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ウクライナ(その7)(ウクライナ軍の反転攻勢に焦るプーチン…「核ミサイルを撃つタイミングは今しかない」、「はったりではない」との核の脅しも動員令も プーチンが「負け戦」を認識した証拠、「部分的動員」という賭けに出たプーチンの苦渋 米欧はロシアの核使用示唆に強力な報復を警告) [世界情勢]

ウクライナについては、8月11日に取上げた。今日は、(その7)(ウクライナ軍の反転攻勢に焦るプーチン…「核ミサイルを撃つタイミングは今しかない」、「はったりではない」との核の脅しも動員令も プーチンが「負け戦」を認識した証拠、「部分的動員」という賭けに出たプーチンの苦渋 米欧はロシアの核使用示唆に強力な報復を警告)である。

先ずは、9月22日付け現代ビジネス「ウクライナ軍の反転攻勢に焦るプーチン…「核ミサイルを撃つタイミングは今しかない」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/100050?imp=0
・『奇襲作戦で北東部・ハルキウ州の大半を奪還したウクライナ軍。しかし、油断してはいけない。プーチンはまさに今、最終兵器を放とうとしている。最悪のシナリオを徹底的にシミュレーションする』、興味深そうだ。
・『ウクライナ軍が仕掛けた罠  ウクライナ戦争が重大な転換点を迎えている。9月11日、ウクライナ軍は北東部のハルキウ州のほぼ全域を奪還した。取り戻した領土は4000~6000平方キロメートルとされ、東京都の面積の1.8倍にあたる。ロシア軍は守勢に回り、部隊の再編制を余儀なくされた。被害も甚大で主力兵器である戦車『T-80』を100台以上破壊され、ロシア軍の重要な補給地点であったイジューム、クピャンスクも失った。'14年の東部ドンバス紛争で指揮を取った元ロシア軍司令官のイゴール・ガーキンは此度の敗走についてこう語っている。 「現在の状況を日露戦争になぞらえて表現するならば、奉天会戦という言葉しか思い浮かばない。ロシアは負けつつあるかもしれない」 奉天会戦は日露戦争において、圧倒的に兵力差があったロシア軍を日本軍が破り、後の勝利を決定的とした戦いだ。国内からそんな声が出るほど、ロシアは窮地に立たされているのだ。 ハルキウ州の奪還は用意周到に仕組まれた奇襲作戦だった。8月9日、ウクライナ軍はクリミア半島西部のサキ航空基地を砲撃し、20日には軍港都市セバストポリでロシア黒海艦隊司令部を爆撃した。 その際、黒海艦隊が所有する戦闘機の半数以上を破壊した。ロシア軍は南西部の要衝へルソンで反攻が始まると予測し、北部、東部に駐留していた兵力を南部に移送し、守備を固めた。 しかし、それが罠だった。ウクライナ軍は手薄になったハルキウ州を一気に攻め立てた。軍事評論家の高部正樹氏が語る』、「罠」としては極めて大規模な仕掛けだ。
・『ウクライナが求めていた戦果  「NATO諸国にウクライナへの『支援疲れ』が漂うなか、戦地はほどなく冬を迎えようとしている。積雪や極寒で前線が膠着するし、天然ガス不足に悩むドイツなどヨーロッパ諸国からの支援が滞るかもしれない。ウクライナは、更なる支援を求めるにあたって、何としても戦果を上げたかったのでしょう」 奪還作戦において、成功のカギを担ったのが主に米国から供与された最新兵器である。まずは制空権を確保するために、攻守両面で重要な役割を果たすレーダーを破壊するミサイル『AGM-88 HARM』を導入した。 そして、それを正確に撃ち込むのに一役買ったのが高性能偵察ドローンの『スキャンイーグル』だ。昼夜問わず、24時間航行することが可能で、ロシア軍の砲撃の射程外から電子光学、赤外線を使ったセンサーで敵レーダーの位置を捉えていたのだ。 さらに、自爆特攻ドローン『スイッチブレード』『フェニックスゴースト』が装甲車両などを攻撃し、兵力を弱らせていった。 「特に戦果をあげたのは、高機動ロケット砲システム『HIMARS』です。静止したものを目標にすればGPS誘導でほぼ100%命中させることができます。1~2ヵ月前まで戦況は膠着状態で、ロシア軍がじりじりと前進していましたが、 HIMARSにより司令部、弾薬庫などが攻撃され、前線への補給が滞った。ロシア軍の圧力が弱くなったことで、ウクライナ軍が反撃するための時間・空間的余裕が生まれたのです」(防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄氏) 北東部を解放したウクライナ軍は、南部でも攻勢を強めていくだろう。ゼレンスキー大統領も独立記念日の前日にあたる8月23日、こう宣言している。 「クリミア半島はわれわれの領土であり、他国との協議なしにわれわれが正しいと決めた方法で取り戻す。奪還は、欧州における安全と正義の回復に向けた歴史的な反戦の一歩となる」』、「奪還作戦において、成功のカギを担ったのが主に米国から供与された最新兵器」、やはりロシア製よりはいいようだ。
・『領土を失うくらいなら  ロシア軍はクリミア半島を死守すると同時に、ウクライナ軍を押し戻すために北部の防衛ラインを急いで再構築しなければならない。10月下旬になれば、雪が降り始め前線は動けなくなるからだ。ロシア軍は主力部隊をへルソンに配置しているが、ドニプロ川周辺の橋を『HIMARS』により破壊されて輸送路が断たれている。 自軍が敗退するさまを眺めるプーチン大統領は冷酷な表情を崩さない。だが、その内面は怒りと屈辱、焦りで煮えたぎっているだろう。 プーチンにとって、この戦争の大義名分は「ウクライナに跋扈するネオナチを排除するための祖国防衛」だ。しかし、現状を見てみれば、実効支配していたウクライナ東部のドンバス地方、クリミア半島を失う恐れすらある。 そして、侵攻以前より領土を減らすことになれば、それはプーチンにとって明白な敗北であり、ロシア史上最大の恥となる。 19世紀にナポレオンがロシアに侵攻したとき、政治家たちは自らの指示でモスクワを燃やした。ナポレオンは『占領する意味がない』と撤退。プーチンはその逸話を『ロシアの勝利』とし、何度もプロパガンダとして利用してきた。プーチンは極端な愛国主義者だ。そして、奇しくも、その状況が現代に再現されている。 欧米の息がかかったウクライナ軍が、さらなる侵攻を企てようものなら、自国領土での損害や国際社会からの猛反発も厭わず、常軌を逸した反撃に出るだろう。そのために必要な兵器は、一つしかない。核兵器だ。 「まさに今が使用のタイミングではあります。プーチンが現在、動員している陸軍、空軍の兵力で巻き返すことができないと判断すれば、核兵器を使用する可能性は否定できません」(軍事ジャーナリストの菊池雅之氏) 後編記事『「11月までに決着をつけろ!」…怒り狂うプーチンが「核ミサイルで狙う都市」』では、プーチンが核ミサイルを落とし得ると言われる理由、核を落とし得る場所について紹介する』、「欧米の息がかかったウクライナ軍が、さらなる侵攻を企てようものなら、自国領土での損害や国際社会からの猛反発も厭わず、常軌を逸した反撃に出るだろう。そのために必要な兵器は、一つしかない。核兵器だ。 「まさに今が使用のタイミングではあります」、恐ろしい話だ。「後編」を見てみよう。

次に、この続きを、9月22日付け現代ビジネス「「11月までに決着をつけろ!」…怒り狂うプーチンが「核ミサイルで狙う都市」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/100052?imp=0
・『前編記事『ウクライナ軍の反転攻勢に焦るプーチン…「核ミサイルを撃つタイミングは今しかない」』に続き、プーチンが核ミサイルを落とし得る場所とその理由について、迫っていく』、「核ミサイルを落とし得る場所とその理由」、穏やかではないが、見てみよう。
・『側近はますます強硬に  国内で活発化し始めた反戦運動も核使用の現実味を高める一因となっている。ロシア軍が守勢に回っているという情報が徐々に伝わり、9月11日に行われた統一地方選では、公然と反戦の声を上げる野党政治家や有権者が目立った。 さらに「プーチンの頭脳」と呼ばれるロシアの極右思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏の娘ダリア氏が暗殺された事件でも、反プーチンを掲げる『国民共和国軍』が犯行声明を発表した。 今、ロシア国内ではプーチン更迭を求める動きがかつてないほどに大きくなっているのだ。筑波大学名誉教授の中村逸郎氏が言う。 「プーチンは、11月にバリ島で開かれる予定のG20までに、なんとしても『特別軍事作戦』を終わらせたいという思惑が強い。今の状況のまま出席すると、当然、欠席する国は多くなり、国際社会での孤立が浮き彫りになってしまいます。そうなれば、厭戦気分が漂い始めた国内でも世論に押され、プーチン陣営の支持基盤も揺らいでくる。 一方で、ウクライナ侵攻を主導したロシア連邦安全保障会議書記のパトルシェフら側近はより強硬な手段を主張し始めています。核兵器を使い、強引にでも作戦を終わらせることもあり得なくはありません」』、「11月にバリ島で開かれる予定のG20までに、なんとしても『特別軍事作戦』を終わらせたいという思惑が強い」とはいうものの、「核兵器を使」えば、「G20」から締め出されることは確実だ。
・『プーチンが「狙う」場所  ウクライナ軍が米国から供与された最新兵器で攻勢を続けるなか、プーチンは一発の核ミサイルで戦況をひっくり返そうとしている。いったい、どこが狙われるのか。 「『威嚇』として人的被害が少なく、かつロシアの領土に放射能の影響が及びにくい地方の原野などに、広島原爆の3分の1程度の威力を持った核ミサイルを落とす可能性があります。首都・キーウとオデーサを結んだ直線から東に離れたウクライナ中央部が着弾地点になると思います」(軍事評論家の高部正樹氏) 人的被害を避けるという意味では海上で爆発させる可能性もある。その際、狙われるのはオデーサ沖合の黒海だ。海上ならば人的被害もなく、北風で放射能は南に流れていき、クリミア半島に放射能の影響が及ぶことはない。NATO諸国も報復はしてこないと踏んでいるのだ。 プーチンは原発を使った「核攻撃」を行う怖れもある。特殊部隊などの手で故意に事故を発生させ、放射能をバラまくのだ。標的になるのは南ウクライナ原発だろう。 現在ロシアが実効支配している地域にあるザポリージャ原発とちがって、ここならば、支配地域や周辺国の汚染は最小限となる。国際社会からの反発は必至だが、ロシアは「偶発的な事故」としてシラを切るだろう。いずれにしても、南部で攻勢を仕掛けようとしているウクライナ軍に対して強烈な牽制となる。 だが、さらにおぞましいシナリオもある。奪還された都市に駐留するウクライナ軍をターゲットに核ミサイルを撃ち込むことだ。先述したように、プーチンは戦争に負けるくらいなら、自国の領土を放射能で汚染させても勝利をもぎ取ろうとするかもしれない』、「広島原爆の3分の1程度の威力を持った核ミサイル」を、「人的被害が少なく、かつロシアの領土に放射能の影響が及びにくい地方の原野」、或いは「オデーサ沖合の黒海だ」、さらに、「原発を使った「核攻撃」を行う怖れもある。特殊部隊などの手で故意に事故を発生させ、放射能をバラまくのだ。標的になるのは南ウクライナ原発」、いずれも恐ろしいシナリオだ。
・『「早すぎる撤退」の不気味  現在、ロシア側にとって、最も窮地に立たされている戦線は東部のドンバス地方だ。ウクライナ軍は徹甲部隊を投入し、米国から新たに供与された対地雷装甲車『マックスプロ』を駆使して一気に領土奪還を目論んでいる。 「このような状況での核兵器の使われ方はごく単純に言うと二つがあり得ます。一つは相手を引き下がらせるために『使うぞ!』と脅して、相手が引き下がらなかった場合に使うパターン。もう一つは黙って奇襲的に使うパターンです。軍事的には黙って使うほうが効果は高い」(防衛研究所・防衛政策研究室長の高橋杉雄氏) その場合に狙われる地域として、候補に挙げられるのはハルキウ、イジュームなどウクライナ軍が今回の奇襲作戦で奪還した補給の重要拠点だ。ここを叩けば、ウクライナ軍の勢いは止まることになるだろう。 一つ気にかかるのが、これらの都市を奪還されたあとのロシア軍の動きである。異様に早いスピードで撤退したのだ。この急ぎ方は、核ミサイルを撃つための準備ではないかと指摘する専門家も少なくない。 「使用される核兵器は短距離弾道ミサイル『イスカンデル』と見て、間違いないでしょう。射程は500km程度で、東部の国境地帯に配備すれば、現在、戦闘が行われている地域のほとんどの主要都市が射程圏内に収まります」(前出・高部氏) このミサイルの恐ろしいところは、複雑な軌道を描きながら超音速で巡航し、さらに本命の核弾頭を確実に着弾させるために囮の爆弾をバラまくことだ。敵の防空システムは攪乱され、迎撃が非常に難しい。また、機動性も高く、装甲車両に積み込んで敵の攻撃が届かない地域へ短時間で移動させることができる。 ウクライナ軍の奇襲作戦で敗走した3日後、ロシア大統領報道官のペスコフはこう強調した。 「特別軍事作戦は継続しており、当初の目標を達成するまで継続する」 これが本気の発言なら、目標達成のため使われる兵器はもはや一つしか残されていない。77年の歳月を経て、再び世界は核の炎による悲劇を目の当たりにするのか』、「ハルキウ、イジュームなどウクライナ軍が今回の奇襲作戦で奪還した補給の重要拠点だ。ここを叩けば、ウクライナ軍の勢いは止まることになるだろう。 一つ気にかかるのが、これらの都市を奪還されたあとのロシア軍の動きである。異様に早いスピードで撤退したのだ。この急ぎ方は、核ミサイルを撃つための準備ではないかと指摘する専門家も少なくない」、このシナリオも注目される。

第三に、9月23日付け東洋経済オンラインが掲載した新聞通信調査会理事・共同通信ロシア・東欧ファイル編集長の吉田 成之氏による「「部分的動員」という賭けに出たプーチンの苦渋 米欧はロシアの核使用示唆に強力な報復を警告」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/620861
・『プーチン大統領が2022年9月21日、ついに「部分的動員」という大きな賭けに出た。兵力不足が露呈したロシア軍がウクライナ軍の巧妙な反攻作戦で崖っぷちに追い込まれた中、30万人規模の予備役投入で戦局の好転を図った苦肉の策だ。 しかし、予備役の戦線投入は早くて数カ月先とみられ、戦況をただちに有利に転換する可能性は低い。おまけにこれまで「戦争は支持するが、従軍はお断り」と考えてきたノンポリのロシア国民の間で、「プーチン離れ」が進む兆候もすでに出始めている。今回の決定がプーチン氏にとって逆噴射する可能性もある』、「予備役の戦線投入は早くて数カ月先とみられ、戦況をただちに有利に転換する可能性は低い」、「これまで「戦争は支持するが、従軍はお断り」と考えてきたノンポリのロシア国民の間で、「プーチン離れ」が進む兆候もすでに出始めている。今回の決定がプーチン氏にとって逆噴射する可能性もある」、既に、自治共和国などへの出国なども増加、招集逃れへの厳罰化なども相次いでとられているようだ。
・『ためらいがちな「部分的動員」発令  今回のプーチン氏の決定は、「ためらい」の色が濃いものだった。当初前日の2022年9月20日夜に行われると言われていた国民向けの声明は延期され、モスクワ時間の同21日朝にテレビ放送された。もともと大統領は、政権内で「戦争党」とも呼ばれる強硬派や民族派が求めていた国民総動員には消極的だった。クレムリンが独自に秘密裡に行う世論調査で否定的な意見が強かったからだ。 しかし、東北部ハルキウ(ハリコフ)州の要衝イジュムがウクライナ軍の奇襲によってあっという間に陥落するなど日々悪化する戦局に対し、クレムリン内では何らかの手を打つべきとの圧力が高まった。一方で大統領の個人的友人でもある新興財閥の中では「平和党」と呼ばれるグループがいて、総動員に反対していた。 このままでは政権内に大きな亀裂が走ることを恐れたプーチン氏は結局、両派の主張の間をとった妥協策として今回の部分的動員になったとみられる。 「戦争党」には政権ナンバー2のパトルシェフ安全保障会議書記やメドベージェフ前大統領、ウォロジン下院議長など大物政治家が揃っている。平和党と比べ、政治的権力は圧倒的に強い。今回の決定でプーチン氏は政権内でのガス抜きを図ったと言えよう。) しかし、実際の戦局を好転させるだけの結果を出せるかとなると疑問が残る。30万人の予備役招集は発表当日から有効とされたが、いくら軍務経験者といってもこれから訓練をし、装備・軍服を配備し戦線に送れるようになるには今後数カ月かかるとの見方が一般的だ。現在ウクライナに派兵されているロシア軍は20万人以下とみられ、それから比べると30万人という規模はかなりのものだ。 一方でウクライナ軍は、2022年末から2023年初めにかけての冬季期間中でのロシア軍への決定的勝利を目指して反攻作戦を急いでおり、ロシア側の動員が間に合わない可能性もある。おまけにロシア軍の東部・南部での士気低下や指揮系統のマヒは隠しようもないほどだ。予備役が配備されても一度壊れた態勢が回復するとはとても思えない。 現在ウクライナ軍は現在ドネツク州陥落に力点を置いており、隣のルハンシク(ルガンスク)州にはもはや重点を置いていない。ロシア軍の士気があまりに低いからだ。ドネツク州でロシア軍部隊は要衝のバフムトへの攻撃を続けているが、ウクライナ側は「無駄な攻撃」と嘲笑している。軍事的に攻略が不可能なためだ。 しかしプーチン氏はドネツク州の早期の全面的制圧を軍に厳命しており、ロシア軍の現地司令官は「不可能であることをプーチン氏に報告できずに惰性で攻撃しているだけ」とウクライナ側はみている。さらに、ミサイルなどの主力兵器の不足も決定的だ。兵力だけ増やしても戦死者を増やすだけとの批判がウクライナ側からも出ている』、「いくら軍務経験者といってもこれから訓練をし、装備・軍服を配備し戦線に送れるようになるには今後数カ月かかるとの見方が一般的だ。現在ウクライナに派兵されているロシア軍は20万人以下とみられ、それから比べると30万人という規模はかなりのものだ。 一方でウクライナ軍は、2022年末から2023年初めにかけての冬季期間中でのロシア軍への決定的勝利を目指して反攻作戦を急いでおり、ロシア側の動員が間に合わない可能性もある」、「ドネツク州でロシア軍部隊は要衝のバフムトへの攻撃を続けているが、ウクライナ側は「無駄な攻撃」と嘲笑している。軍事的に攻略が不可能なためだ。 しかしプーチン氏はドネツク州の早期の全面的制圧を軍に厳命しており、ロシア軍の現地司令官は「不可能であることをプーチン氏に報告できずに惰性で攻撃しているだけ」とウクライナ側はみている」、実情を知らない「プーチン」が口出しするのも考えものだ。
・『部分動員が国内政治にもたらすリスク  今回の部分動員の発表と合わせ、プーチン氏はロシアへの編入を問う「住民投票」がウクライナ東部や南部の計4州で2022年9月23日から27日までの日程で実施されることを初めて認めた。編入支持が「圧倒的多数」で承認されることは確実で、プーチン氏は新たな領土拡大という戦果を誇示する狙いだろう。 しかし、部分動員という折衷的措置であっても、より広い層の国民を戦場に駆り出すことになる今回の決定は、プーチン氏にとって国内政治的にも大きなリスクをもたらした。多くのロシア国民、とくにモスクワやサンクトペテルブルクといった大都市の住民の多くは、自分たちが戦場に送られない限りにおいて、侵攻を支持するという消極的支持派だからだ。 プーチン政権の内部事情に精通する元クレムリンのスピーチライターで政治評論家のアッバス・ガリャモフ氏は「プーチン氏が国民との社会契約を破った」と指摘する。つまり、社会契約とは「プーチン政権はこれまで志願兵の募集を地方中心で行って、都市部住民にはほとんど触らずに来た。彼らには快適な生活を保障する代わりに、戦争への支持を集めてきた」ことだと説明する。) 戦争中も都市部の住民は旅行したり、通常とほぼ変わらぬ生活を謳歌している。この平和な生活が破られることで、今後国民の間で政権への抗議の機運が広がる可能性も出てきた。同時に既にモスクワなどでは招集される前に国外に脱出を図るパニック的動きが出ている。 一方でウクライナ側としては、ロシア軍の追加派兵によって早期勝利への青写真が狂うことを警戒している。今後米欧に追加の軍事支援を求めることになるだろう。 同時に、ウクライナは巧妙な戦略を別途に検討し始めている。それは、前線のロシア将兵に対し、投降と同時にウクライナへの亡命を呼び掛ける作戦だ。戦線ではすでに投降の動きが出始めている。これを受け、ロシア議会では投降を処罰する法が制定された。 このため、ウクライナ軍はロシア兵に対し、プーチン体制がなくなり、徴兵も投降への処罰もなくなるまでウクライナに留まることを許す方針だ。戦死や投獄よりマシと考えるロシア兵が出てくる可能性はある』、「社会契約とは「プーチン政権はこれまで志願兵の募集を地方中心で行って、都市部住民にはほとんど触らずに来た。彼らには快適な生活を保障する代わりに、戦争への支持を集めてきた」ことだと説明する。) 戦争中も都市部の住民は旅行したり、通常とほぼ変わらぬ生活を謳歌している。この平和な生活が破られることで、今後国民の間で政権への抗議の機運が広がる可能性も出てきた。同時に既にモスクワなどでは招集される前に国外に脱出を図るパニック的動きが出ている」、「これまで志願兵の募集を地方中心で行って、都市部住民にはほとんど触らずに来た」、初めて知った。「都市部住民」はまだ余裕がありそうだ。
・『米欧はプーチン執務室への報復も示唆  今回、国際的に衝撃をもたらしたプーチン氏による核兵器使用の警告について、アメリカをはじめとする西側は警戒しつつも、ロシアに対し、水面下で強く警告している。軍事筋によると、2022年3月の段階で米欧は核をウクライナに使用した場合、ロシア軍核部隊のみならず、「使用を決定した場所」、つまりプーチン氏の執務場所も核で報復攻撃するという警告をバックチャンネルを通してしている。今回のプーチン発言後も同様の警告をしたとみられる。 それでもプーチン氏が核使用に踏み切る可能性があるのか否か。それは本人にしかわからない。しかし、通常戦で苦境にあるクレムリンが核の脅しで米欧やウクライナを威嚇し、自国に有利な形での交渉開始を迫る戦略の可能性が高いと筆者はみる。国際社会は冷静に行動すべきだ』、「2022年3月の段階で米欧は核をウクライナに使用した場合、ロシア軍核部隊のみならず、「使用を決定した場所」、つまりプーチン氏の執務場所も核で報復攻撃するという警告をバックチャンネルを通してしている」、「通常戦で苦境にあるクレムリンが核の脅しで米欧やウクライナを威嚇し、自国に有利な形での交渉開始を迫る戦略の可能性が高い」、「核」が「脅し」ではなく、現実化する可能性もあるだけに、こんな綱渡り戦術は避けてもらいたいものだ。
タグ:「2022年3月の段階で米欧は核をウクライナに使用した場合、ロシア軍核部隊のみならず、「使用を決定した場所」、つまりプーチン氏の執務場所も核で報復攻撃するという警告をバックチャンネルを通してしている」、「通常戦で苦境にあるクレムリンが核の脅しで米欧やウクライナを威嚇し、自国に有利な形での交渉開始を迫る戦略の可能性が高い」、「核」が「脅し」ではなく、現実化する可能性もあるだけに、こんな綱渡り戦術は避けてもらいたいものだ。 「これまで志願兵の募集を地方中心で行って、都市部住民にはほとんど触らずに来た」、初めて知った。「都市部住民」はまだ余裕がありそうだ。 「社会契約とは「プーチン政権はこれまで志願兵の募集を地方中心で行って、都市部住民にはほとんど触らずに来た。彼らには快適な生活を保障する代わりに、戦争への支持を集めてきた」ことだと説明する。) 戦争中も都市部の住民は旅行したり、通常とほぼ変わらぬ生活を謳歌している。この平和な生活が破られることで、今後国民の間で政権への抗議の機運が広がる可能性も出てきた。同時に既にモスクワなどでは招集される前に国外に脱出を図るパニック的動きが出ている」、 ない「プーチン」が口出しするのも考えものだ。 一方でウクライナ軍は、2022年末から2023年初めにかけての冬季期間中でのロシア軍への決定的勝利を目指して反攻作戦を急いでおり、ロシア側の動員が間に合わない可能性もある」、「ドネツク州でロシア軍部隊は要衝のバフムトへの攻撃を続けているが、ウクライナ側は「無駄な攻撃」と嘲笑している。軍事的に攻略が不可能なためだ。 しかしプーチン氏はドネツク州の早期の全面的制圧を軍に厳命しており、ロシア軍の現地司令官は「不可能であることをプーチン氏に報告できずに惰性で攻撃しているだけ」とウクライナ側はみている」、実情を知ら 「いくら軍務経験者といってもこれから訓練をし、装備・軍服を配備し戦線に送れるようになるには今後数カ月かかるとの見方が一般的だ。現在ウクライナに派兵されているロシア軍は20万人以下とみられ、それから比べると30万人という規模はかなりのものだ。 「予備役の戦線投入は早くて数カ月先とみられ、戦況をただちに有利に転換する可能性は低い」、「これまで「戦争は支持するが、従軍はお断り」と考えてきたノンポリのロシア国民の間で、「プーチン離れ」が進む兆候もすでに出始めている。今回の決定がプーチン氏にとって逆噴射する可能性もある」、既に、自治共和国などへの出国なども増加、招集逃れへの厳罰化なども相次いでとられているようだ。 「11月にバリ島で開かれる予定のG20までに、なんとしても『特別軍事作戦』を終わらせたいという思惑が強い」とはいうものの、「核兵器を使」えば、「G20」から締め出されることは確実だ。 「核ミサイルを落とし得る場所とその理由」、穏やかではないが、見てみよう。 現代ビジネス「「11月までに決着をつけろ!」…怒り狂うプーチンが「核ミサイルで狙う都市」」 「欧米の息がかかったウクライナ軍が、さらなる侵攻を企てようものなら、自国領土での損害や国際社会からの猛反発も厭わず、常軌を逸した反撃に出るだろう。そのために必要な兵器は、一つしかない。核兵器だ。 「まさに今が使用のタイミングではあります」、恐ろしい話だ。「後編」を見てみよう。 「奪還作戦において、成功のカギを担ったのが主に米国から供与された最新兵器」、やはりロシア製よりはいいようだ。 吉田 成之氏による「「部分的動員」という賭けに出たプーチンの苦渋 米欧はロシアの核使用示唆に強力な報復を警告」 東洋経済オンライン 「ハルキウ、イジュームなどウクライナ軍が今回の奇襲作戦で奪還した補給の重要拠点だ。ここを叩けば、ウクライナ軍の勢いは止まることになるだろう。 一つ気にかかるのが、これらの都市を奪還されたあとのロシア軍の動きである。異様に早いスピードで撤退したのだ。この急ぎ方は、核ミサイルを撃つための準備ではないかと指摘する専門家も少なくない」、このシナリオも注目される。 「罠」としては極めて大規模な仕掛けだ。 「広島原爆の3分の1程度の威力を持った核ミサイル」を、「人的被害が少なく、かつロシアの領土に放射能の影響が及びにくい地方の原野」、或いは「オデーサ沖合の黒海だ」、さらに、「原発を使った「核攻撃」を行う怖れもある。特殊部隊などの手で故意に事故を発生させ、放射能をバラまくのだ。標的になるのは南ウクライナ原発」、いずれも恐ろしいシナリオだ。 (その7)(ウクライナ軍の反転攻勢に焦るプーチン…「核ミサイルを撃つタイミングは今しかない」、「はったりではない」との核の脅しも動員令も プーチンが「負け戦」を認識した証拠、「部分的動員」という賭けに出たプーチンの苦渋 米欧はロシアの核使用示唆に強力な報復を警告) ウクライナ 現代ビジネス「ウクライナ軍の反転攻勢に焦るプーチン…「核ミサイルを撃つタイミングは今しかない」」
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中国国内政治(その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平と李克強の戦いはずるずる続くのか? どうなる秋の中国共産党大会 鄧小平路線と毛沢東路線 決着がつかない中国のたどる道) [世界情勢]

中国国内政治については、2月18日に取上げた。今日は、(その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平と李克強の戦いはずるずる続くのか? どうなる秋の中国共産党大会 鄧小平路線と毛沢東路線 決着がつかない中国のたどる道)である。

先ずは、3月17日付けNewsweek日本版が掲載した在米ジャーナリストのゴードン・チャン氏による「戦争したくて仕方ない軍部と、共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/03/post-98308_1.php
・『<冬季オリンピックをどうにか終えて、異例の「3期目」党総書記を狙う習近平が直面する党上層部と軍の批判派、そして莫大な債務の山という時限爆弾> 中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、オリンピックによってトップの座に上り詰めたと言っても過言ではない。そして今、オリンピックによって、その座を失う可能性がある。 2008年夏に北京夏季五輪が開催されたとき、習は党幹部として実務面の責任を担った。中国でのオリンピック初開催となったこの大会は経済成長を遂げた中国を世界にお披露目する機会にもなり、人々の愛国心と自尊心を大いに高めた。その成功をバネに、習は2012年秋の中国共産党第18回党大会で党総書記(国家主席)の座へと駆け上がった。 今年の冬、習は再びオリンピック開催を仕切った。華やかな開会式を見守りながら、多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている。 習自身も、党内からの激しい突き上げに遭っている。今秋開催予定の第20回党大会で、党総書記として前代未聞の3期目に突入する計画も必ずしも盤石ではない。冬季五輪の失敗が許されないのはもちろん、スキャンダルもテロもウイグル問題への抗議行動も起こさせず、何より「ゼロコロナ」戦略を成功させなければならない』、「多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている。 習自身も、党内からの激しい突き上げに遭っている」、「著しく強権的になった」が、「現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている」、どういうことだろうか。
・『集団指導体制を廃止したツケ  だからだろう。習は準備段階から細かなことにまで目を配ってきた。「オリンピックの準備作業は習の統治スタイルそのものだ」と、ニューヨーク・タイムズ紙は報じた。「選手村の配置からスキーやスキーウエアのブランドまで、あらゆる決定の中心に習がいた」。建設中のオリンピック関連施設を視察に訪れ、現場監督に指示を与えることもあった。 何か間違いがあれば、自分が責任を問われる状況をつくったのは習自身だ。習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした。) 実際、習の弱肉強食のメンタリティーは多くの党員を震え上がらせた。そして習は「もしその時が来たら、去るべき人物」と彼らに見なされるようになった。絶対的服従を求める習の統治スタイルは、中国の台頭が好調な間は機能した。だが今、長年放置した問題が無視できないものとなり、習の立場を脆弱にしている。 中国が抱える最大の問題は、巨額の債務だ。経営危機に陥った中国恒大集団など、複数の大手不動産デベロッパーは昨年9月以降、相次ぎ債務返済に窮してきた。政府も、とりわけ2008年のリーマン・ショック後に打ち出した大型景気対策のツケに苦しんでいる。中国が抱える債務はGDP比350%との推測もあり、もはや小手先の対策では危機は回避できなくなっている。 その一方で、実体経済は停滞している。食料不足も深刻で、資源は枯渇し、新型コロナウイルス感染症の拡大を加速させる一因となった。さらに中国の人口動態は持続不可能なトレンドをたどっている。西安交通大学の研究チームが昨秋発表した予測では、中国の人口は45年後に現在の半分になる可能性があるという』、「習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした」、自ら蒔いたタネだ。
・『露呈する内紛と、公然と表明される異論  習の強権的な統治スタイルを考えれば、指導部内に不和が生じている明らかな兆候があっても驚きではない。いい例が、共産党の汚職摘発を主導する中央規律検査委員会の機関紙、中国紀検監察報が昨年12月号に掲載した記事だ。 「党中央に反する意見を公然と表明する独善的な幹部がいる」と、同記事は述べている。党中央とは一般的に、習その人を指す用語だ。一部の幹部は「党中央の決定や政策を拒否し、ゆがめ」ており「大それた野心の下で公然と、またはひそかに党中央に背く者もいる」という。 政府のプロパガンダ機関が国家指導者へのあからさまな反抗を報じるのだから、内紛がよほど激烈になっているのは間違いない。 この数週間、中国では複数の高官が習と一致しない見解を公表している。国政助言機関、中国人民政治協商会議の賈慶国(チア・チンクオ)常務委員は、過剰な費用を投じて安全保障を追求する姿勢に警告を発した。これは明らかに、習の路線に対する批判だ。 昨年12月には、共産党機関紙の人民日報が経済改革の特集記事を掲載したが、習には全く触れていなかった。英文メディアの日経アジアが指摘するように「中国の主要紙が習を無視するなら、全ては未知数」だ。 こうした不和への反応として、習は軍の支持獲得に力を入れている。共産主義青年団(共青団)とつながっていた前任者の胡錦濤(フー・チンタオ)、胡の前任者で「上海閥」に支えられた江沢民(チアン・ツォーミン)と異なり、国家主席就任以前の習は党内のいずれの派閥とも密接に結び付く存在ではなかった。 だからこそ、どの派閥からも許容され得る人物として、習は国家主席に選ばれた。だがトップに上り詰めると、権力掌握と効果的な支配には支持基盤が不可欠だと判断し、政治的支援の中核として特定の将軍や司令長官に目を向けるようになった。 今や習の派閥は軍だ。将官クラスの「腐敗分子」処分や人民解放軍の全面的再編を通じて、習は軍を手中に収めたと広く見なされている。 とはいえ、軍が習を手中にしている可能性もある。共産党内で最も統制の取れた派閥である軍が習の行動を指示しているか、軍には望みどおりにさせなければならないと、習は承知しているのではないか』、「国家主席就任以前の習は党内のいずれの派閥とも密接に結び付く存在ではなかった。 だからこそ、どの派閥からも許容され得る人物として、習は国家主席に選ばれた。だがトップに上り詰めると、権力掌握と効果的な支配には支持基盤が不可欠だと判断し、政治的支援の中核として特定の将軍や司令長官に目を向けるようになった。 今や習の派閥は軍だ」、「軍が習を手中にしている可能性もある」、「習の派閥は軍」とは危険な気がする。
・『政治体制内で最も好戦的な集団が得た力  いずれにしても、この力学は危険だ。急速な影響力拡大を受けて、人民解放軍には、より多くの国家資源が割かれている。制服組が多くを占める強硬派が政府の方針を決定していると見受けられ、彼らの「軍事外交」が外交政策になっている。 軍トップの一部は戦いたくてうずうずしており、中国の文民統制はごく緩やかなものでしかない。その結果、軍部が台頭した1930年代の日本と似た不穏な事態が起きている。習が力を与えているのは、中国の政治体制内で最も好戦的な集団だ。 オリンピック・パラリンピックが終わったら中国で何が起きるのか。オーストラリアの元外交官で中国専門家のロジャー・アーレンが言う「際限のない無意味な権力闘争」を、共産党幹部が再開するのは確実だ。 だが今度ばかりは、少なくとも中国の最高指導者にとって、党内争いが重要な結果を伴うことはほぼ間違いない。習が国家主席の座にとどまれば、共産党は事実上、制度として成り立たなくなる。 毛沢東時代の絶対的権力の恐怖を経験した共産党は80年代以降、指導者を制約する規定や慣行の確立に動いてきた。だが毛の強権的システムへの回帰こそ、習が望むものだ。 そんな習の運命は、今秋の党大会で決まる。2018年の憲法改正で国家主席の任期制限が撤廃され、「終身国家主席」も夢ではなくなったが、中国で真の権力を握り続けるためには、共産党総書記の座を維持できなければ意味がない。そして習がその座を維持するためには、冬季オリンピックの成功が不可欠だった。 そのために中国は、世界一厳しいゼロコロナ政策を実施してきた。だが、それでもデルタ株とオミクロン株の感染拡大は封じ込められなかったし、ゼロコロナ政策は中国社会に計り知れないダメージを与えるとともに、経済成長も減速させてきた。さらに、妥協のない防疫措置は、中国が全体主義の国であることを世界中に印象付けることにもなった。 「中国共産党の絶対的指導者である習は、オリンピックで壮大なスペクタクルを見せつければ、自分の体制の正当性を国内外にアピールして名声を獲得できると思ったのだろう」と、マクドナルド・ローリエ研究所(カナダ)のチャールズ・バートン上級研究員は言う。「ところが逆に、国民を隅々まで監視する異常な体制や、人道に反する罪、そして新型コロナのパンデミックを引き起こした責任といった中国の暗い側面に世界の注目を集めることになった」』、「冬季オリンピック」は「国民を隅々まで監視する異常な体制や、人道に反する罪、そして新型コロナのパンデミックを引き起こした責任といった中国の暗い側面に世界の注目を集めることになった」、皮肉な結果だ。
・『五輪で世界の人々が体感した中国の闇  冬季オリンピックは、世界中から集まった競技関係者やジャーナリストが中国のシステムを「体感」する機会にもなったと、バートンは指摘する。ウイグル人やチベット人などの人種的・宗教的マイノリティーに対する虐殺や長期収容、拷問、レイプ、奴隷化、臓器摘出といった残虐行為は話題にさえできない。 だが、こうしたおぞましい行為は、中国共産党の本質であり、今後大衆の目から隠し続けるのは難しくなるだろう。過去3回オリンピックに出場している中国のプロテニス選手の彭帥(ポン・シュアイ)が、昨年11月に前政治局常務委員・副首相をレイプで告発して以来、沈黙を強いられていることに世界の注目が集まったのは、オリンピック開催国だったからでもある。 習は批判の声には直接応えないし、自分に都合のいい現実をつくり出すのがうまい。だが、今後はそのやり方や体制に疑問を投げ掛けるのは、反体制派だけではない。批判の一部は、チャンスをずっとうかがってきた党内上層部から出てくる可能性もある。習は、党と軍の敵対派閥に対する粛清を強化してきたが、敵対派閥もオリンピックで習を粛清する理由を見つけたかもしれない。 3月13日のパラリンピック閉会式をもって「オリンピック期間中の停戦」も終わり、中国政治はますます不穏な時期に突入した。秦剛(チン・カン)駐米大使は今年1月、米メディアのインタビューでアメリカとの「軍事衝突」の可能性を口にした。 冬季オリンピックの評価次第では、習は国内の批判派や政敵を黙らせるために、台湾か近隣諸国に対して何らかの攻撃的措置を取る恐れもある。逆に、オリンピックが成功と評価されたとしても、習はそれに勢いづいて大胆な行動に出る恐れがある。 習が権力を維持するために、決定的な勝利を必要としているのは明らかだ。かねてから、自分には中国だけでなく世界を統治する権利と義務があると主張してきたし、中国は領土獲得を永遠に延期することはできないとも言ってきた。台湾併合によってトップとしての自らの正当性を証明したがっているとも言われる。 昨年7月の中国共産党創立100年の大演説で習は、中国の行く手を阻む者は「打ちのめされる」とし、「中国人民は古い世界を打ち破るだけでなく、新しい世界を建設することにも優れている」と語った。 オリンピックは終わったが、本当の競争は始まったばかりだ』、「冬季オリンピックの評価次第では、習は国内の批判派や政敵を黙らせるために、台湾か近隣諸国に対して何らかの攻撃的措置を取る恐れもある。逆に、オリンピックが成功と評価されたとしても、習はそれに勢いづいて大胆な行動に出る恐れがある」、「台湾併合によってトップとしての自らの正当性を証明したがっているとも言われる」、「中国の行く手を阻む者は「打ちのめされる」とし、「中国人民は古い世界を打ち破るだけでなく、新しい世界を建設することにも優れている」、こうした思い上がった考え方をトップがしているとは、恐ろしい国だ。

