SSブログ
世界情勢 ブログトップ
前の10件 | -

ミャンマー(その4)(繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇、市民を虐殺するミャンマー国軍 日本政府・企業は軍と国民 どちらに立つのか?、ミャンマー市民が頼るのは 迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望、日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠) [世界情勢]

ミャンマーについては、3月24日に取上げた。今日は、(その4)(繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇、市民を虐殺するミャンマー国軍 日本政府・企業は軍と国民 どちらに立つのか?、ミャンマー市民が頼るのは 迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望、日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠)である。

先ずは、4月5日付けNewsweek日本版が掲載した毎日新聞記者の永井浩氏による「繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/04/post-95986_1.php
・『ミャンマー軍に対する厳しい制裁に踏み切れない日本政府は軍政の「共犯者」だ> ミャンマーの国軍クーデターから2ヶ月。この政変が起きた2月1日の本サイトで、私は「日本政府は今度こそ民主化支援を惜しむな」と書いた。政府はこれまで、同国の民主化を支援するという空念仏を唱えるだけで、事実上軍政の延命に手を貸してきた事実を知っていたからである。だが、私の期待は裏切られたようだ。民主化運動への国軍の弾圧は残虐化するいっぽうなのに、「民主国家」日本の政権担当者は国軍「非難」の談話などを出すだけで、欧米諸国のような制裁には踏み切れない。なぜなのかを理解するために、私は古い取材メモなどをあらためて引っ張り出してみようと思った』、「日本政府は軍政の「共犯者」、とは手厳しいが、具体的なポイントをみてみよう。
・『スーチー氏「解放」の実態  私がミャンマーの民主化について取材をはじめたのは、民主化運動指導者のアウンサンスーチー氏が6年間におよぶ自宅軟禁から解放された1995年7月から間もなくしてからだった。彼女の解放を喜ぶとともに、依然として軍政がつづく同国の現状と今後の見通しについていろいろ聞きたいジャーナリストが、世界各地から最大都市ヤンゴンのスーチー邸に殺到した。毎日新聞記者の私もその一人だった。 日本政府は彼女の解放を民主化への前進と評価し、欧米諸国にさきがけて、軟禁下で凍結されていた経済援助の再開を表明した。では「解放」の実態とはどのようなものだったのか。多くのジャーナリストの取材申し込みのウエイティングリストの後ろのほうに載っていた私が、やっとスーチー邸の門をくぐったのは9月2日だった。 まだ雨季なので、足元はぬかるんでいた。訪問客は、邸内に設けられた受付で姓名、所属団体、外国人ならパスポート番号を書くようにもとめられる。これは、軍事政権「国家法秩序回復評議会」(SLORC)がスーチー氏の「警護」のために取っている措置とされるが、彼女の側からの自発的要請にもとづくものではない。外国人には、公安当局がカメラのフラッシュを浴びせる。 解放直後は、祝福のお土産をかかえて国内各地から駆けつけた、彼女の率いる「国民民主連盟」(NLD)の支持者たちがひきもきらなかった邸内は、だいぶ落ち着きを取りもどした。軟禁中は手入れができず、「まるでジャングルみたいだった」と彼女が述懐する庭もこざっぱりした。 しかし、日常の活動はいまだに大きな制約を受けている。電話は通話可能になったものの、側近によれば「盗聴されている疑いが強い」。コピー機とファックスの設置には政府の許可が必要だが、申請してもいまだに許可が下りていない。共産主義政権が倒れるまでのソ連・東欧諸国のような言論統制だ。私信はまず届かないとみた方が確実だ。私もインタビュー掲載紙と書留を日本から送ったが、二通とも届いていないことがその後わかった。 スーチー氏以外の多くの党員や支持者は投獄されたままだ。5人以上の集会は事実上禁じられているために、彼女は自宅前に集まった市民に話しかける「対話フォーラム」をはじめた。軍事政権は記者会見を自由に開き、国営の新聞・テレビで自分たちの意見や宣伝を流すことができるが、NLDには自分たちの活動を伝える印刷物さえ許されない。 これが「解放」の実態なのだが、日本政府はそれを民主化進展のあかしととらえた。ヤンゴンの日本大使館関係者は、軍事政権による表現の自由の抑圧ではなく、スーチー氏がNLD書記長に復帰したことを「予想外の強硬な態度」と評した。彼らにとっては、日本のODA(政府開発援助)大綱に定められた基本的人権や自由の保障とは、この程度の意味しかもっていないようだった』、クーデター前でも「スーチー氏」の状態は、事実上の自宅軟禁だったようだ。「日本大使館関係者」の「基本的人権や自由の保障」の認識の浅さには改めて驚かされた。
・『「経済発展に民主化は不可欠」  スーチー氏が私のインタビューで最も強調したのは、「経済発展には民主化が不可欠」という点だった。軍事政権が進める市場経済化政策に応じて日本など外国からの対ミャンマー投資が増えていることについて、「国民の政治に対する信頼がなければ長期的に安定した経済発展は望めません」として、民主化運動のために闘いつづける決意をあらたにした。それなしには、経済開発は軍人を頂点とする一握りの特権層のふところを富ませるだけで、貧富の格差をさらに広げることになってしまうからだ。 彼女はまた、日本人ジャーナリストの私に問いかけるように言った。「日本人は、戦後の繁栄と平和がどうして達成されたかを忘れないでほしい。それは、軍国主義から解放されて民主主義を手に入れたおかげではないでしょうか」。そのような歴史認識が日本の政府と国民に定着しているなら、私たちの民主化運動を正しく理解してくれるはずではないか、という意味であろう。 彼女はそれ以上言わなかったが、その日本軍国主義は第二次大戦中にビルマ(ミャンマー)を侵略し、この国の人びとの命と土地、財産、文化を踏みにじったことをミャンマー国民は忘れていない。彼女の父アウンサンは、英国からの独立をかちとるためにはじめは日本軍の支援を受けながら、日本の敗色が濃くなった戦争末期に抗日蜂起に立ち上がった「独立の英雄」である。 スーチー氏はさらに、「ビルマも1960年代に軍部が実権を握るまでは、民主政治の下で、アジアで最も発展の早い国でした」と指摘した。 私は日本のODA再開決定をどう思うかとたずねた。 「日本政府はビルマの民主化の進展に応じて、という条件をつけているというが、私は真の民主化の進展を条件にしてほしい。私一人の釈放だけでは不十分です。経済援助や投資を個人のためにではなく、国民全体の利益にむすびつくかたちで進めてほしい」 こう答えた彼女は、欧米とは異なる日本の対ミャンマー援助をやんわり批判した。欧米諸国は人権と経済援助をからめる「北風」路線をとっているのに対して、日本は経済援助を段階的に増やしながら軍政に民主化の促進をうながしていく「太陽」路線の優位を主張していたが、スーチー氏は「太陽は暑すぎて快適ではありません。これ以上太陽が暑くなると着ているものすべて脱がされてしまいます」というのだ。 日本のODA再開が彼女の軟禁からの解放に貢献したかのような見方にも、スーチー氏は反発した。「だれが私の解放をもっとも助けてくれたかは、歴史が明らかにすることです。その歴史を、本当の民主化を進めていくなかで、私たちはつくっていきたい」』、「日本政府はビルマの民主化の進展に応じて、という条件をつけているというが、私は真の民主化の進展を条件にしてほしい。私一人の釈放だけでは不十分です」、「日本政府」への痛烈な批判だ。
・『なぜ『ビルマからの手紙』なのか  初対面の私がスーチー氏に対していだいた印象は、東南アジア各地の沼などでよく見かけるハスの花のイメージである。花は、凛として気品と優しさをたたえている。私はそのような美しい花を浮かべる水面の下がどうなっているのかを知りたくなった。 軍事政権や一部の日本人からは、欧米生活の長かった彼女には、自国の現実がよくわかっていないという批判が投げかけられていた。そのいっぽうで、欧米的な民主主義や人権の概念をあてはめ、彼女をミャンマー民主化の旗手にまつりあげる西側世論がある。だがそのような外部の一面的な見方だけでは、国民の圧倒的なアウンサンスーチー人気の秘密はわからない。でもかぎられたインタビューの時間では、その土壌がわからない。そこで私は、彼女に頼んでみた。 「ビルマの民主化を本当に理解するには、この国の歴史、文化、社会への多面的なアプローチが必要だと思う。それを毎日新聞にお書きいただけないだろうか」。彼女は「私もぜひ書いてみたい」と端正な顔をほころばせながら快諾してくれ、「ただ、いまはとても忙しいし、NLDの承認も受けなければなりませんので、正式の返事は2,3日待っていただけませんでしょうか」とのことだった。もちろん党のOKもでた。 こうして、スーチー氏の連載エッセイ『ビルマからの手紙』が11月末から週一回、毎日新聞の紙面を飾りはじめた。 私は、ミャンマー民主化運動の同時進行ドキュメントであるこの文章を日本の読者が読むことで、彼女たちの闘いを支援せよ、などと主張するつもりはなかった。また冷戦後の民主主義と人権の普遍性が強調される風潮のなかで、アウンサンスーチー=天使、軍事政権=悪魔といった安易な図式をあてはめて、アジアの隣人たちの闘いを論じることを避けたかった。「歴史の正しい証人」であることがジャーナリストの使命であるなら、まず言論の自由を奪われた国の人びとの声をできるだけ広く国際社会に伝えなければならない。民主主義の国の一員として享受している言論の自由を、その基本的権利を奪われた国の自由のために行使しなければならいだろう。その情報をどう判断するかは、読者にまかせればよいことである。 毎日新聞は日本語の新聞だが、スーチー氏の原文は英語なので、英語版のザ・デイリー・マイニチに掲載された"Letters From Burma"が目にとまれば、国際的な情報ネットワークをつうじてなんらかの形で世界にも流れる可能性があるだろう。連載開始後、まずAPなどの西側通信社が連載のなかからニュース性の高い情報をとりだして<東京発>で世界に配信しはじめた。ミャンマーの民主化運動を支援している日本の市民グループがザ・デイリー・マイニチの英文をインターネットで世界の市民ネットワークに流しはじめた。米国最大の独立系ニュース・シンジケート「ユニバーサル・プレス・シンジケート」がアジア、欧州、米国、中南米の新聞、雑誌に同時掲載する契約を申し出て、世界15か国で同時掲載されるようになった。 『手紙』のミャンマー国内への持ち込みは難しかったが、在日ミャンマー人の民主化支援グループがビルマ語に翻訳し、自分たちの発行する週刊紙に載せて、1988年のクーデター後に世界に逃れた同胞や、軍事政権に追われてタイ国境の難民キャンプで暮らすビルマ人やカレン人に送った。米国の「自由アジア放送」は、毎日1時間のビルマ語番組で『手紙』を流しはじめた。英国のBBCが『手紙』の一部を放送する計画との知らせも入った。タイの英字紙、タイ語週刊誌からの転載申し入れもつづいた』、「スーチー氏の連載エッセイ『ビルマからの手紙』については、初めて知ったが、毎日新聞としては大ヒットだったろう。
・『日本政府は軍政の「共犯者」  ところが、『ビルマからの手紙』に対する日本政府の反応は驚くべきものだった。池田行彦外相は「スーチーさんは外国ばかりでなく自国民にももっと直接話しかけたらどうか」と、彼女の国の現実を無視した、民主主義国の外相としての見識を疑わせるような発言をした。この拙文の冒頭にあげた「日本政府は今度こそ民主化支援を惜しむな」ですでにあきらかにしたように、外務省は「日本・ミャンマー関係がこじれる。ひいては日中関係にも悪影響を及ぼす」と、再三にわたって毎日新聞に連載の中止を要請してきた。木戸湊編集局長は「『毎日』は民主主義を大切にする新聞である」と言って、彼らの要求を突っぱねた。駐日中国大使館員もパーティーなどで木戸と顔を合わせると、『手紙』に難癖をつけてきたという。ミャンマー大使館はザ・デイリー・マイニチに例年出していた広告の引き下げを通告してきた。軍事政権はしばらくして、「アウンサンスーチーは米国のCIAと日本の毎日新聞から資金提供をうけている」と発表した。 日本政府のミャンマーとの関係とは、軍事政権とのものでしかなく、国民は視野に入っていなかった。外務省は、民主主義の否定という点では軍政と「共犯者」といっても過言ではなかった。そしてこの体質は、現在にいたるまで基本的に変わらなかった。 軍政が国際社会からどのような批判を浴びる仕打ちを自国民に繰り返そうと、日本政府はつねに民主化運動を弾圧する側に寄りそいつづけた。1988年の民主化運動を今回のクーデター後とおなじように市民への無差別銃撃によって血の海に沈めたあと、90年の総選挙の結果を尊重する公約しながら、ふたを開けてみるとNLDの圧勝という結果になると、公約を反故にして権力の座に居座りつづけた非合法政権に対して、である。そして、2020年11月の総選挙でまたNLDが圧勝すると、国軍はクーデターで国民の圧倒的支持を得た合法政権を葬ろうとした。クーデターに反対する「市民不服従運動」が全国的な高まりを見せると、国軍はなりふり構わず子どもたちにまで発砲をつづける。 ミャンマーの悲劇に一刻も早く終止符を打たねばならないとする国際世論をうけて、米国、EUなどの政府は国軍への制裁措置をつぎつぎに打ち出している。日本政府は同盟国米国の顔色をうかがいつつ、国軍とのしがらみを断ち切れないまま、「われわれは民主化をもとめるミャンマー国民の側に立つ」との明確な意思を打ち出せず右往左往するだけである。 「歴史は繰り返す。一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」とは、マルクスの有名な言葉である。ミャンマーの国軍は、自国民を悲劇に陥れる蛮行を繰り返そうとして、「王様は裸である」と叫ぶ圧倒的多数の国民の声に耳をふさぐ喜劇の主人公を演じている。王様の親友であることで「民主主義国」という自らの看板を汚す悲喜劇を演じてきた日本政府は、いつまで国際社会の物笑いとなるような役回りをつづければ気がすむのだろうか。 *この記事は、日刊ベリタからの転載です』、「池田行彦外相」や「外務省」が毎日新聞に圧力をかけるとはとんでもないことだ。「日本政府のミャンマーとの関係とは、軍事政権とのものでしかなく、国民は視野に入っていなかった。外務省は、民主主義の否定という点では軍政と「共犯者」といっても過言ではなかった。そしてこの体質は、現在にいたるまで基本的に変わらなかった」、情けなく、国際的にも恥ずかしいことだ。

次に、4月12日付けYahooニュースが掲載した弁護士で国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子氏による「市民を虐殺するミャンマー国軍。日本政府・企業は軍と国民、どちらに立つのか?」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/itokazuko/20210412-00232215/
・『エスカレートする国軍(ミャンマーのクーデター後、国軍の暴力がエスカレートしています。 国軍の虐殺で、すでに子どもや若者を含む700人以上が犠牲になっていると報じられています。 国軍はこれまで少数民族であるロヒンギャやカチンにも残虐行為の限りを尽くしてきましたが、今や抵抗するすべての者を標的にしています。 10日にはバゴーで、軍が80人を超える住民を虐殺したと報じられています。 (ミャンマーメディアの「ミャンマー・ナウ」は10日、中部の古都バゴーで9日に治安部隊がデモ隊を攻撃し、市民82人が死亡したと報じた。治安部隊は機関銃や迫撃砲など戦闘用の武器を使用したという。現地では夜間の電力供給が遮断された。多数が行方不明との情報もある。死者数がさらに膨らむ恐れもある。日経)  そもそも軍のクーデターは合法性が認められず、権力行使はいかなる正当性もありません。 そして、あろうことか市民に対し、機関銃や迫撃砲など戦闘用の武器を使用するなど、「治安維持」によって正当化される範疇ではありません。 民間人に対する軍の攻撃は、国内の事態であっても「戦争犯罪」に該当するのであり、国軍の行為は国際法上いかなる観点からも擁護できるものではありません。 軍は、抗議活動を行う市民らを念頭に「木を育てるためには、殺虫剤をまいてでも雑草を根絶やしにしなければならない」と述べたとされ、さらに強権的な弾圧で人々を犠牲にする可能性が高いと言えるでしょう。事態は甚大です。 なぜそれでも戦うのか。 こうしたなかでも、驚くべきことに市民は屈することなく、抗議行動を続けています。殺されるかもしれないのに、なぜ、巨大な敵に挑むのか。 2016年の「民主化」まで、ミャンマーは軍事独裁政権下で、人々は自由のない暗黒の時代を耐え忍んでいました。ようやく民主化と自由を手に入れたいま、絶対に暗黒時代に後戻りしないという固い決意があるのです。特に、Z世代と言われる若者が強い意志で立ち上がっています。 しかし、象とアリのようなミャンマーの市民の戦いで市民が勝利するには、国際的な支援が必要です』、「9日に治安部隊がデモ隊を攻撃し、市民82人が死亡したと報じた。治安部隊は機関銃や迫撃砲など戦闘用の武器を使用したという」、国民に「戦闘用の武器を使用」、国軍が国民に対し残虐行為をするとは信じ難い。市民の側は「ようやく民主化と自由を手に入れたいま、絶対に暗黒時代に後戻りしないという固い決意があるのです。特に、Z世代と言われる若者が強い意志で立ち上がっています」、よくぞやるものだと頭が下がる。
・『曖昧 問われ、失望される日本  特に、ミャンマーに影響力の強い日本の行動は問われています。 「日本政府は国軍と国民どちらの立場に立つのか?」 4月2日に議員会館で開催された院内集会で、在日ミャンマー人の若者は日本政府に強く迫りました。 外務省は、クーデター後、以下のような声明を公表して国軍を批判しています。 平和的に行われるデモ活動に対して実弾が用いられることは断じて許されません。日本政府は、ミャンマー国軍が、市民に対する暴力を直ちに停止し、アウン・サン・スー・チー国家最高顧問を始めとする被拘束者を速やかに解放し、民主的な政体を早期に回復することを改めて強く求めます。 しかし、日本の態度は、「口だけ」と批判されています。具体的には何をしているのか、しようとしているのか。 在日ビルマ人とヒューマンライツ・ナウは3月、連名で、日本政府に対し公開質問状を出し、4月2日にその回答が示されました。 しかし、その内容は極めてあいまいなもので、在日ミャンマー人を絶望させるものでした。 例えば、 質問4.日本政府は2020年総選挙によって国民に選ばれていた国会議員らによって構成される連邦議会代表委員会(CRPH)を、ミャンマー国の正式な国家機関として認めているか。認めないとするならその理由は何か。 回答: 〇我が国としては、ミャンマー国軍に対して、①民間人に対する暴力の即時停止、②拘束された関係者の解放、③民主的な政治体制の早期回復、の3点を強く求めてきている。 〇ミャンマー側とは、様々な主体とやり取りを行い、また、働きかけをしてきているが、その具体的内容については、現地の情勢が緊迫する中で、今後の対応や関係者の安全に影響を与え得るためお答えを差し控えたい。 この点は、質問に対する答えになっていません。ミャンマー側とは、様々な主体とやり取りを行い、また、働きかけをしてきている、などとしていますが、違法なクーデターをしている軍を正式な交渉相手として認めることは一切あってはならないはずです。 アウンサンスーチー氏が率いる与党NLDの議員らは、クーデター後、「連邦議会代表委員会(CRPH)」を結成しました。市民の支持を得て活動しており、正当な政府としての承認を求めています。 日本はクーデターを認めない証として、CRPHを正式な代表と認め、交渉をすべきです。 では、今後具体的に何をするか、についても質問に答えません。 質問10.ミャンマー国内では市民の反中感情が高まっており、不買運動も展開されるなど、国軍が中国に頼れば更なる反発を受ける状況にあるとされる。日本政府が国軍に対して、非武装の市民への実力行使について、経済制裁を含む強く非難するメッセージを送ることで、国軍が中国を頼ることになるとの根拠は何か。国軍との「独自のパイプ」があり、一定の信頼関係があるのであればこそ、日本政府が、国軍の過ちを正し、民主主義の回復に向けた変化を促す強いメッセージを発信するべきではないか。 回答:〇我が国は事案発生当日から、ミャンマー国軍に対して、①民間人に対する暴力の即時停止、➁拘束された関係者の解放及び③民主的な政治体制の早期回復を強く求めてきている。3月28日にも、外務大臣談話においてミャンマーで多数の死傷者が発生し続けている状況を強く非難した。 〇その上で、制裁を含む今後の対応については、事態の推移や関係国の対応を注視し、何が効果的かという観点から検討していく。 すでにクーデターから2か月が経過し、700人も貴重な命が奪われたのに、いまだに「制裁を含む今後の対応については、事態の推移や関係国の対応を注視し、何が効果的かという観点から検討していく」 つまりまだ検討中だというのは怠慢ではないでしょうか?口だけだと言われても仕方がないでしょう。 さらに、あまりに誠意がないのがこの回答です。 質問11.国際協力機構(JICA)が現在実施している対ミャンマー政府開発援助(ODA)事業や、国際協力銀行(JBIC)や海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)がミャンマー関連で現在融資・出資している事業について、国軍の資金調達の支援に繋がっているとの指摘がある。このような指摘に対し、日本政府は、人道目的のものを除く全ての支援・事業をいったん停止した上で、国軍と関連する企業が事業に関与していないか、または、事業の実施が国軍に経済的利益をもたらしていないかという点について事実調査を実施しているか。実施しているとすればその調査結果を公表するか。実施・公表しないとすればその理由は何か。 回答:〇日本政府は、事業の円滑な実施のため、必要に応じ、各関係機関等と連携しつつ、御指摘の点について適切に確認をしている。 「適切に確認をしている」とはいったい何を意味するのでしょうか? 国軍の資金源となるプロジェクトを継続することは、人権弾圧や虐殺を助長するものです。国軍や関連企業に関わるODA事業はすべて凍結するべきであり、漫然と資金供与を続けることは、共犯になることにほかなりません。 ところが、このように重要なことに対し、イエスともノーとも答えない、これではミャンマーの人たちが愕然とするのも当然です』、「国軍の資金源となるプロジェクトを継続することは、人権弾圧や虐殺を助長するものです。国軍や関連企業に関わるODA事業はすべて凍結するべき」、その通りだ。
● 日本政府がいますべきこと  在日ミャンマー人の若者は、「国民が毎日殺され、放火されている。どうかミャンマー国民を助けてほしい」と切実に訴えました。 違法なクーデターに基づき権限行使する軍の行動はそもそも合法性がないうえ、住民虐殺という戦争犯罪に該当する行為を行っている軍の行為が明らかにレッドラインを超えていることは明らかです。CRPHが国軍を「テロ団体」とみなすことを国際社会に訴えており、これはうなづけます。こうしたなか、日本は「軍とのパイプ」を理由に軍と話し合って解決する宥和路線を取るべきではありません。 日本政府には、 1 CRPHを正式なミャンマーの代表と認め、軍による政権掌握を一切承認しないこと、2 軍に利益をもたらす経済援助を一切やめること  がいまこそ求められています。さらに、3 欧米諸国とともに、ミャンマー国軍関係者や国軍系企業(米国の制裁対象はミャンマー・エコノミック・ホールディングス・リミテッド(MEHL)と、ミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)など)に対し、ターゲット制裁を発動したり、軍の資金源となっている主要な産品の取引を制限するなどの措置を真剣に検討すべきでしょう』、同感である。
● 企業も軍系企業との取引を断つべき  政府だけではありません。ミャンマーに進出し、ミャンマー国軍系企業と深い取引関係にある日本の著名企業が存在します。クーデター前から国軍がカチン、ロヒンギャなどの少数民族への人権侵害を尽くしていたため、その軍とつながりの深い日本企業は国際的にも問題視されてきました。 しかし、いまや軍の暴力が可視化され、犠牲が増え続けるなか、これ以上取引関係を続けることは人権侵害に資金提供しているようなものです。血塗られたビジネスをこれ以上続け、軍の資金源となり続けるかが問われます。 ヒューマンライツ・ナウは4月5日付で調査報告書を公表、特に深刻な影響のあるミャンマーでの事業とこれに関連している日本企業を公表しました。 関連している企業は、東芝、小松製作所、キリンホールディングス、TASAKI、KDDI、住友商事、Yコンプレックス事業(東京建物 、 オークラ、みずほ銀行 、三井住友銀行、 JOIN 、フジタ) です。 これら企業も、を貫くのでなく、説明責任を果たし、軍に資金を提供し、軍を利するような事業は一切手を引くべきです』、「キリン」が態度表明したが、他は「沈黙」を続けており、態度を明確化すべきだ。
● 市民を応援するために  ミャンマーで起きていること、それは日本と無縁ではありません。もし、日本が欧米その他、ミャンマーの市民を応援する側に加わり共同歩調を取れば、クーデターを失敗に終わらせることができるかもしれません。 日本政府や日本企業の行動次第で事態は変わり得ます。 表面だけ軍を非難しても何ら行動しなければ、それは、命懸けで戦うミャンマー市民を見殺しにすることにほかなりません。 政府と企業には、言葉だけでない明確な態度、クーデターに抵抗する市民の側に立つ覚悟と明確な行動が求められます。 私たちも心を痛めてニュースを見守るだけでなく、政府と企業に責任ある行動をとるよう声を上げることができます。ミャンマーの人たちは私たちのそうした行動を切望し、注視しています。(了)』、同感である。

第三に、4月13日付けNewsweek日本版「ミャンマー市民が頼るのは、迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/04/post-96059_1.php
・『<国際社会に幻滅した市民らが一縷の望みを託す「少数民族連合軍vs国軍」の構図。当事者たちが語るその可能性> 国軍による弾圧が激しさを増すミャンマー(ビルマ)で抵抗手段を奪われた国民たちは今、少数民族の軍隊と国軍との全面戦争を求め始めている。かつては敵視すらしていた少数民族を救世主扱いするほど期待は高いが、どれくらい現実味がある戦略なのか。ミャンマーのエリート軍家系出身で民主活動家のモンザルニ、少数民族であるカチン民族機構(KNO)ロンドン本部のクントイラヤン事務局長、在日ビルマ・ロヒンギャ協会のゾーミントゥット副代表の3人に、本誌・前川祐補が聞いた。 Q:少数民族軍連合vs国軍という対立構図が浮上した経緯を教えてほしい。 モンザルニ:デモを行っていた市民らは当初、諸外国からの外圧を期待していた。軍事的圧力でなくとも、国軍が弾圧から手を引くような効果的な懲罰を求めていた。だが(アメリカなどが部分的に制裁を発動したものの)ミャンマー国民を満足させるような動きは起きていない。国軍への制裁を決議できなかった国連安全保障理事会も含めて国民は外圧に幻滅し、よりどころを少数民族の軍隊にシフトさせた。国民の中には少数民族軍を救世主と呼ぶ者もいる。 クントイラヤン:われわれカチン族は都市部でのデモ弾圧とは別に国軍から攻撃を受け、彼らを返り討ちにした「実績」もあった。 Q:少数民族軍の連合はどのように形成されるのか。 モンザルニ:1つは、「統一政府」の樹立を目指す民主派議員らで構成する連邦議会代表委員会(CRPH)が、少数民族の軍隊を「連邦軍」として取りまとめる方法だ。だが、少数民族側はCRPHの中心にアウンサンスーチーや彼女が率いる国民民主連盟(NLD)を据えることに対して非常に否定的だ。彼らはクーデターを防ぐこともできず、その後の対応でも失敗したからだ。CRPHは国民の支持を得ているが、将来的な政府組織においてスーチーとNLDの影響力をどれだけ排除できるかがカギになる。 クントイラヤン:少数民族の間では、CRPH憲章は現在の憲法から国軍の議会枠(国会議員定数の4分の1は軍人)を定めた条項を取り除いただけ(つまりNLDの影響力が色濃く残る)との批判が多い。私たちはこれまで少数民族に差別的だった「ビルマ人愛国主義者」たちへの警戒を解いておらず、NLDに対する不信感も根強い』、主要な「少数民族」「代表者」の見解とは興味深い。「私たちはこれまで少数民族に差別的だった「ビルマ人愛国主義者」たちへの警戒を解いておらず、NLDに対する不信感も根強い」、確かにこれまでの経緯も無視できないだろう。
・『Q:統一政府の将来像は時間のかかりそうな議論だ。CRPHと少数民族の交渉がまとまらなければ全面戦争のシナリオは消える? モンザルニ:そうでもない。既にCRPHを抜きにした少数民族による「連合軍」構想が持ち上がっている。実際、シャン州軍の創設者であるヨートスックが、ワ州連合軍などと共に独自の連合軍の立ち上げを呼び掛けている。 クントイラヤン:CRPHが少数民族の要求を断ったところで軍事的には空っぽの政府組織が生まれるだけだ。連邦軍は構想段階だが、カチン族だけでなくカレン族の居住地域を含めて局地的には既に戦いが始まっている。 ゾーミントゥット:国民は、これまでさげすんできたアラカン・ロヒンギャ救世軍ですら歓迎している。CRPHがどう判断するかは分からないが、何らかの形で内戦が始まるのは不可避だと思う。 Q:「連邦軍」であれ「連合軍」であれ、国軍と対峙する軍事力はあるのか? モンザルニ: 少数民族の武装勢力は最大で14ほどが参加し得るが、それでも「通常の戦闘」を想定するなら国軍を打ち破ることは難しいだろう。兵力の差は数字以上に大きい。 だが少数民族軍の戦略はいわゆるpositional war(陣地戦)ではなく都市型ゲリラ戦だ。例えばヤンゴンには軍事訓練を受けた「見た目は普通の人」が数千人もいるとされる。彼らは特定の日時に集まり、標的とする軍事施設に攻撃を加える準備ができている。連合軍の戦いは内戦と言うよりは革命抗争だ。革命軍はたいてい武器に乏しく兵士の数も少ない。キューバ革命の時、フィデル・カストロはわずか82人の同志を率いて革命抗争を始めた。数の比較で戦闘を考えると展望を見誤る。 クントイラヤン:ミャンマーの内戦にアメリカが軍隊を派遣することはないだろうが、資金提供やロジスティクスなどの側面支援は交渉可能なはずだ。それができれば、カチンやカレンの軍隊は地上戦で国軍をしのぐことができる。「統一政府」の議論がまとまらないにせよ、国軍による虐殺を止めるためにCRPHの国連大使に選ばれたササは早急に欧米諸国へ支援要請をするべきだ』、「少数民族軍の戦略はいわゆるpositional war(陣地戦)ではなく都市型ゲリラ戦だ。例えばヤンゴンには軍事訓練を受けた「見た目は普通の人」が数千人もいるとされる」、それでも「キューバ革命」を引き合いに出すのは無理がある。「「統一政府」の議論」がまとまってほしいものだ。
・『Q:少数民族はこれまで差別や迫害を受けてきた。少数民族の軍隊に期待する国民は今だけ軍事力にすがり、後で裏切るという懸念はないのか? ゾーミントゥット:今回のクーデターに対して抵抗を続ける中心はZ世代と呼ばれる若者世代だ。彼らは1988年のクーデターを戦った当時の若者世代とは違い、教育水準も高く多様性に対して寛容だ。実際、クーデターが勃発してからこんなことがあった。ある商業系と医科系の大学の学生自治会が、過去のロヒンギャ弾圧に対して公に謝罪声明を発表したのだ。虐殺を知りながら声を上げなかったことへの謝罪だ。自らも軍の弾圧の犠牲者となって初めてロヒンギャの置かれた状況を知ったからなのかどうか経緯は分からないが、彼らの謝罪は誠実なものと受け止めている。 (編集部注:CRPHで広報担当も務めるササはCRPHの国家構想でロヒンギャを国民として認めると4月9日の記者会見で断言した) クントイラヤン:同じ思いだ。繰り返すが、われわれ少数民族はこの状況下でも愛国主義的ビルマ人への警戒心は強い。それでもZ世代への期待は大きい。弾圧を受け行き場を失った若者世代は今、少数民族軍を支持するだけでなく自ら参加しようとしている。実際、カチン軍は彼らに対する軍事訓練を行っており、(カチン)軍幹部の話によれば訓練し切れないほどの若者たちが集まっている。 Q:周辺国は内戦に対してどう反応するだろうか? モンザルニ:中国、インド、タイがその中心だが、彼らは基本的にミャンマー国軍を支持しているので懸念するだろう。だが彼らはあくまで勝ち馬に乗るはずだ。今のところ国軍に賭けているが、「革命抗争」で少数民族軍連合やCRPHが優位な立場になれば、考えを変える可能性はある。周辺国とミャンマー国軍の関係に定まった「方程式」は存在せず、流動的だ。 クントイラヤン:カチン族の主な居住地域は中国と国境を接しているが、今回の騒乱はカチン族が引き起こしたのではない。中国がミャンマーで安定した経済活動を行いたいのなら、彼らが国軍を支援し続けるのは得策でないはずだ。 モンザルニ:CRPHは「連邦軍」構想を進めると同時に、国軍に影響を及ぼす中国に対して立場を表明するべきだ。つまり、CRPHは中国を重要な国家として認めると。その上で、現在の国軍に対する無条件の支援をやめるよう求めるのだ。中国が応じなければ、世論の圧倒的支持を受けるCRPHが実質的な政権を取ったときに、ミャンマーはアメリカや日米豪印らで構成するクアッドに強く傾倒し、中国がこれまでミャンマーで進めていた石油のパイプライン事業をはじめとする経済活動が思うようにいかなくなるという「警告」も忘れずにだ』、「CRPHは中国を重要な国家として認めると。その上で、現在の国軍に対する無条件の支援をやめるよう求めるのだ」、なかなか面白そうな戦略だ。
・『Q:内戦や革命抗争はミャンマーにとって本当に望ましいシナリオなのだろうか? モンザルニ:望ましいシナリオでもなければ、最も前向きな目標でもない。だが今のミャンマーには連邦軍(やその他の連合軍)構想以外にいいシナリオがない。国民はデモに参加しようが家でおとなしくしていようが殺されている。5400万人の国民が人質になっているというのが現実で、「向こう側」を殺すしかないという機運が高まっている。 クントイラヤン:今の状況を変えるためには、国民は国軍に対して強いメッセージを出す必要がある。軍幹部らに対して弾圧から手を引くことを促すような、強固な心理戦を展開する必要がある。少数民族連合軍による「宣戦布告」はその意味で強いメッセージになる。軍幹部が動じずとも、兵士らを可能な限り多く投降させることができれば弾圧を弱める効果は期待できる。 モンザルニ:投降した兵士らを受け入れる新しい軍組織がなければ、ミャンマーはサダム・フセイン亡き後のイラクになり、兵士らは過激派イスラム組織「イスラム国」(IS)のようになってしまう。その意味でも連邦軍は必要だ。 ゾーミントゥット:革命抗争は起きた後の状況が懸念されるが、不可避だと思う。そのなかで望むとすれば、CRPHはできるだけ構成民族に共通認識を持たせてほしい。 Q:非常に複雑な思いだ。 モンザルニ:それは私たちも同じだ。残念ながら、どんな道を選んでもミャンマーを待つのは血まみれの未来だ。 【関連記事】スー・チー拘束でも国際社会がミャンマー政変を「クーデター」と認めたくない理由  ジェノサイドで結ばれる中国とミャンマーの血塗られた同盟』、「投降した兵士らを受け入れる新しい軍組織がなければ、ミャンマーはサダム・フセイン亡き後のイラクになり、兵士らは過激派イスラム組織「イスラム国」(IS)のようになってしまう。その意味でも連邦軍は必要だ」、同感である。

