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イスラエル・パレスチナ(その3)(やり過ぎたイスラエル 守りきれなくなった米バイデン政権が初めて安保理停戦決議の成立許す、攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像、意外と早かったイスラエルの「報復」が意味する事 「暗黙のルール」に基づいた報復の応酬だが…) [世界情勢]

イスラエル・パレスチナについては、本年1月20日に取上げた。今日は、(その3)(やり過ぎたイスラエル 守りきれなくなった米バイデン政権が初めて安保理停戦決議の成立許す、攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像、意外と早かったイスラエルの「報復」が意味する事 「暗黙のルール」に基づいた報復の応酬だが…)である。

先ずは、本年3月26日付けNewsweek日本版「やり過ぎたイスラエル、守りきれなくなった米バイデン政権が初めて安保理停戦決議の成立許す」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/03/post-104081_1.php
・『<バイデン米政権は3月25日、「重要な同盟国」イスラエルのネタニヤフ首相が設定した一線をとうとう越えた。すでに3万人以上の民間人が犠牲になったガザへ、さらに地上侵攻を仕掛けようという暴挙は止められるのか> ジョー・バイデン米政権は3月25日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が設定した一線を越えた。 AP通信の報道によれば、国連安全保障理事会(以下安保理)で25日に行われた停戦決議の採択で、アメリカはイスラエルが求めていた「拒否」ではなく棄権を選択した。パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルとハマスの戦闘の停止、および、ハマスが拘束する人質全員の解放を要求するものだ。 米国が拒否ではなく棄権票を投じたため、停戦決議は初めて可決された。バイデンはガザ地区の人道状況を懸念しており、長らく緊密な同盟国と見なされてきた米国とイスラエルの関係は緊張感を増している。 【動画】水や電気を無目的に使い、ケチャップで血を演出...苦しむガザ住民をあざ笑うイスラエルのインフルエンサーたち ネタニヤフは25日、国連決議採択の前に、バイデン政権に最後通達を行い、もし米国が拒否権を行使しなければ、イスラエル代表団の訪米を中止すると警告した、とイスラエル紙タイムズ・オブ・イスラエルは報じている。 タイムズ・オブ・イスラエルによれば、ツァヒ・ハネグビ国家安全保障顧問とロン・デルメル戦略問題担当相はアメリカを訪問し、ガザにおける人道援助の拡大について意見を交わすことになっていた。 しかし停戦決議の採択後、ネタニヤフ政権はイスラエル代表団の訪米を中止した。そして、「開戦以来、アメリカは安保理で一貫した立場をとってきたが、(投票の棄権は)明らかな後退」であり、「国際的な圧力によって、人質を解放することなく停戦できるという希望をハマスに与える」ものだと断じた』、「国連安全保障理事会(以下安保理)で25日に行われた停戦決議の採択で、アメリカはイスラエルが求めていた「拒否」ではなく棄権を選択した・・・米国が拒否ではなく棄権票を投じたため、停戦決議は初めて可決された。バイデンはガザ地区の人道状況を懸念しており、長らく緊密な同盟国と見なされてきた米国とイスラエルの関係は緊張感を増している・・・ネタニヤフ政権はイスラエル代表団の訪米を中止した。そして、「開戦以来、アメリカは安保理で一貫した立場をとってきたが、(投票の棄権は)明らかな後退」であり、「国際的な圧力によって、人質を解放することなく停戦できるという希望をハマスに与える」ものだと断じた」、なるほど。
・『「正当防衛」を主張するイスラエル  2023年10月7日、ハマスがイスラエルに攻撃を仕掛けた結果、1200人のイスラエル人が犠牲になり、250人が人質として拘束された。現在も100人以上が拘束されている、とイスラエルは述べている。イスラエルは、ハマスの指導者たちを標的とし、人質を取り戻すという目標を掲げ、ガザ攻撃を開始。これまでに3万人以上のパレスチナ人たちが殺された。 バイデンは、イスラエルの重要な同盟国を自認しており、イスラエルには自国を守りハマスを追い詰める権利があると認める一方、ガザにおける民間人の死者数についても懸念も表明してきた。 世界のほかのリーダーに比べると、バイデンは恒久的な停戦を強く求めるまでには至っていないが、それでも、イスラエルに対しより慎重な対応を促すようになっており、ネタニヤフと食い違いが生じている。11月に大統領選挙を控えた国内でも、パレスチナの人道状況を懸念する民主党支持者からの圧力に直面している。) バイデンとネタニヤフはさらに、ガザ南端の都市ラファへの攻撃を開始すべきか否かでも意見が対立していた。エジプトとの国境に位置するラファには、開戦以来、南に避難するようイスラエルから指示された100万人以上のパレスチナ人が過密状態で暮らしている。 ロイターの報道によれば、ネタニヤフは3月18日のバイデンとの電話会談で「ラファにいるハマス戦闘員を排除すると決意しており、地上侵攻以外に方法はない」ことを「非常に明確に」伝えたという。 米国家安全保障問題担当大統領補佐官のジェイク・サリバンもこの会談後、ラファへの「大規模な地上作戦」は「間違い」とコメントしている』、「これまでに3万人以上のパレスチナ人たちが殺された」、犠牲者数は予想以上に多いようだ。「バイデンは、イスラエルの重要な同盟国を自認しており、イスラエルには自国を守りハマスを追い詰める権利があると認める一方、ガザにおける民間人の死者数についても懸念も表明してきた。 世界のほかのリーダーに比べると、バイデンは恒久的な停戦を強く求めるまでには至っていないが、それでも、イスラエルに対しより慎重な対応を促すようになっており、ネタニヤフと食い違いが生じている。11月に大統領選挙を控えた国内でも、パレスチナの人道状況を懸念する民主党支持者からの圧力に直面している。) バイデンとネタニヤフはさらに、ガザ南端の都市ラファへの攻撃を開始すべきか否かでも意見が対立している』、「ネタニヤフ」にすれば、トランプ大大統領が再登場するまでの我慢なのかも知れない。

次に、4月15日付けNewsweek日本版「攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/04/post-104263_1.php
・『<イランが発射した大量の無人機とミサイルを、イスラエルの防空システム「アイアンドーム」が黙らせた> 4月13日にイランはイスラエル領内に大規模攻撃を仕掛けたが、ソーシャルメディア上で共有されているライブ映像や動画は、イランのドローンやミサイルをイスラエルの防空システムが迎撃している模様を伝えている。 【動画】宇宙戦争!? イラン無人機とミサイルの大規模波状攻撃を黙らせたイスラエルの最強の盾「アイアンドーム」 イスラエル国防軍は13日、イランが自国領土内からドローンをイスラエルに向けて発射したことを本誌に対して認めた。 イスラエル国防軍によれば、ミサイル防衛システム「アイアンドーム」を含むイスラエルの防空システムは、イランの無人機による攻撃に備えていた。イランによる今回の無人機攻撃は、4月初めにイラン革命防衛隊の将官2人が殺害されたイスラエルによる空爆に対する報復だ。 CNNが放映したエルサレムからの映像では、イスラエルの防空システムがイランの無人機を迎撃しているように見える。X(旧ツイッター)に投稿された約2分間の映像では、サイレンが鳴り響くなか、イスラエルの都市上空で爆発が起き、明るい閃光が走る様子も見える。 「上空で複数の異なる方向からの迎撃が続いている」と、CNNの国際外交担当編集者ニック・ロバートソンは13日の夜に報告した。「どれが飛来するミサイルで、どれが迎撃ミサイルなのか、区別がつかない」』、「CNNが放映したエルサレムからの映像では、イスラエルの防空システムがイランの無人機を迎撃しているように見える」、やはり「防空システム」は完璧なようだ。
・『夜空で起きた戦闘  ロバートソンは、20〜30発のミサイルが迎撃されたところを目撃したと語った。 「何度も爆発音が聞こえる。これもまた迎撃ミサイルによる音のようだ」と、彼は言う。「攻撃ミサイルによる衝撃音は聞こえない」 ソーシャルメディア・ユーザーのAcynは、CNNの映像をXに投稿し、こうコメントした。「これはライブ映像だ。見えているものが何か、正確にはわからないが、空にいくつも筋が見える」 タイムズ・オブ・イスラエルの軍事特派員エマニュエル・ファビアンがXに投稿した別の動画には、エルサレム上空での爆発が映っている。 エルサレムにある神殿の丘の上空で起きたイランの攻撃のシュールな映像」と、ファビアンはコメントした。 「イスラエル国防軍は厳戒態勢を敷き、常に作戦状況を監視している」とイスラエル軍は13日、本誌に声明で答えた。「イスラエル空域で防衛任務に就いているイスラエル航空宇宙軍(IAF)戦闘機やイスラエル海軍の艦船とともに、国防軍の空中防衛システムは厳戒態勢にある。イスラエル国防軍はすべての標的を監視している。国民には、民間防衛軍司令部の指示と、この件に関するイスラエル国防軍の公式発表に従うことを求めている」) イランがイスラエルに報復を予告し、13日に実際に攻撃を行ったきっかけは、4月初めにシリアでイランの将官2人と士官5人を殺害したイスラエルの攻撃だった。 2023年10月7日に、パレスチナのイスラム組織ハマスがイスラエルに奇襲をかけ、1200人を殺害して以来、イスラエルとハマスの戦闘が始まった。以来、イスラエルとイランの緊張は高まっている。イスラエルは、ガザ地区に潜むハマスを標的に作戦を開始。地元の保健当局者によれば、パレスチナ人3万3000人以上が殺害された。 アメリカとイスラエルの両政府高官は、イランがハマスやイスラム聖戦機構だけでなく、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派、イラクやシリアの諸勢力など、海外の民兵組織に政治的、物質的な支援を提供していると非難している』、「アメリカとイスラエルの両政府高官は、イランがハマスやイスラム聖戦機構だけでなく、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派、イラクやシリアの諸勢力など、海外の民兵組織に政治的、物質的な支援を提供していると非難」、確かに「イラン」は中東で台風の目のような存在のようだ。

第三に、4月19日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリスト・中東料理研究家の池滝 和秀氏による「意外と早かったイスラエルの「報復」が意味する事 「暗黙のルール」に基づいた報復の応酬だが…」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/749303
・『イスラエルは、イランによる初めての領内を狙った直接攻撃に対して「限定的」な報復攻撃を行った。イランのライシ大統領は、イスラエルから攻撃があれば、「大規模かつ激しい報復を行う」と宣言しており、今度はイランの対応が焦点となる。 イスラエルの攻撃やイランの被害状況の全貌は明らかではないものの、イランはドローン3機を迎撃したとして、報復に値するような攻撃だったとは認識しない可能性がある。 イスラエルの戦時内閣は、国内世論や抑止力確保の観点から報復方針を決定したが、ガザ戦争を進める中で事態をエスカレートさせて二正面作戦を強いられたり、対米関係が悪化したりするのを避けるため、苦肉の策としてメッセージ性を込めた形式的な報復攻撃を選択したもようだ』、「イスラエルの戦時内閣は、国内世論や抑止力確保の観点から報復方針を決定したが、ガザ戦争を進める中で事態をエスカレートさせて二正面作戦を強いられたり、対米関係が悪化したりするのを避けるため、苦肉の策としてメッセージ性を込めた形式的な報復攻撃を選択」、報復合戦は両国間紛争の特徴なのかも知れない。
・『双方とも領内攻撃能力を誇示  4月1日のイスラエルによる在シリア・イラン大使館でイラン精鋭部隊、革命防衛隊司令官ら7人が殺害された空爆に端を発した両国間の衝突は、報復合戦の様相を呈しているが、今のところ、慎重に制御された中で報復作戦が展開されていると見るべきだろう。 両国の対立は今に始まったものではない。イスラエルは昨年10月にイランの支援を受けるパレスチナのイスラム組織ハマスの奇襲攻撃を受け、1200人以上が殺害された。イランはハマスに武器や資金を提供しているほか、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラも強力に支援しており、水面下での対立が続いてきた。) 今局面で事態がエスカレートする発端になったのは在シリア・イラン大使館への空爆だった。イスラエルは、ヒズボラやハマスへの支援に関わる革命防衛隊は「テロリスト」だとして大使館攻撃を正当化したが、イランは国際法違反だとして激しく反発した。 イランは13~14日にかけてイスラエル領内に弾道ミサイルやドローンなど300発以上を撃ち込む派手な報復攻撃に出たが、報復を宣言したり周辺国に事前通告したりして、大きな被害が出ないような措置を講じていた。 さらに、イスラエルの軍事基地を狙い、民間人にも犠牲が出ないよう配慮するなど、大使館空爆の報復としてあくまでも軍事的な標的に限定された報復攻撃との姿勢を明確にした。 イスラエルの攻撃も、報復というよりもメッセージ性の強いものだったようだ。イスラエル当局者は米紙ワシントン・ポストに対し、ドローン攻撃はイスラエルがイラン領内を攻撃できるというメッセージを送るものだったと語った』、「イスラエルの攻撃も、報復というよりもメッセージ性の強いものだったようだ。イスラエル当局者は・・・ドローン攻撃はイスラエルがイラン領内を攻撃できるというメッセージを送るものだったと語った」、「イスラエルの攻撃も、報復というよりもメッセージ性の強いものだったようだ」、なるほど。
・『イランが激怒した理由  イランのアハマディネジャド大統領(当時)は「イスラエルを地図上から消し去る」と発言するなどイランはイスラエルを敵視し、両国は厳しく対立してきた。イスラエルはイラン人核技術者などを狙った暗殺作戦をイラン国内で実施したり、サイバー攻撃でイラン核施設や軍事施設などに破壊工作を仕掛けたりしてきた。 イスラエルという軍事強国に対してイランは匿名の攻撃やゲリラ戦術による「非対称戦」で応じ、イスラエル関連船舶や親イラン勢力を使ってイスラエルへ攻撃するなど対立は暗黙のルールに基づいて行われてきた。) しかし、4月1日の在シリア・イラン大使館への攻撃はイランが「国際法違反だ」と強く反発するように、イランはイスラエルがこれまでのルールを逸脱してきたと捉えた。 シリア領内でのイスラエルによるイラン関連の標的を狙った攻撃はこれまでも繰り返されてきたが、イランは無視するか、親イラン勢力による小規模な報復を実施するのにとどめてきた。 だが、在シリア・イラン大使館への攻撃は、大使館にいた革命防衛隊司令官が殺害されるなどイラン側の衝撃は大きく、イランは国内世論的にも看過できず、イスラエルを助長させないためにも報復の必要性に迫られた』、「4月1日の在シリア・イラン大使館への攻撃はイランが「国際法違反だ」と強く反発するように、イランはイスラエルがこれまでのルールを逸脱してきたと捉えた。 シリア領内でのイスラエルによるイラン関連の標的を狙った攻撃はこれまでも繰り返されてきたが、イランは無視するか、親イラン勢力による小規模な報復を実施するのにとどめてきた。 だが、在シリア・イラン大使館への攻撃は、大使館にいた革命防衛隊司令官が殺害されるなどイラン側の衝撃は大きく、イランは国内世論的にも看過できず、イスラエルを助長させないためにも報復の必要性に迫られた」、確かに緊張は質的にも一段高まったようだ。
・『アメリカとイスラエル関係悪化に便乗  イスラエルがルールを破ったと認識したイランは、倍返し的にイスラエルに大規模な攻撃を仕掛けたが、あくまでもイラン大使館空爆への報復であり、民間人に犠牲を出さないなど慎重に計算されたものだった。報復以上の意図はなく事態をエスカレートさせるつもりもないとのメッセージを送っていた。 その上でイスラエルが報復攻撃を行えば、大規模に反撃するとして事態の収拾を図っていた。イランには、イスラエルがガザ戦争でハマス掃討作戦に手こずり、強固な同盟関係にあるアメリカとイスラエルの間がぎくしゃくしてバイデン政権のイスラエルに対する不信感が強まっているとの読みもあった。 実際、バイデン大統領はイスラエルのイラン攻撃に反対する姿勢を示し、イスラエルが攻撃したとしてもアメリカは攻撃に加わらないとの方針を明確にした。) イスラエルのネタニヤフ首相は、バイデン大統領との関係が良好とは言えず、トランプ氏の大統領再選に期待しているとみられるが、バイデン大統領を完全に黙殺して同盟関係を危機に陥らせることもできないだろう。 バイデン大統領が明確にイランへの報復に反対する中、大規模な報復に出れば同盟関係に亀裂を生じかねさせず、報復しなければイランに見くびられてしまうことから、アメリカ・イスラエル関係を損なわず、さらにはイランに対しても、いつでも大規模な攻撃を仕掛けられるというメッセージ性を送るような報復にとどめたようだ』、「バイデン大統領が明確にイランへの報復に反対する中、大規模な報復に出れば同盟関係に亀裂を生じかねさせず、報復しなければイランに見くびられてしまうことから、アメリカ・イスラエル関係を損なわず、さらにはイランに対しても、いつでも大規模な攻撃を仕掛けられるというメッセージ性を送るような報復にとどめたようだ」、「報復」にも微妙な「メッセージ性」が込められているようだ。
・『これで「幕引き」とはならない可能性も  ただ、イスラエルは過去にサイバー攻撃など水面下の戦いでイランを攻撃してきたことから、今局面がこれにて幕引きとはならないことも想定しておくべきだろう。 イランの攻撃は史上初のイスラエル領内への直接攻撃であり、規模も大きかった。このため、イスラエルの報復としては不十分であり、複数回に分けるか、手法を変えるかしてイランに打撃を与えてくることも考えておく必要がある。 イランのイスラエル攻撃はルールの逸脱を許さないというメッセージであり、報復の標的も軍事関連に限られた。イスラエルも、イランの軍事関連施設を標的にしたと伝えられ、報復の応酬となっている双方の衝突は一定のルールが守られている形だ。 イランの核開発は表向きにはエネルギー開発など非軍事との位置付けで、仮にイスラエルが核関連施設を攻撃したとなると、非軍事かつ国益に関わる標的が狙われたことになり、イランとしても、新たな報復に出ざるを得ない。イランの核施設が報復攻撃の標的になったとの情報はなく、今のところは想定される枠内に対立が収まっていると言えよう。) ただ、暗殺作戦や代理戦争という両国間の「影の戦争」が、直接的に攻撃し合う形で激化していることは間違いなく、想定よりも大きな被害が偶発的に出たり、市民が巻き込まれたりすれば、制御不能な事態に陥る恐れもある。 両国の言辞が過激化の一途を辿っていることも不安材料だ。イランの核開発は核爆弾製造の意図があることがほぼ周知の事実になっているが、イラン政府の公式見解は核爆弾などの大量破壊兵器の保有はイスラム教的に禁止されているというものである。最高指導者のファトワ(宗教令)によれば、いかなる種類の大量破壊兵器の製造や使用もハラーム(禁止されるものや行為)だ。 革命防衛隊の幹部は18日、イスラエルがイランの核施設に脅威を与え続けるなら、国際原子力機関(IAEA)との協力を停止し、従来の方針を転換して核爆弾を製造するとの考えを表明した。イランは、ウラン濃縮の技術を兵器級レベルまで高めており、核爆弾の製造は数カ月で可能な段階にあるとされている。 イスラエルに対する直接攻撃では弾道ミサイルがイスラエル軍基地に着弾しており、こうしたミサイルに核弾頭が搭載されれば、国土が小さいイスラエルは存続が脅かされるほどの被害を受けることになる。 イスラエルは、イランの核兵器保有を許さないとの断固たる姿勢を示しており、過去にはイラクやシリアの原子炉を空爆して核兵器開発を阻止してきた。イランの核関連施設への空爆の危険性はますます高まり、そうした場合は全面的な戦争に発展するだろう。 両国間の対立は依然として暗黙の理解に基づく制御可能な状態にとどまっているが、わずかな計算ミスや誤解、誤算により制御不能に陥ってもおかしくない極めて危険な水準に達している』、「イスラエル」と「イラン」の「間の対立は依然として暗黙の理解に基づく制御可能な状態にとどまっているが、わずかな計算ミスや誤解、誤算により制御不能に陥ってもおかしくない極めて危険な水準に達している」微妙なバランスの上にかろうじて均衡しているようだ。
タグ:「国連安全保障理事会(以下安保理)で25日に行われた停戦決議の採択で、アメリカはイスラエルが求めていた「拒否」ではなく棄権を選択した・・・米国が拒否ではなく棄権票を投じたため、停戦決議は初めて可決された。バイデンはガザ地区の人道状況を懸念しており、長らく緊密な同盟国と見なされてきた米国とイスラエルの関係は緊張感を増している・・・ Newsweek日本版「やり過ぎたイスラエル、守りきれなくなった米バイデン政権が初めて安保理停戦決議の成立許す」 (その3)(やり過ぎたイスラエル 守りきれなくなった米バイデン政権が初めて安保理停戦決議の成立許す、攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像、意外と早かったイスラエルの「報復」が意味する事 「暗黙のルール」に基づいた報復の応酬だが…) イスラエル・パレスチナ ネタニヤフ政権はイスラエル代表団の訪米を中止した。そして、「開戦以来、アメリカは安保理で一貫した立場をとってきたが、(投票の棄権は)明らかな後退」であり、「国際的な圧力によって、人質を解放することなく停戦できるという希望をハマスに与える」ものだと断じた」、なるほど。 「これまでに3万人以上のパレスチナ人たちが殺された」、犠牲者数は予想以上に多いようだ。「バイデンは、イスラエルの重要な同盟国を自認しており、イスラエルには自国を守りハマスを追い詰める権利があると認める一方、ガザにおける民間人の死者数についても懸念も表明してきた。 世界のほかのリーダーに比べると、バイデンは恒久的な停戦を強く求めるまでには至っていないが、それでも、イスラエルに対しより慎重な対応を促すようになっており、ネタニヤフと食い違いが生じている。 11月に大統領選挙を控えた国内でも、パレスチナの人道状況を懸念する民主党支持者からの圧力に直面している。) バイデンとネタニヤフはさらに、ガザ南端の都市ラファへの攻撃を開始すべきか否かでも意見が対立している』、「ネタニヤフ」にすれば、トランプ大大統領が再登場するまでの我慢なのかも知れない。 Newsweek日本版「攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像」 「CNNが放映したエルサレムからの映像では、イスラエルの防空システムがイランの無人機を迎撃しているように見える」、やはり「防空システム」は完璧なようだ。 「アメリカとイスラエルの両政府高官は、イランがハマスやイスラム聖戦機構だけでなく、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派、イラクやシリアの諸勢力など、海外の民兵組織に政治的、物質的な支援を提供していると非難」、確かに「イラン」は中東で台風の目のような存在のようだ。 東洋経済オンライン 池滝 和秀氏による「意外と早かったイスラエルの「報復」が意味する事 「暗黙のルール」に基づいた報復の応酬だが…」 「イスラエルの戦時内閣は、国内世論や抑止力確保の観点から報復方針を決定したが、ガザ戦争を進める中で事態をエスカレートさせて二正面作戦を強いられたり、対米関係が悪化したりするのを避けるため、苦肉の策としてメッセージ性を込めた形式的な報復攻撃を選択」、報復合戦は両国間紛争の特徴なのかも知れない。 「イスラエルの攻撃も、報復というよりもメッセージ性の強いものだったようだ。イスラエル当局者は・・・ドローン攻撃はイスラエルがイラン領内を攻撃できるというメッセージを送るものだったと語った」、「イスラエルの攻撃も、報復というよりもメッセージ性の強いものだったようだ」、なるほど。 「4月1日の在シリア・イラン大使館への攻撃はイランが「国際法違反だ」と強く反発するように、イランはイスラエルがこれまでのルールを逸脱してきたと捉えた。 シリア領内でのイスラエルによるイラン関連の標的を狙った攻撃はこれまでも繰り返されてきたが、イランは無視するか、親イラン勢力による小規模な報復を実施するのにとどめてきた。 だが、在シリア・イラン大使館への攻撃は、大使館にいた革命防衛隊司令官が殺害されるなどイラン側の衝撃は大きく、イランは国内世論的にも看過できず、イスラエルを助長させないためにも報復の必要性に 「バイデン大統領が明確にイランへの報復に反対する中、大規模な報復に出れば同盟関係に亀裂を生じかねさせず、報復しなければイランに見くびられてしまうことから、アメリカ・イスラエル関係を損なわず、さらにはイランに対しても、いつでも大規模な攻撃を仕掛けられるというメッセージ性を送るような報復にとどめたようだ」、「報復」にも微妙な「メッセージ性」が込められているようだ。 「イスラエル」と「イラン」の「間の対立は依然として暗黙の理解に基づく制御可能な状態にとどまっているが、わずかな計算ミスや誤解、誤算により制御不能に陥ってもおかしくない極めて危険な水準に達している」微妙なバランスの上にかろうじて均衡しているようだ。
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イタリア(その1)(イタリア移民急増で非常事態 収容施設は民間企業が管理する巨大ビジネス その闇と実態、メローニ首相が代理出産を激しく非難 イタリアでは普遍的犯罪) [世界情勢]

今日は、イタリア(その1)(イタリア移民急増で非常事態 収容施設は民間企業が管理する巨大ビジネス その闇と実態、メローニ首相が代理出産を激しく非難 イタリアでは普遍的犯罪)を取上げよう。

先ずは、昨年4月20日付けNeweek日本版「イタリア移民急増で非常事態、収容施設は民間企業が管理する巨大ビジネス、その闇と実態」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/vismoglie/2023/04/post-51_1.php
・『4月11日、イタリアは、ムスメチ市民保護および海洋政策担当大臣の提案に基づき、閣僚評議会は、移民の流れの例外的な増加に関連して、国の領土全体で6か月間の「非常事態宣言」を承認した。 移民は最初の受付センターであるランペドゥーサ島のホットスポットに一時収容されるが、最大収容数が4倍に膨らむ過密状態である。 今後数か月で、さらにその数も増加するという予測がされている。 移民シェルターの混雑を緩和する特別措置を可能にするためのものが「非常事態宣言」である』、「非常事態宣言」で「移民シェルターの混雑を緩和する特別措置を可能にする」、とはどういうことだろう。
・『「非常事態」の対策内容とは  1、迅速な移民の身元確認、亡命庇護希望者保護ステータスの認定、承認手続きの時間短縮化、早期国外追放活動 2、本国送還センターCPRを新たに新設、特別コミッショナー設定、統合プロジェクト設定 イタリアに留まる権利を持たない移民の本国送還を可能にする構造や新しい本国送還のための拘留センター(CPR=Centro di Permanenza per il Rimpatrio) の開設などが盛り込まれた。 受け入れのニーズ、滞在の必要条件を満たしていない移民の身元認識と本国送還の両方を迅速に進める緊急に提供することができるようになるという。 その新構造を作成するためには、特別コミッショナーの措置も必要である。 フロー管理により、効率的かつタイムリーな対応を行い、庇護希望者の承認手続きの時間短縮化を図る。 マッテオ・ピアンテドージ内務大臣によると、強制送還などの対策をとるための費用として500万ユーロ、日本円でおよそ7億3,600万円を拠出するとしている。 3、現行法令の見直しと改正:非政府組織 (NGO) に所属する船舶に関する法令 海軍閉鎖や港の封鎖を行う安全命令の回復。 複数回の救助や行政上の入港停止を無視し、救助活動を妨げるものやNGO船舶を禁止する。 それに対し、 野党・左派政党によると、 「ピアンテドージ内務大臣が、ますます遠くの港をNGO船舶に割り当て始め、最も重要な地域でNGO船の数を減らしている。NGOによる救助は平均して上陸のわずか12%にすぎないという具体的なデータを出してきて、あたかもNGO船舶が移民を惹き付ける"引き寄せ要因"であるという誤った仮定に基づき、NGO救助船の弱体化を諮ったが、移民のイタリア上陸はますます増加した。」 と、メローニ政権を批判をしている』、「内務大臣が、ますます遠くの港をNGO船舶に割り当て始め、最も重要な地域でNGO船の数を減らしている・・・あたかもNGO船舶が移民を惹き付ける"引き寄せ要因"であるという誤った仮定に基づき、NGO救助船の弱体化を諮ったが、移民のイタリア上陸はますます増加した」、「NGO船」を遠ざけようとする努力は失敗に終わったようだ。
・『| 非常事態宣言は本当に必要だったのか?  野党議員は、そもそも第一に、「非常事態宣言」は必要だったのか? 本当は「緊急事態」でもないのでは?と指摘した。 実際には、今年3月には約13,000人の移民がイタリアに上陸したが、これは、2022年7月の13,802人とほぼ同じ人数であり、8月の16,822人よりも少い。同様に、9月は13,533人、10月は13,493人である。 さらに、世界最大の国際人権NGO法人のアムネスティ・インターナショナルによると、2014年から2017年にかけて、イタリアには623,000人の移民が上陸し、400,000件の亡命申請書が提出され、528,000件が受付システムに登録されたと言う。 "緊急非常事態が宣言されていないにもかかわらず"、190,000人以上の人々を受け入れてきた。過去10年間、その人数はほぼ一定のままだ。 なぜ今、「非常事態宣言」が必要なのかと、メローニ政権に質問を投げかけている。 また、これまでのところ、多くの移民がイタリア領土に上陸し、欧州では最多数であるにも関わらず、なぜか欧州連合で亡命申請を行った人数では4番目に多い国がイタリアであるという矛盾についても指摘している。 昨年2022年のデータでは、亡命申請を行った人数の最多はスペインの116,140人、2番目がフランスで137,505人、3番目がドイツで 217,735人だったのに対し、イタリアは77,195人だった。 2022年の全体では、合計10,865人の外国人が特別保護を受け、亡命申請者の44% が一次保護ステータス、32%が国際的保護の形式を付与され、12%が特別保護ステータスを付与された。 イタリアは、亡命申請が極端に少ない理由の一つに、"外国人に全くその旨を翻訳して伝えていなかった"ことが挙げられる。 右派政党によるプロパガンダ要素が強く、政治的策略であることは数字からも明らかで、移民政策の失敗だと野党は声高に叫び始めた。 野党によると、「"非常事態宣言"は偽装されたものであり、つまりNGO船舶を止めることは単なる口実である、既に以前、失敗に終わった緊急型の規制・行政運営を帳消しにするために、メローニ政権は、より高い目標を掲げて、本当の緊急・非常事態宣言を誇示することしかできなかった。今回もまた失敗だ。」と非難している』、「野党議員は、そもそも第一に、「非常事態宣言」は必要だったのか? 本当は「緊急事態」でもないのでは?と指摘・・・多くの移民がイタリア領土に上陸し、欧州では最多数であるにも関わらず、なぜか欧州連合で亡命申請を行った人数では4番目に多い国がイタリアであるという矛盾についても指摘している・・・亡命申請が極端に少ない理由の一つに、"外国人に全くその旨を翻訳して伝えていなかった"ことが挙げられた」、なるほど。
・『 前左派政権の人道的保護の法令を廃止せよ、新「クトロ法令」決議  メローニ首相は「私の目的は、特別保護の撤廃です」と、はっきりと述べた。 前左派政権(第2次コンテ政府)による過度に拡大された特別保護を廃止したいのがメローニ首相である。 その「特別保護」というものは、ヨーロッパの他の国々で起こっていることと比較すると、イタリアの場合は保護の範囲がさらに追加されており、それは度が過ぎているからだという。 特別保護なるものが存在する限り、移民の流れを止めることができない、合法移民の受け入れ拡大や人身売買業者に対する公然たる闘争の強化をするというのが、メローニ首相の主張である。 そして、特別保護に関しては、災害や医療のための居住許可を最小限に制限することを目的とし、左派による過度に拡大された特別保護の廃止と居住許可を取り消すと修正し、「クトロ法令」を上院で決議した。 それ以前の2018年には既に、前内務大臣で現副首相の極右政党同盟のサルビーニ氏が制定したサルビーニ法令というものが存在している』、「前左派政権(第2次コンテ政府)による過度に拡大された特別保護を廃止したいのがメローニ首相である・・・特別保護なるものが存在する限り、移民の流れを止めることができない、合法移民の受け入れ拡大や人身売買業者に対する公然たる闘争の強化をするというのが、メローニ首相の主張である」、「特別保護」の撤廃はやむを得ないようだ。
・『"サルビーニ法令は、人道的保護を廃止した"  第1条では、庇護の付与に関する新しい規定が含まれており、移民に関する統合法によって想定されていた人道的理由による保護の廃止を効果的に規定している。 ・人道的性質、またはイタリア国家の憲法上または国際的義務に起因するものでなければならない。 ・深刻な災害による理由または医療目的のため、もしくは紛争などの緊急事態から逃れる人々に居住許可を与える。 ・人道的保護は、自国で迫害を受ける可能性があるとき(移民法第 19条) ・労働搾取や人身売買の被害者は国外追放しない。 ・就労滞在許可に変換できない。 などである。 第2条では、本国送還のための拘留センター(CPR) で本国送還を待っている外国人は、最大90日間の拘留であったが、その制限を最大180日に拡大した。 第3条は、亡命・庇護希望者はCPRに最大30日間収容して、身元と市民権を確認できると規定している。 第4条は、CPRに場所がなく、治安判事の許可があれば不法移民を国境事務所に拘留することができると規定した。 第5条は、亡命申請のための居住許可を登記所に登録するための資格に変更した。 第6条は、本国送還のためにより多くの資金を配分することを規定した。 2018年に50 万ユーロ、2019年に150 万ユーロ、2020年にさらに150 万ユーロである。) 国際保護と難民の地位の取り消しまたは否定したものの、このサルビーニ法令は、難民の地位の取り消しまたは補助的な保護を伴う犯罪のリストを拡大したものであった。 リストには、性的暴力、麻薬の製造、所持・密売、強盗・ゆすり、窃盗、強盗、公務員に対する脅迫または暴力などがある。 亡命・庇護希望の申請者が1つでも犯罪を犯し刑事訴訟手続中であった場合、また、有罪判決が下された場合に庇護申請は拒否され停止される。 さらに、難民が出身国に戻った場合、たとえ一時的であっても、国際的および補助的な保護を失うことも規定したものである。 この度決議された「クトロ法令」は、このサルビーニ法令に修正を加えたものであるという。 野党左派反対勢力は、移民に関してメローニ政権が審議した非常事態宣言も強く批判しており、民主党のエリー・シュライン書記官は、「メローニ政権は、移民政策を策定できないことの代償を最も脆弱な人々に負わせている」と不満を漏らし、「メローニは、人身売買業者ではなく、人身売買の犠牲者を攻撃している」と非難、クトロ法案にも強く反発している』、「国際保護と難民の地位の取り消しまたは否定したものの、このサルビーニ法令は、難民の地位の取り消しまたは補助的な保護を伴う犯罪のリストを拡大したものであった。 リストには、性的暴力、麻薬の製造、所持・密売、強盗・ゆすり、窃盗、強盗、公務員に対する脅迫または暴力などがある」、この程度の強化はやむを得ないようだ。
・『イタリアの入管収容施設:本国送還のための拘留センター  CPR) の実態  本国送還のための拘留センターCPR(=Centro di Permanenza per il Rimpatrio) は、日本の入国者収容所のようなものに近い、送還される前の拘置所で、移民を閉じ込める施設だ。 イタリアに滞在するための書類がないこと以外は、内部に収容されている人は誰も犯罪を犯してはいないが、依然とした拘留システムであり、その権利も意味もない刑務所である。 市民の自由と権利のイタリア連合の市民社会組織ネットワーク「ブラック ホール」によってCPRの2つの闇の側面がレポートされた。 イタリアには、本国送還のための拘留センターCPRは10箇所ある。 通常は1つのCPRには、400人未満の移民が収容されている。 送還される可能性が低い人々を拘束し、基本的生活のために必要な経費は、1日で40,000ユーロ(約590万円)以上で、2018年から2021年までの3年の合計は4,400万ユーロ(約64億9,600万円)x 10センター分が税金で賄われた。 実際には、10のセンターの維持費と、センターの内外を監視するために配置されている警察の維持費なども加算しなければならない。 移民の出身国との合意がなされず、何らかの事情で速やかに送還できない場合、長期収容となるが、法律で定められた最大滞在日数に達すると、ほとんどの人がこれら収容所から解放される。本国送還は50%のみ行わている。 2020年1月1日から2022年9月15 日までに本国強制送還が延期された半分以上は、チュニジア国民が関与しており、移民の主な出発国がチュニジアである理由は、移民に対する弾圧が行われているからであるという。 チュニジアのサイード大統領は「移民は国家転覆を目論む犯罪者である」と提言し、 国から脱出する移民を厳しく取り締まり、一斉強制送還にも踏み切ったという背景がある。 チュニジアの次に多い国順で、モロッコ、ナイジェリア、エジプト、アルバニア、ガンビア、アルジェリアが続く。 イタリアはこれらの国々とは、国家間の協定があるため最も簡単に送還できると報告書が強調しているが、正確にはこれらの送還の速さは、"深刻な権利侵害につながる"可能性がある。 実際、多くの場合、彼らは亡命を申請し、保護を正式に申請することが可能であるということは、彼らに全く知らされていない。 難民や亡命希望者から権利を奪うことで、イタリアの移民問題を何らかの形で解決できるだろうという考えなのだろうか。 少数派であるグループの権利の範囲を狭めることは、民主主義の原則と憲法に反することであると同時に、社会的紛争を助長し、領土内の関係の質を悪化させる。 人道上の亡命申請を取り消すことは、地方自治体が責任を負う不規則性と社会不安を助長するだけだ。 同時に、地方自治体の公共システムは解体され、その役割を大幅に削減し、民間システムに依存し支持することは、地方自治体の公共支出の増加にも直接つながっていくのではないだろうか。 ・トリノの本国送還のための拘留センターCPR 亡命申請者のための個別の施設の欠如。窓なしの部屋で一晩のみの滞在可能な施設。 ・ミラノ、トリノ、ローマのグラディスカ、パラッツォ サン ジェルバシオの本国送還のための拘留センターCPR 自律的に照明ライトをオンまたはオフにすることはできない。 ・バーリの本国送還のための拘留センターCPR シーツのないマットレス。部屋にはゴキブリがいる。ドアのない和式トイレ。 悪い衛生状態と質の悪い食品。 などである。 収監所で移民の世話をしなければならない文化仲介者、医師、心理学者などの人員は不足しているので、サービスの実行時間数もおのずと減る。 欧州権利裁判所が要求する最低限の生活空間基準を満たしていない部屋に閉じ込められたなど、CPRに拘束されている人々への深刻な人権侵害があげられた。 これら報告書に挙げられている数え切れないほどの権利の剥奪は、氷山の一角にすぎない。 2017年には、ストラスブール控訴裁判所は、ランペドゥーサ島(南イタリア)に到着した4人のチュニジア人移民が自由を奪われ、不法に強制送還されたことについて、イタリアを非難する判決を下し、欧州人権裁判所によって2020年3月31日には、この種の違反で既にイタリアは有罪判決を受けている』、「欧州権利裁判所が要求する最低限の生活空間基準を満たしていない部屋に閉じ込められたなど、CPRに拘束されている人々への深刻な人権侵害があげられた。 これら報告書に挙げられている数え切れないほどの権利の剥奪は、氷山の一角にすぎない。 2017年には、ストラスブール控訴裁判所は、ランペドゥーサ島(南イタリア)に到着した4人のチュニジア人移民が自由を奪われ、不法に強制送還されたことについて、イタリアを非難する判決を下し、欧州人権裁判所によって2020年3月31日には、この種の違反で既にイタリアは有罪判決を受けている」、これらはいかにもまずい。
・『拘留施設は多国籍企業に丸投げ、巨大ビジネス。その闇と実態  ヨーロッパ全土には、さまざまな種類の拘置所や刑務所を管理するサービスを提供する多国籍企業が存在する。 2020年に、サルデーニャのマコマー本国送還のための拘留センターCPRの事業が発足した。 拘留施設は、スイスの持株会社である Orsイタリアによって管理されている。 Orsはイタリアを中心に、スイス、ドイツ、オーストリアを拠点としたホスピタリティ事業で、22もの刑務所施設のサービスを管理する多国籍企業だ。 昨年の売上高が約600億ドル(約8兆円)に達する巨大ビジネスである。 地域ネットワークの非営利団体ではなく、収益性の高い企業で、イタリア連帯コンソーシアム (Ics) とトリエステのカリタス財団が率いており、人材派遣会社アデコの分社として誕生したのが、このスイスのグループ傘下のOrsイタリアだ。 Orsイタリアは、特にスイス、オーストリア、ドイツで亡命希望者のために特化したセンターを運営しているという。 しかし、近年、基本的人権に害を及ぼすほど非効率的で杜撰な管理を非難されている。 入札で想定されていたコストの14%が削減されている点は、サービスの質に関する疑いも出てきた。 治安令により、難民 1 人あたりの負担は35ユーロ(約5,170円)から26ユーロ(約3,840円)以下に減額された。 2020年1月18日(土曜日)の早朝、ゴリツィアの本国送還のための拘留センターCPRで、37歳のグルジア人が死亡した。亡命希望者であった彼は、難民保護の資格を得るには必要条件を満たしていなかった。目撃者には「警備員に殴られた」とのことだ。 民間管理会社CPRからの情報が漏洩して判明したこともある。 収監されていた移民の自傷行為、自殺未遂、管理団体からの苦情、食べられない食事、衛生と健康、心理的援助における重大な欠陥、弁護権を行使することが困難、などである。そして、少なくとも3回の脱走があったことも報告されていた。 CPR内の死亡者数は2年間で6人。決して高くない数字だが、とにかく、入札を獲得し続けているというのは、とても不可思議ではある。 移民の受付システムを管理する外国人収容施設の入札は、より競争力のある大企業に飲み込まれており、イタリア領土全体にそれは存在するのが現状だ。 市場シェアを占有するために収益を先延ばしにして、競合他社をしのぐための積極的なマーケティングをしているというのが印象で、結局、非営利団体NGOを排除することを目的としているとも見える。 海上のNGO船舶に続いて、陸路についても不可解な権利の歩哨が横行しているようだ』、「拘留施設は多国籍企業に丸投げ、巨大ビジネス」、初めて知った。ただ、「近年、基本的人権に害を及ぼすほど非効率的で杜撰な管理を非難されている。 入札で想定されていたコストの14%が削減されている点は、サービスの質に関する疑いも出てきた。 治安令により、難民 1 人あたりの負担は35ユーロ(約5,170円)から26ユーロ(約3,840円)以下に減額された」、これはやはり問題だ。
・『 今後、考えられるイタリアの抱えるリスク  現在決議で認可されているこの非情事態宣言が、パンデミックのいくつかの段階のように、移民の権利の制限を正当化するために悪用されてはならない。 自由が保証されていない人々に亡命が保証され、とりわけ、イタリアに存在する非正規の外国人の数が増加してしまうことのないようにしていただきたいものだ。 非常事態宣言は、送還の流動性を保証するものでもない。出身国との協定がなければ、送還は行われない。近年さまざまな国ですでに行われているように、出身国と協定を結ぶ必要がある。 移民増加現象の緊急管理は、中長期的なこの政策で構造的な解決策の基礎を築くことができるだろうか』、「移民の権利の制限を正当化するために悪用されてはならない。 自由が保証されていない人々に亡命が保証され、とりわけ、イタリアに存在する非正規の外国人の数が増加してしまうことのないようにしていただきたいものだ」、その通りだ。