次に、9月1日付けJBPressが掲載したジャーナリストの福島 香織氏による「習近平と李克強の戦いはずるずる続くのか? どうなる秋の中国共産党大会 鄧小平路線と毛沢東路線、決着がつかない中国のたどる道」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71641
・『秋の中国共産党大会の日程が8月30日に発表された。七中全会(第7回中央委員会全体会議)が10月9日に始まり、党大会は10月16日から始まる。 思ったより早い開催となったのは、おそらく人事に大きな波乱の要素が今のところない、ということだろう。おそらく習近平の総書記任期継続となりそうだ。 ただ、5年、その権力を保てるかは別だ。周辺の状況をみるに、習近平が圧倒的な権力を掌握しての3期目続投ではなく、今の「習近平 vs.李克強」という党内に「2つの司令部」の権力闘争状況を含めた集団指導体制の継続ということではないだろうか。つまり、党大会で決着がつくと思われていた権力闘争が党大会では終わらず、継続するということだ。 台湾の親中紙の「聯合報」と「経済日報」が8月25日に、「『李上習不下』(李克強が総書記になり、習近平は国家主席と軍事委主席の職位を維持して、権力闘争が継続すること)が“確定”した」と党内筋の話として報じていたが、このニュースはすぐに削除された。可能性としてはこういう形もゼロではないが、このような人事が実現するならば、もう少し周辺がざわつくのではないかと思われる。 では、どのような人事で、どのような路線が党大会後に展開されるのだろう。ちょっと気が早いが、今の段階でありえそうな想定を出してみよう』、興味深そうだ。
・『李克強と習近平がアピールする鄧小平路線と毛沢東路線  河北省で8月1日から15日まで行われた夏の非公式会議、北戴河会議では、習近平が外交、経済、新型コロナ政策、一帯一路などの失敗について、かなり厳しい批判の矢面に立ったとみられている。 内容ははっきりとはわかっていないが、明確にされたのは、8月16日に李克強が経済特区の深圳を視察し、同じ日に習近平が遼寧省錦州市の遼瀋戦役革命記念館を訪れたことだ。 深圳では李克強が鄧小平像に献花し、自ら鄧小平路線の継承者であることをアピールし、企業家や南東部沿海省市の経済官僚を集めて経済座談会も行った。 一方、遼瀋戦役、つまり国共内戦三大戦役の1つである1948年の遼瀋戦役の現場を視察した習近平は、毛沢東路線の継承者であることをアピールしたといえる。遼瀋戦役は毛沢東の戦争であり、国共内戦は今の台湾問題の根源となる戦争だったので、習近平としては、毛沢東の成しえなかった夢を受け継ぐ、つまり台湾を中華民国から「解放」し統一する、というシグナルを発したとみられている。 この北戴河会議直後、李克強と習近平が、それぞれ鄧小平路線と毛沢東路線の両極端をアピールした背景を想像力逞しくすると、北戴河会議で、習近平は様々な政策の失敗について批判を受け、少なくとも経済は李克強主導で鄧小平路線に回帰すべきだ、と迫られた。それに対して習近平が、台湾統一を実現してみせるからもう1期おれに任せろ、と反論したのではないか。武力で台湾統一が実現できるとは党内でもあまり信じられていないので、やれるもんならやってみろとばかりに、ある意味、匙を投げる形で、現状の権力闘争状態がなし崩し的に継続されることになったのかもしれない。 ただ、鄧小平路線と毛沢東路線は正反対の路線であり、共存できる可能性はない。鄧小平の改革開放路線は国際社会、特に西側先進国との融和外交による国内経済の振興であるが、毛沢東路線は、武力やそれを使った恫喝とイデオロギーコントロール強化による個人独裁、個人の権威強化であり、西側経済・外交から自らデカップリングしていく方向性だ。習近平の毛沢東回帰路線が続く限り、中国は外交的に孤立し、経済は急減速し、社会の不安定化と低迷が続くことになるだろう。) おそらくは李克強はそれに抵抗する形で、鄧小平的経済路線を進めようとするだろう。この路線闘争の勝敗の結果が、最終的に権力闘争の勝敗を決することになる』、「北戴河会議で、習近平は様々な政策の失敗について批判を受け、少なくとも経済は李克強主導で鄧小平路線に回帰すべきだ、と迫られた。それに対して習近平が、台湾統一を実現してみせるからもう1期おれに任せろ、と反論したのではないか。武力で台湾統一が実現できるとは党内でもあまり信じられていないので、やれるもんならやってみろとばかりに、ある意味、匙を投げる形で、現状の権力闘争状態がなし崩し的に継続されることになったのかもしれない」、あくまで筆者の福島氏の独断的な見方だ。「ただ、鄧小平路線と毛沢東路線は正反対の路線であり、共存できる可能性はない。鄧小平の改革開放路線は国際社会、特に西側先進国との融和外交による国内経済の振興であるが、毛沢東路線は、武力やそれを使った恫喝とイデオロギーコントロール強化による個人独裁、個人の権威強化であり、西側経済・外交から自らデカップリングしていく方向性だ。習近平の毛沢東回帰路線が続く限り、中国は外交的に孤立し、経済は急減速し、社会の不安定化と低迷が続くことになるだろう。 おそらくは李克強はそれに抵抗する形で、鄧小平的経済路線を進めようとするだろう。この路線闘争の勝敗の結果が、最終的に権力闘争の勝敗を決することになる」、「路線闘争」はさぞかし激しいいものになるだろう。
・『「劣化版」の戦いはずるずる続く  では、最終的に習近平と李克強の路線闘争はどちらが勝つか。 次の党大会の指導部の陣容を想像すると、これまでの5年の間に、きちんと能力のある後継者を育成できなかった習近平の分が悪いのではないか、と思われる。 政治局常務委員7人のうち、習近平を除く68歳以上の老人が引退し、67歳以下が全員残るとすると、引退するのは72歳の栗戦書と68歳の韓正の2人。政治局常務委員の定員数が拡大されないなら、新たに昇進するのは2人で、常識的な予想であれば、現政治局委員で副首相を務める胡春華と丁薛祥の2人だろう。 胡春華は李克強、汪洋の両方から可愛がられている共青団派のエースであり、鄧小平路線の継承者だ。丁薛祥は習近平の秘書役をしてきた習近平の側近で、頭はいいが、党内で重視される、いわゆる行政実務経験が十分ではない。つまり総理や総書記が務まる器ではない。 そうすると、政治局常務委員7人は、習近平、李克強、汪洋、王滬寧、趙楽際、丁薛祥、胡春華となる。李克強派(鄧小平路線継承)が李克強、汪洋、趙楽際、胡春華の4人、習近平派が習近平、王滬寧、丁薛祥の3人で、李克強派が有利になる。 仮に汚職の噂が絶えない趙楽際が引退するとしてもう1人あがるとしたら、宣伝部長で習近平派の黄坤明の可能性があるが、丁薛祥にしても黄坤明にしても小粒感が否めない。また、そもそも王滬寧自身は、江沢民、胡錦涛、習近平という、派閥の色合いの違う3人の指導者とうまくやってきた玉虫色のキャラクターであり、単純に習近平派ともいえない。 政治局25人の面子を考えると、年齢的に11人が引退することになる。この引退者の中に劉鶴(副首相、習近平の経済ブレーン)、栗戦書(全人代常務委員長)、陳希(中央組織部長)が含まれる。この3人は習近平の側近の中で、比較的能力が高く、しかも習近平が心から信頼を置いている人物だ。この3人が政治局を引退することは習近平に大きな痛手となろう。 なぜなら、この3人を除けばその他の習近平派の政治局委員は「七人の小人」と呼ばれるほど小粒ぞろいで、しかも習近平の権力におもねって近寄ってくるに過ぎず、いまいち信用されていないからだ。具体的には蔡奇(北京市書記)、李強(上海市書記)、陳敏爾(重慶市書記)、李希(広東省書記)、丁薛祥(中央弁公庁主任)、黄坤明(中央宣伝部長)、李鴻忠(天津市書記)の7人である。この中で本来、政治局常務委員への出世が期待されていた蔡奇、李強、陳敏爾、李希は全員、新型コロナ対応や電力問題などで行政評価にミソがつき、その無能ぶりを露呈してしまった。彼らが政治局常務委員に出世できるとはちょっと考えにくい。 こうした状況で、権力闘争が継続することになっても、かつての「毛沢東 vs.鄧小平」のような、ダイナミックなものではなく、路線対立軸は同じでもその劣化版の戦いがずるずる続くと思われる。 すでに李克強は首相退任を発表しているので、考えられる職位は総書記か全人代常務委員長くらいだ。李克強は能力的に総書記も十分に務められるので、聯合報の特ダネのような「李克強総書記説」が流れるのだろう。ただ、李克強が総書記になってしまうと、総書記を引退した習近平が首相や全人代委員長など格下の職位に就くことは党内的にはありえないので、政治局常務委員7人では足りなくなる。 中国経済にとって重要なのは、誰が首相を務めるか、だ。能力的には汪洋も胡春華も可能だろう。汪洋が全人代委員長、胡春華が首相、あるいはその反対はあるかもしれない。少なくとも王滬寧や丁薛祥に首相は難しいだろう』、「首相」候補は「李克強派」が有力なようだ。
・『習近平が台湾統一を試みる可能性  こういう状況なので、党大会のあとに展開する中国の状況としては、現在の路線矛盾を抱えながら、外交の孤立化、経済の停滞、社会の混乱が長期化するだろうとの予測が出ている。 つまりは、習近平総書記のまま行き詰まるところまで行き詰まってしまい、その責任を取る形で習近平が総書記を引退する。それが次の党大会の5年後なのかあるいはもう少し早い3年くらい後なのかは分からない。 要するに習近平には毛沢東ほどカリスマ性はなく、李克強には鄧小平ほどの実力はないので、お互いにどちらかを失脚に追い込めるほどの力がない。なので、対立しながら相手の自滅を待つしかないのだ。 そこで一番簡単な予想としては、中国の状況は、5年前後の長い経済・社会停滞期を経験して、社会の不満が習近平政権に向かい、共産党のレジティマシー自体が揺らぐような事態になって初めて習近平が責任を取る形で引退して、新たな集団指導体制で米国はじめ西側社会との外交・経済関係修復をはかる、というパターンか。 だが、習近平が本当に常人に理解しがたいほどの権力欲の塊であったなら、本当に武力による台湾統一を試みようとする可能性はゼロではないだろう。台湾ではロシア・ウクライナ戦争後、防衛費増強と徴兵制延長の問題がかなりホットな話題として議論されているが 8月上旬、ペロシ米下院議長の訪台後に行われた中華民意研究協会の世論調査では、74.7%が徴兵制を現在の4カ月から1年に延長することに賛成している。 知り合いの台湾メディア記者は、「5年以内に台湾海峡危機はありうる。台湾の防衛能力を強化すればするほど、その危機を遠ざけることができると思う」と話していた。 党大会まであと1カ月半、今後どのような変化があるかまだ分からないが、なかなか厳しく不穏な時代が始まろうとしているといえよう』、「習近平には毛沢東ほどカリスマ性はなく、李克強には鄧小平ほどの実力はないので、お互いにどちらかを失脚に追い込めるほどの力がない。なので、対立しながら相手の自滅を待つしかないのだ。 そこで一番簡単な予想としては、中国の状況は、5年前後の長い経済・社会停滞期を経験して、社会の不満が習近平政権に向かい、共産党のレジティマシー自体が揺らぐような事態になって初めて習近平が責任を取る形で引退して、新たな集団指導体制で米国はじめ西側社会との外交・経済関係修復をはかる、というパターンか」、「習近平が本当に常人に理解しがたいほどの権力欲の塊であったなら、本当に武力による台湾統一を試みようとする可能性はゼロではないだろう」、「武力による台湾統一」は起きてほしくないシナリオだ。いずれにせよ中国経済の不振は続き、雇用をめぐる社会不安が高まりそうだ。大混乱に堕ち入らないことを願うばかりだ。
タグ:「多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている。 習自身も、党内からの激しい突き上げに遭っている」、「著しく強権的になった」が、「現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている」、どういうことだろうか。 ゴードン・チャン氏による「戦争したくて仕方ない軍部と、共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時」 Newsweek日本版 「習近平が本当に常人に理解しがたいほどの権力欲の塊であったなら、本当に武力による台湾統一を試みようとする可能性はゼロではないだろう」、「武力による台湾統一」は起きてほしくないシナリオだ。いずれにせよ中国経済の不振は続き、雇用をめぐる社会不安が高まりそうだ。大混乱に堕ち入らないことを願うばかりだ。 「習近平には毛沢東ほどカリスマ性はなく、李克強には鄧小平ほどの実力はないので、お互いにどちらかを失脚に追い込めるほどの力がない。なので、対立しながら相手の自滅を待つしかないのだ。 そこで一番簡単な予想としては、中国の状況は、5年前後の長い経済・社会停滞期を経験して、社会の不満が習近平政権に向かい、共産党のレジティマシー自体が揺らぐような事態になって初めて習近平が責任を取る形で引退して、新たな集団指導体制で米国はじめ西側社会との外交・経済関係修復をはかる、というパターンか」、 「首相」候補は「李克強派」が有力なようだ。 「ただ、鄧小平路線と毛沢東路線は正反対の路線であり、共存できる可能性はない。鄧小平の改革開放路線は国際社会、特に西側先進国との融和外交による国内経済の振興であるが、毛沢東路線は、武力やそれを使った恫喝とイデオロギーコントロール強化による個人独裁、個人の権威強化であり、西側経済・外交から自らデカップリングしていく方向性だ。習近平の毛沢東回帰路線が続く限り、中国は外交的に孤立し、経済は急減速し、社会の不安定化と低迷が続くことになるだろう。 おそらくは李克強はそれに抵抗する形で、鄧小平的経済路線を進めようとする 「北戴河会議で、習近平は様々な政策の失敗について批判を受け、少なくとも経済は李克強主導で鄧小平路線に回帰すべきだ、と迫られた。それに対して習近平が、台湾統一を実現してみせるからもう1期おれに任せろ、と反論したのではないか。武力で台湾統一が実現できるとは党内でもあまり信じられていないので、やれるもんならやってみろとばかりに、ある意味、匙を投げる形で、現状の権力闘争状態がなし崩し的に継続されることになったのかもしれない」、あくまで筆者の福島氏の独断的な見方だ。 福島 香織氏による「習近平と李克強の戦いはずるずる続くのか? どうなる秋の中国共産党大会 鄧小平路線と毛沢東路線、決着がつかない中国のたどる道」 JBPRESS 「中国の行く手を阻む者は「打ちのめされる」とし、「中国人民は古い世界を打ち破るだけでなく、新しい世界を建設することにも優れている」、こうした思い上がった考え方をトップがしているとは、恐ろしい国だ。 「冬季オリンピックの評価次第では、習は国内の批判派や政敵を黙らせるために、台湾か近隣諸国に対して何らかの攻撃的措置を取る恐れもある。逆に、オリンピックが成功と評価されたとしても、習はそれに勢いづいて大胆な行動に出る恐れがある」、「台湾併合によってトップとしての自らの正当性を証明したがっているとも言われる」、 「冬季オリンピック」は「国民を隅々まで監視する異常な体制や、人道に反する罪、そして新型コロナのパンデミックを引き起こした責任といった中国の暗い側面に世界の注目を集めることになった」、皮肉な結果だ。 「国家主席就任以前の習は党内のいずれの派閥とも密接に結び付く存在ではなかった。 だからこそ、どの派閥からも許容され得る人物として、習は国家主席に選ばれた。だがトップに上り詰めると、権力掌握と効果的な支配には支持基盤が不可欠だと判断し、政治的支援の中核として特定の将軍や司令長官に目を向けるようになった。 今や習の派閥は軍だ」、「軍が習を手中にしている可能性もある」、「習の派閥は軍」とは危険な気がする。 「習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした」、自ら蒔 (その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平と李克強の戦いはずるずる続くのか? どうなる秋の中国共産党大会 鄧小平路線と毛沢東路線 決着がつかない中国のたどる道) 中国国内政治
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韓国(尹錫悦大統領)(その2)(韓国が「先進国になった」「日本を超えた」と騒ぐウラで いまひっそり「ヤバすぎる危機」が進行していた…!、“先進国”韓国が「経済崩壊」のカウントダウンで…! もはや「日本超えできない」“危ないシナリオ”が浮上してきた…!、韓国サムスンに引き抜かれた日本人研究者の証言、給料1.7倍で「天国のような環境」 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした10年(前編)、韓国サムスンで10年働いた研究者は見た、すぐクビになる日本人と生き残る日本人の差 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした1 [世界情勢]

韓国(尹錫悦大統領)については、7月2日に取上げた。今日は、(その2)(韓国が「先進国になった」「日本を超えた」と騒ぐウラで いまひっそり「ヤバすぎる危機」が進行していた…!、“先進国”韓国が「経済崩壊」のカウントダウンで…! もはや「日本超えできない」“危ないシナリオ”が浮上してきた…!、韓国サムスンに引き抜かれた日本人研究者の証言、給料1.7倍で「天国のような環境」 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした10年(前編)、韓国サムスンで10年働いた研究者は見た、すぐクビになる日本人と生き残る日本人の差 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした10年(後編)(一部)、韓国経済に黄信号  中国が「お得意さま」からライバルに急変した理由)である。

先ずは、9月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したライターの田中 美蘭氏による「韓国が「先進国になった」「日本を超えた」と騒ぐウラで、いまひっそり「ヤバすぎる危機」が進行していた…!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/98856?imp=0
・『「先進国」になった韓国でひっそり進む「危機」  韓国では、少子高齢化がとどまるところを知らない。 そんな韓国の高齢者たちは一見するとアクティブで、スマホといった最新機器も積極的に使いこなしたり、パワフルで、感心させられることが多い。 しかし、その反面で、社会が急速に変化し、世代間などで生じる対立や分断も深まる中、高齢者たちを取り巻く環境は実に厳しいものとなっている。 韓国といえば、「家族との付き合いが深い」というイメージがある。 このため、家族の集まりや旧盆、旧正月といった伝統行事は妻の立場である女性たちにとってこの上にない精神的な負担と苦痛であることが少なくない。 さらに、義両親があれこれと息子、娘夫婦の孫の育児や教育事情など家庭全般に口出しをして介入してくることで、摩擦が生じることはよくある話である。 だからこそ、ママ友同士で集まれば自然と義実家の愚痴話に花が咲くのである。 一方、中高年の女性たちが集まりながら自分の子どもや嫁、孫の自慢話をしてマウンティングを繰り広げるというのは、これもまた“韓国あるある”な話であり、ドラマなどでもよく描かれる。 これだけを聞けば、韓国の女性たちの老後は子どもや孫の存在が「生きる糧」になっているような印象を受けるが、必ずしもそうではないようである』、「子どもや孫の存在が「生きる糧」に「必ずしもそうではないようである」、どういうことなのだろう。
・『広がる「絶望」  先日、朝鮮日報で韓国のジェンダー問題について特集した記事の中で、60代以上の女性で「メンタルの不調」と訴えるケースが急増していて、その原因の一つに「孫育て」が含まれているというのだ。 日本と同様に共働き家庭が多い韓国では、夫または妻の両親の助けを借りながら育児をする。その理由が「若い頃は義実家に縛られ、老後では孫に縛られ、いつまでも自分のためではなく家族のために生きなくてはならない」ということに虚しさを感じ、自分の人生を悲観するというものである。 5年ほど前に大手建設会社KCC建設のCMが大きな反響を呼んだ。高齢の女性が孫とおぼしき子どもを背負いながら、台所で食事の準備をするシーンが描かれたCMでは、その女性の顔に疲れの色と憂いの表情が浮かんで見えるが、これが「孫育て」をする韓国の高齢女性のありのままの姿といえる。 一人当たりGDPで日本を間もなく抜き去り、「先進国になった」「日本を超えた」という韓国だが、そのウラではこのような社会の歪が起きているわけだ。 日本でも孫の面倒を見ることに疲れやストレスを感じている高齢者は多いという話を聞くが、韓国も日本も「世のすべての祖父母が孫が可愛い、ずっと一緒にいたい」と思っているというのは幻想であり、現実は心に葛藤を抱えている。ここへきて韓国ではウォン高、物価高、金利高の「三重苦」に悩まされている韓国経済だが、新たに高齢者問題が「四重苦」として注目されてきた。 後編記事『“先進国”韓国が「経済崩壊」のカウントダウンで…! もはや「日本超えできない」“危ないシナリオ”が浮上してきた…!』では、そんな韓国経済でいま起きている“危ない現実”についてレポートしよう』、「韓国も日本も「世のすべての祖父母が孫が可愛い、ずっと一緒にいたい」と思っているというのは幻想であり、現実は心に葛藤を抱えている」、その通りなのだろう。

次に、この続きを、9月3日付けダイヤモンド・オンライン「“先進国”韓国が「経済崩壊」のカウントダウンで…! もはや「日本超えできない」“危ないシナリオ”が浮上してきた…!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/98856?imp=0
・『ウォン高、物価高、金利高の「三重苦」に苦しむ韓国で、いま新たに高齢者問題が浮上してきている。 最新の調査では、60代以上の女性で「メンタルの不調」と訴えるケースが急増していて、その原因の一つが「孫育て」だということがわかり、いま話題になっている。よもや家族を支える高齢者が“離脱”すれば、韓国で新たな家族問題に発達しかねない。 そこへ追い打ちをかけるように、韓国では高齢者をめぐって新たな問題も浮上してきた。「先進国」になったと騒ぐ韓国にあって、いま危ない危機が進行し始めているわけだ。その最前線をレポートしよう』、「韓国では高齢者をめぐって新たな問題も浮上」、どんなことなのだろう。
・『高齢女性たちの「深刻すぎる貧困問題」  韓国では、高齢世代の女性たちの「貧困問題」も深刻化している。 映画『ミナリ』でアカデミー賞助演女優賞を獲得したユン・ヨジョンが主演を務めた『バッカスレディ』は、生活のために売春を行う高齢女性の姿を赤裸々に描いた作品である。 「バッカス」は韓国を代表する栄養ドリンク剤の名前であり、ソウルなど都市部の高齢者が集まる場所に現れ、「バッカス」を中高年相手に売りながら、売春を行うというというものである。 一見すると都市伝説のような話であるが、現実であるからこそ、映画にもなり、社会問題としても注目されるのである』、「高齢世代の女性たちの「貧困問題」も深刻化」、「売春」を行うこともあるとは驚かされた。
・『年金、金利、不動産、高齢労働…  最近では高齢女性に限らず、高齢男性がタクシー運転手や配達員、警備員などをして働く姿も目にする。 かつての韓国では50代で仕事をリタイヤするケースがほとんどであった。 それでも、今とは比較にならないほど、物価は安く、銀行の金利は高かった時代でもあり、小さくとも不動産を所有し、それを貸し出すことで得た収入の利息でも受けて蓄えを増やす人も多かった。 そして、老後の生活や介護は子ども、特に長男が無条件に見ることが当然のこととされていた。 つまり、「年金や蓄えがなくとも子どもがいれば何も心配はない」ということだったのだ。 しかし、現在ではどうであろうか――。子どもたちも自分の生活を支えていくだけで精一杯であるうえに、とても高齢の親の家計や介護までを担うことは困難である』、「子どもたちも自分の生活を支えていくだけで精一杯であるうえに、とても高齢の親の家計や介護までを担うことは困難である」、韓国だけでなく、日本でも同様だ。
・『500万世帯に迫る「独居高齢者」  年金制度も開始されて30年ほどで、公務員や教員、軍人といった一部の職業を除けばあとは国民年金であり、その支給額にはやはり大きな差がある。 このため、現在、60代以上の高齢者は少しでの生活の足しを得るために、働かざるを得ない状況なのである。 また、独居高齢者の数は2020年に161万8000世帯で、年々増加傾向にあり、30年後の2050年頃には467万1000世帯にまで増えると見られている。 この背景には、核家族化が進んだことや、日本でいうところの「熟年離婚」の増加が挙げられる。 女性が結婚生活に不満や理不尽さを感じても、昔であれば「離婚はマイナスイメージ」というのが強い上に、女性が一人で生きていくことはほぼ不可能であり、じっと耐えるしかできなかった。 それが、今では迷わず離婚を選ぶことも普通になった』、日本でも「独居高齢者」は2015年で5.7百万人、「熟年離婚」も増えているのも同様だ。
・『完全に崩壊した「人生のモデルケース」  とはいえ、公的年金や高齢者向けの職業斡旋も充実しているとは言い難い。 まして、家族や親族に頼ることが当たり前であった韓国で、いまや子どもに頼ることもできず、高齢者たちにとっては非常に厳しい時代であるといえる。 韓国のみならず、中国でも長きにわたる「一人っ子政策」の弊害が少子化を加速させ、貧困の高齢者問題も深刻化している。 日本も韓国や中国と比較すれば、まだマシと言えるかもしれない。 が、それでも、筆者と同世代の40代は「就職氷河期世代」と言われ、この世代が高齢者の仲間入りをする20~30年後の生活や日本の状況は厳しいと予測されている。 韓国も日本も親世代が歩んで来た「結婚し、子どもを生み育て定年まで勤め上げれば老後は安泰」というモデルケースが完全に崩壊したのだ』、「人生のモデルケース」が「完全に崩壊した」のは「韓国も日本」も同様だ。
・『「日本を超えた」などと言っている場合ではない  いま、高齢者の生活苦や孤独死といった問題はさらに増えていくことであろう。 特に中年世代はこれからの年の重ね方や老後の過ごし方、さらには「終活」についてもシュミレーションをしておく必要があるかもしれない。 この問題を放置しておけば、韓国経済が足元から崩れていくリスクすら秘めている。このままでは「日本を越えた」などと言っていられないほどの危機に直面する危険性すら出てきたというわけだ。 さらに連載記事『韓国が「先進国になった」「日本を超えた」と騒ぐウラで、いまひっそり「ヤバすぎる危機」が進行していた…!』では、そんな韓国で広がる高齢者たちの新たな問題についてレポートしよう』、「韓国」も「日本を超えた」のであれば、「日本」を比較材料にするのではなく、絶対的な指標を重視するべきだろう。

第三に、9月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したビジネスライターの佐久間 俊氏による「韓国サムスンに引き抜かれた日本人研究者の証言、給料1.7倍で「天国のような環境」 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした10年(前編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/308940
・『技術者の「日本離れ」が進んでいる。国内大手企業に勤めるエンジニアや研究者が海外メーカーに引き抜かれ、技術が海外に流出するのだ。長く勤めて安定した大企業正社員の立場を捨てて、海外に出る技術者は、何を魅力に感じて転職するのか?2010年にサムスンに引き抜かれ、10年間勤めたある日本人研究者が、どのように&どんな条件でサムスンに誘われたのか、勤めてみて分かったサムスンと日本の一般企業の違い、韓国社会のどこが良かったかなどについて語る。 閉鎖的な島国、日本の技術の海外流出に歯止めが効かない。 2021年のノーベル物理学賞を受賞した、日本出身で米国籍の気象学者、眞鍋淑郎氏の言葉は記憶に新しい。真鍋氏は「日本人は調和を重んじる。イエスがイエスを意味せず、常に相手を傷つけないよう、周りがどう考えるかを気にする。アメリカでは、他人にどう思われるかを気にせず好きなことができる。私は私のしたいことをしたい」また「私は日本に戻りたくない(略)なぜなら調和の中で生きる能力がないから」と話している。 眞鍋氏でなくても、現在の日本で研究者が自由に研究に打ち込むことは難しくなって来ているのは事実だ。日本でそんな違和感を抱え、私は韓国という新天地を選んだ』、「真鍋氏は「日本人は調和を重んじる。イエスがイエスを意味せず、常に相手を傷つけないよう、周りがどう考えるかを気にする。アメリカでは、他人にどう思われるかを気にせず好きなことができる。私は私のしたいことをしたい」また「私は日本に戻りたくない(略)なぜなら調和の中で生きる能力がないから」と話している」、「日本」でのやり難さを的確に指摘している。
・『今の給与の1.7倍払うので、サムスンで素材開発をしてほしい  2010年当時、私は国内大手材料メーカーで研究者として勤務していた。 朝から雨が降っていたある日、総務課経由で私宛に外線が入っていると連絡があった。いぶかしがりながら回送されてきた受話器を取ると、それは怪しいヘッドハンターからの電話だった。 当時は日本社会全体としてエンジニアの転職(引き抜き)が活発であった時期であり、私も以前から同じような勧誘は何度か受けたことがあったので、特に驚きはしなかった。私はいわゆる古いタイプの会社員であることを自覚している。定年まで勤め上げるのが当たり前、転職には全く興味がなかったし、むしろ転職していく元同僚を憐れんでいた方ですらあった。「怖いもの見たさで、一度くらい話を聞いてみるのもいいか。酒の席で話のネタになるかな……」などと思い、その人と自宅近所の駅の喫茶店で会うことにした。 初回面談の内容はこんな話だった。「サムスンで素材開発を行ってほしい」「あなたの特許出願内容を見て声をかけた」「来て頂けるなら給与は現行の1.5倍出す」と言う。それまで勤めていた会社で心身ともに少し疲れていたタイミングだったこともあり、提示された年棒と残りの会社員人生の期間をあざとく計算しつつ、再度面談するということで一旦別れた。 2回目の面談では、給与は現行の1.7倍に上がり、より具体的な職務内容が提示された。しかしこれまでのキャリアや人脈を捨て、日本を出て韓国にある研究所へ移籍することになるのだ。身軽な単身者とは言え、そうは簡単に決められない』、「身軽な単身者とは言え、そうは簡単に決められない」、慎重なようだ。
・『ヘッドハンターは、心が弱っているときにやってくる  これから海外に行って何年務めることができるか不安があったし、体力的、精神的な限界もあるだろう。急な病気・事故などに遭うこともあるかもしれない。将来貰えるであろう日本での退職金や厚生年金が激減することも容易に計算できた。また、サムスンを退職した後で日本の会社で再就職できるのかという不安もあった。それに、一部には「韓国企業に引き抜かれて転職した人は裏切り者だ」という極端な考え方の人がいることも知っている。 そんな後ろ向きなことばかり色々と考えていると、数日後には3度目の面談を要請された。今度は高級料亭で、しかも先方の役員クラスがわざわざ韓国から出張してきて説得するというではないか。 私は当時40代になったばかり。国内の会社ではふるいに掛けられ、これ以上役職としては上がれそうもなかった。しかし逆に言えば、日本企業に勤め続ければ法律に守られている。あくせく必死に働かずとも、適当に優先度の低い実験をしながら定年まで勤め上げれば、安定した生活を送ることもできる。実際、そういう人間は研究所には多くいた。 そう思っていたはずなのだが、面談を進めていくうちに気持ちが変わってきた。そんなぼんやりとした人生を送るよりも、研究者として世界的大企業に求められて働くほうが、断然刺激的な気がしてきたのだ。3回目の面談の最後には、「これから自分は世界で戦うんだ」という、一種の使命感のようなものまで感じるようになっていたのをよく覚えている。 ヘッドハンティングは、新興宗教の勧誘に近いものがあるのかもしれない。心が弱っているときにやってきて、それまでの自分の考え方をがらりと変えてしまう。 そうこうしているうち、気が付くとソウル行きの航空券と高級ホテルが用意されていた。週末を利用した韓国ツアーだ。韓国に着くと、設備見学や担当役員、上長予定の人との面談が待っていた。細かい契約を文書化して締結し、初めて電話を受けてから3カ月後には、人生初の退職届を出していた』、「3度目の面談」、「先方の役員クラスがわざわざ韓国から出張してきて説得」、「最後には、「これから自分は世界で戦うんだ」という、一種の使命感のようなものまで感じるようになっていた」、さすが説得が巧みだ。
・『サムスンの素晴らしい福利厚生  こうして私は韓国に引っ越し、サムスンで働くことになった。ここからは少し社内外の環境について述べたいと思う。 サムスンは韓国を代表する大企業なだけのことはあり、基本的にはほぼあらゆる面で日本の会社と同等以上のサービスが用意されている。韓国人社員がつくるサムスンの企業文化は、日本の会社にとてもよく似ている部分もあるが、日本では見かけない、ユニークな面もいろいろあった。 例えば福利厚生。私の前職の会社との比較しかできないが、福利厚生で利用できるカフェテリアポイントは日本企業と同じようにいろいろと利用でき、契約している宿泊施設や遊興施設も数多い。また、通販にも利用できるので、家庭を持っている社員には好評のようだ。 また、特筆すべきは年1回の健康診断である。サムスン系列の病院で行うのだが、まるでホテルのように豪華だ。検診には最新鋭の装置を使い、診断後2週間以内には結果が送付されてくる。サムスンの健康診断はどんな小さな異変も見逃さないと、韓国内でも定評があるらしい。特に胃腸の内視鏡検査はすばらしく、睡眠薬で眠っている間に全て完了する。これは是非日本でも普及してほしいと切に思う。 また、社内食堂ではバラエティーに富んだ食事が1日3回無償で提供される。サムスンには労働組合がないのだが(※類似の働きをする組織はあるが、組合ではない)、他にも、誕生日や結婚記念日には会社からプレゼントがもらえるほか、運動会や文化イベント、夕食会など飽きが来ないようにイベントが目白押しだ(※コロナ前)。 面白いのは、文在寅政権になってから週40時間労働制が推進されたおかげで、勤務時間が明らかに短くなったことだ。それまでは土曜日にも当たり前のように出勤していたのだがその習慣もなくなり、無意味な残業が激減したように思う。サムスンのトップはいろいろな罪で頻繁に収監されていたが、会社は国のお手本になろうと努力しているように見えた。 しかしこれだけ恵まれた環境でも、起業や進学といった理由でサムスンを去る韓国人社員は多かった。彼らの上昇志向には感服する』、「これだけ恵まれた環境でも、起業や進学といった理由でサムスンを去る韓国人社員は多かった。彼らの上昇志向には感服する」、「上昇志向」の強さは韓国の強味だ。
・『やりすぎ感のある社内情報セキュリティー  もう一つサムスンの社内環境で印象深かったのは、セキュリティーの厳しさだ。仕事に支障をきたすほど厳格に情報セキュリティーを推進していた。 日本からサムスンの会社、工場、研究所などへ出張で来たことがある人なら、建物に着いてから入場までの時間の長さに辟易(へきえき)したことがあるだろう。社内で使用する全ての紙にはメタルファイバーが埋め込まれており、カバンに隠していても出入口の金属探知機を通過することができないのは有名な話だ。 USBメモリやSDカードなどを持っていても、社内のパソコンでは認識されないので誰も使わない。それどころか、個人用に支給されるパソコンの内部ハードディスクにはデータを記録することができず、特別なクラウドに保管するようになっている。パソコンを記録媒体として使わないのだ。 また、個人所有のスマホには特別なアプリをインストールされ、社内ではカメラが起動できないようになっている。さすがに会社も全社員に強制することはできないので、アプリのインストールを拒否することも可能だ。ただ、そうなると、カメラのレンズ部分に特殊なシールを貼られるまで入場できない。なお余談になるが、社員は皆、スマホはGalaxyを持っているイメージだったが、実際には「かっこいいから」という理由でiPhoneを持っている率も結構高かった』、「社内情報セキュリティー」の厳しさはさすがだ。
・『韓国社会&暮らしのいいところ  ミセモンジ(微細粉塵)で晴れ間が少なく、曇りの日が多い韓国。韓国暮らしについても少し紹介しておこう。 韓国では、新しいテクノロジーを使いこなしている部分と伝統を守っている部分がうまい具合に混じり合い、日本人の目にはユニークな社会を形成しているように見える。みんながスマホまたはパソコンを持っているという前提で社会インフラができており、日本のように弱者に合わせた“優しい社会”ではない。高齢者の方はどう考えているか分からないが、スマホが使える私の年齢だと、とても合理的に見える。 例えば、外国人登録証と銀行口座を紐づけして登録しているので、役所の手続きなどはほとんどオンラインで完結する。最近の例では、新型コロナウィルス関連の生活支援金がこういったシステムのおかげで当日入金されたのは有名だ。日本でこうしたことが進まないのは個人情報を守るべきだという声があるからだろうが、韓国にいると、個人情報の心配より利便性だと感じるし、日本のマイナンバーカードは帰国したらすぐに登録しなければと強く思った。 また、法的規制が少ないのか規制されるのが遅いのか分からないが、韓国ではEVやドローン、電動キックボード等の最新のインフラは、話題になるとすぐに街中で見かけるようになる。日本に比べると規制がゆるく、新しい技術の恩恵をすぐに享受できるので(後に規制が入る場合もあると思うが)社会がダイナミックに見える。もしかすると、日本以外の国はみんなそうで、韓国が特別なわけではないのかもしれないが……。 また、交差点にパラソル(信号待ちの人に日陰を作るため)を設置したり、散歩道や公園が整備されたりと、生活に密着したところに分かりやすく税金が投入されているので、納税者としての満足度も高い。このあたりは税金の使途が分かりにくい日本に比べて、とてもうらやましい点だ。) 住環境に関しては、韓国は日本よりも大変かもしれない。 サムスンに勤める日本人には、単身者でも60~80平方メートル前後、2~3LDKのアパートが貸与される。私の住んでいたアパートは、築年数や駅からの距離、室内設備などから考えると、日本人の感覚としては2000万~3000万円程度の物件にしか見えなかったが、ポストに投函されるチラシを見ると7000万円超のマンションらしい。韓国の不動産バブルが垣間見える瞬間である。 物価面ではよく言われていることだが、光熱費、交通インフラなどが安く、食料品は高い。全体としては日本よりも高いかもしれない。コロナ禍の前には、若い韓国人社員がよく日本出張のついでにiPadを買いたいなどと話していた。確かに、たまに帰国すると日本は安いなと感じてしまう(特に飲食関係)。 ここまで紹介したことはすべて、私が在籍した10年間で急激に変化したことだ。この国の進歩の速さはおそろしい。 後編では、サムスンで働いていたときに感じていたこと、働きやすさや人間関係などについて詳しく紹介する。 >>後編「韓国サムスンで10年働いた研究者は見た、すぐクビになる日本人と生き残る日本人の差」に続く』、「韓国ではEVやドローン、電動キックボード等の最新のインフラは、話題になるとすぐに街中で見かけるようになる。日本に比べると規制がゆるく、新しい技術の恩恵をすぐに享受できるので(後に規制が入る場合もあると思うが)社会がダイナミックに見える」、「生活に密着したところに分かりやすく税金が投入されているので、納税者としての満足度も高い」、「日本」も学ぶべきだ。

第四に、この続きを9月6日ダイヤモンド・オンライン「韓国サムスンで10年働いた研究者は見た、すぐクビになる日本人と生き残る日本人の差 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした10年(後編)」の無料部分を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/308941
・『日本の大手材料系メーカーに約20年勤めていたが、研究者としてもっと活躍したいという気持ちから、サムスンのヘッドハンティングに応じた筆者。2010年、40代前半で韓国へ渡り、サムスンで働き始めた。韓国ナンバーワン企業であるサムスンでの仕事は、社内の文化も、専門職へのサポート体制も、外国人社員の国籍構成も、日本企業とは大きく異なっていた。筆者同様に引き抜かれた日本人社員の中には、1年程度で去って行った者も多く、さらには文在寅政権下で極端な反日キャンペーンが張られていた時期でもあった。内側から見たサムスンの強みや独自性、そして外国人社員がサムスンで生き抜くために気を付けるべき人間関係について、生々しく語る』、興味深そうだ。 
・『研究者にとっては天国のような環境だが、技術以外のものも求められる  2010年、サムスンに引き抜かれて始まった韓国暮らし。前編ではヘッドハンティングの経緯と韓国で暮らして感じたことを述べたが、後編は実際にサムスンで働いてみて気がついたこと、社内事情などについて紹介していこうと思う。 入社して2年を過ぎた辺りからは生活に慣れ、3年を過ぎると日本へ一時帰国するのが面倒になってきた。単身者だったということもあるが、サムスンのフルサポート付きでの海外生活は、研究だけに集中すれば良いので研究者としてはまさに天国のような環境なのである。言葉の壁がある分、わずらわしい人間関係が無いのも良かった。サムスン社内において、日本人の敵は日本人であることが多いのだ。 昔はスペシャルな技術ノウハウを持った人であれば、数年在籍するだけで大金を稼げたそうだが、今は日本人が韓国企業に勤める場合、韓国人と一緒に働くための技術面以外の能力も必要になってきている。ヘッドハンティングされる人は、基本的な技術、ノウハウは当然みな持っているものだが、課題に対して韓国人社員が納得できるような技術指導ができなかったり、社内でのリーダーシップが取れなかったりする日本人は多い。 社内でのリーダーシップを獲得するためには、日本人社員は韓国人社員から嫌われたり、なめられたりしてはいけない。普段は会議も通訳を介して行うため、直接的な表現はマイルドにされて伝わり、言い争いになるようなことは滅多にない。しかし、韓国人と日本人は情緒的に驚くほど似ており、怒りや自信の無さなど気持ちのブレはすぐに読みとられてしまう。さらに日本語を理解している社員もとても多いので、そういう人にはもちろん伝わってしまうし、また、社内では日本人同士の会話も気を使わなければいけない。 結局は、仕事に対しても、人間関係についても、真摯に取り組まなければならないということだ。海外人材とはいえ、そういう態度でなければ厳しい状況に追い込まれてしまうのは、どこの世界でも同じであろう。 今後サムスンに入社する人へちょっとしたアドバイスをするとすれば、「日本のマンガ」の知識を習得しておくべきだと思う。韓国人は『ONE PIECE』(ワンピース)、『スラムダンク』、『ドラゴンボール』で育った人が多い。この3大マンガの大まかなストーリーくらいは把握している方が良い。かめはめ波の一発でも打てれば、人気者間違いなしだ。(これ以下は有料)』、「サムスンのフルサポート付きでの海外生活は、研究だけに集中すれば良いので研究者としてはまさに天国のような環境なのである。言葉の壁がある分、わずらわしい人間関係が無いのも良かった」。うらやましい。「サムスン社内において、日本人の敵は日本人であることが多いのだ」、これはよくあることだ。「人間関係についても、真摯に取り組まなければならないということだ。海外人材とはいえ、そういう態度でなければ厳しい状況に追い込まれてしまうのは、どこの世界でも同じであろう」、当然の厳しさだ。

