百貨店業界(その6)(「そごう・西武売却」セブン&アイの2大誤算…経営陣は「逃げ得」できるのか?、セブン そごう・西武売却完了でも残る後味の悪さ 「実質売却額8500万円」は想定の範囲内だった、「西武池袋本店は切り売りされるのか」会社売却報道の真偽を問うと セブン&アイ井阪社長の答えは—— 決断 そごう・西武61年目のストライキ⑧、ヴィトンやエルメスを失ってしまう…セブン&アイに売られた名門百貨店の悲しき末路) [産業動向]
百貨店業界については、昨年5月17日に取上げた。今日は、(その6)(「そごう・西武売却」セブン&アイの2大誤算…経営陣は「逃げ得」できるのか?、セブン そごう・西武売却完了でも残る後味の悪さ 「実質売却額8500万円」は想定の範囲内だった、「西武池袋本店は切り売りされるのか」会社売却報道の真偽を問うと セブン&アイ井阪社長の答えは—— 決断 そごう・西武61年目のストライキ⑧、ヴィトンやエルメスを失ってしまう…セブン&アイに売られた名門百貨店の悲しき末路)である。
先ずは、昨年9月4日付け東洋経済オンライン「セブン、そごう・西武売却完了でも残る後味の悪さ 「実質売却額8500万円」は想定の範囲内だった」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/699144
・『セブン&アイ・ホールディングス(HD)は9月1日、百貨店子会社のそごう・西武をアメリカの投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループに売却した。売却先をフォートレスに決めたのが昨年11月。長期に渡った売却交渉がようやく完了した。 売却額は2200億円と一見高額。しかし売却日当日、セブン&アイは単体で1457億円の特別損失計上を発表、連結の最終利益の予想を下方修正している。 セブン&アイはなぜ損失計上を迫られたのか』、興味深そうだ。
・『2200億円は有利子負債を含めた評価 その理由は極めて単純。そごう・西武の企業価値の評価が、極めて低かったからだ。 2200億円は確かに実際の売却額だが、これは有利子負債を含めた企業価値がベースとなっている。そごう・西武はこれまで約3000億円と多額の有利子負債を抱えていた。売却に伴ってセブン&アイが自社の貸付金のうち916億円を債権放棄しており、残る有利子負債は単純計算で約2100億円。つまり、2200億円という企業価値の大部分は、有利子負債で占められていたことになる。 セブン&アイは損失計上と同時に公表したリリースで、「そごう・西武株式の譲渡価額は(中略)85百万円を見込んでおります」としているが、まさにこのことを指している。有利子負債のほかに運転資本の減少分などを考慮した「実質的な」譲渡価額が、8500万円だったということだ。 セブン&アイはこの実質的な譲渡価額と簿価との差を、株式譲渡関連特損411億円として損失計上した。そごう・西武の企業価値は当初2500億円とされていたが、売却交渉の長期化や売却後の西武池袋本店(池袋西武)のフロアプランの見直しなどに伴って、300億円減額されたことも、損失計上の要因となっている。 ただ、セブン&アイからすれば、譲渡価額8500万円は完全に想定内だったようだ。「損失を出さずに売るのは超ウルトラC」。そごう・西武の売却の過程で、セブン&アイの関係者はこう漏らしていた。 セブン&アイ側も、買収したフォートレス側も、当初から百貨店事業についてはほとんど価値を見出していなかった。逆に実質評価がマイナスにならずに売却できたことで、セブン&アイの担当者は胸をなで下ろしているかもしれない。) 損失計上には別の要因もある。売却に伴ってセブン&アイが損失補填を余儀なくされたことだ。損失補填のほとんどは前述した債権放棄額916億円だが、もう一つの理由がある。 テナントの移転・撤退に伴う「クリーニング費用」の負担だ。今後、池袋西武にはフォートレスと組む家電量販店の「ヨドバシカメラ」が出店する計画だ。そうなれば、既存のテナントは移転を強いられ、場合によっては撤退を余儀なくされる。 まだ移転が決まっていない一部の高級ブランドなど、今後新たに必要となる移転費用は新オーナーであるフォートレスが負担するが、「すでに大枠が決まっているテナントの移動については、セブン&アイ側が負担する」(ディール関係者)。損失補填の中には、このクリーニング費用の負担が含まれている模様だ。 売却スキームではヨドバシの入居によって多くのテナントの移転・撤退が見込まれ、その費用を誰が負担するかも1つの焦点だった。セブン&アイの実際の負担額は非公開だが、「今回で株式譲渡にかかわる損失は出しつくした」(セブン&アイ広報担当者)。売却後の追加負担も懸念されていたが、それは回避されたようだ。 しかし、終わったのはあくまで会計上の処理だけだ。セブン&アイの経営陣には、今後対峙しなければならない課題がなお残されている』、「今後、池袋西武にはフォートレスと組む家電量販店の「ヨドバシカメラ」が出店する計画だ。そうなれば、既存のテナントは移転を強いられ、場合によっては撤退を余儀なくされる。 まだ移転が決まっていない一部の高級ブランドなど、今後新たに必要となる移転費用は新オーナーであるフォートレスが負担するが、「すでに大枠が決まっているテナントの移動については、セブン&アイ側が負担する」、なるほど。
・『法廷の場で明らかになる取締役の責任 一つは株主対応だ。セブン&アイの株主であるそごう・西武の元社員らは、昨年11月の売却公表時に算定された同社の企業価値2500億円が不透明であるとして、井阪隆一社長らセブン&アイHD取締役に損害賠償を求める株主代表訴訟を東京地裁に提訴している。 問題は、売却先を決定する際に、井阪社長ら取締役が善管注意義務を果たしたといえるかどうかだ。今回の売却経緯を巡っては、入札の際に複数のファンドが手を挙げたものの、途中からフォートレスありきで交渉が進んだとする指摘がある。 また、売却直前になって企業価値が減額されたり、債権放棄を余儀なくされたりしたことを考えると、当初2500億円とされた企業価値の算定根拠が正当なものだったのかが、今後争点となりそうだ。) もう一つはそごう・西武の従業員の雇用問題だ。同社の労働組合は、ヨドバシの入居で百貨店の売り場面積が大きく縮小し、「雇用継続の確証が得られない」と反発。8月31日には、池袋西武で大手百貨店として61年ぶりのストライキを決行した。 この問題はフォートレスに売却された後も、くずぶり続ける。セブン&アイはかねてから「(ヨドバシの入居で)従業員の働く場所が物理的になくなり、社内での配置転換も難しい場合、当社も受け入れる用意はある」(広報担当者)としている。 しかし、セブン&アイの主力業態であるコンビニはフランチャイズビジネスであり、それほど多くの社員が必要なわけではない。さらにイトーヨーカ堂などのスーパー事業は構造改革の真っただ中。事業会社の再編に取り組んでおり、「とても人を受け入れられる状況ではない」(セブン&アイ関係者)。十分な雇用の受け皿となるかは不透明だ』、「問題は、売却先を決定する際に、井阪社長ら取締役が善管注意義務を果たしたといえるかどうかだ。今回の売却経緯を巡っては、入札の際に複数のファンドが手を挙げたものの、途中からフォートレスありきで交渉が進んだとする指摘がある。 また、売却直前になって企業価値が減額されたり、債権放棄を余儀なくされたりしたことを考えると、当初2500億円とされた企業価値の算定根拠が正当なものだったのかが、今後争点となりそうだ。) もう一つはそごう・西武の従業員の雇用問題だ」、なるほど。
・『終盤は「孤軍奮闘」状態だった井阪社長 今回、ここまで事態が混乱したのは、労組との関係が象徴するように、「最初から正直に話し合って納得を得るのではなく、ごまかしながら進めた」(ディールの関係者)からだ。 井阪社長は「事業と雇用を継続する」と主張し続ける一方、「直接の雇用者ではない」として労使交渉には応じてこなかった。初めて交渉の席についたのは8月序盤で、そこから売却完了までは1カ月にも満たない。池袋西武の地元である豊島区や駅前商店街との合意もとれないままで、説明責任を果たしたとは到底いえない。 今回の売却のプロセスでは、従業員や地元、さらに消費者というステークホルダーに対する配慮があまりに欠けていた。そして日本の小売業最大手として、百貨店をどう再生するか、そのために最大のシナジーを発揮できる売却先はどこかといった視点が、ほとんどなかったようにみえる。 責任は井阪社長にだけあるのではない。セブン&アイの関係者によると、首脳陣の一部はそごう・西武売却に際し、「『大変ですね』などと発言するだけで、井阪さんの言う『真摯な対応』をしようという姿勢ではなかった」という。この関係者は売却劇終盤の井阪社長を「孤軍奮闘していた」と哀れむ。 株式譲渡の契約から実行まで、セブン&アイは井阪体制におけるガバナンスのもろさを露呈した。今回セブン&アイが失ったものは、決して少なくないように思える』、「今回の売却のプロセスでは、従業員や地元、さらに消費者というステークホルダーに対する配慮があまりに欠けていた。そして日本の小売業最大手として、百貨店をどう再生するか、そのために最大のシナジーを発揮できる売却先はどこかといった視点が、ほとんどなかったようにみえる。 責任は井阪社長にだけあるのではない」との見方もあるが、私は、「井阪社長」の「責任は」重大だと思う。
次に、本年7月26日付け現代ビジネスが掲載した労組委員長の寺岡 泰博氏による「「西武池袋本店は切り売りされるのか」会社売却報道の真偽を問うと、セブン&アイ井阪社長の答えは—— 決断 そごう・西武61年目のストライキ⑧」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/133790?imp=0
・『「池袋の街に、百貨店を残そう!」「西武池袋本店を守ろう」 2023年8月31日、西武百貨店は終日シャッターを下ろして店を閉じ、300人を超える社員が池袋の街をデモ行進しました。 このストライキを決断し、実行したのがそごう・西武労組の寺岡泰博・中央執行委員長です。 寺岡氏は2016年に中央執行委員長に就任、待っていたのは、外資系ファンドへの新たな「会社売却」交渉でした。しかも、そごう・西武を支える中核店舗の池袋店の不動産をヨドバシカメラに売却し、店舗の半分を家電量販店に改装するというのです。 自分たちはこれまで、百貨店人としてのプライドを胸に働いてきた。会社売却しても「雇用を守る」と経営者は言うが、百貨店で働くことと、ヨドバシカメラやコンビニで働くことはまったく意味が違う。「雇用」ではなく、「雇用の場」を守ってほしい。百貨店人としてのプライドを知ってほしい――。 5000人の社員の先頭に立ち、闘いつづけた熱い男の魂の記録、寺岡氏の著書『決断 そごう・西武61年目のストライキ』より、一部を抜粋してお届けします』、「百貨店で働くことと、ヨドバシカメラやコンビニで働くことはまったく意味が違う。「雇用」ではなく、「雇用の場」を守ってほしい。百貨店人としてのプライドを知ってほしい――」、確かにその通りだろう。
・『「報道は寝耳に水」 偶然にも春闘を前にセブン&アイ労連と経営側の労使協議が予定されていた。イトーヨーカドー労組、そごう・西武労組、セブン&アイ・フードシステムズ労組などセブン&アイ各社の労組幹部が、井阪社長らセブン&アイ経営陣と賃上げについて事前協議する。 この年、われわれそごう・西武労組は春闘で具体的な賃上げを含む労働条件改定を要求提案する方針を固め、最終調整の段階に入っていたが、株式売却という衝撃のニュースが流れ、方針転換するかどうかの判断を迫られることになった。 さらにこの労使協議機会で、私はそごう・西武売却報道について井阪社長に現場の声を伝え、要望を届けようと考えていた。 私が主張したのは、「雇用の維持」と「事業の継続」、そして「情報開示」の3つである。以後2023年8月のストライキまで、この3点をブレずに一貫して言いつづけることになる。 「自分たちの店はどうなるのか、お客さま対応は、など不安の声が上がっています。事業会社が(交渉の)主語ではないとなれば、どこまでが事実なのか知りたいというのが現場の本音です。少なくとも報道が先行して混乱しないように事前に情報共有していただきたい。また、売却にあたっては百貨店価値というよりも不動産価値を打ち出しているようにも映ります。百貨店ブランドを守る、雇用を守るということは胸に留めていただきたい」 井阪社長の回答は、相変わらずとらえどころがないものだった。 「かしこまりました。ただ、報道は寝耳に水で私どもが発信したものではないということは理解していただきたい。そごう・西武は駅前立地の資産価値以外にも顧客基盤、取引先さま、優秀な社員などポテンシャルがある会社です。ベストオーナーと組めばもっとバリューが発揮できるはずです。そう考えていただきたい」 報道を肯定するわけでもないが、「絶対に売らない」というわけでもない。「報道は寝耳に水」という言葉にも、違和感があった。セブン&アイという会社は身内には秘密主義なのに、なぜかメディアには容易に経営情報が漏れる。2月7日発売の経済誌でも、セブン&アイの内部資料を入手したとして、DX戦略の頓挫の詳細を報じていた。本当に不思議な話だ』、「セブン&アイという会社は身内には秘密主義なのに、なぜかメディアには容易に経営情報が漏れる。2月7日発売の経済誌でも、セブン&アイの内部資料を入手したとして、DX戦略の頓挫の詳細を報じていた。本当に不思議な話だ」、なるほど。
・『「もう百貨店ではなくなるかもしれない」 そごう・西武の売却を検討していることを、井阪社長がはじめて公に認めたのはこの2ヵ月後、4月7日のセブン&アイの決算発表の場である。 その間、セブン&アイからはなんの発表もないにもかかわらず、「売却先」をめぐる報道は過熱していた。 〈そごう・西武、入札締め切り 売却先、セブンが絞り込みへ〉(朝日新聞2月22日付) セブン&アイ・ホールディングスは21日、傘下で百貨店を運営するそごう・西武の売却先を募る1次入札を締め切った。 〈1次入札、複数応募か〉(読売新聞2月22日付) 投資ファンドなど複数の応札があったとみられ、今後、売却額など条件面の本格的な交渉に入る。 〈1次入札に複数応募 そごう・西武売却〉(共同通信2月22日付) 三井不動産や三菱地所も入札への参加を検討していたが、見送ったもようだ。再開発による収益性を考慮しても、従業員の引き受けなどの負荷が重荷だったとみられる。 〈そごう・西武売却、魅力は? 駅近の一等地 多い「借り物」複数陣営が応札〉(朝日新聞2月25日付) 複数陣営が応札したとみられる背景にあるのが「不動産」としての魅力。国内有数の一等地に主要店を構える一方、(中略)店舗の土地や建物は「借り物」が目立つ。同社によると、西武池袋本店は建物の大半を自社で持つ一方、地権者は複数いる。 〈「そごう・西武売却」、次入札で残った顔ぶれ〉(東洋経済オンライン2月28日付) 1次入札は2月21日に締め切られ、ゴールドマン・サックスをはじめとする外資系投資銀行や、多数の投資ファンドなどが応札。その結果、米大手投資ファンドのブラックストーン・グループ、米ローン・スター、米フォートレス・インベストメント・グループ、そしてシンガポール政府投資公社(GIC)の4社が残り、2次入札に進んだという。 私たちに見えないところで、事態が激しく動いていた。 東洋経済オンラインの記事では、匿名のそごう・西武幹部が「彼らに売却されたら店舗を単なる不動産として扱われ、切り売りされて終わるのではないか。もう百貨店ではなくなるかもしれない」と語っている。たしかに、応札したのがすべて投資ファンドだということが懸念材料だった。 その後の報道によると、2次入札に進んだ4社からブラックストーンが降り、5月に行われた2次入札にはローン・スター、シンガポール政府投資公社、そしてフォートレスの3社が参加したという。 3社のうち、どこが選ばれるのか――。それも結局、日経新聞による報道が先行した。 続きは<池袋西武がヨドバシHDに買われたらどうなるか 社員と労組が恐れた「最悪の展開」>にて公開中。 百貨店人としてのプライドを守るため、5000人の社員の先頭に立ち、闘いつづけた熱い男の魂の記録『決断 そごう・西武61年目のストライキ』が絶賛発売中!』、「応札したのがすべて投資ファンドだということが懸念材料だった」、なるほど。
第三に、9月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したそごう・西武労働組合 中央執行委員長の寺岡泰博氏による「ヴィトンやエルメスを失ってしまう…セブン&アイに売られた名門百貨店の悲しき末路」を紹介しよう。
・『大手デパート「そごう・西武」の旗艦店・西武池袋本店で大改装作業が進んでいる。セブン&アイ傘下だったそごう・西武の株式を2023年9月に買収した米投資運用会社・フォートレスは、西武池袋本店の不動産を3000億円でヨドバシカメラに売った。その結果、2025年夏のグランドオープン後は、売り場面積の半分弱をヨドバシカメラが占めるようになる。こうしたM&Aの意思決定プロセスにおいて、一貫して蚊帳の外に置かれていた従業員たちの不安と苦悩を、当時の労組トップが赤裸々に語った。※本稿は、寺岡泰博『決断 そごう・西武61年目のストライキ』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『労働組合の知らぬ間にニュースで自社の重要発表が NHKのニュース速報が流れた。 「セブン&アイの取締役会が、2023年2月1日を契約実行日とするフォートレスへのそごう・西武株式譲渡を決議」 これから労組への説明というタイミングでまたもリークかーーこれで何度目だろう。つくづく溜め息が出た。 報道によると、セブン&アイはフォートレスにそごう・西武の株式を譲渡する契約を締結することを2022年11月11日の臨時取締役会で決議し、フォートレスのビジネスパートナーとしてヨドバシホールディングスが加わるという。2023年2月1日の株式譲渡の完了(クロージング)まで、「今後の協議で詰めていく」とされていた。 あとになって分かったことだが、売却後の池袋本店の大まかなフロアプランも11日の臨時取締役会で示されていた。それによると、西武池袋本店本館の北ゾーンにヨドバシカメラが入る計画だという。 池袋本店は細長い廊下のような建物で、本館は北、中央、南の3ゾーンに分かれている。池袋駅は南より北側の人流が多く、北ゾーンがもっとも集客力がある。ルイ・ヴィトン、グッチなどのハイブランドも1階北ゾーンに入居している。 フォートレスのプランでは、この北ゾーンからハイブランドを立ち退かせ、すべてヨドバシカメラにするというのである』、「池袋駅は南より北側の人流が多く、北ゾーンがもっとも集客力がある。ルイ・ヴィトン、グッチなどのハイブランドも1階北ゾーンに入居している。 フォートレスのプランでは、この北ゾーンからハイブランドを立ち退かせ、すべてヨドバシカメラにする」、なるほど。
・『労働組合としてのいらだち おカネを出す人が一番強い ヨドバシが北ゾーンに入居することにこだわっているのは、もうひとつ理由があった。池袋本店から北側に向かって歩くと左にビックカメラ、右にヤマダデンキの大型店が並ぶ。仮に現在の池袋本店の北ゾーンにヨドバシカメラが入ると、ビックカメラ、ヤマダデンキに向かう人たちをその手前でせき止めてしまうことになる。ライバルのビックカメラ、ヤマダに強力な打撃を与えることができる立地なのだ。 ヨドバシはさらに手を打っていた。 池袋本店の地下街から東側に広がる約1200坪にわたるショッピングセンター「池袋ショッピングパーク(ISP)」の株式をヨドバシホールディングスが取得する方向だというのだ。 ISPには現在約60のアパレルや飲食店、食料品店が入居するが、ここにもヨドバシカメラが入れば、さらにビックカメラ、ヤマダデンキへの人流は細ることになる。 井阪隆一社長(セブン&アイHD)に近いと見られていた社外取締役の伊藤邦雄氏でさえ、「気がついたら『ヨドバシ百貨店』になっているようなことは、やってはだめだ。あくまでそごう・西武が、百貨店として成長できるプランでなければだめなんだ」と言っていたと聞く。 しかし、「結局、おカネを出す人が一番強い」とあるアナリストが言っていたように、2000億円を出資する予定のヨドバシカメラに発言権があるのは間違いなかった。) これほど重要な決定が、労働組合にいっさいなんの説明も連絡もなく、抜き打ちのような形で実行されてしまったことに、大きな衝撃を受けた。 2022年11月11日午後の臨時中央経営協議会でそごう・西武の林拓二社長は冒頭突如立ち上がり、「申し訳ありません」とわれわれに頭を下げた。 「前日から様々な報道が先行し、当社で働く従業員の皆さまやステークホルダー(利害関係者)、お客さまに多大な不安を与えたことについて、大変申し訳なく、あらためてお詫びを申し上げます」』、「池袋本店の北ゾーンにヨドバシカメラが入ると、ビックカメラ、ヤマダデンキに向かう人たちをその手前でせき止めてしまうことになる。ライバルのビックカメラ、ヤマダに強力な打撃を与えることができる立地なのだ。 ヨドバシはさらに手を打っていた。 池袋本店の地下街から東側に広がる約1200坪にわたるショッピングセンター「池袋ショッピングパーク(ISP)」の株式をヨドバシホールディングスが取得する方向だというのだ。 ISPには現在約60のアパレルや飲食店、食料品店が入居するが、ここにもヨドバシカメラが入れば、さらにビックカメラ、ヤマダデンキへの人流は細ることになる・・・井阪隆一社長(セブン&アイHD)に近いと見られていた社外取締役の伊藤邦雄氏でさえ、「気がついたら『ヨドバシ百貨店』になっているようなことは、やってはだめだ。あくまでそごう・西武が、百貨店として成長できるプランでなければだめなんだ」と言っていたと聞く。 しかし、「結局、おカネを出す人が一番強い」とあるアナリストが言っていたように、2000億円を出資する予定のヨドバシカメラに発言権があるのは間違いなかった」、なるほど。
・『いったいどういうことなのか 労働組合の頭越しの決定 しかし、林社長に謝られても、結果は覆らない。組合側からは当然、厳しい言葉をぶつけた。 「秘密保持の観点やインサイダー取引に抵触するとの懸念から情報開示が難しい状況とのことでしたが、これだけ外部には情報漏洩をしながら、当社で働く従業員には『決定事項は何もない』とは、いったいどういうことなのか。あまりにも、働く従業員や労働組合を置き去りにした対応なのではないでしょうか」 「今後どんなにきれいなメッセージを並べられても真正面から受け止めることができません。労働組合は個人の私利私欲のために動いているわけではありません」 11月11日の中央経営協議会で「申し訳ない」と頭を下げた林社長は、その後、ある決意を固める。) 社長自ら各店舗に出向いて説明行脚する、「店舗ラウンド」をするというのである。 様々な偶然も重なって社長に抜擢されたが、林さんは本来現場の社員に非常に近い心情を持つ人である。今回の株式売却で従業員に不安が広がっていることは「謝っても謝りきれない」ので、11月16日から全10店舗を回って社員に直接思いを伝えたいという』、「様々な偶然も重なって社長に抜擢されたが、林さんは本来現場の社員に非常に近い心情を持つ人である。今回の株式売却で従業員に不安が広がっていることは「謝っても謝りきれない」ので、11月16日から全10店舗を回って社員に直接思いを伝えたいという」、なるほど。
・『社長の全店舗行脚でも拭えきれない不安 林社長はそごう神戸店、西武高槻店がエイチ・ツー・オーリテイリングに営業譲渡された際にも、現地を回って従業員と直接対話をしたことがある。経営幹部からは「かえって混乱を招く」と止められたが、林社長の意思で強行した。林氏はかつて神戸店の店長を務めた経験があり、とくに思い入れが強いということもあった。 神戸店ではかつての部下らに対し、「申し訳ありません」と深々と頭を下げたと聞いている。 11月16日から始めた全店舗行脚で、社長は営業時間前の部課長会などに参加した。 「今回のディールはそごう・西武を再成長させるためのものです。私は、セブン&アイ・ホールディングスと井阪社長を信じています。従って悪いようにはならない、させない。だから安心して目の前の業務、繁忙期を乗り切ってください」) しかし、私はその話を聞いても不安を拭いきれなかった。 林社長の気持ちは本物だろう。さもなければ、この混乱期に10店舗を回って直接現場の社員に謝罪するという行動に出るはずがない。しかしセブン&アイは、本当に「悪いようにしない」だろうか。 ちょうどこの時期、そごう広島店では本館を改装し、新館から退去して本館にまとめる作業に入っていた。今後もこのまま営業を続けていけるのか、不安が広がっていた。そしてその不安は、そごう・西武の社員すべてが共有する不安でもあった』、「しかしセブン&アイは、本当に「悪いようにしない」だろうか」、妥当な疑問だ。
・『百貨店らしくない店で高級品を買いたくない 2022年11月21日に行われたそごう・西武労働組合の臨時中央大会では、組合の各支部から厳しい声が寄せられた。 「1月末の報道(編集部注/2022年1月31日に日経新聞が報じた)以降、お取引先さまから『先の案件は依頼できない』など厳しいお言葉を頂戴することが続き、普段の営業活動に支障が出ている。事業の特性上、交渉期間や取引納入期間が長い案件が多いことも鑑み、お取引先さまに根拠のある説明ができる安心材料が早くほしいと感じている」(商事支部の組合代議員)) 「お客さまから、『百貨店らしくないお店では高級品を買いたくない』というリアルなお声を頂戴することもあります。そのような中で、当社株式売却の報道があり、実際に納品が先になる高級家具の販売がキャンセルになるといった事案も発生しました。営業体制はなにも変わらなくても、すでに報道だけでブランド毀損は始まっているのだと感じています」(池袋支部の組合代議員) お客さまからの声も報告された。 「そごう・西武は百貨店ではなくなってしまうのかという不安」 「ハレの日需要や継続的なメンテナンスが必要な高額品の買い控え」 「問い合わせに対し曖昧な受け答えしか返ってこない現状」 こうした意見は「ブランド毀損」「信用・信頼の低下」「当社および従業員への不信」という3つに集約し、経営陣に伝えた。 11月22日には、労働組合としてアメリカのフォートレス本社に意見書を送付し、事業継続や従業員の雇用維持に影響が出るプランが提示された場合、「労働組合として明確に反対する」ことを伝えた。 11月24日には、フォートレスからそごう・西武経営陣に池袋本店のフロアプランが提示されている。それによると、低層階を中心に全面積の5割がヨドバシカメラ、残った部分で百貨店を展開するという』、「実際に納品が先になる高級家具の販売がキャンセルになるといった事案も発生しました。営業体制はなにも変わらなくても、すでに報道だけでブランド毀損は始まっている・・・「ハレの日需要や継続的なメンテナンスが必要な高額品の買い控え」・・・池袋本店のフロアプランが提示されている。それによると、低層階を中心に全面積の5割がヨドバシカメラ、残った部分で百貨店を展開するという」、私は「ヨドバシカメラ」の会員だが、同社が大きく存在感を増す「西武」で買い物をしたいとは思わない。
・『ルイ・ヴィトンやエルメスを失ってしまうかもしれない 2022年11月11日のセブン&アイ臨時取締役会で示されたのは北ゾーンを中心に3割をヨドバシにする案だったようだが、結局、中央ゾーンも低層階を中心にヨドバシが入るとされていた。 フォートレス陣営は「話し合いの余地はない。これで決定です」と話したという。 もしこのプランが実行されれば、もっとも集客力のある北ゾーンと、中央ゾーンの低層階を失い、池袋本店の大きな魅力のひとつであるルイ・ヴィトン、エルメスなどのハイブランドも失うことになるかもしれない。 井阪社長から4者会談の場で「ヨドバシカメラが入るにしても低層階を占めるなどということはありません。組合員の皆さまにも、機関紙を通じてぜひそれを伝えてください」と言われていたが、この話も結果的に事実とは違った。「現時点で決定事項はない」という言い方で、その後どうなっても言い訳できるように逃げ道を残していたのだ。 「日本第3位」のデパートの座から転落し、お取引先さまから見た魅力も半減どころではないだろう。影響は他店にも及ぶ。2016年にそごう神戸店を営業譲渡したあと、大津店や西神店、徳島店など関西の店舗は軒並み営業力を落とし、結果的に営業終了に追い込まれた。) 基幹店が倒れれば、周辺も巻き込まれる。それはすでに経験済みだった。まして池袋本店は神戸店よりさらに大きな巨艦店である。その北、中央ゾーンを失うことで、そごう・西武という会社自体が今後、立ち行かなくなる可能性もありうる。 さらに、フォートレスからはじめて示されたそのフロアプランに林社長はその場では反論できず、そのまま持ち帰らざるを得なかったという。それを聞いてまた腰が抜けそうになった。 しかもこの時点で、われわれ労働組合にはいまだフロアプランが正式に提示されていない。2022年12月14日に行われた4度目の4者会談でも、井阪社長は「フロアプランは未定」と言い張った』、ここまでみえみえの嘘をつくとは驚かされた。
・『そごう・西武労組には余計な情報は与えない 「フロアプランはどうなるんですか、もう決まっているんですか」 「決まっていません。むしろそれはこれからです」 「普通に考えたら、ヨドバシがお金を出して買った土地で、自らも営業しようとすれば、自分の土地なんだから当然一番いい場所を自分が使いますよね。そうなればわれわれそごう・西武は、百貨店として生き残れなくなるんじゃないですか」) 「このディールの『主語』はあくまでそごう・西武だから、もっと言うと百貨店を知っているのはそごう・西武なんだから、ヨドバシとフォートレスと、われわれセブンではなくてそごう・西武とで誠実に協議して、リースラインを決めればいいんですよ」 「表向きはそうかもしれませんが。自分の土地は、まずは自分がここを使うと決め、残りを君らが使っていいよ、とするのが普通じゃないですか」 「そんな話ではないですから」 「株式譲渡契約が締結されましたね。その契約の中身は知りませんが、ヨドバシが西武池袋本店のどこからどこまで使うというのは、すでに契約書に盛り込まれているんですか」 「そんな契約はありません。むしろヨドバシとそごう・西武とフォートレスが誠実協議をして、面積を決めるという話になっているんだから。それはまさに、これからの話し合い次第です」 フォートレスはすでに「決定事項」としてフロアプランをそごう・西武経営陣に提示しているというのに、井阪社長は「まだ決まっていない」と言う。労組には余計な情報を与えないという姿勢がありありと感じられた。 何が真実なのか。 苛立ちと不満が募った』、「フォートレスはすでに「決定事項」としてフロアプランをそごう・西武経営陣に提示しているというのに、井阪社長は「まだ決まっていない」と言う」、百貨店ビジネスが理解できない「井阪社長」は本当に無責任だ。これまで物言う株主の圧力をかわすために、「西武」を血祭に挙げたのであれば、「西武」は浮かばれないだろう。外部株主の「伊藤邦雄」氏にも頑張ってもらいたいところだ。
先ずは、昨年9月4日付け東洋経済オンライン「セブン、そごう・西武売却完了でも残る後味の悪さ 「実質売却額8500万円」は想定の範囲内だった」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/699144
・『セブン&アイ・ホールディングス(HD)は9月1日、百貨店子会社のそごう・西武をアメリカの投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループに売却した。売却先をフォートレスに決めたのが昨年11月。長期に渡った売却交渉がようやく完了した。 売却額は2200億円と一見高額。しかし売却日当日、セブン&アイは単体で1457億円の特別損失計上を発表、連結の最終利益の予想を下方修正している。 セブン&アイはなぜ損失計上を迫られたのか』、興味深そうだ。
・『2200億円は有利子負債を含めた評価 その理由は極めて単純。そごう・西武の企業価値の評価が、極めて低かったからだ。 2200億円は確かに実際の売却額だが、これは有利子負債を含めた企業価値がベースとなっている。そごう・西武はこれまで約3000億円と多額の有利子負債を抱えていた。売却に伴ってセブン&アイが自社の貸付金のうち916億円を債権放棄しており、残る有利子負債は単純計算で約2100億円。つまり、2200億円という企業価値の大部分は、有利子負債で占められていたことになる。 セブン&アイは損失計上と同時に公表したリリースで、「そごう・西武株式の譲渡価額は(中略)85百万円を見込んでおります」としているが、まさにこのことを指している。有利子負債のほかに運転資本の減少分などを考慮した「実質的な」譲渡価額が、8500万円だったということだ。 セブン&アイはこの実質的な譲渡価額と簿価との差を、株式譲渡関連特損411億円として損失計上した。そごう・西武の企業価値は当初2500億円とされていたが、売却交渉の長期化や売却後の西武池袋本店(池袋西武)のフロアプランの見直しなどに伴って、300億円減額されたことも、損失計上の要因となっている。 ただ、セブン&アイからすれば、譲渡価額8500万円は完全に想定内だったようだ。「損失を出さずに売るのは超ウルトラC」。そごう・西武の売却の過程で、セブン&アイの関係者はこう漏らしていた。 セブン&アイ側も、買収したフォートレス側も、当初から百貨店事業についてはほとんど価値を見出していなかった。逆に実質評価がマイナスにならずに売却できたことで、セブン&アイの担当者は胸をなで下ろしているかもしれない。) 損失計上には別の要因もある。売却に伴ってセブン&アイが損失補填を余儀なくされたことだ。損失補填のほとんどは前述した債権放棄額916億円だが、もう一つの理由がある。 テナントの移転・撤退に伴う「クリーニング費用」の負担だ。今後、池袋西武にはフォートレスと組む家電量販店の「ヨドバシカメラ」が出店する計画だ。そうなれば、既存のテナントは移転を強いられ、場合によっては撤退を余儀なくされる。 まだ移転が決まっていない一部の高級ブランドなど、今後新たに必要となる移転費用は新オーナーであるフォートレスが負担するが、「すでに大枠が決まっているテナントの移動については、セブン&アイ側が負担する」(ディール関係者)。損失補填の中には、このクリーニング費用の負担が含まれている模様だ。 売却スキームではヨドバシの入居によって多くのテナントの移転・撤退が見込まれ、その費用を誰が負担するかも1つの焦点だった。セブン&アイの実際の負担額は非公開だが、「今回で株式譲渡にかかわる損失は出しつくした」(セブン&アイ広報担当者)。売却後の追加負担も懸念されていたが、それは回避されたようだ。 しかし、終わったのはあくまで会計上の処理だけだ。セブン&アイの経営陣には、今後対峙しなければならない課題がなお残されている』、「今後、池袋西武にはフォートレスと組む家電量販店の「ヨドバシカメラ」が出店する計画だ。そうなれば、既存のテナントは移転を強いられ、場合によっては撤退を余儀なくされる。 まだ移転が決まっていない一部の高級ブランドなど、今後新たに必要となる移転費用は新オーナーであるフォートレスが負担するが、「すでに大枠が決まっているテナントの移動については、セブン&アイ側が負担する」、なるほど。
・『法廷の場で明らかになる取締役の責任 一つは株主対応だ。セブン&アイの株主であるそごう・西武の元社員らは、昨年11月の売却公表時に算定された同社の企業価値2500億円が不透明であるとして、井阪隆一社長らセブン&アイHD取締役に損害賠償を求める株主代表訴訟を東京地裁に提訴している。 問題は、売却先を決定する際に、井阪社長ら取締役が善管注意義務を果たしたといえるかどうかだ。今回の売却経緯を巡っては、入札の際に複数のファンドが手を挙げたものの、途中からフォートレスありきで交渉が進んだとする指摘がある。 また、売却直前になって企業価値が減額されたり、債権放棄を余儀なくされたりしたことを考えると、当初2500億円とされた企業価値の算定根拠が正当なものだったのかが、今後争点となりそうだ。) もう一つはそごう・西武の従業員の雇用問題だ。同社の労働組合は、ヨドバシの入居で百貨店の売り場面積が大きく縮小し、「雇用継続の確証が得られない」と反発。8月31日には、池袋西武で大手百貨店として61年ぶりのストライキを決行した。 この問題はフォートレスに売却された後も、くずぶり続ける。セブン&アイはかねてから「(ヨドバシの入居で)従業員の働く場所が物理的になくなり、社内での配置転換も難しい場合、当社も受け入れる用意はある」(広報担当者)としている。 しかし、セブン&アイの主力業態であるコンビニはフランチャイズビジネスであり、それほど多くの社員が必要なわけではない。さらにイトーヨーカ堂などのスーパー事業は構造改革の真っただ中。事業会社の再編に取り組んでおり、「とても人を受け入れられる状況ではない」(セブン&アイ関係者)。十分な雇用の受け皿となるかは不透明だ』、「問題は、売却先を決定する際に、井阪社長ら取締役が善管注意義務を果たしたといえるかどうかだ。今回の売却経緯を巡っては、入札の際に複数のファンドが手を挙げたものの、途中からフォートレスありきで交渉が進んだとする指摘がある。 また、売却直前になって企業価値が減額されたり、債権放棄を余儀なくされたりしたことを考えると、当初2500億円とされた企業価値の算定根拠が正当なものだったのかが、今後争点となりそうだ。) もう一つはそごう・西武の従業員の雇用問題だ」、なるほど。
・『終盤は「孤軍奮闘」状態だった井阪社長 今回、ここまで事態が混乱したのは、労組との関係が象徴するように、「最初から正直に話し合って納得を得るのではなく、ごまかしながら進めた」(ディールの関係者)からだ。 井阪社長は「事業と雇用を継続する」と主張し続ける一方、「直接の雇用者ではない」として労使交渉には応じてこなかった。初めて交渉の席についたのは8月序盤で、そこから売却完了までは1カ月にも満たない。池袋西武の地元である豊島区や駅前商店街との合意もとれないままで、説明責任を果たしたとは到底いえない。 今回の売却のプロセスでは、従業員や地元、さらに消費者というステークホルダーに対する配慮があまりに欠けていた。そして日本の小売業最大手として、百貨店をどう再生するか、そのために最大のシナジーを発揮できる売却先はどこかといった視点が、ほとんどなかったようにみえる。 責任は井阪社長にだけあるのではない。セブン&アイの関係者によると、首脳陣の一部はそごう・西武売却に際し、「『大変ですね』などと発言するだけで、井阪さんの言う『真摯な対応』をしようという姿勢ではなかった」という。この関係者は売却劇終盤の井阪社長を「孤軍奮闘していた」と哀れむ。 株式譲渡の契約から実行まで、セブン&アイは井阪体制におけるガバナンスのもろさを露呈した。今回セブン&アイが失ったものは、決して少なくないように思える』、「今回の売却のプロセスでは、従業員や地元、さらに消費者というステークホルダーに対する配慮があまりに欠けていた。そして日本の小売業最大手として、百貨店をどう再生するか、そのために最大のシナジーを発揮できる売却先はどこかといった視点が、ほとんどなかったようにみえる。 責任は井阪社長にだけあるのではない」との見方もあるが、私は、「井阪社長」の「責任は」重大だと思う。
次に、本年7月26日付け現代ビジネスが掲載した労組委員長の寺岡 泰博氏による「「西武池袋本店は切り売りされるのか」会社売却報道の真偽を問うと、セブン&アイ井阪社長の答えは—— 決断 そごう・西武61年目のストライキ⑧」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/133790?imp=0
・『「池袋の街に、百貨店を残そう!」「西武池袋本店を守ろう」 2023年8月31日、西武百貨店は終日シャッターを下ろして店を閉じ、300人を超える社員が池袋の街をデモ行進しました。 このストライキを決断し、実行したのがそごう・西武労組の寺岡泰博・中央執行委員長です。 寺岡氏は2016年に中央執行委員長に就任、待っていたのは、外資系ファンドへの新たな「会社売却」交渉でした。しかも、そごう・西武を支える中核店舗の池袋店の不動産をヨドバシカメラに売却し、店舗の半分を家電量販店に改装するというのです。 自分たちはこれまで、百貨店人としてのプライドを胸に働いてきた。会社売却しても「雇用を守る」と経営者は言うが、百貨店で働くことと、ヨドバシカメラやコンビニで働くことはまったく意味が違う。「雇用」ではなく、「雇用の場」を守ってほしい。百貨店人としてのプライドを知ってほしい――。 5000人の社員の先頭に立ち、闘いつづけた熱い男の魂の記録、寺岡氏の著書『決断 そごう・西武61年目のストライキ』より、一部を抜粋してお届けします』、「百貨店で働くことと、ヨドバシカメラやコンビニで働くことはまったく意味が違う。「雇用」ではなく、「雇用の場」を守ってほしい。百貨店人としてのプライドを知ってほしい――」、確かにその通りだろう。
・『「報道は寝耳に水」 偶然にも春闘を前にセブン&アイ労連と経営側の労使協議が予定されていた。イトーヨーカドー労組、そごう・西武労組、セブン&アイ・フードシステムズ労組などセブン&アイ各社の労組幹部が、井阪社長らセブン&アイ経営陣と賃上げについて事前協議する。 この年、われわれそごう・西武労組は春闘で具体的な賃上げを含む労働条件改定を要求提案する方針を固め、最終調整の段階に入っていたが、株式売却という衝撃のニュースが流れ、方針転換するかどうかの判断を迫られることになった。 さらにこの労使協議機会で、私はそごう・西武売却報道について井阪社長に現場の声を伝え、要望を届けようと考えていた。 私が主張したのは、「雇用の維持」と「事業の継続」、そして「情報開示」の3つである。以後2023年8月のストライキまで、この3点をブレずに一貫して言いつづけることになる。 「自分たちの店はどうなるのか、お客さま対応は、など不安の声が上がっています。事業会社が(交渉の)主語ではないとなれば、どこまでが事実なのか知りたいというのが現場の本音です。少なくとも報道が先行して混乱しないように事前に情報共有していただきたい。また、売却にあたっては百貨店価値というよりも不動産価値を打ち出しているようにも映ります。百貨店ブランドを守る、雇用を守るということは胸に留めていただきたい」 井阪社長の回答は、相変わらずとらえどころがないものだった。 「かしこまりました。ただ、報道は寝耳に水で私どもが発信したものではないということは理解していただきたい。そごう・西武は駅前立地の資産価値以外にも顧客基盤、取引先さま、優秀な社員などポテンシャルがある会社です。ベストオーナーと組めばもっとバリューが発揮できるはずです。そう考えていただきたい」 報道を肯定するわけでもないが、「絶対に売らない」というわけでもない。「報道は寝耳に水」という言葉にも、違和感があった。セブン&アイという会社は身内には秘密主義なのに、なぜかメディアには容易に経営情報が漏れる。2月7日発売の経済誌でも、セブン&アイの内部資料を入手したとして、DX戦略の頓挫の詳細を報じていた。本当に不思議な話だ』、「セブン&アイという会社は身内には秘密主義なのに、なぜかメディアには容易に経営情報が漏れる。2月7日発売の経済誌でも、セブン&アイの内部資料を入手したとして、DX戦略の頓挫の詳細を報じていた。本当に不思議な話だ」、なるほど。
・『「もう百貨店ではなくなるかもしれない」 そごう・西武の売却を検討していることを、井阪社長がはじめて公に認めたのはこの2ヵ月後、4月7日のセブン&アイの決算発表の場である。 その間、セブン&アイからはなんの発表もないにもかかわらず、「売却先」をめぐる報道は過熱していた。 〈そごう・西武、入札締め切り 売却先、セブンが絞り込みへ〉(朝日新聞2月22日付) セブン&アイ・ホールディングスは21日、傘下で百貨店を運営するそごう・西武の売却先を募る1次入札を締め切った。 〈1次入札、複数応募か〉(読売新聞2月22日付) 投資ファンドなど複数の応札があったとみられ、今後、売却額など条件面の本格的な交渉に入る。 〈1次入札に複数応募 そごう・西武売却〉(共同通信2月22日付) 三井不動産や三菱地所も入札への参加を検討していたが、見送ったもようだ。再開発による収益性を考慮しても、従業員の引き受けなどの負荷が重荷だったとみられる。 〈そごう・西武売却、魅力は? 駅近の一等地 多い「借り物」複数陣営が応札〉(朝日新聞2月25日付) 複数陣営が応札したとみられる背景にあるのが「不動産」としての魅力。国内有数の一等地に主要店を構える一方、(中略)店舗の土地や建物は「借り物」が目立つ。同社によると、西武池袋本店は建物の大半を自社で持つ一方、地権者は複数いる。 〈「そごう・西武売却」、次入札で残った顔ぶれ〉(東洋経済オンライン2月28日付) 1次入札は2月21日に締め切られ、ゴールドマン・サックスをはじめとする外資系投資銀行や、多数の投資ファンドなどが応札。その結果、米大手投資ファンドのブラックストーン・グループ、米ローン・スター、米フォートレス・インベストメント・グループ、そしてシンガポール政府投資公社(GIC)の4社が残り、2次入札に進んだという。 私たちに見えないところで、事態が激しく動いていた。 東洋経済オンラインの記事では、匿名のそごう・西武幹部が「彼らに売却されたら店舗を単なる不動産として扱われ、切り売りされて終わるのではないか。もう百貨店ではなくなるかもしれない」と語っている。たしかに、応札したのがすべて投資ファンドだということが懸念材料だった。 その後の報道によると、2次入札に進んだ4社からブラックストーンが降り、5月に行われた2次入札にはローン・スター、シンガポール政府投資公社、そしてフォートレスの3社が参加したという。 3社のうち、どこが選ばれるのか――。それも結局、日経新聞による報道が先行した。 続きは<池袋西武がヨドバシHDに買われたらどうなるか 社員と労組が恐れた「最悪の展開」>にて公開中。 百貨店人としてのプライドを守るため、5000人の社員の先頭に立ち、闘いつづけた熱い男の魂の記録『決断 そごう・西武61年目のストライキ』が絶賛発売中!』、「応札したのがすべて投資ファンドだということが懸念材料だった」、なるほど。
第三に、9月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したそごう・西武労働組合 中央執行委員長の寺岡泰博氏による「ヴィトンやエルメスを失ってしまう…セブン&アイに売られた名門百貨店の悲しき末路」を紹介しよう。
・『大手デパート「そごう・西武」の旗艦店・西武池袋本店で大改装作業が進んでいる。セブン&アイ傘下だったそごう・西武の株式を2023年9月に買収した米投資運用会社・フォートレスは、西武池袋本店の不動産を3000億円でヨドバシカメラに売った。その結果、2025年夏のグランドオープン後は、売り場面積の半分弱をヨドバシカメラが占めるようになる。こうしたM&Aの意思決定プロセスにおいて、一貫して蚊帳の外に置かれていた従業員たちの不安と苦悩を、当時の労組トップが赤裸々に語った。※本稿は、寺岡泰博『決断 そごう・西武61年目のストライキ』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『労働組合の知らぬ間にニュースで自社の重要発表が NHKのニュース速報が流れた。 「セブン&アイの取締役会が、2023年2月1日を契約実行日とするフォートレスへのそごう・西武株式譲渡を決議」 これから労組への説明というタイミングでまたもリークかーーこれで何度目だろう。つくづく溜め息が出た。 報道によると、セブン&アイはフォートレスにそごう・西武の株式を譲渡する契約を締結することを2022年11月11日の臨時取締役会で決議し、フォートレスのビジネスパートナーとしてヨドバシホールディングスが加わるという。2023年2月1日の株式譲渡の完了(クロージング)まで、「今後の協議で詰めていく」とされていた。 あとになって分かったことだが、売却後の池袋本店の大まかなフロアプランも11日の臨時取締役会で示されていた。それによると、西武池袋本店本館の北ゾーンにヨドバシカメラが入る計画だという。 池袋本店は細長い廊下のような建物で、本館は北、中央、南の3ゾーンに分かれている。池袋駅は南より北側の人流が多く、北ゾーンがもっとも集客力がある。ルイ・ヴィトン、グッチなどのハイブランドも1階北ゾーンに入居している。 フォートレスのプランでは、この北ゾーンからハイブランドを立ち退かせ、すべてヨドバシカメラにするというのである』、「池袋駅は南より北側の人流が多く、北ゾーンがもっとも集客力がある。ルイ・ヴィトン、グッチなどのハイブランドも1階北ゾーンに入居している。 フォートレスのプランでは、この北ゾーンからハイブランドを立ち退かせ、すべてヨドバシカメラにする」、なるほど。
・『労働組合としてのいらだち おカネを出す人が一番強い ヨドバシが北ゾーンに入居することにこだわっているのは、もうひとつ理由があった。池袋本店から北側に向かって歩くと左にビックカメラ、右にヤマダデンキの大型店が並ぶ。仮に現在の池袋本店の北ゾーンにヨドバシカメラが入ると、ビックカメラ、ヤマダデンキに向かう人たちをその手前でせき止めてしまうことになる。ライバルのビックカメラ、ヤマダに強力な打撃を与えることができる立地なのだ。 ヨドバシはさらに手を打っていた。 池袋本店の地下街から東側に広がる約1200坪にわたるショッピングセンター「池袋ショッピングパーク(ISP)」の株式をヨドバシホールディングスが取得する方向だというのだ。 ISPには現在約60のアパレルや飲食店、食料品店が入居するが、ここにもヨドバシカメラが入れば、さらにビックカメラ、ヤマダデンキへの人流は細ることになる。 井阪隆一社長(セブン&アイHD)に近いと見られていた社外取締役の伊藤邦雄氏でさえ、「気がついたら『ヨドバシ百貨店』になっているようなことは、やってはだめだ。あくまでそごう・西武が、百貨店として成長できるプランでなければだめなんだ」と言っていたと聞く。 しかし、「結局、おカネを出す人が一番強い」とあるアナリストが言っていたように、2000億円を出資する予定のヨドバシカメラに発言権があるのは間違いなかった。) これほど重要な決定が、労働組合にいっさいなんの説明も連絡もなく、抜き打ちのような形で実行されてしまったことに、大きな衝撃を受けた。 2022年11月11日午後の臨時中央経営協議会でそごう・西武の林拓二社長は冒頭突如立ち上がり、「申し訳ありません」とわれわれに頭を下げた。 「前日から様々な報道が先行し、当社で働く従業員の皆さまやステークホルダー(利害関係者)、お客さまに多大な不安を与えたことについて、大変申し訳なく、あらためてお詫びを申し上げます」』、「池袋本店の北ゾーンにヨドバシカメラが入ると、ビックカメラ、ヤマダデンキに向かう人たちをその手前でせき止めてしまうことになる。ライバルのビックカメラ、ヤマダに強力な打撃を与えることができる立地なのだ。 ヨドバシはさらに手を打っていた。 池袋本店の地下街から東側に広がる約1200坪にわたるショッピングセンター「池袋ショッピングパーク(ISP)」の株式をヨドバシホールディングスが取得する方向だというのだ。 ISPには現在約60のアパレルや飲食店、食料品店が入居するが、ここにもヨドバシカメラが入れば、さらにビックカメラ、ヤマダデンキへの人流は細ることになる・・・井阪隆一社長(セブン&アイHD)に近いと見られていた社外取締役の伊藤邦雄氏でさえ、「気がついたら『ヨドバシ百貨店』になっているようなことは、やってはだめだ。あくまでそごう・西武が、百貨店として成長できるプランでなければだめなんだ」と言っていたと聞く。 しかし、「結局、おカネを出す人が一番強い」とあるアナリストが言っていたように、2000億円を出資する予定のヨドバシカメラに発言権があるのは間違いなかった」、なるほど。