次に、4月14日付けNeweek日本版「メローニ首相が代理出産を激しく非難、イタリアでは普遍的犯罪」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/worldvoice/vismoglie/2024/04/post-62.php
・『イタリアのジョルジア・メローニ首相は4月12日金曜日、ローマで行われた『若きヨーロッパのために』と題したイタリアの出生率と人口減少問題について考える会議に出席した。 人口動態の変化、環境、将来についてを話す中で、「代理出産」を激しく非難した。 首相は、代理出産は「非人道的」であると定義し、いわゆる「子宮貸し、レンタル子宮」についてを強調し、「それは間もなく普遍的な犯罪になるだろう」と発表した。 代理出産を普遍的犯罪とする法案を支持する用意があると付け加え、同法案が「できるだけ早く承認されることを期待している」と演説をした。 メローニ首相が「子宮を貸し出す行為」と定義する代理出産とは、国境を越えた愛の行為として偽装することで養われている闇市場のことである。 これは、「意図された親」とも呼ばれ、これから生まれる子供の親となる人々に代わって女性が妊娠を行う生殖補助医療である。 子どもを妊娠する卵子は、ドナーから提供される。 つまり、妊婦は胎児と血のつながりはない。 または、卵子は将来の母親から、精子は将来の父親からのものである可能性がある。 同性カップルの場合、あるいはドナーの場合も同様。 通常、夫婦が代理出産で子どもを産む場合、将来の両親のうち少なくとも一方が、卵子か精子で生まれた子供と遺伝的つながりを持っている。 他人の受精卵を子宮で育てて出産する「代理出産」はイタリアでは普遍的犯罪とになり最長2年の懲役が科せられる。 イタリアでは代理出産はすでに犯罪と定義されている。 イタリア国民による海外での代理出産の罪の起訴に関する「2004年2月19日の法律第40号の第12条の修正案」をメローニ政権は提出している。 国外で行った代理出産も違法。 違反者には3か月から2年の禁固刑と60万ユーロから100万ユーロ(約1億4,110万円)の罰金が科される。 現在イタリアでは代理出産は禁止されており、代理出産のために海外に出るカップルは年間3千?4千件。 最も頻繁にその目的地として選ばれていたのがウクライナだ。 代理出産は、実際にはヨーロッパや世界中のいくつかの国では合法である。 合法の国は、ウクライナ、ギリシャ、ジョージア、アメリカ、カナダ。 コリエレ・デッラ・セーラ 紙によると、海外で赤の他人の女性を妊娠させて生まれたイタリア人の子供に関する公式的な数字はないが、年間250人から350人がいると推定されている』、「他人の受精卵を子宮で育てて出産する「代理出産」はイタリアでは普遍的犯罪とになり最長2年の懲役が科せられる。 イタリアでは代理出産はすでに犯罪と定義されている。 イタリア国民による海外での代理出産の罪の起訴に関する「2004年2月19日の法律第40号の第12条の修正案」をメローニ政権は提出している。 国外で行った代理出産も違法。 違反者には3か月から2年の禁固刑と60万ユーロから100万ユーロ(約1億4,110万円)の罰金」、なるほど。
・『 イタリア司法の判決で国が敗訴  海外で代理出産によって生まれた子どもをイタリアに連れ帰り、子どもの出生届をする際、同性カップルの間の子ども(未成年者)に発行される電子身分証明書の登録時に『母親の名前』『父親の名前』と記載されている文書は事実上違法であると訴えた同性カップル。 公務員が犯したイデオロギー的虚偽の犯罪であり、また、両親の性別に対応するその他の文言を適用したことを非難した裁判で、2024年2月15日に、ローマ控訴裁判所は、『当時内務大臣だったサルヴィーニ氏が主導して作った2019年内務省令』を違法と判決した。 裁判所の判決文によれば、『親1/親2』ならば良いという。 また、2024年3月5日にも、イタリア・パドヴァ裁判所判決で、同性カップルの母親が、2人の子どもの出生証明書について有効を求めていた裁判では、母親2人の認知の取り消しを求めた検察庁の上訴が棄却された。 よって、同性親家庭の非生物学的な母親は形式的にも母親であり続ける。どちらか一方の母親を削除することはできないという判決が下され、国が敗訴した形となった。 メローニ首相と連立政権の党で現副首相・インフラ運輸大臣のサルビーニ氏は、「控訴院の判決は間違っている。誰もが恋愛において、自分のやりたいことをいつでも自由にすれば良いが、『お母さん』と『お父さん』と言う言葉が法律によって削除されることを認定するなど、馬鹿げている。避(注:正しくは「非」)難に値する行為で、これは進歩ではない。」と、SNS上で怒りの反論を述べている。 また、メローニ政権で家族・出生・機会均等大臣を務めるエウジェニア・ロッチェッラ氏は、「イタリアでは子供たちはみな同じであり、同じ権利を持っている。これは最近欧州人権裁判所によって認められており、破毀院も共同セクションである」と言い、メローニ政権は我々の制度を一ミリも変えていないと強調した。同大臣は、「異性愛者と同性愛者の両方のカップルに適用される簡単で利用しやすい手続きもすでにある」と、述べている。 昨年3月にも、ミラノで生まれた同性カップルの息子と娘の登記所への登録を停止するよう要請が、イタリア内務省からミラノ市長へ通達されるという騒動が話題となった』、「海外で代理出産によって生まれた子どもをイタリアに連れ帰り、子どもの出生届をする際、同性カップルの間の子ども(未成年者)に発行される電子身分証明書の登録時に『母親の名前』『父親の名前』と記載されている文書は事実上違法であると訴えた同性カップル。 公務員が犯したイデオロギー的虚偽の犯罪であり、また、両親の性別に対応するその他の文言を適用したことを非難した裁判で、2024年2月15日に、ローマ控訴裁判所は、『当時内務大臣だったサルヴィーニ氏が主導して作った2019年内務省令』を違法と判決した。 裁判所の判決文によれば、『親1/親2』ならば良いという・・・メローニ首相と連立政権の党で現副首相・インフラ運輸大臣のサルビーニ氏は、「控訴院の判決は間違っている。誰もが恋愛において、自分のやりたいことをいつでも自由にすれば良いが、『お母さん』と『お父さん』と言う言葉が法律によって削除されることを認定するなど、馬鹿げている。避(注:正しくは「非」)難に値する行為で、これは進歩ではない。」と、SNS上で怒りの反論を述べている」、「メローニ首相」は右翼なので、やはり判断は保守的なようだ。
・『イタリアでの同性カップルの子どもの家族登記・役所への届出  父&父(海外産まれの子)[満月]?認可 母&母(海外産まれの子)[満月]?認可 母&母(イタリアで出産した子)[×]認可しない というものが、現在のイタリアの現状である。 メローニ首相: 「子供たちをスーパーマーケットの棚に並ぶ商品のようにみなすことが愛の行為だということは、私には納得できない。子どもたちを産みたいという正当な欲求を諦めることも愛の行為ではない。子どもには可能な限りどんな手段を使ってでも保障できる権利があるのです。」と述べた。 一方、野党は、「家族が第一であり、出生率が政府の優先事項であるとも述べているが、これは、子供用品(特におむつやミルク)に対する付加価値税の引き上げなど、前年と比較して行政が実施した一部の措置と客観的に見て矛盾する言葉である」と、すぐに反応を示して批判をした。 イタリアの標準税率は22%で、主に生活必需品を対象として、10%、5%、4%の軽減税率がある。 メローニ政権は、家族向け対策として、おむつやミルクなどの子供向け製品の付加価値税VAT(イタリアではIVA)を2023年に22%から5%に引き下げる減税措置をしたが、現在は5%だったものを10%に引き上げ、増税をした。 野党民主党の書記長シュライン氏は独身女性であり、同性のパートナーがいるレズビアンであることを公表しているが、視野が狭いのではいかと感じる。 子どもの育児は、母乳やミルクや離乳食が終わり、おむつが外れる期間までではない。ピンポイントの時期だけに必要な雑貨購入にかかる税率を5%にしたとて、直接的に出生率の向上に繋がるわけではないとも思える。子どもは成長をしていくにつれ、もっとお金は掛かるものであって、一児の母親であるメローニ首相の5%税率の撤廃は妥当である。 メローニ首相は、もっと違う形で子育て世代への支援を考え予算案に盛り込んだ』、「メローニ首相は、もっと違う形で子育て世代への支援を考え予算案に盛り込んだ」、どんな形なのだろう。
・『 イタリアの子育て世代支援策  新しい予算法においては、行政には次の権限もあるということも強調しておく必要がある。 2024年に親の育児休暇を増やすために、約1億4,000万ユーロ(約228億4000万円)を割り当てた。 ・保育所のボーナスを増額する(経済状態指数ISEE年間所得が4万ユーロ未満(約652万円未満)の家庭に対して3,000ユーロ(約49万円)から3,600ユーロ(約58万7000円)に増額する。 資金は2025年には2億4,000万(約391億5400万円)から2億5,400万(約407億8500万円)、2026年には最大3億ユーロ(約489億円)に増加する。) ・母親ボーナスを導入する(子供(2人以上)を持つ労働者に対する拠出金軽減』、どれも面白いが、特に「母親ボーナスを導入」は傑作だ。
・『 イタリアの深刻な人口減少とリスク  すべての措置は、センセーショナルな出生率の低下を食い止めようと計画されている。 イタリア国立統計研究所(ISTAT) のデータによると、2023年に生まれた子どもの数はわずか37万9千人。 1000人当たり6.4人の子どもが出生し、過去最高のマイナス記録となった。 2022年には6.7人で、昨年は出生数がマイナス1万4千人、出生率は3.6%であった。 メローニ首相は、スピーチの中で、出生率低下という長年の問題について再び語った。「何年にもわたって作られてきた物語を覆さない限り、具体的な介入は決して十分ではない。 子どもをこの世に産むということは、女性にとって自由、夢、キャリア、場合によっては美貌を犠牲にすることになるため、それは最終的には不都合な選択になるといったこの種のメッセージは所謂、"反面教師"であると捉えるべきである。キャリアを築くために子どもを産むことを諦めることは、"真の自由ではない"」と、メローニ首相は主張した。 近年の傾向を逆転させることができなければ、人口減少がイタリアとヨーロッパを崖っぷちに引きずり込む危険にさらされるだろう』、「キャリアを築くために子どもを産むことを諦めることは、"真の自由ではない"」と、メローニ首相は主張」、正論ではあるが、女性の昇進に一定のクオータ(割り当て)などをする方が本筋だろう。
・『 イタリアの出生率の緊急事態  ローマの会議にはエウジーニア・ロッチェッラ家族・出生・機会均等大臣も出席し、イタリアの出生率の深刻な傾向について語った。 家族・出生・機会均等大臣は、「この問題への無関心が何年も続いたため、影響を残さず、この問題を止めて傾向を逆転させるには長い時間がかかるだろう」と説明している。 同大臣によれば、出生率政策への投資に対する大きなインセンティブは欧州連合から得られる可能性があるという。 そしてこれが、イタリア政府が人口動態の問題を次期欧州委員会と新しい欧州議会の優先事項に据える理由であり、「グリーン移行とデジタル移行に関してすでに行われたように、人口動態の移行、すなわち厳しい冬からの移行への投資とヨーロッパにおける大胆さと未来感を通して、少なくとも新生の春が訪れるだろう」と、演説で述べている。 出生率を上げたい、子どもの数を増やし人口減少に歯止めをかけたいが、代理出産によって子どもを増やすことはしてはいけない。 La Repubblica @repubblica 公式Youtubeチャンネルより教皇フランシスコ「代理出産は嘆かわしい。世界レベルで禁止されなければならない」 今年1月には、ローマ教皇フランシスコは、代理出産、レンタル子宮、ジェンダー理論について言及した。 「平和への道には、母親の胎内にいる胎児から始まる、すべての人間の生命は、その存在のあらゆる瞬間において尊重され保護されなければなりません。一方で、特に西洋では、これは抑制できず、文化が根強く普及していることを遺憾に思います。商業化の対象となってはならない。」 いわゆる代理出産は女性と子供の尊厳を著しく傷つける行為である。 世界人権宣言に含まれるシンプルだが明確な表現によれば、平和への道には人権の尊重が必要だと述べている』、「いわゆる代理出産は女性と子供の尊厳を著しく傷つける行為である。 世界人権宣言に含まれるシンプルだが明確な表現によれば、平和への道には人権の尊重が必要だと述べている」、同感である。
タグ:イタリア (その1)(イタリア移民急増で非常事態 収容施設は民間企業が管理する巨大ビジネス その闇と実態、メローニ首相が代理出産を激しく非難 イタリアでは普遍的犯罪) Neweek日本版「イタリア移民急増で非常事態、収容施設は民間企業が管理する巨大ビジネス、その闇と実態」 「非常事態宣言」で「移民シェルターの混雑を緩和する特別措置を可能にする」、とはどういうことだろう。 「内務大臣が、ますます遠くの港をNGO船舶に割り当て始め、最も重要な地域でNGO船の数を減らしている・・・あたかもNGO船舶が移民を惹き付ける"引き寄せ要因"であるという誤った仮定に基づき、NGO救助船の弱体化を諮ったが、移民のイタリア上陸はますます増加した」、「NGO船」を遠ざけようとする努力は失敗に終わったようだ。 「野党議員は、そもそも第一に、「非常事態宣言」は必要だったのか? 本当は「緊急事態」でもないのでは?と指摘・・・多くの移民がイタリア領土に上陸し、欧州では最多数であるにも関わらず、なぜか欧州連合で亡命申請を行った人数では4番目に多い国がイタリアであるという矛盾についても指摘している・・・亡命申請が極端に少ない理由の一つに、"外国人に全くその旨を翻訳して伝えていなかった"ことが挙げられた」、なるほど。 「前左派政権(第2次コンテ政府)による過度に拡大された特別保護を廃止したいのがメローニ首相である・・・特別保護なるものが存在する限り、移民の流れを止めることができない、合法移民の受け入れ拡大や人身売買業者に対する公然たる闘争の強化をするというのが、メローニ首相の主張である」、「特別保護」の撤廃はやむを得ないようだ。 「国際保護と難民の地位の取り消しまたは否定したものの、このサルビーニ法令は、難民の地位の取り消しまたは補助的な保護を伴う犯罪のリストを拡大したものであった。 リストには、性的暴力、麻薬の製造、所持・密売、強盗・ゆすり、窃盗、強盗、公務員に対する脅迫または暴力などがある」、この程度の強化はやむを得ないようだ。 「欧州権利裁判所が要求する最低限の生活空間基準を満たしていない部屋に閉じ込められたなど、CPRに拘束されている人々への深刻な人権侵害があげられた。 これら報告書に挙げられている数え切れないほどの権利の剥奪は、氷山の一角にすぎない。 2017年には、ストラスブール控訴裁判所は、ランペドゥーサ島(南イタリア)に到着した4人のチュニジア人移民が自由を奪われ、不法に強制送還されたことについて、イタリアを非難する判決を下し、欧州人権裁判所によって2020年3月31日には、この種の違反で既にイタリアは有罪判決を受けて いる」、これらはいかにもまずい。 「拘留施設は多国籍企業に丸投げ、巨大ビジネス」、初めて知った。ただ、「近年、基本的人権に害を及ぼすほど非効率的で杜撰な管理を非難されている。 入札で想定されていたコストの14%が削減されている点は、サービスの質に関する疑いも出てきた。 治安令により、難民 1 人あたりの負担は35ユーロ(約5,170円)から26ユーロ(約3,840円)以下に減額された」、これはやはり問題だ。 「移民の権利の制限を正当化するために悪用されてはならない。 自由が保証されていない人々に亡命が保証され、とりわけ、イタリアに存在する非正規の外国人の数が増加してしまうことのないようにしていただきたいものだ」、その通りだ。 Neweek日本版「メローニ首相が代理出産を激しく非難、イタリアでは普遍的犯罪」 「他人の受精卵を子宮で育てて出産する「代理出産」はイタリアでは普遍的犯罪とになり最長2年の懲役が科せられる。 イタリアでは代理出産はすでに犯罪と定義されている。 イタリア国民による海外での代理出産の罪の起訴に関する「2004年2月19日の法律第40号の第12条の修正案」をメローニ政権は提出している。 国外で行った代理出産も違法。 違反者には3か月から2年の禁固刑と60万ユーロから100万ユーロ(約1億4,110万円)の罰金」、なるほど。 「海外で代理出産によって生まれた子どもをイタリアに連れ帰り、子どもの出生届をする際、同性カップルの間の子ども(未成年者)に発行される電子身分証明書の登録時に『母親の名前』『父親の名前』と記載されている文書は事実上違法であると訴えた同性カップル。 公務員が犯したイデオロギー的虚偽の犯罪であり、また、両親の性別に対応するその他の文言を適用したことを非難した裁判で、2024年2月15日に、ローマ控訴裁判所は、『当時内務大臣だったサルヴィーニ氏が主導して作った2019年内務省令』を違法と判決した。 裁判所の判決文によれば、『親1/親2』ならば良いという・・・メローニ首相と連立政権の党で現副首相・インフラ運輸大臣のサルビーニ氏は、「控訴院の判決は間違っている。誰もが恋愛において、自分のやりたいことをいつでも自由にすれば良いが、『お母さん』と『お父さん』と言う言葉が法律によって削除されることを認定するなど、馬鹿げている。避(注:正しくは「非」)難に値する行為で、これは進歩ではない。」と、SNS上で怒りの反論を述べている」、「メローニ首相」は右翼なので、やはり判断は保守的なようだ。 「メローニ首相は、もっと違う形で子育て世代への支援を考え予算案に盛り込んだ」、どんな形なのだろう。 どれも面白いが、特に「母親ボーナスを導入」は傑作だ。 「キャリアを築くために子どもを産むことを諦めることは、"真の自由ではない"」と、メローニ首相は主張」、正論ではあるが、女性の昇進に一定のクオータ(割り当て)などをする方が本筋だろう。 「いわゆる代理出産は女性と子供の尊厳を著しく傷つける行為である。 世界人権宣言に含まれるシンプルだが明確な表現によれば、平和への道には人権の尊重が必要だと述べている」、同感である。
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ウクライナ(その7)(元CIA諜報員がウクライナ支援を解き明かす バイデンの「不作為」と「プーチンの操り人形」、プーチンの誤算 傷だらけでクリミア半島から逃げ出す黒海艦隊、ウクライナ劣勢?いや違う この先にあるのは膠着状態 ロシアの「北朝鮮化」ウクライナの「韓国化」だ ロシア軍の「怒涛の進撃」は難しい、ウクライナ劣勢?いや違う この先にあるのは膠着状態 ロシアの「北朝鮮化」ウクライナの「韓国化」だ ロシア軍の「怒涛の進撃」は難しい) [世界情勢]

ウクライナについては、昨年8月5日に取上げた。今日は、(その7)(元CIA諜報員がウクライナ支援を解き明かす バイデンの「不作為」と「プーチンの操り人形」、プーチンの誤算 傷だらけでクリミア半島から逃げ出す黒海艦隊、ウクライナ劣勢?いや違う この先にあるのは膠着状態 ロシアの「北朝鮮化」ウクライナの「韓国化」だ ロシア軍の「怒涛の進撃」は難しい、ウクライナ劣勢?いや違う この先にあるのは膠着状態 ロシアの「北朝鮮化」ウクライナの「韓国化」だ ロシア軍の「怒涛の進撃」は難しい)である。

先ずは、本年2月22日付けNewsweek日本版が掲載した元CIA諜報員のグレン・カール氏による「元CIA諜報員がウクライナ支援を解き明かす、バイデンの「不作為」と「プーチンの操り人形」トランプ」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/glenn/2024/02/post-117_1.php
<さながら第1次大戦における塹壕戦の21世紀版。アメリカの軍事支援に世界の未来は懸かっているが、大統領選挙をにらみ、トランプが横やりを入れる> ウクライナ戦争は3年目に入り、同国東部の戦線は実に延長1000キロに及ぶ。 農地も森林も砲弾でえぐられ、破壊された戦車や凍り付いた兵士の遺体があちこちに転がっている。 ロシア大統領のウラジーミル・プーチンはウクライナ国家の完全な解体を目指し、ウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキーは領土の完全な奪還を目指している。 どちらにとっても、妥協という名の選択肢はたぶんない。 そうであれば、無情で無益な殺し合いは今年も続くことになるのだろう。 せいぜい1機1000ドル程度の無人機がイナゴの大群のように飛び回り、1両で何百万ドルもする戦車を撃破している。 この2年間でウクライナ側はロシア軍の戦車3000両以上を破壊した。 この数はプーチンの言う「3日間」「特別軍事作戦」の開始時点でロシア軍が配備していた戦車の総数を上回る。 だから今のロシア軍は70年以上前の旧式戦車を引っ張り出して前線に向かわせている。 ロシア軍の死傷者は累計40万人に上るが、今もロシア兵は毎日、いわゆる「肉弾攻撃」でウクライナ側の陣地に突進している。 1日に最大で1000人のロシア兵が殺され、放置された遺体は誰もいない森で凍り付き、あるいは腐敗していく。 辺りにはロシア軍の装甲車両1万2000台の残骸も散らばる。 だがウクライナ側も、昨年夏の反転攻勢では成果を上げられなかった。 ロシア側の築いた幅100キロもの地雷原や塹壕を突破できなかった。 ロシアを守るためにウクライナを「非ナチ化」するのだと、プーチンは言い張ってきた。 思うようにいかない戦争を正当化するための、憎しみと偽りの愛国心で塗り固めた嘘にすぎなかったが、今は別な言説を持ち出している。 この戦争はロシアが生き延びるための、「真の敵」たるアメリカとの闘いなのだと。 間近に敵と遭遇するので両軍から「ゼロライン」と呼ばれる最前線から遠く離れた場所に、実はウクライナの運命を決める2つの「戦域」がある。 まずはロシアが展開する情報戦と、それに対抗するバイデン政権が激突する米国内の戦域。 もう1つはNATO諸国とロシアの工場で繰り広げられる武器製造合戦だ。 この2つの趨勢で、戦闘がいつまで続くかも、ウクライナが全ての領土を奪還できるかも、ロシアがどれだけの占領地を保持できるかも決まる。 あいにく結果は見通せない。 消耗戦と膠着状態は今年いっぱい続きそうだ。 しかし今、ロシアを決定的に利するような変化がアメリカの政治システムに生じている。 そう、死活的に重要な決戦の舞台はアメリカの首都ワシントン。 問われているのは、果たして議会がウクライナへの追加支援を認めるかどうか。 そしてジョー・バイデン米大統領がどんな手を打つかだ』、「間近に敵と遭遇するので両軍から「ゼロライン」と呼ばれる最前線から遠く離れた場所に、実はウクライナの運命を決める2つの「戦域」がある。 まずはロシアが展開する情報戦と、それに対抗するバイデン政権が激突する米国内の戦域。 もう1つはNATO諸国とロシアの工場で繰り広げられる武器製造合戦だ。 この2つの趨勢で、戦闘がいつまで続くかも、ウクライナが全ての領土を奪還できるかも、ロシアがどれだけの占領地を保持できるかも決まる。 あいにく結果は見通せない・・・あいにく結果は見通せない。 消耗戦と膠着状態は今年いっぱい続きそうだ。 しかし今、ロシアを決定的に利するような変化がアメリカの政治システムに生じている。 そう、死活的に重要な決戦の舞台はアメリカの首都ワシントン。 問われているのは、果たして議会がウクライナへの追加支援を認めるかどうか。 そしてジョー・バイデン米大統領がどんな手を打つかだ」、なるほど。 
・『アメリカの支援が止まった  2022年2月24日にロシア軍の侵攻が始まって以来、アメリカはウクライナに750億ドル(約11兆円)以上の軍事的・財政的支援を行ってきた。 ウクライナ戦における真の敵はアメリカだというプーチンの言説は嘘八百だが、彼の信念でもあるだろう。 欧米の支援が止まればこの戦争には1週間で勝てると、吐き捨てるように言ったこともある。 しかしアメリカでは、予算を決める権限は大統領ではなく議会にある。 昨年の秋、バイデン政権は600億ドル(約9兆円)の追加軍事支援を議会に提案した。 これに(今年2月に承認された)EUの追加支援500億ユーロ(約8兆円)を加えれば、あと1年か2年粘って新たな攻勢に転じることも可能だった。 だがドナルド・トランプ前米大統領が横やりを入れた。 議会共和党を牛耳るトランプ派議員に、ウクライナ支援に反対するよう求めたのだ。 かつてヒラリー・クリントンが呼んだように、まさにトランプは「プーチンの操り人形」。これでアメリカ政府のウクライナ支援は止まった。 そもそもロシアは何年も前から、アメリカの世論や政治家に影響を与えるための情報戦を繰り広げてきた。 とりわけ2016年の大統領選には力を入れた。 筆者は10年も前から繰り返し指摘してきたが、ロシアの情報機関とつながりのある複数の人物がトランプとその取り巻きに接触していた証拠は掃いて捨てるほどある。 それは1979年に始まり、2016年の大統領選まで続いていた。 ロシアの情報機関に取り込まれたとは言わぬまでも、トランプが彼らに利用されていた形跡はある。 操り人形ではなかったとしても、ロシアのために「影響力を行使する代理人」ではあった。 そしてアメリカの国益を損なうような発言をして、プーチンを喜ばせていた。 現にトランプは2019年に、バイデンに不利な情報をウクライナから引き出そうとした疑いで弾劾されている。 その「情報」は、ウクライナに潜むロシアのスパイが提供したものだった。 USA-ELECTION/TRUMP Republican presidential candidate and former U.S. President Donald Trump speaks at a campaign event ahead of the Republican presidential primary election in North Charleston, South Carolina, U.S. February 14, 2024. REUTERS/Sam Wolfe プーチンとの関係が噂されるトランプ前大統領 SAM WOLFEーREUTERS  ロシアの情報機関は長年にわたり、共和党の政治家やロビー団体、メディア関係者に何百万ドルもの資金を流してきた。 それは政界や国民の意見を親ロシア・反ウクライナに導き、同時にアメリカの制度や民主主義に不満を抱くように誘導する戦略的キャンペーンだった。 ロシアの資金を受け取っていた1人が、現下院議長のマイク・ジョンソンだ。 ロシアのもくろみはあらゆる面で成功している。 トランプはプーチンのウクライナ侵攻を「天才的」と評し、NATOの悪口を繰り返している。 ウクライナ支援に反対する共和党議員は多く、もはや議会はまともに機能していない。) そもそも下院議長のジョンソンは、一貫してウクライナ支援に反対票を投じてきた。 共和党支持者の多くは「アメリカ第一」の孤立主義を唱え、バイデンよりもプーチンを好み、バイデンのウクライナ支援を「アメリカ後回し」政策と呼んでいる。 バイデンとしては、ウクライナを支援しつつもNATO軍とロシア軍の直接対決は避けたい。 だから軍事支援は小出しにし、徐々に増やしてきた。つまり、ウクライナが負けない程度の武器を供与してきた。 ウクライナを「ゆっくりと勝たせ」、その間にロシアに血を流させるが、ロシアが戦争を拡大するほどには痛め付けず、ウクライナに決定的な勝利をもたらすつもりもない。 今回の戦争には何千台もの戦車が投入されているが、アメリカがようやくウクライナに31台の主力戦車M1エイブラムズを引き渡したのは昨年秋のことだった』、「ロシアの情報機関とつながりのある複数の人物がトランプとその取り巻きに接触していた証拠は掃いて捨てるほどある。 それは1979年に始まり、2016年の大統領選まで続いていた。 ロシアの情報機関に取り込まれたとは言わぬまでも、トランプが彼らに利用されていた形跡はある。 操り人形ではなかったとしても、ロシアのために「影響力を行使する代理人」ではあった。 そしてアメリカの国益を損なうような発言をして、プーチンを喜ばせていた。 現にトランプは2019年に、バイデンに不利な情報をウクライナから引き出そうとした疑いで弾劾されている・・・ロシアの情報機関は長年にわたり、共和党の政治家やロビー団体、メディア関係者に何百万ドルもの資金を流してきた。 それは政界や国民の意見を親ロシア・反ウクライナに導き、同時にアメリカの制度や民主主義に不満を抱くように誘導する戦略的キャンペーンだった。 ロシアの資金を受け取っていた1人が、現下院議長のマイク・ジョンソンだ。 ロシアのもくろみはあらゆる面で成功している。 トランプはプーチンのウクライナ侵攻を「天才的」と評し、NATOの悪口を繰り返している。 ウクライナ支援に反対する共和党議員は多く、もはや議会はまともに機能していない。) そもそも下院議長のジョンソンは、一貫してウクライナ支援に反対票を投じてきた」、なるほど。
・『熾烈で困難な武器製造合戦  もう1つの死活的に重要な戦域は双方の武器製造工場だ。 もっと大量の武器弾薬を供与されなければ、ウクライナ側が決定的な攻勢に出ることはできず、現状の防衛線を維持するのがやっとだろう。 一方でロシアは武器製造能力の向上に熱心で、その努力はウクライナを支援するNATO陣営をはるかに上回る。 もともとウクライナとは比較にならないほどの弾薬を持っており、今もウクライナ側の5倍に当たる1日1万発の砲弾を撃っている。 ただしロシアも必要な弾薬の確保には苦労している。 現状の生産能力は1日当たり約5500発だが、それでも1日の使用量の半分だ。 ロシアは24年の国防予算を前年比約1.7倍の1000億ドル相当に引き上げ、経済を軍需優先にシフトさせている。 またイランや北朝鮮から何百万発もの砲弾を購入している。 開戦当時に比べれば装備や兵員の質は劣るものの、ロシアは今年も砲撃と攻撃のレベルを維持、あるいは強化することができるだろう。 一方のアメリカとNATOは、既に武器弾薬の在庫を使い尽くした。そしてウクライナでの需要を満たすための生産能力増強に悪戦苦闘している。 アメリカは23年に砲弾の生産量を倍増させ、毎月2万8000発まで可能にした。 いずれは月産9万発に増やす計画だが、その実現には2026年までかかる。 一方でNATO加盟の欧州諸国は現状で月産2万5000発にとどまり、まだ目標の3分の1にしか達していない。 全部合わせても、今のウクライナ軍なら7日ほどで使い果たしてしまう。 だから節約せねばならず、ここ数週間は1日2000発くらいしか撃っていない。 NATO全体の軍事予算はロシアの10倍で、合算したGDPはロシアの25倍に当たるが、それでも今のウクライナに必要なだけの武器弾薬は製造できない)』、「熾烈で困難な武器製造合戦・・・ロシアは武器製造能力の向上に熱心で、その努力はウクライナを支援するNATO陣営をはるかに上回る。 もともとウクライナとは比較にならないほどの弾薬を持っており、今もウクライナ側の5倍に当たる1日1万発の砲弾を撃っている。 ただしロシアも必要な弾薬の確保には苦労している。 現状の生産能力は1日当たり約5500発だが、それでも1日の使用量の半分だ。 ロシアは24年の国防予算を前年比約1.7倍の1000億ドル相当に引き上げ、経済を軍需優先にシフトさせている。 またイランや北朝鮮から何百万発もの砲弾を購入している・・・アメリカは23年に砲弾の生産量を倍増させ、毎月2万8000発まで可能にした。 いずれは月産9万発に増やす計画だが、その実現には2026年までかかる。 一方でNATO加盟の欧州諸国は現状で月産2万5000発にとどまり、まだ目標の3分の1にしか達していない。 全部合わせても、今のウクライナ軍なら7日ほどで使い果たしてしまう。 だから節約せねばならず、ここ数週間は1日2000発くらいしか撃っていない。 NATO全体の軍事予算はロシアの10倍で、合算したGDPはロシアの25倍に当たるが、それでも今のウクライナに必要なだけの武器弾薬は製造できない」、こんなに武器生産能力に差があるとは初めて知った。 
・『バイデン対トランプの決戦  いずれにせよ、今年中にどちらか一方が軍事的に決定的な勝利を挙げることはなさそうだ。 「工場戦争」の決着はつかず、ウクライナもロシアも弾薬不足に悩まされ、当面はにらみ合いが続く公算が高い。 しかしバイデン政権の求めた総額600億ドルの追加軍事支援が議会で承認されていないため、今はロシア側が優位に立つ。 ウクライナ側は攻撃より守備に力を入れざるを得ず、ロシアはおそらくウクライナ東部の占領地をそのまま保持できる。 ただしアメリカの追加支援が決まり、長射程の武器弾薬が続々と供給されるようになれば話は別だ。 たいていの戦争は、戦場ではなく交渉のテーブルで終わる。 アメリカの支援再開が遅れれば、欧州では早期停戦を求める声が高まるだろう。 そうなると血に飢えたプーチンはウクライナ全域に猛攻をかけるかもしれない。 だが、それでウクライナ側がひるむとは思えない。 侵略者でファシスト国家のロシアに、あの国の人々が降伏するとは思えない。なにしろ国の存亡が懸かっている。 とはいえウクライナの運命はアメリカの首都ワシントンで決まる。 ウクライナを助けたいバイデン大統領以下の政界主流派と、ロシアに寄り添うトランプと彼を熱烈に支持する共和党の議員団。 この対決の根っこにはアメリカ伝統の孤立主義があるが、アメリカの政治と社会をぶち壊したいプーチンの執拗かつ戦略的な情報戦も効いている。 さて、勝つのはバイデンかトランプか。これはアメリカの、そして世界の未来を懸けた闘いだ。 <本誌2024年2月27日号掲載>)(ウクライナ軍反転作戦の結末 の図はリンク先参照)』、「ウクライナの運命はアメリカの首都ワシントンで決まる。 ウクライナを助けたいバイデン大統領以下の政界主流派と、ロシアに寄り添うトランプと彼を熱烈に支持する共和党の議員団。 この対決の根っこにはアメリカ伝統の孤立主義があるが、アメリカの政治と社会をぶち壊したいプーチンの執拗かつ戦略的な情報戦も効いている。 さて、勝つのはバイデンかトランプか。これはアメリカの、そして世界の未来を懸けた闘いだ」、その通りだ。