第五に、9月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「韓国経済に黄信号、中国が「お得意さま」からライバルに急変した理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/309190
・『8月、韓国の製造業PMI(購買担当者景況感指数)は事業環境の改善と悪化の境目である50を下回り49.8に下落した。一つの要因として、中国が韓国の“お得意さま”から、競争上の脅威に変わり始めたことがある。中国は韓国から輸入してきた半導体や自動車などの国産化を急いでいて、これまでのように韓国企業が中国の需要を取り込んで成長を目指すことは難しくなっている。韓国経済が直面する環境の急変は、わが国にとっても他人事ではないはずだ』、「これまでのように韓国企業が中国の需要を取り込んで成長を目指すことは難しくなっている」、これは大変だ。
・『中国が、韓国の“お得意さま”からライバルに変化  足元で、韓国経済の減速懸念が急速に高まっている。背景として、中国経済の低迷に加えて、これまで“お得意さま”だった中国企業との関係が変化していることがある。中国企業の急成長によって、中国が韓国にとっての“お得意さま”からライバルに変化しつつある。そうした変化は、過去、わが国と韓国・台湾企業との間にも見られた構造変化だ。 また、ゼロコロナ政策に固執する共産政党の経済施策や、歴史的な渇水によって経済活動が低迷する中国経済は景気の回復が遅れている。その結果、韓国は最大の輸出先である中国の需要を、これまでのようなペースで獲得することが難しくなっている。 最近では、電気自動車(EV)、車載用バッテリーなどの分野で、中国企業が急速に価格競争力を強めている。サムスン電子が健闘しているスマートフォンに関しても、中国企業がシェアを奪取する可能性は高い。それに加えて、ウクライナ危機などによって世界経済の脱グローバル化が加速し、天然ガスなどの供給体制が不安定化したことも韓国にマイナスだ。 1990年代の初頭以降、韓国はグローバル化を追い風にして加工貿易体制を強化した。それが中国の需要取り込みに決定的な役割を果たした。今後の経済成長をどう実現するか、韓国は正念場を迎えている』、「中国企業の急成長によって、中国が韓国にとっての“お得意さま”からライバルに変化しつつある。そうした変化は、過去、わが国と韓国・台湾企業との間にも見られた構造変化だ」、この構造的変化は「韓国」にとっては打撃だ。
・『中国と韓国の経済的関係は構造的に変化している  8月、韓国の製造業PMI(購買担当者景況感指数)は事業環境の改善と悪化の境目である50を下回り49.8に下落した。2020年9月以来の50割れだ。ウクライナ危機が発生して以降、世界経済の中でもわが国を含むアジア地域の景況感は相対的に底堅さを保ってきたが、韓国の景況感は急速に弱含み始めた。 一つの要因として、中国が韓国のお得意さまから、競争上の脅威に変わり始めたことがある。産業振興策である「中国製造2025」が推進されたことは大きい。半導体や車載用などのバッテリー、量子コンピューティング、人工知能(AI)などの最先端分野に対して共産党政権は産業補助金を積み増した。 また、共産党政権は国有・国営など主要企業に土地も供与した。このことで中国企業の固定費負担は主要先進国の企業と比較して大きく低下した。その後、米中対立などによって中国の最先端の半導体製造技術の確立は遅れたが、車載用のバッテリー分野やスマートフォン、有機ELパネルなどのディスプレー分野で中国企業の成長は加速している。韓国企業が高シェアを維持した、あるいは事業運営体制を強化している分野で中国企業の台頭が鮮明だ。 中国と韓国の経済的関係は構造的に変化している。1960年代以降、韓国ではサムスングループなど財閥の事業運営体制が強化された。それと同時に、当時の韓国政府はわが国などからの技術移転を加速させた。こうして、鉄鋼、家電、自動車など工業化が進んだ。 97年に発生したアジア通貨危機の後、韓国は資材を輸入し、国内でテレビなどの大量生産を行い、ウォン安を追い風にして中国などへの輸出競争力を高めた。近年は、メモリ半導体などの供給体制が急速に強化され、経済面で韓国の対中依存度は高まった。 しかし、中国は韓国から輸入してきた半導体や自動車などの国産化を急いでいる。これまでのように韓国の企業が中国の需要を取り込んで成長を目指すことは難しくなっている。今後、韓国企業はより熾烈(しれつ)な中国企業との競争に対応しなければならなくなるだろう』、「中国は韓国から輸入してきた半導体や自動車などの国産化を急いでいる。これまでのように韓国の企業が中国の需要を取り込んで成長を目指すことは難しくなっている。今後、韓国企業はより熾烈(しれつ)な中国企業との競争に対応しなければならなくなるだろう」、同様なことは、日本と「韓国」の間でも発生した発展段階の必然だ。
・『韓国経済を直撃する中国経済「想定外」の失速  目下、韓国経済は中国経済の失速に直面している。中国経済は成長の限界を迎えつつあり、背景にはゼロコロナ政策に固執する共産党政権の経済運営など複合的な要因がある。一部の経済専門家からは、「中国が経済規模などの面で米国を上回るのは難しくなった」との見方さえ出始めている。 無視できないファクターの一つは不動産バブル崩壊だ。20年8月に共産党政権が導入した「3つのレッドライン」によって、想定外に中国経済は悪化した。不動産市況の悪化は止まらず、債務問題が深刻化。不動産デベロッパーなどの民間企業のデフォルト懸念が追加的に高まっている。 加えて、家計や地方政府も含めて経済全体で不良債権の増加懸念が上昇している。そのため共産党政権は、人民元安加速のリスクを冒してまで追加利下げを実施しなければならない状況に追い込まれた。 また、ゼロコロナ政策の徹底によって中国国内の人流・物流はかなり不安定だ。最悪期を脱して生産活動は徐々に持ち直しているものの、個人消費の戻りはかなり鈍い。 3月下旬から5月、習近平政権は有無を言わさぬ姿勢で、最大の経済都市である上海でゼロコロナ政策を徹底した。その結果、物流が途絶えて食料不足が発生するなど、市民生活はかなりの苦境に陥った。これは人民にあまりに強いショックを与えたと考えられる。「生活と安全を自力で守らなければならない」と先行きに危機感を強める人が増え、節約志向が強まっているようだ。 さらに、脱グローバル化の負の影響も増大している。ウクライナ危機の発生以降、ロシアから欧州などに対する天然ガスなどの供給が減少した。供給体制は不安定化し、各国で物価は高騰している。中国では主食の豚肉価格が高騰し、消費者物価が徐々に上昇していることが消費者心理をさらに冷え込ませている。 その結果、22年4~6月期の中国の実質GDP成長率は、前期比マイナス2.6%だった。日米と同様に前期比年率換算で見ると、中国の実質GDPは前期から10%減少(失速)した。それが韓国の景況感を悪化させたのだ』、「中国経済「想定外」の失速」は、確かに「韓国経済を直撃する」不運な材料だ。
・『厳しさ増す韓国経済を取り巻く環境  今後、韓国が経済成長を目指すことは追加的に難しくなる恐れが高まっている。90年代以降、世界経済のグローバル化が加速し、国際分業体制が強化された。これにより世界全体で緩やかに経済が成長すると同時に物価が上昇しづらい環境が出現した。 それを追い風に韓国の財閥系大手企業は積極的に設備投資を行って大量生産を行い、世界の需要変化に機敏に対応して輸出を増やす経済体制を急速に整備した。その象徴として、サムスン電子などはデジタル家電のユニット組み立て型の生産体制を強化しつつ、半導体の受託製造(ファウンドリー)事業を強化して最先端分野の需要をより効率的に獲得した。ちなみに、この裏返しとしてわが国の家電、半導体、液晶パネルなどの競争力が失われた。 中国共産党政権は半導体やバッテリー、EV、脱炭素関連の技術やAIなどの開発、生産体制をさらに強力にサポートするだろう。それによって、韓国企業から中国勢へ、シェアや技術の移転が加速するだろう。 加えて、米国では北米生産のEVに補助金が支給されるなど、物価上昇圧力に対応しつつ雇用を支えるために、各国は自国の事情を優先せざるを得ない。他方、韓国統計庁によると21年の合計特殊出生率は前年比0.03ポイント低下の0.81だった。国内需要の縮小均衡は避けられず、景気を支えてきた対中輸出の伸び悩みがさらに鮮明化すれば、韓国全体で不満、閉塞感が一段と上昇するだろう。 韓国経済が直面する環境の急速な変化は、わが国にとって他人事ではない。少子高齢化などによって、わが国の需要は伸び悩んでいる。一方で、天然ガス価格などの上昇は経済に逆風だ。 世界経済の先行き懸念が高まる中で、わが国政府は超高純度の半導体部材や精密な工作機械、脱炭素などに寄与する新しい素材など、企業が世界的な強みを維持している分野での新しい取り組みをより積極的にサポートしなければならない。それが本邦企業の成長を支え、経済と社会の中長期的な安定に無視できない影響を与えるだろう』、「国内需要の縮小均衡は避けられず、景気を支えてきた対中輸出の伸び悩みがさらに鮮明化すれば、韓国全体で不満、閉塞感が一段と上昇するだろう」、「わが国政府は超高純度の半導体部材や精密な工作機械、脱炭素などに寄与する新しい素材など、企業が世界的な強みを維持している分野での新しい取り組みをより積極的にサポートしなければならない。それが本邦企業の成長を支え、経済と社会の中長期的な安定に無視できない影響を与えるだろう」、同感である。
タグ:「国内需要の縮小均衡は避けられず、景気を支えてきた対中輸出の伸び悩みがさらに鮮明化すれば、韓国全体で不満、閉塞感が一段と上昇するだろう」、「わが国政府は超高純度の半導体部材や精密な工作機械、脱炭素などに寄与する新しい素材など、企業が世界的な強みを維持している分野での新しい取り組みをより積極的にサポートしなければならない。それが本邦企業の成長を支え、経済と社会の中長期的な安定に無視できない影響を与えるだろう」、同感である。 「中国経済「想定外」の失速」は、確かに「韓国経済を直撃する」不運な材料だ。 「中国は韓国から輸入してきた半導体や自動車などの国産化を急いでいる。これまでのように韓国の企業が中国の需要を取り込んで成長を目指すことは難しくなっている。今後、韓国企業はより熾烈(しれつ)な中国企業との競争に対応しなければならなくなるだろう」、同様なことは、日本と「韓国」の間でも発生した発展段階の必然だ。 「中国企業の急成長によって、中国が韓国にとっての“お得意さま”からライバルに変化しつつある。そうした変化は、過去、わが国と韓国・台湾企業との間にも見られた構造変化だ」、この構造的変化は「韓国」にとっては打撃だ。 「これまでのように韓国企業が中国の需要を取り込んで成長を目指すことは難しくなっている」、これは大変だ。 「真鍋氏は「日本人は調和を重んじる。イエスがイエスを意味せず、常に相手を傷つけないよう、周りがどう考えるかを気にする。アメリカでは、他人にどう思われるかを気にせず好きなことができる。私は私のしたいことをしたい」また「私は日本に戻りたくない(略)なぜなら調和の中で生きる能力がないから」と話している」、「日本」でのやり難さを的確に指摘している。 佐久間 俊氏による「韓国サムスンに引き抜かれた日本人研究者の証言、給料1.7倍で「天国のような環境」 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした10年(前編)」 「韓国」も「日本を超えた」のであれば、「日本」を比較材料にするのではなく、絶対的な指標を重視するべきだろう。 「人生のモデルケース」が「完全に崩壊した」のは「韓国も日本」も同様だ。 日本でも「独居高齢者」は2015年で5.7百万人、「熟年離婚」も増えているのも同様だ。 「子どもたちも自分の生活を支えていくだけで精一杯であるうえに、とても高齢の親の家計や介護までを担うことは困難である」、韓国だけでなく、日本でも同様だ。 「高齢世代の女性たちの「貧困問題」も深刻化」、「売春」を行うこともあるとは驚かされた。 「韓国では高齢者をめぐって新たな問題も浮上」、どんなことなのだろう。 ダイヤモンド・オンライン「“先進国”韓国が「経済崩壊」のカウントダウンで…! もはや「日本超えできない」“危ないシナリオ”が浮上してきた…!」 「韓国も日本も「世のすべての祖父母が孫が可愛い、ずっと一緒にいたい」と思っているというのは幻想であり、現実は心に葛藤を抱えている」、その通りなのだろう。 「子どもや孫の存在が「生きる糧」に「必ずしもそうではないようである」、どういうことなのだろう。 田中 美蘭氏による「韓国が「先進国になった」「日本を超えた」と騒ぐウラで、いまひっそり「ヤバすぎる危機」が進行していた…!」 ダイヤモンド・オンライン ダイヤモンド・オンライン「韓国サムスンで10年働いた研究者は見た、すぐクビになる日本人と生き残る日本人の差 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした10年(後編)」 「韓国ではEVやドローン、電動キックボード等の最新のインフラは、話題になるとすぐに街中で見かけるようになる。日本に比べると規制がゆるく、新しい技術の恩恵をすぐに享受できるので(後に規制が入る場合もあると思うが)社会がダイナミックに見える」、「生活に密着したところに分かりやすく税金が投入されているので、納税者としての満足度も高い」、「日本」も学ぶべきだ。 「社内情報セキュリティー」の厳しさはさすがだ。 真壁昭夫氏による「韓国経済に黄信号、中国が「お得意さま」からライバルに急変した理由」 「サムスンのフルサポート付きでの海外生活は、研究だけに集中すれば良いので研究者としてはまさに天国のような環境なのである。言葉の壁がある分、わずらわしい人間関係が無いのも良かった」。うらやましい。「サムスン社内において、日本人の敵は日本人であることが多いのだ」、これはよくあることだ。「人間関係についても、真摯に取り組まなければならないということだ。海外人材とはいえ、そういう態度でなければ厳しい状況に追い込まれてしまうのは、どこの世界でも同じであろう」、当然の厳しさだ。 「これだけ恵まれた環境でも、起業や進学といった理由でサムスンを去る韓国人社員は多かった。彼らの上昇志向には感服する」、「上昇志向」の強さは韓国の強味だ。 「3度目の面談」、「先方の役員クラスがわざわざ韓国から出張してきて説得」、「最後には、「これから自分は世界で戦うんだ」という、一種の使命感のようなものまで感じるようになっていた」、さすが説得が巧みだ。 「身軽な単身者とは言え、そうは簡単に決められない」、慎重なようだ。 (その2)(韓国が「先進国になった」「日本を超えた」と騒ぐウラで いまひっそり「ヤバすぎる危機」が進行していた…!、“先進国”韓国が「経済崩壊」のカウントダウンで…! もはや「日本超えできない」“危ないシナリオ”が浮上してきた…!、韓国サムスンに引き抜かれた日本人研究者の証言、給料1.7倍で「天国のような環境」 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした10年(前編)、韓国サムスンで10年働いた研究者は見た、すぐクビになる日本人と生き残る日本人の差 ヘッドハンティングされて韓国で暮らした1 韓国(尹錫悦大統領)
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中国情勢(軍事・外交)(その14)(「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う、バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…、中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味 日本がやるべきことは?) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、6月6日に取上げた。今日は、(その14)(「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う、バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…、中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味 日本がやるべきことは?)である。

先ずは、6月21日付けPRESIDENT Onlineが掲載した前国家安全保障局長の北村 滋氏による「「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/57786
・『中国は2008年から外国の優秀な研究者を集める「千人計画」を進めている。目的は一体何なのか。元国家安全保障局長の北村滋さんは「破格の待遇で研究者を呼んでいる。中国が行っているのは単なる技術競争ではない」という――。 ※本稿は、北村滋、大藪剛史(聞き手・構成)『経済安全保障 異形の大国、中国を直視せよ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。Qは聞き手の質問、Aは北村氏の回答』、興味深そうだ。
・『中国の論文数は2016年に世界トップになった  Q:中国の科学発展の歴史について聞きたい。 A:中国は1950年代から、核兵器と弾道ミサイル、人工衛星の開発を並行して行う「両弾一星」のスローガンを掲げて、軍主導の宇宙開発に乗り出した。有人宇宙活動や月探査など、現在の宇宙事業も、軍が密接に関与しながら進められている。 文化大革命(66~76年)では知識人が迫害され、科学技術の発展が遅れた。だが、最高実力者の鄧小平氏が70年代後半から「国家の根幹は科学技術力にある」として立て直しを図った。90年代に海外から中国人留学生を呼び戻す「海亀政策」を進め、先端技術を取り込んだ。94年には、国外で活躍する優秀な人材を中国に呼び戻す政策の一環として「百人計画」が始まった。 中国製のスーパーコンピューターが2010年、計算速度で世界一を達成し、13年には無人探査機「嫦娥じょうが3号」が月面探査に成功した。科学の発展は、論文数にも表れている。日本の文部科学省の集計では、1981年に1800本だった中国の論文数は、2015年までに160倍増となった。全米科学財団(NSF)の報告書によると、16年に中国が初めて米国を抜いて世界トップに立ったようだ』、「論文数」で「16年に中国が初めて米国を抜いて世界トップに立った」、大したものだ。
・『外国から優秀な人材を集める「千人計画」  中国版GPSと呼ばれるグローバル衛星測位システム「北斗」が既に運用されている。人工衛星は、艦艇や航空機の位置把握、ミサイル誘導などの軍事目的にも役立つ。 21年3月の全国人民代表大会(全人代)で採択された新5カ年計画には、「科学技術の自立自強を国の発展の戦略的な支えとする」との文言が盛り込まれた。最先端の民間技術を積極的に軍事に転用する国家戦略「軍民融合」の下、今後も、世界トップレベルの研究者の招請や企業買収などを通じ、最先端技術を吸収していくだろう。 軍民融合の一環として、中国は「千人計画」を進めている。百人計画が成功したのを受けて、外国から優秀な人材を集める中国政府の人材招致プロジェクトだ。国家レベルでは08年から実施されている。採用される日本人研究者も増えている。 Q:外国人研究者は破格の待遇で集められているようだ。読売新聞の取材では、研究経費として500万元(約8600万円)が補助され、100万元(約1700万円)の一時金が与えられる例もあったようだ。 A:招聘に応じた日本人研究者には、「日本の大学だと研究費が年数十万円ということもある。日本の研究者は少ない研究費を奪い合っている。中国からの資金補助はとても助かる」と話す人もいる』、「世界トップレベルの研究者の招請」する「千人計画」では、「研究経費として500万元(約8600万円)が補助され、100万元(約1700万円)の一時金が与えられる例もあった」、と破格の待遇で搔き集めているようだ。
・『補助金、広い研究室にマンション、運転手付きの車まで…  補助金だけではない。広い研究室やマンションも与えられる。家賃はほとんど中国政府が払ってくれる、家政婦付きのマンションを与える、運転手付きの車が使えるとか、そんな話もある。退職した後の仕事を探していた大学教授や研究者が、こういった好条件につられて中国に渡航するケースが多い。 米司法省は、20年1月28日、「千人計画」への参加を巡って米政府に虚偽の説明をした米ハーバード大化学・化学生物学科長の教授を起訴した。ナノテクノロジーの世界的な権威だ。この教授は、12~17年頃に千人計画に参加し、月5万ドル(約550万円)の給料や15万8000ドル(約1740万円)の生活費を受け取った。この教授は国防総省などから研究費を受け取っていたため、外国から資金提供を受けた際に米政府へ報告する義務があったが、「千人計画」への参加を隠していたということだ。 中国が米国の最新技術や知的財産を狙い、この教授に接近したのだろう。 Q:中国政府は外国人の研究者らをどうやって招いているのか。 A:日本に留学していた中国人の元教え子や、日本で共同研究を行った中国人の研究者が誘うケースがあるようだ。元々の知り合いのつてを利用しているのだろう』、「補助金だけではない。広い研究室やマンションも与えられる。家賃はほとんど中国政府が払ってくれる、家政婦付きのマンションを与える、運転手付きの車が使えるとか、そんな話もある」、これは魅力的だ。「米司法省は・・・「千人計画」への参加を巡って米政府に虚偽の説明をした米ハーバード大化学・化学生物学科長の教授を起訴した。ナノテクノロジーの世界的な権威だ。この教授は、12~17年頃に千人計画に参加し、月5万ドル(約550万円)の給料や15万8000ドル(約1740万円)の生活費を受け取った。この教授は国防総省などから研究費を受け取っていたため、外国から資金提供を受けた際に米政府へ報告する義務があったが、「千人計画」への参加を隠していたということだ」、これでは「起訴」されて当然だ。
・『兵器開発とつながりが深い大学に所属する研究者も  Q:「千人計画」に応じて中国に渡った研究者らは、どういったところで研究をするのか。 A:中国軍の兵器開発とつながりが深い「国防7校」(国防七子)に所属していた研究者もいる。 国防7校は、軍と軍事産業へ理工科人材供給を目的に設置された以下の7つの大学だ。 ・ハルビン工業大(宇宙工学や通信、電子、新素材、生産自動化) ・北京航空航天大(航空・宇宙工学、電子、素材、コンピューター、AI) ・北京理工大(素材、ソフトウェア、光エレクトロニクス) ・西北工業大(航空、宇宙、海洋・船舶工学) ・ハルビン工程大(船舶工業、海軍装備、深海工程と原子力) ・南京航空航天大(航空・宇宙工学) ・南京理工大(化学工業、AI、交通自動化、素材、通信、電子)』、「国防7校」とは権威がありそうだ。
・『本国と全く同じ研究施設を再現する「シャドーラボ」  Q:「千人計画」によって、これまでどのような技術が中国に奪われたのか。 A:米軍の最新鋭ステルス戦闘機F-35のエンジンに関するデータを中国に流出させた事例も報告されている。日本のある研究機構で働いていた中国人が、「風洞ふうどう設備」の技術を中国に持ち帰ったことも確認されている。 風洞設備は、飛行機や宇宙へ向かうロケットなどが空気中を飛ぶ際の空気抵抗や、機体周辺の空気の流れを調べるためのものだ。大きな筒のような洞ほらの中に、航空機の模型を置き、人工的に空気を流す設備だ。 この研究者は1990年代半ば、この研究機関で研究し、2000年に中国に帰っている。今は北京の中国科学院力学研究所に所属している。ここに日本のものと酷似した風洞設備が完成していることが確認されている。この研究所は極超音速ミサイルを研究している。つまり、開発中のミサイルの空気抵抗を減らしたり、宇宙から弾道弾が大気圏に再突入する際の熱防護素材を作ったりする研究に利用されているということだ。 本国にあるのと全く同じ研究施設を再現する、こういった例を「シャドーラボ」(影の研究室)という』、「中国科学院力学研究所に」、「日本のものと酷似した風洞設備が完成」、こうした「シャドーラボ」により「極超音速ミサイル研究」は、それがなかった場合に比べ、はかどったことだろう。
・『ノーベル賞級の研究をする人を集める「万人計画」  Q:「千人計画」に応じた人たちにはノルマはあるのか。 A:論文執筆のノルマを課しているようだ。『ネイチャー』や『サイエンス』など世界的に名だたる科学誌への掲載を求めていた。さきほど、中国の論文数が増えていると説明したが、こういった圧力も反映されているのだろう。 中国は、00年から17年までに、6万6690人を留学させて、彼等は米国で博士号を授与されている。米国の大学で博士号を取得する学生のおよそ1割強が中国人留学生だ。シリコンバレーや研究機関で、中核的役割を果たしている。07年に5万人以下だった海外人材の帰国者数は、17年に48万人に急増している。高度な技術を母国に持ち帰っているということだ。 中国には「万人計画」もある。ノーベル賞級の研究を行う研究者を集めるものだ』、「07年に5万人以下だった海外人材の帰国者数は、17年に48万人に急増している。高度な技術を母国に持ち帰っているということだ」、「千人計画」、「万人計画」といいスケールが大きい。。
・『日米欧と中国では「目指す未来」がまったく違う  Q:日本は米国や欧州各国とも、科学技術の競争をしている。中国との競争はそれとは違うのか。 A:全く違う。日米欧など西側先進諸国と中国は、国際秩序に関する考えで大きな隔たりがある。西側先進諸国が目指す秩序は「自由で開かれた、法の支配に基づく世界」だ。それぞれの国が平等で、法の支配、自由を尊重するというものだ。 中国が目指す秩序は何か。習主席は頻繁に「新型国際関係」という言葉を使うが、西側主導の秩序への挑戦にほかならない。「自由、人権、民主主義」といった日米欧の価値観に真っ向から挑戦している。中国共産党による一党支配が自由や平等、法の支配とはほど遠いものであることは、中国が新疆ウイグル自治区や香港で行っていることを見れば明らかだ。対外関係でも、他国と対等なつながりを持とうとしているようには見えない。 習主席の言う「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」に基づき、中国を頂点としたピラミッド型の国家連合を目指しているというのが本質だ。「一帯一路」構想の一環でアジアやアフリカの途上国に、インフラ整備のための桁違いの投資を行っているが、単なる経済協力ではない。それは、しばしば当該国の財政を圧迫し、「援助」自体がエコノミック・ステートクラフト化している。最終的に目指しているのは、中国の資金を背景とした影響力の行使だ。 中国は、単なる技術競争をしているだけではない。習主席の視線の先には、我々西側先進諸国が想像するのと全く異なる人類の未来が広がっている』、「西側先進諸国が目指す秩序は「自由で開かれた、法の支配に基づく世界」だ。それぞれの国が平等で、法の支配、自由を尊重するというものだ。 中国が目指す秩序は何か。習主席は頻繁に「新型国際関係」という言葉を使うが、西側主導の秩序への挑戦にほかならない。「自由、人権、民主主義」といった日米欧の価値観に真っ向から挑戦」、「「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」に基づき、中国を頂点としたピラミッド型の国家連合を目指しているというのが本質だ。「一帯一路」構想の一環でアジアやアフリカの途上国に、インフラ整備のための桁違いの投資を行っているが、単なる経済協力ではない。それは、しばしば当該国の財政を圧迫し、「援助」自体がエコノミック・ステートクラフト化している。最終的に目指しているのは、中国の資金を背景とした影響力の行使だ」、恐ろしいことだ。
・『日本にとっての軍事的な脅威は増していく  Q:中国の国家体制は盤石なのか。 A:短期的に習主席の基盤が固まっていることは間違いないと思う。 ただ、習主席は、政権全体の動揺を懸念していると思われる。中国共産党とは異なる価値を信じる組織に対する恐れは、日本人が考える以上に大きい。チベット、台湾、ウイグル、民主派、法輪功の5つを彼らは「五毒」と称し、いずれも中国共産党の体制に服さないものとして徹底的に弾圧していることが、その表れだろう。中国の歴史を見ると平和的、民主的な政権移行はなく、王朝が代わることにより政権が代わるというのが歴史が示すところだ。中国共産党は王朝ではないが、民主的政権交代を容認しない中国共産党による一党支配であり、そうした中国自身の歴史が常に念頭にあると思う。 習近平政権は、「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」を実現するために、富強、強軍の政策を継続することは間違いない。日本にとって軍事的な脅威は増していくことを覚悟しなければならない』、「習近平政権は、「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」を実現するために、富強、強軍の政策を継続することは間違いない。日本にとって軍事的な脅威は増していくことを覚悟しなければならない」、「日本」としては、ノウハウや情報、人材の流出に気を付けるのがせいぜいだろう。

次に、8月26日付けPRESIDENT Onlineが掲載した三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 副主任研究員の土田 陽介氏による「バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/60947
・『リトアニアと中国の外交関係が極めて悪化  8月11日、エストニアとラトビアが中国との経済的な協力枠組みである「中国―中東欧国家合作」(通称「16+1」)から離脱すると発表した。 中国北京市で2022年7月26、27両日、省部級の主要指導幹部対象の「習近平総書記の重要演説の精神を学び、中国共産党第20回全国代表大会を迎える」特別研修班が開かれ、習近平中国共産党中央委員会総書記・国家主席・中央軍事委員会主席が開講式で重要演説を行った 昨年、リトアニアがこの2カ国に先行してこの枠組みから離脱を表明しており、今回のエストニアとラトビアの決断によって、いわゆるバルト三国の全てが「中国離れ」を進めることになった。 とはいえ、バルト三国のこの決断は時間の問題だった。 2021年2月、新型コロナの流行を受けて2年ぶりに北京で開催された「17+1サミット」(当時はまだリトアニアが参加していたため「17+1」だった。)にもバルト三国は首脳の参加を見送り、高官を派遣するにとどめた。当時から、中国に対して徐々に距離を取っていたわけだ。 その後、周知のとおり、リトアニアと中国の外交関係が極めて悪化した。台湾をめぐる問題に端を発したものだが、これにロシアのウクライナ侵攻に伴う地政学的な緊張の高まりも複雑に絡む事態になったと考えられる。 共通してロシアへの対抗意識が強いバルト三国が、中国への対応でも連帯を強めたという側面も大きいのではないだろうか。 それにバルト三国は、これまで「16+1」の枠組みを通じて中国から満足な投融資を得ていなかった。将来的にも、欧州連合(EU)が中国に対する圧力を強めている状況の下では、中国からの投融資が増えるとは考えにくい。 貿易面でも中国に対する依存度はそれほど高くないため、バルト三国は中国との枠組みから離脱できたといえよう』、「バルト三国」は、「中国から満足な投融資を得ていなかった」、「貿易面でも中国に対する依存度はそれほど高くない」、などから、「中国との枠組みから離脱できた」なるほど。
・『中東欧に「選択と集中」をかける中国  しかしながら、中国にとってバルト三国の決断が衝撃だったかというと、むしろ想定内だったはずだ。中国は中国で、2021年2月の北京サミット前後から、経済協力の対象を絞ってきた。 具体的にその対象とは、2019年に当時の「17+1」に参加したギリシャを筆頭に、ハンガリーとクロアチア、そしてEU未加盟の西バルカン諸国となる。 2019年9月に就任したミツォキタス首相の下、ギリシャと中国の関係は良好なものとなっている。そうした中で、2021年10月には中国の国有海運最大手、中国遠洋海運集団(コスコ・グループ)がピレウス港に対する出資額を引き上げたほか、習近平政権が抱える「一帯一路」構想につき、両国の協力関係を深化させる旨で合意に達した。 こちらも関係が良好なハンガリーに対しては、中国企業による大型投資が相次いでいる。6月にはパソコン大手の聯想集団(レノボ・グループ)がハンガリーに建てた工場が稼働、8月には電気自動車(EV)用電池大手、寧徳時代新能源科技(CATL)が73億ユーロ(約1兆円)を投じ、ハンガリーにバッテリー工場を建設すると発表した。 中国はハンガリーの首都ブタペストと隣国セルビアの首都ベオグラードを結ぶ鉄道の更新プロジェクトも支援している。また建設大手、中国交通建設の子会社である中国路橋工程(CRBC)は、クロアチア南部の沿岸部に巨大な斜張橋(ペリェシャツ橋)を建設したが、これは5億2600万ユーロ(約730億円、うちEUが7割弱を資金支援)規模の巨大プロジェクトだ。 2025年のEU加盟が視野に入るセルビアとは、先述のハンガリーとの間の鉄道網の改修以外にも、中国は協力関係の深化を模索している。 つまり中国は、ギリシャを起点として、西バルカン諸国やクロアチアを経由し、ハンガリーに至る一帯に「選択と集中」をかけて、中国は経済協力関係の深化を試みていると整理できる』、「中国は、ギリシャを起点として、西バルカン諸国やクロアチアを経由し、ハンガリーに至る一帯に「選択と集中」をかけて、中国は経済協力関係の深化を試みていると整理できる」、「さしずめ「バルト三国」は「選択」対象から漏れたようだ。
・『有効な対抗手段を持っていないEU  加えて中国は、上記の国々に対して新型コロナウイルスのワクチン(シノバック社やシノファーム社製)を提供した実績がある。 中国製のワクチンは重症化しにくいとされるオミクロン株の流行や欧米製のワクチンに比べた場合の有効性の低さなどから需要が減退したが、友好関係の深化という意味では一定の役割を果たしたといえよう。) EUは立法機関である欧州議会を中心に、対中姿勢を硬化させている。 一方で、中国は引き続きヨーロッパの市場へのアクセスを重視している。その足場として、バルカン半島からハンガリーを一体的にとらえているように考えられる。これらの国々がロシアとも比較的友好的であることも、中国にとっては都合がいいといえるのではないか。 インフラ投資といったハード面のみならず、公衆衛生でのサポートという一種のソフトパワーも行使した中国に対して、EUは有効な対抗手段をまだ用意できていない。EU版一帯一路ともいえる「グローバル・ゲートウェイ」構想下での支援対象からEU加盟済みの中東欧諸国は外れているし、EU未加盟の国々への支援の展望も描きにくい。 EUによる開発支援は、当然だがEUの経済観が色濃く反映される。新興国ではインフラの建設には経済性よりも政治性が重視される傾向が強いが、EUは支援に当たり経済性の高さを強く要求する。さらに「グローバル・ゲートウェイ」構想では、EUが重視する「デジタル化」と「脱炭素化」にかなう領域でのサポートを念頭に置いている。 とはいえ、新興国でそうした諸条件をクリアできるプロジェクトなど、まずない。欧米諸国が「債務の罠」につながると警告を繰り返したところで、新興国にとって話が早い中国からの投融資は魅力的である。結局のところEUは、有効な手立てをとることができないまま、バルカンからハンガリーにかけて中国の進出を許し続けている』、「欧米諸国が「債務の罠」につながると警告を繰り返したところで、新興国にとって話が早い中国からの投融資は魅力的である。結局のところEUは、有効な手立てをとることができないまま、バルカンからハンガリーにかけて中国の進出を許し続けている」、やむを得ないだろう。
・『岐路に立つ中国の「一帯一路」  そもそも「16+1」は、習近平政権の「一帯一路」構想の延長線上にあったものだ。 中国がもともと「一帯一路」構想に確たるビジョンを持っていたわけでもないが、バルト三国が離反したことや、コロナ禍で中国が中東欧の「選択と集中」を進めていたことは、この「一帯一路」構想そのものが岐路に立っていることの証左といえよう。 時を同じくして生じたスリランカの国家破綻も、中国の「一帯一路」構想が岐路に立っていることをよく示している。スリランカは7月5日、国家が破産したと宣言した。スリランカのハンバントタ港は、その建設から運営までが中国の手によって行われており、スリランカが陥った「債務の罠」を象徴する存在としてよく知られている。 もともとは長期にわたって政権を担っていたラージャパクサ一族によるバラマキ政策が、スリランカが国家破綻に陥った直接的な原因だ。それにハンバントタ港に関しては、中国の貸し手責任と同様にスリランカの借り手責任も問われるべきである。 さらにいえば、ハンバントタ港は中国にとって本当に資産性があるのか、議論の余地があろう』、「岐路に立つ中国の「一帯一路」」、当然だ。
・『「債務の罠」は中国にとっての「不良債権の罠」  スリランカから海を隔たればインドがある。そのインドと中国は是々非々で協力し、反目もする特有の緊張関係にある。8月中旬に中国軍の調査船がハンバントタ港に入港したが、当然ながらインドの強い反発を招いた。 両国が軍事的な緊張を回避したいという思惑を持つ中で、中国にとってハンバントタ港の使い勝手は必ずしもよくない。 それに、国家破綻に陥ったスリランカでは社会が不安定化している。ハンバントタ港やその周辺の治安維持のコストも急増せざるを得ないはずだが、そのコストを負担するのはもちろん中国になる。 またスリランカは、債権者に対して債務再編を要請すると考えられる。中国が簡単に応じるわけもないが、出方を間違えれば新興国の支持も失う。 ハンバントタ港でさえこの状況である。中国が「一帯一路」構想の下で投融資を行った海外のプロジェクトの多くは、中国にとって使い勝手が良くない資産が多いはずだ。 つまり、新興国にとっての「債務の罠」は中国にとっての「不良債権の罠」と裏返しである。中東欧やスリランカの事例は、そうした「不良債権の罠」の序章かもしれない』、「スリランカは、債権者に対して債務再編を要請すると考えられる」、これを邪険に扱えば、「中国にとっての」「不良債権の罠」問題が深刻化する。「中国」には微妙な綱渡りが求められそうだ。

第三に、8月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した評論家・翻訳家の白川 司氏による「中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味、日本がやるべきことは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/308567
・『習近平氏とプーチン氏 裏目に出た「永遠の友情」  8月16日、中国の李克強首相が広東省深センを視察したときに発した言葉が物議を醸している。李氏は「中国の開放はまだ引き続き進めなければならない。黄河と長江は逆流しない」と述べて、鄧小平氏(故人)の改革開放路線の保持を訴えて、対米強硬と内製化に傾く習近平国家主席を批判したのではないかと憶測を呼んでいるのである。政権内で習主席に対する風当たりが強まっていることがうかがえる。 習主席は対米強硬を強化するとともに、ロシアとの連携強化に乗り出している。中ロが現在のような連携関係となるきっかけとなったのが、2021年2月4日の北京オリンピック開会式の後に行われた両者の会談だった。ウイグル問題で多くの国家首脳が参加を見合わせる中、堂々と出席してくれたプーチン大統領に、習主席は「ロシアに対する無限の友情」を約束した。 ロシアがウクライナに軍事侵攻したのは、その後のことだった。 2014年ソチオリンピックでも、両者は首脳会談を行っており、第2次世界大戦70年でナチスや日本軍と対抗した「戦勝国」の立場からの連携を確認しているものの、それ以上の連携には進まなかった。 当時、ロシアはウクライナのNATO加盟の動きに軍事圧力をもって対抗して、各国から非難を浴びていた。ロシアが軍事侵攻に及ぶと予期した専門家は少なく、中国もその可能性を小さく見積もっていたと伝えられている。たとえ軍事侵攻が起こったとしても、ごく短期で終わるという見方が大勢を占めていた。 だが、2月24日以降のウクライナ軍事侵攻で、ロシア軍は首都キーウ攻略作戦で苦戦を強いられて、撤退に追い込まれてしまった。ロシアは国際的な非難を受け、ウクライナ軍には武器援助が集まり、ウクライナ軍の奮闘ぶりが各国に伝えられた。 これは中国、特に習主席としては大誤算だった。中国はこれまでロシアとは一定の距離を取り、2014年のロシアのクリミア併合の際も、中国はあくまで中立を保っていた。だが、ウイグル問題で中国が非難されて、「ハレの舞台」である北京オリンピックに対して西側からの政治的ボイコットを受けたことで、習氏はロシアへの「無限の友情」を確約したのである。このことがプーチン大統領にウクライナ軍事侵攻を決心させる一つの要因となったことは間違いないだろう。 メディアでウクライナ軍の快進撃が報じられ続ける一方で、ロシア軍による民間人への被害や虐待行為などが伝えられるようになると、その批判が中国にも向くようになった。西側は経済制裁でロシアを締め上げる策に出たが、中国がそれを和らげるバッファーになっていたことが明らかだったからである。 これまでロシアに対しては慎重姿勢だった中国が、積極支援に入った途端に国際的なロシア孤立政策に巻き込まれることになったことからも、習主席が外交センスに恵まれていないことは明らかだろう。しかも、異例の3期目には入れるかどうかの重要な時期であったことで、習主席は自分の首を絞めることとなった。 また、この状況は異例の3選を企んでいた習主席にとっては打撃になった。不動産投資規制などの規制策が裏目に出ていた上に、ゼロコロナ政策で人民の不満が爆発寸前になっていたために、反習勢力が3選を阻止するための材料に使い始めたからである。そのため、経済再建派の李克強首相が権力闘争で勢いを盛り返し始めた』、「北京オリンピック開会式の後に行われた両者の会談だった。ウイグル問題で多くの国家首脳が参加を見合わせる中、堂々と出席してくれたプーチン大統領に、習主席は「ロシアに対する無限の友情」を約束した。 ロシアがウクライナに軍事侵攻したのは、その後のことだった」、よほど「ロシア」の参加が嬉しかったのだろう。「不動産投資規制などの規制策が裏目に出ていた上に、ゼロコロナ政策で人民の不満が爆発寸前になっていたために、反習勢力が3選を阻止するための材料に使い始めたからである。そのため、経済再建派の李克強首相が権力闘争で勢いを盛り返し始めた」、面白い展開になってきた。
・『内政も外交も失敗 それでも盤石な権力基盤  習近平指導部がこれまで取ってきた政策は「ほとんどが失敗」と言ってもいいほど惨憺たるものだった。 たとえば、習主席が先導してきた国家的プロジェクトである「中国製造2025」と「一帯一路」は、いずれもここにきて行き詰まりを見せている。 中国製造2025においては、先端半導体の内製化に失敗して半導体自給率は目標を大きく下回り、一帯一路も現地で雇用を生まず収益性も考慮されていなかったことから、各地で反中感情を高めた。 先述したゼロコロナ政策や不動産投資規制は中国経済に直接ダメージを与えており、IT企業への規制も虎の子の自国IT企業を痛めつけるだけであり、習主席の肝いりだったスマートシティー「雄安新区」もうまくいってないと伝えられている。やることなすことが裏目に出ていると言ってもいいだろう。 本来であれば異例の3期目など狙える状態ではないはずだが、それでも次に向けた習主席の権力基盤は着々と固まり、反習派への巻き返しが始まっている。習主席の権力基盤が思いのほか頑強で、失政にもかかわらず取って代わるほどの人材がいないからだろう。 さらに、6月の全人代(中国全国人民代表大会)の常務委員会では、趙克志公安相の後任として、習主席側近の王小洪が起用されることとなった。王氏は習主席が福建省役員だったころからの部下だった。公安はもともと反習派の牙城といわれていた組織だったが、そのトップを習派にすげ替えることに成功したわけである。 ところが、その習主席に大きなダメージを与えかねない事件がアメリカから訪れる。8月のペロシ米下院議長の台湾訪問である。ペロシ氏の訪台は4月に計画されていたが、本人が新型コロナに感染して延期されていたものだ。 4月時点での訪台は中国側から大きな反発は見られなかった。だが、8月は習主席が異例の3期目をかけて権力闘争を繰り広げている真っただ中にあり、習近平指導部としてどうしてもペロシ氏訪台は避けたかった。直前のバイデン大統領との電話会談でも習主席は「火遊びをする者は火で焼け死ぬ」ということわざを使って恫喝すらいとわなかったが、ペロシ氏は訪台して蔡英文総統と会談し、習主席は顔に泥を塗られることとなった。 ペロシ氏が台湾をたつと、人民解放軍が台湾海峡の中間線を越えて軍事示威行動を続けた。さらに、日本の排他的経済水域(EEZ)にも5発のミサイルを撃ち込んでいる。これは「中国の軍事計画が一つ先に進んだ」という面があるが、同時に日米が中国による台湾有事に備えることを強いた点で、中国にとっては外交上の失策ともいえる。 アメリカ側はその後も超党派で下院議員を送って、台湾を守るというメッセージを送り続け、米中関係は悪化を極めている。これは3期を目指す習主席にとってはマイナスなる。習近平指導部は内政に加えて、外交も失敗したのである』、「本来であれば異例の3期目など狙える状態ではないはずだが、それでも次に向けた習主席の権力基盤は着々と固まり、反習派への巻き返しが始まっている」、「アメリカ側はその後も超党派で下院議員を送って、台湾を守るというメッセージを送り続け、米中関係は悪化を極めている。これは3期を目指す習主席にとってはマイナスなる。習近平指導部は内政に加えて、外交も失敗したのである」、さんざんなのに地位を守れているのは不思議だ。
・『ウクライナ戦争の長期化で高まる欧米への不満  失策続きの習近平指導部だったが、ウクライナ戦争が長引くごとに、情勢は徐々に中国に有利に働き始めた。エネルギーと小麦などの食料が高騰することで、途上国などのグローバルサウス(南北問題の南側)が、ウクライナ支援とロシア経済制裁を強める欧米に対して、不満を持ち始めたのである。そのため、ウクライナ支援を続ける西側とグローバルサウスの分裂が始まってしまったのだ。 習主席は4月に「世界安全保障構想(GSI)」という新たな戦略的枠組みを発表して、グローバルサウスの取り込みに入ったのである。まだ始まったばかりではあるが、ウクライナ戦争の余波でハイパーインフレや食料不足に苦しむ途上国や新興国から賛同を得る可能性が高まっている。 さらに、9月にカザフスタンのサマルカンドで開催される上海協力機構サミットでは、中国が習・プーチン会談を実施しようとしていることをアメリカ経済紙の『ウォール・ストリート・ジャーナル』がすっぱ抜いている。 上海協力機構(本部は北京)は中国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタン・インド・パキスタンの計8カ国で構成される国際組織であるが、中国が近隣国をまとめるための枠組みだと言っていいだろう。 ここでの最大の懸念はインドだ。インドはもともと反米親ロの傾向があるのだが、それを日米側に引き入れたのが安倍晋三元首相だった。安倍首相は中国との領土問題でインド国内で反中感情が強まっていた時期にモディ首相の信頼を勝ち取り、トランプ大統領を説得して日米豪印の4カ国による「クアッド(4カ国戦略対話)」を成立させた。 インドの反対で軍事同盟化することはできなかったものの、海側から日米が、陸側からインドが中国を牽制することで、中国を封じることを中心とした戦略的枠組みとして中国封じ込め政策は大きく前進した。 だが、ウクライナ戦争でインドはウクライナ側に付かず、ロシアに配慮した中立に近い姿勢を見せた。インドは武器とエネルギーをロシアに依存しており、西側がいくら要請してもロシア封じ込めには参加するわけにはいかないのである。インドのみならず、ロシアのエネルギーが西側より安く買えるのであれば、中ロ側に付きたいと考える国は多いはずだ。 そのインドをはじめ、イスラエル、トルコ、ブラジルなど一筋縄ではいかない国々の首脳の信頼を勝ち取ってきたのが、安倍元首相だったのだが、それらの国の気持ちは、ウクライナ戦争の長期化によって西側から離れつつある。 ウクライナ戦争が長引くごとに南北の分裂が深まり、南側のリーダーとして中国の存在感が高まっているのである。習主席の3期目が決まり南北分裂が進めば、冷戦期ほどのはっきりした対立にはならないものの、両者がそれぞれの陣営で共存し合う「ソフト冷戦」に突入する可能性が否定できない。 また、ロシアを封じ込めると中東やアフリカなどでロシアの影響下にある国々は、今度はアメリカではなく、多くが中国の支援を受けようとするはずである。つまり、ロシアの影響力を制限しようとすれば、中国の影響力が拡大するのである。これは西側にとって得策ではない。 日本としても、台湾防衛を第一に考えるなら、現在の状態は望ましいものではない。また、中国のこのような動きはまだ始まったばかりであり、巻き返しはじゅうぶん可能だ。 中国包囲網は先進国のみでは完成しない。少なくともロシアを含む新興国や途上国を中国側に付かせてしまっては、中国の覇権拡大を止めることは困難である。ウクライナ戦争を一日でも早く停戦に持ち込んで、再び日米中心でインドをはじめとするグローバルサウスを引き入れる必要がある。 先述したようにインドはもともと反米・親ロの傾向が強い。ロシアと敵対したままであると、せっかく日米側に引き入れたインドが、今度は中ロ側にシフトする可能性すらある。中ロが連携することは日本にとってデメリットがあまりにも大きい。ウクライナ戦争を一日も早く終わらせ、ロシア包囲網を解いてこれ以上の中ロ接近を阻止することは、日本の安全保障にとっても重要である。 それらの仲介者の役割に最適なのが日本だ。だが、外交で大仕事ができる安倍元首相は帰らぬ人だ。世界がいま「ポスト安倍」を必要としているのである』、「ウクライナ戦争が長引くごとに南北の分裂が深まり、南側のリーダーとして中国の存在感が高まっているのである」、「ロシアを封じ込めると中東やアフリカなどでロシアの影響下にある国々は、今度はアメリカではなく、多くが中国の支援を受けようとするはずである。つまり、ロシアの影響力を制限しようとすれば、中国の影響力が拡大するのである。これは西側にとって得策ではない」、「中国包囲網は先進国のみでは完成しない。少なくともロシアを含む新興国や途上国を中国側に付かせてしまっては、中国の覇権拡大を止めることは困難である。ウクライナ戦争を一日でも早く停戦に持ち込んで、再び日米中心でインドをはじめとするグローバルサウスを引き入れる必要がある。 先述したようにインドはもともと反米・親ロの傾向が強い。ロシアと敵対したままであると、せっかく日米側に引き入れたインドが、今度は中ロ側にシフトする可能性すらある。中ロが連携することは日本にとってデメリットがあまりにも大きい。ウクライナ戦争を一日も早く終わらせ、ロシア包囲網を解いてこれ以上の中ロ接近を阻止することは、日本の安全保障にとっても重要である。 それらの仲介者の役割に最適なのが日本だ。だが、外交で大仕事ができる安倍元首相は帰らぬ人だ。世界がいま「ポスト安倍」を必要としているのである」、岸田首相は外相経験も長く、「ポスト安倍」にうってつけである。ただ、ハッタリも必要になる外交交渉能力には疑問なしとしないが、大筋では筆者の主張に同意できる。
タグ:『経済安全保障 異形の大国、中国を直視せよ』(中央公論新社) 北村 滋氏による「「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う」 PRESIDENT ONLINE (その14)(「中国の資金援助は助かる」と日本人研究者…破格の待遇で世界の人材を集める「千人計画」の恐ろしい目的 日米欧による"科学技術の競争"とは狙いがまったく違う、バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…、中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味 日本がやるべきことは?) 中国情勢(軍事・外交) 先述したようにインドはもともと反米・親ロの傾向が強い。ロシアと敵対したままであると、せっかく日米側に引き入れたインドが、今度は中ロ側にシフトする可能性すらある。中ロが連携することは日本にとってデメリットがあまりにも大きい。ウクライナ戦争を一日も早く終わらせ、ロシア包囲網を解いてこれ以上の中ロ接近を阻止することは、日本の安全保障にとっても重要である。 それらの仲介者の役割に最適なのが日本だ。だが、外交で大仕事ができる安倍元首相は帰らぬ人だ。世界がいま「ポスト安倍」を必要としているのである」、岸田首相は外相経 「ウクライナ戦争が長引くごとに南北の分裂が深まり、南側のリーダーとして中国の存在感が高まっているのである」、「ロシアを封じ込めると中東やアフリカなどでロシアの影響下にある国々は、今度はアメリカではなく、多くが中国の支援を受けようとするはずである。つまり、ロシアの影響力を制限しようとすれば、中国の影響力が拡大するのである。これは西側にとって得策ではない」、「中国包囲網は先進国のみでは完成しない。少なくともロシアを含む新興国や途上国を中国側に付かせてしまっては、中国の覇権拡大を止めることは困難である。ウクライ 「本来であれば異例の3期目など狙える状態ではないはずだが、それでも次に向けた習主席の権力基盤は着々と固まり、反習派への巻き返しが始まっている」、「アメリカ側はその後も超党派で下院議員を送って、台湾を守るというメッセージを送り続け、米中関係は悪化を極めている。これは3期を目指す習主席にとってはマイナスなる。習近平指導部は内政に加えて、外交も失敗したのである」、さんざんなのに地位を守れているのは不思議だ。 「北京オリンピック開会式の後に行われた両者の会談だった。ウイグル問題で多くの国家首脳が参加を見合わせる中、堂々と出席してくれたプーチン大統領に、習主席は「ロシアに対する無限の友情」を約束した。 ロシアがウクライナに軍事侵攻したのは、その後のことだった」、よほど「ロシア」の参加が嬉しかったのだろう。「不動産投資規制などの規制策が裏目に出ていた上に、ゼロコロナ政策で人民の不満が爆発寸前になっていたために、反習勢力が3選を阻止するための材料に使い始めたからである。そのため、経済再建派の李克強首相が権力闘争で勢い 白川 司氏による「中国・習近平がもくろむ「世界分断計画」の現実味、日本がやるべきことは?」 ダイヤモンド・オンライン 「スリランカは、債権者に対して債務再編を要請すると考えられる」、これを邪険に扱えば、「中国にとっての」「不良債権の罠」問題が深刻化する。「中国」には微妙な綱渡りが求められそうだ。 「岐路に立つ中国の「一帯一路」」、当然だ。 「欧米諸国が「債務の罠」につながると警告を繰り返したところで、新興国にとって話が早い中国からの投融資は魅力的である。結局のところEUは、有効な手立てをとることができないまま、バルカンからハンガリーにかけて中国の進出を許し続けている」、やむを得ないだろう。 「中国は、ギリシャを起点として、西バルカン諸国やクロアチアを経由し、ハンガリーに至る一帯に「選択と集中」をかけて、中国は経済協力関係の深化を試みていると整理できる」、「さしずめ「バルト三国」は「選択」対象から漏れたようだ。 「バルト三国」は、「中国から満足な投融資を得ていなかった」、「貿易面でも中国に対する依存度はそれほど高くない」、などから、「中国との枠組みから離脱できた」なるほど。 土田 陽介氏による「バルト三国すべてが「中国離れ」を決断…欧州で進めていた「一帯一路」が行き詰まりを見せ始めたワケ 次の標的はハンガリーとギリシャだが…」 「習近平政権は、「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」を実現するために、富強、強軍の政策を継続することは間違いない。日本にとって軍事的な脅威は増していくことを覚悟しなければならない」、「日本」としては、ノウハウや情報、人材の流出に気を付けるのがせいぜいだろう。 「西側先進諸国が目指す秩序は「自由で開かれた、法の支配に基づく世界」だ。それぞれの国が平等で、法の支配、自由を尊重するというものだ。 中国が目指す秩序は何か。習主席は頻繁に「新型国際関係」という言葉を使うが、西側主導の秩序への挑戦にほかならない。「自由、人権、民主主義」といった日米欧の価値観に真っ向から挑戦」、「「中華民族の偉大な復興」「中国の夢」に基づき、中国を頂点としたピラミッド型の国家連合を目指しているというのが本質だ。「一帯一路」構想の一環でアジアやアフリカの途上国に、インフラ整備のための桁違いの 「07年に5万人以下だった海外人材の帰国者数は、17年に48万人に急増している。高度な技術を母国に持ち帰っているということだ」、「千人計画」、「万人計画」といいスケールが大きい。。 「中国科学院力学研究所に」、「日本のものと酷似した風洞設備が完成」、こうした「シャドーラボ」により「極超音速ミサイル研究」は、それがなかった場合に比べ、はかどったことだろう。 「補助金だけではない。広い研究室やマンションも与えられる。家賃はほとんど中国政府が払ってくれる、家政婦付きのマンションを与える、運転手付きの車が使えるとか、そんな話もある」、これは魅力的だ。「米司法省は・・・「千人計画」への参加を巡って米政府に虚偽の説明をした米ハーバード大化学・化学生物学科長の教授を起訴した。ナノテクノロジーの世界的な権威だ。この教授は、12~17年頃に千人計画に参加し、月5万ドル(約550万円)の給料や15万8000ドル(約1740万円)の生活費を受け取った。この教授は国防総省などから 「世界トップレベルの研究者の招請」する「千人計画」では、「研究経費として500万元(約8600万円)が補助され、100万元(約1700万円)の一時金が与えられる例もあった」、と破格の待遇で搔き集めているようだ。 「論文数」で「16年に中国が初めて米国を抜いて世界トップに立った」、大したものだ。
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台湾(その5)(レガシー作り?議会の圧力?お騒がせペロシの台湾訪問 その裏を読む 24年大統領選を見据えた民主党の事情、ペロシ氏訪台で「アジア主戦場の米中新冷戦」の足音 日本に覚悟はあるか) [世界情勢]

