ミャンマー(その7)(少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺 検問所爆破 戦闘機撃墜も、ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない) [世界情勢]
ミャンマーについては、昨年2月17日に取上げた。今日は、(その7)(少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺 検問所爆破 戦闘機撃墜も、ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない)である。
先ずは、本年3月19日付け現代ビジネス「少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107805?imp=0
・『軍政の残虐非道な行動が明らかに(ミン・アウン・フライン司令官率いるミャンマー軍事政権は2022年から2023年にかけて反軍政の抵抗を続ける市民組織「国民防衛軍(PDF)」などへの弾圧を強化しており、その過程で一般市民の殺害も増加している。 そうした中でも特に未成年の若者や女性を虐殺するケースが相次いで報告され、人権侵害がこれまで以上に深刻化しているという。 さらに2023年3月13日にはミャンマーの独立系メディアが仏教寺院に避難していた一般市民と同時に僧侶をも殺害していたことを報じた。 ミャンマーは国民の90%を仏教徒が占める国で、僧侶は国民の尊敬を集める対象となっているだけに、僧侶まで殺害するという軍政の容赦ない姿勢は反軍政を掲げる国民の反感と怒りを高めている。 こうした軍政の残虐非道な行動は、2月2日に戒厳令を7郡区から37郡区に拡大し、同月22日にもさらにサガイン地方域で3郡区を追加するなどして、抵抗勢力との戦闘が激化している地方での軍の権力を強化したことと関係があるとみられている。 2021年2月のクーデター以降すでに2年以上が経過しながらも、国内の治安が一向に安定せず、8月に予定している「民主的な総選挙」の実施も危ぶまれる状況に対する軍政の焦りが背景にあるとの見方が有力視されている。 軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図しているとされ、各地から報告される兵士による残虐行為はその反映とされている』、「軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図している」、なるほど。
・『寺院の避難民を僧侶と共に殺害 独立メディア「ミャンマー・ナウ」はミャンマー北東部シャン州南部ピンラウン郡区のナンニント村で市民ら29人が殺害されているのを地元抵抗勢力である「カレンニー民族防衛隊(KNDF)」が3月13日の声明で明らかにしたと伝えた。29人の中には仏教僧侶3人が含まれていたとしている。 KNDFなどによると、軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている。 ナンニント村の大半の住民は軍による攻撃激化を恐れて数週間前にすでに村外に避難していたが、僧侶が避難をせずに村に留まったことから20数人の男性村人が共に村に残り、空襲・砲撃を逃れるために寺院に避難していたという。 KNDFはナンニント村の状況を確認するためにドローンで上空から偵察していたところ、寺院で多数の遺体を発見したものの兵士が撤退するのを待ったため現場の寺院には12日までたどり着けなかったとしている。 KNDFのミャンマー語のホームページには殺害現場の生々しい写真が複数アップされ、民族衣装であるロンジーをまとった多数の男性が銃撃を受けて頭部や上半身などから血を流して寺院の外壁周辺に倒れている様子が写っている。 死者の間にはサフラン色の僧衣をまとった仏教僧侶が僧衣の一部を血に染めて横たわっており、寺院の外壁にも多数の弾痕が残されている。住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという。 この寺院襲撃、僧侶殺害に関し、軍政のゾー・ミン・トゥン報道官はメディアに対して武装市民組織と民間人の何人かが死亡したことは確認したものの「地元のPDFメンバーによる殺害である」として兵士の関与を否定した』、「軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている」、「住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという」、酷いものだ。
・『若者を虐殺、斬首で遺体放置 独立系メディアなどによると、2月25日に北西部サガイン地方域ミンム郡区ニャウン・ピンカン村付近で武装市民組織PDFと軍による戦闘が発生した。PDF側が弾薬不足のため退却する際に退路に地雷を埋設していた若者5人が軍に拘束された。 その後若者5人の遺体が発見されたが、うち3人は斬首され、頭部が竹柵や荷車の上に「晒し首」状態で放置されており、中には手足が切断された遺体もあったという。遺体には銃創が一切ないことから、若者らは生きたまま斬首された可能性が高いとみられている。 兵士は殺害した若者の携帯電話を取り上げて犠牲者の親族や友人に電話をかけて「死を祝っている」と述べたうえ、犠牲者を罵倒し続けたという。 斬首されたのは15歳の少年、17歳と19歳の青年で、いずれも地元の武装市民組織を手伝い地雷を設置していたところを軍に拘束され、虐殺されたという。事件を伝える独立メディアのウェブサイトには3人の若者がほほ笑む生前の写真がアップされている。 同村周辺ではさらに2人の若者の殺害遺体も発見されているほか、サガイン地方域カン・タイン村では別の男性2人の斬首遺体が発見され、同地方域ミンム郡区ニャウンイン村では16人が殺害されている。 このように国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている。 このほか10月には北部カチン州ハパカント近郊の村で軍政に抵抗を続ける少数民族武装勢力やその支持者、一般市民が参加して開催中のコンサート会場を軍が空爆して地元の著名女性歌手や男性演奏家、多数の観衆が殺害される事件も起きている』、「国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている」、なるほど。
・『レイプして殺害される女性たち 3月2日、サガイン地方域サガイン群区タルタイン村で女性3人を含む住民が軍に拘束されて「人間の盾」として戦闘現場に立たされたことが報じられた。 さらに同じ日、同地方域ミンム群区ニャウンイン村でレイプされた女性の遺体が発見されたほか。同村では計14人の遺体が発見されたが、その中にはレイプされ顔面や頭部を激しく殴打された痕跡の残る女性3人の遺体も含まれていたという。 2022年8月27日には、サガイン地方域カニ郡区タイエットピンブラ村に進入した兵士らが民家に取り残された知的障害のある40代の女性を屋外に連れ出して複数の兵士がレイプした。 また同月11日には同地方域インマビン群区インバウンテン村で10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も明らかになっている』、「10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も明らかに」、自国民に対する残虐行為も度を越している。
・『激化する人権侵害事件 このように軍は2022年から、各地で抵抗を続ける武装市民組織メンバーに対する掃討作戦を通じて一般市民を巻き込んだ強権的弾圧を強化、女性や若者をも無差別に殺害しているが、国民の尊敬と信仰の対象である仏教僧侶まで容赦なく殺害するという暴挙に対し内外から厳しい批判が高まっている。 戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている。 タイ西部ターク県メーソットに本拠を置くミャンマーの人権団体「ミャンマー政治犯支援協会(AAPP)」によると、3月14日現在、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている』、「戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている・・・ミャンマーの人権団体「ミャンマー政治犯支援協会(AAPP)」によると、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている」、「人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている」、その通りだ。
次に、8月8日付け現代ビジネスが掲載したPanAsiaNews記者の大塚 智彦氏による「ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺、検問所爆破、戦闘機撃墜も」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114446?imp=0
・『実質的な内戦状態にあり治安状況が深刻化しているミャンマーで、ミン・アウン・フライン国軍司令官率いる軍政は7月31日に期限を迎えた非常事態宣言を6ヵ月延長することを決めた。これにより軍政が目指す「民政移管の為の民主的選挙」の実施は2024年2月以降にずれ込むことが確定し、軍政の強権弾圧政治が続くことになった。 軍政が非常事態宣言を延長した理由は国軍司令官が「武装した暴力が続いている。選挙は時期尚早で用意周到に準備する必要がある。当面の間我々が責任を負わなければならない」と述べたように、国内の治安が予想に反して一向に安定せず、各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や国境地帯を拠点とする少数民族武装勢力が軍や警察を攻撃し、軍も住民に対して暴力や虐殺を続けるなど、全土で戦闘が激化していることが背景にある』、「国内の治安が予想に反して一向に安定せず、各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や国境地帯を拠点とする少数民族武装勢力が軍や警察を攻撃し、軍も住民に対して暴力や虐殺を続けるなど、全土で戦闘が激化している」、ような状況では、「選挙」の延期は当然だ。
・『PDFによる軍への攻撃 軍政に抵抗する立場から報道を続けているミャンマーの独立系メディア「イラワジ」は7月31日、ミャンマー各地でのPDFと軍の戦闘を詳しく伝えた。 それによると戦闘は北西部のザガイン地方域、チン州、西部のカレン州(カイン州)中部のマンダレー地方域、南部のタニンダーリ地方域、東部のシャン州の各地で発生とミャンマーのほぼ全域に渡り、治安状況が軍政にとって深刻な問題になっていることが裏付けられている。 マンダレー地方域では7月27日、タベイッキン郡区でイラワジ川を航行していた軍の9隻の船団に対し、同地方域やザガイン地方域から集結した37のPDF組織が共同で待ち伏せ攻撃を敢行した。 船団の2隻を破壊したが、別の船から発砲があり川中の船と沿岸8ヵ所との間で激しい銃撃戦が交わされた。その後、船団は現場を逃れたため軍兵士の死傷者数は明らかになっていないが、同船団は食料や武器、弾薬、人員を補充するため輸送中だったとしている。 チン州ミンダット郡区では7月30日、パトロール中の軍の車列を地元のPDFが待ち伏せ攻撃し兵士8人を殺害した。さらに7月28日にはザガイン地方域モンユワ郡区にある軍の北西司令部をPDFが107ミリロケット弾で攻撃し、軍施設に損害を与えたという。 このほかにもタニンダーリ地方域では地元PDF部隊が地雷6つを使って軍を攻撃し、兵士10人を殺害したと報じた。 こうした一連の攻撃で軍側には少なくとも89人の犠牲を強いたと各地のPDFは報告しており、軍側の被害が拡大していることを印象付けた』、「戦闘は北西部のザガイン地方域、チン州、西部のカレン州(カイン州)中部のマンダレー地方域、南部のタニンダーリ地方域、東部のシャン州の各地で発生とミャンマーのほぼ全域に渡り、治安状況が軍政にとって深刻な問題になっていることが裏付けられている」、「こうした一連の攻撃で軍側には少なくとも89人の犠牲を強いたと各地のPDFは報告しており、軍側の被害が拡大していることを印象付けた」、なるほど。
・『戦闘機を地上から撃墜 軍政は戦闘機や爆撃機、ヘリコプターなどで掌握している制空権を利用して各地のPDF拠点への空からの攻撃を強化しているが、学校や仏教寺院などの被害も拡大しており、「無差別空爆」を行っている可能性もあるという。 そんな中、東部カヤー州パウラケ郡区にある少数民族武装勢力「カレンニ民族人民解放戦線(KNPLF)」の拠点を攻撃するために戦闘機1機が低空飛行で接近した際、地上からの銃撃などで撃墜に成功したとKNPLFが明らかにした。 KNPLFによると、特に対空兵器があった訳ではないが、メンバーによる必死の攻撃で墜落させた、と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させたという。 この戦闘機はイワルティット村近くに墜落したが同村周辺は軍の支配地域のため、墜落した戦闘機の詳しい情報は当初不明だった。軍が急いで機体の残骸を片付けてしまったことも影響しているが、KNPLFは、その後詳細が明らかになったとしている。 それによると同機はK8Wという戦闘機で、空軍の大尉と中尉が乗り込んだ複座で、タウング空軍基地から攻撃のため発進した。その後、空軍は、犠牲となった2人のパイロットをそれぞれ少佐、大尉に昇進させ功績を讃えたという。 さらに7月31日には、カレン州パアン郡区サルウィン橋に設けられていた軍の検問所が地元PDFによって爆破され、民間人1人が死亡、兵士7人を含む10数人が負傷したという。検問所の兵士が近くに駐車していた車両を不審に思って調べようとしたところ爆発したとカレン情報センター(KIC)が情報提供した』、「戦闘機1機が低空飛行で接近した際、地上からの銃撃などで撃墜に成功したとKNPLFが明らかにした。 KNPLFによると、特に対空兵器があった訳ではないが、メンバーによる必死の攻撃で墜落させた、と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、「特に対空兵器があった訳ではないが・・・と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、大したものだ。
・『軍が住民14人を虐殺 一方、軍も各地で強力な抵抗を続けるPDFへの攻撃を激化させている。 独立系メディア「ミャンマー・ナウ」が7月31日に伝えたところによると、ザガイン地方域モンユウのチンドウィン川西岸にあるソネチャウン村で住民14人の虐殺があったという。 それによると、雨の降る深夜、ソネチャウン村に約60人の兵士が侵入、民家を訪れては懐中電灯で住民の顔を照らし、地元PDFの幹部を探しだそうとした。犬が大きく吠えて多くの住民が起きたが、当初は軍の接近を住民に連絡する訪問と思って扉を開けた人が多かったという。 軍はミョー・ミン・ウー氏(42)を捜索し、彼を見つけると同じ家にいた兄弟や子供と一緒に拘束した。さらに、PDF関係者とみられる住民を次々と拘束し「武器をどこに隠した」と拷問を加えながら尋問を続けた。拘束された住民はPDFとの関係を否定し、武器の所在も知らないと主張したという。 翌日の明け方には、ミョー・ミン・ウー氏をはじめとする拘束されいた14人の遺体が村のあちこちに放置されているのが見つかった。遺体には拷問の跡や刃物による傷など虐待の痕跡が残され、残虐な手段で虐殺されたことを物語っていた。 兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪するなどの行為を行って村を去ったと報じ、軍の行動を非難した』、「ミョー・ミン・ウー氏をはじめとする拘束されいた14人の遺体が村のあちこちに放置されているのが見つかった。遺体には拷問の跡や刃物による傷など虐待の痕跡が残され、残虐な手段で虐殺されたことを物語っていた。 兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪するなどの行為を行って村を去ったと報じ、軍の行動を非難」、酷いものだ。
・『柔軟姿勢はあくまで表向き(8月1日、ミン・アウン・フライン国軍司令官は非常事態宣言を延長するとともに、アウン・サン・スー・チーさんを含めた政治犯など約7000人に対する恩赦を発表した。 これにより19のいわれなき罪状で訴追され2022年12月に合計禁固33年の判決を受けて収監されていたスー・チーさんは、5件の刑で計6年の減刑措置を受けた。スー・チーさんの残る刑期は27年となったものの、78歳という年齢を考えると、実質的には終身刑と同じといえる。 軍政は恩赦に先立ち、スー・チーさんをそれまで収容していた首都ネピドー近郊の刑務所内に設けた特別な施設から刑務所外にある政府関係者の民家に移送したという。 さらに7月には、ネピドーを訪問したタイのドーン外相とスー・チーさんとの面会を特別に許可し、両者は直接対面して会談した。スー・チーさんが外国の閣僚と面会するのは2021年2月1日のクーデターで軍によって身柄を拘束されて以来初めてであった。 このように軍政は、スー・チーさんに対し、刑務所外への移送、タイの外相との面会許可、そして恩赦による刑期短縮と「柔軟姿勢」ともとれる措置を相次いで講じているが、これには非常事態宣言の延長という強権政治の継続に対する欧米や東南アジア諸国連合(ASEAN)の批判を交わす狙いがあるとみられている。 しかしこうした「柔軟姿勢」の一方でPDFや少数民族武装勢力など反軍政の抵抗勢力との戦闘を激化させており、武力衝突は依然として内戦状態と言っても過言ではない状況となっている。 この衝突で軍の兵士そして抵抗組織、さらに一般住民の犠牲は増える一方で、軍による人権侵害とともにミャンマー情勢をより深刻かつ複雑なもにしている。 ミャンマー問題の解決の糸口は、一向に見えてこない。・・・・・ さらに連載記事『少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃』では、“もうひとつの現実”について詳報しています』、「合計禁固33年の判決を受けて収監されていたスー・チーさんは、5件の刑で計6年の減刑措置を受けた。スー・チーさんの残る刑期は27年となったものの、78歳という年齢を考えると、実質的には終身刑と同じといえる」、「タイのドーン外相とスー・チーさんとの面会を特別に許可」、これは「欧米や東南アジア諸国連合(ASEAN)の批判を交わす狙い」、「一方でPDFや少数民族武装勢力など反軍政の抵抗勢力との戦闘を激化させており、武力衝突は依然として内戦状態と言っても過言ではない状況となっている」、なるほど。
第三に、9月3日付け現代ビジネスが掲載したPanAsiaNews記者の大塚 智彦氏による「ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/115692?imp=0
・『国軍兵士の「寝返り」 軍政と武装抵抗勢力との戦闘が続き実質的な内戦状態にあるミャンマーで、正規軍の中で戦線離脱や部隊離反などによる脱走兵が増加し、その大半が敵対する民主派勢力「国民防衛軍(PDF)」に加わっていることが、ミャンマーの独立系メディアなどの報道で明らかになった。 国軍兵士の「寝返り」ともいえるこの現象は、2021年2月に軍がアウン・サン・スー・チーさん率いる民主政府から実権を奪取したクーデター以来続く傾向というが、2023年になってその数はさらに増加傾向にあると指摘されている。 「ミン・アウン・フライン国軍司令官でさえ実際に国軍兵士の正確な兵力(兵士の数)を把握できていない」と言われるほど、最前線の部隊では定員数と実際の兵士の数に大きなギャップが生じているという。 こうした深刻な事態に軍政は政府職員や自治体職員をリクルートして兵力不足を補おうとしているが、職業軍人ではない「動員された兵士」ほど寝返る傾向が強く、不足が補えない状況が続いている。 一方のPDF側は国軍兵士の投降を呼びかける運動を強め、武器や弾薬、軍用車両などを持参しての寝返りには報奨金を用意するなどと宣伝して国軍兵力の数的弱体化を試みている。 このような国軍の兵力低下は、PDF戦闘員や一般住民に対する空爆、民家放火や拷問、暴力や残虐な殺害行為、人間の盾としての利用などを激化させるという行動のエスカレートを招いているとされ、そこに国軍の焦燥感が如実に現われているといわれている』、「最前線の部隊では定員数と実際の兵士の数に大きなギャップが生じているという。 こうした深刻な事態に軍政は政府職員や自治体職員をリクルートして兵力不足を補おうとしているが、職業軍人ではない「動員された兵士」ほど寝返る傾向が強く、不足が補えない状況が続いている。 一方のPDF側は国軍兵士の投降を呼びかける運動を強め、武器や弾薬、軍用車両などを持参しての寝返りには報奨金を用意するなどと宣伝して国軍兵力の数的弱体化を試みている」、なるほど。
・『過去4ヵ月で500人が離反 独立系メディア「イラワジ」が8月25日伝えたところによると、最近開催された軍政に対抗する民主派組織「国家統一政府(NUG)」の第28回閣議で、マー・ウィン・カイン・タン首相が「過去4ヵ月の間に約500人の国軍兵士が軍を離脱、脱走した」と報告した。この500人の中には大隊副司令官という軍幹部も含まれているという。 今年8月に入ってからだけでも50人以上が国軍を離れており、軍の兵力低下が深刻な問題となっているとの見方を示した。こうした動きは西部チン州、東部カヤー州、カレン州などでも報告され、兵士の部隊離反が全国的に起きているとNUGではみている。 NUGによると、2021年2月のクーデター以来、少なくとも15000人の兵士と警察官が寝返って民主派の「不服従運動(CDM)」に参加しているという。軍政側は兵士の死傷者や行方不明者、脱走者などの数字を明らかにしていないが、NUG側が指摘した数字はある程度実態を反映しているとの見方が有力だ。 寝返った兵士や警察官は「国民防衛軍(PDF)」に加わって軍との戦闘に参加するほか、単に逃亡して密かに暮らしているかのどちらかであるという。 こうした事態に軍政側は兵士を軍に引き留めるために、休暇の奨励、芸能人らによる部隊慰問、指揮官は兵士と共に食事をとりコミュニケーションを密にするなど、あの手この手の対策を講じているとされる。 これに対しNUG側は兵士や警察官に離脱を勧めており、武器や弾薬、航空機や艦船と共に寝返った兵士らには多額の現金を付与するという報奨金制度を設けている』、「「過去4ヵ月の間に約500人の国軍兵士が軍を離脱、脱走した」と報告した。この500人の中には大隊副司令官という軍幹部も含まれているという。 今年8月に入ってからだけでも50人以上が国軍を離れており、軍の兵力低下が深刻な問題となっている」、「NUGによると、2021年2月のクーデター以来、少なくとも15000人の兵士と警察官が寝返って民主派の「不服従運動(CDM)」に参加しているという・・・寝返った兵士や警察官は「国民防衛軍(PDF)」に加わって軍との戦闘に参加するほか、単に逃亡して密かに暮らしているかのどちらかであるという」、「NUG側は兵士や警察官に離脱を勧めており、武器や弾薬、航空機や艦船と共に寝返った兵士らには多額の現金を付与するという報奨金制度を設けている」、なるほど。
・『寝返った元国軍兵士の証言 「イラワジ」は8月26日、同月1日に入手したという軍の文書に基づき各地の部隊で兵員不足が深刻な問題となっていると指摘した。 その文書は北東部シャン州に拠点を置く歩兵114大隊から国軍上層部に報告されたものとみられ、少なくとも857人の大隊要員が必要にもかかわらず実際には132人しか兵士がいないことを訴えている。 また、その132人の兵士のうち基地防衛のために62人を残し、半数以上の70人が基地を出て最前線での戦闘に従事しているという実態も記述されている。 さらに別の文書では、シャン州の国境問題担当の大佐が地区総務部門関係者に対して警察官を除く全ての公務員の名簿を提出するよう要請したことが記されている。このことから兵員不足を緊急に解消するために公務員を民兵または予備軍兵士に転換することを州政府が計画していることが分かるとしている。 同じ26日に「イラワジ」は元国軍兵士であるテット・ミャット元陸軍大尉のインタビュー記事を掲載した。ミャット氏は2021年6月に軍を離反し軍政に抵抗する市民の「不服従運動(CDM)」に参加、以後抵抗勢力側に協力して現役の兵士や将校の離反、逃亡の手助けを続けているという。 ミャット氏によると「イラワジ」が入手し報道した文書は「本物と思われる」とした上で、「各大隊は毎月兵員数などの情報を上部機関に報告する必要がある。大隊は兵士の定員数が約800人なのだが、どこの大隊もその数を満たしていないのが実情だ」と述べて文書の信憑性とともに国軍の兵員数逼迫が事実であるとの見方を示した』、「歩兵114大隊から国軍上層部に報告されたものとみられ、少なくとも857人の大隊要員が必要にもかかわらず実際には132人しか兵士がいないことを訴えている。 また、その132人の兵士のうち基地防衛のために62人を残し、半数以上の70人が基地を出て最前線での戦闘に従事しているという実態も記述されている」、驚くほどの欠員ぶりだ。
・『公務員を民兵や予備軍に採用 軍政が兵力不足を深刻に考えていることは近年、地方の行政機関などで働く公務員を軍になかば強制的に採用し、民兵や予備軍に編入して部隊に送り込んでいることに現れている、とミャット氏は指摘している。 The Irrawaddy より 臨時採用され兵士として前線に送られた公務員出身者などは、戦闘で生命の危機に直面した場合に容易に投降する傾向がみられ、それもまた兵員不足の一因として軍政の悩みの種となっているという。 公務員以外にも、地方の住民で食糧難や滞在場所のない人々を脅迫して採用するというケースも報告されるなど、軍の兵員不足の深刻さが浮き彫りとなっている。公務員や一般住民からの臨時兵士の他、正規軍兵士の前線からの離脱者も多く、「先見の明がある兵士」や「民主化弾圧に疑問を抱く兵士」らが「抵抗組織からの誘い」などを理由に寝返る傾向があるという。 そしてミャット氏は「イラワジ」に対して、「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要があるとの言葉で結んだ』、「公務員以外にも、地方の住民で食糧難や滞在場所のない人々を脅迫して採用するというケースも報告されるなど、軍の兵員不足の深刻さが浮き彫りとなっている。公務員や一般住民からの臨時兵士の他、正規軍兵士の前線からの離脱者も多く、「先見の明がある兵士」や「民主化弾圧に疑問を抱く兵士」らが「抵抗組織からの誘い」などを理由に寝返る傾向があるという。 そしてミャット氏は「イラワジ」に対して、「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要」、なるほど。
・『一般住民を逮捕し人間の盾に 国軍は最近、抵抗勢力PDFや国境周辺での少数民族武装勢力との戦闘の中で、兵力不足を補う策として、一般住民を逮捕して、人間の盾として利用する作戦を実行しているという。 8月25日、北部カチン州パカント郡にあるナントヤール村、カットマウ村、サインパラ村に約30人の兵士が夜陰に紛れて侵入し、村人ら約100人を逮捕、連行したという。 軍はその後、パカント村に進軍するに際し、逮捕した住民を人間の盾として最前線に立たせたり、地雷が埋設されている可能性のある場所を強制的に歩かせたりして兵士の犠牲を最小限にしようとする作戦をとっている、と抵抗勢力はみている。 こうした作戦は軍による苦肉の策であり、兵員不足を補う根本的な解決策とはなっていないばかりか、一般住民の反感を買って軍の立場を窮地に追い込む結果になっている。 住民を敵に回しても民主化抵抗勢力との戦闘を継続しなければならない軍政の焦りが背景にあるのは間違いない。 2021年2月のクーデター以来、軍政は全土での治安安定という目標を達成できず、今年7月31日に非常事態宣言を半年間延長したことで2023年内に予定していた総選挙も2024年2月以降に延期せざるを得ない状況となっており、ますます苦境に陥っているのが実情だ』、「軍はその後、パカント村に進軍するに際し、逮捕した住民を人間の盾として最前線に立たせたり、地雷が埋設されている可能性のある場所を強制的に歩かせたりして兵士の犠牲を最小限にしようとする作戦をとっている、と抵抗勢力はみている。 こうした作戦は軍による苦肉の策であり、兵員不足を補う根本的な解決策とはなっていないばかりか、一般住民の反感を買って軍の立場を窮地に追い込む結果になっている」、これではどうしようもないようだ。しかし、国民の無駄な犠牲は続くが、これを止められるのは、中国と日本だが、日本は何故か腰が重いようだ。
先ずは、本年3月19日付け現代ビジネス「少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107805?imp=0
・『軍政の残虐非道な行動が明らかに(ミン・アウン・フライン司令官率いるミャンマー軍事政権は2022年から2023年にかけて反軍政の抵抗を続ける市民組織「国民防衛軍(PDF)」などへの弾圧を強化しており、その過程で一般市民の殺害も増加している。 そうした中でも特に未成年の若者や女性を虐殺するケースが相次いで報告され、人権侵害がこれまで以上に深刻化しているという。 さらに2023年3月13日にはミャンマーの独立系メディアが仏教寺院に避難していた一般市民と同時に僧侶をも殺害していたことを報じた。 ミャンマーは国民の90%を仏教徒が占める国で、僧侶は国民の尊敬を集める対象となっているだけに、僧侶まで殺害するという軍政の容赦ない姿勢は反軍政を掲げる国民の反感と怒りを高めている。 こうした軍政の残虐非道な行動は、2月2日に戒厳令を7郡区から37郡区に拡大し、同月22日にもさらにサガイン地方域で3郡区を追加するなどして、抵抗勢力との戦闘が激化している地方での軍の権力を強化したことと関係があるとみられている。 2021年2月のクーデター以降すでに2年以上が経過しながらも、国内の治安が一向に安定せず、8月に予定している「民主的な総選挙」の実施も危ぶまれる状況に対する軍政の焦りが背景にあるとの見方が有力視されている。 軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図しているとされ、各地から報告される兵士による残虐行為はその反映とされている』、「軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図している」、なるほど。
・『寺院の避難民を僧侶と共に殺害 独立メディア「ミャンマー・ナウ」はミャンマー北東部シャン州南部ピンラウン郡区のナンニント村で市民ら29人が殺害されているのを地元抵抗勢力である「カレンニー民族防衛隊(KNDF)」が3月13日の声明で明らかにしたと伝えた。29人の中には仏教僧侶3人が含まれていたとしている。 KNDFなどによると、軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている。 ナンニント村の大半の住民は軍による攻撃激化を恐れて数週間前にすでに村外に避難していたが、僧侶が避難をせずに村に留まったことから20数人の男性村人が共に村に残り、空襲・砲撃を逃れるために寺院に避難していたという。 KNDFはナンニント村の状況を確認するためにドローンで上空から偵察していたところ、寺院で多数の遺体を発見したものの兵士が撤退するのを待ったため現場の寺院には12日までたどり着けなかったとしている。 KNDFのミャンマー語のホームページには殺害現場の生々しい写真が複数アップされ、民族衣装であるロンジーをまとった多数の男性が銃撃を受けて頭部や上半身などから血を流して寺院の外壁周辺に倒れている様子が写っている。 死者の間にはサフラン色の僧衣をまとった仏教僧侶が僧衣の一部を血に染めて横たわっており、寺院の外壁にも多数の弾痕が残されている。住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという。 この寺院襲撃、僧侶殺害に関し、軍政のゾー・ミン・トゥン報道官はメディアに対して武装市民組織と民間人の何人かが死亡したことは確認したものの「地元のPDFメンバーによる殺害である」として兵士の関与を否定した』、「軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている」、「住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという」、酷いものだ。
・『若者を虐殺、斬首で遺体放置 独立系メディアなどによると、2月25日に北西部サガイン地方域ミンム郡区ニャウン・ピンカン村付近で武装市民組織PDFと軍による戦闘が発生した。PDF側が弾薬不足のため退却する際に退路に地雷を埋設していた若者5人が軍に拘束された。 その後若者5人の遺体が発見されたが、うち3人は斬首され、頭部が竹柵や荷車の上に「晒し首」状態で放置されており、中には手足が切断された遺体もあったという。遺体には銃創が一切ないことから、若者らは生きたまま斬首された可能性が高いとみられている。 兵士は殺害した若者の携帯電話を取り上げて犠牲者の親族や友人に電話をかけて「死を祝っている」と述べたうえ、犠牲者を罵倒し続けたという。 斬首されたのは15歳の少年、17歳と19歳の青年で、いずれも地元の武装市民組織を手伝い地雷を設置していたところを軍に拘束され、虐殺されたという。事件を伝える独立メディアのウェブサイトには3人の若者がほほ笑む生前の写真がアップされている。 同村周辺ではさらに2人の若者の殺害遺体も発見されているほか、サガイン地方域カン・タイン村では別の男性2人の斬首遺体が発見され、同地方域ミンム郡区ニャウンイン村では16人が殺害されている。 このように国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている。 このほか10月には北部カチン州ハパカント近郊の村で軍政に抵抗を続ける少数民族武装勢力やその支持者、一般市民が参加して開催中のコンサート会場を軍が空爆して地元の著名女性歌手や男性演奏家、多数の観衆が殺害される事件も起きている』、「国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている」、なるほど。
・『レイプして殺害される女性たち 3月2日、サガイン地方域サガイン群区タルタイン村で女性3人を含む住民が軍に拘束されて「人間の盾」として戦闘現場に立たされたことが報じられた。 さらに同じ日、同地方域ミンム群区ニャウンイン村でレイプされた女性の遺体が発見されたほか。同村では計14人の遺体が発見されたが、その中にはレイプされ顔面や頭部を激しく殴打された痕跡の残る女性3人の遺体も含まれていたという。 2022年8月27日には、サガイン地方域カニ郡区タイエットピンブラ村に進入した兵士らが民家に取り残された知的障害のある40代の女性を屋外に連れ出して複数の兵士がレイプした。 また同月11日には同地方域インマビン群区インバウンテン村で10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も明らかになっている』、「10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も明らかに」、自国民に対する残虐行為も度を越している。
・『激化する人権侵害事件 このように軍は2022年から、各地で抵抗を続ける武装市民組織メンバーに対する掃討作戦を通じて一般市民を巻き込んだ強権的弾圧を強化、女性や若者をも無差別に殺害しているが、国民の尊敬と信仰の対象である仏教僧侶まで容赦なく殺害するという暴挙に対し内外から厳しい批判が高まっている。 戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている。 タイ西部ターク県メーソットに本拠を置くミャンマーの人権団体「ミャンマー政治犯支援協会(AAPP)」によると、3月14日現在、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている』、「戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている・・・ミャンマーの人権団体「ミャンマー政治犯支援協会(AAPP)」によると、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている」、「人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている」、その通りだ。
次に、8月8日付け現代ビジネスが掲載したPanAsiaNews記者の大塚 智彦氏による「ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺、検問所爆破、戦闘機撃墜も」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114446?imp=0
・『実質的な内戦状態にあり治安状況が深刻化しているミャンマーで、ミン・アウン・フライン国軍司令官率いる軍政は7月31日に期限を迎えた非常事態宣言を6ヵ月延長することを決めた。これにより軍政が目指す「民政移管の為の民主的選挙」の実施は2024年2月以降にずれ込むことが確定し、軍政の強権弾圧政治が続くことになった。 軍政が非常事態宣言を延長した理由は国軍司令官が「武装した暴力が続いている。選挙は時期尚早で用意周到に準備する必要がある。当面の間我々が責任を負わなければならない」と述べたように、国内の治安が予想に反して一向に安定せず、各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や国境地帯を拠点とする少数民族武装勢力が軍や警察を攻撃し、軍も住民に対して暴力や虐殺を続けるなど、全土で戦闘が激化していることが背景にある』、「国内の治安が予想に反して一向に安定せず、各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や国境地帯を拠点とする少数民族武装勢力が軍や警察を攻撃し、軍も住民に対して暴力や虐殺を続けるなど、全土で戦闘が激化している」、ような状況では、「選挙」の延期は当然だ。
・『PDFによる軍への攻撃 軍政に抵抗する立場から報道を続けているミャンマーの独立系メディア「イラワジ」は7月31日、ミャンマー各地でのPDFと軍の戦闘を詳しく伝えた。 それによると戦闘は北西部のザガイン地方域、チン州、西部のカレン州(カイン州)中部のマンダレー地方域、南部のタニンダーリ地方域、東部のシャン州の各地で発生とミャンマーのほぼ全域に渡り、治安状況が軍政にとって深刻な問題になっていることが裏付けられている。 マンダレー地方域では7月27日、タベイッキン郡区でイラワジ川を航行していた軍の9隻の船団に対し、同地方域やザガイン地方域から集結した37のPDF組織が共同で待ち伏せ攻撃を敢行した。 船団の2隻を破壊したが、別の船から発砲があり川中の船と沿岸8ヵ所との間で激しい銃撃戦が交わされた。その後、船団は現場を逃れたため軍兵士の死傷者数は明らかになっていないが、同船団は食料や武器、弾薬、人員を補充するため輸送中だったとしている。 チン州ミンダット郡区では7月30日、パトロール中の軍の車列を地元のPDFが待ち伏せ攻撃し兵士8人を殺害した。さらに7月28日にはザガイン地方域モンユワ郡区にある軍の北西司令部をPDFが107ミリロケット弾で攻撃し、軍施設に損害を与えたという。 このほかにもタニンダーリ地方域では地元PDF部隊が地雷6つを使って軍を攻撃し、兵士10人を殺害したと報じた。 こうした一連の攻撃で軍側には少なくとも89人の犠牲を強いたと各地のPDFは報告しており、軍側の被害が拡大していることを印象付けた』、「戦闘は北西部のザガイン地方域、チン州、西部のカレン州(カイン州)中部のマンダレー地方域、南部のタニンダーリ地方域、東部のシャン州の各地で発生とミャンマーのほぼ全域に渡り、治安状況が軍政にとって深刻な問題になっていることが裏付けられている」、「こうした一連の攻撃で軍側には少なくとも89人の犠牲を強いたと各地のPDFは報告しており、軍側の被害が拡大していることを印象付けた」、なるほど。
・『戦闘機を地上から撃墜 軍政は戦闘機や爆撃機、ヘリコプターなどで掌握している制空権を利用して各地のPDF拠点への空からの攻撃を強化しているが、学校や仏教寺院などの被害も拡大しており、「無差別空爆」を行っている可能性もあるという。 そんな中、東部カヤー州パウラケ郡区にある少数民族武装勢力「カレンニ民族人民解放戦線(KNPLF)」の拠点を攻撃するために戦闘機1機が低空飛行で接近した際、地上からの銃撃などで撃墜に成功したとKNPLFが明らかにした。 KNPLFによると、特に対空兵器があった訳ではないが、メンバーによる必死の攻撃で墜落させた、と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させたという。 この戦闘機はイワルティット村近くに墜落したが同村周辺は軍の支配地域のため、墜落した戦闘機の詳しい情報は当初不明だった。軍が急いで機体の残骸を片付けてしまったことも影響しているが、KNPLFは、その後詳細が明らかになったとしている。 それによると同機はK8Wという戦闘機で、空軍の大尉と中尉が乗り込んだ複座で、タウング空軍基地から攻撃のため発進した。その後、空軍は、犠牲となった2人のパイロットをそれぞれ少佐、大尉に昇進させ功績を讃えたという。 さらに7月31日には、カレン州パアン郡区サルウィン橋に設けられていた軍の検問所が地元PDFによって爆破され、民間人1人が死亡、兵士7人を含む10数人が負傷したという。検問所の兵士が近くに駐車していた車両を不審に思って調べようとしたところ爆発したとカレン情報センター(KIC)が情報提供した』、「戦闘機1機が低空飛行で接近した際、地上からの銃撃などで撃墜に成功したとKNPLFが明らかにした。 KNPLFによると、特に対空兵器があった訳ではないが、メンバーによる必死の攻撃で墜落させた、と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、「特に対空兵器があった訳ではないが・・・と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、大したものだ。
・『軍が住民14人を虐殺 一方、軍も各地で強力な抵抗を続けるPDFへの攻撃を激化させている。 独立系メディア「ミャンマー・ナウ」が7月31日に伝えたところによると、ザガイン地方域モンユウのチンドウィン川西岸にあるソネチャウン村で住民14人の虐殺があったという。 それによると、雨の降る深夜、ソネチャウン村に約60人の兵士が侵入、民家を訪れては懐中電灯で住民の顔を照らし、地元PDFの幹部を探しだそうとした。犬が大きく吠えて多くの住民が起きたが、当初は軍の接近を住民に連絡する訪問と思って扉を開けた人が多かったという。 軍はミョー・ミン・ウー氏(42)を捜索し、彼を見つけると同じ家にいた兄弟や子供と一緒に拘束した。さらに、PDF関係者とみられる住民を次々と拘束し「武器をどこに隠した」と拷問を加えながら尋問を続けた。拘束された住民はPDFとの関係を否定し、武器の所在も知らないと主張したという。 翌日の明け方には、ミョー・ミン・ウー氏をはじめとする拘束されいた14人の遺体が村のあちこちに放置されているのが見つかった。遺体には拷問の跡や刃物による傷など虐待の痕跡が残され、残虐な手段で虐殺されたことを物語っていた。 兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪するなどの行為を行って村を去ったと報じ、軍の行動を非難した』、「ミョー・ミン・ウー氏をはじめとする拘束されいた14人の遺体が村のあちこちに放置されているのが見つかった。遺体には拷問の跡や刃物による傷など虐待の痕跡が残され、残虐な手段で虐殺されたことを物語っていた。 兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪するなどの行為を行って村を去ったと報じ、軍の行動を非難」、酷いものだ。
・『柔軟姿勢はあくまで表向き(8月1日、ミン・アウン・フライン国軍司令官は非常事態宣言を延長するとともに、アウン・サン・スー・チーさんを含めた政治犯など約7000人に対する恩赦を発表した。 これにより19のいわれなき罪状で訴追され2022年12月に合計禁固33年の判決を受けて収監されていたスー・チーさんは、5件の刑で計6年の減刑措置を受けた。スー・チーさんの残る刑期は27年となったものの、78歳という年齢を考えると、実質的には終身刑と同じといえる。 軍政は恩赦に先立ち、スー・チーさんをそれまで収容していた首都ネピドー近郊の刑務所内に設けた特別な施設から刑務所外にある政府関係者の民家に移送したという。 さらに7月には、ネピドーを訪問したタイのドーン外相とスー・チーさんとの面会を特別に許可し、両者は直接対面して会談した。スー・チーさんが外国の閣僚と面会するのは2021年2月1日のクーデターで軍によって身柄を拘束されて以来初めてであった。 このように軍政は、スー・チーさんに対し、刑務所外への移送、タイの外相との面会許可、そして恩赦による刑期短縮と「柔軟姿勢」ともとれる措置を相次いで講じているが、これには非常事態宣言の延長という強権政治の継続に対する欧米や東南アジア諸国連合(ASEAN)の批判を交わす狙いがあるとみられている。 しかしこうした「柔軟姿勢」の一方でPDFや少数民族武装勢力など反軍政の抵抗勢力との戦闘を激化させており、武力衝突は依然として内戦状態と言っても過言ではない状況となっている。 この衝突で軍の兵士そして抵抗組織、さらに一般住民の犠牲は増える一方で、軍による人権侵害とともにミャンマー情勢をより深刻かつ複雑なもにしている。 ミャンマー問題の解決の糸口は、一向に見えてこない。・・・・・ さらに連載記事『少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃』では、“もうひとつの現実”について詳報しています』、「合計禁固33年の判決を受けて収監されていたスー・チーさんは、5件の刑で計6年の減刑措置を受けた。スー・チーさんの残る刑期は27年となったものの、78歳という年齢を考えると、実質的には終身刑と同じといえる」、「タイのドーン外相とスー・チーさんとの面会を特別に許可」、これは「欧米や東南アジア諸国連合(ASEAN)の批判を交わす狙い」、「一方でPDFや少数民族武装勢力など反軍政の抵抗勢力との戦闘を激化させており、武力衝突は依然として内戦状態と言っても過言ではない状況となっている」、なるほど。
第三に、9月3日付け現代ビジネスが掲載したPanAsiaNews記者の大塚 智彦氏による「ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/115692?imp=0
・『国軍兵士の「寝返り」 軍政と武装抵抗勢力との戦闘が続き実質的な内戦状態にあるミャンマーで、正規軍の中で戦線離脱や部隊離反などによる脱走兵が増加し、その大半が敵対する民主派勢力「国民防衛軍(PDF)」に加わっていることが、ミャンマーの独立系メディアなどの報道で明らかになった。 国軍兵士の「寝返り」ともいえるこの現象は、2021年2月に軍がアウン・サン・スー・チーさん率いる民主政府から実権を奪取したクーデター以来続く傾向というが、2023年になってその数はさらに増加傾向にあると指摘されている。 「ミン・アウン・フライン国軍司令官でさえ実際に国軍兵士の正確な兵力(兵士の数)を把握できていない」と言われるほど、最前線の部隊では定員数と実際の兵士の数に大きなギャップが生じているという。 こうした深刻な事態に軍政は政府職員や自治体職員をリクルートして兵力不足を補おうとしているが、職業軍人ではない「動員された兵士」ほど寝返る傾向が強く、不足が補えない状況が続いている。 一方のPDF側は国軍兵士の投降を呼びかける運動を強め、武器や弾薬、軍用車両などを持参しての寝返りには報奨金を用意するなどと宣伝して国軍兵力の数的弱体化を試みている。 このような国軍の兵力低下は、PDF戦闘員や一般住民に対する空爆、民家放火や拷問、暴力や残虐な殺害行為、人間の盾としての利用などを激化させるという行動のエスカレートを招いているとされ、そこに国軍の焦燥感が如実に現われているといわれている』、「最前線の部隊では定員数と実際の兵士の数に大きなギャップが生じているという。 こうした深刻な事態に軍政は政府職員や自治体職員をリクルートして兵力不足を補おうとしているが、職業軍人ではない「動員された兵士」ほど寝返る傾向が強く、不足が補えない状況が続いている。 一方のPDF側は国軍兵士の投降を呼びかける運動を強め、武器や弾薬、軍用車両などを持参しての寝返りには報奨金を用意するなどと宣伝して国軍兵力の数的弱体化を試みている」、なるほど。
・『過去4ヵ月で500人が離反 独立系メディア「イラワジ」が8月25日伝えたところによると、最近開催された軍政に対抗する民主派組織「国家統一政府(NUG)」の第28回閣議で、マー・ウィン・カイン・タン首相が「過去4ヵ月の間に約500人の国軍兵士が軍を離脱、脱走した」と報告した。この500人の中には大隊副司令官という軍幹部も含まれているという。 今年8月に入ってからだけでも50人以上が国軍を離れており、軍の兵力低下が深刻な問題となっているとの見方を示した。こうした動きは西部チン州、東部カヤー州、カレン州などでも報告され、兵士の部隊離反が全国的に起きているとNUGではみている。 NUGによると、2021年2月のクーデター以来、少なくとも15000人の兵士と警察官が寝返って民主派の「不服従運動(CDM)」に参加しているという。軍政側は兵士の死傷者や行方不明者、脱走者などの数字を明らかにしていないが、NUG側が指摘した数字はある程度実態を反映しているとの見方が有力だ。 寝返った兵士や警察官は「国民防衛軍(PDF)」に加わって軍との戦闘に参加するほか、単に逃亡して密かに暮らしているかのどちらかであるという。 こうした事態に軍政側は兵士を軍に引き留めるために、休暇の奨励、芸能人らによる部隊慰問、指揮官は兵士と共に食事をとりコミュニケーションを密にするなど、あの手この手の対策を講じているとされる。 これに対しNUG側は兵士や警察官に離脱を勧めており、武器や弾薬、航空機や艦船と共に寝返った兵士らには多額の現金を付与するという報奨金制度を設けている』、「「過去4ヵ月の間に約500人の国軍兵士が軍を離脱、脱走した」と報告した。この500人の中には大隊副司令官という軍幹部も含まれているという。 今年8月に入ってからだけでも50人以上が国軍を離れており、軍の兵力低下が深刻な問題となっている」、「NUGによると、2021年2月のクーデター以来、少なくとも15000人の兵士と警察官が寝返って民主派の「不服従運動(CDM)」に参加しているという・・・寝返った兵士や警察官は「国民防衛軍(PDF)」に加わって軍との戦闘に参加するほか、単に逃亡して密かに暮らしているかのどちらかであるという」、「NUG側は兵士や警察官に離脱を勧めており、武器や弾薬、航空機や艦船と共に寝返った兵士らには多額の現金を付与するという報奨金制度を設けている」、なるほど。
・『寝返った元国軍兵士の証言 「イラワジ」は8月26日、同月1日に入手したという軍の文書に基づき各地の部隊で兵員不足が深刻な問題となっていると指摘した。 その文書は北東部シャン州に拠点を置く歩兵114大隊から国軍上層部に報告されたものとみられ、少なくとも857人の大隊要員が必要にもかかわらず実際には132人しか兵士がいないことを訴えている。 また、その132人の兵士のうち基地防衛のために62人を残し、半数以上の70人が基地を出て最前線での戦闘に従事しているという実態も記述されている。 さらに別の文書では、シャン州の国境問題担当の大佐が地区総務部門関係者に対して警察官を除く全ての公務員の名簿を提出するよう要請したことが記されている。このことから兵員不足を緊急に解消するために公務員を民兵または予備軍兵士に転換することを州政府が計画していることが分かるとしている。 同じ26日に「イラワジ」は元国軍兵士であるテット・ミャット元陸軍大尉のインタビュー記事を掲載した。ミャット氏は2021年6月に軍を離反し軍政に抵抗する市民の「不服従運動(CDM)」に参加、以後抵抗勢力側に協力して現役の兵士や将校の離反、逃亡の手助けを続けているという。 ミャット氏によると「イラワジ」が入手し報道した文書は「本物と思われる」とした上で、「各大隊は毎月兵員数などの情報を上部機関に報告する必要がある。大隊は兵士の定員数が約800人なのだが、どこの大隊もその数を満たしていないのが実情だ」と述べて文書の信憑性とともに国軍の兵員数逼迫が事実であるとの見方を示した』、「歩兵114大隊から国軍上層部に報告されたものとみられ、少なくとも857人の大隊要員が必要にもかかわらず実際には132人しか兵士がいないことを訴えている。 また、その132人の兵士のうち基地防衛のために62人を残し、半数以上の70人が基地を出て最前線での戦闘に従事しているという実態も記述されている」、驚くほどの欠員ぶりだ。
・『公務員を民兵や予備軍に採用 軍政が兵力不足を深刻に考えていることは近年、地方の行政機関などで働く公務員を軍になかば強制的に採用し、民兵や予備軍に編入して部隊に送り込んでいることに現れている、とミャット氏は指摘している。 The Irrawaddy より 臨時採用され兵士として前線に送られた公務員出身者などは、戦闘で生命の危機に直面した場合に容易に投降する傾向がみられ、それもまた兵員不足の一因として軍政の悩みの種となっているという。 公務員以外にも、地方の住民で食糧難や滞在場所のない人々を脅迫して採用するというケースも報告されるなど、軍の兵員不足の深刻さが浮き彫りとなっている。公務員や一般住民からの臨時兵士の他、正規軍兵士の前線からの離脱者も多く、「先見の明がある兵士」や「民主化弾圧に疑問を抱く兵士」らが「抵抗組織からの誘い」などを理由に寝返る傾向があるという。 そしてミャット氏は「イラワジ」に対して、「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要があるとの言葉で結んだ』、「公務員以外にも、地方の住民で食糧難や滞在場所のない人々を脅迫して採用するというケースも報告されるなど、軍の兵員不足の深刻さが浮き彫りとなっている。公務員や一般住民からの臨時兵士の他、正規軍兵士の前線からの離脱者も多く、「先見の明がある兵士」や「民主化弾圧に疑問を抱く兵士」らが「抵抗組織からの誘い」などを理由に寝返る傾向があるという。 そしてミャット氏は「イラワジ」に対して、「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要」、なるほど。
・『一般住民を逮捕し人間の盾に 国軍は最近、抵抗勢力PDFや国境周辺での少数民族武装勢力との戦闘の中で、兵力不足を補う策として、一般住民を逮捕して、人間の盾として利用する作戦を実行しているという。 8月25日、北部カチン州パカント郡にあるナントヤール村、カットマウ村、サインパラ村に約30人の兵士が夜陰に紛れて侵入し、村人ら約100人を逮捕、連行したという。 軍はその後、パカント村に進軍するに際し、逮捕した住民を人間の盾として最前線に立たせたり、地雷が埋設されている可能性のある場所を強制的に歩かせたりして兵士の犠牲を最小限にしようとする作戦をとっている、と抵抗勢力はみている。 こうした作戦は軍による苦肉の策であり、兵員不足を補う根本的な解決策とはなっていないばかりか、一般住民の反感を買って軍の立場を窮地に追い込む結果になっている。 住民を敵に回しても民主化抵抗勢力との戦闘を継続しなければならない軍政の焦りが背景にあるのは間違いない。 2021年2月のクーデター以来、軍政は全土での治安安定という目標を達成できず、今年7月31日に非常事態宣言を半年間延長したことで2023年内に予定していた総選挙も2024年2月以降に延期せざるを得ない状況となっており、ますます苦境に陥っているのが実情だ』、「軍はその後、パカント村に進軍するに際し、逮捕した住民を人間の盾として最前線に立たせたり、地雷が埋設されている可能性のある場所を強制的に歩かせたりして兵士の犠牲を最小限にしようとする作戦をとっている、と抵抗勢力はみている。 こうした作戦は軍による苦肉の策であり、兵員不足を補う根本的な解決策とはなっていないばかりか、一般住民の反感を買って軍の立場を窮地に追い込む結果になっている」、これではどうしようもないようだ。しかし、国民の無駄な犠牲は続くが、これを止められるのは、中国と日本だが、日本は何故か腰が重いようだ。
タグ:(その7)(少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺 検問所爆破 戦闘機撃墜も、ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない) ミャンマー 現代ビジネス「少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃」 「軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図している」、なるほど。 「軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている」、「住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという」、酷いものだ。 「国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている」、なるほど。 「10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も明らかに」、自国民に対する残虐行為も度を越している。 「戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている・・・ミャンマーの人権団体「ミャンマー政治犯支援協会(AAPP)」によると、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている」、 「人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている」、その通りだ。 現代ビジネス 大塚 智彦氏による「ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺、検問所爆破、戦闘機撃墜も」 「国内の治安が予想に反して一向に安定せず、各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や国境地帯を拠点とする少数民族武装勢力が軍や警察を攻撃し、軍も住民に対して暴力や虐殺を続けるなど、全土で戦闘が激化している」、ような状況では、「選挙」の延期は当然だ。 「戦闘は北西部のザガイン地方域、チン州、西部のカレン州(カイン州)中部のマンダレー地方域、南部のタニンダーリ地方域、東部のシャン州の各地で発生とミャンマーのほぼ全域に渡り、治安状況が軍政にとって深刻な問題になっていることが裏付けられている」、「こうした一連の攻撃で軍側には少なくとも89人の犠牲を強いたと各地のPDFは報告しており、軍側の被害が拡大していることを印象付けた」、なるほど。 「戦闘機1機が低空飛行で接近した際、地上からの銃撃などで撃墜に成功したとKNPLFが明らかにした。 KNPLFによると、特に対空兵器があった訳ではないが、メンバーによる必死の攻撃で墜落させた、と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、「特に対空兵器があった訳ではないが・・・と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、大したものだ。 「ミョー・ミン・ウー氏をはじめとする拘束されいた14人の遺体が村のあちこちに放置されているのが見つかった。遺体には拷問の跡や刃物による傷など虐待の痕跡が残され、残虐な手段で虐殺されたことを物語っていた。 兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪するなどの行為を行って村を去ったと報じ、軍の行動を非難」、酷いものだ。 「合計禁固33年の判決を受けて収監されていたスー・チーさんは、5件の刑で計6年の減刑措置を受けた。スー・チーさんの残る刑期は27年となったものの、78歳という年齢を考えると、実質的には終身刑と同じといえる」、「タイのドーン外相とスー・チーさんとの面会を特別に許可」、これは「欧米や東南アジア諸国連合(ASEAN)の批判を交わす狙い」、 「一方でPDFや少数民族武装勢力など反軍政の抵抗勢力との戦闘を激化させており、武力衝突は依然として内戦状態と言っても過言ではない状況となっている」、なるほど。 大塚 智彦氏による「ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない」 「最前線の部隊では定員数と実際の兵士の数に大きなギャップが生じているという。 こうした深刻な事態に軍政は政府職員や自治体職員をリクルートして兵力不足を補おうとしているが、職業軍人ではない「動員された兵士」ほど寝返る傾向が強く、不足が補えない状況が続いている。 一方のPDF側は国軍兵士の投降を呼びかける運動を強め、武器や弾薬、軍用車両などを持参しての寝返りには報奨金を用意するなどと宣伝して国軍兵力の数的弱体化を試みている」、なるほど。 「「過去4ヵ月の間に約500人の国軍兵士が軍を離脱、脱走した」と報告した。この500人の中には大隊副司令官という軍幹部も含まれているという。 今年8月に入ってからだけでも50人以上が国軍を離れており、軍の兵力低下が深刻な問題となっている」、 「NUGによると、2021年2月のクーデター以来、少なくとも15000人の兵士と警察官が寝返って民主派の「不服従運動(CDM)」に参加しているという・・・寝返った兵士や警察官は「国民防衛軍(PDF)」に加わって軍との戦闘に参加するほか、単に逃亡して密かに暮らしているかのどちらかであるという」、「NUG側は兵士や警察官に離脱を勧めており、武器や弾薬、航空機や艦船と共に寝返った兵士らには多額の現金を付与するという報奨金制度を設けている」、なるほど。 「歩兵114大隊から国軍上層部に報告されたものとみられ、少なくとも857人の大隊要員が必要にもかかわらず実際には132人しか兵士がいないことを訴えている。 また、その132人の兵士のうち基地防衛のために62人を残し、半数以上の70人が基地を出て最前線での戦闘に従事しているという実態も記述されている」、驚くほどの欠員ぶりだ。 「公務員以外にも、地方の住民で食糧難や滞在場所のない人々を脅迫して採用するというケースも報告されるなど、軍の兵員不足の深刻さが浮き彫りとなっている。公務員や一般住民からの臨時兵士の他、正規軍兵士の前線からの離脱者も多く、「先見の明がある兵士」や「民主化弾圧に疑問を抱く兵士」らが「抵抗組織からの誘い」などを理由に寝返る傾向があるという。 そしてミャット氏は「イラワジ」に対して、「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要」、なるほど。 「軍はその後、パカント村に進軍するに際し、逮捕した住民を人間の盾として最前線に立たせたり、地雷が埋設されている可能性のある場所を強制的に歩かせたりして兵士の犠牲を最小限にしようとする作戦をとっている、と抵抗勢力はみている。 こうした作戦は軍による苦肉の策であり、兵員不足を補う根本的な解決策とはなっていないばかりか、一般住民の反感を買って軍の立場を窮地に追い込む結果になっている」、 これではどうしようもないようだ。しかし、国民の無駄な犠牲は続くが、これを止められるのは、中国と日本だが、日本は何故か腰が重いようだ。
台湾(その5)(いきなり数千発のミサイルが沖縄に…米国の大学教授が予想した「中国の台湾進攻」の絶望的シナリオ アメリカの選択肢は軍事的後退と核使用の2択、自衛隊員2500人 米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション 開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅、迫り来る「台湾有事」に無防備すぎる日本企業 中国の在留邦人10万人は取り残されるのか) [世界情勢]
台湾については、本年2月13日に取上げた。今日は、(その5)(いきなり数千発のミサイルが沖縄に…米国の大学教授が予想した「中国の台湾進攻」の絶望的シナリオ アメリカの選択肢は軍事的後退と核使用の2択、自衛隊員2500人 米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション 開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅、迫り来る「台湾有事」に無防備すぎる日本企業 中国の在留邦人10万人は取り残されるのか)である。
先ずは、本年2月17日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究院(SAIS)特別教授 ハル・ブランズ氏とタフツ大学政治学部准教授のマイケル・ベックリー氏による「いきなり数千発のミサイルが沖縄に…米国の大学教授が予想した「中国の台湾進攻」の絶望的シナリオ アメリカの選択肢は軍事的後退と核使用の2択」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/66598?page=1
・『中国の台湾進攻はあり得るのか。起きるのであればいつなのか。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のハル・ブランズ教授とタフツ大学マイケル・ベックリー准教授による共著『デンジャー・ゾーン』(訳:奥山真司、飛鳥新社)より、一部を紹介しよう――』、「いきなり数千発のミサイルが沖縄に」とタイトルはセンセーショナルだ。
・『中国の台湾への軍事攻撃は成功するのか 2020年9月、人民解放軍は台湾海峡で、この25年間で最も攻撃的な軍事力の誇示を開始した。台湾の防空識別圏への侵入は急増している。中国軍の任務部隊の中には、30機以上の戦闘機と6隻の艦艇を従えて、ほぼ一日おきに海峡を徘徊しているものもある。その多くは、台湾と中国の双方が何十年間にもわたって尊重してきた境界線である「中間線」を突破している。 これらの部隊の中には、パトロール中にフィリピンと台湾の間を航行するアメリカの空母や駆逐艦への攻撃をシミュレートする動きをしたものもある。また、中国は2020年に香港の民主化運動を鎮圧することで、台湾を平和的に説得できる時代が終わったことを示唆したのだ』、「中国は2020年に香港の民主化運動を鎮圧することで、台湾を平和的に説得できる時代が終わったことを示唆した」、確かにこれは重い意味を持つようだ。
・『アメリカ・台湾と中国の圧倒的な差 軍事攻撃は成功するだろうか? その答えは、つい最近まで「ノー」であった。 1990年代には台湾は中国に対して地理的・技術的に有利であったため、実質的に征服不可能だった。台湾海峡は台風や高波のおかげで危険な海域で、島そのものが自然の要塞となっている。東海岸は険しい断崖絶壁、西海岸は沖合数キロに広がる干潟で、激しい潮流もある。台湾には侵略してくる軍隊が上陸できるような砂浜さえ十数カ所しかない。アメリカと台湾の戦闘機と海軍の艦隊は、中国軍を決して近寄らせない状態を維持できていたのだ。 ところがそれ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊できると言われている。 中国のサイバーおよび対衛星能力は、アメリカ軍の重要なセンサーや人工衛それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊星を機能不全に陥れることで、同軍の耳と目と口をきけなくしてしまう恐れがある。中国の対艦ミサイルは、西太平洋を航行するアメリカの大型水上艦にとって、非常に危険になる。ここ25年間にわたり、人民解放軍は台湾征服のために執拗しつように準備してきた』、「1990年代には台湾は中国に対して地理的・技術的に有利であったため、実質的に征服不可能だった。台湾海峡は台風や高波のおかげで危険な海域で、島そのものが自然の要塞となっている」、「それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊できると言われている。 中国のサイバーおよび対衛星能力は、アメリカ軍の重要なセンサーや人工衛それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊星を機能不全に陥れることで、同軍の耳と目と口をきけなくしてしまう恐れがある。中国の対艦ミサイルは、西太平洋を航行するアメリカの大型水上艦にとって、非常に危険になる。ここ25年間にわたり、人民解放軍は台湾征服のために執拗しつように準備してきた」、かつてとは比べようもないほど「中国軍」が増強されたようだ。
・『「グアムキラー」の恐るべき実力 一方のアメリカは、この期間を通じて中東のテロリストとの戦いに明け暮れていた。最近ではNATOの東側の陣地を強化するために、ヨーロッパに部隊と武器を投入している。オバマ、トランプ、バイデンの各政権は、中国に対抗するため、アジアに軸足移動(ピボット)することを望んでいた。 だがこのような計画は、ISISの台頭やロシアのウクライナ侵攻など、他の地域で発生した案件によって覆されてきた。グローバルな勢力であるアメリカは、単一の不測の軍事案件に備える余裕もない。その結果、中国の軍事近代化に空軍と海軍が追いつけていない。 アジアにおけるアメリカの軍隊は、依然として少数の大型の軍艦と、露出した基地から運用される短距離戦闘機が主体で、これらはまさに、中国が奇襲ミサイル攻撃で破壊しうるものだ。アメリカは台湾から500マイル以内(無給油の戦闘機がガス欠になる前に帰還できる最大飛行距離)にたった2つの空軍基地しか持っていない。中国がこれらの基地を使えなくすれば、アメリカ軍は空母や、台湾から1800マイル離れたグアムから行動しなければならなくなる。 この距離と空中給油の必要性のために、アメリカ軍の出撃回数は半減させられ、そのせいで中国に台湾上空を支配するチャンスを与えてしまうことになる。 さらに悪いことに、中国は現在、グアムを攻撃できる爆撃機と弾道ミサイルを保有しており、本土から1000マイル以上離れて移動中の空母を攻撃できる可能性もある。これらの「グアムキラー」と「空母キラー」のミサイルが宣伝通り機能すれば、中国は東アジアにおけるアメリカの軍事力に損害を与えることができる』、「オバマ、トランプ、バイデンの各政権は、中国に対抗するため、アジアに軸足移動(ピボット)することを望んでいた。 だがこのような計画は、ISISの台頭やロシアのウクライナ侵攻など、他の地域で発生した案件によって覆されてきた。グローバルな勢力であるアメリカは、単一の不測の軍事案件に備える余裕もない。その結果、中国の軍事近代化に空軍と海軍が追いつけていない。 アジアにおけるアメリカの軍隊は、依然として少数の大型の軍艦と、露出した基地から運用される短距離戦闘機が主体で、これらはまさに、中国が奇襲ミサイル攻撃で破壊しうるものだ。アメリカは台湾から500マイル以内・・・にたった2つの空軍基地しか持っていない。中国がこれらの基地を使えなくすれば、アメリカ軍は空母や、台湾から1800マイル離れたグアムから行動しなければならなくなる。 この距離と空中給油の必要性のために、アメリカ軍の出撃回数は半減させられ、そのせいで中国に台湾上空を支配するチャンスを与えてしまうことになる」、なるほど。
・『台湾の圧倒的に不利な状況 台湾には、その遅れを取り戻す準備ができていない。徴兵制からプロフェッショナルによる志願制への移行の一環として、台湾は現役兵力を27万5000人から17万5000人に削減し、徴兵期間を1年間から4カ月へと短縮した。新兵は数週間の基礎訓練しか受けず、予備役の訓練は頻度が少なく内容も不十分だ。 また、台湾は兵站部隊を削減しており、これによって戦闘部隊への補給や基本的な整備を日常的に怠っている状態だ。そのため兵士は事故や貴重な弾薬の浪費を恐れて武器を使った訓練を避けている。 台湾のパイロットの飛行時間は、月に10時間未満である。また、戦車や攻撃ヘリの半数以上が使用不可能な状態で、多くの台湾人兵士が士気の低下に苦しんでいる。 要するに、中国は1914年のドイツや、1941年の日本のように、軍事面では有利だが有限のチャンスの窓を持っているということだ。台湾政府自身が認めているように、中国は台湾の守りを「麻痺」させることができそうだ』、「台湾は兵站部隊を削減しており、これによって戦闘部隊への補給や基本的な整備を日常的に怠っている状態だ。そのため兵士は事故や貴重な弾薬の浪費を恐れて武器を使った訓練を避けている。 台湾のパイロットの飛行時間は、月に10時間未満である。また、戦車や攻撃ヘリの半数以上が使用不可能な状態で、多くの台湾人兵士が士気の低下に苦しんでいる・・・台湾政府自身が認めているように、中国は台湾の守りを「麻痺」させることができそうだ」、「台湾」が自ら「守り」を弱めた理由は何なのだろう。ただ、いずれにしても、ちょっとやそっとの増強では到底追いつけないだろう。
・『2030年初頭までが中国のチャンスといえるワケ 台湾とアメリカはこの脅威を本格的に自覚しており、解決しなければならない重要な問題を特定し、それに応じた軍備の再編を始めている。だがアメリカと台湾の国防改革が大きな影響を与え始める現在から2030年代初頭までの間には、中国にもまだチャンスは残されている。 実際のところ、アメリカの巡洋艦、誘導弾を装備した潜水艦、長距離爆撃機の多くが退役する2020年代半ばには、両岸の軍事バランスは一時的に中国にかなり有利になると思われる。 アメリカ軍は実に多くの点で、まだロナルド・レーガンが築いた軍隊なのだ。とりわけアメリカ海軍と空軍の近代化は何十年にもわたって先送りにされてきた。現在その問題は深刻なものとなっている。 ペンタゴンが所有する主力艦や戦闘機の多くは、文字通りバラバラになっているか、燃え尽きようとしている。老朽化した船体や機体は新たなアップグレードだけでなく、中国の新軍と競争するために必要な最新のエンジン、センサー、弾薬を搭載することにも耐えられない状態だ。これらのアメリカの戦力は退役させなければならない。 だがそれらが退役すれば、アメリカ軍は東アジアに配備される、近代的な海軍火力の基本である垂直発射型ミサイルの発射管の数を数百本も減らすことになる。 一方で、中国はさらに数百の対艦・対地攻撃ミサイル、数十機の長距離爆撃機と水陸両用艦、そして中国本土から台湾の大半または全域を攻撃できるロケット発射システムを稼働させるだろう。 これはいわば「地政学的な時限爆弾」である。2020年代半ばから後半にかけての時期は、敵を倒して修正主義的な欲望を満たす上で、中国にとってこれほどの好機はない。あるペンタゴンの元高官が言ったように、アメリカはこの時期に台湾との戦いで「尻を蹴り上げられる」リスクを負うことになる』、「2020年代半ばから後半にかけての時期は・・・中国にとってこれほどの好機はない。あるペンタゴンの元高官が言ったように、アメリカはこの時期に台湾との戦いで「尻を蹴り上げられる」リスクを負うことになる」、やれやれ。
・『台湾進攻は2027年までのどこか このような動きを見て、中国の退役軍人や国営放送の報道機関では中国共産党に直ちに台湾に侵攻するよう促す声が上がっている。中国国民もそれに同意しているようだ。 国営の『環球時報』の2020年の調査によれば、本土の70%の人々が台湾の本土への統一のために武力行使することを強く支持しており、37%が「もし戦争が起こるなら、2025年までがベストだ」と考えているという。 中国政府高官たちは、プライベートな場では西側の専門家たちに向かって、中国共産党内で侵略を求める声が高まっており、習近平は「人民解放軍はそれをやり遂げることができる」と主張するタカ派や「イエスマン」たちに囲まれていると語っている。 おそらくそのためかもしれないが、習近平は「台湾の解放」に自分の正統性(レジティマシー)を賭けている。2017年に彼は台湾の統一が「中華民族の偉大な若返りを実現するための必然的な要件」であると発表した。そして2020年には中国共産党が「近代化された」軍隊を投入する予定の時期を、2034年から2027年に早めている。 2021年3月、当時インド太平洋軍司令官であったフィリップ・デービッドソン提督は、中国が今後6年以内に台湾を侵略する可能性があると警告した』、「国営の『環球時報』の2020年の調査によれば、本土の70%の人々が台湾の本土への統一のために武力行使することを強く支持しており、37%が「もし戦争が起こるなら、2025年までがベストだ」と考えているという。 中国政府高官たちは、プライベートな場では西側の専門家たちに向かって、中国共産党内で侵略を求める声が高まっており、習近平は「人民解放軍はそれをやり遂げることができる」と主張するタカ派や「イエスマン」たちに囲まれていると語っている」、「アメリカ海軍と空軍の近代化は何十年にもわたって先送りにされてきた。現在その問題は深刻なものとなっている。 ペンタゴンが所有する主力艦や戦闘機の多くは、文字通りバラバラになっているか、燃え尽きようとしている。老朽化した船体や機体は新たなアップグレードだけでなく、中国の新軍と競争するために必要な最新のエンジン、センサー、弾薬を搭載することにも耐えられない状態だ。これらのアメリカの戦力は退役させなければならない」、「おそらくそのためかもしれないが、習近平は「台湾の解放」に自分の正統性・・・を賭けている。2017年に彼は台湾の統一が「中華民族の偉大な若返りを実現するための必然的な要件」であると発表した。そして2020年には中国共産党が「近代化された」軍隊を投入する予定の時期を、2034年から2027年に早めている。 2021年3月、当時インド太平洋軍司令官であったフィリップ・デービッドソン提督は、中国が今後6年以内に台湾を侵略する可能性があると警告した」、「今後6年以内に台湾を侵略する可能性」とは大変だ。
・『「真珠湾攻撃」が中国の手本になる 中国は、台湾を圧迫して降伏させる選択肢をいくつか持っている。たとえば台北が支配しているが中国本土の海岸からわずか数キロしか離れていない沖合の露出した島の一つを奪取することや、海・空の封鎖を行う、あるいは単に誘導ミサイルで台湾を爆撃することなどだ。 だが、これらのオプションはアメリカと台湾に対処するための時間的余裕を与えることになるし、中国側もわざわざそれを与えるつもりはない。 彼らは1990年から91年のペルシャ湾戦争で、サダム・フセインの軍隊がいかに虐殺されたかを目の当たりにした。しかもこの時はペンタゴンが周辺に膨大な数の兵器を数週間で集め、しかも巨大な国際的な同盟を結集させている。 彼らは早い段階、つまり台湾とアメリカ軍が反撃してくる前に、激しく攻撃することが勝利への一番の近道であることを知っている。だからこそ中国の軍事ドクトリンでは、真珠湾攻撃のような形で相手を素早く武装解除することを目指しているのだ。そのためわれわれは本当に悲惨なシナリオを心配しなければならない』、「台湾とアメリカ軍が反撃してくる前に、激しく攻撃することが勝利への一番の近道であることを知っている。だからこそ中国の軍事ドクトリンでは、真珠湾攻撃のような形で相手を素早く武装解除することを目指しているのだ」、恐ろしいことだ。
