権増大リスク抑制のために公共事業の審査基準を厳しくしていることが、この傾向を加速している。 第4に不動産市場停滞の長期化。 これは中央政府の不動産投機抑制策の強化が直接的要因である。 それに加えて、人口減少予想や都市化のスローダウン予想などが将来の不動産需要下押し要因として意識されていることも影響している。 不動産市場の停滞長期化は、財政面では、地方財政の財源難と中央政府の負担増大をもたらす。 金融面では、地方の中小金融機関の不良債権問題を引き起こし、破綻金融機関救済のための各種金融・財政負担が増大する。 (図表2:総人口(単位・万人)の推移はリンク先参照) 第5に米中対立の長期化。 中国マクロ経済への直接的な影響はそれほど大きくないが、経済人に与える心理的影響は無視できない。 第6に期待成長率の下方屈折。 上述の要因が合わさって将来の経済に対する期待を弱気化させ、それが企業経営者の投資姿勢の慎重化と消費者の購買意欲の低下を招く。 第7に以上の要因を背景に成長率が低下すれば、経営効率の低い国有企業の業績が悪化し、中央・地方政府による赤字補填が拡大し、財政負担の増大を招く。 これらの中長期的要因は従来2025年前後から表面化すると予想されていた。 しかし、新たな統計データの発表や政府の政策運営の影響などから表面化の時期が3年ほど早まったように感じられる』、ということは、「表面化」は2022年から始まったようだ。
・『4.中国経済の下支え要因 以上のマイナス要因しかなければ中国経済の成長率は今後急速な低下を余儀なくされるはずである。 しかし、次のような下支え要因も存在するため、成長率の低下はいくぶん緩やかなものに留まると考えられる。 第1に外資企業の対中投資拡大の持続。 中国国民の急速な所得水準の上昇とともに高付加価値製品の需要が拡大し、中国国内市場の魅力はますます増大しつつある。 加えて、内需の伸び鈍化を懸念する中国政府が、優良外資企業に対する誘致姿勢を一段と積極化し、手厚いサポートを提供することも外資企業の投資拡大にとって追い風となる。 このため、グローバル市場で高い競争力を持つ日米欧主要企業の大部分は中国市場での積極姿勢を変えない方針。 第2に中国企業の国際競争力の増大。 大学卒業者数の急速な増加により高学歴人材が大幅に増加しつつある。 こうした豊富な高学歴人材の支えを背景に、EV、リチウム電池、太陽光パネル、半導体、PC、スマートフォンなどの分野における中国企業の競争力が着実に向上してきている。 今後も中国企業が優位性を持つ産業分野の拡大が続くことが予想される。 第3にアジア域内の発展途上国との経済交流の増加。 中国はこれまで一帯一路政策を強力に推進し、周辺の発展途上国、特にアジア域内の連携を強化してきた。 今後、中長期にわたり、ASEAN(東南アジア諸国連合)およびインドの長期的な経済発展が続く見通しであることから、それらの国々と中国経済との相互連携は一段と深まり、水平分業などの協力関係がさらに拡大していくことが予想される。 第4に大規模な不良債権問題の回避。 中国は日本の不動産バブルの経験を深く研究し、リスク回避のための政策を積み重ねてきた。 その成果は1~2級都市の不動産市場における投機抑制策の成功といった形で表れている。 こうした状況から見て、日本の1990年代のようなバブル経済崩壊に伴う国家経済全体の長期停滞は回避できる可能性が高いと見られている。 以上の要因から見て、2020年代に中国の経済成長率の低下が続く局面においても、日本および世界の企業にとって中国市場の魅力が急速に低下する可能性は低いと考えられる。 日本企業としては、経済成長率低下を強調するメディア報道などに振り回されず、中国市場の分野別の市場ニーズの変化を冷静かつ詳細に把握し、的確なマーケティングと迅速な経営判断により中国市場での競争に勝ち残る努力が不可欠である。 中国市場での競争相手は、一段と技術力を高めてきている中国企業とグローバル市場で高い競争力を保持する欧米・韓国台湾の一流企業である。 その厳しい競争の中で生き残るためには、高い専門能力を備えた高学歴人材の育成と、グローバル市場での競争に大胆にチャレンジする人材を生み出すリーダーシップ教育が今後の日本企業の生き残りのカギとなる』、「日本の1990年代のようなバブル経済崩壊に伴う国家経済全体の長期停滞は回避できる可能性が高いと見られている」、というのは甘過ぎるようで、もっと厳しくみるべきだろう。「厳しい競争の中で生き残るためには、高い専門能力を備えた高学歴人材の育成と、グローバル市場での競争に大胆にチャレンジする人材を生み出すリーダーシップ教育が今後の日本企業の生き残りのカギとなる」、同感である。
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