台湾については、6月25日に取上げた。今日は、(その5)(レガシー作り?議会の圧力?お騒がせペロシの台湾訪問 その裏を読む 24年大統領選を見据えた民主党の事情、ペロシ氏訪台で「アジア主戦場の米中新冷戦」の足音 日本に覚悟はあるか)である。

先ずは、8月8日付け現代ビジネスが掲載した双日総合研究所 官民連携室 副主任研究員 米国経済・産業調査・経済安全保障担当の安田 佐和子氏による「レガシー作り?議会の圧力?お騒がせペロシの台湾訪問、その裏を読む 24年大統領選を見据えた民主党の事情」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/98333?imp=0
・『バイデンは止めようとしたものの  「敵を過小評価するな、過大評価してもいけない」とは、1997年以降、25年ぶりに下院議長として台湾を訪問したナンシー・ペロシ氏の名言のひとつだ。5人の子供を産んだ後、1987年に下院議員に初当選してから18期連続、35年にわたって選挙区を守ってきた同氏の言葉は、米中関係が台湾海峡をめぐり緊迫するなか、ひときわ重みを増す。 ペロシ氏の訪台計画は、7月19日付けの英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙でリークされた。バイデン氏は報道を受け7月21日、要人輸送機が空軍に属するためか「軍は良いアイデアと考えていない」と発言。 その後、CNNなど、バイデン政権がペロシ氏に訪台を断念するよう説得中などの報道が飛び交った。バイデン政権としては米中オンライン会談を予定していただけに、一段の関係悪化を回避したかったとされる。 ブルームバーグによれば、ペロシ氏の訪台計画にバイデン政権は怒り心頭で、国家安全保障会議(NSC)や国務省の高官がペロシ陣営に赴き、地政学的リスクを事前に説明したという。しかし、ペロシ氏は訪台を敢行。国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報担当調整官が8月2日、「下院議長には訪台の権利がある」と述べ、三権分立の下で行政府の制御が及ぶ範囲内ではないと一線を画すにとどめた。 問題は、本当にバイデン政権がペロシ氏の訪台を説得できなかったのかという点にある。ペロシ氏といえば82歳で、1973年に上院議員に当選した79歳のバイデン氏より政治キャリアでは短いが、年上だ。そのペロシ氏は中間選挙で民主党が野党に転じれば引退する公算が大きく、天安門事件後の1991年に訪中し抗議活動を展開するなど対中強硬派で知られるだけに、自身のレガシー作りへの算段が働いたのだろう』、「ペロシ氏の訪台計画にバイデン政権は怒り心頭で、国家安全保障会議(NSC)や国務省の高官がペロシ陣営に赴き、地政学的リスクを事前に説明したという。しかし、ペロシ氏は訪台を敢行。国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報担当調整官が8月2日、「下院議長には訪台の権利がある」と述べ、三権分立の下で行政府の制御が及ぶ範囲内ではないと一線を画すにとどめた」、「バイデン」の政治力のなさを如実に示した形だ。
・『噂飛び交うペロシ自身の「事情」  しかし、中間選挙で敗北が色濃く、ペロシ氏が議長の座を下りることを視野に自身のレガシー作りを狙ったかというと、話はそう単純ではなさそうだ。 米中のさらなる分断はただでさえロシアによるウクライナ侵攻で脆弱な世界経済を一段と混迷させかねない。結果的に、米国の信頼を失墜させるだけでなく、4~6月期まで2四半期連続でマイナス成長に落ち込む米経済に、さらなる打撃を与えうる。そのような危険を冒すにしては、リターンが余りにも小さく、最終的に自身のレガシーにも傷が付く』、「自身のレガシー作りを狙った」のではないとすると、真の狙いは何なのだろう。
・『米実質GDP成長率は2四半期連続でマイナス  中台問題が取り沙汰されるなか「ペロシ氏の夫が、半導体産業支援法案成立の前に500万ドル相当の関連株を売却した」との報道が流れたため、保守派からは、ペロシ氏がスキャンダルから話題を逸らすべく訪台という大舞台を演出したとの批判も聞かれる。 過去を紐解けば、確かにそのように受け止められるケースがあった。1998年12月にクリントン大統領(当時)がホワイトハウス実習生との不倫問題をもみ消した問題で弾劾訴追に直面した際、国連の武器査察を拒否し続けた報復として、イラクの武器関連施設を空爆した。奇しくも、同年5月公開の映画「ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ」のストーリーの一部が現実化し、騒然となったものだ。事実は小説より奇なりというが、さすがに邪推が過ぎるというものだろう』、「ペロシ氏がスキャンダルから話題を逸らすべく訪台という大舞台を演出したとの批判も」、そんなみみっちい理由ではなかっと思うしかなさそうだ。
・『米国の大義名分は  英FT紙がペロシ訪台計画のスクープを飛ばした直後、中国外務省は即座に「重大な影響を及ぼす」と反発。北戴河会議を控え、7月28日に行われた米中首脳電話会談後に公表された声明でも、ペロシ訪台をめぐり中国側は「火遊びをすれば、必ずやけどする」と警告した。ペロシ氏が台湾を訪問することが確実になった8月2日には、台湾企業の約100社に対し食品の輸入禁止を決定。 中国軍は8月4日から台湾周辺で過去最大規模の軍事演習を開始し、発射されたミサイルは日本の排他的経済水域(EEZ)内にも落下した。NSCのカービー氏は、ペロシ訪台による中国側の対抗措置として、台湾海峡や台湾近辺でのミサイル発射や大規模な軍事演習などを挙げたが、その通りになった。 米国のアジア専門家の間では、中国にとってペロシ訪台は「越えてはならない一線を越えた」との見方が優勢だ。 米戦略国際問題研究所(CSIS)の専任研究員を経て、ジャーマン・マーシャル・ファンド・オブ・ザ・ユナイテッド・ステーツのアジア地域所長を務めるボニー・グラッサー氏は「米中は極めて危険で、険悪な状態に陥った」と分析。その上で、中国政府の行動が「単なる報復を超え、現状の変更を引き起こしかねない」との懸念を寄せていた。 ペロシ氏がバイデン政権や専門家の懸念を無視して訪台を断行したのならば、大義名分があったに違いない。それこそ、中間選挙だけでなく2024年の米大統領選を見据えた“強い米国”の再構築ではないか。 ロシアのウクライナ侵攻を受け、中国の“力による現状変更”が警戒される状況で、中国の威嚇を跳ね除け「台湾を支える米国の揺るぎない米国の関与を守る」意思を伝えることは、国内だけでなく海外で“強い米国”を印象づける利点もある。インド太平洋など、米国が主導する多国間での対中包囲網へのコミットメントの強化とも捉えられよう』、「中国の威嚇を跳ね除け「台湾を支える米国の揺るぎない米国の関与を守る」意思を伝えることは、国内だけでなく海外で“強い米国”を印象づける利点も」、これなら立派な「大義名分」だ。
・『軽く見られているバイデンの二転三転  そもそも、バイデン氏の支持率はジリ貧が続く。ギャラップが7月5~26日に実施した世論調査によれば、支持率は38%と就任以来の最低を更新した。それだけでなく、4月20日から7月19日までの平均支持率も40%と、1954年以降、1期目の大統領としては同期間中の平均値で過去最低を塗り替えた。つまり、トランプ前大統領の42%すら下回ったことになる。民主党寄りの有権者からも、そっぽを向かれている。 CNNが7月28日に公表した世論調査では、彼らの間でも「バイデン氏以外の候補者を擁立すべき」との回答が75%と、1~2月時点の51%から急伸していた』、 バイデン氏の失点と言えば、21年8月、イスラム主義組織タリバン勢力によるカブール陥落が真っ先に挙げられる。以降はインフレ高進が仇となったが、ロシアによるウクライナ侵攻についても「トランプが大統領ならば、ロシアはウクライナ侵攻しなかった」との回答が62%に達したことも、記憶に新しい。(3月10日公開「『危機の大統領』? ウクライナ侵攻でも支持率低迷のバイデン政権」』、確かに「バイデン」はモーロクした印象が強過ぎる。「「トランプが大統領ならば、ロシアはウクライナ侵攻しなかった」との回答」は、どこまで国際政治の実態を反映したものかは不明だが、頼りない印象だけは抜群だ。
・『議員たちの台湾問題  5月の台湾防衛に関して「イエス」と応じたバイデン氏の発言は、真の意図はともかく失言とされる。しかし、民主党や共和党の有力上院議員は歓迎した。 民主党のロバート・メネンデス上院外交委員長(ニュージャージー州)は「バイデン氏は正しい。信頼できる抑止には勇気と明快さが必要だ」と評価した。共和党のミッチ・マコーネル院内総務(ケンタッキー州)は、「台湾への侵攻を米国が座視しないと中国は知るべき」と発言。同党のリック・スコット上院議員(フロリダ州)も「大統領は2回も台湾を防衛すると発言したが、ホワイトハウスはその度に修正した」とツイートし、上院は混乱を終わらせるべきだと主張した。その上で「私が推進する“台湾侵略防止法案”を可決し、米国による台湾支援を明確化すべきだ」と訴えた。 なお、スコット氏は2019年にフロリダ州知事から上院議員に転じたばかりだが、21年から全国共和党上院委員会の委員長を務め、24年の米大統領選での出馬が囁かれる一人である』、親「台湾」の「上院議員」が、「24年の米大統領選での出馬が囁かれる一人」とは、「中国外交」の苦戦はしばらく続きそうだ。
・『台湾防衛発言に対するスコット議員のツイート  米国は、1979年に成立した“台湾関係法”と1982年に制定された“6つの保証”に基づき、台湾の自衛能力貢献に寄与してきた。半面、米軍の介入を確約していない。長年“曖昧戦略”を展開したわけだが、中国の脅威が眼前に迫り、2030年頃に中国はGDPで米国を追い抜く見通しだ。米議会の対中警戒は、否が応でも高まらざるを得ない。約520億ドル規模の補助金を含む半導体生産支援法案(CHIPSプラス)が超党派で成立したのも、そうした背景がある。 その上院は足元、スコット氏が法案を提出するだけでなく、メネンデス氏が同じく上院外交委員会のリンゼー・グラム議員(共和党)と連名で“2022年版台湾政策法”を提案。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、台湾関係法を刷新するもので、向こう4年間の台湾への外交軍事支援を含め、台湾を“重要な北大西洋条約機構(NATO)非加盟の同盟地域”に指定し米国からの武器納入を容易にしつつ、相互防衛の約束は盛り込まない』、「相互防衛の約束は盛り込まない」、ということで「中国」のメンツをかろうじて守った形だ。
・『切実、民主党の24年大統領選挙  1995~96年の第3次台湾海峡危機では、96年3月の中国の大規模軍事演習を展開、米国は台湾近海に原子力空母2隻を派遣するまで緊張が高まった。しかし、クリントン政権(当時)は同年7月にレーク安全保障担当大統領補佐官が中国に送り出し、翌97年5月にクリントン氏が最恵国待遇の更新支持を表明。1997年10月には江沢民主席が国賓として米国を訪問し、1998年6月には、クリントン氏が約9年ぶりに訪中するなど、現在の米国人にしてみれば米国が歩み寄った印象は拭えない。 現状、ピュー・リサーチ・センターの米世論調査で、米国人の89%が「中国を競争相手あるいは敵」とみなし、中国と台湾における緊張も「深刻」と受け止める米国人も78%だ。米世論での対中警戒が高まるだけに、米議会が当時のような姿勢を認めるはずはない。ペロシ氏の訪台は、中国の力による現状変更に屈しない立法府の力強い意志と結束を象徴したと言えよう。 何より民主党にしてみれば、中間選挙だけでなく、次の米大統領選を見据えた布石だったとしてもおかしくない。バイデン陣営にしても、行政府として距離を置けば中国側が何と言おうが説明可能という逃げ道が残る。一方で、民主党の大統領候補が誰であっても、中国に24年の米大統領選を制するには“弱腰”でいられない。 ニューズウィーク誌がペロシ訪台計画について“トランプ前大統領による強硬な対中政策転換のさらなる勝利”と伝えていた。米大統領選を控え、民主党は中国や米世論を過小評価も過大評価もせず、淡々と“強い米国”のイメージ作りに励む必要がありそうだ) バイデン氏の台湾を防衛すると3度にわたって発言しつつ、その度に撤回しているのも、米国の有権者にすれば高等な“曖昧戦略”(「1つの中国」を認め台湾と正式な国交を結ばず、武器輸出などを行う状態)というより、“優柔不断”に映るのだろう。 ワシントン・ポスト紙は5月24日に“二転三転するバイデン氏の台湾防衛宣言は米国を弱くみせる”との論説を掲載。そこで、リチャード・ハース外交問題評議会(CFR)会長の「戦略的曖昧さとして知られる政策は……その役割を終えた。今こそ米国は、戦略的明確化政策を導入すべき時だ」との発言を引用し、曖昧戦略からの脱却を訴えた』、「「戦略的曖昧さとして知られる政策は……その役割を終えた。今こそ米国は、戦略的明確化政策を導入すべき時だ」との発言を引用し、曖昧戦略からの脱却を訴えた」、注目すべき発言だ。

次に、8月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「ペロシ氏訪台で「アジア主戦場の米中新冷戦」の足音、日本に覚悟はあるか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307778
・『米国のナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪れ、世界中で議論を呼んでいる。経済危機を避けるため、米中が対話の可能性を模索しつつあった中、その努力を無に帰したからだ。中国はペロシ議長の訪台を受けて大規模な軍事演習を実施し、台湾だけでなく米国を挑発している。このことは、もし今後の世界で「新冷戦」があるならば、その主戦場が「北東アジア」であることを明示したといえる。冷戦といえば、ウクライナ戦争の渦中にあるロシアを想起し、意外に思う読者がいるかもしれないが、ロシアの脅威はもはや幻想にすぎない。そういえる要因を詳しく解説する』、「新冷戦」「の主戦場が「北東アジア」」とは興味深そうだ。
・『米ペロシ議長の訪台を受け中国が大規模軍事演習に走ったワケ  米国のナンシー・ペロシ下院議長が8月2日夜に台湾を訪れて、蔡英文台湾総統と会談した。ペロシ議長は会談で、世界的に「民主主義VS権威主義」の対立構造が鮮明になっていると指摘し、「米国は揺るぎない決意で台湾と世界の民主主義を守る」と強調した。 また、ペロシ議長は今回、中国民主化運動の元学生リーダー、ウアルカイシ氏ら人権・民主運動関係者と会談したという。加えて、半導体受託生産世界最大手・台湾積体電路製造(TSMC)の劉徳音会長とも会談したと報じられている。 だが中国は、ペロシ議長の訪台に強く反発した。中国軍は、台湾周辺で実弾射撃を伴う大規模な軍事演習を行い、台湾北方、東方、南方の各海域に向けて弾道ミサイル「東風」を11発発射した。重要なことは、史上初めて、日本の排他的経済水域(EEZ)内に5発、中国軍のミサイルが着弾したことだ。 ペロシ議長の訪台を受け、中国が強気な態度を取った要因については、専門家の間でさまざまな見方がある。 その一つは、「習近平国家主席がペロシ議長の訪台を許したことについての、国民からの批判を抑えたかったのではないか」というものだ。 というのも、2022年は中国と習主席にとって重要な時期である。8月1日は中国人民解放軍の「建軍95周年記念日」だった。8月には他にも、長老らの意見を聞いて共産党の方針を決める「北戴河会議」がある。また、22年秋には5年に一度の党大会を控えている。 重要な会議や式典が相次ぐ時期に、国内で弱腰の姿勢を見せられなかったというのだ。 もう一つの見方は、「台湾を取り囲み、武力侵攻を想定した軍事演習を行うことで、中国の軍事能力の向上を米国に見せつける狙いがあった」というものだ。 これまでの中国は、軍事演習の他にも、米国に対するサイバー攻撃など多岐にわたる作戦領域を展開してきた。その背景には、米国が武器売却や軍事演習を通じて、粛々と台湾との関係を強化してきたことへの強い不満があるという。 今回もこうした不満が原因となり、軍事演習によって米国を挑発・威嚇しようとした可能性は大いにあるだろう』、「2022年は中国と習主席にとって重要な時期である。8月1日は中国人民解放軍の「建軍95周年記念日」だった。8月には他にも、長老らの意見を聞いて共産党の方針を決める「北戴河会議」がある。また、22年秋には5年に一度の党大会を控えている。 重要な会議や式典が相次ぐ時期に、国内で弱腰の姿勢を見せられなかったというのだ」、「中国の軍事能力の向上を米国に見せつける狙い」、いずれももっともな見方だ。
・『ペロシ議長の訪台は米中の歩み寄りを無に帰した  しかし、「中国は米国とのこれ以上の緊張拡大を望んでいるわけではなく、それを慎重に避けている」という見方もある。 また、ペロシ議長の訪台自体についても、各方面から厳しい批判がある。米ジョー・バイデン政権は対中強硬姿勢を強化しながらも、並行して中国との対話も進め、対中関係を安定させようとしてきた。 特に、ウクライナ戦争勃発後は、欧米のロシアに対する経済制裁が、中国を含む国際経済に悪影響を与えつつある。その中で経済危機を避けるために、米中は対話の可能性を模索しつつあった。 だが、ペロシ議長の訪台は、これらの米中両政府の努力を無に帰したかもしれない。たとえ前述の通り、中国がこれ以上の緊張拡大を望んでいなかったとしても、訪台を機に米中関係が明らかに悪い方向に向かうのは間違いない。 また、台湾や日本にとっても、議長の訪台の意義を見いだすことは難しい。「結局、議長のレガシー(遺産)づくりでしかない」といった厳しい報道も出ている。“遺産”という表現が使われた理由は、米国で22年11月に行われる中間選挙で、民主党が厳しい戦いを強いられ、敗北によってペロシ議長が退任する可能性が考えられるからだ。 しかし、不可解なペロシ議長の訪台と、中国からの反発が意味することが一つある。それは、もし今後の世界で「新冷戦」があるならば、その主戦場が「北東アジア」であることがはっきりしたことだ。 逆にいえば、欧州には「新冷戦」など存在せず、その主戦場になり得ないことが明確になった。 新冷戦といえば、ウクライナ戦争の渦中にあるロシアを想起し、意外に思う読者が多いかもしれない。だが、ウクライナ戦争によって、現在の欧米諸国におけるロシアの劣勢は明確になっている。もはや、対立構図で論じられるレベルではないのだ。 この連載では、ウクライナ戦争開戦前から、ロシアはユーラシア大陸の勢力争いで、米英仏独などNATO(北大西洋要約機構)に敗北していると指摘してきた(本連載第306回・p2)。 振り返ると、東西冷戦期にドイツは東西に分裂し、「ベルリンの壁」で東西両陣営が対峙(たいじ)した。当時、旧ソ連の影響圏は「東ドイツ」まで広がっていた。しかし東西冷戦終結後、旧共産圏の東欧諸国や、旧ソ連領だった国が次々と民主化した。その結果、約30年間にわたってNATOやEU(欧州連合)は東方に拡大してきた。 ペロシ氏訪台で「アジア主戦場の米中新冷戦」の足音、日本に覚悟はあるか ヨーロッパの地図(出典:123RF)。ポーランドやチェコ、ハンガリー、「バルト三国」などは冷戦後にNATOに加わった ベラルーシ、ウクライナなど数カ国を除き、旧ソ連の影響圏だったほとんどの国がNATO、EU加盟国になった。ウクライナ戦争の開戦前、ロシアの勢力圏は、東ベルリンからウクライナ・ベラルーシのラインまで大きく後退していた。 ウクライナ戦争の開戦時、プーチン大統領は「NATOがこれ以上拡大しないという法的拘束力のある確約をする」「NATOがロシア国境の近くに攻撃兵器を配備しない」「1997年以降にNATOに加盟した国々からNATOが部隊や軍事機構を撤去する」の3つを要求した(第297回)。これらの内容からは、ロシアがNATOの東方拡大によって、いかに追い込まれていたかが見て取れる。 そして、ウクライナ戦争開戦から5カ月がたった現在、ロシアはウクライナ東部を占領し、大攻勢に出ていると報じられている。だが欧州全体の地図を眺めれば、NATOの勢力圏が開戦前より拡大し、ロシアがさらに追い込まれていることがわかる』、「欧州全体の地図を眺めれば、NATOの勢力圏が開戦前より拡大し、ロシアがさらに追い込まれていることがわかる」、その通りだ。
・『ロシアの不利は明確 欧州は「新冷戦」の舞台ではない  そう言い切れる要因は、長年NATOとロシアの間で「中立」を守ってきたスウェーデン、フィンランドのNATO加盟決定である(第306回・p3)。加盟交渉は当初、NATO加盟国の一つでありながら、ロシアとも密接な関係を保ってきたトルコが反対し、難航するかと思われた。だが、トルコはあっさりと翻意した。 トルコはウクライナ戦争を巡り、最もしたたかに振る舞っている国だ。かつては、ウクライナとロシアの停戦交渉の仲介役を担おうとしたこともあった。そのトルコが、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟を認めたのは、相当の「実利」を得られると踏んだからだろう。 スウェーデン・フィンランドのNATO加盟によって、地上におけるNATO加盟国とロシアの間の国境は2倍以上に延びる。海上においても、「不凍港」があるバルト海に接する国が、ほぼすべてNATO加盟国になる。単にNATOの勢力圏が東方拡大したという以上に、ロシアの安全保障体制に深刻な影響を与えることになるのだ』、「スウェーデン・フィンランドのNATO加盟によって、地上におけるNATO加盟国とロシアの間の国境は2倍以上に延びる。海上においても、「不凍港」があるバルト海に接する国が、ほぼすべてNATO加盟国になる。単にNATOの勢力圏が東方拡大したという以上に、ロシアの安全保障体制に深刻な影響を与える」、そんな影響があったことをクリアに示してくれた。
・『事実上「戦勝」状態にあるNATOの不安要素とは?  その上、今後はウクライナ、モルドバ、ジョージアもNATOに加わる可能性がある。確かにこれらの国は今、ロシアに領土の一部を占領されている。だが、そのままの状態でも、3カ国がもしNATOに加盟すれば、NATOの東方拡大はより多くの旧ソ連国に及ぶことになる。 戦争で苦しんでいるウクライナ国民にとっては大変申し訳ないことだが、NATOからすれば、すでにロシアに完勝し、得るものを得たということだといえる。これが、欧州には「新冷戦」など存在しないと言い切れる根拠である。 ただし、事実上の「戦勝」状態にあるNATOだが、わずかに不安要素もある。 ロシアのウクライナ軍事侵攻が始まって以降、ロシアからの石油・ガスパイプラインに依存していない米英を中心に、欧米諸国は一枚岩となってロシアに経済制裁を科してきた(第303回)。だが現在は、米英と欧州諸国の間に不協和音が生じているようにみえる。 その理由は、ロシアが欧州へのエネルギー供給を大幅に削減したからだ。ロシアの国営エネルギー会社ガスプロムが先月末、ドイツにつながるパイプライン「ノルドストリーム1」の流量を半分に減らし、輸送能力の20%にすると発表した。そのため、今冬に深刻な天然ガス不足が起こる懸念が出て、欧州諸国に動揺が走っているのだ。 そのため欧州諸国は、今冬のエネルギー不安を回避する目的で、ロシアがウクライナの領土を占領した状態のまま、停戦の実現に動くかもしれない。各国はウクライナへの武器供与などを行っているものの、NATOのロシアに対する「完勝」が決定的となった今、エネルギー供給不安を我慢してまで戦争を継続する意義がなくなってしまった。 一方の米英は、ロシアからの輸入に依存しておらず、「ノルドストリーム1」の流量減によるダメージは相対的に小さい。ウクライナ戦争をこれ以上継続する積極的な理由はないが、戦争が長引くほどにプーチン政権が追い込まれるメリットもある。他の欧州諸国ほど停戦を急いでいるわけではなく、温度差が生じている(第304回)。 とはいえ、ロシアの不利に変わりはない。今後のウクライナ戦争は、世界を巻き込む大問題ではなく、あくまでユーラシア大陸の一地域で起こった「局地戦」となっていくだろう。 戦況が現状のまま停戦交渉が進めば、ロシアによるウクライナ領の占領という「力による一方的な現状変更」を容認することになるが、欧州諸国にとってはエネルギー面の不安が解消される。 停戦が実現しても、ウクライナの領土をロシアが占領し続ける限り、経済制裁は続くが、ロシア産石油ガスは制裁対象から外されるだろう。プーチン政権を一挙に倒すことはできないが、それでもジワジワと追い詰めることはできる。温度差はあるものの、欧米諸国にとっては、それでも十分な成果なのだ』、「戦況が現状のまま停戦交渉が進めば、ロシアによるウクライナ領の占領という「力による一方的な現状変更」を容認することになるが、欧州諸国にとってはエネルギー面の不安が解消される。 停戦が実現しても、ウクライナの領土をロシアが占領し続ける限り、経済制裁は続くが、ロシア産石油ガスは制裁対象から外されるだろう・・・温度差はあるものの、欧米諸国にとっては、それでも十分な成果なのだ」、なるほど。
・『ロシアの脅威は幻想にすぎない 日本が真に警戒すべきは中国だ  要するに、「大国ロシア」とは「幻想」にすぎない(第297回)。ロシアへのウクライナ侵攻をボクシングに例えるならば、リング上で攻め込まれ、ロープ際まで追い込まれてダウン寸前のボクサーが、かろうじて繰り出したジャブのようなものなのだ。 こうした要因により、欧米諸国の関心はロシアから離れ、中国との真の「新冷戦」に向かっている。幻想にすぎない「大国ロシア」と違い、中国との対立は多岐にわたっており、リアリティーのある危機であるからだ。 台湾を巡る軋轢(あつれき)の他にも、中国による「東シナ海や南シナ海における力による一方的な現状変更の動き」「知的財産権の侵害など経済安全保障の問題」「新疆ウイグル自治区や香港などでの人権侵害」などを欧米側は厳しく批判し、対立している。 なにより問題なのは、中国を中心とする権威主義体制は世界中に広がり、自由民主主義に対抗する勢力になりつつあることだ。 特に中国は、新型コロナウイルス感染拡大への対応について、自国のトップダウンによる意思決定の早さを「権威主義の優位性」と誇り、世界中の権威主義体制や軍事政権の指導者がそれを支持するようになった(第263回)。 また、アフリカ諸国や南米諸国など、中国から支援を受けて経済的な結び付きを強めることで、中国を支持する国家も増えている(第267回)。 これに対して、米国は、日米同盟など二国間関係に加えて「主要7カ国首脳会議(G7)」「日米豪印戦略対話(クアッド)」「米英豪の安全保障パートナーシップ(AUKUS)」など、さまざまな戦略性のある多国間の枠組みを強化。重層的な「対中国包囲網」を築くことで対抗しようとしている。 日本は、これらのさまざまな枠組みの中で、米国をサポートする役割があるのはいうまでもない。地政学上、日本が「新冷戦」の最前線に位置しているからだ。 尖閣諸島侵攻の懸念といった軍事面の安全保障のみならず、半導体、電気自動車、人工知能、量子コンピューターの開発といった経済面の安全保障においても、日本にとって中国は大きな脅威である(第306回・p5)。 ペロシ議長の訪台は、北東アジアで「新冷戦」が本格化する狼煙(のろし)となった可能性がある。日本には、その戦いに身を投じる覚悟が求められている』、「日本は、これらのさまざまな枠組みの中で、米国をサポートする役割があるのはいうまでもない。地政学上、日本が「新冷戦」の最前線に位置しているからだ。 尖閣諸島侵攻の懸念といった軍事面の安全保障のみならず、半導体、電気自動車、人工知能、量子コンピューターの開発といった経済面の安全保障においても、日本にとって中国は大きな脅威」、「ペロシ議長の訪台は、北東アジアで「新冷戦」が本格化する狼煙・・・となった可能性」、同感である。
タグ:現代ビジネス 台湾 (その5)(レガシー作り?議会の圧力?お騒がせペロシの台湾訪問 その裏を読む 24年大統領選を見据えた民主党の事情、ペロシ氏訪台で「アジア主戦場の米中新冷戦」の足音 日本に覚悟はあるか) 安田 佐和子氏による「レガシー作り?議会の圧力?お騒がせペロシの台湾訪問、その裏を読む 24年大統領選を見据えた民主党の事情」 「ペロシ氏の訪台計画にバイデン政権は怒り心頭で、国家安全保障会議(NSC)や国務省の高官がペロシ陣営に赴き、地政学的リスクを事前に説明したという。しかし、ペロシ氏は訪台を敢行。国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報担当調整官が8月2日、「下院議長には訪台の権利がある」と述べ、三権分立の下で行政府の制御が及ぶ範囲内ではないと一線を画すにとどめた」、「バイデン」の政治力のなさを如実に示した形だ。 「自身のレガシー作りを狙った」のではないとすると、真の狙いは何なのだろう。 「ペロシ氏がスキャンダルから話題を逸らすべく訪台という大舞台を演出したとの批判も」、そんなみみっちい理由ではなかっと思うしかなさそうだ。 「中国の威嚇を跳ね除け「台湾を支える米国の揺るぎない米国の関与を守る」意思を伝えることは、国内だけでなく海外で“強い米国”を印象づける利点も」、これなら立派な「大義名分」だ。 バイデン氏の失点と言えば、21年8月、イスラム主義組織タリバン勢力によるカブール陥落が真っ先に挙げられる。以降はインフレ高進が仇となったが、ロシアによるウクライナ侵攻についても「トランプが大統領ならば、ロシアはウクライナ侵攻しなかった」との回答が62%に達したことも、記憶に新しい。(3月10日公開「『危機の大統領』? ウクライナ侵攻でも支持率低迷のバイデン政権」』、確かに「バイデン」はモーロクした印象が強過ぎる。「「トランプが大統領ならば、ロシアはウクライナ侵攻しなかった」との回答」は、どこまで国際政治の 親「台湾」の「上院議員」が、「24年の米大統領選での出馬が囁かれる一人」とは、「中国外交」の苦戦はしばらく続きそうだ。 「相互防衛の約束は盛り込まない」、ということで「中国」のメンツをかろうじて守った形だ。 「「戦略的曖昧さとして知られる政策は……その役割を終えた。今こそ米国は、戦略的明確化政策を導入すべき時だ」との発言を引用し、曖昧戦略からの脱却を訴えた」、注目すべき発言だ。 ダイヤモンド・オンライン 上久保誠人氏による「ペロシ氏訪台で「アジア主戦場の米中新冷戦」の足音、日本に覚悟はあるか」 「新冷戦」「の主戦場が「北東アジア」」とは興味深そうだ。 「2022年は中国と習主席にとって重要な時期である。8月1日は中国人民解放軍の「建軍95周年記念日」だった。8月には他にも、長老らの意見を聞いて共産党の方針を決める「北戴河会議」がある。また、22年秋には5年に一度の党大会を控えている。 重要な会議や式典が相次ぐ時期に、国内で弱腰の姿勢を見せられなかったというのだ」、「中国の軍事能力の向上を米国に見せつける狙い」、いずれももっともな見方だ。 「欧州全体の地図を眺めれば、NATOの勢力圏が開戦前より拡大し、ロシアがさらに追い込まれていることがわかる」、その通りだ。 「スウェーデン・フィンランドのNATO加盟によって、地上におけるNATO加盟国とロシアの間の国境は2倍以上に延びる。海上においても、「不凍港」があるバルト海に接する国が、ほぼすべてNATO加盟国になる。単にNATOの勢力圏が東方拡大したという以上に、ロシアの安全保障体制に深刻な影響を与える」、そんな影響があったことをクリアに示してくれた。 「戦況が現状のまま停戦交渉が進めば、ロシアによるウクライナ領の占領という「力による一方的な現状変更」を容認することになるが、欧州諸国にとってはエネルギー面の不安が解消される。 停戦が実現しても、ウクライナの領土をロシアが占領し続ける限り、経済制裁は続くが、ロシア産石油ガスは制裁対象から外されるだろう・・・温度差はあるものの、欧米諸国にとっては、それでも十分な成果なのだ」、なるほど。 「日本は、これらのさまざまな枠組みの中で、米国をサポートする役割があるのはいうまでもない。地政学上、日本が「新冷戦」の最前線に位置しているからだ。 尖閣諸島侵攻の懸念といった軍事面の安全保障のみならず、半導体、電気自動車、人工知能、量子コンピューターの開発といった経済面の安全保障においても、日本にとって中国は大きな脅威」、「ペロシ議長の訪台は、北東アジアで「新冷戦」が本格化する狼煙・・・となった可能性」、同感である。
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ウクライナ(その6)(このままでは第三次世界大戦になる…佐藤優が注目する「クリミア大橋」と「リトアニア」という2大リスク アメリカは必死になってウクライナを抑えているが…、秘密警察と検察のトップを突如解任…佐藤優「ゼレンスキー大統領を疑心暗鬼に陥れたロシアの狡猾な心理戦」 「アメリカに管理された戦争」を続けるウクライナの苦しさ、ウクライナ軍の焦り「ドローン攻撃が、ロシア軍に効かない」…! 米国製「ロケット砲」も“効き目なし”で、いよいよ大ピンチへ…!、プーチンの「思惑通りだ」「危険な状況だ」…! ウクライ [世界情勢]

ウクライナについては、6月24日に取上げた。今日は、(その6)(このままでは第三次世界大戦になる…佐藤優が注目する「クリミア大橋」と「リトアニア」という2大リスク アメリカは必死になってウクライナを抑えているが…、秘密警察と検察のトップを突如解任…佐藤優「ゼレンスキー大統領を疑心暗鬼に陥れたロシアの狡猾な心理戦」 「アメリカに管理された戦争」を続けるウクライナの苦しさ、ウクライナ軍の焦り「ドローン攻撃が、ロシア軍に効かない」…! 米国製「ロケット砲」も“効き目なし”で、いよいよ大ピンチへ…!、プーチンの「思惑通りだ」「危険な状況だ」…! ウクライナ軍が“兵力ダウン”“戦費枯渇”で直面する「ヤバすぎる現実」)である。

先ずは、7月22日付けPRESIDENT Onlineが掲載した作家・元外務省主任分析官の佐藤 優氏による「このままでは第三次世界大戦になる…佐藤優が注目する「クリミア大橋」と「リトアニア」という2大リスク アメリカは必死になってウクライナを抑えているが…」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/59806
・『ロシアとウクライナの戦争は、これからどうなるのか。元外交官で作家の佐藤優さんは「ウクライナ軍はロシア軍の物資の補給路であるクリミア大橋の爆破を計画している。これが実行されれば、第3次世界大戦につながりかねない」という――。(連載第17回)』、「第3次世界大戦につながりかねない」とは穏やかならざることだ。
・『ロシア本土とクリミア半島をつなぐ全長19キロ  日本のメディアはあまり話題にしていないのですが、ロシアとウクライナの戦争が「第3次世界大戦」となる瀬戸際に差し掛かっています。とりわけ私が注目しているのは「クリミア大橋爆破計画」と「リトアニアの国境封鎖」の帰趨です。 クリミア大橋は、2014年にクリミア半島を併合したあと、ロシアが造りました。ロシアのクラスノダール地方にあるタマン半島とクリミア半島東端のケルチという町の間に架かっています。全長およそ19キロメートルに及ぶ、鉄道と道路の併用橋です。2015年5月に工事が始まり、道路は18年5月に、鉄道は19年12月に完成しました。これによって、ロシア本土とクリミア半島が陸路でつながりました。工費は37億ドルといわれます。 開通の式典には、プーチン大統領も出席。大型トラックのハンドルを自ら握って車列を先導し、ロシア側からクリミア半島へ渡るパフォーマンスを演じました』、「全長およそ19キロメートルに及ぶ、鉄道と道路の併用橋」、戦略的価値は大きそうだ。
・『クリミア大橋を破壊して補給路を断つ作戦  ウクライナへの侵攻が始まったあと、この橋がロシア軍の物資の輸送に使われているので破壊すべきだという意見が、ウクライナ側から出ています。クリミア大橋を破壊すれば、ロシアの黒海艦隊が母港としているセヴァストポリへの陸からの補給路を断つことができるからです。 5月9日の朝日新聞デジタルは、次のように報じました。 〈「必ず破壊される。問題は、それがいつになるかということだ」。ウクライナのニュースサイト「チャンネル24」(8日付)によると、ウクライナのアンドルーシウ内相顧問はこう言ってクリミア橋を将来的に攻撃する可能性に触れた。現状では遠距離から攻撃できる有効な武器がないとして、攻撃するには橋の沿岸に近づく必要があるとの課題も指摘した。〉 〈ウクライナのダニロフ国家安全保障国防会議書記も4月下旬、橋の破壊について「機会があれば、間違いなくやるだろう」とラジオ番組で述べている。〉 〈ロシアはウクライナ側の発言に強く反発している。ロシアの有力紙「ベドモスチ」によると、大統領府のペスコフ報道官はダニロフ氏の発言について、「テロ行為の可能性を発表したことにほかならない」と批判。政府の安全保障会議で副議長を務めるメドベージェフ前首相も、ダニロフ氏について「彼自身が報復の標的になることを理解してくれるよう願っている」とSNSに書き込み、ウクライナ側を強く牽制した』、ウクライナに米国が供与した高機動ロケット砲システムハイマースは、攻撃にはうってつけだが、米国は「クリミア橋」への使用は認めないだろう。
・『クリミア大橋の爆破で「ロシアにパニックが起きる」  アメリカが武器の追加支援を発表した翌日の6月16日には、ウクライナ国防軍のマルシェンコ少将の発言が報じられました。 「米国をはじめとする北大西洋条約機構(NATO)諸国の武器を受け取ったら、少なくともクリミア大橋の攻撃を試みる」 「クリミア大橋は目標の一つか?」と尋ねられたマルシェンコ少将は、 「100%そうだ。このことはロシア軍人、ウクライナ軍人、ロシア市民、ウクライナ市民にとって秘密ではない。これがロシアを敗北させるための第一の目標だ。われわれは虫垂を切らなくてはならない。虫垂を切れば、これでロシアにパニックが起きる」と答えたといいます。 ロシアは、敏感に反応しました。政府系テレビ第一チャンネルの政治討論番組「グレート・ゲーム(ボリシャヤ・イグラー)」が早速この日の夜、マルシェンコ少将の発言を取り上げたのです。出演者は、ロシア高等経済大学のドミトリー・スースロフ教授、モスクワ国際関係大学のアンドリャニク・ミグラニャン教授、作家のニコライ・スタリコフ氏などでした』、「ロシアは、敏感に反応しました」、当然だろう。
・『アメリカが必死になってウクライナを抑えている理由  スースロフ教授が問います。 「スタリコフさんにお伺いしたい。米国は、この種の発言やウクライナの行動が紛争を激化させる直接的要因になるとは考えないのか。紛争はウクライナだけでなく、その外側にも及ぶ。猿に手榴弾を持たせるようになれば(今がまさにそのような状況であるが)、責任は猿に手榴弾を渡した者が負わなくてはならない」 スタリコフ氏は、こう答えました。 「理屈では、猿に手榴弾を与えた者が責任を負わなくてはならない。しかし、歴史において責任を負うのは猿自身である。手榴弾は投げた者がその責任を負うというのが、米国の考えだ。ウクライナ軍の将官の一人がクリミア大橋を攻撃すると言っても、米国は何の損もしない」 いまのところクリミア大橋への攻撃が実行されないのは、アメリカが必死になってウクライナを抑えているからです。アメリカは、ロシアがこの戦争に勝つことがあってはならないと考えると同時に、ロシアが攻勢を強めるウクライナ情勢においてウクライナが圧勝することはないとわかっています。だから戦火をウクライナ国内に押しとどめたいと考えているのです』、「アメリカ」の「支援」は条件付きなので、「ウクライナ」もやり難いだろう。
・『リトアニアも一触即発  バルト三国のリトアニアが第3次世界大戦の引き金になるかもしれないことは、4月27日のこの連載で指摘しました。ロシアの飛び地の領土カリーニングラードとの国境を、リトアニアが封鎖する動きがあったからです。ロシアからの警告が効いたようで封鎖は見送られていたのですが、6月18日から、EUが制裁の対象としている貨物を積んだ列車の通過を禁止し始めました。 カリーニングラードはバルト艦隊の母港であり、迎撃ミサイルシステムも備わっています。ロシアにとって戦略的な要衝ですから、交通路を確保するため「平和維持」の名目でNATO加盟国のリトアニアに軍隊を送る可能性があります。旧日本軍が、南満州鉄道を守るという名目で派兵したようなものです。 ではアメリカは、NATO第5条を適用して共同防衛に踏み切るのか。これは、ロシアと本気で事を構える覚悟があるか否かを問われる事態ですが、アメリカは介入したがらないでしょう』、「リトアニア」がわざわざこんな時期に火遊びをするとは困ったことだ。
・『アメリカ、イギリス、ドイツは交戦国と認定されかねない  最終的には、リトアニアが妥協せざるを得ないと考えます。しかし、小国の瀬戸際外交によってロシアを挑発してみせ、NATOに対しても存在をアピールできたことは、リトアニアにとっての成果になります。ソ連が崩壊する前から、リトアニアの歴史的なアイデンティティーは「反ロシア」で、教育や文化全体の中で染み込んでいます。それは裏返して言えば、ロシアの怖さをよく知っているということです。 リトアニアの歴史を振り返ると、13世紀にはリトアニア大公国が成立し、14世紀にポーランドとの連合王国となり、全盛期はバルト海から黒海に及ぶほど勢力を拡大します。しかし18世紀末にはロシア、プロイセン、オーストリアによって三度にわたり領土分割が行われ、ロシア革命が起こる1918年まで約120年に及びロシア帝国の支配が続きました。1940年のソ連侵攻により再び独立を失い、その後ナチスドイツが占領、そして再びソ連に併合されます。そのため、反ロシア感情が極めて強い国の一つです。 仮にクリミア大橋が破壊されれば、ロシアはそのための武器を供給したNATOへの攻撃に踏み切りかねません。カリーニングラードに対するリトアニアの封鎖も同じで、ロシアは力で阻止するかもしれません。どちらの場合も、第3次世界大戦の危機が到来します。 伝統的な国際法からすると、兵器を供与している国は、それだけで交戦国と認定される可能性があります。アメリカ、イギリス、ドイツなどは、すでに交戦国と認定されてもいいほどの踏み込み方をしています。ウクライナの戦いは応援するが、NATO諸国や米ロ戦争に拡大しないようにする綱渡りゲームが行われているのです』、危なっかしい「綱渡りゲーム」は、当面、続けざるを得ないようだ。

