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北朝鮮問題(その23)(ロシアにとって北朝鮮との協力には魅力がない ロシア出身の北朝鮮専門家が語るロ朝関係のリアル、北朝鮮とロシアの関係に中国が激怒していた! ロ朝首脳会談にご立腹、中国人の北朝鮮入国を禁止) [世界情勢]

北朝鮮問題については、2021年10月24日に取上げた。久しぶりの今日は、(その23)(ロシアにとって北朝鮮との協力には魅力がない ロシア出身の北朝鮮専門家が語るロ朝関係のリアル、北朝鮮とロシアの関係に中国が激怒していた! ロ朝首脳会談にご立腹、中国人の北朝鮮入国を禁止)である。

先ずは、本年1月10日付け東洋経済オンライン「ロシアにとって北朝鮮との協力には魅力がない ロシア出身の北朝鮮専門家が語るロ朝関係のリアル」を紹介しよう。
・『2024年新年を迎えたが、朝鮮半島では緊張が続いている。北朝鮮の最高指導者で朝鮮労働党の金正恩総書記は2023年12月30日、韓国との関係を「同族関係」ではなく、敵対的な両国関係、交戦関係であると言及した。さらに2024年1月5日、韓国西部・黄海上の国境となるNLL(北方限界線)に向けて「訓練」と称して砲撃を繰り返している。 北朝鮮は何を考えているのか。ロシア出身で、著名な北朝鮮研究者として知られる韓国・国民大学のアンドレイ・ランコフ教授に、朝鮮半島の現状と今後の見通しについて聞いた(Qは聞き手の質問、Aはランコフ教授の回答)。 Q:金正恩総書記は2023年12月30日、国家的な重要会議の一つである朝鮮労働党中央委員会総会拡大会議で、韓国は「同族関係」ではなく「交戦国」だと言及しました。 A:敵対国と言及したことは重要な動きです。ただ、それより重要なことがあります。金総書記が事実上、数十年間にわたって北朝鮮が実施してきた平和統一路線を失敗として認めたということです。「わが党と共和国(北朝鮮)政府が打ち出した祖国平和統一の思想と路線、方針はどれ一つまともな実を結ばなかった」と述べました』、「金総書記が事実上、数十年間にわたって北朝鮮が実施してきた平和統一路線を失敗として認めた・・・韓国は「同族関係」ではなく「交戦国」だと言及」、扱いが現実を直視したものになったようだ。
・『「ソウル火の海」より過激な姿勢  私の記憶が正しければ、北朝鮮側が「交戦国」との言葉もそうですが、これほど強硬な警告と脅威を与えたことはありません。厳密に言えば、彼らが1990年代初頭から時々繰り返してきた「ソウルを火の海にする」といった脅し文句よりもはるかに強いものです。 一方で、これは金総書記が客観的な現実、あるいは真実を認めたとも言えます。実際に、平和統一という話は当初から現実とは距離のあるプロパガンダに過ぎなかったためです。とはいえ、このようなプロパガンダを突然捨てたことにはいろんな意味があります。 韓国の尹錫悦政権は保守政権として、北朝鮮に強硬な姿勢を見せ続けています。こうした政権に対する不満を示したと言えるでしょう。ただ2024年1月2日に、金総書記の実妹で労働党副部長の金与正氏が発表した談話をみると、韓国が保守政権であれ革新政権であれ、「大韓民国」として自分たちには同じ存在ということを何回も強調しています。 今回北朝鮮が韓国を統一の対象とするよりは、隣に存在する敵対国としてみなすという発言をしたことは、長期的な変化の始まりと言えるでしょう。このように変化させたのは、前述したように、現実を認めたとも言えます。) 同族国ではなく「まったくの外国」として描写することで、北朝鮮国内における韓国の魅力を下げようという考えも垣間見えます。言い換えれば、大韓民国を日本やアメリカのように、多くの外国の中の一国だと国民を誘導すれば、北朝鮮人民が持つ統一への関心がある程度低くなるでしょう。 とはいえ、このような政策が実効性のあるものかどうかはわかりません。なぜなら、旧東ドイツでのドイツ社会主義統一党、これが東ドイツの共産党だったのですが、この政党は旧西ドイツはまったくの外国であり、東ドイツの国民も西ドイツとは違う民族だと主張していました。しかし、こういった主張が東ドイツ人民が西ドイツに対して抱く魅力を壊すまでには至りませんでした。 Q:2024年になり、北朝鮮は黄海上のNLL海域での射撃訓練を実施しました。これは「敵対国」という発言による措置でしょうか。 A:私は、今回の射撃事件は金正恩の「敵対国家宣言」とはこれといった関係がないと考えています。 最近、韓国の保守政権は軍事訓練を熱心に行うだけでなく、この訓練をメディアを通じて国民に積極的にアピールし、国民の関心を惹こうとしています。これに北朝鮮はイラついているのが現状です』、「北朝鮮側が「交戦国」との言葉もそうですが、これほど強硬な警告と脅威を与えたことはありません。厳密に言えば、彼らが1990年代初頭から時々繰り返してきた「ソウルを火の海にする」といった脅し文句よりもはるかに強いものです」、なるほど。
・『北朝鮮が持つ「砲弾」には強い関心  また、北朝鮮は韓国や米韓合同の軍事訓練に対抗して、ミサイルを発射したり軍事演習を行うなど対応してきました。強力な行動には強力な行動で対抗するという北朝鮮の姿勢、いわば小規模な「強対強」戦略です。これは北朝鮮がこれまでやってきたことでもあり、今後も行われるでしょう。 それでも、予測可能な未来においては南北の武力衝突の可能性は高くないと考えます。双方は「強対強」路線を信じていますが、現在の状況において大規模な戦争を行うつもりはありません。 ただ、南北関係は緊張状態にあり、2010年に北朝鮮が行った延坪島(黄海のNLL付近の韓国側の島)砲撃のような小規模な武力挑発を行うことはありえるでしょう。 Q:現在進行中のウクライナ戦争に関連して、北朝鮮はロシアとの関係を深めていると指摘されています。武器などをロシアに輸出し、戦争に加担しているのではないかと疑われています。 A:ウクライナ戦争でロシアは砲弾が枯渇しています。そのため、北朝鮮が保有する砲弾の在庫に対する関心は高い。実際に、ロシアは北朝鮮から数十万発の砲弾を受け取りたいとの希望を持っています。 また、ロシアは保有する重要な軍事技術を北朝鮮に移転できることをほのめかしています。しかし、こうした姿勢は北朝鮮のみに向けて言っていることではありません。 ロシアは北朝鮮の砲弾に関心を持ちながらも、一方で韓国がウクライナへ砲弾を輸出することを強く心配しています。韓国は今や、世界有数の砲弾製造国であるためです。) ロシアは北朝鮮へ重要な軍事技術を移転できることをほのめかしながら、韓国に圧力をかけているということになります。ウクライナに砲弾を輸出すれば、ロシアは北朝鮮に軍事技術を移転するとの、いわば脅しです。これは当然、アメリカや欧州各国に向けたものでもあります。 とはいえ、客観的に言えば、ロシアが北朝鮮に大規模な軍事技術を移転する可能性はなくはないですが、高くはないと思います。偵察衛星関連、通常兵器関連の技術移転は可能です。しかし、弾道ミサイルや核兵器に関する技術は事実上、不可能です。 Q:2023年11月に北朝鮮は、軍事偵察衛星の発射に成功したと発表しましたが、これにロシアの技術が利用されたとする見方もあります。 A:偵察衛星への技術移転・供与の可能性は否定できません。北朝鮮が偵察衛星を持ったことは周辺国に対する不安材料にもなりますが、同時に肯定的な側面もあります。それは、北朝鮮側も偵察衛星を通じて周辺国の正しい情報をある程度把握しておくことで、誤った判断をする可能性が減るためです』、「ロシアは北朝鮮へ重要な軍事技術を移転できることをほのめかしながら、韓国に圧力をかけているということになります。ウクライナに砲弾を輸出すれば、ロシアは北朝鮮に軍事技術を移転するとの、いわば脅しです」、なるほど。
・『核兵器の技術移転・協力はありえない  朝鮮半島の緊張状態が続いている中で、戦争へとつながる要素は偶発的な衝突や誤判による過剰行為です。この点からみると、北朝鮮独自の情報源を持つことは決して悪いことではありません。ロシアもそのように、肯定的に考えている部分もあります。 Q:ロシアが北朝鮮に核兵器技術を移転する可能性がないのは、どうしてでしょうか。 A:アメリカは核兵器の拡散に神経を使っていますが、ロシアも核兵器の拡散を最も恐れています。仮に北朝鮮に核心的な技術を提供・移転して北朝鮮が核兵器の製造を完成させ、ひいては高度化させた場合、ロシア自身が核兵器保有国を誕生させたという悪い例をつくってしまうことになるからです。 ロシアの周辺国に北朝鮮の経験が移転され、ロシアの安保環境が悪化することをロシアは極度に恐れます。ロシアの場合、ベラルーシのほかに安心できる国はありません。これは中国もそうでしょう。 中国も核兵器を持っていますが、仮に北朝鮮が核兵器を完成させ、それが拡散してしまうと周辺国が核兵器を持つ可能性が一気に高まってしまいます。これは、ロシアにとっても中国にとっても、最悪のシナリオです。 Q:ロシアと北朝鮮との経済関係が拡大しているとの指摘もあります。 A:実はこの2国間で、一般的な貿易が活発化する可能性はほとんどないと思います。まず、これまでの北朝鮮とロシア(ソ連)との経済交流を振り返ってみると、ロシア側が国家予算を使って経済交流を後押しした場合にのみ、2国間の貿易規模が拡大しているという歴史があります。) 基本的な理由もあります。北朝鮮が国際市場で販売できる品目のうち、ロシアが関心を持つような品目はほとんどありません。北朝鮮は石炭や鉄鉱石など天然資源を持っていますが、これら品目はロシアがより豊富に持っているものです。海産物などもそうです。 たった一つ、ロシアが大きな関心を持っている品目があります。北朝鮮の労働力です。これまでもロシア領内で多くの北朝鮮労働者が働いてきました。ウクライナ戦争も続いており、ロシアはより多くの労働力を必要としています。 ロシアにとって需要があるのは人材です。だからこそ、北朝鮮の労働力は魅力的です。賃金はロシア人より安くて済むし、過度な要求もしない。北朝鮮という国家が間に入るので、ストライキといった面倒なことは起きません。労働者のロシアへの派遣が今後、活発化する可能性は高いと思います。 しかし、ロシア政府が北朝鮮との交流拡大のために支援するかどうかは未知数です。現時点では、ロシア政府にそのような意思があるように見えません。ロシアにとって北朝鮮は、戦略的な価値がそれほど高くないためです』、「ロシアが大きな関心を持っている品目があります。北朝鮮の労働力です。これまでもロシア領内で多くの北朝鮮労働者が働いてきました。ウクライナ戦争も続いており、ロシアはより多くの労働力を必要としています。 ロシアにとって需要があるのは人材です。だからこそ、北朝鮮の労働力は魅力的です。賃金はロシア人より安くて済むし、過度な要求もしない。北朝鮮という国家が間に入るので、ストライキといった面倒なことは起きません。労働者のロシアへの派遣が今後、活発化する可能性は高いと思います」、「北朝鮮の労働力は魅力的です。賃金はロシア人より安くて済むし、過度な要求もしない。北朝鮮という国家が間に入るので、ストライキといった面倒なことは起きません」、「ロシア」にとってはまさに干天の慈雨だ。
・『北朝鮮が持つ戦略的価値は中国にメリット  Q:ウクライナ戦争が勃発し世界が多極化する兆しがはっきりとしてきた中で、それでも北朝鮮とロシア、中国の3カ国が連帯を強めているように思えます。 中国にとって北朝鮮は、ロシアよりもはるかに戦略的価値が高い国です。北朝鮮が朝鮮半島での緩衝地帯という地政学的な意味もある。北朝鮮の輸出品目には、石炭など中国で需要がありよく売れる品目が少なくありません。中国経済の力からすれば、北朝鮮を支援するにしてもその負担はとても小さくメリットが大きいと言えます。 東アジアのこれら3カ国にとって、核となるのはやはり中国です。ロシアと北朝鮮との関係よりは、今こそ関心が高まっていますが、中朝関係ほどは重要にはならないでしょう。 Q:これら3カ国には「反米」的という共通項はありますが、今後も連帯は深まるでしょうか。 A:実は、この3カ国関係はとても深刻な問題を抱えています。例えばGDPで見ると、中国・ロシア・北朝鮮は600:50:1になります。経済的にはあまりにも不平等な関係です。 また、「反米」といった価値観でいえば、まさに反米主義と自由民主主義を拒否するという点以外で、共有できるものがありません。確かにアメリカ中心の世界秩序に対する不満が強く、アメリカが言う「ゲームのルール」に反発しています。) そのため、確かにこれら3カ国はアメリカに対してうるさく反発・攻撃しますが、一方でアメリカと妥協できることを夢見ています。問題は、アメリカがこれら3カ国が望む条件で妥協する考えがいっさいない、ということです。 お互いに不信感を拭いきれない関係でもあります。中国からみると、ロシアは19世紀に沿海州など、本来は中国の領土だった部分を「盗んだ」列強の1つです。北朝鮮はやたら自尊心は強いが非合理主義、そして冒険主義が強い国家です。 ロシアはアジアの国家に対して無視、軽視する傾向が根強い。ロシアのエリート層が客観的な視野を持っているとしても、中国に対し心からパートナーとなりえるとは考えづらいでしょう。 北朝鮮からすれば、この国はもともと他国に対する不信感が強い。隣国の中国であっても、「内政干渉をしばしば行う危険な大国」だと思っています』、「中国からみると、ロシアは19世紀に沿海州など、本来は中国の領土だった部分を「盗んだ」列強の1つです。北朝鮮はやたら自尊心は強いが非合理主義、そして冒険主義が強い国家です。 ロシアはアジアの国家に対して無視、軽視する傾向が根強い・・・中国に対し心からパートナーとなりえるとは考えづらいでしょう」、なるほど。
・『ロ中朝の3カ国関係の結びつきは強くない  Q:3カ国の関係を今後もつなぎ止めるものはありますか。 A:もしロシアで政権交代といったことが生じれば、ロシアはこの3カ国関係から抜け出すでしょう。現時点に限ってみれば、この3カ国関係に加わったことで、砲弾や弾薬を受け取ることができます。 一方で、中国は前述したような戦略的な利益のために、北朝鮮への支援を今後も継続していくと思います。 北朝鮮も国連による経済制裁が重くのしかかっている限り、中国に依存する戦略を放棄しないでしょう。内心、北朝鮮はこんな戦略を好ましいとは思っていませんが、代案を探せずにいます。 金総書記は、自身が政権を継承した2012年から2018年ごろまで続けた市場経済的な改革を放棄しました。そして、住民監視を強化するために有利な中央計画経済を一定程度、復活させました。米中対立が続く中、このような北朝鮮の政策は今後5年から10年は変化を見せないでしょう』、「現時点に限ってみれば、この3カ国関係に加わったことで、砲弾や弾薬を受け取ることができます。 一方で、中国は前述したような戦略的な利益のために、北朝鮮への支援を今後も継続していくと思います。 北朝鮮も国連による経済制裁が重くのしかかっている限り、中国に依存する戦略を放棄しないでしょう・・・金総書記は、自身が政権を継承した2012年から2018年ごろまで続けた市場経済的な改革を放棄しました。そして、住民監視を強化するために有利な中央計画経済を一定程度、復活させました。米中対立が続く中、このような北朝鮮の政策は今後5年から10年は変化を見せないでしょう」、拉致問題への言及はないが、「北朝鮮の政策は今後5年から10年は変化を見せないでしょう」、というのでは、拉致問題の進展も期待できぞうにないようだ。

次に、1月23日付け東洋経済オンラインが掲載した 中国・北朝鮮ウォッチャーの中野 鷹氏による「北朝鮮とロシアの関係に中国が激怒していた! ロ朝首脳会談にご立腹、中国人の北朝鮮入国を禁止」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/729386
・『世界的なコロナ禍が収束する中、北朝鮮の動向に関心が持たれている。ミサイル発射など軍事面での行動が目を引くが、実は自国と海外との往来をいつ解放するのかにも注目が高まっている。2020年1月にコロナの拡大を防ぐため中朝国境を封鎖して以来、正式に解除されていないためだ。貿易など細々とした対外関係は行われているが、そのような中、「本格開放のシグナル?」とも思える動きが見えた。 2024年1月12日、ロシアの旅行会社が「北朝鮮へのスキーツアーを実施する」と、アメリカ政府系ラジオの自由アジア放送(RFA)が伝えた。 観光目的での北朝鮮訪問が実現すれば2020年1月22日、新型コロナウイルスの感染拡大防止を理由に北朝鮮が一切の入国を停止した後で初めてのこととなる。 この報道を契機に、中国の旅行会社からは「なぜロシアからなのか。信じられない」との落胆の声が聞こえてくる』、興味深そうだ。
・『中国の旅行社が落胆する理由  翌1月13日、アメリカ・CNNは、2023年12月に北朝鮮を訪問したロシアのオレグ・コジェミャコ沿海地方知事との会談で、北朝鮮当局と観光ツアーの再開が議題となった可能性があると伝えている。 ロシアの旅行会社が主催するツアーは、2024年2月9日にロシア沿海州のウラジオストクから空路で平壌へ入る計画のようだ。現時点では70人の参加が確定しているという。 旅行日程は、3泊4日で費用は1人750ドル(約11万円)。ツアーの目玉は、北朝鮮東部・元山に近い馬息嶺(マシンリョン)スキー場でのスキー観光となるようだ。 前述のRFAは、ロシアメディアの情報として「観光の本格再開は4月とされ、今回2月実施のスキーツアーは試験的なプレ実施との位置づけだ」とも伝えている。 こうした一連の報道を見ると、北朝鮮旅行は現在ロシアがイニシアティブを取っているように思える。だが、外国人訪朝者の95%強を占めてきた北朝鮮の「お得意様」中国はどうなっているのか。) 今回、中国が後れを取ったのは、中国政府が北朝鮮への人的往来を無期限延期するという、実質的な「制裁」を課していたことが関係筋の証言で浮かび上がってきた。 ロシア・ウラジオストクの旅行社ボストーク・イントゥール社による北朝鮮スキーツアーのポスター。「山岳スキーリゾート馬息嶺」と名づけ、3泊4日のツアーとなっている(写真・同社のホームページより) 実は2023年9月25日、日本のNHKや朝日新聞をはじめとする日本メディアが、「北朝鮮が9月25日から外国人の入国を許可。国営中国中央テレビ(CCTV)が伝える」と大きく報じていた。 しかし、その後も中国から北朝鮮への出入国は正常化されるどころか、北朝鮮から中国への人的往来もコロナ禍前の水準ほどに戻ったとの情報は確認できない』、「今回、中国が後れを取ったのは、中国政府が北朝鮮への人的往来を無期限延期するという、実質的な「制裁」を課していたことが関係筋の証言で浮かび上がってきた」、なるほど。
・『延び延びにされてきた北朝鮮入国  中朝国境の遼寧省・丹東にある国営旅行会社の社長は、「北朝鮮の最高指導者のロシア訪問が、中国政府が人的往来を止めたきっかけ」と打ち明ける。 すなわち、2023年9月12日からの北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記がロシア極東訪問してプーチン大統領との首脳会談を行ったことが、中国の習近平国家主席の逆鱗に触れ、結果として制裁を課したということだ。 この国営旅行会社は、中国人向け北朝鮮旅行手配では最大手となる。国営企業なので丹東駅から平壌駅までの国際列車の乗車券も優先的に取得できるなど、北朝鮮に関する旅行業界での力は絶大なものを持つ。 また、これまで北朝鮮の旅行業を「自分がリードしてきた」という自負も強い。だからこそ、今回の再開1号ツアーがロシアに取られたことは、さぞかしがっかりさせられたことだろう。 では、2020年に北朝鮮が国境を閉鎖して以降、中朝国境ではどのような動きを見せてきたのか。とくに2023年1月以降の動きを振り返ってみたい。) 2023年1月8日、中国・吉林省の琿春と北朝鮮の羅先特別市のイミグレーション圏河口岸(出入国審査場)の封鎖が解除された。そして、車両や人的往来を限定再開させた。 行けるのは羅先のみと限定されており、平壌など他の都市へ移動は制限されたままだ。また、観光客も実質的に通過することができない。 その後、国境付近は穏やかだったが、再びここが注目を集めたのは2023年8月16日に丹東との国境の封鎖が解除され、北朝鮮のテコンドー選手団が国際大会に参加するために中国へ入国した時だ。平壌からの入国者は3年半ぶりだった』、「2023年9月12日からの北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記がロシア極東訪問してプーチン大統領との首脳会談を行ったことが、中国の習近平国家主席の逆鱗に触れ、結果として制裁を課したということだ」、「中国の習近平国家主席」にしては大人げない態度だ。
・『2023年下半期から徐々に増えてきたが…  2023年8月末には丹東からの国際列車に加え、北京や瀋陽からの北朝鮮国営・高麗航空が限定的に運行が再開され、コロナ禍で帰国できなかった北朝鮮人外交官や労働者などの帰国が確認されている。 そして9月16日、中国・杭州で開催されたアジア大会へ参加する選手や関係者など約200人が中国へ入国している。 また8月末からは中国当局が拘束していた脱北者の強制送還が始まった。10月9日には脱北者600人を一斉に送還し、これまで約2600人が北朝鮮へ強制送還されたと、韓国メディアの報道がある。 このように、間欠的に、かつゆっくりと中朝国境の人的往来が正常化されるような動きがあった。 とくに2023年8月中旬、北京の北朝鮮大使館は、関係する貿易・旅行関係者向けに「9月24日前後から人的往来を再開する」と通知を出した。通知を読むと、中朝が合意した内容だと読み取れる内容だった。) 筆者は、この北朝鮮大使館から通知があったことを関係筋から聞いていたので「9月25日、北朝鮮が外国人の入国許可」の報道には驚くことはなかった。強いて言えば、中国人以外の外国人向けの観光業も同時に再開させるとの直前情報に驚いたくらいだ。 実は当初、中国の関係筋から聞いていたのは、以下のような内容だった。 まず先行して中国人を、それも観光目的ではなく、出張者などから往来を再開させ、中国人の北朝鮮旅行は中国で最大の連休期間となる10月1日の国慶節(建国記念日)あたりから再開させる。日本人を含むその他の外国人は、早くて10月末から再開させるのではないか、というものだった』、中国サイドの勝手な思い入れは外れたようだ。
・『往来を「無期限延期」にした理由  かなりハイペースのスケジュールに感じられたため、「観光再開は予想以上に早い。それだけ、北朝鮮の経済状況が悪いのだろう」と受け取っていた。 ところが、前述したように、9月25日に中国メディアが報じたのにもかかわらず、その後は「人的往来が再開した」との報道がパタリと途絶えてしまった。 中国メディアが伝えた情報は、本来のテレビによる報道ではなく、インターネット上での記事だったようだが、その後に削除されたようで今ではその報道を確認できていない。 いったん中国メディアが報じたのにもかかわらず、結局実行されなかった大きな理由は、前述の丹東の国営旅行会社社長が明かしたように、中国政府が金正恩・プーチン会談に激怒し、9月25日に人的往来再開で中朝合意していた約束を中国政府が一方的に反故にし、無期限延期にしたことだろう。 反故にしたタイミングが直前すぎたことも、結局は誤報の原因となった可能性もありそうだ。) ただ、米中対立が深まる中、北朝鮮と中国、ロシアは緩やかな連帯が深まっているとされている情勢なのに、中国政府はなぜ北朝鮮がロシアへ接近したことにそこまで反発したのか。 中国とロシアの関係はよい――。日本にいると中国はロシアに近く、現在のウクライナ戦争についても、中国はロシアよりだとみている日本人は多いと思う。 中国国内では、地元のSNS「微博(ウェイボー)」などで見られるコメントを見ると、ロシア支持のコメントが圧倒的に多い。ウクライナを支持し、戦争そのものへの批判は大部分が削除されていると思われる。これは中国当局による情報統制の一環だろう』、「米中対立が深まる中、北朝鮮と中国、ロシアは緩やかな連帯が深まっているとされている情勢なのに、中国政府はなぜ北朝鮮がロシアへ接近したことにそこまで反発したのか」、中国人にしたら、「北朝鮮」は朝鮮戦争の時に膨大な犠牲を払って守ってやったのに、「ロシア」にくっついたことで、プライドを壊されたためなのかも知れない。
・『日本人が思うほど関係は強くない  実は、中ロ関係は日本人が思う以上に薄っぺらで脆弱な関係だ。中ロ朝の3カ国とも、自分たちの権威主義体制維持を脅かすアメリカに反対するという1点で、しかも細くつながっているだけだ。 互いの利己的な国益のために、水面下ではそうとうなつばぜり合いが繰り返されており、蜜月関係とはとうてい言えるような関係ではない。 2024年1月13日に行われた台湾の総統選挙の結果もあり、中国の関心は台湾に集中しているような情勢ではある。しかし、中国の現実的な狙いは「台湾統一」ではなく、ロシア極東の再併合なのではないのかと思えるフシがある。 実際に、そう指摘する声がロシアと国境を接する吉林省の実業家や旅行業関係者などからもしばしば出されている。 現在の吉林省を含む旧満州、すなわち東北3省の人たちは、現在のウラジオストクを含むロシア沿海地方、アムール州、ユダヤ自治州、ザバイカリエ地方などを「外東北」(日本では外満州)と呼び、ウラジオストクを旧名の「海参崴」と呼び続ける人がいる。 それは、「外満州はロシアと結ばされた不平等条約によってロシア帝国に奪われた土地」と認識している人が少なくないからだ。) 世界史の教科書をひもとくと、1858年のアイグン条約と1860年の北京条約で本来保有していた広大な領地がロシアへ割譲されている。 もちろん、習近平政権は一度も「奪われた外東北を奪還する」などと口にしたことはない。だが、吉林省在住の中国人たちに話を聞くと、そんな清朝時代の最大領土を取り戻すという「中国の夢」が見え隠れするのだ。 中国政府としては武力を用いず、かつ国際社会との摩擦も最小限に抑えてかつての領土を併合したい。そのためにロシアの国力低下を虎視眈々と待っているのだという声も、実は少なくはない』、「現在の吉林省を含む旧満州、すなわち東北3省の人たちは、現在のウラジオストクを含むロシア沿海地方、アムール州、ユダヤ自治州、ザバイカリエ地方などを「外東北」(日本では外満州)と呼び、ウラジオストクを旧名の「海参崴」と呼び続ける人がいる。 それは、「外満州はロシアと結ばされた不平等条約によってロシア帝国に奪われた土地」と認識している人が少なくないからだ。) 世界史の教科書をひもとくと、1858年のアイグン条約と1860年の北京条約で本来保有していた広大な領地がロシアへ割譲されている・・・吉林省在住の中国人たちに話を聞くと、そんな清朝時代の最大領土を取り戻すという「中国の夢」が見え隠れするのだ。 中国政府としては武力を用いず、かつ国際社会との摩擦も最小限に抑えてかつての領土を併合したい。そのためにロシアの国力低下を虎視眈々と待っているのだという声も、実は少なくはない」、なるほど。
・『中国が抱く「沿海州再併合」  中国は、ロシアがウクライナに勝とうが負けようが中国の国益になるようなポジションで動いている。ウクライナ戦争では、仮にロシアが勝利しても、国力や国際的な信用、プレゼンスも大幅低下することは避けられない。敗北すれば、ロシア領土が複数に分割される、などの話も飛び交っている。 前者であれば、疲弊したロシアに対し外満州を金で割譲することを持ちかける。後者であれば、分割された領土に対し歴史的な経緯を主張したり、高麗人(朝鮮半島からロシア沿海地方へ移住した朝鮮民族)を中国の少数民族朝鮮族の同胞だと定義し、少数民族保護などの名目で再併合するシナリオも考えられる。 こうしてみると、中国はロシアがどちらに転んでも自分たちに利益となるような態度をとっているといえる。 しかも、中国による「極東再併合」は、今に始まったことではない。すでに10年以上前から、吉林省の実業家を中心にロシア沿海地方の農地を買収し、中国人を移住させる大規模耕作地を増やしてきた。この件は日本のメディアでも報じられたことがある。) コロナ禍で一時的に中ロ間の人的往来は止まっていたが、2023年1月8日に陸路の中ロ国境封鎖が解除された。 しかし、人的往来が停止している間も中ロの貨物輸送は増えており、ロシア政府系通信社のスプートニク中国語版は2023年1月12日、ロシア・マハリノと中国・琿春間の鉄道による貨物量が2022年には約350万トンとなり、前年比22%増を記録していると伝えた。 さらに、ロシア産石炭の輸出が急増しており、そのため、検問所を24時間体制にし、貨物列車も1日5本を増便させたと伝えている』、「ウクライナ戦争では、仮にロシアが勝利しても、国力や国際的な信用、プレゼンスも大幅低下することは避けられない。敗北すれば、ロシア領土が複数に分割される、などの話も飛び交っている。 前者であれば、疲弊したロシアに対し外満州を金で割譲することを持ちかける。後者であれば、分割された領土に対し歴史的な経緯を主張したり、高麗人(朝鮮半島からロシア沿海地方へ移住した朝鮮民族)を中国の少数民族朝鮮族の同胞だと定義し、少数民族保護などの名目で再併合するシナリオも考えられる。 こうしてみると、中国はロシアがどちらに転んでも自分たちに利益となるような態度をとっているといえる・・・すでに10年以上前から、吉林省の実業家を中心にロシア沿海地方の農地を買収し、中国人を移住させる大規模耕作地を増やしてきた。この件は日本のメディアでも報じられたことがある。) コロナ禍で一時的に中ロ間の人的往来は止まっていたが、2023年1月8日に陸路の中ロ国境封鎖が解除された。 しかし、人的往来が停止している間も中ロの貨物輸送は増えており、ロシア政府系通信社のスプートニク中国語版は2023年1月12日、ロシア・マハリノと中国・琿春間の鉄道による貨物量が2022年には約350万トンとなり、前年比22%増を記録していると伝えた。 さらに、ロシア産石炭の輸出が急増しており、そのため、検問所を24時間体制にし、貨物列車も1日5本を増便させた』、中国人は極めて長期的視点で着々と併合に向けた準備を進めているようだ。
・『ロシア沿海州が中国の租借地化  中国人実業家によると、今では農地だけではなく、鉱山や港などの長期使用権なども獲得していると胸を張る。まるで、ロシア沿海州が中国の租借地状態になりつつあるようだ。 中国共産党の一党支配という国家体制上、こうした沿海州へ進出する中国人たちの背後には、中国政府の意向が働いていることは容易に想像がつく。 そんな中国政府が着々と狙っているエリアに、金正恩総書記がコロナ後、初の外国訪問として訪れた。だから、習近平国家主席がへそを曲げたという想像もつく。しかも、金総書記は2019年にも同じロシア沿海州を訪問し、プーチン大統領と初めての首脳会談をおこなった。 ロシア側からみても、中国の極東再併合の狙いを認識しており、そうした中国を牽制するために、2度も金総書記をロシア沿海州へ厚遇してまで招き首脳会談を開催した可能性がなくもない。 そして北朝鮮は、中ロ間の間隙を利用するかのようにロシアへ接近して、武器を供与し、その見返りとしてミサイル技術をロシアから獲得。さらには、ロシアへ北朝鮮への観光ツアー再開を打診した――。 こうしてみると、中ロ関係を悪化させることが北朝鮮の国益だといわんばかりに動いているようにも見えてくる。) 北朝鮮に激怒し、へそを曲げた状態とされる中国は、今後どのような動きを見せるだろうか。 1つは、中国政府が今後も態度を硬化させて、中国を経由する外国人をも含めた人的往来の再開を無期限延期したままにする。 あるいは、振り上げた拳をそのままにして、拳を振り上げなかったことにし、ロシアがやっているようなことに合わせて人的往来、つまり、北朝鮮観光をあっさりと「許可」して再開させる可能性も十分にある』、「北朝鮮に激怒し、へそを曲げた状態とされる中国は、今後どのような動きを見せるだろうか。 1つは、中国政府が今後も態度を硬化させて、中国を経由する外国人をも含めた人的往来の再開を無期限延期したままにする。 あるいは、振り上げた拳をそのままにして、拳を振り上げなかったことにし、ロシアがやっているようなことに合わせて人的往来、つまり、北朝鮮観光をあっさりと「許可」して再開させる可能性も十分にある」、どちらになるのだろう。
・『もう1つの「中国の夢」  それは、中国も国内経済が悪く、国民に対するガス抜きを行うことが不可欠となっているためだ。 中国政府にとって台湾問題は自国の求心力を高める重要な問題だ。 また極東再併合は、清朝最大領土を奪還する「中国の夢」にも矛盾することもない。台湾問題と比較し、獲得できる資源とリスクを天秤にかけると、どちらに本腰を入れるべき夢なのか。 万が一、ウクライナ戦争の行方次第でロシアが崩壊・分割されるような事態になれば、中国はどさくさに紛れて清朝が領土とみなしたこともないサハリンさえも取りに動くだろう。これは決して筆者の空想ではない。実際にこんな話題が、すでに東北3省の中国人実業家たちからはささやかれているのが現状だ』、「万が一、ウクライナ戦争の行方次第でロシアが崩壊・分割されるような事態になれば、中国はどさくさに紛れて清朝が領土とみなしたこともないサハリンさえも取りに動くだろう。これは決して筆者の空想ではない。実際にこんな話題が、すでに東北3省の中国人実業家たちからはささやかれているのが現状だ」、「東北3省の中国人実業家たちからはささやかれている」というのには心底驚いた。  
タグ:北朝鮮問題 (その23)(ロシアにとって北朝鮮との協力には魅力がない ロシア出身の北朝鮮専門家が語るロ朝関係のリアル、北朝鮮とロシアの関係に中国が激怒していた! ロ朝首脳会談にご立腹、中国人の北朝鮮入国を禁止) 東洋経済オンライン「ロシアにとって北朝鮮との協力には魅力がない ロシア出身の北朝鮮専門家が語るロ朝関係のリアル」 「金総書記が事実上、数十年間にわたって北朝鮮が実施してきた平和統一路線を失敗として認めた・・・韓国は「同族関係」ではなく「交戦国」だと言及」、扱いが現実を直視したものになったようだ。 「北朝鮮側が「交戦国」との言葉もそうですが、これほど強硬な警告と脅威を与えたことはありません。厳密に言えば、彼らが1990年代初頭から時々繰り返してきた「ソウルを火の海にする」といった脅し文句よりもはるかに強いものです」、なるほど。 「ロシアは北朝鮮へ重要な軍事技術を移転できることをほのめかしながら、韓国に圧力をかけているということになります。ウクライナに砲弾を輸出すれば、ロシアは北朝鮮に軍事技術を移転するとの、いわば脅しです」、なるほど。 「ロシアが大きな関心を持っている品目があります。北朝鮮の労働力です。これまでもロシア領内で多くの北朝鮮労働者が働いてきました。ウクライナ戦争も続いており、ロシアはより多くの労働力を必要としています。 ロシアにとって需要があるのは人材です。だからこそ、北朝鮮の労働力は魅力的です。賃金はロシア人より安くて済むし、過度な要求もしない。北朝鮮という国家が間に入るので、ストライキといった面倒なことは起きません。労働者のロシアへの派遣が今後、活発化する可能性は高いと思います」、 「北朝鮮の労働力は魅力的です。賃金はロシア人より安くて済むし、過度な要求もしない。北朝鮮という国家が間に入るので、ストライキといった面倒なことは起きません」、「ロシア」にとってはまさに干天の慈雨だ。 「中国からみると、ロシアは19世紀に沿海州など、本来は中国の領土だった部分を「盗んだ」列強の1つです。北朝鮮はやたら自尊心は強いが非合理主義、そして冒険主義が強い国家です。 ロシアはアジアの国家に対して無視、軽視する傾向が根強い・・・中国に対し心からパートナーとなりえるとは考えづらいでしょう」、なるほど。 「現時点に限ってみれば、この3カ国関係に加わったことで、砲弾や弾薬を受け取ることができます。 一方で、中国は前述したような戦略的な利益のために、北朝鮮への支援を今後も継続していくと思います。 北朝鮮も国連による経済制裁が重くのしかかっている限り、中国に依存する戦略を放棄しないでしょう・・・ 金総書記は、自身が政権を継承した2012年から2018年ごろまで続けた市場経済的な改革を放棄しました。そして、住民監視を強化するために有利な中央計画経済を一定程度、復活させました。米中対立が続く中、このような北朝鮮の政策は今後5年から10年は変化を見せないでしょう」、拉致問題への言及はないが、「北朝鮮の政策は今後5年から10年は変化を見せないでしょう」、というのでは、拉致問題の進展も期待できぞうにないようだ。 東洋経済オンライン 中野 鷹氏による「北朝鮮とロシアの関係に中国が激怒していた! ロ朝首脳会談にご立腹、中国人の北朝鮮入国を禁止」 「今回、中国が後れを取ったのは、中国政府が北朝鮮への人的往来を無期限延期するという、実質的な「制裁」を課していたことが関係筋の証言で浮かび上がってきた」、なるほど。 「2023年9月12日からの北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記がロシア極東訪問してプーチン大統領との首脳会談を行ったことが、中国の習近平国家主席の逆鱗に触れ、結果として制裁を課したということだ」、「中国の習近平国家主席」にしては大人げない態度だ。 中国サイドの勝手な思い入れは外れたようだ。 「米中対立が深まる中、北朝鮮と中国、ロシアは緩やかな連帯が深まっているとされている情勢なのに、中国政府はなぜ北朝鮮がロシアへ接近したことにそこまで反発したのか」、中国人にしたら、「北朝鮮」は朝鮮戦争の時に膨大な犠牲を払って守ってやったのに、「ロシア」にくっついたことで、プライドを壊されたためなのかも知れない。 「現在の吉林省を含む旧満州、すなわち東北3省の人たちは、現在のウラジオストクを含むロシア沿海地方、アムール州、ユダヤ自治州、ザバイカリエ地方などを「外東北」(日本では外満州)と呼び、ウラジオストクを旧名の「海参崴」と呼び続ける人がいる。 それは、「外満州はロシアと結ばされた不平等条約によってロシア帝国に奪われた土地」と認識している人が少なくないからだ。) 世界史の教科書をひもとくと、1858年のアイグン条約と1860年の北京条約で本来保有していた広大な領地がロシアへ割譲されている・・・吉林省在住の中国人たちに話を聞くと、そんな清朝時代の最大領土を取り戻すという「中国の夢」が見え隠れするのだ。 中国政府としては武力を用いず、かつ国際社会との摩擦も最小限に抑えてかつての領土を併合したい。そのためにロシアの国力低下を虎視眈々と待っているのだという声も、実は少なくはない」、なるほど。 「ウクライナ戦争では、仮にロシアが勝利しても、国力や国際的な信用、プレゼンスも大幅低下することは避けられない。敗北すれば、ロシア領土が複数に分割される、などの話も飛び交っている。 前者であれば、疲弊したロシアに対し外満州を金で割譲することを持ちかける。後者であれば、分割された領土に対し歴史的な経緯を主張したり、高麗人(朝鮮半島からロシア沿海地方へ移住した朝鮮民族)を中国の少数民族朝鮮族の同胞だと定義し、少数民族保護などの名目で再併合するシナリオも考えられる。 こうしてみると、中国はロシアがどちらに転んでも自分たちに利益となるような態度をとっているといえる・・・すでに10年以上前から、吉林省の実業家を中心にロシア沿海地方の農地を買収し、中国人を移住させる大規模耕作地を増やしてきた。この件は日本のメディアでも報じられたことがある。) コロナ禍で一時的に中ロ間の人的往来は止まっていたが、2023年1月8日に陸路の中ロ国境封鎖が解除された。 しかし、人的往来が停止している間も中ロの貨物輸送は増えており、ロシア政府系通信社のスプートニク中国語版は2023年1月12日、ロ シア・マハリノと中国・琿春間の鉄道による貨物量が2022年には約350万トンとなり、前年比22%増を記録していると伝えた。 さらに、ロシア産石炭の輸出が急増しており、そのため、検問所を24時間体制にし、貨物列車も1日5本を増便させた』、中国人は極めて長期的視点で着々と併合に向けた準備を進めているようだ。 「北朝鮮に激怒し、へそを曲げた状態とされる中国は、今後どのような動きを見せるだろうか。 1つは、中国政府が今後も態度を硬化させて、中国を経由する外国人をも含めた人的往来の再開を無期限延期したままにする。 あるいは、振り上げた拳をそのままにして、拳を振り上げなかったことにし、ロシアがやっているようなことに合わせて人的往来、つまり、北朝鮮観光をあっさりと「許可」して再開させる可能性も十分にある」、どちらになるのだろう。 「万が一、ウクライナ戦争の行方次第でロシアが崩壊・分割されるような事態になれば、中国はどさくさに紛れて清朝が領土とみなしたこともないサハリンさえも取りに動くだろう。これは決して筆者の空想ではない。実際にこんな話題が、すでに東北3省の中国人実業家たちからはささやかれているのが現状だ」、「東北3省の中国人実業家たちからはささやかれている」というのには心底驚いた。
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インド(その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、グローバルサウスの盟主インド モディ首相に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も、ヒンドゥー教寺院でモディが始める宗教戦争) [世界情勢]

インドについては、(その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、グローバルサウスの盟主インド モディ首相に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も、ヒンドゥー教寺院でモディが始める宗教戦争)である。