次に、3月6日付けNewsweek日本版「プーチンの誤算、傷だらけでクリミア半島から逃げ出す黒海艦隊」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/03/post-103903_1.php
・『<陸ではウクライナ軍を押しているロシアだが、黒海ではドローン攻撃による大きな被害が続出。ロシアが誇る黒海艦隊も大損害を被って東に逃げている> ロシアがウクライナへの本格的な侵攻を開始してから2年以上。ロシアのウクライナにおける最大の戦利品であったクリミア半島に対する支配には、亀裂が入りかけている。 ここ数週間、ウクライナ本土の戦いではロシア軍がかなりの犠牲を払いつつも大きな勝利をおさめているが、対照的に「ウクライナは黒海の戦いにほぼ勝利した」と、ロバート・マレット退役米海軍副提督は本誌に語った。 2022年2月以来、ウクライナ軍の攻撃でロシアの黒海艦隊はかなりの損失を被っている。2014年にロシアがクリミア半島を併合して以来、ウクライナはこの半島の奪還を誓っている。 過去10年間、ロシアはクリミア半島の黒海沿いの軍港を利用し、ロシアの勢力を越えてウクライナ南部にまで投射するつもりでいた、と元ウクライナ海軍大尉のアンドリー・リジェンコは言う。 だが、クリミア周辺でのウクライナの攻撃が成功しているため、ロシアの計画は頓挫しかけている。 ロシアは開戦後早い時期にウクライナ製と思われるネプチューン・ミサイルの攻撃で旗艦モスクワを失った。2023年9月には英仏製ストームシャドー・ミサイルの華々しい攻撃でロシアのキロ級潜水艦が破壊された。 ウクライナ海軍のドローンは今年2月、ロシアの誘導ミサイル搭載コルベット艦イワノベッツを破壊し、上陸用艦船数隻の撃沈に成功している』、「「ここ数週間、ウクライナ本土の戦いではロシア軍がかなりの犠牲を払いつつも大きな勝利をおさめているが、対照的に「ウクライナは黒海の戦いにほぼ勝利した」と、ロバート・マレット退役米海軍副提督は本誌に語った」、確かに「黒海の戦い」では優位なようだ。
・『失われたロシアの優位性  2月中旬、ウクライナは、ロシアのセバストポリ海軍基地の南東に位置するクリミア南部の都市アルプカの近くで、大型揚陸艦シーザー・クニコフを撃沈したと発表した。この攻撃によって、元から数が少なかったロシア軍の揚陸艦の艦隊がさらに縮小した。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は攻撃の直後、「今日、われわれは黒海の安全を強化し、国民のモチベーションを高めた」と述べた。この種の艦船を失ったため、ロシア軍の上陸作戦はかなり難しくなる、とリジェンコは本誌に語った。 ウクライナは、ロシアのフェオドシャ港や、クリミア半島とロシアのクラスノダール地方を結ぶ重要なクリミア大橋など、クリミア東部まで攻撃範囲を拡大している。 3月5日未明、ウクライナ国防省情報総局(GUR)は、ロシアのプロジェクト22160哨戒艦4隻のうちの1隻であるセルゲイ・コトフに、ウクライナ国産のマグラV5水上ドローンが突っ込んでいるように見える映像を公開した。ウクライナによると、同船はロシアが占領するクリミアとロシア南西部を隔てるケルチ海峡の近くにいた。地元情報筋はクリミア大橋が一晩閉鎖されたと伝えた。 GURはソーシャルメディアへの投稿で、この艦船は「船尾、右側面、左側面に損傷を受けた」と付け加えた。 イギリスのグラント・シャップス国防相は昨年12月、ロシアは過去4カ月で黒海艦隊の20%を失ったと述べ、「ロシアの黒海における優位性は、今や疑わしい」と、語っている。) 海軍のドローンと西側から供与された巡航ミサイルを駆使するウクライナの執拗な攻撃は、ロシア海軍を黒海の東に押しやり、クリミア半島周辺のロシア占領地域の安全を脅かしている。 「ロシアは東に移動するしかない」と言うのは、ウクライナ軍トップの元特別顧問で、現在はアメリカン大学キーウ校の学長を務めるダニエル・ライス。だが、そうすることでロシアはクリミアに対する支配力を失うことになる、と彼は本誌に語った。 ロシアは黒海東部の港湾インフラの拡張を余儀なくされているが、それはクリミア周辺の施設(セヴァストポリにある基地や軍港など)が危機に瀕しているからだ、とマレットは言う。 ロシアは、ロシア領内と国際的に認められている黒海の港湾都市ノボロシスクにクリミアの資源の一部を移している。一部報道によれば、ロシアはジョージア領内で事実上の独立状態にあるアブハジアのオチャムチレ港に新たな軍事基地を計画しているともいう。そうなれば、黒海におけるロシアの部隊はウクライナの海岸線からさらに遠ざかることになる。 ロシアは新型の主要艦船をクリミアに留めておくことを非常に警戒するようになり、数隻をノボロシスクに移した、とリジェンコは言う』、「イギリスのグラント・シャップス国防相は昨年12月、ロシアは過去4カ月で黒海艦隊の20%を失ったと述べ、「ロシアの黒海における優位性は、今や疑わしい」と、語っている・・・ロシアは新型の主要艦船をクリミアに留めておくことを非常に警戒するようになり、数隻をノボロシスクに移した」、なるほど。
・『黒海はグレーゾーンに  侵攻前のロシアの基本的な前提は、領空の支配と黒海における海軍力の支配の2つであったはずだが、どちらも失った」と、ライスは言う。 ウクライナは黒海経由で何百万トンもの穀物を輸出することにも成功している。 だが、これはウクライナがこの周辺地域を支配下においたことを意味するものではない。ウクライナのせいで北西の隅では動きがとりにくくなっているとはいえ、ロシアは依然として黒海の大部分を支配している、とリジェンコは言う。黒海の一部が「グレーゾーン」になり、どちらの国が支配しているとも言えなくなった段階だ、と彼は言う』、「ロシアは依然として黒海の大部分を支配している、とリジェンコは言う。黒海の一部が「グレーゾーン」になり、どちらの国が支配しているとも言えなくなった段階だ」、確かに「黒海はグレーゾーンに」だ。

第三に、3月7日付け現代ビジネスが掲載した外交評論家・元在ロシア大使館公使・元在ウズベキスタン・タジキスタン大使の河東 哲夫氏による「ウクライナ劣勢?いや違う、この先にあるのは膠着状態、ロシアの「北朝鮮化」ウクライナの「韓国化」だ ロシア軍の「怒涛の進撃」は難しい」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/125279?imp=0
・『決してロシアが有利になったわけではない  今ウクライナ戦争は「開戦2周年」、ということで、世界中のメディアは「これまでの総括」で賑わう。しかし今、一番注目するべきは、昨年6月以来のウクライナ軍総反撃の挫折で、戦局がロシア有利に傾いてきたのかどうか、ウクライナ東部のアヴデエフカを陥したロシア軍が西へ西へと怒涛の進軍を開始することはないのか、どうかだろう。 アヴデエフカは、ドネツィク州の州都ドネツィクの北西約25キロ。戦前の人口は4万人程度で、幹線道路も通っていないが、欧州でも最大規模のコークス製造プラントを抱える。つまり東ウクライナのキーの産業である製鉄業のハブの一つ。しかも、アヴデエフカはウクライナ軍にとっては、ロシアの占領するドネツィクを砲撃する拠点だった。 ウクライナ戦争は、軍が動きにくい冬季には下火となる。しかし2022年の冬は、アヴデエフカの北方にあるバフムートの攻防が数カ月、メディアを賑わせた。これは多分、ロシア軍がウクライナ南部で三重にわたる大防御線を構築する間、ウクライナ軍を引き付けておく効果を持った。ロシアはここに例のプリゴージンとその傭兵隊を向かわせて、バフムートを23年5月に制圧する。バフムートは天王山と言われた割に、ロシアによる制圧で戦局に変化が起きることもなかったが。 そして23年冬は、アヴデエフカが天王山に仕立て上げられる。ロシア軍は、ウクライナ軍をこちらに引き付けて、南部での攻勢を鈍らせようとしたのだろうし、ウクライナはウクライナで、ここを死守することで西側の関心を引き付けようとしたのだろう』、「23年冬は、アヴデエフカが天王山に仕立て上げられる。ロシア軍は、ウクライナ軍をこちらに引き付けて、南部での攻勢を鈍らせようとしたのだろうし、ウクライナはウクライナで、ここを死守することで西側の関心を引き付けようとしたのだろう」、なるほど。
・『天王山に仕立て上げられたアヴデエフ  今回、ロシアはアヴデエフカ制圧に本腰を入れ、傭兵隊ではなく軍本体を投入した。それは、3月17日の大統領選挙までにせめてアヴデエフカくらいは取っておかないと、政権として示しがつかないということであったのだろう。 ウクライナ軍前総司令官ザルージニーは、アヴデエフカを死守して多大の損害を出すよりも、早めに撤退して後方の防御を固めることを進言していたが、ゼレンスキー大統領はそれでは西側からの支援が得られなくなるとして、2月8日、ザルージニーに代わってシルスキー陸軍司令官を総司令官に任命。16日にはシルスキーにアヴデエフカの死守を命じた上で、ミュンヘンでの国際シンポジウムに出発してしまう。 アヴデエフカの陥落は17日に起きる。ロシア軍が市内に突入すると、シルスキーはそれまでの「死守せよ」を「撤退せよ」に変える。「包囲されるのを避け、将兵の命を救うため」というもっともらしい談話を出して。 命令の180度変更は現場に混乱を生む。ニューヨーク・タイムスは、ウクライナ軍は算を乱した退却で800~1000人の捕虜を出したと報じた。これでシルスキー総司令官への信頼は、就任早々地に墜ちたことだろう。 ロシア軍はその後も、アヴデエフカ周辺の小村を次々と制圧していく。しかし、西方への大攻勢が始まる兆候はまだ見られない。アヴデエフカには西方に通ずる幹線道路も通っていないし、大攻勢のための人員、装備も、まだ集積していないのだろう。夏までには西へ向かっての大攻勢を始める、そしてキエフの包囲、攻略も狙う、という見方が喧伝されている』、「前総司令官ザルージニーは、アヴデエフカを死守して多大の損害を出すよりも、早めに撤退して後方の防御を固めることを進言していたが、ゼレンスキー大統領はそれでは西側からの支援が得られなくなるとして、2月8日、ザルージニーに代わってシルスキー陸軍司令官を総司令官に任命。16日にはシルスキーにアヴデエフカの死守を命じた上で、ミュンヘンでの国際シンポジウムに出発してしまう。 アヴデエフカの陥落は17日に起きる。ロシア軍が市内に突入すると、シルスキーはそれまでの「死守せよ」を「撤退せよ」に変える。「包囲されるのを避け、将兵の命を救うため」というもっともらしい談話を出して。 命令の180度変更は現場に混乱を生む。ニューヨーク・タイムスは、ウクライナ軍は算を乱した退却で800~1000人の捕虜を出したと報じた。これでシルスキー総司令官への信頼は、就任早々地に墜ちたことだろう」、軍事に素人の「ゼレンスキー大統領」が「シルスキー陸軍司令官を総司令官に任命。16日にはシルスキーにアヴデエフカの死守を命じた上で、ミュンヘンでの国際シンポジウムに出発してしまう。 アヴデエフカの陥落は17日に起きる。ロシア軍が市内に突入すると、シルスキーはそれまでの「死守せよ」を「撤退せよ」に変える。「包囲されるのを避け、将兵の命を救うため」というもっともらしい談話を出して。 命令の180度変更は現場に混乱を生む。ニューヨーク・タイムスは、ウクライナ軍は算を乱した退却で800~1000人の捕虜を出したと報じた」、「ゼレンスキー大統領」や「「シルスキー陸軍司令官」は「算を乱した退却で800~1000人の捕虜」に対し重大な責任がある。
・『ロシア軍、一気に西進?  ウクライナ軍は、アヴデエフカ以西に防御陣地を構築していない。ロシアは昨年6月、ウクライナ南部にも構築しておいた何重にもわたる防御線が功を奏し、ウクライナ軍の攻勢を止めることができた。ウクライナ軍には、同じことができる資材も人員もないのだ。 ただ、戦争のやり方が、ドローンの普及で革命的に変わってきたことを考慮しないといけないだろう。ロシア軍が西へ向けて怒涛の進撃を開始するには、戦車、装甲車、弾薬、ミサイル、大砲を前線近くに大量に集積し、人員も集めないといけない。だが、そういうことをウクライナ軍の至近距離で始めれば、偵察用ドローンで察知され、攻撃用ドローン、ミサイル、夏には陣営に加わるF16戦闘機に殲滅されてしまう。 米議会がウクライナ支援予算を止めているのが心配だが、EUがその穴をかなり埋めるだろう。F16などは既存の予算で発注されていると思われるので、米国製兵器の流入も続くだろう。 ソ連時代の軍教育を受けたシルスキー総司令官が、これらの事情をよく把握し、創造的な兵力運用をできるかどうか。ゼレンスキーの素人考えに振り回されることがないかどうか。失われた信用を取り戻せるかどうか。これらがうまくいけば、ロシア軍の「怒涛の進撃」は難しい』、「米議会がウクライナ支援予算を止めているのが心配だが、EUがその穴をかなり埋めるだろう。F16などは既存の予算で発注されていると思われるので、米国製兵器の流入も続くだろう」、「シルスキー総司令官」にとって名誉回復のチャンスを生かしてもらいたいものだ。
・『ウクライナ、クリミア奪還?  ウクライナ軍内部には、クリミア制圧を進言する者もいる。クリミアは2つの陸峡、1つの鉄橋で本土と結ばれるだけで、ロシア軍にとっては補給が難しい。ロシア黒海艦隊にとって唯一の良港セヴァストーポリは、ウクライナ軍の射程に入っていて、もはや使えない。つまり海路での補給も難しい。乾燥したクリミア半島にとって貴重な水の供給減だった、本土からのカホフカ運河は、昨年6月、何者かがカホフカ・ダムを爆破したことで、干上がっている。 工業の中心地である東ウクライナに比べて、観光しか資源のないクリミアは、制圧した者にとっては負担になる場所ではあるが、「ロシアは東ウクライナ、ウクライナはクリミアを取った。互角で停戦」という触れ込みにできる、というメリットはある』、「「ロシアは東ウクライナ、ウクライナはクリミアを取った。互角で停戦」という触れ込みにできる、というメリットはある」、その通りではある。
・『朝鮮半島のような将来像  こうしてウクライナ戦争は、ロシア、ウクライナ双方にとって勝ち負けのはっきりしない膠着状態になる可能性が大なのだ。膠着状態のところにスターリンが死去し、休戦協定締結に至った朝鮮戦争が思い起こされる。朝鮮半島ではその後も、時々武力衝突が起きているが、韓国では70年余にわたって安定が維持され、かつての「後れた農業地帯」は今や世界でGDP13位の韓国になっている。 ウクライナの工業の中心は東部にある。西半分の経済発展をはかるには、韓国の場合と同様、西側からの投資が必要になる。とっかかりはある。西半分をEUのサプライ・チェーンに組み込むことだ。EU市場を念頭に置いた工場は、ウクライナ西半分で既にいくつか操業しているし、その中には住友電気工業、矢崎総業等の日本企業もある。隣接のポーランド、スロバキア、ハンガリーは、EUの一部として発展を遂げている。そして、ウクライナの農業を医薬品原料栽培等、高付加価値の産業に変えていくこともできるだろう。 一方、ロシアは、かつての北朝鮮に酷似した――サイズは大きいが――国に脱落していくことだろう。核兵器で周囲を脅すことしかできない、全体主義の経済小国に。 ロシアの抱える課題は大きい。プーチンの力を畏怖する向きは西側にもいるが、彼はソ連崩壊=植民地主義帝国の崩壊という歴史的・世界的モメンタムを逆転することはできないだろう。ロシアはまだ、「ソ連帝国崩壊」の勢いの中にあるのだ。分裂した諸国のエリートはそれぞれ利権構造を作り上げ、もはや他者に支配されたくはない。そして旧宗主国ロシアは、彼らを再統合できる武力、経済力、ソフト・パワーを欠く。それは今のトルコ、オーストリアを見てもわかることだ。 ロシアは西側の制裁を乗り切ったと言われるが、そんなことはない。国内の経済は軍需に圧倒されて賃金が高騰。インフレ圧力が高まっている。国内航空の80%はエアバス、ボーイングに機材を依存していたから、制裁で部品とメンテの提供を切られて、欠航が増えている。 我々はプーチン・ロシアの実力をじっくり見定め、その拡張をしっかり抑え込みつつ付き合っていくことだ』、「ウクライナ戦争は、ロシア、ウクライナ双方にとって勝ち負けのはっきりしない膠着状態になる可能性が大なのだ」、だとしても「朝鮮戦争が思い起こされる」というのには違和感がある。厭戦気分が高まってきたことが背景にあるのだろう。「ウクライナ戦争」と「ウクライナ戦争」には共通点は少ない感じだ。「ウクライナ」の再生に西欧諸国が果たす役割、「ロシア」への対応は筆者の指摘の通りだろうが、現在これらを取上げるのは次期尚早と思われる。

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タグ:「ロシアの情報機関とつながりのある複数の人物がトランプとその取り巻きに接触していた証拠は掃いて捨てるほどある。 それは1979年に始まり、2016年の大統領選まで続いていた。 ロシアの情報機関に取り込まれたとは言わぬまでも、トランプが彼らに利用されていた形跡はある。 操り人形ではなかったとしても、ロシアのために「影響力を行使する代理人」ではあった。 そしてアメリカの国益を損なうような発言をして、プーチンを喜ばせていた。 現にトランプは2019年に、バイデンに不利な情報をウクライナから引き出そうとした疑いで あいにく結果は見通せない。 消耗戦と膠着状態は今年いっぱい続きそうだ。 しかし今、ロシアを決定的に利するような変化がアメリカの政治システムに生じている。 そう、死活的に重要な決戦の舞台はアメリカの首都ワシントン。 問われているのは、果たして議会がウクライナへの追加支援を認めるかどうか。 そしてジョー・バイデン米大統領がどんな手を打つかだ」、なるほど。 「間近に敵と遭遇するので両軍から「ゼロライン」と呼ばれる最前線から遠く離れた場所に、実はウクライナの運命を決める2つの「戦域」がある。 まずはロシアが展開する情報戦と、それに対抗するバイデン政権が激突する米国内の戦域。 もう1つはNATO諸国とロシアの工場で繰り広げられる武器製造合戦だ。 この2つの趨勢で、戦闘がいつまで続くかも、ウクライナが全ての領土を奪還できるかも、ロシアがどれだけの占領地を保持できるかも決まる。 あいにく結果は見通せない・・・ グレン・カール氏による「元CIA諜報員がウクライナ支援を解き明かす、バイデンの「不作為」と「プーチンの操り人形」トランプ」 「前総司令官ザルージニーは、アヴデエフカを死守して多大の損害を出すよりも、早めに撤退して後方の防御を固めることを進言していたが、ゼレンスキー大統領はそれでは西側からの支援が得られなくなるとして、2月8日、ザルージニーに代わってシルスキー陸軍司令官を総司令官に任命。16日にはシルスキーにアヴデエフカの死守を命じた上で、ミュンヘンでの国際シンポジウムに出発してしまう。 (その7)(元CIA諜報員がウクライナ支援を解き明かす バイデンの「不作為」と「プーチンの操り人形」、プーチンの誤算 傷だらけでクリミア半島から逃げ出す黒海艦隊、ウクライナ劣勢?いや違う この先にあるのは膠着状態 ロシアの「北朝鮮化」ウクライナの「韓国化」だ ロシア軍の「怒涛の進撃」は難しい、ウクライナ劣勢?いや違う この先にあるのは膠着状態 ロシアの「北朝鮮化」ウクライナの「韓国化」だ ロシア軍の「怒涛の進撃」は難しい) ウクライナ Newsweek日本版「プーチンの誤算、傷だらけでクリミア半島から逃げ出す黒海艦隊」 「イギリスのグラント・シャップス国防相は昨年12月、ロシアは過去4カ月で黒海艦隊の20%を失ったと述べ、「ロシアの黒海における優位性は、今や疑わしい」と、語っている・・・ロシアは新型の主要艦船をクリミアに留めておくことを非常に警戒するようになり、数隻をノボロシスクに移した」、なるほど。 「「ここ数週間、ウクライナ本土の戦いではロシア軍がかなりの犠牲を払いつつも大きな勝利をおさめているが、対照的に「ウクライナは黒海の戦いにほぼ勝利した」と、ロバート・マレット退役米海軍副提督は本誌に語った」、確かに「黒海の戦い」では優位なようだ。 「ウクライナの運命はアメリカの首都ワシントンで決まる。 ウクライナを助けたいバイデン大統領以下の政界主流派と、ロシアに寄り添うトランプと彼を熱烈に支持する共和党の議員団。 この対決の根っこにはアメリカ伝統の孤立主義があるが、アメリカの政治と社会をぶち壊したいプーチンの執拗かつ戦略的な情報戦も効いている。 さて、勝つのはバイデンかトランプか。これはアメリカの、そして世界の未来を懸けた闘いだ」、その通りだ。 NATO全体の軍事予算はロシアの10倍で、合算したGDPはロシアの25倍に当たるが、それでも今のウクライナに必要なだけの武器弾薬は製造できない」、こんなに武器生産能力に差があるとは初めて知った。 何百万発もの砲弾を購入している・・・アメリカは23年に砲弾の生産量を倍増させ、毎月2万8000発まで可能にした。 いずれは月産9万発に増やす計画だが、その実現には2026年までかかる。 一方でNATO加盟の欧州諸国は現状で月産2万5000発にとどまり、まだ目標の3分の1にしか達していない。 全部合わせても、今のウクライナ軍なら7日ほどで使い果たしてしまう。 だから節約せねばならず、ここ数週間は1日2000発くらいしか撃っていない。 「23年冬は、アヴデエフカが天王山に仕立て上げられる。ロシア軍は、ウクライナ軍をこちらに引き付けて、南部での攻勢を鈍らせようとしたのだろうし、ウクライナはウクライナで、ここを死守することで西側の関心を引き付けようとしたのだろう」、なるほど。 「熾烈で困難な武器製造合戦・・・ロシアは武器製造能力の向上に熱心で、その努力はウクライナを支援するNATO陣営をはるかに上回る。 もともとウクライナとは比較にならないほどの弾薬を持っており、今もウクライナ側の5倍に当たる1日1万発の砲弾を撃っている。 ただしロシアも必要な弾薬の確保には苦労している。 現状の生産能力は1日当たり約5500発だが、それでも1日の使用量の半分だ。 ロシアは24年の国防予算を前年比約1.7倍の1000億ドル相当に引き上げ、経済を軍需優先にシフトさせている。 またイランや北朝鮮から ウクライナ支援に反対する共和党議員は多く、もはや議会はまともに機能していない。) そもそも下院議長のジョンソンは、一貫してウクライナ支援に反対票を投じてきた」、なるほど。 弾劾されている・・・ロシアの情報機関は長年にわたり、共和党の政治家やロビー団体、メディア関係者に何百万ドルもの資金を流してきた。 それは政界や国民の意見を親ロシア・反ウクライナに導き、同時にアメリカの制度や民主主義に不満を抱くように誘導する戦略的キャンペーンだった。 ロシアの資金を受け取っていた1人が、現下院議長のマイク・ジョンソンだ。 ロシアのもくろみはあらゆる面で成功している。 トランプはプーチンのウクライナ侵攻を「天才的」と評し、NATOの悪口を繰り返している。 河東 哲夫氏による「ウクライナ劣勢?いや違う、この先にあるのは膠着状態、ロシアの「北朝鮮化」ウクライナの「韓国化」だ ロシア軍の「怒涛の進撃」は難しい」 「「ロシアは東ウクライナ、ウクライナはクリミアを取った。互角で停戦」という触れ込みにできる、というメリットはある」、その通りではある。 「米議会がウクライナ支援予算を止めているのが心配だが、EUがその穴をかなり埋めるだろう。F16などは既存の予算で発注されていると思われるので、米国製兵器の流入も続くだろう」、「シルスキー総司令官」にとって名誉回復のチャンスを生かしてもらいたいものだ。 命令の180度変更は現場に混乱を生む。ニューヨーク・タイムスは、ウクライナ軍は算を乱した退却で800~1000人の捕虜を出したと報じた」、「ゼレンスキー大統領」や「「シルスキー陸軍司令官」は「算を乱した退却で800~1000人の捕虜」に対し重大な責任がある。 軍事に素人の「ゼレンスキー大統領」が「シルスキー陸軍司令官を総司令官に任命。16日にはシルスキーにアヴデエフカの死守を命じた上で、ミュンヘンでの国際シンポジウムに出発してしまう。 アヴデエフカの陥落は17日に起きる。ロシア軍が市内に突入すると、シルスキーはそれまでの「死守せよ」を「撤退せよ」に変える。「包囲されるのを避け、将兵の命を救うため」というもっともらしい談話を出して。 アヴデエフカの陥落は17日に起きる。ロシア軍が市内に突入すると、シルスキーはそれまでの「死守せよ」を「撤退せよ」に変える。「包囲されるのを避け、将兵の命を救うため」というもっともらしい談話を出して。 命令の180度変更は現場に混乱を生む。ニューヨーク・タイムスは、ウクライナ軍は算を乱した退却で800~1000人の捕虜を出したと報じた。これでシルスキー総司令官への信頼は、就任早々地に墜ちたことだろう」、 Newsweek日本版 現代ビジネス 「ロシアは依然として黒海の大部分を支配している、とリジェンコは言う。黒海の一部が「グレーゾーン」になり、どちらの国が支配しているとも言えなくなった段階だ」、確かに「黒海はグレーゾーンに」だ。 「ウクライナ戦争は、ロシア、ウクライナ双方にとって勝ち負けのはっきりしない膠着状態になる可能性が大なのだ」、だとしても「朝鮮戦争が思い起こされる」というのには違和感がある。厭戦気分が高まってきたことが背景にあるのだろう。「ウクライナ戦争」と「ウクライナ戦争」には共通点は少ない感じだ。「ウクライナ」の再生に西欧諸国が果たす役割、「ロシア」への対応は筆者の指摘の通りだろうが、現在これらを取上げるのは次期尚早と思われる。
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トランプ(その51)(トランプが大統領再選したときの「危険シナリオ」 「もしトラ」から「ほぼトラ」に変わりつつある、「有名大学から極左を追い出せ!」トランプ氏の主張に支持者が拍手喝采なワケ【佐藤優・池上彰対談】) [世界情勢]

トランプについては、本年1月28日に取上げた。今日は、(その51)(トランプが大統領再選したときの「危険シナリオ」 「もしトラ」から「ほぼトラ」に変わりつつある、「有名大学から極左を追い出せ!」トランプ氏の主張に支持者が拍手喝采なワケ【佐藤優・池上彰対談】)である。

先ずは、本年2月24日付け東洋経済オンラインが掲載した経済ジャーナリストの岩崎 博充氏による「トランプが大統領再選したときの「危険シナリオ」 「もしトラ」から「ほぼトラ」に変わりつつある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/736164
・『今年の11月に行われるアメリカの大統領選挙が、早くもドナルド・トランプ前大統領の再選になるのではないかと心配されている。いまや、「もしトラ(もしかしたらトランプ)」から「ほぼトラ(ほぼトランプ)」に変わりつつあり、最近は「確トラ(確実にトランプ)」と言われる状況にまで事態は進んでいる。 実際に、トランプ氏が再選されるかどうかはわからない。「ブルームバーグ」が報道するように「トランプ氏、選挙開戦7月に軍資金枯渇の見通し-弁護士費用で綱渡り」(2024年2月15日配信)のように資金の枯渇で苦戦する可能性があるかもしれない。 将来のことはわからないが、ここではトランプ氏の大統領再選が実現した場合、世界はどうなるのか……、アメリカや日本の国民はどうなるのか……。トランプ再選後の状況を、最近の彼の言動や8年前の行動などを参考に、いくつかのシナリオを検証してみたい』、「もしトラ」から「ほぼトラ」に変わりつつあり、「最近は「確トラ」と言われる状況にまで事態は進んでいる」、願わくば「確トラ」は勘弁してもらいたいものだ。
・『シナリオ①ウクライナ戦争がロシア勝利で終わる?  もともとトランプ氏は、ロシアとの関わりを指摘されてきた人間だが、つい先日もロシアに有利になるような発言をして、世間を驚かせた。「相応の資金を負担しないNATO加盟国に対しては、ロシアに好きにするように言う」として、アメリカはロシアに侵略されても、防衛しない趣旨の発言をして、バイデン大統領やNATOのトップから批判されている。 かたやロシアのプーチン大統領は、「バイデン大統領のほうが予測可能で、ロシアにとっては再選が望ましい」とコメント。プーチンの本音は「コントロールできるトランプより、できないバイデンのほうが嫌だ」と言っているのではないか、とさえ指摘されている。) もともとトランプ氏が当選した2016年の大統領選挙では、ロシアが重要な役割を果たしたと指摘されている。 トランプ氏とロシアの関係については、英国オックスフォード大学の「ComputationalPropagandaProject(コンピューターによる政治宣伝研究プロジェクト)」と、ソーシャルメディア分析企業の「グラフィカ」による共同研究の報告書が、アメリカの上院で発表された。 報告書にはロシアは政治宣伝拡散のためにFacebookやTwitter(現X)など、ソーシャルメディアを駆使して(大統領選挙に)介入した」とある。「発信のすべてが、特にドナルド・トランプに利益をもたらそうとしていたのは明白だ」と、報告書は主張している(BBCニュース、2018年12月18日)』、「ロシア」の「ソーシャルメディアを駆使して(大統領選挙に)介入」は、「特にドナルド・トランプに利益をもたらそうとしていたのは明白だ」、なるほど。
・『トランプが公表した「アジェンダ47」  実際にトランプ氏は、プーチン大統領の盟友である富豪の「オレグ・デリパスカ」とつながりのあるロシア企業3社の経済制裁を任期途中に解除している(BBCニュース、2019年1月28日)。トランプ氏は、自分が大統領に返り咲いたときの政策に対して、公約集として「アジェンダ47」を公表しているが、外交に関しては次のように明言している。 ・ウクライナは、ただちに停戦(アメリカ・ファーストの外交政策の復活)  ・第3次世界大戦の防止のために、圧倒的な戦力を整備する(防衛費の大幅増強)  ・NATOなどの同盟国に対しても同等の負担を要求する  ロシアと戦争をしているウクライナの戦況がどうなるかは不明だが、はっきりしていることは日本を含めた同盟国が、それ相応の負担をしなければならなくなるということだろう。前回の在任中は途中で諦めた感があるトランプ氏だが、ここで返り咲けば、前回以上に強権的な姿勢が目立つ政権になることは確実で、米軍を駐留させているNATOや韓国、日本に対しても、これまで以上の高い負担を求めてくることになるはずだ。) 今でも他国に比べて莫大なコストを負担している日本だが、さらなる負担を求められる可能性もある。何よりも、多額の財政赤字を抱える日本にとっては、防衛費の大幅増強を求められるのは大きな負担になる。政府による財政支出に頼りすぎている日本経済にとっては、大きなブレーキになるはずだ。 ちなみに、ガザ地区に侵攻したイスラエルに関しては、アメリカ国内にいるユダヤ人の献金と票がトランプ氏にとっては最重要課題であり、むしろイスラエルを強く支持する側に回るとされる。「アメリカ・ファースト」ではなく「トランプ・ファースト」が彼の政治的信条の根幹だ』、「前回の在任中は途中で諦めた感があるトランプ氏だが、ここで返り咲けば、前回以上に強権的な姿勢が目立つ政権になることは確実で、米軍を駐留させているNATOや韓国、日本に対しても、これまで以上の高い負担を求めてくることになるはずだ・・・多額の財政赤字を抱える日本にとっては、防衛費の大幅増強を求められるのは大きな負担になる。政府による財政支出に頼りすぎている日本経済にとっては、大きなブレーキになるはずだ・・・イスラエルに関しては、アメリカ国内にいるユダヤ人の献金と票がトランプ氏にとっては最重要課題であり、むしろイスラエルを強く支持する側に回るとされる。「アメリカ・ファースト」ではなく「トランプ・ファースト」が彼の政治的信条の根幹だ」、なるほど。
・『シナリオ② インフレの再燃から株価暴落へ?  トランプ氏の大統領再選は、同時にインフレの再燃でもある。というのも、トランプ氏の掲げる政策の大半は、インフレの原因になるものばかりだからだ。アメリカ経済に再びインフレをもたらせば、金利がまた上昇に転ずることになる。ドルが高くなり、世界中の通貨がまた安くなる。 アメリカだけではなく、世界中が再びインフレの波に襲われることになる。これまでにトランプ政権がとってきた政策や新たに公約として掲げているものをチェックすると次のようになり、その結果としてインフレの圧力が高まる。 ●保護貿易政策(中国からの輸入品に対して60%の関税を課す、というトランプ氏の発言が注目されているが、輸入品の価格上昇につながることになり、インフレ再燃の要因となる。 ●大幅な規制緩和(トランプ政権の誕生は、前回もそうだったように大幅な規制緩和が実施される。規制緩和によって景気が良くなり、株価が上がる。個人消費も拡大し、景気が一時的に良くなることは間違いない。経済が意図的に成長に転ずれば、自然にインフレが始まる。その結果として、インフレは再度の利上げを招き、株価低迷、個人消費の低迷をもたらす。 ●減税による個人消費の拡大(関税引き上げや規制緩和による増収などを背景に、先行して行われるのが「減税」だ。ポピュリズム(大衆迎合主義)政治の典型的なパターンだが、大幅な減税は個人消費を押し上げて、一時的には景気が良くなりインフレが再燃する。トランプ氏は、減税=国民の支持率が上がることを信じている。) ●移民政策強化による賃金上昇(今回の選挙でもトランプ氏が強くアピールしているのが、移民審査の厳格化だ。移民に対する審査を強化することで、移民人口を大幅に抑えてしまう可能性が高い。アメリカの経済成長の源とも言える人口増加をストップすることになり、短期的には影響が出ないものの、中長期的には賃金が上昇することになり、飲食や運送などのサービス価格が上昇し、やはりインフレを招く。 ●金融緩和政策への大幅転換(アメリカの中央銀行であるFRB議長の任期(2026年5月)が、大統領の任期中に終わるため迫ってきているが、現在のパウエル議長よりハト派=積極的な金融緩和への転換が予想される。必要以上に金利を引き下げて、景気を刺激する政策に転換することが予想され、景気の押し上げ=インフレを招くことになる。 インフレは、ドル高を招くために、日本を含めた海外でのインフレも深刻化する。インフレは、金融引締め、株価の下落などを招くため、最終的には景気が低迷していくことになる』、「トランプ政権がとってきた政策や新たに公約として掲げているものをチェックすると次のようになり・・・・・・保護貿易政策・・・大幅な規制緩和・・・減税による個人消費の拡大・・・移民政策強化による賃金上昇・・・金融緩和政策への大幅転換」いずれも「その結果としてインフレの圧力が高まる」のは確かだ。
・『シナリオ③大統領権限の強化  トランプ氏と言えば、さまざまな裁判を抱えていることで有名だが、この2月16日にはニューヨークの司法当局が、トランプ一族企業に対して約3億5400万ドル(約533億円)の支払いを命じる判決を下している。トランプ氏は「バイデンの政敵に対する魔女狩りであり、選挙妨害だ」と主張することで選挙戦に有利になるように演出。その選挙スタイルが成功しているとはいえ、今回の民事訴訟に加えて議会襲撃など4つの刑事事件でも起訴されている。 トランプ氏は大統領に再選されなければ、犯罪者として収監される可能性が高いと予想されており、亡命するか、あるいは自分が大統領になって、自分自身に恩赦を出して免責するしか道が残っていないとも言われている。さらに、トランプ氏が大統領に返り咲けば、大統領権限をフル活用して強大な権力を獲得しようとすることが予想されている。 たとえば、大統領権限を制限した1974年の「執行留保統制法」についても、トランプ氏は合憲ではないと疑問を呈しており、大統領権限を大幅に強化することが考えられる。大統領権限で、予算執行をストップさせ歳出削減を強制的に可能にし、その財源で減税を実行するかもしれない。ウクライナ支援などアメリカの利益にならないような予算は大幅に削減してくるはずだ。) 行政に限らず、共和党に有利になるような司法制度や議会運営に対してメスを入れてくる可能性も高い。もともとトランプ氏は、前回の選挙戦で陰謀論の「ディープ・ステート(闇の政府)」を打倒するとして、国家統治の本質的な部分にまで踏み込もうとしたものの未遂に終わっている。たとえば、情報機関や連邦政府の要所を占めている官僚を解雇し、汚職を排除すると称して主要な政府職員を一掃する可能性もある。 トランプ氏は、日本製鉄がアメリカの鉄鋼大手「USスチール」を買収する構想について「絶対に阻止する」と発言して注目されたが、大統領権限の強化によって、さまざまな面でアメリカ有利のビジネス体制となり、アメリカとビジネスをするのに大きな時間とコストがかかるようになってしまうかもしれない。 このほか、内政に対しては大統領権限を大幅に強化させる可能性があると報道されている。その範囲は政府内部に限らず、マスメディアなどに対しても支配権を握ろうとしている節がある。たとえば、日経速報ニュース「高関税・脱中国から陰謀論まで『トランプ公約集』要旨」(2024年2月10日配信)などを参考にまとめると、次のような政策が考えられる。 ●大統領が予算執行を停止できる「没収権」を復活させる ●国防総省や国務省、CIA(中央情報局)の人事は忠誠心で判断し支配下に置く ●反トラスト法を監視するFTC(連邦取引委員会)、放送通信事業を所管するFCC(連邦通信委員会)を大統領指揮下において管理する ●多様性を重視した教育を否定、「トランプ大学」の設立構想 ●ジェンダー教育や批判的人種理論(白人至上主義の批判)を強要する学校に対しては補助金カット』、「『トランプ公約集』要旨」の各項目はとんでもないものばかりだ。
・『リスクだらけの「トランプ2」  トランプ政権が誕生するかどうかは、まだまだ微妙だ。そもそも民主党のバイデン大統領も高齢で選挙戦を最後まで戦えるのかさえも疑問だ。そんな状況の中で、はっきりしていることはトランプ氏が共和党の候補者に正式になった場合、11月に行われる大統領選挙後も混乱が深まるということだ。最悪の場合、再びトランプ氏が選挙で負けても敗北を認めず、アメリカ国内で内戦になる可能性も完全には否定できない。つまり、トランプ氏が勝っても、負けても大混乱が避けられないということだ。 内戦が始まらない場合でも、トランプ政権の誕生はリスクだらけの日常になりそうだ。たとえば、株式や為替といった金融市場も、確かに最初は投資家の期待を受けて株価も上昇したものの、新型コロナになってからは大きく下落した。なぜ、前回のトランプ氏が選挙で負けたかと言えば、新型コロナというパンデミックの発生によって、十分な対応力を見せられなかったからだろう。 史上最高値を更新し続けているような、現在の株高の中で、今後もその勢いを維持できるかは甚だ疑問だ。超ワンマン体質では、不測の事態に直面したときに、エビデンスに基づいた正しい選択ができない可能性がある。自分の周囲をイエスマンだけで固めようとする独裁者は、いずれ馬脚を現す。 そんな状況を覚悟のうえで、与えられた時間の中で、トランプ政権の返り咲きという、これまでにない途方もないリスクに対応する方法を考えるしかない』、「超ワンマン体質では、不測の事態に直面したときに、エビデンスに基づいた正しい選択ができない可能性がある。自分の周囲をイエスマンだけで固めようとする独裁者は、いずれ馬脚を現す。 そんな状況を覚悟のうえで、与えられた時間の中で、トランプ政権の返り咲きという、これまでにない途方もないリスクに対応する方法を考えるしかない」、その通りだろう。