次に、8月6日付けPRESIDENT Onlineが掲載した作家・元外務省主任分析官の佐藤 優氏による「秘密警察と検察のトップを突如解任…佐藤優「ゼレンスキー大統領を疑心暗鬼に陥れたロシアの狡猾な心理戦」 「アメリカに管理された戦争」を続けるウクライナの苦しさ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/60287
・『7月17日、ウクライナのゼレンスキー大統領は保安局長官(秘密警察長官)と検事総長という高官2人を「ロシアに協力する反逆行為が多数見つかった」という理由で解任した。一人はゼレンスキー大統領の幼なじみ、もう一人はロシアの戦争犯罪を捜査してきた女性だった。解任の背景には何があるのか。元外交官で作家の佐藤優さんが解説する――。(連載第18回)』、「保安局長官」と「検事総長」の「解任」とはよほどのことなのだろう。
・『「秘密警察と検察のトップが解任」の衝撃  7月28日は、ゼレンスキー大統領が2021年に制定した祝日「ウクライナの国家の日」でした。記念の動画メッセージで、ゼレンスキー大統領はこう演説しました。 「私たちは、戦うために生き続けるし、生きるために戦い続ける。私たちは、自らの家から最後の占領者を追い出すまで屈しないし、ウクライナの大地の最後の1メートルを解放するまで止まらない。最後の村、最後の家、最後の井戸、最後のサクラ、最後のヤナギが解放されるまで、私たちが気を休めることはない」(ウクライナ唯一の国営通信社「ウクルインフォルム通信」の日本語版より)』、なるほど。
・『「ロシアとつながりのある人間」を組織から排除してきたが…  保安局はソ連時代にはKGBでした。1991年12月にウクライナがソ連から独立した後も、インテリジェンス機関や検察にはソ連時代からの職員が勤務していました。 2013年に親ロシアのヤヌコビッチ大統領がロシアからの強い圧力を受けて、EUとの連合協定締結の署名を取りやめたことを発端に、反政府デモが盛んになり、2014年に追放されると(マイダン革命)、反ロ親米政権が発足し、ウクライナは、保安局、軍、検察で「非ロシア化」を徹底しようとしました。特に保安局の幹部職員をアメリカやイギリスでインテリジェンスの訓練を受けた人たちに入れ替えてきました。 そのため、ロシアと協力する保安局員や検察官が大量に出てきたことはゼレンスキー大統領にとって想定外の事態だったと思います。 しかし、実際はロシアとつながりのある人間を完全に排除していたわけではありません。 ウクライナ当局が7月16日に反逆罪などで拘束した連邦保安局クリミア支局長のオレグ・クリニッチ氏は1989年から1994年まで、ロシア連邦保安庁(FSB)アカデミーで学び、ロシアの防諜機関で勤務。1996年からはロシア連邦議会の国家院(下院)で勤務した経歴の持ち主です。そんなクリニッチ氏が2020年からウクライナ保安局で働き始めたわけです。 ゼレンスキー大統領は、ロシアの侵攻当初にクリニッチ氏を解任していますが、保安局の幹部の半数は同様の非難を受けるような経歴を持っているとされます』、「保安・防諜」機関が任務に忠実か否かの判断は極めて難しいものだ。
・『「解任された2人は国民の不満のはけ口にされた」  そのような状況の中で、ロシアのインテリジェンス機関は、ゼレンスキー大統領が疑心暗鬼に陥るような情報を巧みに流す心理戦を行っているのだと思います。秘密警察と検察といえば最も秩序が守られるべき部門なのに、そこさえ国家として抑えきれないのが、現在のゼレンスキー政権なのです。しかし秘密警察と検察を信用できなくなったら、国のトップは誰を信用すればいいのでしょうか。 この解任人事に、ロシアは即座に反応しました。同じ18日の夜9時、政府系テレビ「第一チャンネル」のニュース番組「ブレーミャ(時代)」が取り上げています。 アナウンサーが「2人の側近を解任したゼレンスキーの真意を探ってみましょう」と言い、現地ウクライナからのリポートも交えた内容でした。この番組の見立てを要約すれば、次の通りになります。 ――ゼレンスキー大統領は「西側諸国の支援を受けているので、ウクライナの勝利は近い」と言っているが、前線の状況は真逆である。国内外に向けて勝てない釈明を余儀なくされた大統領は、身辺にいる裏切り者のせいにしている。解任された2人は、国民の不満のはけ口として、スケープゴートにされたのだ――。 ゼレンスキー大統領は、国民の戦意を鼓舞し続けています。しかし、その足元を支える政権中枢が混乱し始めています。7月18日のBBCは、次のように報じています。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は17日夜、保安局(SBU)長官(秘密警察長官)と検事総長を解任したと発表した。強力な権力を持つ両組織内で、ロシアに協力する反逆行為が多数見つかったためとしている。ウクライナ当局は16日には、SBUのクリミアでの元幹部を反逆容疑などで拘束している。 ゼレンスキー大統領は、ロシアが占領した地域で60人以上の元政府職員が、ウクライナに敵対し、ロシアに協力していると述べた。さらに、法執行機関の職員がロシアに協力したりウクライナに敵対したりした疑いで、計651件の事件捜査に着手していると話した。 恒例になっている夜のビデオ声明でゼレンスキー氏は、「国の安全保障の基礎に対してこれほど多くの犯罪が行われていたことは(中略)(両組織の)トップにきわめて重大な疑問を突きつけており、すべての疑問にしかるべき適切な答えを得ていく」と述べた』、どうも防諜に素人の「ゼレンスキー大統領」に対し、「ロシアのインテリジェンス機関は、ゼレンスキー大統領が疑心暗鬼に陥るような情報を巧みに流す心理戦を行っている」可能性が強いのではなかろうか。
・『解任された2人は最側近だった  解任されたのは、KGB(ソ連の秘密警察機関であり対外諜報機関)を前身とする情報機関である保安局のバカノウ局長と、ベネディクトワ検事総長です。 バカノウ氏は、幼なじみのゼレンスキー氏が主宰する劇団「95地区」でも同僚でした。ゼレンスキー氏の資金管理係として2019年の大統領選にも深く関わり、当選後は保安局長官に任命されたのです。大学の観光科卒でしたから政治の経験もインテリジェンスに従事したこともまったくなかったので任命当初から資質に疑念が呈されていました。 ベネディクトワ検事総長は、ゼレンスキー氏が役者時代に知己を得て、大統領選挙で精力的に活動した論功でこの職に就きました。ロシア軍が行った戦争犯罪の捜査を率いてきた女性です。2人とも、ゼレンスキー大統領の最側近として知られていました。 解任の理由は、2人自身が「ロシアに協力する反逆行為」を行ったのではなく、部下を統率できなかったこと。部下たちは、この政権は長く持たないと見切りをつけ、自分の温かい椅子を確保するなら早いほうが得だと考えて、裏切り行為に走ったのでしょう』、「部下たちは、この政権は長く持たないと見切りをつけ、自分の温かい椅子を確保するなら早いほうが得だと考えて、裏切り行為に走ったのでしょう」、あり得る話だ。
・『「ロシアに勝てないのは裏切者がいるからだ」  番組はさらに、アメリカの政治サイト「POLITICO」を引用しながら、ゼレンスキー政権の内情を深掘りしていきます。すなわち、バカノウ氏が長官を務めてきたSBUの中にロシアの工作員がいることが、6月にウクライナ軍が敗北した原因だという指摘です。 ウクライナ当局者と西側外交官は皆、懸念はバカノフ氏だけでなく、ロシアの本格的なウクライナ侵攻の最初の数時間から数日間における当局幹部数人の決断についても大きいと語った。 へルソンのSBU長官であるセルヒィ・クリヴォルチコ将軍は、ゼレンスキーの命令に反して、ロシア軍が襲撃する前に同市から避難するよう部下に命じたと当局は主張する。 一方、彼の補佐役で地元事務所の反テロセンター長であるイホル・サドキン大佐は、クリミアから北上するロシア軍にウクライナの機雷の位置を密告し、敵機の飛行経路の調整に協力しながら、西へ向かうSBU捜査官の車列の中で逃走したと当局は主張している。 へルソンは、全面的な侵攻が始まって以来、ロシア軍に占領された最初の、そして今のところ唯一のウクライナの主要都市である。プーチン大統領が新たな攻勢を開始してから7日後の3月3日にロシア軍に占領された。 ウクライナ当局によると、ロシア軍がへルソンを簡単に占領できたのは、ドニプロ川に架かるアントノフスキー橋の爆破に現地SBU職員が失敗し、ロシア軍の進入を許してしまったためだという。 ゼレンスキー大統領に近いウクライナ政府高官は、6月にPOLITICOに対し、機密性の高い人事問題について話すため匿名を条件に、「我々は彼の仕事に満足しておらず、彼を排除するために動いている」と述べた。「我々は彼の管理能力に満足していない。なぜなら、今必要なのは……危機に対する管理能力であり、彼が持っているとは思えないからだ。」(7月17日・POLITICO) この番組の「ゼレンスキー大統領がスケープ・ゴートを必要としている」という見立ては、的確な評価と思います。ロシア軍は攻勢を強め、ウクライナ東部の約8割を制圧、南部でもじわじわと制圧地域を広げています。欧米から支援を受けるゼレンスキー大統領は、ロシアに勝てない理由を説明する必要に迫られているのです』、「ロシアに勝てないのは裏切者がいるからだ」と「スケープ・ゴート」に仕立て上げられたとの見方は大いにあり得る話だ。
・『「汚職の撲滅」はEU加盟の条件でもある  ウクライナは最近、「アメリカから供与された高機動ロケット砲システム『ハイマース』が威力を発揮して、大きな戦果を上げている」と誇示しています。しかし7月末で16基にすぎず、そのうち4基はロシアに壊されてしまった(ウクライナは否定)というのでは、戦果も限られるはずです。 さらに、供与に伴うアメリカ側の条件で、ハイマースでロシア本土を攻撃することはもとより、ロシアの補給路であるクリミア大橋を攻撃するのもいけないと手足を縛られているのです。アメリカに管理された戦争を戦っている限り、ウクライナに決定的な勝利は望めません。アメリカの目的は、戦争を少しでも長引かせてロシアに打撃を与えることだからです。 SBUの長官には、第1次官を務めていたマリウク氏が代行として起用されました。検事総長の後任には、7月28日にコースチン議員が選ばれました。同じ28日、政権の高官による汚職犯罪の捜査と起訴を担う「特別汚職対策検察(SAP)」の新しいトップに、オレクサンドル・クリメンコ氏が任命されたことも発表されました。 ウクルインフォルム通信によると、イェルマーク大統領府長官は次のようにコメントしています。 「独立した汚職対策インフラは、ウクライナの民主主義の重要な要素だ。汚職との闘いは、私たちの国家にとっての優先課題である。なぜなら、その成功に、私たちの投資の魅力とビジネスの自由がかかっているからだ」 裏返せばウクライナには、それだけ汚職がはびこっているわけです。汚職の撲滅は、ウクライナがEU加盟国の地位を与えられるために課された条件のひとつでもあります。道のりは遠いといえます』、「汚職の撲滅は、ウクライナがEU加盟国の地位を与えられるために課された条件のひとつでもあります。道のりは遠いといえます」、なるほど。
・『ロシアが虎視眈々と狙っていること  裏切り者がいるせいで勝てないという説明は、戦争中の国家として、かなり苦しい言い訳です。マイダン革命以降、ウクライナは8年間、非ロシア化の徹底を図ってきましたが、思うように進んでいない現実が浮き彫りになりました。 こうした内実は、ウクライナ国家の中枢が体をなしていないことを示しています。末端の官僚だけでなく、政権の中枢から国の行く末を憂慮してロシアと手を組もうと考える人が出てこないとも限りません。ロシアはそれを、ずっと待っています。 戦局を見据えながら、両国が折り合いをつけて停戦に向かうのか。ウクライナが国の内側から瓦解がかいして、思わぬ形で戦争が終わるのか。それとも、劣勢のゼレンスキー大統領が首都キーウを離れて西部のガリツィア地方へ逃れ、国が東西に分断されるのか。さまざまな可能性が出てきたように感じられます。 もっとも日本の国際政治学者やウクライナ専門家の大多数は、これからウクライナが反転攻勢を行って、ロシア軍を駆逐する可能性があるとまだ信じているようです』、米国のCIAや英国のMI6も、「ロシア軍」がいまにも負けそうな分析を流しているが、どうも怪しそうだ。

第三に、8月8日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「ウクライナ軍の焦り「ドローン攻撃が、ロシア軍に効かない」…! 米国製「ロケット砲」も“効き目なし”で、いよいよ大ピンチへ…!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/98235?imp=0
・『ウクライナ「消耗戦」の危ない現実  ロシアによるウクライナ侵攻から5ヵ月が経過した。 戦線は膠着状態に陥り、「消耗戦」の様相が強まっている。犠牲者や戦費ばかりが日ごとに増えていく展開だ。 ウクライナ政府は西側諸国からの軍事支援でロシアへの反撃を試みようとしているが、当初の狙いどおり事態は進展していない。 ロシアのプーチン大統領側が対応策を講じているからだ。 侵攻直後、ロシア軍に致命的な打撃を与えて注目されたウクライナ軍のドローンはその威力をすでに失っている。 ロシア軍がウクライナ軍のドローン識別のために早期警戒レーダーを活用するとともに、ドローンの交信を妨害するなどの電子戦システムを構築して防御システムを確立したからだ』、「ロシア」も「対応策を講じている」ようだ。
・『アメリカも「打つ手なし」…  ロシア軍が地対空防衛システムを強化したことにより、米国製(グレイ・イーグル)などの最新型の攻撃型ドローンも機能しなくなっている。 一方、ロシア軍は監視、偵察任務のために多くのドローンを戦場に投入しており、これに効果的に対処できる装備を持たないウクライナ軍は苦戦を強いられている。 そうした中で、戦況を抜本的に改善できると期待されているのは高機動ロケット砲システム「ハイマース」だ。 米国からウクライナにすでに16基供与されており、戦場ですでに効果を発揮し始めていると言われている。 しかし、じつは専門家の見方は冷ややかだ。 ハイマースで指揮所や弾薬庫を攻撃すれば、ロシアの進軍を遅らせることができるが、ウクライナ軍に領土奪還をもたらすだけの能力は有していないからだ。 いたずらに現在の膠着状態を長引かせるだけなのかもしれない。懸念されるのはロシア軍がハイマースから発射されるミサイルを迎撃する術を習得しつつあることだ。ハイマースはドローンなど空からの攻撃に脆く、ロシア軍が今後この弱点を攻めてくる可能性が高いのだ。 後編記事『プーチンの「思惑通りだ」「危険な状況だ」…! ウクライナ軍が“兵力ダウン”“戦費枯渇”で直面する「ヤバすぎる現実」』では、さらにウクライナが直面している厳しい現実についてレポートしよう』、「ハイマースはドローンなど空からの攻撃に脆く、ロシア軍が今後この弱点を攻めてくる可能性が高いのだ」、「ロシア」も自力を出してきたようで手強そうだ。

第四に、8月8日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「プーチンの「思惑通りだ」「危険な状況だ」…! ウクライナ軍が“兵力ダウン”“戦費枯渇”で直面する「ヤバすぎる現実」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/98243?imp=0
・『ウクライナ軍がいよいよ追い詰められてきた――。前編記事『ウクライナ軍の焦り「ドローン攻撃が、ロシア軍に効かない」…! 米国製「ロケット砲」も“効き目なし”で、いよいよ大ピンチへ…!』では、これまでは効果があったドローン攻撃がロシア軍に読まれ始めて戦果をあげられなくなっているうえ、頼みの綱であった米国製ロケットでも状況を打開できないウクライナの苦境ぶりをレポートした。 最近では世界中でウクライナ情勢をめぐるニュースが減ってきている中で、いま本当に現場ではいったい何が起きているのか――その最新事情をレポートしよう』、興味深そうだ。
・『背水のウクライナ  米国政府は引き続き軍事支援を続けているものの、ウクライナ軍の戦闘の行方については悲観的になっている(6月29日付CNN)。 新たな兵器システムが戦況を即座に変えるとは見ておらず、ウクライナが戦闘で失った領土を奪還できるという確信は大きく揺らいでいるという。 このように、西側諸国の間で「ウクライナがロシアの攻撃に耐えられない」と見方が広がっていることに焦っているのはウクライナ政府だ。 7月23日付ニューヨークタイムズは「ウクライナは『ロシアに対する反撃は可能だ』と主張して西側諸国に軍事支援の拡大を説得しようと血眼になっている」と報じた』、確かに「ウクライナ」は「背水」の状態に追い込まれたようだ。
・『「戦費」が枯渇し始めた!  ウクライナのレズニコウ国防相は、7月26日に「兵器製造企業にとってロシアの侵攻を受けたウクライナは自社の製品の質などを試せる格好の実験場だ」とアピールして、西側諸国に対し軍装備品の追加供与を懇願した(米国政府がハイマースを供与する目的はウクライナを支援するためではなく、ロシア軍の防空ミサイルシステムの性能を調査することにあるとの指摘もある)。 そこへきて、ウクライナ政府にとってさらに頭が痛い問題が浮上している。 ロシア軍を自国領土から追い出すための戦費が枯渇し始めているのだ。 ロシアの侵攻により、ウクライナの戦費は今年2月の2億5000万ドルから5月には33億ドルへと膨れ上がり、その後も「うなぎ登り」の状態が続いている。 ウクライナ政府は戦費を捻出するために日常的なサービスへの支出を大幅に切り詰めているが、歳入拡大の余地はあまりないのが実情だ。 ロシアの侵攻後に停止された付加価値税と輸入関税は再び導入されている。「企業への増税」という選択肢はあるが、戦闘で疲弊している経済が急速に悪化するリスクがある』、「ロシア」は石油・天然ガスを欧州や中国などに売却しているが、「ウクライナ」は穀物輸出が漸く部分的に再開した程度だ。
・『財務相が「非常に危険だ」と…  是が非でも戦費を確保したい状況の中、「頼みの綱」となっているのはウクライナ中央銀行だ。 侵攻以降、ウクライナ中銀は77億ドル分の国債を買い入れており、事実上の紙幣増刷を余儀なくされている。 ウクライナのインフレ率は20%に達し侵攻前の2倍になっており、マルチェンコ財務相は「紙幣の増刷に頼り続ければインフレをあおることになり非常に危険だ」と警告を発している。 追い詰められたウクライナ政府は戦費の財源として外貨準備にも手を付け始めている。 ウクライナ中銀は「6月だけで外貨準備高の約9パーセントに当たる23億ドルを取り崩した」ことを明らかにしている。 激減している外貨準備を温存するため、ウクライナ中銀は通貨フリブナの対米ドルレートを25%切り下げたが、外貨準備は近いうちに底を打つことは間違いない』、「通貨切り下げ」はインフレも激化させるリスキーな政策だ。
・『「綱渡り」だ  「青息吐息」のウクライナ政府に対し、西側諸国はようやく救いの手を差し伸べた。 ウクライナ政府は20日、主要債権国などとの間で8月1日以降の外債の元利払いを2年間延期することで大筋合意を取り付けた。 合意が成立したものの、格付け会社フィッチ・レーテイングスは「デフォルトと同様のプロセスが開始された」との認識を示し、ウクライナ政府の格付けをこれまでの「CCC]から「C」に引き下げた。 これによりウクライナ政府は60億ドル分の支出を当面回避できたが、この額は毎月発生している財政赤字(約90億ドル)にも満たない。 ウクライナ財政の「綱渡り」の状況は一向に改善されたことにはならない』、「財政の「綱渡り」の状況」はやむを得ないだろう。
・『焼け石に水  穀物輸出が再開されれば、毎月約8億ドルの輸出関税収入が得られることになる。 しかし、「火の車」となったウクライナ財政にとって「焼け石に水」に過ぎない。 ゼレンスキー大統領を始め政府首脳は好戦的な態度を崩していないが、戦費を賄うことは早晩できなくなる。 ロシアとの停戦に応じざるを得なくなるのではないだろうか』、現在は戦線膠着とはいっても、徐々に「ロシア」側が優勢になりつつあるので、「ウクライナ」にとって「停戦」へのハードルは高そうだ。
タグ:ウクライナ (その6)(このままでは第三次世界大戦になる…佐藤優が注目する「クリミア大橋」と「リトアニア」という2大リスク アメリカは必死になってウクライナを抑えているが…、秘密警察と検察のトップを突如解任…佐藤優「ゼレンスキー大統領を疑心暗鬼に陥れたロシアの狡猾な心理戦」 「アメリカに管理された戦争」を続けるウクライナの苦しさ、ウクライナ軍の焦り「ドローン攻撃が、ロシア軍に効かない」…! 米国製「ロケット砲」も“効き目なし”で、いよいよ大ピンチへ…!、プーチンの「思惑通りだ」「危険な状況だ」…! ウクライ ウクライナ軍が“兵力ダウン”“戦費枯渇”で直面する「ヤバすぎる現実」) PRESIDENT ONLINE 佐藤 優氏による「このままでは第三次世界大戦になる…佐藤優が注目する「クリミア大橋」と「リトアニア」という2大リスク アメリカは必死になってウクライナを抑えているが…」 「第3次世界大戦につながりかねない」とは穏やかならざることだ。 「全長およそ19キロメートルに及ぶ、鉄道と道路の併用橋」、戦略的価値は大きそうだ。 ウクライナに米国が供与した高機動ロケット砲システムハイマースは、攻撃にはうってつけだが、米国は「クリミア橋」への使用は認めないだろう。 「ロシアは、敏感に反応しました」、当然だろう。 「アメリカ」の「支援」は条件付きなので、「ウクライナ」もやり難いだろう。 「リトアニア」がわざわざこんな時期に火遊びをするとは困ったことだ。 危なっかしい「綱渡りゲーム」は、当面、続けざるを得ないようだ。 佐藤 優氏による「秘密警察と検察のトップを突如解任…佐藤優「ゼレンスキー大統領を疑心暗鬼に陥れたロシアの狡猾な心理戦」 「アメリカに管理された戦争」を続けるウクライナの苦しさ」 「保安局長官」と「検事総長」の「解任」とはよほどのことなのだろう。 「保安・防諜」機関が任務に忠実か否かの判断は極めて難しいものだ。 、どうも防諜に素人の「ゼレンスキー大統領」に対し、「ロシアのインテリジェンス機関は、ゼレンスキー大統領が疑心暗鬼に陥るような情報を巧みに流す心理戦を行っている」可能性が強いのではなかろうか。 「部下たちは、この政権は長く持たないと見切りをつけ、自分の温かい椅子を確保するなら早いほうが得だと考えて、裏切り行為に走ったのでしょう」、あり得る話だ。 「ロシアに勝てないのは裏切者がいるからだ」と「スケープ・ゴート」に仕立て上げられたとの見方は大いにあり得る話だ。 「汚職の撲滅は、ウクライナがEU加盟国の地位を与えられるために課された条件のひとつでもあります。道のりは遠いといえます」、なるほど。 米国のCIAや英国のMI6も、「ロシア軍」がいまにも負けそうな分析を流しているが、どうも怪しそうだ。 現代ビジネス 藤 和彦氏による「ウクライナ軍の焦り「ドローン攻撃が、ロシア軍に効かない」…! 米国製「ロケット砲」も“効き目なし”で、いよいよ大ピンチへ…!」 「ロシア」も「対応策を講じている」ようだ。 「ハイマースはドローンなど空からの攻撃に脆く、ロシア軍が今後この弱点を攻めてくる可能性が高いのだ」、「ロシア」も自力を出してきたようで手強そうだ。 藤 和彦氏による「プーチンの「思惑通りだ」「危険な状況だ」…! ウクライナ軍が“兵力ダウン”“戦費枯渇”で直面する「ヤバすぎる現実」」 確かに「ウクライナ」は「背水」の状態に追い込まれたようだ。 「ロシア」は石油・天然ガスを欧州や中国などに売却しているが、「ウクライナ」は穀物輸出が漸く部分的に再開した程度だ。 「通貨切り下げ」はインフレも激化させるリスキーな政策だ。 「財政の「綱渡り」の状況」はやむを得ないだろう。 現在は戦線膠着とはいっても、徐々に「ロシア」側が優勢になりつつあるので、「ウクライナ」にとって「停戦」へのハードルは高そうだ。
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南アジア(その1)(中国に「借金漬け」にされたスリランカがデフォルト 見えた一帯一路の本性 ウクライナ戦争の隙に中国がインド洋と南極で着々と構築する「2本の首飾り」、国民を「こじき」にした一族支配 行き過ぎた仏教ナショナリズム──スリランカ崩壊は必然だった、中国に借金漬けにされ ロシアに助けを求める…国家破綻したスリランカで起きている"負の連鎖" 悪政が悪政を呼び込む悪循環) [世界情勢]

今日は、南アジア(その1)(中国に「借金漬け」にされたスリランカがデフォルト 見えた一帯一路の本性 ウクライナ戦争の隙に中国がインド洋と南極で着々と構築する「2本の首飾り」、国民を「こじき」にした一族支配 行き過ぎた仏教ナショナリズム──スリランカ崩壊は必然だった、中国に借金漬けにされ ロシアに助けを求める…国家破綻したスリランカで起きている"負の連鎖" 悪政が悪政を呼び込む悪循環)を取上げよう。

先ずは、5月23日付けJBPressが掲載した在英ジャーナリストの木村 正人氏による「中国に「借金漬け」にされたスリランカがデフォルト、見えた一帯一路の本性 ウクライナ戦争の隙に中国がインド洋と南極で着々と構築する「2本の首飾り」」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70231
・『[ロンドン発]経済危機に揺れるスリランカが1948年の独立以来、初のデフォルト(債務不履行)に陥った。スリランカ中央銀行のナンダラール・ウィーラシンハ総裁は19日、「債務が再編されるまで支払いはできない」と“先制デフォルト”を宣言した。 コロナ危機とエネルギー危機が起きる以前から、スリランカは無謀なインフラ整備で債務を膨らませてきた』、「中央銀行」「総裁」が堂々と「デフォルト」宣言をするとは驚いた。
・『「債務の罠」にハマったスリランカ  ウィーラシンハ総裁は「インフレ率は30%前後。変動が激しい食料品やエネルギー価格を含むヘッドラインインフレ率は今後数カ月で40%程度にハネ上がる」と警戒する。スリランカの主要金利はすでに14.5%に引き上げられている。無償で支給されるパンに人々は殺到し、ガソリンを求める列は何キロメートルも続く。街頭では政府への抗議活動が吹き荒れる。 スリランカはアジアと中東・アフリカを結ぶシーレーン(海上交通路)の要衝だ。南端のハンバントタ港は2017年から99年間にわたり中国国有企業に貸し出された。インフラ整備のため中国から湯水のようにお金を借りたものの結局、思ったような利益は出ずに返済不能に陥り、施設や土地を明け渡さざるを得なくなる「債務の罠」の典型例だ。 ドバイ、シンガポール、香港など金融センターに匹敵する港湾都市を目指す「コロンボ・ポート・シティー」の埋め立て工事のため、スリランカは別の中国国有企業から14億ドルの投資を受けた。見返りにその43%が99年間にわたりリースされた。債権者は中国だけではない。米ウォール街やその他の機関投資家からの借り入れも膨張している』、「南端のハンバントタ港は2017年から99年間にわたり中国国有企業に貸し出された」、「インフラ整備のため中国から湯水のようにお金を借りたものの結局、思ったような利益は出ずに返済不能に陥り、施設や土地を明け渡さざるを得なくなる「債務の罠」の典型例だ」、「債権者は中国だけではない。米ウォール街やその他の機関投資家からの借り入れも膨張」、「債権者は中国だけではない」とのニュースには驚かされた。
・『スリランカのデフォルトで白日の下にさらされた一帯一路の嘘  米政府が運営する海外放送「ボイス・オブ・アメリカ」によると、スリランカの対外債務は510億ドル。中国の習近平国家主席のインフラ経済圏「一帯一路」プロジェクトに費やされた110億ドルも含まれる。スリランカ政府は返済延期と25億ドル相当の緊急支援を中国に求めたが、中国は3100万ドルの「緊急人道支援」や人民元スワップを提供しただけだ。 外国から巨額資金を借りて債務が膨らんだところに、コロナ危機で外貨を稼ぎ出す観光業が大打撃を受けた。コロナ復興による需給逼迫、サプライチェーンの停滞、高騰するエネルギー価格はウクライナ戦争でさらに押し上げられた。燃料・飼料・肥料不足による食料品価格の上昇、インフレ高進が低所得者・貧困層の生活を直撃する。 スリランカがデフォルトに陥れば、黙っていても港湾施設など戦略的な重要インフラが中国の手中に落ちる。地政学的な競争に注目する英シンクタンク「カウンシル・オン・ジオストラテジー」アソシエイト研究員で、英外交官として香港返還に関わったマシュー・ヘンダーソン氏は「スリランカの危機は一帯一路のリスクを浮き彫りにした」と指摘する。 ヘンダーソン氏によると、途上国における一帯一路の共同開発プロジェクトは米ウォール街の強欲で冷徹な資本主義のアプローチよりはるかに温和で、人と人とのつながりを重視しており、全体的に見て良いことだと中国は強調してきた。「しかし、これは真っ赤な嘘だとスリランカのデフォルトで白日の下にさらされた」と言う』、「一帯一路の共同開発プロジェクトは米ウォール街の強欲で冷徹な資本主義のアプローチよりはるかに温和」との「中国」側主張は「真っ赤な嘘」、その通りだ。
・『中国の「真珠の首飾り」戦略  中国がインド洋諸国で港湾インフラを支援する動きは「真珠の首飾り」戦略と呼ばれる。「インド太平洋地域で中国はガバナンス(統治)やレジリエンス(困難な状況に遭遇してもすぐに立ち直る回復力)、政治的不安定さの面で問題を抱える国々を標的にしてきた。スリランカはそれに当てはまる」(ヘンダーソン氏) 中国のインフラ開発プロジェクトは債務国の経済的な自立性を失わせる。生産能力を多様化できず、資源輸出に依存する国々は中国依存症を深めていく。その一方で、中国は経済だけでなく、政治や軍事面でも影響力を増大させる。「米欧がウクライナ戦争に集中している間に中国が自らのアジェンダを加速させているのはもはや疑いようがない」 「中国は、狙った国が拒むことができないような提案をして、これまでよりはるかに強引な方法で“取引”を迫っている。融資や投資にとどまらず、台湾との関係を断つよう圧力をかけたり、西側からの影響を排除しようとしたりしている」。こう語るヘンダーソン氏はもう一つの「真珠の首飾り」にも懸念を深める。 中国は4月19日、南太平洋の島国ソロモン諸島と最低5年間の安全保障協定を正式に締結した。ソロモン諸島のマナセ・ソガバレ首相はわざわざ「条約」と表現した。 協定の内容はまだ明らかにされていないが、漏洩した協定案には「中国は自らの必要性に応じて、ソロモン諸島の同意を得た上でソロモン諸島に寄港し、兵站補給を行うことができる」と記されていた。社会秩序の維持や災害救助のため、中国から警察や軍人を要請できるとの内容も含まれるとされる』、「中国のインフラ開発プロジェクトは債務国の経済的な自立性を失わせる。生産能力を多様化できず、資源輸出に依存する国々は中国依存症を深めていく。その一方で、中国は経済だけでなく、政治や軍事面でも影響力を増大させる」、「南太平洋の島国ソロモン諸島と最低5年間の安全保障協定を正式に締結」、「漏洩した協定案には「中国は自らの必要性に応じて、ソロモン諸島の同意を得た上でソロモン諸島に寄港し、兵站補給を行うことができる」と記されていた。社会秩序の維持や災害救助のため、中国から警察や軍人を要請できるとの内容も含まれるとされる」、「中国」が「ソロモン諸島」での「兵站補給」まで狙っているとは、本当に目が離せない存在になったようだ。
・『台湾有事で米軍の軍事的支援を阻止できる  ソロモン諸島が中国の軍事拠点になれば大ごとだ。ソロモン諸島は沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ第1列島線や伊豆・小笠原諸島からグアム、パプアニューギニアに至る第2列島線の外側にある。中国は、西太平洋で絶大な影響力を誇る米国をこの地域から追い出したいという長期戦略を描いている。 左の赤線が第一列島線、右の赤線が第二列島線(DoD, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で) 英シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)アジア太平洋上級研究員のユアン・グラハム氏は「ソロモン諸島に海軍基地があれば台湾有事の際、米軍の軍事支援を阻止するために利用できる」とIISSサイトへの寄稿で指摘している。中国はその意図を明確に否定している。 グラハム氏によれば、ソロモン諸島が2019年に国家承認を台湾から中国に切り替えてから、中国はソロモン諸島の金権政治に関与してきた。両国の協定案が漏洩した直後、この地域の安全保障提供国を自負するオーストラリアは新しい支援パッケージと漁業保護のため2隻目の巡視船をソロモン諸島南東部テモツ州に配置する計画を明らかにした。 ヘンダーソン氏は「中国は何十年も太平洋の経済的・政治的影響力拡大に関心を示してきた。フィジーやトンガにも注目してきた。中国とソロモン諸島の協定はまさしくそれを狙ったものだ。場合によっては、ソロモン諸島は中国に乗っ取られ、軍事的に利用される懸念がある。米国が動き始めたのは安心材料だが、かなり遅すぎた面は否めない」と語る』、「米国が動き始めたのは安心材料だが、かなり遅すぎた面は否めない」、やはり「遅すぎた」と厳しく見るべきだ。
・『軍事化される南極  日本の上杉謙太郎外務政務官も4月26日、ソロモン諸島を訪れ、ソガバレ首相に「中国とソロモン諸島間の安全保障協力協定について懸念をもって注視している」と伝えた。 ソロモン諸島はエリザベス英女王を君主に頂く英連邦王国15カ国(英国を含む)の一つだ。その英連邦王国に激震が走っている。 カリブ海に浮かぶ島国バルバドスは独立以来、英連邦王国のひとつだったが、21年にエリザベス女王を君主とすることを止め、共和制に移行した。同国は一帯一路への協力文書に署名しており、地元メディアによると、中国は教育機器やノートパソコン、タブレットなどのテクノロジー機器をバルバドスに寄贈するとともに、農業プロジェクトにも投資している。 共和制に移行する動きが強まるジャマイカも一帯一路に参加する10番目のカリブ諸国として名を連ねている。スリランカは英連邦王国ではないものの、英連邦加盟国の一つである。こうした国々はシーレーン上の要衝に位置している。 ヘンダーソン氏は「中国が英連邦をソフトターゲットとみなしているのは明らかだ。いくつかのレベルで動いている。ボリス・ジョンソン英首相が掲げる『グローバル・ブリテン』の基本ラインの一つは南シナ海などにおける英国の継続的な利益を守ることだ。その中には中国の干渉を受けない台湾の安全保障、香港の自治を維持することも含まれる」と言う。 「太平洋地域、特にオセアニアと英国のつながりにはポスト植民地主義の幻想というレッテルを貼られる。かつて西側列強が保持していた地域を中国が奪い取り、新しい国際秩序が出現したと喧伝している。そして中国は南米や南太平洋、南極に長期的な関心を持ってきた」 ヘンダーソン氏はインド洋の『真珠の首飾り』と同じように南太平洋から南極につながる『真珠の首飾り』があるという。中国は一帯一路の中で資源が豊富な「極地の大国」を目指す構想を掲げている。ヘンダーソン氏は南太平洋の『真珠の首飾り』が完成した時、南極は「軍事化」されている恐れがあると示唆した。 (【マシュー・ヘンダーソン氏】の略歴はリンク先参照)』、「「中国が英連邦をソフトターゲットとみなしているのは明らかだ。いくつかのレベルで動いている。ボリス・ジョンソン英首相が掲げる『グローバル・ブリテン』の基本ラインの一つは南シナ海などにおける英国の継続的な利益を守ることだ。その中には中国の干渉を受けない台湾の安全保障、香港の自治を維持することも含まれる」、英国もしっかりしないと、「英連邦」が「中国」の草刈り場となりかねない。「中国は一帯一路の中で資源が豊富な「極地の大国」を目指す構想を掲げている。ヘンダーソン氏は南太平洋の『真珠の首飾り』が完成した時、南極は「軍事化」されている恐れがあると示唆」、「南極」の非軍事化を折に触れて再確認する必要がある。