・『いったいどういうことなのか 労働組合の頭越しの決定 しかし、林社長に謝られても、結果は覆らない。組合側からは当然、厳しい言葉をぶつけた。 「秘密保持の観点やインサイダー取引に抵触するとの懸念から情報開示が難しい状況とのことでしたが、これだけ外部には情報漏洩をしながら、当社で働く従業員には『決定事項は何もない』とは、いったいどういうことなのか。あまりにも、働く従業員や労働組合を置き去りにした対応なのではないでしょうか」 「今後どんなにきれいなメッセージを並べられても真正面から受け止めることができません。労働組合は個人の私利私欲のために動いているわけではありません」 11月11日の中央経営協議会で「申し訳ない」と頭を下げた林社長は、その後、ある決意を固める。) 社長自ら各店舗に出向いて説明行脚する、「店舗ラウンド」をするというのである。 様々な偶然も重なって社長に抜擢されたが、林さんは本来現場の社員に非常に近い心情を持つ人である。今回の株式売却で従業員に不安が広がっていることは「謝っても謝りきれない」ので、11月16日から全10店舗を回って社員に直接思いを伝えたいという』、「様々な偶然も重なって社長に抜擢されたが、林さんは本来現場の社員に非常に近い心情を持つ人である。今回の株式売却で従業員に不安が広がっていることは「謝っても謝りきれない」ので、11月16日から全10店舗を回って社員に直接思いを伝えたいという」、なるほど。
・『社長の全店舗行脚でも拭えきれない不安 林社長はそごう神戸店、西武高槻店がエイチ・ツー・オーリテイリングに営業譲渡された際にも、現地を回って従業員と直接対話をしたことがある。経営幹部からは「かえって混乱を招く」と止められたが、林社長の意思で強行した。林氏はかつて神戸店の店長を務めた経験があり、とくに思い入れが強いということもあった。 神戸店ではかつての部下らに対し、「申し訳ありません」と深々と頭を下げたと聞いている。 11月16日から始めた全店舗行脚で、社長は営業時間前の部課長会などに参加した。 「今回のディールはそごう・西武を再成長させるためのものです。私は、セブン&アイ・ホールディングスと井阪社長を信じています。従って悪いようにはならない、させない。だから安心して目の前の業務、繁忙期を乗り切ってください」) しかし、私はその話を聞いても不安を拭いきれなかった。 林社長の気持ちは本物だろう。さもなければ、この混乱期に10店舗を回って直接現場の社員に謝罪するという行動に出るはずがない。しかしセブン&アイは、本当に「悪いようにしない」だろうか。 ちょうどこの時期、そごう広島店では本館を改装し、新館から退去して本館にまとめる作業に入っていた。今後もこのまま営業を続けていけるのか、不安が広がっていた。そしてその不安は、そごう・西武の社員すべてが共有する不安でもあった』、「しかしセブン&アイは、本当に「悪いようにしない」だろうか」、妥当な疑問だ。
・『百貨店らしくない店で高級品を買いたくない 2022年11月21日に行われたそごう・西武労働組合の臨時中央大会では、組合の各支部から厳しい声が寄せられた。 「1月末の報道(編集部注/2022年1月31日に日経新聞が報じた)以降、お取引先さまから『先の案件は依頼できない』など厳しいお言葉を頂戴することが続き、普段の営業活動に支障が出ている。事業の特性上、交渉期間や取引納入期間が長い案件が多いことも鑑み、お取引先さまに根拠のある説明ができる安心材料が早くほしいと感じている」(商事支部の組合代議員)) 「お客さまから、『百貨店らしくないお店では高級品を買いたくない』というリアルなお声を頂戴することもあります。そのような中で、当社株式売却の報道があり、実際に納品が先になる高級家具の販売がキャンセルになるといった事案も発生しました。営業体制はなにも変わらなくても、すでに報道だけでブランド毀損は始まっているのだと感じています」(池袋支部の組合代議員) お客さまからの声も報告された。 「そごう・西武は百貨店ではなくなってしまうのかという不安」 「ハレの日需要や継続的なメンテナンスが必要な高額品の買い控え」 「問い合わせに対し曖昧な受け答えしか返ってこない現状」 こうした意見は「ブランド毀損」「信用・信頼の低下」「当社および従業員への不信」という3つに集約し、経営陣に伝えた。 11月22日には、労働組合としてアメリカのフォートレス本社に意見書を送付し、事業継続や従業員の雇用維持に影響が出るプランが提示された場合、「労働組合として明確に反対する」ことを伝えた。 11月24日には、フォートレスからそごう・西武経営陣に池袋本店のフロアプランが提示されている。それによると、低層階を中心に全面積の5割がヨドバシカメラ、残った部分で百貨店を展開するという』、「実際に納品が先になる高級家具の販売がキャンセルになるといった事案も発生しました。営業体制はなにも変わらなくても、すでに報道だけでブランド毀損は始まっている・・・「ハレの日需要や継続的なメンテナンスが必要な高額品の買い控え」・・・池袋本店のフロアプランが提示されている。それによると、低層階を中心に全面積の5割がヨドバシカメラ、残った部分で百貨店を展開するという」、私は「ヨドバシカメラ」の会員だが、同社が大きく存在感を増す「西武」で買い物をしたいとは思わない。
・『ルイ・ヴィトンやエルメスを失ってしまうかもしれない 2022年11月11日のセブン&アイ臨時取締役会で示されたのは北ゾーンを中心に3割をヨドバシにする案だったようだが、結局、中央ゾーンも低層階を中心にヨドバシが入るとされていた。 フォートレス陣営は「話し合いの余地はない。これで決定です」と話したという。 もしこのプランが実行されれば、もっとも集客力のある北ゾーンと、中央ゾーンの低層階を失い、池袋本店の大きな魅力のひとつであるルイ・ヴィトン、エルメスなどのハイブランドも失うことになるかもしれない。 井阪社長から4者会談の場で「ヨドバシカメラが入るにしても低層階を占めるなどということはありません。組合員の皆さまにも、機関紙を通じてぜひそれを伝えてください」と言われていたが、この話も結果的に事実とは違った。「現時点で決定事項はない」という言い方で、その後どうなっても言い訳できるように逃げ道を残していたのだ。 「日本第3位」のデパートの座から転落し、お取引先さまから見た魅力も半減どころではないだろう。影響は他店にも及ぶ。2016年にそごう神戸店を営業譲渡したあと、大津店や西神店、徳島店など関西の店舗は軒並み営業力を落とし、結果的に営業終了に追い込まれた。) 基幹店が倒れれば、周辺も巻き込まれる。それはすでに経験済みだった。まして池袋本店は神戸店よりさらに大きな巨艦店である。その北、中央ゾーンを失うことで、そごう・西武という会社自体が今後、立ち行かなくなる可能性もありうる。 さらに、フォートレスからはじめて示されたそのフロアプランに林社長はその場では反論できず、そのまま持ち帰らざるを得なかったという。それを聞いてまた腰が抜けそうになった。 しかもこの時点で、われわれ労働組合にはいまだフロアプランが正式に提示されていない。2022年12月14日に行われた4度目の4者会談でも、井阪社長は「フロアプランは未定」と言い張った』、ここまでみえみえの嘘をつくとは驚かされた。
・『そごう・西武労組には余計な情報は与えない 「フロアプランはどうなるんですか、もう決まっているんですか」 「決まっていません。むしろそれはこれからです」 「普通に考えたら、ヨドバシがお金を出して買った土地で、自らも営業しようとすれば、自分の土地なんだから当然一番いい場所を自分が使いますよね。そうなればわれわれそごう・西武は、百貨店として生き残れなくなるんじゃないですか」) 「このディールの『主語』はあくまでそごう・西武だから、もっと言うと百貨店を知っているのはそごう・西武なんだから、ヨドバシとフォートレスと、われわれセブンではなくてそごう・西武とで誠実に協議して、リースラインを決めればいいんですよ」 「表向きはそうかもしれませんが。自分の土地は、まずは自分がここを使うと決め、残りを君らが使っていいよ、とするのが普通じゃないですか」 「そんな話ではないですから」 「株式譲渡契約が締結されましたね。その契約の中身は知りませんが、ヨドバシが西武池袋本店のどこからどこまで使うというのは、すでに契約書に盛り込まれているんですか」 「そんな契約はありません。むしろヨドバシとそごう・西武とフォートレスが誠実協議をして、面積を決めるという話になっているんだから。それはまさに、これからの話し合い次第です」 フォートレスはすでに「決定事項」としてフロアプランをそごう・西武経営陣に提示しているというのに、井阪社長は「まだ決まっていない」と言う。労組には余計な情報を与えないという姿勢がありありと感じられた。 何が真実なのか。 苛立ちと不満が募った』、「フォートレスはすでに「決定事項」としてフロアプランをそごう・西武経営陣に提示しているというのに、井阪社長は「まだ決まっていない」と言う」、百貨店ビジネスが理解できない「井阪社長」は本当に無責任だ。これまで物言う株主の圧力をかわすために、「西武」を血祭に挙げたのであれば、「西武」は浮かばれないだろう。外部株主の「伊藤邦雄」氏にも頑張ってもらいたいところだ。
タグ:ダイヤモンド・オンライン 寺岡泰博氏による「ヴィトンやエルメスを失ってしまう…セブン&アイに売られた名門百貨店の悲しき末路」 寺岡泰博『決断 そごう・西武61年目のストライキ』(講談社) 「池袋駅は南より北側の人流が多く、北ゾーンがもっとも集客力がある。ルイ・ヴィトン、グッチなどのハイブランドも1階北ゾーンに入居している。 フォートレスのプランでは、この北ゾーンからハイブランドを立ち退かせ、すべてヨドバシカメラにする」、なるほど。 「池袋本店の北ゾーンにヨドバシカメラが入ると、ビックカメラ、ヤマダデンキに向かう人たちをその手前でせき止めてしまうことになる。ライバルのビックカメラ、ヤマダに強力な打撃を与えることができる立地なのだ。 ヨドバシはさらに手を打っていた。 池袋本店の地下街から東側に広がる約1200坪にわたるショッピングセンター「池袋ショッピングパーク(ISP)」の株式をヨドバシホールディングスが取得する方向だというのだ。 ISPには現在約60のアパレルや飲食店、食料品店が入居するが、ここにもヨドバシカメラが入れば、さらにビックカメラ、ヤマダデンキへの人流は細ることになる・・・井阪隆一社長(セブン&アイHD)に近いと見られていた社外取締役の伊藤邦雄氏でさえ、「気がついたら『ヨドバシ百貨店』になっているようなことは、やってはだめだ。あくまでそごう・西武が、百貨店として成長できるプランでなければだめなんだ」と言っていたと聞く。 しかし、「結局、おカネを出す人が一番強い」とあるアナリストが言っていたように、2000億円を出資する予 定のヨドバシカメラに発言権があるのは間違いなかった」、なるほど。 「様々な偶然も重なって社長に抜擢されたが、林さんは本来現場の社員に非常に近い心情を持つ人である。今回の株式売却で従業員に不安が広がっていることは「謝っても謝りきれない」ので、11月16日から全10店舗を回って社員に直接思いを伝えたいという」、なるほど。 「しかしセブン&アイは、本当に「悪いようにしない」だろうか」、妥当な疑問だ。 「実際に納品が先になる高級家具の販売がキャンセルになるといった事案も発生しました。営業体制はなにも変わらなくても、すでに報道だけでブランド毀損は始まっている・・・「ハレの日需要や継続的なメンテナンスが必要な高額品の買い控え」・・・池袋本店のフロアプランが提示されている。それによると、低層階を中心に全面積の5割がヨドバシカメラ、残った部分で百貨店を展開するという」、私は「ヨドバシカメラ」の会員だが、同社が大きく存在感を増す「西武」で買い物をしたいとは思わない。 ここまでみえみえの嘘をつくとは驚かされた。 「フォートレスはすでに「決定事項」としてフロアプランをそごう・西武経営陣に提示しているというのに、井阪社長は「まだ決まっていない」と言う」、百貨店ビジネスが理解できない「井阪社長」は本当に無責任だ。これまで物言う株主の圧力をかわすために、「西武」を血祭に挙げたのであれば、「西武」は浮かばれないだろう。外部株主の「伊藤邦雄」氏にも頑張ってもらいたいところだ。
鉄道(その13)(豪雪で露呈 オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り、「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」 自前の工場で徹底整備、JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは) [産業動向]
鉄道については、本年2月19日に取上げた。今日は、(その13)(豪雪で露呈 オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り、「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」 自前の工場で徹底整備、JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは)である。
先ずは、本年3月1日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「豪雪で露呈、オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/737656
・『2023年12月初旬、ドイツやオーストリアなど中欧と呼ばれる地域を中心に、非常に強い寒波が襲った。ミュンヘンなど大都市周辺でも、積雪は数十センチを超え、チェコ共和国南部では同国での観測史上最低となるマイナス28℃を記録した。 除雪が追い付かないほどの積雪によって交通網はマヒし、ドイツ南部からオーストリアへかけての地域は、空路・陸路ともに数日間にわたって交通機関が全面的にストップするなど大混乱となった』、大変だ。
・『主力特急車両が相次ぎダウン かつてないほどの低い気温と積雪により、除雪完了に伴う運行再開後も列車に不具合が相次いだ。オーストリア連邦鉄道(OBB)の都市間特急「レイルジェット」は2023年の時点で60本の列車がオーストリアおよびその周辺国との間を結んで運行しているが、このうちの1割にあたる6本が完全に使用不能となり、工場で修理せざるをえないという緊急事態となった。 だが、工場も修理だけではなく、日常の定期検査も並行して行わなければならないというキャパシティの問題があるため、使用不能となった編成のうちすぐに修理に取り掛かれたのは6本中4本だけだった。 ほかの54本の編成についても、一時は完全な状態で運行ができる編成がわずかに12本しかなく、残りは営業用として動かせる状態にはあるものの、ドアやトイレなどが故障した不完全な状態で営業せざるをえなかった。運行中に故障が悪化し、運転打ち切りや運休が相次ぐ結果となった。) 運休こそ逃れた列車に関しても代替運行となり、ローカル列車などに使用される通常客車を使用した列車も見られた。レイルジェットは、ビジネスクラスと呼ばれる特等席を筆頭に通常の1等・2等車、そして食堂車を連結しているが、代替の列車にはビジネスクラスや食堂車は連結されず、サービスダウンは否めなかった。 レイルジェットは、従来の客車特急列車インターシティの上位に位置する列車として2008年に誕生。客車ではあるが1両ごとに切り離しはできず、完全に固定された7両の編成を機関車が牽引・推進するもので、客車列車というよりは電車に近い。いわゆる高速列車ではないものの、最高時速は230kmに達し、洗練された内外装デザインも含め、従来型客車の旧態依然としたイメージを打ち破る車両となった。 2016年までの間に60本が製造され、チェコ鉄道にも同型車両が7本納入された。現在は、ウィーン―ザルツブルク間などの主要幹線において、新幹線で言うところの「のぞみ」や「こだま」のような、速達タイプ(RJX)と各駅停車タイプ(RJ)が設定されるなど、オーストリア国内における都市間輸送の大半をこのレイルジェットが担う形となっている』、「レイルジェットは、従来の客車特急列車インターシティの上位に位置する列車として2008年に誕生。客車ではあるが1両ごとに切り離しはできず、完全に固定された7両の編成を機関車が牽引・推進するもので、客車列車というよりは電車に近い。いわゆる高速列車ではないものの、最高時速は230kmに達し、洗練された内外装デザインも含め、従来型客車の旧態依然としたイメージを打ち破る車両となった。 2016年までの間に60本が製造され、チェコ鉄道にも同型車両が7本納入された。現在は、ウィーン―ザルツブルク間などの主要幹線において、新幹線で言うところの「のぞみ」や「こだま」のような、速達タイプ(RJX)と各駅停車タイプ(RJ)が設定されるなど、オーストリア国内における都市間輸送の大半をこのレイルジェットが担う形」、なるほど。
・『1両ごとに切り離せないレイルジェット 今回、運行開始以来大きな問題のなかったレイルジェットに、記録的な大雪と寒波という想定を超えた異常気象が襲ったことで、不具合が多発してしまった。さすがのオーストリア連邦鉄道もここまでの異常気象は想定していなかったようだが、それを差し引いても予備車がほとんどない状態で運用を回している現状について、見通しが甘かったのではないかという声も聞かれた。 予備車不足の問題もさることながら、もう1つ大きな問題となったのが、固定編成のレイルジェットならではの「不具合発生に伴う編成全体の離脱」だ。 客車の利点の1つとして、柔軟な編成が組めることが挙げられる。乗客の増減に合わせて1両単位で車両を連結・切り離しできるので、鉄道会社によっては団体客が乗車する日に1両追加で連結するということもやっていた。) これは、万が一車両の不具合が発生した際、その不具合があった車両だけを切り離し、別の運行可能な客車を代わりに連結できるということでもある。寝台車のような特殊な車両の場合は同じ設備の車両が用意できず、個室寝台の代わりがクシェット(簡易寝台)や座席車になってしまうといったことは過去に何度も発生してきたが、運休するよりはマシで、本来のサービスを受けられない乗客に対しては返金などのお詫びをして終了となる。 ところが、固定編成のレイルジェットは、故障した1両だけを切り離すということができない。ドアやトイレといった部分的な故障でも、修理するためには7両編成丸ごと工場へ入場させなければならない。 日本的に考えると、客用ドアの故障は大きなトラブルである。不具合が発生すれば工場へ即入場となるだろう。だが、今回はただでさえ故障が相次いで工場が逼迫している状況で、こう言っては何だが「たかがドア1カ所」のために編成を丸ごと工場入りさせて列車を運休することなどできない。乗客には多少の不便をかけることにはなるが、運休することを考えれば走らせたほうがまだマシなため、故障した状態のまま営業に就かせるケースが相次ぐことになる』、「固定編成のレイルジェットは、故障した1両だけを切り離すということができない。ドアやトイレといった部分的な故障でも、修理するためには7両編成丸ごと工場へ入場させなければならない。 日本的に考えると、客用ドアの故障は大きなトラブルである。不具合が発生すれば工場へ即入場となるだろう。だが、今回はただでさえ故障が相次いで工場が逼迫している状況で、こう言っては何だが「たかがドア1カ所」のために編成を丸ごと工場入りさせて列車を運休することなどできない。乗客には多少の不便をかけることにはなるが、運休することを考えれば走らせたほうがまだマシなため、故障した状態のまま営業に就かせるケースが相次ぐことになる」、これは大変だ。
・『「固定編成」は欧州に向いているのか? ヨーロッパの鉄道は過去20年で大きく変化し、列車の編成も日本のように動力分散方式の電車・ディーゼルカーや、客車列車でもそれに準ずる固定編成の列車が増えてきた。2023年冬から走り始めた夜行列車「ナイトジェット」の最新型も、ついに固定編成を採用するに至った。 ただ前述の通り、固定編成の列車はどこかに不具合が発生した場合、編成単位での工場入りが必要となる。日本と異なり不具合の発生確率が高いヨーロッパでは、故障のたびに運休が発生しては、それこそ運用が回らなくなってしまう。 ある意味では、柔軟性という面において利点のある固定されていない編成のほうが、ヨーロッパの列車運用には合っているのかもしれない』、「固定編成の列車はどこかに不具合が発生した場合、編成単位での工場入りが必要となる。日本と異なり不具合の発生確率が高いヨーロッパでは、故障のたびに運休が発生しては、それこそ運用が回らなくなってしまう。 ある意味では、柔軟性という面において利点のある固定されていない編成のほうが、ヨーロッパの列車運用には合っているのかもしれない」、その通りだ。
次に、4月20日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」、自前の工場で徹底整備」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/748914
・『鉄道黎明期より長い時間を歩んできたヨーロッパの多くの国では、車両を含む鉄道産業遺産が国や地方自治体の管理する博物館を中心に保存され、民間団体が廃車となった車両を買い取って動態保存している例も多い。そんな中、異色の存在となっているのがイタリアのFondazione FS Italiane(イタリア鉄道財団)だ。 イタリア鉄道財団は、イタリア鉄道、トレニタリア(イタリア鉄道旅客輸送子会社)、RFI(イタリア鉄道インフラ子会社)の3社のCEOが創立メンバーとなって、2013年3月6日に財団の設立趣意書および定款に署名した。2015年12月には、政府の文化遺産・活動・観光省が財団の「機関会員」として加わっている』、日本では「動態保存」は極めて少ないが、イタリアではかなり多いようだ。
・『鉄道遺産保存「財団」の財源は? 財団が設立された目的は、1839年に誕生したイタリア鉄道の膨大な歴史的・技術的遺産を国の歴史の重要な一部として強化し、無傷で将来の世代に引き渡すことで、長い歴史の中における国の成長と国家統一の象徴としての鉄道の重要性を証明することに加え、イタリア国家の利益のために、観光の面で鉄道需要の回復を刺激することが最終的な目標となっている。 その主な活動内容は、400両以上の歴史的鉄道車両の保存(うち約200両は動態保存され現在も稼働中)、イタリア鉄道に関するさまざまな文献資料の保存、ナポリ近郊のピエトラルサと、トリエステにある鉄道博物館の維持管理、運休している風光明媚な鉄道路線の観光路線としての再生などだ。もちろん、純粋な維持管理だけではなく、若い世代への技術継承も含まれる。技術者の育成は、古い技術の維持には必要不可欠なことだ。) 気になるのは財源だ。前述の3社からの資金や政府の補助金などがベースだが、不動産収入や株式運用による資産、地方自治体や企業からの寄付金なども使われている。ただし、個人からの寄付はとくに募っていない。筆者は以前に寄付を申し出たが、十分な財源があるので大丈夫と断られてしまった。このあたりは、博物館やイベントなどで寄付を募っている英国やドイツなどと異なり興味深い。 財団のロゴは、イタリア鉄道(FS)で1966~1982年に使用された、通称「テレビロゴ」(文字周囲の枠がブラウン管時代のテレビの画面に似ているところからそう呼ばれる)をベースにしている。 古典車両を維持管理するための中枢とも言うべき車両工場は全国に3カ所あり、各工場は原則的に車両の種類によって役割が分担されている。いったい、工場ではどのような作業が行われているのだろうか。財団が保有する工場の一つである、ラ・スペツィア工場を取材する機会を得た。 ▽財団の工場内部を取材(ラ・スペツィアはイタリア北西部、リグーリア州の東部に位置する人口約9万人の港町で、首都ローマとジェノヴァを結ぶ幹線上に位置する。ラ・スペツィア工場は1926年に建設され、当時はまだ三相交流方式という特殊な電化方式を採用していたイタリア国鉄の電気機関車を整備する工場として使用された。 2014年にイタリア鉄道財団へ譲渡され、以降は主に財団の保有する電気機関車の定期点検やオーバーホールのほか、動かない状態で保管されていた車両の修復作業なども請け負っている。) 工場建屋内へ入ると、戦前製の古い機関車がずらりと並んでいる。 財団の保有する車両は、1:動態保存(本線走行可能)2:動態保存(本線走行不可)3:静態保存 の3種類に大別される。 1は動く状態に完全復元され、信号などの保安装置も現在の最新システムに換装し、イベント時に本線上を走行させることが可能な車両だ。2は、電気装置などはすべて稼働状態となっていて、パンタグラフを上げて電気を通せば動かすことができるが、保安装置が現代の基準に合致しないため、構内など閉鎖された場所でのデモ走行に限られる。日本で言えば「碓氷峠鉄道文化むら」(群馬県)に保存されているEF63形電気機関車のようなものだ。3は文字通り、動力や制御装置が稼働できない状態で、博物館などで保存・展示させるための車両だ。 工場建屋の中に1両、ピカピカに磨き上げられた電気機関車がいる。E424型249号機といい、第二次大戦直後の1946年に製造された4動軸の機関車だ。主にローカル線で旅客・貨物列車の両方に使えるよう設計され、荷物や郵便を運べるように車体中央にはシャッター付きの荷室が設けられたユニークな機関車だ。 後年、近郊列車をプッシュプル運転する目的で、推進運転制御装置を搭載し、色を当時の最新塗装へ変更して使用されたが、その改造の際に元番号+200へと改番されている。つまり、オリジナルの状態ではE424型049号機だった』、「1は動く状態に完全復元され、信号などの保安装置も現在の最新システムに換装し、イベント時に本線上を走行させることが可能な車両だ。2は、電気装置などはすべて稼働状態となっていて、パンタグラフを上げて電気を通せば動かすことができるが、保安装置が現代の基準に合致しないため、構内など閉鎖された場所でのデモ走行に限られる。日本で言えば「碓氷峠鉄道文化むら」(群馬県)に保存されているEF63形電気機関車のようなものだ。3は文字通り、動力や制御装置が稼働できない状態で、博物館などで保存・展示させるための車両だ」、なるほど。
・『見えない部分も解体して徹底修復 現場で案内をしてくれた技師いわく、この車両は動かせる状態にあるが、信号装置が古い状態のままで、かつパンタグラフは現在本線上での使用を認められてない古いタイプ(FS Tipo42)を搭載しているため、本線走行はできないという(前述「2」に該当)。 ただ、現場のこだわりで車体表記は元の番号である049号機へ塗り替えており(製造銘板などは249号機のまま)、前面の目立つ位置に取り付けられていた制御回路引き通し線も撤去し、オリジナルの古いパンタグラフとともに美しい状態で保存できている、と技師は胸を張っていた。動かすことはできるので、工場内のイベントなどでは、今後も元気な様子を見ることができるだろう。) 隣の建屋では、完全に解体された625型蒸気機関車の修復が行われていた。古い車両は、外側がきれいでも内側に傷んでいる部分が多く、この625型も車体の基礎となる台枠部分が腐食して、かなり鉄板が薄くなっているのが見た目にもわかる。完全にばらした状態から修復するのは、こうした見えない部分の補強をするためである。 屋外には、整備が終わった状態の車両から整備待ちで保管されている車両まで数十両が留置されている。その中でもとくに気になったのは、現存するのがここで保管されている2両だけというALn442-448型気動車だ』、「この車両は動かせる状態にあるが、信号装置が古い状態のままで、かつパンタグラフは現在本線上での使用を認められてない古いタイプ(FS Tipo42)を搭載しているため、本線走行はできないという(前述「2」に該当)」、なるほど。
・『朽ち果てた車両を「救出」 ALn442-448型は、1955年にブレダ(現在の日立レールの前身であるアンサルドブレダの合併前の会社)で製造された気動車で、1957年のTEE(ヨーロッパ国際特急)運行開始時に使用された歴史的な車両だ。だが、数両を残してすべて解体され、ミラノの科学技術博物館に保存された1両もアスベストが問題となって展示が取りやめとなり、そのまま解体されてしまった。 最後に残ったALn442-448型2008号機は、アスベスト除去業者へ引き渡されたものの、その業者が倒産してしまい、屋外で雨ざらしとなって何年も放置され、すっかり朽ち果てていた。本来であれば解体されてもおかしくはないところだが、財団が救出して引き取ったものだ。 保管された車両を拝ませてもらった時には、あまりの朽ち果てた状態に愕然とした。実際、技師もこれからどうやって修復をしていこうかと頭を悩ませていると語っていたが、3年前に同様の状態から見事に復活し、本線走行を行っているETR252型アルレッキーノの例を見れば、必ずや復活を果たせるだろうと期待せずにはいられない。) そんな財団の悩みが、1980年代以降に製造されたいわゆる新性能車両だ。1980年代というと、ちょうどチョッパ制御やインバーター制御など、半導体技術が世に出始めた頃である。 旧来の技術である抵抗制御などは、ある意味で言えば「溶接してハンマーで叩けば直せる」アナログ式なので、技術を継承さえすれば、理論上は半永久的に残すことができる。蒸気機関車は言わずもがな、電車や電気機関車も、古い時代の車両は動態保存されている車両が多い。 一方でチョッパ制御以降の車両は、制御装置に半導体を用いていることから、故障してしまえば部品の交換以外に修理の方法がない。ところが半導体は日進月歩で進化を続けており、古くなった製品はすぐに生産中止となることから、現役の車両ですら、まだ動く車両を廃車にして、予備部品の確保(共食い)を行っている車種もある』、「チョッパ制御以降の車両は、制御装置に半導体を用いていることから、故障してしまえば部品の交換以外に修理の方法がない。ところが半導体は日進月歩で進化を続けており、古くなった製品はすぐに生産中止となることから、現役の車両ですら、まだ動く車両を廃車にして、予備部品の確保(共食い)を行っている車種もある」、確かに「半導体」導入以降は「予備部品の確保(共食い)」が必要になるようだ。
・『鉄道遺産も絵画などと同様の価値 財団は現在、1両のチョッパ制御機関車(E632型030号機)を保有している。状況次第では今後も増えていくものと考えられ、予備部品の確保はもちろんのこと、万が一部品が枯渇した際にどう対処していくのかが将来的な課題と言えよう。 絵画など多くの文化的遺産を保有し、それらの修復技術にも定評があるイタリアは、産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている。 数年前から修復作業が進められているイタリアの伝説的な鉄道車両、ETR302型セッテベッロを含め今も修復を待つ車両は多いが、これらが再び息を吹き返し、イタリアの大地を駆け抜ける日もそう遠くない未来のことだろう』、「修復技術にも定評があるイタリアは、産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、「イタリア」が「修復技術にも定評がある」、「産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、注目すべき国の1つだ。
第三に、7月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏による「JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/346902
・『JR東日本とJR西日本は7月5日、旅客輸送量や労働生産人口の減少が見込まれる中、将来にわたり鉄道輸送事業を維持発展させ、利用者への安定的な輸送サービスを提供する目的で、車両の装置・部品共通化の検討を開始したと発表した。その狙いと、今後の可能性とは』、興味深そうだ。
・『鉄道車両の全ての部品が特注品なわけではない ひとくちに車両の「共通化」といってもさまざまなレベルがある。鉄道車両は基本的にオーダーメイドだが、当然、全ての部品が特注品なわけではない。日本の鉄道車両、特に電車は日立製作所、川崎重工業の子会社である川崎車両、JR東海の子会社である日本車輛製造、JR東日本の子会社である総合車両製作所、近鉄グループの近畿車輛の5社がほとんどを占める。 例えば相模鉄道のJR直通用車両「12000系」や、東急電鉄の田園都市線「2020系」、大井町線「6020系」、目黒線「3020系」、京王電鉄京王ライナー対応車「5000系」は、JR東日本の山手線・横須賀線「E235系」と同様の標準設計「sustina」を採用し、総合車両製作所で製造されている。 また、日立製作所のアルミ車両標準設計「A-train」は、東京メトロの「10000系」以降の多くの車両や、東武鉄道の「50000系」「60000系」、西武鉄道の「20000系」「30000系」など、JR東日本、大手私鉄、公営地下鉄、海外鉄道など広く用いられている。 これらメーカーの標準設計で製造された車両は、鉄道事業者ごとの特色を出すために前面形状こそ作り分けられているものの、よく見れば、車体の側面や内装はほとんど同じであることに気づくだろう。このように衝突安全性向上や環境負荷低減に対応しつつ、コスト削減を図るのも共通化の効果だ』、「これらメーカーの標準設計で製造された車両は、鉄道事業者ごとの特色を出すために前面形状こそ作り分けられているものの、よく見れば、車体の側面や内装はほとんど同じであることに気づくだろう。このように衝突安全性向上や環境負荷低減に対応しつつ、コスト削減を図るのも共通化の効果だ」、なるほど。
・『車両設計自体を共通化することも 車体の標準設計のみならず、車両設計自体を共通化することもある。例えば東海道・山陽新幹線では、JR西日本「500系」などの独自設計の車両が走っていたこともあるが、現在は「N700S」などに共通化されている。北陸新幹線でもJR東日本とJR西日本が同一設計の「E7/W7系」を導入した。 私鉄では東京メトロと東武鉄道が、地下鉄日比谷線向けに共通設計の「13000系」と「70000系」を近畿車輛に発注している。両系列は、前面形状を除く車体と走行関係のシステムは同一で、内装も装飾以外はおおむね共通化されているが、一部に構造が異なる点もある。 近年の鉄道車両の生産数は、新幹線やJR東日本の一部形式を除けば、多くても300~400両、ほとんどは100両程度と少ないため、量産効果が小さい。特に一部列車のみ日比谷線に乗り入れる東武鉄道は、必要な編成数がそれほど多くないため、独自設計の車両を製造すると高くつく。そこで東京メトロと一括して発注することで、性能や操作性を統一するとともにコストダウンを狙った。 だが、こうした車両設計の共通化は、上記新幹線や地下鉄など運行系統がほぼ一体化している路線であればともかく、全く違う地域を走る路線では、それぞれの環境や特性にあわせる必要があるため困難だ』、「近年の鉄道車両の生産数は、新幹線やJR東日本の一部形式を除けば、多くても300~400両、ほとんどは100両程度と少ないため、量産効果が小さい。特に一部列車のみ日比谷線に乗り入れる東武鉄道は、必要な編成数がそれほど多くないため、独自設計の車両を製造すると高くつく。そこで東京メトロと一括して発注することで、性能や操作性を統一するとともにコストダウンを狙った」、なるほど。
・『両社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大 今回の発表を受け、国鉄時代に全国に導入された「103系」や「205系」のように車両自体を共通化する方向に進むのでは、という反応も見られる。しかし、ホームドアの整備が進む現代では、車両と設備の整合が必要であり、都市部の車両をJR東日本は4ドア、JR西日本は3ドアに統一しているため、完全な共通化は不可能だ。そこでまずは装置・部品の共通化から検討に着手する。 電車には電機部品(パンタグラフ、制御装置、モーター、補助電源装置、バッテリーなど)、空気圧システム(コンプレッサー、ブレーキ装置、戸閉め装置)、空調、案内装置などさまざまな装置・部品が設置されている。これらは車両メーカーが製造する部品もあれば、東芝や東洋電機製造、三菱電機のように、主要電気装置や車両機器を手掛ける電機メーカーもある。 大掛かりなシステムは各社がサプライヤーとともに一貫して設計・製造している。安定調達や競争原理を考慮すれば、無理な統一はかえって非効率、コスト増にもなりかねない。ただ部品によっては事業者ごとのニーズに応じて、似たようなものを多品種少量生産している。 これらはサプライヤーにとって儲かる仕事ではなく、今後は発注数の減少が予想されるため、業界全体の効率化を図り、限られた人員や設備を各社の得意な領域に集中したい。そこでモーター、台車のオイルダンパー、パンタグラフ、行先表示器など、可能な範囲で装置・部品の共通化に着手し、各社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大するというのが今回の発表だ』、「今後は発注数の減少が予想されるため、業界全体の効率化を図り、限られた人員や設備を各社の得意な領域に集中したい。そこでモーター、台車のオイルダンパー、パンタグラフ、行先表示器など、可能な範囲で装置・部品の共通化に着手し、各社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大するというのが今回の発表だ」、なるほど。
・『今回の共通化検討が形になるのは5~10年後か 具体的には、まずJR東日本とJR西日本が共通化の方向性など土台作りを進め、続いて他の鉄道事業者や車両メーカー、サプライヤーと意見交換をして具体的な内容を詰める。そして共通化部品調達の仕組みを構築した上で、実際の車両に展開する。 現行車両の部品の交換は現実的ではないため、共通化を取り入れた設計は今後の新型車両から導入する。つまり、今回の検討が形になるのは5年後、10年後レベルの話になる。QRコード乗車券を8事業者共同で進めるように、今後の検討で、大手私鉄が参加してさらに大きな取り組みになる可能性もある。 車両設計を完全に共通化するのは困難だが、プレスリリースには「各鉄道事業者の独自の使用となるものは今後検討」として、ドア位置や枚数、車体幅、長さ、前面形状などが挙げられている。「sustina」は車両ごとに車体構造のカスタマイズが可能であり、前述のように、すでに導入した私鉄もある。 近年JR西日本が導入した「225系」「227系」「321系」「323系」は、川崎車両と近畿車輛が担当している。JR東日本は装置・部品以上の検討は全く白紙というが、将来的にJR西日本が「sustina」を採用することもあり得るかもしれない(逆にJR東日本が車両調達先をグループ以外に変更するとは考えにくい)。 いずれにせよ、人口減少が進めば鉄道事業は縮小していく。事業が縮小すれば鉄道車両も削減され、新造車両も減少する。海外進出を進める車両メーカーもあるが、サプライヤーの多くは国内需要が中心だ。事業者のみ、メーカーのみの課題ではなく、将来にわたって鉄道システムを機能させるための検討が、今後ますます本格化しそうだ』、「現行車両の部品の交換は現実的ではないため、共通化を取り入れた設計は今後の新型車両から導入する。つまり、今回の検討が形になるのは5年後、10年後レベルの話になる。QRコード乗車券を8事業者共同で進めるように、今後の検討で、大手私鉄が参加してさらに大きな取り組みになる可能性もある・・・人口減少が進めば鉄道事業は縮小していく。事業が縮小すれば鉄道車両も削減され、新造車両も減少する。海外進出を進める車両メーカーもあるが、サプライヤーの多くは国内需要が中心だ。事業者のみ、メーカーのみの課題ではなく、将来にわたって鉄道システムを機能させるための検討が、今後ますます本格化しそうだ」、設計の共通化などによる効率化が、今後進展するのは、楽しみだ。
先ずは、本年3月1日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「豪雪で露呈、オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/737656
・『2023年12月初旬、ドイツやオーストリアなど中欧と呼ばれる地域を中心に、非常に強い寒波が襲った。ミュンヘンなど大都市周辺でも、積雪は数十センチを超え、チェコ共和国南部では同国での観測史上最低となるマイナス28℃を記録した。 除雪が追い付かないほどの積雪によって交通網はマヒし、ドイツ南部からオーストリアへかけての地域は、空路・陸路ともに数日間にわたって交通機関が全面的にストップするなど大混乱となった』、大変だ。
・『主力特急車両が相次ぎダウン かつてないほどの低い気温と積雪により、除雪完了に伴う運行再開後も列車に不具合が相次いだ。オーストリア連邦鉄道(OBB)の都市間特急「レイルジェット」は2023年の時点で60本の列車がオーストリアおよびその周辺国との間を結んで運行しているが、このうちの1割にあたる6本が完全に使用不能となり、工場で修理せざるをえないという緊急事態となった。 だが、工場も修理だけではなく、日常の定期検査も並行して行わなければならないというキャパシティの問題があるため、使用不能となった編成のうちすぐに修理に取り掛かれたのは6本中4本だけだった。 ほかの54本の編成についても、一時は完全な状態で運行ができる編成がわずかに12本しかなく、残りは営業用として動かせる状態にはあるものの、ドアやトイレなどが故障した不完全な状態で営業せざるをえなかった。運行中に故障が悪化し、運転打ち切りや運休が相次ぐ結果となった。) 運休こそ逃れた列車に関しても代替運行となり、ローカル列車などに使用される通常客車を使用した列車も見られた。レイルジェットは、ビジネスクラスと呼ばれる特等席を筆頭に通常の1等・2等車、そして食堂車を連結しているが、代替の列車にはビジネスクラスや食堂車は連結されず、サービスダウンは否めなかった。 レイルジェットは、従来の客車特急列車インターシティの上位に位置する列車として2008年に誕生。客車ではあるが1両ごとに切り離しはできず、完全に固定された7両の編成を機関車が牽引・推進するもので、客車列車というよりは電車に近い。いわゆる高速列車ではないものの、最高時速は230kmに達し、洗練された内外装デザインも含め、従来型客車の旧態依然としたイメージを打ち破る車両となった。 2016年までの間に60本が製造され、チェコ鉄道にも同型車両が7本納入された。現在は、ウィーン―ザルツブルク間などの主要幹線において、新幹線で言うところの「のぞみ」や「こだま」のような、速達タイプ(RJX)と各駅停車タイプ(RJ)が設定されるなど、オーストリア国内における都市間輸送の大半をこのレイルジェットが担う形となっている』、「レイルジェットは、従来の客車特急列車インターシティの上位に位置する列車として2008年に誕生。客車ではあるが1両ごとに切り離しはできず、完全に固定された7両の編成を機関車が牽引・推進するもので、客車列車というよりは電車に近い。いわゆる高速列車ではないものの、最高時速は230kmに達し、洗練された内外装デザインも含め、従来型客車の旧態依然としたイメージを打ち破る車両となった。 2016年までの間に60本が製造され、チェコ鉄道にも同型車両が7本納入された。現在は、ウィーン―ザルツブルク間などの主要幹線において、新幹線で言うところの「のぞみ」や「こだま」のような、速達タイプ(RJX)と各駅停車タイプ(RJ)が設定されるなど、オーストリア国内における都市間輸送の大半をこのレイルジェットが担う形」、なるほど。
・『1両ごとに切り離せないレイルジェット 今回、運行開始以来大きな問題のなかったレイルジェットに、記録的な大雪と寒波という想定を超えた異常気象が襲ったことで、不具合が多発してしまった。さすがのオーストリア連邦鉄道もここまでの異常気象は想定していなかったようだが、それを差し引いても予備車がほとんどない状態で運用を回している現状について、見通しが甘かったのではないかという声も聞かれた。 予備車不足の問題もさることながら、もう1つ大きな問題となったのが、固定編成のレイルジェットならではの「不具合発生に伴う編成全体の離脱」だ。 客車の利点の1つとして、柔軟な編成が組めることが挙げられる。乗客の増減に合わせて1両単位で車両を連結・切り離しできるので、鉄道会社によっては団体客が乗車する日に1両追加で連結するということもやっていた。) これは、万が一車両の不具合が発生した際、その不具合があった車両だけを切り離し、別の運行可能な客車を代わりに連結できるということでもある。寝台車のような特殊な車両の場合は同じ設備の車両が用意できず、個室寝台の代わりがクシェット(簡易寝台)や座席車になってしまうといったことは過去に何度も発生してきたが、運休するよりはマシで、本来のサービスを受けられない乗客に対しては返金などのお詫びをして終了となる。 ところが、固定編成のレイルジェットは、故障した1両だけを切り離すということができない。ドアやトイレといった部分的な故障でも、修理するためには7両編成丸ごと工場へ入場させなければならない。 日本的に考えると、客用ドアの故障は大きなトラブルである。不具合が発生すれば工場へ即入場となるだろう。だが、今回はただでさえ故障が相次いで工場が逼迫している状況で、こう言っては何だが「たかがドア1カ所」のために編成を丸ごと工場入りさせて列車を運休することなどできない。乗客には多少の不便をかけることにはなるが、運休することを考えれば走らせたほうがまだマシなため、故障した状態のまま営業に就かせるケースが相次ぐことになる』、「固定編成のレイルジェットは、故障した1両だけを切り離すということができない。ドアやトイレといった部分的な故障でも、修理するためには7両編成丸ごと工場へ入場させなければならない。 日本的に考えると、客用ドアの故障は大きなトラブルである。不具合が発生すれば工場へ即入場となるだろう。だが、今回はただでさえ故障が相次いで工場が逼迫している状況で、こう言っては何だが「たかがドア1カ所」のために編成を丸ごと工場入りさせて列車を運休することなどできない。乗客には多少の不便をかけることにはなるが、運休することを考えれば走らせたほうがまだマシなため、故障した状態のまま営業に就かせるケースが相次ぐことになる」、これは大変だ。
・『「固定編成」は欧州に向いているのか? ヨーロッパの鉄道は過去20年で大きく変化し、列車の編成も日本のように動力分散方式の電車・ディーゼルカーや、客車列車でもそれに準ずる固定編成の列車が増えてきた。2023年冬から走り始めた夜行列車「ナイトジェット」の最新型も、ついに固定編成を採用するに至った。 ただ前述の通り、固定編成の列車はどこかに不具合が発生した場合、編成単位での工場入りが必要となる。日本と異なり不具合の発生確率が高いヨーロッパでは、故障のたびに運休が発生しては、それこそ運用が回らなくなってしまう。 ある意味では、柔軟性という面において利点のある固定されていない編成のほうが、ヨーロッパの列車運用には合っているのかもしれない』、「固定編成の列車はどこかに不具合が発生した場合、編成単位での工場入りが必要となる。日本と異なり不具合の発生確率が高いヨーロッパでは、故障のたびに運休が発生しては、それこそ運用が回らなくなってしまう。 ある意味では、柔軟性という面において利点のある固定されていない編成のほうが、ヨーロッパの列車運用には合っているのかもしれない」、その通りだ。
次に、4月20日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」、自前の工場で徹底整備」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/748914
・『鉄道黎明期より長い時間を歩んできたヨーロッパの多くの国では、車両を含む鉄道産業遺産が国や地方自治体の管理する博物館を中心に保存され、民間団体が廃車となった車両を買い取って動態保存している例も多い。そんな中、異色の存在となっているのがイタリアのFondazione FS Italiane(イタリア鉄道財団)だ。 イタリア鉄道財団は、イタリア鉄道、トレニタリア(イタリア鉄道旅客輸送子会社)、RFI(イタリア鉄道インフラ子会社)の3社のCEOが創立メンバーとなって、2013年3月6日に財団の設立趣意書および定款に署名した。2015年12月には、政府の文化遺産・活動・観光省が財団の「機関会員」として加わっている』、日本では「動態保存」は極めて少ないが、イタリアではかなり多いようだ。
・『鉄道遺産保存「財団」の財源は? 財団が設立された目的は、1839年に誕生したイタリア鉄道の膨大な歴史的・技術的遺産を国の歴史の重要な一部として強化し、無傷で将来の世代に引き渡すことで、長い歴史の中における国の成長と国家統一の象徴としての鉄道の重要性を証明することに加え、イタリア国家の利益のために、観光の面で鉄道需要の回復を刺激することが最終的な目標となっている。 その主な活動内容は、400両以上の歴史的鉄道車両の保存(うち約200両は動態保存され現在も稼働中)、イタリア鉄道に関するさまざまな文献資料の保存、ナポリ近郊のピエトラルサと、トリエステにある鉄道博物館の維持管理、運休している風光明媚な鉄道路線の観光路線としての再生などだ。もちろん、純粋な維持管理だけではなく、若い世代への技術継承も含まれる。技術者の育成は、古い技術の維持には必要不可欠なことだ。) 気になるのは財源だ。前述の3社からの資金や政府の補助金などがベースだが、不動産収入や株式運用による資産、地方自治体や企業からの寄付金なども使われている。ただし、個人からの寄付はとくに募っていない。筆者は以前に寄付を申し出たが、十分な財源があるので大丈夫と断られてしまった。このあたりは、博物館やイベントなどで寄付を募っている英国やドイツなどと異なり興味深い。 財団のロゴは、イタリア鉄道(FS)で1966~1982年に使用された、通称「テレビロゴ」(文字周囲の枠がブラウン管時代のテレビの画面に似ているところからそう呼ばれる)をベースにしている。 古典車両を維持管理するための中枢とも言うべき車両工場は全国に3カ所あり、各工場は原則的に車両の種類によって役割が分担されている。いったい、工場ではどのような作業が行われているのだろうか。財団が保有する工場の一つである、ラ・スペツィア工場を取材する機会を得た。 ▽財団の工場内部を取材(ラ・スペツィアはイタリア北西部、リグーリア州の東部に位置する人口約9万人の港町で、首都ローマとジェノヴァを結ぶ幹線上に位置する。ラ・スペツィア工場は1926年に建設され、当時はまだ三相交流方式という特殊な電化方式を採用していたイタリア国鉄の電気機関車を整備する工場として使用された。 2014年にイタリア鉄道財団へ譲渡され、以降は主に財団の保有する電気機関車の定期点検やオーバーホールのほか、動かない状態で保管されていた車両の修復作業なども請け負っている。) 工場建屋内へ入ると、戦前製の古い機関車がずらりと並んでいる。 財団の保有する車両は、1:動態保存(本線走行可能)2:動態保存(本線走行不可)3:静態保存 の3種類に大別される。 1は動く状態に完全復元され、信号などの保安装置も現在の最新システムに換装し、イベント時に本線上を走行させることが可能な車両だ。2は、電気装置などはすべて稼働状態となっていて、パンタグラフを上げて電気を通せば動かすことができるが、保安装置が現代の基準に合致しないため、構内など閉鎖された場所でのデモ走行に限られる。日本で言えば「碓氷峠鉄道文化むら」(群馬県)に保存されているEF63形電気機関車のようなものだ。3は文字通り、動力や制御装置が稼働できない状態で、博物館などで保存・展示させるための車両だ。 工場建屋の中に1両、ピカピカに磨き上げられた電気機関車がいる。E424型249号機といい、第二次大戦直後の1946年に製造された4動軸の機関車だ。主にローカル線で旅客・貨物列車の両方に使えるよう設計され、荷物や郵便を運べるように車体中央にはシャッター付きの荷室が設けられたユニークな機関車だ。 後年、近郊列車をプッシュプル運転する目的で、推進運転制御装置を搭載し、色を当時の最新塗装へ変更して使用されたが、その改造の際に元番号+200へと改番されている。つまり、オリジナルの状態ではE424型049号機だった』、「1は動く状態に完全復元され、信号などの保安装置も現在の最新システムに換装し、イベント時に本線上を走行させることが可能な車両だ。2は、電気装置などはすべて稼働状態となっていて、パンタグラフを上げて電気を通せば動かすことができるが、保安装置が現代の基準に合致しないため、構内など閉鎖された場所でのデモ走行に限られる。日本で言えば「碓氷峠鉄道文化むら」(群馬県)に保存されているEF63形電気機関車のようなものだ。3は文字通り、動力や制御装置が稼働できない状態で、博物館などで保存・展示させるための車両だ」、なるほど。