次に、3月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家・元外務省主任分析官の佐藤 優氏とジャーナリストの池上 彰氏の対談「有名大学から極左を追い出せ!」トランプ氏の主張に支持者が拍手喝采なワケ【佐藤優・池上彰対談】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340905
・『11月に迫る米国大統領選挙で、トランプ前大統領は優勢に戦っている。なぜトランプ氏は支持されるのか。前回に続き、スペシャル版としてジャーナリストの池上彰氏を迎えて最新の世界情勢について語り尽くす』、興味深そうだ。
・『「能力より忠誠心を重視」 トランプの公約の中身  佐藤 今年11月の米国大統領選挙では、トランプ前大統領の返り咲きが現実味を帯びてきました。 池上 トランプ氏は2023年に、「アジェンダ47」という公約を発表しています。その中身を見ていくと、どんな米国を目指しているかが分かります。 まず「ディープステート(闇の政府)」を解体する。トランプ氏は前回、大統領になれば何でも好きにできるだろうと思っていたのに、さまざまな良識派に抵抗されて思い通りにならなかった。「これは闇の政府が牛耳っているからだ」と考えたわけです。 だからディープステートを支えている連中は大統領令で皆、首にする。米国の公務員において政権運営を担う3000人から4000人程度は大統領による政治任用ですが、それ以外は公務員試験に受かって入ってきた人たちです。彼らについても、能力ではなく忠誠心を確かめ、自分の言うことを聞かないやつはすぐに首にできる仕組みを作るというのです。 佐藤 かなりの新陳代謝が起きますね。トランプ氏の第一次政権時代のブレーンは、すでに誰も残っていないでしょう。そもそも、副大統領は誰になるのか。 池上 それが注目の的です。指名争いを途中で撤退した候補者はヘイリーを除いてみんな、自分を副大統領にしてほしいようです。トランプ氏の周囲では、黒人や女性にすればバイデン氏に勝てるという議論があって、トランプ氏は考えている状態です。 「アジェンダ47」には、公正取引委員会を大統領の直属にするという項目もあります。特定企業の独占が過ぎると公正取引委員会がモノ申すわけですが、大統領命令で自由にできるようにすると言っています。 佐藤 競争原理の市場に独禁法みたいな縛りを作って介入するほうが、むしろ不公正だという論理ですね。トランプ一族が経営する複合企業が大きくなりそうです』、「「アジェンダ47」という公約を発表・・・「ディープステート・・・」を解体する。トランプ氏は前回、大統領になれば何でも好きにできるだろうと思っていたのに、さまざまな良識派に抵抗されて思い通りにならなかった。「これは闇の政府が牛耳っているからだ」と考えたわけです。 だからディープステートを支えている連中は大統領令で皆、首にする。米国の公務員において政権運営を担う3000人から4000人程度は大統領による政治任用ですが、それ以外は公務員試験に受かって入ってきた人たちです。彼らについても、能力ではなく忠誠心を確かめ、自分の言うことを聞かないやつはすぐに首にできる仕組みを作るというのです」、「政治任用」以外の人間も「能力ではなく忠誠心を確かめ、自分の言うことを聞かないやつはすぐに首にできる仕組みを作る」、これは画期的だ。
・『トランプの主張にはそれなり説得力がある  池上 巨大な私立大学への多額の寄付金に税金をかける、という項目もあります。トランプ氏が言うには「有名大学には極左がいっぱいいて、共和党を批判している。課税することによって、大学から極左の連中を追い出す」。 佐藤 米国の大学はもうけ過ぎですから、無税はおかしい。また、連邦政府の無駄な支出を削減し、減税という形で国民に還元するというので皆、拍手喝采です。 池上 子どもの性自認やトランスジェンダーについて教えた教師は、公民権違反などで厳罰に処するとも言っています。 州議会で共和党が多数を占めるフロリダ州で、一昨年7月から性的指向や性自認に関して教えることを禁止する州法が施行されました。通称「ゲイと言うな法」です。あれを国家レベルにして、LGBTQについて学校では触れないということです。 佐藤 ローティーンの子どもたちに性自認の判断を迫ったり、性転換の手術を認めたりしていいのか、という議論もあります。トランプ氏の主張は粗野ですが、それなりに説得力があるんです。つまり、ポリティカルコレクトネスを掲げて口に出してはいけないとされている問題が、本当にタブーなんだろうかとトランプ氏は問い掛けている』、「佐藤 米国の大学はもうけ過ぎですから、無税はおかしい。また、連邦政府の無駄な支出を削減し、減税という形で国民に還元するというので皆、拍手喝采です・・・佐藤 ローティーンの子どもたちに性自認の判断を迫ったり、性転換の手術を認めたりしていいのか、という議論もあります。トランプ氏の主張は粗野ですが、それなりに説得力があるんです。つまり、ポリティカルコレクトネスを掲げて口に出してはいけないとされている問題が、本当にタブーなんだろうかとトランプ氏は問い掛けている」、もっともな部分もあるようだ。
・『米国の産業界も金融界もトランプに期待  佐藤 日本では「トランプはとんでもないやつだ。大統領に返り咲いたら、世界は大混乱になる」と思い込んでいて、「なぜ米国人は、彼を再びリーダーに担ごうとしているのか」を真剣に分析しようとしません。 池上 佐藤さんは「ウクライナへ攻め込んだロシアを非難するだけでなく、その内在的論理を理解する必要がある」と言っていますね。「トランプを生み出す米国の内在的論理」についても、知らなければならないということですね。 佐藤 米国社会では過去40年で格差が急激に広がっていて、その上医療費は恐ろしいほど高額。「金がないやつは病気になったら死ね」というのが、今の米国です。こんな社会にしたエスタブリッシュメントには責任がある。それを乱暴な言葉で訴えているのが、トランプ氏じゃないでしょうか。トランプ氏は米国第一主義で輸入に規制をかけると宣言していますから、当然、国内産業が振興し、米国内の景気は良くなるでしょう。 池上 米国の産業界も金融界もトランプ氏に期待していますね。 佐藤 そういう意味では、トランプ氏はレーニンに似ている。陰謀論的な発言は別として、なぜトランプ氏が支持されるのかを考えると、合理性があると思えるんです。 池上 なるほど、トランプ現象とはトランプ革命ですか。優雅に暮らしていた帝政ロシアの貴族たちには教養があったのに、農民や工場労働者、下っ端の兵隊たちで構成されるボルシェビキによって、ひっくり返されました』、「佐藤 米国社会では過去40年で格差が急激に広がっていて、その上医療費は恐ろしいほど高額。「金がないやつは病気になったら死ね」というのが、今の米国です。こんな社会にしたエスタブリッシュメントには責任がある。それを乱暴な言葉で訴えているのが、トランプ氏じゃないでしょうか・・・トランプ氏はレーニンに似ている。陰謀論的な発言は別として、なぜトランプ氏が支持されるのかを考えると、合理性があると思えるんです。 池上 なるほど、トランプ現象とはトランプ革命ですか。優雅に暮らしていた帝政ロシアの貴族たちには教養があったのに、農民や工場労働者、下っ端の兵隊たちで構成されるボルシェビキによって、ひっくり返されました」、確かに主張にもまともな部分もあるようだ。
・『戦争に自国の兵を送らない米国の狡さ  佐藤 ウクライナ戦争について、他国の領土を侵略したロシアは明らかに間違っています。しかし西側は、ウクライナに「われわれの自由や民主主義や価値観を守るために戦え」と言って、お金と武器だけ貸し付ける。死ぬのはウクライナ人とロシア人だけ。これがモラル的に正しいのか。 ひと昔前の米国だったら、自分たちが戦いました。自由社会を守るためにベトナムへ行き、テロと戦うためにアフガニスタンへ行きました。最近の米国には狡さと嘘があるでしょう。トランプ氏は、そこも巧みについていると思います。 池上 米国の狡さでいうと、オバマ時代に過激派組織「イスラム国」(IS)が勢力を拡大したときも、米兵が死なないようにクルド人に武器や金を送って戦わせましたね。クルドの民兵に万単位の犠牲が出て、ようやくISを鎮めることができました。米軍はクルド人を支援するため後方にいたんですが、トランプ氏が大統領になったら撤退させました。 佐藤 台湾有事が現実になれば、ウクライナ戦争の繰り返しになるかもしれません。台湾人が民主主義を守るために、中国人と戦う。気をつけないといけないのは、憲法9条を改正して日本が参戦できるようになれば、「武器と金は提供するから戦ってこい」と言われるかもしれないことです。米国的な価値観を守るために、日本が中国と戦うことになりかねません。 トランプ氏が「自由や民主主義を守るために、米軍が他国へ行く必要はない。北大西洋条約機構(NATO)だって、ロシアが怖いなら自分たちで対応しろ」というのは突き放した表現ですが、素朴な正しさがあります』、「ひと昔前の米国だったら、自分たちが戦いました。自由社会を守るためにベトナムへ行き、テロと戦うためにアフガニスタンへ行きました。最近の米国には狡さと嘘があるでしょう。トランプ氏は、そこも巧みについていると思います・・・台湾人が民主主義を守るために、中国人と戦う。気をつけないといけないのは、憲法9条を改正して日本が参戦できるようになれば、「武器と金は提供するから戦ってこい」と言われるかもしれないことです。米国的な価値観を守るために、日本が中国と戦うことになりかねません」、台湾がらみでは、日本は注意深く行動すべきだ。
・『トランプは常軌を逸しているが「怪しげな人」しか革命は起こせない  池上「なぜ米国人は、トランプの言うことを信じるんですか?」とよく聞かれます。「大統領がおっしゃってるんだから、正しいに違いない」と、米国大統領の権威というものを信じている人たちが多いですね。 佐藤 正当な選挙結果を暴力で覆そうと試みたわけだから、普通の法治国家なら政治劇場への入場券を失うはずです。それなのに彼は、失っていない。そう考えると米国では、規格外のことが起きているんです。 レーニンがインテリで貴族だったように、考えてみればトランプ氏もエスタブリッシュメント側の人です。ところが何かの巡り合わせによって、虐げられた階級の代表者になっています。トランプ氏は常軌を逸したような人物ですが、歴史を振り返ると、こういうタイプにしか革命はできません。歴史を動かすのはいつも怪しげな人たちです。レーニンだって既成概念を否定するダダイストだし、奥さんと愛人と一緒に住んでいました。 池上 スターリンは銀行強盗をやったし、売春宿を経営してすごくもうけた。レーニンから「革命の資金集めのための売春宿経営はいいけど、そっちが本業じゃないからいいかげんにしておけ」とたしなめられたという話があります』、「レーニンがインテリで貴族だったように、考えてみればトランプ氏もエスタブリッシュメント側の人です。ところが何かの巡り合わせによって、虐げられた階級の代表者になっています。トランプ氏は常軌を逸したような人物ですが、歴史を振り返ると、こういうタイプにしか革命はできません。歴史を動かすのはいつも怪しげな人たちです」、なるほど。
・『ディープステートは日本を含めて実在する  佐藤 トランプ氏の発言を、もっと真面目に捉えなければいけないと思います。彼の言うディープステートは、日本を含めて実在します。近代的な国家システムは、選挙によって選ばれた政治家と、資格試験によって登用された官僚で成り立っています。しかし影の陰謀団ではないにせよ、正規の手続きを経ていないのに政治や経済政策の決定に関与する人たちがいます。日本で言えば、しばしば政府の諮問会議や有識者会議のメンバーになっていた、ヤマト運輸の故小倉昌男さんやJR東海の故葛西敬之さん。 池上 古くは、故中曽根康弘元首相のブレーンだった故瀬島龍三さんとか。 佐藤 さらに中高一貫校のつながりなど、表に一切出てこない事実上のブレーンもいます。彼らの主張が政策に採用されたら、誰がどう責任を取るのか。民主的統制を経ていないエスタブリッシュメントたちが国家意思を形成するのは、世界的な傾向ですが、そこには問題も孕んでいます。 われわれは今、時代の転換点にいます。革命家であるトランプ氏に対して忌避感を持つのは、旧世代のエスタブリッシュメントの感覚ではないでしょうか。 池上 4年後にトランプ氏の評価は一変しているかもしれませんね』、「日本」では、「政府の諮問会議や有識者会議のメンバーになっていた、ヤマト運輸の故小倉昌男さんやJR東海の故葛西敬之さん」など大勢いる。「民主的統制を経ていないエスタブリッシュメントたちが国家意思を形成する」のは確かに問題だ。「トランプ氏」の言動を巡って「日本」側の問題まで炙り出されたようだ。 
タグ:トランプ イスラエルに関しては、アメリカ国内にいるユダヤ人の献金と票がトランプ氏にとっては最重要課題であり、むしろイスラエルを強く支持する側に回るとされる。「アメリカ・ファースト」ではなく「トランプ・ファースト」が彼の政治的信条の根幹だ」、なるほど。 「前回の在任中は途中で諦めた感があるトランプ氏だが、ここで返り咲けば、前回以上に強権的な姿勢が目立つ政権になることは確実で、米軍を駐留させているNATOや韓国、日本に対しても、これまで以上の高い負担を求めてくることになるはずだ・・・多額の財政赤字を抱える日本にとっては、防衛費の大幅増強を求められるのは大きな負担になる。政府による財政支出に頼りすぎている日本経済にとっては、大きなブレーキになるはずだ・・・ 「ロシア」の「ソーシャルメディアを駆使して(大統領選挙に)介入」は、「特にドナルド・トランプに利益をもたらそうとしていたのは明白だ」、なるほど。 「もしトラ」から「ほぼトラ」に変わりつつあり、「最近は「確トラ」と言われる状況にまで事態は進んでいる」、願わくば「確トラ」は勘弁してもらいたいものだ。 岩崎 博充氏による「トランプが大統領再選したときの「危険シナリオ」 「もしトラ」から「ほぼトラ」に変わりつつある」 東洋経済オンライン (その51)(トランプが大統領再選したときの「危険シナリオ」 「もしトラ」から「ほぼトラ」に変わりつつある、「有名大学から極左を追い出せ!」トランプ氏の主張に支持者が拍手喝采なワケ【佐藤優・池上彰対談】) ダイヤモンド・オンライン 「超ワンマン体質では、不測の事態に直面したときに、エビデンスに基づいた正しい選択ができない可能性がある。自分の周囲をイエスマンだけで固めようとする独裁者は、いずれ馬脚を現す。 そんな状況を覚悟のうえで、与えられた時間の中で、トランプ政権の返り咲きという、これまでにない途方もないリスクに対応する方法を考えるしかない」、その通りだろう。 「『トランプ公約集』要旨」の各項目はとんでもないものばかりだ。 「トランプ政権がとってきた政策や新たに公約として掲げているものをチェックすると次のようになり・・・・・・保護貿易政策・・・大幅な規制緩和・・・減税による個人消費の拡大・・・移民政策強化による賃金上昇・・・金融緩和政策への大幅転換」いずれも「その結果としてインフレの圧力が高まる」のは確かだ。 「佐藤 米国の大学はもうけ過ぎですから、無税はおかしい。また、連邦政府の無駄な支出を削減し、減税という形で国民に還元するというので皆、拍手喝采です・・・佐藤 ローティーンの子どもたちに性自認の判断を迫ったり、性転換の手術を認めたりしていいのか、という議論もあります。トランプ氏の主張は粗野ですが、それなりに説得力があるんです。 だからディープステートを支えている連中は大統領令で皆、首にする。米国の公務員において政権運営を担う3000人から4000人程度は大統領による政治任用ですが、それ以外は公務員試験に受かって入ってきた人たちです。彼らについても、能力ではなく忠誠心を確かめ、自分の言うことを聞かないやつはすぐに首にできる仕組みを作るというのです」、「政治任用」以外の人間も「能力ではなく忠誠心を確かめ、自分の言うことを聞かないやつはすぐに首にできる仕組みを作る」、これは画期的だ。 「「アジェンダ47」という公約を発表・・・「ディープステート・・・」を解体する。トランプ氏は前回、大統領になれば何でも好きにできるだろうと思っていたのに、さまざまな良識派に抵抗されて思い通りにならなかった。「これは闇の政府が牛耳っているからだ」と考えたわけです。 池上 彰氏の対談「有名大学から極左を追い出せ!」トランプ氏の主張に支持者が拍手喝采なワケ【佐藤優・池上彰対談】」 佐藤 優氏 池上 なるほど、トランプ現象とはトランプ革命ですか。優雅に暮らしていた帝政ロシアの貴族たちには教養があったのに、農民や工場労働者、下っ端の兵隊たちで構成されるボルシェビキによって、ひっくり返されました」、確かに主張にもまともな部分もあるようだ。 「佐藤 米国社会では過去40年で格差が急激に広がっていて、その上医療費は恐ろしいほど高額。「金がないやつは病気になったら死ね」というのが、今の米国です。こんな社会にしたエスタブリッシュメントには責任がある。それを乱暴な言葉で訴えているのが、トランプ氏じゃないでしょうか・・・トランプ氏はレーニンに似ている。陰謀論的な発言は別として、なぜトランプ氏が支持されるのかを考えると、合理性があると思えるんです。 つまり、ポリティカルコレクトネスを掲げて口に出してはいけないとされている問題が、本当にタブーなんだろうかとトランプ氏は問い掛けている」、もっともな部分もあるようだ。 「レーニンがインテリで貴族だったように、考えてみればトランプ氏もエスタブリッシュメント側の人です。ところが何かの巡り合わせによって、虐げられた階級の代表者になっています。トランプ氏は常軌を逸したような人物ですが、歴史を振り返ると、こういうタイプにしか革命はできません。歴史を動かすのはいつも怪しげな人たちです」、なるほど。 べきだ。 「ひと昔前の米国だったら、自分たちが戦いました。自由社会を守るためにベトナムへ行き、テロと戦うためにアフガニスタンへ行きました。最近の米国には狡さと嘘があるでしょう。トランプ氏は、そこも巧みについていると思います・・・台湾人が民主主義を守るために、中国人と戦う。気をつけないといけないのは、憲法9条を改正して日本が参戦できるようになれば、「武器と金は提供するから戦ってこい」と言われるかもしれないことです。米国的な価値観を守るために、日本が中国と戦うことになりかねません」、台湾がらみでは、日本は注意深く行動す 「日本」では、「政府の諮問会議や有識者会議のメンバーになっていた、ヤマト運輸の故小倉昌男さんやJR東海の故葛西敬之さん」など大勢いる。「民主的統制を経ていないエスタブリッシュメントたちが国家意思を形成する」のは確かに問題だ。「トランプ氏」の言動を巡って「日本」側の問題まで炙り出されたようだ。
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北朝鮮問題(その23)(ロシアにとって北朝鮮との協力には魅力がない ロシア出身の北朝鮮専門家が語るロ朝関係のリアル、北朝鮮とロシアの関係に中国が激怒していた! ロ朝首脳会談にご立腹、中国人の北朝鮮入国を禁止) [世界情勢]

北朝鮮問題については、2021年10月24日に取上げた。久しぶりの今日は、(その23)(ロシアにとって北朝鮮との協力には魅力がない ロシア出身の北朝鮮専門家が語るロ朝関係のリアル、北朝鮮とロシアの関係に中国が激怒していた! ロ朝首脳会談にご立腹、中国人の北朝鮮入国を禁止)である。

先ずは、本年1月10日付け東洋経済オンライン「ロシアにとって北朝鮮との協力には魅力がない ロシア出身の北朝鮮専門家が語るロ朝関係のリアル」を紹介しよう。
・『2024年新年を迎えたが、朝鮮半島では緊張が続いている。北朝鮮の最高指導者で朝鮮労働党の金正恩総書記は2023年12月30日、韓国との関係を「同族関係」ではなく、敵対的な両国関係、交戦関係であると言及した。さらに2024年1月5日、韓国西部・黄海上の国境となるNLL(北方限界線)に向けて「訓練」と称して砲撃を繰り返している。 北朝鮮は何を考えているのか。ロシア出身で、著名な北朝鮮研究者として知られる韓国・国民大学のアンドレイ・ランコフ教授に、朝鮮半島の現状と今後の見通しについて聞いた(Qは聞き手の質問、Aはランコフ教授の回答)。 Q:金正恩総書記は2023年12月30日、国家的な重要会議の一つである朝鮮労働党中央委員会総会拡大会議で、韓国は「同族関係」ではなく「交戦国」だと言及しました。 A:敵対国と言及したことは重要な動きです。ただ、それより重要なことがあります。金総書記が事実上、数十年間にわたって北朝鮮が実施してきた平和統一路線を失敗として認めたということです。「わが党と共和国(北朝鮮)政府が打ち出した祖国平和統一の思想と路線、方針はどれ一つまともな実を結ばなかった」と述べました』、「金総書記が事実上、数十年間にわたって北朝鮮が実施してきた平和統一路線を失敗として認めた・・・韓国は「同族関係」ではなく「交戦国」だと言及」、扱いが現実を直視したものになったようだ。
・『「ソウル火の海」より過激な姿勢  私の記憶が正しければ、北朝鮮側が「交戦国」との言葉もそうですが、これほど強硬な警告と脅威を与えたことはありません。厳密に言えば、彼らが1990年代初頭から時々繰り返してきた「ソウルを火の海にする」といった脅し文句よりもはるかに強いものです。 一方で、これは金総書記が客観的な現実、あるいは真実を認めたとも言えます。実際に、平和統一という話は当初から現実とは距離のあるプロパガンダに過ぎなかったためです。とはいえ、このようなプロパガンダを突然捨てたことにはいろんな意味があります。 韓国の尹錫悦政権は保守政権として、北朝鮮に強硬な姿勢を見せ続けています。こうした政権に対する不満を示したと言えるでしょう。ただ2024年1月2日に、金総書記の実妹で労働党副部長の金与正氏が発表した談話をみると、韓国が保守政権であれ革新政権であれ、「大韓民国」として自分たちには同じ存在ということを何回も強調しています。 今回北朝鮮が韓国を統一の対象とするよりは、隣に存在する敵対国としてみなすという発言をしたことは、長期的な変化の始まりと言えるでしょう。このように変化させたのは、前述したように、現実を認めたとも言えます。) 同族国ではなく「まったくの外国」として描写することで、北朝鮮国内における韓国の魅力を下げようという考えも垣間見えます。言い換えれば、大韓民国を日本やアメリカのように、多くの外国の中の一国だと国民を誘導すれば、北朝鮮人民が持つ統一への関心がある程度低くなるでしょう。 とはいえ、このような政策が実効性のあるものかどうかはわかりません。なぜなら、旧東ドイツでのドイツ社会主義統一党、これが東ドイツの共産党だったのですが、この政党は旧西ドイツはまったくの外国であり、東ドイツの国民も西ドイツとは違う民族だと主張していました。しかし、こういった主張が東ドイツ人民が西ドイツに対して抱く魅力を壊すまでには至りませんでした。 Q:2024年になり、北朝鮮は黄海上のNLL海域での射撃訓練を実施しました。これは「敵対国」という発言による措置でしょうか。 A:私は、今回の射撃事件は金正恩の「敵対国家宣言」とはこれといった関係がないと考えています。 最近、韓国の保守政権は軍事訓練を熱心に行うだけでなく、この訓練をメディアを通じて国民に積極的にアピールし、国民の関心を惹こうとしています。これに北朝鮮はイラついているのが現状です』、「北朝鮮側が「交戦国」との言葉もそうですが、これほど強硬な警告と脅威を与えたことはありません。厳密に言えば、彼らが1990年代初頭から時々繰り返してきた「ソウルを火の海にする」といった脅し文句よりもはるかに強いものです」、なるほど。
・『北朝鮮が持つ「砲弾」には強い関心  また、北朝鮮は韓国や米韓合同の軍事訓練に対抗して、ミサイルを発射したり軍事演習を行うなど対応してきました。強力な行動には強力な行動で対抗するという北朝鮮の姿勢、いわば小規模な「強対強」戦略です。これは北朝鮮がこれまでやってきたことでもあり、今後も行われるでしょう。 それでも、予測可能な未来においては南北の武力衝突の可能性は高くないと考えます。双方は「強対強」路線を信じていますが、現在の状況において大規模な戦争を行うつもりはありません。 ただ、南北関係は緊張状態にあり、2010年に北朝鮮が行った延坪島(黄海のNLL付近の韓国側の島)砲撃のような小規模な武力挑発を行うことはありえるでしょう。 Q:現在進行中のウクライナ戦争に関連して、北朝鮮はロシアとの関係を深めていると指摘されています。武器などをロシアに輸出し、戦争に加担しているのではないかと疑われています。 A:ウクライナ戦争でロシアは砲弾が枯渇しています。そのため、北朝鮮が保有する砲弾の在庫に対する関心は高い。実際に、ロシアは北朝鮮から数十万発の砲弾を受け取りたいとの希望を持っています。 また、ロシアは保有する重要な軍事技術を北朝鮮に移転できることをほのめかしています。しかし、こうした姿勢は北朝鮮のみに向けて言っていることではありません。 ロシアは北朝鮮の砲弾に関心を持ちながらも、一方で韓国がウクライナへ砲弾を輸出することを強く心配しています。韓国は今や、世界有数の砲弾製造国であるためです。) ロシアは北朝鮮へ重要な軍事技術を移転できることをほのめかしながら、韓国に圧力をかけているということになります。ウクライナに砲弾を輸出すれば、ロシアは北朝鮮に軍事技術を移転するとの、いわば脅しです。これは当然、アメリカや欧州各国に向けたものでもあります。 とはいえ、客観的に言えば、ロシアが北朝鮮に大規模な軍事技術を移転する可能性はなくはないですが、高くはないと思います。偵察衛星関連、通常兵器関連の技術移転は可能です。しかし、弾道ミサイルや核兵器に関する技術は事実上、不可能です。 Q:2023年11月に北朝鮮は、軍事偵察衛星の発射に成功したと発表しましたが、これにロシアの技術が利用されたとする見方もあります。 A:偵察衛星への技術移転・供与の可能性は否定できません。北朝鮮が偵察衛星を持ったことは周辺国に対する不安材料にもなりますが、同時に肯定的な側面もあります。それは、北朝鮮側も偵察衛星を通じて周辺国の正しい情報をある程度把握しておくことで、誤った判断をする可能性が減るためです』、「ロシアは北朝鮮へ重要な軍事技術を移転できることをほのめかしながら、韓国に圧力をかけているということになります。ウクライナに砲弾を輸出すれば、ロシアは北朝鮮に軍事技術を移転するとの、いわば脅しです」、なるほど。
・『核兵器の技術移転・協力はありえない  朝鮮半島の緊張状態が続いている中で、戦争へとつながる要素は偶発的な衝突や誤判による過剰行為です。この点からみると、北朝鮮独自の情報源を持つことは決して悪いことではありません。ロシアもそのように、肯定的に考えている部分もあります。 Q:ロシアが北朝鮮に核兵器技術を移転する可能性がないのは、どうしてでしょうか。 A:アメリカは核兵器の拡散に神経を使っていますが、ロシアも核兵器の拡散を最も恐れています。仮に北朝鮮に核心的な技術を提供・移転して北朝鮮が核兵器の製造を完成させ、ひいては高度化させた場合、ロシア自身が核兵器保有国を誕生させたという悪い例をつくってしまうことになるからです。 ロシアの周辺国に北朝鮮の経験が移転され、ロシアの安保環境が悪化することをロシアは極度に恐れます。ロシアの場合、ベラルーシのほかに安心できる国はありません。これは中国もそうでしょう。 中国も核兵器を持っていますが、仮に北朝鮮が核兵器を完成させ、それが拡散してしまうと周辺国が核兵器を持つ可能性が一気に高まってしまいます。これは、ロシアにとっても中国にとっても、最悪のシナリオです。 Q:ロシアと北朝鮮との経済関係が拡大しているとの指摘もあります。 A:実はこの2国間で、一般的な貿易が活発化する可能性はほとんどないと思います。まず、これまでの北朝鮮とロシア(ソ連)との経済交流を振り返ってみると、ロシア側が国家予算を使って経済交流を後押しした場合にのみ、2国間の貿易規模が拡大しているという歴史があります。) 基本的な理由もあります。北朝鮮が国際市場で販売できる品目のうち、ロシアが関心を持つような品目はほとんどありません。北朝鮮は石炭や鉄鉱石など天然資源を持っていますが、これら品目はロシアがより豊富に持っているものです。海産物などもそうです。 たった一つ、ロシアが大きな関心を持っている品目があります。北朝鮮の労働力です。これまでもロシア領内で多くの北朝鮮労働者が働いてきました。ウクライナ戦争も続いており、ロシアはより多くの労働力を必要としています。 ロシアにとって需要があるのは人材です。だからこそ、北朝鮮の労働力は魅力的です。賃金はロシア人より安くて済むし、過度な要求もしない。北朝鮮という国家が間に入るので、ストライキといった面倒なことは起きません。労働者のロシアへの派遣が今後、活発化する可能性は高いと思います。 しかし、ロシア政府が北朝鮮との交流拡大のために支援するかどうかは未知数です。現時点では、ロシア政府にそのような意思があるように見えません。ロシアにとって北朝鮮は、戦略的な価値がそれほど高くないためです』、「ロシアが大きな関心を持っている品目があります。北朝鮮の労働力です。これまでもロシア領内で多くの北朝鮮労働者が働いてきました。ウクライナ戦争も続いており、ロシアはより多くの労働力を必要としています。 ロシアにとって需要があるのは人材です。だからこそ、北朝鮮の労働力は魅力的です。賃金はロシア人より安くて済むし、過度な要求もしない。北朝鮮という国家が間に入るので、ストライキといった面倒なことは起きません。労働者のロシアへの派遣が今後、活発化する可能性は高いと思います」、「北朝鮮の労働力は魅力的です。賃金はロシア人より安くて済むし、過度な要求もしない。北朝鮮という国家が間に入るので、ストライキといった面倒なことは起きません」、「ロシア」にとってはまさに干天の慈雨だ。
・『北朝鮮が持つ戦略的価値は中国にメリット  Q:ウクライナ戦争が勃発し世界が多極化する兆しがはっきりとしてきた中で、それでも北朝鮮とロシア、中国の3カ国が連帯を強めているように思えます。 中国にとって北朝鮮は、ロシアよりもはるかに戦略的価値が高い国です。北朝鮮が朝鮮半島での緩衝地帯という地政学的な意味もある。北朝鮮の輸出品目には、石炭など中国で需要がありよく売れる品目が少なくありません。中国経済の力からすれば、北朝鮮を支援するにしてもその負担はとても小さくメリットが大きいと言えます。 東アジアのこれら3カ国にとって、核となるのはやはり中国です。ロシアと北朝鮮との関係よりは、今こそ関心が高まっていますが、中朝関係ほどは重要にはならないでしょう。 Q:これら3カ国には「反米」的という共通項はありますが、今後も連帯は深まるでしょうか。 A:実は、この3カ国関係はとても深刻な問題を抱えています。例えばGDPで見ると、中国・ロシア・北朝鮮は600:50:1になります。経済的にはあまりにも不平等な関係です。 また、「反米」といった価値観でいえば、まさに反米主義と自由民主主義を拒否するという点以外で、共有できるものがありません。確かにアメリカ中心の世界秩序に対する不満が強く、アメリカが言う「ゲームのルール」に反発しています。) そのため、確かにこれら3カ国はアメリカに対してうるさく反発・攻撃しますが、一方でアメリカと妥協できることを夢見ています。問題は、アメリカがこれら3カ国が望む条件で妥協する考えがいっさいない、ということです。 お互いに不信感を拭いきれない関係でもあります。中国からみると、ロシアは19世紀に沿海州など、本来は中国の領土だった部分を「盗んだ」列強の1つです。北朝鮮はやたら自尊心は強いが非合理主義、そして冒険主義が強い国家です。 ロシアはアジアの国家に対して無視、軽視する傾向が根強い。ロシアのエリート層が客観的な視野を持っているとしても、中国に対し心からパートナーとなりえるとは考えづらいでしょう。 北朝鮮からすれば、この国はもともと他国に対する不信感が強い。隣国の中国であっても、「内政干渉をしばしば行う危険な大国」だと思っています』、「中国からみると、ロシアは19世紀に沿海州など、本来は中国の領土だった部分を「盗んだ」列強の1つです。北朝鮮はやたら自尊心は強いが非合理主義、そして冒険主義が強い国家です。 ロシアはアジアの国家に対して無視、軽視する傾向が根強い・・・中国に対し心からパートナーとなりえるとは考えづらいでしょう」、なるほど。
・『ロ中朝の3カ国関係の結びつきは強くない  Q:3カ国の関係を今後もつなぎ止めるものはありますか。 A:もしロシアで政権交代といったことが生じれば、ロシアはこの3カ国関係から抜け出すでしょう。現時点に限ってみれば、この3カ国関係に加わったことで、砲弾や弾薬を受け取ることができます。 一方で、中国は前述したような戦略的な利益のために、北朝鮮への支援を今後も継続していくと思います。 北朝鮮も国連による経済制裁が重くのしかかっている限り、中国に依存する戦略を放棄しないでしょう。内心、北朝鮮はこんな戦略を好ましいとは思っていませんが、代案を探せずにいます。 金総書記は、自身が政権を継承した2012年から2018年ごろまで続けた市場経済的な改革を放棄しました。そして、住民監視を強化するために有利な中央計画経済を一定程度、復活させました。米中対立が続く中、このような北朝鮮の政策は今後5年から10年は変化を見せないでしょう』、「現時点に限ってみれば、この3カ国関係に加わったことで、砲弾や弾薬を受け取ることができます。 一方で、中国は前述したような戦略的な利益のために、北朝鮮への支援を今後も継続していくと思います。 北朝鮮も国連による経済制裁が重くのしかかっている限り、中国に依存する戦略を放棄しないでしょう・・・金総書記は、自身が政権を継承した2012年から2018年ごろまで続けた市場経済的な改革を放棄しました。そして、住民監視を強化するために有利な中央計画経済を一定程度、復活させました。米中対立が続く中、このような北朝鮮の政策は今後5年から10年は変化を見せないでしょう」、拉致問題への言及はないが、「北朝鮮の政策は今後5年から10年は変化を見せないでしょう」、というのでは、拉致問題の進展も期待できぞうにないようだ。

