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イラン問題(その4)(イランとの応酬はまるでギャンブル トランプ外交の極限の危うさ、米国vsイラン戦争回避の出来レース 2つの国が絶対口を出しては言えない本音とは、米国・イラン「異次元地政学ゲーム」の今後 元中東担当外交官が解説) [世界情勢]

イラン問題については、昨年9月29日に取上げた。今日は、(その4)(イランとの応酬はまるでギャンブル トランプ外交の極限の危うさ、米国vsイラン戦争回避の出来レース 2つの国が絶対口を出しては言えない本音とは、米国・イラン「異次元地政学ゲーム」の今後 元中東担当外交官が解説)である。

先ずは、在米作家の冷泉彰彦氏が本年1月9日付けNewsweek日本版に掲載した「イランとの応酬はまるでギャンブル、トランプ外交の極限の危うさ」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2020/01/post-1136_1.php
・『今回の一件でトランプはおそらく相当程度にペンタゴンを掌握したと見られるが......  トランプ大統領の命令で、米軍がイランのソレイマニ司令官をイラクのバグダッド空港で殺害したのが1月3日。イランは大規模な報復を示唆していました。一部にアメリカとイランは「にらみ合いによる長期戦」となるのでは、という見方がありましたが、イランは早い時期に報復を実行しました。 イラク現地時間8日の未明、米軍が駐留するイラクの基地2カ所に、十数発の弾道ミサイルを撃ち込んだのです。対象となったのは、イラク中西部のアル・アサド空軍基地と関連施設、そして北部のアルビル基地でした。この2カ所への攻撃で、一時イランからは「80人死亡」という情報も流れていたのです。 専門家も、市場も、世論も、世界中が、「トランプの司令官殺害命令を契機として、大規模な戦争が起きる危険性」を覚悟したのでした。この事態を受けて、米国東部時間1月8日の午前11時にトランプ大統領が、ホワイトハウスで会見を行うというニュースが流れると、アメリカのメディアは一斉に「現政権発足以来、最大の危機」という報道を繰り広げました。 ところが、会見の時間が近づくにつれて、下げていたNY株式市場の株価はゆるやかに上昇に転じたのです。会見は11時を過ぎても始まらず、NYダウは40ドル高で小康状態となりました。そこへ、閣僚と軍の幹部が入場して来ました。閣僚というのは、ペンス副大統領、エスパー国防長官、ポンペオ国務長官、軍人は統合幕僚本部のメンバーでした』、私も「トランプ大統領」の「記者会見」を注視していて肩透かしを食らわされた口だ。
・『イラン側からのメッセージ  中継していたCNNでは「政権内、そして軍との意見不一致はない、自分たちは一枚岩だということを誇示している」という解説をしていました。誰も何も言わない不気味な沈黙が流れましたが、各人の表情には緊張は見られたものの、開戦を覚悟した悲壮感はありませんでした。 約30分遅れでトランプ大統領が入場、いきなりイランを批判し、経済制裁の追加を言明しました。口調は厳しいのですが、本格開戦とか再報復という文言はないまま演説が進行して行きましたが、決定的だったのは前日のイラク2カ所へのミサイル攻撃を説明した部分です。 トランプ大統領は、攻撃により「アメリカ人にもイラク人にも犠牲者は出なかった」として、その理由としてはイラン側から事前通告があったと述べていました。つまり、この2カ所に対する攻撃において、イラン側は「これ以上は対立をエスカレートさせない」というメッセージを含めており、アメリカはそれを理解したというわけです。 市場には安堵感が流れて、ダウはザラ場で280ポイントも上昇し、一方で原油の先物は一気に下がりました』、「イラン」はこんな猿芝居をうったことで、国内に説明がつくのだろうか。
・『この先のことは分かりません。今回の会見でも、トランプ大統領は追加の制裁を言明し、とにかくイランの核政策を厳しく批判しています。イランにしても、オバマとEUなどとの間で成立させた核合意が事実上崩壊した今、核開発を簡単に止めることはできません。ですから、アメリカとイランの緊張関係はまだまだ続くと考えられます。 そうではあるのですが、とりあえず12月末から発生していた米イランの間での暴力の応酬が、短期的に沈静化することは確度の高い状況となってきました。また、仮にそうだとすると、1月3日のソレイマニ司令官殺害作戦というのは、法的な正当性や後世の歴史的評価は別として、現時点では「成功した」という評価が可能になります。 何よりも、このイランとの「暫定的な手打ち(?)」により、当面アメリカは米兵を危険に晒すことを回避できた格好です。2017年1月の就任以来、とかくトランプ大統領とペンタゴンの間には、不協和音が続いていましたが、おそらくこの一件をもってトランプ政権は相当な程度に軍を掌握したと考えられます。 それでは、今回の一件はトランプ流の「常識破り」な「交渉術」が成功したもので、今後ますます大統領は自信を深め、世論もそれを支持して、トランプ流の軍事外交が展開される、そんな評価をしていいのかというと、それは違うと思います。 今回のソレイマニ司令官殺害作戦は、とにかく法的根拠が希薄なだけでなく、軍事外交の方法論として、あまりにも危険なギャンブルです。同様の手法が、常に成功するとは限りません。仮に今回の「成功」に味を占めて、トランプ流の軍事外交が世界を対象に展開されるようですと、どこかで大きな破綻が生じる可能性は否定できないでしょう』、こんな「危険なギャンブル」はこれ限りにしてほしいものだ。「ソレイマニ司令官殺害作戦」の「法的な正当性」はもっと問題化すれば面白いのだが・・・。

次に、1月11日付けデイリー新潮「米国vsイラン戦争回避の出来レース、2つの国が絶対口を出しては言えない本音とは」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/01110800/?all=1&page=1
・『これで“手打ち”!?  1月8日、ニューズウィーク日本版は公式サイトに「イラン戦争間近? アメリカで『#第三次大戦』がトレンド入り、若者は徴兵パニック」の記事を掲載した。ウェスリー・ドカリー氏の署名記事で、日本版サイトはその翻訳を掲載した。 午後2時15分に公開された記事の冒頭部分をご紹介しよう。《米軍が1月3日、ドローン攻撃でイラン革命防衛隊の司令官カセム・スレイマニ(註:日本メディアの多くは「ソレイマニ」と表記)を殺害すると、アメリカのSNSは大騒ぎとなり、ツイッターでは「第三次大戦(WWIII)」がトレンド入りした。アメリカがイランとの戦争に踏み切れば、徴兵が始まるのではないかという不安の声も多く上がっている》(註:デイリー新潮の表記法に合わせて引用した。以下同) ここで改めてソレイマニ司令官の殺害を報じた記事を確認しておこう。共同通信は1月3日、「米、イラン精鋭司令官を殺害 トランプ氏が指示、ヘリで攻撃」と報じた。 《米国防総省は2日夜、トランプ大統領の指示を受け、イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を殺害したと発表した。国営イラン放送も、イラクの首都バグダッドの国際空港で米国のヘリコプター攻撃により殺害されたと確認。イラン側の報復は必至で、中東情勢がさらに緊迫化する恐れがある》 そしてイランが攻撃を開始。テレ朝NEWSは1月8日、「【報ステ】イラン報復 アメリカ軍記事(注:「基地」の誤り)にミサイル」の記事を掲載した。 《報復を宣言していたイランが日本時間8日午前7時半ごろ、イラクにあるアメリカ軍基地をミサイルで攻撃した》 この攻撃については後で詳しく見るが、イランが報復を行い、同じ日の午後にニューズウィーク日本版が「第三次世界大戦」の記事を掲載したわけだ。 報復が報復を呼ぶ最悪の展開を想像した方は、この頃なら決して少なくなかっただろう。しかしながら、ニューズウィーク日本版の記事がアップされてから約45分後、午後3時に日テレNEWS24は「イラン外相『戦争は望んでいない』」の記事を掲載した。《イランが、アメリカ軍が駐留するイラクの基地を攻撃したことについて、イランのザリフ外相は8日、「攻撃は終わった。戦争は望んでいない」などとして、あくまで自衛のための報復であることを強調した》』、一時は「ツイッターでは「第三次大戦(WWIII)」がトレンド入りした」、のからの急展開のなかでは、「ニューズウィーク日本版」が先走り記事を出したのも頷ける。それにしても、「イラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官」が、「イラクの首都バグダッドの国際空港で米国のヘリコプター攻撃により殺害された」、本来、厳重な警戒体制が敷かれている筈だが、イラク側に米軍の内通者でもいたのだろうか。
・『金の切れ目がテロの切れ目!?  これを1つの契機として、抑制的な報道が目立つようになっていく。例えば時事通信は翌9日の午前1時57分、公式サイトに「イラン報復、米軍基地攻撃 イラクに弾道ミサイル十数発―トランプ氏『死傷者なし』」の記事を掲載した。末尾を紹介させていただく。《CNNテレビによると、イランはミサイル攻撃実施を事前にイラク政府に伝えていた。イラク側から情報を入手した米軍は、着弾までに兵士らを防空壕(ごう)などに避難させることができたという。事実であれば、イランが緊張激化に歯止めをかけるため、米兵に被害を出さないよう配慮した可能性が高い。イランのメディアは「米部隊側の80人が死亡、200人が負傷した」と伝えたが、国内向けの政治的宣伝とみられる》 こうして徐々に「すわ、第三次世界大戦か」という懸念は減少していき、「どうやら大丈夫みたいだ」と世論も変わったわけだ。 中東研究家の佐々木良昭氏も「私も一時期は最悪の事態を想定しましたが、このままなら両国間の緊張は緩和に向かうと思います」と指摘する。 「改めて浮き彫りになったのは、経済制裁に疲弊しているイランの現状です。イラン国内の世論がアメリカに報復すべきだと沸きたち、指導者層も一時期は頭に血が昇っていたに違いありませんが、しばらくすると『自分たちはアメリカに報復できるだけの資金を持っていない』ことに気づいたのです。イラクにあるアメリカ軍基地に数十発のミサイルを打ち込むので精一杯だったのです」 話は少し古いが、AFP通信は2018年12月2日、「イランと韓国、原油の『物々交換』取引で合意 制裁の回避図る」と報じた。《イランは1日、同国から輸出した原油の代金を物品で受け取る取引を行うことで、韓国と最終合意したことを明らかにした。米国がイラン産原油に対して再発動した禁輸措置の回避を図る》 記事は“制裁逃れ”の面から解説しているが、佐々木氏は同じ動きから「イラン経済の危機的状況」も読み解けるという。 「本来であれば、イランは原油の代金を現ナマで受け取りたいわけです。国内経済に余裕があれば、制裁の解除や緩和を待とうとしたでしょう。それを『物品でいいから払ってくれ』と頼んだということは、国内で薬品など市民生活の必需品さえ枯渇している現状があるからです」 イランの正規軍だけでなく、支援しているテロ組織の動きも鈍い。例えば「反欧米、イスラエル殲滅」を掲げるヒズボラは、レバノン国内に“ヒズボラ国”を樹立するほどの勢力を持っているが、アメリカにテロ攻撃を仕掛けたというニュースは今のところ全く報じられていない。 「簡単な話です。イランの国内経済でさえ悲鳴をあげているのに、外国の組織を援助する余裕などあるはずがありません。イランの支援が先細りしてしまい、ヒズボラを筆頭とするテロ組織は自重するしかない状況なのです」(同・佐々木氏)』、「原油の『物々交換』取引」にまで追い込まれているとは、確かに外貨資金繰りは苦しそうだ。
・『アメリカとイラン、真の関係は?  ソレイマニ司令官を殺害したことでアメリカは面子を保ち、トランプ大統領は自身の再選につなげようとしている。だが、イランはイランで、プライドを満足させた瞬間があったという。 「イランがイラクに放ったミサイルですが、アメリカに攻撃の正確性を見せつけるという真の目的があり、それは果たされたと考えていいでしょう。つまり、ミサイルはアメリカの基地を“ぎりぎりで外す”ように狙って発射され、それは達成されたわけです。イランの国営メディアが報じた『米部隊の80人が死亡』が嘘だとは誰もが分かっていることで、むしろ真実は『米兵や関係者が誰も死ななかった』ことがイラン軍の目的であり、アメリカに対する一種の恫喝にもなっている。こうしてイランの面子も保たれました。これがザリフ外相の『戦争は望んでいない』という抑制的な発言が行われた理由の1つだと考えられます」(同・佐々木氏) イランにとって、ソレイマニ司令官の殺害が屈辱であるのは言うまでもない。しかしながら、メリットがゼロだったかと言えば、実はそうでもないという。 AFP通信は19年12月6日、「イラン反政府デモ弾圧、死者1000人超か、米発表」と報じた。実はイラン国内では反体制のデモが盛んに行われているのだ。 「死者が1000人という数には異論がありますが、イランの指導者層がデモの沈静化に頭を悩ませていたのは間違いありません。ところが、ソレイマニ司令官がアメリカによって殺害されると、イラン国民は反米で一致団結、反政府デモなど消えてしまいました。さらに原油価格が上昇したことも、イランにとっては歓迎すべき状況だったと思われます」(同・佐々木氏) そして佐々木氏は「そもそもアメリカとイラン両国は、互いを本当に敵と見なしているのか、そこに疑問を持ちながらニュースを見てほしいのです」と推奨する。 「アラブ世界ではイスラム教スンニー派が90%と多数派です。リビア、エジプト、スーダン、サウジアラビアなどがスンニー派国家として知られています。ところがイランは、少数派とされるシーア派の国家です。これだけでもアメリカにとってイランは、価値があります。イランが一定の存在感を示す限りは、中東の一体化が阻まれ、アメリカが中東をコントロールできる余地が大きくなるからです」 イランが軍事大国化していくと、サウジやアラブ首長国連邦、ヨルダンという国々はアメリカの軍事兵器を購入する。佐々木氏は「半分は冗談ですが、アメリカはイランにどれだけ感謝しても感謝しすぎるということはないのです」と言う。 「“敵の敵は味方”という諺もあります。国際政治、特に中東となると、簡単に“敵”や“味方”を色分けすることは不可能です。司令官が暗殺され、イランが報復を行った時は緊張しましたが、両国のパフォーマンスだけが目立って沈静化に向かいつつあります。もちろん杞憂で終わるに越したことはありません。しかしながら、国際的な茶番を見せられた印象も拭えないのです」』、イランにとっては、「『米兵や関係者が誰も死ななかった』ことがイラン軍の目的であり、アメリカに対する一種の恫喝にもなっている。こうしてイランの面子も保たれました」、「ソレイマニ司令官がアメリカによって殺害されると、イラン国民は反米で一致団結、反政府デモなど消えてしまいました」、他方、アメリカにとっては、「イランは、少数派とされるシーア派の国家です。これだけでもアメリカにとってイランは、価値があります。イランが一定の存在感を示す限りは、中東の一体化が阻まれ、アメリカが中東をコントロールできる余地が大きくなるからです」、国際情勢は一筋縄ではいかず、複雑怪奇だ。

第三に、元外務省中東アフリカ局参事官でキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦氏が1月12日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「米国・イラン「異次元地政学ゲーム」の今後、元中東担当外交官が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/224880
・『イラン国営メディアは8日未明、イラク西部の米軍と有志連合軍が駐留する空軍基地にミサイル攻撃を行ったと報じた。これを受けて米国・イラン双方から伝わってくる公開情報は極めて興味深い。今後の米イラン関係をいかに読むべきか。現時点での見立てを解説しよう』、宮家氏の「見立て」も興味深そうだ。
・『今後の米イラン関係をいかに読むべきか?  イラン国営メディアは8日未明、イラク西部の米軍と有志連合軍が駐留する空軍基地にミサイル攻撃を行ったと報じた。イランが米軍基地へのミサイル攻撃を認めるのは今回が初めて。一方、米国防総省はイランが12発を超える弾道ミサイルを米軍が駐留するイラク内の基地2カ所に撃ち込んだと発表した。 米国によれば、3発のミサイルはイランから発射されたが、現時点で米国人の死傷報道は出ていない。ドナルド・トランプ米大統領は「全て順調、今のところ良好(All is well 〈中略〉 So far so good)」とツイートした。イラクの首都バグダッドの国際空港近くでイラン最精鋭のクドゥス(Quds)部隊のカセム・ソレイマニ司令官が殺害されてから5日目の出来事である。 これまでイラン指導部は米国に「厳しく報復する」と誓っていたはず。ところが、今回イラン側は「(米側の攻撃)に対応した攻撃が完了した(proportionate attack concluded)」と述べている。以上の公開情報は極めて興味深い。今後の米イラン関係をいかに読むべきか。筆者の現時点での見立ては次の通りだ』、どう読めばいいのだろう。
・『第1ラウンドは米国の勝利?  今回のイラン側のミサイル攻撃が始まる前、筆者はこう書いていた。 (1)正規戦でイランは米軍の敵ではない。イラン自身がそれを最もよく知っているはずだ。さればイランの報復は代理戦争と非正規戦だろう。イランがよほどの誤算をしない限り、いずれにせよトランプ氏は誤算を続けるだろうが、大戦争には至らないとみる。 (2)イランの戦略目的は、対米戦勝利ではなく、イラクなど中東地域からの米軍撤退と米影響力の低下だ。さらに、イランはソレイマニ司令官の死を内政で最大限活用する。経済制裁で疲弊し、民衆の不満が高まっているイランの政府に今必要なのは、共通の敵に対する国民の団結であるはずだからだ』、トランプも「イラクなど中東地域からの米軍撤退」を目指しているので、イランの「戦略目的」達成も夢ではないようだ。
・『計算し尽くされたイランの対応  筆者の上記の見立ては今も基本的に変わっていない。今回イランは難しいオペレーションを強いられた。トランプ氏を相手に、米国の軍人・民間人が多数死亡するような攻撃だけは避けたい。下手をするとイスラム共和制そのものの崩壊にもつながりかねない自殺行為だからだ。 他方、国内政治的には何らかの「断固とした対米報復を実行」する必要がある。あれだけ国民の反米感情をあおっておいて、今更何もしないわけにはいかないからだ。米国人は殺さず、事態もエスカレートさせないが、十分強力な軍事攻撃が必要となると、結局今回のミサイル発射に行き着いたのだろう』、「計算し尽くされたイランの対応」は誠に見事だ。
・『お粗末なトランプ政権内の政策軌道修正  こうしたイラン側の慎重で、熟考の末の、抑制の効いた軍政的政策判断に比べれば、トランプ政権の対応はお世辞にもプロとはいえない。今回も大統領が、熟慮しないまま、衝動的に、恐らくは(誰とは言わないが)「イラン憎し」の閣僚の意見を採用し、いつもの通り暴走したのだろう。 通常この種の問題ある大統領決断が下された後は米政府内、特に国防総省などでダメージコントロール作戦が水面下で展開されることが多い。北朝鮮との対話決定、シリアからの米軍撤退決定などの場合と同様、今回もトランプ政権内で大統領とその部下たちとの間で水面下の熾烈な確執があったはずだ』、トランプ大統領が「いつもの通り暴走したのだろう」、今回は結果オーライなのかも知れないが、それが続く保証はない。
・『第2ラウンドはどうなるか?  現時点(8日夜)では、米国・イラン双方とも、今回の攻撃の被害など詳細な事実関係を検証しつつ、相手の出方を見極めようとしているはずだ。攻撃直後は大統領声明発表も予想されていたが、いまだ行われていない。経験則上あえて予想すれば、当面トランプ氏が対イラン大規模軍事攻撃に踏み切る可能性は低いだろう。 だが、仮にこれで米イラン間の緊張がある程度緩和されたとしても、あくまで第1ラウンドの終了にすぎない。今回は米国・イラン共に、必要であれば相手に対して直接軍事攻撃が可能だということを改めて確認し合ったという点で、両国間で新たな段階の「地政学ゲーム」が始まったとみるべきだろう。 第2ラウンドの最大の焦点も当然、中東湾岸地域での米軍駐留の是非を巡る米イラン間の綱引きだ。先日のイラク国会の米軍撤退要求「決議」に法的拘束力はなかった。されば、今後イランはイラク国内にさらに手を突っ込み、イラク政府が正式に米軍撤退を要求するよう内政干渉を強めていくだろう』、「イラク政府が正式に米軍撤退を要求する」ような事態を、メンツが潰れる米国は必死で防ぐのだろう。
・『米国・イラン関係は前例のない次元に突入  今回筆者の見立てで予想が外れたのは、イランが対米報復に非正規戦や代理戦争を活用しなかったことだ。それは恐らく、国内的に「イランが直接米軍基地をミサイルでたたいた」という形を示す必要があったからだろう。されば、第2ラウンドではこの種の非正規戦や代理戦争がこれまで同様続くことを覚悟すべきだ。 第2ラウンドがいつ始まるかは分からない。恐らくトランプ氏自身の直感が最も重要となるだろう。逆に言えば、これほど重要な米国・イラン間の緊張状態が、米国大統領とはいえ、素人である一個人の直感的、衝動的判断に左右されること自体、米国・イラン関係が前例のない次元に入りつつあることを示している。 一方、日本にとっては外交活動を活性化させるチャンスだ。もちろん、日本ができることには限界があるが、欧州諸国などと共同ないし連携しながら、米国・イラン両国に働き掛けを行う価値は十分あるだろう。もしかしたら、「米イラン新地政学ゲーム」の第2ラウンドは既に始まっているかもしれないからだ』、「これほど重要な米国・イラン間の緊張状態が、米国大統領とはいえ、素人である一個人の直感的、衝動的判断に左右される」、時代というのはまさに「「米イラン新地政学ゲーム」の第2ラウンド」に入っているのかも知れない。私は安倍首相には無理と思うが、「米国・イラン両国に働き掛けを行う」努力は続けてもらいたいものだ。
タグ:宮家邦彦 冷泉彰彦 ダイヤモンド・オンライン Newsweek日本版 デイリー新潮 イラン問題 (その4)(イランとの応酬はまるでギャンブル トランプ外交の極限の危うさ、米国vsイラン戦争回避の出来レース 2つの国が絶対口を出しては言えない本音とは、米国・イラン「異次元地政学ゲーム」の今後 元中東担当外交官が解説) 「イランとの応酬はまるでギャンブル、トランプ外交の極限の危うさ」 イラン側からのメッセージ この2カ所に対する攻撃において、イラン側は「これ以上は対立をエスカレートさせない」というメッセージを含めており、アメリカはそれを理解した アメリカとイランの緊張関係はまだまだ続く イランとの「暫定的な手打ち(?)」により、当面アメリカは米兵を危険に晒すことを回避できた格好です 「米国vsイラン戦争回避の出来レース、2つの国が絶対口を出しては言えない本音とは」 これで“手打ち”!? ニューズウィーク日本版が「第三次世界大戦」の記事を掲載 ツイッターでは「第三次大戦(WWIII)」がトレンド入りした 金の切れ目がテロの切れ目!? アメリカとイラン、真の関係は? ソレイマニ司令官がアメリカによって殺害されると、イラン国民は反米で一致団結、反政府デモなど消えてしまいました 原油価格が上昇したことも、イランにとっては歓迎すべき状況 そもそもアメリカとイラン両国は、互いを本当に敵と見なしているのか、そこに疑問を持ちながらニュースを見てほしいのです イランは、少数派とされるシーア派の国家です。これだけでもアメリカにとってイランは、価値があります。イランが一定の存在感を示す限りは、中東の一体化が阻まれ、アメリカが中東をコントロールできる余地が大きくなるからです 『米兵や関係者が誰も死ななかった』ことがイラン軍の目的であり、アメリカに対する一種の恫喝にもなっている。こうしてイランの面子も保たれました 「米国・イラン「異次元地政学ゲーム」の今後、元中東担当外交官が解説」 今後の米イラン関係をいかに読むべきか? 第1ラウンドは米国の勝利? イランの戦略目的は、対米戦勝利ではなく、イラクなど中東地域からの米軍撤退と米影響力の低下 計算し尽くされたイランの対応 米国人は殺さず、事態もエスカレートさせないが、十分強力な軍事攻撃が必要となると、結局今回のミサイル発射に行き着いた お粗末なトランプ政権内の政策軌道修正 今回も大統領が、熟慮しないまま、衝動的に、恐らくは(誰とは言わないが)「イラン憎し」の閣僚の意見を採用し、いつもの通り暴走したのだろう 第2ラウンドはどうなるか? 第2ラウンドの最大の焦点も当然、中東湾岸地域での米軍駐留の是非を巡る米イラン間の綱引きだ 今後イランはイラク国内にさらに手を突っ込み、イラク政府が正式に米軍撤退を要求するよう内政干渉を強めていくだろう 米国・イラン関係は前例のない次元に突入
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欧州(その6)(マイナス金利に苦しむ欧州銀 迫る景気後退の時限爆弾、中央銀行が環境問題に手を出すのは無理筋だ ラガルドECB総裁はやはり政治的すぎるのか、2020年の欧州 EUを攻めるジョンソン氏 EU守るドイツは世代交代) [世界情勢]

欧州については、昨年5月2日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その6)(マイナス金利に苦しむ欧州銀 迫る景気後退の時限爆弾、中央銀行が環境問題に手を出すのは無理筋だ ラガルドECB総裁はやはり政治的すぎるのか、2020年の欧州 EUを攻めるジョンソン氏 EU守るドイツは世代交代)である。

先ずは、マネックス証券 執行役員チーフ・アナリストの大槻奈那氏が8月26日付けロイターに掲載した「コラム:マイナス金利に苦しむ欧州銀、迫る景気後退の時限爆弾=大槻奈那氏」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/column-forexforum-nana-otsuki-idJPKCN1VC0SK
・『 欧州の銀行株が乱高下している。景気後退に陥った場合にドイツには財政出動の準備があるとの報道で若干値を戻したものの、資産価値に比べて株価が割高か割安かをみる株価純資産倍率(PBR)は、ドイツ銀行(DBKGn.DE)とコメルツ銀行(CBKG.DE)で0.2倍前後、フランスのソシエテ・ジェネラル(SOGN.PA)や英国のバークレイズ(BARC.L)、イタリアのウニクレディト(CRDI.MI)でも0.3─0.4倍と、ことごとく1.0倍を大きく割り、ほぼ今年の最安値近辺で推移している』、PBRがここまで低いとは、改めて驚かされた。もっとも、日本のメガバンクも0.45倍から0.5倍なので、五十歩百歩ともいえる。
・『貸出金利の低下、ここに極まれり  何が問題なのか。2014年に欧州中央銀行(ECB)が導入したマイナス金利は、もちろん元凶の一つだ。デンマークでは今月、一定額以上預金者が対象ながら、貸出金利がマイナス0.6%の住宅ローンが登場して話題になった。ユーロ圏でもドイツの一部の銀行は0.5%の住宅ローンを提供している 。欧州では、少なくとも14銘柄の投機的格付企業の債券がマイナス利回りで取り引きされている。 日銀が2016年にマイナス金利政策を始めた当時、「欧州では案外貸出金利が下がっていない」という分析が多く見られたが、今年に入って大きく低下している。2014年以降の貸出金利の低下幅は約60ベーシスポイント(bp)に達する。年平均12bp前後の下落は、日本の銀行を上回るペースだ。 この間、ユーロ圏の銀行貸出残高10兆ユーロ(約1180兆円)に対し、約600億ユーロの収益が失われた計算になる。同様に、債券の利回りも下落しており、トレーディング収益にもひところの勢いはない。このような傾向は、金利低下が続く中、当面続きそうだ』、「住宅ローン」金利までマイナスの国が現れたとは、まだプラスの日本よりもはるかに酷いようだ。
・『枯渇する不良債権バッファー  さらに問題なのは、こうした利回りの低下で、不良債権が発生した時のバッファーが枯渇しつつあることだ。 2010─11年の財政危機後、欧州の不良債権問題は景気回復と債権売却などで徐々に落ち着いてきた。それでも、貸し出しに占める不良債権の比率はギリシャで41%、ポルトガルやイタリアでも8─9%と、日米に比べてまだ高い。欧州連合(EU)全体の不良債権額は 2019年3月時点で77兆円と、日本の10倍以上だ(ちなみにEUの貸出総額は日本の銀行の約4倍)。 さらにこのところ、地政学リスクの拡大などからクレジットリスクへの市場の警戒感は高まりつつある。これまで拡大基調にあった欧州のローン担保証券(CLO)市場は極めて低調だった 。報道によると、米国では今月、約2カ月前から資金を募っていた3社がレバレッジドローンの販売を中止した 。貿易摩擦の高まり、不安定な原油価格、景気後退リスクを懸念する投資家が質へと逃避していることが背景だ。 忍び寄るダウンサイドに備えるべく、今年4月 、欧州委員会は不良債権に対する統一ルールを決めた。例えば、無担保貸出が新たに不良債権になった場合、3年以内に貸出に対して100%の資本を積まなければならない。 ドイツなどは当初、このルールを既存の貸出全体に適用すべきだと主張していたが、不良債権比率が高い他の国に押し切られ、新規に発生した不良債権だけが対象となった。それでも、銀行にとっては負担増となる可能性が高い。銀行の利ざやは薄くなっており、こうした負担増は収益で吸収しにくくなっている。 規制は好況時に強化するのが鉄則だ。今回のルールも、銀行財務の余裕を減らし、貸し渋りを発生させる可能性がある。早めに景気後退期に備えるためのルールが、むしろプロシクリカル(景気サイクルを加速させること)に働いてしまうかもしれない』、「無担保貸出が新たに不良債権になった場合、3年以内に貸出に対して100%の資本を積まなければならない」、日本の場合は、債務者区分が破綻先であれば直ちに100%だが、要注意先であれば20%、と単純な比較はできないようだ。「今回のルール」が「貸し渋りを発生させる可能性」があり、「プロシクリカルに働いてしまうかもしれない」、というのはこうした規制にはつきものの皮肉だ。
・『準備整わぬまま景気後退か  こうしたルールが導入された背景には、欧州危機後に提唱されてきた「銀行同盟」案の一つである「預金保険制度の統一」のめどが立たないことがある。その他の柱である「銀行監督の統一」と「破綻処理の統一」はなんとか仕組みができたが、預金保険については、脆弱(ぜいじゃく)な銀行預金の払い戻しにまで応じることに、保険システムが堅固なドイツなどが反対している。 ドイツの気持ちもわかる。つい先週も、ラトビア第5位のPNB銀行が閉鎖され、預金保険で10万ユーロまで保護されると発表された。 EU域内で預金保険制度が統一されぬまま、次の景気後退に突入してしまえば、保険システムが脆弱(ぜいじゃく)な国の銀行から預金が流出し、金融格差が拡大してしまう可能性が高い。前回の財政危機時は、今ほどネットバンクが発達していなかったため、地元銀行への預金の粘着性は高かった。だが、今後は預金の流出が想定以上に大きくなるかもしれない。 欧州では、足元で製造業を始めとする様々な経済指標が鈍化している。イタリアでは、ポピュリスト政権が空中分解し、政治的にも不確実性が増している。報じられているドイツの財政出動がどこまで景気を浮揚できるのか。 ドイツは2014年以降、「シュバルツェ・ヌル(黒いゼロ)」をスローガンに財政均衡に取り組んできた。「500億ユーロ程度の財政出動が可能」というショルツ財務相の発言もあるが、そんなドイツが他国のためにどこまで身をていするかは未知数だ。 次の景気後退まで残された時間は多くない。欧州の金融システムには試練の時が近づいている』、確かに「欧州の金融システム」も要注意のようだ。