先ずは、昨年6月7日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリストのさかい もとみ氏による「「今世紀最悪」の列車事故、インドの鉄道安全事情 近年は件数減少、だが新安全装置整備は進まず」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/677456
・『死者が300人近くに及ぶ今回の事故は、インドで今世紀に入ってから最大の列車事故とされる。これだけの規模の事故が起きれば、誰でもインドの鉄道の安全性に疑問を感じるに違いない。 英国の公共放送BBCは、インドにおける鉄道事故について、過去最悪の例は1981年6月、サイクロンの時に橋を渡っていた列車が川に転落し800人弱が亡くなったものだとしている。その後100人以上の死者を出した事故は3度起きており、直近では2016年11月に「インドール―パトナ・エクスプレス」という優等列車が脱線、150人近くが死亡する悲劇が起きている。 しかし、データによると事故は減少傾向にあり、2016年以降はこのような大事故は起きていなかった。安全性の指標となる100万列車キロ当たりの事故件数は、2013年度の0.10件から2021年度には0.03件に減少。2017年度から5年間の安全基金(総額1兆ルピー=約1兆6990億円)を設けたことが安全指標の改善につながったため、5年間延長のうえさらに4500億ルピー(約7645億円)の資金が投入されている』、「データによると事故は減少傾向にあり、2016年以降はこのような大事故は起きていなかった・・・2017年度から5年間の安全基金(総額1兆ルピー=約1兆6990億円)を設けたことが安全指標の改善につながったため、5年間延長のうえさらに4500億ルピー(約7645億円)の資金が投入されている」、なるほど。
・『路線延長世界4位の「国民の足」  国連人口基金(UNFPA)の推計によると、インドの人口は今年14億2860万人となり、中国を抜いて世界一になる見通しだ。人々の重要な足として鉄道のシェアは大きい。 約6万8000kmに及ぶ路線の総延長はアメリカ・中国・ロシアに次いで世界第4位。そのうち、5万9000km余りが交流25kV・50Hzで電化されている。2020年の旅客輸送実績は80億8600万人。長距離列車と近郊列車を加えた旅客列車は1日当たり1万3000本が運行されている。国内の駅数は7325カ所に及ぶ。 歴史的にみると、インドはアジアで最初に鉄道が導入された国だ。イギリスで旅客輸送が始まった1825年から間もない1830年代には、すでに道路やダムの建設に使う資材運搬用の鉄道が敷設されていた歴史もある。 軌間(線路の幅)は長らく複数が混在していたが、現在はほとんどが1676mmの広軌に統一されている。これは新幹線などの標準軌(1435mm)よりもさらに200mm余り広い。当時、インド総督の任にあったダルハウジー卿が「広いほうが望ましい」と言ったことから広軌で敷かれたという。) 経済発展著しいインドでは、人々の往来需要も年々拡大している。そんな中、主要都市を結ぶ昼行電車特急「バンデバラト(Vande Bharat)・エクスプレス」が2019年に登場した。普通車と1等車からなる16両編成で、車内にはUSB電源やWi-Fiも装備している。これまでに18区間に導入されており、テスト中に最高時速180kmまで出した記録もある。 だが、線路の許容速度と運行上の制約から、デリー―ボパール間のみは時速160kmで走れるものの、その他の区間は時速110~130km運行に制限されている。さらなる高速化が期待されるが、従来型の優等列車(エクスプレスまたはメール)の平均時速は50.6km、近郊電車は同37.5km、普通列車は同33.5kmだという。インドの既存客車列車の速度からすれば、圧倒的に速いと言っていいだろう。 インドでは現在、高速鉄道のプロジェクトも進んでいる。最も先行しているのは、西部の商業都市ムンバイ(旧ボンベイ)とその北にあるアーメダバードとを結ぶ路線で、日本の新幹線システムが導入される予定だ』、2017年度から5年間の安全基金(総額1兆ルピー=約1兆6990億円)を設けたことが安全指標の改善につながったため、5年間延長のうえさらに4500億ルピー(約7645億円)の資金が投入されている』、「主要都市を結ぶ昼行電車特急「バンデバラト・・・エクスプレス」、「デリー―ボパール間のみは時速160kmで走れるものの、その他の区間は時速110~130km運行に制限されている。さらなる高速化が期待されるが、従来型の優等列車・・・の平均時速は50.6km、近郊電車は同37.5km、普通列車は同33.5kmだという。インドの既存客車列車の速度からすれば、圧倒的に速い」、なるほど。
・『保安装置の導入前倒しなるか  そのような発展が進む一方で発生した今回の大惨事を受け、インドでは鉄道の安全対策についての議論が高まっている。 インドの鉄道では、運行本数の多い区間に欧州の信号保安システムETCSレベル2水準とされる「Kavach」と称する安全システムの導入を進めている。これはインド国鉄が産業界と共同で開発した”最先端のシステム”とされ、運転士が速度制限を守らなかった場合、自動的にブレーキをかけたり、列車が接近しすぎた場合に衝突を防止したりするものだ。 ただ整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる。Kavachシステムの整備はモディ政権が掲げた「自立したインド」の一環として行われているが、今回事故が起きた路線には「Kavachシステムはない」(鉄道省広報官)という。大事故を教訓に導入計画が前倒しで進められる可能性も高まっているが、はたしてどうなるだろうか。 安全設備の整備はまだ発展途上にあるようだが、事故件数は減少傾向にあっただけに、1000人を超える死傷者を出す事故が起きてしまったのは残念だ。 ある日本人駐在者は「事故翌日に開催された現地団体の集まりで犠牲者に対して黙祷を捧げた」といい、「事故に関する報道は盛んだが、原因分析に関する報道姿勢は思った以上に慎重。第一報ではコロマンデル・エクスプレスの脱線原因は不明とした上で、考えられる仮説を取り上げており、インドメディアは信頼できるかも、と改めて感じた」と話していた。 モディ首相は事故発生翌日の3日、現場へ急行。直ちに「責任のある者に厳罰を与える」と強く述べた。再発防止のための原因究明は欠かせない。これ以上の悲劇を起こさぬために、最善の対応を望みたいものだ』、「運行本数の多い区間に欧州の信号保安システムETCSレベル2水準とされる「Kavach」と称する安全システムの導入を進めている。これはインド国鉄が産業界と共同で開発した”最先端のシステム”とされ、運転士が速度制限を守らなかった場合、自動的にブレーキをかけたり、列車が接近しすぎた場合に衝突を防止したりするものだ。 ただ整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる。Kavachシステムの整備はモディ政権が掲げた「自立したインド」の一環として行われているが、今回事故が起きた路線には「Kavachシステムはない」(鉄道省広報官)・・・整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる」、安全重視の鉄道整備を期待したい。

次に、昨年8月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した著述家/国際公共政策博士の山中俊之氏による「グローバルサウスの盟主インド、モディ首相に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327182
・『インドで7月末、半導体関連の国際会議が開かれ、モディ首相がインドへの投資を呼びかけた。米企業が約4億ドルの投資を発表するなど、グローバル企業のインドへの関心の高さは目立つ。経済や外交で豪腕を発揮するモディ首相とは、どんな人物か。政治家として“死角”はないのか』、興味深そうだ。
・『下位カーストから上り詰めたモディ首相 朝5時起床の「超ハードワーカー」  今、世界で最も注目を集める政治家といえば、インドのモディ首相だろう。インドは2023年、人口が14億2577万人に達し、中国を抜いて世界一の人口になる見込み。大国の指導者として、欧米の西側諸国とも、中国やロシアとも絶妙な距離感を取っている。その手腕は、世界史上においてもまれなことだと注目されている。 モディ首相とはいったい、どんな人物なのだろうか。1950年生まれで今年73歳になるが、朝5時に起床して働き続ける「超ハードワーカー」だという。 モディ首相は、「ガーンチ」という下位カーストの出身といわれる。ガーンチは植物油の圧搾・販売を生業とするカーストだ。ダリット(不可触民)ではないが、差別の対象となることもある。 インドでは、依然としてカーストによる差別が実態としては存在する(憲法では禁止されている)。婚活アプリには、民族・言語の他にカーストを記入する欄もあるくらいだ。モディ氏もこれまで差別や偏見にさらされた経験は、一度や二度ではないだろう。 そのような逆境にもめげず、6歳から家業であるチャイ売りを手伝い始めたモディ氏。若くしてヒンズー至上主義組織に入り、雑用から始めて徐々に頭角を現した。その後、インド人民党に入党すると37歳で出身地であるグジャラート州議会議員、51歳でグジャラート州首相に就任。そして、グジャラート州首相の実績が評価され、総選挙を経て14年に63歳でインド首相に上り詰めた。 こうした出自と経歴もあって、貧民層からの支持は厚い。演説にも定評があり、一般大衆の前に出れば、ロックスター並みの大歓声で迎えられることも。また、ツイッター(現X)のフォロワーは7000万人を超える。 インド国内では絶大な人気を誇るモディ首相。それでは、外交の舞台で各国首脳を翻弄する手腕についてはどうだろうか。また、政治家として“死角”はないのか』、「「ガーンチ」という下位カーストの出身・・・6歳から家業であるチャイ売りを手伝い始めたモディ氏。若くしてヒンズー至上主義組織に入り、雑用から始めて徐々に頭角を現した。その後、インド人民党に入党すると37歳で出身地であるグジャラート州議会議員、51歳でグジャラート州首相に就任。そして、グジャラート州首相の実績が評価され、総選挙を経て14年に63歳でインド首相に上り詰めた」、並外れた実力があったのだろう。
・『世界の舞台で各国首脳を翻弄 「カメレオン外交」の巧妙  貧困層から身を起こし、首相として多様な民族・宗教で構成されるインドを統率してきた豪腕は、外交面でもいかんなく発揮されている。 ロシアのウクライナ侵攻や、米中対立の激化もある中で、モディ首相の国際政治における立ち位置はさらに際立っている。米国など西側諸国とも、ロシアなど反西側諸国とも、したたかに付き合っていく外交姿勢である。 一例として22年9月、ロシアのプーチン大統領と対面で会談したときのこと。インドは、ロシアから大量の武器を購入するなどロシアとの関係は昔から親密だ。ウクライナ侵攻後もロシアから原油を安価で輸入し続けていて、その量は増えるばかり。 しかし、この会談でモディ首相はプーチン大統領に対して、ウクライナ情勢を巡り「今は戦争の時代ではないと思う」などと、率直な懸念を伝えた。プーチン大統領としては、味方だと思っていたモディ首相から厳しい言葉を突き付けられた形だ。 武器と原油の重要供給国の首脳に対して、こうした言動ができるのも、モディ首相ならではといえるだろう。 別の例として23年1月、インド政府はオンライン会合で「グローバルサウスの声サミット」を主催した。グローバルサウスに明確な定義はないが、東南アジアやアフリカ、中南米などの新興国や途上国を指すのが一般的。同会合は最終的に125カ国が参加する規模となった(一部参加も含む。なお、中国は招待されていないとみられている)。まさにインドはグローバルサウスの盟主としての立場を確立しようとしている。 また、5月に広島で開催されたG7サミットにおいては、インドは招待国として参加した。G7サミットは今や、反ロシア・反中国の牙城と化している。この期間中、ウクライナのゼレンスキー大統領からモディ首相に要請があり、広島で会談した。ロシアとも対話のチャンネルを持つインドに対して、ウクライナ側から会談の要請をしたこと自体が、今日のインドの国際政治上の影響力を物語っている。  続く6月、モディ首相は米国を訪問。米議会の上下両院合同会議で演説した。このことは、英国のチャーチル元首相や南アフリカのマンデラ元大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領と並び、数少ない外国首脳の一人となった。演説後、米バイデン大統領夫妻は、モディ首相好みのベジタリアン料理で心づくしの歓待ぶりを見せてもいる。 こうしたモディ首相の外交はまるでカメレオンのようで、西側諸国にも、中国・ロシア側にも、時と場合によって顔を変えることで、譲歩を引き出すことに成功している。現状、「二兎を追う者は一兎をも得ず」が当てはまらず、“二兎を追う者は二兎を得る”状態。世界の首脳が、モディ首相に翻弄(ほんろう)されているといっても過言ではない』、「米国など西側諸国とも、ロシアなど反西側諸国とも、したたかに付き合っていく外交姿勢・・・モディ首相はプーチン大統領に対して、ウクライナ情勢を巡り「今は戦争の時代ではないと思う」などと、率直な懸念を伝えた。プーチン大統領としては、味方だと思っていたモディ首相から厳しい言葉を突き付けられた形だ・・・グローバルサウスに明確な定義はないが、東南アジアやアフリカ、中南米などの新興国や途上国を指す・・・同会合は最終的に125カ国が参加する規模となった・・・グローバルサウスの盟主としての立場を確立」、外交は見事だ。
・『イスラム教徒や少数派に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も  さて、巧みな外交の陰で、モディ首相の強権ぶりやインドの人権問題も取り沙汰されている。 「モディ首相が世界で注目を集めているのは、世界の人々がインドの実態を知らないからだ」――。筆者の友人であるインド人経営者はこう言い放っていた。どうやら、モディ首相に我慢がならないようだ。 例えばインド軍は、イスラム教徒が多いカシミール地方において、過剰な拘束や拷問を行っていると指摘されている(アムネスティ・インターナショナル)。 また、インド政府は、移民への市民権授与に関して、イスラム教徒を除外するなど差別的な対応を取っているとも。加えて、ジャーナリストや人権活動家への弾圧も問題視されている。 先の筆者の友人はヒンズー教徒であるが、モディ首相のイスラム教徒への仕打ちには目に余るものがあると憤っていた。 こうした状況に対して、米国務省は人権と宗教の自由に関する報告書で、インドにおけるイスラム教徒やダリット、キリスト教徒など少数派の待遇について懸念を表明している。 世界最大の民主主義国と言われるインド。モディ首相の動向は、光と陰の両面で見ていくことが重要だ』、「インド軍は、イスラム教徒が多いカシミール地方において、過剰な拘束や拷問を行っていると指摘・・・移民への市民権授与に関して、イスラム教徒を除外するなど差別的な対応を取っているとも。加えて、ジャーナリストや人権活動家への弾圧も問題視されている・・・モディ首相の動向は、光と陰の両面で見ていくことが重要だ」、その通りだ。

第三に、本年1月23日付けNewsweek日本版が掲載した米ウッドロー・ウィルソン国際研究センター南アジア研究所長のマイケル・クーゲルマン氏による「ヒンドゥー教寺院でモディが始める宗教戦争」を紹介しよう。
・『<破壊されたモスクの跡地に建てられたヒンドゥー教徒の新たな聖地が対立をあおる> インド北部の古都アヨディヤ。古代の英雄ラーマ王子の生誕の地として知られる一方で、中世にはイスラム王朝の支配下にあったこの地が、いま再びインドにおける宗教対立の火種となろうとしている。 発端は、1月22日にナレンドラ・モディ首相を迎えて盛大な建立式典が行われるヒンドゥー教寺院だ。このラム寺院が建設された場所には、1992年にヒンドゥー教過激派に破壊されるまで、約500年にわたりモスク(イスラム礼拝所)があった。 【動画】ラム寺院の建立式典を訪れたナレンドラ・モディ首相) 寺院建設の中心となったヒンドゥー至上主義組織「世界ヒンドゥー評議会(VHP)」の広報担当者シャラド・シャルマは、ラム寺院が「世界のヒンドゥー教徒にとって最大の聖地になる。われわれにとってのバチカン(カトリック教会の総本山)だ」と語った。 大論争を巻き起こす過激な措置を打ち出しては、反対意見に耳を貸さずに「公約実現」を貫き、与党・インド人民党(BJP)の支持者を満足させる──。これはモディが首相として過去10年間やってきたアプローチそのものだ。 インド最高裁判所は2019年、アヨディヤで破壊されたバブリ・モスクの跡地を事実上政府の管轄とする判決を下して、ラム寺院建設に道を開いた。同時に裁判所は、目立つ場所にモスク再建の手配をするよう行政に促した。 ところが地元当局が提案した再建場所は、バブリ・モスクがあった場所から約25キロも離れた僻地だった。資金的な支援もないため、建設工事は始まってもいない』、「このラム寺院が建設された場所には、1992年にヒンドゥー教過激派に破壊されるまで、約500年にわたりモスク(イスラム礼拝所)があった・・・寺院建設の中心となったヒンドゥー至上主義組織「世界ヒンドゥー評議会(VHP)」の広報担当者シャラド・シャルマは、ラム寺院が「世界のヒンドゥー教徒にとって最大の聖地になる。われわれにとってのバチカン(カトリック教会の総本山)だ」と語った」、何と思い上がった発言だろう。宗教戦争を回避するためにも、宗教指導者の過激な発言を抑制させるような試みが必要だ。「バブリ・モスク」の「再建」に当たっては、国からの何らかの形での財政支援も必要だし、場所も便利なところにするべきだろう。
・『政教分離の慣例はどこへ  アヨディヤがあるウッタルプラデシュ州は、インドで最も人口が多い州で、モディの盟友ヨギ・アディティアナートが州首相を務める。ラム寺院は「文化、精神、社会の一致」の象徴になるとアディティアナートは言うが、実際には不一致を悪化させそうだ。 モディはこれまでにも現代インドの政教分離の慣例を破り、あからさまなヒンドゥー至上主義的な政策を取ってきた。その第一歩が、19年のカシミールの自治権剝奪だった。さらに同年の改正国籍法では、アフガニスタンやバングラデシュなどからの避難民に市民権を付与するが、「イスラム教徒でないこと」を条件とするなど、イスラム教徒排除を明確にしてきた。) そして今、BJPが長年にわたり推し進めてきたラム寺院が建設された。厳密には完成していないのに建立式典が開かれた背景には、4月の総選挙に向けて熱狂的なヒンドゥー教徒にアピールしたいという意欲が見え隠れする。 その一方で、アヨディヤに来たモディは、インフラ整備計画を発表したり、ラーマ王子伝説と結び付けて貧困層救済を語るなど、「穏健なヒンドゥー至上主義」を示して支持基盤の拡大にも精を出した。 BJPは今度の選挙でも圧勝して、モディが首相として3期目を決めるのは確実とみられている。それでもモディは、「支持者を勢いづけ、批判派を怒らせる」ことで選挙に勝つという、試行錯誤の末に確立した成功戦術を今回も着実に踏襲している』、「モディは、「支持者を勢いづけ、批判派を怒らせる」ことで選挙に勝つという、試行錯誤の末に確立した成功戦術を今回も着実に踏襲している」、これは多民族・多宗教国家のインドにとって、極めて危険な賭けである。現在では弱体化した国民会議派は、政治的には宗教に中立を保っていた筈だ。ただ、モディ氏に「成功戦略」を変えさせ、政治的には宗教に中立を保たせるインセンティブが見当たらないのは、致命的だ。残念ながら、上手い処方箋を思いつかない。 
タグ:インド (その3)(「今世紀最悪」の列車事故 インドの鉄道安全事情 近年は件数減少 だが新安全装置整備は進まず、グローバルサウスの盟主インド モディ首相に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も、ヒンドゥー教寺院でモディが始める宗教戦争) 東洋経済オンライン さかい もとみ氏による「「今世紀最悪」の列車事故、インドの鉄道安全事情 近年は件数減少、だが新安全装置整備は進まず」 「データによると事故は減少傾向にあり、2016年以降はこのような大事故は起きていなかった・・・2017年度から5年間の安全基金(総額1兆ルピー=約1兆6990億円)を設けたことが安全指標の改善につながったため、5年間延長のうえさらに4500億ルピー(約7645億円)の資金が投入されている」、なるほど。 「主要都市を結ぶ昼行電車特急「バンデバラト・・・エクスプレス」、「デリー―ボパール間のみは時速160kmで走れるものの、その他の区間は時速110~130km運行に制限されている。さらなる高速化が期待されるが、従来型の優等列車・・・の平均時速は50.6km、近郊電車は同37.5km、普通列車は同33.5kmだという。インドの既存客車列車の速度からすれば、圧倒的に速い」、なるほど。 「運行本数の多い区間に欧州の信号保安システムETCSレベル2水準とされる「Kavach」と称する安全システムの導入を進めている。これはインド国鉄が産業界と共同で開発した”最先端のシステム”とされ、運転士が速度制限を守らなかった場合、自動的にブレーキをかけたり、列車が接近しすぎた場合に衝突を防止したりするものだ。 ただ整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる。Kavachシステムの整備はモディ政権が掲げた「自立したインド」の一環として行われているが、今回事故が起きた路線には「Kavachシステムはない」(鉄道省広報官)・・・整備の進展はこれからで、2022~2023年度にかけての導入目標も2000kmにとどまる」、安全重視の鉄道整備を期待したい。 ダイヤモンド・オンライン 山中俊之氏による「グローバルサウスの盟主インド、モディ首相に「拷問」「差別」「弾圧」で批判の声も」 「「ガーンチ」という下位カーストの出身・・・6歳から家業であるチャイ売りを手伝い始めたモディ氏。若くしてヒンズー至上主義組織に入り、雑用から始めて徐々に頭角を現した。その後、インド人民党に入党すると37歳で出身地であるグジャラート州議会議員、51歳でグジャラート州首相に就任。そして、グジャラート州首相の実績が評価され、総選挙を経て14年に63歳でインド首相に上り詰めた」、並外れた実力があったのだろう。 「米国など西側諸国とも、ロシアなど反西側諸国とも、したたかに付き合っていく外交姿勢・・・モディ首相はプーチン大統領に対して、ウクライナ情勢を巡り「今は戦争の時代ではないと思う」などと、率直な懸念を伝えた。プーチン大統領としては、味方だと思っていたモディ首相から厳しい言葉を突き付けられた形だ・・・グローバルサウスに明確な定義はないが、東南アジアやアフリカ、中南米などの新興国や途上国を指す・・・ 同会合は最終的に125カ国が参加する規模となった・・・グローバルサウスの盟主としての立場を確立」、外交は見事だ。 「インド軍は、イスラム教徒が多いカシミール地方において、過剰な拘束や拷問を行っていると指摘・・・移民への市民権授与に関して、イスラム教徒を除外するなど差別的な対応を取っているとも。加えて、ジャーナリストや人権活動家への弾圧も問題視されている・・・モディ首相の動向は、光と陰の両面で見ていくことが重要だ」、その通りだ。 Newsweek日本版 マイケル・クーゲルマン氏による「ヒンドゥー教寺院でモディが始める宗教戦争」 「このラム寺院が建設された場所には、1992年にヒンドゥー教過激派に破壊されるまで、約500年にわたりモスク(イスラム礼拝所)があった・・・寺院建設の中心となったヒンドゥー至上主義組織「世界ヒンドゥー評議会(VHP)」の広報担当者シャラド・シャルマは、ラム寺院が「世界のヒンドゥー教徒にとって最大の聖地になる。われわれにとってのバチカン(カトリック教会の総本山)だ」と語った」、何と思い上がった発言だろう。宗教戦争を回避するためにも、宗教指導者の過激な発言を抑制させるような試みが必要だ。 「バブリ・モスク」の「再建」に当たっては、国からの何らかの形での財政支援も必要だし、場所も便利なところにするべきだろう。 「モディは、「支持者を勢いづけ、批判派を怒らせる」ことで選挙に勝つという、試行錯誤の末に確立した成功戦術を今回も着実に踏襲している」、これは多民族・多宗教国家のインドにとって、極めて危険な賭けである。現在では弱体化した国民会議派は、政治的には宗教に中立を保っていた筈だ。 ただ、モディ氏に「成功戦略」を変えさせ、政治的には宗教に中立を保たせるインセンティブが見当たらないのは、致命的だ。残念ながら、上手い処方箋を思いつかない。
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トランプ(その50)(「もしトラ」でガザ・ウクライナは見殺し?韓国も危機?トランプ再選リスク検証【池上彰・増田ユリヤ】、トランプ復活ほぼ確実?「もしトラ」で日本が襲われる3つの悪夢とは) [世界情勢]

トランプについては、2020年10月21日に取上げた。今日は、(その50)(「もしトラ」でガザ・ウクライナは見殺し?韓国も危機?トランプ再選リスク検証【池上彰・増田ユリヤ】、トランプ復活ほぼ確実?「もしトラ」で日本が襲われる3つの悪夢とは)である。

先ずは、本年1月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏と増田ユリヤ氏による「「もしトラ」でガザ・ウクライナは見殺し?韓国も危機?トランプ再選リスク検証【池上彰・増田ユリヤ】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337726
・『ウクライナ戦争に続いてガザ紛争が起こり、国際情勢は混迷を極めているが、2024年はどんな年になるのか。ジャーナリストの池上彰氏と増田ユリヤ氏に聞いた』、興味深そうだ。
・『トランプ氏の大統領返り咲きで最も打撃を受けるのはパレスチナ  増田 ロシアによるウクライナ侵攻は間もなく開始から2年目に突入し、イスラエルとハマスの争いも、3カ月目に入りました。2024年はどのような年になるでしょうか。 池上 何と言っても注目は「もしトラ」でしょう。「もしトラ」は、24年11月の米大統領選挙で「もしトランプ前大統領が再び大統領に返り咲いたら」を略した言葉です。 増田 「もしドラ」(岩崎夏海著『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』の略称)をもじったものですね。 池上 はい。米国政治は国際情勢の全てに影響を及ぼしますから、24年を占う上で米大統領選の動向は外せません。 増田 このまま「もしトラ」が実現したら、最も打撃を受けるのはパレスチナ。在職中に在イスラエル米大使館をエルサレムに移したトランプ氏ですから、情勢の悪化は避けられません。そもそもバイデン政権でも、イスラエルを制止することはできていませんが。 池上 イスラエル政府とパレスチナ当局は23年11月下旬、戦闘を7日間休止しました。それも程なく再開され、ガザ地区の被害は拡大する一方です。12月8日には国連安全保障理事会で即時停戦案の採決があり、15の理事国のうち日本やフランスなど13カ国が賛成したにもかかわらず、米国が拒否権を発動し、否決されました。 増田 ましてやトランプ政権が実現したら、一体どうなるのか……。 池上 イスラエルの動向は、米国国内のユダヤ人たちの意向にも影響を与えます。米国のユダヤ人は、国内の政局に大きな影響力を持っており、民主党であれ共和党であれ、献金や票で力を持つユダヤ人社会を無視することはできません。これまで何度も米大統領選挙を取材しましたが、民主党と共和党、どちらの大会でも「われわれはイスラエルと共にある」という旗が掲げられたり、缶バッジが売られたりしています。 増田 ただ今回は、米国国内も一枚岩ではありません』、「「民主党と共和党、どちらの大会でも「われわれはイスラエルと共にある」という旗が掲げられたり、缶バッジが売られたりしています」、なるほど。
・『即時停戦を支持する若者がバイデン不支持でトランプがリード  池上 米大統領選候補の支持率で見ると、ハマスとイスラエルの軍事衝突が起きる前はバイデン氏がわずかながらトランプ氏をリードしていました。しかしその後、民主党ではイスラエル支持派と即時停戦派で割れたため、イスラエル寄りの立場を示すバイデン氏の支持は、特に若い世代の間で低下しています。パレスチナ情勢の悪化で、トランプ氏が僅差ながらバイデン氏をリードする事態になりました。 増田 即時停戦を支持する若者の反応は、パレスチナを見殺しにするなという、当然の反発ですよね。しかしそれがバイデン氏の支持率をそぎ、結果的にトランプ氏が浮上するというのは何とも皮肉です。 イスラエル当局は「ハマス殲滅」を大義名分に、一般市民も大量に殺害しています。市民を「人間の盾」にしているのはハマスであり、悪いのはハマスである、だからハマスを殲滅するまで攻撃をやめないというのがイスラエルの論理です。 池上 イスラエル軍のコンリクス報道官が、ガザでハマスの戦闘員1人につき約2人の民間人が死亡したことに対して「(テロリストとの市街戦としては)非常に良い割合だ」と発言して物議を醸しているのは当然でしょう。 増田 米国在住のユダヤ人の中にもイスラエルのガザへの攻撃を非難し、即時停戦を求めてデモを行っている人もいます』、「民主党ではイスラエル支持派と即時停戦派で割れたため、イスラエル寄りの立場を示すバイデン氏の支持は、特に若い世代の間で低下しています。パレスチナ情勢の悪化で、トランプ氏が僅差ながらバイデン氏をリードする事態になりました・・・即時停戦を支持する若者の反応は、パレスチナを見殺しにするなという、当然の反発ですよね。しかしそれがバイデン氏の支持率をそぎ、結果的にトランプ氏が浮上するというのは何とも皮肉です」、なるほど。
・『「もしトラ」ならウクライナ、韓国、NATOに影響  池上 とはいえ、戦闘が長引くのはイスラエルにとっても打撃です。働き盛りの世代が兵士として動員されていますから、経済は足踏み状態に陥っている。そのためイスラエルにとっても「戦闘は5カ月が限度」という指摘もあります。 また、この事態を違った視点で見ているのがウクライナです。ここまで欧米、特に米国からの支援を受けて何とかロシアに抵抗してきましたが、イスラエルとパレスチナの争いに世界の目が向き、ウクライナに対する関心や支援の度合いが低下しつつあることに焦りの色をにじませています。その上、トランプ氏はウクライナ支援を打ち切ると公言しています。 それだけではなく、「もしトラ」なら、米国の経済的な負担を減らすためにNATO(北大西洋条約機構)から脱退し、在韓米軍も撤退させる可能性があります。トランプ氏は在任時に韓国への貿易赤字に不満を持ち、在韓米軍を撤退させようとしたところ、ポンペオ国務長官(当時)が「2期目の優先事項にしましょう」と言って止めたという逸話がありますから。 増田 一方、トランプ氏の対抗馬として急浮上しているのが現在唯一の女性候補である共和党のニッキー・ヘイリー氏。トランプ政権で国連大使を務めましたが、現在はトランプ路線と距離を置いています』、「イスラエルとパレスチナの争いに世界の目が向き、ウクライナに対する関心や支援の度合いが低下しつつあることに焦りの色をにじませています。その上、トランプ氏はウクライナ支援を打ち切ると公言しています。 それだけではなく、「もしトラ」なら、米国の経済的な負担を減らすためにNATO・・・から脱退し、在韓米軍も撤退させる可能性があります。トランプ氏は在任時に韓国への貿易赤字に不満を持ち、在韓米軍を撤退させようとしたところ、ポンペオ国務長官(当時)が「2期目の優先事項にしましょう」と言って止めたという逸話がありますから」、なるほど。
・『今年は各国で選挙がめじろ押し  池上 「このままでは一蓮托生になる」とみて、任期途中で辞任しましたね。当時から「いずれ大統領選に出るつもりなのかな」と思っていましたが、案の定でした。ただ、有力な対抗馬とはいえトランプ氏とは支持率に大きな開きがあり、「もしトラ」の可能性は決して低くはありません。 24年は米大統領選以外にも国際的に注目される選挙がめじろ押し。1月13日には台湾の総統選挙が行われ、米国との連携を強める民進党の頼清徳氏が勝利しましたが、3月にはロシアの大統領選挙が予定されています。プーチン大統領は再選されるでしょう。ロシアが一方的に併合したウクライナの各州でも選挙が行われます。 増田 そして11月には米大統領選。「もしトラ」ならウクライナもガザも見殺しにされる可能性が高い。不安ばかり募りますが、明るいニュースはないのでしょうか。 池上 あえて挙げれば24年7月にあるパリオリンピック・パラリンピックでしょうか。工事の遅れで開催が危ぶまれている25年の大阪万博とは違って、安心して楽しめるのではないかと期待しています』、「米大統領選。「もしトラ」ならウクライナもガザも見殺しにされる可能性が高い・・・明るいニュースは・・・あえて挙げれば24年7月にあるパリオリンピック・パラリンピック・・・安心して楽しめるのではないかと期待しています」、「ウクライナもガザも見殺し」とはいまから覚悟しておく必要がありそうだ。

次に、1月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「トランプ復活ほぼ確実?「もしトラ」で日本が襲われる3つの悪夢とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337837
・『「もしトランプ大統領が再登場したら?」を意味する“もしトラ”という言葉がはやっています。正直なところ、トランプ政権復活の可能性はかなり高いです。「ほぼ確実」と言えるでしょう。それでも、 “もしトラ”では絶対にダメです。実現した場合、2025年には日本企業にもマズいことが起きるからです』、「トランプ政権復活の可能性はかなり高いです。「ほぼ確実」と言えるでしょう。それでも、 “もしトラ”では絶対にダメです。実現した場合、2025年には日本企業にもマズいことが起きるからです」、なるほど。
・『トランプが共和党候補としてバイデンに勝つ!? 「もしトラ」は確実に起こる  トランプ前大統領が、共和党の大統領候補を選ぶ二つ目のイベントとなるニューハンプシャー州の予備選挙で再び勝利しました。 候補者の対抗馬はすでに元国連大使のヘイリー氏一人に絞られていて、かつ、ヘイリー氏が緒戦でトランプ候補にもし勝てるとしたら唯一のチャンスは今回のニューハンプシャー州だと言われていました。 ヘイリー氏はこれまでニューハンプシャー州の選挙戦に実質的に注力してきたのですが、結果としてはトランプ候補54%、ヘイリー候補43%と勝つことはできませんでした。 とはいえ、ヘイリー候補の43%は善戦と言えるでしょう。この後、2月24日にヘイリー氏の地元であるサウスカロライナ州の予備選挙では少なくとも1勝できるはずで、候補選びの趨勢(すうせい)が決まるといわれている3月5日のスーパーチューズデーまで、わずかながらチャンスが残っている状況です。 その前提で、未来予測の専門家として断定させていただくことが二つあります。一つ目に、共和党の候補者はトランプ候補でほぼ決まりでしょう。 ここまでは、他の識者の方々も意見は同じだと思います。重要なのは二つ目で、11月の大統領選挙の本選でも間違いなくトランプ候補が、民主党現職のバイデン大統領に勝つでしょう。 世の中では、かつてのベストセラーの「もしドラ」にひっかけて「もしトラ」という言葉がはやっています。「もしトランプ大統領が再登場したら?」を意味する言葉です。言葉としては面白いのですが、未来予測の立場で言えば「もしトラ」ではダメです。 「まず確実にトランプ新大統領が誕生する前提で、2025年には日本企業にはマズいことが起きるだろう」ということが、現時点で一番蓋然(がいぜん)性が高い未来です。 この記事では前半で「なぜトランプ新大統領の誕生が確実なのか」を解説したうえで、後半では「まずトラ」、つまりトランプ大統領で日本企業はどうマズいことになるのかを予測してみたいと思います』、「「まず確実にトランプ新大統領が誕生する前提で、2025年には日本企業にはマズいことが起きるだろう」ということが、現時点で一番蓋然(がいぜん)性が高い未来です」、なるほど。
・『健康不安、スキャンダル、戦争がなければ トランプ政権の復活はほぼ確実  アメリカの大統領選挙は4年に一度行われ、二大政党である民主党と共和党の大統領候補が一騎討ちの形で選挙を戦います。その選挙は50州それぞれに割り当てられている選挙人の数を勝った候補が総取りするという一風変わった間接選挙で行われます。そのため過去何回か、アメリカ全体の総得票数では多かった候補が敗れるという結果も起きています。 この独特の大統領選挙の仕組みは、50州それぞれが独立国家のような権利を有するという歴史的な経緯から生まれた制度なのですが、建国250年もたつとそれなりに制度疲労が起きています。 簡単に説明すると、50州のうち40州前後の州は選挙をする前から民主党候補が勝つか共和党候補が勝つかはほぼ決まっているのです。 ざっくり言えば、東海岸と西海岸では民主党が強く、中央部の州では共和党が強い傾向があります。金融とITの強い州では民主党が強く、工業と農業が盛んな州では共和党が強いと言ったほうがより正確かもしれません。 つまり、アメリカの大統領選挙は残る少数の「激戦区」でどちらの候補が勝つかでバイデン大統領が再選されるのか、トランプ候補が返り咲きをするかが決まる。これが「制度疲労」の正体です。 この制度疲労の欠陥があるせいで、2024年の大統領選挙は比較的予想がつきやすい状態になっています。簡単に言えば、今のところ激戦区においてバイデン大統領がトランプ候補よりも支持率を大きく下げているのです。 民主党としてはバイデン大統領以外の候補が出てきたほうが、本当はトランプ候補に勝てる可能性があるのですが、現職の大統領が選挙に出ると言っている以上、民主党で別の候補が出てくることが難しいのです。 これが、トランプ新大統領復活の可能性が高いという根拠です。私は7割方、この予測が当たると思っていますが、この予測が覆る可能性としての不測の要素は3つあります。 (1)高齢のバイデン大統領、トランプ候補のどちらかに健康不安が発生する (2)同じく大統領候補に選ばれる前に政治的に致命的なスキャンダルが発生する (3)アメリカが本格的な戦争に巻き込まれる どれもありうるシナリオですが、その確率を考えても「まずトランプだろう」というのが現時点での未来予測ということです。 では、ここからは「まず確実にトランプ新大統領が誕生するとしたら、それは日本企業にとって何がどうマズいのか?」を考えてみたいと思います。 トランプ新大統領が誕生すれば、基本的にバイデン現大統領の政策の多くが否定されることになります。 原理原則としては「米国第一主義」「保護主義」「同盟軽視」が基本姿勢になるでしょう。その前提でこの記事では、特に重要な以下の3点について述べてみたいと思います。 (1)ウクライナ紛争およびガザ紛争への影響 (2)地球温暖化の後退 (3)米中の分断』、「ざっくり言えば、東海岸と西海岸では民主党が強く、中央部の州では共和党が強い傾向があります。金融とITの強い州では民主党が強く、工業と農業が盛んな州では共和党が強いと言ったほうがより正確かもしれません。 つまり、アメリカの大統領選挙は残る少数の「激戦区」でどちらの候補が勝つかでバイデン大統領が再選されるのか、トランプ候補が返り咲きをするかが決まる・・・激戦区においてバイデン大統領がトランプ候補よりも支持率を大きく下げているのです。 民主党としてはバイデン大統領以外の候補が出てきたほうが、本当はトランプ候補に勝てる可能性があるのですが、現職の大統領が選挙に出ると言っている以上、民主党で別の候補が出てくることが難しいのです。 これが、トランプ新大統領復活の可能性が高いという根拠です」、なるほど。
・『トランプ政権が復活→ウクライナ紛争終結 軍事予算増で欧州経済は停滞   まず最初に、今年11月にトランプ大統領が誕生した場合、そこでウクライナ紛争が終わる可能性があります。理由はウクライナの弾切れです。 ウクライナはこの2年間、欧米からの支援を受けて敢然とロシアに対抗してきたのですが、直近ではヨーロッパからの弾薬が枯渇しつつあり、戦線も膠着(こうちゃく)状態です。 頼みの綱はアメリカからの弾薬の支援ですが、トランプ大統領はビジネスマンですから、金銭的に割に合わないウクライナへの支援は大幅に縮小する可能性があります。 そうなるとゼレンスキー大統領はどこかの時点で、現実的に和平を模索する必要が出てくるでしょう。クリミア紛争のときと同様に、ウクライナはまた領土の一部をロシアに奪われた形での紛争終結を受け入れざるをえなくなります。 いい面としては、日本を含めた西側諸国とロシアのビジネスが再開することですが、悪い問題として紛争終結が欧州経済に与える影響があります。簡単に言えばロシアに対抗するためのEUないしはNATOの軍事配備増強が必要になり、その負担で欧州の実態経済が悪化することをある程度想定しておく必要があります。 一つわかりやすい例を挙げておきますと、2023年にドイツ経済がマイナス成長になったという事実があります。その主要な理由がドイツの法律にあります。政府の支出が大きくならないようにルールが決められていて、日本政府のようにじゃぶじゃぶと政策的な支出を増やすことができないのです。 日本は10年前の日銀の異次元緩和以降、逆に政治家がどんどん支出を増やしてプライマリーバランスが悪化していることが問題なのですが、それはまた別の問題として、ドイツおよびEUはどこかで政府予算を増やしたら、どこかを削らなければいけない。 つまり軍事予算が増える分、経済への支出が減り、結果として欧州経済が停滞する。これは欧州とのビジネスがある日本企業には大きなリスクになります。 ウクライナ紛争終結の問題はこれだけではありませんが、とにかく戦争終結で世の中の前提が大きく変わるというのが“まずトラ”(まず確実にトランプ新大統領が誕生する場合)で起こる最初の問題です』、「ドイツおよびEUはどこかで政府予算を増やしたら、どこかを削らなければいけない。 つまり軍事予算が増える分、経済への支出が減り、結果として欧州経済が停滞する。これは欧州とのビジネスがある日本企業には大きなリスクになります」、「ドイツやEU」にそんな厳しい財政ルールがあるとは初めて知った。
・『アメリカがパリ協定から離脱→日本の脱炭素投資が遅れ国際競争力ダウン  二番目が、アメリカが地球温暖化を抑止するパリ協定の枠組みから、また離脱するリスクです。これはEV(電気自動車)で出遅れている日本企業にとっては朗報だという側面はあるでしょう。しかし私はその影響が多岐にわたることで、事態はそれほど簡単ではないと捉えています。 悪い方の影響は二つあって、一つは日本企業がアメリカと協調して行ってきた脱炭素投資がはしごを外される危険性です。これはバイデン政権下で日本の自動車メーカーが投資をしてきたアメリカのEVと認められるための投資が無駄になるといった事柄がわかりやすい具体例でしょう。 もう一つは、このタイミングでアメリカとそれに追随する日本が脱炭素投資を緩めてしまうことで、2020年代後半に逆に日本に求められる脱炭素のハードルが大きく上がってしまうことです。ひとことで言えば、遅れが大きくなって国際競争力を下げてしまうリスクといえます』、「アメリカが地球温暖化を抑止するパリ協定の枠組みから、また離脱するリスクです。これはEV(電気自動車)で出遅れている日本企業にとっては朗報だという側面はあるでしょう。しかし私はその影響が多岐にわたることで、事態はそれほど簡単ではないと捉えています。 悪い方の影響は二つあって、一つは日本企業がアメリカと協調して行ってきた脱炭素投資がはしごを外される危険性です・・・もう一つは、このタイミングでアメリカとそれに追随する日本が脱炭素投資を緩めてしまうことで、2020年代後半に逆に日本に求められる脱炭素のハードルが大きく上がってしまうことです」、なるほど。
・『地政学リスクが大きくなり紛争リスクも本格化  三番目が、中国とアメリカのデカップリング(分断)です。これも現時点では熊本や千歳に半導体工場が建設されるなど日本経済にプラスの要素はあるのですが、当然のことながら日本経済の重要な取引先である中国市場との関係が悪化するのは、マイナス要因の方が大きいわけです。 悪いことに、今年から来年にかけて中国経済は不動産バブル崩壊の影響で非常に苦しい状況に陥ると予測されています。最悪の時期であるがゆえにトランプ新大統領は自信をもって中国たたきに出る可能性が高くなります。 その反作用で仮にグローバルサウスが中国寄りに動いたとしたら、日本がアメリカに追随することで日本は中国市場だけでなく、グローバルサウス市場でも立ち回りにくくなるという事態も想定しなければいけないでしょう。 そしてこれらのリスクを組み合わせると、四番目のリスクが浮かび上がります。トランプ新大統領誕生で、地政学リスクははるかに大きくなるのです。 これらの三つの変化によって、国同士の力関係が変化するのもリスクですが、それに加えて新たに高まる別の紛争リスクを考える必要が出てきます。 わかりやすい例を一つ挙げれば、イスラエルとアメリカの関係性が変わることで、イランをはじめとする中東諸国がイスラエルとハマス(あるいはパレスチナ)との戦争に参戦しやすくなる可能性があります。当然のことながら、もしそうなれば新たな中東戦争が勃発し、新たなオイルショックが起きる危険性が高まります』、「イスラエルとアメリカの関係性が変わることで、イランをはじめとする中東諸国がイスラエルとハマス(あるいはパレスチナ)との戦争に参戦しやすくなる可能性があります。当然のことながら、もしそうなれば新たな中東戦争が勃発し、新たなオイルショックが起きる危険性が高まります」、これは大変だ。
・『日本は「もしトラ」ではなく「まずトラ」を真剣に考えるべきだ  全体を総括すると、こういう話になります。トランプ新大統領が誕生する確率は高く、その結果、ロシア、欧州、中国、グローバルサウスそれぞれとアメリカとの関係性が大きく変わることになるでしょう。 日本政府はある程度、アメリカに追随するでしょうから、それぞれの国でビジネスを行う日本企業にとっては逆風も吹くわけです。 もちろんトランプ新大統領のアメリカ第一主義、保護主義、分断主義の恩恵をストレートに受けられる日本企業もあるとは思います。しかし状況がそれほど単純ではない日本企業の場合、今年の秋までに、自社にどのような悪影響が起きるのか、きちんとあぶり出したうえで、対策を考えておく必要があります。 その意味で「もしトラ」などと口にしているのは危険です。「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められているのです』、「トランプ新大統領が誕生する確率は高く、その結果、ロシア、欧州、中国、グローバルサウスそれぞれとアメリカとの関係性が大きく変わることになるでしょう。 日本政府はある程度、アメリカに追随するでしょうから、それぞれの国でビジネスを行う日本企業にとっては逆風も吹くわけです・・・「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められているのです」、「日本企業」にとって「「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められている」、準備はずいぶん大変そうだ。 
タグ:「イスラエルとパレスチナの争いに世界の目が向き、ウクライナに対する関心や支援の度合いが低下しつつあることに焦りの色をにじませています。その上、トランプ氏はウクライナ支援を打ち切ると公言しています。 それだけではなく、「もしトラ」なら、米国の経済的な負担を減らすためにNATO・・・から脱退し、在韓米軍も撤退させる可能性があります。 「民主党ではイスラエル支持派と即時停戦派で割れたため、イスラエル寄りの立場を示すバイデン氏の支持は、特に若い世代の間で低下しています。パレスチナ情勢の悪化で、トランプ氏が僅差ながらバイデン氏をリードする事態になりました・・・即時停戦を支持する若者の反応は、パレスチナを見殺しにするなという、当然の反発ですよね。しかしそれがバイデン氏の支持率をそぎ、結果的にトランプ氏が浮上するというのは何とも皮肉です」、なるほど。 「「民主党と共和党、どちらの大会でも「われわれはイスラエルと共にある」という旗が掲げられたり、缶バッジが売られたりしています」、なるほど。 池上 彰氏と増田ユリヤ氏による「「もしトラ」でガザ・ウクライナは見殺し?韓国も危機?トランプ再選リスク検証【池上彰・増田ユリヤ】」 ダイヤモンド・オンライン (その50)(「もしトラ」でガザ・ウクライナは見殺し?韓国も危機?トランプ再選リスク検証【池上彰・増田ユリヤ】、トランプ復活ほぼ確実?「もしトラ」で日本が襲われる3つの悪夢とは) トランプ 「日本企業」にとって「「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められている」、準備はずいぶん大変そうだ。 「トランプ新大統領が誕生する確率は高く、その結果、ロシア、欧州、中国、グローバルサウスそれぞれとアメリカとの関係性が大きく変わることになるでしょう。 日本政府はある程度、アメリカに追随するでしょうから、それぞれの国でビジネスを行う日本企業にとっては逆風も吹くわけです・・・「まずトラ」を前提に、生き残り戦略を考えることが今の経営者には求められているのです」、 「イスラエルとアメリカの関係性が変わることで、イランをはじめとする中東諸国がイスラエルとハマス(あるいはパレスチナ)との戦争に参戦しやすくなる可能性があります。当然のことながら、もしそうなれば新たな中東戦争が勃発し、新たなオイルショックが起きる危険性が高まります」、これは大変だ。 大きく上がってしまうことです」、なるほど。 「アメリカが地球温暖化を抑止するパリ協定の枠組みから、また離脱するリスクです。これはEV(電気自動車)で出遅れている日本企業にとっては朗報だという側面はあるでしょう。しかし私はその影響が多岐にわたることで、事態はそれほど簡単ではないと捉えています。 悪い方の影響は二つあって、一つは日本企業がアメリカと協調して行ってきた脱炭素投資がはしごを外される危険性です・・・もう一つは、このタイミングでアメリカとそれに追随する日本が脱炭素投資を緩めてしまうことで、2020年代後半に逆に日本に求められる脱炭素のハードルが 「ドイツおよびEUはどこかで政府予算を増やしたら、どこかを削らなければいけない。 つまり軍事予算が増える分、経済への支出が減り、結果として欧州経済が停滞する。これは欧州とのビジネスがある日本企業には大きなリスクになります」、「ドイツやEU」にそんな厳しい財政ルールがあるとは初めて知った。 激戦区においてバイデン大統領がトランプ候補よりも支持率を大きく下げているのです。 民主党としてはバイデン大統領以外の候補が出てきたほうが、本当はトランプ候補に勝てる可能性があるのですが、現職の大統領が選挙に出ると言っている以上、民主党で別の候補が出てくることが難しいのです。 これが、トランプ新大統領復活の可能性が高いという根拠です」、なるほど。 「ざっくり言えば、東海岸と西海岸では民主党が強く、中央部の州では共和党が強い傾向があります。金融とITの強い州では民主党が強く、工業と農業が盛んな州では共和党が強いと言ったほうがより正確かもしれません。 つまり、アメリカの大統領選挙は残る少数の「激戦区」でどちらの候補が勝つかでバイデン大統領が再選されるのか、トランプ候補が返り咲きをするかが決まる・・・ 「「まず確実にトランプ新大統領が誕生する前提で、2025年には日本企業にはマズいことが起きるだろう」ということが、現時点で一番蓋然(がいぜん)性が高い未来です」、なるほど。 「トランプ政権復活の可能性はかなり高いです。「ほぼ確実」と言えるでしょう。それでも、 “もしトラ”では絶対にダメです。実現した場合、2025年には日本企業にもマズいことが起きるからです」、なるほど。 鈴木貴博氏による「トランプ復活ほぼ確実?「もしトラ」で日本が襲われる3つの悪夢とは」 「米大統領選。「もしトラ」ならウクライナもガザも見殺しにされる可能性が高い・・・明るいニュースは・・・あえて挙げれば24年7月にあるパリオリンピック・パラリンピック・・・安心して楽しめるのではないかと期待しています」、「ウクライナもガザも見殺し」とはいまから覚悟しておく必要がありそうだ。 トランプ氏は在任時に韓国への貿易赤字に不満を持ち、在韓米軍を撤退させようとしたところ、ポンペオ国務長官(当時)が「2期目の優先事項にしましょう」と言って止めたという逸話がありますから」、なるほど。
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イスラエル・パレスチナ(その2)(今こそ「2国家解決」が現実的選択...どうしたら実現できるか?、「第3次世界大戦を避けたいならガザは信託統治するしかない」…イスラエル首相の暴走を阻止すべき理由 オスロ合意に立ち戻ってパレスチナ国家の設立を、ガザ地区の死者 過去24時間で200人近くに イスラエル軍の空爆と砲撃で、イスラエル ハマスの3分の2の戦闘部隊を壊滅=ネタニヤフ首相、フーシ派が米タンカーにミサイル発射 米大統領「空爆継続へ」) [世界情勢]