・『沖縄に数千発のミサイルが降り注ぐ 最も可能性の高い戦争開始の形は、台湾、沖縄やグアムのアメリカ軍基地、日本を母港とするアメリカの空母打撃群の上に、陸上・空中から発射された中国のミサイル数千発が降り注いで始まる、というものだ。 台湾各地に潜んでいた中国の特殊部隊や諜報員たちが工作を開始し、軍事施設で爆弾を爆発させ、台湾の指導者を暗殺する。中国のサイバー攻撃は、台湾の重要なインフラを麻痺させるだろう。 また、人民解放軍はサイバー攻撃と、場合によっては地上発射型ミサイルを使って、アメリカ軍同士やワシントンとの通信手段となっている衛星を破壊し、数日から数週間にわたってアメリカ側の対応を不可能にしたり、そもそも何が起こっているのかをわからないようにするだろう。 人民解放軍のサイバー部隊は、それと並行してアメリカ本国でもトラブルを起こし、混乱を招いてアメリカ国内の政治紛争を悪化させるために、偽情報キャンペーンを展開することになるだろう。 その一方で、台湾海峡で軍事演習を行っていた中国艦艇の船団が、台湾の浜辺に向かって猛進し、その合間にも大陸にいる数十万の中国軍が、本格攻撃に備えて艦船やヘリコプターに乗り込み始めるだろう。小型の強襲揚陸艦が台湾海峡の民間フェリーの間から現れ、台湾軍が対応する前に重要な港や海岸を奪取しようとする可能性もある』、「台湾各地に潜んでいた中国の特殊部隊や諜報員たちが工作を開始し、軍事施設で爆弾を爆発させ、台湾の指導者を暗殺する。中国のサイバー攻撃は、台湾の重要なインフラを麻痺させるだろう。 また、人民解放軍はサイバー攻撃と、場合によっては地上発射型ミサイルを使って、アメリカ軍同士やワシントンとの通信手段となっている衛星を破壊し、数日から数週間にわたってアメリカ側の対応を不可能にしたり、そもそも何が起こっているのかをわからないようにするだろう」、中国側の初期戦術はその通りなのだろ。
・『勝利のためには核の可能性も 中国の奇襲攻撃で前方展開部隊の多くを失ったアメリカ軍が再び台湾に近づくには、数千マイル離れた場所から航空機と軍艦を投入し、ミサイル、スマート機雷、電磁波妨害などをかき分けながら戦わなければならないだろう。 さらにそのような兵力を集結させるには、攻撃的なロシアからNATOの東方側面を守るために配備されているような、他の重要な地域のアセットを引き離してくる必要があるかもしれない。そしてアメリカは一つの大国にしか対処できない軍備だけで二つの核武装した大国に対処するという、実に厳しい安全保障上の課題に直面するかもしれないのだ。 アメリカはグローバルなトレードオフに直面し、太平洋のアメリカ軍は、ベトナム戦争や第二次世界大戦以来の規模となる損失を被るだろう。アメリカの指導者たちはひどいジレンマに直面することになるかもしれない。つまり屈辱的な軍事的後退を受け入れるか、中国が後退しなければ核兵器を使うと脅すかだ。 2018年、国防専門家によるある有識者委員会は、核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性がある、と結論付けている。地政学的にこれ以上危険なことはない。 「恐ろしい2020年代」は厄介な10年間となりそうだ。なぜなら中国が厄介な地政学的な分岐点――衰退を避けるために大胆に行動することが可能であり、またそうすべき時点――に差しかかっているからだ』、「アメリカはグローバルなトレードオフに直面し、太平洋のアメリカ軍は、ベトナム戦争や第二次世界大戦以来の規模となる損失を被るだろう。アメリカの指導者たちはひどいジレンマに直面することになるかもしれない。つまり屈辱的な軍事的後退を受け入れるか、中国が後退しなければ核兵器を使うと脅すかだ。 2018年、国防専門家によるある有識者委員会は、核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性がある、と結論付けている。地政学的にこれ以上危険なことはない」、「核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性」、「アメリカ」が「核の黙示録」に頼れば、中国側も「核」で応戦するという悲劇的シナリオに追い込まれる可能性もある。或いは「アメリカ」が「「決定的な軍事的敗北」を被る」方を選択した場合には、「中国の天下」が続くという嫌な時代になる可能性も覚悟する必要がありそうだ。
次に、3月29日付けPRESIDENT Onlineが掲載したフリーライター・翻訳者の青葉 やまと氏による「自衛隊員2500人、米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション 開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67914?page=1
・『中国軍は結局のところ「日米の応戦に圧倒される」 台湾有事をめぐる緊張が高まっている。中国の習近平国家主席は台湾統一への意欲を明言しており、武力攻撃の現実味は増している。 仮に有事に発展した場合、台湾は中国の人民解放軍に対抗し、主権を維持することが可能なのだろうか。また、近隣国である日本にどのような影響が及び得るのだろうか。 日本のシンクタンクである笹川平和財団が実施し、日経アジアが報じた戦闘シミュレーションによると、仮に中国が武力行使に及んだ際にも、台湾の主権を奪う試みは失敗に終わるとの予測が示された。米シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)が1月に示した机上戦闘シミュレーションも、同様の傾向を示した。 ただし、どちらのシミュレーションも、その陰には日米の多大な代償が伴うおそれがあると物語っている。前者では、日米は合わせて500機以上の戦闘機を失うとの試算結果が出た。 その内容は海外のニュースメディアにも報じられるところとなった。米軍事分析サイトのソフリプは、CSISの分析を報じ、中国軍は結局のところ「日米の応戦に圧倒される」と述べている。 一方で同記事は、「言うまでもなく、中国は数十発の中距離および中距離・準中距離弾道ミサイルを保有しており、その気になれば日本を簡単に攻撃することができる」とも述べ、改めて中国の脅威を警告している』、「笹川平和財団」の「戦闘シミュレーション」によれば、「仮に中国が武力行使に及んだ際にも、台湾の主権を奪う試みは失敗に終わるとの予測」、「米シンクタンク・戦略国際問題研究所」も「同様の傾向」を示した。しかし、「どちらのシミュレーションも、その陰には日米の多大な代償が伴うおそれがあると物語っている。前者では、日米は合わせて500機以上の戦闘機を失うとの試算結果」、なるほど。
・『日本は144機の戦闘機を失い、自衛隊員2500人が死傷する 笹川平和財団は1月下旬、4日間を投じ、中国が台湾侵攻を行ったと仮定した机上の戦闘シミュレーションを実施した。元自衛官や日米の学者・研究者など、識者約30名が参加した。シナリオでは2026年、中国が水陸両軍を投じ、台湾に武力攻撃を仕掛けた状況を想定している。 日経アジアは2月下旬、この内容を詳しく報じた。台湾占領という中国の目論見もくろみを阻止することは可能であるとの結論だ。同時に、日米は「軍事的な人員と装備に大きな犠牲が伴う」とも報じられている。 財団によるシミュレーションでは、日本は144機の戦闘機を失い、自衛隊の死傷者は2500人に達するとの結果が得られたという。一方でアメリカの被害もこれ以上に甚大で、最大400機の戦闘機を失い、1万人以上の兵士が死傷するおそれがあるとの結果が示された。 シミュレーションでは核兵器の使用は想定していない。また、米が軍事的関与を強めているフィリピンを含め、ASEAN諸国の対応は検証の対象外とした』、「日米」の「犠牲」は甚大で、「日本は144機の戦闘機を失い、自衛隊の死傷者は2500人に達する」(財団)、「アメリカの被害もこれ以上に甚大で、最大400機の戦闘機を失い、1万人以上の兵士が死傷するおそれがある」、なるほど。
・『日本は米軍の行動に巻き込まれる シミュレーションでは中国軍が侵略にあたり司令部を設置するとし、これにアメリカ軍が直ちに対応する状況を描いた。米軍は原子力空母を中核とする空母打撃群およびステルス戦闘機を直ちに出撃させ、台湾周辺に配備する展開が想定された。 これに伴い、軍事基地や民間空港の利用を米軍に認めている日本は、米軍の行動に巻き込まれる展開になるとシミュレーションは想定している。中国は日本の米軍基地に対してミサイル攻撃を実施し、これを受けて日本の首相は国家非常事態を宣言する流れとなる。 国家に存続の危機が生じたと判断されることで、日本はアメリカ軍に対し、沖縄や九州の自衛隊基地や民間空港の使用を許可する展開になるとの想定だ。 さらに日本側は、海上自衛隊の軍艦および航空自衛隊のF-35戦闘機を出撃させ、中国からの攻撃に対抗措置を講じる。シミュレーションでは、米軍と自衛隊が中国軍の補給線を断ち、台湾上空の制空権を握ったあと、中国軍に決定打となる攻撃を仕掛けたことで紛争の終結に至っている。 ソフリプは、大なり小なり日本が巻き添えを食う展開は避けられないとみる。「中国が日本の基地を直接攻撃しない場合であっても、日本の基地は人員を動員し、介入を試みるアメリカに協調することを決断するだろう」と同誌は解説している』、「シミュレーションでは、米軍と自衛隊が中国軍の補給線を断ち、台湾上空の制空権を握ったあと、中国軍に決定打となる攻撃を仕掛けたことで紛争の終結に至っている」、「ソフリプは、大なり小なり日本が巻き添えを食う展開は避けられないとみる。「中国が日本の基地を直接攻撃しない場合であっても、日本の基地は人員を動員し、介入を試みるアメリカに協調することを決断するだろう」と同誌は解説している』、なるほど。
・『日米の応戦で、紛争は2週間で終結する シミュレーションの結末について日経アジアは、「結局のところ中国は、日米の応戦に圧倒されるところとなり、紛争は2週間あまりで終結した」と報じている。 紛争の過程で中国は、相当な犠牲を被るようだ。空母2隻を含む156隻の軍艦、および168機の戦闘機、そして48機の軍用輸送機を中国側は失うとされている。兵士の死傷は4万人以上に及ぶ。 一方で台湾は、18隻の軍艦と200機の軍用機を喪失する。また、兵士1万3000人が死傷する計算となっている。日米軍も前述のように、合計1万2500人以上の兵士が死傷し、500機超の戦闘機を失うという結果が示された。 米ソフリプはシミュレーションの結果に触れ、「台湾の主権維持と引き換えに、日米同盟は高い代償を払うおそれがある」と報じている。 日経アジアによると、笹川平和財団・安全保障研究グループの渡部恒雄上席研究員は「まだ可能なうちに、重大な損失に対する可能な限りの備えを実施すべきである」と警鐘を鳴らす。「中国は情報戦、宇宙開発、サイバー戦争や他の側面でも(シミュレーションの前提より)進歩している可能性がある」との指摘だ』、「中国は・・・空母2隻を含む156隻の軍艦、および168機の戦闘機、そして48機の軍用輸送機を中国側は失うとされている。兵士の死傷は4万人以上」、「台湾は、18隻の軍艦と200機の軍用機を喪失する。また、兵士1万3000人が死傷」、「日米軍も・・・合計1万2500人以上の兵士が死傷し、500機超の戦闘機を失うという結果」、「日米軍」の損失も馬鹿にならないようだ。
・『台湾の国防相「中国による初期の攻撃を撃退できる」 軍事ニュースメディアのユーラシアン・タイムズは「中国による台湾の併合を防ぐことに成功する」とのシミュレーション結果を報じたうえで、ソフリプと同様、「(日米)両国は、兵士と装備の面で高い代償を払うことになる」と指摘している。) 同記事はまた、台湾軍の機能について、「台湾軍の主な目的の一つは、アメリカなどの同盟国が台湾を支援できるよう、中国人民解放軍を2週間食い止めることである」と指摘し、台湾軍単独での防衛に疑問を示した。 一方で台湾の邱国正国防相は、台湾の軍隊の準備態勢が十分に高ければという条件の下、中国による初期の攻撃を撃退できるとの見解を示している。同氏は、中国軍が紛争を起こす実力を持っているとの認識を示したうえで、1~2週間で台湾占領を達成するだけの力はないと語った。 台湾の台北時報タイペイ・タイムズ紙はシミュレーション結果を基に、「机上演習で『身の毛もよだつ』損失、中国が敗北の見込み」と報じた。4万人が死傷する中国側に対し、台湾軍も2万6000人以上の死傷者が出る厳しい結果を伝えている』、「中国軍が紛争を起こす実力を持っているとの認識を示したうえで、1~2週間で台湾占領を達成するだけの力はないと語った。 台湾の台北時報タイペイ・タイムズ紙はシミュレーション結果を基に、「机上演習で『身の毛もよだつ』損失、中国が敗北の見込み」と報じた。4万人が死傷する中国側に対し、台湾軍も2万6000人以上の死傷者が出る厳しい結果を伝えている」、なるほど。
・『24のシナリオを分析した米シンクタンク 財団によるシミュレーションはあくまで机上の議論ではあるが、決して絵空事とも言っていられないようだ。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が1月に示した戦闘シミュレーション結果も、この結果とほぼ一致する内容になっている。 CSISはシミュレーションのモデルを構築するにあたり、過去の歴史的な軍事作戦の事例を参考にしたという。例えば中国が台湾上陸を仕掛ける際に用いるであろう上陸艇の立ち回りについては、ノルマンディー上陸作戦や沖縄での戦闘など、歴史上の実際の軍事衝突での事例をデータ化した。 こうしたデータの下、部隊同士が衝突した場合の双方の損失を予測するモデルをあらかじめ構築し、机上で摸擬戦闘ゲームを実施した。政府高官や軍経験者などの経歴を持つプレーヤーが各軍をプレーし、個々の戦闘結果は前述のモデルに基づき、一定のランダム性を交えながらコンピューターが算出した。 24種のシナリオにしたがってシミュレーションを実施した結果、大半のシナリオでは、日米の助力によって台湾側が中国の上陸作戦の阻止に成功し、自治を維持する結果に至ったという』、「24種のシナリオにしたがってシミュレーションを実施した結果、大半のシナリオでは、日米の助力によって台湾側が中国の上陸作戦の阻止に成功し、自治を維持する結果に至った」、まずまずだ。
・『開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅 各シミュレーションの詳細を見ると、侵攻序盤の展開については、どのシナリオもほぼ同じ動きとなるようだ。台湾にとって悲報となるが、開戦直後のわずか数時間で、台湾の海軍と空軍はほぼ壊滅的な打撃を受けるという。 中国軍は強力なロケット部隊を展開して島国である台湾を包囲し、日米が軍艦やジェット機を島内に配備することを拒む作戦に出る。 こうして時間を稼いだうえで中国側は、数万人規模の中国兵を軍用および民間の上陸艇に乗せて海峡を渡り、海岸堡かいがんほと呼ばれる一時的な上陸拠点を海岸に設置する。安全を確保したこの拠点の後方に、空挺くうてい部隊が次々と舞い降りるという』、それにしても「開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅」との「侵攻序盤の展開」はショッキングだ。
・『中国共産党を待ち受ける紛争後の余波 だがその後、最も起きうる可能性が高いと判断された「基本シナリオ」においては、中国の侵攻はすぐに失敗に終わる。台湾の地上部隊が海岸堡を急襲し、中国側は補給線の確保と内陸部への進軍に苦戦する展開が見られた。 その間にも、日本の自衛隊の援護を受け、米軍の潜水艦・爆撃機・戦闘機が戦闘区域に到達。中国の上陸艦隊を「急速に機能不全に陥れる」という。 CSISはリポートを通じ、紛争後の余波にも触れている。それによると中国国内では、中国共産党の支持が揺らぐことが予見されるという。リポートは「中国も大きな損失を被っており、台湾の占領に失敗したことで、中国共産党による統治が不安定になる可能性がある」としている。 他方、防衛側の損害も計り知れない。台湾の経済は甚大な打撃を受けるほか、米軍の人的および物質的損失により、国際社会におけるアメリカの地位が揺らぐおそれがあるとリポートは指摘している』、「「基本シナリオ」においては、中国の侵攻はすぐに失敗に終わる。台湾の地上部隊が海岸堡を急襲し、中国側は補給線の確保と内陸部への進軍に苦戦する展開が見られた。 その間にも、日本の自衛隊の援護を受け、米軍の潜水艦・爆撃機・戦闘機が戦闘区域に到達。中国の上陸艦隊を「急速に機能不全に陥れる」という。 CSISはリポートを通じ、紛争後の余波にも触れている。それによると中国国内では、中国共産党の支持が揺らぐことが予見されるという。リポートは「中国も大きな損失を被っており、台湾の占領に失敗したことで、中国共産党による統治が不安定になる可能性がある」としている」、「中国共産党による統治が不安定になる可能性」確かにその通りだ。
・『日本は、台湾有事と無関係ではいられない 本稿では2つのシミュレーション結果を取り上げたが、互いに独立したシンクタンクが実施したこれらの解析結果は、同一の傾向を示すこととなった。台湾海峡の有事に日米が厳しい態度で臨むことにより、中国は2週間で撤退し、台湾の主権は守られることを示唆している。 同時に、これら2つのシミュレーションは共通して、中国軍の脅威が日米にも多大な損害をもたらすおそれがあることを物語っている。 また、例えば前者のシミュレーションはあくまで、各陣営の現在の兵力、および2026年時点で配備が予想される兵器に基づいている。しかし中国は、西太平洋地域における軍事プレゼンスの拡大を図っており、核戦力の増強も図っている。財団は、投入可能な兵器の状況によっては、中国軍がより有利に戦闘を進めるおそれもあると警告している。 日本にとって、こうしたシミュレーションの結果は、中国軍の脅威を強調するものであり、警鐘に他ならない。アジア太平洋地域の安全保障を維持するため、日本は引き続きアメリカと緊密な協力関係を築く必要があるだろう。 まずは有事に発展しないことを願うばかりだが、シミュレーションのシナリオのように日本へのミサイル攻撃が行われるのであれば、台湾情勢は無関係と見ることも難しくなってくる。中国軍の脅威に適正に対処するため、戦略的な準備が求められよう』、「財団は、投入可能な兵器の状況によっては、中国軍がより有利に戦闘を進めるおそれもあると警告している。 日本にとって、こうしたシミュレーションの結果は、中国軍の脅威を強調するものであり、警鐘に他ならない。アジア太平洋地域の安全保障を維持するため、日本は引き続きアメリカと緊密な協力関係を築く必要があるだろう。 まずは有事に発展しないことを願うばかりだが、シミュレーションのシナリオのように日本へのミサイル攻撃が行われるのであれば、台湾情勢は無関係と見ることも難しくなってくる。中国軍の脅威に適正に対処するため、戦略的な準備が求められよう」、その通りだ。
第三に、7月31日付け東洋経済オンライン「迫り来る「台湾有事」に無防備すぎる日本企業 中国の在留邦人10万人は取り残されるのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/690050
・『台湾海峡の緊張が高まっている。中国が台湾統一(併合)に向けて武力侵攻する日がくるのか。7月31日発売『週刊東洋経済』の特集「台湾リスク」では、日本企業に迫り来る台湾有事の全シナリオを示した。 7月なかばの3連休。東京・市谷の防衛省近くにあるホテルの一室は、戦時さながらの緊張感に包まれた。「台湾有事」への対応シミュレーションが行われていたのだ。民間シンクタンク「日本戦略研究フォーラム(JFSS)」が主催し2021年から毎年1回行われている取り組みで、3回目の今年は米国や台湾からも有識者が多数参加した。 今回のシミュレーションでは27年を想定して、中国と台湾の間で発生しうる軍事衝突のシナリオを3つ用意。刻々と変化する事態に、参加した国会議員が「大臣」として判断を下していく設定だ。事務次官クラスの元官僚や将官級の自衛隊OBが補佐役を務める』、興味深そうだ。
・『「事態認定」の難しさ 今年のシミュレーションの想定時期が27年とされたのは、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有など防衛3文書に盛り込まれた防衛力整備が実現するタイミングだからだ。同時に中国人民解放軍の創立100年の節目、かつ中国の習近平国家主席が3期目を終える直前でもある。さらなる任期延長を目指す習主席が、レガシーづくりのために台湾統一を急ぐ、という予測は米軍関係者からしきりに発信されている。 シミュレーションで首相役を務めた小野寺五典・衆議院議員(元防衛相)が最も頭を悩ませたのが、「事態認定」の難しさだ。自衛隊が防衛出動するには、政府が「武力攻撃事態(日本への武力攻撃に対して個別的自衛権を行使)」「存立危機事態(密接な関係にある他国、つまり米国への武力攻撃に対して集団的自衛権を行使)」のいずれかに認定する必要がある。) 中国からのサイバー攻撃により日本国内に大規模停電と通信障害が発生し、沖縄県・先島諸島への海底ケーブルが切断されたという想定に際し、防衛省サイドは「武力攻撃予測事態」の認定を要請した。これは「武力攻撃事態」の一歩手前の準備期間で、認定されれば自衛隊による空港・港湾・道路の優先利用や住民避難が可能になる。日本側が有事に備えていることを中国側に示す抑止効果もある。 しかし小野寺「首相」は認定を見送った。 理由の1つは、日本が先に事態をエスカレートさせたと国際社会でみられるのを避けるため。もう1つは、中国にいる日本人に退避の時間をつくるためだ。小野寺氏は昨年も同様の判断を下している。 中国には約10万人の日本人が住んでいる。事態認定はいわば中国を敵国と見なす行為であり、そうなれば中国にいる日本人が危険にさらされるおそれがある。中国の外に脱出するための時間を確保する必要があるというのが小野寺氏の考えだった』、「中国にいる日本人に退避の時間をつくるため」、これでは時間がかかり過ぎて、タイミングを失うだけだ。「在留邦人」の問題は別途考えるようにすべきだ。
・『この判断には異議もある。事態が動く中で自衛隊の展開が遅れるからだ。また、多少時間ができたところで、実際に10万人もの在留邦人が逃げ切れる保証はない。 JFSSのシミュレーションに第1回から参加し続けている尾上定正・元空将は「米国のバイデン大統領はロシアのウクライナ侵攻に際して、ロシアやウクライナにいる米国人の救出作戦は行わないと明言した。有事の際に、在外邦人保護のため政府のできる役割は限られているのが現実だ」と話す』、「米国のバイデン大統領はロシアのウクライナ侵攻に際して、ロシアやウクライナにいる米国人の救出作戦は行わないと明言した」、日本も見習うべきだ。
・『中国脱出は現実的に無理 台湾有事に備え台湾駐在員の退避計画を作成した企業はあっても、中国駐在員のそれを用意している日本企業はまずない。「退避計画を作成していることが中国人社員に知られた瞬間に組織が回らなくなるし、中国当局からのバッシングも必至だ」(中国ビジネスに詳しい商社関係者)。) 多くの企業では、いったんは検討してもすぐ「現実的に無理」という結論に至る。せいぜい「駐在員に1年間有効なオープン航空券を渡しておく」という程度のことでお茶を濁しているようだ。 「世界の工場」中国は日本企業にとって重要な生産基盤だ。現在も高水準の投資が続いているが、その位置づけは下がりつつある。国際協力銀行が製造業企業に「今後3年程度の有望な事業展開先国・地域」を聞くアンケート調査では、中国の得票率が長期低落傾向だ。 米中対立に続いて台湾有事という異次元のリスクが浮上した今、中国ビジネスの将来像を描くのは以前よりずっと難しくなってきた。 本当に武力衝突が始まれば、そのダメージは東アジアにとどまらない。半導体産業において、台湾積体電路製造(TSMC)をはじめとする台湾企業の存在は圧倒的で台湾勢のシェアは先端品では9割に及ぶ。米国のヘインズ国家情報長官は5月に上院軍事委員会で、「台湾の半導体供給が止まれば、世界経済は年間6000億〜1兆ドル以上の打撃を受ける可能性がある」と証言した。 日本にとって台湾有事は、絶対に発生を避けたい事態だ。中国を含む東アジア全域に張り巡らせてきたサプライチェーンが破壊されることの打撃は計り知れない』、「日本にとって台湾有事は、絶対に発生を避けたい事態だ」、しかし、極秘にシミュレーションしておく必要はありそうだ。
・『米軍が緊張感を演出している面も 米国発の議論をそのまま受け取る必要はない。装備体系の更新を急ぎたい米軍が、「台湾有事が27年に迫っている」という緊張感を演出している面もあるからだ。 前防衛大学校長で6月まで米スタンフォード大学に滞在していた国分良成・慶応大学名誉教授は、最近の講演会で「米国で台湾有事の議論を主導しているのは、ワシントンにいる安全保障系の戦略家たちばかりだ。中国や台湾の内情を踏まえた分析はあまり見られない」と話した。 確率論や常識では考えにくいが、ひとたび実現すれば壊滅的な被害をもたらすリスクを「ブラックスワン」と呼ぶ。日本にとって台湾有事はまさにこれだ。最悪の事態を想定しておくのが安全保障の要諦だが、その論理だけでは社会は回らない。まして企業には個別の判断があって当然だ。自分のビジネスにとっての最適解を見つけるために、バランスよく情報を集め台湾をめぐるファクトを正確に理解しておきたい』、「ブラックスワン」となれば、高度な大人の判断が求められるようだ。
先ずは、本年2月17日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究院(SAIS)特別教授 ハル・ブランズ氏とタフツ大学政治学部准教授のマイケル・ベックリー氏による「いきなり数千発のミサイルが沖縄に…米国の大学教授が予想した「中国の台湾進攻」の絶望的シナリオ アメリカの選択肢は軍事的後退と核使用の2択」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/66598?page=1
・『中国の台湾進攻はあり得るのか。起きるのであればいつなのか。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のハル・ブランズ教授とタフツ大学マイケル・ベックリー准教授による共著『デンジャー・ゾーン』(訳:奥山真司、飛鳥新社)より、一部を紹介しよう――』、「いきなり数千発のミサイルが沖縄に」とタイトルはセンセーショナルだ。
・『中国の台湾への軍事攻撃は成功するのか 2020年9月、人民解放軍は台湾海峡で、この25年間で最も攻撃的な軍事力の誇示を開始した。台湾の防空識別圏への侵入は急増している。中国軍の任務部隊の中には、30機以上の戦闘機と6隻の艦艇を従えて、ほぼ一日おきに海峡を徘徊しているものもある。その多くは、台湾と中国の双方が何十年間にもわたって尊重してきた境界線である「中間線」を突破している。 これらの部隊の中には、パトロール中にフィリピンと台湾の間を航行するアメリカの空母や駆逐艦への攻撃をシミュレートする動きをしたものもある。また、中国は2020年に香港の民主化運動を鎮圧することで、台湾を平和的に説得できる時代が終わったことを示唆したのだ』、「中国は2020年に香港の民主化運動を鎮圧することで、台湾を平和的に説得できる時代が終わったことを示唆した」、確かにこれは重い意味を持つようだ。
・『アメリカ・台湾と中国の圧倒的な差 軍事攻撃は成功するだろうか? その答えは、つい最近まで「ノー」であった。 1990年代には台湾は中国に対して地理的・技術的に有利であったため、実質的に征服不可能だった。台湾海峡は台風や高波のおかげで危険な海域で、島そのものが自然の要塞となっている。東海岸は険しい断崖絶壁、西海岸は沖合数キロに広がる干潟で、激しい潮流もある。台湾には侵略してくる軍隊が上陸できるような砂浜さえ十数カ所しかない。アメリカと台湾の戦闘機と海軍の艦隊は、中国軍を決して近寄らせない状態を維持できていたのだ。 ところがそれ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊できると言われている。 中国のサイバーおよび対衛星能力は、アメリカ軍の重要なセンサーや人工衛それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊星を機能不全に陥れることで、同軍の耳と目と口をきけなくしてしまう恐れがある。中国の対艦ミサイルは、西太平洋を航行するアメリカの大型水上艦にとって、非常に危険になる。ここ25年間にわたり、人民解放軍は台湾征服のために執拗しつように準備してきた』、「1990年代には台湾は中国に対して地理的・技術的に有利であったため、実質的に征服不可能だった。台湾海峡は台風や高波のおかげで危険な海域で、島そのものが自然の要塞となっている」、「それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊できると言われている。 中国のサイバーおよび対衛星能力は、アメリカ軍の重要なセンサーや人工衛それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊星を機能不全に陥れることで、同軍の耳と目と口をきけなくしてしまう恐れがある。中国の対艦ミサイルは、西太平洋を航行するアメリカの大型水上艦にとって、非常に危険になる。ここ25年間にわたり、人民解放軍は台湾征服のために執拗しつように準備してきた」、かつてとは比べようもないほど「中国軍」が増強されたようだ。
・『「グアムキラー」の恐るべき実力 一方のアメリカは、この期間を通じて中東のテロリストとの戦いに明け暮れていた。最近ではNATOの東側の陣地を強化するために、ヨーロッパに部隊と武器を投入している。オバマ、トランプ、バイデンの各政権は、中国に対抗するため、アジアに軸足移動(ピボット)することを望んでいた。 だがこのような計画は、ISISの台頭やロシアのウクライナ侵攻など、他の地域で発生した案件によって覆されてきた。グローバルな勢力であるアメリカは、単一の不測の軍事案件に備える余裕もない。その結果、中国の軍事近代化に空軍と海軍が追いつけていない。 アジアにおけるアメリカの軍隊は、依然として少数の大型の軍艦と、露出した基地から運用される短距離戦闘機が主体で、これらはまさに、中国が奇襲ミサイル攻撃で破壊しうるものだ。アメリカは台湾から500マイル以内(無給油の戦闘機がガス欠になる前に帰還できる最大飛行距離)にたった2つの空軍基地しか持っていない。中国がこれらの基地を使えなくすれば、アメリカ軍は空母や、台湾から1800マイル離れたグアムから行動しなければならなくなる。 この距離と空中給油の必要性のために、アメリカ軍の出撃回数は半減させられ、そのせいで中国に台湾上空を支配するチャンスを与えてしまうことになる。 さらに悪いことに、中国は現在、グアムを攻撃できる爆撃機と弾道ミサイルを保有しており、本土から1000マイル以上離れて移動中の空母を攻撃できる可能性もある。これらの「グアムキラー」と「空母キラー」のミサイルが宣伝通り機能すれば、中国は東アジアにおけるアメリカの軍事力に損害を与えることができる』、「オバマ、トランプ、バイデンの各政権は、中国に対抗するため、アジアに軸足移動(ピボット)することを望んでいた。 だがこのような計画は、ISISの台頭やロシアのウクライナ侵攻など、他の地域で発生した案件によって覆されてきた。グローバルな勢力であるアメリカは、単一の不測の軍事案件に備える余裕もない。その結果、中国の軍事近代化に空軍と海軍が追いつけていない。 アジアにおけるアメリカの軍隊は、依然として少数の大型の軍艦と、露出した基地から運用される短距離戦闘機が主体で、これらはまさに、中国が奇襲ミサイル攻撃で破壊しうるものだ。アメリカは台湾から500マイル以内・・・にたった2つの空軍基地しか持っていない。中国がこれらの基地を使えなくすれば、アメリカ軍は空母や、台湾から1800マイル離れたグアムから行動しなければならなくなる。 この距離と空中給油の必要性のために、アメリカ軍の出撃回数は半減させられ、そのせいで中国に台湾上空を支配するチャンスを与えてしまうことになる」、なるほど。
・『台湾の圧倒的に不利な状況 台湾には、その遅れを取り戻す準備ができていない。徴兵制からプロフェッショナルによる志願制への移行の一環として、台湾は現役兵力を27万5000人から17万5000人に削減し、徴兵期間を1年間から4カ月へと短縮した。新兵は数週間の基礎訓練しか受けず、予備役の訓練は頻度が少なく内容も不十分だ。 また、台湾は兵站部隊を削減しており、これによって戦闘部隊への補給や基本的な整備を日常的に怠っている状態だ。そのため兵士は事故や貴重な弾薬の浪費を恐れて武器を使った訓練を避けている。 台湾のパイロットの飛行時間は、月に10時間未満である。また、戦車や攻撃ヘリの半数以上が使用不可能な状態で、多くの台湾人兵士が士気の低下に苦しんでいる。 要するに、中国は1914年のドイツや、1941年の日本のように、軍事面では有利だが有限のチャンスの窓を持っているということだ。台湾政府自身が認めているように、中国は台湾の守りを「麻痺」させることができそうだ』、「台湾は兵站部隊を削減しており、これによって戦闘部隊への補給や基本的な整備を日常的に怠っている状態だ。そのため兵士は事故や貴重な弾薬の浪費を恐れて武器を使った訓練を避けている。 台湾のパイロットの飛行時間は、月に10時間未満である。また、戦車や攻撃ヘリの半数以上が使用不可能な状態で、多くの台湾人兵士が士気の低下に苦しんでいる・・・台湾政府自身が認めているように、中国は台湾の守りを「麻痺」させることができそうだ」、「台湾」が自ら「守り」を弱めた理由は何なのだろう。ただ、いずれにしても、ちょっとやそっとの増強では到底追いつけないだろう。
・『2030年初頭までが中国のチャンスといえるワケ 台湾とアメリカはこの脅威を本格的に自覚しており、解決しなければならない重要な問題を特定し、それに応じた軍備の再編を始めている。だがアメリカと台湾の国防改革が大きな影響を与え始める現在から2030年代初頭までの間には、中国にもまだチャンスは残されている。 実際のところ、アメリカの巡洋艦、誘導弾を装備した潜水艦、長距離爆撃機の多くが退役する2020年代半ばには、両岸の軍事バランスは一時的に中国にかなり有利になると思われる。 アメリカ軍は実に多くの点で、まだロナルド・レーガンが築いた軍隊なのだ。とりわけアメリカ海軍と空軍の近代化は何十年にもわたって先送りにされてきた。現在その問題は深刻なものとなっている。 ペンタゴンが所有する主力艦や戦闘機の多くは、文字通りバラバラになっているか、燃え尽きようとしている。老朽化した船体や機体は新たなアップグレードだけでなく、中国の新軍と競争するために必要な最新のエンジン、センサー、弾薬を搭載することにも耐えられない状態だ。これらのアメリカの戦力は退役させなければならない。 だがそれらが退役すれば、アメリカ軍は東アジアに配備される、近代的な海軍火力の基本である垂直発射型ミサイルの発射管の数を数百本も減らすことになる。 一方で、中国はさらに数百の対艦・対地攻撃ミサイル、数十機の長距離爆撃機と水陸両用艦、そして中国本土から台湾の大半または全域を攻撃できるロケット発射システムを稼働させるだろう。 これはいわば「地政学的な時限爆弾」である。2020年代半ばから後半にかけての時期は、敵を倒して修正主義的な欲望を満たす上で、中国にとってこれほどの好機はない。あるペンタゴンの元高官が言ったように、アメリカはこの時期に台湾との戦いで「尻を蹴り上げられる」リスクを負うことになる』、「2020年代半ばから後半にかけての時期は・・・中国にとってこれほどの好機はない。あるペンタゴンの元高官が言ったように、アメリカはこの時期に台湾との戦いで「尻を蹴り上げられる」リスクを負うことになる」、やれやれ。
・『台湾進攻は2027年までのどこか このような動きを見て、中国の退役軍人や国営放送の報道機関では中国共産党に直ちに台湾に侵攻するよう促す声が上がっている。中国国民もそれに同意しているようだ。 国営の『環球時報』の2020年の調査によれば、本土の70%の人々が台湾の本土への統一のために武力行使することを強く支持しており、37%が「もし戦争が起こるなら、2025年までがベストだ」と考えているという。 中国政府高官たちは、プライベートな場では西側の専門家たちに向かって、中国共産党内で侵略を求める声が高まっており、習近平は「人民解放軍はそれをやり遂げることができる」と主張するタカ派や「イエスマン」たちに囲まれていると語っている。 おそらくそのためかもしれないが、習近平は「台湾の解放」に自分の正統性(レジティマシー)を賭けている。2017年に彼は台湾の統一が「中華民族の偉大な若返りを実現するための必然的な要件」であると発表した。そして2020年には中国共産党が「近代化された」軍隊を投入する予定の時期を、2034年から2027年に早めている。 2021年3月、当時インド太平洋軍司令官であったフィリップ・デービッドソン提督は、中国が今後6年以内に台湾を侵略する可能性があると警告した』、「国営の『環球時報』の2020年の調査によれば、本土の70%の人々が台湾の本土への統一のために武力行使することを強く支持しており、37%が「もし戦争が起こるなら、2025年までがベストだ」と考えているという。 中国政府高官たちは、プライベートな場では西側の専門家たちに向かって、中国共産党内で侵略を求める声が高まっており、習近平は「人民解放軍はそれをやり遂げることができる」と主張するタカ派や「イエスマン」たちに囲まれていると語っている」、「アメリカ海軍と空軍の近代化は何十年にもわたって先送りにされてきた。現在その問題は深刻なものとなっている。 ペンタゴンが所有する主力艦や戦闘機の多くは、文字通りバラバラになっているか、燃え尽きようとしている。老朽化した船体や機体は新たなアップグレードだけでなく、中国の新軍と競争するために必要な最新のエンジン、センサー、弾薬を搭載することにも耐えられない状態だ。これらのアメリカの戦力は退役させなければならない」、「おそらくそのためかもしれないが、習近平は「台湾の解放」に自分の正統性・・・を賭けている。2017年に彼は台湾の統一が「中華民族の偉大な若返りを実現するための必然的な要件」であると発表した。そして2020年には中国共産党が「近代化された」軍隊を投入する予定の時期を、2034年から2027年に早めている。 2021年3月、当時インド太平洋軍司令官であったフィリップ・デービッドソン提督は、中国が今後6年以内に台湾を侵略する可能性があると警告した」、「今後6年以内に台湾を侵略する可能性」とは大変だ。
・『「真珠湾攻撃」が中国の手本になる 中国は、台湾を圧迫して降伏させる選択肢をいくつか持っている。たとえば台北が支配しているが中国本土の海岸からわずか数キロしか離れていない沖合の露出した島の一つを奪取することや、海・空の封鎖を行う、あるいは単に誘導ミサイルで台湾を爆撃することなどだ。 だが、これらのオプションはアメリカと台湾に対処するための時間的余裕を与えることになるし、中国側もわざわざそれを与えるつもりはない。 彼らは1990年から91年のペルシャ湾戦争で、サダム・フセインの軍隊がいかに虐殺されたかを目の当たりにした。しかもこの時はペンタゴンが周辺に膨大な数の兵器を数週間で集め、しかも巨大な国際的な同盟を結集させている。 彼らは早い段階、つまり台湾とアメリカ軍が反撃してくる前に、激しく攻撃することが勝利への一番の近道であることを知っている。だからこそ中国の軍事ドクトリンでは、真珠湾攻撃のような形で相手を素早く武装解除することを目指しているのだ。そのためわれわれは本当に悲惨なシナリオを心配しなければならない』、「台湾とアメリカ軍が反撃してくる前に、激しく攻撃することが勝利への一番の近道であることを知っている。だからこそ中国の軍事ドクトリンでは、真珠湾攻撃のような形で相手を素早く武装解除することを目指しているのだ」、恐ろしいことだ。
・『沖縄に数千発のミサイルが降り注ぐ 最も可能性の高い戦争開始の形は、台湾、沖縄やグアムのアメリカ軍基地、日本を母港とするアメリカの空母打撃群の上に、陸上・空中から発射された中国のミサイル数千発が降り注いで始まる、というものだ。 台湾各地に潜んでいた中国の特殊部隊や諜報員たちが工作を開始し、軍事施設で爆弾を爆発させ、台湾の指導者を暗殺する。中国のサイバー攻撃は、台湾の重要なインフラを麻痺させるだろう。 また、人民解放軍はサイバー攻撃と、場合によっては地上発射型ミサイルを使って、アメリカ軍同士やワシントンとの通信手段となっている衛星を破壊し、数日から数週間にわたってアメリカ側の対応を不可能にしたり、そもそも何が起こっているのかをわからないようにするだろう。 人民解放軍のサイバー部隊は、それと並行してアメリカ本国でもトラブルを起こし、混乱を招いてアメリカ国内の政治紛争を悪化させるために、偽情報キャンペーンを展開することになるだろう。 その一方で、台湾海峡で軍事演習を行っていた中国艦艇の船団が、台湾の浜辺に向かって猛進し、その合間にも大陸にいる数十万の中国軍が、本格攻撃に備えて艦船やヘリコプターに乗り込み始めるだろう。小型の強襲揚陸艦が台湾海峡の民間フェリーの間から現れ、台湾軍が対応する前に重要な港や海岸を奪取しようとする可能性もある』、「台湾各地に潜んでいた中国の特殊部隊や諜報員たちが工作を開始し、軍事施設で爆弾を爆発させ、台湾の指導者を暗殺する。中国のサイバー攻撃は、台湾の重要なインフラを麻痺させるだろう。 また、人民解放軍はサイバー攻撃と、場合によっては地上発射型ミサイルを使って、アメリカ軍同士やワシントンとの通信手段となっている衛星を破壊し、数日から数週間にわたってアメリカ側の対応を不可能にしたり、そもそも何が起こっているのかをわからないようにするだろう」、中国側の初期戦術はその通りなのだろ。
・『勝利のためには核の可能性も 中国の奇襲攻撃で前方展開部隊の多くを失ったアメリカ軍が再び台湾に近づくには、数千マイル離れた場所から航空機と軍艦を投入し、ミサイル、スマート機雷、電磁波妨害などをかき分けながら戦わなければならないだろう。 さらにそのような兵力を集結させるには、攻撃的なロシアからNATOの東方側面を守るために配備されているような、他の重要な地域のアセットを引き離してくる必要があるかもしれない。そしてアメリカは一つの大国にしか対処できない軍備だけで二つの核武装した大国に対処するという、実に厳しい安全保障上の課題に直面するかもしれないのだ。 アメリカはグローバルなトレードオフに直面し、太平洋のアメリカ軍は、ベトナム戦争や第二次世界大戦以来の規模となる損失を被るだろう。アメリカの指導者たちはひどいジレンマに直面することになるかもしれない。つまり屈辱的な軍事的後退を受け入れるか、中国が後退しなければ核兵器を使うと脅すかだ。 2018年、国防専門家によるある有識者委員会は、核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性がある、と結論付けている。地政学的にこれ以上危険なことはない。 「恐ろしい2020年代」は厄介な10年間となりそうだ。なぜなら中国が厄介な地政学的な分岐点――衰退を避けるために大胆に行動することが可能であり、またそうすべき時点――に差しかかっているからだ』、「アメリカはグローバルなトレードオフに直面し、太平洋のアメリカ軍は、ベトナム戦争や第二次世界大戦以来の規模となる損失を被るだろう。アメリカの指導者たちはひどいジレンマに直面することになるかもしれない。つまり屈辱的な軍事的後退を受け入れるか、中国が後退しなければ核兵器を使うと脅すかだ。 2018年、国防専門家によるある有識者委員会は、核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性がある、と結論付けている。地政学的にこれ以上危険なことはない」、「核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性」、「アメリカ」が「核の黙示録」に頼れば、中国側も「核」で応戦するという悲劇的シナリオに追い込まれる可能性もある。或いは「アメリカ」が「「決定的な軍事的敗北」を被る」方を選択した場合には、「中国の天下」が続くという嫌な時代になる可能性も覚悟する必要がありそうだ。
次に、3月29日付けPRESIDENT Onlineが掲載したフリーライター・翻訳者の青葉 やまと氏による「自衛隊員2500人、米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション 開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67914?page=1
・『中国軍は結局のところ「日米の応戦に圧倒される」 台湾有事をめぐる緊張が高まっている。中国の習近平国家主席は台湾統一への意欲を明言しており、武力攻撃の現実味は増している。 仮に有事に発展した場合、台湾は中国の人民解放軍に対抗し、主権を維持することが可能なのだろうか。また、近隣国である日本にどのような影響が及び得るのだろうか。 日本のシンクタンクである笹川平和財団が実施し、日経アジアが報じた戦闘シミュレーションによると、仮に中国が武力行使に及んだ際にも、台湾の主権を奪う試みは失敗に終わるとの予測が示された。米シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)が1月に示した机上戦闘シミュレーションも、同様の傾向を示した。 ただし、どちらのシミュレーションも、その陰には日米の多大な代償が伴うおそれがあると物語っている。前者では、日米は合わせて500機以上の戦闘機を失うとの試算結果が出た。 その内容は海外のニュースメディアにも報じられるところとなった。米軍事分析サイトのソフリプは、CSISの分析を報じ、中国軍は結局のところ「日米の応戦に圧倒される」と述べている。 一方で同記事は、「言うまでもなく、中国は数十発の中距離および中距離・準中距離弾道ミサイルを保有しており、その気になれば日本を簡単に攻撃することができる」とも述べ、改めて中国の脅威を警告している』、「笹川平和財団」の「戦闘シミュレーション」によれば、「仮に中国が武力行使に及んだ際にも、台湾の主権を奪う試みは失敗に終わるとの予測」、「米シンクタンク・戦略国際問題研究所」も「同様の傾向」を示した。しかし、「どちらのシミュレーションも、その陰には日米の多大な代償が伴うおそれがあると物語っている。前者では、日米は合わせて500機以上の戦闘機を失うとの試算結果」、なるほど。
・『日本は144機の戦闘機を失い、自衛隊員2500人が死傷する 笹川平和財団は1月下旬、4日間を投じ、中国が台湾侵攻を行ったと仮定した机上の戦闘シミュレーションを実施した。元自衛官や日米の学者・研究者など、識者約30名が参加した。シナリオでは2026年、中国が水陸両軍を投じ、台湾に武力攻撃を仕掛けた状況を想定している。 日経アジアは2月下旬、この内容を詳しく報じた。台湾占領という中国の目論見もくろみを阻止することは可能であるとの結論だ。同時に、日米は「軍事的な人員と装備に大きな犠牲が伴う」とも報じられている。 財団によるシミュレーションでは、日本は144機の戦闘機を失い、自衛隊の死傷者は2500人に達するとの結果が得られたという。一方でアメリカの被害もこれ以上に甚大で、最大400機の戦闘機を失い、1万人以上の兵士が死傷するおそれがあるとの結果が示された。 シミュレーションでは核兵器の使用は想定していない。また、米が軍事的関与を強めているフィリピンを含め、ASEAN諸国の対応は検証の対象外とした』、「日米」の「犠牲」は甚大で、「日本は144機の戦闘機を失い、自衛隊の死傷者は2500人に達する」(財団)、「アメリカの被害もこれ以上に甚大で、最大400機の戦闘機を失い、1万人以上の兵士が死傷するおそれがある」、なるほど。
・『日本は米軍の行動に巻き込まれる シミュレーションでは中国軍が侵略にあたり司令部を設置するとし、これにアメリカ軍が直ちに対応する状況を描いた。米軍は原子力空母を中核とする空母打撃群およびステルス戦闘機を直ちに出撃させ、台湾周辺に配備する展開が想定された。 これに伴い、軍事基地や民間空港の利用を米軍に認めている日本は、米軍の行動に巻き込まれる展開になるとシミュレーションは想定している。中国は日本の米軍基地に対してミサイル攻撃を実施し、これを受けて日本の首相は国家非常事態を宣言する流れとなる。 国家に存続の危機が生じたと判断されることで、日本はアメリカ軍に対し、沖縄や九州の自衛隊基地や民間空港の使用を許可する展開になるとの想定だ。 さらに日本側は、海上自衛隊の軍艦および航空自衛隊のF-35戦闘機を出撃させ、中国からの攻撃に対抗措置を講じる。シミュレーションでは、米軍と自衛隊が中国軍の補給線を断ち、台湾上空の制空権を握ったあと、中国軍に決定打となる攻撃を仕掛けたことで紛争の終結に至っている。 ソフリプは、大なり小なり日本が巻き添えを食う展開は避けられないとみる。「中国が日本の基地を直接攻撃しない場合であっても、日本の基地は人員を動員し、介入を試みるアメリカに協調することを決断するだろう」と同誌は解説している』、「シミュレーションでは、米軍と自衛隊が中国軍の補給線を断ち、台湾上空の制空権を握ったあと、中国軍に決定打となる攻撃を仕掛けたことで紛争の終結に至っている」、「ソフリプは、大なり小なり日本が巻き添えを食う展開は避けられないとみる。「中国が日本の基地を直接攻撃しない場合であっても、日本の基地は人員を動員し、介入を試みるアメリカに協調することを決断するだろう」と同誌は解説している』、なるほど。
・『日米の応戦で、紛争は2週間で終結する シミュレーションの結末について日経アジアは、「結局のところ中国は、日米の応戦に圧倒されるところとなり、紛争は2週間あまりで終結した」と報じている。 紛争の過程で中国は、相当な犠牲を被るようだ。空母2隻を含む156隻の軍艦、および168機の戦闘機、そして48機の軍用輸送機を中国側は失うとされている。兵士の死傷は4万人以上に及ぶ。 一方で台湾は、18隻の軍艦と200機の軍用機を喪失する。また、兵士1万3000人が死傷する計算となっている。日米軍も前述のように、合計1万2500人以上の兵士が死傷し、500機超の戦闘機を失うという結果が示された。 米ソフリプはシミュレーションの結果に触れ、「台湾の主権維持と引き換えに、日米同盟は高い代償を払うおそれがある」と報じている。 日経アジアによると、笹川平和財団・安全保障研究グループの渡部恒雄上席研究員は「まだ可能なうちに、重大な損失に対する可能な限りの備えを実施すべきである」と警鐘を鳴らす。「中国は情報戦、宇宙開発、サイバー戦争や他の側面でも(シミュレーションの前提より)進歩している可能性がある」との指摘だ』、「中国は・・・空母2隻を含む156隻の軍艦、および168機の戦闘機、そして48機の軍用輸送機を中国側は失うとされている。兵士の死傷は4万人以上」、「台湾は、18隻の軍艦と200機の軍用機を喪失する。また、兵士1万3000人が死傷」、「日米軍も・・・合計1万2500人以上の兵士が死傷し、500機超の戦闘機を失うという結果」、「日米軍」の損失も馬鹿にならないようだ。
・『台湾の国防相「中国による初期の攻撃を撃退できる」 軍事ニュースメディアのユーラシアン・タイムズは「中国による台湾の併合を防ぐことに成功する」とのシミュレーション結果を報じたうえで、ソフリプと同様、「(日米)両国は、兵士と装備の面で高い代償を払うことになる」と指摘している。) 同記事はまた、台湾軍の機能について、「台湾軍の主な目的の一つは、アメリカなどの同盟国が台湾を支援できるよう、中国人民解放軍を2週間食い止めることである」と指摘し、台湾軍単独での防衛に疑問を示した。 一方で台湾の邱国正国防相は、台湾の軍隊の準備態勢が十分に高ければという条件の下、中国による初期の攻撃を撃退できるとの見解を示している。同氏は、中国軍が紛争を起こす実力を持っているとの認識を示したうえで、1~2週間で台湾占領を達成するだけの力はないと語った。 台湾の台北時報タイペイ・タイムズ紙はシミュレーション結果を基に、「机上演習で『身の毛もよだつ』損失、中国が敗北の見込み」と報じた。4万人が死傷する中国側に対し、台湾軍も2万6000人以上の死傷者が出る厳しい結果を伝えている』、「中国軍が紛争を起こす実力を持っているとの認識を示したうえで、1~2週間で台湾占領を達成するだけの力はないと語った。 台湾の台北時報タイペイ・タイムズ紙はシミュレーション結果を基に、「机上演習で『身の毛もよだつ』損失、中国が敗北の見込み」と報じた。4万人が死傷する中国側に対し、台湾軍も2万6000人以上の死傷者が出る厳しい結果を伝えている」、なるほど。
・『24のシナリオを分析した米シンクタンク 財団によるシミュレーションはあくまで机上の議論ではあるが、決して絵空事とも言っていられないようだ。米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が1月に示した戦闘シミュレーション結果も、この結果とほぼ一致する内容になっている。 CSISはシミュレーションのモデルを構築するにあたり、過去の歴史的な軍事作戦の事例を参考にしたという。例えば中国が台湾上陸を仕掛ける際に用いるであろう上陸艇の立ち回りについては、ノルマンディー上陸作戦や沖縄での戦闘など、歴史上の実際の軍事衝突での事例をデータ化した。 こうしたデータの下、部隊同士が衝突した場合の双方の損失を予測するモデルをあらかじめ構築し、机上で摸擬戦闘ゲームを実施した。政府高官や軍経験者などの経歴を持つプレーヤーが各軍をプレーし、個々の戦闘結果は前述のモデルに基づき、一定のランダム性を交えながらコンピューターが算出した。 24種のシナリオにしたがってシミュレーションを実施した結果、大半のシナリオでは、日米の助力によって台湾側が中国の上陸作戦の阻止に成功し、自治を維持する結果に至ったという』、「24種のシナリオにしたがってシミュレーションを実施した結果、大半のシナリオでは、日米の助力によって台湾側が中国の上陸作戦の阻止に成功し、自治を維持する結果に至った」、まずまずだ。
・『開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅 各シミュレーションの詳細を見ると、侵攻序盤の展開については、どのシナリオもほぼ同じ動きとなるようだ。台湾にとって悲報となるが、開戦直後のわずか数時間で、台湾の海軍と空軍はほぼ壊滅的な打撃を受けるという。 中国軍は強力なロケット部隊を展開して島国である台湾を包囲し、日米が軍艦やジェット機を島内に配備することを拒む作戦に出る。 こうして時間を稼いだうえで中国側は、数万人規模の中国兵を軍用および民間の上陸艇に乗せて海峡を渡り、海岸堡かいがんほと呼ばれる一時的な上陸拠点を海岸に設置する。安全を確保したこの拠点の後方に、空挺くうてい部隊が次々と舞い降りるという』、それにしても「開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅」との「侵攻序盤の展開」はショッキングだ。
・『中国共産党を待ち受ける紛争後の余波 だがその後、最も起きうる可能性が高いと判断された「基本シナリオ」においては、中国の侵攻はすぐに失敗に終わる。台湾の地上部隊が海岸堡を急襲し、中国側は補給線の確保と内陸部への進軍に苦戦する展開が見られた。 その間にも、日本の自衛隊の援護を受け、米軍の潜水艦・爆撃機・戦闘機が戦闘区域に到達。中国の上陸艦隊を「急速に機能不全に陥れる」という。 CSISはリポートを通じ、紛争後の余波にも触れている。それによると中国国内では、中国共産党の支持が揺らぐことが予見されるという。リポートは「中国も大きな損失を被っており、台湾の占領に失敗したことで、中国共産党による統治が不安定になる可能性がある」としている。 他方、防衛側の損害も計り知れない。台湾の経済は甚大な打撃を受けるほか、米軍の人的および物質的損失により、国際社会におけるアメリカの地位が揺らぐおそれがあるとリポートは指摘している』、「「基本シナリオ」においては、中国の侵攻はすぐに失敗に終わる。台湾の地上部隊が海岸堡を急襲し、中国側は補給線の確保と内陸部への進軍に苦戦する展開が見られた。 その間にも、日本の自衛隊の援護を受け、米軍の潜水艦・爆撃機・戦闘機が戦闘区域に到達。中国の上陸艦隊を「急速に機能不全に陥れる」という。 CSISはリポートを通じ、紛争後の余波にも触れている。それによると中国国内では、中国共産党の支持が揺らぐことが予見されるという。リポートは「中国も大きな損失を被っており、台湾の占領に失敗したことで、中国共産党による統治が不安定になる可能性がある」としている」、「中国共産党による統治が不安定になる可能性」確かにその通りだ。
・『日本は、台湾有事と無関係ではいられない 本稿では2つのシミュレーション結果を取り上げたが、互いに独立したシンクタンクが実施したこれらの解析結果は、同一の傾向を示すこととなった。台湾海峡の有事に日米が厳しい態度で臨むことにより、中国は2週間で撤退し、台湾の主権は守られることを示唆している。 同時に、これら2つのシミュレーションは共通して、中国軍の脅威が日米にも多大な損害をもたらすおそれがあることを物語っている。 また、例えば前者のシミュレーションはあくまで、各陣営の現在の兵力、および2026年時点で配備が予想される兵器に基づいている。しかし中国は、西太平洋地域における軍事プレゼンスの拡大を図っており、核戦力の増強も図っている。財団は、投入可能な兵器の状況によっては、中国軍がより有利に戦闘を進めるおそれもあると警告している。 日本にとって、こうしたシミュレーションの結果は、中国軍の脅威を強調するものであり、警鐘に他ならない。アジア太平洋地域の安全保障を維持するため、日本は引き続きアメリカと緊密な協力関係を築く必要があるだろう。 まずは有事に発展しないことを願うばかりだが、シミュレーションのシナリオのように日本へのミサイル攻撃が行われるのであれば、台湾情勢は無関係と見ることも難しくなってくる。中国軍の脅威に適正に対処するため、戦略的な準備が求められよう』、「財団は、投入可能な兵器の状況によっては、中国軍がより有利に戦闘を進めるおそれもあると警告している。 日本にとって、こうしたシミュレーションの結果は、中国軍の脅威を強調するものであり、警鐘に他ならない。アジア太平洋地域の安全保障を維持するため、日本は引き続きアメリカと緊密な協力関係を築く必要があるだろう。 まずは有事に発展しないことを願うばかりだが、シミュレーションのシナリオのように日本へのミサイル攻撃が行われるのであれば、台湾情勢は無関係と見ることも難しくなってくる。中国軍の脅威に適正に対処するため、戦略的な準備が求められよう」、その通りだ。
第三に、7月31日付け東洋経済オンライン「迫り来る「台湾有事」に無防備すぎる日本企業 中国の在留邦人10万人は取り残されるのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/690050
・『台湾海峡の緊張が高まっている。中国が台湾統一(併合)に向けて武力侵攻する日がくるのか。7月31日発売『週刊東洋経済』の特集「台湾リスク」では、日本企業に迫り来る台湾有事の全シナリオを示した。 7月なかばの3連休。東京・市谷の防衛省近くにあるホテルの一室は、戦時さながらの緊張感に包まれた。「台湾有事」への対応シミュレーションが行われていたのだ。民間シンクタンク「日本戦略研究フォーラム(JFSS)」が主催し2021年から毎年1回行われている取り組みで、3回目の今年は米国や台湾からも有識者が多数参加した。 今回のシミュレーションでは27年を想定して、中国と台湾の間で発生しうる軍事衝突のシナリオを3つ用意。刻々と変化する事態に、参加した国会議員が「大臣」として判断を下していく設定だ。事務次官クラスの元官僚や将官級の自衛隊OBが補佐役を務める』、興味深そうだ。
・『「事態認定」の難しさ 今年のシミュレーションの想定時期が27年とされたのは、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有など防衛3文書に盛り込まれた防衛力整備が実現するタイミングだからだ。同時に中国人民解放軍の創立100年の節目、かつ中国の習近平国家主席が3期目を終える直前でもある。さらなる任期延長を目指す習主席が、レガシーづくりのために台湾統一を急ぐ、という予測は米軍関係者からしきりに発信されている。 シミュレーションで首相役を務めた小野寺五典・衆議院議員(元防衛相)が最も頭を悩ませたのが、「事態認定」の難しさだ。自衛隊が防衛出動するには、政府が「武力攻撃事態(日本への武力攻撃に対して個別的自衛権を行使)」「存立危機事態(密接な関係にある他国、つまり米国への武力攻撃に対して集団的自衛権を行使)」のいずれかに認定する必要がある。) 中国からのサイバー攻撃により日本国内に大規模停電と通信障害が発生し、沖縄県・先島諸島への海底ケーブルが切断されたという想定に際し、防衛省サイドは「武力攻撃予測事態」の認定を要請した。これは「武力攻撃事態」の一歩手前の準備期間で、認定されれば自衛隊による空港・港湾・道路の優先利用や住民避難が可能になる。日本側が有事に備えていることを中国側に示す抑止効果もある。 しかし小野寺「首相」は認定を見送った。 理由の1つは、日本が先に事態をエスカレートさせたと国際社会でみられるのを避けるため。もう1つは、中国にいる日本人に退避の時間をつくるためだ。小野寺氏は昨年も同様の判断を下している。 中国には約10万人の日本人が住んでいる。事態認定はいわば中国を敵国と見なす行為であり、そうなれば中国にいる日本人が危険にさらされるおそれがある。中国の外に脱出するための時間を確保する必要があるというのが小野寺氏の考えだった』、「中国にいる日本人に退避の時間をつくるため」、これでは時間がかかり過ぎて、タイミングを失うだけだ。「在留邦人」の問題は別途考えるようにすべきだ。
・『この判断には異議もある。事態が動く中で自衛隊の展開が遅れるからだ。また、多少時間ができたところで、実際に10万人もの在留邦人が逃げ切れる保証はない。 JFSSのシミュレーションに第1回から参加し続けている尾上定正・元空将は「米国のバイデン大統領はロシアのウクライナ侵攻に際して、ロシアやウクライナにいる米国人の救出作戦は行わないと明言した。有事の際に、在外邦人保護のため政府のできる役割は限られているのが現実だ」と話す』、「米国のバイデン大統領はロシアのウクライナ侵攻に際して、ロシアやウクライナにいる米国人の救出作戦は行わないと明言した」、日本も見習うべきだ。
・『中国脱出は現実的に無理 台湾有事に備え台湾駐在員の退避計画を作成した企業はあっても、中国駐在員のそれを用意している日本企業はまずない。「退避計画を作成していることが中国人社員に知られた瞬間に組織が回らなくなるし、中国当局からのバッシングも必至だ」(中国ビジネスに詳しい商社関係者)。) 多くの企業では、いったんは検討してもすぐ「現実的に無理」という結論に至る。せいぜい「駐在員に1年間有効なオープン航空券を渡しておく」という程度のことでお茶を濁しているようだ。 「世界の工場」中国は日本企業にとって重要な生産基盤だ。現在も高水準の投資が続いているが、その位置づけは下がりつつある。国際協力銀行が製造業企業に「今後3年程度の有望な事業展開先国・地域」を聞くアンケート調査では、中国の得票率が長期低落傾向だ。 米中対立に続いて台湾有事という異次元のリスクが浮上した今、中国ビジネスの将来像を描くのは以前よりずっと難しくなってきた。 本当に武力衝突が始まれば、そのダメージは東アジアにとどまらない。半導体産業において、台湾積体電路製造(TSMC)をはじめとする台湾企業の存在は圧倒的で台湾勢のシェアは先端品では9割に及ぶ。米国のヘインズ国家情報長官は5月に上院軍事委員会で、「台湾の半導体供給が止まれば、世界経済は年間6000億〜1兆ドル以上の打撃を受ける可能性がある」と証言した。 日本にとって台湾有事は、絶対に発生を避けたい事態だ。中国を含む東アジア全域に張り巡らせてきたサプライチェーンが破壊されることの打撃は計り知れない』、「日本にとって台湾有事は、絶対に発生を避けたい事態だ」、しかし、極秘にシミュレーションしておく必要はありそうだ。
・『米軍が緊張感を演出している面も 米国発の議論をそのまま受け取る必要はない。装備体系の更新を急ぎたい米軍が、「台湾有事が27年に迫っている」という緊張感を演出している面もあるからだ。 前防衛大学校長で6月まで米スタンフォード大学に滞在していた国分良成・慶応大学名誉教授は、最近の講演会で「米国で台湾有事の議論を主導しているのは、ワシントンにいる安全保障系の戦略家たちばかりだ。中国や台湾の内情を踏まえた分析はあまり見られない」と話した。 確率論や常識では考えにくいが、ひとたび実現すれば壊滅的な被害をもたらすリスクを「ブラックスワン」と呼ぶ。日本にとって台湾有事はまさにこれだ。最悪の事態を想定しておくのが安全保障の要諦だが、その論理だけでは社会は回らない。まして企業には個別の判断があって当然だ。自分のビジネスにとっての最適解を見つけるために、バランスよく情報を集め台湾をめぐるファクトを正確に理解しておきたい』、「ブラックスワン」となれば、高度な大人の判断が求められるようだ。
タグ:台湾 (その5)(いきなり数千発のミサイルが沖縄に…米国の大学教授が予想した「中国の台湾進攻」の絶望的シナリオ アメリカの選択肢は軍事的後退と核使用の2択、自衛隊員2500人 米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション 開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅、迫り来る「台湾有事」に無防備すぎる日本企業 中国の在留邦人10万人は取り残されるのか) PRESIDENT ONLINE ハル・ブランズ マイケル・ベックリー氏 「いきなり数千発のミサイルが沖縄に…米国の大学教授が予想した「中国の台湾進攻」の絶望的シナリオ アメリカの選択肢は軍事的後退と核使用の2択」 共著『デンジャー・ゾーン』(訳:奥山真司、飛鳥新社) 「いきなり数千発のミサイルが沖縄に」とタイトルはセンセーショナルだ。 「中国は2020年に香港の民主化運動を鎮圧することで、台湾を平和的に説得できる時代が終わったことを示唆した」、確かにこれは重い意味を持つようだ。 「1990年代には台湾は中国に対して地理的・技術的に有利であったため、実質的に征服不可能だった。台湾海峡は台風や高波のおかげで危険な海域で、島そのものが自然の要塞となっている」、「それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊できると言われている。 中国のサイバーおよび対衛星能力は、アメリカ軍の重要なセンサーや人工衛それ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。 中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊星を機能不全に陥れることで、同軍の耳と目と口をきけなくしてしまう恐れがある。中国の対艦ミサイルは、西太平洋を航行するアメリカの大型水上艦にとって、非常に危険になる。ここ25年間にわたり、人民解放軍は台湾征服のために執拗しつように準備してきた」、かつてとは比べようもないほど「中国軍」が増強されたようだ。 「オバマ、トランプ、バイデンの各政権は、中国に対抗するため、アジアに軸足移動(ピボット)することを望んでいた。 だがこのような計画は、ISISの台頭やロシアのウクライナ侵攻など、他の地域で発生した案件によって覆されてきた。グローバルな勢力であるアメリカは、単一の不測の軍事案件に備える余裕もない。その結果、中国の軍事近代化に空軍と海軍が追いつけていない。 アジアにおけるアメリカの軍隊は、依然として少数の大型の軍艦と、露出した基地から運用される短距離戦闘機が主体で、これらはまさに、中国が奇襲ミサイル攻撃で破壊しうるものだ。アメリカは台湾から500マイル以内・・・にたった2つの空軍基地しか持っていない。中国がこれらの基地を使えなくすれば、アメリカ軍は空母や、台湾から1800マイル離れたグアムから行動しなければならなくなる。 この距離と空中給油の必要性のために、アメリカ軍の出撃回数は半減させられ、そのせいで中国に台湾上空を支配するチャンスを与えてしまうことになる 「台湾は兵站部隊を削減しており、これによって戦闘部隊への補給や基本的な整備を日常的に怠っている状態だ。そのため兵士は事故や貴重な弾薬の浪費を恐れて武器を使った訓練を避けている。 台湾のパイロットの飛行時間は、月に10時間未満である。また、戦車や攻撃ヘリの半数以上が使用不可能な状態で、多くの台湾人兵士が士気の低下に苦しんでいる・・・台湾政府自身が認めているように、中国は台湾の守りを「麻痺」させることができそうだ」、「台湾」が自ら「守り」を弱めた理由は何なのだろう。ただ、いずれにしても、ちょっとやそっとの増強 では到底追いつけないだろう。 「2020年代半ばから後半にかけての時期は・・・中国にとってこれほどの好機はない。あるペンタゴンの元高官が言ったように、アメリカはこの時期に台湾との戦いで「尻を蹴り上げられる」リスクを負うことになる」、やれやれ。 「国営の『環球時報』の2020年の調査によれば、本土の70%の人々が台湾の本土への統一のために武力行使することを強く支持しており、37%が「もし戦争が起こるなら、2025年までがベストだ」と考えているという。 中国政府高官たちは、プライベートな場では西側の専門家たちに向かって、中国共産党内で侵略を求める声が高まっており、習近平は「人民解放軍はそれをやり遂げることができる」と主張するタカ派や「イエスマン」たちに囲まれていると語っている」、 「アメリカ海軍と空軍の近代化は何十年にもわたって先送りにされてきた。現在その問題は深刻なものとなっている。 ペンタゴンが所有する主力艦や戦闘機の多くは、文字通りバラバラになっているか、燃え尽きようとしている。老朽化した船体や機体は新たなアップグレードだけでなく、中国の新軍と競争するために必要な最新のエンジン、センサー、弾薬を搭載することにも耐えられない状態だ。これらのアメリカの戦力は退役させなければならない」、「おそらくそのためかもしれないが、習近平は「台湾の解放」に自分の正統性・・・を賭けている。201 7年に彼は台湾の統一が「中華民族の偉大な若返りを実現するための必然的な要件」であると発表した。そして2020年には中国共産党が「近代化された」軍隊を投入する予定の時期を、2034年から2027年に早めている。 2021年3月、当時インド太平洋軍司令官であったフィリップ・デービッドソン提督は、中国が今後6年以内に台湾を侵略する可能性があると警告した」、「今後6年以内に台湾を侵略する可能性」とは大変だ。 「台湾とアメリカ軍が反撃してくる前に、激しく攻撃することが勝利への一番の近道であることを知っている。だからこそ中国の軍事ドクトリンでは、真珠湾攻撃のような形で相手を素早く武装解除することを目指しているのだ」、恐ろしいことだ。 「台湾各地に潜んでいた中国の特殊部隊や諜報員たちが工作を開始し、軍事施設で爆弾を爆発させ、台湾の指導者を暗殺する。中国のサイバー攻撃は、台湾の重要なインフラを麻痺させるだろう。 また、人民解放軍はサイバー攻撃と、場合によっては地上発射型ミサイルを使って、アメリカ軍同士やワシントンとの通信手段となっている衛星を破壊し、数日から数週間にわたってアメリカ側の対応を不可能にしたり、そもそも何が起こっているのかをわからないようにするだろう」、中国側の初期戦術はその通りなのだろ。 「アメリカはグローバルなトレードオフに直面し、太平洋のアメリカ軍は、ベトナム戦争や第二次世界大戦以来の規模となる損失を被るだろう。アメリカの指導者たちはひどいジレンマに直面することになるかもしれない。つまり屈辱的な軍事的後退を受け入れるか、中国が後退しなければ核兵器を使うと脅すかだ。 2018年、国防専門家によるある有識者委員会は、核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性がある、と結論付けている。地政学的にこれ以上危険なことはない」、 「核の黙示録の危険を冒すような戦略に頼らなければ、アメリカは「決定的な軍事的敗北」を被る可能性」、「アメリカ」が「核の黙示録」に頼れば、中国側も「核」で応戦するという悲劇的シナリオに追い込まれる可能性もある。或いは「アメリカ」が「「決定的な軍事的敗北」を被る」方を選択した場合には、「中国の天下」が続くという嫌な時代になる可能性も覚悟する必要がありそうだ。 青葉 やまと 「自衛隊員2500人、米兵1万人が犠牲になれば台湾は守れる…中国の台湾侵攻をめぐる衝撃のシミュレーション 開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅」 「笹川平和財団」の「戦闘シミュレーション」によれば、「仮に中国が武力行使に及んだ際にも、台湾の主権を奪う試みは失敗に終わるとの予測」、「米シンクタンク・戦略国際問題研究所」も「同様の傾向」を示した。しかし、「どちらのシミュレーションも、その陰には日米の多大な代償が伴うおそれがあると物語っている。前者では、日米は合わせて500機以上の戦闘機を失うとの試算結果」、なるほど。 「日米」の「犠牲」は甚大で、「日本は144機の戦闘機を失い、自衛隊の死傷者は2500人に達する」(財団)、「アメリカの被害もこれ以上に甚大で、最大400機の戦闘機を失い、1万人以上の兵士が死傷するおそれがある」、なるほど。 「シミュレーションでは、米軍と自衛隊が中国軍の補給線を断ち、台湾上空の制空権を握ったあと、中国軍に決定打となる攻撃を仕掛けたことで紛争の終結に至っている」、「ソフリプは、大なり小なり日本が巻き添えを食う展開は避けられないとみる。「中国が日本の基地を直接攻撃しない場合であっても、日本の基地は人員を動員し、介入を試みるアメリカに協調することを決断するだろう」と同誌は解説している』、なるほど。 「中国は・・・空母2隻を含む156隻の軍艦、および168機の戦闘機、そして48機の軍用輸送機を中国側は失うとされている。兵士の死傷は4万人以上」、「台湾は、18隻の軍艦と200機の軍用機を喪失する。また、兵士1万3000人が死傷」、「日米軍も・・・合計1万2500人以上の兵士が死傷し、500機超の戦闘機を失うという結果」、「日米軍」の損失も馬鹿にならないようだ。 「中国軍が紛争を起こす実力を持っているとの認識を示したうえで、1~2週間で台湾占領を達成するだけの力はないと語った。 台湾の台北時報タイペイ・タイムズ紙はシミュレーション結果を基に、「机上演習で『身の毛もよだつ』損失、中国が敗北の見込み」と報じた。4万人が死傷する中国側に対し、台湾軍も2万6000人以上の死傷者が出る厳しい結果を伝えている」、なるほど。 「24種のシナリオにしたがってシミュレーションを実施した結果、大半のシナリオでは、日米の助力によって台湾側が中国の上陸作戦の阻止に成功し、自治を維持する結果に至った」、まずまずだ。 それにしても「開戦から数時間で台湾の海・空軍はほぼ壊滅」との「侵攻序盤の展開」はショッキングだ。 「「基本シナリオ」においては、中国の侵攻はすぐに失敗に終わる。台湾の地上部隊が海岸堡を急襲し、中国側は補給線の確保と内陸部への進軍に苦戦する展開が見られた。 その間にも、日本の自衛隊の援護を受け、米軍の潜水艦・爆撃機・戦闘機が戦闘区域に到達。中国の上陸艦隊を「急速に機能不全に陥れる」という。 CSISはリポートを通じ、紛争後の余波にも触れている。それによると中国国内では、中国共産党の支持が揺らぐことが予見されるという。リポートは「中国も大きな損失を被っており、台湾の占領に失敗したことで、中国共産党による統治が不安定になる可能性がある」としている」、「中国共産党による統治が不安定になる可能性」確かにその通りだ。 「財団は、投入可能な兵器の状況によっては、中国軍がより有利に戦闘を進めるおそれもあると警告している。 日本にとって、こうしたシミュレーションの結果は、中国軍の脅威を強調するものであり、警鐘に他ならない。アジア太平洋地域の安全保障を維持するため、日本は引き続きアメリカと緊密な協力関係を築く必要があるだろう。 まずは有事に発展しないことを願うばかりだが、シミュレーションのシナリオのように日本へのミサイル攻撃が行われるのであれば、台湾情勢は無関係と見ることも難しくなってくる。中国軍の脅威に適正に対処するため、戦 略的な準備が求められよう」、その通りだ。 東洋経済オンライン「迫り来る「台湾有事」に無防備すぎる日本企業 中国の在留邦人10万人は取り残されるのか」 興味深そうだ。 「中国にいる日本人に退避の時間をつくるため」、これでは時間がかかり過ぎて、タイミングを失うだけだ。「在留邦人」の問題は別途考えるようにすべきだ。 「米国のバイデン大統領はロシアのウクライナ侵攻に際して、ロシアやウクライナにいる米国人の救出作戦は行わないと明言した」、日本も見習うべきだ。 「日本にとって台湾有事は、絶対に発生を避けたい事態だ」、しかし、極秘にシミュレーションしておく必要はありそうだ。 「ブラックスワン」となれば、高度な大人の判断が求められるようだ。
中国国内政治(その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平にビビりまくる李強新首相 国家主席のポチとなって視察同行の悲哀、「消えた秦剛外相のミステリー」を追う、中国「反スパイ法改正」で“日本人の拘束リスク”は上昇必至…注意すべきことは?) [世界情勢]
中国国内政治については、昨年2月18日に取上げた。今日は、(その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平にビビりまくる李強新首相 国家主席のポチとなって視察同行の悲哀、「消えた秦剛外相のミステリー」を追う、中国「反スパイ法改正」で“日本人の拘束リスク”は上昇必至…注意すべきことは?)である。
先ずは、昨年3月17日付けNewsweek日本版が掲載した在米ジャーナリストのゴードン・チャン氏による「戦争したくて仕方ない軍部と、共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/03/post-98308_1.php
・『<冬季オリンピックをどうにか終えて、異例の「3期目」党総書記を狙う習近平が直面する党上層部と軍の批判派、そして莫大な債務の山という時限爆弾> 中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、オリンピックによってトップの座に上り詰めたと言っても過言ではない。そして今、オリンピックによって、その座を失う可能性がある。 2008年夏に北京夏季五輪が開催されたとき、習は党幹部として実務面の責任を担った。中国でのオリンピック初開催となったこの大会は経済成長を遂げた中国を世界にお披露目する機会にもなり、人々の愛国心と自尊心を大いに高めた。その成功をバネに、習は2012年秋の中国共産党第18回党大会で党総書記(国家主席)の座へと駆け上がった。 今年の冬、習は再びオリンピック開催を仕切った。華やかな開会式を見守りながら、多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている。 習自身も、党内からの激しい突き上げに遭っている。今秋開催予定の第20回党大会で、党総書記として前代未聞の3期目に突入する計画も必ずしも盤石ではない。冬季五輪の失敗が許されないのはもちろん、スキャンダルもテロもウイグル問題への抗議行動も起こさせず、何より「ゼロコロナ」戦略を成功させなければならない』、「2008年夏に北京夏季五輪が開催されたとき、習は党幹部として実務面の責任を担った。中国でのオリンピック初開催となったこの大会は経済成長を遂げた中国を世界にお披露目する機会にもなり、人々の愛国心と自尊心を大いに高めた。その成功をバネに、習は2012年秋の中国共産党第18回党大会で党総書記(国家主席)の座へと駆け上がった」、「今年の冬、習は再びオリンピック開催を仕切った。華やかな開会式を見守りながら、多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている」、「基盤」が「脆弱」になったとはどういうことだろう。