・『見えない部分も解体して徹底修復 現場で案内をしてくれた技師いわく、この車両は動かせる状態にあるが、信号装置が古い状態のままで、かつパンタグラフは現在本線上での使用を認められてない古いタイプ(FS Tipo42)を搭載しているため、本線走行はできないという(前述「2」に該当)。 ただ、現場のこだわりで車体表記は元の番号である049号機へ塗り替えており(製造銘板などは249号機のまま)、前面の目立つ位置に取り付けられていた制御回路引き通し線も撤去し、オリジナルの古いパンタグラフとともに美しい状態で保存できている、と技師は胸を張っていた。動かすことはできるので、工場内のイベントなどでは、今後も元気な様子を見ることができるだろう。) 隣の建屋では、完全に解体された625型蒸気機関車の修復が行われていた。古い車両は、外側がきれいでも内側に傷んでいる部分が多く、この625型も車体の基礎となる台枠部分が腐食して、かなり鉄板が薄くなっているのが見た目にもわかる。完全にばらした状態から修復するのは、こうした見えない部分の補強をするためである。 屋外には、整備が終わった状態の車両から整備待ちで保管されている車両まで数十両が留置されている。その中でもとくに気になったのは、現存するのがここで保管されている2両だけというALn442-448型気動車だ』、「この車両は動かせる状態にあるが、信号装置が古い状態のままで、かつパンタグラフは現在本線上での使用を認められてない古いタイプ(FS Tipo42)を搭載しているため、本線走行はできないという(前述「2」に該当)」、なるほど。
・『朽ち果てた車両を「救出」 ALn442-448型は、1955年にブレダ(現在の日立レールの前身であるアンサルドブレダの合併前の会社)で製造された気動車で、1957年のTEE(ヨーロッパ国際特急)運行開始時に使用された歴史的な車両だ。だが、数両を残してすべて解体され、ミラノの科学技術博物館に保存された1両もアスベストが問題となって展示が取りやめとなり、そのまま解体されてしまった。 最後に残ったALn442-448型2008号機は、アスベスト除去業者へ引き渡されたものの、その業者が倒産してしまい、屋外で雨ざらしとなって何年も放置され、すっかり朽ち果てていた。本来であれば解体されてもおかしくはないところだが、財団が救出して引き取ったものだ。 保管された車両を拝ませてもらった時には、あまりの朽ち果てた状態に愕然とした。実際、技師もこれからどうやって修復をしていこうかと頭を悩ませていると語っていたが、3年前に同様の状態から見事に復活し、本線走行を行っているETR252型アルレッキーノの例を見れば、必ずや復活を果たせるだろうと期待せずにはいられない。) そんな財団の悩みが、1980年代以降に製造されたいわゆる新性能車両だ。1980年代というと、ちょうどチョッパ制御やインバーター制御など、半導体技術が世に出始めた頃である。 旧来の技術である抵抗制御などは、ある意味で言えば「溶接してハンマーで叩けば直せる」アナログ式なので、技術を継承さえすれば、理論上は半永久的に残すことができる。蒸気機関車は言わずもがな、電車や電気機関車も、古い時代の車両は動態保存されている車両が多い。 一方でチョッパ制御以降の車両は、制御装置に半導体を用いていることから、故障してしまえば部品の交換以外に修理の方法がない。ところが半導体は日進月歩で進化を続けており、古くなった製品はすぐに生産中止となることから、現役の車両ですら、まだ動く車両を廃車にして、予備部品の確保(共食い)を行っている車種もある』、「チョッパ制御以降の車両は、制御装置に半導体を用いていることから、故障してしまえば部品の交換以外に修理の方法がない。ところが半導体は日進月歩で進化を続けており、古くなった製品はすぐに生産中止となることから、現役の車両ですら、まだ動く車両を廃車にして、予備部品の確保(共食い)を行っている車種もある」、確かに「半導体」導入以降は「予備部品の確保(共食い)」が必要になるようだ。
・『鉄道遺産も絵画などと同様の価値 財団は現在、1両のチョッパ制御機関車(E632型030号機)を保有している。状況次第では今後も増えていくものと考えられ、予備部品の確保はもちろんのこと、万が一部品が枯渇した際にどう対処していくのかが将来的な課題と言えよう。 絵画など多くの文化的遺産を保有し、それらの修復技術にも定評があるイタリアは、産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている。 数年前から修復作業が進められているイタリアの伝説的な鉄道車両、ETR302型セッテベッロを含め今も修復を待つ車両は多いが、これらが再び息を吹き返し、イタリアの大地を駆け抜ける日もそう遠くない未来のことだろう』、「修復技術にも定評があるイタリアは、産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、「イタリア」が「修復技術にも定評がある」、「産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、注目すべき国の1つだ。
第三に、7月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏による「JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/346902
・『JR東日本とJR西日本は7月5日、旅客輸送量や労働生産人口の減少が見込まれる中、将来にわたり鉄道輸送事業を維持発展させ、利用者への安定的な輸送サービスを提供する目的で、車両の装置・部品共通化の検討を開始したと発表した。その狙いと、今後の可能性とは』、興味深そうだ。
・『鉄道車両の全ての部品が特注品なわけではない ひとくちに車両の「共通化」といってもさまざまなレベルがある。鉄道車両は基本的にオーダーメイドだが、当然、全ての部品が特注品なわけではない。日本の鉄道車両、特に電車は日立製作所、川崎重工業の子会社である川崎車両、JR東海の子会社である日本車輛製造、JR東日本の子会社である総合車両製作所、近鉄グループの近畿車輛の5社がほとんどを占める。 例えば相模鉄道のJR直通用車両「12000系」や、東急電鉄の田園都市線「2020系」、大井町線「6020系」、目黒線「3020系」、京王電鉄京王ライナー対応車「5000系」は、JR東日本の山手線・横須賀線「E235系」と同様の標準設計「sustina」を採用し、総合車両製作所で製造されている。 また、日立製作所のアルミ車両標準設計「A-train」は、東京メトロの「10000系」以降の多くの車両や、東武鉄道の「50000系」「60000系」、西武鉄道の「20000系」「30000系」など、JR東日本、大手私鉄、公営地下鉄、海外鉄道など広く用いられている。 これらメーカーの標準設計で製造された車両は、鉄道事業者ごとの特色を出すために前面形状こそ作り分けられているものの、よく見れば、車体の側面や内装はほとんど同じであることに気づくだろう。このように衝突安全性向上や環境負荷低減に対応しつつ、コスト削減を図るのも共通化の効果だ』、「これらメーカーの標準設計で製造された車両は、鉄道事業者ごとの特色を出すために前面形状こそ作り分けられているものの、よく見れば、車体の側面や内装はほとんど同じであることに気づくだろう。このように衝突安全性向上や環境負荷低減に対応しつつ、コスト削減を図るのも共通化の効果だ」、なるほど。
・『車両設計自体を共通化することも 車体の標準設計のみならず、車両設計自体を共通化することもある。例えば東海道・山陽新幹線では、JR西日本「500系」などの独自設計の車両が走っていたこともあるが、現在は「N700S」などに共通化されている。北陸新幹線でもJR東日本とJR西日本が同一設計の「E7/W7系」を導入した。 私鉄では東京メトロと東武鉄道が、地下鉄日比谷線向けに共通設計の「13000系」と「70000系」を近畿車輛に発注している。両系列は、前面形状を除く車体と走行関係のシステムは同一で、内装も装飾以外はおおむね共通化されているが、一部に構造が異なる点もある。 近年の鉄道車両の生産数は、新幹線やJR東日本の一部形式を除けば、多くても300~400両、ほとんどは100両程度と少ないため、量産効果が小さい。特に一部列車のみ日比谷線に乗り入れる東武鉄道は、必要な編成数がそれほど多くないため、独自設計の車両を製造すると高くつく。そこで東京メトロと一括して発注することで、性能や操作性を統一するとともにコストダウンを狙った。 だが、こうした車両設計の共通化は、上記新幹線や地下鉄など運行系統がほぼ一体化している路線であればともかく、全く違う地域を走る路線では、それぞれの環境や特性にあわせる必要があるため困難だ』、「近年の鉄道車両の生産数は、新幹線やJR東日本の一部形式を除けば、多くても300~400両、ほとんどは100両程度と少ないため、量産効果が小さい。特に一部列車のみ日比谷線に乗り入れる東武鉄道は、必要な編成数がそれほど多くないため、独自設計の車両を製造すると高くつく。そこで東京メトロと一括して発注することで、性能や操作性を統一するとともにコストダウンを狙った」、なるほど。
・『両社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大 今回の発表を受け、国鉄時代に全国に導入された「103系」や「205系」のように車両自体を共通化する方向に進むのでは、という反応も見られる。しかし、ホームドアの整備が進む現代では、車両と設備の整合が必要であり、都市部の車両をJR東日本は4ドア、JR西日本は3ドアに統一しているため、完全な共通化は不可能だ。そこでまずは装置・部品の共通化から検討に着手する。 電車には電機部品(パンタグラフ、制御装置、モーター、補助電源装置、バッテリーなど)、空気圧システム(コンプレッサー、ブレーキ装置、戸閉め装置)、空調、案内装置などさまざまな装置・部品が設置されている。これらは車両メーカーが製造する部品もあれば、東芝や東洋電機製造、三菱電機のように、主要電気装置や車両機器を手掛ける電機メーカーもある。 大掛かりなシステムは各社がサプライヤーとともに一貫して設計・製造している。安定調達や競争原理を考慮すれば、無理な統一はかえって非効率、コスト増にもなりかねない。ただ部品によっては事業者ごとのニーズに応じて、似たようなものを多品種少量生産している。 これらはサプライヤーにとって儲かる仕事ではなく、今後は発注数の減少が予想されるため、業界全体の効率化を図り、限られた人員や設備を各社の得意な領域に集中したい。そこでモーター、台車のオイルダンパー、パンタグラフ、行先表示器など、可能な範囲で装置・部品の共通化に着手し、各社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大するというのが今回の発表だ』、「今後は発注数の減少が予想されるため、業界全体の効率化を図り、限られた人員や設備を各社の得意な領域に集中したい。そこでモーター、台車のオイルダンパー、パンタグラフ、行先表示器など、可能な範囲で装置・部品の共通化に着手し、各社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大するというのが今回の発表だ」、なるほど。
・『今回の共通化検討が形になるのは5~10年後か 具体的には、まずJR東日本とJR西日本が共通化の方向性など土台作りを進め、続いて他の鉄道事業者や車両メーカー、サプライヤーと意見交換をして具体的な内容を詰める。そして共通化部品調達の仕組みを構築した上で、実際の車両に展開する。 現行車両の部品の交換は現実的ではないため、共通化を取り入れた設計は今後の新型車両から導入する。つまり、今回の検討が形になるのは5年後、10年後レベルの話になる。QRコード乗車券を8事業者共同で進めるように、今後の検討で、大手私鉄が参加してさらに大きな取り組みになる可能性もある。 車両設計を完全に共通化するのは困難だが、プレスリリースには「各鉄道事業者の独自の使用となるものは今後検討」として、ドア位置や枚数、車体幅、長さ、前面形状などが挙げられている。「sustina」は車両ごとに車体構造のカスタマイズが可能であり、前述のように、すでに導入した私鉄もある。 近年JR西日本が導入した「225系」「227系」「321系」「323系」は、川崎車両と近畿車輛が担当している。JR東日本は装置・部品以上の検討は全く白紙というが、将来的にJR西日本が「sustina」を採用することもあり得るかもしれない(逆にJR東日本が車両調達先をグループ以外に変更するとは考えにくい)。 いずれにせよ、人口減少が進めば鉄道事業は縮小していく。事業が縮小すれば鉄道車両も削減され、新造車両も減少する。海外進出を進める車両メーカーもあるが、サプライヤーの多くは国内需要が中心だ。事業者のみ、メーカーのみの課題ではなく、将来にわたって鉄道システムを機能させるための検討が、今後ますます本格化しそうだ』、「現行車両の部品の交換は現実的ではないため、共通化を取り入れた設計は今後の新型車両から導入する。つまり、今回の検討が形になるのは5年後、10年後レベルの話になる。QRコード乗車券を8事業者共同で進めるように、今後の検討で、大手私鉄が参加してさらに大きな取り組みになる可能性もある・・・人口減少が進めば鉄道事業は縮小していく。事業が縮小すれば鉄道車両も削減され、新造車両も減少する。海外進出を進める車両メーカーもあるが、サプライヤーの多くは国内需要が中心だ。事業者のみ、メーカーのみの課題ではなく、将来にわたって鉄道システムを機能させるための検討が、今後ますます本格化しそうだ」、設計の共通化などによる効率化が、今後進展するのは、楽しみだ。
タグ:鉄道 橋爪 智之氏による「豪雪で露呈、オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り」 「1は動く状態に完全復元され、信号などの保安装置も現在の最新システムに換装し、イベント時に本線上を走行させることが可能な車両だ。2は、電気装置などはすべて稼働状態となっていて、パンタグラフを上げて電気を通せば動かすことができるが、保安装置が現代の基準に合致しないため、構内など閉鎖された場所でのデモ走行に限られる。日本で言えば「碓氷峠鉄道文化むら」(群馬県)に保存されているEF63形電気機関車のようなものだ。3は文字通り、動力や制御装置が稼働できない状態で、博物館などで保存・展示させるための車両だ」、なるほ 枝久保達也氏による「JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは」 橋爪 智之氏による「「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」、自前の工場で徹底整備」 「固定編成の列車はどこかに不具合が発生した場合、編成単位での工場入りが必要となる。日本と異なり不具合の発生確率が高いヨーロッパでは、故障のたびに運休が発生しては、それこそ運用が回らなくなってしまう。 ある意味では、柔軟性という面において利点のある固定されていない編成のほうが、ヨーロッパの列車運用には合っているのかもしれない」、その通りだ。 「レイルジェットは、従来の客車特急列車インターシティの上位に位置する列車として2008年に誕生。客車ではあるが1両ごとに切り離しはできず、完全に固定された7両の編成を機関車が牽引・推進するもので、客車列車というよりは電車に近い。いわゆる高速列車ではないものの、最高時速は230kmに達し、洗練された内外装デザインも含め、従来型客車の旧態依然としたイメージを打ち破る車両となった。 2016年までの間に60本が製造され、チェコ鉄道にも同型車両が7本納入された。 (その13)(豪雪で露呈 オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り、「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」 自前の工場で徹底整備、JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは) 「固定編成のレイルジェットは、故障した1両だけを切り離すということができない。ドアやトイレといった部分的な故障でも、修理するためには7両編成丸ごと工場へ入場させなければならない。 日本的に考えると、客用ドアの故障は大きなトラブルである。不具合が発生すれば工場へ即入場となるだろう。だが、今回はただでさえ故障が相次いで工場が逼迫している状況で、こう言っては何だが「たかがドア1カ所」のために編成を丸ごと工場入りさせて列車を運休することなどできない。乗客には多少の不便をかけることにはなるが、運休することを考えれば 日本では「動態保存」は極めて少ないが、イタリアではかなり多いようだ。 走らせたほうがまだマシなため、故障した状態のまま営業に就かせるケースが相次ぐことになる」、これは大変だ。 「チョッパ制御以降の車両は、制御装置に半導体を用いていることから、故障してしまえば部品の交換以外に修理の方法がない。ところが半導体は日進月歩で進化を続けており、古くなった製品はすぐに生産中止となることから、現役の車両ですら、まだ動く車両を廃車にして、予備部品の確保(共食い)を行っている車種もある」、確かに「半導体」導入以降は「予備部品の確保(共食い)」が必要になるようだ。 東洋経済オンライン 事業が縮小すれば鉄道車両も削減され、新造車両も減少する。海外進出を進める車両メーカーもあるが、サプライヤーの多くは国内需要が中心だ。事業者のみ、メーカーのみの課題ではなく、将来にわたって鉄道システムを機能させるための検討が、今後ますます本格化しそうだ」、設計の共通化などによる効率化が、今後進展するのは、楽しみだ。 「修復技術にも定評があるイタリアは、産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、「イタリア」が「修復技術にも定評がある」、「産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、注目すべき国の1つだ。 現在は、ウィーン―ザルツブルク間などの主要幹線において、新幹線で言うところの「のぞみ」や「こだま」のような、速達タイプ(RJX)と各駅停車タイプ(RJ)が設定されるなど、オーストリア国内における都市間輸送の大半をこのレイルジェットが担う形」、なるほど。 「近年の鉄道車両の生産数は、新幹線やJR東日本の一部形式を除けば、多くても300~400両、ほとんどは100両程度と少ないため、量産効果が小さい。特に一部列車のみ日比谷線に乗り入れる東武鉄道は、必要な編成数がそれほど多くないため、独自設計の車両を製造すると高くつく。そこで東京メトロと一括して発注することで、性能や操作性を統一するとともにコストダウンを狙った」、なるほど。 「この車両は動かせる状態にあるが、信号装置が古い状態のままで、かつパンタグラフは現在本線上での使用を認められてない古いタイプ(FS Tipo42)を搭載しているため、本線走行はできないという(前述「2」に該当)」、なるほど。 「現行車両の部品の交換は現実的ではないため、共通化を取り入れた設計は今後の新型車両から導入する。つまり、今回の検討が形になるのは5年後、10年後レベルの話になる。QRコード乗車券を8事業者共同で進めるように、今後の検討で、大手私鉄が参加してさらに大きな取り組みになる可能性もある・・・人口減少が進めば鉄道事業は縮小していく。 大変だ。 ど。 ダイヤモンド・オンライン 「これらメーカーの標準設計で製造された車両は、鉄道事業者ごとの特色を出すために前面形状こそ作り分けられているものの、よく見れば、車体の側面や内装はほとんど同じであることに気づくだろう。このように衝突安全性向上や環境負荷低減に対応しつつ、コスト削減を図るのも共通化の効果だ」、なるほど。 「今後は発注数の減少が予想されるため、業界全体の効率化を図り、限られた人員や設備を各社の得意な領域に集中したい。そこでモーター、台車のオイルダンパー、パンタグラフ、行先表示器など、可能な範囲で装置・部品の共通化に着手し、各社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大するというのが今回の発表だ」、なるほど。
コンサルティング(その2)(マッキンゼー? ボスコン? コンサル2大トップの「採用基準」はどう違う?【コンサル専門エージェントが公開】、「とりあえずコンサル業界に」就活市場で人気化が止まらない1つの納得理由 外資系コンサルティングファームが人気の理由と選考プロセスを解説) [産業動向]
コンサルティングについては、本年3月3日に取上げた。今日は、(その2)(マッキンゼー? ボスコン? コンサル2大トップの「採用基準」はどう違う?【コンサル専門エージェントが公開】、「とりあえずコンサル業界に」就活市場で人気化が止まらない1つの納得理由 外資系コンサルティングファームが人気の理由と選考プロセスを解説)である。
先ずは、本年3月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した久留須 親氏による「マッキンゼー? ボスコン? コンサル2大トップの「採用基準」はどう違う?【コンサル専門エージェントが公開】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340873
・『コンサルティング業界に特化したエージェントとして、17年間転職支援をしてきた久留須 親(くるす ちかし)氏、はコンサルティングファーム志願者の「駆け込み寺」として、マッキンゼー、BCGなどの経営戦略系ファーム、そしてアクセンチュア、デロイトなどの総合系ファームに、多くの内定者を送り出してきた。著書『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』では「ファームに入社した人の共通点」「具体的にどんな対策をすれば受かるのか」「入社後活躍する人とは」などについて、史上初めて実際に入社した3000人以上のデータを分析し「ファクトベース」で伝えている。 今回は、本書の内容から一部を抜粋・編集し、「各社の採用のポイント」を紹介する』、興味深そうだ。
・『マッキンゼーに受かる人が、全てのファームに受かるわけではない コンサルティングファームを受けるとき、最初にぜひ知って欲しいのが「カルチャーフィット」の重要性についてです。経営戦略系、総合系問わず、ファームの「難易度」は決して大学受験の偏差値ピラミッドのようなものではありません。 ピラミッド的な考え方だと「マッキンゼーの難易度が一番高く、マッキンゼーに受かる人は他社も全部受かる」と思いがちですが、実際には「マッキンゼーにしか受からなかった」という人が多いのが実状です。これは、各ファームがカルチャーフィットもしっかりと見ていることが理由かと思います。フィット感がない場合は、スキルがある程度評価できても採用を見送ったり、評価が低くなるような採用基準になっていたりします。 特に、Top-tier(トップティア)と呼ばれるマッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン コンサルティング グループ、ベイン・アンド・カンパニーは紛れもないグローバルエクセレントカンパニーですから、この3社が持つカルチャーは極めて強固で「三社三様」です。この3社全てからオファーを得た人は、私の17年の経験の中でも数人しか見たことがありません。他のファームにも、それぞれカルチャーや企業カラーがあります。商社や広告代理店、メガバンクのように、「同じ業界でもカルチャーや企業カラーが全く違う」というのと同様です。 ここで大事なことは「偏差値的な考えで志望度を決めない」ことです。なぜなら「自分が行きたいファームが自分に合っているファームとは限らない」からです。実際、あるファームではうまくパフォームできなかった人が、ファームが変わるだけで水を得た魚のようにハイパフォーマーになった、という例を数多く見てきました。 多くの人が大学受験を経験しているため「偏差値的に考えてしまう」ことは理解できます。しかし、「転職の目的はファームに入社することではなく、コンサルタントとしてパフォームすること」です。「オファーを獲得したファームが自分にフィットしている」と考える人が、最終的にうまくいきます。 「自分が行きたいファームから是が非でもオファーを獲得する」と考えるのではなく、「オファーを獲得したファームが自分にフィットしている」と考えるようにしてください』、「大事なことは「偏差値的な考えで志望度を決めない」ことです。なぜなら「自分が行きたいファームが自分に合っているファームとは限らない」からです・・・「自分が行きたいファームから是が非でもオファーを獲得する」と考えるのではなく、「オファーを獲得したファームが自分にフィットしている」と考えるようにしてください」、なるほど。
・『マッキンゼー・アンド・カンパニー マッキンゼーは、グローバルリーダーの育成を使命とするグローバルトップファームです。特に重視していることで有名なコンピテンシー(行動特性・能力)は、「リーダーシップ」です。コンサルタントのリーダーシップとは、組織のトップが発揮すべきいわゆる「人の上に立つリーダーシップ」とは異なります(詳細は、本書の中で説明しています)。採用の際は英語力が求められないファームも多いなか、マッキンゼーでは英語でのケース面接が行われます。 <採用で見られるポイント> ・極めて高いインテレクチュアルスキル:経営に関する幅広い知識や実際の事例、ビジネスのトレンドなどのファクトをおさえた戦略立案ができるとよいです。 ・卓越したリーダーシップ:「グローバルリーダーとして世の中を引っ張っていきたい」という強い意志やアスピレーションを語れるようにしておきましょう。 ・ビジネスレベルの英語力:特に会話力が求められ、英語でケース面接も行います。インテグレイティブ以外のサービスラインでは、各サービス領域における経験や高い専門性が求められます。 <特徴> マッキンゼー・アンド・カンパニーは、1926年にジェームズ・O・マッキンゼーによって設立されました。1929年にアンドリュー・トーマス(トム)・カーニーを最初のパートナーとして迎え入れ、1933年にマービン・バウアーが入社しました。1937年にマッキンゼーが急逝しますが、バウアーがニューヨークオフィスを率いて色々な経緯ののち、1947年に現在のマッキンゼー・アンド・カンパニーになります。バウアーは、マッキンゼーの成長を長期にわたってリードし、ファクトベースの分析的アプローチによる科学的・論理的な問題解決の方法論を確立したことで、「現在の経営コンサルティング業界の父」とも称されています。 日本支社は、1971年に設立されました。1972年に入社した大前研一が1975年に出版した『企業参謀 戦略的思考とはなにか』は、日本における経営コンサルティングの礎を築いた書籍といえます(50年近く経った今でもロングセラーです)。 クライアントに常に最高水準の支援を提供することを掲げていることから、時代と共にクライアントのニーズに合わせてサービス内容を拡げており、従来のジェネラルな経営コンサルティングを手掛けるインテグレイティブに加えて、デジタルやアクセラレート(実行支援)、オペレーション(サプライチェーン・マニュファクチャリングなど)、RTS(企業変革・事業再生)、クォンタムブラック(データサイエンティスト)、リープ(新規事業立案)などの多岐にわたるサービスラインを有しています。 また、グローバルで真の「One Firm(ひとつのファーム)」として運営されているのが特徴で、各国のコンサルタントが国をまたいでプロジェクトにアサインされたり、社内のナレッジ(英語で管理されている)を有効活用する観点から、英語が社内公用語となっています(応募時の必要書類も英文レジュメのみです)』、「各国のコンサルタントが国をまたいでプロジェクトにアサインされたり、社内のナレッジ(英語で管理されている)を有効活用する観点から、英語が社内公用語となっています(応募時の必要書類も英文レジュメのみです)」、なるほど。
・『ボストン コンサルティング グループ 日本支社の従業員数が世界の中でも多く、日本に根差したグローバルトップファームです。BCGが特に重視するのが「インサイト」すなわち洞察力です。洞察力については本書でも詳細に説明していますが、ロジカルシンキングから一歩進んで「独自の考えや切り口・視点があること」が求められます。 <採用で見られるポイント> ・極めて高いインテレクチュアルスキル:ロジカルかつ柔軟な発想から独自のインサイトを示すことができるとよいです。 ・アスピレーション:自分が何を大切にしていて、それを磨くためにどういうことをしてきたかを語れるようにしておきましょう。 <特徴> BCGは、1963年にアーサー・ディ・リトルから独立したブルース・ヘンダーソンらによってボストンで設立されました。今では「経営戦略」という言葉は当たり前になっていますが、初めて「戦略」という概念を経営に導入したファームです。 また、「経験曲線」や「プロダクト・ポートフォリオ・マトリクス(PPM)」、「タイムベース競争」などの画期的なアイデアを開発したのもBCGです。競合企業に対する「差別化」「優位性」の必要性をいち早く提唱し、「Insight(洞察)」「Impact(インパクト)」「Trust(信頼)」のサイクルを付加価値の源泉として捉え、重視しています。 東京オフィスは、1966年にボストンに次ぐ2番目のオフィスとして設立されました。いち早く日本市場に着目し、クライアント経営層が抱える経営戦略上の課題に対して、深い洞察からインパクトのある戦略を提案、さらに戦略の実現まで手掛けてクライアントを変革し、持続的な競合優位性を構築することで信頼を得ています。その結果、日本において最も規模が大きい経営戦略ファームとなっています。 このようなクライアントの変革を実現するために、各業界や業務領域における高い専門性を有する経営戦略コンサルタントを抱えているだけでなく、テクノロジーやデジタル、デザイン、インキュベーション創出などを手掛ける人材も有しており、アーキテクトやシステムエンジニア、データサイエンティスト、デザイナー、プロダクトマネージャーなどと経営戦略コンサルタントが協働しています。 また、東京オフィス以外にも、名古屋・大阪・京都・福岡にオフィスを構えており、グローバルファームでありながらしっかりと日本に根差したファームといえます』、「日本支社の従業員数が世界の中でも多く、日本に根差したグローバルトップファームです」、例外的存在だ。
(※本記事は、『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』から抜粋・編集したものです) (久留須 親氏については、リンク先参照)
次に、5月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したコンサルティングファーム研究会 フェルミ推定・ケース面接対策チームによる「「とりあえずコンサル業界に」就活市場で人気化が止まらない1つの納得理由 外資系コンサルティングファームが人気の理由と選考プロセスを解説」を紹介しよう。
・『今、学生や転職者から最も人気の就職先の一つがコンサルティング業界だ。数多くの志望者の中から、一握りの有望な人材を見抜くために、この業界にはフェルミ推定やケース面接と呼ばれる独特の入社試験がある。新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』は、大手コンサルティングファームで実際に出題された問題を集め、現役で活躍するコンサルタントに解答してもらうことで、コンサル流の思考法をノウハウとして凝縮した1冊だ。就活対策にはもちろんのこと、思考力のトレーニングにも最適だ。本稿では、本書執筆者の1人で現役コンサルタントのRIO氏に、外資系コンサルティングファームが人気の理由と選考プロセスについて話を聞いた(Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『「とりあえずコンサル業界に就職したい」と考える学生が増えている Q:近年コンサルティング業界が、就活で人気になっていると聞きますが、その理由はどこにあるのでしょうか。 RIO氏:最近の傾向として、とりあえずコンサルティング業界を目指そうという学生が非常に増えていて、「とりコン(とりあえずコンサル業界に就職)」という言葉も一般的になっています。 Q:なぜ、数ある業種や職種の中で「とりあえずコンサル」と考える学生が多いのでしょうか。 RIO氏:目まぐるしく変化する時代の中で、何もわからないまま一つの業界に腰を据えることをリスクだと捉えているからではないでしょうか。 その点でコンサルタントの仕事は、プロジェクトごとに様々な業界に入り込んで、クライアントの経営課題と向き合う仕事なので、将来に色々なキャリアの選択肢を残せると職業だと言えるかもしれません。 一般的な企業では、いわゆる下積みのような期間を過ごすケースが多く、気づいたときには転職するには遅い年齢になってしまうこともありえます。 コンサルティングファームの仕事は、一般的な企業ではかなり上のポジションに就かないと向き合えないような経営課題を1年目のコンサルタントから新卒であろうと関係なく、必死になって取り組むことになります。 先輩のコンサルタントたちからはもちろん、クライアント企業の経営層や担当者からも学びながらアウトプットし、フィードバックを受けるといった魅力的な成長機会を得ることができるのです』、「一般的な企業では、いわゆる下積みのような期間を過ごすケースが多く、気づいたときには転職するには遅い年齢になってしまうこともありえます。 コンサルティングファームの仕事は、一般的な企業ではかなり上のポジションに就かないと向き合えないような経営課題を1年目のコンサルタントから新卒であろうと関係なく、必死になって取り組むことになります。 先輩のコンサルタントたちからはもちろん、クライアント企業の経営層や担当者からも学びながらアウトプットし、フィードバックを受けるといった魅力的な成長機会を得ることができるのです」、確かにこれなら魅力的だ。
・『コンサルティングファームの採用プロセス Q:コンサルティングファームの一般的な選考プロセスを教えてください。 RIO氏:まずエントリーシートを提出してウェブテストを受けます。それを突破すると1次面接に呼ばれるわけですが、この段階でケース面接問題やフェルミ推定問題が出題されます。 一般的な会社における新卒採用の面接では、志望者のパーソナリティに関すること、たとえば「学生時代に力を入れたこと」などを聞かれると思いますが、そのような人物面接に加えて、「東京都の通勤ラッシュを解消するには?」といったような、志望者の思考力を試すケース面接が行われます 面接官との1対1で行われる場合もあれば、グループディスカッションや筆記テストの場合もあります。 基本的には、このような面接が2~3回実施された後、3次面接ないし4次面接の段階で、コンサルティングファームのパートナーが出てきます。 そこで、さらにケース面接を行う場合もあれば、志望者のパーソナリティを聞くような通常の人物面接が行われることもありますが、最終的にその企業のカルチャーとフィットしていると評価された志望者に内定を出すというのが一般的な選考の流れです』、「1次面接に呼ばれるわけですが、この段階でケース面接問題やフェルミ推定問題が出題されます。 一般的な会社における新卒採用の面接では、志望者のパーソナリティに関すること、たとえば「学生時代に力を入れたこと」などを聞かれると思いますが、そのような人物面接に加えて、「東京都の通勤ラッシュを解消するには?」といったような、志望者の思考力を試すケース面接が行われます 面接官との1対1で行われる場合もあれば、グループディスカッションや筆記テストの場合もあります。 基本的には、このような面接が2~3回実施された後、3次面接ないし4次面接の段階で、コンサルティングファームのパートナーが出てきます」、さすがに慎重な採用姿勢だ。
・『インターンで内定が決まる学生も RIO氏:このほか、インターンシップを通じた採用のパターンもあります。その場合は、1~2回のケース面接を行い、合格した人が「ジョブ」と呼ばれる数日間のインターンに参加します。 このインターンでは、「ある会社の新規事業を立案せよ」とか「ある会社のM&Aの戦略を検討せよ」という課題に取り組むことになります。 他のインターン参加者と協力しながら調査分析や資料作成に取り組み、最終日にはパートナーを前にプレゼンテーションを行います。 課題の合間には、コンサルティングファームの代表から話があったり、各部署の説明が行われたりもします。 インターンの当日あるいは後日、ジョブで高評価を得た人は人事部やパートナーとの面接に呼ばれ、一部の方に内定が出されます』、「ジョブで高評価を得た人は人事部やパートナーとの面接に呼ばれ、一部の方に内定が出されます」、当然だろう。
・『コンサルティング業界の採用人数は増えている Q:外資系コンサルの選考と聞くと、非常に難易度の高い、厳しい面接というイメージもありますが、実際のところどうなのでしょうか。 RIO氏:初めてフェルミ推定やケース面接の問題を目にすると、難しく感じるかもしれません。ですが、問題を繰り返し練習すれば、誰でも「回答の型」を身につけることができます。 これはコンサルタントの仕事に必要な「問題解決思考の型」「ロジカルシンキングの型」でもあります。 コンサルティングファームの選考では、必ずフェルミ推定やケース面接が実施されるので、対策を立てやすいという面もあります。事前に対策を立てることで、選考突破の可能性を大きく伸ばすことができます。 私は10年以上この業界で働いているのですが、私が就職した時と比べると、コンサルティングファームの採用人数は圧倒的に増えています。 いわゆる総合コンサルを中心に、以前は十数名しか採用しなかった企業が、数百名以上採用するようになっており、このこともコンサルティング業界への就職を希望する学生が増えている大きな要因だと思います』、「コンサルティングファームの選考では、必ずフェルミ推定やケース面接が実施されるので、対策を立てやすいという面もあります。事前に対策を立てることで、選考突破の可能性を大きく伸ばすことができます・・・総合コンサルを中心に、以前は十数名しか採用しなかった企業が、数百名以上採用するようになっており、このこともコンサルティング業界への就職を希望する学生が増えている大きな要因だと思います」、「フェルミ推定」など論理的思考に役立つ知識を勉強した学生が増えているのは、l心強い。
先ずは、本年3月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した久留須 親氏による「マッキンゼー? ボスコン? コンサル2大トップの「採用基準」はどう違う?【コンサル専門エージェントが公開】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340873
・『コンサルティング業界に特化したエージェントとして、17年間転職支援をしてきた久留須 親(くるす ちかし)氏、はコンサルティングファーム志願者の「駆け込み寺」として、マッキンゼー、BCGなどの経営戦略系ファーム、そしてアクセンチュア、デロイトなどの総合系ファームに、多くの内定者を送り出してきた。著書『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』では「ファームに入社した人の共通点」「具体的にどんな対策をすれば受かるのか」「入社後活躍する人とは」などについて、史上初めて実際に入社した3000人以上のデータを分析し「ファクトベース」で伝えている。 今回は、本書の内容から一部を抜粋・編集し、「各社の採用のポイント」を紹介する』、興味深そうだ。
・『マッキンゼーに受かる人が、全てのファームに受かるわけではない コンサルティングファームを受けるとき、最初にぜひ知って欲しいのが「カルチャーフィット」の重要性についてです。経営戦略系、総合系問わず、ファームの「難易度」は決して大学受験の偏差値ピラミッドのようなものではありません。 ピラミッド的な考え方だと「マッキンゼーの難易度が一番高く、マッキンゼーに受かる人は他社も全部受かる」と思いがちですが、実際には「マッキンゼーにしか受からなかった」という人が多いのが実状です。これは、各ファームがカルチャーフィットもしっかりと見ていることが理由かと思います。フィット感がない場合は、スキルがある程度評価できても採用を見送ったり、評価が低くなるような採用基準になっていたりします。 特に、Top-tier(トップティア)と呼ばれるマッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン コンサルティング グループ、ベイン・アンド・カンパニーは紛れもないグローバルエクセレントカンパニーですから、この3社が持つカルチャーは極めて強固で「三社三様」です。この3社全てからオファーを得た人は、私の17年の経験の中でも数人しか見たことがありません。他のファームにも、それぞれカルチャーや企業カラーがあります。商社や広告代理店、メガバンクのように、「同じ業界でもカルチャーや企業カラーが全く違う」というのと同様です。 ここで大事なことは「偏差値的な考えで志望度を決めない」ことです。なぜなら「自分が行きたいファームが自分に合っているファームとは限らない」からです。実際、あるファームではうまくパフォームできなかった人が、ファームが変わるだけで水を得た魚のようにハイパフォーマーになった、という例を数多く見てきました。 多くの人が大学受験を経験しているため「偏差値的に考えてしまう」ことは理解できます。しかし、「転職の目的はファームに入社することではなく、コンサルタントとしてパフォームすること」です。「オファーを獲得したファームが自分にフィットしている」と考える人が、最終的にうまくいきます。 「自分が行きたいファームから是が非でもオファーを獲得する」と考えるのではなく、「オファーを獲得したファームが自分にフィットしている」と考えるようにしてください』、「大事なことは「偏差値的な考えで志望度を決めない」ことです。なぜなら「自分が行きたいファームが自分に合っているファームとは限らない」からです・・・「自分が行きたいファームから是が非でもオファーを獲得する」と考えるのではなく、「オファーを獲得したファームが自分にフィットしている」と考えるようにしてください」、なるほど。
・『マッキンゼー・アンド・カンパニー マッキンゼーは、グローバルリーダーの育成を使命とするグローバルトップファームです。特に重視していることで有名なコンピテンシー(行動特性・能力)は、「リーダーシップ」です。コンサルタントのリーダーシップとは、組織のトップが発揮すべきいわゆる「人の上に立つリーダーシップ」とは異なります(詳細は、本書の中で説明しています)。採用の際は英語力が求められないファームも多いなか、マッキンゼーでは英語でのケース面接が行われます。 <採用で見られるポイント> ・極めて高いインテレクチュアルスキル:経営に関する幅広い知識や実際の事例、ビジネスのトレンドなどのファクトをおさえた戦略立案ができるとよいです。 ・卓越したリーダーシップ:「グローバルリーダーとして世の中を引っ張っていきたい」という強い意志やアスピレーションを語れるようにしておきましょう。 ・ビジネスレベルの英語力:特に会話力が求められ、英語でケース面接も行います。インテグレイティブ以外のサービスラインでは、各サービス領域における経験や高い専門性が求められます。 <特徴> マッキンゼー・アンド・カンパニーは、1926年にジェームズ・O・マッキンゼーによって設立されました。1929年にアンドリュー・トーマス(トム)・カーニーを最初のパートナーとして迎え入れ、1933年にマービン・バウアーが入社しました。1937年にマッキンゼーが急逝しますが、バウアーがニューヨークオフィスを率いて色々な経緯ののち、1947年に現在のマッキンゼー・アンド・カンパニーになります。バウアーは、マッキンゼーの成長を長期にわたってリードし、ファクトベースの分析的アプローチによる科学的・論理的な問題解決の方法論を確立したことで、「現在の経営コンサルティング業界の父」とも称されています。 日本支社は、1971年に設立されました。1972年に入社した大前研一が1975年に出版した『企業参謀 戦略的思考とはなにか』は、日本における経営コンサルティングの礎を築いた書籍といえます(50年近く経った今でもロングセラーです)。 クライアントに常に最高水準の支援を提供することを掲げていることから、時代と共にクライアントのニーズに合わせてサービス内容を拡げており、従来のジェネラルな経営コンサルティングを手掛けるインテグレイティブに加えて、デジタルやアクセラレート(実行支援)、オペレーション(サプライチェーン・マニュファクチャリングなど)、RTS(企業変革・事業再生)、クォンタムブラック(データサイエンティスト)、リープ(新規事業立案)などの多岐にわたるサービスラインを有しています。 また、グローバルで真の「One Firm(ひとつのファーム)」として運営されているのが特徴で、各国のコンサルタントが国をまたいでプロジェクトにアサインされたり、社内のナレッジ(英語で管理されている)を有効活用する観点から、英語が社内公用語となっています(応募時の必要書類も英文レジュメのみです)』、「各国のコンサルタントが国をまたいでプロジェクトにアサインされたり、社内のナレッジ(英語で管理されている)を有効活用する観点から、英語が社内公用語となっています(応募時の必要書類も英文レジュメのみです)」、なるほど。
・『ボストン コンサルティング グループ 日本支社の従業員数が世界の中でも多く、日本に根差したグローバルトップファームです。BCGが特に重視するのが「インサイト」すなわち洞察力です。洞察力については本書でも詳細に説明していますが、ロジカルシンキングから一歩進んで「独自の考えや切り口・視点があること」が求められます。 <採用で見られるポイント> ・極めて高いインテレクチュアルスキル:ロジカルかつ柔軟な発想から独自のインサイトを示すことができるとよいです。 ・アスピレーション:自分が何を大切にしていて、それを磨くためにどういうことをしてきたかを語れるようにしておきましょう。 <特徴> BCGは、1963年にアーサー・ディ・リトルから独立したブルース・ヘンダーソンらによってボストンで設立されました。今では「経営戦略」という言葉は当たり前になっていますが、初めて「戦略」という概念を経営に導入したファームです。 また、「経験曲線」や「プロダクト・ポートフォリオ・マトリクス(PPM)」、「タイムベース競争」などの画期的なアイデアを開発したのもBCGです。競合企業に対する「差別化」「優位性」の必要性をいち早く提唱し、「Insight(洞察)」「Impact(インパクト)」「Trust(信頼)」のサイクルを付加価値の源泉として捉え、重視しています。 東京オフィスは、1966年にボストンに次ぐ2番目のオフィスとして設立されました。いち早く日本市場に着目し、クライアント経営層が抱える経営戦略上の課題に対して、深い洞察からインパクトのある戦略を提案、さらに戦略の実現まで手掛けてクライアントを変革し、持続的な競合優位性を構築することで信頼を得ています。その結果、日本において最も規模が大きい経営戦略ファームとなっています。 このようなクライアントの変革を実現するために、各業界や業務領域における高い専門性を有する経営戦略コンサルタントを抱えているだけでなく、テクノロジーやデジタル、デザイン、インキュベーション創出などを手掛ける人材も有しており、アーキテクトやシステムエンジニア、データサイエンティスト、デザイナー、プロダクトマネージャーなどと経営戦略コンサルタントが協働しています。 また、東京オフィス以外にも、名古屋・大阪・京都・福岡にオフィスを構えており、グローバルファームでありながらしっかりと日本に根差したファームといえます』、「日本支社の従業員数が世界の中でも多く、日本に根差したグローバルトップファームです」、例外的存在だ。
(※本記事は、『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』から抜粋・編集したものです) (久留須 親氏については、リンク先参照)
次に、5月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したコンサルティングファーム研究会 フェルミ推定・ケース面接対策チームによる「「とりあえずコンサル業界に」就活市場で人気化が止まらない1つの納得理由 外資系コンサルティングファームが人気の理由と選考プロセスを解説」を紹介しよう。
・『今、学生や転職者から最も人気の就職先の一つがコンサルティング業界だ。数多くの志望者の中から、一握りの有望な人材を見抜くために、この業界にはフェルミ推定やケース面接と呼ばれる独特の入社試験がある。新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』は、大手コンサルティングファームで実際に出題された問題を集め、現役で活躍するコンサルタントに解答してもらうことで、コンサル流の思考法をノウハウとして凝縮した1冊だ。就活対策にはもちろんのこと、思考力のトレーニングにも最適だ。本稿では、本書執筆者の1人で現役コンサルタントのRIO氏に、外資系コンサルティングファームが人気の理由と選考プロセスについて話を聞いた(Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『「とりあえずコンサル業界に就職したい」と考える学生が増えている Q:近年コンサルティング業界が、就活で人気になっていると聞きますが、その理由はどこにあるのでしょうか。 RIO氏:最近の傾向として、とりあえずコンサルティング業界を目指そうという学生が非常に増えていて、「とりコン(とりあえずコンサル業界に就職)」という言葉も一般的になっています。 Q:なぜ、数ある業種や職種の中で「とりあえずコンサル」と考える学生が多いのでしょうか。 RIO氏:目まぐるしく変化する時代の中で、何もわからないまま一つの業界に腰を据えることをリスクだと捉えているからではないでしょうか。 その点でコンサルタントの仕事は、プロジェクトごとに様々な業界に入り込んで、クライアントの経営課題と向き合う仕事なので、将来に色々なキャリアの選択肢を残せると職業だと言えるかもしれません。 一般的な企業では、いわゆる下積みのような期間を過ごすケースが多く、気づいたときには転職するには遅い年齢になってしまうこともありえます。 コンサルティングファームの仕事は、一般的な企業ではかなり上のポジションに就かないと向き合えないような経営課題を1年目のコンサルタントから新卒であろうと関係なく、必死になって取り組むことになります。 先輩のコンサルタントたちからはもちろん、クライアント企業の経営層や担当者からも学びながらアウトプットし、フィードバックを受けるといった魅力的な成長機会を得ることができるのです』、「一般的な企業では、いわゆる下積みのような期間を過ごすケースが多く、気づいたときには転職するには遅い年齢になってしまうこともありえます。 コンサルティングファームの仕事は、一般的な企業ではかなり上のポジションに就かないと向き合えないような経営課題を1年目のコンサルタントから新卒であろうと関係なく、必死になって取り組むことになります。 先輩のコンサルタントたちからはもちろん、クライアント企業の経営層や担当者からも学びながらアウトプットし、フィードバックを受けるといった魅力的な成長機会を得ることができるのです」、確かにこれなら魅力的だ。