次に、1月23日付け東洋経済オンラインが掲載した 中国・北朝鮮ウォッチャーの中野 鷹氏による「北朝鮮とロシアの関係に中国が激怒していた! ロ朝首脳会談にご立腹、中国人の北朝鮮入国を禁止」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/729386
・『世界的なコロナ禍が収束する中、北朝鮮の動向に関心が持たれている。ミサイル発射など軍事面での行動が目を引くが、実は自国と海外との往来をいつ解放するのかにも注目が高まっている。2020年1月にコロナの拡大を防ぐため中朝国境を封鎖して以来、正式に解除されていないためだ。貿易など細々とした対外関係は行われているが、そのような中、「本格開放のシグナル?」とも思える動きが見えた。 2024年1月12日、ロシアの旅行会社が「北朝鮮へのスキーツアーを実施する」と、アメリカ政府系ラジオの自由アジア放送(RFA)が伝えた。 観光目的での北朝鮮訪問が実現すれば2020年1月22日、新型コロナウイルスの感染拡大防止を理由に北朝鮮が一切の入国を停止した後で初めてのこととなる。 この報道を契機に、中国の旅行会社からは「なぜロシアからなのか。信じられない」との落胆の声が聞こえてくる』、興味深そうだ。
・『中国の旅行社が落胆する理由  翌1月13日、アメリカ・CNNは、2023年12月に北朝鮮を訪問したロシアのオレグ・コジェミャコ沿海地方知事との会談で、北朝鮮当局と観光ツアーの再開が議題となった可能性があると伝えている。 ロシアの旅行会社が主催するツアーは、2024年2月9日にロシア沿海州のウラジオストクから空路で平壌へ入る計画のようだ。現時点では70人の参加が確定しているという。 旅行日程は、3泊4日で費用は1人750ドル(約11万円)。ツアーの目玉は、北朝鮮東部・元山に近い馬息嶺(マシンリョン)スキー場でのスキー観光となるようだ。 前述のRFAは、ロシアメディアの情報として「観光の本格再開は4月とされ、今回2月実施のスキーツアーは試験的なプレ実施との位置づけだ」とも伝えている。 こうした一連の報道を見ると、北朝鮮旅行は現在ロシアがイニシアティブを取っているように思える。だが、外国人訪朝者の95%強を占めてきた北朝鮮の「お得意様」中国はどうなっているのか。) 今回、中国が後れを取ったのは、中国政府が北朝鮮への人的往来を無期限延期するという、実質的な「制裁」を課していたことが関係筋の証言で浮かび上がってきた。 ロシア・ウラジオストクの旅行社ボストーク・イントゥール社による北朝鮮スキーツアーのポスター。「山岳スキーリゾート馬息嶺」と名づけ、3泊4日のツアーとなっている(写真・同社のホームページより) 実は2023年9月25日、日本のNHKや朝日新聞をはじめとする日本メディアが、「北朝鮮が9月25日から外国人の入国を許可。国営中国中央テレビ(CCTV)が伝える」と大きく報じていた。 しかし、その後も中国から北朝鮮への出入国は正常化されるどころか、北朝鮮から中国への人的往来もコロナ禍前の水準ほどに戻ったとの情報は確認できない』、「今回、中国が後れを取ったのは、中国政府が北朝鮮への人的往来を無期限延期するという、実質的な「制裁」を課していたことが関係筋の証言で浮かび上がってきた」、なるほど。
・『延び延びにされてきた北朝鮮入国  中朝国境の遼寧省・丹東にある国営旅行会社の社長は、「北朝鮮の最高指導者のロシア訪問が、中国政府が人的往来を止めたきっかけ」と打ち明ける。 すなわち、2023年9月12日からの北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記がロシア極東訪問してプーチン大統領との首脳会談を行ったことが、中国の習近平国家主席の逆鱗に触れ、結果として制裁を課したということだ。 この国営旅行会社は、中国人向け北朝鮮旅行手配では最大手となる。国営企業なので丹東駅から平壌駅までの国際列車の乗車券も優先的に取得できるなど、北朝鮮に関する旅行業界での力は絶大なものを持つ。 また、これまで北朝鮮の旅行業を「自分がリードしてきた」という自負も強い。だからこそ、今回の再開1号ツアーがロシアに取られたことは、さぞかしがっかりさせられたことだろう。 では、2020年に北朝鮮が国境を閉鎖して以降、中朝国境ではどのような動きを見せてきたのか。とくに2023年1月以降の動きを振り返ってみたい。) 2023年1月8日、中国・吉林省の琿春と北朝鮮の羅先特別市のイミグレーション圏河口岸(出入国審査場)の封鎖が解除された。そして、車両や人的往来を限定再開させた。 行けるのは羅先のみと限定されており、平壌など他の都市へ移動は制限されたままだ。また、観光客も実質的に通過することができない。 その後、国境付近は穏やかだったが、再びここが注目を集めたのは2023年8月16日に丹東との国境の封鎖が解除され、北朝鮮のテコンドー選手団が国際大会に参加するために中国へ入国した時だ。平壌からの入国者は3年半ぶりだった』、「2023年9月12日からの北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記がロシア極東訪問してプーチン大統領との首脳会談を行ったことが、中国の習近平国家主席の逆鱗に触れ、結果として制裁を課したということだ」、「中国の習近平国家主席」にしては大人げない態度だ。
・『2023年下半期から徐々に増えてきたが…  2023年8月末には丹東からの国際列車に加え、北京や瀋陽からの北朝鮮国営・高麗航空が限定的に運行が再開され、コロナ禍で帰国できなかった北朝鮮人外交官や労働者などの帰国が確認されている。 そして9月16日、中国・杭州で開催されたアジア大会へ参加する選手や関係者など約200人が中国へ入国している。 また8月末からは中国当局が拘束していた脱北者の強制送還が始まった。10月9日には脱北者600人を一斉に送還し、これまで約2600人が北朝鮮へ強制送還されたと、韓国メディアの報道がある。 このように、間欠的に、かつゆっくりと中朝国境の人的往来が正常化されるような動きがあった。 とくに2023年8月中旬、北京の北朝鮮大使館は、関係する貿易・旅行関係者向けに「9月24日前後から人的往来を再開する」と通知を出した。通知を読むと、中朝が合意した内容だと読み取れる内容だった。) 筆者は、この北朝鮮大使館から通知があったことを関係筋から聞いていたので「9月25日、北朝鮮が外国人の入国許可」の報道には驚くことはなかった。強いて言えば、中国人以外の外国人向けの観光業も同時に再開させるとの直前情報に驚いたくらいだ。 実は当初、中国の関係筋から聞いていたのは、以下のような内容だった。 まず先行して中国人を、それも観光目的ではなく、出張者などから往来を再開させ、中国人の北朝鮮旅行は中国で最大の連休期間となる10月1日の国慶節(建国記念日)あたりから再開させる。日本人を含むその他の外国人は、早くて10月末から再開させるのではないか、というものだった』、中国サイドの勝手な思い入れは外れたようだ。
・『往来を「無期限延期」にした理由  かなりハイペースのスケジュールに感じられたため、「観光再開は予想以上に早い。それだけ、北朝鮮の経済状況が悪いのだろう」と受け取っていた。 ところが、前述したように、9月25日に中国メディアが報じたのにもかかわらず、その後は「人的往来が再開した」との報道がパタリと途絶えてしまった。 中国メディアが伝えた情報は、本来のテレビによる報道ではなく、インターネット上での記事だったようだが、その後に削除されたようで今ではその報道を確認できていない。 いったん中国メディアが報じたのにもかかわらず、結局実行されなかった大きな理由は、前述の丹東の国営旅行会社社長が明かしたように、中国政府が金正恩・プーチン会談に激怒し、9月25日に人的往来再開で中朝合意していた約束を中国政府が一方的に反故にし、無期限延期にしたことだろう。 反故にしたタイミングが直前すぎたことも、結局は誤報の原因となった可能性もありそうだ。) ただ、米中対立が深まる中、北朝鮮と中国、ロシアは緩やかな連帯が深まっているとされている情勢なのに、中国政府はなぜ北朝鮮がロシアへ接近したことにそこまで反発したのか。 中国とロシアの関係はよい――。日本にいると中国はロシアに近く、現在のウクライナ戦争についても、中国はロシアよりだとみている日本人は多いと思う。 中国国内では、地元のSNS「微博(ウェイボー)」などで見られるコメントを見ると、ロシア支持のコメントが圧倒的に多い。ウクライナを支持し、戦争そのものへの批判は大部分が削除されていると思われる。これは中国当局による情報統制の一環だろう』、「米中対立が深まる中、北朝鮮と中国、ロシアは緩やかな連帯が深まっているとされている情勢なのに、中国政府はなぜ北朝鮮がロシアへ接近したことにそこまで反発したのか」、中国人にしたら、「北朝鮮」は朝鮮戦争の時に膨大な犠牲を払って守ってやったのに、「ロシア」にくっついたことで、プライドを壊されたためなのかも知れない。
・『日本人が思うほど関係は強くない  実は、中ロ関係は日本人が思う以上に薄っぺらで脆弱な関係だ。中ロ朝の3カ国とも、自分たちの権威主義体制維持を脅かすアメリカに反対するという1点で、しかも細くつながっているだけだ。 互いの利己的な国益のために、水面下ではそうとうなつばぜり合いが繰り返されており、蜜月関係とはとうてい言えるような関係ではない。 2024年1月13日に行われた台湾の総統選挙の結果もあり、中国の関心は台湾に集中しているような情勢ではある。しかし、中国の現実的な狙いは「台湾統一」ではなく、ロシア極東の再併合なのではないのかと思えるフシがある。 実際に、そう指摘する声がロシアと国境を接する吉林省の実業家や旅行業関係者などからもしばしば出されている。 現在の吉林省を含む旧満州、すなわち東北3省の人たちは、現在のウラジオストクを含むロシア沿海地方、アムール州、ユダヤ自治州、ザバイカリエ地方などを「外東北」(日本では外満州)と呼び、ウラジオストクを旧名の「海参崴」と呼び続ける人がいる。 それは、「外満州はロシアと結ばされた不平等条約によってロシア帝国に奪われた土地」と認識している人が少なくないからだ。) 世界史の教科書をひもとくと、1858年のアイグン条約と1860年の北京条約で本来保有していた広大な領地がロシアへ割譲されている。 もちろん、習近平政権は一度も「奪われた外東北を奪還する」などと口にしたことはない。だが、吉林省在住の中国人たちに話を聞くと、そんな清朝時代の最大領土を取り戻すという「中国の夢」が見え隠れするのだ。 中国政府としては武力を用いず、かつ国際社会との摩擦も最小限に抑えてかつての領土を併合したい。そのためにロシアの国力低下を虎視眈々と待っているのだという声も、実は少なくはない』、「現在の吉林省を含む旧満州、すなわち東北3省の人たちは、現在のウラジオストクを含むロシア沿海地方、アムール州、ユダヤ自治州、ザバイカリエ地方などを「外東北」(日本では外満州)と呼び、ウラジオストクを旧名の「海参崴」と呼び続ける人がいる。 それは、「外満州はロシアと結ばされた不平等条約によってロシア帝国に奪われた土地」と認識している人が少なくないからだ。) 世界史の教科書をひもとくと、1858年のアイグン条約と1860年の北京条約で本来保有していた広大な領地がロシアへ割譲されている・・・吉林省在住の中国人たちに話を聞くと、そんな清朝時代の最大領土を取り戻すという「中国の夢」が見え隠れするのだ。 中国政府としては武力を用いず、かつ国際社会との摩擦も最小限に抑えてかつての領土を併合したい。そのためにロシアの国力低下を虎視眈々と待っているのだという声も、実は少なくはない」、なるほど。
・『中国が抱く「沿海州再併合」  中国は、ロシアがウクライナに勝とうが負けようが中国の国益になるようなポジションで動いている。ウクライナ戦争では、仮にロシアが勝利しても、国力や国際的な信用、プレゼンスも大幅低下することは避けられない。敗北すれば、ロシア領土が複数に分割される、などの話も飛び交っている。 前者であれば、疲弊したロシアに対し外満州を金で割譲することを持ちかける。後者であれば、分割された領土に対し歴史的な経緯を主張したり、高麗人(朝鮮半島からロシア沿海地方へ移住した朝鮮民族)を中国の少数民族朝鮮族の同胞だと定義し、少数民族保護などの名目で再併合するシナリオも考えられる。 こうしてみると、中国はロシアがどちらに転んでも自分たちに利益となるような態度をとっているといえる。 しかも、中国による「極東再併合」は、今に始まったことではない。すでに10年以上前から、吉林省の実業家を中心にロシア沿海地方の農地を買収し、中国人を移住させる大規模耕作地を増やしてきた。この件は日本のメディアでも報じられたことがある。) コロナ禍で一時的に中ロ間の人的往来は止まっていたが、2023年1月8日に陸路の中ロ国境封鎖が解除された。 しかし、人的往来が停止している間も中ロの貨物輸送は増えており、ロシア政府系通信社のスプートニク中国語版は2023年1月12日、ロシア・マハリノと中国・琿春間の鉄道による貨物量が2022年には約350万トンとなり、前年比22%増を記録していると伝えた。 さらに、ロシア産石炭の輸出が急増しており、そのため、検問所を24時間体制にし、貨物列車も1日5本を増便させたと伝えている』、「ウクライナ戦争では、仮にロシアが勝利しても、国力や国際的な信用、プレゼンスも大幅低下することは避けられない。敗北すれば、ロシア領土が複数に分割される、などの話も飛び交っている。 前者であれば、疲弊したロシアに対し外満州を金で割譲することを持ちかける。後者であれば、分割された領土に対し歴史的な経緯を主張したり、高麗人(朝鮮半島からロシア沿海地方へ移住した朝鮮民族)を中国の少数民族朝鮮族の同胞だと定義し、少数民族保護などの名目で再併合するシナリオも考えられる。 こうしてみると、中国はロシアがどちらに転んでも自分たちに利益となるような態度をとっているといえる・・・すでに10年以上前から、吉林省の実業家を中心にロシア沿海地方の農地を買収し、中国人を移住させる大規模耕作地を増やしてきた。この件は日本のメディアでも報じられたことがある。) コロナ禍で一時的に中ロ間の人的往来は止まっていたが、2023年1月8日に陸路の中ロ国境封鎖が解除された。 しかし、人的往来が停止している間も中ロの貨物輸送は増えており、ロシア政府系通信社のスプートニク中国語版は2023年1月12日、ロシア・マハリノと中国・琿春間の鉄道による貨物量が2022年には約350万トンとなり、前年比22%増を記録していると伝えた。 さらに、ロシア産石炭の輸出が急増しており、そのため、検問所を24時間体制にし、貨物列車も1日5本を増便させた』、中国人は極めて長期的視点で着々と併合に向けた準備を進めているようだ。
・『ロシア沿海州が中国の租借地化  中国人実業家によると、今では農地だけではなく、鉱山や港などの長期使用権なども獲得していると胸を張る。まるで、ロシア沿海州が中国の租借地状態になりつつあるようだ。 中国共産党の一党支配という国家体制上、こうした沿海州へ進出する中国人たちの背後には、中国政府の意向が働いていることは容易に想像がつく。 そんな中国政府が着々と狙っているエリアに、金正恩総書記がコロナ後、初の外国訪問として訪れた。だから、習近平国家主席がへそを曲げたという想像もつく。しかも、金総書記は2019年にも同じロシア沿海州を訪問し、プーチン大統領と初めての首脳会談をおこなった。 ロシア側からみても、中国の極東再併合の狙いを認識しており、そうした中国を牽制するために、2度も金総書記をロシア沿海州へ厚遇してまで招き首脳会談を開催した可能性がなくもない。 そして北朝鮮は、中ロ間の間隙を利用するかのようにロシアへ接近して、武器を供与し、その見返りとしてミサイル技術をロシアから獲得。さらには、ロシアへ北朝鮮への観光ツアー再開を打診した――。 こうしてみると、中ロ関係を悪化させることが北朝鮮の国益だといわんばかりに動いているようにも見えてくる。) 北朝鮮に激怒し、へそを曲げた状態とされる中国は、今後どのような動きを見せるだろうか。 1つは、中国政府が今後も態度を硬化させて、中国を経由する外国人をも含めた人的往来の再開を無期限延期したままにする。 あるいは、振り上げた拳をそのままにして、拳を振り上げなかったことにし、ロシアがやっているようなことに合わせて人的往来、つまり、北朝鮮観光をあっさりと「許可」して再開させる可能性も十分にある』、「北朝鮮に激怒し、へそを曲げた状態とされる中国は、今後どのような動きを見せるだろうか。 1つは、中国政府が今後も態度を硬化させて、中国を経由する外国人をも含めた人的往来の再開を無期限延期したままにする。 あるいは、振り上げた拳をそのままにして、拳を振り上げなかったことにし、ロシアがやっているようなことに合わせて人的往来、つまり、北朝鮮観光をあっさりと「許可」して再開させる可能性も十分にある」、どちらになるのだろう。
・『もう1つの「中国の夢」  それは、中国も国内経済が悪く、国民に対するガス抜きを行うことが不可欠となっているためだ。 中国政府にとって台湾問題は自国の求心力を高める重要な問題だ。 また極東再併合は、清朝最大領土を奪還する「中国の夢」にも矛盾することもない。台湾問題と比較し、獲得できる資源とリスクを天秤にかけると、どちらに本腰を入れるべき夢なのか。 万が一、ウクライナ戦争の行方次第でロシアが崩壊・分割されるような事態になれば、中国はどさくさに紛れて清朝が領土とみなしたこともないサハリンさえも取りに動くだろう。これは決して筆者の空想ではない。実際にこんな話題が、すでに東北3省の中国人実業家たちからはささやかれているのが現状だ』、「万が一、ウクライナ戦争の行方次第でロシアが崩壊・分割されるような事態になれば、中国はどさくさに紛れて清朝が領土とみなしたこともないサハリンさえも取りに動くだろう。これは決して筆者の空想ではない。実際にこんな話題が、すでに東北3省の中国人実業家たちからはささやかれているのが現状だ」、「東北3省の中国人実業家たちからはささやかれている」というのには心底驚いた。  
タグ:北朝鮮問題 (その23)(ロシアにとって北朝鮮との協力には魅力がない ロシア出身の北朝鮮専門家が語るロ朝関係のリアル、北朝鮮とロシアの関係に中国が激怒していた! ロ朝首脳会談にご立腹、中国人の北朝鮮入国を禁止) 東洋経済オンライン「ロシアにとって北朝鮮との協力には魅力がない ロシア出身の北朝鮮専門家が語るロ朝関係のリアル」 「金総書記が事実上、数十年間にわたって北朝鮮が実施してきた平和統一路線を失敗として認めた・・・韓国は「同族関係」ではなく「交戦国」だと言及」、扱いが現実を直視したものになったようだ。 「北朝鮮側が「交戦国」との言葉もそうですが、これほど強硬な警告と脅威を与えたことはありません。厳密に言えば、彼らが1990年代初頭から時々繰り返してきた「ソウルを火の海にする」といった脅し文句よりもはるかに強いものです」、なるほど。 「ロシアは北朝鮮へ重要な軍事技術を移転できることをほのめかしながら、韓国に圧力をかけているということになります。ウクライナに砲弾を輸出すれば、ロシアは北朝鮮に軍事技術を移転するとの、いわば脅しです」、なるほど。 「ロシアが大きな関心を持っている品目があります。北朝鮮の労働力です。これまでもロシア領内で多くの北朝鮮労働者が働いてきました。ウクライナ戦争も続いており、ロシアはより多くの労働力を必要としています。 ロシアにとって需要があるのは人材です。だからこそ、北朝鮮の労働力は魅力的です。賃金はロシア人より安くて済むし、過度な要求もしない。北朝鮮という国家が間に入るので、ストライキといった面倒なことは起きません。労働者のロシアへの派遣が今後、活発化する可能性は高いと思います」、 「北朝鮮の労働力は魅力的です。賃金はロシア人より安くて済むし、過度な要求もしない。北朝鮮という国家が間に入るので、ストライキといった面倒なことは起きません」、「ロシア」にとってはまさに干天の慈雨だ。 「中国からみると、ロシアは19世紀に沿海州など、本来は中国の領土だった部分を「盗んだ」列強の1つです。北朝鮮はやたら自尊心は強いが非合理主義、そして冒険主義が強い国家です。 ロシアはアジアの国家に対して無視、軽視する傾向が根強い・・・中国に対し心からパートナーとなりえるとは考えづらいでしょう」、なるほど。 「現時点に限ってみれば、この3カ国関係に加わったことで、砲弾や弾薬を受け取ることができます。 一方で、中国は前述したような戦略的な利益のために、北朝鮮への支援を今後も継続していくと思います。 北朝鮮も国連による経済制裁が重くのしかかっている限り、中国に依存する戦略を放棄しないでしょう・・・ 金総書記は、自身が政権を継承した2012年から2018年ごろまで続けた市場経済的な改革を放棄しました。そして、住民監視を強化するために有利な中央計画経済を一定程度、復活させました。米中対立が続く中、このような北朝鮮の政策は今後5年から10年は変化を見せないでしょう」、拉致問題への言及はないが、「北朝鮮の政策は今後5年から10年は変化を見せないでしょう」、というのでは、拉致問題の進展も期待できぞうにないようだ。 東洋経済オンライン 中野 鷹氏による「北朝鮮とロシアの関係に中国が激怒していた! ロ朝首脳会談にご立腹、中国人の北朝鮮入国を禁止」 「今回、中国が後れを取ったのは、中国政府が北朝鮮への人的往来を無期限延期するという、実質的な「制裁」を課していたことが関係筋の証言で浮かび上がってきた」、なるほど。 「2023年9月12日からの北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記がロシア極東訪問してプーチン大統領との首脳会談を行ったことが、中国の習近平国家主席の逆鱗に触れ、結果として制裁を課したということだ」、「中国の習近平国家主席」にしては大人げない態度だ。 中国サイドの勝手な思い入れは外れたようだ。 「米中対立が深まる中、北朝鮮と中国、ロシアは緩やかな連帯が深まっているとされている情勢なのに、中国政府はなぜ北朝鮮がロシアへ接近したことにそこまで反発したのか」、中国人にしたら、「北朝鮮」は朝鮮戦争の時に膨大な犠牲を払って守ってやったのに、「ロシア」にくっついたことで、プライドを壊されたためなのかも知れない。 「現在の吉林省を含む旧満州、すなわち東北3省の人たちは、現在のウラジオストクを含むロシア沿海地方、アムール州、ユダヤ自治州、ザバイカリエ地方などを「外東北」(日本では外満州)と呼び、ウラジオストクを旧名の「海参崴」と呼び続ける人がいる。 それは、「外満州はロシアと結ばされた不平等条約によってロシア帝国に奪われた土地」と認識している人が少なくないからだ。) 世界史の教科書をひもとくと、1858年のアイグン条約と1860年の北京条約で本来保有していた広大な領地がロシアへ割譲されている・・・吉林省在住の中国人たちに話を聞くと、そんな清朝時代の最大領土を取り戻すという「中国の夢」が見え隠れするのだ。 中国政府としては武力を用いず、かつ国際社会との摩擦も最小限に抑えてかつての領土を併合したい。そのためにロシアの国力低下を虎視眈々と待っているのだという声も、実は少なくはない」、なるほど。 「ウクライナ戦争では、仮にロシアが勝利しても、国力や国際的な信用、プレゼンスも大幅低下することは避けられない。敗北すれば、ロシア領土が複数に分割される、などの話も飛び交っている。 前者であれば、疲弊したロシアに対し外満州を金で割譲することを持ちかける。後者であれば、分割された領土に対し歴史的な経緯を主張したり、高麗人(朝鮮半島からロシア沿海地方へ移住した朝鮮民族)を中国の少数民族朝鮮族の同胞だと定義し、少数民族保護などの名目で再併合するシナリオも考えられる。 こうしてみると、中国はロシアがどちらに転んでも自分たちに利益となるような態度をとっているといえる・・・すでに10年以上前から、吉林省の実業家を中心にロシア沿海地方の農地を買収し、中国人を移住させる大規模耕作地を増やしてきた。この件は日本のメディアでも報じられたことがある。) コロナ禍で一時的に中ロ間の人的往来は止まっていたが、2023年1月8日に陸路の中ロ国境封鎖が解除された。 しかし、人的往来が停止している間も中ロの貨物輸送は増えており、ロシア政府系通信社のスプートニク中国語版は2023年1月12日、ロ シア・マハリノと中国・琿春間の鉄道による貨物量が2022年には約350万トンとなり、前年比22%増を記録していると伝えた。 さらに、ロシア産石炭の輸出が急増しており、そのため、検問所を24時間体制にし、貨物列車も1日5本を増便させた』、中国人は極めて長期的視点で着々と併合に向けた準備を進めているようだ。 「北朝鮮に激怒し、へそを曲げた状態とされる中国は、今後どのような動きを見せるだろうか。 1つは、中国政府が今後も態度を硬化させて、中国を経由する外国人をも含めた人的往来の再開を無期限延期したままにする。 あるいは、振り上げた拳をそのままにして、拳を振り上げなかったことにし、ロシアがやっているようなことに合わせて人的往来、つまり、北朝鮮観光をあっさりと「許可」して再開させる可能性も十分にある」、どちらになるのだろう。 「万が一、ウクライナ戦争の行方次第でロシアが崩壊・分割されるような事態になれば、中国はどさくさに紛れて清朝が領土とみなしたこともないサハリンさえも取りに動くだろう。これは決して筆者の空想ではない。実際にこんな話題が、すでに東北3省の中国人実業家たちからはささやかれているのが現状だ」、「東北3省の中国人実業家たちからはささやかれている」というのには心底驚いた。
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インド(その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、グローバルサウスの盟主インド モディ首相に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も、ヒンドゥー教寺院でモディが始める宗教戦争) [世界情勢]

インドについては、(その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、グローバルサウスの盟主インド モディ首相に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も、ヒンドゥー教寺院でモディが始める宗教戦争)である。

先ずは、昨年6月7日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリストのさかい もとみ氏による「「今世紀最悪」の列車事故、インドの鉄道安全事情 近年は件数減少、だが新安全装置整備は進まず」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/677456
・『死者が300人近くに及ぶ今回の事故は、インドで今世紀に入ってから最大の列車事故とされる。これだけの規模の事故が起きれば、誰でもインドの鉄道の安全性に疑問を感じるに違いない。 英国の公共放送BBCは、インドにおける鉄道事故について、過去最悪の例は1981年6月、サイクロンの時に橋を渡っていた列車が川に転落し800人弱が亡くなったものだとしている。その後100人以上の死者を出した事故は3度起きており、直近では2016年11月に「インドール―パトナ・エクスプレス」という優等列車が脱線、150人近くが死亡する悲劇が起きている。 しかし、データによると事故は減少傾向にあり、2016年以降はこのような大事故は起きていなかった。安全性の指標となる100万列車キロ当たりの事故件数は、2013年度の0.10件から2021年度には0.03件に減少。2017年度から5年間の安全基金(総額1兆ルピー=約1兆6990億円)を設けたことが安全指標の改善につながったため、5年間延長のうえさらに4500億ルピー(約7645億円)の資金が投入されている』、「データによると事故は減少傾向にあり、2016年以降はこのような大事故は起きていなかった・・・2017年度から5年間の安全基金(総額1兆ルピー=約1兆6990億円)を設けたことが安全指標の改善につながったため、5年間延長のうえさらに4500億ルピー(約7645億円)の資金が投入されている」、なるほど。
・『路線延長世界4位の「国民の足」  国連人口基金(UNFPA)の推計によると、インドの人口は今年14億2860万人となり、中国を抜いて世界一になる見通しだ。人々の重要な足として鉄道のシェアは大きい。 約6万8000kmに及ぶ路線の総延長はアメリカ・中国・ロシアに次いで世界第4位。そのうち、5万9000km余りが交流25kV・50Hzで電化されている。2020年の旅客輸送実績は80億8600万人。長距離列車と近郊列車を加えた旅客列車は1日当たり1万3000本が運行されている。国内の駅数は7325カ所に及ぶ。 歴史的にみると、インドはアジアで最初に鉄道が導入された国だ。イギリスで旅客輸送が始まった1825年から間もない1830年代には、すでに道路やダムの建設に使う資材運搬用の鉄道が敷設されていた歴史もある。 軌間(線路の幅)は長らく複数が混在していたが、現在はほとんどが1676mmの広軌に統一されている。これは新幹線などの標準軌(1435mm)よりもさらに200mm余り広い。当時、インド総督の任にあったダルハウジー卿が「広いほうが望ましい」と言ったことから広軌で敷かれたという。) 経済発展著しいインドでは、人々の往来需要も年々拡大している。そんな中、主要都市を結ぶ昼行電車特急「バンデバラト(Vande Bharat)・エクスプレス」が2019年に登場した。普通車と1等車からなる16両編成で、車内にはUSB電源やWi-Fiも装備している。これまでに18区間に導入されており、テスト中に最高時速180kmまで出した記録もある。 だが、線路の許容速度と運行上の制約から、デリー―ボパール間のみは時速160kmで走れるものの、その他の区間は時速110~130km運行に制限されている。さらなる高速化が期待されるが、従来型の優等列車(エクスプレスまたはメール)の平均時速は50.6km、近郊電車は同37.5km、普通列車は同33.5kmだという。インドの既存客車列車の速度からすれば、圧倒的に速いと言っていいだろう。 インドでは現在、高速鉄道のプロジェクトも進んでいる。最も先行しているのは、西部の商業都市ムンバイ(旧ボンベイ)とその北にあるアーメダバードとを結ぶ路線で、日本の新幹線システムが導入される予定だ』、2017年度から5年間の安全基金(総額1兆ルピー=約1兆6990億円)を設けたことが安全指標の改善につながったため、5年間延長のうえさらに4500億ルピー(約7645億円)の資金が投入されている』、「主要都市を結ぶ昼行電車特急「バンデバラト・・・エクスプレス」、「デリー―ボパール間のみは時速160kmで走れるものの、その他の区間は時速110~130km運行に制限されている。さらなる高速化が期待されるが、従来型の優等列車・・・の平均時速は50.6km、近郊電車は同37.5km、普通列車は同33.5kmだという。インドの既存客車列車の速度からすれば、圧倒的に速い」、なるほど。
・『保安装置の導入前倒しなるか  そのような発展が進む一方で発生した今回の大惨事を受け、インドでは鉄道の安全対策についての議論が高まっている。 インドの鉄道では、運行本数の多い区間に欧州の信号保安システムETCSレベル2水準とされる「Kavach」と称する安全システムの導入を進めている。これはインド国鉄が産業界と共同で開発した”最先端のシステム”とされ、運転士が速度制限を守らなかった場合、自動的にブレーキをかけたり、列車が接近しすぎた場合に衝突を防止したりするものだ。 ただ整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる。Kavachシステムの整備はモディ政権が掲げた「自立したインド」の一環として行われているが、今回事故が起きた路線には「Kavachシステムはない」(鉄道省広報官)という。大事故を教訓に導入計画が前倒しで進められる可能性も高まっているが、はたしてどうなるだろうか。 安全設備の整備はまだ発展途上にあるようだが、事故件数は減少傾向にあっただけに、1000人を超える死傷者を出す事故が起きてしまったのは残念だ。 ある日本人駐在者は「事故翌日に開催された現地団体の集まりで犠牲者に対して黙祷を捧げた」といい、「事故に関する報道は盛んだが、原因分析に関する報道姿勢は思った以上に慎重。第一報ではコロマンデル・エクスプレスの脱線原因は不明とした上で、考えられる仮説を取り上げており、インドメディアは信頼できるかも、と改めて感じた」と話していた。 モディ首相は事故発生翌日の3日、現場へ急行。直ちに「責任のある者に厳罰を与える」と強く述べた。再発防止のための原因究明は欠かせない。これ以上の悲劇を起こさぬために、最善の対応を望みたいものだ』、「運行本数の多い区間に欧州の信号保安システムETCSレベル2水準とされる「Kavach」と称する安全システムの導入を進めている。これはインド国鉄が産業界と共同で開発した”最先端のシステム”とされ、運転士が速度制限を守らなかった場合、自動的にブレーキをかけたり、列車が接近しすぎた場合に衝突を防止したりするものだ。 ただ整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる。Kavachシステムの整備はモディ政権が掲げた「自立したインド」の一環として行われているが、今回事故が起きた路線には「Kavachシステムはない」(鉄道省広報官)・・・整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる」、安全重視の鉄道整備を期待したい。

次に、昨年8月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した著述家/国際公共政策博士の山中俊之氏による「グローバルサウスの盟主インド、モディ首相に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327182
・『インドで7月末、半導体関連の国際会議が開かれ、モディ首相がインドへの投資を呼びかけた。米企業が約4億ドルの投資を発表するなど、グローバル企業のインドへの関心の高さは目立つ。経済や外交で豪腕を発揮するモディ首相とは、どんな人物か。政治家として“死角”はないのか』、興味深そうだ。
・『下位カーストから上り詰めたモディ首相 朝5時起床の「超ハードワーカー」  今、世界で最も注目を集める政治家といえば、インドのモディ首相だろう。インドは2023年、人口が14億2577万人に達し、中国を抜いて世界一の人口になる見込み。大国の指導者として、欧米の西側諸国とも、中国やロシアとも絶妙な距離感を取っている。その手腕は、世界史上においてもまれなことだと注目されている。 モディ首相とはいったい、どんな人物なのだろうか。1950年生まれで今年73歳になるが、朝5時に起床して働き続ける「超ハードワーカー」だという。 モディ首相は、「ガーンチ」という下位カーストの出身といわれる。ガーンチは植物油の圧搾・販売を生業とするカーストだ。ダリット(不可触民)ではないが、差別の対象となることもある。 インドでは、依然としてカーストによる差別が実態としては存在する(憲法では禁止されている)。婚活アプリには、民族・言語の他にカーストを記入する欄もあるくらいだ。モディ氏もこれまで差別や偏見にさらされた経験は、一度や二度ではないだろう。 そのような逆境にもめげず、6歳から家業であるチャイ売りを手伝い始めたモディ氏。若くしてヒンズー至上主義組織に入り、雑用から始めて徐々に頭角を現した。その後、インド人民党に入党すると37歳で出身地であるグジャラート州議会議員、51歳でグジャラート州首相に就任。そして、グジャラート州首相の実績が評価され、総選挙を経て14年に63歳でインド首相に上り詰めた。 こうした出自と経歴もあって、貧民層からの支持は厚い。演説にも定評があり、一般大衆の前に出れば、ロックスター並みの大歓声で迎えられることも。また、ツイッター(現X)のフォロワーは7000万人を超える。 インド国内では絶大な人気を誇るモディ首相。それでは、外交の舞台で各国首脳を翻弄する手腕についてはどうだろうか。また、政治家として“死角”はないのか』、「「ガーンチ」という下位カーストの出身・・・6歳から家業であるチャイ売りを手伝い始めたモディ氏。若くしてヒンズー至上主義組織に入り、雑用から始めて徐々に頭角を現した。その後、インド人民党に入党すると37歳で出身地であるグジャラート州議会議員、51歳でグジャラート州首相に就任。そして、グジャラート州首相の実績が評価され、総選挙を経て14年に63歳でインド首相に上り詰めた」、並外れた実力があったのだろう。
・『世界の舞台で各国首脳を翻弄 「カメレオン外交」の巧妙  貧困層から身を起こし、首相として多様な民族・宗教で構成されるインドを統率してきた豪腕は、外交面でもいかんなく発揮されている。 ロシアのウクライナ侵攻や、米中対立の激化もある中で、モディ首相の国際政治における立ち位置はさらに際立っている。米国など西側諸国とも、ロシアなど反西側諸国とも、したたかに付き合っていく外交姿勢である。 一例として22年9月、ロシアのプーチン大統領と対面で会談したときのこと。インドは、ロシアから大量の武器を購入するなどロシアとの関係は昔から親密だ。ウクライナ侵攻後もロシアから原油を安価で輸入し続けていて、その量は増えるばかり。 しかし、この会談でモディ首相はプーチン大統領に対して、ウクライナ情勢を巡り「今は戦争の時代ではないと思う」などと、率直な懸念を伝えた。プーチン大統領としては、味方だと思っていたモディ首相から厳しい言葉を突き付けられた形だ。 武器と原油の重要供給国の首脳に対して、こうした言動ができるのも、モディ首相ならではといえるだろう。 別の例として23年1月、インド政府はオンライン会合で「グローバルサウスの声サミット」を主催した。グローバルサウスに明確な定義はないが、東南アジアやアフリカ、中南米などの新興国や途上国を指すのが一般的。同会合は最終的に125カ国が参加する規模となった(一部参加も含む。なお、中国は招待されていないとみられている)。まさにインドはグローバルサウスの盟主としての立場を確立しようとしている。 また、5月に広島で開催されたG7サミットにおいては、インドは招待国として参加した。G7サミットは今や、反ロシア・反中国の牙城と化している。この期間中、ウクライナのゼレンスキー大統領からモディ首相に要請があり、広島で会談した。ロシアとも対話のチャンネルを持つインドに対して、ウクライナ側から会談の要請をしたこと自体が、今日のインドの国際政治上の影響力を物語っている。  続く6月、モディ首相は米国を訪問。米議会の上下両院合同会議で演説した。このことは、英国のチャーチル元首相や南アフリカのマンデラ元大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領と並び、数少ない外国首脳の一人となった。演説後、米バイデン大統領夫妻は、モディ首相好みのベジタリアン料理で心づくしの歓待ぶりを見せてもいる。 こうしたモディ首相の外交はまるでカメレオンのようで、西側諸国にも、中国・ロシア側にも、時と場合によって顔を変えることで、譲歩を引き出すことに成功している。現状、「二兎を追う者は一兎をも得ず」が当てはまらず、“二兎を追う者は二兎を得る”状態。世界の首脳が、モディ首相に翻弄(ほんろう)されているといっても過言ではない』、「米国など西側諸国とも、ロシアなど反西側諸国とも、したたかに付き合っていく外交姿勢・・・モディ首相はプーチン大統領に対して、ウクライナ情勢を巡り「今は戦争の時代ではないと思う」などと、率直な懸念を伝えた。プーチン大統領としては、味方だと思っていたモディ首相から厳しい言葉を突き付けられた形だ・・・グローバルサウスに明確な定義はないが、東南アジアやアフリカ、中南米などの新興国や途上国を指す・・・同会合は最終的に125カ国が参加する規模となった・・・グローバルサウスの盟主としての立場を確立」、外交は見事だ。
・『イスラム教徒や少数派に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も  さて、巧みな外交の陰で、モディ首相の強権ぶりやインドの人権問題も取り沙汰されている。 「モディ首相が世界で注目を集めているのは、世界の人々がインドの実態を知らないからだ」――。筆者の友人であるインド人経営者はこう言い放っていた。どうやら、モディ首相に我慢がならないようだ。 例えばインド軍は、イスラム教徒が多いカシミール地方において、過剰な拘束や拷問を行っていると指摘されている(アムネスティ・インターナショナル)。 また、インド政府は、移民への市民権授与に関して、イスラム教徒を除外するなど差別的な対応を取っているとも。加えて、ジャーナリストや人権活動家への弾圧も問題視されている。 先の筆者の友人はヒンズー教徒であるが、モディ首相のイスラム教徒への仕打ちには目に余るものがあると憤っていた。 こうした状況に対して、米国務省は人権と宗教の自由に関する報告書で、インドにおけるイスラム教徒やダリット、キリスト教徒など少数派の待遇について懸念を表明している。 世界最大の民主主義国と言われるインド。モディ首相の動向は、光と陰の両面で見ていくことが重要だ』、「インド軍は、イスラム教徒が多いカシミール地方において、過剰な拘束や拷問を行っていると指摘・・・移民への市民権授与に関して、イスラム教徒を除外するなど差別的な対応を取っているとも。加えて、ジャーナリストや人権活動家への弾圧も問題視されている・・・モディ首相の動向は、光と陰の両面で見ていくことが重要だ」、その通りだ。

第三に、本年1月23日付けNewsweek日本版が掲載した米ウッドロー・ウィルソン国際研究センター南アジア研究所長のマイケル・クーゲルマン氏による「ヒンドゥー教寺院でモディが始める宗教戦争」を紹介しよう。
・『<破壊されたモスクの跡地に建てられたヒンドゥー教徒の新たな聖地が対立をあおる> インド北部の古都アヨディヤ。古代の英雄ラーマ王子の生誕の地として知られる一方で、中世にはイスラム王朝の支配下にあったこの地が、いま再びインドにおける宗教対立の火種となろうとしている。 発端は、1月22日にナレンドラ・モディ首相を迎えて盛大な建立式典が行われるヒンドゥー教寺院だ。このラム寺院が建設された場所には、1992年にヒンドゥー教過激派に破壊されるまで、約500年にわたりモスク(イスラム礼拝所)があった。 【動画】ラム寺院の建立式典を訪れたナレンドラ・モディ首相) 寺院建設の中心となったヒンドゥー至上主義組織「世界ヒンドゥー評議会(VHP)」の広報担当者シャラド・シャルマは、ラム寺院が「世界のヒンドゥー教徒にとって最大の聖地になる。われわれにとってのバチカン(カトリック教会の総本山)だ」と語った。 大論争を巻き起こす過激な措置を打ち出しては、反対意見に耳を貸さずに「公約実現」を貫き、与党・インド人民党(BJP)の支持者を満足させる──。これはモディが首相として過去10年間やってきたアプローチそのものだ。 インド最高裁判所は2019年、アヨディヤで破壊されたバブリ・モスクの跡地を事実上政府の管轄とする判決を下して、ラム寺院建設に道を開いた。同時に裁判所は、目立つ場所にモスク再建の手配をするよう行政に促した。 ところが地元当局が提案した再建場所は、バブリ・モスクがあった場所から約25キロも離れた僻地だった。資金的な支援もないため、建設工事は始まってもいない』、「このラム寺院が建設された場所には、1992年にヒンドゥー教過激派に破壊されるまで、約500年にわたりモスク(イスラム礼拝所)があった・・・寺院建設の中心となったヒンドゥー至上主義組織「世界ヒンドゥー評議会(VHP)」の広報担当者シャラド・シャルマは、ラム寺院が「世界のヒンドゥー教徒にとって最大の聖地になる。われわれにとってのバチカン(カトリック教会の総本山)だ」と語った」、何と思い上がった発言だろう。宗教戦争を回避するためにも、宗教指導者の過激な発言を抑制させるような試みが必要だ。「バブリ・モスク」の「再建」に当たっては、国からの何らかの形での財政支援も必要だし、場所も便利なところにするべきだろう。
・『政教分離の慣例はどこへ  アヨディヤがあるウッタルプラデシュ州は、インドで最も人口が多い州で、モディの盟友ヨギ・アディティアナートが州首相を務める。ラム寺院は「文化、精神、社会の一致」の象徴になるとアディティアナートは言うが、実際には不一致を悪化させそうだ。 モディはこれまでにも現代インドの政教分離の慣例を破り、あからさまなヒンドゥー至上主義的な政策を取ってきた。その第一歩が、19年のカシミールの自治権剝奪だった。さらに同年の改正国籍法では、アフガニスタンやバングラデシュなどからの避難民に市民権を付与するが、「イスラム教徒でないこと」を条件とするなど、イスラム教徒排除を明確にしてきた。) そして今、BJPが長年にわたり推し進めてきたラム寺院が建設された。厳密には完成していないのに建立式典が開かれた背景には、4月の総選挙に向けて熱狂的なヒンドゥー教徒にアピールしたいという意欲が見え隠れする。 その一方で、アヨディヤに来たモディは、インフラ整備計画を発表したり、ラーマ王子伝説と結び付けて貧困層救済を語るなど、「穏健なヒンドゥー至上主義」を示して支持基盤の拡大にも精を出した。 BJPは今度の選挙でも圧勝して、モディが首相として3期目を決めるのは確実とみられている。それでもモディは、「支持者を勢いづけ、批判派を怒らせる」ことで選挙に勝つという、試行錯誤の末に確立した成功戦術を今回も着実に踏襲している』、「モディは、「支持者を勢いづけ、批判派を怒らせる」ことで選挙に勝つという、試行錯誤の末に確立した成功戦術を今回も着実に踏襲している」、これは多民族・多宗教国家のインドにとって、極めて危険な賭けである。現在では弱体化した国民会議派は、政治的には宗教に中立を保っていた筈だ。ただ、モディ氏に「成功戦略」を変えさせ、政治的には宗教に中立を保たせるインセンティブが見当たらないのは、致命的だ。残念ながら、上手い処方箋を思いつかない。 
タグ:インド (その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、グローバルサウスの盟主インド モディ首相に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も、ヒンドゥー教寺院でモディが始める宗教戦争) 東洋経済オンライン さかい もとみ氏による「「今世紀最悪」の列車事故、インドの鉄道安全事情 近年は件数減少、だが新安全装置整備は進まず」 「データによると事故は減少傾向にあり、2016年以降はこのような大事故は起きていなかった・・・2017年度から5年間の安全基金(総額1兆ルピー=約1兆6990億円)を設けたことが安全指標の改善につながったため、5年間延長のうえさらに4500億ルピー(約7645億円)の資金が投入されている」、なるほど。 「主要都市を結ぶ昼行電車特急「バンデバラト・・・エクスプレス」、「デリー―ボパール間のみは時速160kmで走れるものの、その他の区間は時速110~130km運行に制限されている。さらなる高速化が期待されるが、従来型の優等列車・・・の平均時速は50.6km、近郊電車は同37.5km、普通列車は同33.5kmだという。インドの既存客車列車の速度からすれば、圧倒的に速い」、なるほど。 「運行本数の多い区間に欧州の信号保安システムETCSレベル2水準とされる「Kavach」と称する安全システムの導入を進めている。これはインド国鉄が産業界と共同で開発した”最先端のシステム”とされ、運転士が速度制限を守らなかった場合、自動的にブレーキをかけたり、列車が接近しすぎた場合に衝突を防止したりするものだ。 ただ整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる。Kavachシステムの整備はモディ政権が掲げた「自立したインド」の一環として行われているが、今回事故が起きた路線には「Kavachシステムはない」(鉄道省広報官)・・・整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる」、安全重視の鉄道整備を期待したい。 ダイヤモンド・オンライン 山中俊之氏による「グローバルサウスの盟主インド、モディ首相に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も」 「「ガーンチ」という下位カーストの出身・・・6歳から家業であるチャイ売りを手伝い始めたモディ氏。若くしてヒンズー至上主義組織に入り、雑用から始めて徐々に頭角を現した。その後、インド人民党に入党すると37歳で出身地であるグジャラート州議会議員、51歳でグジャラート州首相に就任。そして、グジャラート州首相の実績が評価され、総選挙を経て14年に63歳でインド首相に上り詰めた」、並外れた実力があったのだろう。 「米国など西側諸国とも、ロシアなど反西側諸国とも、したたかに付き合っていく外交姿勢・・・モディ首相はプーチン大統領に対して、ウクライナ情勢を巡り「今は戦争の時代ではないと思う」などと、率直な懸念を伝えた。プーチン大統領としては、味方だと思っていたモディ首相から厳しい言葉を突き付けられた形だ・・・グローバルサウスに明確な定義はないが、東南アジアやアフリカ、中南米などの新興国や途上国を指す・・・ 同会合は最終的に125カ国が参加する規模となった・・・グローバルサウスの盟主としての立場を確立」、外交は見事だ。 「インド軍は、イスラム教徒が多いカシミール地方において、過剰な拘束や拷問を行っていると指摘・・・移民への市民権授与に関して、イスラム教徒を除外するなど差別的な対応を取っているとも。加えて、ジャーナリストや人権活動家への弾圧も問題視されている・・・モディ首相の動向は、光と陰の両面で見ていくことが重要だ」、その通りだ。 Newsweek日本版 マイケル・クーゲルマン氏による「ヒンドゥー教寺院でモディが始める宗教戦争」 「このラム寺院が建設された場所には、1992年にヒンドゥー教過激派に破壊されるまで、約500年にわたりモスク(イスラム礼拝所)があった・・・寺院建設の中心となったヒンドゥー至上主義組織「世界ヒンドゥー評議会(VHP)」の広報担当者シャラド・シャルマは、ラム寺院が「世界のヒンドゥー教徒にとって最大の聖地になる。われわれにとってのバチカン(カトリック教会の総本山)だ」と語った」、何と思い上がった発言だろう。宗教戦争を回避するためにも、宗教指導者の過激な発言を抑制させるような試みが必要だ。 「バブリ・モスク」の「再建」に当たっては、国からの何らかの形での財政支援も必要だし、場所も便利なところにするべきだろう。 「モディは、「支持者を勢いづけ、批判派を怒らせる」ことで選挙に勝つという、試行錯誤の末に確立した成功戦術を今回も着実に踏襲している」、これは多民族・多宗教国家のインドにとって、極めて危険な賭けである。現在では弱体化した国民会議派は、政治的には宗教に中立を保っていた筈だ。 ただ、モディ氏に「成功戦略」を変えさせ、政治的には宗教に中立を保たせるインセンティブが見当たらないのは、致命的だ。残念ながら、上手い処方箋を思いつかない。
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トランプ(その50)(「もしトラ」でガザ・ウクライナは見殺し?韓国も危機?トランプ再選リスク検証【池上彰・増田ユリヤ】、トランプ復活ほぼ確実?「もしトラ」で日本が襲われる3つの悪夢とは) [世界情勢]