・『集団指導体制を廃止したツケ だからだろう。習は準備段階から細かなことにまで目を配ってきた。「オリンピックの準備作業は習の統治スタイルそのものだ」と、ニューヨーク・タイムズ紙は報じた。「選手村の配置からスキーやスキーウエアのブランドまで、あらゆる決定の中心に習がいた」。建設中のオリンピック関連施設を視察に訪れ、現場監督に指示を与えることもあった。 何か間違いがあれば、自分が責任を問われる状況をつくったのは習自身だ。習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした。) 実際、習の弱肉強食のメンタリティーは多くの党員を震え上がらせた。そして習は「もしその時が来たら、去るべき人物」と彼らに見なされるようになった。絶対的服従を求める習の統治スタイルは、中国の台頭が好調な間は機能した。だが今、長年放置した問題が無視できないものとなり、習の立場を脆弱にしている。 中国が抱える最大の問題は、巨額の債務だ。経営危機に陥った中国恒大集団など、複数の大手不動産デベロッパーは昨年9月以降、相次ぎ債務返済に窮してきた。政府も、とりわけ2008年のリーマン・ショック後に打ち出した大型景気対策のツケに苦しんでいる。中国が抱える債務はGDP比350%との推測もあり、もはや小手先の対策では危機は回避できなくなっている。 その一方で、実体経済は停滞している。食料不足も深刻で、資源は枯渇し、新型コロナウイルス感染症の拡大を加速させる一因となった。さらに中国の人口動態は持続不可能なトレンドをたどっている。西安交通大学の研究チームが昨秋発表した予測では、中国の人口は45年後に現在の半分になる可能性があるという』、「自分が責任を問われる状況をつくったのは習自身だ。習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした」、「長年放置した問題が無視できないものとなり、習の立場を脆弱にしている。 中国が抱える最大の問題は、巨額の債務だ。経営危機に陥った中国恒大集団など、複数の大手不動産デベロッパーは昨年9月以降、相次ぎ債務返済に窮してきた。政府も、とりわけ2008年のリーマン・ショック後に打ち出した大型景気対策のツケに苦しんでいる。中国が抱える債務はGDP比350%との推測もあり、もはや小手先の対策では危機は回避できなくなっている。 その一方で、実体経済は停滞している」、「中国の人口動態は持続不可能なトレンドをたどっている。西安交通大学の研究チームが昨秋発表した予測では、中国の人口は45年後に現在の半分になる可能性があるという」、こんな難問を抱えて、「トップダウン式の意思決定システム」で乗り切ろうというのは、およそ正気の沙汰とは思えない。
・『露呈する内紛と、公然と表明される異論 習の強権的な統治スタイルを考えれば、指導部内に不和が生じている明らかな兆候があっても驚きではない。いい例が、共産党の汚職摘発を主導する中央規律検査委員会の機関紙、中国紀検監察報が昨年12月号に掲載した記事だ。 「党中央に反する意見を公然と表明する独善的な幹部がいる」と、同記事は述べている。党中央とは一般的に、習その人を指す用語だ。一部の幹部は「党中央の決定や政策を拒否し、ゆがめ」ており「大それた野心の下で公然と、またはひそかに党中央に背く者もいる」という。 政府のプロパガンダ機関が国家指導者へのあからさまな反抗を報じるのだから、内紛がよほど激烈になっているのは間違いない。 この数週間、中国では複数の高官が習と一致しない見解を公表している。国政助言機関、中国人民政治協商会議の賈慶国(チア・チンクオ)常務委員は、過剰な費用を投じて安全保障を追求する姿勢に警告を発した。これは明らかに、習の路線に対する批判だ。 昨年12月には、共産党機関紙の人民日報が経済改革の特集記事を掲載したが、習には全く触れていなかった。英文メディアの日経アジアが指摘するように「中国の主要紙が習を無視するなら、全ては未知数」だ。) こうした不和への反応として、習は軍の支持獲得に力を入れている。共産主義青年団(共青団)とつながっていた前任者の胡錦濤(フー・チンタオ)、胡の前任者で「上海閥」に支えられた江沢民(チアン・ツォーミン)と異なり、国家主席就任以前の習は党内のいずれの派閥とも密接に結び付く存在ではなかった。 だからこそ、どの派閥からも許容され得る人物として、習は国家主席に選ばれた。だがトップに上り詰めると、権力掌握と効果的な支配には支持基盤が不可欠だと判断し、政治的支援の中核として特定の将軍や司令長官に目を向けるようになった。 今や習の派閥は軍だ。将官クラスの「腐敗分子」処分や人民解放軍の全面的再編を通じて、習は軍を手中に収めたと広く見なされている。 とはいえ、軍が習を手中にしている可能性もある。共産党内で最も統制の取れた派閥である軍が習の行動を指示しているか、軍には望みどおりにさせなければならないと、習は承知しているのではないか』、「習は軍を手中に収めたと広く見なされている。 とはいえ、軍が習を手中にしている可能性もある。共産党内で最も統制の取れた派閥である軍が習の行動を指示しているか、軍には望みどおりにさせなければならないと、習は承知しているのではないか」、これは軍の暴走を抑えられないことを意味し、極めて危険な兆候だ。
・『政治体制内で最も好戦的な集団が得た力 いずれにしても、この力学は危険だ。急速な影響力拡大を受けて、人民解放軍には、より多くの国家資源が割かれている。制服組が多くを占める強硬派が政府の方針を決定していると見受けられ、彼らの「軍事外交」が外交政策になっている。 軍トップの一部は戦いたくてうずうずしており、中国の文民統制はごく緩やかなものでしかない。その結果、軍部が台頭した1930年代の日本と似た不穏な事態が起きている。習が力を与えているのは、中国の政治体制内で最も好戦的な集団だ。 オリンピック・パラリンピックが終わったら中国で何が起きるのか。オーストラリアの元外交官で中国専門家のロジャー・アーレンが言う「際限のない無意味な権力闘争」を、共産党幹部が再開するのは確実だ。 だが今度ばかりは、少なくとも中国の最高指導者にとって、党内争いが重要な結果を伴うことはほぼ間違いない。習が国家主席の座にとどまれば、共産党は事実上、制度として成り立たなくなる。 毛沢東時代の絶対的権力の恐怖を経験した共産党は80年代以降、指導者を制約する規定や慣行の確立に動いてきた。だが毛の強権的システムへの回帰こそ、習が望むものだ。) 3月13日のパラリンピック閉会式をもって「オリンピック期間中の停戦」も終わり、中国政治はますます不穏な時期に突入した。秦剛(チン・カン)駐米大使は今年1月、米メディアのインタビューでアメリカとの「軍事衝突」の可能性を口にした。 冬季オリンピックの評価次第では、習は国内の批判派や政敵を黙らせるために、台湾か近隣諸国に対して何らかの攻撃的措置を取る恐れもある。逆に、オリンピックが成功と評価されたとしても、習はそれに勢いづいて大胆な行動に出る恐れがある。 習が権力を維持するために、決定的な勝利を必要としているのは明らかだ。かねてから、自分には中国だけでなく世界を統治する権利と義務があると主張してきたし、中国は領土獲得を永遠に延期することはできないとも言ってきた。台湾併合によってトップとしての自らの正当性を証明したがっているとも言われる。 昨年7月の中国共産党創立100年の大演説で習は、中国の行く手を阻む者は「打ちのめされる」とし、「中国人民は古い世界を打ち破るだけでなく、新しい世界を建設することにも優れている」と語った。 オリンピックは終わったが、本当の競争は始まったばかりだ』、「軍トップの一部は戦いたくてうずうずしており、中国の文民統制はごく緩やかなものでしかない。その結果、軍部が台頭した1930年代の日本と似た不穏な事態が起きている。習が力を与えているのは、中国の政治体制内で最も好戦的な集団だ」、「習近平」が「軍部」を賢明に抑えることを期待したい。
次に、7月16日付け現代ビジネスが掲載した国際ジャーナリストの林 愛華氏による「林愛華の「中南海ディープスロート」第2回 習近平にビビりまくる李強新首相 国家主席のポチとなって視察同行の悲哀」を紹介しよう。
・『李強首相がビジネスチャーター便を利用した意味 6月18日、中国国務院総理の李強はドイツを訪問した。国務院総理になって、初めての公式な外国訪問だったが、李強が乗っていたのは政府専用機ではなく、ビジネスチャーター機だった。 新華社はわざわざ「国務院総理の李強はビジネスチャーター機を使って北京を離れた。ドイツ総理ショルツとフランス政府の招きを受けて、ドイツとフランスを公式訪問する(中略)」と報じた。 2013年5月27日、当時の総理の李克強がドイツ訪問を終え、大きな成果を挙げて政府専用機で帰国したと中央テレビ網が報じた。違いは鮮明だ。現任の李強国務院総理はビジネスチャーター機を使い、前の総理の李克強は政府専用機だった。中国においてこれは意味が大きく違う。 中国語で「専機」(ジュアンジー)は政府専用機を指し、「包機」(バオジー)はビジネスチャーター機を意味する。字面の通り、政府専用機とビジネスチャーター機の待遇の違いは鮮明だ。 2012年12月4日に「中共中央八項規定(中共中央の八項目の規約)」を審議し、決議された。「中共中央総書記、国務院総理が訪問をするとき、政府専用機を使用する。ほかの中央政治局常務委員が訪問する際は、必要に応じてビジネスチャーター機あるいは定期便を使うべき」と規定した。 これに従うと、李強は政府専用機を使って外国訪問すべきところ。しかし、実際に彼はビジネスチャーター機を使い、降格待遇を内外に見せつけた』、「李強は政府専用機を使って外国訪問すべきところ。しかし、実際に彼はビジネスチャーター機を使い、降格待遇を内外に見せつけた」、奥ゆかしいようだ。
・『習近平の子分のようにしか見えない 香港のメディア「星島網」は「ビジネスチャーター機を使って外遊するのは李強が自ら選んだのであろう。その目的は(自分が中国のリーダーで二番目と言うより)、他の常務委員と同じであることを示して、習近平の突出した地位を浮かび上がらせようとしている」と指摘した。 李強のこの行動からもう一つの信号が読み取れる。彼と習近平の関係である。習氏に信頼されているが、恐れと遠慮もかなり強い。 李強は副総理の経験もないのに、上海市長から直接国務院総理に異例の抜擢を受けた。立場は弱い。だから常に習氏の機嫌を損なわないように神経を使っているのだろう。初外遊にも関わらず、規約に定められた専用機の使用を辞退した。 中国のことわざに「伴君如伴虎(君主に仕えるのは虎に仕える如し)」というものがある。習近平に対する忠誠心だけで任用されたので、常に姿勢を低くしなければならないのだろう。 他の常務委員会メンバーも同じで、すべて、習氏の言う通りにしているように見える。 今年の5月10日に、習近平は、北京から130kmほどの雄安新区を視察した。北京の機能の移転先と位置づける、習肝いりの新区だ。習は訪問に李強を含む3名の政治局常務委員を同行させた。これは中国において極めてまれなことだ。 胡錦涛時代には、国家主席が国務院総理と同時に地方視察した例は、ほぼなかった。安全保障の視点からは、主席と国務院総理は同時に外出してはならない。しかし、習近平は慣例を破った。現場の写真からは、李強は子分のようにしか見えなかった』、「李強は副総理の経験もないのに、上海市長から直接国務院総理に異例の抜擢を受けた。立場は弱い。だから常に習氏の機嫌を損なわないように神経を使っているのだろう」、わざわざ格下の「ビジネスチャーター機」を使うとは涙ぐましい努力だ。
・『「習近平思想を指導する」 李強は着任してまもなく、「国務院工作規則」を修正し、公表した。指導思想からマルクス主義、毛沢東思想、鄧小平理論、(江沢民の)三つの代表、(胡錦涛の)科学的発展観を全部削除し、「国務院は習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想を指導とする」とした。 李強はこうして、習近平とともに国の行政を管理する国務院総理から、単なる習氏の追従者に成り下がった。李強が用心深くビジネスチャーター機を使う心理が理解できる。 7月6日から9日まで、イエレン米財務長官が訪中した際、李強のほかに前の副総理の劉鶴とも会談した。本来であれば、すでに引退した劉鶴は、李克強と同じように国務にかかわらなくなるはずである。しかし、71歳にもなったのに、劉鶴はやめられずに事実上の再雇用の身だ。 経済通の劉鶴はアメリカとのかかわりが深い。喉から手が出るほど米国との関係を修復したい習政権にとって、劉鶴の力が必要不可欠だったのだろう。 このことを裏返してみれば、李強が率いる国務院メンバーの力不足を証明している』、「本来であれば、すでに引退した劉鶴は、李克強と同じように国務にかかわらなくなるはずである。しかし、71歳にもなったのに、劉鶴はやめられずに事実上の再雇用の身だ。 経済通の劉鶴はアメリカとのかかわりが深い。喉から手が出るほど米国との関係を修復したい習政権にとって、劉鶴の力が必要不可欠だったのだろう。 このことを裏返してみれば、李強が率いる国務院メンバーの力不足を証明している」、同感である。
第三に、この続きを、7月21日付け現代ビジネスが掲載した国際ジャーナルストの林愛華氏による「「消えた秦剛外相のミステリー」を追う…林愛華の「中南海ディープスロート」第3回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/113504?imp=0
・『秦剛の行方 中国の国務委員兼外相の秦剛が、6月25日のロシア外務次官との会談の後、もう1ヵ月近くも動静が途絶えている。外国人記者たちはこれに注目し、7月7日以降、中国外務省の定例の記者会見でたびたび問いただしているが、誤魔化されている。 秦剛外相は、EUの外相にあたるジョセップ・ボレル氏と北京で会談する予定だったが、到着予定の7月5日のわずか2日前になって、中国外務省はEU側に、秦外相は欠席すると伝えた(米メディア『ポリティコ』)。 そのため外国人記者たちは、秦剛に健康問題が生じたのではないかと問いただした。香港のメディアも7月10日、「秦外相が新型コロナウイルスに感染した」と報じた。 誤魔化しきれないと判断したのか、中国外務省は7月11日になって、秦氏が健康上の理由で、インドネシアで行われるアジア地域フォーラム(ARF)などの会議を欠席すると公表した。中国では、国家指導者の健康問題は高度な国家秘密。このように認めたことは極めて例外的な対応だった。 一石が投じられると千層の波が広がる。秦外相にまつわる様々な不穏な話が、中国内外のSNSで取りざたされた。日本のマスコミも取り上げたが、秦外相は香港フェニックステレビの著名な女性ジャーナリストとの不倫関係で調査を受け、動静が途絶えたのではないかと言われたほどだ。 中国のネット上では、裏に政治闘争の匂いをちらつかせるものも、次々と出てきた。 7月13日には、秦剛が6月25日に中央紀律検査委員会の取り調べを受けたと、北京に住むフリーランスの記者、高瑜がツイートした。7月14日には、中国の公安が現れ、秦外相に関するツイッターを削除させられたと、彼女は再びツイートした。 秦外相と不倫関係にある女性のスパイ説や、秦外相自身がアメリカに対して、中国のロケット部隊の秘密を漏洩したことに関して調査されたなどという話も流れた。7月17日には、秦外相が北京の「301病院」(中央軍事委員会が管理する幹部用病院)で死亡したという情報まで飛び出した。 中国では、権力闘争が激しくなると、このような噂が飛び交うものだ。秦外相の失脚を望む人間もいるからだ』、現職の外務大臣が1カ月近く消息不明というのは、いくら秘密国家とはいえ、異常事態だ。
・『水面下で起こる政治闘争 かつて中国外務省の看板スポークスマンと言われた趙立堅。過激な民族主義的発言で「戦狼(せんろう)外交官」(オオカミのように吠える外交官)の代表格と言われた人物であった。しかし秦剛が外相になる直前に降格されて、国境海洋事務局に異動し、その副局長に就任した。 当時、彼の降格人事は、秦剛に嫌われたからだと言われた。趙立堅の妻、湯天如は中国版SNSの「微博」(ウェイボー)で不満をぶちまけ、しばらく微博が更新停止となっていた。しかし今年の7月5日、唐突に、湯天如は「パキスタンのシャリフ総理から花束を贈られた、ありがとう」と、写真とともに「微博」に公開した。 7月10日、つまり中国外務省が秦外相の病気を公にした前日には、彼女は再び、「今天是个好日子(今日はいい日だ)」と「微博」を更新し、夫がスポークスマンだった当時の姿を記録するVTRとともに公開した。 その1時間後には再度、外交官を讃える旗の写真とともに、「皆様の支持に感謝する」とのコメントを公表した。「微博」での「復権」への嬉しさは隠せなかったようだ。 中国外務省では、1年前まで親ロシア派が重視され、勢力が強かった。しかし、2022年6月14日、外務副大臣(外交部副部長)で次期外相とも目された楽玉成が突然、国家ラジオテレビ局の副局長に異動。事実上の降格だった。 それから半年後、趙立堅スポークスマンも更迭された。この一連の動きは、外務省の親米派が絡んでいると見られてきた。そして、その後にアメリカとの関係を重視する駐米大使の秦剛が外相になった。 しかも、彼は弱冠57歳で、駐米中国大使から中央委員、外相、さらには外相兼任でその上の国務委員にまで上りつめた。異例の抜擢だ。外務省内の親米派が完全に勝利したかのように見えた。 楽玉成を始めとした親ロシア派は、面白くなかったろう。秦外相に嫌われたとされる戦狼外交官の趙立堅一家も、今回の秦外相の状況を喜んでいるのではないか。 習近平政権も3期目となり、李克強をはじめとする、いわゆる共青団派は全員、政権外に排除された。代わりに社会主義を固く信じ、民族主義者に映る人たちが台頭している。そのため中国は、現在の国際秩序にむやみに挑戦し、ますます国際社会から乖離している。 秦剛外相にまつわる騒動も、このような中国の情勢と関係がないとは言いきれない。 それにしても、いまだに中国外務省が沈黙を保っているのは不自然だ。1ヵ月近い外相の不在は、政治闘争が起こっているとの憶測を生むだけの十分な空白期間と言えるだろう』、「7月26日付けNHKは「中国 秦剛外相を解任 事実上の更迭か 後任に王毅政治局委」と伝えた。それにしても「後任に王毅政治局委」とは大ベテランの再登場だ、
第四に、8月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際コラムニストの加藤嘉一氏による「中国「反スパイ法改正」で“日本人の拘束リスク”は上昇必至…注意すべきことは?」を紹介しよう。
・『日本の政府と企業の間で高まる「反スパイ法」への警戒と懸念 習近平第3次政権が本格始動して5カ月がたとうとしている。新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に封じ込めるために、3年以上続けてきた「ゼロコロナ」政策が解除された時期とも重なり、中国の“リオープニング”(再開放)に内外から期待がかけられた。 台湾海峡における潜在的衝突、半導体を巡る輸出規制、軍事交流メカニズムの遮断などに象徴される「米中対立」という地政学的構造問題に、日本の官民も必然的に巻き込まれている。そのたびに日中関係は緊張、不安定化し、中国に関わる事業を営む日本企業は、眠れない日々を過ごしているに違いない。 こうした中、日本政府および企業が、「中国との付き合い方」という意味で、足元最も警戒、懸念しているのが、いわゆる「反スパイ法」であろう。今年3月下旬、アステラス製薬現地法人の幹部が北京で拘束された事件(いまだ釈放されていない)は記憶に新しい。 中国政府は2014年11月に「反スパイ法」を公布、即日施行(同時に、1993年に採択された「国家安全法」は廃止)し、それ以来、計17人の邦人が拘束され、うち9人が実刑判決を受けてきた。 「コロナ禍は終わり、中国に行けるようになったが、行っても大丈夫ですか?」 「国際会議に招待されたが、身の安全のほうが大事だから断ることにした」 「普通のビジネスマンですが、中国で拘束される可能性もあるんですよね?」 「拘束されるリスクに対応するためにどうしたらいいでしょうか?持参しないほうがいいものはありますか?仮に拘束されたらどうすればいいでしょうか?」 特にアステラス製薬幹部の拘束以降、このような質問が筆者の元にも頻繁に寄せられている。この拘束事件が、習近平3期目の本格始動、「ゼロコロナ」解除からのリオープンのタイミングとほぼ重なっており、これから、従来のような中国出張が可能になる(ビザは必要)と多くの財界関係者が舞い上がっていた矢先に起きたこともあり、邦人拘束を巡る法的根拠の一つである「反スパイ法」にますます多くの警戒と懸念が集まっているというのが現状であろう』、「これから、従来のような中国出張が可能になる(ビザは必要)と多くの財界関係者が舞い上がっていた矢先に起きた」、「財界関係者」は短期的視点しか持ってないようなのは残念だ。
・『「反スパイ法」で押さえるべき10のポイント 実態は我々が想像するよりも深刻だと認識すべきだろう。 中国共産党結党記念日に当たる7月1日に「反スパイ法」の改正版が施行されたのである。新旧両バージョンの原文を熟読、比較したが、今回の改正は、単なる文言の修正ではなく、3期目入りした習近平政権の国家戦略を反映したものだというのが筆者の基本的判断である。以下、今回の改正において、押さえておくべきポイントを端的に示す。その上で、我々はそこからどんな示唆をくみ取るべきかについて若干の分析を試みる』、「実態は我々が想像するよりも深刻だと認識すべき」、なるほど。
・『中国における邦人拘束リスクは高まるのが必至 上の図表で整理したように、旧版と比べて新版「反スパイ法」は明らかに“進化”している。筆者が特に着目するのが4、7、8である。 4に関して、例えば、ある日本人が北朝鮮に対するスパイ行為をしたとして、その行為が、本件における“第三国”である中国の国家安全に危害を与えると、中国の国家安全当局が主観的に解釈した場合には、当事者である日本人が中国の国家安全当局によって拘束・逮捕され、中国の法律によって裁かれ得るということである。) しかも、2で示したように、「解釈権」はますます拡大しており、中国が国益に反すると見なした「不適切な人物」に対しては、総じて「反スパイ法」が適用される可能性が高くなったといえる。 7に関して、中国の組織や個人とコミュニケーションを取っているほとんどの日本人はテンセントが運営するWeChatのアカウントを有し、使用していると察するが、そのやりとりはすべて中国国家安全当局に見られている。より正確に言えば、同当局は、それらのやりとりを把握できる手段を有している。 そして、文字・通話・写真・文書(特に写真と文書は要注意)を含め、それらのやりとりが中国の国家安全に危害を与えると当局に解釈されれば、その当事者は「反スパイ法」に基づいて拘束・逮捕され、実刑判決を受け得るということである。 8に関して、(特に空港における)出入国時に起こり得る事態というのは、「反スパイ法」および邦人拘束を巡る極めて重要な要素であるが、容疑者の出国を巡る規定が従来以上に、かつ具体的に明文化された事実は重い。 中国と事業を展開している企業であれば、中国から追放された当事者がその日から10年間、中国への入国が禁止されるというのは、会社の事業・収益・評判などあらゆる意味で痛手となるに違いない。ただ、筆者が話を聞いている日本を含む各国の関係者は、中国に入国できないよりも、むしろ中国から出国できないリスクを警戒しているようではあるが。 いずれにせよ、日本企業を取り巻く中国の「反スパイ法」関連の動向、事態は刻一刻と深刻化している。と同時に覚えておかなければならないのは、冒頭の米中対立を含め、日中関係が悪化し、中国政府の日本の対日外交に対する不満や不信が高まれば高まるほど、邦人が「反スパイ法」容疑で中国国家安全当局によって拘束・逮捕される可能性が高まるという不都合な真実である。 ある意味、米中対立下における日本の対中外交、およびそれに対する中国政府の“解釈”が鍵を握っているということだ。そして、いったん邦人が拘束・逮捕されてしまえば、外務省・大使館を含め、日本政府にできることは極めて限られている。 自分の身は自分で守るしかないのだ』、「いったん邦人が拘束・逮捕されてしまえば、外務省・大使館を含め、日本政府にできることは極めて限られている」、負け犬根性まる出しだが、その前に「反スパイ法」の問題点を、日系企業の声を入れて堂々と主張するといった法律面の対応は十分に可能なのではなかろうか。
先ずは、昨年3月17日付けNewsweek日本版が掲載した在米ジャーナリストのゴードン・チャン氏による「戦争したくて仕方ない軍部と、共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/03/post-98308_1.php
・『<冬季オリンピックをどうにか終えて、異例の「3期目」党総書記を狙う習近平が直面する党上層部と軍の批判派、そして莫大な債務の山という時限爆弾> 中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、オリンピックによってトップの座に上り詰めたと言っても過言ではない。そして今、オリンピックによって、その座を失う可能性がある。 2008年夏に北京夏季五輪が開催されたとき、習は党幹部として実務面の責任を担った。中国でのオリンピック初開催となったこの大会は経済成長を遂げた中国を世界にお披露目する機会にもなり、人々の愛国心と自尊心を大いに高めた。その成功をバネに、習は2012年秋の中国共産党第18回党大会で党総書記(国家主席)の座へと駆け上がった。 今年の冬、習は再びオリンピック開催を仕切った。華やかな開会式を見守りながら、多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている。 習自身も、党内からの激しい突き上げに遭っている。今秋開催予定の第20回党大会で、党総書記として前代未聞の3期目に突入する計画も必ずしも盤石ではない。冬季五輪の失敗が許されないのはもちろん、スキャンダルもテロもウイグル問題への抗議行動も起こさせず、何より「ゼロコロナ」戦略を成功させなければならない』、「2008年夏に北京夏季五輪が開催されたとき、習は党幹部として実務面の責任を担った。中国でのオリンピック初開催となったこの大会は経済成長を遂げた中国を世界にお披露目する機会にもなり、人々の愛国心と自尊心を大いに高めた。その成功をバネに、習は2012年秋の中国共産党第18回党大会で党総書記(国家主席)の座へと駆け上がった」、「今年の冬、習は再びオリンピック開催を仕切った。華やかな開会式を見守りながら、多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている」、「基盤」が「脆弱」になったとはどういうことだろう。
・『集団指導体制を廃止したツケ だからだろう。習は準備段階から細かなことにまで目を配ってきた。「オリンピックの準備作業は習の統治スタイルそのものだ」と、ニューヨーク・タイムズ紙は報じた。「選手村の配置からスキーやスキーウエアのブランドまで、あらゆる決定の中心に習がいた」。建設中のオリンピック関連施設を視察に訪れ、現場監督に指示を与えることもあった。 何か間違いがあれば、自分が責任を問われる状況をつくったのは習自身だ。習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした。) 実際、習の弱肉強食のメンタリティーは多くの党員を震え上がらせた。そして習は「もしその時が来たら、去るべき人物」と彼らに見なされるようになった。絶対的服従を求める習の統治スタイルは、中国の台頭が好調な間は機能した。だが今、長年放置した問題が無視できないものとなり、習の立場を脆弱にしている。 中国が抱える最大の問題は、巨額の債務だ。経営危機に陥った中国恒大集団など、複数の大手不動産デベロッパーは昨年9月以降、相次ぎ債務返済に窮してきた。政府も、とりわけ2008年のリーマン・ショック後に打ち出した大型景気対策のツケに苦しんでいる。中国が抱える債務はGDP比350%との推測もあり、もはや小手先の対策では危機は回避できなくなっている。 その一方で、実体経済は停滞している。食料不足も深刻で、資源は枯渇し、新型コロナウイルス感染症の拡大を加速させる一因となった。さらに中国の人口動態は持続不可能なトレンドをたどっている。西安交通大学の研究チームが昨秋発表した予測では、中国の人口は45年後に現在の半分になる可能性があるという』、「自分が責任を問われる状況をつくったのは習自身だ。習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした」、「長年放置した問題が無視できないものとなり、習の立場を脆弱にしている。 中国が抱える最大の問題は、巨額の債務だ。経営危機に陥った中国恒大集団など、複数の大手不動産デベロッパーは昨年9月以降、相次ぎ債務返済に窮してきた。政府も、とりわけ2008年のリーマン・ショック後に打ち出した大型景気対策のツケに苦しんでいる。中国が抱える債務はGDP比350%との推測もあり、もはや小手先の対策では危機は回避できなくなっている。 その一方で、実体経済は停滞している」、「中国の人口動態は持続不可能なトレンドをたどっている。西安交通大学の研究チームが昨秋発表した予測では、中国の人口は45年後に現在の半分になる可能性があるという」、こんな難問を抱えて、「トップダウン式の意思決定システム」で乗り切ろうというのは、およそ正気の沙汰とは思えない。
・『露呈する内紛と、公然と表明される異論 習の強権的な統治スタイルを考えれば、指導部内に不和が生じている明らかな兆候があっても驚きではない。いい例が、共産党の汚職摘発を主導する中央規律検査委員会の機関紙、中国紀検監察報が昨年12月号に掲載した記事だ。 「党中央に反する意見を公然と表明する独善的な幹部がいる」と、同記事は述べている。党中央とは一般的に、習その人を指す用語だ。一部の幹部は「党中央の決定や政策を拒否し、ゆがめ」ており「大それた野心の下で公然と、またはひそかに党中央に背く者もいる」という。 政府のプロパガンダ機関が国家指導者へのあからさまな反抗を報じるのだから、内紛がよほど激烈になっているのは間違いない。 この数週間、中国では複数の高官が習と一致しない見解を公表している。国政助言機関、中国人民政治協商会議の賈慶国(チア・チンクオ)常務委員は、過剰な費用を投じて安全保障を追求する姿勢に警告を発した。これは明らかに、習の路線に対する批判だ。 昨年12月には、共産党機関紙の人民日報が経済改革の特集記事を掲載したが、習には全く触れていなかった。英文メディアの日経アジアが指摘するように「中国の主要紙が習を無視するなら、全ては未知数」だ。) こうした不和への反応として、習は軍の支持獲得に力を入れている。共産主義青年団(共青団)とつながっていた前任者の胡錦濤(フー・チンタオ)、胡の前任者で「上海閥」に支えられた江沢民(チアン・ツォーミン)と異なり、国家主席就任以前の習は党内のいずれの派閥とも密接に結び付く存在ではなかった。 だからこそ、どの派閥からも許容され得る人物として、習は国家主席に選ばれた。だがトップに上り詰めると、権力掌握と効果的な支配には支持基盤が不可欠だと判断し、政治的支援の中核として特定の将軍や司令長官に目を向けるようになった。 今や習の派閥は軍だ。将官クラスの「腐敗分子」処分や人民解放軍の全面的再編を通じて、習は軍を手中に収めたと広く見なされている。 とはいえ、軍が習を手中にしている可能性もある。共産党内で最も統制の取れた派閥である軍が習の行動を指示しているか、軍には望みどおりにさせなければならないと、習は承知しているのではないか』、「習は軍を手中に収めたと広く見なされている。 とはいえ、軍が習を手中にしている可能性もある。共産党内で最も統制の取れた派閥である軍が習の行動を指示しているか、軍には望みどおりにさせなければならないと、習は承知しているのではないか」、これは軍の暴走を抑えられないことを意味し、極めて危険な兆候だ。
・『政治体制内で最も好戦的な集団が得た力 いずれにしても、この力学は危険だ。急速な影響力拡大を受けて、人民解放軍には、より多くの国家資源が割かれている。制服組が多くを占める強硬派が政府の方針を決定していると見受けられ、彼らの「軍事外交」が外交政策になっている。 軍トップの一部は戦いたくてうずうずしており、中国の文民統制はごく緩やかなものでしかない。その結果、軍部が台頭した1930年代の日本と似た不穏な事態が起きている。習が力を与えているのは、中国の政治体制内で最も好戦的な集団だ。 オリンピック・パラリンピックが終わったら中国で何が起きるのか。オーストラリアの元外交官で中国専門家のロジャー・アーレンが言う「際限のない無意味な権力闘争」を、共産党幹部が再開するのは確実だ。 だが今度ばかりは、少なくとも中国の最高指導者にとって、党内争いが重要な結果を伴うことはほぼ間違いない。習が国家主席の座にとどまれば、共産党は事実上、制度として成り立たなくなる。 毛沢東時代の絶対的権力の恐怖を経験した共産党は80年代以降、指導者を制約する規定や慣行の確立に動いてきた。だが毛の強権的システムへの回帰こそ、習が望むものだ。) 3月13日のパラリンピック閉会式をもって「オリンピック期間中の停戦」も終わり、中国政治はますます不穏な時期に突入した。秦剛(チン・カン)駐米大使は今年1月、米メディアのインタビューでアメリカとの「軍事衝突」の可能性を口にした。 冬季オリンピックの評価次第では、習は国内の批判派や政敵を黙らせるために、台湾か近隣諸国に対して何らかの攻撃的措置を取る恐れもある。逆に、オリンピックが成功と評価されたとしても、習はそれに勢いづいて大胆な行動に出る恐れがある。 習が権力を維持するために、決定的な勝利を必要としているのは明らかだ。かねてから、自分には中国だけでなく世界を統治する権利と義務があると主張してきたし、中国は領土獲得を永遠に延期することはできないとも言ってきた。台湾併合によってトップとしての自らの正当性を証明したがっているとも言われる。 昨年7月の中国共産党創立100年の大演説で習は、中国の行く手を阻む者は「打ちのめされる」とし、「中国人民は古い世界を打ち破るだけでなく、新しい世界を建設することにも優れている」と語った。 オリンピックは終わったが、本当の競争は始まったばかりだ』、「軍トップの一部は戦いたくてうずうずしており、中国の文民統制はごく緩やかなものでしかない。その結果、軍部が台頭した1930年代の日本と似た不穏な事態が起きている。習が力を与えているのは、中国の政治体制内で最も好戦的な集団だ」、「習近平」が「軍部」を賢明に抑えることを期待したい。
次に、7月16日付け現代ビジネスが掲載した国際ジャーナリストの林 愛華氏による「林愛華の「中南海ディープスロート」第2回 習近平にビビりまくる李強新首相 国家主席のポチとなって視察同行の悲哀」を紹介しよう。
・『李強首相がビジネスチャーター便を利用した意味 6月18日、中国国務院総理の李強はドイツを訪問した。国務院総理になって、初めての公式な外国訪問だったが、李強が乗っていたのは政府専用機ではなく、ビジネスチャーター機だった。 新華社はわざわざ「国務院総理の李強はビジネスチャーター機を使って北京を離れた。ドイツ総理ショルツとフランス政府の招きを受けて、ドイツとフランスを公式訪問する(中略)」と報じた。 2013年5月27日、当時の総理の李克強がドイツ訪問を終え、大きな成果を挙げて政府専用機で帰国したと中央テレビ網が報じた。違いは鮮明だ。現任の李強国務院総理はビジネスチャーター機を使い、前の総理の李克強は政府専用機だった。中国においてこれは意味が大きく違う。 中国語で「専機」(ジュアンジー)は政府専用機を指し、「包機」(バオジー)はビジネスチャーター機を意味する。字面の通り、政府専用機とビジネスチャーター機の待遇の違いは鮮明だ。 2012年12月4日に「中共中央八項規定(中共中央の八項目の規約)」を審議し、決議された。「中共中央総書記、国務院総理が訪問をするとき、政府専用機を使用する。ほかの中央政治局常務委員が訪問する際は、必要に応じてビジネスチャーター機あるいは定期便を使うべき」と規定した。 これに従うと、李強は政府専用機を使って外国訪問すべきところ。しかし、実際に彼はビジネスチャーター機を使い、降格待遇を内外に見せつけた』、「李強は政府専用機を使って外国訪問すべきところ。しかし、実際に彼はビジネスチャーター機を使い、降格待遇を内外に見せつけた」、奥ゆかしいようだ。
・『習近平の子分のようにしか見えない 香港のメディア「星島網」は「ビジネスチャーター機を使って外遊するのは李強が自ら選んだのであろう。その目的は(自分が中国のリーダーで二番目と言うより)、他の常務委員と同じであることを示して、習近平の突出した地位を浮かび上がらせようとしている」と指摘した。 李強のこの行動からもう一つの信号が読み取れる。彼と習近平の関係である。習氏に信頼されているが、恐れと遠慮もかなり強い。 李強は副総理の経験もないのに、上海市長から直接国務院総理に異例の抜擢を受けた。立場は弱い。だから常に習氏の機嫌を損なわないように神経を使っているのだろう。初外遊にも関わらず、規約に定められた専用機の使用を辞退した。 中国のことわざに「伴君如伴虎(君主に仕えるのは虎に仕える如し)」というものがある。習近平に対する忠誠心だけで任用されたので、常に姿勢を低くしなければならないのだろう。 他の常務委員会メンバーも同じで、すべて、習氏の言う通りにしているように見える。 今年の5月10日に、習近平は、北京から130kmほどの雄安新区を視察した。北京の機能の移転先と位置づける、習肝いりの新区だ。習は訪問に李強を含む3名の政治局常務委員を同行させた。これは中国において極めてまれなことだ。 胡錦涛時代には、国家主席が国務院総理と同時に地方視察した例は、ほぼなかった。安全保障の視点からは、主席と国務院総理は同時に外出してはならない。しかし、習近平は慣例を破った。現場の写真からは、李強は子分のようにしか見えなかった』、「李強は副総理の経験もないのに、上海市長から直接国務院総理に異例の抜擢を受けた。立場は弱い。だから常に習氏の機嫌を損なわないように神経を使っているのだろう」、わざわざ格下の「ビジネスチャーター機」を使うとは涙ぐましい努力だ。
・『「習近平思想を指導する」 李強は着任してまもなく、「国務院工作規則」を修正し、公表した。指導思想からマルクス主義、毛沢東思想、鄧小平理論、(江沢民の)三つの代表、(胡錦涛の)科学的発展観を全部削除し、「国務院は習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想を指導とする」とした。 李強はこうして、習近平とともに国の行政を管理する国務院総理から、単なる習氏の追従者に成り下がった。李強が用心深くビジネスチャーター機を使う心理が理解できる。 7月6日から9日まで、イエレン米財務長官が訪中した際、李強のほかに前の副総理の劉鶴とも会談した。本来であれば、すでに引退した劉鶴は、李克強と同じように国務にかかわらなくなるはずである。しかし、71歳にもなったのに、劉鶴はやめられずに事実上の再雇用の身だ。 経済通の劉鶴はアメリカとのかかわりが深い。喉から手が出るほど米国との関係を修復したい習政権にとって、劉鶴の力が必要不可欠だったのだろう。 このことを裏返してみれば、李強が率いる国務院メンバーの力不足を証明している』、「本来であれば、すでに引退した劉鶴は、李克強と同じように国務にかかわらなくなるはずである。しかし、71歳にもなったのに、劉鶴はやめられずに事実上の再雇用の身だ。 経済通の劉鶴はアメリカとのかかわりが深い。喉から手が出るほど米国との関係を修復したい習政権にとって、劉鶴の力が必要不可欠だったのだろう。 このことを裏返してみれば、李強が率いる国務院メンバーの力不足を証明している」、同感である。
第三に、この続きを、7月21日付け現代ビジネスが掲載した国際ジャーナルストの林愛華氏による「「消えた秦剛外相のミステリー」を追う…林愛華の「中南海ディープスロート」第3回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/113504?imp=0
・『秦剛の行方 中国の国務委員兼外相の秦剛が、6月25日のロシア外務次官との会談の後、もう1ヵ月近くも動静が途絶えている。外国人記者たちはこれに注目し、7月7日以降、中国外務省の定例の記者会見でたびたび問いただしているが、誤魔化されている。 秦剛外相は、EUの外相にあたるジョセップ・ボレル氏と北京で会談する予定だったが、到着予定の7月5日のわずか2日前になって、中国外務省はEU側に、秦外相は欠席すると伝えた(米メディア『ポリティコ』)。 そのため外国人記者たちは、秦剛に健康問題が生じたのではないかと問いただした。香港のメディアも7月10日、「秦外相が新型コロナウイルスに感染した」と報じた。 誤魔化しきれないと判断したのか、中国外務省は7月11日になって、秦氏が健康上の理由で、インドネシアで行われるアジア地域フォーラム(ARF)などの会議を欠席すると公表した。中国では、国家指導者の健康問題は高度な国家秘密。このように認めたことは極めて例外的な対応だった。 一石が投じられると千層の波が広がる。秦外相にまつわる様々な不穏な話が、中国内外のSNSで取りざたされた。日本のマスコミも取り上げたが、秦外相は香港フェニックステレビの著名な女性ジャーナリストとの不倫関係で調査を受け、動静が途絶えたのではないかと言われたほどだ。 中国のネット上では、裏に政治闘争の匂いをちらつかせるものも、次々と出てきた。 7月13日には、秦剛が6月25日に中央紀律検査委員会の取り調べを受けたと、北京に住むフリーランスの記者、高瑜がツイートした。7月14日には、中国の公安が現れ、秦外相に関するツイッターを削除させられたと、彼女は再びツイートした。 秦外相と不倫関係にある女性のスパイ説や、秦外相自身がアメリカに対して、中国のロケット部隊の秘密を漏洩したことに関して調査されたなどという話も流れた。7月17日には、秦外相が北京の「301病院」(中央軍事委員会が管理する幹部用病院)で死亡したという情報まで飛び出した。 中国では、権力闘争が激しくなると、このような噂が飛び交うものだ。秦外相の失脚を望む人間もいるからだ』、現職の外務大臣が1カ月近く消息不明というのは、いくら秘密国家とはいえ、異常事態だ。
・『水面下で起こる政治闘争 かつて中国外務省の看板スポークスマンと言われた趙立堅。過激な民族主義的発言で「戦狼(せんろう)外交官」(オオカミのように吠える外交官)の代表格と言われた人物であった。しかし秦剛が外相になる直前に降格されて、国境海洋事務局に異動し、その副局長に就任した。 当時、彼の降格人事は、秦剛に嫌われたからだと言われた。趙立堅の妻、湯天如は中国版SNSの「微博」(ウェイボー)で不満をぶちまけ、しばらく微博が更新停止となっていた。しかし今年の7月5日、唐突に、湯天如は「パキスタンのシャリフ総理から花束を贈られた、ありがとう」と、写真とともに「微博」に公開した。 7月10日、つまり中国外務省が秦外相の病気を公にした前日には、彼女は再び、「今天是个好日子(今日はいい日だ)」と「微博」を更新し、夫がスポークスマンだった当時の姿を記録するVTRとともに公開した。 その1時間後には再度、外交官を讃える旗の写真とともに、「皆様の支持に感謝する」とのコメントを公表した。「微博」での「復権」への嬉しさは隠せなかったようだ。 中国外務省では、1年前まで親ロシア派が重視され、勢力が強かった。しかし、2022年6月14日、外務副大臣(外交部副部長)で次期外相とも目された楽玉成が突然、国家ラジオテレビ局の副局長に異動。事実上の降格だった。 それから半年後、趙立堅スポークスマンも更迭された。この一連の動きは、外務省の親米派が絡んでいると見られてきた。そして、その後にアメリカとの関係を重視する駐米大使の秦剛が外相になった。 しかも、彼は弱冠57歳で、駐米中国大使から中央委員、外相、さらには外相兼任でその上の国務委員にまで上りつめた。異例の抜擢だ。外務省内の親米派が完全に勝利したかのように見えた。 楽玉成を始めとした親ロシア派は、面白くなかったろう。秦外相に嫌われたとされる戦狼外交官の趙立堅一家も、今回の秦外相の状況を喜んでいるのではないか。 習近平政権も3期目となり、李克強をはじめとする、いわゆる共青団派は全員、政権外に排除された。代わりに社会主義を固く信じ、民族主義者に映る人たちが台頭している。そのため中国は、現在の国際秩序にむやみに挑戦し、ますます国際社会から乖離している。 秦剛外相にまつわる騒動も、このような中国の情勢と関係がないとは言いきれない。 それにしても、いまだに中国外務省が沈黙を保っているのは不自然だ。1ヵ月近い外相の不在は、政治闘争が起こっているとの憶測を生むだけの十分な空白期間と言えるだろう』、「7月26日付けNHKは「中国 秦剛外相を解任 事実上の更迭か 後任に王毅政治局委」と伝えた。それにしても「後任に王毅政治局委」とは大ベテランの再登場だ、
第四に、8月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際コラムニストの加藤嘉一氏による「中国「反スパイ法改正」で“日本人の拘束リスク”は上昇必至…注意すべきことは?」を紹介しよう。
・『日本の政府と企業の間で高まる「反スパイ法」への警戒と懸念 習近平第3次政権が本格始動して5カ月がたとうとしている。新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に封じ込めるために、3年以上続けてきた「ゼロコロナ」政策が解除された時期とも重なり、中国の“リオープニング”(再開放)に内外から期待がかけられた。 台湾海峡における潜在的衝突、半導体を巡る輸出規制、軍事交流メカニズムの遮断などに象徴される「米中対立」という地政学的構造問題に、日本の官民も必然的に巻き込まれている。そのたびに日中関係は緊張、不安定化し、中国に関わる事業を営む日本企業は、眠れない日々を過ごしているに違いない。 こうした中、日本政府および企業が、「中国との付き合い方」という意味で、足元最も警戒、懸念しているのが、いわゆる「反スパイ法」であろう。今年3月下旬、アステラス製薬現地法人の幹部が北京で拘束された事件(いまだ釈放されていない)は記憶に新しい。 中国政府は2014年11月に「反スパイ法」を公布、即日施行(同時に、1993年に採択された「国家安全法」は廃止)し、それ以来、計17人の邦人が拘束され、うち9人が実刑判決を受けてきた。 「コロナ禍は終わり、中国に行けるようになったが、行っても大丈夫ですか?」 「国際会議に招待されたが、身の安全のほうが大事だから断ることにした」 「普通のビジネスマンですが、中国で拘束される可能性もあるんですよね?」 「拘束されるリスクに対応するためにどうしたらいいでしょうか?持参しないほうがいいものはありますか?仮に拘束されたらどうすればいいでしょうか?」 特にアステラス製薬幹部の拘束以降、このような質問が筆者の元にも頻繁に寄せられている。この拘束事件が、習近平3期目の本格始動、「ゼロコロナ」解除からのリオープンのタイミングとほぼ重なっており、これから、従来のような中国出張が可能になる(ビザは必要)と多くの財界関係者が舞い上がっていた矢先に起きたこともあり、邦人拘束を巡る法的根拠の一つである「反スパイ法」にますます多くの警戒と懸念が集まっているというのが現状であろう』、「これから、従来のような中国出張が可能になる(ビザは必要)と多くの財界関係者が舞い上がっていた矢先に起きた」、「財界関係者」は短期的視点しか持ってないようなのは残念だ。
・『「反スパイ法」で押さえるべき10のポイント 実態は我々が想像するよりも深刻だと認識すべきだろう。 中国共産党結党記念日に当たる7月1日に「反スパイ法」の改正版が施行されたのである。新旧両バージョンの原文を熟読、比較したが、今回の改正は、単なる文言の修正ではなく、3期目入りした習近平政権の国家戦略を反映したものだというのが筆者の基本的判断である。以下、今回の改正において、押さえておくべきポイントを端的に示す。その上で、我々はそこからどんな示唆をくみ取るべきかについて若干の分析を試みる』、「実態は我々が想像するよりも深刻だと認識すべき」、なるほど。
・『中国における邦人拘束リスクは高まるのが必至 上の図表で整理したように、旧版と比べて新版「反スパイ法」は明らかに“進化”している。筆者が特に着目するのが4、7、8である。 4に関して、例えば、ある日本人が北朝鮮に対するスパイ行為をしたとして、その行為が、本件における“第三国”である中国の国家安全に危害を与えると、中国の国家安全当局が主観的に解釈した場合には、当事者である日本人が中国の国家安全当局によって拘束・逮捕され、中国の法律によって裁かれ得るということである。) しかも、2で示したように、「解釈権」はますます拡大しており、中国が国益に反すると見なした「不適切な人物」に対しては、総じて「反スパイ法」が適用される可能性が高くなったといえる。 7に関して、中国の組織や個人とコミュニケーションを取っているほとんどの日本人はテンセントが運営するWeChatのアカウントを有し、使用していると察するが、そのやりとりはすべて中国国家安全当局に見られている。より正確に言えば、同当局は、それらのやりとりを把握できる手段を有している。 そして、文字・通話・写真・文書(特に写真と文書は要注意)を含め、それらのやりとりが中国の国家安全に危害を与えると当局に解釈されれば、その当事者は「反スパイ法」に基づいて拘束・逮捕され、実刑判決を受け得るということである。 8に関して、(特に空港における)出入国時に起こり得る事態というのは、「反スパイ法」および邦人拘束を巡る極めて重要な要素であるが、容疑者の出国を巡る規定が従来以上に、かつ具体的に明文化された事実は重い。 中国と事業を展開している企業であれば、中国から追放された当事者がその日から10年間、中国への入国が禁止されるというのは、会社の事業・収益・評判などあらゆる意味で痛手となるに違いない。ただ、筆者が話を聞いている日本を含む各国の関係者は、中国に入国できないよりも、むしろ中国から出国できないリスクを警戒しているようではあるが。 いずれにせよ、日本企業を取り巻く中国の「反スパイ法」関連の動向、事態は刻一刻と深刻化している。と同時に覚えておかなければならないのは、冒頭の米中対立を含め、日中関係が悪化し、中国政府の日本の対日外交に対する不満や不信が高まれば高まるほど、邦人が「反スパイ法」容疑で中国国家安全当局によって拘束・逮捕される可能性が高まるという不都合な真実である。 ある意味、米中対立下における日本の対中外交、およびそれに対する中国政府の“解釈”が鍵を握っているということだ。そして、いったん邦人が拘束・逮捕されてしまえば、外務省・大使館を含め、日本政府にできることは極めて限られている。 自分の身は自分で守るしかないのだ』、「いったん邦人が拘束・逮捕されてしまえば、外務省・大使館を含め、日本政府にできることは極めて限られている」、負け犬根性まる出しだが、その前に「反スパイ法」の問題点を、日系企業の声を入れて堂々と主張するといった法律面の対応は十分に可能なのではなかろうか。
タグ:中国国内政治 (その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平にビビりまくる李強新首相 国家主席のポチとなって視察同行の悲哀、「消えた秦剛外相のミステリー」を追う、中国「反スパイ法改正」で“日本人の拘束リスク”は上昇必至…注意すべきことは?) Newsweek日本版 ゴードン・チャン氏による「戦争したくて仕方ない軍部と、共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時」 「2008年夏に北京夏季五輪が開催されたとき、習は党幹部として実務面の責任を担った。中国でのオリンピック初開催となったこの大会は経済成長を遂げた中国を世界にお披露目する機会にもなり、人々の愛国心と自尊心を大いに高めた。その成功をバネに、習は2012年秋の中国共産党第18回党大会で党総書記(国家主席)の座へと駆け上がった」、 「今年の冬、習は再びオリンピック開催を仕切った。華やかな開会式を見守りながら、多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている」、「基盤」が「脆弱」になったとはどういうことだろう。 「自分が責任を問われる状況をつくったのは習自身だ。習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした」、「長年放置した問題が無視できないものとなり、習の立場を脆弱にしている。 中国が抱える最大の問題は、巨額の債務だ。経営危機に陥った中国恒大集団など、複数の大手不動産デベロッパーは昨年9月以降、相次ぎ債務返済に窮してきた。 政府も、とりわけ2008年のリーマン・ショック後に打ち出した大型景気対策のツケに苦しんでいる。中国が抱える債務はGDP比350%との推測もあり、もはや小手先の対策では危機は回避できなくなっている。 その一方で、実体経済は停滞している」、「中国の人口動態は持続不可能なトレンドをたどっている。西安交通大学の研究チームが昨秋発表した予測では、中国の人口は45年後に現在の半分になる可能性があるという」、こんな難問を抱えて、「トップダウン式の意思決定システム」で乗り切ろうというのは、およそ正気の沙汰とは思えない。 「習は軍を手中に収めたと広く見なされている。 とはいえ、軍が習を手中にしている可能性もある。共産党内で最も統制の取れた派閥である軍が習の行動を指示しているか、軍には望みどおりにさせなければならないと、習は承知しているのではないか」、これは軍の暴走を抑えられないことを意味し、極めて危険な兆候だ。 「軍トップの一部は戦いたくてうずうずしており、中国の文民統制はごく緩やかなものでしかない。その結果、軍部が台頭した1930年代の日本と似た不穏な事態が起きている。習が力を与えているのは、中国の政治体制内で最も好戦的な集団だ」、「習近平」が「軍部」を賢明に抑えることを期待したい。 現代ビジネス 林 愛華氏による「林愛華の「中南海ディープスロート」第2回 習近平にビビりまくる李強新首相 国家主席のポチとなって視察同行の悲哀」 「李強は政府専用機を使って外国訪問すべきところ。しかし、実際に彼はビジネスチャーター機を使い、降格待遇を内外に見せつけた」、奥ゆかしいようだ。 「李強は副総理の経験もないのに、上海市長から直接国務院総理に異例の抜擢を受けた。立場は弱い。だから常に習氏の機嫌を損なわないように神経を使っているのだろう」、わざわざ格下の「ビジネスチャーター機」を使うとは涙ぐましい努力だ。 「本来であれば、すでに引退した劉鶴は、李克強と同じように国務にかかわらなくなるはずである。しかし、71歳にもなったのに、劉鶴はやめられずに事実上の再雇用の身だ。 経済通の劉鶴はアメリカとのかかわりが深い。喉から手が出るほど米国との関係を修復したい習政権にとって、劉鶴の力が必要不可欠だったのだろう。 このことを裏返してみれば、李強が率いる国務院メンバーの力不足を証明している」、同感である。 林愛華氏による「「消えた秦剛外相のミステリー」を追う…林愛華の「中南海ディープスロート」第3回」 、現職の外務大臣が1カ月近く消息不明というのは、いくら秘密国家とはいえ、異常事態だ。 「7月26日付けNHKは「中国 秦剛外相を解任 事実上の更迭か 後任に王毅政治局委」と伝えた。それにしても「後任に王毅政治局委」とは大ベテランの再登場だ、 ダイヤモンド・オンライン 加藤嘉一氏による「中国「反スパイ法改正」で“日本人の拘束リスク”は上昇必至…注意すべきことは?」 「これから、従来のような中国出張が可能になる(ビザは必要)と多くの財界関係者が舞い上がっていた矢先に起きた」、「財界関係者」は短期的視点しか持ってないようなのは残念だ。 「いったん邦人が拘束・逮捕されてしまえば、外務省・大使館を含め、日本政府にできることは極めて限られている」、負け犬根性まる出しだが、その前に「反スパイ法」の問題点を、日系企業の声を入れて堂々と主張するといった法律面の対応は十分に可能なのではなかろうか。
フランス(その4)(フランス暴動は収まっても政治にくすぶる火種 移民地区を財政支援すれば極右の伸長を招く、日本の報道では分からない「移民大国」フランスの試行錯誤【池上彰・増田ユリヤ対談】) [世界情勢]
フランスについては、昨年1月3日に取上げた。今日は、(その4)(フランス暴動は収まっても政治にくすぶる火種 移民地区を財政支援すれば極右の伸長を招く、日本の報道では分からない「移民大国」フランスの試行錯誤【池上彰・増田ユリヤ対談】)である。
先ずは、本年7月14日付け東洋経済オンラインが掲載した第一生命経済研究所主席エコノミストの田中 理氏による「フランス暴動は収まっても政治にくすぶる火種 移民地区を財政支援すれば極右の伸長を招く」を紹介しよう。
・『フランスのパリ郊外のナンテールで6月27日に起きた、北アフリカにルーツを持つ17歳の少年が警察に射殺された事件は、人種差別や自身の置かれた境遇に不満を持ち、国家や社会から見捨てられていると感じている移民二世や三世の若者による暴動を引き起こした。 パリ北東部や南東部の移民やその家族が多く居住するバンリュー地区(フランス語で「郊外」を意味する)やフランス各地の地方都市で、暴徒化した若者が警察署、学校、図書館、市庁舎、バス、路面電車、車、商店などを襲撃・放火し、警官隊や治安維持隊と激しく衝突した。 事件後の数日間で数千人が逮捕され、炎上する車や花火を投げる若者の姿が世界中に伝えられたが、暴動は1週間足らずでひとまず沈静化の兆しをみせている』、「事件後の数日間で数千人が逮捕」、とは大規模だ。
・『移民地区で警察との間に不信感 暴動のきっかけとなった射殺事件は、無免許でレンタカーを運転中だった「ナヘルM」少年(ナヘルは少年の名前、Mは苗字の伏せ字)のスピード違反を目撃した2人の警官が車両を追走。停止した車から降りるように命じられた少年がこれを拒絶し、警官の制止を振り切って車を再発進させたところ、1人の警官が運転席にいた少年に向かって発砲した。 バンリュー地区では、貧困、教育の荒廃、麻薬の密売、暴力犯罪などが蔓延し、不良化した少年と警察による衝突やいざこざが後を絶たず、両者の間に不信感が渦巻いている。2005年には北アフリカ出身の10代の少年2人が警察からの逃走中に変電所に逃げ込み、感電死する事件が発生し、フランス各地で3週間にわたって暴動が続いた。 類似した事件は最近もたびたび発生しているが、今回は少年と警官のやり取りを撮影した動画がソーシャルメディアで拡散され、若者の不満が爆発した。 フランスは古くはアフリカの旧植民地諸国から、最近ではより幅広い国々から多くの移民を受け入れてきた。人口に占める移民の割合は1968年の6.5%から2021年には10.3%に増加し、フランス国籍を持つ移民の子孫を含めると、外国にルーツを持つ人口の割合はその数倍に達する。 移民や移民の子孫は、移民のバックグラウンドを持たないフランス人と比べて、失業率が高く、低技能・低賃金労働に従事し、生活環境や住環境が厳しく、健康状態も悪いことが各種の統計から確認される』、「人口に占める移民の割合は1968年の6.5%から2021年には10.3%に増加し、フランス国籍を持つ移民の子孫を含めると、外国にルーツを持つ人口の割合はその数倍に達する」、「移民や移民の子孫は、移民のバックグラウンドを持たないフランス人と比べて、失業率が高く、低技能・低賃金労働に従事し、生活環境や住環境が厳しく、健康状態も悪いことが各種の統計から確認される」、なるほど。
・『こうした状況は、フランス語の運用能力やフランスの文化や生活習慣への理解が十分でなかった第一世代の移民だけでなく、フランスで生まれ育った第二世代や第三世代の移民の子孫でもそれほど改善していない。2020年の調査では、両親が移民である子弟の30%が「民族、国籍、人種に基づく差別を経験したことがある」と回答している。 マグレブ(モロッコ、アルジェリア、チュニジアなどの北アフリカ諸国の総称)にルーツを持つ移民や移民の子孫は、同じような経歴を持つ非移民のフランス人に比べて、採用担当者から面接に呼ばれることが少なく、失業のリスクが高く、不当に仕事を拒否されることが多いとの調査結果もある』、「マグレブ・・・にルーツを持つ移民や移民の子孫は、同じような経歴を持つ非移民のフランス人に比べて、採用担当者から面接に呼ばれることが少なく、失業のリスクが高く、不当に仕事を拒否されることが多いとの調査結果もある」、やはり就職差別もあるようだ。
・『9月ラグビーW杯の会場は目と鼻の先 暴動が比較的短期間で落ち着きそうなことから、フランス経済への影響は、それほど深刻なものとはならないだろう。とはいえ、フランスはこれから観光シーズンの最盛期に入り、新型コロナウイルスの感染拡大で自粛していた海外からの観光客が押し寄せてくることが期待されていた。暴動の発生を受け、宿泊予約の一部がキャンセルされたようだ。 9月初旬から10月下旬までの間、フランス各地で開催されるラグビー・ワールドカップの準決勝や決勝戦が行われるパリ郊外のスタッド・ド・フランス(サン=ドニ・スタジアム)は、バンリュー地区に隣接し、今回の暴動の発生現場の1つから目と鼻の先だ。 サン=ドニ・スタジアムは、2024年夏のパリ・オリンピック=パラリンピックの開会式・閉会式が行われるメインスタジアムでもあり、選手村、メディアセンター、水泳・バドミントン・バレーボール競技の会場もパリ北部の移民居住地域の中に点在する。 同スタジアム周辺は、2015年のパリ同時多発テロ事件での自爆テロ現場の1つだったほか、2023年のサッカー・チャンピオンズリーグの決勝戦後にも暴動が発生した。 マクロン大統領は就任以来、教育や公共住宅など、バンリュー地区に大規模な投資を行ってきた。この地域では、2024年夏のオリンピック・パラリンピック関連の建設工事も同時に進んでいる』、「9月ラグビーW杯の会場は目と鼻の先」、やはり地価が安いからなのだろう。
・『移民地区への支援に「農村軽視」と批判 一方、過去2度の大統領選挙でマクロン氏と対峙した極右政党・国民連合のルペン氏は、政府によるバンリュー地区への手厚い政策支援の結果、地方の貧しい農村地域が軽視されていると批判してきた。 長期的な財政安定に向けて、国民に年金の支給開始年齢の引き上げでの協力を求めてきたマクロン大統領が、社会的不平等の是正を目的にバンリュー地区への追加の財政支援を決定すれば、ルペン氏に格好の得点機会を提供することになりかねない。 ルペン氏は2022年の大統領選挙での敗北後、極端な政策主張を封印し、責任ある政党への脱皮を有権者にアピールしている。物価高騰による生活困窮や年金改革での国民の反発も追い風に、支持を伸ばしてきた』、「マクロン大統領が、社会的不平等の是正を目的にバンリュー地区への追加の財政支援を決定すれば、ルペン氏に格好の得点機会を提供することになりかねない」、「ルペン氏」はズル賢いようだ。
・『フランスでは大統領の3選が禁止され、マクロン大統領は2027年の大統領選に出馬できない。マクロン大統領の誕生以降、フランス政界を引っ張ってきた伝統的な右派の共和党と伝統的な左派の社会党は党勢凋落が著しい。 今回の問題への対応は、ポスト・マクロンをにらんだ政局展開を左右しかねない。) 事件はフランス内外で政治的な波紋を広げている。 マクロン大統領は6月30日、ブリュッセルで開かれていた欧州連合(EU)首脳会議を途中で切り上げて帰国し、7月2日からのドイツへの公式訪問を取りやめ、事件への対応に当たった。 3月には年金改革を巡る混乱の発生を受け、英国のチャールズ新国王がフランス訪問を延期したばかりで、フランスの内政混乱はマクロン大統領が重視する外交にも少なからず影響を及ぼしている。 EUの二大国であるドイツとフランスは最近、将来的な原子力エネルギー利用の是非、対空防衛システムの共同調達、ウクライナ支援、財政規律の見直し協議など、さまざまな政策分野で足並みの乱れを露呈してきた。 フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相は、かつてのミッテラン=コール時代やサルコジ=メルケル時代のような、首脳同士の個人的な信頼関係を構築できていないとも噂される』、「フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相は、かつてのミッテラン=コール時代やサルコジ=メルケル時代のような、首脳同士の個人的な信頼関係を構築できていない」、残念ながらその通りだ。
・『独仏のスキマ風はEUにもマイナス フランスは年金改革に暴動と内政が混乱、ドイツはイデオロギーの異なる3党が集まる連立政権内の不協和音に追われ、両国とも内向きになっている。ドイツは合意したはずの政策が連立政権内でひっくり返されることもあり、フランスの政府関係者からは、「ドイツにはまるで3人の首相がいるようだ」との不満の声も聞かれる。 独仏関係の弱体化とそれに伴うリーダーシップの低下は、EUの政策運営や統合強化の行方にも影を落としかねない。2024年半ばにはEUの共同立法機関である欧州議会の選挙が控えており、EUの執行部が総入れ替えとなる。現体制の下でEU関連の政策実現に残された時間は少ない。) フランス国内では、年金改革を巡る数カ月に及んだデモや衝突が一服し、次の政策課題に取り組もうとしていた矢先の内政混乱により、マクロン2期目の改革推進力が一段と低下する恐れがある。 マクロン大統領の議会会派アンサンブルは、2022年の国民議会(下院)選挙で過半数を失い、法案成立に野党の協力が必要となる』、「独仏関係の弱体化とそれに伴うリーダーシップの低下は、EUの政策運営や統合強化の行方にも影を落としかねない。2024年半ばにはEUの共同立法機関である欧州議会の選挙が控えており、EUの執行部が総入れ替えとなる。現体制の下でEU関連の政策実現に残された時間は少ない」、「フランス国内では、年金改革を巡る数カ月に及んだデモや衝突が一服し、次の政策課題に取り組もうとしていた矢先の内政混乱により、マクロン2期目の改革推進力が一段と低下する恐れがある」、なるほど。『野党の協力が得られなかった年金改革では、憲法第49条第3項の特例を用いて議会採決なしで法案を成立させ、このことが国民の反発をさらに高めた。秋にはグリーン産業促進法、移民法改正、来年度予算など、重要法案の審議が目白押しだ。議会を迂回する非常手段を多用することは難しい』。
・『与野党の亀裂深まり、政策停滞は必至 これまでのところマクロン大統領は、射殺事件とそれを機に起きた暴動に手堅く対処している。右派の主張に肩入れし過ぎれば、弱者切り捨てや差別容認と受け止められかねず、左派の主張に傾き過ぎると、極右政党の伸長を招く恐れがある。 マクロン大統領は発砲した警官を擁護せず、移民社会への配慮を示すと同時に、若者による暴力行為を厳しく非難している。非常事態を宣言すべきとの極右政党の主張を退け、警官隊や治安維持隊の大規模投入で暴動を比較的早期に沈静化することに成功した。緊急閣議を招集し、事態の収拾に向けて指導力を発揮した。 不安要素もある。 今回の事件と暴動の発生を受け、与野党間の亀裂は一段と深まっている。 極右政党・国民連合のルペン氏は、政府が暴徒や犯罪に甘いと批判し、刑事事件で成人として責任追及される年齢を18歳から16歳に引き下げることや、有罪判決を受けた住民の公営住宅に住む権利や生活保護を受給する権利を剥奪することを訴えている。 極左政党・不服従のフランスを率いるメランション氏は、警察による暴力行為を非難し、低所得者への支援拡大を求めている。 マクロン大統領が法案審議での協力に期待を寄せる伝統的な右派政党の共和党は最近、極右勢力への対抗意識から、ルペン氏率いる国民連合と似通った司法制度改革案を発表した。移民法改正などの議会審議は紛糾が予想され、政策停滞が避けられそうにない』、「今回の事件と暴動の発生を受け、与野党間の亀裂は一段と深まっている」、「マクロン大統領が法案審議での協力に期待を寄せる伝統的な右派政党の共和党は最近、極右勢力への対抗意識から、ルペン氏率いる国民連合と似通った司法制度改革案を発表した。移民法改正などの議会審議は紛糾が予想され、政策停滞が避けられそうにない」、「マクロン大統領」は中国寄りの姿勢など、問題が多い。国内政治は難題が多そうだ。
次に、8月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏とジャーナリストの増田ユリヤ氏の対談「日本の報道では分からない「移民大国」フランスの試行錯誤【池上彰・増田ユリヤ対談】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/326960
・『フランスでは6月に移民の子の少年が警察官に射殺された事件が起きてから、デモや暴動が続発した。ジャーナリストの増田ユリヤ氏は「日本では『やっぱり移民は問題だ』で終わってしまいがちだが、移民大国フランスでは20年近く試行錯誤を繰り返し、少しずつ前に進んでいる」という。池上彰氏が聞いた』、興味深そうだ。
・『年始からデモが続発 五輪ムードとは程遠いパリ 池上 2024年夏、パリ五輪・パラリンピックが開催されます。五輪は7月26日から、パラリンピックは8月28日からと開催を1年後に控え、日本での関連報道も増えてきています。パリ五輪は第1次世界大戦と第2次世界大戦の「戦間期」である1924年にも開催されており、ちょうど100年目に再び、同じ地で五輪が開かれることでも注目されていますね。 でもパリは五輪ムードには程遠いのではないですか。 増田 パリは年始から「年金支給年齢引き上げ」を決めた政府に反対するデモが続発しており、私は3月下旬に続いて、6月6日にも現地取材に行きました。大規模なデモが起きるという情報があったからなのですが、実際に現地では鉄鋼業や農業など、各組合が呼び掛けて集まった人々が合流した、当初よりも小規模のデモが行われていました。 ナポレオンのお墓があるアンバリッドから、プラス・ディタリー(イタリア広場)までのコースを行進するもので、この政府批判デモにはフランス国内の地方自治体の市長や副市長も参加していたんです。しかも、トリコロールのたすきをかけて。 池上 日本ではなかなか考えられないことですね』、なるほど。
・『移民系の人たちの怒りに火を付けた警察官による少年射殺事件 増田 日本の多くの人はデモと暴動を同一視していて、「パリで大規模なデモ」というと、パリ中のそこかしこで暴徒や抗議者が店舗の窓ガラスを割ったり放火したりと過激な行為に及んでいる、と思っているのではないでしょうか。日本でパリの様子が報じられる際に使われているのは、デモでなく暴動の映像ということも多いです。 6月27日にアフリカにルーツを持つ移民の子の少年が警察官に銃で撃たれ死亡した事件が起きてから抗議活動は激化しており、ベルギーのブリュッセルでも大規模な暴動が起きています。射殺された17歳の少年はこれまでにも窃盗などによる逮捕歴があり、今回も交通検問を逃れようと車を発進させたところ、撃たれた。これが市民、特に移民系の人たちの怒りに火を付けたのです』、「射殺された17歳の少年はこれまでにも窃盗などによる逮捕歴があり、今回も交通検問を逃れようと車を発進させたところ、撃たれた」、「警察」の発砲はやむを得ないと思われるが、現地ならではの事情もあるのだろうか。
・『フランスでは「3代さかのぼればみんな移民」 増田 フランスでは凶悪犯罪の増加に伴い、2017年に法律が改正され、警察の発砲条件が緩和されています。また、右派のマリーヌ・ルペンを支持するなど移民に対する厳しい措置を望む人たちは、今回の件でも警察側を支持しているようです。 池上 元々フランスはデモの権利を最大限認めている一方、警察国家でもあるんですよね。日本では現行犯か、裁判所による逮捕状がなければ怪しい人物を逮捕できませんが、フランスの警察は警察官自身の判断で、最大24時間、特定の人物の身柄を拘束することができます。今回のデモ、あるいは抗議活動や暴動によって6月末までに3500人が拘束されたと報じられていますが、これは日本でいう「逮捕」とは違います。 増田 多数の拘束者が出るのも無理はない面もあって、事件を口実に暴れたいだけの若者も少なくない、と話す現地の声もあります。 中には動画を撮影してYouTubeで拡散し、再生回数を稼ぐために店舗を襲っているケースもある。日本では「移民問題が噴出した」という定型的な切り口で報じられていますが、移民を巡る問題は、一口ではとても言い表せないほど複雑な課題を孕んでいるのです。 池上 欧州の移民というと多くの人は中東やアフリカから来た人たちのことを思い浮かべると思いますが、フランスは欧州内からの移民も多い「移民大国」ですよね。2007年から12年まで大統領を務めたニコラ・サルコジ氏はハンガリー系ですし、その後大統領になったフランソワ・オランド氏のルーツはオランダです。 増田 フランスでは「3代さかのぼればみんな移民」と言う人もいますよ。もちろん、欧州外から来た移民との間であつれきがあるのは事実ですが』、「フランスは欧州内からの移民も多い「移民大国」ですよね。2007年から12年まで大統領を務めたニコラ・サルコジ氏はハンガリー系ですし、その後大統領になったフランソワ・オランド氏のルーツはオランダです」、なるほど。「フランスでは「3代さかのぼればみんな移民」と言う人もいますよ」、これには驚かされた。
・『学校長が治安の悪い地域に住み込んで毎朝、校門前で生徒と握手する 池上 移民系の若者たちが契機となり、フランス全土に波及した事件は以前にもありました。パリ郊外で北アフリカ出身の移民の若者が窃盗を働き、警察に追われながら変電所に逃げ込んで感電死するという痛ましい事件が起きたのは2005年のことです。 増田 その後、事件が起こった地域では、保育所や小中学校が協力して教育改革に取り組んでいました。例えば、民間団体の協力を得て、フランス各地を回っての歴史教育を行うプログラムの拡充を図ったり、ある中学校では毎朝、校長先生が校門に立って、移民を含む全ての生徒たちとあいさつと握手を交わして学校になじんでもらう努力をしていました。 フランスの小中学校は校長以下3人の役職者が学校内か学校のすぐ近くに住まなければならないという決まりがあるため、移民の多い治安の悪い地域に住み込んで、問題解決に尽力している人たちもいるのです』、「フランスの小中学校は校長以下3人の役職者が学校内か学校のすぐ近くに住まなければならないという決まりがあるため、移民の多い治安の悪い地域に住み込んで、問題解決に尽力している人たちもいる」、初めて知ったが、いい試みだ。もっとも、「治安の悪い地域」なら住宅を見つけるのは簡単だが、「治安」が良い「地域」では見つけるのはそんなに簡単にはいかないだろう。
・『階層の違う人々が同じ場所に暮らす、保護者にも語学指導…様々な取り組み 池上 フランスは移民の存在を前提として、どうすればあつれきを減らせるかを考えている。そのためにはまずは教育だ、と。 増田 はい。当時も現地を取材しましたが、鍵になるのはフランス語。学習内容を理解するには不可欠ですから、移民の子どもを対象に補習を行ったり、フランス語を話せない保護者にも学んでもらおうと活動をしたりしている団体もありました。フランス政府も、移民の子でも頑張ればグランゼコール(高等教育機関)にまで行ける教育改革を始めました。 また、移民の多い英国のロンドンで実施されているような、「社会の階層の違う人たちを、あえて同じ場所に住まわせ、交流させる」取り組みも導入しています。もちろん生活上のいざこざもありますが、相互理解を深める以外にないという観点から少しずつ努力を重ね、社会も少しずついい方向へ進みつつあるのも事実なのです。 池上 「移民による暴動」という報道だけでは見えてこない、社会の実相ですね。 増田 日本では「やっぱり移民は問題だ」「差別はなくならない」で終わってしまいがちですが、試行錯誤を繰り返し少しずつ前に進んでいる欧州の取り組みを、まずは知る必要があるでしょう』、私は日本の場合は、「移民」を引き続き制限的に扱えば、さほど問題にならないと考える。
先ずは、本年7月14日付け東洋経済オンラインが掲載した第一生命経済研究所主席エコノミストの田中 理氏による「フランス暴動は収まっても政治にくすぶる火種 移民地区を財政支援すれば極右の伸長を招く」を紹介しよう。
・『フランスのパリ郊外のナンテールで6月27日に起きた、北アフリカにルーツを持つ17歳の少年が警察に射殺された事件は、人種差別や自身の置かれた境遇に不満を持ち、国家や社会から見捨てられていると感じている移民二世や三世の若者による暴動を引き起こした。 パリ北東部や南東部の移民やその家族が多く居住するバンリュー地区(フランス語で「郊外」を意味する)やフランス各地の地方都市で、暴徒化した若者が警察署、学校、図書館、市庁舎、バス、路面電車、車、商店などを襲撃・放火し、警官隊や治安維持隊と激しく衝突した。 事件後の数日間で数千人が逮捕され、炎上する車や花火を投げる若者の姿が世界中に伝えられたが、暴動は1週間足らずでひとまず沈静化の兆しをみせている』、「事件後の数日間で数千人が逮捕」、とは大規模だ。
・『移民地区で警察との間に不信感 暴動のきっかけとなった射殺事件は、無免許でレンタカーを運転中だった「ナヘルM」少年(ナヘルは少年の名前、Mは苗字の伏せ字)のスピード違反を目撃した2人の警官が車両を追走。停止した車から降りるように命じられた少年がこれを拒絶し、警官の制止を振り切って車を再発進させたところ、1人の警官が運転席にいた少年に向かって発砲した。 バンリュー地区では、貧困、教育の荒廃、麻薬の密売、暴力犯罪などが蔓延し、不良化した少年と警察による衝突やいざこざが後を絶たず、両者の間に不信感が渦巻いている。2005年には北アフリカ出身の10代の少年2人が警察からの逃走中に変電所に逃げ込み、感電死する事件が発生し、フランス各地で3週間にわたって暴動が続いた。 類似した事件は最近もたびたび発生しているが、今回は少年と警官のやり取りを撮影した動画がソーシャルメディアで拡散され、若者の不満が爆発した。 フランスは古くはアフリカの旧植民地諸国から、最近ではより幅広い国々から多くの移民を受け入れてきた。人口に占める移民の割合は1968年の6.5%から2021年には10.3%に増加し、フランス国籍を持つ移民の子孫を含めると、外国にルーツを持つ人口の割合はその数倍に達する。 移民や移民の子孫は、移民のバックグラウンドを持たないフランス人と比べて、失業率が高く、低技能・低賃金労働に従事し、生活環境や住環境が厳しく、健康状態も悪いことが各種の統計から確認される』、「人口に占める移民の割合は1968年の6.5%から2021年には10.3%に増加し、フランス国籍を持つ移民の子孫を含めると、外国にルーツを持つ人口の割合はその数倍に達する」、「移民や移民の子孫は、移民のバックグラウンドを持たないフランス人と比べて、失業率が高く、低技能・低賃金労働に従事し、生活環境や住環境が厳しく、健康状態も悪いことが各種の統計から確認される」、なるほど。
・『こうした状況は、フランス語の運用能力やフランスの文化や生活習慣への理解が十分でなかった第一世代の移民だけでなく、フランスで生まれ育った第二世代や第三世代の移民の子孫でもそれほど改善していない。2020年の調査では、両親が移民である子弟の30%が「民族、国籍、人種に基づく差別を経験したことがある」と回答している。 マグレブ(モロッコ、アルジェリア、チュニジアなどの北アフリカ諸国の総称)にルーツを持つ移民や移民の子孫は、同じような経歴を持つ非移民のフランス人に比べて、採用担当者から面接に呼ばれることが少なく、失業のリスクが高く、不当に仕事を拒否されることが多いとの調査結果もある』、「マグレブ・・・にルーツを持つ移民や移民の子孫は、同じような経歴を持つ非移民のフランス人に比べて、採用担当者から面接に呼ばれることが少なく、失業のリスクが高く、不当に仕事を拒否されることが多いとの調査結果もある」、やはり就職差別もあるようだ。
・『9月ラグビーW杯の会場は目と鼻の先 暴動が比較的短期間で落ち着きそうなことから、フランス経済への影響は、それほど深刻なものとはならないだろう。とはいえ、フランスはこれから観光シーズンの最盛期に入り、新型コロナウイルスの感染拡大で自粛していた海外からの観光客が押し寄せてくることが期待されていた。暴動の発生を受け、宿泊予約の一部がキャンセルされたようだ。 9月初旬から10月下旬までの間、フランス各地で開催されるラグビー・ワールドカップの準決勝や決勝戦が行われるパリ郊外のスタッド・ド・フランス(サン=ドニ・スタジアム)は、バンリュー地区に隣接し、今回の暴動の発生現場の1つから目と鼻の先だ。 サン=ドニ・スタジアムは、2024年夏のパリ・オリンピック=パラリンピックの開会式・閉会式が行われるメインスタジアムでもあり、選手村、メディアセンター、水泳・バドミントン・バレーボール競技の会場もパリ北部の移民居住地域の中に点在する。 同スタジアム周辺は、2015年のパリ同時多発テロ事件での自爆テロ現場の1つだったほか、2023年のサッカー・チャンピオンズリーグの決勝戦後にも暴動が発生した。 マクロン大統領は就任以来、教育や公共住宅など、バンリュー地区に大規模な投資を行ってきた。この地域では、2024年夏のオリンピック・パラリンピック関連の建設工事も同時に進んでいる』、「9月ラグビーW杯の会場は目と鼻の先」、やはり地価が安いからなのだろう。