次に、7月22日付けNewsweek日本版が掲載した米ウェークフォレスト大学政治・国際関係教授のニール・デボッタ氏による「国民を「こじき」にした一族支配、行き過ぎた仏教ナショナリズム──スリランカ崩壊は必然だった」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/07/post-99173_1.php
・『怒れる民衆が大統領府・公邸に突入、大統領は国外へ逃亡。未来を窒息させ、歴史的危機を招いた根本要因は偏狭なナショナリズムにある> スリランカの悲しくも無惨な歴史に、また1つの大きな転機が訪れた。去る7月9日の土曜日、怒れる民衆が大統領府に、そして大統領と首相の公邸に詰め掛け厳重なバリケードを突破し、治安部隊の殴打や催涙ガス攻撃にも耐えて果敢に前進し、ついには内部に突入して3つとも占拠してしまった。 大統領のゴタバヤ・ラジャパクサは、もちろんデモ隊が到着する前に逃げ出していた(国外から電子メールで、国会議長に辞表を送ってきたのは5日後のことだ)。ラニル・ウィクラマシンハ首相の私邸にも火が放たれたが、こちらはデモ隊に罪をなすり付けたい親大統領派の仕組んだ工作の可能性がある。 ウィクラマシンハが首相に就任したのは今年5月。デモ隊が首相公邸に乱入し、当時の首相マヒンダ・ラジャパクサ(大統領の兄で、自身も大統領を2期務めた大ベテラン)が逃亡と辞職に追い込まれたので、急きょ起用されたのだった。ウィクラマシンハは過去にも5回、首相に指名されているが、いずれも任期半ばで退陣している。しかも前回の首相在任中には、ラジャパクサ兄弟の腐敗を暴こうとする検察の捜査を妨害した疑いがあり、そのせいで民衆は彼の辞職も要求していた。 もちろん、民衆の蜂起を招いた直接の原因は経済政策の度し難い失敗にある。だがラジャパクサのような男が権力の頂点に立てた背景には、多数派民族シンハラ人の仏教ナショナリズムがある。 建国当時の統治機構は実力主義だったが、やがてゆがんだ仏教ナショナリズムが浸透し、特定の民族(あるいは特定の個人)だけが潤う統治システムが出来上がった。かつて現地の有力紙が嘆いたとおり、それは「密輸業者や詐欺師、殺人犯、牛泥棒など」が支配する政治システムで、これがスリランカの未来を窒息させた。 昨年半ばには、化学肥料や農薬、除草剤の輸入が禁じられた。当然、収穫は減るから農民は困る。だから各地で反政府デモが起きた。しかし当時の政府は既に深刻な外貨不足に悩んでいた。だから輸入をやめて、浮いた資金を農家向けの補助金に回そうと考えていた。 農民の大多数はラジャパクサ兄弟と同じシンハラ人の仏教徒だ。だから、彼らと敵対するつもりはなかった。それに、彼らに対する恐怖心もあった。過去に、ラジャパクサ兄弟を批判したジャーナリストが何人も殺害されていたからだ。 しかし今回は都市部の中産階級にも怒りが広がっていた。3月には反政府派の活動を支持する女性たちが大統領の私邸前で抗議行動を行っていた。4月には大統領府の前にデモ隊が集まり、自分たちの運動は「アラガラヤ(闘争)」だと宣言した。) 抗議行動は国内全土に広がり、5月9日には首相公邸に多数の民衆が集まり、マヒンダ・ラジャパクサ首相を辞任に追い込んだ。そして大統領公邸での抗議行動が92日目に入った7月9日、ついに弟のゴタバヤも大統領の座を追われた。2年半前の大統領選では、この国に「繁栄と輝かしい未来」をもたらすと約束していたのだが。 現在の危機の直接的な原因は深刻な外貨不足にあり、民衆の抗議運動に拍車を掛けたのは貧困と経済の失速だ』、「ゆがんだ仏教ナショナリズムが浸透し、特定の民族(あるいは特定の個人)だけが潤う統治システムが出来上がった。かつて現地の有力紙が嘆いたとおり、それは「密輸業者や詐欺師、殺人犯、牛泥棒など」が支配する政治システムで、これがスリランカの未来を窒息させた」、「現在の危機の直接的な原因は深刻な外貨不足にあり、民衆の抗議運動に拍車を掛けたのは貧困と経済の失速だ」、余りに酷い状況で、失敗国家と言える存在だ。
・『「上位中所得国」なのに  外貨不足には複数の要因が関係している。1つは、2019年4月に起きた連続爆弾テロ。追い打ちをかけたのは新型コロナウイルスの流行。これらで観光業が大打撃を受け、海外で働く出稼ぎ労働者からの送金も減った。それでも大統領は公約どおり減税を実施した。当然、国庫は底を突く。510億ドルに上る対外債務の返済(今年だけで約70億ドル)など、もはや不可能だった。 国民は調理用ガスボンベや灯油、ガソリン、砂糖や粉ミルク、医薬品などの生活必需品を手に入れるために行列しなければならなくなった。ガソリンを買うために何日も並んでいるうちに息絶えた人が、今年だけで16人もいる。 この国は、2019年には国際社会で「上位中所得国」に分類されていた。なのに今は、抗議の民衆が大統領一族に「私たちをこじきにした責任を取れ」と叫んでいる。 実際、中産階級の人たちも食うものに困っている。ユニセフ(国連児童基金)によると、現時点で570万人が食事など緊急の人道支援を必要としており、これには約230万の児童が含まれる。しかも資金不足の政府が紙幣を増刷するから、6月の食品価格上昇率は80%を超えた。 実を言えば、この国には1970年代半ばにも人々が食べ物を求めて行列した経験がある。ただし原因は社会主義的な統制経済の失敗と自給自足への過度なこだわりだった。つまり、今とは事情が違う。 当時のスリランカには自動車も少なかった。電気も、ろくに通じていなかった。だが今はオートバイや自動車が普及し、調理にはガスボンベが使われる。小規模農家でも機械化が進んで燃料は必需品だ。 だから外貨不足の政府が6月末に、輸入に頼る燃料の販売先を一部の「必須」部門の労働者に限ると言い出したとき、庶民は激怒した。 そこで反政府の活動家たちは、SNSを通じて7月9日の抗議行動への参加を呼び掛けた。政府は前日に夜間外出禁止令を出し、大人数の治安部隊を配備した。それでも最大都市コロンボには数十万の群衆が押し寄せた』、「この国は、2019年には国際社会で「上位中所得国」に分類されていた。なのに今は、抗議の民衆が大統領一族に「私たちをこじきにした責任を取れ」と叫んでいる。 実際、中産階級の人たちも食うものに困っている」、「中産階級の人たちも食うものに困っている」理由は、「外貨不足」、インフレなどのためだろう。
・『シンハラ人優遇の弊害  政府の中枢機関がこんなふうに乗っ取られるとは、たぶん誰も予想していなかった。しかし一定の前兆はあった。7月5日には国会で大統領は野党議員にやじを飛ばされ、すごすごと議場から退散した。一方で政府の支持率は、3%台に低迷していた。 そもそも、危機の源は忌まわしいエスノクラシー(特定の民族による少数民族の強権的支配)にある。人口の75%を占めるシンハラ人は、この島に定住した最初の民族だと自称している。その伝承によれば、総人口に対して約15%のタミル人や約10%のイスラム教徒など、その他の民族は多数派のお情けでここに暮らしていることになる。 このイデオロギーは神話と組み合わされ、仏教信仰に支えられた民族の物語を紡いできた。スリランカの国旗を見れば一目瞭然だ。勇気の印である剣を持つライオンが中央に位置して多数派民族を表現し、その脇に少数派民族を表す色違いの縦じまが並ぶ。それはスリランカという国がシンハラ人仏教徒の国であることを象徴している。 こうしたエスノクラシーの成立は、1956年当時のバンダラナイケ首相がシンハラ語を唯一の公用語と定めたことに起因する。その後、歴代の政権は少数派タミル人を一貫して冷遇してきた。 しかし英国統治時代から、タミル人は少数派のわりに数多くの公職に就いていた。流れが変わったのは、シンハラ語が公用語になってから。ほぼ15年で形勢は逆転した。1956年には官僚の30%、軍人の40%を占めていたタミル人が、70年には官僚の5%、軍人の1%に減っていた。 またシンハラ人の社会経済的進出を妨げるという理由で英語教育が廃止された影響も大きい。おかげでスリランカ人は、アジアでの英語力による優位性を永遠に失った。 官僚機構も骨抜きにされた。かつての官庁は能力主義で、官僚は職務に私情を挟まず公平だったが、シンハラ民族主義の政府は自民族の利害を最大限に優先させた。 大学では住居を整備しないことでタミル人の受け入れ人数が絞られ、一方で理系学部への入学試験ではタミル人にシンハラ人より高い点数を求めた。知識や技能より、政治と民族が優先された。 実力主義が通らず、専門知識も尊重されない世の中を見限る有能な人材は多かった。高潔で実力主義のシンハラ人は海外へ脱出した。ゆがんだ民族主義が頭脳流出を招き、実務を担う官僚の水準が下がった。一方で、タミル人には選択の余地がなかった。 こんな民族差別に怒ったタミル人は、分離独立を求めて30年近く戦った。この内戦はシンハラ人の勝利で09年に終結。以来、マヒンダ・ラジャパクサ率いる政府は仏教徒の過激派と組んで、イスラム教徒への憎悪をあおってきた。 少数派タミル人の排斥こそ愛国的行為。そんな理屈でラジャパクサ兄弟はシンハラ人の仏教ナショナリズムと人種差別を結合させた。 その後、マヒンダ・ラジャパクサは中国の口車に乗って、役にも立たない無用な開発プロジェクトに手を出した。必要な資金は中国から借り、その返済には「借り換え」の手法を用いるつもりだった。 観光や海外在住者からの送金で得た外貨を利子の返済に充て、足りなければ借り換えればいいと考えていた。最悪だが、実はスリランカの対外債務に占める中国の割合は10%程度にすぎない。だから当座の問題は中国に対する債務残高の額ではなく、中国の融資に潜む隠された意図の解明であり、中国マネーが誰の懐に納まったかの究明だ。 スリランカは現在、IMFや世界銀行からの支援を得ようとしているが、これらの機関は支援や債務再編に同意する前に、中国からの借り入れに関する透明性を要求するだろう。スリランカはまさに、中国の「債務の罠」に落ちた国の典型だからだ。 一方で私腹を肥やしてきた政治家は、責任追及を恐れて権力の座にとどまりたがる。ゴタバヤ・ラジャパクサは大統領選に出馬するに当たって米国籍を放棄しているから逃げ場がなく、ひとたび権力を失えば国内で不正利得を告発される恐れがあった』、「エスノクラシー」、「シンハラ語が公用語になってから。ほぼ15年で形勢は逆転した。1956年には官僚の30%、軍人の40%を占めていたタミル人が、70年には官僚の5%、軍人の1%に減っていた」、「またシンハラ人の社会経済的進出を妨げるという理由で英語教育が廃止された影響も大」、長い間に国家の競争力は弱まったのだろう。
・『民族主義で腹は膨れず  大統領が正式に辞任した後、議会はウィクラマシンハを大統領代行に指名し、7月20日に議員の互選で(ゴタバヤの任期の切れる24年までの)新大統領を決める予定だ。(編集部注:21日、ウィクラマシンハが新大統領に就任)しかし国民の怒りは国会にも向けられているから、場合によっては早期の解散・総選挙を迫られる可能性もある。 いずれにせよ、生活必需品の不足は今後も何カ月か続くだろう。つまりラジャパクサ家がいなくなっても、当面は今の経済的苦難が続くとみていい。支援の先頭に立つのは隣国インドだ。既に40億ドルの資金を提供している。中国も通貨スワップで資金を出しているが、スリランカの債務再編には消極的だ(もしも応じれば「債務の罠」に落ちた他の諸国も同様な要求をしてくるに違いない)。 日本は主要な援助国で債権国でもあるが、やはり追加支援には慎重だ。この腐敗体質では援助金がどこに流れるか分からないからだ。他の支援国も同様で、スリランカ政府の腐敗の根が取り除かれないかぎり、誰も動かない。早急に政治の安定を取り戻すことが、さらなる追加融資や債務再編の第一歩だ。 考えてみれば、スリランカ国民の7月9日の行動は実に革命的だった。5月に元大統領で現職首相のマヒンダを追い落とした勢いで、2カ月後には弟で現職大統領のゴタバヤも倒した。 しかし、それを可能にしたのは未曽有の経済危機であり、この国で圧倒的多数を占めるシンハラ人仏教徒が宗教的な寛容の精神に目覚め、少数派のタミル人やイスラム教徒に対して犯してきた人道上の罪を認めたからではない。 それでも、今回の事態で分かったことがある。いくら民族主義的な感情に訴えても、日常的な飢餓と欠乏感には勝てないという事実だ。ラジャパクサ兄弟も、このことを思い知らされたはずだ。 そして民衆の抗議行動は宗派を超えて多くの宗教者や一般市民を団結させ、この島国の未来をみんなで考え、築いていこうという機運を生んだ。みんなが苦しんできたのだから、多数派民族による強権支配とは縁を切るべきだ。だがこの国の悲しい歴史を顧みると、あいにく明るい未来は描けない。 【映像】大統領公邸になだれ込み、プールを占拠するスリランカ国民)』、「日本は主要な援助国で債権国でもあるが、やはり追加支援には慎重だ。この腐敗体質では援助金がどこに流れるか分からないからだ。他の支援国も同様で、スリランカ政府の腐敗の根が取り除かれないかぎり、誰も動かない。早急に政治の安定を取り戻すことが、さらなる追加融資や債務再編の第一歩だ」、「民衆の抗議行動は宗派を超えて多くの宗教者や一般市民を団結させ、この島国の未来をみんなで考え、築いていこうという機運を生んだ。みんなが苦しんできたのだから、多数派民族による強権支配とは縁を切るべきだ。だがこの国の悲しい歴史を顧みると、あいにく明るい未来は描けない」、その通りだろう。

第三に、7月28日付けPRESIDENT Onlineが掲載したフリーライター・翻訳者の青葉 やまと氏による「中国に借金漬けにされ、ロシアに助けを求める…国家破綻したスリランカで起きている"負の連鎖" 悪政が悪政を呼び込む悪循環」を紹介しよう。
・『中国の手に落ちたスリランカの悲劇  インド半島の先端に浮かぶ島国・スリランカが、経済危機に瀕ひんしている。 ラニル・ウィクラマシンハ首相は7月5日、議会での演説を通じて「国家の破産」を宣言した。美しい景観から「インド洋の真珠」とも呼ばれ、地政学上の要衝でもある人口2200万の国家は、中国の「債務の罠」に陥り破滅へと向かっている。  スリランカは長引く外貨準備不足で物資の輸入に支障をきたしており、国民生活は大混乱に陥っている。子に食糧を与えようと出がらししか口にしていない親たちや、急ごしらえの売春宿で体を売って食べ物を買う女性たち、そしてガソリンを買うために10日も列に並ぶドライバーなど、悲惨な現状が多く報じられるようになった。 その元凶は、一族支配による悪政と中国への経済依存だ。7月14日に辞任したゴタバヤ・ラージャパクサ前大統領は兄弟で大統領と首相を務め、要職を一族の関係者で固めていた。民主主義国家を標榜する同国にありながら、独裁・腐敗政治の蔓延まんえんを招くこととなる。加えて見逃せないのが、中国による籠絡だ』、「元凶は、一族支配による悪政と中国への経済依存」、その通りだ。
・『「債務の罠」で重要港湾は植民地に  2000年代にインフラ整備を積極的推進したスリランカは、中国などへの対外債務を膨らませた。巨額の返済に行き詰まり、港湾国家構想の中核であった南部ハンバントタ港の運営権を、中国国営企業に99年間供与する事態まで発展している。 この一件は、中国が仕掛ける「債務の罠」の典型的な事例だとして国際的な注目を集めた。中国が途上国に対して多用する手口に、高額なインフラ整備費を厳しい返済条件で貸し付けるものがある。相手国が返済条件に応じられなくなるのを待って、新設したインフラ施設の運営権の譲渡を受ける手法だ。) こうして中国の手に落ちたスリランカのハンバントタ港をめぐっては、事実上の中国の植民地ではないかとする国際的な批判が相次いでいる。 中国は「真珠の首飾り」と呼ばれる海上輸送ルートの確立を試みていとされる。インド西部のパキスタンからスリランカのハンバントタ港を経て、台湾海峡へと至るルートだ。中国の打算的な戦略は、スリランカへの「債務の罠」の成功で見事に実を結んだともいえよう』、「南部ハンバントタ港の運営権を、中国国営企業に99年間供与する事態まで発展」、「この一件は、中国が仕掛ける「債務の罠」の典型的な事例だとして国際的な注目を集めた。中国が途上国に対して多用する手口に、高額なインフラ整備費を厳しい返済条件で貸し付けるものがある。相手国が返済条件に応じられなくなるのを待って、新設したインフラ施設の運営権の譲渡を受ける手法だ」、「ハンバントタ港をめぐっては、事実上の中国の植民地ではないかとする国際的な批判が相次いでいる」、「中国」にしてみれば、契約を履行したに過ぎないと言い訳できる。
・『一族支配の悪政が限界を迎えた  港湾構想の中核のひとつを失ったスリランカは、経済・政治面で崖っぷちを歩み続けてきた。そこへ新型コロナにより観光産業が打撃を受け、危機はますます高まってきた。 政策も悪手が続く。2021年4月には突如として化学肥料と農薬の全面輸入禁止を打ち出し、有機農業化への急激な舵を切った。ところが有機肥料の供給が追いつかず、セイロン茶葉など農作物の品質と収量が低下。早くも10月には禁輸撤回に追い込まれている。 迷走する政治と経済に、国民の生活は疲弊している。経済危機を受け、スリランカの主要産業のひとつであるアパレル産業で働く女性たちは、食糧を買う資金を得るために売春宿で働くことを余儀なくされている。 英テレグラフ紙は、NIKEやGAPなど大手多国籍企業向けの製品工場で働く女性たちが、物価高のため副業として体を売っていると報じている』、なるほど。
・『生きるために身体を売る女性たち  同紙によると女性たちには、1000スリランカ・ルピー(約380円)ほどの日当が支給される。だが、40%にも達するインフレを前に、こうした賃金は無価値になりつつあるという。 衣料品業界で働く女性の多くは同業界の経験しかもたず、体を売る以外に追加収入を得る術がない。記事が掲載されたのは5月だが、現在ではさらに状況が悪化している。英BBCはスリランカ政府発表のデータをもとに、6月のインフレ率が54.6%に達したと報じている。 薬と食糧を買うため、体を売る女性が目立つようになった。インドの大手コングロマリットが運営するニュースメディア「ファースト・ポスト」は、首都スリジャヤワルダナプラコッテに隣接する旧首都のコロンボで、にわかづくりの売春宿が増加していると報じている。売春宿には研究者からマフィアまで多様な客が集い、彼らを相手にすることで1日で半月分の収入を得ることができるという』、「コロンボで、にわかづくりの売春宿が増加していると報じている。売春宿には研究者からマフィアまで多様な客が集い、彼らを相手にすることで1日で半月分の収入を得ることができるという」、みじめな状況だ。
・『ガソリン不足で働けず、輸送混乱で物価上昇  食糧以外では、ほぼ輸入に依存している燃料の不足も深刻だ。 ガソリンと軽油を求め、給油所には連日長蛇の列ができている。英BBCは、コロンボでミニバス運転手として働く43歳男性の事例として、給油待ちの列に10日間並んだ事例を取り上げている。車中泊をしながら10日目に給油所にたどり着いたが、それでもタンク満タンの給油はかなわなかったという。 英スカイ・ニュースは、トゥクトゥク(三輪タクシー)で稼ぐある運転手の話を伝えている。燃料不足を受け、この男性は2週間に一度しか操業できない状態だという。妻は妊娠中だが、「彼女のおなかにいる子供にごはんをあげることができていない」とこの男性は唇を噛む。 食糧難に喘あえぐのは、一部の国民だけではないようだ。シンガポールの国際ニュースメディアであるチャンネル・ニュース・アジアは、世界食糧計画(WFP)による評価として、スリランカの6世帯に5世帯が食べ物を抜くか減らしていると報じている。ある一家は小さな魚を6人の子供に分け与え、大人は残った汁だけで空腹を紛らわせている模様だ。燃料不足で商品の輸送が停滞しており、食品などの価格上昇に歯止めがかからない』、「世界食糧計画(WFP)による評価として、スリランカの6世帯に5世帯が食べ物を抜くか減らしていると報じている。ある一家は小さな魚を6人の子供に分け与え、大人は残った汁だけで空腹を紛らわせている模様だ」、「6世帯に5世帯」とは本当に深刻だ。
・『中国紙は「借金漬け外交」の批判を意に介さず  こうした生活危機は、長年の悪政と中国による「債務の罠」に端を発するものだ。 米外交コラムニストのイシャーン・タルール氏は、米ワシントン・ポスト紙への寄稿を通じ、「しかしスリランカは、中国批評家たちが中国の『債務の罠』外交と呼ぶものに足を踏み入れてしまったのだ」と指摘している。 2020年の債務返済の際、国際通貨基金(IMF)との対話を通じ、緊縮財政と債務整理を推進するという道が残されていた。しかしスリランカは、既存債務の返済に充てるべく、中国がちらつかせた30億ドルの追加融資枠にいとも簡単に飛びついてしまったのだとタルール氏は論じている。 一方で中国側は、このような国際的批判を意に介さない。中国共産党傘下のグローバル・タイムズ紙(環球時報)は7月18日、スリランカ大使が中国による支援が「大いに役立っている」と発言したと報じ、支援は人道的な援助であると強調した。 記事はスリランカ側が政権交代後も「中国との卓越した関係の維持」を望んでいると述べている。また、スリランカ大使による見解として、「否定派たちが債務を中国プロジェクトのせいにするのは、中国バッシングの口実にすぎない」との意見を取り上げた』、失脚した「大統領一族」を通じて「中国による債務の罠」についても、もっと具体的な事実が明らかになってくるだろう。
・『経済危機で高まるロシア依存  中国とのパイプが深まる一方で、ロシア依存も大きな懸案となりつつある。英BBCは、スリランカのゴタバヤ・ラージャパクサ前大統領が辞任の1週間前、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対して燃料輸入に関して支援を要請したと報じている。 報道と前大統領自身のツイートによると、スリランカ側は輸入代金の支払いに関して信用面での支援をプーチン氏に求めた模様だ。スリランカは燃料不足解消のため過去数カ月間でロシアからの燃料輸入を行っているが、今後さらに輸入量を拡大することが予想される。) 同記事によるとスリランカ側は、かつて観光客のおよそ20%を占めていたロシア人観光客の再来にも期待感を示しているという。ウクライナ侵攻を発端に国際社会がロシアと距離を置くなか、正反対の動きとなった。 スリランカ側はそもそも、ロシアへの経済制裁に反対の立場を示している。小麦や燃料などのロシアからの輸出が滞ることで、途上国の経済が困窮しているとの主張だ。 インドのPTI通信が報じたところによると、ラニル・ウィクラマシンハ首相は西側諸国に対し、「ウクライナ侵攻に関するロシアへの制裁は、モスクワを屈服させることにはならず、代わりに食糧不足と物価高騰で途上国をひどく傷つけることになるだろう」と発言した』、「スリランカ側は、かつて観光客のおよそ20%を占めていたロシア人観光客の再来にも期待感を示しているという」、現在の「ウクライナ」情勢をみる限り、「スリランカ側」の「期待」は期待だけで終わるだろう。
・『悪政が、悪政を招く悪循環  経済危機に陥ったスリランカを、計算高い中国とロシアが虎視眈々たんたんとねらっている。 中国に関しては「債務の罠」による借金漬け外交を太平洋諸国やアフリカ諸国に対しても展開しており、もはや返済猶予の代償としてのインフラの乗っ取りは常套手段だ。経済破綻のスリランカも、むしろ筋書きどおりといったところだろう。 政権交代にかかわらず関係の深化を表明しているが、経済援助を完全な人道支援と受け取ることは難しいだろう。現在のスリランカとしては藁わらにもすがる思いで飛びつきたいところだろうが、すでに実質的な植民地となった南部ハンバントタ港の悲劇が、国内他所で繰り返されないとも限らない。 ロシアに関してはプーチン政権側から積極的なアプローチがあるわけではないが、ロシア産燃料と観光客の受け入れを積極的に推進するスリランカは、国際社会から孤立するロシア経済にとって渡りに船だ。制裁の影響を緩和すべく、スリランカ経済とのパイプを強める展開が予想される。 急速なインフラ開発による発展を夢みたスリランカだが、中国が仕掛ける債務の罠にとらわれる結果となった。実質的な独裁政治と中国への傾倒が国民生活の破綻をまねき、結果としてさらに中露への依存が深まろうとしている』、「スリランカ」が「結果としてさらに中露への依存が深まろうと」する限り、苦境からの脱却は期待できない。これも建国以来、政策運営を致命的に誤ってきた、身から出た錆なのかも知れない。
タグ:南アジア (その1)(中国に「借金漬け」にされたスリランカがデフォルト 見えた一帯一路の本性 ウクライナ戦争の隙に中国がインド洋と南極で着々と構築する「2本の首飾り」、国民を「こじき」にした一族支配 行き過ぎた仏教ナショナリズム──スリランカ崩壊は必然だった、中国に借金漬けにされ ロシアに助けを求める…国家破綻したスリランカで起きている"負の連鎖" 悪政が悪政を呼び込む悪循環) JBPRESS 木村 正人氏による「中国に「借金漬け」にされたスリランカがデフォルト、見えた一帯一路の本性 ウクライナ戦争の隙に中国がインド洋と南極で着々と構築する「2本の首飾り」」 「中央銀行」「総裁」が堂々と「デフォルト」宣言をするとは驚いた。 「南端のハンバントタ港は2017年から99年間にわたり中国国有企業に貸し出された」、「インフラ整備のため中国から湯水のようにお金を借りたものの結局、思ったような利益は出ずに返済不能に陥り、施設や土地を明け渡さざるを得なくなる「債務の罠」の典型例だ」、「債権者は中国だけではない。米ウォール街やその他の機関投資家からの借り入れも膨張」、「債権者は中国だけではない」とのニュースには驚かされた。 「一帯一路の共同開発プロジェクトは米ウォール街の強欲で冷徹な資本主義のアプローチよりはるかに温和」との「中国」側主張は「真っ赤な嘘」、その通りだ。 「中国のインフラ開発プロジェクトは債務国の経済的な自立性を失わせる。生産能力を多様化できず、資源輸出に依存する国々は中国依存症を深めていく。その一方で、中国は経済だけでなく、政治や軍事面でも影響力を増大させる」、「南太平洋の島国ソロモン諸島と最低5年間の安全保障協定を正式に締結」、「漏洩した協定案には「中国は自らの必要性に応じて、ソロモン諸島の同意を得た上でソロモン諸島に寄港し、兵站補給を行うことができる」と記されていた。社会秩序の維持や災害救助のため、中国から警察や軍人を要請できるとの内容も含まれるとさ 「米国が動き始めたのは安心材料だが、かなり遅すぎた面は否めない」、やはり「遅すぎた」と厳しく見るべきだ。 「「中国が英連邦をソフトターゲットとみなしているのは明らかだ。いくつかのレベルで動いている。ボリス・ジョンソン英首相が掲げる『グローバル・ブリテン』の基本ラインの一つは南シナ海などにおける英国の継続的な利益を守ることだ。その中には中国の干渉を受けない台湾の安全保障、香港の自治を維持することも含まれる」、英国もしっかりしないと、「英連邦」が「中国」の草刈り場となりかねない。「中国は一帯一路の中で資源が豊富な「極地の大国」を目指す構想を掲げている。ヘンダーソン氏は南太平洋の『真珠の首飾り』が完成した時、南極は Newsweek日本版 ニール・デボッタ氏による「国民を「こじき」にした一族支配、行き過ぎた仏教ナショナリズム──スリランカ崩壊は必然だった」 「ゆがんだ仏教ナショナリズムが浸透し、特定の民族(あるいは特定の個人)だけが潤う統治システムが出来上がった。かつて現地の有力紙が嘆いたとおり、それは「密輸業者や詐欺師、殺人犯、牛泥棒など」が支配する政治システムで、これがスリランカの未来を窒息させた」、「現在の危機の直接的な原因は深刻な外貨不足にあり、民衆の抗議運動に拍車を掛けたのは貧困と経済の失速だ」、余りに酷い状況で、失敗国家と言える存在だ。 「この国は、2019年には国際社会で「上位中所得国」に分類されていた。なのに今は、抗議の民衆が大統領一族に「私たちをこじきにした責任を取れ」と叫んでいる。 実際、中産階級の人たちも食うものに困っている」、「中産階級の人たちも食うものに困っている」理由は、「外貨不足」、インフレなどのためだろう。 「エスノクラシー」、「シンハラ語が公用語になってから。ほぼ15年で形勢は逆転した。1956年には官僚の30%、軍人の40%を占めていたタミル人が、70年には官僚の5%、軍人の1%に減っていた」、「またシンハラ人の社会経済的進出を妨げるという理由で英語教育が廃止された影響も大」、長い間に国家の競争力は弱まったのだろう。 「日本は主要な援助国で債権国でもあるが、やはり追加支援には慎重だ。この腐敗体質では援助金がどこに流れるか分からないからだ。他の支援国も同様で、スリランカ政府の腐敗の根が取り除かれないかぎり、誰も動かない。早急に政治の安定を取り戻すことが、さらなる追加融資や債務再編の第一歩だ」、「民衆の抗議行動は宗派を超えて多くの宗教者や一般市民を団結させ、この島国の未来をみんなで考え、築いていこうという機運を生んだ。みんなが苦しんできたのだから、多数派民族による強権支配とは縁を切るべきだ。だがこの国の悲しい歴史を顧みると PRESIDENT ONLINE 青葉 やまと氏による「中国に借金漬けにされ、ロシアに助けを求める…国家破綻したスリランカで起きている"負の連鎖" 悪政が悪政を呼び込む悪循環」 「元凶は、一族支配による悪政と中国への経済依存」、その通りだ。 「南部ハンバントタ港の運営権を、中国国営企業に99年間供与する事態まで発展」、「この一件は、中国が仕掛ける「債務の罠」の典型的な事例だとして国際的な注目を集めた。中国が途上国に対して多用する手口に、高額なインフラ整備費を厳しい返済条件で貸し付けるものがある。相手国が返済条件に応じられなくなるのを待って、新設したインフラ施設の運営権の譲渡を受ける手法だ」、「ハンバントタ港をめぐっては、事実上の中国の植民地ではないかとする国際的な批判が相次いでいる」、「中国」にしてみれば、契約を履行したに過ぎないと言い訳でき 「コロンボで、にわかづくりの売春宿が増加していると報じている。売春宿には研究者からマフィアまで多様な客が集い、彼らを相手にすることで1日で半月分の収入を得ることができるという」、みじめな状況だ。 「世界食糧計画(WFP)による評価として、スリランカの6世帯に5世帯が食べ物を抜くか減らしていると報じている。ある一家は小さな魚を6人の子供に分け与え、大人は残った汁だけで空腹を紛らわせている模様だ」、「6世帯に5世帯」とは本当に深刻だ。 失脚した「大統領一族」を通じて「中国による債務の罠」についても、もっと具体的な事実が明らかになってくるだろう。 「スリランカ側は、かつて観光客のおよそ20%を占めていたロシア人観光客の再来にも期待感を示しているという」、現在の「ウクライナ」情勢をみる限り、「スリランカ側」の「期待」は期待だけで終わるだろう。 「スリランカ」が「結果としてさらに中露への依存が深まろうと」する限り、苦境からの脱却は期待できない。これも建国以来、政策運営を致命的に誤ってきた、身から出た錆なのかも知れない。
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グローバル化(その2)(水野和夫法政大教授 ブロック圏で回す経済システムが必要、「グローバル化は日本を縮小させる」フランス人歴史学者が断言するワケ、スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」) [世界情勢]

グローバル化については、2020年4月25日に取上げた。今日は、(その2)(水野和夫法政大教授 ブロック圏で回す経済システムが必要、「グローバル化は日本を縮小させる」フランス人歴史学者が断言するワケ、スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」)である。

先ずは、2020年5月27日付け日刊ゲンダイ「水野和夫法政大教授 ブロック圏で回す経済システムが必要」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/273711
・『世界で猛威を振るい続ける新型コロナウイルス。感染が急拡大した原因は、グローバル経済のもとに世界各地に広がった人・モノ・カネの流れに沿ってウイルスが拡散したことだ。そのため、世界規模で経済活動を停止せざるを得なくなり、各国の識者からは従来の経済システムに代わる新たな動きを求める声も出始めた。終息の出口が見えない「新型コロナ禍」が浮き彫りにしたグローバル経済の問題。果たして今後の経済システムはどうあるべきか。経済学者の法政大学教授の水野和夫氏に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは水野氏の回答)』、水野氏は国際証券(現:三菱UFJ証券)のエコノミストから法政大教授になり、大きな枠組みでの分析は定評があった。
・『Q:新型コロナ禍で明らかになったグローバル経済の問題をどう考えていますか。 A:世界はこれまで、あたかも「グローバルウイルス」に感染したかのように「グローバル化した経済システムこそが正しい姿なのだ」と刷り込まれ、洗脳されてきました。そして、各国企業は世界中にサプライチェーン(供給網)を張り巡らせてきたわけですが、皮肉にも、そうやって拡大させてきたサプライチェーンに伴いビジネスマンの出張機会が多くなったり、格安LCCの登場で観光客の移動も頻繁となったりしたことが新型コロナの移動を活発化させ感染を拡大する原因となりました。 2008年の「リーマン・ショック」の時、今回のようにサプライチェーンが分断された自動車メーカーの幹部は「3次下請けまでは自分の会社で把握、管理しているけれども、4次、5次、6次の下請けとなると、もはや、どこから部品が来るのか分からない」などと言っていました。つまり、その当時から、グローバル経済に伴うサプライチェーンの問題は指摘されていたのです』、「自動車メーカーの幹部は「3次下請けまでは自分の会社で把握、管理しているけれども、4次、5次、6次の下請けとなると、もはや、どこから部品が来るのか分からない」と、「問題は指摘されていた」、なるほど。
・『サプライチェーンは資本が搾取する構造  Q:すでにグローバル経済の限界は見えつつあったわけですね。 A:「リーマン・ショック」の時も「100年に1度の経済危機」と大騒ぎしたのに、企業はサプライチェーンを縮小するどころか、さらに拡大、膨張させました。ある会社の経営者は経済紙の記事で、「我が社のサプライチェーン(をつなぐ距離)は地球と月を往復するぐらい」などと言っていましたが、要するに地球を何十周もするほどの距離で物流網を敷き、ヒトやモノを動かしてきたのです。そして、新型コロナでそれが分断され、「スペイン風邪以来、100年に1度の危機だ」と嘆いている。要するに「リーマン・ショック」の時の反省もないまま、全く同じことを言っているのです。 おそらく、多くの企業は新型コロナ禍が落ち着いて1年ぐらい過ぎたら、また世界中にサプライチェーンを張り巡らせるでしょう。そして、また新たな感染症が流行したら大騒ぎするという繰り返しです。一体、何度、同じ目に合えば気が付くのでしょうか。 「リーマン・ショック」の時はサブプライム層と言われる中産階級の一歩手前の人が被害者になりましたが、今回の新型コロナでは、各国でインフラを支えていた人たちが大きな影響を受けました。サプライチェーンの仕組みというのは結局、資本が賃金の安い場所を求め、搾取に搾取を重ねていく構造です。こうした弱者に痛みを押し付ける仕組みをいつまで続けるのか。マルクスは「地球が太陽に吸い込まれでもしない限り、資本家はカネもうけをやめない」という趣旨の言葉を残していますが、まったく絶望的な状況と言わざるを得ません』、「「リーマン・ショック」の時の反省もないまま、全く同じことを言っているのです。 おそらく、多くの企業は新型コロナ禍が落ち着いて1年ぐらい過ぎたら、また世界中にサプライチェーンを張り巡らせるでしょう。そして、また新たな感染症が流行したら大騒ぎするという繰り返しです」、「サプライチェーンの仕組みというのは結局、資本が賃金の安い場所を求め、搾取に搾取を重ねていく構造です。こうした弱者に痛みを押し付ける仕組みをいつまで続けるのか。マルクスは「地球が太陽に吸い込まれでもしない限り、資本家はカネもうけをやめない」という趣旨の言葉を残していますが、まったく絶望的な状況と言わざるを得ません」、その通りだ。
・『ブロック圏で経済を回す構造に転換するべき  Q:経済の在り方をどう見直すべきなのでしょうか。 A:まず、真っ先にやることはグローバル化脱退宣言。グローバル化をやめることです。今から100年前の自由貿易主義が叫ばれた時代は、自国で足りないモノ(原料や部品など)がたくさんありました。そのため、地球の裏側から運んでくる必要があったわけです。つまり、自由貿易というのは自国に足りないモノを求めて遠方に広がり、しかも、当時は移動コストも安かった。ところが、今の時代は違います。移動コストは高くなり、物流に伴う自動車や鉄道、航空機、船などの大量移動で地球温暖化や気候変動の問題も指摘されるようになりました。 一方、近代はどの国も(工業、農産物などの)生産力が向上しており、わざわざ遠方に出向く必要もなくなりました。もはや、世界中にサプライチェーンを張り巡らせる必要はなく、近隣諸国などの限られた地域で経済システムを完結できるようになったのです。 Q:世界規模でサプライチェーンを作るのではなく、近隣諸国などと緊密に連携するべきだと。 A:典型的なのがEUですが、例えば農産物はフランスや東ヨーロッパ、工業製品はドイツ、良し悪しは別として原子力エネルギーはフランス……というように、EU圏内で経済は成り立っています。日本の場合も、韓国、台湾、豪州、ニュージーランドと経済的連携を強め、ブロック圏を作るべきでしょう。特にパネルやICチップなどの工業製品については、韓国、台湾で十分です。日本企業がわざわざ欧米に工場を進出したり、輸入したりする必要はありません。農産物は豪州、ニュージーランドがあります。エネルギーについても再生自然エネルギーに切り替えれば、ほぼこの圏内で経済は完結すると思います。つまり、膨張したサプライチェーンを縮小し、人・モノ・カネの流れを限定した地域内で経済を回していく。新型コロナ禍によってグローバル経済という秩序が崩壊しつつある中、新たな世界経済の構造へと大転換させるべき時なのです。 感染症対策も近隣諸国と情報交換した方が早い対応が取れるでしょう。各国で状況が異なるのに、世界規模で足並みをそろえて対策を考えるのは現実的ではないからです。新型コロナ対策でも、日本は出遅れましたが、韓国や台湾などは成功している。新たな感染症が起きた時、こうした国々と協力して防疫対策を構築し、次のウイルスの脅威に備える体制を整えるべきだと思います』、「移動コストは高くなり、物流に伴う自動車や鉄道、航空機、船などの大量移動で地球温暖化や気候変動の問題も指摘されるように」、「近代はどの国も(工業、農産物などの)生産力が向上しており、わざわざ遠方に出向く必要もなくなりました。もはや、世界中にサプライチェーンを張り巡らせる必要はなく、近隣諸国などの限られた地域で経済システムを完結できるようになった」、「新型コロナ禍によってグローバル経済という秩序が崩壊しつつある中、新たな世界経済の構造へと大転換させるべき時」、その通りだ。
・『安倍首相は経団連に内部留保の活用を呼び掛けるべき  Q:グローバル化以外で見直すべき部分はありますか。 A:都市の集中、大都市化というのも限界に来ていると思います。新型コロナの感染者数が最も多いのは米国ですが、ニューヨーク、ワシントン、ボストンなど人口規模の多い州で、米国内の感染者、死者数の半分以上を占めています。つまり、「集積の利益が一番、利潤を極大化する」という発想から都市化が進んだわけですが、人口の密集地域ほど感染症が直撃する実態が明らかになった今、都市への集中もやめる必要があると思います。 Q:新型コロナで経済が大きなダメージを受けている日本企業、政府はどうあるべきでしょうか。 A:日本経済の最大の問題は供給過剰にあるということです。例えば、食料品は生産しても廃棄するばかり。いわゆる食品ロスです。住宅も空き家が増えているのに新築住宅を作り続けています。無理な経済成長を目指して労働時間を増やしているだけなのです。この結果、大企業は現在、世界でも例を見ない460兆円にもおよぶ内部留保を積み上げましたが、この中には本来、働く人の労働生産性の上昇に応じて支払われるべきだった賃金が含まれています。 利潤を上げているのに利息も払わず、まさかのためにと言って労働者などに支払ってこなかった「一時預かり金」などを含めると、ざっと130兆円ほどになるでしょう。新型コロナの影響を受けた国民生活を救済するため、まず、このお金を国民のために活用するべきです。そして、さらに残りの内部留保の一部を償還財源として、政府が「新型コロナ国債」を発行する。そして、政府や自治体の自粛要請で営業できず、苦境に追い込まれている小売業や宿泊、飲食業の家賃補てん、休業補償に充てればいい。政府は(緊急事態宣言の発令下でも)開店していたパチンコ店に苦言を呈するのではなく、安倍首相が経団連に対して内部留保の活用を呼び掛けるべきなのです』、「内部留保460兆円」のうち、「働く人の労働生産性の上昇に応じて支払われるべきだった賃金」などの「一時預かり金」、ざっと130兆円ほどを、「新型コロナの影響を受けた国民生活を救済するため、まず、このお金を国民のために活用するべき」、「残りの内部留保の一部を償還財源として、政府が「新型コロナ国債」を発行する。そして、政府や自治体の自粛要請で営業できず、苦境に追い込まれている小売業や宿泊、飲食業の家賃補てん、休業補償に充てればいい」、「開店していたパチンコ店に苦言を呈するのではなく、安倍首相が経団連に対して内部留保の活用を呼び掛けるべきなのです」、同感である。

次に、2020年9月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した歴史学者のエマニュエル・トッド氏による「「グローバル化は日本を縮小させる」フランス人歴史学者が断言するワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/247077
・『“フランス最大の知性”ともよばれる歴史人口学者エマニュエル・トッド氏は、日本における「能力主義」は他国とその性質が異なると指摘する。その理由とは?トッド氏の最新刊『大分断 教育がもたらす新たな階級化社会』(訳:大野 舞)から一部を抜粋して紹介する』、興味深そうだ。
・『日本における「能力主義」 他国と異なる特徴とは?  アメリカやフランスのような平等主義の社会では、能力主義は平等という理想の歪んだ形として表出してしまいました。最初は、誰もが学業をするべきで、教育は皆のものだと言われました。しかし、マイケル・ヤングが気づいたのは、大衆層の中の優秀な人たちが進学すると、社会は再び階級化するだろうということでした。そして上層には、上層にいると考える人たちによって新たなグループが形成されるのです。 フランスなどでは能力主義のコンセプトは常にポジティブに評価されてきました。人々は、能力主義は民主主義から生まれたものだと捉えているのです。多くの人は、これが実は教育の民主化の悲惨な二次的影響であり、結局は自己破壊に陥ってしまうものであることを理解していません。この民主化プロセスは最終段階(100%の人が高等教育を受ける段階)まで行き着けないものなのですから。 戦後の日本においてもこの能力主義という考え方は非常に根強かったのではないでしょうか。ただ、日本の特殊な点は、直系家族構造における不平等を受け入れる価値観と、江戸時代の非常に特殊なヒエラルキーの考え方、この二つをベースにしながら、それと同時に能力主義の考え方があったという点です。一方でフランスでは、能力主義とは人類の平等と強く結びついた観念であることを先ほど述べました。この違いがあるため、二つの国の結果は異なるのです。 基本的に直系家族を基盤とする日本のような社会は、そもそもが身分制の社会です。ここでは長男が重要とされてきました。それは徐々に男性全体が特権を持つ、つまり男性優位社会へと変化していきました。日本でももちろん、戦後には能力主義の発展が見られましたが、そこにはフランスで見られるような、平等に対する強いこだわりがないのです。日本にも奥深いところで、巧妙な形での平等主義が存在するとは思います。例えば、あるレベルにおいてはどの仕事も高尚であり、正しく為されるべき、といった考え方です。「馬鹿な人はいても馬鹿げた仕事はない」ということです。そしてきちんと為された仕事はそれがどんな仕事であれ評価されます。それぞれがある身分に属していて、そこで自分の仕事をきちんとこなすという社会です。 もちろん、日本にも高等教育を受けたエリートが存在しますが、他国と異なるのは、人々がその身分の序列を認めているという点です。ここでは上層部の下層部に対する軽蔑、あるいは下層部の上層部に対する憎しみというものはないのです』、「日本では」、「上層部の下層部に対する軽蔑、あるいは下層部の上層部に対する憎しみというものはない」、というのは本当だろうか。他国と同様にあるような気もする。
・『なぜ日本ではポピュリズムが力を持たないか  日本における高等教育の発展というのは、フランスよりもさらに突き詰められたもので、例えば大学入学の際に非常に激しい競争プロセスが存在します。また、大学もレベルによって明確に序列化されています。しかしこの能力主義的なプロセスは、日本の根本にある文化とは矛盾しないのです。 また、もう一つ重要なことは、日本にはポピュリズムがないということです。私が言うポピュリズムというのは、エリート主義を批判することで政治システムに入ってくる政党のことです。このような形は日本ではうまくいかないでしょう。もちろん、東大法学部出身者はフランスのENA出身者と同様の立場にいるでしょう。しかし、繰り返しになりますが、日本ではフランスに比べて、身分に対して傲慢な感情がないのです。 これらを踏まえた上で、日本社会の矛盾とは、身分制が色濃い社会であるにもかかわらず非常に踏み込んだ教育促進のプロセスがあり、能力主義化も進められたということではないでしょうか。日本は身分制の社会ですが、明治の頃からすでに教育の重要性を認識してきました。私が思うにこれもまた、国家が生き延びるためだったのだろうということです。日本人であると感じることや、西洋からの脅威に対抗し生き延びるために、日本社会は自分たちの価値観を超越し、階級化したシステムを残したままで大規模な民主化へ進んでいったのだと思うのです。) なお、直系家族構造の社会の問題は、非常に効率的ではあるのですが、現状の形をそのまま繰り返すという傾向があり、無気力な社会になることと関係しているという点です。直系家族の罠は、自分と全く同じものを作り出そうとする点にあるのです。それと同時に、虚弱なシステムでもあるため外からショックを受けた時に再び活性化するという側面もあります。 同じ直系家族構造を持つドイツもそうです。例えば、フランス革命やイギリスの産業革命を目の当たりにし、イギリスやフランスよりも識字率が高かったドイツは、自分たちの社会を奮い立たせる必要に迫られ、最終的には国の再発展につなげていったのです。これは日本がアメリカと接することによって明治を迎えたのと似ています。直系家族社会は、敵や刺激、外的な脅威などをうまく利用してきたとも言えるでしょう。ただ、このようなシステムからは階級闘争やエリート対大衆というような構図は生まれません』、「日本にはポピュリズムがない」、「フランス革命やイギリスの産業革命を目の当たりにし、イギリスやフランスよりも識字率が高かったドイツは、自分たちの社会を奮い立たせる必要に迫られ、最終的には国の再発展につなげていったのです。これは日本がアメリカと接することによって明治を迎えたのと似ています」。なるほど。
・『グローバル化への適応と人口減少の関係  先ほど明治維新について述べましたが、日本について考察する際に重要なのは、日本の適応性という問題だと思います。日本の近代の歴史は、変化の激しい、また時には脅威ともなる周辺世界にいかに適応するかという問題に集約されるからです。 江戸時代に日本は商業面でも技術面でも、自国のみで目をみはる発展を遂げました。その発展の仕方のある部分は、不思議なことに一部の西ヨーロッパの発展と並行したものだったりもしました。こうして鎖国を続けていた日本でしたが、とうとうアメリカから黒船が突然訪れ、接触を迫られ、不意の恐怖に襲われたのです。 これ以降の日本の歴史は「グローバル化にいかに適応していくか」という点に集約されると思います。ある意味、安全ではない状態がずっと安定していると言ってしまうこともできるわけです。そしてこの黒船の来航による反響の一つが明治維新で、それは驚くべきものでした。工業化への適応力や戦後の回復もまた素晴らしいものでした。西洋に追いつくために進めた回復、つまり突然の変化への適応力によって、結果的に世界第二位の経済国にまでなったのです(2011年まで)。ちなみに、私は一国の力をGDP(国内総生産)だけで判断せずに、技術の能力なども含めて見ます。そうした意味で、日本はいまだに大国であると思っています。 とはいえ、昔から変わらない一つの問題があるのです。それが人口の問題です。韓国なども似たような状況です。 日本は自由貿易を完全に受け入れた国ではないと思います。完全ではありませんが、ある程度、日本は自国を守ってきたと思うのです。日本国内で様々な問題があるのはもちろんわかっていますが、自由貿易によって引き起こされる社会的な崩壊、国内格差という現象に対しては、フランスやイギリス、あるいはアメリカよりも、うまく自国を守れているだろうと思います。日本の適応のための一連の努力、教育面の努力や技術面のそれは完璧主義につながっており、他には類を見ない形で高い均質性のレベルと社会の安定性を維持してきました。 しかしこれらは人口の側面を犠牲にする形で進められたと見ることができるでしょう。日本の出生率の低さはドイツに似たものがありますが、日本の出生率を分析すると、その原因には女性の微妙な地位や、キャリアか子供かを選ばなければいけない状況、父権制の名残があることなどが挙げられます。 日本や韓国のような国では、今もそうかもしれませんが、西洋システムというとてつもない圧力をかけてくるものに対抗するために、本当に多くの努力をしなければならなかったという背景がありました。そうして社会の一貫性や文化などを守ってきましたが、社会が再生され続けるために必要なレベルの出生率を保つということまではできなかったのです』、「日本の適応のための一連の努力、教育面の努力や技術面のそれは完璧主義につながっており、他には類を見ない形で高い均質性のレベルと社会の安定性を維持してきました。 しかしこれらは人口の側面を犠牲にする形で進められたと見ることができる」、面白い見方だ。
・『グローバル化は日本を縮小させる  先にも述べたように、日本はポピュリズム不在の国です。ポピュリズムは、グローバル化が引き起こす社会の格差が政治的な形で表出したものです。ですから日本にポピュリズムがないということは、格差が他国よりもましだということを意味するのです。また、前述したように、日本の近代史というのは国家の生き残りの歴史でした。そうして、国外からの圧力に対抗し、自己を守り、前進し、生き延びるために西洋に追いつくことを繰り返してきました。そんな中で、人口減少が実はその対価だったと言えると思うのです。 日本がグローバル化から完全に自由だったならば、人口の均衡を保つ術を見つける時間もあったでしょう。しかし今日、日本は経済的に厳しい状況にあります。グローバル化による経済的なプレッシャーは、日本のような国がその最も重要な課題である出生率の回復と向き合うこと、つまり支援のためにお金を注ぎ込むことを邪魔しているとも言えるのです(ここでの出生率の支援というのは、単なる手当金のことを指しているのではありません。それは高等教育費を減らすことなども含めます)。グローバル化の圧力は日本を分断するのではなく、日本全体を縮小させているのです。グローバル化は日本がその最も喫緊とする問題と向き合うことを阻止していると言えるでしょう。 ※本文は書籍『大分断 教育がもたらす新たな階級化社会』を一部抜粋して掲載しています』、「グローバル化の圧力は日本を分断するのではなく、日本全体を縮小させているのです。グローバル化は日本がその最も喫緊とする問題と向き合うことを阻止していると言える」、「低い」「出生率」に「グローバル化氏圧力」があるというのは、面白い視点だが、「日本全体を縮小させている」というのは困ったことだ。

