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金融政策(その46)(その時 現場は凍り付いた…!植田日銀総裁に「経済学の大天才」が噛みついた!その「空気よまない直言」のヤバすぎる中身、日本の地銀が「大崩壊」の末路…米・銀行の「連鎖倒産」でリーマン級「大不況」がやってくる、多くの人が意外と知らない「マイナス金利解除」でも円安が止まらない「根本的な理由」 「為替は金融差で動く」は本当か?) [経済政策]

金融政策については、本年3月29日に取上げた。今日は、(その46)(その時 現場は凍り付いた…!植田日銀総裁に「経済学の大天才」が噛みついた!その「空気よまない直言」のヤバすぎる中身、日本の地銀が「大崩壊」の末路…米・銀行の「連鎖倒産」でリーマン級「大不況」がやってくる、多くの人が意外と知らない「マイナス金利解除」でも円安が止まらない「根本的な理由」 「為替は金融差で動く」は本当か?)である。

先ずは、昨年6月16日付け現代ビジネスが掲載した鷲尾 香一氏による「その時、現場は凍り付いた…!植田日銀総裁に「経済学の大天才」が噛みついた!その「空気よまない直言」のヤバすぎる中身」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111599
・『2人の経済学の天才が激突  6月15日から2日間にわたって行われている日銀政策決定会合だが、マーケットは概ね「大規模緩和の継続」を予想している。 筆者もその見通しには同意するが、ちょうどひと月前の5月15日に開かれた政府・経済経済財政諮問会議で、今後の植田和男日本銀行総裁の政策に大きな影響を与えるのではないかと感じるやり取りがあった。 前編『ノーベル経済学賞「有力日本人候補」が日銀・植田総裁に噛みついた!いったい何があったのか…?』でお伝えしたとおり、植田総裁の経済学のライバルで、プリンストン大学の清滝信宏教授が植田総裁の意見に噛みついたのだ。 本稿では、植田総裁と清滝氏の二人の世界的知性がぶつかり合った会議の中身について詳しくお伝えしていこう』、興味深そうだ。
・『ライバルの直言は「緩和はさっさとやめろ」  5月15日の経済財政諮問会議に出席した植田総裁は、物価の見通しについて、「現在は2%を上回っているが、輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していくもとで、今年度半ばにかけて、2%を下回る水準までプラス幅を縮小していく」とした。 つまり、これまで通り秋口から物価は下がっていくという見通しを示し、対規模緩和を継続した4月の政策決定会合の内容を改めて説明した。 これに対して、経済財政諮問会議に有識者の1人として出席した清滝教授は、植田総裁と真っ向から対立する意見を出したのだ。 清滝教授は、世界経済の現状を「インフレが進行しており、欧米では政策金利の大幅な引上げにもかかわらず、2%を超えるインフレが数年は続くと予想されている」とした上で、日本についても「円安と輸入物価の高騰から、目標値を超えるインフレが続いている」と分析。 その上で、たとえ物価が植田総裁の見通し通りに1〜2%に下がったとしても「インフレ率が1~2%程度に定着すれば、量的・質的緩和は解除すべきである」と指摘した。 植田総裁が量的緩和の解除に慎重なのは、国内で金利が上がりはじめれば日本国債を大量に保有する金融機関に含み損が発生し、アメリカのシリコンバレー銀行のように経営難に陥る地銀が出かねないという懸念もあるからだ。住宅ローンを組む多くの人にも大きなダメージとなりかねない。 低金利に慣れ切った今の日本で金融政策を正常化すると、大きな痛みを伴いかねないのだ。 しかし、グローバル標準の経済学者である清滝教授は発言がたちどころにマーケットに影響する植田総裁と違って、なれ合い的な“日本の空気”など気にする必要などないのだろう。 長期的な視野に立って、最適であろう経済学の知見とセオリーをストレートに述べて「緩和は、さっさと解除しろ」と指摘したのだ』、「長期的な視野に立って、最適であろう経済学の知見とセオリーをストレートに述べて「緩和は、さっさと解除しろ」と指摘」、植田総裁にとっては、耳が痛い話だ。
・『もう「大規模緩和」の効果はない?  ちなみに、清滝教授がノーベル経済学賞に最も近い日本人と言われるゆえんは、1997年に日本のバブル崩壊を説明する「清滝・ムーアモデル」を英経済学者のジョン・ムーア氏と共同で示したことによる。この理論は、リーマンショックでも実証され、金融危機の対応にも貢献したという。 日本のバブル崩壊では、土地や株などの資産価格が暴落した。銀行は不動産などを担保に融資をおこなうが、担保価値が下がることで金融機関の融資もまた停滞する。これが不況を招き、さらに資産価値が下落するという負のスパイラルが不況を長期化させる。 これを精密に分析して解明したのが「清滝・ムーアモデル」で、「失われた20年」とか「失われた30年」と言われる日本の長期停滞を言い当てた。 日本停滞の根本原因を知り尽くす清滝教授だけに、経済財政諮問会議で次のような苦言も呈している。) 「量的・質的金融緩和は持続的成長につながらない」 「1%以下の金利でなければ採算が取れないような投資をいくらしても経済は成長しない」 つまり、量的緩和による低金利は、生産性の低い投資を企業に促し、逆に収益体質を脆弱化している、そのため、むしろ“デフレになりやすくなっている”と言うのである。緩やかなインフレを目指した大規模緩和をこれ以上継続する効果に疑問符を付けたというわけだ。 ライバルの経済学者の直言は、同じく経済学のセオリーを知り尽くす植田総裁の政策にこれからどのように影響するだろうか。 さらに連載記事『業火は日本の金融界にも飛んでくる…!米銀破綻が経営を直撃しかねない「危ないニッポンの銀行」の実名』では、日銀の政策変更も影響しかねない金融機関の実態についてお伝えしていこう』、「量的緩和による低金利は、生産性の低い投資を企業に促し、逆に収益体質を脆弱化している、そのため、むしろ“デフレになりやすくなっている”と言うのである。緩やかなインフレを目指した大規模緩和をこれ以上継続する効果に疑問符を付けたというわけだ」、確かに説得力に富む主張だ。私にはどちらが正しいのか判断することは残念ながら出来ないが、こうした本格的な論戦が始まったことは、日本もようやく欧米の水準に近づいたといえるのかも知れない。

次に、3月20日付け現代ビジネス「日本の地銀が「大崩壊」の末路…米・銀行の「連鎖倒産」でリーマン級「大不況」がやってくる」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107785
・『欧米で急拡大している、金融機関に対する信用不安。このまま連鎖倒産が続けば、やがて2008年のリーマン・ショック級の世界的大不況が訪れると予想する人もいる。はたして、日本経済はこれからどこに向かうのだろうか。 前編記事『リーマン級「大不況」がやってくる…「SVB破綻」でこれから起こりうる「ヤバすぎる事態」』に引き続き、これからの世界経済を予想してみたい』、興味深そうだ。
・『「氷山の一角」なのか  3月8日、SVBが保有する国債の売却損と新たな増資計画を発表すると、同行に対する信用不安が一気に拡大。SVBの動きを危惧した著名投資家やベンチャーキャピタリストたちがツイッターで警告した結果、それがスラックなどプライベートなSNSでどんどん拡散されていった。 そして翌9日、SVBの株価が急落してから10日の破綻までは、まさに「あっという間」だった。かつてのように銀行に押しかけた人も見られたが、今回はオンラインで引き出そうとする預金者が続出。フィンテック(ファイナンス・テクノロジー)時代ならではのスピード感といえる。 12日には、早くも次なる衝撃が金融界を襲う。暗号資産業界との関係が深い、総資産1100億ドル(約15兆円)のシグネチャー銀行(ニューヨーク州)も預金流出に見舞われ、「連鎖破綻」したのだ。 両行の破綻を受け、金融機関に対する信用不安がさらに広まることを恐れたバイデン大統領の動きは素早く、必死に火消しをはかっている。だが、はたして金融不安は完全に消失したといえるのか。 マーケットにとっていちばんよくないのは、何が起こっているのかわからないことだ。最悪のケースが脳裏に浮かび、機関投資家の売り浴びせのネタになってしまいかねない。そう、かつてのリーマン・ショックの時のように―。 中国の交通銀行香港法人元社長の洪灝氏が「SVBの事件は投資家と消費者の信頼を確実に低下させた。SVBは少数派なのか、それとも氷山の一角なのか」などとコラムに記すなど、疑心暗鬼が渦巻く中、シリコンバレーの投資家の一人は、不安な胸中をこう明かす。 「これから何週間か、何ヵ月かの間に、ベンチャーキャピタルやテック企業、スタートアップ関連の銀行が破綻する可能性があるのではないかと危惧しています」』、「SVBが保有する国債の売却損と新たな増資計画を発表すると、同行に対する信用不安が一気に拡大。SVBの動きを危惧した著名投資家やベンチャーキャピタリストたちがツイッターで警告した結果、それがスラックなどプライベートなSNSでどんどん拡散されていった。 そして翌9日、SVBの株価が急落してから10日の破綻までは、まさに「あっという間」だった・・・フィンテック(ファイナンス・テクノロジー)時代ならではのスピード感」、なるほど。
・『また「リーマン・ショック」が起こる  さらなる連鎖が杞憂で済めばいいのだが、じつは今後、銀行破綻が波及すると指摘する人物は、冒頭のドレクスラー氏以外にもいる。世界三大投資家として知られるジム・ロジャーズ氏がその一人だ。 「2008年のリーマン・ショック以降、14年もの間、アメリカではリセッション(景気後退)が起こってきませんでした。 しかし、いまのアメリカのようにインフレ抑制のために金利を上げれば、ベアマーケット(下落相場)を誘発し、財務的に脆弱な銀行が破綻するのは、これまでもあったこと。バイデン大統領は今回銀行を救済しましたが、それがうまくいくとは思えません。 著書『捨てられる日本』の中で、『私の人生で最大の下落相場が5年以内に到来する』と断言していますが、破綻が他の銀行にも及べば、リーマン・ショックの時のような世界的な金融危機が早晩、起きると見ています」 そうなると、いよいよ日本も、「対岸の火事」と見過ごすことはできなくなる』、「『私の人生で最大の下落相場が5年以内に到来する』と断言していますが、破綻が他の銀行にも及べば、リーマン・ショックの時のような世界的な金融危機が早晩、起きると見ています」 そうなると、いよいよ日本も、「対岸の火事」と見過ごすことはできなくなる」、なるほど。
・『世界的大不況の可能性も  ここで、「利上げによる米国債の価格下落で結果的に破綻する銀行が出たことにショックを受けた」と語るのは、金融アナリストでマリブジャパン代表の高橋克英氏だ。気がかりだと同氏がまず指摘するのは、ほかでもない、「米国債の今後の動向」だという。 「今回は2行が問題になりましたが、保有比率はともかく、アメリカの利上げ以降、世界中の金融機関で米国債が評価損の状態にあるといえます。 SVBと同様、米国債を保有する金融機関が含み損を処理しようと一斉に売りに転じれば、歯止めが利かなくなる恐れがあります」 下落が下落を呼べば、金融機関が持つ米国債の含み損がさらに拡大するのは必然。やがて信用不安を招くと資金調達も困難となり、破綻の連鎖から一気に世界的大不況へと発展しかねない。 当然、日本市場も大きな影響を免れない。結果的にアメリカ発の銀行破綻ラッシュが日本に襲いかかってくることも決してありえない話ではないのだ』、「保有比率はともかく、アメリカの利上げ以降、世界中の金融機関で米国債が評価損の状態にあるといえます。 SVBと同様、米国債を保有する金融機関が含み損を処理しようと一斉に売りに転じれば、歯止めが利かなくなる恐れがあります」 下落が下落を呼べば、金融機関が持つ米国債の含み損がさらに拡大するのは必然。やがて信用不安を招くと資金調達も困難となり、破綻の連鎖から一気に世界的大不況へと発展しかねない」、こうしたリスクがこれまでのところ顕在化してないのはラッキーだ。
・『地銀や日銀にも影響か  「アメリカとまったく同じことが起こりえる」 こういって日本の地方銀行に注目するのは、経済評論家で百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏だ。日本は日銀による異次元緩和政策でずっと金利が低く抑えられてきた。そうした状況下で預金の貸し出し先がない日本の銀行は、国債を買い続けてきた。 「その中でも特に購入額が多いのが、地銀なのです。中には保有する全有価証券のうち、国債が占める割合が4割近くに達する地銀もあります。 今後、もし日銀が長年続けてきたゼロ金利政策の出口戦略として金利を断続的に上げ始めたら、今回破綻したアメリカの銀行と同じように、地銀も大きな含み損を抱えることになる。 そして信用不安を引き起こし、『このまま預けておいたらまずいんじゃないか』と思った人たちが預金を引き出したら、立ち行かなくなる地銀が出てくるでしょう。 こうした構造的な類似性が今回明らかになったといえるのです」 同じことは、560兆円の国債を保有する日銀にもいえる。日本の行方には「進むも地獄退くも地獄」の厳しい事態が待ち受けていると、経済評論家の加谷珪一氏は見ている。 「インフレをコントロールしようと利上げをすると、日銀の含み損が拡大し、バランスシートが棄損します。すると今度は日本円が機関投資家の売り仕掛けに遭い、円安が進んでインフレが加速する。住宅ローン金利も上がって破産者も増えるでしょう。 もちろん国債を発行する政府の利払いも増えるので、財源の手当てが必要になります。金利が1%上がれば1000兆円ある国債発行残高に対して、金利の支払いだけで10兆円になってしまいます。 そうなれば増税でまかなうしかありませんが、消費税5%分に相当する巨額をどうやって工面するというのか。考えただけでも絶望的です」』、「今後、もし日銀が長年続けてきたゼロ金利政策の出口戦略として金利を断続的に上げ始めたら、今回破綻したアメリカの銀行と同じように、地銀も大きな含み損を抱えることになる。 そして信用不安を引き起こし、『このまま預けておいたらまずいんじゃないか』と思った人たちが預金を引き出したら、立ち行かなくなる地銀が出てくるでしょう。 こうした構造的な類似性が今回明らかになったといえるのです」 同じことは、560兆円の国債を保有する日銀にもいえる。日本の行方には「進むも地獄退くも地獄」の厳しい事態が待ち受けていると、経済評論家の加谷珪一氏は見ている。 「インフレをコントロールしようと利上げをすると、日銀の含み損が拡大し、バランスシートが棄損します。すると今度は日本円が機関投資家の売り仕掛けに遭い、円安が進んでインフレが加速する。住宅ローン金利も上がって破産者も増えるでしょう。 もちろん国債を発行する政府の利払いも増えるので、財源の手当てが必要になります。金利が1%上がれば1000兆円ある国債発行残高に対して、金利の支払いだけで10兆円になってしまいます。 そうなれば増税でまかなうしかありませんが、消費税5%分に相当する巨額をどうやって工面するというのか。考えただけでも絶望的です」」、もともとの異次元緩和政策が抱えていた問題点が露呈することになる。
・『待ち受ける恐怖の悪循環  だからといってインフレを放置すれば、物価高はますます加速する一方、預貯金の価値はどんどん目減りしていく。 つまり、いずれにしても利上げをしなければならない「恐怖の悪循環」に陥ってしまうのだ。 では、それを免れるにはどうすればいいか。おそらくいま、どの金融機関も利上げによる悪影響を必死で調査しているはずだ。加谷氏は「4月に入ってからも、しばらくは不安が市場を駆け巡り、株価が乱高下する展開が続く」と見ている。 そこで「いま大切なのは、できるだけ負債を持たないこと」と前出のジム・ロジャーズ氏はアドバイスを送る。 「今後は負債を持つ人ほど苦しむことになるでしょう。金や銀に投資する人がいるかもしれませんが、現在は高値に止まっていますので、私は購入していません」 金融機関に対する信用不安は、その幻想が崩れた瞬間、突然やってくる。 いま多くの人々は「まさか日銀が潰れることはない」と信じているが、日銀だけが例外ということはありえない。 「シリコンバレーで起きている銀行破綻ラッシュは、『安易に出口に向かってはいけない』ということを示唆しているのです」(前出・鈴木氏) 次期日銀総裁の植田和男氏はその就任直後から、一瞬の判断ミスも許されない緊急事態に直面することになる。金融緩和路線を維持するのか、修正するのか。舵取りの困難さはこれまで以上に大きくなったといえる。 「週刊現代」2023年3月25日号より さらに関連記事『リーマン級「大不況」がやってくる…「SVB破綻」でこれから起こりうる「ヤバすぎる事態」』では、すべての発端となったSVBの破綻の背景を詳細に解説する』、「金融機関に対する信用不安は、その幻想が崩れた瞬間、突然やってくる。 いま多くの人々は「まさか日銀が潰れることはない」と信じているが、日銀だけが例外ということはありえない」、強く同意する。

第三に、4月3日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「多くの人が意外と知らない「マイナス金利解除」でも円安が止まらない「根本的な理由」 「為替は金融差で動く」は本当か?」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/126867?imp=0
・『日銀が政策転換を実施したにもかかわらず、外国為替市場では円安が進んでいる。首をかしげている人も多いようだが、市場原理を知る人にとっては不思議なことではない。大規模緩和策からの撤退が始まったことで、際限のない円安リスクは回避できたが、大きな方向性としては依然として円安傾向が続く』、興味深そうだ。
・『「為替は金利差で動く」は、100%正確ではない  日銀は3月19日に開催された金融政策決定会合においてマイナス金利の解除を決定した。これは長く続いた大規模緩和策からの撤退を意味しており、秋にはゼロ金利の解除が行われ、いよいよ短期金利が上昇に向けて動き出すことになる。 日本円は過去2年間で、1ドル=100円から150円と暴落に近い状況まで下落した。この急ピッチな円安について多くの専門家は日米の金融政策に起因する金利差が原因であると説明してきた。為替の理論は簡単ではないので、筆者もテレビに呼ばれたり、一般紙からコメントを求められた時には「金利差が原因」と説明したこともある。 だが金利差で為替が動くという説明は、半分は当たっているのだが、100%正確とは言い難い。 もし為替市場が金利差で動くのであれば、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は利下げに向けて動き始めており、一方の日銀は利上げ開始するタイミングなので、円高に振れるとの予想になる。実際、多くの専門家がゼロ金利解除後は急激な円高になると説明していた。
 だが現実は正反対であり、むしろ円安が進んでいるが、筆者らにとってこれは予想された事態であり、特段、大きな驚きはない。その理由は、厳密にいうと金利差というのは、為替を動かす要因ではなく、その裏にある本質的要因を間接的に示しているにすぎないからである』、「厳密にいうと金利差というのは、為替を動かす要因ではなく、その裏にある本質的要因を間接的に示しているにすぎないからである」、どういうことなのだろう。
・『「物価見通しの差」で決まる  最終的に為替市場の動向を決めるのは、金利ではなく将来の物価見通しである。 これは経済学の分野では購買力平価という形で理論化されているが、多くの専門家がこの理論を消化できておらず、結果として為替市場の動向を見誤っている。それはどういうことだろうか。 購買力平価の理論では、二国間の為替は両国の物価見通しの差で決まるとされる。片方の国の物価が上がった場合、一物一価の原則を成り立たせるには、物価上昇分だけ当該国の通貨は減価する必要に迫られる。 これが購買力平価による理論的な為替レートである。現時点における購買力平価の為替レートは、市場の実勢レートより円高となっており、多くの論者がこれを根拠に、現在の円安は単なる投機であり、やがて円高に振れると説明している。 だが、こうした理屈で円高を主張している人が見落としている点がある。それは、購買力平価という理論は物価と為替の関係性を示したものに過ぎず、理論値が先にあり、その後で現実の為替レートがそこに収束するとは限らないという点である。 物理学の法則でもよくあることなのだが、複数主体の関係性のみを示したモデルというのは少なくない。自然科学を学んだ人であれば、これはごく当たり前のことだが、いわゆる文系的な世界にこうしたモデルが持ち込まれると、時に想定されていない「文学的解釈」が登場することがある』、「購買力平価の理論では、二国間の為替は両国の物価見通しの差で決まるとされる。片方の国の物価が上がった場合、一物一価の原則を成り立たせるには、物価上昇分だけ当該国の通貨は減価する必要に迫られる。 これが購買力平価による理論的な為替レートである。現時点における購買力平価の為替レートは、市場の実勢レートより円高となっており、多くの論者がこれを根拠に、現在の円安は単なる投機であり、やがて円高に振れると説明している。 だが、こうした理屈で円高を主張している人が見落としている点がある。それは、購買力平価という理論は物価と為替の関係性を示したものに過ぎず、理論値が先にあり、その後で現実の為替レートがそこに収束するとは限らないという点である」、なるほど。
・『なぜ日本の物価は「まだ上がる」予想なのか  このケースで言えば、先に購買力平価の理論値があり、市場のレートはそこに向かって動くとの解釈がそれにあたる。将来のことは誰にも分からないので、筆者の予想が合っているのかもわからない。だが、少なくとも購買力平価の理論では、先に理論値が決まり、そこに市場レートが収束するとは説明していない。 もし先に市場レートが円安に振れ、結果的に輸入物価の上昇を通じて全体の物価が上がった場合、先に市場レートが下がり、理論値がそれに追いつくというシナリオが十分にあり得る。理論が持つこうした中立的な解釈を無視して、無意識的に先に理論値があると考えるのは、自然科学の世界ではご法度である。 上記で説明した通り、先に市場レートが決まり、それによって物価が上昇し理論値が修正されるのだとすると、今回、発生している円安の理由はハッキリしている。市場は国内物価がさらに上がると予想しており、そのシナリオに向けて市場が先に動いているからである。 では、市場はなぜ日本の物価がさらに上がると予想しているのだろうか。 それは政策転換を表明したとはいえ、日銀は当分の間、緩和的な政策を続けざるを得ず、市場には今後も大量のマネーが供給される可能性が高いからである。日銀は600兆円もの国債を抱えており、日本の経済圏にはGDP(国内総生産)を上回る規模の余剰マネーがバラ撒かれた状態にある。これは明らかに将来のインフレ要因であり、市場は日銀が緩和策から完全撤退しない限り、インフレ圧力は弱まらないと見ている』、「今回、発生している円安の理由はハッキリしている。市場は国内物価がさらに上がると予想しており、そのシナリオに向けて市場が先に動いているからである。 では、市場はなぜ日本の物価がさらに上がると予想しているのだろうか。 それは政策転換を表明したとはいえ、日銀は当分の間、緩和的な政策を続けざるを得ず、市場には今後も大量のマネーが供給される可能性が高いからである。日銀は600兆円もの国債を抱えており、日本の経済圏にはGDP(国内総生産)を上回る規模の余剰マネーがバラ撒かれた状態にある。これは明らかに将来のインフレ要因であり、市場は日銀が緩和策から完全撤退しない限り、インフレ圧力は弱まらないと見ている」、その通りだ。
・『円高になるのはどんなケースか  結果として、日銀が政策転換を表明したとしても、事実上の緩和策は続くとの解釈になり、引き続き円安が継続するというシナリオが成立する。 もう少しわかりやすくいえば、以下のようになるだろう。 今回の政策転換によって、際限のない円安や物価上昇は回避できたかもしれない。だが、日銀は緩和的姿勢を継続せざるを得ず、正常化を進めている米国との方向性の違いは解消されないため、緩やかな円安傾向が続くことになる。 もしこの流れが大きく変化し、円高に振れることがあるとすれば、米国のリセッション懸念が高まり、予想以上のペースで利下げに踏み切る時だろう。だが今のところ米国のインフレ圧力は弱まっておらず、利下げのペースも緩やかなままとなる可能性が高い。 あくまで二国間の比較問題としては、日本の方が圧倒的に緩和的であり、円安に振れやすい。市場はこのあたりを察知しており、それが今の為替レートを成り立たせていると考えるべきだ』、「あくまで二国間の比較問題としては、日本の方が圧倒的に緩和的であり、円安に振れやすい。市場はこのあたりを察知しており、それが今の為替レートを成り立たせていると考えるべきだ」、同感である。

なお、明日の更新は休む予定で、明後日にご期待を!
タグ:(その46)(その時 現場は凍り付いた…!植田日銀総裁に「経済学の大天才」が噛みついた!その「空気よまない直言」のヤバすぎる中身、日本の地銀が「大崩壊」の末路…米・銀行の「連鎖倒産」でリーマン級「大不況」がやってくる、多くの人が意外と知らない「マイナス金利解除」でも円安が止まらない「根本的な理由」 「為替は金融差で動く」は本当か?) 金融政策 「SVBが保有する国債の売却損と新たな増資計画を発表すると、同行に対する信用不安が一気に拡大。SVBの動きを危惧した著名投資家やベンチャーキャピタリストたちがツイッターで警告した結果、それがスラックなどプライベートなSNSでどんどん拡散されていった。 そして翌9日、SVBの株価が急落してから10日の破綻までは、まさに「あっという間」だった・・・フィンテック(ファイナンス・テクノロジー)時代ならではのスピード感」、なるほど。 現代ビジネス「日本の地銀が「大崩壊」の末路…米・銀行の「連鎖倒産」でリーマン級「大不況」がやってくる」 「量的緩和による低金利は、生産性の低い投資を企業に促し、逆に収益体質を脆弱化している、そのため、むしろ“デフレになりやすくなっている”と言うのである。緩やかなインフレを目指した大規模緩和をこれ以上継続する効果に疑問符を付けたというわけだ」、確かに説得力に富む主張だ。私にはどちらが正しいのか判断することは残念ながら出来ないが、こうした本格的な論戦が始まったことは、日本もようやく欧米の水準に近づいたといえるのかも知れない。 「長期的な視野に立って、最適であろう経済学の知見とセオリーをストレートに述べて「緩和は、さっさと解除しろ」と指摘」、植田総裁にとっては、耳が痛い話だ。 植田総裁と清滝氏の二人の世界的知性がぶつかり合った会議の中身 鷲尾 香一氏による「その時、現場は凍り付いた…!植田日銀総裁に「経済学の大天才」が噛みついた!その「空気よまない直言」のヤバすぎる中身」 現代ビジネス 「『私の人生で最大の下落相場が5年以内に到来する』と断言していますが、破綻が他の銀行にも及べば、リーマン・ショックの時のような世界的な金融危機が早晩、起きると見ています」 そうなると、いよいよ日本も、「対岸の火事」と見過ごすことはできなくなる」、なるほど。 「保有比率はともかく、アメリカの利上げ以降、世界中の金融機関で米国債が評価損の状態にあるといえます。 SVBと同様、米国債を保有する金融機関が含み損を処理しようと一斉に売りに転じれば、歯止めが利かなくなる恐れがあります」 下落が下落を呼べば、金融機関が持つ米国債の含み損がさらに拡大するのは必然。やがて信用不安を招くと資金調達も困難となり、破綻の連鎖から一気に世界的大不況へと発展しかねない」、こうしたリスクがこれまでのところ顕在化してないのはラッキーだ。 「今後、もし日銀が長年続けてきたゼロ金利政策の出口戦略として金利を断続的に上げ始めたら、今回破綻したアメリカの銀行と同じように、地銀も大きな含み損を抱えることになる。 そして信用不安を引き起こし、『このまま預けておいたらまずいんじゃないか』と思った人たちが預金を引き出したら、立ち行かなくなる地銀が出てくるでしょう。 こうした構造的な類似性が今回明らかになったといえるのです」 同じことは、560兆円の国債を保有する日銀にもいえる。日本の行方には「進むも地獄退くも地獄」の厳しい事態が待ち受けていると、経済評論 家の加谷珪一氏は見ている。 「インフレをコントロールしようと利上げをすると、日銀の含み損が拡大し、バランスシートが棄損します。すると今度は日本円が機関投資家の売り仕掛けに遭い、円安が進んでインフレが加速する。住宅ローン金利も上がって破産者も増えるでしょう。 もちろん国債を発行する政府の利払いも増えるので、財源の手当てが必要になります。金利が1%上がれば1000兆円ある国債発行残高に対して、金利の支払いだけで10兆円になってしまいます。 そうなれば増税でまかなうしかありませんが、消費税5%分に相当する巨額をどうやって工面するというのか。考えただけでも絶望的です」」、もともとの異次元緩和政策が抱えていた問題点が露呈することになる。 「金融機関に対する信用不安は、その幻想が崩れた瞬間、突然やってくる。 いま多くの人々は「まさか日銀が潰れることはない」と信じているが、日銀だけが例外ということはありえない」、強く同意する。 加谷 珪一氏による「多くの人が意外と知らない「マイナス金利解除」でも円安が止まらない「根本的な理由」 「為替は金融差で動く」は本当か?」 「厳密にいうと金利差というのは、為替を動かす要因ではなく、その裏にある本質的要因を間接的に示しているにすぎないからである」、どういうことなのだろう。 「購買力平価の理論では、二国間の為替は両国の物価見通しの差で決まるとされる。片方の国の物価が上がった場合、一物一価の原則を成り立たせるには、物価上昇分だけ当該国の通貨は減価する必要に迫られる。 これが購買力平価による理論的な為替レートである。現時点における購買力平価の為替レートは、市場の実勢レートより円高となっており、多くの論者がこれを根拠に、現在の円安は単なる投機であり、やがて円高に振れると説明している。 だが、こうした理屈で円高を主張している人が見落としている点がある。それは、購買力平価という理論は物価と為替の関係性を示したものに過ぎず、理論値が先にあり、その後で現実の為替レートがそこに収束するとは限らないという点である」、なるほど。 「今回、発生している円安の理由はハッキリしている。市場は国内物価がさらに上がると予想しており、そのシナリオに向けて市場が先に動いているからである。 では、市場はなぜ日本の物価がさらに上がると予想しているのだろうか。 それは政策転換を表明したとはいえ、日銀は当分の間、緩和的な政策を続けざるを得ず、市場には今後も大量のマネーが供給される可能性が高いからである。 日銀は600兆円もの国債を抱えており、日本の経済圏にはGDP(国内総生産)を上回る規模の余剰マネーがバラ撒かれた状態にある。これは明らかに将来のインフレ要因であり、市場は日銀が緩和策から完全撤退しない限り、インフレ圧力は弱まらないと見ている」、その通りだ。 「あくまで二国間の比較問題としては、日本の方が圧倒的に緩和的であり、円安に振れやすい。市場はこのあたりを察知しており、それが今の為替レートを成り立たせていると考えるべきだ」、同感である。
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景気動向(その2)(「日本の実質GDPはコロナ禍前より減少 なぜ米国は成長するのにマイナス成長か?) [経済]