第四に、4月27日付けPRESIDENT Onlineが掲載した東京外国語大学教授の篠田 英朗氏による「日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/45524
・『ミャンマー情勢が緊迫している。欧米諸国が経済制裁などに動く一方、日本政府の動きは鈍い。東京外国語大学の篠田英朗教授は「ミャンマー問題は、さまざまな日本の外交問題を照らし出している。日本の外交スタイルは世界標準からかけ離れている」と指摘する――』、「日本の外交スタイルは世界標準からかけ離れている」とは痛烈な批判だ。
・『強調される「独自のパイプ」とは何なのか  緊迫するミャンマー情勢に直面し、歯切れの悪い日本外交の姿が露呈している。「日本はミャンマーに独自のパイプがある」といった、言語明瞭・意味不明の言説が頻繁に語られている。しかし2月1日のクーデター勃発から3カ月がたち、これらの言説に実行が伴っていないことは明らかになってきている。そもそもこれらの言説は、具体的にはいったい何を意味しているのか。 4月9日に、駐ミャンマーの15大使が共同声明の形で公表したミャンマー軍を非難する共同声明に、日本は加わらなかった。アメリカの同盟国で加わらなかったのは、日本と、エルドアン大統領のトルコやドゥテルテ大統領のフィリピンくらいであった。 「日本は軍の利益になる援助を止めろ」、といった国内外からの声に対して、日本の外交当局が「対応は検討中です」とだけ述べて、あとはじっと無言で耐え続ける、という図式が続いている。茂木外相が「北風がいいか、太陽がいいか」といったナゾナゾのようなことを国会答弁で述べたことは、日本の奇妙な外交スタイルとして国際的にも広く報じられた。 こうしたすっきりしないやり取りの中で頻繁に語られているのが、「パイプ」という謎の概念だ。日本の外交当局が「パイプ」なるものに異様なまでのこだわりを見せている。しかしそれが何なのかは、一切語ろうとはしない。 いったい「パイプ」とは何なのか。 ここでは「金」の面から、日本が持つ「パイプ」について考えてみたい』、「何なの」だろう。
・『「援助」と言いつつ実態は「投資」  日本のメディアは、同じ情報源から聞いてきたことをそのまま各社が引用しているかのように、「日本はミャンマーに巨額の援助をしているので影響力がある」、と伝え続けている。残念ながら、そのような報道は海外メディアでは見ることがない。日本の存在は、上述の「北風か太陽か」自問自答のように茶化されたりする文脈で報道されることはあっても、真面目にミャンマー軍に影響力を行使できるパワーとしては扱われない。 実際に、日本がミャンマー軍に影響力を行使しているような様子は全く見られない。それでは、どれだけ日本のメディアが日本において日本語で日本人向けに「日本は影響力がある」と主張してみたところで、海外では全く相手にされていないのは仕方がない。 (図表1 ミャンマー向け有償資金協力例はリンク先参照) なぜなのか。その理由は、援助の中身を見れば、推察できる。日本は毎年1000億円を超える額のODAをミャンマーに投入し続けているが、そのほとんどは円借款である。これはつまり投資である。これは0.01%の40年償還という好待遇であるとはいえ、貸付金である。他の東南アジア諸国のように経済発展が進むと、円借款の金額は返還されてきて、むしろ日本は利息分の利潤すら得ることになる』、「毎年1000億円を超える額のODAをミャンマーに投入し続けている」、こんなにも「投入」しているとは、初めて知った。
・『「アジア最後のフロンティア」の夢  日本はミャンマーを「アジア最後のフロンティア」と見込んで、官民一体になったいわば旧来型の護送船団方式の経済進出を行ってきている。円借款を実施するプロジェクトを日本企業に受注させ、それを梃子にして日本が抱え込んでいる経済特区に集中的に日本企業を進出させる、といった具合である。それがミャンマーに対する戦略的計算だけでなく、他の東南アジア諸国における成功モデルの再現を期待する経済的願望による行動でもあることは当然だろう。 果たしてこの護送船団方式のODAを媒介にした経済進出は成功したのか。実情としては、まだ成果が出ていない。日本が集中的に進出した「ティラワ経済特区」を例に取れば、多数の企業の進出に耐えられるインフラの不足が解決されておらず、電力網の整備などを日本のODAを通じて実施している段階だ。当然ながら、数千億円にのぼる貸付金は、まだ全く返還されてきていない』、「護送船団方式のODAを媒介にした経済進出は成功したのか。実情としては、まだ成果が出ていない」、今回のクーデターも踏まえると、返済は難しくなりそうだ。
・『2013年には4000億円の債務を帳消しに  実は日本ほどではないとはいえ、他の諸国も、2011年の民主化プロセスの開始後、ミャンマーに対する援助額を増加させてはいた。他国と同様に、軍政期には援助額を停滞気味にさせていた日本は、他を圧倒するようなODAの増額を果たすために、それまで累積していたミャンマー向けの貸付金を一気に帳消しにするという作戦に出た。多額の未払金が残ったままでは、新規の援助の大幅増額が困難だったからだ。 そこで2013年に、約2000億円の債権放棄を行った。さらに手続き上の理由から債権放棄ができなかった約2000億円について、同額の融資を一気に行い、それを原資にして即座の名目的な返還を果たさせるという離れ技まで行った。 つまり日本政府は、ミャンマーで焦げ付いていた約4000億円の貸付金を、日本の納税者に負担させる形で一気に帳消しにして、さらなる融資の工面に乗り出した。それもこれも全て、ミャンマーを「アジア最後のフロンティア」と見込んだ経済的願望があればこそであった』、「ミャンマーで焦げ付いていた約4000億円の貸付金を、日本の納税者に負担させる形で一気に帳消しにして、さらなる融資の工面に乗り出した」、初耳だが、「日本政府」も説明責任をきちんと果たすべきだ。
・『軍部を擁護してきたかいはあったのか  その後もODAという名目でミャンマーに貸し付けた資金は回収されていない。むしろ今回の事件で回収が困難になってきたという印象は否めない。そもそも市民を殺戮してまで権力にしがみつくミャンマー軍幹部が、日本から借りたお金をコツコツと返却するために努力するような人物であるようには見えない。借金は返還できなければ、以前のように踏み倒すだけだろう。 国家と国家の間の貸し借りで、返還がなかったからといって、差し押さえなどの措置を取ることはできない。日本ができるのは、市民に銃を向けて殺戮している虐殺者たちに、ただただひたすら返金をお願いする陳情をすることだけだ。それどころか、以前にように、新たな融資でとりあえず名目的に補塡ほてんさせるしか手がないなどといったことになれば、再び日本の納税者を借金地獄に引き込むしか手がなくなるだろう。 現在、ミャンマー軍幹部に標的制裁をかけている欧米諸国に対して、日本では「欧米はミャンマーと付き合いが浅いから簡単にそういうことができる」といった言い方をする方が多い。しかしこれは見方を変えれば、ミャンマー軍が権力を握り続けた民主化プロセスに懐疑的だった欧米諸国に対して、事あるごとにミャンマーを擁護する立場をとり続けてきた日本のリスク管理の甘さが問われている事態だとも言えるわけである。 このような事情を持つ「金」で成立している「パイプ」を、いかに日本人が日本国内で日本語で日本人向けに誇示しようとも、国際的には同じようには認められないのは、致し方のないところもある』、日本のマスコミや野党が外務省の説明を鵜呑みにしているのも、情けない。もっと実態を明らかにすべきだ。
・『在日ミャンマー人が「日本ミャンマー協会」前でデモをする意味  現在、日本にいるミャンマーの人たちを含む人々が、「日本ミャンマー協会」の前でデモを行ったりしている。市民を虐殺している軍を利する「パイプを断て」、と要請している(*1)。 「日本ミャンマー協会」とは何か。同協会の会長である渡邉秀央氏は、ミャンマー軍との間に特に「太いパイプ」を持ち、軍司令官であるミン・アウン・フライン氏とも過去に24回会っているという緊密な関係を続けている。渡邉氏がキーパーソンなのは、日本のODA業界にミャンマー向け巨額円借款の恒常化を実現した人物だからだ(*2)。 元郵政大臣である渡邊氏は、当然ながら日本のエスタブリシュメント層に「太いパイプ」を持ち、日本ミャンマー協会の役員には、政・財・官界の大物がずらっと並ぶ。「最高顧問」の麻生太郎副総理をはじめとする大物政治家のみならず、ODA契約企業リストにも登場する財閥系の企業名が目立つ(*3)。 仮にミャンマー向けの円借款が焦げ付いて日本の納税者が負担を強いられるとしても、契約企業が損失を受けるわけではない。これに対して、ミャンマー軍が市民を虐殺しているからといって実施中のODAまで止めてしまっては、これらの迷惑をかけてはいけないところに多大な迷惑がかかってしまう。日本の外交当局が「対応策を慎重に検討する」のも無理もないということは、こうしたリストを見るだけでも容易に推察できるだろう』、「ODA]が「契約企業」の既得権になってしまい、「ミャンマー」との交渉材料に使えないのも逆立ちした話だ。
・『「選挙は公正だった」となぜ言えないのか  なお在日のミャンマーの方々を含む人々は、日本財団ビルの前でもデモを行ったりする。「ミャンマー国民和解担当日本政府代表」の肩書も持つ笹川陽平氏が、同財団の会長を務めているからだ。笹川氏は、日本政府代表として、日本政府の予算で、昨年11月のミャンマー選挙の監視団を率いた。選挙直後こそ、選挙は公正に行われた、と発言していた。しかしミャンマー軍が「選挙には不正があった」と主張してクーデターを起こしてからは、沈黙を保っている。 デモをしている人々は、「せめて選挙は公正だったので、クーデターは認められないと発言してほしい」と懇願しているのだが、笹川氏は反応していない。言うまでもなく、笹川氏も、ミャンマーに深く関わる日本社会の大物だ』、「笹川氏は、日本政府代表として、日本政府の予算で、昨年11月のミャンマー選挙の監視団を率いた」、のであれば、「クーデターを起こしてからは、沈黙を保っている」というのは卑怯で、責任の放棄だ。
・『「パイプ」の論理にだけ身を委ねていいのか  日本は、ミャンマー軍幹部らと「パイプ」を持つ。ただそれを、外交官が秘密の外交術で特殊技能を発揮して海外で作り出したパイプ、といったふうに勝手にロマン主義的に捉えるとすると、状況を見間違えるかもしれない。「パイプ」は、個々の外務省職員のような存在を超えて、日本国内各所に「金」とともに太く縦横無尽に伸びている。「パイプ」とは、個々の外交官が、個人的意見で論じていい政策論を超えたものなのである。 だが果たして、だからといって「パイプ」の論理にだけ身を委ねていれば、日本は絶対に安泰だろうか。日本の納税者が不当に損をする事態は絶対発生しない、と保証している人物がどこかにいるだろうか。 ミャンマー問題は、さまざまな日本の外交問題を照らし出している。旧来型の護送船団方式のODAの「パイプ」のあり方も、その問題の一つであろう。 (*1)東洋経済ONLINE「沈黙する『日本ミャンマー協会』が抗議浴びる訳」(尾崎孝史、2021年4月22日) (*2)ロイター「特別リポート:急接近する日本とミャンマー、投資加速の舞台裏」(2012年10月5日) (*3)「日本ミャンマー協会 役員名簿」』、いい加減な「パイプの論理」などに惑わされないよう、「ODA]のあり方を原点から見直すべきだ。
タグ:ミャンマー yahooニュース PRESIDENT ONLINE Newsweek日本版 伊藤和子 (その4)(繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇、市民を虐殺するミャンマー国軍 日本政府・企業は軍と国民 どちらに立つのか?、ミャンマー市民が頼るのは 迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望、日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠) 永井浩 「繰り返されるミャンマーの悲劇 繰り返される「民主国家」日本政府の喜劇」 ミャンマー軍に対する厳しい制裁に踏み切れない日本政府は軍政の「共犯者」だ クーデター前でも「スーチー氏」の状態は、事実上の自宅軟禁だったようだ。「日本大使館関係者」の「基本的人権や自由の保障」の認識の浅さには改めて驚かされた。 「日本政府はビルマの民主化の進展に応じて、という条件をつけているというが、私は真の民主化の進展を条件にしてほしい。私一人の釈放だけでは不十分です」、「日本政府」への痛烈な批判だ スーチー氏の連載エッセイ『ビルマからの手紙』については、初めて知ったが、毎日新聞としては大ヒットだったろう 「池田行彦外相」や「外務省」が毎日新聞に圧力をかけるとはとんでもないことだ。 外務省は、民主主義の否定という点では軍政と「共犯者」といっても過言ではなかった。そしてこの体質は、現在にいたるまで基本的に変わらなかった」、情けなく、国際的にも恥ずかしいことだ。 「市民を虐殺するミャンマー国軍。日本政府・企業は軍と国民、どちらに立つのか?」 「9日に治安部隊がデモ隊を攻撃し、市民82人が死亡したと報じた。治安部隊は機関銃や迫撃砲など戦闘用の武器を使用したという」、国民に「戦闘用の武器を使用」、国軍が国民に対し残虐行為をするとは信じ難い。 市民の側は「ようやく民主化と自由を手に入れたいま、絶対に暗黒時代に後戻りしないという固い決意があるのです。特に、Z世代と言われる若者が強い意志で立ち上がっています」、よくぞやるものだと頭が下がる 「国軍の資金源となるプロジェクトを継続することは、人権弾圧や虐殺を助長するものです。国軍や関連企業に関わるODA事業はすべて凍結するべき」、その通りだ。 日本政府がいますべきこと 欧米諸国とともに、ミャンマー国軍関係者や国軍系企業 に対し、ターゲット制裁を発動したり、軍の資金源となっている主要な産品の取引を制限するなどの措置を真剣に検討すべき 「キリン」が態度表明したが、他は「沈黙」を続けており、態度を明確化すべきだ。 私たちも心を痛めてニュースを見守るだけでなく、政府と企業に責任ある行動をとるよう声を上げることができます 「ミャンマー市民が頼るのは、迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望」 国際社会に幻滅した市民らが一縷の望みを託す「少数民族連合軍vs国軍」の構図。当事者たちが語るその可能性 主要な「少数民族」「代表者」の見解とは興味深い 「私たちはこれまで少数民族に差別的だった「ビルマ人愛国主義者」たちへの警戒を解いておらず、NLDに対する不信感も根強い」、確かにこれまでの経緯も無視できないだろう 少数民族軍の戦略はいわゆるpositional war(陣地戦)ではなく都市型ゲリラ戦だ。例えばヤンゴンには軍事訓練を受けた「見た目は普通の人」が数千人もいるとされる」、それでも「キューバ革命」を引き合いに出すのは無理がある。「「統一政府」の議論」がまとまってほしいものだ 「CRPHは中国を重要な国家として認めると。その上で、現在の国軍に対する無条件の支援をやめるよう求めるのだ」、なかなか面白そうな戦略だ。 「投降した兵士らを受け入れる新しい軍組織がなければ、ミャンマーはサダム・フセイン亡き後のイラクになり、兵士らは過激派イスラム組織「イスラム国」(IS)のようになってしまう。その意味でも連邦軍は必要だ」、同感である 篠田 英朗 「日本政府が「ミャンマー軍の市民虐殺」に沈黙を続ける根本的理由 外交を歪めてきた「ODA金脈」の罠」 「日本の外交スタイルは世界標準からかけ離れている」とは痛烈な批判だ 「何なの」だろう。 「毎年1000億円を超える額のODAをミャンマーに投入し続けている」、こんなにも「投入」しているとは、初めて知った。 「護送船団方式のODAを媒介にした経済進出は成功したのか。実情としては、まだ成果が出ていない」、今回のクーデターも踏まえると、返済は難しくなりそうだ。 「ミャンマーで焦げ付いていた約4000億円の貸付金を、日本の納税者に負担させる形で一気に帳消しにして、さらなる融資の工面に乗り出した」、初耳だが、「日本政府」も説明責任をきちんと果たすべきだ 日本のマスコミや野党が外務省の説明を鵜呑みにしているのも、情けない。もっと実態を明らかにすべきだ。 「ODA]が「契約企業」の既得権になってしまい、「ミャンマー」との交渉材料に使えないのも逆立ちした話だ 「笹川氏は、日本政府代表として、日本政府の予算で、昨年11月のミャンマー選挙の監視団を率いた」、のであれば、「クーデターを起こしてからは、沈黙を保っている」というのは卑怯で、責任の放棄だ。 いい加減な「パイプの論理」などに惑わされないよう、「ODA]のあり方を原点から見直すべきだ。
nice!(0)  コメント(0) 

バイデン政権(その1)(バイデン政権へ影響力高めるもう1人のジョー 中間選挙へ向け左傾化のイメージ払拭に一役、「トランプ逮捕」はあるか 財務記録入手で不正疑惑捜査は核心に、政局を横目にバイデン政権は安全運転 その先は?) [世界情勢]

今日は、バイデン政権(その1)(バイデン政権へ影響力高めるもう1人のジョー 中間選挙へ向け左傾化のイメージ払拭に一役、「トランプ逮捕」はあるか 財務記録入手で不正疑惑捜査は核心に、政局を横目にバイデン政権は安全運転 その先は?)を取上げよう。なお、前回は「トランプ VS バイデン(その3)」として、1月26日に取上げた。

先ずは、3月6日付け東洋経済オンラインが掲載した米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長の渡辺 亮司氏による「バイデン政権へ影響力高めるもう1人のジョー 中間選挙へ向け左傾化のイメージ払拭に一役」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/415358
・『バイデン大統領は任期中で最も重要となるかもしれない法案に間もなく署名する。それは過去1年間、アメリカ国民を悩ましてきたパンデミックに終止符を打つべく、最大1.9兆ドル(約200兆円)規模の追加経済支援策「アメリカ救済計画法案」だ。だが、バイデン政権は選挙公約に反し、初っ端から民主党単独で強行採決し、法制化に至る見通しだ』、興味深そうだ。
・『バイデンの理想どおりに進む議会審議  追加経済支援策では、バイデン大統領は最初から超党派合意は棄てていたように見える。政権発足から2週間も経たない2月1日、バイデン大統領は穏健派の共和党上院議員10人とホワイトハウスで面談。彼らが提案する6180億ドルの支援策と政権の目指す1.9兆ドルの支援策の妥協案を模索する交渉がその後始動するかとも思われた。 だが、その期待はすぐに消え去った。政権は聞く耳を持っているそぶりを見せていたものの、共和党との妥協案を交渉する意思はなかったのだ。会合から約1週間後には議会民主党が予算決議を通し、バイデン政権が民主党のみで可決できる財政調整法を利用し法案策定を進めたことは、共和党を激怒させた。 政権が超党派合意を早期に放棄したのには理由がある。バイデン政権では、ロン・クレイン大統領首席補佐官をはじめ2009年の苦い経験を鮮明に記憶しているオバマ政権経験者が多数、要職に就いている。当時、リーマンショック後の景気対策「アメリカ再生・再投資法(ARRA)」で、オバマ政権は共和党の支持獲得のために支援額を減らすことなどに妥協するも、結局、ほとんど共和党の支持を得ることができなかった。 減額されたことが経済回復の遅れをもたらし、オバマ政権の経済対策を批判する共和党が翌年の中間選挙で下院議席を63も民主党から奪い大勝し、民主党にとって悲惨な結果をもたらした。これを教訓に、危機の中で時間を無駄に過ごすという同じ過ちを犯してはいけないと政権幹部は考えているのだ。 そしてバイデン政権は単独行動に強気となれるもう1つの理由がある。議会では共和党が1人も賛成しないとしても、国民世論において追加経済支援策は党派を問わず幅広い支持を得ているのだ。モーニングコンサルト紙・ポリティコ紙が実施した世論調査(2月26日~3月1日)によると、追加経済支援策は全国民の77%、共和党支持者のみでも59%の支持を集めている。民主党は超党派の定義を「議会」ではなく「国民」にすり替え、公約違反でないことを主張している。 いずれも「上院の生きもの」とも呼ばれるバイデン大統領と共和党のミッチ・マコネル上院院内総務は、上院で24年間ほど肩を並べて働いた仲だ。お互いの信頼関係は揺るぎがないとも報道されてきた。ジョージア州決戦投票により民主党の上院奪還が確定するまでは、ワシントンの「パワーカップル」になるとも称され、超党派合意に期待感が高まっていた。 だが、その期待は甘く、2極化社会における議会には個人的な信頼関係では乗り越えられない壁があることが明らかになってきた。追加経済支援策のように国民に人気の法案でさえ、議会で超党派の合意を得られていない。そのことは、今後4年間の政権運営の厳しさを示唆し、多くの場面でバイデン大統領は民主党のみで可決できるものに頼らざるをえない。したがって今日、バイデン政権にとって重要なのは、超党派合意よりも民主党の党内団結となっている』、「オバマ政権」時代の「共和党の支持獲得のための妥協が、民主党のトラウマになっているようだ。「バイデン政権にとって重要なのは、超党派合意よりも民主党の党内団結」、なるほど。
・『民主党穏健派ジョー・マンチンの影響力  民主党がホワイトハウス、そして上下両院を握る「三冠(トライフェクタ)」が実現したワシントン政治において、新たな「パワーカップル」は2人のジョーだ。1人はもちろん、ジョー・バイデン大統領。そして、もう1人は民主党穏健派の代表格ジョー・マンチン上院議員だ。その影響力は議会民主党トップのナンシー・ペロシ下院議長やチャック・シューマー上院院内総務をも上回ると指摘される。 トライフェクタであっても、民主党内では急進左派と穏健派で政策は大きく異なり一枚岩ではない。特に上院では民主党50議席・共和党50議席で、カマラ・ハリス副大統領の決定票でぎりぎりの過半数を得る窮屈さで、民主党議員の造反を1人も許す余裕がない。バイデン政権は党内で最も勢いがある民主党急進左派の望む項目を多々、政策目標に盛り込んでいるが、大幅な左傾化からの防波堤となっているのがマンチン氏を筆頭とする数名の民主党穏健派議員だ。 マンチン氏は、人口が日本の札幌市よりも少ない約180万人のウェストバージニア州選出の上院議員だ。同州ではトランプ大統領が2016年も2020年も圧勝し、2020年は全米でワイオミング州に次ぐ大差で勝利したレッドステートだ。ウェストバージニア州選出の政治家は共和党ばかりで同氏は孤立している。 マンチン氏は政策によっては同じ政党の急進左派よりも、共和党穏健派に近い。ホワイトハウスは、コロナ対策をはじめ重要な政策で民主党穏健派の中でも特に同議員の動向を注視している。直近ではリベラル派のニーラ・タンデン氏を行政管理予算局(OMB)局長に指名する案を撤回させるなど、人事面でもマンチン氏は影響力を行使している。) 追加経済支援策の中身は大きく分けると、3つ。第1に伝統的な景気刺激策、第2にコロナ対策に直接関わる支援、第3に支援策に便乗して追加された民主党が長年掲げる政策だ。支援規模以外では民主党穏健派や共和党は3つ目の便乗政策について特に懸念を示してきた。便乗政策の中で最も注目を集めたのが最低賃金引き上げだ。 バイデン政権は上院の財政調整法を利用する場合、そもそも時給15ドルへの最低賃金引き上げは議会職員である議事運営専門員(パーラメンタリアン)の判断で、最終法案に盛り込まれないと見ていた。財政調整法の適用範囲は、歳出、歳入、債務上限に関わる分野などに限定されている。にもかかわらず、あえて法案に含めることを支持してきたのは、長年、急進左派が強くこだわっている政策であるからだ。 パーラメンタリアンは各政策について中立的な立場で財政調整法に盛り込むことが適切か判断を下す。その際の判断基準は、ウェストバージニア州選出という意味ではマンチン氏の大先輩に当たるロバート・バード元上院議員が作成した「バードルール(Byrd rule)」だ。パーラメンタリアンの審査はバードバス(Byrd(bird) bath:鳥の水浴び)、そしてその過程でバードルール違反として却下(drop)される行為はバードドロップ(Byrd(bird) drop:鳥の糞)と議会職員の間では呼ばれている』、「パーラメンタリアン」とは面白い制度だ。
・『2人のジョーを救ったパーラメンタリアン  バイデン政権は党内団結のためにも、急進左派と穏健派の微妙なバランスを取らなければならない。だが、中立な立場のパーラメンタリアンといった第三者が判断するのであれば、急進左派も政権に対し文句をいえないであろうとの計算があった。したがって2月25日、パーラメンタリアンが最低賃金をバードドロップしたことはバイデン政権にとっては理想の結果であったのだ。 仮にパーラメンタリアンが時給15ドルの最低賃金引き上げを認めていたら、バイデン政権にとって厄介なこととなっていた。その場合、上院では少なくとも穏健派のキルステン・シネマ氏(アリゾナ州選出)とマンチン氏の民主党議員2人が支援策に反対票を投じ廃案となるか、あるいは、可決に時間を要することが想定されていたからだ。バイデン政権の重要法案を廃案に追い込んだとすれば、民主党穏健派議員は民主党支持基盤からの批判を受け、苦境に陥っていたであろう。) だが、実際にはパーラメンタリアンの判断はあくまでも助言にすぎず法的拘束力は伴っていない。議会ではカマラ・ハリス副大統領がパーラメンタリアンの判断を覆すシナリオに関するメモが出回っていた。特に下院の急進左派が最低賃金の引き上げを長年支持してきた同副大統領に圧力をかけていたのは確かだ。 しかし、急進左派からの圧力は見られたものの、追加経済支援策が崩壊する事態までには発展せず、法案可決に向けて民主党は団結し着実に前進している。バイデン大統領にとって理想通りの展開となっている』、「民主党」も「穏健派」と「急進左派」の幅が広いので、バランスを取る「バイデン大統領」も大変だ。
・『左傾化を避け、中間選挙で三冠を堅持できるか  政権と同じ政党が上下両院を握っている場合、大統領は任期1期目の中間選挙で上院あるいは下院で多数派の座を失うケースが多い。たいていは与党内の左派あるいは右派の行きすぎた政策に対し、国民からしっぺ返しを食らうものだ。 議会で共和党の支持を得られず民主党のみで間もなく成立する追加経済支援策も、同様の運命にあるのか。今後、共和党が同支援策は急進左派の望むリベラルな政策であると烙印を押す格好でイデオロギーをめぐる争いを仕掛けるであろう。 一方、民主党は危機時に国民に人気の現金給付などに共和党が反対したことを訴えて反論するであろう。そもそも現金給付はトランプ前政権も支持していたことだ。追加経済支援策への国民の高い支持率が、中間選挙に向けてどう推移するか注目だ。15ドルへの最低賃金引き上げ断念に加え、タンデン氏指名承認の断念は一見、バイデン政権の失敗とも見えるが、左傾化のイメージを払拭するうえで、バイデン政権にとって中長期的には喜ぶべきことかもしれない。 今年10月以降の2022年度予算では、バイデン政権の次の重要法案である環境に軸足を置いたインフラ整備法案を再び民主党のみで可決しようとするだろう。マンチン氏をはじめ穏健派の抵抗によって政策の左傾化を避け、同時に経済回復の追い風が吹けば、民主党は2022年中間選挙での敗北を免れるかもしれない。アメリカ政治の行方はパンデミック、経済の行方などさまざまな不確実性がつきまとうが、確実なのは2人のジョーが中間選挙までの約20カ月間、ワシントンの政治を大きく動かしていくことだ』、「2人のジョー」のお手並みを拝見するとしよう。

次に、3月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際ジャーナリスト・外交政策センター理事の蟹瀬誠一氏による「「トランプ逮捕」はあるか、財務記録入手で不正疑惑捜査は核心に」を紹介しよう』。
https://diamond.jp/articles/-/266588
・『ハードディスクの入手でトランプへの捜査は核心へ  逮捕され刑務所に送られるのか。それともお得意のウソとハッタリでまたも法の網を潜り抜けるのか。司法当局によるドナルド・トランプ前米大統領に対する捜査が核心に迫りつつある。 吹雪の中、ニューヨーク郊外の会計事務所を訪れた地方検事補佐と2人の捜査官は「ある物」を受け取ると急いでマンハッタン南端に立つ古びた州庁舎へ車を走らせた。2月末のことである。 「ある物」とは、トランプの過去8年分の納税記録など財務資料が記録されたハードディスクだ。脱税や保険詐欺、業務記録の改ざんなど前大統領の犯罪を裏付ける重要な証拠である。) 地元メディアの報道によると、そのハードディスクは州庁舎の特別な部屋に保管されている。入口は頑丈な二重の金属ドアで、内部の壁や天井には銅箔が張られているという。外部からリモートでデジタル情報にアクセスさせないためだ。そんな厳重な警戒ぶりからみても、資料の中には「大統領の犯罪」を立証する決め手が含まれていることは間違いないだろう。 トランプは在任中、大統領の免責特権を盾に背任、共謀、職権乱用、司法妨害、脱税、詐欺などさまざまな疑惑の追及を逃れてきた。歴代大統領が慣例として行ってきた納税申告書の公開も、「政治的な魔女狩りだ!」と叫んで拒否し続けた。 しかし、今や「ただの一市民」となったトランプに免責特権はない。最高裁は2月22日、ニューヨーク州マンハッタン地区主席検事サイラス・ヴァンスの要請を認め、前大統領に財務資料の提出を命令した。さすがのトランプもこれには逆らえない。判決からわずか数時間後、膨大な資料が収められたハードディスクがトランプの会計事務所から司直の手に渡った。 この資料を基に検察が起訴すれば、内容が一般にも公開される可能性がある。場合によってはトランプ自身が法廷で証言を求められるかもしれない。そうなれば見ものだ』、「大統領の免責特権を盾に背任、共謀、職権乱用、司法妨害、脱税、詐欺などさまざまな疑惑の追及を逃れてきた」のが、「過去8年分の納税記録など財務資料が記録されたハードディスク」から何が出てくるのか、楽しみだ。
・『脱税と不正税申告を集中的に捜査  ニューヨーク州検察が集中的に捜査しているのは脱税と不正税申告だ。そのため州検察は捜査チームにFTIコンサルティングというフォレンジック会計の専門家を雇った。フォレンジック会計は訴訟会計とも呼ばれ、会計上の違法行為を見つけて裁判に耐えうるデータを集める作業のことだ。トランプの不明朗な金の流れを精査するのが目的だが、捜査の中立性を担保する狙いもある。 それだけではない。ニューヨーク・マフィア5大ファミリーのひとつ、ガンビーノ一家のボスの息子を有罪にしたことで有名な元連邦検察官マーク・ポメランツも捜査チームに加わっている。マフィアの巧妙な脱税手口を知り尽くしたベテランだ。 「彼らは本気だ。すでに確証に近いものを手に入れ、その仕上げにかかっているようだ」と、トランプ大統領上級顧問だったケリーアン・コンウェイの夫で反トランプ弁護士のジョージ・コンウェイは地元誌のインタビューで語っている。 トランプの財務記録を巡っては、すでに米ニューヨーク・タイムズ紙が独自入手した資料を基にスッパ抜いている。例えば、富豪のはずのトランプが大統領選以前の15年間のうち10年間にわたり連邦所得税を納めなくて済んだカラクリや、勝利が決まった2016年の納税額がたったの750ドル(約8万円)だったことなどだ。 そもそもトランプの犯罪捜査は2018年までさかのぼる。当初は2016年の大統領選挙中にポルノ女優とのセックススキャンダルをもみ消すために数十万ドルの口止め料を支払ったことが公職選挙法違反に当たるというものだった。しかしその後、捜査はトランプ個人の不正疑惑だけでなく一族が経営するトランプ・オーガニゼーションを巻き込んだ粉飾決算、詐欺、背任などに広がっていった。 すでに元顧問弁護士でトランプの忠実な「ピットブル(闘犬)」と呼ばれたマイケル・コーエンが司法取引に応じて有罪を認め、脱税と選挙資金法違反で禁固3年の有罪判決を受けている。ボスに見捨てられた恨みは深い。「あいつ(トランプ)はずるいウソつき、詐欺師だ」と議会証言で前大統領をこき下ろし、今も捜査に協力している。 新司法長官メリック・ガーランド(民主党)が許可すれば、検察は年内にもトランプを複数の容疑で刑事告発できるとヴァンス主席検事は自信を深めているという』、「年内にもトランプを複数の容疑で刑事告発できる」、とは既に証拠を握ったのだろうか。
・『検察の切り札は金庫番との司法取引  しかし法律専門家の間では、前大統領の刑事告発はそう簡単ではないという指摘がある。なぜなら裁判では、トランプに「合理的疑いの余地のない」明確な犯罪の意図があったことを陪審に証明しなくてはならないからだ。そのためには財務資料とともに決め手となる関係者の証言が欠かせない。 すでに検察はトランプ一族と関係の深いドイツ銀行従業員など関係者多数に聞き取りを行った模様だが、油断は禁物だ。実業家時代にトランプは4000件近くの訴訟を抱えたが、いずれも狡猾な手段を使って切り抜けているからだ。 じつはトランプの側にはマフィアの守護神といわれた悪徳弁護士ロイ・コーンが常についていた。ウソとハッタリで敵を容赦なくたたきつぶす者が最後に勝者となるという処世訓をトランプにたたき込んだのもこの男だった。 コーンはすでにこの世を去っているが、トランプは彼から犯罪の痕跡を残さない術を学んでいる。例えば、自分の机にはコンピューターを置かず個人的電子メールアドレスも持たない。メッセージは側近に書かせる。不正行為を指示するときには言質を取られないよう曖昧な言葉を使って自分の意図を部下に忖度(そんたく)させる。悪徳政治家やヤクザの常とう手段だ。いざとなったら知らんふりをして責任を他人になすりつけることができる。 そんな悪賢い前大統領に対して、検察の切り札は長年トランプ一族の忠実な金庫番を務め誰よりも黒い金の流れを知る最高財務責任者のアレン・ワイゼルバーグ(73歳)だ。もしワイゼルバーグがコーエン受刑者と同じように司法取引に応じて証言すれば、トランプは窮地に追い込まれるだろう。 前大統領のめいで自著でトランプ一家の暗部を暴露したメアリー・トランプはこう言ってはばからない。 「すべての死体(犯罪の証拠)がどこに埋められているかはワイゼルバーグが知っています」』、「ワイゼルバーグ」は確かに「検察の切り札」のようだ。
・『平静を装うトランプだが 無傷の逃げ切りは困難  それではトランプ本人は何をしているのだろうか。知人で米ニュース誌記者のビル・パウエルによると、フェイスブックやツイッターから排除されて発信力を失った前大統領は平静を装ってフロリダの高級リゾートでゴルフ三昧の日々を過ごしているそうだ。 しかし、誇大妄想で偏執狂のトランプがそうたやすく引き下がるわけがない。パームビーチに「The Office of the Former President(元大統領のオフィス)」という珍妙な名前の事務所を開設し、陣営の上級顧問ジェイソン・ミラーや元主席戦略官だったスティーブ・バノンたちと共和党乗っ取りをひそかに画策しているという。いまだにトランプを恐れる大多数の共和党議員を利用して白人至上主義とアメリカファーストを推し進めようというのだ。 トランプの政治資金団体である「Save America(アメリカを救え)」はすでに約8000万ドルもの寄付金を集めており、来年の中間選挙でトランプに忠誠を誓う共和党候補につぎ込む手はずだ。 弾劾裁判でトランプに反旗を翻した共和党議員への仕返しも忘れていない。「復讐リスト」には、下院共和党ナンバー3のリズ・チェイニー下院議員を含む10人以上の共和党議員の名前がズラリと並んでいる。どんな汚い手を使っても彼らを落選させるつもりだ。 とにかくトランプは蛇のように執念深い。実業家時代に黒い組織の人脈から2つのおきてを学んでいるからだ。ひとつは「やられたら容赦なくやり返せ」。もうひとつは「ボスを裏切ったヤツを絶対に許さない」である。 そんな負けず嫌いのトランプも今度ばかりは無傷で逃げ切るのは難しいだろう。検察側が時間をかけて周到に物的証拠や証言を積み重ねてきているからだ。 コロナ感染対策と経済再建で手いっぱいのバイデン大統領はトランプ起訴には消極的だ。だが、これほどまでに悪質な「大統領の犯罪」を見逃せば、民主主義の根幹である法の支配を揺るがすことになりかねない。不安の声が法曹界や民主党支持者の間で高まっている。 アメリカ社会を分断し世界秩序を混乱させたトランプ前大統領は、果たしてどのように裁かれるのか。重厚なローマ様式のニューヨーク郡裁判所ビルの正面を見上げると、初代大統領ジョージ・ワシントンの次のような碑文が刻まれている。 「真の司法権は良識ある政府の最も強固な柱である」』、「「Save America・・・はすでに約8000万ドルもの寄付金を集めており」、「「復讐リスト」には・・・チェイニー下院議員を含む10人以上の共和党議員の名前がズラリと並んでいる」、やはり司法的手段で葬り去るのが王道のように思える。

第三に、在米作家の冷泉彰彦氏が3月6日付けメールマガジンJMMに掲載した「政局を横目にバイデン政権は安全運転、その先は?」from911/USAレポートを紹介しよう。
・『何かと社会を騒がせてきたトランプがフロリダに隠棲して、アメリカ社会は静かになるかと思われたのですが、そうも簡単には行かない状況があるようです。トランプ不在の政局とはいえ、アメリカの政界は落ち着く暇はないようです。 騒がしいということでは、まずニューヨーク州のクオモ知事に対する批判の声が非常に大きくなっています。クオモ知事に関しては、前回この欄でお話した、高齢者施設入居者におけるコロナ死亡者の問題については、さすがに知事を一方的に叩くムードは収まりました。 感染爆発の最悪のシナリオを前提とした上で、なおかつ一般診療のキャパシティーも確保しながら医療崩壊を食い止めるために、施設入居者については病院ではなく、施設に戻すというのが知事の政策でした。施設であれば「自分のベッドがあり、施設として看護師等のケアが受けられる」というのが理由で、あくまで医療崩壊を回避するための苦肉の策だったのです。 ですが、知事の策は完全に裏目に出ました。まず感染爆発は深刻でしたが、知事の覚悟した「最悪」には至りませんでした。一方で、必死に確保した一般病棟には、コロナを恐れて患者はほとんど来ず、対策はムダに終わりました。その反対に、施設内ではPPE不足、ノウハウ不足のためにクラスターが多数発生して多くの人命が失われました。 そうした施設等で高齢者の家族を亡くした人々には、結果論ではあるものの、クオモ知事への反感があり、政治家の多くはその反感を使って知事を追い詰めようとしたわけですが、知事の側の主張は一貫しており「攻め切れない」というムードになっていたのです。ところが、そのアンチ・クオモのモメンタムを引き継ぐように、今度は知事のセクハラ的な言動が問題になっています。 公職にある人間として、この世代の人は相当に気をつけてきたはずなのですが、とにかく様々な過去の言動が蒸し返されて激しい批判が起きています。知事自身はどのケースについても「心外」であるようで今のところは、辞任せずに徹底抗戦という構えですが、どうなるかは分かりません。 ちなみに、現時点でクオモ知事への追及を強めているのは共和党よりも、民主党の左派が中心となっています。捜査開始を示唆しているニューヨーク州の検事総長も、弾劾審査を検討中という州議会のグループも民主党系で、いわば党内抗争という趣になっています』、「民主党」も左右の党内抗争に熱を上げているようでは、共和党への対抗策は二の次のようだ。
・『実は、ニューヨークの民主党内は、デブラシオ市長が左派でバーニー・サンダース議員などに近い一方で、クオモ知事はクリントン夫妻やオバマの人脈と重なる中道派です。そして、この2人はこの約8年間にわたって一方が知事、一方が市長という立場で何度も衝突を繰り返してきました。 例えばですが、ハリケーンで海水が入って水没したNY地下鉄の電気系統について、どうやって抜本的な補修工事をするかといった実務的な部分でも衝突していました。デブラシオ市長がコンサルの口車に乗せられて高額で、長期運休を余儀なくされるような工事計画で進めようとしたところで、クオモ知事が低コスト短期間の抜本補修案を持ち込んでひっくり返したという事件があり、そこで両者の関係は決定的になっていたようです。 その流れもあって、2020年春以降の新型コロナ感染拡大においては、デブラシオ市長が市内の感染拡大防止に対して動くと、クオモ知事はNY市より200キロ北にある州都オルバニーから、その政策を否定して「上書き」するということが繰り返されていました。そんな中で、任期4年で3選禁止となっている市長の方は、この2021年で退任が決定していることもあり、存在感はやや弱くなっていたのです。 そのデブラシオ市長の支持派は、そうした経緯もあって今回のセクハラ疑惑においては、クオモ批判に動いています。大物政治家、例えば民主党左派のAOCことアレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員なども、かなり厳しい姿勢でクオモ批判の側に立っています。そうした中で、デブラシオ市長は急速に存在感を回復しており、ここ数週間で激しくなっているアジア系へのヘイトクライムに対して、率先して批判と防犯の指揮を執っています。 では、この秋の市長選がどうなるかということでは、民主党では「べーシック・インカム(BI)」政策を掲げた台湾系のアンドリュー・ヤング候補が先行していたのですが、ここへ来て元警官でアフリカ系のエリック・アダムス・ブルックリン区長が迫ってきています。アダムス候補は、ミレニアル世代に受ける左派というよりも、古典的なリベラル・ニューヨーカーという感じです。ですから、この2人の対決は、民主党内の中道対左派という軸とはまた違ってきています』、「民主党内」の対立の「軸」は多様なようだ。
・『一方で、ワシントンDCの中央政界では、閣僚人事とコロナ対策法案の審議で、連邦上院における動きが連日のように報じられています。その中では、民主党内での造反が話題になっていますが、その中心人物であるジョー・マンチン議員(ウェスト・バージニア州選出)は、保守州から保守票を獲得して上院の民主党議席を守っているというアクロバット的な存在ですので、コロナ対策への財政出動枠を抑制するとか、最低賃金の全国15ドル化に反対するというのは、基本的には想定されたことであり、その中で是々非々の調整がされているということだと思います。 では、共和党の方はどうかというと、例えば2月28日には、フロリダ州のオーランドで行われた保守派の政治集会「CPAC」にトランプ前大統領が登場して、2024年の大統領選挙における出馬を匂わせたりしていますが、これも想定された事態です。そのトランプに関しては、一旦は「トランプ離れ」に踏み出したとされる、共和党上院のマコネル院内総務が「仮に2024年にトランプが共和党の大統領候補に指名されたら」という前提での質問に対して「勿論、支持する」と答えています。 メディアは、「やっぱり、マコネルはまだトランプ支持なのか」などと落胆していましたが、マコネル議員としたら、「仮に共和党の予備選で勝ったら」という前提での質問だったので、即座に「支持する」としただけで、その予備選で自分がトランプを支持するとは一言も言っていないわけです。ですから、マコネルとしては、全く「ブレ」てはいないということになります。 そのマコネルとして、また共和党の上下両院の議員団としては、できる限りはトランプを過去の人にして行こう、だが、現時点ではその影響力をゼロにはできない、という共通理解があるわけです。その上で、政治家各個人として、トランプとの距離感をそれぞれに取っているというのが現状です。 一方で、局所的な動きとしてはテキサス州のアボット知事(共和)が、いきなり公共の場における「マスク着用義務化の終了」を宣言し、同時に「レストランの屋内営業を含むあらゆるビジネスへのコロナ関連の規制を解除」するとして話題になりました。 テキサス州の場合、実は2月末の寒波に伴う大規模な停電や断水のために、多くの家庭が避難生活を送ったり、地域での相互扶助活動が活発化する中で、残念ながら感染拡大の小規模なリバウンドが起きていた中での「規制全面解除」となった格好です。ただ、大規模停電については、初動における言動が迷走したことも含めてアボット知事には政治的な責任を問う声も大きい中では、テキサスの世論の一部に強く迎合する形での「規制解除」をやらざるを得なかったというのは政治的には理由のあることと言えます』、「テキサス州のアボット知事(共和)が、いきなり公共の場における「マスク着用義務化の終了」を宣言」したのは、「大規模停電」への「政治的な責任を問う声も大きい」のが背景にあったというのは納得した。
・『そんなわけで、民主党も共和党も様々な葛藤を抱え、また中央と地方ではそれぞれに独立した政局が展開しているわけですが、トランプ時代のシナリオのない、ハチャメチャな流れと比較すると、とりあえず全てが想定の中に収まっているのは事実だと思います。その上で、「最初の100日間」というこの時期、バイデン政権はとりあえずワクチン接種の劇的な加速を軸に、社会を前へ進めようということで、政争には超然とした立場を維持しているように見えます。 そのバイデン政権は、移民政策、環境政策などで前政権の行った「揺り戻し」を一気に修正していますが、これも想定内の行動と言えるでしょう。ただ、バイデン政権の動きの中で、中東における軍事外交に関しては、少々解説が必要と思います。 2月25日にバイデン政権は発足後初めての「空爆」を、シリア領内のイラン系の民兵組織に対して実施しました。これは唐突な行動のように見えますが、実は突発的な動きではなく、2月15日にイラク領内のクルド自治区にあるアルビールで、イラン系のミサイル攻撃によってアメリカの民間軍事会社の関係者が1名死亡し、数名が負傷するという事件があり、これが背景となっていました。この事件を放置することは、イランに対して誤ったメッセージを送ることになるという理由から、25日の限定的な攻撃となったものです。 この25日の攻撃については、「強・中・弱」の3つのオプションの中の「中」だという説明が大統領からありましたが、これに対してイランはイラク領内の米軍基地をミサイル攻撃しています。但し、報復とはいえ、急所は外した攻撃であり、今後は何らかの交渉となる道筋を残したものと言えます。 一方で、これと同時にバイデン政権は、前政権がひた隠しにしていた「サウジの反政府ジャーナリスト暗殺事件」に関する調査結果を公表して、ムハンマド皇太子の関与を指摘しました。こちらは、トランプ政権当時のムハンマド皇太子との「癒着関係」を断ち切るとか、イランとの小規模な攻撃の応酬をする一方で、イランの宿敵であるサウジとも距離を置く姿勢を見せて、一種の超然的な姿勢を見せたようにも見えます。 こうした中東政策の全体としては、「全てが想定内」という中で、トランプ時代のアメリカが陥った「シリア政策の迷走」「クルド支援の放棄」「イラクのイラン化放置によるイランへの誤ったメッセージ」「サウジへの過剰な甘やかし」といった問題をリセットして、改めてアメリカとしての中東政策を描き直す準備をしている、そのように受け止めることも可能です』、「中東政策」がバランスを取り戻しつつあるのは結構なことだ。
・『では、今月中旬に組まれた日米「2+2(という言い方は何故か今回はしないようですが)」つまり外相と防衛相の会談では、現時点での「ベスト・アンド・ブライテスト」と言っていい本格閣僚であるブリンケン国務長官とオースティン国防長官は、日本と何を協議するためにやって来るのでしょうか? 1つは、対中国の「リバランス」であり、2つ目は、そのための必要条件としての日米韓3カ国の関係改善へ向けた協議になると思います。ここまでは想定内ですが、仮に第3の議題としてミャンマー情勢の落とし所、そして第4の議題として環境外交の問題を持ち出す可能性もあるかもしれません。 そうなると、日米の協議は単にトランプ時代の迷走のリセットだけでなく、2021年という現時点での「全くの未体験ゾーン」における同盟の再定義と強化というレベルの問題になってくるのではないかと思われます。とりあえず、現在のバイデン政権は想定内の動きが主であり、また日々の政局には超然的に振る舞っています。 ですが、日米関係においては、もっと意欲的に仕掛けてくることが予想される中では、菅政権としてはこれと真剣に向かい合うことが求められます。少なくとも、ミャンマー軍政にも「一部の理がある」とか、「原発ゼロなら火力継続か水素輸入で」「日韓関係改善ができるほど政権は強固でない」などという本音を見透かされるようでは、同盟の強化は持ち越しとなるのではないかと思われます』、同感である。
タグ:東洋経済オンライン 蟹瀬誠一 冷泉彰彦 ダイヤモンド・オンライン JMM 渡辺 亮司 バイデン政権 (その1)(バイデン政権へ影響力高めるもう1人のジョー 中間選挙へ向け左傾化のイメージ払拭に一役、「トランプ逮捕」はあるか 財務記録入手で不正疑惑捜査は核心に、政局を横目にバイデン政権は安全運転 その先は?) 「バイデン政権へ影響力高めるもう1人のジョー 中間選挙へ向け左傾化のイメージ払拭に一役」 バイデン政権は選挙公約に反し、初っ端から民主党単独で強行採決し、法制化に至る見通しだ 「オバマ政権」時代の「共和党の支持獲得のための妥協が、民主党のトラウマになっているようだ。 「バイデン政権にとって重要なのは、超党派合意よりも民主党の党内団結」、なるほど。 「パーラメンタリアン」とは面白い制度だ 「民主党」も「穏健派」と「急進左派」の幅が広いので、バランスを取る「バイデン大統領」も大変だ 「2人のジョー」のお手並みを拝見するとしよう。 「「トランプ逮捕」はあるか、財務記録入手で不正疑惑捜査は核心に」 「大統領の免責特権を盾に背任、共謀、職権乱用、司法妨害、脱税、詐欺などさまざまな疑惑の追及を逃れてきた」のが、「過去8年分の納税記録など財務資料が記録されたハードディスク」から何が出てくるのか、楽しみだ 「年内にもトランプを複数の容疑で刑事告発できる」、とは既に証拠を握ったのだろうか 「ワイゼルバーグ」は確かに「検察の切り札」のようだ 「「Save America・・・はすでに約8000万ドルもの寄付金を集めており」 「復讐リスト」には チェイニー下院議員を含む10人以上の共和党議員の名前がズラリと並んでいる やはり司法的手段で葬り去るのが王道のように思える 「政局を横目にバイデン政権は安全運転、その先は?」from911/USAレポート 「民主党」も左右の党内抗争に熱を上げているようでは、共和党への対抗策は二の次のようだ。 「民主党内」の対立の「軸」は多様なようだ。 「テキサス州のアボット知事(共和)が、いきなり公共の場における「マスク着用義務化の終了」を宣言」したのは、「大規模停電」への「政治的な責任を問う声も大きい」のが背景にあったというのは納得した 「中東政策」がバランスを取り戻しつつあるのは結構なことだ 少なくとも、ミャンマー軍政にも「一部の理がある」とか、「原発ゼロなら火力継続か水素輸入で」「日韓関係改善ができるほど政権は強固でない」などという本音を見透かされるようでは、同盟の強化は持ち越しとなるのではないかと思われます
nice!(0)  コメント(0) 