・『コンサルティングファームの採用プロセス Q:コンサルティングファームの一般的な選考プロセスを教えてください。 RIO氏:まずエントリーシートを提出してウェブテストを受けます。それを突破すると1次面接に呼ばれるわけですが、この段階でケース面接問題やフェルミ推定問題が出題されます。 一般的な会社における新卒採用の面接では、志望者のパーソナリティに関すること、たとえば「学生時代に力を入れたこと」などを聞かれると思いますが、そのような人物面接に加えて、「東京都の通勤ラッシュを解消するには?」といったような、志望者の思考力を試すケース面接が行われます 面接官との1対1で行われる場合もあれば、グループディスカッションや筆記テストの場合もあります。 基本的には、このような面接が2~3回実施された後、3次面接ないし4次面接の段階で、コンサルティングファームのパートナーが出てきます。 そこで、さらにケース面接を行う場合もあれば、志望者のパーソナリティを聞くような通常の人物面接が行われることもありますが、最終的にその企業のカルチャーとフィットしていると評価された志望者に内定を出すというのが一般的な選考の流れです』、「1次面接に呼ばれるわけですが、この段階でケース面接問題やフェルミ推定問題が出題されます。 一般的な会社における新卒採用の面接では、志望者のパーソナリティに関すること、たとえば「学生時代に力を入れたこと」などを聞かれると思いますが、そのような人物面接に加えて、「東京都の通勤ラッシュを解消するには?」といったような、志望者の思考力を試すケース面接が行われます 面接官との1対1で行われる場合もあれば、グループディスカッションや筆記テストの場合もあります。 基本的には、このような面接が2~3回実施された後、3次面接ないし4次面接の段階で、コンサルティングファームのパートナーが出てきます」、さすがに慎重な採用姿勢だ。
・『インターンで内定が決まる学生も RIO氏:このほか、インターンシップを通じた採用のパターンもあります。その場合は、1~2回のケース面接を行い、合格した人が「ジョブ」と呼ばれる数日間のインターンに参加します。 このインターンでは、「ある会社の新規事業を立案せよ」とか「ある会社のM&Aの戦略を検討せよ」という課題に取り組むことになります。 他のインターン参加者と協力しながら調査分析や資料作成に取り組み、最終日にはパートナーを前にプレゼンテーションを行います。 課題の合間には、コンサルティングファームの代表から話があったり、各部署の説明が行われたりもします。 インターンの当日あるいは後日、ジョブで高評価を得た人は人事部やパートナーとの面接に呼ばれ、一部の方に内定が出されます』、「ジョブで高評価を得た人は人事部やパートナーとの面接に呼ばれ、一部の方に内定が出されます」、当然だろう。
・『コンサルティング業界の採用人数は増えている Q:外資系コンサルの選考と聞くと、非常に難易度の高い、厳しい面接というイメージもありますが、実際のところどうなのでしょうか。 RIO氏:初めてフェルミ推定やケース面接の問題を目にすると、難しく感じるかもしれません。ですが、問題を繰り返し練習すれば、誰でも「回答の型」を身につけることができます。 これはコンサルタントの仕事に必要な「問題解決思考の型」「ロジカルシンキングの型」でもあります。 コンサルティングファームの選考では、必ずフェルミ推定やケース面接が実施されるので、対策を立てやすいという面もあります。事前に対策を立てることで、選考突破の可能性を大きく伸ばすことができます。 私は10年以上この業界で働いているのですが、私が就職した時と比べると、コンサルティングファームの採用人数は圧倒的に増えています。 いわゆる総合コンサルを中心に、以前は十数名しか採用しなかった企業が、数百名以上採用するようになっており、このこともコンサルティング業界への就職を希望する学生が増えている大きな要因だと思います』、「コンサルティングファームの選考では、必ずフェルミ推定やケース面接が実施されるので、対策を立てやすいという面もあります。事前に対策を立てることで、選考突破の可能性を大きく伸ばすことができます・・・総合コンサルを中心に、以前は十数名しか採用しなかった企業が、数百名以上採用するようになっており、このこともコンサルティング業界への就職を希望する学生が増えている大きな要因だと思います」、「フェルミ推定」など論理的思考に役立つ知識を勉強した学生が増えているのは、l心強い。
タグ:コンサルティング (その2)(マッキンゼー? ボスコン? コンサル2大トップの「採用基準」はどう違う?【コンサル専門エージェントが公開】、「とりあえずコンサル業界に」就活市場で人気化が止まらない1つの納得理由 外資系コンサルティングファームが人気の理由と選考プロセスを解説) ダイヤモンド・オンライン 久留須 親氏による「マッキンゼー? ボスコン? コンサル2大トップの「採用基準」はどう違う?【コンサル専門エージェントが公開】」 「大事なことは「偏差値的な考えで志望度を決めない」ことです。なぜなら「自分が行きたいファームが自分に合っているファームとは限らない」からです・・・「自分が行きたいファームから是が非でもオファーを獲得する」と考えるのではなく、「オファーを獲得したファームが自分にフィットしている」と考えるようにしてください」、なるほど。 「各国のコンサルタントが国をまたいでプロジェクトにアサインされたり、社内のナレッジ(英語で管理されている)を有効活用する観点から、英語が社内公用語となっています(応募時の必要書類も英文レジュメのみです)」、なるほど。 「日本支社の従業員数が世界の中でも多く、日本に根差したグローバルトップファームです」、例外的存在だ。 コンサルティングファーム研究会 フェルミ推定・ケース面接対策チームによる「「とりあえずコンサル業界に」就活市場で人気化が止まらない1つの納得理由 外資系コンサルティングファームが人気の理由と選考プロセスを解説」 新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』 「一般的な企業では、いわゆる下積みのような期間を過ごすケースが多く、気づいたときには転職するには遅い年齢になってしまうこともありえます。 コンサルティングファームの仕事は、一般的な企業ではかなり上のポジションに就かないと向き合えないような経営課題を1年目のコンサルタントから新卒であろうと関係なく、必死になって取り組むことになります。 先輩のコンサルタントたちからはもちろん、クライアント企業の経営層や担当者からも学びながらアウトプットし、フィードバックを受けるといった魅力的な成長機会を得ることができるのです」、確かにこれなら魅力的だ。 「1次面接に呼ばれるわけですが、この段階でケース面接問題やフェルミ推定問題が出題されます。 一般的な会社における新卒採用の面接では、志望者のパーソナリティに関すること、たとえば「学生時代に力を入れたこと」などを聞かれると思いますが、そのような人物面接に加えて、「東京都の通勤ラッシュを解消するには?」といったような、志望者の思考力を試すケース面接が行われます 面接官との1対1で行われる場合もあれば、グループディスカッションや筆記テストの場合もあります。 基本的には、このような面接が2~3回実施された後、3次 面接ないし4次面接の段階で、コンサルティングファームのパートナーが出てきます」、さすがに慎重な採用姿勢だ。 「ジョブで高評価を得た人は人事部やパートナーとの面接に呼ばれ、一部の方に内定が出されます」、当然だろう。 「コンサルティングファームの選考では、必ずフェルミ推定やケース面接が実施されるので、対策を立てやすいという面もあります。事前に対策を立てることで、選考突破の可能性を大きく伸ばすことができます・・・総合コンサルを中心に、以前は十数名しか採用しなかった企業が、数百名以上採用するようになっており、このこともコンサルティング業界への就職を希望する学生が増えている大きな要因だと思います」、 「フェルミ推定」など論理的思考に役立つ知識を勉強した学生が増えているのは、l心強い。
ホテル(その8)(桜の季節を襲う「ホテル価格高騰」、3つの裏事情 東京や京都は1年で5割上昇、「値上げの弊害」も、アパホテル 「客室数日本一」を支える"経営哲学" 「Much Better」ではなく「Even Better」の強さ) [産業動向]
ホテルについては、本年3月14日に取上げた。今日は、(その8)(桜の季節を襲う「ホテル価格高騰」、3つの裏事情 東京や京都は1年で5割上昇、「値上げの弊害」も、アパホテル 「客室数日本一」を支える"経営哲学" 「Much Better」ではなく「Even Better」の強さ)である。
先ずは、3月24日付け東洋経済オンライン「桜の季節を襲う「ホテル価格高騰」、3つの裏事情 東京や京都は1年で5割上昇、「値上げの弊害」も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/742727?display=b
・『東京でも桜が開花しはじめるなど、春の行楽シーズンがやってきた。 子どもの春休みなどが重なるこの時期は、日本人観光客が国内旅行に出かけるほか、多くの外国人観光客も日本を訪れ、観光地は賑わいを見せる。 一方、ホテルの客室単価が近年急激に上昇しており、旅行需要に水を差す可能性が出てきた。 ホテルにとっても桜の観光シーズンは、夏休みなどに並ぶ「稼ぎ時」だ。2023年にはパレスホテル東京(千代田区)の3?4月の平均客室単価が10万円を超えた。284室を有する大型日系ホテルとしては異例の価格だ』。「パレスホテル東京(千代田区)の3?4月の平均客室単価が10万円を超えた」、それほどエポックメ-キングなことなのだろうか。
・『ドーミーインはコロナ前より約35%上昇 「東京や京都などの平均客室単価は去年の同時期と比べて5割程度上昇している」。全国展開するビジネスホテル大手の関係者は3~4月の見通しをそう語る。インバウンド客が殺到している観光地のホテルは、2024年も価格が高騰することになりそうだ。 ホテル価格の高騰が顕著になったのはコロナ禍が明けてからだ。例えば、共立メンテナンスが運営をしているドーミーインの2023年10~12月の平均客室単価は1万4400円と2019年同時期と比べると約35%上昇している。 単価が高騰しているのはビジネスホテルだけではない。大手ホテル予約サイトを見ると、オークラ東京(港区)は約11万8000円(4月8日から1泊の素泊まり料金、48平米)、パーク ハイアット 東京は約19万8000円(同、55平米)とラグジュアリーホテルも強気の価格設定をしていることがわかる。) ホテルの価格が上がり続ける背景には3つの事情がある。 1つ目がインバウンド観光客の急増だ。水際対策が緩和された2022年10月以降、インバウンド客回復のペースが加速した。 日本政府観光局が発表している「訪日外客統計」によれば、2023年10月に訪日外国人が251万人とコロナ前(249万人)を超えて以降、足元ではコロナ前を超える水準が続いている。 ホテルは自社の客室稼働率や競合の価格などを分析して客室単価を決めている。インバウンド客が増えたことで、東京や大阪など都市部の稼働率が上昇した』、「ホテル価格の高騰が顕著になったのはコロナ禍が明けてからだ。例えば、共立メンテナンスが運営をしているドーミーインの2023年10~12月の平均客室単価は1万4400円と2019年同時期と比べると約35%上昇している・・・ホテルの価格が上がり続ける背景には3つの事情がある。 1つ目がインバウンド観光客の急増だ。水際対策が緩和された2022年10月以降、インバウンド客回復のペースが加速」、なるほど。
・『「稼働率」よりも「客室単価」を重視した販売戦略に 2つ目がコストアップの転嫁である。ホテルはフロントや調理など多くのスタッフを必要とする。 コロナ禍で多くのホテルは経営を維持するために人員削減を行ったが、宿泊客が一気に戻ったことで人手不足が深刻となっている。そのためホテルは新卒社員の初任給増額など待遇改善を進めている。 そのほかにも水道光熱費の上昇や客室清掃やリネン会社など委託先への支払い料金の増加などもある。客室の販売価格にこうしたコスト増加分が転嫁されている。 3つ目がホテル会社の経営戦略の変化である。コロナ前までは、客室をどれだけ埋めるかという「稼働率」を重視してきたが、コロナ禍を経て「客室単価」を重視した販売戦略をとるようになった。 ホテルニューオータニの清水肇総支配人も1月に行った東洋経済のインタビューで「無理をして客室を埋めるよりも、売れる日に単価を上げれば収益性は高くなる。(コロナ禍を経て)売り方が変わってきたと思う」と述べている。 同じ売上高だとすれば、「稼働率が高い」よりも「客室単価が高い」ほうがホテルが獲得する利益が多くなる。ホテルでは、一般的に客室1室を販売するごとに客室清掃費用、アメニティ代などが発生する。だが客室単価が上がればこうしたコストは抑制できる。) インバウンドの増加やコストアップという外部環境の要因はすぐに収まりそうにない。ホテル各社はコロナ禍で行った借入金の返済があるため、しばらくは利益重視の販売を続けることになりそうだ。つまり当面の間、ホテルの価格高騰は止まらないという訳だ。 こうした追い風を受けホテル各社の業績も絶好調だ。ホテル椿山荘東京を運営する藤田観光は2023年の業績は売上高645億円(前年同期比47.5%増)、営業利益66億円(前年度は40億円の赤字)と営業利益は2019年の2.8億円を大きく上回った。そのほかの企業も業績の急回復を予想している。 一方で、値上げによる弊害も徐々に現れ始めている。観光庁が発表をしている宿泊旅行統計調査によれば、2023年10~12月の日本人の延べ宿泊者数(宿泊人数×宿泊数)は、2022年の同期間を下回った。 延べ宿泊者数が前年同期を下回るのは、コロナ禍以降では、GoToトラベルキャンペーンの反動減があった2021年11月以来のことである。「ホテルの客室価格が上昇したため、日本人旅行者が減少する傾向は去年の後半から顕著に出ている」と業界幹部は指摘する』、「2つ目がコストアップの転嫁である。ホテルはフロントや調理など多くのスタッフを必要とする。 コロナ禍で多くのホテルは経営を維持するために人員削減を行ったが、宿泊客が一気に戻ったことで人手不足が深刻となっている。そのためホテルは新卒社員の初任給増額など待遇改善を進めている・・・3つ目がホテル会社の経営戦略の変化である。コロナ前までは、客室をどれだけ埋めるかという「稼働率」を重視してきたが、コロナ禍を経て「客室単価」を重視した販売戦略をとるようになった。 ホテルニューオータニの清水肇総支配人も1月に行った東洋経済のインタビューで「無理をして客室を埋めるよりも、売れる日に単価を上げれば収益性は高くなる。(コロナ禍を経て)売り方が変わってきたと思う」と述べている。 同じ売上高だとすれば、「稼働率が高い」よりも「客室単価が高い」ほうがホテルが獲得する利益が多くなる・・・ホテル各社はコロナ禍で行った借入金の返済があるため、しばらくは利益重視の販売を続けることになりそうだ。つまり当面の間、ホテルの価格高騰は止まらないという訳だ・・・宿泊旅行統計調査によれば、2023年10~12月の日本人の延べ宿泊者数(宿泊人数×宿泊数)は、2022年の同期間を下回った。 延べ宿泊者数が前年同期を下回るのは、コロナ禍以降では、GoToトラベルキャンペーンの反動減があった2021年11月以来のことである。「ホテルの客室価格が上昇したため、日本人旅行者が減少する傾向は去年の後半から顕著に出ている」と業界幹部は指摘する」、なるほど。
・『旅行を敬遠し、ほかのレジャーを選ぶ動きも 東洋大学・国際観光学部の徳江順一郎准教授は、「ホテルの客室単価上昇が続くと、消費者が旅行に近い喜びを得られる代替財に流れる可能性もある」とみる。 高すぎる旅行を敬遠し、テーマパークや映画などほかのレジャーを選ぶということだ。実際、円安と物価高の影響で海外旅行が高騰したため、国内旅行を選ぶ動きはすでに起きている。 足元で起きているホテルの客室単価の上昇の多くは、体験価値の向上ではなく、市場の需給逼迫によって起きている。 徳江准教授は「値上がりをしても、泊まり続けてくれるファンの育成が大前提。会員向けの値下げや客室のグレードアップをするなど、顧客満足度の向上を続ける必要がある」と指摘する。 直近ではコロナ禍で行えていなかった大型改装に踏み切るホテルなども増えている。ホテル各社には消費者に客室単価上昇を納得してもらうための、体験価値の向上が求められる』。「「ホテルの客室単価上昇が続くと、消費者が旅行に近い喜びを得られる代替財に流れる可能性もある」とみる。 高すぎる旅行を敬遠し、テーマパークや映画などほかのレジャーを選ぶということだ。実際、円安と物価高の影響で海外旅行が高騰したため、国内旅行を選ぶ動きはすでに起きている・・・「徳江准教授は「値上がりをしても、泊まり続けてくれるファンの育成が大前提。会員向けの値下げや客室のグレードアップをするなど、顧客満足度の向上を続ける必要がある」と指摘する。 直近ではコロナ禍で行えていなかった大型改装に踏み切るホテルなども増えている。ホテル各社には消費者に客室単価上昇を納得してもらうための、体験価値の向上が求められる」、なるほど。
次に、3月22日付け東洋経済オンラインが掲載したフリーライター・編集者 の笹間 聖子氏による「アパホテル、「客室数日本一」を支える"経営哲学" 「Much Better」ではなく「Even Better」の強さ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/741933
・『男性はもちろん、昨今は女性や外国人観光客など、多くの人が利用しているビジネスホテル。各ホテルはそれぞれに、代名詞とも言えるサービスや設備を持っている。けれど昨今のホテル選びでは価格ばかりが注目され、提供側がこだわっているポイントにはスポットライトが当たっていないこともしばしばだ。 この連載、「ビジネスホテル、言われてみればよく知らない話」では、各ビジネスホテルの代名詞的なサービス・設備を紹介し、さらにその奥にある経営哲学や歴史、ホスピタリティまでをひもといていく。連載第5回からは、全国1位の客室数を誇る王者・アパホテルの代表的なサービスと経営哲学を、全3回にわたりお届けする』、「アパホテル」はこのところTVコマーシャルも派手に打っている。
・『過去最高益を記録。全国客室数の8%がアパ 1971年の創業から52期連続黒字。2023年11月期のグループ連結決算では、売上高1912億円、経常利益553億円を叩き出し、過去最高益を更新した巨大ホテルチェーンがある。アパグループ(以下、アパ)だ。 過去最高益の理由について社長兼CEOを務める元谷一志氏は、「客室数の増大と、インバウンドが客室を高単価で購入していることにあります」と分析する。 実際、現在の客室数は直営、FC合わせて11万7000室。これは全国に約150万室あるホテル、旅館のほぼ8%を占める数値だ。アパはさらに、2027年3月期に15万室、10%の寡占化を目指して増設を続けている。) アパの成功の1つの要因になっているのが、代名詞とも言える、「トリプルワンシステム」だ。「トリプルワンシステム」とはその名の通り、「3つの1」を実現するシステムのこと。内訳は、「1ステップ予約、1秒チェックイン、1秒チェックアウト」だ。どんな内容か、ここで簡単に説明しよう。 まず「1ステップ予約」は、予約専用の「アパアプリ」をインストールして目当てのホテルを登録しておけば、ホテル、宿泊日、到着時間を選択するだけで予約が完了するサービスだ。 次に「1秒チェックイン」とは、到着前、アプリでチェックインボタンをクリックし、QRコードを発行。到着後に、「1秒チェックイン専用機」にスマホをかざせばルームキーが発行され、チェックインが完了する。 最後の「1秒チェックアウト」は宿泊後、返却ポストにキーを入れるだけでチェックアウトができる。 いずれも現在はそう珍しいものではないが、アパがオンライン決済とアプリ予約サービスを開始した時期は2017年4月。コロナ禍より前の話だ』、「現在の客室数は直営、FC合わせて11万7000室。これは全国に約150万室あるホテル、旅館のほぼ8%を占める数値」、思いのほか大規模だ。「アパの成功の1つの要因になっているのが・・・「トリプルワンシステム」だ。「トリプルワンシステム」とはその名の通り、「3つの1」を実現するシステムのこと。内訳は、「1ステップ予約、1秒チェックイン、1秒チェックアウト」だ。どんな内容か、ここで簡単に説明しよう・・・「1ステップ予約」は、予約専用の「アパアプリ」をインストールして目当てのホテルを登録しておけば、ホテル、宿泊日、到着時間を選択するだけで予約が完了するサービスだ。 次に「1秒チェックイン」とは、到着前、アプリでチェックインボタンをクリックし、QRコードを発行。到着後に、「1秒チェックイン専用機」にスマホをかざせばルームキーが発行され、チェックインが完了する。 最後の「1秒チェックアウト」は宿泊後、返却ポストにキーを入れるだけでチェックアウトができる」、先進的だ。
・『アプリを開発した背景は? 導入した理由について元谷氏は、「オンライン決済は、スマホとルームキーがつながる未来を見据えての開発でした。またアプリ開発のきっかけは、GAFAが『検索表示からの予約成立時に一定のコミッションを取る』方式に転換したことです。コミッションを削減して個人を囲い込むには、アプリしかないと考えました」と振り返る。 当初はまだQRコードの発行はなく、チェックイン機での入力が必要だった。だが2020年6月、コロナ禍を受け、QRコードでルームキーを発行できる「1秒チェックイン専用機」の順次導入がスタートする。狙いは、さらなるスピードアップと非接触にあった。) それから4年。2024年現在、アパアプリのダウンロード数は500万を超えている。OTA(オンライン旅行代理店)からの予約をのぞき、自社システムでの予約は7割以上がアプリからだ。 理由は、指先一つでできる手軽さ。そして、予約成立時にアパが8~15%の手数料を取られるOTAよりも、自社システムからの予約を最安値とする「ベストレート宣言」をしていることにある』、「2024年現在、アパアプリのダウンロード数は500万を超えている。OTA(オンライン旅行代理店)からの予約をのぞき、自社システムでの予約は7割以上がアプリからだ。 理由は、指先一つでできる手軽さ。そして、予約成立時にアパが8~15%の手数料を取られるOTAよりも、自社システムからの予約を最安値とする「ベストレート宣言」をしていることにある」、「自社システムでの予約は7割以上がアプリからだ」とは凄く強力な武器だ。
・『顧客満足度向上とDXによる省人化、2兎を追う 2023年5月には、新たなアプリも誕生した。滞在者専用アプリ『APA Stay Here』だ。 ノーマルの『アパホテル』以外の4ブランド、『アパホテル&リゾート』『アパホテルステイ』『アパホテルエクセレント』『アパホテルプライド』への導入が順次始まっている。 新アプリのコンセプトは「1Guest,1Digital Concierge」。滞在の延長やマッサージの予約、レストランの食券購入など14の機能を備えている。 「APA Atay Here」のトップ画面 こちらのアプリの開発目的は、ゲストからの内線コールを極力減らすとともに、「かゆいところに手が届く」コンシェルジュのようなサービスをデジタルで実現することにあるそうだ。 2つのアプリから見えてくるのは、「顧客満足度の向上」と「DXによる省人化」、一見相反する両者を、同時に追求するアパの姿勢だ。 アパアプリは、利便性と「忙しいゲストの時間を奪わない」スピード感で、『APA Stay Here』は、デジタルながらも手厚いコンシェルジュのようなサービスで、それぞれに顧客満足度を向上。その裏で、どちらも煩雑な顧客とのやりとりを減らし、従業員の作業を軽減している。 元谷氏は、「日本の人口がどんどん減っていくなか、人員確保は難しくなりつつあり、これからさらに省人化が必要になります。そこで大きな役割を果たすのが、アプリをはじめとするDX化です。アパでは今後もDX化による顧客満足度の向上を推進していきたいですね」と話す。) もう1つ、アパ成功の要因として元谷氏自身が上げるのが、「1ホテル、1イノベーション」の姿勢だ。その意味は、次々に誕生する新しいホテルに必ず1つ以上、改善や新たな機能を付加するというもの。 例えば、2018年3月にオープンした『アパホテル&リゾート〈西新宿五丁目駅タワー〉』では、入眠スピードにこだわってシーリー社と共同開発したオリジナルベッド「クラウドフィット」の快適性はそのままに、厚みを減らした新ベッド「クラウドフィットグラン」を採用。以後、他ホテルへも導入を進めている。 新ベッド開発の理由はインバウンドの多くが持つ、大型トランクが入るベッド下収納を確保するため。コンパクトな客室を、トランクが占拠するのを防ぐ狙いだ』、「「APA Atay Here」のトップ画面 こちらのアプリの開発目的は、ゲストからの内線コールを極力減らすとともに、「かゆいところに手が届く」コンシェルジュのようなサービスをデジタルで実現することにあるそうだ。 2つのアプリから見えてくるのは、「顧客満足度の向上」と「DXによる省人化」、一見相反する両者を、同時に追求するアパの姿勢だ」、「「顧客満足度の向上」と「DXによる省人化」」、を「同時に追求するアパの姿勢」、こんな素晴らしい先進性があったとは、初めて知った。
・『「ユニットバスのバスタブを5度傾ける」理由とは? 同様のインバウンド客への配慮で言えば、2023年11月にオープンした『アパホテル〈茅場町八丁堀駅前〉』からは、ユニットバスのバスタブを5度傾けて設置している。「用を足す際にバスタブに膝が当たる」という声を受け、膝が当たらない角度に変更したのだ。 同ホテルではまた、それまで1m60cmあったシャワーホースも1m20cmに改良。短縮することで操作性を上げるとともに、湯を張った際にホースが浸からず、カビを防ぐ狙いだ。 加えて、洗面ボールもサイズアップし、形状も変更。これは、蛇口から湯沸かしポットに水を注ぐ際に、しっかりボール内にポットを入れ、水を注ぎやすくするために行われた改良だ。排水口に付けているヘアキャッチャーの網目も、万一コンタクトを落としても流れない目の大きさに変更された。) ほかにも、改良はひっきりなしだ。例えば、2022年10月に開業した『アパホテル&リゾート〈六本木駅東〉』からは、枕元に「おやすみスイッチ(GOOD NIGHT スイッチ)」を設置している。 「おやすみスイッチ(GOOD NIGHT スイッチ)」とは、冷蔵庫、空調、ユニットバス、テレビ以外の電気がすべて1カ所で切れるスイッチのこと。ユニットバスやテレビが含められていないのは、複数人で泊まっている場合に誰かが使っている可能性を考えてのことだ。なんとも、きめ細かな配慮……。 『おやすみスイッチ 開発理由について元谷氏は、「海外出張の際に、あちこち点在するスイッチの場所がわからず、あきらめて寝たことがストレスだったんです。それで、一括で全部切れるスイッチを思い立ちました」と説明する』、「GOOD NIGHT スイッチ」に「ユニットバスやテレビが含められていないのは、複数人で泊まっている場合に誰かが使っている可能性を考えてのことだ」、「きめ細かな配慮」はさすがだ。
・『アパは「良いものを、さらに良くする」ラボである 通常、商品でもホテルでも、「同じものを大量に作る」ほうがコストメリットは大きいものだ。「1ホテル、1イノベーション」はコスト的にはかなりマイナスとなるが、その姿勢を追求し続けているのはなぜなのか。元谷氏は以下のように説明する。 「一番は、何度も訪れる方への配慮です。経済原論に関する考え方に、『カレーライスの法則』というものがあります。人は同じ味のカレーを食べると、1杯目は満足するけれど、2杯目は満足度が下がる。3杯目以降はもっと下がり、いつか見向きもされなくなるというものです。ホテルも同様で、同じサービスを提供し続けると、満足度はどんどん低減するのです。 と同時に、テクノロジーも日進月歩で進化します。かつては貴重だったWi-Fiだって、今では当たり前ですよね。だからつねに新開発を続け、世に受け入れられるサービスだけを残していく必要があるのです』、「テクノロジーも日進月歩で進化します。かつては貴重だったWi-Fiだって、今では当たり前ですよね。だからつねに新開発を続け、世に受け入れられるサービスだけを残していく必要があるのです』、「つねに新開発を続け、世に受け入れられるサービスだけを残していく必要があるのです』、「アパ」の躍進の背後には、こんなに「テクノロジー」への注力があったとは初めて知った。「アパ」の成功は、一過性のものではなく、ビルトインされたもののようだ。
先ずは、3月24日付け東洋経済オンライン「桜の季節を襲う「ホテル価格高騰」、3つの裏事情 東京や京都は1年で5割上昇、「値上げの弊害」も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/742727?display=b
・『東京でも桜が開花しはじめるなど、春の行楽シーズンがやってきた。 子どもの春休みなどが重なるこの時期は、日本人観光客が国内旅行に出かけるほか、多くの外国人観光客も日本を訪れ、観光地は賑わいを見せる。 一方、ホテルの客室単価が近年急激に上昇しており、旅行需要に水を差す可能性が出てきた。 ホテルにとっても桜の観光シーズンは、夏休みなどに並ぶ「稼ぎ時」だ。2023年にはパレスホテル東京(千代田区)の3?4月の平均客室単価が10万円を超えた。284室を有する大型日系ホテルとしては異例の価格だ』。「パレスホテル東京(千代田区)の3?4月の平均客室単価が10万円を超えた」、それほどエポックメ-キングなことなのだろうか。
・『ドーミーインはコロナ前より約35%上昇 「東京や京都などの平均客室単価は去年の同時期と比べて5割程度上昇している」。全国展開するビジネスホテル大手の関係者は3~4月の見通しをそう語る。インバウンド客が殺到している観光地のホテルは、2024年も価格が高騰することになりそうだ。 ホテル価格の高騰が顕著になったのはコロナ禍が明けてからだ。例えば、共立メンテナンスが運営をしているドーミーインの2023年10~12月の平均客室単価は1万4400円と2019年同時期と比べると約35%上昇している。 単価が高騰しているのはビジネスホテルだけではない。大手ホテル予約サイトを見ると、オークラ東京(港区)は約11万8000円(4月8日から1泊の素泊まり料金、48平米)、パーク ハイアット 東京は約19万8000円(同、55平米)とラグジュアリーホテルも強気の価格設定をしていることがわかる。) ホテルの価格が上がり続ける背景には3つの事情がある。 1つ目がインバウンド観光客の急増だ。水際対策が緩和された2022年10月以降、インバウンド客回復のペースが加速した。 日本政府観光局が発表している「訪日外客統計」によれば、2023年10月に訪日外国人が251万人とコロナ前(249万人)を超えて以降、足元ではコロナ前を超える水準が続いている。 ホテルは自社の客室稼働率や競合の価格などを分析して客室単価を決めている。インバウンド客が増えたことで、東京や大阪など都市部の稼働率が上昇した』、「ホテル価格の高騰が顕著になったのはコロナ禍が明けてからだ。例えば、共立メンテナンスが運営をしているドーミーインの2023年10~12月の平均客室単価は1万4400円と2019年同時期と比べると約35%上昇している・・・ホテルの価格が上がり続ける背景には3つの事情がある。 1つ目がインバウンド観光客の急増だ。水際対策が緩和された2022年10月以降、インバウンド客回復のペースが加速」、なるほど。
・『「稼働率」よりも「客室単価」を重視した販売戦略に 2つ目がコストアップの転嫁である。ホテルはフロントや調理など多くのスタッフを必要とする。 コロナ禍で多くのホテルは経営を維持するために人員削減を行ったが、宿泊客が一気に戻ったことで人手不足が深刻となっている。そのためホテルは新卒社員の初任給増額など待遇改善を進めている。 そのほかにも水道光熱費の上昇や客室清掃やリネン会社など委託先への支払い料金の増加などもある。客室の販売価格にこうしたコスト増加分が転嫁されている。 3つ目がホテル会社の経営戦略の変化である。コロナ前までは、客室をどれだけ埋めるかという「稼働率」を重視してきたが、コロナ禍を経て「客室単価」を重視した販売戦略をとるようになった。 ホテルニューオータニの清水肇総支配人も1月に行った東洋経済のインタビューで「無理をして客室を埋めるよりも、売れる日に単価を上げれば収益性は高くなる。(コロナ禍を経て)売り方が変わってきたと思う」と述べている。 同じ売上高だとすれば、「稼働率が高い」よりも「客室単価が高い」ほうがホテルが獲得する利益が多くなる。ホテルでは、一般的に客室1室を販売するごとに客室清掃費用、アメニティ代などが発生する。だが客室単価が上がればこうしたコストは抑制できる。) インバウンドの増加やコストアップという外部環境の要因はすぐに収まりそうにない。ホテル各社はコロナ禍で行った借入金の返済があるため、しばらくは利益重視の販売を続けることになりそうだ。つまり当面の間、ホテルの価格高騰は止まらないという訳だ。 こうした追い風を受けホテル各社の業績も絶好調だ。ホテル椿山荘東京を運営する藤田観光は2023年の業績は売上高645億円(前年同期比47.5%増)、営業利益66億円(前年度は40億円の赤字)と営業利益は2019年の2.8億円を大きく上回った。そのほかの企業も業績の急回復を予想している。 一方で、値上げによる弊害も徐々に現れ始めている。観光庁が発表をしている宿泊旅行統計調査によれば、2023年10~12月の日本人の延べ宿泊者数(宿泊人数×宿泊数)は、2022年の同期間を下回った。 延べ宿泊者数が前年同期を下回るのは、コロナ禍以降では、GoToトラベルキャンペーンの反動減があった2021年11月以来のことである。「ホテルの客室価格が上昇したため、日本人旅行者が減少する傾向は去年の後半から顕著に出ている」と業界幹部は指摘する』、「2つ目がコストアップの転嫁である。ホテルはフロントや調理など多くのスタッフを必要とする。 コロナ禍で多くのホテルは経営を維持するために人員削減を行ったが、宿泊客が一気に戻ったことで人手不足が深刻となっている。そのためホテルは新卒社員の初任給増額など待遇改善を進めている・・・3つ目がホテル会社の経営戦略の変化である。コロナ前までは、客室をどれだけ埋めるかという「稼働率」を重視してきたが、コロナ禍を経て「客室単価」を重視した販売戦略をとるようになった。 ホテルニューオータニの清水肇総支配人も1月に行った東洋経済のインタビューで「無理をして客室を埋めるよりも、売れる日に単価を上げれば収益性は高くなる。(コロナ禍を経て)売り方が変わってきたと思う」と述べている。 同じ売上高だとすれば、「稼働率が高い」よりも「客室単価が高い」ほうがホテルが獲得する利益が多くなる・・・ホテル各社はコロナ禍で行った借入金の返済があるため、しばらくは利益重視の販売を続けることになりそうだ。つまり当面の間、ホテルの価格高騰は止まらないという訳だ・・・宿泊旅行統計調査によれば、2023年10~12月の日本人の延べ宿泊者数(宿泊人数×宿泊数)は、2022年の同期間を下回った。 延べ宿泊者数が前年同期を下回るのは、コロナ禍以降では、GoToトラベルキャンペーンの反動減があった2021年11月以来のことである。「ホテルの客室価格が上昇したため、日本人旅行者が減少する傾向は去年の後半から顕著に出ている」と業界幹部は指摘する」、なるほど。
・『旅行を敬遠し、ほかのレジャーを選ぶ動きも 東洋大学・国際観光学部の徳江順一郎准教授は、「ホテルの客室単価上昇が続くと、消費者が旅行に近い喜びを得られる代替財に流れる可能性もある」とみる。 高すぎる旅行を敬遠し、テーマパークや映画などほかのレジャーを選ぶということだ。実際、円安と物価高の影響で海外旅行が高騰したため、国内旅行を選ぶ動きはすでに起きている。 足元で起きているホテルの客室単価の上昇の多くは、体験価値の向上ではなく、市場の需給逼迫によって起きている。 徳江准教授は「値上がりをしても、泊まり続けてくれるファンの育成が大前提。会員向けの値下げや客室のグレードアップをするなど、顧客満足度の向上を続ける必要がある」と指摘する。 直近ではコロナ禍で行えていなかった大型改装に踏み切るホテルなども増えている。ホテル各社には消費者に客室単価上昇を納得してもらうための、体験価値の向上が求められる』。「「ホテルの客室単価上昇が続くと、消費者が旅行に近い喜びを得られる代替財に流れる可能性もある」とみる。 高すぎる旅行を敬遠し、テーマパークや映画などほかのレジャーを選ぶということだ。実際、円安と物価高の影響で海外旅行が高騰したため、国内旅行を選ぶ動きはすでに起きている・・・「徳江准教授は「値上がりをしても、泊まり続けてくれるファンの育成が大前提。会員向けの値下げや客室のグレードアップをするなど、顧客満足度の向上を続ける必要がある」と指摘する。 直近ではコロナ禍で行えていなかった大型改装に踏み切るホテルなども増えている。ホテル各社には消費者に客室単価上昇を納得してもらうための、体験価値の向上が求められる」、なるほど。
次に、3月22日付け東洋経済オンラインが掲載したフリーライター・編集者 の笹間 聖子氏による「アパホテル、「客室数日本一」を支える"経営哲学" 「Much Better」ではなく「Even Better」の強さ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/741933
・『男性はもちろん、昨今は女性や外国人観光客など、多くの人が利用しているビジネスホテル。各ホテルはそれぞれに、代名詞とも言えるサービスや設備を持っている。けれど昨今のホテル選びでは価格ばかりが注目され、提供側がこだわっているポイントにはスポットライトが当たっていないこともしばしばだ。 この連載、「ビジネスホテル、言われてみればよく知らない話」では、各ビジネスホテルの代名詞的なサービス・設備を紹介し、さらにその奥にある経営哲学や歴史、ホスピタリティまでをひもといていく。連載第5回からは、全国1位の客室数を誇る王者・アパホテルの代表的なサービスと経営哲学を、全3回にわたりお届けする』、「アパホテル」はこのところTVコマーシャルも派手に打っている。
・『過去最高益を記録。全国客室数の8%がアパ 1971年の創業から52期連続黒字。2023年11月期のグループ連結決算では、売上高1912億円、経常利益553億円を叩き出し、過去最高益を更新した巨大ホテルチェーンがある。アパグループ(以下、アパ)だ。 過去最高益の理由について社長兼CEOを務める元谷一志氏は、「客室数の増大と、インバウンドが客室を高単価で購入していることにあります」と分析する。 実際、現在の客室数は直営、FC合わせて11万7000室。これは全国に約150万室あるホテル、旅館のほぼ8%を占める数値だ。アパはさらに、2027年3月期に15万室、10%の寡占化を目指して増設を続けている。) アパの成功の1つの要因になっているのが、代名詞とも言える、「トリプルワンシステム」だ。「トリプルワンシステム」とはその名の通り、「3つの1」を実現するシステムのこと。内訳は、「1ステップ予約、1秒チェックイン、1秒チェックアウト」だ。どんな内容か、ここで簡単に説明しよう。 まず「1ステップ予約」は、予約専用の「アパアプリ」をインストールして目当てのホテルを登録しておけば、ホテル、宿泊日、到着時間を選択するだけで予約が完了するサービスだ。 次に「1秒チェックイン」とは、到着前、アプリでチェックインボタンをクリックし、QRコードを発行。到着後に、「1秒チェックイン専用機」にスマホをかざせばルームキーが発行され、チェックインが完了する。 最後の「1秒チェックアウト」は宿泊後、返却ポストにキーを入れるだけでチェックアウトができる。 いずれも現在はそう珍しいものではないが、アパがオンライン決済とアプリ予約サービスを開始した時期は2017年4月。コロナ禍より前の話だ』、「現在の客室数は直営、FC合わせて11万7000室。これは全国に約150万室あるホテル、旅館のほぼ8%を占める数値」、思いのほか大規模だ。「アパの成功の1つの要因になっているのが・・・「トリプルワンシステム」だ。「トリプルワンシステム」とはその名の通り、「3つの1」を実現するシステムのこと。内訳は、「1ステップ予約、1秒チェックイン、1秒チェックアウト」だ。どんな内容か、ここで簡単に説明しよう・・・「1ステップ予約」は、予約専用の「アパアプリ」をインストールして目当てのホテルを登録しておけば、ホテル、宿泊日、到着時間を選択するだけで予約が完了するサービスだ。 次に「1秒チェックイン」とは、到着前、アプリでチェックインボタンをクリックし、QRコードを発行。到着後に、「1秒チェックイン専用機」にスマホをかざせばルームキーが発行され、チェックインが完了する。 最後の「1秒チェックアウト」は宿泊後、返却ポストにキーを入れるだけでチェックアウトができる」、先進的だ。
・『アプリを開発した背景は? 導入した理由について元谷氏は、「オンライン決済は、スマホとルームキーがつながる未来を見据えての開発でした。またアプリ開発のきっかけは、GAFAが『検索表示からの予約成立時に一定のコミッションを取る』方式に転換したことです。コミッションを削減して個人を囲い込むには、アプリしかないと考えました」と振り返る。 当初はまだQRコードの発行はなく、チェックイン機での入力が必要だった。だが2020年6月、コロナ禍を受け、QRコードでルームキーを発行できる「1秒チェックイン専用機」の順次導入がスタートする。狙いは、さらなるスピードアップと非接触にあった。) それから4年。2024年現在、アパアプリのダウンロード数は500万を超えている。OTA(オンライン旅行代理店)からの予約をのぞき、自社システムでの予約は7割以上がアプリからだ。 理由は、指先一つでできる手軽さ。そして、予約成立時にアパが8~15%の手数料を取られるOTAよりも、自社システムからの予約を最安値とする「ベストレート宣言」をしていることにある』、「2024年現在、アパアプリのダウンロード数は500万を超えている。OTA(オンライン旅行代理店)からの予約をのぞき、自社システムでの予約は7割以上がアプリからだ。 理由は、指先一つでできる手軽さ。そして、予約成立時にアパが8~15%の手数料を取られるOTAよりも、自社システムからの予約を最安値とする「ベストレート宣言」をしていることにある」、「自社システムでの予約は7割以上がアプリからだ」とは凄く強力な武器だ。
・『顧客満足度向上とDXによる省人化、2兎を追う 2023年5月には、新たなアプリも誕生した。滞在者専用アプリ『APA Stay Here』だ。 ノーマルの『アパホテル』以外の4ブランド、『アパホテル&リゾート』『アパホテルステイ』『アパホテルエクセレント』『アパホテルプライド』への導入が順次始まっている。 新アプリのコンセプトは「1Guest,1Digital Concierge」。滞在の延長やマッサージの予約、レストランの食券購入など14の機能を備えている。 「APA Atay Here」のトップ画面 こちらのアプリの開発目的は、ゲストからの内線コールを極力減らすとともに、「かゆいところに手が届く」コンシェルジュのようなサービスをデジタルで実現することにあるそうだ。 2つのアプリから見えてくるのは、「顧客満足度の向上」と「DXによる省人化」、一見相反する両者を、同時に追求するアパの姿勢だ。 アパアプリは、利便性と「忙しいゲストの時間を奪わない」スピード感で、『APA Stay Here』は、デジタルながらも手厚いコンシェルジュのようなサービスで、それぞれに顧客満足度を向上。その裏で、どちらも煩雑な顧客とのやりとりを減らし、従業員の作業を軽減している。 元谷氏は、「日本の人口がどんどん減っていくなか、人員確保は難しくなりつつあり、これからさらに省人化が必要になります。そこで大きな役割を果たすのが、アプリをはじめとするDX化です。アパでは今後もDX化による顧客満足度の向上を推進していきたいですね」と話す。) もう1つ、アパ成功の要因として元谷氏自身が上げるのが、「1ホテル、1イノベーション」の姿勢だ。その意味は、次々に誕生する新しいホテルに必ず1つ以上、改善や新たな機能を付加するというもの。 例えば、2018年3月にオープンした『アパホテル&リゾート〈西新宿五丁目駅タワー〉』では、入眠スピードにこだわってシーリー社と共同開発したオリジナルベッド「クラウドフィット」の快適性はそのままに、厚みを減らした新ベッド「クラウドフィットグラン」を採用。以後、他ホテルへも導入を進めている。 新ベッド開発の理由はインバウンドの多くが持つ、大型トランクが入るベッド下収納を確保するため。コンパクトな客室を、トランクが占拠するのを防ぐ狙いだ』、「「APA Atay Here」のトップ画面 こちらのアプリの開発目的は、ゲストからの内線コールを極力減らすとともに、「かゆいところに手が届く」コンシェルジュのようなサービスをデジタルで実現することにあるそうだ。 2つのアプリから見えてくるのは、「顧客満足度の向上」と「DXによる省人化」、一見相反する両者を、同時に追求するアパの姿勢だ」、「「顧客満足度の向上」と「DXによる省人化」」、を「同時に追求するアパの姿勢」、こんな素晴らしい先進性があったとは、初めて知った。
・『「ユニットバスのバスタブを5度傾ける」理由とは? 同様のインバウンド客への配慮で言えば、2023年11月にオープンした『アパホテル〈茅場町八丁堀駅前〉』からは、ユニットバスのバスタブを5度傾けて設置している。「用を足す際にバスタブに膝が当たる」という声を受け、膝が当たらない角度に変更したのだ。 同ホテルではまた、それまで1m60cmあったシャワーホースも1m20cmに改良。短縮することで操作性を上げるとともに、湯を張った際にホースが浸からず、カビを防ぐ狙いだ。 加えて、洗面ボールもサイズアップし、形状も変更。これは、蛇口から湯沸かしポットに水を注ぐ際に、しっかりボール内にポットを入れ、水を注ぎやすくするために行われた改良だ。排水口に付けているヘアキャッチャーの網目も、万一コンタクトを落としても流れない目の大きさに変更された。) ほかにも、改良はひっきりなしだ。例えば、2022年10月に開業した『アパホテル&リゾート〈六本木駅東〉』からは、枕元に「おやすみスイッチ(GOOD NIGHT スイッチ)」を設置している。 「おやすみスイッチ(GOOD NIGHT スイッチ)」とは、冷蔵庫、空調、ユニットバス、テレビ以外の電気がすべて1カ所で切れるスイッチのこと。ユニットバスやテレビが含められていないのは、複数人で泊まっている場合に誰かが使っている可能性を考えてのことだ。なんとも、きめ細かな配慮……。 『おやすみスイッチ 開発理由について元谷氏は、「海外出張の際に、あちこち点在するスイッチの場所がわからず、あきらめて寝たことがストレスだったんです。それで、一括で全部切れるスイッチを思い立ちました」と説明する』、「GOOD NIGHT スイッチ」に「ユニットバスやテレビが含められていないのは、複数人で泊まっている場合に誰かが使っている可能性を考えてのことだ」、「きめ細かな配慮」はさすがだ。
・『アパは「良いものを、さらに良くする」ラボである 通常、商品でもホテルでも、「同じものを大量に作る」ほうがコストメリットは大きいものだ。「1ホテル、1イノベーション」はコスト的にはかなりマイナスとなるが、その姿勢を追求し続けているのはなぜなのか。元谷氏は以下のように説明する。 「一番は、何度も訪れる方への配慮です。経済原論に関する考え方に、『カレーライスの法則』というものがあります。人は同じ味のカレーを食べると、1杯目は満足するけれど、2杯目は満足度が下がる。3杯目以降はもっと下がり、いつか見向きもされなくなるというものです。ホテルも同様で、同じサービスを提供し続けると、満足度はどんどん低減するのです。 と同時に、テクノロジーも日進月歩で進化します。かつては貴重だったWi-Fiだって、今では当たり前ですよね。だからつねに新開発を続け、世に受け入れられるサービスだけを残していく必要があるのです』、「テクノロジーも日進月歩で進化します。かつては貴重だったWi-Fiだって、今では当たり前ですよね。だからつねに新開発を続け、世に受け入れられるサービスだけを残していく必要があるのです』、「つねに新開発を続け、世に受け入れられるサービスだけを残していく必要があるのです』、「アパ」の躍進の背後には、こんなに「テクノロジー」への注力があったとは初めて知った。「アパ」の成功は、一過性のものではなく、ビルトインされたもののようだ。
タグ:「2つ目がコストアップの転嫁である。ホテルはフロントや調理など多くのスタッフを必要とする。 コロナ禍で多くのホテルは経営を維持するために人員削減を行ったが、宿泊客が一気に戻ったことで人手不足が深刻となっている。そのためホテルは新卒社員の初任給増額など待遇改善を進めている・・・3つ目がホテル会社の経営戦略の変化である。コロナ前までは、客室をどれだけ埋めるかという「稼働率」を重視してきたが、コロナ禍を経て「客室単価」を重視した販売戦略をとるようになった。 「つねに新開発を続け、世に受け入れられるサービスだけを残していく必要があるのです』、「アパ」の躍進の背後には、こんなに「テクノロジー」への注力があったとは初めて知った。「アパ」の成功は、一過性のものではなく、ビルトインされたもののようだ。 「GOOD NIGHT スイッチ」に「ユニットバスやテレビが含められていないのは、複数人で泊まっている場合に誰かが使っている可能性を考えてのことだ」、「きめ細かな配慮」はさすがだ。 笹間 聖子氏による「アパホテル、「客室数日本一」を支える"経営哲学" 「Much Better」ではなく「Even Better」の強さ」 東洋経済オンライン 直近ではコロナ禍で行えていなかった大型改装に踏み切るホテルなども増えている。ホテル各社には消費者に客室単価上昇を納得してもらうための、体験価値の向上が求められる」、なるほど。 「「ホテルの客室単価上昇が続くと、消費者が旅行に近い喜びを得られる代替財に流れる可能性もある」とみる。 高すぎる旅行を敬遠し、テーマパークや映画などほかのレジャーを選ぶということだ。実際、円安と物価高の影響で海外旅行が高騰したため、国内旅行を選ぶ動きはすでに起きている・・・「徳江准教授は「値上がりをしても、泊まり続けてくれるファンの育成が大前提。会員向けの値下げや客室のグレードアップをするなど、顧客満足度の向上を続ける必要がある」と指摘する。 一見相反する両者を、同時に追求するアパの姿勢だ」、「「顧客満足度の向上」と「DXによる省人化」」、を「同時に追求するアパの姿勢」、こんな素晴らしい先進性があったとは、初めて知った。 「「APA Atay Here」のトップ画面 こちらのアプリの開発目的は、ゲストからの内線コールを極力減らすとともに、「かゆいところに手が届く」コンシェルジュのようなサービスをデジタルで実現することにあるそうだ。 2つのアプリから見えてくるのは、「顧客満足度の向上」と「DXによる省人化」、 「自社システムでの予約は7割以上がアプリからだ」とは凄く強力な武器だ。 日、到着時間を選択するだけで予約が完了するサービスだ。 次に「1秒チェックイン」とは、到着前、アプリでチェックインボタンをクリックし、QRコードを発行。到着後に、「1秒チェックイン専用機」にスマホをかざせばルームキーが発行され、チェックインが完了する。 最後の「1秒チェックアウト」は宿泊後、返却ポストにキーを入れるだけでチェックアウトができる」、先進的だ。 「現在の客室数は直営、FC合わせて11万7000室。これは全国に約150万室あるホテル、旅館のほぼ8%を占める数値」、思いのほか大規模だ。「アパの成功の1つの要因になっているのが・・・「トリプルワンシステム」だ。「トリプルワンシステム」とはその名の通り、「3つの1」を実現するシステムのこと。内訳は、「1ステップ予約、1秒チェックイン、1秒チェックアウト」だ。どんな内容か、ここで簡単に説明しよう・・・「1ステップ予約」は、予約専用の「アパアプリ」をインストールして目当てのホテルを登録しておけば、ホテル、宿泊 「アパホテル」はこのところTVコマーシャルも派手に打っている。 宿泊旅行統計調査によれば、2023年10~12月の日本人の延べ宿泊者数(宿泊人数×宿泊数)は、2022年の同期間を下回った。 延べ宿泊者数が前年同期を下回るのは、コロナ禍以降では、GoToトラベルキャンペーンの反動減があった2021年11月以来のことである。「ホテルの客室価格が上昇したため、日本人旅行者が減少する傾向は去年の後半から顕著に出ている」と業界幹部は指摘する」、なるほど。 ホテルニューオータニの清水肇総支配人も1月に行った東洋経済のインタビューで「無理をして客室を埋めるよりも、売れる日に単価を上げれば収益性は高くなる。(コロナ禍を経て)売り方が変わってきたと思う」と述べている。 同じ売上高だとすれば、「稼働率が高い」よりも「客室単価が高い」ほうがホテルが獲得する利益が多くなる・・・ホテル各社はコロナ禍で行った借入金の返済があるため、しばらくは利益重視の販売を続けることになりそうだ。つまり当面の間、ホテルの価格高騰は止まらないという訳だ・・・ 「ホテル価格の高騰が顕著になったのはコロナ禍が明けてからだ。例えば、共立メンテナンスが運営をしているドーミーインの2023年10~12月の平均客室単価は1万4400円と2019年同時期と比べると約35%上昇している・・・ホテルの価格が上がり続ける背景には3つの事情がある。 1つ目がインバウンド観光客の急増だ。水際対策が緩和された2022年10月以降、インバウンド客回復のペースが加速」、なるほど。 「パレスホテル東京(千代田区)の3?4月の平均客室単価が10万円を超えた」、それほどエポックメ-キングなことなのだろうか。 東洋経済オンライン「桜の季節を襲う「ホテル価格高騰」、3つの裏事情 東京や京都は1年で5割上昇、「値上げの弊害」も」 (その8)(桜の季節を襲う「ホテル価格高騰」、3つの裏事情 東京や京都は1年で5割上昇、「値上げの弊害」も、アパホテル 「客室数日本一」を支える"経営哲学" 「Much Better」ではなく「Even Better」の強さ) ホテル