景気動向については、2021年11月10日に取上げた。今日は、(その2)(日本の実質GDPはコロナ禍前より減少 なぜ米国は成長するのにマイナス成長か?)である。

本年3月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「日本の実質GDPはコロナ禍前より減少、なぜ米国は成長するのにマイナス成長か?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339932
・『2019~23年の実質GDP米国は5%増、日本は1%減少  2023年の国内総生産(GDP)が2月15日に発表され、日本の名目GDPは米ドル換算でドイツに抜かれて世界4位に転落、55年ぶりに日独が逆転した。 だが、アメリカとの間でも、新型コロナウイルスの感染拡大という異常な事態での経済パフォーマンスが顕著に異なるものとなった。それまでもあった日米の違いがはっきりと現れた。 この期間を通じてアメリカ経済は成長したのに対して、日本経済はマイナス成長に陥ったのだ。 IMF(国際通貨基金)のデータによれば、コロナがほぼ収束した2023年の日本の実質GDPは、コロナ禍前の19年の0.989倍になった。つまり約1%減少した。それに対して、アメリカでは1.051倍になった。つまり、約5%増加した(注)。減少と増加では、天と地ほどの隔たりがある。 3月中旬に自動車・電機大手の集中回答が予定される今春闘での高い賃上げが成長をけん引するかのように言われている。だがそれは誤解だ。 仮に春闘で連合が要求する「5%賃上げ」が実現することになっても、根本的な問題は解決しない』、「2019~23年の実質GDP米国は5%増、日本は1%減少」、成長率格差は顕著だ。
・『実質賃金下落が実質消費を減らした 増えたのは在庫投資と政府支出だけ  日本の場合、需要面のGDP構成項目を見ると、図表1の通りだ。さまざまな項目が落ち込んでいる。国内需要項目で増えたのは在庫投資と政府消費支出だけだ。 在庫投資の増加は、簡単にいえば「売れ残り」だが、家計消費の落ち込みは物価上昇によって実質賃金が下落したことによってもたらされた。家計消費支出はGDPの約半分を占めているので、これがGDP成長率に与えた効果は大きい。 (表1:日本のGDPの需要項目別成長率 はリンク先参照) これに対してアメリカでは、インフレによって実質賃金が一時的に低下したが、再び増加に転じ、GDPが増えた』、「アメリカでは・・・実質賃金が一時的に低下したが、再び増加に転じ、GDPが増えた」、のに対し日本では「実質賃金下落」が「実質消費を減らし」続けた。
・『日銀は円安を阻止し物価上昇を抑えるべきだった  今回のインフレ局面はアメリカに端を発したものであり、それはコロナ回復期の需要増大によってもたらされた。その後、ウクライナ戦争による穀物・エネルギー価格の急騰もあってインフレは加速。それが日本に輸入されたのだが、これを日本側で食い止めるのは不可能だったと考えられるかもしれない。 しかし、遮断する方策はあった。日本銀行が金利を上げて円安を阻止し、円ベースでの輸入物価の上昇を食い止めれば、国内物価への波及を抑えられ、実質賃金の下落も、消費支出の減少も抑えることができただろう、 しかし実際には、日銀は市場の圧力に抗して、2022年12月まで長期金利の抑圧をやめなかった。それがGDPマイナス成長をもたらした最大の原因だ。 アメリカで20年に大規模な金融緩和を行なったが、FRB(連邦準備制度理事会)はインフレが一時的でないと認識するや、政策転換して金融引き締めを行なった』、金融政策は為替動向に割り当てるべきではないとの伝統的考え方に加えて、景気の腰はまだ弱いとの判断が制約になったことは確かだ、ただ、為替動向についての日銀総裁の余りにつれないコメントが円安を煽ったことも事実で、学者とはいえ総裁にはもう少し巧みな対応を期待したい。
・『「春闘賃上げ率5%」でも問題解決しない 消費者物価上昇がベアの伸びを上回る可能性(いまの日本経済浮揚の最重要課題は賃金の引き上げだとする意見が多い。そして、そのきっかけとして、春闘での高い賃上げ率が必要だとする意見が多い。連合は5%を超える賃上げを目指すとしており、経営者側でも高い賃上げを支持示する声が強い。 賃金の引き上げはもちろん重要な課題だ。しかし、これで問題が解決できるわけではない。 注意すべきことが二つある。第1は、仮に春闘で5%の賃上げが実現したところで、経済全体の賃上げ率は、それよりずっと低くなることだ。 なぜなら、5%はベースアップ(ベア)だけではなく、定期昇給分(定昇)も含む数字だからだ。これらのうち経済全体の賃上げ率に影響するのはベアの部分だけだ。 これは次のように考えれば理解できるだろう。ある企業で、入社する従業員と退社する従業員の数が釣り合い、その結果、年齢別の従業員数が、毎年変わらないとする。すると、個々の従業員の給与は、ベアだけでなく定昇によっても増える。 しかし退社する人もいるので、企業全体として見た場合の給与総額の増加率はベアに相当する部分だけしか増えない。企業の負担もベア相当分だけだ。どの企業についてもこれが言えるとすれば、経済全体としての給与総額の増加率は平均的なベア増加率に等しいことになる。 個々の従業員の立場から見ると、ベアも定昇も享受する。しかしそれは、20代から50代前半までの人に限られたことだ。この年齢階級の人は、年をとるに従って、子供の教育などに要する生活費が多くなる。それに応じて給与を上げるというのが定期昇給の意味だ。 したがって、生活が豊かになるわけではないと言える。しかもこれは50代前半までのことであって、それ以降になれば多くの企業では給与は減少する。 こうしたことを考えれば、日本人の給与を評価するには、春闘賃上げ率でなく、中小企業なども含めた経済全体の賃金上昇率、あるいはベースアップ率を見るのが適切だと言える。 2023年春闘での賃上げ率は3.6%だったが、このうちベアは2%程度だったとみられる。消費者物価の上昇率がこれを超えたために、実質賃金が下落したのだ。 2024年の春闘での連合の目標である「5%以上」の内訳は、定昇2%、ベアが3%以上だ。 仮にこれが実現でき、かつ消費者物価の上昇率が今後、高まるようなことがなければ、少なくとも春闘参加企業については、実質賃金下落の状態から脱却できるだろう。 ただし、物価上昇が収束するかどうかは分からない。 消費者物価指数の上昇率は依然として高止まりしており、生鮮食品を除く総合指数の対前年同月比は依然として2%台であり、23年平均では3.1%の上昇率だ。 これでは、実質賃金が有意にプラスになるのは期待できない』、「日本人の給与を評価するには、春闘賃上げ率でなく、中小企業なども含めた経済全体の賃金上昇率、あるいはベースアップ率を見るのが適切だと言える・・・2023年春闘での賃上げ率は3.6%だったが、このうちベアは2%程度だったとみられる。消費者物価の上昇率がこれを超えたために、実質賃金が下落したのだ。 2024年の春闘での連合の目標である「5%以上」の内訳は、定昇2%、ベアが3%以上だ。 仮にこれが実現でき、かつ消費者物価の上昇率が今後、高まるようなことがなければ、少なくとも春闘参加企業については、実質賃金下落の状態から脱却できるだろう。 ただし、物価上昇が収束するかどうかは分からない」、なるほど。
・『アメリカで物価上昇率が高いのは経済成長率が高いことの結果  注意すべき第2点は、経済全体が成長する必要性だ。賃金だけが他の経済変数と独立に上がることはない。経済全体がバランスを取って成長する必要がある。 賃金が経済成長を牽引するのではない。経済を牽引するのは新しい技術やビジネスモデルだ。それらが、新しいタイプの企業活動を実現し経済が成長する。その結果として賃金が上がるのだ。 アメリカの場合、先進的な部門ほど賃金上昇率が高く、賃金の水準も高く、また成長率も高い。これらの分野が先導することによってアメリカ経済全体が成長している。 そして、賃金が上昇することによって物価が上昇している。 だから、古典的な意味でのフィリップスカーブの関係が成り立っていると考えて良い。 つまり、物価上昇率が高いのは経済成長率が高いことの結果であり、したがって望ましいことと考えられるわけだ。 ただ、2021年以降は、コロナからの回復という特殊条件によって、物価上昇率があまりに高まったために実質賃金が低下し、その結果、金融引き締めが必要になったのだ。 注目すべきは、アメリカがこの間に数々の技術革新を実現していることだ。コロナ禍の下では、リモートワークのために、IT機器などに関する新しい需要が掘り起こされ、ズームなどが普及した。そして最近では生成AIの目覚ましい発展がある。 コロナ回復期の賃金上昇がインフレを引き起こしたのは事実だが、背後には、IT産業の顕著な成長があったのだ。こうした基本的条件があるため、いったん下落した実質賃金が、早期にプラスの伸びに回復した』、「経済を牽引するのは新しい技術やビジネスモデルだ。それらが、新しいタイプの企業活動を実現し経済が成長する。その結果として賃金が上がるのだ。 アメリカの場合、先進的な部門ほど賃金上昇率が高く、賃金の水準も高く、また成長率も高い。これらの分野が先導することによってアメリカ経済全体が成長している・・・物価上昇率が高いのは経済成長率が高いことの結果であり、したがって望ましいことと考えられるわけだ・・・コロナ回復期の賃金上昇がインフレを引き起こしたのは事実だが、背後には、IT産業の顕著な成長があったのだ。こうした基本的条件があるため、いったん下落した実質賃金が、早期にプラスの伸びに回復した」、やはり「アメリカ」「経済」は力強い。
・『技術革新が起らない日本で目覚ましい賃金上昇はありえない  日本の場合には、物価が外生的な原因で上昇し、それに追いつくために賃金引上げが必要になった。しかし十分に引き上げられないため、実質賃金が下落した。これは、アメリカのメカニズムとは大きく違う。 日本に欠けているのは、アメリカで起ったような技術革新だ。産業構造が古いままであり、新しい時代に対応する経済活動が始まっていない。コロナ禍でデジタル化の遅れが痛感されたが、いまだにファクスが使われ、捺印なしには事務処理が進まない。 そのため、GDPが減少している。こうした中で賃金だけが目覚ましく上昇することなどはあり得ない。 (注)IMF、世界経済見通し(WEO)のデータによる。2023年の値はIMFの推計値』、「日本に欠けているのは、アメリカで起ったような技術革新だ。産業構造が古いままであり、新しい時代に対応する経済活動が始まっていない。コロナ禍でデジタル化の遅れが痛感されたが、いまだにファクスが使われ、捺印なしには事務処理が進まない。 そのため、GDPが減少している。こうした中で賃金だけが目覚ましく上昇することなどはあり得ない」、強く同意する。 
タグ:「2019~23年の実質GDP米国は5%増、日本は1%減少」、成長率格差は顕著だ。 野口悠紀雄氏による「日本の実質GDPはコロナ禍前より減少、なぜ米国は成長するのにマイナス成長か?」 ダイヤモンド・オンライン (その2)(「日本の実質GDPはコロナ禍前より減少 なぜ米国は成長するのにマイナス成長か?) 景気動向 「アメリカでは・・・実質賃金が一時的に低下したが、再び増加に転じ、GDPが増えた」、のに対し日本では「実質賃金下落」が「実質消費を減らし」続けた。 金融政策は為替動向に割り当てるべきではないとの伝統的考え方に加えて、景気の腰はまだ弱いとの判断が制約になったことは確かだ、ただ、為替動向についての日銀総裁の余りにつれないコメントが円安を煽ったことも事実で、学者とはいえ総裁にはもう少し巧みな対応を期待したい。 「日本人の給与を評価するには、春闘賃上げ率でなく、中小企業なども含めた経済全体の賃金上昇率、あるいはベースアップ率を見るのが適切だと言える・・・2023年春闘での賃上げ率は3.6%だったが、このうちベアは2%程度だったとみられる。消費者物価の上昇率がこれを超えたために、実質賃金が下落したのだ。 2024年の春闘での連合の目標である「5%以上」の内訳は、定昇2%、ベアが3%以上だ。 仮にこれが実現でき、かつ消費者物価の上昇率が今後、高まるようなことがなければ、少なくとも春闘参加企業については、実質賃金下落の 状態から脱却できるだろう。 ただし、物価上昇が収束するかどうかは分からない」、なるほど。 「経済を牽引するのは新しい技術やビジネスモデルだ。それらが、新しいタイプの企業活動を実現し経済が成長する。その結果として賃金が上がるのだ。 アメリカの場合、先進的な部門ほど賃金上昇率が高く、賃金の水準も高く、また成長率も高い。これらの分野が先導することによってアメリカ経済全体が成長している・・・物価上昇率が高いのは経済成長率が高いことの結果であり、したがって望ましいことと考えられるわけだ・・・コロナ回復期の賃金上昇がインフレを引き起こしたのは事実だが、背後には、IT産業の顕著な成長があったのだ。こうした基 本的条件があるため、いったん下落した実質賃金が、早期にプラスの伸びに回復した」、やはり「アメリカ」「経済」は力強い。 「日本に欠けているのは、アメリカで起ったような技術革新だ。産業構造が古いままであり、新しい時代に対応する経済活動が始まっていない。コロナ禍でデジタル化の遅れが痛感されたが、いまだにファクスが使われ、捺印なしには事務処理が進まない。 そのため、GDPが減少している。こうした中で賃金だけが目覚ましく上昇することなどはあり得ない」、強く同意する。
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公務員制度(その7)([新連載]霞が関人材クライシス 若手官僚はなぜ辞めるのか、〈音声入手〉「国交省の人間をまた推薦させて頂きたい」 別法人でも国交省有力OBが“天下り要求” 前理事長は「もうたくさん」、天下りの警察OBに「退職金10億円」払った団体の名前…世間が呆れ返った警察利権の実態とは?) [経済政治動向]

公務員制度については、2021年12月21日に取上げた。今日は、(その7)([新連載]霞が関人材クライシス 若手官僚はなぜ辞めるのか、〈音声入手〉「国交省の人間をまた推薦させて頂きたい」 別法人でも国交省有力OBが“天下り要求” 前理事長は「もうたくさん」、天下りの警察OBに「退職金10億円」払った団体の名前…世間が呆れ返った警察利権の実態とは?)である。

先ずは、2022年5月31日付け日経ビジネスオンライン「[新連載]霞が関人材クライシス 若手官僚はなぜ辞めるのか」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00460/053000001/
・『深夜残業の多いブラック職場、旧態依然とした年功序列型の組織、自己成長の実感が薄い――。悪評が定着した霞が関の不人気は深刻化し、応募者の減少傾向に歯止めがかからない。それでも官僚が今、そして未来の日本を支える頭脳集団であることに変わりない。多岐にわたる関係者と調整し、課題を解決する力は、企業のイノベーションにとっても必要だ。司令塔の地盤沈下が進む国に未来はない。官僚の威信と魅力を取り戻す道を探る。 今後のラインアップ ・霞が関人材クライシス 若手官僚はなぜ辞めるのか(今回) ・ブラック職場とは言わせない 霞が関、働き方改革の最前線 ・立ち上がった民間出身官僚 「個の犠牲」に頼らない風土を ・官僚だってやりたい仕事がある 2割の時間を「本業外」に ・現役官僚座談会「同窓会で給料の話になったらトイレに行く」 ・農水省発、官僚YouTuberの挑戦 「等身大の霞が関」を国民へ ・民間で光る「官僚力」 企業と日本の活力に ・総務省出身のDeNA岡村社長「官僚の総合力、企業経営で生かせ」 など   5月20日、いつにも増して静まり返る財務省を幹部が朝から駆け回っていた。未明に電車内で他の乗客に暴行を振るったとして、総括審議官(当時、20日付で大臣官房付に更迭)の小野平八郎容疑者が逮捕された。その後処理に追われていたのだ。 省内で「周囲に声を荒らげることはなく、仕事もそつなくこなす」(主税局関係者)と評されていた小野氏に何があったのか。 総括審議官は政府の経済財政諮問会議に絡む業務が多い。複数の関係者の話を総合すると、6月上旬に閣議決定される「骨太の方針」について、小野氏は財務省の意向を反映させるため自民党との調整に追われていた。 自民党には財政再建派の「財政健全化推進本部」(額賀福志郎本部長)と、積極財政派の「財政政策検討本部」(西田昌司本部長)がある。国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2025年度に黒字化する政府目標の取り扱いを巡って対立しているが、参院選を7月に控える今は、政局化を避けることで内々に合意していることで知られている。 財政健全化推進本部は5月19日、小野氏が作成したドラフトを基に官邸宛ての提言をまとめようとした。しかし財政政策検討本部側に抵抗されて断念。結局、額賀本部長が預かって骨太の方針に押し込む流れになった。 機関決定の見送りは、小野氏にとって財務省から課せられたミッションの失敗を意味する。その日の夜、小野氏は複数の会合を重ねて痛飲したとみられる』、「電車内で他の乗客に暴行を振るったとして、総括審議官(当時、20日付で大臣官房付に更迭)の小野平八郎容疑者が逮捕された・・・機関決定の見送りは、小野氏にとって財務省から課せられたミッションの失敗を意味する。その日の夜、小野氏は複数の会合を重ねて痛飲」、いくら事情があったにせよ、「電車内で他の乗客に暴行を振るった」のはいただけない。
・『「出世しても潰れる」不安   財務省の中堅幹部はこう漏らした。「いくら昇進レースで懸命に勝ち残っても、一寸先は闇ということだ。もちろん許される行為ではないが、霞が関の一員としてむなしいし、正直に言うと少なからず同情できる面もある」 今回の事件が霞が関に広げた波紋は、単なる「有力幹部の不祥事」レベルにとどまらない。特に若いキャリア官僚の間では、「順調に出世して事務次官のポストが見えていても、強いストレスによって潰れてしまう」(総務省課長補佐)という捉え方にみられるように、自らの将来を不安視する向きが強まっている。 働くステージとして、霞が関の人気は右肩下がりが続いてきた。21年の国家公務員総合職(キャリア)の採用試験申込者数は1万7411人と、5年連続で過去最少を更新した。22年春の試験は1万5330人と6年ぶりに増加に転じたものの、底を打って低迷を完全に抜け出すだけの目ぼしい材料はない。 中央省庁は国政の基盤を作る役割を担うだけに、もともと「働きがい」ならどの職種にも勝るとも劣らないはずだ。しかし過酷な残業が、それを打ち消してしまう』、「霞が関の人気は右肩下がりが続いてきた。21年の国家公務員総合職(キャリア)の採用試験申込者数は1万7411人と、5年連続で過去最少を更新した。22年春の試験は1万5330人と6年ぶりに増加に転じたものの、底を打って低迷を完全に抜け出すだけの目ぼしい材料はない」、なるほど。
・『3割が「過労死ライン」  内閣人事局が20年秋に国家公務員約5万人の働き方を調べたところ、20代のキャリア官僚の3割が「過労死ライン」とされる月80時間を超える残業をこなしていた。 19年4月施行の改正労働基準法で、民間企業の時間外労働時間は原則として1カ月当たり45時間以内、特別条項が適用されると1カ月100時間未満、複数にわたる月平均は80時間以内と定められた。 国家公務員は労働基準法の適用対象外だが、人事院の規則に従えば1カ月間の時間外労働は原則45時間以内でなければならない。しかし罰則はなく、国会対応などで業務の比重が高い部署には月100時間未満の超過勤務を認める例外規定もある。 首相官邸は、労働の実態に合わせて超過勤務手当を支払うよう各省庁に求めた。すると22年度の一般会計当初予算は、本省分の残業代として総額約403億円を計上。補正分を含めた前年度より17.5%も膨らんだ。本来はもらえていたはずの残業代が、やっと支払われるようになってきた形だが、旧態依然とした労働環境はなかなか改善できない。 「ブラックな働き方と知りながら、政策を作りたくて入ってきている。昔も今もこれからも、残れるやつだけ残ればいいのが霞が関という世界だ」。ある省で将来の事務次官候補に挙がる課長はこう語り働き方改革の推進に対して難色をあらわにする。 経済産業省で10年代に勤務した一般職の女性は、管理職が部下に「辞めろ、死ね」と怒鳴っていた姿が忘れられない。「経産省を出れば何もできないであろう人が幅を利かす」組織に失望した。若手・中堅を中心に退職者が増えてきたのも、こうした組織風土と無関係ではないだろう』、「国家公務員は労働基準法の適用対象外だが、人事院の規則に従えば1カ月間の時間外労働は原則45時間以内でなければならない。しかし罰則はなく、国会対応などで業務の比重が高い部署には月100時間未満の超過勤務を認める例外規定もある。 首相官邸は、労働の実態に合わせて超過勤務手当を支払うよう各省庁に求めた。すると22年度の一般会計当初予算は、本省分の残業代として総額約403億円を計上。補正分を含めた前年度より17.5%も膨らんだ。本来はもらえていたはずの残業代が、やっと支払われるようになってきた形だが、旧態依然とした労働環境はなかなか改善できない・・・「ブラックな働き方と知りながら、政策を作りたくて入ってきている。昔も今もこれからも、残れるやつだけ残ればいいのが霞が関という世界だ」。ある省で将来の事務次官候補に挙がる課長はこう語り働き方改革の推進に対して難色をあらわにする・・・経済産業省で10年代に勤務した一般職の女性は、管理職が部下に「辞めろ、死ね」と怒鳴っていた姿が忘れられない。「経産省を出れば何もできないであろう人が幅を利かす」組織に失望した。若手・中堅を中心に退職者が増えてきたのも、こうした組織風土と無関係ではないだろう」、なるほど。
・『忙しくても報酬は少ない  日本の国家公務員は、諸外国と比べて仕事量が多いのに、もらえる報酬は少ない。大阪大学大学院法学研究科の北村亘教授が経済協力開発機構(OECD)のデータを基に試算したところ、政府全体の歳出を公務員数で割った数値は日本が他の先進民主主義国より圧倒的に高かった。 国の歳出は規模が大きくなればなるほど、運用が煩雑になり、公務員が担う仕事量は多くなる。北村教授が浮き彫りにしたのは、1人当たりの負担が世界でも群を抜いて大きい日本の国家公務員の姿だった。 一方で、政府の人件費が政府全体の歳出に占める割合をみると、日本が最小クラスであることも分かった(上のグラフを参照)。 北村教授は「予算が膨張する一方で職員の定数が減らされ続けているため、国家公務員の業務は量が増えつつ複雑・高度化している」と指摘。「国家公務員の志願者がさらに減れば質の確保が難しくなり、人数以上の仕事を処理できなくなる」と警鐘を鳴らす』、「政府全体の歳出を公務員数で割った数値は日本が他の先進民主主義国より圧倒的に高かった。 国の歳出は規模が大きくなればなるほど、運用が煩雑になり、公務員が担う仕事量は多くなる。北村教授が浮き彫りにしたのは、1人当たりの負担が世界でも群を抜いて大きい日本の国家公務員の姿だった。 一方で、政府の人件費が政府全体の歳出に占める割合をみると、日本が最小クラスであることも分かった・・・1人当たりの負担が世界でも群を抜いて大きい日本の国家公務員の姿だった。 一方で、政府の人件費が政府全体の歳出に占める割合をみると、日本が最小クラスであることも分かった」、なるほど。
・『極端に減った「ボトムアップ」  霞が関OBも、キャリア官僚の業務スタイルが変わったのを感じ取っている。1993年に通商産業省(現経産省)に入った古谷元さんは、当時を「霞が関が日本を動かしているという自負が強かった」と振り返る。省内にさまざまな人が出入りし、あらゆる先進的な情報が自分の机に座っていれば得られた。夜は仲間と政策を議論し、固まったものが1年たった頃に実現していく。そんなダイナミズムがあった。 米シリコンバレーへの留学を経験し、政府主導の産業育成に疑問を感じて2000年に退職。米コンサルティング大手などで働いていたが、かつての上司から19年初めに連絡があった。「若手の退職が増えているから戻ってきてほしい」。経産省で管理職の公募制度が始まるタイミングに合わせた勧誘に、古谷さんは「民間を知るからこそ分かる政府の役割とやりがいを伝えたい」と一念発起。スタートアップ企業育成の中核となる新規事業創造推進室のトップに就いた。 ところが20年ぶりの現場では、昔のようにボトムアップで政策が日の目を見ることが極端に少なくなっていた。代わりに増えたのは、トップダウンの意思決定。古谷さんからすれば、理由は明らかだった。「とにかく若手の官僚が情報を収集できていない」。延長もあり得る期限付きの復帰だったが、希望せずに霞が関を離れた』、「米シリコンバレーへの留学を経験し、政府主導の産業育成に疑問を感じて2000年に退職。米コンサルティング大手などで働いていたが、かつての上司から19年初めに連絡があった。「若手の退職が増えているから戻ってきてほしい」。経産省で管理職の公募制度が始まるタイミングに合わせた勧誘に、古谷さんは「民間を知るからこそ分かる政府の役割とやりがいを伝えたい」と一念発起。スタートアップ企業育成の中核となる新規事業創造推進室のトップに就いた。 ところが20年ぶりの現場では、昔のようにボトムアップで政策が日の目を見ることが極端に少なくなっていた。代わりに増えたのは、トップダウンの意思決定。古谷さんからすれば、理由は明らかだった。「とにかく若手の官僚が情報を収集できていない」。延長もあり得る期限付きの復帰だったが、希望せずに霞が関を離れた」、「昔のようにボトムアップで政策が日の目を見ることが極端に少なくなっていた。代わりに増えたのは、トップダウンの意思決定」というのは由々しいことだ。
・『東大生は「コンサルか商社」  霞が関の地盤沈下は、エリート層が敬遠するようになった現実とも無関係ではないだろう。象徴的なのが東京大学出身者の動向だ。優秀な学生がこぞって中央省庁入りを目指し、東大が「キャリア官僚の育成機関」とまで言われた時代ではなくなった。 キャリア官僚の採用試験で合格した東大出身者は16年度から減少を続け、20年度には300人台に突入した。法学部2年の男子生徒は「周囲では起業するか、外資系コンサル会社や商社を志望する学生が多くなっている。キャリア官僚も悪くないが、やはり労働環境の悪さがネックになる」と明かす。 「霞が関に入ることを家族に相談したが、全力で止められた」と笑うのは、法学部3年の男子生徒だ。大手IT幹部の父親は、データを示しながら「年収が低いし、下積みの期間が長くて効率が悪い。大企業を目指すか、コンサルで経験を積んで起業すべきだ」と説得したという。 21年は法案や条約の関連文書に多数の誤記が見つかり、組織の劣化が懸念された霞が関。このまま自滅するわけにはいかない──。危機感を高めた霞が関は今、モデルチェンジを急いでいる』、「象徴的なのが東京大学出身者の動向だ。優秀な学生がこぞって中央省庁入りを目指し、東大が「キャリア官僚の育成機関」とまで言われた時代ではなくなった。 キャリア官僚の採用試験で合格した東大出身者は16年度から減少を続け、20年度には300人台に突入した・・・「周囲では起業するか、外資系コンサル会社や商社を志望する学生が多くなっている」、なるほど。

次に、昨年4月19日付け文春オンライン「〈音声入手〉「国交省の人間をまた推薦させて頂きたい」 別法人でも国交省有力OBが“天下り要求” 前理事長は「もうたくさん」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/62252
・『国土交通省の元事務次官らが民間企業「空港施設」(東京都大田区)の役員人事に介入していた問題に続き、国交省の有力OBが、一般財団法人「土地情報センター」(東京都千代田区)の理事長(当時)に対しても、同省出身者を常務理事に据えるよう繰り返し要求していたことが、「週刊文春」が入手した音声データでわかった。国交省は空港施設のケースでは組織としての関与を否定していたが、別法人においても天下りを要求する音声データの存在が発覚し、国交省が有力OBを介する形で、天下りを常態化させている疑いが浮上した。 「空港施設」を巡っては、国交省の元事務次官で東京メトロ会長の本田勝氏が、同省の元東京航空局長で副社長の山口勝弘氏を社長に据えるよう要求していた問題が発覚。さらに「週刊文春」4月6日発売号では、その山口氏が取締役時代、役員が集まる会議で、国交省の意向をちらつかせながら自身を副社長に自薦する発言を重ねていた問題を報じた(音声データを「週刊文春 電子版」で公開中)。その後、山口氏は副社長を辞任。空港施設は第三者による検証委員会を設置し、経緯の調査を進めている。 今回新たに天下り問題が明らかになったのは、一般財団法人「土地情報センター」。1986年、旧国土庁(現国土交通省)所管の公益法人として設立され、2011年からは民間色の強い一般財団法人に移行している。現在の理事長は、国交省元政策統括官の北本政行氏(1983年、旧国土庁入庁)だ。 「土地情報センターの理事長には代々、国交省OBが就いてきました。前理事長の馬場健氏も元本州四国連絡橋公団監理官です。ただ、国からの事業が減る中で、馬場氏は自らの退任前に運営の健全化を図ろうとしていた。特に報酬年1800万円とされる常務理事ポストを無くそうとしていました。このポストも代々、国交省OBが天下りしています」(同センターの職員) 「週刊文春」は、馬場理事長(当時)と、元国交審議官の三澤眞氏が2021年1月25日に電話でやり取りした際の音声データを入手した。 「三澤氏は1970年に旧建設省入省。人事課長を経験し、ナンバー2の国交審議官まで務めた有力OBです。馬場氏より1年先輩にあたります」(国交省関係者)』、「国からの事業が減る中で、馬場氏は自らの退任前に運営の健全化を図ろうとしていた。特に報酬年1800万円とされる常務理事ポストを無くそうとしていました」、「馬場」氏」が「国交省OB」でありながら、天下り先の利益を優先させようとしたのは、大したものだ。
・『空きポストに国交省OBを推薦するやりとり  音声データには、次のように記録されている。 三澤「藤原さんから伺ったんだけれども、今年の夏、理事長交代をされるって。そういう方向ですよね?」 馬場「いま検討中ですね」 「藤原さん」とは、元国土事務次官の藤原良一氏。1960年に旧建設省に入省し、現在も同省出身者に大きな影響力を持つ人物だ。土地情報センターの評議員も務めている。 さらに音声はこう続く。 三澤「そいでね、理事長交代して、仮に北本君が上がるということになった場合、その後任として国交省の人間をまた推薦させて頂きたいんですけど」』、「藤原良一氏」が通常の「国交省」の役人らしい行動だ。
・『馬場氏は運営の健全化のため受け入れを拒否  「北本君」は、現理事長の北本氏。当時はセンターの常務理事だった。三澤氏は、北本氏の理事長昇格に伴って空くことになる常務理事ポストに国交省OBを据えようとしていたのだ。ただ、これに対し、馬場氏は一般財団法人として民間企業との取引も増えるなか、運営の健全化を図るべく、天下りの受け入れを拒否する。 馬場「いや、それはできないですよ」 三澤「いやいやいや、だからどうして?」 馬場「だって、ウチ関係ないですもの、国と」 三澤「だって今まで、理事長と常務っていたわけでしょ?」 馬場「今までとだからもう全然違うんですよ、10年前と今とじゃ」 三澤「今まで、10年前じゃなくて、今現在も理事長と常務がいる」 馬場「刻々と変化してきて、全然もう関係ないですよ、国は」 こうしたやり取りの末、最終的に国交省OBの指定席とされてきた常務理事ポストは空席のまま、2021年6月、馬場氏は退任し、新理事長に北本氏が就任した。 馬場氏に尋ねると、次のように回答した。 「音声は本物ですね。これまでにも国交省OBの常務を迎え入れてきましたが、決算書も作れないし、一生懸命に働いている職員のモチベーションにもかかわる。国交省人事課の要請でOBたちを(センターの)顧問にもして、10年余りで計5000万円以上支払ってきた。もうたくさんですよ」) 「それとなく呟いたことはあるかもしれませんね」 一方、三澤氏は次のように語る。 「確かに一度、電話で話しました。今までも国交省OBが常務に来ていて、役に立つなら引き続き活用してほしいと。馬場君のことは50年ぐらい知っていて、私なりのアドバイスをしていた。一OBとしてそうした意見があるのがそんなにおかしいかなあ。非難に値するという意識は全然ありませんでした」 藤原氏はこう答えた。 「三澤君とは色々な会合で会うから、それとなく(常務理事に国交省OBを起用すべきと)呟いたことはあるかもしれませんね」 土地情報センターは以下のように回答した。 「(三澤氏の電話について)ニュアンスなど詳細は存じ上げませんが、当センターと関わりのない外部の方が繰り返し求めているのであれば、適切ではないと考えます。 (国交省OBの登用について)有力OBからの要求のみを理由として理事長などのポストに国交省出身者を登用することは適切ではないと考えます。民間、官庁OBなど出身を問わず、組織(当センター)に必要な人材を重要なポストに登用すべきであると考えています」 国交省人事課は以下のように回答した。 「(三澤氏の電話について)すでに退職して民間人であるOBの発言や、民間組織の人事についてコメントする立場になく、調査を行うことは考えていません。(国交省として土地情報センターの幹部人事に関与した疑いについては)私どもとしては、そのようなことは確認していません」 三澤氏の発言などから浮かび上がるのは、空港施設のケースに続き、国交省が有力OBを中心に組織として、土地情報センターへの天下りに関与していた疑いだ。国家公務員法は、省庁による天下りのあっせんや現役職員の利害関係企業への求職などを禁じている。そのため、有力OBが天下りの調整にあたるのが常態化している恐れがあるのだ。立憲民主党が省庁幹部の再就職状況を調査するよう衆院に要請するなど、天下りの実態解明を求める声が高まっている中、新たに発覚した音声データの存在を受け、国交省がどのような対応を取るのか、注目される。 4月19日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および4月20日(木)発売の「週刊文春」では、土地情報センターの事業内容や、詳しい音声データの中身などについても報じている。また、「週刊文春 電子版」では、三澤氏と馬場氏のやり取りを収めた音声データを公開している』、「立憲民主党が省庁幹部の再就職状況を調査するよう衆院に要請するなど、天下りの実態解明を求める声が高まっている中、新たに発覚した音声データの存在を受け、国交省がどのような対応を取るのか、注目される」、徹底的に監視してゆく必要がある。