ミャンマー(その3)(抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」、「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由、ミャンマー政変 にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”) [世界情勢]

ミャンマーについては、本年2月28日に取上げた。今日は、(その3)(抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」、「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由、ミャンマー政変 にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”)である。

先ずは、3月17日付け日経ビジネスオンライン「抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00118/031700044/
・『2月1日の国軍によるクーデターはミャンマーを窮地に追いやった。多くの市民が国軍の支配に不服従を貫き、毎日休みなく全国各地で厳しい抗議デモが起きている。ゼネストも広がり、経済は立ち行かなくなりつつある。だが国軍による弾圧は苛烈になる一方だ。報道によれば、3月16日までに少なくとも180人を超える犠牲者が出ている。なぜ国軍はクーデターを起こしたのか。先行きが不透明な状況はいつまで続くのか。ミャンマー政府と少数民族武装勢力との和平に貢献し、ミャンマーの政治・軍関係者とのつながりも深い日本経済大学の井本勝幸・特命教授に話を聞いた(Qは聞き手の質問)。 Q:国軍による弾圧がエスカレートしており、状況は悪化する一方です。 日本経済大学の井本勝幸・特命教授(以下、井本氏):わずか1カ月でミャンマーという国はボロボロになってしまいました。国軍は人々に銃口を向け、通信は断続的に遮断され、夜陰に紛れた誘拐まがいの拘束が横行している。刑務所でもひどい事態が起きていると聞いています。 治安部隊はデモで負傷した人を手当てする医療ボランティアにまで暴行を加えている。弾圧は厳しくなる一方で、もう尋常ではありません。私は国軍とも長い付き合いがありますが、ここまでバカな連中だとは思わなかったというのが正直な思いです。 このままではもっと悲惨なことになります。ですから私はCRPH(注:「連邦議会代表委員会」、国軍に対抗するためアウン・サン・スーチー氏率いる国民民主連盟のメンバーが中心となって設立した組織。事実上の臨時政府)のメンバーに「(国軍との)戦い方を変えたほうがいいのではないか」と伝えました。 人々の国軍を許さないという思いは十分に分かる。ただ路上に出てデモ活動をすれば命を失います。これ以上、犠牲者を増やさないためにも、今後はゼネストなどを中心に対抗していくべきだと考えています。CRPHのメンバーも危ない。今、国軍は関係者を血眼になって探しています。彼らは今、捕まったら最後という状況で活動しているのです。 クーデターの数週間後に元国軍関係者と話をしたところ、彼は「国軍はルーズ・オア・ウィン・タクティクスに入っている」と言いました。勝つか負けるか、どちらかしかないということですね。もちろん相手は民衆です。武装勢力ならまだしも、丸腰の民衆相手に、何が「ルーズ・オア・ウィン」だと個人的には思います。国軍はここまで民衆の反発が強いとは想定していなかったのです。文句を言いつつもクーデターや国軍の支配を結局は受け入れるだろうと浅読みしていたのです。現実が想定と大きく違っていたものだから、追い詰められて強硬な姿勢を取らざるを得なくなってしまった。 Q:人々は治安当局の弾圧に屈することなく抗議を続けています。現状では着地点が見えません。 井本氏:民衆は今のところ国軍に一歩も引く気はありません。国軍側は国民民主連盟(NLD)が大勝した2020年11月の総選挙で大規模な不正があったとし、選挙をやり直す方針を示していますが、一方で多くの人々はクーデター以前の状況に戻せという。 国軍に対する反発は本当に根強いものがあります。ミャンマーの民政化はまだ途上で、これまで約半世紀にわたって軍事政権が続いてきました。ここでクーデターを認めてしまっては、また暗黒の時代に逆戻りする。ミャンマーの人々はこう考えています。彼らからすれば、今回は国軍との最後の戦いなのです。だからたとえ命を落としても、経済が立ち行かなくなり生活ができなくなったとしても、絶対に軍政を認めないという姿勢を示しています』、「国軍はここまで民衆の反発が強いとは想定していなかったのです。文句を言いつつもクーデターや国軍の支配を結局は受け入れるだろうと浅読みしていたのです。現実が想定と大きく違っていたものだから、追い詰められて強硬な姿勢を取らざるを得なくなってしまった」、それにしても、国民に銃を向けるとは酷いものだ。
・『難民が発生する恐れ  対立は深まるばかりです。国軍による弾圧が激化すれば、生活できなくなる人が大量に出て難民化します。1988年に起きた民主化運動でも多くの難民が発生し、タイに逃れました。国内外の難民を誰が救うのか。国際社会は軍政を動かしてでも彼らを守らなければなりません。 もっとも、抗議運動にしても、いつまでも続けられるわけではありません。後述するように国際社会からの介入がない限り、どこかに落としどころを見つける必要はあります。一方で、反軍政を貫こうとする人々は活動を先鋭化させていくでしょう。彼らが行き着く先は少数民族武装勢力です。これもまた88年の民主化運動で見られた動きです。 例えば当時の軍事政権に武力闘争を挑んだ全ビルマ学生民主戦線(ABSDF)は国軍に追い詰められ、少数民族武装勢力のカレン民族同盟(KNU)を頼りました。それしか道がなかったのです。そして今回もまた同じような動きが出ると思います。本当に残念なことですが、国軍は同じ歴史を繰り返そうとしているのです。 Q:なぜ国軍はそもそもクーデターに踏み切ったのか。またスー・チー氏やNLD側に防ぐ手立てはなかったのでしょうか。 井本氏:国軍は軍政時代の2003年に民主化へのロードマップを公表し、これに従って民政移管を進めてきました。国軍は「民主化の主役はあくまで自分たち」であると思っていましたし、これを主導することで国民から尊敬されたかったのです。 ただ現実は異なりました。「愛される国軍」になりたかったのに、国民からはそっぽを向かれてしまった。象徴的なのが2015年の総選挙です。この選挙で国軍出身のテイン・セイン大統領率いる軍系政党(連邦団結発展党、USDP)は、スー・チー氏率いるNLDに大敗を喫しました。 テイン・セイン氏は軍出身ながら民主化を積極的に推し進め、少数民族武装勢力との停戦も実現し、さらに経済的にも多くの改革に着手してきた。国軍内部で「テイン・セイン氏は(民主化に)前のめりになりすぎている。やりすぎだ」という声が出ていたほどです。それなのに、国民の支持はスー・チー氏に集中した。結局、民主化の主役は国軍ではなくスー・チー氏であることを、まざまざと見せつけられたのです。「スー・チー氏さえいなければ」という思いが、国軍にはくすぶり続けました。 さらに2020年の総選挙ではスー・チー氏率いるNLDは前回を上回る勝利を収め、USDPは前回よりもひどい大敗を喫しました。「スー・チー氏さえいなければ」という思いはより強くなり、自らの存在が脅かされるとの危機感が国軍をクーデターに駆り立ててしまった。 クーデターで全権を握ったのは国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官です。ただ関係者の間では、今回のクーデターを主導したのは彼だけではないという見方があります。たとえばCRPHの関係者は「日本が交渉に乗り出すとすれば、相手はタン・シュエ氏だ」と話しています(注:タン・シュエ氏は旧軍政トップとして独裁体制を敷いた人物。2011年、後継としてテイン・セイン氏を政治トップに、ミン・アウン・フライン氏を国軍トップに指名し一線から退いたといわれている)。ミン・アウン・フライン氏はどちらかといえば穏健派として知られていましたが、その周囲にいる国軍幹部はタン・シュエ氏子飼いの強硬派が多いと聞いています。 タン・シュエ氏はミン・アウン・フライン氏にその地位を譲る際、「必要とされる場合は再び軍が実権を握る」と予言していました。そのタイミングが今だったということでしょう。ただ国軍の一部関係者からは、現状について戸惑いの声が上がっているのも事実で、(民衆への弾圧について)やりすぎていると冷静に見る向きもあります。でも軍の命令には怖くて逆らえません。私はかつて国軍の兵舎を訪ねたことがありますが、そこではいじめが横行しており、上官はやりたい放題でした。あそこにいたら誰だって恐怖心でいっぱいになり、上官の命令には逆らえなくなります。知り合いの国軍関係者に対しては「このままでは国軍は国民からも国際社会からも相手にされなくなる。再革命が必要なんじゃないか」と話していますが、今のところ、その可能性はありません。 一方のスー・チー氏やNLD側も今回は国軍の動きを見誤りました。国軍は2020年11月の総選挙について検証するよう再三迫っていましたが、NLDは聞き入れなかった。しかもNLD側はぎりぎりまで、国軍によるクーデターの動きを把握できていなかった。最初から対応しておけば、ここまで国がボロボロになるような事態にはならなかったかもしれません』、「国軍トップ」の「ミン・アウン・フライン氏はどちらかといえば穏健派として知られていましたが、その周囲にいる国軍幹部はタン・シュエ氏子飼いの強硬派が多い」、なるほど。
・『主要な少数民族武装勢力は反軍政に  今、課題になっているのはNLDやCRPHのリーダーの不在です(注:国軍はクーデター以来、スー・チー氏を拘束している)。国軍と対等に話ができる人がいないのです。CRPHの関係者とも話していますが、結局、これまで何もかもスー・チー氏頼みだったのは問題でした。NLD政権内ではスー・チー氏の顔色をうかがいながら仕事をするような雰囲気ができてしまい、彼女の耳に入る前に案件が握りつぶされてしまうこともありました。もっとも、スー・チー氏は75歳になっています。現実的に考えれば次の5年が(国のトップとして仕事をする)最後のタイミングだったでしょう。こんな事態になる前から、新しいリーダーを育てておく必要はあったと思います。 Q:ミャンマーの少数民族武装勢力は今回のクーデターにどう反応しているでしょうか。 井本氏:ミャンマー政府との停戦協定に署名していた10の少数民族武装勢力は国軍の弾圧を非難し、軍との和平交渉を打ち切りCRPH支持を表明しています。さらに、停戦に応じていなかったカチン独立軍(KIA)も 市民の抗議運動を保護する姿勢を示し、国軍と衝突しました。 当初、CRPHは一部の少数民族武装勢力としか接触していなかったため、それではだめだと私は伝えました。結果、CRPHは各民族との交渉に乗り出しました。高度な自治を約束し、さらに民主主義に基づいて国軍を解体し、武装勢力と統合して新たに連邦軍を作ると明言しています。これは画期的な動きだったと思います。少数民族武装勢力との和平を進めるという点では、国軍は一度解体されることが避けられないのです(注:一方で国軍はNLD政権がテロリスト団体に指定していた少数民族武装勢力アラカン軍のテロ団体指定を解除した)。 関係者によれば国軍は「ここで自分たちが倒れたら、ミャンマーはシリアのようになる」と本気で考えているそうです。ただ、現状ではCRPH・少数民族武装勢力と国軍とが内戦状態になることは考えにくいと思っています。CRPHは武器を持ちませんし、少数民族武装勢力は自分たちの支配が及ぶエリアを守ることが第一で、エリアを出て戦闘することは基本的にはないからです。また今回の問題について、あくまでビルマ族内の主導権争いだと冷めた目で見る向きもあります。Q国際社会は、日本はどう対応すべきでしょうか。 井本氏:国際社会がミャンマーの人々を「保護する責任(R2P、Responsibility to Protect )」はあると思います。国に人々を守る意思がないのですから。本来であれば、国際社会がPKO(国連平和維持活動)のような形を取って介入すべきでしょう。そうすれば少なくとも弾圧はなくなるでしょうし、対立する双方が対話する機会ができます。ただ国連などの介入は現状では望めません。国連安全保障理事会では中国やロシアが慎重な見方を崩さず、結局、議長声明しか出すことができませんでした。米国などは経済制裁を打ち出していますが、経済制裁で問題が解決した例を私は知りません。 ミャンマー国内では、「中国が国軍を支援している」との見方が強まっており、反中デモも行われています。ただ状況はもっと複雑だと思います。中国とべったりだったのは、むしろスー・チー政権でした。国軍は中国の影響力の増大には危機感を強めていたのです。中国は一部の少数民族武装勢力の後ろ盾にもなっていましたから。そこで国軍は近年、中国ではなくロシアから兵器を購入していました。しかもクーデターの数日前にはロシアの国防相がミン・アウン・フライン総司令官と会談しています。国軍は中国とロシア、そして中国の進出に神経をとがらせる隣国、インドとのバランスをうまく取りながら、難局を乗り越えていこうという腹ではないかと思います。 有効な手が打てない国際社会ですが、それでも手をこまぬいている場合ではないでしょう。国軍は前回の総選挙で大規模な不正があったと主張しています。ならば国際社会が調査団を入れて、改めて票の数え直しをするとか、選挙をするにしても軍政の都合のいいものにするのではなくて、国際社会が責任を持って11月と同じ顔ぶれで実施させるなど、やれることはあるはずです。 日本は国軍とのチャンネルがあります。それを生かし、改めて民主化を促していくという立場でいいと思います。国際社会からは批判を受けるかもしれませんが、独自のカードを用意して交渉していくのです。例えば人道支援は止めないけれども、弾圧が続く限り大きなプロジェクトは支援しないといったように、是々非々でやっていくしかない。かつての軍政時代から日本はミャンマーへの支援を続けてきました。投資も多く、日本人もたくさん住んでいます。今ここで関係を断ち切ってしまっては、もう二度とミャンマーに入れないでしょう。今、国軍は日本の声に耳を貸そうとしませんが、粘り強く働きかけていくしかないと思います。 この記事はシリーズ「東南アジアの現場を歩く」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます』、「日本は国軍とのチャンネルがあります。それを生かし、改めて民主化を促していくという立場でいいと思います」、手ぬる過ぎる。毎日、大勢が殺されているなかで、もう悠長なことを言っているヒマはない筈だ。

次に、3月23日付けWedge「「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由」を紹介しよう。
・『我々日本人自ら「親日国」と形容することも多いミャンマ――。ミャンマーのクーデターから1カ月が経過するなか、俄かにその風向きに微かな異変が起きつつある』、「微かな異変」とは何なのだろう。
・『丸山大使の「外相」発言に猛反発  政府をはじめとした日本側の対応に不満を抱えているミャンマー国民の声が、ソーシャルメディア上を中心に急速に目立つようになってきている。事の発端は今月8日、国軍と太いパイプを持つと言われている丸山市郎・駐ミャンマー大使が、国軍が「外相」に指名したワナ・マウン・ルウィン氏と首都ネピドーで会談した際のこと。 丸山大使は、クーデター後の状況に対して「重大な懸念」を表明すると同時に、ミャンマー市民への一切の暴力停止、アウン・サン・スー・チー氏らの早期解放、民主的な体制の速やかなる回復といった3点を要求した。独自に築いてきた軍政とのパイプを生かしながらの外交が行われた形だが、その夜に在ミャンマー日本大使館がフェイスブック上で、ワナ・マウン・ルウィン氏について「外相」と表記した上で、上記事項を申し入れたとビルマ語、英語、日本語で投稿。 すると、瞬く間にミャンマー市民から非難の声が殺到。「日本政府の弱気な態度に失望しています」、「日本はミャンマー国民の声を聞かず、軍人を認めるつもりなのか?」、「ワナ・マウン・ルウィン氏は、外務大臣ではありません。誰も認めてはいけませんし、このような言葉使いをやめて頂きたい。ミャンマー国民としては強く非難します」など、痛烈なコメントが怒涛のような勢いで相次いでしまったのだ。 これを受けて、加藤勝信官房長官は10日に行われた記者会見で、ミャンマー国軍が任命したワナ・マウン・ルウィン氏を日本政府が「外相」と呼んだことについて、「〝外相〟と呼称はしているが、呼称によって国軍によるクーデターの正当性やデモ隊への暴力を認めることは一切ない」と強調。その上で、「ミャンマー側の具体的な行動を求めていくうえで、国軍と意思疎通を継続することは不可欠で、これまで培ってきたチャンネルをしっかり活用して働きかけを続けることが重要だ」と日本政府の姿勢を説明する対応に追われた。 茂木敏充外相も、丸山大使が会談した翌日9日の記者会見では、ワナ・マウン・ルウィン氏を「外相」と呼んでいたものの、10日の衆院外務委員会の途中から、ミャンマー市民の心情や国際世論への配慮からか「当局によって指名されている外相と言われる人」との表現を使い、軌道修正した。 2日に開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)の非公式外相会議では、内政不干渉を原則として加盟国の国内政治事情などに対し介入を避けてきたなかで、各国から批判の声が相次ぐなど異例とも言える事態となり、インドネシアとシンガポールの外相がワナ・マウン・ルウィン氏に対して「外相」という呼称を使わなかったことが報じられた経緯もある。こうしたなかで、最大のODA支援国である日本が「外相」という言葉を堂々と使用したことにミャンマー市民は強く反応したというわけだ』、呼称は極めて重要な問題なのに、「日本」の外務省がここまでセンスがないとは驚かされた。
・『「治安部隊」の呼称を使い続ける日本メディアに非難  さらに、日本の各メディアへの非難も高まる事態となっている。主たる引き金は「治安部隊」という表現だ。今、スーチー氏の解放と民主化を掲げて声を上げているミャンマー市民らは、国軍を「テロリスト」と呼び始めている。事実、武器を持たずに「非暴力」で立ち向かおうとする市民に対して発砲して多くの犠牲者を出したり、不服従運動に参加する公務員やメディア関係者らを夜中に逮捕・拘束、さらには戒厳令下での死刑もちらつかせるなど、次第にその手口は過激化している。 国軍に対しては、国内外から急速に批判が高まっており、もはや「治安」を守る部隊ではなく暴力を煽り人を殺す「テロリスト」なのだ、というのがミャンマー市民の理屈だ。ソーシャルメディア上ではもはや、ミャンマー市民らによる「国軍テロリスト」という呼称は定着しているような状況だ。 「治安部隊」という表現に対して、ミャンマー市民からの反発に火がついた一つのきっかけが、第2の都市マンダレーでデモ隊への銃撃によって犠牲となった19歳のチェ・シンさんの死だ。歌と踊りが趣味で「エンゼル」(天使)という愛称で親しまれ、銃撃される前の姿を捉えた写真やイラストは抗議運動で掲げられるなど、象徴的な存在となったチェ・シンさん。 しかし、ミャンマーの国営テレビでは、警察がマンダレー郊外の墓から遺体を掘り起こして検視を行った結果、チェ・シンさんの頭から摘出された銃弾は警察のものではなく、さらに警察がいた方向からは撃たれていないなどと報じた。ソーシャルメディア上では「遺体を掘り起こすなどなんておぞましい行為だ」「こんな虚偽報告を信じるものなどいない」などの書き込みが相次ぐ事態となったわけだが、日本のメディアでは、ミャンマー国営テレビが「警察が裁判所の許可を得て遺体を掘り起こし検視を行なった」と伝えたことを報道。 すると、テレビのタイトル字幕を撮影した画面がソーシャルメディア上で一気に拡散されていき、「日本のメディアは捏造報道ばかりでフェイクを垂れ流している」「なぜ軍事独裁政権の嘘ばかりを配信するミャンマーの国営テレビを信じるの? 人殺しであるミャンマー軍事政権と同じだ」「テロリスト集団を応援するような報道しか出来ないのですか」などとあっという間に非難の声が広がってしまった。 きちんと放送全体を見れば決して国軍の肩を持つような内容にはなっておらず、あくまで国営テレビではこう報じられたものの市民からは反発が上がっている、として右上のサイドタイトルには「犠牲者の遺体掘り起こし ミャンマー当局に非難の声」とも書かれている。 さらに、ソーシャルメディア上での「誰がこのような(当局の)うその報告を信じるだろうか」という市民の言葉も併せて紹介されており、放送全体のニュアンスからすればむしろ市民による当局への非難を伝えている内容になっている。しかし、ミャンマーの国営テレビで伝えられた内容を引用で報じたことに対して「国軍の言うことを信じて肩を担ぐのか」とあたかも肩棒を担いでしまったかのように怒りを買う結果となった。 今や、日本メディアへのミャンマー市民の目線は非常に厳しいものとなり、あらゆるニュースについての文言が取り沙汰され、様々な非難が止まない状況だ。 このようにミャンマー市民の不信感が募る背景には、欧米諸国が先んじて国軍関係者らを対象にした強硬な制裁措置などを打ち出してきたなか、日本政府は協調路線を取っておらず、独自の外交を行なっていることが挙げられる。軍政時代からの「独自の国軍とのパイプ」を生かした外交が謳われ、これまで民主化を後押ししてきた経緯があるが、これほどまでに市民の犠牲が出て国際社会からも制裁を求める声が強まるなか、果たして国軍側との「対話と協力」を維持して慎重に対応する姿勢が依然として通用する事態なのか――既に多数の犠牲者が出ている緊迫した情勢下、ミャンマー市民にとっては「及び腰」「口だけで行動が伴わない」などと捉えられる結果を招いている』、「欧米諸国が先んじて国軍関係者らを対象にした強硬な制裁措置などを打ち出してきたなか、日本政府は協調路線を取っておらず、独自の外交を行なっていることが挙げられる・・・これほどまでに市民の犠牲が出て国際社会からも制裁を求める声が強まるなか、果たして国軍側との「対話と協力」を維持して慎重に対応する姿勢が依然として通用する事態なのか」、少なくとも「国軍側」にもっと強い姿勢で取っていることが「ミャンマー市民」にも分かる程度までは、圧力を強めるべきだ。
・『日本政府が表明した「ロヒンギャ支援」にも反発  さらに、日本政府による人道支援も、非難の的となった。政府は9日、ミャンマー国内やバングラデシュに流入したイスラム教徒少数民族ロヒンギャ難民らへの医療用品や食糧支援などの名目で1900万ドル(約20億9000万円)の緊急無償資金協力を行うことを決定した。クーデターが起きた2月以降、日本政府が発表した初めてのミャンマー関連の支援で、赤十字国際委員会(ICRC)や国連世界食糧計画(WFP)などの国際機関を通じて、約60万人に対する食料支援やシェルターの改修、医療用品の提供などが実施されるとされた。 国軍との交換公文の署名などは行わず、茂木敏充外相は会見で「ミャンマーの国民が困るような事態については人道上の問題で支援を続けねばならない」と、あくまで経済支援は行わない構えだが、人道支援の継続を表明した形だ。 しかし、このロヒンギャへの支援が報じられると、再びミャンマー市民からの不満、非難が続出。ソーシャルメディア上では、「日本政府には呆れます」「この支援金が誰に手渡されるのかが気になります。軍に渡したところで、難民支援に使うと約束したとしても口約束で行かない。大半は軍の懐にいくでしょう」などの非難が相次いだ。なかには、「間違えないでください、国軍に支援金が渡るのではなく、赤十字などを通してロヒンギャに支援されるのです」と冷静に支援の意図を正す投稿も見られたが、それに対しても「国軍に渡る可能性がないと言い切れるのか」などと強い反発の声が散見される。 ソーシャルメディア上に溢れる、ミャンマー市民たちの声は、国際社会が制裁に舵を切るなか、期待していた日本政府の対応への失望感への表れでもある。 独自の外交を貫いてきた日本政府は今、厳しい舵取りを迫られている』、「ミャンマー市民たちの声は、国際社会が制裁に舵を切るなか、期待していた日本政府の対応への失望感への表れでもある」、「日本政府としても、前述の通り、「国軍側」に圧力を強めるべきだ。

第三に、3月23日付けデイリー新潮が掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤和彦氏による「ミャンマー政変、にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/03230602/?all=1
・『2月1日にクーデターが起きたミャンマー情勢はますます混迷の度を深めている。 クーデターを起こした国軍が、デモ制圧を続ける姿勢を示し、全権掌握の既成事実づくりを頑なに進める一方、民主化勢力は「臨時政府」を立ち上げ、統治の正統性を主張する。 混乱状態が長期化しつつある中で、ミャンマーではこのところ「国軍を支援している」として中国に対する批判の声が高まりつつある。 中国側は否定しているが、3月11日、ヤンゴンで国軍のクーデターに抗議する数百人のデモ隊が中国大使館に対する抗議活動を行った。中国製品の不買運動を呼びかける声も上がっていたが、その矢先の14日、ヤンゴンにある複数の中国系の工場が何者かの襲撃を受け、多くの中国人従業員が怪我をするという事案も発生した。 ミャンマーにおける中国のプレゼンスは大きい。中国にとってミャンマーは手放すことが出来ない要衝の地である。中国はミャンマーが民主化プロセスを進める中、同国のインフラ整備などに巨額の資金を投じてきた(総額1000億ドル)。「一帯一路」の旗頭の下でミャンマーとの物流ルート「中国・ミャンマー経済回廊」の建設を進めており、完成すれば中国は内陸部からインド洋に抜ける大動脈と海洋進出の足がかりを得ることになる。原油・天然ガス輸送におけるマラッカ海峡の依存度を低下させるため、ミャンマーのチャウピュー港から中国雲南省につながる原油・天然ガスパイプラインも整備してきたが、クーデターによる政情不安が、中国の「虎の子」である資産にとって脅威になるとの懸念を強めている(3月10日付日本経済新聞)。 中国はアウンサンスーチー国家顧問率いる国民民主連盟(NLD)政権との関係は良好だったが、国軍は「NLDが中国と近すぎる」として警戒感を強めた。このことが今回のクーデターの一因であるとされている。 中国は国軍に対しても軍事協力を提案してきたが、国軍は中国と協力しながらもその影響力拡大に対する警戒を怠ることはなかった。中国は海洋輸送路確保に向けた「真珠の首飾り戦略」の一環として、ミャンマーの主要な港湾に海軍の駐留を望んできたが、ミャンマー軍は外国軍の駐留を禁止した憲法を盾にこれを拒否してきた経緯がある』、「国軍は「NLDが中国と近すぎる」として警戒感を強めた」「中国は海洋輸送路確保に向けた「真珠の首飾り戦略」の一環として、ミャンマーの主要な港湾に海軍の駐留を望んできたが、ミャンマー軍は外国軍の駐留を禁止した憲法を盾にこれを拒否してきた」、「中国」は「クーデター」の黒幕ではないようだ。
・『インド・中国両国間の代理戦争の場に  その背景には根深い反中感情がある。1990年代の軍事独裁時代に中国資本がミャンマーに流入、これにより凶悪犯罪が多発したという苦い思いがある。「中国系少数民族の武装解除がうまくいっていないのは中国の支援があるからだ」との苛立ちもある。 「中国との関係を取り仕切るのが自分たちの役割だ」と考える国軍だが、2月下旬に中国との間で非公開で行った会議内容が外部に流出した(3月13日付産経新聞)。地元メデイアによれば、国軍との会議で中国側は、雲南省とミャンマー西部のチャウピューを結ぶ内陸部の天然ガス・原油パイプラインの戦略的重要性を強調し、警備の強化を求めてきた。デモ隊が中国に資源を送るパイプラインへの攻撃を主張していたからである。中国側はさらにミャンマーでの反中感情を抑えるため、国内メデイアに圧力をかけることも要求したという。中国側の要求に対する国軍の回答は明らかになっていないが、国軍の後ろ盾は中国だけではない。近年インドとの関係を強化している。2019年のミャンマーのインドからの武器購入額は1億ドルとなり、中国からの武器購入額(4700万ドル)を凌駕している。インドは昨年ミャンマー軍に潜水艦を贈与した。 インドにとってもミャンマー軍は欠かせない存在になりつつある。インドの北東部の国境地帯では中国の支援を受けているとされる少数民族武装勢力が活動しており、インドの要請でミャンマー軍は過去2年間、武装勢力を排除する作戦を行ってきた。 「中国問題」のウエイトが高まるミャンマーでは、「少数民族の取り込み」も大きな争点になりつつある。135の少数民族が住んでいるとされるミャンマーでは1948年の独立以来、人口の約7割を占めるビルマ族による支配に不満を抱く少数民族が活動を続けてきた。国軍は少数民族の平定を担う役割を有していることを根拠に連邦議会の議席の4分の1を無条件で割り振られる特権を正当化してきた。 クーデターで実権を握った国軍は少数民族の取り込みを進めている(2月8日付産経新聞)。新設された最高意志決定機関「行政評議会」メンバーの一人に西部ラカイン州の少数民族「アラカン族」出身者を起用した。背景にはNLDが実現できなかった和平を推進したい思惑があるが、NLDも3月に入り、南東部のカイン州で自治拡大を求めて国軍と衝突してきたカレン族の武装組織などに接近し始めた(3月12日付日本経済新聞)。 そのせいだろうか、南部のタニンダーリ地域の町ミッタでは8日、この地域に影響力がある少数民族武装勢力が銃を携え、約2000人のデモ隊の警護に当たった(3月9日付NHK)。当該地域の少数民族はカレン族と中国南部の貴州省や雲南省などの山岳地帯に住むミャオ族の支系とされるモン族である。 これを契機に中国系武装勢力と国軍が衝突する事態になれば、ミャンマー情勢を憂慮してきた中国が「自国民保護」を名目に実力行使に出る可能性が出てくるだろう。そうなれば中国と同様、ミャンマー情勢を静観していたインドも黙っていない。北東部のアルナチャルプラデシュ州を巡り中国との領土問題を抱えるインドにとって、北東部と国境を接するミャンマーが中国の勢力下に入ることはなんとしてでも阻止しなければならない。 国軍はこれまで「対応を誤れば、同国がインド・中国両国間の代理戦争の場になる」ことを恐れてきたが、自らが起こしたクーデターによりその懸念がにわかに現実味を帯びてきた。なんとも皮肉な話である』、「国軍はこれまで「対応を誤れば、同国がインド・中国両国間の代理戦争の場になる」ことを恐れてきたが、自らが起こしたクーデターによりその懸念がにわかに現実味を帯びてきた。なんとも皮肉な話である」、インドまでは「国軍」の背後にあるとは、何とも複雑な構図だ。いずれにしても、日本政府は国軍にもっと影響力を行使して、平和的解決に努めるべきだ。
タグ:ミャンマー 日経ビジネスオンライン WEDGE デイリー新潮 (その3)(抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」、「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由、ミャンマー政変 にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”) 「抗議デモの死者180人 「このままではミャンマーはもっと悲惨に」」 日本経済大学の井本勝幸・特命教授 「国軍はここまで民衆の反発が強いとは想定していなかったのです。文句を言いつつもクーデターや国軍の支配を結局は受け入れるだろうと浅読みしていたのです。現実が想定と大きく違っていたものだから、追い詰められて強硬な姿勢を取らざるを得なくなってしまった」、それにしても、国民に銃を向けるとは酷いものだ 「国軍トップ」の「ミン・アウン・フライン氏はどちらかといえば穏健派として知られていましたが、その周囲にいる国軍幹部はタン・シュエ氏子飼いの強硬派が多い」、なるほど 「日本は国軍とのチャンネルがあります。それを生かし、改めて民主化を促していくという立場でいいと思います」、手ぬる過ぎる。毎日、大勢が殺されているなかで、もう悠長なことを言っているヒマはない筈だ 「「親日国」ミャンマー市民が日本に厳しい視線注ぐ理由」 丸山大使の「外相」発言に猛反発 呼称は極めて重要な問題なのに、「日本」の外務省がここまでセンスがないとは驚かされた。 「欧米諸国が先んじて国軍関係者らを対象にした強硬な制裁措置などを打ち出してきたなか、日本政府は協調路線を取っておらず、独自の外交を行なっていることが挙げられる・・・これほどまでに市民の犠牲が出て国際社会からも制裁を求める声が強まるなか、果たして国軍側との「対話と協力」を維持して慎重に対応する姿勢が依然として通用する事態なのか」、少なくとも「国軍側」にもっと強い姿勢で取っていることが「ミャンマー市民」にも分かる程度までは、圧力を強めるべきだ 「ミャンマー市民たちの声は、国際社会が制裁に舵を切るなか、期待していた日本政府の対応への失望感への表れでもある」、「日本政府としても、前述の通り、「国軍側」に圧力を強めるべきだ 藤和彦 「ミャンマー政変、にわかに現実味を帯びてきた国軍が恐れる“最悪シナリオ”」 「国軍は「NLDが中国と近すぎる」として警戒感を強めた」「中国は海洋輸送路確保に向けた「真珠の首飾り戦略」の一環として、ミャンマーの主要な港湾に海軍の駐留を望んできたが、ミャンマー軍は外国軍の駐留を禁止した憲法を盾にこれを拒否してきた」、「中国」は「クーデター」の黒幕ではないようだ インド・中国両国間の代理戦争の場に 「国軍はこれまで「対応を誤れば、同国がインド・中国両国間の代理戦争の場になる」ことを恐れてきたが、自らが起こしたクーデターによりその懸念がにわかに現実味を帯びてきた。なんとも皮肉な話である」、インドまでは「国軍」の背後にあるとは、何とも複雑な構図だ。いずれにしても、日本政府は国軍にもっと影響力を行使して、平和的解決に努めるべきだ。
nice!(0)  コメント(0) 

ミャンマー(その2)(スーチー氏拘束を率いた司令官の切迫した事情 クーデターの支えに一体何が存在しているのか、ミャンマー軍事政権と中国の「急接近」はあるか?宮本雄二・元中国大使に聞く 宮本雄二/ミャンマー・中国元大使に聞く)  [世界情勢]

ミャンマーについては、2018年6月9日に取り上げた。今日は、(その2)(スーチー氏拘束を率いた司令官の切迫した事情 クーデターの支えに一体何が存在しているのか、ミャンマー軍事政権と中国の「急接近」はあるか?宮本雄二・元中国大使に聞く 宮本雄二/ミャンマー・中国元大使に聞く)である。