イスラエル・パレスチナについては、昨年12月9日に取上げた。今日は、(その2)(今こそ「2国家解決」が現実的選択...どうしたら実現できるか?、「第3次世界大戦を避けたいならガザは信託統治するしかない」…イスラエル首相の暴走を阻止すべき理由 オスロ合意に立ち戻ってパレスチナ国家の設立を、ガザ地区の死者 過去24時間で200人近くに イスラエル軍の空爆と砲撃で、イスラエル ハマスの3分の2の戦闘部隊を壊滅=ネタニヤフ首相、フーシ派が米タンカーにミサイル発射 米大統領「空爆継続へ」)である。

先ずは、昨年12月12日付けNewsweek日本版「今こそ「2国家解決」が現実的選択...どうしたら実現できるか?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/12/post-103213_1.php
・『<イスラエルとパレスチナの和平は、高尚な外交的理想であるばかりではない。21世紀の世界の平和と安定のために不可欠な政治的現実だ> 多くの幻想がもはや打ち砕かれた。イスラム組織ハマスによる10月7日の奇襲攻撃以前、イスラエルとパレスチナの数十年に及ぶ紛争は解決不能で、可能なのは対処することだけだと、第三者も当事者も考えるようになっていた。新たに芽生えた希望は、パレスチナ問題には触れずに、イスラエルが近隣アラブ諸国と和平を実現して外交関係を結ぶこと。パレスチナ人の関与も、パレスチナ国家の樹立もなしに、中東に平和をもたらせるのではないか──。 だが今では、そんな未来像は錯覚にすぎなかったとはっきりしている。 1947年、イギリスによるパレスチナ委任統治の終了が翌年に迫るなか、国連総会は当該地域をユダヤ人国家とアラブ人国家の2つに分けるというパレスチナ分割決議を採択した。だが48年にイスラエルが独立宣言を行った直後、近隣のアラブ連盟5カ国が宣戦布告し、第1次中東戦争が勃発。両者の争いは形を変えながら現在まで続いている。 紛争終結の選択肢は、今も昔もほとんど変わらない。理論的には、ヨルダン川と地中海の間の一帯をどちらかが制圧して勝利し、敗北側を追い出すのが1つの方法だ。しかし今の時代、そんなやり方が国際社会に通用するはずがない。ならば、唯一の道は双方が妥協して、緊密な経済関係で結ばれた2つの国家を創設することだ。75年以上前の国連決議は、同じ道筋を描いていた。 忘れられかけていた「2国家解決」は10月7日以降、パレスチナ自治区ガザで続く戦争と、果てしない中東紛争の完全な終結をめぐる議論において再浮上している。この新たな関心は、克服できないジレンマを前にした絶望の表出にすぎないのか。それとも、極度に困難とはいえ唯一の解決策を目指す真剣な姿勢の表れなのか』、「唯一の道は双方が妥協して、緊密な経済関係で結ばれた2つの国家を創設することだ。75年以上前の国連決議は、同じ道筋を描いていた。 忘れられかけていた「2国家解決」は10月7日以降、パレスチナ自治区ガザで続く戦争と、果てしない中東紛争の完全な終結をめぐる議論において再浮上している」、なるほど。
・『2国家解決がまともに取り上げられたのは、90年代前半のオスロ合意当時が最後だ。解決の日は驚くほど近いと大勢が信じたが、95年にイスラエルのラビン首相がナショナリストに暗殺され、期待は消えた。その後、継続の試みはあったものの、合意は形骸化。テロで相手を屈服させられると考えたパレスチナ側の歴史的誤算である第2次インティファーダ(反イスラエル闘争)が勃発し、和平プロセスは崩壊した。 以来、オスロ合意は「あり得た姿」の悲しい象徴と化し、2国家解決はかつてなく遠のいたようにみえる。テロや占領の圧迫を受け、急進派の圧力に押されて、双方が暴力と対決の道を突き進んできた。その頂点が10月7日の恐るべき民間人虐殺だ。) どうしたら今、2国家解決を実現できるか。何よりも、双方が互いの正当な主張を認めなければならない。イスラエルに安全保障面で譲歩を求めるべきではないし、パレスチナが独立国家という位置付けを諦め、ヨルダン川西岸地区でのイスラエル人の入植活動を受け入れられるはずがない。 現在の戦争が終わったとき、最も急ぐべきなのは和平プロセスの再生に向けて新たな枠組みを策定し、機能不全状態のパレスチナ自治政府を改革し、イスラエル指導部を入れ替えることだ。イスラエルのネタニヤフ首相率いる極右政権が存続する限り、和平プロセス再開の取り組みは、始まった時点で終わりになるのが目に見えている。 さらに、新たな和平プロセスには、信頼できる第三者による極めて大規模な軍事・政治・経済的援助が不可欠だ。オスロ合意当時と比べて、中東と世界全体の在り方は劇変している。もはやアメリカとEUだけでなく、中国の参加も必要になるだろう。 イスラエルとパレスチナの和平は、高尚な外交的理想であるばかりではない。21世紀の世界の平和と安定のために不可欠な政治的現実だ。[コピーライト]Project Syndicate』、「現在の戦争が終わったとき、最も急ぐべきなのは和平プロセスの再生に向けて新たな枠組みを策定し、機能不全状態のパレスチナ自治政府を改革し、イスラエル指導部を入れ替えることだ。イスラエルのネタニヤフ首相率いる極右政権が存続する限り、和平プロセス再開の取り組みは、始まった時点で終わりになるのが目に見えている。 さらに、新たな和平プロセスには、信頼できる第三者による極めて大規模な軍事・政治・経済的援助が不可欠だ。オスロ合意当時と比べて、中東と世界全体の在り方は劇変している。もはやアメリカとEUだけでなく、中国の参加も必要になるだろう。 イスラエルとパレスチナの和平は、高尚な外交的理想であるばかりではない。21世紀の世界の平和と安定のために不可欠な政治的現実だ」、その通りだ。

次に、昨年12月15日付けプレジデント 2023年12月29日号が掲載したビジネス・ブレークスルー大学学長の大前 研一氏による「「第3次世界大戦を避けたいならガザは信託統治するしかない」…イスラエル首相の暴走を阻止すべき理由 オスロ合意に立ち戻ってパレスチナ国家の設立を」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/76642
・『オスロ合意を反故にした身勝手なイスラエル  イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザへの攻撃が激化している。イスラエルとパレスチナの軍事衝突は、このまま他国を巻き込んで第三次世界大戦へと発展していくのか。それともイスラエルが矛を収めるのか。どちらに転ぶのか、現段階では予断を許さない。 今回、先に手を出したのはガザのイスラム組織ハマスだ。10月7日、ハマスの奇襲攻撃によってイスラエルは約1200人の死者を出し、約240人を人質に取られた。 自慢のアイアンドーム(防空システム)も奇襲攻撃の前には機能せず、狼狽したイスラエルはガザへの空爆を開始。また、人質奪還とハマス壊滅を目的に、地上侵攻作戦も展開している。 11月13日、ガザ当局はこれまでに1万1240人が同地で犠牲になったと発表した。イスラエルによる空爆・地上侵攻はハマスの本拠地があるとされるガザ北部に集中している。国連人道問題調整事務所の調査によると、ガザ北部では住宅の少なくとも45%が破壊・損壊されたという。 発表されているガザでの死者数と住宅の破壊状況のバランスには、違和感を覚える。ガザには約200万人のパレスチナ人が住んでいる。そのうちの半数が北部で暮らしていたとして、住宅の半分近くを失う攻撃があったにもかかわらず犠牲者が1万人強にとどまったのは不思議であり、計算が合わない。この数字の不釣り合いこそが、現地が混乱を極めている証左だろう。誰も被害の実態がつかめていないのだ。 ガザの死者のうち、4630人が子どもなのだ。少子化で苦しむ先進国と違い、貧しい地域は子どもの比率が高い。子どもの死者が多いことは確率的に不思議ではなく、おそらくイスラエルが子どもを意図的に狙って攻撃したわけではない。しかし、それでも世間的な印象は悪い。イスラエルの後ろ盾であるアメリカのユダヤ人社会でも、人道的観点から一時的な停戦を呼び掛ける声があがっている。ところが、イスラエルに手を緩める気配はなく、ネタニヤフ首相は「ハマスを根絶する」と息巻いている。 イスラエルとハマスの争いは、どちらが悪いとは一概に言いづらい。今回も歴史をどこまで遡るかによって見方が変わるが、ひとまず1993年のオスロ合意に立ち返るとわかりやすい。) オスロ合意は、それまでお互いの存在を認めていなかったイスラエル政府とPLO(パレスチナ解放機構)が、二国共存を目指して交わした協定だ。この合意でPLOはイスラエルを国家として承認して、イスラエルはPLOを自治政府として承認。さらにイスラエルは、ヨルダン川西岸やガザなどの占領地域から撤退することに合意した。 しかし、合意に反して、イスラエルはむしろパレスチナへのユダヤ人の入植を強化させた。オスロ合意でパレスチナの自治が承認されたのは、ヨルダン川西岸とガザの2つの地区だ。ヨルダン川西岸に関しては、イスラエル人の入植地とパレスチナ人の居住地が入り混じらずに分離している。イスラエルは2002年以降、自爆テロを防ぐという名目で巨大な分離壁を入植地の外周につくり、パレスチナ人が自由に往来できないようにした。分離壁はオスロ合意で定めた停戦ラインを越え、パレスチナ側にはみ出している。イスラエルの、明らかな国際法違反である。 一方、ガザはヨルダン川西岸地区と違って住民が分離されておらず、パレスチナ人の中にユダヤ人やその他の外国人が溶け込むようにして暮らしている。パレスチナの暫定自治政府はヨルダン川西岸にあり、ガザに対しては影響力をほとんど持っていない。暫定自治政府の代わりにガザを実効支配しているのが武装組織のハマスであり、入植をやめないイスラエルに対してテロを続けていたという構図だ』、「分離壁はオスロ合意で定めた停戦ラインを越え、パレスチナ側にはみ出している。イスラエルの、明らかな国際法違反である」、なるほど。
・『中東和平の第一歩はネタニヤフ首相の失脚だ  イスラエルとパレスチナの問題には、長く複雑な歴史がある。その長い歴史の中でもクリントン大統領を仲介役とし、国連の後押しを受けて成立したオスロ合意は、両者がもっとも歩み寄ることができた瞬間だった。オスロ合意が履行されていれば、今回のような大規模な戦闘は起きていなかった。気になるのは今後の展開だ。考えられるルートは2つある。一つは、第三次世界大戦につながる破滅の道だ。 イスラエルは現在、3つの勢力と直接的に衝突している。パレスチナのハマス、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派だ。このうちヒズボラは、今回のハマスの奇襲攻撃に呼応するようにしてイスラエルにミサイルを打ち込んだ。一方、フーシ派は航行中の日本郵船の貨物船を紅海で拿捕だほするなど、テロ活動を活発化させている。 イスラエルと直接的に衝突しているのはこの3つだが、これらの勢力を陰で支えているのがイランである。 イスラエルが問題の根を断つためイランと事を構えようとすると、衝突勢力が一気に拡大するおそれがある。たとえば、イスラエルがイランにミサイルや戦闘機で攻撃を仕掛けるとなると、ルート上にあるイラクが黙っていない。 スンニ派の盟主サウジアラビアも攻撃ルート上だが、同国はイスラエルと国交正常化交渉をしている。しかし、イランがシーア派だとはいえ、イスラエルに味方してアラブ世界から総スカンを食らうようなマネはしないだろう。現在は中立を表明しているトルコも、イスラム色を強めているエルドアン大統領はイラン支援に回るに違いない。 この混沌とした中東情勢に、ウクライナ戦争で孤立を深めているロシアが加われば、アメリカ・イスラエル対イラン・ロシアを軸とした第三次世界大戦へと発展するおそれがある。 ただ、このルートが地獄に続く道だということはどの国もわかっている。 アメリカには、アフガニスタンで味わった苦い記憶がある。9・11の首謀者と断定したオサマ・ビン・ラディンを匿かくまうタリバンを殲滅するため、01年にアフガニスタンへ派兵したが、目的を果たせぬまま21年に撤退したのだ。 内政的にイスラエル支援の姿勢を崩すことはないが、アフガニスタンと同じ展開が予想される対ヒズボラ戦に踏みこみたくないのがアメリカの本音だ。 ハマスらを支援するイランは経済的に余裕がない。また、ロシアは国内にユダヤ人を多く抱えている。イスラエルへの入植者は旧ソビエト連邦出身者が一番多いという事情もあって、反イスラエルの姿勢を明確にできないのだ。 現在前線で戦っている勢力以外は、どの国も世界大戦への移行を望んでいない。そろばんを弾けば割に合わないのだ。どんなに非合理でもやむにやまれず起きるのが戦争の一面なので楽観はできないが、世界がこの破滅ルートに進む可能性は低いだろう。 考えうるもう一つのルートが、ネタニヤフ首相の失脚と「ガザ暫定自治政府」の設立である。 ネタニヤフ首相はイスラエルの中では右寄りの政治家だ。しかし、イスラエルも右派一色ではなく、過去にはラビン、オルメルトなど、パレスチナ国家の成立を手伝おうとした穏健派の首相がいた。このまま戦闘が長期化して経済に悪影響を与え、イスラエルが国際的に孤立するようになれば、ネタニヤフ下ろしが現実味を帯びてくる』、「内政的にイスラエル支援の姿勢を崩すことはないが、アフガニスタンと同じ展開が予想される対ヒズボラ戦に踏みこみたくないのがアメリカの本音だ。 ハマスらを支援するイランは経済的に余裕がない。また、ロシアは国内にユダヤ人を多く抱えている。イスラエルへの入植者は旧ソビエト連邦出身者が一番多いという事情もあって、反イスラエルの姿勢を明確にできないのだ。 現在前線で戦っている勢力以外は、どの国も世界大戦への移行を望んでいない。そろばんを弾けば割に合わないのだ。どんなに非合理でもやむにやまれず起きるのが戦争の一面なので楽観はできないが、世界がこの破滅ルートに進む可能性は低いだろう・・・考えうるもう一つのルートが、ネタニヤフ首相の失脚と「ガザ暫定自治政府」の設立である。 ネタニヤフ首相はイスラエルの中では右寄りの政治家だ。しかし、イスラエルも右派一色ではなく、過去にはラビン、オルメルトなど、パレスチナ国家の成立を手伝おうとした穏健派の首相がいた。このまま戦闘が長期化して経済に悪影響を与え、イスラエルが国際的に孤立するようになれば、ネタニヤフ下ろしが現実味を帯びてくる」、「ネタニヤフ下ろしが現実味を帯びてくる」、これが実現してほしいものだ。
・『両陣営の埒外にいる国が信託統治すべき  とはいえ、穏健派が実権を握っても、ハマスがガザを実効支配したまま停戦するとは考えにくい。現実的には、ハマスを排除したうえでガザに暫定自治政府を設立するのがよいだろう。ヨルダン川西岸を治めるパレスチナ暫定自治政府にガザを治める力はないので、第三者の外国人部隊を入れて、新たな暫定自治政府をつくるのだ。 第一次世界大戦や第二次世界大戦のあと、ミクロネシアの島々は信託統治という形で外国政府が統治した。たとえばパラオは第一次世界大戦後に日本が国際連盟に委託されて統治し、第二次世界大戦後はアメリカが国際連合から任されて信託統治していた。その後、自治できる体制が整った後に独立し、94年にパラオ共和国となった。ガザも同じ方式で、段階的にパレスチナ国家の設立を目指せばよい。信託統治する国は国連が決めるが、アメリカではイスラエル贔屓びいきすぎてパレスチナ人が受け入れないだろう。これでは、ハマスが別の形で生き残り、凄惨なテロが続くことになる。 両陣営の埒らち外にいる国が信託統治すれば、パレスチナ人も納得するだろう。たとえばオスロ合意の延長線上で、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドの北欧4国。アメリカ追従の日本が信託統治に関わるのは難しいが、イスラムでも非アラブ圏のマレーシアやインドネシアなど、アジアの国々が関与することもありえる。 2つのルートのうち、流血がより少なくて済むのは信託統治のほうである。障害となるのは、ハマスを殲滅するまで継戦するつもりのネタニヤフ首相だ。今後、国際世論がネタニヤフ首相の失脚を後押しし、国連が信託統治を積極的に働きかけていくことが、イスラエルとパレスチナ、ひいては中東地域に平穏を取り戻す鍵になる』、「流血がより少なくて済むのは信託統治のほうである。障害となるのは、ハマスを殲滅するまで継戦するつもりのネタニヤフ首相だ。今後、国際世論がネタニヤフ首相の失脚を後押しし、国連が信託統治を積極的に働きかけていくことが、イスラエルとパレスチナ、ひいては中東地域に平穏を取り戻す鍵になる」、その通りだ。

第三に、12月30日付けNewsweek日本版「ガザ地区の死者、過去24時間で200人近くに イスラエル軍の空爆と砲撃で」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/12/24200-1.php
・『パレスチナ自治区ガザ中部へのイスラエル軍の進軍を背景に数万人のパレスチナ人がさらなる避難を余儀なくされる中、ガザでの空爆および砲撃による死者数は過去24時間で200人近くに上った。 ガザ保健当局によると、イスラエル軍の攻撃により過去24時間で187人のパレスチナ人が死亡。死者数はガザ人口の約1%に当たる合計2万1507人に達した。さらに数千人の遺体ががれきの下に埋もれている可能性がある。 住民によれば、イスラエル軍はここ2日で、ガザ中部の戦闘でブレイジの奥深くまで進軍し、東部の郊外では激しい戦闘が続いている。爆撃も特に激しく、隣接するヌセイラットやマガジも爆撃されているという。 パレスチナのメディアはヌセイラットへの攻撃で一晩で少なくとも35人が死亡したと報じた。 イスラエルのガラント国防相は、イスラエル軍はイスラム組織ハマスの司令部や武器庫に到達していると指摘。「われわれの作戦は戦争の目的を達成するために不可欠だ。われわれは敵対勢力の壊滅という結果を目の当たりにしている」と述べた』、「ガザ地区の死者、過去24時間で200人近く」とはすごい犠牲者数だ。「「われわれの作戦は戦争の目的を達成するために不可欠だ。われわれは敵対勢力の壊滅という結果を目の当たりにしている」と述べた」、腹立たしいが「イスラエル」の「勝利」は近いのだろうか。

第四に、本年1月19日付けロイター「イスラエル、ハマスの3分の2の戦闘部隊を壊滅=ネタニヤフ首相」を紹介しよう。
・『イスラエルのネタニヤフ首相は18日、パレスチナ自治区ガザにいるイスラム組織ハマスの戦闘部隊の約3分の2を壊滅させたとし、「完全勝利」まで戦争を続けると述べた。 記者会見で「戦闘には2つの段階がある。1段階目はハマスの部隊を壊滅させ、組織化された戦闘体制を破壊することだ」と指摘。「これまでで24部隊中16─17部隊を壊滅させた。その後、武装勢力の領土を一掃する段階がある。通常、1段階目はより短期に、2段階目はより長期になる」とした。 また、戦死したイスラエル軍兵士の写真を掲げながら、兵士の死は無駄ではないとし、ハマスが敗北し、ガザで拘束されている人質が解放されるまで戦闘を続けると強調。「勝利にはあと何カ月もかかるだろうが、われわれはそれを達成する決意だ」とした』、「1段階目のハマスの部隊を壊滅させ」るのは近そうだ。

第五に、1月19日付けロイター「フーシ派が米タンカーにミサイル発射、米大統領「空爆継続へ」」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/world/security/GAMWAZWKKNNJNLRMZG3LSIDHNQ-2024-01-19/
・『イエメンの親イラン武装組織フーシ派は18日、米国のタンカーに向けて対艦弾道ミサイル2発を発射した。米軍が明らかにした。ミサイルはタンカー付近の水域に落ちたが、負傷者や被害はなかったという。 米中央軍のX(旧ツイッター)への投稿によると、イエメン時間18日午後9時ごろにミサイルが発射された。 フーシ派は先に、アデン湾で米国の船舶「ケム・レンジャー」をミサイルで攻撃したと明らかにし、「命中」したと主張していた。  攻撃は、パレスチナ自治区ガザでイスラエルによる攻撃を受けているパレスチナ人との連帯を示すものとしている。 米国は先週、イエメンのフーシ派拠点に対する攻撃を開始。今週にはフーシ派を「特別指定国際テロリスト(SDGT)」に再指定した。 バイデン米大統領は18日、大統領専用機「エアフォースワン」内で記者団に、フーシ派の攻撃を止められないかもしれないが、フーシ派に対する空爆を継続すると表明。「(空爆は)フーシ派を止めているか。止めていない。フーシ派は続けるか。そうだ」と述べた』、米軍にとって「フーシ派拠点拠点」など物の数ではない筈だ。いくら「パレスチナ人との連帯」を示す狙いだったとしても、余りに馬鹿げた挑発をする戦略的意図が分からない。
タグ:イスラエル・パレスチナ (その2)(今こそ「2国家解決」が現実的選択...どうしたら実現できるか?、「第3次世界大戦を避けたいならガザは信託統治するしかない」…イスラエル首相の暴走を阻止すべき理由 オスロ合意に立ち戻ってパレスチナ国家の設立を、ガザ地区の死者 過去24時間で200人近くに イスラエル軍の空爆と砲撃で、イスラエル ハマスの3分の2の戦闘部隊を壊滅=ネタニヤフ首相、フーシ派が米タンカーにミサイル発射 米大統領「空爆継続へ」) Newsweek日本版「今こそ「2国家解決」が現実的選択...どうしたら実現できるか?」 「唯一の道は双方が妥協して、緊密な経済関係で結ばれた2つの国家を創設することだ。75年以上前の国連決議は、同じ道筋を描いていた。 忘れられかけていた「2国家解決」は10月7日以降、パレスチナ自治区ガザで続く戦争と、果てしない中東紛争の完全な終結をめぐる議論において再浮上している」、なるほど。 「現在の戦争が終わったとき、最も急ぐべきなのは和平プロセスの再生に向けて新たな枠組みを策定し、機能不全状態のパレスチナ自治政府を改革し、イスラエル指導部を入れ替えることだ。イスラエルのネタニヤフ首相率いる極右政権が存続する限り、和平プロセス再開の取り組みは、始まった時点で終わりになるのが目に見えている。 さらに、新たな和平プロセスには、信頼できる第三者による極めて大規模な軍事・政治・経済的援助が不可欠だ。 オスロ合意当時と比べて、中東と世界全体の在り方は劇変している。もはやアメリカとEUだけでなく、中国の参加も必要になるだろう。 イスラエルとパレスチナの和平は、高尚な外交的理想であるばかりではない。21世紀の世界の平和と安定のために不可欠な政治的現実だ」、その通りだ。 プレジデント 2023年12月29日号 大前 研一氏による「「第3次世界大戦を避けたいならガザは信託統治するしかない」…イスラエル首相の暴走を阻止すべき理由 オスロ合意に立ち戻ってパレスチナ国家の設立を」 「分離壁はオスロ合意で定めた停戦ラインを越え、パレスチナ側にはみ出している。イスラエルの、明らかな国際法違反である」、なるほど。 「内政的にイスラエル支援の姿勢を崩すことはないが、アフガニスタンと同じ展開が予想される対ヒズボラ戦に踏みこみたくないのがアメリカの本音だ。 ハマスらを支援するイランは経済的に余裕がない。また、ロシアは国内にユダヤ人を多く抱えている。イスラエルへの入植者は旧ソビエト連邦出身者が一番多いという事情もあって、反イスラエルの姿勢を明確にできないのだ。 現在前線で戦っている勢力以外は、どの国も世界大戦への移行を望んでいない。 そろばんを弾けば割に合わないのだ。どんなに非合理でもやむにやまれず起きるのが戦争の一面なので楽観はできないが、世界がこの破滅ルートに進む可能性は低いだろう・・・考えうるもう一つのルートが、ネタニヤフ首相の失脚と「ガザ暫定自治政府」の設立である。 ネタニヤフ首相はイスラエルの中では右寄りの政治家だ。しかし、イスラエルも右派一色ではなく、過去にはラビン、オルメルトなど、パレスチナ国家の成立を手伝おうとした穏健派の首相がいた。このまま戦闘が長期化して経済に悪影響を与え、イスラエルが国際的に孤立するようになれば、 ネタニヤフ下ろしが現実味を帯びてくる」、「ネタニヤフ下ろしが現実味を帯びてくる」、これが実現してほしいものだ。 「流血がより少なくて済むのは信託統治のほうである。障害となるのは、ハマスを殲滅するまで継戦するつもりのネタニヤフ首相だ。今後、国際世論がネタニヤフ首相の失脚を後押しし、国連が信託統治を積極的に働きかけていくことが、イスラエルとパレスチナ、ひいては中東地域に平穏を取り戻す鍵になる」、その通りだ。 Newsweek日本版「ガザ地区の死者、過去24時間で200人近くに イスラエル軍の空爆と砲撃で」 「ガザ地区の死者、過去24時間で200人近く」とはすごい犠牲者数だ。「「われわれの作戦は戦争の目的を達成するために不可欠だ。われわれは敵対勢力の壊滅という結果を目の当たりにしている」と述べた」、腹立たしいが「イスラエル」の「勝利」は近いのだろうか。 ロイター「イスラエル、ハマスの3分の2の戦闘部隊を壊滅=ネタニヤフ首相」 「1段階目のハマスの部隊を壊滅させ」るのは近そうだ。 ロイター「フーシ派が米タンカーにミサイル発射、米大統領「空爆継続へ」」 米軍にとって「フーシ派拠点拠点」など物の数ではない筈だ。いくら「パレスチナ人との連帯」を示す狙いだったとしても、余りに馬鹿げた挑発をする戦略的意図が分からない。
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香港(その8)(香港社会は今... 世界で報じられた民主化デモのその後、民主活動家・周庭氏亡命に香港行政トップが怒りを爆発させた3つの理由 東アジア「深層取材ノート」(第215回)、日本好きな「民主の女神」周庭さんが亡命できない スパイ天国・日本の残念な現状 勝丸円覚「インテリジェンス通信」第3回) [世界情勢]

香港については、2021年10月19日に取上げた。久しぶりの今日は、(その8)(香港社会は今... 世界で報じられた民主化デモのその後、民主活動家・周庭氏亡命に香港行政トップが怒りを爆発させた3つの理由 東アジア「深層取材ノート」(第215回)、日本好きな「民主の女神」周庭さんが亡命できない スパイ天国・日本の残念な現状 勝丸円覚「インテリジェンス通信」第3回)である。

先ずは、昨年5月6日付けNewsweek日本版が掲載したライターの西谷 格氏による「香港社会は今... 世界で報じられた民主化デモのその後」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/05/post-98630.php
・『<2019年6月から大規模なデモが続き、市民と香港政府の対立は激化した。今は表面的には落ち着きを取り戻したように見える> 香港では2019年6月から半年以上にわたって大規模なデモが続き、世界で連日報じられた。 そもそもの発端は、香港にいる犯罪者を中国本土に送ることが可能になる「逃亡犯条例改正案」に対する市民の反発だ。市民と香港政府の対立は激化し、双方の暴力行為がエスカレートした。 2020年に入るとコロナ禍によって集会が禁じられ、6月には反政府運動などを禁じる「国家安全維持法」が中国政府主導で強権的に施行される。言論の自由への制限が強まり、中国共産党を否定していた新聞は廃刊に追い込まれた。 そこまではニュースで見聞きした人も少なくないだろうが、その後の香港社会はどうなっているのか。 実態は、この状況にやむを得ず慣れ始め、表面的には落ち着きを取り戻したように見える。 香港民意研究所の世論調査に「一国二制度を信じる」と答えた人は、27%(2020年2月)から45.8%(2022年2月)まで回復。治安の悪化や経済的損失による疲弊や諦念が背景にある。 6月末には林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が退任する。5月8日に行われる次期選挙では、デモ鎮圧で香港警察を指揮した李家超(ジョン・リー)が中国の強い後押しを受けて当選確実に。 自由への締め付けがさらに強まると懸念されているが、もう以前ほどの反発は起こらないかもしれない』、新長官の「李家超」氏については、次の記事を参照されたいが、ますます中国本土の支配が強まっているようだ。

次に、本年12月7日付けJBPressが掲載したジャーナリストの近藤 大介氏による「民主活動家・周庭氏亡命に香港行政トップが怒りを爆発させた3つの理由 東アジア「深層取材ノート」(第215回)」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/78304#goog_rewarded
・『「私は現在、カナダのトロントに滞在しています。もう永遠に、香港には戻らないと決めました……」 12月3日、香港の民主活動グループ「香港衆志」で副事務局長を務めた周庭(Agnes Chow)氏(27歳)が、SNSで衝撃の「亡命宣言」を行った。その後、日本メディアなどのインタビューにも答え、香港の民主が大きく後退している現状を訴えたことから、世界的な話題を呼んでいる。 「恩を仇で返された。全力を挙げ逃亡犯をひっ捕らえる」 当の香港も、激震している。5日には、ついに香港トップの李家超行政長官が、「周庭問題」に言及。激しい怒りをぶちまけた。 「香港政府は全力を挙げて、国家の安全に危害を及ぼすいかなる逃亡犯をもひっ捕らえる。周庭は、外国もしくは境外の勢力と結託し、国家の安全に危害を与えた容疑で拘束された。そのような保護措置を放棄し、逃亡した人物に対して、警察は必然的に、全力でひっ捕らえる。 いかなる逃亡犯も、いますぐ自首することだ。そうでなければ終身、逃亡犯であり続け、終身追われる身となるだろう。 一部の逃亡犯は、誠実さを装い、言い訳をつけて同情をでっちあげ、自己を光り輝くよう見せようとしている。まったくもって恥ずべき行為だ。 香港警察は、本件で寛大な処置を試した。だが恩を仇で返されたのだ。最も失望しているのは、寛大な処置を担当した者たちだろう。香港警察は今回の経験を総括し、法規を有効にし、国家の安全の維持・保護を確保していく。そして糸を引いている外部勢力には、打撃を与えていく」) 前任の林鄭月娥行政長官が、5年間の任期中に、特定の香港人を名指しして、ここまで強烈に非難したのを、見たことがなかった。昨年7月1日に就任した李家超行政長官も、これまでは努めて、平静な行政運営を心掛けていたように見受けられる。 それがなぜ今回、ここまで怒りに満ちた発言をしたのか? そこには、3つの理由が背景として考えられる』、「李家超行政長官」が「ここまで怒りに満ちた発言をした」、「背景」をみてみよう。
・『「香港のプーチン」のメンツ丸潰れ  第一に、自身の警察官僚としてのメンツを潰されたことだ。 李家超行政長官は1957年12月、香港に生まれた。大卒のエリートではなく、1977年に19歳で香港警察に入った叩き上げだ。香港警察では長く諜報畑を歩き、1998年には800kgもの爆薬保管庫を摘発するなど、諜報員として実績を積んだ。まさに、ウラジーミル・プーチン露大統領の経歴と重なり、「香港のプーチン」との異名を取るゆえんである。 諜報員としての実績を評価され、2003年にはロンドンの王室防衛学院で研修を受けた。その後もトントン拍子で出世を重ね、2017年6月、初の叩き上げの諜報員出身者として、保安局長に就任した。この辺りから、習近平主席の目に留まっていく。 保安局長時代は、2019年6月に始まった大規模な民主派デモを取り締まった。この時、デモの中心にいた一人が、周庭氏だった。) 李保安局長は香港警察の指揮官として、デモ隊との「攻防戦」で、計6000人以上もの香港市民を拘束し、計1万発以上の催涙弾を撃ちまくった。周庭氏も逮捕、投獄され、最終的に2021年6月に出所した』、「李家超行政長官」は「「香港のプーチン」との異名」を取った、「保安局長」時代には、「香港警察の指揮官として、デモ隊との「攻防戦」で、計6000人以上もの香港市民を拘束し、計1万発以上の催涙弾を撃ちまくった。周庭氏も逮捕、投獄され、最終的に2021年6月に出所した」、なるほど。
・『「香港の守護神」と目されているのに  李局長は、民主派グループにとっては「悪の権化」だが、「中南海」(北京政府)にとっては「香港の守護神」と映った。二度と大規模デモを起こさせないため、2020年6月に、悪名高い香港国家安全維持法を制定したが、この新法制定に尽力したのも、李家超局長だった。 こうした「実績」により、習近平主席の「お墨付き」を経て、昨年7月1日に、他に誰も立候補者が出ない「異様な選挙」を経て、第6代行政長官に就任したのだ。就任式及び香港返還25周年祝賀会に参加するため、北京から訪れた習近平主席に対して、李新行政長官が平身低頭する姿が印象的だった。 このように警察官僚としての「民主化弾圧」が認められてトップに立ったという自負が、周庭氏の「カナダ亡命」によって打ち砕かれたのである』、「このように警察官僚としての「民主化弾圧」が認められてトップに立ったという自負が、周庭氏の「カナダ亡命」によって打ち砕かれたのである」、怒りはさぞかし激しそうだ。
・『すでにイエローカードを食らっている李家超氏  第二に、李行政長官が、ボスである習近平主席の怒りを恐れているということだ。 前述のような経緯で香港トップに上り詰めた李家超行政長官が見ているのは、750万香港市民というより、「中南海」の習近平主席である。習主席の覚えめでたくありたいと、常に考えているはずだ。いったん習主席の「寵愛」がなくなれば、外相だろうが国防相だろうが失脚するのは、周知の通りだ。 特に、ある香港人の話によると、李行政長官は習主席に対して、次のような「前科」があるという。 「昨年11月、タイのバンコクでAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議が開かれた際、李家超長官は、あろうことか習近平主席と会談した際に、新型コロナウイルスを移してしまったという噂が立った。李長官自身も、香港に戻って陽性反応が出て隔離された。それで翌12月に改めて北京を訪問し、習主席に直接詫びたと聞いた」 この証言がもし事実であれば、すでにこの時点で李長官は「イエローカード」である。それが「民主運動の首謀者」の一人がカナダに亡命し、「反習近平政権運動」でも展開すれば、これはもう「レッドカード」というわけだ』、「タイのバンコクでAPEC・・・首脳会議が開かれた際、李家超長官は、あろうことか習近平主席と会談した際に、新型コロナウイルスを移してしまったという噂が立った・・・この証言がもし事実であれば、すでにこの時点で李長官は「イエローカード」である。それが「民主運動の首謀者」の一人がカナダに亡命し、「反習近平政権運動」でも展開すれば、これはもう「レッドカード」というわけだ」、なるほど。
・『台湾にどう波及するか  第三の理由は、台湾問題だ。これは先日、台湾問題の専門家である吉村剛史・元産経新聞台北支局長から受けた指摘だ。吉村氏は、次のような見解を示した。 「1月13日に行われる台湾総統選挙まで、あと1カ月あまり。4年前の総統選挙に最も影響を与えたのは、香港情勢だった。香港政府と中国政府が香港の民主化運動を徹底的に弾圧したため、多くの台湾人が『台湾が香港の二の舞になるのはゴメンだ』として、中国に厳しい態度を取る蔡英文総統に投票したのだ。 同様に、今回もまた、台湾総統選挙の直前に、周庭さんが亡命した。当然ながら、台湾人も敏感に反応しており、総統選挙に一定の影響を与えるだろう。すなわち、与党・民進党の頼清徳候補(副総統・民進党主席)に有利に働くということだ」 周庭氏の今後の動向に注目したい』、「周庭さん亡命」には台湾人も敏感に反応しており、総統選挙に一定の影響を与えるだろう。すなわ円鏡ち、与党・民進党の頼清徳候補(副総統・民進党主席)に有利に働くということだ」、「総統選挙」動向に注目したい。