第三に、本年6月14日付け日経ビジネスオンラインが掲載した米コロンビア大学教授のジョセフ E.スティグリッツ氏による「スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00351/060900031/
・『2年以上ぶりに開催された世界経済フォーラムは、1995年以来、私が参加してきたこれまでのダボス会議とは明らかに様子が違っていた。1月の明るい雪と晴天から一転、雪がないスキー場と、5月のどんよりとした霧雨に見舞われた、気候のことではない。 これまでのフォーラムは、グローバル化を擁護してきた。だが今回は、サプライチェーンの寸断、食料やエネルギー価格の高騰、一部の製薬会社が数十億の追加利益を得るために何十億もの人々が新型コロナウイルスワクチンを手にすることができない知的財産権(IP)体制などといった、グローバル化の失敗に主眼を置いていた。 こうした諸問題への対応策として提案されたのは、生産の「再集積」または「友好国化」、さらに「国の生産能力を高めるための産業政策」の制定だ。誰もが国境のない世界を目指しているように見えた時代は過ぎ去り、突然、誰もが少なくともいくつかの国の国境が経済発展と安全保障の鍵であることを認識するようになったのである。 かつて自由なグローバリゼーションの擁護者であった人々にとって、ダボスのこの方向転換は結果として明らかな不協和音をもたらした。「友好国化」と自由で無差別な貿易の原則を両立させることができず、ダボス会議に参加した実業界と政界のリーダーの大半は、ありふれた話に終始した。なぜこのような事態に陥ったのか、あるいは、グローバリゼーションが全盛の時代にまん延していた「欠陥のある超楽観主義的な論理」について、反省の色はほとんど見られなかった。 もちろん、問題はグローバリゼーションだけではない。市場経済全体にレジリエンス(回復力)が欠けているのだ。私たちは、基本的にはスペアタイヤのない車を作り、現在の価格を数ドル下げただけで、将来の緊急事態にはほとんど注意を払ってこなかった。 ジャストインタイムは、経済がわずかな変動にしか直面しない限りにおいては、素晴らしい革新的技術であった。だが、新型コロナウイルスによる操業停止に直面すると、例えばマイクロチップの不足が新車の不足を引き起こすなどといった供給不足の連鎖を引き起こし、大打撃を被ったのだ。 2006年に筆者が『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す(Making Globalization Work)』(徳間書店)で警告したように、市場はリスクの「値付け」をうまくできない(二酸化炭素の排出量に価格を付けないのと同じ理由だ)。例えばドイツは、明らかに信頼がおけない貿易相手国のロシアからガス供給を受け、依存することを選択した。今、ドイツは、予想され、かつ予測可能であった結果に直面している。 18世紀にアダム・スミスが見出したように、資本主義は独占へと自然に向かっていく傾向があるため、自助努力だけで成り立つシステムではない。しかし、米国のレーガン大統領と英国のサッチャー首相が「規制緩和」の時代を築いて以来、市場の集中が常態化し、電子商取引やソーシャルメディアなど注目される分野だけの現象ではなくなった。 今春、米国で起きた悲惨な粉ミルクの品不足は、それ自体が独占の結果であった。アボット・ラボラトリーズが安全性の問題で生産停止に追い込まれた後、米国人はすぐに、たった1社で米国の供給量の半分近くを占めていることに気づいたのである』、「ダボス会議に参加した実業界と政界のリーダーの大半は、ありふれた話に終始した。なぜこのような事態に陥ったのか、あるいは、グローバリゼーションが全盛の時代にまん延していた「欠陥のある超楽観主義的な論理」について、反省の色はほとんど見られなかった」、「米国のレーガン大統領と英国のサッチャー首相が「規制緩和」の時代を築いて以来、市場の集中が常態化し、電子商取引やソーシャルメディアなど注目される分野だけの現象ではなくなった。 今春、米国で起きた悲惨な粉ミルクの品不足は、それ自体が独占の結果であった」、痛烈な批判だ。
・『米国の偽善に冷ややかな新興国  今年のダボス会議では、グローバリゼーションの失敗が政治に与えた影響も存分に見られた。ロシアがウクライナに侵攻したとき、クレムリンは即座に、しかもほぼ全世界から非難を浴びた。しかしその3カ月後、新興国や途上国(EMDCs)はより曖昧な立場を取るようになった。多くの者が、2003年には偽りの口実でイラクに侵攻したにもかかわらず、ロシアの侵略に説明責任を求める米国の偽善を指摘している。 EMDCsはまた、欧州と米国による最近のワクチンナショナリズムの歴史も強調している。これは、30年前に押し付けられた世界貿易機関(WTO)のIP条項によって維持されてきたものだ。そして、食料とエネルギー価格の上昇の矢面に立たされているのが、EMDCsである。過去の不正義と相まって、こうした最近の動きは、民主主義と国際的な法の支配を提唱する欧米の信用を失墜させるものだ。 確かに、米国による民主主義擁護の支援を拒否する多くの国は、いずれにせよ民主的ではない。しかしほかの国々は民主的だ。この戦いをリードすべく立ち上がったように見える米国は、制度的な人種差別や権威主義者に媚(こ)びたトランプ政権から、投票を抑制して2021年1月6日の米国議会議事堂での暴動から有権者の注意をそらそうとする共和党の執拗な試みまで、自らの失敗によって立場を損なわれてきたのである。 米国にとって最善の方法は、食料とエネルギーのコスト高騰に対処できるよう支援することで、新興国に対してより大きな連帯感を示すことであろう。これは、富裕国の特別引き出し権(国際通貨基金の準備資産)を再配分し、世界貿易機関(WTO)で新型コロナウイルス関連の強力な知的財産権の放棄を支持すれば、可能になる。 さらに、食糧やエネルギー価格の高騰は、多くの貧困国で債務危機を引き起こし、このパンデミック(世界的大流行)による悲劇的な不公平をさらに悪化させる可能性がある。もし米国と欧州が真のグローバル・リーダーシップを発揮したいのであれば、各国が負担しきれないほどの債務を負うようそそのかした大銀行や債権者の味方をするのはやめるべきだ。 40年にわたりグローバリゼーションを擁護してきたダボス会議の面々は、明らかに舵(かじ)取りを誤った。ダボス会議は、先進国、途上国を問わず繁栄を約束してきた。しかし、北半球の巨大企業が豊かになる一方で、すべての人がより良くなるはずのプロセスは、代わりにあらゆる場所で敵を作っただけだった。「トリクルダウン経済学」とは、富裕層が豊かになれば、自動的にすべての人が恩恵を受けるというものだが、理論も根拠もない詐欺のようなものだ。 今年のダボス会議は、残念な結果に終わった。世界に今日のような状況をもたらした意思決定と政策について、真剣に考える機会であり得たはずだ。グローバリゼーションがピークに達した今、その衰退を管理することが、その隆盛を管理したときよりもうまくいくことを願うばかりである』、「ダボス会議は、先進国、途上国を問わず繁栄を約束してきた。しかし、北半球の巨大企業が豊かになる一方で、すべての人がより良くなるはずのプロセスは、代わりにあらゆる場所で敵を作っただけだった。「トリクルダウン経済学」とは、富裕層が豊かになれば、自動的にすべての人が恩恵を受けるというものだが、理論も根拠もない詐欺のようなものだ」、「グローバリゼーションがピークに達した今、その衰退を管理することが、その隆盛を管理したときよりもうまくいくことを願うばかりである」、皮肉たっぷりだ。
タグ:「自動車メーカーの幹部は「3次下請けまでは自分の会社で把握、管理しているけれども、4次、5次、6次の下請けとなると、もはや、どこから部品が来るのか分からない」と、「問題は指摘されていた」、なるほど。 水野氏は国際証券(現:三菱UFJ証券)のエコノミストから法政大教授になり、大きな枠組みでの分析は定評があった。 日刊ゲンダイ「水野和夫法政大教授 ブロック圏で回す経済システムが必要」 「移動コストは高くなり、物流に伴う自動車や鉄道、航空機、船などの大量移動で地球温暖化や気候変動の問題も指摘されるように」、「近代はどの国も(工業、農産物などの)生産力が向上しており、わざわざ遠方に出向く必要もなくなりました。もはや、世界中にサプライチェーンを張り巡らせる必要はなく、近隣諸国などの限られた地域で経済システムを完結できるようになった」、「新型コロナ禍によってグローバル経済という秩序が崩壊しつつある中、新たな世界経済の構造へと大転換させるべき時」、その通りだ。 「「リーマン・ショック」の時の反省もないまま、全く同じことを言っているのです。 おそらく、多くの企業は新型コロナ禍が落ち着いて1年ぐらい過ぎたら、また世界中にサプライチェーンを張り巡らせるでしょう。そして、また新たな感染症が流行したら大騒ぎするという繰り返しです」、「サプライチェーンの仕組みというのは結局、資本が賃金の安い場所を求め、搾取に搾取を重ねていく構造です。こうした弱者に痛みを押し付ける仕組みをいつまで続けるのか。マルクスは「地球が太陽に吸い込まれでもしない限り、資本家はカネもうけをやめない」とい グローバル化 (その2)(水野和夫法政大教授 ブロック圏で回す経済システムが必要、「グローバル化は日本を縮小させる」フランス人歴史学者が断言するワケ、スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」) 「内部留保460兆円」のうち、「働く人の労働生産性の上昇に応じて支払われるべきだった賃金」などの「一時預かり金」、ざっと130兆円ほどを、「新型コロナの影響を受けた国民生活を救済するため、まず、このお金を国民のために活用するべき」、「残りの内部留保の一部を償還財源として、政府が「新型コロナ国債」を発行する。そして、政府や自治体の自粛要請で営業できず、苦境に追い込まれている小売業や宿泊、飲食業の家賃補てん、休業補償に充てればいい」、「開店していたパチンコ店に苦言を呈するのではなく、安倍首相が経団連に対して内 ダイヤモンド・オンライン エマニュエル・トッド氏による「「グローバル化は日本を縮小させる」フランス人歴史学者が断言するワケ」 「日本では」、「上層部の下層部に対する軽蔑、あるいは下層部の上層部に対する憎しみというものはない」、というのは本当だろうか。他国と同様にあるような気もする。 「日本にはポピュリズムがない」、「フランス革命やイギリスの産業革命を目の当たりにし、イギリスやフランスよりも識字率が高かったドイツは、自分たちの社会を奮い立たせる必要に迫られ、最終的には国の再発展につなげていったのです。これは日本がアメリカと接することによって明治を迎えたのと似ています」。なるほど。 「日本の適応のための一連の努力、教育面の努力や技術面のそれは完璧主義につながっており、他には類を見ない形で高い均質性のレベルと社会の安定性を維持してきました。 しかしこれらは人口の側面を犠牲にする形で進められたと見ることができる」、面白い見方だ。 「グローバル化の圧力は日本を分断するのではなく、日本全体を縮小させているのです。グローバル化は日本がその最も喫緊とする問題と向き合うことを阻止していると言える」、「低い」「出生率」に「グローバル化の圧力」があるというのは、面白い視点だが、「日本全体を縮小させている」というのは困ったことだ。 日経ビジネスオンライン ジョセフ E.スティグリッツ氏による「スティグリッツ氏「『脱グローバル化』を正しく理解しよう」」 「ダボス会議に参加した実業界と政界のリーダーの大半は、ありふれた話に終始した。なぜこのような事態に陥ったのか、あるいは、グローバリゼーションが全盛の時代にまん延していた「欠陥のある超楽観主義的な論理」について、反省の色はほとんど見られなかった」、「米国のレーガン大統領と英国のサッチャー首相が「規制緩和」の時代を築いて以来、市場の集中が常態化し、電子商取引やソーシャルメディアなど注目される分野だけの現象ではなくなった。 今春、米国で起きた悲惨な粉ミルクの品不足は、それ自体が独占の結果であった」、痛烈な批判だ 「ダボス会議は、先進国、途上国を問わず繁栄を約束してきた。しかし、北半球の巨大企業が豊かになる一方で、すべての人がより良くなるはずのプロセスは、代わりにあらゆる場所で敵を作っただけだった。「トリクルダウン経済学」とは、富裕層が豊かになれば、自動的にすべての人が恩恵を受けるというものだが、理論も根拠もない詐欺のようなものだ」、「グローバリゼーションがピークに達した今、その衰退を管理することが、その隆盛を管理したときよりもうまくいくことを願うばかりである」、皮肉たっぷりだ。
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韓国(尹錫悦大統領)(その1)(元駐韓大使が解説3題:韓国・次期政権が暴くべき文大統領の「ウソと秘め事」、韓国経済が深刻な危機!前政権の「負の遺産」問題、文在寅政権が報復つぶし?「検察捜査権を剥奪」強行の暴挙) [世界情勢]

今日は、韓国(尹錫悦大統領)(その1)(元駐韓大使が解説3題:韓国・次期政権が暴くべき文大統領の「ウソと秘め事」、韓国経済が深刻な危機!前政権の「負の遺産」問題、文在寅政権が報復つぶし?「検察捜査権を剥奪」強行の暴挙)を取上げよう。

先ずは、4月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国・次期政権が暴くべき文大統領の「ウソと秘め事」、元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/301250
・『「三不」政策を巡り中韓で異なる主張  尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が大統領となり、最初に取り組む問題が、外交の健全化だろう。これまで文在寅(ムン・ジェイン)大統領の下で韓国は、中国・北朝鮮にすり寄り、ご機嫌伺いに勢力を注いできた。 その端的な例が、在韓米軍がTHAAD(高高度ミサイル防衛システム)を配備することに対する中国の反発を受け、文在寅大統領が訪中2カ月前に「THAADを追加配備しない」「米国のミサイル防衛システム(MD)に参加しない」「日米韓軍事同盟はしない」といわゆる「三不」政策を表明したことである。これは、韓国の安保に関する主権を制限しかねない内容である。 しかし、文在寅大統領にとっては、中国の機嫌を損なわないことが最優先であった。とはいえ、THAAD問題を中国側と交渉した文政権の複数の当事者は「三不」について、「政府の考えを説明した」ものにすぎず、「約束」ではないと強調してきた。文政権としても約束とするには躊躇(ちゅうちょ)があったのだろう。 ところが、中国国営の環球時報によれば、「三不は韓中相互尊重の結果」として、中国側では約束と受け止めているようである。韓国メディアは最近、「中国が在韓米軍のTHAADに対し、『三不』に加えて『一限』まで要求していたが、文在寅政権はこれを隠していた」と報じた。ここでいう「一限」とは、すでに配備されたTHAADの運用に制限を加えるという意味である。 この報道が正しければ、「三不」政策は中韓の交渉の結果ということになる。しかも、「三不」に加え、「一限」も交渉の対象となっていたことがうかがえる。「一限」の存在は、環球時報が2017年11月、「三不と一限は韓国が取るべきマジノ線(最低条件)」と主張したことがきっかけで、外交関係者の間で取り上げられるようになった。中韓の交渉の結果であれば、単に「政府の考え方を説明した」では通らないのではないか』、「文在寅政権」の「中国」外交がこれほど事実を隠蔽していたとは驚きだ。
・『尹錫悦氏側は文政権の説明に疑義  尹錫悦氏の大統領職引き継ぎ委員会は4日、元壱喜(ウォン・イルヒ)首席副報道官が「当事者たちが真実を国民に細かく明らかにすることが道理だ」とコメントした。 元壱喜副報道官は「記事の内容が事実であれば、今も韓国の軍事主権を侵害する深刻な事案という問題意識を持っている」「事実関係がどうなっているか私たちが確認できる内容は全くないが、現政府には合意に関与した当事者たちがいるので、その人たちが真実を明らかにすることが道理だ」とコメントした。 この当事者とは、当時の康京和(カン・ギョンファ)外相および鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長を指しているようだ。 しかし、韓国政府はこれまで一貫して、「約束」を否定してきた。韓国外交部による引き継ぎ委員からの業務報告でも「三不」や「一限」に関する内容は含まれていなかったという』、「外交」は「韓国側」だけが秘密にしようと思っても、相手方の中国の事情もあるので、必ずしも守秘が貫徹できる訳ではないのに、「文政権」は何故、秘密にしたのだろう。
・『文在寅政権は次期政権に中韓交渉の真実を伝えるべきだ  尹錫悦氏は大統領選の時からTHAADの追加配備を公言しており、「三不」破棄は既定路線となっている。「三不」については、あくまで文在寅政権での考えとの前提で、追加配備を行う方針であり、これを実行すれば中国側との大きな軋轢(あつれき)を招来することになるだろう。 だが、「一限」についてはそもそも想定外のことである。さらに、「三不」と「一限」が「中韓相互尊重の結果」であれば、これを破棄することで中韓の摩擦は一層大きくなるだろう。) いずれにせよ、尹錫悦氏は中韓交渉の真実を知る必要がある。文在寅政権は、自分たちに不都合なことは外交に限らず、国内政治でも隠し続けてきた。しかし、外交ではこれは通用しない。韓国にとって極めて不適切な合意でも、合意は合意である。尹錫悦政権はその真実を知り、それでも合意を破棄すべき時は、中国との大きな摩擦を覚悟すべきである。 文在寅政権は、中国に外交の主導権を奪われ、中国の言いなりになってきた。しかもそれを国民に知られないように、ひたすら隠し続けてきた。そのツケを負うのは次期政権である。 文在寅政権は、中国の反発を招かない行動を取ることが平和への道だと思い込んでいるが、それは真の平和ではなく、中国に支配された平和である。韓国が主権を取り戻し、正常な外交を行おうとすれば、中国の反発を招く。その原因をもたらしたのは文在寅政権の外交政策である』、「文在寅政権は、自分たちに不都合なことは外交に限らず、国内政治でも隠し続けてきた。しかし、外交ではこれは通用しない。韓国にとって極めて不適切な合意でも、合意は合意である。尹錫悦政権はその真実を知り、それでも合意を破棄すべき時は、中国との大きな摩擦を覚悟すべきである」、前政権の失政のツケを払わされるとは「尹錫悦政権」も大変だ。
・『中国追随外交を続ける二つの理由  韓国にとって、中国はどのような国なのか、韓国国民は真実を知るべきである。 文在寅大統領は昨年、習近平国家主席との電話会談で中国共産党100周年に対する祝賀を述べた。中国共産党は朝鮮戦争の折、人民解放軍を派遣し、米韓を中心とする国連軍を押し返して、朝鮮半島の分断を固定化した張本人である。その中国共産党に対して100周年の祝賀を述べることは、韓国国民の朝鮮統一に対する思いを踏みにじっているとしか思えない。 また、鄭義溶外相は王毅外相に招かれて台湾海峡の対岸・厦門に、はせ参じた。米韓首脳会談を前に、台湾問題が話題となるのをけん制しようとする中国の策略に乗ったわけである。 このように、韓国政府は中国の機嫌取りに熱心である。 文在寅大統領が中国追従外交を行うのには、二つの理由がある。  第一に、中国が北朝鮮に対して影響力を行使し、北朝鮮と韓国の関係改善に尽力してくれると思い込んでいることだ。しかし、これまでの北朝鮮との交渉の過程で、中国が韓国に協力する姿勢を示してきた事例を筆者は知らない。 第二に、輸出先としての重要性だ。韓国の輸出の4分の1以上が中国向けであり、中国との円満な関係が韓国の経済にとって不可欠と考えている。 しかし、韓国の中国経済専門家は「韓国と中国は経済分野ではここ30年で互恵的な関係からライバル関係に変わったため、韓国企業の対中戦略も見直さなければならない」と指摘する。特に、中国に過度に依存してきたサプライチェーンの多角化が急務だとの声が上がっている。 韓国から中国へ輸出する品目は減り続ける半面、韓国は中国からの原材料の輸入に依存し続けており、韓国の劣勢はますます強まりつつある。多くの品目で過度な中国依存が進めば、韓国は経済的にますます中国から自立できなくなる。中国からの依存脱却は急務である。 中国に対する過度な譲歩姿勢は終わらせるべき時が来ている。現在の中韓関係において、中国はあくまでも自国の利害を基本に韓国に対応してきている。韓国も自国の利益を優先して考えるべき時に来ているのではないか』、「韓国も自国の利益を優先して考えるべき時に来ている」、その通りだ。
・『安保リスクの高まりによりTHAADの追加配備は不可避  中国は、THAADのレーダーによって国内の軍の配置が米国に明らかになることを恐れている。しかし、北朝鮮は今年に入り、極超音速ミサイル、鉄道から発射のミサイル、ICBM(大陸間弾道ミサイル)など次々にミサイルの発射を行い、近く核実験も再開すると言われている。こうした北朝鮮の兵器は、いずれも中ロの支援の下に高度化されているのである。 これに対し、韓国は防衛体制を整備し、ミサイル迎撃能力を高める必要がある。それがTHAADの追加配備であり、それは中国の軍の配置を探るためではなく、韓国の防衛のためにすることである。 北朝鮮の核ミサイル能力の向上という新たな安保リスクに対応するためには、「三不」の廃棄はやむを得ない選択である。そもそも、文在寅政権が中国に対し、北朝鮮への有効な抑止を求めることなく、「三不」を表明したことは極めて不適切であった。その表明に至る交渉の実態について、尹錫悦政権は知る必要があり、それを踏まえて中国と話し合っていくべきであろう』、「そもそも、文在寅政権が中国に対し、北朝鮮への有効な抑止を求めることなく、「三不」を表明したことは極めて不適切であった。その表明に至る交渉の実態について、尹錫悦政権は知る必要があり、それを踏まえて中国と話し合っていくべき」、その通りだ。
・『韓国籍タンカー2隻を北朝鮮に売却したことが判明  米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカは5日、韓国船籍だったタンカー2隻がこのほど、北朝鮮所有になったことが分かり、国連の対北朝鮮制裁委員会が正式調査に着手した、と報じた。 2隻のタンカーのうちの1隻である「デホ・サンライズ号」は昨年、中国企業に売却された後、北朝鮮所有のシエラレオネ船籍「オーシャン・スカイ号」に変わったという。専門家パネルは船舶の位置を示す自動船舶識別装置を逆追跡、衛星写真資料を分析してこのような情報を得た。) さらに専門家パネルは、かつて韓国船籍だった別のタンカー「ウジョン号」が北朝鮮の旗をつけていることも確認し調査を進めている。同タンカーは昨年8月8、9、10日の3回にわたり違法な船舶間積み替え方式(瀬取り)により、パラオ船籍のタンカーから油類を受け取る様子が捉えられえている。 国連安保理は2016年に採択した制裁決議2321号に基づき、国連加盟国が北朝鮮に船舶を販売することは禁止している。 しかし、文在寅政権は逆に北朝鮮への制裁を緩和するよう欧米各国に働きかけており、国際社会が一致団結して北朝鮮の核ミサイル開発を阻止しようとする動きに反する行動を取っている。 また、文在寅政権は国連の北朝鮮人権決議共同提案国への参加を4年連続で見送った。国連の北朝鮮人権特別報告者が「北朝鮮の人権状況はここ6年でさらに悪化した」と指摘し、複数の国際人権団体は書簡を通じて文在寅大統領に「任期の最後には北朝鮮人権決議案に加わってほしい」と求めたが、文在寅政権は最後まで拒否した。 文在寅政権は20年に、朝鮮労働党の金正恩総書記の妹である金与正(ヨジョン)党第1副部長(当時)の要求で、「対北ビラ禁止法」を制定した。これにより、米国議会では「人権聴聞会」の対象国となった。 また、19年には韓国への帰順の意向を伝えた北朝鮮の漁船乗組員2人を凶悪犯との理由で北朝鮮に強制的に送り返し、国連人権報告者が「深く懸念する」という事態になった。 文在寅大統領は「平和が来れば北朝鮮の人権問題も改善する」という趣旨の発言を繰り返しているが、北朝鮮の人権状況に向き合う姿勢は一向に見えない。 文在寅政権は、米朝首脳会談のお膳立てをする際にも、米国と北朝鮮にそれぞれ聞こえのいいことを伝えた結果、ベトナムでの首脳会談が不調に終わると双方から激しい反発を受けた。文在寅大統領は特にそれ以来、北朝鮮の機嫌を取ることに終始している。 繰り返しになるが、尹錫悦政権は文在寅政権の外交の実態を掌握することが不可欠である(詳細は拙書「さまよえる韓国人」ご参照)。その上で、外交の正常化を図っていかなければならない』、「韓国船籍だったタンカー2隻がこのほど、北朝鮮所有になったことが分かり、国連の対北朝鮮制裁委員会が正式調査に着手」、とんでもないことだ。「尹錫悦政権は文在寅政権の外交の実態を掌握することが不可欠である」、「その上で、外交の正常化を図っていかなければならない」、その通りだ。

次に、4月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「文在寅政権が報復つぶし?「検察捜査権を剥奪」強行の暴挙、元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/301843
・『検察捜査権剥奪法案の公布を目指す党議決定  共に民主党(以下「民主党」)は12日、議員総会を開き、検察の捜査権を完全に剥奪する法案を今月中に国会で可決し、来月3日の文在寅政権最後の閣議で公布することを目指すと党議決定した。同党所属議員全員172人の共同提案で国会に法案を提出した。 これは尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期政権となり、新大統領が同法に拒否権を発動できないようにするためである。民主党は何が何でも同法の成立を強行するという意思を明らかにしたものといえる。 同法は、「腐敗」「経済」「公職者」「選挙」「防衛事業」「大惨事災害」の6分野についての捜査権限を検察から剥奪するものである。 民主党の討議決定の翌日、尹錫悦次期大統領は側近の韓東勲(ハン・ドンフン)氏を法相に指名した。同法を巡っては、民主党と検察が全面対決していたが、これに尹次期政権が加わってきたということである。 文在寅政権は、立法・行政・司法の権限を独占し、マスコミをコントロールし、独裁政権を作り上げてきたが、その過程でさまざまな不正があった。それを覆い隠そうとするのが、検察から捜査権限を完全剥奪することの狙いである』、「文在寅政権は、立法・行政・司法の権限を独占し、マスコミをコントロールし、独裁政権を作り上げてきたが、その過程でさまざまな不正があった。それを覆い隠そうとするのが、検察から捜査権限を完全剥奪することの狙い」、党利党略でここまでするのかと驚かされた。
・『民主党の暴挙に対し検察は組織を上げて反対  大検察庁(最高検)は8日、金浯洙(キム・オス)検事総長主催の全国高等検察庁会議を開催。民主党が検察捜査権の完全はく奪を目指していることについて、「政治的な次元で性急に推進されていることを深刻に懸念している」「国民が悔しい思いをすることや人権侵害を防止するために、最低限の安全装置はいかなる場合でも維持すべきだ」としつつ、「政界が進めている検察捜査機能の全面廃止法案に反対する」との検察の立場を表明した。 さらに検察は全国各地の地検でも会議を開催し、いずれの会議も反対の立場を明確にした。 また、政権による不正を捜査する時には中核的な役割を果たすソウル中央地検は、部長検事全員が法案に反対するとの意見書を李正洙(イ・ジョンス)ソウル中央地検長に提出した。検察の中からは「金浯洙検事総長は自らの職を賭して法案を阻止すべきだ」との声が上がり、それまでの弱腰姿勢には辞任論も出た。 こうした中、検察は11日に全国検事長会議を開催した。その席上、金浯洙検事総長は「職に恋々としない」「検察の捜査機能が廃止されるならば、検事総長の私としてはこれ以上職務を遂行するいかなる意味もない。どんな責任を取ることも辞さない」と述べた。金浯洙検事総長は17日、民主党の暴挙に抗議し辞表を提出した。 全国の地検長18人は会議後、声明文を発表し、「国会に仮称『刑事司法制度改善特別委員会』を設置し、各界の専門家と国民の意見を十分に集約した上で、合理的な改善策を取りまとめることを訴える」との立場を表明した』、「検察は組織を上げて反対」、当然だろう。
・『民主党の検察改革に対し味方からも懸念の声  全国地検長会議の席上、「昨年1月の検察・警察の捜査権調整以降、事件の処理が遅れ、国民が大きな不便を感じている」との指摘があった。民主党による検察の捜査権への介入が韓国の司法制度の障害となっているということである。 それでも民主党は翌12日、検察捜査権の完全剥奪法案を4月中に国会で可決させることを党議決定した。しかし、民主党は法案が国会で成立後、施行まで3カ月の期間があることを理由に、捜査権限をどの機関に移管するかは決めなかった。民主党は捜査権を警察、もしくは新設を目指した重大犯罪捜査庁のどちらに移管するのが有利かてんびんにかけているようである。 このように肝心な問題について態度を保留していることを見ても、この党議決定が拙速なものであったことは否定できない。 こうした民主党の動きに対しては、文在寅政権の「友軍」であるはずの「民主社会のための弁護士会」(民弁)が、「いくら正しい方向でも、さまざまな検討や補完が必要だ」と懸念を表明している。 また、民主党以上に左派色の強い革新系野党の正義党も「検察捜査権の完全剥奪を強行できるほどの大義名分や国民の共感は得られているのか」と疑問を呈した。 法務部次官、検事総長として文在寅政権の不正疑惑に「免罪符」を与えようとした金浯洙検事総長までも、先述の通り、検察組織全体の反対で突然態度を変え、「検察の捜査機能を廃止すれば、検事総長として職務を遂行することに何の意味もない」と批判した。 民主党による検察捜査権完全剥奪の動きに対し、国民の支持は感じられない。しかし、それでも民主党は同法案の成立を強行しようとしている。なぜだろうか』、「捜査権を警察、もしくは新設を目指した重大犯罪捜査庁のどちらに移管するのが有利かてんびんにかけているようである。 このように肝心な問題について態度を保留していることを見ても」、やはり「党議決定が拙速なものであった」ようだ。
・『現政権が抱える多数の不正疑惑  朝鮮日報は、民主党が同法案の成立を強行する理由について、「文在寅大統領と李在明(イ・ジェミョン)前京畿道知事の不正に関する捜査を徹底して封じ込める意図があるとしか考えられない」と述べている。 検察は先日、産業通商資源部の局長が韓国電力公社傘下の発電会社4社の社長に辞表提出を強要したという、いわゆる「産業通商資源部ブラックリスト事件」の捜査に着手した。さらに月城(ウォルソン)原発1号機廃炉に関わる経済性評価の捏造や蔚山(ウルサン)市長選挙への介入など、現政権の不正に関する捜査をいつでも始めることができる。しかし、これらの事件の捜査はこれまで、現政権の圧力で中断していた。 李在明前知事については、同氏が関係する大庄洞(テジャンドン)土地開発疑惑や弁護士費用の代納、権純一(クォン・スンイル)元大法官(最高裁判事)との裁判取引疑惑、夫人による京畿道知事時代の法人名義のクレジットカード不正使用、城南(ソンナム)FC後援会の賄賂疑惑に対する捜査が待ち受けている。 民主党の検察に対する介入は、曺国(チョ・グク)元法相の不正に関する捜査が本格化したときから、検察改革という美名の下で捜査チームを解体し捜査権を奪い、検事総長の懲戒という形で本格化した。 現政権にとって、検察は退任後の自らの不正を暴く宿敵であり、何としても検察の捜査権を奪っておかなければ安心できないのだろう』、「現政権にとって、検察は退任後の自らの不正を暴く宿敵であり、何としても検察の捜査権を奪っておかなければ安心できないのだろう」、余りに見え見えの党利党略には驚くほかない。
・『次期法相に40代の韓東勲氏を指名  尹錫悦次期大統領は、民主党が捜査権完全剥奪法案を党議決定した翌日(13日)、次期法相候補に韓東勲司法研修院副院長を指名した。尹氏は自ら記者会見室でこの人事を発表し、「法務行政の現代化、グローバルスタンダードを満たす司法システムを確立するに適任者だ」と語った。 韓東勲氏はまだ40代であり、多くの法曹界の先輩を押しのけての指名に「破格の人事」だという声が上がっている。だが、尹錫悦次期大統領は「韓氏はさまざまな国際業務経験を持っている。絶対に破格の人事ではない」と自らの決定を擁護した。 韓東勲氏は17年、崔順実(チェ・スンシル)氏の国政介入事件で特別検事チームに尹錫悦氏と共に派遣されて以降、尹錫悦氏を補佐してきた。尹錫悦氏が検事総長に就任すると、大検察庁反腐敗・強力部長として「積弊捜査」を統括した。しかし、19年尹錫悦氏が曺国元法相一家に対する捜査を指揮して以降、4回も左遷され、自らも捜査対象とされたことがあった。しかし、最近「嫌疑なし」となった。 韓東勲氏の指名を受け民主党は、「国民に対する人事テロ」だと反発、朴洪根(パク・ホングン)院内総務は「尹氏は公正ではなく、功臣を選んだ。側近を据え、検察の権力を私有化し、強大な権力を持つ検察共和国を作るという露骨な政治報復宣言だ」と指摘した。 朴洪根氏の批判を聞く限り、文在寅政権が市民運動などの「運動圏」出身の左翼系の人々で政権の中枢を固め(韓国では「コード人事」とやゆ)、社会の不公正を一層拡大し、検察改革と称して、自らに都合のいい、新しい検察組織を作ってきたことへの反省はみじんもない。 韓国法曹界も、検察の捜査権限については米国、日本、フランス、ドイツなどで認められた民主主義国家で共通する制度であると認めている。 にもかかわらず、検察の捜査権限を維持することを「強大な権力を持つ検察共和国を作る」と批判する朴洪根の発言は理解し難い。むしろ、自分たちの論理で、自分たちに都合のいい、検察共和国を作ろうとしているのは文在寅政権ではないだろうか。 次期政権で与党となる「国民の力」の権性東(クォン・ソンドン)院内代表は、「法相には刀はなく、検事総長が刀を握っている」としており、韓東勲氏も「具体的な事件について(法相が)捜査指揮権を行使することはない」と政治報復論を否定している。他方、同党内には「民主党が『検察捜査権完全剥奪』を主張している状況で、韓氏を据えて真っ向から対決を宣言したものだ」とする声も出ている』、「次期法相に40代の韓東勲氏を指名」、腕が振るえるのだろうか。
・『文在寅政権の5年間の客観的な検証が必要  中央日報は社説「韓国次期政権、心を開いて広く人材を見たのか疑問」の中で、「尹氏が韓氏を法相候補に指名したのは『検察捜査権完全剥奪』を進める民主党への対応と受け止められている」「尹錫悦次期大統領が正面対決を選択したことで、新政権の発足から与野党の対立は絶えないと予想される。これでは『協治』は難しく、陣営間の対立が激しくなり、結局、国民が不幸になる」と指摘している。 しかし、与野党対決の構図にしているのは民主党の方である。文在寅氏と李在明氏の不正に関する捜査の阻止を目的とする検察捜査権完全剥奪法案を4月の国会で拙速に成立させようということがそもそも対決の発端である。この法案を取りやめるか否かが、与野党対決を防止できるかの分かれ目である。しかも、その意図が文在寅氏とその側近を不正追及から守るという不純なものである。 中央日報は、「文在寅の懺悔(ざんげ)、尹錫悦の寛容」という記事を掲載、「文在寅氏が最後にやるべきことは、在任中の過ちと失敗について国民の前で懺悔すること」であり、一方、尹錫悦氏は「故金大中氏が残した寛容と節制の精神を胸に刻んでほしい」と訴えている。それは政治報復の文化を打破してほしいということであろう。 しかし、文在寅政権が残した、悪弊と経済への損失はあまりにも大きい。それを見逃せば、韓国がこれから直面する困難の責任を、すべて尹錫悦政権が負うことになる。いずれにせよ、文在寅政権と民主党が行ってきた民主主義を無視した暴挙や経済への失政は見逃せないだろう。 次期政権の始動を前に、まずは文在寅政権の5年間を客観的に検証し、その弊害を除去していくことが必要だ。だが、尹錫悦次期大統領は、それが政治報復と疑われないよう自らを律する姿勢を見せることが重要である』、「まずは文在寅政権の5年間を客観的に検証し、その弊害を除去していくことが必要だ。だが、尹錫悦次期大統領は、それが政治報復と疑われないよう自らを律する姿勢を見せることが重要」、その通りだ。