先ずは、本年 2月10日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストで元毎日新聞編集委員の春日 孝之氏による「スーチー氏拘束を率いた司令官の切迫した事情 クーデターの支えに一体何が存在しているのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/410827
・『ミャンマーで起きたクーデターは、この国のウォッチャーを「まさか」と絶句させる出来事だった。なぜ、あのミン・アウン・フライン国軍最高司令官が……。そんな反応である。 彼は民主化プロセスに前向きで、穏健派と目されていたからだ。「総選挙での不正」が、クーデター正当化の理由となりえるのか。民主政権を転覆させるという暴力的手段が、これまでの改革を後退させ、国民の猛反発を招いて、取り戻しかけた国軍の権威を失墜させかねないとは考えなかったのだろうか』、「国軍」の発砲によるデモ参加者の死亡事件も相次ぎ、様相は緊迫の度を高めている。
・『クーデターの大義とは対極にありそうな私的事情  ともかく、ミン・アウン・フラインはルビコン川を渡ると心を決め、実行に移した。ここでは「クーデターの大義」とは対極にありそうな彼の「個人的な理由(都合)」に絞り、その心中を推し量ってみた。 私は2015年6月にミン・アウン・フラインにインタビューをした際、生年月日を聞いた。「1956年」としか公表されていなかったからだ。返ってきたのは「59歳です。60歳に向かっているところです」との曖昧な言葉だった。この国では、政権幹部や高級軍人の誕生日は国家の「最高機密」である。占星術や呪術が盛んなお国柄で、「黒魔術で呪詛される」と本気で信じているからだ。 ミャンマーの政治と占星術、呪術の深いつながりについては拙著『黒魔術がひそむ国ミャンマー政治の舞台裏』で紹介しているので、ここでは詳細を省くが、ミン・アウン・フラインは当時、翌年に定年を迎えて退役するはずだった。 しかし、インタビューから半年後に実施された2015年総選挙でアウン・サン・スー・チー率いる当時の最大野党「国民民主連盟」(NLD)が大勝。NLD政権の誕生が確実となり、ミン・アウン・フラインは定年を延長して最高司令官の地位にとどまる。政権交代で軍出身のテイン・セイン大統領が退くことになり、スー・チー新政権の「目付」を自らが担うという判断もあったと思う。 今回のクーデターの個人的理由として、ミン・アウン・フラインの「大統領への野心」が指摘される。可能性はあった。スー・チー政権の行政、政治能力、つまり政権運営能力は客観的に見てもレベルは低い。「自分がタクトを振るえば……」という自負心があったとしても不思議ではない。 同時に、今度は避けて通れそうにない「65歳の定年」を前に、どうしても「最高権力者でなければまずい」と考えたであろう事情を斟酌したい。 今回SNS上では、2020年総選挙に際して、ミン・アウン・フラインがあるシナリオを描いていたとのうわさが飛び交った。軍系政党が一定議席を獲得して自らが大統領になる「プランA」。大敗した場合はクーデターを敢行するという「プランB」。やむなく「プランB」を実行に移した、というものだ。 プランの真偽は別にして、選挙結果次第で大統領になるチャンスはあった。大統領選出の仕組みはこうだ。選挙を受けて国会の上院と下院の民選議員からそれぞれ1人、両院の4分の1を占める最高司令官指名の軍人議員団から1人の計3人を副大統領に選ぶ。この中から全員投票で大統領を選ぶのだ。 つまり、ミン・アウン・フラインはまず軍人議員団の推挙で副大統領となる。軍系政党とその友党が改選議席の4分の1を獲得していれば、国会議席の過半数を占めて大統領に選出される。ハードルはそんなに高くなかったが、軍系政党は惨敗した。 冒頭で「選挙不正」がクーデター正当化の理由になりえるのか、と提起したが、スー・チー政権を誕生させた2015年総選挙でもスー・チー側が「不正」を訴えて大騒ぎになった。軍系政党の票の買収疑惑に加え、今回と同様に有権者名簿の不備に起因するものもだ。名簿に欠落や重複があまりにも多く、NLDは、選挙前に修正版を発表した選挙管理委員会に「依然3~8割が誤りだ」と猛反発した。結局はNLDが大勝。当時のテイン・セイン政権の選管は異議申し立てを受け付け、まがりなりにも調査を行って騒ぎは収束した。 今回はスー・チー政権の選管だ。「不備」は予測できる。調査要求を一切拒否したというなら民主主義のプロセスを無視したことになり、ミン・アウン・フラインの主張にも「一理」はある(とは言えクーデター正当化の理由にはならないと思うが)』、なるほど。
・『見逃せないロヒンギャ問題  ミン・アウン・フラインが最高権力者の地位にこだわった個人的理由の1つとして、ロヒンギャ問題は見逃せない。国軍は、ロヒンギャ武装組織への掃討作戦に対し、国連や米欧から「民族浄化だ」と厳しい非難を浴びてきた。作戦は、武装組織による治安部隊への同時多発テロが引き金となったが、国際司法の場でミン・アウン・フラインら国軍幹部は訴追の対象だ。権力を手放せば、2期目に入ったスー・チー政権が国際的な圧力に屈し、拘束などのリスクにさらされる可能性が生じる。 スー・チーは、オランダでの国際司法裁判所の審理に出廷し、国軍の作戦に「行きすぎ」を認めたが「ジェノサイド(集団虐殺)の意図」は否定した。スー・チーも国際的な非難を浴びて「堕ちた偶像」とまでこき下ろされた。 これに対しSNS上では当時、こんなうわさが駆け巡った。スー・チーはミン・アウン・フラインにこう告げる。「次の審理にはあなたが出廷しなさい。あなたの指揮した作戦ですから」。これがクーデターの伏線になったというわけだ。スー・チーはロヒンギャ問題で自国の立場を主張せず、沈黙してきた。彼はそんなスー・チーへの苛立ちを募らせていたと。 2人の確執の深さは、スー・チーが最高権力を手中にした経緯を知ることで容易に想像できる。 スー・チーのNLDは2015年総選挙で大勝、国会議席の過半数を占めた。NLDが出す副大統領が大統領に選出されることになった。大統領は憲法上、国家元首である。スー・チーは自分がなりたかったが、憲法の国籍条項が阻んでいた。息子が外国籍だからだ。 そこで彼女は「大統領の上に立つ」と宣言し、ミン・アウン・フラインと水面下で攻防を繰り広げた。私は当時ヤンゴンで、NLD法律顧問で最高裁の法廷弁護士だった人物からその推移をフォローしていた。スー・チーは国籍条項の一時凍結案を国会で通して「正式な大統領」になるウルトラC案を突き付ける。しかし「憲法の守護者」を任じるミン・アウン・フラインの抵抗は強く、最終的にスー・チーは「国家顧問」という超法規的ポストを創設、「大統領の上」に君臨する最高指導者となった。「憲法が禁止していないから問題ない」という驚くべきレトリックだった。 ミン・アウン・フラインが地団駄を踏んで悔しがったことは、その後の彼の発言からも明らかだ。こうした妙案をひねり出したとみられる先の弁護士はその後、何者かに暗殺される』、「最終的にスー・チーは「国家顧問」という超法規的ポストを創設、「大統領の上」に君臨する最高指導者となった。「憲法が禁止していないから問題ない」という驚くべきレトリックだった」、「スー・チー」氏もなかなかしたたかなようだ。
・『最後の交渉は「メンツとメンツのぶつかり合い」  今回のクーデターを前に前日、国軍とスー・チーの両サイドで「最後の交渉」が行われたことが明らかになっている。選挙不正への対応をめぐるもので、交渉内容を知りうる筋は「メンツとメンツのぶつかり合いだった」と明かす。 この国の憲法は、国家非常時には最高司令官が全権を掌握できるシステムになっている。「クーデター容認条項」があるのだ。そうした憲法上の実質的な最高権力者ミン・アウン・フラインと、憲法を超越した最高権力者スー・チー。2人は互いに妥協を拒み、従来からのスー・チーへの不満に加え、義憤にかられたミン・アウン・フラインは最後の一線を越える決意をした……。 もちろんクーデターの理由が1つ、というのは考えにくい。ロヒンギャ問題で国際的非難を浴びる中での国軍内の守旧派の巻き返し、ミャンマーでの「失地回復」を試みる中国の利害や利権、米中対立といった国際情勢などさまざまな要素が思い浮かぶ。 それらは別の機会に触れるとして、クーデターはミャンマー民主化の流れにも国際的な政治潮流にも逆行する大それた行動である。ミン・アウン・フラインに、クーデターという挙に駆り立てた、いや「支え」となった何かが存在したのではないか。表向きには出てこない、占いや呪術的な要素の介在だ。クーデター決行の決断や実行の日時、新軍政発足の日時についても、この国では必ず「お抱え占星術師」が重要な役割を担う。私は、クーデターの背後にひそむ「ミャンマー政治の舞台裏」に思いをはせている』、「「お抱え占星術師」など「クーデターの背後にひそむ「ミャンマー政治の舞台裏」に思いをはせている」、とは我々の想像を超えた世界のようだ。

次に、2月19日付けダイヤモンド・オンライン「ミャンマー軍事政権と中国の「急接近」はあるか?宮本雄二・元中国大使に聞く 宮本雄二/ミャンマー・中国元大使に聞く」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/263
・『国軍、NLDの勢いに危機感 だが「軍政回帰」は疑問  Q:今回の国軍のクーデターをどう受け止ますか。 A:2011年に民政移管後、15年と昨年11月の2回の選挙でアウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が大勝し、国軍側に影響力がどんどん弱まる危機感が強かった。 国軍側は憲法で国会に議員数の4分の1の「軍人枠」を設け、民政移管後も影響力を維持する仕掛けを施してきたが、それでもNLDが勢い増す一方のなかで焦りがあったことは確かだろう。 ただ歴史的に見ても、独立した当初からミャンマー(当時はビルマ)は民主主義体制を志向してきた。国軍が権力を掌握した時もあったが、派閥争いや汚職で民政が機能しなくなったときに暫定的に統治するというものだ。その意識は国軍自身も今も持っているはずだ。それが他国の軍事政権とは違う点で、国民もそういうことで軍事政権を認めてきた。 だから今回も軍政回帰に一直線に向かうとは思えない』、「ミャンマー・中国元大使」、とはまさに最適任者だ。
・『民主化ロードマップ」は転換点 もはや後戻りできない  Q:しかし過去2回のクーデターの際も、軍事政権は長期化し独裁的な体制が続きました。 A:最初の62年のクーデターで政権を作ったネウィン将軍は、日本軍に訓練された「ビルマ独立軍」の創設メンバーだった。当時、全体の統括をスーチー氏の父親のアンサウン将軍がやり、軍事面の統括をネウィン氏がやって、ビルマの独立を達成したが、独立運動の目的はビルマに民主的な政府を作ることにあった。 だからクーデター後もネウィン氏は民主的な政府に(権力を)返す必要があると常に思っていた。 ただもともと軍人だし、軍は社会を安定化させることができるが経済を発展させる能力がない。以前はタイより豊かな国だったが、ネウィン政権の最後の頃、87年には国連の最貧国に指定されて、援助をもらうだけの国になってしまった。 誇り高いミャンマーの人には屈辱的なことだった。そこで学生らを中心に大規模な民主化運動が起き、結局、その混乱を88年に軍が無血クーデターで収束することになる。 Q:その時もソウマウン将軍を議長に新政府が作られ、90年には選挙が行われましたが、NLDが圧勝したのに政権移譲は行われませんでした。 A:国軍が政権について得たさまざまな既得権益を守ろうとしたことにあったと思う。私が大使でいた時、現地の華僑の人から、ミャンマーには、表のミャンマー経済と同じサイズで裏のミャンマー経済があるといわれた。 軍事政権がいろんなものを輸入禁止にするのだが、その裏で密輸でもうける。そういう闇の経済の利益の半分は華僑が、半分は軍事政権が手にしているということだった。 だがスーチー氏の登場以降、国際社会は軍事政権に厳しくなり、制裁を受けたこともあって経済は一向によくならない。97年にASEANに入ったが、ASEANからは経済自由化など、欧米とはまた違う圧力を受けることになった。 それで軍事政権も耳を傾けざるを得なくなって、2003年に「11年に民政移管を完了する」という「民主化への7段階のロードマップ」を発表した。 行き当たりばったりで何をやってもうまくいかず、袋小路に追い込まれて考え出されたのが民主化ロードマップだった。民主化をすれば国際社会が認めてくれるし、外資も入ってくる。そうすることでミャンマーの次の一歩を踏み出せると、当時のキンニュン首相が打ち出したわけだ。 軍事政権もそれを守り、11年3月にテインセイン大統領の下での民政移管が実現した。軍政には後戻りできないという意味で民主化ロードマップでというのは、ミャンマーの歴史的な転換点だった』、歴史的にみると、「軍政」の期間が長かったことに改めて驚かされる。
・『スーチー氏にも責任がある 民政を守る努力、双方が不十分  Q:そうした歴史があるにもかかわらず軍はなぜ今回、実力行使に出たのですか。 A:ミャンマーでは国をまとめて一つの方向にもっていける政治指導者がなかなか出てこない。アウンサン将軍は別格の政治指導者でもあったが、ネウィン将軍以降は、基本的に軍人だ。将来の民主化に戻すことを見据えた統治を実現するためには新たな政治指導者が必要だ。 その点ではテインセイン大統領は軍人出身だったが、スーチー氏の立場に配慮して意識的にスーチー氏やNLDとの関係もうまく作り、経済改革も進めて外国企業の進出も増えた。それで2015年に選挙をしてNLDが勝った。ここまではテインセイン氏にとっても予定通りだったと思う。 だが16年に、NLD政権ができてスーチー氏は国家顧問兼外相という形で実権を握るのだが、スーチー氏も本当の政治家ではないから国をまとめるということではうまくやれていなかった。 実質的な大統領なのだから、今度はスーチー氏が軍のメンツを立てながらやらないといけなかった。軍との関係をうまくやって進めていけば、民主主義の体制は徐々にだが、本当に根付いていくと思う。 もちろん軍部にも責任があったが、スーチー氏も責任を負わないといけない。NLDと国軍の間で常に対立があった状況を克服し、民政を守っていく努力が双方ともに不十分だった。今回のクーデターの根源的な原因はそれだと思う。 Q:具体的には何が問題だったのでしょうか。 A:国軍からすれば、スーチー氏が国軍の力を弱めようとする動きをずっとするわけだ。国軍枠の議席を保障した憲法の修正提案をずっとやって、選挙で選ばれた政府が名実ともに統治できるようにする方向で動くから、NLD政権は軍の既得権益を脅かそうとしているというふうに軍は考える。 一方でスーチー氏から見れば国軍との関係が大事ということで、ロヒンギャ弾圧で国際社会から非難されながら国軍を擁護してきた。これほど犠牲を払っているのに、という思いがある。 だが国軍にはスーチー氏は我々に敬意を示さないという思いがあるし、昨年の選挙で不正があったと言っているのに一顧だにしない。メンツが著しく損なわれたと受け止めたのだろう。メンツは彼らにとってはべらぼうに大事な価値観だ。 ただ、国民にクーデターが支持されているかといえばそうではない』、今回は公務員もクーデターへの抗議デモに参加しているようだ。
・『軍は「一枚岩」ではない可能性 クーデターの正当性は弱い  Q:それはどうしてですか。 A:一つは国軍クーデターの正当性が著しく弱いことがある。 これまでは、軍事政権は国が混乱したときの暫定だということでクーデターの正当性は国民も理解したし、軍人もそう思っていたと思う。 だが、民主化ロードマップも軍事政権の時に作られ、軍自身がそれを実現してきたことを考えると、選挙に不正があったという名目だけでクーデターをするのに値するのか、という疑問が軍の中にもあると思う。 現地の関係者に聞いた話だが、テインセイン氏は16年に退任したが、昨秋の選挙結果を受け入れるように軍幹部には言っていたようだ。軍幹部の中にもそう思っている人がいて一定の勢力があるということだと思う。軍が一枚岩ではない可能性がある。 それに国民の意識も違っている。 民政移管後のこの10年でミャンマーの人々が経済発展の果実を得て豊かな生活を体験した。軍政に戻るということはこれを放棄して、経済もうまくいかず、前と同じ貧しい生活に戻るということになる。それを納得するのかどうかだ。 今の抗議デモはNLDの支持者が中心だと思われるが、今後、経済がうまくいかなくなると、一般大衆が立ち上がる。そうなると、おそらく軍も相当に手を焼くと思う』、既に「一般大衆が立ち上がる」段階に入ったような気がする。
・『インド洋へのルート確保や「一帯一路」 中国には軍事、経済で死活的利益  Q:米国は軍事政権に対して制裁で動いていますが、中国はいまのところ静観の構えです。中国はどう動くのでしょうか。 A:中国にとってミャンマーは、軍事安全保障の面でも経済の面でも重要な国であることは間違いない。 ミャンマーを経由してインド洋に抜けるというルートは中国には戦略的なポイントだ。台湾有事などの際に米国第7艦隊がマラッカ海峡を封鎖すれば、エネルギー資源の入手経路が直ちに遮断され、死活問題となる。 南シナ海での基地建設に邁進しているのも同じ理由だ。ミャンマーやパキスタン経由でインド洋に出るルートを確保して米国の勢力圏にない拠点をインド洋に沿岸に設けることは安全保障上、必須のことだ。 この地政学的な要因に加え、ミャンマーは日本の1.8倍の国土に5000万人を超える人口を持っている。市場としてもASEANの最後のフロンティアだ。「一帯一路」構想でもここにとっかかりを持つことが中国の対外戦略の重要な利害に関わる。 今回も国際社会が経済制裁などで軍事政権を追い詰めることになれば、中国がミャンマーへの関与を強める可能性がある』、「ミャンマーを経由してインド洋に抜けるというルートは中国には戦略的なポイント」、「「一帯一路」構想でもここにとっかかりを持つことが中国の対外戦略の重要な利害に関わる」、となれば、「今回も国際社会が経済制裁などで軍事政権を追い詰めることになれば、中国がミャンマーへの関与を強める可能性がある」、難しいところだ。
・『西側の経済制裁実施の陰で最大の援助国として影響力  Q:西側諸国が経済制裁を強めれば、逆に中国は軍事政権を支えるということですか。 A:88年のクーデターの時も軍事政権が選挙で負けても政権移譲をせず、西側諸国が経済制裁をしたが、それを機に中国はあっと言う間に援助ナンバー1の国になった。 私がミャンマー大使でいた2000年代初めには、中国は圧倒的な援助のドナーで、ミャンマー政権も非常に気を使っていた。我々はミャンマーの要人となかなか会う機会がなかったが、中国大使はよく会っていて非常に気軽に口を利いていた。 なんとか接触をしようと、キンニュン首相が学校などを視察するときには必ず同行するようにして、チャンスを見ては立ち話をした。ただ政権トップだったタンシュエ議長らには3年の在任中、1回しか会えなかった。中国はしょっちゅう本国の共産党幹部ら要人が来ていたから、中国大使はタンシュエ氏らともよく会っていた。 それが当時の実情だが、ただそんなに心配しなくてもいいと思ったのは、ミャンマーの国民感情は日本に対してのほうが圧倒的に良くて中国には悪かったからだ。 当時、ミャンマーとタイ、ラオスの国境はゴールデントライアングル(黄金の三角地帯)といわれて、麻薬栽培やカジノで稼いだ中国系ミャンマー人がミャンマー国内に下りてきてたくさんの中国人が生活するようになったが、高飛車な振る舞いで一般のミャンマー人に悪い印象を与えていた。 当時は日本政府は援助額としては大したことはできていなかったが、第二次大戦中、ミャンマーの人たちに命を助けられた旧日本兵やその家族が、慰霊団とか、感謝のための訪問を続け、学校を作り、井戸掘りをやっていた。政府も赤ちゃん用のワクチンを援助していて、現地の人はそれを知っている。 中国の援助は発電所などの大がかりなもので、政府は感謝するが、国民のほうは、金額は少ないけれど日本のほうが自分たちの生活のために支援してくれているということで心情的には日本支持だった』、「88年のクーデターの時も軍事政権が選挙で負けても政権移譲をせず、西側諸国が経済制裁をしたが、それを機に中国はあっと言う間に援助ナンバー1の国になった」、「政権トップだったタンシュエ議長らには3年の在任中、1回しか会えなかった。中国はしょっちゅう本国の共産党幹部ら要人が来ていたから、中国大使はタンシュエ氏らともよく会っていた」、「日本」と「中国」への対応の差はこんなにも大きいとは・・・。
・『ラオスやカンボジアにはならない? 支配の歴史に対する抵抗感強い  Q:援助を武器にした「南進政策」でラオスやカンボジアは事実上、中国に支配されているかのような状況です。ミャンマーはそうなりませんか。 A:ミャンマー人をずっと見ていて一番強く感じるのは、誇り高い人たちであり、抑えつけられることに対して強く反発することだ。 英国に植民地支配され、その後は日本軍の統治に抑えつけられた歴史がある。戦後、日本はミャンマーを支援してきたから、そのことには感謝してくれてはいるが、ミャンマーの独立を支援した点を除き、戦争中の日本に対しては感謝はない。 その国民性を考えると、中国に簡単に抑えられるとはまったく思わない。 ラオス、カンボジアは内心はまた別だと思うが、現状では中国の言うことを聞くという選択肢しかないが、ミャンマーはラオスやカンボジアのようにはならないと思う。 軍事政権も同じだ。国軍が一番、血を流した相手はビルマ共産党軍だ。国軍はビルマ共産党軍を抑え込んで国の統一を維持した。ビルマ共産党は、中国共産党、人民解放軍に直接支援されていたわけで、ビルマ共産党軍との戦いの歴史は国軍の中で間違いなく教育され、受け継がれている。 軍事政権は便宜的に中国と仲良くしていろんな支援を得ようとすることはあったとしても、心を許すことは本当にあり得ない。 そういう意味で中国にとってもかじ取りは非常に難しい。いわゆるゲーム理論に従えば千載一遇のチャンスで、西側諸国がミャンマーに対して厳しい態度を取れば取るほど自分たちが近づいていこうということになるが、ミャンマーはそもそも中国が抑えつけるには大き過ぎる。 日本なども全面的に協力しているし、タイなどの資本もどんどん入っているから、簡単に中国の言う通りにはいかない。) ただ今後、米中対立、とりわけ経済関係の成り行きいかんで、いわゆるセクターごとのデカップリング(中国分離)は起こり得るし、今回のコロナショックで起きたサプライチェーンの断絶の教訓から、そういった事態に備えなければいけないと、中国の共産党や政府の幹部の一部の人は考え始めていると思う。 それが現実になればなるほど、中国のアジアシフトは明確にならざるを得ない。昨年署名されたRCEP(ASEAN加盟10カ国と日中韓豪ニュージーランドの地域的な包括経済連携協定)はその基盤になり得るわけだ。 一方でミャンマーの軍事政権も中国に近づくことが利益だと考えたら接近するだろう。中国とミャンマーは状況によって、距離を置いたり逆に接近したりという戦術的な関係になる可能性がある』、「国軍はビルマ共産党軍を抑え込んで国の統一を維持した」、こんな歴史があったとは初めて知った。確かに「中国とミャンマーは状況によって、距離を置いたり逆に接近したりという戦術的な関係になる可能性がある」、のかも知れない。
・『国際的な孤立深まれば対中接近も 「選挙やり直し」で軍のメンツも立つ?  Q:ミャンマーの今後ですが、軍が一枚岩でないという状況でどういう展開を予想しますか。 A:一番心配しているのは、軍事政権はきちんとした情勢分析をせずにその時の雰囲気や流れでやってしまうことが多いことだ。だから、国際社会はあまり性急に追い詰めるようなことはしないほうがいい。 国軍のミンアウンフライン最高司令官が中国にどこまで近づくかというのは、軍事政権が国際社会でどれだけ孤立するか、による。またミンアウンフライン氏自身にとっても、軍が曲がりなりにも一体化している限りは中国にすり寄る必要はないが、軍の中の対立が相当、厳しいものになってくれば、中国にすり寄って助けてもらうという選択肢を取る可能性は出てくる。 国際社会、とりわけ西側諸国はこれらの要素を十分に考慮しながら軍事政権にはこれまでの民主化の軌道に戻るように働きかけることだ。 Q:国軍は「1年以内に選挙をやる」と言っていますが、そうなるのでしょうか。 A:選挙はやると思う。軍事政権にとってそれ以外に混乱を収拾する方法がない。国軍が主張するように選挙違反があったのかどうかはわからないが、ミャンマーではこれまで軍事政権の下でも選挙はきちんと行われてきた。 軍人だから、票をどう増やすかという選挙戦術などは知らないし、もともと軍は選挙には干渉しない。それで軍人やその家族が多数を占める地域でもNLDが勝つということが起きる。現地の関係者に聞いたら、昨年の選挙でも軍は本当に選挙に勝つと信じていたという。 もちろん、その前に前回選挙で不正があったという物語は作り上げると思う。勝つと思ってやって負けてしまい、選挙をやろうと主導した人の責任問題を回避するために不正があったと言うしかないということかもしれない。だが、選挙自体はきちんとやる。やり直し選挙をしてやはり負けたということになっても、一応、軍内部でも説明がつくわけだ。 そしてやり直し選挙ではNLDがまた勝つと思うし、軍はその結果を受け入れると思う』、「やり直し選挙ではNLDがまた勝つと思うし、軍はその結果を受け入れると思う」、分かり難い国だ。
・『性急に追い込むのはリスク 日本は米国へのブレーキ役に  Q:経済制裁などは性急にはしないほうがいいということですか。 A:まずはスーチー氏を釈放させ、選挙をやるというのなら実施させて、その代わりに結果には絶対に従うのだぞということを軍事政権に約束させ、徐々にクーデター前の状況に戻していくことが一案としては考えられる。 振り返ってみると、ミャンマーが民政移管を進めた際には、国連の安保理でミャンマー問題が議論され、それが軍事政権には相当のプレッシャーになっていた。 だから今回も安保理で議論することは圧力をかけるいい方法だが、このカードをあまり早く使い切らないほうがいい。すぐに結論を出して何かをやるというよりも、軍事政権を揺さぶる材料として、状況に応じて安保理で議論をする。それで揺さぶって、それでも動かなかったら、そのときには厳しい措置を取ればいい。 成り行きいかんでは、安保理で拒否権を持つ中国の重要性がさらに増す結果にもなり得るが、安保理カードが使えるというのは前回の経験で学んでいる。大事に取っておく必要がある。 Q:日本は伝統的にミャンマーとは良好な関係を維持してきましたが、ミャンマー問題で米中が対立するようなことになれば、米国からは連携強化を求められる可能性があり、政府も約400社の日本の進出企業も対応が難しくなります。 A:軍事政権とNLD双方に話ができるのが、日本が現在置かれた立場だ。そのためにこれまで外交努力を続けてきた。しがたって日本としては双方と話をし、さらに米国と相談しながら、どういうところに落とし込んでいけば各方面の打撃が少ないのか、妥協点を探る役割を担う必要がある。 軍事政権には一番大きな代償を払ってもらうことにならざるを得ないが、ただすべて軍事政権の責任というのでは、彼らを追い込んでしまう。反発して内にこもってしまうことにならないようにこちら側に引っ張ってきて、みんなである程度の出口を作るようにしないといけない。 米国が制裁でどう動くか、それから米国の人権団体の動向も注意する必要がある。米国が性急な措置を取ることへのブレーキ役になることも大事だ。 私が大使をしていた時もそうだったが、人権団体が日本は非人道的な軍事政権と付き合っていると難癖をつけて、進出している日本企業の不買運動を呼びかけたりした。他の日本企業も米国市場でのビジネスに影響が及ぶのを恐れてミャンマーに投資をしなくなった。 また米国政府がミャンマーで生産して米国に輸出をする企業を制裁対象にする可能性もある。今はミャンマーやアジア自体の市場が大きくなってきているので、ミャンマーへの進出企業の多くはミャンマー国内やASEANで利益を得るために出ている。米国市場以外を市場としているような企業であれば、そう心配することはないと思うが、メイド・イン・ミャンマーで米国に輸出をしている企業はリスクを抱える。 米国がそういう状況にならないように、日本政府もミャンマーの軍事政権に民主主義体制を全面的に否定しているのではないことを示させないといけないが、米国世論が人権を否定したという結論を持ったときには、人権団体が騒ぎ出すという構図があることは注意しておかないといけない』、確かに「ミャンマー」への対応は、一筋縄ではいかないようだ。
タグ:ミャンマー 東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン (その2)(スーチー氏拘束を率いた司令官の切迫した事情 クーデターの支えに一体何が存在しているのか、ミャンマー軍事政権と中国の「急接近」はあるか?宮本雄二・元中国大使に聞く 宮本雄二/ミャンマー・中国元大使に聞く) 春日 孝之 「スーチー氏拘束を率いた司令官の切迫した事情 クーデターの支えに一体何が存在しているのか」 クーデターの大義とは対極にありそうな私的事情 見逃せないロヒンギャ問題 「最終的にスー・チーは「国家顧問」という超法規的ポストを創設、「大統領の上」に君臨する最高指導者となった。「憲法が禁止していないから問題ない」という驚くべきレトリックだった」、「スー・チー」氏もなかなかしたたかなようだ 最後の交渉は「メンツとメンツのぶつかり合い」 「「お抱え占星術師」など「クーデターの背後にひそむ「ミャンマー政治の舞台裏」に思いをはせている」、とは我々の想像を超えた世界のようだ 「ミャンマー軍事政権と中国の「急接近」はあるか?宮本雄二・元中国大使に聞く 宮本雄二/ミャンマー・中国元大使に聞く」 国軍、NLDの勢いに危機感 だが「軍政回帰」は疑問 「ミャンマー・中国元大使」、とはまさに最適任者だ。 民主化ロードマップ」は転換点 もはや後戻りできない スーチー氏にも責任がある 民政を守る努力、双方が不十分 今回は公務員もクーデターへの抗議デモに参加しているようだ 軍は「一枚岩」ではない可能性 クーデターの正当性は弱い 既に「一般大衆が立ち上がる」段階に入ったような気がする インド洋へのルート確保や「一帯一路」 中国には軍事、経済で死活的利益 「ミャンマーを経由してインド洋に抜けるというルートは中国には戦略的なポイント」、「「一帯一路」構想でもここにとっかかりを持つことが中国の対外戦略の重要な利害に関わる」、となれば、「今回も国際社会が経済制裁などで軍事政権を追い詰めることになれば、中国がミャンマーへの関与を強める可能性がある」、難しいところだ 西側の経済制裁実施の陰で最大の援助国として影響力 88年のクーデターの時も軍事政権が選挙で負けても政権移譲をせず、西側諸国が経済制裁をしたが、それを機に中国はあっと言う間に援助ナンバー1の国になった」 「政権トップだったタンシュエ議長らには3年の在任中、1回しか会えなかった。中国はしょっちゅう本国の共産党幹部ら要人が来ていたから、中国大使はタンシュエ氏らともよく会っていた」、「日本」と「中国」への対応の差はこんなにも大きいとは・・・ ラオスやカンボジアにはならない? 支配の歴史に対する抵抗感強い 「国軍はビルマ共産党軍を抑え込んで国の統一を維持した」、こんな歴史があったとは初めて知った。確かに「中国とミャンマーは状況によって、距離を置いたり逆に接近したりという戦術的な関係になる可能性がある」、のかも知れない 国際的な孤立深まれば対中接近も 「選挙やり直し」で軍のメンツも立つ? 確かに「ミャンマー」への対応は、一筋縄ではいかないようだ
nice!(0)  コメント(0) 

英国EU離脱問題(その17)(クリスマスに急転直下 漁業問題も先送りのブレグジット合意の危うさ、英EUの通商合意 ロンドン金融街シティーにとっては慰めにならず、ロンドン ブレグジット後に株取引で欧州最大拠点から陥落 アムステルダムに明け渡す) [世界情勢]

英国EU離脱問題については、昨年4月22日に取上げた。今日は、(その17)(クリスマスに急転直下 漁業問題も先送りのブレグジット合意の危うさ、英EUの通商合意 ロンドン金融街シティーにとっては慰めにならず、ロンドン ブレグジット後に株取引で欧州最大拠点から陥落 アムステルダムに明け渡す)である。

先ずは、昨年12月25日付けNewsweek日本版が掲載したフランス在住ライターの今井佐緒里氏による「クリスマスに急転直下、漁業問題も先送りのブレグジット合意の危うさ」を紹介しよう。
・『<どさくさ紛れの感もある合意には、一般市民や産業への恩恵が具体的に見えず、そもそも大市場のEUがなぜイギリスに譲歩しなければならなったのかという疑念も漂う。それがEUに対する疲労感や拒否感につながっていくリスクもある>  欧州連合(EU)と英国の間に合意がなされた。 英国では、合意の中身より、ジョンソン首相の宣伝効果が功を奏している。 そして、EU加盟国では、もっとも最初から存在して忘れてかけていた根本的な疑問が投げかけられる。 2000ページもある内容を、たった10ヶ月くらいで、しかもコロナ禍の中で交渉を進めた現場の交渉官たちは、大変な努力をしたとしかし、クリスマス休暇中の慌ただしい合意。誰も中身を落ち着いて精査する環境になく、休み中にもう暫定発効しそうな勢いだ。本当にこれで良かったのか』、膨大な交渉事項があるのに、交渉期限をわざと短く区切ったのは、「ジョンソン首相」らしいやり方だ。
・『フランスの現場からの疑問  「私は合意内容のすべてがわかってからしか、声明を出さないつもりです」。フランスの欧州外交委員会のプレジデントであるジャン・フランソワ・ラパン委員長は、こう言った。 彼は漁師問題を抱える、英仏海峡に面したパ・ド・カレ県の上院議員でもある。「私の県では、みんな漁業に関する合意の詳細を、じりじりしながら待っています」。 「Public SENAT」によると、漁師たちは、この協定について、常に懸念を表明してきた。海洋漁業・養殖地域委員会によると、この県を含むオー・ド・フランス地方の漁業者による漁獲量の75%が危機に瀕しているのだという。 フランス上院では、クレマン・ボーヌ欧州担当大臣が、「英国の条件は受け入れられない」と断言していた。 合意書が今まで封印されていたという事実だけで、それなりの予兆があるように思えたという。 「合意があるという事実は良いことです。でも合意は、英国が欧州市場へのアクセスを容易にするものであり、恩恵を受けるのはイギリス人です。残る問題は、何の見返りがあるかということです」』、フランス側の言い分に偏っているが、交渉事である以上、どちらかに一方的に有利とはならない筈だ。
・『漁業問題は結局どうなったか  漁業の問題は、どうやら2026年6月までの5年半の移行期間が定められたようである。 その間、欧州の漁業者は年間6億5,000万ユーロにのぼる漁獲量の25%を放棄することになる。その後は、イギリス領海へのアクセスは毎年再交渉されることになるという。AFPが報じた。 もしこれが本当なら、確かに、イギリスがEUの「25%」という数字を受け入れたのは、大幅な妥協だろう。5年半の移行期間というのは、当初EUは10年、英国は3年と言っていたのだから、互いの妥協かもしれない(ジョンソン首相は「EUは14年を求めていて、我が国は3年だった」と公式に言っているが・・・そうなのか??  漁業が主権の象徴になっていたのに、英国が25%も放棄したのが「主権回復」になるのかどうか、はなはだ疑問である。 それに5年半の移行期間で何をどうして削減していくかは、未定だという。 一方でEUの加盟国側の政治家や市民としては、根本的な問いが出始めたようである。「なぜ我々が妥協して、何かを失わないといけないのか」。 そもそも、わかりやすくいうのなら、イギリス側の主張はこういうようなものだった。 「私は会社を辞めます。引き止めても無駄です。この会社が嫌なんです。でも、これからもこの会社とのお付き合いは続けたい。会社のシステムも備品も、今までどおり使わせてください。でも、私はもうここの会社員じゃないのだから、会社の規則に従うのは嫌ですよ。私はもう独立して自由なのだから、私のやり方で、会社のシステムや備品を使わさせてもらいます。心配しないでください。それほどかけ離れたことはしませんから」 あれほどジョンソン首相は「合意なし」「イギリスは合意がなくても繁栄する」と強気に言っていたのだから、そうさせてあげるべきではなかったか──と。 一般市民や地元の政治家にとって、EUの首都であるブリュッセルは遠い。漁業や農業が犠牲になるということは日本でもあるが、少なくとも「その見返りに、我が国の商業は恩恵を受けた」とか、「我が国の立場としては、そうせざるを得なかったのだ」というのがわかりやすく伝わる。 しかし、EUという枠組みや欧州の利益というのは大きすぎてわかりにくいし、ブリュッセルは外国だという意識が頭をもたげてくる。 このような加盟国の一般市民や地元政治家の感情は、EUに対する疲労感や拒否感につながってゆくリスクをはらんでいる』、確かにそのリスクがあるからこそ、EU側の姿勢も厳しかったのだろう。
・『ジョンソン首相のメディア対策と大宣伝  ジョンソン首相の宣伝力は大したものだ。EUの欧州委員会という巨大な役所では、とても太刀打ちできない。 おそらく、広告代理店か、プロのアドバイザーがついているのではないか。なにせ今時は、戦争にも広告代理店がつく時代である。 英国がもっていた内部文書が、ニュースサイトの「グイド・フォークス」に引用された。 その中の分析では、合意内容で英国の「勝利」が28、EUは11、双方が妥協した分野が26だとしている。文書については、その後英当局者が確認しているという。意図的なリークを感じさせる。 ただ、英国の「勝利」とされているいくつかは、双方の当初の立場を正確に比較してはいない。 フランスの日経新聞「Les Echos」は以下のように書いている。 交渉の真の勝者が誰であろうと、現在の状況は首相の手にかかっている。 クリスマス・イブ(日本のおおみそかに相当)の前で、いかなるロビー団体も、(移行期間が終了となる)来週の前に、実際に合意のテキストを解剖分析して、可能性のある欠陥を指摘するということができない、というだけではない。 いつもはEU懐疑派で、右翼系のマスコミは、デイリー・メールからデイリー・エクスプレス、ザ・サンまで、ここ数日、政府がワイヤーで合意を引き上げるという偉業を絶賛しているように見えた。 保守党のEU離脱派のメンバーも、合意に賛成しているようだ。 ジョンソン首相はここ数週間、彼らをなだめるための努力を惜しまなかったと言わなければならない。彼らの利益の守護者を装うためにドラマ仕立てで強調しているし、昨年、離脱協定を議会で可決させることに成功したのと同じレシピを使っている、としてもである。 そのレシピとは、まず、EUに対して尊大な毅然とした態度を示し、次に妥協点に達するためにバラスト(船のバランスをとるための重し)を手放し、それを外交的な成功で信用に値するものとしてプレゼンすることだ。 彼がどれだけ力を入れているかを示すために、ここ最近、写真が積極的に使われた。半闇のオフィスでデア・ライエン委員長と電話をしていたり、ブリュッセルにいる彼女と直に話すためにジェット機のはしごを登ったり、である。 この広告宣伝は、どこまでその効果はもつのだろうか。 合意内容が公開されて、年が明けてすべての人が仕事に戻ったとき、合意内容はどのように評価されるのだろうか』、「ジョンソン首相の宣伝力は大したものだ」、確かに前任の正直だったテリーザ・メイ前首相とは大違いだが、嘘を言っているのではとの疑念もつきまとう。
・『そして、EU加盟国の側は?  EU加盟国側の反応はどうだろうか。 バルニエ首席交渉官を筆頭に、欧州委員会は今まで、主にブリュッセル駐在の加盟国大使を通じて、27カ国の首脳の同意を取りながら進めてきたのだから、極端な反対意見は出ないと思われる。おそらく、27カ国の政府レベルでは了承となるだろう。 しかし、各国の現場や識者からは不満が出るだろう。それは、選挙で選ばれなければならない各国の政治家にとって、非常に嫌なものになりかねない。 「5年半」という漁業の移行期間も、本当にギリギリまで妥協したのではないか。EU内は(一応)民主主義国家ばかりだから、5年の間に一度も選挙がない国はおそらく存在せず、それよりは長い期間である、という判断だった可能性はあるだろう。 それに、最初から存在して、目の前のブレグジットの交渉を前に忘れかけていた根源的な問いは、これから一層浮き出るかもしれない。「そこまで自発的に離婚したがったイギリスに親切にして、こちらに何の得があったのか」「極右を活気づけたり、追随したがるものが出てきたりして、EUの屋台骨をゆるがしかねないのではないか」と』、「「5年半」という漁業の移行期間も、本当にギリギリまで妥協したのではないか」、違和感がある。むしろ。とりあえず、先送りしたと捉えるべきだろう。
・『中長期的な展望で見るならば  結局、合意はどのような内容かわからないと判断のしようがないし、実際にどのような運用がなされるのか、しばらく見てみないとわからないだろう。 イギリスに関税ゼロという恩恵を与えたといっても、実は関税はあまり今の世界、特に先進国ではあまり大きなウエイトを占めていない。大事なのは非関税障壁、つまり世界のルールづくりのほうなのだ。誰がイニシアチブをとるか、世界規模で競争しているのである。 世界のルールは誰がつくるのか、ルールを制するものが、ビジネスを制すとすら言える──という現代の原則に立ち返れば、英国に対して懲罰的な措置をとらず、EUの勢力圏内に留めておかせたほうが、EUにとっては長期的な利益になるのかもしれないが......そういう大きな戦略は、わかりにくいし見えにくいだろう。 さらに、収まる気配のないコロナ禍で、平和と日常が脅かされているからこそ、目に見えやすい効果が期待されている時代なのも、不安材料である。 バルニエEU首席交渉官は、1月1日には「多くの市民や企業にとって」「本当の変化」があると強調した。それは事実に違いない。 そしてEUは、最も影響を受けたセクターを支援するために50億ユーロを予算に計上している。 ※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。』、「実は関税はあまり今の世界、特に先進国ではあまり大きなウエイトを占めていない。大事なのは非関税障壁、つまり世界のルールづくりのほうなのだ」、これまでは、1つの国で承認されれば、EU域内ではそれが通用する共通パスポートがあったが、これふぁなくなるのは、売り込みのネックになるだろう。