第三に、12月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したセキュリティコンサルタントの勝丸円覚氏による「日本好きな「民主の女神」周庭さんが亡命できない、スパイ天国・日本の残念な現状 勝丸円覚「インテリジェンス通信」第3回」を紹介しよう。
・『2020年に香港で逮捕され、カナダで亡命を表明した「民主の女神」こと周庭さん。メディアのインタビューに日本語で受け答えし、日本の音楽やアニメが好きだという彼女はなぜ日本を選ばなかったのか。元公安でセキュリティコンサルタントの勝丸円覚さんに「亡命先としての日本の現状」を解説してもらった。さらに、いまカナダにいる周庭さんが中国共産党から身の安全を守る方法をアドバイスしてもらった』、「周庭さん」は「亡命先としての日本」を冷静に見ていたからこそ、「いまカナダにいる」のだろう。
・『周庭さんが大好きな日本に亡命しなかった理由  周庭さんはカナダに事実上亡命して一生帰らないと宣言しました。亡命先としてカナダがふさわしいかどうかを説明します。 確かに言えることは、日本よりはカナダの方が亡命に向いているだろうということです。日本は亡命する国としてあまりふさわしくありません。まずは、日本に亡命しない方がいい理由を説明します。 一番の理由は、日本は亡命を積極的には受け入れない国だからです。亡命する人はもともと住んでいた国を何らかの理由で追われてきている人ですから、受け入れる側にも外交上のリスクがあります。ましてや周庭さんの場合は、中国を相手にすることになりますから、日本も摩擦を産みたくないと弱腰になってしまうでしょう。これは過去の事例から見てもそうです。移住するならまだしも、亡命となるとそもそも受け入れてもらえない可能性があります。 また、設備の面でも日本はカナダのように十分なものを提供できません。通常、亡命者を受け入れる際は、セーフハウスという安全が確保された住居と警備を提供する必要があります。これまで積極的に亡命を受け入れてこなかった日本には、そうした施設や警備を提供するノウハウ、過去の蓄積がほとんどありません。仮に日本が周庭さんを受け入れたとしても、安全が確保される保証はカナダより低くなります。 カナダはこれまでも多数の亡命者を受け入れてきているので、設備や警備の面では日本より優れていると言えます。今後、周庭さんにセーフハウスが提供される可能性が非常に高いです。 日本と比較した時のカナダの優位性については、説明した通りです。では、カナダが最も安全な国かと言うとそうではありません。たとえば、隣国のアメリカであれば、CIAやFBIがいるので、周庭さんを中国共産党から守るという目的であれば、アメリカの方がより優れていると言えます。) ではなぜアメリカを選ばなかったのでしょうか。カナダのほうが国籍やビザが取りやすかったのではないかと推測します。また、カナダは国籍ロンダリングでよく使われる国の一つです。国籍ロンダリングとは、主にアメリカ国籍などを取得する際にまずカナダ国籍を取得するというもので、中国のスパイの協力者などもよく使う手段です。 というわけで、より安全な国はあるものの、最初に亡命する国としてカナダは優れていて、少なくとも日本に来るよりは安全を確保しやすいということができます』、「亡命する人はもともと住んでいた国を何らかの理由で追われてきている人ですから、受け入れる側にも外交上のリスクがあります。ましてや周庭さんの場合は、中国を相手にすることになりますから、日本も摩擦を産みたくないと弱腰になってしまうでしょう。これは過去の事例から見てもそうです。移住するならまだしも、亡命となるとそもそも受け入れてもらえない可能性があります。 また、設備の面でも日本はカナダのように十分なものを提供できません。通常、亡命者を受け入れる際は、セーフハウスという安全が確保された住居と警備を提供する必要があります。これまで積極的に亡命を受け入れてこなかった日本には、そうした施設や警備を提供するノウハウ、過去の蓄積がほとんどありません」、なるほど。
・『中国政府から逃げる方法は「逃げないこと」?  カナダにも中国共産党の息がかかった人間は数多くいます。周庭さんに何らかの危害が加えられ、場合によっては不当に圧力をかけられるというようなケースも考えられます。彼女に身を守るためのアドバイスをするとすれば、自分の行動予定表を把握してくれる人を作ることを勧めます。おそらくカナダ政府が買って出ると思いますが。 さらに、活動を完全に隠すのではなく、オープンにする方が望ましいでしょう。なぜなら姿を隠してしまうことで、陰で危害が加えられる可能性もあるからです。通信社やメディアを使うのも一つの手ですが、SNSや個人メディアなどより手軽な手段で活動を発信し続けた方がいいでしょう。そうすることで、何かあったときに異変が公になるスピードが早まり、深刻な危害が加えられる可能性も少なくなります。 以前、アステラス製薬の社員が中国警察に身柄拘束されるという事件がありましたが、そのようなケースでも躊躇することなくすぐにメディアに情報を渡した方がいいです。なぜなら、中国政府は体裁をすごく気にするので、外国人を身柄拘束したことを公にすることで、闇から闇に葬り去れなくなるのです。したがって、周庭さんには、常に表に出続けるということを意識して欲しいです』、「活動を完全に隠すのではなく、オープンにする方が望ましいでしょう。なぜなら姿を隠してしまうことで、陰で危害が加えられる可能性もあるからです。通信社やメディアを使うのも一つの手ですが、SNSや個人メディアなどより手軽な手段で活動を発信し続けた方がいいでしょう。そうすることで、何かあったときに異変が公になるスピードが早まり、深刻な危害が加えられる可能性も少なくなります」、なるほど。
・『町中華やクリーニング店も? 日本にある中国の諜報網  周庭さんが亡命したカナダにも、そして我々が暮らす日本にも中国のスパイは数多くいます。中国は各国にいる留学生やビジネスパーソンを後から協力者としてリクルートします。各国の中国大使館は、その国にいる中国人の膨大なデータベースを持っていて、その中から協力者に適した人間を洗い出します。そして、在日中国大使館にも10名程度いるとされるスパイマスターと呼ばれるプロのスパイが、リクルーターを使って該当者を協力者としてスカウトする仕組みです。 スパイではない一般人をスパイ活動の協力者にしていくので、中国の諜報網は現地当局もすべてを把握することは難しい。 さらに、密告制度のようなものがあって、スパイの協力者たちは情報の質に応じて報酬を受け取ることができます。実際、公安時代に町中華やクリーニング店がその窓口になっていることを突き止めたことがあります。 京都大学名誉教授の中西輝政氏によると、オーストラリアには中国スパイとその協力者が数万人いたといいます。単純に人口比だけで考えれば、日本にはその5倍いてもおかしくない。オーストラリアの規模が5万人だとすると、25万規模の中国のスパイとその関係者がいても不思議ではありません。 こうした町中華などが情報を捕捉する投網式の諜報にだけでなく、加えて中国はピンポイントでピンポイントで諜報を仕掛ける方法があります。最近だと研究機関「産業技術総合研究所」に所属していた中国籍の研究者が、研究データを中国企業に流出させた事件がありました。そのときは、日本にいる中国人の膨大なデータベースの中から、「長くその会社で働いているこの人物がよさそうだ」などと狙いを定めて、情報を提供させる方法を取ることもあります。 各国にいる中国スパイの協力者が狙っているのは、企業機密や中国人に関する情報だけではありません。実は、日本人もターゲットにされる可能性があります。 たとえば、秋葉原に中国の警察の出先機関とされる「海外派出所」があったことが話題になりました。最優先の監視対象は中国人ですが、日本人でも中国のオウム真理教と言われる「法輪功の信者」とかウイグル弾圧に反対する中国人を支援している日本人なども監視されています。 このように皆さんの生活圏にも中国のスパイとその息がかかった協力者は潜んでいます。一般人の皆さんは直接危害を加えられることはありませんが、彼らの活動は日本にとって大きな損失をもたらしています。また、周庭さんのような特別な立場になると監視の目は一段と厳しくなるのは明らか。実際に香港政府トップが「自ら出頭しない限り、生涯にわたって追跡されることになる」と脅迫しています。世界のメディアは彼女の発信に継続して注目していかなければなりません。それが彼女を守ることにもつながります』、「各国の中国大使館は、その国にいる中国人の膨大なデータベースを持っていて、その中から協力者に適した人間を洗い出します。そして、在日中国大使館にも10名程度いるとされるスパイマスターと呼ばれるプロのスパイが、リクルーターを使って該当者を協力者としてスカウトする仕組みです。 スパイではない一般人をスパイ活動の協力者にしていくので、中国の諜報網は現地当局もすべてを把握することは難しい。 さらに、密告制度のようなものがあって、スパイの協力者たちは情報の質に応じて報酬を受け取ることができます。実際、公安時代に町中華やクリーニング店がその窓口になっていることを突き止めたことがあります、なるほど。「周庭さん」については、「香港政府トップが「自ら出頭しない限り、生涯にわたって追跡されることになる」と脅迫しています。世界のメディアは彼女の発信に継続して注目していかなければなりません。それが彼女を守ることにもつながります」、同感である。
タグ:JBPRESS 新長官の「李家超」氏については、次の記事を参照されたいが、ますます中国本土の支配が強まっているようだ。 西谷 格氏による「香港社会は今... 世界で報じられた民主化デモのその後」 Newsweek日本版 (その8)(香港社会は今... 世界で報じられた民主化デモのその後、民主活動家・周庭氏亡命に香港行政トップが怒りを爆発させた3つの理由 東アジア「深層取材ノート」(第215回)、日本好きな「民主の女神」周庭さんが亡命できない スパイ天国・日本の残念な現状 勝丸円覚「インテリジェンス通信」第3回) 香港 近藤 大介氏による「民主活動家・周庭氏亡命に香港行政トップが怒りを爆発させた3つの理由 東アジア「深層取材ノート」(第215回)」 「李家超行政長官」が「ここまで怒りに満ちた発言をした」、「背景」をみてみよう。 「李家超行政長官」は「「香港のプーチン」との異名」を取った、「保安局長」時代には、「香港警察の指揮官として、デモ隊との「攻防戦」で、計6000人以上もの香港市民を拘束し、計1万発以上の催涙弾を撃ちまくった。周庭氏も逮捕、投獄され、最終的に2021年6月に出所した」、なるほど。 「このように警察官僚としての「民主化弾圧」が認められてトップに立ったという自負が、周庭氏の「カナダ亡命」によって打ち砕かれたのである」、怒りはさぞかし激しそうだ。 「タイのバンコクでAPEC・・・首脳会議が開かれた際、李家超長官は、あろうことか習近平主席と会談した際に、新型コロナウイルスを移してしまったという噂が立った・・・この証言がもし事実であれば、すでにこの時点で李長官は「イエローカード」である。それが「民主運動の首謀者」の一人がカナダに亡命し、「反習近平政権運動」でも展開すれば、これはもう「レッドカード」というわけだ」、なるほど。 「周庭さん亡命」には台湾人も敏感に反応しており、総統選挙に一定の影響を与えるだろう。すなわ円鏡ち、与党・民進党の頼清徳候補(副総統・民進党主席)に有利に働くということだ」、「総統選挙」動向に注目したい。 ダイヤモンド・オンライン 勝丸円覚氏による「日本好きな「民主の女神」周庭さんが亡命できない、スパイ天国・日本の残念な現状 勝丸円覚「インテリジェンス通信」第3回」 「周庭さん」は「亡命先としての日本」を冷静に見ていたからこそ、「いまカナダにいる」のだろう。 「亡命する人はもともと住んでいた国を何らかの理由で追われてきている人ですから、受け入れる側にも外交上のリスクがあります。ましてや周庭さんの場合は、中国を相手にすることになりますから、日本も摩擦を産みたくないと弱腰になってしまうでしょう。これは過去の事例から見てもそうです。移住するならまだしも、亡命となるとそもそも受け入れてもらえない可能性があります。 また、設備の面でも日本はカナダのように十分なものを提供できません。通常、亡命者を受け入れる際は、セーフハウスという安全が確保された住居と警備を提供する必要があります。これまで積極的に亡命を受け入れてこなかった日本には、そうした施設や警備を提供するノウハウ、過去の蓄積がほとんどありません」、なるほど。 「活動を完全に隠すのではなく、オープンにする方が望ましいでしょう。なぜなら姿を隠してしまうことで、陰で危害が加えられる可能性もあるからです。通信社やメディアを使うのも一つの手ですが、SNSや個人メディアなどより手軽な手段で活動を発信し続けた方がいいでしょう。そうすることで、何かあったときに異変が公になるスピードが早まり、深刻な危害が加えられる可能性も少なくなります」、なるほど。 「各国の中国大使館は、その国にいる中国人の膨大なデータベースを持っていて、その中から協力者に適した人間を洗い出します。そして、在日中国大使館にも10名程度いるとされるスパイマスターと呼ばれるプロのスパイが、リクルーターを使って該当者を協力者としてスカウトする仕組みです。 スパイではない一般人をスパイ活動の協力者にしていくので、中国の諜報網は現地当局もすべてを把握することは難しい。 さらに、密告制度のようなものがあって、スパイの協力者たちは情報の質に応じて報酬を受け取ることができます。実際、公安時代に町中華やクリーニング店がその窓口になっていることを突き止めたことがあります、なるほど。「周庭さん」については、「香港政府トップが「自ら出頭しない限り、生涯にわたって追跡されることになる」と脅迫しています。世界のメディアは彼女の発信に継続して注目していかなければなりません。それが彼女を守ることにもつながります」、同感である。
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イスラエル・パレスチナ(その1)(イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」、、もはや「わざと戦争を長引かせて」政治生命の維持に固執するしかない ネタニヤフとその代償、イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質、ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に、「ホロコースト」の過去を持つドイツで いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増) [世界情勢]

今日は、イスラエル・パレスチナ(その1)(イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」、もはや「わざと戦争を長引かせて」政治生命の維持に固執するしかない ネタニヤフとその代償、イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質、ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に、「ホロコースト」の過去を持つドイツで いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増)を取上げよう。

先ずは、本年10月14日付け東洋経済オンラインが掲載した歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏による「イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/708392
・『パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織「ハマス」は10月7日、イスラエルへの大規模な奇襲攻撃を仕掛けた。イスラエルも応酬し、双方の死者は2000人を超えている。この衝突の背景に何があるのか。『サピエンス全史』著者でイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏(ヘブライ大学教授)の寄稿文を掲載する』、興味深そうだ。
・『「ホロコースト」を引き合いに出す事態  イスラエルの人々は今、自らが見舞われたばかりの出来事を必死に理解しようとしている。私たちはまず、今回の惨事を1973年のヨム・キプール戦争(第4次中東戦争)と比べてみた。50年前、エジプト軍とシリア軍が奇襲攻撃を仕掛け、イスラエルを立て続けに打ち負かしたが、その後、イスラエル国防軍が態勢を立て直して主導権を奪い返し、形勢を逆転させた。 だが今度の出来事は、いくつものキブツや集落で起こった大虐殺の恐ろしいニュースや画像が続々と届くにつれ、ヨム・キプール戦争とは似ても似つかないものであることに私たちは気づいた。新聞やSNSや家庭で、人々はユダヤ民族にとって最悪の時代を引き合いに出している。例えば、ホロコーストでナチスのアインザッツグルッペン(移動虐殺部隊)が村落を包囲してユダヤ人を殺害したときや、ロシア帝国でユダヤ人の大虐殺が行なわれたときのことだ。 私自身も、ベエリとクファル・アザのキブツに親族や友人がおり、ぞっとするような話を多く耳にしてきた。ハマスはこの2つのキブツを何時間も完全に掌握していた。テロリストたちは家を一軒一軒回り、組織的に家族を皆殺しにしたり、子供の目の前で親を殺したり、赤ん坊や老婆さえも人質に取ったりした。生き延びた人々は恐怖におののきながら、戸棚の中や地下室に身を隠し、軍や警察に電話をして助けを求めたが、多くの場合、救助隊が到着したときにはすでに手後れだった。) 私の99歳になる伯父と、その妻で89歳の伯母は、ベエリのキブツに住んでいる。そこがハマスの手に落ちて間もなく、まったく連絡がつかなくなった。2人は、何十人ものテロリストが暴れ回り、人々を惨殺している間、ずっと自宅で息を潜めていたそうだ。やがて私のもとに、2人が助かったという連絡があった。だが、多くの知人が人生で最悪の知らせを受け取った。 伯父夫妻はともに、たくましいユダヤ人だ。第1次世界大戦と第2次世界大戦の大戦間に東ヨーロッパで生まれ、ホロコーストですでに1つの世界を失っている。私たちは、身を守る術(すべ)のないユダヤ人たちが、ナチスの魔手を逃れるために戸棚の中や地下室に身を隠したが、誰も助けに来てくれなかったという話を聞いて育った。イスラエルは、このようなことが二度と起こらないようにするために建国された。 それにもかかわらず、なぜ今回の惨劇は起こったのか? イスラエルという国は、どうして道を見失ってしまったのか?』、「ハマスはこの2つのキブツを何時間も完全に掌握していた。テロリストたちは家を一軒一軒回り、組織的に家族を皆殺しにしたり、子供の目の前で親を殺したり、赤ん坊や老婆さえも人質に取ったりした。生き延びた人々は恐怖におののきながら、戸棚の中や地下室に身を隠し、軍や警察に電話をして助けを求めたが、多くの場合、救助隊が到着したときにはすでに手後れだった・・・イスラエルは、このようなことが二度と起こらないようにするために建国された。 それにもかかわらず、なぜ今回の惨劇は起こったのか? イスラエルという国は、どうして道を見失ってしまったのか?」、なるほど。
・『イスラエルの機能不全の真の原因は「ポピュリズム」  ある意味で、イスラエルの人々は長年の思い上がりの代償を払っているといえる。歴代の政権と多くの一般国民が、私たちはパレスティナ人よりもはるかに強い、彼らはあっさり無視できる、と感じていた。イスラエルがパレスティナ人との和解の試みを放棄し、何十年にもわたって数百万のパレスティナ人を占領下に置いてきたことは、厳しく非難されるべきだ。 破壊された建物の外にいるパレスチナ人住民。 だからといって、イスラム原理主義組織ハマスによる残虐行為は正当化できない。そもそもハマスは、イスラエルと平和条約を締結する可能性を容認したためしがなく、オスロ合意に基づく和平の進展を、ありとあらゆる手を使って妨げてきた。平和を望む者なら誰もが、ハマスを糾弾し、制裁を課し、人質全員の即時解放と、ハマスの完全な武装解除を要求しなくてはならない。 さらに、イスラエルにどれほどの責任を帰すことにしようと、それでこの国の機能不全を説明することはできない。歴史は道徳の物語ではない。イスラエルの機能不全の真の原因は、この国の不道徳とされているものではなく、ポピュリズム(大衆迎合主義)だ。何年にもわたって、イスラエルはポピュリズムの強権的指導者ベンヤミン・ネタニヤフが支配してきた。彼はPRの天才だが、首相としては無能だ。何度となく自分の個人的利益を国益に優先し、国民の内紛を誘うことでキャリアを築いてきた。能力や適性よりも自分への忠誠に基づいて人々を要職に就け、成功はすべて自分の手柄にする一方、失敗の責任はいっさい取らず、真実を語ることも耳にすることも軽んじているように見える。) ネタニヤフが2022年12月に樹立した連立政権は、最低であり最悪だ。それは、救世主メシア信仰の狂信者たちと厚顔無恥な日和見(ひよりみ)主義者たちの同盟であり、彼らは、治安状況の悪化をはじめ、イスラエルが抱える問題の数々を顧みず、際限なく権力を我が物にすることしか眼中になかった。その目標を達成しようと、極端な対立を招くような政策を採用し、その政策に反対する国家機関にまつわる言語道断の陰謀論を広め、国に忠誠を尽くすエリートたちに、「ディープステート(闇の政府)」の売国奴というレッテルを貼った。 政府は、外部からの脅威が高まっているさなかに、政策がイスラエルを危険にさらし、抑止力を損なっていると、自国の治安部隊や無数の専門家から繰り返し警告されていた。それにもかかわらず、イスラエル国防軍の参謀総長が、政府の政策が及ぼす治安上の影響についてネタニヤフに警告するために会見を求めると、ネタニヤフは会うことを拒んだ。それでもヨアヴ・ガラント国防相が警鐘を鳴らすと、ネタニヤフは彼の更迭を決めた。その後それを撤回せざるをえなくなったが、それは民衆が激しい怒りを爆発させたからにすぎない。ネタニヤフがそのような行動を長年取り続けたせいで、イスラエルが惨禍に見舞われる状況を招いたのだ。 イスラエルや、イスラエル=パレスティナ紛争をどう考えていようと、ポピュリズムがイスラエルという国家を蝕(むしば)んだことを、世界中の他の民主主義国家は教訓として受け止めるべきだ』、「イスラエルの人々は長年の思い上がりの代償を払っているといえる。歴代の政権と多くの一般国民が、私たちはパレスティナ人よりもはるかに強い、彼らはあっさり無視できる、と感じていた。イスラエルがパレスティナ人との和解の試みを放棄し、何十年にもわたって数百万のパレスティナ人を占領下に置いてきたことは、厳しく非難されるべきだ。 
・『依然として破局を防ぐことができる  イスラエルは、自らが破局を迎えることを依然として防ぐことができる。イスラエルは、ハマスをはじめ、多くの敵たちに対して今なお軍事面で圧倒的な優位に立っている。ユダヤ民族の長い苦しみの歴史の記憶が、今、国民を奮い立たせている。イスラエル国防軍その他の国家機関は、当初の衝撃から立ち直りつつある。市民社会は、かつてないような形で立ち上がり、政府の機能障害が残した多くの隙間を埋めている。市民は長蛇の列を成して献血し、交戦地帯からの避難民を自宅に喜んで受け入れ、食物や衣料、その他の必需品を寄付している。 助けが必要な今このとき、私たちは世界中の友人たちにも支援を呼びかけている。これまでのイスラエルの振る舞いには、とがめるべきことが多々ある。過去を変えることはできないが、ハマスに勝利した暁には、イスラエルの人々は現政権に責任を取らせるだけではなく、ポピュリズムの陰謀論やメシア信仰の幻想も捨て去り、そして、国内には民主主義を、国外には平和を、というイスラエル建国の理想を実現するために、誠実な努力をすることが願われてやまない。 (ユヴァル・ノア・ハラリ氏の略歴はリンク先参照)』、「平和を望む者なら誰もが、ハマスを糾弾し、制裁を課し、人質全員の即時解放と、ハマスの完全な武装解除を要求しなくてはならない。 さらに、イスラエルにどれほどの責任を帰すことにしようと、それでこの国の機能不全を説明することはできない。歴史は道徳の物語ではない。イスラエルの機能不全の真の原因は、この国の不道徳とされているものではなく、ポピュリズム(大衆迎合主義)だ。何年にもわたって、イスラエルはポピュリズムの強権的指導者ベンヤミン・ネタニヤフが支配してきた。彼はPRの天才だが、首相としては無能だ。何度となく自分の個人的利益を国益に優先し、国民の内紛を誘うことでキャリアを築いてきた。能力や適性よりも自分への忠誠に基づいて人々を要職に就け、成功はすべて自分の手柄にする一方、失敗の責任はいっさい取らず、真実を語ることも耳にすることも軽んじているように見える。) ネタニヤフが2022年12月に樹立した連立政権は、最低であり最悪だ。それは、救世主メシア信仰の狂信者たちと厚顔無恥な日和見(ひよりみ)主義者たちの同盟であり、彼らは、治安状況の悪化をはじめ、イスラエルが抱える問題の数々を顧みず、際限なく権力を我が物にすることしか眼中になかった。その目標を達成しようと、極端な対立を招くような政策を採用し、その政策に反対する国家機関にまつわる言語道断の陰謀論を広め、国に忠誠を尽くすエリートたちに、「ディープステート(闇の政府)」の売国奴というレッテルを貼った」、どうも筆者の「ネタニヤフ首相」に対するの評価はさんざんのようだ。

次に、12月7日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/719481
・『イスラエル軍によるガザ攻撃が再開され、状況の悪化がさらに深刻になっているイスラエル・ハマス紛争は、収束の道がまったく見えない状況が続いている。 そんな中、主要国の間で「イスラエルとパレスチナ国家が平和共存する」という「二国家解決案」が活発に議論され始めた。激しい戦闘のさなかに、互いに相手を国家として認めるという現実離れした夢物語のような話がなぜ今、国際社会で取り上げられているのか』、興味深そうだ。
・『パレスチナと認め合った30年前の「オスロ合意」  二国家解決案の歴史は古く、最初は1947年、独立を求めるユダヤ人とパレスチナ人の緊張が高まる中、国連が総会でこの地域を2つの国家に分割する案を採択した。 パレスチナは領土の半分以上を奪われる案だったために当然、反対したが、ユダヤ人はこの案を受け入れて翌年、イスラエルの独立を宣言した。ユダヤ人とパレスチナ人の緊張はここから一気に高まってしまった。 世界的に注目されたのは1993年の「オスロ合意」だった。 この合意でパレスチナ側を代表するパレスチナ解放機構(PLO)はイスラエルを国家として認め、イスラエルもガザとヨルダン川西岸にパレスチナ暫定自治政府を置くことを認めた。同時にイスラエル軍が占領地から撤退することも盛り込まれた。明文化されなかったものの、パレスチナ人が将来独立国家を手にすることが期待できる内容だった。) 当時、イスラエルがPLOをテロ組織と非難する一方で、PLOはイスラエルを国家と認めず激しく対立していた。にもかかわらず両者はノルウェーの首都、オスロを舞台に水面下で極秘の接触、交渉をしていたのだ。 残念ながらオスロ合意の描いた平和への道筋はわずか2年後、和平推進の中心人物だったイスラエルのラビン首相が暗殺されたためにあっけなく頓挫してしまった。 以後、イスラエルは和平に積極的だった労働党が国民の支持を失い、代わりにパレスチナに対する強硬論を掲げる右派が台頭してきた。現在のネタニヤフ首相もその勢力の一人で、極右政党や宗教政党と組んだ連立政権はイスラエル史上最も右派の政権と言われている』、「1993年の「オスロ合意」・・・でパレスチナ側を代表するパレスチナ解放機構(PLO)はイスラエルを国家として認め、イスラエルもガザとヨルダン川西岸にパレスチナ暫定自治政府を置くことを認めた。同時にイスラエル軍が占領地から撤退することも盛り込まれた。明文化されなかったものの、パレスチナ人が将来独立国家を手にすることが期待できる内容だった。) 当時、イスラエルがPLOをテロ組織と非難する一方で、PLOはイスラエルを国家と認めず激しく対立していた。にもかかわらず両者はノルウェーの首都、オスロを舞台に水面下で極秘の接触、交渉をしていたのだ。 残念ながらオスロ合意の描いた平和への道筋はわずか2年後、和平推進の中心人物だったイスラエルのラビン首相が暗殺されたためにあっけなく頓挫・・・以後、イスラエルは和平に積極的だった労働党が国民の支持を失い、代わりにパレスチナに対する強硬論を掲げる右派が台頭してきた。現在のネタニヤフ首相もその勢力の一人で、極右政党や宗教政党と組んだ連立政権はイスラエル史上最も右派の政権」、なるほど。
・『ガザの非人道的状況を国際社会は放置できない  一方のパレスチナ側はヨルダン川西岸とガザ地区が分裂し、ガザはイスラエルの存在を否定するハマスが支配し、イスラエルに対する攻撃やテロを続けている。オスロ合意にかかわったPLOのアラファト議長も死去し彼を引き継ぐ有力な指導者は登場していない。 イスラエルとパレスチナの間で和平の動きは完全に消えてしまい、国際社会も次第にパレスチナ問題に対する関心を失っていった。そればかりか同じ民族でパレスチナを支持していたアラブ諸国からは、イスラエルとの国交を樹立する国も相次ぎ、パレスチナ側は孤立感を深めていた。 そうした空気が今回のハマスのイスラエル攻撃で一変した。イスラエル軍による攻撃によって生まれたガザの非人道的状況を国際社会は放置できなくなった。かといってイスラエルやハマスの攻撃を止める手立てもない。 そこで浮上してきたのが「二国家解決案」である。) アメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相に繰り返し「二国家解決案が唯一の答えだ」と主張している。EU(欧州連合)のボレル外交安全保障上級代表をはじめ英仏など欧州の主要国首脳も相次いで二国家案の支持を表明している。 11月末には、スペインで開かれたアラブ・EU外相会合で、参加国は二国家解決案が必要という意見で一致した。さらに国連安保理の議論では、インドネシアやロシア、ガーナなども二国家解決案への支持を表明した。 多くの国が二国家解決論を唱えたからといって武力攻撃が止まるわけではない。にもかかわらずなぜ今、セピア色を帯びたような二国家解決案を持ち出したのだろうか』、「イスラエル軍による攻撃によって生まれたガザの非人道的状況を国際社会は放置できなくなった。かといってイスラエルやハマスの攻撃を止める手立てもない。 そこで浮上してきたのが「二国家解決案」である。) アメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相に繰り返し「二国家解決案が唯一の答えだ」と主張している。EU(欧州連合)のボレル外交安全保障上級代表をはじめ英仏など欧州の主要国首脳も相次いで二国家案の支持を表明している」、なるほど。
・『イスラエルに対して手を打てない国際社会  最大の理由は、イスラエルの攻撃がガザ市民の危機的状況を生み出していることに対し、国際社会はなにかメッセージを出さざるをえないためだろう。どの国の指導者もネタニヤフ首相の軍事行動やハマスの攻撃を止めることができない。また歴史的経緯もあって欧米など多くの国はイスラエルをあからさまに非難することもできない。 そんな中でイスラエルもパレスチナも一度は合意した二国家解決案は、一見説得力を持っているように見える便利な方策なのだ。 残念なことにオスロ合意から30年たち、パレスチナ問題をめぐる状況は大きく変化しており、仮に現在の紛争が停戦にこぎつけたとしても二国家解決案は簡単に実現しそうにはない。 オスロ合意を実現したイスラエルのラビン首相は、1991年の湾岸戦争時にイランがイスラエルにミサイルを発射し若者が逃げ惑う状況を見て、「紛争は自分たちの代に終わらせなければならない」と強く思ったという。和平実現に対する強い意志と情熱を持ったラビン首相がPLOのアラファト議長を説得したことで合意することができた。 それに対し現在のネタニヤフ首相は「パレスチナ国家樹立を阻止できるのは自分だけだ」などと公言している正反対の政治家だ。) そもそも二国家解決案は双方が互いに相手の存在を認めることが前提となる。しかし、イスラエルの現政権は、自国の安全のためにガザとヨルダン川西岸の占領や支配の強化、さらには一部の併合さえ主張している。これでは当事者が話し合いのテーブルにつくことさえ難しい。 またイスラエル政府はヨルダン川西岸でのユダヤ人による入植を積極的に進めている。現在、70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配している。その結果、パレスチナ人のエリアは飛び地でわずかに点在しているだけになっている』、「イスラエルの現政権は、自国の安全のためにガザとヨルダン川西岸の占領や支配の強化、さらには一部の併合さえ主張している。これでは当事者が話し合いのテーブルにつくことさえ難しい。 またイスラエル政府はヨルダン川西岸でのユダヤ人による入植を積極的に進めている。現在、70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配している。その結果、パレスチナ人のエリアは飛び地でわずかに点在しているだけになっている」、「ヨルダン川西岸・・・70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配」、そんなに支配が進んでいたとは初めて知った。
・『新たな対立を生むのか、入植の現状を追認するのか  仮にオスロ合意と同じようにヨルダン川西岸全域をパレスチナ国家にするとなれば、入植した70万人のユダヤ人は出ていくことになるのか。それは新たな対立を生むだけだ。だからと言って現状追認でパレスチナ人が住む飛び地だけを新しい国家とすれば、それはもはや国家としての体をなさない。 つまり入植地拡大が事実上、ヨルダン川西岸のパレスチナ国家樹立を不可能にしているのである。 またパレスチナ国家を作るとしても、現在のパレスチナ側にまともな統治主体がないことも大きな問題だ。 今回の紛争でガザ地区の統治を担っていたハマスは壊滅状態となるだろう。イスラエルは少なくともハマスによる統治は認めない。しかし、ハマスに代わる組織は想像すらできない。一方、ヨルダン川西岸を統治する立場にある暫定自治政府は、汚職と腐敗でほとんど当事者能力を失った状態にある。 統治主体なき国家はありえない。パレスチナ国家を作るためには、気の遠くなるような準備が必要になる。) さらにパレスチナ難民の扱いもある。近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえるといわれている。パレスチナ国家が独立すれば難民が戻ってくるのか。現在の人口をはるかに上回る難民の帰還は現実的ではない。 新たな国の安全保障はどうするのか。パレスチナ国家が独自に軍隊を持つことはイスラエルにとっては脅威そのものであり、簡単に認めることはできないだろう。 経済の面では、破壊し尽くされたガザの復興をはじめ、独自の産業も資本もないパレスチナ国家が自立できるまで、国際社会が膨大な支援を求められる。 そもそも国際社会はパレスチナ国家建設のための協力体制を構築できるのだろうか。ウクライナ戦争などで顕在化した欧米と中露の対立は、国連を機能不全に陥らせている。パレスチナ問題で欧米と中露が簡単に歩調を合わせることは想像しにくい』、「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえるといわれている。パレスチナ国家が独立すれば難民が戻ってくるのか。現在の人口をはるかに上回る難民の帰還は現実的ではない。 新たな国の安全保障はどうするのか。パレスチナ国家が独自に軍隊を持つことはイスラエルにとっては脅威そのものであり、簡単に認めることはできないだろう」、「「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえる」とはその扱いも重要だ。「経済の面では、破壊し尽くされたガザの復興をはじめ、独自の産業も資本もないパレスチナ国家が自立できるまで、国際社会が膨大な支援を求められる。 そもそも国際社会はパレスチナ国家建設のための協力体制を構築できるのだろうか・・・欧米と中露の対立は、国連を機能不全に陥らせている。パレスチナ問題で欧米と中露が簡単に歩調を合わせることは想像しにくい」、なるほど。
・『ガザばかりでなくヨルダン川西岸でも目立つ弾圧  かつては現実的な解決策だった二国家解決案は、30年の時を経ていまや手の届かない「理想」に変質してしまったのである。にもかかわらず多くの国がこの案を持ち出すのは、建設的な姿勢を見せるための方便としか見えない。 ガザでは連日、多くの犠牲者が出ているが、同時にあまり注目されていないがヨルダン川西岸でもイスラエル軍や入植者によるパレスチナ人への弾圧が目立っている。相互不信、憎悪の極限状態にある両者に任せても状況は改善されず、永遠にテロと武力攻撃が続くだけだ。だからと言って妙案があるわけではない。 紛争をイスラエルとハマスの問題に封じ込めないで、深刻な国際問題と認識し、国連など国際機関や主要国が連携して本気で取り組む段階にきている。主要国は二国家解決案などという夢物語でお茶を濁すのではなく、とにかくイスラエルに圧力をかけて戦闘を止めることから始めるべきであろう』、「主要国は二国家解決案などという夢物語でお茶を濁すのではなく、とにかくイスラエルに圧力をかけて戦闘を止めることから始めるべきであろう」、同感である。

第三に、12月8日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの長谷川 幸洋氏による「ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/120433?imp=0
・『テロ攻撃を1年以上前から把握  イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権は、イスラム過激派ハマスのテロ攻撃計画を1年以上も前から把握していたにもかかわらず、テロを防げなかった。ハマスを事実上、支援していた政権が、軍の情報と警告を無視したからだ。いったい、何が起きていたのか。 ネタニヤフ政権が「テロ計画を知っていた」という衝撃的な事実は、イスラエルの有力紙ハアレツが11月24日に報じた。それによれば、イスラエル軍は数年前に最初の兆候を入手し「1年以上前には、完全な攻撃計画が明らかになっていた」という。 ニューヨーク・タイムズは6日後の30日、攻撃計画の全容を報じた。同紙が入手した「ジェリコの壁」と呼ばれる文書によれば、ロケット砲による砲撃から始まり、ドローンで監視塔のカメラや自動機関銃を破壊、パラグライダーやオートバイ、徒歩で住民や兵士を殺害していく計画だった。 これは10月7日に実際に起きたテロと、ほとんど同じである。 文書は、イスラエル軍の規模や配置、通信連絡基点の場所も正確に記していた。イスラエル軍から機密情報が流出していた可能性も浮上している。イスラエルが、どうやって攻撃計画の文書を入手したか、も不明だ。双方のスパイが暗躍していたのかもしれない。 ハアレツやニューヨーク・タイムズが報じた背景には、ネタニヤフ政権に打撃になる内部告発が相次いでいた事情がある。 最初は、11月20日にハアレツが報じた女性兵士たちの告発だった。ガザ国境近くの監視塔で、ガザ内部の状況を監視カメラで警戒する女性偵察兵たちは、数カ月前から「異変」に気づいていた』、「ネタニヤフ政権は、イスラム過激派ハマスのテロ攻撃計画を1年以上も前から把握していたにもかかわらず、テロを防げなかった。ハマスを事実上、支援していた政権が、軍の情報と警告を無視したからだ」、思いがけないニュースだ。
・『軍事情報機関研究部門の責任者が暴露  男たちが監視塔や戦車の模型をドローンで攻撃したり、国境フェンスまで走って何分かかるか、ストップウオッチで測っていた。戦車の兵隊を拘束するリハーサルもしていた。また、高級車に乗ってやってきた覆面姿のハマス高官と思しき男たちが、現場で何かを相談している様子も目撃された。 彼女たちは上層部に異変を報告したが、無視されてしまった。 それだけではない。軍はテロ前夜、国境を守る特殊部隊を増強したが、最前線にいる彼女たちには、それを連絡しなかった。結果的に、彼女たちは無防備のまま、テロに遭遇し、数十人が殺されたり、誘拐されたりしてしまった。彼女たちは、そんな一部始終を匿名でハアレツに暴露したのである。 記事は反響を呼んだ。 米メディア、ポリティカ欧州版は翌21日、ハアレツの記事を引用する形で、女性偵察兵たちの告発を報じた。イスラエルの軍事情報機関研究部門の責任者であるアミット・サール准将は、実名でハアレツの取材に応じて「自分はネタニヤフ首相にイランやイスラム過激派ヒズボラ、ハマスが攻撃してくる可能性を警告していた」と暴露した。 彼は、ネタニヤフ政権が当時、進めていた大掛かりな司法改革が、ハマスにとって攻撃の絶好のチャンスであり「パーフェクト・ストーム(完全な嵐)になる」と警告していた。最高裁の機能を弱める司法改革案は、イスラエルの国論を2分し、大規模な反対デモが連日、繰り広げられていた。それが「敵の攻撃を招く」とみたのだ。 11月24日には、敵の軍事ドクトリンを分析する専門部隊、8200部隊の下士官も、内部告発に加わった。彼女はハアレツに匿名で「自分はハマスの意図を警告する報告書を3通書いた」と訴えた。こうした流れのなかで、冒頭に紹介した「イスラエルは1年以上前から、ハマスの攻撃を知っていた」という特ダネが出てきたのだ。これも内部告発に基づく情報とみていいだろう。 ネタニヤフ政権は、なぜ現場から上がっていた情報を無視したのか。 攻撃計画を報じたニューヨーク・タイムズは「当局が『ハマスには実行する能力がなく、計画は希望的なものだ』とみて退けていた」と報じている。 だが、本当の理由はそれだけではない』、「ネタニヤフ政権が当時、進めていた大掛かりな司法改革が、ハマスにとって攻撃の絶好のチャンスであり「パーフェクト・ストーム(完全な嵐)になる」と警告していた。最高裁の機能を弱める司法改革案は、イスラエルの国論を2分し、大規模な反対デモが連日、繰り広げられていた。それが「敵の攻撃を招く」とみたのだ・・・ネタニヤフ政権は、なぜ現場から上がっていた情報を無視したのか。 攻撃計画を報じたニューヨーク・タイムズは「当局が『ハマスには実行する能力がなく、計画は希望的なものだ』とみて退けていた」と報じている。 だが、本当の理由はそれだけではない」、「本当の理由」は何なのだろう。
・『ハマスを支援していたネタニヤフ政権  ネタニヤフ政権は事実上、ハマスを支援していたのである。それは、テロ攻撃の前から指摘されていた。たとえば、ニューヨーク・タイムズの著名コラムニスト、トーマス・フリードマン氏は2021年5月16日のコラムで、こう書いている。 〈ハマスとビビ(注・ネタニヤフの愛称)は会話していない。会話する必要がない。彼らはお互いが権力の座にとどまるために、必要としているものを理解しており、意識的であれ、無意識であれ、彼らはそれを相手に提供しようとしている〉 〈過去12年間、ビビは「ハマスを維持する一方、パレスチナ自治政府(PA)を弱体化して分断する」という使命を抱いていた。そうすれば、米国の議会で「私は平和を愛している。だが、あちら側には相手がいない。パレスチナ人は弱体化して分裂している」と言えるからだ〉 〈ハマスにも「ネタニヤフを権力の座にとどめる」という使命があった。そうすれば、ハマスとイランにいる支持者たちは、欧州やリベラルな大学のキャンパス、メディア、民主党などにいる脳天気な支持者たちに向かって「問題はハマスではない。酷いイスラエルのネタニヤフ政権なのだ」と言えるのだ〉 つまり、ネタニヤフ政権は「ハマスとPLO=パレスチナ自治政府の分断統治」によって、イスラエル国家の安泰を目指していたのである。 こうした分析は、いまや広く世界で共有されている。歴史家のアダム・ラズ氏は10月20日、ハアレツ紙上でこう指摘した。 〈2009年に政権に復帰して以来、ネタニヤフの手法は一貫して、ガザのハマスを強化する一方、パレスチナ自治政府を弱体化するというものだった。彼はハマス体制を終わらせる、いかなる外交的、軍事的試みにも抵抗してきた〉 〈彼が2019年4月に「我々はハマスへの抑止力を回復した。主要な供給源を断ち切った」と宣言したのは、真っ赤な嘘だ〉 〈彼はパレスチナ人の受刑者を解放し、カタールがハマスに現金を提供するのを容認し、建設資材はじめ、さまざまな物資をガザが輸入するのを認めた。それらは、テロに使われた。パレスチナ人がイスラエルで働く労働許可証も増やした。これが、テロリズムの蔓延とネタニヤフ支配の共存につながったのだ〉』、「ハマスとビビ(注・ネタニヤフの愛称)は会話していない。会話する必要がない。彼らはお互いが権力の座にとどまるために、必要としているものを理解しており、意識的であれ、無意識であれ、彼らはそれを相手に提供しようとしている〉 〈過去12年間、ビビは「ハマスを維持する一方、パレスチナ自治政府(PA)を弱体化して分断する」という使命を抱いていた。そうすれば、米国の議会で「私は平和を愛している。だが、あちら側には相手がいない。パレスチナ人は弱体化して分裂している」と言えるからだ〉 〈ハマスにも「ネタニヤフを権力の座にとどめる」という使命があった。そうすれば、ハマスとイランにいる支持者たちは、欧州やリベラルな大学のキャンパス、メディア、民主党などにいる脳天気な支持者たちに向かって「問題はハマスではない。酷いイスラエルのネタニヤフ政権なのだ」と言えるのだ」、なるほど。
・『退場のときが近づく  10月20日付の英ガーディアンは、ネタニヤフ氏が2019年3月、自ら率いる右派政党リクードの会合で、ハマス支援を呼びかけた有名な言葉を紹介している。彼は、こう演説していた。 〈パレスチナ国家の誕生を阻止したいと望むものは、誰でもハマスの強化とハマスへの現金供給を支援しなければならない。これは、ガザのパレスチナ人をヨルダン川西岸のパレスチナ人から孤立させる、我々の戦略の一部なのだ〉 政権内部からも、ネタニヤフ政権とハマスの蜜月を裏付ける実名証言が出た。先に触れた11月21日付のポリティコは、イスラエル国防情報部の責任者マイケル・ミルシュタイン氏の発言を紹介している。 〈偵察兵たちの話は「ハマスは革命運動から次第に穏健になって、もっと現実的な組織に変わっている」というストーリーにそぐわなかった。ハマスを飼い慣らすことが統治であり、彼女たちの警告はそれに合わなかったのだ。だが、それは希望的観測だった〉
ネタニヤフ政権は、どうなるのか。 政権のスポークスパーソンはニューヨーク・タイムズ報道後の12月1日、米CNNで「10月7日の大虐殺は、我々の側の失敗だ。何が起きていたのか、徹底的に検証する。それ以外に選択肢はない」と語った。防諜機関シンベットの責任者であるロネン・バー氏も「責任は私にある」と認めている。 世論調査では、ニューヨーク・タイムズの報道前から、政権与党の支持率が急落している。11月26日付の米ワシントン・ポストは「ネタニヤフとハマスはお互いに依存し合ってきた。両者は、ともに退場するときが近づいている」と書いた。政権交代は時間の問題だろう。 12月6日に配信したYouTube番組「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」は、私の1人語りで「自民党の政治資金問題」について解説しました。 7日には「カナダに出国した香港の周庭は安全か」を、同じく1人語りで配信しました。 8日には、ニコ生番組「長谷川幸洋Tonight」で、イスラエル情勢などについて解説します』、「ネタニヤフ政権は、どうなるのか。 政権のスポークスパーソンはニューヨーク・タイムズ報道後の12月1日、米CNNで「10月7日の大虐殺は、我々の側の失敗だ。何が起きていたのか、徹底的に検証する。それ以外に選択肢はない」と語った。防諜機関シンベットの責任者であるロネン・バー氏も「責任は私にある」と認めている。 世論調査では、ニューヨーク・タイムズの報道前から、政権与党の支持率が急落している。11月26日付の米ワシントン・ポストは「ネタニヤフとハマスはお互いに依存し合ってきた。両者は、ともに退場するときが近づいている」と書いた。政権交代は時間の問題だろう」、「ネタニヤフとハマス」の馴れ合い終了後は、どうなるのだろう。