・『移民地区への支援に「農村軽視」と批判 一方、過去2度の大統領選挙でマクロン氏と対峙した極右政党・国民連合のルペン氏は、政府によるバンリュー地区への手厚い政策支援の結果、地方の貧しい農村地域が軽視されていると批判してきた。 長期的な財政安定に向けて、国民に年金の支給開始年齢の引き上げでの協力を求めてきたマクロン大統領が、社会的不平等の是正を目的にバンリュー地区への追加の財政支援を決定すれば、ルペン氏に格好の得点機会を提供することになりかねない。 ルペン氏は2022年の大統領選挙での敗北後、極端な政策主張を封印し、責任ある政党への脱皮を有権者にアピールしている。物価高騰による生活困窮や年金改革での国民の反発も追い風に、支持を伸ばしてきた』、「マクロン大統領が、社会的不平等の是正を目的にバンリュー地区への追加の財政支援を決定すれば、ルペン氏に格好の得点機会を提供することになりかねない」、「ルペン氏」はズル賢いようだ。
・『フランスでは大統領の3選が禁止され、マクロン大統領は2027年の大統領選に出馬できない。マクロン大統領の誕生以降、フランス政界を引っ張ってきた伝統的な右派の共和党と伝統的な左派の社会党は党勢凋落が著しい。 今回の問題への対応は、ポスト・マクロンをにらんだ政局展開を左右しかねない。) 事件はフランス内外で政治的な波紋を広げている。 マクロン大統領は6月30日、ブリュッセルで開かれていた欧州連合(EU)首脳会議を途中で切り上げて帰国し、7月2日からのドイツへの公式訪問を取りやめ、事件への対応に当たった。 3月には年金改革を巡る混乱の発生を受け、英国のチャールズ新国王がフランス訪問を延期したばかりで、フランスの内政混乱はマクロン大統領が重視する外交にも少なからず影響を及ぼしている。 EUの二大国であるドイツとフランスは最近、将来的な原子力エネルギー利用の是非、対空防衛システムの共同調達、ウクライナ支援、財政規律の見直し協議など、さまざまな政策分野で足並みの乱れを露呈してきた。 フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相は、かつてのミッテラン=コール時代やサルコジ=メルケル時代のような、首脳同士の個人的な信頼関係を構築できていないとも噂される』、「フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相は、かつてのミッテラン=コール時代やサルコジ=メルケル時代のような、首脳同士の個人的な信頼関係を構築できていない」、残念ながらその通りだ。
・『独仏のスキマ風はEUにもマイナス フランスは年金改革に暴動と内政が混乱、ドイツはイデオロギーの異なる3党が集まる連立政権内の不協和音に追われ、両国とも内向きになっている。ドイツは合意したはずの政策が連立政権内でひっくり返されることもあり、フランスの政府関係者からは、「ドイツにはまるで3人の首相がいるようだ」との不満の声も聞かれる。 独仏関係の弱体化とそれに伴うリーダーシップの低下は、EUの政策運営や統合強化の行方にも影を落としかねない。2024年半ばにはEUの共同立法機関である欧州議会の選挙が控えており、EUの執行部が総入れ替えとなる。現体制の下でEU関連の政策実現に残された時間は少ない。) フランス国内では、年金改革を巡る数カ月に及んだデモや衝突が一服し、次の政策課題に取り組もうとしていた矢先の内政混乱により、マクロン2期目の改革推進力が一段と低下する恐れがある。 マクロン大統領の議会会派アンサンブルは、2022年の国民議会(下院)選挙で過半数を失い、法案成立に野党の協力が必要となる』、「独仏関係の弱体化とそれに伴うリーダーシップの低下は、EUの政策運営や統合強化の行方にも影を落としかねない。2024年半ばにはEUの共同立法機関である欧州議会の選挙が控えており、EUの執行部が総入れ替えとなる。現体制の下でEU関連の政策実現に残された時間は少ない」、「フランス国内では、年金改革を巡る数カ月に及んだデモや衝突が一服し、次の政策課題に取り組もうとしていた矢先の内政混乱により、マクロン2期目の改革推進力が一段と低下する恐れがある」、なるほど。『野党の協力が得られなかった年金改革では、憲法第49条第3項の特例を用いて議会採決なしで法案を成立させ、このことが国民の反発をさらに高めた。秋にはグリーン産業促進法、移民法改正、来年度予算など、重要法案の審議が目白押しだ。議会を迂回する非常手段を多用することは難しい』。
・『与野党の亀裂深まり、政策停滞は必至 これまでのところマクロン大統領は、射殺事件とそれを機に起きた暴動に手堅く対処している。右派の主張に肩入れし過ぎれば、弱者切り捨てや差別容認と受け止められかねず、左派の主張に傾き過ぎると、極右政党の伸長を招く恐れがある。 マクロン大統領は発砲した警官を擁護せず、移民社会への配慮を示すと同時に、若者による暴力行為を厳しく非難している。非常事態を宣言すべきとの極右政党の主張を退け、警官隊や治安維持隊の大規模投入で暴動を比較的早期に沈静化することに成功した。緊急閣議を招集し、事態の収拾に向けて指導力を発揮した。 不安要素もある。 今回の事件と暴動の発生を受け、与野党間の亀裂は一段と深まっている。 極右政党・国民連合のルペン氏は、政府が暴徒や犯罪に甘いと批判し、刑事事件で成人として責任追及される年齢を18歳から16歳に引き下げることや、有罪判決を受けた住民の公営住宅に住む権利や生活保護を受給する権利を剥奪することを訴えている。 極左政党・不服従のフランスを率いるメランション氏は、警察による暴力行為を非難し、低所得者への支援拡大を求めている。 マクロン大統領が法案審議での協力に期待を寄せる伝統的な右派政党の共和党は最近、極右勢力への対抗意識から、ルペン氏率いる国民連合と似通った司法制度改革案を発表した。移民法改正などの議会審議は紛糾が予想され、政策停滞が避けられそうにない』、「今回の事件と暴動の発生を受け、与野党間の亀裂は一段と深まっている」、「マクロン大統領が法案審議での協力に期待を寄せる伝統的な右派政党の共和党は最近、極右勢力への対抗意識から、ルペン氏率いる国民連合と似通った司法制度改革案を発表した。移民法改正などの議会審議は紛糾が予想され、政策停滞が避けられそうにない」、「マクロン大統領」は中国寄りの姿勢など、問題が多い。国内政治は難題が多そうだ。
次に、8月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏とジャーナリストの増田ユリヤ氏の対談「日本の報道では分からない「移民大国」フランスの試行錯誤【池上彰・増田ユリヤ対談】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/326960
・『フランスでは6月に移民の子の少年が警察官に射殺された事件が起きてから、デモや暴動が続発した。ジャーナリストの増田ユリヤ氏は「日本では『やっぱり移民は問題だ』で終わってしまいがちだが、移民大国フランスでは20年近く試行錯誤を繰り返し、少しずつ前に進んでいる」という。池上彰氏が聞いた』、興味深そうだ。
・『年始からデモが続発 五輪ムードとは程遠いパリ 池上 2024年夏、パリ五輪・パラリンピックが開催されます。五輪は7月26日から、パラリンピックは8月28日からと開催を1年後に控え、日本での関連報道も増えてきています。パリ五輪は第1次世界大戦と第2次世界大戦の「戦間期」である1924年にも開催されており、ちょうど100年目に再び、同じ地で五輪が開かれることでも注目されていますね。 でもパリは五輪ムードには程遠いのではないですか。 増田 パリは年始から「年金支給年齢引き上げ」を決めた政府に反対するデモが続発しており、私は3月下旬に続いて、6月6日にも現地取材に行きました。大規模なデモが起きるという情報があったからなのですが、実際に現地では鉄鋼業や農業など、各組合が呼び掛けて集まった人々が合流した、当初よりも小規模のデモが行われていました。 ナポレオンのお墓があるアンバリッドから、プラス・ディタリー(イタリア広場)までのコースを行進するもので、この政府批判デモにはフランス国内の地方自治体の市長や副市長も参加していたんです。しかも、トリコロールのたすきをかけて。 池上 日本ではなかなか考えられないことですね』、なるほど。
・『移民系の人たちの怒りに火を付けた警察官による少年射殺事件 増田 日本の多くの人はデモと暴動を同一視していて、「パリで大規模なデモ」というと、パリ中のそこかしこで暴徒や抗議者が店舗の窓ガラスを割ったり放火したりと過激な行為に及んでいる、と思っているのではないでしょうか。日本でパリの様子が報じられる際に使われているのは、デモでなく暴動の映像ということも多いです。 6月27日にアフリカにルーツを持つ移民の子の少年が警察官に銃で撃たれ死亡した事件が起きてから抗議活動は激化しており、ベルギーのブリュッセルでも大規模な暴動が起きています。射殺された17歳の少年はこれまでにも窃盗などによる逮捕歴があり、今回も交通検問を逃れようと車を発進させたところ、撃たれた。これが市民、特に移民系の人たちの怒りに火を付けたのです』、「射殺された17歳の少年はこれまでにも窃盗などによる逮捕歴があり、今回も交通検問を逃れようと車を発進させたところ、撃たれた」、「警察」の発砲はやむを得ないと思われるが、現地ならではの事情もあるのだろうか。
・『フランスでは「3代さかのぼればみんな移民」 増田 フランスでは凶悪犯罪の増加に伴い、2017年に法律が改正され、警察の発砲条件が緩和されています。また、右派のマリーヌ・ルペンを支持するなど移民に対する厳しい措置を望む人たちは、今回の件でも警察側を支持しているようです。 池上 元々フランスはデモの権利を最大限認めている一方、警察国家でもあるんですよね。日本では現行犯か、裁判所による逮捕状がなければ怪しい人物を逮捕できませんが、フランスの警察は警察官自身の判断で、最大24時間、特定の人物の身柄を拘束することができます。今回のデモ、あるいは抗議活動や暴動によって6月末までに3500人が拘束されたと報じられていますが、これは日本でいう「逮捕」とは違います。 増田 多数の拘束者が出るのも無理はない面もあって、事件を口実に暴れたいだけの若者も少なくない、と話す現地の声もあります。 中には動画を撮影してYouTubeで拡散し、再生回数を稼ぐために店舗を襲っているケースもある。日本では「移民問題が噴出した」という定型的な切り口で報じられていますが、移民を巡る問題は、一口ではとても言い表せないほど複雑な課題を孕んでいるのです。 池上 欧州の移民というと多くの人は中東やアフリカから来た人たちのことを思い浮かべると思いますが、フランスは欧州内からの移民も多い「移民大国」ですよね。2007年から12年まで大統領を務めたニコラ・サルコジ氏はハンガリー系ですし、その後大統領になったフランソワ・オランド氏のルーツはオランダです。 増田 フランスでは「3代さかのぼればみんな移民」と言う人もいますよ。もちろん、欧州外から来た移民との間であつれきがあるのは事実ですが』、「フランスは欧州内からの移民も多い「移民大国」ですよね。2007年から12年まで大統領を務めたニコラ・サルコジ氏はハンガリー系ですし、その後大統領になったフランソワ・オランド氏のルーツはオランダです」、なるほど。「フランスでは「3代さかのぼればみんな移民」と言う人もいますよ」、これには驚かされた。
・『学校長が治安の悪い地域に住み込んで毎朝、校門前で生徒と握手する 池上 移民系の若者たちが契機となり、フランス全土に波及した事件は以前にもありました。パリ郊外で北アフリカ出身の移民の若者が窃盗を働き、警察に追われながら変電所に逃げ込んで感電死するという痛ましい事件が起きたのは2005年のことです。 増田 その後、事件が起こった地域では、保育所や小中学校が協力して教育改革に取り組んでいました。例えば、民間団体の協力を得て、フランス各地を回っての歴史教育を行うプログラムの拡充を図ったり、ある中学校では毎朝、校長先生が校門に立って、移民を含む全ての生徒たちとあいさつと握手を交わして学校になじんでもらう努力をしていました。 フランスの小中学校は校長以下3人の役職者が学校内か学校のすぐ近くに住まなければならないという決まりがあるため、移民の多い治安の悪い地域に住み込んで、問題解決に尽力している人たちもいるのです』、「フランスの小中学校は校長以下3人の役職者が学校内か学校のすぐ近くに住まなければならないという決まりがあるため、移民の多い治安の悪い地域に住み込んで、問題解決に尽力している人たちもいる」、初めて知ったが、いい試みだ。もっとも、「治安の悪い地域」なら住宅を見つけるのは簡単だが、「治安」が良い「地域」では見つけるのはそんなに簡単にはいかないだろう。
・『階層の違う人々が同じ場所に暮らす、保護者にも語学指導…様々な取り組み 池上 フランスは移民の存在を前提として、どうすればあつれきを減らせるかを考えている。そのためにはまずは教育だ、と。 増田 はい。当時も現地を取材しましたが、鍵になるのはフランス語。学習内容を理解するには不可欠ですから、移民の子どもを対象に補習を行ったり、フランス語を話せない保護者にも学んでもらおうと活動をしたりしている団体もありました。フランス政府も、移民の子でも頑張ればグランゼコール(高等教育機関)にまで行ける教育改革を始めました。 また、移民の多い英国のロンドンで実施されているような、「社会の階層の違う人たちを、あえて同じ場所に住まわせ、交流させる」取り組みも導入しています。もちろん生活上のいざこざもありますが、相互理解を深める以外にないという観点から少しずつ努力を重ね、社会も少しずついい方向へ進みつつあるのも事実なのです。 池上 「移民による暴動」という報道だけでは見えてこない、社会の実相ですね。 増田 日本では「やっぱり移民は問題だ」「差別はなくならない」で終わってしまいがちですが、試行錯誤を繰り返し少しずつ前に進んでいる欧州の取り組みを、まずは知る必要があるでしょう』、私は日本の場合は、「移民」を引き続き制限的に扱えば、さほど問題にならないと考える。
タグ:フランス (その4)(フランス暴動は収まっても政治にくすぶる火種 移民地区を財政支援すれば極右の伸長を招く、日本の報道では分からない「移民大国」フランスの試行錯誤【池上彰・増田ユリヤ対談】) 東洋経済オンライン 田中 理氏による「フランス暴動は収まっても政治にくすぶる火種 移民地区を財政支援すれば極右の伸長を招く」 「事件後の数日間で数千人が逮捕」、とは大規模だ。 「人口に占める移民の割合は1968年の6.5%から2021年には10.3%に増加し、フランス国籍を持つ移民の子孫を含めると、外国にルーツを持つ人口の割合はその数倍に達する」、「移民や移民の子孫は、移民のバックグラウンドを持たないフランス人と比べて、失業率が高く、低技能・低賃金労働に従事し、生活環境や住環境が厳しく、健康状態も悪いことが各種の統計から確認される」、なるほど。 「マグレブ・・・にルーツを持つ移民や移民の子孫は、同じような経歴を持つ非移民のフランス人に比べて、採用担当者から面接に呼ばれることが少なく、失業のリスクが高く、不当に仕事を拒否されることが多いとの調査結果もある」、やはり就職差別もあるようだ。 「9月ラグビーW杯の会場は目と鼻の先」、やはり地価が安いからなのだろう。 「マクロン大統領が、社会的不平等の是正を目的にバンリュー地区への追加の財政支援を決定すれば、ルペン氏に格好の得点機会を提供することになりかねない」、「ルペン氏」はズル賢いようだ。 「フランスのマクロン大統領とドイツのショルツ首相は、かつてのミッテラン=コール時代やサルコジ=メルケル時代のような、首脳同士の個人的な信頼関係を構築できていない」、残念ながらその通りだ。 「独仏関係の弱体化とそれに伴うリーダーシップの低下は、EUの政策運営や統合強化の行方にも影を落としかねない。2024年半ばにはEUの共同立法機関である欧州議会の選挙が控えており、EUの執行部が総入れ替えとなる。現体制の下でEU関連の政策実現に残された時間は少ない」、「フランス国内では、年金改革を巡る数カ月に及んだデモや衝突が一服し、次の政策課題に取り組もうとしていた矢先の内政混乱により、マクロン2期目の改革推進力が一段と低下する恐れがある」、なるほど。 『野党の協力が得られなかった年金改革では、憲法第49条第3項の特例を用いて議会採決なしで法案を成立させ、このことが国民の反発をさらに高めた。秋にはグリーン産業促進法、移民法改正、来年度予算など、重要法案の審議が目白押しだ。議会を迂回する非常手段を多用することは難しい』。 「今回の事件と暴動の発生を受け、与野党間の亀裂は一段と深まっている」、「マクロン大統領が法案審議での協力に期待を寄せる伝統的な右派政党の共和党は最近、極右勢力への対抗意識から、ルペン氏率いる国民連合と似通った司法制度改革案を発表した。移民法改正などの議会審議は紛糾が予想され、政策停滞が避けられそうにない」、「マクロン大統領」は中国寄りの姿勢など、問題が多い。国内政治は難題が多そうだ。 ダイヤモンド・オンライン 池上 彰氏 増田ユリヤ氏の対談「日本の報道では分からない「移民大国」フランスの試行錯誤【池上彰・増田ユリヤ対談】」 「射殺された17歳の少年はこれまでにも窃盗などによる逮捕歴があり、今回も交通検問を逃れようと車を発進させたところ、撃たれた」、「警察」の発砲はやむを得ないと思われるが、現地ならではの事情もあるのだろうか。 「フランスは欧州内からの移民も多い「移民大国」ですよね。2007年から12年まで大統領を務めたニコラ・サルコジ氏はハンガリー系ですし、その後大統領になったフランソワ・オランド氏のルーツはオランダです」、なるほど。 「フランスでは「3代さかのぼればみんな移民」と言う人もいますよ」、これには驚かされた。 「フランスの小中学校は校長以下3人の役職者が学校内か学校のすぐ近くに住まなければならないという決まりがあるため、移民の多い治安の悪い地域に住み込んで、問題解決に尽力している人たちもいる」、初めて知ったが、いい試みだ。 もっとも、「治安の悪い地域」なら住宅を見つけるのは簡単だが、「治安」が良い「地域」では見つけるのはそんなに簡単にはいかないだろう。 私は日本の場合は、「移民」を引き続き制限的に扱えば、さほど問題にならないと考える。
ウクライナ(その6)(プリゴジンの「信用失墜」に成功したプーチン どうなる「料理番の運命 ワグネルはベラルーシで軍事訓練中 プーチンの狙いは「プリゴジンとの分断」、IAEA ザポロジエ原発で対人地雷確認 「安全基準に矛盾」とロシアを批判、「プーチンを倒せば平和になる」とは限らない 日本も危ない失脚後の最悪シナリオ、アメリカの“弱腰"を懸念し始めたウクライナ 戦争の終わりが見えないまま反攻に最大注力へ、プーチン政権の〝恫喝的行動〟に国際司法が怒り ICC裁判官を指名手配のロシア当局に非難声明「深い懸念」) [世界情勢]
ウクライナについては、本年3月1日に取上げた。今日は、(その6)(プリゴジンの「信用失墜」に成功したプーチン どうなる「料理番の運命 ワグネルはベラルーシで軍事訓練中 プーチンの狙いは「プリゴジンとの分断」、IAEA ザポロジエ原発で対人地雷確認 「安全基準に矛盾」とロシアを批判、「プーチンを倒せば平和になる」とは限らない 日本も危ない失脚後の最悪シナリオ、アメリカの“弱腰"を懸念し始めたウクライナ 戦争の終わりが見えないまま反攻に最大注力へ、プーチン政権の〝恫喝的行動〟に国際司法が怒り ICC裁判官を指名手配のロシア当局に非難声明「深い懸念」)である。
先ずは、本年7月18日付けJBPressが掲載した在英ジャーナリストの木村 正人氏による「プリゴジンの「信用失墜」に成功したプーチン、どうなる「料理番」の運命 ワグネルはベラルーシで軍事訓練中、プーチンの狙いは「プリゴジンとの分断」」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/76080
・『反乱5日後にプリゴジンと35人のワグネル司令官と面談 ウラジーミル・プーチン露大統領は民間軍事会社ワグネルグループから「プーチンの料理番」こと創設者のエフゲニー・プリゴジンを排除しようとしたが、失敗していたことを露の有力日刊紙「コメルサント」(電子版7月13日付)に明らかにした。プーチンは「プリゴジンの反乱」5日後の6月29日クレムリンでプリゴジンと35人のワグネル司令官と面談していた。 ドミトリー・ペスコフ露大統領報道官はこれに先立つ7月10日、プーチンとプリゴジンらの面談を認め、「大統領は『特別軍事作戦』中の前線におけるワグネルの功績を称え、6月24日の出来事(プリゴジンの反乱)の評価を下した。大統領は司令官たちの説明に耳を傾け、彼らに雇用のさらなる選択肢と契約を提示した」と説明していた。 プーチンとプリゴジン、ワグネル司令官の面談は3時間にも及んだという。コメルサント紙によると、プーチンは「ロシア社会にとって、すべては非常に単純で明白なことだ。一般的にワグネル戦闘員は立派に戦った。彼らがこのような出来事に引きずり込まれたことは遺憾の極みだ」と語った。 プーチンが最初に会いたかったのは「名誉ある戦いをしたワグネル司令官たちで、プリゴジンではなかった」との見方をコメルサント紙の特派員は伝えている。「私は彼らとの面談で、彼らが戦場で何をしたか、次に6月24日に彼らが何をしたかを評価した。第3に、私は彼らに今後の任務について可能な選択肢を示した。それだけだ」とプーチンは説明した』、「プーチン」にとっては、「ワグネル司令官」と「プリゴジン」を切り離す狙いだろう。
・『プリゴジンを参謀長「セドイ(白髪)」に交代させることを提案 「民間軍事会社ワグネルは戦闘部隊として存続するのか」という特派員の問いに、プーチンは「ワグネルは存在しない。ロシアに民間軍事会社を認める法律はない。ワグネルというグループはあっても法的には存在しない」と叫んだ。「今回の一件と民間軍事会社の合法化は別問題だ。これは議会や政府で議論されるべき問題で、簡単ではない」と強調した。 プーチンは面談で35人のワグネル司令官に雇用の選択肢をいくつか提示した。その中にはプリゴジンの代わりに「セドイ(白髪)」というコードネームを持つ司令官の下で働くという選択肢もあった。「セドイ」はアフガニスタン戦争やチェチェン紛争、シリア内戦に関わった元内務省工作員(大佐)で、ワグネル参謀長のアンドレイ・トロシェフのことだ。 プーチンはその時のことをコメルサント紙の特派員にこう語っている。 「この条件を飲めばワグネルが1つの場所に集まり、任務を続けることもできただろう。これまで実質的な司令官だった人物が指揮をとるのだから何も変わらないはずだった。多くのワグネル司令官が頷いた」 しかし、このプーチンとの会談で最前列に陣取ったプリゴジンはそのことに気づかず「いや、全員がこの決定には賛成していない」と首を縦には振らなかった。 「プリゴジンの反乱」を巡るさまざまな憶測が飛び交う中、プーチンは、ワグネルからプリゴジンの影響力を排除するため、東部ドネツク州の激戦地バフムートを制圧するなど、ウクライナ戦争におけるワグネルの功績を称える一方で、ウクライナの占領地を含むロシア国内ではワグネルは非合法な存在であることを改めて強調した』、「ウクライナ戦争におけるワグネルの功績を称える一方で、ウクライナの占領地を含むロシア国内ではワグネルは非合法な存在であることを改めて強調」、あくまで「非合法な存在」とさせたいようだ。
・『プリゴジンに対するネガティブ・キャンペーン 「ワグネルは存在しない」というプーチンの言葉が伝わる中、大きなテントの中のベッドに腰掛け、Tシャツにブリーフ、中年太りしたお腹というみっともない姿で撮影されたプリゴジンの写真がテレグラムチャンネルに出回った。英紙デーリー・テレグラフによると、写真のメタデータから、「プリゴジンの反乱」12日前の6月12日に撮影されたという。 テレグラムチャンネルに投稿されたプリゴジンの写真。でっぷりしたお腹が分かるTシャツにブリーフ姿というあられもない格好。この写真が出回った背景には、ロシア政府によるプリゴジンを貶めるネガティブキャンペーンがあると見られている(「REVERSE SIDE OF THE MEDAL」のテレグラムチャンネルより) 同紙は「恐れられた軍閥(プリゴジン)を弱体化させ、辱め、信用を失墜させようとするクレムリンのキャンペーンと軌を一にしている」と分析する。ロシアの治安部隊がサンクトペテルブルクにあるプリゴジンの邸宅を捜索した際、カツラでいっぱいの戸棚、黄金の延べ棒、ワニの剥製、屋内プールの写真が次々と公開された。プリゴジンを貶める狙いがある。 ジョー・バイデン米大統領は7月13日の記者会見で「もし私がプリゴジンだったら、食べるものに気をつけるだろう。メニューから目を離さないだろう。しかし冗談はさておき、ロシアにおけるプリゴジンの将来がどうなるのか、私たちの誰にも確かなことは分からない」と話した。 デーリー・テレグラフ紙によると、「セドイ」ことトロシェフは2017年、泥酔してサンクトペテルブルクの病院に救急車で運び込まれたことがある。トロシェフは現金で500万ルーブル(約770万円)と5000ドル(約70万円)、シリアの軍事地図、新兵器の領収書、電子航空券を持っており、救急隊員を驚かせたという』、そんな多額の「現金」を身につけているとは、さすが民間軍事組織の長だ。
・『ショイグ露国防相を「木偶の坊」呼ばわり トロシェフはその前年の16年、シリアの過激派組織「イスラム国」に対するワグネルの攻撃を指揮し、古代都市パルミラを解放した功績でプーチンからロシアの英雄と称えられた。ウクライナ戦争では無能なセルゲイ・ショイグ露国防相を「木偶の坊」呼ばわりした上で、ロシア軍の司令官に悪態をつき、「砲弾をもっとよこせ」と要求した。 トロシェフは14年、プリゴジンによるワグネル創設を支援し、それ以来、シリア、アフリカ、ウクライナ戦争での軍事作戦を指揮するなど、重要な役割を果たしてきた。戦闘を忌避するワグネル戦闘員を罰する「内部保安部」のトップとも伝えられている。トロシェフのリーダーシップはプーチンに感銘を与えたとされる。 複数のテレグラムチャネルで公開された情報によると、アフリカに展開していたワグネルの軍事教官が7月11日、ロシアの占領下にあるウクライナ東部ルハンスク州から車列を組み、ベラルーシの軍事訓練場に到着した。 ロシア国防省は12日、ワグネルから戦車を含む2000もの重火器の引き渡しを受けたと発表した。14日にはワグネルの軍事教官がベラルーシ領土防衛隊の徴集兵に戦場での移動や戦術射撃、戦闘外傷救護を訓練している映像が公開された。 米シンクタンク「戦争研究所(ISW)」は、ワグネルはアフリカに展開する部隊をローテーションさせようとしており、ベラルーシでの軍事教練はより広範なローテーションの一環であることを示唆していると指摘する。ワグネルは6月24日の反乱の後、休暇を取り、再編成を経て、8月前半にベラルーシに展開すると伝えられる』、「ワグネルはアフリカに展開する部隊をローテーションさせようとしており、ベラルーシでの軍事教練はより広範なローテーションの一環であることを示唆」、なるほど。
・『ベラルーシ国防省はワグネル部隊のためのロードマップを作成 ベラルーシでの軍事教練は、その地ならしの可能性が大きい。ベラルーシ国防省は7月14日、ベラルーシ軍を訓練するワグネル部隊のためのロードマップを作成したと発表した。 独立監視団体によると、翌15日朝、ベラルーシでドネツク、ルガンスク両人民共和国のナンバープレートを付けた60台以上の車列を護衛するベラルーシの交通警察が目撃された。ワグネル部隊、ワグネル戦闘員240人、40台のトラック、大量の武器が次々と到着したという。 ベラルーシ軍は旧ソ連時代のアフガン戦争以来、戦闘任務に参加していない。このため、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、ウクライナ戦争だけでなく中東・アフリカで豊富な実戦経験を持つワグネルのノウハウを吸収するため、自国での受け入れに前向きだった。 ロシアの国防問題に詳しい米シンクタンク、ランド研究所のダラ・マシコット上級政策リサーチャーは英紙ガーディアンに「プーチンはプリゴジンとワグネル戦闘員との間にくさびを打ち込もうとしている。プーチンはワグネルという道具を必要としている。だからプリゴジンだけをワグネルから引き離そうとした」との見方を示している。 最近、実施された2つのロシア全国世論調査ではプリゴジンの活動への支持率は「プリゴジンの反乱」前は55%(不支持率はわずか17%)にまで達したが、その後29%にまで急落(不支持率は39%に上昇)した。テレビは積極的にプリゴジンとワグネルの信用を失墜させるキャンペーンを展開、テレビ視聴者の半数以上がプリゴジンの活動を否定的に捉えていた。 プーチンは「プリゴジンの反乱」後、内政問題の後始末にひとまず成功したかたちだ』、「プーチンは「プリゴジンの反乱」後、内政問題の後始末にひとまず成功したかたちだ」、なーんだ、つまらない。
次に、7月25日付けNewsweek日本版「IAEA、ザポロジエ原発で対人地雷確認 「安全基準に矛盾」とロシアを批判」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/07/iaea-15.php
・『国際原子力機関(IAEA)は24日、ロシア軍が占領しているウクライナ南部のザポロジエ原子力発電所で対人地雷が見つかったとし、安全基準に違反すると批判した。 IAEAのグロッシ事務局長は声明で、現地に駐在するIAEA職員が原発の内部と外部のフェンスの間にある緩衝地帯で地雷を確認したとし、過去の調査でも地雷が見つかっていると指摘。 「こうした爆発物の存在はIAEAの安全基準と原子力安全保障の指針に矛盾するもので、発電所職員にさらなる心理的圧力を与える」とした。 同氏は6月にも地雷について同様の警告を発したが、その際も今回も原発の安全性を脅かすものではないとの見方を示した』、「IAEA」が「現地に駐在するIAEA職員」させるようにしたことは、監視の上で必須の存在だ。「ロシア」もその存在を意識せざるを得ないだろう。
第三に、7月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「「プーチンを倒せば平和になる」とは限らない、日本も危ない失脚後の最悪シナリオ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/326704
・『日本人の中には、プーチン大統領が失脚すればウクライナ紛争が終結し、ロシアの民主化が進むことを期待している人が多いように思える。だが、必ずしもそうとは限らない。プーチン大統領よりも強権的で、かつ“中国寄り”の指導者が登場する可能性もあるのだ。そうした「ポスト・プーチン」の最悪シナリオを、根拠と併せて解説する』、「プーチン大統領が失脚すればウクライナ紛争が終結し、ロシアの民主化が進むことを期待している人が多い」、恥ずかしながら私もその1人だ。
・『トルコの立ち回りによって スウェーデンの加盟が実現 去る7月中旬、北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議がリトアニアで開催された。スウェーデンのNATO加盟が確実になり、今年4月のフィンランド加盟に続いてNATOのさらなる「東方拡大」が実現した。 一方、ウクライナのNATO加盟に向けた具体的な道筋は示されなかった。また、NATOの東京事務所の設置は、エマニュエル・マクロン仏大統領の反対で先送りとなった。 スウェーデンのNATO加盟はもともと、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領が強硬に反対していた。エルドアン大統領の言い分は「トルコからの分離独立を目指すクルド人勢力をスウェーデンが支援している」というものだった。 だが首脳会談直前の7月10日、エルドアン大統領はスウェーデンのウルフ・クリステション首相と会談。その場でクリステション首相は、クルド人組織を支援しないこと、テロ対策の強化や反テロ法を施行すること、トルコのEU加盟を積極的に支援することを約束した。 その結果エルドアン大統領は、スウェーデンのNATO加盟を受け入れた。こうしたエルドアン大統領の姿勢からは、「トルコが態度を軟化させてNATOを救った」という演出によって存在感を高めたいという思惑が透けて見える。 トルコには「EU(欧州連合)への正式加盟」という長年の悲願がある。だが、イスラム教国であること、警察・司法制度が未整備であること、強権的な政治と人権抑圧の問題があることなどから、加盟は認められてこなかった。 また、EU加盟国のキプロスは南北で紛争状態にあるが、このうち北部を支配する未承認国家「北キプロス・トルコ共和国」をトルコだけが承認している。このこともEU加盟を妨げるハードルになってきた。 そうした状況の打開を狙って、エルドアン大統領はしたたかに振る舞ったわけだ。その結果実現したスウェーデンのNATO加盟は、フィンランドの加盟に続いてロシアに衝撃を与えただろう』、「エルドアン大統領」のしたたかさには脱帽だ。
・『ウクライナ紛争の開戦前から ロシアは極めて不利だった というのも、ウクライナ紛争開戦時を振り返ると、ウラジーミル・プーチン露大統領はNATOに「三つの要求」を突き付けていた。その内容は以下の通りだ。 ・「NATOがこれ以上拡大しない」という法的拘束力のある確約をする ・NATOがロシア国境の近くに攻撃兵器を配備しない ・1997年以降にNATOに加盟した国々から、NATOの部隊や軍事機構を撤去する だが、ウクライナ紛争が長引く中、この「三つの要求」はまだ一つも実現していない。それどころか、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟によって、ロシアがNATOと接する国境は以前の2倍以上に広がった。 ロシア海軍の展開において極めて重要な「不凍港」があるバルト海に接する国もほぼすべてNATO加盟国になり、ロシアの海軍は身動きが取りづらくなった(本連載第306回・p3)。両国の加盟は、ロシアの安全保障戦略に大打撃を与えたはずだ。 とはいえ、長期的な視点での「ロシア不利」の状況は今に始まったことではない。東西冷戦終結後、約30年間にわたってNATO・EUの勢力は東方に拡大を続けてきた。その半面、ロシアの勢力圏は東ベルリンからウクライナ・ベラルーシのラインまで大きく後退していた(第297回)。 一連の勢力図を踏まえて、筆者はウクライナ戦争開戦時に「ロシアはすでに負けている」と表現したほどだ。 しかし、厳しい状況に置かれているのはウクライナも同じだ。冒頭でも述べたが、今回の首脳会議ではウクライナのNATO加盟について具体的な進展がなかった。それどころか、ジョー・バイデン米大統領は「ウクライナのNATO加盟は戦争終結後」と明言した。 NATO首脳会議に合わせて、主要7カ国(G7)は「ウクライナを守るために長期的な支援を行う」といった趣旨の共同宣言を発表したが、こうした支援が紛争の抜本的解決に結びつかないのは近年の戦況を見れば明らかだ。 NATOはウクライナの領土奪還よりも、戦争を延々と継続させることを重視し、中途半端に戦争に関与しているように思える(第325回)。 本連載で何度も指摘してきたが、米英をはじめとするNATOにとってウクライナ紛争とは、20年以上にわたって強大な権力を保持し、難攻不落の権力者と思われたプーチン大統領を弱体化させ、あわよくば打倒できるかもしれない好機である。紛争が長引けば長引くほど、プーチン大統領は追い込まれる。) そのため、NATOにはウクライナ紛争を積極的に停戦させる理由がない。NATO側がロシアに大打撃を与え、ウクライナ紛争を終わらせようと本気で考えているのであれば、支援を小出しにせず、戦局を大きく変える大量の武器をウクライナに供与しているはずだ。 今後どれだけロシアが攻勢を強めたとしても、戦況を俯瞰すると「NATOの東方拡大」「ロシアの勢力縮小」という大きな構図は変わらない。繰り返しになるが、世界的に見ればロシアの後退は続いており、ロシアはすでに敗北していると言っても過言ではない。 だからこそ、バイデン大統領やG7は「ウクライナのNATO加盟は戦争終結後」「ウクライナを守るために長期的な支援を行う」という発言をしたのだろう。やはり彼らは「ウクライナが戦い続けたいならば、少しずつ支援する」という煮え切らないスタンスなのである。このことが、NATO首脳会談を通じて再確認できたといえる』、「バイデン大統領やG7は」・・・「ウクライナが戦い続けたいならば、少しずつ支援する」という煮え切らないスタンスなのである。このことが、NATO首脳会談を通じて再確認できた』、なるほど。
・『プーチンを倒せば ロシアが民主化するとは限らない では今後、長期的な視点では「追い込まれている」ロシアはどうなるのか。 NATO首脳会談よりも前の話になるが、6月末にロシアの民間軍事会社「ワグネル・グループ」の創設者であるエフゲニー・プリゴジン氏が武装蜂起したことは示唆に富んでいる。この「ワグネルの反乱」は24時間ほどで終結したが、プーチン大統領の就任以来最大の造反事件となった。 そして、この反乱を「プーチン体制の終わりの始まり」だと指摘する識者も出てきている。「プーチン大統領の次」に世間の関心が向き始めたようだ。 本連載でもウクライナ紛争の開戦時から、「紛争終結後にプーチン大統領が失脚する可能性がある」「ポスト・プーチンがどうなるかを今から考えておく必要がある」と提言してきた(第298回・p6)。 ここで「ポスト・プーチン」のカギを握るのが、ウクライナ紛争に関しては前面に立ちたがらない中国だ。 思い返せば、開戦のきっかけとなった「ウクライナ東部独立承認」をロシア議会に提案したのは、ロシアにおける野党「ロシア共産党」だった。この党は、中国共産党の強い影響下にあると指摘されている。 やや疑り深い見方をすれば、中国共産党がプーチン大統領を「進むも地獄、引くも地獄」の戦争に引き込んだと考えることもできる。 この見方が正しければ、プーチン大統領を苦境に追いやった中国が、水面下で「親中派のポスト・プーチン」の擁立を画策していたとしても不思議ではない。 一方で米英側も、ロシアを民主化するべく、ロシア人の民主主義者から「ポスト・プーチン」を担ぎ出そうと裏工作を続けているはずだ。 だが米英の情報機関が動いていても、楽観的な見方は禁物だ。プーチン大統領は長期政権の間に、反体制派や民主化勢力を徹底的に弾圧してきた。その影響がプーチン大統領の失脚後も色濃く残り、民主化勢力が権力を掌握できない可能性も否定できない』、「「ウクライナ東部独立承認」をロシア議会に提案したのは、ロシアにおける野党「ロシア共産党」だった。この党は、中国共産党の強い影響下にあると指摘されている。 やや疑り深い見方をすれば、中国共産党がプーチン大統領を「進むも地獄、引くも地獄」の戦争に引き込んだと考えることもできる」、初めて知った。「プーチン大統領は長期政権の間に、反体制派や民主化勢力を徹底的に弾圧してきた。その影響がプーチン大統領の失脚後も色濃く残り、民主化勢力が権力を掌握できない可能性も否定できない」、残念だ。
・『中国が力を増し 日本が被害を受けるリスクも われわれ日本人の中にも、プーチン大統領が失脚すればウクライナ紛争が終結し、ロシアの民主化が進むことを期待している人が多いように思える。だが、必ずしもそうとは限らない。プーチン大統領よりも強権的で、かつ親中派の指導者が登場するかもしれないのだ。 もし本当に、親中派の強権的な指導者が権力を掌握した暁には、中国はロシアに対して圧倒的な影響力を持つ。例えるならば、かつて栄華を誇ったモンゴル帝国「元」が再出現するようなものだ(第300回)。そして、その“大帝国化”した中国に、日本は軍事的に包囲されることになる。 ただでさえ日本は今、中国の軍事力の急激な拡大や、中国による台湾侵攻・尖閣諸島侵攻の懸念といった安全保障上の重大なリスクを抱えている。その状況下で中国がロシアへの影響力を強めると、日本は極めて不利な状況に追い込まれる。 こうした事態に備えて、NATOの協力を得て強固な安全保障体制を築きたいところだが、先のNATO首脳会議で「NATOの東京事務所設置」が事実上白紙に戻ったのは重大な懸念事項だといえる。 この案には、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が強く反対した。これを受け、ハンガリーなど複数の加盟国もフランスに同調した。 もともとは中国も「アジア版NATOは不要だ」と猛反発していたことから、中国との経済関係を重視するマクロン大統領は中国を必要以上に刺激したくなかったのだろう。 この案は米英主導で進められてきたが、NATO内部が一枚岩でないことが明るみに出た。今のままでは、強大化した中国が台湾に侵攻したときなどに、NATOが本気で日本を守ってくれるかは疑問が残る。 国を奪われ、生活を奪われ、命を奪われているウクライナ国民の方々には本当に申し訳ない言い方になるが、こうした危険性を踏まえると、日本にとっては「ウクライナの反転攻勢が成功せず、プーチン大統領が政権を維持するほうがマシ」かもしれないのだ。 プーチン大統領は日本に対して強硬な姿勢を示し続けているが、中長期的には極東において、中国と日本の間でバランスを取ろうとするはずだ。 プーチン大統領はウクライナ戦争開戦後に、日本の「サハリンI・II」の天然ガス開発の権益維持を容認したこともある。その理由は、中国への過度な依存による「属国化」を避けるためだったと考えられる(第327回・p4)。 要するに、日本にとってはウクライナが勝てばいいわけではなく、プーチン大統領が失脚すればいいという単純な話ではないのだ。世界で孤立するリスクを抱える日本が国際社会で生き抜くには、複雑な国際関係の情勢を先読みし、戦略的に行動しなければならない』、「プーチン大統領よりも強権的で、かつ親中派の指導者が登場するかもしれないのだ。 もし本当に、親中派の強権的な指導者が権力を掌握した暁には、中国はロシアに対して圧倒的な影響力を持つ。例えるならば、かつて栄華を誇ったモンゴル帝国「元」が再出現するようなものだ(第300回)。そして、その“大帝国化”した中国に、日本は軍事的に包囲されることになる」、「世界で孤立するリスクを抱える日本が国際社会で生き抜くには、複雑な国際関係の情勢を先読みし、戦略的に行動しなければならない」、その通りだ。
第四に、7月31日付け東洋経済オンラインが掲載した新聞通信調査会理事・共同通信ロシア・東欧ファイル編集長の吉田 成之氏による「アメリカの“弱腰"を懸念し始めたウクライナ 戦争の終わりが見えないまま反攻に最大注力へ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/691208
・『難航していたウクライナ軍の反攻作戦に新たな動きがあった。さまざまな試行錯誤の末、ウクライナ軍は2023年7月末、大規模な攻撃作戦用にと温存してきた精鋭部隊の一部を満を持して初めて南部戦線に投入したのだ。 反攻作戦開始から約2カ月、反攻作戦のギアを一段上げたと言える。しかし、いよいよこれから、というこの時期、ウクライナ政府に今春までのような高揚感が乏しいのが実情だ。むしろ、今後に対する不安感が霧のように立ち込め始めている。それはなぜか。その内実を深掘りしてみた』、興味深そうだ。
・『ウクライナ顧問「何か、くさい臭いがする」 「憂鬱なアレストビッチ」。今キーウではこの言葉が政治的流行語のようにしきりに語られている。前ウクライナ大統領府長官顧問である安保問題専門家オレクシー・アレストビッチ氏が2023年7月半ばにネット上で行った発言がきっかけだ。少し長くなるが、悔しい思いのたけをぶちまけた彼の発言の内容を、以下に紹介する。 「(全占領地の奪還を意味する)1991年の国境線まで戻すことがわれわれの憲法上の義務であり、その目標は変わっていない。しかし、戦場でわれわれが決定的優位性を得るための武器が供与されない。なぜだ?何か、くさい臭いがする」 この「くさい臭い」発言に込められたのは、アメリカへの強い憤懣だ。ウクライナ側が強く要請している、アメリカ製F16戦闘機や、長射程地対地ミサイル「ATACMS」の供与がいまだに実現しないのは、アメリカのバイデン政権の意向を反映したもので、それがゆえに反攻作戦が思い通りに進まない、という不満だ。 F16に関してバイデン政権は2023年5月、ヨーロッパの同盟国が供与することを容認する方針に転じたものの、供与の前段階であるウクライナ軍パイロットの訓練すら始まっていない。 これについて、アメリカは公式的には様々な技術的理由を挙げているが、アレストビッチ氏は、実際には技術的な事情ではなく、ロシアに対する軍事的な「決定的優位性」をウクライナ軍に与えたくないというバイデン政権の戦略が隠されていると指摘したのだ。 曰く「われわれの外交上の目標は、われわれの主要なスポンサーのそれとは異なるのだ」。つまり、バイデン政権は侵攻してきたロシア軍に対し、ウクライナ軍が負けないよう軍事支援はするものの、圧倒的に勝つような軍事的優位性は与えないという戦略的目標を持っているという見方をアレストビッチ氏は示したのだ。 そのうえで、アレストビッチ氏は今後、領土奪還のテンポが大きく上がらず、反攻作戦が膠着状態に陥った時期を見計らって、バイデン政権がウクライナとロシアに対し、戦争を凍結し、停戦協議を行うよう提案するだろうとの見立てを示した。) この見立てを前提に、アレストビッチ氏は「ウクライナ全領土をキーウ側とロシアの間でそれぞれの実効支配地域ごとに分割する」といった内容の停戦協定を受け入れるという個人的立場を示した。 つまり、ウクライナ政府側がほぼ現状のまま全土の約80%、ロシアが約20%を占有するとの考えだ。この案を受け入れる前提として、アレストビッチ氏はウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟が認められることを挙げた。ロシアに移譲される国土については、将来的に「非軍事的手段」で取り戻すと強調した。 アレストビッチ氏は、その言動が世界中のウクライナ・ウォッチャーから注目されている。元ロシア下院議員との掛け合いスタイルでアレストビッチ氏が流すユーチューブ・チャンネルは、侵攻に関するチャンネルの中で最もアクセスが多いと言われている。ウクライナ政府の意向を探るため、プーチン大統領も欠かさずチェックするといわれるほどだ。 それだけに、アレストビッチ氏としては、水面下に潜むバイデン政権の「本音」をウクライナ内外に広く知らせるため、意図的に今回刺激的発言をしたとみられる』、「バイデン政権は侵攻してきたロシア軍に対し、ウクライナ軍が負けないよう軍事支援はするものの、圧倒的に勝つような軍事的優位性は与えないという戦略的目標を持っている」、「バイデン政権がウクライナとロシアに対し、戦争を凍結し、停戦協議を行うよう提案するだろうとの見立てを示した。) この見立てを前提に、アレストビッチ氏は「ウクライナ全領土をキーウ側とロシアの間でそれぞれの実効支配地域ごとに分割する」といった内容の停戦協定を受け入れるという個人的立場を示した。 つまり、ウクライナ政府側がほぼ現状のまま全土の約80%、ロシアが約20%を占有するとの考えだ。この案を受け入れる前提として、アレストビッチ氏はウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟が認められることを挙げた。ロシアに移譲される国土については、将来的に「非軍事的手段」で取り戻すと強調した」、ここまで極秘シナリオが出来ているとは驚かされた。
・『「領土分割やむなし」発言の真意 そのアレストビッチ氏による、今回のアメリカ批判と領土分割やむなし発言は、全領土奪還を掲げるゼレンスキー政権の公式的立場とは大きく異なる。しかし、筆者が取材した結果、実はゼレンスキー政権内部でもアレストビッチ氏と同様に、反攻作戦が膠着状態になればアメリカが「タオルを投げ入れ」、停戦協議の開始を提案してくるのではと真剣に警戒され始めていることがわかった。 すでにウクライナ政府は水面下で、ウクライナを最も強く支持しているバルト3国やポーランドなどの隣国に対し、仮にアメリカが停戦交渉開始を提案してきた場合、引き続きウクライナへの軍事支援を継続するか否か、を問い合わせ始めている。停戦交渉開始提案がワシントンから来た場合の対応策を真剣に検討し始めたことを示すものだ。 今回のアレストビッチ発言と、その背景にあるゼレンスキー政権の危機感の直接の引き金になったのは、2023年7月11、12日の両日にリトアニアの首都ビリニュスで開かれたNATO首脳会議だ。 ゼレンスキー政権は、会議でNATO即時加盟が決まることが無理なのことは事前に承知していたが、「ウクライナ戦争終了後」などという形で具体的な加盟の時期や道筋が明示されることを期待していた。 事実、ヨーロッパ各国やトルコは道筋明示を支持していたが、結局アメリカとドイツがこれに反対した。NATO加盟に関してはまったく具体的道筋が一切盛り込まれない、事実上ゼロ回答の共同声明が発表された。 これを受けて、ゼレンスキー政権は、アメリカがロシアとの対決回避のため、停戦交渉による紛争凍結に傾いており、NATO加盟が約束されたものでないことを思い知ったのだ。) これに加えもう1つ、ウクライナが神経を尖らせているアメリカの動きがある。バイデン政権内で対ロシア秘密交渉役を担っているバーンズ中央情報局(CIA)長官の閣僚級への格上げだ。今後、より権限のある地位になったバーンズ氏がロシアとウクライナの間に入って、停戦交渉開始に向けた外交工作を始める前触れではないかとゼレンスキー政権は警戒している。 バーンズ氏はすでに2023年6月末にロシア対外情報局(SVR)のナルイシキン長官と電話会談したことが明るみに出ている。ウクライナの軍事筋によると、本稿執筆時点で、バーンズ氏がロシア政府側と何らかの秘密交渉をしたという形跡はないという。 こうしたバイデン政権に対し、アメリカ内からもすでに公然と批判が出ている。その代表的人物が、ホッジス元アメリカ駐欧州陸軍司令官だ。 あるユーチューブ・チャンネルに出演したホッジス氏は、そもそも論として、バイデン政権には当初からウクライナに全占領地を奪還させる、つまり勝利させるつもりはなかったと指摘した』、「ホッジス元アメリカ駐欧州陸軍司令官だ。 あるユーチューブ・チャンネルに出演したホッジス氏は、そもそも論として、バイデン政権には当初からウクライナに全占領地を奪還させる、つまり勝利させるつもりはなかったと指摘」、なるほど。
・『アメリカはウクライナが勝つことを望んでいない バイデン政権がウクライナへの軍事支援を巡り、合言葉のように掲げていた「as long as it takes (必要とされる限り)」という原則について、ホッジス氏はこう解説する。「必要な兵器をなるべく早く渡すという善意を意味しているだけで、必要な軍事支援を今全部行うとは約束してはいない。空虚な宣言だ」と。 つまり「アメリカは、ウクライナが敗戦することを望んでいないが、一方でウクライナが勝つことも望んでおらず、国際的に承認済みの1991年の国境線を回復することも望んでいないようだ」と指摘する。こうした見方はウクライナ側と軌を一にするものだ。 ホッジス氏は、最終的にどのような形で戦争を終わらせるか、についてバイデン政権内で明確な戦略が決まっていないようだと指摘する。この点では、停戦交渉を提案してくると警戒を強めるウクライナ政府とは若干見方が異なる。「今、ホワイトハウス、国務省、国防総省の間で今後どうするか、議論が行われていると思う」と指摘し、アメリカはATACMSなどを早く供与すべきと述べた。 いずれにしても、ホッジス氏はバイデン政権がプーチン政権を倒すつもりがないとの見方を示す。プーチン政権に対する戦略的姿勢として「ロシアとはいかなる問題が発生しても、話し合いで問題を最終的に解決できると考えている」と指摘する。 ここで話を反攻作戦に戻そう。戦況は地点ごとに、ウクライナが攻勢に出ている方面とロシア軍が主導権を握っているところがあり、まだら模様状態だ。 例えば、東部ドネツク州の要衝都市バフムトは、ロシアの民間軍事会社ワグネル部隊に一度は制圧された後、ウクライナ軍が周辺部からジリジリ盛り返して半ば包囲状態だ。包囲網が完成すれば、守るロシア正規軍に投降を呼び掛ける可能性があるという。 一方で同じく東部のクプヤンシク・リマン方面ではロシア軍が約10万人規模の増援部隊を投入して、激戦が続いている。 しかし、現在最も注目されているのは南部戦線だ。ウクライナ軍はドネツク州のマリウポリ、ザポリージャ州のベルジャンスクとメリトポリという3つのアゾフ海沿岸の都市に向け、ジリジリと南下作戦を続けている。 キーウの軍事筋は、詳しい場所を明らかにしていないものの、西側でNATO流の訓練を施され、NATO式の戦術や兵器を身に着けた、虎の子の8旅団(1旅団は3000人程度)のうち1個旅団程度が南部に投入されたことを明らかにした』、「西側でNATO流の訓練を施され、NATO式の戦術や兵器を身に着けた、虎の子の8旅団(1旅団は3000人程度)のうち1個旅団程度が南部に投入された」、なるほど。
・『ウクライナは精鋭中の精鋭旅団を投入か 筆者はこの旅団の投入先を、南部の交通の要衝でもあるメリトポリ方面だとにらんでいる。メリトポリは、ロシア本土からウクライナ東部、アゾフ海沿岸を経由して最終的にはクリミア半島に至る、いわいる地上輸送回廊の要所だ。上記した3都市の中で最もロシア軍の防御態勢が強固といわれる。 執筆時点でウクライナ軍はメリトポリの北方にあるトクマクまで約25キロメートルの地点まで進んできた。これからウクライナ軍を待ち構えるのが、俗に「スロビキン・ライン」とも呼ばれるロシア軍の堅固な防衛線だ。 「竜の歯」と呼ばれる、戦車の侵入を阻むためのコンクリート製の障害物が延々と並べられ、その後ろには塹壕線があり、さらに砲撃用陣地が並んでいるといわれる。また地雷原が広がっている。これらの防御線を突破しないとトクマクには到達できない。 戦況に詳しいイスラエルのロシア系軍事専門家グリゴーリー・タマル氏によると、地雷原は過去例がないほど密なもので、ロシア軍は敷設記録の地図さえ作らないまま、大慌てで地雷を敷設したという。 この地雷原がウクライナ軍の進軍を妨げる大きな要因になっていたが、タマル氏はアメリカが最近供与に踏み切ったクラスター(集束)弾が効果をあげていると強調した。 この弾が投下されると、中から多数の子爆弾が散らばって爆発し、地雷原を広く無効化するからだ。同時に榴弾砲などの火砲面でも、一時は砲弾数で優位に立つロシア軍に押されていたが、最近は高い命中精度を持つ西側製火砲を生かして優位に立ち始めたという。 当面トクマク制圧の可否が今後の戦況の分かれ目になるとみられる。ここからメリトポリに対し、高機動ロケット砲システム、ハイマースで集中的に砲撃できるようになるからだ。射程約80キロメートルのハイマースはゲームチェンジャーと呼ばれるほどこれまで効果を上げてきたが、最近はロシア軍のジャミング(電波妨害)作戦の結果、有効射程が約60キロメートルへ短縮され、命中精度も落ちてきているという。このためメリトポリまで約60キロメートルにあるトクマク制圧の重要性が増している。 ウクライナ軍としては、メリトポリ方面へのハイマース攻撃で、クリミアへの地上輸送回廊を寸断し、さらにアゾフ海沿岸に到達することでクリミアへの攻撃を強めることを狙っている。 しかし、先述したアメリカ政府の動きがあり、筆者はウクライナ軍にとってこの1カ月、つまり2023年8月末までが極めて重要だとみる。その時点までに、それなりの戦果を挙げることができないと、アメリカがタオルを投げてくる可能性が現実味を帯びてくるのではないか。 ウクライナ政府も同様の危機感を持っているとみられる。逆に言えば、今後ウクライナ軍が一定の戦果を確実に重ねていけば、ワシントンが停戦交渉提案を持ち込むタイミングを見失う可能性もあるとみる。 最近、ウクライナ軍はモスクワへのドローン攻撃など、実際の軍事的効果より宣伝効果を狙ったとみられる攻撃を増やしている。これも、アメリカをにらんでウクライナの継戦への強い意志を誇示する狙いがあるのではないかと筆者はみる。反攻作戦継続か、紛争凍結か――。ウクライナにとって、極めて重要な夏の決戦になりそうだ』、「地雷原がウクライナ軍の進軍を妨げる大きな要因になっていたが、タマル氏はアメリカが最近供与に踏み切ったクラスター(集束)弾が効果をあげていると強調した。 この弾が投下されると、中から多数の子爆弾が散らばって爆発し、地雷原を広く無効化するからだ。同時に榴弾砲などの火砲面でも、一時は砲弾数で優位に立つロシア軍に押されていたが、最近は高い命中精度を持つ西側製火砲を生かして優位に立ち始めたという」、「クラスター弾」が効果を上げているとは喜ばしいことだ。「ウクライナ軍にとってこの1カ月、つまり2023年8月末までが極めて重要だとみる。その時点までに、それなりの戦果を挙げることができないと、アメリカがタオルを投げてくる可能性が現実味を帯びてくるのではないか」、なるほど。
第五に、8月2日付け夕刊フジ「プーチン政権の〝恫喝的行動〟に国際司法が怒り ICC裁判官を指名手配のロシア当局に非難声明「深い懸念」」を紹介しよう。
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/fuji/world/fuji-_society_foreign_KKIEDUOABRMU7KKEBA7NSXYSDQ
・『国際刑事裁判所(ICC)が、ロシアのウラジーミル・プーチン政権の恫喝(どうかつ)的行為を非難した。ロシア内務省が戦争犯罪の容疑でプーチン大統領らに逮捕状を出したICCの赤根智子裁判官を指名手配したことを受け、締約国会議の議長名の声明で「深い懸念」を表明したのだ。ロシアの非道な行動は、国際司法の世界でも批判にさらされている。 ロシア当局は3月、プーチン氏らの逮捕状を出したICCのカーン主任検察官や赤根氏ら4人に対する捜査を始め、5月にカーン氏ら2人を本人不在のまま起訴して指名手配。赤根氏については、タス通信が7月27日、指名手配を報じていた。 この報道を受け、ICCの締約国会議は同月31日付で声明を発表した。声明では、「ICCの国際的使命を損なう行為だ」とロシア当局による赤根氏の指名手配を批判し、裁判官らに対する「断固とした支持を改めて表明する」と強調した。 ウクライナ戦線でも、ロシアは守勢に立たされている。ロシア国内では最近、ウクライナのものとみられる無人機による攻撃が頻発。1日にも、モスクワ中心部のクレムリン(大統領府)から西に約5キロ離れた高層ビルに無人機が突っ込んだ』、「ロシア内務省」が「プーチン氏らの逮捕状を出したICCのカーン主任検察官や赤根氏ら4人に対する捜査を始め、5月にカーン氏ら2人を本人不在のまま起訴して指名手配」、とんだサル芝居だ。
先ずは、本年7月18日付けJBPressが掲載した在英ジャーナリストの木村 正人氏による「プリゴジンの「信用失墜」に成功したプーチン、どうなる「料理番」の運命 ワグネルはベラルーシで軍事訓練中、プーチンの狙いは「プリゴジンとの分断」」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/76080
・『反乱5日後にプリゴジンと35人のワグネル司令官と面談 ウラジーミル・プーチン露大統領は民間軍事会社ワグネルグループから「プーチンの料理番」こと創設者のエフゲニー・プリゴジンを排除しようとしたが、失敗していたことを露の有力日刊紙「コメルサント」(電子版7月13日付)に明らかにした。プーチンは「プリゴジンの反乱」5日後の6月29日クレムリンでプリゴジンと35人のワグネル司令官と面談していた。 ドミトリー・ペスコフ露大統領報道官はこれに先立つ7月10日、プーチンとプリゴジンらの面談を認め、「大統領は『特別軍事作戦』中の前線におけるワグネルの功績を称え、6月24日の出来事(プリゴジンの反乱)の評価を下した。大統領は司令官たちの説明に耳を傾け、彼らに雇用のさらなる選択肢と契約を提示した」と説明していた。 プーチンとプリゴジン、ワグネル司令官の面談は3時間にも及んだという。コメルサント紙によると、プーチンは「ロシア社会にとって、すべては非常に単純で明白なことだ。一般的にワグネル戦闘員は立派に戦った。彼らがこのような出来事に引きずり込まれたことは遺憾の極みだ」と語った。 プーチンが最初に会いたかったのは「名誉ある戦いをしたワグネル司令官たちで、プリゴジンではなかった」との見方をコメルサント紙の特派員は伝えている。「私は彼らとの面談で、彼らが戦場で何をしたか、次に6月24日に彼らが何をしたかを評価した。第3に、私は彼らに今後の任務について可能な選択肢を示した。それだけだ」とプーチンは説明した』、「プーチン」にとっては、「ワグネル司令官」と「プリゴジン」を切り離す狙いだろう。
・『プリゴジンを参謀長「セドイ(白髪)」に交代させることを提案 「民間軍事会社ワグネルは戦闘部隊として存続するのか」という特派員の問いに、プーチンは「ワグネルは存在しない。ロシアに民間軍事会社を認める法律はない。ワグネルというグループはあっても法的には存在しない」と叫んだ。「今回の一件と民間軍事会社の合法化は別問題だ。これは議会や政府で議論されるべき問題で、簡単ではない」と強調した。 プーチンは面談で35人のワグネル司令官に雇用の選択肢をいくつか提示した。その中にはプリゴジンの代わりに「セドイ(白髪)」というコードネームを持つ司令官の下で働くという選択肢もあった。「セドイ」はアフガニスタン戦争やチェチェン紛争、シリア内戦に関わった元内務省工作員(大佐)で、ワグネル参謀長のアンドレイ・トロシェフのことだ。 プーチンはその時のことをコメルサント紙の特派員にこう語っている。 「この条件を飲めばワグネルが1つの場所に集まり、任務を続けることもできただろう。これまで実質的な司令官だった人物が指揮をとるのだから何も変わらないはずだった。多くのワグネル司令官が頷いた」 しかし、このプーチンとの会談で最前列に陣取ったプリゴジンはそのことに気づかず「いや、全員がこの決定には賛成していない」と首を縦には振らなかった。 「プリゴジンの反乱」を巡るさまざまな憶測が飛び交う中、プーチンは、ワグネルからプリゴジンの影響力を排除するため、東部ドネツク州の激戦地バフムートを制圧するなど、ウクライナ戦争におけるワグネルの功績を称える一方で、ウクライナの占領地を含むロシア国内ではワグネルは非合法な存在であることを改めて強調した』、「ウクライナ戦争におけるワグネルの功績を称える一方で、ウクライナの占領地を含むロシア国内ではワグネルは非合法な存在であることを改めて強調」、あくまで「非合法な存在」とさせたいようだ。
・『プリゴジンに対するネガティブ・キャンペーン 「ワグネルは存在しない」というプーチンの言葉が伝わる中、大きなテントの中のベッドに腰掛け、Tシャツにブリーフ、中年太りしたお腹というみっともない姿で撮影されたプリゴジンの写真がテレグラムチャンネルに出回った。英紙デーリー・テレグラフによると、写真のメタデータから、「プリゴジンの反乱」12日前の6月12日に撮影されたという。 テレグラムチャンネルに投稿されたプリゴジンの写真。でっぷりしたお腹が分かるTシャツにブリーフ姿というあられもない格好。この写真が出回った背景には、ロシア政府によるプリゴジンを貶めるネガティブキャンペーンがあると見られている(「REVERSE SIDE OF THE MEDAL」のテレグラムチャンネルより) 同紙は「恐れられた軍閥(プリゴジン)を弱体化させ、辱め、信用を失墜させようとするクレムリンのキャンペーンと軌を一にしている」と分析する。ロシアの治安部隊がサンクトペテルブルクにあるプリゴジンの邸宅を捜索した際、カツラでいっぱいの戸棚、黄金の延べ棒、ワニの剥製、屋内プールの写真が次々と公開された。プリゴジンを貶める狙いがある。 ジョー・バイデン米大統領は7月13日の記者会見で「もし私がプリゴジンだったら、食べるものに気をつけるだろう。メニューから目を離さないだろう。しかし冗談はさておき、ロシアにおけるプリゴジンの将来がどうなるのか、私たちの誰にも確かなことは分からない」と話した。 デーリー・テレグラフ紙によると、「セドイ」ことトロシェフは2017年、泥酔してサンクトペテルブルクの病院に救急車で運び込まれたことがある。トロシェフは現金で500万ルーブル(約770万円)と5000ドル(約70万円)、シリアの軍事地図、新兵器の領収書、電子航空券を持っており、救急隊員を驚かせたという』、そんな多額の「現金」を身につけているとは、さすが民間軍事組織の長だ。
・『ショイグ露国防相を「木偶の坊」呼ばわり トロシェフはその前年の16年、シリアの過激派組織「イスラム国」に対するワグネルの攻撃を指揮し、古代都市パルミラを解放した功績でプーチンからロシアの英雄と称えられた。ウクライナ戦争では無能なセルゲイ・ショイグ露国防相を「木偶の坊」呼ばわりした上で、ロシア軍の司令官に悪態をつき、「砲弾をもっとよこせ」と要求した。 トロシェフは14年、プリゴジンによるワグネル創設を支援し、それ以来、シリア、アフリカ、ウクライナ戦争での軍事作戦を指揮するなど、重要な役割を果たしてきた。戦闘を忌避するワグネル戦闘員を罰する「内部保安部」のトップとも伝えられている。トロシェフのリーダーシップはプーチンに感銘を与えたとされる。 複数のテレグラムチャネルで公開された情報によると、アフリカに展開していたワグネルの軍事教官が7月11日、ロシアの占領下にあるウクライナ東部ルハンスク州から車列を組み、ベラルーシの軍事訓練場に到着した。 ロシア国防省は12日、ワグネルから戦車を含む2000もの重火器の引き渡しを受けたと発表した。14日にはワグネルの軍事教官がベラルーシ領土防衛隊の徴集兵に戦場での移動や戦術射撃、戦闘外傷救護を訓練している映像が公開された。 米シンクタンク「戦争研究所(ISW)」は、ワグネルはアフリカに展開する部隊をローテーションさせようとしており、ベラルーシでの軍事教練はより広範なローテーションの一環であることを示唆していると指摘する。ワグネルは6月24日の反乱の後、休暇を取り、再編成を経て、8月前半にベラルーシに展開すると伝えられる』、「ワグネルはアフリカに展開する部隊をローテーションさせようとしており、ベラルーシでの軍事教練はより広範なローテーションの一環であることを示唆」、なるほど。
・『ベラルーシ国防省はワグネル部隊のためのロードマップを作成 ベラルーシでの軍事教練は、その地ならしの可能性が大きい。ベラルーシ国防省は7月14日、ベラルーシ軍を訓練するワグネル部隊のためのロードマップを作成したと発表した。 独立監視団体によると、翌15日朝、ベラルーシでドネツク、ルガンスク両人民共和国のナンバープレートを付けた60台以上の車列を護衛するベラルーシの交通警察が目撃された。ワグネル部隊、ワグネル戦闘員240人、40台のトラック、大量の武器が次々と到着したという。 ベラルーシ軍は旧ソ連時代のアフガン戦争以来、戦闘任務に参加していない。このため、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、ウクライナ戦争だけでなく中東・アフリカで豊富な実戦経験を持つワグネルのノウハウを吸収するため、自国での受け入れに前向きだった。 ロシアの国防問題に詳しい米シンクタンク、ランド研究所のダラ・マシコット上級政策リサーチャーは英紙ガーディアンに「プーチンはプリゴジンとワグネル戦闘員との間にくさびを打ち込もうとしている。プーチンはワグネルという道具を必要としている。だからプリゴジンだけをワグネルから引き離そうとした」との見方を示している。 最近、実施された2つのロシア全国世論調査ではプリゴジンの活動への支持率は「プリゴジンの反乱」前は55%(不支持率はわずか17%)にまで達したが、その後29%にまで急落(不支持率は39%に上昇)した。テレビは積極的にプリゴジンとワグネルの信用を失墜させるキャンペーンを展開、テレビ視聴者の半数以上がプリゴジンの活動を否定的に捉えていた。 プーチンは「プリゴジンの反乱」後、内政問題の後始末にひとまず成功したかたちだ』、「プーチンは「プリゴジンの反乱」後、内政問題の後始末にひとまず成功したかたちだ」、なーんだ、つまらない。
次に、7月25日付けNewsweek日本版「IAEA、ザポロジエ原発で対人地雷確認 「安全基準に矛盾」とロシアを批判」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/07/iaea-15.php
・『国際原子力機関(IAEA)は24日、ロシア軍が占領しているウクライナ南部のザポロジエ原子力発電所で対人地雷が見つかったとし、安全基準に違反すると批判した。 IAEAのグロッシ事務局長は声明で、現地に駐在するIAEA職員が原発の内部と外部のフェンスの間にある緩衝地帯で地雷を確認したとし、過去の調査でも地雷が見つかっていると指摘。 「こうした爆発物の存在はIAEAの安全基準と原子力安全保障の指針に矛盾するもので、発電所職員にさらなる心理的圧力を与える」とした。 同氏は6月にも地雷について同様の警告を発したが、その際も今回も原発の安全性を脅かすものではないとの見方を示した』、「IAEA」が「現地に駐在するIAEA職員」させるようにしたことは、監視の上で必須の存在だ。「ロシア」もその存在を意識せざるを得ないだろう。
第三に、7月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「「プーチンを倒せば平和になる」とは限らない、日本も危ない失脚後の最悪シナリオ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/326704
・『日本人の中には、プーチン大統領が失脚すればウクライナ紛争が終結し、ロシアの民主化が進むことを期待している人が多いように思える。だが、必ずしもそうとは限らない。プーチン大統領よりも強権的で、かつ“中国寄り”の指導者が登場する可能性もあるのだ。そうした「ポスト・プーチン」の最悪シナリオを、根拠と併せて解説する』、「プーチン大統領が失脚すればウクライナ紛争が終結し、ロシアの民主化が進むことを期待している人が多い」、恥ずかしながら私もその1人だ。
・『トルコの立ち回りによって スウェーデンの加盟が実現 去る7月中旬、北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議がリトアニアで開催された。スウェーデンのNATO加盟が確実になり、今年4月のフィンランド加盟に続いてNATOのさらなる「東方拡大」が実現した。 一方、ウクライナのNATO加盟に向けた具体的な道筋は示されなかった。また、NATOの東京事務所の設置は、エマニュエル・マクロン仏大統領の反対で先送りとなった。 スウェーデンのNATO加盟はもともと、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領が強硬に反対していた。エルドアン大統領の言い分は「トルコからの分離独立を目指すクルド人勢力をスウェーデンが支援している」というものだった。 だが首脳会談直前の7月10日、エルドアン大統領はスウェーデンのウルフ・クリステション首相と会談。その場でクリステション首相は、クルド人組織を支援しないこと、テロ対策の強化や反テロ法を施行すること、トルコのEU加盟を積極的に支援することを約束した。 その結果エルドアン大統領は、スウェーデンのNATO加盟を受け入れた。こうしたエルドアン大統領の姿勢からは、「トルコが態度を軟化させてNATOを救った」という演出によって存在感を高めたいという思惑が透けて見える。 トルコには「EU(欧州連合)への正式加盟」という長年の悲願がある。だが、イスラム教国であること、警察・司法制度が未整備であること、強権的な政治と人権抑圧の問題があることなどから、加盟は認められてこなかった。 また、EU加盟国のキプロスは南北で紛争状態にあるが、このうち北部を支配する未承認国家「北キプロス・トルコ共和国」をトルコだけが承認している。このこともEU加盟を妨げるハードルになってきた。 そうした状況の打開を狙って、エルドアン大統領はしたたかに振る舞ったわけだ。その結果実現したスウェーデンのNATO加盟は、フィンランドの加盟に続いてロシアに衝撃を与えただろう』、「エルドアン大統領」のしたたかさには脱帽だ。
・『ウクライナ紛争の開戦前から ロシアは極めて不利だった というのも、ウクライナ紛争開戦時を振り返ると、ウラジーミル・プーチン露大統領はNATOに「三つの要求」を突き付けていた。その内容は以下の通りだ。 ・「NATOがこれ以上拡大しない」という法的拘束力のある確約をする ・NATOがロシア国境の近くに攻撃兵器を配備しない ・1997年以降にNATOに加盟した国々から、NATOの部隊や軍事機構を撤去する だが、ウクライナ紛争が長引く中、この「三つの要求」はまだ一つも実現していない。それどころか、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟によって、ロシアがNATOと接する国境は以前の2倍以上に広がった。 ロシア海軍の展開において極めて重要な「不凍港」があるバルト海に接する国もほぼすべてNATO加盟国になり、ロシアの海軍は身動きが取りづらくなった(本連載第306回・p3)。両国の加盟は、ロシアの安全保障戦略に大打撃を与えたはずだ。 とはいえ、長期的な視点での「ロシア不利」の状況は今に始まったことではない。東西冷戦終結後、約30年間にわたってNATO・EUの勢力は東方に拡大を続けてきた。その半面、ロシアの勢力圏は東ベルリンからウクライナ・ベラルーシのラインまで大きく後退していた(第297回)。 一連の勢力図を踏まえて、筆者はウクライナ戦争開戦時に「ロシアはすでに負けている」と表現したほどだ。 しかし、厳しい状況に置かれているのはウクライナも同じだ。冒頭でも述べたが、今回の首脳会議ではウクライナのNATO加盟について具体的な進展がなかった。それどころか、ジョー・バイデン米大統領は「ウクライナのNATO加盟は戦争終結後」と明言した。 NATO首脳会議に合わせて、主要7カ国(G7)は「ウクライナを守るために長期的な支援を行う」といった趣旨の共同宣言を発表したが、こうした支援が紛争の抜本的解決に結びつかないのは近年の戦況を見れば明らかだ。 NATOはウクライナの領土奪還よりも、戦争を延々と継続させることを重視し、中途半端に戦争に関与しているように思える(第325回)。 本連載で何度も指摘してきたが、米英をはじめとするNATOにとってウクライナ紛争とは、20年以上にわたって強大な権力を保持し、難攻不落の権力者と思われたプーチン大統領を弱体化させ、あわよくば打倒できるかもしれない好機である。紛争が長引けば長引くほど、プーチン大統領は追い込まれる。) そのため、NATOにはウクライナ紛争を積極的に停戦させる理由がない。NATO側がロシアに大打撃を与え、ウクライナ紛争を終わらせようと本気で考えているのであれば、支援を小出しにせず、戦局を大きく変える大量の武器をウクライナに供与しているはずだ。 今後どれだけロシアが攻勢を強めたとしても、戦況を俯瞰すると「NATOの東方拡大」「ロシアの勢力縮小」という大きな構図は変わらない。繰り返しになるが、世界的に見ればロシアの後退は続いており、ロシアはすでに敗北していると言っても過言ではない。 だからこそ、バイデン大統領やG7は「ウクライナのNATO加盟は戦争終結後」「ウクライナを守るために長期的な支援を行う」という発言をしたのだろう。やはり彼らは「ウクライナが戦い続けたいならば、少しずつ支援する」という煮え切らないスタンスなのである。このことが、NATO首脳会談を通じて再確認できたといえる』、「バイデン大統領やG7は」・・・「ウクライナが戦い続けたいならば、少しずつ支援する」という煮え切らないスタンスなのである。このことが、NATO首脳会談を通じて再確認できた』、なるほど。
・『プーチンを倒せば ロシアが民主化するとは限らない では今後、長期的な視点では「追い込まれている」ロシアはどうなるのか。 NATO首脳会談よりも前の話になるが、6月末にロシアの民間軍事会社「ワグネル・グループ」の創設者であるエフゲニー・プリゴジン氏が武装蜂起したことは示唆に富んでいる。この「ワグネルの反乱」は24時間ほどで終結したが、プーチン大統領の就任以来最大の造反事件となった。 そして、この反乱を「プーチン体制の終わりの始まり」だと指摘する識者も出てきている。「プーチン大統領の次」に世間の関心が向き始めたようだ。 本連載でもウクライナ紛争の開戦時から、「紛争終結後にプーチン大統領が失脚する可能性がある」「ポスト・プーチンがどうなるかを今から考えておく必要がある」と提言してきた(第298回・p6)。 ここで「ポスト・プーチン」のカギを握るのが、ウクライナ紛争に関しては前面に立ちたがらない中国だ。 思い返せば、開戦のきっかけとなった「ウクライナ東部独立承認」をロシア議会に提案したのは、ロシアにおける野党「ロシア共産党」だった。この党は、中国共産党の強い影響下にあると指摘されている。 やや疑り深い見方をすれば、中国共産党がプーチン大統領を「進むも地獄、引くも地獄」の戦争に引き込んだと考えることもできる。 この見方が正しければ、プーチン大統領を苦境に追いやった中国が、水面下で「親中派のポスト・プーチン」の擁立を画策していたとしても不思議ではない。 一方で米英側も、ロシアを民主化するべく、ロシア人の民主主義者から「ポスト・プーチン」を担ぎ出そうと裏工作を続けているはずだ。 だが米英の情報機関が動いていても、楽観的な見方は禁物だ。プーチン大統領は長期政権の間に、反体制派や民主化勢力を徹底的に弾圧してきた。その影響がプーチン大統領の失脚後も色濃く残り、民主化勢力が権力を掌握できない可能性も否定できない』、「「ウクライナ東部独立承認」をロシア議会に提案したのは、ロシアにおける野党「ロシア共産党」だった。この党は、中国共産党の強い影響下にあると指摘されている。 やや疑り深い見方をすれば、中国共産党がプーチン大統領を「進むも地獄、引くも地獄」の戦争に引き込んだと考えることもできる」、初めて知った。「プーチン大統領は長期政権の間に、反体制派や民主化勢力を徹底的に弾圧してきた。その影響がプーチン大統領の失脚後も色濃く残り、民主化勢力が権力を掌握できない可能性も否定できない」、残念だ。
・『中国が力を増し 日本が被害を受けるリスクも われわれ日本人の中にも、プーチン大統領が失脚すればウクライナ紛争が終結し、ロシアの民主化が進むことを期待している人が多いように思える。だが、必ずしもそうとは限らない。プーチン大統領よりも強権的で、かつ親中派の指導者が登場するかもしれないのだ。 もし本当に、親中派の強権的な指導者が権力を掌握した暁には、中国はロシアに対して圧倒的な影響力を持つ。例えるならば、かつて栄華を誇ったモンゴル帝国「元」が再出現するようなものだ(第300回)。そして、その“大帝国化”した中国に、日本は軍事的に包囲されることになる。 ただでさえ日本は今、中国の軍事力の急激な拡大や、中国による台湾侵攻・尖閣諸島侵攻の懸念といった安全保障上の重大なリスクを抱えている。その状況下で中国がロシアへの影響力を強めると、日本は極めて不利な状況に追い込まれる。 こうした事態に備えて、NATOの協力を得て強固な安全保障体制を築きたいところだが、先のNATO首脳会議で「NATOの東京事務所設置」が事実上白紙に戻ったのは重大な懸念事項だといえる。 この案には、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が強く反対した。これを受け、ハンガリーなど複数の加盟国もフランスに同調した。 もともとは中国も「アジア版NATOは不要だ」と猛反発していたことから、中国との経済関係を重視するマクロン大統領は中国を必要以上に刺激したくなかったのだろう。 この案は米英主導で進められてきたが、NATO内部が一枚岩でないことが明るみに出た。今のままでは、強大化した中国が台湾に侵攻したときなどに、NATOが本気で日本を守ってくれるかは疑問が残る。 国を奪われ、生活を奪われ、命を奪われているウクライナ国民の方々には本当に申し訳ない言い方になるが、こうした危険性を踏まえると、日本にとっては「ウクライナの反転攻勢が成功せず、プーチン大統領が政権を維持するほうがマシ」かもしれないのだ。 プーチン大統領は日本に対して強硬な姿勢を示し続けているが、中長期的には極東において、中国と日本の間でバランスを取ろうとするはずだ。 プーチン大統領はウクライナ戦争開戦後に、日本の「サハリンI・II」の天然ガス開発の権益維持を容認したこともある。その理由は、中国への過度な依存による「属国化」を避けるためだったと考えられる(第327回・p4)。 要するに、日本にとってはウクライナが勝てばいいわけではなく、プーチン大統領が失脚すればいいという単純な話ではないのだ。世界で孤立するリスクを抱える日本が国際社会で生き抜くには、複雑な国際関係の情勢を先読みし、戦略的に行動しなければならない』、「プーチン大統領よりも強権的で、かつ親中派の指導者が登場するかもしれないのだ。 もし本当に、親中派の強権的な指導者が権力を掌握した暁には、中国はロシアに対して圧倒的な影響力を持つ。例えるならば、かつて栄華を誇ったモンゴル帝国「元」が再出現するようなものだ(第300回)。そして、その“大帝国化”した中国に、日本は軍事的に包囲されることになる」、「世界で孤立するリスクを抱える日本が国際社会で生き抜くには、複雑な国際関係の情勢を先読みし、戦略的に行動しなければならない」、その通りだ。