次に、12月29日付けBloomberg「英EUの通商合意、ロンドン金融街シティーにとっては慰めにならず」を紹介しよう。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-12-29/QM2XUXT0AFB601
・『+英規制が金融サービス分野で公平な競争環境作るとのEU判断が必要 +EUのお墨付きなければ、英金融業界から資産・人材流出は続く公算 英国と欧州連合(EU)の協力関係に新しい時代を開くとされる自由貿易協定(FTA)は合意が先週ようやく成立したが、ロンドンの金融街シティーには助けとならない。金融サービスについては、EUによる別のお墨付きが必要だからだ。 英国の金融規制と監督は公平な競争環境を作り出すのに十分に堅固だと、EU当局者が判断する必要がある。これがなければ、英国の金融業界から資産や事業、人材が流出する状況は止まらないだろう。 JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックス・グループは最近、EU域内へのさらなる事業移転を始めている。JPモルガンの場合、2000億ユーロ(約25兆3800億円)相当の資産とスタッフ200人が今回の移転の対象に含まれるが、それで終わりではない。 ジョンソン英首相は27日の日曜紙サンデー・テレグラフ紙とのインタビューで、金融サービスに関して協定は「英国が望むほど恐らくカバーしていない」と認め、スナク財務相は金融サービス分野の市場アクセスに関する交渉は続くと述べている。 英国のEU離脱が短期的に金融市場を混乱させるのを防ぐ取り組みで進展はあったものの、英金融業界のEUとの最終的な関係についてのコンセンサスはほとんどできていない。同業界は長年享受してきたEU市場へのアクセスを、まさに数日以内に失おうとしている。 英国のバンカーと規制当局、政治家は通商合意が金融についての合意形成に弾みを付けると期待している。金融業界は100万人以上が雇用され、税収の1割強を担う英経済の要だ。 金融街シティーを代表するザシティーUKのマイルズ・セリック最高経営責任者(CEO)は「通商合意は歓迎だが、金融および関連の専門サービスはサービス分野での関係を展開させ続ける必要性を認識している」と述べた。 欧州のバンカーらも明瞭性を求めている。欧州の業界ロビー団体である欧州金融市場協会(AFME)は、国境を越えた金融市場アクセスをスムーズにするため双方の規制に「同等性」の決定を与える合意を呼び掛けている。AFMEのアダム・ファーカスCEOは「それにより、金融サービスで一段の協力の土台が築かれることを希望する」とし、「移行期終了時の混乱を和らげ新たな関係へのスムーズな移行を確実にするため、EUと英国が迅速に同等性決定を導入することが重要だ」と論じた。 それでも、最も楽観的な金融業者ですら、ロンドンが欧州全体の金融の中心であるという現状は保たれそうにないとみている。 フォンデアライエン欧州委員長はロンドンのシティーとEU の関係の「全てが変わる」と予告。フランス銀行(中央銀行)のビルロワドガロー総裁は10月に欧州の銀行に対し、デリバティブ(金融派生商品)取引を支える業務でロンドンのクリアリングハウス(清算・決済機関)を利用しなくなっていくという長期シフトに備えるよう呼び掛けた。 マクギネス欧州委員(金融サービス担当)は12月にユーロニュースに、「欧州が金融活動の中心をどこに置きたいかという中核的かつ根本的な問題に戻ってくる。それが長期的に、ロンドンの金融街であり続けることはないのは確かだ」と述べた』、「JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックス・グループは最近、EU域内へのさらなる事業移転を始めている」、米国系にとっては当然だ。「新たな関係へのスムーズな移行を確実にするため、EUと英国が迅速に同等性決定を導入することが重要だ」、「それでも、最も楽観的な金融業者ですら、ロンドンが欧州全体の金融の中心であるという現状は保たれそうにないとみている」、やはり離脱の悪影響は避けられないようだ。

第三に、2月12日付けNewsweek日本版が転載したロイター「ロンドン、ブレグジット後に株取引で欧州最大拠点から陥落 アムステルダムに明け渡す」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2021/02/post-95615.php
・『英国が1月1日に欧州連合(EU)を完全に離脱して以来、ロンドンは欧州最大の株式取引拠点としての地位をアムステルダムに明け渡したことが11日公表されたデータで分かった。  両都市で取引所を運営するCBOEによると、1月の1日当たり株式売買高はアムステルダムが92億ユーロ(111億5000万ドル)だったのに対して、ロンドンは86億ユーロ。2020年全体では、ロンドンが最大の175億ユーロ、2位がフランクフルトの59億ユーロで、アムステルダムは6位の26億ユーロにとどまっていた。 欧州証券市場監督局(ESMA)は同日、ロンドンからEU域内への株式取引の移動は恒久的だとの見方を示した。実際、EUがブレグジット(英のEU離脱)後のユーロ建て株式の域内での取引を義務付ける姿勢を撤回する気配がない。 ただ19年6月にロンドンでいったん打ち切られたスイス株取引が今月復活したため、ロンドンとアムステルダムの売買高の差は今後縮まるかもしれない。 11日には、今月になって多くのユーロ建て金利スワップ取引がロンドンからEUとニューヨークに移ったことを示すデータも公表された。 IHSマークイットによると、1月のユーロ建て金利スワップ市場におけるアムステルダムとパリの取引プラットフォームのシェアは25%と、昨年7月の10%から上昇。その半面、ロンドンのシェアは同期間に40%弱から10%強に下がり、米国のシェアが倍増して20%に高まったという』、「ユーロ建て」の「株式取引」、「金利スワップ取引」さらには「その他のデリバティブ取引」、なども「ロンドン」から「アムステルダム」や「フランクフルト」に移ってゆくのは不可避なようだ。 
タグ:ロイター bloomberg Newsweek日本版 英国EU離脱問題 (その17)(クリスマスに急転直下 漁業問題も先送りのブレグジット合意の危うさ、英EUの通商合意 ロンドン金融街シティーにとっては慰めにならず、ロンドン ブレグジット後に株取引で欧州最大拠点から陥落 アムステルダムに明け渡す) 今井佐緒里 「クリスマスに急転直下、漁業問題も先送りのブレグジット合意の危うさ」 EUに対する疲労感や拒否感につながっていくリスクもある 2000ページもある内容 たった10ヶ月くらいで クリスマス休暇中の慌ただしい合意 誰も中身を落ち着いて精査する環境になく、休み中にもう暫定発効しそうな勢いだ 膨大な交渉事項があるのに、交渉期限をわざと短く区切ったのは、「ジョンソン首相」らしいやり方だ フランスの現場からの疑問 オー・ド・フランス地方の漁業者による漁獲量の75%が危機に瀕している フランス側の言い分に偏っているが、交渉事である以上、どちらかに一方的に有利とはならない筈だ 漁業問題は結局どうなったか 英国が25%も放棄 5年半の移行期間で何をどうして削減していくかは、未定 ジョンソン首相のメディア対策と大宣伝 「ジョンソン首相の宣伝力は大したものだ」、確かに前任の正直だったテリーザ・メイ前首相とは大違いだが、嘘を言っているのではとの疑念もつきまとう そして、EU加盟国の側は?  EU加盟国側の反応はどうだろうか 「「5年半」という漁業の移行期間も、本当にギリギリまで妥協したのではないか」、違和感がある。むしろ。とりあえず、先送りしたと捉えるべきだろう 中長期的な展望で見るならば 「実は関税はあまり今の世界、特に先進国ではあまり大きなウエイトを占めていない。大事なのは非関税障壁、つまり世界のルールづくりのほうなのだ」、これまでは、1つの国で承認されれば、EU域内ではそれが通用する共通パスポートがあったが、これふぁなくなるのは、売り込みのネックになるだろう 「英EUの通商合意、ロンドン金融街シティーにとっては慰めにならず」 英規制が金融サービス分野で公平な競争環境作るとのEU判断が必要 EUのお墨付きなければ、英金融業界から資産・人材流出は続く公算 JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックス・グループは最近、EU域内へのさらなる事業移転を始めている 移行期終了時の混乱を和らげ新たな関係へのスムーズな移行を確実にするため、EUと英国が迅速に同等性決定を導入することが重要だ それでも、最も楽観的な金融業者ですら、ロンドンが欧州全体の金融の中心であるという現状は保たれそうにないとみている」、やはり離脱の悪影響は避けられないようだ。 「ロンドン、ブレグジット後に株取引で欧州最大拠点から陥落 アムステルダムに明け渡す」 ロンドンは欧州最大の株式取引拠点としての地位をアムステルダムに明け渡した ユーロ建て金利スワップ取引がロンドンからEUとニューヨークに移った 「ユーロ建て」の「株式取引」、「金利スワップ取引」さらには「その他のデリバティブ取引」、なども「ロンドン」から「アムステルダム」や「フランクフルト」に移ってゆくのは不可避なようだ
nice!(0)  コメント(0) 

北朝鮮問題(その21)(北朝鮮・金正恩の実妹はなぜ昇進しなかったか 党大会で降格人事だが将来の復帰可能性も大、北朝鮮 「自力更生」路線に先祖返りで日朝関係・拉致問題は漂流の気配、韓国文政権の「北朝鮮で原発建設」疑惑で米韓に亀裂か 元駐韓大使が解説) [世界情勢]

北朝鮮問題については、昨年6月18日に取上げた。今日は、(その21)(北朝鮮・金正恩の実妹はなぜ昇進しなかったか 党大会で降格人事だが将来の復帰可能性も大、北朝鮮 「自力更生」路線に先祖返りで日朝関係・拉致問題は漂流の気配、韓国文政権の「北朝鮮で原発建設」疑惑で米韓に亀裂か 元駐韓大使が解説)である。

先ずは、本年1月13日付け東洋経済オンラインが転載したソウル新聞「北朝鮮・金正恩の実妹はなぜ昇進しなかったか 党大会で降格人事だが将来の復帰可能性も大」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/403321
・『北朝鮮の朝鮮労働党第8回党大会で党中枢の人事が行われたが、下馬評では昇進すると予想されていた金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長が、昇進どころか現在の党政治局候補委員という地位も失ったことがわかり、その背景に関心が集まっている』、どうしたのでろう。
・『権力中枢の常務委員になれなかった  今回の党大会で総書記となった金正恩(キム・ジョンウン)委員長の実妹であり、国政の全般に関与していると金委員長の最側近とも見られている彼女は、大会前までは権力中枢の党政治局常務委員になると予想されていた。今回、党部長職にも就かず、党中央委員会委員としてのみ名前を残した。とはいえ、今回の人事で彼女の政治的立場が弱まったとみるのは時期尚早だと、専門家の多くは見ている。 2017年に政治局候補委員となった金与正氏は、2018年に行われた3回の南北首脳会談では金委員長を補佐したことで、大きく注目されるようになった。2019年末からは党第1副部長として対南(韓国)事業を総括してきた。2020年6月、南北共同連絡事務所を北朝鮮が一方的に爆破したときには韓国と真っ向から対立する一方で、アメリカとの問題にも積極的に関与してきた。 こういった役割と立場を考えると、今回の党大会で金与正氏は昇進すると韓国の情報機関は予測しており、さらに常務委員にまで昇進するとの見方も一部ではあった。今回の党大会では、執行部が座る壇上の席にも着いていた。 しかし、今回昇進しなかったからといって、金与正氏の権力が弱まったとみるべきではないという分析が多い。韓国・経済社会研究院のシン・ボムチョル外交安保センター長は「今回の党大会は金委員長の地位を内実ともに高めるためであり、その過程で金与正氏を一時的に身を引かせたものではないか。いつでも彼女は再浮上できる」と見ている。 党政治局の中枢である常務委員会の人事では、81歳と最高齢で内閣総理をも務めた朴奉珠(パク・ポンジュ)氏が引退し、それまで候補委員だった趙勇元(チョ・ヨンウォン)党組織指導部第1副部長が常務委員となった。党序列20位前後だった候補委員から、序列5位にまで一気に昇進した。趙氏は、党中央委員会書記、党中央軍事委員会委員にも任命された』、一時は「金委員長」の健康不安説・死亡説まで流れていたが、これは全くガセネタだったようだ。
・『金委員長の“カバン持ち”が急浮上  金委員長の現地指導や視察の際には必ず同行していた趙氏の抜擢人事は、党体制整備と金委員長の地位強化を目指す今回の党大会を象徴する出来事だ。韓国・慶南大学極東問題研究所の林乙出(イム・ウルチュル)教授は、「指導部の世代交代とともに、対米関係と経済建設という2つの課題を抱える金委員長が実質的な成果と業績を積むことに注力しようとしている」と指摘する。 外交・安保政策では、対南問題を総括する金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長は党書記になれず、党部長にだけ名前を残した。これは、北朝鮮が対南担当の書記をなくし、部長だけを置いたことになる。北韓大学院大学の梁茂進(ヤン・ムジン)教授は、「対南担当の書記を置かないことで、韓国を担当する党の機能が相当弱まったとも言えるが、今後、金与正氏がそれを担当することを念頭に置いている可能性がある」と見ている。 対南政策を担当していた崔善姫(チェ・ソンヒ)外務省次官は党中央委員会委員から候補委員へ降格となり、対中外交を担当していた金成男(キム・ソンナム)党国際部第1副部長が党中央委員会部長に任命された。李善権(リ・ソングォン)外相は政治局候補委員の座を守った。(韓国「ソウル新聞」2021年1月12日)』、「対南担当の書記をなくし、部長だけを置いたことになる」、「韓国」はわざわざ工作するまでもないと、軽くみられた可能性もあるだろう。

次に、2月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した朝日新聞編集委員の牧野愛博氏による「北朝鮮、「自力更生」路線に先祖返りで日朝関係・拉致問題は漂流の気配」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/261380
・『5年ぶり労働大会と軍事パレード 見えた金正恩体制の今後  北朝鮮で1月12日まで開かれていた第8回朝鮮労働党大会で、最高指導者の金正恩氏が新しいポストの党総書記に就任した。 14日には平壌の金日成広場で軍事パレードも行われた。 党大会と軍事パレードから見えてきたものは、国際的な経済制裁や新型コロナウイルス感染、水害の「三重苦」のもとで独裁体制にも揺らぎが感じられる苦しい状況だ。 「自力更生」というかつての厳しい時代のスローガンが再び掲げられたのは、その象徴だ。 「拉致問題の解決」を最重要課題に掲げ、日朝関係改善をめざす日本政府は自力更生路線に戻る北朝鮮にどう対応していくのか』、「自力更生路線に戻」れば、「拉致問題の解決」の可能性が小さくなってしまいそうだ。
・『経済発展計画の失敗を認め「自力更生、自給自足」掲げる  5年ぶりに開かれた労働党大会は北朝鮮の窮状をさらけ出す場になった。 金正恩氏は2016年から昨年までの国家経済発展5カ年戦略について「途方もなく未達だった」と、失敗に終わったことを認めた。 国際社会からの経済制裁や新型コロナウイルス感染による中国との国境封鎖で貿易量が落ち込み、外貨収入が激減、加えて水害被害の打撃が大きかった。 正恩氏は21年からの新たな5カ年計画について「基本テーマは、依然として自力更生、自給自足である」と語った。 「自力更生」は、初代の金日成総書記の統治の時代から数十年にわたって、外貨不足や飢餓などの際に市民に苦労を押しつけるときに使われてきた常套(じょうとう)文句だ。 脱北した元党幹部の一人は「自力更生や艱苦奮闘という言葉を聞くと、ああ、また生活が苦しくなるのか、とよく思ったものだ」と語る。 通常の党大会は幹部人事などを決めるだけですぐに閉幕するのに、今回、正恩氏は新5カ年計画について詳細に説明し、部門別会議も開くなど、計画達成に懸けている様子だ。 ただ、内容は、金属や電力、農業などの部門の整備発展という、金日成時代から変わらぬ古色蒼然(そうぜん)とした内容にすぎなかった。 北朝鮮では現在も、75年前に終わった日本統治時代の道路や鉄道などのインフラが主に使われ続けている。さらに20年は中国との国境封鎖や制裁などで生産自体も落ち込んだ。 韓国の情報機関、国家情報院は昨年11月の国会説明で、原材料不足や設備の老朽化のため、北朝鮮の産業の設備稼働率が2011年に正恩氏が最高指導者になって以降で最低水準にあると報告した。 目標達成を目指そうにも、資金などの「先立つもの」への言及はないままだった』、「設備稼働率が」「2011年」「以降で最低水準」、しかもミサイルなどを作りまくっているので、民間需要は大幅マイナスだろう。
・『制裁やコロナでの国境閉鎖 外資導入進まず「先祖返り」  苦境を乗り切るためには、まずは外国資本が投資できるよう環境にすることだが、そのためには経済制裁が緩和されるように、ミサイル発射の抑制や核開発関連の疑惑をまずは払拭する必要がある。 また投資家から信頼してもらうため、法律や金融市場の整備など、市場経済の基盤となるインフラや制度が必要不可欠だ。 だが、こうした問題に対する答えも示されなかった。 大会では、ミサイルや核兵器などの開発状況を詳しく公表、多弾道型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の研究が「最終段階」にあることを表明するなど、制裁緩和の状況を作るというよりはバイデン米新政権を威嚇、けん制する姿勢の方が目立った。 外国資本が期待する投資環境の改善策も触れられなかった。 正恩氏は「経済管理の画期的な改善」に言及したが、その意味するところは、小売業や飲食店など、人々の生活に関連する部門は市場経済化を進めるということのようだ。 だがすでに日常の取引は公設市場などが作られ、かつての統制経済のような状況にはない。 今後の経済発展を考える場合、重要なのは経済全体の7割を占めるとされる軍需産業や鉄道・道路・電力などの基幹部門の近代化だが、これらの部門は党や軍幹部などの特権層が牛耳り、賄賂がはびこる。 外資が投資をしても、北朝鮮に利益が集中するようにルールがねじ曲げられ、もうかれば全部没収される。これまでも北朝鮮に投資した日本や中国、韓国の事業家の多くはこの“犠牲”になった。 かつて北朝鮮と合弁で携帯電話事業を展開したエジプトのオラスコム社は莫大な利益をあげたが、北朝鮮は「国外には持ち出せない」として、利益を独り占めにしている。 これでは、どこの国の事業家も北朝鮮に投資するはずがない。 正恩氏自身も外資呼び込みが重要と考えてはいるようだが、ロシアのオルガルヒ(新興富裕層)のような外資とつながった新しい権力層が誕生し、自らの基盤が揺らぐ恐れもあり、現状では大胆な導入策はとてもできないといったところだろう』、「外資が投資をしても、北朝鮮に利益が集中するようにルールがねじ曲げられ、もうかれば全部没収される」、「外資」導入にあたって最低限の要件すら欠いているようだ。
・『首脳外交での成果上がらず不満高まり体制揺らぐ危機感  そもそも今の北朝鮮は国際社会による制裁でがんじがらめになっており、外資も密貿易でもやらない限り、北朝鮮に投資できない状況になっている。 金正恩氏は2018年から19年にかけ、制裁緩和を狙ってトランプ米大統領と首脳外交を繰り広げたが、19年2月、ベトナム・ハノイで行われた第2回米朝首脳会談の決裂以降、米国との対話は断絶状態だ。 米朝外交をやっている当時から北朝鮮市民の間では戸惑いの声が出ていた。なにしろ、建国以来、指導部は米国を最大の敵と位置づけ、米国に対する敵愾(てきがい)心をあおることで国民の不満をそらし続けてきたからだ。 正恩氏が首脳外交で制裁緩和や経済協力などの成果を上げられれば、国民を納得させられたが、それも空振りに終わった。結局、党大会の報告は「完全無欠の核の盾を構築した」という先祖返りした内容でしかなかった。 経済を改善するための良い要素が一つも見つからない中で、行き着いたのが「自力更生」だった。「人民大衆第一主義」も掲げたが、これは国民の不満の高まりを意識し、自らの権力基盤が揺らぎかねないという危機感を抱いたからだろう』、「行き着いたのが「自力更生」」では、今後の苦境が思いやられる。
・『拉致被害者再調査を水面下で日朝協議 「合意」は頓挫、溝が残ったまま  日本は余裕のない北朝鮮とどう向き合っていけばいいのか。とりわけ拉致問題の解決は日朝関係改善をめざすうえで必要十分条件だ。 金正恩氏はかつて日朝協議を進めようとしたことがある。 2014年3月、モンゴル・ウランバートルで日本人拉致被害者、横田めぐみさんの両親とめぐみさんの娘、キム・ウンギョンさんの家族が面会した。 その2カ月後の5月には、日本が独自制裁の一部を解除する代わりに、北朝鮮が日本人拉致被害者らの再調査を行うというストックホルム合意が実現した。 当時の関係者の一人はこの動きについて、「権力者の座に就いた正恩氏が父親が失敗した日本からの経済支援を得ようとしたものだった」と話す。 北朝鮮は14年年秋ごろには、拉致被害者を巡る調査の中間報告を日本に出そうとした。 日本側がその内容を事前に探ったところ、「生存者の全員即時帰還」を掲げる被害者関係者の要請とはほど遠い可能性が高いと判断。あえてこの報告書を受け取らなかった。 その後、再調査は進展しないまま16年2月、北朝鮮が核実験と弾道ミサイルの発射実験をしたのを受けて、日本政府が再び独自制裁を決定すると、北朝鮮は反発し再調査の中止などを発表し合意は崩壊した。 日本政府内には14年当時、「不完全でも報告書を受け取り、その後に不備を追及した方がよい」という意見もあった。 ただ、「不完全な報告書を受け取れば、国内の世論が猛反発する」という政治判断から中間報告書を受け取らないことで一致したという。 「ストックホルム合意の崩壊で、正恩氏は日本を信用できない相手と感じたようだ」と、この当時の関係者の一人は振り返る。 金正恩氏はプライドを傷つけられたとも感じたようだ。 第1回の米朝首脳会談から間もない18年6月19日、北京で習近平国家主席と会談したが、習主席は首脳会談の成功を受けて、「これから日本との関係も避けて通れないだろう。拉致問題が必ず解決しなければならない問題として浮上する」と語ったという。 だが、正恩氏は「ご指摘の問題は理解しているが、今はまだその時期ではない」と答えたという。 その後、日本側からは安倍晋三首相(当時)が「無条件での日朝首脳会談」を提案する動きがあったが、北朝鮮からの反応はなかった。) 19年9月、平壌を訪れた故金丸信・元自民党副総裁の次男、金丸信吾氏と面会した北朝鮮の宋日昊朝日国交正常化交渉担当大使は、提案についてこう語ったという。 「安倍(首相)の発言は、単なる日本国民に向けた、『私はやっています』というパフォーマンスにすぎない。拉致問題が解決してしまったら困るのは安倍(首相)だ。(解決に向けて努力しているように見える)今の状況が一番いいのだ」 菅義偉政権も「無条件での日朝首脳会談」を呼びかけ、同時に「拉致問題の解決」を掲げるが、北朝鮮にしてみれば、菅首相も安倍前首相と同類に映っているようだ。 労働党の機関紙である朝鮮中央通信は昨年12月23日、加藤勝信官房長官が、「全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現すべく、政府も総力を挙げて最大限の努力を続けている」と述べたことについて、こう論評した。 「改めて強調するが、日本が騒ぐ拉致問題はすでに解決済みの問題だ」 北朝鮮側の姿勢には変化がない状況だ』、「拉致問題はすでに解決済みの問題」なのに、「「安倍(首相)の発言は、単なる日本国民に向けた、『私はやっています』というパフォーマンスにすぎない。拉致問題が解決してしまったら困るのは安倍(首相)だ。(解決に向けて努力しているように見える)今の状況が一番いいのだ」、というのは、案外、真相を突いている可能性がある。
・『東京五輪での金与正氏来日に日本側は期待するが  現在、日本政府内からは「東京オリンピック・パラリンピックに金正恩氏の実妹、金与正党副部長が来日してくれたら」と祈るような声が聞かれる。 与正氏に「拉致問題を解決すれば、日本が北朝鮮を経済支援できる」と訴えれば、与正氏が金正恩氏に会談に応じるよう説得してくれるだろう。独裁国家だから最高指導者が決断すれば流れは決まる、という思惑だ。 だがこれには根拠のない楽観論が含まれている。 第一にコロナの感染拡大が止まらない中で東京五輪が開かれる見通しは立っていない。五輪が開かれても、今回の労働党大会で党政治局員候補から中央委員に格下げになった与正氏が来日するのかどうかもわからない。 格下げの背景には、過度にスポットライトが当たり「ナンバー2」「(正恩氏の)後継者」という印象が強まれば、北朝鮮内で権力の分裂や混乱を招くという懸念があったとみられる。 仮に与正氏が来日して日本側と接触したとしても、与正氏が日本のために正恩氏を説得する役割を担ってくれるかどうかもわからない。 拉致問題が解決しても、北朝鮮の核・ミサイル問題が解決しない限り、国際社会による制裁が緩和されることはなく、日本からも経済支援を得られる環境にならないことは、北朝鮮側もよくわかっているからだ。 もし僥倖(ぎょうこう)が続いて、正恩氏が日朝首脳会談に応じる決意を固めたとしても、拉致問題の解決に至るかというと、その可能性も低い。 正恩氏は、建国の父とされた祖父の金日成主席のようなカリスマ性を持った指導者ではないからだ。祖国の解放者という実績もないし、パルチザンとして一緒に米国と戦った戦友のような人脈もない。 自らが党大会で国家経済発展5カ年戦略の失敗を認めたように、国民が評価する業績もまだ上げていない。 正恩氏が最高指導者でいられるのは「白頭山血統」と呼ばれる金日成主席の血筋だからだ。そして正恩氏を取り巻く特権層も、多くは金日成時代からのつながりがある軍や党の幹部らの親族や関係者らだ。 彼らも金日成主席の血筋がトップにある体制だからこそ、特権層としての富裕な暮らしを享受できている。正恩氏と特権層はいわば共生関係にある。 特権層の中には拉致問題に関与した部署の人間も含まれており、拉致問題の解決とは、自分たちが責任を取ることも意味する。そうなる可能性がある拉致門問題の解決を正恩氏に勧める可能性は少ないだろう』、「特権層の中には拉致問題に関与した部署の人間も含まれており、拉致問題の解決とは、自分たちが責任を取ることも意味する。そうなる可能性がある拉致門問題の解決を正恩氏に勧める可能性は少ないだろう」、なるほど。
・『日本が射程内の改良型ミサイル登場 バイデン新政権との連携が重要  1月14日に平壌で行われた軍事パレードも、日本にとっての懸念材料がまた増えただけだった。 パレードでは、昨年10月の労働党創建75周年のパレードで“登場”した新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)は動員されなかったものの、19年春に試験発射した短距離弾道ミサイルが改良した形で登場したからだ。 機体はロシアのイスカンデルに似た「KN23」か、あるいは米国のATACMSに似た「KN24」のいずれかの改良型とみられる。昨年10月のパレードでは片側4輪の移動発射台に搭載されていたが、1月では片側5輪の発射台になり大型化されたようだ。 イスカンデルは射程600キロだが、改良によって1000キロ以上になったと分析する声も出ている。 金正恩氏は党大会で「戦術核兵器の開発」にも言及しており、北朝鮮は米国本土を狙えるというICBMの配備の前に、まずは日本を射程に収めた核弾頭ミサイルを大量に実戦配備するかもしれない。 日本の安全保障体制は、核抑止は米国の「核の傘」を頼っており、仮に北朝鮮が核弾頭ミサイルを配備するとなれば日本だけでは対応できない。より一層、日米の安全保障協力が必要になる。 20日、発足したバイデン新政権の対北朝鮮政策はまだ見えないが、日本としてはまずは米朝の核・ミサイル協議の目標が全面的な核廃棄から、ICBMなどに対象を絞った核軍縮に変質しないよう、米国に強く働きかけるべき時だ。 その一方で、米朝協議が合意に達し制裁緩和が実現した時には、すぐに日朝首脳会談を開催できるように、あるいは米朝合意と同時に日朝合意を実現できるよう、北朝鮮と信頼関係を築く必要がある。 そのためには北朝鮮に連絡事務所を開設するなどの手順が必要だが、いまの菅政権内でそうした対北朝鮮戦略が練られ、準備が行われているようにはとても見えない』、「連絡事務所を開設」はハードルが高いとしても、定期協議でも何でもいいが、「米朝合意」に遅れない体制づくりが必要だ。

第三に、2月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国文政権の「北朝鮮で原発建設」疑惑で米韓に亀裂か、元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/262014
・『2020年版韓国国防白書は日韓「葛藤」と韓中「友好」を強調  2020年版韓国国防白書は、日本に対し従来使用していた「パートナー」という言葉は使わず、単に「隣国」と表現した。これは日本が防衛白書の中で、韓国との「幅広い協力」という表現を削除したことに伴う措置であろう。韓国の軍関係者は「日本の輸出規制以降、ぎくしゃくしていた関係がある」と指摘する。 さらに白書では、「日本の政治家らの独島(竹島の韓国名)挑発(領有権主張)、2018年に起きた自衛隊哨戒機へのレーザー照射問題について『事実をごまかす一方的なメディア発表』で日韓間の国防関係が難航した」と記述している。 これに対し、日本の防衛省は在日韓国大使館の防衛駐在官を招致し、「竹島に関する記述をはじめ歴史認識や輸出管理の見直し、レーダー照射に関する記述など我が国の立場と相容れず、我が国として受け入れられない」などと抗議した。 韓国はその一方で、中国に関しては、これまでの白書にあった「THAAD(高高度防衛ミサイル)を巡る対立」の項目を丸ごと削除し、「両国関係の安定的発展」という表現も用い、2017年の韓中首脳会談など「正常化の努力」を記述した。 こうした、日本と中国に関する記述についてソウル大学の朴喆熙(パク・チョルヒ)教授は、「均衡感を喪失すれば韓米日協力を強調するバイデン政権に誤ったシグナルを与えかねない」「中国は西海(ソへ、黄海のこと)で領有権を主張しながら侵犯しているのが現実だが、本当にわが国の軍が主権を守る意思があるのか疑問を感じるほどだ」(中央日報)と警鐘を鳴らしている。 朴教授の指摘のように、韓国政府、メディアを挙げて、米国のバイデン大統領が日本の菅義偉首相とは1月28日に電話会談したにもかかわらず、3日午後になっても文在寅大統領には電話がないことに焦りを覚えているようである。 韓国のメディアは中韓首脳の電話会談を米韓に先立って行ったこと、その内容も中国ペースだったこと、特に、中国共産党の100周年に対する祝意を述べ共産党の功績をたたえるような発言をしていることが、米国の不興を買っているからであろうと分析している。 国防白書はこうした文在寅政権の姿勢を体現しているといえる』、「中韓首脳の電話会談を米韓に先立って行った」、「中国共産党の100周年に対する祝意を述べ共産党の功績をたたえるような発言」、これでは「米国の不興を買っている」のも当然だ。
・『北朝鮮は敵国ではない 南北関係改善の意思表示も  その一方で、軍事的な脅威の高まる北朝鮮について、文在寅政権の誕生後に出した2018年白書では「主敵」「敵」という表現を削除したが、これを今回も踏襲した。それまでは「韓国軍は大韓民国の主権、国土、国民、財産を脅かし侵害する勢力を韓国の敵とみなす」と記述していた。ただ、盧武鉉政権では「直接的な軍事脅威」として「敵」という表現は用いなかった。 軍は今回の白書で、各種弾道ミサイルなど北朝鮮の軍事的脅威が強まった点は指摘した。特に「大口径放射砲(ロケット砲)を開発、朝鮮半島全域を打撃できる放射砲を中心に火力を補強している」と記載したが、「戦術核兵器開発」に関する評価はなかった。 北朝鮮の「核保有」も従来のように明示せず、「プルトニウム50キロ保有」「核兵器小型化能力が相当な水準」と2年前と同じ内容を記述した。 金正恩氏が、朝鮮労働党大会で南北、米朝首脳会談が行われている時期にも核ミサイル開発を継続してきたことを認めたのを全く無視した指摘である。 最近の南北軍事関係については、北朝鮮は「全般的に『9.19軍事合意』を遵守している」と評価した。北朝鮮による南北共同連絡事務所の爆破や軍事的威嚇を無視した形である。 南北の政治関係では、「金委員長は、党創立75年閲兵式の演説では南北関係改善に関する意思も披歴した」と述べた。しかし、それも韓国の出方次第だという条件付きであることには触れていない。 北朝鮮の内部情勢に関し、従来の白書で使っていた「政権世襲」という表現を「金正恩国務委員長の執権」に変更した。民主社会デモで広く用いられる「執権」という表現を用いることで体制の正統性を認める意図があるのであろう。 韓国の国防白書は、現在の朝鮮半島情勢を客観的に分析・評価するものとは言いがたい。あくまでも文在寅政権の政治姿勢を正当化する白書であり、自分たちに都合の良い部分のみを取り上げて、つじつまを合わせた文書と考えた方がよさそうである。 これをもとに韓国の国防政策を策定すれば、北朝鮮の脅威に対処することはできず、韓国の安全保障に甚大な脅威となるであろう。また、日本との協力に後ろ向きな姿勢を露骨に表しており、米韓同盟に対する認識も、韓国として独自色を強く出そうとしている。 韓国は今後ますます日米から離れ、中朝にすり寄っていくことを暗示するのがこの国防白書かもしれない』、「あくまでも文在寅政権の政治姿勢を正当化する白書であり、自分たちに都合の良い部分のみを取り上げて、つじつまを合わせた文書」、自画自賛のためのようだ。
・『文政権に驚きの疑惑 北朝鮮で原発建設を検討か  文在寅政権の安全保障に対する姿勢の危険さを象徴するのが、文在寅政権が北朝鮮へ原発を供与することを検討していたという、信じられないような疑惑である。 産業通商資源部(以下「産業部」)が公開した「北朝鮮原発建設文書」によると「具体的推進には限界がある」などのただし書きとともに、「内部検討資料」とも記しているが、17件の文書が板門店南北首脳会談(2018年4月27日)直後の5月2日から15日にかけて集中的に作成されていることに多大な懸念を抱かざるを得ない。 「北朝鮮原発」に関する文書の中では、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)の事例について詳しく取り上げ、その上で琴湖地区に原発を建設する第1案を「最も説得力がある」と指摘していたようである。 さらに第2案とされる非武装地帯(DMZ)での原発建設についても「原子炉の稼働には冷却水が必要だ。そのため場所は東海(日本海)か西海(黄海)周辺にしなければならない」とかなり具体的な検討を行ったようである。また、文書の中には「KEDO関連業務経験者名簿」もあった。 当時、文在寅政権が工事を中断させた新ハンウル原発3号機、4号機の設備を北朝鮮に渡そうという部分もあるそうである。 先述の17件の文書の存在は、韓国検察が月城原発1号機の経済性評価の捏造容疑で産業部の公務員らを起訴した際の、起訴状の記録で確認されたものである。産業部の公務員は文書をすべて削除してしまったが、そのこと自体何か隠さなければならないことがあったからであろう。 青瓦台は「(板門店南北首脳会談の際に文在寅氏と金正恩氏が2人で密談した)人道橋会談と前後して北朝鮮側に渡した新経済構想の中に発電所関連の内容がある」との説明をしている。 この新経済構想は文在寅氏が金正恩氏に渡したUSBメモリに記されている。青瓦台はUSBメモリの資料が水力発電や火力発電に関するものだと主張するが、産業部はその後北朝鮮に原発を提供する資料を作成したのであろう。こうした疑惑を晴らすのであれば、USBメモリを公開する必要があるが、青瓦台と民主党はこれを拒んでいる。 こうした一連の文書は、産業部の公務員が単独で作成できるものではないだろう。この時期は「月城原発1号機はいつ閉鎖されるのか」という文在寅大統領の一言で韓国水力原子力に圧力を加えて月城1号機を早期に閉鎖し、新規原発建設白紙化を推進している時期であった。 朝鮮日報の独自取材によれば、月城原発の閉鎖過程で、産業部の職員が、金秀顕(キム・スヒョン)青瓦台社会首席秘書官(当時)がチーム長を務めていた青瓦台エネルギータスクフォース(TF)と緊密に協議し、指示を受けていたことが明らかになったそうである。 こうした疑惑に関し、オリ・ハイノネン元国際原子力機関(IAEA)事務局次長は「(韓国政府が)何を議論し、どのような計画を進めようとしていたか解明することが最も重要」だと指摘した。 ハイノネン元次長は「国連安保理決議1718と2397には『北朝鮮におけるすべての核兵器と現存する核開発計画を直ちに廃棄しなければならない』と記しているが、この核開発計画には(寧辺の)軽水炉や5メガワット原子炉なども含まれている」「そのため誰かが北朝鮮に(既存の)原子炉に代わる施設を建設するとなれば、これはおかしなことだ」と強い懸念を示した。 さらに、1990年代のKEDO当時と比べ、北朝鮮は核兵器を保有している。同元次長は「北朝鮮が核拡散防止条約(NPT)に復帰しない限り、北朝鮮の地に原子炉を建設することはできない」と断言した』、「文在寅政権が北朝鮮へ原発を供与することを検討していた」、事実であれば、国連決議違反だし、飛んでもないことだ。
・『北朝鮮での原発建設の疑惑究明は不可欠  こうした疑惑に対し政府・与党は一斉に総反撃に出ている。 文大統領は「マタドール(根拠のない話による政治攻勢)」として不快感を表し、「旧時代的な政治攻勢」と野党を批判した。青瓦台関係者は「一線を越えた政治的宣伝だ。人々を惑わす無責任な扇動」と大統領に迎合した。 李洛淵(イ・ナギョン)民主党代表は「野党第1党の指導者が越えてはならない線を越えた」と述べた。 これに対し、野党第1党・国民の力の朱豪英(チュ・ホヨン)院内代表は、李代表の発言に対し「青瓦台と与党が疑惑を解消する義務があるにもかかわらず、刑事責任を問うといって過剰反応したのがむしろおかしい」と反論した。 検察の捜査の過程で出てきた北朝鮮での原発建設疑惑に国民が疑問を抱くのは当然だ。「脱原発」を政治哲学とする現政権で公務員が原発建設を単にアイデアとして出したという説明は納得できない。それなれば、なぜ関連文書を廃棄したのか。 北朝鮮への原発供与の問題は、韓国の安全保障にかかわる重大な事項である。それにもかかわらず、文在寅政権は資料を公開して疑惑を晴らすのではなく、隠蔽と反対派攻撃で乗り切ろうとしていることは、決して許されることではない。 韓国政府高官らの不正を捜査する高位公職者犯罪捜査処を新たに設置したのは、こうした時に検察が捜査することを妨害するためである。こうした文在寅政権の独裁政治には政界、言論、国民が一体となって立ち向かっていかなければ、それを正すことはできない。 こうした疑惑に対し、バイデン大統領の対北朝鮮チームはどう反応するであろうか。黙って見過ごすはずはない。ブリンケン国務長官は北朝鮮核問題への対応を全面的に見直すと言っているが、韓国政府がこの疑惑を積極的に晴らす努力をしなければ、対韓関係の全面的な見直しにも発展しかねない。 この問題は、ことの重大性からして、もみ消して済む性格のものではない。仮に文在寅政権がもみ消しに成功すれば、韓国の政治に「明日はない」ということを実証することになるだろう』、「北朝鮮への原発供与の問題は、韓国の安全保障にかかわる重大な事項である。それにもかかわらず、文在寅政権は資料を公開して疑惑を晴らすのではなく、隠蔽と反対派攻撃で乗り切ろうとしていることは、決して許されることではない」、「ブリンケン国務長官は北朝鮮核問題への対応を全面的に見直すと言っているが、韓国政府がこの疑惑を積極的に晴らす努力をしなければ、対韓関係の全面的な見直しにも発展しかねない」、「文在寅政権」の甘過ぎる対北朝鮮政策は、信じ難い。バイデン政権から見捨てられる前に、見直してほしいものだ。
タグ:東洋経済オンライン 北朝鮮問題 ダイヤモンド・オンライン ソウル新聞 武藤正敏 牧野愛博 (その21)(北朝鮮・金正恩の実妹はなぜ昇進しなかったか 党大会で降格人事だが将来の復帰可能性も大、北朝鮮 「自力更生」路線に先祖返りで日朝関係・拉致問題は漂流の気配、韓国文政権の「北朝鮮で原発建設」疑惑で米韓に亀裂か 元駐韓大使が解説) 「北朝鮮・金正恩の実妹はなぜ昇進しなかったか 党大会で降格人事だが将来の復帰可能性も大」 権力中枢の常務委員になれなかった 一時は「金委員長」の健康不安説・死亡説まで流れていたが、これは全くガセネタだったようだ。 金委員長の“カバン持ち”が急浮上 「対南担当の書記をなくし、部長だけを置いたことになる」、「韓国」はわざわざ工作するまでもないと、軽くみられた可能性もあるだろう 「北朝鮮、「自力更生」路線に先祖返りで日朝関係・拉致問題は漂流の気配」 5年ぶり労働大会と軍事パレード 見えた金正恩体制の今後 「自力更生路線に戻」れば、「拉致問題の解決」の可能性が小さくなってしまいそうだ 経済発展計画の失敗を認め「自力更生、自給自足」掲げる 「設備稼働率が」「2011年」「以降で最低水準」、しかもミサイルなどを作りまくっているので、民間需要は大幅マイナスだろう 制裁やコロナでの国境閉鎖 外資導入進まず「先祖返り」 「外資が投資をしても、北朝鮮に利益が集中するようにルールがねじ曲げられ、もうかれば全部没収される」、「外資」導入にあたって最低限の要件すら欠いているようだ 首脳外交での成果上がらず不満高まり体制揺らぐ危機感 「行き着いたのが「自力更生」」では、今後の苦境が思いやられる 拉致被害者再調査を水面下で日朝協議 「合意」は頓挫、溝が残ったまま 「拉致問題はすでに解決済みの問題」なのに、「「安倍(首相)の発言は、単なる日本国民に向けた、『私はやっています』というパフォーマンスにすぎない。拉致問題が解決してしまったら困るのは安倍(首相)だ。(解決に向けて努力しているように見える)今の状況が一番いいのだ」、というのは、案外、真相を突いている可能性がある 東京五輪での金与正氏来日に日本側は期待するが 特権層の中には拉致問題に関与した部署の人間も含まれており、拉致問題の解決とは、自分たちが責任を取ることも意味する。そうなる可能性がある拉致門問題の解決を正恩氏に勧める可能性は少ないだろう」、なるほど 日本が射程内の改良型ミサイル登場 バイデン新政権との連携が重要 「連絡事務所を開設」はハードルが高いとしても、定期協議でも何でもいいが、「米朝合意」に遅れない体制づくりが必要だ 「韓国文政権の「北朝鮮で原発建設」疑惑で米韓に亀裂か、元駐韓大使が解説」 2020年版韓国国防白書は日韓「葛藤」と韓中「友好」を強調 「中韓首脳の電話会談を米韓に先立って行った」、「中国共産党の100周年に対する祝意を述べ共産党の功績をたたえるような発言」、これでは「米国の不興を買っている」のも当然だ 北朝鮮は敵国ではない 南北関係改善の意思表示も 「あくまでも文在寅政権の政治姿勢を正当化する白書であり、自分たちに都合の良い部分のみを取り上げて、つじつまを合わせた文書」、自画自賛のためのようだ 文政権に驚きの疑惑 北朝鮮で原発建設を検討か 「文在寅政権が北朝鮮へ原発を供与することを検討していた」、事実であれば、国連決議違反だし、飛んでもないことだ 北朝鮮での原発建設の疑惑究明は不可欠 「北朝鮮への原発供与の問題は、韓国の安全保障にかかわる重大な事項である。それにもかかわらず、文在寅政権は資料を公開して疑惑を晴らすのではなく、隠蔽と反対派攻撃で乗り切ろうとしていることは、決して許されることではない」 「ブリンケン国務長官は北朝鮮核問題への対応を全面的に見直すと言っているが、韓国政府がこの疑惑を積極的に晴らす努力をしなければ、対韓関係の全面的な見直しにも発展しかねない」 「文在寅政権」の甘過ぎる対北朝鮮政策は、信じ難い。バイデン政権から見捨てられる前に、見直してほしいものだ
nice!(0)  コメント(0) 