第三に、本年5月16日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した関西学院大学名誉教授・博士(人間科学)・保護司の鮎川 潤氏による「天下りの警察OBに「退職金10億円」払った団体の名前…世間が呆れ返った警察利権の実態とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/342846
・『警察庁のキャリア官僚たちはノンキャリアの警察官とは昇進スピードも給料も桁違いだ。しかも、優遇されるのは現役時代だけではなく、退職後の天下り先もよりどりみどり。一流企業に天下る彼らの特権の実態とは。※本稿は、『腐敗する「法の番人」:警察、検察、法務省、裁判所の正義を問う』(平凡社新書、平凡社)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『総会屋の代替機能として警察OBを迎える企業  日本の警察は二重構造になっている。 警察庁という国家公務員の総合職の試験に合格した数百人のキャリア官僚と、各都道府県の警察本部に所属する約26万人の警察官が存在する。各都道府県の警察本部長、主要な都道府県警察本部の刑事部長、公安部長などの地位は、警察庁からキャリアが派遣されて、ほぼ独占している。 しばしば指摘されるように、警察官の採用試験に合格した巡査は幸運であれば、ごく少数のエリートとして警視、警視正になり署長で定年を迎える。一般的には、巡査部長、警部補で定年退職を迎える者が多い。 都道府県警の警察官として採用された場合であっても、警視正以上の地位に就いた場合は国家公務員となり、給与は国から出される。 こうしたたたき上げの警察官に対して、キャリア官僚は都道府県警察本部の要職と警察庁とを往復しながら、地位を昇っていく。採用されて2年で警部、警視正を経て、20余年で警視長ののち、警視監で定年を迎える者も多い。キャリアは、警察の関連団体、一流企業や金融機関に天下る。 銀行、保険、証券会社などの金融業は言うまでもない。電通や博報堂などの広告業、ゼネコンなどの建築業、富士通などの通信機器・情報産業、不動産業、日本郵便、日立をはじめとする日本を代表するメーカーや企業である。 1981年に商法が改正された。それまで企業は、株主総会を円滑に終了させるために、総会屋に金を払っていたが、そうした行為が禁止され、処罰規定も設けられた。総会屋に代替する機能を果たすものとして、またコンプライアンスを遵守するという趣旨から警察の退職者を一般企業が採用するようになったのだろう』、「1981年に商法が改正された。それまで企業は、株主総会を円滑に終了させるために、総会屋に金を払っていたが、そうした行為が禁止され、処罰規定も設けられた。総会屋に代替する機能を果たすものとして、またコンプライアンスを遵守するという趣旨から警察の退職者を一般企業が採用するようになったのだろう」、「警察」にしてみれば、棚ぼた的に天下り先が増えたことになる。
・『JAFへ天下った警視庁長官 退職金は巨額の10億円  従来からの警察の領域である、交通と防犯の分野に天下る者も多い。 交通関係では、天下りの対象としては財団のウェイトが大きいように見受けられる。 その財団として、日本自動車連盟(JAF)、全日本交通安全協会、交通事故総合分析センター、日本道路交通情報センター、全日本指定自動車教習所協会連合会、空港保安事業センター、日本二輪車安全普及協会、日本自動車交通安全用品協会、道路交通情報通信システムセンター、新交通管理システム協会、日本交通管理技術協会、全国ハイヤー・タクシー連合会、東京ハイヤー・タクシー協会、などの財団法人や社団法人の理事長や専務理事、常務理事として天下っている。 高橋幹夫警察庁長官は日本自動車連盟(JAF)に天下り、その理事長を15年間にわたって務めた。毎年、多額の報酬を受けていたが、死亡退職にあたっては「JAFから10億円近い巨額の退職金を受け取ったことが報じられ、今度は世間を呆れさせた」(寺尾文孝『闇の盾』)。 また、各都道府県や各警察署の交通安全協会は退職警察官の重要な受け入れ先ともなっている。各都道府県の交通安全協会は自動車運転免許に関わる事務手続きや講習などを委託されている。各県にある指定自動車教習所の協会や指定自動車教習所の所長、各県にあるタクシー・ハイヤー協会へ天下る都道府県警察本部や警察署の幹部警察官もいる。 交通に関連する企業としては、トヨタ自動車などの自動車メーカー、ヤナセなどの自動車販売業、JRなどの鉄道・交通業へ天下る(バスと接触事故を起こしたら、バスのほうが無理な車線変更や割り込みをしてきたにもかかわらず、バス会社の『警察から天下ってきた』事故担当者が飛んできて、自分のほうが悪いことにされてしまった、という一般の運転者のぼやきはしばしば聞く)。 さらに、道路交通情報通信システムセンター、新交通管理システム協会、日本交通管理技術協会などの協会から、情報産業との関係が浮かび上がるが、富士通、三菱電機などの情報機器産業への就職もある』、「日本自動車連盟(JAF)に天下り、その理事長を15年間にわたって務めた。毎年、多額の報酬を受けていたが、死亡退職にあたっては「JAFから10億円近い巨額の退職金を受け取ったことが報じられ、今度は世間を呆れさせた」、「理事長を15年間」した上で、「死亡退職」にあたっては、「10億円近い巨額の退職金」とは余りに厚遇が過ぎる。「バスと接触事故を起こしたら、バスのほうが無理な車線変更や割り込みをしてきたにもかかわらず、バス会社の『警察から天下ってきた』事故担当者が飛んできて、自分のほうが悪いことにされてしまった、という一般の運転者のぼやきはしばしば聞く」、行き過ぎた天下りの例だ。「道路交通情報通信システムセンター、新交通管理システム協会、日本交通管理技術協会などの協会から、情報産業との関係が浮かび上がるが、富士通、三菱電機などの情報機器産業への就職もある」、なるほど。
・『セコムの顧問には警察がズラリ ALSOKの創設者は警察官僚  交通関係として警察に特徴的なのは、信号機の設計やメインテナンスがある。 たとえば「東管」という会社には、警察庁として警視監ナンバー3の地位だと言われる警察大学校長で退官した後、JR東海の監査役や道路交通情報通信システムセンターの専務理事を務めた全日本交通安全協会の評議員が、特別顧問になっている。 株式会社となっている各地の空港への天下りもある。 なお、キャリア幹部が天下る保険業のなかでも、自動車保険関係が強い保険会社は、交通に関連する企業と言ってもいいのかもしれない。) また、警備業界の警察キャリアの受け入れも顕著である。警備会社の最大手はセコムで、2022年度では、警察庁長官官房付を本社の顧問に、県警察学校長をその県を含む地方本部の顧問に迎え入れている。前年には、北海道警察の参事官をセコムの北海道本部の顧問に迎えている。 現在、取締役に警察関係者はおらず、監事に元警視総監がいる。この元警視総監は、JAF会長及び全日本指定自動車教習所協会連合会代表理事、保険相互会社嘱託、さらにパチスロなどのゲーム機メーカーのコナミの監査役も務めており、警察が利権を持つとされる交通、防犯、風俗という3領域すべてで役職を得たと言うことができよう。 警備業界の第2位は、綜合警備保障(ALSOK)である。警備会社は全国に1万社以上あると思われるが、セコムと綜合警備保障だけで売り上げの4割以上を占めると言われている。業界第1位のセコムの売上高は1兆円を超え、業界第2位の綜合警備保障の売上高は約5,000億円である。これに対して、3位であるセントラル警備保障は約700億円にすぎない。 綜合警備保障は、そもそも警察官僚によって創設された会社である。創始者の村井順は、「内閣総理大臣官房調査室」を設立し、1964年に東京オリンピック組織委員会事務局へ次長として出向したおりに、今後の警備会社の需要と発展を実感したという。警察庁九州管区警察局長で退職したのち警備会社を興した。 長男が社長を継いだのち、中部管区警察局長で退職した警察官僚が迎えられ、社長を約6年務めた。 なお、この社長となった警察官僚の弟も警察官僚で、警察庁長官の後に内閣官房副長官になった』、「綜合警備保障は、そもそも警察官僚によって創設された会社である。創始者の村井順は、「内閣総理大臣官房調査室」を設立し、1964年に東京オリンピック組織委員会事務局へ次長として出向したおりに、今後の警備会社の需要と発展を実感したという。警察庁九州管区警察局長で退職したのち警備会社を興した。 長男が社長を継いだのち、中部管区警察局長で退職した警察官僚が迎えられ、社長を約6年務めた。 なお、この社長となった警察官僚の弟も警察官僚で、警察庁長官の後に内閣官房副長官になった」、なるほど。
・『駐車監視業務の民間委託は警察官の再雇用先確保のため?  綜合警備保障と警察庁との契約に関して、兄弟の関係がマスメディアの話題になったこともあった。 じつは、創設者の次男も警察官僚であった。複数の県警本部長を務めたのち中部管区警察局長で退職し、預金保険機構理事を1年務めた後、綜合警備保障へ入社し、社長に就いた。この社長が招いた官僚が次の社長になった。) 彼は大蔵省に入省し、財務省関税局長を務めた財務官僚だが、和歌山県警本部長を務めた経歴を持つ。常務として迎えられた後、4年後に社長になり10年間社長を務めた。 セコムと比較すると、綜合警備保障は、創始者とその子が警察官僚であるとともに、警察官僚を積極的に役員として迎え入れており、警察官僚や県警本部長経験者が社長を務めてきたという特徴がある。 2006年に駐車監視業務(駐車違反などの取り締まり)が民営化された際、綜合警備保障は東京都内の数か所の警察署管内を請け負った。しかし、その後は引き受けているようには見えない。 受託は入札制度によっており、2人の巡視員による巡回の仕事で、人件費がかかり、利益が上がらないため撤退したものと推定される。 一方セコムは、人を張り付けたり、巡回させたり、常駐させたりする警備から手を引き、CCTVなどの機械監視へと舵を切った。さらにセンサーを組み込んだり、入退室管理と連動させたりして、異常通報があった場合にのみ警備員が駆け付ける、という省力化した機械警備を発展させようとしている。 そのため、こうした原初的な手間暇がかかって儲からない駐車違反取り締まり業務には見向きもしなかったものと考えられる。 じつは、この駐車監視業務の民間移管は、その企画が発表された当初から、大量に定年退職する警察官の再雇用先を確保するためではないかと言われていた。 あえて言うならば、落札した企業は、儲けるためではなく、退職警察官を救済するために儲からない仕事を受託したという、逆説的な見方も可能と思われる』、「綜合警備保障は、創始者とその子が警察官僚であるとともに、警察官僚を積極的に役員として迎え入れており、警察官僚や県警本部長経験者が社長を務めてきたという特徴がある。 2006年に駐車監視業務(駐車違反などの取り締まり)が民営化された際、綜合警備保障は東京都内の数か所の警察署管内を請け負った。しかし、その後は引き受けているようには見えない。 受託は入札制度によっており、2人の巡視員による巡回の仕事で、人件費がかかり、利益が上がらないため撤退したものと推定される。 一方セコムは、人を張り付けたり、巡回させたり、常駐させたりする警備から手を引き、CCTVなどの機械監視へと舵を切った。さらにセンサーを組み込んだり、入退室管理と連動させたりして、異常通報があった場合にのみ警備員が駆け付ける、という省力化した機械警備を発展させようとしている。 そのため、こうした原初的な手間暇がかかって儲からない駐車違反取り締まり業務には見向きもしなかったものと考えられる・・・駐車監視業務の民間移管は、その企画が発表された当初から、大量に定年退職する警察官の再雇用先を確保するためではないかと言われていた。 あえて言うならば、落札した企業は、儲けるためではなく、退職警察官を救済するために儲からない仕事を受託したという、逆説的な見方も可能と思われる」、「駐車監視業務の民間移管」を「落札した企業は、儲けるためではなく、退職警察官を救済するために儲からない仕事を受託した」のは、確かそうだ。 
タグ:公務員制度 (その7)([新連載]霞が関人材クライシス 若手官僚はなぜ辞めるのか、〈音声入手〉「国交省の人間をまた推薦させて頂きたい」 別法人でも国交省有力OBが“天下り要求” 前理事長は「もうたくさん」、天下りの警察OBに「退職金10億円」払った団体の名前…世間が呆れ返った警察利権の実態とは?) 日経ビジネスオンライン「[新連載]霞が関人材クライシス 若手官僚はなぜ辞めるのか」 「電車内で他の乗客に暴行を振るったとして、総括審議官(当時、20日付で大臣官房付に更迭)の小野平八郎容疑者が逮捕された・・・機関決定の見送りは、小野氏にとって財務省から課せられたミッションの失敗を意味する。その日の夜、小野氏は複数の会合を重ねて痛飲」、いくら事情があったにせよ、「電車内で他の乗客に暴行を振るった」のはいただけない。 「霞が関の人気は右肩下がりが続いてきた。21年の国家公務員総合職(キャリア)の採用試験申込者数は1万7411人と、5年連続で過去最少を更新した。22年春の試験は1万5330人と6年ぶりに増加に転じたものの、底を打って低迷を完全に抜け出すだけの目ぼしい材料はない」、なるほど。 「国家公務員は労働基準法の適用対象外だが、人事院の規則に従えば1カ月間の時間外労働は原則45時間以内でなければならない。しかし罰則はなく、国会対応などで業務の比重が高い部署には月100時間未満の超過勤務を認める例外規定もある。 首相官邸は、労働の実態に合わせて超過勤務手当を支払うよう各省庁に求めた。すると22年度の一般会計当初予算は、本省分の残業代として総額約403億円を計上。補正分を含めた前年度より17.5%も膨らんだ。本来はもらえていたはずの残業代が、やっと支払われるようになってきた形だが、旧態依然と した労働環境はなかなか改善できない・・・「ブラックな働き方と知りながら、政策を作りたくて入ってきている。昔も今もこれからも、残れるやつだけ残ればいいのが霞が関という世界だ」。ある省で将来の事務次官候補に挙がる課長はこう語り働き方改革の推進に対して難色をあらわにする・・・経済産業省で10年代に勤務した一般職の女性は、管理職が部下に「辞めろ、死ね」と怒鳴っていた姿が忘れられない。「経産省を出れば何もできないであろう人が幅を利かす」組織に失望した。若手・中堅を中心に退職者が増えてきたのも、こうした組織風土と無関 係ではないだろう」、なるほど。 「政府全体の歳出を公務員数で割った数値は日本が他の先進民主主義国より圧倒的に高かった。 国の歳出は規模が大きくなればなるほど、運用が煩雑になり、公務員が担う仕事量は多くなる。北村教授が浮き彫りにしたのは、1人当たりの負担が世界でも群を抜いて大きい日本の国家公務員の姿だった。 一方で、政府の人件費が政府全体の歳出に占める割合をみると、日本が最小クラスであることも分かった・・・1人当たりの負担が世界でも群を抜いて大きい日本の国家公務員の姿だった。 一方で、政府の人件費が政府全体の歳出に占める割合をみると、日本が最小クラスであることも分かった」、なるほど。 「米シリコンバレーへの留学を経験し、政府主導の産業育成に疑問を感じて2000年に退職。米コンサルティング大手などで働いていたが、かつての上司から19年初めに連絡があった。「若手の退職が増えているから戻ってきてほしい」。経産省で管理職の公募制度が始まるタイミングに合わせた勧誘に、古谷さんは「民間を知るからこそ分かる政府の役割とやりがいを伝えたい」と一念発起。スタートアップ企業育成の中核となる新規事業創造推進室のトップに就いた。 ところが20年ぶりの現場では、昔のようにボトムアップで政策が日の目を見ることが極端に少なくなっていた。代わりに増えたのは、トップダウンの意思決定。古谷さんからすれば、理由は明らかだった。「とにかく若手の官僚が情報を収集できていない」。延長もあり得る期限付きの復帰だったが、希望せずに霞が関を離れた」、「昔のようにボトムアップで政策が日の目を見ることが極端に少なくなっていた。代わりに増えたのは、トップダウンの意思決定」というのは由々しいことだ。 「象徴的なのが東京大学出身者の動向だ。優秀な学生がこぞって中央省庁入りを目指し、東大が「キャリア官僚の育成機関」とまで言われた時代ではなくなった。 キャリア官僚の採用試験で合格した東大出身者は16年度から減少を続け、20年度には300人台に突入した・・・「周囲では起業するか、外資系コンサル会社や商社を志望する学生が多くなっている」、なるほど。 文春オンライン「〈音声入手〉「国交省の人間をまた推薦させて頂きたい」 別法人でも国交省有力OBが“天下り要求” 前理事長は「もうたくさん」 「国からの事業が減る中で、馬場氏は自らの退任前に運営の健全化を図ろうとしていた。特に報酬年1800万円とされる常務理事ポストを無くそうとしていました」、「馬場」氏」が「国交省OB」でありながら、天下り先の利益を優先させようとしたのは、大したものだ。 「藤原良一氏」が通常の「国交省」の役人らしい行動だ。 「立憲民主党が省庁幹部の再就職状況を調査するよう衆院に要請するなど、天下りの実態解明を求める声が高まっている中、新たに発覚した音声データの存在を受け、国交省がどのような対応を取るのか、注目される」、徹底的に監視してゆく必要がある。 ダイヤモンド・オンライン 鮎川 潤氏による「天下りの警察OBに「退職金10億円」払った団体の名前…世間が呆れ返った警察利権の実態とは?」 『腐敗する「法の番人」:警察、検察、法務省、裁判所の正義を問う』(平凡社新書、平凡社) 「1981年に商法が改正された。それまで企業は、株主総会を円滑に終了させるために、総会屋に金を払っていたが、そうした行為が禁止され、処罰規定も設けられた。総会屋に代替する機能を果たすものとして、またコンプライアンスを遵守するという趣旨から警察の退職者を一般企業が採用するようになったのだろう」、「警察」にしてみれば、棚ぼた的に天下り先が増えたことになる。 「日本自動車連盟(JAF)に天下り、その理事長を15年間にわたって務めた。毎年、多額の報酬を受けていたが、死亡退職にあたっては「JAFから10億円近い巨額の退職金を受け取ったことが報じられ、今度は世間を呆れさせた」、「理事長を15年間」した上で、「死亡退職」にあたっては、「10億円近い巨額の退職金」とは余りに厚遇が過ぎる。 「バスと接触事故を起こしたら、バスのほうが無理な車線変更や割り込みをしてきたにもかかわらず、バス会社の『警察から天下ってきた』事故担当者が飛んできて、自分のほうが悪いことにされてしまった、という一般の運転者のぼやきはしばしば聞く」、行き過ぎた天下りの例だ。「道路交通情報通信システムセンター、新交通管理システム協会、日本交通管理技術協会などの協会から、情報産業との関係が浮かび上がるが、富士通、三菱電機などの情報機器産業への就職もある」、なるほど。 「綜合警備保障は、そもそも警察官僚によって創設された会社である。創始者の村井順は、「内閣総理大臣官房調査室」を設立し、1964年に東京オリンピック組織委員会事務局へ次長として出向したおりに、今後の警備会社の需要と発展を実感したという。警察庁九州管区警察局長で退職したのち警備会社を興した。 長男が社長を継いだのち、中部管区警察局長で退職した警察官僚が迎えられ、社長を約6年務めた。 なお、この社長となった警察官僚の弟も警察官僚で、警察庁長官の後に内閣官房副長官になった」、なるほど。 「綜合警備保障は、創始者とその子が警察官僚であるとともに、警察官僚を積極的に役員として迎え入れており、警察官僚や県警本部長経験者が社長を務めてきたという特徴がある。 2006年に駐車監視業務(駐車違反などの取り締まり)が民営化された際、綜合警備保障は東京都内の数か所の警察署管内を請け負った。しかし、その後は引き受けているようには見えない。 受託は入札制度によっており、2人の巡視員による巡回の仕事で、人件費がかかり、利益が上がらないため撤退したものと推定される。 一方セコムは、人を張り付けたり、巡回させたり、常駐させたりする警備から手を引き、CCTVなどの機械監視へと舵を切った。さらにセンサーを組み込んだり、入退室管理と連動させたりして、異常通報があった場合にのみ警備員が駆け付ける、という省力化した機械警備を発展させようとしている。 そのため、こうした原初的な手間暇がかかって儲からない駐車違反取り締まり業務には見向きもしなかったものと考えられる・・・ 駐車監視業務の民間移管は、その企画が発表された当初から、大量に定年退職する警察官の再雇用先を確保するためではないかと言われていた。 あえて言うならば、落札した企業は、儲けるためではなく、退職警察官を救済するために儲からない仕事を受託したという、逆説的な見方も可能と思われる」、「駐車監視業務の民間移管」を「落札した企業は、儲けるためではなく、退職警察官を救済するために儲からない仕事を受託した」のは、確かそうだ。
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公務員制度(その7)([新連載]霞が関人材クライシス 若手官僚はなぜ辞めるのか、〈音声入手〉「国交省の人間をまた推薦させて頂きたい」 別法人でも国交省有力OBが“天下り要求” 前理事長は「もうたくさん」、天下りの警察OBに「退職金10億円」払った団体の名前…世間が呆れ返った警察利権の実態とは?) [経済政治動向]

公務員制度については、2021年12月21日に取上げた。今日は、(その7)([新連載]霞が関人材クライシス 若手官僚はなぜ辞めるのか、〈音声入手〉「国交省の人間をまた推薦させて頂きたい」 別法人でも国交省有力OBが“天下り要求” 前理事長は「もうたくさん」、天下りの警察OBに「退職金10億円」払った団体の名前…世間が呆れ返った警察利権の実態とは?)である。

先ずは、2022年5月31日付け日経ビジネスオンライン「[新連載]霞が関人材クライシス 若手官僚はなぜ辞めるのか」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00460/053000001/
・『深夜残業の多いブラック職場、旧態依然とした年功序列型の組織、自己成長の実感が薄い――。悪評が定着した霞が関の不人気は深刻化し、応募者の減少傾向に歯止めがかからない。それでも官僚が今、そして未来の日本を支える頭脳集団であることに変わりない。多岐にわたる関係者と調整し、課題を解決する力は、企業のイノベーションにとっても必要だ。司令塔の地盤沈下が進む国に未来はない。官僚の威信と魅力を取り戻す道を探る。 今後のラインアップ ・霞が関人材クライシス 若手官僚はなぜ辞めるのか(今回) ・ブラック職場とは言わせない 霞が関、働き方改革の最前線 ・立ち上がった民間出身官僚 「個の犠牲」に頼らない風土を ・官僚だってやりたい仕事がある 2割の時間を「本業外」に ・現役官僚座談会「同窓会で給料の話になったらトイレに行く」 ・農水省発、官僚YouTuberの挑戦 「等身大の霞が関」を国民へ ・民間で光る「官僚力」 企業と日本の活力に ・総務省出身のDeNA岡村社長「官僚の総合力、企業経営で生かせ」 など   5月20日、いつにも増して静まり返る財務省を幹部が朝から駆け回っていた。未明に電車内で他の乗客に暴行を振るったとして、総括審議官(当時、20日付で大臣官房付に更迭)の小野平八郎容疑者が逮捕された。その後処理に追われていたのだ。 省内で「周囲に声を荒らげることはなく、仕事もそつなくこなす」(主税局関係者)と評されていた小野氏に何があったのか。 総括審議官は政府の経済財政諮問会議に絡む業務が多い。複数の関係者の話を総合すると、6月上旬に閣議決定される「骨太の方針」について、小野氏は財務省の意向を反映させるため自民党との調整に追われていた。 自民党には財政再建派の「財政健全化推進本部」(額賀福志郎本部長)と、積極財政派の「財政政策検討本部」(西田昌司本部長)がある。国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2025年度に黒字化する政府目標の取り扱いを巡って対立しているが、参院選を7月に控える今は、政局化を避けることで内々に合意していることで知られている。 財政健全化推進本部は5月19日、小野氏が作成したドラフトを基に官邸宛ての提言をまとめようとした。しかし財政政策検討本部側に抵抗されて断念。結局、額賀本部長が預かって骨太の方針に押し込む流れになった。 機関決定の見送りは、小野氏にとって財務省から課せられたミッションの失敗を意味する。その日の夜、小野氏は複数の会合を重ねて痛飲したとみられる』、「電車内で他の乗客に暴行を振るったとして、総括審議官(当時、20日付で大臣官房付に更迭)の小野平八郎容疑者が逮捕された・・・機関決定の見送りは、小野氏にとって財務省から課せられたミッションの失敗を意味する。その日の夜、小野氏は複数の会合を重ねて痛飲」、いくら事情があったにせよ、「電車内で他の乗客に暴行を振るった」のはいただけない。
・『「出世しても潰れる」不安   財務省の中堅幹部はこう漏らした。「いくら昇進レースで懸命に勝ち残っても、一寸先は闇ということだ。もちろん許される行為ではないが、霞が関の一員としてむなしいし、正直に言うと少なからず同情できる面もある」 今回の事件が霞が関に広げた波紋は、単なる「有力幹部の不祥事」レベルにとどまらない。特に若いキャリア官僚の間では、「順調に出世して事務次官のポストが見えていても、強いストレスによって潰れてしまう」(総務省課長補佐)という捉え方にみられるように、自らの将来を不安視する向きが強まっている。 働くステージとして、霞が関の人気は右肩下がりが続いてきた。21年の国家公務員総合職(キャリア)の採用試験申込者数は1万7411人と、5年連続で過去最少を更新した。22年春の試験は1万5330人と6年ぶりに増加に転じたものの、底を打って低迷を完全に抜け出すだけの目ぼしい材料はない。 中央省庁は国政の基盤を作る役割を担うだけに、もともと「働きがい」ならどの職種にも勝るとも劣らないはずだ。しかし過酷な残業が、それを打ち消してしまう』、「霞が関の人気は右肩下がりが続いてきた。21年の国家公務員総合職(キャリア)の採用試験申込者数は1万7411人と、5年連続で過去最少を更新した。22年春の試験は1万5330人と6年ぶりに増加に転じたものの、底を打って低迷を完全に抜け出すだけの目ぼしい材料はない」、なるほど。
・『3割が「過労死ライン」  内閣人事局が20年秋に国家公務員約5万人の働き方を調べたところ、20代のキャリア官僚の3割が「過労死ライン」とされる月80時間を超える残業をこなしていた。 19年4月施行の改正労働基準法で、民間企業の時間外労働時間は原則として1カ月当たり45時間以内、特別条項が適用されると1カ月100時間未満、複数にわたる月平均は80時間以内と定められた。 国家公務員は労働基準法の適用対象外だが、人事院の規則に従えば1カ月間の時間外労働は原則45時間以内でなければならない。しかし罰則はなく、国会対応などで業務の比重が高い部署には月100時間未満の超過勤務を認める例外規定もある。 首相官邸は、労働の実態に合わせて超過勤務手当を支払うよう各省庁に求めた。すると22年度の一般会計当初予算は、本省分の残業代として総額約403億円を計上。補正分を含めた前年度より17.5%も膨らんだ。本来はもらえていたはずの残業代が、やっと支払われるようになってきた形だが、旧態依然とした労働環境はなかなか改善できない。 「ブラックな働き方と知りながら、政策を作りたくて入ってきている。昔も今もこれからも、残れるやつだけ残ればいいのが霞が関という世界だ」。ある省で将来の事務次官候補に挙がる課長はこう語り働き方改革の推進に対して難色をあらわにする。 経済産業省で10年代に勤務した一般職の女性は、管理職が部下に「辞めろ、死ね」と怒鳴っていた姿が忘れられない。「経産省を出れば何もできないであろう人が幅を利かす」組織に失望した。若手・中堅を中心に退職者が増えてきたのも、こうした組織風土と無関係ではないだろう』、「国家公務員は労働基準法の適用対象外だが、人事院の規則に従えば1カ月間の時間外労働は原則45時間以内でなければならない。しかし罰則はなく、国会対応などで業務の比重が高い部署には月100時間未満の超過勤務を認める例外規定もある。 首相官邸は、労働の実態に合わせて超過勤務手当を支払うよう各省庁に求めた。すると22年度の一般会計当初予算は、本省分の残業代として総額約403億円を計上。補正分を含めた前年度より17.5%も膨らんだ。本来はもらえていたはずの残業代が、やっと支払われるようになってきた形だが、旧態依然とした労働環境はなかなか改善できない・・・「ブラックな働き方と知りながら、政策を作りたくて入ってきている。昔も今もこれからも、残れるやつだけ残ればいいのが霞が関という世界だ」。ある省で将来の事務次官候補に挙がる課長はこう語り働き方改革の推進に対して難色をあらわにする・・・経済産業省で10年代に勤務した一般職の女性は、管理職が部下に「辞めろ、死ね」と怒鳴っていた姿が忘れられない。「経産省を出れば何もできないであろう人が幅を利かす」組織に失望した。若手・中堅を中心に退職者が増えてきたのも、こうした組織風土と無関係ではないだろう」、なるほど。
・『忙しくても報酬は少ない  日本の国家公務員は、諸外国と比べて仕事量が多いのに、もらえる報酬は少ない。大阪大学大学院法学研究科の北村亘教授が経済協力開発機構(OECD)のデータを基に試算したところ、政府全体の歳出を公務員数で割った数値は日本が他の先進民主主義国より圧倒的に高かった。 国の歳出は規模が大きくなればなるほど、運用が煩雑になり、公務員が担う仕事量は多くなる。北村教授が浮き彫りにしたのは、1人当たりの負担が世界でも群を抜いて大きい日本の国家公務員の姿だった。 一方で、政府の人件費が政府全体の歳出に占める割合をみると、日本が最小クラスであることも分かった(上のグラフを参照)。 北村教授は「予算が膨張する一方で職員の定数が減らされ続けているため、国家公務員の業務は量が増えつつ複雑・高度化している」と指摘。「国家公務員の志願者がさらに減れば質の確保が難しくなり、人数以上の仕事を処理できなくなる」と警鐘を鳴らす』、「政府全体の歳出を公務員数で割った数値は日本が他の先進民主主義国より圧倒的に高かった。 国の歳出は規模が大きくなればなるほど、運用が煩雑になり、公務員が担う仕事量は多くなる。北村教授が浮き彫りにしたのは、1人当たりの負担が世界でも群を抜いて大きい日本の国家公務員の姿だった。 一方で、政府の人件費が政府全体の歳出に占める割合をみると、日本が最小クラスであることも分かった・・・1人当たりの負担が世界でも群を抜いて大きい日本の国家公務員の姿だった。 一方で、政府の人件費が政府全体の歳出に占める割合をみると、日本が最小クラスであることも分かった」、なるほど。
・『極端に減った「ボトムアップ」  霞が関OBも、キャリア官僚の業務スタイルが変わったのを感じ取っている。1993年に通商産業省(現経産省)に入った古谷元さんは、当時を「霞が関が日本を動かしているという自負が強かった」と振り返る。省内にさまざまな人が出入りし、あらゆる先進的な情報が自分の机に座っていれば得られた。夜は仲間と政策を議論し、固まったものが1年たった頃に実現していく。そんなダイナミズムがあった。 米シリコンバレーへの留学を経験し、政府主導の産業育成に疑問を感じて2000年に退職。米コンサルティング大手などで働いていたが、かつての上司から19年初めに連絡があった。「若手の退職が増えているから戻ってきてほしい」。経産省で管理職の公募制度が始まるタイミングに合わせた勧誘に、古谷さんは「民間を知るからこそ分かる政府の役割とやりがいを伝えたい」と一念発起。スタートアップ企業育成の中核となる新規事業創造推進室のトップに就いた。 ところが20年ぶりの現場では、昔のようにボトムアップで政策が日の目を見ることが極端に少なくなっていた。代わりに増えたのは、トップダウンの意思決定。古谷さんからすれば、理由は明らかだった。「とにかく若手の官僚が情報を収集できていない」。延長もあり得る期限付きの復帰だったが、希望せずに霞が関を離れた』、「米シリコンバレーへの留学を経験し、政府主導の産業育成に疑問を感じて2000年に退職。米コンサルティング大手などで働いていたが、かつての上司から19年初めに連絡があった。「若手の退職が増えているから戻ってきてほしい」。経産省で管理職の公募制度が始まるタイミングに合わせた勧誘に、古谷さんは「民間を知るからこそ分かる政府の役割とやりがいを伝えたい」と一念発起。スタートアップ企業育成の中核となる新規事業創造推進室のトップに就いた。 ところが20年ぶりの現場では、昔のようにボトムアップで政策が日の目を見ることが極端に少なくなっていた。代わりに増えたのは、トップダウンの意思決定。古谷さんからすれば、理由は明らかだった。「とにかく若手の官僚が情報を収集できていない」。延長もあり得る期限付きの復帰だったが、希望せずに霞が関を離れた」、「昔のようにボトムアップで政策が日の目を見ることが極端に少なくなっていた。代わりに増えたのは、トップダウンの意思決定」というのは由々しいことだ。
・『東大生は「コンサルか商社」  霞が関の地盤沈下は、エリート層が敬遠するようになった現実とも無関係ではないだろう。象徴的なのが東京大学出身者の動向だ。優秀な学生がこぞって中央省庁入りを目指し、東大が「キャリア官僚の育成機関」とまで言われた時代ではなくなった。 キャリア官僚の採用試験で合格した東大出身者は16年度から減少を続け、20年度には300人台に突入した。法学部2年の男子生徒は「周囲では起業するか、外資系コンサル会社や商社を志望する学生が多くなっている。キャリア官僚も悪くないが、やはり労働環境の悪さがネックになる」と明かす。 「霞が関に入ることを家族に相談したが、全力で止められた」と笑うのは、法学部3年の男子生徒だ。大手IT幹部の父親は、データを示しながら「年収が低いし、下積みの期間が長くて効率が悪い。大企業を目指すか、コンサルで経験を積んで起業すべきだ」と説得したという。 21年は法案や条約の関連文書に多数の誤記が見つかり、組織の劣化が懸念された霞が関。このまま自滅するわけにはいかない──。危機感を高めた霞が関は今、モデルチェンジを急いでいる』、「象徴的なのが東京大学出身者の動向だ。優秀な学生がこぞって中央省庁入りを目指し、東大が「キャリア官僚の育成機関」とまで言われた時代ではなくなった。 キャリア官僚の採用試験で合格した東大出身者は16年度から減少を続け、20年度には300人台に突入した・・・「周囲では起業するか、外資系コンサル会社や商社を志望する学生が多くなっている」、なるほど。

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キシダノミクス(その10)(岸田首相 いつの間にか「一強体制」に…!裏ガネ問題がまさかの追い風、「鈍感力」が「突破力」に化けた裏側、岸田首相が訪米で真に交渉すべき「リアル日本有事」への日米大軍事連携、外交敗北…!岸田総理は訪米後、バイデン大統領から思いっきりはしごを外されていた、習近平とバイデンが結託…!?完全にはしごを外された岸田総理の「超外交敗北」の舞台裏) [国内政治]

キシダノミクスについては、本年1月30日に取上げた。今日は、(その10)(岸田首相 いつの間にか「一強体制」に…!裏ガネ問題がまさかの追い風、「鈍感力」が「突破力」に化けた裏側、岸田首相が訪米で真に交渉すべき「リアル日本有事」への日米大軍事連携、外交敗北…!岸田総理は訪米後、バイデン大統領から思いっきりはしごを外されていた、習近平とバイデンが結託…!?完全にはしごを外された岸田総理の「超外交敗北」の舞台裏)である。

先ずは、本年3月28日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの伊藤 博敏氏による「岸田首相、いつの間にか「一強体制」に…!裏ガネ問題がまさかの追い風、「鈍感力」が「突破力」に化けた裏側」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/126593?imp=0
・『岸田の鈍感力が、まさかの突破力に  岸田文雄首相の「安倍派潰し」が、いよいよ“仕上げ”に入ってきた。26,27両日には自ら安倍派幹部4人の再聴取を行って、処分への道筋をつけた。 その先触れのように、二階俊博元党幹事長が次の衆院選での不出馬を表明した。記者会見での「ばかやろう」発言は自制の効かない老いを感じさせたが、党に処分される前での発表は影響力を残すギリギリの決断で、さすがの老練さを感じさせた。 岸田氏に再聴取を受けた塩谷立、下村博文、西村康稔、世耕弘成の4氏は追い込まれた。22年8月に開かれた裏ガネ還流への対応協議幹部会に出席した4人は、政治倫理審査会で説明責任を果たしておらず、「非公認など重い処分は避けられない」と見られていたが、二階氏の決断がそれを後押しする。 結果として「岸田一強体制」が固まった。 振り返ってみれば、岸田首相は派閥政治資金パーティー裏ガネ化事件を最も効果的に使った人である。岸田氏の人の思惑を気にしない鈍感力は、突破力となって自民党は再出発を余儀なくされている。 事件の始まりは『しんぶん赤旗』のスクープとそれを受けて調査した上脇博之・神戸学院大学教授の告発だった。5派4000万円の不記載だったが、その時から最も悪質だったのが安倍派だった。赤旗編集部が政治資金収支報告書を読み込み、辻褄の合わない部分について執拗に問い合わせた。その回数は、22年6月13日から同年11月14日までに64件に及んだ。安倍派は不承不承、訂正に応じた。 これは何を意味するか。単なる記載漏れなどのミスではないということだ。「訂正は罪の自白」というのは上脇氏の持論だが、安倍派は書かずに裏ガネ化する確信犯だった。それがわかったので、上脇氏の告発を受理した検察が襲いかかった。 そこに検察と朝日新聞の思惑があったことを、筆者は「現代ビジネス」で<「安倍派つぶし」に本腰を入れた特捜部と「朝日新聞」…従軍慰安婦報道で信頼を失った「高級紙」の執念>(23年12月14日)と題して報じた』、「裏ガネ還流への対応協議幹部会に出席した4人は、政治倫理審査会で説明責任を果たしておらず、「非公認など重い処分は避けられない」と見られていたが、二階氏の決断がそれを後押しする。 結果として「岸田一強体制」が固まった。 振り返ってみれば、岸田首相は派閥政治資金パーティー裏ガネ化事件を最も効果的に使った人である。岸田氏の人の思惑を気にしない鈍感力は、突破力となって自民党は再出発を余儀なくされている・・・安倍派は書かずに裏ガネ化する確信犯だった。それがわかったので、上脇氏の告発を受理した検察が襲いかかった。 そこに検察と朝日新聞の思惑があったことを、筆者は「現代ビジネス」で<「安倍派つぶし」に本腰を入れた特捜部と「朝日新聞」…従軍慰安婦報道で信頼を失った「高級紙」の執念>(23年12月14日)と題して報じた」、なるほど。
・『三者の思惑が重なった  内閣人事局を発足させた安倍政権が「官僚支配」を強めるなか、「権力の監視役」を以て任ずる検察の総長人事にまで手を入れてきたことを検察総体が恐れた。官邸が望む黒川弘務・東京高検検事長の検事総長就任は阻止したが、その時、検察OBが提出した「政権の意に添わない検察の動きを封じ込め、検察の力を削ぐことを意図している」という意見書に危機感は表われている。 そこに「反安倍」を社論とする朝日新聞が、スクープを連発してマスメディアをリードした。朝日は社説で、<この政権は、民主主義をどこまで壊していくのだろう>(19年12月30日)と断罪し、その安倍派を狙った検察捜査に連帯した。 一方、上脇氏は「日本に議会制民主主義はいまだに実現していない」として、それを阻んでいる「政治とカネ」を告発し続けている憲法学者である。2000年に97年12月の新進党分裂に絡む政党助成金の告発を行って以来、20年以上にわたって告発を続けてきた。「政治とカネ」を告発する第一人者であり、その分、告発状は精緻に構成され、提出されれば検察は受理せざるを得ない。 派閥政治資金パーティーの裏ガネ化は、そんな三者の思惑と諸条件が重なって自民党を揺るがす事件となった。秩序を崩壊させ結果的に「岸田一強」に持って行ったのは岸田氏自身である。 岸田氏は安倍、二階派に続き、岸田派も元会計責任者が立件されるのが明らかになった1月18日、解散を決めて記者団に伝えた。政権を支える麻生派領袖の麻生太郎、茂木派領袖の茂木敏充の両氏には事後通告。2人は激しく反発するが政局は動き始め、安倍派、二階派が解散を決め、茂木派も政策勉強会に衣替えして派閥政治は幕を下ろした』、なるほど。
・『「検審地獄」に苦しむ議員が出る  事件を受けて行なわれた衆参政治倫理審査会を経て、焦点は誰をどう処分するかに迫られた。処分を避けて領袖の二階氏が不出馬を迫られた二階派、「重い処分」を幹部4人が通告された安倍派の不満は大きいが、裏ガネ事件が終結したわけではない。 事件を受けて3月11日までに90人の国会議員らが政治資金収支報告書を訂正した。「罪の自白」であり告発はやりやすくなる。既に上脇氏は、3月22日までに安倍派5人衆のひとりである萩生田光一氏と、同じく5人衆で前出の世耕氏の2人を告発した。派閥還流資金を記載しなかったというもので、萩生田分が2278万円、世耕分が1542万円である。 これまでに現職国会議員3人を含む10人が起訴あるいは略式起訴されたが、それは検察判断による立件であり、「訂正」という形で証拠が提示され還流の事件構図が明らかになっている以上、今後も告発は可能だ。 もちろん90人すべては現実的ではないものの、国民感覚で1000万円以上の裏ガネ化は脱税と感覚的には同義。悪質さの兼ね合いもあるだろうが、1000万円以上の20人が告発予定者といえよう。うち二階派が4名で16名が安倍派である。「事件を風化させてはならない。準備はしている」(上脇氏)ということで、萩生田、世耕両氏以降も告発は続き、受理して捜査の流れとなる。25日までに安倍派の三ツ林裕巳氏を2592万円の「不記載」で告発した。 捜査の結果がたとえ不起訴処分でも、その後は検察審査会が待ち受ける。告発人が「不起訴不当」を申し立て、11人の市民が処分の妥当性を審査し、「起訴すべき」という議決が2度、出れば強制起訴となる。そこまで行くケースは稀だが、再捜査での不起訴という最終結論が出るまで、告発を受けた政治家の活動に支障が生じるのは間違いなく、「検審地獄」に苦しむ議員が出てこよう』、「これまでに現職国会議員3人を含む10人が起訴あるいは略式起訴されたが、それは検察判断による立件であり、「訂正」という形で証拠が提示され還流の事件構図が明らかになっている以上、今後も告発は可能だ。 もちろん90人すべては現実的ではないものの、国民感覚で1000万円以上の裏ガネ化は脱税と感覚的には同義。悪質さの兼ね合いもあるだろうが、1000万円以上の20人が告発予定者といえよう。うち二階派が4名で16名が安倍派である。「事件を風化させてはならない。準備はしている」(上脇氏)ということで、萩生田、世耕両氏以降も告発は続き、受理して捜査の流れとなる。25日までに安倍派の三ツ林裕巳氏を2592万円の「不記載」で告発した」、なるほど。
・『党内と国民のフラストレーションは…  岸田氏は、事件に絡めて派閥を解消、処分を断行して党内の支配体制を強化した。事件を終らせまいとする告発の動きと、いつまた連動するかわからない検察の思惑、そして国民の厳しい目を思えば、党内の不満分子も動きにくい。 だが、処分へ向けた岸田氏の「安倍派聴取」など、「どの口がいう」と断罪してしかるべきものだ。 上脇氏は、裏ガネ化事件の告発を続ける一方、岸田氏の首相就任を祝う会を主催した任意団体が、収益の一部を岸田氏の関連団体に寄付していた問題で、3月4日、岸田氏らを政治資金規正法違反で告発した。 22年6月に行なわれた祝う会は、会の司会進行は地元秘書で連絡先は岸田事務所という誰が考えても事務所主導の政治資金パーティーだった。だが、岸田氏サイドは「地元有志の純粋な祝賀会だった」として、政治資金収支報告書に記載していなかった。そこで上脇氏は「不記載」で告発した。 この「人と自分は違う」という姿勢は岸田氏に一貫している。裏ガネ化問題でも、自らの処分については「派閥全体での還付の不記載とはまったく次元が違う」と述べ、不記載は「事務疎漏によるもので、支出にはなんら問題がない」と強調した。仮にそうであっても元会計責任者は立件されており道義的責任はあり、処分の対象となってしかるべきだが、「自民党の歴史のなかでも現職の総裁が処分された例はない」と開き直った。 首相公邸で忘年会を開いていた長男で政務担当秘書官だった翔太郎氏を更迭する際の遅さや、最側近の木原誠二補佐官が妻の元夫不審死事件に関わったとして「文春砲」を浴びても使い続けたことと合わせ、岸田氏は「聞く力」を標榜しながら、外部の意見をまったく聞かず気にしない。 この鈍感力を突破力に変えて、政権の不支持率は高いのに党内に敵がいない状態を作り上げた。これまでにない首相タイプだが、自民党内だけでなく国民のフラストレーションも高まる一方であるのは指摘しておかねばなるまい』、「岸田氏は「聞く力」を標榜しながら、外部の意見をまったく聞かず気にしない。 この鈍感力を突破力に変えて、政権の不支持率は高いのに党内に敵がいない状態を作り上げた。これまでにない首相タイプだが、自民党内だけでなく国民のフラストレーションも高まる一方であるのは指摘しておかねばなるまい」、その通りだ。