第四に、12月8日付けNewsweek日本版「「ホロコースト」の過去を持つドイツで、いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/12/post-103169.php
・『<イスラエル軍とハマスの戦闘が始まってから、悪夢の歴史を持つドイツで「反ユダヤ」的な事件が頻発するように。過激な事件も起きている> イスラム組織ハマスによるイスラエルへの奇襲と、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの報復攻撃を受けて、ホロコーストの過去を持つドイツが揺れている。 政府は全面的なイスラエル支持を表明しているが、国内では反ユダヤ主義的な事件が急増。反ユダヤ主義調査情報センター(RIAS)によれば、衝突が始まった10月7日から11月9日にかけて、ドイツで起きた反ユダヤ主義的事件は994件。1日平均29件に達し、昨年同時期の320%増となっている。 その多くは攻撃的な言動などのレベルにとどまるが、ベルリンのシナゴーグ(ユダヤ教会堂)に火炎瓶が投げ付けられるなど一部で過激な事件も発生している。 +994件(10月7日から11月9日にかけてドイツ国内で発生した反ユダヤ主義的事件の件数) +29件(事件の1日当たりの平均件数) +320%増(昨年同時期との比較)』、「ドイツ」は「イスラエル」に贖罪の念を抱いている筈だが、「イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの報復攻撃」の余りの酷さで、「反ユダヤ主義的な事件が急増」せざるを得なくなったようだ。 
タグ:「ドイツ」は「イスラエル」に贖罪の念を抱いている筈だが、「イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの報復攻撃」の余りの酷さで、「反ユダヤ主義的な事件が急増」せざるを得なくなったようだ。 Newsweek日本版「「ホロコースト」の過去を持つドイツで、いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増」 いている」と書いた。政権交代は時間の問題だろう」、「ネタニヤフとハマス」の馴れ合い終了後は、どうなるのだろう。 「ネタニヤフ政権は、どうなるのか。 政権のスポークスパーソンはニューヨーク・タイムズ報道後の12月1日、米CNNで「10月7日の大虐殺は、我々の側の失敗だ。何が起きていたのか、徹底的に検証する。それ以外に選択肢はない」と語った。防諜機関シンベットの責任者であるロネン・バー氏も「責任は私にある」と認めている。 世論調査では、ニューヨーク・タイムズの報道前から、政権与党の支持率が急落している。11月26日付の米ワシントン・ポストは「ネタニヤフとハマスはお互いに依存し合ってきた。両者は、ともに退場するときが近づ そうすれば、米国の議会で「私は平和を愛している。だが、あちら側には相手がいない。パレスチナ人は弱体化して分裂している」と言えるからだ〉 〈ハマスにも「ネタニヤフを権力の座にとどめる」という使命があった。そうすれば、ハマスとイランにいる支持者たちは、欧州やリベラルな大学のキャンパス、メディア、民主党などにいる脳天気な支持者たちに向かって「問題はハマスではない。酷いイスラエルのネタニヤフ政権なのだ」と言えるのだ」、なるほど。 「ハマスとビビ(注・ネタニヤフの愛称)は会話していない。会話する必要がない。彼らはお互いが権力の座にとどまるために、必要としているものを理解しており、意識的であれ、無意識であれ、彼らはそれを相手に提供しようとしている〉 〈過去12年間、ビビは「ハマスを維持する一方、パレスチナ自治政府(PA)を弱体化して分断する」という使命を抱いていた。 ネタニヤフ政権は、なぜ現場から上がっていた情報を無視したのか。 攻撃計画を報じたニューヨーク・タイムズは「当局が『ハマスには実行する能力がなく、計画は希望的なものだ』とみて退けていた」と報じている。 だが、本当の理由はそれだけではない」、「本当の理由」は何なのだろう。 「ネタニヤフ政権が当時、進めていた大掛かりな司法改革が、ハマスにとって攻撃の絶好のチャンスであり「パーフェクト・ストーム(完全な嵐)になる」と警告していた。最高裁の機能を弱める司法改革案は、イスラエルの国論を2分し、大規模な反対デモが連日、繰り広げられていた。それが「敵の攻撃を招く」とみたのだ・・・ 「ネタニヤフ政権は、イスラム過激派ハマスのテロ攻撃計画を1年以上も前から把握していたにもかかわらず、テロを防げなかった。ハマスを事実上、支援していた政権が、軍の情報と警告を無視したからだ」、思いがけないニュースだ。 長谷川 幸洋氏による「ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に」 現代ビジネス 「主要国は二国家解決案などという夢物語でお茶を濁すのではなく、とにかくイスラエルに圧力をかけて戦闘を止めることから始めるべきであろう」、同感である。 「「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえる」とはその扱いも重要だ。「経済の面では、破壊し尽くされたガザの復興をはじめ、独自の産業も資本もないパレスチナ国家が自立できるまで、国際社会が膨大な支援を求められる。 そもそも国際社会はパレスチナ国家建設のための協力体制を構築できるのだろうか・・・欧米と中露の対立は、国連を機能不全に陥らせている。パレスチナ問題で欧米と中露が簡単に歩調を合わせることは想像しにくい」、なるほど。 「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえるといわれている。パレスチナ国家が独立すれば難民が戻ってくるのか。現在の人口をはるかに上回る難民の帰還は現実的ではない。 新たな国の安全保障はどうするのか。パレスチナ国家が独自に軍隊を持つことはイスラエルにとっては脅威そのものであり、簡単に認めることはできないだろう」、 「ヨルダン川西岸・・・70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配」、そんなに支配が進んでいたとは初めて知った。 「イスラエルの現政権は、自国の安全のためにガザとヨルダン川西岸の占領や支配の強化、さらには一部の併合さえ主張している。これでは当事者が話し合いのテーブルにつくことさえ難しい。 またイスラエル政府はヨルダン川西岸でのユダヤ人による入植を積極的に進めている。現在、70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配している。その結果、パレスチナ人のエリアは飛び地でわずかに点在しているだけになっている」、 「イスラエル軍による攻撃によって生まれたガザの非人道的状況を国際社会は放置できなくなった。かといってイスラエルやハマスの攻撃を止める手立てもない。 そこで浮上してきたのが「二国家解決案」である。) アメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相に繰り返し「二国家解決案が唯一の答えだ」と主張している。EU(欧州連合)のボレル外交安全保障上級代表をはじめ英仏など欧州の主要国首脳も相次いで二国家案の支持を表明している」、なるほど。 宗教政党と組んだ連立政権はイスラエル史上最も右派の政権」、なるほど。 当時、イスラエルがPLOをテロ組織と非難する一方で、PLOはイスラエルを国家と認めず激しく対立していた。にもかかわらず両者はノルウェーの首都、オスロを舞台に水面下で極秘の接触、交渉をしていたのだ。 残念ながらオスロ合意の描いた平和への道筋はわずか2年後、和平推進の中心人物だったイスラエルのラビン首相が暗殺されたためにあっけなく頓挫・・・以後、イスラエルは和平に積極的だった労働党が国民の支持を失い、代わりにパレスチナに対する強硬論を掲げる右派が台頭してきた。現在のネタニヤフ首相もその勢力の一人で、極右政党や 「1993年の「オスロ合意」・・・でパレスチナ側を代表するパレスチナ解放機構(PLO)はイスラエルを国家として認め、イスラエルもガザとヨルダン川西岸にパレスチナ暫定自治政府を置くことを認めた。同時にイスラエル軍が占領地から撤退することも盛り込まれた。明文化されなかったものの、パレスチナ人が将来独立国家を手にすることが期待できる内容だった。 薬師寺 克行氏による「イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質」 恥な日和見(ひよりみ)主義者たちの同盟であり、彼らは、治安状況の悪化をはじめ、イスラエルが抱える問題の数々を顧みず、際限なく権力を我が物にすることしか眼中になかった。その目標を達成しようと、極端な対立を招くような政策を採用し、その政策に反対する国家機関にまつわる言語道断の陰謀論を広め、国に忠誠を尽くすエリートたちに、「ディープステート(闇の政府)」の売国奴というレッテルを貼った」、どうも筆者の「ネタニヤフ首相」に対するの評価はさんざんのようだ。 何年にもわたって、イスラエルはポピュリズムの強権的指導者ベンヤミン・ネタニヤフが支配してきた。彼はPRの天才だが、首相としては無能だ。何度となく自分の個人的利益を国益に優先し、国民の内紛を誘うことでキャリアを築いてきた。能力や適性よりも自分への忠誠に基づいて人々を要職に就け、成功はすべて自分の手柄にする一方、失敗の責任はいっさい取らず、真実を語ることも耳にすることも軽んじているように見える。) ネタニヤフが2022年12月に樹立した連立政権は、最低であり最悪だ。それは、救世主メシア信仰の狂信者たちと厚顔無 「平和を望む者なら誰もが、ハマスを糾弾し、制裁を課し、人質全員の即時解放と、ハマスの完全な武装解除を要求しなくてはならない。 さらに、イスラエルにどれほどの責任を帰すことにしようと、それでこの国の機能不全を説明することはできない。歴史は道徳の物語ではない。イスラエルの機能不全の真の原因は、この国の不道徳とされているものではなく、ポピュリズム(大衆迎合主義)だ。 「イスラエルの人々は長年の思い上がりの代償を払っているといえる。歴代の政権と多くの一般国民が、私たちはパレスティナ人よりもはるかに強い、彼らはあっさり無視できる、と感じていた。イスラエルがパレスティナ人との和解の試みを放棄し、何十年にもわたって数百万のパレスティナ人を占領下に置いてきたことは、厳しく非難されるべきだ。 ・・・イスラエルは、このようなことが二度と起こらないようにするために建国された。 それにもかかわらず、なぜ今回の惨劇は起こったのか? イスラエルという国は、どうして道を見失ってしまったのか?」、なるほど。 「ハマスはこの2つのキブツを何時間も完全に掌握していた。テロリストたちは家を一軒一軒回り、組織的に家族を皆殺しにしたり、子供の目の前で親を殺したり、赤ん坊や老婆さえも人質に取ったりした。生き延びた人々は恐怖におののきながら、戸棚の中や地下室に身を隠し、軍や警察に電話をして助けを求めたが、多くの場合、救助隊が到着したときにはすでに手後れだった ユヴァル・ノア・ハラリ氏による「イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」」 東洋経済オンライン (その1)(イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」、、もはや「わざと戦争を長引かせて」政治生命の維持に固執するしかない ネタニヤフとその代償、イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質、ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に、「ホロコースト」の過去を持つドイツで いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増) イスラエル・パレスチナ
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ミャンマー(その7)(少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺 検問所爆破 戦闘機撃墜も、ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない) [世界情勢]

ミャンマーについては、昨年2月17日に取上げた。今日は、(その7)(少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺 検問所爆破 戦闘機撃墜も、ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない)である。

先ずは、本年3月19日付け現代ビジネスが掲載したPanAsiaNews記者の大塚 智彦氏による「少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107805?imp=0
・『軍政の残虐非道な行動が明らかに  ミン・アウン・フライン司令官率いるミャンマー軍事政権は2022年から2023年にかけて反軍政の抵抗を続ける市民組織「国民防衛軍(PDF)」などへの弾圧を強化しており、その過程で一般市民の殺害も増加している。 そうした中でも特に未成年の若者や女性を虐殺するケースが相次いで報告され、人権侵害がこれまで以上に深刻化しているという。 さらに2023年3月13日にはミャンマーの独立系メディアが仏教寺院に避難していた一般市民と同時に僧侶をも殺害していたことを報じた。 ミャンマーは国民の90%を仏教徒が占める国で、僧侶は国民の尊敬を集める対象となっているだけに、僧侶まで殺害するという軍政の容赦ない姿勢は反軍政を掲げる国民の反感と怒りを高めている。 こうした軍政の残虐非道な行動は、2月2日に戒厳令を7郡区から37郡区に拡大し、同月22日にもさらにサガイン地方域で3郡区を追加するなどして、抵抗勢力との戦闘が激化している地方での軍の権力を強化したことと関係があるとみられている。 2021年2月のクーデター以降すでに2年以上が経過しながらも、国内の治安が一向に安定せず、8月に予定している「民主的な総選挙」の実施も危ぶまれる状況に対する軍政の焦りが背景にあるとの見方が有力視されている。 軍政は総選挙実施で軍政に対する「国民の信任」を得たとしてクーデターの正当化を目論んでいるため、万難を排してまでも総選挙実施を企図しているとされ、各地から報告される兵士による残虐行為はその反映とされている』、「ミャンマーは国民の90%を仏教徒が占める国で、僧侶は国民の尊敬を集める対象となっているだけに、僧侶まで殺害するという軍政の容赦ない姿勢は反軍政を掲げる国民の反感と怒りを高めている。 こうした軍政の残虐非道な行動は、2月2日に戒厳令を7郡区から37郡区に拡大し、同月22日にもさらにサガイン地方域で3郡区を追加するなどして、抵抗勢力との戦闘が激化している地方での軍の権力を強化したことと関係があるとみられている。 2021年2月のクーデター以降すでに2年以上が経過しながらも、国内の治安が一向に安定せず、8月に予定している「民主的な総選挙」の実施も危ぶまれる状況に対する軍政の焦りが背景にあるとの見方が有力視されている」、なるほど。
・『寺院の避難民を僧侶と共に殺害  独立メディア「ミャンマー・ナウ」はミャンマー北東部シャン州南部ピンラウン郡区のナンニント村で市民ら29人が殺害されているのを地元抵抗勢力である「カレンニー民族防衛隊(KNDF)」が3月13日の声明で明らかにしたと伝えた。29人の中には仏教僧侶3人が含まれていたとしている。 KNDFなどによると、軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている。 ナンニント村の大半の住民は軍による攻撃激化を恐れて数週間前にすでに村外に避難していたが、僧侶が避難をせずに村に留まったことから20数人の男性村人が共に村に残り、空襲・砲撃を逃れるために寺院に避難していたという。 KNDFはナンニント村の状況を確認するためにドローンで上空から偵察していたところ、寺院で多数の遺体を発見したものの兵士が撤退するのを待ったため現場の寺院には12日までたどり着けなかったとしている。 KNDFのミャンマー語のホームページには殺害現場の生々しい写真が複数アップされ、民族衣装であるロンジーをまとった多数の男性が銃撃を受けて頭部や上半身などから血を流して寺院の外壁周辺に倒れている様子が写っている。 死者の間にはサフラン色の僧衣をまとった仏教僧侶が僧衣の一部を血に染めて横たわっており、寺院の外壁にも多数の弾痕が残されている。住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという。 この寺院襲撃、僧侶殺害に関し、軍政のゾー・ミン・トゥン報道官はメディアに対して武装市民組織と民間人の何人かが死亡したことは確認したものの「地元のPDFメンバーによる殺害である」として兵士の関与を否定した』、「軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている・・・住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという」、自国軍隊がやることとは思えない、酷い話だ。
・『若者を虐殺、斬首で遺体放置  独立系メディアなどによると、2月25日に北西部サガイン地方域ミンム郡区ニャウン・ピンカン村付近で武装市民組織PDFと軍による戦闘が発生した。PDF側が弾薬不足のため退却する際に退路に地雷を埋設していた若者5人が軍に拘束された。 その後若者5人の遺体が発見されたが、うち3人は斬首され、頭部が竹柵や荷車の上に「晒し首」状態で放置されており、中には手足が切断された遺体もあったという。遺体には銃創が一切ないことから、若者らは生きたまま斬首された可能性が高いとみられている。 兵士は殺害した若者の携帯電話を取り上げて犠牲者の親族や友人に電話をかけて「死を祝っている」と述べたうえ、犠牲者を罵倒し続けたという。 斬首されたのは15歳の少年、17歳と19歳の青年で、いずれも地元の武装市民組織を手伝い地雷を設置していたところを軍に拘束され、虐殺されたという。事件を伝える独立メディアのウェブサイトには3人の若者がほほ笑む生前の写真がアップされている。 同村周辺ではさらに2人の若者の殺害遺体も発見されているほか、サガイン地方域カン・タイン村では別の男性2人の斬首遺体が発見され、同地方域ミンム郡区ニャウンイン村では16人が殺害されている。 このように国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している。 こうした傾向は以前からあり、2022年9月にはサガイン地方域にある小学校が空爆されて児童11人が犠牲となり15人が行方不明となった。この時、軍は死亡した子供たちの遺体を袋詰めにしてトラックでどこかに運び去ったと地元メディアは伝えている。 国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている。 このほか10月には北部カチン州ハパカント近郊の村で軍政に抵抗を続ける少数民族武装勢力やその支持者、一般市民が参加して開催中のコンサート会場を軍が空爆して地元の著名女性歌手や男性演奏家、多数の観衆が殺害される事件も起きている』、「PDF側が弾薬不足のため退却する際に退路に地雷を埋設していた若者5人が軍に拘束された。 その後若者5人の遺体が発見されたが、うち3人は斬首され、頭部が竹柵や荷車の上に「晒し首」状態で放置されており、中には手足が切断された遺体もあったという。遺体には銃創が一切ないことから、若者らは生きたまま斬首された可能性が高いとみられている・・・国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している・・・国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負った子供は少なくとも約400人に上っている」、本当に国郡の暴虐ぶりは目に余る。
・『レイプして殺害される女性たち  3月2日、サガイン地方域サガイン群区タルタイン村で女性3人を含む住民が軍に拘束されて「人間の盾」として戦闘現場に立たされたことが報じられた。 さらに同じ日、同地方域ミンム群区ニャウンイン村でレイプされた女性の遺体が発見されたほか。同村では計14人の遺体が発見されたが、その中にはレイプされ顔面や頭部を激しく殴打された痕跡の残る女性3人の遺体も含まれていたという。 2022年8月27日には、サガイン地方域カニ郡区タイエットピンブラ村に進入した兵士らが民家に取り残された知的障害のある40代の女性を屋外に連れ出して複数の兵士がレイプした。 また同月11日には同地方域インマビン群区インバウンテン村で10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も明らかになっている』、「同地方域ミンム群区ニャウンイン村でレイプされた女性の遺体が発見されたほか。同村では計14人の遺体が発見されたが、その中にはレイプされ顔面や頭部を激しく殴打された痕跡の残る女性3人の遺体も含まれていたという・・・2022年8月11日には同地方域インマビン群区インバウンテン村で10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も」、よくぞこんなにも「残虐」な「事件」が続発するとは、やはり「ミャンマー」は異常な国だ。
・『激化する人権侵害事件  このように軍は2022年から、各地で抵抗を続ける武装市民組織メンバーに対する掃討作戦を通じて一般市民を巻き込んだ強権的弾圧を強化、女性や若者をも無差別に殺害しているが、国民の尊敬と信仰の対象である仏教僧侶まで容赦なく殺害するという暴挙に対し内外から厳しい批判が高まっている。 戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている。 タイ西部ターク県メーソットに本拠を置くミャンマーの人権団体「ミャンマー政治犯支援協会(AAPP)」によると、3月14日現在、軍政によって身柄を拘束された市民は20359人、殺害された市民は3124人に上っている』、「軍は2022年から、各地で抵抗を続ける武装市民組織メンバーに対する掃討作戦を通じて一般市民を巻き込んだ強権的弾圧を強化、女性や若者をも無差別に殺害しているが、国民の尊敬と信仰の対象である仏教僧侶まで容赦なく殺害するという暴挙に対し内外から厳しい批判が高まっている。 戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの混乱は収拾不能な状況に陥っている」、極めて危険な状態だ。日本はODAなどを通じて「ミャンマー」に強い影響力を持っているので、軍政の混乱解決に向け指導力を発揮してもらいたい。

次に、8月8日付け現代ビジネスが掲載したPanAsiaNews記者の大塚 智彦氏による「ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺、検問所爆破、戦闘機撃墜も」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114446?imp=0
・『実質的な内戦状態にあり治安状況が深刻化しているミャンマーで、ミン・アウン・フライン国軍司令官率いる軍政は7月31日に期限を迎えた非常事態宣言を6ヵ月延長することを決めた。これにより軍政が目指す「民政移管の為の民主的選挙」の実施は2024年2月以降にずれ込むことが確定し、軍政の強権弾圧政治が続くことになった。 軍政が非常事態宣言を延長した理由は国軍司令官が「武装した暴力が続いている。選挙は時期尚早で用意周到に準備する必要がある。当面の間我々が責任を負わなければならない」と述べたように、国内の治安が予想に反して一向に安定せず、各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や国境地帯を拠点とする少数民族武装勢力が軍や警察を攻撃し、軍も住民に対して暴力や虐殺を続けるなど、全土で戦闘が激化していることが背景にある』、「軍政が非常事態宣言を延長した理由は・・・国内の治安が予想に反して一向に安定せず、各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や国境地帯を拠点とする少数民族武装勢力が軍や警察を攻撃し、軍も住民に対して暴力や虐殺を続けるなど、全土で戦闘が激化していることが背景にある」、なるほど。
・『PDFによる軍への攻撃  軍政に抵抗する立場から報道を続けているミャンマーの独立系メディア「イラワジ」は7月31日、ミャンマー各地でのPDFと軍の戦闘を詳しく伝えた。 それによると戦闘は北西部のザガイン地方域、チン州、西部のカレン州(カイン州)中部のマンダレー地方域、南部のタニンダーリ地方域、東部のシャン州の各地で発生とミャンマーのほぼ全域に渡り、治安状況が軍政にとって深刻な問題になっていることが裏付けられている。 マンダレー地方域では7月27日、タベイッキン郡区でイラワジ川を航行していた軍の9隻の船団に対し、同地方域やザガイン地方域から集結した37のPDF組織が共同で待ち伏せ攻撃を敢行した。 船団の2隻を破壊したが、別の船から発砲があり川中の船と沿岸8ヵ所との間で激しい銃撃戦が交わされた。その後、船団は現場を逃れたため軍兵士の死傷者数は明らかになっていないが、同船団は食料や武器、弾薬、人員を補充するため輸送中だったとしている。 チン州ミンダット郡区では7月30日、パトロール中の軍の車列を地元のPDFが待ち伏せ攻撃し兵士8人を殺害した。さらに7月28日にはザガイン地方域モンユワ郡区にある軍の北西司令部をPDFが107ミリロケット弾で攻撃し、軍施設に損害を与えたという。 このほかにもタニンダーリ地方域では地元PDF部隊が地雷6つを使って軍を攻撃し、兵士10人を殺害したと報じた。 こうした一連の攻撃で軍側には少なくとも89人の犠牲を強いたと各地のPDFは報告しており、軍側の被害が拡大していることを印象付けた』、「こうした一連の攻撃で軍側には少なくとも89人の犠牲を強いたと各地のPDFは報告しており、軍側の被害が拡大していることを印象付けた」、なるほど。
・『戦闘機を地上から撃墜  軍政は戦闘機や爆撃機、ヘリコプターなどで掌握している制空権を利用して各地のPDF拠点への空からの攻撃を強化しているが、学校や仏教寺院などの被害も拡大しており、「無差別空爆」を行っている可能性もあるという。 そんな中、東部カヤー州パウラケ郡区にある少数民族武装勢力「カレンニ民族人民解放戦線(KNPLF)」の拠点を攻撃するために戦闘機1機が低空飛行で接近した際、地上からの銃撃などで撃墜に成功したとKNPLFが明らかにした。 KNPLFによると、特に対空兵器があった訳ではないが、メンバーによる必死の攻撃で墜落させた、と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させたという。 この戦闘機はイワルティット村近くに墜落したが同村周辺は軍の支配地域のため、墜落した戦闘機の詳しい情報は当初不明だった。軍が急いで機体の残骸を片付けてしまったことも影響しているが、KNPLFは、その後詳細が明らかになったとしている。 それによると同機はK8Wという戦闘機で、空軍の大尉と中尉が乗り込んだ複座で、タウング空軍基地から攻撃のため発進した。その後、空軍は、犠牲となった2人のパイロットをそれぞれ少佐、大尉に昇進させ功績を讃えたという。 さらに7月31日には、カレン州パアン郡区サルウィン橋に設けられていた軍の検問所が地元PDFによって爆破され、民間人1人が死亡、兵士7人を含む10数人が負傷したという。検問所の兵士が近くに駐車していた車両を不審に思って調べようとしたところ爆発したとカレン情報センター(KIC)が情報提供した』、「K8Wという戦闘機で、空軍の大尉と中尉が乗り込んだ複座で、タウング空軍基地から攻撃のため発進した」、「特に対空兵器があった訳ではないが、メンバーによる必死の攻撃で墜落させた、と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、大したものだ。
・『軍が住民14人を虐殺  一方、軍も各地で強力な抵抗を続けるPDFへの攻撃を激化させている。 独立系メディア「ミャンマー・ナウ」が7月31日に伝えたところによると、ザガイン地方域モンユウのチンドウィン川西岸にあるソネチャウン村で住民14人の虐殺があったという。 それによると、雨の降る深夜、ソネチャウン村に約60人の兵士が侵入、民家を訪れては懐中電灯で住民の顔を照らし、地元PDFの幹部を探しだそうとした。犬が大きく吠えて多くの住民が起きたが、当初は軍の接近を住民に連絡する訪問と思って扉を開けた人が多かったという。 軍はミョー・ミン・ウー氏(42)を捜索し、彼を見つけると同じ家にいた兄弟や子供と一緒に拘束した。さらに、PDF関係者とみられる住民を次々と拘束し「武器をどこに隠した」と拷問を加えながら尋問を続けた。拘束された住民はPDFとの関係を否定し、武器の所在も知らないと主張したという。 翌日の明け方には、ミョー・ミン・ウー氏をはじめとする拘束されいた14人の遺体が村のあちこちに放置されているのが見つかった。遺体には拷問の跡や刃物による傷など虐待の痕跡が残され、残虐な手段で虐殺されたことを物語っていた。 兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪するなどの行為を行って村を去ったと報じ、軍の行動を非難した』、「軍はミョー・ミン・ウー氏(42)を捜索し、彼を見つけると同じ家にいた兄弟や子供と一緒に拘束した。さらに、PDF関係者とみられる住民を次々と拘束し「武器をどこに隠した」と拷問を加えながら尋問を続けた。拘束された住民はPDFとの関係を否定し、武器の所在も知らないと主張したという。 翌日の明け方には、ミョー・ミン・ウー氏をはじめとする拘束されいた14人の遺体が村のあちこちに放置されているのが見つかった。遺体には拷問の跡や刃物による傷など虐待の痕跡が残され、残虐な手段で虐殺されたことを物語っていた。 兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪するなどの行為を行って村を去った」、「兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪」、とは実に酷い話だ。
・『柔軟姿勢はあくまで表向き  8月1日、ミン・アウン・フライン国軍司令官は非常事態宣言を延長するとともに、アウン・サン・スー・チーさんを含めた政治犯など約7000人に対する恩赦を発表した。 これにより19のいわれなき罪状で訴追され2022年12月に合計禁固33年の判決を受けて収監されていたスー・チーさんは、5件の刑で計6年の減刑措置を受けた。スー・チーさんの残る刑期は27年となったものの、78歳という年齢を考えると、実質的には終身刑と同じといえる。 軍政は恩赦に先立ち、スー・チーさんをそれまで収容していた首都ネピドー近郊の刑務所内に設けた特別な施設から刑務所外にある政府関係者の民家に移送したという。 さらに7月には、ネピドーを訪問したタイのドーン外相とスー・チーさんとの面会を特別に許可し、両者は直接対面して会談した。スー・チーさんが外国の閣僚と面会するのは2021年2月1日のクーデターで軍によって身柄を拘束されて以来初めてであった。 このように軍政は、スー・チーさんに対し、刑務所外への移送、タイの外相との面会許可、そして恩赦による刑期短縮と「柔軟姿勢」ともとれる措置を相次いで講じているが、これには非常事態宣言の延長という強権政治の継続に対する欧米や東南アジア諸国連合(ASEAN)の批判を交わす狙いがあるとみられている。 しかしこうした「柔軟姿勢」の一方でPDFや少数民族武装勢力など反軍政の抵抗勢力との戦闘を激化させており、武力衝突は依然として内戦状態と言っても過言ではない状況となっている。 この衝突で軍の兵士そして抵抗組織、さらに一般住民の犠牲は増える一方で、軍による人権侵害とともにミャンマー情勢をより深刻かつ複雑なもにしている。 ミャンマー問題の解決の糸口は、一向に見えてこない』、「非常事態宣言の延長という強権政治の継続に対する欧米や東南アジア諸国連合・・・の批判」、日本も批判を「欧米や東南アジア諸国連合」任せにせず、自ら積極的に働きかけてゆくべきだ。

第三に、9月3日付け現代ビジネスが掲載したPanAsiaNews記者の大塚 智彦氏による「ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/115692?imp=0
・『国軍兵士の「寝返り」  軍政と武装抵抗勢力との戦闘が続き実質的な内戦状態にあるミャンマーで、正規軍の中で戦線離脱や部隊離反などによる脱走兵が増加し、その大半が敵対する民主派勢力「国民防衛軍(PDF)」に加わっていることが、ミャンマーの独立系メディアなどの報道で明らかになった。 国軍兵士の「寝返り」ともいえるこの現象は、2021年2月に軍がアウン・サン・スー・チーさん率いる民主政府から実権を奪取したクーデター以来続く傾向というが、2023年になってその数はさらに増加傾向にあると指摘されている。 「ミン・アウン・フライン国軍司令官でさえ実際に国軍兵士の正確な兵力(兵士の数)を把握できていない」と言われるほど、最前線の部隊では定員数と実際の兵士の数に大きなギャップが生じているという。 こうした深刻な事態に軍政は政府職員や自治体職員をリクルートして兵力不足を補おうとしているが、職業軍人ではない「動員された兵士」ほど寝返る傾向が強く、不足が補えない状況が続いている。 一方のPDF側は国軍兵士の投降を呼びかける運動を強め、武器や弾薬、軍用車両などを持参しての寝返りには報奨金を用意するなどと宣伝して国軍兵力の数的弱体化を試みている。 このような国軍の兵力低下は、PDF戦闘員や一般住民に対する空爆、民家放火や拷問、暴力や残虐な殺害行為、人間の盾としての利用などを激化させるという行動のエスカレートを招いているとされ、そこに国軍の焦燥感が如実に現われているといわれている』、「正規軍の中で戦線離脱や部隊離反などによる脱走兵が増加し、その大半が敵対する民主派勢力「国民防衛軍(PDF)」に加わっていることが、ミャンマーの独立系メディアなどの報道で明らかになった。 国軍兵士の「寝返り」ともいえるこの現象は、2021年2月に軍がアウン・サン・スー・チーさん率いる民主政府から実権を奪取したクーデター以来続く傾向というが、2023年になってその数はさらに増加傾向にあると指摘されている」、いよいよ国軍も最終段階に陥った可能性がある。
・『過去4ヵ月で500人が離反  独立系メディア「イラワジ」が8月25日伝えたところによると、最近開催された軍政に対抗する民主派組織「国家統一政府(NUG)」の第28回閣議で、マー・ウィン・カイン・タン首相が「過去4ヵ月の間に約500人の国軍兵士が軍を離脱、脱走した」と報告した。この500人の中には大隊副司令官という軍幹部も含まれているという。 今年8月に入ってからだけでも50人以上が国軍を離れており、軍の兵力低下が深刻な問題となっているとの見方を示した。こうした動きは西部チン州、東部カヤー州、カレン州などでも報告され、兵士の部隊離反が全国的に起きているとNUGではみている。 NUGによると、2021年2月のクーデター以来、少なくとも15000人の兵士と警察官が寝返って民主派の「不服従運動(CDM)」に参加しているという。軍政側は兵士の死傷者や行方不明者、脱走者などの数字を明らかにしていないが、NUG側が指摘した数字はある程度実態を反映しているとの見方が有力だ。 寝返った兵士や警察官は「国民防衛軍(PDF)」に加わって軍との戦闘に参加するほか、単に逃亡して密かに暮らしているかのどちらかであるという。 こうした事態に軍政側は兵士を軍に引き留めるために、休暇の奨励、芸能人らによる部隊慰問、指揮官は兵士と共に食事をとりコミュニケーションを密にするなど、あの手この手の対策を講じているとされる。 これに対しNUG側は兵士や警察官に離脱を勧めており、武器や弾薬、航空機や艦船と共に寝返った兵士らには多額の現金を付与するという報奨金制度を設けている』、「軍政側」「NUG側」とも必死に知恵を絞っているようだ。
・『寝返った元国軍兵士の証言  「イラワジ」は8月26日、同月1日に入手したという軍の文書に基づき各地の部隊で兵員不足が深刻な問題となっていると指摘した。 その文書は北東部シャン州に拠点を置く歩兵114大隊から国軍上層部に報告されたものとみられ、少なくとも857人の大隊要員が必要にもかかわらず実際には132人しか兵士がいないことを訴えている。 また、その132人の兵士のうち基地防衛のために62人を残し、半数以上の70人が基地を出て最前線での戦闘に従事しているという実態も記述されている。 さらに別の文書では、シャン州の国境問題担当の大佐が地区総務部門関係者に対して警察官を除く全ての公務員の名簿を提出するよう要請したことが記されている。このことから兵員不足を緊急に解消するために公務員を民兵または予備軍兵士に転換することを州政府が計画していることが分かるとしている。 同じ26日に「イラワジ」は元国軍兵士であるテット・ミャット元陸軍大尉のインタビュー記事を掲載した。ミャット氏は2021年6月に軍を離反し軍政に抵抗する市民の「不服従運動(CDM)」に参加、以後抵抗勢力側に協力して現役の兵士や将校の離反、逃亡の手助けを続けているという。 ミャット氏によると「イラワジ」が入手し報道した文書は「本物と思われる」とした上で、「各大隊は毎月兵員数などの情報を上部機関に報告する必要がある。大隊は兵士の定員数が約800人なのだが、どこの大隊もその数を満たしていないのが実情だ」と述べて文書の信憑性とともに国軍の兵員数逼迫が事実であるとの見方を示した』、「元国軍兵士であるテット・ミャット元陸軍大尉のインタビュー記事を掲載した。ミャット氏は2021年6月に軍を離反し軍政に抵抗する市民の「不服従運動(CDM)」に参加、以後抵抗勢力側に協力して現役の兵士や将校の離反、逃亡の手助けを続けているという。 ミャット氏によると・・・「各大隊は毎月兵員数などの情報を上部機関に報告する必要がある。大隊は兵士の定員数が約800人なのだが、どこの大隊もその数を満たしていないのが実情だ」、なるほど。
・『公務員を民兵や予備軍に採用  軍政が兵力不足を深刻に考えていることは近年、地方の行政機関などで働く公務員を軍になかば強制的に採用し、民兵や予備軍に編入して部隊に送り込んでいることに現れている、とミャット氏は指摘している。 臨時採用され兵士として前線に送られた公務員出身者などは、戦闘で生命の危機に直面した場合に容易に投降する傾向がみられ、それもまた兵員不足の一因として軍政の悩みの種となっているという。 公務員以外にも、地方の住民で食糧難や滞在場所のない人々を脅迫して採用するというケースも報告されるなど、軍の兵員不足の深刻さが浮き彫りとなっている。 公務員や一般住民からの臨時兵士の他、正規軍兵士の前線からの離脱者も多く、「先見の明がある兵士」や「民主化弾圧に疑問を抱く兵士」らが「抵抗組織からの誘い」などを理由に寝返る傾向があるという。 そしてミャット氏は「イラワジ」に対して、「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要があるとの言葉で結んだ』、「「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要」、その通りだ。
・『一般住民を逮捕し人間の盾に  国軍は最近、抵抗勢力PDFや国境周辺での少数民族武装勢力との戦闘の中で、兵力不足を補う策として、一般住民を逮捕して、人間の盾として利用する作戦を実行しているという。 8月25日、北部カチン州パカント郡にあるナントヤール村、カットマウ村、サインパラ村に約30人の兵士が夜陰に紛れて侵入し、村人ら約100人を逮捕、連行したという。 軍はその後、パカント村に進軍するに際し、逮捕した住民を人間の盾として最前線に立たせたり、地雷が埋設されている可能性のある場所を強制的に歩かせたりして兵士の犠牲を最小限にしようとする作戦をとっている、と抵抗勢力はみている。 こうした作戦は軍による苦肉の策であり、兵員不足を補う根本的な解決策とはなっていないばかりか、一般住民の反感を買って軍の立場を窮地に追い込む結果になっている。 住民を敵に回しても民主化抵抗勢力との戦闘を継続しなければならない軍政の焦りが背景にあるのは間違いない。 2021年2月のクーデター以来、軍政は全土での治安安定という目標を達成できず、今年7月31日に非常事態宣言を半年間延長したことで2023年内に予定していた総選挙も2024年2月以降に延期せざるを得ない状況となっており、ますます苦境に陥っているのが実情だ』、「住民を敵に回しても民主化抵抗勢力との戦闘を継続しなければならない軍政の焦りが背景にあるのは間違いない」、その通りだ。日本政府もミャンマー政府・国軍との関係を見直しておくべき段階にきたのではなかろうか。
タグ:現代ビジネス (その7)(少年を斬首 女性をレイプ 僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃、ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺 検問所爆破 戦闘機撃墜も、ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない) ミャンマー 大塚 智彦氏による「少年を斬首、女性をレイプ、僧侶も銃殺…残虐性増すミャンマー国軍の血も涙もない攻撃」 「ミャンマーは国民の90%を仏教徒が占める国で、僧侶は国民の尊敬を集める対象となっているだけに、僧侶まで殺害するという軍政の容赦ない姿勢は反軍政を掲げる国民の反感と怒りを高めている。 こうした軍政の残虐非道な行動は、2月2日に戒厳令を7郡区から37郡区に拡大し、同月22日にもさらにサガイン地方域で3郡区を追加するなどして、抵抗勢力との戦闘が激化している地方での軍の権力を強化したことと関係があるとみられている。 2021年2月のクーデター以降すでに2年以上が経過しながらも、国内の治安が一向に安定せず、8月に予定している「民主的な総選挙」の実施も危ぶまれる状況に対する軍政の焦りが背景にあるとの見方が有力視されている」、なるほど。 「軍は11日にナンニント村に空爆や砲撃を加えた上で、地上部隊が村に進入、村内の仏教寺院に避難していた市民を外に連れ出しその場で射殺した。その時僧侶3人も同時に殺害されたとしている。犠牲者には10代前半の少年2人も含まれ、全員がナンニント村の男性住民であるとしている・・・住民らに向けて銃を乱射して殺害した問答無用の残虐行為の跡がみてとれる。KNDFによると兵士はその後、ナンニント村の住居を焼き払ったという」、自国軍隊がやることとは思えない、酷い話だ。 「PDF側が弾薬不足のため退却する際に退路に地雷を埋設していた若者5人が軍に拘束された。 その後若者5人の遺体が発見されたが、うち3人は斬首され、頭部が竹柵や荷車の上に「晒し首」状態で放置されており、中には手足が切断された遺体もあったという。遺体には銃創が一切ないことから、若者らは生きたまま斬首された可能性が高いとみられている・・・国軍は今や、軍に同調しない市民とみれば年齢に関係なく殺害するという「殺人組織」と化している・・・国連によるとクーデター発生後、ミャンマー全国で軍による攻撃で死亡あるいは重傷を負 負った子供は少なくとも約400人に上っている」、本当に国郡の暴虐ぶりは目に余る。 「同地方域ミンム群区ニャウンイン村でレイプされた女性の遺体が発見されたほか。同村では計14人の遺体が発見されたが、その中にはレイプされ顔面や頭部を激しく殴打された痕跡の残る女性3人の遺体も含まれていたという・・・2022年8月11日には同地方域インマビン群区インバウンテン村で10代の少女ら2人が兵士から集団レイプを受け、その後殺害され、遺体が崖に全裸の状態で放置されるという残虐な事件も」、よくぞこんなにも「残虐」な「事件」が続発するとは、やはり「ミャンマー」は異常な国だ。 「軍は2022年から、各地で抵抗を続ける武装市民組織メンバーに対する掃討作戦を通じて一般市民を巻き込んだ強権的弾圧を強化、女性や若者をも無差別に殺害しているが、国民の尊敬と信仰の対象である仏教僧侶まで容赦なく殺害するという暴挙に対し内外から厳しい批判が高まっている。 戒厳令を拡大したことで地方の行政権が大幅に軍に移譲され、軍はこうした残虐行為を通じて抵抗勢力や反軍政の市民への「見せしめ効果」を狙っているとされる。しかしこうした残虐な人権侵害行為は反軍政感情を一層高めるという逆効果を招いており、ミャンマーの 混乱は収拾不能な状況に陥っている」、極めて危険な状態だ。日本はODAなどを通じて「ミャンマー」に強い影響力を持っているので、軍政の混乱解決に向け指導力を発揮してもらいたい。 大塚 智彦氏による「ミャンマー軍政「非常事態宣言延長」で国内全域で治安はさらに悪化…住民虐殺、検問所爆破、戦闘機撃墜も」 「軍政が非常事態宣言を延長した理由は・・・国内の治安が予想に反して一向に安定せず、各地で武装市民組織「国民防衛軍(PDF)」や国境地帯を拠点とする少数民族武装勢力が軍や警察を攻撃し、軍も住民に対して暴力や虐殺を続けるなど、全土で戦闘が激化していることが背景にある」、なるほど。 「こうした一連の攻撃で軍側には少なくとも89人の犠牲を強いたと各地のPDFは報告しており、軍側の被害が拡大していることを印象付けた」、なるほど。 「K8Wという戦闘機で、空軍の大尉と中尉が乗り込んだ複座で、タウング空軍基地から攻撃のため発進した」、「特に対空兵器があった訳ではないが、メンバーによる必死の攻撃で墜落させた、と地上からの銃撃によって戦闘機を墜落させた」、大したものだ。 「軍はミョー・ミン・ウー氏(42)を捜索し、彼を見つけると同じ家にいた兄弟や子供と一緒に拘束した。さらに、PDF関係者とみられる住民を次々と拘束し「武器をどこに隠した」と拷問を加えながら尋問を続けた。拘束された住民はPDFとの関係を否定し、武器の所在も知らないと主張したという。 翌日の明け方には、ミョー・ミン・ウー氏をはじめとする拘束されいた14人の遺体が村のあちこちに放置されているのが見つかった。 遺体には拷問の跡や刃物による傷など虐待の痕跡が残され、残虐な手段で虐殺されたことを物語っていた。 兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪するなどの行為を行って村を去った」、「兵士は民家から電化製品や食料を奪い、住民からは現金を強奪」、とは実に酷い話だ。 「非常事態宣言の延長という強権政治の継続に対する欧米や東南アジア諸国連合・・・の批判」、日本も批判を「欧米や東南アジア諸国連合」任せにせず、自ら積極的に働きかけてゆくべきだ。 大塚 智彦氏による「ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない」 「正規軍の中で戦線離脱や部隊離反などによる脱走兵が増加し、その大半が敵対する民主派勢力「国民防衛軍(PDF)」に加わっていることが、ミャンマーの独立系メディアなどの報道で明らかになった。 国軍兵士の「寝返り」ともいえるこの現象は、2021年2月に軍がアウン・サン・スー・チーさん率いる民主政府から実権を奪取したクーデター以来続く傾向というが、2023年になってその数はさらに増加傾向にあると指摘されている」、いよいよ国軍も最終段階に陥った可能性がある。 「軍政側」「NUG側」とも必死に知恵を絞っているようだ。 「元国軍兵士であるテット・ミャット元陸軍大尉のインタビュー記事を掲載した。ミャット氏は2021年6月に軍を離反し軍政に抵抗する市民の「不服従運動(CDM)」に参加、以後抵抗勢力側に協力して現役の兵士や将校の離反、逃亡の手助けを続けているという。 ミャット氏によると・・・「各大隊は毎月兵員数などの情報を上部機関に報告する必要がある。大隊は兵士の定員数が約800人なのだが、どこの大隊もその数を満たしていないのが実情だ」、なるほど。 「「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要」、その通りだ。 「住民を敵に回しても民主化抵抗勢力との戦闘を継続しなければならない軍政の焦りが背景にあるのは間違いない」、その通りだ。日本政府もミャンマー政府・国軍との関係を見直しておくべき段階にきたのではなかろうか。
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イスラエル・パレスチナ(その3)(証拠が薄すぎる「小児病院の地下はハマスの拠点」...国際的支持を失いかねない イスラエルの「苦しい言い訳」の中身とは?、イスラエル軍が戦場支配 対ハマスで技術的優位性 軍の指揮統制センター ドローンや戦車・兵士などから集めた戦場データを活用し戦闘を調整、ガザ戦争でアメリカは信用を失い EUは弱体化 漁夫の利を得るのは「意外なあの国々」「イギリスとフランスが中東紛争の真犯人」は本当か?――悪名高い「サイクス=ピコ協定」の裏に隠された「失敗の本質」) [世界情勢]