携帯・スマホ(その13)(ついにトンネル抜けた?楽天の未来占う3つの焦点 連続赤字でも株価急騰 モバイルは黒字間近か、底を脱した楽天、株主たちが語った「安堵と不満」 株主総会での注目点はモバイルから財務戦略に、[新連載]楽天 泥沼の5期連続赤字に見えた光明 総力戦で開く血路) [産業動向]
携帯・スマホについては、昨年9月30日に取上げた。今日は、(その13)(ついにトンネル抜けた?楽天の未来占う3つの焦点 連続赤字でも株価急騰 モバイルは黒字間近か、底を脱した楽天、株主たちが語った「安堵と不満」 株主総会での注目点はモバイルから財務戦略に、[新連載]楽天 泥沼の5期連続赤字に見えた光明 総力戦で開く血路)である。
先ずは、本年2月21日付け東洋経済オンライン「ついにトンネル抜けた?楽天の未来占う3つの焦点 連続赤字でも株価急騰、モバイルは黒字間近か」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/735773
・『トンネルを抜ける日は、いよいよ近いのか。 2月14日に発表された楽天グループの2023年12月期決算は、売上高が前期比7.8%増の2兆0713億円、営業損益が2128億円の赤字(前期は3716億円の赤字)だった。 営業赤字が大幅に縮まったのは、モバイル事業の採算改善が主因だ。セグメント単体では3375億円の赤字と、前期から1400億円余り縮小している。売上高の増加に加え、コスト削減や基地局整備の一巡が大きく貢献した。 楽天市場を中心としたインターネットサービス、楽天カードなどのフィンテックのセグメントでも、取扱高が順調に拡大したことなどから増益を達成している』、最悪期は脱しつつあるようだ。
・『5期連続赤字、無配でも株価は急騰 5期連続赤字を受け、配当は過去20年で初めての無配としたものの、楽天グループの株価は749円(2月20日終値)と、2月14日比で19%高にまで急騰。「サプライズはなかったが、(懸案だったモバイル事業の)進捗に安心感がある」(アナリスト)と、ポジティブな受け止めが目立った。 楽天は2024年12月期の業績予想を公表していない。ただし、モバイル事業については2024年12月までにEBITDA(利払い前、税引き前、減価償却前利益)ベースで単月黒字化を目指すとし、2025年12月期には通期黒字化を計画している。 モバイル事業への本格参入以来、長らく続いていた低迷期を抜け出し、ついに浮上のときを迎えるのか。楽天の未来を占ううえでは、3つの指標が重要になってくる。) 第1に、モバイルの契約数だ。2023年12月末の契約数(MVNO・BCPを除く)は596万と、10~12月の3カ月で84万回線増えた。 四半期ごとの増え幅としては、300万人まで月額使用料を1年間に限って無料とするキャンペーンなどでユーザーを急拡大させていた2021年1~3月期(純増数は123万)に次ぐ水準となった』、「モバイルの契約数」は順調なようだ。
・『(楽天モバイルの契約数と顧客単価推移の図はリンク先参照) 楽天は、2024年中に契約数を800万から1000万まで押し上げることを目標に掲げる。ユーザー1人当たりの平均単価を2500円~3000円と仮定した場合、この契約数がモバイル事業を黒字化できる水準とみているからだ。 直近四半期の増加ペースを2024年末まで維持できれば、単純計算で契約数は932万に達し、黒字化の下限として示した800万を大きく上回ることになる』、「直近四半期の増加ペースを2024年末まで維持できれば、単純計算で契約数は932万に達し、黒字化の下限として示した800万を大きく上回ることになる」、なるほど。
・『足元の伸びは法人向けが牽引 ただ、目標達成に向けては課題もある。個人ユーザーの開拓だ。 足元の契約数の伸びを牽引しているのは、楽天が2023年1月からサービス提供を始めた法人向けが中心とみられる。実際、決算資料では「B2Bは(中略)年末にかけてパイプラインの獲得が大幅に進み、第4四半期の契約回線数が顕著に増加」と記されている。 料金の割安感を訴求し、従来取引のある約90万社の顧客基盤を中心に新規獲得を続けているもようだが、楽天の取引先は従業員数の少ない中小企業が大半を占める。競合キャリアが先行して長らくサービスを提供している領域でもあり、この1年の勢いを持続したまま乗り換えを促す難易度は高いだろう。 さらに言えば、業務用の法人向け携帯の契約数は、国内市場全体の1~2割程度とされる。法人頼みのままでは、早晩伸びが鈍化しかねない。 昨年末に法人向けの契約が急増したことで、ユーザーの単価にも影響が出ている。2023年9~12月期の平均単価は1986円と、前の四半期比で3%低下した。個人向けより単価が低い傾向にある法人向けの比率が高まったことが響いたようだ。 先述の通り、契約数800万~1000万での黒字化の前提条件として、会社側はユーザー単価を2500~3000円と設定している。現状比で2割以上引き上げる必要がある。) こうした背景から、楽天は個人向けの開拓に向けた施策を相次いで打ち出してきた。 2月1日から、モバイルユーザーが別の人を紹介した場合、楽天ポイントを1人につき7000ポイント還元するなどのキャンペーン施策を開始。2月21日からは家族で契約した場合、ユーザー1人当たり100円割引を受けられる家族割プランの提供を始める。 楽天の三木谷浩史会長兼社長は2月14日の決算会見で、「(単価を引き上げるために)追加の施策が必要だ。とくに(楽天モバイルユーザー向けのアプリ内に掲載する)広告収入が増えていくだろう」と展望を語った。 データトラフィックが多く、高単価な個人向けを拡大できれば、収益力向上にもつながる。今後登場してくる追加施策の具体的中身に注目したい』、「法人向けの契約が急増したことで、ユーザーの単価にも影響が出ている。2023年9~12月期の平均単価は1986円と、前の四半期比で3%低下した。個人向けより単価が低い傾向にある法人向けの比率が高まったことが響いたようだ」、なるほど。
・『モバイルへの設備投資は大幅減を見込む 楽天の未来を占う第2の指標は、赤字の元凶となってきたモバイルへの設備投資の額だ。 2024年12月期の計画は約1000億円と、前期の1776億円から4割減を見込む。年間数千億円を投じてきた2~3年前と比べると、山は越えたといえる。 楽天はモバイル事業の参入当初、約6000億円で全国に4G用の基地局網を整備できると見込んでいた。しかし必要となる基地局数の見通しが甘かったことなどから、結果的に累計の設備投資額は1兆円を超える規模にまで膨らんだ。 こうした過去の経緯を踏まえると、先行きに不安も残る。 楽天は2023年末、屋内でもつながりやすいとされる周波数帯「プラチナバンド」の700MHz(メガヘルツ)帯の割り当てを総務省から受けた。2024年5月をメドに利用を始める予定だという。) 割り当てを受ける際に総務省へ提出した資料では、プラチナバンド整備に伴う追加の設備投資額を10年間で500億円強と試算。整備期間の後半にその比重が大きくなるとしている。 ただ、楽天にとってプラチナバンドの獲得は初めてのこと。競合からは「500億円の投資でできるとはさすがに思わない」(ソフトバンクの宮川潤一社長)といぶかしむ声も上がっていた。仮に設備投資の見通しに再び狂いが生じれば、財務面では手痛い打撃となる。 とくに懸念されるのが、社債・劣後債の償還への影響である。今後2年で償還を控えた社債・劣後債の規模は約7000億円に上り、これが第3の指標だ』、「プラチナバンド整備に伴う追加の設備投資額を10年間で500億円強と試算。整備期間の後半にその比重が大きくなるとしている・・・競合からは「500億円の投資でできるとはさすがに思わない」・・・といぶかしむ声も」、「設備投資額」はもっと多くなりそうだ。
・『今後2年で償還時期を迎える楽天グループ債 モバイル事業への投資原資を確保するため社債の発行を続けてきた楽天では、その償還が2024年から2025年にかけてピークを迎える。楽天本体の総額では、2024年に2200億円強、2025年は4800億円弱に達する見通しだ(編集部注・ドル建て債は1ドル150円で計算)。 2月6日には約2700億円のドル建て社債(利率11%)を発行するなど、資金の調達に邁進している。会社側は「2024年のリファイナンス(負債の借り換え)リスクは解消した」と強調する』、「リファイナンス・・・リスクは解消」、というのは言い過ぎで、やはり「リスク」は残っていると考えるべきだ。
・『リファイナンスは可能だと確信 2025年に満期を迎える償還分についても、国内の個人向け債券(リテール債)の新規発行による借り換えや、楽天証券を傘下に抱える楽天証券ホールディングスの株式上場といった資本性資金の調達で乗り切る方針だ。 楽天によれば、2022年と2023年にそれぞれ国内向けで1500億円(利率0.72%)、2500億円(同3.3%)ずつ発行したリテール債は好評を博し、たちまち完売したという。「日本のリテール債市場は厚みがあり、当社の認知度も高いことから、リファイナンスは可能であると確信」(楽天)しているようだ。ただ、S&Pグローバル・レーティングなどの格付け会社はここ1~2年の間で楽天の格付けを相次ぎ引き下げている。 資本性資金の調達にも不透明感が漂う。楽天証券HDは2023年7月に東京証券取引所へ株式上場を申請していたが、同年11月にみずほ証券が楽天証券に追加出資を決定したことを踏まえていったん申請を取り下げていた。現時点で上場のメドは立っていない。 今なおリスク要素を複数抱える楽天だが、1年前と比べれば、浮上に向けた道筋が見えてきたことも確か。3つの指標の進捗を追うことで、同社が今後たどるシナリオの解像度を高められるだろう』、「今なおリスク要素を複数抱える楽天だが、1年前と比べれば、浮上に向けた道筋が見えてきたことも確か」、今後の「楽天」を注視したい。
次に、4月2日付け東洋経済オンライン「底を脱した楽天、株主たちが語った「安堵と不満」 株主総会での注目点はモバイルから財務戦略に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/745100
・『東京郊外の多摩川沿いに位置し、「都会と自然が調和する街」として知られる世田谷の二子玉川。曇天となった3月28日の朝、都内を代表するセレブタウンは、駅前にプラカードを手にした大勢の楽天グループ関係者が立ち並び、いつもと異なる雰囲気が漂っていた。 改札から出た人々の多くがプラカードに目をやりながら、近くにそびえ立つ高層ビルへと列をなすように吸い込まれていく。 楽天は同日午前10時から、この地に構える本社「楽天クリムゾンハウス」で27回目の定時株主総会を開いた。会場は昨年までの「グランドプリンスホテル新高輪」(東京都港区)から一変し、初の本社開催となった』、「定時株主総会を」、「これまでのホテルから」、「初の本社開催となった」、なるほど。
・『株価は年初から約4割上昇 「500円くらいのときに底値だと思って買ったら上がってきたので、結果的にラッキーだった。結局モバイルが赤字なだけで、他は好調だ」。総会開始前、約1年前に楽天株を購入したという50代の株主の男性は取材にそう話した。 楽天が2月に発表した2023年12月期決算は、売上高が前期比7.8%増の2兆0713億円、営業損益が2128億円の赤字(前期は3716億円の赤字)だった。営業赤字は4期連続となったが、懸案のモバイル事業がコスト削減や基地局整備の一巡などで改善し、前年より赤字幅は大幅に縮小した(詳細はこちら)。 23年ぶりの無配を決めた一方、モバイルの契約数が順調に増えたことや、注目されていた財務面で「2024年のリファイナンス(負債の借り換え)リスクは解消した」と説明したこともあり、その後の株価は急騰。足元では800円台後半と、年初から約4割上昇している。 コロナ後では最多となる465人の株主が来場したという、今回の株主総会。三木谷浩史会長兼社長は何を語ったのか。ここからは、出席株主への取材などを基に、総会の様子を紹介していこう。) この日、議長を務めた三木谷氏は、楽天モバイルの代名詞である「ショッキングピンク」を連想させる明るい色のネクタイに、スーツ姿で登場した。総会では、前期の事業実績をビデオで報告後、株主からの関心がとくに高い「財務戦略」「モバイル」「AI(人工知能)」の3つのテーマが個別に説明されたという』、「モバイルの契約数が順調に増えたことや、注目されていた財務面で「2024年のリファイナンス(負債の借り換え)リスクは解消した」と説明したこともあり、その後の株価は急騰。足元では800円台後半と、年初から約4割上昇している」、なるほど。
・『楽天グループの株主総会当日の様子 総会当日、本社周辺の様子。コロナ後では最多となる465人の株主が来場したという(記者撮影) 3つのテーマのうち、最も長い時間が割かれたのがモバイル事業だった。三木谷氏は、モバイルが巨額の投資一巡後は利益率が大きく上昇する「固定費型ビジネス」であることや、ECや金融といった他事業とのシナジー効果が期待できることなどを説明した。 そのうえで、「損益分岐点を超えるのが今年の目標だ。それを達成した暁には、最終的にナンバーワンモバイルキャリアへの道、そこから派生するソフトウェア技術による世界への進出を行っていきたい」と、強気の姿勢を崩さなかった。 楽天モバイルは2月以降、家族や学生向けの新料金プログラムを相次いで投入している。三木谷氏は「3月の申し込みが大変順調だ」と述べ、足元の契約数を「650万」と明らかにしたという。過去最多を更新した昨年末(596万、MVNO・BCPを除く)から、約50万件増えた計算となる。今後も楽天経済圏の利用者や取引先の法人を中心に契約拡大を目指す考えを示した』、「三木谷氏」は当時から強気だったようだ。
・『財務戦略については“強気”の説明 その後の質疑応答では約30分かけ、株主からの質問に答えた。過去数年、恒例にもなっていたモバイル関連の問いはなく、株主の注目は今後の財務戦略に移ったようだった』、。
・『今後2年で償還期限を迎える楽天グループ債 楽天は2024年の社債償還のメドがたったとする一方で、2025年にも約4800億円の償還を控えている。総会に約20年出席しているという株主からは、「金利負担が確実に増えていく中で、社債償還や借入金返済に向けたロードマップの詳細を説明してほしい」という質問があった。 この質問には財務担当役員ではなく、三木谷氏自ら、「金利はコントロールできないが、市場の楽天モバイルに関する信頼レベルが上がり、株価も回復基調だ。これに応じて、債券市場も信頼を戻している」と説明した。 三木谷氏は、楽天モバイルへの大型投資が一服したことに加え、キャッシュフローの改善や運転資金の効率化を理由に、「現在の社債や銀行借り入れの返済はまったく問題なく行える」と断言。「返済計画や将来的な無借金経営への布石は、しっかりした中期的プランを作ってある」とまで言い切ったという。) 一方、楽天が今回無配を決めたことに不満の声も上がった。今期以降の配当の見通しを問われた三木谷氏は、「財務強化を行い、株価を上げていくことが、株主の皆様にとって1番だ」と述べるにとどめ、具体的なコメントは避けた。 10人の株主からの質疑応答を終えた後、総会は大きな波乱もなく、1時間24分で幕を閉じた。 総会では、提案された3つの議案がすべて承認された。今後の資金調達に向け、議決権や普通株式への転換権のない「社債型種類株式」を新たに発行するために定款を変更し、取締役と監査役の選任も決まった。 他方で総会後に開示された臨時報告書によると、三木谷氏の取締役再任への賛成率は82.16%と、昨年(89.50%)より7ポイント余り低下した。楽天は昨年5月に公募増資と第三者割当増資で3000億円規模の資金調達を実施している。翌月に開示された変更報告書では、直前まで34.21%だった三木谷氏による楽天の実質的な株式保有率が28.01%まで低下しており、今回の結果にも影響したとみられる』、「楽天モバイルへの大型投資が一服したことに加え、キャッシュフローの改善や運転資金の効率化を理由に、「現在の社債や銀行借り入れの返済はまったく問題なく行える」と断言。「返済計画や将来的な無借金経営への布石は、しっかりした中期的プランを作ってある」とまで言い切ったという」、なるほど。
・『株主が吐露した会社説明に対する不安 会社側の説明に対し、株主たちはどんな印象を持ったのか。総会終了後、50代の株主は、「モバイルは質問もなく、厳しい声はなくなりつつある。業績が改善したことで安心感が出てきている」と語った。 ただ、先行きへの不安が払拭されたわけではないという。「キャッシュフローについて質疑や説明があったが、中長期的に本当に大丈夫なのか、確信を持てない内容だった。社債償還も2025年については、説明がフワっとしていて、見えてこなかった」(同株主)。 同じく財務戦略に最も関心があったという60代の株主は、「2025年の社債償還も全然問題ないとまで言い切って、全体的に自信がみなぎっていて非常にびっくりした」と振り返る一方、「そうした姿勢とは裏腹に配当は苦しそうだし、総会の会場を本社に移したのも、経費削減ということだと思う。そういうところに、何となく財務の不安定さを感じる」とも漏らした。 山梨県から訪れたという70代の株主は「配当がゼロなら来年までに株価を1000円くらいまで上げてほしい。三木谷氏のビジョンはわかったので成果を見せてほしい」とまくしたてた。) 株主らの前で、三木谷氏が言及した財務戦略の「中期的なプラン」。その一端は、総会の直後に明らかになった。 楽天は4月1日、金融事業の大規模な再編に向けた協議を始めたと公表した。今年10月を目標に、銀行、証券、クレジットカードなどの金融子会社を1つのグループへと集約することを想定しており、経営の効率化や連携の強化を進める。 業績堅調な金融事業を一体運営することで収益力をより一層高め、財務基盤の改善につなげる狙いもあるとみられる』、「60代の株主は、「2025年の社債償還も全然問題ないとまで言い切って、全体的に自信がみなぎっていて非常にびっくりした」と振り返る一方、「そうした姿勢とは裏腹に配当は苦しそうだし、総会の会場を本社に移したのも、経費削減ということだと思う。そういうところに、何となく財務の不安定さを感じる」とも漏らした」、なるほど。
・『挑戦する姿勢に応援の声も 「国内で頑張る会社だから応援しているし、無配でももう少し我慢する。アマゾンなど海外企業にやられると税金が日本に落ちなくなる」。総会に参加した株主からは、国内のIT企業として新事業に挑戦する姿勢に対し、純粋に期待する声も聞かれた。 「将来的な大きな成長について、大変大きな自信とそれを実現する覚悟がある」と胸を張ったという三木谷氏に対し、期待と不満が入り混じる様子を見せた株主たち。長かった暗闇の先に一筋の光が見え始めた楽天は、本当にトンネルから抜け出すことができるのか。その確信度合いをめぐる両者の隔たりに、煮え切らなさも感じさせられる総会だった』、「「将来的な大きな成長について、大変大きな自信とそれを実現する覚悟がある」と胸を張ったという三木谷氏に対し、期待と不満が入り混じる様子を見せた株主たち。長かった暗闇の先に一筋の光が見え始めた楽天は、本当にトンネルから抜け出すことができるのか。その確信度合いをめぐる両者の隔たりに、煮え切らなさも感じさせられる総会だった」、なるほど。
第三に、7月8日付け日経ビジネスオンライン「[新連載]楽天、泥沼の5期連続赤字に見えた光明 総力戦で開く血路」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00655/070400001/
・『「契約者数1000万人に向けた最重要戦略が、つながりやすさだ」 6月27日、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長はつながりやすい周波数帯「プラチナバンド」の商用サービス開始を宣言し、満面の笑みを浮かべた。 三木谷氏が意気込むのも無理はない。今の楽天Gは業績だけを見れば危機的状況。その原因こそ、楽天モバイルだったからだ。 楽天Gの2023年12月期における連結決算(国際会計基準)は最終損益が3394億円の赤字。最終赤字は5期連続で、直近の24年1~3月期も423億円の最終赤字だ』、土俵際まで追い詰められた「楽天」にとって、救いの神が「「プラチナバンド」の商用サービス開始」だ。
・『グループの売り上げは2兆円を突破 +2023年12月期の連結決算(国際会計基準) 莫大な設備投資を要するモバイル事業に参入した以上、初期に赤字がかさむのは当然のことではある。とはいえモバイルの収益が想定より伸び悩み、黒字化の目標時期は年単位で先送りになっている。 「楽天は本当にダメかもしれない」。あるアナリストは23年春、冷や汗をかいていた。巨額の赤字を計上しながら、数千億円単位の社債を毎年のように償還していく必要に迫られるという、極めて苦しい状況に楽天Gは直面してきた』、「莫大な設備投資を要するモバイル事業に参入した以上、初期に赤字がかさむのは当然のことではある。とはいえモバイルの収益が想定より伸び悩み、黒字化の目標時期は年単位で先送りになっている。 「楽天は本当にダメかもしれない」。あるアナリストは23年春、冷や汗をかいていた」、なるほど。
・■本連載のラインアップ(予定) ・楽天、泥沼の5期連続赤字に見えた光明 総力戦で開く血路(今回) ・楽天流、3つの財務危機回避術 調達・ポイント・資金環流 ・楽天に迫る延命治療の副作用 迫る2027年の崖 ・楽天モバイル、総力戦で700万契約 実名勧誘社員のお手本は三木谷氏 ・楽天に救いの手差し伸べたKDDIの深慮遠謀 モバイルに待つ3つの未来 ・楽天の金融部門、潜在価値「5兆円」 挑戦と成長のカギに ・「楽天の全てに絡みたい」 みずほ、連携深める三木谷・木原ライン ・楽天OBに聞く、異業種でも生きる楽天流 「知的体育会系」で果たす目標 ・楽天流の暗部 止められなかった幹部の不正、肝いり事業も撤退へ ・「破壊的実業家」三木谷氏の軌跡 楽天が最終決戦でつかみ取る果実 しかし24年現在、評価は徐々に変わりつつある。モバイルの回線数はようやく軌道に乗って伸び始め、様々な資金調達手段を駆使することで足元の社債償還にもめどがついた。一部の証券会社は目標株価を上方修正し、投資家たちの注目を集め始めている。 当初計画よりもはるかに多くの資金をモバイル事業につぎ込むことになり、途中で倒れてもおかしくない危機を救ったのは、楽天流の徹底的なKPI(重要業績評価指標)マネジメントだ。 どんな泥臭い手段を使ってでも目標の数字を果たそうとする、三木谷氏のリーダーシップと楽天Gの体育会系的な「必達の文化」が、楽天をぎりぎりのところで踏ん張らせてきた』、「途中で倒れてもおかしくない危機を救ったのは、楽天流の徹底的なKPI(重要業績評価指標)マネジメントだ。 どんな泥臭い手段を使ってでも目標の数字を果たそうとする、三木谷氏のリーダーシップと楽天Gの体育会系的な「必達の文化」が、楽天をぎりぎりのところで踏ん張らせてきた」、なるほど。
・『始まった最終決戦 現状を冷静に評価すれば「当面、生き延びるめどがついた」というところだろう。危機が一服した今、経営を一気に立て直せるかが楽天Gの今後を左右する。 お手並み拝見の構えだったNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが、ここにきて楽天モバイルを「本物のライバル」と見なし始めた。価格競争力のある楽天モバイルに対抗して、料金プランの見直しを始めている』、「お手並み拝見の構えだったNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが、ここにきて楽天モバイルを「本物のライバル」と見なし始めた」、ライバルたちの動きは、何よりの心強い証拠だ。
・『エコシステムでは圧倒的1位 ●通信各社のエコシステムの規模 注:2023年度実績値 出所:シティグループ証券 グループ全体の収益を支えてきた金融事業に対しては、PayPayやSBIホールディングス、三井住友フィナンシャルグループなどが攻勢を強めている。 電子商取引(EC)で競合するアマゾンジャパンは今年に入って、NTTドコモやリクルートとポイントで協業を始めた』、。
・『Eコマースもアマゾンに食らいつく ●日本のEコマース流通総額の推移 注:2023年は推計値 出所:シティグループ証券 楽天モバイルは本当に稼げるようになるのか。巨額の社債は返せるのか。堅調なECと金融の盤石さは保てるのか。これらの問いに、楽天Gは答えていかねばならない。 直近ではモバイル投資を極端に抑制しつつ、社債を新規発行した資金で既発債を早期償還するなどして、楽天Gは財務リスクをコントロールしている。設備投資再開を余儀なくされ、再び社債償還期限が相次いで訪れるのは27年以降。勝負の結果が明らかになるのはそのタイミングだろう。 「モバイルに注ぎ込んだ資金を考えれば、単純撤退という選択肢は失われている」(アナリスト)。グループ経営は、モバイルと一蓮托生(いちれんたくしょう)の状況だ。楽天が直面する最終決戦の行方は、日本の金融分野やモバイル分野の形にも大きな影響を与えることになる。 巨額債務の返済を迫られる楽天は、いかにして財務危機を乗り越えようとしているのか。次回、その詳細に迫る。 この記事はシリーズ「楽天 最終決戦で開く血路」に収容されています。フォローすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます』、「 巨額債務の返済を迫られる楽天は、いかにして財務危機を乗り越えようとしているのか。次回、その詳細に迫る」、今後も興味深いものがあれば、適宜、紹介してゆきたい。
先ずは、本年2月21日付け東洋経済オンライン「ついにトンネル抜けた?楽天の未来占う3つの焦点 連続赤字でも株価急騰、モバイルは黒字間近か」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/735773
・『トンネルを抜ける日は、いよいよ近いのか。 2月14日に発表された楽天グループの2023年12月期決算は、売上高が前期比7.8%増の2兆0713億円、営業損益が2128億円の赤字(前期は3716億円の赤字)だった。 営業赤字が大幅に縮まったのは、モバイル事業の採算改善が主因だ。セグメント単体では3375億円の赤字と、前期から1400億円余り縮小している。売上高の増加に加え、コスト削減や基地局整備の一巡が大きく貢献した。 楽天市場を中心としたインターネットサービス、楽天カードなどのフィンテックのセグメントでも、取扱高が順調に拡大したことなどから増益を達成している』、最悪期は脱しつつあるようだ。
・『5期連続赤字、無配でも株価は急騰 5期連続赤字を受け、配当は過去20年で初めての無配としたものの、楽天グループの株価は749円(2月20日終値)と、2月14日比で19%高にまで急騰。「サプライズはなかったが、(懸案だったモバイル事業の)進捗に安心感がある」(アナリスト)と、ポジティブな受け止めが目立った。 楽天は2024年12月期の業績予想を公表していない。ただし、モバイル事業については2024年12月までにEBITDA(利払い前、税引き前、減価償却前利益)ベースで単月黒字化を目指すとし、2025年12月期には通期黒字化を計画している。 モバイル事業への本格参入以来、長らく続いていた低迷期を抜け出し、ついに浮上のときを迎えるのか。楽天の未来を占ううえでは、3つの指標が重要になってくる。) 第1に、モバイルの契約数だ。2023年12月末の契約数(MVNO・BCPを除く)は596万と、10~12月の3カ月で84万回線増えた。 四半期ごとの増え幅としては、300万人まで月額使用料を1年間に限って無料とするキャンペーンなどでユーザーを急拡大させていた2021年1~3月期(純増数は123万)に次ぐ水準となった』、「モバイルの契約数」は順調なようだ。
・『(楽天モバイルの契約数と顧客単価推移の図はリンク先参照) 楽天は、2024年中に契約数を800万から1000万まで押し上げることを目標に掲げる。ユーザー1人当たりの平均単価を2500円~3000円と仮定した場合、この契約数がモバイル事業を黒字化できる水準とみているからだ。 直近四半期の増加ペースを2024年末まで維持できれば、単純計算で契約数は932万に達し、黒字化の下限として示した800万を大きく上回ることになる』、「直近四半期の増加ペースを2024年末まで維持できれば、単純計算で契約数は932万に達し、黒字化の下限として示した800万を大きく上回ることになる」、なるほど。
・『足元の伸びは法人向けが牽引 ただ、目標達成に向けては課題もある。個人ユーザーの開拓だ。 足元の契約数の伸びを牽引しているのは、楽天が2023年1月からサービス提供を始めた法人向けが中心とみられる。実際、決算資料では「B2Bは(中略)年末にかけてパイプラインの獲得が大幅に進み、第4四半期の契約回線数が顕著に増加」と記されている。 料金の割安感を訴求し、従来取引のある約90万社の顧客基盤を中心に新規獲得を続けているもようだが、楽天の取引先は従業員数の少ない中小企業が大半を占める。競合キャリアが先行して長らくサービスを提供している領域でもあり、この1年の勢いを持続したまま乗り換えを促す難易度は高いだろう。 さらに言えば、業務用の法人向け携帯の契約数は、国内市場全体の1~2割程度とされる。法人頼みのままでは、早晩伸びが鈍化しかねない。 昨年末に法人向けの契約が急増したことで、ユーザーの単価にも影響が出ている。2023年9~12月期の平均単価は1986円と、前の四半期比で3%低下した。個人向けより単価が低い傾向にある法人向けの比率が高まったことが響いたようだ。 先述の通り、契約数800万~1000万での黒字化の前提条件として、会社側はユーザー単価を2500~3000円と設定している。現状比で2割以上引き上げる必要がある。) こうした背景から、楽天は個人向けの開拓に向けた施策を相次いで打ち出してきた。 2月1日から、モバイルユーザーが別の人を紹介した場合、楽天ポイントを1人につき7000ポイント還元するなどのキャンペーン施策を開始。2月21日からは家族で契約した場合、ユーザー1人当たり100円割引を受けられる家族割プランの提供を始める。 楽天の三木谷浩史会長兼社長は2月14日の決算会見で、「(単価を引き上げるために)追加の施策が必要だ。とくに(楽天モバイルユーザー向けのアプリ内に掲載する)広告収入が増えていくだろう」と展望を語った。 データトラフィックが多く、高単価な個人向けを拡大できれば、収益力向上にもつながる。今後登場してくる追加施策の具体的中身に注目したい』、「法人向けの契約が急増したことで、ユーザーの単価にも影響が出ている。2023年9~12月期の平均単価は1986円と、前の四半期比で3%低下した。個人向けより単価が低い傾向にある法人向けの比率が高まったことが響いたようだ」、なるほど。
・『モバイルへの設備投資は大幅減を見込む 楽天の未来を占う第2の指標は、赤字の元凶となってきたモバイルへの設備投資の額だ。 2024年12月期の計画は約1000億円と、前期の1776億円から4割減を見込む。年間数千億円を投じてきた2~3年前と比べると、山は越えたといえる。 楽天はモバイル事業の参入当初、約6000億円で全国に4G用の基地局網を整備できると見込んでいた。しかし必要となる基地局数の見通しが甘かったことなどから、結果的に累計の設備投資額は1兆円を超える規模にまで膨らんだ。 こうした過去の経緯を踏まえると、先行きに不安も残る。 楽天は2023年末、屋内でもつながりやすいとされる周波数帯「プラチナバンド」の700MHz(メガヘルツ)帯の割り当てを総務省から受けた。2024年5月をメドに利用を始める予定だという。) 割り当てを受ける際に総務省へ提出した資料では、プラチナバンド整備に伴う追加の設備投資額を10年間で500億円強と試算。整備期間の後半にその比重が大きくなるとしている。 ただ、楽天にとってプラチナバンドの獲得は初めてのこと。競合からは「500億円の投資でできるとはさすがに思わない」(ソフトバンクの宮川潤一社長)といぶかしむ声も上がっていた。仮に設備投資の見通しに再び狂いが生じれば、財務面では手痛い打撃となる。 とくに懸念されるのが、社債・劣後債の償還への影響である。今後2年で償還を控えた社債・劣後債の規模は約7000億円に上り、これが第3の指標だ』、「プラチナバンド整備に伴う追加の設備投資額を10年間で500億円強と試算。整備期間の後半にその比重が大きくなるとしている・・・競合からは「500億円の投資でできるとはさすがに思わない」・・・といぶかしむ声も」、「設備投資額」はもっと多くなりそうだ。
・『今後2年で償還時期を迎える楽天グループ債 モバイル事業への投資原資を確保するため社債の発行を続けてきた楽天では、その償還が2024年から2025年にかけてピークを迎える。楽天本体の総額では、2024年に2200億円強、2025年は4800億円弱に達する見通しだ(編集部注・ドル建て債は1ドル150円で計算)。 2月6日には約2700億円のドル建て社債(利率11%)を発行するなど、資金の調達に邁進している。会社側は「2024年のリファイナンス(負債の借り換え)リスクは解消した」と強調する』、「リファイナンス・・・リスクは解消」、というのは言い過ぎで、やはり「リスク」は残っていると考えるべきだ。
・『リファイナンスは可能だと確信 2025年に満期を迎える償還分についても、国内の個人向け債券(リテール債)の新規発行による借り換えや、楽天証券を傘下に抱える楽天証券ホールディングスの株式上場といった資本性資金の調達で乗り切る方針だ。 楽天によれば、2022年と2023年にそれぞれ国内向けで1500億円(利率0.72%)、2500億円(同3.3%)ずつ発行したリテール債は好評を博し、たちまち完売したという。「日本のリテール債市場は厚みがあり、当社の認知度も高いことから、リファイナンスは可能であると確信」(楽天)しているようだ。ただ、S&Pグローバル・レーティングなどの格付け会社はここ1~2年の間で楽天の格付けを相次ぎ引き下げている。 資本性資金の調達にも不透明感が漂う。楽天証券HDは2023年7月に東京証券取引所へ株式上場を申請していたが、同年11月にみずほ証券が楽天証券に追加出資を決定したことを踏まえていったん申請を取り下げていた。現時点で上場のメドは立っていない。 今なおリスク要素を複数抱える楽天だが、1年前と比べれば、浮上に向けた道筋が見えてきたことも確か。3つの指標の進捗を追うことで、同社が今後たどるシナリオの解像度を高められるだろう』、「今なおリスク要素を複数抱える楽天だが、1年前と比べれば、浮上に向けた道筋が見えてきたことも確か」、今後の「楽天」を注視したい。
次に、4月2日付け東洋経済オンライン「底を脱した楽天、株主たちが語った「安堵と不満」 株主総会での注目点はモバイルから財務戦略に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/745100
・『東京郊外の多摩川沿いに位置し、「都会と自然が調和する街」として知られる世田谷の二子玉川。曇天となった3月28日の朝、都内を代表するセレブタウンは、駅前にプラカードを手にした大勢の楽天グループ関係者が立ち並び、いつもと異なる雰囲気が漂っていた。 改札から出た人々の多くがプラカードに目をやりながら、近くにそびえ立つ高層ビルへと列をなすように吸い込まれていく。 楽天は同日午前10時から、この地に構える本社「楽天クリムゾンハウス」で27回目の定時株主総会を開いた。会場は昨年までの「グランドプリンスホテル新高輪」(東京都港区)から一変し、初の本社開催となった』、「定時株主総会を」、「これまでのホテルから」、「初の本社開催となった」、なるほど。
・『株価は年初から約4割上昇 「500円くらいのときに底値だと思って買ったら上がってきたので、結果的にラッキーだった。結局モバイルが赤字なだけで、他は好調だ」。総会開始前、約1年前に楽天株を購入したという50代の株主の男性は取材にそう話した。 楽天が2月に発表した2023年12月期決算は、売上高が前期比7.8%増の2兆0713億円、営業損益が2128億円の赤字(前期は3716億円の赤字)だった。営業赤字は4期連続となったが、懸案のモバイル事業がコスト削減や基地局整備の一巡などで改善し、前年より赤字幅は大幅に縮小した(詳細はこちら)。 23年ぶりの無配を決めた一方、モバイルの契約数が順調に増えたことや、注目されていた財務面で「2024年のリファイナンス(負債の借り換え)リスクは解消した」と説明したこともあり、その後の株価は急騰。足元では800円台後半と、年初から約4割上昇している。 コロナ後では最多となる465人の株主が来場したという、今回の株主総会。三木谷浩史会長兼社長は何を語ったのか。ここからは、出席株主への取材などを基に、総会の様子を紹介していこう。) この日、議長を務めた三木谷氏は、楽天モバイルの代名詞である「ショッキングピンク」を連想させる明るい色のネクタイに、スーツ姿で登場した。総会では、前期の事業実績をビデオで報告後、株主からの関心がとくに高い「財務戦略」「モバイル」「AI(人工知能)」の3つのテーマが個別に説明されたという』、「モバイルの契約数が順調に増えたことや、注目されていた財務面で「2024年のリファイナンス(負債の借り換え)リスクは解消した」と説明したこともあり、その後の株価は急騰。足元では800円台後半と、年初から約4割上昇している」、なるほど。
・『楽天グループの株主総会当日の様子 総会当日、本社周辺の様子。コロナ後では最多となる465人の株主が来場したという(記者撮影) 3つのテーマのうち、最も長い時間が割かれたのがモバイル事業だった。三木谷氏は、モバイルが巨額の投資一巡後は利益率が大きく上昇する「固定費型ビジネス」であることや、ECや金融といった他事業とのシナジー効果が期待できることなどを説明した。 そのうえで、「損益分岐点を超えるのが今年の目標だ。それを達成した暁には、最終的にナンバーワンモバイルキャリアへの道、そこから派生するソフトウェア技術による世界への進出を行っていきたい」と、強気の姿勢を崩さなかった。 楽天モバイルは2月以降、家族や学生向けの新料金プログラムを相次いで投入している。三木谷氏は「3月の申し込みが大変順調だ」と述べ、足元の契約数を「650万」と明らかにしたという。過去最多を更新した昨年末(596万、MVNO・BCPを除く)から、約50万件増えた計算となる。今後も楽天経済圏の利用者や取引先の法人を中心に契約拡大を目指す考えを示した』、「三木谷氏」は当時から強気だったようだ。
・『財務戦略については“強気”の説明 その後の質疑応答では約30分かけ、株主からの質問に答えた。過去数年、恒例にもなっていたモバイル関連の問いはなく、株主の注目は今後の財務戦略に移ったようだった』、。
・『今後2年で償還期限を迎える楽天グループ債 楽天は2024年の社債償還のメドがたったとする一方で、2025年にも約4800億円の償還を控えている。総会に約20年出席しているという株主からは、「金利負担が確実に増えていく中で、社債償還や借入金返済に向けたロードマップの詳細を説明してほしい」という質問があった。 この質問には財務担当役員ではなく、三木谷氏自ら、「金利はコントロールできないが、市場の楽天モバイルに関する信頼レベルが上がり、株価も回復基調だ。これに応じて、債券市場も信頼を戻している」と説明した。 三木谷氏は、楽天モバイルへの大型投資が一服したことに加え、キャッシュフローの改善や運転資金の効率化を理由に、「現在の社債や銀行借り入れの返済はまったく問題なく行える」と断言。「返済計画や将来的な無借金経営への布石は、しっかりした中期的プランを作ってある」とまで言い切ったという。) 一方、楽天が今回無配を決めたことに不満の声も上がった。今期以降の配当の見通しを問われた三木谷氏は、「財務強化を行い、株価を上げていくことが、株主の皆様にとって1番だ」と述べるにとどめ、具体的なコメントは避けた。 10人の株主からの質疑応答を終えた後、総会は大きな波乱もなく、1時間24分で幕を閉じた。 総会では、提案された3つの議案がすべて承認された。今後の資金調達に向け、議決権や普通株式への転換権のない「社債型種類株式」を新たに発行するために定款を変更し、取締役と監査役の選任も決まった。 他方で総会後に開示された臨時報告書によると、三木谷氏の取締役再任への賛成率は82.16%と、昨年(89.50%)より7ポイント余り低下した。楽天は昨年5月に公募増資と第三者割当増資で3000億円規模の資金調達を実施している。翌月に開示された変更報告書では、直前まで34.21%だった三木谷氏による楽天の実質的な株式保有率が28.01%まで低下しており、今回の結果にも影響したとみられる』、「楽天モバイルへの大型投資が一服したことに加え、キャッシュフローの改善や運転資金の効率化を理由に、「現在の社債や銀行借り入れの返済はまったく問題なく行える」と断言。「返済計画や将来的な無借金経営への布石は、しっかりした中期的プランを作ってある」とまで言い切ったという」、なるほど。
・『株主が吐露した会社説明に対する不安 会社側の説明に対し、株主たちはどんな印象を持ったのか。総会終了後、50代の株主は、「モバイルは質問もなく、厳しい声はなくなりつつある。業績が改善したことで安心感が出てきている」と語った。 ただ、先行きへの不安が払拭されたわけではないという。「キャッシュフローについて質疑や説明があったが、中長期的に本当に大丈夫なのか、確信を持てない内容だった。社債償還も2025年については、説明がフワっとしていて、見えてこなかった」(同株主)。 同じく財務戦略に最も関心があったという60代の株主は、「2025年の社債償還も全然問題ないとまで言い切って、全体的に自信がみなぎっていて非常にびっくりした」と振り返る一方、「そうした姿勢とは裏腹に配当は苦しそうだし、総会の会場を本社に移したのも、経費削減ということだと思う。そういうところに、何となく財務の不安定さを感じる」とも漏らした。 山梨県から訪れたという70代の株主は「配当がゼロなら来年までに株価を1000円くらいまで上げてほしい。三木谷氏のビジョンはわかったので成果を見せてほしい」とまくしたてた。) 株主らの前で、三木谷氏が言及した財務戦略の「中期的なプラン」。その一端は、総会の直後に明らかになった。 楽天は4月1日、金融事業の大規模な再編に向けた協議を始めたと公表した。今年10月を目標に、銀行、証券、クレジットカードなどの金融子会社を1つのグループへと集約することを想定しており、経営の効率化や連携の強化を進める。 業績堅調な金融事業を一体運営することで収益力をより一層高め、財務基盤の改善につなげる狙いもあるとみられる』、「60代の株主は、「2025年の社債償還も全然問題ないとまで言い切って、全体的に自信がみなぎっていて非常にびっくりした」と振り返る一方、「そうした姿勢とは裏腹に配当は苦しそうだし、総会の会場を本社に移したのも、経費削減ということだと思う。そういうところに、何となく財務の不安定さを感じる」とも漏らした」、なるほど。
・『挑戦する姿勢に応援の声も 「国内で頑張る会社だから応援しているし、無配でももう少し我慢する。アマゾンなど海外企業にやられると税金が日本に落ちなくなる」。総会に参加した株主からは、国内のIT企業として新事業に挑戦する姿勢に対し、純粋に期待する声も聞かれた。 「将来的な大きな成長について、大変大きな自信とそれを実現する覚悟がある」と胸を張ったという三木谷氏に対し、期待と不満が入り混じる様子を見せた株主たち。長かった暗闇の先に一筋の光が見え始めた楽天は、本当にトンネルから抜け出すことができるのか。その確信度合いをめぐる両者の隔たりに、煮え切らなさも感じさせられる総会だった』、「「将来的な大きな成長について、大変大きな自信とそれを実現する覚悟がある」と胸を張ったという三木谷氏に対し、期待と不満が入り混じる様子を見せた株主たち。長かった暗闇の先に一筋の光が見え始めた楽天は、本当にトンネルから抜け出すことができるのか。その確信度合いをめぐる両者の隔たりに、煮え切らなさも感じさせられる総会だった」、なるほど。
第三に、7月8日付け日経ビジネスオンライン「[新連載]楽天、泥沼の5期連続赤字に見えた光明 総力戦で開く血路」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00655/070400001/
・『「契約者数1000万人に向けた最重要戦略が、つながりやすさだ」 6月27日、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長はつながりやすい周波数帯「プラチナバンド」の商用サービス開始を宣言し、満面の笑みを浮かべた。 三木谷氏が意気込むのも無理はない。今の楽天Gは業績だけを見れば危機的状況。その原因こそ、楽天モバイルだったからだ。 楽天Gの2023年12月期における連結決算(国際会計基準)は最終損益が3394億円の赤字。最終赤字は5期連続で、直近の24年1~3月期も423億円の最終赤字だ』、土俵際まで追い詰められた「楽天」にとって、救いの神が「「プラチナバンド」の商用サービス開始」だ。
・『グループの売り上げは2兆円を突破 +2023年12月期の連結決算(国際会計基準) 莫大な設備投資を要するモバイル事業に参入した以上、初期に赤字がかさむのは当然のことではある。とはいえモバイルの収益が想定より伸び悩み、黒字化の目標時期は年単位で先送りになっている。 「楽天は本当にダメかもしれない」。あるアナリストは23年春、冷や汗をかいていた。巨額の赤字を計上しながら、数千億円単位の社債を毎年のように償還していく必要に迫られるという、極めて苦しい状況に楽天Gは直面してきた』、「莫大な設備投資を要するモバイル事業に参入した以上、初期に赤字がかさむのは当然のことではある。とはいえモバイルの収益が想定より伸び悩み、黒字化の目標時期は年単位で先送りになっている。 「楽天は本当にダメかもしれない」。あるアナリストは23年春、冷や汗をかいていた」、なるほど。
・■本連載のラインアップ(予定) ・楽天、泥沼の5期連続赤字に見えた光明 総力戦で開く血路(今回) ・楽天流、3つの財務危機回避術 調達・ポイント・資金環流 ・楽天に迫る延命治療の副作用 迫る2027年の崖 ・楽天モバイル、総力戦で700万契約 実名勧誘社員のお手本は三木谷氏 ・楽天に救いの手差し伸べたKDDIの深慮遠謀 モバイルに待つ3つの未来 ・楽天の金融部門、潜在価値「5兆円」 挑戦と成長のカギに ・「楽天の全てに絡みたい」 みずほ、連携深める三木谷・木原ライン ・楽天OBに聞く、異業種でも生きる楽天流 「知的体育会系」で果たす目標 ・楽天流の暗部 止められなかった幹部の不正、肝いり事業も撤退へ ・「破壊的実業家」三木谷氏の軌跡 楽天が最終決戦でつかみ取る果実 しかし24年現在、評価は徐々に変わりつつある。モバイルの回線数はようやく軌道に乗って伸び始め、様々な資金調達手段を駆使することで足元の社債償還にもめどがついた。一部の証券会社は目標株価を上方修正し、投資家たちの注目を集め始めている。 当初計画よりもはるかに多くの資金をモバイル事業につぎ込むことになり、途中で倒れてもおかしくない危機を救ったのは、楽天流の徹底的なKPI(重要業績評価指標)マネジメントだ。 どんな泥臭い手段を使ってでも目標の数字を果たそうとする、三木谷氏のリーダーシップと楽天Gの体育会系的な「必達の文化」が、楽天をぎりぎりのところで踏ん張らせてきた』、「途中で倒れてもおかしくない危機を救ったのは、楽天流の徹底的なKPI(重要業績評価指標)マネジメントだ。 どんな泥臭い手段を使ってでも目標の数字を果たそうとする、三木谷氏のリーダーシップと楽天Gの体育会系的な「必達の文化」が、楽天をぎりぎりのところで踏ん張らせてきた」、なるほど。
・『始まった最終決戦 現状を冷静に評価すれば「当面、生き延びるめどがついた」というところだろう。危機が一服した今、経営を一気に立て直せるかが楽天Gの今後を左右する。 お手並み拝見の構えだったNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが、ここにきて楽天モバイルを「本物のライバル」と見なし始めた。価格競争力のある楽天モバイルに対抗して、料金プランの見直しを始めている』、「お手並み拝見の構えだったNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが、ここにきて楽天モバイルを「本物のライバル」と見なし始めた」、ライバルたちの動きは、何よりの心強い証拠だ。
・『エコシステムでは圧倒的1位 ●通信各社のエコシステムの規模 注:2023年度実績値 出所:シティグループ証券 グループ全体の収益を支えてきた金融事業に対しては、PayPayやSBIホールディングス、三井住友フィナンシャルグループなどが攻勢を強めている。 電子商取引(EC)で競合するアマゾンジャパンは今年に入って、NTTドコモやリクルートとポイントで協業を始めた』、。
・『Eコマースもアマゾンに食らいつく ●日本のEコマース流通総額の推移 注:2023年は推計値 出所:シティグループ証券 楽天モバイルは本当に稼げるようになるのか。巨額の社債は返せるのか。堅調なECと金融の盤石さは保てるのか。これらの問いに、楽天Gは答えていかねばならない。 直近ではモバイル投資を極端に抑制しつつ、社債を新規発行した資金で既発債を早期償還するなどして、楽天Gは財務リスクをコントロールしている。設備投資再開を余儀なくされ、再び社債償還期限が相次いで訪れるのは27年以降。勝負の結果が明らかになるのはそのタイミングだろう。 「モバイルに注ぎ込んだ資金を考えれば、単純撤退という選択肢は失われている」(アナリスト)。グループ経営は、モバイルと一蓮托生(いちれんたくしょう)の状況だ。楽天が直面する最終決戦の行方は、日本の金融分野やモバイル分野の形にも大きな影響を与えることになる。 巨額債務の返済を迫られる楽天は、いかにして財務危機を乗り越えようとしているのか。次回、その詳細に迫る。 この記事はシリーズ「楽天 最終決戦で開く血路」に収容されています。フォローすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます』、「 巨額債務の返済を迫られる楽天は、いかにして財務危機を乗り越えようとしているのか。次回、その詳細に迫る」、今後も興味深いものがあれば、適宜、紹介してゆきたい。