次に、4月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元週刊文春・月刊文芸春秋編集長の木俣正剛氏による「岸田首相が訪米で真に交渉すべき「リアル日本有事」への日米大軍事連携」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/341946
・『北のミサイルを乗っ取るスゴイ兵器が日本にはある  今回は『リアル 日本有事』(麻生幾著/角川春樹事務所」という本を紹介したいと思います。これは小説ですが、小説というよりも軍事・外交機密を調査報道できる日本で屈指の記者による「機密暴露」の本と言えます。 たとえば、「NEWS」という兵器を日本が持っていることをご存じでしょうか。宇宙・サイバー空間を防衛するためのシステムで、米国とも一部を共有していますが、なんと北朝鮮がミサイルを発射する兆候を掴めば、このシステムが稼働し、北のミサイルが発信している電波をキャッチアップして、誘導そのものを乗っ取り、日米が自由に北のミサイルの方向を変えられる機能を備えています。 こんなSFみたいな話をすると、眉唾と思う読者もおられるでしょう。しかし、著者の麻生幾氏が小説家になった経緯を知る私は、この小説に登場する大量の軍事機密はすべて事実だと思っています。 麻生氏はもともと『週刊文春』時代の私の部下でした。入社数年で、公安や自衛隊など機密保持が厳重な組織の重要情報を手に入れる凄腕記者になりました。拉致被害者として認定された有本恵子さんなど3人の失踪留学生の存在を明らかにしたのは、麻生氏のスクープです。 しかし、軍事・外交機密の取材には、公務員の守秘義務違反の問題が存在します。記者はニュースソースの秘匿が認められていますが、公務員は守秘義務違反で馘首の可能性さえあり、特に軍事機密となると、彼らを巻き込む危険があります。 実際麻生氏も、治安組織から取材源を特定するため尾行されることが多くなり、記者としての活動が困難になりました。家宅捜索を受けて、資料などで公務員に迷惑をかける可能性を考え、取材資料は弁護士事務所か麻生氏とは無関係と思われる私が預かっていたほどです。 これが、彼がノンフィクションから小説家に転身した理由です。第一作は50万部以上のベストセラーになった『宣戦布告』。1996年、北朝鮮の小型潜水艦が韓国海岸に座礁しましたが、これをヒントに、もし北朝鮮の潜水艦が日本の海岸に座礁した場合、どういう展開になるか取材して小説にしようと提案したのが私でした。当時は現在より、有事法制の整備はさらに遅れていて、日本防衛の脆弱性がこの小説で明らかになり、話題を呼びました。) 以降、ドラマ化された『外事警察』や特殊部隊の実態を描いた『瀕死のライオン』など、事実に基づくリアルな描写が特徴の作品を書いていますが、今回は日本が中国と武力衝突する可能性を描いた、軍事機密満載の作品に挑みました。ストーリーを紹介するのはネタバレになるので多くは語りませんが、舞台は宮古島。台湾侵攻の前哨戦として宮古島の占拠を企てる作戦がテーマとだけ言っておきます』、「宇宙・サイバー空間を防衛するためのシステムで、米国とも一部を共有していますが、なんと北朝鮮がミサイルを発射する兆候を掴めば、このシステムが稼働し、北のミサイルが発信している電波をキャッチアップして、誘導そのものを乗っ取り、日米が自由に北のミサイルの方向を変えられる機能を備えています。 こんなSFみたいな話をすると、眉唾と思う読者もおられるでしょう。しかし、著者の麻生幾氏が小説家になった経緯を知る私は、この小説に登場する大量の軍事機密はすべて事実だと思っています」、やはり架空の話なのではないだろうか。
「「NEWS」という兵器・・・宇宙・サイバー空間を防衛するためのシステムで、米国とも一部を共有していますが、なんと北朝鮮がミサイルを発射する兆候を掴めば、このシステムが稼働し、北のミサイルが発信している電波をキャッチアップして、誘導そのものを乗っ取り、日米が自由に北のミサイルの方向を変えられる機能を備えています。 こんなSFみたいな話をすると、眉唾と思う読者もおられるでしょう。しかし、著者の麻生幾氏が小説家になった経緯を知る私は、この小説に登場する大量の軍事機密はすべて事実だと思っています。 麻生氏はもともと『週刊文春』時代の私の部下でした。入社数年で、公安や自衛隊など機密保持が厳重な組織の重要情報を手に入れる凄腕記者になりました。拉致被害者として認定された有本恵子さんなど3人の失踪留学生の存在を明らかにしたのは、麻生氏のスクープです。 しかし、軍事・外交機密の取材には、公務員の守秘義務違反の問題が存在します。記者はニュースソースの秘匿が認められていますが、公務員は守秘義務違反で馘首の可能性さえあり、特に軍事機密となると、彼らを巻き込む危険があります。 実際麻生氏も、治安組織から取材源を特定するため尾行されることが多くなり、記者としての活動が困難になりました。家宅捜索を受けて、資料などで公務員に迷惑をかける可能性を考え、取材資料は弁護士事務所か麻生氏とは無関係と思われる私が預かっていたほどです」、「取材資料は弁護士事務所か麻生氏とは無関係と思われる私が預かっていたほど」、そこまでやるのかと驚かされた。
・『日米同盟による台湾防衛の鍵となる「極秘の防衛システム」とは  が、この作品に登場する新兵器、あるいは新事実こそ、読者は知っておくべきだと思います。たとえば、先ほどのNEWS以外に秘密裏に開発されている兵器として、米国が開発を断念した戦略ミサイルを撃墜できるレーザービーム兵器(三菱重工が、米国が持っていない大電力充電装置を開発し、米国と共同で完成させる予定)とか、すでに世界最初の実射実験を開始したレールガン(電磁兵器で超高速弾を発射して、超高速ミサイルに対抗する)といったゲームの世界のような兵器が登場します。 また、COPシステム(日米同盟の根幹となる通信ネットワークシステム)からの様々な情報は日本も完全に共有していて、陸上自衛隊などは戦闘時、タブレット端末に共通作戦状況図が指揮官に細かく伝えられ、攻撃するか防御をとるかといった指示が送られます。 さらに、驚くシステムが登場します。新兵器だけで戦争に勝てるわけではありません。現代戦は情報戦。宇宙空間の衛星監視、早期警戒機の遠距離レーダー偵察が、勝敗を決めます。ロシアが簡単にウクライナを占領できると目論んだのに阻止されたのも、米軍とNATOによる偵察情報が正確で、その情報を提供されたウクライナ軍がロシア軍の配置を見切って防衛陣地を構築したからこそ撃退できました。 つまり、情報を米欧と共有することこそ、日米同盟が台湾を防衛できるか否かの鍵となります。そのために必要な秘密のシステムが存在します。どれも、メディアが一度も書いたことがない極秘インテリジェンスネットワークシステムです。 ・セントリックス-J ・JICPAC(ジックパック) ・JSECRE  それぞれ米国が日本と情報を共有するシステムで、「セントリックス-J」は、潜在的なターゲットの部隊配置や能力を常に最新のものに更新して共有します。「JICPAC」は、各自衛隊に提供されている情報で、北朝鮮のすべての港からの出入港状況などは毎朝、最新のものが自衛隊の情報担当幹部に届けられ、警察庁とも連携していて、北朝鮮の工作船の動向や要人の動向、核実験施設の動向などの情報も提供されています(もちろん北朝鮮だけではなく、中国やロシアについてもです)。 「JSECRE」は、共同で作戦する場合に共通して見る作戦図です。敵の位置、火力、規模、状況などが示され、日米の部隊の配置も示されます。これをもとに日米共同作戦は行われるのです。これらの情報は米軍の卓越した軍事衛星や早期警戒管制機などから集められたものですが、日本も米国には多大な貢献をしています。 まず、日本列島に北から南まで「NEWS」システムを配置することで、列島そのものが巨大なレーダーアンテナとなり、北朝鮮や中国の情報を米軍側に提供できます。また、防衛省情報本部・電波部の大刀洗通信所ではアメリカ国家安全保障局(NSA)と共同運用する衛星通信傍受システムで、中国の通信衛星200基を同時に傍受できます。1時間で50万個のeメールとSNSを探知し、個人情報を収集してビッグデータに変換、大衆の動向を探るとともに、世論操作も試みています。 小説風にわかりやすく書くと、最新の護衛艦「まや」が、中国の軍艦による巡航ミサイルの攻撃を受けたとします。これを米海軍の早期警戒機E2Dのレーダーが探知したなら、瞬時に「まや」の防空システムに情報が共有され、「まや」のレーダーが探知していなくても、米軍からのデータで対空ミサイルを発射し、中国のミサイルを撃墜できるのです。もちろん、日本側の早期警戒機も「まや」自身のレーダーも優秀ですが、自軍のレーダー探知圏外でも交戦できるデータリンクネットワークが、護衛艦や航空機にも備えられているということになります』、「小説風にわかりやすく書くと、最新の護衛艦「まや」が、中国の軍艦による巡航ミサイルの攻撃を受けたとします。これを米海軍の早期警戒機E2Dのレーダーが探知したなら、瞬時に「まや」の防空システムに情報が共有され、「まや」のレーダーが探知していなくても、米軍からのデータで対空ミサイルを発射し、中国のミサイルを撃墜できるのです。もちろん、日本側の早期警戒機も「まや」自身のレーダーも優秀ですが、自軍のレーダー探知圏外でも交戦できるデータリンクネットワークが、護衛艦や航空機にも備えられているということになります」、架空の話だろうが、仮に本当であれば素晴らしい。
・『トランプリスクを前に日米安保の深化は喫緊の課題  日米安保は今、重大な岐路を迎えています。対中国、台湾有事を想定した場合、もっと連携を強化する必要があるのです。米国の新大統領にトランプ氏が就任した場合、忠実に日米安保条約を守るかどうかには不安が残るだけに、今のうちに国家間の協定により、縛りを入れなければなりません。 実際、米政策研究機関「戦略国際問題研究所(CSIS)」は4日、超党派の有識者による日米同盟への提言『アーミテージ・ナイ報告書』で、威圧的な動きを強める中国の抑止を念頭に日米安保の「より統合された同盟関係への移行」を提唱しています。アーミテージもナイも、党派の違いはあってもアジア外交の専門家として影響力を持つ人物です』、「米国の新大統領にトランプ氏が就任した場合、忠実に日米安保条約を守るかどうかには不安が残るだけに、今のうちに国家間の協定により、縛りを入れなければなりません。 実際、米政策研究機関「戦略国際問題研究所(CSIS)」は4日、超党派の有識者による日米同盟への提言『アーミテージ・ナイ報告書』で、威圧的な動きを強める中国の抑止を念頭に日米安保の「より統合された同盟関係への移行」を提唱」、なるほど。
・『岸田首相が訪米で本当に話し合うべきこと  そして、この提言を現実化する動きはすでに始まっています。まず、日米安保で重要な役割を果たす米国太平洋軍の司令部はハワイにあります。ハワイと日本本国で連携するのは、実際かなり不便です。今すぐ太平洋軍の司令部を日本に前進させようという主張も日米双方にありますが、現在検討されているのは、太平洋軍の司令官は大将であるものの、中将クラスの高位の将官が日本に常駐し、実質上の同盟軍司令部を日本に作るという案です。 それに応じる形で日本側は、米軍と共同作戦を行うために、従来の縦割り司令部を改め、陸海空の自衛隊を束ねる「統合作戦司令部」を24年末には創設することを決定しました。ただ、日本の統合作戦司令部のトップは海将、陸将などと特殊な呼称で、国際的には中将とも大将ともとれます。米軍も中将がトップとなると、日米共同作戦の指揮をどちらが執るかという問題が起きます(通常、階級が上の軍人がトップとなりますが、同格となる場合、米軍が日本軍を指揮下に置くという可能性もあるのです)。 4月8日から14日までの岸田総理訪米は、日本では半導体問題やUSスティールの買収問題ばかりがクローズアップされていますが、米太平洋軍の司令部の実質的前進という重大な外交的選択を行う交渉が、秘かに行われていることを報じる日本メディアは少ないはずです。 さて、小説では宮古島に上陸するための海図を中国の諜報員が日本の民間人から買い取ることから「侵攻の端緒」が描かれます。日本がどんな武器で、思いもよらない中国の侵攻を防ぐかは小説を読んでのお楽しみです。 ここまでの日米の軍事的連携を読んで、「とんでもない本」「とんでもない事態」と感じる人もいるでしょう。しかし、国民が何も知らぬまま、日米軍事同盟が勝手に深化してゆくことこそ問題があります。だからこそ、小説という形でリアルな日本有事を考えた上で、日本はどうすべきか考える。そういう本質的な議論が必要な時期がきました。 そのために、知り得た軍事機密を思い切り暴露したのが、この「小説」なのです。守秘義務の壁を破るため、麻生氏はいったん首都圏から出て、別の携帯電話でニュースソースと連絡をとって取材をするなど、大変な努力を続けてきました。その成果がこの作品であり、昨年、実施された日米秘密演習「ヤマサクラ」がモデルとなっているとのことです』、「岸田総理訪米は、日本では半導体問題やUSスティールの買収問題ばかりがクローズアップされていますが、米太平洋軍の司令部の実質的前進という重大な外交的選択を行う交渉が、秘かに行われていることを報じる日本メディアは少ないはずです・・・国民が何も知らぬまま、日米軍事同盟が勝手に深化してゆくことこそ問題があります。だからこそ、小説という形でリアルな日本有事を考えた上で、日本はどうすべきか考える。そういう本質的な議論が必要な時期がきました。 そのために、知り得た軍事機密を思い切り暴露したのが、この「小説」なのです」、なるほど。

第三に、5月9日付け現代ビジネス「外交敗北…!岸田総理は訪米後、バイデン大統領から思いっきりはしごを外されていた」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/129074?imp=0
・『訪米によって「強固な日米関係」を世界にアピールしたつもりの岸田総理。しかしアメリカと中国は急接近をはじめ、日本の対中強硬路線に怒った習近平は前代未聞の対日政策を繰り出そうとしている』、成功とばかり思っていたが、失敗だったとは驚かされた。
・『帰国後顔色がずっと悪い  4月28日の補選で3つの惨敗を喫した岸田政権だが、実はもうひとつの大敗を喫していた。「外交敗戦」である。 4月8日から14日まで、国賓待遇で訪米した岸田総理。自身が「この3年間の政治活動のなかでも最大のハイライト」と位置づける力の入れようで、ホワイトハウスで行われた晩餐会でのジョークと自虐を盛り込んだスピーチを中心に、日本のメディアも「外交の岸田、ここにあり」と好意的に取り上げた。総理もお得意の英語でアメリカ高官たちを笑わせることができ、米国滞在中はずっとご満悦だったという。 ところが、帰国後の岸田総理の顔色は思わしくなく、「なんのための訪米だったのか……」と苦虫を噛みつぶしたような様子だったという。外務省の関係者が明かす。 「実は、総理は『バイデン大統領にはしごを外された』と落胆しているのです。せっかく自分が中国に向かって上げられるだけ拳を振り上げたのに、バイデン政権は岸田総理の帰国後、総理をあざ笑うかのように中国に急接近を始めたからです」 一体どういうことか。 日本のメディアでは晩餐会の様子ばかりが報じられたが、今回の岸田訪米で国際的に注目を集めたのは、4月10日、ホワイトハウスでの日米首脳会談の終了後に発表された「日米首脳共同声明」だ。 この首脳会談は、日米同盟の深化を強調すると同時に「共通の仮想敵国」である中国への対抗をこれまで以上に鮮明にしたものとなった。共同会見で、岸田総理はこう力説した。 「力、または威圧による一方的な現状変更の試みは、世界のいかなる場所でも断じて許容できない。そのような観点からも、中国をめぐる諸課題への対応にあたり、引き続き日米で緊密に連携していくことで一致しました」 もうひとつ注目されたのが、翌11日に行われた岸田総理のアメリカ連邦議会での演説だ。安倍元総理が'15年4月に行って以来9年ぶりとなる日本の総理の演説だったが、そのなかでも総理は力強く「反中」を宣言、民主党・共和党両党の議員から拍手が送られた。日本では経験したことのない万雷の拍手に包み込まれ、岸田総理は天にも昇る心地だったという。 この岸田総理の挑発的な宣言に、中国は猛反発した。まだ岸田総理がアメリカ滞在中だというのに、翌12日に中国外交部の劉勁松・アジア局長が北京の日本大使館の横地晃・首席公使を呼び出して、厳正な申し入れ、深刻な懸念、強烈な不満を表明したのだ。 「さらに同日の中国外交部の定例会見でも、毛寧報道官が日本を名指しして吠えました。『アメリカと日本は仲間を引っ張り込んでミニグループを作り、集団的な対抗を策動している。それこそが地域の平和と安定を脅かしている』と、激しい口調で非難したのです」(前出・外務省関係者)』、「岸田総理の挑発的な宣言に、中国は猛反発した。まだ岸田総理がアメリカ滞在中だというのに、翌12日に中国外交部の劉勁松・アジア局長が北京の日本大使館の横地晃・首席公使を呼び出して、厳正な申し入れ、深刻な懸念、強烈な不満を表明した」、なるほど。
・『秘密の夕食会の内側  しかし、この反応は岸田総理の想定内だった。先の共同声明では「日米の防衛関係をかつてないレベルに引き上げる」と謳い、「陸・海・空の自衛隊を統合した作戦司令部を発足させること」「日本にトマホークミサイルを配備すること」などを宣言している。ここまで踏み込めば、中国の反発を招くのは当然だ。 それをわかってなお、岸田総理が日米の結束をアピールし、これまで以上に踏み込んだ「対中防衛強化」を宣言したのはなぜか。 「実はその答えが9日の夜に行われた、バイデン夫妻と岸田夫妻との非公式夕食会にあるのです」 日本の政府高官の一人が明かす。 後編記事『習近平とバイデンが結託…!?完全にはしごを外された岸田総理の「超外交敗北」の舞台裏』ヘ続く』、「非公式夕食会」の内容を見てみよう。

第四に、5月9日付け現代ビジネス「習近平とバイデンが結託…!?完全にはしごを外された岸田総理の「超外交敗北」の舞台裏」を紹介しよう。
・『訪米によって「強固な日米関係」を世界にアピールしたつもりの岸田総理。しかしアメリカと中国は急接近をはじめ、日本の対中強硬路線に怒った習近平は前代未聞の対日政策を繰り出そうとしている。 前編記事『外交敗北…!岸田総理は訪米後、バイデン大統領から思いっきりはしごを外されていた』より続く』、興味深そうだ。
・『事態の急変  「この夕食会は、シーフードレストラン『ブラックソルト』で行われました。ここはバイデン大統領にとって最も思い入れのあるレストラン。なぜなら、'18年暮れに大統領選出馬を決めたのがこの場所だったからです。 その決意の場で大統領と総理が話し合ったのは『トランプの再選防止対策』でした。なんとしても次の選挙で勝ちたい大統領は、岸田総理に『あなたは私の息子のようだ。ともにあと4年、頑張ろう。君にもきっと長い未来がある』とおだて倒し、バイデン政権への忠誠強化を呼びかけたのです。 岸田総理も、トランプ再選を歓迎していません。そもそもトランプ氏とウマが合うわけがないし、トランプ政権が誕生すれば、麻生太郎さんがトランプ氏を利用して『岸田降ろし』をはじめるかもしれない。 総理は大統領のこの言葉を聞いて、バイデン-岸田ラインが今後も続くと確信。大統領のために自分ができることはなにかを考えたのです」 あと4年、総理としてバイデンを支えたい。4年というスパンで考えれば、中国をどう押さえ込むかが日米最大の外交課題となるだろう。日米で対中強硬姿勢を示せば、トランプ陣営もバイデン陣営を「中国に弱腰」と批判できなくなる。バイデン-岸田ラインで、長期的に中国を押さえ込む、今日はその始まりの日なのだ。 そんな使命感を抱きながら、総理はあの日米首脳共同声明を力強く読み上げたのだ。 ところが、渾身の「反中演説」からわずか数日後に、急転直下の事態が起こった。 「総理がアメリカから帰国するや、バイデン政権が習近平政権に急接近したのです。 まず16日にオースティン国防長官が中国の董軍・国防部長とオンライン会談を行い、『信頼関係をもう一度構築すべきだ』と確認しあいました。1年半ぶりとなったこの米中国防相会談が、日本側が想定していたより友好的な会談になったことに総理は驚き戸惑い、国会の合間に官邸に岡野正敬外務次官を二度も呼び出して事情を聞いていました」(同前) さらに追い打ちを掛けるように、24日から26日にかけてブリンケン国務長官が中国を電撃訪問。上海・北京を訪れ、王毅外相らと会談した。 「この国務長官の訪中も、上海の市街を楽しそうに歩き小籠包をほおばるなど友好ムードに満ちていて、岸田総理は『あれだけ対中強硬姿勢で結束したはずなのに、私の演説は一体何のためだったんだ……』と卒倒せんばかりでした」(同)』、「総理がアメリカから帰国するや、バイデン政権が習近平政権に急接近したのです。 まず16日にオースティン国防長官が中国の董軍・国防部長とオンライン会談・・・24日から26日にかけてブリンケン国務長官が中国を電撃訪問。上海・北京を訪れ、王毅外相らと会談した。 「この国務長官の訪中も、上海の市街を楽しそうに歩き小籠包をほおばるなど友好ムードに満ちていて、岸田総理は『あれだけ対中強硬姿勢で結束したはずなのに、私の演説は一体何のためだったんだ……』と卒倒せんばかりでした」、岸田は外交は得意といわれているのに、どうなっているのだろう。
・『恐怖の体験  大統領との4年間を夢見て対中強硬路線を打ち出した総理を見捨てるかのような「米中急接近」。バイデン側にも狙いはある。皮肉にも、岸田総理にも呼びかけた「トランプ再選阻止」だ。外務省の幹部が明かす。 「習近平主席もまた、トランプを大の苦手としています。というのも、習氏とトランプ大統領との最初の米中首脳会談となった'17年4月、フロリダの大統領の別荘で、習氏は在任中でもトップクラスの『恐怖の体験』をしたからです。 円満な雰囲気で進んだディナーが終わる頃、大統領が突然『今夜のデザートはトマホークミサイルだ!』と告げました。その直前に地中海東部に展開する米海軍の駆逐艦から、シリアに向けて59発のトマホークミサイルが発射された報告を受けて、快哉を叫んだのです。まるで、当時シリア紛争を巡って立場を異にしていた中国を威嚇するかのように、です」 このときの体験がトラウマとなった習主席にとって、トランプ再選は悪夢そのもの。トランプは「再選されたら中国に60%の関税をかける」と公言しているが、そんなことをされたら、中国経済は崩壊する。それはすなわち、習近平政権の崩壊をも意味する。 「なんとしてもトランプ再選を阻止したいという点で、習主席とバイデン大統領は利害が一致している。そこで、大統領選まで米中でハイレベルの交流を継続して行い、お互いに譲るところは譲って『どうすれば天敵・トランプの再選を防げるか』を協議することにしたのです。 岸田総理はバイデン政権が中国に接近したことで、はしごを外されてしまった。結局、アメリカからいままで以上に重い軍事的な責務を負わされたうえ、中国の逆鱗に触れただけだった、とも言えます」(同)』、「なんとしてもトランプ再選を阻止したいという点で、習主席とバイデン大統領は利害が一致している。そこで、大統領選まで米中でハイレベルの交流を継続して行い、お互いに譲るところは譲って『どうすれば天敵・トランプの再選を防げるか』を協議することにしたのです。 岸田総理はバイデン政権が中国に接近したことで、はしごを外されてしまった。結局、アメリカからいままで以上に重い軍事的な責務を負わされたうえ、中国の逆鱗に触れただけだった、とも言えます」、「岸田」は自分が「バイデン」からどう思われているかを理解していなかったようだ。外務省スタッフも無能だ。同行記者団も提灯記事ばかりでなく、この記事のような内容でも報告すべきだ。
・『中国の恐るべき一手  外交の岸田と呼ばれた私が、アメリカにハメられるとは___。「バイデンショック」とも言うべき事態を前に、岸田総理はいま茫然自失状態だという。それを見計らったように、中国は厳しい一手を打ってきた。外務省幹部が続ける。 「中国の元慰安婦の遺族が、中国で日本政府を提訴し謝罪と賠償を求めたのです。中国人の元慰安婦をめぐって日本政府を提訴するのは、中国では初めてのこと。習近平は急接近している日韓の引きはがしを図って、この『慰安婦カード』を切ってきたのです」 実に厄介な問題で、今回の日米共同声明に対する中国の怒りが伝わってくる一手だ、とこの外務省幹部は解説する。 それでも、バイデン大統領が再選されれば「フミオ、あのときの約束を覚えているかい? もう中国への歩み寄りは終わりだ。これからの4年間、君とともに歩もう」と再度「強固な日米関係」が示されるかもしれない。 しかし総理は今回の訪米を通じて密かに感じ取っているはずなのだ。「アメリカ全土がトランプ再選の熱気に包まれていて、それは避けられそうにもない」ということを。つまり、バイデン大統領との強固な関係など、あと1年もすれば意味をなさないものになってしまうということを……』、「総理は今回の訪米を通じて密かに感じ取っているはずなのだ。「アメリカ全土がトランプ再選の熱気に包まれていて、それは避けられそうにもない」ということを。つまり、バイデン大統領との強固な関係など、あと1年もすれば意味をなさないものになってしまうということを……」、それが分かっていながら、「バイデン大統領との強固な関係」作りに精を出して、「中国」を怒らせたのでは、どうしようもない外交下手だ。
タグ:キシダノミクス (その10)(岸田首相 いつの間にか「一強体制」に…!裏ガネ問題がまさかの追い風、「鈍感力」が「突破力」に化けた裏側、岸田首相が訪米で真に交渉すべき「リアル日本有事」への日米大軍事連携、外交敗北…!岸田総理は訪米後、バイデン大統領から思いっきりはしごを外されていた、習近平とバイデンが結託…!?完全にはしごを外された岸田総理の「超外交敗北」の舞台裏) 現代ビジネス 伊藤 博敏氏による「岸田首相、いつの間にか「一強体制」に…!裏ガネ問題がまさかの追い風、「鈍感力」が「突破力」に化けた裏側」 「裏ガネ還流への対応協議幹部会に出席した4人は、政治倫理審査会で説明責任を果たしておらず、「非公認など重い処分は避けられない」と見られていたが、二階氏の決断がそれを後押しする。 結果として「岸田一強体制」が固まった。 振り返ってみれば、岸田首相は派閥政治資金パーティー裏ガネ化事件を最も効果的に使った人である。岸田氏の人の思惑を気にしない鈍感力は、突破力となって自民党は再出発を余儀なくされている・・・安倍派は書かずに裏ガネ化する確信犯だった。 それがわかったので、上脇氏の告発を受理した検察が襲いかかった。 そこに検察と朝日新聞の思惑があったことを、筆者は「現代ビジネス」で<「安倍派つぶし」に本腰を入れた特捜部と「朝日新聞」…従軍慰安婦報道で信頼を失った「高級紙」の執念>(23年12月14日)と題して報じた」、なるほど。 「これまでに現職国会議員3人を含む10人が起訴あるいは略式起訴されたが、それは検察判断による立件であり、「訂正」という形で証拠が提示され還流の事件構図が明らかになっている以上、今後も告発は可能だ。 もちろん90人すべては現実的ではないものの、国民感覚で1000万円以上の裏ガネ化は脱税と感覚的には同義。悪質さの兼ね合いもあるだろうが、1000万円以上の20人が告発予定者といえよう。うち二階派が4名で16名が安倍派である。「事件を風化させてはならない。準備はしている」(上脇氏)ということで、萩生田、世耕両氏以 降も告発は続き、受理して捜査の流れとなる。25日までに安倍派の三ツ林裕巳氏を2592万円の「不記載」で告発した」、なるほど。 「岸田氏は「聞く力」を標榜しながら、外部の意見をまったく聞かず気にしない。 この鈍感力を突破力に変えて、政権の不支持率は高いのに党内に敵がいない状態を作り上げた。これまでにない首相タイプだが、自民党内だけでなく国民のフラストレーションも高まる一方であるのは指摘しておかねばなるまい」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 木俣正剛氏による「岸田首相が訪米で真に交渉すべき「リアル日本有事」への日米大軍事連携」 「取材資料は弁護士事務所か麻生氏とは無関係と思われる私が預かっていたほど」、そこまでやるのかと驚かされた。 「小説風にわかりやすく書くと、最新の護衛艦「まや」が、中国の軍艦による巡航ミサイルの攻撃を受けたとします。これを米海軍の早期警戒機E2Dのレーダーが探知したなら、瞬時に「まや」の防空システムに情報が共有され、「まや」のレーダーが探知していなくても、米軍からのデータで対空ミサイルを発射し、中国のミサイルを撃墜できるのです。もちろん、日本側の早期警戒機も「まや」自身のレーダーも優秀ですが、自軍のレーダー探知圏外でも交戦できるデータリンクネットワークが、護衛艦や航空機にも備えられているということになります」、架 空の話だろうが、仮に本当であれば素晴らしい。 「米国の新大統領にトランプ氏が就任した場合、忠実に日米安保条約を守るかどうかには不安が残るだけに、今のうちに国家間の協定により、縛りを入れなければなりません。 実際、米政策研究機関「戦略国際問題研究所(CSIS)」は4日、超党派の有識者による日米同盟への提言『アーミテージ・ナイ報告書』で、威圧的な動きを強める中国の抑止を念頭に日米安保の「より統合された同盟関係への移行」を提唱」、なるほど。 「岸田総理訪米は、日本では半導体問題やUSスティールの買収問題ばかりがクローズアップされていますが、米太平洋軍の司令部の実質的前進という重大な外交的選択を行う交渉が、秘かに行われていることを報じる日本メディアは少ないはずです・・・国民が何も知らぬまま、日米軍事同盟が勝手に深化してゆくことこそ問題があります。だからこそ、小説という形でリアルな日本有事を考えた上で、日本はどうすべきか考える。そういう本質的な議論が必要な時期がきました。 そのために、知り得た軍事機密を思い切り暴露したのが、この「小説」なのです」、なるほど。 現代ビジネス「外交敗北…!岸田総理は訪米後、バイデン大統領から思いっきりはしごを外されていた」 成功とばかり思っていたが、失敗だったとは驚かされた。 「岸田総理の挑発的な宣言に、中国は猛反発した。まだ岸田総理がアメリカ滞在中だというのに、翌12日に中国外交部の劉勁松・アジア局長が北京の日本大使館の横地晃・首席公使を呼び出して、厳正な申し入れ、深刻な懸念、強烈な不満を表明した」、なるほど。 「非公式夕食会」の内容を見てみよう。 現代ビジネス「習近平とバイデンが結託…!?完全にはしごを外された岸田総理の「超外交敗北」の舞台裏」 「総理がアメリカから帰国するや、バイデン政権が習近平政権に急接近したのです。 まず16日にオースティン国防長官が中国の董軍・国防部長とオンライン会談・・・24日から26日にかけてブリンケン国務長官が中国を電撃訪問。上海・北京を訪れ、王毅外相らと会談した。 「この国務長官の訪中も、上海の市街を楽しそうに歩き小籠包をほおばるなど友好ムードに満ちていて、岸田総理は『あれだけ対中強硬姿勢で結束したはずなのに、私の演説は一体何のためだったんだ……』と卒倒せんばかりでした」、岸田は外交は得意といわれているのに、どうな っているのだろう。 「なんとしてもトランプ再選を阻止したいという点で、習主席とバイデン大統領は利害が一致している。そこで、大統領選まで米中でハイレベルの交流を継続して行い、お互いに譲るところは譲って『どうすれば天敵・トランプの再選を防げるか』を協議することにしたのです。 岸田総理はバイデン政権が中国に接近したことで、はしごを外されてしまった。結局、アメリカからいままで以上に重い軍事的な責務を負わされたうえ、中国の逆鱗に触れただけだった、とも言えます」、 「岸田」は自分が「バイデン」からどう思われているかを理解していなかったようだ。外務省スタッフも無能だ。同行記者団も提灯記事ばかりでなく、この記事のような内容でも報告すべきだ。 「総理は今回の訪米を通じて密かに感じ取っているはずなのだ。「アメリカ全土がトランプ再選の熱気に包まれていて、それは避けられそうにもない」ということを。つまり、バイデン大統領との強固な関係など、あと1年もすれば意味をなさないものになってしまうということを……」、それが分かっていながら、「バイデン大統領との強固な関係」作りに精を出して、「中国」を怒らせたのでは、どうしようもない外交下手だ。
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「物言う株主」(アクティビスト・ファンド)(その6)(京都銀行VS英ファンド、終わらない「還元戦争」 シルチェスターが2年連続で特別配当を要求、花王の経営戦略を問題視「モノ言う株主」が急浮上 強面ファンドが社長の肝煎り戦略に「ダメ出し」、京成電鉄が「オリエンタルランド株」巡り攻防戦 物言う株主の株主提案にも動じない老獪さ) [企業経営]

「物言う株主」(アクティビスト・ファンド)については、昨年3月15日に取上げた。今日は、(その6)(京都銀行VS英ファンド、終わらない「還元戦争」 シルチェスターが2年連続で特別配当を要求、花王の経営戦略を問題視「モノ言う株主」が急浮上 強面ファンドが社長の肝煎り戦略に「ダメ出し」、京成電鉄が「オリエンタルランド株」巡り攻防戦 物言う株主の株主提案にも動じない老獪さ)である。