第三に、6月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国経済が深刻な危機!前政権の「負の遺産」問題を元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304421
・『統一地方選挙で勝利した大統領の関心は経済危機へ  中央日報によれば、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は6月3日、「経済危機をはじめとする台風圏にわれわれは入っている」と述べたという。 その際に記者が、1日の統一地方選挙で尹錫悦大統領が率いる保守系与党「国民の力」が勝利したことについて触れ、「(国民の力の)勝利で国政運営能力を確保したという評価が多いが」と質問したところ、「みなさんは今、家の窓、庭の木が揺れていることを感じないだろうか。政党の政治的勝利を口にする状況ではない」と述べ、「選挙の勝利よりも民生経済の危機の克服が重要だ」と力説した。 尹錫悦大統領が「台風圏」と述べた理由の一つが、5月の韓国の消費者物価上昇率が5.4%と、13年9カ月ぶりの高水準になったことである。短期的に物価高・高金利・ウォン安の三つの波に襲われていることが韓国経済の展望を暗くしている。 経済的な困難に見舞われた背景には、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギーや食料価格の高騰、米国をはじめとする先進各国における物価高騰に対応した金利引き上げ、中国のゼロコロナ政策に伴う上海市の封鎖で生じた、原材料や半導体などのサプライチェーンの混乱などがあげられる。 韓国の中央銀行は物価高騰を抑えるため金利を引き上げている。それは経済成長率の低下に跳ね返ってくるだろう。物価を安定させても、成長の原動力を見つけ、経済体質を改善するという課題がある。こうした中、韓国経済はスタグフレーション(不景気下での物価上昇)に入った、入ろうとしているとの指摘がなされている』、「経済危機」は「韓国」のみならず日本も含めた先進国に共通する問題ではあるが、「韓国」固有の問題もありそうだ。
・『新政権への期待は経済の立て直し  韓国の国民が尹錫悦政権に最も望むことは、経済を立て直し、民生を安定化させることである。 文在寅(ムン・ジェイン)政権になってから、国民生活の質は低下した。製造業は韓国での投資に見切りをつけ、良質な雇用は失われている。国民は一生働いても家を持つことが夢となった。こうした経済社会の現状に対する不満が革新政権を終わらせる結果となった。 文在寅政権が行った社会主義国のような改革によって韓国経済の活力は失われ、物価高・高金利・ウォン安という悪循環脱却を著しく困難なものにしている。 尹錫悦政権に与えられた使命は、こうした韓国の経済社会を立て直すことであり、それができなければ、せっかく改善しだした支持率は低下していくであろう』、「文在寅政権が行った社会主義国のような改革によって韓国経済の活力は失われ、物価高・高金利・ウォン安という悪循環脱却を著しく困難なものにしている」、「韓国」固有の深刻な問題だ。
・『文在寅政権下で韓国経済は弱体化  グローバル統計サイト「NUMBEO」によると、韓国の「生活の質」指数は、文在寅政権が発足した2017年には67カ国中22位であった。しかし、21年になると82カ国中42位と中位圏に落ちた。その最大の原因は、ソウル市の不動産価格が2倍となるなど、文在寅政権の不動産政策の失敗である。韓国の21年の特殊出生率は0.81であるが、これは希望のない社会を反映している。 韓国の雇用状況の悪化は著しい。それは青年層ばかりでなく、韓国経済を支える40代の雇用率も最低水準に落ち込んでいる。特に、製造業などの良質な雇用が減少しているのは、「反企業的」な韓国政府の政策が原因だ。その代表例が、最低賃金の合理性のない大幅引き上げである。 30年間ソウルで勤務したあるグローバル金融機関のCEOは、「国際資本が韓国経済に興味を失っている」と話す。韓国経済の根本的問題は主要産業の国際競争力の低下である。 韓国経済のGDP成長率は、新型コロナ前の19年でさえ2%だった。それも大幅な財政支出で実現したものであり、それを除けば実質的には1%台であったといわれる。韓国で成長率1%台というのはアジア通貨危機やリーマンショックなど世界経済が困難な時にあったくらいである。19年の世界経済は好調であり、韓国だけがとり残されていた。 家計所得についても、格差が拡大し、低所得者の困難は増大しており、2020年の所得上位20%と下位20%の所得格差は5.26倍に達した。これは過去2番目に高い数字である。 急激な最低賃金の引き上げと週52時間制など無理な所得主導成長のせいで失業が増大し、雇用も非正規雇用、短時間雇用が増えているからである。 こうして韓国の国民生活が困難を極める中、物価高・金利高・ウォン安が襲ってきたのである』、確かに無理な経済政策の歪が蓄積して事態を複雑化させているようだ。
・『韓国が直面している長期低成長の危機  韓国経済にはインフレ、世界的な景気低迷、貿易収支悪化などの「警告灯」がともっている。 ロシアのウクライナ侵攻によって国際的な原油価格、食料価格が急騰している。これに加え、米国におけるインフレ加速を抑制するため、金利が急上昇している。さらに、上海封鎖などにより、中国経済が低迷している。これらの要因は海外発であり、韓国としての対応に限界がある。 韓国でも世界経済の不安でウォン安が進み、輸入物価が上昇、インフレを加速させている。 前述の通り、5月の消費者物価上昇率は5.4%であり、これはグローバル金融危機だった2008年8月(5.6%)以来の高水準である。何より軽油・ガソリンなどの石油類が34.8%と大幅上昇、生産・物流コストの上昇につながり韓国経済全般を冷え込ませている。4月の産業活動動向で全生産が-0.7%、小売り販売が-0.2%、企業の設備投資が-7.5%と、2カ月連続でトリプル減となった。 物価高は今後も続く見通しであり、6~7月には6%台に上昇するとの見通しもある。 貿易収支は、3月は1億1518万ドル(約150億円)の赤字だった。4月は1~20日までで51億9900万ドル(約6800億円)の赤字である。 主な大企業の最高責任者(CEO)は最悪の状況を前提にしたシミュレーションを作成し対応策づくりをしている。 韓国経済は中長期的には潜在成長率の基調的下落が懸念される。韓国は高齢化に直面しており、韓国経済を成長軌道に戻す原動力が見当たらない。韓国銀行の李昌ヨン(イ・チャンヨン)総裁は「長期低成長」を懸念している。 物価上昇を抑えるため、韓国銀行は政策金利を果敢に引き上げている。コロナ拡大以降、低金利政策を取ってきたため、借金をしてまで投資を行うことがブームとなり、家計債務が1900兆ウォン(約200兆円)に膨らんだ。政策金利の引き上げで貸出金利が上昇すれば、金利負担が増え、個人消費が落ち込むと同時に、債務不履行が増えるリスクがある。 尹錫悦政権は、大統領当選後に急上昇した物価高に起因する経済危機に取り組まなければならない。ただ、前述の通り、物価高・高金利・ウォン安をもたらす海外要因を韓国政府主導で抑え込むことはできず、難しい対応を求められる』、「韓国銀行の李昌ヨン・・・総裁は「長期低成長」を懸念」、確かに厳しい環境だ。
・『文在寅政権時代の悪弊を修正することが第一歩  文在寅政権時に積み上がった韓国経済の「負の遺産」が、韓国経済の物価高対応を一層困難なものにしている。それは文在寅政権が、民主労総(全国民主労働組合総連盟)という過激な労働組合の主張を大幅に取り入れた結果であり、社会主義的な論理で経済をゆがめた結果でもある。 その代表的なものが労働生産性の向上を伴わない一方的な最低賃金の大幅な引き上げと労働時間の制限、労働災害に当たり経営者に懲役刑を含む責任を負わせる法律の制定などである。 韓国経済を復活させ、国民に希望を与えるためには、こうした制度を抜本的に改革する必要がある。それは、韓国経済のあり方そのものに対する保革の論理の対立であり、文在寅政権に近かった過激な労働組合との闘争を意味するだろう。 尹錫悦政権がこれから行う経済政策は、文在寅政権および「共に民主党」(以下、民主党)の経済政策と正面から対立することになる。尹錫悦政権として経済改革は2年後の総選挙まで待つことはできない以上、和戦両様の構えで民主党に臨もうとしているのではないか。 いずれにせよ、民主党が韓国経済社会の国益と未来を考えて尹錫悦政権と建設的な話し合いができるかどうかが、韓国経済復活の分岐点になる』、「尹錫悦政権として経済改革は2年後の総選挙まで待つことはできない以上、和戦両様の構えで民主党に臨もうとしているのではないか」、乗り切るには相当の覚悟が必要なようだ。
・『文在寅前大統領と周辺への捜査は民主党の現政権への対応次第  文在寅前大統領は退任直前に非民主的手法で、検察から捜査権のほとんどを剥奪する検察捜査権完全剥奪法(検捜完剥法)を成立させた。それは、文在寅前大統領と李在明(イ・ジェミョン)前京畿(キョンギ)道知事を捜査から守るためといわれる。 同法は4カ月の猶予期間を経て、9月から施行される。検察に捜査権限のあった「6大犯罪」のうち、公職者、選挙、防衛産業、大規模な事故の四つは9月以降、警察だけが捜査を行えるようになる。また、1年6カ月後に重大犯罪捜査庁が発足すれば、検察に残された汚職、経済犯罪の捜査権も剥奪される。 文在寅前大統領は検察の捜査権を剥奪すれば安泰と考えていたのかもしれない。しかし、いずれかの機関で必ず捜査は行われる。 捜査権の多くは警察に移管される。文在寅前大統領側は、検察は敵、警察は味方と考えてきた。しかし、警察の人事を握るのは尹錫悦政権だ。尹錫悦政権は2日、警察庁長官に次ぐ7人の幹部のうち任期が特定されている1人を除く6人を交代させた。警察庁長官は7月で任期が終わるため、新たに任命された6人の中から後任の警察庁長官が選抜されるのであろう。これによって警察は文在寅色を一掃することになり、文在寅前大統領とその周辺の捜査も行いやすくなる。 また、検察は、9月までの残りの期間、文在寅政権に絡む不正の追及に本腰を入れ急いでいる。 まず、白雲揆(ペク・ウンギュ)元産業資源相の事務所を押収捜査した。狙いは経済性評価の捏造による月城(ウォルソン)原発の早期稼働停止疑惑だろう。この疑惑は文在寅政権幹部を捜査俎上に載せる可能性があり、文在寅政権と近かったハンギョレ新聞は「文在寅政権に対する捜査のシグナルか」と危機感を募らせている。) 検察はまた、李在明前京畿道知事のキム・ヘギョン夫人の公務用クレジットカードの私的使用で家宅捜索した。李在明氏は国会議員に当選したため、身柄拘束は困難であるが、まずは夫人に捜査のメスを入れたということであろう。 文在寅前大統領は政権から離れた今、検察の捜査権を剥奪する小手先の手法で自己防衛を図ることはできないことを思い知らされたことだろう。さらに今後、検捜完剥法を違憲で提訴する、もしくは国民投票にかけるということも検討されているかもしれない。 いずれにせよ、文在寅前大統領とその周辺が身を守るための最善の方法は、尹錫悦政権と国益を目指して協力することである。文在寅前大統領と民主党が現政権に協力すれば、尹錫悦政権も文在寅前大統領をたたく必要はない。半面、尹錫悦大統領との対決をあおるようなことがあれば、攻撃の矛先が文在寅前大統領に向かうこともあるだろう。 尹錫悦大統領にとっても経済危機に対応するためには民主党の協力を求めたいところだ。 政権基盤の強くない尹錫悦大統領としては、民主党との対立は避けたいところだ。民主党が協力姿勢を示せば、文在寅前大統領とその周辺に対する捜査を行って対立を深めることは望まないはずであり、尹錫悦大統領と文在寅前大統領の双方にとってメリットがあるのではないだろうか』、「尹錫悦大統領としては、民主党との対立は避けたいところだ。民主党が協力姿勢を示せば、文在寅前大統領とその周辺に対する捜査を行って対立を深めることは望まないはずであり、尹錫悦大統領と文在寅前大統領の双方にとってメリットがあるのではないだろうか」、そう予定調和的に上手くいってくれるのだろうか。
タグ:(その1)(元駐韓大使が解説3題:韓国・次期政権が暴くべき文大統領の「ウソと秘め事」、韓国経済が深刻な危機!前政権の「負の遺産」問題、文在寅政権が報復つぶし?「検察捜査権を剥奪」強行の暴挙) 武藤正敏氏による「韓国・次期政権が暴くべき文大統領の「ウソと秘め事」、元駐韓大使が解説」 ダイヤモンド・オンライン 韓国(尹錫悦大統領) 「文在寅政権」の「中国」外交がこれほど事実を隠蔽していたとは驚きだ。 「文在寅政権は、自分たちに不都合なことは外交に限らず、国内政治でも隠し続けてきた。しかし、外交ではこれは通用しない。韓国にとって極めて不適切な合意でも、合意は合意である。尹錫悦政権はその真実を知り、それでも合意を破棄すべき時は、中国との大きな摩擦を覚悟すべきである」、前政権の失政のツケを払わされるとは「尹錫悦政権」も大変だ。 「韓国も自国の利益を優先して考えるべき時に来ている」、その通りだ。 「そもそも、文在寅政権が中国に対し、北朝鮮への有効な抑止を求めることなく、「三不」を表明したことは極めて不適切であった。その表明に至る交渉の実態について、尹錫悦政権は知る必要があり、それを踏まえて中国と話し合っていくべき」、その通りだ。 「韓国船籍だったタンカー2隻がこのほど、北朝鮮所有になったことが分かり、国連の対北朝鮮制裁委員会が正式調査に着手」、とんでもないことだ。「尹錫悦政権は文在寅政権の外交の実態を掌握することが不可欠である」、「その上で、外交の正常化を図っていかなければならない」、その通りだ。 武藤正敏氏による「文在寅政権が報復つぶし?「検察捜査権を剥奪」強行の暴挙、元駐韓大使が解説」 「文在寅政権は、立法・行政・司法の権限を独占し、マスコミをコントロールし、独裁政権を作り上げてきたが、その過程でさまざまな不正があった。それを覆い隠そうとするのが、検察から捜査権限を完全剥奪することの狙い」、党利党略でここまでするのかと驚かされた。 「検察は組織を上げて反対」、当然だろう。 「捜査権を警察、もしくは新設を目指した重大犯罪捜査庁のどちらに移管するのが有利かてんびんにかけているようである。 このように肝心な問題について態度を保留していることを見ても」、やはり「党議決定が拙速なものであった」ようだ。 「現政権にとって、検察は退任後の自らの不正を暴く宿敵であり、何としても検察の捜査権を奪っておかなければ安心できないのだろう」、余りに見え見えの党利党略には驚くほかない。 「次期法相に40代の韓東勲氏を指名」、腕が振るえるのだろうか。 「まずは文在寅政権の5年間を客観的に検証し、その弊害を除去していくことが必要だ。だが、尹錫悦次期大統領は、それが政治報復と疑われないよう自らを律する姿勢を見せることが重要」、その通りだ。 武藤正敏氏による「韓国経済が深刻な危機!前政権の「負の遺産」問題を元駐韓大使が解説」 「経済危機」は「韓国」のみならず日本も含めた先進国に共通する問題ではあるが、「韓国」固有の問題もありそうだ。 「文在寅政権が行った社会主義国のような改革によって韓国経済の活力は失われ、物価高・高金利・ウォン安という悪循環脱却を著しく困難なものにしている」、「韓国」固有の深刻な問題だ。 確かに無理な経済政策の歪が蓄積して事態を複雑化させているようだ。 「韓国銀行の李昌ヨン・・・総裁は「長期低成長」を懸念」、確かに厳しい環境だ。 「尹錫悦政権として経済改革は2年後の総選挙まで待つことはできない以上、和戦両様の構えで民主党に臨もうとしているのではないか」、乗り切るには相当の覚悟が必要なようだ。 「尹錫悦大統領としては、民主党との対立は避けたいところだ。民主党が協力姿勢を示せば、文在寅前大統領とその周辺に対する捜査を行って対立を深めることは望まないはずであり、尹錫悦大統領と文在寅前大統領の双方にとってメリットがあるのではないだろうか」、そう予定調和的に上手くいってくれるのだろうか。
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台湾(その4)(台湾が韓国をGDPで間もなく逆転!なぜ「永遠のライバル」に勝てるのか、台湾めぐる「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」 実際にリスクを高めるのは?、中国軍は最初に日本の米軍基地を爆撃する…米メディアが報じた「中国の台湾侵攻」の悲劇的なシナリオ 台湾海軍の元トップ「われわれに勝機はまったくない」) [世界情勢]

台湾については、昨年11月27日に取上げた。今日は、(その4)(台湾が韓国をGDPで間もなく逆転!なぜ「永遠のライバル」に勝てるのか、台湾めぐる「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」 実際にリスクを高めるのは?、中国軍は最初に日本の米軍基地を爆撃する…米メディアが報じた「中国の台湾侵攻」の悲劇的なシナリオ 台湾海軍の元トップ「われわれに勝機はまったくない」)である。

先ずは、本年3月24日付けダイヤモンド・オンラインが転載した財訊「台湾が韓国をGDPで間もなく逆転!なぜ「永遠のライバル」に勝てるのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/299334
・『台湾と韓国の間には共通点が多い。かつて「アジア四小龍」にそれぞれ数えられ、いずれも電子産業を柱とする。似ているが故にお互いライバルと意識してきた両国だ。経済という点では長く韓国が優勢だったが、ここにきて台湾が逆転しそうだという。『半導体・電池・EV 台湾が最強の理由』(全6回)の#4では、台湾人が快哉を叫ぶ「逆転レース」について伝える。(台湾「財訊」孫蓉萍、翻訳・再編集/ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ』、興味深そうだ。
・『1人当たりGDPで韓国を上回る日が近い  台湾の1人当たりGDP(国内総生産、名目)は2003年に韓国に逆転されて以来、追い付くことができない状態が長く続いてきた。その状況がここにきて、大きく変化している。国際通貨基金(IMF)の推計によると、台湾の1人当たりGDPは3年後の25年に4万2801ドルに達し、韓国の4万2719ドルを小幅で上回る見通しだ。 このIMFの推計は非常に保守的な数値である。台湾の経済部(日本の経済産業省に相当)所管のシンクタンク、中華経済研究院は、台湾が21年にすでに僅差で韓国を上回っているという試算を出している。その差は数百ドルにすぎないが、台湾人にとっては奮い立たせられる数字だ。 21年は株式市場においても、台湾の上場企業の時価総額が年初から23.7%伸びたのに対し、韓国は3.6%の小幅成長にとどまっている。台湾と韓国の競争におけるスター選手というべき企業の時価総額を比べると、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が5305億ドルであるのに対し、韓国のサムスン電子は3879億ドル(3月22日の終値ベース)となっている。 長期にわたり台韓間には、国際政治における恩讐があったと同時に、産業競争においても度々角突き合わせてきた経緯があった』、「1人当たりGDP」は、「2003年に韓国に逆転されて以来、追い付くことができない状態が長く続いてきた。その状況がここにきて、大きく変化」、かつては「台湾」の方が上で、それを取り戻しつつあるようだ。
・『韓国は対中輸出が大幅減速 台湾は米中対立が追い風に 経済の活力を奪い合う台湾vs韓国  両国がアジア四小龍と呼ばれた時代、台湾は経済と貿易の自由化を進め、国営事業を民営化し、電子産業を発展させることに全力を挙げた。中小企業が急速に成長した時期でもある。韓国はこの時期、鉄鋼や自動車といった重工業を重視し、財閥を支援した。しかし1997年のアジア通貨危機により、過剰債務を抱えていた財閥は大きな痛手を被り、韓国経済は失速した。 ところが2000年代になると、台湾では90年ごろから起きていた中小企業の中国への流出で産業の空洞化が進んだ一方、韓国では金融経済システムの国際化が進み、財閥企業による規模のメリットを生かした経営が成功した。 そして現在の状況は、台韓経済の3回戦目に突入したといえるわけだ。ここで台湾が逆転しようとしている背景にあるのは、韓国経済が壁に突き当たっていることだ。 中華経済研究院の王健副院長は、「韓国経済を支える財閥企業はスケールメリットという点で秀でているが、景気悪化の局面では対応に遅れる面がある」と指摘している。 また経営規模の大きさという点では、韓国の財閥よりも中国企業の方が大きい。そのため、中国企業によって韓国の財閥から市場が奪われ、技術力の面でも逆転されるという現象が起きている。韓国経済は対中輸出に依存して成長を遂げてきたが、もはや対中輸出の大きな伸びは望めなくなっている。 韓国経済が壁に突き当たっているのとは対照的に、台湾は米中対立を受けた世界的なサプライチェーンの見直しを経済成長の追い風としている。蔡英文総統が17年に産業革新を推進する政策を導入したことも相まって、台湾企業が中国から回帰しているだけでなく、米グーグルや米マイクロソフトといったグローバル企業も台湾に投資するようになっている。 新型コロナウイルスの感染拡大があっても、台湾では都市封鎖が行われず、企業活動が継続でき、輸出の伸びは韓国よりも高かった。この間、台湾ドルの上昇が進んでおり、本来なら輸出には不利な為替環境だ。しかし台湾ドル高のマイナス要素に企業の競争力が勝っており、通貨高は1人当たりGDPを膨らませる結果となっている。 台湾経済は目下繁栄の局面にあるが、王副院長は「台湾が有利なうちに、産業の転換を図り、医療や宇宙産業のような次世代の重要産業を育成しなければならない。またさまざまな金融的手段で企業が資金調達し、十分な研究開発資金を獲得することを妨げてはいけない」と指摘する。 韓国では大手100社の研究開発費がコロナ禍のさなかの20年に前年比3.3%伸びている。その投資分野は半導体やITだけでなく、次世代自動車や水素エネルギー、航空宇宙産業など幅広い。財閥企業はこの転換期に巨額の投資を断行しており、台湾に多い中小企業を圧倒する資本力を見せつけている。 韓国の次期大統領である尹錫悦(ユン・ソンヨル)氏は親米派のため、これまで米国の支援を得てきた台湾のアジアにおける立ち位置が変わる可能性もある。 台湾と韓国の競争はこれからもまだ続く。これまでの歴史を振り返り、世界経済の変化を理解することで、台湾経済の進むべき道はおのずと見えてくる』、「中国企業によって韓国の財閥から市場が奪われ、技術力の面でも逆転されるという現象が起きている。韓国経済は対中輸出に依存して成長を遂げてきたが、もはや対中輸出の大きな伸びは望めなくなっている。 韓国経済が壁に突き当たっているのとは対照的に、台湾は米中対立を受けた世界的なサプライチェーンの見直しを経済成長の追い風としている。蔡英文総統が17年に産業革新を推進する政策を導入したことも相まって、台湾企業が中国から回帰しているだけでなく、米グーグルや米マイクロソフトといったグローバル企業も台湾に投資するようになっている」、韓国と台湾の好対照が明確になったようだ。

次に、5月24日付けNewsweek日本版が掲載した在英ジャーナリストの木村正人氏による「台湾めぐる「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」、実際にリスクを高めるのは?」を紹介しよう。
・『<バイデン米大統領は日本で、「台湾を守るため軍事的に関与する気はあるのか」という質問に「そうだ」と明確に回答。この発言の意図とは?> 来日中のジョー・バイデン米大統領と岸田文雄首相は23日、東京・元赤坂の迎賓館で会談した。中国の軍事力が急拡大する中、共同記者会見で「あなたはウクライナ紛争に軍事的に関与したくなかった。もし同じ状況になったら、台湾を守るために軍事的に関与する気はあるのか」と記者に問われたバイデン氏は「そうだ」と明確に答えた。 「それがわれわれの約束だ。われわれは『一つの中国』政策に合意している。しかし軍事力で(台湾を)奪うことを許すわけにはいかない。それを容認すれば(東アジア)地域を混乱させることになる。ウクライナと同じような事態を誘発しかねない。アメリカの責任はさらに重くなった」とバイデン氏は説明した。 米ホワイトハウスは即座に「われわれの政策は変わっていない」とバイデン発言のトーンを弱めた。例によってバイデン氏のアドリブ発言か否か、意図は何か、真相は藪の中だ。 ロシアとの核戦争にエスカレートするのを避けるため「米軍をウクライナに派兵するつもりは全くない」と早々と宣言したバイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好となった。台湾問題でも直接の軍事介入を頭から否定すれば、同じ間違いを繰り返す。バイデン氏は少なくとも口先では「戦略的曖昧さ」から「戦略的明確さ」に舵を切った。 一方、岸田氏は「中国人民解放軍海軍の活動や、中露の合同軍事演習を注視している。東シナ海や南シナ海での武力行使による現状変更には断固として反対する」と表明した。しかし日米両国の台湾問題に対する基本的な立場は変わらず、「台湾海峡の平和と安定は国際社会の安全保障と繁栄に欠かせない要素だ」とこれまでの方針を繰り返すにとどめた』、「ロシアとの核戦争にエスカレートするのを避けるため「米軍をウクライナに派兵するつもりは全くない」と早々と宣言したバイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好となった。台湾問題でも直接の軍事介入を頭から否定すれば、同じ間違いを繰り返す。バイデン氏は少なくとも口先では「戦略的曖昧さ」から「戦略的明確さ」に舵を切った」、「バイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好」、台湾では同じ過ちを回避したとはいえ、外交上の汚点だ。
・『昨年10月にもバイデン氏は「台湾防衛」発言  バイデン氏は昨年10月、米ボルチモアでのタウンホールイベントでも、中国から攻撃された場合、アメリカは台湾を防衛するのかと問われ、「イエス。われわれはその約束をしている」と発言した。中国は台湾を祖国にとって欠かすことのできない一部とみなしており、そこにアメリカが安全保障を拡大することは不必要な挑発と訝る声もあった。 英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマイケル・クラーク前所長は当時、「台湾の将来を決めるのは台湾の人々だけだという理由でアメリカが台湾の防衛に尽力していると明確に表明することは道徳的に正しいことだが、中国に対するアメリカの抑止力の信頼性を高めることにはならない」という道徳的な正義とリアルポリティクスのジレンマに言及している。 1979年に米中関係が正常化された際、台湾に対するアメリカの立場は台湾関係法で定められた。台湾に防衛的武器を提供するとともに、台湾の人々の安全、社会・経済システムを危うくするような力に対抗するアメリカの能力を維持することが約束された。しかし「中国が侵攻してきた場合、台湾を防衛する約束をしていないのは明らかだ」(クラーク氏)。 歴代の米大統領がこの「戦略的曖昧さ」を伝統的に維持してきたのは、台湾問題を巡りアメリカが中国との戦争に巻き込まれるリスクを回避したいからだ。2001年にジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)は台湾への50億ドル武器売却を承認し、台湾防衛のため「必要なことは何でもする」と発言したが、その後、中国との関係を強化するため、この立場を和らげている』、「歴代の米大統領がこの「戦略的曖昧さ」を伝統的に維持してきたのは、台湾問題を巡りアメリカが中国との戦争に巻き込まれるリスクを回避したいから」、なるほど。
・『「戦略的曖昧さ」は中国の拡張主義を助長するだけ?  経済的な米中逆転が目前に迫る中、「戦略的曖昧さ」は中国の拡張主義を促すだけだという反省が米国内でも強まってきた。ドナルド・トランプ米大統領時代、台湾との防衛・安全保障協力を強化する国防権限法が可決されるなど、アメリカは台湾への支援を強化している。しかしアメリカの安全保障パートナー国の立場は微妙だ。 台湾問題を巡って米中が敵対し、アメリカか中国かの二者択一を迫られるのを避けるため「戦略的曖昧さ」を望む東アジアの国々も少なくない。昨年3月、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官(当時)は少なくとも27年までに台湾への脅威が顕在化すると証言している。 中国は今のところ24年の台湾総統選を注視している。アメリカが台湾防衛という「戦略的明確さ」をとれば、台湾独立派が勢いづき、中台関係の緊張が一段と増すかもしれない。 ウクライナの場合、「戦略的曖昧さ」というより、核戦争を回避するため直接軍事介入はしないという「戦略的明確さ」が侵攻を思いとどまらせるという抑止力を帳消しにしたとの見方もある。しかしロシア軍のウクライナ侵攻は、ポスト冷戦の国防・安全保障環境を一変させた。これまでの常識が通用しなくなったのだ。 道徳的な正義に重きを置くバイデン氏はウラジーミル・プーチン露大統領を「人殺しの独裁者」「悪党」「戦争犯罪人」「虐殺者」と呼んできた。バイデン氏は3月のワルシャワ演説で「責められるべきはプーチン氏だ」「この男は権力の座にとどまらせてはいけない」と体制転換を目指すとみなすことができる発言をした。 体制転換にゴールを引き上げると戦争の終わりが見えなくなる。このためホワイトハウスは火消しに追われた。しかし今、重要なのは「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」のどちらが中国の台湾侵攻というリスクを軽減できるのかを慎重に分析することだ』、「アメリカが台湾防衛という「戦略的明確さ」をとれば、台湾独立派が勢いづき、中台関係の緊張が一段と増すかもしれない」、「台湾独立派」の存在が事態をややこしくしているようだ。
・『台湾有事は日本有事  5月5日、英首相官邸で行われた日英首脳会談で、岸田氏とボリス・ジョンソン英首相は昨年10月に交渉を始めた日英円滑化協定が大枠合意に至ったことを歓迎し、この協定が自衛隊と英軍の共同運用・演習の円滑化を通じ日英安全保障・防衛協力をさらに深化させ、日英両国が世界の平和と安定に一層寄与することを確認している。 英政府は「共同作業・演習・運用を可能にする」協定と位置付け、「イギリスは欧州で初めて日本とこのような協定を結ぶ国となる。インド太平洋地域へのコミットメントを強化し、世界の平和と安全の守りをさらに強化する。訓練、共同演習、災害救援活動を実施するためにともに派遣される」と表明した。 これについて、英首相報道官は「日英両国が原則合意した円滑化協定はこれまでわれわれが一緒にやっていて、これからも継続していきたいすべての活動を反映している。日本の自衛隊と英軍の共同訓練や共同運用を可能にすることや、来るべき数年の間に著しく重要になるインド太平洋地域で拡大していくイギリスの活動も含まれている」と説明した。 「現在、原則合意の段階だ。円滑化協定が最終的に決定された時点で、もっと多くのことが語られるだろう」。台湾有事の際にどう機能するのかという質問には「どんな仮想的な状況が含まれるかについてはコメントしたくないが、自衛隊と英軍の部隊が一緒に作戦行動することは含まれている」とだけ語った。 台湾有事になると、アメリカの反撃を止めるため、沖縄本島から西は中国の軍事影響下に入る。すなわち台湾有事は日本有事なのだ。「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」のいずれをとるにせよ、台湾有事のリスクがゼロになるわけではない。バイデン発言の真意がどこにあるのかはともかく、日本はすでに台湾有事を日本有事として備えているのだろうか』、「日本は」「台湾有事を日本有事として備え」るべきだろう。

第三に、6月22日付けPRESIDENT Onlineが掲載したフリーライター・翻訳者の青葉 やまと氏による「中国軍は最初に日本の米軍基地を爆撃する…米メディアが報じた「中国の台湾侵攻」の悲劇的なシナリオ 台湾海軍の元トップ「われわれに勝機はまったくない」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/58819
・『米メディアが報じた「台湾有事」の悲劇的シナリオ  中国による台湾侵攻の懸念が高まるなか、悲観的なシナリオがアメリカで報じられている。中国が侵攻に踏み切った場合、日米およびその他のアメリカの同盟国が制止に動いたとしても、制止は不可能だという分析だ。さらに、中国は開戦直後、真っ先に在日米軍基地などを叩くとする予測も出ている。米CNNが、米シンクタンクおよび複数のアナリストによる見解をもとに報じた。 台湾侵攻の現実味は、直近でも改めて浮き彫りになっている。アメリカのバイデン大統領は5月23日の訪日中、台湾有事の際にはアメリカによる軍事介入を実行する意思があると明言した。米ワシントン・ポスト紙は、「(バイデン氏が)台湾へのあらゆる攻撃のおそれに対し、鋭い警告を発した」と報じている。 バイデン氏によるこうした警告は就任以来、今回で3度目となる。米中間の緊張の高まりを懸念するホワイトハウスは今回も含め、都度打ち消しの声明を発表してきた。CNNはこのような経緯を説明したうえで、「しかしながら、必然的にこの疑問が浮かぶ。すなわち、中国が台湾の奪取を試みた場合、アメリカとその同盟国たちは制止する能力をもつのだろうか?」と述べ、実際に侵攻が起きた際に阻止は可能なのかと問題提起している。 同記事はアナリストによる分析をもとに、次のように続けた。「そして、驚くべき答えがこちらだ。おそらく、(アメリカと同盟国による制止は)不可能である」』、「CNN」は「アナリストによる分析をもとに・・・驚くべき答えが・・・(アメリカと同盟国による制止は)不可能である」、悲観的な見方だ。
・『米軍を苦しめる「距離の呪縛」  専門家らが懸念しているのは、現実的にアメリカが台湾へどれだけの武力を動員できるかという点だ。CNNは、「中国が保有する兵士・ミサイル・船舶の数は、台湾、あるいはアメリカや日本といった支援国となり得る国が(戦場に)持ち込むことができるこれらの数を上回る」と指摘する。 アメリカおよび同盟国の軍事力を単純に合計すれば、中国の武力に対抗することは難しくない。しかし、中国に近い台湾が戦場となったならば、いかに多くを現地に配備できるかという視点において、中国に一方的に分ぶがあると専門家らはみている。このため記事は、「仮に中国がこの島を手に入れようと決意を固めたならば、おそらくそれは可能だ」と論じている。 CNNは、ワシントンD.C.に拠点を置くシンクタンク「新アメリカ安全保障センター」が最近行った台湾有事の戦局シミュレーションを取り上げている。この机上分析は、アメリカ空軍が台湾有事の際の航空戦力として、主に約800キロ離れたフィリピンからの出撃に頼らざるを得ないとの前提に立ったものだ。このような見方をするのは、同シンクタンクにとどまらない。 米空軍本部で戦略・統合・要求担当副参謀長を務めるクリントン・ヒノテ中将はCNNに対し、米軍が「距離の呪縛」に直面することになるだろうと認めている』、「中国に近い台湾が戦場となったならば、いかに多くを現地に配備できるかという視点において、中国に一方的に分ぶがあると専門家らはみている。このため記事は、「仮に中国がこの島を手に入れようと決意を固めたならば、おそらくそれは可能だ」と論じている」、「距離の呪縛」は確かに「米軍を苦しめる」ようだ。
・『台湾海軍の元トップ「われわれに勝機はまったくない」  別の米有力シンクタンクである大西洋評議会も、同様の分析を示している。台湾での軍事衝突は中国にとっての「ホーム戦」、アメリカとその同盟国にとっては「アウェー戦」になるとの指摘だ。 「地理的な形成不利、および長距離の通信体制を埋め合わせるため、多大なリソースが必要となるだろう」と同機構は述べ、アメリカにとって厳しい戦いになるとの見方を示した。 米軍が距離の壁に阻まれれば、当事者国同士の兵力がものをいうことになる。AFP通信は米国防省のデータをもとに、中台間には圧倒的な兵力差が存在すると指摘している。 陸軍兵の数は台湾の9万人弱に対して中国が100万人以上、戦車は800両対6300両、戦闘機は400機対1600機と、4~11倍の開きがある状態だ。台湾海軍の元トップである李喜明元台湾海軍参謀総長はAFP通信に対し、「軍事的な直接対決となれば、われわれに勝機はまったくない」との厳しい認識を示した。 アジア太平洋外交に特化した米シンクタンク「プロジェクト2049研究所」のエリック・リー助手研究員は、米ナショナル・インタレスト誌への寄稿を通じ、台湾側の防衛設計を明かしている。 それによると台湾側は、まずは中国人民解放軍が「壊滅的なミサイル攻撃」を実施し、追って「水陸両面での総力的な侵攻」に出るシナリオを想定している模様だ。台湾側が応戦に使えるミサイルは数日で払底し、中国軍に有利な進軍を許すおそれがある、と氏は指摘している』、「米軍が距離の壁に阻まれれば、当事者国同士の兵力がものをいうことになる。AFP通信は米国防省のデータをもとに、中台間には圧倒的な兵力差が存在すると指摘」、「李喜明元台湾海軍参謀総長はAFP通信に対し、「軍事的な直接対決となれば、われわれに勝機はまったくない」との厳しい認識」、その通りだろう。
・『防衛に有利な台湾の地形  ただし、本格的な侵攻となれば、中国側も相当な犠牲の覚悟を強いられる。武力衝突では一般に、攻撃側が防衛側を落とすためには3倍の能力が必要だとされる。中国側としても余裕の制圧とはならず、相当な犠牲を強いられることになるだろう。このため大西洋評議会は、中国が直ちに武力行使に及ぶことはないと分析している。) これに加え、島国・台湾の急峻きゅうしゅんな地形が天然の要塞ようさいとして機能し、中国軍を大いに疲弊させるだろう。 AFPによると、米シンクタンク研究員のイアン・イーストン氏は台湾沿岸部の地形について、「防衛側にとって夢のよう」な形状だと語っている。台湾には上陸に適した海岸がわずか14カ所しかなく、さらにこうしたポイントの多くが山や崖に囲まれ、あるいは防衛に適した都市インフラに近接しているためだ。 さらにAFPは、米防衛大学のネイバル・ウォー・カレッジによる分析として、大規模な侵攻に適する期間は毎年5~7月と10月の2回しかないと報じている。海峡は最も狭いポイントでも幅130キロほどあり、その特性は半ば外洋にも近い。年2回のモンスーンの時期を含め、季節による荒天の影響を大きく受ける。 また、コンパクトな国土をもつ台湾だが、その地形は湿地帯に山林、そして都市部の人口密集地とさまざまだ。中国軍がこれらの地域で抜かりなく戦闘を展開するためには、複数の地形に対応できるだけの大量の兵器を中国本土から輸送し、さらにそれらを使いこなせる訓練された兵士を輸送することが不可欠だ。弾薬と食糧の供給も問題となるだろう。 戦略国際問題研究所のボニー・リン上級フェローはAFPの取材に対し、「上陸だけが問題ではないのです」「配備され進軍するとなれば、部隊をどうやって維持するのでしょうか。兵站へいたんはどうするのでしょうか」と問題を提起し、台湾攻略の難しさを強調した』、「台湾沿岸部の地形について、「防衛側にとって夢のよう」な形状・・・台湾には上陸に適した海岸がわずか14カ所しかなく、さらにこうしたポイントの多くが山や崖に囲まれ、あるいは防衛に適した都市インフラに近接しているためだ。 さらにAFPは、米防衛大学のネイバル・ウォー・カレッジによる分析として、大規模な侵攻に適する期間は毎年5~7月と10月の2回しかない」、「中国軍がこれらの地域で抜かりなく戦闘を展開するためには、複数の地形に対応できるだけの大量の兵器を中国本土から輸送し、さらにそれらを使いこなせる訓練された兵士を輸送することが不可欠だ。弾薬と食糧の供給も問題となるだろう」、「中国軍」にとっても「攻撃」は簡単ではなさそうだ。
・『ノルマンディー上陸作戦並みの被害予想も  大西洋評議会はこうした事情を念頭に、「単純にいって中国は、上陸による全面的な台湾侵攻を近い未来に決行できるだけの軍事能力と規模をもたない」と分析している。ただし、射程2000キロ以上におよぶDF-21準中距離弾道ミサイルなどを仮に中国が投入したならば、増援到着までの2日間ほど、台湾は厳しい戦いを強いられるだろうとも指摘している。 いずれにせよ、ひとたび台湾攻撃が発生したならば、両軍への多大な犠牲は避けられそうにない。CNNは「多数のアナリストら」による理解として、台湾侵攻は歴史上悪名高いノルマンディー上陸作戦を超え、「非常に危険かつ入り組んだ」武力衝突になるとの見方を伝えている。 第2次大戦中にアメリカ軍など連合国がドイツ占領下のフランス・ノルマンディー海岸への上陸を目指したノルマンディー上陸作戦は、3カ月という長期にわたり展開し、両軍計約50万人の死者・不明者を出した。仮に台湾への上陸作戦が決行されたならば、台湾のみならず中国側の犠牲者も相当な規模に上る公算だ』、「「多数のアナリストら」による理解として、台湾侵攻は歴史上悪名高いノルマンディー上陸作戦を超え、「非常に危険かつ入り組んだ」武力衝突になるとの見方」、厳しい見方だ。
・『米軍が現実視する「中国軍による基地攻撃」のリスク  台湾と中国間で高まる緊張は、日本人にとってもひとごとではない。新アメリカ安全保障センターは、最近実施したシミュレーションにおいて、戦闘のごく初期段階において中国側が、在日米軍基地に直接攻撃を仕掛けると見込んでいる。CNNは、「この模擬戦争は、中国軍がグアムや日本などにある近場の米軍基地を叩くことから作戦を開始する展開をシミュレートした」としている。 在日米軍基地への先制攻撃により、中国は米軍の出撃を遅らせ、台湾攻撃を進める時間を稼ぐことが可能となる。米空軍本部のヒノテ中将はCNNに対し、中国軍が米軍基地に不意打ちを喰くらわせるおそれは十分にあるとの認識を示した。中国が保有する各種弾道ミサイルは、少なくとも純粋な射程という観点では、近隣の米軍基地を攻撃する能力を有する。 米軍はこのリスクを、現実のものと受け止めているようだ。グアムのアンダーセン空軍基地が破壊されるという非常事態に備え、代替基地の建設に動き出した。米ワー・ゾーン誌は6月15日、中国が同空軍基地を「壊滅」させた場合に備え、米軍が大規模なバックアップ施設の建設に着手したと報じている。 建設先はグアム本島から北東に約170キロ離れたテニアン島の国際空港の敷地内だ。同誌によると計画は10年前から存在したが、今年5月になって建設が本格化した。 グアム防衛論は、ここ数カ月で盛んに議論されるようになった。米防衛・安全保障専門誌の『ディフェンス・ワン』は5月、「グアムはミサイル防衛の強化を必要としている……早急に」との記事を掲載した。記事は、米軍がグアムに重要な潜水艦施設および大規模な空軍基地を有することを念頭に、「グアムが中国にとって魅力的なターゲットであることは容易に理解できる」と論じている。 日本の米軍基地をグアムと完全に同列に論じることはできないが、少なくとも米軍は有事のシナリオとして、台湾へ到達可能な周辺地域の基地を中国が破壊する危険性を視野に入れているようだ』、「グアムのアンダーセン空軍基地が破壊されるという非常事態に備え、代替基地の建設に動き出した」、「建設先はグアム本島から北東に約170キロ離れたテニアン島の国際空港の敷地内」、「米軍」がそこまで備え始めたとは、初めて知った。
・『中国共産党紙の編集長は自信「アメリカと台湾を完全に圧倒」  中台間の緊張は高まるばかりだ。米ワシントンD.C.に本部を構える中東報道研究機関は、中国共産党傘下のグローバル・タイムズの胡こ錫進しゃくしん編集長が5月23日、自身のブログにおいて非常に攻撃的な記事を掲載したと報じている。 問題の記事において胡氏は、「台湾の軍事的支援に固執するならばアメリカは、PLA(中国人民解放軍)との直接衝突という紛れもないリスクに直面することになる」と警告を発した。 胡氏はさらに、「さて、今日の人民解放軍はどうだろうか? わが海軍と空軍の総火力は台湾海峡において、アメリカと台湾の海軍・空軍の火力の合計を完全に圧倒することができる」と述べ、中国側の兵力に大きな自信を示している。 このほか中国側は、冒頭に挙げた訪日中のバイデン氏の発言にも激しく反発している。中国のグローバル・タイムズ紙は6月12日、魏ぎ鳳和ほうわ国務委員兼国防相が、これまで中国が米国に示したなかでも「最も強い警告」を発したと報じた。 魏氏はシンガポールで行った演説を通じ、「中国は間違いなく統一を実現する」と強調し、中国から台湾を分割しようとする者があれば中国軍は最後まで戦うとも発言している』、「魏ぎ鳳和ほうわ国務委員兼国防相」の発言はまさに政治的なようだ。
・『ウクライナ侵攻初期と重なる構図 泥沼化に懸念  大国が小国への侵攻に出る構図は、ロシアによるウクライナ侵攻の泥沼を想起させる。ここ数週間の動きではロシアの優勢が目立つものの、ウクライナ側も当初、ぬかるみの多い領土という地の利を得て善戦した。また、ロシア軍内部に貧弱な兵站ルートなど問題が山積したことで、結果として想定外の長期戦に至っている。 この構図は、中国対台湾にも重なる可能性がある。仮に台湾への武力行使に踏み切った場合、島国・台湾固有の地形に中国軍が足をすくわれる可能性は十分にある。ロシアとは異なり、侵略先との間には台湾海峡が横たわることから、補給にもいっそうの苦闘が予想される。国土を堅守したい台湾側は士気の維持の面でも有利であり、兵士数で上回る中国軍といえど、容易に攻略できるとは限らない。 一方で台湾としても、他国による支援という観点では、ウクライナよりも厳しい事態に直面しかねない。多数の北大西洋条約機構(NATO)加盟国と地続きとなっているウクライナは、隣接諸国からの輸送ルートを確保しやすい状況にある。 反面、海に囲まれ中国ミサイルの射程内に浮かぶ台湾においては、NATOの支援が一定の障壁に阻まれるおそれは否定できない。米軍が「距離の呪縛」に苦しみ、中国側も台湾海峡の攻略に手を焼くとなれば、結果的にロシア・ウクライナ間同様の長期戦へのもつれ込みは必至だ。 中国としても、多大な被害を予期しているとみえる。シンガポールでの演説において中国の魏国防相は、「平和的統一は中国人民の最大の願いである」と述べ、必ずしも武力解決にこだわる姿勢がないと言い添えた。「一つの中国」の固持は既定路線とみられるが、硬軟含めどのような策を繰り出すのか、今後の動向が注目される』、「中国としても、多大な被害を予期しているとみえる。シンガポールでの演説において中国の魏国防相は、「平和的統一は中国人民の最大の願いである」と述べ、必ずしも武力解決にこだわる姿勢がないと言い添えた。「一つの中国」の固持は既定路線とみられるが、硬軟含めどのような策を繰り出すのか、今後の動向が注目される」、「必ずしも武力解決にこだわる姿勢がないと言い添えた」、「平和的統一」のような重要なことも、最後に「言い添え」ることで、実際には軽視していることや、軍事色を薄める狙いだろう。やはり、「中国」の姿勢は要注意だ。
タグ:台湾 (その4)(台湾が韓国をGDPで間もなく逆転!なぜ「永遠のライバル」に勝てるのか、台湾めぐる「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」 実際にリスクを高めるのは?、中国軍は最初に日本の米軍基地を爆撃する…米メディアが報じた「中国の台湾侵攻」の悲劇的なシナリオ 台湾海軍の元トップ「われわれに勝機はまったくない」) ダイヤモンド・オンライン 財訊「台湾が韓国をGDPで間もなく逆転!なぜ「永遠のライバル」に勝てるのか」 「1人当たりGDP」は、「2003年に韓国に逆転されて以来、追い付くことができない状態が長く続いてきた。その状況がここにきて、大きく変化」、かつては「台湾」の方が上で、それを取り戻しつつあるようだ。 「中国企業によって韓国の財閥から市場が奪われ、技術力の面でも逆転されるという現象が起きている。韓国経済は対中輸出に依存して成長を遂げてきたが、もはや対中輸出の大きな伸びは望めなくなっている。 韓国経済が壁に突き当たっているのとは対照的に、台湾は米中対立を受けた世界的なサプライチェーンの見直しを経済成長の追い風としている。蔡英文総統が17年に産業革新を推進する政策を導入したことも相まって、台湾企業が中国から回帰しているだけでなく、米グーグルや米マイクロソフトといったグローバル企業も台湾に投資するようになって Newsweek日本版 木村正人氏による「台湾めぐる「戦略的曖昧さ」と「戦略的明確さ」、実際にリスクを高めるのは?」 「ロシアとの核戦争にエスカレートするのを避けるため「米軍をウクライナに派兵するつもりは全くない」と早々と宣言したバイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好となった。台湾問題でも直接の軍事介入を頭から否定すれば、同じ間違いを繰り返す。バイデン氏は少なくとも口先では「戦略的曖昧さ」から「戦略的明確さ」に舵を切った」、「バイデン氏はロシア軍のウクライナ侵攻にお墨付きを与える格好」、台湾では同じ過ちを回避したとはいえ、外交上の汚点だ。 「歴代の米大統領がこの「戦略的曖昧さ」を伝統的に維持してきたのは、台湾問題を巡りアメリカが中国との戦争に巻き込まれるリスクを回避したいから」、なるほど。 「アメリカが台湾防衛という「戦略的明確さ」をとれば、台湾独立派が勢いづき、中台関係の緊張が一段と増すかもしれない」、「台湾独立派」の存在が事態をややこしくしているようだ。 「日本は」「台湾有事を日本有事として備え」るべきだろう。 PRESIDENT ONLINE 青葉 やまと氏による「中国軍は最初に日本の米軍基地を爆撃する…米メディアが報じた「中国の台湾侵攻」の悲劇的なシナリオ 台湾海軍の元トップ「われわれに勝機はまったくない」」 「CNN」は「アナリストによる分析をもとに・・・驚くべき答えが・・・(アメリカと同盟国による制止は)不可能である」、悲観的な見方だ。 「中国に近い台湾が戦場となったならば、いかに多くを現地に配備できるかという視点において、中国に一方的に分ぶがあると専門家らはみている。このため記事は、「仮に中国がこの島を手に入れようと決意を固めたならば、おそらくそれは可能だ」と論じている」、「距離の呪縛」は確かに「米軍を苦しめる」ようだ。 「米軍が距離の壁に阻まれれば、当事者国同士の兵力がものをいうことになる。AFP通信は米国防省のデータをもとに、中台間には圧倒的な兵力差が存在すると指摘」、「李喜明元台湾海軍参謀総長はAFP通信に対し、「軍事的な直接対決となれば、われわれに勝機はまったくない」との厳しい認識」、その通りだろう。 「台湾沿岸部の地形について、「防衛側にとって夢のよう」な形状・・・台湾には上陸に適した海岸がわずか14カ所しかなく、さらにこうしたポイントの多くが山や崖に囲まれ、あるいは防衛に適した都市インフラに近接しているためだ。 さらにAFPは、米防衛大学のネイバル・ウォー・カレッジによる分析として、大規模な侵攻に適する期間は毎年5~7月と10月の2回しかない」、「中国軍がこれらの地域で抜かりなく戦闘を展開するためには、複数の地形に対応できるだけの大量の兵器を中国本土から輸送し、さらにそれらを使いこなせる訓練された兵 「「多数のアナリストら」による理解として、台湾侵攻は歴史上悪名高いノルマンディー上陸作戦を超え、「非常に危険かつ入り組んだ」武力衝突になるとの見方」、厳しい見方だ。 「グアムのアンダーセン空軍基地が破壊されるという非常事態に備え、代替基地の建設に動き出した」、「建設先はグアム本島から北東に約170キロ離れたテニアン島の国際空港の敷地内」、「米軍」がそこまで備え始めたとは、初めて知った。 「魏ぎ鳳和ほうわ国務委員兼国防相」の発言はまさに政治的なようだ。 「中国としても、多大な被害を予期しているとみえる。シンガポールでの演説において中国の魏国防相は、「平和的統一は中国人民の最大の願いである」と述べ、必ずしも武力解決にこだわる姿勢がないと言い添えた。「一つの中国」の固持は既定路線とみられるが、硬軟含めどのような策を繰り出すのか、今後の動向が注目される」、「必ずしも武力解決にこだわる姿勢がないと言い添えた」、「平和的統一」のような重要なことも、最後に「言い添え」ることで、実際には軽視していることや、軍事色を薄める狙いだろう。やはり、「中国」の姿勢は要注意だ。
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