第四に、7月31日付け東洋経済オンラインが掲載した新聞通信調査会理事・共同通信ロシア・東欧ファイル編集長の吉田 成之氏による「アメリカの“弱腰"を懸念し始めたウクライナ 戦争の終わりが見えないまま反攻に最大注力へ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/691208
・『難航していたウクライナ軍の反攻作戦に新たな動きがあった。さまざまな試行錯誤の末、ウクライナ軍は2023年7月末、大規模な攻撃作戦用にと温存してきた精鋭部隊の一部を満を持して初めて南部戦線に投入したのだ。 反攻作戦開始から約2カ月、反攻作戦のギアを一段上げたと言える。しかし、いよいよこれから、というこの時期、ウクライナ政府に今春までのような高揚感が乏しいのが実情だ。むしろ、今後に対する不安感が霧のように立ち込め始めている。それはなぜか。その内実を深掘りしてみた』、興味深そうだ。
・『ウクライナ顧問「何か、くさい臭いがする」 「憂鬱なアレストビッチ」。今キーウではこの言葉が政治的流行語のようにしきりに語られている。前ウクライナ大統領府長官顧問である安保問題専門家オレクシー・アレストビッチ氏が2023年7月半ばにネット上で行った発言がきっかけだ。少し長くなるが、悔しい思いのたけをぶちまけた彼の発言の内容を、以下に紹介する。 「(全占領地の奪還を意味する)1991年の国境線まで戻すことがわれわれの憲法上の義務であり、その目標は変わっていない。しかし、戦場でわれわれが決定的優位性を得るための武器が供与されない。なぜだ?何か、くさい臭いがする」 この「くさい臭い」発言に込められたのは、アメリカへの強い憤懣だ。ウクライナ側が強く要請している、アメリカ製F16戦闘機や、長射程地対地ミサイル「ATACMS」の供与がいまだに実現しないのは、アメリカのバイデン政権の意向を反映したもので、それがゆえに反攻作戦が思い通りに進まない、という不満だ。 F16に関してバイデン政権は2023年5月、ヨーロッパの同盟国が供与することを容認する方針に転じたものの、供与の前段階であるウクライナ軍パイロットの訓練すら始まっていない。 これについて、アメリカは公式的には様々な技術的理由を挙げているが、アレストビッチ氏は、実際には技術的な事情ではなく、ロシアに対する軍事的な「決定的優位性」をウクライナ軍に与えたくないというバイデン政権の戦略が隠されていると指摘したのだ。 曰く「われわれの外交上の目標は、われわれの主要なスポンサーのそれとは異なるのだ」。つまり、バイデン政権は侵攻してきたロシア軍に対し、ウクライナ軍が負けないよう軍事支援はするものの、圧倒的に勝つような軍事的優位性は与えないという戦略的目標を持っているという見方をアレストビッチ氏は示したのだ。 そのうえで、アレストビッチ氏は今後、領土奪還のテンポが大きく上がらず、反攻作戦が膠着状態に陥った時期を見計らって、バイデン政権がウクライナとロシアに対し、戦争を凍結し、停戦協議を行うよう提案するだろうとの見立てを示した。) この見立てを前提に、アレストビッチ氏は「ウクライナ全領土をキーウ側とロシアの間でそれぞれの実効支配地域ごとに分割する」といった内容の停戦協定を受け入れるという個人的立場を示した。 つまり、ウクライナ政府側がほぼ現状のまま全土の約80%、ロシアが約20%を占有するとの考えだ。この案を受け入れる前提として、アレストビッチ氏はウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟が認められることを挙げた。ロシアに移譲される国土については、将来的に「非軍事的手段」で取り戻すと強調した。 アレストビッチ氏は、その言動が世界中のウクライナ・ウォッチャーから注目されている。元ロシア下院議員との掛け合いスタイルでアレストビッチ氏が流すユーチューブ・チャンネルは、侵攻に関するチャンネルの中で最もアクセスが多いと言われている。ウクライナ政府の意向を探るため、プーチン大統領も欠かさずチェックするといわれるほどだ。 それだけに、アレストビッチ氏としては、水面下に潜むバイデン政権の「本音」をウクライナ内外に広く知らせるため、意図的に今回刺激的発言をしたとみられる』、「バイデン政権は侵攻してきたロシア軍に対し、ウクライナ軍が負けないよう軍事支援はするものの、圧倒的に勝つような軍事的優位性は与えないという戦略的目標を持っている」、「バイデン政権がウクライナとロシアに対し、戦争を凍結し、停戦協議を行うよう提案するだろうとの見立てを示した。) この見立てを前提に、アレストビッチ氏は「ウクライナ全領土をキーウ側とロシアの間でそれぞれの実効支配地域ごとに分割する」といった内容の停戦協定を受け入れるという個人的立場を示した。 つまり、ウクライナ政府側がほぼ現状のまま全土の約80%、ロシアが約20%を占有するとの考えだ。この案を受け入れる前提として、アレストビッチ氏はウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟が認められることを挙げた。ロシアに移譲される国土については、将来的に「非軍事的手段」で取り戻すと強調した」、ここまで極秘シナリオが出来ているとは驚かされた。
・『「領土分割やむなし」発言の真意 そのアレストビッチ氏による、今回のアメリカ批判と領土分割やむなし発言は、全領土奪還を掲げるゼレンスキー政権の公式的立場とは大きく異なる。しかし、筆者が取材した結果、実はゼレンスキー政権内部でもアレストビッチ氏と同様に、反攻作戦が膠着状態になればアメリカが「タオルを投げ入れ」、停戦協議の開始を提案してくるのではと真剣に警戒され始めていることがわかった。 すでにウクライナ政府は水面下で、ウクライナを最も強く支持しているバルト3国やポーランドなどの隣国に対し、仮にアメリカが停戦交渉開始を提案してきた場合、引き続きウクライナへの軍事支援を継続するか否か、を問い合わせ始めている。停戦交渉開始提案がワシントンから来た場合の対応策を真剣に検討し始めたことを示すものだ。 今回のアレストビッチ発言と、その背景にあるゼレンスキー政権の危機感の直接の引き金になったのは、2023年7月11、12日の両日にリトアニアの首都ビリニュスで開かれたNATO首脳会議だ。 ゼレンスキー政権は、会議でNATO即時加盟が決まることが無理なのことは事前に承知していたが、「ウクライナ戦争終了後」などという形で具体的な加盟の時期や道筋が明示されることを期待していた。 事実、ヨーロッパ各国やトルコは道筋明示を支持していたが、結局アメリカとドイツがこれに反対した。NATO加盟に関してはまったく具体的道筋が一切盛り込まれない、事実上ゼロ回答の共同声明が発表された。 これを受けて、ゼレンスキー政権は、アメリカがロシアとの対決回避のため、停戦交渉による紛争凍結に傾いており、NATO加盟が約束されたものでないことを思い知ったのだ。) これに加えもう1つ、ウクライナが神経を尖らせているアメリカの動きがある。バイデン政権内で対ロシア秘密交渉役を担っているバーンズ中央情報局(CIA)長官の閣僚級への格上げだ。今後、より権限のある地位になったバーンズ氏がロシアとウクライナの間に入って、停戦交渉開始に向けた外交工作を始める前触れではないかとゼレンスキー政権は警戒している。 バーンズ氏はすでに2023年6月末にロシア対外情報局(SVR)のナルイシキン長官と電話会談したことが明るみに出ている。ウクライナの軍事筋によると、本稿執筆時点で、バーンズ氏がロシア政府側と何らかの秘密交渉をしたという形跡はないという。 こうしたバイデン政権に対し、アメリカ内からもすでに公然と批判が出ている。その代表的人物が、ホッジス元アメリカ駐欧州陸軍司令官だ。 あるユーチューブ・チャンネルに出演したホッジス氏は、そもそも論として、バイデン政権には当初からウクライナに全占領地を奪還させる、つまり勝利させるつもりはなかったと指摘した』、「ホッジス元アメリカ駐欧州陸軍司令官だ。 あるユーチューブ・チャンネルに出演したホッジス氏は、そもそも論として、バイデン政権には当初からウクライナに全占領地を奪還させる、つまり勝利させるつもりはなかったと指摘」、なるほど。
・『アメリカはウクライナが勝つことを望んでいない バイデン政権がウクライナへの軍事支援を巡り、合言葉のように掲げていた「as long as it takes (必要とされる限り)」という原則について、ホッジス氏はこう解説する。「必要な兵器をなるべく早く渡すという善意を意味しているだけで、必要な軍事支援を今全部行うとは約束してはいない。空虚な宣言だ」と。 つまり「アメリカは、ウクライナが敗戦することを望んでいないが、一方でウクライナが勝つことも望んでおらず、国際的に承認済みの1991年の国境線を回復することも望んでいないようだ」と指摘する。こうした見方はウクライナ側と軌を一にするものだ。 ホッジス氏は、最終的にどのような形で戦争を終わらせるか、についてバイデン政権内で明確な戦略が決まっていないようだと指摘する。この点では、停戦交渉を提案してくると警戒を強めるウクライナ政府とは若干見方が異なる。「今、ホワイトハウス、国務省、国防総省の間で今後どうするか、議論が行われていると思う」と指摘し、アメリカはATACMSなどを早く供与すべきと述べた。 いずれにしても、ホッジス氏はバイデン政権がプーチン政権を倒すつもりがないとの見方を示す。プーチン政権に対する戦略的姿勢として「ロシアとはいかなる問題が発生しても、話し合いで問題を最終的に解決できると考えている」と指摘する。 ここで話を反攻作戦に戻そう。戦況は地点ごとに、ウクライナが攻勢に出ている方面とロシア軍が主導権を握っているところがあり、まだら模様状態だ。 例えば、東部ドネツク州の要衝都市バフムトは、ロシアの民間軍事会社ワグネル部隊に一度は制圧された後、ウクライナ軍が周辺部からジリジリ盛り返して半ば包囲状態だ。包囲網が完成すれば、守るロシア正規軍に投降を呼び掛ける可能性があるという。 一方で同じく東部のクプヤンシク・リマン方面ではロシア軍が約10万人規模の増援部隊を投入して、激戦が続いている。 しかし、現在最も注目されているのは南部戦線だ。ウクライナ軍はドネツク州のマリウポリ、ザポリージャ州のベルジャンスクとメリトポリという3つのアゾフ海沿岸の都市に向け、ジリジリと南下作戦を続けている。 キーウの軍事筋は、詳しい場所を明らかにしていないものの、西側でNATO流の訓練を施され、NATO式の戦術や兵器を身に着けた、虎の子の8旅団(1旅団は3000人程度)のうち1個旅団程度が南部に投入されたことを明らかにした』、「西側でNATO流の訓練を施され、NATO式の戦術や兵器を身に着けた、虎の子の8旅団(1旅団は3000人程度)のうち1個旅団程度が南部に投入された」、なるほど。
・『ウクライナは精鋭中の精鋭旅団を投入か 筆者はこの旅団の投入先を、南部の交通の要衝でもあるメリトポリ方面だとにらんでいる。メリトポリは、ロシア本土からウクライナ東部、アゾフ海沿岸を経由して最終的にはクリミア半島に至る、いわいる地上輸送回廊の要所だ。上記した3都市の中で最もロシア軍の防御態勢が強固といわれる。 執筆時点でウクライナ軍はメリトポリの北方にあるトクマクまで約25キロメートルの地点まで進んできた。これからウクライナ軍を待ち構えるのが、俗に「スロビキン・ライン」とも呼ばれるロシア軍の堅固な防衛線だ。 「竜の歯」と呼ばれる、戦車の侵入を阻むためのコンクリート製の障害物が延々と並べられ、その後ろには塹壕線があり、さらに砲撃用陣地が並んでいるといわれる。また地雷原が広がっている。これらの防御線を突破しないとトクマクには到達できない。 戦況に詳しいイスラエルのロシア系軍事専門家グリゴーリー・タマル氏によると、地雷原は過去例がないほど密なもので、ロシア軍は敷設記録の地図さえ作らないまま、大慌てで地雷を敷設したという。 この地雷原がウクライナ軍の進軍を妨げる大きな要因になっていたが、タマル氏はアメリカが最近供与に踏み切ったクラスター(集束)弾が効果をあげていると強調した。 この弾が投下されると、中から多数の子爆弾が散らばって爆発し、地雷原を広く無効化するからだ。同時に榴弾砲などの火砲面でも、一時は砲弾数で優位に立つロシア軍に押されていたが、最近は高い命中精度を持つ西側製火砲を生かして優位に立ち始めたという。 当面トクマク制圧の可否が今後の戦況の分かれ目になるとみられる。ここからメリトポリに対し、高機動ロケット砲システム、ハイマースで集中的に砲撃できるようになるからだ。射程約80キロメートルのハイマースはゲームチェンジャーと呼ばれるほどこれまで効果を上げてきたが、最近はロシア軍のジャミング(電波妨害)作戦の結果、有効射程が約60キロメートルへ短縮され、命中精度も落ちてきているという。このためメリトポリまで約60キロメートルにあるトクマク制圧の重要性が増している。 ウクライナ軍としては、メリトポリ方面へのハイマース攻撃で、クリミアへの地上輸送回廊を寸断し、さらにアゾフ海沿岸に到達することでクリミアへの攻撃を強めることを狙っている。 しかし、先述したアメリカ政府の動きがあり、筆者はウクライナ軍にとってこの1カ月、つまり2023年8月末までが極めて重要だとみる。その時点までに、それなりの戦果を挙げることができないと、アメリカがタオルを投げてくる可能性が現実味を帯びてくるのではないか。 ウクライナ政府も同様の危機感を持っているとみられる。逆に言えば、今後ウクライナ軍が一定の戦果を確実に重ねていけば、ワシントンが停戦交渉提案を持ち込むタイミングを見失う可能性もあるとみる。 最近、ウクライナ軍はモスクワへのドローン攻撃など、実際の軍事的効果より宣伝効果を狙ったとみられる攻撃を増やしている。これも、アメリカをにらんでウクライナの継戦への強い意志を誇示する狙いがあるのではないかと筆者はみる。反攻作戦継続か、紛争凍結か――。ウクライナにとって、極めて重要な夏の決戦になりそうだ』、「地雷原がウクライナ軍の進軍を妨げる大きな要因になっていたが、タマル氏はアメリカが最近供与に踏み切ったクラスター(集束)弾が効果をあげていると強調した。 この弾が投下されると、中から多数の子爆弾が散らばって爆発し、地雷原を広く無効化するからだ。同時に榴弾砲などの火砲面でも、一時は砲弾数で優位に立つロシア軍に押されていたが、最近は高い命中精度を持つ西側製火砲を生かして優位に立ち始めたという」、「クラスター弾」が効果を上げているとは喜ばしいことだ。「ウクライナ軍にとってこの1カ月、つまり2023年8月末までが極めて重要だとみる。その時点までに、それなりの戦果を挙げることができないと、アメリカがタオルを投げてくる可能性が現実味を帯びてくるのではないか」、なるほど。
第五に、8月2日付け夕刊フジ「プーチン政権の〝恫喝的行動〟に国際司法が怒り ICC裁判官を指名手配のロシア当局に非難声明「深い懸念」」を紹介しよう。
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/fuji/world/fuji-_society_foreign_KKIEDUOABRMU7KKEBA7NSXYSDQ
・『国際刑事裁判所(ICC)が、ロシアのウラジーミル・プーチン政権の恫喝(どうかつ)的行為を非難した。ロシア内務省が戦争犯罪の容疑でプーチン大統領らに逮捕状を出したICCの赤根智子裁判官を指名手配したことを受け、締約国会議の議長名の声明で「深い懸念」を表明したのだ。ロシアの非道な行動は、国際司法の世界でも批判にさらされている。 ロシア当局は3月、プーチン氏らの逮捕状を出したICCのカーン主任検察官や赤根氏ら4人に対する捜査を始め、5月にカーン氏ら2人を本人不在のまま起訴して指名手配。赤根氏については、タス通信が7月27日、指名手配を報じていた。 この報道を受け、ICCの締約国会議は同月31日付で声明を発表した。声明では、「ICCの国際的使命を損なう行為だ」とロシア当局による赤根氏の指名手配を批判し、裁判官らに対する「断固とした支持を改めて表明する」と強調した。 ウクライナ戦線でも、ロシアは守勢に立たされている。ロシア国内では最近、ウクライナのものとみられる無人機による攻撃が頻発。1日にも、モスクワ中心部のクレムリン(大統領府)から西に約5キロ離れた高層ビルに無人機が突っ込んだ』、「ロシア内務省」が「プーチン氏らの逮捕状を出したICCのカーン主任検察官や赤根氏ら4人に対する捜査を始め、5月にカーン氏ら2人を本人不在のまま起訴して指名手配」、とんだサル芝居だ。
タグ:ウクライナ JBPRESS 木村 正人氏による「プリゴジンの「信用失墜」に成功したプーチン、どうなる「料理番」の運命 ワグネルはベラルーシで軍事訓練中、プーチンの狙いは「プリゴジンとの分断」」 「プーチン」にとっては、「ワグネル司令官」と「プリゴジン」を切り離す狙いだろう。 「ウクライナ戦争におけるワグネルの功績を称える一方で、ウクライナの占領地を含むロシア国内ではワグネルは非合法な存在であることを改めて強調」、あくまで「非合法な存在」とさせたいようだ。 そんな多額の「現金」を身につけているとは、さすが民間軍事組織の長だ。 「ワグネルはアフリカに展開する部隊をローテーションさせようとしており、ベラルーシでの軍事教練はより広範なローテーションの一環であることを示唆」、なるほど。 「プーチンは「プリゴジンの反乱」後、内政問題の後始末にひとまず成功したかたちだ」、なーんだ、つまらない。 Newsweek日本版「IAEA、ザポロジエ原発で対人地雷確認 「安全基準に矛盾」とロシアを批判」 「IAEA」が「現地に駐在するIAEA職員」させるようにしたことは、監視の上で必須の存在だ。「ロシア」もその存在を意識せざるを得ないだろう。 ダイヤモンド・オンライン 上久保誠人氏による「「プーチンを倒せば平和になる」とは限らない、日本も危ない失脚後の最悪シナリオ」 「プーチン大統領が失脚すればウクライナ紛争が終結し、ロシアの民主化が進むことを期待している人が多い」、恥ずかしながら私もその1人だ。 「エルドアン大統領」のしたたかさには脱帽だ。 「バイデン大統領やG7は」・・・「ウクライナが戦い続けたいならば、少しずつ支援する」という煮え切らないスタンスなのである。このことが、NATO首脳会談を通じて再確認できた』、なるほど。 「「ウクライナ東部独立承認」をロシア議会に提案したのは、ロシアにおける野党「ロシア共産党」だった。この党は、中国共産党の強い影響下にあると指摘されている。 やや疑り深い見方をすれば、中国共産党がプーチン大統領を「進むも地獄、引くも地獄」の戦争に引き込んだと考えることもできる」、初めて知った。 「プーチン大統領は長期政権の間に、反体制派や民主化勢力を徹底的に弾圧してきた。その影響がプーチン大統領の失脚後も色濃く残り、民主化勢力が権力を掌握できない可能性も否定できない」、残念だ。 「プーチン大統領よりも強権的で、かつ親中派の指導者が登場するかもしれないのだ。 もし本当に、親中派の強権的な指導者が権力を掌握した暁には、中国はロシアに対して圧倒的な影響力を持つ。例えるならば、かつて栄華を誇ったモンゴル帝国「元」が再出現するようなものだ(第300回)。そして、その“大帝国化”した中国に、日本は軍事的に包囲されることになる」、 「世界で孤立するリスクを抱える日本が国際社会で生き抜くには、複雑な国際関係の情勢を先読みし、戦略的に行動しなければならない」、その通りだ。 東洋経済オンライン 吉田 成之氏による「アメリカの“弱腰"を懸念し始めたウクライナ 戦争の終わりが見えないまま反攻に最大注力へ」 興味深そうだ。 「バイデン政権は侵攻してきたロシア軍に対し、ウクライナ軍が負けないよう軍事支援はするものの、圧倒的に勝つような軍事的優位性は与えないという戦略的目標を持っている」、「バイデン政権がウクライナとロシアに対し、戦争を凍結し、停戦協議を行うよう提案するだろうとの見立てを示した。) この見立てを前提に、アレストビッチ氏は「ウクライナ全領土をキーウ側とロシアの間でそれぞれの実効支配地域ごとに分割する」といった内容の停戦協定を受け入れるという個人的立場を示した。 つまり、ウクライナ政府側がほぼ現状のまま全土の約80%、ロシアが約20%を占有するとの考えだ。この案を受け入れる前提として、アレストビッチ氏はウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟が認められることを挙げた。ロシアに移譲される国土については、将来的に「非軍事的手段」で取り戻すと強調した」、ここまで極秘シナリオが出来ているとは 驚かされた。 「ホッジス元アメリカ駐欧州陸軍司令官だ。 あるユーチューブ・チャンネルに出演したホッジス氏は、そもそも論として、バイデン政権には当初からウクライナに全占領地を奪還させる、つまり勝利させるつもりはなかったと指摘」、なるほど。 「西側でNATO流の訓練を施され、NATO式の戦術や兵器を身に着けた、虎の子の8旅団(1旅団は3000人程度)のうち1個旅団程度が南部に投入された」、なるほど。 「地雷原がウクライナ軍の進軍を妨げる大きな要因になっていたが、タマル氏はアメリカが最近供与に踏み切ったクラスター(集束)弾が効果をあげていると強調した。 この弾が投下されると、中から多数の子爆弾が散らばって爆発し、地雷原を広く無効化するからだ。同時に榴弾砲などの火砲面でも、一時は砲弾数で優位に立つロシア軍に押されていたが、最近は高い命中精度を持つ西側製火砲を生かして優位に立ち始めたという」、「クラスター弾」が効果を上げているとは喜ばしいことだ。 「ウクライナ軍にとってこの1カ月、つまり2023年8月末までが極めて重要だとみる。その時点までに、それなりの戦果を挙げることができないと、アメリカがタオルを投げてくる可能性が現実味を帯びてくるのではないか」、なるほど。 夕刊フジ「プーチン政権の〝恫喝的行動〟に国際司法が怒り ICC裁判官を指名手配のロシア当局に非難声明「深い懸念」」 「ロシア内務省」が「プーチン氏らの逮捕状を出したICCのカーン主任検察官や赤根氏ら4人に対する捜査を始め、5月にカーン氏ら2人を本人不在のまま起訴して指名手配」、とんだサル芝居だ。
ウクライナ(その7)(追いつめられたプーチンが「欧州最大規模のザポリージャ原発を攻撃して破壊する」という「最悪シナリオ」、《黒海が放射性物質で汚染》《食糧危機に直結》…!追いつめられたプーチンとロシアが「ザポリージャ原発を爆破」した時に起きる「ヤすぎる事態」、プーチンの大誤算…ここにきて「プリゴジン」にかわって「ルカシェンコ」がプーチンを脅かす「危険過ぎる存在」となっている「ヤバすぎる理由」) [世界情勢]
ウクライナについては、7月4日に取上げた。今日は、(その7)(追いつめられたプーチンが「欧州最大規模のザポリージャ原発を攻撃して破壊する」という「最悪シナリオ」、《黒海が放射性物質で汚染》《食糧危機に直結》…!追いつめられたプーチンとロシアが「ザポリージャ原発を爆破」した時に起きる「ヤバすぎる事態」、プーチンの大誤算…ここにきて「プリゴジン」にかわって「ルカシェンコ」がプーチンを脅かす「危険過ぎる存在」となっている「ヤバすぎる理由」)である。
先ずは、6月27日付け現代ビジネス「追いつめられたプーチンが「欧州最大規模のザポリージャ原発を攻撃して破壊する」という「最悪シナリオ」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111977
・『欧州最大級のザポリージャ原発は、昨年3月以降ロシア軍による実質的支配が続いている。ウクライナの反転攻勢を恐れるプーチンは、チョルノービリ、福島を超える最悪の放射能事故を起こすのか』、興味深そうだ。
・『なぜダムを破壊したか 「ダム周辺は肥沃な農業地帯で、ブドウやメロンの産地として知られていました。毎年、9月の収穫期には緑色のブドウがそこかしこで実っている本当に美しい土地だったのです。そんな果物畑が今回のダム決壊による洪水で、使い物にならなくなってしまった……。復興には10年以上かかるともいわれています。このような重大な環境破壊は、決して許されるものではありません」 6月6日、ウクライナ南部ヘルソン州の「カホフカダム」が爆破によって決壊。当日、ダム付近に滞在していたセルゲイ・コレスニチェンコ氏(41歳)は、そう怒りを露にした。 決壊によって発生した洪水は600平方kmに及び、約1万4000戸が浸水。ウクライナ当局によると、約8000人が避難し、70万人が飲料水を必要としている状況が続いているという。 ウクライナ、ロシア双方が「ダム破壊は相手の攻撃によるものである」と主張している。が、ロシア研究が専門の拓殖大学教授・名越健郎氏は「ウクライナ側がダム破壊を実行するとは思えない」と語る。 「6月4日からウクライナが反転攻勢を始め、その2日後にダム破壊が起きています。ウクライナは4つの戦線で進撃を続けていると分析されていますが、最終的には、現在ロシア軍に占領されている交通の要所・メリトポリを奪還し、補給線を寸断することが目的と見られています」 ウクライナ軍がメリトポリに到達するためには、カホフカダムがあるヘルソン州を進行せざるを得ない。そこで、ロシア軍はダムを爆破したと見られているのだ。 「ロシア側も、ウクライナの狙いは十分に理解している。ウクライナ軍をヘルソン州側から進撃させないためにダムを決壊させ、周辺部を浸水させることでメリトポリ方面の防御を固めようと考えたのでしょう」(同前) カホフカダム爆破は今後の戦局を大きく左右するだけでなく、欧州、さらには世界全体を脅かす重大なリスクもはらんでいる。 ウクライナ南部にある「ザポリージャ原発」は、6基の原子炉を備える欧州最大級の原発で、総電気出力量は600万キロワット、ピーク時にはウクライナの全電力の5分の1を供給していた。そのザポリージャ原発が冷却水を取水していたのが、爆破されたカホフカダムだったのだ』、「「カホフカダム」が爆破によって決壊」、ずいぶん荒っぽいことをするものだ。「「ロシア側も、ウクライナの狙いは十分に理解している。ウクライナ軍をヘルソン州側から進撃させないためにダムを決壊させ、周辺部を浸水させることでメリトポリ方面の防御を固めようと考えたのでしょう」、「ウクライナ南部にある「ザポリージャ原発」は、6基の原子炉を備える欧州最大級の原発で、総電気出力量は600万キロワット、ピーク時にはウクライナの全電力の5分の1を供給していた。そのザポリージャ原発が冷却水を取水していたのが、爆破されたカホフカダムだったのだ」、なるほど。
・『冷却水喪失の現実味 NPO法人「原子力資料情報室」の松久保肇事務局長が言う。 「ザポリージャ原発は昨年3月からロシア軍が実質的に支配しており、現在は稼働を停止しています。正確に言うと、6基のうち5基が冷温停止で、1基が高温停止の状態です。高温停止というのは、原子炉が200~350℃の熱を保っている状態。1基だけ高温停止にしているのは、原発内や原発近くにあるエネルゴダールという街に熱を供給するためです。日本と違い、原発からの排熱を所内や地域の熱供給に使っているのです」 稼働が止まっていても、当然、原発には冷却水が必要不可欠だ。松久保氏が続ける。 「冷温停止状態であっても燃料から熱が出ていることは間違いなく、常に冷却を続ける必要があります。ロシアもウクライナも『貯水池に十分な冷却水があるため当面は問題ない』と発表していますが、貯水池に水がなくなったときはどうなるのか。早急に代替水源を確保する必要があります」 '11年の東日本大震災の際に発生した福島第一原発事故の際も、冷却水問題は起きている。4号機の使用済み燃料プールに冷却水喪失の恐れがあり、放射性物質大量放出の危機が顕在化したのだ。 「冷却ができなくなれば、メルトダウン(炉心溶融)が起き、放射性物質が大気に放出されてしまう危険性がある。高温停止の5号機は冷却までに時間がかかるため、メルトダウンの可能性はさらに高まります。ウクライナの原子力規制当局はダム爆破後の6月8日、一刻も早く5号機を冷温停止にするよう指示しましたが、ロシア側に停止する動きは見られません」(同前) ザポリージャ原発を巡っては、さらに最悪のケースも考えられる。プーチン大統領の指示のもと、ロシア軍が自ら原発を攻撃することもありうるのだ。
実際、ウクライナ国防省情報総局は5月26日、 「ロシア軍が制圧下にあるザポリージャ原発を自ら攻撃し、放射性物質が漏れたと国際社会に訴えてウクライナの反攻を阻止する計画を立てている」 との声明を出している。 防衛省防衛研究所防衛政策研究室長の高橋杉雄氏が「最悪のシナリオ」をこう予想する。 「ロシア軍はザポリージャ原発周辺にロケット砲部隊を配備し、原発を盾にウクライナ軍へ一方的な攻撃を続けています。これはウクライナ軍としては悩ましい問題。ロシア軍からザポリージャ原発を取り戻すために、隣接するドニプロ川から特殊部隊を潜入させる可能性はあります。その銃撃戦のなかで流れ弾が原発の建物に当たるリスクがあります。考えたくはないですが、撤退を余儀なくされたロシア軍が、重要拠点を敵に渡さぬため、原発を攻撃して破壊するという事態も起こりかねません」 後編記事『《黒海が放射性物質で汚染》《食糧危機に直結》…!追いつめられたプーチンとロシアが「ザポリージャ原発を爆破」した時に起きる「ヤバすぎる事態」』につづく』、「「冷温停止状態であっても燃料から熱が出ていることは間違いなく、常に冷却を続ける必要があります。ロシアもウクライナも『貯水池に十分な冷却水があるため当面は問題ない』と発表していますが、貯水池に水がなくなったときはどうなるのか。早急に代替水源を確保する必要があります」、「「ロシア軍はザポリージャ原発周辺にロケット砲部隊を配備し、原発を盾にウクライナ軍へ一方的な攻撃を続けています。これはウクライナ軍としては悩ましい問題。ロシア軍からザポリージャ原発を取り戻すために、隣接するドニプロ川から特殊部隊を潜入させる可能性はあります。その銃撃戦のなかで流れ弾が原発の建物に当たるリスクがあります。考えたくはないですが、撤退を余儀なくされたロシア軍が、重要拠点を敵に渡さぬため、原発を攻撃して破壊するという事態も起こりかねません」、「原発を盾にウクライナ軍へ一方的な攻撃を続けています」とは、「ロシア側」のやり方は実に汚い。「撤退を余儀なくされたロシア軍が、重要拠点を敵に渡さぬため、原発を攻撃して破壊するという事態も起こりかねません」、こんな事態にならないよう祈るしかなさそうだ。
次に、この続きを、6月27日付け現代ビジネス「《黒海が放射性物質で汚染》《食糧危機に直結》…!追いつめられたプーチンとロシアが「ザポリージャ原発を爆破」した時に起きる「ヤバすぎる事態」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111978
・『欧州最大級のザポリージャ原発は、昨年3月以降ロシア軍による実質的支配が続いている。カホフカダムをロシアが破壊したと見られているように、ウクライナの反転攻勢を恐れるプーチンは、チョルノービリ、福島を超える最悪の放射能事故を起こすのか。 前編記事『追いつめられたプーチンが「欧州最大規模のザポリージャ原発を攻撃して破壊する」という「最悪シナリオ」』より続く』、興味深そうだ。
・『電源喪失、そのとき 歴史を振り返ってみても、ありえないと思われたことが起きるのが戦争であり、それをするのがプーチンという男だ。 昨年2月、国際社会から孤立することが明らかな状況でウクライナに侵攻を始め、11月には実際にザポリージャ原発に10発以上の砲撃を浴びせて電気設備などを破壊している。このときもロシアは「ウクライナの仕業だ」と非難していた。 ウクライナの反攻が脅威と見れば、欧州最大級の原発を自ら破壊するという「史上最悪の火遊び」に出る可能性は否定できない。 では、実際に原発が攻撃された場合、何が起きるのか。核問題の専門家であるハーバード大学ベルファ科学国際問題センターのマリアナ・ブジェリン博士が言う。 「'84年から稼働を開始したザポリージャ原発は『VVER』と呼ばれるロシア型加圧水型原子炉で、原子炉内の核燃料を守る格納容器は、鋼板ライナーという金属を内張りした鉄筋コンクリートで覆われています。 日本を含む先進国の原子炉と同水準の安全性があるとされますが、武力攻撃をされる想定では設計されていないため、仮にロシア軍からミサイル攻撃あるいは砲撃をされれば格納容器は貫通または亀裂が入るでしょう。ロシアが航空機を"意図的に"墜落させ、事故によるものだと主張することも考えられる」 原発が武力攻撃を想定していないことは、日本の国会でも明らかにされている。昨年3月の衆院経済産業委員会で質問を受けた原子力規制委員会の更田豊志委員長(当時)は、日本国内の原発がミサイル攻撃された場合、 「放射性物質がまき散らされることが懸念される。現在の設備で避けられるとは考えていない」 と発言している。) ブジェリン博士が続ける。 「とはいえ、仮に核燃料を守る格納容器が粉々に破壊されたとしても、すぐさま放射能物質の放出を引き起こすわけではありません。冷温停止されている原子炉内にある核燃料の温度が上がり、臨界点に達して放射性物質が出るまでには数週間かかる。高温停止状態の5号機については当然、メルトダウンまでの時間は短くなりますが、それでも猶予はあります」 ここで問題になるのは、ウクライナとロシアが戦時下にあるということだ。ロシアによる占領以降、ザポリージャ原発の職員は約1万人から約3000人に減っている。6基の原発に事故が起きたときに対応できる人数ではなく、修理に必要な部品の供給ができるかどうかも未知数だ。 前出の松久保氏が言う。 「格納容器が損傷するということは、いわば釜が割れているような状態になるということ。どれだけ容器に水を入れても貯めることはできず、これでは冷却ができません。 さらに恐ろしいのは、戦闘によって冷却システムを構築している電源を喪失することです。ザポリージャ原発は外部から電源をとっており、これが遮断された場合は非常用ディーゼルを使って冷却システムを動かし原発を冷やします。これらが攻撃によって機能不全に陥ると、メルトダウンの可能性が高くなります」 福島第一原発の事故でも、地震によって送電線の断線やショート、関連施設の故障が相次ぎ、外部電源を喪失。その後、太平洋から押し寄せた津波が福島第一原発を襲い、非常用電源が水没したことで重大事故を引き起こした。 「冷却システムの喪失が影響するのは、原子炉だけではありません。原発から出た使用済み燃料は、原子炉近くに敷設されている使用済み燃料プールに入れられている。使用済み燃料は取り出した直後は非常に高熱で、数年にわたりプールで冷やしておく必要があります。しかし、冷却システムが破壊されればプールの水温は上昇し、やがて蒸発する。そうなれば、使用済み燃料が露出して火災が発生し、放射性物質が放出されます。 また、冷却が終わった核燃料は『乾式貯蔵キャスク』という容器に入れられ、空気冷却、つまりは野晒し状態で置いてあります。燃料プールほどの影響はありませんが、これも放射性物質を含んでいるため、攻撃によって容器が破壊されれば周囲を汚染することになります」(同前)』、「武力攻撃をされる想定では設計されていないため、仮にロシア軍からミサイル攻撃あるいは砲撃をされれば格納容器は貫通または亀裂が入るでしょう・・・ブジェリン博士が続ける。 「とはいえ、仮に核燃料を守る格納容器が粉々に破壊されたとしても、すぐさま放射能物質の放出を引き起こすわけではありません。冷温停止されている原子炉内にある核燃料の温度が上がり、臨界点に達して放射性物質が出るまでには数週間かかる。高温停止状態の5号機については当然、メルトダウンまでの時間は短くなりますが、それでも猶予はあります」、「ロシアによる占領以降、ザポリージャ原発の職員は約1万人から約3000人に減っている。6基の原発に事故が起きたときに対応できる人数ではなく、修理に必要な部品の供給ができるかどうかも未知数だ」、「原発から出た使用済み燃料は、原子炉近くに敷設されている使用済み燃料プールに入れられている。使用済み燃料は取り出した直後は非常に高熱で、数年にわたりプールで冷やしておく必要があります。しかし、冷却システムが破壊されればプールの水温は上昇し、やがて蒸発する。そうなれば、使用済み燃料が露出して火災が発生し、放射性物質が放出されます」、なるほど。
・『汚染される黒海の魚 原発攻撃によって発生する主な放射性物質は、福島第一原発の際にも盛んに報じられた「セシウム137」だ。体内に入ると心筋細胞などに蓄積しやすく、心筋障害や不整脈といった心臓疾患、免疫機能低下などを引き起こすとも言われる。 また、放射能が弱まるまでの期間を示す「半減期」は30年と、長期にわたる汚染の原因となることでも知られている。 松久保氏が言う。 「我々の団体が昨年4月に行ったシンポジウムでは、ザポリージャ原発が攻撃を受けた際にどれほどの放射性物質が放出・拡散するかもシミュレーションしています。ザポリージャ原発1号機の炉内にあるセシウム137の総量の50%にあたる157ペタベクレルが放出、同時に使用済み燃料プール内の総量の75%にあたる590ペタベクレルが放出した場合を想定し、これらによってどれくらいの人々が避難を必要とするかを試算しました。 ちなみに、チョルノービリ原発事故でのセシウム137の放出量は約85ペタベクレル。福島第一原発事故では約7~20ペタベクレルが放出したとされています」 シミュレーションは、'21年3月の第3週と第4週、2つの気象条件のもと行われた。その結果、ウクライナやロシアだけでなく周辺諸国も汚染の危険性があることが明らかになったという。 「3週目の気象条件では、ウクライナで最大360万人、ルーマニアで最大210万人、ベラルーシで最大88万人、モルドバで最大42万人、ロシアで最大6万人が避難を強いられることになると予想されました。一方、第4週の気象条件では、ウクライナで最大160万人、トルコで最大220万人、ロシアで最大2万8000人という結果だった。風向きや天候にもよりますが、ウクライナ周辺の国々の大半が汚染される可能性があるということです。 それほど多くのセシウム137が本当に放出するのか、という疑問があるかもしれませんが、これはあくまで原発1基が攻撃された場合の試算。もし意図的な攻撃により6基すべてで放射性物質の放出が起きてしまえば、シミュレーションよりもさらに甚大な被害が広がる可能性もあるのです」 ウクライナからトルコにまでセシウム137が飛散するということは、すなわち黒海も汚染されるということだ。 松久保氏が続ける。 「福島の事故の場合、放出された放射性物質の約8割が海に落ちました。それでも、太平洋は循環しているため汚染は希釈されました。しかし黒海は内海ですから、循環しません。魚は汚染され続け、高濃度の放射性物質を含んだ魚が出てくる可能性がある。 また、ザポリージャ原発の周辺は欧州有数の穀物地帯としても知られています。汚染が広がれば耕作はできなくなり、ウクライナの穀物に依存しているアフリカ各国などで食糧危機が発生することも考えられます」』、「ザポリージャ原発1号機」が攻撃で破壊された場合の影響を「試算」したところ、「「3週目の気象条件では、ウクライナで最大360万人、ルーマニアで最大210万人、ベラルーシで最大88万人、モルドバで最大42万人、ロシアで最大6万人が避難を強いられることになると予想されました。一方、第4週の気象条件では、ウクライナで最大160万人、トルコで最大220万人、ロシアで最大2万8000人という結果だった。風向きや天候にもよりますが、ウクライナ周辺の国々の大半が汚染される可能性があるということです」、原発1基でこれだけ汚染が広がるようだ。
・『恐怖の集団パニック 日本にも影響はある。現在、日本はウクライナから穀物を輸入していないが、原発が破壊されたとなれば市場価格が高騰する可能性は極めて高い。実際、カホフカダムの決壊後には、国際市場における小麦の相場が上昇している。 また、戦時下で起きた原発事故の場合、賠償責任の所在も難しい問題となる。現在、ザポリージャ原発の所有権はあいまいだが、実際に放射性物質が発生する事態になれば互いに責任をなすりつけ合うことになるのは明らかだ。その結果、汚染された地域の住民たちが正当な賠償を受けられなくなる可能性も指摘されている。 福島大学環境放射能研究所客員教授のマーク・ジェレズニヤク氏が語る。ジェレズニヤク氏は福島第一原発事故後の'13年に福島大に着任し、放射性物質の拡散予測を専門に行ってきたウクライナ人研究者である。 「まずは、カホフカダムの決壊によって生じた洪水被害の復旧が急務です。ザポリージャ原発の冷却水を確保することももちろんですが、カホフカダムの水がなくなれば地域の農業は壊滅状態になります。 そして、一番大事なのはIAEA(国際原子力機関)の勧告に従い、高温停止状態のザポリージャ原発5号機を冷温停止にすることです。チョルノービリはもちろん福島原発の事故もウクライナ国民に広く知られてはいるものの、多くの国民が『少量の放射線でも命にかかわる』と誤解しています。そうした状況で、ロシア軍が原発を占拠し、何らかの損傷を与える危惧が継続するなか、放射性物質の漏れがたとえわずかでも発生すれば、大規模な集団パニックが起きるでしょう。ロシア軍による原発に対するテロ的な攻撃を心配しています」 原発を盾にしたテロ行為に手を染めれば、プーチンは最悪の形で歴史に名を残すことになる』、「「まずは、カホフカダムの決壊によって生じた洪水被害の復旧が急務です。ザポリージャ原発の冷却水を確保することももちろんですが、カホフカダムの水がなくなれば地域の農業は壊滅状態になります。 そして、一番大事なのはIAEA(国際原子力機関)の勧告に従い、高温停止状態のザポリージャ原発5号機を冷温停止にすることです」、主要国が「ロシア」に圧力をかける必要もありそうだ。
第三に、7月4日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの町田 徹氏による「プーチンの大誤算…ここにきて「プリゴジン」にかわって「ルカシェンコ」がプーチンを脅かす「危険過ぎる存在」となっている「ヤバすぎる理由」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/112736?imp=0
・『新たな「獅子身中の虫」 たった1日で収束したものの、先月(6月)23日に、民間軍事組織ワグネルを率いるプリゴジン氏が起こした反乱は、ロシアのプーチン政権が抱える統治と安全保障体制の脆さを浮き彫りにした。そして対照的に、プリゴジン氏に矛を収めさせることによって、おおいにロシア側の陣営で株をあげたのが、ベラルーシのルカシェンコ大統領である。 ベラルーシはロシアの同盟国だ。ロシアと国境を接しており、プーチン大統領が戦術核兵器の配備を進めている国家でもある。ただ、ここに来て再び、両国の間にその扱いに関する齟齬が生じ始めている。 ベラルーシのルカシェンコ大統領は、30年近くにわたって強権的に国家を統治してきた人物だ。「ヨーロッパ最後の独裁者」と形容されてきたものの、ここ1、2年はすっかり勢いを失い、プーチン氏に依存する傾向を強めていた。しかし、今回の反乱の鎮圧によって、すっかり息を吹き返したともとれる状況になっている。 プーチン大統領は、プリゴジン氏にかわり、ルカシェンコ大統領という新たな「獅子身中の虫」を抱え込んだ可能性がある。 「彼の努力と献身で事態が平和的に決着した」――。 プーチン氏は6月26日の夜、プリゴジン氏の反乱の収束後に行った初めての演説で、ルカシェンコ氏をこう持ち上げて称賛し、感謝の意を表明した。 プーチン政権では、ペスコフ大統領報道官も翌27日、ルカシェンコ氏を「経験豊富で賢明な政治家」と礼賛したし、ロシア議会下院も同じ27日、ルカシェンコ氏に対する賛辞を贈った。 こうした称賛の嵐を見ただけでも、ルカシェンコ大統領が、今回の騒ぎで、存在感を高めたことは明らかである。今回、株を上げた人物は他にはいないと言っても過言ではない。 対照的に、これまで強固な体制で統治していると見られてきた、ロシアのプーチン大統領の威信は大きく傷ついた。象徴的だったのは、プーチン氏が現地時間の24日午前10時頃に行ったテレビでの演説だ。 この演説のタイミングは、ワグネルのプリゴジン氏が前夜、ロシア軍の空爆によって多数の戦闘員が死亡したと不満をぶちまけて「正義の行進」を始めると宣言し、翌朝になってワグネルの部隊がモスクワまでの距離が約400キロメートルのロストフ州の州都ロストフナドヌーに入り、同地のロシア軍施設を制圧したとした強調、返す刀でロシアのショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長への面会を要求した後、というものだった』、「ルカシェンコ大統領が、今回の騒ぎで、存在感を高めたことは明らかである。今回、株を上げた人物は他にはいないと言っても過言ではない。 対照的に、これまで強固な体制で統治していると見られてきた、ロシアのプーチン大統領の威信は大きく傷ついた」、その通りだ。
・『ロシア軍の中の深刻な亀裂 プーチン氏はこの演説で、「我々は反逆と裏切りに直面している」と認め、ワグネルの対応について口を極めて批判したうえで、「この反乱に参加したものは全員処罰する」と宣言した。 だが、はっきり言って、演出は拙かった。プーチン氏が、閉鎖的なオフィスから独りで演説をしたことは、その一因だ。孤立した指導者という印象を免れなかった。プーチン大統領は反乱に対して一方的に怒りを露わにしたものの、その表情は硬く、どこか脅えて自信のなさそうな風情にも映った。この演説を見たロシア国民の間では、プーチン氏がワグネルの行軍を恐れて早々にモスクワから脱出したという噂が駆け巡る始末だったという。 付言しておくと、この辺りのプーチン大統領の対応は、昨年2月のロシア軍の侵攻直後に、ウクライナのゼレンスキー大統領が見せた対応とは真逆である。 ゼレンスキー大統領は、戸惑う人々を勇気づける振る舞いで、強いリーダーというイメージを確立したからである。同大統領は、他の政府高官、つまり仲間とともに、戦禍に巻き込まれつつあったウクライナの首都キーウの街中を堂々と歩きながら「国と国の独立を守るため、我々はみんなここ(キーウ)にいる」と語りかける動画を流して、最後までウクライナ国民と一緒に戦い抜く覚悟を鮮明にしたのだった。 ゼレンスキー大統領とは正反対に、プーチン氏はプリゴジン氏の反乱に直面し、真価を発揮できなかった。それまでのこわもての絶対的な独裁者というイメージを大きく損ねてしまった。 また、ロシア軍の間には、深刻な亀裂、もしくは分断が存在するという見方も定着してしまった。主流派と目されるショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長は、繰り返し、プリゴジン氏による非難の対象となってきた。今回の反乱で、計画通りに進まないウクライナ戦争を指導した無能な責任者のレッテルを貼られた格好だ。 その一方で、プリゴジン氏の信頼が厚いとされてきた、ウクライナ軍事侵攻の副司令官を務めるセルゲイ・スロビキン氏は消息が不明になっている。先月24日の午前0時過ぎに、「隊列を停止し、戻れというロシア大統領の命令に従うことが不可欠だ」とワグネルに呼びかける映像を流したのを最後に、すでに1週間以上、表舞台に姿を現していないのだ。拘束されたとの報道も一部にあるが、真偽は確認されていない。 とはいえ、スロビキン氏は明らかにショイグ国防相らと立場を異にしていたとみられており、ロシア軍の中には深刻な亀裂があるとみなされている。 加えて、ワグネルがいとも簡単にロストフ州のロシア軍施設を制圧したり、23日からのわずか1日で780キロメートルも進軍してロシアの首都モスクワまで約200キロメートルの地に迫ったりしたことから、ロシア軍の中にワグネルに対する協力者がいたとの見方は根強い。軍の統制の回復は困難が予想される深刻な問題だ。 反乱を主導したプリゴジン氏は、ルカシェンコ大統領からプーチン氏の同意を取り付けたとして身の安全を保障され、反乱を収束させてベラルーシに受け入れられたことになっている。しかし、プリゴジン氏にとって、ベラルーシが将来的にも安住の地になるかは疑問だ。これまでのような勢いを維持できるとも考えにくい』、「ワグネルがいとも簡単にロストフ州のロシア軍施設を制圧したり、23日からのわずか1日で780キロメートルも進軍してロシアの首都モスクワまで約200キロメートルの地に迫ったりしたことから、ロシア軍の中にワグネルに対する協力者がいたとの見方は根強い」、その通りだ。
・『ルカシェンコの大きな手柄 民間軍事組織ワグネルはすでに、ロシア国内での活動を禁じられたという。兵士たちは、プーチン大統領から、ロシア国防省との契約か、ベラルーシへの移動か、故郷への帰還という3つの選択肢の中から一つを選ぶように求められている。ルカシェンコ大統領の言葉通りに、今後、ベラルーシにワグネルの駐留拠点ができたとしても、これまでの規模の兵力を維持することは難しそうだ。 そして、プリゴジン氏の財閥は、早くも解体の憂き目に直面している。メディアグループの「パトリオット」は、プーチン政権の圧力を受けたとも、プリゴジン氏自らが「解散させた」ともいわれ、その活動を停止した。 また、プーチン大統領は、軍の給食事業で巨額の収益を上げてきたとされるプリゴジン氏の関連会社「コンコルド」に対して、不正がなかったかの調査を徹底的に行う考えを表明している。 アフリカ各地の権益も、ロシアやロシア軍に接収されかねない。 こうした中で、ただひとり意気軒高なのが、ルカシェンコ大統領だ。6月27日には、ベラルーシの国営ベルタ通信など通じて、プーチン氏とプリゴジン氏の間に入って、武装蜂起を収束させた内幕を得意満面に明かしている。 それによると、プーチン氏がルカシェンコ氏に電話をかけてきたのは、24日の緊急テレビ演説を終えた直後だったという。プーチン氏はテレビ演説で「武装蜂起に参加した者を厳罰に処す」としていたが、ルカシェンコ氏は「(そうした処分を)急ぐ必要はない。私がプリゴジン氏と話そう。『悪い平和』でも、戦争よりはマシだ」となだめたとしている。 この時、プーチン氏は「無駄だ。彼(=プリゴジン氏)は電話にも出ないし、誰とも話そうとしない」と述べたが、ルカシェンコ氏はロシア連邦保安局(FSB)の協力を得て、プリゴジン氏との電話会談に漕ぎ着けた。 合計で6、7回に及んだ電話協議で、これまでのロシアの仕打ちに対する不満をぶちまけ続けるプリゴジン氏に対し、ルカシェンコ大統領は「(ロシア軍と戦えば)虫けらのように潰される」などと状況を解説し、説得に努めたというのである。 ルカシェンコ氏は最後に、プーチン大統領に電話し、ルカシェンコ大統領とプリゴジン氏が交わした言葉に対し、「約束したことはすべて実行する」との言質をとったと明かし、ワグネルの進軍の停止に応じさせたという。こうして、ルカシェンコ大統領がモスクワでの衝突を事前に回避させる大きな手柄を立てたというわけだ。) ルカシェンコ大統領は2020年の大統領選挙で6選を果たしたものの、選挙の不正を訴える大規模な抗議デモが発生。激しい弾圧によって事態を収拾したとはいえ、混乱は収まらず、ロシアからの低価格エネルギー供給などに大きく依存して政権の命脈をなんとか保ってきたのが実態だった。以来、ウクライナ侵攻を巡っても、従属ともとれる強い支持の表明を続けてきた。 今回、大いに株を上げたルカシェンコ大統領だが、プーチン大統領にとって、継続的に頼れる存在になることはあまりなさそうだ。 というのは、27日のベラルーシ国営ベルタ通信の報道に、早くも、ルカシェンコ大統領の今後の振る舞いに疑念を抱かざるを得ない情報が含まれていたからだ。ルカシェンコ大統領が国内演説で、ベラルーシに配備される予定のロシアの戦術核兵器のうち「かなりの部分」が領内に運び込まれたとしたうえで、核の使用権がロシアにあるとの欧米の見方を「でたらめだ。核はわれわれの兵器であり、われわれがそれを使えるだろう」と反論したというのである。 ロシア側はかねて、この問題について「(ベラルーシに核兵器を)譲渡するわけではない」と説明してきた。明らかな齟齬が生じ始めているのだ。 そもそも、この戦術核兵器の配備問題は、ベラルーシと国境を接するポーランドやリトアニアといった西側諸国が神経を尖らせてきた問題である。 そして、ここに来て急浮上した戦術核兵器を巡るロシアとベラルーシの見解の相違は、ウクライナ戦争での弾薬の供給不足に不満を唱えてきたプリゴジン氏のいら立ちとは深刻さがまったく違う問題として、戦術核のベラルーシへの配備を積極的に進めてきたプーチン大統領のアタマも悩ませる大きな火種になりかねない。 さらに、関連記事『プーチン絶体絶命…!プリゴジンが呼び覚した「反乱で変わるロシア」と、これからがヤバい!独裁体制「意外すぎる脆さと弱さ」』では、いま起きている“もう一つの現実”について迫っています』、「今回、大いに株を上げたルカシェンコ大統領だが、プーチン大統領にとって、継続的に頼れる存在になることはあまりなさそうだ・・・ルカシェンコ大統領が国内演説で、ベラルーシに配備される予定のロシアの戦術核兵器のうち「かなりの部分」が領内に運び込まれたとしたうえで、核の使用権がロシアにあるとの欧米の見方を「でたらめだ。核はわれわれの兵器であり、われわれがそれを使えるだろう」と反論したというのである。 ロシア側はかねて、この問題について「(ベラルーシに核兵器を)譲渡するわけではない」と説明してきた。明らかな齟齬が生じ始めているのだ。 そもそも、この戦術核兵器の配備問題は、ベラルーシと国境を接するポーランドやリトアニアといった西側諸国が神経を尖らせてきた問題である。 そして、ここに来て急浮上した戦術核兵器を巡るロシアとベラルーシの見解の相違は、ウクライナ戦争での弾薬の供給不足に不満を唱えてきたプリゴジン氏のいら立ちとは深刻さがまったく違う問題として、戦術核のベラルーシへの配備を積極的に進めてきたプーチン大統領のアタマも悩ませる大きな火種になりかねない」、確かに「戦術核兵器を巡るロシアとベラルーシの見解の相違は」、今後どう解決されるのだろう。
先ずは、6月27日付け現代ビジネス「追いつめられたプーチンが「欧州最大規模のザポリージャ原発を攻撃して破壊する」という「最悪シナリオ」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111977
・『欧州最大級のザポリージャ原発は、昨年3月以降ロシア軍による実質的支配が続いている。ウクライナの反転攻勢を恐れるプーチンは、チョルノービリ、福島を超える最悪の放射能事故を起こすのか』、興味深そうだ。
・『なぜダムを破壊したか 「ダム周辺は肥沃な農業地帯で、ブドウやメロンの産地として知られていました。毎年、9月の収穫期には緑色のブドウがそこかしこで実っている本当に美しい土地だったのです。そんな果物畑が今回のダム決壊による洪水で、使い物にならなくなってしまった……。復興には10年以上かかるともいわれています。このような重大な環境破壊は、決して許されるものではありません」 6月6日、ウクライナ南部ヘルソン州の「カホフカダム」が爆破によって決壊。当日、ダム付近に滞在していたセルゲイ・コレスニチェンコ氏(41歳)は、そう怒りを露にした。 決壊によって発生した洪水は600平方kmに及び、約1万4000戸が浸水。ウクライナ当局によると、約8000人が避難し、70万人が飲料水を必要としている状況が続いているという。 ウクライナ、ロシア双方が「ダム破壊は相手の攻撃によるものである」と主張している。が、ロシア研究が専門の拓殖大学教授・名越健郎氏は「ウクライナ側がダム破壊を実行するとは思えない」と語る。 「6月4日からウクライナが反転攻勢を始め、その2日後にダム破壊が起きています。ウクライナは4つの戦線で進撃を続けていると分析されていますが、最終的には、現在ロシア軍に占領されている交通の要所・メリトポリを奪還し、補給線を寸断することが目的と見られています」 ウクライナ軍がメリトポリに到達するためには、カホフカダムがあるヘルソン州を進行せざるを得ない。そこで、ロシア軍はダムを爆破したと見られているのだ。 「ロシア側も、ウクライナの狙いは十分に理解している。ウクライナ軍をヘルソン州側から進撃させないためにダムを決壊させ、周辺部を浸水させることでメリトポリ方面の防御を固めようと考えたのでしょう」(同前) カホフカダム爆破は今後の戦局を大きく左右するだけでなく、欧州、さらには世界全体を脅かす重大なリスクもはらんでいる。 ウクライナ南部にある「ザポリージャ原発」は、6基の原子炉を備える欧州最大級の原発で、総電気出力量は600万キロワット、ピーク時にはウクライナの全電力の5分の1を供給していた。そのザポリージャ原発が冷却水を取水していたのが、爆破されたカホフカダムだったのだ』、「「カホフカダム」が爆破によって決壊」、ずいぶん荒っぽいことをするものだ。「「ロシア側も、ウクライナの狙いは十分に理解している。ウクライナ軍をヘルソン州側から進撃させないためにダムを決壊させ、周辺部を浸水させることでメリトポリ方面の防御を固めようと考えたのでしょう」、「ウクライナ南部にある「ザポリージャ原発」は、6基の原子炉を備える欧州最大級の原発で、総電気出力量は600万キロワット、ピーク時にはウクライナの全電力の5分の1を供給していた。そのザポリージャ原発が冷却水を取水していたのが、爆破されたカホフカダムだったのだ」、なるほど。
・『冷却水喪失の現実味 NPO法人「原子力資料情報室」の松久保肇事務局長が言う。 「ザポリージャ原発は昨年3月からロシア軍が実質的に支配しており、現在は稼働を停止しています。正確に言うと、6基のうち5基が冷温停止で、1基が高温停止の状態です。高温停止というのは、原子炉が200~350℃の熱を保っている状態。1基だけ高温停止にしているのは、原発内や原発近くにあるエネルゴダールという街に熱を供給するためです。日本と違い、原発からの排熱を所内や地域の熱供給に使っているのです」 稼働が止まっていても、当然、原発には冷却水が必要不可欠だ。松久保氏が続ける。 「冷温停止状態であっても燃料から熱が出ていることは間違いなく、常に冷却を続ける必要があります。ロシアもウクライナも『貯水池に十分な冷却水があるため当面は問題ない』と発表していますが、貯水池に水がなくなったときはどうなるのか。早急に代替水源を確保する必要があります」 '11年の東日本大震災の際に発生した福島第一原発事故の際も、冷却水問題は起きている。4号機の使用済み燃料プールに冷却水喪失の恐れがあり、放射性物質大量放出の危機が顕在化したのだ。 「冷却ができなくなれば、メルトダウン(炉心溶融)が起き、放射性物質が大気に放出されてしまう危険性がある。高温停止の5号機は冷却までに時間がかかるため、メルトダウンの可能性はさらに高まります。ウクライナの原子力規制当局はダム爆破後の6月8日、一刻も早く5号機を冷温停止にするよう指示しましたが、ロシア側に停止する動きは見られません」(同前) ザポリージャ原発を巡っては、さらに最悪のケースも考えられる。プーチン大統領の指示のもと、ロシア軍が自ら原発を攻撃することもありうるのだ。
実際、ウクライナ国防省情報総局は5月26日、 「ロシア軍が制圧下にあるザポリージャ原発を自ら攻撃し、放射性物質が漏れたと国際社会に訴えてウクライナの反攻を阻止する計画を立てている」 との声明を出している。 防衛省防衛研究所防衛政策研究室長の高橋杉雄氏が「最悪のシナリオ」をこう予想する。 「ロシア軍はザポリージャ原発周辺にロケット砲部隊を配備し、原発を盾にウクライナ軍へ一方的な攻撃を続けています。これはウクライナ軍としては悩ましい問題。ロシア軍からザポリージャ原発を取り戻すために、隣接するドニプロ川から特殊部隊を潜入させる可能性はあります。その銃撃戦のなかで流れ弾が原発の建物に当たるリスクがあります。考えたくはないですが、撤退を余儀なくされたロシア軍が、重要拠点を敵に渡さぬため、原発を攻撃して破壊するという事態も起こりかねません」 後編記事『《黒海が放射性物質で汚染》《食糧危機に直結》…!追いつめられたプーチンとロシアが「ザポリージャ原発を爆破」した時に起きる「ヤバすぎる事態」』につづく』、「「冷温停止状態であっても燃料から熱が出ていることは間違いなく、常に冷却を続ける必要があります。ロシアもウクライナも『貯水池に十分な冷却水があるため当面は問題ない』と発表していますが、貯水池に水がなくなったときはどうなるのか。早急に代替水源を確保する必要があります」、「「ロシア軍はザポリージャ原発周辺にロケット砲部隊を配備し、原発を盾にウクライナ軍へ一方的な攻撃を続けています。これはウクライナ軍としては悩ましい問題。ロシア軍からザポリージャ原発を取り戻すために、隣接するドニプロ川から特殊部隊を潜入させる可能性はあります。その銃撃戦のなかで流れ弾が原発の建物に当たるリスクがあります。考えたくはないですが、撤退を余儀なくされたロシア軍が、重要拠点を敵に渡さぬため、原発を攻撃して破壊するという事態も起こりかねません」、「原発を盾にウクライナ軍へ一方的な攻撃を続けています」とは、「ロシア側」のやり方は実に汚い。「撤退を余儀なくされたロシア軍が、重要拠点を敵に渡さぬため、原発を攻撃して破壊するという事態も起こりかねません」、こんな事態にならないよう祈るしかなさそうだ。
次に、この続きを、6月27日付け現代ビジネス「《黒海が放射性物質で汚染》《食糧危機に直結》…!追いつめられたプーチンとロシアが「ザポリージャ原発を爆破」した時に起きる「ヤバすぎる事態」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111978
・『欧州最大級のザポリージャ原発は、昨年3月以降ロシア軍による実質的支配が続いている。カホフカダムをロシアが破壊したと見られているように、ウクライナの反転攻勢を恐れるプーチンは、チョルノービリ、福島を超える最悪の放射能事故を起こすのか。 前編記事『追いつめられたプーチンが「欧州最大規模のザポリージャ原発を攻撃して破壊する」という「最悪シナリオ」』より続く』、興味深そうだ。
・『電源喪失、そのとき 歴史を振り返ってみても、ありえないと思われたことが起きるのが戦争であり、それをするのがプーチンという男だ。 昨年2月、国際社会から孤立することが明らかな状況でウクライナに侵攻を始め、11月には実際にザポリージャ原発に10発以上の砲撃を浴びせて電気設備などを破壊している。このときもロシアは「ウクライナの仕業だ」と非難していた。 ウクライナの反攻が脅威と見れば、欧州最大級の原発を自ら破壊するという「史上最悪の火遊び」に出る可能性は否定できない。 では、実際に原発が攻撃された場合、何が起きるのか。核問題の専門家であるハーバード大学ベルファ科学国際問題センターのマリアナ・ブジェリン博士が言う。 「'84年から稼働を開始したザポリージャ原発は『VVER』と呼ばれるロシア型加圧水型原子炉で、原子炉内の核燃料を守る格納容器は、鋼板ライナーという金属を内張りした鉄筋コンクリートで覆われています。 日本を含む先進国の原子炉と同水準の安全性があるとされますが、武力攻撃をされる想定では設計されていないため、仮にロシア軍からミサイル攻撃あるいは砲撃をされれば格納容器は貫通または亀裂が入るでしょう。ロシアが航空機を"意図的に"墜落させ、事故によるものだと主張することも考えられる」 原発が武力攻撃を想定していないことは、日本の国会でも明らかにされている。昨年3月の衆院経済産業委員会で質問を受けた原子力規制委員会の更田豊志委員長(当時)は、日本国内の原発がミサイル攻撃された場合、 「放射性物質がまき散らされることが懸念される。現在の設備で避けられるとは考えていない」 と発言している。) ブジェリン博士が続ける。 「とはいえ、仮に核燃料を守る格納容器が粉々に破壊されたとしても、すぐさま放射能物質の放出を引き起こすわけではありません。冷温停止されている原子炉内にある核燃料の温度が上がり、臨界点に達して放射性物質が出るまでには数週間かかる。高温停止状態の5号機については当然、メルトダウンまでの時間は短くなりますが、それでも猶予はあります」 ここで問題になるのは、ウクライナとロシアが戦時下にあるということだ。ロシアによる占領以降、ザポリージャ原発の職員は約1万人から約3000人に減っている。6基の原発に事故が起きたときに対応できる人数ではなく、修理に必要な部品の供給ができるかどうかも未知数だ。 前出の松久保氏が言う。 「格納容器が損傷するということは、いわば釜が割れているような状態になるということ。どれだけ容器に水を入れても貯めることはできず、これでは冷却ができません。 さらに恐ろしいのは、戦闘によって冷却システムを構築している電源を喪失することです。ザポリージャ原発は外部から電源をとっており、これが遮断された場合は非常用ディーゼルを使って冷却システムを動かし原発を冷やします。これらが攻撃によって機能不全に陥ると、メルトダウンの可能性が高くなります」 福島第一原発の事故でも、地震によって送電線の断線やショート、関連施設の故障が相次ぎ、外部電源を喪失。その後、太平洋から押し寄せた津波が福島第一原発を襲い、非常用電源が水没したことで重大事故を引き起こした。 「冷却システムの喪失が影響するのは、原子炉だけではありません。原発から出た使用済み燃料は、原子炉近くに敷設されている使用済み燃料プールに入れられている。使用済み燃料は取り出した直後は非常に高熱で、数年にわたりプールで冷やしておく必要があります。しかし、冷却システムが破壊されればプールの水温は上昇し、やがて蒸発する。そうなれば、使用済み燃料が露出して火災が発生し、放射性物質が放出されます。 また、冷却が終わった核燃料は『乾式貯蔵キャスク』という容器に入れられ、空気冷却、つまりは野晒し状態で置いてあります。燃料プールほどの影響はありませんが、これも放射性物質を含んでいるため、攻撃によって容器が破壊されれば周囲を汚染することになります」(同前)』、「武力攻撃をされる想定では設計されていないため、仮にロシア軍からミサイル攻撃あるいは砲撃をされれば格納容器は貫通または亀裂が入るでしょう・・・ブジェリン博士が続ける。 「とはいえ、仮に核燃料を守る格納容器が粉々に破壊されたとしても、すぐさま放射能物質の放出を引き起こすわけではありません。冷温停止されている原子炉内にある核燃料の温度が上がり、臨界点に達して放射性物質が出るまでには数週間かかる。高温停止状態の5号機については当然、メルトダウンまでの時間は短くなりますが、それでも猶予はあります」、「ロシアによる占領以降、ザポリージャ原発の職員は約1万人から約3000人に減っている。6基の原発に事故が起きたときに対応できる人数ではなく、修理に必要な部品の供給ができるかどうかも未知数だ」、「原発から出た使用済み燃料は、原子炉近くに敷設されている使用済み燃料プールに入れられている。使用済み燃料は取り出した直後は非常に高熱で、数年にわたりプールで冷やしておく必要があります。しかし、冷却システムが破壊されればプールの水温は上昇し、やがて蒸発する。そうなれば、使用済み燃料が露出して火災が発生し、放射性物質が放出されます」、なるほど。
・『汚染される黒海の魚 原発攻撃によって発生する主な放射性物質は、福島第一原発の際にも盛んに報じられた「セシウム137」だ。体内に入ると心筋細胞などに蓄積しやすく、心筋障害や不整脈といった心臓疾患、免疫機能低下などを引き起こすとも言われる。 また、放射能が弱まるまでの期間を示す「半減期」は30年と、長期にわたる汚染の原因となることでも知られている。 松久保氏が言う。 「我々の団体が昨年4月に行ったシンポジウムでは、ザポリージャ原発が攻撃を受けた際にどれほどの放射性物質が放出・拡散するかもシミュレーションしています。ザポリージャ原発1号機の炉内にあるセシウム137の総量の50%にあたる157ペタベクレルが放出、同時に使用済み燃料プール内の総量の75%にあたる590ペタベクレルが放出した場合を想定し、これらによってどれくらいの人々が避難を必要とするかを試算しました。 ちなみに、チョルノービリ原発事故でのセシウム137の放出量は約85ペタベクレル。福島第一原発事故では約7~20ペタベクレルが放出したとされています」 シミュレーションは、'21年3月の第3週と第4週、2つの気象条件のもと行われた。その結果、ウクライナやロシアだけでなく周辺諸国も汚染の危険性があることが明らかになったという。 「3週目の気象条件では、ウクライナで最大360万人、ルーマニアで最大210万人、ベラルーシで最大88万人、モルドバで最大42万人、ロシアで最大6万人が避難を強いられることになると予想されました。一方、第4週の気象条件では、ウクライナで最大160万人、トルコで最大220万人、ロシアで最大2万8000人という結果だった。風向きや天候にもよりますが、ウクライナ周辺の国々の大半が汚染される可能性があるということです。 それほど多くのセシウム137が本当に放出するのか、という疑問があるかもしれませんが、これはあくまで原発1基が攻撃された場合の試算。もし意図的な攻撃により6基すべてで放射性物質の放出が起きてしまえば、シミュレーションよりもさらに甚大な被害が広がる可能性もあるのです」 ウクライナからトルコにまでセシウム137が飛散するということは、すなわち黒海も汚染されるということだ。 松久保氏が続ける。 「福島の事故の場合、放出された放射性物質の約8割が海に落ちました。それでも、太平洋は循環しているため汚染は希釈されました。しかし黒海は内海ですから、循環しません。魚は汚染され続け、高濃度の放射性物質を含んだ魚が出てくる可能性がある。 また、ザポリージャ原発の周辺は欧州有数の穀物地帯としても知られています。汚染が広がれば耕作はできなくなり、ウクライナの穀物に依存しているアフリカ各国などで食糧危機が発生することも考えられます」』、「ザポリージャ原発1号機」が攻撃で破壊された場合の影響を「試算」したところ、「「3週目の気象条件では、ウクライナで最大360万人、ルーマニアで最大210万人、ベラルーシで最大88万人、モルドバで最大42万人、ロシアで最大6万人が避難を強いられることになると予想されました。一方、第4週の気象条件では、ウクライナで最大160万人、トルコで最大220万人、ロシアで最大2万8000人という結果だった。風向きや天候にもよりますが、ウクライナ周辺の国々の大半が汚染される可能性があるということです」、原発1基でこれだけ汚染が広がるようだ。
・『恐怖の集団パニック 日本にも影響はある。現在、日本はウクライナから穀物を輸入していないが、原発が破壊されたとなれば市場価格が高騰する可能性は極めて高い。実際、カホフカダムの決壊後には、国際市場における小麦の相場が上昇している。 また、戦時下で起きた原発事故の場合、賠償責任の所在も難しい問題となる。現在、ザポリージャ原発の所有権はあいまいだが、実際に放射性物質が発生する事態になれば互いに責任をなすりつけ合うことになるのは明らかだ。その結果、汚染された地域の住民たちが正当な賠償を受けられなくなる可能性も指摘されている。 福島大学環境放射能研究所客員教授のマーク・ジェレズニヤク氏が語る。ジェレズニヤク氏は福島第一原発事故後の'13年に福島大に着任し、放射性物質の拡散予測を専門に行ってきたウクライナ人研究者である。 「まずは、カホフカダムの決壊によって生じた洪水被害の復旧が急務です。ザポリージャ原発の冷却水を確保することももちろんですが、カホフカダムの水がなくなれば地域の農業は壊滅状態になります。 そして、一番大事なのはIAEA(国際原子力機関)の勧告に従い、高温停止状態のザポリージャ原発5号機を冷温停止にすることです。チョルノービリはもちろん福島原発の事故もウクライナ国民に広く知られてはいるものの、多くの国民が『少量の放射線でも命にかかわる』と誤解しています。そうした状況で、ロシア軍が原発を占拠し、何らかの損傷を与える危惧が継続するなか、放射性物質の漏れがたとえわずかでも発生すれば、大規模な集団パニックが起きるでしょう。ロシア軍による原発に対するテロ的な攻撃を心配しています」 原発を盾にしたテロ行為に手を染めれば、プーチンは最悪の形で歴史に名を残すことになる』、「「まずは、カホフカダムの決壊によって生じた洪水被害の復旧が急務です。ザポリージャ原発の冷却水を確保することももちろんですが、カホフカダムの水がなくなれば地域の農業は壊滅状態になります。 そして、一番大事なのはIAEA(国際原子力機関)の勧告に従い、高温停止状態のザポリージャ原発5号機を冷温停止にすることです」、主要国が「ロシア」に圧力をかける必要もありそうだ。
第三に、7月4日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの町田 徹氏による「プーチンの大誤算…ここにきて「プリゴジン」にかわって「ルカシェンコ」がプーチンを脅かす「危険過ぎる存在」となっている「ヤバすぎる理由」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/112736?imp=0
・『新たな「獅子身中の虫」 たった1日で収束したものの、先月(6月)23日に、民間軍事組織ワグネルを率いるプリゴジン氏が起こした反乱は、ロシアのプーチン政権が抱える統治と安全保障体制の脆さを浮き彫りにした。そして対照的に、プリゴジン氏に矛を収めさせることによって、おおいにロシア側の陣営で株をあげたのが、ベラルーシのルカシェンコ大統領である。 ベラルーシはロシアの同盟国だ。ロシアと国境を接しており、プーチン大統領が戦術核兵器の配備を進めている国家でもある。ただ、ここに来て再び、両国の間にその扱いに関する齟齬が生じ始めている。 ベラルーシのルカシェンコ大統領は、30年近くにわたって強権的に国家を統治してきた人物だ。「ヨーロッパ最後の独裁者」と形容されてきたものの、ここ1、2年はすっかり勢いを失い、プーチン氏に依存する傾向を強めていた。しかし、今回の反乱の鎮圧によって、すっかり息を吹き返したともとれる状況になっている。 プーチン大統領は、プリゴジン氏にかわり、ルカシェンコ大統領という新たな「獅子身中の虫」を抱え込んだ可能性がある。 「彼の努力と献身で事態が平和的に決着した」――。 プーチン氏は6月26日の夜、プリゴジン氏の反乱の収束後に行った初めての演説で、ルカシェンコ氏をこう持ち上げて称賛し、感謝の意を表明した。 プーチン政権では、ペスコフ大統領報道官も翌27日、ルカシェンコ氏を「経験豊富で賢明な政治家」と礼賛したし、ロシア議会下院も同じ27日、ルカシェンコ氏に対する賛辞を贈った。 こうした称賛の嵐を見ただけでも、ルカシェンコ大統領が、今回の騒ぎで、存在感を高めたことは明らかである。今回、株を上げた人物は他にはいないと言っても過言ではない。 対照的に、これまで強固な体制で統治していると見られてきた、ロシアのプーチン大統領の威信は大きく傷ついた。象徴的だったのは、プーチン氏が現地時間の24日午前10時頃に行ったテレビでの演説だ。 この演説のタイミングは、ワグネルのプリゴジン氏が前夜、ロシア軍の空爆によって多数の戦闘員が死亡したと不満をぶちまけて「正義の行進」を始めると宣言し、翌朝になってワグネルの部隊がモスクワまでの距離が約400キロメートルのロストフ州の州都ロストフナドヌーに入り、同地のロシア軍施設を制圧したとした強調、返す刀でロシアのショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長への面会を要求した後、というものだった』、「ルカシェンコ大統領が、今回の騒ぎで、存在感を高めたことは明らかである。今回、株を上げた人物は他にはいないと言っても過言ではない。 対照的に、これまで強固な体制で統治していると見られてきた、ロシアのプーチン大統領の威信は大きく傷ついた」、その通りだ。
・『ロシア軍の中の深刻な亀裂 プーチン氏はこの演説で、「我々は反逆と裏切りに直面している」と認め、ワグネルの対応について口を極めて批判したうえで、「この反乱に参加したものは全員処罰する」と宣言した。 だが、はっきり言って、演出は拙かった。プーチン氏が、閉鎖的なオフィスから独りで演説をしたことは、その一因だ。孤立した指導者という印象を免れなかった。プーチン大統領は反乱に対して一方的に怒りを露わにしたものの、その表情は硬く、どこか脅えて自信のなさそうな風情にも映った。この演説を見たロシア国民の間では、プーチン氏がワグネルの行軍を恐れて早々にモスクワから脱出したという噂が駆け巡る始末だったという。 付言しておくと、この辺りのプーチン大統領の対応は、昨年2月のロシア軍の侵攻直後に、ウクライナのゼレンスキー大統領が見せた対応とは真逆である。 ゼレンスキー大統領は、戸惑う人々を勇気づける振る舞いで、強いリーダーというイメージを確立したからである。同大統領は、他の政府高官、つまり仲間とともに、戦禍に巻き込まれつつあったウクライナの首都キーウの街中を堂々と歩きながら「国と国の独立を守るため、我々はみんなここ(キーウ)にいる」と語りかける動画を流して、最後までウクライナ国民と一緒に戦い抜く覚悟を鮮明にしたのだった。 ゼレンスキー大統領とは正反対に、プーチン氏はプリゴジン氏の反乱に直面し、真価を発揮できなかった。それまでのこわもての絶対的な独裁者というイメージを大きく損ねてしまった。 また、ロシア軍の間には、深刻な亀裂、もしくは分断が存在するという見方も定着してしまった。主流派と目されるショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長は、繰り返し、プリゴジン氏による非難の対象となってきた。今回の反乱で、計画通りに進まないウクライナ戦争を指導した無能な責任者のレッテルを貼られた格好だ。 その一方で、プリゴジン氏の信頼が厚いとされてきた、ウクライナ軍事侵攻の副司令官を務めるセルゲイ・スロビキン氏は消息が不明になっている。先月24日の午前0時過ぎに、「隊列を停止し、戻れというロシア大統領の命令に従うことが不可欠だ」とワグネルに呼びかける映像を流したのを最後に、すでに1週間以上、表舞台に姿を現していないのだ。拘束されたとの報道も一部にあるが、真偽は確認されていない。 とはいえ、スロビキン氏は明らかにショイグ国防相らと立場を異にしていたとみられており、ロシア軍の中には深刻な亀裂があるとみなされている。 加えて、ワグネルがいとも簡単にロストフ州のロシア軍施設を制圧したり、23日からのわずか1日で780キロメートルも進軍してロシアの首都モスクワまで約200キロメートルの地に迫ったりしたことから、ロシア軍の中にワグネルに対する協力者がいたとの見方は根強い。軍の統制の回復は困難が予想される深刻な問題だ。 反乱を主導したプリゴジン氏は、ルカシェンコ大統領からプーチン氏の同意を取り付けたとして身の安全を保障され、反乱を収束させてベラルーシに受け入れられたことになっている。しかし、プリゴジン氏にとって、ベラルーシが将来的にも安住の地になるかは疑問だ。これまでのような勢いを維持できるとも考えにくい』、「ワグネルがいとも簡単にロストフ州のロシア軍施設を制圧したり、23日からのわずか1日で780キロメートルも進軍してロシアの首都モスクワまで約200キロメートルの地に迫ったりしたことから、ロシア軍の中にワグネルに対する協力者がいたとの見方は根強い」、その通りだ。