先ずは、昨年4月28日付け東洋経済オンライン「京都銀行VS英ファンド、終わらない「還元戦争」 シルチェスターが2年連続で特別配当を要求」を紹介しよう。
・『イギリスの投資ファンド、シルチェスター・インターナショナル・インベスターズは4月26日、京都銀行に対して株主提案を行う方針を明らかにした。4月30日までに、6月の定時株主総会に向けた提案書を会社側へ提出する。 シルチェスターによる京都銀行への株主提案は2度目だ。2022年の定時株主総会でも特別配当を求めたが否決に終わっている。リベンジとなる今年は1株あたり62円の特別配当に加えて、発行済み株式の1%にあたる、上限50億円の自己株取得も要求する構えだ。 京都銀行の広報担当者は「シルチェスターが株主提案の意向を表明したことは承知している。ただ、提案をまだ受領していないためコメントは控える」としている。1年に渡るつばぜり合いを経て、両社はまたも株主総会で衝突することになった』、興味深そうだ。
・『16年目の「豹変」  最初にシルチェスターが京都銀行の株式を取得したのは2006年9月。15年以上の間、株主提案を行ったことは一度もなく、どちらかと言えば穏健な株主とみなされていた。 牙を剥いたのは2022年4月だった。シルチェスターは1株当たり100円という会社側の配当計画にかみつき、別途132円の特別配当を求めると表明。地方銀行関係者を一様に驚かせた。 豹変の背景には運用体制の変更があったという指摘もあるが、シルチェスターは「会社との対話はこれまでも行ってきたが、われわれの要望が理解されなかった」と、しびれを切らしたという。 シルチェスターが問題視したのは、京都銀行の利益構造だ。任天堂やニデック(旧日本電産)、京セラ、村田製作所といった京都企業の株式を保有しており、それらが莫大な配当金をもたらしている。当時のシルチェスターの書簡によれば、2021年3月期の純利益169億円に対して、保有株式の配当金は173億円もあった。逆に、融資やコンサルティングといった本業は赤字だった。 そこでシルチェスターは「コアの銀行業務からの純利益の50%」、および「保有株式から受け取る年間配当金の100%」を配当に回すことを求めた。シルチェスターは「受取配当金を盾にごまかしをするのではなく、コアの銀行業務の収益性改善に確実に注力させる」案だと胸を張った。) 京都銀行は当時、2021年末に総還元性向50%程度という地銀最高水準の還元方針を策定したばかりだった。2022年1月に4年ぶりとなる自己株取得も発表していた。そんな中で受けたシルチェスターの提案を「地域金融機関である当行の特徴を考慮しない、短期的な視点に立脚したもの」と断じた。すると、シルチェスターは「(京都銀行の説明は)認識の甘さと財務的洞察力の欠如を示すもの」と反発。両社の対立は決定的となった。 結局、2022年6月の定時株主総会では、シルチェスターの株主提案への賛成率は25%にとどまった。だが、これでシルチェスターが諦めると見る向きは少なかった』、「任天堂やニデック(旧日本電産)、京セラ、村田製作所といった京都企業の株式を保有しており、それらが莫大な配当金をもたらしている。当時のシルチェスターの書簡によれば、2021年3月期の純利益169億円に対して、保有株式の配当金は173億円もあった。逆に、融資やコンサルティングといった本業は赤字だった・・・シルチェスターは「コアの銀行業務からの純利益の50%」、および「保有株式から受け取る年間配当金の100%」を配当に回すことを求めた」、京都の優良企業からの「配当」が大幅黒字なのに、「本業は赤字」とは苦しく、「物言う株主」に付け入れられたようだ。
・『株を買い増し臨戦態勢  これは来年も仕掛けるな」。地銀関係者の間では、2023年も京都銀行が株主提案を受領するという見方が早くから広がっていた。総会後、シルチェスターは京都銀行の株を買い進めていたからだ。 シルチェスターは2022年、京都銀行のほかに岩手、滋賀、中国(現ちゅうぎんフィナンシャルグループ)の3行にも同様の株主提案を行っていた。しかし、株を買い増したのは京都銀行のみ。他3行はむしろ保有比率を引き下げている』、「シルチェスター」が「株を買い増したのは京都銀行のみ。他3行はむしろ保有比率を引き下げている」、不運にも狙われたものだ。
・『シルチェスターが過去株主提案した地銀の保有比率  対する京都銀行は、提案を受けた危機感もあってか、さらなる還元強化に踏み込んだ。2023年1月には2年連続となる自己株取得の実施を発表し、3月に策定した中期経営計画では総還元性向を「50%程度」から「50%以上」へと引き上げた。2024年3月期の総還元性向は60%超となる見通しだ。リスク資産への投資や還元強化による自己資本比率の縮減など、過去の中計では見られなかった資本政策も掲げた。 だが、シルチェスターは納得しなかった。「資本配分政策の変更を発表しない限り、株主総会において議案を提出する」。3月下旬、シルチェスターは京都銀行に書簡を送付した。やり玉に挙げたのはROE(自己資本利益率)とPBR(株価純資産倍率)だ。 シルチェスターは資本コストを上回る水準として、かねて10%以上のROEを投資先企業に求めている。京都銀行に対しても、2022年に行った株主提案の中でROEの低さを指摘していた。特別配当の実施は還元強化に加えて、資本の圧縮を促す意図もある。 PBRについては、1倍に引き上げるための計画を求めた。2022年の株主提案ではPBRに関する言及がなかったが、東京証券取引所が上場企業に対してPBRなどの改善策を求めた動きに呼応したものと見られる。今回の株主提案ではPBRの改善を期待してか、昨年にはなかった自社株買いが追加されている。 京都銀行のROEは3%弱、実績PBRも0.4倍台と、シルチェスターが求める水準にはほど遠い。4月中旬にも両社は電話で意見を交わしたが、強硬姿勢を崩さないシルチェスターと、漸進的な改革を模索する京都銀行との溝は埋まるはずもなく、交渉は決裂した』、「京都銀行のROEは3%弱、実績PBRも0.4倍台と、シルチェスターが求める水準にはほど遠い。4月中旬にも両社は電話で意見を交わしたが、強硬姿勢を崩さないシルチェスターと、漸進的な改革を模索する京都銀行との溝は埋まるはずもなく、交渉は決裂した」、やむを得ないだろう。
・『要求水準まで提案は続く  通常の場合、弊社は当会社(京都銀行)の更新後の中期経営計画を支持し、取締役会に対する賛成票を投じることでしょう」。26日の公表文の中で、シルチェスターは京都銀行が資本政策の見直しに踏み切ったこと自体は評価している。だが、あくまで同社の要求水準に達していない限り、株主提案を行うというスタンスだ。 関係者によれば、シルチェスターの目的は必ずしも株主提案を可決することだけではないという。「昨年より賛成率が上がれば、経営陣によりプレッシャーがかかる。それだけでも提案を行う意義がある」。両社が「停戦」を迎える兆しは見えない』、「「昨年より賛成率が上がれば、経営陣によりプレッシャーがかかる。それだけでも提案を行う意義がある」、なるほど。

次に、本年4月14日付け東洋経済オンライン「花王の経営戦略を問題視「モノ言う株主」が急浮上 強面ファンドが社長の肝煎り戦略に「ダメ出し」」を紹介しよう。
・『「花王は今こそよりよい企業になるべきだ」 モノ言う株主として知られるオアシス・インベストメント・マネジメントのセス・フィッシャー最高投資責任者が来日し、4月8日の会見で花王に対する要求をぶちまけた。 オアシスによれば、花王にコンタクトしたのは約9カ月前のこと。社長を含めた経営陣との面談を求めてきたが、いまだ実現していないという。3月22日に開かれた定時株主総会で経営陣には会えたものの、社長との面談は「5月末以降」とはね返された。 オアシスは花王株の3%超を握っているとする。直近ではドラッグストアのツルハホールディングス(HD)やエレベーターメーカーのフジテックなどの株式を買い増してきた。ただ、花王の時価総額は約2.8兆円。オアシスの日本での投資案件としては最大規模とみられる』、「社長を含めた経営陣との面談を求めてきたが、いまだ実現していないという。3月22日に開かれた定時株主総会で経営陣には会えたものの、社長との面談は「5月末以降」とはね返された」、なるほど。
・『強面ファンドの変化  オアシスは近年、創業家に絡んだ不祥事をテコに、経営陣の入れ替えを提案する手法を得意としてきた。 フジテックでは創業家の内山高一元社長をターゲットに「私邸の庭掃除を従業員にやらせている」という写真や、不動産に関わる不透明な取引を指摘。ほかの株主からの支持も集めて内山氏を退任に追い込んだ。) ツルハHDでも取締役会が鶴羽順社長ら創業家に牛耳られており、ガバナンス面で問題があると訴えた。最終的にイオンに保有株式を約1000億円で売却することでエグジットしたが、手法は似ている。 今年3月にはMBO(経営陣による買収)をめぐって買い付け価格に異議を唱えた大正製薬HD案件でも、土地の売買について創業家を攻撃している。 だが今回、花王に突きつけた要求は、これまで得意としてきた“戦法”とは中身が異なる』、「オアシスは近年、創業家に絡んだ不祥事をテコに、経営陣の入れ替えを提案する手法を得意としてきた。 フジテックでは創業家の内山高一元社長をターゲットに「私邸の庭掃除を従業員にやらせている」という写真や、不動産に関わる不透明な取引を指摘。ほかの株主からの支持も集めて内山氏を退任に追い込んだ」、コーポレート・ガバナンスを徹底する上で果たしている役割は無視できない。
・『ブランド集約は”不十分”  8日の会見でセス氏は「海外大手ブランドと比べても花王のブランドは多すぎる。もっと絞り込むべきだ」と主張。さらに「優れた製品があるにもかかわらず、積極的な海外展開が見られない」と日本国外の市場へのより積極的な進出を訴えた。 確かに花王はここ数年、業績不振に悩まされてきた。 2019年度まで7期連続で営業最高益を更新したが、20年度以降は4期連続の営業減益。19年度に2117億円あった営業利益は、23年度に600億円まで縮小。23年度に計上した547億円の構造改革費用を除いても、収益悪化は明白だ。 背景にはインバウンド需要剥落や原料高騰といった外部要因のみならず、花王固有の問題が重なっている。 オアシスの指摘どおり、花王は過去10年間で商品数が倍増している。消費者ニーズの広がりに合わせて商品を細分化したためだが、結果として1つの商品に充てるマーケティング費用や研究費が分散した。 海外進出も出遅れている。花王の消費者向け(コンシューマープロダクツ)事業の23年度の海外売上比率は35%にとどまる。) 花王は足元で利益重視に方針転換し、低収益なSKU(商品の品目数)の削減や、ブランドの売却・撤退を進めている。 昨年8月には紙おむつ「メリーズ」の中国生産撤退を発表。化粧品では中価格帯メイク「コフレドール」「オーブ」の販売終了を決めた。茶飲料「ヘルシア」はキリンビバレッジに売却する。スキンケアの海外展開では、とがった技術を武器に攻略を目指している。独自技術を生かせる領域で、差別化を図る戦略を掲げる。 しかし、オアシスはこれでは不十分と指摘する。例えば、長谷部佳宏社長は21年1月の社長就任時に、「アナザー花王」という新事業の構想を掲げた。「未来の成長エンジンとなる新事業」として、健康状態の予測ができる技術などを事業化する方針だ。 だが、オアシスは「(アナザー花王は)やるべきではない。長谷部社長は研究畑出身なので関心が強いかもしれないが、リソースは消費者向け事業のブランドに向けるべきだ」と手厳しい』、「オアシスは「(アナザー花王は)やるべきではない。長谷部社長は研究畑出身なので関心が強いかもしれないが、リソースは消費者向け事業のブランドに向けるべきだ」と手厳しい」、なるほど。
・『経営陣の交代に含み  セス氏は「(社長交代が必要とは)今日は言わないでおく」と経営トップのすげ替え要求に含みを持たせた。意見の対立がさらに先鋭化すれば株主総会で議決権の奪い合いに発展する可能性もある。 花王側は「オアシスの主張では、23年度決算で示した積極的なポートフォリオ管理と構造改革について、残念ながら十分な理解がなされていません」(4日リリース)と公表した。 改革を求めるオアシスへ、花王はどう対応していくのか。多くのファンを抱えるブランドを展開する花王だけに、影響は大きい。議論の行方次第では、消費者をも巻き込んだ“場外乱闘”へと発展しかねない』、「改革を求めるオアシスへ、花王はどう対応していくのか」、大いに注目される。

第三に、5月10日付け東洋経済オンライン「京成電鉄が「オリエンタルランド株」巡り攻防戦 物言う株主の株主提案にも動じない老獪さ」を紹介しよう。
・『「京成電鉄は強い。ファンドの要求に応じているようでいて、実はまともに対峙していないように見える」。大手私鉄のある幹部はそう語る。 千葉、東京東部などを地盤とする京成電鉄とアクティビスト(物言う株主)の対立がヒートアップしている。イギリスの投資ファンドのパリサー・キャピタルは4月30日、株式の1.6%を所有する京成電鉄に対し、オリエンタルランド(OLC)株の一部売却などを求める株主提案を出した。 パリサーは同24日に、資本コストを意識した投資戦略と株主還元に関する計画を年内に策定し公表することを求めていた。併せて、OLC株の保有比率を2026年3月末までに4%ほど引き下げて15%未満にすることも要求していた。 当初は勧告的な内容にとどめていたが、京成電鉄側が拒否したため、法的拘束力のある株主提案として再提出した』、「イギリスの投資ファンドのパリサー・キャピタルは4月30日、株式の1.6%を所有する京成電鉄に対し、オリエンタルランド(OLC)株の一部売却などを求める株主提案を出した。 パリサーは同24日に、資本コストを意識した投資戦略と株主還元に関する計画を年内に策定し公表することを求めていた。併せて、OLC株の保有比率を2026年3月末までに4%ほど引き下げて15%未満にすることも要求」、なるほど。
・『パリサーとは10回以上の会談  パリサー側の資料によると、京成電鉄の取締役会とは2021年8月に協議を開始している。このころに京成電鉄株を取得したと推察される。 これまで両者は10回以上にわたりオンラインや対面でミーティングを実施してきた。OLC株の売却などを要請するパリサーに対し、京成電鉄側は「OLC株の売却は当面ない」などと対立の姿勢を見せていた。 だが、2024年2月に330億円を上限とする自己株買いを発表。さらに3月には約1640万株のOLC株式を801億円で譲渡し、保有比率を約19%と1%ポイント引き下げた。売却益は特別配当として、株主に一部還元した。 譲歩の姿勢を見せたように映る京成電鉄だが、パリサー側は対応に不満を募らせる。「OLC株1%の売却自体は歓迎。大きな一歩。だが、成長戦略や株主還元の意識は到底足りない」と、京成電鉄の内情に詳しい市場関係者は指摘する。) 株価もこの市場関係者の不満を反映しているかのようだ。OLC株1%売却と増配の発表を受けた4月30日、京成電鉄の株価(終値)は5893円と前営業日終値比で0.6%下落した。株式市場の反応は冷ややかだった。 「これが株式市場の評価だ。しぶしぶ、1%を売ったことが市場に見透かされている。これでは(この程度の規模の売却では)ダメでしょう、というのが投資家の大半の見方ではないか」(別の市場関係者) 京成電鉄は、ディズニーランドが位置する千葉県浦安に直通する路線を保有しているわけではない。事業のシナジー効果が薄いように見えるが、京成電鉄はこれまで、OLCを「一種の祖業」として、株式保有を正当化してきた。 京成電鉄は明治時代の1909年に、成田山新勝寺の参拝輸送を目的に設立された「京成電気軌道」を起源とする。その後、東京への延伸を繰り返し、1960年には「押上ー浅草橋」駅間を開業。東京圏の需要は大きく、安定成長していった』、「京成電鉄は、ディズニーランドが位置する千葉県浦安に直通する路線を保有しているわけではない。事業のシナジー効果が薄いように見えるが、京成電鉄はこれまで、OLCを「一種の祖業」として、株式保有を正当化してきた」、「一種の祖業」とは苦しい位置づけだ。
・『京成にとってOLC株は「打ち出の小槌」  一方、OLCの設立は1960年。浦安沖の海面を埋め立て、商住地域の開発と一大レジャーランドの建設を行い、国民の文化などに寄与することを目的に創業した。 OLCの設立に大きく関わったのが、当時の社長であり、京成電鉄の「中興の祖」と言われる川崎千春氏だ。アメリカでディズニーランドを体験した川崎氏は、帰国後、三井不動産の江戸英雄社長(当時)らとともに、「オリエンタルランド設立計画趣意書」をまとめた。 OLCが創業時に事務所を置いたのは当時の京成電鉄の本社(東京都上野)でもあった。 その後、京成電鉄は「打ち出の小槌」のようにOLC株を少しずつ売却して、設備投資や自己株買いの資金として充当してきた。2023年9月末時点での保有比率は20%弱。筆頭株主ではあるが、子会社ではなく持ち分適用会社となっている。 ところが、京成電鉄の時価総額1兆円強に対し、OLCの時価総額は7兆9000億円(ともに5月8日時点)。京成電鉄の保有比率に換算すると、京成電鉄が持つOLC株の時価は京成電鉄の時価総額を上回ることになる。 この「資本のねじれ」につけ込んだのが、2021年に設立されたパリサーだ。 パリサーの創業者で最高投資責任者であるジェームズ・スミス氏は、エリオット・マネジメントの出身。アメリカの投資ファンドであるエリオットは、「武闘派」のアクティビストとして知られる。 しかし京成電鉄は、折衝力に長けるパリサーに対し冷静な姿勢をこれまで崩さなかった。「パリサーは京成電鉄の老獪さに翻弄されているかのようだ」(市場関係者)との見方まである。) 株主提案をしたものの、パリサーの株式保有比率は1.6%に過ぎない。多くの株主の支持を得て決議を成立させるのはハードルが高そうだ。 京成電鉄がこの先、パリサーの要求に応じて保有比率を15%未満にするためにOLC株を約4%売却しすることは考えにくいようにも見える。ところが京成電鉄の関係者は、「京成電鉄がOLC株を大量に売っても不思議ではない」と話す。 上場企業は近年、資本コストや株価を意識した経営がより強く求められている。「京成電鉄も資本収益性を十分に意識しないと、株主にそっぽを向かれる懸念がある。経営陣はこの2~3年で『(持ち合い株式などは)売らなきゃ』という気持ちに傾いている」(京成電鉄の関係者)。 OLC株を大量に売って売却益を得たとしても、その使途がなければ不毛な行為となる。その点、京成電鉄にはこの先の成長戦略において、多くの資金需要がある』、「「京成電鉄も資本収益性を十分に意識しないと、株主にそっぽを向かれる懸念がある。経営陣はこの2~3年で『(持ち合い株式などは)売らなきゃ』という気持ちに傾いている」(京成電鉄の関係者)。 OLC株を大量に売って売却益を得たとしても、その使途がなければ不毛な行為となる。その点、京成電鉄にはこの先の成長戦略において、多くの資金需要がある」、どんな「資金需要」なのだろう。
・『資金使途が説明できれば株を売る?  京成電鉄にとって成田国際空港へのアクセス路線は収益柱だ。その成田空港は滑走路の新設など拡張計画を打ち出している。「成田空港の発着回数が増えるとなると、当社としても輸送力の増強を図る必要がある」と同社の広報・IR担当者は話す。車両基地の建設や整備も進めることになるだろう。 ほかにも、「台風や地震などの災害対策、バスの運転手不足対策など、やることはいっぱいある」(京成電鉄の関係者)。さらに鉄道以外の領域である流通事業強化の一環で、今2025年3月期中にも地場スーパーなどのM&A(企業合併・買収)を検討している。 京成電鉄の関係者は、「京成電鉄は成長投資への資金が必要だ。お金の使い方が説明できるとなると、OLCを売るのではないか」と見通す。 「京成電鉄の小林敏也社長が、『OLCが当社の持ち分適用会社であることにこだわる必要はない』と、周りにつぶやいている」――。市場関係者からは、こういった声も漏れ伝わってくる。 パリサーのOLC株に対する要求について、その対応を京成電鉄の広報・IR担当者に確認したところ、「個別の投資家に関することは回答できない」とした。 おりしも、エリオットからOLC株売却を求められている三井不動産は、その保有比率を徐々に減らしている。京成電鉄は現在の保有比率を継続するとなると、多額のOLC株を保有する合理性を説明できなければならない。 当面の焦点は、6月27日に開催予定の京成電鉄の定時株主総会だ。経営陣は株主に向けて何をどう語るのか。これまで以上に注目を集める』、「成田空港の発着回数が増えるとなると、当社としても輸送力の増強を図る必要がある」と同社の広報・IR担当者は話す。車両基地の建設や整備も進めることになるだろう。 ほかにも、「台風や地震などの災害対策、バスの運転手不足対策など、やることはいっぱいある」・・・。さらに鉄道以外の領域である流通事業強化の一環で、今2025年3月期中にも地場スーパーなどのM&A・・・を検討している。 京成電鉄の関係者は、「京成電鉄は成長投資への資金が必要だ。お金の使い方が説明できるとなると、OLCを売るのではないか」と見通す・・・当面の焦点は、6月27日に開催予定の京成電鉄の定時株主総会だ。経営陣は株主に向けて何をどう語るのか。これまで以上に注目を集める」、さて、実際にはどうするのだろうか。
タグ:「物言う株主」(アクティビスト・ファンド) (その6)(京都銀行VS英ファンド、終わらない「還元戦争」 シルチェスターが2年連続で特別配当を要求、花王の経営戦略を問題視「モノ言う株主」が急浮上 強面ファンドが社長の肝煎り戦略に「ダメ出し」、京成電鉄が「オリエンタルランド株」巡り攻防戦 物言う株主の株主提案にも動じない老獪さ) 東洋経済オンライン「京都銀行VS英ファンド、終わらない「還元戦争」 シルチェスターが2年連続で特別配当を要求」 「任天堂やニデック(旧日本電産)、京セラ、村田製作所といった京都企業の株式を保有しており、それらが莫大な配当金をもたらしている。当時のシルチェスターの書簡によれば、2021年3月期の純利益169億円に対して、保有株式の配当金は173億円もあった。逆に、融資やコンサルティングといった本業は赤字だった・・・シルチェスターは「コアの銀行業務からの純利益の50%」、 および「保有株式から受け取る年間配当金の100%」を配当に回すことを求めた」、京都の優良企業からの「配当」が大幅黒字なのに、「本業は赤字」とは苦しく、「物言う株主」に付け入れられたようだ。 「シルチェスター」が「株を買い増したのは京都銀行のみ。他3行はむしろ保有比率を引き下げている」、不運にも狙われたものだ。 「京都銀行のROEは3%弱、実績PBRも0.4倍台と、シルチェスターが求める水準にはほど遠い。4月中旬にも両社は電話で意見を交わしたが、強硬姿勢を崩さないシルチェスターと、漸進的な改革を模索する京都銀行との溝は埋まるはずもなく、交渉は決裂した」、やむを得ないだろう。 「「昨年より賛成率が上がれば、経営陣によりプレッシャーがかかる。それだけでも提案を行う意義がある」、なるほど。 東洋経済オンライン「花王の経営戦略を問題視「モノ言う株主」が急浮上 強面ファンドが社長の肝煎り戦略に「ダメ出し」」 「社長を含めた経営陣との面談を求めてきたが、いまだ実現していないという。3月22日に開かれた定時株主総会で経営陣には会えたものの、社長との面談は「5月末以降」とはね返された」、なるほど。 「オアシスは近年、創業家に絡んだ不祥事をテコに、経営陣の入れ替えを提案する手法を得意としてきた。 フジテックでは創業家の内山高一元社長をターゲットに「私邸の庭掃除を従業員にやらせている」という写真や、不動産に関わる不透明な取引を指摘。ほかの株主からの支持も集めて内山氏を退任に追い込んだ」、コーポレート・ガバナンスを徹底する上で果たしている役割は無視できない。 「オアシスは「(アナザー花王は)やるべきではない。長谷部社長は研究畑出身なので関心が強いかもしれないが、リソースは消費者向け事業のブランドに向けるべきだ」と手厳しい」、なるほど。 「改革を求めるオアシスへ、花王はどう対応していくのか」、大いに注目される。 東洋経済オンライン「京成電鉄が「オリエンタルランド株」巡り攻防戦 物言う株主の株主提案にも動じない老獪さ」 「イギリスの投資ファンドのパリサー・キャピタルは4月30日、株式の1.6%を所有する京成電鉄に対し、オリエンタルランド(OLC)株の一部売却などを求める株主提案を出した。 パリサーは同24日に、資本コストを意識した投資戦略と株主還元に関する計画を年内に策定し公表することを求めていた。併せて、OLC株の保有比率を2026年3月末までに4%ほど引き下げて15%未満にすることも要求」、なるほど。 「京成電鉄は、ディズニーランドが位置する千葉県浦安に直通する路線を保有しているわけではない。事業のシナジー効果が薄いように見えるが、京成電鉄はこれまで、OLCを「一種の祖業」として、株式保有を正当化してきた」、「一種の祖業」とは苦しい位置づけだ。 「「京成電鉄も資本収益性を十分に意識しないと、株主にそっぽを向かれる懸念がある。経営陣はこの2~3年で『(持ち合い株式などは)売らなきゃ』という気持ちに傾いている」(京成電鉄の関係者)。 OLC株を大量に売って売却益を得たとしても、その使途がなければ不毛な行為となる。その点、京成電鉄にはこの先の成長戦略において、多くの資金需要がある」、どんな「資金需要」なのだろう。 「成田空港の発着回数が増えるとなると、当社としても輸送力の増強を図る必要がある」と同社の広報・IR担当者は話す。車両基地の建設や整備も進めることになるだろう。 ほかにも、「台風や地震などの災害対策、バスの運転手不足対策など、やることはいっぱいある」・・・。さらに鉄道以外の領域である流通事業強化の一環で、今2025年3月期中にも地場スーパーなどのM&A・・・を検討している。 京成電鉄の関係者は、「京成電鉄は成長投資への資金が必要だ。お金の使い方が説明できるとなると、OLCを売るのではないか」と見通す・・・当面の焦点は、6月27日に開催予定の京成電鉄の定時株主総会だ。経営陣は株主に向けて何をどう語るのか。これまで以上に注目を集める」、さて、実際にはどうするのだろうか。
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天皇制度(その5)(愛子さま 佳子さま結婚で「女性宮家」は必要か?皇位継承問題の“3つの論点”とは、昭和天皇も上皇も…なぜ天皇は「生物学」を研究したのか?【養老孟司×茂木健一郎×東浩紀鼎談】) [政治]

昨日に続き、天皇制度(その5)(愛子さま 佳子さま結婚で「女性宮家」は必要か?皇位継承問題の“3つの論点”とは、昭和天皇も上皇も…なぜ天皇は「生物学」を研究したのか?【養老孟司×茂木健一郎×東浩紀鼎談】)を取上げよう。

先ずは、本年4月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した評論家の八幡和郎氏による「愛子さま、佳子さま結婚で「女性宮家」は必要か?皇位継承問題の“3つの論点”とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/341138
・『皇位継承問題の解決に向けて高まる女性皇族めぐる議論  岸田文雄首相に対する批判は保守派からもすさまじい。自民党の支持率が落ち、党員数が減っている原因についても、清和会の不祥事ではなく、LGBT法案の成立のせいだとかいっている。 しかし、保守派の人たちも、岸田首相が安倍晋三元首相の悲願であった皇位継承問題に決着をつけるべく動いていることは、高く評価している。 自民党では麻生太郎副総裁を会長として「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」を2023年11月に設置し、政府の『皇位継承に関する有識者会議』が2022年に取りまとめた報告書を具体化する作業中である。 焦点は、女性皇族だけが結婚後も皇室にとどまることと、旧宮家の男系男子を養子とすることを可能にする皇室典範改正である。 一方、立憲民主党は、自身が首相だったときの女性宮家案(一般的には、結婚後の女性皇族の家族も皇族とし、皇位継承権も与えることを指す)に拘泥する野田佳彦元首相を委員長とする委員会が論点整理案をまとめた。その内容は「女性宮家を緊急的な課題として議論を急ぐ必要がある」とする一方、女性宮家は将来の女系天皇につながるという慎重意見も併記されたようだ。 公明党は北側一雄副代表が、女性皇族だけが皇族として残る案に理解を示す発言をしている。 この問題は、今国会で議論される可能性もあるので、これまでの経緯と、なにが焦点であるのかについて、総括したい』、興味深そうだ。
・『皇位継承についてのこれまでの有識者会議  皇位継承についての有識者会議というと、小泉内閣時の2005年、女系天皇を容認する報告を出した「皇室典範に関する有識者会議」(座長・吉川弘之元東京大学総長)が有名だが、2006年の悠仁さまの誕生で前提を失い、宙に浮いた。 その後、外野からの愛子天皇待望論などはあったが、現行の皇室典範の規定で秋篠宮皇嗣殿下が第1位、その子の悠仁さまが第2位の継承順位となっているのをいわば廃嫡することは、国際的にもほとんど類例がないし、政治的にも実務的にも支持する者は少ない。 ただ、悠仁さまの後が続かなかったらという含みで、女性皇族が結婚したのち女性宮家を創設する案が、野田首相時代に持ち出された。 しかし、安倍内閣になり、陛下が退位を希望されたため、それへの対応が優先された。そして、陛下の退位を特例として処理し、秋篠宮殿下を皇嗣殿下として皇太子と同じ扱いとして将来の皇位継承を確定させるとともに、女性宮家等(等は旧宮家の扱いを念頭)の検討をすると付帯決議された。 そして、菅義偉内閣のときに、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議(座長・清家篤前慶応義塾塾長)が設立され、岸田内閣の2021年12月に報告書を出した。 この有識者会議は、小泉内閣時代の有識者会議と同じ位置づけで、国会の「附帯決議」を受けて設立されたものなので、小泉内閣時代の報告書は上書きされ、いわば無効になった。つまり、二つの案が併存しているのではない。 また、女性皇族の配偶者を皇族扱いする案は、眞子さんと小室圭氏の結婚をめぐる騒動で、不適切な皇族の出現の危険性が杞憂(きゆう)でないことがはからずも示されたため、やや後退した。 2021年12月の報告書では、(1)国家の基本に関わる事柄なので、制度的な安定性が重要、(2)次世代の皇位継承者として悠仁さまがいる中で仕組みに大きな変更を加えることには慎重であるべきだ、(3)有識者のほとんどが、悠仁さまが将来の天皇になることは変更すべきではないという意見、(4)皇族方のこれまでの人生設計を安直に変えるのは良くない――とした。 そして、悠仁さま以降の皇位継承は、悠仁さまが結婚され、お子さまがどうなるかのめどがついてから議論を深めるべきで、つまり今後20年ほど凍結すべきだとした。 秋篠宮皇嗣殿下が、上皇陛下が退位されたのと同じ年齢(85歳余)になられるのは2050年、悠仁さまが同じ年齢になられるのは2092年なので、悠仁さまに男子のお子様がおられなかったとしても、2070年頃までに決めたらいいことである。そのときの悠仁さまの皇位継承者は、現在はまだ生まれていない子であるから、現時点での人気投票的議論は全く無意味である』、「女性皇族の配偶者を皇族扱いする案は、眞子さんと小室圭氏の結婚をめぐる騒動で、不適切な皇族の出現の危険性が杞憂(きゆう)でないことがはからずも示されたため、やや後退した』、「悠仁さま以降の皇位継承は、悠仁さまが結婚され、お子さまがどうなるかのめどがついてから議論を深めるべきで、つまり今後20年ほど凍結すべきだとした。 秋篠宮皇嗣殿下が、上皇陛下が退位されたのと同じ年齢(85歳余)になられるのは2050年、悠仁さまが同じ年齢になられるのは2092年なので、悠仁さまに男子のお子様がおられなかったとしても、2070年頃までに決めたらいいことである」、なるほど。「小室圭氏の結婚」はやはり問題含みと捉えられているようだ。
・『皇族を増やすための3つの手立て  しかし、公務の担い手が不足する中で、皇族を少し増やしたいし、なにか事故などで緊急に皇位継承者が必要になったときや、悠仁さまに男子が生まれなかったときの皇位継承者の供給源も考えておかねばならない。 そこで、報告書はより踏み込んで、以下の三つの手立てを提案している。 (1)内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持する、(2)皇族の養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とする、(3)皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とする。 (1)は佳子さま、愛子さま、場合によっては三笠宮家、高円宮家の未婚の女王さまが結婚後も皇族としてとどまるということだ。ただし、家族は皇族にはしない。第14代将軍徳川家茂の御台所・和宮(仁孝天皇第8皇女)が皇族身分を維持したが、夫の家茂は皇族とされなかったことを前例としている。 ただし、佳子さまや愛子さまが皇族にとどまることが嫌だと言われたら、無理強いはできないし、配偶者は皇族にならないといっても、海外などに一緒に行かれることもあろうから、女性皇族が結婚後も皇室に残る場合、結婚には皇室会議の了承が必要となる可能性もある。 (2)は、1947年に臣籍降下した11宮家の男系子孫を対象としている。嫡出が条件だが、他家の養子になっているかどうかは問わない。この旧宮家からの養子案については、次回に論じることにする。 もし、養子の合意が成立しなければ、(3)で旧宮家の男子をそのまま皇族にする余地も残している。 旧宮家の男子と佳子さまや愛子さまが結婚されたら、その配偶者や子も皇族にするという意見もあるが、近親結婚になるし、本人の意向を制約することになりかねず、私は良くないと思う』、「事故などで緊急に皇位継承者が必要になったときや、悠仁さまに男子が生まれなかったときの皇位継承者の供給源も考えておかねばならない。 そこで、報告書はより踏み込んで、以下の三つの手立てを提案している。(1)内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持する、(2)皇族の養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とする、(3)皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とする・・・(1)で「佳子さまや愛子さまが皇族にとどまることが嫌だと言われたら、無理強いはできないし、配偶者は皇族にならないといっても、海外などに一緒に行かれることもあろうから、女性皇族が結婚後も皇室に残る場合、結婚には皇室会議の了承が必要となる可能性もある」、「結婚には皇室会議の了承が必要となる可能性も」、おおごとだ。
・『今後の検討における3つの論点  これからの検討における第一の論点は、有識者会議の結論を覆して、配偶者や子どもにも皇族身分を与えるかどうかである。 家族なのに身分が違うのは不自然だと言う人もいるが、たとえば、首相夫人は公的な立場でないが、必要に応じて公人に似た扱いを受ける。また、首相夫人が海外訪問などの公務に実質的に参加するかどうかも、首相夫人の希望によりケースバイケースで柔軟に対処されているのと同じで、不自然とはいえない。 そもそも、女性宮家推進派は、内親王が難点のある相手と結婚したいというはずないとか主張していた。だが、小室圭氏の件で、その主張は覆された。また、将来の状況に応じて、制度を改正して結婚相手を皇族にしても構わない。いずれにせよ、現状では皇族としないほうが、佳子さまや愛子さまの結婚相手を制約しないためにもいい。 第二の論点は、旧宮家の養子案も同時に決めるべきかどうかである。私は前述の「女性皇族本人が結婚後も皇族身分を保持する案」も含め、どちらの案にもそれぞれ反対する人はいるが、この二つを同時に決着しないと、何も決められず、機を失うと考える。 女性皇族については、佳子さまと愛子さまが適齢期を迎えているので急ぐ必要がある。また、皇族の養子についても、ご高齢の常陸宮殿下がご健在のうちに養子をとられるほうが、民間から嫁いだ妃殿下たちが養子をとるより自然だから、急いだ方がよい。 第三の論点は、佳子さまと愛子さまだけなのか、三笠宮家の彬子さま、瑤子さま、高円宮家の承子さまも議論の対象に含むかどうかである。佳子さまと愛子さま以外のお三人も、公務の担い手不足のなかで貴重な戦力となっており、今後、結婚されるのかどうかも分からないが、結婚されて公務から離れられたら困るのは、佳子さま、愛子さまと事情は同じだ』、「女性皇族本人が結婚後も皇族身分を保持する案」には賛成である。
・『上皇陛下の子孫以外を皇統から排除するリスク  こうした論点を考える上で、忘れられがちなのは、小泉内閣のときから続く、いわゆる女系論者による次のような主張だ。 上皇陛下の孫の女性3人である眞子さん(現在は除外されているが)、佳子さま、愛子さまのために女性宮家を設けたら、たとえ悠仁さまの後が続かなくとも、将来の皇位継承には問題がなくなるので、それ以外の皇位継承候補は用意する必要がない。 しかし、眞子さんが皇室を離れられた今となっては、悠仁さまを含めたった3人の孫たちの子孫が、女系を含めたからといって、これから順調に増えていくかはわからない。数学的に見れば、上皇陛下の4人の孫が、百年先でも子孫を残している可能性は高いが、似た遺伝子を持つのだから、数学的な可能性よりもリスクは大きいと見た方がよい。なお、皇室に生まれた方で子どもがおられる方は半分ほどに過ぎないという現実もある。 だとすれば、上皇陛下の子孫以外を皇位継承候補者から外すことは、皇統断絶のリスクを高める。 イギリスのように5000人の王位継承権者がいなくても、数十人以上の継承権者がおり、必要に応じて補充できるようにすべきであり、上皇陛下の子孫以外を皇統から排除するという考え方は危険である。 憲法学者には、皇籍離脱をした人やその子孫が皇族になるのは憲法違反であるという人もいる(内閣法制局は問題ないという見解)。だが、それは、現皇族の子孫で、生まれたときから皇位継承時点まで皇族であり続けている者が誰もいなくなったら、新たな天皇が即位することは憲法違反なので店じまいしなくてはならないということを意味する。いわば「隠れた天皇制廃止論」だ。 野田元首相などがもくろむとおり、佳子さまと愛子さまの女性宮家を創設して、旧宮家などを皇位継承候補から完全排除したのちに、悠仁さまを含めた3人の子孫が100年後に絶えた時、あわてて「旧宮家というのが昔はありましたっけ」などと言っても遅いのである。 私は女系も潜在候補とすることに反対ではないが、その場合については、明治天皇の女系子孫までを視野に入れるべきだと考えている。 東久邇家は昭和天皇の長女の子孫であり、明治天皇の皇女は北白川、朝香、竹田、東久邇の各宮家に降嫁してそれぞれ子孫がいる。彼らは男系男子の皇統に属し、しかも、明治天皇や昭和天皇の女系子孫である。 また、大正天皇の親王である三笠宮さまの子孫も、内親王が近衛家と裏千家に嫁がれ、孫世代の2人も結婚されている。 いずれにせよ、女系を容認するときに佳子さまと愛子さまだけを対象として限定するのは理屈に合わない。皇族女子が結婚後に皇族身分を維持するという制度の対象から三笠宮家と高円宮家の3人を外す理由もないし、旧宮家のうち明治天皇や昭和天皇の女系子孫である人たちも大事にすべきであろう』、「イギリスのように5000人の王位継承権者がいなくても、数十人以上の継承権者がおり、必要に応じて補充できるようにすべきであり、上皇陛下の子孫以外を皇統から排除するという考え方は危険である」、「イギリスのように5000人の王位継承権者が「、こんなに多いとは初めて知った。「上皇陛下の子孫以外を皇統から排除するという考え方は危険である」、その通りだ。「女系を容認するときに佳子さまと愛子さまだけを対象として限定するのは理屈に合わない。皇族女子が結婚後に皇族身分を維持するという制度の対象から三笠宮家と高円宮家の3人を外す理由もないし、旧宮家のうち明治天皇や昭和天皇の女系子孫である人たちも大事にすべきであろう」、同感である。