トランプ VS バイデン(その3)(アメリカ分裂でバイデン政権の舵取りは困難に 当初から共和党と民主党左派の挟み撃ちに遭う トランプ後の共和党とQアノン アメリカのファシズム的未来、トランプ後の共和党とQアノン アメリカのファシズム的未来、米国という共和政国家の臨死体験 大統領が企てたクーデターの衝撃――マーティン・ウルフ) [世界情勢]

トランプ VS バイデンについては、昨年12月21日に取上げた。今日は、(その3)(アメリカ分裂でバイデン政権の舵取りは困難に 当初から共和党と民主党左派の挟み撃ちに遭う トランプ後の共和党とQアノン アメリカのファシズム的未来、トランプ後の共和党とQアノン アメリカのファシズム的未来、米国という共和政国家の臨死体験 大統領が企てたクーデターの衝撃――マーティン・ウルフ)である。

先ずは、1月14日付け東洋経済オンラインが掲載した米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長の渡辺 亮司氏による「アメリカ分裂でバイデン政権の舵取りは困難に 当初から共和党と民主党左派の挟み撃ちに遭う」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/403457
・『「ユナイテッド航空93便」。9.11アメリカ同時多発テロ事件で、首都ワシントンの連邦議会議事堂に突っ込むためにアルカイダ工作員がハイジャックしたフライトだ。乗客がハイジャック犯と戦い、議事堂に到達する前にペンシルベニア州で墜落した。熱狂的なトランプ支持者は、2020年大統領選を「93便選挙」と称していた。ジョー・バイデン政権発足によってアメリカ社会が変わることを、自らの手で阻止せねばならないといった決死の覚悟を示すものだ。 同時多発テロ事件から約20年が経過した1月6日、ホワイトハウス南側の広場でトランプ大統領の演説を聞いた支持者たちはペンシルベニア通りを南東に下り、連邦議会議事堂に乱入。アルカイダも実現しなかったことを成し遂げた。民主党支持者やアメリカのリベラル系メディアなど大手メディアの大半は、議会乱入者を抗議者とは呼ばず「反乱者」や「国内テロリスト」と称している。 9.11後、テロ攻撃に衝撃を受けたアメリカ国民の声を反映し対テロ政策導入に向け政治家は党を問わず団結した。今回も衝撃を受けた国民は多くいるが、政治家は団結するであろうか。議会を攻撃したのは国外のテロ組織ではなく身内で片方の政党の支持基盤であったこと、そして国は二極化していることからも、それは疑わしい』、「熱狂的なトランプ支持者は、2020年大統領選を「93便選挙」と称していた」、やはり彼らの熱量は相当高かったようだ。
・『共和党支持者の多くはトランプ勝利を信じている  トランプ支持者の議事堂乱入により自らの命が危険にさらされた後も、共和党出身の上院議員8人、下院議員139人が、一部の州のバイデン勝利の認定について異議を唱えた。共和党の支持基盤はトランプ氏の勝利を信じて疑わない。2020年12月時点で共和党支持者の72%が2020年選挙の結果を信用しないと回答している(NPRとPBS<いずれも公共の放送局>、マリスト大学による共同世論調査)。そのため、議員は自らの再選や大統領選出馬などを視野に入れて行動したようだ。 また、新興右派放送局のワン・アメリカ・ニュース(OAN)、ニュースマックス、そしてフォックスニュースのコメンテーターなども、今回の事件を糾弾するのではなく、議会乱入者は左翼の活動家ネットワークであるアンティファではないか、との陰謀説まで語っている。これらのメディアやソーシャルメディアを通じて情報を得る多くのトランプ支持者は、陰謀説による妄想の別世界にいる。事実上のクーデターに参画しているという自覚がない支持者が多数いるとも、指摘されている。 1月20日正午にバイデン政権が発足することは、トランプ氏も認め、確実となった。ようやくホワイトハウスの住人となるバイデン氏だが、トランプ政権から引き継ぐ国内外の危機は過去の大統領が経験したことがないほど深刻だ。1世紀ぶりのパンデミック、経済危機、人種問題をめぐる社会不安、そして気候変動問題など、政権が直面する課題は山積みだ。だが、発足当初から政権運営の最大の悩みの種となるのは、南北戦争(1861~1865年)以来とも指摘される社会の二極化であろう。議事堂乱入事件でそれが浮き彫りになった。 4年前までバイデン氏の上司であったオバマ前大統領も社会の二極化を危惧していた。オバマ氏が一夜で政界のスターに飛躍した2004年民主党全国大会の演説は、すでに国の団結を呼びかけたものであった。しかし、オバマ政権下でも二極化は進み、トランプ政権でさらに悪化した』、「これらのメディアやソーシャルメディアを通じて情報を得る多くのトランプ支持者は、陰謀説による妄想の別世界にいる。事実上のクーデターに参画しているという自覚がない支持者が多数いるとも、指摘されている」、恐ろしい「分断」だ。「発足当初から政権運営の最大の悩みの種となるのは、南北戦争(1861~1865年)以来とも指摘される社会の二極化」、その通りだろう。
・『バイデン氏の中道政策に反発、党内の亀裂も鮮明  大統領就任式はその2週間前にトランプ支持者がよじ登って占拠した連邦議会議事堂西側で開催される予定だが、バイデン氏はその場で国家の団結を改めて訴えるに違いない。 29歳の若さで上院に初当選し、半世紀近く首都ワシントンで過ごしたバイデン氏は「ワシントンの生き物」とも称される。上院幹部そして副大統領を経験し、ここまで政治経験が豊富な大統領は、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺後に引き継いだリンドン・ジョンソン大統領(1963~1969年)以来とも指摘される。バイデン氏はアメリカの分裂を修復することに楽観的な見方も示しているが、その長いワシントン経験によって実現できるのであろうか。 不正選挙でバイデン氏が大統領に就任したと信じるトランプ支持者は多数いるが、ほかにも懸念はある。自身を含む穏健派と急進左派やリベラル派との間で見られる民主党内の対立だ。バイデン氏は2020年12月末、メディアに対しアメリカ政治は中道にシフトしたと語り、中道の政策を推進する意志を明らかにした。 「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」を掲げ当選しワシントン政治の伝統を破壊してきたトランプ大統領に対し、バイデン氏は「アメリカを再び正常に(Make America Normal Again)」とする政策だと、政治専門家は揶揄している。確かに有権者が政治の正常化を望んでいる面もあるだろう。 だが、民主党内で最も勢いを増している左派は、中道の政策を望んでバイデン氏を支持したわけではない。民主党を統一させる効果を発揮したのはバイデン氏の掲げる政策ではなく、トランプ氏の存在と同大統領の危機対応についての懸念であった。 1月5日、ジョージア州上院決選投票で民主党候補2人がともに勝利したことで大統領府、上下両院の3つすべてを握る「トライフェクタ(三冠)」を民主党は実現した。 上院で共和党が多数派を維持していたら、バイデン政権が成立を願う法案は共和党ミッチ・マコネル上院院内総務によって阻止される運命にあった。だが、上院奪還により民主党チャック・シューマー上院院内総務が議題を決定できることになる。またバイデン政権の閣僚など政府高官も上院で承認が容易になる。より大規模な対コロナ経済支援策、インフラ整備法案の可決なども可能性が高まる。バイデン政権にとっては公約実現のうえで、トライフェクタは朗報だ』、確かにその通りだが、楽観も禁物だ。
・『2022年に早くも下院過半数を失うおそれ  ところが、次回選挙を考慮すると必ずしもバイデン氏は喜べないかもしれない。共和党が上院多数派を維持していた場合、左派が望むグリーン・ニュー・ディール、オバマケアの大幅な改革をはじめ左寄りの政策に関わる法案を議会で可決できないことについて、バイデン氏は共和党に責任を転嫁できた。しかし、トライフェクタでは左寄りの政策の法案可決に期待が高まり、政権に対する左派からの圧力が強まる。 だが、上院では財政調整法を利用した一部の法案を除き、フィリバスター(議事妨害)を廃止しない限り、採決に入るためには60票の賛成票が必要だ。つまり、引き続き穏健派を含む民主党上院議員の50票すべてと共和党上院議員10票が必要となる。また、下院でも民主党の過半数確保はギリギリの状態(民主党222議席、共和党211議席、空席2議席)である。民主党提出の法案にすべての共和党議員が反対した場合、民主党6人が造反すれば可決できない。 そのため、バイデン政権は穏健派の動向に配慮し、左派が望む法案をすべて推進するわけにはいかない。バイデン氏は左派と穏健派の間で板挟みとなる。その結果、不満を抱く左派は2024年大統領選民主党予備選で独自の候補を擁立する可能性さえあろう。 一方、共和党は、民主党がトライフェクタを成立させたために、かえって、民主党の政策を過激なものだとして、反対運動を展開しやすくなる。2020年大統領選では、民主党に対して、社会主義、過激な左派、とのレッテルを貼ったが、2022年の中間選挙で同様のことを行えば、共和党は特に下院を奪還する可能性がある。2021年、共和党はバイデン政権に協力せず、妨害行為を拡大するかもしれない。 日々の大統領のツイッターなどで振り回された4年間のトランプ政権の混乱後、バイデン政権は政策に一貫性を取り戻し、表面上はアメリカ政治が落ち着きを取り戻したように見えるかもしれない。しかし、バイデン氏は、同氏が不正選挙で選ばれたと考える多くのトランプ支持者、さらには民主党左派といったさまざまな抵抗勢力に対応せねばならない。危機対応においては幅広い国民からの支持が欠かせない。バイデン氏の政権発足後のハネムーン期間は短いものとなりそうだ』、「トライフェクタでは左寄りの政策の法案可決に期待が高まり、政権に対する左派からの圧力が強まる」、「上院では・・・引き続き穏健派を含む民主党上院議員の50票すべてと共和党上院議員10票が必要となる。また、下院でも民主党の過半数確保はギリギリの状態(民主党222議席、共和党211議席、空席2議席)である」、微妙な綱渡り状態を余儀なくされrそうだ。

次に、1月18日付けNewsweek日本版が掲載した元CIA諜報員のグレン・カール氏による「トランプ後の共和党とQアノン、アメリカのファシズム的未来」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/glenn/2021/01/q-1_1.php
・『<議事堂で「トランプ愛」を叫んだ暴徒に対し、警察の対応が弱腰だったのはなぜか。トランプが去っても「トランプ」は終わらない。変貌した共和党とQアノン(注)の陰謀論は、この国の民主主義を今後何年も危険にさらし続けるだろう>(本誌「トランプは終わらない」特集より) 怒れるドナルド・トランプ大統領の支持者が米連邦議会議事堂を占拠した事件を目にしたアメリカ人は、催涙ガスや議事堂のバルコニーにぶら下がる暴徒の姿に衝撃を受けた。 まさに反乱と呼ぶしかない事態は、残り任期わずかとなった政権の内部崩壊と大統領の弾劾につながる可能性がある。(編集部注:1月13日、下院により再び弾劾訴追を受けた) アメリカ民主主義の中心である連邦議会で起きた悪夢は、60年間にわたって悪化してきた政治的緊張の論理的・必然的な帰結だ。トランプは1月6日の連邦議会への突入を直接扇動し、最初はテレビ画面を見ながら喜んでいたという。 だがトランプは、現在の共和党を特徴付ける分断と社会的保守主義を一瞬だけ代表するグロテスクで無能なリーダーにすぎない。この根深い潮流はアメリカの社会と政治をますます麻痺させ、今後何年もこの国の民主主義を危険にさらすだろう。 1月6日に議事堂を占拠した暴徒のほとんどは白人だった。彼らは驚くべき計画性と組織性を示した。 わずか2時間前、ワシントンの2キロ離れた場所で演説したトランプは、議会による大統領選の結果認定に圧力をかけようと総勢4万人とも言われる群衆を直接扇動し、連邦議会議事堂に向かわせようとした。 「徹底的に戦わなければ、この国を奪われることになる。ワイルドなことになるぞ!」と、トランプは言った。 多数のトランプ支持者がリーダーの指示に従い、議事堂を襲撃。アメリカ民主主義の中心を占拠した。トランプ派のジョシュ・ホーリー上院議員は議事堂に入るとき、こぶしを上げて彼らの到着を歓迎した。 しかし、昨年11月3日の選挙結果を覆すという彼らの試みは失敗に終わった。当然だろう。 暴徒にできたのは破壊することだけ、「トランプ主義」とは怒りと恨み以外にほとんど何もない代物だ。それでも暴れ回るトランプ支持派は、民主主義と法の支配というアメリカ共通の理想を蹂躙することには成功した』、「わずか2時間前、ワシントンの2キロ離れた場所で演説したトランプは、議会による大統領選の結果認定に圧力をかけようと総勢4万人とも言われる群衆を直接扇動し、連邦議会議事堂に向かわせようとした」、明らかにけしかけたようだ。「トランプ派のジョシュ・ホーリー上院議員は議事堂に入るとき、こぶしを上げて彼らの到着を歓迎した」、上院議員がすることとは思えない。
(注)Qアノン:アメリカの極右が提唱している根拠のない陰謀論(Wikipedoia)
・『警官の対応が弱腰だった理由  国や社会が崩壊し始めるとき、人々は「内部の裏切り」に非難の矛先を向ける傾向が強くなる。不本意ながら筆者は、連邦議会の防衛ラインを突破した暴徒が迷路のような議事堂のどこに行けばいいか知っているように見えたことを指摘しなければならない。 そして彼らは、議事堂内で議論する議員たちを守る役目の警官の一部から、少なくとも暗黙の支援を受けているようにも見えた。警備担当者の一部については、暴徒が議事堂周囲のバリケードを通り抜けるのを許し、彼らと一緒に自撮り写真に興じる姿が映像に残っている。 警察が完全に不意を突かれ、議事堂への暴徒の襲撃に対処する計画を立てていなかったとは考えにくい。 ジョー・バイデン次期大統領の就任式前の期間、アメリカでは誰もが首都での暴力の危険性を議論していた。ワシントン市長は不測の事態に備え、数日前に州兵を招集していた。つまり、トランプ支持派による議事堂襲撃計画は周知の事実だった。 連邦議会議事堂の警備を担当する議会警察(USCP)は、襲撃や暴動から議事堂を守る計画を立てるのが唯一の仕事だ。 連邦政府で数十年働いた筆者の経験でも、想定し得る全ての脅威や攻撃にどう対応するかを全ての建物と職場で計画し、訓練を行っていた。ところが議事堂を占拠した暴徒は、当局がようやく態勢を整えるまでの4時間、自由に動き回っていた。 もっとも、議会が暴徒に蹂躙されるような大惨事の原因は、悪意ある陰謀ではなく組織的無能の結果であることが多い。筆者も何度となく経験したことだ。 連邦議会の敷地の警護を任された600人の警官は、暴力的な無数のデモ隊による襲撃に対処する準備ができていなかった。議会警察の責任者は無計画のまま、現場の警官を置き去りにした。 だが賢明なことに、警察は武力の行使は避ける決意を固めていたようだ。武力行使は危険なデモを血の海に変え、アメリカ民主主義の中心たる議事堂の階段や廊下で数十人以上が命を落とす危険性があった。 国防総省はこの日のデモを見越して招集された300人の州兵の役割を交通整理などの「非対立的」な仕事に限定し、武装を禁止した。6カ月前、ホワイトハウス前で行われたBLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)運動のデモに対する行き過ぎた対応の二の舞いを避けたかったのだろう』、「賢明なことに、警察は武力の行使は避ける決意を固めていたようだ。武力行使は危険なデモを血の海に変え、アメリカ民主主義の中心たる議事堂の階段や廊下で数十人以上が命を落とす危険性があった」、大規模な流血が避けられたことは、確かに不幸中の幸だ。
・『南北戦争以降で最悪の危機  そのため警官たちは、自分たちだけで暴徒と対峙する羽目に陥り、観光客を誘導するためのバリケード以外に何もない状態で襲撃に対処していた。 暴徒は1人の警察官を消火器で殴りつけ、殴られた警官はこのときの負傷が原因で死亡した。暴徒の1人は襲撃の際に射殺され、当局が4時間以上たって治安を取り戻すまでに、さらに3人が命を落とした。 賢明な自制心のためか、それとも内心でトランプ支持派に共感していたのか。それはともかく、暴徒の襲撃に対する警察の弱々しい対応は、半年前の完全に平和的なBLMのデモに対する暴動鎮圧用装備の兵士の対応と対照的だった。 議事堂で銃撃を受けて死亡した暴徒の女性がトランプ支持の極右陰謀論グループ「Qアノン」の思想を信奉していたことは意外ではない。Qアノンの陰謀論によれば、トランプはアメリカを救うために神が送り込んだ救世主だとされる。 トランプは、世界を牛耳る官僚や民主党員、ユダヤ人、CIA職員、国際金融資本などによる陰謀から一般庶民を守ろうとしていて、これらの勢力はトランプを抹殺しようとしている──と、Qアノンは信じている(ちなみに、筆者は元CIA工作員・元米連邦政府職員で、民主党を支持していて、子供時代にユダヤ人の町で育ち、金融機関で働いた経験もあるが、残念ながら世界を牛耳ってはいない)。 暴動は得てしてそういうものだが、議事堂で起きた出来事は、トランプ支持派にダメージを与える結果を招いた。 上院で誰よりも卑屈なまでにトランプ支持を打ち出していたホーリーとテッド・クルーズの両上院議員はこの一件で厳しい批判を浴び、2人の政治的立場は(少なくとも現時点では)今回の事件が起きる前よりもかなり苦しくなっている。 トランプ自身も、ついに大統領選での敗北を認めざるを得なくなった。 トランプ支持派の議事堂乱入は、アメリカにとって19世紀半ばの南北戦争以降で最悪の危機と言っていい。しかし、アメリカの民主主義に対してそれ以上に大きな危険の種は、昨年11月の大統領選でトランプに投票した膨大な数の有権者の思考の中に潜んでいる。 それにより、アメリカは、トランプが去った後も長期にわたり、社会的・政治的な分断と衝突に苦しめられるだろう。 共和党はこの60~80年ほどの間、右傾化し続けてきた。これは、圧倒的に白人中心だったアメリカ社会が多民族社会へ移行し、あらゆるグループに平等な権利を認めるようになり始めたことへの反発が生み出した結果だった。 共和党は白人の既得権、大企業の利益、一部の人への富の集中を擁護する政党に変貌している。今日の共和党的発想によれば、連邦政府の政策はほぼ全て、「昔ながらの生き方」と「自由」を否定し、白人に犠牲を強いてマイノリティーを「不公正に」(とこの勢力は考えている)優遇するものに見えている』、「暴徒の襲撃に対する警察の弱々しい対応は、半年前の完全に平和的なBLMのデモに対する暴動鎮圧用装備の兵士の対応と対照的だった」、「アメリカの民主主義に対してそれ以上に大きな危険の種は、昨年11月の大統領選でトランプに投票した膨大な数の有権者の思考の中に潜んでいる。 それにより、アメリカは、トランプが去った後も長期にわたり、社会的・政治的な分断と衝突に苦しめられるだろう。 共和党はこの60~80年ほどの間、右傾化し続けてきた。これは、圧倒的に白人中心だったアメリカ社会が多民族社会へ移行し、あらゆるグループに平等な権利を認めるようになり始めたことへの反発が生み出した結果だった」、深い分析だ。
・『トランプ後も変わらないもの  壊された議事堂の窓ガラスはいずれ修復され、建物に充満した催涙ガスの臭いはすぐに消えるだろう。そして、トランプはやがて嘲笑の対象になるだろう。トランプ後の共和党を主導する政治家たちが公然と暴動をけしかけることも考えにくい。 しかし、共和党を支持する社会的・人種的グループがアメリカ社会の支配的地位から滑り落ち続けることに変わりはない。共和党のリーダーたちはこれからも、役割を果たそうとする政府の足を引っ張り、社会変革と経済的再分配を妨害し続けるだろう。 共和党は、異人種に対して被害者意識を抱く人々の政党と化していて、政府の機能を有用なものと考えず、自分たちの「リーダー」を祭り上げることにより、民主政治の「抑制と均衡」の仕組みを弱体化させようとしている。 これは、もはやファシズム以外の何物でもない。問題は、そのような政党がアメリカの2大政党の1つであることだ。 4年半前の2016年7月、トランプがこの年の米大統領選の共和党候補者指名を獲得したとき、筆者は本誌への寄稿「自称『救世主』がアメリカを破壊する」の中でこう記した(2016年8月9日号)。 「古代ギリシャの哲学者は(トランプの)出現を予見していた......古代の賢人が警告してから2400年後、そして近代初の民主共和制の国アメリカが誕生してから240年後の今、賢者の警告を裏付けるようにトランプは出現し、アメリカの政治制度を破壊しようとしている」 アメリカ政治の麻痺状態は、今後もますます深刻化するだろう。共和党が政治的存在感を失い、政治システムが白人の怒りと不満と妨害行為を克服し、金融エリートたち(大半は白人だ)が経済的・政治的実権を握り続ける状況に終止符が打たれるまで、政治の機能不全は続く。 アメリカの民主政治は、トランプ政権の4年間で破壊される一歩手前まで来た。トランプと共和党が生み出したQアノンの狂気とファシズムは、その破壊をいっそう進行させるのかもしれない。 <2021年1月19日号「トランプは終わらない」特集より>』、「共和党は、異人種に対して被害者意識を抱く人々の政党と化していて、政府の機能を有用なものと考えず、自分たちの「リーダー」を祭り上げることにより、民主政治の「抑制と均衡」の仕組みを弱体化させようとしている。 これは、もはやファシズム以外の何物でもない。問題は、そのような政党がアメリカの2大政党の1つであることだ」、事実とすれば、恐ろしいことだ。著者は民主党系なので、共和党系の人の見解も知りたいところだ。

第三に、1月26日付けJBPressが:Financial Timesを転載した「米国という共和政国家の臨死体験 大統領が企てたクーデターの衝撃――マーティン・ウルフ」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63799
・『起きたことは、以下の通りだ。 米国のドナルド・トランプ大統領は何カ月もの間、何の裏付けもなく、公正な選挙で自分が負けるはずはないと断言していた。 案の定、敗北すると不正な選挙のせいにした。この主張には今でも、共和党支持者が5人に4人の割合で同意している。 大統領は、選挙結果を覆すよう各州の当局者に圧力をかけた。 これに失敗すると、今度は各州から送られてきた大統領選挙人の投票結果に目をつけ、副大統領と連邦議会議員を脅してこれらを却下させようとした。 さらには、その求めに従うよう議会に圧力をかけるために、議事堂を襲撃するよう扇動した。 その結果、約147人の連邦議会議員(うち8人は上院議員)が、州から提出された投票結果を却下することに賛成した』、「マーティン・ウルフ」氏は、チーフ・エコノミクス・コメンテーターで、よく日経新聞んも寄稿している。「約147人の連邦議会議員(うち8人は上院議員)が、州から提出された投票結果を却下することに賛成した」、というのは深刻だ。
・『「大嘘」が反乱に発展  端的に言えば、トランプ氏はクーデターを企てた。 もっと悪いことに、共和党支持者の大多数は、こうした行動を取ったトランプ氏の理屈を受け入れている。ものすごい数の連邦議会議員が同調した。 クーデターが失敗したのは、裁判所が証拠のない訴えを棄却し、各州の当局者がきちんと務めを果たしたからだ。 だが、歴代の国防長官10人は、選挙に関与しないよう米軍に警告する必要性を感じた。 筆者は2016年3月、トランプ氏が共和党大統領候補に指名される前から、この人物は重大な脅威になると論じていた。 トランプ氏が、偉大な共和政国家の指導者に求められる資質を全く持ち合わせていないことは明らかだった。 ところがその後、甚だしい不適格さを補う「欠点」があることが判明した。 ある民主主義国について次のような話を聞かされたら、読者はどう反応するだろうか。 現職が明らかな敗北を喫した選挙が不正に行われたものだったという「大嘘」、この嘘を拡散した偏向メディア、それを信じた有権者、反乱を起こした暴徒による議会襲撃、そして、その嘘が作り出した疑惑に対処するために選挙を中断しなければならないと主張する議員たち――。 恐らく、この国は死の危険にさらされていると結論づけるだろう。 米国は多数決主義の国家ではない。小さな州はその少ない人口に見合わない議決権を持ち、人種差別による投票権行使抑制の歴史がある州すら存在する。 しかし、誰が政権を握るかは選挙で決めることになっている。 2大政党の片方の支持者の大半が、自分たちが負けた選挙は「盗まれた選挙」だと考えたら、果たしてこの仕組みは機能するだろうか。 平和的に権力を獲得し、正統にこれを保持することなど、できるものか。どちらが政権を担うかを決める要因は、暴力しか残らない』、「クーデターが失敗したのは、裁判所が証拠のない訴えを棄却し、各州の当局者がきちんと務めを果たしたからだ」、なるほど。「2大政党の片方の支持者の大半が、自分たちが負けた選挙は「盗まれた選挙」だと考えたら、果たしてこの仕組みは機能するだろうか。 平和的に権力を獲得し、正統にこれを保持することなど、できるものか。どちらが政権を担うかを決める要因は、暴力しか残らない」、恐ろしいことだ。
・『ポスト・トゥルースはプレ・ファシズム  米エール大学のティモシー・スナイダー氏が主張するように、「ポスト・トゥルースはプレ・ファシズムであり、トランプが我々のポスト・トゥルース大統領だった」。 もし真実が主観的なものなら、力が物事を決めるしかない。そうなれば、本当の意味での民主主義は存在し得ない。 互いににらみ合う乱暴者の集団が複数できるか、ボスが率いる圧倒的に大きな集団が1つできるかのいずれかだ。 米国という共和政国家の国際的な信用にとってこれがいかにひどい時代だったか、そして世界各地の独裁者たちをいかに喜ばせてきたか、楽観論者であっても同意せざるを得ないだろう。 しかし、楽観論者は次のように言うかもしれない。 米国は厳しい試練の時代をくぐり抜けてきた、今度もまた国内外で約束を新たにする、ちょうど1930年代に、今よりもはるかに危険だった時代にフランクリン・ルーズベルトがやったように――。 残念ながら、筆者はそう思わない。共和党は扇動のせいですっかり堕落してしまっている。 筆者が本稿を書くや否や、左派の暴力や社会主義者についての不満が語られ始めることは分かっている。 しかし、民主党の主要メンバーには、トランプ氏に相当する人物は絶対に見当たらない。プレ・ファシストがいるのは右派の方だ。 もっと悪いことに、トランプ氏自身は病原体ではなく症状でしかない。ジェームズ・マードック氏は先日、次のように語った。 「議会議事堂の襲撃は、我々が危険だと考えていたものが本当に、恐ろしいほど危険であることを証明している。視聴取者に嘘を広めてきた放送局は、気がつかないうちに拡散して手に負えなくなる勢力を野に放った。連中はこの先何年も、我々の近くに居続ける」 父親のルパート・マードック氏が築いた、あの有害なフォックス・ニュースのことを言っていたのだろうか』、「もっと悪いことに、トランプ氏自身は病原体ではなく症状でしかない」、確かにその通りなのかも知れない。
・『共和党が進む道  トランピズムのポスト・トゥルース的世界の創出において右翼メディアのバブルが一役買ったことは明らかだ。 富豪が資金を提供した「制度内への長征」(注)についても、同じことが言える。 この長征によって作り出された司法部門は一般庶民の武装、目に見えない政治献金、そして格差の拡大をもたらし、民主的な安定性を危険にさらしている。 最も厄介なのは、減税や規制緩和の実行に必要な有権者の支持を集めるために、人種による分断の政治という、米国史の非常に不愉快な一部分を共和党のエリートが兵器として利用したことだ。 早すぎる「絶望死」を経験しているのは、大学卒の学歴を持たない白人たちだ。しかし、右翼の真の敵はリベラル派であり、社会における少数派民族だ。 右派の政治が今の姿を保つ限り、大統領選以降に露わになった危険性が消えることはない。連邦議会の共和党議員は、ジョー・バイデン新大統領を失敗させようとするだろう。 狂信的な議員と、自分の出世を何よりも重視する議員は手を組み続ける。常軌を逸した右翼プロパガンダも吐き出され続けるだろう。 そのような運動が次の大統領候補に選ぶのは、果たしてどんな人物か。ミット・ロムニー氏のような従来型の保守政治家だろうか。そうではあるまい。 トランプ氏は道を示した。今後は多くの人々がその道をたどろうとするだろう。 あれほど多くの共和党議員が連邦政府を失敗させたり富める者をさらに富ませたりすることを目標に掲げている限り、同党の政治はそのように機能するに違いない』、「トランプ氏は道を示した。今後は多くの人々がその道をたどろうとするだろう。 あれほど多くの共和党議員が連邦政府を失敗させたり富める者をさらに富ませたりすることを目標に掲げている限り、同党の政治はそのように機能するに違いない」、困ったことだ。
(注)「制度内への長征」:1960年代、西ドイツの学生運動家のルディ・ドゥチュケが唱えた社会の機構の完全な一部となることにより、政府や社会の中から過激な変革を実現するという考え方(Wikipedia)。米国の動きとの関連は不明。
・『歴史の大きな転換点  我々は歴史の重要な転換点にさしかかった。 米国は世界で最も強く、最も大きな影響力を誇る民主的な共和制国家だ。過ちや欠点がどれほどあっても、世界の手本であり、民主的な価値観の守護者だった。 トランプ氏の指揮下で、これが消え失せた。トランプ氏は一貫して、この共和制国家の理想に体現された価値観や願望に敵対していた。 トランプ氏は失敗した。しかも、同氏がクーデターを企ててから、同氏の脅威が現実のものだったことを誰も否定できなくなっている。 だが、それでは十分ではない。もし米国の政治が今後、大方の予想通りに展開していくなら、トランプのような人物は増えていく。 そのなかには、トランプ氏本人よりも有能で無慈悲な人物がいて、成功を収めるかもしれない。 そのような事態を阻止するのであれば、米国政治は今こそ、真実を重んじる姿勢と排他的でないタイプの愛国主義へのシフトを断行しなければならない。 共和政を取っていた歴史上最後の超大国はローマだったとされる。しかし、富裕層と権力者が共和政を破壊し、軍事独裁政を敷いた。 米国が誕生する1800年も前の話だ。米国という共和政国家はトランプの試練を生き延びた。だが、まだ死の淵から救い出してやる必要がある』、「ローマ」帝国を持ち出すとはさすが、英国人のコメンテータらしい。「米国という共和政国家はトランプの試練を生き延びた。だが、まだ死の淵から救い出してやる必要がある」、「救い出す」にはかなり難路で、相当の努力も必要なようだ。
タグ:東洋経済オンライン JBPRESS Financial Times Newsweek日本版 渡辺 亮司 グレン・カール トランプ VS バイデン (その3)(アメリカ分裂でバイデン政権の舵取りは困難に 当初から共和党と民主党左派の挟み撃ちに遭う トランプ後の共和党とQアノン アメリカのファシズム的未来、トランプ後の共和党とQアノン アメリカのファシズム的未来、米国という共和政国家の臨死体験 大統領が企てたクーデターの衝撃――マーティン・ウルフ) 「アメリカ分裂でバイデン政権の舵取りは困難に 当初から共和党と民主党左派の挟み撃ちに遭う」 熱狂的なトランプ支持者は、2020年大統領選を「93便選挙」と称していた」、やはり彼らの熱量は相当高かったようだ 共和党支持者の多くはトランプ勝利を信じている これらのメディアやソーシャルメディアを通じて情報を得る多くのトランプ支持者は、陰謀説による妄想の別世界にいる。事実上のクーデターに参画しているという自覚がない支持者が多数いるとも、指摘されている」、恐ろしい「分断」だ 「発足当初から政権運営の最大の悩みの種となるのは、南北戦争(1861~1865年)以来とも指摘される社会の二極化」、その通りだろう バイデン氏の中道政策に反発、党内の亀裂も鮮明 バイデン政権にとっては公約実現のうえで、トライフェクタは朗報だ』、確かにその通りだが、楽観も禁物だ 2022年に早くも下院過半数を失うおそれ 「トライフェクタでは左寄りの政策の法案可決に期待が高まり、政権に対する左派からの圧力が強まる」 引き続き穏健派を含む民主党上院議員の50票すべてと共和党上院議員10票が必要となる。また、下院でも民主党の過半数確保はギリギリの状態(民主党222議席、共和党211議席、空席2議席)である」、微妙な綱渡り状態を余儀なくされrそうだ。 「トランプ後の共和党とQアノン、アメリカのファシズム的未来」 「わずか2時間前、ワシントンの2キロ離れた場所で演説したトランプは、議会による大統領選の結果認定に圧力をかけようと総勢4万人とも言われる群衆を直接扇動し、連邦議会議事堂に向かわせようとした」、明らかにけしかけたようだ 「トランプ派のジョシュ・ホーリー上院議員は議事堂に入るとき、こぶしを上げて彼らの到着を歓迎した」、上院議員がすることとは思えない 警官の対応が弱腰だった理由 賢明なことに、警察は武力の行使は避ける決意を固めていたようだ。武力行使は危険なデモを血の海に変え、アメリカ民主主義の中心たる議事堂の階段や廊下で数十人以上が命を落とす危険性があった」、大規模な流血が避けられたことは、確かに不幸中の幸だ 南北戦争以降で最悪の危機 アメリカの民主主義に対してそれ以上に大きな危険の種は、昨年11月の大統領選でトランプに投票した膨大な数の有権者の思考の中に潜んでいる。 それにより、アメリカは、トランプが去った後も長期にわたり、社会的・政治的な分断と衝突に苦しめられるだろう。 共和党はこの60~80年ほどの間、右傾化し続けてきた。これは、圧倒的に白人中心だったアメリカ社会が多民族社会へ移行し、あらゆるグループに平等な権利を認めるようになり始めたことへの反発が生み出した結果だった」、深い分析だ トランプ後も変わらないもの 共和党は、異人種に対して被害者意識を抱く人々の政党と化していて、政府の機能を有用なものと考えず、自分たちの「リーダー」を祭り上げることにより、民主政治の「抑制と均衡」の仕組みを弱体化させようとしている。 これは、もはやファシズム以外の何物でもない。問題は、そのような政党がアメリカの2大政党の1つであることだ」、事実とすれば、恐ろしいことだ 著者は民主党系なので、共和党系の人の見解も知りたいところだ 「米国という共和政国家の臨死体験 大統領が企てたクーデターの衝撃――マーティン・ウルフ」 マーティン・ウルフ」氏は、チーフ・エコノミクス・コメンテーター 「約147人の連邦議会議員(うち8人は上院議員)が、州から提出された投票結果を却下することに賛成した」、というのは深刻 「大嘘」が反乱に発展 クーデターが失敗したのは、裁判所が証拠のない訴えを棄却し、各州の当局者がきちんと務めを果たしたからだ 2大政党の片方の支持者の大半が、自分たちが負けた選挙は「盗まれた選挙」だと考えたら、果たしてこの仕組みは機能するだろうか。 平和的に権力を獲得し、正統にこれを保持することなど、できるものか。どちらが政権を担うかを決める要因は、暴力しか残らない」、恐ろしいことだ ポスト・トゥルースはプレ・ファシズム もっと悪いことに、トランプ氏自身は病原体ではなく症状でしかない 共和党が進む道 トランプ氏は道を示した。今後は多くの人々がその道をたどろうとするだろう。 あれほど多くの共和党議員が連邦政府を失敗させたり富める者をさらに富ませたりすることを目標に掲げている限り、同党の政治はそのように機能するに違いない」、困ったことだ 「制度内への長征」 歴史の大きな転換点 「ローマ」帝国を持ち出すとはさすが、英国人のコメンテータらしい 「米国という共和政国家はトランプの試練を生き延びた。だが、まだ死の淵から救い出してやる必要がある」、「救い出す」にはかなり難路で、相当の努力も必要なようだ。
nice!(0)  コメント(0) 

諜報活動(スパイ)(その1)(CIAが採用している「スパイたちの意外な前職」とは、「アラビアのロレンス」より中東で活躍したジャック・フィルビーと スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレをつなぐ線、【追悼】元スパイ作家ル・カレに元CIA工作員から愛を込めて) [世界情勢]