次に、みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏が12月9日付け東洋経済オンラインに掲載した「中央銀行が環境問題に手を出すのは無理筋だ ラガルドECB総裁はやはり政治的すぎるのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/318462
・『11月にECB(欧州中央銀行)総裁に就任したラガルド氏の最初の任務は、「中期的に2%未満であるがその近辺(below, but close to, 2% over the medium term)」とされている「物価安定の定義」を抜本的に見直すことであり、金融政策の戦略を修正することであると想定されている。 ECBが金融政策の戦略を見直すのは2003年以来、実に16年ぶり。新任総裁にとっては大事業である。現行の「物価安定の定義」を正面から解釈すると「2%に到達すれば引き締められる」との誤解を招きやすいため、あくまで2%を境として対称的に物価目標をにらんでいることを明確化したいとの思惑がある。「物価安定の定義」は確かに時代に合わなくなっていると思われるため、この修正は必要な措置であると筆者も考えている』、「ラガルド氏」は弁護士出身で、フランスの財務大臣を経て、IMF(国際通貨基金)専務理事を務めた女傑が、いよいよECB総裁という難しい地位に就いたようだ。
・『新しいEUとしては環境問題に本気  しかし、ここにきて気になる動きが断続的に報じられている。それはラガルド総裁が今回の修正作業の一環として、環境問題、とりわけ気候変動に関する論点を組み入れることに関心を示しており、これを政策運営上の重要テーマとしたいという意向を持っていることだ。 欧州議会の場でもラガルド総裁は「物価安定の二の次だが(secondary to protecting price stability)」と断った上で、「気候問題をECBのマクロ経済モデルに織り込むべきであり、EU(欧州連合)域内の銀行を監督するにあたってもそのリスクを考慮に入れる」と意気込みを見せている。 ちなみに、ラガルド体制と同タイミングで発足した新たな欧州委員会を率いるフォンデアライエン新委員長も、欧州議会における演説で「The European Green Deal(欧州のグリーンディール)」はマストであることを強調しており、やはり環境を新体制で重視する姿勢を示している。 新生EUの顔とも言える2トップがこうしたスタンスを明らかにしている状況は欧州が持つ環境問題への意識が他国・地域よりも強いものであることを象徴していると言える。何かにつけて理想に振れやすい欧州だけにその過剰な動きには懸念も生じるところだ』、EUの委員長が「環境を新体制で重視する」のは理解できるが、ECB総裁まで足並みを揃えるとは驚かされた。
・『環境問題が重要だからといってそれを中央銀行が考慮すべきかどうかはまったく別問題ではないだろうか。率直に言って環境問題を斟酌した金融政策運営は無理筋に思えてならない。 この点について、①政策波及経路が想像できない、②役割区分を取り違えている、という2点から考察したい。評価する際に必要な視点は、気候変動が「重要か、重要ではないか」ではなく、「中央銀行がやる筋合いのものか」ということなのである。 まず①の「政策波及経路が想像できない」という思いは多くの市場参加者が抱くはずだ。そもそも庭先であるはずの物価や賃金ひいては景気の変動を制御することにも難渋しているのに、気候の変動を制御できるというのか。どのような手段や経路、そして確度を想定して政策運営をすれば気候変動に有意な影響を与えることができるのか。また、それをどうやって検証するのか。 気候変動は短くても数百年、長くて十万年といった時間軸で捉えるべき問題であるとの指摘もよく聞く。その変化を経済主体がはっきりと実感する頃には数世代が入れ替わるような時間軸の長いテーマだ。今起きている変動がいつ頃の経済活動に起因しているのか(あるいはしていないのか)を特定するのも難しいのに、どうやって適切な金融政策を割り当てるのか。景気安定化を主な目的として、今月や来月の株価や為替に振り回されている中央銀行が悠久の時を超えて変化が現れる環境問題の変数まで考慮するというのはいささか尊大に思える』、説得力のある主張で、その通りだ。
・『前のめりなビルロワドガロー仏中銀総裁  非常にうがった見方であることを承知で言えば、本当に地球温暖化が人間の営む経済活動の活発化と因果関係があるならば、金融引き締めを行って経済活動の停滞化を図るのが正解、という考え方も間違っていないことになる。むしろ金融政策の波及経路としては最もシンプルで腑に落ちる考え方である。だが、納得が得られないことは言うまでもない。 一方、ビルロワドガロー仏中銀総裁はFT紙の取材に対し以下のように述べている。「エネルギー価格の上昇と経済成長率の低下を通じて、地球温暖化は"スタグフレーションショック"を引き起こす恐れをはらんでおり、(これに対抗策を講じることは)すでに物価安定の責務の一部(already part of our price stability mandate)になっている」。ロジックとしては納得できなくはない。 しかし、「金融政策という手段で気候変動を抑制できるのか」という根本的な疑問を抱くのは筆者だけではあるまい。中央銀行は症状に対する適切な処方箋を持たないと思われる。また、同総裁は地球温暖化をECBの経済予測モデルに織り込むべきだとまで述べているが、四半期ごとに改定され、1年前と方向感が大きく変わることも珍しくないスタッフ見通しに環境問題という論点を入れ込んでECBの「次の一手」が変わるのだろうか。 ちなみに、ビルロワドガロー総裁は、11月末、日本銀行も遂に参加することが報じられた「気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(NGFS:Network for Greening the Financial System)」の創設メンバーの1人として知られている。今後も同様の発言を繰り返すことが予想される。) なお、11月28日、同じくフランス出身のクーレECB理事は「中銀が気候変動問題の克服で先頭に立つのは無理がある。これは政治の仕事であり、そうあるべき」と述べる一方、「中銀は各行に与えられた責務の範囲内で支援を行うことはできる」と表明している。筆者は基本的に前者の立場だが、後者の「責務の範囲内で支援」をあえて考えれば何が考えられるだろうか。 この点、量的緩和政策(QE)において環境に配慮した事業が発行するグリーンボンド(グリーン債 )を多く購入しようという「グリーンQE」なるアイディアがECB当局者の間で飛び交っている。ただ、環境問題への配慮に支持を表明しているビルロワドガロー総裁をもってしても「相対的に小さいグリーンボンド市場での大量購入は市場を大きく歪める可能性がある」として難色を示す。 しかし、問題は債券市場の大小ではない。今年10月、バイトマン独連銀総裁は「インフレ率が低い間だけ気候変動対策を続けなければならない理由は、ほとんど理解されない」とグリーンQEを批判してみせた。筆者もまったく同感だ。環境対策それ自体が重要なテーマだとしても、QEを通じてそれを支援するということは「金融緩和(≒QE)が不要の局面に入れば支援しなくてもいい」という意味もはらんでしまう。そうした要らぬ政治判断を迫られないために中央銀行には政治からの独立性が保証されているはずだ』、「「グリーンQE」なるアイディア」に対しては、「ビルロワドガロー総裁をもってしても「相対的に小さいグリーンボンド市場での大量購入は市場を大きく歪める可能性がある」として難色を示す」。「バイトマン独連銀総裁は「インフレ率が低い間だけ気候変動対策を続けなければならない理由は、ほとんど理解されない」とグリーンQEを批判」、もっともな批判だ。
・『環境対策は中銀ではなく政府の仕事である  それ以外にも、常設されている流動性供給において、中央銀行が民間銀行から担保を受け入れる際に、グリーンボンドの掛け目を優遇したりする案も取りざたされている。確かにこの程度であれば、「責務の範囲内で支援」できるかもしれない。だが、当該資産がどの程度、環境に優しい(あるいは優しくない)のかを定量的に評価できる尺度を用意しないかぎり、このようなアプローチすら難しい。 一方、環境問題が重要であり、中央銀行として支援できることがあったとしても、「本当にやるべきなのか」という根本的な疑問も残る。②の「役割区分を取り違えている」という論点である。クーレ理事も述べるように、基本的に環境問題で先頭に立つのは「政治の仕事」であり、中立性が要求される中央銀行の仕事ではない。バイトマン総裁も「気候変動問題の対策を打ち出すのは選挙民によって選ばれた政府の仕事で、中銀が環境政策を推進する民主的な正当性はない」と明言している。 上述した担保の取り扱いを環境基準で差別化するというアプローチ1つ取ってみても、中央銀行が環境に優しい(あるいは優しくない)との評価を行い、私企業の資金調達の優劣にまで踏み込むことが適切なのだろうか。その評価が異論の余地のない単純なものであるならば気にはならないかもしれない。しかし、判断に迷う微妙なケースも出てくるはずだ。) もし、環境への影響に関して企業Aが企業Bよりも優遇され、企業Bからクレームが出た場合、どうするのか。中央銀行は環境の専門家ではないので、第三者から意見を聞くことになろう。しかし、その第三者が適切であるかも含めて議論を呼ぶと予想される。そもそも政策運営は物価安定に注力すべきところ、これに関与する主体が枝分かれしながら増えて行ってしまうこと自体、健全ではない。中立の立場から物価安定を追求するという期初の目的に対して、ノイズがどんどん増えてしまう。 ECB以外にも環境問題に関心を寄せている中央銀行はあるが、今のところは静観の構えが目立つ。パウエルFRB(米国連邦準備制度理事会)議長は今年7月の議会証言で、自然災害が金融市場に及ぼす影響を注視するものの「気候リスクは長期的なもので、日々の銀行監督に影響を与えるとは思わない」と述べ、そのリスクが中央銀行の責務に関わる可能性を明示的に認めることは避けた。時間軸が違い過ぎるという問題意識だろう。 また、カーニー総裁率いるイングランド銀行(BOE)は国内大手銀行のストレステスト(健全性審査)に地球温暖化と環境政策を組み込む意向を示しているが、やはり金融政策を気候変動対策に割り当てることについては二の足を踏んでいる。なお、フランス銀行(中銀)も国内の銀行と保険会社に対しやはり気候変動に関するストレステストを来年から実施する意向を明らかにしている。こうして見ると、「まずはストレステストにシナリオの1つとして組み込む」というのが各国当局の採る最初の一手となってきそうだが、二の矢が続くのかは微妙な情勢と言わざるをえない』、確かに「まずはストレステストにシナリオの1つとして組み込む」のが現実的なアプローチだ。
・『亀裂の「修復」ではなく「拡大」も  世界的には「気候変動の重要性は認めつつも、中央銀行の相対する(すべき)問題ではない」という意見がまだ主流である中、ラガルド総裁が仮に環境問題を新たな金融政策戦略の一要素として取り込むのであれば、正否は別にして、それは先進的な動きとは言える。 だが、「総論賛成、各論反対」の当局者が多数と思われる中でこれを敢行すれば、すでに現行の金融政策をめぐって分裂している政策理事会の亀裂をさらに深めることになりかねない。目先の金融政策運営と異なり、一度決めてしまえば簡単には修正できない戦略でもあり、環境問題を盛り込むには議論が熟していない。 東洋経済オンライン記事『ラガルドECB総裁誕生から何を読み解くか』『ECB分裂騒ぎで、ラガルド新総裁は慎重な船出に』でも論じたが、ラガルド総裁にはまず前ドラギ体制で生じた政策理事会内の亀裂を修復するという調整能力に大きな期待がかかっている。にもかかわらず、こうした根の深そうな新しい争点を持ち込んでしまうあたりに、初動としてはやや不安を覚えてしまうものがある。すでにドイツははっきりと気候変動に関与することに反対の立場を表明している。 ラガルド総裁にとっての最初の大事業となる政策戦略の修正作業が、亀裂の「修復」ではなく「拡大」をもたらすような一手にならないことを祈るばかりである。「金融政策における環境問題のあり方」は中央銀行デジタル通貨(CBDC)と並び、2020年に注目すべき大きな金融のテーマとなってきそうである』、今後の論議に注目したい。

第三に、在独ジャーナリストの熊谷 徹氏が1月6日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「2020年の欧州、EUを攻めるジョンソン氏、EU守るドイツは世代交代」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/122300125/?P=1
・『2020年、欧州政局の最大の焦点は、1月31日に英国が欧州連合(EU)から正式に離脱することだろう。EUほど規模が大きく複雑な国際機関から、英国のような大国が離脱するのは、世界でも例がない出来事だ。1952年のECSC(ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体、EUの前身)創設以来、拡大と深化を続けてきた欧州統合に初めてブレーキがかかり、後退を強いられる。英国は、世界に広がる右派ポピュリズム革命の、欧州最初の犠牲者となる』、英国EU離脱については、このブログの12月18日に取上げた。
・『ブレグジットがやって来る  さて2019年12月12日の英国議会下院総選挙でボリス・ジョンソン首相率いる保守党が圧勝した時、他の欧州諸国の政界や経済界では、「合意なきEU離脱が回避された」という安堵の声が強かった。 実際、ジョンソン首相は12月20日、EUとの間で合意した離脱協定案を議会下院の採決で承認させることに成功した。「ブレグジット疲れ」という言葉まで生んだ過去1年間の堂々めぐりがまるで嘘だったかのようだ。 テリーザ・メイ前首相が1年間に3回試みて失敗した議会承認を、ジョンソン氏が首相就任からわずか5カ月で成功させたことについて、他の欧州諸国の首脳たちも感嘆の声を上げた。ドイツのアンゲラ・メルケル首相が「議会での袋小路のような状態が終わったことは、良いことだ。ジョンソン首相の政局運営には脱帽する」と珍しくほめたほどだ。 奇矯な発言や行動で、メディアから「道化師」と揶揄(やゆ)されたジョンソン氏だが、職業的政治家としての手腕はメイ氏よりも上だった。 メイ前首相にとって致命傷となったのは、2017年に実施した前倒し総選挙だった。同氏は下院で議席の過半数を確保することに失敗した。これは、EUとの合意案を議会で通過させることを極めて難しくした。従ってジョンソン氏はまず総選挙で勝って、議会の安定過半数を確保してから、EUとの合意案をめぐる議会での採決に臨んだ。ジョンソン氏は政権政党が踏むべきオーソドックスな手順に従って、自らの政策目標を貫いたのだ』、「メルケル首相が」「珍しくほめた」というのは、ドイツも英国の不毛な離脱論議に愛想を尽かしていたとはいえ、とんだ判断ミスだ。
・『ジョンソン氏が仕掛けた時限爆弾  ただし欧州諸国の首脳たちが「合意なきEU離脱の回避」を喜ぶのは、早過ぎた。ジョンソン首相は、離脱協定に関連する法案の中にある「時限爆弾」を仕掛けたからだ。 英国は2020年1月31日にEUから離脱する。ただし、両者の新しい関係を規定する細則が決まるのは、これからだ。つまりEUと英国は、ブレグジットという枠組みを協定によって肉付けしなければならない。) 英国とEUは、1月31日にブレグジットを実現した後に、関税や製品の安全基準、環境保護基準、移民管理、安全保障など様々なディテールについて協議を開始し、協定を結ぶ必要がある。これまでは多国間協定で決めていたことを、英国とEUの間の「二国間協定」に移し替えなくてはならない。これは極めて複雑で、労力と時間を必要とする作業だ。 ジョンソン首相が仕掛けた時限爆弾は、「EUとの自由貿易協定などに関する交渉を、2020年末までに終えなくてはならない」という規定だ。つまり英国政府は、EUとの自由貿易協定に関する交渉の期間を、2021年1月1日以降に延期することを自ら禁じた。 だがEUは、わずか11カ月で自由貿易協定などに関する交渉を終わらせるのは、不可能と考えている。2017年にEUとカナダの間で発効した自由貿易協定(CETA)の交渉には、7年もかかった。CETAの協定書は、約1600ページに達する膨大なものだ。EU側では、英国との交渉には最低3年必要だという意見が強い』、「ジョンソン氏が仕掛けた時限爆弾」、なかなか巧みな高等戦術だ。
・『2020年末に合意なきEU離脱の可能性が再び浮上  ジョンソン首相が「交渉を11カ月で終わらせろ」という強気の規定を法案に盛り込んだ背景には、「自由貿易協定において英国が望む条件をEUが受け入れない場合、2020年12月31日に時間切れとなって合意なきEU離脱になだれ込む可能性がある」という圧力を高めるためだ。 彼は首相就任以来、合意なきEU離脱の可能性をちらつかせることにより、EUに英領北アイルランドとアイルランド共和国の間の国境に関する提案をのませることに成功した。EUはそれまで「メイ前首相との間で合意した離脱協定案の変更には応じない」という態度を堅持していた。EUが2019年秋に突然態度を180度変えた背景には、「ジョンソン首相は、本当に合意なしで英国をEUから離脱させるかもしれない」という強い危惧があった。 つまりジョンソン首相は、「EUに譲歩させるためには、合意なきEU離脱の可能性をちらつかせるのが最も効果的だ」ということを学んだ。このため2020年2月から始める自由貿易協定に関する交渉は、英国のペースで進むだろう。EUの交渉団は、英国の交渉担当者が多くの無理難題を押しつけてくることを覚悟しなくてはならない』、EUとしては、離脱には大きなナイナスが伴うことを示したいところだろうが、「合意なきEU離脱の可能性をちらつかせる」戦術を前にしては、いいなりになる可能性が強い。
・『総選挙を前にしたドイツで伝統政党の衰退  さてEU最大の経済パワー、ドイツではメルケル首相の後継者をめぐるレースが2020年に始まる。各党は2021年10月24日の連邦議会選挙(総選挙)へ向けて、首相候補を2020年末までに決めなくてはならない。 かつて欧州で政治的な安定性が最も高いと言われたドイツでは、伝統政党の支持率が急落し、二大政党制が大きく揺らいでいる。 公共放送局ARDが2019年12月5日に発表した政党支持率調査によると、CDU・CSU(キリスト教民主・社会同盟)の支持率は25%。SPD(ドイツ社会民主党)は第4位に転落し、支持率は13%にすぎない。つまりCDU・CSUとSPDは合計38%しか取れず、議会の過半数を確保できない。1970年代にはこれらの3党が約90%の得票率を記録していたことを考えると、ドイツ社会の大きな変遷を感じる。こうした数字を見ると、2021年の総選挙以降、大連立政権が継続される可能性はかなり低いと見るべきだろう。 メルケル氏の後継者として有力視されていたアンネグレート・クランプカレンバウアーCDU党首の人気は低迷している。同氏はザールラントという小さな州の首相しか経験していない。失言が多く、中央政府の閣僚として経験の浅さを感じさせる。(例えばトルコのシリア侵攻を、誤って「併合」と呼んでしまった)) 最近発表された世論調査によると、「メルケル首相の仕事ぶりに満足している」と答えた回答者の比率は47%。これに対して、「クランプカレンバウアー国防大臣の仕事に満足している」と答えた回答者は24%とはるかに低かった。2019年秋に旧東ドイツ3州で実施された州議会選挙で、CDUは右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に多数の票を奪われ、得票率を激減させた。同年11月に行われたCDU党大会で代議員たちはクランプカレンバウアー氏を一応支持した。CDUは同氏を首相候補に擁立するだろうが、同氏の選挙戦は厳しいものになるだろう。 SPDの「病」はもっと深刻だ。同党は2019年12月6日の党大会で、左派に属するサスキア・エスケン議員と、ノルベルト・ワルターボルヤンス氏(前ノルトライン・ウェストファーレン州財務相)を共同党首に選んだ。 エスケン氏とボルヤンス氏は、CDU・CSUとの大連立に批判的な政治家として知られている。どちらも、中央政界では全く無名だった。現在メルケル政権で財務大臣を務めるオラフ・ショルツ氏など有名な政治家は、新執行部から一掃された。 この「クーデター」の背景には、大連立政権の解体を求めてきた、SPD青年部のケビン・キューネルト部長の策略がある。エスケン氏とボルヤンス氏は、SPD左派に属するキューネルト部長の後押しを受けて、共同党首の座に就くことができた。いわばSPD青年部の「傀儡(かいらい)」である。キューネルト氏は、新執行部で副党首の1人となった。 SPDはCDU・CSUとの違いを際立たせるために、富裕税の導入、最低賃金の引き上げや社会保障を拡充するための赤字国債の発行などを要求し、政策を急速に左傾化させつつある。SPDは、こうした政策によって、支持率を現在の2倍にあたる30%に引き上げる目標を打ち出した。だがドイツのメディアは、緑の党が環境政策に力点を置き、世論調査において第2党の位置を占めている今日、左傾化だけでSPDが得票率を回復できるかどうかについて、悲観的な見方を強めている』、EUのアンカー役を果たしてきた「ドイツで伝統政党の衰退」、となれば、欧州情勢は不安定化する可能性がある。
・『欧州で重要性を増す地球温暖化問題  日本ではいまだに、緑の党を、環境保護団体グリーンピースのような過激な政策を掲げる左翼政党と考えている人が多い。しかしそうした見方は、時代遅れだ。ドイツの経済界は、緑の党をパートナーと見始めている。ダイムラーやポルシェが本社を置く旧西ドイツ南西部の物づくりの中心地バーデン・ヴュルテンベルク州では、2011年以来8年間にわたり緑の党の議員が首相を務めている。 2021年に予定される連邦議会選挙の後には、緑の党が連立政権に入るという意見が有力だ。同党の支持率が20%を超えているために、緑の党なしに連立政権を作ることは困難だからである。緑の党出身の首相が初めて誕生する可能性すらある。 ドイツでは地球温暖化問題に対する市民の関心が日本以上に強く、政党はこのテーマを重視しない限り有権者の支持を得られなくなっている。「公共性」に関する尺度が、日本とは大きく異なるのだ。 EU委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン新委員長も、二酸化炭素の排出量を2050年までにゼロにする「欧州グリーン・ディール」を12月12日に発表した。同氏は、グリーン・ディールを「欧州にとって、人類を月面に着陸させた米国のアポロ計画並みの重要性を持つプロジェクト」と呼んだ。この発言は日本ではほとんど注目されていないが、EUが地球温暖化対策を最も重要な政策目標の一つにしていることを浮き彫りにしている。 2020年、日本も多事多難が予想され、国外に目を向けている余裕はないという人が多いかもしれない。しかしこういう時代だからこそ、日本とは異なる価値観に目を向ける複眼的思考が重要なのではないだろうか』、ドイツでは「緑の党出身の首相が初めて誕生する可能性すらある」、そこまできたかと改めて驚かされた。日本も「地球温暖化」問題に真剣に取り組んでゆく必要がありそうだ。
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2020年展望(2020年は「米国発のリスク」が国際関係を揺さぶる、2020年代はどんな10年(ディケイド)になるのか?) [世界情勢]

明けましておめでとうございます。今日は、2020年展望(2020年は「米国発のリスク」が国際関係を揺さぶる、2020年代はどんな10年(ディケイド)になるのか?)を取上げよう。

先ずは、元外務省外務審議官で日本総合研究所国際戦略研究所理事長の田中 均氏が12月18日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「2020年は「米国発のリスク」が国際関係を揺さぶる」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/223703
・『深刻な「6つのリスク」背景に国際協調体制の弱体化  昨年末の本コラムで筆者は「2019年は国際関係が緊迫する」として6つの地政学リスクを指摘した。 (1)米国は「自国利益優先」を強める、(2)米中の戦略的競争は激化、(3)北朝鮮の非核化は停滞、(4)BREXITの混迷が続く、(5)サウジやイスラエルとイランの対立が先鋭化、(6)日本は近隣諸国との摩擦が拡大する、というものだったが、2019年はおおよそ予想したとおり国際情勢は展開した。 2020年はどうなるか。 先週末、米中で第一段階の貿易合意が発表されたが、米中の戦略的対立は続く。 BREXITも保守党の勝利で2020年1月末までの離脱に道が開かれたが、経過期間の1年の間に英・EU間で経済協定は合意できるかは見通せない。2020年の地政学リスクは依然として深刻だ。 その背景として、長年、鬱積された不満をきっかけとするポピュリズムが先進民主主義国を席巻しているほか、中国・ロシア・トルコなどの新興国においては強権体制が強化され、国際社会は強力な指導者を欠き国際協調体制は弱体化していることがある。 さらに、11月の米国大統領選挙に向けた動きが国際関係を揺さぶることになるだろう』、「地政学リスクは依然として深刻・・・ポピュリズムが先進民主主義国を席巻しているほか、中国・ロシア・トルコなどの新興国においては強権体制が強化され、国際社会は強力な指導者を欠き国際協調体制は弱体化している」、やはり明るい年にはなりそうもなさそうだ。
・『米大統領選からは目を離せない 「再選」厳しければ予想外の対外政策  これから1年、世界は米国大統領選挙戦から目が離せない。 おそらく年内に下院はトランプ大統領弾劾訴追決議案を通過させ、上院の弾劾裁判は1月から開始されることになる。 共和党多数の上院で3分の2の多数で弾劾が成立することはないだろうが、米国史上3人目の弾劾訴追を受けた大統領としてトランプ氏は選挙戦に臨むこととなる。 民主党の候補者が誰になるかによっても違うだろうが、トランプ大統領の再選は容易ではない。 本来は、米経済が好況を維持していることもあり、二期目を狙う大統領は圧倒的に有利なはずだ。しかしトランプ大統領の就任以来3年間の平均支持率は40%前後であり、その前2代の大統領に比べ5~6ポイント低い。 支持率があまり変動していないのは、強固な支持層の存在を裏付けるものではあるが、これは同時に不支持層も多いことを物語っており、票を上積みしていくのは容易ではない。 さらに2020年の選挙では、最大の有権者グループが「ベビーブーマー世代(1946年~64年生まれ)」から、20代~30代の「ミレニアル世代(1981年~96年生まれ)」に移るといわれている。 ミレニアル世代は政治に対する関心が高く投票率を押し上げる要因になるだろうし、民主党支持者が60%を占めるともいわれる。 そのような情勢を背景に、トランプ大統領は実績を上げることに躍起になるだろう。 新NAFTA(USMCA)成立の見通しや、中国との貿易合意第1弾はプラスの要因だ。トランプ大統領は中国とのさらなる合意や北朝鮮非核化の合意に注力するだろうが、安易に妥協すれば共和党強硬派の反発を買うことになり、もろ刃の剣になる。 今の米国の対外政策は、トランプ大統領のツイートから始まる衝動的で一見、華々しい政策と、周到に練られた伝統的な外交安保政策との二層構造の色彩が強い。 トランプ大統領のその時々の思いつきのような短絡的ともとれるアプローチはフォローアップが難しく、反発して政権を離れる幹部も多い。 シリアからの撤兵をはじめ、ペルシャ湾を通行する艦船防護のため有志国構想、中東和平構想、北朝鮮非核化問題、米中貿易戦争のいずれをとっても慎重さを欠け、米国の政策は予見性を損なっているといえる。 トランプ大統領にとり再選見通しが厳しくなればなるほど、対外政策動向は予見性を欠くであろうし、それを大きなリスク要因として、世界は振り回されることになるだろう』、最後の部分は確かにありそうなシナリオだ。
・『香港、台湾情勢いかんで米中は抜き差しならぬ局面も  米国の対中強硬路線は共和・民主両党の全面的な支持を受けており、香港人権・民主主義法だけでなく、ウイグル人権法も成立する方向となっている。 台湾でも来年1月の総統選挙で蔡英文総統が再選される見通しが強く、米国の後ろ盾を得て中国に対抗する路線を歩む可能性が強い。今後、米中間は、次世代通信規格「5G」などハイテクを巡る課題や香港・ウイグル・台湾を巡り厳しく対峙していくこととなるのだろう。 これらは中国が「核心的利益」と位置付ける問題であり、長期にわたる米中対立は必至となる。 来年1年を見通せば、中国は共産党統治の矛盾が深まり、守勢に立たざるを得ないだろう。 その根源にあるのは経済成長率の低下だ。 2020年は、習近平国家主席が公約した「2010年比GDP倍増」の最終年で、この公約達成のためには、最低でも5.8%の成長率を必要とする。 それが米国との第一段階の貿易合意を急がせた理由だろうが、今後も中国政府は目標実現に躍起になるだろう。 そのような経済状況を背景に、中国は香港問題でも強硬な措置をとれない。もし人民解放軍が強制的にデモの排除などに乗り出すなら、米国をはじめ国際社会の強い反発を招き、おそらく主要国は経済制裁を科すといった方向になるのは明らかだ。 従って、中国はそのような行動には出ないだろう。 中国は、混乱が長引くことで香港市民の間からも生活が脅かされるといった批判がでて、デモが自然に収束することを期待するのだろうが、2020年は立法会、2022年には行政長官の選挙が控えている。 これらの選挙を通じ「民主派」が平和裏に勢いを増せば、中国のジレンマは深まる。 香港、台湾情勢いかんでは、中国は強権的に反応を行うことに踏み切る場合もあるだろう。そうなれば米中対立は抜き差しならない局面が来る』、「中国」、「香港、台湾情勢」もどうやら台風の目のようだ。
・『北朝鮮の「瀬戸際作戦」続く 緊迫化するが、対話路線に戻る余地も  北朝鮮の「瀬戸際作戦」は当分、続くのだろう。 北朝鮮は一方的に今年の年末を非核化交渉のデッドラインとし、米国の譲歩を迫っている。 トランプ大統領は大統領選挙をにらみ首脳会談による合意を模索したいと考えているのだろうが、国内の批判を浴びることは必至であり、安易な妥協には踏み切れない。 従って北朝鮮は来年に向けてさらに強硬姿勢のトーンをエスカレートさせていくのだろうし、ICBM発射実験・核実験の再開をにおわす行動をとるだろう。 ただ、実際に実験再開をした場合には、国連はさらなる安保理制裁措置を科すだろうし、北朝鮮がそこまで進むとは考えづらい。おそらく実際の実験には至らない段階で、再び米朝対話に戻る可能性がある。 その場合には、中国との合意のように、米国と北朝鮮の双方が合意できるところを「第一段階の合意」として先に進むことはあり得る。 北朝鮮は寧辺(ニョンビョン)の核施設プラスα、米国は南北経済協力を安保理制裁の例外にすることや相互の連絡事務所設置に応じるところから始めるということになるのかもしれない。 ただ、北朝鮮問題では「計算違い」の可能性を否定することはできない。北朝鮮が米国大統領選挙を人質にもっと米国を揺さぶろうとすれば、ある段階で米国は再び「強い軍事的圧力路線」に戻ることはいとわないだろう。 オリンピック開催も控えた日本の立場からすれば、そのような展開は何としてでも避けたいところだ』、北朝鮮にとっては、再選を控えて成果を焦っているトランプ大統領の方が、交渉し易いのかも知れない。
・『欧州はBREXIT後へ 「安定」までは時間かかる  英国では保守党が総選挙に大勝し、2020年1月末までのBREXITに道筋がつけられた。 英国は2020年末までの移行期間の間に、EUとの自由貿易協定を成立させることが求められている。 しかし、このような短期間で合意を達成させるのは不可能だ。 関税の引き下げや撤廃問題はともかく、これまでEU規則の下にあった貿易規則や原産地証明、税関規則などを調整していくのには時間がかかるほか、投資問題や北アイルランドでの国境措置・スコットランドの要請など政治的課題も解決しなければならない。 ジョンソン首相の公約に反し、移行期間を2年程度延長せざるを得ない結果になると思われるが、その際の政治的混乱も覚悟しなければなるまい。 欧州各地で極右、極左、強権的政党などのポピュリスト政党が台頭し既成政党が力を失ってきており、ドイツの国内政治も難しい局面にある。 BREXIT後に向けて、EUではさらなる統合に向けての求心力は働きそうにない。トランプ政権との間でもNATO問題を含め不協和音が目立ち、一方でロシアとの対立は激化していくのだろう。 英国を失ったEUが安定性を取り戻すには時間がかかるのではないか』、欧州まで「英国を失ったEUが安定性を取り戻すには時間がかかる」、特にリーダー役だった「ドイツの国内政治も難しい局面」、であれば、迷走が始まるのかも知れない。
・『中東情勢の不安定化は続く イランはロシア、中国に接近  中東情勢は不安定な情勢が続く。米国は引き続き、サウジアラビアとイスラエルを支援しイラン包囲網を強化しようとするだろうし、イランは経済困難を脱するためにロシア、中国、EUへの傾斜を強めよう。 米国の提唱したペルシャ湾安全航行のための有志連合はイランを刺激し、船舶に対してテロ的な攻撃が行われるリスクを内在している。トルコのクルド攻撃はNATO内の不協和音を一層強めることとなる。原油価格の低落は続き、各地での衝突も続くことになるのだろう』、「米国の」「イラン包囲網強化」、も「ロシア、中国」を利するだけで、困ったことだ。
・『日本と近隣諸国の関係は正念場 対ロシア戦略は再構築が必要  日本にとっては、韓国などの近隣諸国との関係改善が正念場になる。 中国は米国との戦略的競争の長期化を想定し日本との関係改善にかじを切ったが、2020年は習近平国家主席の訪日で新しい関係構築の節目を迎える。 中国の香港、ウイグル、そして台湾問題へのアプローチいかんでは習近平国家主席を国賓で迎えることに内外の批判が出るだろうし、中国との長期的な関係構築のため是々非々で行動する日本の戦略が試される。 韓国との関係は、3つの基本的原則の下で外交が成果を上げれば関係は改善する。 それは、(1)世論を過剰に巻き込まない静かな政府間協議、(2)日韓関係の長期的な重要性についての国民の理解、そして(3)徴用工問題についての日韓基本条約に反しない解決だ。 来年も北朝鮮問題で東アジアの情勢が大きく揺れそうなことを考えれば、日米韓連携が重要となる。北朝鮮問題については、何よりも日朝協議のパイプの構築が求められるのだろう。 ロシアについては、現状では北方四島問題についての進展は見越せない。国際社会の中でロシアへの反発が強まっており、今後の日本の戦略再構築は急務といえよう』、「日韓関係」では韓国経済が失速していることは、関係改善のテコになる可能性があるが、対ロシア関係の「日本の戦略再構築」は難題だろう。

次に、在米作家の冷泉彰彦氏が12月28日付けでメールマガジンJMMに掲載した「2020年代はどんな10年(ディケイド)になるのか?」from911/USを紹介しよう。
・『20世紀の世界では、10年ごとに時代を刻んで世相を語るのが当たり前でした。 例えば日本の場合ですと、戦後の混乱の続いた1950年代、冷戦の厳しさと高度成長の60年代、石油危機など混乱の中で豊かさの確保に走った70年代、そしてバブル膨張の80年代と、その崩壊の90年代というように、それぞれの10年(ディケイド)には濃厚な印象が刻印されていったものです。 更に、これに文化や世相を重ねることも可能であり、いずれにしても10年を単位として、社会は時代の記憶を積み重ねて行ったのでした。その点から考えると、21世紀に入ってからの日本では、前世紀と比較すると、この「10年」という単位への意識が薄れているようです。 2000年代、2010年代と既に2つの時代が過ぎて行ったわけですが、特に日本の場合、どちらの10年も区切りとして鮮やかな印象はありません。理由としては、リーマン・ショック(2008年)、東日本大震災とエネルギー危機(2011年)といった2つの時代の転換点があまりに鮮烈であったことが挙げられます。 その一方で、高齢の引退世代にしても、大企業に終身雇用されている人々にしても、また非正規労働を続けている人に取っても、社会におけるそれぞれが置かれた条件の中で生きるのが精一杯であって、社会全体が10年単位で変わっていく中での自分という意識は薄れているのだと思います。 では、アメリカではどうかというと、やはり10年単位で時代を区切っていく考え方は弱くなっているのを感じます。 もっとも、日本との比較で言えば、2000年代というのは、911テロとイラク・アフガン戦争、そしてリーマン・ショックによる共和党政権の終焉とオバマの登場という10年だというようなイメージはあります。また2010年代というのは、オバマによる経済復興の時代であったはずが、グローバリズムとITの進捗により徐々に格差が拡大し、社会の分裂が顕著になってトランプが登場した10年という括りもできます。 そんな中で、一応2000年代とか、2010年代という言い方自体は、日本より良く耳にするのは事実です。ですが、アメリカに取っての50年代、60年代、70年代、80年代、90年代がそれぞれ、濃厚に持っていた「時代の特徴や雰囲気」というのは、21世紀に入ってからの「それぞれの10年」では、薄れていると思います』、日本のみならず、「アメリカ」でも「「時代の特徴や雰囲気」というのは、21世紀に入ってからの「それぞれの10年」では、薄れている」、その要因は何なのだろう。
・『時代感覚の薄れということで言えば、この年の瀬には2020年代への予測をする記事が出てきていますが、内容は似通ったものが多くなっています。例えば、・米中の確執は対立の分野を変えつつ続くだろう ・アジアは米国の影響力低下により混乱拡大の気配 ・西側同盟の中でも外でも国家間の争いは激化する ・技術の進歩によって経済格差は更に拡大するだろう といった悲観論はかなり広範に支持されています。また、地球全体で大きなテーマとなっている環境問題、特に地球温暖化と排出ガスの問題については、20年代の10年間は対策が「待ったなし」であるという見方も多く共有されています。 その一方で、技術の分野については、特にその進歩に関しては楽観論が主流です。 英ガーディアン紙の予測、あるいは米CNETの記事などが典型ですが、・人間の大脳がAIと直接コミュニケーションするようになる ・薬剤や再生治療の進歩によりAIDSや癌は相当程度制圧が可能になる ・自動運転や空中移動が実用化される ・ドローンや3Dプリンタの利用が拡大する といった内容が主となっています。技術の進歩に関しては、他のメディアでもこのような見方が一般的です。その一方で、老舗の新聞「シカゴ・トリビューン(電子版)」ではエリック・ゾーンという記者が、もう少し辛口の「2020年代予測」を書いています。 「2029年になっても物販のドローン配達は主流になっていないだろうし、自動運転は市内とか郊外エリアでは実用になっていないだろう。暗号資産が法定通貨を駆逐することもない。人間が月面や火星に行って帰ってくることもないだろう。アメフトが極端な不人気に陥ることもなさそうだ」 「3Dプリンタが一家に一台とはならないだろうし、VRのヘッドセットでみんなが映画やスポーツ中継を見ることもないだろう。AMラジオやフェイスブックがなくなることもないし、在宅勤務は増えても交通渋滞が解消されるほどではないだろう」 「スマート・ウォッチ以外のウェアラブル・デバイスが普及することはないだろう。また、人工知能という言葉は、本質的な意味で使われるのではなく、現在と同様にスローガン的な言葉に留まっているだろう。圧縮空気チューブによる高速移動や高速鉄道などが普及することもないだろう」 という具合に「技術革新や社会の変化のスピードは、それほどでもない」としておいて、その次には「温暖化で住めなくなった沿岸部などからの難民問題が深刻化する」とか、「スパイの七つ道具もどきの小型カメラや、映像処理技術の向上による<ディープ・フェイク>が悪質化する」など、かなり悲観的な「2029年」を描いて見せています。 このゾーン記者の記事が持っている、ある種の「歯切れの悪さ」というのは、何となくこの年末の雰囲気に重なるように思います。そう言えば、アメリカのメディアの好きな「年末回顧」についても、今年の場合は何となく歯切れの悪い感じがしました。 NYタイムスは、12月中旬に、わざわざカラーの別刷りで年末回顧の特集をしていましたが、その表紙はアメリカのニュースではなく香港情勢でした。CNN(電子版)も写真で回顧する2019年という特集を派手なサイトで展開していますが、こちらはプロカメラマンの取った象徴的な写真を羅列しただけで、とにかく1年間に「こんなこと、あんなこと」があったという集成に過ぎないのです。 この歯切れの悪さ、時代感覚の弱さというのは、ある種、日本と逆の構造を持っているように思います。日本の場合は、短期的には様々な問題があり、解決をしたり、抱えていったりしなくてはならないわけですが、とにかく長期トレンドとしては競争力喪失と人口減という衰退の方向性が重くのしかかっています。その重しがあるために、10年で区切ったり、1年を回顧したりということが難しくなっているわけです』、「日本の場合は・・・長期トレンドとしては競争力喪失と人口減という衰退の方向性が重くのしかかっています。その重しがあるために、10年で区切ったり、1年を回顧したりということが難しくなっているわけです」、なるほど説得力がある説明だ。
・『ちなみに、言うまでもないことですが、今年の漢字がどうとか、流行語がどうというのは、面白おかしく同調できる表層の話題づくり以上でも以下でもないわけです。 むしろ、時代の課題に向かい合うのを避けているだけとも思えます。 一方で、アメリカの場合は、技術の進歩と社会の変化であるとか、地球環境の問題であるとか、あるいは国際関係、国際経済の動向などを中長期の視点で議論するだけの意欲は、社会的には十分にあると思います。ですが、短期的には政治の分断という現象、具体的にはトランプ現象と、民主党の党内抗争という問題が重くのしかかっているわけです。 つまり、技術にしても国際関係や経済にしても、左右対立と切り離して議論をするのは難しくなっています。とりわけ環境に関しては、温暖化理論を認めない右派と、グリーン・ニューディールを主張する若手の左派の間では、全く議論ができる状態ではありません。 そんな中で、例えば新聞にしても、ネットやTVの大手メディアにしても、「価値判断を交えた意味のある議論」を志向してしまうと、どうしても左右のどちらかの立場性から逃れられなくなる、そうした報道や議論の困難という問題に縛られてしまっているのだと思います』、アメリカでは、「「価値判断を交えた意味のある議論」を志向してしまうと、どうしても左右のどちらかの立場性から逃れられなくなる、そうした報道や議論の困難という問題に縛られてしまっている」、というのが、「「アメリカ」でも「「時代の特徴や雰囲気」というのは、21世紀に入ってからの「それぞれの10年」では、薄れている」理由のようだ。
・『その意味では、2020年代という「10年(ディケイド)」の方向性を考えるためには、まず現在進行形となっている「大統領弾劾」が否決されるにしても、どのようなプロセスをたどるのかという問題、そして民主党の統一候補がどのような形で選ばれ、2016年の失敗を乗り越えて団結できるのかが問われてきます。 現在の情勢では、上院での弾劾案可決の見通しはなく、各議員の選挙区事情から弾劾に走ったことは民主党の失点であり、共和党を団結させただけのように見えます。 また、民主党の中は穏健派と左派という2つの勢力により深刻な分断を抱えています。 そう考えると、トランプ再選の可能性は少なくありません。 それはそうなのですが、無党派層、中道層、そして共和党支持の中の穏健層、そして若者や女性、あるいは有色人種の多くが「ドナルド・トランプが大統領であり続けることは問題」だと見ている、これもまた、現在のアメリカでは否定できない事実だと思います。その意味で、年明け以降の政局は余り軽く考えることはできないように思います。 もっと言えば、アメリカの世論の深層は、ブッシュ父子やオバマのように「直面した問題に対処するので精一杯」の政権ではなく、少なくともレーガンやクリントンのように、10年単位の長期レンジの中で、アメリカに取っての最適解を示したような政権を欲しているのだと思います。 技術の進歩が人類のライフスタイルや社会のあり方に変革をもたらそうとしている現在、その一方で冷戦の消滅以来懸念されていた国家間の対立が本格化している時代に、超大国アメリカがどのような方向性を打ち出すのか、10年単位の発想がなかなかできない世相を打破して、正に10年単位での発想をもたらすような政治、時代の深層が求めているのはそのような政権なのだと思います。 その意味で、2020年代がどのような10年(ディケイド)になるのかは、2020年に行われる大統領弾劾審議、そして大統領選によって大きく左右されるのだと考えられます』、「アメリカの世論の深層は・・・少なくともレーガンやクリントンのように、10年単位の長期レンジの中で、アメリカに取っての最適解を示したような政権を欲している」、「最適解を示」すのは、トランプでは無理だろうし、民主党の乱立した候補にも無理のように思える。となると、欲求不満だけが残るのだろうか。
タグ:冷泉彰彦 ダイヤモンド・オンライン 日本の場合 JMM 田中 均 2020年展望 (2020年は「米国発のリスク」が国際関係を揺さぶる、2020年代はどんな10年(ディケイド)になるのか?) 「2020年は「米国発のリスク」が国際関係を揺さぶる」 深刻な「6つのリスク」背景に国際協調体制の弱体化 ポピュリズムが先進民主主義国を席巻 中国・ロシア・トルコなどの新興国においては強権体制が強化 国際社会は強力な指導者を欠き国際協調体制は弱体化 米大統領選からは目を離せない 「再選」厳しければ予想外の対外政策 2020年の選挙では、最大の有権者グループが「ベビーブーマー世代(1946年~64年生まれ)」から、20代~30代の「ミレニアル世代(1981年~96年生まれ)」に移る トランプ大統領は実績を上げることに躍起に 今の米国の対外政策は、トランプ大統領のツイートから始まる衝動的で一見、華々しい政策と、周到に練られた伝統的な外交安保政策との二層構造の色彩が強い トランプ大統領にとり再選見通しが厳しくなればなるほど、対外政策動向は予見性を欠くであろうし、それを大きなリスク要因として、世界は振り回されることになるだろう 香港、台湾情勢いかんで米中は抜き差しならぬ局面も 北朝鮮の「瀬戸際作戦」続く 緊迫化するが、対話路線に戻る余地も 欧州はBREXIT後へ 「安定」までは時間かかる 中東情勢の不安定化は続く イラン包囲網を強化 イランは経済困難を脱するためにロシア、中国、EUへの傾斜を強めよう 日本と近隣諸国の関係は正念場 対ロシア戦略は再構築が必要 北方四島問題についての進展は見越せない。国際社会の中でロシアへの反発が強まっており、今後の日本の戦略再構築は急務 「2020年代はどんな10年(ディケイド)になるのか?」from911/US 21世紀に入ってからの日本では、前世紀と比較すると、この「10年」という単位への意識が薄れている アメリカではどうかというと、やはり10年単位で時代を区切っていく考え方は弱くなっている アメリカに取っての50年代、60年代、70年代、80年代、90年代がそれぞれ、濃厚に持っていた「時代の特徴や雰囲気」というのは、21世紀に入ってからの「それぞれの10年」では、薄れていると思います シカゴ・トリビューン(電子版)」ではエリック・ゾーンという記者が、もう少し辛口の「2020年代予測」 長期トレンドとしては競争力喪失と人口減という衰退の方向性が重くのしかかっています。その重しがあるために、10年で区切ったり、1年を回顧したりということが難しくなっているわけです 「価値判断を交えた意味のある議論」を志向してしまうと、どうしても左右のどちらかの立場性から逃れられなくなる、そうした報道や議論の困難という問題に縛られてしまっている アメリカの世論の深層は、ブッシュ父子やオバマのように「直面した問題に対処するので精一杯」の政権ではなく、少なくともレーガンやクリントンのように、10年単位の長期レンジの中で、アメリカに取っての最適解を示したような政権を欲している 2020年代がどのような10年(ディケイド)になるのかは、2020年に行われる大統領弾劾審議、そして大統領選によって大きく左右されるのだと考えられます
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ポピュリズムの台頭(その5)(Brexit実現へ 右派ポピュリスト革命の「最初の勝利」、ヨーロッパでポピュリズムへの反省が始まった?A New Hope for Democracy) [世界情勢]