トランプについては、2020年10月21日に取上げた。今日は、(その50)(「もしトラ」でガザ・ウクライナは見殺し?韓国も危機?トランプ再選リスク検証【池上彰・増田ユリヤ】、トランプ復活ほぼ確実?「もしトラ」で日本が襲われる3つの悪夢とは)である。

先ずは、本年1月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏と増田ユリヤ氏による「「もしトラ」でガザ・ウクライナは見殺し?韓国も危機?トランプ再選リスク検証【池上彰・増田ユリヤ】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337726
・『ウクライナ戦争に続いてガザ紛争が起こり、国際情勢は混迷を極めているが、2024年はどんな年になるのか。ジャーナリストの池上彰氏と増田ユリヤ氏に聞いた』、興味深そうだ。
・『トランプ氏の大統領返り咲きで最も打撃を受けるのはパレスチナ  増田 ロシアによるウクライナ侵攻は間もなく開始から2年目に突入し、イスラエルとハマスの争いも、3カ月目に入りました。2024年はどのような年になるでしょうか。 池上 何と言っても注目は「もしトラ」でしょう。「もしトラ」は、24年11月の米大統領選挙で「もしトランプ前大統領が再び大統領に返り咲いたら」を略した言葉です。 増田 「もしドラ」(岩崎夏海著『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』の略称)をもじったものですね。 池上 はい。米国政治は国際情勢の全てに影響を及ぼしますから、24年を占う上で米大統領選の動向は外せません。 増田 このまま「もしトラ」が実現したら、最も打撃を受けるのはパレスチナ。在職中に在イスラエル米大使館をエルサレムに移したトランプ氏ですから、情勢の悪化は避けられません。そもそもバイデン政権でも、イスラエルを制止することはできていませんが。 池上 イスラエル政府とパレスチナ当局は23年11月下旬、戦闘を7日間休止しました。それも程なく再開され、ガザ地区の被害は拡大する一方です。12月8日には国連安全保障理事会で即時停戦案の採決があり、15の理事国のうち日本やフランスなど13カ国が賛成したにもかかわらず、米国が拒否権を発動し、否決されました。 増田 ましてやトランプ政権が実現したら、一体どうなるのか……。 池上 イスラエルの動向は、米国国内のユダヤ人たちの意向にも影響を与えます。米国のユダヤ人は、国内の政局に大きな影響力を持っており、民主党であれ共和党であれ、献金や票で力を持つユダヤ人社会を無視することはできません。これまで何度も米大統領選挙を取材しましたが、民主党と共和党、どちらの大会でも「われわれはイスラエルと共にある」という旗が掲げられたり、缶バッジが売られたりしています。 増田 ただ今回は、米国国内も一枚岩ではありません』、「「民主党と共和党、どちらの大会でも「われわれはイスラエルと共にある」という旗が掲げられたり、缶バッジが売られたりしています」、なるほど。
・『即時停戦を支持する若者がバイデン不支持でトランプがリード  池上 米大統領選候補の支持率で見ると、ハマスとイスラエルの軍事衝突が起きる前はバイデン氏がわずかながらトランプ氏をリードしていました。しかしその後、民主党ではイスラエル支持派と即時停戦派で割れたため、イスラエル寄りの立場を示すバイデン氏の支持は、特に若い世代の間で低下しています。パレスチナ情勢の悪化で、トランプ氏が僅差ながらバイデン氏をリードする事態になりました。 増田 即時停戦を支持する若者の反応は、パレスチナを見殺しにするなという、当然の反発ですよね。しかしそれがバイデン氏の支持率をそぎ、結果的にトランプ氏が浮上するというのは何とも皮肉です。 イスラエル当局は「ハマス殲滅」を大義名分に、一般市民も大量に殺害しています。市民を「人間の盾」にしているのはハマスであり、悪いのはハマスである、だからハマスを殲滅するまで攻撃をやめないというのがイスラエルの論理です。 池上 イスラエル軍のコンリクス報道官が、ガザでハマスの戦闘員1人につき約2人の民間人が死亡したことに対して「(テロリストとの市街戦としては)非常に良い割合だ」と発言して物議を醸しているのは当然でしょう。 増田 米国在住のユダヤ人の中にもイスラエルのガザへの攻撃を非難し、即時停戦を求めてデモを行っている人もいます』、「民主党ではイスラエル支持派と即時停戦派で割れたため、イスラエル寄りの立場を示すバイデン氏の支持は、特に若い世代の間で低下しています。パレスチナ情勢の悪化で、トランプ氏が僅差ながらバイデン氏をリードする事態になりました・・・即時停戦を支持する若者の反応は、パレスチナを見殺しにするなという、当然の反発ですよね。しかしそれがバイデン氏の支持率をそぎ、結果的にトランプ氏が浮上するというのは何とも皮肉です」、なるほど。
・『「もしトラ」ならウクライナ、韓国、NATOに影響  池上 とはいえ、戦闘が長引くのはイスラエルにとっても打撃です。働き盛りの世代が兵士として動員されていますから、経済は足踏み状態に陥っている。そのためイスラエルにとっても「戦闘は5カ月が限度」という指摘もあります。 また、この事態を違った視点で見ているのがウクライナです。ここまで欧米、特に米国からの支援を受けて何とかロシアに抵抗してきましたが、イスラエルとパレスチナの争いに世界の目が向き、ウクライナに対する関心や支援の度合いが低下しつつあることに焦りの色をにじませています。その上、トランプ氏はウクライナ支援を打ち切ると公言しています。 それだけではなく、「もしトラ」なら、米国の経済的な負担を減らすためにNATO(北大西洋条約機構)から脱退し、在韓米軍も撤退させる可能性があります。トランプ氏は在任時に韓国への貿易赤字に不満を持ち、在韓米軍を撤退させようとしたところ、ポンペオ国務長官(当時)が「2期目の優先事項にしましょう」と言って止めたという逸話がありますから。 増田 一方、トランプ氏の対抗馬として急浮上しているのが現在唯一の女性候補である共和党のニッキー・ヘイリー氏。トランプ政権で国連大使を務めましたが、現在はトランプ路線と距離を置いています』、「イスラエルとパレスチナの争いに世界の目が向き、ウクライナに対する関心や支援の度合いが低下しつつあることに焦りの色をにじませています。その上、トランプ氏はウクライナ支援を打ち切ると公言しています。 それだけではなく、「もしトラ」なら、米国の経済的な負担を減らすためにNATO・・・から脱退し、在韓米軍も撤退させる可能性があります。トランプ氏は在任時に韓国への貿易赤字に不満を持ち、在韓米軍を撤退させようとしたところ、ポンペオ国務長官(当時)が「2期目の優先事項にしましょう」と言って止めたという逸話がありますから」、なるほど。
・『今年は各国で選挙がめじろ押し  池上 「このままでは一蓮托生になる」とみて、任期途中で辞任しましたね。当時から「いずれ大統領選に出るつもりなのかな」と思っていましたが、案の定でした。ただ、有力な対抗馬とはいえトランプ氏とは支持率に大きな開きがあり、「もしトラ」の可能性は決して低くはありません。 24年は米大統領選以外にも国際的に注目される選挙がめじろ押し。1月13日には台湾の総統選挙が行われ、米国との連携を強める民進党の頼清徳氏が勝利しましたが、3月にはロシアの大統領選挙が予定されています。プーチン大統領は再選されるでしょう。ロシアが一方的に併合したウクライナの各州でも選挙が行われます。 増田 そして11月には米大統領選。「もしトラ」ならウクライナもガザも見殺しにされる可能性が高い。不安ばかり募りますが、明るいニュースはないのでしょうか。 池上 あえて挙げれば24年7月にあるパリオリンピック・パラリンピックでしょうか。工事の遅れで開催が危ぶまれている25年の大阪万博とは違って、安心して楽しめるのではないかと期待しています』、「米大統領選。「もしトラ」ならウクライナもガザも見殺しにされる可能性が高い・・・明るいニュースは・・・あえて挙げれば24年7月にあるパリオリンピック・パラリンピック・・・安心して楽しめるのではないかと期待しています」、「ウクライナもガザも見殺し」とはいまから覚悟しておく必要がありそうだ。

次に、1月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「トランプ復活ほぼ確実?「もしトラ」で日本が襲われる3つの悪夢とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337837
・『「もしトランプ大統領が再登場したら?」を意味する“もしトラ”という言葉がはやっています。正直なところ、トランプ政権復活の可能性はかなり高いです。「ほぼ確実」と言えるでしょう。それでも、 “もしトラ”では絶対にダメです。実現した場合、2025年には日本企業にもマズいことが起きるからです』、「トランプ政権復活の可能性はかなり高いです。「ほぼ確実」と言えるでしょう。それでも、 “もしトラ”では絶対にダメです。実現した場合、2025年には日本企業にもマズいことが起きるからです」、なるほど。
・『トランプが共和党候補としてバイデンに勝つ!? 「もしトラ」は確実に起こる  トランプ前大統領が、共和党の大統領候補を選ぶ二つ目のイベントとなるニューハンプシャー州の予備選挙で再び勝利しました。 候補者の対抗馬はすでに元国連大使のヘイリー氏一人に絞られていて、かつ、ヘイリー氏が緒戦でトランプ候補にもし勝てるとしたら唯一のチャンスは今回のニューハンプシャー州だと言われていました。 ヘイリー氏はこれまでニューハンプシャー州の選挙戦に実質的に注力してきたのですが、結果としてはトランプ候補54%、ヘイリー候補43%と勝つことはできませんでした。 とはいえ、ヘイリー候補の43%は善戦と言えるでしょう。この後、2月24日にヘイリー氏の地元であるサウスカロライナ州の予備選挙では少なくとも1勝できるはずで、候補選びの趨勢(すうせい)が決まるといわれている3月5日のスーパーチューズデーまで、わずかながらチャンスが残っている状況です。 その前提で、未来予測の専門家として断定させていただくことが二つあります。一つ目に、共和党の候補者はトランプ候補でほぼ決まりでしょう。 ここまでは、他の識者の方々も意見は同じだと思います。重要なのは二つ目で、11月の大統領選挙の本選でも間違いなくトランプ候補が、民主党現職のバイデン大統領に勝つでしょう。 世の中では、かつてのベストセラーの「もしドラ」にひっかけて「もしトラ」という言葉がはやっています。「もしトランプ大統領が再登場したら?」を意味する言葉です。言葉としては面白いのですが、未来予測の立場で言えば「もしトラ」ではダメです。 「まず確実にトランプ新大統領が誕生する前提で、2025年には日本企業にはマズいことが起きるだろう」ということが、現時点で一番蓋然(がいぜん)性が高い未来です。 この記事では前半で「なぜトランプ新大統領の誕生が確実なのか」を解説したうえで、後半では「まずトラ」、つまりトランプ大統領で日本企業はどうマズいことになるのかを予測してみたいと思います』、「「まず確実にトランプ新大統領が誕生する前提で、2025年には日本企業にはマズいことが起きるだろう」ということが、現時点で一番蓋然(がいぜん)性が高い未来です」、なるほど。
・『健康不安、スキャンダル、戦争がなければ トランプ政権の復活はほぼ確実  アメリカの大統領選挙は4年に一度行われ、二大政党である民主党と共和党の大統領候補が一騎討ちの形で選挙を戦います。その選挙は50州それぞれに割り当てられている選挙人の数を勝った候補が総取りするという一風変わった間接選挙で行われます。そのため過去何回か、アメリカ全体の総得票数では多かった候補が敗れるという結果も起きています。 この独特の大統領選挙の仕組みは、50州それぞれが独立国家のような権利を有するという歴史的な経緯から生まれた制度なのですが、建国250年もたつとそれなりに制度疲労が起きています。 簡単に説明すると、50州のうち40州前後の州は選挙をする前から民主党候補が勝つか共和党候補が勝つかはほぼ決まっているのです。 ざっくり言えば、東海岸と西海岸では民主党が強く、中央部の州では共和党が強い傾向があります。金融とITの強い州では民主党が強く、工業と農業が盛んな州では共和党が強いと言ったほうがより正確かもしれません。 つまり、アメリカの大統領選挙は残る少数の「激戦区」でどちらの候補が勝つかでバイデン大統領が再選されるのか、トランプ候補が返り咲きをするかが決まる。これが「制度疲労」の正体です。 この制度疲労の欠陥があるせいで、2024年の大統領選挙は比較的予想がつきやすい状態になっています。簡単に言えば、今のところ激戦区においてバイデン大統領がトランプ候補よりも支持率を大きく下げているのです。 民主党としてはバイデン大統領以外の候補が出てきたほうが、本当はトランプ候補に勝てる可能性があるのですが、現職の大統領が選挙に出ると言っている以上、民主党で別の候補が出てくることが難しいのです。 これが、トランプ新大統領復活の可能性が高いという根拠です。私は7割方、この予測が当たると思っていますが、この予測が覆る可能性としての不測の要素は3つあります。 (1)高齢のバイデン大統領、トランプ候補のどちらかに健康不安が発生する (2)同じく大統領候補に選ばれる前に政治的に致命的なスキャンダルが発生する (3)アメリカが本格的な戦争に巻き込まれる どれもありうるシナリオですが、その確率を考えても「まずトランプだろう」というのが現時点での未来予測ということです。 では、ここからは「まず確実にトランプ新大統領が誕生するとしたら、それは日本企業にとって何がどうマズいのか?」を考えてみたいと思います。 トランプ新大統領が誕生すれば、基本的にバイデン現大統領の政策の多くが否定されることになります。 原理原則としては「米国第一主義」「保護主義」「同盟軽視」が基本姿勢になるでしょう。その前提でこの記事では、特に重要な以下の3点について述べてみたいと思います。 (1)ウクライナ紛争およびガザ紛争への影響 (2)地球温暖化の後退 (3)米中の分断』、「ざっくり言えば、東海岸と西海岸では民主党が強く、中央部の州では共和党が強い傾向があります。金融とITの強い州では民主党が強く、工業と農業が盛んな州では共和党が強いと言ったほうがより正確かもしれません。 つまり、アメリカの大統領選挙は残る少数の「激戦区」でどちらの候補が勝つかでバイデン大統領が再選されるのか、トランプ候補が返り咲きをするかが決まる・・・激戦区においてバイデン大統領がトランプ候補よりも支持率を大きく下げているのです。 民主党としてはバイデン大統領以外の候補が出てきたほうが、本当はトランプ候補に勝てる可能性があるのですが、現職の大統領が選挙に出ると言っている以上、民主党で別の候補が出てくることが難しいのです。 これが、トランプ新大統領復活の可能性が高いという根拠です」、なるほど。
・『トランプ政権が復活→ウクライナ紛争終結 軍事予算増で欧州経済は停滞   まず最初に、今年11月にトランプ大統領が誕生した場合、そこでウクライナ紛争が終わる可能性があります。理由はウクライナの弾切れです。 ウクライナはこの2年間、欧米からの支援を受けて敢然とロシアに対抗してきたのですが、直近ではヨーロッパからの弾薬が枯渇しつつあり、戦線も膠着(こうちゃく)状態です。 頼みの綱はアメリカからの弾薬の支援ですが、トランプ大統領はビジネスマンですから、金銭的に割に合わないウクライナへの支援は大幅に縮小する可能性があります。 そうなるとゼレンスキー大統領はどこかの時点で、現実的に和平を模索する必要が出てくるでしょう。クリミア紛争のときと同様に、ウクライナはまた領土の一部をロシアに奪われた形での紛争終結を受け入れざるをえなくなります。 いい面としては、日本を含めた西側諸国とロシアのビジネスが再開することですが、悪い問題として紛争終結が欧州経済に与える影響があります。簡単に言えばロシアに対抗するためのEUないしはNATOの軍事配備増強が必要になり、その負担で欧州の実態経済が悪化することをある程度想定しておく必要があります。 一つわかりやすい例を挙げておきますと、2023年にドイツ経済がマイナス成長になったという事実があります。その主要な理由がドイツの法律にあります。政府の支出が大きくならないようにルールが決められていて、日本政府のようにじゃぶじゃぶと政策的な支出を増やすことができないのです。 日本は10年前の日銀の異次元緩和以降、逆に政治家がどんどん支出を増やしてプライマリーバランスが悪化していることが問題なのですが、それはまた別の問題として、ドイツおよびEUはどこかで政府予算を増やしたら、どこかを削らなければいけない。 つまり軍事予算が増える分、経済への支出が減り、結果として欧州経済が停滞する。これは欧州とのビジネスがある日本企業には大きなリスクになります。 ウクライナ紛争終結の問題はこれだけではありませんが、とにかく戦争終結で世の中の前提が大きく変わるというのが“まずトラ”(まず確実にトランプ新大統領が誕生する場合)で起こる最初の問題です』、「ドイツおよびEUはどこかで政府予算を増やしたら、どこかを削らなければいけない。 つまり軍事予算が増える分、経済への支出が減り、結果として欧州経済が停滞する。これは欧州とのビジネスがある日本企業には大きなリスクになります」、「ドイツやEU」にそんな厳しい財政ルールがあるとは初めて知った。
・『アメリカがパリ協定から離脱→日本の脱炭素投資が遅れ国際競争力ダウン  二番目が、アメリカが地球温暖化を抑止するパリ協定の枠組みから、また離脱するリスクです。これはEV(電気自動車)で出遅れている日本企業にとっては朗報だという側面はあるでしょう。しかし私はその影響が多岐にわたることで、事態はそれほど簡単ではないと捉えています。 悪い方の影響は二つあって、一つは日本企業がアメリカと協調して行ってきた脱炭素投資がはしごを外される危険性です。これはバイデン政権下で日本の自動車メーカーが投資をしてきたアメリカのEVと認められるための投資が無駄になるといった事柄がわかりやすい具体例でしょう。 もう一つは、このタイミングでアメリカとそれに追随する日本が脱炭素投資を緩めてしまうことで、2020年代後半に逆に日本に求められる脱炭素のハードルが大きく上がってしまうことです。ひとことで言えば、遅れが大きくなって国際競争力を下げてしまうリスクといえます』、「アメリカが地球温暖化を抑止するパリ協定の枠組みから、また離脱するリスクです。これはEV(電気自動車)で出遅れている日本企業にとっては朗報だという側面はあるでしょう。しかし私はその影響が多岐にわたることで、事態はそれほど簡単ではないと捉えています。 悪い方の影響は二つあって、一つは日本企業がアメリカと協調して行ってきた脱炭素投資がはしごを外される危険性です・・・もう一つは、このタイミングでアメリカとそれに追随する日本が脱炭素投資を緩めてしまうことで、2020年代後半に逆に日本に求められる脱炭素のハードルが大きく上がってしまうことです」、なるほど。
・『地政学リスクが大きくなり紛争リスクも本格化  三番目が、中国とアメリカのデカップリング(分断)です。これも現時点では熊本や千歳に半導体工場が建設されるなど日本経済にプラスの要素はあるのですが、当然のことながら日本経済の重要な取引先である中国市場との関係が悪化するのは、マイナス要因の方が大きいわけです。 悪いことに、今年から来年にかけて中国経済は不動産バブル崩壊の影響で非常に苦しい状況に陥ると予測されています。最悪の時期であるがゆえにトランプ新大統領は自信をもって中国たたきに出る可能性が高くなります。 その反作用で仮にグローバルサウスが中国寄りに動いたとしたら、日本がアメリカに追随することで日本は中国市場だけでなく、グローバルサウス市場でも立ち回りにくくなるという事態も想定しなければいけないでしょう。 そしてこれらのリスクを組み合わせると、四番目のリスクが浮かび上がります。トランプ新大統領誕生で、地政学リスクははるかに大きくなるのです。 これらの三つの変化によって、国同士の力関係が変化するのもリスクですが、それに加えて新たに高まる別の紛争リスクを考える必要が出てきます。 わかりやすい例を一つ挙げれば、イスラエルとアメリカの関係性が変わることで、イランをはじめとする中東諸国がイスラエルとハマス(あるいはパレスチナ)との戦争に参戦しやすくなる可能性があります。当然のことながら、もしそうなれば新たな中東戦争が勃発し、新たなオイルショックが起きる危険性が高まります』、「イスラエルとアメリカの関係性が変わることで、イランをはじめとする中東諸国がイスラエルとハマス(あるいはパレスチナ)との戦争に参戦しやすくなる可能性があります。当然のことながら、もしそうなれば新たな中東戦争が勃発し、新たなオイルショックが起きる危険性が高まります」、これは大変だ。
・『日本は「もしトラ」ではなく「まずトラ」を真剣に考えるべきだ  全体を総括すると、こういう話になります。トランプ新大統領が誕生する確率は高く、その結果、ロシア、欧州、中国、グローバルサウスそれぞれとアメリカとの関係性が大きく変わることになるでしょう。 日本政府はある程度、アメリカに追随するでしょうから、それぞれの国でビジネスを行う日本企業にとっては逆風も吹くわけです。 もちろんトランプ新大統領のアメリカ第一主義、保護主義、分断主義の恩恵をストレートに受けられる日本企業もあるとは思います。しかし状況がそれほど単純ではない日本企業の場合、今年の秋までに、自社にどのような悪影響が起きるのか、きちんとあぶり出したうえで、対策を考えておく必要があります。 その意味で「もしトラ」などと口にしているのは危険です。「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められているのです』、「トランプ新大統領が誕生する確率は高く、その結果、ロシア、欧州、中国、グローバルサウスそれぞれとアメリカとの関係性が大きく変わることになるでしょう。 日本政府はある程度、アメリカに追随するでしょうから、それぞれの国でビジネスを行う日本企業にとっては逆風も吹くわけです・・・「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められているのです」、「日本企業」にとって「「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められている」、準備はずいぶん大変そうだ。 
タグ:「イスラエルとパレスチナの争いに世界の目が向き、ウクライナに対する関心や支援の度合いが低下しつつあることに焦りの色をにじませています。その上、トランプ氏はウクライナ支援を打ち切ると公言しています。 それだけではなく、「もしトラ」なら、米国の経済的な負担を減らすためにNATO・・・から脱退し、在韓米軍も撤退させる可能性があります。 「民主党ではイスラエル支持派と即時停戦派で割れたため、イスラエル寄りの立場を示すバイデン氏の支持は、特に若い世代の間で低下しています。パレスチナ情勢の悪化で、トランプ氏が僅差ながらバイデン氏をリードする事態になりました・・・即時停戦を支持する若者の反応は、パレスチナを見殺しにするなという、当然の反発ですよね。しかしそれがバイデン氏の支持率をそぎ、結果的にトランプ氏が浮上するというのは何とも皮肉です」、なるほど。 「「民主党と共和党、どちらの大会でも「われわれはイスラエルと共にある」という旗が掲げられたり、缶バッジが売られたりしています」、なるほど。 池上 彰氏と増田ユリヤ氏による「「もしトラ」でガザ・ウクライナは見殺し?韓国も危機?トランプ再選リスク検証【池上彰・増田ユリヤ】」 ダイヤモンド・オンライン (その50)(「もしトラ」でガザ・ウクライナは見殺し?韓国も危機?トランプ再選リスク検証【池上彰・増田ユリヤ】、トランプ復活ほぼ確実?「もしトラ」で日本が襲われる3つの悪夢とは) トランプ 「日本企業」にとって「「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められている」、準備はずいぶん大変そうだ。 「トランプ新大統領が誕生する確率は高く、その結果、ロシア、欧州、中国、グローバルサウスそれぞれとアメリカとの関係性が大きく変わることになるでしょう。 日本政府はある程度、アメリカに追随するでしょうから、それぞれの国でビジネスを行う日本企業にとっては逆風も吹くわけです・・・「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められているのです」、 「イスラエルとアメリカの関係性が変わることで、イランをはじめとする中東諸国がイスラエルとハマス(あるいはパレスチナ)との戦争に参戦しやすくなる可能性があります。当然のことながら、もしそうなれば新たな中東戦争が勃発し、新たなオイルショックが起きる危険性が高まります」、これは大変だ。 大きく上がってしまうことです」、なるほど。 「アメリカが地球温暖化を抑止するパリ協定の枠組みから、また離脱するリスクです。これはEV(電気自動車)で出遅れている日本企業にとっては朗報だという側面はあるでしょう。しかし私はその影響が多岐にわたることで、事態はそれほど簡単ではないと捉えています。 悪い方の影響は二つあって、一つは日本企業がアメリカと協調して行ってきた脱炭素投資がはしごを外される危険性です・・・もう一つは、このタイミングでアメリカとそれに追随する日本が脱炭素投資を緩めてしまうことで、2020年代後半に逆に日本に求められる脱炭素のハードルが 「ドイツおよびEUはどこかで政府予算を増やしたら、どこかを削らなければいけない。 つまり軍事予算が増える分、経済への支出が減り、結果として欧州経済が停滞する。これは欧州とのビジネスがある日本企業には大きなリスクになります」、「ドイツやEU」にそんな厳しい財政ルールがあるとは初めて知った。 激戦区においてバイデン大統領がトランプ候補よりも支持率を大きく下げているのです。 民主党としてはバイデン大統領以外の候補が出てきたほうが、本当はトランプ候補に勝てる可能性があるのですが、現職の大統領が選挙に出ると言っている以上、民主党で別の候補が出てくることが難しいのです。 これが、トランプ新大統領復活の可能性が高いという根拠です」、なるほど。 「ざっくり言えば、東海岸と西海岸では民主党が強く、中央部の州では共和党が強い傾向があります。金融とITの強い州では民主党が強く、工業と農業が盛んな州では共和党が強いと言ったほうがより正確かもしれません。 つまり、アメリカの大統領選挙は残る少数の「激戦区」でどちらの候補が勝つかでバイデン大統領が再選されるのか、トランプ候補が返り咲きをするかが決まる・・・ 「「まず確実にトランプ新大統領が誕生する前提で、2025年には日本企業にはマズいことが起きるだろう」ということが、現時点で一番蓋然(がいぜん)性が高い未来です」、なるほど。 「トランプ政権復活の可能性はかなり高いです。「ほぼ確実」と言えるでしょう。それでも、 “もしトラ”では絶対にダメです。実現した場合、2025年には日本企業にもマズいことが起きるからです」、なるほど。 鈴木貴博氏による「トランプ復活ほぼ確実?「もしトラ」で日本が襲われる3つの悪夢とは」 「米大統領選。「もしトラ」ならウクライナもガザも見殺しにされる可能性が高い・・・明るいニュースは・・・あえて挙げれば24年7月にあるパリオリンピック・パラリンピック・・・安心して楽しめるのではないかと期待しています」、「ウクライナもガザも見殺し」とはいまから覚悟しておく必要がありそうだ。 トランプ氏は在任時に韓国への貿易赤字に不満を持ち、在韓米軍を撤退させようとしたところ、ポンペオ国務長官(当時)が「2期目の優先事項にしましょう」と言って止めたという逸話がありますから」、なるほど。
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イスラエル・パレスチナ(その2)(今こそ「2国家解決」が現実的選択...どうしたら実現できるか?、「第3次世界大戦を避けたいならガザは信託統治するしかない」…イスラエル首相の暴走を阻止すべき理由 オスロ合意に立ち戻ってパレスチナ国家の設立を、ガザ地区の死者 過去24時間で200人近くに イスラエル軍の空爆と砲撃で、イスラエル ハマスの3分の2の戦闘部隊を壊滅=ネタニヤフ首相、フーシ派が米タンカーにミサイル発射 米大統領「空爆継続へ」) [世界情勢]

イスラエル・パレスチナについては、昨年12月9日に取上げた。今日は、(その2)(今こそ「2国家解決」が現実的選択...どうしたら実現できるか?、「第3次世界大戦を避けたいならガザは信託統治するしかない」…イスラエル首相の暴走を阻止すべき理由 オスロ合意に立ち戻ってパレスチナ国家の設立を、ガザ地区の死者 過去24時間で200人近くに イスラエル軍の空爆と砲撃で、イスラエル ハマスの3分の2の戦闘部隊を壊滅=ネタニヤフ首相、フーシ派が米タンカーにミサイル発射 米大統領「空爆継続へ」)である。

先ずは、昨年12月12日付けNewsweek日本版「今こそ「2国家解決」が現実的選択...どうしたら実現できるか?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/12/post-103213_1.php
・『<イスラエルとパレスチナの和平は、高尚な外交的理想であるばかりではない。21世紀の世界の平和と安定のために不可欠な政治的現実だ> 多くの幻想がもはや打ち砕かれた。イスラム組織ハマスによる10月7日の奇襲攻撃以前、イスラエルとパレスチナの数十年に及ぶ紛争は解決不能で、可能なのは対処することだけだと、第三者も当事者も考えるようになっていた。新たに芽生えた希望は、パレスチナ問題には触れずに、イスラエルが近隣アラブ諸国と和平を実現して外交関係を結ぶこと。パレスチナ人の関与も、パレスチナ国家の樹立もなしに、中東に平和をもたらせるのではないか──。 だが今では、そんな未来像は錯覚にすぎなかったとはっきりしている。 1947年、イギリスによるパレスチナ委任統治の終了が翌年に迫るなか、国連総会は当該地域をユダヤ人国家とアラブ人国家の2つに分けるというパレスチナ分割決議を採択した。だが48年にイスラエルが独立宣言を行った直後、近隣のアラブ連盟5カ国が宣戦布告し、第1次中東戦争が勃発。両者の争いは形を変えながら現在まで続いている。 紛争終結の選択肢は、今も昔もほとんど変わらない。理論的には、ヨルダン川と地中海の間の一帯をどちらかが制圧して勝利し、敗北側を追い出すのが1つの方法だ。しかし今の時代、そんなやり方が国際社会に通用するはずがない。ならば、唯一の道は双方が妥協して、緊密な経済関係で結ばれた2つの国家を創設することだ。75年以上前の国連決議は、同じ道筋を描いていた。 忘れられかけていた「2国家解決」は10月7日以降、パレスチナ自治区ガザで続く戦争と、果てしない中東紛争の完全な終結をめぐる議論において再浮上している。この新たな関心は、克服できないジレンマを前にした絶望の表出にすぎないのか。それとも、極度に困難とはいえ唯一の解決策を目指す真剣な姿勢の表れなのか』、「唯一の道は双方が妥協して、緊密な経済関係で結ばれた2つの国家を創設することだ。75年以上前の国連決議は、同じ道筋を描いていた。 忘れられかけていた「2国家解決」は10月7日以降、パレスチナ自治区ガザで続く戦争と、果てしない中東紛争の完全な終結をめぐる議論において再浮上している」、なるほど。
・『2国家解決がまともに取り上げられたのは、90年代前半のオスロ合意当時が最後だ。解決の日は驚くほど近いと大勢が信じたが、95年にイスラエルのラビン首相がナショナリストに暗殺され、期待は消えた。その後、継続の試みはあったものの、合意は形骸化。テロで相手を屈服させられると考えたパレスチナ側の歴史的誤算である第2次インティファーダ(反イスラエル闘争)が勃発し、和平プロセスは崩壊した。 以来、オスロ合意は「あり得た姿」の悲しい象徴と化し、2国家解決はかつてなく遠のいたようにみえる。テロや占領の圧迫を受け、急進派の圧力に押されて、双方が暴力と対決の道を突き進んできた。その頂点が10月7日の恐るべき民間人虐殺だ。) どうしたら今、2国家解決を実現できるか。何よりも、双方が互いの正当な主張を認めなければならない。イスラエルに安全保障面で譲歩を求めるべきではないし、パレスチナが独立国家という位置付けを諦め、ヨルダン川西岸地区でのイスラエル人の入植活動を受け入れられるはずがない。 現在の戦争が終わったとき、最も急ぐべきなのは和平プロセスの再生に向けて新たな枠組みを策定し、機能不全状態のパレスチナ自治政府を改革し、イスラエル指導部を入れ替えることだ。イスラエルのネタニヤフ首相率いる極右政権が存続する限り、和平プロセス再開の取り組みは、始まった時点で終わりになるのが目に見えている。 さらに、新たな和平プロセスには、信頼できる第三者による極めて大規模な軍事・政治・経済的援助が不可欠だ。オスロ合意当時と比べて、中東と世界全体の在り方は劇変している。もはやアメリカとEUだけでなく、中国の参加も必要になるだろう。 イスラエルとパレスチナの和平は、高尚な外交的理想であるばかりではない。21世紀の世界の平和と安定のために不可欠な政治的現実だ。[コピーライト]Project Syndicate』、「現在の戦争が終わったとき、最も急ぐべきなのは和平プロセスの再生に向けて新たな枠組みを策定し、機能不全状態のパレスチナ自治政府を改革し、イスラエル指導部を入れ替えることだ。イスラエルのネタニヤフ首相率いる極右政権が存続する限り、和平プロセス再開の取り組みは、始まった時点で終わりになるのが目に見えている。 さらに、新たな和平プロセスには、信頼できる第三者による極めて大規模な軍事・政治・経済的援助が不可欠だ。オスロ合意当時と比べて、中東と世界全体の在り方は劇変している。もはやアメリカとEUだけでなく、中国の参加も必要になるだろう。 イスラエルとパレスチナの和平は、高尚な外交的理想であるばかりではない。21世紀の世界の平和と安定のために不可欠な政治的現実だ」、その通りだ。

次に、昨年12月15日付けプレジデント 2023年12月29日号が掲載したビジネス・ブレークスルー大学学長の大前 研一氏による「「第3次世界大戦を避けたいならガザは信託統治するしかない」…イスラエル首相の暴走を阻止すべき理由 オスロ合意に立ち戻ってパレスチナ国家の設立を」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/76642
・『オスロ合意を反故にした身勝手なイスラエル  イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの攻撃が激化している。イスラエルとパレスチナの軍事衝突は、このまま他国を巻き込んで第三次世界大戦へと発展していくのか。それともイスラエルが矛を収めるのか。どちらに転ぶのか、現段階では予断を許さない。 今回、先に手を出したのはガザのイスラム組織ハマスだ。10月7日、ハマスの奇襲攻撃によってイスラエルは約1200人の死者を出し、約240人を人質に取られた。 自慢のアイアンドーム(防空システム)も奇襲攻撃の前には機能せず、狼狽したイスラエルはガザへの空爆を開始。また、人質奪還とハマス壊滅を目的に、地上侵攻作戦も展開している。 11月13日、ガザ当局はこれまでに1万1240人が同地で犠牲になったと発表した。イスラエルによる空爆・地上侵攻はハマスの本拠地があるとされるガザ北部に集中している。国連人道問題調整事務所の調査によると、ガザ北部では住宅の少なくとも45%が破壊・損壊されたという。 発表されているガザでの死者数と住宅の破壊状況のバランスには、違和感を覚える。ガザには約200万人のパレスチナ人が住んでいる。そのうちの半数が北部で暮らしていたとして、住宅の半分近くを失う攻撃があったにもかかわらず犠牲者が1万人強にとどまったのは不思議であり、計算が合わない。この数字の不釣り合いこそが、現地が混乱を極めている証左だろう。誰も被害の実態がつかめていないのだ。 ガザの死者のうち、4630人が子どもなのだ。少子化で苦しむ先進国と違い、貧しい地域は子どもの比率が高い。子どもの死者が多いことは確率的に不思議ではなく、おそらくイスラエルが子どもを意図的に狙って攻撃したわけではない。しかし、それでも世間的な印象は悪い。イスラエルの後ろ盾であるアメリカのユダヤ人社会でも、人道的観点から一時的な停戦を呼び掛ける声があがっている。ところが、イスラエルに手を緩める気配はなく、ネタニヤフ首相は「ハマスを根絶する」と息巻いている。 イスラエルとハマスの争いは、どちらが悪いとは一概に言いづらい。今回も歴史をどこまで遡るかによって見方が変わるが、ひとまず1993年のオスロ合意に立ち返るとわかりやすい。) オスロ合意は、それまでお互いの存在を認めていなかったイスラエル政府とPLO(パレスチナ解放機構)が、二国共存を目指して交わした協定だ。この合意でPLOはイスラエルを国家として承認して、イスラエルはPLOを自治政府として承認。さらにイスラエルは、ヨルダン川西岸やガザなどの占領地域から撤退することに合意した。 しかし、合意に反して、イスラエルはむしろパレスチナへのユダヤ人の入植を強化させた。オスロ合意でパレスチナの自治が承認されたのは、ヨルダン川西岸とガザの2つの地区だ。ヨルダン川西岸に関しては、イスラエル人の入植地とパレスチナ人の居住地が入り混じらずに分離している。イスラエルは2002年以降、自爆テロを防ぐという名目で巨大な分離壁を入植地の外周につくり、パレスチナ人が自由に往来できないようにした。分離壁はオスロ合意で定めた停戦ラインを越え、パレスチナ側にはみ出している。イスラエルの、明らかな国際法違反である。 一方、ガザはヨルダン川西岸地区と違って住民が分離されておらず、パレスチナ人の中にユダヤ人やその他の外国人が溶け込むようにして暮らしている。パレスチナの暫定自治政府はヨルダン川西岸にあり、ガザに対しては影響力をほとんど持っていない。暫定自治政府の代わりにガザを実効支配しているのが武装組織のハマスであり、入植をやめないイスラエルに対してテロを続けていたという構図だ』、「分離壁はオスロ合意で定めた停戦ラインを越え、パレスチナ側にはみ出している。イスラエルの、明らかな国際法違反である」、なるほど。
・『中東和平の第一歩はネタニヤフ首相の失脚だ  イスラエルとパレスチナの問題には、長く複雑な歴史がある。その長い歴史の中でもクリントン大統領を仲介役とし、国連の後押しを受けて成立したオスロ合意は、両者がもっとも歩み寄ることができた瞬間だった。オスロ合意が履行されていれば、今回のような大規模な戦闘は起きていなかった。気になるのは今後の展開だ。考えられるルートは2つある。一つは、第三次世界大戦につながる破滅の道だ。 イスラエルは現在、3つの勢力と直接的に衝突している。パレスチナのハマス、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派だ。このうちヒズボラは、今回のハマスの奇襲攻撃に呼応するようにしてイスラエルにミサイルを打ち込んだ。一方、フーシ派は航行中の日本郵船の貨物船を紅海で拿捕だほするなど、テロ活動を活発化させている。 イスラエルと直接的に衝突しているのはこの3つだが、これらの勢力を陰で支えているのがイランである。 イスラエルが問題の根を断つためイランと事を構えようとすると、衝突勢力が一気に拡大するおそれがある。たとえば、イスラエルがイランにミサイルや戦闘機で攻撃を仕掛けるとなると、ルート上にあるイラクが黙っていない。 スンニ派の盟主サウジアラビアも攻撃ルート上だが、同国はイスラエルと国交正常化交渉をしている。しかし、イランがシーア派だとはいえ、イスラエルに味方してアラブ世界から総スカンを食らうようなマネはしないだろう。現在は中立を表明しているトルコも、イスラム色を強めているエルドアン大統領はイラン支援に回るに違いない。 この混沌とした中東情勢に、ウクライナ戦争で孤立を深めているロシアが加われば、アメリカ・イスラエル対イラン・ロシアを軸とした第三次世界大戦へと発展するおそれがある。 ただ、このルートが地獄に続く道だということはどの国もわかっている。 アメリカには、アフガニスタンで味わった苦い記憶がある。9・11の首謀者と断定したオサマ・ビン・ラディンを匿かくまうタリバンを殲滅するため、01年にアフガニスタンへ派兵したが、目的を果たせぬまま21年に撤退したのだ。 内政的にイスラエル支援の姿勢を崩すことはないが、アフガニスタンと同じ展開が予想される対ヒズボラ戦に踏みこみたくないのがアメリカの本音だ。 ハマスらを支援するイランは経済的に余裕がない。また、ロシアは国内にユダヤ人を多く抱えている。イスラエルへの入植者は旧ソビエト連邦出身者が一番多いという事情もあって、反イスラエルの姿勢を明確にできないのだ。 現在前線で戦っている勢力以外は、どの国も世界大戦への移行を望んでいない。そろばんを弾けば割に合わないのだ。どんなに非合理でもやむにやまれず起きるのが戦争の一面なので楽観はできないが、世界がこの破滅ルートに進む可能性は低いだろう。 考えうるもう一つのルートが、ネタニヤフ首相の失脚と「ガザ暫定自治政府」の設立である。 ネタニヤフ首相はイスラエルの中では右寄りの政治家だ。しかし、イスラエルも右派一色ではなく、過去にはラビン、オルメルトなど、パレスチナ国家の成立を手伝おうとした穏健派の首相がいた。このまま戦闘が長期化して経済に悪影響を与え、イスラエルが国際的に孤立するようになれば、ネタニヤフ下ろしが現実味を帯びてくる』、「内政的にイスラエル支援の姿勢を崩すことはないが、アフガニスタンと同じ展開が予想される対ヒズボラ戦に踏みこみたくないのがアメリカの本音だ。 ハマスらを支援するイランは経済的に余裕がない。また、ロシアは国内にユダヤ人を多く抱えている。イスラエルへの入植者は旧ソビエト連邦出身者が一番多いという事情もあって、反イスラエルの姿勢を明確にできないのだ。 現在前線で戦っている勢力以外は、どの国も世界大戦への移行を望んでいない。そろばんを弾けば割に合わないのだ。どんなに非合理でもやむにやまれず起きるのが戦争の一面なので楽観はできないが、世界がこの破滅ルートに進む可能性は低いだろう・・・考えうるもう一つのルートが、ネタニヤフ首相の失脚と「ガザ暫定自治政府」の設立である。 ネタニヤフ首相はイスラエルの中では右寄りの政治家だ。しかし、イスラエルも右派一色ではなく、過去にはラビン、オルメルトなど、パレスチナ国家の成立を手伝おうとした穏健派の首相がいた。このまま戦闘が長期化して経済に悪影響を与え、イスラエルが国際的に孤立するようになれば、ネタニヤフ下ろしが現実味を帯びてくる」、「ネタニヤフ下ろしが現実味を帯びてくる」、これが実現してほしいものだ。
・『両陣営の埒外にいる国が信託統治すべき  とはいえ、穏健派が実権を握っても、ハマスがガザを実効支配したまま停戦するとは考えにくい。現実的には、ハマスを排除したうえでガザに暫定自治政府を設立するのがよいだろう。ヨルダン川西岸を治めるパレスチナ暫定自治政府にガザを治める力はないので、第三者の外国人部隊を入れて、新たな暫定自治政府をつくるのだ。 第一次世界大戦や第二次世界大戦のあと、ミクロネシアの島々は信託統治という形で外国政府が統治した。たとえばパラオは第一次世界大戦後に日本が国際連盟に委託されて統治し、第二次世界大戦後はアメリカが国際連合から任されて信託統治していた。その後、自治できる体制が整った後に独立し、94年にパラオ共和国となった。ガザも同じ方式で、段階的にパレスチナ国家の設立を目指せばよい。信託統治する国は国連が決めるが、アメリカではイスラエル贔屓びいきすぎてパレスチナ人が受け入れないだろう。これでは、ハマスが別の形で生き残り、凄惨なテロが続くことになる。 両陣営の埒らち外にいる国が信託統治すれば、パレスチナ人も納得するだろう。たとえばオスロ合意の延長線上で、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドの北欧4国。アメリカ追従の日本が信託統治に関わるのは難しいが、イスラムでも非アラブ圏のマレーシアやインドネシアなど、アジアの国々が関与することもありえる。 2つのルートのうち、流血がより少なくて済むのは信託統治のほうである。障害となるのは、ハマスを殲滅するまで継戦するつもりのネタニヤフ首相だ。今後、国際世論がネタニヤフ首相の失脚を後押しし、国連が信託統治を積極的に働きかけていくことが、イスラエルとパレスチナ、ひいては中東地域に平穏を取り戻す鍵になる』、「流血がより少なくて済むのは信託統治のほうである。障害となるのは、ハマスを殲滅するまで継戦するつもりのネタニヤフ首相だ。今後、国際世論がネタニヤフ首相の失脚を後押しし、国連が信託統治を積極的に働きかけていくことが、イスラエルとパレスチナ、ひいては中東地域に平穏を取り戻す鍵になる」、その通りだ。