イスラエル・パレスチナについては、11月9日に取上げた。今日は、(その3)(証拠が薄すぎる「小児病院の地下はハマスの拠点」...国際的支持を失いかねない イスラエルの「苦しい言い訳」の中身とは?、イスラエル軍が戦場支配 対ハマスで技術的優位性 軍の指揮統制センター ドローンや戦車・兵士などから集めた戦場データを活用し戦闘を調整、ガザ戦争でアメリカは信用を失い EUは弱体化 漁夫の利を得るのは「意外なあの国々」「イギリスとフランスが中東紛争の真犯人」は本当か?――悪名高い「サイクス=ピコ協定」の裏に隠された「失敗の本質」)である。

先ずは、11月14日付けNewsweek日本版「証拠が薄すぎる「小児病院の地下はハマスの拠点」...国際的支持を失いかねない、イスラエルの「苦しい言い訳」の中身とは?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/11/post-103046_1.php
・『<病院への攻撃を世界や国際機関が非難するなか、イスラエルは「証拠」で「正当性」を誇示するが...。イスラエルを支持するバイデン大統領も苦しい立場に> イスラエル国防軍(IDF)は、ガザ市内にある小児病院の地下にハマス司令部が存在していた証拠を発見したと述べている。そこに人質が拘置されていた証拠も発見したという。 パレスチナのガザ地区における戦闘は、同地区を実効支配しているイスラム武装組織ハマスが10月7日に対イスラエル奇襲攻撃を仕かけて以来、激しさを増している。 またイスラエルは、同地区最大のシファ病院を攻撃したとして、厳しい非難を浴びている。今回の戦闘を巡る厄介な問題は、病院に対する攻撃だ。病院の地下にハマス司令部が本当に存在しているのか否かによって、イスラエルは国際的な支持を失いかねない。 また、イスラエルを支持する米大統領ジョー・バイデンは、難しい立場に置かれる可能性がある。 IDF報道官のダニエル・ハガリ少将は11月13日、X(旧ツイッター)に動画を投稿した。ガザ市西部にあるランティシ小児病院の地下部分などを歩いて撮影したという動画だ。 ハガリ少将は動画のなかで、発見したものを示しながら、同病院がハマス司令部として使われていた証拠だと述べている。そうした証拠には、火器や手榴弾、爆弾が固定された自爆用ベルトといった軍装備品なども含まれている。 ハガリ少将は発見された装備品の横に立ちながら、「わかってほしい。こうした武器や装備品は、大がかりな戦闘のためのものだ」と語っている。そして、ハマスが拘束した人質がランティシ小児病院の地下室に収容されていた可能性がある証拠を指摘。 その証拠とは哺乳瓶やおむつ、シャワーやトイレ、また小さなキッチンなど「即席」で置かれており、ソファと椅子、レンガの壁に掛けられたカーテンを含む部屋である。 人質を撮影して動画撮影する目的がなければ、部屋にカーテンをかける理由はないと述べる。また、別の部屋ではアラビア語で書かれたリストも発見された。そこに「任務遂行中」と書かれていると、ハガリ少将は説明している。) 「これは監視者のリストで、テロリストが自分の名前を書くものだ。テロリストはみなシフトを組んで、ここに拘置されていた人々を監視していた」とハガリ少将は説明している。 動画にはさらに、病院の敷地近くで見つかったというトンネルの入り口も映っている。トンネルの深さはおよそ20メートルで、入り口は防弾ドアで守られている。これは、病院とトンネルがつながっている「動かぬ証拠、明らかな証拠に思える」とハガリ少将は話している。 イスラエルは以前から、ハマスが住居や病院、学校を戦闘員の盾として使っていると訴えてきた。そう主張するひとつの理由は、民間人の命が失われていることで、パレスチナ解放運動への同情と国際的な注目が集まることだ。 今回の動画は、イスラエル軍が、ガザ地区最大の医療機関シファ病院の包囲網を狭める中で投稿された』、「イスラム武装組織ハマスが10月7日に対イスラエル奇襲攻撃を仕かけて以来、激しさを増している」、「イスラエル」は自慢の防諜組織が兆候を全く捉えられなかったこともあって、明らかに過剰な「報復作戦」を展開している。
・『【動画】まったく機能していないシファ病院の現在  2023年11月13日映像)を見る イスラエルは、同病院の地下にもハマス司令部があると主張しているが、イスラエル政府はそれを裏づける証拠をほとんど示していない。 また、シファ病院のモハメド・アブ・セルミア院長はイスラエル側の主張を否定し、病院の地下に司令部はないと述べている。) イスラエルは11月13日の動画投稿に先立ち、地下軍事施設と疑われる位置を示した地図を公開している。 「ハマスのテロリストが病院から攻撃を仕かけていることを確認した場合、私たちはやるべきことをやる」。IDF報道官のリチャード・ヘクト中佐はAP通信に対してそう述べていた。 シファ病院内にいるガザ保健省の報道管理官アシュラフ・アル・キドラがロイターに対して述べたところによれば、同病院では電力が絶たれており、新生児を含む患者が死亡したいう。ニューヨーク・タイムズ紙は、多数の人が週末にシファ病院から避難したと報じている。 また、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は11月13日、いまの状況は同病院の入院患者にとって「悲惨であり、非常に危険である」とXに投稿した。 米大統領バイデンは11月13日、大統領執務室で記者に対し、ガザにある病院は「保護されなければならない」とし、「病院に対する侵入的な行為が減ることを私は望んでいるし、そうなると期待している」と述べた』、「イスラエルは、同病院の地下にもハマス司令部があると主張しているが、イスラエル政府はそれを裏づける証拠をほとんど示していない」、これは大きな問題だ。「イスラエル」を全面支持している「バイデン政権」にとっても、頭が痛い問題だろう。

次に、11月16日付け現代ビジネスが転載したThe Wall Street Journal「イスラエル軍が戦場支配、対ハマスで技術的優位性 軍の指揮統制センター、ドローンや戦車・兵士などから集めた戦場データを活用し戦闘を調整」を紹介しよう。
・『ガザ地区に展開するイスラエル歩兵部隊の主勢力・ギバティ旅団の指揮官らは、小さな教室ほどの大きさの平屋の建物数棟の中で、ガザ内のイスラエル軍とパレスチナ勢力の位置をリアルタイムで表示する複数のスクリーンを確認することができる。 指揮官らはこの情報を使い、部隊や兵器の位置、また偵察機をチェスの駒のように移動させている。) ガザとの境界に近いこの場所は、広範に及ぶ軍の技術中枢部でもカギを握る中心であり、ドローンやジェット戦闘機、海軍艦艇、戦車、兵士らが集めた何千もの戦場データが集約されている。これらデータはイスラエル軍が3週間足らずの間に、兵士の死者数を50人未満に抑えながら、イスラム組織ハマスの拠点であるガザ市の大部分を一挙に占領することを可能にした。 イスラエル軍はハマスの広大な地下トンネル網を破壊し、そこに拠点を置く指導者らを打ち破り、ガザにおけるハマスの軍事力と統治力を壊滅させることに重点を置いている。イスラエル政府が戦闘をさらに精密な段階へ移行しようとする中、軍のこの指揮統制センターは今後数週間にわたってこれまでよりも重要な役割を果たすことになる。 イスラエルは戦闘のあらゆる段階で、ハマスに対する技術面および軍事面の圧倒的な優位性を示してきた。軍は数千回の空爆でハマスの能力をそぎ落とし、イスラエル軍の戦車や部隊が進軍できるよう障害物を取り除き、ガザ市での支配力を徐々に強めてきた。 イスラエル軍の指揮統制センターはドローンやジェット戦闘機・軍艦・戦車・兵士などから集めた戦場のデータを活用し、ガザ地区のハマスとの戦闘における調整を行っている ギバティ旅団のこの指揮統制センターでは11日、指揮官らがガザ市内のアルランティシ病院からの退避の様子を監視。地上部隊や上空のドローン、また病院内の人々とのやり取りや交信内容を分析しながら、病院を出る約1000人の中に戦闘員が含まれていないか確認した。 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に提供された退避の際の動画には、銃を肩から提げた数人の戦闘員らが、市民の群れに混じって病院を出ていく様子が映っていた。現場や指揮統制センターの指揮官らの間では、その場で戦闘員らと交戦するべきか、それを回避して逃がすべきか議論が続いたという。また狙撃手がこれら戦闘員らを排除できるとする意見もあったが、パニックを引き起こす懸念もあり、戦闘員らはそのまま病院を去った。 だがその際に病院から逃げた戦闘員の1人は、学校に潜伏中にドローンの空爆を受けて死亡。退避後もその行動が追跡されていたことが明らかになっている。 ギバティ旅団の指揮官らは指揮統制センターの中で、今後展開される地下での戦闘に注力。地上部隊はこれまでにトンネルへの入り口を160カ所確認しており、そのデータを利用してハマスの地下ネットワークをより詳細に把握しようと試みているという。 壁に設置された中型のテレビスクリーンで、指揮官らは市街地にズームインした高画質画像を見られる。また軍全体や戦闘現場にいる部隊から集めた情報や監視活動がスクリーンに映し出され、それは絶えず更新されている。 パレスチナの軍事目標を見つけると、イスラエル軍将校はそばで待機する武器専門家に指示し、適切な攻撃手段を選択する。恐らくは無人機(ドローン)で即座にピンポイント攻撃を行うか、ジェット戦闘機でビルを丸ごと破壊するかだ。彼らは付近の戦闘ヘリコプターを通じて現場の将校と直接連絡を取ることができる。 もし目標ゾーンの近くで民間人の存在を確認したら、情報担当将校は彼らに接触し、その場を離れるよう警告できる。またパレスチナの戦闘員グループが二つの異なる部隊の間を直進しているような状況では、味方への誤射を避けるため、指揮統制センターは両部隊の動きを誘導できる。地上の指揮官が上空の視点を必要とする場合、指揮統制センターの指揮官が最寄りのドローンを見つけて知らせる。 こうした手段があるとはいえ、イスラエルの空爆でパレスチナの民間人は大勢殺害されている。イスラエル当局者は、民間人の犠牲をできる限り少なくするよう努めているが、ハマスが彼らの軍事インフラをガザ地区の民間人インフラに潜り込ませているため、犠牲は避けられないと話している。 ドローンの戦時利用に反対する英NGO(非政府組織)「ドローン・ウォーズUK」のクリス・コール代表は、たとえイスラエル軍が攻撃ごとに合理的な民間人犠牲者数を設定しようとしていたとしても、1カ月足らずで民間人数千人の死亡は、爆撃作戦全体が不均衡な規模であることを示している、と主張した。 「IDF(イスラエル国防軍)は民間人が本来持つべき価値をはるかに低くする決定を下しているように見える」とコール氏は言う。「彼らのやっていることが違法なことに疑いの余地はない」』、「イスラエル軍の指揮統制センターはドローンやジェット戦闘機・軍艦・戦車・兵士などから集めた戦場のデータを活用し、ガザ地区のハマスとの戦闘における調整を行っている」、なるほど。「「ドローン・ウォーズUK」のクリス・コール代表は、たとえイスラエル軍が攻撃ごとに合理的な民間人犠牲者数を設定しようとしていたとしても、1カ月足らずで民間人数千人の死亡は、爆撃作戦全体が不均衡な規模であることを示している、と主張した」、「1カ月足らずで民間人数千人の死亡」との犠牲は確かに大きいようだ。 

第三に、11月16日付けNewsweek日本版が掲載した国際政治学者・ハーバード大学ケネディ行政大学院教授のスティーブン・ウォルト氏による「ガザ戦争でアメリカは信用を失い、EUは弱体化、漁夫の利を得るのは「意外なあの国々」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/11/post-103056_1.php
・『<失われたアメリカの情報・判断力への信頼、民主主義国連合の亀裂。居直った中国とロシアがグローバルサウスを取り込み、世界の多極化を狙う> 今回のガザ戦争、その余波はどこまで広がるのだろう? 私見だが、悪しき地政学的展開が起きても、たいていは逆の好ましい力が働いて均衡を取り戻し、世界地図で見れば点のような場所で起きた出来事の余波が遠くまで広がることはない。危機や戦争が起きても、たいていは頭を冷やしたほうが勝つから、その影響は限定される。 だが例外はあり、今回のガザ戦争はそうした不幸な例外の1つかもしれない。 もちろん、第3次大戦の瀬戸際だと言うつもりはない。これが中東全域を巻き込む紛争に拡大するとも思っていない。 その可能性は排除できないものの、今のところ、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラも、イランやロシア、トルコなどの周辺諸国も、直接的に首を突っ込もうとはしていない。 アメリカ政府も、局地的な紛争に抑え込もうと努力している。戦域が拡大すれば損害が大きくなり、危険も増す。だから私たちは、その努力が実ることを願う。 だが、たとえ戦闘がパレスチナ自治区ガザ地区に限定され、遠からず終結するとしても、その余波は世界中に広がる。 その影響はどんなものか。 答えを探るには、イスラム組織ハマスによる奇襲攻撃が始まる10月7日以前の地政学的状況に立ち戻る必要がある。 まずアメリカとNATO諸国はウクライナで、ロシアを相手に代理戦争を繰り広げていた。 目標はウクライナを支援し、ロシアが2022年2月24日以降に占領した土地を取り戻すこと。ロシアを弱体化し、二度と似たようなまねができないようにすることだ。 だが筋書きどおりにはいかなかった。 今夏の反転攻勢は行き詰まり、軍事面ではロシア側が徐々に勢いを取り戻しているようで、ウクライナ側が領土を取り戻す可能性は遠のいていた。 これに加えて、アメリカは中国とも事実上の経済戦争を繰り広げていた。半導体やAI(人工知能)、量子コンピューターなどの先端技術で、中国が覇権を握るのを阻止する戦いだ』、「アメリカ」は「ウクライナ」では「筋書きどおりにはいかなかった」、「アメリカは中国とも事実上の経済戦争を繰り広げていた」、確かに「アメリカ」を取り巻く環境は厳しい。
・『対中政策の行き詰まり  アメリカ政府は中国を、最大の長期的ライバル(米国防用語では「基準となる脅威」)と見なしている。 ただしジョー・バイデン大統領率いる現政権は対中制裁の対象を絞り、「小さな庭に高い壁」を築くだけだとし、それ以外の分野では協力を維持したい意向を示していた。 だが現実には、小さな庭は大きくなるばかり。いくら高い障壁を設けても、一定の先端技術分野で中国が台頭するのを阻止するのは不可能という見方が強まっていた。) 中東政策はどうか。バイデン政権はサウジアラビアが中国に接近するのを防ぐため、イスラエルとの関係正常化を条件に、サウジアラビアに一定の安全保障を約束し、場合によっては核関連技術へのアクセスも認めようとしていた。 だが、そんな離れ業が決まる保証はなかった。 そもそもパレスチナの問題に目をつぶり、占領地でのイスラエル政府の蛮行に見て見ぬふりをしている限り、いずれ火を噴くのは避けられない。そういう批判があったのも事実だ。 そこへ10.7の奇襲があり、戦争が始まった。その地政学的な意味と、アメリカ外交への影響はいかなるものか。 まず、サウジアラビアとイスラエルの関係正常化に向けたアメリカ政府の努力は水泡に帰した(ある意味、ハマスの狙いどおりだ)。 むろん、これを永遠に阻止するのは無理だろう。関係正常化を促した事情は何も変わっていないからだ。しかし、行く手を阻む障害は増えた。 2点目。最近のアメリカは中東に費やす時間と労力を減らし、アジアに向ける時間とエネルギーを増やそうとしていたが、この戦争でそうはいかなくなった。 なにしろ時間は限られている。バイデン大統領やアントニー・ブリンケン国務長官が毎日のようにイスラエルや中東諸国に飛んでいたら、他の場所に十分な時間と関心を割くことはできない。 アジアの専門家であるカート・キャンベルを国務副長官に起用したことで状況はいくらか改善されるかもしれない。 それでも中東で火の手が上がった以上、アジアに割くことのできる外交的・軍事的能力が中短期的に低下することは間違いない。 しかも国務省内部では、政権の露骨にイスラエル寄りな対応に中堅幹部が反発しており、混乱が生じている。問題の解決は難しくなるばかりだ。 要するに、今回の中東での戦争は台湾や日本、フィリピン、その他中国からの圧力に直面している国々にとって好ましいニュースではない。 今の中国は経済面で苦しい状況にあるが、それでも台湾や南シナ海での軍事的挑発を止める気配はない。最近も南シナ海上空で米軍B52戦略爆撃機に、中国のJ11戦闘機が異常接近する事態があった。 今は米軍の空母2隻が地中海東部に派遣されており、アメリカ政府は中東から目を離せない。だからアジア情勢が一気に暗転した場合、アメリカが効果的に対応できるかどうかは疑わしい。 そして仮にも、ガザでの戦闘がレバノンやイランにまで広がったらどうなるか。アメリカとその同盟国はさらに多くの時間と資源を中東地域に向けざるを得まい』、「今回の中東での戦争は台湾や日本、フィリピン、その他中国からの圧力に直面している国々にとって好ましいニュースではない。 今の中国は経済面で苦しい状況にあるが、それでも台湾や南シナ海での軍事的挑発を止める気配はない。最近も南シナ海上空で米軍B52戦略爆撃機に、中国のJ11戦闘機が異常接近する事態があった・・・仮にも、ガザでの戦闘がレバノンやイランにまで広がったらどうなるか。アメリカとその同盟国はさらに多くの時間と資源を中東地域に向けざるを得まい」、その通りだ。
・『EUトップの深刻な亀裂  3点目。ガザ地区の紛争はウクライナにとって最悪だ。メディアはガザ情勢一色に染まり、ウクライナ支援を支持する世論は後退している。 アメリカでは下院共和党が支援継続に難色を示している。10月4日から16日にかけて行われたギャラップの世論調査でも、アメリカ政府のウクライナ支援は過剰だと考える人が41%に上った(6月時点では29%にすぎなかった)。 もっと面倒な問題もある。ウクライナ戦争は激しい消耗戦となっており、いくら砲弾があっても足りない。 だがアメリカも同盟諸国も、ウクライナのニーズを満たすだけの兵器を生産できない。ウクライナ軍の戦闘能力を維持するため、アメリカは韓国とイスラエルに置いていた武器弾薬を転用せざるを得なかった。 そこへ突然、イスラエルで戦争が始まった。 こうなると、ウクライナに武器弾薬を送る余裕はなくなる。それでウクライナ軍が劣勢に立たされ、万が一ウクライナ軍が崩壊し始めたら、バイデン政権はどうすればいいのか。 EUにとっても頭の痛い問題だ。ロシアのウクライナ侵攻で、多少の軋轢はあったにせよ、欧州の結束は強まった。10月のポーランド総選挙で、極右政党「法と正義」が政権の座を追われたことも好ましい変化だった。 しかしガザ紛争で欧州の亀裂が再び表面化した。今はイスラエルを無条件で支持する国もあれば、パレスチナの大義に共感を示す国もある。 EUの大統領格であるウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長と、外相格のジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表の間にも深刻な亀裂が生じている。 フォンデアライエンはイスラエル支持に偏りすぎている」と批判する書簡に、約800人のEU職員が署名したとも報じられている。 この戦争が長引けば長引くほど、こうした亀裂は広がっていく。 それはまた欧州外交の弱みを浮き彫りにし、世界の民主主義国を一つの強力な連合体にまとめるという壮大な目標に向かう動きを後退させかねない。 西側諸国にとっては最悪な展開だが、ロシアと中国には願ってもない朗報だ。 アメリカの目がウクライナや東アジアからそれるなら大歓迎。しかも中東なら、自分たちは高みの見物を決め込める。 一方で今回のガザ紛争は、アメリカの一極支配よりも多極的な世界秩序のほうが好ましい、という中ロ両国の長年の主張に一定の論拠を与える。) 1993年のオスロ合意以来、アメリカは一貫して中東情勢に大きな発言力を持ってきた。 だが、結果はどうだ。 イラクでは悲惨な戦争を招き、イランの核開発は止められず、イスラム過激派の台頭も許した。 イエメンでは内戦が激化し、リビアは無政府状態に陥った。そしてもちろん、オスロ合意は反故(ほご)になった──彼らはそう主張できる。 10月7日のハマスの奇襲を見ろ、アメリカは最も親密な同盟国すら守れないではないか、という主張もできる。 そういう主張に反論することは容易だが、くみする国も多いだろう。実際、中ロのメディアは今回のガザ紛争を機にアメリカ批判を強め、国際社会での支持を広げている。 今回の戦争とアメリカの対応がこの先も、アメリカ外交にとっては重い足かせとなるだろう。 既にウクライナ危機をめぐる欧米諸国の見解と、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上諸国の姿勢にはかなりの溝が生じている。欧米のダブルスタンダードに対する反発も強まっている。 この溝を一段と深めたのは、ハマスに対するイスラエル軍の桁違いな報復だ。もともとパレスチナの人々への共感は、欧米以外の国々のほうがはるかに強い。 その共感は紛争が長引けば長引くほど、またイスラエル軍に殺されるパレスチナの民間人が増えれば増えるほど強まるだろう。一方で欧米諸国は、歴史的な経緯もあってイスラエル側の肩を持たざるを得ない。 G7に属する某国の外交官が先頃、英紙フィナンシャル・タイムズで嘆いていた。 「これで私たちはグローバルサウスの獲得競争に敗れた。(ウクライナ支援で協力を取り付けようとした)今までの努力は水泡に帰した。......彼らは二度と、私たちの話に耳を傾けないだろう」』、「ウクライナ軍の戦闘能力を維持するため、アメリカは韓国とイスラエルに置いていた武器弾薬を転用せざるを得なかった。 そこへ突然、イスラエルで戦争が始まった。 こうなると、ウクライナに武器弾薬を送る余裕はなくなる。それでウクライナ軍が劣勢に立たされ、万が一ウクライナ軍が崩壊し始めたら、バイデン政権はどうすればいいのか・・・欧米諸国の見解と、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上諸国の姿勢にはかなりの溝が生じている。欧米のダブルスタンダードに対する反発も強まっている。 この溝を一段と深めたのは、ハマスに対するイスラエル軍の桁違いな報復だ」、なるほど。
・『漁夫の利を得る中国  それだけではない。 北大西洋両岸の快適な地域に属さない国々から見れば、欧米の関心はあまりに身勝手で恣意的だ。 中東で新たな戦争が起きた途端に、欧米のメディアはその話で埋め尽くされた。新聞もそうだし、ニュース専門のテレビ局もそうだ。政治家はせっせと自らの見解を述べ、どうすべきかを説く。 だが今回の戦争が始まったのと同じ10月に出た国連の報告書に、コンゴ民主共和国には現時点で約700万の国内避難民がいるとあった事実はほとんど報じられていない。 その数はイスラエルとガザ地区の被害者より桁違いに多いにもかかわらずだ。) もちろん、それでグローバルサウスの国々が一斉に反米に転じるわけではない。欧米の偽善に腹を立てはしても、それぞれの国益を追求するなかではアメリカや欧州諸国との関係は切れない。 だが、今までどおりにいくと思うのは間違いだ。人権だの法の支配だのという私たちの議論に、彼らはますます耳を貸さなくなる。そして中国とアメリカをてんびんにかけて、様子を見る国が今よりも増えることだろう。 付言すれば、今回の不幸な戦争がどう転んでも、アメリカ外交の評判が高まることはない。 10.7の奇襲を防げなかったことで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の評判は地に落ちただろうが、アメリカ政府も同じく予測できなかったし、その後の対応も(少なくとも今までのところは)お粗末すぎる。 そしてもしも、ウクライナの戦争が不幸な結末を迎えたらどうなるか。 アメリカの信用だけでなく、その判断力も問われることになる。 よその国がアメリカ政府の助言に従うのは、アメリカ政府には確かな情報と判断力と行動力があり、人権にも法の支配にも一定の配慮をしてくれると思えばこそだ。 その前提が崩れたら、誰もアメリカの助言など聞かなくなる』、「今回の戦争が始まったのと同じ10月に出た国連の報告書に、コンゴ民主共和国には現時点で約700万の国内避難民がいるとあった事実はほとんど報じられていない。 その数はイスラエルとガザ地区の被害者より桁違いに多いにもかかわらずだ。) もちろん、それでグローバルサウスの国々が一斉に反米に転じるわけではない。欧米の偽善に腹を立てはしても、それぞれの国益を追求するなかではアメリカや欧州諸国との関係は切れない・・・今回の不幸な戦争がどう転んでも、アメリカ外交の評判が高まることはない。 10.7の奇襲を防げなかったことで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の評判は地に落ちただろうが、アメリカ政府も同じく予測できなかったし、その後の対応も(少なくとも今までのところは)お粗末すぎる。 そしてもしも、ウクライナの戦争が不幸な結末を迎えたらどうなるか。 アメリカの信用だけでなく、その判断力も問われることになる」、想像するだけで恐ろしいシナリオだ。

第四に、11月17日付けデイリー新潮「「イギリスとフランスが中東紛争の真犯人」は本当か?――悪名高い「サイクス=ピコ協定」の裏に隠された「失敗の本質」」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/11170609/?all=1
・『10月7日、イスラム組織ハマースの越境攻撃によって始まったイスラエル・パレスチナ紛争。今回のハマースによる攻撃は、1973年10月にエジプト軍がイスラエル軍の防衛体制の隙をついて奇襲を仕掛けて始まった「第4次中東戦争」を想起させる。 まるで時計の針が巻き戻ってしまったかのような事態だが、中東情勢に詳しい向きには、1916年にイギリスとフランスによって結ばれた「サイクス=ピコ協定」が、今日の混乱の原因として思い出されるのではないだろうか。オスマン帝国の崩壊を受け、西洋列強によって地図の上に勝手に国境線が引かれたという、悪名高い協定である』、世界史にちょっと出てきたので、名前だけは記憶にある。
・『サイクス=ピコ協定によるオスマン帝国の分割案  サイクス=ピコ協定によるオスマン帝国の分割案。画像は『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(新潮選書)より (地図製作:アトリエ・プラン)(他の写真を見る) しかし本当に「サイクス=ピコ協定」が問題の本質なのか。そもそも、それはどのような協定だったのか。 中東研究の第一人者である東京大学教授・池内恵氏は著書『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』で、複雑な事情をわかりやすく解きほぐしている。以下、同書から一部を再編集して紹介しよう。 いまや中東の地は、ヨーロッパへ世界へと難民、テロを拡散する「蓋のないパンドラの箱」と化している。列強によって無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では主流だ。しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない  1916年5月16日、イギリスとフランスの間でサイクス=ピコ協定が結ばれた。これにロシアも同意して、西洋列強がオスマン帝国の支配領域を第1次世界大戦の後に分割する取り決めが結ばれた。 サイクス=ピコ協定は、現在のトルコ南東部と、シリアやイラク、パレスチナやヨルダンなどにかけての一帯を切り離し、英・仏の直接統治・支配圏に分けた。 サイクス=ピコ協定は、第1次世界大戦(1914-18)後から現在までの、中東の諸国家と国際秩序の礎となった。サイクス=ピコ協定を基礎にした中東諸国の国境線の中で、政治が行われ、国民社会が形成され、国際関係が取り結ばれた』、「サイクス=ピコ協定によるオスマン帝国の分割案・・・イギリスとフランスの間でサイクス=ピコ協定が結ばれた。これにロシアも同意して、西洋列強がオスマン帝国の支配領域を第1次世界大戦の後に分割する取り決めが結ばれた・・・サイクス=ピコ協定は、第1次世界大戦(1914-18)後から現在までの、中東の諸国家と国際秩序の礎となった。サイクス=ピコ協定を基礎にした中東諸国の国境線の中で、政治が行われ、国民社会が形成され、国際関係が取り結ばれた」、なるほど。
・『蘇る密約  (中東及び周辺諸国の地図はリンク先参照) 混乱の続く中東情勢。画像は『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(新潮選書)より (地図製作:アトリエ・プラン)(他の写真を見る) 百年の時を経て、中東は大変動の時代を迎えている。アラブ世界では多くの国家が崩壊するか、決定的に揺らいだ。政権が自らの国民に発砲し、樽爆弾で市場を無差別に爆撃する。内戦が果てしなく続き、武装集団が各地を支配する。テロが頻発し、過激主義が横行する。宗教的・民族的少数派が住処(すみか)を追われ、殺害され、奴隷化される。大量の難民が流出して彷徨(さまよ)い、その一部が欧州に達しただけで、EU(欧州連合)の結束は瓦解の縁(ふち)に立たされている。 現在の中東の大混乱は、百年前の、まさにサイクス=ピコ協定が結ばれた頃の状況に、次第に近づいてきている。 戦乱と国家の崩壊、武装集団の角逐(かくちく)、難民の流動、少数派の迫害・虐殺と奴隷化、これらはいずれも第1次世界大戦とその直後の中東に、大規模に生じた出来事だった。 現在の中東に生じている事象は、決して最近になって突然に始まったことではない。第1次世界大戦時に噴出した諸問題が、一時は解決したとも思われていながら、実は解決しきれずに、水面下で残っていた。問題を覆い隠すことを可能にしていた中東諸国家の政権や中東地域の国際関係が、イラク戦争から「アラブの春」にかけて揺らいだ。それによって問題が一気に噴出してきたというのが実情である』、「現在の中東に生じている事象は、決して最近になって突然に始まったことではない。第1次世界大戦時に噴出した諸問題が、一時は解決したとも思われていながら、実は解決しきれずに、水面下で残っていた。問題を覆い隠すことを可能にしていた中東諸国家の政権や中東地域の国際関係が、イラク戦争から「アラブの春」にかけて揺らいだ。それによって問題が一気に噴出してきたというのが実情である」、確かに歴史的にみる必要がありそうだ。
・『「イスラーム国」による批判  2014年に「イスラーム国」がイラクとシリアで支配領域を広げた時、その宣伝映像で「サイクス=ピコ協定の終わり」を喧伝(けんでん)した。「イスラーム国」は、サイクス=ピコ協定の秩序に代わる、より妥当な秩序を示してはいない。しかし「イスラーム国」が、サイクス=ピコ協定に基づく枠組みによって維持されてきた中東の国家や国際秩序に挑戦し、そのほころびに付け込んでいることは確かだろう。サイクス=ピコ協定に始まる一連の協定や条約の枠組みによって、中東の国家と社会と国際関係はどうにか維持されてきた。しかしその秩序は矛盾や脆弱性を孕(はら)んだものだった。 「イスラーム国」によるサイクス=ピコ協定の批判は特に目新しいものではない。シリアやイラク、エジプトなどアラブ諸国の民族主義的な政権は、サイクス=ピコ協定を植民地主義による中東の不当な分割を象徴するものとして非難し、その超克を主張してきた。そう主張しながらも、各国の政権はサイクス=ピコ協定の枠組みに依存し、利用し、権力の源としてきた。 アラブの各国の政権が独立運動以来、かくも長くサイクス=ピコ協定の打破を主張してきたにもかかわらず、統一アラブ国家が生まれなかったのは、各国の政治に内在する原因があったのであり、サイクス=ピコ協定という外交文書や、英・仏の帝国主義・植民地主義だけに、現在の中東諸問題の原因を求め、責を帰すのは妥当ではないだろう』、「アラブの各国の政権が独立運動以来、かくも長くサイクス=ピコ協定の打破を主張してきたにもかかわらず、統一アラブ国家が生まれなかったのは、各国の政治に内在する原因があったのであり、サイクス=ピコ協定という外交文書や、英・仏の帝国主義・植民地主義だけに、現在の中東諸問題の原因を求め、責を帰すのは妥当ではないだろう」、その通りだ。
・『「協定」をなくせばいいのか  サイクス=ピコ協定ほど、批判と罵(ののし)りの対象となった外交文書も珍しいだろう。そもそもここまで一般に名前が知られている外交文書というものも、少ないだろう。 サイクス=ピコ協定は、ロシアにおいて革命で権力を掌握したボリシェビキ政権によってその存在が暴露されたことから、「列強の中東への不当な介入と分割」の象徴とされて批判の的となった。 日本では世界史の教科書や資料集で取り上げられ、さまざまな中東関連本でも必ずと言っていいほど言及される。そこから「サイクス=ピコ協定こそ中東問題の元凶」といった決まり文句が、一般向け解説でも、あるいは中東専門家が政治的な発言を行う時にも、しばしば見られるようになった。 しかしこのような批判が、現在の問題の理解と解決のために役立つかというと、疑問である。それではサイクス=ピコ協定をなくしてしまえば中東問題は解決するのか。もちろんそのようなことはない。サイクス=ピコ協定をなくしてそれ以前の状態に戻れるのか。もちろん戻れない。それ以前の状態にもし戻れたとして、そこに住む人々のどれだけが納得するのか。その多くは納得しないだろう。 サイクス=ピコ協定を無効とするならば、むしろ今と同様あるいはそれをも上回るような内戦や戦争が勃発し、少数派の迫害や奴隷化が国際社会の制約なく横行しかねない。難民の規模はさらに拡大するだろう。 サイクス=ピコ協定は、中東の国家と社会が抱えた「病」への処方箋だった。この「病」が根から完治しない限り、紛争は続く。解決策として提示されるものも、どこかサイクス=ピコ協定に似通ったものになるだろう。 言うまでもなく、サイクス=ピコ協定が提示する「処方箋」は完璧にはほど遠いものであり、矛盾や欺瞞や不十分さを多く抱え込んでいた。しかしそれは、中東が抱えている問題の複雑さを反映したものだった。サイクス=ピコ協定は問題を解消する魔法の杖ではなく、問題の根深さ、解決策の不在を表現したものだった。 当時の超大国である列強という「医師」に、中東の国家と社会の「病」への処方箋を書く、その資格と能力があったかというと、それは疑わしい。しかしその当時の中東に、より適切に国家と社会を形成できる主体があったかというと、なかったと言わざるを得ない。それは現在でもなお残る問題である。 ※池内恵『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(新潮選書)から一部を再編集。 いまや中東の地は、ヨーロッパへ世界へと難民、テロを拡散する「蓋のないパンドラの箱」と化している。列強によって無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では主流だ。しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない』、「サイクス=ピコ協定は、中東の国家と社会が抱えた「病」への処方箋だった。この「病」が根から完治しない限り、紛争は続く。解決策として提示されるものも、どこかサイクス=ピコ協定に似通ったものになるだろう・・・列強によって無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では主流だ。しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない」、同感である。絶対的な正解がないのが、国際政治の現実だ。 
タグ:「サイクス=ピコ協定によるオスマン帝国の分割案・・・イギリスとフランスの間でサイクス=ピコ協定が結ばれた。これにロシアも同意して、西洋列強がオスマン帝国の支配領域を第1次世界大戦の後に分割する取り決めが結ばれた・・・サイクス=ピコ協定は、第1次世界大戦(1914-18)後から現在までの、中東の諸国家と国際秩序の礎となった。 「サイクス=ピコ協定は、中東の国家と社会が抱えた「病」への処方箋だった。この「病」が根から完治しない限り、紛争は続く。解決策として提示されるものも、どこかサイクス=ピコ協定に似通ったものになるだろう・・・列強によって無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では主流だ。 サイクス=ピコ協定を基礎にした中東諸国の国境線の中で、政治が行われ、国民社会が形成され、国際関係が取り結ばれた」、なるほど。 「現在の中東に生じている事象は、決して最近になって突然に始まったことではない。第1次世界大戦時に噴出した諸問題が、一時は解決したとも思われていながら、実は解決しきれずに、水面下で残っていた。問題を覆い隠すことを可能にしていた中東諸国家の政権や中東地域の国際関係が、イラク戦争から「アラブの春」にかけて揺らいだ。それによって問題が一気に噴出してきたというのが実情である」、確かに歴史的にみる必要がありそうだ。 ラエル軍の桁違いな報復だ」、なるほど。 「イスラエル軍の指揮統制センターはドローンやジェット戦闘機・軍艦・戦車・兵士などから集めた戦場のデータを活用し、ガザ地区のハマスとの戦闘における調整を行っている」、なるほど。「「ドローン・ウォーズUK」のクリス・コール代表は、たとえイスラエル軍が攻撃ごとに合理的な民間人犠牲者数を設定しようとしていたとしても、1カ月足らずで民間人数千人の死亡は、爆撃作戦全体が不均衡な規模であることを示している、と主張した」、「1カ月足らずで民間人数千人の死亡」との犠牲は確かに大きいようだ。 ・・・今回の不幸な戦争がどう転んでも、アメリカ外交の評判が高まることはない。 10.7の奇襲を防げなかったことで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の評判は地に落ちただろうが、アメリカ政府も同じく予測できなかったし、その後の対応も(少なくとも今までのところは)お粗末すぎる。 そしてもしも、ウクライナの戦争が不幸な結末を迎えたらどうなるか。 アメリカの信用だけでなく、その判断力も問われることになる」、想像するだけで恐ろしいシナリオだ。 「アラブの各国の政権が独立運動以来、かくも長くサイクス=ピコ協定の打破を主張してきたにもかかわらず、統一アラブ国家が生まれなかったのは、各国の政治に内在する原因があったのであり、サイクス=ピコ協定という外交文書や、英・仏の帝国主義・植民地主義だけに、現在の中東諸問題の原因を求め、責を帰すのは妥当ではないだろう」、その通りだ。 「ウクライナ軍の戦闘能力を維持するため、アメリカは韓国とイスラエルに置いていた武器弾薬を転用せざるを得なかった。 そこへ突然、イスラエルで戦争が始まった。 こうなると、ウクライナに武器弾薬を送る余裕はなくなる。それでウクライナ軍が劣勢に立たされ、万が一ウクライナ軍が崩壊し始めたら、バイデン政権はどうすればいいのか・・・欧米諸国の見解と、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上諸国の姿勢にはかなりの溝が生じている。欧米のダブルスタンダードに対する反発も強まっている。 この溝を一段と深めたのは、ハマスに対するイス 「今回の戦争が始まったのと同じ10月に出た国連の報告書に、コンゴ民主共和国には現時点で約700万の国内避難民がいるとあった事実はほとんど報じられていない。 その数はイスラエルとガザ地区の被害者より桁違いに多いにもかかわらずだ。) もちろん、それでグローバルサウスの国々が一斉に反米に転じるわけではない。欧米の偽善に腹を立てはしても、それぞれの国益を追求するなかではアメリカや欧州諸国との関係は切れない 現代ビジネス Newsweek日本版「証拠が薄すぎる「小児病院の地下はハマスの拠点」...国際的支持を失いかねない、イスラエルの「苦しい言い訳」の中身とは?」 「イスラエルは、同病院の地下にもハマス司令部があると主張しているが、イスラエル政府はそれを裏づける証拠をほとんど示していない」、これは大きな問題だ。「イスラエル」を全面支持している「バイデン政権」にとっても、頭が痛い問題だろう。 しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない」、同感である。絶対的な正解がないのが、国際政治の現実だ。 Newsweek日本版 「今回の中東での戦争は台湾や日本、フィリピン、その他中国からの圧力に直面している国々にとって好ましいニュースではない。 今の中国は経済面で苦しい状況にあるが、それでも台湾や南シナ海での軍事的挑発を止める気配はない。最近も南シナ海上空で米軍B52戦略爆撃機に、中国のJ11戦闘機が異常接近する事態があった・・・仮にも、ガザでの戦闘がレバノンやイランにまで広がったらどうなるか。アメリカとその同盟国はさらに多くの時間と資源を中東地域に向けざるを得まい」、その通りだ。 (その3)(証拠が薄すぎる「小児病院の地下はハマスの拠点」...国際的支持を失いかねない イスラエルの「苦しい言い訳」の中身とは?、イスラエル軍が戦場支配 対ハマスで技術的優位性 軍の指揮統制センター ドローンや戦車・兵士などから集めた戦場データを活用し戦闘を調整、ガザ戦争でアメリカは信用を失い EUは弱体化 漁夫の利を得るのは「意外なあの国々」「イギリスとフランスが中東紛争の真犯人」は本当か?――悪名高い「サイクス=ピコ協定」の裏に隠された「失敗の本質」) スティーブン・ウォルト氏による「ガザ戦争でアメリカは信用を失い、EUは弱体化、漁夫の利を得るのは「意外なあの国々」」 、世界史にちょっと出てきたので、名前だけは記憶にある。 The Wall Street Journal「イスラエル軍が戦場支配、対ハマスで技術的優位性 軍の指揮統制センター、ドローンや戦車・兵士などから集めた戦場データを活用し戦闘を調整」 デイリー新潮「「イギリスとフランスが中東紛争の真犯人」は本当か?――悪名高い「サイクス=ピコ協定」の裏に隠された「失敗の本質」」 「アメリカ」は「ウクライナ」では「筋書きどおりにはいかなかった」、「アメリカは中国とも事実上の経済戦争を繰り広げていた」、確かに「アメリカ」を取り巻く環境は厳しい。 「イスラム武装組織ハマスが10月7日に対イスラエル奇襲攻撃を仕かけて以来、激しさを増している」、「イスラエル」は自慢の防諜組織が兆候を全く捉えられなかったこともあって、明らかに過剰な「報復作戦」を展開している。 イスラエル・パレスチナ
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中国での日本人拘束問題 スパイ(?)(その5)(中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 爆弾“証言”で日本の情報機関は大混乱 今こそインテリジェンス体制の整備を、中国で「日本人スパイは至る所に」の報道も…訪中日本人が感じた“不気味な異変”の数々、「匿名座談会」駐在員が語る監視社会中国の恐怖 反スパイ法と"データ3法"で情報統制が強化) [世界情勢]