・『ルカシェンコの大きな手柄 民間軍事組織ワグネルはすでに、ロシア国内での活動を禁じられたという。兵士たちは、プーチン大統領から、ロシア国防省との契約か、ベラルーシへの移動か、故郷への帰還という3つの選択肢の中から一つを選ぶように求められている。ルカシェンコ大統領の言葉通りに、今後、ベラルーシにワグネルの駐留拠点ができたとしても、これまでの規模の兵力を維持することは難しそうだ。 そして、プリゴジン氏の財閥は、早くも解体の憂き目に直面している。メディアグループの「パトリオット」は、プーチン政権の圧力を受けたとも、プリゴジン氏自らが「解散させた」ともいわれ、その活動を停止した。 また、プーチン大統領は、軍の給食事業で巨額の収益を上げてきたとされるプリゴジン氏の関連会社「コンコルド」に対して、不正がなかったかの調査を徹底的に行う考えを表明している。 アフリカ各地の権益も、ロシアやロシア軍に接収されかねない。 こうした中で、ただひとり意気軒高なのが、ルカシェンコ大統領だ。6月27日には、ベラルーシの国営ベルタ通信など通じて、プーチン氏とプリゴジン氏の間に入って、武装蜂起を収束させた内幕を得意満面に明かしている。 それによると、プーチン氏がルカシェンコ氏に電話をかけてきたのは、24日の緊急テレビ演説を終えた直後だったという。プーチン氏はテレビ演説で「武装蜂起に参加した者を厳罰に処す」としていたが、ルカシェンコ氏は「(そうした処分を)急ぐ必要はない。私がプリゴジン氏と話そう。『悪い平和』でも、戦争よりはマシだ」となだめたとしている。 この時、プーチン氏は「無駄だ。彼(=プリゴジン氏)は電話にも出ないし、誰とも話そうとしない」と述べたが、ルカシェンコ氏はロシア連邦保安局(FSB)の協力を得て、プリゴジン氏との電話会談に漕ぎ着けた。 合計で6、7回に及んだ電話協議で、これまでのロシアの仕打ちに対する不満をぶちまけ続けるプリゴジン氏に対し、ルカシェンコ大統領は「(ロシア軍と戦えば)虫けらのように潰される」などと状況を解説し、説得に努めたというのである。 ルカシェンコ氏は最後に、プーチン大統領に電話し、ルカシェンコ大統領とプリゴジン氏が交わした言葉に対し、「約束したことはすべて実行する」との言質をとったと明かし、ワグネルの進軍の停止に応じさせたという。こうして、ルカシェンコ大統領がモスクワでの衝突を事前に回避させる大きな手柄を立てたというわけだ。) ルカシェンコ大統領は2020年の大統領選挙で6選を果たしたものの、選挙の不正を訴える大規模な抗議デモが発生。激しい弾圧によって事態を収拾したとはいえ、混乱は収まらず、ロシアからの低価格エネルギー供給などに大きく依存して政権の命脈をなんとか保ってきたのが実態だった。以来、ウクライナ侵攻を巡っても、従属ともとれる強い支持の表明を続けてきた。 今回、大いに株を上げたルカシェンコ大統領だが、プーチン大統領にとって、継続的に頼れる存在になることはあまりなさそうだ。 というのは、27日のベラルーシ国営ベルタ通信の報道に、早くも、ルカシェンコ大統領の今後の振る舞いに疑念を抱かざるを得ない情報が含まれていたからだ。ルカシェンコ大統領が国内演説で、ベラルーシに配備される予定のロシアの戦術核兵器のうち「かなりの部分」が領内に運び込まれたとしたうえで、核の使用権がロシアにあるとの欧米の見方を「でたらめだ。核はわれわれの兵器であり、われわれがそれを使えるだろう」と反論したというのである。 ロシア側はかねて、この問題について「(ベラルーシに核兵器を)譲渡するわけではない」と説明してきた。明らかな齟齬が生じ始めているのだ。 そもそも、この戦術核兵器の配備問題は、ベラルーシと国境を接するポーランドやリトアニアといった西側諸国が神経を尖らせてきた問題である。 そして、ここに来て急浮上した戦術核兵器を巡るロシアとベラルーシの見解の相違は、ウクライナ戦争での弾薬の供給不足に不満を唱えてきたプリゴジン氏のいら立ちとは深刻さがまったく違う問題として、戦術核のベラルーシへの配備を積極的に進めてきたプーチン大統領のアタマも悩ませる大きな火種になりかねない。 さらに、関連記事『プーチン絶体絶命…!プリゴジンが呼び覚した「反乱で変わるロシア」と、これからがヤバい!独裁体制「意外すぎる脆さと弱さ」』では、いま起きている“もう一つの現実”について迫っています』、「今回、大いに株を上げたルカシェンコ大統領だが、プーチン大統領にとって、継続的に頼れる存在になることはあまりなさそうだ・・・ルカシェンコ大統領が国内演説で、ベラルーシに配備される予定のロシアの戦術核兵器のうち「かなりの部分」が領内に運び込まれたとしたうえで、核の使用権がロシアにあるとの欧米の見方を「でたらめだ。核はわれわれの兵器であり、われわれがそれを使えるだろう」と反論したというのである。 ロシア側はかねて、この問題について「(ベラルーシに核兵器を)譲渡するわけではない」と説明してきた。明らかな齟齬が生じ始めているのだ。 そもそも、この戦術核兵器の配備問題は、ベラルーシと国境を接するポーランドやリトアニアといった西側諸国が神経を尖らせてきた問題である。 そして、ここに来て急浮上した戦術核兵器を巡るロシアとベラルーシの見解の相違は、ウクライナ戦争での弾薬の供給不足に不満を唱えてきたプリゴジン氏のいら立ちとは深刻さがまったく違う問題として、戦術核のベラルーシへの配備を積極的に進めてきたプーチン大統領のアタマも悩ませる大きな火種になりかねない」、確かに「戦術核兵器を巡るロシアとベラルーシの見解の相違は」、今後どう解決されるのだろう。
タグ:ロシア側はかねて、この問題について「(ベラルーシに核兵器を)譲渡するわけではない」と説明してきた。明らかな齟齬が生じ始めているのだ。 そもそも、この戦術核兵器の配備問題は、ベラルーシと国境を接するポーランドやリトアニアといった西側諸国が神経を尖らせてきた問題である。 そして、ここに来て急浮上した戦術核兵器を巡るロシアとベラルーシの見解の相違は、ウクライナ戦争での弾薬の供給不足に不満を唱えてきたプリゴジン氏のいら立ちとは深刻さがまったく違う問題として、戦術核のベラルーシへの配備を積極的に進めてきたプーチン大 (その7)(追いつめられたプーチンが「欧州最大規模のザポリージャ原発を攻撃して破壊する」という「最悪シナリオ」、《黒海が放射性物質で汚染》《食糧危機に直結》…!追いつめられたプーチンとロシアが「ザポリージャ原発を爆破」した時に起きる「ヤすぎる事態」、プーチンの大誤算…ここにきて「プリゴジン」にかわって「ルカシェンコ」がプーチンを脅かす「危険過ぎる存在」となっている「ヤバすぎる理由」) 現代ビジネス 汚染が広がるようだ。 「「まずは、カホフカダムの決壊によって生じた洪水被害の復旧が急務です。ザポリージャ原発の冷却水を確保することももちろんですが、カホフカダムの水がなくなれば地域の農業は壊滅状態になります。 そして、一番大事なのはIAEA(国際原子力機関)の勧告に従い、高温停止状態のザポリージャ原発5号機を冷温停止にすることです」、主要国が「ロシア」に圧力をかける必要もありそうだ。 「「冷温停止状態であっても燃料から熱が出ていることは間違いなく、常に冷却を続ける必要があります。ロシアもウクライナも『貯水池に十分な冷却水があるため当面は問題ない』と発表していますが、貯水池に水がなくなったときはどうなるのか。早急に代替水源を確保する必要があります」、 出されます」、なるほど。 現代ビジネス「追いつめられたプーチンが「欧州最大規模のザポリージャ原発を攻撃して破壊する」という「最悪シナリオ」」 町田 徹氏による「プーチンの大誤算…ここにきて「プリゴジン」にかわって「ルカシェンコ」がプーチンを脅かす「危険過ぎる存在」となっている「ヤバすぎる理由」」 統領のアタマも悩ませる大きな火種になりかねない」、確かに「戦術核兵器を巡るロシアとベラルーシの見解の相違は」、今後どう解決されるのだろう。 「ロシアによる占領以降、ザポリージャ原発の職員は約1万人から約3000人に減っている。6基の原発に事故が起きたときに対応できる人数ではなく、修理に必要な部品の供給ができるかどうかも未知数だ」、「原発から出た使用済み燃料は、原子炉近くに敷設されている使用済み燃料プールに入れられている。使用済み燃料は取り出した直後は非常に高熱で、数年にわたりプールで冷やしておく必要があります。しかし、冷却システムが破壊されればプールの水温は上昇し、やがて蒸発する。そうなれば、使用済み燃料が露出して火災が発生し、放射性物質が放 「ルカシェンコ大統領が、今回の騒ぎで、存在感を高めたことは明らかである。今回、株を上げた人物は他にはいないと言っても過言ではない。 対照的に、これまで強固な体制で統治していると見られてきた、ロシアのプーチン大統領の威信は大きく傷ついた」、その通りだ。 「ワグネルがいとも簡単にロストフ州のロシア軍施設を制圧したり、23日からのわずか1日で780キロメートルも進軍してロシアの首都モスクワまで約200キロメートルの地に迫ったりしたことから、ロシア軍の中にワグネルに対する協力者がいたとの見方は根強い」、その通りだ。 「今回、大いに株を上げたルカシェンコ大統領だが、プーチン大統領にとって、継続的に頼れる存在になることはあまりなさそうだ・・・ルカシェンコ大統領が国内演説で、ベラルーシに配備される予定のロシアの戦術核兵器のうち「かなりの部分」が領内に運び込まれたとしたうえで、核の使用権がロシアにあるとの欧米の見方を「でたらめだ。核はわれわれの兵器であり、われわれがそれを使えるだろう」と反論したというのである。 「武力攻撃をされる想定では設計されていないため、仮にロシア軍からミサイル攻撃あるいは砲撃をされれば格納容器は貫通または亀裂が入るでしょう・・・ブジェリン博士が続ける。 「とはいえ、仮に核燃料を守る格納容器が粉々に破壊されたとしても、すぐさま放射能物質の放出を引き起こすわけではありません。冷温停止されている原子炉内にある核燃料の温度が上がり、臨界点に達して放射性物質が出るまでには数週間かかる。高温停止状態の5号機については当然、メルトダウンまでの時間は短くなりますが、それでも猶予はあります」、 「「カホフカダム」が爆破によって決壊」、ずいぶん荒っぽいことをするものだ。「「ロシア側も、ウクライナの狙いは十分に理解している。ウクライナ軍をヘルソン州側から進撃させないためにダムを決壊させ、周辺部を浸水させることでメリトポリ方面の防御を固めようと考えたのでしょう」、 現代ビジネス「《黒海が放射性物質で汚染》《食糧危機に直結》…!追いつめられたプーチンとロシアが「ザポリージャ原発を爆破」した時に起きる「ヤバすぎる事態」」 「「ロシア軍はザポリージャ原発周辺にロケット砲部隊を配備し、原発を盾にウクライナ軍へ一方的な攻撃を続けています。これはウクライナ軍としては悩ましい問題。ロシア軍からザポリージャ原発を取り戻すために、隣接するドニプロ川から特殊部隊を潜入させる可能性はあります。その銃撃戦のなかで流れ弾が原発の建物に当たるリスクがあります。考えたくはないですが、撤退を余儀なくされたロシア軍が、重要拠点を敵に渡さぬため、原発を攻撃して破壊するという事態も起こりかねません」、 「原発を盾にウクライナ軍へ一方的な攻撃を続けています」とは、「ロシア側」のやり方は実に汚い。「撤退を余儀なくされたロシア軍が、重要拠点を敵に渡さぬため、原発を攻撃して破壊するという事態も起こりかねません」、こんな事態にならないよう祈るしかなさそうだ。 「ウクライナ南部にある「ザポリージャ原発」は、6基の原子炉を備える欧州最大級の原発で、総電気出力量は600万キロワット、ピーク時にはウクライナの全電力の5分の1を供給していた。そのザポリージャ原発が冷却水を取水していたのが、爆破されたカホフカダムだったのだ」、なるほど。 「ザポリージャ原発1号機」が攻撃で破壊された場合の影響を「試算」したところ、「「3週目の気象条件では、ウクライナで最大360万人、ルーマニアで最大210万人、ベラルーシで最大88万人、モルドバで最大42万人、ロシアで最大6万人が避難を強いられることになると予想されました。一方、第4週の気象条件では、ウクライナで最大160万人、トルコで最大220万人、ロシアで最大2万8000人という結果だった。風向きや天候にもよりますが、ウクライナ周辺の国々の大半が汚染される可能性があるということです」、原発1基でこれだけ ウクライナ
ウクライナ(その6)(極超音速キンジャール6発を撃ち落してわかった ロシア核はそんなに怖くない、ダム決壊でクリミアが干上がる?──悪魔のごとき「焦土作戦」、「モスクワへ進軍」「あと200km、死ぬ覚悟は出来ている」…この数日で「ロシア内戦」に至りそうだったワグネル創設者ブリコジンとプーチンの「蜜月と確執」の詳細、「ブリコジンの反乱」を招いてしまった「プーチンの狂気」とこれからロシアを待つ「ヤバすぎる展開」) [世界情勢]
ウクライナについては、本年3月1日に取上げた。今日は、(その6)(極超音速キンジャール6発を撃ち落してわかった ロシア核はそんなに怖くない、ダム決壊でクリミアが干上がる?──悪魔のごとき「焦土作戦」、「モスクワへ進軍」「あと200km、死ぬ覚悟は出来ている」…この数日で「ロシア内戦」に至りそうだったワグネル創設者ブリコジンとプーチンの「蜜月と確執」の詳細、「ブリコジンの反乱」を招いてしまった「プーチンの狂気」とこれからロシアを待つ「ヤバすぎる展開」)である。
先ずは、本年5月17日付けNewsweek日本版「極超音速キンジャール6発を撃ち落してわかった、ロシア核はそんなに怖くない」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/05/6-137_1.php
・『<プーチンが「どんな防空システムにも止められない」と豪語してきたキンジャール6発を含め全18発、高密度で飛んできたミサイルをウクライナがすべて迎撃できたとすれば、ロシアの核攻撃が成功する可能性は低くなる> ウクライナは、ロシアが5月16日にキーウ上空に発射した極超音速の空対地ミサイル「キンジャール」6発を撃墜したと発表した。西側の防空システムの有効性を実証するとともに、ロシアがこの戦争にもたらす核リスクの大きさが変わる可能性もある出来事だ。 ウクライナの発表によると、MiG-31戦闘機から発射された6発のKh-47キンジャールは、ロシアが一晩で発射したミサイル18発の一部だ。キンジャールのほかには、陸上から巡航ミサイル3発、黒海から「カリブル」巡航ミサイル9発が発射されたという。 ウクライナ軍総司令官のヴァレリー・ザルジニーは、18発すべての迎撃に成功したと述べている。とりわけキンジャールは核弾頭を搭載可能で、最高速度マッハ10とされており、ロシアは「誰にも止められない」と豪語してきた。 ドイツのシンクタンク、ヨーロッパ・レジリエンス・イニシアチブ・センターの創始者であるセルゲイ・サムレニーは本誌に対し、「ロシアが止められないと言った兵器はこれが初めてではなく、ほぼ止められることが判明している」と語った』、「キンジャールは・・・最高速度マッハ10」、なのに、「ウクライナ」側にすべて撃破された理由は、不明だが、低速走行中に撃破されたのかも知れない。
・『ロシアに勝った防空システム 「今回の件は、ロシア軍とロシア技術の信憑性に傷をつけた」とサムレニーは続ける。「通常、このような攻撃においては、防空システムが手一杯で迎撃が間に合わなくなるはずだ」 「西側の武器支援を受けたウクライナ軍は、ロシアによる、これまでで最も現代的な兵器を使った激しい攻撃も撃退できることがはっきりした」 またサムレニーは「西側では、核戦争へのエスカレーションが起こり得るという恐怖はいまだに根強い」と言う。「しかし、すべてのリスクの重みを改めて見直す必要がある」と述べた。 ウクライナがロシアの最先端のミサイル迎撃に成功したのが本当だとしたら、ロシアによる核攻撃が成功する可能性は「私たちが考えていたより大幅に低くなる」とサムレニーは言う。 開戦以来、ロシアの国営テレビはしばしば、自国の核兵器を自慢してきた。ウラジーミル・プーチン大統領も核威嚇を行ってきた。 ノルウェー、オスロ大学の博士研究員ファビアン・ホフマンは本誌の取材に対し、これほど激しく、時間調整された、多ベクトルのミサイル攻撃を封じたウクライナの能力は、「たとえこれらのミサイルに核兵器が搭載されたとしても、途中で撃ち落とせる可能性が十分ある」ことを示唆すると述べている。 「この事実は、ロシアの意思決定者に難しい問いを投げ掛けることになる。核兵器の有効性について、これまでよりも不安を感じることになるだろう」とホフマンは話す。 だからといって西側が、これまでより核エスカレーションのリスクを冒そうしてはならないが、「核で対峙することがロシアの利益になるとは思わない」とホフマンは述べた。) ウクライナは5月4日、アメリカの「パトリオット」防空システム(広域防空用の地対空ミサイルシステム)を使って、初めてキーウ近くの上空でキンジャール1発を撃墜したと発表している。 パトリオットは、NATO諸国がウクライナに供与している先進的な防空システムの一つだ。ドイツの短距離空対空ミサイル「IRIS-T」は、2022年10月にウクライナに到着し、以来、60以上の目標を撃墜している。フランスとイタリアが共同開発する地対空ミサイルシステム「SAMP/T」も最近到着した。 パトリオットが、18発のうち何発を迎撃したかは不明だが、ウクライナ軍の成功は、ウクライナが集中砲火に耐えられる防空システムを持ったことを示している。ウクライナ軍の指揮を執るセルヒイ・ポプコは今回の集中砲火について、「異例の密度」と表現する。 プーチンは、ロシア語で「短剣」を意味するキンジャールをロシアの次世代兵器と謳っていたが、「高度な防空システムを回避できる」といったロシアの主張に対しては、専門家から疑問の声が上がっていた』、「核兵器の有効性について、これまでよりも不安を感じることになるだろう」とホフマンは話す」、「「高度な防空システムを回避できる」といったロシアの主張に対しては、専門家から疑問の声が上がっていた」、なるほど。
次に、6月8日付けNewsweek日本版「ダム決壊でクリミアが干上がる?──悪魔のごとき「焦土作戦」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/06/post-101845_1.php
・『<環境を汚染し、飲料水も農地も奪ったダム決壊をウクライナはダム破壊による「焦土作戦」と呼ぶ。それも「焼かれた」のは、昨日まで自国領だと言っていた土地だ> ウクライナ政府はカホフカ・ダムの決壊で、南部の何万人もの住民が飲料水を利用できなくなると警告した。ウクライナ南部は今後何年も深刻な水不足に陥り、農業生産も大打撃を受けるとの懸念が広がっている。 6月6日、ウクライナ南部ヘルソン州ノバカホフカにあるロシア軍支配下の水力発電ダムが爆破され、住宅地が浸水し多数の住民が避難した。一夜明けた7日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はメッセージアプリ「テレグラム」で、「ロシアのテロリストたち」がウクライナ最大級の貯水池を意図的に破壊したと非難した。 一方、ロシアはウクライナがドニプロ(ドニエプル)川に建設されたダムに破壊工作を行なったと主張、非難合戦が続いている。 米シンクタンク・ジェームズタウン財団のアナリスト、アラ・フルスカによると、カホフカ貯水池の水位は1時間に15センチのペースで低下し続けており、深刻な水不足が予想されるという。 「今後数日様子を見ないと水の動きは読めないが、非常に深刻な影響が出ることは間違いない」』、こんなに戦略的に重要なダムへの攻撃を許してしまったのは、「ウクライナ」側の手落ちなのではなかろうか。
・『ロシア軍は北クリミア運河の利用を断念 「ヘルソン州の南部とクリミア、特にクリミア半島北部では飲料水が入手できなくなる恐れがある」と、フルスカは述べている。 カホフカ貯水池はウクライナのドニプロペトロウシク州の都市クリビー・リフで使用される水の70%前後を供給しており、市当局は市民に飲料水を貯めておくよう呼びかけた。ミコライウ州とザポリッジャ州、さらに南の地域の水供給にも影響が及ぶ恐れがある。 フルスカによれば、クリミアに駐留するロシア軍も、カホフカ貯水池から取水した水をクリミア半島に供給している「北クリミア運河」がもはや頼りにならないことを認めたという。 2014年のロシアによるクリミア併合で、ウクライナはこの運河経由のクリミアへの給水を制限したが、ロシアは昨年2月のウクライナ侵攻後、カホフカ・ダム周辺地域を支配下に置き、運河を経由してクリミア半島に淡水が豊富に供給されるようにした。 しかし「カホフカ海」と呼ばれるほど広大な貯水池が決壊した今、「クリミアは今後何年も水不足にあえぐことになると、多くの専門家がみている」と、フルスカは言う。) ウクライナ環境連盟の代表で、環境問題でウクライナ政府の顧問を務めるテチャナ・ティモツコはウクライナの国営通信社ウクルインフォルムにダム決壊は「この地域全体の農業に甚大な打撃を及ぼすだろう」と語った。 「クリミア半島は今後10年か15年、ことによると永久に淡水を確保できなくなる恐れがある」と、ティモツは述べた。 浸水地域の水が引けば、被害状況が明らかになるだろうが、ダム破壊が環境に与える影響について、本誌がウクライナのアントン・ヘラシチェンコ内相顧問にコメントを求めると、自身のツイッターの7日付けの投稿を見てほしいと言われた。 ヘラシチェンコはこの投稿で「カホフカ水力発電所の破壊は環境に壊滅的な被害を与える」と警告し、後2?4日でカホフカ貯水池の膨大な水は全て流出すると予測。一帯の国立公園や広大な土地の破壊など、環境に与える打撃を列挙している。 ヘラシチェンコはまた、ヘルソン州とミコライウ州の一部地域では何百種もの動植物が姿を消し、灌漑用水が使えなくなるためヘルソン州とザポリッジャ州のざっと150万ヘクタールの土地が穀物栽培など農業生産に利用できなくなると予測している。 ウクライナ内務省の顧問であるアントン・ゲラシュチェンコはツイートで、ドニプロ川から溢れた水は、有害物質やゴミを呑み込んで有毒かもしれないだけでなく、土壌から流出した地雷も紛れて近づくのは危険だと書いている。) ウクライナのセルギー・キスリツァ国連大使は、この「攻撃」は、退却する軍隊が敵に利用されそうなものはすべて焼き尽くしていく軍事戦略「焦土作戦」そのものだと言った。この場合恐ろしいのは、クリミア北部も含め被害に遭った土地の大半が、ロシアが「自分のもの」だとして統治してきた土地だということだ。「大地を焼き尽くす代わりに水浸しにすることで、この土地はもはやロシアのものではないと認めたようなものだ」』、「ドニプロ川から溢れた水は、有害物質やゴミを呑み込んで有毒かもしれないだけでなく、土壌から流出した地雷も紛れて近づくのは危険だと書いている」、「被害に遭った土地の大半が、ロシアが「自分のもの」だとして統治してきた土地だということだ。「大地を焼き尽くす代わりに水浸しにすることで、この土地はもはやロシアのものではないと認めたようなものだ」、「ロシア」のやり方は本当に酷い。
第三に、6月26日付けYahooニュースが転載した現代ビジネス「「モスクワへ進軍」「あと200km、死ぬ覚悟は出来ている」…この数日で「ロシア内戦」に至りそうだったワグネル創設者ブリコジンとプーチンの「蜜月と確執」の詳細」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/53ee0b83cdf2b99b10675cb961e3cc6b7f7252cb
・『プリゴジンがクーデター? 6月24日、「ロシアに混乱を招いた原因を見つけ出す」「死ぬ覚悟はできている」などとして突如「モスクワへの進軍」を宣言した、民間軍事組織ワグネルと創始者プリゴジン。 その後またたく間にモスクワの南、約500kmのボロネジの軍事施設を制圧。さらに北上を重ね、200kmあまりのリペツク州に迫っているかと25日の時点で世界各国の報道機関に報じられた。モスクワでは25日および月曜日の26日にも市民に対して外出禁止や仕事・学校を休むことなどが発令され、ロシア正規軍の都市防衛部隊も急遽展開するという、緊迫の情勢を見せていた。 しかしその直後、プリゴジンは一転して「ロシア人の血が流れることの責任の大きさを認識」と宣言してベラルーシへ転進。その後、同国のルカシェンコ大統領が仲介役を買って出たことや、プーチン大統領もブリコジンへの捜査を停止し出国を認めること、ルカシェンコ大統領への謝意などを示したことが矢継ぎ早に報じられた。一方で、その後プリゴジンの消息が聞こえないことなども取り沙汰されている。 ロシアで今いったい何が起きているのか? なぜ前例のないほどの「プーチンの弱腰」という例外状況が生じているのか、発端となったプリゴジンとプーチンの蜜月が生まれた背景、そして確執の経緯について、本誌が報じた記事を改めてお送りする。 「『ジイさん』が最終的に"クソ馬鹿"であることが明確になったら、国はどうすればいい? 戦争にどうやって勝てばいいのか?」 ロシアのSNS「テレグラム」の動画内でこう怒りをぶつけたのは、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者でオリガルヒ(新興財閥)のエフゲニー・プリゴジンだ』、興味深そうだ。
・『「クソ馬鹿なジイさん」 動画が公開されたのは、戦勝記念日にあたる5月9日のこと。そんな国の祝日に水を差すかのように、彼が口汚く「クソ馬鹿なジイさん」と罵る相手こそ、ウラジーミル・プーチン大統領その人だ。 プリゴジンが激昂するのは無理もない。ウクライナとの戦争が長期化する中、要衝バフムトの前線を維持してきたワグネル。しかし激戦の中、弾薬が底をつき始めていた。 「弾薬が70%足りない。ショイグ(国防相)、ゲラシモフ(参謀総長)! 弾薬はどこにあるんだ」 5月5日、プリゴジンが必死に訴えると、後日、弾薬が届いた。ところが、肝心の量は要求のたった10%。それどころか、「バフムトの陣地を離れたら、祖国に対する国家反逆罪になる」という脅し付きだったのだ。 「この戦争のみならず、シリア内戦の時も、プリゴジン率いるワグネルはロシアの正規軍よりも最前線に立って戦ってきました。それもすべては、『盟友』プーチンのために他なりません。しかし、ここ最近のやり取りから、プーチン側はプリゴジンを切り捨てたように見えます」(筑波大学名誉教授の中村逸郎氏))』、「ここ最近のやり取りから、プーチン側はプリゴジンを切り捨てたように見えます」、なるほど。
・『プーチンとプリゴジンの出会い そもそも、プーチンとプリゴジンが長きにわたり蜜月関係にあったことは周知の事実だ。共にサンクトペテルブルク出身である2人が接近したのは1996年に遡る。 ホットドッグチェーンの立ち上げで財を成したプリゴジンは、サンクトペテルブルクに高級レストラン「スターラヤ・タモージニヤ」を開店する。ここに頻繁に通っていたのが、当時同市副市長のプーチンだった。カムチャツカ産のカニサラダ、カスピ海の最高級キャビア……プーチンの注文に対し、プリゴジンは自ら給仕を買って出たという。 拓殖大学海外事情研究所特任教授の名越健郎氏はこう語る。 「表向きはレストランなどの経営をしていたプリゴジンですが、裏では闇カジノに携わっていました。当時、プーチンはサンクトペテルブルクの闇カジノ撲滅委員長でもありました。そこでプリゴジンが『ウチのカジノだけはお目こぼしを』と取り入ったことで、親密になったと推測されます」 以降、プーチンはうまみのある学校給食の委託などでプリゴジンを重用する。その見返りとして、プリゴジンも自らの手を汚した。ワグネル以外にも、サイバー戦組織を指揮し、プーチンに有利に働くよう、ネット上の言論操作を行っている。 後編記事『「プリゴジンの反乱」を招いてしまった「プーチンの狂気」とこれからロシアを待つ「ヤバすぎる展開」』につづく』、「ホットドッグチェーンの立ち上げで財を成したプリゴジンは、サンクトペテルブルクに高級レストラン・・・を開店」、「頻繁に通っていたのが、当時同市副市長のプーチンだった」、「当時、プーチンはサンクトペテルブルクの闇カジノ撲滅委員長でもありました。そこでプリゴジンが『ウチのカジノだけはお目こぼしを』と取り入ったことで、親密になったと推測されます」 以降、プーチンはうまみのある学校給食の委託などでプリゴジンを重用する。その見返りとして、プリゴジンも自らの手を汚した。ワグネル以外にも、サイバー戦組織を指揮し、プーチンに有利に働くよう、ネット上の言論操作を行っている」、ずいぶん長い腐れ縁のようだ。
第四に、6月26日付け現代ビジネス「「ブリコジンの反乱」を招いてしまった「プーチンの狂気」とこれからロシアを待つ「ヤバすぎる展開」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/112397?imp=0
・『6月24日、「ロシアに混乱を招いた原因を見つけ出す」「死ぬ覚悟はできている」などとして突如「モスクワへの進軍」を宣言した、民間軍事組織ワグネルと創始者プリゴジン。 その後またたく間にモスクワの南、約500kmのボロネジの軍事施設を制圧。さらに北上を重ね、200kmあまりのリペツク州に迫っているかと25日の時点で世界各国の報道機関に報じられた。モスクワでは25日および月曜日の26日にも市民に対して外出禁止や仕事・学校を休むことなどが発令され、ロシア正規軍の都市防衛部隊も急遽展開するという、緊迫の情勢を見せていた。 しかしその直後、プリゴジンは一転して「ロシア人の血が流れることの責任の大きさを認識」と宣言してベラルーシへ転進。その後、同国のルカシェンコ大統領が仲介役を買って出たことや、プーチン大統領もプリゴジンへの捜査を停止し出国を認めること、ルカシェンコ大統領への謝意などを示したことが矢継ぎ早に報じられた。一方で、その後プリゴジンの消息が聞こえないことなども取り沙汰されている。 ロシアで今いったい何が起きているのか? なぜ前例のないほどの「プーチンの弱腰」という例外状況が生じているのか、発端となったプリゴジンとプーチンの蜜月が生まれた背景、そして確執の経緯について、本誌が報じた記事を改めてお送りする。 前編記事『「モスクワへ進軍」から1日で「ベラルーシに転進」したワグネル創設者エフゲニー・プリゴジンとプーチンとの「蜜月と確執」の経緯』より続く』、「モスクワ」まで「200kmあまりのリペツク州に迫っているかと25日の時点で世界各国の報道機関に報じられた。モスクワでは25日および月曜日の26日にも市民に対して外出禁止や仕事・学校を休むことなどが発令され、ロシア正規軍の都市防衛部隊も急遽展開するという、緊迫の情勢を見せていた」、一触即発の段階で、「ベラルーシに転進」するという驚きの展開をした背景についてみていこう。
・『5月の時点でプリゴジンを切り捨てていたプーチン なぜプーチンは、5月の時点でそんなプリゴジンを容赦なく切り捨ててしまったのか。一説には、プリゴジンの政治的野心と反乱を抑えるためと考える向きがある。前出の中村氏が語る。 「プリゴジンに弾薬を渡すと、ウクライナとの戦争のために使わず、ロシアに攻め上がってくるのではないか、といった報道が出ています。それによれば、プリゴジンの目的は、自分がロシアの大統領になること。ここへきて、ウクライナと手を組み、軍事クーデターに動く可能性が出てきています」 実際、5月14日には、プリゴジンがウクライナ政府に対してロシアの侵攻部隊の位置情報提供を提案した、と米ワシントン・ポストが報じている。 だが一方で、プリゴジンの粛清はあまりにも合理性に欠ける、という意見もある。前出の名越氏もそう考える一人だ』、「5月の時点でプリゴジンを切り捨てていたプーチン」、「プリゴジンの目的は、自分がロシアの大統領になること。ここへきて、ウクライナと手を組み、軍事クーデターに動く可能性が出てきています」、複雑でよく分からない動きだ。
・『ワグネルとプリゴジンは一部では英雄的存在 「このままワグネルが前線地帯から撤退すれば、ロシアはより敗色濃厚になります。それにプリゴジンは今や愛国勢力の英雄的存在で、彼を支持する軍事ブロガーたちにもフォロワーが100万人ほどいる。それらを敵に回すと考えれば、プリゴジンを粛清することなど正気の沙汰と思えません」 はたして「皇帝」は何を考えているのか―おそらくは、この戦争泥沼化の失態の責任を誰に押しつけ、自らの身をいかにして守るかということだ。前出の中村氏はこう指摘する。 「現在の戦況は、完全にロシアがウクライナに負けている状態です。そこで、プーチンはプリゴジンに失敗の責任を取らせようとしているのではないでしょうか。まさに『トカゲの尻尾切り』です」 権力を掌握し、恒久的に維持しようとする独裁者は、けっして自分の非を認めようとはしない。それどころか、「どうせ代わりの者などいくらでもいる」と、下の者に責任を被せて追放し、追及から逃れるのが常だ。 プーチンがプリゴジンにそうするように、独裁者が、かつて盟友だった者に罪を被せ、粛清した事例は過去にも存在する。 ナチス・ドイツのアドルフ・ヒトラーが、親友エルンスト・レームを粛清した「長いナイフの夜事件」がそうだ。 レームは、ヒトラーが党首になる前からの数少ない友人であり、互いに「俺」「お前」で呼び合う間柄だったという。そんな彼が率いる軍事組織「突撃隊」は、ナチ党の集会の警備や護衛に加え、反対党の襲撃などの実行部隊を担う、いわばヒトラー子飼いのテロ組織でもあった。 だが、ヒトラーが国のトップに立ち、権力を得ると、徐々に突撃隊が邪魔な存在になっていく。 「突撃隊による過激な暴力活動は、ナチスの暗黒面として批判されている。このままでは自分も糾弾され、権力の座を追われかねない。ならば幕僚長のレームに責任をなすりつけ、一掃すれば、大義名分にもなる。そうとなれば粛清するしかない」 こう考えたであろうヒトラーは、1934年、レーム率いる突撃隊関係者ら1000人以上を処刑。親友をも殺して、トカゲの尻尾切りを完遂したのである』、「「現在の戦況は、完全にロシアがウクライナに負けている状態です。そこで、プーチンはプリゴジンに失敗の責任を取らせようとしているのではないでしょうか。まさに『トカゲの尻尾切り』です」、なるほど。
・『肥大するナルシシズム 普通の人間であれば、人格を疑われるような責任逃れはそうできない。だが、独裁者は良心の呵責なく尻尾を切り取り、「すぐにまた生えてくる」とばかりに平然としている。そこには、どんな心理が働いているのか。 軍事心理学が専門である同志社大学教授の余語真夫氏が解説する。 「多くの独裁者に共通するのは、サイコパシー(精神病質)、マキャヴェリズム(権謀術数主義)、そしてナルシシズム(自己陶酔症)の3つの特性で構成される『ダーク・トライアド』というパーソナリティ特徴を持つということです。この3つの特性はすべて、他者への無関心や冷淡さに向かう傾向があり、自分の行動で他人に不利益が生じようとも、罪悪感を持つことは一切ないのです」 心理学の世界では、「悪の3大気質」とも呼ばれるダーク・トライアド。中でも、ナルシシズムという特性だけは、時代を問わず、ほぼすべての独裁者が有している。そう指摘するのは、早稲田メンタルクリニックの精神科医・益田裕介氏だ。 「独裁者は自分の目的を達成するため、部下を捨て駒のように扱うのが常です。その結果、次第に周囲は本音を言わなくなっていき、孤独感が募ります。すると、その寂しさを紛らわす心理作用として、自己暗示的に『ナルシシズムの強化』が行われるのです」 こんなプレッシャーに耐えられるのは自分しかいない。周囲は無能な人間ばかり。自分は運命に選ばれている。こうしたナルシシズムは、重度の人間不信と背中合わせだ。 「こうなると、もはや猜疑心の塊となり、誰も信じられなくなってしまう。だからトカゲの尻尾切りも平気で行えるわけです。この精神状態に一度なってしまうと、元に戻ることはほぼありません。プーチンも今、そういった状態にあるのでしょう」(益田氏) すでにプーチンは、プリゴジンに次ぐ新たな「トカゲの尻尾」を探しているかもしれない』、「サイコパシー(精神病質)、マキャヴェリズム(権謀術数主義)、そしてナルシシズム(自己陶酔症)の3つの特性で構成される『ダーク・トライアド』というパーソナリティ特徴を持つということです」、「中でも、ナルシシズムという特性だけは、時代を問わず、ほぼすべての独裁者が有している」、「こんなプレッシャーに耐えられるのは自分しかいない。周囲は無能な人間ばかり。自分は運命に選ばれている。こうしたナルシシズムは、重度の人間不信と背中合わせだ。 「こうなると、もはや猜疑心の塊となり、誰も信じられなくなってしまう。だからトカゲの尻尾切りも平気で行えるわけです。この精神状態に一度なってしまうと、元に戻ることはほぼありません。プーチンも今、そういった状態にあるのでしょう」(益田氏) すでにプーチンは、プリゴジンに次ぐ新たな「トカゲの尻尾」を探しているかもしれない」、「プーチン」が「猜疑心の塊となり、誰も信じられなくなってしまう。だからトカゲの尻尾切りも平気で行えるわけです」、大いにありそうな見方だ。
先ずは、本年5月17日付けNewsweek日本版「極超音速キンジャール6発を撃ち落してわかった、ロシア核はそんなに怖くない」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/05/6-137_1.php
・『<プーチンが「どんな防空システムにも止められない」と豪語してきたキンジャール6発を含め全18発、高密度で飛んできたミサイルをウクライナがすべて迎撃できたとすれば、ロシアの核攻撃が成功する可能性は低くなる> ウクライナは、ロシアが5月16日にキーウ上空に発射した極超音速の空対地ミサイル「キンジャール」6発を撃墜したと発表した。西側の防空システムの有効性を実証するとともに、ロシアがこの戦争にもたらす核リスクの大きさが変わる可能性もある出来事だ。 ウクライナの発表によると、MiG-31戦闘機から発射された6発のKh-47キンジャールは、ロシアが一晩で発射したミサイル18発の一部だ。キンジャールのほかには、陸上から巡航ミサイル3発、黒海から「カリブル」巡航ミサイル9発が発射されたという。 ウクライナ軍総司令官のヴァレリー・ザルジニーは、18発すべての迎撃に成功したと述べている。とりわけキンジャールは核弾頭を搭載可能で、最高速度マッハ10とされており、ロシアは「誰にも止められない」と豪語してきた。 ドイツのシンクタンク、ヨーロッパ・レジリエンス・イニシアチブ・センターの創始者であるセルゲイ・サムレニーは本誌に対し、「ロシアが止められないと言った兵器はこれが初めてではなく、ほぼ止められることが判明している」と語った』、「キンジャールは・・・最高速度マッハ10」、なのに、「ウクライナ」側にすべて撃破された理由は、不明だが、低速走行中に撃破されたのかも知れない。
・『ロシアに勝った防空システム 「今回の件は、ロシア軍とロシア技術の信憑性に傷をつけた」とサムレニーは続ける。「通常、このような攻撃においては、防空システムが手一杯で迎撃が間に合わなくなるはずだ」 「西側の武器支援を受けたウクライナ軍は、ロシアによる、これまでで最も現代的な兵器を使った激しい攻撃も撃退できることがはっきりした」 またサムレニーは「西側では、核戦争へのエスカレーションが起こり得るという恐怖はいまだに根強い」と言う。「しかし、すべてのリスクの重みを改めて見直す必要がある」と述べた。 ウクライナがロシアの最先端のミサイル迎撃に成功したのが本当だとしたら、ロシアによる核攻撃が成功する可能性は「私たちが考えていたより大幅に低くなる」とサムレニーは言う。 開戦以来、ロシアの国営テレビはしばしば、自国の核兵器を自慢してきた。ウラジーミル・プーチン大統領も核威嚇を行ってきた。 ノルウェー、オスロ大学の博士研究員ファビアン・ホフマンは本誌の取材に対し、これほど激しく、時間調整された、多ベクトルのミサイル攻撃を封じたウクライナの能力は、「たとえこれらのミサイルに核兵器が搭載されたとしても、途中で撃ち落とせる可能性が十分ある」ことを示唆すると述べている。 「この事実は、ロシアの意思決定者に難しい問いを投げ掛けることになる。核兵器の有効性について、これまでよりも不安を感じることになるだろう」とホフマンは話す。 だからといって西側が、これまでより核エスカレーションのリスクを冒そうしてはならないが、「核で対峙することがロシアの利益になるとは思わない」とホフマンは述べた。) ウクライナは5月4日、アメリカの「パトリオット」防空システム(広域防空用の地対空ミサイルシステム)を使って、初めてキーウ近くの上空でキンジャール1発を撃墜したと発表している。 パトリオットは、NATO諸国がウクライナに供与している先進的な防空システムの一つだ。ドイツの短距離空対空ミサイル「IRIS-T」は、2022年10月にウクライナに到着し、以来、60以上の目標を撃墜している。フランスとイタリアが共同開発する地対空ミサイルシステム「SAMP/T」も最近到着した。 パトリオットが、18発のうち何発を迎撃したかは不明だが、ウクライナ軍の成功は、ウクライナが集中砲火に耐えられる防空システムを持ったことを示している。ウクライナ軍の指揮を執るセルヒイ・ポプコは今回の集中砲火について、「異例の密度」と表現する。 プーチンは、ロシア語で「短剣」を意味するキンジャールをロシアの次世代兵器と謳っていたが、「高度な防空システムを回避できる」といったロシアの主張に対しては、専門家から疑問の声が上がっていた』、「核兵器の有効性について、これまでよりも不安を感じることになるだろう」とホフマンは話す」、「「高度な防空システムを回避できる」といったロシアの主張に対しては、専門家から疑問の声が上がっていた」、なるほど。
次に、6月8日付けNewsweek日本版「ダム決壊でクリミアが干上がる?──悪魔のごとき「焦土作戦」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/06/post-101845_1.php
・『<環境を汚染し、飲料水も農地も奪ったダム決壊をウクライナはダム破壊による「焦土作戦」と呼ぶ。それも「焼かれた」のは、昨日まで自国領だと言っていた土地だ> ウクライナ政府はカホフカ・ダムの決壊で、南部の何万人もの住民が飲料水を利用できなくなると警告した。ウクライナ南部は今後何年も深刻な水不足に陥り、農業生産も大打撃を受けるとの懸念が広がっている。 6月6日、ウクライナ南部ヘルソン州ノバカホフカにあるロシア軍支配下の水力発電ダムが爆破され、住宅地が浸水し多数の住民が避難した。一夜明けた7日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はメッセージアプリ「テレグラム」で、「ロシアのテロリストたち」がウクライナ最大級の貯水池を意図的に破壊したと非難した。 一方、ロシアはウクライナがドニプロ(ドニエプル)川に建設されたダムに破壊工作を行なったと主張、非難合戦が続いている。 米シンクタンク・ジェームズタウン財団のアナリスト、アラ・フルスカによると、カホフカ貯水池の水位は1時間に15センチのペースで低下し続けており、深刻な水不足が予想されるという。 「今後数日様子を見ないと水の動きは読めないが、非常に深刻な影響が出ることは間違いない」』、こんなに戦略的に重要なダムへの攻撃を許してしまったのは、「ウクライナ」側の手落ちなのではなかろうか。
・『ロシア軍は北クリミア運河の利用を断念 「ヘルソン州の南部とクリミア、特にクリミア半島北部では飲料水が入手できなくなる恐れがある」と、フルスカは述べている。 カホフカ貯水池はウクライナのドニプロペトロウシク州の都市クリビー・リフで使用される水の70%前後を供給しており、市当局は市民に飲料水を貯めておくよう呼びかけた。ミコライウ州とザポリッジャ州、さらに南の地域の水供給にも影響が及ぶ恐れがある。 フルスカによれば、クリミアに駐留するロシア軍も、カホフカ貯水池から取水した水をクリミア半島に供給している「北クリミア運河」がもはや頼りにならないことを認めたという。 2014年のロシアによるクリミア併合で、ウクライナはこの運河経由のクリミアへの給水を制限したが、ロシアは昨年2月のウクライナ侵攻後、カホフカ・ダム周辺地域を支配下に置き、運河を経由してクリミア半島に淡水が豊富に供給されるようにした。 しかし「カホフカ海」と呼ばれるほど広大な貯水池が決壊した今、「クリミアは今後何年も水不足にあえぐことになると、多くの専門家がみている」と、フルスカは言う。) ウクライナ環境連盟の代表で、環境問題でウクライナ政府の顧問を務めるテチャナ・ティモツコはウクライナの国営通信社ウクルインフォルムにダム決壊は「この地域全体の農業に甚大な打撃を及ぼすだろう」と語った。 「クリミア半島は今後10年か15年、ことによると永久に淡水を確保できなくなる恐れがある」と、ティモツは述べた。 浸水地域の水が引けば、被害状況が明らかになるだろうが、ダム破壊が環境に与える影響について、本誌がウクライナのアントン・ヘラシチェンコ内相顧問にコメントを求めると、自身のツイッターの7日付けの投稿を見てほしいと言われた。 ヘラシチェンコはこの投稿で「カホフカ水力発電所の破壊は環境に壊滅的な被害を与える」と警告し、後2?4日でカホフカ貯水池の膨大な水は全て流出すると予測。一帯の国立公園や広大な土地の破壊など、環境に与える打撃を列挙している。 ヘラシチェンコはまた、ヘルソン州とミコライウ州の一部地域では何百種もの動植物が姿を消し、灌漑用水が使えなくなるためヘルソン州とザポリッジャ州のざっと150万ヘクタールの土地が穀物栽培など農業生産に利用できなくなると予測している。 ウクライナ内務省の顧問であるアントン・ゲラシュチェンコはツイートで、ドニプロ川から溢れた水は、有害物質やゴミを呑み込んで有毒かもしれないだけでなく、土壌から流出した地雷も紛れて近づくのは危険だと書いている。) ウクライナのセルギー・キスリツァ国連大使は、この「攻撃」は、退却する軍隊が敵に利用されそうなものはすべて焼き尽くしていく軍事戦略「焦土作戦」そのものだと言った。この場合恐ろしいのは、クリミア北部も含め被害に遭った土地の大半が、ロシアが「自分のもの」だとして統治してきた土地だということだ。「大地を焼き尽くす代わりに水浸しにすることで、この土地はもはやロシアのものではないと認めたようなものだ」』、「ドニプロ川から溢れた水は、有害物質やゴミを呑み込んで有毒かもしれないだけでなく、土壌から流出した地雷も紛れて近づくのは危険だと書いている」、「被害に遭った土地の大半が、ロシアが「自分のもの」だとして統治してきた土地だということだ。「大地を焼き尽くす代わりに水浸しにすることで、この土地はもはやロシアのものではないと認めたようなものだ」、「ロシア」のやり方は本当に酷い。
第三に、6月26日付けYahooニュースが転載した現代ビジネス「「モスクワへ進軍」「あと200km、死ぬ覚悟は出来ている」…この数日で「ロシア内戦」に至りそうだったワグネル創設者ブリコジンとプーチンの「蜜月と確執」の詳細」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/53ee0b83cdf2b99b10675cb961e3cc6b7f7252cb
・『プリゴジンがクーデター? 6月24日、「ロシアに混乱を招いた原因を見つけ出す」「死ぬ覚悟はできている」などとして突如「モスクワへの進軍」を宣言した、民間軍事組織ワグネルと創始者プリゴジン。 その後またたく間にモスクワの南、約500kmのボロネジの軍事施設を制圧。さらに北上を重ね、200kmあまりのリペツク州に迫っているかと25日の時点で世界各国の報道機関に報じられた。モスクワでは25日および月曜日の26日にも市民に対して外出禁止や仕事・学校を休むことなどが発令され、ロシア正規軍の都市防衛部隊も急遽展開するという、緊迫の情勢を見せていた。 しかしその直後、プリゴジンは一転して「ロシア人の血が流れることの責任の大きさを認識」と宣言してベラルーシへ転進。その後、同国のルカシェンコ大統領が仲介役を買って出たことや、プーチン大統領もブリコジンへの捜査を停止し出国を認めること、ルカシェンコ大統領への謝意などを示したことが矢継ぎ早に報じられた。一方で、その後プリゴジンの消息が聞こえないことなども取り沙汰されている。 ロシアで今いったい何が起きているのか? なぜ前例のないほどの「プーチンの弱腰」という例外状況が生じているのか、発端となったプリゴジンとプーチンの蜜月が生まれた背景、そして確執の経緯について、本誌が報じた記事を改めてお送りする。 「『ジイさん』が最終的に"クソ馬鹿"であることが明確になったら、国はどうすればいい? 戦争にどうやって勝てばいいのか?」 ロシアのSNS「テレグラム」の動画内でこう怒りをぶつけたのは、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者でオリガルヒ(新興財閥)のエフゲニー・プリゴジンだ』、興味深そうだ。
・『「クソ馬鹿なジイさん」 動画が公開されたのは、戦勝記念日にあたる5月9日のこと。そんな国の祝日に水を差すかのように、彼が口汚く「クソ馬鹿なジイさん」と罵る相手こそ、ウラジーミル・プーチン大統領その人だ。 プリゴジンが激昂するのは無理もない。ウクライナとの戦争が長期化する中、要衝バフムトの前線を維持してきたワグネル。しかし激戦の中、弾薬が底をつき始めていた。 「弾薬が70%足りない。ショイグ(国防相)、ゲラシモフ(参謀総長)! 弾薬はどこにあるんだ」 5月5日、プリゴジンが必死に訴えると、後日、弾薬が届いた。ところが、肝心の量は要求のたった10%。それどころか、「バフムトの陣地を離れたら、祖国に対する国家反逆罪になる」という脅し付きだったのだ。 「この戦争のみならず、シリア内戦の時も、プリゴジン率いるワグネルはロシアの正規軍よりも最前線に立って戦ってきました。それもすべては、『盟友』プーチンのために他なりません。しかし、ここ最近のやり取りから、プーチン側はプリゴジンを切り捨てたように見えます」(筑波大学名誉教授の中村逸郎氏))』、「ここ最近のやり取りから、プーチン側はプリゴジンを切り捨てたように見えます」、なるほど。
・『プーチンとプリゴジンの出会い そもそも、プーチンとプリゴジンが長きにわたり蜜月関係にあったことは周知の事実だ。共にサンクトペテルブルク出身である2人が接近したのは1996年に遡る。 ホットドッグチェーンの立ち上げで財を成したプリゴジンは、サンクトペテルブルクに高級レストラン「スターラヤ・タモージニヤ」を開店する。ここに頻繁に通っていたのが、当時同市副市長のプーチンだった。カムチャツカ産のカニサラダ、カスピ海の最高級キャビア……プーチンの注文に対し、プリゴジンは自ら給仕を買って出たという。 拓殖大学海外事情研究所特任教授の名越健郎氏はこう語る。 「表向きはレストランなどの経営をしていたプリゴジンですが、裏では闇カジノに携わっていました。当時、プーチンはサンクトペテルブルクの闇カジノ撲滅委員長でもありました。そこでプリゴジンが『ウチのカジノだけはお目こぼしを』と取り入ったことで、親密になったと推測されます」 以降、プーチンはうまみのある学校給食の委託などでプリゴジンを重用する。その見返りとして、プリゴジンも自らの手を汚した。ワグネル以外にも、サイバー戦組織を指揮し、プーチンに有利に働くよう、ネット上の言論操作を行っている。 後編記事『「プリゴジンの反乱」を招いてしまった「プーチンの狂気」とこれからロシアを待つ「ヤバすぎる展開」』につづく』、「ホットドッグチェーンの立ち上げで財を成したプリゴジンは、サンクトペテルブルクに高級レストラン・・・を開店」、「頻繁に通っていたのが、当時同市副市長のプーチンだった」、「当時、プーチンはサンクトペテルブルクの闇カジノ撲滅委員長でもありました。そこでプリゴジンが『ウチのカジノだけはお目こぼしを』と取り入ったことで、親密になったと推測されます」 以降、プーチンはうまみのある学校給食の委託などでプリゴジンを重用する。その見返りとして、プリゴジンも自らの手を汚した。ワグネル以外にも、サイバー戦組織を指揮し、プーチンに有利に働くよう、ネット上の言論操作を行っている」、ずいぶん長い腐れ縁のようだ。
第四に、6月26日付け現代ビジネス「「ブリコジンの反乱」を招いてしまった「プーチンの狂気」とこれからロシアを待つ「ヤバすぎる展開」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/112397?imp=0
・『6月24日、「ロシアに混乱を招いた原因を見つけ出す」「死ぬ覚悟はできている」などとして突如「モスクワへの進軍」を宣言した、民間軍事組織ワグネルと創始者プリゴジン。 その後またたく間にモスクワの南、約500kmのボロネジの軍事施設を制圧。さらに北上を重ね、200kmあまりのリペツク州に迫っているかと25日の時点で世界各国の報道機関に報じられた。モスクワでは25日および月曜日の26日にも市民に対して外出禁止や仕事・学校を休むことなどが発令され、ロシア正規軍の都市防衛部隊も急遽展開するという、緊迫の情勢を見せていた。 しかしその直後、プリゴジンは一転して「ロシア人の血が流れることの責任の大きさを認識」と宣言してベラルーシへ転進。その後、同国のルカシェンコ大統領が仲介役を買って出たことや、プーチン大統領もプリゴジンへの捜査を停止し出国を認めること、ルカシェンコ大統領への謝意などを示したことが矢継ぎ早に報じられた。一方で、その後プリゴジンの消息が聞こえないことなども取り沙汰されている。 ロシアで今いったい何が起きているのか? なぜ前例のないほどの「プーチンの弱腰」という例外状況が生じているのか、発端となったプリゴジンとプーチンの蜜月が生まれた背景、そして確執の経緯について、本誌が報じた記事を改めてお送りする。 前編記事『「モスクワへ進軍」から1日で「ベラルーシに転進」したワグネル創設者エフゲニー・プリゴジンとプーチンとの「蜜月と確執」の経緯』より続く』、「モスクワ」まで「200kmあまりのリペツク州に迫っているかと25日の時点で世界各国の報道機関に報じられた。モスクワでは25日および月曜日の26日にも市民に対して外出禁止や仕事・学校を休むことなどが発令され、ロシア正規軍の都市防衛部隊も急遽展開するという、緊迫の情勢を見せていた」、一触即発の段階で、「ベラルーシに転進」するという驚きの展開をした背景についてみていこう。
・『5月の時点でプリゴジンを切り捨てていたプーチン なぜプーチンは、5月の時点でそんなプリゴジンを容赦なく切り捨ててしまったのか。一説には、プリゴジンの政治的野心と反乱を抑えるためと考える向きがある。前出の中村氏が語る。 「プリゴジンに弾薬を渡すと、ウクライナとの戦争のために使わず、ロシアに攻め上がってくるのではないか、といった報道が出ています。それによれば、プリゴジンの目的は、自分がロシアの大統領になること。ここへきて、ウクライナと手を組み、軍事クーデターに動く可能性が出てきています」 実際、5月14日には、プリゴジンがウクライナ政府に対してロシアの侵攻部隊の位置情報提供を提案した、と米ワシントン・ポストが報じている。 だが一方で、プリゴジンの粛清はあまりにも合理性に欠ける、という意見もある。前出の名越氏もそう考える一人だ』、「5月の時点でプリゴジンを切り捨てていたプーチン」、「プリゴジンの目的は、自分がロシアの大統領になること。ここへきて、ウクライナと手を組み、軍事クーデターに動く可能性が出てきています」、複雑でよく分からない動きだ。
・『ワグネルとプリゴジンは一部では英雄的存在 「このままワグネルが前線地帯から撤退すれば、ロシアはより敗色濃厚になります。それにプリゴジンは今や愛国勢力の英雄的存在で、彼を支持する軍事ブロガーたちにもフォロワーが100万人ほどいる。それらを敵に回すと考えれば、プリゴジンを粛清することなど正気の沙汰と思えません」 はたして「皇帝」は何を考えているのか―おそらくは、この戦争泥沼化の失態の責任を誰に押しつけ、自らの身をいかにして守るかということだ。前出の中村氏はこう指摘する。 「現在の戦況は、完全にロシアがウクライナに負けている状態です。そこで、プーチンはプリゴジンに失敗の責任を取らせようとしているのではないでしょうか。まさに『トカゲの尻尾切り』です」 権力を掌握し、恒久的に維持しようとする独裁者は、けっして自分の非を認めようとはしない。それどころか、「どうせ代わりの者などいくらでもいる」と、下の者に責任を被せて追放し、追及から逃れるのが常だ。 プーチンがプリゴジンにそうするように、独裁者が、かつて盟友だった者に罪を被せ、粛清した事例は過去にも存在する。 ナチス・ドイツのアドルフ・ヒトラーが、親友エルンスト・レームを粛清した「長いナイフの夜事件」がそうだ。 レームは、ヒトラーが党首になる前からの数少ない友人であり、互いに「俺」「お前」で呼び合う間柄だったという。そんな彼が率いる軍事組織「突撃隊」は、ナチ党の集会の警備や護衛に加え、反対党の襲撃などの実行部隊を担う、いわばヒトラー子飼いのテロ組織でもあった。 だが、ヒトラーが国のトップに立ち、権力を得ると、徐々に突撃隊が邪魔な存在になっていく。 「突撃隊による過激な暴力活動は、ナチスの暗黒面として批判されている。このままでは自分も糾弾され、権力の座を追われかねない。ならば幕僚長のレームに責任をなすりつけ、一掃すれば、大義名分にもなる。そうとなれば粛清するしかない」 こう考えたであろうヒトラーは、1934年、レーム率いる突撃隊関係者ら1000人以上を処刑。親友をも殺して、トカゲの尻尾切りを完遂したのである』、「「現在の戦況は、完全にロシアがウクライナに負けている状態です。そこで、プーチンはプリゴジンに失敗の責任を取らせようとしているのではないでしょうか。まさに『トカゲの尻尾切り』です」、なるほど。
・『肥大するナルシシズム 普通の人間であれば、人格を疑われるような責任逃れはそうできない。だが、独裁者は良心の呵責なく尻尾を切り取り、「すぐにまた生えてくる」とばかりに平然としている。そこには、どんな心理が働いているのか。 軍事心理学が専門である同志社大学教授の余語真夫氏が解説する。 「多くの独裁者に共通するのは、サイコパシー(精神病質)、マキャヴェリズム(権謀術数主義)、そしてナルシシズム(自己陶酔症)の3つの特性で構成される『ダーク・トライアド』というパーソナリティ特徴を持つということです。この3つの特性はすべて、他者への無関心や冷淡さに向かう傾向があり、自分の行動で他人に不利益が生じようとも、罪悪感を持つことは一切ないのです」 心理学の世界では、「悪の3大気質」とも呼ばれるダーク・トライアド。中でも、ナルシシズムという特性だけは、時代を問わず、ほぼすべての独裁者が有している。そう指摘するのは、早稲田メンタルクリニックの精神科医・益田裕介氏だ。 「独裁者は自分の目的を達成するため、部下を捨て駒のように扱うのが常です。その結果、次第に周囲は本音を言わなくなっていき、孤独感が募ります。すると、その寂しさを紛らわす心理作用として、自己暗示的に『ナルシシズムの強化』が行われるのです」 こんなプレッシャーに耐えられるのは自分しかいない。周囲は無能な人間ばかり。自分は運命に選ばれている。こうしたナルシシズムは、重度の人間不信と背中合わせだ。 「こうなると、もはや猜疑心の塊となり、誰も信じられなくなってしまう。だからトカゲの尻尾切りも平気で行えるわけです。この精神状態に一度なってしまうと、元に戻ることはほぼありません。プーチンも今、そういった状態にあるのでしょう」(益田氏) すでにプーチンは、プリゴジンに次ぐ新たな「トカゲの尻尾」を探しているかもしれない』、「サイコパシー(精神病質)、マキャヴェリズム(権謀術数主義)、そしてナルシシズム(自己陶酔症)の3つの特性で構成される『ダーク・トライアド』というパーソナリティ特徴を持つということです」、「中でも、ナルシシズムという特性だけは、時代を問わず、ほぼすべての独裁者が有している」、「こんなプレッシャーに耐えられるのは自分しかいない。周囲は無能な人間ばかり。自分は運命に選ばれている。こうしたナルシシズムは、重度の人間不信と背中合わせだ。 「こうなると、もはや猜疑心の塊となり、誰も信じられなくなってしまう。だからトカゲの尻尾切りも平気で行えるわけです。この精神状態に一度なってしまうと、元に戻ることはほぼありません。プーチンも今、そういった状態にあるのでしょう」(益田氏) すでにプーチンは、プリゴジンに次ぐ新たな「トカゲの尻尾」を探しているかもしれない」、「プーチン」が「猜疑心の塊となり、誰も信じられなくなってしまう。だからトカゲの尻尾切りも平気で行えるわけです」、大いにありそうな見方だ。
タグ:「ドニプロ川から溢れた水は、有害物質やゴミを呑み込んで有毒かもしれないだけでなく、土壌から流出した地雷も紛れて近づくのは危険だと書いている」、「被害に遭った土地の大半が、ロシアが「自分のもの」だとして統治してきた土地だということだ。「大地を焼き尽くす代わりに水浸しにすることで、この土地はもはやロシアのものではないと認めたようなものだ」、「ロシア」のやり方は本当に酷い。 、こんなに戦略的に重要なダムへの攻撃を許してしまったのは、「ウクライナ」側の手落ちなのではなかろうか。 「「現在の戦況は、完全にロシアがウクライナに負けている状態です。そこで、プーチンはプリゴジンに失敗の責任を取らせようとしているのではないでしょうか。まさに『トカゲの尻尾切り』です」、なるほど。 「5月の時点でプリゴジンを切り捨てていたプーチン」、「プリゴジンの目的は、自分がロシアの大統領になること。ここへきて、ウクライナと手を組み、軍事クーデターに動く可能性が出てきています」、複雑でよく分からない動きだ。 「こうなると、もはや猜疑心の塊となり、誰も信じられなくなってしまう。だからトカゲの尻尾切りも平気で行えるわけです。この精神状態に一度なってしまうと、元に戻ることはほぼありません。プーチンも今、そういった状態にあるのでしょう」(益田氏) すでにプーチンは、プリゴジンに次ぐ新たな「トカゲの尻尾」を探しているかもしれない」、「プーチン」が「猜疑心の塊となり、誰も信じられなくなってしまう。だからトカゲの尻尾切りも平気で行えるわけです」、大いにありそうな見方だ。 「サイコパシー(精神病質)、マキャヴェリズム(権謀術数主義)、そしてナルシシズム(自己陶酔症)の3つの特性で構成される『ダーク・トライアド』というパーソナリティ特徴を持つということです」、「中でも、ナルシシズムという特性だけは、時代を問わず、ほぼすべての独裁者が有している」、「こんなプレッシャーに耐えられるのは自分しかいない。周囲は無能な人間ばかり。自分は運命に選ばれている。こうしたナルシシズムは、重度の人間不信と背中合わせだ。 「モスクワ」まで「200kmあまりのリペツク州に迫っているかと25日の時点で世界各国の報道機関に報じられた。モスクワでは25日および月曜日の26日にも市民に対して外出禁止や仕事・学校を休むことなどが発令され、ロシア正規軍の都市防衛部隊も急遽展開するという、緊迫の情勢を見せていた」、一触即発の段階で、「ベラルーシに転進」するという驚きの展開をした背景についてみていこう。 現代ビジネス「「ブリコジンの反乱」を招いてしまった「プーチンの狂気」とこれからロシアを待つ「ヤバすぎる展開」」 以降、プーチンはうまみのある学校給食の委託などでプリゴジンを重用する。その見返りとして、プリゴジンも自らの手を汚した。ワグネル以外にも、サイバー戦組織を指揮し、プーチンに有利に働くよう、ネット上の言論操作を行っている」、ずいぶん長い腐れ縁のようだ。 「ホットドッグチェーンの立ち上げで財を成したプリゴジンは、サンクトペテルブルクに高級レストラン・・・を開店」、「頻繁に通っていたのが、当時同市副市長のプーチンだった」、「当時、プーチンはサンクトペテルブルクの闇カジノ撲滅委員長でもありました。そこでプリゴジンが『ウチのカジノだけはお目こぼしを』と取り入ったことで、親密になったと推測されます」 「ここ最近のやり取りから、プーチン側はプリゴジンを切り捨てたように見えます」、なるほど。 現代ビジネス「「モスクワへ進軍」「あと200km、死ぬ覚悟は出来ている」…この数日で「ロシア内戦」に至りそうだったワグネル創設者ブリコジンとプーチンの「蜜月と確執」の詳細」 yahooニュース Newsweek日本版「ダム決壊でクリミアが干上がる?──悪魔のごとき「焦土作戦」」 「核兵器の有効性について、これまでよりも不安を感じることになるだろう」とホフマンは話す」、「「高度な防空システムを回避できる」といったロシアの主張に対しては、専門家から疑問の声が上がっていた」、なるほど。 (その6)(極超音速キンジャール6発を撃ち落してわかった ロシア核はそんなに怖くない、ダム決壊でクリミアが干上がる?──悪魔のごとき「焦土作戦」、「モスクワへ進軍」「あと200km、死ぬ覚悟は出来ている」…この数日で「ロシア内戦」に至りそうだったワグネル創設者ブリコジンとプーチンの「蜜月と確執」の詳細、「ブリコジンの反乱」を招いてしまった「プーチンの狂気」とこれからロシアを待つ「ヤバすぎる展開」) ウクライナ 「キンジャールは・・・最高速度マッハ10」、なのに、「ウクライナ」側にすべて撃破された理由は、不明だが、低速走行中に撃破されたのかも知れない。 Newsweek日本版「極超音速キンジャール6発を撃ち落してわかった、ロシア核はそんなに怖くない」
ミャンマー(その7)(インドネシア クーデターから2年のミャンマーに将軍派遣へ 民主化への経験共有は可能か、少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍事政権に曖昧な姿勢を続ける日本 人権活動家が語る現地の危機と日本への要請) [世界情勢]
ミャンマーについては、昨年2月17日に取上げた。今日は、(その7)(インドネシア クーデターから2年のミャンマーに将軍派遣へ 民主化への経験共有は可能か、少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍事政権に曖昧な姿勢を続ける日本 人権活動家が語る現地の危機と日本への要請)である。
先ずは、本年2月3日付けNewsweek日本版「インドネシア、クーデターから2年のミャンマーに将軍派遣へ 民主化への経験共有は可能か」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/02/2-471_1.php
・『<ASEAN議長であり、かつて民主化の道を歩んだ国がミャンマー問題を解決しに動き出した> インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は2月2日、膠着状態に陥っているミャンマー問題への打開の道筋を探るために近くインドネシア軍の将軍クラスをミャンマーに派遣する方針をロイター通信とのインタビューの中で明らかにした。 インドネシアとしては1998年に約30年にわたるスハルト長期独裁政権の崩壊から民主国家への道を歩み始めた経緯や経験をミャンマーの軍事政権と共有することでなんとか軍政と民主勢力との対話による平和的な解決を促す狙いがある。 インドネシアは2023年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国であることや2021年2月1日のクーデター発生を受けて同年4月に首都ジャカルタでASEAN緊急首脳会議を開催するなど、ミャンマー問題に積極的に関わって来たことも今回の動きの背景にある』、「インドネシアとしては1998年に約30年にわたるスハルト長期独裁政権の崩壊から民主国家への道を歩み始めた経緯や経験をミャンマーの軍事政権と共有することでなんとか軍政と民主勢力との対話による平和的な解決を促す狙い」、なるほど。
・『変革に関係した将軍を派遣へ ジョコ・ウィドド大統領は「将軍派遣」に関して具体的な日程や派遣する将軍の人選に関しては明らかにしなかったが、陸軍幹部で第6代大統領だったスシロ・バンバン・ユドヨノ氏、ジョコ・ウィドド大統領と親しいアンディカ・プルカサ前国軍司令官、プラボウォ・スビアント国防相などの名前が取り沙汰されている。 しかしジョコ・ウィドド大統領がインタビューの中で「インドネシアの(民主化という)変革に関与した人物」を想定していると述べたことから1998年以降のインドネシア民主化に関わった軍人である可能性が高く、国防相や政治・法務・治安担当の調整相も歴任したウィラント元国軍司令官の可能性も浮上している。 ウィラント氏は1998年当時の国軍司令官だったが、国民の民主化を求める運動が高まるなかでスハルト大統領に「大統領辞任」を促しそれが結局大統領職に拘り続けていたスハルト大統領に「引導を渡した」結果となった経緯がある』、「ミャンマー」側の受け入れ体制を見る前に、「インドネシア」側の候補者を云々するのは時期尚早な印象がある。
・『大統領自身のミャンマー訪問に含み ジョコ・ウィドド大統領は自身のミャンマー訪問についてインタビューでは完全に否定せず含みをもたせながらも、ミャンマー軍事政権のトップがミン・アウン・フライン国軍司令官という軍人であることから「同じ軍人という背景をもつ者同士の方が話ししやすいという面もある」として、今回はインドネシア国軍の退役将軍クラスによる「可能な限り早い時期」の派遣検討となったとしている。 ミャンマーにはクーデター以降ASEAN加盟国の首脳クラスとしては2022年の議長国だったカンボジアのフンセン首相が首都ヤンゴンを訪れミン・アウン・フライン国軍司令官と首脳会談を行ったことがある。 さらに外相クラスでは2021年の議長国ブルネイのエルワン第2外相がASEAN特使として、さらに2022年に同じくASEAN特使だったカンボジアのプラク・ソコン外相などがヤンゴンを訪問し事態打開策を協議している』、「ジョコ・ウィドド大統領は自身のミャンマー訪問についてインタビューでは完全に否定せず含みをもたせながらも、ミャンマー軍事政権のトップがミン・アウン・フライン国軍司令官という軍人であることから「同じ軍人という背景をもつ者同士の方が話ししやすいという面もある」として、今回はインドネシア国軍の退役将軍クラスによる「可能な限り早い時期」の派遣検討となったとしている」、いくら「軍人」「同士」とはいえ、国民の虐殺という点では大きな違いがあるのではなかろうか。
・『ASEANの分断が深刻化 ASEANの対ミャンマー対応方針は2021年4月にジャカルタで開催されたASEAN緊急首脳会議でミン・アウン・フライン国軍司令官も出席して合意に達した「5項目の合意」が基本線となっていた。 しかしミャンマー軍政は「武力行使の即時停止」「全関係者とASEAN特使の面会」という2項目について拒否を続けている。 2022年の議長国だったカンボジアはフンセン首相が旗振り役となってミャンマー問題打開に積極的姿勢をみせ、自らヤンゴンを訪問してミン・アウン・フライン国軍司令官と会談するなどASEANによる和解調停の主導権を握り存在感を示そうとした。 だが、2022年7月にミャンマー軍政が政治犯4人の死刑をフンセン首相の中止要請にも関わらず執行したことでカンボジアもミャンマーに強硬姿勢を続けるマレーシアやインドネシア、シンガポール、フィリピンに同調せざるを得なくなった。 そして2022年10月のASEAN首脳会議からミン・アウン・フライン国軍司令官は招待されず、以降ミャンマー軍政関係者抜きのASEAN会議が続いている。2月3日からインドネシア・ジョグジャカルタで開かれるASEAN環境相会議にも軍政が選任した「環境相格」は招待されない事態となっている』、「2022年7月にミャンマー軍政が政治犯4人の死刑をフンセン首相の中止要請にも関わらず執行したことでカンボジアもミャンマーに強硬姿勢を続けるマレーシアやインドネシア、シンガポール、フィリピンに同調せざるを得なくなった・・・以降ミャンマー軍政関係者抜きのASEAN会議が続いている」、「ミャンマー軍政」側の行き過ぎた「強硬姿勢」に原因がある。
・『タイのスタンドプレー こうしたASEANによるミャンマー問題の仲介工作が行き詰るなか、タイは12月22日にミャンマー軍政の「外相格」であるワナ・マウン・ルウィン氏をバンコクに招いて外相会談を開催した。しかし参加したのはタイ、カンボジア、ラオス、ベトナムの外相や外相級で対ミャンマーの姿勢が融和的な国やミャンマーの最大の後ろ盾である中国と極めて親しい関係の国に限定された。 インドネシアやマレーシア、シンガポール、フィリピンは招待されたものの参加を拒否した。その結果この会談は「ASEAN非公式外相会議」との位置づけとなった。 ミャンマーと同様にクーデターで実権を握ったプラユット首相(陸軍大将)が率いるタイ政府が開催した「非公式外相会」だが、ASEAN内部の分断を加速させる動きだとの警戒感が広がっているという。 今回のジョコ・ウィドド大統領の将軍派遣はタイのスタンドプレーを巻き返し、主導権を発揮する狙いもあるとみられているが、軍人同士の対話が事態打開の糸口となるかは不透明だ。 ジョコ・ウィドド大統領は事態打開の進展がなければ「断固として行動する」と明らかにしており、今後の議長国インドネシアによるASEANのかじ取りが注目されている』、肝心の「ミャンマー側」の受け入れについては、明確な記述がない。その後の続報もないようだ。しばし静観するほかなさそうだ。
次に、3月19日付け現代ビジネス「少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107805?imp=0
・『軍政の残虐非道な行動が明らかに ミン・アウン・フライン司令官率いるミャンマー軍事政権は2022年から2023年にかけて反軍政の抵抗を続ける市民組織「国民防衛軍(PDF)」などへの弾圧を強化しており、その過程で一般市民の殺害も増加している。 そうした中でも特に未成年の若者や女性を虐殺するケースが相次いで報告され、人権侵害がこれまで以上に深刻化しているという。 さらに2023年3月13日にはミャンマーの独立系メディアが仏教寺院に避難していた一般市民と同時に僧侶をも殺害していたことを報じた。 ミャンマーは国民の90%を仏教徒が占める国で、僧侶は国民の尊敬を集める対象となっているだけに、僧侶まで殺害するという軍政の容赦ない姿勢は反軍政を掲げる国民の反感と怒りを高めている。 こうした軍政の残虐非道な行動は、2月2日に戒厳令を7郡区から37郡区に拡大し、同月22日にもさらにサガイン地方域で3郡区を追加するなどして、抵抗勢力との戦闘が激化している地方での軍の権力を強化したことと関係があるとみられている。 2021年2月のクーデター以降すでに2年以上が経過しながらも、国内の治安が一向に安定せず、8月に予定している「民主的な総選挙」の実施も危ぶまれる状況に対する軍政の焦りが背景にあるとの見方が有力視されている。 軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図しているとされ、各地から報告される兵士による残虐行為はその反映とされている』、「8月に予定している「民主的な総選挙」の実施も危ぶまれる状況に対する軍政の焦りが背景にあるとの見方が有力視されている。 軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図しているとされ、各地から報告される兵士による残虐行為はその反映とされている」、なるほど。
・『寺院の避難民を僧侶と共に殺害 独立メディア「ミャンマー・ナウ」はミャンマー北東部シャン州南部ピンラウン郡区のナンニント村で市民ら29人が殺害されているのを地元抵抗勢力である「カレンニー民族防衛隊(KNDF)」が3月13日の声明で明らかにしたと伝えた。29人の中には仏教僧侶3人が含まれていたとしている。 KNDFなどによると、軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている。 ナンニント村の大半の住民は軍による攻撃激化を恐れて数週間前にすでに村外に避難していたが、僧侶が避難をせずに村に留まったことから20数人の男性村人が共に村に残り、空襲・砲撃を逃れるために寺院に避難していたという。 KNDFはナンニント村の状況を確認するためにドローンで上空から偵察していたところ、寺院で多数の遺体を発見したものの兵士が撤退するのを待ったため現場の寺院には12日までたどり着けなかったとしている。 KNDFのミャンマー語のホームページには殺害現場の生々しい写真が複数アップされ、民族衣装であるロンジーをまとった多数の男性が銃撃を受けて頭部や上半身などから血を流して寺院の外壁周辺に倒れている様子が写っている。 死者の間にはサフラン色の僧衣をまとった仏教僧侶が僧衣の一部を血に染めて横たわっており、寺院の外壁にも多数の弾痕が残されている。住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという。 この寺院襲撃、僧侶殺害に関し、軍政のゾー・ミン・トゥン報道官はメディアに対して武装市民組織と民間人の何人かが死亡したことは確認したものの「地元のPDFメンバーによる殺害である」として兵士の関与を否定した』、「僧侶が避難をせずに村に留まったことから20数人の男性村人が共に村に残り、空襲・砲撃を逃れるために寺院に避難していたという・・・KNDFのミャンマー語のホームページには殺害現場の生々しい写真が複数アップされ、民族衣装であるロンジーをまとった多数の男性が銃撃を受けて頭部や上半身などから血を流して寺院の外壁周辺に倒れている様子が写っている。 死者の間にはサフラン色の僧衣をまとった仏教僧侶が僧衣の一部を血に染めて横たわっており、寺院の外壁にも多数の弾痕が残されている。住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる』、何のための虐殺なのだろう。
・『若者を虐殺、斬首で遺体放置 独立系メディアなどによると、2月25日に北西部サガイン地方域ミンム郡区ニャウン・ピンカン村付近で武装市民組織PDFと軍による戦闘が発生した。PDF側が弾薬不足のため退却する際に退路に地雷を埋設していた若者5人が軍に拘束された。 その後若者5人の遺体が発見されたが、うち3人は斬首され、頭部が竹柵や荷車の上に「晒し首」状態で放置されており、中には手足が切断された遺体もあったという。遺体には銃創が一切ないことから、若者らは生きたまま斬首された可能性が高いとみられている。 兵士は殺害した若者の携帯電話を取り上げて犠牲者の親族や友人に電話をかけて「死を祝っている」と述べたうえ、犠牲者を罵倒し続けたという。 斬首されたのは15歳の少年、17歳と19歳の青年で、いずれも地元の武装市民組織を手伝い地雷を設置していたところを軍に拘束され、虐殺されたという。事件を伝える独立メディアのウェブサイトには3人の若者がほほ笑む生前の写真がアップされている。 同村周辺ではさらに2人の若者の殺害遺体も発見されているほか、サガイン地方域カン・タイン村では別の男性2人の斬首遺体が発見され、同地方域ミンム郡区ニャウンイン村では16人が殺害されている。 このように国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている。 このほか10月には北部カチン州ハパカント近郊の村で軍政に抵抗を続ける少数民族武装勢力やその支持者、一般市民が参加して開催中のコンサート会場を軍が空爆して地元の著名女性歌手や男性演奏家、多数の観衆が殺害される事件も起きている』、「若者5人の遺体が発見されたが、うち3人は斬首され、頭部が竹柵や荷車の上に「晒し首」状態で放置されており、中には手足が切断された遺体もあったという。遺体には銃創が一切ないことから、若者らは生きたまま斬首された可能性が高いとみられている。 兵士は殺害した若者の携帯電話を取り上げて犠牲者の親族や友人に電話をかけて「死を祝っている」と述べたうえ、犠牲者を罵倒し続けたという。 斬首されたのは15歳の少年、17歳と19歳の青年で、いずれも地元の武装市民組織を手伝い地雷を設置していたところを軍に拘束され、虐殺されたという」、「国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている。 このほか10月には北部カチン州ハパカント近郊の村で軍政に抵抗を続ける少数民族武装勢力やその支持者、一般市民が参加して開催中のコンサート会場を軍が空爆して地元の著名女性歌手や男性演奏家、多数の観衆が殺害される事件も起きている」、「国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している」、恐ろしいことだ。
・『レイプして殺害される女性たち 3月2日、サガイン地方域サガイン群区タルタイン村で女性3人を含む住民が軍に拘束されて「人間の盾」として戦闘現場に立たされたことが報じられた。 さらに同じ日、同地方域ミンム群区ニャウンイン村でレイプされた女性の遺体が発見されたほか。同村では計14人の遺体が発見されたが、その中にはレイプされ顔面や頭部を激しく殴打された痕跡の残る女性3人の遺体も含まれていたという。 2022年8月27日には、サガイン地方域カニ郡区タイエットピンブラ村に進入した兵士らが民家に取り残された知的障害のある40代の女性を屋外に連れ出して複数の兵士がレイプした。 また同月11日には同地方域インマビン群区インバウンテン村で10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も明らかになっている』、男性兵士の士気向上のためなのだろうか。