ポピュリズムの台頭については、1月18日に取上げた。今日は、(その5)(Brexit実現へ 右派ポピュリスト革命の「最初の勝利」、ヨーロッパでポピュリズムへの反省が始まった?A New Hope for Democracy)である。

先ずは、在独ジャーナリストの熊谷 徹氏が12月17日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「Brexit実現へ、右派ポピュリスト革命の「最初の勝利」」を紹介しよう。これは、昨日のこのブログで取上げた英国のEU離脱を、欧州大陸側から見たものでもある。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/121600123/?P=1
:12月12日の英下院総選挙で、ジョンソン首相の率いる保守党が365議席を獲得。EU離脱が進むことになった。英国の離脱はEUに甚大な影響を及ぼす。英国の人口は約6600万人、GDPは約2兆3000億ユーロ。EUのGDPは一挙に約18%、人口は約13%減る。この離脱は、欧州で右派ポピュリズム勢力が収める最初の具体的な勝利だ。 「ブレグジットを終わらせよう(Get Brexit done)」というボリス・ジョンソン首相のスローガンが、英国の有権者を突き動かした。保守党の大勝で、英国が来年1月末までにEU(欧州連合)との合意に基づいて離脱することはほぼ確実となった』、「この離脱は、欧州で右派ポピュリズム勢力が収める最初の具体的な勝利だ」、東欧を除いた西欧では確かにその通りだ。
・『保守党、32年ぶりの歴史的圧勝  12月12日の下院総選挙で、ジョンソン首相の率いる保守党が365議席を得て、過半数を確保することが確実となった。英国下院の議席数は650なので、ジョンソン首相は安定過半数を確保する。これは1987年にマーガレット・サッチャー首相(当時)の率いる保守党が下院総選挙で圧勝して375議席を確保したのに次ぐ、地滑り的勝利だ。これに対しジェレミー・コービン氏の率いる労働党の議席数は203にとどまった。これは1935年以来最も少ない議席数だ。 わずか1年前には下院で何の権限も持たない「ヒラ議員」だったジョンソン首相に、有権者は絶大な権力というクリスマス・プレゼントを与えた。彼はブレグジット(英国によるEU離脱)を跳躍台に使って、権力拡大という政治的目標を着々と実現しつつある。保守党は、不運続きだったテリーザ・メイ前首相の時に比べて、下院での勢力を広げることに成功した。保守党にとっても、メディアから「ピエロ」と揶揄(やゆ)されたジョンソン氏を首相に担ぎ上げたことは、「勝利」だった。 ジョンソン圧勝は、英国のメディアや世論調査機関にとっても、想定外の事態だ。投票前の世論調査では、保守党への支持率(40%台)が労働党への支持率(30%台)を約10ポイント上回っていたが、実際の開票結果がこれほどの大差になるとは誰も予想していなかった。 ジョンソン首相は公約通り来年1月末までにブレグジットを実現するために、EU離脱に関する協定案を早急に下院で可決させるだろう。プリティ・パテル内務大臣は、「政府はクリスマス前に下院で協定案の承認を受け、ブレグジットを実現する」と述べている』、「ジョンソン首相」はかつてロンドン市長だったが、「1年前には下院で何の権限も持たない「ヒラ議員」だった」。「「ピエロ」と揶揄」されながらも、ここまで大処理したとは、幸運の星にでも恵まれたのだろう。
・『「ブレグジットを片付けて、前へ進もう」  この選挙は、ブレグジットに関する事実上の2度目の国民投票だった。有権者たちは今回、ブレグジットを断行するよう、首相に明確な負託を与えた。EU残留派の希望を打ち砕き、ジョンソン首相に追い風となったのは、「ブレグジットを早く終えたい」という国民の願望だ。 英国にはブレグジット疲れ(Brexithaustion)という言葉がある。2016年の国民投票で離脱派が勝利したものの、ブレグジットは政府と議会下院の対立のために、3年以上袋小路に陥っていた。英国、EUの政界、産業界では「ブレグジットをめぐる交渉のために、経済のデジタル化やロシア・中国からの脅威への対応、移民問題など、重要な議題がおろそかにされている」という不満が高まっていた。特にブレグジットに関する政府の提案が、ことごとく議会でブロックされ、堂々めぐりの状態が続いたことに多くの英国民がうんざりしていた。 保守党は今回の選挙戦で映画「ラブ・アクチュアリー」(2003年公開・ヒュー・グラント主演)を基にしたテレビ広告を放映した。クリスマスを前にした英国の住宅街。玄関のベルが鳴ったので住人の女性が扉を開けると、ジョンソン首相が立っている。彼はテープレコーダーでクリスマス・キャロルの音楽を流しながら、メッセージを書いた紙を女性に次々に見せる。そこには「もしも議会が妨害しなければ、我々はブレグジットを実現して、前に進むことができます」と書かれている。首相は次々に紙を取りかえて、「しかしひょっとすると労働党が勝つかもしれません。保守党が安定過半数を確保できるか、それともどの党も過半数を取れない状態になるか、それを決めるのはあなたの1票です」と訴える。 多くの有権者は、「前に進むことができる(We can move on)」というメッセージに引きつけられたのだろう。保守党も労働党も過半数を取れないハングパーラメント(宙づりの議会)が生まれた場合、これまでの堂々めぐりが来年も続く。多くの英国人たちは新しい年には、この国をブレグジットの泥沼から引っ張り上げて、けじめをつけたいと考えたのだ』、「保守党」の「テレビ広告」は、心憎いほど巧みだ。
・『ジョンソン首相の強硬な態度が奏功  ジョンソン氏に勝利をもたらしたのは、彼が首相就任直後から「EUと合意できなくても離脱する」という強硬姿勢を示し続けたことだ。彼の側近は「政府はEUと合意できないという前提で準備作業を進めている」というメッセージをメディアに流した。ジョンソン首相は、EU側に「英国は、合意なしのハード・ブレグジットに本当に踏み切るかもしれない」という不安を抱かせることに成功した。 この不安が、今年10月17日に奇跡を生んだ。EUは、それまで「メイ前首相との間で合意した離脱協定案を修正しない」という態度を貫いていた。ところがEUは突然180度方向転換して交渉に応じ、アイルランド共和国と英領北アイルランド地方との間の国境に関するジョンソン首相の修正案に合意したのだ。 この背景には、ハード・ブレグジットに対する恐れとともに、EU側の「ブレグジット疲れ」もあった。ブレグジットをめぐる先行きの不透明感は、ドイツをはじめとする欧州大陸各国の景気にも悪影響を与え始めていた。「離脱できないならば、溝の中で死んだ方がましだ」というジョンソン首相の脅しに、EUは屈したことになる。 ジョンソン首相は、1月31日までに離脱するという当面の目標は達成するだろう。だが英国政府の前には、難題が山積している。英国政府は、2月1日から始まる11カ月の移行期間中に、離脱後のEUとの貿易に関する条件や、英国民・EU圏の市民の滞在権の問題、防衛協力など、ブレグジット後の対EU関係についての様々な条件について、EUと本格的な協議を始めなくてはならない。ブレグジットが英国に与える不利益を最小限にするための作業が始まるのは、まさにこれからである。 ジョンソン首相は、「2020年末までにEUとの自由貿易などに関する交渉を終える」という目標を打ち出しているが、EU側では「少なくとも交渉に3年はかかるだろう」という見方が有力だ。EUとカナダの間の自由貿易協定の調印には、実に7年もの歳月がかかっている』、「EU側の「ブレグジット疲れ」もあった」、言われてみればその通りなのかも知れない。
・『ブレグジットはEUにとっても大損失  欧州大陸の政府や企業は、英国がEUとの合意なしに離脱する「ハード・ブレグジット」への懸念を強めていた。EUと英国の間に関税が突然導入されると、物流などを混乱させるからだ。だがジョンソン首相の圧勝によって、彼がEUとの間で合意した協定に基づき離脱が行われることがほぼ確実となり、ハード・ブレグジットの危険は回避された。 EU側では、安堵の声が聞かれる。ドイツのアンゲラ・メルケル首相は「英国がEUを離れるのは残念だが、無秩序なハード・ブレグジットではなく、合意に基づいたブレグジットとなることを歓迎する。さらに保守党が安定過半数を確保したことで、これまで我々がしばしば目撃したような、議会と政府が立ち往生する状況が避けられるのは、よいことだ」と述べている。 ブレグジットをめぐる五里霧中の状態が終わり、EU離脱への道筋がはっきりしたこと、特に無秩序な離脱の回避は、民間企業からも高く評価されるに違いない。 しかし英国の離脱が、EUにとって大きな痛手であることに変わりはない。1952年に欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)として産声を上げたEUは67年間の歴史の中で、初めて加盟国を失う。欧州の拡大・統合プロセスに初めてブレーキがかけられる。 しかも英国は、EUで最も重要な国の1つだ。ブレグジットによってEUの人口は約6624万人減り、GDPも約2兆3320億ユーロ(約280兆円)減る。英国のGDPは、28の加盟国の中で、ドイツに次いで2番目に大きい。EUのGDPは一挙に約18%、人口は約13%減る。 ドイツの経済学者ハンス・ベルナー・ジン教授は、「英国のGDP規模は、GDPが最も小さい方から20の加盟国を合わせた経済規模に相当する。つまりブレグジットはEUの小国20カ国が一度にEUを離脱するのと同じインパクト(衝撃)を持つ」と述べている。 欧州で株式市場に上場している企業の約20%が、英国に本社を置いている。さらに英国は欧州の「知の源泉」としても重要な役割を果たしている。世界のトップ大学と言われる高水準の大学のランキングによると、欧州で最も水準が高い大学10校のうち、8校が英国にある。別のランキングを見ても、10校中7校が英国の大学だ。 外交に与える影響も大きい。伝統的に英国は米国政府と「特別な関係」を維持してきた。例えば米国の諜報(ちょうほう)機関は、同じアングロサクソンの国である英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの諜報機関と密接に協力してきた。これら5カ国の諜報機関のサークルは「ファイブ・アイズ(5つの目)」と呼ばれる。英国はこれらの国々と特に親しい関係を保ち、イスラム系テロ組織などに関する重要な情報を、日本やドイツなどの非アングロサクソンの国よりも多く共有してきた。このように米国政府と独自の情報チャネルを持っている英国を失うことは、EUにとって大きな損失である』、「ブレグジットはEUの小国20カ国が一度にEUを離脱するのと同じインパクトを持つ」、「高水準の大学のランキングによると、欧州で最も水準が高い大学10校のうち、8校が英国にある」、「ファイブ・アイズ」の英国を失う、などいずれもEU諸国にとっても、影響は大きそうだ。
・『EU財政にも深い傷  英国離脱は、EU財政にも大きな影響を与える。EUの2017年度予算は約1579億ユーロ(約19兆円)。EUはこの資金によって、域内の経済格差を縮める努力をしている。例えばギリシャやイタリア南部を旅行すると、高速道路などの工事現場の立て札に、しばしば青地に黄色の星を並べたEUのマークが付けられているのを目にする。その工事にEUの資金が投じられていることを示す。 EUはこのように欧州の至る所で、道路や橋梁、鉄道網などの交通インフラを整備したり、各国の農家に補助金を出したり、企業の研究開発を支援したりしている。EUから主に資金援助を受けるのは、市民1人当たりのGDPがEU平均よりも低い国々だ。EU予算は、加盟国が納める拠出金によって支えられている。この「会費」の額は、GDPの大きさなどに基づいて決められている。2017年に拠出金額が最も多かったのはドイツで、約196億ユーロ(約2兆4000億円)だった。英国の支払額は約106億ユーロ(約1兆3000億円)で、フランス、イタリアに次いで第4位である。 加盟国はEUに「会費」を支払うだけではなく、EUから様々な資金援助、つまり「見返り」も受ける。したがってEUへの貢献度を比べる上で最も重要なのは純拠出金、つまり加盟国がEUに支払う拠出金と、各国がEUから受け取る補助金などとの差額である。 交通インフラの整備が遅れており、農業への依存度が高い国ほど、EUから多額の補助金を受け取る。このためEU内のいわば「発展途上国」は拠出金よりも受け取る額が多いので差引額が黒字(入超)となる。他方、交通インフラの整備が比較的進んでおり、農業依存度が低い「先進工業国」は赤字(出超)となる。 英国の2017年の純拠出金(つまり赤字額)は約53億ユーロ(約6400億円)で、ドイツ(107億ユーロ=約1兆3000億円)に次いで2番目に多かった。純拠出金(赤字額)の対GDP比率を比べると、ドイツはGDPの0.32%で第1位。英国は同0.23%で第4位である。 逆に農業など第1次産業への依存度が大きいポーランドやギリシャは、EUから供与される額の方が、EUに支払う額を上回っているので黒字となっている。ギリシャはGDPの2.1%に相当する額、ポーランドはGDPの1.9%に当たる額をEUから受け取っている。 つまり英国の離脱によって、EUが使える資金の規模は一挙に6400億円減る。中長期的には、補助金やインフラ整備資金などを受け取っている東欧諸国、南欧諸国にとっても痛手だ』、確かに「中長期的には、補助金やインフラ整備資金などを受け取っている東欧諸国、南欧諸国にとっても痛手だ」、こんなところにも影響せざるを得ないようだ。
・『英国は欧州ポピュリスト革命の最初の犠牲者  21世紀に入ってから、米国でのトランプ政権の誕生など、世界各地で右派ポピュリスト勢力が拡大しつつある。私はこれを、世界で「右派ポピュリズム革命」が進んでいる兆候と考えている。この革命は運動の中心を持たず、所得格差や政治エスタブリッシュメント(特権階級)に対する市民の不満を「栄養」として、各地で分散的に増殖しつつある。近く実現する英国のEU離脱は、欧州で右派ポピュリズム勢力が収める最初の具体的な勝利だ。 フランスやイタリアの右派ポピュリズム勢力は、2016年以降の英国の混乱を見て恐れをなしたのか、最近ではEU離脱を要求しなくなっている。ドイツの右翼政党も、最近ではユーロ圏離脱について、言及するのを避けている。だが来年英国が離脱を実現した場合、これらの国々のポピュリストたちがどのような反応を見せるかは、依然として1つの心配の種だ。EUがジョンソン首相の脅しの前に妥協したことが、他国の右派ポピュリスト勢力に「新たな勇気」を与えるとしたら、欧州にとっての大きな悲劇である』、「「右派ポピュリズム革命」・・・所得格差や政治エスタブリッシュメント(特権階級)に対する市民の不満を「栄養」として、各地で分散的に増殖しつつある」、憂慮すべき現象だ。「英国のEU離脱は、欧州で右派ポピュリズム勢力が収める最初の具体的な勝利だ」、ハンガリーやポーランドなど旧東欧諸国では「右派ポピュリズム政権」になっているので、正しくは「欧州で」というより「西欧で」だろう。「EUがジョンソン首相の脅しの前に妥協したことが、他国の右派ポピュリスト勢力に「新たな勇気」を与えるとしたら、欧州にとっての大きな悲劇である」、その通りで、思わぬ余波になる懸念がありそうだ。

次に、ジョージタウン大学教授のチャールズ・カプチャン氏が10月5日付けNewsweek日本版に掲載した「ヨーロッパでポピュリズムへの反省が始まった?A New Hope for Democracy」を紹介しよう。ただ、これは英総選挙前に書かれたことを留意する必要がある。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/post-13115_1.php
・『<イギリスとイタリアの変化に見る民主主義の「自己修正」はアメリカに到達するか> ヨーロッパの政治の振り子が、移民排斥やナショナリズムの熱狂とは反対の方向に振れつつあるのかもしれない。 もちろん、イギリスのEU離脱(ブレグジット)をめぐる迷走は、相変わらずどこに行き着くのか分からない。イタリアで新たに誕生した連立内閣も、いつまで続くのか、あるいは、まともに機能するか分からない。 それでも、イギリスで与党・保守党の一部がボリス・ジョンソン首相に対して反旗を翻したこと、そしてイタリアで右派政党「同盟」(旧「北部同盟」)が権力の座から転落したことは、民主主義社会には過激なポピュリズムから回帰する力があるという希望をもたらしている。 確かに、自由民主主義と多元主義の危機はまだ続いている。 イギリスのジョンソンや、イタリアのマッテオ・サルビニ同盟党首、ドナルド・トランプ米大統領、そしてハンガリーのオルバン・ビクトル首相らポピュリスト政治家は、北米とヨーロッパがいかに衝動的な政治に流されやすいかを明らかにした。イギリスの首相が、EUからの合意なき離脱という破壊的行為を固く決意しているらしいことは、いまだにショッキングな現実だ。 アメリカの大統領が連日のように移民を侮辱し、ハイチとアフリカ諸国を「肥だめ」と呼び、ネオナチのデモに好意的な発言をすることも、これまでなら考えられなかった。イタリアで最大の人気を誇る政治家であるサルビニが、国内における民族浄化ならぬ「移民浄化」を訴えたことも衝撃的だった。 だが、イギリスとイタリアの政治で最近起きていることは、大衆扇動と人種差別をあおる行為にも限度がある(かもしれない)ことを示唆した。 英議会は、合意なき離脱を延期する法案を可決した。さらに保守党から大量の議員が離党した(造反を理由に追放された議員を含む)ため、ジョンソンは議会で多数派の地位を失った。長い目で見れば、こうした反乱は手遅れだったのかもしれない。 しかし選挙で選ばれた議員たちが、自らの政治生命や忠義を危険にさらしてでも国家のために立ち上がったことは、民主主義の自己修正メカニズムが機能しつつあり、リーダーによる民主的手続き無視に待ったをかける動きとして注目に値する。 相変わらずイギリス国内の分断は激しく、政治的な機能不全は続いている。しかし少なくとも現時点では、政治の適正化と常識が、ポピュリストの暴走に勝利を収めつつある』、総選挙結果は、イギリスでは真逆のことが起きたことを示している。「保守党から大量の議員が離党」、彼らはどうなったのだろう。
・『「サルビニ排除」で一致  イタリアでも、中道主義と歩み寄りの精神が復活しつつあるようだ。8月に同盟と左派政党「五つ星運動」の連立政権が崩壊して以来、混乱が続いていたが、五つ星と民主党の間で連立合意が成立したのだ。) だからといって両党がイデオロギー的な一致点を見いだせるとは思えないし、有効な統治を実現できる保証もない。しかしサルビニを退場させるという最優先課題に対処するために、イタリアの政治システムは適切に機能したと言えるだろう。 同盟の反移民的な言動と無責任なEU批判は、依然として大衆の間で受けがいい。それでもイタリア全体は、もっときちんとした形を持つ、まともな政治に回帰しつつある。ヨーロッパにはまだ、ポピュリストの政治指導者が権力を握っている国があることを考えると、イギリスとイタリアのこうした変化は歓迎すべきものだ。 例えばハンガリーでは、オルバンの権力は強くなる一方だ。ポーランドでも、右派政党「法と正義」が5月の欧州議会選挙で相変わらずの強さを示し、10月に予定されている総選挙でも善戦するとみられている。 しかし何より懸念すべきなのは、アメリカでトランプの人気に陰りが見えないことだろう。トランプは国内外で移民排斥的でナショナリスト的な主張を繰り返してきた。しかも2020年大統領選に向けて、支持基盤を勢いづけるとともに、民主党を突き放すために一段と過激な言動を取る可能性は高い。 民主党は18年の中間選挙の結果、下院で多数派の座を取り戻し、大統領の暴走を抑制しようとしてきた。だが、トランプは依然として民主主義の理念と手続きを踏みにじり、国内外に甚大な影響を与えている。 それなのになお、約40%の有権者から支持を集めており、再選の可能性は十分ある』、「何より懸念すべきなのは、アメリカでトランプの人気に陰りが見えないことだろう」、強く同意する。
・『政治的駆け引きの結果  トランプ自身と同じくらい苦々しい問題は、共和党がトランプの気まぐれを黙認していることだろう。分別があるはずの議員たちが、一貫性のない気分屋のデマゴーグ(扇動政治家)にそろって追従しているのだ。 それはトランプが、共和党の支持基盤の心をがっちりつかんでいるからだ。減税と保守派判事の指名という、共和党が最も重視するアジェンダの一部を実現してきたことも大きい。 しかしトランプへの追従は、大きな代償ももたらしている。トランプは歳出削減や貿易重視、移民受け入れなど、共和党の伝統的な立場を捨てた。 また、白人ナショナリズムを支持し、移民を排斥する発言は、人種的・民族的・宗教的な多様性を維持しつつ社会のまとまりを確保してきたアメリカの民主主義と多元主義を脅かしている。 それでもイギリスとイタリアの出来事を見ると、欧米の政治をむしばむ右派ポピュリズムに歯止めをかけることは可能なのだという希望が湧いてくる。 イギリスでは、ひと握りの勇気ある保守党議員がジョンソンの暴走にストップをかけた。イタリアでは、政治的現実主義がサルビニの野心をくじき、国家を危機の寸前から救った。 とはいえ、そのどちらも選挙の結果ではなく、政治的駆け引きの結果、生じた。このため、この現象が社会全体におけるポピュリズムの一時的後退を意味するのか、それとも、長期にわたる政治的軌道修正なのかは、まだ判断することはできない。 この疑問への答えは、イギリスの理性と、イタリアの現実主義が、大衆の不満にきちんと対処する政策を生み出せるかどうかに懸かっている。 それは歴史的に重大な意味を持つであろう20年アメリカ大統領選の行方にも、少なからぬ影響を与えるに違いない』、「イギリス」では、選挙結果からみるに、「理性」ではなく、「議会の混迷続きによる投げやりな態度」と言い換えた方が適切だろう。「20年アメリカ大統領選の行方にも、少なからぬ影響を与える」ことがないよう祈るしかなさそうだ。
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英国EU離脱問題(その15)(ブレグジット実現に道筋つけた英保守党「歴史的勝利」の理由、英総選挙 どっちつかずより「とっとと離脱」を選んだイギリスは大丈夫か、英国のEU離脱が確実となった今 「日米英同盟」結成に動くべき理由) [世界情勢]

英国EU離脱問題については、4月13日に取上げた。総選挙を経た今日は、(その15)(ブレグジット実現に道筋つけた英保守党「歴史的勝利」の理由、英総選挙 どっちつかずより「とっとと離脱」を選んだイギリスは大丈夫か、英国のEU離脱が確実となった今 「日米英同盟」結成に動くべき理由)である。

先ずは、みずほ総合研究所欧米調査部 上席主任エコノミストの吉田健一郎氏が12月14日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「ブレグジット実現に道筋つけた英保守党「歴史的勝利」の理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/223490
・『過半数超え87年以来の大勝 コービン労働党首は辞意  12月12日に投開票が行われた英国の総選挙は、ボリス・ジョンソン首相が率いる与党・保守党が大勝した。 保守党の獲得議席は過半議席を上回る364議席となる見通しで、マーガレット・サッチャー首相が3選を果たした1987年総選挙以来の議席数を獲得した。 他方、野党第一党の労働党は1935年総選挙以来の大敗を喫し、203議席の獲得にとどまった。 保守党が過半数を大幅に超える議席を得たことで、英下院での離脱協定の批准や関連の実装法案などが早ければ年内か、来年1月に可決される見通しで、「2月1日のブレグジット実現」の道筋がついた。 支持率調査では選挙戦終盤に労働党が追い上げていたこともあり、直前の予想では保守党が過半議席を獲れないのではないかとの見通しがささやかれていただけに、今回の結果は驚きをもって受け止められた。 特に労働党の大敗は事前予測を大きく上回る結果で、例えば、英調査会社YouGovは、労働の獲得議席数を中央値で231議席、レンジでみても206~256議席と予測していた。 選挙結果を受けて、労働党のジェレミー・コービン党首は辞任の意向を表明した』、私自身は「離脱」には反対なので、総選挙結果には失望した。
・『メッセージが明確だった保守党 “混迷疲れ”の有権者の支持得る  何が保守党と労働党の命運を分けたのか。明暗を分けた3つのポイントがある。 第一は、ブレグジット政策の成否である。 今回の選挙の主要争点であるブレグジットについて、保守党のメッセージは明確で、一方の労働党のメッセージは曖昧だった。 保守党のジョンソン首相は、「ブレグジットを実現させる(Get Brexit Done)」というシンプルかつ分かりやすいスローガンを繰り返し、16年の国民投票以降の長きにわたるブレグジット交渉と英下院の迷走に疲れた有権者の支持を得た。 これに対し労働党は、選挙で勝った場合には3カ月以内に、より穏健な離脱を再交渉し、6カ月後にその結果とEU残留とを国民投票にかけることを公約としていた。 しかし、コービン党首は国民投票となった場合に労働党が党として残留と離脱のどちらの側に立つかという基本的な問いに明確に答えることすらできなかった。 このため、伝統的な労働党の地盤で離脱支持者が多い中西部で保守党に票が流れただけでなく、残留を支持する有権者の票も固めきれなかった。 第二は、マニフェストの内容である。 保守党の歳出拡大策が、労働党よりも多くの有権者の支持を得た可能性がある。 保守党は拡張的な財政政策を打ち出し、国民保健サービス(NHS)改革や、治安といった世論の関心が高い分野に積極的に資金を投入し、国民保険料減額など国民受けの良い政策を公約とした。 他方で労働党は左派的なアジェンダを追求し、鉄道、公共、郵便事業などの再国有化、法人税の19%から26%への引き上げ、富裕者への所得増税と中低所得者への増税凍結など、サッチャー政権以降、採られてきた経済政策と逆方向の再分配政策を提唱した。 しかし、こうした政策の恩恵を得る中西部、労働者階級の有権者はブレグジット政策への反対から保守党に流れ、時代に逆行する政策は都市部の有権者や若者には届かなかった。 第三は、党首の人気である。 2019年9月にIpsos MORIが行った世論調査によれば、コービン党首は野党の党首として、77年の調査開始以来最も人気がない党首と見なされている(不支持率は76%)。ブレグジット政策の取り扱いについても回答者の77%が「悪い」と答えた。 17年の前回選挙では労働党が勝利したが、今回の選挙では保守党が勝利したストーク・オン・トレント北の選挙区から立候補した労働党のスミース議員は、英スカイTVとのインタビューの中で「コービン氏の個人的な動きが、今回の私の選挙区での(敗北という)結果をもたらした」と厳しく非難している』、どうみても「労働党」のオウンゴールだ。不利と分かっている総選挙に何故賛成したのかも疑問だが、「16年の国民投票以降の長きにわたるブレグジット交渉と英下院の迷走に疲れた有権者」を前にしては、党派的理由で総選挙に反対する選択肢はなかったのかも知れない。
・『SNPがスコットランドで議席増、自民党は不振で党首も落選  総選挙で、保守、労働党以外のそのほかの党では、明確に離脱取りやめを打ち出した自由民主党の獲得議席は、12議席の見通しで、スウィンソン党首も議席を失った。 650の選挙区に分かれて、各選挙区で最多票を得た候補1名が当選する小選挙区制は、支持基盤が広い大政党に有利といわれる。 このため、有権者は自由民主党を支持していたとしても、自らの票が死票とならないよう、当選しそうな大政党に投票する傾向がある(戦略的投票といわれる)。この結果、支持率調査と比べても自由民主党の獲得議席数は伸びなかった。 スコットランドの地域政党であるスコットランド民族党(SNP)は、スコットランドでの議席数を増やした。 SNPは、スコットランドの英国からの独立を問う住民投票を2020年内に実施することを公約として掲げており、その前哨戦としての位置づけがあった。) そのため、保守党が2017年の前回選挙よりさらにスコットランドでの議席数を伸ばしたことで、SNPは住民投票実施の要求を強める可能性がある。 ただし、英国では住民投票の実施には中央政府での立法が必要である。保守党は住民投票の実施に反対しており、公約実現の見通しは立っていない。 その他、ナイジェル・ファラージ党首が率いる新党ブレグジット党は、議席を獲得できなかった。そもそも、メイ前政権の下で穏健化するブレグジットに不満を抱く有権者の受け皿として登場した同党は、ジョンソン政権の誕生とともに支持率は低下に転じた』、「ブレグジット党は」ブレグジットを掲げる「ジョンソン政権」を前にしては、存在意義を失ったのだろう。
・『来年2月1日に「実現」 3月からEUとFTA交渉  保守党の勝利により、ブレグジットは実現が確定したといえる。 今後は、英下院で離脱協定が批准された後、離脱協定実施法案など幾つかの関連法が可決され、2月1日に英国はEUを離脱することとなる。 EU条約第50条第3項、およびEU決定(EU) 2019/1810によれば、英・EU両者が批准プロセスを終えた月の翌月初日あるいは20年2月1日のどちらか早いほうが離脱日となる。 保守党が下院で過半議席を握り、かつ所属議員の造反はほぼ起こらないと予想され、そう考えると、下院採決は円滑に進む見通しだ。 20年2月1日から同年12月31日まで、英国は離脱に向けた移行期間に入る。 移行期間中は英国にEU法が適用されることから、離脱したという事実以外、経済活動に与える影響はほとんどないだろう。 在英のEU市民や在EUの英国民についてもその地位は保証される。財、サービス、資本の移動についても従来同様に自由である。 移行期間に英国とEUは自由貿易協定(FTA)の締結に向けた交渉を行う。 英国側の首席交渉官はリズ・トラス国際貿易相であり、EU側は新任のフィル・ホーガン欧州委員(通商担当)になる。なお、ホーガン委員はアイルランド出身で、前農業・農村開発担当の欧州委員である。 EU側では、まず首脳会合において交渉の基本方針を定め、EUとして英国との通商交渉を開始する権限を欧州委員会に付託するための交渉指令を、EU閣僚理事会において承認する必要がある。 ホーガン委員は、アイルランド紙とのインタビューの中で「(3月17日のアイルランドの祭日である)聖パトリック・デイ」までには交渉開始が可能と述べている』、「移行期間」での「英国とEUは自由貿易協定(FTA)の締結に向けた交渉」は簡単ではなさそうだ。
・『FTAは1年ではまとまらず 移行期間は延長される見込み  ただ、FTA交渉の難しさを考えると、英国とEUの間のFTA交渉は、移行期間中にはまとまらず、移行期間は延長される公算が大きい。 ホーガン欧州委員(通商担当)は、前述のインタビューの中で、「(長年EUの一員であった)英国との交渉はゼロから始まるわけではなく、通常3~4年かかる他国との交渉よりもより早期に締結が可能」との見通しを述べている。 だが、3月に交渉を始めても、わずか8カ月強で発効までこぎつけられるという見通しは楽観的過ぎるだろう。 FTA交渉が2020年12月末までの移行期間中に終わらない場合、英国とEUの間で関税や通関手続きが突然、発生し、いわゆる「合意なき離脱」と同じような状況に陥ってしまう。 こうした状況を避けるべく、離脱協定第132条では移行期間の1年または2年の延期が認められている。ただし延期の決定は、7月1日までにされなければならないため、交渉開始からほとんど時間はない』、「延期の決定は、7月1日までにされなければならない」、のであれば、当初の交渉は「延期」を睨んだものとなり、本腰が入らないのではという気もする。
・『EUとの「公平な競争関係維持」に向けた規制の調和が争点に  FTA交渉の焦点は、英・EUが公平な競争環境(Level Playing Field、LPF)の維持に向けた包括的な枠組みを作れるかという点だろう。 EUは、離脱した英国が一方的に自由化を進め、EU企業の競争力がそがれることを懸念している。 LPFの維持に向けた製品基準や労働基準、国家補助など競争政策、徴税の仕組み、社会保障・労働に関する基準、環境保護に関する規制などの枠組みなどが、争点としては考えられる。 例えば、英国が特定の産業に有利になるような補助金政策をとったり、過度に低い法人税を課したりして、競争上の不利をEU企業にもたらすことは、LPFを阻害する可能性があるとEU側はみなしている。 さらに、LPFが守られているかどうかの監視や、紛争処理、判決の執行、制裁の付加などの役割をどのような機関がどのような形で担うのか、といった点も協議される。 英国はEUのルールに縛られずに独自の自由な規制環境の中で第三国との通商関係を構築したいと考えており、EUとの交渉は難航する可能性がある。 こうした中で、財の取引は広範な自由化が進む公算が大きい。これまでEUが結んできたカナダとの包括的経済貿易協定(CETA)や日本との経済連携協定(EPA)の実績を考えると、英・EU間のFTAにおいても全量に近い関税撤廃が予想される。 しかし、関税が撤廃されるといっても、原産地規則(ROO)に関する取り決めなど、優遇関税を適用する上でのルール作りについては、交渉の余地が大きい。 他方で、サービス取引については、単一市場にいる現状と比してクロスボーダーでのサービス提供は難しくなるだろう。 英国にとって重要な金融サービスについては、1カ国で営業免許を取得すれば残りのEU27カ国に対して自由にクロスボーダーで金融サービスを提供することができる「パスポート」は使えなくなる。 在英金融機関は、EU内に新たな拠点を作るなど既に対応済みであり、大きな混乱は生じないとみられるが、英国とEUが将来関係に関する政治宣言の中で20年6月末までに行うことで合意した、同等性評価の結果が注目される』、「同等性評価」を厳しく運用すれば、英国は手足を縛られることになるので、どこで着地させるかは、確かに注目点だ。
・『ジョンソン首相は第三国とも幅広いFTA目指す  筆者は11月に英国へ出張し、離脱推進派のエコノミストと議論を行ったが、その時に感じたのは、離脱を支持するエコノミストの自由貿易推進への強い意志である。 保守党の政治家を含む離脱推進派は、ブレグジットを国内外で自由化を進めるための手段と見なしている。 従って、第三国とのFTAをいかに早く、広く、深く進めていけるかは重要である。FTAの優先順位としてはEUが筆頭に来るだろうが、その後、米国、オセアニア諸国、日本などが続くとみられる。 第三国とのFTAについて、離脱派エコノミストのグループであるEconomists for Free Tradeは、第三国とのFTAの効果だけで英GDPを中期的に4.0%押し上げると推計している。 英国内市場の開放による競争促進や価格低下がGDPの中期的な増加をもたらすと考えているためだ。 一般的にFTAのメリットとしては、自由化による輸出先市場の開放が挙げられることが多いが、ここでは国外市場開放のメリットではなく、国内市場開放のメリットを狙っている。 中期的にみて、離脱派のエコノミストが考えるように「自由で開放的なビジネスの場」として英経済が拡大していくという保証はない。むしろ現在のエコノミストのコンセンサスはその逆で、英国は中期的に競争力を失うというものだ。 しかし、少なくとも保守党の政治家たちは、市場開放による新自由主義的な政策を拡張財政とセットにしながら追求している』、「Economists for Free Tradeは、第三国とのFTAの効果だけで英GDPを中期的に4.0%押し上げると推計」、EU離脱に伴うマイナス効果は入ってない可能性がある。「現在のエコノミストのコンセンサスはその逆で、英国は中期的に競争力を失うというものだ」、この方がありそうなシナリオだ。