タグ:「 巨額債務の返済を迫られる楽天は、いかにして財務危機を乗り越えようとしているのか。次回、その詳細に迫る」、今後も興味深いものがあれば、適宜、紹介してゆきたい。 「お手並み拝見の構えだったNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが、ここにきて楽天モバイルを「本物のライバル」と見なし始めた」、ライバルたちの動きは、何よりの心強い証拠だ。 「途中で倒れてもおかしくない危機を救ったのは、楽天流の徹底的なKPI(重要業績評価指標)マネジメントだ。 どんな泥臭い手段を使ってでも目標の数字を果たそうとする、三木谷氏のリーダーシップと楽天Gの体育会系的な「必達の文化」が、楽天をぎりぎりのところで踏ん張らせてきた」、なるほど。 本連載のラインアップ(予定) 「莫大な設備投資を要するモバイル事業に参入した以上、初期に赤字がかさむのは当然のことではある。とはいえモバイルの収益が想定より伸び悩み、黒字化の目標時期は年単位で先送りになっている。 「楽天は本当にダメかもしれない」。あるアナリストは23年春、冷や汗をかいていた」、なるほど。 土俵際まで追い詰められた「楽天」にとって、救いの神が「「プラチナバンド」の商用サービス開始」だ。 日経ビジネスオンライン「[新連載]楽天、泥沼の5期連続赤字に見えた光明 総力戦で開く血路」 「「将来的な大きな成長について、大変大きな自信とそれを実現する覚悟がある」と胸を張ったという三木谷氏に対し、期待と不満が入り混じる様子を見せた株主たち。長かった暗闇の先に一筋の光が見え始めた楽天は、本当にトンネルから抜け出すことができるのか。その確信度合いをめぐる両者の隔たりに、煮え切らなさも感じさせられる総会だった」、なるほど。 「60代の株主は、「2025年の社債償還も全然問題ないとまで言い切って、全体的に自信がみなぎっていて非常にびっくりした」と振り返る一方、「そうした姿勢とは裏腹に配当は苦しそうだし、総会の会場を本社に移したのも、経費削減ということだと思う。そういうところに、何となく財務の不安定さを感じる」とも漏らした」、なるほど。 「楽天モバイルへの大型投資が一服したことに加え、キャッシュフローの改善や運転資金の効率化を理由に、「現在の社債や銀行借り入れの返済はまったく問題なく行える」と断言。「返済計画や将来的な無借金経営への布石は、しっかりした中期的プランを作ってある」とまで言い切ったという」、なるほど。 「三木谷氏」は当時から強気だったようだ。 「モバイルの契約数が順調に増えたことや、注目されていた財務面で「2024年のリファイナンス(負債の借り換え)リスクは解消した」と説明したこともあり、その後の株価は急騰。足元では800円台後半と、年初から約4割上昇している」、なるほど。 「定時株主総会を」、「これまでのホテルから」、「初の本社開催となった」、なるほど。 け東洋経済オンライン「底を脱した楽天、株主たちが語った「安堵と不満」 株主総会での注目点はモバイルから財務戦略に」 「今なおリスク要素を複数抱える楽天だが、1年前と比べれば、浮上に向けた道筋が見えてきたことも確か」、今後の「楽天」を注視したい。 「リファイナンス・・・リスクは解消」、というのは言い過ぎで、やはり「リスク」は残っていると考えるべきだ。 「プラチナバンド整備に伴う追加の設備投資額を10年間で500億円強と試算。整備期間の後半にその比重が大きくなるとしている・・・競合からは「500億円の投資でできるとはさすがに思わない」・・・といぶかしむ声も」、「設備投資額」はもっと多くなりそうだ。 「法人向けの契約が急増したことで、ユーザーの単価にも影響が出ている。2023年9~12月期の平均単価は1986円と、前の四半期比で3%低下した。個人向けより単価が低い傾向にある法人向けの比率が高まったことが響いたようだ」、なるほど。 「直近四半期の増加ペースを2024年末まで維持できれば、単純計算で契約数は932万に達し、黒字化の下限として示した800万を大きく上回ることになる」、なるほど。 「モバイルの契約数」は順調なようだ。 最悪期は脱しつつあるようだ。 (その13)(ついにトンネル抜けた?楽天の未来占う3つの焦点 連続赤字でも株価急騰 モバイルは黒字間近か、底を脱した楽天、株主たちが語った「安堵と不満」 株主総会での注目点はモバイルから財務戦略に、[新連載]楽天 泥沼の5期連続赤字に見えた光明 総力戦で開く血路) 携帯・スマホ 東洋経済オンライン「ついにトンネル抜けた?楽天の未来占う3つの焦点 連続赤字でも株価急騰、モバイルは黒字間近か」
飛行機(航空機)(その2)(福岡空港ふたたび「門限」でマニラとんぼ返り! 乗客は11時間カンヅメ もはや“金銭補償”が必要か、機内に約11時間“缶詰”…乗客「戻ると言われ絶望」福岡空港“門限”に間に合わずマニラにUターン、航空管制官が日本の空港でも英語を使う理由 ミスが許されない環境のコミュニケーション) [産業動向]
飛行機(航空機)については、2018年10月22日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(福岡空港ふたたび「門限」でマニラとんぼ返り! 乗客は11時間カンヅメ もはや“金銭補償”が必要か、機内に約11時間“缶詰”…乗客「戻ると言われ絶望」福岡空港“門限”に間に合わずマニラにUターン、航空管制官が日本の空港でも英語を使う理由 ミスが許されない環境のコミュニケーション)である。
先ずは、昨年9月7日付けMerkmal「福岡空港ふたたび「門限」でマニラとんぼ返り! 乗客は11時間カンヅメ、もはや“金銭補償”が必要か」を紹介しよう。
https://merkmal-biz.jp/post/47860
・『最近、福岡空港の「門限」問題が頻繁に報道されている。福岡空港では、22時までに着陸できない便は着陸を許可されず、どこか別の空港に回されるか、最悪、出発地に引き返さなければならない。これが「門限」問題である』、興味深そうだ。
・『「門限」問題再び 最近、福岡空港の「門限」問題が頻繁に報道されている。福岡空港では、22時までに着陸できない便は着陸を許可されず、どこか別の空港に回されるか、最悪、出発地に引き返さなければならない。これが「門限」問題である。 前回大きな問題となったのは2023年2月で、羽田発福岡行きのJAL機が「門限」によって福岡空港に着陸できず、関西空港に回航、結局東京の羽田空港に戻された。 今回は国際線で、北九州空港にダイバート(目的地変更)したが、入国できず、出発地のマニラに戻らなければならなかった。乗客にとっては災難としかいいようがない。 9月4日、フィリピンの格安航空会社(LCC)セブパシフィック航空は、福岡空港の混雑で上空旋回を余儀なくされた結果、燃料不足が懸念され、北九州空港に着陸したと報じられた。このため、福岡空港の「門限」に抵触し、マニラへ引き返した。この間、乗客は機内に11時間も閉じ込められた。 ここでまず疑問になるのは、燃料不足の恐れがなぜ生じたのかということだ。通常、航空機のフライトを計画する際、ディスパッチャー(運航管理者)とパイロットは目的地の空港の状況をきちんと把握し、上空旋回の可能性があれば、燃料を多めに搭載するはずである。 特に福岡空港は滑走路が1本しかなく、混雑時には長時間の上空旋回を余儀なくされることが予想される。燃料不足の恐れがあったとはどういうことか。燃料を可能な限り少なくしてコストを最小限に抑えるというLCCの方針が、このような状況でも貫かれているとすれば、「安全軽視と受け止められても仕方がない」と批判を覚悟しなければならない。) 最近、福岡空港の「門限」問題が頻繁に報道されている。福岡空港では、22時までに着陸できない便は着陸を許可されず、どこか別の空港に回されるか、最悪、出発地に引き返さなければならない。これが「門限」問題である』、「燃料を可能な限り少なくしてコストを最小限に抑えるというLCCの方針が、このような状況でも貫かれているとすれば、「安全軽視と受け止められても仕方がない」と批判を覚悟しなければならない」、これは大いに問題だ。
・『着陸可否の見極め必要 一方で、福岡空港の混雑が「門限」を守ることを難しくしているのも事実だ。2024年に新しい第2滑走路が建設され、供用が開始されれば、混雑度は改善されるだろう。しかし当面は、観光需要の急速な回復とそれにともなう離着陸便の増加により、福岡空港の離着陸遅延がますます深刻化することを覚悟しなければならない。そうなれば、「門限」の問題は今後も繰り返されるだろう。 国内線については、北九州空港の受け入れ環境が整備された結果、問題は緩和されたが、国際線の「門限」問題については、改めて深く検討する必要があることが、今回のケースで明らかになった。 前述したように、CIQの職員は国家公務員であるため、そう簡単に増員することはできないし、今回のような状況を踏まえて増員すれば、逆に2024年の福岡空港の新滑走路供用開始時に余ってしまう可能性もある。 当面は、福岡空港を出発する時間帯に、福岡空港への着陸の可否を慎重に見極め、少なくとも21時までには到着するスケジュールで便を設定するしかない。それ以降に福岡空港に到着したい場合は、特に国内線では新幹線の利用を促すべきだ。これは、環境負荷を減らすために需要を航空から鉄道にシフトさせるというヨーロッパの政策にも合致する。 そして何よりも「パッセンジャー・ライト(乗客の権利)」を考えることである。これは以前の記事(「JAL機の福岡空港「門限破り」 既出報道に欠けていた「乗客の権利」という視座、航空需要回復の今後このままでいいのか?」、2023年3月11日配信)でも触れたことだが、欧米のLCCでパイロットに成果主義が導入された際、悪天候で飛べそうもないフライトでも、なんとか飛ばそうと乗客が長時間機内に留め置かれ、結局フライトは失敗に終わった。その結果、乗客が大きな精神的・肉体的苦痛を被ったことから生まれた乗客の権利概念である。) 最近、福岡空港の「門限」問題が頻繁に報道されている。福岡空港では、22時までに着陸できない便は着陸を許可されず、どこか別の空港に回されるか、最悪、出発地に引き返さなければならない。これが「門限」問題である』、「福岡空港」では「「門限問題」が深刻であるにも関わらず、「(LCC)セブパシフィック航空」が利用を申し込んでいたとは不思議だ。継続的利用ではなく、スッポット的利用なのかも知れない。さらには、「第二滑走路」完成で混雑が緩和されることを先読みしている可能性がある。
・『乗客補償の採用 ロイター通信は8月28日、米運輸省がアメリカン航空グループに対し、旅客機内に乗客が閉じ込められたまま滑走路に長時間滞留することを禁止する規則に違反したとして、410万ドル(約6億610万円)の罰金を科したと報じた。このうち半分の205万ドルは、地上にとどまることを余儀なくされた』、日本でも「旅客機内に乗客が閉じ込められたまま滑走路に長時間滞留することを禁止する規則」の導入を検討すべきだ。
・『「乗客への補償」 に充てられる。 報道によれば、2018年から2021年にかけて、アメリカン航空は合計43便において、乗客に降りる機会を与えずに地上にとどまらせたことが判明している。そしてそのなかには、乗客に水や食料を提供する義務が果たされていないケースもあったとしている。 日本もこの考え方を採用する必要があるだろう。これにより、航空会社が最近の遅延増加による問題に対して、より真剣な対策を採るようになることが期待される』、日本でもアメリカのように「乗客に降りる機会を与え」たり、「乗客に水や食料を提供する義務」を課したりすべきだ。
次に、昨年9月7日付けFNNプライモンラインが掲載した「機内に約11時間“缶詰”…乗客「戻ると言われ絶望」福岡空港“門限”に間に合わずマニラにUターン」を紹介しよう。
https://www.fnn.jp/articles/-/582568
・『4日午後8時ごろ、福岡空港で撮影されたとある映像。 フィリピンのマニラから来た航空機が、着陸を試みるが…、機体は上昇。 マニラにUターンすることを余儀なくされたのだ。 一度着陸を試みたものの、再び上昇していくマニラからの航空機(福岡空港 4日午後8時ごろ)乗客125人は、出発から11時間もの間、缶詰となった』、「乗客125人は、出発から11時間もの間、缶詰となった」だけでなく、「マニラにUターン」による「乗客」の怒りはさぞやと思われる』、「「マニラにUターン」による「乗客」の怒りはさぞやと思われる」、その通りだ。
・『乗客「言われた瞬間、絶望。反応する元気もなかった」 マニラに戻る航空機の中で、撮影された映像がある。 乗客の女性が、タガログ語で「初めての経験です。日本に着いたばかりなのに、再びマニラに飛び立ちます」と話している。 機内は照明が落とされ、外も真っ暗だ。 イット!の取材に、乗客の一人は「もうマニラに戻るって言われた瞬間、絶望的すぎて。疲れが勝ちすぎて、反応する元気も出なかった」と当時の心境を明かした』、「乗客の一人は「もうマニラに戻るって言われた瞬間、絶望的すぎて。疲れが勝ちすぎて、反応する元気も出なかった」、心から同情する。
・『原因は?給油と目的地・福岡空港の“門限” なぜ、着陸しないまま、マニラに引き返すことになったのか。 答えは、目的地である福岡空港の“門限”だ。 福岡空港は市街地と隣接していることから、午後10時を過ぎると着陸できない。 着陸できなかったのは、フィリピンの格安航空会社「セブ・パシフィック航空」の航空機。 国土交通省・福岡空港事務所によると、航空機は4日午後4時半ごろ、マニラの空港を離陸した。 そして午後8時ごろ、航空機は着陸態勢に入った。 管制が着陸を促すと、「燃料が足りなくなるおそれがある」と連絡があったという ところが、何らかの理由で上昇。 管制が再び着陸を促したところ「燃料が足りなくなる恐れがある」と連絡があり、航空機は北九州空港に代替着陸し、給油した。 北九州空港では入国手続きができず、すでに“門限”をオーバー。 マニラへと引き返すことになったのだという』、「北九州空港」に「代替着陸し、給油」したが、「入国手続きができず、すでに“門限”をオーバー」、さんざんだ。
・『結局、福岡空港の“門限”を過ぎ、出発地に引き返すことに… 約11時間機内にいた乗客は、航空会社の対応にも疑問を抱いていた。 約11時間機内にいた乗客:次の便の予約をしてもらったんですけど、そのカウンターも1つしかなくて、そこでもめっちゃ待たされて。体力的に休めなかったので、きつかったですね。 航空機は、他の空港に行くことはできなかったのだろうか。 元日本航空機長で、航空評論家の小林宏之氏に話を聞いたところ、入国手続きができず、すでに“門限”をオーバーた。(「イット!」9月6日放送より)』、こんな場合には、格安航空は、不利だ。特に、「格安航空会社「セブ・パシフィック航空」」の対応は余りにお粗末だ。
第三に、6月22日付け東洋経済オンラインが掲載した元航空管制官・航空専門家のタワーマン氏による「航空管制官が日本の空港でも英語を使う理由 ミスが許されない環境のコミュニケーション」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/764535
・『2024年1月2日、羽田空港で起きた航空機同士の衝突事故では、管制官とパイロットの交信が注目されました。事故原因はまだ究明されていませんが、航空管制が空の安全において非常に重要な位置を占めていることは間違いありません。 航空管制の世界は、意外に思えるほどに「人と人のコミュニケーション」によって成り立っています。ひとつのミスも許されないなか、管制官とパイロット、さらには管制官同士で、どのような交信を行なっているのか? 元・航空管制官で現在、航空評論家であるタワーマン氏の著書『航空管制知られざる最前線』から一部を抜粋し、間断ない離陸・着陸を捌くプロフェッショナルの舞台裏に迫ります』、興味深そうだ。
・『世界中の管制官が英語で交信を行なう理由 管制官は、安全かつ効率的に航空交通を管理するのが仕事です。しかし、実際に飛んでいるのはパイロットで、管制官は管制室またはレーダー室の内部にいます。管制官がコントロールできる方法は、無線によるパイロットとの交信のみ。つまり、コミュニケーションこそ、管制官の「最大の武器」なのです。 パイロットとの交信は、基本は英語で行ないます。国際航空機関であるICAO(国際民間航空機関)はもちろんのこと、日本の管制の〝バイブル?である「管制方式基準」にも「管制用語は英語または母国語を原則とする」と記されています。なぜ、英語なのか。その理由は2つあると私は考えています。 1つは、当然ですが「共通言語が必要」だということ。世界中、さまざまな国で航空機が行き来し、パイロットの国籍もさまざまです。やはり共通語となると英語が適当でしょう。では、国際線が発着しない国内線専用の空港ではどうかというと、やはり英語が原則です。ただし、中国のように国内パイロットの便に限って、母国語を使っている国もあります。) ある日本人パイロットから聞いた話ですが、彼が中国の空港に行ったとき、別の飛行機のパイロットが管制官と何を話しているのかが理解できず、大きな不安を覚えたそうです。 管制官がパイロットに指示しているのか、地上車両の運転手に情報を出しているのかさえもわからなかったといいます。 管制官が何かの指示を出していることは理解できるのですが、その内容が不明なので、別の飛行機がこちらに機首を向けて動き出したりはしないかと疑念が抜けなかったそうです。パイロットの状況認識もまた、航空交通の安全には欠かせないものです。たとえ国内線であっても、やはり英語で交信するのが原則だと思います』、「たとえ国内線であっても、やはり英語で交信するのが原則だと思います」、その通りだ。
・『「誤解を生まないため」に英語を使う 交信に英語を使うもう1つの理由、それは、「誤解を生まないため」です。管制で使う言葉は英語を基本としていますが、日常英語そのものではありません。より誤解を生まないように定義されています。そのことについては後述しますが、まず、ふだん使い慣れた言葉(私たちにとっては日本語)が、本当にもっとも誤解を生まないコミュニケーション手段なのかどうかを考えてみましょう。 たとえば、「○○はないですよね?」という質問に「はい」と答える場合、日本語では「はい、あります」「はい、ありません」と後ろに続く言葉しだいで2つの可能性があります。「はい」だけでは意味を持たない(判断できない)こともあるでしょう。 また、日本語は表意文字で漢字を使うため、読むときにはわかりやすいのですが、耳で聞くときには同音異義語が多いのも気になります。たとえば、「こうか」は「降下」なのか「効果」なのか。「たいき」は「待機」なのか「大気」なのか。文脈を読めば間違えることはまずなさそうですが、それでも曖昧さは残ります。) 誤解をなくすうえでいちばん重要なことは、耳で聞いただけで、明確にこの言葉とこの言葉は違うと区別できることです。ふだん使い慣れている母国語であるために、かえって曖昧さを許容してしまったり、微妙に違う意味に捉えてしまうこともあるでしょう。 管制でよく使う言葉に「指示」「許可」「承認」があります。この3つは似て非なる言葉で、管制方式基準ではそれぞれ明確に定義されています。しかし、その定義をしっかり認識していないと、母国語であるがゆえにそれぞれが勝手に意味を読み取って、解釈が分かれてしまう可能性もあると私は考えています。 実際、英語を母国語とするアメリカではコミュニケーションエラーは少ないのかというと、そんなことはありません。管制を母国語で行なったからといって、ミスやエラーが減るわけではないのです』、「管制でよく使う言葉に「指示」「許可」「承認」があります。この3つは似て非なる言葉で、管制方式基準ではそれぞれ明確に定義されています。しかし、その定義をしっかり認識していないと、母国語であるがゆえにそれぞれが勝手に意味を読み取って、解釈が分かれてしまう可能性もあると私は考えています。 実際、英語を母国語とするアメリカではコミュニケーションエラーは少ないのかというと、そんなことはありません。管制を母国語で行なったからといって、ミスやエラーが減るわけではないのです」、なるほど。
・『聞き間違いを防ぐ「フォネティックコード」とは 管制で使う英語は、誤解を生じないように定義されていると述べましたが、その例をいくつか挙げておきましょう。 たとえば、「Yes」「No」は基本的に使いません。「Yes」と答えたいときは「affirm」「No」は「negative」といいます。それぞれ音節が短く聞き取りにくい、ほかの言葉と区別しにくいというのがその理由です。 とくに「No」は「Know」と音が同じでまぎらわしく、また「All」など「O(オー)」の音に似た母音を含む単語が多いのも理由だといわれています。アルファベットも、やはり短くて聞き取りにくいため、「A(エー)」「B(ビー」)「C(シー)」とは発音しません。誰しも日常的に、B、D、E、P、Tなどは、聞いたときにどれなのか迷ってしまい、相手に確認した経験があるのではないでしょうか。 ABCは、それぞれ、「A(Alfa:アルファ)」「B(Bravo:ブラボー)」「C(Charlie:チャーリー)」。日本語でも、電話などで発音しにくい文字を説明するときに「アジアのア」「イロハのイ」などというのと同じです。これを「フォネティックコード」といいます。) 管制では、便名、空港名、航空路の名称など多くの記号を使用します。これらを無線の音声のみでやりとりする際、B、D、E、P、Tをそれぞれ「ブラボー=B」「デルタ=D」「エコー=E」「パパ=P」「タンゴ=T」などといえば、判別しやすいわけです。 フォネティックコードは数字にも設定されています。「3」を「トゥリー」と発音するのは、「th」の発音が「s」と似ているため、「9」を「ナイナー」というのは、ドイツ語の「nein:いいえ」と発音が同じなどといった理由もあるでしょう。 これらは、航空管制官など航空保安職員の教育訓練を行なう航空保安大学校で叩きこまれるので、頭に染みついています。私もふだんの英会話で、うっかり「9」を「ナイナー」といってしまった経験があります』、「ABCは、それぞれ、「A(Alfa:アルファ)」「B(Bravo:ブラボー)」「C(Charlie:チャーリー)」。日本語でも、電話などで発音しにくい文字を説明するときに「アジアのア」「イロハのイ」などというのと同じです。これを「フォネティックコード」といいます。) 管制では、便名、空港名、航空路の名称など多くの記号を使用します。これらを無線の音声のみでやりとりする際、B、D、E、P、Tをそれぞれ「ブラボー=B」「デルタ=D」「エコー=E」「パパ=P」「タンゴ=T」などといえば、判別しやすいわけです。 フォネティックコードは数字にも設定されています。「3」を「トゥリー」と発音するのは、「th」の発音が「s」と似ているため、「9」を「ナイナー」というのは、ドイツ語の「nein:いいえ」と発音が同じなどといった理由もあるでしょう」、なるほど。
・『現場でもっとも使われるフォネティックコード((出所)『航空管制 知られざる最前線』より フォネティックコードが管制の現場でもっとも使われるのは、誘導路の指示です。ターミナルビルと滑走路のあいだには網の目のように誘導路が走っており、駐機場から滑走路に誘導するときに、どの誘導路を通っていくのかを管制官がパイロットに指示します。 この誘導路が「A-1」「A-2」「B」「C」などとなっていることが多いのですが、これをパイロットが聞き間違えて、さらに管制官も復唱の間違いをスルーすると、「道間違い」が発生します。 そのリカバリーは大変ですし、タイミングによってはヘッドオン(鉢合わせ)や接触など、重大な出来事につながりかねません。そこで、「アルファー・ワン」「ブラボー」「チャーリー」などとフォネティックコードを使うルールになっているのです。) また、パイロットとの交信中に聞き慣れない言葉が出てきたときにも、フォネティックコードで確認する場合があります。よくあるのが、機内で急病人が出たケース。管制官は必要に応じて、具体的な病名を確認することがあります。 たとえば、「てんかん」の発作で倒れた、という場合、てんかんは英語で「epilepsy」です。管制官はいくら英語が堪能だとはいっても、病名などの単語までは把握できていないこともあります。そんなときは、フォネティックコードを使って「エコー、パパ、インディア……」とつづりを伝えてもらうことで理解できます』、「機内で急病人が出たケース。管制官は必要に応じて、具体的な病名を確認することがあります。 たとえば、「てんかん」の発作で倒れた、という場合、てんかんは英語で「epilepsy」です。管制官はいくら英語が堪能だとはいっても、病名などの単語までは把握できていないこともあります。そんなときは、フォネティックコードを使って「エコー、パパ、インディア……」とつづりを伝えてもらうことで理解できます」、確かに便利そうだ。
・『羽田の管制塔は「トーキョータワー」? 航空会社のコールサインにも、フォネティックコードを使うことがあります。無線で交信する際は、最初にコールサインで呼びかけます。航空会社のコールサインはアルファベット3文字で、JAL(日本航空)なら、「JAL(ジャパン・エア)○○便、こちら管制塔」と交信を始めます。「ジャル」でも「ジャパンエアライン」でもなく、「ジャパン・エア」としか呼んではいけません。 しかし、ときどきチャーター機など、聞き慣れない会社の便が来ることがあります。そんなときには「THY(タンゴ、ホテル、ヤンキー)○○便、こちら管制塔」などと呼び出すことが可能です。ちなみに、「THY」はトルコ航空のことで、コールサインは「ターキッシュ」となります。 個人用や社用のビジネスジェットなども、すべてアルファベットのコールサインがあり、面白いものだと日産は「NI55AN(ノベンバー、インディア、ファイブ、ファイブ、アルファ、ノベンバー)」というコールサインの機体を持ちます。数字の「5」が「S」に似ていることから、そのような登録名を使っているようです』、「航空会社のコールサインにも、フォネティックコードを使うことがあります。無線で交信する際は、最初にコールサインで呼びかけます。航空会社のコールサインはアルファベット3文字で、JAL(日本航空)なら、「JAL(ジャパン・エア)○○便、こちら管制塔」と交信を始めます。「ジャル」でも「ジャパンエアライン」でもなく、「ジャパン・エア」としか呼んではいけません。 しかし、ときどきチャーター機など、聞き慣れない会社の便が来ることがあります。そんなときには「THY(タンゴ、ホテル、ヤンキー)○○便、こちら管制塔」などと呼び出すことが可能です。ちなみに、「THY」はトルコ航空のことで、コールサインは「ターキッシュ」となります」、なるほど。
・『航空管制 知られざる最前線 (KAWADE夢新書 S 452) ちなみに管制塔のコールサインは「タワー」。羽田の管制塔は、正式名称である東京国際空港から取って、「トーキョータワー」と決められています。 重大な聞き間違いを防ぎたいときも、フォネティックコードは便利です。たとえば、到着機や出発機に旋回を指示する場合、右旋回なら「ライト・ターン」、左旋回なら「レフト・ターン」といいます。 ところが、意外に思うかもしれませんが、「ライト・ターン」の指示に対して、パイロットが「レフト・ターン」と復唱してくることもあります。音声の単純な聞き間違いのケースが多いですが、「通常、この飛行経路ならレフト・ターンだ」と思いこんでいるため、意識が引っ張られた結果、そう聞こえてしまっているのではないか、とも考えられます。 このような場合も、ライトの頭文字である「R」を強調して、「ロミオ・ターン」と言い換えることで、間違いを正すことができます』、「「ライト・ターン」の指示に対して、パイロットが「レフト・ターン」と復唱してくることもあります。音声の単純な聞き間違いのケースが多いですが、「通常、この飛行経路ならレフト・ターンだ」と思いこんでいるため、意識が引っ張られた結果、そう聞こえてしまっているのではないか、とも考えられます。 このような場合も、ライトの頭文字である「R」を強調して、「ロミオ・ターン」と言い換えることで、間違いを正すことができます」、確かにこれなら確実だ。
先ずは、昨年9月7日付けMerkmal「福岡空港ふたたび「門限」でマニラとんぼ返り! 乗客は11時間カンヅメ、もはや“金銭補償”が必要か」を紹介しよう。
https://merkmal-biz.jp/post/47860
・『最近、福岡空港の「門限」問題が頻繁に報道されている。福岡空港では、22時までに着陸できない便は着陸を許可されず、どこか別の空港に回されるか、最悪、出発地に引き返さなければならない。これが「門限」問題である』、興味深そうだ。
・『「門限」問題再び 最近、福岡空港の「門限」問題が頻繁に報道されている。福岡空港では、22時までに着陸できない便は着陸を許可されず、どこか別の空港に回されるか、最悪、出発地に引き返さなければならない。これが「門限」問題である。 前回大きな問題となったのは2023年2月で、羽田発福岡行きのJAL機が「門限」によって福岡空港に着陸できず、関西空港に回航、結局東京の羽田空港に戻された。 今回は国際線で、北九州空港にダイバート(目的地変更)したが、入国できず、出発地のマニラに戻らなければならなかった。乗客にとっては災難としかいいようがない。 9月4日、フィリピンの格安航空会社(LCC)セブパシフィック航空は、福岡空港の混雑で上空旋回を余儀なくされた結果、燃料不足が懸念され、北九州空港に着陸したと報じられた。このため、福岡空港の「門限」に抵触し、マニラへ引き返した。この間、乗客は機内に11時間も閉じ込められた。 ここでまず疑問になるのは、燃料不足の恐れがなぜ生じたのかということだ。通常、航空機のフライトを計画する際、ディスパッチャー(運航管理者)とパイロットは目的地の空港の状況をきちんと把握し、上空旋回の可能性があれば、燃料を多めに搭載するはずである。 特に福岡空港は滑走路が1本しかなく、混雑時には長時間の上空旋回を余儀なくされることが予想される。燃料不足の恐れがあったとはどういうことか。燃料を可能な限り少なくしてコストを最小限に抑えるというLCCの方針が、このような状況でも貫かれているとすれば、「安全軽視と受け止められても仕方がない」と批判を覚悟しなければならない。) 最近、福岡空港の「門限」問題が頻繁に報道されている。福岡空港では、22時までに着陸できない便は着陸を許可されず、どこか別の空港に回されるか、最悪、出発地に引き返さなければならない。これが「門限」問題である』、「燃料を可能な限り少なくしてコストを最小限に抑えるというLCCの方針が、このような状況でも貫かれているとすれば、「安全軽視と受け止められても仕方がない」と批判を覚悟しなければならない」、これは大いに問題だ。
・『着陸可否の見極め必要 一方で、福岡空港の混雑が「門限」を守ることを難しくしているのも事実だ。2024年に新しい第2滑走路が建設され、供用が開始されれば、混雑度は改善されるだろう。しかし当面は、観光需要の急速な回復とそれにともなう離着陸便の増加により、福岡空港の離着陸遅延がますます深刻化することを覚悟しなければならない。そうなれば、「門限」の問題は今後も繰り返されるだろう。 国内線については、北九州空港の受け入れ環境が整備された結果、問題は緩和されたが、国際線の「門限」問題については、改めて深く検討する必要があることが、今回のケースで明らかになった。 前述したように、CIQの職員は国家公務員であるため、そう簡単に増員することはできないし、今回のような状況を踏まえて増員すれば、逆に2024年の福岡空港の新滑走路供用開始時に余ってしまう可能性もある。 当面は、福岡空港を出発する時間帯に、福岡空港への着陸の可否を慎重に見極め、少なくとも21時までには到着するスケジュールで便を設定するしかない。それ以降に福岡空港に到着したい場合は、特に国内線では新幹線の利用を促すべきだ。これは、環境負荷を減らすために需要を航空から鉄道にシフトさせるというヨーロッパの政策にも合致する。 そして何よりも「パッセンジャー・ライト(乗客の権利)」を考えることである。これは以前の記事(「JAL機の福岡空港「門限破り」 既出報道に欠けていた「乗客の権利」という視座、航空需要回復の今後このままでいいのか?」、2023年3月11日配信)でも触れたことだが、欧米のLCCでパイロットに成果主義が導入された際、悪天候で飛べそうもないフライトでも、なんとか飛ばそうと乗客が長時間機内に留め置かれ、結局フライトは失敗に終わった。その結果、乗客が大きな精神的・肉体的苦痛を被ったことから生まれた乗客の権利概念である。) 最近、福岡空港の「門限」問題が頻繁に報道されている。福岡空港では、22時までに着陸できない便は着陸を許可されず、どこか別の空港に回されるか、最悪、出発地に引き返さなければならない。これが「門限」問題である』、「福岡空港」では「「門限問題」が深刻であるにも関わらず、「(LCC)セブパシフィック航空」が利用を申し込んでいたとは不思議だ。継続的利用ではなく、スッポット的利用なのかも知れない。さらには、「第二滑走路」完成で混雑が緩和されることを先読みしている可能性がある。
・『乗客補償の採用 ロイター通信は8月28日、米運輸省がアメリカン航空グループに対し、旅客機内に乗客が閉じ込められたまま滑走路に長時間滞留することを禁止する規則に違反したとして、410万ドル(約6億610万円)の罰金を科したと報じた。このうち半分の205万ドルは、地上にとどまることを余儀なくされた』、日本でも「旅客機内に乗客が閉じ込められたまま滑走路に長時間滞留することを禁止する規則」の導入を検討すべきだ。
・『「乗客への補償」 に充てられる。 報道によれば、2018年から2021年にかけて、アメリカン航空は合計43便において、乗客に降りる機会を与えずに地上にとどまらせたことが判明している。そしてそのなかには、乗客に水や食料を提供する義務が果たされていないケースもあったとしている。 日本もこの考え方を採用する必要があるだろう。これにより、航空会社が最近の遅延増加による問題に対して、より真剣な対策を採るようになることが期待される』、日本でもアメリカのように「乗客に降りる機会を与え」たり、「乗客に水や食料を提供する義務」を課したりすべきだ。
次に、昨年9月7日付けFNNプライモンラインが掲載した「機内に約11時間“缶詰”…乗客「戻ると言われ絶望」福岡空港“門限”に間に合わずマニラにUターン」を紹介しよう。
https://www.fnn.jp/articles/-/582568
・『4日午後8時ごろ、福岡空港で撮影されたとある映像。 フィリピンのマニラから来た航空機が、着陸を試みるが…、機体は上昇。 マニラにUターンすることを余儀なくされたのだ。 一度着陸を試みたものの、再び上昇していくマニラからの航空機(福岡空港 4日午後8時ごろ)乗客125人は、出発から11時間もの間、缶詰となった』、「乗客125人は、出発から11時間もの間、缶詰となった」だけでなく、「マニラにUターン」による「乗客」の怒りはさぞやと思われる』、「「マニラにUターン」による「乗客」の怒りはさぞやと思われる」、その通りだ。
・『乗客「言われた瞬間、絶望。反応する元気もなかった」 マニラに戻る航空機の中で、撮影された映像がある。 乗客の女性が、タガログ語で「初めての経験です。日本に着いたばかりなのに、再びマニラに飛び立ちます」と話している。 機内は照明が落とされ、外も真っ暗だ。 イット!の取材に、乗客の一人は「もうマニラに戻るって言われた瞬間、絶望的すぎて。疲れが勝ちすぎて、反応する元気も出なかった」と当時の心境を明かした』、「乗客の一人は「もうマニラに戻るって言われた瞬間、絶望的すぎて。疲れが勝ちすぎて、反応する元気も出なかった」、心から同情する。
・『原因は?給油と目的地・福岡空港の“門限” なぜ、着陸しないまま、マニラに引き返すことになったのか。 答えは、目的地である福岡空港の“門限”だ。 福岡空港は市街地と隣接していることから、午後10時を過ぎると着陸できない。 着陸できなかったのは、フィリピンの格安航空会社「セブ・パシフィック航空」の航空機。 国土交通省・福岡空港事務所によると、航空機は4日午後4時半ごろ、マニラの空港を離陸した。 そして午後8時ごろ、航空機は着陸態勢に入った。 管制が着陸を促すと、「燃料が足りなくなるおそれがある」と連絡があったという ところが、何らかの理由で上昇。 管制が再び着陸を促したところ「燃料が足りなくなる恐れがある」と連絡があり、航空機は北九州空港に代替着陸し、給油した。 北九州空港では入国手続きができず、すでに“門限”をオーバー。 マニラへと引き返すことになったのだという』、「北九州空港」に「代替着陸し、給油」したが、「入国手続きができず、すでに“門限”をオーバー」、さんざんだ。
・『結局、福岡空港の“門限”を過ぎ、出発地に引き返すことに… 約11時間機内にいた乗客は、航空会社の対応にも疑問を抱いていた。 約11時間機内にいた乗客:次の便の予約をしてもらったんですけど、そのカウンターも1つしかなくて、そこでもめっちゃ待たされて。体力的に休めなかったので、きつかったですね。 航空機は、他の空港に行くことはできなかったのだろうか。 元日本航空機長で、航空評論家の小林宏之氏に話を聞いたところ、入国手続きができず、すでに“門限”をオーバーた。(「イット!」9月6日放送より)』、こんな場合には、格安航空は、不利だ。特に、「格安航空会社「セブ・パシフィック航空」」の対応は余りにお粗末だ。
第三に、6月22日付け東洋経済オンラインが掲載した元航空管制官・航空専門家のタワーマン氏による「航空管制官が日本の空港でも英語を使う理由 ミスが許されない環境のコミュニケーション」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/764535
・『2024年1月2日、羽田空港で起きた航空機同士の衝突事故では、管制官とパイロットの交信が注目されました。事故原因はまだ究明されていませんが、航空管制が空の安全において非常に重要な位置を占めていることは間違いありません。 航空管制の世界は、意外に思えるほどに「人と人のコミュニケーション」によって成り立っています。ひとつのミスも許されないなか、管制官とパイロット、さらには管制官同士で、どのような交信を行なっているのか? 元・航空管制官で現在、航空評論家であるタワーマン氏の著書『航空管制知られざる最前線』から一部を抜粋し、間断ない離陸・着陸を捌くプロフェッショナルの舞台裏に迫ります』、興味深そうだ。
・『世界中の管制官が英語で交信を行なう理由 管制官は、安全かつ効率的に航空交通を管理するのが仕事です。しかし、実際に飛んでいるのはパイロットで、管制官は管制室またはレーダー室の内部にいます。管制官がコントロールできる方法は、無線によるパイロットとの交信のみ。つまり、コミュニケーションこそ、管制官の「最大の武器」なのです。 パイロットとの交信は、基本は英語で行ないます。国際航空機関であるICAO(国際民間航空機関)はもちろんのこと、日本の管制の〝バイブル?である「管制方式基準」にも「管制用語は英語または母国語を原則とする」と記されています。なぜ、英語なのか。その理由は2つあると私は考えています。 1つは、当然ですが「共通言語が必要」だということ。世界中、さまざまな国で航空機が行き来し、パイロットの国籍もさまざまです。やはり共通語となると英語が適当でしょう。では、国際線が発着しない国内線専用の空港ではどうかというと、やはり英語が原則です。ただし、中国のように国内パイロットの便に限って、母国語を使っている国もあります。) ある日本人パイロットから聞いた話ですが、彼が中国の空港に行ったとき、別の飛行機のパイロットが管制官と何を話しているのかが理解できず、大きな不安を覚えたそうです。 管制官がパイロットに指示しているのか、地上車両の運転手に情報を出しているのかさえもわからなかったといいます。 管制官が何かの指示を出していることは理解できるのですが、その内容が不明なので、別の飛行機がこちらに機首を向けて動き出したりはしないかと疑念が抜けなかったそうです。パイロットの状況認識もまた、航空交通の安全には欠かせないものです。たとえ国内線であっても、やはり英語で交信するのが原則だと思います』、「たとえ国内線であっても、やはり英語で交信するのが原則だと思います」、その通りだ。
・『「誤解を生まないため」に英語を使う 交信に英語を使うもう1つの理由、それは、「誤解を生まないため」です。管制で使う言葉は英語を基本としていますが、日常英語そのものではありません。より誤解を生まないように定義されています。そのことについては後述しますが、まず、ふだん使い慣れた言葉(私たちにとっては日本語)が、本当にもっとも誤解を生まないコミュニケーション手段なのかどうかを考えてみましょう。 たとえば、「○○はないですよね?」という質問に「はい」と答える場合、日本語では「はい、あります」「はい、ありません」と後ろに続く言葉しだいで2つの可能性があります。「はい」だけでは意味を持たない(判断できない)こともあるでしょう。 また、日本語は表意文字で漢字を使うため、読むときにはわかりやすいのですが、耳で聞くときには同音異義語が多いのも気になります。たとえば、「こうか」は「降下」なのか「効果」なのか。「たいき」は「待機」なのか「大気」なのか。文脈を読めば間違えることはまずなさそうですが、それでも曖昧さは残ります。) 誤解をなくすうえでいちばん重要なことは、耳で聞いただけで、明確にこの言葉とこの言葉は違うと区別できることです。ふだん使い慣れている母国語であるために、かえって曖昧さを許容してしまったり、微妙に違う意味に捉えてしまうこともあるでしょう。 管制でよく使う言葉に「指示」「許可」「承認」があります。この3つは似て非なる言葉で、管制方式基準ではそれぞれ明確に定義されています。しかし、その定義をしっかり認識していないと、母国語であるがゆえにそれぞれが勝手に意味を読み取って、解釈が分かれてしまう可能性もあると私は考えています。 実際、英語を母国語とするアメリカではコミュニケーションエラーは少ないのかというと、そんなことはありません。管制を母国語で行なったからといって、ミスやエラーが減るわけではないのです』、「管制でよく使う言葉に「指示」「許可」「承認」があります。この3つは似て非なる言葉で、管制方式基準ではそれぞれ明確に定義されています。しかし、その定義をしっかり認識していないと、母国語であるがゆえにそれぞれが勝手に意味を読み取って、解釈が分かれてしまう可能性もあると私は考えています。 実際、英語を母国語とするアメリカではコミュニケーションエラーは少ないのかというと、そんなことはありません。管制を母国語で行なったからといって、ミスやエラーが減るわけではないのです」、なるほど。
・『聞き間違いを防ぐ「フォネティックコード」とは 管制で使う英語は、誤解を生じないように定義されていると述べましたが、その例をいくつか挙げておきましょう。 たとえば、「Yes」「No」は基本的に使いません。「Yes」と答えたいときは「affirm」「No」は「negative」といいます。それぞれ音節が短く聞き取りにくい、ほかの言葉と区別しにくいというのがその理由です。 とくに「No」は「Know」と音が同じでまぎらわしく、また「All」など「O(オー)」の音に似た母音を含む単語が多いのも理由だといわれています。アルファベットも、やはり短くて聞き取りにくいため、「A(エー)」「B(ビー」)「C(シー)」とは発音しません。誰しも日常的に、B、D、E、P、Tなどは、聞いたときにどれなのか迷ってしまい、相手に確認した経験があるのではないでしょうか。 ABCは、それぞれ、「A(Alfa:アルファ)」「B(Bravo:ブラボー)」「C(Charlie:チャーリー)」。日本語でも、電話などで発音しにくい文字を説明するときに「アジアのア」「イロハのイ」などというのと同じです。これを「フォネティックコード」といいます。) 管制では、便名、空港名、航空路の名称など多くの記号を使用します。これらを無線の音声のみでやりとりする際、B、D、E、P、Tをそれぞれ「ブラボー=B」「デルタ=D」「エコー=E」「パパ=P」「タンゴ=T」などといえば、判別しやすいわけです。 フォネティックコードは数字にも設定されています。「3」を「トゥリー」と発音するのは、「th」の発音が「s」と似ているため、「9」を「ナイナー」というのは、ドイツ語の「nein:いいえ」と発音が同じなどといった理由もあるでしょう。 これらは、航空管制官など航空保安職員の教育訓練を行なう航空保安大学校で叩きこまれるので、頭に染みついています。私もふだんの英会話で、うっかり「9」を「ナイナー」といってしまった経験があります』、「ABCは、それぞれ、「A(Alfa:アルファ)」「B(Bravo:ブラボー)」「C(Charlie:チャーリー)」。日本語でも、電話などで発音しにくい文字を説明するときに「アジアのア」「イロハのイ」などというのと同じです。これを「フォネティックコード」といいます。) 管制では、便名、空港名、航空路の名称など多くの記号を使用します。これらを無線の音声のみでやりとりする際、B、D、E、P、Tをそれぞれ「ブラボー=B」「デルタ=D」「エコー=E」「パパ=P」「タンゴ=T」などといえば、判別しやすいわけです。 フォネティックコードは数字にも設定されています。「3」を「トゥリー」と発音するのは、「th」の発音が「s」と似ているため、「9」を「ナイナー」というのは、ドイツ語の「nein:いいえ」と発音が同じなどといった理由もあるでしょう」、なるほど。
・『現場でもっとも使われるフォネティックコード((出所)『航空管制 知られざる最前線』より フォネティックコードが管制の現場でもっとも使われるのは、誘導路の指示です。ターミナルビルと滑走路のあいだには網の目のように誘導路が走っており、駐機場から滑走路に誘導するときに、どの誘導路を通っていくのかを管制官がパイロットに指示します。 この誘導路が「A-1」「A-2」「B」「C」などとなっていることが多いのですが、これをパイロットが聞き間違えて、さらに管制官も復唱の間違いをスルーすると、「道間違い」が発生します。 そのリカバリーは大変ですし、タイミングによってはヘッドオン(鉢合わせ)や接触など、重大な出来事につながりかねません。そこで、「アルファー・ワン」「ブラボー」「チャーリー」などとフォネティックコードを使うルールになっているのです。) また、パイロットとの交信中に聞き慣れない言葉が出てきたときにも、フォネティックコードで確認する場合があります。よくあるのが、機内で急病人が出たケース。管制官は必要に応じて、具体的な病名を確認することがあります。 たとえば、「てんかん」の発作で倒れた、という場合、てんかんは英語で「epilepsy」です。管制官はいくら英語が堪能だとはいっても、病名などの単語までは把握できていないこともあります。そんなときは、フォネティックコードを使って「エコー、パパ、インディア……」とつづりを伝えてもらうことで理解できます』、「機内で急病人が出たケース。管制官は必要に応じて、具体的な病名を確認することがあります。 たとえば、「てんかん」の発作で倒れた、という場合、てんかんは英語で「epilepsy」です。管制官はいくら英語が堪能だとはいっても、病名などの単語までは把握できていないこともあります。そんなときは、フォネティックコードを使って「エコー、パパ、インディア……」とつづりを伝えてもらうことで理解できます」、確かに便利そうだ。
・『羽田の管制塔は「トーキョータワー」? 航空会社のコールサインにも、フォネティックコードを使うことがあります。無線で交信する際は、最初にコールサインで呼びかけます。航空会社のコールサインはアルファベット3文字で、JAL(日本航空)なら、「JAL(ジャパン・エア)○○便、こちら管制塔」と交信を始めます。「ジャル」でも「ジャパンエアライン」でもなく、「ジャパン・エア」としか呼んではいけません。 しかし、ときどきチャーター機など、聞き慣れない会社の便が来ることがあります。そんなときには「THY(タンゴ、ホテル、ヤンキー)○○便、こちら管制塔」などと呼び出すことが可能です。ちなみに、「THY」はトルコ航空のことで、コールサインは「ターキッシュ」となります。 個人用や社用のビジネスジェットなども、すべてアルファベットのコールサインがあり、面白いものだと日産は「NI55AN(ノベンバー、インディア、ファイブ、ファイブ、アルファ、ノベンバー)」というコールサインの機体を持ちます。数字の「5」が「S」に似ていることから、そのような登録名を使っているようです』、「航空会社のコールサインにも、フォネティックコードを使うことがあります。無線で交信する際は、最初にコールサインで呼びかけます。航空会社のコールサインはアルファベット3文字で、JAL(日本航空)なら、「JAL(ジャパン・エア)○○便、こちら管制塔」と交信を始めます。「ジャル」でも「ジャパンエアライン」でもなく、「ジャパン・エア」としか呼んではいけません。 しかし、ときどきチャーター機など、聞き慣れない会社の便が来ることがあります。そんなときには「THY(タンゴ、ホテル、ヤンキー)○○便、こちら管制塔」などと呼び出すことが可能です。ちなみに、「THY」はトルコ航空のことで、コールサインは「ターキッシュ」となります」、なるほど。
・『航空管制 知られざる最前線 (KAWADE夢新書 S 452) ちなみに管制塔のコールサインは「タワー」。羽田の管制塔は、正式名称である東京国際空港から取って、「トーキョータワー」と決められています。 重大な聞き間違いを防ぎたいときも、フォネティックコードは便利です。たとえば、到着機や出発機に旋回を指示する場合、右旋回なら「ライト・ターン」、左旋回なら「レフト・ターン」といいます。 ところが、意外に思うかもしれませんが、「ライト・ターン」の指示に対して、パイロットが「レフト・ターン」と復唱してくることもあります。音声の単純な聞き間違いのケースが多いですが、「通常、この飛行経路ならレフト・ターンだ」と思いこんでいるため、意識が引っ張られた結果、そう聞こえてしまっているのではないか、とも考えられます。 このような場合も、ライトの頭文字である「R」を強調して、「ロミオ・ターン」と言い換えることで、間違いを正すことができます』、「「ライト・ターン」の指示に対して、パイロットが「レフト・ターン」と復唱してくることもあります。音声の単純な聞き間違いのケースが多いですが、「通常、この飛行経路ならレフト・ターンだ」と思いこんでいるため、意識が引っ張られた結果、そう聞こえてしまっているのではないか、とも考えられます。 このような場合も、ライトの頭文字である「R」を強調して、「ロミオ・ターン」と言い換えることで、間違いを正すことができます」、確かにこれなら確実だ。