中国での日本人拘束問題 スパイ(?)については、本年4月7日に取上げた。今日は、(その5)(中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 爆弾“証言”で日本の情報機関は大混乱 今こそインテリジェンス体制の整備を、中国で「日本人スパイは至る所に」の報道も…訪中日本人が感じた“不気味な異変”の数々、「匿名座談会」駐在員が語る監視社会中国の恐怖 反スパイ法と"データ3法"で情報統制が強化)である。

先ずは、4月28日付けJBPressが掲載した国際ジャーナリストの山田 敏弘氏による「中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 爆弾“証言”で日本の情報機関は大混乱、今こそインテリジェンス体制の整備を」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74986
・『実はいま、日本の“スパイ史”に残るような大変な出来事が起きている。 2022年10月、中国と日本の架け橋として活動していた「日中青年交流協会」の元理事長である鈴木英司氏が、中国でスパイ活動の罪で6年間投獄された後に解放され、帰国した。鈴木氏は2016年に逮捕されるまで、200回以上も中国を訪れて日中の交流のために活動していた人物だ。 日中のために尽力していた鈴木氏が実刑判決を受けるのは、親中派の人々にとって衝撃的だったという。その鈴木氏が『中国拘束2279日』(毎日新聞出版社)という本を上梓した。中国当局から「日本の公安調査庁のスパイ」と認定されて有罪判決を受けた鈴木氏は、この本の中で明確に自身は「スパイじゃない」として“ぬれ衣による逮捕・拘束”だったと批判している。 その鈴木氏の帰国とその著書が、いま日本のインテリジェンスに携わる人々の間で大きな波紋を呼んでいるのだ。 例えば、著書で鈴木氏はある「疑惑」を主張している。その疑惑とは、本の帯にも書かれている「公安調査庁に中国のスパイがいる」というものだ。事実であれば日本の情報機関である公安調査庁にとっては一大事であり、その存続すら揺るがしかねない大スキャンダルとなる。 そこで、本稿では次の2点について、筆者の取材からの情報も合わせて考察してみたい』、「鈴木氏は、この本の中で明確に自身は「スパイじゃない」として“ぬれ衣による逮捕・拘束”だったと批判」、これは証拠不足で、何とも言えない。「公安調査庁に中国のスパイがいる」、事実であれば、とんでもないことだ。
・『日中友好活動に長年携わってきたのに  1つ目は、鈴木氏が、日本のために働いたスパイだったのかどうかだ。もう1つは、先に述べた公安調査庁の内部に中国のために働く「二重スパイ」がいるのかどうか、である。 まず簡単に、鈴木氏の来歴を見ていきたい。 著書によれば、鈴木氏は大学卒業後に労働組合職員となる。少年時代から中国に対する関心を持っていたところ、上部団体の日本労働組合総評議会(総評)が中国の労働組合のナショナルセンター・中華全国総工会と交流を開始したことで、その事務局を担当。それを機に度々訪中するようになる。社会党の竹内猛衆議院議員(当時)の秘書を務めた時期もある。また竹内氏の秘書になる前から、社会党の土井たか子衆議院議員(当時)とも親しく、土井事務所が発行した通行証で国会にも通っていたという。) 2016年、日中青年交流協会の理事長として日中交流イベントの打ち合わせのために北京を訪問したところ、帰国直前になって、中国の情報・防諜機関である北京市国家公安局に拘束された。 そして裁判で有罪となり、6年間刑務所で過ごした。中国と日本のために尽力してきた鈴木氏の失望感は計り知れない』、「鈴木氏は2016年に逮捕されるまで、200回以上も中国を訪れて日中の交流のために活動していた人物だ。 日中のために尽力していた鈴木氏が実刑判決を受けるのは、親中派の人々にとって衝撃的だった・・・裁判で有罪となり、6年間刑務所で過ごした。中国と日本のために尽力してきた鈴木氏の失望感は計り知れない」、その通りだ。
・『公安調査庁はスパイ組織か  本から抜粋すると、有罪になった罪状はこうだ。 (1)中国政府が「スパイ組織」と認定する公安調査庁から、鈴木氏が「任務」を請け負い情報を収集し報酬を得ていた (2)2013年12月4日、鈴木氏が北京で湯本淵(タン・ベンヤン)さん(在日中国大使館の元公使参事官で、すでに中国に帰国)と会食した際、湯さんから北朝鮮関係の情報を聞き、その内容を公安調査庁に提供した (3)提供した内容は「情報」であると中華人民共和国国家保密局に認定された  ここからわかるように、中国当局は鈴木氏を「公安調査庁のスパイ」と認定している。念のために公安調査庁について説明すれば、法務省の外局で国内外の情報を収集・分析している“スパイ機関”だ。アメリカのCIA(中央情報局)からは、日本側のカウンターパートの一つと認識されている。事実、公安調査庁の職員はCIAで情報収集研修をするなど関係は近い。 公安調査庁は、基本的には対外情報活動はしていないことになっているが、実際は中国などで情報活動を行ってきた。事実、これまで中国当局に逮捕されてきた邦人の中にも、「公安調査庁のスパイ」だった人物が存在する。 ところが鈴木氏は、公安調査庁をスパイ組織であるとは思っていなかったようだ(少なくとも、そう主張している)。
) 鈴木氏は著書でこう述べている。「『公安調査庁はスパイ組織でもなければ、謀略機関でもない。CIAとはまったく違う』と主張したが、どうやら中国政府は公安調査庁をスパイ機関と認定しているようだった」 残念ながら、この言い分は世界的には通用しない。他国から見れば公安調査庁は、れっきとした日本の情報機関=スパイ機関である。 鈴木氏は、その公安調査庁の職員らと情報交換をしていたことは認めている。しかも、中国での取り調べの際に、公安調査庁の職員たちと見られる20人ほどの顔写真を中国当局から見せられて、そのうち4人は知り合いであると答えている(なぜ中国当局が写真を持っていたのかの疑問はまた後に触れる)。 それだけ公安調査庁の職員と接触があれば、鈴木氏を「公安調査庁のスパイ」とする中国の認識のほうが世界の常識に近いと言わざるを得ないのではないだろうか。筆者は中国の肩を持つ気はないが、いくら鈴木氏が「公安調査庁が情報機関だとは知らなかった」と抗弁しても、それだけでは中国当局を納得させられないだろう』、「鈴木氏は、公安調査庁をスパイ組織であるとは思っていなかったようだ(少なくとも、そう主張している)」、苦しい言い訳だ。「公安調査庁の職員と接触があれば、鈴木氏を「公安調査庁のスパイ」とする中国の認識のほうが世界の常識に近いと言わざるを得ないのではないだろうか」、なるほど。
・『長年にわたって監視されていた鈴木氏  さらに、(2)については、2013年12月に、北京で在日中国大使館にも勤務していた中国人外交官である湯本淵氏と食事をしているときに、鈴木氏は北朝鮮情勢について質問したという。その質問が、スパイ活動の一環で、その情報を公安調査庁に提供したと認定されている。 実はこの会食の場には、毎日新聞の政治部副部長(当時)も同席していたと、鈴木氏は明らかにしている。そういう縁から、今回の本も毎日新聞出版社から出版されたのかも知れない。) この食事の席で湯氏から聞いた内容が公安調査庁に伝わったのか否か、あるいは伝わっていたとしたらどう伝わったのかは明らかになっていない。ただ、もし何かしらの形で伝わっていたのなら言い訳は難しいだろう。ちなみに判決文によれば、中国当局は2010年から鈴木氏を公安調査庁のスパイであるとみて捜査を行っていたという。目をつけられていたということだ』、「中国当局は2010年から鈴木氏を公安調査庁のスパイであるとみて捜査を行っていたという」、10年以上も監視されていたのに、気づかなかったというのも不思議だ。
・『公安調査庁との間で金銭授受は本当になかったのか  筆者は、鈴木氏が解放され帰国してから、政府関係者や公安関係者、警察などに取材を続けてきた。ある公安関係者は、匿名を条件にこう語っている。 「中国に利することになるのであまり言いたくはないですが、鈴木さんは公安調査庁から金銭を受け取っていました。さらに中国で捕まっている間も、鈴木氏側に(政府から)補償がなされていたと認識している」 この“証言”だけでは断定はできないだろうが、事実とすれば鈴木氏は公安調査庁のエージェントとして中国で活動していたことが疑われる。 この点について、鈴木氏はどう答えるのか。筆者はそれを確認すべく、鈴木氏へのインタビュー申請をしたが断られた。 もっとも鈴木氏は著書の中で、「私は公安調査庁から任務を言い渡されたこともなければ、報酬を受け取ったこともない」「もし公安調査庁がスパイ組織だと知っていたら、そもそも私は同庁の職員とは付き合わない。任務ももちろん帯びていない。任務だとすれば、私の旅費、ホテル代を公安調査庁が支払い、何々について調べろと命じられ、私がそれに応え、さらにレポートにして出すだろう」と否定してはいる。) ただ別の公安関係者たちからはこんな声も聞かれる。 「日本政府は、海外で情報活動していることを建前上、認めていないので、政府は鈴木氏の(公安調査庁から依頼を受けたことはないとの)発言を否定することはできません」 もしも公安関係者の金銭提供の話が事実だとすれば、これは情報機関から金銭を受け取っていたことになり、それは「スパイ活動」と指摘されても仕方がない。世界的に見れば、それが普通である。もちろん愛国的に、情報提供に金銭を受け取らない協力者もいるが……。この点についての真偽は、今後も取材していきたい』、「もしも公安関係者の金銭提供の話が事実だとすれば、これは情報機関から金銭を受け取っていたことになり、それは「スパイ活動」と指摘されても仕方がない。世界的に見れば、それが普通である」、なるほど。
・『中国情報当局は公安調査庁関係者の写真を撮りまくっている  本稿で考察する2点目は、鈴木氏が主張する「公安調査庁に中国のスパイがいる」という問題だ。本当にいれば、大変な事態で、公安調査庁の内部情報が筒抜けになっている可能性がある。 ただ鈴木氏がそう主張する根拠は少し弱いと言わざるを得ない。 鈴木氏は、取り調べで公安調査庁の職員たちと見られる20人ほどの顔写真を中国当局から見せられたとし、そんな写真を持っている中国当局は、公安調査庁に協力者がいるのではないかと指摘している。 もちろん、その指摘が事実である可能性がある。 ただこの話を聞いて思い出したのが、筆者が5年ほど前に、公安調査庁職員から聞いた話だ。 その当時、公安調査庁は、中国の関係者が日本国内の公安調査庁の関係施設に出入りする人たちの顔写真を望遠レンズを使ったりしながら撮影していることを把握していると言っていた。それについては、2020年に出版した拙著『世界のスパイから喰いモノにされる日本』にも書いている。であれば、公安調査庁職員の顔写真を豊富に持っていても不思議はない。) さらに、鈴木氏は著書の中で、裁判所に向かう護送車に乗り込んで座ると、なんとその向かい側の席にやはり当局に拘束されて手錠をはめられて座っている湯本淵氏とバッタリ再会したと書いている。そして護送車の中で、スパイ容疑の被告である鈴木氏に、中国人容疑者である湯本淵氏がこう語りかけたという。 「日本の公安調査庁の中にはね、大物のスパイがいますよ。ただのスパイじゃない。相当な大物のスパイですよ。私が公安調査庁に話したことが、中国に筒抜けでしたから。大変なことです」 「日本に帰ったら必ず公表してください」 筆者はこのやり取りにも違和感を抱いている。こんな偶然を、果たして中国当局が許すのだろうか。普通に考えれば、当事者同士で会話をさせれば、口裏を合わせられる可能性もある。結果的に、鈴木氏は湯本淵氏との約束をメディアでの活動や今回の出版で果たしている』、「鈴木氏が主張する「公安調査庁に中国のスパイがいる」という問題だ。本当にいれば、大変な事態で、公安調査庁の内部情報が筒抜けになっている可能性がある。 ただ鈴木氏がそう主張する根拠は少し弱いと言わざるを得ない」、なるほど。
・『これを機に日本のインテリジェンス体制を見直すべき  また鈴木氏の出版やメディアでの活動は、日本の情報機関の活動に大きな影響を及ぼしている。公安調査庁では、まず中国国内の情報活動を停止することになったという。「公安調査庁内部に中国のスパイがいる」と大々的にぶち上げられたのだから致し方あるまい。そして、本当に中国人スパイが紛れ込んでいるかどうかは別として、これが日本のインテリジェンスにとっては大打撃であるのも間違いない。 逆に言えば、鈴木氏が本当に公安調査庁のスパイだったのか否かはともかく、中国当局としては日本の情報活動を強く牽制することができたことになる。 日本は、世界各国が当たり前のようにやっているサイバー攻撃やハッキングによるサイバースパイ工作も他国に対して仕掛けることができないし、海外でのインテリジェンス活動も“表向き”は行っていないことになっている。その上、今回の件で重要なライバルである中国からの情報もこれまで以上に得られなくなる。少し前には、ロシアのウラジオストクでも日本人領事がスパイ容疑で一時拘束されたこともあり、ロシアにおける情報活動の動きも鈍っている。 果たしてこのままで日本の安全保障や経済安保は大丈夫なのだろうか。むしろ、いま日本のインテリジェンス分野は重大な岐路に差し掛かっていると認識すべきなのではないだろうか。 筆者は、日本は最近起きている数々のスパイ関連の問題から目を背けず、正面から日本のインテリジェンス活動をどうしていくのかを協議すべき時に来ていると考えている。今こそ、日本がインテリジェンスの世界でも「普通の国」になるチャンスとも言える。 たとえばこうだ。日本に対外インテリジェンス機関を設立し、反スパイ法を制定する。そうして日本政府が公式に国外での対外スパイ活動をバックアップし、日本のためのインテリジェンス収集や工作活動までできる諜報員を育てていく。国家予算をつけ、活動の範囲や保護規定もはっきりと決めることで、海外でインテリジェンス活動をする邦人の保護活動にも寄与することになるだろう。 いま動かなければ、鈴木氏のように中国でスパイとして拘束されてしまう邦人(もちろん日本の情報機関の協力者ではない人も含む)は今後も後を絶たないだろう』、「筆者は、日本は最近起きている数々のスパイ関連の問題から目を背けず、正面から日本のインテリジェンス活動をどうしていくのかを協議すべき時に来ていると考えている。今こそ、日本がインテリジェンスの世界でも「普通の国」になるチャンスとも言える。 たとえばこうだ。日本に対外インテリジェンス機関を設立し、反スパイ法を制定する。そうして日本政府が公式に国外での対外スパイ活動をバックアップし、日本のためのインテリジェンス収集や工作活動までできる諜報員を育てていく。国家予算をつけ、活動の範囲や保護規定もはっきりと決めることで、海外でインテリジェンス活動をする邦人の保護活動にも寄与することになるだろう」、全面的に同意したい。

次に、10月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「中国で「日本人スパイは至る所に」の報道も…訪中日本人が感じた“不気味な異変”の数々」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330547
・『日本と中国は政治的な溝だけでなく、ビジネス間の溝も深まっている。「政治、外交がダメでもせめてビジネスでは」――と期待する日本のビジネスパーソンも中国の現状に落胆する。この状況に、追い打ちをかけるのが中国の改正「反スパイ法」だ。今年7月の導入から3カ月あまりがたつが、互いを疑心暗鬼にさせる同法は、日中の経済交流にますます深刻な影響を及ぼしそうだ。(「China Report」著者 ジャーナリスト 姫田小夏」、「日本のビジネスパーソンも中国の現状に落胆する。この状況に、追い打ちをかけるのが中国の改正「反スパイ法」だ」、なるほど。
・『中国の社会システムからはじき出される日本人  この夏中国へ渡航した日本からの出張者が続々と帰国した。現地事情についての情報交換が行われる中、長年にわたり日中間を往来する出張者が異口同音に語るのは「中国の現状は想像を超えていた」ということだ。 北京に出張した人は、北京五輪当時、急ピッチで新設された北京首都国際空港のターミナルについて「ほこりまみれで劣化が激しい」と驚いた。また、上海に出張した人は、宿泊先の老舗ホテルについて「コロナ禍の消毒液の影響で壁やエレベーターのボタンがボロボロ」と、痛ましい変化に眉をひそめる。今や住人がいなくなった「幽霊マンション」はどこにでもあり、企業倒産も珍しくない。 出張した日本のビジネスパーソンたちが問題にしたのは、景気の悪化だけでなかった。 2010年代に上海の現地法人で総経理を務めた経験のあるA氏は、「中国はもう外国人が生活できる場所ではありません。現地に信頼できる中国人がいなければ、外国人は“行き倒れ”になるリスクさえあります」と、中国出張を振り返る。 「コロナ前まで、私は中国の決済アプリでキャッシュレス決済を行っていましたが、今回の渡航では銀行認証が厳格化されて使えませんでした。訪問先の中国東北部でも現金はほとんど使えず、必要なものは友人の中国人のスマホで立て替えて買ってもらいました」 買い物先や観光地、タクシーや鉄道で――中国社会で成熟する決済システムや予約システムからすっかりはじき出された出張ベースの外国人は、現地に家族や親類、友人がいる場合を除いて、相当の不便を強いられるという。 「外国人が強いられる不便さ」はすでにビザ申請の時点から始まっていた。福岡県在住のB氏は「ビザ申請書には昔の職場の上司の連絡先どころか、他界した親の情報まで記入させられ、申請書を提出してからは3回も修正させられました」とあきれる。複雑な申請は外国人を遠ざけるには効果的だ』、「買い物先や観光地、タクシーや鉄道で――中国社会で成熟する決済システムや予約システムからすっかりはじき出された出張ベースの外国人は、現地に家族や親類、友人がいる場合を除いて、相当の不便を強いられるという」、なるほど。
・『「反スパイ法」の裏に“外国人アレルギー”  19世紀の半植民地化を経験し、20世紀の東西冷戦では「竹のカーテン」で閉ざされた中国だが、ここに来て“外国人アレルギー”はますます高まっている。 そのきっかけの一つが、今年7月に施行された中国の改正反スパイ法だ。同法はスパイ行為の定義を拡大したもので、「国家機密または国家情報、そのほかの国家の安全と利益に関する文書、データ、情報および物品の窃取、偵察、買収、または不法に提供する活動等」といった文言などが盛り込まれた。 中国では国家安全部による「怪しい活動をしている人物がいればただちに当局に通報せよ」とする文書がネット上に掲載され、7月以降、国民を動員しての“スパイ封じ込め”が一段と強化されるようになった。 浮き彫りになるのは外国人への警戒だ。中国政府は「外国には、中国の社会主義制度を転覆し、台頭を阻止したい勢力が存在する」という認識を持ち、スパイは外国から送られてくることを想定している。 実際、近年中国では、全く知らない外国人がメールやSNSを使って中国人に接触し、中国の軍事機密を調べさせる「スパイ行為」が後を絶たないと中国メディアが報じている。 “外国のスパイ”が狙うのは、政治、経済、国防、最先端技術などを専門にする大学生が多いといい、9月の新学期には中国の各大学で、スパイを見つけた場合の通報方法、国家の安全を脅かす行為を特定する方法などを教える特別講座が設けられた。 大学生は「金欲しさ」に機密を売り渡してしまう傾向があるというが、最近の就職難や経済難を思えば、報酬目当ての情報売却の増加は容易に想像がつく。 国家安全保障に詳しい中国人専門家の投稿記事によると「中国人に対する外国のスパイの要求は、最初は『市内の風景を撮影してほしい』という簡単なものから始まり、次第に港や造船所を撮影してほしいとエスカレートを見せ、与える報酬も多額なものになる」という。 中国当局による取り締まりは強化されている。今年8月、国家安全部は、中国で軍事機密プロジェクトに従事していた女性を、海外でスパイ活動を行っていた容疑で逮捕した。女性は渡航先のイタリアで米国の駐イタリア大使館員と食事などを通して緊密になり、米国移住と引き換えに軍事機密情報を売り渡したという。大使館員はCIAの職員だった。 3月には日本の製薬会社の中国駐在員が反スパイ法違反で拘束され、4月には中国共産党系の新聞「光明日報」の幹部が、北京で日本大使館の職員と面会した直後に中国当局に拘束されるなど、物騒な事件は中国の日本人社会の身近なところに及んでいる』、「物騒な事件は中国の日本人社会の身近なところに及んでいる」、恐ろしいことだ。
・『会社員を装って中国で情報収集…?日本人に向けられる疑心暗鬼  中国のネット記事に「日本人は戦前から会社員を装って中国に入国し情報を収集しており、いまなお日本人のスパイは中国社会のあらゆる領域に深く浸透している」とするくだりがあった。 まさに先頃話題になったテレビドラマ「VIVANT」に登場する「別班(べっぱん)」を想起させるが、これは先述した詳細な記述を要求するビザ申請と符合する。とりわけ「過去の職歴と当時の上司」を詳細にわたり書かせるのは、「公務員職を一時的に離れ、民間企業の職員となり中国に入国する日本人がいるからではないか」と推測する向きもある。 もっともスパイを疑われているのは会社員だけではない。中国当局は駐在員の身分で滞在する会社員の活動のみならず、研究者などの学術交流についても警戒している。 現代中国を研究する私大教授C氏は、「日常のメールのやりとりでさえも中国側の相手は警戒し、余計な描写は避け、非常に短い一文しか戻ってこなくなりました」と変化を物語るが、こうしたコメントからも中国側の関係者がかなり用心深くなっていることがうかがえる。 「車の中からは風景の撮影をしないようにお願いします。これから港を見学しますが、カメラやスマホは持参しないでください」――中国を視察で訪れた日本人のD氏は、現地のガイド役の中国人からこう指示されたという。D氏にとって4年ぶりの中国訪問は緊張の連続だった。 前出のA氏もいくつかの異変を感じ取っている。山東省青島市を訪れた印象について、「あれほど外国人でにぎわっていた青島でしたが、その数は激減し、欧米人に至ってはほとんど姿を見ることはありませんでした」と率直な印象を述べている。 そのA氏が国際線で羽田空港に向かう帰途に就いたときのことだ。離陸直前の機内で、乗客はすべての窓のシェードを閉めるようアナウンスが流れた。「中国往来は15年近くなりますが、こんなことは初めてです。滑走路には外国人に見せたくないものがあるのでしょうか。不気味さを感じました」と漏らす。 E氏にも長い中国歴があるが、今夏出張の際に中国の銀行口座と携帯番号を解約した。中国との往来を持つ日本人はE氏のように現地の銀行口座と携帯番号を持つのが通例だが、筆者の周辺では中国から距離を置くためのこのような選択が散見されるようになった。 「スパイはどこにでもいる」と中国当局が警戒を強める中、この「反スパイ法」は間違いなく日中間の交流の分断を招くだろう。互いに「あの人はスパイかもしれない」と疑心暗鬼になり、痛くもない腹を探り合う、そんな嫌な世の中の到来を予感させる。 山崎豊子氏の小説「大地の子」では、主人公の残留日本人・陸一心が文革中に「日本人である」という理由で無実の罪を着せられ、文化大革命の嵐の中、僻地の労働改造所に送り込まれるシーンがある。 何がどう災いするかわからない、あの混沌とした社会への逆戻りは止まらないのだろうか。少なくとも、私たち外国人が「容易に足を踏み入れることができなくなった国」という意味で、今の中国は文化大革命が始まる前夜をほうふつとさせている』、「少なくとも、私たち外国人が「容易に足を踏み入れることができなくなった国」という意味で、今の中国は文化大革命が始まる前夜をほうふつとさせている」、「今の中国は文化大革命が始まる前夜をほうふつとさせている」、こんなことでは、日本人の「中国」観光旅行者は激減だろう。

第三に、11月13日付け東洋経済オンライン「「匿名座談会」駐在員が語る監視社会中国の恐怖 反スパイ法と"データ3法"で情報統制が強化」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/714009
・『李克強前首相の突然の死、日本人駐在員の逮捕など不吉なニュースが続く中国。経済成長が鈍化し、直接投資が初のマイナスになった「世界の市場」から企業が逃げ始めた。 『週刊東洋経済』11月18日号の第1特集は「絶望の中国ビジネス」。共産党が経済よりも大事にしている「国家安全」は中国をどう変えていくのか?日本企業のビジネスへの影響は?匿名座談会や特別対談など、豊富な記事でその答えをお届けする。 反スパイ法や電子データの移動に制限を課すデータ3法など、中国では情報統制が強化されている。現地駐在員や中国ビジネスに関わる会社員に監視社会のリアルや中国ビジネスの現状を聞いた(Qは聞き手の質問)。 [参加者PROFILE] Aさん40代男性・IT営業職 Bさん50代男性・企画部門 Cさん30代男性・営業職 Dさん40代男性・営業職』、興味深そうだ。 
・『Q:反スパイ法やデータ3法はビジネスに影響はありますか。 Aデータ3法関連の仕事が増えていたが、9月末に新たなパブリックコメント案(編集部注:1年間で国外へ提供する個人情報が少ない場合、手続きが簡素化される)が発表され、対象企業が大幅に減った。危機感をあおって仕事を取っていた競合企業は、契約解除などの話が増えるだろう。われわれとしては獲得する案件は選別している。機密情報が含まれるデータ分析や日本企業へのデータ提供などは危険なので控えている』、「われわれとしては獲得する案件は選別している。機密情報が含まれるデータ分析や日本企業へのデータ提供などは危険なので控えている」、日本企業が商売をし難くなったことは確かだ。
・『もはや読む意味はない  B以前、リポートをウィーチャットで送信したところ、相手先に届かないことがあった。おそらく政府要人の名前などが入っていたためブロックされたのだろう。スパイと疑われる可能性があるため、政府関係者とのコンタクトも難しくなった。だから中国発のリポートは機微に触れる情報がなくなり、もはや読む意味はないだろう。 情報をやり取りする仕事は政府から監視されており、気苦労が多い。中国政府が厳しくなったのは、2013年のスノーデン事件(米国のスノーデン氏によって世界各国の機密情報などが暴露された)がきっかけだと思う。あれで米国の諜報活動の実態がよくわかり、中国は防諜の必要性を改めて認識したのではないか。 C直接的な影響はないが、ある日本企業では現地法人の部署の名前を変えたと聞いた。「調査」を「研究」にしたそうだ。調査だと機密情報を探る部署との誤解を与えかねないからだそうだ。また本社(日本)の投資意欲が下がっているため、新規事業の提案などをしても反応が鈍い。現在の日中関係を考えると、投資がかさむ事業は難しい。撤退がすぐできるよう資産を抱え込まない事業のほうが現実的だろう。 D私の見方は3人と違う。サイバーセキュリティー法など、政府の情報管理は以前から厳しかった。年々、内容が厳しくなっているだけで、予想はできたはずだ。日本企業が中国撤退をする言い訳にこれらを使っているだけだと思う。消費財の技術はすでに中国企業に追いつかれており、マーケティングにおいても日本企業は太刀打ちできない状態になっている』、「ある日本企業では現地法人の部署の名前を変えたと聞いた。「調査」を「研究」にしたそうだ。調査だと機密情報を探る部署との誤解を与えかねないからだそうだ。また本社(日本)の投資意欲が下がっているため、新規事業の提案などをしても反応が鈍い。現在の日中関係を考えると、投資がかさむ事業は難しい。撤退がすぐできるよう資産を抱え込まない事業のほうが現実的だろう・・・私の見方は3人と違う。サイバーセキュリティー法など、政府の情報管理は以前から厳しかった。年々、内容が厳しくなっているだけで、予想はできたはずだ。日本企業が中国撤退をする言い訳にこれらを使っているだけだと思う。消費財の技術はすでに中国企業に追いつかれており、マーケティングにおいても日本企業は太刀打ちできない状態になっている」、なるほど。
・『原発処理水の問題は注意  Q:10月には中国で日本人がスパイ容疑で逮捕されました。 Aアステラス製薬社員が拘束された直後は、駐在している日本人の間での緊張が高まった。医療分野や半導体など中国政府が注力をしている業界の関係者は注意が必要だと思う。ただ地域によっても受け止め方の違いはあるようで、北京の駐在員はピリピリしていても、上海ではそうでもない。もっと南の広東省になると全然気にしていない人もいるようだ。 Cわれわれのような、若手・中堅はあまり関係のない話だと思っている。だが、原発処理水の問題は注意が必要だ。日本の報道を引用し処理水は科学的に問題ないというような発信をすると、当局から目をつけられると聞いた。) B拘束されやすい人には特徴がある。中国駐在歴が長い人、そして語学力が高く、中国人と突っ込んだやり取りができる人だ。まあ、現実にはそんな人材はごく少数だから、普通の駐在員は心配しなくていいともいえる。これまでに捕まった人の多くは日本の公安調査庁と接点があったといわれている。そういう背景がなければ、過度に心配する必要はないだろう。 中国の役人との接点がリスクになることは認識しておく必要はある。役人たちとの以前はセーフだった交流が、今は違法と判断されかねない。講演をすると、中国の役人たちから「ぜひ話を聞かせてほしい」と言われて会食をすることがあったが、最近は気をつけている。また中国政府関係者も外国人との会食に応じる機会が減っており、交流自体が減ったと思う。 D消費財は政府にとって位置づけが低く、拘束されることはないと思っている。一方でブランドを潰される可能性はあるだろう。有名消費財ブランドの担当者でハニートラップに引っかかっている人がいる。いかがわしい接待を受けていることがSNSで拡散されれば、ブランドのイメージは崩壊し、不買運動につながりかねない。業界を見渡すと、もう少し考えて行動したほうがいい人がいる』、「地域によっても受け止め方の違いはあるようで、北京の駐在員はピリピリしていても、上海ではそうでもない。もっと南の広東省になると全然気にしていない人もいるようだ・・・中国の役人との接点がリスクになることは認識しておく必要はある。役人たちとの以前はセーフだった交流が、今は違法と判断されかねない。講演をすると、中国の役人たちから「ぜひ話を聞かせてほしい」と言われて会食をすることがあったが、最近は気をつけている。また中国政府関係者も外国人との会食に応じる機会が減っており、交流自体が減ったと思う」、なるほど。日本企業の機密を保護する「スパイ罪」を制定し、違反する中国人を逮捕すれば、逮捕された日本人との交換も可能になるので、早急に検討すべきだ。
・『中国企業のアプリは使わない  Q:情報流出について気をつけていることはありますか。 C中国政府にとって敏感な内容はウィーチャットで連絡を取らない。例えば10月に李克強前首相が亡くなったが、そのときはLINE(ライン)を使った。 A業務の情報交換はできるだけ、中国企業のアプリは使わないようにしている。日本側との情報のやり取りは取引先が指定したVPN(=仮想専用線。通信を暗号化でき安全性が高い)を使っている。ただ、現地スタッフはウィーチャットで仕事をしていると思う。すべて徹底するのは難しい。) D基本的に情報はすべて流出していると考えている。信頼できる取引先であれば情報はすべて開示している。隠すより中国企業に追いつくことのほうが大事だ。 B中国当局はスマホを勝手に起動して盗聴器に仕立てる技術を持っているという噂がある。正しいかどうかわからないが、用心のために重要な会議のときはスマホを持ち込まないようにしている駐在員がいる。スマホの位置情報をつかまれたくないときは、電波遮断の袋に入れるとよいと聞いた』、「業務の情報交換はできるだけ、中国企業のアプリは使わないようにしている。日本側との情報のやり取りは取引先が指定したVPN・・・を使っている・・・用心のために重要な会議のときはスマホを持ち込まないようにしている駐在員がいる。スマホの位置情報をつかまれたくないときは、電波遮断の袋に入れるとよいと聞いた」、ずいぶん大変なようだ。
・『日本が貧しくなった  Q:明るい話がないですね。 B円安や物価高で飲みに行く機会もめっきり減った。接待で使うような中国式のカラオケなんて、今は1人3000元(約6万円)程度する。そもそも日本人は中国人と比べて金払いが悪いと思われていて、店に行っても相手にされない。日本が貧しくなったと感じる。 A明るい話といえば、新型コロナがひどかった時期と比べると徐々に日本人が増えてきたと思う。子どもが日本人学校に通っているが、生徒数は徐々に増えてきていると聞く。ただ、ビザの関係などで本格回復には程遠い。往来が戻ってくれないと商機が増えないので、日中関係が改善して出張や駐在が活発になってほしい。 C最近は大手企業の中国撤退などもあったが、日本勢が戦える分野もまだある。例えば自動車では東北部にはEVは定着しないと思う。冬は寒いのでつねにヒーターをつける必要がある。消費電力の観点などを考えるとエンジン車に優位性がある。市場シェアを取っていくのではなく、特定の分野を見極めて競争をすること。それが日本企業の生き残る道だと思っている』、「接待で使うような中国式のカラオケなんて、今は1人3000元(約6万円)程度する。そもそも日本人は中国人と比べて金払いが悪いと思われていて、店に行っても相手にされない。日本が貧しくなったと感じる」、寂しい限りだ・・・子どもが日本人学校に通っているが、生徒数は徐々に増えてきていると聞く。「消費電力の観点などを考えるとエンジン車に優位性がある。市場シェアを取っていくのではなく、特定の分野を見極めて競争をすること。それが日本企業の生き残る道だと思っている」、「スパイ」の嫌疑をかけられるリスクを負いながら、「生き残る道」を探っている「日本企業」の努力には頭が下がる。
タグ:私の見方は3人と違う。サイバーセキュリティー法など、政府の情報管理は以前から厳しかった。年々、内容が厳しくなっているだけで、予想はできたはずだ。日本企業が中国撤退をする言い訳にこれらを使っているだけだと思う。消費財の技術はすでに中国企業に追いつかれており、マーケティングにおいても日本企業は太刀打ちできない状態になっている」、なるほど。 中国での日本人拘束問題 スパイ(?) 「ある日本企業では現地法人の部署の名前を変えたと聞いた。「調査」を「研究」にしたそうだ。調査だと機密情報を探る部署との誤解を与えかねないからだそうだ。また本社(日本)の投資意欲が下がっているため、新規事業の提案などをしても反応が鈍い。現在の日中関係を考えると、投資がかさむ事業は難しい。撤退がすぐできるよう資産を抱え込まない事業のほうが現実的だろう・・・ 「スパイ」の嫌疑をかけられるリスクを負いながら、「生き残る道」を探っている「日本企業」の努力には頭が下がる。 「接待で使うような中国式のカラオケなんて、今は1人3000元(約6万円)程度する。そもそも日本人は中国人と比べて金払いが悪いと思われていて、店に行っても相手にされない。日本が貧しくなったと感じる」、寂しい限りだ・・・子どもが日本人学校に通っているが、生徒数は徐々に増えてきていると聞く。「消費電力の観点などを考えるとエンジン車に優位性がある。市場シェアを取っていくのではなく、特定の分野を見極めて競争をすること。それが日本企業の生き残る道だと思っている」、 「業務の情報交換はできるだけ、中国企業のアプリは使わないようにしている。日本側との情報のやり取りは取引先が指定したVPN・・・を使っている・・・用心のために重要な会議のときはスマホを持ち込まないようにしている駐在員がいる。スマホの位置情報をつかまれたくないときは、電波遮断の袋に入れるとよいと聞いた」、ずいぶん大変なようだ。 日本企業の機密を保護する「スパイ罪」を制定し、違反する中国人を逮捕すれば、逮捕された日本人との交換も可能になるので、早急に検討すべきだ。 「地域によっても受け止め方の違いはあるようで、北京の駐在員はピリピリしていても、上海ではそうでもない。もっと南の広東省になると全然気にしていない人もいるようだ・・・中国の役人との接点がリスクになることは認識しておく必要はある。役人たちとの以前はセーフだった交流が、今は違法と判断されかねない。講演をすると、中国の役人たちから「ぜひ話を聞かせてほしい」と言われて会食をすることがあったが、最近は気をつけている。また中国政府関係者も外国人との会食に応じる機会が減っており、交流自体が減ったと思う」、なるほど。 「少なくとも、私たち外国人が「容易に足を踏み入れることができなくなった国」という意味で、今の中国は文化大革命が始まる前夜をほうふつとさせている」、「今の中国は文化大革命が始まる前夜をほうふつとさせている」、こんなことでは、日本人の「中国」観光旅行者は激減だろう。 「われわれとしては獲得する案件は選別している。機密情報が含まれるデータ分析や日本企業へのデータ提供などは危険なので控えている」、日本企業が商売をし難くなったことは確かだ。 東洋経済オンライン「「匿名座談会」駐在員が語る監視社会中国の恐怖 反スパイ法と"データ3法"で情報統制が強化」 「物騒な事件は中国の日本人社会の身近なところに及んでいる」、恐ろしいことだ。 「買い物先や観光地、タクシーや鉄道で――中国社会で成熟する決済システムや予約システムからすっかりはじき出された出張ベースの外国人は、現地に家族や親類、友人がいる場合を除いて、相当の不便を強いられるという」、なるほど。 「日本のビジネスパーソンも中国の現状に落胆する。この状況に、追い打ちをかけるのが中国の改正「反スパイ法」だ」、なるほど。 姫田小夏氏による「中国で「日本人スパイは至る所に」の報道も…訪中日本人が感じた“不気味な異変”の数々」 ダイヤモンド・オンライン で、海外でインテリジェンス活動をする邦人の保護活動にも寄与することになるだろう」、全面的に同意したい。 「筆者は、日本は最近起きている数々のスパイ関連の問題から目を背けず、正面から日本のインテリジェンス活動をどうしていくのかを協議すべき時に来ていると考えている。今こそ、日本がインテリジェンスの世界でも「普通の国」になるチャンスとも言える。 たとえばこうだ。日本に対外インテリジェンス機関を設立し、反スパイ法を制定する。そうして日本政府が公式に国外での対外スパイ活動をバックアップし、日本のためのインテリジェンス収集や工作活動までできる諜報員を育てていく。国家予算をつけ、活動の範囲や保護規定もはっきりと決めること 「鈴木氏が主張する「公安調査庁に中国のスパイがいる」という問題だ。本当にいれば、大変な事態で、公安調査庁の内部情報が筒抜けになっている可能性がある。 ただ鈴木氏がそう主張する根拠は少し弱いと言わざるを得ない」、なるほど。 「もしも公安関係者の金銭提供の話が事実だとすれば、これは情報機関から金銭を受け取っていたことになり、それは「スパイ活動」と指摘されても仕方がない。世界的に見れば、それが普通である」、なるほど。 「中国当局は2010年から鈴木氏を公安調査庁のスパイであるとみて捜査を行っていたという」、10年以上も監視されていたのに、気づかなかったというのも不思議だ。 「鈴木氏は、公安調査庁をスパイ組織であるとは思っていなかったようだ(少なくとも、そう主張している)」、苦しい言い訳だ。「公安調査庁の職員と接触があれば、鈴木氏を「公安調査庁のスパイ」とする中国の認識のほうが世界の常識に近いと言わざるを得ないのではないだろうか」、なるほど。 「鈴木氏は2016年に逮捕されるまで、200回以上も中国を訪れて日中の交流のために活動していた人物だ。 日中のために尽力していた鈴木氏が実刑判決を受けるのは、親中派の人々にとって衝撃的だった・・・裁判で有罪となり、6年間刑務所で過ごした。中国と日本のために尽力してきた鈴木氏の失望感は計り知れない」、その通りだ。 「鈴木氏は、この本の中で明確に自身は「スパイじゃない」として“ぬれ衣による逮捕・拘束”だったと批判」、これは証拠不足で、何とも言えない。「公安調査庁に中国のスパイがいる」、事実であれば、とんでもないことだ。 山田 敏弘氏による「中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 爆弾“証言”で日本の情報機関は大混乱、今こそインテリジェンス体制の整備を」 JBPRESS (その5)(中国の獄中から帰還した邦人が暴露「公安調査庁に中国のスパイ」は事実なのか 爆弾“証言”で日本の情報機関は大混乱 今こそインテリジェンス体制の整備を、中国で「日本人スパイは至る所に」の報道も…訪中日本人が感じた“不気味な異変”の数々、「匿名座談会」駐在員が語る監視社会中国の恐怖 反スパイ法と"データ3法"で情報統制が強化)
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イスラエル・パレスチナ(その2)(イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか、中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?、イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング) [世界情勢]