次に、5月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した解剖学者の養老孟司氏、脳科学者の茂木健一郎氏、批評家・作家の東 浩紀氏による鼎談「昭和天皇も上皇も…なぜ天皇は「生物学」を研究したのか?【養老孟司×茂木健一郎×東浩紀鼎談】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/341605
・『養老孟司、茂木健一郎、東 浩紀が、日本の歪みについて語り合うスペシャル鼎談。戦前は現人神とされ、戦後は人間の身ながら日本国民統合の象徴として生きた昭和天皇は、その戦争責任とともに左右の論者で評価が分かれるところ。昭和12年に生まれ、上皇陛下と同世代の養老先生は、昭和天皇をどう見ているのか。※本稿は、養老孟司、茂木健一郎、東 浩紀『日本の歪み』(講談社現代新書)の一部を抜粋・編集したものです』、「養老先生」が「上皇陛下と同世代」とは初めて知ったが、興味深そうだ。
・『神様を父に持って生まれた「象徴天皇」上皇陛下の苦労  東 新憲法が天皇の地位を「日本国民統合の象徴である」と定め、神から人になった天皇は、今度は象徴になりました。 養老 国民にとっても「象徴天皇」がどういうものかよくわかりませんが、天皇の側も相当大変だったと思います。2016年、現在の上皇が退位を希望されたときの言葉は次のようなものでした。 「即位以来、私は国事行為を行うと共に、日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方を、日々模索しつつ過ごして来ました」(象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば) 本当にそうだろうなと思います。非常に同情しました。誰も「象徴天皇」が何か知らないわけですから。大変でしたね、と。 茂木 上皇は養老さんの4歳上ですね。先ほど話した、体験の「地層」という意味での世代論で言えば、ほぼ同じ風景をご覧になってきたわけです。 養老 歳も近かったので、子供の頃から大変だろうなと思っていました。なんせお父さんが神様だったんだから。だからそうっとしておいてあげましょうよ、と思います。 茂木 昭和天皇、上皇、今上天皇への思いは違いますか。 養老 それは違いますね。偉さが違うというか(笑)。昭和天皇は神様だったから一番偉い。上皇は知り合いの知り合いくらいの人がいて僕に近いから、もっと人間くさくなってくる。今上天皇についてはお孫さん、という感じです』、「養老 歳も近かったので、子供の頃から大変だろうなと思っていました。なんせお父さんが神様だったんだから。だからそうっとしておいてあげましょうよ、と思います・・・「即位以来、私は国事行為を行うと共に、日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方を、日々模索しつつ過ごして来ました」(象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば) 本当にそうだろうなと思います。非常に同情しました。誰も「象徴天皇」が何か知らないわけですから。大変でしたね、と」、さすが年齢が近いだけある。
・『天皇は正気を保つために生物学を研究していた?  東 昭和天皇はヒドロゾア(ヒドロ虫類)、上皇はハゼを研究し、専門的な業績を残しています。養老さんは、なぜ天皇は生物学を学ぶのだと思いますか。 養老 ロンドンの自然史博物館のキュレーターが、昭和天皇の『相模湾産後鰓類図譜』という本を見つけて、日本の王室はこんなことをしているのかと驚いていました。) 養老 イギリスにはロイヤル・ソサイエティ(王立学会)という王族や貴族も名を連ねる民間の科学団体があって、正式名称は「自然についての知識を改善するためのロンドン王立協会」(The Royal Society of London for Improving Natural Knowledge)。実験科学ではなく、生物学などのより博物学的な科学をやっています。自然と触れることは、そういう人たちが気を抜くのにいちばんいい方法だからでしょうね。昭和天皇はイギリスに留学していたので、その雰囲気を知っていたのだと思います。 茂木 養老先生が解剖学を選んだ理由の一つとして、戦後に教科書を墨塗りした体験を挙げて、「死体は裏切らないから」とおっしゃっています。死体は死体のまま、解釈ひとつで態度が変わったりしない。天皇が生物学を勉強したのにも、それと共通するところがあるのではないでしょうか。 養老 大いにあると思います。正気を保つためにやっていたんでしょう。 茂木 正気を保つために蟲を見ていた。 養老 神様にまでされてしまって、いい加減にしてくれという気持ちがあったとしたら、ヒドロ虫でも見ているのがいちばんですから。昭和天皇はよく正気でいられたと思いませんか?そんなに普通の判断が狂っていたわけではないと思いますよ。 茂木 退位なさるべきだったと言う人もいますが、養老先生からすると、淡々と昭和を生ききったことは評価されることだと。 養老 そうです。そして、生物学はずいぶんその助けになったのではないでしょうか』、「養老 イギリスにはロイヤル・ソサイエティ(王立学会)という王族や貴族も名を連ねる民間の科学団体があって、正式名称は「自然についての知識を改善するためのロンドン王立協会」・・・実験科学ではなく、生物学などのより博物学的な科学をやっています。自然と触れることは、そういう人たちが気を抜くのにいちばんいい方法だからでしょうね。昭和天皇はイギリスに留学していたので、その雰囲気を知っていたのだと思います・・・正気を保つためにやっていたんでしょう・・・神様にまでされてしまって、いい加減にしてくれという気持ちがあったとしたら、ヒドロ虫でも見ているのがいちばんですから。昭和天皇はよく正気でいられたと思いませんか?そんなに普通の判断が狂っていたわけではないと思いますよ」、なるほど。
・『「やめよう」と言えなかった昭和天皇に戦争責任はあるのか  東 最近の研究者のなかには、昭和天皇は戦争に対してわりと意見を述べていて、「平和を望んでいたのに戦争に巻き込まれた」という戦後のイメージと実態は違っていたのではないかと言う人もいます。) 養老 それはないと思います。あの雰囲気の中で、ただ「やめましょう」とはとても言えないですよ。そんな簡単なもんじゃなかったと思います。判断は都度しなければならないし、下手をすれば宮中某重大事件(編集部注/大正9年、ときの皇太子裕仁親王と久邇宮家の良子女王の婚約をめぐって、宮中から元老、政界にいたるまで推進派と反対派にわかれて暗闘を繰り広げた)を繰り返してしまうこともわかっていたでしょうから。 茂木 神輿に担がれていて、とても降りられる状況ではなかったと。 養老 もちろんそうですよ。僕ら小学生まで、訳もわからないまま皇居に向かって最敬礼ですから。そういう神輿の担ぎ方は、明治の元勲が天皇を利用したことに端を発するのでしょうが、それが当時の日本の政治のあり方だったのだから、しょうがないと言えばしょうがないですね。 茂木 解剖学と同様、時代ごとに細かく見ていかないと捉えきれないニュアンスがあって、それを捉えないと、なぜこの決断をしたのかとか、なぜ社会が動いたのかがわからないのでしょうね。社会は複雑系で、本当は簡単な因果では説明できない。 養老 天皇陛下のせい、とは思わないわけです。ただ僕より少し上の人には「天皇嫌い」がけっこういて、井上ひさしなんかは、なんで怒るのっていうような話でも怒っていました。 東 天皇の話をするだけで怒るんですか。 養老 そうです。感情的に嫌いなんだなということがよくわかりました。堀田善衞も天皇嫌いだった。 茂木 石原慎太郎が絶対に「君が代」を歌わないというのは何だったんでしょう。 東 声を出さずに口パクだったと聞いたことがあります。 養老 知らないんじゃないの(笑)』、「養老」氏はさすがに「あの雰囲気の中で、ただ「やめましょう」とはとても言えないですよ。そんな簡単なもんじゃなかったと思います。判断は都度しなければならないし、下手をすれば宮中某重大事件・・・を繰り返してしまうこともわかっていたでしょうから・・・社会は複雑系で、本当は簡単な因果では説明できない。 養老 天皇陛下のせい、とは思わないわけです。ただ僕より少し上の人には「天皇嫌い」がけっこういて、井上ひさしなんかは、なんで怒るのっていうような話でも怒っていました。 東 天皇の話をするだけで怒るんですか。 養老 そうです。感情的に嫌いなんだなということがよくわかりました。堀田善衞も天皇嫌いだった」、「僕より少し上の人には「天皇嫌い」がけっこういて」、というのは不思議だ。
・『養老先生がよく歌っていた軍歌はアニソンに似ている  茂木 養老先生は軍歌は歌っていたんですか。 養老 兄貴が予科練崩れだったので、家でしょっちゅう歌っていて、いろいろ覚えました。 東 軍歌は子供の頃の思い出という感じですか。 養老 新宿に「潜水艦」という飲み屋があって、ときどき軍歌を歌いに行っていました。そこは夜中の12時までは軍歌を流していて、12時過ぎると懐メロになる。大晦日には店主が客を引き連れて靖国神社に参拝に行くような変な店だった。 茂木 へえ。おいくつくらいの頃ですか。 養老 30歳前後でしょうか。 東 ということは、若気の至りではなく、確信犯的にお好きだったのですね。どんな歌を歌われたんですか。 養老 「嗚呼神風特別攻撃隊」とかね。兄貴に教わって歌っていると、おふくろが「なんで今頃そんな歌を歌うんだ」って怒っていたのを思い出します。おふくろは若い人が特攻で出ていくのを知っていましたからね。 茂木 学徒出陣はニュースとして記憶にありますか。 養老 ないです。 茂木 そうか、養老先生は軍歌を歌っていらしたのか。たしかに軍歌って名曲が多いですよね。あの頃の作曲家は、現代の日本人と身体性が違うように思う。戦後のイデオロギーで否定して片付ければいいものではないように思います。 養老 軍歌はどこに行っちゃったんだろうなと思っていましたが、TVアニメに受け継がれているんだと気付きました。 東 アニソンですね。アップテンポで歌謡曲的で、たしかに軍歌の継承者なのかもしれない。 茂木 なるほど。たしかに軍歌的な盛り上がりがある。軍歌って不思議なことに左の人もけっこう好きですよね。何かパトスをかきたてるところがある。 養老 メーデーの歌なんて、ほとんど「歩兵の本領」とメロディが同じですからね。 茂木 その軍歌バーは左の人も来ていたんですか。 養老 来てない。右ばっかり。 東 養老さんは右翼青年だったんですか。 養老 右翼ではないですね。でも僕らの世代は戦争の教育を受けて、戦争に行けなかった世代ですから、その影響はあるかもしれません。 東 憧れがあった。 養老 そうですね。実際に行った連中は懲り懲りしているでしょうが』、「養老 兄貴が予科練崩れだったので、家でしょっちゅう歌っていて、いろいろ覚えました。 東 軍歌は子供の頃の思い出という感じですか。 養老 新宿に「潜水艦」という飲み屋があって、ときどき軍歌を歌いに行っていました。そこは夜中の12時までは軍歌を流していて・・・大晦日には店主が客を引き連れて靖国神社に参拝に行くような変な店だった・・・養老 軍歌はどこに行っちゃったんだろうなと思っていましたが、TVアニメに受け継がれているんだと気付きました。 東 アニソンですね。アップテンポで歌謡曲的で、たしかに軍歌の継承者なのかもしれない・・・東 養老さんは右翼青年だったんですか。 養老 右翼ではないですね。でも僕らの世代は戦争の教育を受けて、戦争に行けなかった世代ですから、その影響はあるかもしれません。 東 憧れがあった。 養老 そうですね。実際に行った連中は懲り懲りしているでしょうが」、「養老」氏が「軍歌」が好きで、「新宿に「潜水艦」という飲み屋があって、ときどき軍歌を歌いに行っていました」、というのは初めて知った。およそ、昆虫が好きというのとは結びつかないが、趣味というのは分からないものだ。
タグ:「女性皇族本人が結婚後も皇族身分を保持する案」には賛成である。 (1)で「佳子さまや愛子さまが皇族にとどまることが嫌だと言われたら、無理強いはできないし、配偶者は皇族にならないといっても、海外などに一緒に行かれることもあろうから、女性皇族が結婚後も皇室に残る場合、結婚には皇室会議の了承が必要となる可能性もある」、「結婚には皇室会議の了承が必要となる可能性も」、おおごとだ。 「事故などで緊急に皇位継承者が必要になったときや、悠仁さまに男子が生まれなかったときの皇位継承者の供給源も考えておかねばならない。 そこで、報告書はより踏み込んで、以下の三つの手立てを提案している。(1)内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持する、(2)皇族の養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とする、(3)皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とする・・・ 「悠仁さま以降の皇位継承は、悠仁さまが結婚され、お子さまがどうなるかのめどがついてから議論を深めるべきで、つまり今後20年ほど凍結すべきだとした。 秋篠宮皇嗣殿下が、上皇陛下が退位されたのと同じ年齢(85歳余)になられるのは2050年、悠仁さまが同じ年齢になられるのは2092年なので、悠仁さまに男子のお子様がおられなかったとしても、2070年頃までに決めたらいいことである」、なるほど。「小室圭氏の結婚」はやはり問題含みと捉えられているようだ。 八幡和郎氏による「愛子さま、佳子さま結婚で「女性宮家」は必要か?皇位継承問題の“3つの論点”とは」 ダイヤモンド・オンライン (その5)(愛子さま 佳子さま結婚で「女性宮家」は必要か?皇位継承問題の“3つの論点”とは、昭和天皇も上皇も…なぜ天皇は「生物学」を研究したのか?【養老孟司×茂木健一郎×東浩紀鼎談】) 天皇制度 「イギリスのように5000人の王位継承権者がいなくても、数十人以上の継承権者がおり、必要に応じて補充できるようにすべきであり、上皇陛下の子孫以外を皇統から排除するという考え方は危険である」、「イギリスのように5000人の王位継承権者が「、こんなに多いとは初めて知った。「上皇陛下の子孫以外を皇統から排除するという考え方は危険である」、その通りだ。 「女系を容認するときに佳子さまと愛子さまだけを対象として限定するのは理屈に合わない。皇族女子が結婚後に皇族身分を維持するという制度の対象から三笠宮家と高円宮家の3人を外す理由もないし、旧宮家のうち明治天皇や昭和天皇の女系子孫である人たちも大事にすべきであろう」、同感である。 養老孟司氏 茂木健一郎氏 東 浩紀氏による鼎談「昭和天皇も上皇も…なぜ天皇は「生物学」を研究したのか?【養老孟司×茂木健一郎×東浩紀鼎談】」 養老孟司、茂木健一郎、東 浩紀『日本の歪み』(講談社現代新書) 「養老先生」が「上皇陛下と同世代」とは初めて知ったが、興味深そうだ。 「養老 歳も近かったので、子供の頃から大変だろうなと思っていました。なんせお父さんが神様だったんだから。だからそうっとしておいてあげましょうよ、と思います・・・「即位以来、私は国事行為を行うと共に、日本国憲法下で象徴と位置づけられた天皇の望ましい在り方を、日々模索しつつ過ごして来ました」(象徴としてのお務めについての天皇陛下のおことば) 本当にそうだろうなと思います。非常に同情しました。誰も「象徴天皇」が何か知らないわけですから。大変でしたね、と」、さすが年齢が近いだけある。 「養老 イギリスにはロイヤル・ソサイエティ(王立学会)という王族や貴族も名を連ねる民間の科学団体があって、正式名称は「自然についての知識を改善するためのロンドン王立協会」・・・実験科学ではなく、生物学などのより博物学的な科学をやっています。自然と触れることは、そういう人たちが気を抜くのにいちばんいい方法だからでしょうね。昭和天皇はイギリスに留学していたので、その雰囲気を知っていたのだと思います ・・・正気を保つためにやっていたんでしょう・・・神様にまでされてしまって、いい加減にしてくれという気持ちがあったとしたら、ヒドロ虫でも見ているのがいちばんですから。昭和天皇はよく正気でいられたと思いませんか?そんなに普通の判断が狂っていたわけではないと思いますよ」、なるほど。 「養老」氏はさすがに「あの雰囲気の中で、ただ「やめましょう」とはとても言えないですよ。そんな簡単なもんじゃなかったと思います。判断は都度しなければならないし、下手をすれば宮中某重大事件・・・を繰り返してしまうこともわかっていたでしょうから・・・社会は複雑系で、本当は簡単な因果では説明できない。 養老 天皇陛下のせい、とは思わないわけです。ただ僕より少し上の人には「天皇嫌い」がけっこういて、井上ひさしなんかは、なんで怒るのっていうような話でも怒っていました。 東 天皇の話をするだけで怒るんですか。 養老 そうです。感情的に嫌いなんだなということがよくわかりました。堀田善衞も天皇嫌いだった」、「僕より少し上の人には「天皇嫌い」がけっこういて」、というのは不思議だ。 「養老 兄貴が予科練崩れだったので、家でしょっちゅう歌っていて、いろいろ覚えました。 東 軍歌は子供の頃の思い出という感じですか。 養老 新宿に「潜水艦」という飲み屋があって、ときどき軍歌を歌いに行っていました。そこは夜中の12時までは軍歌を流していて・・・大晦日には店主が客を引き連れて靖国神社に参拝に行くような変な店だった・・・ 養老 軍歌はどこに行っちゃったんだろうなと思っていましたが、TVアニメに受け継がれているんだと気付きました。 東 アニソンですね。アップテンポで歌謡曲的で、たしかに軍歌の継承者なのかもしれない・・・東 養老さんは右翼青年だったんですか。 養老 右翼ではないですね。でも僕らの世代は戦争の教育を受けて、戦争に行けなかった世代ですから、その影響はあるかもしれません。 東 憧れがあった。 養老 そうですね。実際に行った連中は懲り懲りしているでしょうが」、「養老」氏が「軍歌」が好きで、「新宿に「潜水艦」という飲み屋があって、ときどき軍歌を歌いに行っていました」、というのは初めて知った。およそ、昆虫が好きというのとは結びつかないが、趣味というのは分からないものだ。
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天皇制度(その4)(天皇陛下「英国留学」の原点 イギリス外務省が奔走した100年前の“国家プロジェクト”、天皇陛下「英国留学」の原点 水面下で米英がせめぎ合った「家庭教師プロジェクト」) [政治]

天皇制度については、2021年12月28日に取上げた。久しぶりの今日は、(その4)(天皇陛下「英国留学」の原点 イギリス外務省が奔走した100年前の“国家プロジェクト”、天皇陛下「英国留学」の原点 水面下で米英がせめぎ合った「家庭教師プロジェクト」)である。

先ずは、昨年7月17日付けデイリー新潮が掲載したジャーナリストの徳本栄一郎氏による「天皇陛下「英国留学」の原点 イギリス外務省が奔走した100年前の“国家プロジェクト”」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/07170900/?all=1
・『天皇陛下のご著書『テムズとともに――英国の二年間』(紀伊國屋書店)には、英オックスフォード大学に留学された際の思い出が綴られている。だが、その背後には、日本への影響力拡大を目指す英国の思惑があった。機密解除文書から、その知られざる内幕を解き明かす。(前後編のうち「前編」)<『英国機密ファイルの昭和天皇』(新潮社)より抜粋、一部加筆しています>』、興味深そうだ。
・『「今日の私の生き方にどれだけプラスになっているか」  「私がオックスフォードに滞在したのは、一九八三年の六月末から八五年の十月初旬にいたる二年四カ月間であった。その間、とても一口では表現できない数々の経験を積むことができた」 「それらは常に青春の貴重な思い出として、時間、空間を超えて鮮やかによみがえってくる。その多くが今日の私の生き方にどれだけプラスになっているかは、いうまでもない」 今春、今上天皇の英国留学の回顧録『テムズとともに』が復刊された。その冒頭は、こうした言葉で始まっている。 1983年6月、学習院大学を卒業した浩宮(今上天皇)は、英国オックスフォード大学への留学に出発した。一般学生と寮生活をし、中世のテムズ川の水上交通史を学ぶためで、これほど長期間、皇族が海外に出るのは異例だった。その間、内側から英国を眺め、外から日本を見つめ直せたという。 留学が、いかに大きな体験だったかが分かる。だが、それは浩宮が初めてではない。 今から100年前、同じくオックスフォードで学んだのが、昭和天皇の弟・秩父宮だ。東洋の皇族の留学を、英国は国を挙げて歓迎した。その裏には、明治から脈々と続く、英国の深遠な外交戦略があった。 関東大震災の翌年、1924年7月、皇居の濠を臨む駐日英国大使館から、ロンドンに電報が送られた。最高機密を指す「Most Confidential」とあり、10行余りの短い文面である。 「信頼できる筋によると、(大正)天皇の次男、秩父宮が、来春、英国に留学することがほぼ確定した。宮中は、当面、この件を極秘扱いにし、発表は控えるよう切望している」 電報を作成したのは、当時のチャールズ・エリオット駐日英国大使。オックスフォード大学を卒業後、外務省に入り、ロシアやトルコでキャリアを重ね、4年前、東京に赴任した。このエリオットが心血を注いだのが、秩父宮の留学だった』、「1983年6月、学習院大学を卒業した浩宮(今上天皇)は、英国オックスフォード大学への留学に出発した。一般学生と寮生活をし、中世のテムズ川の水上交通史を学ぶためで、これほど長期間、皇族が海外に出るのは異例だった。その間、内側から英国を眺め、外から日本を見つめ直せたという。 留学が、いかに大きな体験だったかが分かる」、確かに海外留学は貴重な体験だろう。
・『英国王から届いた歓迎の親電 浩宮英国留学  その年、秋も深まった11月、ロンドンの外務省に、エリオット大使から長文の報告が届く。留学は本決まりで、秩父宮は、天皇の息子の中で体力、知性共に、最も優れているという。 「留学の考えは、昨年7月、欧州訪問中の松平が最初に持ち出してきた。彼は、秩父宮の世話役に適任とされるドラモンド夫妻と、ロンドンで予備交渉を行った。その後、翌春の留学をめざし、松平は帰国した。 しかし、昨年9月の大震災後、今は皇族が国を離れるべきでないとの空気が広がり、守旧派の実力者も、天皇の息子の留学は前例がないと反対した。その後、西園寺公望や宮内大臣らが賛成し、計画は、貞明皇后に提出され、予想外に早く承諾された。皇太子は、当初から留学に賛成しており、同意を得るのは容易であった」 ここで登場する松平とは、当時、宮中の式部官だった松平慶民(よしたみ)を指す。彼自身、オックスフォードで学んだ経験がある。すでに1年以上前から、松平と英国側は、密かに根回しを進めていたのだった。 そして、年が明けた1925年1月、英国のオースティン・チェンバレン外務大臣は、国王ジョージ五世に最終報告を送った。従来、日本の皇族はフランス留学が多く、英国は初めてとし、国王自ら、摂政宮に親電を打つべきという。 それから間もなく、日本の新聞に、英国王からの親電の内容が紹介された。 「貴殿下が秩父宮殿下をして更に研学せしむる為め弊国に渡来することを許すべく決定されたるに就き貴殿下が弊国に対して示されたる顕著なる信任の情に対し甚く感銘する所あり」(「朝日新聞」、1925年1月24日付) 日本の皇族が英国で教育を受けることになり、それを、国王も歓迎している。このニュースは、新鮮な驚きを伴って、国中に広まっていった』、「従来、日本の皇族はフランス留学が多く、英国は初めてとし、国王自ら、摂政宮に親電を打つべきという。 それから間もなく、日本の新聞に、英国王からの親電の内容が紹介された」、「従来、日本の皇族はフランス留学が多く、英国は初めて」とは初めて知った。「日本の皇族が英国で教育を受けることになり、それを、国王も歓迎している。このニュースは、新鮮な驚きを伴って、国中に広まっていった」、英国側の手回しのよさは大したものだ。
・『破棄された日英同盟  機密解除されたこれらの文書から、奇異な印象を受ける人もいるかもしれない。いくら天皇家とはいえ、一青年皇族の留学だ。それを、まるで国家プロジェクトのように扱っている。駐日大使はおろか、外務大臣、国王まで動員し、根回しする。この裏には、当時の英国の思惑が隠れていた。 過去、いくつもの世界帝国が登場したが、その中で、英国は特別な位置を占める。インドやアフリカに植民地を持ち、7つの海を航海し、日の沈まぬ大英帝国とされた。その英国が、20世紀初めに結んだのが、日英同盟だ。 なぜ、誇りある大英帝国が、日本と手を組んだか。そこには、アジアの権益を狙うロシアへの警戒が横たわっていた。19世紀末、中国で外国人を排斥する義和団事件が起きると、各国は北京に軍隊を派遣する。ところが、その後も、ロシアは軍を引き揚げず、南下の意思を示し始めた。 このままでは、自分たちの権益にも脅威となる。英国は焦るが、彼らとて、アフリカの戦争に手を焼き、単独で対抗できない。そこで結んだのが、日英同盟だった。 ところが、1920年代に入ると、日英には暗雲が漂い始める。原因の一つは、米国だった。すでに米国は、日本の勢力拡大を警戒し、将来の対日戦争を想定していた。そして、そのネックは、日英同盟にあった。 同盟の条約では、日英どちらかが戦争に入れば、他方も参戦し、援助するとある。もし日米が戦えば、米国と英国が戦う羽目になる。米国は、同盟の破棄を画策し、ついに受け入れさせるのに成功した。 その後、英国はすぐに、シンガポール軍港の強化を検討し、日本では裏切られたとの感情が広がる。秩父宮の留学が決まったのは、まさにその最中だった。チェンバレン外務大臣から国王への報告では、シンガポール基地への「疑念」を晴らせるとある。たかが留学、されど留学なのだ。 また、英国が神経を尖らせたのは、外交だけではない。日本の国内情勢に、重大な関心を寄せていた』、「いくら天皇家とはいえ、一青年皇族の留学だ。それを、まるで国家プロジェクトのように扱っている。駐日大使はおろか、外務大臣、国王まで動員し、根回しする。この裏には、当時の英国の思惑が隠れていた。 過去、いくつもの世界帝国が登場したが、その中で、英国は特別な位置を占める。インドやアフリカに植民地を持ち、7つの海を航海し、日の沈まぬ大英帝国とされた。その英国が、20世紀初めに結んだのが、日英同盟だ・・・米国は、同盟の破棄を画策し、ついに受け入れさせるのに成功した。 その後、英国はすぐに、シンガポール軍港の強化を検討し、日本では裏切られたとの感情が広がる」、なるほど。
・『「宮中某重大事件」浩宮英国留学  1924年7月、明治の元老で政界の重鎮、松方正義が亡くなった。薩摩武士の家系に生まれ、維新後、明治政府で大蔵卿として財政政策を取り仕切った。その後も、政府の意思決定に関わり、彼の死は、無視できなかったようだ。エリオット大使の本国への報告を見てみる。 「松方は、西郷(隆盛)や大久保(利通)、木戸(孝充)ら維新の英雄でなく、伊藤(博文)、井上(馨)、山縣(有朋)、大山(巌)と同じ第2世代に属する。これは、王政復古により、封建制度から西欧型政権に移行する危険な時期、国の運命を担った世代である。松方は、伊藤の先見性、井上の頭の回転の速さは持ち合わせないが、機会が到来するのを待つ能力を持っていた」 明治の時代、伊藤や山縣らで構成する元老は、天皇の諮問機関の役割を担った。次期首相を推薦する他、外交にも目を光らせた。松方の死で、残る元老は、西園寺公望だけとなった。 元老の力が弱まれば、日本の意思決定は、どう変わるか。それを、英国は掴みかねていた。その懸念を増幅したのが、大正天皇の存在である。 もともと病弱な天皇は、この頃、とても公務に耐えられる状態ではなかった。そのため、皇太子裕仁が摂政に就き、代わりに公務をこなしていた。そして、松方の死の4ヵ月前、エリオットは、ロンドンに報告した。 「宮内省によると、天皇の病状は、前回の発表時より悪化している。これは、より深刻な状態を明らかにする前段階で、退位の準備の可能性もある」 「自分は最近、上海と香港を訪れたが、現地の外国人コミュニティーは、すでに天皇が死去したと信じる者も多い」 摂政の皇太子裕仁は、まだ22歳の若さで、国内を掌握する力は未知数だ。また、彼の結婚を巡る混乱も、国内の不安定さを見せつけた。いわゆる「宮中某重大事件」である。 これは、山縣有朋が、皇太子裕仁の妃に内定した良子女王(後の香淳皇后)の母方、島津家に色覚異常があるとし、婚約解消を迫った事件だ。西園寺公望や原敬首相は山縣を支持したが、大正天皇の皇后や島津家は、反山縣勢力を結集して対抗する。 この裏には、長州出身の山縣が、薩摩の島津家の血が皇室に入るのを嫌ったとの説も流れ、政界を巻き込む騒ぎになった。結局、皇太子が良子との結婚を強く望み、右翼の頭山満も反山縣につき、ついに婚約破棄の企ては潰れた』、「「宮中某重大事件」である。 これは、山縣有朋が、皇太子裕仁の妃に内定した良子女王(後の香淳皇后)の母方、島津家に色覚異常があるとし、婚約解消を迫った事件だ・・・西園寺公望や原敬首相は山縣を支持したが、大正天皇の皇后や島津家は、反山縣勢力を結集して対抗する・・・結局、皇太子が良子との結婚を強く望み、右翼の頭山満も反山縣につき、ついに婚約破棄の企ては潰れた」、こんな事件があったとは初めて知った。
・『「彼らは完成を夢みて一つ一つ石を積んでいく」  皇太子の婚約一つで混乱するほど、国内が不安定であることを、英国は察知した。1924年1月の結婚の際、駐日大使館は本国に、皇族の人間関係を含む、詳細な報告を送った。 明治から大正に移り、かつて維新を戦った世代は消えつつある。政党政治は定着せず、政治家は、権力闘争に明け暮れる。そして、宮中には、病弱な天皇と若い皇太子が控える。今後、日本の意思決定は、誰が、どうやって担うか。 その真っ只中で、秩父宮の留学準備は進められた。この過程で、英国は、皇族を初め、政府要人と濃密な接触を図ることができた。そこから、日本の支配層のデリケートな情報が手に入る。留学自体、インテリジェンス収集の絶好の機会だったのだ。 1925年7月、ロンドンのバッキンガム宮殿に近いビクトリア駅に、秩父宮と随員一行が到着した。出迎えたのは、王室関係者を初め、チェンバレン外務大臣らである。2年に亘るプロジェクトが成功した瞬間だ。 そして、それは同時に、英国政府の後輩への貴重な財産になってくれた。80年代、彼らが浩宮留学に動いた際、前例にしたのが、秩父宮なのだ。その浩宮は回顧録『テムズとともに』で、こう振り返っている。 「私は、イギリスの人が常に長期的視点にたって物事を考えているように感じている。常に、差し迫ったもののみでなく、さらに先のことを考えながら、焦ることなく遂行していく国民性があるように感じる。これは、一つには家の建築方法と一脈通じるものがあるのではなかろうか。例えば、巨大な大聖堂にしても、それは数百年の歳月をかけて造られるものが多い。最初に石を積んだ石工は、その完成を見られない。しかし、彼らは完成を夢みて一つ一つ石を積んでいく」 まさに、この最初に積まれた石が、100年前の留学だった。それなしに、令和の天皇が、オックスフォードで学ぶことはなかった。 そして、やがて英国の視線は、もう一人の皇族に向けられる。彼の元へ家庭教師を送れば、日本での影響力を拡大できる。浩宮の父で、平成の天皇となる、皇太子明仁だった。 ※以下、「後編」に続く』、「1925年7月、ロンドンのバッキンガム宮殿に近いビクトリア駅に、秩父宮と随員一行が到着した。出迎えたのは、王室関係者を初め、チェンバレン外務大臣らである。2年に亘るプロジェクトが成功した瞬間だ。 そして、それは同時に、英国政府の後輩への貴重な財産になってくれた。80年代、彼らが浩宮留学に動いた際、前例にしたのが、秩父宮なのだ。その浩宮は回顧録『テムズとともに』で、こう振り返っている。 「私は、イギリスの人が常に長期的視点にたって物事を考えているように感じている。常に、差し迫ったもののみでなく、さらに先のことを考えながら、焦ることなく遂行していく国民性があるように感じる・・・イギリスの人が常に長期的視点にたって物事を考えているように感じている。常に、差し迫ったもののみでなく、さらに先のことを考えながら、焦ることなく遂行していく国民性があるように感じる。これは、一つには家の建築方法と一脈通じるものがあるのではなかろうか。例えば、巨大な大聖堂にしても、それは数百年の歳月をかけて造られるものが多い。最初に石を積んだ石工は、その完成を見られない。しかし、彼らは完成を夢みて一つ一つ石を積んでいく」、なるほど。