・『激化する人権侵害事件 このように軍は2022年から、各地で抵抗を続ける武装市民組織メンバーに対する掃討作戦を通じて一般市民を巻き込んだ強権的弾圧を強化、女性や若者をも無差別に殺害しているが、国民の尊敬と信仰の対象である仏教僧侶まで容赦なく殺害するという暴挙に対し内外から厳しい批判が高まっている。 戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている。 タイ西部ターク県メーソットに本拠を置くミャンマーの人権団体「ミャンマー政治犯支援協会(AAPP)」によると、3月14日現在、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている』、「戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている」、「3月14日現在、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている」、軍隊が国民を護るのではなく、虐待するとは、「ミャンマー」は酷い国だ。もっとも、スーチー氏の父親のアウンサン将軍は国民的な人気があったようだから、その後、軍隊が劣化したのだろう。
第三に、6月25日付け東洋経済オンライン「ミャンマー軍事政権に曖昧な姿勢を続ける日本 人権活動家が語る現地の危機と日本への要請」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/681301
・『激化する国軍による市民の弾圧、超大型サイクロン・モカによる深刻な被害と被災者の孤立……。5月末に来日したミャンマーの人権活動家キンオーンマー氏(プログレッシブ・ボイス会長)に、ミャンマー現地の実情と日本の責務についてインタビューした。(Qは聞き手の質問、Aは筆者の回答) Q:国軍と民主派勢力の戦いが激しさを増す中、軍事政権は総選挙を実施すべく準備を進めているといいます。 A:有権者名簿の作成や投票所に配置される係員の訓練などの準備を進めている。ただ、ミャンマーの市民は選挙に強く反対しており、かなりの抵抗に遭っている。 (Khin Ohmar/プログレッシブ・ボイス会長の略歴はリンク先参照)。 A:軍事政権は政党登録に関する新しい法律を制定したが、クーデター前に政権を担っていたアウンサンスーチー氏率いる「国民民主連盟」(NLD)や「シャン民族民主連盟」(SNLD)は政党登録を抹消された。代わりに国軍がコントロールする政党がいくつも結成された。仏教徒の極右ナショナリストの政党や、麻薬王が作った政党、実態のない少数民族の政党などを国軍は自分たちのコントロール下に置いて総選挙を有利に進めようとしている。 バングラデシュの難民キャンプにいるロヒンギャの人たちについても、ミャンマーに帰還させるパイロットプロジェクトを軍事政権は開始している。そこに参加すれば市民権を与えるとか、法的地位を保証する身分証明用のカードを発給するとしているが、そのカードは投票で使えるだけで他にはほとんど意味がない』、「国軍と民主派勢力の戦いが激しさを増す中、軍事政権は総選挙を実施すべく準備を進めている・・・市民は選挙に強く反対しており、かなりの抵抗に遭っている」、「アウンサンスーチー氏率いる「国民民主連盟」(NLD)や「シャン民族民主連盟」(SNLD)は政党登録を抹消された。代わりに国軍がコントロールする政党がいくつも結成された。仏教徒の極右ナショナリストの政党や、麻薬王が作った政党、実態のない少数民族の政党などを国軍は自分たちのコントロール下に置いて総選挙を有利に進めようとしている」、なるほど。
・『笹川陽平氏の動きに疑念 Q:総選挙に正当性があるとは思えませんが。 A:文民統制下の2020年に実施された総選挙に関与した公務員やボランティアとも話をしたが、彼らの誰一人として、このたび軍事政権が行おうとしている総選挙を支持する者はいなかった。しかし、国軍の兵士が自宅に来て銃を突きつけ、投票を強制した場合、住民がそれに逆らうことは難しい。また、国軍は住民を困窮させたあげくに、コメなどの食料支援と引き替えに票を得ようとするかもしれない。 Q:「ミャンマー国民和解担当日本政府代表」の肩書きを持つ日本財団会長の笹川陽平氏は今年2月にミャンマーを訪問した後、タイの首都バンコクで記者会見に臨み、「民主化の第一歩は選挙。何が何でもやらないといけない」と力説したと報じられています。 笹川氏に対しては4月にミャンマーの406の市民社会団体が書簡を送り、「『選挙』を支持する発言が日本政府の特使としてのものだったのか」について問い合わせた。特使の任務の詳細や、特使としての活動の予算や報酬、特使が日本政府のどの部署に対して報告義務を負うのかについても明らかにするように求めた。しかし笹川氏から回答は得られなかった。日本政府も笹川氏の活動との関係について明言を避けている。) Q:日本政府はどのような姿勢を取るべきだと思いますか。 A:日本政府は軍事クーデターへの非難声明を出す一方で、軍事政権への政府開発援助(ODA)を継続している。軍事クーデター前年の総選挙で勝利した民主派と軍事政権のどちらを支持しているのかもはっきりしない。ミャンマーの国民はこうした日本の曖昧な姿勢に困惑している。日本政府にはミャンマー民主化のために道義的・倫理的役割を発揮するように求めたい。 日本は国連安全保障理事会の非常任理事国でもある。2022年12月に採択された安保理決議を踏まえ、ジェノサイド、戦争犯罪、そして人道に対する罪について国軍の責任を追及する具体的な措置を取るべきだ。 また、次のようなことができるはずだ。すなわち、(1)国軍関係者や国軍系企業をターゲットにした経済制裁の実施、(2)NUGとの対話、(3)軍事政権が強行しようとしている総選挙を支持しないと表明すること、(4)ミャンマー国軍の支配下で実施されているすべてのODAを直ちに打ち切ること、(5)在日ミャンマー人の保護、などだ。 今般の入管法改正により強制送還が増える事態ともなれば、在日ミャンマー人は生命の危機に直結する。国外に居住していたというだけで逮捕・投獄されたミャンマー人を私は知っている。在日ミャンマー人の中には民主化支援の活動をしている人も多く、帰国すれば必ず尋問を受けることになる』、「「ミャンマー国民和解担当日本政府代表」の肩書きを持つ日本財団会長の笹川陽平氏は今年2月にミャンマーを訪問した後、タイの首都バンコクで記者会見に臨み、「民主化の第一歩は選挙。何が何でもやらないといけない」と力説」、事実上、「日本政府」の代理をしているようだが、とんでもないことだ。「日本政府は軍事クーデターへの非難声明を出す一方で、軍事政権への政府開発援助(ODA)を継続している。軍事クーデター前年の総選挙で勝利した民主派と軍事政権のどちらを支持しているのかもはっきりしない。ミャンマーの国民はこうした日本の曖昧な姿勢に困惑している。日本政府にはミャンマー民主化のために道義的・倫理的役割を発揮するように求めたい。 日本は国連安全保障理事会の非常任理事国でもある。2022年12月に採択された安保理決議を踏まえ、ジェノサイド、戦争犯罪、そして人道に対する罪について国軍の責任を追及する具体的な措置を取るべきだ」、「ODA」継続の条件に民主化を入れることも可能な筈だ。
・『弱体化する国軍、日本はNUGと対話を Q:日本政府は民主派勢力が結成したNUGとどのように関係を持つべきでしょうか。 A:日本がNUGとの公式の連絡手段を持っていないのは戦略的な誤りだ。(欧米諸国のみならず)中国やインドネシア、マレーシア、韓国もNUGと連絡を取っている。日本がミャンマーにきちんと関与するためには、NUGときちんと対話すべき。日本政府は軍事政権を長引かせたいのか、あるいは文民統制に戻ってほしいと思っているのか、はっきりしてほしい。 Q:民主派勢力の抵抗に遭い、国軍も弱体化しているとも指摘されています。 A:10年前、国軍は40万人を擁していると言われていた。しかし(西側の)軍事アナリストの推計では、クーデター前に実際の人数は30万人もいないと指摘されていた。クーデター後はさらに2万~3万人減っていると見られる。新たな兵士の募集もできていない。軍隊から離脱すると家族にも危害が及びかねないが、2万人以上の兵士がこれまでに国軍から脱走している。 民主派勢力や少数民族武装組織との戦いが長引く中、国軍は広大な国土に薄く広く展開せざるをえず、あらゆる場所で市民の抵抗に遭っている。国軍の兵士は疲れ果て、追い込まれている。国軍は国土の20%以下しか支配下に置いていない。民主派勢力に勝機はある』、「日本がNUGとの公式の連絡手段を持っていないのは戦略的な誤りだ。(欧米諸国のみならず)中国やインドネシア、マレーシア、韓国もNUGと連絡を取っている。日本がミャンマーにきちんと関与するためには、NUGときちんと対話すべき」、「日本がNUGとの公式の連絡手段を持っていない」というのは初めて知った。外務省は一体、何をやっているのだろう。「国軍の兵士は疲れ果て、追い込まれている。国軍は国土の20%以下しか支配下に置いていない。民主派勢力に勝機はある」、そうであれば、なをさら「NUGときちんと対話すべき」だ。
先ずは、本年2月3日付けNewsweek日本版「インドネシア、クーデターから2年のミャンマーに将軍派遣へ 民主化への経験共有は可能か」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/02/2-471_1.php
・『<ASEAN議長であり、かつて民主化の道を歩んだ国がミャンマー問題を解決しに動き出した> インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は2月2日、膠着状態に陥っているミャンマー問題への打開の道筋を探るために近くインドネシア軍の将軍クラスをミャンマーに派遣する方針をロイター通信とのインタビューの中で明らかにした。 インドネシアとしては1998年に約30年にわたるスハルト長期独裁政権の崩壊から民主国家への道を歩み始めた経緯や経験をミャンマーの軍事政権と共有することでなんとか軍政と民主勢力との対話による平和的な解決を促す狙いがある。 インドネシアは2023年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国であることや2021年2月1日のクーデター発生を受けて同年4月に首都ジャカルタでASEAN緊急首脳会議を開催するなど、ミャンマー問題に積極的に関わって来たことも今回の動きの背景にある』、「インドネシアとしては1998年に約30年にわたるスハルト長期独裁政権の崩壊から民主国家への道を歩み始めた経緯や経験をミャンマーの軍事政権と共有することでなんとか軍政と民主勢力との対話による平和的な解決を促す狙い」、なるほど。
・『変革に関係した将軍を派遣へ ジョコ・ウィドド大統領は「将軍派遣」に関して具体的な日程や派遣する将軍の人選に関しては明らかにしなかったが、陸軍幹部で第6代大統領だったスシロ・バンバン・ユドヨノ氏、ジョコ・ウィドド大統領と親しいアンディカ・プルカサ前国軍司令官、プラボウォ・スビアント国防相などの名前が取り沙汰されている。 しかしジョコ・ウィドド大統領がインタビューの中で「インドネシアの(民主化という)変革に関与した人物」を想定していると述べたことから1998年以降のインドネシア民主化に関わった軍人である可能性が高く、国防相や政治・法務・治安担当の調整相も歴任したウィラント元国軍司令官の可能性も浮上している。 ウィラント氏は1998年当時の国軍司令官だったが、国民の民主化を求める運動が高まるなかでスハルト大統領に「大統領辞任」を促しそれが結局大統領職に拘り続けていたスハルト大統領に「引導を渡した」結果となった経緯がある』、「ミャンマー」側の受け入れ体制を見る前に、「インドネシア」側の候補者を云々するのは時期尚早な印象がある。
・『大統領自身のミャンマー訪問に含み ジョコ・ウィドド大統領は自身のミャンマー訪問についてインタビューでは完全に否定せず含みをもたせながらも、ミャンマー軍事政権のトップがミン・アウン・フライン国軍司令官という軍人であることから「同じ軍人という背景をもつ者同士の方が話ししやすいという面もある」として、今回はインドネシア国軍の退役将軍クラスによる「可能な限り早い時期」の派遣検討となったとしている。 ミャンマーにはクーデター以降ASEAN加盟国の首脳クラスとしては2022年の議長国だったカンボジアのフンセン首相が首都ヤンゴンを訪れミン・アウン・フライン国軍司令官と首脳会談を行ったことがある。 さらに外相クラスでは2021年の議長国ブルネイのエルワン第2外相がASEAN特使として、さらに2022年に同じくASEAN特使だったカンボジアのプラク・ソコン外相などがヤンゴンを訪問し事態打開策を協議している』、「ジョコ・ウィドド大統領は自身のミャンマー訪問についてインタビューでは完全に否定せず含みをもたせながらも、ミャンマー軍事政権のトップがミン・アウン・フライン国軍司令官という軍人であることから「同じ軍人という背景をもつ者同士の方が話ししやすいという面もある」として、今回はインドネシア国軍の退役将軍クラスによる「可能な限り早い時期」の派遣検討となったとしている」、いくら「軍人」「同士」とはいえ、国民の虐殺という点では大きな違いがあるのではなかろうか。
・『ASEANの分断が深刻化 ASEANの対ミャンマー対応方針は2021年4月にジャカルタで開催されたASEAN緊急首脳会議でミン・アウン・フライン国軍司令官も出席して合意に達した「5項目の合意」が基本線となっていた。 しかしミャンマー軍政は「武力行使の即時停止」「全関係者とASEAN特使の面会」という2項目について拒否を続けている。 2022年の議長国だったカンボジアはフンセン首相が旗振り役となってミャンマー問題打開に積極的姿勢をみせ、自らヤンゴンを訪問してミン・アウン・フライン国軍司令官と会談するなどASEANによる和解調停の主導権を握り存在感を示そうとした。 だが、2022年7月にミャンマー軍政が政治犯4人の死刑をフンセン首相の中止要請にも関わらず執行したことでカンボジアもミャンマーに強硬姿勢を続けるマレーシアやインドネシア、シンガポール、フィリピンに同調せざるを得なくなった。 そして2022年10月のASEAN首脳会議からミン・アウン・フライン国軍司令官は招待されず、以降ミャンマー軍政関係者抜きのASEAN会議が続いている。2月3日からインドネシア・ジョグジャカルタで開かれるASEAN環境相会議にも軍政が選任した「環境相格」は招待されない事態となっている』、「2022年7月にミャンマー軍政が政治犯4人の死刑をフンセン首相の中止要請にも関わらず執行したことでカンボジアもミャンマーに強硬姿勢を続けるマレーシアやインドネシア、シンガポール、フィリピンに同調せざるを得なくなった・・・以降ミャンマー軍政関係者抜きのASEAN会議が続いている」、「ミャンマー軍政」側の行き過ぎた「強硬姿勢」に原因がある。
・『タイのスタンドプレー こうしたASEANによるミャンマー問題の仲介工作が行き詰るなか、タイは12月22日にミャンマー軍政の「外相格」であるワナ・マウン・ルウィン氏をバンコクに招いて外相会談を開催した。しかし参加したのはタイ、カンボジア、ラオス、ベトナムの外相や外相級で対ミャンマーの姿勢が融和的な国やミャンマーの最大の後ろ盾である中国と極めて親しい関係の国に限定された。 インドネシアやマレーシア、シンガポール、フィリピンは招待されたものの参加を拒否した。その結果この会談は「ASEAN非公式外相会議」との位置づけとなった。 ミャンマーと同様にクーデターで実権を握ったプラユット首相(陸軍大将)が率いるタイ政府が開催した「非公式外相会」だが、ASEAN内部の分断を加速させる動きだとの警戒感が広がっているという。 今回のジョコ・ウィドド大統領の将軍派遣はタイのスタンドプレーを巻き返し、主導権を発揮する狙いもあるとみられているが、軍人同士の対話が事態打開の糸口となるかは不透明だ。 ジョコ・ウィドド大統領は事態打開の進展がなければ「断固として行動する」と明らかにしており、今後の議長国インドネシアによるASEANのかじ取りが注目されている』、肝心の「ミャンマー側」の受け入れについては、明確な記述がない。その後の続報もないようだ。しばし静観するほかなさそうだ。
次に、3月19日付け現代ビジネス「少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107805?imp=0
・『軍政の残虐非道な行動が明らかに ミン・アウン・フライン司令官率いるミャンマー軍事政権は2022年から2023年にかけて反軍政の抵抗を続ける市民組織「国民防衛軍(PDF)」などへの弾圧を強化しており、その過程で一般市民の殺害も増加している。 そうした中でも特に未成年の若者や女性を虐殺するケースが相次いで報告され、人権侵害がこれまで以上に深刻化しているという。 さらに2023年3月13日にはミャンマーの独立系メディアが仏教寺院に避難していた一般市民と同時に僧侶をも殺害していたことを報じた。 ミャンマーは国民の90%を仏教徒が占める国で、僧侶は国民の尊敬を集める対象となっているだけに、僧侶まで殺害するという軍政の容赦ない姿勢は反軍政を掲げる国民の反感と怒りを高めている。 こうした軍政の残虐非道な行動は、2月2日に戒厳令を7郡区から37郡区に拡大し、同月22日にもさらにサガイン地方域で3郡区を追加するなどして、抵抗勢力との戦闘が激化している地方での軍の権力を強化したことと関係があるとみられている。 2021年2月のクーデター以降すでに2年以上が経過しながらも、国内の治安が一向に安定せず、8月に予定している「民主的な総選挙」の実施も危ぶまれる状況に対する軍政の焦りが背景にあるとの見方が有力視されている。 軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図しているとされ、各地から報告される兵士による残虐行為はその反映とされている』、「8月に予定している「民主的な総選挙」の実施も危ぶまれる状況に対する軍政の焦りが背景にあるとの見方が有力視されている。 軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図しているとされ、各地から報告される兵士による残虐行為はその反映とされている」、なるほど。
・『寺院の避難民を僧侶と共に殺害 独立メディア「ミャンマー・ナウ」はミャンマー北東部シャン州南部ピンラウン郡区のナンニント村で市民ら29人が殺害されているのを地元抵抗勢力である「カレンニー民族防衛隊(KNDF)」が3月13日の声明で明らかにしたと伝えた。29人の中には仏教僧侶3人が含まれていたとしている。 KNDFなどによると、軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている。 ナンニント村の大半の住民は軍による攻撃激化を恐れて数週間前にすでに村外に避難していたが、僧侶が避難をせずに村に留まったことから20数人の男性村人が共に村に残り、空襲・砲撃を逃れるために寺院に避難していたという。 KNDFはナンニント村の状況を確認するためにドローンで上空から偵察していたところ、寺院で多数の遺体を発見したものの兵士が撤退するのを待ったため現場の寺院には12日までたどり着けなかったとしている。 KNDFのミャンマー語のホームページには殺害現場の生々しい写真が複数アップされ、民族衣装であるロンジーをまとった多数の男性が銃撃を受けて頭部や上半身などから血を流して寺院の外壁周辺に倒れている様子が写っている。 死者の間にはサフラン色の僧衣をまとった仏教僧侶が僧衣の一部を血に染めて横たわっており、寺院の外壁にも多数の弾痕が残されている。住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという。 この寺院襲撃、僧侶殺害に関し、軍政のゾー・ミン・トゥン報道官はメディアに対して武装市民組織と民間人の何人かが死亡したことは確認したものの「地元のPDFメンバーによる殺害である」として兵士の関与を否定した』、「僧侶が避難をせずに村に留まったことから20数人の男性村人が共に村に残り、空襲・砲撃を逃れるために寺院に避難していたという・・・KNDFのミャンマー語のホームページには殺害現場の生々しい写真が複数アップされ、民族衣装であるロンジーをまとった多数の男性が銃撃を受けて頭部や上半身などから血を流して寺院の外壁周辺に倒れている様子が写っている。 死者の間にはサフラン色の僧衣をまとった仏教僧侶が僧衣の一部を血に染めて横たわっており、寺院の外壁にも多数の弾痕が残されている。住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる』、何のための虐殺なのだろう。
・『若者を虐殺、斬首で遺体放置 独立系メディアなどによると、2月25日に北西部サガイン地方域ミンム郡区ニャウン・ピンカン村付近で武装市民組織PDFと軍による戦闘が発生した。PDF側が弾薬不足のため退却する際に退路に地雷を埋設していた若者5人が軍に拘束された。 その後若者5人の遺体が発見されたが、うち3人は斬首され、頭部が竹柵や荷車の上に「晒し首」状態で放置されており、中には手足が切断された遺体もあったという。遺体には銃創が一切ないことから、若者らは生きたまま斬首された可能性が高いとみられている。 兵士は殺害した若者の携帯電話を取り上げて犠牲者の親族や友人に電話をかけて「死を祝っている」と述べたうえ、犠牲者を罵倒し続けたという。 斬首されたのは15歳の少年、17歳と19歳の青年で、いずれも地元の武装市民組織を手伝い地雷を設置していたところを軍に拘束され、虐殺されたという。事件を伝える独立メディアのウェブサイトには3人の若者がほほ笑む生前の写真がアップされている。 同村周辺ではさらに2人の若者の殺害遺体も発見されているほか、サガイン地方域カン・タイン村では別の男性2人の斬首遺体が発見され、同地方域ミンム郡区ニャウンイン村では16人が殺害されている。 このように国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている。 このほか10月には北部カチン州ハパカント近郊の村で軍政に抵抗を続ける少数民族武装勢力やその支持者、一般市民が参加して開催中のコンサート会場を軍が空爆して地元の著名女性歌手や男性演奏家、多数の観衆が殺害される事件も起きている』、「若者5人の遺体が発見されたが、うち3人は斬首され、頭部が竹柵や荷車の上に「晒し首」状態で放置されており、中には手足が切断された遺体もあったという。遺体には銃創が一切ないことから、若者らは生きたまま斬首された可能性が高いとみられている。 兵士は殺害した若者の携帯電話を取り上げて犠牲者の親族や友人に電話をかけて「死を祝っている」と述べたうえ、犠牲者を罵倒し続けたという。 斬首されたのは15歳の少年、17歳と19歳の青年で、いずれも地元の武装市民組織を手伝い地雷を設置していたところを軍に拘束され、虐殺されたという」、「国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている。 このほか10月には北部カチン州ハパカント近郊の村で軍政に抵抗を続ける少数民族武装勢力やその支持者、一般市民が参加して開催中のコンサート会場を軍が空爆して地元の著名女性歌手や男性演奏家、多数の観衆が殺害される事件も起きている」、「国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している」、恐ろしいことだ。
・『レイプして殺害される女性たち 3月2日、サガイン地方域サガイン群区タルタイン村で女性3人を含む住民が軍に拘束されて「人間の盾」として戦闘現場に立たされたことが報じられた。 さらに同じ日、同地方域ミンム群区ニャウンイン村でレイプされた女性の遺体が発見されたほか。同村では計14人の遺体が発見されたが、その中にはレイプされ顔面や頭部を激しく殴打された痕跡の残る女性3人の遺体も含まれていたという。 2022年8月27日には、サガイン地方域カニ郡区タイエットピンブラ村に進入した兵士らが民家に取り残された知的障害のある40代の女性を屋外に連れ出して複数の兵士がレイプした。 また同月11日には同地方域インマビン群区インバウンテン村で10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も明らかになっている』、男性兵士の士気向上のためなのだろうか。
・『激化する人権侵害事件 このように軍は2022年から、各地で抵抗を続ける武装市民組織メンバーに対する掃討作戦を通じて一般市民を巻き込んだ強権的弾圧を強化、女性や若者をも無差別に殺害しているが、国民の尊敬と信仰の対象である仏教僧侶まで容赦なく殺害するという暴挙に対し内外から厳しい批判が高まっている。 戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている。 タイ西部ターク県メーソットに本拠を置くミャンマーの人権団体「ミャンマー政治犯支援協会(AAPP)」によると、3月14日現在、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている』、「戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている」、「3月14日現在、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている」、軍隊が国民を護るのではなく、虐待するとは、「ミャンマー」は酷い国だ。もっとも、スーチー氏の父親のアウンサン将軍は国民的な人気があったようだから、その後、軍隊が劣化したのだろう。
第三に、6月25日付け東洋経済オンライン「ミャンマー軍事政権に曖昧な姿勢を続ける日本 人権活動家が語る現地の危機と日本への要請」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/681301
・『激化する国軍による市民の弾圧、超大型サイクロン・モカによる深刻な被害と被災者の孤立……。5月末に来日したミャンマーの人権活動家キンオーンマー氏(プログレッシブ・ボイス会長)に、ミャンマー現地の実情と日本の責務についてインタビューした。(Qは聞き手の質問、Aは筆者の回答) Q:国軍と民主派勢力の戦いが激しさを増す中、軍事政権は総選挙を実施すべく準備を進めているといいます。 A:有権者名簿の作成や投票所に配置される係員の訓練などの準備を進めている。ただ、ミャンマーの市民は選挙に強く反対しており、かなりの抵抗に遭っている。 (Khin Ohmar/プログレッシブ・ボイス会長の略歴はリンク先参照)。 A:軍事政権は政党登録に関する新しい法律を制定したが、クーデター前に政権を担っていたアウンサンスーチー氏率いる「国民民主連盟」(NLD)や「シャン民族民主連盟」(SNLD)は政党登録を抹消された。代わりに国軍がコントロールする政党がいくつも結成された。仏教徒の極右ナショナリストの政党や、麻薬王が作った政党、実態のない少数民族の政党などを国軍は自分たちのコントロール下に置いて総選挙を有利に進めようとしている。 バングラデシュの難民キャンプにいるロヒンギャの人たちについても、ミャンマーに帰還させるパイロットプロジェクトを軍事政権は開始している。そこに参加すれば市民権を与えるとか、法的地位を保証する身分証明用のカードを発給するとしているが、そのカードは投票で使えるだけで他にはほとんど意味がない』、「国軍と民主派勢力の戦いが激しさを増す中、軍事政権は総選挙を実施すべく準備を進めている・・・市民は選挙に強く反対しており、かなりの抵抗に遭っている」、「アウンサンスーチー氏率いる「国民民主連盟」(NLD)や「シャン民族民主連盟」(SNLD)は政党登録を抹消された。代わりに国軍がコントロールする政党がいくつも結成された。仏教徒の極右ナショナリストの政党や、麻薬王が作った政党、実態のない少数民族の政党などを国軍は自分たちのコントロール下に置いて総選挙を有利に進めようとしている」、なるほど。
・『笹川陽平氏の動きに疑念 Q:総選挙に正当性があるとは思えませんが。 A:文民統制下の2020年に実施された総選挙に関与した公務員やボランティアとも話をしたが、彼らの誰一人として、このたび軍事政権が行おうとしている総選挙を支持する者はいなかった。しかし、国軍の兵士が自宅に来て銃を突きつけ、投票を強制した場合、住民がそれに逆らうことは難しい。また、国軍は住民を困窮させたあげくに、コメなどの食料支援と引き替えに票を得ようとするかもしれない。 Q:「ミャンマー国民和解担当日本政府代表」の肩書きを持つ日本財団会長の笹川陽平氏は今年2月にミャンマーを訪問した後、タイの首都バンコクで記者会見に臨み、「民主化の第一歩は選挙。何が何でもやらないといけない」と力説したと報じられています。 笹川氏に対しては4月にミャンマーの406の市民社会団体が書簡を送り、「『選挙』を支持する発言が日本政府の特使としてのものだったのか」について問い合わせた。特使の任務の詳細や、特使としての活動の予算や報酬、特使が日本政府のどの部署に対して報告義務を負うのかについても明らかにするように求めた。しかし笹川氏から回答は得られなかった。日本政府も笹川氏の活動との関係について明言を避けている。) Q:日本政府はどのような姿勢を取るべきだと思いますか。 A:日本政府は軍事クーデターへの非難声明を出す一方で、軍事政権への政府開発援助(ODA)を継続している。軍事クーデター前年の総選挙で勝利した民主派と軍事政権のどちらを支持しているのかもはっきりしない。ミャンマーの国民はこうした日本の曖昧な姿勢に困惑している。日本政府にはミャンマー民主化のために道義的・倫理的役割を発揮するように求めたい。 日本は国連安全保障理事会の非常任理事国でもある。2022年12月に採択された安保理決議を踏まえ、ジェノサイド、戦争犯罪、そして人道に対する罪について国軍の責任を追及する具体的な措置を取るべきだ。 また、次のようなことができるはずだ。すなわち、(1)国軍関係者や国軍系企業をターゲットにした経済制裁の実施、(2)NUGとの対話、(3)軍事政権が強行しようとしている総選挙を支持しないと表明すること、(4)ミャンマー国軍の支配下で実施されているすべてのODAを直ちに打ち切ること、(5)在日ミャンマー人の保護、などだ。 今般の入管法改正により強制送還が増える事態ともなれば、在日ミャンマー人は生命の危機に直結する。国外に居住していたというだけで逮捕・投獄されたミャンマー人を私は知っている。在日ミャンマー人の中には民主化支援の活動をしている人も多く、帰国すれば必ず尋問を受けることになる』、「「ミャンマー国民和解担当日本政府代表」の肩書きを持つ日本財団会長の笹川陽平氏は今年2月にミャンマーを訪問した後、タイの首都バンコクで記者会見に臨み、「民主化の第一歩は選挙。何が何でもやらないといけない」と力説」、事実上、「日本政府」の代理をしているようだが、とんでもないことだ。「日本政府は軍事クーデターへの非難声明を出す一方で、軍事政権への政府開発援助(ODA)を継続している。軍事クーデター前年の総選挙で勝利した民主派と軍事政権のどちらを支持しているのかもはっきりしない。ミャンマーの国民はこうした日本の曖昧な姿勢に困惑している。日本政府にはミャンマー民主化のために道義的・倫理的役割を発揮するように求めたい。 日本は国連安全保障理事会の非常任理事国でもある。2022年12月に採択された安保理決議を踏まえ、ジェノサイド、戦争犯罪、そして人道に対する罪について国軍の責任を追及する具体的な措置を取るべきだ」、「ODA」継続の条件に民主化を入れることも可能な筈だ。
・『弱体化する国軍、日本はNUGと対話を Q:日本政府は民主派勢力が結成したNUGとどのように関係を持つべきでしょうか。 A:日本がNUGとの公式の連絡手段を持っていないのは戦略的な誤りだ。(欧米諸国のみならず)中国やインドネシア、マレーシア、韓国もNUGと連絡を取っている。日本がミャンマーにきちんと関与するためには、NUGときちんと対話すべき。日本政府は軍事政権を長引かせたいのか、あるいは文民統制に戻ってほしいと思っているのか、はっきりしてほしい。 Q:民主派勢力の抵抗に遭い、国軍も弱体化しているとも指摘されています。 A:10年前、国軍は40万人を擁していると言われていた。しかし(西側の)軍事アナリストの推計では、クーデター前に実際の人数は30万人もいないと指摘されていた。クーデター後はさらに2万~3万人減っていると見られる。新たな兵士の募集もできていない。軍隊から離脱すると家族にも危害が及びかねないが、2万人以上の兵士がこれまでに国軍から脱走している。 民主派勢力や少数民族武装組織との戦いが長引く中、国軍は広大な国土に薄く広く展開せざるをえず、あらゆる場所で市民の抵抗に遭っている。国軍の兵士は疲れ果て、追い込まれている。国軍は国土の20%以下しか支配下に置いていない。民主派勢力に勝機はある』、「日本がNUGとの公式の連絡手段を持っていないのは戦略的な誤りだ。(欧米諸国のみならず)中国やインドネシア、マレーシア、韓国もNUGと連絡を取っている。日本がミャンマーにきちんと関与するためには、NUGときちんと対話すべき」、「日本がNUGとの公式の連絡手段を持っていない」というのは初めて知った。外務省は一体、何をやっているのだろう。「国軍の兵士は疲れ果て、追い込まれている。国軍は国土の20%以下しか支配下に置いていない。民主派勢力に勝機はある」、そうであれば、なをさら「NUGときちんと対話すべき」だ。
タグ:「日本がNUGとの公式の連絡手段を持っていないのは戦略的な誤りだ。(欧米諸国のみならず)中国やインドネシア、マレーシア、韓国もNUGと連絡を取っている。日本がミャンマーにきちんと関与するためには、NUGときちんと対話すべき」、「日本がNUGとの公式の連絡手段を持っていない」というのは初めて知った。外務省は一体、何をやっているのだろう。 「日本政府は軍事クーデターへの非難声明を出す一方で、軍事政権への政府開発援助(ODA)を継続している。軍事クーデター前年の総選挙で勝利した民主派と軍事政権のどちらを支持しているのかもはっきりしない。ミャンマーの国民はこうした日本の曖昧な姿勢に困惑している。日本政府にはミャンマー民主化のために道義的・倫理的役割を発揮するように求めたい。 日本は国連安全保障理事会の非常任理事国でもある。2022年12月に採択された安保理決議を踏まえ、ジェノサイド、戦争犯罪、そして人道に対する罪について国軍の責任を追及する具体 的な措置を取るべきだ」、「ODA」継続の条件に民主化を入れることも可能な筈だ。 男性兵士の士気向上のためなのだろうか。 斬首されたのは15歳の少年、17歳と19歳の青年で、いずれも地元の武装市民組織を手伝い地雷を設置していたところを軍に拘束され、虐殺されたという」、「国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 「3月14日現在、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている」、軍隊が国民を護るのではなく、虐待するとは、「ミャンマー」は酷い国だ。もっとも、スーチー氏の父親のアウンサン将軍は国民的な人気があったようだから、その後、軍隊が劣化したのだろう。 「国軍と民主派勢力の戦いが激しさを増す中、軍事政権は総選挙を実施すべく準備を進めている・・・市民は選挙に強く反対しており、かなりの抵抗に遭っている」、「アウンサンスーチー氏率いる「国民民主連盟」(NLD)や「シャン民族民主連盟」(SNLD)は政党登録を抹消された。代わりに国軍がコントロールする政党がいくつも結成された。仏教徒の極右ナショナリストの政党や、麻薬王が作った政党、実態のない少数民族の政党などを国軍は自分たちのコントロール下に置いて総選挙を有利に進めようとしている」、なるほど。 「若者5人の遺体が発見されたが、うち3人は斬首され、頭部が竹柵や荷車の上に「晒し首」状態で放置されており、中には手足が切断された遺体もあったという。遺体には銃創が一切ないことから、若者らは生きたまま斬首された可能性が高いとみられている。 兵士は殺害した若者の携帯電話を取り上げて犠牲者の親族や友人に電話をかけて「死を祝っている」と述べたうえ、犠牲者を罵倒し続けたという。 東洋経済オンライン「ミャンマー軍事政権に曖昧な姿勢を続ける日本 人権活動家が語る現地の危機と日本への要請」 死者の間にはサフラン色の僧衣をまとった仏教僧侶が僧衣の一部を血に染めて横たわっており、寺院の外壁にも多数の弾痕が残されている。住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる』、何のための虐殺なのだろう。 「「ミャンマー国民和解担当日本政府代表」の肩書きを持つ日本財団会長の笹川陽平氏は今年2月にミャンマーを訪問した後、タイの首都バンコクで記者会見に臨み、「民主化の第一歩は選挙。何が何でもやらないといけない」と力説」、事実上、「日本政府」の代理をしているようだが、とんでもないことだ。 「僧侶が避難をせずに村に留まったことから20数人の男性村人が共に村に残り、空襲・砲撃を逃れるために寺院に避難していたという・・・KNDFのミャンマー語のホームページには殺害現場の生々しい写真が複数アップされ、民族衣装であるロンジーをまとった多数の男性が銃撃を受けて頭部や上半身などから血を流して寺院の外壁周辺に倒れている様子が写っている。 「8月に予定している「民主的な総選挙」の実施も危ぶまれる状況に対する軍政の焦りが背景にあるとの見方が有力視されている。 軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図しているとされ、各地から報告される兵士による残虐行為はその反映とされている」、なるほど。 肝心の「ミャンマー側」の受け入れについては、明確な記述がない。その後の続報もないようだ。しばし静観するほかなさそうだ。 現代ビジネス「少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃」 「国軍の兵士は疲れ果て、追い込まれている。国軍は国土の20%以下しか支配下に置いていない。民主派勢力に勝機はある」、そうであれば、なをさら「NUGときちんと対話すべき」だ。 「戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている」、 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている。 このほか10月には北部カチン州ハパカント近郊の村で軍政に抵抗を続ける少数民族武装勢力やその支持者、一般市民が参加して開催中のコンサート会場を軍が空爆して地元の著名女性歌手や男性演奏家、多数の観衆が殺害される事件も起きている」、「国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している」、恐ろしいことだ。 「2022年7月にミャンマー軍政が政治犯4人の死刑をフンセン首相の中止要請にも関わらず執行したことでカンボジアもミャンマーに強硬姿勢を続けるマレーシアやインドネシア、シンガポール、フィリピンに同調せざるを得なくなった・・・以降ミャンマー軍政関係者抜きのASEAN会議が続いている」、「ミャンマー軍政」側の行き過ぎた「強硬姿勢」に原因がある。 「ジョコ・ウィドド大統領は自身のミャンマー訪問についてインタビューでは完全に否定せず含みをもたせながらも、ミャンマー軍事政権のトップがミン・アウン・フライン国軍司令官という軍人であることから「同じ軍人という背景をもつ者同士の方が話ししやすいという面もある」として、今回はインドネシア国軍の退役将軍クラスによる「可能な限り早い時期」の派遣検討となったとしている」、いくら「軍人」「同士」とはいえ、国民の虐殺という点では大きな違いがあるのではなかろうか。 「インドネシアとしては1998年に約30年にわたるスハルト長期独裁政権の崩壊から民主国家への道を歩み始めた経緯や経験をミャンマーの軍事政権と共有することでなんとか軍政と民主勢力との対話による平和的な解決を促す狙い」、なるほど。 「ミャンマー」側の受け入れ体制を見る前に、「インドネシア」側の候補者を云々するのは時期尚早な印象がある。 Newsweek日本版「インドネシア、クーデターから2年のミャンマーに将軍派遣へ 民主化への経験共有は可能か」 (その7)(インドネシア クーデターから2年のミャンマーに将軍派遣へ 民主化への経験共有は可能か、少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍事政権に曖昧な姿勢を続ける日本 人権活動家が語る現地の危機と日本への要請) ミャンマー
インド(その2)(グローバルサウスの盟主を目指すインドの危うさ モディ首相の触れられたくない過去も問題視、悪名高き「お役所仕事」が最大障壁…!インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」、「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係) [世界情勢]
インドについては、2021年8月13日に取上げた。今日は、(その2)(グローバルサウスの盟主を目指すインドの危うさ モディ首相の触れられたくない過去も問題視、悪名高き「お役所仕事」が最大障壁…!インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」、「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係)である。
先ずは、本年4月11日付けデイリー新潮が掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤和彦氏による「グローバルサウスの盟主を目指すインドの危うさ モディ首相の触れられたくない過去も問題視」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/04110602/?all=1
・『「中国という全体主義国家は、多方面からの戦略を用いて米国を追い落とし、世界に君臨する超大国になろうとしている」 インド陸軍のパンデ参謀長は3月27日、米誌ニューズウィークのインタビューでこのように述べた。近年のインドの高官としては最も過激な中国批判の1つだ。 パンデ氏は中印国境の最前線で指揮をとるインド軍の最高幹部だ。 インドと 中国が軍事衝突したのは、1962年。両国の間の全長約3400キロメートルに及ぶ実効支配線の一部をめぐっての争いだった。その後、小康状態が続いていたが、2020年6月に、半世紀近くなかった死者を出す衝突が発生し、昨年12月にはインド軍が米国情報機関の支援を得て実効支配線の西側から侵入した中国軍を撃退したとされている。 パンデ氏は「北部国境沿いの軍の配備を見直し、高次の準備態勢を維持している」と自信を示しているが、中国との対立は長期にわたって続くことが懸念されている。 中国との国境紛争を重く見たインド政府は3月中旬、銀行や貿易業者に対して、ロシアからの輸入代金支払いに中国の人民元を使わないように働きかけている(3月13日付ロイター)。 これは、インドがロシア産の原油や石炭の最大の買い手になったことが関係している。 ウクライナ戦争の影響でロシアでは、米ドルに代わり人民元が最も取り引きされている外貨となっている。中国は3月末、アラブ首長国連邦(UAE)産の液化天然ガス(LNG)を人民元建てで購入する契約を成立させた。 エネルギー取引の分野で人民元のプレゼンスが高まっているのにもかかわらず、「インド準備銀行(中央銀行)は人民元による貿易決済に乗り気ではない」とインドの銀行関係者は語り、「政府が人民元の利用を妨げている」と嘆いている。 インド政府はさらに4月から自国通貨ルピー建ての貿易を促進する方針を明らかにしており、マレーシアやミャンマーとの貿易をルピーで決済することを発表している』、「中国との国境紛争を重く見たインド政府は3月中旬、銀行や貿易業者に対して、ロシアからの輸入代金支払いに中国の人民元を使わないように働きかけている」、「インド政府はさらに4月から自国通貨ルピー建ての貿易を促進する方針を明らかにしており、マレーシアやミャンマーとの貿易をルピーで決済することを発表」、「ルピーで決済」は「ルピー」の通貨価値が不安定なので、それほど進まないだろう。
・『「今年はインドが世界を主導するきっかけに…」 中国との確執が通貨の問題に波及した形だが、最近のインドはとにかく鼻息が荒い。インドの経済規模は中国の6分の1に過ぎないが、足元はインドが俄然優勢だからだ。 インドの昨年の実質国内総生産(GDP)は6.7%の成長となり、中国の伸び率を上回った。 ドルベースの昨年の名目GDP(約3兆3800億ドル)は日本の8割に迫っている。 昨年、中国が人口減に転じたのに対し、インドは2060年代まで人口増が続き、17億人に近づくと予測されている。 パンデ氏はこのような現状を踏まえ「インドは今日、世界の舞台で一大勢力として台頭している。現在のインドは、経済成長や他国との戦略的連携を後ろ盾に『グローバルサウス』の声となっている。今年はインドが世界を主導するきっかけとなる分水嶺の年になる」と自信満々だ。 グローバルサウスとは、南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称だ。北半球の先進国と対比して使われることが多い。 ウクライナ情勢を巡り欧米諸国とロシアとの対立が深まる中、国連決議などの場面でグローバルサウスの動向が注目されるようになっている。 成長著しいインドだが、世界銀行による位置づけは「下位中所得国」であり、途上国が直面する問題を当事者として理解できる立場にある。 西側諸国が中国やロシアと対抗する上で、同じ民主主義を看板に掲げるインドを重視するようになっていることも追い風だ。特に、日米豪との「クアッド」の枠組みはインドにとって戦略的な強みとなっている。 モディ首相もこのことを十分に自覚している。西側諸国と良好な関係を武器にグローバルサウスの盟主として、目障りなライバルである中国を追い詰めようとしている』、「グローバルサウスとは、南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称だ」、「ウクライナ情勢を巡り欧米諸国とロシアとの対立が深まる中、国連決議などの場面でグローバルサウスの動向が注目」、「日米豪との「クアッド」の枠組みはインドにとって戦略的な強みとなっている」、なるほど。
・『強権国家に近づいているとの指摘も だが、「世界最大の民主主義国家に危うい一面が目立つようになってきた」との指摘も出てきている。 モディ首相は最近「欧米など先進国のツケをサウスの国々が不当に払わされている」との不満をたびたび口にするようになっている。 モディ首相は3月2日、ブリンケン米国務長官が参加している20カ国・地域(G20)外相会合の場で、米国が築いた第2次世界大戦後の国際秩序を「失敗」と一刀両断した。インドの批判に対し、西側諸国は同国の人権状況を問題視し始めている。 米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 モディ首相についても「州首相時代の2002年に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が持ち上がっているが、植民地時代への恨みが根強く残るインドでは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」との反発が高まるばかりだ。 インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 インドと西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからない。日本でもインドは大きな存在になったが、その距離の取り方は一筋縄ではいかないのではないだろうか。 (藤和彦氏の経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官) はリンク先参照)』、「米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 モディ首相についても「州首相時代の2002年に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が持ち上がっているが、植民地時代への恨みが根強く残るインドでは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」との反発が高まるばかりだ。 インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう』、「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」との「警告」は重く受け止める必要がある。「インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう」、その通りだ。
次に、6月6日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「悪名高き「お役所仕事」が最大障壁…!インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111119?imp=0
・『インドは中国のように経済大国になるか? 世界一の人口大国となることが確実視されるインド経済の存在感が、大きくなっている。 過去20年間、世界経済を牽引してきた中国が、人口が減少に転じ「ピークが過ぎた」との見方が強まっていることが背景にある。 世界経済の減速が懸念される中、「人口が増加し続けるインドが『第2の中国』となる」との期待が高まっているが、はたしてそうだろうか。 インドは世界で最も若年人口の比率が高い国の1つだが、2021年の労働参加率(生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)に占める労働力人口の割合)は46%とアジアで最も低い(日本は84%)。 女性の労働参加率はさらにひどく、世界最低の水準で推移している』、「2021年の労働参加率・・・は46%とアジアで最も低い・・・女性の労働参加率はさらにひどく、世界最低の水準で推移」、若年労働力へ職を提供できないというのは、致命的だ。
・『高度成長できないインドの弱点 中国を始めアジアの国々は、労働集約型の製造業の製品輸出のおかげで多くの雇用を創出できたが、製造業に弱みを抱えるインドは慢性的な雇用不足に苦しめられている。 世界銀行によれば、製造業がGDPに占める割合(2021年時点)は中国が27%、ベトナムが25%であるのに対し、インドは14%に過ぎない。 インドでは過去10年、毎年700万職者が市場に参入してきたが、新規の雇用を満足につくることができなかった。このため、職にありつけない若者は農村にとどまるしかなく、インドでは全労働者の半数近くが農村などで日々を生き抜くための低賃金の仕事に従事している。 「宝の持ち腐れ」になっていると言っても過言ではない』、「製造業に弱みを抱えるインドは慢性的な雇用不足に苦しめられている」、「製造業がGDPに占める割合(2021年時点)は中国が27%、ベトナムが25%であるのに対し、インドは14%に過ぎない。 インドでは過去10年、毎年700万職者が市場に参入してきたが、新規の雇用を満足につくることができなかった。このため、職にありつけない若者は農村にとどまるしかなく、インドでは全労働者の半数近くが農村などで日々を生き抜くための低賃金の仕事に従事している。 「宝の持ち腐れ」になっていると言っても過言ではない」、「宝の持ち腐れ」とは言い得て妙だ。
・『足を引っ張る「お役所仕事」 モデイ政権は「GDPに占める製造業の比率を25%にまで引き上げる」との政策目標を掲げているが、言うは易し、行うは難しだ。 中国一辺倒の投資に不安を感じ、グローバル企業はリスクの分散先としてインドを選択し始めているが、苦戦を強いられている。米アップルは、インドで現地生産の拡大を目指しているが、製造される部品のうちiPhoneの組み立て工場に納品できる合格品が約半分にとどまっている。 インド経済の足かせとなってきた悪名高い「お役所仕事」も変わっていない。 米格付け会社ムーデイーズ・インベスター・サービスは5月23日「政策の実行ベースの遅さやお役所仕事のせいで、製造業やインフラなどのセクターで外国からの投資が減少する恐れがある」と指摘した。 後編記事『「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係』では、インドの内情から経済成長への障壁をさらに検証していこう』、「米アップルは、インドで現地生産の拡大を目指しているが、製造される部品のうちiPhoneの組み立て工場に納品できる合格品が約半分にとどまっている」、これほど「合格品」が低いのは労働力の質も低いと考えざるを得ない。「米格付け会社ムーデイーズ・インベスター・サービスは5月23日「政策の実行ベースの遅さやお役所仕事のせいで、製造業やインフラなどのセクターで外国からの投資が減少する恐れがある」と指摘」、これは深刻だ。
第三に、この続きを、6月6日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111120?imp=0
・『インドを取り巻く火種の数々 過去20年間、世界経済を牽引してきた中国が人口減少に転じたことで、やがて世界一の人口大国となるインドの存在感が高まっている。しかし、残念ながらインドが「第2の中国」となる日は、やってきそうにない。 前編『インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」』でも紹介したとおり、アジア最下位の労働参加率や高度成長に不可欠な製造業に発展の兆しが見られないことが、足を引っ張っているからだ。 さらに近年では、ナショナリズムの台頭から様々な火種がくすぶるようになってきた。 インドで活動するグローバル企業にとってのさらなるリスクは、テロの脅威だ。 統制が厳しい中国とは異なり、インド国内ではイスラム過激派などにテロ事件が多発しており、2008年のムンバイ同時多発テロでは日本人も犠牲になった。 このところ卑劣なテロ事件は発生していないが、インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信しているのが現状だ(3月28日付FNNプライムオンライン)』、「残念ながらインドが「第2の中国」となる日は、やってきそうにない・・・アジア最下位の労働参加率や高度成長に不可欠な製造業に発展の兆しが見られないことが、足を引っ張っているからだ。 さらに近年では、ナショナリズムの台頭から様々な火種がくすぶるように」、「インドで活動するグローバル企業にとってのさらなるリスクは、テロの脅威だ。 統制が厳しい中国とは異なり、インド国内ではイスラム過激派などにテロ事件が多発しており、2008年のムンバイ同時多発テロでは日本人も犠牲になった。 このところ卑劣なテロ事件は発生していないが、インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信しているのが現状だ」、「インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信している」、外資にとっては嫌な国だ。
・『最高峰のエコノミストも「経済減速」を指摘 好調に見えるインド経済にも景気後退の影が忍び寄ってきている。 インド人材採用連盟は5月23日「同国のIT業界で昨年4月から今年3月までの1年間に嘱託社員の雇用が前年に比べ7.7%減少し、約6万人が失業した」と発表した。 識者の間でもインド経済の今後を悲観視する声が強まっている。その代表格は元インド準備銀行(中央銀行)総裁のラグラム・ラジャン氏だ。 ラジャン氏は「高成長を見込める要因が見当たらず、インド経済は減速する」と手厳しい(2023年4月19日付日本経済新聞)。 1950年代から80年代にかけて、インドの経済成長は途上国の中で低かったため、「ヒンズー成長率」と揶揄されてきたが、この用語が再び囁かれるようになっている。インドは過去何度となく高成長の期待を裏切ってきたが、今回も「二の舞」を踏むことになるのだろうか』、「1950年代から80年代にかけて、インドの経済成長は途上国の中で低かったため、「ヒンズー成長率」と揶揄されてきたが、この用語が再び囁かれるようになっている」、「インドは過去何度となく高成長の期待を裏切ってきたが、今回も「二の舞」を踏むことになるのだろうか」、「「ヒンズー成長率」とは有り難くないネーミングだ。
・『豊富な若年層が政権の凶器となる日 グローバルサウスの代表を自認するインドに対して、西側諸国は同国の人権状況を問題視し始めていることも気になるところだ。 米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。 2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 経済が失速すればインドの失業問題がさらに悪化するのは明らかだ。 若年人口が社会の過半を占めるインドでは暴力事件が多発しており、過去には政権を揺るがす事態に発展したこともあった。豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」なのだ。 インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 イスラム教徒への差別の問題も火種となりつつある』、「インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘」、「豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」なのだ。 インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 イスラム教徒への差別の問題も火種となりつつある」、 「豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」」とは、高齢化が激化している「日本」からみると、贅沢な悩みだ。
・『台頭するナショナリズム 米政治学者のフランシス・フクヤマ氏は「インドはかつて宗教的にも言語的にも多様性に富んだ国だったが、現在のインド与党はヒンドウー教のナショナリストの国に変えようとしている。必ず暴力が起きる」と警告を発している(5月27日付AERA)。 モデイ首相についても「州首相時代に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が英国から出ているが、与党サイドは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」とけんもほろろだ。 「世界最大の民主主義国家」と称されるインドだが、西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからなくなっている。 残念ながら、インドは「次の中国」になれないのではないだろうか。 さらに連載記事『習近平から逃げ出した中国人が、アメリカで直面した「過酷な現実」…!その原因となったとある「薬物」の名前』では、いまアメリカで起こる異変について詳しくレポートしよう』、「フランシス・フクヤマ氏は「インドはかつて宗教的にも言語的にも多様性に富んだ国だったが、現在のインド与党はヒンドウー教のナショナリストの国に変えようとしている。必ず暴力が起きる」と警告を発している」、「「世界最大の民主主義国家」と称されるインドだが、西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからなくなっている。 残念ながら、インドは「次の中国」になれないのではないだろうか」、「インド」にはつくずく失望した。
なお、鉄道事故については、まだきちんとした記事がないので、出次第、取上げるつもりだ。
先ずは、本年4月11日付けデイリー新潮が掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤和彦氏による「グローバルサウスの盟主を目指すインドの危うさ モディ首相の触れられたくない過去も問題視」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/04110602/?all=1
・『「中国という全体主義国家は、多方面からの戦略を用いて米国を追い落とし、世界に君臨する超大国になろうとしている」 インド陸軍のパンデ参謀長は3月27日、米誌ニューズウィークのインタビューでこのように述べた。近年のインドの高官としては最も過激な中国批判の1つだ。 パンデ氏は中印国境の最前線で指揮をとるインド軍の最高幹部だ。 インドと 中国が軍事衝突したのは、1962年。両国の間の全長約3400キロメートルに及ぶ実効支配線の一部をめぐっての争いだった。その後、小康状態が続いていたが、2020年6月に、半世紀近くなかった死者を出す衝突が発生し、昨年12月にはインド軍が米国情報機関の支援を得て実効支配線の西側から侵入した中国軍を撃退したとされている。 パンデ氏は「北部国境沿いの軍の配備を見直し、高次の準備態勢を維持している」と自信を示しているが、中国との対立は長期にわたって続くことが懸念されている。 中国との国境紛争を重く見たインド政府は3月中旬、銀行や貿易業者に対して、ロシアからの輸入代金支払いに中国の人民元を使わないように働きかけている(3月13日付ロイター)。 これは、インドがロシア産の原油や石炭の最大の買い手になったことが関係している。 ウクライナ戦争の影響でロシアでは、米ドルに代わり人民元が最も取り引きされている外貨となっている。中国は3月末、アラブ首長国連邦(UAE)産の液化天然ガス(LNG)を人民元建てで購入する契約を成立させた。 エネルギー取引の分野で人民元のプレゼンスが高まっているのにもかかわらず、「インド準備銀行(中央銀行)は人民元による貿易決済に乗り気ではない」とインドの銀行関係者は語り、「政府が人民元の利用を妨げている」と嘆いている。 インド政府はさらに4月から自国通貨ルピー建ての貿易を促進する方針を明らかにしており、マレーシアやミャンマーとの貿易をルピーで決済することを発表している』、「中国との国境紛争を重く見たインド政府は3月中旬、銀行や貿易業者に対して、ロシアからの輸入代金支払いに中国の人民元を使わないように働きかけている」、「インド政府はさらに4月から自国通貨ルピー建ての貿易を促進する方針を明らかにしており、マレーシアやミャンマーとの貿易をルピーで決済することを発表」、「ルピーで決済」は「ルピー」の通貨価値が不安定なので、それほど進まないだろう。
・『「今年はインドが世界を主導するきっかけに…」 中国との確執が通貨の問題に波及した形だが、最近のインドはとにかく鼻息が荒い。インドの経済規模は中国の6分の1に過ぎないが、足元はインドが俄然優勢だからだ。 インドの昨年の実質国内総生産(GDP)は6.7%の成長となり、中国の伸び率を上回った。 ドルベースの昨年の名目GDP(約3兆3800億ドル)は日本の8割に迫っている。 昨年、中国が人口減に転じたのに対し、インドは2060年代まで人口増が続き、17億人に近づくと予測されている。 パンデ氏はこのような現状を踏まえ「インドは今日、世界の舞台で一大勢力として台頭している。現在のインドは、経済成長や他国との戦略的連携を後ろ盾に『グローバルサウス』の声となっている。今年はインドが世界を主導するきっかけとなる分水嶺の年になる」と自信満々だ。 グローバルサウスとは、南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称だ。北半球の先進国と対比して使われることが多い。 ウクライナ情勢を巡り欧米諸国とロシアとの対立が深まる中、国連決議などの場面でグローバルサウスの動向が注目されるようになっている。 成長著しいインドだが、世界銀行による位置づけは「下位中所得国」であり、途上国が直面する問題を当事者として理解できる立場にある。 西側諸国が中国やロシアと対抗する上で、同じ民主主義を看板に掲げるインドを重視するようになっていることも追い風だ。特に、日米豪との「クアッド」の枠組みはインドにとって戦略的な強みとなっている。 モディ首相もこのことを十分に自覚している。西側諸国と良好な関係を武器にグローバルサウスの盟主として、目障りなライバルである中国を追い詰めようとしている』、「グローバルサウスとは、南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称だ」、「ウクライナ情勢を巡り欧米諸国とロシアとの対立が深まる中、国連決議などの場面でグローバルサウスの動向が注目」、「日米豪との「クアッド」の枠組みはインドにとって戦略的な強みとなっている」、なるほど。
・『強権国家に近づいているとの指摘も だが、「世界最大の民主主義国家に危うい一面が目立つようになってきた」との指摘も出てきている。 モディ首相は最近「欧米など先進国のツケをサウスの国々が不当に払わされている」との不満をたびたび口にするようになっている。 モディ首相は3月2日、ブリンケン米国務長官が参加している20カ国・地域(G20)外相会合の場で、米国が築いた第2次世界大戦後の国際秩序を「失敗」と一刀両断した。インドの批判に対し、西側諸国は同国の人権状況を問題視し始めている。 米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 モディ首相についても「州首相時代の2002年に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が持ち上がっているが、植民地時代への恨みが根強く残るインドでは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」との反発が高まるばかりだ。 インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 インドと西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからない。日本でもインドは大きな存在になったが、その距離の取り方は一筋縄ではいかないのではないだろうか。 (藤和彦氏の経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官) はリンク先参照)』、「米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 モディ首相についても「州首相時代の2002年に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が持ち上がっているが、植民地時代への恨みが根強く残るインドでは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」との反発が高まるばかりだ。 インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう』、「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」との「警告」は重く受け止める必要がある。「インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう」、その通りだ。
次に、6月6日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「悪名高き「お役所仕事」が最大障壁…!インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111119?imp=0
・『インドは中国のように経済大国になるか? 世界一の人口大国となることが確実視されるインド経済の存在感が、大きくなっている。 過去20年間、世界経済を牽引してきた中国が、人口が減少に転じ「ピークが過ぎた」との見方が強まっていることが背景にある。 世界経済の減速が懸念される中、「人口が増加し続けるインドが『第2の中国』となる」との期待が高まっているが、はたしてそうだろうか。 インドは世界で最も若年人口の比率が高い国の1つだが、2021年の労働参加率(生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)に占める労働力人口の割合)は46%とアジアで最も低い(日本は84%)。 女性の労働参加率はさらにひどく、世界最低の水準で推移している』、「2021年の労働参加率・・・は46%とアジアで最も低い・・・女性の労働参加率はさらにひどく、世界最低の水準で推移」、若年労働力へ職を提供できないというのは、致命的だ。
・『高度成長できないインドの弱点 中国を始めアジアの国々は、労働集約型の製造業の製品輸出のおかげで多くの雇用を創出できたが、製造業に弱みを抱えるインドは慢性的な雇用不足に苦しめられている。 世界銀行によれば、製造業がGDPに占める割合(2021年時点)は中国が27%、ベトナムが25%であるのに対し、インドは14%に過ぎない。 インドでは過去10年、毎年700万職者が市場に参入してきたが、新規の雇用を満足につくることができなかった。このため、職にありつけない若者は農村にとどまるしかなく、インドでは全労働者の半数近くが農村などで日々を生き抜くための低賃金の仕事に従事している。 「宝の持ち腐れ」になっていると言っても過言ではない』、「製造業に弱みを抱えるインドは慢性的な雇用不足に苦しめられている」、「製造業がGDPに占める割合(2021年時点)は中国が27%、ベトナムが25%であるのに対し、インドは14%に過ぎない。 インドでは過去10年、毎年700万職者が市場に参入してきたが、新規の雇用を満足につくることができなかった。このため、職にありつけない若者は農村にとどまるしかなく、インドでは全労働者の半数近くが農村などで日々を生き抜くための低賃金の仕事に従事している。 「宝の持ち腐れ」になっていると言っても過言ではない」、「宝の持ち腐れ」とは言い得て妙だ。
・『足を引っ張る「お役所仕事」 モデイ政権は「GDPに占める製造業の比率を25%にまで引き上げる」との政策目標を掲げているが、言うは易し、行うは難しだ。 中国一辺倒の投資に不安を感じ、グローバル企業はリスクの分散先としてインドを選択し始めているが、苦戦を強いられている。米アップルは、インドで現地生産の拡大を目指しているが、製造される部品のうちiPhoneの組み立て工場に納品できる合格品が約半分にとどまっている。 インド経済の足かせとなってきた悪名高い「お役所仕事」も変わっていない。 米格付け会社ムーデイーズ・インベスター・サービスは5月23日「政策の実行ベースの遅さやお役所仕事のせいで、製造業やインフラなどのセクターで外国からの投資が減少する恐れがある」と指摘した。 後編記事『「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係』では、インドの内情から経済成長への障壁をさらに検証していこう』、「米アップルは、インドで現地生産の拡大を目指しているが、製造される部品のうちiPhoneの組み立て工場に納品できる合格品が約半分にとどまっている」、これほど「合格品」が低いのは労働力の質も低いと考えざるを得ない。「米格付け会社ムーデイーズ・インベスター・サービスは5月23日「政策の実行ベースの遅さやお役所仕事のせいで、製造業やインフラなどのセクターで外国からの投資が減少する恐れがある」と指摘」、これは深刻だ。
第三に、この続きを、6月6日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111120?imp=0
・『インドを取り巻く火種の数々 過去20年間、世界経済を牽引してきた中国が人口減少に転じたことで、やがて世界一の人口大国となるインドの存在感が高まっている。しかし、残念ながらインドが「第2の中国」となる日は、やってきそうにない。 前編『インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」』でも紹介したとおり、アジア最下位の労働参加率や高度成長に不可欠な製造業に発展の兆しが見られないことが、足を引っ張っているからだ。 さらに近年では、ナショナリズムの台頭から様々な火種がくすぶるようになってきた。 インドで活動するグローバル企業にとってのさらなるリスクは、テロの脅威だ。 統制が厳しい中国とは異なり、インド国内ではイスラム過激派などにテロ事件が多発しており、2008年のムンバイ同時多発テロでは日本人も犠牲になった。 このところ卑劣なテロ事件は発生していないが、インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信しているのが現状だ(3月28日付FNNプライムオンライン)』、「残念ながらインドが「第2の中国」となる日は、やってきそうにない・・・アジア最下位の労働参加率や高度成長に不可欠な製造業に発展の兆しが見られないことが、足を引っ張っているからだ。 さらに近年では、ナショナリズムの台頭から様々な火種がくすぶるように」、「インドで活動するグローバル企業にとってのさらなるリスクは、テロの脅威だ。 統制が厳しい中国とは異なり、インド国内ではイスラム過激派などにテロ事件が多発しており、2008年のムンバイ同時多発テロでは日本人も犠牲になった。 このところ卑劣なテロ事件は発生していないが、インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信しているのが現状だ」、「インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信している」、外資にとっては嫌な国だ。
・『最高峰のエコノミストも「経済減速」を指摘 好調に見えるインド経済にも景気後退の影が忍び寄ってきている。 インド人材採用連盟は5月23日「同国のIT業界で昨年4月から今年3月までの1年間に嘱託社員の雇用が前年に比べ7.7%減少し、約6万人が失業した」と発表した。 識者の間でもインド経済の今後を悲観視する声が強まっている。その代表格は元インド準備銀行(中央銀行)総裁のラグラム・ラジャン氏だ。 ラジャン氏は「高成長を見込める要因が見当たらず、インド経済は減速する」と手厳しい(2023年4月19日付日本経済新聞)。 1950年代から80年代にかけて、インドの経済成長は途上国の中で低かったため、「ヒンズー成長率」と揶揄されてきたが、この用語が再び囁かれるようになっている。インドは過去何度となく高成長の期待を裏切ってきたが、今回も「二の舞」を踏むことになるのだろうか』、「1950年代から80年代にかけて、インドの経済成長は途上国の中で低かったため、「ヒンズー成長率」と揶揄されてきたが、この用語が再び囁かれるようになっている」、「インドは過去何度となく高成長の期待を裏切ってきたが、今回も「二の舞」を踏むことになるのだろうか」、「「ヒンズー成長率」とは有り難くないネーミングだ。
・『豊富な若年層が政権の凶器となる日 グローバルサウスの代表を自認するインドに対して、西側諸国は同国の人権状況を問題視し始めていることも気になるところだ。 米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。 2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 経済が失速すればインドの失業問題がさらに悪化するのは明らかだ。 若年人口が社会の過半を占めるインドでは暴力事件が多発しており、過去には政権を揺るがす事態に発展したこともあった。豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」なのだ。 インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 イスラム教徒への差別の問題も火種となりつつある』、「インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘」、「豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」なのだ。 インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 イスラム教徒への差別の問題も火種となりつつある」、 「豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」」とは、高齢化が激化している「日本」からみると、贅沢な悩みだ。
・『台頭するナショナリズム 米政治学者のフランシス・フクヤマ氏は「インドはかつて宗教的にも言語的にも多様性に富んだ国だったが、現在のインド与党はヒンドウー教のナショナリストの国に変えようとしている。必ず暴力が起きる」と警告を発している(5月27日付AERA)。 モデイ首相についても「州首相時代に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が英国から出ているが、与党サイドは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」とけんもほろろだ。 「世界最大の民主主義国家」と称されるインドだが、西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからなくなっている。 残念ながら、インドは「次の中国」になれないのではないだろうか。 さらに連載記事『習近平から逃げ出した中国人が、アメリカで直面した「過酷な現実」…!その原因となったとある「薬物」の名前』では、いまアメリカで起こる異変について詳しくレポートしよう』、「フランシス・フクヤマ氏は「インドはかつて宗教的にも言語的にも多様性に富んだ国だったが、現在のインド与党はヒンドウー教のナショナリストの国に変えようとしている。必ず暴力が起きる」と警告を発している」、「「世界最大の民主主義国家」と称されるインドだが、西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからなくなっている。 残念ながら、インドは「次の中国」になれないのではないだろうか」、「インド」にはつくずく失望した。
なお、鉄道事故については、まだきちんとした記事がないので、出次第、取上げるつもりだ。