次に、在英ジャーナリストの小林恭子氏が12月14日付けNewsweek日本版に掲載した「英総選挙、どっちつかずより「とっとと離脱」を選んだイギリスは大丈夫か」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kobayashi/2019/12/post-6_1.php
・『<イギリス人は3年前の国民投票でEU離脱を選択してしまったことを後悔していると思ったが、フタを開ければ、強硬離脱派のジョンソンが歴史的大勝を収め、再度の国民投票を提示した労働党は大敗した。一体何が起こったのか> イギリスで12日、下院(定数650)総選挙が行われ、ボリス・ジョンソン氏が率いる保守党が単独過半数を超える365議席を獲得して、圧勝した。ここまでの議席数は、1987年のマーガレット・サッチャー首相以来。今年7月末の首相就任時には「イギリスを壊す男」とも言われたジョンソン氏はなぜ勝てたのか。 一方、社会主義的政策で若者層を中心に人気を得ていた労働党のジェレミー・コービン党首。世論調査では保守党との差を当初の20ポイントから10ポイントにまで縮め、追い上げていたものの、59議席を失うという驚きの結果になった。 保守党と労働党、こうも大きく明暗を分けたのはなぜだろう』、小林氏はどのように見ているのだろう。
・『「ブレグジットを片付けてしまおう」  単独過半数が確定した後、ジョンソン首相は保守党員の前に立ち、演説を始めた。「初めて保守党に投票した方は、今回、私たちに票を貸してくれただけかもしれません」「これは自分がロンドン市長に選ばれた時も、こう言ったのですが」と前置きをして、右腕をブルブルと振るわせた。「投票用紙の保守党の欄にチェックを入れた時、手が震えたかもしれません」。少し笑いが起きる。しかし、雰囲気はあくまでも真面目だ。「あなたは次回、労働党に投票するのかもしれません。でも、あなたが私たちを信頼してくれたことに感謝します。私は、私たち保守党はあなたの信頼を決して無駄にしません」。拍手が沸いた。 伝統的に労働党に投票する多くの有権者が今回保守党に投票したこと。これこそ、ジョンソン氏率いる保守党の成功の印だった。 選挙期間中は、「コービン政権を成立させてはならない」と何度も繰り返してきた。実際に、コービン排除に成功したのである。 「さあ、これからブレグジットを片付けてしまいましょう」。「ブレグジットを実行する(Let's get Brexit done)」というフレーズは、選挙運動中に何度も繰り返してきた。 しかし、ここで終わってしまっては、保守党最大のジョーク男と言われるジョンソン氏らしくない。そこで、「その前に......朝食を片付けてしまいましょう!」。聴衆がどっと沸いた。 名門イートン校からオックスフォード大学に進み、ジャーナリストから下院議員、ロンドン市長、そしてまた下院議員、さらに外相にまでなったジョンソン氏をイギリスでは「ボリス」以外で呼ぶ人はほとんどいない(今は「首相」という呼び方が多いかもしれないが)。 テレビのクイズ番組内でのユーモアあふれる応答によって国民的人気者になり、「いつも笑わせてくれる政治家」として知られるようになったが、政治信条は風見鶏的で、離脱を推進する政治家となったのも、その方が首相になれる確率が高かったからに過ぎない。事実の誇張や女性蔑視、人種差別的とも捉えうる危ない表現がひょこっと顔を出す人物である。) それでも、ジョンソン氏は保守党を大勝に導いた。 その鍵は、ブレグジットだった。キャンペーン中、「ブレグジットを実行する」、「もうオーブンに入っている(だから、すぐ実行できるぞ)」と繰り返したジョンソン氏。耳にタコができるようなフレーズの繰り返しだった。 しかし、これこそが今の英国の有権者の多くが望んでいることだった。 離脱の是非を問う国民投票から3年半が経過し、それでもいつ離脱するのかが定かではない英国は、「ブレグジットを実行する」と繰り返す、ジョンソン氏のような人物を必要としていた。そして、有権者は保守党に票を投じることでそれを証明して見せた』、「ジョンソン氏」はなかなかの役者のようだ。「「ブレグジットを実行する(Let's get Brexit done)」というフレーズは」、ブレグジット騒ぎにうんざりしていた国民に受けたのだろう。
・『嫌われた、ジェッザ  今から4年前の2015年、緊縮財政が継いた英国で、労働党の党首選が行われた。 この時、まさかと思う人物が選ばれてしまった。他の党首候補者よりも20歳は年齢が高く、万年平議員のジェレミー・コービン氏だ。反戦・反核運動で知られ、筋金入りの左派である。愛称は「ジェッザ」。 社会福祉の削減が次第に負の影響を及ぼしはじめ、嫌気がさしていた国民感情を察知した労働党内の左派層がコービン氏を後押し。党首選が進む中で、コービン氏の社会民主主義的政策が若者層に魅力的に映った。 しかし、「既成体制を脅かす」存在とみなされたコービン氏は党内の中道派や右派系マスコミに頻繁に批判された。何度も「コービン下ろし」の動きがあり、これをかいくぐりながら、今日まで党首の地位を維持してきた。 ところが、今回の総選挙では、59議席を失い、獲得議席数は203。1935年以来の低い議席数である。しかも、今回は、伝統的に労働党の拠点だったイングランド地方北部の複数の選挙区での負けが目立った。 どんなコービン下ろしにも頑として動じなかったコービン氏は、自分の選挙区であるロンドン・イズリントンで、「非常にがっかりする結果となりました」と述べた。 「それでも、選挙中の私たちの公約は人々に希望を与えるものだったと思います」と胸を張った。 ただし、「次の選挙では、私は党首として闘いません」と宣言した。いつ辞任するかは党幹部との協議によるという。 労働党大敗の理由も明らかだった。やっぱり、ブレグジットだったのである』、肝心の「ブレグジット」に明確な姿勢を示せず、大敗した「コービン党首」の引責は当然だろうが、労働党は今後どのように立て直していくのだろう。
・『「再度の国民投票」で、支持者を減らす  2016年のEU加盟の是非を問う国民投票の際に、労働党は議員内では残留派が大部分だったが、自分の選挙区は離脱を選択したケースが多々あった。 そこで2017年の総選挙では、労働党はブレグジットの実現を公約としたが、今回は「再度の国民投票」を選択肢に入れた。コービン党首自身は「ブレグジットについて、自分は中立です」と宣言していた。 もし政権が取れたら、EUと再度交渉をして新たな離脱協定案を作る。それを国民が受け入れるのか、あるいは残留を希望するかを聞き、その結果を受け入れるというスタンスであるという。 しかし、「離脱中止」、あるいは「再度の国民投票」は、現在のイギリスではタブーだ。 もちろん、今でも残留を願う人はいるし、離脱による経済への負の影響が多大であることもよく紹介されている。 しかし、最初の国民投票から3年半経ち、何度も「離脱予定日」が延長され、下院での議論が行き詰まっている様子を目撃してきた国民からすると、残留派の国民でさえ、「とにかく、早く何かしてくれ」という思いが強い。 もし労働党の言うように「もう一度、EUと交渉し、新たな離脱案を作り、再度国民投票をして......」となった場合、数カ月、いや1年はかかるかもしれない。 国民は「いつ果てるとも分からない状態」に、心底飽き飽きしている。 ブレグジットの実行を願う、これまでは労働党支持の有権者は、今回、保守党を選んだのである』、「残留派の国民でさえ、「とにかく、早く何かしてくれ」という思いが強い」、「国民は「いつ果てるとも分からない状態」に、心底飽き飽きしている」、というのが保守党大勝の背景なのだろう。
・『「協力できない」と言われ  労働党の大敗には、コービン党首自身への嫌気感もかなり影響している。 公約には電気、水道、鉄道などの公営化を含む、サッチャー政権以前の時代に後戻りするような政策が含まれており、反コービン派が言うところの「共産主義的」匂いがあった。 離脱中止というラジカルな選択肢を公約にした自由民主党のジョー・スウィンソン党首は、自分自身が落選するという顛末を経験したが、彼女が毛嫌いしていたのがコービン党首。「一旦は、ブレグジットを実行すると言っていた。ああいう人とは協力できない」と何度か明言した。 コービン氏は保守系の力が強いメディアも敵に回した。労働党内のユダヤ人差別の撤廃に同氏が積極的ではないという記事が継続して掲載されてきた。 筆者からすると、ジャム作りが趣味というコービン氏は人柄が良さそうに見える。時には妄言を発し、首相職を狙うためには自説を曲げることも厭わないジョンソン氏よりは、人間的に正直に見える。 しかし、ジョンソン氏は今後、5年間はイギリスの首相であり続け、コービン氏は来年上半期には、政治の表舞台から去ってゆく。 理不尽かもしれないが、今のイギリスには「とにかく、ブレグジット」という強い風が吹いているのである』、やはり「人柄の良さ」は、政治家としては評価されないようだ。
・『なぜ、ブレグジットなのか  ところで、そもそもなぜブレグジットなのか。経済的に不利益を被るかもしれないのに、なぜ?と筆者はよく聞かれる。 一義的にいうと、「誰かに自分のことを決められるのは、嫌だ」という国民感情がある。 EU加盟国では、国内の法律の上にEUの法律が存在する構造だ。法律を決めるのは欧州議会議員と欧州委員会の官僚で、前者は英国民も票を投じることができるものの、自分が住む地域の欧州議会議員の名前を知っている人はほとんどいないほど、遠い存在だ。欧州委員会は官僚主義の権化として英国民は認識している。 離脱推進者が主張していたのは、「これまでEUに支払ってきたお金を国の医療サービスや教育に回せる」、そして、「英連邦を含む、世界中と自由貿易ができる」こと。 IMFやイングランド銀行、その他の多くの経済や金融の専門組織やシンクタンクは、ブレグジットによって負の影響が出る、特に貧困層が大きな悪影響を受けると警告してきた。 「なぜ、それでもブレグジットをしたいのか」と聞かれるならば、当初の国民投票から年月が経つうちに、「5年、10年後になって、最初の痛みが薄らいだ時に、大きな飛躍ができるのではないか」という見方を出す専門家もいるようになり、決して荒唐無稽の話ではなくなったという背景がある。 イングランド北部を中心に、ブレグジットへの志向が出てきた理由として、「再現(注:際限?)のないEU市民の流入を止めたい」という思いもあった。 例えば、こういうことだ。 2004年以降、東欧諸国を中心とした10カ国が一気にEUに加盟したことで、学校、職場、病院でみるみる間に人が増えた。筆者も実際に、病院のアポが取りにくくなり、ポーランドやハンガリー、リトアニアなどからきた人をよく見かけるようになった。 時の政府がEUからの移民流入に一定の歯止めをかけるべきだったのに、と筆者は思う。しかし、それはEUの人、もの、サービス、資本の自由な往来を阻害するものとして、当時は受け止められ、「無制限での受け入れは良いこと」と思われていたのである。 「自分で自分のことを決めたい」。この思いがますます強くなっていることを感じるこの頃だ』、国民投票時には僅差で、その後、離脱派の主張のいいかげんさも明らかになったのに、「「5年、10年後になって、最初の痛みが薄らいだ時に、大きな飛躍ができるのではないか」という見方を出す専門家もいるようになり、決して荒唐無稽の話ではなくなった」、政治の流れというのはそんなものなのかも知れない。

第三に、立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏が12月16日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「英国のEU離脱が確実となった今、「日米英同盟」結成に動くべき理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/223445
・『12月12日に行われた英国の総選挙で与党保守党が圧勝した。これで英国がEU離脱の早期実現に向けて動くことは確実となった。この情勢を受けて日本がすべきことは「日米英同盟」の結成に向けて働き掛けていくことだ。その理由を解説する』、強い違和感を感じたので、あえて紹介した次第だ。
・『英国の総選挙は与党保守党の圧勝 EU離脱に大きく前進した  12月12日、英国で総選挙の投開票が行われた。与党保守党が、2017年の前回選挙から49議席増やす364議席を獲得した。下院(定数650)の過半数(325)をはるかに超える大勝利となり、10月にボリス・ジョンソン英首相が欧州連合(EU)とまとめた「離脱協定案」の議会通過に大きく前進した。 一方、労働党は前回の選挙から60議席減らす202議席にとどまった。元々労働党の基盤であったイングランド北部や中部の工業地帯が保守党に切り崩されてしまう大敗となった。また、一貫して「EU残留」を訴えてきた中道政党・自由民主党は、トニー・ブレア元首相やジョン・メイジャー元首相らが「超党派」で支援していたが、2議席減の11議席の獲得という結果に終わった。これに対して、「EU残留・英国からの独立」を主張するスコットランド民族党(SNP)は、13議席増の48議席と躍進した。今回は、英国総選挙を総括し、今後について考察してみたい。) ▽英国民は「合意ある離脱」が最適解と判断したのだろう(この連載では、16年の「EUからの離脱を問う国民投票」の後、どんなに英国政治が混乱して見えても、「英国は必ずEU離脱について『最適な解』を見つける」と一貫して主張し続けてきた(本連載第224回)。今回の総選挙で、英国民はジョンソン首相がまとめた「合意ある離脱」が最適であるという判断を下したのではないだろうか。 筆者が、英国は最適な解を見つけると信じて疑わなかったのは、他の政治体制にはなく、自由民主主義体制だけが持つ機能があるからだ。それは、政治家も国民も「失敗」から「学習」することができ、大きな体制変革なくして、「失敗をやり直す」ことができること(第198回)。そして、それは権力を持つ側の言動が、全て国民にオープンである自由民主主義体制だからこそ可能なことである。 英国のEU離脱に関する今日までのプロセスを振り返ってみよう。特筆すべきことは、いいことも悪いことも全て隠されることなく、英国民のみならず、世界中の誰でも自由に見て、自由に批判することができるオープンな状況で行われてきたということだ。 3年前の国民投票から、本当にいろいろなことがあった。英国の政治家と国民は、EU離脱そのものの困難さ、そしてEU離脱のための合意形成の難しさを痛感した。「合理なき離脱」で起こる深刻な事態も認識した(第224回・P5)。 その結果、英国民が下した判断が今回の総選挙の結果だ。多くの英国民は紆余曲折の末、ジョンソン首相が取りまとめた離脱協定案を、「まだマシなもの」として受け入れることにした。そして、これ以上EU離脱を巡って何も決められない混乱した状況が続き、他の政策課題が後回しにされ続けることを回避した。これは、EU離脱に関する全ての情報が国民にオープンだったからこそ下せた判断だと考える。) よく、「国家の大事なことはエリートが決めればいい。選挙に委ねるのは間違い」という主張がある。だが、かつての共産主義や全体主義の国など、エリートが全てを決める「計画経済」の国はほとんど失敗した(第114回)。エリートは自らの誤りになかなか気付けないものだ。 また、エリートは自らの誤りを隠そうとし、情報を都合よく操作しようとする。しかし、操作しようとすればするほど、ますますつじつまが合わなくなる。国民がエリートの誤りに気付いたときは手の施しようがなくなっていて、国民はエリートと共に滅びるしかないのだ。その端的な事例が、「大本営発表」を続けて国民をだまし、国民が気づいたときには無条件降伏に追い込まれていた、かつての「大日本帝国」だろう。 共産主義・全体主義の国は、うまくいっているときは意思決定が早く、優れた政治体制のように見えなくもない。だが、いったん危機に陥ると脆いものだ。一方、自由民主主義がその真価を発揮するのは、危機的状況においてである。 危機的状況であっても、国民に隠し事なく、どんな都合の悪い情報でもオープンにすることで、国民は危機回避に動くことができる。また、政府に誤りがあれば、選挙という手段で政治体制が崩壊する前にそれを正すことができる。 そういう状況は意思決定に長い時間がかかるし、不格好に見えるものである。だが、最後には国家そのものを崩壊させるようなことにはならず、ベストではないにせよ、「まだマシ」な決定を下すことができるものだ。 ちなみに、第2次世界大戦の緒戦、英国はナチスドイツに対して劣勢に追い込まれた。しかし、英公共放送BBCは、日本の「大本営発表」とは真逆の姿勢をとった。悪い情報も包み隠さず放送したのだ。悪い情報を国民が知ることこそ、明日の勝利につながるという信念に基づいた行動だった(第108回)。 ウィンストン・チャーチル元英首相の有名な言葉、「民主主義は最悪の政治体制といえる。これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除けばだが」は、今でも生きている。英国はブレグジット(英国のEU離脱)という難題に対して、奇跡的に「最適な解」を見つけた。このことは、どんな国でも陥る可能性がある「国難」に対してどう対処すべきか、議会制民主主義国の本家本元がお手本を示したといえるのではないだろうか』、「国家の大事なことはエリートが決めればいい。選挙に委ねるのは間違い」は確かに間違いだが、国民に任せると「衆愚政治」に陥り易いのも事実だ。「危機的状況であっても、国民に隠し事なく、どんな都合の悪い情報でもオープンにすることで、国民は危機回避に動くことができる。また、政府に誤りがあれば、選挙という手段で政治体制が崩壊する前にそれを正すことができる」、「議会制民主主義国の本家本元がお手本を示したといえるのではないだろうか」、どう考えても英国政治を美化し過ぎだ。現実には、ジョンソン首相のポピュリスト的手法や騙し合いなど、ドロドロしたものがある筈だ。
・『英国がEUの早期離脱に動くのは確実 問題は離脱後の英国経済の行方だ  さて、気になるのは、選挙後の展開である。いうまでもなく、保守党が議会で安定多数を確保したことで、ジョンソン首相はEUからの早期離脱を実行に移すことになる。 問題は、離脱後の英国経済がどうなるかだ。英国は離脱後にEUと自由貿易協定(FTA)を締結する方針である。ただ、貿易量はEU残留時に比べて2~3割落ち込み、国内総生産(GDP)も3~8%ほど下回るという見通しがある。だが、筆者は短期的な経済の動向にはあまり関心はない。 確かにEU離脱による経済の混乱は起こるだろう。しかし、ジョンソン首相はこれまでの首相たちのような緊縮財政とは真逆の、大胆な財政出動を行ってそれを補うだろう。英国の財政は他の欧州諸国と比べればまだマシな状況であり、短期的な財政出動に耐える体力は持っている。 その上、英国に拠点を置く企業は既にEU離脱後の経済の落ち込みに対する準備を完了している。従って、おそらく試算された通りに経済が落ち込むことはないのではないか。これも、EU離脱を巡る情報がオープンだった賜物である。ジョンソン首相が就任したとき、英国の企業は「合意なき離脱」を覚悟し、それに対処する準備を始めることができていたからだ。 そして、EU離脱直後の混乱期が過ぎていくと、この連載で何度も主張してきた、「英国の優位性」が効いてくることになる。それは、英国が「英連邦」という巨大な「生存圏」を持っていることだ。 英連邦には、「資源大国(南アフリカ、ナイジェリア、カナダ、オーストラリアなど)」「高度人材大国(インド)」「高度経済成長している新興国(東南アジア)」などが含まれる。英連邦を再構築しつつ、離脱後の最初の5年間を乗り切れば、その後は「巨大な生存権」を築ける可能性があるのだ(第134回)。 それに対して、EUは「ドイツの独り勝ち」状態であり、ギリシャやイタリアなど経済的に問題を抱えている国が少なくない。それらの国では、ドイツへの不満もあり、極右政党が台頭している「EU離脱予備軍」国もある。また、英国のようにエネルギー自給ができず、ロシアの天然ガスに依存しており、エネルギー安全保障上も脆弱である(第149回)。 もし英国がEUに残留すれば、経済的に困難を抱える国々の面倒を見るように押し付けられる可能性が高かった。早いうちにEUから抜けたほうがまだマシというのが、筆者の見解だ。 また、英国がEUから離脱すれば、英ロンドンの国際金融市場「シティ」から資金が引き揚げられてシティに代わる金融市場が欧州に生まれる、シティの地位は劇的に低下するという意見がある。だが、これは間違いである。 シティがEUの規制から自由になれば、世界中の資金はより規制が少なく、世界中に点在する英国領やエリザベス女王直轄領のタックスヘイブンが背後にあるシティに集まりやすくなるからだ。 そもそも、シティには長年蓄積された国際金融市場としてのノウハウがある。これをドイツの製造業が中心であるEUが簡単に身に付けられるものではない。シティに取って代われるはずがないのだ。日本に例えるならば、「車の生産拠点である豊田市に、東京の金融市場を持ってきてもうまくできるはずがない」と言えば、分かりやすいだろうか。 そして、さらに考えるべきことがあるとすれば、今回の総選挙で議席を伸ばしたSNPである。ニコラ・スタージョン党首は、EU離脱になれば、再びスコットランド独立の住民投票の実現を目指すと宣言している(第90回)。 しかし、スコットランドの独立気運は縮小していくと考える。繰り返すが、EUは今後、加盟国の中で経済的に問題がある国によって、内部的に不安定になる可能性がある。そうなると、EUにしがみつくよりも英国の一部であるほうが有利だという考え方が次第に広がっていくだろう』、「「英連邦」という巨大な「生存圏」を持っている」、いまや「英連邦」は名目的なもので、経済的結びつきは弱い。まして、「生存圏」なる時代がかった概念を持ち出した筆者のセンスも疑わざるを得ない。
・『英国のEU離脱に対して日本がすべきは「日米英同盟」の結成  英国が「EU離脱」へ動き出すことに対して、日本は「日米英同盟」の結成に向けて早期に働き掛けていくべきだろう(第217回)。 既に、英国はテリーザ・メイ政権時から、EU離脱後の「米国抜きの11カ国による環太平洋包括連携協定」(いわゆる「TPP11」)への加盟を希望してきた(第192回)。ジョンソン首相もその方針を踏襲するだろう。TPP11のうち、6カ国(カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシア、シンガポール、ブルネイ)が英連邦加盟国であり、英国のTPP11への参加は自然な流れだ。 TPP11への英国の加盟は、英連邦の再構築に加えて、実質的な「日英自由貿易協定」の締結を意味する。そして、日本の参議院選挙が終わったことで、日米の貿易交渉も本格化する。最終的に世界第1位(米国)、第3位(日本)、第5位(英国)の経済大国に、TPP加盟10カ国と他の英連邦諸国(インド、南アフリカ、ナイジェリアなど)が加わる「超巨大自由貿易圏」が誕生することになる。 また、ジョンソン首相は就任時にドナルド・トランプ米大統領と電話会談し、EU離脱後の英国と米国が早期に「野心的な自由貿易協定」の交渉を開始することで一致している。トランプ大統領は、「米英の貿易は、英国がEUの一員であることで妨げられてきた。離脱後、両国間の取引は3倍から4倍、5倍増えるかもしれない」との見方を示した。 その後、お互いにいろいろなことを言い合ってはいるが、基本的にはジョンソン首相とトランプ大統領は「ケミストリー」が合う。目が離せないような丁々発止のやり取りとなり、交渉が進んでいくはずだ。 英国の「TPP11」加盟と「米英FTA」締結は、日本にとっても大きなメリットとなるだろう。筆者は、「安倍外交」にレガシー(遺産)があるとすれば、それは例えば、日露関係の深化による北方領土問題の進展などではないと思う。むしろ、「TPP11」をまとめ上げたことこそが、真のレガシーである。 今後の国際社会は「ブロック化」が進み、「生存圏」を築ける国家・地域が生き残る力を持つことになる。しかし、国内に資源がなく、輸出主導型の経済システムで生きてきた日本は、「生存権」を持つ国が経済と資源を「ブロック化」してしまったら、一つの小さな島国に落ちてしまう(第145回)』、「今後の国際社会は「ブロック化」が進み、「生存圏」を築ける国家・地域が生き残る力を持つことになる」、グローバル化が曲がり角にあることは事実だが、かといって対極の「ブロック化」が進むとの筆者の判断には首を傾げざるを得ない。
・『安倍政権は、世界の「ブロック化」で日本が抱えるリスクの恐ろしさを実は非常によく理解しており、米国の離脱にもかかわらず、TPP11をまとめ上げた(第192回)。これは、自由貿易を守りたい国々にとって非常に魅力的であり、安倍首相の「八方美人的」な人当たりの良さも加わり、日本に「自由貿易圏のアンカー役」といっても過言ではない地位を与えつつあるように思う。そして、その基盤の上に米国と英国が加わるのだ。それは日本が、中国やロシア、EUを上回る巨大な「生存圏」を形成することを意味する。 そして、日本にとっては経済面だけでなく、安全保障面でも大きなメリットをもたらすことになるだろう。「EU離脱」後、英国が英連邦という「生存圏」を強化するために、安全保障面で中東・インド洋から東南アジアへのプレゼンスを強めようとするのは明らかだ。 海軍力をランク付けすると、1位米国、4位日本、5位英国という説がある。日米同盟が日米英安全保障同盟に発展すれば、圧倒的な世界最大の海軍が誕生することになる。このことは、中国の海洋進出に対する強い牽制となるのは間違いない(第187回)。 日米英の経済・安全保障における同盟関係の強化は、できるだけ急がなければならない。まず、来年の米大統領選挙でトランプ大統領が勝てるかどうか分からない。米民主党の大統領が誕生すれば、ジョンソン首相との関係がどうなるか分からないし、民主党は歴史的に「親・中国」で、日本との関係がいいとは言えない。 また、安倍首相の任期も残り2年を切っている。自民党総裁に「4選」という話がないわけではないが、基本的に首相自身にその気はないようだ。後継とされる自民党の石破茂元幹事長や岸田文雄政調会長に、日米英同盟という大胆な発想を進める力量はないように思う。 結局、「ドナルド・シンゾー・ボリス」というある意味「規格外」の人間が集まったときでないと、こういうことはできない。やるなら、今しかないのだ。 最後に強調しておきたいのだが、これは軍事的・経済的に急拡大している中国と闘うためにやるのではないということだ。日本は、中国とは親密な関係を築かねばならないというのはいうまでもない。実際、米中貿易戦争中のトランプ大統領はともかくとして、ジョンソン首相は中国とも非常に親しい関係にある。 日米英同盟は、日本が中国と対等に付き合い続けるために必要なものだということだ。急激に力を付けている相手と対等に付き合うには、こちらも力を持たなければならない。 日本では、英国のEU離脱による日本企業のリスクという短期的な話ばかりが議論されてきた。しかし、短期的な話よりも重要なのは、中長期的にEU離脱で何が起こるのかを見極めて、日本がどう動くかを考えることである』、「日米英同盟」については、アメリカ・ファーストを唱えるトランプ大統領が果たして関心を示すかは疑問だ。筆者の「妄想」に過ぎないのではなかろうか。
タグ:ダイヤモンド・オンライン 吉田健一郎 Newsweek日本版 上久保誠人 英国EU離脱問題 (その15)(ブレグジット実現に道筋つけた英保守党「歴史的勝利」の理由、英総選挙 どっちつかずより「とっとと離脱」を選んだイギリスは大丈夫か、英国のEU離脱が確実となった今 「日米英同盟」結成に動くべき理由) 「ブレグジット実現に道筋つけた英保守党「歴史的勝利」の理由」 過半数超え87年以来の大勝 コービン労働党首は辞意 メッセージが明確だった保守党 “混迷疲れ”の有権者の支持得る 16年の国民投票以降の長きにわたるブレグジット交渉と英下院の迷走に疲れた有権者 SNPがスコットランドで議席増、自民党は不振で党首も落選 来年2月1日に「実現」 3月からEUとFTA交渉 移行期間中は英国にEU法が適用される FTAは1年ではまとまらず 移行期間は延長される見込み EUとの「公平な競争関係維持」に向けた規制の調和が争点に ジョンソン首相は第三国とも幅広いFTA目指す 小林恭子 「英総選挙、どっちつかずより「とっとと離脱」を選んだイギリスは大丈夫か」 「ブレグジットを片付けてしまおう」 「さあ、これからブレグジットを片付けてしまいましょう」。「ブレグジットを実行する(Let's get Brexit done)」というフレーズ 離脱の是非を問う国民投票から3年半が経過し、それでもいつ離脱するのかが定かではない英国は、「ブレグジットを実行する」と繰り返す、ジョンソン氏のような人物を必要としていた 嫌われた、ジェッザ 2015年、緊縮財政が継いた英国で、労働党の党首選が行われた。 この時、まさかと思う人物が選ばれてしまった。他の党首候補者よりも20歳は年齢が高く、万年平議員のジェレミー・コービン氏だ 「再度の国民投票」で、支持者を減らす コービン党首自身への嫌気感 「共産主義的」匂い なぜ、ブレグジットなのか 「誰かに自分のことを決められるのは、嫌だ」という国民感情がある 「5年、10年後になって、最初の痛みが薄らいだ時に、大きな飛躍ができるのではないか」という見方を出す専門家もいるようになり、決して荒唐無稽の話ではなくなった 「英国のEU離脱が確実となった今、「日米英同盟」結成に動くべき理由」 英国の総選挙は与党保守党の圧勝 EU離脱に大きく前進した 「国家の大事なことはエリートが決めればいい。選挙に委ねるのは間違い」という主張 端的な事例が、「大本営発表」を続けて国民をだまし、国民が気づいたときには無条件降伏に追い込まれていた、かつての「大日本帝国」 危機的状況であっても、国民に隠し事なく、どんな都合の悪い情報でもオープンにすることで、国民は危機回避に動くことができる。また、政府に誤りがあれば、選挙という手段で政治体制が崩壊する前にそれを正すことができる 英国がEUの早期離脱に動くのは確実 問題は離脱後の英国経済の行方だ 英国が「英連邦」という巨大な「生存圏」を持っている スコットランドの独立気運は縮小していく 「日米英同盟」の結成に向けて早期に働き掛けていくべき 今後の国際社会は「ブロック化」が進み、「生存圏」を築ける国家・地域が生き残る力を持つことになる 日米英同盟は、日本が中国と対等に付き合い続けるために必要なもの
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香港(その3)(香港デモに「暴力はダメ」と安易に考える人に伝えたい大事なこと、香香港情勢を甘く見た中国 巻き返しに出る可能性も 習近平は香港の中国離れを絶対に容認しない) [世界情勢]

香港については、10月8日に取上げた。今日は、(その3)(香港デモに「暴力はダメ」と安易に考える人に伝えたい大事なこと、香香港情勢を甘く見た中国 巻き返しに出る可能性も 習近平は香港の中国離れを絶対に容認しない)である。