第三に、12月30日付けNewsweek日本版「ガザ地区の死者、過去24時間で200人近くに イスラエル軍の空爆と砲撃で」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/12/24200-1.php
・『パレスチナ自治区ガザ中部へのイスラエル軍の進軍を背景に数万人のパレスチナ人がさらなる避難を余儀なくされる中、ガザでの空爆および砲撃による死者数は過去24時間で200人近くに上った。 ガザ保健当局によると、イスラエル軍の攻撃により過去24時間で187人のパレスチナ人が死亡。死者数はガザ人口の約1%に当たる合計2万1507人に達した。さらに数千人の遺体ががれきの下に埋もれている可能性がある。 住民によれば、イスラエル軍はここ2日で、ガザ中部の戦闘でブレイジの奥深くまで進軍し、東部の郊外では激しい戦闘が続いている。爆撃も特に激しく、隣接するヌセイラットやマガジも爆撃されているという。 パレスチナのメディアはヌセイラットへの攻撃で一晩で少なくとも35人が死亡したと報じた。 イスラエルのガラント国防相は、イスラエル軍はイスラム組織ハマスの司令部や武器庫に到達していると指摘。「われわれの作戦は戦争の目的を達成するために不可欠だ。われわれは敵対勢力の壊滅という結果を目の当たりにしている」と述べた』、「ガザ地区の死者、過去24時間で200人近く」とはすごい犠牲者数だ。「「われわれの作戦は戦争の目的を達成するために不可欠だ。われわれは敵対勢力の壊滅という結果を目の当たりにしている」と述べた」、腹立たしいが「イスラエル」の「勝利」は近いのだろうか。

第四に、本年1月19日付けロイター「イスラエル、ハマスの3分の2の戦闘部隊を壊滅=ネタニヤフ首相」を紹介しよう。
・『イスラエルのネタニヤフ首相は18日、パレスチナ自治区ガザにいるイスラム組織ハマスの戦闘部隊の約3分の2を壊滅させたとし、「完全勝利」まで戦争を続けると述べた。 記者会見で「戦闘には2つの段階がある。1段階目はハマスの部隊を壊滅させ、組織化された戦闘体制を破壊することだ」と指摘。「これまでで24部隊中16─17部隊を壊滅させた。その後、武装勢力の領土を一掃する段階がある。通常、1段階目はより短期に、2段階目はより長期になる」とした。 また、戦死したイスラエル軍兵士の写真を掲げながら、兵士の死は無駄ではないとし、ハマスが敗北し、ガザで拘束されている人質が解放されるまで戦闘を続けると強調。「勝利にはあと何カ月もかかるだろうが、われわれはそれを達成する決意だ」とした』、「1段階目のハマスの部隊を壊滅させ」るのは近そうだ。

第五に、1月19日付けロイター「フーシ派が米タンカーにミサイル発射、米大統領「空爆継続へ」」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/world/security/GAMWAZWKKNNJNLRMZG3LSIDHNQ-2024-01-19/
・『イエメンの親イラン武装組織フーシ派は18日、米国のタンカーに向けて対艦弾道ミサイル2発を発射した。米軍が明らかにした。ミサイルはタンカー付近の水域に落ちたが、負傷者や被害はなかったという。 米中央軍のX(旧ツイッター)への投稿によると、イエメン時間18日午後9時ごろにミサイルが発射された。 フーシ派は先に、アデン湾で米国の船舶「ケム・レンジャー」をミサイルで攻撃したと明らかにし、「命中」したと主張していた。  攻撃は、パレスチナ自治区ガザでイスラエルによる攻撃を受けているパレスチナ人との連帯を示すものとしている。 米国は先週、イエメンのフーシ派拠点に対する攻撃を開始。今週にはフーシ派を「特別指定国際テロリスト(SDGT)」に再指定した。 バイデン米大統領は18日、大統領専用機「エアフォースワン」内で記者団に、フーシ派の攻撃を止められないかもしれないが、フーシ派に対する空爆を継続すると表明。「(空爆は)フーシ派を止めているか。止めていない。フーシ派は続けるか。そうだ」と述べた』、米軍にとって「フーシ派拠点拠点」など物の数ではない筈だ。いくら「パレスチナ人との連帯」を示す狙いだったとしても、余りに馬鹿げた挑発をする戦略的意図が分からない。
タグ:イスラエル・パレスチナ (その2)(今こそ「2国家解決」が現実的選択...どうしたら実現できるか?、「第3次世界大戦を避けたいならガザは信託統治するしかない」…イスラエル首相の暴走を阻止すべき理由 オスロ合意に立ち戻ってパレスチナ国家の設立を、ガザ地区の死者 過去24時間で200人近くに イスラエル軍の空爆と砲撃で、イスラエル ハマスの3分の2の戦闘部隊を壊滅=ネタニヤフ首相、フーシ派が米タンカーにミサイル発射 米大統領「空爆継続へ」) Newsweek日本版「今こそ「2国家解決」が現実的選択...どうしたら実現できるか?」 「唯一の道は双方が妥協して、緊密な経済関係で結ばれた2つの国家を創設することだ。75年以上前の国連決議は、同じ道筋を描いていた。 忘れられかけていた「2国家解決」は10月7日以降、パレスチナ自治区ガザで続く戦争と、果てしない中東紛争の完全な終結をめぐる議論において再浮上している」、なるほど。 「現在の戦争が終わったとき、最も急ぐべきなのは和平プロセスの再生に向けて新たな枠組みを策定し、機能不全状態のパレスチナ自治政府を改革し、イスラエル指導部を入れ替えることだ。イスラエルのネタニヤフ首相率いる極右政権が存続する限り、和平プロセス再開の取り組みは、始まった時点で終わりになるのが目に見えている。 さらに、新たな和平プロセスには、信頼できる第三者による極めて大規模な軍事・政治・経済的援助が不可欠だ。 オスロ合意当時と比べて、中東と世界全体の在り方は劇変している。もはやアメリカとEUだけでなく、中国の参加も必要になるだろう。 イスラエルとパレスチナの和平は、高尚な外交的理想であるばかりではない。21世紀の世界の平和と安定のために不可欠な政治的現実だ」、その通りだ。 プレジデント 2023年12月29日号 大前 研一氏による「「第3次世界大戦を避けたいならガザは信託統治するしかない」…イスラエル首相の暴走を阻止すべき理由 オスロ合意に立ち戻ってパレスチナ国家の設立を」 「分離壁はオスロ合意で定めた停戦ラインを越え、パレスチナ側にはみ出している。イスラエルの、明らかな国際法違反である」、なるほど。 「内政的にイスラエル支援の姿勢を崩すことはないが、アフガニスタンと同じ展開が予想される対ヒズボラ戦に踏みこみたくないのがアメリカの本音だ。 ハマスらを支援するイランは経済的に余裕がない。また、ロシアは国内にユダヤ人を多く抱えている。イスラエルへの入植者は旧ソビエト連邦出身者が一番多いという事情もあって、反イスラエルの姿勢を明確にできないのだ。 現在前線で戦っている勢力以外は、どの国も世界大戦への移行を望んでいない。 そろばんを弾けば割に合わないのだ。どんなに非合理でもやむにやまれず起きるのが戦争の一面なので楽観はできないが、世界がこの破滅ルートに進む可能性は低いだろう・・・考えうるもう一つのルートが、ネタニヤフ首相の失脚と「ガザ暫定自治政府」の設立である。 ネタニヤフ首相はイスラエルの中では右寄りの政治家だ。しかし、イスラエルも右派一色ではなく、過去にはラビン、オルメルトなど、パレスチナ国家の成立を手伝おうとした穏健派の首相がいた。このまま戦闘が長期化して経済に悪影響を与え、イスラエルが国際的に孤立するようになれば、 ネタニヤフ下ろしが現実味を帯びてくる」、「ネタニヤフ下ろしが現実味を帯びてくる」、これが実現してほしいものだ。 「流血がより少なくて済むのは信託統治のほうである。障害となるのは、ハマスを殲滅するまで継戦するつもりのネタニヤフ首相だ。今後、国際世論がネタニヤフ首相の失脚を後押しし、国連が信託統治を積極的に働きかけていくことが、イスラエルとパレスチナ、ひいては中東地域に平穏を取り戻す鍵になる」、その通りだ。 Newsweek日本版「ガザ地区の死者、過去24時間で200人近くに イスラエル軍の空爆と砲撃で」 「ガザ地区の死者、過去24時間で200人近く」とはすごい犠牲者数だ。「「われわれの作戦は戦争の目的を達成するために不可欠だ。われわれは敵対勢力の壊滅という結果を目の当たりにしている」と述べた」、腹立たしいが「イスラエル」の「勝利」は近いのだろうか。 ロイター「イスラエル、ハマスの3分の2の戦闘部隊を壊滅=ネタニヤフ首相」 「1段階目のハマスの部隊を壊滅させ」るのは近そうだ。 ロイター「フーシ派が米タンカーにミサイル発射、米大統領「空爆継続へ」」 米軍にとって「フーシ派拠点拠点」など物の数ではない筈だ。いくら「パレスチナ人との連帯」を示す狙いだったとしても、余りに馬鹿げた挑発をする戦略的意図が分からない。
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香港(その8)(香港社会は今... 世界で報じられた民主化デモのその後、民主活動家・周庭氏亡命に香港行政トップが怒りを爆発させた3つの理由 東アジア「深層取材ノート」(第215回)、日本好きな「民主の女神」周庭さんが亡命できない スパイ天国・日本の残念な現状 勝丸円覚「インテリジェンス通信」第3回) [世界情勢]

香港については、2021年10月19日に取上げた。久しぶりの今日は、(その8)(香港社会は今... 世界で報じられた民主化デモのその後、民主活動家・周庭氏亡命に香港行政トップが怒りを爆発させた3つの理由 東アジア「深層取材ノート」(第215回)、日本好きな「民主の女神」周庭さんが亡命できない スパイ天国・日本の残念な現状 勝丸円覚「インテリジェンス通信」第3回)である。

先ずは、昨年5月6日付けNewsweek日本版が掲載したライターの西谷 格氏による「香港社会は今... 世界で報じられた民主化デモのその後」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/05/post-98630.php
・『<2019年6月から大規模なデモが続き、市民と香港政府の対立は激化した。今は表面的には落ち着きを取り戻したように見える> 香港では2019年6月から半年以上にわたって大規模なデモが続き、世界で連日報じられた。 そもそもの発端は、香港にいる犯罪者を中国本土に送ることが可能になる「逃亡犯条例改正案」に対する市民の反発だ。市民と香港政府の対立は激化し、双方の暴力行為がエスカレートした。 2020年に入るとコロナ禍によって集会が禁じられ、6月には反政府運動などを禁じる「国家安全維持法」が中国政府主導で強権的に施行される。言論の自由への制限が強まり、中国共産党を否定していた新聞は廃刊に追い込まれた。 そこまではニュースで見聞きした人も少なくないだろうが、その後の香港社会はどうなっているのか。 実態は、この状況にやむを得ず慣れ始め、表面的には落ち着きを取り戻したように見える。 香港民意研究所の世論調査に「一国二制度を信じる」と答えた人は、27%(2020年2月)から45.8%(2022年2月)まで回復。治安の悪化や経済的損失による疲弊や諦念が背景にある。 6月末には林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が退任する。5月8日に行われる次期選挙では、デモ鎮圧で香港警察を指揮した李家超(ジョン・リー)が中国の強い後押しを受けて当選確実に。 自由への締め付けがさらに強まると懸念されているが、もう以前ほどの反発は起こらないかもしれない』、新長官の「李家超」氏については、次の記事を参照されたいが、ますます中国本土の支配が強まっているようだ。

次に、本年12月7日付けJBPressが掲載したジャーナリストの近藤 大介氏による「民主活動家・周庭氏亡命に香港行政トップが怒りを爆発させた3つの理由 東アジア「深層取材ノート」(第215回)」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/78304#goog_rewarded
・『「私は現在、カナダのトロントに滞在しています。もう永遠に、香港には戻らないと決めました……」 12月3日、香港の民主活動グループ「香港衆志」で副事務局長を務めた周庭(Agnes Chow)氏(27歳)が、SNSで衝撃の「亡命宣言」を行った。その後、日本メディアなどのインタビューにも答え、香港の民主が大きく後退している現状を訴えたことから、世界的な話題を呼んでいる。 「恩を仇で返された。全力を挙げ逃亡犯をひっ捕らえる」 当の香港も、激震している。5日には、ついに香港トップの李家超行政長官が、「周庭問題」に言及。激しい怒りをぶちまけた。 「香港政府は全力を挙げて、国家の安全に危害を及ぼすいかなる逃亡犯をもひっ捕らえる。周庭は、外国もしくは境外の勢力と結託し、国家の安全に危害を与えた容疑で拘束された。そのような保護措置を放棄し、逃亡した人物に対して、警察は必然的に、全力でひっ捕らえる。 いかなる逃亡犯も、いますぐ自首することだ。そうでなければ終身、逃亡犯であり続け、終身追われる身となるだろう。 一部の逃亡犯は、誠実さを装い、言い訳をつけて同情をでっちあげ、自己を光り輝くよう見せようとしている。まったくもって恥ずべき行為だ。 香港警察は、本件で寛大な処置を試した。だが恩を仇で返されたのだ。最も失望しているのは、寛大な処置を担当した者たちだろう。香港警察は今回の経験を総括し、法規を有効にし、国家の安全の維持・保護を確保していく。そして糸を引いている外部勢力には、打撃を与えていく」) 前任の林鄭月娥行政長官が、5年間の任期中に、特定の香港人を名指しして、ここまで強烈に非難したのを、見たことがなかった。昨年7月1日に就任した李家超行政長官も、これまでは努めて、平静な行政運営を心掛けていたように見受けられる。 それがなぜ今回、ここまで怒りに満ちた発言をしたのか? そこには、3つの理由が背景として考えられる』、「李家超行政長官」が「ここまで怒りに満ちた発言をした」、「背景」をみてみよう。
・『「香港のプーチン」のメンツ丸潰れ  第一に、自身の警察官僚としてのメンツを潰されたことだ。 李家超行政長官は1957年12月、香港に生まれた。大卒のエリートではなく、1977年に19歳で香港警察に入った叩き上げだ。香港警察では長く諜報畑を歩き、1998年には800kgもの爆薬保管庫を摘発するなど、諜報員として実績を積んだ。まさに、ウラジーミル・プーチン露大統領の経歴と重なり、「香港のプーチン」との異名を取るゆえんである。 諜報員としての実績を評価され、2003年にはロンドンの王室防衛学院で研修を受けた。その後もトントン拍子で出世を重ね、2017年6月、初の叩き上げの諜報員出身者として、保安局長に就任した。この辺りから、習近平主席の目に留まっていく。 保安局長時代は、2019年6月に始まった大規模な民主派デモを取り締まった。この時、デモの中心にいた一人が、周庭氏だった。) 李保安局長は香港警察の指揮官として、デモ隊との「攻防戦」で、計6000人以上もの香港市民を拘束し、計1万発以上の催涙弾を撃ちまくった。周庭氏も逮捕、投獄され、最終的に2021年6月に出所した』、「李家超行政長官」は「「香港のプーチン」との異名」を取った、「保安局長」時代には、「香港警察の指揮官として、デモ隊との「攻防戦」で、計6000人以上もの香港市民を拘束し、計1万発以上の催涙弾を撃ちまくった。周庭氏も逮捕、投獄され、最終的に2021年6月に出所した」、なるほど。
・『「香港の守護神」と目されているのに  李局長は、民主派グループにとっては「悪の権化」だが、「中南海」(北京政府)にとっては「香港の守護神」と映った。二度と大規模デモを起こさせないため、2020年6月に、悪名高い香港国家安全維持法を制定したが、この新法制定に尽力したのも、李家超局長だった。 こうした「実績」により、習近平主席の「お墨付き」を経て、昨年7月1日に、他に誰も立候補者が出ない「異様な選挙」を経て、第6代行政長官に就任したのだ。就任式及び香港返還25周年祝賀会に参加するため、北京から訪れた習近平主席に対して、李新行政長官が平身低頭する姿が印象的だった。 このように警察官僚としての「民主化弾圧」が認められてトップに立ったという自負が、周庭氏の「カナダ亡命」によって打ち砕かれたのである』、「このように警察官僚としての「民主化弾圧」が認められてトップに立ったという自負が、周庭氏の「カナダ亡命」によって打ち砕かれたのである」、怒りはさぞかし激しそうだ。
・『すでにイエローカードを食らっている李家超氏  第二に、李行政長官が、ボスである習近平主席の怒りを恐れているということだ。 前述のような経緯で香港トップに上り詰めた李家超行政長官が見ているのは、750万香港市民というより、「中南海」の習近平主席である。習主席の覚えめでたくありたいと、常に考えているはずだ。いったん習主席の「寵愛」がなくなれば、外相だろうが国防相だろうが失脚するのは、周知の通りだ。 特に、ある香港人の話によると、李行政長官は習主席に対して、次のような「前科」があるという。 「昨年11月、タイのバンコクでAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議が開かれた際、李家超長官は、あろうことか習近平主席と会談した際に、新型コロナウイルスを移してしまったという噂が立った。李長官自身も、香港に戻って陽性反応が出て隔離された。それで翌12月に改めて北京を訪問し、習主席に直接詫びたと聞いた」 この証言がもし事実であれば、すでにこの時点で李長官は「イエローカード」である。それが「民主運動の首謀者」の一人がカナダに亡命し、「反習近平政権運動」でも展開すれば、これはもう「レッドカード」というわけだ』、「タイのバンコクでAPEC・・・首脳会議が開かれた際、李家超長官は、あろうことか習近平主席と会談した際に、新型コロナウイルスを移してしまったという噂が立った・・・この証言がもし事実であれば、すでにこの時点で李長官は「イエローカード」である。それが「民主運動の首謀者」の一人がカナダに亡命し、「反習近平政権運動」でも展開すれば、これはもう「レッドカード」というわけだ」、なるほど。
・『台湾にどう波及するか  第三の理由は、台湾問題だ。これは先日、台湾問題の専門家である吉村剛史・元産経新聞台北支局長から受けた指摘だ。吉村氏は、次のような見解を示した。 「1月13日に行われる台湾総統選挙まで、あと1カ月あまり。4年前の総統選挙に最も影響を与えたのは、香港情勢だった。香港政府と中国政府が香港の民主化運動を徹底的に弾圧したため、多くの台湾人が『台湾が香港の二の舞になるのはゴメンだ』として、中国に厳しい態度を取る蔡英文総統に投票したのだ。 同様に、今回もまた、台湾総統選挙の直前に、周庭さんが亡命した。当然ながら、台湾人も敏感に反応しており、総統選挙に一定の影響を与えるだろう。すなわち、与党・民進党の頼清徳候補(副総統・民進党主席)に有利に働くということだ」 周庭氏の今後の動向に注目したい』、「周庭さん亡命」には台湾人も敏感に反応しており、総統選挙に一定の影響を与えるだろう。すなわ円鏡ち、与党・民進党の頼清徳候補(副総統・民進党主席)に有利に働くということだ」、「総統選挙」動向に注目したい。

第三に、12月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したセキュリティコンサルタントの勝丸円覚氏による「日本好きな「民主の女神」周庭さんが亡命できない、スパイ天国・日本の残念な現状 勝丸円覚「インテリジェンス通信」第3回」を紹介しよう。
・『2020年に香港で逮捕され、カナダで亡命を表明した「民主の女神」こと周庭さん。メディアのインタビューに日本語で受け答えし、日本の音楽やアニメが好きだという彼女はなぜ日本を選ばなかったのか。元公安でセキュリティコンサルタントの勝丸円覚さんに「亡命先としての日本の現状」を解説してもらった。さらに、いまカナダにいる周庭さんが中国共産党から身の安全を守る方法をアドバイスしてもらった』、「周庭さん」は「亡命先としての日本」を冷静に見ていたからこそ、「いまカナダにいる」のだろう。
・『周庭さんが大好きな日本に亡命しなかった理由  周庭さんはカナダに事実上亡命して一生帰らないと宣言しました。亡命先としてカナダがふさわしいかどうかを説明します。 確かに言えることは、日本よりはカナダの方が亡命に向いているだろうということです。日本は亡命する国としてあまりふさわしくありません。まずは、日本に亡命しない方がいい理由を説明します。 一番の理由は、日本は亡命を積極的には受け入れない国だからです。亡命する人はもともと住んでいた国を何らかの理由で追われてきている人ですから、受け入れる側にも外交上のリスクがあります。ましてや周庭さんの場合は、中国を相手にすることになりますから、日本も摩擦を産みたくないと弱腰になってしまうでしょう。これは過去の事例から見てもそうです。移住するならまだしも、亡命となるとそもそも受け入れてもらえない可能性があります。 また、設備の面でも日本はカナダのように十分なものを提供できません。通常、亡命者を受け入れる際は、セーフハウスという安全が確保された住居と警備を提供する必要があります。これまで積極的に亡命を受け入れてこなかった日本には、そうした施設や警備を提供するノウハウ、過去の蓄積がほとんどありません。仮に日本が周庭さんを受け入れたとしても、安全が確保される保証はカナダより低くなります。 カナダはこれまでも多数の亡命者を受け入れてきているので、設備や警備の面では日本より優れていると言えます。今後、周庭さんにセーフハウスが提供される可能性が非常に高いです。 日本と比較した時のカナダの優位性については、説明した通りです。では、カナダが最も安全な国かと言うとそうではありません。たとえば、隣国のアメリカであれば、CIAやFBIがいるので、周庭さんを中国共産党から守るという目的であれば、アメリカの方がより優れていると言えます。) ではなぜアメリカを選ばなかったのでしょうか。カナダのほうが国籍やビザが取りやすかったのではないかと推測します。また、カナダは国籍ロンダリングでよく使われる国の一つです。国籍ロンダリングとは、主にアメリカ国籍などを取得する際にまずカナダ国籍を取得するというもので、中国のスパイの協力者などもよく使う手段です。 というわけで、より安全な国はあるものの、最初に亡命する国としてカナダは優れていて、少なくとも日本に来るよりは安全を確保しやすいということができます』、「亡命する人はもともと住んでいた国を何らかの理由で追われてきている人ですから、受け入れる側にも外交上のリスクがあります。ましてや周庭さんの場合は、中国を相手にすることになりますから、日本も摩擦を産みたくないと弱腰になってしまうでしょう。これは過去の事例から見てもそうです。移住するならまだしも、亡命となるとそもそも受け入れてもらえない可能性があります。 また、設備の面でも日本はカナダのように十分なものを提供できません。通常、亡命者を受け入れる際は、セーフハウスという安全が確保された住居と警備を提供する必要があります。これまで積極的に亡命を受け入れてこなかった日本には、そうした施設や警備を提供するノウハウ、過去の蓄積がほとんどありません」、なるほど。
・『中国政府から逃げる方法は「逃げないこと」?  カナダにも中国共産党の息がかかった人間は数多くいます。周庭さんに何らかの危害が加えられ、場合によっては不当に圧力をかけられるというようなケースも考えられます。彼女に身を守るためのアドバイスをするとすれば、自分の行動予定表を把握してくれる人を作ることを勧めます。おそらくカナダ政府が買って出ると思いますが。 さらに、活動を完全に隠すのではなく、オープンにする方が望ましいでしょう。なぜなら姿を隠してしまうことで、陰で危害が加えられる可能性もあるからです。通信社やメディアを使うのも一つの手ですが、SNSや個人メディアなどより手軽な手段で活動を発信し続けた方がいいでしょう。そうすることで、何かあったときに異変が公になるスピードが早まり、深刻な危害が加えられる可能性も少なくなります。 以前、アステラス製薬の社員が中国警察に身柄拘束されるという事件がありましたが、そのようなケースでも躊躇することなくすぐにメディアに情報を渡した方がいいです。なぜなら、中国政府は体裁をすごく気にするので、外国人を身柄拘束したことを公にすることで、闇から闇に葬り去れなくなるのです。したがって、周庭さんには、常に表に出続けるということを意識して欲しいです』、「活動を完全に隠すのではなく、オープンにする方が望ましいでしょう。なぜなら姿を隠してしまうことで、陰で危害が加えられる可能性もあるからです。通信社やメディアを使うのも一つの手ですが、SNSや個人メディアなどより手軽な手段で活動を発信し続けた方がいいでしょう。そうすることで、何かあったときに異変が公になるスピードが早まり、深刻な危害が加えられる可能性も少なくなります」、なるほど。
・『町中華やクリーニング店も? 日本にある中国の諜報網  周庭さんが亡命したカナダにも、そして我々が暮らす日本にも中国のスパイは数多くいます。中国は各国にいる留学生やビジネスパーソンを後から協力者としてリクルートします。各国の中国大使館は、その国にいる中国人の膨大なデータベースを持っていて、その中から協力者に適した人間を洗い出します。そして、在日中国大使館にも10名程度いるとされるスパイマスターと呼ばれるプロのスパイが、リクルーターを使って該当者を協力者としてスカウトする仕組みです。 スパイではない一般人をスパイ活動の協力者にしていくので、中国の諜報網は現地当局もすべてを把握することは難しい。 さらに、密告制度のようなものがあって、スパイの協力者たちは情報の質に応じて報酬を受け取ることができます。実際、公安時代に町中華やクリーニング店がその窓口になっていることを突き止めたことがあります。 京都大学名誉教授の中西輝政氏によると、オーストラリアには中国スパイとその協力者が数万人いたといいます。単純に人口比だけで考えれば、日本にはその5倍いてもおかしくない。オーストラリアの規模が5万人だとすると、25万規模の中国のスパイとその関係者がいても不思議ではありません。 こうした町中華などが情報を捕捉する投網式の諜報にだけでなく、加えて中国はピンポイントでピンポイントで諜報を仕掛ける方法があります。最近だと研究機関「産業技術総合研究所」に所属していた中国籍の研究者が、研究データを中国企業に流出させた事件がありました。そのときは、日本にいる中国人の膨大なデータベースの中から、「長くその会社で働いているこの人物がよさそうだ」などと狙いを定めて、情報を提供させる方法を取ることもあります。 各国にいる中国スパイの協力者が狙っているのは、企業機密や中国人に関する情報だけではありません。実は、日本人もターゲットにされる可能性があります。 たとえば、秋葉原に中国の警察の出先機関とされる「海外派出所」があったことが話題になりました。最優先の監視対象は中国人ですが、日本人でも中国のオウム真理教と言われる「法輪功の信者」とかウイグル弾圧に反対する中国人を支援している日本人なども監視されています。 このように皆さんの生活圏にも中国のスパイとその息がかかった協力者は潜んでいます。一般人の皆さんは直接危害を加えられることはありませんが、彼らの活動は日本にとって大きな損失をもたらしています。また、周庭さんのような特別な立場になると監視の目は一段と厳しくなるのは明らか。実際に香港政府トップが「自ら出頭しない限り、生涯にわたって追跡されることになる」と脅迫しています。世界のメディアは彼女の発信に継続して注目していかなければなりません。それが彼女を守ることにもつながります』、「各国の中国大使館は、その国にいる中国人の膨大なデータベースを持っていて、その中から協力者に適した人間を洗い出します。そして、在日中国大使館にも10名程度いるとされるスパイマスターと呼ばれるプロのスパイが、リクルーターを使って該当者を協力者としてスカウトする仕組みです。 スパイではない一般人をスパイ活動の協力者にしていくので、中国の諜報網は現地当局もすべてを把握することは難しい。 さらに、密告制度のようなものがあって、スパイの協力者たちは情報の質に応じて報酬を受け取ることができます。実際、公安時代に町中華やクリーニング店がその窓口になっていることを突き止めたことがあります、なるほど。「周庭さん」については、「香港政府トップが「自ら出頭しない限り、生涯にわたって追跡されることになる」と脅迫しています。世界のメディアは彼女の発信に継続して注目していかなければなりません。それが彼女を守ることにもつながります」、同感である。
タグ:JBPRESS 新長官の「李家超」氏については、次の記事を参照されたいが、ますます中国本土の支配が強まっているようだ。 西谷 格氏による「香港社会は今... 世界で報じられた民主化デモのその後」 Newsweek日本版 (その8)(香港社会は今... 世界で報じられた民主化デモのその後、民主活動家・周庭氏亡命に香港行政トップが怒りを爆発させた3つの理由 東アジア「深層取材ノート」(第215回)、日本好きな「民主の女神」周庭さんが亡命できない スパイ天国・日本の残念な現状 勝丸円覚「インテリジェンス通信」第3回) 香港 近藤 大介氏による「民主活動家・周庭氏亡命に香港行政トップが怒りを爆発させた3つの理由 東アジア「深層取材ノート」(第215回)」 「李家超行政長官」が「ここまで怒りに満ちた発言をした」、「背景」をみてみよう。 「李家超行政長官」は「「香港のプーチン」との異名」を取った、「保安局長」時代には、「香港警察の指揮官として、デモ隊との「攻防戦」で、計6000人以上もの香港市民を拘束し、計1万発以上の催涙弾を撃ちまくった。周庭氏も逮捕、投獄され、最終的に2021年6月に出所した」、なるほど。 「このように警察官僚としての「民主化弾圧」が認められてトップに立ったという自負が、周庭氏の「カナダ亡命」によって打ち砕かれたのである」、怒りはさぞかし激しそうだ。 「タイのバンコクでAPEC・・・首脳会議が開かれた際、李家超長官は、あろうことか習近平主席と会談した際に、新型コロナウイルスを移してしまったという噂が立った・・・この証言がもし事実であれば、すでにこの時点で李長官は「イエローカード」である。それが「民主運動の首謀者」の一人がカナダに亡命し、「反習近平政権運動」でも展開すれば、これはもう「レッドカード」というわけだ」、なるほど。 「周庭さん亡命」には台湾人も敏感に反応しており、総統選挙に一定の影響を与えるだろう。すなわ円鏡ち、与党・民進党の頼清徳候補(副総統・民進党主席)に有利に働くということだ」、「総統選挙」動向に注目したい。 ダイヤモンド・オンライン 勝丸円覚氏による「日本好きな「民主の女神」周庭さんが亡命できない、スパイ天国・日本の残念な現状 勝丸円覚「インテリジェンス通信」第3回」 「周庭さん」は「亡命先としての日本」を冷静に見ていたからこそ、「いまカナダにいる」のだろう。 「亡命する人はもともと住んでいた国を何らかの理由で追われてきている人ですから、受け入れる側にも外交上のリスクがあります。ましてや周庭さんの場合は、中国を相手にすることになりますから、日本も摩擦を産みたくないと弱腰になってしまうでしょう。これは過去の事例から見てもそうです。移住するならまだしも、亡命となるとそもそも受け入れてもらえない可能性があります。 また、設備の面でも日本はカナダのように十分なものを提供できません。通常、亡命者を受け入れる際は、セーフハウスという安全が確保された住居と警備を提供する必要があります。これまで積極的に亡命を受け入れてこなかった日本には、そうした施設や警備を提供するノウハウ、過去の蓄積がほとんどありません」、なるほど。 「活動を完全に隠すのではなく、オープンにする方が望ましいでしょう。なぜなら姿を隠してしまうことで、陰で危害が加えられる可能性もあるからです。通信社やメディアを使うのも一つの手ですが、SNSや個人メディアなどより手軽な手段で活動を発信し続けた方がいいでしょう。そうすることで、何かあったときに異変が公になるスピードが早まり、深刻な危害が加えられる可能性も少なくなります」、なるほど。 「各国の中国大使館は、その国にいる中国人の膨大なデータベースを持っていて、その中から協力者に適した人間を洗い出します。そして、在日中国大使館にも10名程度いるとされるスパイマスターと呼ばれるプロのスパイが、リクルーターを使って該当者を協力者としてスカウトする仕組みです。 スパイではない一般人をスパイ活動の協力者にしていくので、中国の諜報網は現地当局もすべてを把握することは難しい。 さらに、密告制度のようなものがあって、スパイの協力者たちは情報の質に応じて報酬を受け取ることができます。実際、公安時代に町中華やクリーニング店がその窓口になっていることを突き止めたことがあります、なるほど。「周庭さん」については、「香港政府トップが「自ら出頭しない限り、生涯にわたって追跡されることになる」と脅迫しています。世界のメディアは彼女の発信に継続して注目していかなければなりません。それが彼女を守ることにもつながります」、同感である。
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イスラエル・パレスチナ(その1)(イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」、、もはや「わざと戦争を長引かせて」政治生命の維持に固執するしかない ネタニヤフとその代償、イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質、ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に、「ホロコースト」の過去を持つドイツで いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増) [世界情勢]

今日は、イスラエル・パレスチナ(その1)(イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」、もはや「わざと戦争を長引かせて」政治生命の維持に固執するしかない ネタニヤフとその代償、イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質、ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に、「ホロコースト」の過去を持つドイツで いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増)を取上げよう。