タグ:(その2)(福岡空港ふたたび「門限」でマニラとんぼ返り! 乗客は11時間カンヅメ もはや“金銭補償”が必要か、機内に約11時間“缶詰”…乗客「戻ると言われ絶望」福岡空港“門限”に間に合わずマニラにUターン、航空管制官が日本の空港でも英語を使う理由 ミスが許されない環境のコミュニケーション) 飛行機(航空機) Merkmal「福岡空港ふたたび「門限」でマニラとんぼ返り! 乗客は11時間カンヅメ、もはや“金銭補償”が必要か」 「燃料を可能な限り少なくしてコストを最小限に抑えるというLCCの方針が、このような状況でも貫かれているとすれば、「安全軽視と受け止められても仕方がない」と批判を覚悟しなければならない」、これは大いに問題だ。 「福岡空港」では「「門限問題」が深刻であるにも関わらず、「(LCC)セブパシフィック航空」が利用を申し込んでいたとは不思議だ。継続的利用ではなく、スッポット的利用なのかも知れない。さらには、「第二滑走路」完成で混雑が緩和されることを先読みしている可能性がある。 、日本でも「旅客機内に乗客が閉じ込められたまま滑走路に長時間滞留することを禁止する規則」の導入を検討すべきだ。 日本でもアメリカのように「乗客に降りる機会を与え」たり、「乗客に水や食料を提供する義務」を課したりすべきだ。 FNNプライモンライン 「機内に約11時間“缶詰”…乗客「戻ると言われ絶望」福岡空港“門限”に間に合わずマニラにUターン」 「「マニラにUターン」による「乗客」の怒りはさぞやと思われる」、その通りだ。 「乗客の一人は「もうマニラに戻るって言われた瞬間、絶望的すぎて。疲れが勝ちすぎて、反応する元気も出なかった」、心から同情する。 「北九州空港」に「代替着陸し、給油」したが、「入国手続きができず、すでに“門限”をオーバー」、さんざんだ。 こんな場合には、格安航空は、不利だ。特に、「格安航空会社「セブ・パシフィック航空」」の対応は余りにお粗末だ。 東洋経済オンライン タワーマン氏による「航空管制官が日本の空港でも英語を使う理由 ミスが許されない環境のコミュニケーション」 「たとえ国内線であっても、やはり英語で交信するのが原則だと思います」、その通りだ。 「管制でよく使う言葉に「指示」「許可」「承認」があります。この3つは似て非なる言葉で、管制方式基準ではそれぞれ明確に定義されています。しかし、その定義をしっかり認識していないと、母国語であるがゆえにそれぞれが勝手に意味を読み取って、解釈が分かれてしまう可能性もあると私は考えています。 実際、英語を母国語とするアメリカではコミュニケーションエラーは少ないのかというと、そんなことはありません。管制を母国語で行なったからといって、ミスやエラーが減るわけではないのです」、なるほど。 「ABCは、それぞれ、「A(Alfa:アルファ)」「B(Bravo:ブラボー)」「C(Charlie:チャーリー)」。日本語でも、電話などで発音しにくい文字を説明するときに「アジアのア」「イロハのイ」などというのと同じです。これを「フォネティックコード」といいます。) 管制では、便名、空港名、航空路の名称など多くの記号を使用します。これらを無線の音声のみでやりとりする際、B、D、E、P、Tをそれぞれ「ブラボー=B」「デルタ=D」「エコー=E」「パパ=P」「タンゴ=T」などといえば、判別しやすいわけです。 フォネティックコードは数字にも設定されています。「3」を「トゥリー」と発音するのは、「th」の発音が「s」と似ているため、「9」を「ナイナー」というのは、ドイツ語の「nein:いいえ」と発音が同じなどといった理由もあるでしょう」、なるほど。 「機内で急病人が出たケース。管制官は必要に応じて、具体的な病名を確認することがあります。 たとえば、「てんかん」の発作で倒れた、という場合、てんかんは英語で「epilepsy」です。管制官はいくら英語が堪能だとはいっても、病名などの単語までは把握できていないこともあります。そんなときは、フォネティックコードを使って「エコー、パパ、インディア……」とつづりを伝えてもらうことで理解できます」、確かに便利そうだ。 「航空会社のコールサインにも、フォネティックコードを使うことがあります。無線で交信する際は、最初にコールサインで呼びかけます。航空会社のコールサインはアルファベット3文字で、JAL(日本航空)なら、「JAL(ジャパン・エア)○○便、こちら管制塔」と交信を始めます。「ジャル」でも「ジャパンエアライン」でもなく、「ジャパン・エア」としか呼んではいけません。 しかし、ときどきチャーター機など、聞き慣れない会社の便が来ることがあります。そんなときには「THY(タンゴ、ホテル、ヤンキー)○○便、こちら管制塔」などと 「「ライト・ターン」の指示に対して、パイロットが「レフト・ターン」と復唱してくることもあります。音声の単純な聞き間違いのケースが多いですが、「通常、この飛行経路ならレフト・ターンだ」と思いこんでいるため、意識が引っ張られた結果、そう聞こえてしまっているのではないか、とも考えられます。 このような場合も、ライトの頭文字である「R」を強調して、「ロミオ・ターン」と言い換えることで、間違いを正すことができます」、確かにこれなら確実だ。
食品一般(その1)(崩れたXmasケーキ騒動で高島屋が「原因の特定不可能」は結論急ぎすぎ? むしろ潔い?、「オロナミンC」と「リポビタンD」の決定的な違い…日本がレッドブルを生み出せなかった残念な理由とは?) [産業動向]
今日は、食品一般(その1)(崩れたXmasケーキ騒動で高島屋が「原因の特定不可能」は結論急ぎすぎ? むしろ潔い?、「オロナミンC」と「リポビタンD」の決定的な違い…日本がレッドブルを生み出せなかった残念な理由とは?)を取上げよう。
先ずは、昨年12月28日付け日刊ゲンダイ「崩れたXmasケーキ騒動で高島屋が「原因の特定不可能」は結論急ぎすぎ? むしろ潔い?」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/334041
・『「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」──。ネット上でこんな声も聞かれるなどした、大手百貨店「高島屋」がネット販売した冷凍のクリスマスケーキが崩れた状態で購入者に届けられた問題。 問題のケーキは埼玉・羽生市の菓子メーカーが製造。「高島屋」が通販限定商品として税込み5400円で約2900個を予約販売。ヤマト運輸が22~25日に配送したのだが、直後から、SNS上では《ケーキがぐちゃぐちゃ》《ケーキが崩れてイチゴが散乱している!》といった投稿が続出していた。 この事態を受けて27日に会見を開いた「高島屋」によると、販売した2879個のうち、ケーキが崩れた状態で届いたのが807個(26日夜時点)だったという。 1年に1度のクリスマスの日を迎え、さあケーキを食べようとワクワクした気持ちで箱を開けたら潰れてイチゴが散乱していた、となれば購入者はさぞ落胆したに違いない』、「販売した2879個のうち、ケーキが崩れた状態で届いたのが807個(26日夜時点)だった」、「ケーキが崩れた」のはかなり高い割合だ。
・『「原因の特定は不可能」で炎上必至かと思いきや… 会見で「原因の特定は不可能」と発言した「高島屋」の横山和久代表取締役専務に対し、SNS上では《原因が分からなければ再発防止策できないのでは》《結論を出すのが早すぎる》《まだ何かあるのではないか》との声もあり、騒動はさらなる炎上必至かと思いきや、「高島屋」の姿勢に好印象を受けたという投稿も。) 《高島屋は「生産から流通を含め、商品を客の手元に届けするまでが販売者」「原因を特定できるような管理体制を構築できなかったことも会社の問題」と。全責任は高島屋にあると言い切った。くどくど言い訳しない姿勢が良かった》 《こういうケースの会見だと、あれこれ言い訳しつつ、第三者委員会を作ると言って時間稼ぎし、ほとぼりが冷めた頃に再発防止策が公表される。でも、高島屋はメーカーなどに責任を押し付けることなく、私たちが悪い。全責任を取ると。これが不祥事が発生した時の危機管理だろう》 果たして「原因の特定不可能」の結論は急ぎ過ぎか、それとも危機管理対応なのか』、「高島屋」が「原因の特定は不可能」としつつも、「くどくど言い訳」せず、「「原因を特定できるような管理体制を構築できなかったことも会社の問題」と。全責任は高島屋にあると言い切った」のは、大したものだ。危機管理のお手本だ。
次に、本年/6月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「「オロナミンC」と「リポビタンD」の決定的な違い…日本がレッドブルを生み出せなかった残念な理由とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/345800
・『「24時間戦えますか?」のキャッチフレーズで一世を風靡した第一三共のリゲインの主力商品が今年4月で出荷を終えました。栄養ドリンク市場は縮小している一方で、エナジードリンク市場は世界的に成長しています。「オロナミンC」と「リポビタンD」の決定的な違いとは?日本がレッドブルを生み出せなかったのには理由があるのです』、興味深そうだ。
・『栄養ドリンク市場は縮小 エナジードリンク市場は成長、違いは? 「24時間戦えますか?」のキャッチフレーズで一世を風靡した第一三共のリゲインの主力商品が今年4月で出荷を終えました。30年以上にわたって約20種類を販売してきましたが、今後はドリンク剤としては100ミリリットルのMJ-リゲインという商品のみの販売になります。 栄養ドリンク市場は2000年をピークに市場縮小傾向が続いているようです。私も20代から30代にかけては激務の毎日の中で、残業時間によく栄養ドリンクを飲んだものです。ただ管理職になったころから、24時間戦わなくなったせいでしょうか、栄養ドリンクはすっかり飲まなくなりました。 あくまで個人の振り返りですが、市場が縮小しているということは日本全体で似たような現象が起きているのかもしれません。 栄養ドリンク市場が縮小する一方で、世界的に市場拡大が続いているのがエナジードリンク市場です。 このふたつの市場、何が違うのかから説明する必要があるかもしれません。 栄養ドリンク市場の売れ筋商品の代表例はリポビタンDです。一方のエナジードリンク市場の代表格といえばレッドブルということになります。 ではこのふたつの製品の違いは何なのでしょう?実はこの説明はなかなか興味深い論点があるのです』、どう違うのだろう。
・『「分類」が違うことから売り方が大きく異なる まずは公式説明から入りましょう。リポビタンDのような栄養ドリンクは医薬品ないしは医薬部外品に分類されます。一方のレッドブルなどのエナジードリンクは清涼飲料水に分類されます。 そのため、栄養ドリンクは疲労回復の効能をうたうことができます。一方でエナジードリンクは効能をうたうことはできず、なんとなく元気が出るようなイメージを訴求することしか法律では許されていません。 つぎに非公式な説明をしますと、レッドブルはもともとタイで圧倒的なシェアを持っていたリポビタンDに対抗する製品として地場の会社が発売したドリンクがルーツです。 その後、エナジードリンクの可能性に目をつけたオーストリアの企業がタイのレッドブルのグローバル市場での販売権を獲得します。 このオーストリアの企業がとにかくマーケティングがうまかったのです。味や成分を改良し、広告宣伝も果敢に投資して欧米市場で製品を売り込みます。 結果、世界中にエナジードリンク市場が生まれ、モンスターなど対抗ブランドも出現し、いまではエナジードリンク市場が世界の飲料の重要なセグメントにまで発展しています。 つまり非公式な説明によれば、もともと同じような競合商品だったのだけれども、売り方がうまいレッドブルが世界市場を制したという話でもあるのです』、「レッドブルはもともとタイで圧倒的なシェアを持っていたリポビタンDに対抗する製品として地場の会社が発売したドリンクがルーツ・・・オーストリアの企業がタイのレッドブルのグローバル市場での販売権を獲得します。 このオーストリアの企業がとにかくマーケティングがうまかったのです。味や成分を改良し、広告宣伝も果敢に投資して欧米市場で製品を売り込みます。 結果、世界中にエナジードリンク市場が生まれ、モンスターなど対抗ブランドも出現し、いまではエナジードリンク市場が世界の飲料の重要なセグメントにまで発展」、なるほど。
・『オロナミンCが国民的ドリンクになれた理由 リポビタミンDにはない「強み」とは? 実は非公式な栄養ドリンクの歴史にはもうひとつ面白い先行事例があります。 オロナミンCは「医薬品ないしは医薬部外品が栄養ドリンク」という定義に当てはまらない製品だということをご存じでしょうか? 大塚製薬のヒット商品であるオロナミンCも日本の栄養ドリンク市場を拡げようという野望から生まれた商品です。当時大塚製薬ではキングシローなどの栄養ドリンクを発売していたのですが、苦戦を強いられていました。 当時の開発陣が苦心をした結果、編み出したのがそれまで市場になかった「おいしいドリンク剤を開発する」というアイデアでした。1965年のことです。炭酸を加えることでオロナミンCはそれまで市場になかったおいしさを手にいれたのです。 ところがここで厚生省(当時)から待ったがかかります。「炭酸入り飲料は医薬用ドリンク剤として認めることはできない」というのです。 炭酸を抜いて医薬品とするか、炭酸入りで清涼飲料水として発売するか。当時の経営陣は悩んだすえに、オロナミンCをおいしいままで発売することに決めました。だからオロナミンCは清涼飲料水なのです。 当時のこの経営判断はもうひとつ別の未来を拓きます。医薬品でなくなった結果、大塚製薬はオロナミンCを一般の小売店で流通させることを決めるのです。当時の社長は、薬局よりも食料品店は10倍も多いのだから、これはチャンスだと社員にはっぱをかけたというエピソードも残っています。 結果的にオロナミンCはリポビタンDとは違う形で国民的な愛用ドリンクとなりました。 大村崑さんのCMと「元気ハツラツ」という効能をうたえないキャッチフレーズが日本中に浸透して、国民的に飲まれるようになったのです。 さて、ここまでの公式および非公式な歴史解説からみなさんはこの市場についてどうお感じになるでしょう。 リポビタンDが日本国内で圧倒的な地位を占める一方で、世界市場はレッドブルにとられてしまった。そして、そのやり方が有効なことは実はオロナミンCが日本国内で過去に証明していた。 そう考えると栄養ドリンク市場の縮小と、エナジードリンク市場の拡大については、ある種、感慨深いものがあります』、「炭酸を加えることでオロナミンCはそれまで市場になかったおいしさを手にいれたのです。 ところがここで厚生省(当時)から待ったがかかります。「炭酸入り飲料は医薬用ドリンク剤として認めることはできない」というのです。 炭酸を抜いて医薬品とするか、炭酸入りで清涼飲料水として発売するか。当時の経営陣は悩んだすえに、オロナミンCをおいしいままで発売することに決めました。だからオロナミンCは清涼飲料水なのです・・・医薬品でなくなった結果、大塚製薬はオロナミンCを一般の小売店で流通させることを決めるのです。当時の社長は、薬局よりも食料品店は10倍も多いのだから、これはチャンスだと社員にはっぱをかけたというエピソードも残っています。 結果的にオロナミンCはリポビタンDとは違う形で国民的な愛用ドリンクとなりました」、なるほど。
・『エナジードリンクは「清涼飲料水」だが問題点もある 栄養ドリンクとは少し違う話になるかもしれませんが、歴史という観点ではサプリメントについても触れておいたほうがいいかもしれません。 今の若い方はご存じないでしょうけれども、1980年代まではビタミン類は医薬品で、価格もかなり割高でした。 それがこの頃から日米貿易摩擦が激しくなり、アメリカ側の強い圧力があってサプリメントを医薬品ではなく食品として流通できるように制度が変わり、現在に至るのです。 その当時からアメリカはサプリメント大国でしたから、アメリカから安く輸入されたビタミンなどのサプリメントはあっという間に日本市場を席捲します。 アメリカでシェアが高かったネイチャーメイドのサプリメントの日本での販売権を大塚製薬が獲得したのですが、当時、アメリカから輸入したものをそのまま売っただけで日本市場では圧倒的に価格が安くなると大塚製薬の役員の方がおっしゃっていたのを思い出しました。 ビタミン剤が食品になったぐらいですから、その頃に、栄養ドリンクの分類も見直しておいたら、今頃、世界の栄養ドリンク市場の業界地図も変わっていたかもしれません。 さて、ここまでの説明ですと一方的にエナジードリンク市場拡大を礼賛しているようにも読めるので、バランスの意味でエナジードリンクの問題点も挙げておきます。 医薬品ないしは医薬部外品である栄養ドリンクは効能説明ができる一方で、適切な使用量も明記されます。しかし清涼飲料水であるエナジードリンクには適正な使用量の表記はありません。 実は健康的にはこのことが問題を引き起こす可能性があります。というのもエナジードリンクは元気になることを実感させるためにカフェインを多めに配合する傾向があるのです。 カフェインはたばこやアルコールと並んで適法な嗜好物・刺激物のひとつですが、取り過ぎが体に悪影響を及ぼすのはたばこやアルコールと同じです。 カフェインの場合、適量ならば意識がしゃっきりして、仕事がはかどります。朝、コーヒーを飲むと目がよく覚めるのと同じです。 しかし過剰に摂り過ぎるとカフェイン依存症のリスクが高まります。重症になると海外では死亡例も出るくらい注意が必要です。 一般にエナジードリンク1本にはコーヒー2杯分程度のカフェインが入っています。中毒を起こすにはエナジードリンクを1日7本ぐらい飲むレベルだといいますから、普通の飲み方ならば問題ないはずです。 ただ、たとえば仕事の追い込みで徹夜を乗り切ろうとしてエナジードリンクに頼ると、夜明けごろには気づくとそれくらい飲んでしまうかもしれませんね』、「1980年代まではビタミン類は医薬品で、価格もかなり割高でした。 それがこの頃から日米貿易摩擦が激しくなり、アメリカ側の強い圧力があってサプリメントを医薬品ではなく食品として流通できるように制度が変わり、現在に至るのです。 その当時からアメリカはサプリメント大国でしたから、アメリカから安く輸入されたビタミンなどのサプリメントはあっという間に日本市場を席捲します・・・エナジードリンクの問題点も挙げておきます。 医薬品ないしは医薬部外品である栄養ドリンクは効能説明ができる一方で、適切な使用量も明記されます。しかし清涼飲料水であるエナジードリンクには適正な使用量の表記はありません。 実は健康的にはこのことが問題を引き起こす可能性があります。というのもエナジードリンクは元気になることを実感させるためにカフェインを多めに配合する傾向があるのです・・・たとえば仕事の追い込みで徹夜を乗り切ろうとしてエナジードリンクに頼ると、夜明けごろには気づくとそれくらい飲んでしまうかもしれませんね」、やはりリスクも相応にあるようだ。
・『「カフェイン強化+高齢者向け」の飲料市場が広がるかもしれない さて、この記事の最後にもうひとつ、あるアイデアについてお話をしたいと思います。 私はレッドブルの成功は極めてマーケティング的な成功だったと考えています。元気が出る飲料を手軽な缶入りにしてコーラと同じ場所で売り始めたら世界でバカ売れしたわけです。 それに気づかなかった反省から考えると、リポビタンDにもオロナミンCにもリゲインにも、これまでの主要市場とはまた別の、年々拡大する市場機会があるように感じます。 実は、私の家族で圧倒的に栄養ドリンクを消費していたのは私の父でした。20年近く前の話です。 当時、70代に入った頃から、父はとにかく元気が出ないという症状に悩んでいました。私も最近、同じ悩みを持っていますが、人生の中で初めて高齢者になるという経験をすると、それまでできたことができなくなることが増えてきます。元気でいるというのもそのできなくなることのひとつです。 それで父の家に遊びにいったときに「リポビタンDを買ってきてほしい」と言われたのです。親孝行としては安上がりだったので、行きに薬局でひと箱買って持っていったらずいぶんと喜ばれました。 家が近所なので訪ねるたびに買っていくようになり、年齢が上がるたびにリポビタンDではなく、タウリンが3000mgのものや、晩年はタウリン4000mgのものを喜ぶようになってきました。 そういう私も、当時の父よりはまだずいぶんと若いはずですが、何をしていても疲れが早く来るようになりました。それで当然ですがいろいろなものを試しています。 ビタミンのサプリメントは日常的に飲んでますし、骨や筋肉量を落さないようにカルシウムやプロテインも口にしています。そしてこれはあくまで個人の感想ですが、仕事中にしゃきっとするにはエナジードリンクが即効性がいいようです。たぶんカフェインのおかげでしょう。 その観点で振り返ると、少なくとも日本市場での現在のマーケティングにおいては栄養ドリンクもエナジードリンクも筋肉がマッチョな若者向けのイメージばかり目につきます。 私は経済の専門家なのでそういったマーケティング情報は無視してエナジードリンクや栄養ドリンクで疲れやすい日常をカバーしていますが、私の同世代から見れば今の栄養ドリンクのマーケティングは逆に情報バイアスになってしまっているのではないでしょうか。 マーケティング的に思考すれば、中身は似ていても売り方はまったく違う製品がこのジャンルに出現して、5年後の高齢者市場をそのようなドリンクが席捲する未来がくるかもしれません。 カフェイン強化な高齢者向けの手軽な飲料が、「おーい、元気?」とか「京都・五右衛門」「禿鷹」みたいな商品名で売り出されるようなイメージの話です。 リゲインの販売終了から「日本人が24時間戦わなくなった」ことが示唆される今日この頃ではありますが、24時間戦わなくなった日本人も、夜7時頃からの睡魔と戦っているのは事実です。 しゃきっと元気になりたい高齢者向けの市場も、世界市場の潜在規模は大きいと思いませんか?』、「マーケティング的に思考すれば、中身は似ていても売り方はまったく違う製品がこのジャンルに出現して、5年後の高齢者市場をそのようなドリンクが席捲する未来がくるかもしれません。 カフェイン強化な高齢者向けの手軽な飲料が、「おーい、元気?」とか「京都・五右衛門」「禿鷹」みたいな商品名で売り出されるようなイメージの話です。 リゲインの販売終了から「日本人が24時間戦わなくなった」ことが示唆される今日この頃ではありますが、24時間戦わなくなった日本人も、夜7時頃からの睡魔と戦っているのは事実です。 しゃきっと元気になりたい高齢者向けの市場も、世界市場の潜在規模は大きいと思いませんか?」、「日本人も、夜7時頃からの睡魔と戦っているのは事実です。 しゃきっと元気になりたい高齢者向けの市場も、世界市場の潜在規模は大きい」、その通りだ。
先ずは、昨年12月28日付け日刊ゲンダイ「崩れたXmasケーキ騒動で高島屋が「原因の特定不可能」は結論急ぎすぎ? むしろ潔い?」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/334041
・『「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」──。ネット上でこんな声も聞かれるなどした、大手百貨店「高島屋」がネット販売した冷凍のクリスマスケーキが崩れた状態で購入者に届けられた問題。 問題のケーキは埼玉・羽生市の菓子メーカーが製造。「高島屋」が通販限定商品として税込み5400円で約2900個を予約販売。ヤマト運輸が22~25日に配送したのだが、直後から、SNS上では《ケーキがぐちゃぐちゃ》《ケーキが崩れてイチゴが散乱している!》といった投稿が続出していた。 この事態を受けて27日に会見を開いた「高島屋」によると、販売した2879個のうち、ケーキが崩れた状態で届いたのが807個(26日夜時点)だったという。 1年に1度のクリスマスの日を迎え、さあケーキを食べようとワクワクした気持ちで箱を開けたら潰れてイチゴが散乱していた、となれば購入者はさぞ落胆したに違いない』、「販売した2879個のうち、ケーキが崩れた状態で届いたのが807個(26日夜時点)だった」、「ケーキが崩れた」のはかなり高い割合だ。
・『「原因の特定は不可能」で炎上必至かと思いきや… 会見で「原因の特定は不可能」と発言した「高島屋」の横山和久代表取締役専務に対し、SNS上では《原因が分からなければ再発防止策できないのでは》《結論を出すのが早すぎる》《まだ何かあるのではないか》との声もあり、騒動はさらなる炎上必至かと思いきや、「高島屋」の姿勢に好印象を受けたという投稿も。) 《高島屋は「生産から流通を含め、商品を客の手元に届けするまでが販売者」「原因を特定できるような管理体制を構築できなかったことも会社の問題」と。全責任は高島屋にあると言い切った。くどくど言い訳しない姿勢が良かった》 《こういうケースの会見だと、あれこれ言い訳しつつ、第三者委員会を作ると言って時間稼ぎし、ほとぼりが冷めた頃に再発防止策が公表される。でも、高島屋はメーカーなどに責任を押し付けることなく、私たちが悪い。全責任を取ると。これが不祥事が発生した時の危機管理だろう》 果たして「原因の特定不可能」の結論は急ぎ過ぎか、それとも危機管理対応なのか』、「高島屋」が「原因の特定は不可能」としつつも、「くどくど言い訳」せず、「「原因を特定できるような管理体制を構築できなかったことも会社の問題」と。全責任は高島屋にあると言い切った」のは、大したものだ。危機管理のお手本だ。
次に、本年/6月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「「オロナミンC」と「リポビタンD」の決定的な違い…日本がレッドブルを生み出せなかった残念な理由とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/345800
・『「24時間戦えますか?」のキャッチフレーズで一世を風靡した第一三共のリゲインの主力商品が今年4月で出荷を終えました。栄養ドリンク市場は縮小している一方で、エナジードリンク市場は世界的に成長しています。「オロナミンC」と「リポビタンD」の決定的な違いとは?日本がレッドブルを生み出せなかったのには理由があるのです』、興味深そうだ。
・『栄養ドリンク市場は縮小 エナジードリンク市場は成長、違いは? 「24時間戦えますか?」のキャッチフレーズで一世を風靡した第一三共のリゲインの主力商品が今年4月で出荷を終えました。30年以上にわたって約20種類を販売してきましたが、今後はドリンク剤としては100ミリリットルのMJ-リゲインという商品のみの販売になります。 栄養ドリンク市場は2000年をピークに市場縮小傾向が続いているようです。私も20代から30代にかけては激務の毎日の中で、残業時間によく栄養ドリンクを飲んだものです。ただ管理職になったころから、24時間戦わなくなったせいでしょうか、栄養ドリンクはすっかり飲まなくなりました。 あくまで個人の振り返りですが、市場が縮小しているということは日本全体で似たような現象が起きているのかもしれません。 栄養ドリンク市場が縮小する一方で、世界的に市場拡大が続いているのがエナジードリンク市場です。 このふたつの市場、何が違うのかから説明する必要があるかもしれません。 栄養ドリンク市場の売れ筋商品の代表例はリポビタンDです。一方のエナジードリンク市場の代表格といえばレッドブルということになります。 ではこのふたつの製品の違いは何なのでしょう?実はこの説明はなかなか興味深い論点があるのです』、どう違うのだろう。
・『「分類」が違うことから売り方が大きく異なる まずは公式説明から入りましょう。リポビタンDのような栄養ドリンクは医薬品ないしは医薬部外品に分類されます。一方のレッドブルなどのエナジードリンクは清涼飲料水に分類されます。 そのため、栄養ドリンクは疲労回復の効能をうたうことができます。一方でエナジードリンクは効能をうたうことはできず、なんとなく元気が出るようなイメージを訴求することしか法律では許されていません。 つぎに非公式な説明をしますと、レッドブルはもともとタイで圧倒的なシェアを持っていたリポビタンDに対抗する製品として地場の会社が発売したドリンクがルーツです。 その後、エナジードリンクの可能性に目をつけたオーストリアの企業がタイのレッドブルのグローバル市場での販売権を獲得します。 このオーストリアの企業がとにかくマーケティングがうまかったのです。味や成分を改良し、広告宣伝も果敢に投資して欧米市場で製品を売り込みます。 結果、世界中にエナジードリンク市場が生まれ、モンスターなど対抗ブランドも出現し、いまではエナジードリンク市場が世界の飲料の重要なセグメントにまで発展しています。 つまり非公式な説明によれば、もともと同じような競合商品だったのだけれども、売り方がうまいレッドブルが世界市場を制したという話でもあるのです』、「レッドブルはもともとタイで圧倒的なシェアを持っていたリポビタンDに対抗する製品として地場の会社が発売したドリンクがルーツ・・・オーストリアの企業がタイのレッドブルのグローバル市場での販売権を獲得します。 このオーストリアの企業がとにかくマーケティングがうまかったのです。味や成分を改良し、広告宣伝も果敢に投資して欧米市場で製品を売り込みます。 結果、世界中にエナジードリンク市場が生まれ、モンスターなど対抗ブランドも出現し、いまではエナジードリンク市場が世界の飲料の重要なセグメントにまで発展」、なるほど。
・『オロナミンCが国民的ドリンクになれた理由 リポビタミンDにはない「強み」とは? 実は非公式な栄養ドリンクの歴史にはもうひとつ面白い先行事例があります。 オロナミンCは「医薬品ないしは医薬部外品が栄養ドリンク」という定義に当てはまらない製品だということをご存じでしょうか? 大塚製薬のヒット商品であるオロナミンCも日本の栄養ドリンク市場を拡げようという野望から生まれた商品です。当時大塚製薬ではキングシローなどの栄養ドリンクを発売していたのですが、苦戦を強いられていました。 当時の開発陣が苦心をした結果、編み出したのがそれまで市場になかった「おいしいドリンク剤を開発する」というアイデアでした。1965年のことです。炭酸を加えることでオロナミンCはそれまで市場になかったおいしさを手にいれたのです。 ところがここで厚生省(当時)から待ったがかかります。「炭酸入り飲料は医薬用ドリンク剤として認めることはできない」というのです。 炭酸を抜いて医薬品とするか、炭酸入りで清涼飲料水として発売するか。当時の経営陣は悩んだすえに、オロナミンCをおいしいままで発売することに決めました。だからオロナミンCは清涼飲料水なのです。 当時のこの経営判断はもうひとつ別の未来を拓きます。医薬品でなくなった結果、大塚製薬はオロナミンCを一般の小売店で流通させることを決めるのです。当時の社長は、薬局よりも食料品店は10倍も多いのだから、これはチャンスだと社員にはっぱをかけたというエピソードも残っています。 結果的にオロナミンCはリポビタンDとは違う形で国民的な愛用ドリンクとなりました。 大村崑さんのCMと「元気ハツラツ」という効能をうたえないキャッチフレーズが日本中に浸透して、国民的に飲まれるようになったのです。 さて、ここまでの公式および非公式な歴史解説からみなさんはこの市場についてどうお感じになるでしょう。 リポビタンDが日本国内で圧倒的な地位を占める一方で、世界市場はレッドブルにとられてしまった。そして、そのやり方が有効なことは実はオロナミンCが日本国内で過去に証明していた。 そう考えると栄養ドリンク市場の縮小と、エナジードリンク市場の拡大については、ある種、感慨深いものがあります』、「炭酸を加えることでオロナミンCはそれまで市場になかったおいしさを手にいれたのです。 ところがここで厚生省(当時)から待ったがかかります。「炭酸入り飲料は医薬用ドリンク剤として認めることはできない」というのです。 炭酸を抜いて医薬品とするか、炭酸入りで清涼飲料水として発売するか。当時の経営陣は悩んだすえに、オロナミンCをおいしいままで発売することに決めました。だからオロナミンCは清涼飲料水なのです・・・医薬品でなくなった結果、大塚製薬はオロナミンCを一般の小売店で流通させることを決めるのです。当時の社長は、薬局よりも食料品店は10倍も多いのだから、これはチャンスだと社員にはっぱをかけたというエピソードも残っています。 結果的にオロナミンCはリポビタンDとは違う形で国民的な愛用ドリンクとなりました」、なるほど。
・『エナジードリンクは「清涼飲料水」だが問題点もある 栄養ドリンクとは少し違う話になるかもしれませんが、歴史という観点ではサプリメントについても触れておいたほうがいいかもしれません。 今の若い方はご存じないでしょうけれども、1980年代まではビタミン類は医薬品で、価格もかなり割高でした。 それがこの頃から日米貿易摩擦が激しくなり、アメリカ側の強い圧力があってサプリメントを医薬品ではなく食品として流通できるように制度が変わり、現在に至るのです。 その当時からアメリカはサプリメント大国でしたから、アメリカから安く輸入されたビタミンなどのサプリメントはあっという間に日本市場を席捲します。 アメリカでシェアが高かったネイチャーメイドのサプリメントの日本での販売権を大塚製薬が獲得したのですが、当時、アメリカから輸入したものをそのまま売っただけで日本市場では圧倒的に価格が安くなると大塚製薬の役員の方がおっしゃっていたのを思い出しました。 ビタミン剤が食品になったぐらいですから、その頃に、栄養ドリンクの分類も見直しておいたら、今頃、世界の栄養ドリンク市場の業界地図も変わっていたかもしれません。 さて、ここまでの説明ですと一方的にエナジードリンク市場拡大を礼賛しているようにも読めるので、バランスの意味でエナジードリンクの問題点も挙げておきます。 医薬品ないしは医薬部外品である栄養ドリンクは効能説明ができる一方で、適切な使用量も明記されます。しかし清涼飲料水であるエナジードリンクには適正な使用量の表記はありません。 実は健康的にはこのことが問題を引き起こす可能性があります。というのもエナジードリンクは元気になることを実感させるためにカフェインを多めに配合する傾向があるのです。 カフェインはたばこやアルコールと並んで適法な嗜好物・刺激物のひとつですが、取り過ぎが体に悪影響を及ぼすのはたばこやアルコールと同じです。 カフェインの場合、適量ならば意識がしゃっきりして、仕事がはかどります。朝、コーヒーを飲むと目がよく覚めるのと同じです。 しかし過剰に摂り過ぎるとカフェイン依存症のリスクが高まります。重症になると海外では死亡例も出るくらい注意が必要です。 一般にエナジードリンク1本にはコーヒー2杯分程度のカフェインが入っています。中毒を起こすにはエナジードリンクを1日7本ぐらい飲むレベルだといいますから、普通の飲み方ならば問題ないはずです。 ただ、たとえば仕事の追い込みで徹夜を乗り切ろうとしてエナジードリンクに頼ると、夜明けごろには気づくとそれくらい飲んでしまうかもしれませんね』、「1980年代まではビタミン類は医薬品で、価格もかなり割高でした。 それがこの頃から日米貿易摩擦が激しくなり、アメリカ側の強い圧力があってサプリメントを医薬品ではなく食品として流通できるように制度が変わり、現在に至るのです。 その当時からアメリカはサプリメント大国でしたから、アメリカから安く輸入されたビタミンなどのサプリメントはあっという間に日本市場を席捲します・・・エナジードリンクの問題点も挙げておきます。 医薬品ないしは医薬部外品である栄養ドリンクは効能説明ができる一方で、適切な使用量も明記されます。しかし清涼飲料水であるエナジードリンクには適正な使用量の表記はありません。 実は健康的にはこのことが問題を引き起こす可能性があります。というのもエナジードリンクは元気になることを実感させるためにカフェインを多めに配合する傾向があるのです・・・たとえば仕事の追い込みで徹夜を乗り切ろうとしてエナジードリンクに頼ると、夜明けごろには気づくとそれくらい飲んでしまうかもしれませんね」、やはりリスクも相応にあるようだ。
・『「カフェイン強化+高齢者向け」の飲料市場が広がるかもしれない さて、この記事の最後にもうひとつ、あるアイデアについてお話をしたいと思います。 私はレッドブルの成功は極めてマーケティング的な成功だったと考えています。元気が出る飲料を手軽な缶入りにしてコーラと同じ場所で売り始めたら世界でバカ売れしたわけです。 それに気づかなかった反省から考えると、リポビタンDにもオロナミンCにもリゲインにも、これまでの主要市場とはまた別の、年々拡大する市場機会があるように感じます。 実は、私の家族で圧倒的に栄養ドリンクを消費していたのは私の父でした。20年近く前の話です。 当時、70代に入った頃から、父はとにかく元気が出ないという症状に悩んでいました。私も最近、同じ悩みを持っていますが、人生の中で初めて高齢者になるという経験をすると、それまでできたことができなくなることが増えてきます。元気でいるというのもそのできなくなることのひとつです。 それで父の家に遊びにいったときに「リポビタンDを買ってきてほしい」と言われたのです。親孝行としては安上がりだったので、行きに薬局でひと箱買って持っていったらずいぶんと喜ばれました。 家が近所なので訪ねるたびに買っていくようになり、年齢が上がるたびにリポビタンDではなく、タウリンが3000mgのものや、晩年はタウリン4000mgのものを喜ぶようになってきました。 そういう私も、当時の父よりはまだずいぶんと若いはずですが、何をしていても疲れが早く来るようになりました。それで当然ですがいろいろなものを試しています。 ビタミンのサプリメントは日常的に飲んでますし、骨や筋肉量を落さないようにカルシウムやプロテインも口にしています。そしてこれはあくまで個人の感想ですが、仕事中にしゃきっとするにはエナジードリンクが即効性がいいようです。たぶんカフェインのおかげでしょう。 その観点で振り返ると、少なくとも日本市場での現在のマーケティングにおいては栄養ドリンクもエナジードリンクも筋肉がマッチョな若者向けのイメージばかり目につきます。 私は経済の専門家なのでそういったマーケティング情報は無視してエナジードリンクや栄養ドリンクで疲れやすい日常をカバーしていますが、私の同世代から見れば今の栄養ドリンクのマーケティングは逆に情報バイアスになってしまっているのではないでしょうか。 マーケティング的に思考すれば、中身は似ていても売り方はまったく違う製品がこのジャンルに出現して、5年後の高齢者市場をそのようなドリンクが席捲する未来がくるかもしれません。 カフェイン強化な高齢者向けの手軽な飲料が、「おーい、元気?」とか「京都・五右衛門」「禿鷹」みたいな商品名で売り出されるようなイメージの話です。 リゲインの販売終了から「日本人が24時間戦わなくなった」ことが示唆される今日この頃ではありますが、24時間戦わなくなった日本人も、夜7時頃からの睡魔と戦っているのは事実です。 しゃきっと元気になりたい高齢者向けの市場も、世界市場の潜在規模は大きいと思いませんか?』、「マーケティング的に思考すれば、中身は似ていても売り方はまったく違う製品がこのジャンルに出現して、5年後の高齢者市場をそのようなドリンクが席捲する未来がくるかもしれません。 カフェイン強化な高齢者向けの手軽な飲料が、「おーい、元気?」とか「京都・五右衛門」「禿鷹」みたいな商品名で売り出されるようなイメージの話です。 リゲインの販売終了から「日本人が24時間戦わなくなった」ことが示唆される今日この頃ではありますが、24時間戦わなくなった日本人も、夜7時頃からの睡魔と戦っているのは事実です。 しゃきっと元気になりたい高齢者向けの市場も、世界市場の潜在規模は大きいと思いませんか?」、「日本人も、夜7時頃からの睡魔と戦っているのは事実です。 しゃきっと元気になりたい高齢者向けの市場も、世界市場の潜在規模は大きい」、その通りだ。
タグ:食品一般 (その1)(崩れたXmasケーキ騒動で高島屋が「原因の特定不可能」は結論急ぎすぎ? むしろ潔い?、「オロナミンC」と「リポビタンD」の決定的な違い…日本がレッドブルを生み出せなかった残念な理由とは?) 日刊ゲンダイ「崩れたXmasケーキ騒動で高島屋が「原因の特定不可能」は結論急ぎすぎ? むしろ潔い?」 「販売した2879個のうち、ケーキが崩れた状態で届いたのが807個(26日夜時点)だった」、「ケーキが崩れた」のはかなり高い割合だ。 「高島屋」が「原因の特定は不可能」としつつも、「くどくど言い訳」せず、「「原因を特定できるような管理体制を構築できなかったことも会社の問題」と。全責任は高島屋にあると言い切った」のは、大したものだ。危機管理のお手本だ。 ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「「オロナミンC」と「リポビタンD」の決定的な違い…日本がレッドブルを生み出せなかった残念な理由とは?」 どう違うのだろう。 「レッドブルはもともとタイで圧倒的なシェアを持っていたリポビタンDに対抗する製品として地場の会社が発売したドリンクがルーツ・・・オーストリアの企業がタイのレッドブルのグローバル市場での販売権を獲得します。 このオーストリアの企業がとにかくマーケティングがうまかったのです。味や成分を改良し、広告宣伝も果敢に投資して欧米市場で製品を売り込みます。 結果、世界中にエナジードリンク市場が生まれ、モンスターなど対抗ブランドも出現し、いまではエナジードリンク市場が世界の飲料の重要なセグメントにまで発展」、なるほど。 「炭酸を加えることでオロナミンCはそれまで市場になかったおいしさを手にいれたのです。 ところがここで厚生省(当時)から待ったがかかります。「炭酸入り飲料は医薬用ドリンク剤として認めることはできない」というのです。 炭酸を抜いて医薬品とするか、炭酸入りで清涼飲料水として発売するか。当時の経営陣は悩んだすえに、オロナミンCをおいしいままで発売することに決めました。 だからオロナミンCは清涼飲料水なのです・・・医薬品でなくなった結果、大塚製薬はオロナミンCを一般の小売店で流通させることを決めるのです。当時の社長は、薬局よりも食料品店は10倍も多いのだから、これはチャンスだと社員にはっぱをかけたというエピソードも残っています。 結果的にオロナミンCはリポビタンDとは違う形で国民的な愛用ドリンクとなりました」、なるほど。 「1980年代まではビタミン類は医薬品で、価格もかなり割高でした。 それがこの頃から日米貿易摩擦が激しくなり、アメリカ側の強い圧力があってサプリメントを医薬品ではなく食品として流通できるように制度が変わり、現在に至るのです。 その当時からアメリカはサプリメント大国でしたから、アメリカから安く輸入されたビタミンなどのサプリメントはあっという間に日本市場を席捲します・・・ エナジードリンクの問題点も挙げておきます。 医薬品ないしは医薬部外品である栄養ドリンクは効能説明ができる一方で、適切な使用量も明記されます。しかし清涼飲料水であるエナジードリンクには適正な使用量の表記はありません。 実は健康的にはこのことが問題を引き起こす可能性があります。というのもエナジードリンクは元気になることを実感させるためにカフェインを多めに配合する傾向があるのです・・・たとえば仕事の追い込みで徹夜を乗り切ろうとしてエナジードリンクに頼ると、夜明けごろには気づくとそれくらい飲んでしまうかもしれませ んね」、やはりリスクも相応にあるようだ。 「マーケティング的に思考すれば、中身は似ていても売り方はまったく違う製品がこのジャンルに出現して、5年後の高齢者市場をそのようなドリンクが席捲する未来がくるかもしれません。 カフェイン強化な高齢者向けの手軽な飲料が、「おーい、元気?」とか「京都・五右衛門」「禿鷹」みたいな商品名で売り出されるようなイメージの話です。 リゲインの販売終了から「日本人が24時間戦わなくなった」ことが示唆される今日この頃ではありますが、24時間戦わなくなった日本人も、夜7時頃からの睡魔と戦っているのは事実です。 しゃきっと元気になりたい高齢者向けの市場も、世界市場の潜在規模は大きいと思いませんか?」、「日本人も、夜7時頃からの睡魔と戦っているのは事実です。 しゃきっと元気になりたい高齢者向けの市場も、世界市場の潜在規模は大きい」、その通りだ。
自動車(一般)(その8)(自動車「認証不正問題」の本質は国交省の“イジメ”ではないか…? 時代錯誤な「お役所仕事」が日本経済を停滞させる、トヨタにホンダまで!自動車メーカーの経営が「コンプラ順守」を叫んでも 現場が結局「不正」を起こすワケ) [産業動向]
自動車(一般)については、本年5月6日に取上げた。今日は、(その8)(自動車「認証不正問題」の本質は国交省の“イジメ”ではないか…? 時代錯誤な「お役所仕事」が日本経済を停滞させる、トヨタにホンダまで!自動車メーカーの経営が「コンプラ順守」を叫んでも 現場が結局「不正」を起こすワケ)である。
先ずは、本年6月11日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の朝香 豊氏による「自動車「認証不正問題」の本質は国交省の“イジメ”ではないか…? 時代錯誤な「お役所仕事」が日本経済を停滞させる」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/131526?imp=0
・『現行6車種の「出荷停止」は妥当か 今月3日、トヨタ、ホンダ、マツダなど自動車メーカー5社で、量産に必要な型式指定申請で不正があったことが判明し、そのうち現在3社が生産中の6車種について出荷停止となった。 第一報に接したときには、「これはまたとんでもないことをやらかしたな」と、俄に日本企業への不信感を募らせたが、その後、各社が開いた記者会見を聞いて、今回「不正」とされたことの大半は本来「不正」などと呼ぶべきものではない、ということが判明した。「不正」と呼ぶべき一部についても、実に軽微な話で、こんなことは大々的に扱わずに処理すべきものではないかと感じた。 例えばトヨタは、後部からの車をぶつけられた時に油漏れを起こすかどうかについて、車体重量1800キロの車をぶつけて実験を行い、問題ないことを検証していた。ところが国交省の求める実験では1100キロ(正確には1100キロ±20キロ以内)の車をぶつけて油漏れを起こすかどうかであり、1800キロの車をぶつけて実験をしながら、1100キロの車をぶつけて油漏れを起こさなかったと記したのは、虚偽記載に当たるというのである。 より大きなダメージを与えられる試験を実施して安全性に問題がないことを確認しても、それでは「不正」だと国交省は主張しているのだ。この国交省の姿勢を融通性に欠けるものだと受け取るのは、当然ではないか。 ところで、トヨタはなぜ国内の型式認証の基準が1100キロの車だとわかっていながら、わざわざ1800キロの車を用意して実験したのだろうか。それは世界でもっとも厳しいのが1800キロの車での実験であるからだ。世界で最も厳しい基準で実験を行って、世界中どこでも通用する車として販売していきたいというのが、国際競争を戦っている日本の自動車メーカーの考えである。 後部からの車の衝突は理解できるが、エアバックのタイマー起動は納得いかないという意見もあるが、これはエアバックのタイマー起動実験を完全に誤解したものだ。そうした人たちは、本当にエアバッグが起動するかどうかわからないので、タイマーを使って確実に起動させてごまかしたと思っているのだろうが、実はそうではない。 衝突時の衝撃は車体構造とシートベルトで受け止めるのが基本で、シートベルトが十分に安全かどうかが問題となる。シートベルトの安全性を確認するには、エアバッグが本来の製品仕様通りに衝突時間にジャストタイムで起動するのは不都合なのだ。だからタイマーを使って意図的にエアバッグの作動を遅らせ、シートベルトの安全性をより厳密に確認していたのである。つまり、仮にエアバッグの作動が遅れたとしても安全であるかどうかを確かめていたのだ。 エアバッグが衝突時にジャストタイムで起動するのは、過去の知見の積み重ねで99.9%以上確実に作動するのはわかっているが、万一ジャストタイムで起動せずに少し遅れたとしても、乗員の安全を確保できるシートベルト性能があるかどうかを確かめていたのである。そしてこれでも十分に安全であることを確認していた。だが、このやり方を国交省は「不正」だと問題視しているのだ。 安全性に欠けるものをごまかして乗り切ろうとしたわけでもないのに、「不正」「虚偽記載」だと批判されるのは、実に迷惑な話である』、「車体重量1800キロの車をぶつけて実験を行い、問題ないことを検証していた。ところが国交省の求める実験では1100キロ(正確には1100キロ±20キロ以内)の車をぶつけて油漏れを起こすかどうかであり、1800キロの車をぶつけて実験をしながら、1100キロの車をぶつけて油漏れを起こさなかったと記したのは、虚偽記載に当たるというのである。 より大きなダメージを与えられる試験を実施して安全性に問題がないことを確認しても、それでは「不正」だと国交省は主張しているのだ」、国交省の姿勢は大いに問題だ。
・『「睨まれるとメーカーは報復されます」 私が今回の一件は、メーカーではなくて国交省の問題ではないのか、との見方を自身のYouTubeチャンネルでアップしたところ、国交省の不合理極まりない対応に苦労してきた多くの視聴者から、様々な反応をもらった。 「元自動車会社の開発部門で認証業務に携わった人間として朝香先生のご意見、ご指摘に心から感謝し賛同致します」 「朝香さんがこの件を取り上げて頂いた事に大変感謝いたします。自動車業界に居ましたが、国土交通省は神より強い状態でちょっとでも睨まれるとメーカーは報復されますから」 「あなたの考え方は全く正しい! 私は航空関係の退職者ですが、国交省の馬鹿げた筋違いは眼を覆うCrazyさです」 元自動車メーカーの開発部門、営業部門の者として言わせていただきますと国交省運輸局や海事局の型式認証試験は時代錯誤の試験項目が多く残っていたり無駄無意味な試験項目が多く、悪いのは国交省であると思います」 「自動車整備関連で仕事をしていますが、車検(保安基準)が未だに昭和30,40年代から変わっていない部分があります。車の性能があがり、道路事情も進化しているのに国交省のお役所仕事が経済を停滞させているのは間違いないですね」 これらの声が国交省の規制と向き合ってきた現場の声なのだ。 国交省が、メーカー側の苦労を理解したうえで、メーカーの現実を考慮した規制に変えていれば、話は全く変わっていただろう。例えば、先程の後部から車がぶつかってきた時の安全確認について言えば、車体重量1100キロという基準にするのではなく、「車体重量1100キロ以上の台車を利用して調べればよい」との基準に変えていれば、トヨタのやったことは当然ながら「不正」にも「虚偽記載」にも当たらない。 問題は、国交省が製造現場の実態を理解したうえで、日本のメーカーが国際競争で戦うのに適したものへと規制をアップデートしなければならないという意識が希薄であることにあると言うべきではないだろうか。トヨタの豊田章男会長も、「(制度と現場に)ギャップがある。制度自体をどうするのか、議論になっていくとよい」と発言し、国交省の姿勢に問題があることを匂わした。 世界においてもこの話は完全に誤解されて報道されている。例えばニューヨーク・タイムズは「トヨタなどの日本の自動車メーカーは安全性試験を不正操作したと語る」という表題で、「日本製品には優れたものづくりに支えられた高い品質が備わっているとの捉え方が長らくなされてきたが、こうした不正事例が相次いでいる中で、そのような考え方は変化し始めているかもしれない」などと報じられた。
参照)Toyota and Other Japanese Carmakers Say They Mishandled Safety Tests(The New York Times, June 3, 2024) この日本の自動車メーカーに対するダメージを、国交省はどうやって回復するつもりなのか? はっきり言うが、そんな責任など、国交省は全く考えていないだろう。だからこそ、なおさらタチが悪いのだ。 時代錯誤かつ無駄な規制を作っては、国内メーカーの自由を奪い、権力を振るうことで自らの存在意義を作り上げている国交省のあり方は「醜い」の一言だ』、「時代錯誤かつ無駄な規制を作っては、国内メーカーの自由を奪い、権力を振るうことで自らの存在意義を作り上げている国交省のあり方は「醜い」の一言だ」、言い得て妙だ。
・『国内メーカーには厳しく外国メーカーには甘い マスコミの報道も醜い。例えばテレビ朝日の経済部記者は、「入学試験を受ける時にカンニングをして合格点を取った人に、入学後にカンニングの疑惑をかけられて、改めて試験を受けたら合格点が取れました」という話に例えて表現していたが、今回の件はそういう話ではない。 マラソンを走る時に、普段は着けない10キロの重りを着けて走っても合格タイム内で走れたので、重りを付けなくても絶対に合格タイム内で走れるのだから、わざわざ重りなしで走り直す必要はない、という感じで捉えるべきものだ。 参照)【業界の慣習?】トヨタなど5社で不正発覚 国交省の対応は 経済部・進藤潤耶記者【ABEMA NEWS】(2024年6月3日)