次に、昨年7月17日付けデイリー新潮が掲載したジャーナリストの徳本栄一郎氏による「天皇陛下「英国留学」の原点 水面下で米英がせめぎ合った「家庭教師プロジェクト」を紹介しよう。
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・『天皇陛下がご著書に「何ものにも代えがたい貴重な経験となった」と綴られた、若き日の英国留学――。その背後に見え隠れするのは英国の深遠な外交だった。実は、上皇陛下の“家庭教師”をめぐっても、水面下で米英のせめぎ合いが展開されていた。(前後編のうち「後編」)<『英国機密ファイルの昭和天皇』(新潮社)より抜粋、一部加筆しています>』、興味深そうだ。
・『サッチャー首相、エリザベス女王とも交流  思い返してみると、この二年間は瞬く間に過ぎ去ったように感じるものの、私はその間実に様々なものを学んだように思う」 「英国の内側から英国を眺め、様々な人と会い、その交流を通じて英国社会の多くの側面を学ぶことができたこと、さらには日本の外にあって日本を見つめ直すことができたこと、このようなことが私にとって何ものにも代えがたい貴重な経験となった」 今上天皇の英国留学の回顧録、『テムズとともに――英国の二年間』は、これらの言葉で終わる。 1983年、学習院大学を卒業した浩宮(今上天皇)は、英国オックスフォード大学の留学に出発した。まず、トム・ホール大佐宅にホームステイし、一般学生と寮生活をする。これほど長期間、皇族が海外に出るのは異例で、その間、英国政府は、完璧とも言える体制で支援した。 私服の警護官が、目立たぬよう付き添い、一般学生と同じ生活ができるようにした。また、マーガレット・サッチャー首相やエリザベス女王とも交流するなど、浩宮にとって青春の忘れられない記憶になった。 前回触れたように、この背後には、明治から脈々と続く、英国の深遠な外交があった。終戦直後の皇太子の家庭教師プロジェクトも、その一つである』、「1983年、学習院大学を卒業した浩宮(今上天皇)は、英国オックスフォード大学の留学に出発した。まず、トム・ホール大佐宅にホームステイし、一般学生と寮生活をする。これほど長期間、皇族が海外に出るのは異例で、その間、英国政府は、完璧とも言える体制で支援した。 私服の警護官が、目立たぬよう付き添い、一般学生と同じ生活ができるようにした。また、マーガレット・サッチャー首相やエリザベス女王とも交流するなど、浩宮にとって青春の忘れられない記憶になった」、なるほど。
・『「その影響力は、単なる英語教師をはるかに超える」  そこは、まるで日本でありながら、日本でないような空間だったという。 空襲を免れた丸の内のビルは、巨大な星条旗が翻る。周囲の路上は、英語の標識が並び、ジープが通り過ぎる。そして、歩道には、日本人のガールフレンドを連れた米軍兵士が闊歩していた。これが、1949年、敗戦から4年目を迎えた東京の光景だった。 その年の3月、皇居の濠を臨む駐日英国代表部が、ロンドンの外務省に報告書を送った。 「然るべき人間を(宮中に)送り込めば、その影響力は、単なる英語教師をはるかに超える。天皇や他の皇族、宮中関係者と頻繁な接触が可能となり、立憲君主のあらゆる事項で意見を求められる」 マッカーサーという障害を克服し、日本側と調整を進めるのが、自分の課題だ。決して容易でないのは承知しているが、実行する価値はあると思われる」 作成したのは、駐日英国代表のアルバリー・ガスコイン。第一次大戦に従軍後、外務省に入り、中国やハンガリーで勤務した。本省の極東部の幹部も務め、3年前、東京に赴任してきた。50代を迎え、外交官として脂が乗り切った時期だ。その彼が目指したのが、皇太子・明仁への家庭教師派遣だった。 敗戦と、それから7年間の占領は、日本人に初めて、外国による支配を体験させた。この間、連合国軍総司令部(GHQ)の最高司令官ダグラス・マッカーサーは、文字通り、国を一変させた。 新憲法の制定や農地解放、財閥解体は、明治維新以来の変化をもたらす。そして、それは、皇室にも波及した。皇太子に、米国人の家庭教師が任命されたのだ』、「GHQの最高司令官ダグラス・マッカーサーは、文字通り、国を一変させた。 新憲法の制定や農地解放、財閥解体は、明治維新以来の変化をもたらす。そして、それは、皇室にも波及した。皇太子に、米国人の家庭教師が任命された」、なるほど。
・『ジミーと呼ばれた皇太子  敗戦の翌年、皇太子の英語教師として、エリザベス・バイニング夫人が来日する。だが、彼女が、単なる教師を超え、皇室のアドバイザー的存在だったのは、明らかだ。回顧録『皇太子の窓』で、こう述べている。 「私は天皇陛下御自身に任命された家庭教師なのである」 「そして、英語を教えるということは、日本に対して新しい動的な関係をもつようになったアメリカ的な民主主義の思想と実践とを、皇太子殿下その他の生徒たちに教えるという、さらに大きな仕事の方便にすぎないこともわかっていた」  実際、彼女は学習院中等科の授業で、生徒に英語のニックネームをつけ、エイブラハム・リンカーンの演説を暗記させた。皇太子にも「ジミー」という名を与え、様々なテーマで討論させた。 また、昭和天皇から教育で意見を求められ、吉田茂首相とも付き合い、日本の戦後史の目撃者と言える。それを、苦々しく見つめていたのが、英国政府だった。ガスコインの報告書の末尾は、こうだ。 「日本に皇室が維持される場合、その継承者は、適切な民主主義の基盤を持つべきである。また、天皇と皇室は、立憲君主制の教育を受けるべきで、それは、米国人でなく、われわれのみが行い得る」』、「苦々しく見つめていたのが、英国政府だった。ガスコインの報告書の末尾は、こうだ。 「日本に皇室が維持される場合、その継承者は、適切な民主主義の基盤を持つべきである。また、天皇と皇室は、立憲君主制の教育を受けるべきで、それは、米国人でなく、われわれのみが行い得る」、なるほど。
・『英国に助けを求めたGHQ  米国に皇室改革などできるか、と言わんばかりだが、これには伏線があった。 占領開始直後、GHQは、宮中の大規模なリストラに踏み切る。5000人以上いた職員を削減したのだが、その後も、試行錯誤が続く。そもそも宮中の適正な規模、業務とは何か、彼らも知らなかったのだ。そこで助けを求めたのが、英国だ。 英外務省は、すぐにバッキンガム宮殿と協議し、職員数や内訳、業務を、GHQに伝えた。偉そうに日本の占領を仕切っているが、米国は、皇室改革のノウハウがない。報告を受けた外務省は、この機会を逃さなかった。そこから、家庭教師派遣プロジェクトが浮上する。 そして彼らは、バイニング夫人の情報を集め始めた。米国が支給する給与の額、手当をチェックし、参考にするためだ。その上で、大蔵省に予算措置を打診した。大蔵省も乗り気で、3年から5年、年間1000ポンドを出してもいいという。 これで、金の目途もついた。 ところが、この時のプロジェクトは、挫折してしまう。英国側の記録では、マッカーサーが乗り気ではなかったためらしい。英国外務省が唇を噛むのが目に浮かぶが、2年後、再びチャンスがやって来た。 1951年9月、サンフランシスコで、講和条約が調印され、翌年の春、発効した。これにより、日本占領は終わり、GHQも去っていく。そして、この頃、東京から、ある情報がもたらされた』、「GHQは、宮中の大規模なリストラに踏み切る。5000人以上いた職員を削減したのだが、その後も、試行錯誤が続く。そもそも宮中の適正な規模、業務とは何か、彼らも知らなかったのだ。そこで助けを求めたのが、英国だ。 英外務省は、すぐにバッキンガム宮殿と協議し、職員数や内訳、業務を、GHQに伝えた。偉そうに日本の占領を仕切っているが、米国は、皇室改革のノウハウがない。報告を受けた外務省は、この機会を逃さなかった。そこから、家庭教師派遣プロジェクトが浮上する・・・バイニング夫人の情報を集め始めた。米国が支給する給与の額、手当をチェックし、参考にするためだ。その上で、大蔵省に予算措置を打診した。大蔵省も乗り気で、3年から5年、年間1000ポンドを出してもいいという。 これで、金の目途もついた。 ところが、この時のプロジェクトは、挫折してしまう。英国側の記録では、マッカーサーが乗り気ではなかったためらしい」、なるほど。
・『「米国人は、何ら理解していない」  宮内庁の式部官長、松平康昌が、海外の王室制度を調査するため訪英することが決まったのだ。松平は、貴族院議員を経て宮中入りし、占領期、連合国との折衝を担った。その彼が、1952年1月、ロンドンへ入るという。これを機に説得しようと、英国外務省は動き始めた。 「(東京での)パーティーの席で、松平や田島(筆者注・田島道治宮内庁長官)は、かなり意図的に、『英国人家庭教師をつける考えは捨てていない。松平の訪英中、この提案に関心を持つ人間と会えないか』と言ってきた。ただ、彼らがどこまで真剣かは不明である」 「いかに立憲君主制を機能させるか、米国人は、何ら理解していない。彼らは、立憲君主とは、ただゴム印を押す者としか考えていない」 そして、今回、英国側は、家庭教師の人選まで検討した。オックスフォード大学トリニティ・カレッジの学長に、候補者の推薦を依頼した。さらに何と、松平説得に、国王ジョージ6世の長女、後のエリザベス女王まで動員しようとした。 松平との面談記録を読むと、執念じみたものさえ伝わってくる。 だが、結局、この時も話はまとまらなかった。時期尚早だったのかもしれないが、そもそもなぜ、英国は、ここまで家庭教師にこだわったのか。それは、英外務省文書の次の言葉から分かる。 「日本は、今後わずか10年から15年で、極東の極めて重要な要因となり、天皇の個人的影響力も、戦前より強くなると思われる。従って、皇室に英国への好意を抱かせるのは、われわれにも大きな利益となる。純粋に政治的観点からも、実現へ全力を尽くすべきである」 明治維新以来、英国は、あらゆるルートで日本の支配層に食い込んできた。留学生も受け入れ、彼らは、帰国後、近代国家の建設に貢献した。ところが、敗戦後、米国主導のGHQが幅を利かせ始める。立憲君主制も理解せず、自分に都合のいい改革を進めた。今こそ、われわれが存在感を発揮せねば。英国政府の本音を代弁すれば、こういう感じか。 皇太子明仁への家庭教師派遣、それは、戦後の国益を巡るせめぎ合いだった。そして、今から見ると、浩宮の留学のプロローグになっていたのが分かる。 80年代、英国は、外務省はおろか、サッチャー首相、エリザベス女王も動員し、留学を全面的に支援した。その裏には、終戦直後、米国に抱いた屈辱感があったのかもしれない』、「皇太子明仁への家庭教師派遣、それは、戦後の国益を巡るせめぎ合いだった。そして、今から見ると、浩宮の留学のプロローグになっていたのが分かる。 80年代、英国は、外務省はおろか、サッチャー首相、エリザベス女王も動員し、留学を全面的に支援した。その裏には、終戦直後、米国に抱いた屈辱感があったのかもしれない」、その通りなのだろう。
・『「この体験は、将来、息子にとって真の財産となることでしょう」  だが、英国の思惑はどうあれ、留学が、浩宮の生涯の財産になったのは、間違いない。「テムズとともに」は、オックスフォードでの日々を愛おしむように綴っている。それは、まさに内側から英国を、外から日本を見つめ直す体験だった。そして、1985年10月、ロンドンの空港を飛び立つ場面で終わっていた。 「ロンドンの風景が遠ざかるのを見ながら、私の中で自分の人生にとって重要な一つの章が終わり、新たなページが開かれる思いがし、しばし心の中に大きな空白ができたような気がした。それとともに、内心熱いものがこみ上げて来る衝動も隠すことはできなかった。私は、ただ、じっと窓の外を見つめていた」 その翌月、ホームステイ先だったホール大佐に、日本のある人物から、感謝の手紙が届けられる。 「英国での滞在と勉学が実り多く、息子が大きく成長できたことを、妻と私も大変嬉しく思います。この体験は、将来、息子にとって真の財産となることでしょう」 ロンドンの英公文書館が保管する手紙は、直筆の署名で、「Akihito」とある。浩宮を留学に送り出した父であり平成の天皇、そして、現在の上皇からの手紙であった。 徳本栄一郎氏の略歴はリンク先参照)』、「ホームステイ先だったホール大佐に、日本のある人物から、感謝の手紙が届けられる。 「英国での滞在と勉学が実り多く、息子が大きく成長できたことを、妻と私も大変嬉しく思います。この体験は、将来、息子にとって真の財産となることでしょう」 ロンドンの英公文書館が保管する手紙は、直筆の署名で、「Akihito」とある。浩宮を留学に送り出した父であり平成の天皇、そして、現在の上皇からの手紙であった」、「英国」側の苦労も報われたようだ。
タグ:天皇制度 (その4)(天皇陛下「英国留学」の原点 イギリス外務省が奔走した100年前の“国家プロジェクト”、天皇陛下「英国留学」の原点 水面下で米英がせめぎ合った「家庭教師プロジェクト」) デイリー新潮 徳本栄一郎氏による「天皇陛下「英国留学」の原点 イギリス外務省が奔走した100年前の“国家プロジェクト”」 『英国機密ファイルの昭和天皇』(新潮社) 「1983年6月、学習院大学を卒業した浩宮(今上天皇)は、英国オックスフォード大学への留学に出発した。一般学生と寮生活をし、中世のテムズ川の水上交通史を学ぶためで、これほど長期間、皇族が海外に出るのは異例だった。その間、内側から英国を眺め、外から日本を見つめ直せたという。 留学が、いかに大きな体験だったかが分かる」、確かに海外留学は貴重な体験だろう。 「従来、日本の皇族はフランス留学が多く、英国は初めてとし、国王自ら、摂政宮に親電を打つべきという。 それから間もなく、日本の新聞に、英国王からの親電の内容が紹介された」、「従来、日本の皇族はフランス留学が多く、英国は初めて」とは初めて知った。「日本の皇族が英国で教育を受けることになり、それを、国王も歓迎している。このニュースは、新鮮な驚きを伴って、国中に広まっていった」、英国側の手回しのよさは大したものだ。 「いくら天皇家とはいえ、一青年皇族の留学だ。それを、まるで国家プロジェクトのように扱っている。駐日大使はおろか、外務大臣、国王まで動員し、根回しする。この裏には、当時の英国の思惑が隠れていた。 過去、いくつもの世界帝国が登場したが、その中で、英国は特別な位置を占める。インドやアフリカに植民地を持ち、7つの海を航海し、日の沈まぬ大英帝国とされた。その英国が、20世紀初めに結んだのが、日英同盟だ・・・米国は、同盟の破棄を画策し、ついに受け入れさせるのに成功した。 その後、英国はすぐに、シンガポール軍港の強化を 検討し、日本では裏切られたとの感情が広がる」、なるほど。 「「宮中某重大事件」である。 これは、山縣有朋が、皇太子裕仁の妃に内定した良子女王(後の香淳皇后)の母方、島津家に色覚異常があるとし、婚約解消を迫った事件だ・・・西園寺公望や原敬首相は山縣を支持したが、大正天皇の皇后や島津家は、反山縣勢力を結集して対抗する・・・結局、皇太子が良子との結婚を強く望み、右翼の頭山満も反山縣につき、ついに婚約破棄の企ては潰れた」、こんな事件があったとは初めて知った。 「1925年7月、ロンドンのバッキンガム宮殿に近いビクトリア駅に、秩父宮と随員一行が到着した。出迎えたのは、王室関係者を初め、チェンバレン外務大臣らである。2年に亘るプロジェクトが成功した瞬間だ。 そして、それは同時に、英国政府の後輩への貴重な財産になってくれた。80年代、彼らが浩宮留学に動いた際、前例にしたのが、秩父宮なのだ。その浩宮は回顧録『テムズとともに』で、こう振り返っている。 「私は、イギリスの人が常に長期的視点にたって物事を考えているように感じている。常に、差し迫ったもののみでなく、さらに先のことを考えながら、焦ることなく遂行していく国民性があるように感じる・・・イギリスの人が常に長期的視点にたって物事を考えているように感じている。常に、差し迫ったもののみでなく、さらに先のことを考えながら、焦ることなく遂行していく国民性があるように感じる。これは、一つには家の建築方法と一脈通じるものがあるのではなかろうか。例えば、巨大な大聖堂にしても、それは数百年の歳月をかけて造られるものが 多い。最初に石を積んだ石工は、その完成を見られない。しかし、彼らは完成を夢みて一つ一つ石を積んでいく」、なるほど。 徳本栄一郎氏による「天皇陛下「英国留学」の原点 水面下で米英がせめぎ合った「家庭教師プロジェクト」 「1983年、学習院大学を卒業した浩宮(今上天皇)は、英国オックスフォード大学の留学に出発した。まず、トム・ホール大佐宅にホームステイし、一般学生と寮生活をする。これほど長期間、皇族が海外に出るのは異例で、その間、英国政府は、完璧とも言える体制で支援した。 私服の警護官が、目立たぬよう付き添い、一般学生と同じ生活ができるようにした。また、マーガレット・サッチャー首相やエリザベス女王とも交流するなど、浩宮にとって青春の忘れられない記憶になった」、なるほど。 「GHQの最高司令官ダグラス・マッカーサーは、文字通り、国を一変させた。 新憲法の制定や農地解放、財閥解体は、明治維新以来の変化をもたらす。そして、それは、皇室にも波及した。皇太子に、米国人の家庭教師が任命された」、なるほど。 「苦々しく見つめていたのが、英国政府だった。ガスコインの報告書の末尾は、こうだ。 「日本に皇室が維持される場合、その継承者は、適切な民主主義の基盤を持つべきである。また、天皇と皇室は、立憲君主制の教育を受けるべきで、それは、米国人でなく、われわれのみが行い得る」、なるほど。 「GHQは、宮中の大規模なリストラに踏み切る。5000人以上いた職員を削減したのだが、その後も、試行錯誤が続く。そもそも宮中の適正な規模、業務とは何か、彼らも知らなかったのだ。そこで助けを求めたのが、英国だ。 英外務省は、すぐにバッキンガム宮殿と協議し、職員数や内訳、業務を、GHQに伝えた。偉そうに日本の占領を仕切っているが、米国は、皇室改革のノウハウがない。報告を受けた外務省は、この機会を逃さなかった。そこから、家庭教師派遣プロジェクトが浮上する・・・ バイニング夫人の情報を集め始めた。米国が支給する給与の額、手当をチェックし、参考にするためだ。その上で、大蔵省に予算措置を打診した。大蔵省も乗り気で、3年から5年、年間1000ポンドを出してもいいという。 これで、金の目途もついた。 ところが、この時のプロジェクトは、挫折してしまう。英国側の記録では、マッカーサーが乗り気ではなかったためらしい」、なるほど。 「皇太子明仁への家庭教師派遣、それは、戦後の国益を巡るせめぎ合いだった。そして、今から見ると、浩宮の留学のプロローグになっていたのが分かる。 80年代、英国は、外務省はおろか、サッチャー首相、エリザベス女王も動員し、留学を全面的に支援した。その裏には、終戦直後、米国に抱いた屈辱感があったのかもしれない」、その通りなのだろう。 「ホームステイ先だったホール大佐に、日本のある人物から、感謝の手紙が届けられる。 「英国での滞在と勉学が実り多く、息子が大きく成長できたことを、妻と私も大変嬉しく思います。この体験は、将来、息子にとって真の財産となることでしょう」 ロンドンの英公文書館が保管する手紙は、直筆の署名で、「Akihito」とある。浩宮を留学に送り出した父であり平成の天皇、そして、現在の上皇からの手紙であった」、「英国」側の苦労も報われたようだ。
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脳科学(その4)(『脳の闇』の中野信子が指摘 日本人に「社会不安障害」が多い理由 ぶつかるのは面倒だから回避する 人と接するのが苦手な日本人の「気難しさ」、生まれて数ヶ月で「眠らせてしまった能力」じつは 戻るかもしれない…脳科学が挑む「究極の方法」) [科学]

脳科学については、昨年3月10日に取上げた。今日は、(その4)(『脳の闇』の中野信子が指摘 日本人に「社会不安障害」が多い理由 ぶつかるのは面倒だから回避する 人と接するのが苦手な日本人の「気難しさ」、生まれて数ヶ月で「眠らせてしまった能力」じつは 戻るかもしれない…脳科学が挑む「究極の方法」)である。

先ずは、本年1月8日付けJBPressが掲載した長野 光氏による「『脳の闇』の中野信子が指摘、日本人に「社会不安障害」が多い理由 ぶつかるのは面倒だから回避する、人と接するのが苦手な日本人の「気難しさ」【JBpressセレクション】」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/78694
・『JBpressで掲載した人気記事から、もう一度読みたい記事を選びました。(初出:2023年3月22日)※内容は掲載当時のものです。 今の社会は何事も簡素に、便利に、合理的になっているが、それと反比例するように、人々はこれまで以上にデリケートかつ気難しくなっている印象を受ける。デジタルデバイスやインターネット空間が発達し、本音と建前、正義と悪が錯綜する現代という檻の中で、人々の思考と感情が窮屈さに悲鳴を上げている。 そんな時代に、私たちはどのように生きればいいのか。『脳の闇』(新潮新書)を上梓した脳科学者の中野信子氏に聞いた。(Qは聞き手の質問) Q:霊感商法、特殊詐欺、結婚詐欺、悪質なマルチ商法やネズミ講など、最近人を騙してカネを取る事件が頻繁に報道されます。「騙される人間は考えが甘い」などと思ってしまいがちですが、中野さんは「自分が詐欺師だったら高学歴の人を狙うかもしれない」と書かれています。高学歴の人には、つけ込まれる隙があるということでしょうか。 中野信子氏(以下、中野):高学歴の人は「自分だけは人から騙されることはない」というバイアスにかかりやすい人たちと言えます。自分には十分に知性があるから、人を騙そうとする人を見抜く力があると。あるいは、このような言い方は嫌いですが、「自分の周りには人を騙すような“民度の低い”人間はいない」と思い込んでいる。 そして、怪しげな人が近づいてきても、最初から相手を疑うのは失礼だと教えられているため、怪しげな人に対してさえ、失礼な応対をするのはいかがなものかという意識が働き、相手を疑う自分にこそ問題があると考えがちです。 つまり、怪しさを検知する機能を持ってはいても、感度が鈍っている場合があり、そのような一種のバグや穴のようなものを高学歴の人はより多く抱えていると考えられるのです。 Q:学力の高さのような頭の良さは、人の狡さを見抜くことにはうまく作用しないものでしょうか。 中野:しないと思います。よく出題されるひっかけ問題のようなものであれば、十分にトレーニングを積んでいるので見分けることができると思います。しかし、座学は人一倍努力しているにしても、実地で人間関係を十分にトレーニングしているわけではない。人間関係のトレーニングは学校で教えられるようなものではないので、むしろ勉強することに多大な時間を割いてきた高学歴の人は不利と言えるかもしれません。 付き合う人も限られており、合理的に考えれば人を騙すより自分で稼いだ方が楽だと考える人たちと付き合っていることも多いでしょう。ですから、人を騙して勝ち逃げしようと企むような人は、むしろ、高学歴の人をターゲットにしてもおかしくないと思います』、「高学歴の人は「自分だけは人から騙されることはない」というバイアスにかかりやすい人たちと言えます・・・人を騙して勝ち逃げしようと企むような人は、むしろ、高学歴の人をターゲットにしてもおかしくないと思います」、なるほど。
・『「誰かを罰する」ことで感じる快感  Q:「規範意識が高いところほどいじめが起きやすい」「決めごとの多い夫婦ほど離婚しやすい」と書かれています。何か事件があると、「より細かな法整備が必要だ」「より厳しい厳罰化が必要だ」といった議論が盛んに行われます。学校や家庭などでも問題のある子供は厳しいルールで囲い込んで間違った行動から遠ざけようとしがちですが、ルールをたくさん作るほど、人と人がぶつかる摩擦点が増えてかえって危険ということでしょうか。 中野:そういう側面もあります。たとえば、誹謗中傷に関する問題などは、抑止力としてある程度の厳罰化は必要だと思います。しかし、規範意識が高くなっていくと、規範を破った人に対して厳しい視線を向けることが、あたかも正義であるかのように社会が変質していきます。 逆説的に、問題がある人を国や法律が完全に罰してくれるという安心感があれば、自分たちが私刑を加える必要はなくなりますから、こうしたリスクは回避しやすくなるでしょう。 けれども、大衆がその処罰では不十分だと不満を持つような、少額の罰金や譴責(けんせき)処分のような形で終わってしまう場合、「誰も彼らを罰することができないならば自分で罰しなければならない」という圧力が自発的に生じて、ターゲットに対する攻撃はより激化しがちになるという構図です。 もちろん、人々の怒りが正当な場合もあります。けれども、誤解によって相手が過剰に責められる場合もある。しかし、ひとたび人々の間で罰する機運が高まってしまった後では、止めようとする声は聞き入れられません。なぜなら、人々は罰する快感によって思考停止してしまうからです。そして、正義を執行する快感を取り上げられることに抵抗するのです。これはとても恐ろしいことです。 人間というものは、何もない状態で自分を正しいと認識することができません。しかし、誰か責めるべき相手がいると、その相手と比較して自分は正しいという認知に至ることができる。そのため、誰か一人でも自分が責めることができる相手を設定しておくことが、自分が快感を得ることができるスイッチになる。 この場合、責めるべき対象が謝罪をしたり悪行をやめたりすると、次の標的を求めるようになる。そのようにして、次々と標的を探し続けるのです。 だからこそ、「こういうことをしてはいけない」という禁止の社会通念を強めることに私は抵抗を感じるのです』、「誰か責めるべき相手がいると、その相手と比較して自分は正しいという認知に至ることができる。そのため、誰か一人でも自分が責めることができる相手を設定しておくことが、自分が快感を得ることができるスイッチになる。 この場合、責めるべき対象が謝罪をしたり悪行をやめたりすると、次の標的を求めるようになる。そのようにして、次々と標的を探し続けるのです」、なるほど。
・『「怒りやすい脳」も態度を変えることは可能  Q:人は常に誰かを罰しておきたいと思うものなんですね。 中野:そうですね。相手を罰することで自分を正義側に位置付けることができる。「自分はそんなことはしない」と思う人でも、これは必ず皆持っている機能です。そんなふうに自分に自信がある人ほど気をつけてほしい。怖いのは、自分が無意識の内に誰かへの懲罰的な行為に加担していることです。 Q:「他人の過ちを糾弾し、自らの正当性が認められることによってひとときの快楽を得られたとしても、日々他人の言動にイライラし、許せないという強い怒りを感じながら生きる生活を、私は幸せだとはとても思えない」と書かれています。ムカムカして何かにつけ批判ばかりしている人や、怒りを原動力に日常をこなしているような人も見られます。怒りの感情の持ちやすさは、脳の作りに原因があるのでしょうか、それとも、ただの思考の癖のようなものなのでしょうか。 中野:怒りやすい脳の作りというものはあると思うし、それを作り変えることは難しいですが、自分が怒りやすい人間であるという自覚を持って対処することは可能です。 たとえば、怒りを感じることは仕方がないけれど、怒りを表現するときに「手は出さないように気をつけよう」と注意することはできる。あるいは、怒りをそのまま言葉にして全部相手に伝えるのではなくて、自分がどういうところに残念さを感じ、だからどういうことを変えてほしいか、一度整理して丁寧に相手に伝えることはできます。 つまり、気持ちで怒ることは構わないけれど、怒りを態度にして表明することには気をつけなければならないという認識を持てば、態度の方は変えることができる。 足を挫きやすい人であれば、自分の癖を理解して靴を取り替えてみたり、サポーターを当ててみたりといった工夫は可能になる。歩き方そのものを変えてみることもできる。怒りやすい脳を持っていること自体はしょうがないけれど、それが問題にならないように暮らすという努力は可能だと思います』、「怒りやすい脳を持っていること自体はしょうがないけれど、それが問題にならないように暮らすという努力は可能だと思います」、なるほど。
・『情報量が多くなるほど孤立していくパラドキシカル  Q:本書の「迷信・俗信」に関する個所では、過去にあったほんの数回の経験だけで、脳がいかに固定観念を持ってしまうか、誤ったパターン認識を持ちやすいか、といったことについて説明されています。SNSとAIの時代には、ある情報にアクセスすると、同じ方向性の情報や言論がその人に流れ込みます。高度なテクノロジーによって心のほころびが刺激され、危険な勘違いが強化・増幅されやすい状況になっているのでしょうか。 中野:そういう状況になっていますね。様々な陰謀論があり、「世界は、本当はこういった人々によって動かされている」というような、その人が信じたいと思う現実の形があって、そのような情報の中に埋没しやすい環境が現代は整っています。自分の信念とは異なる現実を受け入れることが難しい環境になっています。 情報化社会の中で、情報はフラットに流れるものだとかつては思われていましたが、人間の脳はそんなに劇的には変わっていませんから、情報の処理能力はそんなに速くなってはいません。時間も有限です。 そうなると、1人の人間が触れることのできる情報は莫大な情報のほんの一部、しかも1つの情報の吟味に使える時間はより短くなるため、その人の関心のあるワードや関連ワードをもとに、AIがピックアップしてきた情報を受け入れるという形になってしまう。自然とエコーチェンバー(反響室)現象が惹起されるんです。 情報量が多くなるほど、人々の世界は独自の形の中に孤立していくというパラドキシカルな現象が起きています。 Q:人から相談を受けたり、相談に乗って相手にアドバイスしたりすることがいかに難しいことか、ということについても書かれています。その難しさの本質は、相手の語る悩みに必ずしも悩みの本質があるわけではなく、悩みを相談することを通して承認や共感を獲得したいという隠れた相談者の意図が潜んでいる場合もあり、扱い方を誤ると、関係に亀裂が走る危険をはらんでいると感じました。人に相談をしたりされたりする場合に、どんなことを意識しておいた方がいいでしょうか』、「人から相談を受けたり、相談に乗って相手にアドバイスしたりすることがいかに難しいことか、ということについても書かれています。その難しさの本質は、相手の語る悩みに必ずしも悩みの本質があるわけではなく、悩みを相談することを通して承認や共感を獲得したいという隠れた相談者の意図が潜んでいる場合もあり、扱い方を誤ると、関係に亀裂が走る危険をはらんでいると感じました」、難しいものだ。
・『「誰かにアドバイスすることほど危険なことはない」  中野:これは自戒を込めて言うのですが、誰かにアドバイスするというのは、これほど危険なことはありません。アドバイスする側とされる側は、アドバイスがはじまった途端に、対等な関係ではなくなるからです。アドバイスする側にはある種の権威が付与され、アドバイスを受ける側は、逆に権威と自尊感情を毀損される、という認知的な構造が生じます。 裏付ける実験もあります。アドバイスする側はとても気分がよくなり、アドバイスされる側は不快になるのです。 これは、自分から相手にアドバイスを求めに行った場合でも例外ではありません。「こうするべきだ」と言われると立場が下に感じられる。自分が助言を求めたならまだしも、求めていないのに相手がアドバイスをしてきた場合はなおさら不快になる。 アドバイスをするということはむしろ搾取ですらある、人間関係を壊しかねない危険なものです。 Q:アドバイスする側は気をつける必要がありますが、思わず、相談している人は気をつけなくていいのでしょうか。 中野:お気持ちはよく分かります(笑)。「あなたが聞いてきたんだけどな」という場合でも、しかし、相手の反応を見ると「この人は相談をしたかったのではなくて、自分の考えを後押ししてほしかったのだ」と気づかされることもあります。もう答えは決まっていて、話を聞いてほしかっただけということは往々にしてあるので、一見相談という形を装ってやって来る人を見分けなくてはなりません。 Q:もうアドバイスはしない方がいいということでしょうか』、「誰かにアドバイスするというのは、これほど危険なことはありません。アドバイスする側とされる側は、アドバイスがはじまった途端に、対等な関係ではなくなるからです。アドバイスする側にはある種の権威が付与され、アドバイスを受ける側は、逆に権威と自尊感情を毀損される、という認知的な構造が生じます・・・相手の反応を見ると「この人は相談をしたかったのではなくて、自分の考えを後押ししてほしかったのだ」と気づかされることもあります。もう答えは決まっていて、話を聞いてほしかっただけということは往々にしてあるので、一見相談という形を装ってやって来る人を見分けなくてはなりません」、なるほど。
・『アドバイスを求められたときの切り抜け方  中野:アドバイスはしない方がいいと思います。アドバイスを求められたときの切り抜け方の1つは、「今あなたは困っていて私に相談したくなったんだね。どうして?」と答えるやり方です。さらに、「なんで相談したくなったのか聞かせて」と言うと、こちらがアドバイスのリスクを被らずにすみます。 また、相手は自分から考えを話し始めますからとても楽です。さらに、こういう話の進め方をすると、男の人は女の人から好かれるでしょう。 女の人は話を聞いてくれる男の人を好ましく思う傾向があります。「この人は私のことを分かってくれる」と満足を覚えるんですね。実際は、分かっているわけではなくて、ただ話を聞いているだけであっても、不用意にアドバイスをしまくるよりずっといい。 Q:「どちらかといえば、というかむしろ明らかに、自分はかなり気難しい部類に属する」「相手に合わせるためのやる気を出すことが不可能なのである」と書かれています。ご自身のどういったところに気難しさをお感じになりますか。 中野:気難しさは常に感じています。家から1歩出るのですら大変。実は人間がそんなに好きなわけではないし、仕事に行くのも闘いです。対社会向けのペルソナ(注)をかぶってから家を出るんです。ペルソナをかぶるまではいつも少し苦労します。 Q:ペルソナをかぶる方法はあるんですか? 中野:「もう行かなきゃ」と自分に圧力をかけるだけです。出なければならない事情を作り、強制的に自分を外に出す。 Q:そのペルソナのかぶり方を知らない人もたくさんいるんでしょうね。 中野:いると思います。たくさんの引きこもりの問題があり、現代は家から出なくてもだんだん生活できるようになってきましたが、時代を遡ると、もともと日本人は積極的に外と交わろうとする民族ではないのかもしれないとも思います』、「アドバイスを求められたときの切り抜け方の1つは、「今あなたは困っていて私に相談したくなったんだね。どうして?」と答えるやり方です。さらに、「なんで相談したくなったのか聞かせて」と言うと、こちらがアドバイスのリスクを被らずにすみます・・・中野:気難しさは常に感じています。家から1歩出るのですら大変。実は人間がそんなに好きなわけではないし、仕事に行くのも闘いです。対社会向けのペルソナ(注)をかぶってから家を出るんです。ペルソナをかぶるまではいつも少し苦労します」、中野氏でも「気難しさは常に感じています。家から1歩出るのですら大変」とは初めて知った。
(注)ペルソナ:一般的に社会的役割、劇中の役、心理学で社会に適応するための一種の演技のこと(Wikipedia)
・『人が持つ気難しさの本質  中野:近年「社会不安障害」と呼ばれるものがあり、かつては「対人恐怖症」などとも呼ばれていたものですが、人と接することに大いにストレスを感じるタイプの人が一定数存在し、日本ではその割合がやや多いというデータがあります。かつて「対人恐怖症は国民病だ」とも言われていました。 脳の構造で言うと、脳には眼窩前頭皮質(がんかぜんとうひしつ)と扁桃体(へんとうたい)という場所があり、扁桃体は恐怖を感じる部分なのですが、この2カ所の連携が強いと「社会全般が自分にとって安全な場所か分からない」「どちらかというと恐怖の対象だ」という認知が起こるようです。 どうも、日本人にはこの部分の連携が強い人が多数派で、未知の人間関係に恐れを抱く傾向が強いと考えられます。私自身もそこに当てはまるのかどうか。少なくとも、他者をやすやすと信用するタイプでないことは確かです。 これは脳科学ではなく神話の話になりますが、天照大神(あまてらすおおみかみ)が天岩戸(あまのいわと)にお隠れになる、という話がありますね。神様が自ら引きこもるというのは寓意的で大変興味深く、国民の多くが引きこもるという選択肢を考慮するというのもうなずける話です。ある有名な神社の宮司さんとお話をしたときに、全く同じことを考えていらしたので、とてもびっくりしました。 Q:読んでいて、気難しさというものが本書のサブテーマとして貫かれている印象を受けました。そこで、気難しさの本質は何なのかと考えてみると、拒絶するということでしょうか。 中野:「回避する」ということだと思います。衝突しないように回避する。 Q:回避する気持ちのさらに核心は恐怖心ですか。 中野:面倒くささです。合理性と考えてもらってもいいです。ぶつかると後処理が大変だからあらかじめ交わることを回避する。いちいちの衝突を処理するのは、馬力のある人なら可能かもしれませんが、私には衝突の後その処理に要する体力も気力もない。だから、ぶつかりそうな相手には最初から関わらない。そういう気難しさを自分の中にも感じています』、「天照大神・・・が天岩戸・・・にお隠れになる、という話がありますね。神様が自ら引きこもるというのは寓意的で大変興味深く、国民の多くが引きこもるという選択肢を考慮するというのもうなずける話です」、「神様が自ら引きこもるというのは寓意的で大変興味深く」、その通りだ。