先ずは、立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏が11月27日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「香港デモに「暴力はダメ」と安易に考える人に伝えたい大事なこと」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/221574
・『香港の区議会選挙で民主派が初の過半数獲得  11月24日、香港区議会(地方議会)選挙が実施された。デモ隊と香港警察の対立が激化し、選挙が中止になることが危ぶまれたが、当日は大きな混乱は起きなかった。投票率は前回(2015年)の47%をはるかに上回り、中国返還後に行われた選挙で最高の71%に達した。 そして、民主派が452議席の約9割に達する390議席を獲得する歴史的な勝利を収めた。民主派が過半数を獲得したのは初めてで、改選前に7割の議席を占めていた親中派との立場は完全に逆転した。民主派は、あらためて「五大要求」の実現を要求し、抗議行動を継続すると表明した。しかし、香港政庁とその背後にいる中国共産党が容易に折れるとは考えられない。今後の問題は、民主派がどう要求を実現していくかだ』、興味深そうだ。
・『「デモに対する支持率が低下」と語る日本の“識者”のいいかげんさが露呈  日本では、テレビや新聞、雑誌、インターネット等のメディアで、「識者」と称する人たちが「デモによる暴力で、香港経済や市民の生活にダメージがあり、デモに対する支持率が低下している」というコメントをすることが少なくない。しかし、それはまったく現地のことを知らない人が、日本語でいいかげんなことを言っているだけということが、明らかになった。 香港で行われている世論調査では、民主主義を求める若者に対する支持はまったく下がっていなかった。だが、この事実は、なぜか日本のメディアで取り上げられることが非常に少なかった。 今回の選挙で、香港市民は民主派を圧倒的に支持していることが明らかになった。「デモによる暴力」を批判していた日本の識者の皆様には違和感がある結果だろう。筆者は、彼らに言いたいことがある。 筆者は、選挙の前に香港の「民主の女神」周庭(アグネス・チョウ)さんとSNSのメッセンジャーでやり取りをした。その際、強い印象が残ったのは、彼女が「私がこの運動が始まってからよく思うのは、民主主義と自由がある国の人たちが、自由のない生活を経験したことがないのに、『暴力はダメよ、支持しませんよ』というのは、ちょっと傲慢なのではないか」「私たちだって、暴力を使いたくないですよ」と言ったことだ。 この連載では、中国共産党が「香港の中国化」を目指し、圧力を強めることで、香港市民が自由を奪われ、暴力を使うことでしか民主主義を守る手段がないところまで追い詰められたことを、詳述してきた(本連載第213回)。 雨傘革命後、筆者がアグネスさんら民主派の若者たちに初めて会ったとき、彼らは「香港の選挙は『AKB48の総選挙』のようなもの。民主的に行われているように見えて、実は秋元さんが全部決めている。香港の選挙も中国共産党が全部決めている」と言い、この状況下では「暴力しかない」と訴えかけてきた(第116回)。 それでも彼らは、「デモで選挙制度は変えられなかったが、将来を自分たちで決めたいなら若者の政党をつくるべきだ」と訴えた。彼らは「活動家」から「政治家」に進化しようとした(第141回)。 そして、16年9月4日に行われた香港立法会選挙で、民主派の若者らが6議席を獲得した。彼らを含む「反中国派」全体で30議席を得て、法案の否決が可能になる立法会定数70議席の3分の1(24議席)以上を占める画期的な勝利となった。 しかしその後、彼らは中国を侮辱する言動を行ったとして、議員資格を取り消されてしまった。アグネスさんは18年4月の香港立法会議員の補欠選挙に、弱冠21歳の現役女子大生として立候補しようとしたが、当局によって立候補を差し止められた。 彼らの政治家になろうとする志は、香港政府とその背後にいた中国共産党によって、踏みにじられることになった。そして、この件に象徴される、中国共産党・香港政庁による民主派に対する一連の「弾圧」は、民主化運動の中心メンバーだけではなく、多くの若者を深い絶望に陥れ、「暴力」を肯定せざるを得ないところにまで追い込んだのだ。 この背景を理解することなしに、自由と民主主義を生まれながらに謳歌してきた人が、シンプルに「暴力はいけない」と言うのは、浅はかすぎると断ぜざるを得ない。もちろん、筆者も「暴力」は肯定しない。しかし、香港の「暴力」については、民主派の若者にまったく責任はない。彼らを徹底的に追い詰めた中国共産党・香港政庁にこそ、「暴力」の全責任があると、最大級の非難をしておきたい』、「私がこの運動が始まってからよく思うのは、民主主義と自由がある国の人たちが、自由のない生活を経験したことがないのに、『暴力はダメよ、支持しませんよ』というのは、ちょっと傲慢なのではないか」、との「香港の「民主の女神」の主張はその通りだ。
・『香港政庁・中国共産党が区議会選挙の実施を恐れた理由とは?  香港区議会については、地域の法律や予算を決める強い権限は持っておらず、公共サービスや福祉といった地域の問題について政府に提言する諮問機関のような役割しかない。従って、今回の選挙の結果は、香港の情勢に大きな影響を与えないという人がいる。しかし、その見方は、正しいとはいえない。 香港政庁・中国共産党は、今回の区議会選挙を延期できないか、ずっと模索していたとされる。デモ隊と警察の衝突の激化で、選挙の安全な実施が困難だからと報道されることが多かったが、そんな単純な理由ではない) 香港政庁・中国共産党は、選挙当日になれば市民は皆、デモを行わず選挙に行くことを当然、予測できたはずだからだ。実際、衝突などまったく起きることはなく、整然と選挙が実施された。 香港政庁・中国共産党が本当に恐れたのは、今回の選挙結果が「香港行政長官選挙」に与える影響だ。香港行政長官は、不動産や金融など35業界の代表と立法会議員、区議会議員ら1200人で構成される「選挙委員会」の投票で選出される。 行政長官選挙に立候補するには「選挙委員」のうち、150人以上の推薦が必要であり、当選するには過半数の得票を得る必要がある。これまで、選挙委員は親中派が多数を占めてきたため、事実上民主派の候補者は立候補すらできない仕組みとなってきた。 しかし、選挙委員のうち区議会枠(総数117)は、区議会議員の互選で選ばれる。今回の区議会選挙で民主派が9割を占めたので、区議会枠は親中派から民主派に変わることになる。互選がどういう形になるかは不明だが、仮に117人の9割だとすると、民主派は105人いうことになる。 また、20年9月には「立法会選挙」が実施される。これは区議会選に比べて、民主派が躍進するには高い壁がある。定数70のうち直接選挙で選ばれるのは35議席だ。残る35議席は職業別代表枠で、間接選挙によって選ばれるが、ほとんどが親中派である。 その上問題なのは、直接選挙が「比例代表制」であることだ。区議会選は、勝者となる党派が実際の得票数よりも多くの議席を獲得する傾向にある「小選挙区制」だった。実際、今回の区議会選は、民主派が9割の議席を獲得したが、得票数は6割程度だったのだ。 「比例代表制」の場合は、シンプルにいえば6割の得票数だと、6割の議席を獲得することになる。仮に、民主派が今回と同程度の支持を集めたとすると、立法会選挙の直接選挙35議席中21議席の獲得にとどまる。定数70のうちの21議席なので、区議会の過半数には遠く及ばないことになる。 ただ、立法会議員はそのまま行政長官選挙の選挙委員となる。21人の民主派が立法会枠から加わることになると、選挙委員会1200人中、区議会枠と合わせて民主派は126人程度となる。すると、立候補者を出すために必要な選挙委員150人の推薦を実現するハードルが、かなり下がることになる そして、ここまでハードルが下がってしまうと、中国共産党にとっての「不測の事態」が起こりかねなくなる。現在、親中派とみられる人たちも、民主化支持の世論を気にして、中国共産党と距離を置いているといわれる。 仮に22年の次期行政長官選挙の際にそのような状況になったら、選挙委員会の中から、親中派・民主派双方の幅広い支持を得られるような、開明的なリーダーが立候補して行政長官に当選し、中国共産党が香港の行政をコントロールできないという事態も起きかねない。だから、中国共産党は、そのきっかけとなる懸念がある今回の区議会選の実施を嫌がったのだといえる』、「香港政庁・中国共産党が本当に恐れたのは、今回の選挙結果が「香港行政長官選挙」に与える影響だ」、その後の説明と合わせて、よく理解できた。「区議会選は・・・「小選挙区制」だった。実際、今回の区議会選は、民主派が9割の議席を獲得したが、得票数は6割程度だったのだ」、初めて知ったが、香港政庁・中国共産党も改めてその恐ろしさを認識したのだろう。
・『香港の状況を劇的に変えられるのは「財界」である  しかし、それはあくまで中国共産党にとっての「不測の事態」であり、民主派にとっては「希望的観測」にすぎないだろう。リアリスティックに考えれば、香港の状況を劇的に変えることができるのは、「財界」である(第223回・P6)。 財界が民主派に寝返れば、行政長官選挙の「選挙委員」は民主派が圧倒的多数派になる。つまり、民主派の候補者しか当選できない制度に代わってしまうことになるのだ。 だが、アグネスさんに聞いてみたが、財界の動きは「分からない」という。財界について話題を振っても、反応が鈍い。おそらく、現在のところ民主派と財界の間に接点はないのだろう。財界は完全に親中派とみなされているので、民主派が安易に接触すると、動きが筒抜けになってしまう恐れがある。信用できないのだろう。 日本的な感覚で考えれば、民主派の若者の中に財界と交渉できるような「寝業師」はいないのかと言いたくなる。おそらく、いないのだろう。リーダー不在の「水の革命」(*)の難しさが露呈しているといえるのかもしれない(第214回)。 *香港出身のアクション映画スターであるブルース・リーが語った格言「Be Water(水のようになれ)」にちなんだ、今回の香港の民主化デモの通称。リーダー不在で臨機応変にデモ活動のかたちを変えることに由来する。 一方、財界側は民主派の抗議行動に対して、静観を貫いている。ただ、今回の抗議行動が始まって以降、中国共産党は、香港の民間企業に対する圧力を徹底的に強化している。例えば、中国政府はキャセイパシフィック航空に対して、デモにかかわった従業員を職務に就かせないように強く要求し、実際にデモに参加した操縦士2名が解雇された。また、同社のルパート・ホッグ前最高経営責任者(CEO)が辞任に追い込まれ。キャセイパシフィックの元操縦士で立法会議員のジェレミー・タム氏も、同社を退社した。 英公共放送「BBC」のカリシュマ・ヴァスワニ・アジア経済担当編委員は、「キャセイの話は、香港でビジネスをする企業が、中国が何を欲するかを勘案しないとどうなるかを示す教訓といえる」と指摘する(BBC NEWS JAPAN「香港デモ、苦しむキャセイ航空 『会社が恐怖に包まれている』」)。だが、静観を貫く財界は内心、中国共産党に対する強い不満を募らせているという。なにか、起爆剤となることが起きれば、財界は動くかもしれない』、楽観的に過ぎる印象を受ける。やはり香港の存在意義は、中国の出先であって、それを抜きにした存在意義は考え難いからだ、
・『香港財界を動かす可能性を感じさせる米議会の「香港人権・民主主義法案」  そして、財界を動かす可能性を感じさせるのが、米議会が可決した「香港人権・民主主義法案」だ。現在、米中貿易交渉が佳境を迎えている(第211回)。ドナルド・トランプ米大統領は法案に署名するかどうか、態度を明らかにしていない。 だが、仮にトランプ大統領が拒否権を発動しても、上下両院の3分の2が賛成すればこれを覆すことができる。この法案はすでに、ほぼ全会一致で可決されており、大統領が署名しなかった場合でも、問題なく成立するとみられる。 香港人権・民主主義法は、米国務省が年1回、香港の「一国二制度」が保証され、香港の「非常に高度な自治」が維持されているかを確認し、米国が香港に通商上の優遇措置という「特別な地位」を付与するのが妥当かどうかを判断するものだ。 もし、香港で人権侵害などが起きた場合、その責任者には米国の入国禁止や資産凍結などの制裁が科せられる。そして、通商上の優遇措置が撤廃されれば、香港は中国本土の都市と同じ扱いを受けることになる。 これは、ただでさえ不調に陥っている中国経済に大打撃を与えることになると指摘されている。中国では、資本取引が全面的には自由化されていない。中国の対内・対外直接投資の6〜7割は香港経由である。また、08年から19年7月まで、中国企業が香港市場で株式新規上場し資金調達した金額は1538億ドルで、中国市場全体の3148億ドルの約半分である。さらに、中国企業が18年に海外市場で行ったドル建て起債1659億ドルの33%を、香港の債券市場が占めている(岡田充「米中代理戦争と化した香港デモ。アメリカの『香港人権法』は諸刃の刃になるか」Business Insider Japan )。 中国経済における香港の重要度は以前と比べると下がっているといわれるが、いまだに多くの部分を依存しているといえる。もちろん、香港への優遇措置見直しは、米国経済にもダメージを与えるものだ。 だが、貿易戦争は双方が不利益を受けるものであり、問題はどちらにより大きな損害があるかだ。米中貿易戦争でより大きなダメージを中国が受けたように、香港が中国本土と同じ扱いとなれば、中国がより深刻な損害を受けることになると考えられる。 区議会選が終われば、中国共産党は再び全国人民代表大会常務委員会が前面に出て香港への関与の姿勢を強めるとみられていた。デモの鎮圧には、より強硬な手段が講じられるとの懸念も出ていた。だが、米国が香港人権・民主主義法を発動するかどうかは、中国共産党に対する極めて強いけん制となるだろう。 そして、香港人権・民主主義法が施行されれば、香港の財界は中国共産党に従属する「親中派」のスタンスを変えざるを得なくなるかもしれない。 香港に対する優遇措置が維持されなければ、民間企業はビジネスを続けることができない。しかし、前述のキャセイパシフィック航空のように、中国共産党からの圧力に屈する姿を米国に見せてしまうと、一国二制度は維持されていないとみなされて、米国が法律を発動する懸念が出てしまう。財界もまた、従来通り「親中派」のままでいいのか、難しい判断を迫られることになる可能性がある。 要するに、香港政庁・中国共産党と民主派の間で膠着状態が続く香港の抗議活動を動かせるとすれば、それは香港財界と米国ということになる。この連載では、次のように論じたことがある(第223回・P6)。14年の「雨傘運動」は、行政長官選挙の選挙委員会を親中派が占めて、民主派は立候補すらできない制度の理不尽さに反発して起きた。だが、香港財界が民主派を支持すると決断すれば、雨傘運動の若者たちが目指したものの大部分が、長い戦いの末に実現することになる。このことをあらためて強く主張したい。香港財界には、一国二制度を守るために、歴史的な決断を下してもらいたい』、トランプ大統領は『香港人権法』に一応署名はしたようだが、中国政府にもかなり気を使っており、対決は避けたいようだ。ただ、『香港人権法』が財界の考え方に多少の変化をもたらす可能性はありそうだ。

次に、政治学者の舛添 要一氏が11月30日付けJBPressに掲載した「香香港情勢を甘く見た中国、巻き返しに出る可能性も 習近平は香港の中国離れを絶対に容認しない」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58432
・『11月24日に投票が行われた香港の区議会議員選挙は、民主派の圧勝という予想外の結果となり、世界中に大きな衝撃を与えた。とくに、親中派の勝利を信じていた習近平政権には、大きな誤算となった。 さらに、19日に米議会を通過していた「香港人権・民主主義法案」にトランプ大統領が署名し、米中間に新たな火種が生まれた』、あの舛添 要一氏が何を主張するのだろう。
・『次の焦点は行政長官選挙と立法会選挙  香港政府が、4月に、容疑者を中国に引き渡すことを可能にする逃亡犯条例改正案を立法会に提案し、これに抗議する市民が街頭に出たのが6月である。デモに参加する人々の数は増えていき、6月16日には200万人にも達した。民主派は、①条例改正案の撤回に加え、②デモの「暴動」認定の取り消し、③警察の暴力に対する独立調査委員会の設置、④抗議活動で拘束された者の釈放、⑤行政長官選挙の民主化の5項目要求を掲げている。 その後もデモは続き、遂に9月4日、林鄭月娥行政長官は条例改正案を正式に撤回した。しかし、民主化を求める市民の抗議活動は続いていった。10月5日には、「覆面禁止規則」が施行され、それがまたデモを過激化させるという悪循環になり、11月8日には、現場で負傷した男子大学生が死亡した。その3日後の11日には、警官の発砲で男子学生が重態になり、抗議活動が毎日続くようになり、17日には香港理工大学を学生が占拠して警官隊と攻防を繰り返す事態に発展した。 このような中で、区議会議員選挙のキャンペーンが10月18日から始まり、11月24日に投票が行われたわけだ。選挙期間中には、民主派、親中派双方の候補者や選挙事務所が襲撃されるなど混乱が続いた。このため、選挙が予定通り行えるかどうか不安視されたほどであった。 区議会議員選挙は、親中派の特権階級による間接選挙である行政長官選挙と違って、市民が直接投票する普通選挙であり、民意が反映される。18区議会の452議席を選ぶが、それ以外に、親中派に27議席を割り当てる仕組みとなっている。 今回は、過去最多の約1100人が立候補し、投票率も71.2%と過去最高であった。そして結果は、民主派が388議席で約85%の議席を獲得する圧勝であった。親中派は改選前には7割を占めていたが、59議席と惨敗した。その他は5議席である。2015年の前回の選挙(総議席数は431)では、民主派が120議席、親中派が293議席、その他が18議席だったので、地滑り的な大変動が起こったと言ってよい。まさに民主化を求める市民の声が反映されたのである。 行政権のトップと国会(立法会)を選ぶ選挙は普通選挙ではないために、今回の区議会議員選挙の結果がなおさら重要になる』、「地滑り的な大変動」には前述の通り小選挙区制が影響している。
・『惨敗で浮上する立法会選挙の仕組み変更の可能性  行政長官の選挙は、1200人の選挙委員による間接選挙で、内訳は、業界団体別の選挙で選ばれた926人、立法会枠70人、区議枠117人、中国全人代・人民政治協商会議枠が87人となっている。今回の区議選の結果で、117人枠の大半を民主派が占めることになるが、これは選挙委員全体のわずか1割程度であり、業界団体の中の民主派を合わせても、過半数にはほど遠い。しかし、何の影響もないわけではない。 また、立法会の選挙は、定数70議席のうち、比例代表による直接選挙が35議席、業界団体別の選挙が29議席、区議枠が6議席である。民主派は現在25議席であるが、次回選挙でどれくらい上積みできるかが重要である。 区議会議員選挙は小選挙区であり、死票が多くなる。民主派は議席で8割を超えたが、得票率で見ると57%であり、親中派が41%である。立法会の直接選挙は比例代表制であるので、区議選と同じ得票率ならば、民主派が20議席、親中派が14議席となる。区議枠の5議席を確保すると、民主派議席は25議席。そこで、過半数にはあと10議席以上必要で、親中派が占める業界枠29議席の中から10議席をもぎ取るのは困難である。 しかし、万が一、そのような事態になれば、習近平政権としては取り返しのつかないことになる。香港で制定される全ての法律が反中国的なものになってしまう危険性があるからである。 だからこそ中国は、今回の結果を驚愕の念をもって受け止めた。中国では、区議会議員選挙の結果に関する報道は一切ない。北京政府は、これまで通り親中派が勝つと確信していたようである。それは、デモ隊の暴力行為で経済活動を阻害され、不満がたまっている「サイレント・マジョリティ」は民主派に投票しないだろうという安心感があったからである。この楽観主義は、事態を正確に分析することに失敗したことを意味し、読みは完全に間違っていた。 そこで、習近平政権は、今後、立法会選挙の仕組みを変える可能性すらあり、香港の自治権を制限する方向に動く可能性がある。「一国二制度」は認めても、香港はあくまでも中国の一部であり、北京に刃向かうことは許さないという立場である』、「行政長官の選挙は、1200人の選挙委員・・・中国全人代・人民政治協商会議枠が87人」、中国本土側が「87人」も確保されているとは初めて知った。「北京政府は、これまで通り親中派が勝つと確信」、香港には中国側の情報工作員が多数いる筈だが、彼らは「北京政府」を忖度して、不都合な事実を伝えるのをためらったのかも知れない。
・『ポピュリズム横行する民主主義と「幸福な監視社会」中国の相克  そのような北京政府の前に立ち塞がっているのが、国際社会、とりわけアメリカである。中国の監視社会の酷さは、ウイグルへの弾圧が典型であるが、習近平による非公開演説や収容者の家族との想定問答集などの内部文書を11月16日にニューヨークタイムズが入手して公開した。その中で、習近平が「容赦するな」と喝破したことが暴露されている。これは「幸福な監視社会」が牙を剝くと、どのような弾圧社会になるかを示しており、世界に衝撃を与えた。 そして、アメリカ議会では、10月15日に下院で可決された「香港人権・民主主義法案」が、上院でも11月19日に全会一致で可決された。この法律は、香港で「一国二制度」、つまり「高度な自治」が機能しているかどうかを毎年検証し、議会に報告することをアメリカ政府に義務づけるものである。もし人権侵害などが確認されれば、香港への優遇措置を見直すことが可能となり、民主派を支援する内容となっている。 この米議会の決定に対して、中国は内政干渉だとして猛反発し、対抗措置をとることを明らかにした。そこで焦点になっていたのが、法案に必要な署名にトランプ大統領が応じるか否かであった。一般的に、大統領の選択肢としては、①拒否権を発動する、②10日間何もせずに自然成立を待つ、③署名するという三つがあるが、①の場合は、両院で3分の2の多数で再可決されることは確実なので、結果的には意味がない。ただ、中国に対しては恩を売ったことになる。しかし、米国内で人権を無視する大統領という悪評が立つことになる。 今のトランプは再選されるために役立つことは何でもやる、再選にマイナスになることは何もやらないという一貫した姿勢である。結局、27日には、「香港人権・民主主義法案」に署名し、その結果、法案は成立した。これに対して、中国は、「重大な内政干渉だ」として、報復措置をとることを示唆した。 署名後に、トランプは、「中国や香港の指導者が見解の違いを友好的に乗り越え、長期的な平和と繁栄につなげるよう願う」という声明を出し、「この法律には大統領の外交政策における憲法上の権限行使を妨げる条項がある、私の政権は外交関係において、この法律の条項が大統領権限と矛盾しないようにする」と述べて、中国への一定の配慮をのぞかせている。 しかし、交渉が進む米中貿易協議への悪影響も懸念される。中国が態度を硬化させ、アメリカとの合意に達しなければ、12月15日には、アメリカは中国からの輸入品に新たに関税を上乗せすることになる。対象にはスマートフォンやパソコンが含まれており、米中双方に大きな影響が出る。そうなれば、「交渉上手」だと自負するトランプの人気にも陰りが見えてこよう。 習近平政権にとっては、香港や台湾を中国の不可分の領土として中国共産党の支配下に置くことが政策目標であり、その基礎が崩れるような事態は何としても避けたいのである。しかし、米中貿易摩擦をこれ以上に悪化させたくないので、アメリカを刺激しないように慎重に行動してきた。香港に直接介入しなかったのも、そのためである。 しかし、アメリカが法律まで制定して香港の行方について「内政干渉」するに及んで、北京政府としても何らかの対抗措置を考えざるをえなくなっている。それがどのようなものになるか、これから2週間の中国の動きを注目しなければならない。 世界の覇権をめぐる米中の争いで、軍事や経済については、中国が猛烈な勢いでアメリカに追いついている。問題は、民主主義という価値観について、どのような立場をとるかということである。世界中でポピュリズムの嵐が吹き荒れ、民主主義の統治能力が問われるなかで、「幸福な監視社会」を実現させた中国である。共産党の支配のほうが安定性を含め、統治が上手く機能しているのではないかという意見が世界中で力を持ち始めている。そのような状況で、香港で民主派が勢力を伸ばしていることは、政治制度が覇権争いの重要な柱であることを再認識させている』、「幸福な監視社会」という表現にはいささか違和感を感じる。監視社会であっても経済的成果を国民が享受しているという意味なのだろうが、「統治が上手く機能している」、もウィグルだけでなく、その他の地方でも頻発していると言われる抗議行動への弾圧などを見ると、大いに疑わしいのではなかろうか。いずれにしろ、今後の香港情勢も要注目のようだ。
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中国国内政治(その7)(すっぱ抜かれた悪行 新疆と香港を踏みにじる中国 NYTが内部文書をスクープ 徹底的な新疆弾圧を指示した習近平、中国・習近平「ウイグル人に容赦するな」極秘文書流出 衝撃の全貌) [世界情勢]

中国国内政治については、昨年8月27日に取上げた。1年以上経った今日は、(その7)(すっぱ抜かれた悪行 新疆と香港を踏みにじる中国 NYTが内部文書をスクープ 徹底的な新疆弾圧を指示した習近平、中国・習近平「ウイグル人に容赦するな」極秘文書流出 衝撃の全貌)である。

先ずは、元産経新聞北京特派員でフリージャナリストの福島 香織氏が本年11月21日付けJBPressに掲載した「すっぱ抜かれた悪行、新疆と香港を踏みにじる中国 NYTが内部文書をスクープ、徹底的な新疆弾圧を指示した習近平」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58326
・『ニューヨーク・タイムズが、中国・新疆(しんきょう)ウイグル自治区に関する内部文書24件403ページをすっぱ抜いたスクープは、これが本物なら、天安門事件の真相に迫った張良が持ち出した天安門文書に匹敵するジャーナリズムの快挙と言えるかもしれない。 「これが本物なら」とあえて言うのは、今のところ新疆ウイグル自治区当局および中国サイドは、この文書が捏造文書であると主張しているからだ。その可能性はゼロではない。というのも、これだけの大量の文書を手に入れるには、共産党中央のハイレベル関係者によるリークが考えられるのだが、特ダネを連発する記者ないしはメディアの信用を落とすために、わざとニセ文書をつかませる罠である、ということも考えられるからだ。 こういう中国のニセリークには多くのメディアが苦い経験を持っている。産経新聞が2011年7月に報じた「江沢民死去」の誤報は、中国当局がメディアを陥れるための偽情報に騙された1つの典型例だろう。 だが、私はこの内部文書を全文読んだわけではないが、一部公開されているものを読む限りでは、本物ではないか、と見ている。 「ラジオ・フリー・アジア」(米国の政府系ラジオ放送局)などの在米ウイグル人記者たちが共産党関係筋に取材して報道した内容と符合するし、私自身が体制内学者たちに聞いた習近平の新疆政策の背景なども、こうした新疆文書の内容と一致している(詳しくは拙著『ウイグル人に何が起きているのか』をお読みいただきたい)。 北海道大学教授が中国の古本屋で買い求めた国民党に関する歴史史料のような、カビの生えた文書ですら機密文書扱いされてスパイ容疑で逮捕されるのだから、新疆における現在進行形の政策に関する秘密文書の入手は非常に危険を伴う仕事であったはずだ。まずは命がけのスクープをものにしたニューヨーク・タイムズを讃えたい。そして、このスクープの意義と影響を考えたいと思う』、「中国のニセリーク」で「産経新聞」が引っかかったのは軽微な誤報に過ぎないが、今回のは影響が深刻なだけに「ニセリーク」の可能性は小さいのではなかろうか。
・『「一切の情けをかけるな」と習近平  まずニューヨーク・タイムズのスクープの内容を簡単におさらいしたい。 入手した24の文書は一部内容が重複するが、およそ200ページ分が習近平や指導者の内部演説、150ページ分がウイグル人に対する管理コントロールに関する指示と報告。さらに地方のイスラム教制限に関する言及がある。 これらの文書がどのように集められたのかは不明ながら、中国政府のこうしたウイグル弾圧に対して、内部ではかなりの不満があることがうかがえる。 中国最高指導部の政策制定プロセスは秘密とされ、とくに新疆のような資源が豊富で、パキスタンやアフガニスタンなど中央アジアと隣接する敏感な地域に対する政策決定プロセスは厳密に秘匿されてきた。この地域はムスリムの最大集中居住地域であり、言語体系から文化、価値観に至るまで中国共産党や漢族の価値観とは異なり、そういったことから差別され、また制限も課せられていた地域だ。 中国当局は国際社会に向けて、ウイグル人の強制収容施設について「職業教育訓練センターである」といういかにも慈善や福祉目的の施設のように説明しているが、文書の中では、現場の鎮圧を示す言葉や命令形表現が使われており、強制的な弾圧命令として現場官僚に通達されている。 例えば、ウイグル人留学生が夏休みに新疆の実家に帰ってきたとき、家に父母がおらず親戚も失踪、隣人たちも姿がない。みんな強制収容されていて、学生が当局の官僚に「家族はどこにいますか」と問い合わせてきたとする。そのとき、どう答えるべきか? といった模範解答も指示されている。「彼らは政府が建てた研修学校にいる」と答えるのが模範解答例だ。もし学生がさらに説明を求めたら「彼らは罪を犯したのではないが、学校から離れることはできない」と答える。さらに「もしもあなたが彼らを支持するのならば、それは彼らのためにも、あなたのためにも良いことだ」という言い方で、学生の答え方次第で家族の拘禁時間が短くなったり延長したりすることを伝えるよう指示されている。つまり恫喝だ。 父母の強制連行を学生に見られた場合、父母の学費を誰に支払ってもらえるのか学生が知りたがった場合、労働力を奪われ畑を耕す人間がいなくなったといわれた場合の模範解答もある。そして官僚に恨みを抱きそうな人間に対しては、恫喝を交えて、共産党の助けに感謝し、沈黙するように求めよと指示している』、キメ細かい想定問答には驚かされた。習近平指導部は本気のようだ。
・『また、習近平が官僚たちに向けて行ったとされる内部演説では、鎮圧を基本とすることを訴えていた。 2014年4月の習近平の新疆視察前の3月1日に、雲南省昆明駅などで「ウイグル人テロリスト」による大襲撃事件があり、150人以上が負傷、30人以上が死亡した。これを受けて習近平は「反テロ、反浸透、反分裂の闘争」は、専制機関を使い「一切の情けをかけるな」と指示していた。 さらに、2016年8月に陳全国が新疆ウイグル自治区の新書記に就任した後は、新疆における収容施設が急速に拡大した。陳全国は習近平の演説を官僚たちに伝えながら、その内容を徹底的に遂行するよう指示していた。 こうした徹底鎮圧指示が現地の数千人に及ぶ官僚幹部らの懐疑と抵抗にあったことも、文書から判明した。現地幹部たちは民族間の緊張を過激化させ、経済成長が扼殺されることを懸念したという。 これに対し陳全国は、こうした抵抗感を示す幹部を粛正し、その中には県レベルの指導幹部も含まれていたという。莎車県の指導幹部の王勇知に関する報告書が11ページおよび15ページ分あるが、彼は民族間対立を解消するために経済発展に力を入れる政策をとっており、それまでの評価は高かった。だが、陳全国時代以降は、全県で強制収容された2万人のムスリムのうち7000人をひそかに釈放していたことがばれ、「党中央の新疆政策に対する深刻な違反」で拘留、起訴され、権力剥奪ほか懲罰を受けたという』、「徹底鎮圧指示が現地の数千人に及ぶ官僚幹部らの懐疑と抵抗にあった」、日々、ウイグル人と対峙している現地幹部にすれば、本心では出来るだけ穏便に済ませたいのが人情だろう。
・『けっして善意ではない新疆政策の根本  また今の習近平政権の極めて過激なウイグル弾圧が政策として打ち出された背景に、2009年7月5日の「7.5ウルムチ騒乱」や2014年5月22日のウルムチ市の朝市襲撃事件が指摘されている。 「新疆独立派によるテロ」とされる朝市襲撃事件では、襲撃者が車2台で朝市に突っ込み、爆発物を投げつけ、襲撃者4人を含めて39人の死者が出た。この事件の前の4月30日にはウルムチ駅で爆発事件が起き、自爆した2人を含む3人が死亡、79人が負傷する事件が起きている。これは習近平が新疆を視察したタイミングであり、習近平暗殺の噂も囁かれた事件だ。この新彊視察旅行前の3月1日には雲南省昆明駅で、警官5人を含む34人が死亡した「ウイグル族過激派による暴力テロ事件」が発生していた。 こうした新疆における暴力事件を受けて、習近平は新疆政策に関する4つの秘密演説を展開する。その中で習近平はウイグル人の大規模拘束を直接命令はしていないが、「専制」を手段として、新疆からイスラム過激派分子を徹底排除することを呼び掛けている。 また習近平は、経済発展を通じて新疆の不安定さを抑制していくという以前の中国指導者のやり方について、「それでは不十分だ」「イデオロギー上の問題を解決して、新疆地域のムスリム少数民族の思想を作り変える努力を展開せよ」と指示。これは2009年の7.5ウルムチ騒乱以降、胡錦濤政権が展開した経済優先の新疆融和政策を批判している内容といえる。 胡錦濤政権は、7.5ウルムチ騒乱の原因は当時の自治区書記の王楽泉の腐敗政治によるウイグル人搾取に対する不満と恨みがあると見た。そこで、ウルムチ騒乱を鎮圧したのち、経済発展によって民族間の格差と不満を解消する比較的融和的な政策を打ち出した。だが、習近平はこれを生ぬるいと批判したのである。 自分の前の指導者の政治が失敗だったことを証明することで自分の政策の正しさをアピールするやり方は、中国に限らず政治家の常套手段だが、習近平の場合、胡錦濤の新疆政策を否定するために必要以上に強硬政策に転じたともいえそうだ。 ニューヨーク・タイムズによると、2014年ごろから登場した再教育施設と称する強制収容施設は、当初は数十人から数百人のウイグル人を収容する小型施設が多かった。施設の目的は、イスラム教への忠誠を捨てさせ、共産党への感謝の情を植え付けることだった。だが、2016年8月に陳全国が書記になると、数週間後に地方官僚に召集をかけて、習近平の秘密講話を引用しながら、新たな安全コントロール措置と強制収容所の拡大を命じたのだという。 このスクープは、共産党が現在行っている新疆政策がけっして、国際社会に対し説明しているようなウイグル人の再就職支援といった「善意」の目的ではなく、また建前で謳う多民族国家や人類運命共同体といった理想とは程遠い、「専制」による民族・宗教・イデオロギー弾圧であり、支配管理強化であることの明確な証拠となるものと言えるだろう。今、新疆で起きている問題は、間違いなく人道の問題なのだということを証明する内部資料という意味で、このスクープの意義と影響は大きい』、「2014年4月の習近平の新疆視察前」や後にテロ事件がこれだけ頻発していたとは、改めて驚かされた。「習近平の場合、胡錦濤の新疆政策を否定するために必要以上に強硬政策に転じたともいえそうだ」、「建前で謳う多民族国家や人類運命共同体といった理想とは程遠い、「専制」による民族・宗教・イデオロギー弾圧であり、支配管理強化であることの明確な証拠となるもの」、いつまでこんな乱暴な強圧政策を続けるのだろう。アフガニスタンにロシアや米国が手を焼いた挙句、支配できなかったことを無視しているのだろうか。
・『つながっているウイグル問題と香港問題  このスクープ記事を書いたニューヨーク・タイムズの記者は香港駐在で、このニュースも「香港発」となっているのは、なんとも言えない気分だ。というのも、今、香港はまさに“新疆化”している状況だからだ。 若者の中国専制に対する命がけの抵抗を中国は「テロ」と表現し、その弾圧を正当化しようとし、さらには、数千人の若者を「暴動」に関与したとして手当たり次第に拘束し、どこに収容されているのか、ケガの手当てがされているのか、弁護士にも家族にもわからないという人が多々存在する。 香港の人権団体・本土研究社によれば、深圳に近い山間部に、「反テロ訓練センター」の建設予定があり、19億香港ドルの予算が計上されているという。この施設は新疆ウイグル自治区のテロ対策施設を参考にしており、実際に香港警察は2011年から毎年エリート警官を7人ずつ新疆ウイグル自治区のテロ対策施設での研修に派遣しているそうだ。訓練センターには新疆と同じく反テロ再教育施設のような洗脳施設も併設されるのではないかとの話も出ている。 ウイグル人の中にISのテロに参与する人間がおり、香港のデモ参加者の中にも破壊活動や血生臭い暴力を振るう人はいる、というのは事実だ。だが、それを理由に、ウイグル人全員、香港人全員が無差別に捕まえられ、拷問や虐待が行われていることを国際社会は座視してはいけないだろう。また、どのような犯罪者にも最低限の人権があり、公正な司法プロセスに従って裁かれるのが現代文明国家を名乗る最低の条件だ。中国がその最低限の条件・法治を備えない限り、中国のテロ対策、暴徒鎮圧という建前での暴力的権力の行使に、一分の説得力もない。 ウイグル問題、香港問題はつながっている。それが台湾や南シナ海周辺国家や、あるいは日本に波及する可能性が、絶対ないとは言い切れない。だからこそ、私はウイグルや香港の問題に関心を持ち続けてほしいと繰り返し訴えるのである』、説得力ある主張で、その通りだ。