今日は、諜報活動(スパイ)(その1)(CIAが採用している「スパイたちの意外な前職」とは、「アラビアのロレンス」より中東で活躍したジャック・フィルビーと スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレをつなぐ線、【追悼】元スパイ作家ル・カレに元CIA工作員から愛を込めて)を紹介しよう。

先ずは、11月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジェイソン・ハンソン氏(翻訳家: 栗木 さつき氏)による「CIAが採用している「スパイたちの意外な前職」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/254194
・『スパイのスキルは「ビジネススキルの宝庫」だった!すばらしい実績を残したCIA諜報員におくられる賞を約10年の在職中に2度も受賞した著者が、訓練で身につけたそのスキルの中から、ビジネスでも使える実践的な技を教える『超一流の諜報員が教えるCIA式 極秘心理術』がついに発売。 佐藤優氏が「競争に勝つための表技と裏技が盛り込まれた、強いビジネスマンになるための必読書」と絶賛する同書より特別に一部公開します』、「佐藤優氏」が「絶賛」するとはどんな内容なのだろう。
・『あらゆる職業や階級の人、さまざまな学歴の人が採用されている  起業家となってもっとも胸躍る体験のひとつは、さまざまな経歴をもつビジネスマンと知りあえることだ。これまでにも、功成り名遂げたそうそうたるビジネスマンと面識を得てきたが、昔はコメディアンだった、弁護士だった、サーカスの曲芸師だったという人もいた。 諜報の世界も似たようなものだ―それはもう多様なバックグラウンドがあって、興味が尽きないような経歴の持ち主もいる。 それに、成功した起業家の大半がMBAなど取得してはいないように、世間がどう想像していようと、名門大学が未来のスパイを輩出しているわけではない。 たしかに諜報員は私の知るなかでもとびきり頭のキレる人間ばかりだが、CIAはさまざまな経歴をもつ人の価値を認め、尊重している。 映画「アルゴ」に登場するCIA職員のモデルとなったトニー・メンデスは、大学で美術を学んだ。彼はグラフィックデザイナーの求人に応募し、最終的にCIAに雇われた。また高名なシェフで、料理本の著書もあるジュリア・チャイルドは、ニューヨーク市の広告代理店でコピーライターとして働いたあと、OSS(戦略諜報局。CIAの前身)にタイピストとして入局した。そして、ついには国家機密のリサーチを任されるまでの信頼を獲得した。 またCIAの諜報員の多くが、高校卒業時には大学進学より軍隊への入隊を選んでいた(私自身は警官としてキャリアを始めた)。 スパイの一団と同席する機会があれば、これまでに一風変わった仕事をした経験はおありですかと、尋ねてみるといい。まちがいなく、意外な答えが返ってくるはずだ。 花屋の店員でした、タクシーの運転手をしていましたよ……。なかにはカウボーイだったという男もいるほどだ。CIAは当人が名門大学出身かどうかよりも、総合的な知能があるかどうか、そしてすばやく問題を解決する能力があるかどうかを重視する。 こうした知能と能力は、ビジネスの世界でも重視されるようになっている。ニュース専門放送局CNBCの先日の調査によれば、スモールビジネス経営者の大半は四年制大学の学位をもっていない。大学に通った経験のない経営者の数は、性別や年齢を問わず、大学に通った経験がある経営者の数より多い。 たしかに教育を受ける機会があるのはすばらしいことだが、卒業証書1枚あれば、経営者として成功できるわけではないのだ。(本原稿は『超一流の諜報員が教えるCIA式 極秘心理術』ジェイソン・ハンソン著、栗木さつき訳の抜粋です)』、「CIAは当人が名門大学出身かどうかよりも、総合的な知能があるかどうか、そしてすばやく問題を解決する能力があるかどうかを重視」、「こうした知能と能力は、ビジネスの世界でも重視されるようになっている」、確かにそんな「知能と能力」を持っていれば、「ビジネスの世界」でも通用しそうだ。
・『「スパイスキル」は「最高のビジネススキル」ーはじめにより  諜報員は、訓練初日から「世界一のセールスパーソン」になる方法を叩き込まれる。ただし、いわゆる商品を売るわけではない。売ろうとしているのは「国家に対する裏切り」だ。この商談成立に失敗すれば、諜報員は殺害されたり、異国の刑務所で余生を送る末路をたどりかねない。 国家を裏切ったことが発覚すれば、反逆罪に問われる。それを相手に売りつけようというのだから一筋縄ではいかない。おまけに反逆が発覚すれば、当人は容赦のない懲罰を受ける。 しかし諜報員は、そのリスクを冒すように仕向ける特別な訓練を受ける。おまけに相手には、自分の意志でそうしたと思わせるのだ。 諜報員は訓練を受け、次のような能力を身に付ける。 + どれほど奇妙で突拍子もない要請をしようと、きわめて短期のうちに、相手に応じさせる自信をもつ。 + 心から信頼できる友だちのように思わせる。秘密、心配事、胸の奥底にある恐怖心などを打ち明けられる、心の拠り所のように思わせる。 + ターゲットのふるまいをさりげなく真似て、同じことに関心をもっているように思わせる。 + 共感し、ターゲットのことを心から案じているように思わせ、信頼を獲得する。 + 大量の情報を分析し、任務遂行の「役に立つもの」と「足を引っ張るもの」の手がかりを得る。 + 厳しい鍛錬を続ける。几帳面で、仕事熱心で、献身的。身体をベストの状態にキープする努力を怠らない。 + 順応性があり、チームに協力する。計画の実行には不測の事態が付き物だが、だからといってミッションを失敗に終わらせることはない。 本書で指南するノウハウを活用すれば、製品、ブランド、会社、アイディアなど、あなたが売りたいものの売り方を変えられる。「一般の人たち」がもっていないスパイの特質は、自信をもって行動し、反応し、順応する能力だ。 CIAの諜報員として訓練を受けてきた私の知見はビジネスの世界でも大いに活用できるうえ、みなさんの日々の生活も改善できると確信している。 これだけはお約束する。巷には「これで自信がもてるようになる!」とか、「自信をもてば、もっと成果をあげられる!」といった謳い文句の自己啓発書があふれている。だが私としては、そうした月並みな本の山に新たな一冊を加えるつもりは毛頭ない。 本書では、あらゆる諜報員が隠しもっている秘密兵器を明かしていく。 それはほかでもない、諜報員の心得(マインドセット)だ。 諜報員のマインドセットとは、好感がもてる雰囲気、共感、自信、知性といった多様な特質の組み合わせだ。このマインドセットを獲得すれば、なんでも楽々とこなせるようになる。 さらに、諜報員のマインドセットにはもうひとつ大きな特徴がある。 「有能なセールスパーソン」として最強の手腕も発揮できるのだ。 あなたがどんな仕事に就いているにせよ、もっと大きな成果をあげ、その成功を継続させるために、ぜひ本書を活用してもらいたい』、「売ろうとしているのは「国家に対する裏切り」だ。この商談成立に失敗すれば、諜報員は殺害されたり、異国の刑務所で余生を送る末路をたどりかねない」、有力なスパイは、捕まっても、相手国とスパイ交換で利用されることもある。「諜報員のマインドセット」を備えていれば、「有能なセールスパーソン」になれそうだ。
・『実用的なノウハウが満載!(本の紹介はリンク先参照)』、私は英国のスパイ小説ファンだが、」最近は東西冷戦の終了で、代わりにテロものなどに移ったようだ。ただ、やはりスケールが小さくなったようだ。

次に、12月25日付けNewsweek日本版が掲載した日本エネルギー経済研究所中東センターの理事・センター長の保坂修司氏による「「アラビアのロレンス」より中東で活躍したジャック・フィルビーと、スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレをつなぐ線」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/hosaka/2020/12/post-38_1.php
・『<ル・カレの小説には、実在した英ソの二重スパイ、キム・フィルビーからのインスピレーションがみられた。だが、話はそこで終わらない。日本で知る人は少ないが、20世紀初頭の中東にはある英国人がおり、サウジが石油王国になるきっかけもその人物だったと言えるかもしれない>  12月12日、英国の小説家、ジョン・ル・カレが亡くなった。89歳だった。個人的には熱烈なファンというわけではないが、自宅の書棚にも『寒い国から帰ってきたスパイ』『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』『スクールボーイ閣下』など何冊も文庫本があった。どれも学生時代に読んだものだ。 ル・カレの本のすぐそばにグレアム・グリーンとかブライアン・フリーマントルなど英国作家が並んでいるところをみると、何となく当時の読書傾向がうかがえる。 いうまでもないが、3人ともスパイ小説の名人であり、しかも、彼らの小説で重要な役回りを果たす登場人物の多くは、イアン・フレミングのジェームズ・ボンドやトム・クランシーのジャック・ライアンのような超人的なスパイと異なり、中年や初老の地味で、さえない連中である。ル・カレのジョージ・スマイリー、グリーンのモーリス・カースル、そしてフリーマントルのチャーリー・マフィン、しかりだ。 3人の英国の著名な小説家に共通するのは、とくに彼らのスパイ小説のなかに、多かれ少なかれ、実在する英国の諜報機関で対外諜報活動を統括するMI6の幹部だったキム・フィルビーから得たインスピレーションの跡がうかがえることだ。 キム・フィルビーは1912年、インドで生まれ、名門パブリック・スクールのウェストミンスター校を経てケンブリッジ大学を卒業した。大学時代にすでに共産主義に傾倒し、ソ連の諜報機関にスパイとしてスカウトされ、ジャーナリストを経験したのち、MI6に入っている。 つまり、フィルビーは英国のスパイであると同時に、ソ連のスパイでもあった。いわゆる二重スパイ、ル・カレの使った用語では「もぐら」である。 当時、ケンブリッジやオックスフォードなど英国の名門大学では共産主義の影響が顕著で、彼らの多くがのちに政府やジャーナリズムなどで主要なポジションを得て、ときにはスパイとしてソ連に情報を提供していた。 フィルビーは、同窓で、外交官のドナルド・マクリーンやガイ・バージェス、美術史家のアンソニー・ブラントらとともに「ケンブリッジ・ファイブ」と呼ばれた。 フィルビーは何度かソ連のスパイではないかと疑われたが、1963年に英国を逃亡し、ソ連に亡命した。ソ連ではKGBで働き、1970年には名誉称号勲章、1980年にはレーニン勲章を授与された。 1988年5月11日、フィルビーはモスクワで亡くなった。キム・フィルビーが忠誠を誓ったソ連は、すでにアフガニスタンへの軍事介入などで屋台骨がガタガタになっており、彼が死んだ数日後に、尾羽うちからしてそのアフガニスタンから撤退を開始した。ソ連の崩壊はその2年半後である』、「キム・フィルビー」も若い頃夢見ていた「ソ連」の実態を見てどう思ったのだろうか。「ル・カレのジョージ・スマイリー、グリーンのモーリス・カースル、そしてフリーマントルのチャーリー・マフィン」、いずれも、私のお気に入りの主人公だ。
・『英国から離れ、後のサウジ初代国王の顧問となった父ジャック  さて、中東ともイスラームとも関係ない話を書いたが、ここからが本題である。 キム・フィルビーがインドで生まれたのは上に述べたが、それは、彼の父親であるジャック・フィルビー(ジャックは通称、本名はハリー・セントジョン〔シンジョン〕・フィルビー)が植民地官僚としてインドに赴任していたからである。 父ジャックも実は1885年にスリランカで生まれ、ウェストミンスター校、ケンブリッジ大学で学んでいる。ケンブリッジでは有名なイラン研究者、エドワード・G・ブラウンのもとでペルシア語等を学び、その後、英国の植民地省に入り、イラクの首都バグダード等に赴任した。 ちなみに、息子のケースと同様、当時の英国のエリート植民地官僚はほとんどが名門パブリック・スクールからオックスフォード・ケンブリッジのコースを辿っており(しかも場合によってはフリーメーソンでもあった)、こうした学閥・人間関係が、ある種、秘密結社的に機能しており、就職や役所等の人事に影響を及ぼしていたといわれている。 20世紀はじめの時代、英国は、オスマン帝国に対するアラブ諸国の反乱を組織しており、彼もその工作の一端に従事しており、アラブ圏を広く回っていた。 当時の英国の中東政策といえば、アラブ人やユダヤ人に矛盾する約束をした、悪名高い三枚舌政策(バルフォア宣言、フセイン・マクマホン書簡、サイクス・ピコ協定)が知られているが、ジャック・フィルビーたちもそれに否応なく巻き込まれていたのである。 しかし、当時の英国は同時に優れた専門家・植民地官僚を数多く輩出しており、ジャックは彼らとの交流を通じて、アラブ世界、とくにアラビア半島やペルシア湾情勢について学んでいった。クウェートやアラビア半島についていくつかの著作を残したハロルド・ディクソンや「砂漠の女王」とも称されたガートルード・ベルなどがそうだ。 とくに、ベルは、年下のジャックをかわいがり、姉が弟に教えるように、アラブ諸国のさまざまな情報やその入手法について教えていた。そして、ジャックはベルに敬意を示した。のちに、ジャックは、サウジアラビアの大砂漠ルブゥルハーリーを横断する大冒険を行うが、これは、ガートルード・ベルのアラビア半島横断に触発されたものといえるだろう。 しかし、英国の対中東政策に不満をもったジャックは英国政府から離れ、当時、急速に領土と影響力を拡大していたサウード家のアブドゥルアジーズ(のちサウジアラビアの初代国王)の顧問となり、ムスリムに改宗している。 実際、彼は1910年代からアブドゥルアジーズと接触、その能力を高く評価し、アラブの統一を成し遂げられるのは彼だと信じるようになっていた。このことも、彼が、ハーシム家(現ヨルダン王室)を支持する英国政府を見限る主たる原因となった。 のちの歴史が語るとおり、結果的にはジャックの主張が正しいことが証明されたわけだ(少なくともハーシム家よりもサウード家により大きな力があるという点では)』、「ジャックは英国政府から離れ、当時、急速に領土と影響力を拡大していたサウード家のアブドゥルアジーズ(のちサウジアラビアの初代国王)の顧問となり、ムスリムに改宗」、「改宗」までしたとは徹底している。英国は「ハーシム家(現ヨルダン王室)を支持」、「サウード家」に食い込めなかったのは手痛い失敗だ。
・『ソ連のスパイであった息子を気にかけ、ベイルートのキムを訪ねた  20世紀初頭の中東で活躍した英国人としてジャック・フィルビーを知る人は、少なくとも日本では一部の専門家を除けば、ほとんどいないはずだ。 しかし、実際にはサウジアラビアがアラビア半島の多くの地域を占領するうえで、彼は重要な役割を果たしており、さらにサウジアラビアが石油大国になるきっかけも彼だったといえるかもしれない。 米国のスタンダード石油カリフォルニア(通称ソーカル、現在のシェブロン)がサウジアラビアで石油利権を獲得するうえで、アブドゥルアジーズとのあいだを取り持ったのがフィルビーであった。1936年、ソーカルは米テキサコ社と組んで、アラビアン・アメリカン石油会社を設立した。現在、世界最大の石油会社であるサウジアラムコである。 日本では映画などで有名になった「アラビアのロレンス」こと、T.E.ロレンスが圧倒的に有名で、少女マンガの主人公にもなっているが、歴史的な重要度でいえば、フィルビーの足元にもおよばない。 ソ連のスパイであった息子のキムのことは当然、気にかけていたであろう。キムはスパイ容疑では何とか逮捕は免れたものの、MI6を退職し、特派員としてレバノンの首都ベイルートで働くようになった(そして二重スパイとしての活動も再開)。このときは当然、父の中東におけるコネが役立ったであろう。 1960年9月、ジャックはベイルートのキムを訪ねていた。連日のパーティー三昧で、楽しい日々を過ごしていた。そこではジャックは、若者たちに囲まれ、上機嫌であった。ある夜も、家に戻る途中にナイトクラブにいくといってきかなかったという。だが、翌日、突然苦しみだした。キムは父を緊急入院させたが、すぐに昏睡状態になってしまった。 ジャックは、一度だけ目を覚ましたものの、一言「退屈だ」といってふたたび意識を失い、二度と目を開けることはなかった。ジャック・フィルビー----アラブ世界ではシェイフ・アブダッラーとして知られる----は1960年9月30日、とても退屈とは思えない波乱の人生に幕を閉じた。 ジャックはベイルートで埋葬され、キムは、父の墓碑に「最高のアラビア探検家」と刻んだという』、「ジャック」、「キム」とも、並外れた人物だったようだ。
タグ:もぐら グレアム・グリーン 二重スパイ 諜報活動 ダイヤモンド・オンライン Newsweek日本版 ブライアン・フリーマントル (スパイ) (その1)(CIAが採用している「スパイたちの意外な前職」とは、「アラビアのロレンス」より中東で活躍したジャック・フィルビーと スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレをつなぐ線、【追悼】元スパイ作家ル・カレに元CIA工作員から愛を込めて) ジェイソン・ハンソン 「CIAが採用している「スパイたちの意外な前職」とは」 「佐藤優氏」が「絶賛」 あらゆる職業や階級の人、さまざまな学歴の人が採用されている CIAは当人が名門大学出身かどうかよりも、総合的な知能があるかどうか、そしてすばやく問題を解決する能力があるかどうかを重視 こうした知能と能力は、ビジネスの世界でも重視されるようになっている スパイスキル」は「最高のビジネススキル」 売ろうとしているのは「国家に対する裏切り」だ。この商談成立に失敗すれば、諜報員は殺害されたり、異国の刑務所で余生を送る末路をたどりかねない 実用的なノウハウが満載! 保坂修司 「「アラビアのロレンス」より中東で活躍したジャック・フィルビーと、スパイ小説の巨匠ジョン・ル・カレをつなぐ線」 ル・カレの小説には、実在した英ソの二重スパイ、キム・フィルビーからのインスピレーションがみられた。だが、話はそこで終わらない。日本で知る人は少ないが、20世紀初頭の中東にはある英国人がおり、サウジが石油王国になるきっかけもその人物だったと言えるかもしれない 登場人物の多くは 超人的なスパイと異なり、中年や初老の地味で、さえない連中である 彼らのスパイ小説のなかに、多かれ少なかれ、実在する英国の諜報機関で対外諜報活動を統括するMI6の幹部だったキム・フィルビーから得たインスピレーションの跡がうかがえる 大学時代にすでに共産主義に傾倒し、ソ連の諜報機関にスパイとしてスカウトされ、ジャーナリストを経験したのち、MI6に入っている キム・フィルビー」も若い頃夢見ていた「ソ連」の実態を見てどう思ったのだろうか 英国から離れ、後のサウジ初代国王の顧問となった父ジャック ジャックは英国政府から離れ、当時、急速に領土と影響力を拡大していたサウード家のアブドゥルアジーズ(のちサウジアラビアの初代国王)の顧問となり、ムスリムに改宗 ソ連のスパイであった息子を気にかけ、ベイルートのキムを訪ねた 「ジャック」、「キム」とも、並外れた人物だったようだ
nice!(0)  コメント(0) 

韓国(文在寅大統領)(その7)(「韓国は詐欺共和国」主要紙に罵倒される文在寅政権 「願望」を「現実」のように語る指導者が招いた再びのコロナ危機、韓国・文大統領が仕掛けた検察改革の危険性 国家情報院の権限も制約 その政治的意図とは) [世界情勢]

韓国(文在寅大統領)については、11月4日に取上げた。今日は、(その7)(「韓国は詐欺共和国」主要紙に罵倒される文在寅政権 「願望」を「現実」のように語る指導者が招いた再びのコロナ危機、韓国・文大統領が仕掛けた検察改革の危険性 国家情報院の権限も制約 その政治的意図とは)である。

先ずは、12月22日付けJBPressが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤 正敏氏による「「韓国は詐欺共和国」主要紙に罵倒される文在寅政権 「願望」を「現実」のように語る指導者が招いた再びのコロナ危機」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63383
・『韓国の主要紙「朝鮮日報」が「我らの在寅がそんなはずない」というコラムを掲載した。極めて歯切れよく、文在寅(ムン・ジェイン)政権の本質を突いている論評なので、まずはその一部を紹介しよう』、タイトルは傑作だ。
・『「我らの大統領がそんなはずない」  「『大韓民国は詐欺共和国』という説は少なくない統計で裏付けられている。国ごとに違いはあるが、世界的に見て最も多く起こる犯罪は窃盗だ。ところが、韓国だけは詐欺犯罪が1位だ」 「金を借りたが返済できなかったり、約束を守らなかったりしても詐欺とは言わない。人を故意にだまして利益を得た時、詐欺だという。大統領は『公正と正義の国を作る』と約束して政権を発足させたが、守られていない。4年過ぎた今、考えてみると、当初から守る考えもないのにああ言ったようだ。大統領は『住宅価格には自信がある』と声高に叫んだが、住宅価格は高騰しており、庶民はため息ばかりついている」 「検察総長(日本の検事総長に相当)に任命状を渡し、『生きている権力に厳正に対処せよ』と言ったのに、権力不正を捜査する検察総長をやり玉に挙げた。過去の為政者たちのどんな口先だけの言葉もかなわない歴史に残る虚言だ」 「世論調査会社・韓国ギャラップの先日の世論調査で、大統領支持率は38%になった。同社の調査は、支持するかどうかを尋ねた後、『なぜそう思うのか、理由を一つだけ挙げてください』という記述式の問いがある。支持者の30%以上は理由を『一生懸命やっている』『全般的にうまくやっている』『分からない』と書いた。いくら考えても、うまくやっていることが見つからないため、支持理由を書けと言われて『一生懸命やっている』としか答えられなかったのだ」 「そんな悲しい回答をしなければならない政権支持者たちを見つつ、20年以上前に詐欺の被害を受けた遠い親族のぼうぜん自失とした表情が頭に浮かんだ。その親族は詐欺師だと発覚した人物に向かって最後まで『あの人がそんなはずない』と言っていた。詐欺の被害者は最後まで詐欺師を信じたがる傾向がある。大統領を支持した人たちもこう言うだろう。『我らのイニ(文大統領の愛称)がそんなはずない』」 国内の主要紙から「我が国は詐欺共和国」と酷評されるというのは、文政権が世論から見放されつつある証拠と見るべきであろう』、「国ごとに違いはあるが、世界的に見て最も多く起こる犯罪は窃盗だ。ところが、韓国だけは詐欺犯罪が1位だ」、初めて知った。
・『「支持率40%回復」をどう読み解くか  文在寅政権の現状を思い浮かべながらこれを読んでみると、「なるほど」と思った。私がテレビに出ている時に一緒に解説していた韓国出身の方は、今でも文在寅氏が40%近い支持を得ていることを尊重すべきだという。私も一般的な指導者についてはそう思う。しかし、前記のコラムを読んでいると、文在寅氏の場合にはそれが当てはまらないのではないかと本当に思えてくるのだ。 ちなみにギャラップによる調査で支持率が38%から40%に回復した際(調査期間:12月15~17日)では、「支持しない」と回答した人は全体の52%(2ポイント低下)であり、「支持する」とした割合をまだ12%も上回っている。 支持の理由について、「ハンギョレ新聞」が報じたところによれば、「新型コロナウイルスへの対応」(29%)や「検察改革」(11%)、「全般的にうまくやっている」(7%)などが挙げられている。 一方で、不支持の理由は、「不動産政策」(20%)や「全般的に不足」(12%)、「新型コロナへの対応の不備」(11%)、「法務部と検察の対立」(8%)だ。 支持と不支持、それぞれの理由を比較してみてどう感じるだろうか。現在の文政権の取り組みの中で、コロナ対策や検察改革の現状を見るに、これらが「うまく行っている」と韓国の国民が本気で評価しているとは到底思えない。実際、コロナ対策や検察問題を不支持の理由に挙げている人も多いのだから。 つまりこういうことだろう。文在寅政権の体質にそもそも問題があり、さらに政策がことごとく失敗していることを多くの国民は感じ始めている。しかし、それでも文在寅氏の岩盤支持層は文在寅氏支持から離脱できない。そのため、無理やり支持の理由を考えている、ということではないだろうか。 妄信的な文在寅大統領への支持は、ある日、国民がはっと目を醒ましたら、一気に雲散霧消する可能性もある。それほど現在の支持率は脆いものと受け止めたほうが良いのかもしれない』、「妄信的な文在寅大統領への支持は、ある日、国民がはっと目を醒ましたら、一気に雲散霧消する可能性もある」、「武藤」氏の希望的観測なのかも知れない。
・『K防疫を過信しすぎてコロナ対策に失敗  文政権は自身の体質の問題、政策の失敗を「K防疫」で隠し続けてきた。昨年秋から今年年頭くらいにかけては、曺国(チョ・グク)前法相のスキャンダルによって、政権に対する信頼も急低下し、4月の総選挙での与党の勝利はかなり微妙になっていた。 そこにコロナがやってきた。当初は感染拡大に手を焼く場面もあったが、その後はPCR検査の大規模な実施、クレジットカードの決済情報や携帯電話の位置情報などによる感染経路の特定、隔離治療などによって封じ込めに成功。一時はこの「K防疫」は国際的にも高く評価された。 そのため、このこと自体をもって、冒頭に紹介した朝鮮日報のコラムのように「大統領による詐欺だ」とは言えないが、政権の体質の問題、政策の問題を「K防疫」で覆い隠そうとすることは、詐欺の一種といえるだろう。加えて「K防疫」を自画自賛し、そこだけに国民の目を向けさせたのは、虚偽宣伝と非難を受けても当然であろう。 というのも、ここにきて韓国では新型コロナの感染が急拡大しているのだ。そのためマスコミでも、「文政権のK防疫成功は誤りだった」との論評が増えている。 文大統領は、新型コロナの問題について楽観的発言を繰り返してきたが、現実にはそのたびに悲観的状況が広がっていた。コロナは「遠からず終息する。K防疫は模範事例」という言葉を何度も繰り返した。最近も「長いトンネルの先が見える」と述べていたが、実際はどうかと言えば、12月15日以降、5日連続で一日の感染者が1000人を突破。第1波当時を大きく上回る感染者を日々記録している。「トンネルの先が見える」は文大統領特有の虚偽宣伝であろう。 病床確保も問題になってきた。17日の「中央日報」はソウル市で新型コロナ感染者が空き病床を待つ間に死亡する事例が発生したと報じた。この感染者は病状が急速に悪化したため、保健所を通じて2回もソウル市に緊急病床の配分を要請したのだが、結局ベッドは用意されず、自宅で亡くなっているのが発見された。 ソウル市の医療体制はそれほど逼迫している。 16日午後8時の時点でソウル市の感染専門病院の病床稼働率は86.1%。重症患者治療用の病床は計80で、使用中の病床は79、入院可能な病床は1床だけである。ソウル市は急遽専門病院を年末までに5カ所追加で指定するというが、対応の遅れは否定できない。文大統領は、これでも「K防疫の成功」を主張するつもりだろうか』、「ソウル市の医療体制はそれほど逼迫している」にも拘わらず、「「K防疫の成功」を主張」するとは、さすが「詐欺犯罪が1位」の国だけある。
・『ワクチン確保に失敗したことを謝罪しない文在寅  文大統領は10月、就任3年を迎えた際に行った演説で「K防疫が世界の標準になった」と胸を張ったが、今般の感染者急増で、大量の検査・疫学調査・隔離治療を中心とするK防疫は医療体制に負担をかけているという批判も相次いでいるようである。 もう一つ、批判が高まっているのが「ワクチン確保の遅れ」についてだ。 文大統領は12月9日、首都圏の防疫状況を点検するための会議で、「わが国にワクチンが入ってくるまでに外国で多くの接種事例が蓄積されるため、効果や副作用などを十分にモニタリングして、迅速に接種が始められるよう計画を前倒しして準備してほしい」と述べた。まるでワクチン確保が遅れたのは、政府がワクチンの安全性に慎重な姿勢で臨んでいるからだと言い訳しているように聞こえる。 18日、韓国政府は、4400万人分の海外製ワクチンを確保したと発表したが、購入契約を終えたのはアストラゼネカの1000万人分だけだという。それも導入時期さえ契約書に明記されていない。ファイザーなど製薬3社とはいつ契約できるか不透明な状況のようである。 丁世均(チョン・セギュン)首相はアストラゼネカのワクチンについて「早ければ2月」に接種が始まるとしているが、安全性検証が長期化すれば、実際のワクチン導入はそれよりさらに遅れる可能性が指摘されている。文政権はワクチン確保の問題について国民に真実を伝えているとは言えない状況だ。 ワクチン確保にこれだけ遅れた原因について丁首相はこう述べた。 「(ワクチン購入交渉に乗り出した)7月には国内の確定患者が100人程度であったため、ワクチンへの依存度を高めることを想定できなかった面がある」 「K防疫」の成功に慢心してしまい、その後の備えのために必要な手を打たなかったということだ。この失態に関して、文大統領は自らの責任をまだ認めていない。 この間、韓国政府は何をしていたのか。国内状況が安定的に維持されるだろうと判断し、来年登場する国産ワクチンと治療剤だけを頼りにしたのが実態であるという。文大統領自ら「K防疫に続きKバイオが我々にとってもう一度希望と誇りになるだろうと信じている」などと語っていたのだ。 文大統領の発言には、希望や期待と現実の間に乖離があることは日常茶飯事である。しかし、国民にとって最も緊急で重要な問題にこうした「虚言」を弄するのはもはや「詐欺」と言わざるを得まい。 文政権はコロナが急拡大する中でも対応を変えなかった。感染の急拡大に伴い、世論の批判も高まる中で慌てている』、「国内状況が安定的に維持されるだろうと判断し、来年登場する国産ワクチンと治療剤だけを頼りにしたのが実態」、とは致命的な判断ミスだ。
・『目に余る「強引な国会運営」  文政権は、一時的な「K防疫の成功」で、4月の総選挙で圧倒的な勝利を収め、その数をもって国会で強制採決を繰り返し、「公正と正義の国を作る」という文大統領の以前の発言とは真っ向から対立する「非民主的な国会」を作り上げてしまった。 その因果だろうが、文大統領の支持率が急落した。朝鮮日報が指摘するところによれば、これに慌てた与党は12月初めに、「支持層を再結集し、多くの国民と対決する粗悪な陣営政治」を解消することを解決策に挙げたという。要するに、支持率下落の原因を読み間違えているというのだ。 文陣営では、支持率の下落が、「公捜処(高位公職者犯罪捜査処)設置を強行し、尹錫悦(ユン・ソクヨル)検事総長を攻撃せよ」というシグナルと解釈したのだという。 <今なお総選挙での勝利に酔い、「『180議席を与えたのに、今何をやっているのか』と民心が叱責している」との錯覚に陥っている。民心についての深刻な誤読だ>(12月20日付・朝鮮日報) 民心の誤読は公捜処や尹検事総長に関することだけではない。「不動産政策」「コロナへの対応」「経済・民生問題への対応」など政策面での失敗が支持率急落の原因であることも認めようとしていない。さらに「法務部と検察の対立」「対北朝鮮ビラ散布禁止法」などで強引な立法措置を続けたことが文政権への不支持を増やしていることにも気づいていない。 米国は韓国政府が強引に国会を通した「対北朝鮮ビラ散布禁止法」を批判し、来年早々米議会で聴聞会を開催するといった。また、トマス・オヘア・キンタナ国連北朝鮮人権状況特別報告者が「民主的機関が適切な手続きにより改正法を見直すことを勧告する」とメディアとのインタビューで語った。 これに対し韓国統一部は「国会で憲法と法律が定めた手続きにより法律を改正したことに対してこのような言及が出て遺憾」と反論した。 しかし、この法律は野党が大反対する中、強引な多数決原理で成立したものである。また、この改正の目的として「多数の境界地域の国民の生命安全保護のために」と言っているが、現実には金正恩氏の妹の金与正氏の恫喝にしり込みしたものである。 文政権の国際社会に向けた発信もこのように欺瞞に満ちている。 今の韓国国内政治は、「自分たち与党はすべて正しい、野党はすべて間違っている」との前提から出発しているのが実情だ。そうでなければ、国会でまともに審議もせずに自らの政策を通すことなど考えられない。これが「公正と正義の国」なのか』、「野党が大反対する中、強引な多数決原理で成立」、日本の自民党政治とも類似している。
・『「公正と正義の国を作る」との発言こそ最大の詐欺  「曺国黒書」と呼ばれる政権批判の書『一度も経験したことのない国』は、ジャーナリスト、弁護士、会計士ら5人の著者によるベストセラーだが、さすがにこの著者たちの指摘は厳しい。同書の10万部突破を記念して開かれたオンラインイベントでも「現政権では民主主義が事実上蒸発した」と嘆いている。 著者の一人、陳重権(チン・ジュングォン)元東洋大学教授は「今の政権の人たちが信じる民主主義と、我々が知っている民主主義は言葉は同じだが、その内容は違う」、「今の政権の人間たちは運動圏(左派の市民学生運動勢力)的な民衆民主主義の観念を持っており、民主主義を単なる多数決と考え、自分たちの考えを少数に強要し、それが善であると錯覚している」と指摘。 壇国大学医学部の徐珉(ソ・ミン)教授は、「今の政権のすべてを示すのが尹美香(ユン・ミヒャン)議員だ」、「かつての政権であれば、とっくの昔に追い出されていたはずだが、現政権では尹美香氏は今も国会議員をしている。このことが、現政権がいかなる政権か示していると思う」と述べている。 慰安婦支援運動の中心にいた尹美香氏は、寄り添っていたはずの元慰安婦からそっぽを向かれ、厳しい批判に晒されている。言うなれば尹美香氏は、元慰安婦に対し最大の詐欺を働いたと言うことができよう。その人が国会議員を続けている。大統領や与党は、彼女を一生懸命擁護している。公正も正義もあったものではない。韓国国民はそれをどのように考えているのだろうか』、「元慰安婦に対し最大の詐欺を働いた」「尹美香氏」が、いまだに「国会議員を続けている」というのにも驚かされた。さすが「詐欺犯罪が1位」の面目躍如だ。

次に、12月24日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「韓国・文大統領が仕掛けた検察改革の危険性 国家情報院の権限も制約、その政治的意図とは」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/398679
・『12月に入って韓国の国会で国の根幹を揺るがすような重要な法律が次々と成立している。文在寅大統領はこれらを「権力機関改革三法」と呼び自画自賛しているが、その内容をみると、韓国という国家が向かっている方向性に危うさを覚える。 成立した法律の一つは「高位公職者犯罪捜査処法」(以下「公捜処」)だ。名前の通り、大統領をはじめ政府高官らの不正を捜査する独立機関の設置を定めている。既存の検察組織が政府高官らを勝手に捜査しないよう、捜査権を公捜処に移してしまう。 ところが公捜処の長は大統領が任命するとされているため、大統領はこの人事権を使って自分や側近らに都合の悪い捜査を実質的に止めてしまうことができる』、「高位公職者犯罪捜査処法」は「長は大統領が任命するとされているため、大統領はこの人事権を使って自分や側近らに都合の悪い捜査を実質的に止めてしまうことができる」、みえみえの悪法だ。
・『法相と検事総長が激しく対立  残る2つは「改正国家情報院法」と「改正警察庁法」で、北朝鮮絡みの事件や国内のスパイ事件などの捜査権を国家情報院から警察に移す。その結果、国情院が専門とする北朝鮮についての情報収集も大きく制約されることになる。南北関係改善に力を入れる文大統領にとって、国情院が大きな障害になっていると考えたうえでの改正のようだ。 この他にも北朝鮮を批判するビラを風船などで散布することを禁じる「改正南北関係発展法」も成立した。北朝鮮に批判的な脱北者らの団体が風船を使い、金正恩体制を批判するビラを北朝鮮に飛ばしたことに北朝鮮が激しく反発。それを受けての対応だ。保守勢力は「北の脅しに屈した」と批判するが、韓国政府は「国境付近の韓国住民の生命を守るため」と強調している。 新法の成立だけではない。同時進行で政権内では秋美愛(チュミエ)法相と尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長の対立がすさまじい様相を呈している。刑事事件捜査に積極的と言われる尹総長が文政権の中枢や与党関係者の捜査を始めると、秋法相がそれを抑え込もうとし、尹総長が対抗措置を打つ。秋法相はとうとう、検事総長に対する懲戒処分を決定し、それに尹総長が異議を唱えるなど混乱が続いているのだ。 法律の内容から想像できる通り、文大統領は検察と国情院という組織を徹底的に嫌っている。それには長い歴史的背景がある。 文大統領は2019年2月、政府の会議で検察について次のように語っている。 「日本帝国の強占期(強制的に占領した時期)、検事と検察は日本帝国の強圧と植民地統治を下支えする機関だった。独立運動家を弾圧し、国民の考えと思想まで監視し、統制した。われわれはゆがんだ権力機関の姿を完全に捨て去らなければならない」 そして、今回の改革関連法成立後には、「民主主義の長年の宿願だった権力機関改革の制度化がいよいよ完成された」「検察はこれまで聖域であり、全能の権限を持っていた。公捜処は検察に対する民主的統制手段である」と述べた』、「文大統領は検察と国情院という組織を徹底的に嫌っている。それには長い歴史的背景がある」、文政権の「検事総長」に対する職務停止命令は、裁判所により24日付けで無効となった。
・『検察組織は「権力の侍女」  韓国は1987年に民主化し、独裁政権時代に圧倒的な権力を振り回していた陸軍を中心とする軍部の力は完全に消えた。ところが、検察と国情院(かつては大韓民国中央情報部=KCIAと呼ばれていた)の2つの組織は形を変えながら今も力を維持したまま残っている。 文大統領の言葉に示されているように、進歩派勢力にとって検察組織は保守政権の「権力の侍女」であり、かつて自分たちを弾圧してきた組織である。そして、民主化後も国民の手の届かない権力組織として生き残り、歴代政権の命運を左右してきた。特に文大統領は、師と仰ぐ廬武鉉・元大統領が大統領退任後、検察の厳しい捜査によって自殺に追い込まれた経験があり、検察にことさら厳しい見方をしている。 一方の国情院の前身は朴正煕政権時代の悪名高いKCIAであり、民主化活動家ら反政府勢力を厳しく取り締まり、命まで奪ってきた組織だ。いまは対北の諜報活動などを行い、北朝鮮の脅威を強調する組織である。したがって南北関係の改善を重視する文大統領にとっては、政権の足を引っ張る組織でしかない。 つまり、進歩勢力から見れば、検察と国情院は、韓国の民主化実現までの独裁体制を支えた組織であり、民主化後もそのまま残り、今度は保守勢力を支える組織となっている。当然、文大統領のいう「積弊清算」の代表的な対象となる。 ろうそくデモによって幅広い国民の支持を得て政権を獲得した文大統領にすれば、こうした積弊を解消し、保守勢力を弱体化させ、進歩勢力=民主勢力が政権を維持する「永久政権論」は当然のことであり、正義であるということになる。 しかし、事はそう単純ではない。 韓国では民主化後、保守派、進歩派を問わず、歴代大統領は全員、本人あるいは家族が逮捕されたり自殺するなど悲劇的な運命をたどっている。検察の捜査対象は表面的にはいずれか一方に偏っているわけではない。 秋法相と対立している現在の尹総長も、保守勢力の李明博、朴槿恵大統領に対する捜査を積極的に進め、「積弊清算に貢献した」として文大統領自身が検事総長に抜擢した人物だ。その尹総長が現政権関係者の捜査に乗り出した途端、政権は一転して尹総長の排除に血道をあげている』、「文政権」も「尹総長」に対する姿勢の急変はずいぶん勝手なようだ。
・『検察の民主的統制をどう担保するか  気に入らない捜査を進める検事総長を排除する政権が、捜査の指揮権を握る公捜処を手に入れた時、はたして政治的中立性を担保した捜査を期待できるだろうか。 大統領がトップを任命する組織が高位公職者だけを捜査するという仕組み自体に、大統領の言う民主的統制との間でそもそも矛盾がある。 検察組織の民主的統制はどの国にとっても重い課題である。そのためには捜査の政治的中立性を確保し、人事が政治から独立し、自律性を持っていることなどが必要となる。そのうえで地道に実績を積み重ねることで、権力の不正を公平、公正に摘発する機関として国民に支持され、信頼されていく。 にもかかわらず、公捜処にはこうした政治的中立性や自律性を担保する仕組みが備わっていない。 文大統領に言わせると、国民に選ばれた自分たちが検察の権力を弱め、統制するのであるから、国民の望む正義が実現できるというであろうが、これはあまりにも自己中心的すぎる。このままでは公捜処が進歩勢力にとっての「権力の侍女」になりかねない。 さらに仮に政権交代して保守勢力が権力を握ったときには、公捜処が進歩勢力を弾圧するための道具になってしまう可能性さえ秘めている。 国情院の改革についても疑問がある』、安部政権も検事総長の定年延長問題が問題化、結局は当の検事総長の賭けマージャン問題で、辞任追い込まれたように、検事総長に政権が影響力を及ぼそうとする誘因は強いようだ。
・『独裁時代と変わらぬ政治手法  改革によって北朝鮮に対する韓国の情報収集力などが格段に落ちる可能性が指摘されている。北朝鮮は核兵器やミサイルの開発を継続しており、韓国だけでなく、日本やアメリカなどの関係国にとって軍事的脅威である。この現実を文政権はどう認識しているのであろうか。 南北関係改善を重視することは選択肢の1つであるだろう。だからといって厳しい安保環境を脇においてしまうことは、韓国のみならず日本を含む北東アジア、さらには世界にとっても危険なことである。 文大統領の権力機関改革がこのようにさまざまな矛盾や問題を抱えている最大の原因は、改革の目的が純粋に政策的なものではなく、保守勢力を否定し、弱体化するという極めて政治的なものであることにある。こうした政治的目的を達成するために、国家にとって極めて重要な司法制度や安全保障政策を動員してしまった。その手法は進歩勢力が批判する独裁体制時代の政権と変わるところがない。 その結果、司法制度の政治的中立性がゆがみ、国民の信頼がゆらぐ。また、安全保障政策上のリスクが高まる可能性がある。さらには保守と進歩の対立が一層激化し、社会の分断が深刻化するであろう』、「最大の原因は、改革の目的が純粋に政策的なものではなく、保守勢力を否定し、弱体化するという極めて政治的なものであることにある。こうした政治的目的を達成するために、国家にとって極めて重要な司法制度や安全保障政策を動員してしまった」、全く飛んでもないような政策割当だ。党派色を離れて、もっと冷静に議論できないものなのだろうか。
タグ:韓国 東洋経済オンライン JBPRESS 薬師寺 克行 武藤 正敏 (文在寅大統領) (その7)(「韓国は詐欺共和国」主要紙に罵倒される文在寅政権 「願望」を「現実」のように語る指導者が招いた再びのコロナ危機、韓国・文大統領が仕掛けた検察改革の危険性 国家情報院の権限も制約 その政治的意図とは) 「「韓国は詐欺共和国」主要紙に罵倒される文在寅政権 「願望」を「現実」のように語る指導者が招いた再びのコロナ危機」 「朝鮮日報」が「我らの在寅がそんなはずない」というコラムを掲載 「我らの大統領がそんなはずない」 国ごとに違いはあるが、世界的に見て最も多く起こる犯罪は窃盗だ。ところが、韓国だけは詐欺犯罪が1位だ 「支持率40%回復」をどう読み解くか 妄信的な文在寅大統領への支持は、ある日、国民がはっと目を醒ましたら、一気に雲散霧消する可能性もある K防疫を過信しすぎてコロナ対策に失敗 「ソウル市の医療体制はそれほど逼迫している」 「「K防疫の成功」を主張」するとは、さすが「詐欺犯罪が1位」の国だけある ワクチン確保に失敗したことを謝罪しない文在寅 国内状況が安定的に維持されるだろうと判断し、来年登場する国産ワクチンと治療剤だけを頼りにしたのが実態」、とは致命的な判断ミスだ 目に余る「強引な国会運営」 「野党が大反対する中、強引な多数決原理で成立」、日本の自民党政治とも類似 「公正と正義の国を作る」との発言こそ最大の詐欺 「元慰安婦に対し最大の詐欺を働いた」「尹美香氏」が、いまだに「国会議員を続けている」というのにも驚かされた。さすが「詐欺犯罪が1位」の面目躍如だ 「韓国・文大統領が仕掛けた検察改革の危険性 国家情報院の権限も制約、その政治的意図とは」 「高位公職者犯罪捜査処法」は「長は大統領が任命するとされているため、大統領はこの人事権を使って自分や側近らに都合の悪い捜査を実質的に止めてしまうことができる」、みえみえの悪法だ 法相と検事総長が激しく対立 文政権の「検事総長」に対する職務停止命令は、裁判所により24日付けで無効となった 検察組織は「権力の侍女」 検察の民主的統制をどう担保するか 独裁時代と変わらぬ政治手法 最大の原因は、改革の目的が純粋に政策的なものではなく、保守勢力を否定し、弱体化するという極めて政治的なものであることにある。こうした政治的目的を達成するために、国家にとって極めて重要な司法制度や安全保障政策を動員してしまった 全く飛んでもないような政策割当だ。党派色を離れて、もっと冷静に議論できないものなのだろうか
nice!(0)  コメント(0) 