次に、5月5日付け現代ビジネスが掲載した東京大学薬学部教授・脳研究者の池谷 裕二氏による「生まれて数ヶ月で「眠らせてしまった能力」じつは、戻るかもしれない…脳科学が挑む「究極の方法」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/127310?imp=0
・『累計43万部を突破し、ベストセラーとなっている脳研究者・池谷裕二さんによる脳講義シリーズ。このたび、『進化しすぎた脳』 『単純な脳、複雑な「私」』(講談社ブルーバックス) に続き、15年ぶりとなるシリーズ最新作 『夢を叶えるために脳はある』(講談社)が刊行された。 なぜ僕らは脳を持ち、何のために生きているのか。脳科学が最後に辿り着く予想外の結論、そしてタイトルに込められた「本当の意味」とは――。 高校生に向けておこなわれた脳講義をもとにつくられた本書から、その一部をご紹介しよう。 ※ 本記事は、『夢を叶えるために脳はある』(講談社)の読みどころを、厳選してお届けしています』、興味深そうだ。
・『絶対音感と相対音感、コスパがいいのはどっちだろう  相対音感は、転調しても対応できる。応用性も高く便利な能力ではある。 けれども、だからといって、わざわざ絶対音感を捨てて、相対音感を得るには、コストが嵩む。それほど苦労をしてまで、相対音感を採用している。それが脳だ(Qは聞き手の質問、Aは回答)。 Q:見返りとして利点があるから? A:きっとそうだろうね。一つのポイントは「声」だ。 人ごとに声の高さ(音程)が違う。女の人が「おはよう」と言うときと、男の人が「おはよう」と言うときで、聞く側がもし絶対音感で判断したら、違う言葉になってしまうよね。周波数がまったく違うんだから。 耳の鼓膜から入ってきた直下の脳回路では絶対音感として扱うから、発火する神経細胞はまるで異なる。だから、絶対音感だけに頼ると、同じ言葉でも音程が違うだけで会話ができない。言葉を有効にするためには、相対音感が必要だ。 その人に固有な声の周波数は声帯のサイズで決まる。管楽器や太鼓と同じことで、大きいほうが低い音になる。ほんの少しサイズが違うだけで周波数が変わる。 もし絶対音感だけで会話をしようとしたら、人々のあいだで声帯のサイズをぴったりと揃えておかねばならない。これは生物の発生を考えると、きわめてむずかしいことだ。果物や野菜のサイズがまちまちなように、声帯のサイズを厳密に揃えることは、とんでもなく困難。人体は工業製品じゃないからね。) 脳が相対音感を発達させているという事実は、裏を返せば、声の品質を個人間で均一にさせる苦労に比べたら、相対音感を脳に装備させる苦労のほうが軽いということを物語っている。 身体のデザインに手を加えるくらいならば、脳回路の設計を調整するほうが、低コストですむ。脳のほうが身体よりも進化的に後から発達したよね。だから、身体のほうが既得権益を強く主張する、という見方もできる。 そう考えていくと、相対音感が大切なのは納得できる。でもね、これでは答えになっていない。だって、絶対音感の能力を捨てる必要まではないからだ。せっかく持って生まれてきたものを、わざわざ消すのも、またコストがかかる。 Q:たしかに。 A:ごく一部の人とはいえ、絶対音感の能力を残したまま大人になる人もいる。つまり、絶対音感の能力を持ったままでも、死ぬほど困ることはない。 あっても生命に不都合はないのに、なぜ捨てるのだろうか。もしかしたら絶対音感と相対音感を両方とも備えていれば、いざというときに役に立つかもしれない。もったいない。 こうした問いを追究するのが、「脳AI融合プロジェクト」の一つ。 脳の音処理の、少なくとも初期の段階では、絶対音感で反応している。だから、その脳の活動を、人工知能で読み取って、人工知能の分析結果を、本人に教えてやるという方法が考えられるよね。「あなたの脳がこんな活動をしているときの音はラの音ですよ」とか。 そんなトレーニングを積むと、「ああ、なるほど! いままで気づかなかったけど、自分の脳がこんな活動をしたときの音はラの音程だったのか」と本人が気づくようになる。一度コツをつかめば、しめたものだよね。 もうその人にとってラの音を識別することは楽勝だ。こんな具合に、人工知能を使って、脳に眠った能力を覚醒させることができる。そんなことを目指した研究を展開している。 *本記事の抜粋元・池谷 裕二『夢を叶えるために脳はある 「私という現象」、高校生と脳を語り尽くす』(講談社)は、人気脳研究学者である著者が、3日間にわたっておこなった感動の講義の内容を収めています。ぜひ、お買い求めください』、「耳の鼓膜から入ってきた直下の脳回路では絶対音感として扱うから、発火する神経細胞はまるで異なる。だから、絶対音感だけに頼ると、同じ言葉でも音程が違うだけで会話ができない。言葉を有効にするためには、相対音感が必要だ。 その人に固有な声の周波数は声帯のサイズで決まる。管楽器や太鼓と同じことで、大きいほうが低い音になる。ほんの少しサイズが違うだけで周波数が変わる。 もし絶対音感だけで会話をしようとしたら、人々のあいだで声帯のサイズをぴったりと揃えておかねばならない。これは生物の発生を考えると、きわめてむずかしいことだ。果物や野菜のサイズがまちまちなように、声帯のサイズを厳密に揃えることは、とんでもなく困難。人体は工業製品じゃないからね・・・ごく一部の人とはいえ、絶対音感の能力を残したまま大人になる人もいる。つまり、絶対音感の能力を持ったままでも、死ぬほど困ることはない。 あっても生命に不都合はないのに、なぜ捨てるのだろうか。もしかしたら絶対音感と相対音感を両方とも備えていれば、いざというときに役に立つかもしれない。もったいない。 こうした問いを追究するのが、「脳AI融合プロジェクト」の一つ。 脳の音処理の、少なくとも初期の段階では、絶対音感で反応している。だから、その脳の活動を、人工知能で読み取って、人工知能の分析結果を、本人に教えてやるという方法が考えられるよね。「あなたの脳がこんな活動をしているときの音はラの音ですよ」とか。 そんなトレーニングを積むと、「ああ、なるほど! いままで気づかなかったけど、自分の脳がこんな活動をしたときの音はラの音程だったのか」と本人が気づくようになる。一度コツをつかめば、しめたものだよね」、NHK女子アナウンサーの林田氏は芸大大学院卒で「絶対音感」の持ち主といわれている。この記事のおかげで、「絶対音感」と「相対音感」の違いが理解できた。 
タグ:脳科学 (その4)(『脳の闇』の中野信子が指摘 日本人に「社会不安障害」が多い理由 ぶつかるのは面倒だから回避する 人と接するのが苦手な日本人の「気難しさ」、生まれて数ヶ月で「眠らせてしまった能力」じつは 戻るかもしれない…脳科学が挑む「究極の方法」) JBPRESS 長野 光氏による「『脳の闇』の中野信子が指摘、日本人に「社会不安障害」が多い理由 ぶつかるのは面倒だから回避する、人と接するのが苦手な日本人の「気難しさ」【JBpressセレクション】」 「高学歴の人は「自分だけは人から騙されることはない」というバイアスにかかりやすい人たちと言えます・・・人を騙して勝ち逃げしようと企むような人は、むしろ、高学歴の人をターゲットにしてもおかしくないと思います」、なるほど。 「誰か責めるべき相手がいると、その相手と比較して自分は正しいという認知に至ることができる。そのため、誰か一人でも自分が責めることができる相手を設定しておくことが、自分が快感を得ることができるスイッチになる。 この場合、責めるべき対象が謝罪をしたり悪行をやめたりすると、次の標的を求めるようになる。そのようにして、次々と標的を探し続けるのです」、なるほど。 「怒りやすい脳を持っていること自体はしょうがないけれど、それが問題にならないように暮らすという努力は可能だと思います」、なるほど。 「人から相談を受けたり、相談に乗って相手にアドバイスしたりすることがいかに難しいことか、ということについても書かれています。その難しさの本質は、相手の語る悩みに必ずしも悩みの本質があるわけではなく、悩みを相談することを通して承認や共感を獲得したいという隠れた相談者の意図が潜んでいる場合もあり、扱い方を誤ると、関係に亀裂が走る危険をはらんでいると感じました」、難しいものだ。 「誰かにアドバイスするというのは、これほど危険なことはありません。アドバイスする側とされる側は、アドバイスがはじまった途端に、対等な関係ではなくなるからです。アドバイスする側にはある種の権威が付与され、アドバイスを受ける側は、逆に権威と自尊感情を毀損される、という認知的な構造が生じます・・・相手の反応を見ると「この人は相談をしたかったのではなくて、自分の考えを後押ししてほしかったのだ」と気づかされることもあります。もう答えは決まっていて、話を聞いてほしかっただけということは往々にしてあるので、一見相談とい う形を装ってやって来る人を見分けなくてはなりません」、なるほど。 「アドバイスを求められたときの切り抜け方の1つは、「今あなたは困っていて私に相談したくなったんだね。どうして?」と答えるやり方です。さらに、「なんで相談したくなったのか聞かせて」と言うと、こちらがアドバイスのリスクを被らずにすみます・・・中野:気難しさは常に感じています。家から1歩出るのですら大変。実は人間がそんなに好きなわけではないし、仕事に行くのも闘いです。対社会向けのペルソナ(注)をかぶってから家を出るんです。ペルソナをかぶるまではいつも少し苦労します」、中野氏でも「気難しさは常に感じています。家か ら1歩出るのですら大変」とは初めて知った。 (注)ペルソナ:一般的に社会的役割、劇中の役、心理学で社会に適応するための一種の演技のこと(Wikipedia) 「天照大神・・・が天岩戸・・・にお隠れになる、という話がありますね。神様が自ら引きこもるというのは寓意的で大変興味深く、国民の多くが引きこもるという選択肢を考慮するというのもうなずける話です」、「神様が自ら引きこもるというのは寓意的で大変興味深く」、その通りだ。 現代ビジネス 池谷 裕二氏による「生まれて数ヶ月で「眠らせてしまった能力」じつは、戻るかもしれない…脳科学が挑む「究極の方法」」 『夢を叶えるために脳はある』(講談社) 「耳の鼓膜から入ってきた直下の脳回路では絶対音感として扱うから、発火する神経細胞はまるで異なる。だから、絶対音感だけに頼ると、同じ言葉でも音程が違うだけで会話ができない。言葉を有効にするためには、相対音感が必要だ。 その人に固有な声の周波数は声帯のサイズで決まる。管楽器や太鼓と同じことで、大きいほうが低い音になる。ほんの少しサイズが違うだけで周波数が変わる。 もし絶対音感だけで会話をしようとしたら、人々のあいだで声帯のサイズをぴったりと揃えておかねばならない。これは生物の発生を考えると、きわめてむずかしいことだ。果物や野菜のサイズがまちまちなように、声帯のサイズを厳密に揃えることは、とんでもなく困難。人体は工業製品じゃないからね・・・ごく一部の人とはいえ、絶対音感の能力を残したまま大人になる人もいる。つまり、絶対音感の能力を持ったままでも、死ぬほど困ることはない。 あっても生命に不都合はないのに、なぜ捨てるのだろうか。もしかしたら絶対音感と相対音感を両方とも備 えていれば、いざというときに役に立つかもしれない。もったいない。 こうした問いを追究するのが、「脳AI融合プロジェクト」の一つ。 脳の音処理の、少なくとも初期の段階では、絶対音感で反応している。だから、その脳の活動を、人工知能で読み取って、人工知能の分析結果を、本人に教えてやるという方法が考えられるよね。「あなたの脳がこんな活動をしているときの音はラの音ですよ」とか。 そんなトレーニングを積むと、「ああ、なるほど! いままで気づかなかったけど、自分の脳がこんな活動をしたときの音はラの音程だったのか」と本人 に教えてやるという方法が考えられるよね。「あなたの脳がこんな活動をしているときの音はラの音ですよ」とか。 そんなトレーニングを積むと、「ああ、なるほど! いままで気づかなかったけど、自分の脳がこんな活動をしたときの音はラの音程だったのか」と本人が気づくようになる。一度コツをつかめば、しめたものだよね」、NHK女子アナウンサーの林田氏は芸大大学院卒で「絶対音感」の持ち主といわれている。この記事のおかげで、「絶対音感」と「相対音感」の違いが理解できた。
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報道の自由度(その4)(報道の自由度ランキング 日本は70位に後退 G7で最下位 ウクライナや韓国を下回る その要因は?、日本の「報道の自由度」は70位でコンゴ以下!マスコミを萎縮させる諸悪の根源とは) [メディア]

報道の自由度については、2020年4月28日に取上げた。久しぶりの今日は、(その4)(報道の自由度ランキング 日本は70位に後退 G7で最下位 ウクライナや韓国を下回る その要因は?、日本の「報道の自由度」は70位でコンゴ以下!マスコミを萎縮させる諸悪の根源とは)である。

先ずは、本年5月4日付けハフポスト日本版編集部「報道の自由度ランキング、日本は70位に後退。G7で最下位、ウクライナや韓国を下回る。その要因は?」を紹介しよう。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_6635c397e4b0e44cfb119834
・『国境なき記者団(RSF)は「世界中で報道の自由が、政治当局によって脅かされています」と指摘している。 国際的な非政府・非営利組織の「国境なき記者団(RSF)」は5月3日、2024年の「報道の自由度ランキング」を発表した。 1位にノルウェー、2位にデンマーク、3位にスウェーデンがランクイン。日本は2023年から順位を下げ、70位だった。 RSFは、「世界全体的に政治指標が低下している」と指摘。「メディアの自主性に対する支持と尊重が憂慮すべきレベルで低下し、国家や他の政治主体からの圧力が増大している」と分析した。 また、RSFは「2023年10月以降、ジャーナリストとメディアに対する違反行為が相次いでいる」と指摘。イスラエル国防軍によって、100人以上のパレスチナ人記者が殺害されており、そのうち少なくとも22人は業務中に殺害されたという。 RSF編集ディレクターのアンヌ・ボカンデ氏は「国家やその他の政治勢力が報道の自由を守るために果たす役割が減少している」と警告した。 また、2024年は世界人口の半数以上が投票に行く「世界史上最大の選挙の年」だ。RSFは「ディープフェイクは現在、選挙の行方を左右する主要な位置を占めている」と指摘。偽情報などへの規制がない場合、生成AIが政治目的の偽情報の武器として使用される懸念があることを示した』、「イスラエル国防軍によって、100人以上のパレスチナ人記者が殺害されており、そのうち少なくとも22人は業務中に殺害された」、戦争ではジャーナリストの犠牲が避けられないとはいえ、犠牲者数の多さには驚かされる。
・『日本が70位に後退した理由は?  日本の報道の自由度は、2023年の68位から70位に順位を下げた。この順位は先進国が集まるG7で最下位、戦争中のウクライナ(61位)や近隣の韓国(62位)を下回る結果だ。 日本についてRSFは、新聞やテレビなどの従来のメディアが依然として大きな影響力を持っているとした上で、以下のように分析している。 「日本は議会制民主主義国家であり、メディアの自由と多元主義の原則は一般に尊重されている。しかし、伝統的な利害関係やビジネス上の利害関係、政治的圧力、男女間の不平等が、ジャーナリストが監視者としての役割を完全に果たすことをしばしば妨げている」 加えて、政府や企業が主要メディアの運営に日常的に圧力をかけていることや、2020年以降、政府が新型コロナウイルス対策を理由に、記者会見に招待するジャーナリストの数を削減したことなども指摘した。 また、記者クラブ制度の問題点も指摘。「既存の報道機関のみに記者会見や高官へのアクセスを許可しており、記者に自己検閲を促している。フリーランスや外国人記者に対するあからさまな差別に当たる」と批判している』、「日本」の「70位」は、「戦争中のウクライナ(61位)や近隣の韓国(62位)を下回る結果だ」、「伝統的な利害関係やビジネス上の利害関係、政治的圧力、男女間の不平等が、ジャーナリストが監視者としての役割を完全に果たすことをしばしば妨げている」、「政府が新型コロナウイルス対策を理由に、記者会見に招待するジャーナリストの数を削減したことなども指摘」、「記者クラブ制度の問題点も指摘。「既存の報道機関のみに記者会見や高官へのアクセスを許可しており、記者に自己検閲を促している。フリーランスや外国人記者に対するあからさまな差別に当たる」と批判」、なるほど。

次に、5月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「日本の「報道の自由度」は70位でコンゴ以下!マスコミを萎縮させる諸悪の根源とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/343385
・『日本のジャーナリストには本当に「報道の自由」がないのか?  「はあ?これほど好き勝手に政権批判ができているのに、報道の自由がないわけないだろ!こんなランキング信用できるか!」「報道ステーションやってた古舘さんが、民主党政権の時に圧力をかけられたって言っていたけれど、2010年のランキングは11位。めちゃくちゃ矛盾しているじゃん」 フランスの非政府組織(NGO)の国境なき記者団が毎年発表している「報道の自由度ランキング」で、日本が「70位」になったことに不満を爆発させる人が続出している。 ただ、文句を言いたくなる気持ちもわからんでもない。 例えば、日本よりも「報道の自由がある」という評価のコンゴ共和国(69位)は、外務省の海外安全情報によれば、一部地域で反政府勢力や犯罪集団等が活動して治安が悪い。当然、取材・言論活動をするジャーナリストにも危険が伴う。 そんなコンゴ共和国より「報道の自由がない」と言われても、「うんうん、確かにそうだな」と納得する人は少ないだろう。 日本ではジャーナリスト殺害はおろか、逮捕・拘禁されることなどない。せいぜい尾行されてスキャンダルがあれば、週刊誌にリークされるというような「嫌がらせ」がある程度だ。 例えば、情報番組で政権批判をしていたあるコメンテーターは、ある政府機関に尾行され、若い女性と会ったり買い物をしたりしているところまで撮影されてしまった。その後、政府機関は、彼の行動を写真付きで「レポート」にまとめて、某週刊誌編集部に持ち込んだ。ほどなくして、この週刊誌は「パパ活疑惑」として報道。そのコメンテーターの「権力に立ち向かう正義の人」というイメージは地に堕ちてしまったというわけだ。 ちなみに、この「レポート」は筆者も参加しているニコニコチャンネル「国際ジャーナリスト山田敏弘氏の消されるチャンネル」の中で公開しているので、興味のある方はご覧になっていただきたい。 では、テレビで政権批判をしたところで、そんな「嫌がらせ」程度しかない日本では、メディアやジャーナリストは「萎縮」することなく「報道の自由」を謳歌しているのかというと、そうとも言い難い。日本がコンゴ共和国よりも「報道の自由がない」と評価されるのには、それなりの根拠があるのだ』、「情報番組で政権批判をしていたあるコメンテーターは、ある政府機関に尾行され、若い女性と会ったり買い物をしたりしているところまで撮影されてしまった。その後、政府機関は、彼の行動を写真付きで「レポート」にまとめて、某週刊誌編集部に持ち込んだ。ほどなくして、この週刊誌は「パパ活疑惑」として報道。そのコメンテーターの「権力に立ち向かう正義の人」というイメージは地に堕ちてしまったというわけだ」、ずいぶん脇の甘い「コメンテーター」だ。「日本がコンゴ共和国よりも「報道の自由がない」と評価されるのには、それなりの根拠があるのだ」、どういうことだろう。
・『「記者クラブ」が批判されているのに、スルーする大手メディア  実は、今回のランキングは、単にジャーナリストが殺されたり、逮捕や拘禁されたりという言論弾圧だけを指標化としているわけではなく、「自己検閲」も問題にしている。 つまり、現在の日本は本来、好き勝手に政府の批判ができるような国なのに、メディアやジャーナリストが保身や同調圧力、商業主義や権力への迎合という自己都合で、報道すべきことを報道していないーー。という「言論機関の自殺行為」について、国境なき記者団が、言論弾圧と同じくらい問題視しているのだ。 それがうかがえるのが、今回のランキングにおける「日本」のカントリーシートにある以下の文言だ。 《The system of kisha clubs (reporters’ clubs), which allows only established news organisations to access press conferences and senior officials, pushes reporters toward self-censorship and constitutes blatant discrimination against freelancers and foreign reporters.》 つまり、既存の報道機関のみ、記者会見や政府高官へのアクセスを許可する「The system of kisha clubs(記者クラブのシステム)」こそが、記者に「自己検閲」を促し、フリーランスや外国人記者に対する露骨な差別にもつながる諸悪の根源だと国境なき記者団は批判しているのだ。 という話をすると、マスコミの皆さんは「言論の自由を守る我々が、自己検閲などするわけがないだろ」と不愉快になるだろうが、このランキングのニュースですらゴリゴリに「自己検閲」をしている。「報道しない自由」を行使して、まったく触れていない記者クラブメディアもあれば、日本テレビのように報道しておきながら「記者クラブ」にまったく触れないところもある。 天下の朝日新聞になると、さすがに「黙殺」はしていないが、「記者クラブ制度がメディアの自己検閲や外国人ジャーナリストらの差別につながっているとした」(朝日新聞デジタル、24年5月3日)という感じで、記者クラブに対する「既存の報道機関のみ記者会見や高官へのアクセスを許可する」という指摘をバッサリと割愛している。 「それは新聞なので文字数が」とかなんとか言い訳が聞こえてきそうだが、「非記者クラブメディア」が以下のように、国境なき記者団の指摘を読者にわかりやすく伝えている。これと比べると、「ああ、やっぱり自分たちに都合の悪い話だからね」と思われてもしようがない腰の引け方だ。 《記者クラブ制度の問題点も指摘。「既存の報道機関のみに記者会見や高官へのアクセスを許可しており、記者に自己検閲を促している。フリーランスや外国人記者に対するあからさまな差別に当たる」と批判している》(ハフィントンポスト日本版、2024年5月4日)』、「記者クラブ制度の問題点も指摘。「既存の報道機関のみに記者会見や高官へのアクセスを許可しており、記者に自己検閲を促している。フリーランスや外国人記者に対するあからさまな差別に当たる」と批判している・・・「報道しない自由」を行使して、まったく触れていない記者クラブメディアもあれば、日本テレビのように報道しておきながら「記者クラブ」にまったく触れないところもある。 天下の朝日新聞になると、さすがに「黙殺」はしていないが、「記者クラブ制度がメディアの自己検閲や外国人ジャーナリストらの差別につながっているとした」(朝日新聞デジタル、24年5月3日)という感じで、記者クラブに対する「既存の報道機関のみ記者会見や高官へのアクセスを許可する」という指摘をバッサリと割愛している」、なるほど、
・『「記者クラブ」に属するマスコミ人が言葉を濁すワケ  では、なぜ権力の監視や、社会正義のために戦うマスコミの皆さんが、「記者クラブ制度」という話題になると、途端に自己検閲をしたり、ムニャムニャと言葉を濁すのか。 それは、後ろめたいからだ。 記者クラブは何十年にわたって、海外のジャーナリストや報道の専門家から、報道の自由を侵害している諸悪の根源だと指摘され続けている。例えば、2016年、日本のマスコミを調査した国連の特別報告者、デビッド・ケイ氏が外国特派員協会で会見を行って、「いわゆる『記者クラブ』制度はアクセスと排除を重んじ、フリーランスやオンラインジャーナリズムに害を与えている」として記者クラブの廃止を訴えた。 世界には山ほど「プレスクラブ」があるにも関わらず、なぜ日本の「The system of kisha clubs」だけが叩かれるのか。というのも、誰でも加盟できるプレスクラブと違って、閉鎖的なムラ社会がゆえ「アクセスジャーナリズム」(記者が権力側に気に入られることで情報を得る取材手法)の温床になってしまうからだ。 数年前、財務官僚がテレビ朝日の女性記者を夜な夜な呼び出してセクハラをしていたことが大きな問題になった。なぜ権力の監視をするはずのジャーナリストが、権力に食い物にされるのかと不思議に思うだろうが、これも記者クラブの弊害だ。 クラブの記者は所属する会社の代表として、「ムラ社会の権力者」(情報を握る政府高官)から、特ダネをいただくため気に入ってもらうことがミッションだ。だから逆らえないのだ。そして何よりも、フリージャーナリストや外国人記者など「よそ者」がいないので、この手の「権力者との癒着」が上司から部下、先輩から後輩という感じで綿々と受け継がれてしまうのだ』、「世界には山ほど「プレスクラブ」があるにも関わらず、なぜ日本の「The system of kisha clubs」だけが叩かれるのか。というのも、誰でも加盟できるプレスクラブと違って、閉鎖的なムラ社会がゆえ「アクセスジャーナリズム」・・・の温床になってしまうからだ・・・クラブの記者は所属する会社の代表として、「ムラ社会の権力者」(情報を握る政府高官)から、特ダネをいただくため気に入ってもらうことがミッションだ。だから逆らえないのだ。そして何よりも、フリージャーナリストや外国人記者など「よそ者」がいないので、この手の「権力者との癒着」が上司から部下、先輩から後輩という感じで綿々と受け継がれてしまうのだ」、なるほど。
・『民主党政権時代はなぜ「報道の自由がある」と評価された?  このような「The system of kisha clubsこそが諸悪の根源」という視点を持つと、「好き勝手に政府を叩ける国」が、なぜジャーナリストが殺害・逮捕されるような国よりも「報道の自由がない」などと評価されてしまうのか、という謎の答えが見えてくる。 例えば、今回は「70位」が注目されているが、日本への評価は、この10年ほど、ずっとこんなものだ。15年は61位で、16年にはなんと過去最低の72位まで転落。そこから18年〜21年は多少持ち直して、66〜67位あたりをキープしたが22年は再び71位まで下げ、23年に68位になったがやっぱり落ち込んで今年は70位になったという流れだ。 では、その前にはどうだったのかというと、民主党政権の2010年に11位、12年に22位イギリスやアメリカを上回るほどだった。しかし、自民党が2012年12月に政権奪回した直後の13年に53位へと急落している。 では、なんで民主党政権の時だけ「報道の自由がある」と評価されたのか。これは別に民主党がメディアに特段優しかったわけでもないし、その後の自民党政権が急に言論弾圧を始めたわけでもない。 この時期だけ閉鎖的な記者クラブに「開放」という動きがあったからだ。当時、主要新聞社の労働組合が加盟している「新聞労連」が2010年3月4日、「記者会見の全面開放宣言~記者クラブ改革へ踏み出そう~」という声明を引用させていただこう。 ======================  記者会見については、昨年9月の民主、社民、国民新の3党による連立政権の発足後、外務省や総務省などの省庁で「大臣会見のオープン化」が広がっています。本来ならば記者クラブ側が主体的に会見のオープン化を実現すべきでしたが、公権力が主導する形で開放されたのは、残念であると言わざるをえません。 (中略) まず、記者クラブに所属していない取材者にとってニーズが強く、記者クラブ側にとっても取り組みやすいと思われる記者会見の全面開放をただちに進めることから始めましょう。 ====================  この「記者クラブ全面開放」は、民主党政権崩壊とともに幻で終わった。だから12年に22位だったのが、13年に自民党が政権奪還すると急に53位に転落したのである』、「民主党政権の2010年に11位、12年に22位イギリスやアメリカを上回るほどだった。しかし、自民党が2012年12月に政権奪回した直後の13年に53位へと急落している・・・民主、社民、国民新の3党による連立政権の発足後、外務省や総務省などの省庁で「大臣会見のオープン化」が広がっています。本来ならば記者クラブ側が主体的に会見のオープン化を実現すべきでしたが、公権力が主導する形で開放されたのは、残念であると言わざるをえません。 (中略) まず、記者クラブに所属していない取材者にとってニーズが強く、記者クラブ側にとっても取り組みやすいと思われる記者会見の全面開放をただちに進めることから始めましょう・・・「「記者クラブ全面開放」は、民主党政権崩壊とともに幻で終わった。だから12年に22位だったのが、13年に自民党が政権奪還すると急に53位に転落したのである」、なるほど。
・『記者クラブでは、「無知」でも優秀な記者になれる  自民党政権でアクセスジャーナリズムが深刻になったことがうかがえるエピソードがある。安倍元首相の番記者を長く務めてスクープも連発した某ジャーナリストの方が、報道番組に出演して旧統一教会との関係を知っていたのかと問われて、こう答えた。 「いや残念ながら記者時代、私はまったく把握していなかったんですね」 これは、世界のジャーナリズムの常識からしても「異常」と言わざるを得ない。 週刊誌の世界では、安倍元首相と教団の関係は第一次安倍政権時代から記事になっている。岸信介と国際勝共連合との「共闘関係」は、タブーでもなんでもなく「史実」なので、ちょっと政治を取材した経験のあるジャーナリストならば誰でも知っている常識だ。ネットでも山ほど情報があふれていて、安倍元首相を殺害した山上徹也被告もそれを見て犯行を決意したと言われている。 そんな「常識」を安倍元首相に24時間張り付いていたはずの番記者は知らなかった。 いや、知識不足を批判しているのではなく、ここで大切なのは「知らなくても務まる」ということだ。先ほどから申し上げているように、「記者クラブ制度」が引き起こすアクセスジャーナリズムというのは、わかりやすくいえば、「権力者に気にいってもらってネタをもらう」ということだ。 つまり、この方がスクープを連発したのは、安倍元首相に気に入ってもらってネタをもらえたからだ。気に入ってもらうのに、「旧統一教会との関係」なんて安倍元首相の嫌がる話は知らなくていい。これが、「優秀なマスコミ記者の流儀」なのだ。 「The system of kisha clubs」が存続する限り、日本の権力癒着型取材は変わらないだろう。 テレビや新聞というオールドメディアは、高齢化でどんどん衰退していくので、生き残るためにより権力との癒着を強めていく。あと数年もすれば、日本の順位もいよいよ80位台に突入していくのではないか』、「「記者クラブ制度」が引き起こすアクセスジャーナリズムというのは、わかりやすくいえば、「権力者に気にいってもらってネタをもらう」ということだ。 つまり、この方がスクープを連発したのは、安倍元首相に気に入ってもらってネタをもらえたからだ。気に入ってもらうのに、「旧統一教会との関係」なんて安倍元首相の嫌がる話は知らなくていい。これが、「優秀なマスコミ記者の流儀」なのだ・・・テレビや新聞というオールドメディアは、高齢化でどんどん衰退していくので、生き残るためにより権力との癒着を強めていく。あと数年もすれば、日本の順位もいよいよ80位台に突入していくのではないか」、「高齢化でどんどん衰退していくので、生き残るためにより権力との癒着を強めていく」、というのはやむを得ないにしても、困ったことだ。ただ、マスコミとしては、本来の批判精神を活かして権力に対峙していくことで、人気を獲得していく道もあるのではなかろうか。
タグ:「イスラエル国防軍によって、100人以上のパレスチナ人記者が殺害されており、そのうち少なくとも22人は業務中に殺害された」、戦争ではジャーナリストの犠牲が避けられないとはいえ、犠牲者数の多さには驚かされる。 ハフポスト日本版編集部「報道の自由度ランキング、日本は70位に後退。G7で最下位、ウクライナや韓国を下回る。その要因は?」 (その4)(報道の自由度ランキング 日本は70位に後退 G7で最下位 ウクライナや韓国を下回る その要因は?、日本の「報道の自由度」は70位でコンゴ以下!マスコミを萎縮させる諸悪の根源とは) 報道の自由度 「日本」の「70位」は、「戦争中のウクライナ(61位)や近隣の韓国(62位)を下回る結果だ」、「伝統的な利害関係やビジネス上の利害関係、政治的圧力、男女間の不平等が、ジャーナリストが監視者としての役割を完全に果たすことをしばしば妨げている」、「政府が新型コロナウイルス対策を理由に、記者会見に招待するジャーナリストの数を削減したことなども指摘」、「記者クラブ制度の問題点も指摘。 「既存の報道機関のみに記者会見や高官へのアクセスを許可しており、記者に自己検閲を促している。フリーランスや外国人記者に対するあからさまな差別に当たる」と批判」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生氏による「日本の「報道の自由度」は70位でコンゴ以下!マスコミを萎縮させる諸悪の根源とは」 「情報番組で政権批判をしていたあるコメンテーターは、ある政府機関に尾行され、若い女性と会ったり買い物をしたりしているところまで撮影されてしまった。その後、政府機関は、彼の行動を写真付きで「レポート」にまとめて、某週刊誌編集部に持ち込んだ。ほどなくして、この週刊誌は「パパ活疑惑」として報道。そのコメンテーターの「権力に立ち向かう正義の人」というイメージは地に堕ちてしまったというわけだ」、ずいぶん脇の甘い「コメンテーター」だ。「日本がコンゴ共和国よりも「報道の自由がない」と評価されるのには、それなりの根拠があ るのだ」、どういうことだろう。 「記者クラブ制度の問題点も指摘。「既存の報道機関のみに記者会見や高官へのアクセスを許可しており、記者に自己検閲を促している。フリーランスや外国人記者に対するあからさまな差別に当たる」と批判している・・・「報道しない自由」を行使して、まったく触れていない記者クラブメディアもあれば、日本テレビのように報道しておきながら「記者クラブ」にまったく触れないところもある。 天下の朝日新聞になると、さすがに「黙殺」はしていないが、「記者クラブ制度がメディアの自己検閲や外国人ジャーナリストらの差別につながっているとした」(朝日新聞デジタル、24年5月3日)という感じで、記者クラブに対する「既存の報道機関のみ記者会見や高官へのアクセスを許可する」という指摘をバッサリと割愛している」、なるほど、 「世界には山ほど「プレスクラブ」があるにも関わらず、なぜ日本の「The system of kisha clubs」だけが叩かれるのか。というのも、誰でも加盟できるプレスクラブと違って、閉鎖的なムラ社会がゆえ「アクセスジャーナリズム」・・・の温床になってしまうからだ・・・クラブの記者は所属する会社の代表として、「ムラ社会の権力者」(情報を握る政府高官)から、特ダネをいただくため気に入ってもらうことがミッションだ。だから逆らえないのだ。そして何よりも、フリージャーナリストや外国人記者など「よそ者」がいないの で、この手の「権力者との癒着」が上司から部下、先輩から後輩という感じで綿々と受け継がれてしまうのだ」、なるほど。 「民主党政権の2010年に11位、12年に22位イギリスやアメリカを上回るほどだった。しかし、自民党が2012年12月に政権奪回した直後の13年に53位へと急落している・・・民主、社民、国民新の3党による連立政権の発足後、外務省や総務省などの省庁で「大臣会見のオープン化」が広がっています。本来ならば記者クラブ側が主体的に会見のオープン化を実現すべきでしたが、公権力が主導する形で開放されたのは、残念であると言わざるをえません。 (中略) まず、記者クラブに所属していない取材者にとってニーズが強く、記者クラブ側にとっても取り組みやすいと思われる記者会見の全面開放をただちに進めることから始めましょう・・・「「記者クラブ全面開放」は、民主党政権崩壊とともに幻で終わった。だから12年に22位だったのが、13年に自民党が政権奪還すると急に53位に転落したのである」、なるほど。 「「記者クラブ制度」が引き起こすアクセスジャーナリズムというのは、わかりやすくいえば、「権力者に気にいってもらってネタをもらう」ということだ。 つまり、この方がスクープを連発したのは、安倍元首相に気に入ってもらってネタをもらえたからだ。気に入ってもらうのに、「旧統一教会との関係」なんて安倍元首相の嫌がる話は知らなくていい。これが、「優秀なマスコミ記者の流儀」なのだ・・・テレビや新聞というオールドメディアは、高齢化でどんどん衰退していくので、生き残るためにより権力との癒着を強めていく。あと数年もすれば、日本 の順位もいよいよ80位台に突入していくのではないか」、「高齢化でどんどん衰退していくので、生き残るためにより権力との癒着を強めていく」、というのはやむを得ないにしても、困ったことだ。ただ、マスコミとしては、本来の批判精神を活かして権力に対峙していくことで、人気を獲得していく道もあるのではなかろうか。
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