次に、地政学・戦略学研究者の奥山 真司氏が11月22日付け現代ビジネスに掲載した「中国・習近平「ウイグル人に容赦するな」極秘文書流出、衝撃の全貌」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68571
・『NYT紙の超弩級スクープ  アメリカの有力紙であるニューヨーク・タイムズ紙から、世界を揺るがすような衝撃的なニュースが発表された。11月16日、中国政府の高官によるリークでもたらされた膨大な「内部文書」の存在をネット上で報じたのだ。 この文書によると、北京政府は新疆ウイグル自治区で「職業訓練を行っている」と主張する施設にウイグル人たちを強制的に収容し、外部と通信が遮断された環境の中で徹底した思想教育を行っているという。 また、2014年に習近平国家主席が非公開で行った演説の内容にも触れており、ウイグル人の取締りについて「容赦するな」という指示を出していたことや、ウイグル人の弾圧をめぐって共産党内からも反発する声が出ているといった事実を伝えている。 さらに衝撃的なのは、「強制収容所」と言われる施設にウイグル人を収容する際、残された家族にどう対応すべきかについても、北京政府が具体的なマニュアルを作成しているということだ。 まずここでお断りしておきたいのだが、筆者は中国を専門に研究している人間ではない。したがって、中国側の詳しい事情の解説や分析については、そちらを専門とするジャーナリストや研究者の方々におまかせするつもりだ。 本稿では、現在進行中の「米中冷戦」とも言えるグローバルな世界政治の戦略状況の文脈の中で、ニューヨーク・タイムズ紙の記事を分析しつつ、最終的には、日本が本件をどう理解し、どう行動すべきかについても簡潔に提言してみたい』、第一の記事でも紹介したが、これはより詳細なものらしい。「ウイグル人の弾圧をめぐって共産党内からも反発する声が出ている」、これを弾圧路線で押し切った習近平国家主席はかなり強引なようだ。
・『北京政府に不満を抱く幹部のリークで  この内部文書の分析記事は、2人の記者の共著となっている。ともに中国取材のベテランだ。 1人目はオーストラリア出身の元ロイター通信の記者で、中国に20年の滞在歴があるクリス・バックリー記者。もう1人は、同紙の香港担当のオースティン・ラムジー記者である。 当記事は香港発のものだが、ラムジー記者はこの記事をまとめるために、しばらくの間、香港のデモ活動に関する取材と報道を停止していたようだ。 記事そのものは印刷すると40ページ前後にもなる膨大なものであり、あまりに長いため、ラムジー記者による「5つのポイント」と題されたまとめ的な記事も同日に発表されている。 記事のもととなった内部文書は、北京政府のやり方に不満を抱いた中国共産党の幹部によって、当然ながら匿名でもたらされたものだという。文書は24本、全体では403ページにわたる膨大なものであり、同紙のネット記事では、原書の一部が画像化され公開されている』、「北京政府のやり方に不満を抱いた中国共産党の幹部によって、当然ながら匿名でもたらされたもの」、あり得そうな話だ。
・『家族が「強制収容」に気づいたら…  記事はまず、新疆ウイグル自治区から中国国内の別の地域の大学や、海外留学などに出ている学生が、休暇期間に自宅に帰り、家族の誰かが強制収容所に収容されていることに気づくというエピソードから始まる。 そして、そのような「残された家族」たちからの怒りの問いかけに、同地区政府がどのように対応すべきかについて、マニュアルが存在することが記される。 さらにはそのマニュアルが、北京政府が過去3年間に同地区に設けてきた「職業訓練所」と称する強制収容所や、北京政府が唱える「対テロ作戦」の実態を暴く、中国共産党の歴史でも外部に漏洩することが非常に稀な内部文書の一部であることが明らかにされるのだ。 記事では、内部文書が暴露した「衝撃の事実」として、4つの項目が挙げられている。 (1)習近平は、2014年に政情不安にあった新疆ウイグル自治区を訪問して以降、「容赦ない」統治方針に転換したこと。 (2)外国でのテロ事件の頻発や、米国のアフガニスタンからの兵力撤退によって、北京の指導層がイスラム教徒の脅威を懸念し、徹底弾圧に踏み切ったこと。 (3)国際的にもニュースになっている同地区の強制収容所の建設は、2016年8月に同地区のトップとなった陳全国(Chen Quanguo)が、習近平が内部向けに行った演説を背景として正当化することにより、急激に進められたこと。 (4)ところがこの弾圧は、ウイグル人と漢族の民族対立の激化や、同地区の経済成長の鈍化を恐れた現地の共産党幹部たちから抵抗に遭っており、中には収容所から「囚人」を7000人も逃したことが発覚して処罰された者もいたこと。 いずれも注目すべきことであるが、私は以下の5つの論点が国際的な戦略状況に大きな示唆や影響をもっていると感じる。それぞれ順に説明していこう』、「外国でのテロ事件の頻発や、米国のアフガニスタンからの兵力撤退によって、北京の指導層がイスラム教徒の脅威を懸念し、徹底弾圧に踏み切った」、融和ではなく、「徹底弾圧」とは最終的にはどうするつもりなのだろう。
・『「むしろ共産党に感謝せよ」  この文書においてまず注目すべきは、ウイグル人などイスラム系少数民族に対する弾圧の、あからさまかつ具体的な手段が紹介されていることだ。 収容されたあとに残された家族への対応マニュアルについては、すでに触れた通りだが、その理由を問いかけてくる家族に対しては、 「あなたの家族は収容されたが、いずれあなたも政府のこの措置に賛成し、支持するようになるはずだ」「その家族本人だけでなく、あなた自身にも良い結果をもたらすものだ」「あなたの家族は無料で高等教育を受けているのだ。むしろ共産党に感謝せよ」といった、自由主義社会の価値基準では信じられないような受け答えが、「模範解答」として示されている。 また、新疆ウイグル自治区の住民の中でも特に頭脳明晰で優秀な若者は、伝統的に共産党の指示によって中国国内の別の大学などに送られ、後に「ウイグル人のエリート」として同自治区の共産党に忠実な公務員や教員になることを期待されていることや、こうしたエリートたちが、近年はSNSなどを含めて厳しい監視対象下に置かれていることが文書から判明している。 たとえば、彼らエリートが「WeChatやWeiboをはじめとするSNSに間違った意見を書き込むこと」については、彼らの中国国内における社会的つながりの広さゆえに「その意見をつぶすことが難しくなる」と北京政府が危惧していることが記されている』、確かに「ウイグル人のエリート」の扱いには気を使わざるを得ないだろう。
・『家族を人質にとる  さらに、ウイグル人に対する想定問答の中には、 「あなたの行動が模範的なものであれば、(訓練施設に入っている)親族の評価も高まるが、その逆の場合には悪影響が出る」というあからさまな脅しと、背景にいわゆる「信用スコア」による評価システムがあることを匂わせるようなものも含まれているという。 このような「親族を人質にとる」という方法は、やや形は違うが、反北京的な民主化運動を展開したり、それを支持するような意見をSNS上に書きこんだ、海外留学中の漢族の学生たちに対しても(そしてもちろん、その他の少数民族出身の中国人にも)行われている。 これは俗に「タコ理論」(Kite Theory)と呼ばれるものである。オーストラリアにおける北京の浸透工作を暴き、同国でベストセラーとなった『サイレント・インベージョン』の著者であるチャールズスタート大学のクライブ・ハミルトン教授によれば、〈中国は収監したいと思う人間を強制送還するための独自の手段を持っている。そして「自発的」に帰国するよう促すための方策があるのだ……逃亡犯は凧のようなものであり、身体は海外にいても、その糸は中国国内とつながっている。[中国警察]は家族や友人を通じて常に彼らを発見することができる〉(p.51) というのだ。これは親族を拘束したり、その身の危険を匂わせることによる「自発的な引き戻し」の例に関する指摘だが、似たようなケースはカナダやアメリカでもニュースになっている。 より監視の厳しい国内で、北京が同じようなことをやっていないと考えるのは難しいだろう』、「家族を人質にとる」、汚い手だが、中国人のように家族を大切にする国では有効な手段だろう。
・『習近平が直接指示していた  2つ目の論点は、習近平が新疆ウイグル自治区の現状についてかなりの知識を持って語り、自ら弾圧政策を決定して指示を出していたことが、今回の報道で明白になった点だ。 報じられた文書の中身は、習近平が非公開の場で行った内部向けの「秘密演説」の内容がほぼ200ページと、全体のおよそ半分を占めている。しかも、公的には絶対に言えないような、かなり生々しい指示を現地政府の職員や官僚たちに対して伝えていたことが見てとれる。 たとえばここで興味深いのは、2014年に行われた、初めてにして唯一の習近平の「現地入り」の様子が示されていることだ。 文書によると、習近平は2014年の4月に3泊4日のスケジュールで新疆ウイグル自治区を訪れているのだが、その滞在の最終日である30日には、ウルムチ郊外の駅でウイグル人の武闘派2人が自爆テロを起こして80人の負傷者と1人の死者が出ている。 また、その約1ヵ月後にはウルムチの野菜市場で爆弾テロが起こっており、94人の負傷者と少なくとも39人の死者が出ているのだ。 習近平は、このような同地区で頻発するテロと治安状態の悪化を踏まえて、メディアには取り上げられなかった「非公開スピーチ」を数多く行っていたことが文書の中から見てとれる。 その中には、今回の記事で話題になった「徹底的に無慈悲に抑え込め」という言葉もあり、「独裁のツールを使って、新疆ウイグル自治区のイスラム教過激派を根絶せよ」と指示していたという記述もある。  スピーチの内容からは、習近平自身がウイグルの独立派の動きやその歴史について(北京政府の公式見解そのものであるが)かなり詳しい知識をもっていることがうかがえる。 ここから言えるのは、収容所を次々と建てた現地担当者こそ2016年8月にチベットから移ってきた陳全国(Chen Quanguo)ではあるが、方針転換を指示したのは、習近平本人であったということだ。 後世において、この恐ろしい人権侵害の実態が非難されることになるとすれば、その責任を負っているのはまさに習近平その人であることが、今回の報道によって証明されるだろう』、「独裁のツールを使って、新疆ウイグル自治区のイスラム教過激派を根絶せよ」、との習近平の指示は正気とは思えない。
・『「ソ連の統治は生ぬるかった」  3つ目の論点は、イスラム教過激主義を弾圧するための手段として、習近平が新疆ウイグル自治区の経済成長を諦めたという点だ。 たとえば、この文書に収録されている演説によると、習近平は「ソ連崩壊」を自らの統治の教訓としており、一言でいえば、「ソ連の統治はイデオロギー的に甘く、リーダーたちも生ぬるかった」と見ているという。 そのため、習近平は中国共産党の支配に対するあらゆる挑戦を排除することに集中しており、いわゆる「人権派」を積極的に逮捕し、新疆ウイグル自治区では民心掌握の基礎である「経済発展」さえも民族分離主義を助長するおそれがあるとして、経済発展よりも現地人の再教育・監視強化に動いたという。 文書からは、これに対して現地政府官僚たちから「経済発展を必要としている現地の実情を見ていない」と相当の不満が表明されたことがうかがえる。 反発した共産党幹部の中には、強制収容所から7000人もの囚人を逃す者も現れたことは、すでに述べた通りである。 ただ、こうした反対派の動機も日本の価値観からは微妙に離れており、強制収容所に若者が収容されてしまうと(実際は老人も多く収容されているらしいのだが)労働人口が減り、経済活動が制限される結果、自分たち幹部が賄賂を受け取ることができなくなり、党における出世が遅れてしまう、という懸念が大きいのだという。 つまり、ウイグル人を助けた動機は人道的なものではなく、あくまでも自分の出世のためであるという点は特筆すべきだろう』、「新疆ウイグル自治区では民心掌握の基礎である「経済発展」さえも民族分離主義を助長するおそれがあるとして、経済発展よりも現地人の再教育・監視強化に動いた」、驚くほどの徹底ぶりだ。
・『「経済発展させてもロクなことがない」  習近平の方針転換は、前任者の温家宝、さらには自身の父である習仲勲がとってきた、少数民族自治区に対する経済発展を通じた融和・発展政策から、大きな転換を図ったものとして注目すべきであろう。 このような「権力基盤を固めるためには経済発展を捨て、警察力を増強して監視体制を強化すればよい」という政策の歴史的先例として有名なのが、中南米のハイチで独裁体制を敷き、親子そろって30年以上統治してきたデュヴァリエ大統領(在任1957-71年)だ。 彼は政権につくと、すぐに開発政策をゼロにして国民の大半が貧困にとどまるようにしただけでなく、私設の警察組織である「トントン・マクート(現地語で「麻袋おじさん」の意)」を使って政敵を追い落とし、国民を強い監視下に置くことによって長期政権を実現した。 このような「経済発展よりも監視強化」という独裁者の技術については、習近平も実によく理解しているようで、文書の中には「冷戦で最初にソ連圏から離れた国々は、経済的に豊かであった」との記述もある。 その実例として、習近平はベルリンの壁を最初に崩壊させた東ドイツやバルト三国、そして比較的豊かだったが分裂して後に内戦に至った、ユーゴスラビアなどの例を挙げている。 つまりこの文書の内容が正しければ、習近平は「ウイグル人を経済的に発展させてもロクな結果にはつながらない。今後は経済的に締め付け、監視を強化すべきだ」と考えているということになる。 ただし、ニューヨーク・タイムズ紙の記事のコメント欄を見ると、「現実に、中国はいまだに新疆ウイグル自治区を含む西部への投資を続けている」とする意見があり、この点をもって「この記事はフェイクニュースだ!」という指摘も出ていることは念のため明記しておくべきかもしれない』、「ハイチで独裁体制を敷き、親子そろって30年以上統治」、最終的には軍部クーデターで終止符を打ったようだ。ハイチより民度が遥かに高い中国では独裁体制の命は短い筈だ。
・『イスラム教を「病気」扱い  4つ目に触れておくべき論点は、北京政府がイスラム教に触れ過激化した人間を「病気」として扱っており、それを「治療」できると考えている点である。 宗教や思想を「病気」(原文では「病毒」)として扱うことは(建前であっても)多文化主義を奉じる西洋諸国においては信じがたい、受け入れられない考え方であるが、習近平を筆頭とする中国共産党体制では、この考え方はマニュアルのレベルまで落とし込まれ徹底されている。 もちろん、このような強制収容所での「再教育」がどこまで効果のあるものなのかは誰にもわからない。だが少なくとも中国共産党には「信仰を教育(洗脳)によって是正できる」という考え方が実際にあり、かつそれは十分正当化できるものだと考えられているようだ』、恐ろしい思い込みだ。
・『「アメリカと同じことをしているだけ」  5つ目の論点は、新疆ウイグル自治区の統治に関して、習近平やその周辺がアメリカをモデルとしている点だ。 とりわけ注目すべきは、習近平が演説において、2001年に発生したいわゆる「9・11連続テロ事件」と、その後のアメリカ側の対応を参考にしたと言及していること、さらにはアメリカのアフガニスタン駐留や、シリアにおけるIS掃討作戦を非常に気にかけているということである。 日本人にとって中東は物理的・心理的な距離感があるが、国内に一定数のイスラム教徒を抱え、イスラム教国と国境を接している北京上層部にとっては、アフガニスタンやシリアの問題は、新疆ウイグル自治区の治安問題と直結した身近なものとして感じられることが、習近平の発言からもよくわかる。 しかも驚くのは、「アメリカがアフガニスタンで展開している兵力を撤退させると、その地域のイスラム過激派が勢力をつけ、そこに参加して過激主義に染まったウイグル人が出身地域に戻り、分離・独立運動を焚きつけるのではないか」という懸念を習近平自身が抱いていたという点である。 要するに、習近平やその周辺の指導部の中では「われわれのやっていることは、アメリカのやっていることと同じ」というロジックなのだ。 「自分たちは中国政府のような人権蹂躙はしていない」と考えたいアメリカ人にとって、このようなロジックが受け入れがたいことは、容易に想像がつく。 以上、今回の報道の「5つの特徴」を紹介してきたが、とくにこの第4・第5の論点は、西欧諸国、とりわけアメリカのリベラルな思想を持つ人々にとっては、身の毛のよだつほどの嫌悪感を引き起こすものであるということは重ねて指摘しておきたい。 それほどまでに、アメリカ社会と中国社会の「世界観」や「価値観」は異なるのだ』、こんなことでは、既にこじれた米中通商問題に、人権問題までが絡んで解決はますます遠のく懸念が強い。
・『「第二のホロコースト」という声も  ニューヨーク・タイムズ紙の記事については、日本ではまだ新聞各紙が簡潔に触れた程度で反応が薄いが、本国アメリカでは、当然ながら実に大きな反響を巻き起こしており、本稿を執筆している20日の時点で記事そのものに400件近いコメントが寄せられている。 また、ライバル紙でもあるワシントン・ポスト紙も、その2日後となる18日にはエリザベス・ウォーレン民主党大統領選候補や識者、さらには専門家たちが本件についてツイッター上に書き込んだものをまとめた記事を掲載している。 中にはこれを「第二のホロコーストだ」として、「世界の人権派よ立ち上がれ」と訴えるメッセージも見てとれる。 冒頭に述べたように、今回の記事は、対中政策ではそれまで中国に甘いと言われてきた米国のリベラル側メディアが、中国にかなり批判的になっていることを再び証明したものといえる。 ちなみに、ニューヨーク・タイムズ紙は2012年に胡錦濤の一族の蓄財ネットワークについての調査記事を書いて北京政府に嫌われており、同社の記者の入国ビザ発給を拒否されるなど、北京とは犬猿の仲であり、これが結果的に今回のリーク記事の発表につながったことは容易に想像がつく。 もちろんニューヨーク・タイムズ紙自身は、トランプ大統領からロシア疑惑の報道について「フェイク・ニュース」と何度も決めつけられているわけだが、とりわけ「対北京」という点においては、トランプ政権と歩調をあわせた動きを見せている点は留意しておくべきだ。 非難された側である北京の反応としては、日本の外務省にあたる外交部の報道官が、記者からこの記事に関する質問を受け日本はて「フェイク・ニュースだ」と断定し、その時の様子を国営メディアである「環球時報」(Global Times)が英語記事の中で引用している』、「それまで中国に甘いと言われてきた米国のリベラル側メディアが、中国にかなり批判的になっていることを再び証明したもの」、中国は米国情勢の変化をつぶさに観察している筈だが、こと人権や政治体制の問題では、絶対に妥協しないようだ。
・『日本は何をすべきか?  今後の展望についてであるが、文書の中にもあるとおり、習近平は2014年から始めた今回の弾圧について「海外の批判を無視せよ」と命じている。残念ながら、「ウイグル問題は国内問題である」として、引き続き厳しい締付けを行っていくと思われる。 さらに、北京政府は現在継続している香港の民主化デモに関しても、香港警察を使って厳しい締付けを行っている。北京においては、この2つの案件は「分離独立派の鎮圧」や「対テロ対策」という意味合いにおいてつながっているという認識が持たれている可能性もある。 その点において、香港のデモに参加している学生たちが今回のものを含むウイグルに関する一連の報道を受け、「ウイグルのように弾圧されて世界から忘れ去られたくない」と発言しているのは興味深いと言えよう。 では、これらを踏まえて日本はどうすべきか。 ウイグル人への弾圧は、世界的にみても歴史に残る人権弾圧・人権侵害であるとして、日本政府が声を上げるべきであることは間違いない。 ところが安倍総理率いる日本政府は、習近平の国賓待遇での訪日が来年に控えていることもあり、今回の記事から推測されるような中国の人権侵害については「中国の国内問題である」として、何か特別に発言をするとは思えない。 西側諸国の社会の一員である日本が、倫理的・道義的な観点からできることはただ一つ──日本のメディアがこの問題をさらに報じ、取り上げ続けることだ。 日本の世論の中で、この隣国の「恐るべき人権侵害」の実態が広く知られるようになれば、たとえば将来日本のトップが中国側と何らかの交渉をする時に、 「うちの国民(とメディア)が、あなたの国の人権問題で騒ぎますので」と一言述べることによって、相手に圧力をかけるための「外交カード」の一枚となり得るからだ』、「日本のメディア」には中国に忖度することなく、大いに頑張ってもらいたいものだ。
いずれにしろ、習近平の思い上がった姿勢は、米国だけでなく、近隣諸国に脅威を与え、長い目では中国の国益に反する結果を招くこととなり、中国共産党内の反習近平派が力を増す可能性もあるのではなかろうか。、
タグ:ニューヨーク・タイムズ JBPRESS 現代ビジネス 中国国内政治 奥山 真司 福島 香織 (その7)(すっぱ抜かれた悪行 新疆と香港を踏みにじる中国 NYTが内部文書をスクープ 徹底的な新疆弾圧を指示した習近平、中国・習近平「ウイグル人に容赦するな」極秘文書流出 衝撃の全貌) 「すっぱ抜かれた悪行、新疆と香港を踏みにじる中国 NYTが内部文書をスクープ、徹底的な新疆弾圧を指示した習近平」 新疆(しんきょう)ウイグル自治区に関する内部文書24件403ページをすっぱ抜いたスクープ 「一切の情けをかけるな」と習近平 鎮圧を基本とする 徹底鎮圧指示が現地の数千人に及ぶ官僚幹部らの懐疑と抵抗にあった けっして善意ではない新疆政策の根本 「7.5ウルムチ騒乱」 朝市襲撃事件 雲南省昆明駅 「ウイグル族過激派による暴力テロ事件」 新疆地域のムスリム少数民族の思想を作り変える努力を展開せよ」と指示 胡錦濤政権が展開した経済優先の新疆融和政策を批判 習近平の場合、胡錦濤の新疆政策を否定するために必要以上に強硬政策に転じたともいえそうだ つながっているウイグル問題と香港問題 「中国・習近平「ウイグル人に容赦するな」極秘文書流出、衝撃の全貌」 NYT紙の超弩級スクープ 中国政府の高官によるリーク ウイグル人の弾圧をめぐって共産党内からも反発する声が出ている 北京政府に不満を抱く幹部のリークで 家族が「強制収容」に気づいたら… 外国でのテロ事件の頻発や、米国のアフガニスタンからの兵力撤退によって、北京の指導層がイスラム教徒の脅威を懸念し、徹底弾圧に踏み切った 「むしろ共産党に感謝せよ」 ウイグル人のエリート 家族を人質にとる 習近平が直接指示していた 「ソ連の統治は生ぬるかった」 「経済発展させてもロクなことがない」 ハイチで独裁体制を敷き、親子そろって30年以上統治してきたデュヴァリエ大統領 イスラム教を「病気」扱い 中国共産党には「信仰を教育(洗脳)によって是正できる」という考え方が実際にあり、かつそれは十分正当化できるものだと考えられている 「アメリカと同じことをしているだけ」 「第二のホロコースト」という声も 日本は何をすべきか? 日本が、倫理的・道義的な観点からできることはただ一つ──日本のメディアがこの問題をさらに報じ、取り上げ続けること
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トランプ大統領(その43)(トランプ 突然の「グリーンランド買収」表明の本気度と隠された真意 景気問題が噴出した瞬間に…、トランプ大統領と闘う正体不明の内部告発者 ウクライナ疑惑はアメリカ民主主義の試金石、トランプ大統領じわり追い込む「支持層」の本音 2年前とは様相が変わってきている) [世界情勢]

トランプ大統領については、9月1日に取上げた。今日は、(その43)(トランプ 突然の「グリーンランド買収」表明の本気度と隠された真意 景気問題が噴出した瞬間に…、トランプ大統領と闘う正体不明の内部告発者 ウクライナ疑惑はアメリカ民主主義の試金石、トランプ大統領じわり追い込む「支持層」の本音 2年前とは様相が変わってきている)である。

先ずは、明治大学教授の海野 素央氏が9月5日付け現代ビジネスに掲載した「トランプ、突然の「グリーンランド買収」表明の本気度と隠された真意 景気問題が噴出した瞬間に…」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66968
・『なぜ突然……?  ドナルド・トランプ米大統領がこの数週間に、異例中の異例といえる2つの行動に出ました。1つはグリーンランド買収を巡るデンマーク訪問中止、もう1つは野党民主党の女性新人下院議員2人のイスラエル訪問阻止です。 いったいトランプ大統領は何を狙っているのでしょうか。これらふたつの行動の背景には、共通のある「隠された意図」がありました。 デンマーク領であるグリーンランドの人口は5万6000人で、島には先住民族も生活しています。9月上旬に予定されていたデンマーク訪問を前に、トランプ大統領はグリーンランド買収を「最重要課題ではない」としながらも、「大型の不動産取引になる」と自ら宣伝していました。 米メディアによれば、トランプ大統領がグリーンランド買収に乗り出した理由は、主として3つあります。 第1に、グリーンランドは石炭やアルミニウムといった鉱物資源が豊富だから。第2に、グリーンランドは欧州と北米をつなぐ戦略的に極めて重要な位置にあるから。NATO(北大西洋条約機構)の一環として、米国はすでにグリーンランドに空軍基地及びレーダー基地を置いています。そして第3に、中国がグリーンランドへの投資に意欲を示しているからです。 しかし、トランプ大統領のグリーンランド買収に関する自身のツイッター投稿、そしてホワイトハウスの記者団からの質問に対する回答、買収に乗り出したタイミングを分析すると、本当の狙いは上記の3つ以外にあることが分かります』、突如の表明には驚かされたが、「本当の狙いは」どこにあるのだろう。
・『トルーマン大統領も検討していた  まずトランプ大統領は8月19日、自身のツイッターにグリーンランドの小さな村に金色のトランプタワーが建っている合成写真を掲載し、「グリーンランドはこんなふうにはならないと約束する」と投稿しました(写真はリンク先参照)。不動産業出身のトランプ大統領は、グリーンランドに観光立国としての潜在能力をみて、それを利用しようとしていると疑われたことを意識していたのでしょう。 Donald J. Trump @realDonaldTrump I promise not to do this to Greenland! View image on Twitter 308K 9:07 AM - Aug 20, 2019 Twitter Ads info and privacy 109K people are talking about this 余談ですが、トランプ大統領は北朝鮮に対しても「不動産業の視点から見ると、経済的潜在性が高い」との評価を下し、同国における観光産業の可能性に言及しています。グリーンランドに対しても、同様の観点から見ていておかしくはありません。 次に、トランプ大統領はホワイトハウスの記者団からの質問に、かつて1946年にハリー・トルーマン元米大統領がグリーンランド買収を試みたことに触れました。当時、トルーマン元大統領は1億ドルで島の買収を図ろうとしましたが、デンマークから拒否されています。 デンマークとの「大型の不動産取引」に成功すれば、トランプ大統領はトルーマン元大統領が達成できなかったグリーンランド買収を実現し、「レガシー(政治的遺産)」を作ることができる、というわけです。 さらに、トランプ大統領がグリーンランド買収への関心を認めたタイミングにも注意を払う必要があります。米メディア、経済学者や民主党大統領候補指名争いを戦っている候補が、米国における景気後退の兆候についての議論を盛んに始めたときだったのです。 この議論では、米景気の後退をもたらす主要因として、トランプ大統領による中国からの輸入品に対する追加関税がやり玉に上がり、大統領は守勢に回っていました。 言うまでもなく、トランプ大統領の支持率を支えているのは好調な経済と高い株価です。大統領の支持率は40%から45%の間を推移していますが、経済政策に関してはそれを上回る50%の支持率があります。つまり、再選を目指すトランプ大統領にとって景気後退が最大の懸念材料になるというわけです。 今のところトランプ大統領は「景気後退からほど遠い」と繰り返し言い張っています。しかしその反面、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長に責任を押しつけ、しかも「フェイク(偽)メディアと民主党候補が米国経済を潰そうとしている」とも主張しています。 このような状況の中で、トランプ大統領は米国民の関心を景気後退からそらすために、グリーンランド買収を公表したとみてよいでしょう。 結局、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相がグリーンランド買収を「馬鹿げた議論」と一蹴したので、トランプ大統領は同国訪問を中止しました。この突然のキャンセルも話題になり、トランプ大統領は一時的にせよ、米国民の関心を景気後退からグリーンランド買収へとそらすことができました』、「米国民の関心を景気後退からそらすために、グリーンランド買収を公表」、とはさすがにメディアの使い方を知り尽くしたトランプ大統領ならではだ。しかし、大統領の訪問を突然キャンセルされたデンマークにとっては、腹の虫がおさまらないだろう。
・『イスラム教徒の議員にレッテル貼り  もう1つの異例中の異例の行動、民主党議員のイスラエル訪問阻止についても説明しましょう。 トランプ大統領は、自らに非常に批判的な、イスラム教徒でソマリア出身のイルハン・オマル下院議員(ミネソタ州)と、同教徒でパレスチナ系のラシダ・タリーブ下院議員(ミシガン州)に「反イスラエル・反ユダヤ人」とレッテルを貼り、「彼女たちは民主党の新しい顔だ」と語気を強めて語りました。 2020年米大統領選挙を強く意識しているトランプ大統領は、彼女たち2人の下院議員を利用して「民主党は極左の政党である」とアピールし、民主党に対する有権者の警戒心を高めようとしています。 しかも、トランプ大統領は「オマルとタリーブが民主党の顔になったので、(同じ極左のアレクサンドリア・オカシオ=)コルテスが(彼女たちに注目を奪われて)いきり立っている」と自身のツイッターに投稿しました。民主党の極左グループにくさびを打ち込み、弱体化を図ろうと試みているのが明らかです。 タリーブ下院議員とオマル下院議員に対する攻撃は続きます。大統領は「イスラエルがタリーブとオマルの(イスラエル)訪問を許可すれば、弱みを見せることになる」「タリーブはイスラエルとすべてのユダヤ人を憎んでいる」「タリーブはイスラエルへの支援金額を減らす」などと自身のツイッターに投稿し、同国のネタニエフ政権に圧力をかけました。 そもそも米政府は、イスラエルに対して年間30億ドル(約3162億円)もの軍事支援を行っており、これまでにも米上下両院の議員が超党派でイスラエルを訪問しています。にもかかわらず、トランプ大統領はタリーブ下院議員とオマル下院議員のイスラエル入国の差し止めをネタニエフ政権に要求したのです。その結果、同政権は2人の入国禁止を発表しました』、「民主党の極左グループにくさびを打ち込み、弱体化を図ろうと試みている」、汚い手だが、効果的なのだろう。イスラム教徒が下院議員になるというのは、トランプは別として、米国はやはり開かれた国のようだ。イスラエルにしたら「入国禁止」の口実が出来てホッとしたのではなかろうか。
・『さすがにこれに関しては、大統領の身内である与党共和党の議員からも批判が出ました。しかしトランプ大統領にとっては、支持基盤を強化することが目的であり、その目的はこの一件で果たされたはずです。つまり、今回の「騒動」は、トランプ大統領にとって政治的得点になったのです。 加えて、トランプ大統領が「トランプ対タリーブ+オマル」の対立構図を作り、米国民、殊に支持者の関心をやはり景気後退からそらした点も看過できません。米メディアは、トランプ大統領のアドバイザーが「民主党の極左の女性新人下院議員4人(コルテス、アヤンナ・プレスリー、タリーブ、オマル)」の中で、「タリーブとオマルを集中して攻撃するべきである」と助言した、とも報じています。おそらく、トランプ大統領の支持層がこのふたりを特に嫌っているという点で、逆に利用価値が高いからでしょう。 トランプ大統領は自身にとって都合が悪い話題から米国民の関心をそらすために、「異例の行動」をとることが有効である、と考えています。一見すると無関係な「グリーンランド買収」の試みと「タリーブ・オマル両議員のイスラエル訪問阻止」に隠された共通の意図は、主要メディアが争点にしている「景気後退」をカモフラージュすることだった、といえるでしょう』、トランプ大統領の手法は汚いが、実に効果的なようだ。民主党も早く一本化しないと、トランプ劇場を閉鎖に追い込めないだろう。