タグ:インド (その2)(グローバルサウスの盟主を目指すインドの危うさ モディ首相の触れられたくない過去も問題視、悪名高き「お役所仕事」が最大障壁…!インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」、「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係) デイリー新潮 藤和彦氏による「グローバルサウスの盟主を目指すインドの危うさ モディ首相の触れられたくない過去も問題視」 「中国との国境紛争を重く見たインド政府は3月中旬、銀行や貿易業者に対して、ロシアからの輸入代金支払いに中国の人民元を使わないように働きかけている」、「インド政府はさらに4月から自国通貨ルピー建ての貿易を促進する方針を明らかにしており、マレーシアやミャンマーとの貿易をルピーで決済することを発表」、「ルピーで決済」は「ルピー」の通貨価値が不安定なので、それほど進まないだろう。 「グローバルサウスとは、南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称だ」、「ウクライナ情勢を巡り欧米諸国とロシアとの対立が深まる中、国連決議などの場面でグローバルサウスの動向が注目」、「日米豪との「クアッド」の枠組みはインドにとって戦略的な強みとなっている」、なるほど。 「米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 モディ首相についても「州首相時代の2002年に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が持ち上がっているが、植民地時代への恨みが根強く残るインドでは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」との反発が高まるばかりだ。 「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」との「警告」は重く受け止める必要がある。「インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう」、その通りだ。 現代ビジネス 藤 和彦氏による「悪名高き「お役所仕事」が最大障壁…!インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」」 「2021年の労働参加率・・・は46%とアジアで最も低い・・・女性の労働参加率はさらにひどく、世界最低の水準で推移」、若年労働力へ職を提供できないというのは、致命的だ。 「製造業に弱みを抱えるインドは慢性的な雇用不足に苦しめられている」、「製造業がGDPに占める割合(2021年時点)は中国が27%、ベトナムが25%であるのに対し、インドは14%に過ぎない。 インドでは過去10年、毎年700万職者が市場に参入してきたが、新規の雇用を満足につくることができなかった。このため、職にありつけない若者は農村にとどまるしかなく、インドでは全労働者の半数近くが農村などで日々を生き抜くための低賃金の仕事に従事している。 「宝の持ち腐れ」になっていると言っても過言ではない」、「宝の持ち腐れ」とは言い得て妙だ。 「米アップルは、インドで現地生産の拡大を目指しているが、製造される部品のうちiPhoneの組み立て工場に納品できる合格品が約半分にとどまっている」、これほど「合格品」が低いのは労働力の質も低いと考えざるを得ない。 「米格付け会社ムーデイーズ・インベスター・サービスは5月23日「政策の実行ベースの遅さやお役所仕事のせいで、製造業やインフラなどのセクターで外国からの投資が減少する恐れがある」と指摘」、これは深刻だ。 藤 和彦氏による「「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係」 「残念ながらインドが「第2の中国」となる日は、やってきそうにない・・・アジア最下位の労働参加率や高度成長に不可欠な製造業に発展の兆しが見られないことが、足を引っ張っているからだ。 さらに近年では、ナショナリズムの台頭から様々な火種がくすぶるように」、「インドで活動するグローバル企業にとってのさらなるリスクは、テロの脅威だ。 統制が厳しい中国とは異なり、インド国内ではイスラム過激派などにテロ事件が多発しており、2008年のムンバイ同時多発テロでは日本人も犠牲になった。 このところ卑劣なテロ事件は発生していないが、インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信しているのが現状だ」、「インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信している」、外資にとっては嫌な国だ。 「1950年代から80年代にかけて、インドの経済成長は途上国の中で低かったため、「ヒンズー成長率」と揶揄されてきたが、この用語が再び囁かれるようになっている」、「インドは過去何度となく高成長の期待を裏切ってきたが、今回も「二の舞」を踏むことになるのだろうか」、「「ヒンズー成長率」とは有り難くないネーミングだ。 「インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘」、「豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」なのだ。 インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 イスラム教徒への差別の問題も火種となりつつある」、 「豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」」とは、高齢化が激化している「日本」からみると、贅沢な悩みだ。 「フランシス・フクヤマ氏は「インドはかつて宗教的にも言語的にも多様性に富んだ国だったが、現在のインド与党はヒンドウー教のナショナリストの国に変えようとしている。必ず暴力が起きる」と警告を発している」、「「世界最大の民主主義国家」と称されるインドだが、西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからなくなっている。 残念ながら、インドは「次の中国」になれないのではないだろうか」、「インド」にはつくずく失望した。 なお、鉄道事故については、まだきちんとした記事がないので、出次第、取上げるつもりだ。
中国情勢(軍事・外交)(その15)(なぜ中国の科学技術は飛躍的に向上したのか…中国のスパイがアメリカの研究機関から山ほど盗んだもの 留学生や研究者を脅して機密情報を盗ませる、国内13大学が「中国政府の宣伝工作拠点」に?“孔子学院”の危険な実態、アメリカ密入国めざす中国人が急増 一体なぜ?教師やエンジニアら知識人も逃亡) [世界情勢]
中国情勢(軍事・外交)については、本年2月21日に取上げた。今日は、(その15)(なぜ中国の科学技術は飛躍的に向上したのか…中国のスパイがアメリカの研究機関から山ほど盗んだもの 留学生や研究者を脅して機密情報を盗ませる、国内13大学が「中国政府の宣伝工作拠点」に?“孔子学院”の危険な実態、アメリカ密入国めざす中国人が急増 一体なぜ?教師やエンジニアら知識人も逃亡)である。
先ずは、本年3月15日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの池上 彰氏による「なぜ中国の科学技術は飛躍的に向上したのか…中国のスパイがアメリカの研究機関から山ほど盗んだもの 留学生や研究者を脅して機密情報を盗ませる」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67295
・『中国は世界でどのような諜報活動を行っているのか。ジャーナリストの池上彰さんは「情報機関に属する職員だけではなく、留学生や研究者などの民間人が国から要請を受け機密情報を盗むなどのスパイ活動を行っている」という――。(第1回) ※本稿は、池上彰『世界史を変えたスパイたち』(日経BP)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『アメリカが警戒する「孔子学院」の正体 2010年代以降、米中対立が強まる中、アメリカが「中国がアメリカ国内の対中言論をコントロールするプロパガンダの拠点になっている」として警戒しているものの一つが、各大学などに設置されていた「孔子学院」です。 表向きには「中国語や中国文化を無償で教える教育センター」だとして、中国はその地域の教育機関などと連携し、世界中にこの孔子学院を設置してきました。中でもアメリカはこの孔子学院の最大の進出国で、その数は最盛期には120校にものぼっていました。 しかしその実態は中国のインテリジェンス機関である統一戦線工作部から資金や指示の出ている、まぎれもない中国の工作機関なのではないか、との指摘が相次ぎ、2014年頃から2020年までの間にかなりの数の孔子学院が閉鎖されてきました。 こうした、一見スパイ活動や対外情報活動とは関係なさそうな組織を使うのは中国の得意技です。他にも、海外に多く居住している中国系の住民(華僑)なども含め、関係国との間に友好団体を作り、文化や芸術、交流活動などを行いながら、実際には中国・共産党の意向に沿った情報活動や、中国に友好的な外国人を獲得し、育てる役割も果たしています』、「「孔子学院」・・・表向きには「中国語や中国文化を無償で教える教育センター」だとして、中国はその地域の教育機関などと連携し、世界中にこの孔子学院を設置してきました。中でもアメリカはこの孔子学院の最大の進出国で、その数は最盛期には120校にものぼっていました。 しかしその実態は中国のインテリジェンス機関である統一戦線工作部から資金や指示の出ている、まぎれもない中国の工作機関なのではないか、との指摘が相次ぎ、2014年頃から2020年までの間にかなりの数の孔子学院が閉鎖」、「最盛期には120校・・・かなりの数の孔子学院が閉鎖」、「文化や芸術、交流活動などを行いながら、実際には中国・共産党の意向に沿った情報活動や、中国に友好的な外国人を獲得し、育てる役割も果たしています」、手の込んだ偽装工作だ。
・『中国の法律にある恐ろしい内容 さまざまな理由で海外にいる中国人を、情報機関の職員でもないのに自国の情報活動に利用する。現在も、これが中国のインテリジェンス活動の大きな特徴です。 しかも、中国では2017年に国家情報法が施行されました。この法律には「いかなる組織及び個人も、法律に従って国家の情報活動に協力し、国の情報活動の秘密を守らなければならない。国は、そのような国民、組織を保護する」(第7条)と定められています。 つまり、海外にいる中国人であっても、「国家に必要な情報を提供しなさい」と命じられれば、それに従わなければならない、ということです。 実際、日本の大学に留学していた中国人留学生が、サイバースパイの片棒を担がされていた事件が発覚しています。 中国のハッカー集団が足場として使っていたレンタルサーバーを、留学生が偽名で契約していたのです。この留学生は、中国在住の女性から「レンタルサーバーを偽名で借りてほしい」「日本のUSBメモリを購入して中国に送ってほしい」などと頼まれ、言うことを聞いてしまったのです。 しかし徐々に注文がエスカレートし、「日本企業しか買えないセキュリティーソフトを、日本企業に成りすまして購入しろ」と指示され、断ったところ「国に貢献しろ」などと協力を強要されたといいます』、「「日本企業しか買えないセキュリティーソフトを、日本企業に成りすまして購入しろ」と指示され、断ったところ「国に貢献しろ」などと協力を強要された」、酷い話だ。
・『「中国にいる親族がどうなってもいいのか」 留学生など、一般の中国人をこうした工作に参加させる場合、「祖国に貢献したくないのか」と迫るケースの他に、「中国にいる親族がどうなってもいいのか」と脅迫するケースもあるようです。 留学生に協力を迫ったこの女性の夫は、中国人民解放軍のサイバー攻撃部隊に所属していたこともわかっています。そして女性の夫が所属する部隊は、実際に日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)や航空関連企業に対してサイバー攻撃を行っていたのです。 元留学生は間接的にかかわったにすぎませんが、全体としてみれば日本に対するサイバー攻撃の一端を担ったことになってしまいました。 中国軍のサイバー攻撃のために、在外中国人、それも留学生まで使う。こうした中国のやり方に、アメリカは警戒感を強めています。 2022年7月には、ロンドンでMI5(保安部)のマッカラム長官と、FBI(アメリカ連邦捜査局)のレイ長官が合同で企業向けの講演会を行い、「中国のやり方に気をつけろ!」と警告を発しました。 それによれば、中国は欧米企業の機密情報を盗むためにさまざまな手段を講じており、サイバー攻撃はもちろん、協力者を使った情報の窃取を行っているといいます。 そして習近平が掲げた「中国製造2025」、つまり中国が2025年までに製造業で世界の頂点に立つという目標を達成するために、手段を選ばず攻撃を仕掛けてきている、と断言しました』、「「中国にいる親族がどうなってもいいのか」と脅迫するケースもある」、「ロンドンでMI5(保安部)のマッカラム長官と、FBI(アメリカ連邦捜査局)のレイ長官が合同で企業向けの講演会を行い、「中国のやり方に気をつけろ!」と警告」、「「中国製造2025」・・・目標を達成するために、手段を選ばず攻撃を仕掛けてきている、と断言」、大いに気を付けるべきだ。
・『スパイの約4割が民間人 最も気をつけるべきは「千粒の砂」という戦略で、「中国共産党は、かつてのように外交官を偽装する工作員を使わない。さまざまなチャンネルを通じて情報を集めている」と指摘したのです。 「千粒の砂」とは、いわゆる工作員や外交官を使うのではなく、世界中に散らばっている中国人をその都度、情報活動に利用する戦略のことです。 もともと中国は、特定のスパイに基づかず、多くの人手を使ってできるだけ多くの断片情報を集め、そこから使える情報を精査する手法を使っていました。これを「千粒の砂の中に一粒の砂金がある」と称したことから、中国の情報活動の姿勢や方針が「千粒の砂」戦略と呼ばれるようになりました。 実際、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が、2000年から2019年初頭にかけてアメリカで起きた中国と関連したスパイ事件を確認したところ、137件の事件報告のうち、57%が「中国の軍人または政府職員」だった一方、36%が「中国の民間人」だったと指摘されています。 実にスパイ事件の4割近くが、特別な訓練を受けたわけではない「民間人」とは驚きます』、「スパイ事件の4割近くが、特別な訓練を受けたわけではない「民間人」とは驚きます」、その通りだ。
・『中国の科学技術力が上がった要因 こうした、広範囲の一般人を情報活動に使う中国の戦法を前に、防諜側は、一体誰を、どこまでの範囲の人間をスパイと考えて対処すればいいかがわからなくなります。 また、全体で見れば大きなスパイ行為であっても、多くの人間が少しずつ関係し、しかも当人はスパイ行為を行っているという自覚もないとなれば、仮に発覚しても司法で裁くことができません。 さらに留学生で言えば、先のサイバー事件のように具体的な指示を受けるだけでなく、実際に留学生として欧米の大学で見聞きした情報を、中国に持ち帰って祖国の発展に生かせ、という大きな方針も打ち出されています。 受け入れる欧米側の大学としては、優秀な中国人留学生や研究者であればあるほど、自国での研究・開発成果を中国に持ち帰られる危険性が常に存在している、ということになってしまいます。 また、実際に研究者の立場で世界中の研究機関や催しに参加し、そこで情報を得たり、意見交換したり、各国の研究者と知己を得たりすることは、当然、スパイ行為にはあたりません。そのため、中国はこうした立場の人間や、それに成りすました工作員をうまく使い、アメリカなどの科学技術情報を得ては国家の技術力向上に生かしていたようです』、「受け入れる欧米側の大学としては、優秀な中国人留学生や研究者であればあるほど、自国での研究・開発成果を中国に持ち帰られる危険性が常に存在している、ということになってしまいます」、「中国はこうした立場の人間や、それに成りすました工作員をうまく使い、アメリカなどの科学技術情報を得ては国家の技術力向上に生かしていたようです」、なるほど。
・『「豊かになれば民主化する」と思っていたが 中国は1988年に中性子爆弾の開発に成功しました。FBIはこれを「中国が独自に開発したものではなく、アメリカの国立研究所から獲得されたものだ」と分析しています。特にアメリカの軍事技術にかかわる研究や開発を行っている機関は、中国としては狙い目です。 アメリカは近年の中国の技術開発能力の飛躍は、留学生や研究者、さらにサイバー攻撃によってアメリカから盗んだ技術によって達成されたものであると考えているのです。 こうした中国式の情報収集は1970年代から行われてきたのですが、ここへきてアメリカが警戒感をあらわにしているのは、「中国は豊かになれば民主化し、共産党一党独裁体制から脱却するだろう」という見通しが間違っていたことを認識したからです。 さらに中国の科学技術力の伸びが想像以上に早く、サイバー領域での中国の活動があまりに活発なことが影響しているのでしょう。そのサイバー攻撃の足掛かりになっているのが、中国製の通信機器なのではないか』、「ここへきてアメリカが警戒感をあらわにしているのは、「中国は豊かになれば民主化し、共産党一党独裁体制から脱却するだろう」という見通しが間違っていたことを認識したからです」、甘い認識というより期待の誤りを遅まきながら、気付いたようだ。
・『日本はどうするのか 機器にバックドア(外部からシステムにアクセスできるような経路=ドアのこと。中国の場合は海外に販売する際に前もってこのドアを作っておき、外部からの情報窃取やサイバー攻撃の経路としている)が仕掛けられていて、米国内の通信情報がすべて中国に筒抜けになっているのではないかと危惧しているのです。 特に中国の通信大手企業であるファーウェイに対する警戒感が強まっていますが、そこにはバックドアの問題に加え、国家情報法の規定に基づき、「ファーウェイが業務上、アメリカで知り得た情報を、中国当局からの要請があれば政府に提供するのではないか」と考えられていることも含まれています。 これが、米中対立の中でも「経済安全保障」と言われる分野で、アメリカから中国製品の排除が進められている一番の理由です。 中国製品を排除し、中国系企業を減益させることで、次世代製品の開発や、戦略物資と言われる半導体製造技術を磨くための資金を絶ちたい。 アメリカの研究を中国人留学生や研究者が持ち帰るのを阻止し、中国の科学技術力の成長を鈍化させようという狙いがあるのです。 米中の間に挟まれた日本も、当然無関係ではいられません』、「日本」でも「経済安全保障」の視点で「中国製品」への警戒が高まっており、警戒心を一層高めて臨むべきだろう。
次に、5月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村 悠氏による「国内13大学が「中国政府の宣伝工作拠点」に?“孔子学院”の危険な実態」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323000
・『米国で閉鎖が相次ぐ孔子学院 国内13大学で設置が確認 政府は5月12日に閣議決定した答弁書において、国内の少なくとも13大学に、中国政府による教育機関「孔子学院」が設置されていると明らかにした。 日本で設置が確認されたのは、早稲田大、立命館大、桜美林大、武蔵野大、愛知大、関西外国語大、大阪産業大、岡山商科大、北陸大、福山大、山梨学院大、立命館アジア太平洋大、札幌大の13大学である。 この孔子学院は、中国政府が世界各国の大学などに非営利教育機構として設置を進めていたが、中国共産党のスパイ・プロパガンダ(政治宣伝)機関との指摘が相次ぎ、文部科学省は運営の透明化を大学側に求めていた。 米国においても2000年代後半~2010年代前半までに米国大学100校超のキャンパスにおいて開講されていたが、学問・表現の自由の侵害およびスパイ活動・知的財産窃盗などの可能性について連邦議会が懸念を表明、米国内では同学院の閉鎖が相次いでいる。だが、世界全体で見てみると、今も160以上の国や地域に550を超える孔子学院が存在するといわれる』、「日本で設置が確認されたのは・・・の13大学である」、「米国大学100校超のキャンパスにおいて開講されていたが・・・米国内では同学院の閉鎖が相次いでいる」、なるほど。
・『孔子学院の実態と要注意の国内大学とは 孔子学院は、2004年に「外国における中国語・中国文化の普及」を目的として韓国に初めて設立された。 その形態は、非政府組織(NGO)であるが、その実態は中国教育部(文部科学省に相当)傘下の国家漢語国際推進指導小組弁公室(漢語事務局)が運営機関であり、背後で中国共産党指導部が意思決定をしている国家プロジェクトである。 ちなみに、孔子学院には儒学の始祖「孔子」の名を冠しているが、儒学に関する教育機関では一切ない。 日本で孔子学院を開校する際には、大学と漢語事務局との間で契約を結ぶ。法令による設置認可や届け出が必要ないため、文部科学省などの認可は不要である。 そのため、孔子学院の運営に関しては、中国政府が設置先の大学に資金提供をし、教職員の採用方法などについても契約で自由に取り決めることができる。 日本の大学からすれば、孔子学院設置費用や運営費は、中国政府が援助するため、大学側はほとんど負担することなく、中国語教育を安価で学生に提供でき、学生も併せて募集できるため、メリットが多い。 日本における孔子学院設置の流れは以下の通りである。 (図表:日本における孔子学院設置の流れ はリンク先参照) 上記孔子学院設置校のうち、★印を付けた3大学における孔子学院は要注意である(その1つである工学院大学孔子学院は21年3月末閉鎖)。 まず、工学院大学と提携していた北京航空航天大学は、中国の軍需企業を管理する国家国防科学技術工業局に直属する国防七校の1つであり、同大は、大量破壊兵器であるミサイル開発の疑いがあるとして、貨物や技術の輸出時には経済産業省の許可が必要な「外国ユーザーリスト」に記載されている。 また、立命館大学、早稲田大学と提携している北京大学は、準国防大学といわれ、国家国防科学技術工業局が管理している大学である』、「日本の大学からすれば、孔子学院設置費用や運営費は、中国政府が援助するため、大学側はほとんど負担することなく、中国語教育を安価で学生に提供でき、学生も併せて募集できるため、メリットが多い」、ただ、「北京航空航天大学は・・・大量破壊兵器であるミサイル開発の疑いがあるとして、貨物や技術の輸出時には経済産業省の許可が必要な「外国ユーザーリスト」に記載」、「北京大学は、準国防大学といわれ、国家国防科学技術工業局が管理している大学」、など問題も抱えている。
・『孔子学院が危険な3つの理由 孔子学院の危険性は3点ある。 一点目は、孔子学院と受け入れ大学側との契約内容が不透明であることだ。 米国上院国土安全保障・政府問題委員会の報告によれば、 ●中国政府が孔子学院に関連し、米国教育機関に1億5000万ドル(約200億円)以上の資金を提供 ●中国政府が孔子学院の予算・教育内容・人事の全てを管理 ●孔子学院の教職員が中国の国益擁護を誓約 ●孔子学院と大学との契約内容を非公開 としており、極めて問題のある契約を孔子学院と受け入れ大学側とで締結している可能性があると指摘。日本においても契約内容は文部科学省などが審査する構造になっていない状況となっている。 二点目は、文部科学省をはじめ日本政府機関の審査などを経ずに、日本の大学内に中国政府の統制下にある機関(孔子学院)が設置されるため、大学および日本の自治に極めて重大な懸念があることである。 中国共産党のスパイ機関・プロパガンダ工作を行うと世界から指摘を受けている孔子学院に対し、日本はその設置を許容したままとなっている。 なお、一部メディアによれば、2010年に大阪産業大学の理事が孔子学院を運営する漢語事務局をスパイ機関と呼んだことで、キャンパス内の中国人留学生などから大きな反発を受けて謝罪して辞任し、この話が中国共産党機関紙の人民日報に掲載されたという。 いずれにせよ、中国政府の統制の下、教育内容が管理され、教育の自由を侵害している。これが、後述のプロパガンダ工作につながる。) 三点目は、プロパガンダ工作・スパイ活動の危険性である。 それは具体的にどのようなものなのか、以下解説したい』、「孔子学院と受け入れ大学側との契約内容が不透明」、「文部科学省をはじめ日本政府機関の審査などを経ずに、日本の大学内に中国政府の統制下にある機関(孔子学院)が設置されるため、大学および日本の自治に極めて重大な懸念がある」、「プロパガンダ工作・スパイ活動の危険性」、やはり大きな問題がありそうだ。
・『孔子学院を使った中国政府のプロパガンダ工作とは 孔子学院によるプロパガンダ工作は「シャープパワー」と位置付けられている。 シャープパワーとは、軍事力などの「ハードパワー」と、文化・教育・価値観といった「ソフトパワー」との中間に位置付けられている。 一般的に、ソフトパワーによって相手国の世論に対し、自国に対する親近感や好感を醸成し、対象国の世論を味方につけて自国の利益に資するようにする手法をパブリック・ディプロマシーという。 孔子学院はその手法の代表例であったが、中国のような権威主義国家ならではの強引・横暴な要素が大きいことから、シャープパワーとして批判されている。 その手法はこうだ。 まず、孔子学院において、友好的な文化・教育交流として、中国の文化や言語に多く触れてもらう。そして、学生に中国の文化に親しみを持たせた上で、中国への留学や招待を実施し、親中派として育て上げる。注意すべきは、このプロセスにおいてウイグル人権問題や香港弾圧について触れず、台湾問題や尖閣問題などについては中国の主張をソフトに教育・浸透させていくのだ。 中国に長く留学した私の知人(日本人)と会話した際、彼にウイグル人権問題の話題を投げかけてもけげんそうな顔を浮かべ、「留学して思ったが、そもそも証拠がないだろう。中国の現地では誰も問題にしていない」などとけむに巻こうとする。 尖閣問題についても、「中国の主張も聞かなければならない。日本の主張ばかり聞いても仕方ない」と中国目線で答えるのだ。さらに、「中国に来ればわかる」とまで言われてしまった(私が中国に行ったら、おそらく反スパイ法で拘束されるだろう)。 また、孔子学院の社会人学生として、例えばメディア関係の人間を中国旅行などに誘い、現地の“良い部分”の情報に多く触れ、親中派として育て上げる。同様の手法は企業幹部や政治家にも及ぶだろう。 要は、孔子学院を経て中国に“都合の良い情報”のみを与え、可能であれば感化させ、親中派を孔子学院の設置国で拡大させていくプロパガンダ工作である。そして、こうした取り組みが、日本の有力な大学において、日本政府(文部科学省)が関知することなく行われているのだ。 ちなみに、中国による工作はこれだけではない。 例えば、日本国際問題研究所の桒原響子氏によれば、台湾有事における一つの想定として、中国は、日本と米国の分断を目指し、「台湾有事における在日米軍や自衛隊の活動により、日本は戦争に巻き込まれる」と訴えることで、日本の軍事アレルギーを刺激し、批判的なデモや抗議活動を活発化させようとしていると述べている。 台湾有事に限らず、これに似た状況は、既に日本国内でも散見されているが、その背景に中国の思惑が働いていることは明白であろう』、「一般的に、ソフトパワーによって相手国の世論に対し、自国に対する親近感や好感を醸成し、対象国の世論を味方につけて自国の利益に資するようにする手法をパブリック・ディプロマシーという。 孔子学院はその手法の代表例であったが、中国のような権威主義国家ならではの強引・横暴な要素が大きいことから、シャープパワーとして批判されている」、「孔子学院を経て中国に“都合の良い情報”のみを与え、可能であれば感化させ、親中派を孔子学院の設置国で拡大させていくプロパガンダ工作である。そして、こうした取り組みが、日本の有力な大学において、日本政府(文部科学省)が関知することなく行われているのだ」、恐ろしい主権の侵害だ。
・『孔子学院によるスパイ活動とは まず、孔子学院が設置されている大学が保有する研究情報などの知的財産に加え、中国人留学生のコミュニティー情報、有力人物の人脈等について極めて近くで触れられる環境にある。 また、中国の「千粒の砂戦略」のように、中国はビジネスマンや留学生などのさまざまなチャネルを利用して技術情報の窃取を試みる。事実、中国人留学生による諜報事件は近年、日本国内でも幾度か検挙されている。 特に悪質なのは、中国政府機関系の人間が善意の留学生に接触し、スパイ活動に加担させる点だ。 2008年夏、北京五輪の聖火リレーが開かれた際、中国大使館などの指示を受け、中国人留学生学友会を主とした中国人留学生が全国から動員されたが(当時の報道によると、3000~5000人が集まったとされる)、善意の留学生であれ、中国政府の意向には従順である。したがって、中国政府が孔子学院を通じ、情報収集や工作活動を指示すること、または同活動にリクルートすることは当然想定される。 さらに、3月初旬に、日本に留学していた女子留学生が香港に一時帰国した際、SNSで香港独立に関する情報を流したとして国家安全維持法違反の容疑で逮捕された件や、中国非公式警察による在日中国人コミュニティに入り込んだ監視活動を鑑みても、孔子学院がプロパガンダ工作を行うだけではなく、これら反体制動向の監視活動に関与、情報提供などの支援を行っていると推察することもできる』、「中国政府が孔子学院を通じ、情報収集や工作活動を指示すること、または同活動にリクルートすることは当然想定される・・・孔子学院がプロパガンダ工作を行うだけではなく、これら反体制動向の監視活動に関与、情報提供などの支援を行っていると推察することもできる」、なるほど。
・『孔子学院に対して政府は対応策を示すべき 今回、参政党の神谷宗幣参院議員の質問主意書に答えた形で、報道において孔子学院がクローズアップされた。 2021年には、参議院文教科学委員会質問において、自由民主党の有村治子参議院議員が孔子学院について取り上げ、萩生田光一文部科学相(当時)が初めて孔子学院への対応を明言した。また、過去には自由民主党の杉田水脈衆院議員が予算委員会(第四分科会)において、孔子学院について取り上げている。 これまで、孔子学院について、各国が閉鎖などの措置を進める中で、日本においてはその対応が明確になされることはなく、前述の議員たちの行動によってクローズアップされては世間からの関心が薄れ…ということを繰り返している。この状況は、現在の厳しい国際情勢の中で日本の立場として懸念すべきではないだろうか。 日本として明確な対応策を示す必要がある。 そして、社会もこの問題について関心を高めるべきだろう。 最後に断っておくが、中国の文化に触れ、中国の言語を学び、互いの理解を深めるのは素晴らしいことであり、筆者にも素晴らしい中国人の友人がいる。 一方で、本稿において、それとは区別して孔子学院への懸念に対し、社会において改めて認識され、日本の対策がわずかでも進むことを期待したい』、「孔子学院に対して政府は」、大学任せにせず、「対応策を示すべき」、その通りだ。
第三に、5月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家・ジャーナリストの莫 邦富氏による「アメリカ密入国めざす中国人が急増、一体なぜ?教師やエンジニアら知識人も逃亡」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323114
・『米国に密入国した密航者の中に現れた中国人 深夜、メキシコと米国との国境地帯。地続きの国境線の向こう側に立っている米国の警察官が、懐中電灯で国境線に沿って作られた鉄条網のメキシコ側の河畔を照らしている。なぜか。 群衆がその河畔を移動しているのだ。中には乳飲み子を抱えている男性もいる。米国に密入国しようとする者を取り締まる米国の警察官が、照明の便宜を与えているこの滑稽な光景に、今日の米国密入国における現状の一つの側面を見いだすことができる。 メキシコと米国との国境を突破して米国に密入国した人たちの群れに、最近、新しい顔が増えた。中国人だ。 中南米ルートを使って米国とメキシコの国境にたどり着いた中国国民の数は最近急増しており、米国国土安全保障省の統計によると、昨年10月以降、中国人密入国者が6500人を超え、前年同期の15倍に跳ね上がり、歴史的なピークに達したという。 私は、1990年代初頭、中国人密航者の非合法旅行を操る業者「蛇頭」と密航者たちを追跡して取材したことがあるだけに、このニュースを知り、大きな驚きを覚えた。中国社会も大きく変化し、中国人の密航者はいなくなったと思っていたからだ』、「昨年10月以降、中国人密入国者が6500人を超え、前年同期の15倍に跳ね上がり、歴史的なピークに達した」、「米国」への「密入国者」で「中国人」が急増しているとの報には驚かされた。
・『中国人密航者を操る『蛇頭』、やがて下火になったが… 1994年に、私が日本語で書いたノンフィクション書籍『蛇頭』は日本でベストセラーとなった。ベトナム難民を装った福建省出身の密航者が多かった時期にも一致したため、同書に対する日本社会の関心度が高く、日本メディアでの露出も多かった。 故・立花隆さんは『週刊文春』の連載で『蛇頭』を取り上げ、絶賛してくれた。テレビ局をはじめ、1日で7、8社のメディアの取材を受けたこともある。日・米・英・仏・独・露・伊などの国々の多くのメディアに取り上げられ、中国でも話題になり、世界知識出版社が『点撃蛇頭』という書名で中国語版を出版してくれた。 出版後の波及効果も大きかった。『蛇頭』を読んだ映画評論家の馳星周さんが同書にインスピレーションを得て冒険小説『不夜城』を書いた。本が出版された時、馳星周さんは『蛇頭』を参考にして書いたことをわざわざ本の中に明記していた。 『蛇頭』は、福建省出身の密航者問題で頭を痛めた日本の警察当局からも注目された。ある地方自治体の警察本部が一度で500部を購入した。警察学校では『蛇頭』が警察研修用の副読本にもなり、おかげで私の名前を覚えた警察官も相当いた。 香港の映画監督・映画プロデューサーのイー・トンシン(爾冬陞、Derek Yee)さんは『蛇頭』を読んで、新宿を舞台にした映画『新宿インシデント』(中国語は「新宿事件」)を作った。2009年に公開されたこの映画の主演はジャッキー・チェンさんで、日本人の映画俳優陣には、竹中直人さん、長門裕之さんらがいた。映画のエンディングに、私の名前も入っている。 中国経済の急速な発展で、08年北京オリンピック以降、多くの中国人が自由に海外旅行へ出られるようになり、いまや多くの国々の観光事業を支える重要な顧客にもなった。こうした社会事情の変化もあり、『蛇頭』もやがて絶版となった。 ベストセラーの作品が絶版となったことに対し、私はむしろ中国社会の進歩を表した一つの現象だと受け止め、中国はもう密航者を作りださないだろうと信じた。 こう信じていただけに、米国とメキシコとの国境を目指す中国人密入国者が大勢いるという最新の報道を読んだ私は絶句したのだ』、「中国経済の急速な発展で、08年北京オリンピック以降、多くの中国人が自由に海外旅行へ出られるようになり、いまや多くの国々の観光事業を支える重要な顧客にもなった。こうした社会事情の変化もあり、『蛇頭』もやがて絶版となった・・・もう密航者を作りださないだろうと信じた。 こう信じていただけに、米国とメキシコとの国境を目指す中国人密入国者が大勢いるという最新の報道を読んだ私は絶句した」、なるほど。
・『南米まで行けば…米国への密航に希望を持つ中国人 15年に米国の国境警備隊は、米国国境を密航という手段で突き破ろうとした中国出身の密航者を48人取り押さえた。しかし、14年まで米国当局には記録がないとし、「(同国境で)中国国民を捕まえたことは一度もない」と述べた。 しかし、22年末から情勢は急転した。米国への密入国を狙う群れの中にいる中国人は、日を追うごとに増加しているのだ。ある米国在住の中国人関係者はSNSを通しての私の取材に、次のように述べた。 「今年3月までにパナマにある難民キャンプはほとんど中国人に占領されている。ある現地の撮影者から、1日に車十数台分の密航者が運び込まれていて、ほとんどの乗客は中国人だったと証言があった。パナマ政府の発表によると、今年1月から3月の間に3855人の中国人密航者がコロンビアとパナマの国境地帯にあるダリエン地峡を通過した。目的地はアメリカだ」 太平洋の端にある中国から遠く離れた米国までの道のりは遠い。中国のパスポート所持者に対してビザ免除措置を与える南米の国が増えたことで、米国に近い南米のいくつかの国までは飛行機で移動することができるようになった。米国への密入国を希望する人にとっては、好都合だ。 エクアドルは、現在多くの中国人が選んだ重要な着地点である。そこからは「蛇頭」が引率する隊列について徒歩で行進する。最後は米国とメキシコとの国境を突破すれば、米国入国が実現できる。 拙著『蛇頭』を取材していた頃、蛇頭は比較的貧しい暮らしをしていた福建省出身者がほとんどを占める密航者を「鴨子(カモ)」と呼んでいた。しかし、いまは、知識人が多く、密航者は自らのことを「走線人(ルート走破者)」と呼ぶ。密航者の構成内容の変化に、中国の社会事情が色濃く影を落としている』、「「今年3月までにパナマにある難民キャンプはほとんど中国人に占領されている。ある現地の撮影者から、1日に車十数台分の密航者が運び込まれていて、ほとんどの乗客は中国人だったと証言があった。パナマ政府の発表によると、今年1月から3月の間に3855人の中国人密航者がコロンビアとパナマの国境地帯にあるダリエン地峡を通過した。目的地はアメリカだ」、「中国のパスポート所持者に対してビザ免除措置を与える南米の国が増えたことで、米国に近い南米のいくつかの国までは飛行機で移動することができるようになった。米国への密入国を希望する人にとっては、好都合だ」、「ビザ免除措置を与える南米の国が増えた」ことが引き金になっていたとは皮肉だ。
・『中国人密航者は本国で「いい職業」についていた人も多い 米国に密入国できた中国人を助けるために、米国の中国系住民は生活品や食品などを寄付する支援活動を開始した。 ロサンゼルスにほど近い郊外都市・モントレーパークで行われた寄付活動に参加した友人は現場の光景に驚いた。 「寄付品を受け取りに来る人が非常に多い。ホテルの周りに長い列ができている。男も女もいて、年長者は50歳前後、幼い者は10代前半。彼らは一人一人身なりが清潔で、顔つきや行動が落ち着いている。想像していた密航者のような苦労を重ね、ろうばいしている姿は見られない」 友人が寄付活動を呼びかけたリーダーに確認したら、以下のような情報を得た。 「密航者たちは山東、江蘇、浙江、湖北、陝西など多くの省から来ている。中国ではいい職業を持っていた。その多くが中国の自動車免許証を持っていることから、中国では車を所有していたことがわかる。職業もさまざまだ。以前の密航者のほとんどは福建省の農村出身だったが、いまは中学校の教師やエンジニア、保険外交員、金融業従事者、さらには自分で会社を作ったことがある人も多い」 彼らは皆共通語で交流している。多くの人がパソコンを使い、英語ができる人も結構いる。インターネットを利用して、自分の子どものために米国の学校に入学手続きを申請することもできる。寄付された書籍を選ぶ人もいた。 しかし、厳しい密航移動や海外の移民生活に耐えられない人も多い。せっかくメキシコに着いたものの、密航ルートの厳しさを実感して、米国への密入国をあきらめ、所持している中国パスポートを使って、そのまま中国に戻った人もいれば、米国に運よく密入国できたが、非合法移民の日常に動揺を覚え、住み慣れた中国に帰る選択をした人もいたという。 『蛇頭』絶版後、その続編を書く必然性はもうないと思っていたが、ひょっとしたら、続編を読みたいという市場ニーズがまた出てきそうな気がした。本棚に飾っている『蛇頭』を見つめながら、ぼうぜん自失になった』、「「密航者たちは山東、江蘇、浙江、湖北、陝西など多くの省から来ている。中国ではいい職業を持っていた。その多くが中国の自動車免許証を持っていることから、中国では車を所有していたことがわかる。職業もさまざまだ。以前の密航者のほとんどは福建省の農村出身だったが、いまは中学校の教師やエンジニア、保険外交員、金融業従事者、さらには自分で会社を作ったことがある人も多い」 彼らは皆共通語で交流している。多くの人がパソコンを使い、英語ができる人も結構いる」、「せっかくメキシコに着いたものの、密航ルートの厳しさを実感して、米国への密入国をあきらめ、所持している中国パスポートを使って、そのまま中国に戻った人もいれば、米国に運よく密入国できたが、非合法移民の日常に動揺を覚え、住み慣れた中国に帰る選択をした人もいたという」、中流階級らしい行動だ。今後、中南米経由の「米国」「密入国」がどうなるのか、注目したい。
先ずは、本年3月15日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの池上 彰氏による「なぜ中国の科学技術は飛躍的に向上したのか…中国のスパイがアメリカの研究機関から山ほど盗んだもの 留学生や研究者を脅して機密情報を盗ませる」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67295
・『中国は世界でどのような諜報活動を行っているのか。ジャーナリストの池上彰さんは「情報機関に属する職員だけではなく、留学生や研究者などの民間人が国から要請を受け機密情報を盗むなどのスパイ活動を行っている」という――。(第1回) ※本稿は、池上彰『世界史を変えたスパイたち』(日経BP)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『アメリカが警戒する「孔子学院」の正体 2010年代以降、米中対立が強まる中、アメリカが「中国がアメリカ国内の対中言論をコントロールするプロパガンダの拠点になっている」として警戒しているものの一つが、各大学などに設置されていた「孔子学院」です。 表向きには「中国語や中国文化を無償で教える教育センター」だとして、中国はその地域の教育機関などと連携し、世界中にこの孔子学院を設置してきました。中でもアメリカはこの孔子学院の最大の進出国で、その数は最盛期には120校にものぼっていました。 しかしその実態は中国のインテリジェンス機関である統一戦線工作部から資金や指示の出ている、まぎれもない中国の工作機関なのではないか、との指摘が相次ぎ、2014年頃から2020年までの間にかなりの数の孔子学院が閉鎖されてきました。 こうした、一見スパイ活動や対外情報活動とは関係なさそうな組織を使うのは中国の得意技です。他にも、海外に多く居住している中国系の住民(華僑)なども含め、関係国との間に友好団体を作り、文化や芸術、交流活動などを行いながら、実際には中国・共産党の意向に沿った情報活動や、中国に友好的な外国人を獲得し、育てる役割も果たしています』、「「孔子学院」・・・表向きには「中国語や中国文化を無償で教える教育センター」だとして、中国はその地域の教育機関などと連携し、世界中にこの孔子学院を設置してきました。中でもアメリカはこの孔子学院の最大の進出国で、その数は最盛期には120校にものぼっていました。 しかしその実態は中国のインテリジェンス機関である統一戦線工作部から資金や指示の出ている、まぎれもない中国の工作機関なのではないか、との指摘が相次ぎ、2014年頃から2020年までの間にかなりの数の孔子学院が閉鎖」、「最盛期には120校・・・かなりの数の孔子学院が閉鎖」、「文化や芸術、交流活動などを行いながら、実際には中国・共産党の意向に沿った情報活動や、中国に友好的な外国人を獲得し、育てる役割も果たしています」、手の込んだ偽装工作だ。
・『中国の法律にある恐ろしい内容 さまざまな理由で海外にいる中国人を、情報機関の職員でもないのに自国の情報活動に利用する。現在も、これが中国のインテリジェンス活動の大きな特徴です。 しかも、中国では2017年に国家情報法が施行されました。この法律には「いかなる組織及び個人も、法律に従って国家の情報活動に協力し、国の情報活動の秘密を守らなければならない。国は、そのような国民、組織を保護する」(第7条)と定められています。 つまり、海外にいる中国人であっても、「国家に必要な情報を提供しなさい」と命じられれば、それに従わなければならない、ということです。 実際、日本の大学に留学していた中国人留学生が、サイバースパイの片棒を担がされていた事件が発覚しています。 中国のハッカー集団が足場として使っていたレンタルサーバーを、留学生が偽名で契約していたのです。この留学生は、中国在住の女性から「レンタルサーバーを偽名で借りてほしい」「日本のUSBメモリを購入して中国に送ってほしい」などと頼まれ、言うことを聞いてしまったのです。 しかし徐々に注文がエスカレートし、「日本企業しか買えないセキュリティーソフトを、日本企業に成りすまして購入しろ」と指示され、断ったところ「国に貢献しろ」などと協力を強要されたといいます』、「「日本企業しか買えないセキュリティーソフトを、日本企業に成りすまして購入しろ」と指示され、断ったところ「国に貢献しろ」などと協力を強要された」、酷い話だ。
・『「中国にいる親族がどうなってもいいのか」 留学生など、一般の中国人をこうした工作に参加させる場合、「祖国に貢献したくないのか」と迫るケースの他に、「中国にいる親族がどうなってもいいのか」と脅迫するケースもあるようです。 留学生に協力を迫ったこの女性の夫は、中国人民解放軍のサイバー攻撃部隊に所属していたこともわかっています。そして女性の夫が所属する部隊は、実際に日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)や航空関連企業に対してサイバー攻撃を行っていたのです。 元留学生は間接的にかかわったにすぎませんが、全体としてみれば日本に対するサイバー攻撃の一端を担ったことになってしまいました。 中国軍のサイバー攻撃のために、在外中国人、それも留学生まで使う。こうした中国のやり方に、アメリカは警戒感を強めています。 2022年7月には、ロンドンでMI5(保安部)のマッカラム長官と、FBI(アメリカ連邦捜査局)のレイ長官が合同で企業向けの講演会を行い、「中国のやり方に気をつけろ!」と警告を発しました。 それによれば、中国は欧米企業の機密情報を盗むためにさまざまな手段を講じており、サイバー攻撃はもちろん、協力者を使った情報の窃取を行っているといいます。 そして習近平が掲げた「中国製造2025」、つまり中国が2025年までに製造業で世界の頂点に立つという目標を達成するために、手段を選ばず攻撃を仕掛けてきている、と断言しました』、「「中国にいる親族がどうなってもいいのか」と脅迫するケースもある」、「ロンドンでMI5(保安部)のマッカラム長官と、FBI(アメリカ連邦捜査局)のレイ長官が合同で企業向けの講演会を行い、「中国のやり方に気をつけろ!」と警告」、「「中国製造2025」・・・目標を達成するために、手段を選ばず攻撃を仕掛けてきている、と断言」、大いに気を付けるべきだ。
・『スパイの約4割が民間人 最も気をつけるべきは「千粒の砂」という戦略で、「中国共産党は、かつてのように外交官を偽装する工作員を使わない。さまざまなチャンネルを通じて情報を集めている」と指摘したのです。 「千粒の砂」とは、いわゆる工作員や外交官を使うのではなく、世界中に散らばっている中国人をその都度、情報活動に利用する戦略のことです。 もともと中国は、特定のスパイに基づかず、多くの人手を使ってできるだけ多くの断片情報を集め、そこから使える情報を精査する手法を使っていました。これを「千粒の砂の中に一粒の砂金がある」と称したことから、中国の情報活動の姿勢や方針が「千粒の砂」戦略と呼ばれるようになりました。 実際、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が、2000年から2019年初頭にかけてアメリカで起きた中国と関連したスパイ事件を確認したところ、137件の事件報告のうち、57%が「中国の軍人または政府職員」だった一方、36%が「中国の民間人」だったと指摘されています。 実にスパイ事件の4割近くが、特別な訓練を受けたわけではない「民間人」とは驚きます』、「スパイ事件の4割近くが、特別な訓練を受けたわけではない「民間人」とは驚きます」、その通りだ。
・『中国の科学技術力が上がった要因 こうした、広範囲の一般人を情報活動に使う中国の戦法を前に、防諜側は、一体誰を、どこまでの範囲の人間をスパイと考えて対処すればいいかがわからなくなります。 また、全体で見れば大きなスパイ行為であっても、多くの人間が少しずつ関係し、しかも当人はスパイ行為を行っているという自覚もないとなれば、仮に発覚しても司法で裁くことができません。 さらに留学生で言えば、先のサイバー事件のように具体的な指示を受けるだけでなく、実際に留学生として欧米の大学で見聞きした情報を、中国に持ち帰って祖国の発展に生かせ、という大きな方針も打ち出されています。 受け入れる欧米側の大学としては、優秀な中国人留学生や研究者であればあるほど、自国での研究・開発成果を中国に持ち帰られる危険性が常に存在している、ということになってしまいます。 また、実際に研究者の立場で世界中の研究機関や催しに参加し、そこで情報を得たり、意見交換したり、各国の研究者と知己を得たりすることは、当然、スパイ行為にはあたりません。そのため、中国はこうした立場の人間や、それに成りすました工作員をうまく使い、アメリカなどの科学技術情報を得ては国家の技術力向上に生かしていたようです』、「受け入れる欧米側の大学としては、優秀な中国人留学生や研究者であればあるほど、自国での研究・開発成果を中国に持ち帰られる危険性が常に存在している、ということになってしまいます」、「中国はこうした立場の人間や、それに成りすました工作員をうまく使い、アメリカなどの科学技術情報を得ては国家の技術力向上に生かしていたようです」、なるほど。
・『「豊かになれば民主化する」と思っていたが 中国は1988年に中性子爆弾の開発に成功しました。FBIはこれを「中国が独自に開発したものではなく、アメリカの国立研究所から獲得されたものだ」と分析しています。特にアメリカの軍事技術にかかわる研究や開発を行っている機関は、中国としては狙い目です。 アメリカは近年の中国の技術開発能力の飛躍は、留学生や研究者、さらにサイバー攻撃によってアメリカから盗んだ技術によって達成されたものであると考えているのです。 こうした中国式の情報収集は1970年代から行われてきたのですが、ここへきてアメリカが警戒感をあらわにしているのは、「中国は豊かになれば民主化し、共産党一党独裁体制から脱却するだろう」という見通しが間違っていたことを認識したからです。 さらに中国の科学技術力の伸びが想像以上に早く、サイバー領域での中国の活動があまりに活発なことが影響しているのでしょう。そのサイバー攻撃の足掛かりになっているのが、中国製の通信機器なのではないか』、「ここへきてアメリカが警戒感をあらわにしているのは、「中国は豊かになれば民主化し、共産党一党独裁体制から脱却するだろう」という見通しが間違っていたことを認識したからです」、甘い認識というより期待の誤りを遅まきながら、気付いたようだ。
・『日本はどうするのか 機器にバックドア(外部からシステムにアクセスできるような経路=ドアのこと。中国の場合は海外に販売する際に前もってこのドアを作っておき、外部からの情報窃取やサイバー攻撃の経路としている)が仕掛けられていて、米国内の通信情報がすべて中国に筒抜けになっているのではないかと危惧しているのです。 特に中国の通信大手企業であるファーウェイに対する警戒感が強まっていますが、そこにはバックドアの問題に加え、国家情報法の規定に基づき、「ファーウェイが業務上、アメリカで知り得た情報を、中国当局からの要請があれば政府に提供するのではないか」と考えられていることも含まれています。 これが、米中対立の中でも「経済安全保障」と言われる分野で、アメリカから中国製品の排除が進められている一番の理由です。 中国製品を排除し、中国系企業を減益させることで、次世代製品の開発や、戦略物資と言われる半導体製造技術を磨くための資金を絶ちたい。 アメリカの研究を中国人留学生や研究者が持ち帰るのを阻止し、中国の科学技術力の成長を鈍化させようという狙いがあるのです。 米中の間に挟まれた日本も、当然無関係ではいられません』、「日本」でも「経済安全保障」の視点で「中国製品」への警戒が高まっており、警戒心を一層高めて臨むべきだろう。
次に、5月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村 悠氏による「国内13大学が「中国政府の宣伝工作拠点」に?“孔子学院”の危険な実態」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323000
・『米国で閉鎖が相次ぐ孔子学院 国内13大学で設置が確認 政府は5月12日に閣議決定した答弁書において、国内の少なくとも13大学に、中国政府による教育機関「孔子学院」が設置されていると明らかにした。 日本で設置が確認されたのは、早稲田大、立命館大、桜美林大、武蔵野大、愛知大、関西外国語大、大阪産業大、岡山商科大、北陸大、福山大、山梨学院大、立命館アジア太平洋大、札幌大の13大学である。 この孔子学院は、中国政府が世界各国の大学などに非営利教育機構として設置を進めていたが、中国共産党のスパイ・プロパガンダ(政治宣伝)機関との指摘が相次ぎ、文部科学省は運営の透明化を大学側に求めていた。 米国においても2000年代後半~2010年代前半までに米国大学100校超のキャンパスにおいて開講されていたが、学問・表現の自由の侵害およびスパイ活動・知的財産窃盗などの可能性について連邦議会が懸念を表明、米国内では同学院の閉鎖が相次いでいる。だが、世界全体で見てみると、今も160以上の国や地域に550を超える孔子学院が存在するといわれる』、「日本で設置が確認されたのは・・・の13大学である」、「米国大学100校超のキャンパスにおいて開講されていたが・・・米国内では同学院の閉鎖が相次いでいる」、なるほど。
・『孔子学院の実態と要注意の国内大学とは 孔子学院は、2004年に「外国における中国語・中国文化の普及」を目的として韓国に初めて設立された。 その形態は、非政府組織(NGO)であるが、その実態は中国教育部(文部科学省に相当)傘下の国家漢語国際推進指導小組弁公室(漢語事務局)が運営機関であり、背後で中国共産党指導部が意思決定をしている国家プロジェクトである。 ちなみに、孔子学院には儒学の始祖「孔子」の名を冠しているが、儒学に関する教育機関では一切ない。 日本で孔子学院を開校する際には、大学と漢語事務局との間で契約を結ぶ。法令による設置認可や届け出が必要ないため、文部科学省などの認可は不要である。 そのため、孔子学院の運営に関しては、中国政府が設置先の大学に資金提供をし、教職員の採用方法などについても契約で自由に取り決めることができる。 日本の大学からすれば、孔子学院設置費用や運営費は、中国政府が援助するため、大学側はほとんど負担することなく、中国語教育を安価で学生に提供でき、学生も併せて募集できるため、メリットが多い。 日本における孔子学院設置の流れは以下の通りである。 (図表:日本における孔子学院設置の流れ はリンク先参照) 上記孔子学院設置校のうち、★印を付けた3大学における孔子学院は要注意である(その1つである工学院大学孔子学院は21年3月末閉鎖)。 まず、工学院大学と提携していた北京航空航天大学は、中国の軍需企業を管理する国家国防科学技術工業局に直属する国防七校の1つであり、同大は、大量破壊兵器であるミサイル開発の疑いがあるとして、貨物や技術の輸出時には経済産業省の許可が必要な「外国ユーザーリスト」に記載されている。 また、立命館大学、早稲田大学と提携している北京大学は、準国防大学といわれ、国家国防科学技術工業局が管理している大学である』、「日本の大学からすれば、孔子学院設置費用や運営費は、中国政府が援助するため、大学側はほとんど負担することなく、中国語教育を安価で学生に提供でき、学生も併せて募集できるため、メリットが多い」、ただ、「北京航空航天大学は・・・大量破壊兵器であるミサイル開発の疑いがあるとして、貨物や技術の輸出時には経済産業省の許可が必要な「外国ユーザーリスト」に記載」、「北京大学は、準国防大学といわれ、国家国防科学技術工業局が管理している大学」、など問題も抱えている。
・『孔子学院が危険な3つの理由 孔子学院の危険性は3点ある。 一点目は、孔子学院と受け入れ大学側との契約内容が不透明であることだ。 米国上院国土安全保障・政府問題委員会の報告によれば、 ●中国政府が孔子学院に関連し、米国教育機関に1億5000万ドル(約200億円)以上の資金を提供 ●中国政府が孔子学院の予算・教育内容・人事の全てを管理 ●孔子学院の教職員が中国の国益擁護を誓約 ●孔子学院と大学との契約内容を非公開 としており、極めて問題のある契約を孔子学院と受け入れ大学側とで締結している可能性があると指摘。日本においても契約内容は文部科学省などが審査する構造になっていない状況となっている。 二点目は、文部科学省をはじめ日本政府機関の審査などを経ずに、日本の大学内に中国政府の統制下にある機関(孔子学院)が設置されるため、大学および日本の自治に極めて重大な懸念があることである。 中国共産党のスパイ機関・プロパガンダ工作を行うと世界から指摘を受けている孔子学院に対し、日本はその設置を許容したままとなっている。 なお、一部メディアによれば、2010年に大阪産業大学の理事が孔子学院を運営する漢語事務局をスパイ機関と呼んだことで、キャンパス内の中国人留学生などから大きな反発を受けて謝罪して辞任し、この話が中国共産党機関紙の人民日報に掲載されたという。 いずれにせよ、中国政府の統制の下、教育内容が管理され、教育の自由を侵害している。これが、後述のプロパガンダ工作につながる。) 三点目は、プロパガンダ工作・スパイ活動の危険性である。 それは具体的にどのようなものなのか、以下解説したい』、「孔子学院と受け入れ大学側との契約内容が不透明」、「文部科学省をはじめ日本政府機関の審査などを経ずに、日本の大学内に中国政府の統制下にある機関(孔子学院)が設置されるため、大学および日本の自治に極めて重大な懸念がある」、「プロパガンダ工作・スパイ活動の危険性」、やはり大きな問題がありそうだ。
・『孔子学院を使った中国政府のプロパガンダ工作とは 孔子学院によるプロパガンダ工作は「シャープパワー」と位置付けられている。 シャープパワーとは、軍事力などの「ハードパワー」と、文化・教育・価値観といった「ソフトパワー」との中間に位置付けられている。 一般的に、ソフトパワーによって相手国の世論に対し、自国に対する親近感や好感を醸成し、対象国の世論を味方につけて自国の利益に資するようにする手法をパブリック・ディプロマシーという。 孔子学院はその手法の代表例であったが、中国のような権威主義国家ならではの強引・横暴な要素が大きいことから、シャープパワーとして批判されている。 その手法はこうだ。 まず、孔子学院において、友好的な文化・教育交流として、中国の文化や言語に多く触れてもらう。そして、学生に中国の文化に親しみを持たせた上で、中国への留学や招待を実施し、親中派として育て上げる。注意すべきは、このプロセスにおいてウイグル人権問題や香港弾圧について触れず、台湾問題や尖閣問題などについては中国の主張をソフトに教育・浸透させていくのだ。 中国に長く留学した私の知人(日本人)と会話した際、彼にウイグル人権問題の話題を投げかけてもけげんそうな顔を浮かべ、「留学して思ったが、そもそも証拠がないだろう。中国の現地では誰も問題にしていない」などとけむに巻こうとする。 尖閣問題についても、「中国の主張も聞かなければならない。日本の主張ばかり聞いても仕方ない」と中国目線で答えるのだ。さらに、「中国に来ればわかる」とまで言われてしまった(私が中国に行ったら、おそらく反スパイ法で拘束されるだろう)。 また、孔子学院の社会人学生として、例えばメディア関係の人間を中国旅行などに誘い、現地の“良い部分”の情報に多く触れ、親中派として育て上げる。同様の手法は企業幹部や政治家にも及ぶだろう。 要は、孔子学院を経て中国に“都合の良い情報”のみを与え、可能であれば感化させ、親中派を孔子学院の設置国で拡大させていくプロパガンダ工作である。そして、こうした取り組みが、日本の有力な大学において、日本政府(文部科学省)が関知することなく行われているのだ。 ちなみに、中国による工作はこれだけではない。 例えば、日本国際問題研究所の桒原響子氏によれば、台湾有事における一つの想定として、中国は、日本と米国の分断を目指し、「台湾有事における在日米軍や自衛隊の活動により、日本は戦争に巻き込まれる」と訴えることで、日本の軍事アレルギーを刺激し、批判的なデモや抗議活動を活発化させようとしていると述べている。 台湾有事に限らず、これに似た状況は、既に日本国内でも散見されているが、その背景に中国の思惑が働いていることは明白であろう』、「一般的に、ソフトパワーによって相手国の世論に対し、自国に対する親近感や好感を醸成し、対象国の世論を味方につけて自国の利益に資するようにする手法をパブリック・ディプロマシーという。 孔子学院はその手法の代表例であったが、中国のような権威主義国家ならではの強引・横暴な要素が大きいことから、シャープパワーとして批判されている」、「孔子学院を経て中国に“都合の良い情報”のみを与え、可能であれば感化させ、親中派を孔子学院の設置国で拡大させていくプロパガンダ工作である。そして、こうした取り組みが、日本の有力な大学において、日本政府(文部科学省)が関知することなく行われているのだ」、恐ろしい主権の侵害だ。
・『孔子学院によるスパイ活動とは まず、孔子学院が設置されている大学が保有する研究情報などの知的財産に加え、中国人留学生のコミュニティー情報、有力人物の人脈等について極めて近くで触れられる環境にある。 また、中国の「千粒の砂戦略」のように、中国はビジネスマンや留学生などのさまざまなチャネルを利用して技術情報の窃取を試みる。事実、中国人留学生による諜報事件は近年、日本国内でも幾度か検挙されている。 特に悪質なのは、中国政府機関系の人間が善意の留学生に接触し、スパイ活動に加担させる点だ。 2008年夏、北京五輪の聖火リレーが開かれた際、中国大使館などの指示を受け、中国人留学生学友会を主とした中国人留学生が全国から動員されたが(当時の報道によると、3000~5000人が集まったとされる)、善意の留学生であれ、中国政府の意向には従順である。したがって、中国政府が孔子学院を通じ、情報収集や工作活動を指示すること、または同活動にリクルートすることは当然想定される。 さらに、3月初旬に、日本に留学していた女子留学生が香港に一時帰国した際、SNSで香港独立に関する情報を流したとして国家安全維持法違反の容疑で逮捕された件や、中国非公式警察による在日中国人コミュニティに入り込んだ監視活動を鑑みても、孔子学院がプロパガンダ工作を行うだけではなく、これら反体制動向の監視活動に関与、情報提供などの支援を行っていると推察することもできる』、「中国政府が孔子学院を通じ、情報収集や工作活動を指示すること、または同活動にリクルートすることは当然想定される・・・孔子学院がプロパガンダ工作を行うだけではなく、これら反体制動向の監視活動に関与、情報提供などの支援を行っていると推察することもできる」、なるほど。
・『孔子学院に対して政府は対応策を示すべき 今回、参政党の神谷宗幣参院議員の質問主意書に答えた形で、報道において孔子学院がクローズアップされた。 2021年には、参議院文教科学委員会質問において、自由民主党の有村治子参議院議員が孔子学院について取り上げ、萩生田光一文部科学相(当時)が初めて孔子学院への対応を明言した。また、過去には自由民主党の杉田水脈衆院議員が予算委員会(第四分科会)において、孔子学院について取り上げている。 これまで、孔子学院について、各国が閉鎖などの措置を進める中で、日本においてはその対応が明確になされることはなく、前述の議員たちの行動によってクローズアップされては世間からの関心が薄れ…ということを繰り返している。この状況は、現在の厳しい国際情勢の中で日本の立場として懸念すべきではないだろうか。 日本として明確な対応策を示す必要がある。 そして、社会もこの問題について関心を高めるべきだろう。 最後に断っておくが、中国の文化に触れ、中国の言語を学び、互いの理解を深めるのは素晴らしいことであり、筆者にも素晴らしい中国人の友人がいる。 一方で、本稿において、それとは区別して孔子学院への懸念に対し、社会において改めて認識され、日本の対策がわずかでも進むことを期待したい』、「孔子学院に対して政府は」、大学任せにせず、「対応策を示すべき」、その通りだ。
第三に、5月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家・ジャーナリストの莫 邦富氏による「アメリカ密入国めざす中国人が急増、一体なぜ?教師やエンジニアら知識人も逃亡」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323114
・『米国に密入国した密航者の中に現れた中国人 深夜、メキシコと米国との国境地帯。地続きの国境線の向こう側に立っている米国の警察官が、懐中電灯で国境線に沿って作られた鉄条網のメキシコ側の河畔を照らしている。なぜか。 群衆がその河畔を移動しているのだ。中には乳飲み子を抱えている男性もいる。米国に密入国しようとする者を取り締まる米国の警察官が、照明の便宜を与えているこの滑稽な光景に、今日の米国密入国における現状の一つの側面を見いだすことができる。 メキシコと米国との国境を突破して米国に密入国した人たちの群れに、最近、新しい顔が増えた。中国人だ。 中南米ルートを使って米国とメキシコの国境にたどり着いた中国国民の数は最近急増しており、米国国土安全保障省の統計によると、昨年10月以降、中国人密入国者が6500人を超え、前年同期の15倍に跳ね上がり、歴史的なピークに達したという。 私は、1990年代初頭、中国人密航者の非合法旅行を操る業者「蛇頭」と密航者たちを追跡して取材したことがあるだけに、このニュースを知り、大きな驚きを覚えた。中国社会も大きく変化し、中国人の密航者はいなくなったと思っていたからだ』、「昨年10月以降、中国人密入国者が6500人を超え、前年同期の15倍に跳ね上がり、歴史的なピークに達した」、「米国」への「密入国者」で「中国人」が急増しているとの報には驚かされた。
・『中国人密航者を操る『蛇頭』、やがて下火になったが… 1994年に、私が日本語で書いたノンフィクション書籍『蛇頭』は日本でベストセラーとなった。ベトナム難民を装った福建省出身の密航者が多かった時期にも一致したため、同書に対する日本社会の関心度が高く、日本メディアでの露出も多かった。 故・立花隆さんは『週刊文春』の連載で『蛇頭』を取り上げ、絶賛してくれた。テレビ局をはじめ、1日で7、8社のメディアの取材を受けたこともある。日・米・英・仏・独・露・伊などの国々の多くのメディアに取り上げられ、中国でも話題になり、世界知識出版社が『点撃蛇頭』という書名で中国語版を出版してくれた。 出版後の波及効果も大きかった。『蛇頭』を読んだ映画評論家の馳星周さんが同書にインスピレーションを得て冒険小説『不夜城』を書いた。本が出版された時、馳星周さんは『蛇頭』を参考にして書いたことをわざわざ本の中に明記していた。 『蛇頭』は、福建省出身の密航者問題で頭を痛めた日本の警察当局からも注目された。ある地方自治体の警察本部が一度で500部を購入した。警察学校では『蛇頭』が警察研修用の副読本にもなり、おかげで私の名前を覚えた警察官も相当いた。 香港の映画監督・映画プロデューサーのイー・トンシン(爾冬陞、Derek Yee)さんは『蛇頭』を読んで、新宿を舞台にした映画『新宿インシデント』(中国語は「新宿事件」)を作った。2009年に公開されたこの映画の主演はジャッキー・チェンさんで、日本人の映画俳優陣には、竹中直人さん、長門裕之さんらがいた。映画のエンディングに、私の名前も入っている。 中国経済の急速な発展で、08年北京オリンピック以降、多くの中国人が自由に海外旅行へ出られるようになり、いまや多くの国々の観光事業を支える重要な顧客にもなった。こうした社会事情の変化もあり、『蛇頭』もやがて絶版となった。 ベストセラーの作品が絶版となったことに対し、私はむしろ中国社会の進歩を表した一つの現象だと受け止め、中国はもう密航者を作りださないだろうと信じた。 こう信じていただけに、米国とメキシコとの国境を目指す中国人密入国者が大勢いるという最新の報道を読んだ私は絶句したのだ』、「中国経済の急速な発展で、08年北京オリンピック以降、多くの中国人が自由に海外旅行へ出られるようになり、いまや多くの国々の観光事業を支える重要な顧客にもなった。こうした社会事情の変化もあり、『蛇頭』もやがて絶版となった・・・もう密航者を作りださないだろうと信じた。 こう信じていただけに、米国とメキシコとの国境を目指す中国人密入国者が大勢いるという最新の報道を読んだ私は絶句した」、なるほど。
・『南米まで行けば…米国への密航に希望を持つ中国人 15年に米国の国境警備隊は、米国国境を密航という手段で突き破ろうとした中国出身の密航者を48人取り押さえた。しかし、14年まで米国当局には記録がないとし、「(同国境で)中国国民を捕まえたことは一度もない」と述べた。 しかし、22年末から情勢は急転した。米国への密入国を狙う群れの中にいる中国人は、日を追うごとに増加しているのだ。ある米国在住の中国人関係者はSNSを通しての私の取材に、次のように述べた。 「今年3月までにパナマにある難民キャンプはほとんど中国人に占領されている。ある現地の撮影者から、1日に車十数台分の密航者が運び込まれていて、ほとんどの乗客は中国人だったと証言があった。パナマ政府の発表によると、今年1月から3月の間に3855人の中国人密航者がコロンビアとパナマの国境地帯にあるダリエン地峡を通過した。目的地はアメリカだ」 太平洋の端にある中国から遠く離れた米国までの道のりは遠い。中国のパスポート所持者に対してビザ免除措置を与える南米の国が増えたことで、米国に近い南米のいくつかの国までは飛行機で移動することができるようになった。米国への密入国を希望する人にとっては、好都合だ。 エクアドルは、現在多くの中国人が選んだ重要な着地点である。そこからは「蛇頭」が引率する隊列について徒歩で行進する。最後は米国とメキシコとの国境を突破すれば、米国入国が実現できる。 拙著『蛇頭』を取材していた頃、蛇頭は比較的貧しい暮らしをしていた福建省出身者がほとんどを占める密航者を「鴨子(カモ)」と呼んでいた。しかし、いまは、知識人が多く、密航者は自らのことを「走線人(ルート走破者)」と呼ぶ。密航者の構成内容の変化に、中国の社会事情が色濃く影を落としている』、「「今年3月までにパナマにある難民キャンプはほとんど中国人に占領されている。ある現地の撮影者から、1日に車十数台分の密航者が運び込まれていて、ほとんどの乗客は中国人だったと証言があった。パナマ政府の発表によると、今年1月から3月の間に3855人の中国人密航者がコロンビアとパナマの国境地帯にあるダリエン地峡を通過した。目的地はアメリカだ」、「中国のパスポート所持者に対してビザ免除措置を与える南米の国が増えたことで、米国に近い南米のいくつかの国までは飛行機で移動することができるようになった。米国への密入国を希望する人にとっては、好都合だ」、「ビザ免除措置を与える南米の国が増えた」ことが引き金になっていたとは皮肉だ。
・『中国人密航者は本国で「いい職業」についていた人も多い 米国に密入国できた中国人を助けるために、米国の中国系住民は生活品や食品などを寄付する支援活動を開始した。 ロサンゼルスにほど近い郊外都市・モントレーパークで行われた寄付活動に参加した友人は現場の光景に驚いた。 「寄付品を受け取りに来る人が非常に多い。ホテルの周りに長い列ができている。男も女もいて、年長者は50歳前後、幼い者は10代前半。彼らは一人一人身なりが清潔で、顔つきや行動が落ち着いている。想像していた密航者のような苦労を重ね、ろうばいしている姿は見られない」 友人が寄付活動を呼びかけたリーダーに確認したら、以下のような情報を得た。 「密航者たちは山東、江蘇、浙江、湖北、陝西など多くの省から来ている。中国ではいい職業を持っていた。その多くが中国の自動車免許証を持っていることから、中国では車を所有していたことがわかる。職業もさまざまだ。以前の密航者のほとんどは福建省の農村出身だったが、いまは中学校の教師やエンジニア、保険外交員、金融業従事者、さらには自分で会社を作ったことがある人も多い」 彼らは皆共通語で交流している。多くの人がパソコンを使い、英語ができる人も結構いる。インターネットを利用して、自分の子どものために米国の学校に入学手続きを申請することもできる。寄付された書籍を選ぶ人もいた。 しかし、厳しい密航移動や海外の移民生活に耐えられない人も多い。せっかくメキシコに着いたものの、密航ルートの厳しさを実感して、米国への密入国をあきらめ、所持している中国パスポートを使って、そのまま中国に戻った人もいれば、米国に運よく密入国できたが、非合法移民の日常に動揺を覚え、住み慣れた中国に帰る選択をした人もいたという。 『蛇頭』絶版後、その続編を書く必然性はもうないと思っていたが、ひょっとしたら、続編を読みたいという市場ニーズがまた出てきそうな気がした。本棚に飾っている『蛇頭』を見つめながら、ぼうぜん自失になった』、「「密航者たちは山東、江蘇、浙江、湖北、陝西など多くの省から来ている。中国ではいい職業を持っていた。その多くが中国の自動車免許証を持っていることから、中国では車を所有していたことがわかる。職業もさまざまだ。以前の密航者のほとんどは福建省の農村出身だったが、いまは中学校の教師やエンジニア、保険外交員、金融業従事者、さらには自分で会社を作ったことがある人も多い」 彼らは皆共通語で交流している。多くの人がパソコンを使い、英語ができる人も結構いる」、「せっかくメキシコに着いたものの、密航ルートの厳しさを実感して、米国への密入国をあきらめ、所持している中国パスポートを使って、そのまま中国に戻った人もいれば、米国に運よく密入国できたが、非合法移民の日常に動揺を覚え、住み慣れた中国に帰る選択をした人もいたという」、中流階級らしい行動だ。今後、中南米経由の「米国」「密入国」がどうなるのか、注目したい。
タグ:中国情勢(軍事・外交) (その15)(なぜ中国の科学技術は飛躍的に向上したのか…中国のスパイがアメリカの研究機関から山ほど盗んだもの 留学生や研究者を脅して機密情報を盗ませる、国内13大学が「中国政府の宣伝工作拠点」に?“孔子学院”の危険な実態、アメリカ密入国めざす中国人が急増 一体なぜ?教師やエンジニアら知識人も逃亡) PRESIDENT ONLINE 池上 彰氏による「なぜ中国の科学技術は飛躍的に向上したのか…中国のスパイがアメリカの研究機関から山ほど盗んだもの 留学生や研究者を脅して機密情報を盗ませる」 池上彰『世界史を変えたスパイたち』(日経BP) 「「孔子学院」・・・表向きには「中国語や中国文化を無償で教える教育センター」だとして、中国はその地域の教育機関などと連携し、世界中にこの孔子学院を設置してきました。中でもアメリカはこの孔子学院の最大の進出国で、その数は最盛期には120校にものぼっていました。 しかしその実態は中国のインテリジェンス機関である統一戦線工作部から資金や指示の出ている、まぎれもない中国の工作機関なのではないか、との指摘が相次ぎ、2014年頃から2020年までの間にかなりの数の孔子学院が閉鎖」、 「最盛期には120校・・・かなりの数の孔子学院が閉鎖」、「文化や芸術、交流活動などを行いながら、実際には中国・共産党の意向に沿った情報活動や、中国に友好的な外国人を獲得し、育てる役割も果たしています」、手の込んだ偽装工作だ。 「「日本企業しか買えないセキュリティーソフトを、日本企業に成りすまして購入しろ」と指示され、断ったところ「国に貢献しろ」などと協力を強要された」、酷い話だ。 「「中国にいる親族がどうなってもいいのか」と脅迫するケースもある」、「ロンドンでMI5(保安部)のマッカラム長官と、FBI(アメリカ連邦捜査局)のレイ長官が合同で企業向けの講演会を行い、「中国のやり方に気をつけろ!」と警告」、「「中国製造2025」・・・目標を達成するために、手段を選ばず攻撃を仕掛けてきている、と断言」、大いに気を付けるべきだ。 「スパイ事件の4割近くが、特別な訓練を受けたわけではない「民間人」とは驚きます」、その通りだ。 「受け入れる欧米側の大学としては、優秀な中国人留学生や研究者であればあるほど、自国での研究・開発成果を中国に持ち帰られる危険性が常に存在している、ということになってしまいます」、「中国はこうした立場の人間や、それに成りすました工作員をうまく使い、アメリカなどの科学技術情報を得ては国家の技術力向上に生かしていたようです」、なるほど。 「ここへきてアメリカが警戒感をあらわにしているのは、「中国は豊かになれば民主化し、共産党一党独裁体制から脱却するだろう」という見通しが間違っていたことを認識したからです」、甘い認識というより期待の誤りを遅まきながら、気付いたようだ。 「日本」でも「経済安全保障」の視点で「中国製品」への警戒が高まっており、警戒心を一層高めて臨むべきだろう。 ダイヤモンド・オンライン 稲村 悠氏による「国内13大学が「中国政府の宣伝工作拠点」に?“孔子学院”の危険な実態」 「日本で設置が確認されたのは・・・の13大学である」、「米国大学100校超のキャンパスにおいて開講されていたが・・・米国内では同学院の閉鎖が相次いでいる」、なるほど。 「日本の大学からすれば、孔子学院設置費用や運営費は、中国政府が援助するため、大学側はほとんど負担することなく、中国語教育を安価で学生に提供でき、学生も併せて募集できるため、メリットが多い」、 ただ、「北京航空航天大学は・・・大量破壊兵器であるミサイル開発の疑いがあるとして、貨物や技術の輸出時には経済産業省の許可が必要な「外国ユーザーリスト」に記載」、「北京大学は、準国防大学といわれ、国家国防科学技術工業局が管理している大学」、など問題も抱えている。 「孔子学院と受け入れ大学側との契約内容が不透明」、「文部科学省をはじめ日本政府機関の審査などを経ずに、日本の大学内に中国政府の統制下にある機関(孔子学院)が設置されるため、大学および日本の自治に極めて重大な懸念がある」、「プロパガンダ工作・スパイ活動の危険性」、やはり大きな問題がありそうだ。 「一般的に、ソフトパワーによって相手国の世論に対し、自国に対する親近感や好感を醸成し、対象国の世論を味方につけて自国の利益に資するようにする手法をパブリック・ディプロマシーという。 孔子学院はその手法の代表例であったが、中国のような権威主義国家ならではの強引・横暴な要素が大きいことから、シャープパワーとして批判されている」、 「孔子学院を経て中国に“都合の良い情報”のみを与え、可能であれば感化させ、親中派を孔子学院の設置国で拡大させていくプロパガンダ工作である。そして、こうした取り組みが、日本の有力な大学において、日本政府(文部科学省)が関知することなく行われているのだ」、恐ろしい主権の侵害だ。 「中国政府が孔子学院を通じ、情報収集や工作活動を指示すること、または同活動にリクルートすることは当然想定される・・・孔子学院がプロパガンダ工作を行うだけではなく、これら反体制動向の監視活動に関与、情報提供などの支援を行っていると推察することもできる」、なるほど。 「孔子学院に対して政府は」、大学任せにせず、「対応策を示すべき」、その通りだ。 莫 邦富氏による「アメリカ密入国めざす中国人が急増、一体なぜ?教師やエンジニアら知識人も逃亡」 「昨年10月以降、中国人密入国者が6500人を超え、前年同期の15倍に跳ね上がり、歴史的なピークに達した」、「米国」への「密入国者」で「中国人」が急増しているとの報には驚かされた。 「中国経済の急速な発展で、08年北京オリンピック以降、多くの中国人が自由に海外旅行へ出られるようになり、いまや多くの国々の観光事業を支える重要な顧客にもなった。こうした社会事情の変化もあり、『蛇頭』もやがて絶版となった・・・もう密航者を作りださないだろうと信じた。 こう信じていただけに、米国とメキシコとの国境を目指す中国人密入国者が大勢いるという最新の報道を読んだ私は絶句した」、なるほど。 「「今年3月までにパナマにある難民キャンプはほとんど中国人に占領されている。ある現地の撮影者から、1日に車十数台分の密航者が運び込まれていて、ほとんどの乗客は中国人だったと証言があった。パナマ政府の発表によると、今年1月から3月の間に3855人の中国人密航者がコロンビアとパナマの国境地帯にあるダリエン地峡を通過した。目的地はアメリカだ」、 「中国のパスポート所持者に対してビザ免除措置を与える南米の国が増えたことで、米国に近い南米のいくつかの国までは飛行機で移動することができるようになった。米国への密入国を希望する人にとっては、好都合だ」、「ビザ免除措置を与える南米の国が増えた」ことが引き金になっていたとは皮肉だ。 「「密航者たちは山東、江蘇、浙江、湖北、陝西など多くの省から来ている。中国ではいい職業を持っていた。その多くが中国の自動車免許証を持っていることから、中国では車を所有していたことがわかる。職業もさまざまだ。以前の密航者のほとんどは福建省の農村出身だったが、いまは中学校の教師やエンジニア、保険外交員、金融業従事者、さらには自分で会社を作ったことがある人も多い」 彼らは皆共通語で交流している。多くの人がパソコンを使い、英語ができる人も結構いる」、 「せっかくメキシコに着いたものの、密航ルートの厳しさを実感して、米国への密入国をあきらめ、所持している中国パスポートを使って、そのまま中国に戻った人もいれば、米国に運よく密入国できたが、非合法移民の日常に動揺を覚え、住み慣れた中国に帰る選択をした人もいたという」、中流階級らしい行動だ。今後、中南米経由の「米国」「密入国」がどうなるのか、注目したい。