イスラエル・パレスチナについては、本年10月22日に取上げた。今日は、(その2)(イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか、中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?、イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング)である。

先ずは、10月25日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/710395
・『イスラエルはよく知られているように、欧米先進国並みの民主主義国であるとともに、世界に離散したユダヤ人が集まったユダヤ人の国である。1人当たりのGDPは5.4万ドルで世界14位。日本の3.3万ドル、32位を上回っている(2022年、IMF統計)。数字の上では堂々たる先進国である。 ところが、この「民主主義国」であると同時に「ユダヤ人の国家」であることは、イスラエルの場合、乗り越えがたい深刻な矛盾をはらんでいる。そして、それが今回のハマスによるイスラエル侵攻の最大の原因の1つになっているにじゅう』、「1人当たりのGDPは5.4万ドルで世界14位。日本の3.3万ドル、32位を上回っている」、ずいぶん日本より多いようだ。
・『2022年12月に発足した「最右翼」の連立政権  現在のイスラエルのネタニヤフ政権はイスラエル史上、最右翼の政権と言われている。首相のネタニヤフ氏は右派政党「リクード」の党首で、すでに合計16年余りも首相を務める右派政治家で知られる。 そのネタニヤフ氏が2022年12月に発足した第6次政権で選んだ連立相手は、イスラエルが紀元前1000年ごろのヘブライ王国のダビデ王の時代のように運営されることを掲げ、極右の宗教政党と言われる「宗教シオニスト党」や、やはり極右政党で超民族主義や反アラブ主義を掲げる「ユダヤの力」などだ。 タカ派で知られるネタニヤフ氏が最も左派に見えると揶揄されるような連立政権だ。 しかもこうした極右、宗教政党の党首が、占領地であるヨルダン川西岸やガザ地区の民生を担当する第2国防相、あるいはヨルダン川西岸の警察業務担当の国家安全保障相という重要な閣僚に就任し、パレスチナ人に対して厳しい政策を実施し始めたのである。) ネタニヤフ連立政権が最も力を入れたのが司法制度改革だった。最高裁判所の決定を国会が過半数の賛成で覆すことができるよう改めるほか、最高裁判事の任命などで政府の権限を強めることなどが改革の柱となっている。 最高裁判所は過去に、入植地でのパレスチナ人の土地所有権を認める判決を出して政府が推し進める入植地拡大政策にブレーキをかけたり、ユダヤ教の超正統派が通う宗教学校生が兵役を免除されている慣例を無効とする判決を出している。 これらは極右や宗教政党から見れば「リベラル過ぎる判決」であり、容認できない』、「首相のネタニヤフ氏は右派政党「リクード」の党首で、すでに合計16年余りも首相を務める右派政治家で知られる。 そのネタニヤフ氏が2022年12月に発足した第6次政権で選んだ連立相手は、イスラエルが紀元前1000年ごろのヘブライ王国のダビデ王の時代のように運営されることを掲げ、極右の宗教政党と言われる「宗教シオニスト党」や、やはり極右政党で超民族主義や反アラブ主義を掲げる「ユダヤの力」などだ。 タカ派で知られるネタニヤフ氏が最も左派に見えると揶揄されるような連立政権だ・・・ネタニヤフ連立政権が最も力を入れたのが司法制度改革だった。最高裁判所の決定を国会が過半数の賛成で覆すことができるよう改めるほか、最高裁判事の任命などで政府の権限を強めることなどが改革の柱となっている。 最高裁判所は過去に、入植地でのパレスチナ人の土地所有権を認める判決を出して政府が推し進める入植地拡大政策にブレーキをかけたり、ユダヤ教の超正統派が通う宗教学校生が兵役を免除されている慣例を無効とする判決を出している。 これらは極右や宗教政党から見れば「リベラル過ぎる判決」であり、容認できない」、なるほど。
・『司法制度改革が招いた政権批判がかき消えた  当然のことながら、政権の司法制度改革案に対しては「三権分立を弱体化させる」「民主主義の根幹が崩壊する」などの批判が、イスラエル国内だけでなく欧米諸国からも相次いだ。 さらにネタニヤフ首相自身が汚職で起訴されている身でもあったため、「有罪判決を逃れるための改革だ」などという批判も出た。国内では10万人規模のデモが行われ、反対の動きは政府内から軍の内部にまで広がった。しかし、司法制度改革法は7月に可決された。 司法制度改革への批判がそのまま政権批判の拡大につながる可能性もあったが、10月7日のハマスによる大規模テロによってイスラエル国内のムードは一変した。ネタニヤフ首相は野党も加わる「戦時内閣」を発足させ、国民の意識はハマスに対する報復に集中し、政権批判は消えてしまった。) ネタニヤフ首相自身のタカ派ぶりを象徴するのは、第6次政権に先立つ2018年に成立させた「基本法:ユダヤ国家法」だ。成文憲法のないイスラエルでは、憲法に相当する基本法を重要な項目ごとに制定している。「ユダヤ国家法」もその1つだが、問題はその内容だ。 まずイスラエルという国を「ユダヤ人の民族国家」と規定し「イスラエル国における民族自決権の行使はユダヤ人のみによっておこなわれる」とした。そしてヘブライ語を唯一の公用語とし、それまでヘブライ語とともに公用語だったアラビア語を公用語から外した。 そしてイスラエル国民でもあるパレスチナ人の権利や地位については何も触れられていない』、「司法制度改革案に対しては「三権分立を弱体化させる」「民主主義の根幹が崩壊する」などの批判が、イスラエル国内だけでなく欧米諸国からも相次いだ。 さらにネタニヤフ首相自身が汚職で起訴されている身でもあったため、「有罪判決を逃れるための改革だ」などという批判も出た。国内では10万人規模のデモが行われ、反対の動きは政府内から軍の内部にまで広がった。しかし、司法制度改革法は7月に可決された。 司法制度改革への批判がそのまま政権批判の拡大につながる可能性もあったが、10月7日のハマスによる大規模テロによってイスラエル国内のムードは一変した・・・ネタニヤフ首相は野党も加わる「戦時内閣」を発足させ、国民の意識はハマスに対する報復に集中し、政権批判は消えてしまった。 ネタニヤフ首相自身のタカ派ぶりを象徴するのは、第6次政権に先立つ2018年に成立させた「基本法:ユダヤ国家法」だ。成文憲法のないイスラエルでは、憲法に相当する基本法を重要な項目ごとに制定している。「ユダヤ国家法」もその1つだが、問題はその内容だ。 まずイスラエルという国を「ユダヤ人の民族国家」と規定し「イスラエル国における民族自決権の行使はユダヤ人のみによっておこなわれる」とした。そしてヘブライ語を唯一の公用語とし、それまでヘブライ語とともに公用語だったアラビア語を公用語から外した。 そしてイスラエル国民でもあるパレスチナ人の権利や地位については何も触れられていない」、なるほど。
・『民主国家から「ユダヤ人民族国家」に変質  イスラエルの「建国宣言」(1948年)や基本法の「人間の尊厳と自由」(1992年)には、すべての国民に開かれた「民主国家」「人間の尊厳と自由を守る」などと書かれている。それと比較すると、ネタニヤフ首相が進めた「ユダヤ国家法」、そして司法制度改革は、イスラエルが民主国家という色彩を薄め、ユダヤ人を中心とする民族国家に変質していることを示している。 ネタニヤフ首相のもとでのイスラエル国家の変質は、当然、パレスチナ側との緊張を高める。 ここ数年、大きな武力衝突がないことから、アメリカ国務省関係者らからは「こんなに静かな中東は久しぶりだ」などという声が出ていたが、一方で少なからぬ専門家が「大規模な軍事衝突はいつあってもおかしくない状況だ」と論じていた。 残念なことにその予想が当たり、10月7日に悲劇が起きてしまった。) ダニエル・ソカッチ著の『イスラエル』(NHK出版)が興味深い話を紹介している。イスラエルの初代首相のダヴィド・ベン=グリオン氏はイスラエルのナショナル・アイデンティティーについて、3つの要素があると指摘している。 イスラエルはユダヤ人が多数を占める国家である。 イスラエルは民主主義国家である。 イスラエルは新しい占領地(ヨルダン川西岸とガザ地区)をすべて保有する。 そしてイスラエルはこのうち2つを選ぶことはできるが、3つ全部は選べないというのだ。 この指摘こそが、冒頭に紹介した、イスラエルがユダヤ人国家と民主主義国を同時に標榜することの矛盾を示している』、「ネタニヤフ首相が進めた「ユダヤ国家法」、そして司法制度改革は、イスラエルが民主国家という色彩を薄め、ユダヤ人を中心とする民族国家に変質していることを示している。 ネタニヤフ首相のもとでのイスラエル国家の変質は、当然、パレスチナ側との緊張を高める・・・初代首相のダヴィド・ベン=グリオン氏はイスラエルのナショナル・アイデンティティーについて、3つの要素があると指摘している。 イスラエルはユダヤ人が多数を占める国家である。 イスラエルは民主主義国家である。 イスラエルは新しい占領地・・・をすべて保有する。 そしてイスラエルはこのうち2つを選ぶことはできるが、3つ全部は選べないというのだ。 この指摘こそが、冒頭に紹介した、イスラエルがユダヤ人国家と民主主義国を同時に標榜することの矛盾を示している」、なるほど。
・『占領地を併合すれば、ユダヤ人とパレスチナ人が半々に  イスラエルの人口は約950万人だが、このうち約2割はアラブ人ら非ユダヤ人だ。つまりイスラエルの現実は、ユダヤ人の単一民族国家ではないということだ。実際、アラブ人を代表する政党が存在し、国会に議席も得ている。 連立与党の極右・宗教政党は、実質占領状態にあるヨルダン川西岸とガザも元はユダヤ人の土地であるとして併合を主張している。両地域のパレスチナ人の人口は500万人を超えることから、併合が実現した場合、この地域に住む住民も当然、イスラエル国民となる。 その結果、ユダヤ人とパレスチナ人の人口は約700万人ずつで拮抗することになる。 民主国家は、国民に等しく参政権などの権利を与える。当然、国会の議員構成も大きく変わり、これまでのようにパレスチナ人を差別的に扱う法律は通りにくくなる。逆に併合後もあくまでも「ユダヤ人国家」にこだわるのであれば、ユダヤ人以外の民族の権利を奪う、つまりは人種差別思想に基づく「アパルトヘイト」的政策を取り入れざるを得なくなる。 建国当初からイスラエルの指導者らは、民主国家と民族国家の持つ矛盾を知っていた。 建国から約30年間、政権を維持してきた左派の労働党は、矛盾が顕在化することを避けるため和平合意の道を探り、ラビン首相が1993年にヨルダン川西岸とガザに暫定自治政府を置くことなどを柱とする「オスロ合意」にこぎつけた。 最終的ゴールが、ユダヤ人国家とパレスチナ人国家が並立する「二国家解決案」だった。) ところが「オスロ合意」をピークに和平に向けた動きは失速していった。 ラビン首相の暗殺以後、テロや武力衝突が繰り返され、市民の不安、不満が強まり寛容性は消えてしまった。それを受けてパレスチナに対する強硬論を訴える右派、タカ派が支持を増やす。 一方で、和平交渉を進めてきた左派勢力が衰退していく。その先に出現したのがネタニヤフ氏の時代である。支持基盤を右派政党からさらに宗教政党まで幅を広げていき、今日に至っている。 彼らは、イスラエルが発足時から抱えている矛盾などまったく意に介していないかのようである。重視しているのは民主国家であることを犠牲にした民族主義であり、領土の拡張である。それを実現するための法律が「ユダヤ国家法」であり「司法制度改革」だ』、「イスラエルの人口は約950万人だが、このうち約2割はアラブ人ら非ユダヤ人だ。つまりイスラエルの現実は、ユダヤ人の単一民族国家ではないということだ。実際、アラブ人を代表する政党が存在し、国会に議席も得ている・・・極右・宗教政党は、実質占領状態にあるヨルダン川西岸とガザも元はユダヤ人の土地であるとして併合を主張している。両地域のパレスチナ人の人口は500万人を超えることから、併合が実現した場合、この地域に住む住民も当然、イスラエル国民となる。 その結果、ユダヤ人とパレスチナ人の人口は約700万人ずつで拮抗することになる。 民主国家は、国民に等しく参政権などの権利を与える。当然、国会の議員構成も大きく変わり、これまでのようにパレスチナ人を差別的に扱う法律は通りにくくなる。逆に併合後もあくまでも「ユダヤ人国家」にこだわるのであれば、ユダヤ人以外の民族の権利を奪う、つまりは人種差別思想に基づく「アパルトヘイト」的政策を取り入れざるを得なくなる。 建国当初からイスラエルの指導者らは、民主国家と民族国家の持つ矛盾を知っていた。 建国から約30年間、政権を維持してきた左派の労働党は、矛盾が顕在化することを避けるため和平合意の道を探り、ラビン首相が1993年にヨルダン川西岸とガザに暫定自治政府を置くことなどを柱とする「オスロ合意」にこぎつけた。 最終的ゴールが、ユダヤ人国家とパレスチナ人国家が並立する「二国家解決案」だった・・・ネタニヤフ氏の時代である。支持基盤を右派政党からさらに宗教政党まで幅を広げていき、今日に至っている。 彼らは、イスラエルが発足時から抱えている矛盾などまったく意に介していないかのようである。重視しているのは民主国家であることを犠牲にした民族主義であり、領土の拡張である。それを実現するための法律が「ユダヤ国家法」であり「司法制度改革」だ」、なるほど。
・『占領地の抑圧支配は続けられるのか  前述の『イスラエル』によると、ベン=グリオン氏は、「ヨルダン川西岸とガザという占領地は返還すべきである」ということを言いたかったのだ。そうしなければイスラエルは、民主主義国家でもユダヤ人の国家でもなくなってしまうというのである。 国際的に人権意識が高まっている21世紀の今日、百万人単位の1つの民族を、別の民族が抑圧的に支配しながら安定的な国家運営などできるはずもない。しかし、ネタニヤフ政権を支える極右・宗教政党は、ベン=グリオン氏らの苦悩など想像もできないようである。 むろん今回の大規模テロの責任は、一義的にテロ組織ハマスにある。特に戦闘員でもない一般市民を対象とした大量無差別殺人は徹底的に追及されるべきだ。ガザに住む200万人の命を、イスラエルに向けたロケット弾で守ることはできない。ハマスにはもはや統治者としての責任感は感じられない。 2023年は「オスロ合意」の実現から30年という年だ。当時もイスラエルとパレスチナのPLO(パレスチナ解放機構)は相手を激しく否定していたが、にもかかわらずクリントン米大統領の前でラビン首相とアラファトPLO議長が握手した。 時がたち、兵器は近代化し破壊力が増した。破壊し尽くされたガザの映像は、長く続くネタニヤフ政権のもとで、「二国家解決策」が完全に葬り去られてしまったことを示している』、「ベン=グリオン氏は、「ヨルダン川西岸とガザという占領地は返還すべきである」ということを言いたかったのだ。そうしなければイスラエルは、民主主義国家でもユダヤ人の国家でもなくなってしまうというのである。 国際的に人権意識が高まっている21世紀の今日、百万人単位の1つの民族を、別の民族が抑圧的に支配しながら安定的な国家運営などできるはずもない」、まともな考え方だ。「しかし、ネタニヤフ政権を支える極右・宗教政党は、ベン=グリオン氏らの苦悩など想像もできないようである。 むろん今回の大規模テロの責任は、一義的にテロ組織ハマスにある・・・2023年は「オスロ合意」の実現から30年という年だ。当時もイスラエルとパレスチナのPLO(パレスチナ解放機構)は相手を激しく否定していたが、にもかかわらずクリントン米大統領の前でラビン首相とアラファトPLO議長が握手した。 時がたち、兵器は近代化し破壊力が増した。破壊し尽くされたガザの映像は、長く続くネタニヤフ政権のもとで、「二国家解決策」が完全に葬り去られてしまったことを示している」、「ネタニヤフ政権」も全く困ったものだ。

次に、11月1日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家の冷泉彰彦氏による「中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2023/11/post-1331_1.php
・『<日本外交は歴史的に「宗教対立には関与しない」基本方針を貫いてきた> 現地時間10月7日に発生した、武装集団ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃と、これを受けたイスラエルのハマスに対する宣戦布告により、両者は戦闘状態に入っています。米バイデン政権は、直ちにイスラエルへの強力な支持を表明、G7の中でイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダもほぼこれに同調しています。 その一方で、日本はG7諸国の中では唯一この問題に関しては冷静な立場を取っています。勿論、ハマスの人道を無視した乱射、殺人や誘拐などに対する非難は行っていますが、その一方でガザ地区への援助は継続しています。また、国連における決議等での行動も、イスラエルを全面的に支持するアメリカの投票行動とは少し異なった動きをしています。 今回は、上川外相がイスラエルを訪問しますが、前後してヨルダンを訪問、そして可能であればパレスチナ側要人とも会談して、双方に対する敬意を払う姿勢を見せています。つまり、この問題に関して、そして広い意味での中東情勢に関しては、日本は中立の立場なのです。 理由としては3つ挙げられると思います』、興味深そうだ。
・『中東産原油への依存  1つは、非常に現実的な理由として、日本が石油の一方的な輸入国だからです。日本は資源がないだけでなく、先進国型のエネルギー消費をする人口が1億3000万と多く、また衰退したとは言え製造業もあります。そんな中で、原子力の平和利用については技術力があるものの、政財界が世論を説得する努力が不足しているために、どうしても化石燃料への依存が止められません。 歴史的にも、1970年代に中東戦争による第一次石油ショック、イラン革命による第二次石油ショックという2度の原油高により日本経済は大きく揺さぶられました。そして現在は、ロシアのウクライナ侵攻による原油高と円安に深く苦しんでいます。そんな中では、中東の産油国と良好な関係を保つことは、国益の生命線です。そのためには、パレスチナの人々の権利というアラブの大義に理解を示すことは避けて通れません。 2番目は、製造業の拠点として、資源の購入先として、また人口減に苦しむ中での人材供給元として、日本はアジア、南アジアの国々に大きく依存しています。その中で、インドネシア、マレーシア、パキスタン、バングラデシュといったイスラム圏の国々との関係は極めて重要です。彼らとの信頼関係を維持するためにも、中東における中立ということは必要です。 3つ目の理由としては、日本の外交が江戸時代以来、そして明治から現在に至るまで、徹底的に「非宗教的」であったということがあります。国際社会には様々な利害関係が渦巻いています。その中で宗教を軸とした対立というのは無視できない問題です。ですが、日本は歴史的に「宗教による対立には関わらない」ということ、裏返せば「宗教の対立には全方位で臨む」という姿勢を堅持してきました。これは、例えば戦後における度重なる安保理非常任理事国での貢献などで結果を出したことも加わって、日本の国際的信頼の基盤となっています。今回の中立政策も、その日本外交の「非宗教性」という国是に即したものと言えます。) では現在の情勢下、G7の中で、日本だけがこうした姿勢を取ることには問題があるのかというと、それは「ない」と考えられます。 何よりも、上記の3点は求められれば胸を張って説明できるし、アメリカを含むG7諸国はそれぞれに理解を示すと考えられるからです。特にアメリカに関しては、今回の事態を受けて「イスラエル支持で団結」という状況にはなっていません。アラブ系の市民運動による「ガザ人道危機への告発」だけでなく、今は、穏健ユダヤ系による「ユダヤ系の名で攻撃するな」という反戦運動が高まっているなど、アメリカ世論は「一枚岩」ではないということもあります。多くのイスラム系市民を抱えたイギリス、フランスなど、他のG7諸国にも似たような状況があると考えて良いと思います。 日本の特に保守派の中には、日米同盟の堅持が安全保障の根幹だという認識から、軍事外交においては、アメリカに100%同調すべきという考え方が昔からありました。例えば湾岸戦争、あるいは21世紀初頭の反テロ戦争においては、可能な限りアメリカを支持する姿勢を見せることが、日本の安全を確保する上では「必要不可欠」だと思い詰めていたのです。ですが、現在の世界情勢は当時とは状況が違っており、現在の日本は「中立」を保っていいし、また条件的にもそれは可能であると考えられます』、「中東情勢に関しては、日本は中立の立場なのです。 理由と1つは、非常に現実的な理由として、日本が石油の一方的な輸入国だからです・・・2番目は、製造業の拠点として、資源の購入先として、また人口減に苦しむ中での人材供給元として、日本はアジア、南アジアの国々に大きく依存しています。その中で、インドネシア、マレーシア、パキスタン、バングラデシュといったイスラム圏の国々との関係は極めて重要・・・3つ目の理由としては、日本の外交が江戸時代以来、そして明治から現在に至るまで、徹底的に「非宗教的」であった・・・アメリカに関しては、今回の事態を受けて「イスラエル支持で団結」という状況にはなっていません。アラブ系の市民運動による「ガザ人道危機への告発」だけでなく、今は、穏健ユダヤ系による「ユダヤ系の名で攻撃するな」という反戦運動が高まっているなど、アメリカ世論は「一枚岩」ではないということもあります。多くのイスラム系市民を抱えたイギリス、フランスなど、他のG7諸国にも似たような状況があると考えて良いと思います・・・現在の日本は「中立」を保っていいし、また条件的にもそれは可能であると考えられます」、その通りだ。

第三に、11月7日付けNewsweek日本版が掲載した英ブラッドフォード大学教授〔平和学〕のポール・ロジャーズ氏による「イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/11/post-102984.php
・『<イスラエル軍がとった過去の軍事行動のパターンから見えてくるネタニヤフ首相の戦略的誤算がもたらす地上侵攻の末路とは?> 過去40年間、イスラエルは武装組織との戦いで苦杯をなめてきた。 1982年、イスラエルがレバノンに侵攻し南部を制圧したのをきっかけに、イスラム過激派組織ヒズボラが台頭した。イスラエル軍は敗北を重ね、2000年にレバノンから完全に撤退した。 06年、ヒズボラのロケット攻撃に反撃するため再びレバノンを攻めるも退却。空爆の手段に訴え、レバノンのインフラに甚大な被害を与えた。 そして今度は07年からイスラム過激派組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザだ。イスラエルはハマスのロケット攻撃と地下トンネル網の拡大を抑えることを主な目的に、08〜21年にかけてガザに4度攻め込んだ。 14年の「境界防衛作戦」では地上侵攻で苦戦を強いられ、精鋭部隊ゴラン旅団の戦闘員も大勢犠牲となった。 このときもイスラエルは空爆を行い、最も犠牲を払ったのは民間人だった。4回の戦いでイスラエルは約300人の死者を出し、ガザの犠牲者は5300人を超えた。 今後を占うには歴史が参考になる。9.11同時多発テロの後で、アメリカは国際社会の強い支持を得た。アフガニスタンに侵攻すれば泥沼に陥ると警告する専門家もいたが、タリバンとの戦いは避けられないと国際社会は見なした。 だが、アメリカを含む連合軍はその20年後、混乱の中でアフガンから撤退した』、「過去40年間、イスラエルは武装組織との戦いで苦杯をなめてきた。 1982年、イスラエルがレバノンに侵攻し南部を制圧したのをきっかけに、イスラム過激派組織ヒズボラが台頭した。イスラエル軍は敗北を重ね、2000年にレバノンから完全に撤退した。 06年、ヒズボラのロケット攻撃に反撃するため再びレバノンを攻めるも退却。空爆の手段に訴え、レバノンのインフラに甚大な被害を与えた・・・今度は07年からイスラム過激派組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザだ。イスラエルはハマスのロケット攻撃と地下トンネル網の拡大を抑えることを主な目的に、08〜21年にかけてガザに4度攻め込んだ。 14年の「境界防衛作戦」では地上侵攻で苦戦を強いられ、精鋭部隊ゴラン旅団の戦闘員も大勢犠牲となった。 このときもイスラエルは空爆を行い、最も犠牲を払ったのは民間人だった。4回の戦いでイスラエルは約300人の死者を出し、ガザの犠牲者は5300人を超えた」、これまで苦戦を強いられてきたというのは意外だ。
・『国連での孤立が鮮明に  地上戦の拡大に関して、イスラエルでは懸念の声が上がっている。軍部でもベンヤミン・ネタニヤフ政権内でも国民の間でも、今後の動向については意見が分かれる。 ロシア軍に包囲された東部マリウポリでウクライナ軍がアゾフスターリ製鉄所に籠城し、全長24キロの地下トンネルを駆使して3カ月近く持ちこたえたのはつい昨年のこと。ガザのトンネル網ははるかに広大で、ハマスが数カ月の戦闘に備えているのは確実だ。 10月7日にハマスの奇襲で大勢の市民が命を落とすと、イスラエルには強い支持が寄せられた。しかしそうした支持は既に薄れかけている。 ネタニヤフ政権は地上侵攻の意味するところを全く理解できていないが、必要なことは死者の数を見れば分かる。08年からの衝突でイスラエル側は約1700人を失った。 一方ガザの犠牲者は1万4000人を超え、この数は毎日数百人単位で増えている。 ネタニヤフ政権を今のところ国民は支持している。だがハマスに拘束された人々の家族は戦闘より人質救出を優先してほしいと訴え、その声が世論を変えつつある。 変化は国際世論にも見られ、これにはイスラエルだけでなくアメリカのバイデン政権も戦々恐々としている。 10月27日の国連総会で「人道的休戦」を求める決議案が採択された際、イスラエルとアメリカを支持し反対に回ったのはわずか14カ国。賛成した121カ国のうち8カ国がEU加盟国で、棄権した44カ国にはイギリスも含まれた。 過去のイスラエルによる軍事行動は、国際的な支持を失うと同時に終結を迎えた。奇襲の衝撃が冷めないうちに地上侵攻を開始しハマスを壊滅させていれば、ネタニヤフは勝利を宣言できたただろう。 だがそうはならず、今後そうなる見込みもない』、「10月7日にハマスの奇襲で大勢の市民が命を落とすと、イスラエルには強い支持が寄せられた。しかしそうした支持は既に薄れかけている。 ネタニヤフ政権は地上侵攻の意味するところを全く理解できていないが、必要なことは死者の数を見れば分かる。08年からの衝突でイスラエル側は約1700人を失った。 一方ガザの犠牲者は1万4000人を超え、この数は毎日数百人単位で増えている。 ネタニヤフ政権を今のところ国民は支持している。だがハマスに拘束された人々の家族は戦闘より人質救出を優先してほしいと訴え、その声が世論を変えつつある。 変化は国際世論にも見られ、これにはイスラエルだけでなくアメリカのバイデン政権も戦々恐々としている。 10月27日の国連総会で「人道的休戦」を求める決議案が採択された際、イスラエルとアメリカを支持し反対に回ったのはわずか14カ国。賛成した121カ国のうち8カ国がEU加盟国で、棄権した44カ国にはイギリスも含まれた・・・」、「奇襲の衝撃が冷めないうちに地上侵攻を開始しハマスを壊滅させていれば、ネタニヤフは勝利を宣言できたただろう。 だがそうはならず、今後そうなる見込みもない」、「ハマス」に拘束された「人質」がネックの1つの原因なのかも知れないが、現在、「人質」解放交渉が進んでいるとの報道もある。「ネタニヤフ政権」による「ガザ」支援活動への厳しい規制が、人道危機を悪化させているのは確かだ。「イスラエル」は、虎の子の情報機関モサドの情報収集が機能しなかったことあって、「ハマス」への懲罰に血道を挙げているようだが、もっと冷静になってほしいものだ。
タグ:イスラエル・パレスチナ (その2)(イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか、中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?、イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング) 東洋経済オンライン 薬師寺 克行氏による「イスラエルが抱える「最大の矛盾」が招いた悲劇 ユダヤ人国家と民主主義国家は両立できるのか」 「1人当たりのGDPは5.4万ドルで世界14位。日本の3.3万ドル、32位を上回っている」、ずいぶん日本より多いようだ。 「首相のネタニヤフ氏は右派政党「リクード」の党首で、すでに合計16年余りも首相を務める右派政治家で知られる。 そのネタニヤフ氏が2022年12月に発足した第6次政権で選んだ連立相手は、イスラエルが紀元前1000年ごろのヘブライ王国のダビデ王の時代のように運営されることを掲げ、極右の宗教政党と言われる「宗教シオニスト党」や、やはり極右政党で超民族主義や反アラブ主義を掲げる「ユダヤの力」などだ。 タカ派で知られるネタニヤフ氏が最も左派に見えると揶揄されるような連立政権だ ・・・ネタニヤフ連立政権が最も力を入れたのが司法制度改革だった。最高裁判所の決定を国会が過半数の賛成で覆すことができるよう改めるほか、最高裁判事の任命などで政府の権限を強めることなどが改革の柱となっている。 最高裁判所は過去に、入植地でのパレスチナ人の土地所有権を認める判決を出して政府が推し進める入植地拡大政策にブレーキをかけたり、ユダヤ教の超正統派が通う宗教学校生が兵役を免除されている慣例を無効とする判決を出している。 これらは極右や宗教政党から見れば「リベラル過ぎる判決」であり、容認できない」、なるほ ど。 「司法制度改革案に対しては「三権分立を弱体化させる」「民主主義の根幹が崩壊する」などの批判が、イスラエル国内だけでなく欧米諸国からも相次いだ。 さらにネタニヤフ首相自身が汚職で起訴されている身でもあったため、「有罪判決を逃れるための改革だ」などという批判も出た。国内では10万人規模のデモが行われ、反対の動きは政府内から軍の内部にまで広がった。しかし、司法制度改革法は7月に可決された。 司法制度改革への批判がそのまま政権批判の拡大につながる可能性もあったが、10月7日のハマスによる大規模テロによってイスラエ ル国内のムードは一変した・・・ネタニヤフ首相は野党も加わる「戦時内閣」を発足させ、国民の意識はハマスに対する報復に集中し、政権批判は消えてしまった。 ネタニヤフ首相自身のタカ派ぶりを象徴するのは、第6次政権に先立つ2018年に成立させた「基本法:ユダヤ国家法」だ。成文憲法のないイスラエルでは、憲法に相当する基本法を重要な項目ごとに制定している。「ユダヤ国家法」もその1つだが、問題はその内容だ。 まずイスラエルという国を「ユダヤ人の民族国家」と規定し「イスラエル国における民族自決権の行使はユダヤ人のみによっておこなわれる」とした。そしてヘブライ語を唯一の公用語とし、それまでヘブライ語とともに公用語だったアラビア語を公用語から外した。 そしてイスラエル国民でもあるパレスチナ人の権利や地位については何も触れられていない」、なるほど。 ダニエル・ソカッチ著の『イスラエル』(NHK出版) 「ネタニヤフ首相が進めた「ユダヤ国家法」、そして司法制度改革は、イスラエルが民主国家という色彩を薄め、ユダヤ人を中心とする民族国家に変質していることを示している。 ネタニヤフ首相のもとでのイスラエル国家の変質は、当然、パレスチナ側との緊張を高める・・・初代首相のダヴィド・ベン=グリオン氏はイスラエルのナショナル・アイデンティティーについて、3つの要素があると指摘している。 イスラエルはユダヤ人が多数を占める国家である。 イスラエルは民主主義国家である。 イスラエルは新しい占領地・・・をすべて保有する。 そしてイスラエルはこのうち2つを選ぶことはできるが、3つ全部は選べないというのだ。 この指摘こそが、冒頭に紹介した、イスラエルがユダヤ人国家と民主主義国を同時に標榜することの矛盾を示している」、なるほど。 「イスラエルの人口は約950万人だが、このうち約2割はアラブ人ら非ユダヤ人だ。つまりイスラエルの現実は、ユダヤ人の単一民族国家ではないということだ。実際、アラブ人を代表する政党が存在し、国会に議席も得ている・・・ 極右・宗教政党は、実質占領状態にあるヨルダン川西岸とガザも元はユダヤ人の土地であるとして併合を主張している。両地域のパレスチナ人の人口は500万人を超えることから、併合が実現した場合、この地域に住む住民も当然、イスラエル国民となる。 その結果、ユダヤ人とパレスチナ人の人口は約700万人ずつで拮抗することになる。 民主国家は、国民に等しく参政権などの権利を与える。当然、国会の議員構成も大きく変わり、これまでのようにパレスチナ人を差別的に扱う法律は通りにくくなる。 逆に併合後もあくまでも「ユダヤ人国家」にこだわるのであれば、ユダヤ人以外の民族の権利を奪う、つまりは人種差別思想に基づく「アパルトヘイト」的政策を取り入れざるを得なくなる。 建国当初からイスラエルの指導者らは、民主国家と民族国家の持つ矛盾を知っていた。 建国から約30年間、政権を維持してきた左派の労働党は、矛盾が顕在化することを避けるため和平合意の道を探り、ラビン首相が1993年にヨルダン川西岸とガザに暫定自治政府を置くことなどを柱とする「オスロ合意」にこぎつけた。 最終的ゴールが、ユダヤ人国家とパレスチ ナ人国家が並立する「二国家解決案」だった・・・ネタニヤフ氏の時代である。支持基盤を右派政党からさらに宗教政党まで幅を広げていき、今日に至っている。 彼らは、イスラエルが発足時から抱えている矛盾などまったく意に介していないかのようである。重視しているのは民主国家であることを犠牲にした民族主義であり、領土の拡張である。それを実現するための法律が「ユダヤ国家法」であり「司法制度改革」だ」、なるほど。 「ベン=グリオン氏は、「ヨルダン川西岸とガザという占領地は返還すべきである」ということを言いたかったのだ。そうしなければイスラエルは、民主主義国家でもユダヤ人の国家でもなくなってしまうというのである。 国際的に人権意識が高まっている21世紀の今日、百万人単位の1つの民族を、別の民族が抑圧的に支配しながら安定的な国家運営などできるはずもない」、まともな考え方だ。「しかし、ネタニヤフ政権を支える極右・宗教政党は、ベン=グリオン氏らの苦悩など想像もできないようである。 むろん今回の大規模テロの責任は、一義的にテ ロ組織ハマスにある・・・2023年は「オスロ合意」の実現から30年という年だ。当時もイスラエルとパレスチナのPLO(パレスチナ解放機構)は相手を激しく否定していたが、にもかかわらずクリントン米大統領の前でラビン首相とアラファトPLO議長が握手した。 時がたち、兵器は近代化し破壊力が増した。破壊し尽くされたガザの映像は、長く続くネタニヤフ政権のもとで、「二国家解決策」が完全に葬り去られてしまったことを示している」、「ネタニヤフ政権」も全く困ったものだ。 Newsweek日本版 冷泉彰彦氏による「中東問題に関する日本の「中立」外交は問題なのか?」 「中東情勢に関しては、日本は中立の立場なのです。 理由と1つは、非常に現実的な理由として、日本が石油の一方的な輸入国だからです・・・2番目は、製造業の拠点として、資源の購入先として、また人口減に苦しむ中での人材供給元として、日本はアジア、南アジアの国々に大きく依存しています。その中で、インドネシア、マレーシア、パキスタン、バングラデシュといったイスラム圏の国々との関係は極めて重要・・・3つ目の理由としては、日本の外交が江戸時代以来、そして明治から現在に至るまで、徹底的に「非宗教的」であった ・・・アメリカに関しては、今回の事態を受けて「イスラエル支持で団結」という状況にはなっていません。アラブ系の市民運動による「ガザ人道危機への告発」だけでなく、今は、穏健ユダヤ系による「ユダヤ系の名で攻撃するな」という反戦運動が高まっているなど、アメリカ世論は「一枚岩」ではないということもあります。多くのイスラム系市民を抱えたイギリス、フランスなど、他のG7諸国にも似たような状況があると考えて良いと思います・・・現在の日本は「中立」を保っていいし、また条件的にもそれは可能であると考えられます」、その通りだ。 ポール・ロジャーズ氏による「イスラエル「40年の戦史」が予言する終戦のタイミング」 「過去40年間、イスラエルは武装組織との戦いで苦杯をなめてきた。 1982年、イスラエルがレバノンに侵攻し南部を制圧したのをきっかけに、イスラム過激派組織ヒズボラが台頭した。イスラエル軍は敗北を重ね、2000年にレバノンから完全に撤退した。 06年、ヒズボラのロケット攻撃に反撃するため再びレバノンを攻めるも退却。空爆の手段に訴え、レバノンのインフラに甚大な被害を与えた ・・・今度は07年からイスラム過激派組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザだ。イスラエルはハマスのロケット攻撃と地下トンネル網の拡大を抑えることを主な目的に、08〜21年にかけてガザに4度攻め込んだ。 14年の「境界防衛作戦」では地上侵攻で苦戦を強いられ、精鋭部隊ゴラン旅団の戦闘員も大勢犠牲となった。 このときもイスラエルは空爆を行い、最も犠牲を払ったのは民間人だった。4回の戦いでイスラエルは約300人の死者を出し、ガザの犠牲者は5300人を超えた」、これまで苦戦を強いられてきたというのは意外だ。 「10月7日にハマスの奇襲で大勢の市民が命を落とすと、イスラエルには強い支持が寄せられた。しかしそうした支持は既に薄れかけている。 ネタニヤフ政権は地上侵攻の意味するところを全く理解できていないが、必要なことは死者の数を見れば分かる。08年からの衝突でイスラエル側は約1700人を失った。 一方ガザの犠牲者は1万4000人を超え、この数は毎日数百人単位で増えている。 ネタニヤフ政権を今のところ国民は支持している。だがハマスに拘束された人々の家族は戦闘より人質救出を優先してほしいと訴え、その声が世論を変えつつある。 変化は国際世論にも見られ、これにはイスラエルだけでなくアメリカのバイデン政権も戦々恐々としている。 10月27日の国連総会で「人道的休戦」を求める決議案が採択された際、イスラエルとアメリカを支持し反対に回ったのはわずか14カ国。賛成した121カ国のうち8カ国がEU加盟国で、棄権した44カ国にはイギリスも含まれた・・・」 「奇襲の衝撃が冷めないうちに地上侵攻を開始しハマスを壊滅させていれば、ネタニヤフは勝利を宣言できたただろう。 だがそうはならず、今後そうなる見込みもない」、「ハマス」に拘束された「人質」がネックの1つの原因なのかも知れないが、現在、「人質」解放交渉が進んでいるとの報道もある。「ネタニヤフ政権」による「ガザ」支援活動への厳しい規制が、人道危機を悪化させているのは確かだ。「イスラエル」は、虎の子の情報機関モサドの情報収集が機能しなかったことあって、「ハマス」への懲罰に血道を挙げているようだが、もっと冷静になっ てほしいものだ。
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