次に、 米州住友商事会社ワシントン事務所 シニアアナリストの渡辺 亮司氏が10月15日付け東洋経済オンラインに掲載した「トランプ大統領と闘う正体不明の内部告発者 ウクライナ疑惑はアメリカ民主主義の試金石」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/307851
・『9月末からアメリカの首都ワシントンで吹き荒れているトランプ大統領とウクライナをめぐる弾劾調査の嵐はいっこうに勢いが弱まらない。トランプ大統領は「政権転覆を狙ったクーデターだ」として、10月8日、下院民主党が求める文書提出や証言などを拒否、全面対決に出た。対決が続く限り、民主党が多数派を占める下院での大統領弾劾は不可避だ。 トランプ政権は弾劾調査を、民主党が始めた「党派対立」、あるいは国家に従わない官僚軍団「闇の国家(ディープステート)」によるものだ、と訴えて、共和党の支持を固めると同時に、他の話題で国民の気を散らすことで、この苦境を乗り越えようとしている。今のところ、この戦略は効果を発揮し、議会共和党の多くはトランプ政権と歩調を合わせているため、上院の雰囲気は罷免には程遠く、大統領の座は揺るぎない。 現在、大統領と共和党の攻撃の矛先は、事の発端であり、いまだ正体不明のCIA(中央情報局)職員とされる内部告発者に向けられている』、「トランプ政権は弾劾調査を、民主党が始めた「党派対立」、あるいは国家に従わない官僚軍団「闇の国家」によるものだ、と訴え」、とは巧みな防戦だ。
・『トランプ氏の攻撃の的となる内部告発者  前回、現職大統領の行為について内部告発があり、弾劾手続きが行われたのは、1998年のビル・クリントン元大統領(民主党)の不倫スキャンダルであった。大統領の不倫相手モニカ・ルインスキー元ホワイトハウスインターンとの電話を密かに録音していた元ホワイトハウス職員のリンダ・トリップ氏が、録音テープをケネス・スター独立検察官(当時)に提出した。スター独立検察官はその録音テープを大統領弾劾条項の1つとなる偽証罪の証拠として利用するに至った。 クリントン元大統領が、下院で弾劾されるも、上院で罷免を逃れた背景には、自らの弾劾手続きは「党派対立」によるものだと、民主党支持者、国民に訴えたことが大きい。当時は共和党が上下両院で過半数を握っていたものの、上院では3分の2に達していなかった。下院で弾劾されることは目に見えていたが、上院で民主党が団結しているかぎり、罷免を回避できるのは確実であった。党派対立との訴えは功を奏し、クリントン元大統領は政権を存続することができた。 しかし、党派対立が強調される過程で犠牲となったのが、アメリカの民主国家を支えてきた内部告発制度への国民の信頼だ。内部告発者のトリップ氏は無所属として登録し、共和党にも民主党にも献金したことがなかった。クリントン政権や民主党は党派対立と位置付け、共和党が民主党大統領を追い出す陰謀に加担したとして内部告発者のトリップ氏に「右翼」の烙印を押した。 トランプ政権もウクライナ疑惑を党派対立の一環と位置づけている。その結果、政権や共和党の内部告発者に対する強い批判が目立つ。なお、1人目の内部告発者については、情報当局の監察官に内部告発する前に民主党のアダム・シフ下院情報特別委員長の側近に接触していたことが判明した。そのため、「ウクライナ疑惑」は民主党が当初から内部告発者と共謀して党派的に動いたものだと、共和党は批判している。 10月6日のフォックスニュースにおいて、ホワイトハウスのスティーブン・ミラー上級顧問は、内部告発者を「ディープステートの工作員」と呼び、トランプ政権発足以降に選挙で選ばれていない政府職員がトランプ大統領を失脚させようと企んでいることの一環である、と主張した』、「内部告発者」の正体は、トランプの息子が名前入りで暴露したとの報道もある。
・『世界最強のアメリカ大統領を内部告発することは容易ではない。特にCIAのような情報当局に勤務する政府職員の内部告発は、現行法では完全に守られていない。他の政府機関の職員よりもさらに難易度が高いのだ。 今回、内部告発者のCIA職員は2つのルートで大統領の行為について告発している。1つがCIA法律顧問局を通じた告発だ。 匿名を望むCIA職員は、同僚を通じてコートニー・エルウッドCIA首席弁護士に報告。その後、規則に基づきエルウッド首席弁護士が、ホワイトハウスと司法省安全保障部門の首席弁護士と、大統領の違法行為の疑いについて電話で協議。数日後にはウィリアム・バー司法長官にも共有された。だが、司法省はその告発を実質握り潰した。 本来、司法省は法律に基づき党派を意識せずに判断を下すべきである。だが、大統領に指名された司法長官は党派的となりがちであり、大統領あるいは政権と自らに不都合なことをしないことは想像できる。リチャード・ニクソン大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件当時の司法長官も同様に党派的であった。 1つ目の告発ルートが機能しないことを察知した内部告発者は、直接、情報当局の監察官に告発した。告発を受けた情報当局のマイケル・アトキンソン監察官は国家情報長官(DNI)室に報告。報告を受けたジョセフ・マグワイア国家情報長官代行は、大統領に関わる話であることから、司法省と協議した。司法省はまたしても、何も問題がないとDNIに返答した。 しかし、法律では監察官とDNIの間で合意に至らなかった案件について、監察官は議会にその存在を通知する義務がある。そのため、監察官は下院情報特別委員会に内部告発の存在について通知し、それによってシフ下院情報特別委員長が内部告発書の提出を求め召喚状を出すに至った。 民主党が多数派の議会下院が関与することで、大統領府を牽制する3権分立の抑制と均衡が機能して、内部告発は世に知れ渡ることとなった。アトキンソン監察官はトランプ大統領によって指名された人物だ。もしアトキンソン監察官がトランプ大統領への忠誠心から党派的に内部告発を自らの手で握り潰し議会に通知していなければ、内部告発は今頃、闇に葬られていたであろう』、「司法省はその告発を実質握り潰した」が、「アトキンソン監察官」がルール通りに、「下院情報特別委員会に内部告発の存在について通知」、とは勇気ある行動だ。
・『内部告発制度はアメリカ建国以来の伝統  内部告発者を守る法律を世界で初めて制定したのはアメリカだ。内部告発制度は民主国家のアメリカを象徴するものであり、その成り立ちはアメリカ建国の頃までさかのぼる。 独立戦争の最中、1777年にエセック・ホプキンズ大陸海軍司令官がイギリス人捕虜に対して行った虐待行為について部下が告発し、司令官解任に至った。その後、ホプキンズ元司令官は同氏と同じロードアイランド州出身の部下で内部告発を行った海軍将校サミュエル・ショー氏とリチャード・マーベン氏の2人を解任に追いやり告訴するなど報復。 だが、現在の議会の前身である「大陸会議」が介入して内部告発者を守った。この事件を契機に1778年、大陸会議は内部告発者を保護する法律を全会一致で制定するに至った。ホプキンズ司令官は、兄がロードアイランド州知事を務め、1776年の独立宣言にも署名したスティーブン・ホプキンズであり、政治的影響力のある一族の出身だった。だが、国民を代表する大陸会議は弱者を守ったのだ。) アメリカには建国当初から、このように、職権を乱用し秘密裏に不法行為などを働く権力者を、弱者の内部告発者が暴くという伝統があり、これが民主国家の土台となってきた。アメリカの内部告発制度に詳しいミドルベリー大学のアリソン・スタンガー国際政治経済学教授は内部告発をアメリカ人の「DNAに刻まれている」ものと称している。 だが、内部告発は必ずしもアメリカ政府によって歓迎されてきたわけではない。特に国家安全保障に重要となる情報をどこまで国民に公開すべきかは民主主義を唱える政府にとっては悩みどころである。 エドワード・スノーデン元国家安全保障局(NSA)契約職員は国家機密をメディアに暴露したことで、1917年諜報活動取締法(スパイ活動法)違反などの罪で起訴されている。もし、スノーデン氏が正規ルートで当時のNSA監察官に内部告発していたら、握り潰されていた可能性が高いとみられている。スノーデン氏はいまだにアメリカに戻っていない。内部告発者が英雄とされるか、あるいは反逆者と評されるかは紙一重だ。 しかし、ウクライナ疑惑がスノーデン事件と異なるのはアメリカの安全保障への脅威には関係がなく、2020年の大統領再選を狙ったトランプ大統領の政治的思惑に関わる疑惑である点だ。また、同疑惑では内部告発者は正規ルートで報告している。とはいえ、トランプ大統領はウクライナ疑惑が世に知れ渡った直後、内部告発者について「スパイのようなもの」と非公開会合で主張した』、「ウクライナ疑惑・・・2020年の大統領再選を狙ったトランプ大統領の政治的思惑に関わる疑惑」、どうみても悪質だ。
・『内部告発制度が危機に瀕するおそれも  内部告発者は欧州に知見があり、ホワイトハウスでの勤務経験のあるCIAの男性職員と報道されている。ネット上などではすでに有力候補の名前も浮上しているありさまで、いずれ正体が暴かれるリスクがある。正体が判明すれば、保守系メディアは内部告発者を反トランプの民主党支持者、または「ディープステート」の一味だとして集中攻撃するであろう。内部告発者の過去にまでさかのぼってさまざまな個人情報が明かされる危険性も高い。 10月6日、2人目の内部告発者がいることを1人目の内部告発者を弁護するマーク・ザイード弁護士などが明らかにした。10月10日にはトランプ大統領の顧問弁護士ルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長の協力者2人が選挙資金法違反の容疑で逮捕された。翌11日、今年5月に解任されたマリー・ヨバノビッチ前駐ウクライナ大使が議会で証言。今週以降も元政府職員を含め議会での証言者が続き、ウクライナ疑惑に関する事実関係が徐々に解明されていくであろう。 内部告発者の情報ついての信憑性は高まっており、トランプ大統領は下院で弾劾されるとの見方が支配的だ。だが、共和党が団結してトランプ大統領が上院で有罪となることはないだろう。 アメリカ人のDNAに刻まれているはずの内部告発制度が今回の大統領弾劾をめぐる議論で「党派対立」、「ディープステート」と位置付けられて、国民の信頼が失われてしまうと、アメリカの民主主義は深い傷を負いかねない。約半世紀前のウォーターゲート事件は、内部告発制度などアメリカの民主国家の仕組みが大幅に見直される契機となった。 アメリカ憲法は「We the People of the United States (われわれ、アメリカ国民は)」から始まり、3権分立でお互いをけん制し合うが、憲法上は国民を代表する議会が大統領や最高裁を上回る権力を保持している。世界最強の大統領に立ち向かう内部告発がどのように扱われるのか、ウクライナ疑惑は再びアメリカの民主主義の将来を占う試金石となるだろう』、当面、今夜から始まる下院での公聴会の審議を見守りたい。

第三に、ジャーナリストのジェームズ・シムズ氏が10月24日付け東洋経済オンラインに掲載した「トランプ大統領じわり追い込む「支持層」の本音 2年前とは様相が変わってきている」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/309911
・『2020年の大統領選はドナルド・トランプ敗退の様相――。 少し前まではトランプの勝算は高かった。今のところは経済指標も好調で、アメリカ国民の不評を買うような海外における戦争もない。ジョージ・W・ブッシュ元大統領は不景気によって、リンドン・ジョンソン元大統領が泥沼化したベトナム戦争によって支持を失ったように、こうした要素は現職のアメリカ大統領の支持率に大きく影響する。 スキャンダルは通常、政権に悪影響を及ぼすが、現時点ではトランプ支持者や無党派層にはあまり影響を及ぼしていない。 ところが、ウクライナをめぐる新たなスキャンダルで状況は一変している。下院議会で弾劾調査が開始され、トランプの周辺人物たちを巻き込み始めた。すでに微妙な支持率に加えて、景気の先行きも不透明感を増しているほか、民主党が格差問題を取り上げ始めていることもトランプにとってはバッドニュースだ。 かつてのリアリティーテレビ番組のスターだったトランプが敗退すれば、同氏はえり抜きの一群に仲間入りする。1952年以降、1期しか務められなかった大統領はジミー・カーターとブッシュの2人だけだ。ロナルド・レーガン元大統領や、バラク・オバマ前大統領などほか6人は、2期務めている』、「ドナルド・トランプ敗退の様相」、とは面白くなってきた。
・『ウクライナ・スキャンダルという痛手  最近で最も大きいスキャンダルはウクライナ絡みで、これこそがトランプ政権最大のスキャンダルとなりそうだ。内部告発者による申し立てが調査の発端となり、トランプ政権が軍事援助を逆手にとって、ウクライナ政府にトランプ氏最大の民主党ライバルである前ジョー・バイデン前副大統領と、その息子による汚職の可能性について調べさせようとしたとして、民主党が非難している。 その申し立てによると、トランプ政権はトランプの電話内容が発覚すれば問題となりうる性質のものであることに気づき、文字起こしを隠蔽させようとした疑いが持たれている。 弾劾に向けて下院は訴追者として告発を行い、決定されれば上院が裁判を行う。2大政党間におけるトランプへの見解はほぼ固まっており、共和党優位の上院が3分の2以上の票でトランプ追放を宣告することは考えにくい。だが、予定される公聴会で証人たちに召喚され、公開されていない詳細事項や関係書類などが公にされれば、大統領選を大きく左右する要素になるだろう。 すでに9月25日に電話の内容が公開された後、何人かの現役および元国務省高官が不利な証言を下院にしたり、問題になった政策を議論するメッセージなど公開。ミック・マルバニー主席補佐官代行がいったんウクライナの軍事支援をする代わりにトランプがウクライナに政治的な調査を依頼したと会見で認めた後、翌日これを撤回するという事態が起きている。 「今回の件は、トランプにとって重大な脅威になるだろう。真摯に対応しないとまずい」と、トランプの側近であり、保守系メディア、ニュースマックスのCEOであるクリス・ラディは話す。「トランプを弾劾すべきという人の数は急激にとは言えないが増え続けており、これは大統領にとってはいい話ではない」 注目すべきは、この1件によってトランプ氏が無所属有権者ならびに、中道共和党有権者の支持を失うかどうかだ。ほかの世論調査同様、モンマス大学の調査でも、弾劾及び解任を支持するアメリカ国民の割合は8月から9月にかけて35%から44%に上昇している。無党派有権者間では30%から41%に増えている』、「ウクライナ・スキャンダル」は確かに驚くほど悪質だ。
・『支持層に広がるトランプへの「不信感」  前回選挙の2016年、トランプ氏はその人気度を上回る得票率を獲得することができた。支持率は38%だったのに対し、一般投票では46%を得票して当選したのだ。 ところが、今年10月に行われたフォックスニュースの有権者調査では、43%がトランプ氏を支持しているものの、民主党のバイデン前副大統領、バーニー・サンダース上院議員、エリザベス・ウォーレン上院議員らと比較した想定票数ではトランプ氏が下回った。 元軍人のジェラルド・エブセンと彼の妻デビーにとっては、健康保険と気候変動問題が重要な問題だ。「健康保険については、(アメリカの65歳以上向け健康保険)メディケアよりは、オバマケア的な観点のバイデンを支持している。2人にとっては、医療保険が誰に投票するか決める材料になる」と、夫妻で、アイオワ州で8月に開かれたウォーレンのキャンペーンイベントに参加していたデビーは話す。 とはいえ、2人の最終ゴールは「トランプを落とすこと」であり、最終的には民主党候補に票を投じる考えだ。 大統領に就任してからほぼ3年、トランプ氏の支持率が50%を超えたことはまだない。これは近年の大統領としては前代未聞だ。 一方で、同氏の不支持率はつねに50%を上回っている。2018年にはそれを示唆するかのように、共和党が下院議席過半数を失った。トランプ氏の行動と敵対意識を高めるような物言いによって、郊外の有権者、とくに大卒の共和党女性有権者、そして無党派有権者投票者たちに愛想を尽かされたからだ。 景気が後退し、中国との貿易戦争が農業や工業の主要地帯に大きな悪影響を及ぼすようになれば、トランプ支持はさらに弱まるものと思われる。こうした地域からの支持がトランプ氏の最大の強みの1つだからだ。9月のワシントン・ポスト/ABCニュースによる世論調査によると、対象となった有権者の59%が2020年は不景気に陥ると考えており、43%がトランプ氏の経済貿易政策によってその可能性が高まると考えている。 実際、トランプ支持層である農家でもトランプ氏に対する「不信感」は広がっている。筆者が8月に生産金額において全米最大の農業地区であるネブラスカ州の第3下院選挙区を訪れた際にも、農業団体幹部が農民たちは中国との貿易戦争や、トウモロコシと大豆を原料とするエタノールのための再生可能燃料令を緩和するといったトランプ氏の政策の一部に憤っていると話していた。) 「農民たちはとても不満に思っている。先の選挙では農業コミュニティーがトランプ支持に大きく貢献したと彼らは思っているのだから」とこの幹部は言う。「トランプに見捨てられた気分だ、という声も聞かれる」。 カンザス州の元州議会議員(共和党)のウィント・ウィンターも、「トランプが中国との貿易協議で大きな成果を上げるとは最初から思っていなかったが、一連の関税引き上げやツイートなどは茶番でしかない」と話す。「トランプはおそらく大統領選直前に何らかの手打ちをし、それを自分の成果として喧伝するだろう」。 ウィンターは、2018年のカンザス州知事選の際には、トランプが支持した右派候補ではなく、民主党候補を応援にまわっており、次期大統領選でも民主党候補に投票するとしている。ただしウォーレンやサンダースといった急進派を応援するのは心情的に難しい、ともしている』、「民主党候補」が急進派のままでは、共和党支持者の票は確かに期待できないだろう。
・『勢いを増す「格差是正」を訴える声  対して、ネブラスカ州第3下院選挙区の共和党エイドリアン・スミス議員は、農民たちがトランプ大統領を「裏切る」とは見ていない。「トランプ以外の人で、少しでもマシになるとはどうしても考えにくいんでね」と、同議員は笑いながら語る。 一方、「大企業や一握りの世界的エリートがブルーカラーの仕事をたたき潰してしまったのであり、中産階級がトランプを当選に導いた」というトランプによる大衆受けするメッセージはすでに浸透しており、これに伴って民主党ではウォーレン人気が高まってきている。同氏のメッセージは、労働者の経済的困窮を改善するには構造変革が必要だというもの。一部の世論調査では、ウォーレンがバイデン及びサンダースを抜いている。 「富の99%を上位1%の人間が握っているこの現状には大きな問題がある。アメリカはそのような国として成り立っているのではない」と、特殊教育の教師であるジェシカ・マッケナ氏は言う。同氏は8月、幼い娘とともにアイオワ州でのウォーレン氏の選挙運動に参加していた。 こうした中、トランプ氏が大衆受けする経済不満を再び振りかざすかどうかは定かではない。前回同氏に投票した国民は、トランプ氏の見え透いた口先の約束を見透かしているかもしれない。例えば、同氏のPRポイントであった1.5兆ドルの減税は、結局主として企業や上位1%の富裕層をさらに優遇するものだったからだ。) 6月には、右派のアメリカン・エンタープライズ公共政策研究所が「共和党員たちは、この世の中における自分たちの立ち位置をよく考える必要がある。ますます多くのアメリカ国民が、格差を是正することに関して、国がもっと大きな役割を担う必要があると考えるようになっている」と、書いている。 同研究所が1月に行った世論調査では、回答者の55%が、貧困は各個人の努力というよりも構造的問題によって形成されていると考えており、この数字は2001年における44%から上昇している』、右派の研究所でも「格差を是正」への国民の要望が強まっているとの世論調査結果は重い。
・『共和党内での支持率は依然高い  とはいえ、トランプは共和党内ではいまだに常時90%に上る支持率を維持しており、2016年がまさにそうだったように、一般投票では負けても、選挙人団のほうは同氏に優勢に動く可能性がある。共和党の政治家たちはトランプ氏を裏切ることを恐れており、一生懸命声援を送っている。 例えば、トランプが、ソマリアから帰化してアメリカ国民となった議員をはじめとする4人の少数派民族出身の女性議員について、「『国へ帰って』自分の破綻した国をどうにかしろ」と発言し、彼女たちがトランプを非難したときも、ほとんどの共和党員がそうした人種差別的発言に対してトランプを非難することはなかった。 この件の数週間後、カンザス州代表の第2下院選挙区のスティーブ・ワトキンス議員は、トランプのこれまでの発言の数々について意見を求められ、20人強の選挙人の出席したタウンホール後にこう答えている。「彼が人種差別をする人だとは思わない」。 選挙まで余すところあと1年強となったが、多くのことが起こり、民主党が2016年同様にあとひと息のところで負ける可能性もある。しかし今明らかなのは、トランプの権力掌握が日に日に弱まっている様相だということだ』、いずれにしろ、景気後退はこれから明確になり、株式相場も下落するとすれば、トランプ再選は遠のくだろう。ただし、民主党が穏健派で一本化できなければ、泥沼化する可能性も残されているようだ。
タグ:タイミング 東洋経済オンライン 現代ビジネス トランプ大統領 渡辺 亮司 (その43)(トランプ 突然の「グリーンランド買収」表明の本気度と隠された真意 景気問題が噴出した瞬間に…、トランプ大統領と闘う正体不明の内部告発者 ウクライナ疑惑はアメリカ民主主義の試金石、トランプ大統領じわり追い込む「支持層」の本音 2年前とは様相が変わってきている) 海野 素央 「トランプ、突然の「グリーンランド買収」表明の本気度と隠された真意 景気問題が噴出した瞬間に…」 グリーンランド買収を巡るデンマーク訪問中止 野党民主党の女性新人下院議員2人のイスラエル訪問阻止 トルーマン元大統領は1億ドルで島の買収を図ろうとしましたが、デンマークから拒否 米国における景気後退の兆候についての議論を盛んに始めたときだった 支持率を支えているのは好調な経済と高い株価 デンマークのメッテ・フレデリクセン首相がグリーンランド買収を「馬鹿げた議論」と一蹴したので、トランプ大統領は同国訪問を中止 米国民の関心を景気後退からグリーンランド買収へとそらすことができました イスラム教徒の議員にレッテル貼り イルハン・オマル下院議員 ラシダ・タリーブ下院議員 「民主党は極左の政党である」とアピール タリーブ下院議員とオマル下院議員のイスラエル入国の差し止めをネタニエフ政権に要求 同政権は2人の入国禁止を発表 トランプ大統領は自身にとって都合が悪い話題から米国民の関心をそらすために、「異例の行動」をとることが有効である、と考えています 「トランプ大統領と闘う正体不明の内部告発者 ウクライナ疑惑はアメリカ民主主義の試金石」 トランプ政権は弾劾調査を、民主党が始めた「党派対立」、あるいは国家に従わない官僚軍団「闇の国家(ディープステート)」によるものだ、と訴えて、共和党の支持を固めると同時に、他の話題で国民の気を散らすことで、この苦境を乗り越えようとしている 正体不明のCIA(中央情報局)職員とされる内部告発者 トランプ氏の攻撃の的となる内部告発者 内部告発制度はアメリカ建国以来の伝統 内部告発制度が危機に瀕するおそれも ジェームズ・シムズ 「トランプ大統領じわり追い込む「支持層」の本音 2年前とは様相が変わってきている」 2020年の大統領選はドナルド・トランプ敗退の様相―― 支持層に広がるトランプへの「不信感」 勢いを増す「格差是正」を訴える声 共和党内での支持率は依然高い
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中南米(その1)(一触即発のベネズエラ 「独裁vs民主化」の図式に翻弄される悲惨、「南米の優等生」チリで非常事態宣言 治安悪化の背景にある経済問題) [世界情勢]

今日は、中南米(その1)(一触即発のベネズエラ 「独裁vs民主化」の図式に翻弄される悲惨、「南米の優等生」チリで非常事態宣言 治安悪化の背景にある経済問題)を取上げよう。

先ずは、デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員の山田厚史氏が3月1日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「一触即発のベネズエラ、「独裁vs民主化」の図式に翻弄される悲惨」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/195555
・『ベネズエラに緊張が走っている。 コロンビア国境に集められた「緊急援助物資」の搬入を巡り、マドゥロ政権と反政府勢力が一触即発の状況だ。 「暫定大統領」を宣言したフアン・グアイド国会議長をいち早く支持したトランプ政権は、軍などに反政府勢力側につくように呼びかけ、米国メディアも「人道支援を独裁政権が阻んでいる」と伝える。 「独裁vs民主化」の分かりやすい対立の図式には既視感がある。イラクやリビア、シリア、アフガニスタンなどがそうだった。 独裁、非人道的と決めつけられた政権に対して、「倒されて当然」という世論作りが行われ、他国の軍事介入が正当化されてきた。 不都合な政権は武力で破壊する力を持つ国の代表は米国だ。だが介入の後に残るのは、終わりなき内戦と悲惨な暮らし。 ベネズエラはその瀬戸際にある』、まだ、米国は介入に踏み切ってないが、どうなるのだろう。
・『「暫定大統領」の承認で世界が二分 米国は「武力介入」示唆  二期目に入ったマドゥロ大統領の退陣を求め、グアイド国会議長が「暫定大統領」就任を宣言したのが、今年1月。以来、政権と反政府勢力の対立が激化するばかりだ。 1月23日、首都カラカスで大規模な反政府集会が開かれ、「大統領選挙は無効だ」と気勢をあげた。集会に彗星のごとく現れたのが35歳のグアイド氏だった。 「野党を排除した選挙で選ばれたマドゥロ大統領には正当性がない」と、自分が「暫定大統領」と名乗りを上げた。 ベネズエラでは、大統領不在の時、国会議長が暫定大統領に就く、という規定が憲法にある。 2015年の総選挙で勝利した野党は議員数で上位4党が輪番制で議長を出している。グアイド氏の党は4番目の小党だが昨年12月、国民議会議長になった。 だがそれまでは、ベネズエラでも庶民になじみのない政治家だった。 反政府集会の直前にペンス副大統領から電話で指名された、と現地では伝えられている。いわば米国が選んだ「持ち駒」である。 グアイド議長は「祖国を解放するため、あらゆる選択肢が用意されている」とツイッターで述べた。 「あらゆる選択肢」という言葉は、トランプ大統領が1月に、「グアイド大統領」を承認、し、「武力介入」の可能性を示唆した時、使った言葉だ。 「暫定大統領」を、その後、カナダやEUなどの先進国、近隣国が承認。日本も2月20日、支持を表明した。 米国はベネズエラの国営石油会社に対して米国内の資産を凍結するなどの経済制裁を実施し、マドゥロ大統領へ退陣の圧力をかけ続ける。 一方で、中国、ロシアなどは内政干渉を禁じる国連憲章を守るとしてマドゥロ政権を擁護し、世界が二分された状況だ』、本来であれば、マドゥロ大統領は「グアイド大統領」を国家反逆罪などで逮捕できる筈だが、米国を恐れて何もできないのだろう。
・『「喉に刺さったとげ」抜きたい米国 「反米政権」の転覆を狙う?  米国でベネズエラ問題を担当するのは、共和党右派を代表するペンス副大統領と、安全保障担当のボルトン大統領補佐官だ。 ボルトン氏は「ベネズエラに5000人派兵」と書かれた文書を、これ見よがしに抱えて記者団の前に現れ、「ベネズエラ軍最高司令部よ、今こそ国民の側につくべき時だ」と訴えた。 ボルトン氏はハノイでの米朝協議に備え、2月23日から韓国を訪問する予定だった。急きょ取りやめベネズエラ情勢に集中すると外電は伝えた。 ペンス副大統領も25日、コロンビアの首都ボコダで、グアイド氏と会った。 中南米は、「米国の裏庭」とされ、多くの国は米国と政治的にも経済的にも深く結びついてきた。そうした地域で、「反米」を掲げるマドゥロ政権は、米国は「喉に刺さったとげ」である。 トランプ政権は、ベネズエラを転覆する千載一遇のチャンスと見ているからだろう。 だが政治が混迷するなか、ベネズエラは猛烈なインフレが人々の暮らしを破壊し、1日に約5000人が国境を越えコロンビアやエクアドルに流出しているといわれている。 グアイド議長は国際社会に人道支援を要請。米軍の輸送機がコロンビアに大量の援助物資を輸送し、国境を開くことを求めている。 これに対し、ベネズエラ政府は「人道上の問題はない」と主張、国境を開けば米国の軍事介入を招く、と警戒する。 「人道の危機」には、様々な見方がある。 2017年11月、ベネズエラを調査した国連人権部門の独立専門家アルフレッド・デ・サヤス弁護士は「不満や物不足はあるがベネズエラの状況は人道危機に当らない」と結論づけた。 その後、インフレは勢いを増しているが、食糧などは配給券が配られており、戦火にさらされたシリアやイラクなどの状況とは全く違う。 見方が分かれるなかで、米軍が「人道支援」を名目に、ベネズエラ国内に“侵攻”する可能性はないのか』、ボルトン氏は失脚したが、原因は不明だ。「国連人権部門の独立専門家」が「人道危機に当らない」としているのでは、「米軍が「人道支援」を名目に、ベネズエラ国内に“侵攻”する」のは無理がありそうだ。
・『過去にはCIAが反チャベスクーデターを画策  米国には“前科”がある。 カリブ海を挟んでフロリダ半島の対岸にあるベネズエラは、サウジアラビアをも上回る世界最大の石油埋蔵量を誇る南米の産油国。長く親米政権が続き民主主義も定着していた。 だが一方で、貧富の差は激しく、裕福な暮らしをする白人層とヒスパニックなどの下層に分断され、石油の恩恵は多くの人には届かなかった。 1999年、貧しい人々を背に政権を取ったのが、チャベス前大統領である。 スペイン系、先住民、黒人の血を引き、陸軍士官学校で頭角を現した「青年将校」。一度はクーデターに失敗し投獄されたが、合法的政治運動に転じ1999年の大統領選挙で勝利した。 医療無料化、農地解放、価格統制など貧困層に手厚い政策を推進した。南米に左翼政権が広がることを恐れた米国の干渉が始まる。 2002年、CIAの支援を受けた軍がチャベス大統領を監禁。財界人のペドロ・カルモナ氏を暫定大統領に立てた。 怒った貧困層が大規模なデモを展開し、情勢不利と見た軍が寝返り、チャベスは解放された。カルモナ氏は亡命しクーデターは2日で終息した。 CIAはチャベス政権発足直後からクーデター工作を始めていたことが分かった。その後も暗殺計画が発覚するなど、米国との緊張関係が続いてきた。 米国の干渉を受けながら、チャベス政権が社会主義的政策を遂行できたのはオイルマネーがあったからだ。豊富な石油収入がが貧者に手厚い分配を可能にした。 一方で、取り分が減る大企業や富裕層は反発、海外からの投資は鈍化。国内の供給体制は、脆弱になっていった。 経済が暗転する引き金になったのが、原油価格の急落だった』、「過去にはCIAが反チャベスクーデターを画策」し失敗した前科があるのでは、直接的介入の壁はますます高そうだ。
・『経済制裁は罪なき人を襲う「焦土作戦」  石油収入で得た外貨で工業品や生活物資を輸入する経済は、原油安をもろに受け国際収支が悪化した。 通貨ボリバルは下落、輸入品の価格は上昇し人々の暮らしを直撃した。 石油企業を国有化し、要職を軍関係者に与えた内政が災いした。市況がいい時は素人経営でもしのげるが、悪化すると経営判断が追いつかない。原油生産は落ち込み、経済を委縮させた。 2013年にチャベス大統領が死去、副大統領から後継についたマドゥロ氏は、石油一本足経済の弱点をもろに受けた。 米国との対立で外資導入は進まない。原油の値下がりで資金不足に陥った。 救いの手を差し伸べたのが中国だった。南米への影響力拡大を目指す習近平国家主席はベネズエラを橋頭保に見立てた。マドゥロ政権は中国マネーに頼り対外債務が急拡大した。 一方で、ロシアもこの間、「反米政権」にずっと経済支援を続けてきた。 脆弱なベネズエラ経済がマヒする決定打となったのが、米国による経済制裁だ。 2015年から米国は、ベネズエラ要人が米国に持つ資産の凍結を開始。マドゥロ大統領の全ての資産まで凍結された。 17年8月にはベネズエラ政府や国営石油会社が発行する株や債券の購入を禁止。資本市場から締め出した。 金融制裁が追い打ちをかける。貿易の資金決済が制限され、日用品や医薬品の代金が支払えず、輸入が止まるという事態が起きている。糖尿病薬のインスリンやマラリア治療薬などが入手できない。 貿易はドル決済がほとんどだが、米国の銀行が決済しないためベネズエラは「兵糧攻め」にあっているに等しい。 「子どもに薬を」などと人道支援を訴える記事が日本の新聞に載るが、医薬品不足の根っこには米国による経済制裁があることを忘れてはいけない。 資金不足を補うためベネズエラは、中央銀行の輪転機をフル回転させ景気を好転させようとした。その結果が、とんでもないハイパーインフレだ。 アベノミクスと似た通貨の増発だが、モノがあふれる日本と違い、経済制裁で物資の供給が足らないところで通貨が大量発行されたから、たちまち物価急騰にに火がついた。 国際通貨基金(IMF)は、昨年7月、「ベネズエラの物価上昇率は年率100万%になるだろう」と推計した。トイレットペーパーを買うのにレンガ3つ分ほどの札束が必要になる天文学的なインフレが起きている。 石油に頼り切った脆弱な経済や経済運営に不手際があったにせよ、事態を深刻化させたのは、他でもない経済制裁という「兵糧攻め」である。 そしてその影響をもろに受けたのはチャベス大統領を熱狂的に支持した下層の人々だ。 命と直結する食料品や医薬品の不足がマドゥロ政権への不信となって現れた。 今のベネズエラはの状況は、米国にとって首尾上々だろうが、これは「焦土作戦」ではないか。 気に入らない為政者を引きずり下ろすため、罪のない人たちの生活を破壊し、難民が生ずるような状況を作り出している。 むしろ米国のやっていることの方が、「人道に反する行為」だと思うが、一方で米国は支援物資を届けるからと、国境を開くよう要求している』、米国は直接の介入の代わりに、「焦土作戦」で経済を混乱させているようだ。
・『強国の介入で残るのは内戦の泥沼と悲惨な暮らし  大国が「大義」を掲げて他国に侵攻したり、影響力を強めようとしたりした例は、歴史上、枚挙にいとまがない。最近のイラクやアフガニスタン、シリアなどもそうだ。 ブッシュ政権時代、「9・11同時多発テロ」事件(2001年)を首謀したアルカイダのビン・ラーディン氏の引き渡しなどを求めて、米軍がアフガニスタンを制圧した後、首都カブールでカルザイ大統領を取材したことがある。 大統領邸を警護するのは海兵隊で、周囲は全て米軍で固められ、その中にポツンと大統領がいた。 好感の持てる人物だったが、亡命アフガニスタン人の中から、米国が選んだのはこういう人か、と納得した。見栄えがよく、好感度の高い外向けの役者である。 ベネズエラで、無名のグアイド氏に正当性を付与するには「独裁者と戦う民主化のヒーロー」に仕立てるのがいい、ということなのだろう。 ウォール・ストリート・ジャーナルが「新しい民主的リーダー」とたたえるなど、米国の主要メディアも政権と足並みをそろえ、軍事介入の露払いをするかのような論調だ。 中南米は、巨大な覇権国家の風圧にさらされ、多くの国は“隷属”を強いられてきた。歯向かえば、「非民主的」の烙印を押され、政権転覆や経済封鎖にさらされる。 逆らって得はなく、かろうじてキューバ、ニカラグア、ベネズエラが抵抗を続けている。ベネズエラが倒れれば、ドミノ倒しも起きかねない。 しかも強国が介入したの後に残るのは、終わりなき内戦と悲惨な暮らしだということも、歴史が教えている』、米国は「焦土作戦」の他にも、ベネズエラ軍部にも働きかけているのだろうが、果たしてどうなるのだろう。