先ずは、本年10月14日付け東洋経済オンラインが掲載した歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏による「イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/708392
・『パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織「ハマス」は10月7日、イスラエルへの大規模な奇襲攻撃を仕掛けた。イスラエルも応酬し、双方の死者は2000人を超えている。この衝突の背景に何があるのか。『サピエンス全史』著者でイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏(ヘブライ大学教授)の寄稿文を掲載する』、興味深そうだ。
・『「ホロコースト」を引き合いに出す事態  イスラエルの人々は今、自らが見舞われたばかりの出来事を必死に理解しようとしている。私たちはまず、今回の惨事を1973年のヨム・キプール戦争(第4次中東戦争)と比べてみた。50年前、エジプト軍とシリア軍が奇襲攻撃を仕掛け、イスラエルを立て続けに打ち負かしたが、その後、イスラエル国防軍が態勢を立て直して主導権を奪い返し、形勢を逆転させた。 だが今度の出来事は、いくつものキブツや集落で起こった大虐殺の恐ろしいニュースや画像が続々と届くにつれ、ヨム・キプール戦争とは似ても似つかないものであることに私たちは気づいた。新聞やSNSや家庭で、人々はユダヤ民族にとって最悪の時代を引き合いに出している。例えば、ホロコーストでナチスのアインザッツグルッペン(移動虐殺部隊)が村落を包囲してユダヤ人を殺害したときや、ロシア帝国でユダヤ人の大虐殺が行なわれたときのことだ。 私自身も、ベエリとクファル・アザのキブツに親族や友人がおり、ぞっとするような話を多く耳にしてきた。ハマスはこの2つのキブツを何時間も完全に掌握していた。テロリストたちは家を一軒一軒回り、組織的に家族を皆殺しにしたり、子供の目の前で親を殺したり、赤ん坊や老婆さえも人質に取ったりした。生き延びた人々は恐怖におののきながら、戸棚の中や地下室に身を隠し、軍や警察に電話をして助けを求めたが、多くの場合、救助隊が到着したときにはすでに手後れだった。) 私の99歳になる伯父と、その妻で89歳の伯母は、ベエリのキブツに住んでいる。そこがハマスの手に落ちて間もなく、まったく連絡がつかなくなった。2人は、何十人ものテロリストが暴れ回り、人々を惨殺している間、ずっと自宅で息を潜めていたそうだ。やがて私のもとに、2人が助かったという連絡があった。だが、多くの知人が人生で最悪の知らせを受け取った。 伯父夫妻はともに、たくましいユダヤ人だ。第1次世界大戦と第2次世界大戦の大戦間に東ヨーロッパで生まれ、ホロコーストですでに1つの世界を失っている。私たちは、身を守る術(すべ)のないユダヤ人たちが、ナチスの魔手を逃れるために戸棚の中や地下室に身を隠したが、誰も助けに来てくれなかったという話を聞いて育った。イスラエルは、このようなことが二度と起こらないようにするために建国された。 それにもかかわらず、なぜ今回の惨劇は起こったのか? イスラエルという国は、どうして道を見失ってしまったのか?』、「ハマスはこの2つのキブツを何時間も完全に掌握していた。テロリストたちは家を一軒一軒回り、組織的に家族を皆殺しにしたり、子供の目の前で親を殺したり、赤ん坊や老婆さえも人質に取ったりした。生き延びた人々は恐怖におののきながら、戸棚の中や地下室に身を隠し、軍や警察に電話をして助けを求めたが、多くの場合、救助隊が到着したときにはすでに手後れだった・・・イスラエルは、このようなことが二度と起こらないようにするために建国された。 それにもかかわらず、なぜ今回の惨劇は起こったのか? イスラエルという国は、どうして道を見失ってしまったのか?」、なるほど。
・『イスラエルの機能不全の真の原因は「ポピュリズム」  ある意味で、イスラエルの人々は長年の思い上がりの代償を払っているといえる。歴代の政権と多くの一般国民が、私たちはパレスティナ人よりもはるかに強い、彼らはあっさり無視できる、と感じていた。イスラエルがパレスティナ人との和解の試みを放棄し、何十年にもわたって数百万のパレスティナ人を占領下に置いてきたことは、厳しく非難されるべきだ。 破壊された建物の外にいるパレスチナ人住民。 だからといって、イスラム原理主義組織ハマスによる残虐行為は正当化できない。そもそもハマスは、イスラエルと平和条約を締結する可能性を容認したためしがなく、オスロ合意に基づく和平の進展を、ありとあらゆる手を使って妨げてきた。平和を望む者なら誰もが、ハマスを糾弾し、制裁を課し、人質全員の即時解放と、ハマスの完全な武装解除を要求しなくてはならない。 さらに、イスラエルにどれほどの責任を帰すことにしようと、それでこの国の機能不全を説明することはできない。歴史は道徳の物語ではない。イスラエルの機能不全の真の原因は、この国の不道徳とされているものではなく、ポピュリズム(大衆迎合主義)だ。何年にもわたって、イスラエルはポピュリズムの強権的指導者ベンヤミン・ネタニヤフが支配してきた。彼はPRの天才だが、首相としては無能だ。何度となく自分の個人的利益を国益に優先し、国民の内紛を誘うことでキャリアを築いてきた。能力や適性よりも自分への忠誠に基づいて人々を要職に就け、成功はすべて自分の手柄にする一方、失敗の責任はいっさい取らず、真実を語ることも耳にすることも軽んじているように見える。) ネタニヤフが2022年12月に樹立した連立政権は、最低であり最悪だ。それは、救世主メシア信仰の狂信者たちと厚顔無恥な日和見(ひよりみ)主義者たちの同盟であり、彼らは、治安状況の悪化をはじめ、イスラエルが抱える問題の数々を顧みず、際限なく権力を我が物にすることしか眼中になかった。その目標を達成しようと、極端な対立を招くような政策を採用し、その政策に反対する国家機関にまつわる言語道断の陰謀論を広め、国に忠誠を尽くすエリートたちに、「ディープステート(闇の政府)」の売国奴というレッテルを貼った。 政府は、外部からの脅威が高まっているさなかに、政策がイスラエルを危険にさらし、抑止力を損なっていると、自国の治安部隊や無数の専門家から繰り返し警告されていた。それにもかかわらず、イスラエル国防軍の参謀総長が、政府の政策が及ぼす治安上の影響についてネタニヤフに警告するために会見を求めると、ネタニヤフは会うことを拒んだ。それでもヨアヴ・ガラント国防相が警鐘を鳴らすと、ネタニヤフは彼の更迭を決めた。その後それを撤回せざるをえなくなったが、それは民衆が激しい怒りを爆発させたからにすぎない。ネタニヤフがそのような行動を長年取り続けたせいで、イスラエルが惨禍に見舞われる状況を招いたのだ。 イスラエルや、イスラエル=パレスティナ紛争をどう考えていようと、ポピュリズムがイスラエルという国家を蝕(むしば)んだことを、世界中の他の民主主義国家は教訓として受け止めるべきだ』、「イスラエルの人々は長年の思い上がりの代償を払っているといえる。歴代の政権と多くの一般国民が、私たちはパレスティナ人よりもはるかに強い、彼らはあっさり無視できる、と感じていた。イスラエルがパレスティナ人との和解の試みを放棄し、何十年にもわたって数百万のパレスティナ人を占領下に置いてきたことは、厳しく非難されるべきだ。 
・『依然として破局を防ぐことができる  イスラエルは、自らが破局を迎えることを依然として防ぐことができる。イスラエルは、ハマスをはじめ、多くの敵たちに対して今なお軍事面で圧倒的な優位に立っている。ユダヤ民族の長い苦しみの歴史の記憶が、今、国民を奮い立たせている。イスラエル国防軍その他の国家機関は、当初の衝撃から立ち直りつつある。市民社会は、かつてないような形で立ち上がり、政府の機能障害が残した多くの隙間を埋めている。市民は長蛇の列を成して献血し、交戦地帯からの避難民を自宅に喜んで受け入れ、食物や衣料、その他の必需品を寄付している。 助けが必要な今このとき、私たちは世界中の友人たちにも支援を呼びかけている。これまでのイスラエルの振る舞いには、とがめるべきことが多々ある。過去を変えることはできないが、ハマスに勝利した暁には、イスラエルの人々は現政権に責任を取らせるだけではなく、ポピュリズムの陰謀論やメシア信仰の幻想も捨て去り、そして、国内には民主主義を、国外には平和を、というイスラエル建国の理想を実現するために、誠実な努力をすることが願われてやまない。 (ユヴァル・ノア・ハラリ氏の略歴はリンク先参照)』、「平和を望む者なら誰もが、ハマスを糾弾し、制裁を課し、人質全員の即時解放と、ハマスの完全な武装解除を要求しなくてはならない。 さらに、イスラエルにどれほどの責任を帰すことにしようと、それでこの国の機能不全を説明することはできない。歴史は道徳の物語ではない。イスラエルの機能不全の真の原因は、この国の不道徳とされているものではなく、ポピュリズム(大衆迎合主義)だ。何年にもわたって、イスラエルはポピュリズムの強権的指導者ベンヤミン・ネタニヤフが支配してきた。彼はPRの天才だが、首相としては無能だ。何度となく自分の個人的利益を国益に優先し、国民の内紛を誘うことでキャリアを築いてきた。能力や適性よりも自分への忠誠に基づいて人々を要職に就け、成功はすべて自分の手柄にする一方、失敗の責任はいっさい取らず、真実を語ることも耳にすることも軽んじているように見える。) ネタニヤフが2022年12月に樹立した連立政権は、最低であり最悪だ。それは、救世主メシア信仰の狂信者たちと厚顔無恥な日和見(ひよりみ)主義者たちの同盟であり、彼らは、治安状況の悪化をはじめ、イスラエルが抱える問題の数々を顧みず、際限なく権力を我が物にすることしか眼中になかった。その目標を達成しようと、極端な対立を招くような政策を採用し、その政策に反対する国家機関にまつわる言語道断の陰謀論を広め、国に忠誠を尽くすエリートたちに、「ディープステート(闇の政府)」の売国奴というレッテルを貼った」、どうも筆者の「ネタニヤフ首相」に対するの評価はさんざんのようだ。

次に、12月7日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/719481
・『イスラエル軍によるガザ攻撃が再開され、状況の悪化がさらに深刻になっているイスラエル・ハマス紛争は、収束の道がまったく見えない状況が続いている。 そんな中、主要国の間で「イスラエルとパレスチナ国家が平和共存する」という「二国家解決案」が活発に議論され始めた。激しい戦闘のさなかに、互いに相手を国家として認めるという現実離れした夢物語のような話がなぜ今、国際社会で取り上げられているのか』、興味深そうだ。
・『パレスチナと認め合った30年前の「オスロ合意」  二国家解決案の歴史は古く、最初は1947年、独立を求めるユダヤ人とパレスチナ人の緊張が高まる中、国連が総会でこの地域を2つの国家に分割する案を採択した。 パレスチナは領土の半分以上を奪われる案だったために当然、反対したが、ユダヤ人はこの案を受け入れて翌年、イスラエルの独立を宣言した。ユダヤ人とパレスチナ人の緊張はここから一気に高まってしまった。 世界的に注目されたのは1993年の「オスロ合意」だった。 この合意でパレスチナ側を代表するパレスチナ解放機構(PLO)はイスラエルを国家として認め、イスラエルもガザとヨルダン川西岸にパレスチナ暫定自治政府を置くことを認めた。同時にイスラエル軍が占領地から撤退することも盛り込まれた。明文化されなかったものの、パレスチナ人が将来独立国家を手にすることが期待できる内容だった。) 当時、イスラエルがPLOをテロ組織と非難する一方で、PLOはイスラエルを国家と認めず激しく対立していた。にもかかわらず両者はノルウェーの首都、オスロを舞台に水面下で極秘の接触、交渉をしていたのだ。 残念ながらオスロ合意の描いた平和への道筋はわずか2年後、和平推進の中心人物だったイスラエルのラビン首相が暗殺されたためにあっけなく頓挫してしまった。 以後、イスラエルは和平に積極的だった労働党が国民の支持を失い、代わりにパレスチナに対する強硬論を掲げる右派が台頭してきた。現在のネタニヤフ首相もその勢力の一人で、極右政党や宗教政党と組んだ連立政権はイスラエル史上最も右派の政権と言われている』、「1993年の「オスロ合意」・・・でパレスチナ側を代表するパレスチナ解放機構(PLO)はイスラエルを国家として認め、イスラエルもガザとヨルダン川西岸にパレスチナ暫定自治政府を置くことを認めた。同時にイスラエル軍が占領地から撤退することも盛り込まれた。明文化されなかったものの、パレスチナ人が将来独立国家を手にすることが期待できる内容だった。) 当時、イスラエルがPLOをテロ組織と非難する一方で、PLOはイスラエルを国家と認めず激しく対立していた。にもかかわらず両者はノルウェーの首都、オスロを舞台に水面下で極秘の接触、交渉をしていたのだ。 残念ながらオスロ合意の描いた平和への道筋はわずか2年後、和平推進の中心人物だったイスラエルのラビン首相が暗殺されたためにあっけなく頓挫・・・以後、イスラエルは和平に積極的だった労働党が国民の支持を失い、代わりにパレスチナに対する強硬論を掲げる右派が台頭してきた。現在のネタニヤフ首相もその勢力の一人で、極右政党や宗教政党と組んだ連立政権はイスラエル史上最も右派の政権」、なるほど。
・『ガザの非人道的状況を国際社会は放置できない  一方のパレスチナ側はヨルダン川西岸とガザ地区が分裂し、ガザはイスラエルの存在を否定するハマスが支配し、イスラエルに対する攻撃やテロを続けている。オスロ合意にかかわったPLOのアラファト議長も死去し彼を引き継ぐ有力な指導者は登場していない。 イスラエルとパレスチナの間で和平の動きは完全に消えてしまい、国際社会も次第にパレスチナ問題に対する関心を失っていった。そればかりか同じ民族でパレスチナを支持していたアラブ諸国からは、イスラエルとの国交を樹立する国も相次ぎ、パレスチナ側は孤立感を深めていた。 そうした空気が今回のハマスのイスラエル攻撃で一変した。イスラエル軍による攻撃によって生まれたガザの非人道的状況を国際社会は放置できなくなった。かといってイスラエルやハマスの攻撃を止める手立てもない。 そこで浮上してきたのが「二国家解決案」である。) アメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相に繰り返し「二国家解決案が唯一の答えだ」と主張している。EU(欧州連合)のボレル外交安全保障上級代表をはじめ英仏など欧州の主要国首脳も相次いで二国家案の支持を表明している。 11月末には、スペインで開かれたアラブ・EU外相会合で、参加国は二国家解決案が必要という意見で一致した。さらに国連安保理の議論では、インドネシアやロシア、ガーナなども二国家解決案への支持を表明した。 多くの国が二国家解決論を唱えたからといって武力攻撃が止まるわけではない。にもかかわらずなぜ今、セピア色を帯びたような二国家解決案を持ち出したのだろうか』、「イスラエル軍による攻撃によって生まれたガザの非人道的状況を国際社会は放置できなくなった。かといってイスラエルやハマスの攻撃を止める手立てもない。 そこで浮上してきたのが「二国家解決案」である。) アメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相に繰り返し「二国家解決案が唯一の答えだ」と主張している。EU(欧州連合)のボレル外交安全保障上級代表をはじめ英仏など欧州の主要国首脳も相次いで二国家案の支持を表明している」、なるほど。
・『イスラエルに対して手を打てない国際社会  最大の理由は、イスラエルの攻撃がガザ市民の危機的状況を生み出していることに対し、国際社会はなにかメッセージを出さざるをえないためだろう。どの国の指導者もネタニヤフ首相の軍事行動やハマスの攻撃を止めることができない。また歴史的経緯もあって欧米など多くの国はイスラエルをあからさまに非難することもできない。 そんな中でイスラエルもパレスチナも一度は合意した二国家解決案は、一見説得力を持っているように見える便利な方策なのだ。 残念なことにオスロ合意から30年たち、パレスチナ問題をめぐる状況は大きく変化しており、仮に現在の紛争が停戦にこぎつけたとしても二国家解決案は簡単に実現しそうにはない。 オスロ合意を実現したイスラエルのラビン首相は、1991年の湾岸戦争時にイランがイスラエルにミサイルを発射し若者が逃げ惑う状況を見て、「紛争は自分たちの代に終わらせなければならない」と強く思ったという。和平実現に対する強い意志と情熱を持ったラビン首相がPLOのアラファト議長を説得したことで合意することができた。 それに対し現在のネタニヤフ首相は「パレスチナ国家樹立を阻止できるのは自分だけだ」などと公言している正反対の政治家だ。) そもそも二国家解決案は双方が互いに相手の存在を認めることが前提となる。しかし、イスラエルの現政権は、自国の安全のためにガザとヨルダン川西岸の占領や支配の強化、さらには一部の併合さえ主張している。これでは当事者が話し合いのテーブルにつくことさえ難しい。 またイスラエル政府はヨルダン川西岸でのユダヤ人による入植を積極的に進めている。現在、70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配している。その結果、パレスチナ人のエリアは飛び地でわずかに点在しているだけになっている』、「イスラエルの現政権は、自国の安全のためにガザとヨルダン川西岸の占領や支配の強化、さらには一部の併合さえ主張している。これでは当事者が話し合いのテーブルにつくことさえ難しい。 またイスラエル政府はヨルダン川西岸でのユダヤ人による入植を積極的に進めている。現在、70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配している。その結果、パレスチナ人のエリアは飛び地でわずかに点在しているだけになっている」、「ヨルダン川西岸・・・70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配」、そんなに支配が進んでいたとは初めて知った。
・『新たな対立を生むのか、入植の現状を追認するのか  仮にオスロ合意と同じようにヨルダン川西岸全域をパレスチナ国家にするとなれば、入植した70万人のユダヤ人は出ていくことになるのか。それは新たな対立を生むだけだ。だからと言って現状追認でパレスチナ人が住む飛び地だけを新しい国家とすれば、それはもはや国家としての体をなさない。 つまり入植地拡大が事実上、ヨルダン川西岸のパレスチナ国家樹立を不可能にしているのである。 またパレスチナ国家を作るとしても、現在のパレスチナ側にまともな統治主体がないことも大きな問題だ。 今回の紛争でガザ地区の統治を担っていたハマスは壊滅状態となるだろう。イスラエルは少なくともハマスによる統治は認めない。しかし、ハマスに代わる組織は想像すらできない。一方、ヨルダン川西岸を統治する立場にある暫定自治政府は、汚職と腐敗でほとんど当事者能力を失った状態にある。 統治主体なき国家はありえない。パレスチナ国家を作るためには、気の遠くなるような準備が必要になる。) さらにパレスチナ難民の扱いもある。近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえるといわれている。パレスチナ国家が独立すれば難民が戻ってくるのか。現在の人口をはるかに上回る難民の帰還は現実的ではない。 新たな国の安全保障はどうするのか。パレスチナ国家が独自に軍隊を持つことはイスラエルにとっては脅威そのものであり、簡単に認めることはできないだろう。 経済の面では、破壊し尽くされたガザの復興をはじめ、独自の産業も資本もないパレスチナ国家が自立できるまで、国際社会が膨大な支援を求められる。 そもそも国際社会はパレスチナ国家建設のための協力体制を構築できるのだろうか。ウクライナ戦争などで顕在化した欧米と中露の対立は、国連を機能不全に陥らせている。パレスチナ問題で欧米と中露が簡単に歩調を合わせることは想像しにくい』、「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえるといわれている。パレスチナ国家が独立すれば難民が戻ってくるのか。現在の人口をはるかに上回る難民の帰還は現実的ではない。 新たな国の安全保障はどうするのか。パレスチナ国家が独自に軍隊を持つことはイスラエルにとっては脅威そのものであり、簡単に認めることはできないだろう」、「「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえる」とはその扱いも重要だ。「経済の面では、破壊し尽くされたガザの復興をはじめ、独自の産業も資本もないパレスチナ国家が自立できるまで、国際社会が膨大な支援を求められる。 そもそも国際社会はパレスチナ国家建設のための協力体制を構築できるのだろうか・・・欧米と中露の対立は、国連を機能不全に陥らせている。パレスチナ問題で欧米と中露が簡単に歩調を合わせることは想像しにくい」、なるほど。
・『ガザばかりでなくヨルダン川西岸でも目立つ弾圧  かつては現実的な解決策だった二国家解決案は、30年の時を経ていまや手の届かない「理想」に変質してしまったのである。にもかかわらず多くの国がこの案を持ち出すのは、建設的な姿勢を見せるための方便としか見えない。 ガザでは連日、多くの犠牲者が出ているが、同時にあまり注目されていないがヨルダン川西岸でもイスラエル軍や入植者によるパレスチナ人への弾圧が目立っている。相互不信、憎悪の極限状態にある両者に任せても状況は改善されず、永遠にテロと武力攻撃が続くだけだ。だからと言って妙案があるわけではない。 紛争をイスラエルとハマスの問題に封じ込めないで、深刻な国際問題と認識し、国連など国際機関や主要国が連携して本気で取り組む段階にきている。主要国は二国家解決案などという夢物語でお茶を濁すのではなく、とにかくイスラエルに圧力をかけて戦闘を止めることから始めるべきであろう』、「主要国は二国家解決案などという夢物語でお茶を濁すのではなく、とにかくイスラエルに圧力をかけて戦闘を止めることから始めるべきであろう」、同感である。

第三に、12月8日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの長谷川 幸洋氏による「ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/120433?imp=0
・『テロ攻撃を1年以上前から把握  イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権は、イスラム過激派ハマスのテロ攻撃計画を1年以上も前から把握していたにもかかわらず、テロを防げなかった。ハマスを事実上、支援していた政権が、軍の情報と警告を無視したからだ。いったい、何が起きていたのか。 ネタニヤフ政権が「テロ計画を知っていた」という衝撃的な事実は、イスラエルの有力紙ハアレツが11月24日に報じた。それによれば、イスラエル軍は数年前に最初の兆候を入手し「1年以上前には、完全な攻撃計画が明らかになっていた」という。 ニューヨーク・タイムズは6日後の30日、攻撃計画の全容を報じた。同紙が入手した「ジェリコの壁」と呼ばれる文書によれば、ロケット砲による砲撃から始まり、ドローンで監視塔のカメラや自動機関銃を破壊、パラグライダーやオートバイ、徒歩で住民や兵士を殺害していく計画だった。 これは10月7日に実際に起きたテロと、ほとんど同じである。 文書は、イスラエル軍の規模や配置、通信連絡基点の場所も正確に記していた。イスラエル軍から機密情報が流出していた可能性も浮上している。イスラエルが、どうやって攻撃計画の文書を入手したか、も不明だ。双方のスパイが暗躍していたのかもしれない。 ハアレツやニューヨーク・タイムズが報じた背景には、ネタニヤフ政権に打撃になる内部告発が相次いでいた事情がある。 最初は、11月20日にハアレツが報じた女性兵士たちの告発だった。ガザ国境近くの監視塔で、ガザ内部の状況を監視カメラで警戒する女性偵察兵たちは、数カ月前から「異変」に気づいていた』、「ネタニヤフ政権は、イスラム過激派ハマスのテロ攻撃計画を1年以上も前から把握していたにもかかわらず、テロを防げなかった。ハマスを事実上、支援していた政権が、軍の情報と警告を無視したからだ」、思いがけないニュースだ。
・『軍事情報機関研究部門の責任者が暴露  男たちが監視塔や戦車の模型をドローンで攻撃したり、国境フェンスまで走って何分かかるか、ストップウオッチで測っていた。戦車の兵隊を拘束するリハーサルもしていた。また、高級車に乗ってやってきた覆面姿のハマス高官と思しき男たちが、現場で何かを相談している様子も目撃された。 彼女たちは上層部に異変を報告したが、無視されてしまった。 それだけではない。軍はテロ前夜、国境を守る特殊部隊を増強したが、最前線にいる彼女たちには、それを連絡しなかった。結果的に、彼女たちは無防備のまま、テロに遭遇し、数十人が殺されたり、誘拐されたりしてしまった。彼女たちは、そんな一部始終を匿名でハアレツに暴露したのである。 記事は反響を呼んだ。 米メディア、ポリティカ欧州版は翌21日、ハアレツの記事を引用する形で、女性偵察兵たちの告発を報じた。イスラエルの軍事情報機関研究部門の責任者であるアミット・サール准将は、実名でハアレツの取材に応じて「自分はネタニヤフ首相にイランやイスラム過激派ヒズボラ、ハマスが攻撃してくる可能性を警告していた」と暴露した。 彼は、ネタニヤフ政権が当時、進めていた大掛かりな司法改革が、ハマスにとって攻撃の絶好のチャンスであり「パーフェクト・ストーム(完全な嵐)になる」と警告していた。最高裁の機能を弱める司法改革案は、イスラエルの国論を2分し、大規模な反対デモが連日、繰り広げられていた。それが「敵の攻撃を招く」とみたのだ。 11月24日には、敵の軍事ドクトリンを分析する専門部隊、8200部隊の下士官も、内部告発に加わった。彼女はハアレツに匿名で「自分はハマスの意図を警告する報告書を3通書いた」と訴えた。こうした流れのなかで、冒頭に紹介した「イスラエルは1年以上前から、ハマスの攻撃を知っていた」という特ダネが出てきたのだ。これも内部告発に基づく情報とみていいだろう。 ネタニヤフ政権は、なぜ現場から上がっていた情報を無視したのか。 攻撃計画を報じたニューヨーク・タイムズは「当局が『ハマスには実行する能力がなく、計画は希望的なものだ』とみて退けていた」と報じている。 だが、本当の理由はそれだけではない』、「ネタニヤフ政権が当時、進めていた大掛かりな司法改革が、ハマスにとって攻撃の絶好のチャンスであり「パーフェクト・ストーム(完全な嵐)になる」と警告していた。最高裁の機能を弱める司法改革案は、イスラエルの国論を2分し、大規模な反対デモが連日、繰り広げられていた。それが「敵の攻撃を招く」とみたのだ・・・ネタニヤフ政権は、なぜ現場から上がっていた情報を無視したのか。 攻撃計画を報じたニューヨーク・タイムズは「当局が『ハマスには実行する能力がなく、計画は希望的なものだ』とみて退けていた」と報じている。 だが、本当の理由はそれだけではない」、「本当の理由」は何なのだろう。
・『ハマスを支援していたネタニヤフ政権  ネタニヤフ政権は事実上、ハマスを支援していたのである。それは、テロ攻撃の前から指摘されていた。たとえば、ニューヨーク・タイムズの著名コラムニスト、トーマス・フリードマン氏は2021年5月16日のコラムで、こう書いている。 〈ハマスとビビ(注・ネタニヤフの愛称)は会話していない。会話する必要がない。彼らはお互いが権力の座にとどまるために、必要としているものを理解しており、意識的であれ、無意識であれ、彼らはそれを相手に提供しようとしている〉 〈過去12年間、ビビは「ハマスを維持する一方、パレスチナ自治政府(PA)を弱体化して分断する」という使命を抱いていた。そうすれば、米国の議会で「私は平和を愛している。だが、あちら側には相手がいない。パレスチナ人は弱体化して分裂している」と言えるからだ〉 〈ハマスにも「ネタニヤフを権力の座にとどめる」という使命があった。そうすれば、ハマスとイランにいる支持者たちは、欧州やリベラルな大学のキャンパス、メディア、民主党などにいる脳天気な支持者たちに向かって「問題はハマスではない。酷いイスラエルのネタニヤフ政権なのだ」と言えるのだ〉 つまり、ネタニヤフ政権は「ハマスとPLO=パレスチナ自治政府の分断統治」によって、イスラエル国家の安泰を目指していたのである。 こうした分析は、いまや広く世界で共有されている。歴史家のアダム・ラズ氏は10月20日、ハアレツ紙上でこう指摘した。 〈2009年に政権に復帰して以来、ネタニヤフの手法は一貫して、ガザのハマスを強化する一方、パレスチナ自治政府を弱体化するというものだった。彼はハマス体制を終わらせる、いかなる外交的、軍事的試みにも抵抗してきた〉 〈彼が2019年4月に「我々はハマスへの抑止力を回復した。主要な供給源を断ち切った」と宣言したのは、真っ赤な嘘だ〉 〈彼はパレスチナ人の受刑者を解放し、カタールがハマスに現金を提供するのを容認し、建設資材はじめ、さまざまな物資をガザが輸入するのを認めた。それらは、テロに使われた。パレスチナ人がイスラエルで働く労働許可証も増やした。これが、テロリズムの蔓延とネタニヤフ支配の共存につながったのだ〉』、「ハマスとビビ(注・ネタニヤフの愛称)は会話していない。会話する必要がない。彼らはお互いが権力の座にとどまるために、必要としているものを理解しており、意識的であれ、無意識であれ、彼らはそれを相手に提供しようとしている〉 〈過去12年間、ビビは「ハマスを維持する一方、パレスチナ自治政府(PA)を弱体化して分断する」という使命を抱いていた。そうすれば、米国の議会で「私は平和を愛している。だが、あちら側には相手がいない。パレスチナ人は弱体化して分裂している」と言えるからだ〉 〈ハマスにも「ネタニヤフを権力の座にとどめる」という使命があった。そうすれば、ハマスとイランにいる支持者たちは、欧州やリベラルな大学のキャンパス、メディア、民主党などにいる脳天気な支持者たちに向かって「問題はハマスではない。酷いイスラエルのネタニヤフ政権なのだ」と言えるのだ」、なるほど。
・『退場のときが近づく  10月20日付の英ガーディアンは、ネタニヤフ氏が2019年3月、自ら率いる右派政党リクードの会合で、ハマス支援を呼びかけた有名な言葉を紹介している。彼は、こう演説していた。 〈パレスチナ国家の誕生を阻止したいと望むものは、誰でもハマスの強化とハマスへの現金供給を支援しなければならない。これは、ガザのパレスチナ人をヨルダン川西岸のパレスチナ人から孤立させる、我々の戦略の一部なのだ〉 政権内部からも、ネタニヤフ政権とハマスの蜜月を裏付ける実名証言が出た。先に触れた11月21日付のポリティコは、イスラエル国防情報部の責任者マイケル・ミルシュタイン氏の発言を紹介している。 〈偵察兵たちの話は「ハマスは革命運動から次第に穏健になって、もっと現実的な組織に変わっている」というストーリーにそぐわなかった。ハマスを飼い慣らすことが統治であり、彼女たちの警告はそれに合わなかったのだ。だが、それは希望的観測だった〉
ネタニヤフ政権は、どうなるのか。 政権のスポークスパーソンはニューヨーク・タイムズ報道後の12月1日、米CNNで「10月7日の大虐殺は、我々の側の失敗だ。何が起きていたのか、徹底的に検証する。それ以外に選択肢はない」と語った。防諜機関シンベットの責任者であるロネン・バー氏も「責任は私にある」と認めている。 世論調査では、ニューヨーク・タイムズの報道前から、政権与党の支持率が急落している。11月26日付の米ワシントン・ポストは「ネタニヤフとハマスはお互いに依存し合ってきた。両者は、ともに退場するときが近づいている」と書いた。政権交代は時間の問題だろう。 12月6日に配信したYouTube番組「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」は、私の1人語りで「自民党の政治資金問題」について解説しました。 7日には「カナダに出国した香港の周庭は安全か」を、同じく1人語りで配信しました。 8日には、ニコ生番組「長谷川幸洋Tonight」で、イスラエル情勢などについて解説します』、「ネタニヤフ政権は、どうなるのか。 政権のスポークスパーソンはニューヨーク・タイムズ報道後の12月1日、米CNNで「10月7日の大虐殺は、我々の側の失敗だ。何が起きていたのか、徹底的に検証する。それ以外に選択肢はない」と語った。防諜機関シンベットの責任者であるロネン・バー氏も「責任は私にある」と認めている。 世論調査では、ニューヨーク・タイムズの報道前から、政権与党の支持率が急落している。11月26日付の米ワシントン・ポストは「ネタニヤフとハマスはお互いに依存し合ってきた。両者は、ともに退場するときが近づいている」と書いた。政権交代は時間の問題だろう」、「ネタニヤフとハマス」の馴れ合い終了後は、どうなるのだろう。

第四に、12月8日付けNewsweek日本版「「ホロコースト」の過去を持つドイツで、いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/12/post-103169.php
・『<イスラエル軍とハマスの戦闘が始まってから、悪夢の歴史を持つドイツで「反ユダヤ」的な事件が頻発するように。過激な事件も起きている> イスラム組織ハマスによるイスラエルへの奇襲と、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの報復攻撃を受けて、ホロコーストの過去を持つドイツが揺れている。 政府は全面的なイスラエル支持を表明しているが、国内では反ユダヤ主義的な事件が急増。反ユダヤ主義調査情報センター(RIAS)によれば、衝突が始まった10月7日から11月9日にかけて、ドイツで起きた反ユダヤ主義的事件は994件。1日平均29件に達し、昨年同時期の320%増となっている。 その多くは攻撃的な言動などのレベルにとどまるが、ベルリンのシナゴーグ(ユダヤ教会堂)に火炎瓶が投げ付けられるなど一部で過激な事件も発生している。 +994件(10月7日から11月9日にかけてドイツ国内で発生した反ユダヤ主義的事件の件数) +29件(事件の1日当たりの平均件数) +320%増(昨年同時期との比較)』、「ドイツ」は「イスラエル」に贖罪の念を抱いている筈だが、「イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの報復攻撃」の余りの酷さで、「反ユダヤ主義的な事件が急増」せざるを得なくなったようだ。 
タグ:「ドイツ」は「イスラエル」に贖罪の念を抱いている筈だが、「イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの報復攻撃」の余りの酷さで、「反ユダヤ主義的な事件が急増」せざるを得なくなったようだ。 Newsweek日本版「「ホロコースト」の過去を持つドイツで、いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増」 いている」と書いた。政権交代は時間の問題だろう」、「ネタニヤフとハマス」の馴れ合い終了後は、どうなるのだろう。 「ネタニヤフ政権は、どうなるのか。 政権のスポークスパーソンはニューヨーク・タイムズ報道後の12月1日、米CNNで「10月7日の大虐殺は、我々の側の失敗だ。何が起きていたのか、徹底的に検証する。それ以外に選択肢はない」と語った。防諜機関シンベットの責任者であるロネン・バー氏も「責任は私にある」と認めている。 世論調査では、ニューヨーク・タイムズの報道前から、政権与党の支持率が急落している。11月26日付の米ワシントン・ポストは「ネタニヤフとハマスはお互いに依存し合ってきた。両者は、ともに退場するときが近づ そうすれば、米国の議会で「私は平和を愛している。だが、あちら側には相手がいない。パレスチナ人は弱体化して分裂している」と言えるからだ〉 〈ハマスにも「ネタニヤフを権力の座にとどめる」という使命があった。そうすれば、ハマスとイランにいる支持者たちは、欧州やリベラルな大学のキャンパス、メディア、民主党などにいる脳天気な支持者たちに向かって「問題はハマスではない。酷いイスラエルのネタニヤフ政権なのだ」と言えるのだ」、なるほど。 「ハマスとビビ(注・ネタニヤフの愛称)は会話していない。会話する必要がない。彼らはお互いが権力の座にとどまるために、必要としているものを理解しており、意識的であれ、無意識であれ、彼らはそれを相手に提供しようとしている〉 〈過去12年間、ビビは「ハマスを維持する一方、パレスチナ自治政府(PA)を弱体化して分断する」という使命を抱いていた。 ネタニヤフ政権は、なぜ現場から上がっていた情報を無視したのか。 攻撃計画を報じたニューヨーク・タイムズは「当局が『ハマスには実行する能力がなく、計画は希望的なものだ』とみて退けていた」と報じている。 だが、本当の理由はそれだけではない」、「本当の理由」は何なのだろう。 「ネタニヤフ政権が当時、進めていた大掛かりな司法改革が、ハマスにとって攻撃の絶好のチャンスであり「パーフェクト・ストーム(完全な嵐)になる」と警告していた。最高裁の機能を弱める司法改革案は、イスラエルの国論を2分し、大規模な反対デモが連日、繰り広げられていた。それが「敵の攻撃を招く」とみたのだ・・・ 「ネタニヤフ政権は、イスラム過激派ハマスのテロ攻撃計画を1年以上も前から把握していたにもかかわらず、テロを防げなかった。ハマスを事実上、支援していた政権が、軍の情報と警告を無視したからだ」、思いがけないニュースだ。 長谷川 幸洋氏による「ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に」 現代ビジネス 「主要国は二国家解決案などという夢物語でお茶を濁すのではなく、とにかくイスラエルに圧力をかけて戦闘を止めることから始めるべきであろう」、同感である。 「「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえる」とはその扱いも重要だ。「経済の面では、破壊し尽くされたガザの復興をはじめ、独自の産業も資本もないパレスチナ国家が自立できるまで、国際社会が膨大な支援を求められる。 そもそも国際社会はパレスチナ国家建設のための協力体制を構築できるのだろうか・・・欧米と中露の対立は、国連を機能不全に陥らせている。パレスチナ問題で欧米と中露が簡単に歩調を合わせることは想像しにくい」、なるほど。 「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえるといわれている。パレスチナ国家が独立すれば難民が戻ってくるのか。現在の人口をはるかに上回る難民の帰還は現実的ではない。 新たな国の安全保障はどうするのか。パレスチナ国家が独自に軍隊を持つことはイスラエルにとっては脅威そのものであり、簡単に認めることはできないだろう」、 「ヨルダン川西岸・・・70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配」、そんなに支配が進んでいたとは初めて知った。 「イスラエルの現政権は、自国の安全のためにガザとヨルダン川西岸の占領や支配の強化、さらには一部の併合さえ主張している。これでは当事者が話し合いのテーブルにつくことさえ難しい。 またイスラエル政府はヨルダン川西岸でのユダヤ人による入植を積極的に進めている。現在、70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配している。その結果、パレスチナ人のエリアは飛び地でわずかに点在しているだけになっている」、 「イスラエル軍による攻撃によって生まれたガザの非人道的状況を国際社会は放置できなくなった。かといってイスラエルやハマスの攻撃を止める手立てもない。 そこで浮上してきたのが「二国家解決案」である。) アメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相に繰り返し「二国家解決案が唯一の答えだ」と主張している。EU(欧州連合)のボレル外交安全保障上級代表をはじめ英仏など欧州の主要国首脳も相次いで二国家案の支持を表明している」、なるほど。 宗教政党と組んだ連立政権はイスラエル史上最も右派の政権」、なるほど。 当時、イスラエルがPLOをテロ組織と非難する一方で、PLOはイスラエルを国家と認めず激しく対立していた。にもかかわらず両者はノルウェーの首都、オスロを舞台に水面下で極秘の接触、交渉をしていたのだ。 残念ながらオスロ合意の描いた平和への道筋はわずか2年後、和平推進の中心人物だったイスラエルのラビン首相が暗殺されたためにあっけなく頓挫・・・以後、イスラエルは和平に積極的だった労働党が国民の支持を失い、代わりにパレスチナに対する強硬論を掲げる右派が台頭してきた。現在のネタニヤフ首相もその勢力の一人で、極右政党や 「1993年の「オスロ合意」・・・でパレスチナ側を代表するパレスチナ解放機構(PLO)はイスラエルを国家として認め、イスラエルもガザとヨルダン川西岸にパレスチナ暫定自治政府を置くことを認めた。同時にイスラエル軍が占領地から撤退することも盛り込まれた。明文化されなかったものの、パレスチナ人が将来独立国家を手にすることが期待できる内容だった。 薬師寺 克行氏による「イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質」 恥な日和見(ひよりみ)主義者たちの同盟であり、彼らは、治安状況の悪化をはじめ、イスラエルが抱える問題の数々を顧みず、際限なく権力を我が物にすることしか眼中になかった。その目標を達成しようと、極端な対立を招くような政策を採用し、その政策に反対する国家機関にまつわる言語道断の陰謀論を広め、国に忠誠を尽くすエリートたちに、「ディープステート(闇の政府)」の売国奴というレッテルを貼った」、どうも筆者の「ネタニヤフ首相」に対するの評価はさんざんのようだ。 何年にもわたって、イスラエルはポピュリズムの強権的指導者ベンヤミン・ネタニヤフが支配してきた。彼はPRの天才だが、首相としては無能だ。何度となく自分の個人的利益を国益に優先し、国民の内紛を誘うことでキャリアを築いてきた。能力や適性よりも自分への忠誠に基づいて人々を要職に就け、成功はすべて自分の手柄にする一方、失敗の責任はいっさい取らず、真実を語ることも耳にすることも軽んじているように見える。) ネタニヤフが2022年12月に樹立した連立政権は、最低であり最悪だ。それは、救世主メシア信仰の狂信者たちと厚顔無 「平和を望む者なら誰もが、ハマスを糾弾し、制裁を課し、人質全員の即時解放と、ハマスの完全な武装解除を要求しなくてはならない。 さらに、イスラエルにどれほどの責任を帰すことにしようと、それでこの国の機能不全を説明することはできない。歴史は道徳の物語ではない。イスラエルの機能不全の真の原因は、この国の不道徳とされているものではなく、ポピュリズム(大衆迎合主義)だ。 「イスラエルの人々は長年の思い上がりの代償を払っているといえる。歴代の政権と多くの一般国民が、私たちはパレスティナ人よりもはるかに強い、彼らはあっさり無視できる、と感じていた。イスラエルがパレスティナ人との和解の試みを放棄し、何十年にもわたって数百万のパレスティナ人を占領下に置いてきたことは、厳しく非難されるべきだ。 ・・・イスラエルは、このようなことが二度と起こらないようにするために建国された。 それにもかかわらず、なぜ今回の惨劇は起こったのか? イスラエルという国は、どうして道を見失ってしまったのか?」、なるほど。 「ハマスはこの2つのキブツを何時間も完全に掌握していた。テロリストたちは家を一軒一軒回り、組織的に家族を皆殺しにしたり、子供の目の前で親を殺したり、赤ん坊や老婆さえも人質に取ったりした。生き延びた人々は恐怖におののきながら、戸棚の中や地下室に身を隠し、軍や警察に電話をして助けを求めたが、多くの場合、救助隊が到着したときにはすでに手後れだった ユヴァル・ノア・ハラリ氏による「イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」」 東洋経済オンライン (その1)(イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」、、もはや「わざと戦争を長引かせて」政治生命の維持に固執するしかない ネタニヤフとその代償、イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質、ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に、「ホロコースト」の過去を持つドイツで いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増) イスラエル・パレスチナ
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