中国情勢(軍事・外交)(その10)(こんなに危うい中国の前のめり「ワクチン外交」 衛生領域のシルクロードで新たな世界秩序構築を目論む中国、オーストラリアの島を買って住民の立ち入りを禁じた中国企業に怨嗟の声、中国を封じ込める「海の長城」構築が始まった) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、10月28日に取上げた。今日は、(その10)(こんなに危うい中国の前のめり「ワクチン外交」 衛生領域のシルクロードで新たな世界秩序構築を目論む中国、オーストラリアの島を買って住民の立ち入りを禁じた中国企業に怨嗟の声、中国を封じ込める「海の長城」構築が始まった)である。

先ずは、12月10日付けJBPressが掲載した元産経新聞北京特派員でジャーナリストの福島 香織氏による「こんなに危うい中国の前のめり「ワクチン外交」 衛生領域のシルクロードで新たな世界秩序構築を目論む中国」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/63219
・『新型コロナウイルスワクチンの接種が英国でいよいよ始まった。米ファイザーと独ビオンテックの開発したワクチンで、最初の接種者は90歳の女性だった。アメリカでも年内に接種が開始される見通しだという。ロシアでも「スプートニクV」の大規模接種が始まっており、中国シノバック・バイオテック製ワクチンもインドネシアでの大規模接種にむけて第1便の120万回分が到着したことが報じられている。 ワクチン接種が始まったことは、コロナ禍にあえぐ各国にとってとりあえず朗報ではあるが、やはり気になるのは、世界のコロナワクチン市場をどこの国が制するか、ということだろう。なぜならコロナをワクチンによって制した国が、ポストコロナの国際社会のルールメーカーになる可能性があるとみられているからだ。 気になるのは、やはり中国だ。中国のシノファーム傘下のシノバック・バイオテックなどが開発する不活化ワクチンは、マイナス70度以下という厳しい温度管理が必要なファイザー製などと違い、2~8度の温度での輸送が可能なため通常のコールドサプライチェーンを利用でき、途上国でも取り扱いやすい。しかも年内に6億回分のワクチンを承認する予定であり、その流通性と量産で世界の途上国市場を圧倒しそうな勢いだ。 だが世界は、本当に中国製ワクチンに依存してよいのだろうか』、「中国製ワクチン」は「2~8度の温度での輸送が可能なため通常のコールドサプライチェーンを利用でき、途上国でも取り扱いやすい」、「途上国」にとっては魅力的だ。
・『年内に6億回分のワクチンを市場に供給  中国の王毅外相は、習近平国家主席の名代として出席した12月3日の新型コロナ対応の特別国連総会の場で、「中国が新型コロナワクチンを積極的に途上国に提供し、主要な大国としての影響力を発揮する」と強調した。中国は年内に6億回分の新型コロナワクチンを市場に供給することを12月4日に当局者が明らかにしている。要は、中国のワクチン外交宣言である。 中国の孫春蘭副首相は12月2日に北京の新型コロナウイルスワクチン研究開発生準備工作の会合の場で、今年(2020年)中に空港や港湾の職員および第一線の監督管理人員などハイリスクに分類される職業から緊急使用を認めていく、としている。軍や医療関係者にはすでに投与が始まっている。 中国工程院の王軍志院士によれば「中国の不活化ワクチンの主な特性は天然ウイルスの構造と最も近く、注射後の人体の免疫反応が比較的強く、安全性もコントロール可能」という。ファイザーやモデルナのワクチンはマイナス70度やマイナス20度といった非常に低温での厳密な温度管理が必要だが、中国の不活化ワクチンは2~8度での輸送が可能で、通常のクール便で問題ないほど手軽だ、と主張していた。 米ニューズウィーク誌サイト(12月4日付)によれば、トルコは12月後半から中国製ワクチンの接種を開始する予定である。一部南米国家でも数カ月内に中国製ワクチンの接種を開始するという。また、モロッコでは年内に国内8割の成人に中国製ワクチンを投与する準備を進めている。 さらにアラブ首長国連邦も12月9日に、正式にシノバックの不活化ワクチンを導入することを表明。同国ではシノバック・ワクチンの第3期治験を実施していたが、その結果として86%の有効性が確認されたという。明らかな副作用もなく安全性も保障された、とした。すでに閣僚たちはこのワクチンの接種を受けている』、「中国のワクチン外交宣言」とは本音丸出しだ。
・『中国製ワクチンの効果に疑問符も  一方で、中国製ワクチンに対して、中国人自身が根深い不信感を抱いていることも確かだ。たとえばウガンダの中国大使館によれば、現地のインド企業が請け負っている建設プロジェクトに従事している中国従業員47人が新型コロナ肺炎検査で陽性を示していた。このうち一部の患者は発熱、咳、倦怠感、下痢などの症状が出ている。台湾紙自由時報によれば、この47人はすでに中国製ワクチンを接種していたはずだという。だとするとワクチンの効果はなかった、ということになる。 中国の公式報道によれば、シノバックのワクチンは、海外に出国した中国人労働者に6月から優先的に投与されていた。特に中央機関直属の労務従事者およそ5.6万人には接種済みと発表されている。ウガンダのプロジェクトの従業員も当然接種済のはずだという。中国側はこの点について正式に確認はしていない。 また10月にブラジルで行われていたシノバック製ワクチンの治験が、治験者の深刻な不良反応を引き起こし死亡したという理由で一時中断されたこともあった。中国側は、この不良反応とワクチンの安全性は無関係であると主張しており、ブラジルの治験中断は多分に政治的判断である、としている。 医学誌「ランセット」に寄稿された治験結果によれば、シノバックのワクチンは1回目の接種から28日以内に新型コロナウイルスへの抗体を作り出したが、その抗体レベルは新型コロナに感染したことがある人より低い、とあり、レベルが不十分ではないか、という見方もある』、「中国側は・・・ブラジルの治験中断は多分に政治的判断である、としている」、ボルソナロ大統領が「政治的判断」をするというのは、考え難く、やはり安全性の問題なのではなかろうか。
・『ワクチンメーカー康泰生物のスキャンダル  中国のワクチンに対するネガティブなイメージは、中国の製薬業界の伝統的な不透明さのせいもある。たとえば深センの大手ワクチンメーカー、康泰生物の会長、杜偉民にまつわるスキャンダルである。 ニューヨーク・タイムズ(12月7日付)が改めて特集していた。康泰生物は自社独自で新型コロナワクチン開発を行うと同時に、英アストラゼネカ開発の新型コロナワクチン2億回分の中国国内製造を請け負うことになっている。 だが、康泰生物と杜偉民はかねてからワクチン利権の中心としてスキャンダルにまみれ、2013年に、康泰製のB型肝炎ワクチン接種後に17人の乳幼児が死んだ事件も引き起こしている。ワクチンと乳幼児の死の因果関係は科学的に証明されていないが、それは父母ら批判的言論を行う人々に当局が圧力をかけて世論をコントロールしたからだとみられており、中国社会における杜偉民とワクチンメーカーに対する不信感はずっとくすぶり続けている。 ちなみに杜偉民が関わったワクチンによる健康被害事件は2010年にも起きている。狂犬病ワクチン18万人分について効果がないことが監督管理機関の調べで分かり、大きく告知されたのだが、このワクチンを生産した当時の製薬企業は杜偉民の所有企業だった。杜偉民はこのスキャンダルから逃げるために、問題の製薬企業株を別の製薬企業に譲渡した、という。 また同じ年に、康泰製のB型肝炎ワクチンを接種した広東省の小学生数十人が嘔吐、頭痛などを訴える事件もあった。当局はこれを「集団性心因反応」とし、ワクチンの品質が原因だとはしなかった。だがその3年後に康泰製B型肝炎ワクチンを接種した乳幼児の集団死亡事件があり、庶民の心象としてはワクチンの品質が怪しい、とみている。だが、当局も報道も、ワクチンに問題があったとはせず、ワクチンに問題があるとして訴え続けた保護者や記者、学者らは、「挑発罪」「秩序擾乱罪」などの容疑で逮捕されたりデマ拡散や名誉棄損などで逆に訴えられたりして、沈黙させられた。 杜偉民は2016年に自社のワクチンの承認を早期に得るために関連部門の官僚に賄賂を贈り、その官僚は収賄罪で有罪判決を受けた。しかし、杜偉民自身は起訴されていない。ニューヨーク・タイムズもその真の理由については触れていないが、杜偉民が特別な背景を持つ人物であるとみられている。ちなみに出身は江西省の貧農の出で、苦学して衛生専門学校で学び、地元衛生官僚になったあと、改革開放の波に乗って「下海(官僚をやめて起業)」し、中国ワクチン業界のドンとなっていたことは、メディアなどでも報じられている。 これだけスキャンダルにまみれているにもかかわらず、康泰生物は、ビル・ゲイツ財団の元中国担当責任者の葉雷氏から「中国最先端のワクチン企業の1つ」と絶賛され、新型コロナワクチンでも不活化ワクチンを開発、9月には臨床に入っている。同時に、英アストラゼネカ製ワクチンの生産も請け負うことになり、深セン市政府から2万平方メートルの土地を譲渡され、新型コロナワクチン用の新しい生産工場を建設している』、「当局も報道も、ワクチンに問題があったとはせず、ワクチンに問題があるとして訴え続けた保護者や記者、学者らは、「挑発罪」「秩序擾乱罪」などの容疑で逮捕されたりデマ拡散や名誉棄損などで逆に訴えられたりして、沈黙させられた」、やはり報道の自由がない中国では、問題を隠蔽され易いようだ。
・『中国のワクチン外交に対抗せよ  こうした問題を、中国の製薬会社の地元政府との癒着体質、という一言で受け流していいのだろうか。中国製ワクチンが中国国内で使われるだけであれば、それは中国の内政問題だが、新型コロナワクチンは世界中で使用される。しかも、世界のワクチン市場をどこの国のワクチンが制するかによって、国際社会の枠組みも影響を受けることになる。 南ドイツ新聞は「中国のワクチン外交」というタイトルで次のような論評を掲載している。 「中国は各国にマスク外交を展開し、ウイルスの起源(が中国だという)議論を封じ込めようとした。現在はワクチン外交を展開中で、その目的は単なる象徴的な勝利を獲得することだけではない。今後、何カ月後かに、中国が将来的にどのような世界を想像しているかはっきりと見えてくるだろう。南米とカリブ海諸国はすでに北京から十数億ドルの借金をして中国のワクチンを購入することにしている。メキシコも3500回分のワクチン代金を支払い、ブラジル衛生相はあちこちに頭を下げまわって中国のワクチンに対する不信を打ち消そうとしている。すでに多くのアジア諸国が北京からワクチンを購入したいという意向を伝え、少なくとも16カ国が中国ワクチンの臨床試験計画に参加している。ワクチン戦略は中国指導者に言わせれば衛生領域の“シルクロード”だ」 つまり、中国が目論んでいるのは衛生版シルクロード構想、ワクチン一帯一路戦略である。中国に従順な国には優先的にワクチンを供与し、中国がゲームのルールを作る。WHOが中国に従順になってしまったように、中国からワクチンを与えらえた国々が皆、中国に従順になってしまう、という予測があると南ドイツ新聞は論じる。 民主主義国が、こうした中国のワクチン外交に対抗するために、合理的な価格で途上国でも扱いやすいワクチンを開発できなければ、結局世界の大半は中国ワクチンの生産量に高度に依存する羽目になってしまう。こうして中国は新たな政治秩序を打ち立てようと考えているのだ、という。 こんな状況を考えると、ワクチン実用化をただ、ただ喜ぶわけにはいかないだろう。日本は来年の東京五輪を実現するためになんとしてもワクチンを確保したいと考えているところだろうが、ここで中国製ワクチンに頼ろうとすることだけは避けてほしいと思う。 それよりも、日本は少し遅れてでも、やはり自前のワクチン開発を成功させなければならない。それは自国民の健康と安全のためだけでなく、ポストコロナの世界秩序にも影響するのだという意識も必要だ』、「南米とカリブ海諸国はすでに北京から十数億ドルの借金をして中国のワクチンを購入することにしている。メキシコも3500回分のワクチン代金を支払い・・・すでに多くのアジア諸国が北京からワクチンを購入したいという意向を伝え、少なくとも16カ国が中国ワクチンの臨床試験計画に参加」、「ワクチン外交」はタダではなく、しっかり「代金」を取ったり、「ツケ」払いで「借金」させているようだ。

次に、12月2日付けNewsweek日本版「オーストラリアの島を買って住民の立ち入りを禁じた中国企業に怨嗟の声」を紹介しよう』、どういうことだろう。
・『<楽園のような島を買ってビーチや滑走路へのアクセスさえ禁じたのは、中国人専用の観光地にするためか?>  オーストラリアの島の土地を買い上げた中国の不動産開発業者が、オーストラリア人の立ち入りを禁じて、地元住民や観光客が不満を募らせている。 問題のケズウィック島は、人気の観光スポットとなる可能性を秘めた島だが、チャイナ・ブルームという企業がその一部を買った。島の住民は、同社が楽園のようなこの島の一部地域への立ち入りを禁じていると訴えている。住民によればチャイナ・ブルームは、住民のビーチへの立ち入りや、ボートでの着岸を禁止。滑走路へのアクセスまでも禁じたという。 島に住む複数の家族はさらに、チャイナ・ブルームはこの島の観光業を死に追いやろうとしていると訴える。住民が所有する物件をAirbnbで観光客に貸し出したり宣伝したりすることも禁じられたというのだ。 「彼らは、オーストラリア人を島から追い出したいのだと思う」と、元住民のジュリー・ウィリスは、オーストラリアのニュース番組「カレント・アフェア」に語った。「彼らはこの島を、中国人向け観光専用の島として使いたいのだろう」』、「島の一部を買った」だけなのに、「チャイナ・ブルームは、住民のビーチへの立ち入りや、ボートでの着岸を禁止。滑走路へのアクセスまでも禁じたという」、こんな勝手なことが許されるのだろうか。
・『インフラ投資を歓迎する当局  ウィリスとパートナーのロバート・リーによると、2人が抱えた問題はさらに深刻だったという。というのも、2人は2月になって、それまで6年間にわたって借りていた不動産から3日以内に退去するようチャイナ・ブルームから言い渡されたからだ。2人は物件を購入しようとしたが、チャイナ・ブルームから、物件に不具合が生じた場合の修理にあてる費用として、保証金10万オーストラリアドル(約770万円)を要求された。 ウィリスはこう語る。「彼ら(チャイナ・ブルーム)は、私たちが物件を買うのをあきらめるよう仕向けていたのだと思う。私たちにここにいて欲しくないのだ」 ケズウィック島は、ウィットサンデー諸島に属する島の1つで、オーストラリア北東部にあるクイーンズランド州の海岸線の中ほどの沖合に位置する。 ケズウィック島の大部分は国立公園に指定されている。クイーンズランド州資源局の広報担当者は、チャイナ・ブルームと住民の間に存在するいかなる問題も、解決されることを望んでいると述べた。 広報担当者は、チャイナ・ブルームが道路やボート用のスロープ、桟橋や港湾関連など島のインフラ改善に取り組んでいる点にも留意する必要があると指摘。少数の住民が申し立てている問題の大半は当事者同士で解決されるべき問題だと語った。 中国とオーストラリアの間では最近緊張が高まっている。中国政府当局者が、オーストラリア軍の兵士がアフガニスタン人の子どもを殺そうとしているように見える偽画像をツイートした件では、オーストラリア政府が中国政府に謝罪を要求している。 オーストラリアは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生源に関する調査を要求する動きの先頭に立っているほか、中国政府によるオーストラリアへの内政干渉にも神経をとがらせており、両国の関係は悪化の一途をたどっている』、「州資源局の広報担当者は、チャイナ・ブルームが道路やボート用のスロープ、桟橋や港湾関連など島のインフラ改善に取り組んでいる点にも留意する必要があると指摘」、地方自治体にとっては、「インフラ投資を歓迎」なのだろうが、「オーストラリア政府」は地方自治体の行き過ぎに目を光らせるようだ。

第三に、12月16日付けNewsweek日本版が掲載した 中国出身で日本に帰化した評論家の石平氏による「中国を封じ込める「海の長城」構築が始まった」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/sekihei/2020/12/post-13_1.php
・『<今年10月からのわずか2カ月あまりの間に、人権と安全保障をめぐる西側先進国による対中包囲網の構築が本格化した。地政学的な大変動が東アジアで起き始めている> 今年の10月初旬から12月中旬にかけて、この地球上では「中国」との関連で一連の目まぐるしい出来事が起きている。筆者の目からすればそれらは全て、今後の世界の対立構造を強く予感させるものだ。 まず10月1日、日本の茂木敏充外相が外遊先のフランスでルドリアン外相と会談。同日、ドイツのマース外相ともテレビ会議形式で協議した。この2つの会談を通じて日仏独3カ国の外相は東シナ海や南シナ海情勢について、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた連携強化で一致したという。 10月6日には日米豪印の外相が東京で一堂に集まり、第2回の4カ国外相会議を開いた。上述の日仏独外相会談と同様、この会議の中心テーマはやはり「自由で開かれたインド太平洋の実現」である。会談で4か国の外相は海洋進出を進める中国を念頭に、日本が提唱している「自由で開かれたインド太平洋」構想を推進し、より多くの国々へ連携を広げていくことが重要だとの認識で一致した。 このように、日本の主導で欧州の主要国であるフランスとドイツ、そして環太平洋地域の主要国であるアメリカとインドと豪州が団結し、中国の覇権主義的な海洋進出を封じ込めようとする姿勢を鮮明にした。誰が見ても「中国包囲網」の構築を意味するものだ。 中国の王毅外相は同13日、外遊先のマレーシアの記者会見で日米豪印外相会議に触れ、「インド太平洋版の新たなNATO(北大西洋条約機構)の構築を企てている」「東アジアの平和と発展の将来を損なう」と批判し警戒心を露わにした。日米豪印4カ国の戦略的意図を一番分かっているのはやはり中国自身で、自分たちが包囲されつつあることに危機感を募らせているのであろう』、「日本の主導で欧州の主要国であるフランスとドイツ、そして環太平洋地域の主要国であるアメリカとインドと豪州が団結し、中国の覇権主義的な海洋進出を封じ込めようとする姿勢を鮮明にした。誰が見ても「中国包囲網」の構築を意味するものだ」、「中国」としては面白くないだろう。ただ、日本としては、インドもRCEP(東アジア地域包括的経済連携)に入れようとしたが、インドは自由化に耐えられないとして参加しなかった。
・『ニューヨークで起きたもう1つの動き  前述の東京会議が開かれた当日の10月6日、太平洋を越えたニューヨークではもう1つ、中国に矛先を向ける重要な動きがあった。この日に開かれた人権を担当する国連総会第3委員会の会合で、ドイツのホイスゲン国連大使が日米英仏を含む39カ国を代表して中国の人権問題を批判する声明を発表したのだ。 声明は新疆ウイグル自治区における人権侵害の問題として、宗教に対する厳しい制限、広範で非人道的な監視システム、強制労働、非自発的な不妊手術を取り上げた。声明はまた、7月に中国共産党政権が香港で国家安全維持法を施行後、政治的抑圧が強まっていることも非難した。39カ国は、中国政府が香港住民の権利と自由を守るよう要求。チベットにおける人権侵害についても言及した。 この声明に賛同した国々は上述の日米英仏以外にも、イタリアやカナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどが名を連ねている。G7のメンバー国の全て、そしてEUの加盟国の大半がその中に入っている。つまり、少なくとも人権問題に関していえば今、世界の先進国全体が一致団結して中国を批判する立場をとり、そして中国と対立しているのである』、「少なくとも人権問題に関していえば今、世界の先進国全体が一致団結して中国を批判する立場をとり、そして中国と対立している」、「中国」が強面の姿勢を強めていることも影響しているようだ。
・『西側先進国vs「ならず者国家」の構図  一方の中国はどのように西側先進国に対抗しているのか。実は10月5日、同じ国連総会の第3委員会において、中国は一部の国々を束ねて西側に対する「先制攻撃」を仕掛けた。その日、中国の張軍・国連大使はアンゴラ、北朝鮮、イラン、キューバ、ジンバブエ、南スーダン含む26か国を代表して、アメリカと西側諸国による「人権侵害」を批判した。 中国自身を含めて、上述の国々に「人権」を語る資格があるのか疑問だが、それにしても世界の「問題児国家」「ならず者国家」あるいは化石のような独裁国家が中国の旗下に馳せ参じ、「反欧米」で結束したこの構図は実に興味深い。それはそのまま、「中国を基軸とした独裁国家群vs西側民主主義先進国群」という、新しい冷戦構造の成立を予兆するものではないか。 11月に入ってからも中国と西側諸国との「衝突」が絶えない。11月18日、イギリス、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア、カナダの外相は、中国が香港での批判的な声を封じ込めるために組織的活動を行い、国際的な義務に違反していると非難する共同声明を発表した。それに対し、と、外交儀礼上では普段あり得ないような暴言を吐いて5カ国を批判した』、「「中国を基軸とした独裁国家群vs西側民主主義先進国群」という、新しい冷戦構造の成立を予兆するものではないか」、「中国側の国々はロクなところがないようだ。「中国外務省の趙立堅報道官は翌19日、「(5カ国は)気をつけないと、目玉を引き抜かれるだろう」」、との「批判」には、外交でこんな言葉を使っていいのかと、驚かされた。
・『オーストラリアに喧嘩を売った中国外交官  そして11月30日、今度は趙立堅報道官が5カ国の中のオーストラリアに喧嘩を仕掛けた。彼は豪兵士がアフガニスタン人の子どもの喉元にナイフを突きつけているように見える偽の合成画像をツイッターに投稿。豪州のモリソン首相は激怒して当日のうちに記者会見を開き、画像は偽造されたものだと指摘した上で、「非常に攻撃的だ。中国政府はこの投稿を恥じるべきだ」と批判。中国政府に謝罪と即時の削除を求めた。 もちろん中国政府はこうした削除と謝罪の要求にはいっさい応じない。趙報道官の投稿した映像は今でもツイッターにアップされたままであり、彼の上司にあたる華春瑩報道局長もオーストラリア政府に反論し、趙報道官の投稿を擁護した。 しかし中国側のこのような横暴な態度はさすがに先進国一部の怒りを買った。フランス外務省の報道官は同日30日、「投稿された画像は特にショッキングで、コメントは偏っており、侮辱的だ」「中国のような国の外交に期待される手法として不適当だ」と批判した。12月1日、ニュージーランドのアーダーン首相は記者団に対してこの一件に触れ、「事実として正しくない画像が使われた」と指摘した上で、中国に懸念を直接伝えたと明らかにした。 12月2日、今度はアメリカ国務省がこの件に関する態度を表明した。ブラウン報道官代理は「(中国共産党がオーストラリアに対して取った行動は)精査なしの誤情報流布と威圧的外交の一例」と厳しく批判。合成画像の投稿について「共産党であることを考えても、さらにレベルの低い行動だ」と、矛先を中国共産党に向けた。 このように、中国外務省の報道官がオーストラリアを攻撃するためにツイートした画像は、オートスラリアだけでなくその友好国からの反撃を招くこととなった。そしてこの一件はまた、中国と欧米世界との対立を浮き彫りにした』、「中国」「外交」のネジが外れてしまったようだ。
・『西太平洋上に現れた新たなプレーヤー  12月5日、産経新聞のネット版である産経ニュースは、独自の報道として重大な意味を持つ動きの1つを伝えた。日本の自衛隊と米軍、フランス軍が来年5月、尖閣諸島(沖縄県石垣市)など離島の防衛・奪回作戦に通じる水陸両用の共同訓練を日本の離島で初めて実施することとなったというのである。 産経の記事は、「日米仏の艦艇と陸上部隊が結集し、南西方面の無人島で着上陸訓練を行う」と伝えた上で、「東シナ海と南シナ海で高圧的な海洋進出を強める中国の面前で牽制のメッセージを発信する訓練に欧州の仏軍も加わり、対中包囲網の強化と拡大を示す狙いがある」と解説した。 ここでもっとも重大な意味を持つのは、フランスがアメリカとともに参加することである。アメリカは日本の同盟国だから、日米合同で尖閣防備の軍事訓練を行うのは当たり前だが、フランスの参加は意外だ。フランスはすでに意を決して、自分たちの国益とは直接に関係のない東シナ海の紛争に首を突っ込み、中国と対抗する日米同盟に加わろうとしているのだ。もちろん中国からすれば自国に対する敵対行為であるが、フランスは一向に構わない。 実は欧州のもう一つの大国イギリスもフランスと同じような計画を考えている。共同通信は12月5日、「英海軍、空母を日本近海に派遣へ 香港問題で中国けん制」という以下のニュース記事を配信した。 「英海軍が、最新鋭空母『クイーン・エリザベス』を中核とする空母打撃群を沖縄県などの南西諸島周辺を含む西太平洋に向けて来年初めにも派遣し、長期滞在させることが5日分かった。在日米軍の支援を受けるとみられる。三菱重工業の小牧南工場(愛知県)で艦載のF35Bステルス戦闘機を整備する構想も浮上している。複数の日本政府関係者が明らかにした」』、「イギリス」はともかく、「フランス」までが乗り出してきたのには驚かされた。狙いは何なのだろう。
・『英海軍が日本近海に現れる本当の狙い  1人の日本国民として中国の軍事的膨張を真剣に憂慮している筆者は、ネット上でこの記事に接した時には大きな感動を覚えた。大英帝国としてかつて世界の海を制覇したイギリスが、空母打撃群を派遣して日本周辺の海に長期滞在させるのである。「長期滞在」だから、パフォーマンスのためでもなければ単なる示威行動でもない。イギリスは日米同盟と連携してアジアの秩序維持に加わろうとしている。その矛先の向かうところは言うまでもなく中国である。 共同通信の記事は、空母打撃群派遣の狙いについて「香港問題で中国けん制」とも解説しているが、イギリスがいまさら武力を用いてかつての植民地の香港を奪還するようなことはありえない。ロンドンの戦略家たちの目線にあるのは当然、日本周辺の海域で軍事的紛争がもっとも起きやすい場所、尖閣や台湾海峡、そして南シナ海であろう。 もちろん、老練な外交大国・軍事強国のイギリスは、一時的な思いつきでこのような意思決定を行う国ではない。むしろ、深慮遠謀の上での長期戦略だと見ていい。かつての世界の覇主だったイギリスはどうやら中国を戦略的敵国だと認定し、この新覇権国家の膨張を封じ込める陣営に加わろうとしている。 そして、この原稿を書いている12月16日、大ニュースがまた飛んできた。産経新聞の報じたところによると、ドイツのクランプカレンバウアー国防相は15日、日本の岸信夫防衛相とのオンライン対談で、独連邦軍の艦船を来年、インド太平洋に派遣する方針を表明。南シナ海での中国の強引な権益拡大をけん制するため、「自由で開かれたインド太平洋」に協力する姿勢を明確にした。 戦後は軍の対外派遣に慎重だったドイツもつい重い腰を上げて、対中国包囲網の構築に参加することになった。来年、英仏独3カ国の海軍に米海軍と日本の海上自衛隊が加わり、世界トップクラスの海戦能力を持つ5カ国海軍が日本周辺の海、すなわち中国周辺の海に集まって中国封じ込めのための「海の長城」を築こうとしているのである』、「戦後は軍の対外派遣に慎重だったドイツもつい重い腰を上げて、対中国包囲網の構築に参加することになった」、というのも驚きだ。
・『人権と安全保障という「2つの戦線」  以上、今年10月初旬から12月中旬までの2カ月間あまりにおける世界の主要国の動きを概観したが、これらの動きをつなげて考えると、世界の主な民主主義国家は今、2つの戦線において対中国包囲戦を展開していることがよく分かる。 戦線の1つは人権問題の領域である。中国共産党政権が国内で行なっている人権侵害と民族弾圧に対し、欧米諸国はもはや黙っていない。中国に「NO」を突きつけそのやりたい放題と悪行をやめさせようとして、多くの国々がすでに立ち上がっている。ドイツの国連代表が国連総会の場で、39カ国を束ねて中国の人権抑圧を厳しく批判したのはその最たる例だが、民主主義国家のリーダー格のアメリカも、香港自治法やウイグル人権法などの国内法をつくって人権抑圧に関わった中国政府の高官に制裁を加えている。 人権問題の背後にあるのは当然、人権を大事にする民主主義的価値観と人権抑圧の全体主義的価値観の対立である。今の世界で人権問題を巡って起きている「先進国vs中国」の対立はまさにイデオロギーのぶつかり合い、そして価値観の戦いである。世界史を概観すれば分かるが、価値観の戦いあるいはイデオロギーの対立には妥協の余地はあまりない。双方が徹底的に戦うのが一般的である。 欧米諸国と中国が戦うもう1つの戦線はすなわち安全保障、とりわけアジアと「インド太平洋」地域の安全保障の領域である。東シナ海と南シナ海、そして尖閣周辺や台湾海峡などで軍事的拡張を進め、この広大な地域の安全保障と秩序を破壊しようとする中国に対し、アメリカと日本、イギリスとフランスドイツ、そしてオーストラリアとニュージーランド、さらにアジアの大国のインドまでが加わって、政治的・軍事的対中国包囲網を構築している。 逆に言えば、今の中国は人権・民主主義など普遍的な価値観の大敵、世界の平和秩序とりわけインド・太平洋地域の平和秩序の破壊者となっている。今や世界の民主主義陣営の主要国であり、世界のトップクラスの軍事強国である米・英・仏・独・日・印・豪が連携して、まさに文明世界の普遍的価値を守るために、そして世界とアジアの平和秩序を守るために立ち上がろうとしている』、どうも筆者は、「中国」との対立に焦点を当てるの余り、経済面での「中国」の魅力を無視しているが、現実にはその経済力に魅せられる面も大きい。
・『世界の歴史がまさに今、動いている  しかし、2020年秋からの数カ月間で、上記2つの戦線において対中国包囲網が突如姿を現し迅速に形成されたのは一体なぜなのか。去年までは中国との経済連携に関心を集中させていたドイツやフランスは一体どうして、軍事力まで動員してはるかインド・太平洋地域に乗り込んで中国と対抗することにしたのか。そして、形が見え始めた西側諸国と中国との対立構造は、今後の世界に一体何をもたらすのか。 こういった大問題については稿を改めて論じてみたいが、2020年の秋、われわれの住むこの世界でとてつもなく大きな地殻変動が起きていることは確実であろう。歴史は今、まさに動いているのである』、確かに「対中国包囲網が突如姿を現し迅速に形成された」のは事実であるが、それは前述の通り、「対立」だけではない。協力・協調もあることを忘れるべきではないだろう。
タグ:石平 JBPRESS Newsweek日本版 中国情勢 福島 香織 軍事・外交 (その10)(こんなに危うい中国の前のめり「ワクチン外交」 衛生領域のシルクロードで新たな世界秩序構築を目論む中国、オーストラリアの島を買って住民の立ち入りを禁じた中国企業に怨嗟の声、中国を封じ込める「海の長城」構築が始まった) 「こんなに危うい中国の前のめり「ワクチン外交」 衛生領域のシルクロードで新たな世界秩序構築を目論む中国」 「中国製ワクチン」は「2~8度の温度での輸送が可能なため通常のコールドサプライチェーンを利用でき、途上国でも取り扱いやすい」、「途上国」にとっては魅力的だ 「中国のワクチン外交宣言」とは本音丸出しだ 中国製ワクチンの効果に疑問符も ワクチンメーカー康泰生物のスキャンダル 「当局も報道も、ワクチンに問題があったとはせず、ワクチンに問題があるとして訴え続けた保護者や記者、学者らは、「挑発罪」「秩序擾乱罪」などの容疑で逮捕されたりデマ拡散や名誉棄損などで逆に訴えられたりして、沈黙させられた」、やはり報道の自由がない中国では、問題を隠蔽され易いようだ 中国のワクチン外交に対抗せよ 南米とカリブ海諸国はすでに北京から十数億ドルの借金をして中国のワクチンを購入することにしている。メキシコも3500回分のワクチン代金を支払い すでに多くのアジア諸国が北京からワクチンを購入したいという意向を伝え、少なくとも16カ国が中国ワクチンの臨床試験計画に参加 「ワクチン外交」はタダではなく、しっかり「代金」を取ったり、「ツケ」払いで「借金」させているようだ 「オーストラリアの島を買って住民の立ち入りを禁じた中国企業に怨嗟の声」を紹介しよう』 オーストラリアの島の土地を買い上げた中国の不動産開発業者が、オーストラリア人の立ち入りを禁じて、地元住民や観光客が不満を募らせている 島の一部を買った」だけなのに 「チャイナ・ブルームは、住民のビーチへの立ち入りや、ボートでの着岸を禁止。滑走路へのアクセスまでも禁じたという」、こんな勝手なことが許されるのだろうか インフラ投資を歓迎する当局 州資源局の広報担当者は、チャイナ・ブルームが道路やボート用のスロープ、桟橋や港湾関連など島のインフラ改善に取り組んでいる点にも留意する必要があると指摘」、地方自治体にとっては、「インフラ投資を歓迎」なのだろうが、「オーストラリア政府」は地方自治体の行き過ぎに目を光らせるようだ。 「中国を封じ込める「海の長城」構築が始まった」 今年10月からのわずか2カ月あまりの間に、人権と安全保障をめぐる西側先進国による対中包囲網の構築が本格化した。地政学的な大変動が東アジアで起き始めている 日本の主導で欧州の主要国であるフランスとドイツ、そして環太平洋地域の主要国であるアメリカとインドと豪州が団結し、中国の覇権主義的な海洋進出を封じ込めようとする姿勢を鮮明にした。誰が見ても「中国包囲網」の構築を意味するものだ 「中国」としては面白くないだろう。ただ、日本としては、インドもRCEP(東アジア地域包括的経済連携)に入れようとしたが、インドは自由化に耐えられないとして参加しなかった ニューヨークで起きたもう1つの動き 少なくとも人権問題に関していえば今、世界の先進国全体が一致団結して中国を批判する立場をとり、そして中国と対立している」 西側先進国vs「ならず者国家」の構図 「中国を基軸とした独裁国家群vs西側民主主義先進国群」という、新しい冷戦構造の成立を予兆するものではないか 中国外務省の趙立堅報道官は翌19日、「(5カ国は)気をつけないと、目玉を引き抜かれるだろう」」、との「批判」には、外交でこんな言葉を使っていいのかと、驚かされた オーストラリアに喧嘩を売った中国外交官 「中国」「外交」のネジが外れてしまったようだ 西太平洋上に現れた新たなプレーヤー 「イギリス」はともかく、「フランス」までが乗り出してきたのには驚かされた。狙いは何なのだろう 英海軍が日本近海に現れる本当の狙い 戦後は軍の対外派遣に慎重だったドイツもつい重い腰を上げて、対中国包囲網の構築に参加することになった」、というのも驚きだ 人権と安全保障という「2つの戦線」 どうも筆者は、「中国」との対立に焦点を当てるの余り、経済面での「中国」の魅力を無視しているが、現実にはその経済力に魅せられる面も大きい 世界の歴史がまさに今、動いている 確かに「対中国包囲網が突如姿を現し迅速に形成された」のは事実であるが、それは前述の通り、「対立」だけではない。協力・協調もあることを忘れるべきではないだろう
nice!(0)  コメント(0) 
前の10件 | - 世界情勢 ブログトップ