次に、10月25日付けYahooニュースが転載したダイヤモンド・オンライン記事、第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミストの西濵 徹氏による「「南米の優等生」チリで非常事態宣言、治安悪化の背景にある経済問題」を紹介しよう。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191025-00218383-diamond-int&p=1
・『地下鉄料金引き下げ(注:正しくは、引き上げ)が学生デモ起こす 暴徒化で放火も  南米のチリでは、10月に入って以降に首都サンティアゴで学生デモが発生して一部が暴徒化した結果、ピニェラ政権がサンティアゴ周辺に非常事態宣言を発令する異常事態となっている。 昨年来の国際金融市場の動揺などに伴い通貨ペソ相場が下落し、輸入物価への押し上げ圧力が強まったことで燃料価格への上昇圧力が強まるなか、政府が財政悪化に歯止めを掛けるべく地下鉄料金を引き上げたのが学生デモのきっかけである。 同国ではここ数年、景気減速に伴う歳入減などの影響も重なり、財政赤字の拡大傾向に拍車がかかっている。輸出低迷などを受けて経常赤字も拡大し、「双子の赤字」に直面している。ピニェラ政権にとっては経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の改善が喫緊の課題となっていた。 その後、学生を中心とするデモ活動のほか、大勢で一斉に無賃乗車を決行するといった状況が1週間以上にわたって繰り広げられてきた。一部のデモ隊が過激化する様相を見せ、サンティアゴでは地下鉄の駅やバスなどの公共交通機関のほか、さまざまな建物や警察署、スーパーマーケットなどに放火する動きが出た。死者が発生する事態にまで発展し、最終的に治安当局が鎮圧に乗り出す格好となった』、「南米の優等生」チリで非常事態宣言」、とは南米はどこも大変なようだ。
・『1人あたりGDPは比較的高いが、銅依存の経済体質変わらず  その結果、ピニェラ大統領は現地時間の今月18日に非常事態宣言を発令したほか、翌19日には地下鉄料金の値上げ凍結を発表するなど、政策の見直しを余儀なくされている。 なお、同国では1973年に発生した軍事クーデターを経て誕生したピノチェト政権下で約20年にわたって軍事独裁政権が敷かれた後、1990年に民政移管されたため、多くの国民に当時の記憶が残るなか、軍部による強硬策が採られたのは極めて異例と捉えられている。 なお、チリは1人当たりGDP(国内総生産)が昨年時点で1万5829ドルと中南米諸国のなかでは比較的高い。2010年には中南米諸国のなかでメキシコ(1994年)に次いで、いわゆる「先進国クラブ」とも称されるOECD(経済開発協力機構)に加盟するなど、域内でも政治および経済の両面で比較的安定しているとされる。 ただし、同国の人口は1905万人(今年8月時点)と中南米諸国のなかでは小さく、経済構造的には輸出のGDPに占める比率が約3割と輸出依存度が相対的に高い。さらに、財輸出に占める銅の割合はかつてに比べて低下しているものの、依然として半分近くを占めるなど「モノカルチャー」的な側面がある』、チリでは、自由選挙で成立した左派のアジェンデ政権を米国主導で軍部が1973年にクーデターで倒し、多くの左派活動家が殺害され、軍事政権が1989年まで続いた悲惨な歴史がある(Wikipedia)。今回の「非常事態宣言」はあくまで緊急避難的なものなのだろう。
・『輸出の頭打ちで急速に鈍化する経済成長率  結果的に世界経済の動向に影響を受けやすい上、近年は銅の世界有数の需要国である中国の景気動向に大きく左右される傾向にある。昨年の経済成長率は前年比プラス4.02%と5年ぶりに4%を上回る伸びに加速したものの、今年前半の経済成長率は同プラス1.76%と急速に勢いを失っている。足下の輸出が頭打ちの様相を強めて、前年を下回る伸びで推移していることが影響している。 他方、チリはOECD諸国のなかでは最もジニ係数が高いなど社会・経済的な格差が大きい。近年の生活費や教育費などの高騰の動きを受けて格差が一段と拡大する傾向が強まっており、低所得者層を中心に不満が高まる動きもみられた。 こうしたなか、足下のインフレ率は9月時点で前年比プラス2.11%と中銀が定めるインフレ目標(3プラスマイナス1%)の下限近傍で推移しており、一見すると落ち着いた状況が続いている』、「格差が一段と拡大する傾向が強まっており、低所得者層を中心に不満が高まる動きもみられた」、なるほど。
・『首都サンティアゴから地方都市に拡散するデモ  しかし、上述のように国民の間には広く不満が鬱積する状況が続いてきたなか、政府による地下鉄料金の引き上げ決定という緊縮策の実施が国民感情の「爆発」につながった可能性は高い。 なお、年明け以降の中南米諸国においては、今月にエクアドルでモレノ政権による公共料金の引き上げに反対する国民が暴徒化して一時非常事態宣言が発令された。アルゼンチンではマクリ政権による政策運営を批判する国民が散発的にデモを繰り広げる状況が続いている。 ブラジルでもボウソナロ政権による教育予算削減に反対する学生および教職員が大規模な抗議デモを展開するなど、政府主導による緊縮策をきっかけに国民が不満を爆発させる動きが見られる。 このように、中南米諸国では地域の社会に「液状化」的な動きが広がりを見せるなか、チリの首都サンティアゴでは11月にAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議が、12月にはCOP25(国連気候変動枠組条約第25回締約国会議)の開催が控えている。ピニェラ政権としては早期の事態収拾により国際的なダメージを最小化することを狙ったと考えられる。 ただし、デモの動きは首都サンティアゴから地方都市にも広がりを見せており、政府内では他の都市での非常事態宣言を発令する可能性が示唆されるなど、事態収拾が図られるかは予断を許さない状況にある』、APEC首脳会議は、治安悪化から中止になったようだ。南米での政治不安の広がりは本当に不気味だ
・『不十分な外貨準備 対外的ショックに対する耐性は高くない  しばしば「南米の優等生」とも称されることが少なくないチリだが、外貨準備高は9月末時点で389億ドルである一方、8月末時点における短期対外債務残高が227億ドルと外貨準備高の6割弱の水準に達するなど、対外的なショックに対する耐性は必ずしも高くない。 事実、IMF(国際通貨基金)が輸出やマネーサプライ、短期対外債務残高、その他債務残高などを元に算出するARA(外貨準備高の適正水準:Assessing Reserve Adequacy)対比で、外貨準備高は適正とされる「100~150%」の水準に満たない。対外的に脆弱と判断できる。 足元では、米中貿易摩擦など世界経済を取り巻く環境に不透明感が高まるなか、国際金融市場も動揺しやすい状況が続いている。ピニェラ政権にとっては早期に事態収拾を図ることができるか否か、正念場に立っているといえる』、軍政に戻ることなく、事態を収拾してほしいものだ。
タグ:中南米 yahooニュース ダイヤモンド・オンライン 山田厚史 (その1)(一触即発のベネズエラ 「独裁vs民主化」の図式に翻弄される悲惨、「南米の優等生」チリで非常事態宣言 治安悪化の背景にある経済問題) 「一触即発のベネズエラ、「独裁vs民主化」の図式に翻弄される悲惨」 コロンビア国境に集められた「緊急援助物資」の搬入を巡り、マドゥロ政権と反政府勢力が一触即発の状況 「暫定大統領」を宣言したフアン・グアイド国会議長をいち早く支持したトランプ政権は、軍などに反政府勢力側につくように呼びかけ、米国メディアも「人道支援を独裁政権が阻んでいる」と伝える 「暫定大統領」の承認で世界が二分 米国は「武力介入」示唆 「暫定大統領」を、その後、カナダやEUなどの先進国、近隣国が承認。日本も2月20日、支持を表明 中国、ロシアなどは内政干渉を禁じる国連憲章を守るとしてマドゥロ政権を擁護し、世界が二分 「喉に刺さったとげ」抜きたい米国 「反米政権」の転覆を狙う? 過去にはCIAが反チャベスクーデターを画策 経済制裁は罪なき人を襲う「焦土作戦」 強国の介入で残るのは内戦の泥沼と悲惨な暮らし 西濵 徹 「「南米の優等生」チリで非常事態宣言、治安悪化の背景にある経済問題」 学生デモが発生して一部が暴徒化 サンティアゴ周辺に非常事態宣言を発令 財政赤字の拡大傾向に拍車がかかっている。輸出低迷などを受けて経常赤字も拡大し、「双子の赤字」に直面 1人あたりGDPは比較的高いが、銅依存の経済体質変わらず 輸出の頭打ちで急速に鈍化する経済成長率 首都サンティアゴから地方都市に拡散するデモ 不十分な外貨準備 対外的ショックに対する耐性は高くない
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韓国(文在寅大統領)(その3)(韓国に輸出急減の懸念 自力での経済安定が望めない深刻事情、曺国法務長官が突然の辞任 それでも残るクーデター 戒厳令の可能性、韓国通貨危機! 文政権「韓国経済は善戦」発表直後にIMFからダメ出しの“赤っ恥” 海外の投資家や企業も見限る) [世界情勢]

韓国(文在寅大統領)については、2017年10月25日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)(韓国に輸出急減の懸念 自力での経済安定が望めない深刻事情、曺国法務長官が突然の辞任 それでも残るクーデター 戒厳令の可能性、韓国通貨危機! 文政権「韓国経済は善戦」発表直後にIMFからダメ出しの“赤っ恥” 海外の投資家や企業も見限る)である。

先ずは、法政大学大学院教授の真壁昭夫氏が9月10日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「韓国に輸出急減の懸念、自力での経済安定が望めない深刻事情」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/214043
・『韓国経済に輸出急減の懸念が顕在化  足元、韓国経済に輸出急減の懸念が顕在化している。元々、韓国は輸出依存度の高い経済構造で、輸出の減少は経済全体に深刻なマイナス要因となる。 韓国の輸出急減の背景には、主力輸出先である中国の景気減速やトランプ米大統領の通商政策の影響などがある。特に、米中の貿易摩擦の深刻化に伴い、現在、世界のサプライチェーンが混乱している。そのため、輸出依存度の高い国ほどマイナスの影響が出ている。 韓国はその1つの例といえる。韓国以外にも、ドイツをはじめとするユーロ圏各国を中心に輸出依存度の高い国の景気は急速に悪化している。 8月の韓国の輸出は前年同月比で13.6%減少した。9ヵ月連続で韓国の輸出は前年同月の実績を下回っている。5月以降、米中の貿易摩擦への懸念が高まるに伴い、韓国の輸出減少幅は拡大している。 これまで韓国は、サムスン電子など主力の財閥企業の輸出を増やすことで経済成長を遂げてきた。韓国のGDP(国内総生産)に占める個人消費の割合は50%を下回っており、米国や日本に比べ内需は厚みを欠いている。半導体の主要材料などを輸入し、国内で製品を生産し輸出して収益を得てきた韓国にとって、輸出減少は経済の屋台骨が揺らぐことにもなりかねない。 韓国は、もう少し早い段階から財閥に依存した経済構造を改める必要があった。しかし、歴代の政権は改革に伴う痛みを避けてしまった。国内の資本の蓄積も期待されたほど進んでいない。経済環境の悪化に加え、最側近による数々の不正疑惑が浮上した文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、さらに厳しい状況に直面する可能性がある』、輸出依存型経済で「8月の韓国の輸出は前年同月比で13.6%減少」、というのは大きな打撃だ。
・『サプライチェーン混乱の影響度合い  韓国の輸出が減少している要因の1つとして、米中の貿易摩擦の影響から世界のサプライチェーンに混乱が生じていることは見逃せない。 これまで、世界各国の企業は“世界の工場”としての地位を高めてきた中国に生産拠点を置き、必要な時に、必要なモノを、必要なだけ、各国から調達する体制を整えてきた。その上で企業はモノを生産し、世界各国に輸出して収益を獲得してきた。この中で韓国は、半導体などを各国企業に供給する重要な役割を担ってきた。 しかし、2017年1月に米国大統領に就任したトランプ氏が、グローバルなサプライチェーンを分断している。大統領再選を狙う同氏は、制裁関税の発動などによって対中貿易赤字を削減し、米国産大豆などを中心に対中輸出を増やしたい。できるだけ早期に交渉をまとめたいというのがトランプ氏の本音だろう。 一方、中国も引くに引けない。すでに共産党の長老などから習近平国家主席に対する不満が増えている。香港での反政府デモが想定外に長引いていることもあり、中国は米国に譲歩できなくなっている。中国は基本的には交渉を持久戦に持ち込むなどして、米国の圧力が低下するのを待ちたいはずだ。米中の交渉がどのように進むかは見通しづらい。 この中、制裁関税の回避などを目指して、中国に置いてきた生産拠点をベトナムやインド、タイなどに移す企業が増えている。この動きはまだ落ち着いていない。今後、さらに供給網が混乱する恐れもある。同時に、世界経済の先行き懸念の上昇も重なり自動車や鉄鋼、機械など幅広い業種で減産を重視する考えが増えている。 これが、韓国の輸出にブレーキをかけた。これまで相対的に安定感を保ってきた米国において、ISM製造業景況感指数が景気強弱の境目である50を下回ったことを見ると、世界的なサプライチェーン混乱のマグニチュードは軽視できない。当面、韓国の輸出には下押し圧力がかかり易いものと考えられる』、米中貿易戦争が恩恵をもたらすのではなく、逆に「サプライチェーン混乱の影響」が出てきたようだ。
・『世界的な半導体市況などの悪化  韓国の輸出減少を考える上では、世界的な半導体市況の悪化などの影響も大きい。 米国の半導体工業会(SIA)によると、7月、世界全体での半導体売り上げは前年同月比15.5%減少した。需給関係の悪化から、ICチップなどの価格には下落圧力がかかりやすい状況が続いている。 その要因の1つとして、スマートフォン需要の低迷は見逃せない。2017年以降、世界全体でスマートフォンの出荷台数が減少している。スマートフォンの普及は韓国のサムスン電子などが半導体の輸出を増やし、業績拡大を実現するために欠かせなかった。 それに加え、世界的に設備投資が減少している。2016年から17年にかけて世界的にデータセンターなどへの投資が増加した。その反動とサプライチェーン再編のコスト負担から、足元、世界各国で設備投資の減少が鮮明化している。こうした動きが、輸出主導で景気回復を実現してきた韓国経済を直撃している。 さらに、米アップルは制裁関税の回避のために供給網の再編だけでなく、製品原価の見直しにも着手し始めた。アップルは、製品原価を引き下げるために、有機ELパネルの調達先をサムスン電子から中国の京東方科技集団(BOE)に切り替えることを検討していると報じられている。また、アップルがサムスン電子に対して約束したディスプレーを購入しなかったことへの違約金を支払ったとの観測もある。 これは無視できない変化と考えるべきだ。 現在、中国は政府の補助金を用いて半導体をはじめとする先端分野の開発・生産能力の引き上げに注力している。また、世界的なサプライチェーンの混乱を受けて、世界の半導体などの生産能力には空きが出ている。価格を抑えて受注を確保しようとする企業が出てもおかしくはない。より有利な条件での半導体などの調達を目指し、世界の企業が韓国外の企業との取引を重視する可能性が高まることは軽視できない。 その意味で、韓国経済の実力が問われているといえる』、「サムスン電子」がアップルを失うとすれば、影響はかなり大きい筈だ。
・『文大統領の政策運営で懸念される韓国経済の苦境  韓国経済の先行きを慎重に考える市場参加者や企業経営者は増えている。韓国最大の輸出先である中国の経済は、成長の限界を迎えつつある。中国では、公共事業の積み増しなどにもかかわらず、十分な効果が確認できていない。米国が第4弾の対中制裁関税を発動し、中国がそれに報復したこともあり、中国の企業、消費者のマインドは一段と悪化する恐れがある。いうまでもなく、これは韓国経済にとってマイナスだ。 それに加え、日韓の関係が悪化し、米国も韓国のことを当てにしなくなっていることも見逃せない。歴史を振り返ると、通貨スワップ協定や半導体材料などの調達、さらには半導体製造技術の吸収といった点において、韓国はわが国に依存し続けてきたといえる。 日韓の関係がこじれにこじれる中、韓国がどのようにして経済を安定に向かわせるかは、かなり見通しづらい。最側近による数多くの不正疑惑浮上に直面する文大統領に対する国民の見方も、徐々に変化している。文大統領への信頼感がさらに低下する可能性は高まっている。 その中で、文政権が経済の安定を目指すことは難しいだろう。韓国では国内産の材料などを用いて半導体生産を進めようとする動きが出ている。その一方、韓国の株式市場では外国人投資家などが株式を売却し、資金が海外に流出している。韓国政府・企業の取り組みが世界の企業や市場参加者の信頼を得ているとは考えられない。わずかな成分の差が半導体の性能に大きな影響を与える。従来、わが国の技術力に依存して生産力の増強に注力した韓国が、世界の信任を得られるだけの技術を短期間のうちに生み出すことは想定しづらい。 世界的なサプライチェーン混乱の中、文大統領は自国の経済をさらなる苦境に向かせてしまっているように見える。現時点で、韓国が自力で経済を安定に向かわせる方策は見出しづらい。もし米中の摩擦が一段と激化し、米国の景気後退への懸念がさらに高まるような展開が現実のものとなれば、韓国経済はかなり深刻な状況に陥る可能性がある』、サムスンがベトナム経由で輸出を急拡大させているとのニュースもあり、韓国ウォン安とも相まって、トランプ大統領の逆鱗に触れリスクを指摘する声もあるようだ。

次に、10月14日付けデイリー新潮が掲載した元日経新聞ソウル支局長の鈴置高史氏へのインタビュー「曺国法務長官が突然の辞任 それでも残るクーデター、戒厳令の可能性・・・韓国観察者の鈴置高史氏が読み解く」を紹介しよう。Qは聞き手の質問
https://www.dailyshincho.jp/article/2019/10141900/?all=1&page=1
・『韓国の曺国(チョ・グッ)法務部長官が10月14日、辞意を表明した。就任35日目、家族の不正に検察の捜査の手が入る中での辞任だった。背景を韓国観察者の鈴置高史氏が読み解く』、鈴置氏の見解やいかに。
・『国会ではなく街頭で争う左右  Q:突然の辞任でした。 鈴置: 文在寅(ムン・ジェイン)政権を追い詰めたのは、国民の多くを味方に付けた保守の大集会・デモでした。決め手となったのは、開天節(建国記念日)の10月3日、数十万人が集まって「曺国逮捕」「文在寅退陣」を要求した集会・デモです。 何があっても政権を批判する保守的な人々に加え、政治色の薄い「普通の人」も参加したのです(「『反文在寅』数十万人デモに“普通の人”が参加 『米国に見捨てられる』恐怖が後押し」)。これが効きました。辞任の理由として、文在寅大統領は「国民の間に大きな葛藤を引き起こしたことを申し訳なく思う」と語っています。 Q:文在寅政権にはデモなど無視する手もあった。 鈴置: 確かにそうです。実際、10月3日の大デモの後にも、曺国法務部長官を切る動きは表面化しませんでした。それが今になって辞任させたのは、クーデターの恐怖が高まったこともあったと思います。 Q:クーデターですか? 鈴置: 保守派の大型集会・デモに対抗し、左派も集会・デモを繰り出しました。国会ではなく、街頭を舞台に力比べが始まったのです。それを見た韓国メディアは「代議制民主主義が崩壊する」と悲鳴をあげました。 韓国では国論が分裂して議会では収拾がつかなくなり、左右が街頭での勝負に賭けた時、クーデターが起きているからです。 警告を真っ先に発したのは韓国経済新聞でした。社説「極度の国論分裂…国民を街頭に追いたてた政治、誰の責任か」(10月3日、韓国語版)のポイントを翻訳します。 ・開天節のソウルは都心の光化門からソウル駅まで12車線の大路が集会参加者で埋め尽くされた。「場外集会としては史上最大」と言われるほどに街頭に集まった人々の主張は「曺国辞退」に集約された。 ・5日前(9月28日)に「曺国守護」「政治検察撲滅」を叫ぶ市民が、瑞草洞の検察庁前の道路を占拠したのとあまりにはっきりとした対比となった。この時も多くて10万余人と推定される人波が、検察庁から教育大学駅までの9車線に足の踏み場もないほど満ちた。 ・法務部長官の進退に対し意見を表明するため、市民らが広場に群れ集まる「街頭政治」という極端な国論分裂を如実に示した。 ・国民が自分の代理人を選んで国会を構成し、彼らが調整と妥協を通じ国事を決定する、成熟した代議制民主主義が機能しなくなっているとの証拠でもあろう。 ・与野双方が相手を「積幣」「左派独裁」と決めつけ、一寸の譲歩もなく対決する「政治の失踪」が国民を街頭に追いたてているのだ』、「今になって辞任させたのは、クーデターの恐怖が高まったこともあった」、そこまで事態が切迫していたのには驚かされた。
・『「キーセン・デモ」の後にクーデター  Q:韓国人は2016年の朴槿恵(パク・クネ)退陣要求デモを「民主主義の精華」と誇っていたのに……。 鈴置: 英国名誉革命、フランス革命、米国独立革命と並ぶ「世界4大革命の1つ」と自画自賛しています(『米韓同盟消滅』第3章第1節「疾風怒濤の韓国」参照)。 多くの韓国人が「安倍政権をデモで引きずり降ろせない日本人は韓国を羨ましがっている」とも信じています。文在寅大統領も海外に出るたびに「韓国革命」を誇ってみせます。褒めてもらったことはあまり、ないようですが。 一方、今回の集会・デモは、左右がそれぞれ普通の人を取り込んで参加人数を競う国論分裂型の街頭闘争でした。左派が「腐敗した権力と戦う」と音頭をとって、多くの国民を味方に付けた2016年の集会・デモとは完全に異なるのです。 韓国は「クーデターが成功した国」です。1度目は1961年5月16日に朴正煕(パク・チョンヒ)少将らが敢行した軍事クーデターです。前年の1960年4月19日の四月革命により李承晩(イ・スンマン)大統領が下野しました。 その後、左右から多様な要求が噴出。後継政権の内輪もめもあって、国が混乱に陥りました。そんな中、一部の軍人が国の危機を救うとの名分を掲げて立ち上がったのです。当時、ソウルに住んでいた韓国人から、以下のように聞かされたことがあります。 ・四月革命の後はキーセンまでがデモするほど社会が混乱した。左派の学生が統一を名分に北朝鮮との提携に動きもした。クーデター自体には賛成しない知識人が多かったが「これで混乱が収まる」とほっとする向きもあった』、「韓国人は2016年の朴槿恵退陣要求デモを・・・ 英国名誉革命、フランス革命、米国独立革命と並ぶ「世界4大革命の1つ」と自画自賛」、思い上がりとずうずうしさには呆れるばかりだ。
・『空気は「過去2回」と似ていた  Q:2回目は? 鈴置: このクーデターで政権を握った朴正煕大統領が、1979年10月26日に暗殺されたのがきっかけとなりました。16年間も続いた、いわゆる「軍事独裁政権」が突然に崩壊したことで、韓国は民主化に湧き「ソウルの春」と呼ばれました。 ただ、権力の帰趨も不透明になりました。そこで暗殺事件のどさくさの中、力を溜めていた全斗煥(チョン・ドファン)国軍保安司令官らが1979年12月12日、不安定な政局を収めると称して粛軍クーデターを敢行、成功しました。 韓国経済新聞の社説のどこにも「こんなことやっていたらまた、クーデターが起こるぞ」とは書いてはありません。でも、少し勘のいい韓国人ならそう読むでしょう。 朴槿恵政権が弾劾により倒された。2017年5月から権力を握った左派の文在寅政権は「積幣清算」――過去の弊害を一挙に正す――を謳い、保守勢力の根絶やしに動きました。 朴槿恵、李明博(イ・ミョンバク)の前・元大統領に加え、保守政権時代の最高裁長官まで逮捕しました。 朴槿恵政権の言いなりに動いたとして検事や軍人を捜査。この中から4人の自殺者が出ています。「やられる側」に回った保守は当然、死に物狂いで左派政権を倒そうとします。 曺国法務部長官の任命問題も本質は左右の権力闘争です。文在寅政権は左派弾圧を担ってきた検察から権力を奪う計画です。さらには新たに設立する公務員監察組織を通じ、検察をはじめとする保守勢力に報復すると見られています。 この「検察改革」を任されたのが文在寅大統領と近い、法学者の曺国法務部長官でした。検察が自らを指揮する権限を持つ法務部長官の家族の不正事件を捜査し、引きずり降ろそうとする異様な状態に陥ったのも、自分たちが「やられる側」になったからです。 左右はどちらかしか生き残れない最終戦争に突入した。その戦いの手法が双方の支持者を動員する大衆集会とデモだったのです。過去2回のクーデターの時と似てきていたのです』、「検察が自らを指揮する権限を持つ法務部長官の家族の不正事件を捜査し、引きずり降ろそうとする異様な状態に陥ったのも、自分たちが「やられる側」になったからです」、司法の安定性という意味では問題があるが、安倍政権に「忖度」ばかりしている日本の検察に比べれば、はるかに政権からの独立性が確保されてきたようだ。
・『メディアが左右対立に油  Q:そこで韓国経済新聞は社説で「街頭政治を排し、代議制民主主義を守れ」と訴えたのですね。 鈴置: そうです。しかし、この社説は逆の結果を生んだ――街頭政治を煽ったのです。「代議制を守れ」と主張すると同時に「それを壊した責任は左派にある」と厳しく非難したからです。先ほどの引用に続く後半の一部を翻訳します。 ・大統領と与党が露骨に「曺国は退陣させず」と宣言した直後に、大規模デモが起きたことにも注目せねばならない。 ・無条件に曺国を守る姿勢なら「問題は大統領」との声がさらに高まるだろう。国民を街頭に追いたてる政治は与野すべての失敗だが、国政を主導する与党により大きな責任があると見なければならぬ。 韓国経済新聞は「代議制民主主義の崩壊」を指摘しましたが、結論は政権批判でした。保守の牙城、朝鮮日報も10月4日の社説「常識を裏切った大統領1人が呼び起こした巨大な怒り」(韓国語版)で「民心を街頭での力の対決に追いやった」と、同様の手口で政府・与党を非難しました。 すると政府に近い聯合ニュースが「代議制民主主義の崩壊」を論じつつ、検察の責任を持ち出しました。「政治が消えた『広場』VS『広場』の対決…極度の国論分裂を憂慮」(韓国語版)です。 10月4日14時49分になって配信したことから見て、朝鮮日報などへの反撃を狙ったと思われます。 この記事は冒頭では「進歩(左派)と保守が競争して数の対決に出れば、分裂の政治を加速する」「与野の指導部が集会やデモを支持層の結束に利用すれば、政治不信を深化し代議制民主主義の危機を生む」などと、中立の立場で「政治を憂えて」いました。 しかし「何か政治的な意図があるのではないかと疑われるほどに検察が(曺国法務部長官一家に対し)過度に捜査し、その結果、政治が保守と進歩に分かれて、新たな対決の街頭政治に転落した」との匿名の与党政治家の発言も引用しました。要は「代議制民主主義の危機を呼んだのは保守陣営の検察である」と指弾したのです』、左右の新聞が、「代議制民主主義の崩壊」を指摘しながらも、非難の対象は検察、現政権と180度違うのは、レトリックの極致だ。
・『大統領は広場の声を聞け  Q:「左右どちらが代議制民主主義を壊したのか」との論争に陥った……。 鈴置: その通りです。そして、これが街頭政治に油を注いだ。「責任論」の高まりを背景に、左派の与党は「我々の9月28日の集会には覚醒した国民が自発的に参加した。一方、10月3日の野党の集会は文在寅政権を揺さぶる目的で動員をかけ、人を集めた不純な集会」と決めつけました。 その非難に対抗し、保守はハングルの日で休日である10月9日にも大集会を開きました。「動員ではこれだけの参加者は得られない」と見せつけたのです。 一方、左派は自らの正当性を訴えるため、10月5日にも集会を開きました。そして左右両派は10月12日に同じ場所、瑞草洞で集会を開きました。両派の衝突を防ぐため、警察は5000人の機動隊員を動員しました。「街頭政治」は激しくなる一方だったのです。 中央日報も10月7日に社説「国の分裂いつまで…大統領がソロモンの知恵発揮を=韓国」(日本語版)で「政界はむしろ陣営間の争いを煽り、自ら代議民主主義危機を招いている」と、「広場の声」による勝負に警告を発していました。 ところが、その3日後の同紙は社説「最低支持率を記録した文大統領、広場の叫び声に耳を傾けよ」(10月10日、日本語版)で、見出しにもある通り、「大統領は広場の声を聞け」と主張したのです。 ・大統領は自身の陣営と核心支持層だけ見てはならない。あのように多くの人が叫ぶ広場の叫び声なら、厳重に受け止めるべきだ。 「街頭政治は代議制民主主義の破壊だ」などと、左右双方を第3者的に批判する余裕がなくなったのです。「破局」が迫った、との認識からでしょう』、「中央日報」が社説を「3日後」には180度変えたとは、節操のない新聞社だ。
・『検察は左翼と戦うのに軍は傍観か?  Q:破局……クーデターが起こるというのですか、今の韓国で。 鈴置: それを期待する人がいるのは確かです。在野保守の指導者の1人、趙甲済(チョ・カプチェ)氏は9月21日、自身のサイトで「今、検察は左翼と戦っている。国軍は見学だけするというのか?」(韓国語)を書きました。 趙甲済氏は「民族反逆者の金正恩(キム・ジョンウン)勢力と手を組むものも民族反逆者だ」と文在寅政権を非難。そのうえで「今、検察は左翼、腐敗、反憲法、民族反逆者勢力と戦っている。国軍は見学だけするのか?」と呼びかけました。 ただ、こうした呼びかけがなされるということは、軍がクーデターに動く公算が低い、との認識の裏返しでもあるわけです。 高級軍人もすっかりサラリーマン化して、将官にしてもらえるか、大将・中将で退役できるかに小心翼々。人事権を持つ青瓦台をヒラメのように見上げてばかり、というのが韓国の定説です。 Q:では、クーデターは起きない? 鈴置: 「そう見る韓国人が多い」のは事実です。しかし、「起きない」とも断言できません。前の左派政権、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の時、米軍に「クーデターを起こすから支持してくれ」と持ちかけた韓国の軍人がいました。関係者が明かしました。 Q:それに対し米国の軍人はどう答えたのですか? 鈴置: 「前の2回はやむなく追認したが今度はもう、許さないぞ」と言ったそうです。そう言われてクーデターをあきらめたのか、元々、それほど本気ではなかったのかは不明ですが、この時は不発に終わりました』、「高級軍人もすっかりサラリーマン化して、将官にしてもらえるか、大将・中将で退役できるかに小心翼々。人事権を持つ青瓦台をヒラメのように見上げてばかり、というのが韓国の定説です」、クーデターは起きないと 「そう見る韓国人が多い」、確かに、1996年にOECDにも入り、先進国の仲間入りしたのに、いまさらクーデターでもないだろう。
・『朴槿恵政権当時も戒厳令に期待  Q:結局、曺国辞任でクーデターは回避できましたね。 鈴置: とりあえずは。しかし、左右どちらかしか生き残れない戦いが終わったわけではありません。法務部長官の首をとって勢いに乗る保守は、政権への攻勢を強めるのは間違いありません。 対立案件は曺国問題だけではありません。別のテーマを探して再び街頭に繰り出すでしょう。デモが大成功したという実績を得たのですから。 Q:文在寅政権はどうやってしのぐのでしょうか? 鈴置: もちろん、クーデターの動きには神経を尖らせ続けるでしょう。政権を握るや否や、軍の諜報部門で政治的な行動に出る可能性のある「機務司令部」を解体したのもそのためです。 今後、再びクーデターが噂されるほどに社会が混乱したら、戒厳令を敷いてデモを抑える手もありますし。 Q:戒厳令ですか! 鈴置: 盛り上がる反政府デモを前に、青瓦台(大統領府)は曺国を辞任させるか、戒厳令を敷くか、との選択肢で考えたと思います。 2016年秋に朴槿恵弾劾デモが盛り上がった際「戒厳令を布告して運動を抑え込もう」と主張した人がいました。いまだに「あの時に戒厳令という奥の手を繰り出しておけば、弾劾もなかった」と、残念がる保守も多い。 機務司令部を解体したのも、この組織が戒厳令を検討したと文在寅政権が疑ったからです。今は政権を握った左派が「自分たちも奥の手を」と考えても、不思議はないのです』、いざとなれば「戒厳令を敷く」のは可能かも知れないが、一旦、強権的手段に訴えると、解除する出口を見つけるのに苦労する筈だ。

第三に、10月18日付けZAKZAK「韓国通貨危機! 文政権「韓国経済は善戦」発表直後にIMFからダメ出しの“赤っ恥” 海外の投資家や企業も見限る」を紹介しよう。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/191018/for1910180002-n1.html
・『韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が世界に恥をさらしてしまった。国際通貨基金(IMF)は15日、韓国の2019年と20年の成長率見通しを大幅に引き下げたが、2日前に大統領府(青瓦台)が楽観的な見解を示したばかりだった。米中貿易戦争や日本の輸出管理強化の影響が指摘されるなか、IMFはデフレ基調や失業率の上昇も予測。「反日」一本やりの政策のお粗末ぶりが際立っている。 「韓国経済は善戦している」。13日にこう発言をしたのは、青瓦台の李昊昇(イ・ホスン)経済首席秘書官。中央日報によると、人口5000万人以上の国で2番目に高い成長率であることを根拠に「経済危機説は誇張されている」とも述べたという。 ただ、韓国経済に詳しい朝鮮近現代史研究所所長の松木國俊氏は、こうした見方について「実態が全く伴っていない」と疑問視する。 「文政権は具体的な手を打っていないのに善戦などできるはずもなく、虚偽の発言というしかない。法相を辞任したチョ国(チョ・グク)氏の問題もあり、これ以上国民の怒りを買えば政権が崩壊しかねないため、あたかも対策を講じていると国民に思わせようと政府が言葉を選んだのだろう。ただ国民は政府が信用に値しないと感じているに違いない」と指摘する。 李秘書官が“楽観視発言”をした2日後の15日、韓国経済が善戦していないことを裏付けるかのようなリポートがIMFから発表された。 「世界経済見通し」の中で、韓国の経済成長率は2019年が2・0%、20年が2・2%と、それぞれ4月時点の見通しから0・6ポイントの大幅引き下げとなった。米中貿易戦争や中国経済の減速で経済が悪化するとの見立てだ。 日本の成長率見通しも19年が0・9%、20年が0・5%だからほめられたものではないが、気になるのは消費者物価指数の見通しだ。韓国は19年が0・5%、20年が0・9%。デフレ脱却道半ばの日本(19年1・0%、20年1・3%)を下回っているのだ。 IMFは韓国の失業率についても19年に4・0%、20年に4・2%と上昇を見込んでいる。 直近の数字をみても、韓国の消費者物価は9月に初の前年割れとなり、輸出は9月まで10カ月連続減少に見舞われている』、OECDによる「経済成長率」見通しは、政府見通しより低いとはいっても、2%台であればまずまずだが、政府に「忖度」した数字なのかも知れない。
・『デフレ懸念が強まるなか、経済が縮小傾向にあるとしか受け止められない数字で、当局者に危機感がないはずがない。 韓国銀行(中央銀行)は16日、金融通貨委員会を開き、政策金利を1・50%から1・25%に引き下げることを決定した。7月に続いての利下げで、過去最低水準になった。 利下げはデフレ転落を阻止し、通貨ウォンの下落で輸出を後押しするというメリットがあるが、韓国の場合、海外からの投資資金が逃げ出しかねないというデメリットも抱えている。 米中貿易戦争のあおりを受けている韓国だが、米格付け会社フィッチ・レーティングスのアナリストは、8月28日に日本がいわゆる「ホワイト国(グループA)」から韓国を除外したことで、韓国経済が受ける影響の大きさが不確かだと評価し、企業の景況感と投資に重しとなる可能性が高いとも分析している。 複数の悪材料に対し、韓国を見限る動きも出ているようだ。 中央日報の『人・お金・企業が韓国から出ていく』という特集記事では、人件費や税金の問題から、韓国ではなく東南アジアでビジネスを展開する経営者や、韓国に工場移転を検討していた企業が人件費を理由に採算が取れないとして見送っている事例が紹介されており、厳しい経済の実情を伝えている。 前出の松木氏は「海外の投資家や企業は、経済の客観的な指数しか信じない。どのくらい危機的な状況にあるのかも見抜かれているだろう。利下げもモルヒネのようなもので、景気回復を長続きさせる手段とはいえず、何度も続けられるものでもない」と指摘する。 韓国経済は処置なしなのか』、「利下げはデフレ転落を阻止し、通貨ウォンの下落で輸出を後押しするというメリットがあるが、韓国の場合、海外からの投資資金が逃げ出しかねないというデメリットも抱えている」、というジレンマには頭が痛いところだろう。いずれにしろ、文政権にとって経済はアキレス腱となるだけに、どう乗り切っていくか注目される。
タグ:韓国 IMF ZAKZAK ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 鈴置高史 デイリー新潮 文在寅大統領 (その3)(韓国に輸出急減の懸念 自力での経済安定が望めない深刻事情、曺国法務長官が突然の辞任 それでも残るクーデター 戒厳令の可能性、韓国通貨危機! 文政権「韓国経済は善戦」発表直後にIMFからダメ出しの“赤っ恥” 海外の投資家や企業も見限る) 「韓国に輸出急減の懸念、自力での経済安定が望めない深刻事情」 韓国経済に輸出急減の懸念が顕在化 8月の韓国の輸出は前年同月比で13.6%減少 サプライチェーン混乱の影響度合い 米中の貿易摩擦 世界的な半導体市況などの悪化 アップルは、製品原価を引き下げるために、有機ELパネルの調達先をサムスン電子から中国の京東方科技集団(BOE)に切り替えることを検討 文大統領の政策運営で懸念される韓国経済の苦境 米中の摩擦が一段と激化し、米国の景気後退への懸念がさらに高まるような展開が現実のものとなれば、韓国経済はかなり深刻な状況に陥る可能性 「曺国法務長官が突然の辞任 それでも残るクーデター、戒厳令の可能性・・・韓国観察者の鈴置高史氏が読み解く」 国会ではなく街頭で争う左右 今になって辞任させたのは、クーデターの恐怖が高まったこともあった 「キーセン・デモ」の後にクーデター 2016年の朴槿恵退陣要求デモを 英国名誉革命、フランス革命、米国独立革命と並ぶ「世界4大革命の1つ」と自画自賛 空気は「過去2回」と似ていた 検察が自らを指揮する権限を持つ法務部長官の家族の不正事件を捜査し、引きずり降ろそうとする異様な状態に陥ったのも、自分たちが「やられる側」になったからです メディアが左右対立に油 「代議制民主主義の崩壊」 大統領は広場の声を聞け 検察は左翼と戦うのに軍は傍観か? 朴槿恵政権当時も戒厳令に期待 今後、再びクーデターが噂されるほどに社会が混乱したら、戒厳令を敷いてデモを抑える手もありますし 「韓国通貨危機! 文政権「韓国経済は善戦」発表直後にIMFからダメ出しの“赤っ恥” 海外の投資家や企業も見限る」 「韓国経済は善戦している」 経済首席秘書官 文政権は具体的な手を打っていないのに善戦などできるはずもなく、虚偽の発言というしかない 「世界経済見通し」 韓国の経済成長率は2019年が2・0%、20年が2・2%と、それぞれ4月時点の見通しから0・6ポイントの大幅引き下げとなった 消費者物価指数の見通しだ。韓国は19年が0・5%、20年が0・9%。デフレ脱却道半ばの日本(19年1・0%、20年1・3%)を下回っている 失業率についても19年に4・0%、20年に4・2%と上昇を見込んでいる 韓国銀行(中央銀行) 政策金利を1・50%から1・25%に引き下げることを決定 利下げはデフレ転落を阻止し、通貨ウォンの下落で輸出を後押しするというメリットがあるが、韓国の場合、海外からの投資資金が逃げ出しかねないというデメリットも抱えている 中央日報の『人・お金・企業が韓国から出ていく』 人件費や税金の問題から、韓国ではなく東南アジアでビジネスを展開する経営者や、韓国に工場移転を検討していた企業が人件費を理由に採算が取れないとして見送っている事例が紹介
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