ただし、中には毎日放送のように、国交省の問題を視聴者にわかりやすく説明する番組を作っているところもあったわけで、マスコミ全てがおかしいということではないことは付言しておく。 参照)トヨタなど5社の認証不正『国より厳しい基準で独自に試験』その意味をわかりやすく解説 評論家・国沢光宏さん「日本がどうやって栄えていくか考えるべき」(MBS NEWS 2024年6月4日) ちなみに国交省は、国産車に対しては厳しい規制を敷く一方で、輸入車に対しては、一車種につき年間5000台を上限とするというルールはあるものの、輸入自動車特別取扱制度(PHP)により、簡素な書類審査で日本市場での販売を許可している。国産車は高い安全性が確保できなければならないけれども、輸入車は数が少ないから多少危険であっても構わない、ということなのだろうか。 もちろん国交省は「いや、我々はそんなことは考えていない。輸入車にも高い安全性を求めていて、国内の適合基準を満たしている車以外は販売できないようにしている」と言うであろう。だったら、輸入車同様の扱いで国産車も販売できるようにすればいいじゃないかとさえ言いたくなる。 そもそも、輸入車はそれほど安全なんだろうか? という疑問を私は持つ。 例えば今年5月16日に福建省福州市にある電気自動車大手BYDのディーラーで大規模な火災が発生した。 屋根裏に設置されていた電気配線がショートして出火したものが電気自動車に燃え広がったのではないかとの報道を見かけたが、真偽の程はよくわからない。それはともかく、この事件は、電気自動車は一旦燃え始めると恐ろしいということをまざまざと見せつけることとなった。 国交省はこのBYDの電気自動車に対する安全性を十分調査しているのだろうか。 テスラの安全性についても、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は「注意深いドライバーであれば視認できたはずの危険が絡んだ、回避できるはずの事故が多発する傾向が観察された」として、現在厳しい目を向けている。 参照)テスラの自動運転技術に新たな難題、米当局が「基本的な問題あり」との調査結果(WIRED 2024.04.27) アメリカの規制当局が問題にしているテスラ車の安全性について、国交省は果たしてどこまで問題視しているのだろうか。 国内メーカーに対しては厳しいが、外国メーカーには甘いとなれば、国交省はどこの国の役所なのかと言いたくもなる』、「国内メーカーに対しては厳しいが、外国メーカーには甘いとなれば、国交省はどこの国の役所なのかと言いたくもなる」、少なくとも内外の扱いを同じにすべきだ。
・『1ヵ月の出荷停止で600億円規模の影響 今回の事態を受けて、トヨタは現行生産車で問題のあった「トヨタヤリスクロス」「カローラフィールダー」「カローラアクシオ」について、マツダは「マツダ2」「ロードスターRF」について、出荷停止処置だけでなく、生産も停止した。 トヨタは生産停止期間をとりあえず「6月6日から28日まで」としているが、国交省の対応によっては当然、長引くことも考えられる。 野村総合研究所の木内登英氏の推計よると、仮に出荷停止期間が4ヵ月となった場合、販売金額の減少は983.7億円に上る。また、関連する業種を含めた生産額全体の減少幅は2441.7億円になるというのが、木内氏の計算だ。 参照)自動車メーカー認証不正問題の経済への影響(木内登英のGlobal Economy & Policy Insight 2024/06/04) 仮に出荷停止が1ヵ月で済んだとしても生産額全体の減少は600億円規模になることは見ておかなければならない。 国交省のくだらない対応によって、日本の経済にもこれだけの悪影響を与えることになることを軽視すべきではない』、「1ヵ月の出荷停止で600億円規模の影響」とは無視できない影響だ。「国交省」はもっと責任ある対応をするべきだ。
次に、6月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「トヨタにホンダまで!自動車メーカーの経営が「コンプラ順守」を叫んでも、現場が結局「不正」を起こすワケ」を紹介しよう。
・『主要自動車メーカーの全てで品質・認証の不正問題が起きている。各社の問題発生に共通するのは、技術に対する過信や審査に対する慣れなど心理の影響だ。現場の技術者は皆、審査の重要性を軽視したのだろう。そのため、経営者も「認証試験は現場の判断に任せて良い」といった経営判断が続いたとみられる。生産の現場から経営トップ層まで、現状の生産管理、認証の体制に不備はないという一種のバイアスが強まったと考えられる。また、人手不足で認証体制の強化に影響があったかもしれない』、「技術に対する過信や審査に対する慣れなど心理の影響だ。現場の技術者は皆、審査の重要性を軽視したのだろう。そのため、経営者も「認証試験は現場の判断に任せて良い」といった経営判断が続いたとみられる。生産の現場から経営トップ層まで、現状の生産管理、認証の体制に不備はないという一種のバイアスが強まったと考えられる。また、人手不足で認証体制の強化に影響があったかもしれない」、なるほど。
・『トヨタ、マツダ、ホンダ、スズキ…自動車「認証不正」が経済の下振れリスクに 6月上旬、5つの自動車・二輪車メーカーで「型式指定」を巡る不正が発覚した。いわゆる認証不正問題だ。6月3日、トヨタ自動車は、2014年以降生産した7車種で国の基準と異なる方法で試験を実施したと公表した。マツダ、ヤマハ発動機、ホンダ、スズキでも不正が明らかになった。 世界の自動車業界をリードする日本企業で、なぜ、このような問題が発生するのだろか。背景の一つに、自社の製造技術に対する“過信”があるのだろう。技術に自信があるため、どうしても試験実施方法などの軽視が起きる、といった専門家の声は多い。現場の自信が悪い方向に作用してしまったということだ。そのため、経営トップがいくら法令順守=コンプライアンスと叫んでも、なかなかこの問題を根絶することが難しい。 有力自動車メーカーの認証不正問題は、明らかに日本経済にマイナスだ。生産の中止などで裾野の広い自動車産業の機能が低下することは避けられない。それによって、わが国の経済成長率の下振れリスクが高まる。コロナ禍が明けてからも個人消費がまだまだ弱い一方、自動車の生産や輸出が景気の腰折れを防いできた。しかし、認証不正問題で景気を下支えする力は弱まるだろう。 また、品質不正をきっかけに、各自動車メーカーの信頼性が低下することも懸念される。それは、国内の自動車関連企業の収益減少につながる。電動車の開発や全固体電池の実用化に必要な投資資金が計画を下回り、成長戦略が遅れる可能性もある。認証不正問題は、わが国経済にとって大きな火種になりかねない』、「背景の一つに、自社の製造技術に対する“過信”があるのだろう。技術に自信があるため、どうしても試験実施方法などの軽視が起きる、といった専門家の声は多い。現場の自信が悪い方向に作用してしまったということだ。そのため、経営トップがいくら法令順守=コンプライアンスと叫んでも、なかなかこの問題を根絶することが難しい」、なるほど。
・『主要メーカー全てで品質・認証の不正 どうしてそんなことに?問題の背景は… 今回の発覚によって、わが国の主要自動車メーカーの全てで品質・認証の不正問題が起きたことになる。振り返れば16年、三菱自動車で燃費データの改ざんが明らかになった。続く17年、日産自動車とSUBARUで無資格検査員による完成車の検査が発覚した。さらに22年、商用車(トラック)の生産を行う日野自動車で燃費試験などの不正が表面化した。 そうして23年、ダイハツ工業の衝突試験不正、豊田自動織機でエンジン出力に関する不正も発表された。一連の認証不正、データ改ざんの実態を把握するため、国土交通省は各メーカーに調査を求めた。 これまでの発表によると、トヨタ、マツダ、ヤマハ、ホンダ、スズキの5社、38車種で認証不正があった。生産終了分を含め、不正の対象台数は500万台を超えた。トヨタでは14年から不正が発生していた。16年に問題が発覚したにもかかわらず、不正が続いたのはかなり深刻だ。 問題は、型式指定に関するものである。自動車メーカーが新車を生産する際、安全性、環境性能の基準を適合しているか、事前に国の審査を受ける。審査を通過し型式指定を得ると、メーカーの完成検査で販売できる。協定国であれば検査を簡素化できる。 日本の自動車審査方法は米国と異なる。米国では排ガスに関する事前の審査がある。審査で安全性に問題があればリコールで対応する。 一方、日本では事前に政府が基準を定める。自動車メーカーはそれぞれ基準を満たし、効率的な自動車生産のため“すり合わせ製造技術”を磨いてきた。その結果、燃費、安全、走行など性能は向上し、日本車は世界で高い評価を得た。 認証不正は、消費者が各メーカーに寄せた安心感・信頼感を棄損する懸念がある。トヨタで発覚した6件は国際基準に該当するものだった。同社によると、問題の全貌はまだ把握できていない。問題の完全な解決には、まだ時間がかかるだろう』、「認証不正は、消費者が各メーカーに寄せた安心感・信頼感を棄損する懸念がある。トヨタで発覚した6件は国際基準に該当するものだった。同社によると、問題の全貌はまだ把握できていない。問題の完全な解決には、まだ時間がかかるだろう」、まだ時間がかかるとはやれやれだ。
・『認証不正が発生する主な要因は? マツダとトヨタの資料で判明 なぜ、認証不正が起きたのだろう。問題が発覚した企業の開示内容を確認すると、マツダの公表内容が分かりやすい。同社は「不正の原因」を3つ指摘した。 まず、ガバナンスの問題だ。試験が認証法規に準拠した状態で実施されたかをチェックする仕組み、ガバナンス(管理・監督などを行う)体制が不足していた。 次に、手順の不備があった。認証法規に準拠した試験実施の手順が十分ではなかった。 そして、設備の不足だ。認証法規に準拠した試験条件を安定的に満たす設備の整備が不足した。マツダは改善策に、チェックや管理体制の強化、手順書の見直しと教育などの強化、設備の整備強化を挙げた。 一方、トヨタの公表内容を見ると、一般的に、安全性と環境性の認証は3つの方法があるという。(1)試験時、認証機関の審査官が立ち会う、(2)メーカーが試験を行い、データを提出する、(3)開発試験で有効なデータを認証データとして提出する。トヨタは(2)と(3)で認証の不正が起きた。 各社の問題発生に共通するのは、技術に対する過信や審査に対する慣れなど心理の影響だ。自社の製造技術は高い。完成車の性能に問題もない。現場の技術者は皆、審査の重要性を軽視したのだろう。そのため、経営者も「認証試験は現場の判断に任せて良い」といった経営判断が続いたとみられる。 生産の現場から経営トップ層まで、現状の生産管理、認証の体制に不備はないという一種のバイアスが強まったと考えられる。また、人手不足で認証体制の強化に影響があったかもしれない。 ただ、いずれも経営トップの責任であることは間違いない。本来、経営者は社会的責任を果たすために、抜き打ちで試験の実施体制を検証すべきだ。時代にそぐわない認証基準があるなら、当局に掛け合い、実態に即した認証体制を確立する必要もあった。根本的な原因は、経営者にあると考えられる。他の分野でも決して他人事ではない』、「各社の問題発生に共通するのは、技術に対する過信や審査に対する慣れなど心理の影響だ。自社の製造技術は高い。完成車の性能に問題もない。現場の技術者は皆、審査の重要性を軽視したのだろう。そのため、経営者も「認証試験は現場の判断に任せて良い」といった経営判断が続いたとみられる。 生産の現場から経営トップ層まで、現状の生産管理、認証の体制に不備はないという一種のバイアスが強まったと考えられる。また、人手不足で認証体制の強化に影響があったかもしれない。 ただ、いずれも経営トップの責任であることは間違いない。本来、経営者は社会的責任を果たすために、抜き打ちで試験の実施体制を検証すべきだ。時代にそぐわない認証基準があるなら、当局に掛け合い、実態に即した認証体制を確立する必要もあった。根本的な原因は、経営者にあると考えられる。他の分野でも決して他人事ではない」、その通りだ。
・『自動車メーカーの認証不正が日本経済に与える大きな負のインパクト 自動車の認証不正問題は、日本経済の下振れリスクを高めている。1~3月期の国内総生産(GDP)は実質ベースで前期比0.5%(年率で2.0%)減少した(1次速報)。実質賃金の減少に加え、ダイハツの認証不正による販売減少から個人消費が減少したのだ。自動車関連の設備投資が減少した面もある。 それでも、国内経済は何とか踏みとどまった。北米向けの自動車輸出の増加は景気を支えた。省人化や半導体分野の設備投資、インバウンド需要も景気を下支えした。 4~6月期、自動車の生産回復など前期からの反発で、成長率は上向くとの見方は増えていた。しかし、新たな認証不正の大規模発覚が、そうした展開に完全に水を差している。今後、各社の生産停止などが拡大することになると、経済成長率の下振れ懸念は高まるだろう。 自動車産業の競争力が低下する懸念もある。トヨタの営業利益率は米テスラや独フォルクスワーゲンを上回っており、資金を電気自動車(EV)などの生産体制強化に再配分してきた。可能な限り早いタイミングでエンジン車、ハイブリッド車(HV)、EV、FCV(燃料電池車)、水素エンジン車など“全方位型”のプロダクト・ポートフォリオを拡充することで国際規制に対応し、より多くの需要を創出する戦略だ。 しかし、認証不正問題のせいでEV開発などが遅れる可能性がある。欧米市場で日本車の評価が揺らぎ、需要が現地メーカーに向かうことも考えられる。11月の米大統領選挙後に、次期政権が日本の自動車産業を批判する、輸入車の関税引き上げを示唆するなど、逆風が強まる展開もあるだろう。 現在、アジア新興国市場では、中国や現地EVメーカーの投資が加速している。日本勢にとって電動車への生産強化がいっそう必要なタイミングで、認証不正問題が起きた。そのため、アジア新興国地域の自動車需要が、他国企業に流れることもあるだろう。 そうした展開が現実味を帯びると、自動車関連の素材、汎用型の機械など日本経済全体で研究開発や設備投資の勢いは鈍化する。認証不正問題が、当面の景気、経済の実力である潜在成長率の回復を阻害する要因になることが、大いに懸念される』、「認証不正問題のせいでEV開発などが遅れる可能性がある。欧米市場で日本車の評価が揺らぎ、需要が現地メーカーに向かうことも考えられる。11月の米大統領選挙後に、次期政権が日本の自動車産業を批判する、輸入車の関税引き上げを示唆するなど、逆風が強まる展開もあるだろう。 現在、アジア新興国市場では、中国や現地EVメーカーの投資が加速している。日本勢にとって電動車への生産強化がいっそう必要なタイミングで、認証不正問題が起きた。そのため、アジア新興国地域の自動車需要が、他国企業に流れることもあるだろう・・・自動車関連の素材、汎用型の機械など日本経済全体で研究開発や設備投資の勢いは鈍化する。認証不正問題が、当面の景気、経済の実力である潜在成長率の回復を阻害する要因になることが、大いに懸念される」、同感である。
先ずは、本年6月11日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の朝香 豊氏による「自動車「認証不正問題」の本質は国交省の“イジメ”ではないか…? 時代錯誤な「お役所仕事」が日本経済を停滞させる」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/131526?imp=0
・『現行6車種の「出荷停止」は妥当か 今月3日、トヨタ、ホンダ、マツダなど自動車メーカー5社で、量産に必要な型式指定申請で不正があったことが判明し、そのうち現在3社が生産中の6車種について出荷停止となった。 第一報に接したときには、「これはまたとんでもないことをやらかしたな」と、俄に日本企業への不信感を募らせたが、その後、各社が開いた記者会見を聞いて、今回「不正」とされたことの大半は本来「不正」などと呼ぶべきものではない、ということが判明した。「不正」と呼ぶべき一部についても、実に軽微な話で、こんなことは大々的に扱わずに処理すべきものではないかと感じた。 例えばトヨタは、後部からの車をぶつけられた時に油漏れを起こすかどうかについて、車体重量1800キロの車をぶつけて実験を行い、問題ないことを検証していた。ところが国交省の求める実験では1100キロ(正確には1100キロ±20キロ以内)の車をぶつけて油漏れを起こすかどうかであり、1800キロの車をぶつけて実験をしながら、1100キロの車をぶつけて油漏れを起こさなかったと記したのは、虚偽記載に当たるというのである。 より大きなダメージを与えられる試験を実施して安全性に問題がないことを確認しても、それでは「不正」だと国交省は主張しているのだ。この国交省の姿勢を融通性に欠けるものだと受け取るのは、当然ではないか。 ところで、トヨタはなぜ国内の型式認証の基準が1100キロの車だとわかっていながら、わざわざ1800キロの車を用意して実験したのだろうか。それは世界でもっとも厳しいのが1800キロの車での実験であるからだ。世界で最も厳しい基準で実験を行って、世界中どこでも通用する車として販売していきたいというのが、国際競争を戦っている日本の自動車メーカーの考えである。 後部からの車の衝突は理解できるが、エアバックのタイマー起動は納得いかないという意見もあるが、これはエアバックのタイマー起動実験を完全に誤解したものだ。そうした人たちは、本当にエアバッグが起動するかどうかわからないので、タイマーを使って確実に起動させてごまかしたと思っているのだろうが、実はそうではない。 衝突時の衝撃は車体構造とシートベルトで受け止めるのが基本で、シートベルトが十分に安全かどうかが問題となる。シートベルトの安全性を確認するには、エアバッグが本来の製品仕様通りに衝突時間にジャストタイムで起動するのは不都合なのだ。だからタイマーを使って意図的にエアバッグの作動を遅らせ、シートベルトの安全性をより厳密に確認していたのである。つまり、仮にエアバッグの作動が遅れたとしても安全であるかどうかを確かめていたのだ。 エアバッグが衝突時にジャストタイムで起動するのは、過去の知見の積み重ねで99.9%以上確実に作動するのはわかっているが、万一ジャストタイムで起動せずに少し遅れたとしても、乗員の安全を確保できるシートベルト性能があるかどうかを確かめていたのである。そしてこれでも十分に安全であることを確認していた。だが、このやり方を国交省は「不正」だと問題視しているのだ。 安全性に欠けるものをごまかして乗り切ろうとしたわけでもないのに、「不正」「虚偽記載」だと批判されるのは、実に迷惑な話である』、「車体重量1800キロの車をぶつけて実験を行い、問題ないことを検証していた。ところが国交省の求める実験では1100キロ(正確には1100キロ±20キロ以内)の車をぶつけて油漏れを起こすかどうかであり、1800キロの車をぶつけて実験をしながら、1100キロの車をぶつけて油漏れを起こさなかったと記したのは、虚偽記載に当たるというのである。 より大きなダメージを与えられる試験を実施して安全性に問題がないことを確認しても、それでは「不正」だと国交省は主張しているのだ」、国交省の姿勢は大いに問題だ。
・『「睨まれるとメーカーは報復されます」 私が今回の一件は、メーカーではなくて国交省の問題ではないのか、との見方を自身のYouTubeチャンネルでアップしたところ、国交省の不合理極まりない対応に苦労してきた多くの視聴者から、様々な反応をもらった。 「元自動車会社の開発部門で認証業務に携わった人間として朝香先生のご意見、ご指摘に心から感謝し賛同致します」 「朝香さんがこの件を取り上げて頂いた事に大変感謝いたします。自動車業界に居ましたが、国土交通省は神より強い状態でちょっとでも睨まれるとメーカーは報復されますから」 「あなたの考え方は全く正しい! 私は航空関係の退職者ですが、国交省の馬鹿げた筋違いは眼を覆うCrazyさです」 元自動車メーカーの開発部門、営業部門の者として言わせていただきますと国交省運輸局や海事局の型式認証試験は時代錯誤の試験項目が多く残っていたり無駄無意味な試験項目が多く、悪いのは国交省であると思います」 「自動車整備関連で仕事をしていますが、車検(保安基準)が未だに昭和30,40年代から変わっていない部分があります。車の性能があがり、道路事情も進化しているのに国交省のお役所仕事が経済を停滞させているのは間違いないですね」 これらの声が国交省の規制と向き合ってきた現場の声なのだ。 国交省が、メーカー側の苦労を理解したうえで、メーカーの現実を考慮した規制に変えていれば、話は全く変わっていただろう。例えば、先程の後部から車がぶつかってきた時の安全確認について言えば、車体重量1100キロという基準にするのではなく、「車体重量1100キロ以上の台車を利用して調べればよい」との基準に変えていれば、トヨタのやったことは当然ながら「不正」にも「虚偽記載」にも当たらない。 問題は、国交省が製造現場の実態を理解したうえで、日本のメーカーが国際競争で戦うのに適したものへと規制をアップデートしなければならないという意識が希薄であることにあると言うべきではないだろうか。トヨタの豊田章男会長も、「(制度と現場に)ギャップがある。制度自体をどうするのか、議論になっていくとよい」と発言し、国交省の姿勢に問題があることを匂わした。 世界においてもこの話は完全に誤解されて報道されている。例えばニューヨーク・タイムズは「トヨタなどの日本の自動車メーカーは安全性試験を不正操作したと語る」という表題で、「日本製品には優れたものづくりに支えられた高い品質が備わっているとの捉え方が長らくなされてきたが、こうした不正事例が相次いでいる中で、そのような考え方は変化し始めているかもしれない」などと報じられた。
参照)Toyota and Other Japanese Carmakers Say They Mishandled Safety Tests(The New York Times, June 3, 2024) この日本の自動車メーカーに対するダメージを、国交省はどうやって回復するつもりなのか? はっきり言うが、そんな責任など、国交省は全く考えていないだろう。だからこそ、なおさらタチが悪いのだ。 時代錯誤かつ無駄な規制を作っては、国内メーカーの自由を奪い、権力を振るうことで自らの存在意義を作り上げている国交省のあり方は「醜い」の一言だ』、「時代錯誤かつ無駄な規制を作っては、国内メーカーの自由を奪い、権力を振るうことで自らの存在意義を作り上げている国交省のあり方は「醜い」の一言だ」、言い得て妙だ。
・『国内メーカーには厳しく外国メーカーには甘い マスコミの報道も醜い。例えばテレビ朝日の経済部記者は、「入学試験を受ける時にカンニングをして合格点を取った人に、入学後にカンニングの疑惑をかけられて、改めて試験を受けたら合格点が取れました」という話に例えて表現していたが、今回の件はそういう話ではない。 マラソンを走る時に、普段は着けない10キロの重りを着けて走っても合格タイム内で走れたので、重りを付けなくても絶対に合格タイム内で走れるのだから、わざわざ重りなしで走り直す必要はない、という感じで捉えるべきものだ。 参照)【業界の慣習?】トヨタなど5社で不正発覚 国交省の対応は 経済部・進藤潤耶記者【ABEMA NEWS】(2024年6月3日)
ただし、中には毎日放送のように、国交省の問題を視聴者にわかりやすく説明する番組を作っているところもあったわけで、マスコミ全てがおかしいということではないことは付言しておく。 参照)トヨタなど5社の認証不正『国より厳しい基準で独自に試験』その意味をわかりやすく解説 評論家・国沢光宏さん「日本がどうやって栄えていくか考えるべき」(MBS NEWS 2024年6月4日) ちなみに国交省は、国産車に対しては厳しい規制を敷く一方で、輸入車に対しては、一車種につき年間5000台を上限とするというルールはあるものの、輸入自動車特別取扱制度(PHP)により、簡素な書類審査で日本市場での販売を許可している。国産車は高い安全性が確保できなければならないけれども、輸入車は数が少ないから多少危険であっても構わない、ということなのだろうか。 もちろん国交省は「いや、我々はそんなことは考えていない。輸入車にも高い安全性を求めていて、国内の適合基準を満たしている車以外は販売できないようにしている」と言うであろう。だったら、輸入車同様の扱いで国産車も販売できるようにすればいいじゃないかとさえ言いたくなる。 そもそも、輸入車はそれほど安全なんだろうか? という疑問を私は持つ。 例えば今年5月16日に福建省福州市にある電気自動車大手BYDのディーラーで大規模な火災が発生した。 屋根裏に設置されていた電気配線がショートして出火したものが電気自動車に燃え広がったのではないかとの報道を見かけたが、真偽の程はよくわからない。それはともかく、この事件は、電気自動車は一旦燃え始めると恐ろしいということをまざまざと見せつけることとなった。 国交省はこのBYDの電気自動車に対する安全性を十分調査しているのだろうか。 テスラの安全性についても、米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は「注意深いドライバーであれば視認できたはずの危険が絡んだ、回避できるはずの事故が多発する傾向が観察された」として、現在厳しい目を向けている。 参照)テスラの自動運転技術に新たな難題、米当局が「基本的な問題あり」との調査結果(WIRED 2024.04.27) アメリカの規制当局が問題にしているテスラ車の安全性について、国交省は果たしてどこまで問題視しているのだろうか。 国内メーカーに対しては厳しいが、外国メーカーには甘いとなれば、国交省はどこの国の役所なのかと言いたくもなる』、「国内メーカーに対しては厳しいが、外国メーカーには甘いとなれば、国交省はどこの国の役所なのかと言いたくもなる」、少なくとも内外の扱いを同じにすべきだ。
・『1ヵ月の出荷停止で600億円規模の影響 今回の事態を受けて、トヨタは現行生産車で問題のあった「トヨタヤリスクロス」「カローラフィールダー」「カローラアクシオ」について、マツダは「マツダ2」「ロードスターRF」について、出荷停止処置だけでなく、生産も停止した。 トヨタは生産停止期間をとりあえず「6月6日から28日まで」としているが、国交省の対応によっては当然、長引くことも考えられる。 野村総合研究所の木内登英氏の推計よると、仮に出荷停止期間が4ヵ月となった場合、販売金額の減少は983.7億円に上る。また、関連する業種を含めた生産額全体の減少幅は2441.7億円になるというのが、木内氏の計算だ。 参照)自動車メーカー認証不正問題の経済への影響(木内登英のGlobal Economy & Policy Insight 2024/06/04) 仮に出荷停止が1ヵ月で済んだとしても生産額全体の減少は600億円規模になることは見ておかなければならない。 国交省のくだらない対応によって、日本の経済にもこれだけの悪影響を与えることになることを軽視すべきではない』、「1ヵ月の出荷停止で600億円規模の影響」とは無視できない影響だ。「国交省」はもっと責任ある対応をするべきだ。
次に、6月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「トヨタにホンダまで!自動車メーカーの経営が「コンプラ順守」を叫んでも、現場が結局「不正」を起こすワケ」を紹介しよう。
・『主要自動車メーカーの全てで品質・認証の不正問題が起きている。各社の問題発生に共通するのは、技術に対する過信や審査に対する慣れなど心理の影響だ。現場の技術者は皆、審査の重要性を軽視したのだろう。そのため、経営者も「認証試験は現場の判断に任せて良い」といった経営判断が続いたとみられる。生産の現場から経営トップ層まで、現状の生産管理、認証の体制に不備はないという一種のバイアスが強まったと考えられる。また、人手不足で認証体制の強化に影響があったかもしれない』、「技術に対する過信や審査に対する慣れなど心理の影響だ。現場の技術者は皆、審査の重要性を軽視したのだろう。そのため、経営者も「認証試験は現場の判断に任せて良い」といった経営判断が続いたとみられる。生産の現場から経営トップ層まで、現状の生産管理、認証の体制に不備はないという一種のバイアスが強まったと考えられる。また、人手不足で認証体制の強化に影響があったかもしれない」、なるほど。
・『トヨタ、マツダ、ホンダ、スズキ…自動車「認証不正」が経済の下振れリスクに 6月上旬、5つの自動車・二輪車メーカーで「型式指定」を巡る不正が発覚した。いわゆる認証不正問題だ。6月3日、トヨタ自動車は、2014年以降生産した7車種で国の基準と異なる方法で試験を実施したと公表した。マツダ、ヤマハ発動機、ホンダ、スズキでも不正が明らかになった。 世界の自動車業界をリードする日本企業で、なぜ、このような問題が発生するのだろか。背景の一つに、自社の製造技術に対する“過信”があるのだろう。技術に自信があるため、どうしても試験実施方法などの軽視が起きる、といった専門家の声は多い。現場の自信が悪い方向に作用してしまったということだ。そのため、経営トップがいくら法令順守=コンプライアンスと叫んでも、なかなかこの問題を根絶することが難しい。 有力自動車メーカーの認証不正問題は、明らかに日本経済にマイナスだ。生産の中止などで裾野の広い自動車産業の機能が低下することは避けられない。それによって、わが国の経済成長率の下振れリスクが高まる。コロナ禍が明けてからも個人消費がまだまだ弱い一方、自動車の生産や輸出が景気の腰折れを防いできた。しかし、認証不正問題で景気を下支えする力は弱まるだろう。 また、品質不正をきっかけに、各自動車メーカーの信頼性が低下することも懸念される。それは、国内の自動車関連企業の収益減少につながる。電動車の開発や全固体電池の実用化に必要な投資資金が計画を下回り、成長戦略が遅れる可能性もある。認証不正問題は、わが国経済にとって大きな火種になりかねない』、「背景の一つに、自社の製造技術に対する“過信”があるのだろう。技術に自信があるため、どうしても試験実施方法などの軽視が起きる、といった専門家の声は多い。現場の自信が悪い方向に作用してしまったということだ。そのため、経営トップがいくら法令順守=コンプライアンスと叫んでも、なかなかこの問題を根絶することが難しい」、なるほど。
・『主要メーカー全てで品質・認証の不正 どうしてそんなことに?問題の背景は… 今回の発覚によって、わが国の主要自動車メーカーの全てで品質・認証の不正問題が起きたことになる。振り返れば16年、三菱自動車で燃費データの改ざんが明らかになった。続く17年、日産自動車とSUBARUで無資格検査員による完成車の検査が発覚した。さらに22年、商用車(トラック)の生産を行う日野自動車で燃費試験などの不正が表面化した。 そうして23年、ダイハツ工業の衝突試験不正、豊田自動織機でエンジン出力に関する不正も発表された。一連の認証不正、データ改ざんの実態を把握するため、国土交通省は各メーカーに調査を求めた。 これまでの発表によると、トヨタ、マツダ、ヤマハ、ホンダ、スズキの5社、38車種で認証不正があった。生産終了分を含め、不正の対象台数は500万台を超えた。トヨタでは14年から不正が発生していた。16年に問題が発覚したにもかかわらず、不正が続いたのはかなり深刻だ。 問題は、型式指定に関するものである。自動車メーカーが新車を生産する際、安全性、環境性能の基準を適合しているか、事前に国の審査を受ける。審査を通過し型式指定を得ると、メーカーの完成検査で販売できる。協定国であれば検査を簡素化できる。 日本の自動車審査方法は米国と異なる。米国では排ガスに関する事前の審査がある。審査で安全性に問題があればリコールで対応する。 一方、日本では事前に政府が基準を定める。自動車メーカーはそれぞれ基準を満たし、効率的な自動車生産のため“すり合わせ製造技術”を磨いてきた。その結果、燃費、安全、走行など性能は向上し、日本車は世界で高い評価を得た。 認証不正は、消費者が各メーカーに寄せた安心感・信頼感を棄損する懸念がある。トヨタで発覚した6件は国際基準に該当するものだった。同社によると、問題の全貌はまだ把握できていない。問題の完全な解決には、まだ時間がかかるだろう』、「認証不正は、消費者が各メーカーに寄せた安心感・信頼感を棄損する懸念がある。トヨタで発覚した6件は国際基準に該当するものだった。同社によると、問題の全貌はまだ把握できていない。問題の完全な解決には、まだ時間がかかるだろう」、まだ時間がかかるとはやれやれだ。
・『認証不正が発生する主な要因は? マツダとトヨタの資料で判明 なぜ、認証不正が起きたのだろう。問題が発覚した企業の開示内容を確認すると、マツダの公表内容が分かりやすい。同社は「不正の原因」を3つ指摘した。 まず、ガバナンスの問題だ。試験が認証法規に準拠した状態で実施されたかをチェックする仕組み、ガバナンス(管理・監督などを行う)体制が不足していた。 次に、手順の不備があった。認証法規に準拠した試験実施の手順が十分ではなかった。 そして、設備の不足だ。認証法規に準拠した試験条件を安定的に満たす設備の整備が不足した。マツダは改善策に、チェックや管理体制の強化、手順書の見直しと教育などの強化、設備の整備強化を挙げた。 一方、トヨタの公表内容を見ると、一般的に、安全性と環境性の認証は3つの方法があるという。(1)試験時、認証機関の審査官が立ち会う、(2)メーカーが試験を行い、データを提出する、(3)開発試験で有効なデータを認証データとして提出する。トヨタは(2)と(3)で認証の不正が起きた。 各社の問題発生に共通するのは、技術に対する過信や審査に対する慣れなど心理の影響だ。自社の製造技術は高い。完成車の性能に問題もない。現場の技術者は皆、審査の重要性を軽視したのだろう。そのため、経営者も「認証試験は現場の判断に任せて良い」といった経営判断が続いたとみられる。 生産の現場から経営トップ層まで、現状の生産管理、認証の体制に不備はないという一種のバイアスが強まったと考えられる。また、人手不足で認証体制の強化に影響があったかもしれない。 ただ、いずれも経営トップの責任であることは間違いない。本来、経営者は社会的責任を果たすために、抜き打ちで試験の実施体制を検証すべきだ。時代にそぐわない認証基準があるなら、当局に掛け合い、実態に即した認証体制を確立する必要もあった。根本的な原因は、経営者にあると考えられる。他の分野でも決して他人事ではない』、「各社の問題発生に共通するのは、技術に対する過信や審査に対する慣れなど心理の影響だ。自社の製造技術は高い。完成車の性能に問題もない。現場の技術者は皆、審査の重要性を軽視したのだろう。そのため、経営者も「認証試験は現場の判断に任せて良い」といった経営判断が続いたとみられる。 生産の現場から経営トップ層まで、現状の生産管理、認証の体制に不備はないという一種のバイアスが強まったと考えられる。また、人手不足で認証体制の強化に影響があったかもしれない。 ただ、いずれも経営トップの責任であることは間違いない。本来、経営者は社会的責任を果たすために、抜き打ちで試験の実施体制を検証すべきだ。時代にそぐわない認証基準があるなら、当局に掛け合い、実態に即した認証体制を確立する必要もあった。根本的な原因は、経営者にあると考えられる。他の分野でも決して他人事ではない」、その通りだ。
・『自動車メーカーの認証不正が日本経済に与える大きな負のインパクト 自動車の認証不正問題は、日本経済の下振れリスクを高めている。1~3月期の国内総生産(GDP)は実質ベースで前期比0.5%(年率で2.0%)減少した(1次速報)。実質賃金の減少に加え、ダイハツの認証不正による販売減少から個人消費が減少したのだ。自動車関連の設備投資が減少した面もある。 それでも、国内経済は何とか踏みとどまった。北米向けの自動車輸出の増加は景気を支えた。省人化や半導体分野の設備投資、インバウンド需要も景気を下支えした。 4~6月期、自動車の生産回復など前期からの反発で、成長率は上向くとの見方は増えていた。しかし、新たな認証不正の大規模発覚が、そうした展開に完全に水を差している。今後、各社の生産停止などが拡大することになると、経済成長率の下振れ懸念は高まるだろう。 自動車産業の競争力が低下する懸念もある。トヨタの営業利益率は米テスラや独フォルクスワーゲンを上回っており、資金を電気自動車(EV)などの生産体制強化に再配分してきた。可能な限り早いタイミングでエンジン車、ハイブリッド車(HV)、EV、FCV(燃料電池車)、水素エンジン車など“全方位型”のプロダクト・ポートフォリオを拡充することで国際規制に対応し、より多くの需要を創出する戦略だ。 しかし、認証不正問題のせいでEV開発などが遅れる可能性がある。欧米市場で日本車の評価が揺らぎ、需要が現地メーカーに向かうことも考えられる。11月の米大統領選挙後に、次期政権が日本の自動車産業を批判する、輸入車の関税引き上げを示唆するなど、逆風が強まる展開もあるだろう。 現在、アジア新興国市場では、中国や現地EVメーカーの投資が加速している。日本勢にとって電動車への生産強化がいっそう必要なタイミングで、認証不正問題が起きた。そのため、アジア新興国地域の自動車需要が、他国企業に流れることもあるだろう。 そうした展開が現実味を帯びると、自動車関連の素材、汎用型の機械など日本経済全体で研究開発や設備投資の勢いは鈍化する。認証不正問題が、当面の景気、経済の実力である潜在成長率の回復を阻害する要因になることが、大いに懸念される』、「認証不正問題のせいでEV開発などが遅れる可能性がある。欧米市場で日本車の評価が揺らぎ、需要が現地メーカーに向かうことも考えられる。11月の米大統領選挙後に、次期政権が日本の自動車産業を批判する、輸入車の関税引き上げを示唆するなど、逆風が強まる展開もあるだろう。 現在、アジア新興国市場では、中国や現地EVメーカーの投資が加速している。日本勢にとって電動車への生産強化がいっそう必要なタイミングで、認証不正問題が起きた。そのため、アジア新興国地域の自動車需要が、他国企業に流れることもあるだろう・・・自動車関連の素材、汎用型の機械など日本経済全体で研究開発や設備投資の勢いは鈍化する。認証不正問題が、当面の景気、経済の実力である潜在成長率の回復を阻害する要因になることが、大いに懸念される」、同感である。
電機産業(その6)(日本電産で大量退職 元幹部社員が告白「永守重信会長への過剰な忖度が蔓延している」、日本電産で大量退職 元社員が辟易とした“永守イズム”と「物品購入に5回値切り」等の社内ルール、「バルミューダとパナソニック」失速した根本原因 家電で稼ぐのは至難の業、大手と中堅で温度差) [産業動向]
電機産業については、2022年1月27日に取上げた。今日は、(その6)(日本電産で大量退職 元幹部社員が告白「永守重信会長への過剰な忖度が蔓延している」、日本電産で大量退職 元社員が辟易とした“永守イズム”と「物品購入に5回値切り」等の社内ルール、「バルミューダとパナソニック」失速した根本原因 家電で稼ぐのは至難の業、大手と中堅で温度差)である。
先ずは、本年3月1日付けマネーポストWEB「日本電産で大量退職 元幹部社員が告白「永守重信会長への過剰な忖度が蔓延している」」を紹介しよう。
https://www.moneypost.jp/999170
・『京都・桂川のほとりのプレハブ小屋で日本電産が産声を上げてから今年でちょうど50年。現会長の永守重信氏(78)ら4人でスタートした会社は、いまや売上高2兆円に迫る世界最大手のモーターメーカーとなった。その日本電産で社員の「大量退職」が起きている。彼らはなぜ辞めたのか──会社を去った者たちの肉声をジャーナリストの大清水友明氏がレポートする。【前後編の前編】 日本電産はグループ全体の従業員は11万人を超えるが、本体の社員は2500人あまり。この規模の会社で昨年4月から12月末までに292人の社員が退職。とりわけ冬のボーナスが支給された昨年12月は77人が退社していたことが筆者の取材で分かった。 今年1月24日に行なわれた決算説明会では2023年3月期の連結純利益が前期比56%減の600億円と予測するなど業績にブレーキがかかるなか、足元では人材流出が止まらないのだ。元幹部社員のA氏も昨年、日本電産を退社した一人。 「ひと言で言うなら、時代にそぐわない経営理念について行けなくなったからです」 そう話すA氏は、国内の大手製造業から日本電産に転職した当時から違和感を覚えたと証言する。 「トップへの過剰な忖度が蔓延している企業だと感じました」 彼の言う「トップ」とは日本電産の創業者にして会長の永守氏のこと。入社にあたって永守氏から「売上高10兆円企業を目指そう」と声をかけられた。人を惹きつけるカリスマ性を持った人物に映ったが、困惑したのは入社後に永守氏と食事をした時のこと。 「永守さんの著書に、時間がもったいないから食事では早飯をせよと書いてあったので手早く済ませたのです。永守さんから『おまえ、早いな』と声をかけられましたが、問題は食後。秘書室の社員から『なぜ早く食べたのか』と言われ、『会長が弁当箱の蓋を開けてから蓋を開け、会長が箸を置いてから箸を置くように』と指導された。ここまで細かく言われるのかと驚きました」(A氏) 日本電産では永守氏の存在は絶対である。それを社内に徹底させる存在が秘書室だった。) 「永守さんが私のいた部署を視察することになり、事前に秘書室から注意事項を告げられました。そのなかで驚いたのが、『ブラインドの角度を斜めにしてはいけない』です。永守さんを見下していることになり失礼だというのです」(同前) 日本電産社内の不文律は他にもある。例えば、永守氏への挨拶で「お疲れさまです」は厳禁。元日以外は休まないと公言する疲れ知らずの永守氏に失礼だからだという。代わりに「ご苦労さまです」と声がけするそうだ」(同前)』、「「永守さんの著書に、時間がもったいないから食事では早飯をせよと書いてあったので手早く済ませたのです。永守さんから『おまえ、早いな』と声をかけられましたが、問題は食後。秘書室の社員から『なぜ早く食べたのか』と言われ、『会長が弁当箱の蓋を開けてから蓋を開け、会長が箸を置いてから箸を置くように』と指導された。ここまで細かく言われるのかと驚きました・・・日本電産では永守氏の存在は絶対である。それを社内に徹底させる存在が秘書室だった・・・ブラインドの角度を斜めにしてはいけない』です。永守さんを見下していることになり失礼だというのです」、「ブラインドの角度を斜めにしてはいけない』です。永守さんを見下していることになり失礼」、は理解できない。
・『「休みたい奴は辞めろ」 日本電産では全役員や統括部長らが出席する経営会議が月に2回開かれる。永守氏にそれぞれの事業本部が目標の達成状況を報告するが、業績の思わしくない事業本部の幹部は永守氏から厳しく叱責される。 「特にターゲットになっていたのが車載事業本部です。日産や三菱自動車から移ってきた人たちが多かったのですが、期待した通りの業績をあげられないと、『日産や三菱自動車のような3T企業の感性を早く捨てろ!』と怒鳴るのです」(同前) 3T企業とは、「低成長、低収益、低株価」の企業を指す。車載事業はガソリン車からEVへの世界的なシフトが進むなかで大きく成長が見込まれる分野であるが、中国メーカーとの競争が激しく業績は思うように伸びない。 テコ入れのために2020年にそれまで日産のナンバー3だった関潤氏を社長に招いて車載事業本部の責任者とした。だが、原料高や生産拠点である中国のロックダウンの影響などで低迷が続いた。 永守氏は経営会議の場ばかりか、幹部らへの一斉メールで関氏をはじめとする車載事業本部の幹部らを激しく詰めた。A氏の手もとに残るその一部にはこうある。 〈48年前に自宅で日本電産を創業して、死ぬ想いでここまで持ってきた日本電産を君達のような腐り切った人間に潰されてたまるか! 自動車業界からやってきた社長が、AMEC事業(※編集部注:車載事業)をもっともっと良くしてくれるだろうと期待してきたのに、全く逆にどんどん事業が悪化してきて、遂に名ばかり社長のもとで更に倒産への道を歩み出しているのをみて、怒り狂うどころか悲しくて涙が出て止まらない〉 なお、永守氏の要求への回答は「実現を目指します」や「頑張ります」ではダメなのだという。 「模範解答は『死ぬ気で実現します』です。『死ぬ』というワードが入ると永守さんは喜ぶ」(同前)) 日本電産ではこうした幹部が出席する会議は週末に開かれる。 「しかも土日は永守さんから幹部に一斉メールが次々と送られてくるので、これに即座に回答しなければなりません。精神的に全く休めませんが、永守さんは『代わりはいくらでもいる。休みたい奴は辞めろ』と公言しています」(同前) 社長だった関氏は週末も会議やメールのやり取りに追われる習慣をなくすよう永守氏に進言していたと報じられた。会議に出席する幹部だけでなく、その幹部をサポートするため中間管理職の社員も出社しなくてはならず、疲弊感が全社的に広がっていたからだ。 ところが、関氏の進言を日本電産が長年培ってきた企業文化を崩壊させるものと受け止めた永守氏は、これに激しく反発。車載事業本部の業績低迷もあって、関氏は昨年9月に社長退任へと追い込まれた。 「日本電産の企業文化を守ると言って、私たちのような外部のメーカーから移ってきた人材の提案を受け止めようともしないのです。これだけ外部人材を大量に採用しておきながら、です。関氏の退任騒動を受け、多くの社員は張り詰めた糸がプツリと切れてしまった。その結果が大量退職に繋がった点は否めません」(同前)(後編につづく)』、「しかも土日は永守さんから幹部に一斉メールが次々と送られてくるので、これに即座に回答しなければなりません。精神的に全く休めませんが、永守さんは『代わりはいくらでもいる。休みたい奴は辞めろ』と公言しています」(同前) 社長だった関氏は週末も会議やメールのやり取りに追われる習慣をなくすよう永守氏に進言していたと報じられた。会議に出席する幹部だけでなく、その幹部をサポートするため中間管理職の社員も出社しなくてはならず、疲弊感が全社的に広がっていたからだ。 ところが、関氏の進言を日本電産が長年培ってきた企業文化を崩壊させるものと受け止めた永守氏は、これに激しく反発。車載事業本部の業績低迷もあって、関氏は昨年9月に社長退任へと追い込まれた」、これでは「社員の「大量退職」」は当然だ。
次に、3月2日付けマネーポストWEB「日本電産で大量退職 元社員が辟易とした“永守イズム”と「物品購入に5回値切り」等の社内ルール」を紹介しよう。
https://www.moneypost.jp/999176
・『京都・桂川のほとりのプレハブ小屋で日本電産が産声を上げてから今年でちょうど50年。現会長の永守重信氏(78)ら4人でスタートした会社は、いまや売上高2兆円に迫る世界最大手のモーターメーカーとなった。その日本電産で社員の「大量退職」が起きている。彼らはなぜ辞めたのか──会社を去った者たちの肉声をジャーナリストの大清水友明氏がレポートする』、興味深そうだ。
・競合他社のシェア拡大 日本電産で課長職にいたB氏も昨年退社した一人だった。前職場が他社との経営統合を機にリストラを進めたため転職先を探すうちに日本電産を紹介された。 「採用後に本社で研修を受けましたが、永守イズムとは何かといった精神論が中心でした。研修中に永守会長が考案したPB商品を配られたのですが、ゴミは社外で捨てるよう指示される。以前社内のゴミ箱に捨てられているのを見つけた永守会長が『ワシの商品を捨てるとは何ごとか!』と怒ったからだそう」(B氏) 社員になると、「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」など永守氏の経営理念をまとめた小冊子「挑戦への道」が配布される。冊子にはシリアルナンバーが振られ、社外に持ち出すことはできない。待っているのはこの小冊子の輪読会だ。 「部署ごとに4~5人で『今日はどこそこのページを読もう』と決めて読んだ後に、感想を発表しあうのです。車載事業本部のように他社からの転職組が多い部署は渋々やりますが、小型モータ事業本部のように古株の社員が多い部署は『永守信者』も多く、熱心にやっていました」(同前) まるで。だが永守氏が新しい著書を出版するたびに役職者以上は購入するよう強く指示され、買ったことを総務部に報告しなくてはならなかった。 困ったのが物品の購買にあたって「5回値切り交渉をする」という社内ルール。徹底的に経費を抑え込むことをよしとする永守氏の考えに基づいたもので、上司の決裁を得るには稟議書に値切り交渉の履歴を添付しなくてはならない。) 「相手先のなかには、日本電産はそういうルールだと承知して最初はわざと高めの価格を提示してくるところもあって、本末転倒です。こうした風土に次第について行けなくなり、退社を決めました」(同前) 続いて証言するC氏も昨年に日本電産を退職した。在職中は課長職にあったが、困惑したのは人事評価の制度である。 日本電産では四半期ごとに社員を5段階で評価する。それも絶対評価でなく、全体の10%に1、20%に2をつけるといった相対評価をしなくてはならなかった。 「1や2の評価が出ると給料やボーナスに大きく影響するため、若い社員が意欲を失って辞めてしまいかねない。そのため管理職は部下に『今回だけだから勘弁して』と言って順繰りに1や2の評価をつけているのが実態です。 職場では常に誰それが転職したとか、あそこの会社が転職の狙い目だといった噂が飛び交っていました。経験のあるベテランが育ちにくく、日本電産では10年勤務すれば『プロパー社員』扱いをするほどです」(C氏) 日本電産がモーター事業で一人勝ちを収める時代は終わった。車載事業の要でもある電動アクスル(EVの基幹デバイス)は、トヨタや日産、ホンダら自動車メーカーを始め欧米企業もシェアを拡大するなど、競合他社がひしめく。 この正念場にあって、古い精神論に拘泥する姿勢は、企業としての成長を阻害し社員を不幸にするばかりではないか。) なお一連の大量退社について編集部から日本電産に質問したところ、 「当社が公表していない人事上の秘密情報に該当する事項を含みますので、回答を差し控えさせていただきます」(代理人弁護士) とのことだった。昨年8月に亡くなった稲盛和夫氏は、日本電産と同じく京都を代表するメーカーの京セラを一代で築いた名経営者だ。 その稲盛氏は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」を経営理念として掲げた。いま一度、すべての経営者に噛み締めてもらいたい言葉である。 (了。前編から読む)』、「社員になると、「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」など永守氏の経営理念をまとめた小冊子「挑戦への道」が配布される。冊子にはシリアルナンバーが振られ、社外に持ち出すことはできない。待っているのはこの小冊子の輪読会だ。 「部署ごとに4~5人で『今日はどこそこのページを読もう』と決めて読んだ後に、感想を発表しあうのです。車載事業本部のように他社からの転職組が多い部署は渋々やりますが、小型モータ事業本部のように古株の社員が多い部署は『永守信者』も多く、熱心にやっていました」(同前)」、まるで新興宗教のようだ。「困ったのが物品の購買にあたって「5回値切り交渉をする」という社内ルール。徹底的に経費を抑え込むことをよしとする永守氏の考えに基づいたもので、上司の決裁を得るには稟議書に値切り交渉の履歴を添付しなくてはならない。) 「相手先のなかには、日本電産はそういうルールだと承知して最初はわざと高めの価格を提示してくるところもあって、本末転倒です。こうした風土に次第について行けなくなり、退社を決めました」(同前)・・・この正念場にあって、古い精神論に拘泥する姿勢は、企業としての成長を阻害し社員を不幸にするばかりではないか」、その通りだ。「稲盛氏は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」を経営理念として掲げた」、自分のことしか考えない「永守氏」とは大きな違いだ。「永守氏」にもその爪の垢でも煎じて飲んでほしいものだ。
第三に、6月3日付け東洋経済オンライン「「バルミューダとパナソニック」失速した根本原因 家電で稼ぐのは至難の業、大手と中堅で温度差」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/757950
・『「デザインでは先駆者だったが、ほかのメーカーのデザインが良くなり、しかも私たちの製品より低価格で提供されている。そしてそれを乗り越えるだけの販売力が維持できていない」 新興家電メーカー・バルミューダの寺尾玄社長は5月10日決算会見で、悔しさをにじませてそう語った。同社は2023年12月期決算で、13億7500万円の営業赤字に転落した。 バルミューダは2015年に発売した、パンをおいしく焼けるトースターが大ヒット。その後も電気ケトルや炊飯器など、従来のイメージを覆すようなおしゃれなデザインや斬新なアイデアで一世を風靡した。 2020年には東証マザーズ市場(現グロース市場)に上場を果たし、コロナ禍では巣ごもり需要を捉えて大幅に売り上げを伸ばしてきた』、「新興家電メーカー」が勢いを維持するのはなかなか困難なようだ。
・『購入層に商品が行き渡った が、足元は反動減に苦しんでいる。赤字だった2023年度から、2024年度は1億5000万円の営業黒字へ大幅改善を目指しているが、5月10日に発表した2024年度第1四半期(1~3月期)は2億3600万円の営業赤字と水面下。前期から続く旧製品の在庫処理などが響いた。 バルミューダの家電は「売れる数が一般的な製品と比べると少なく、買う人たちが買ってしまうとなかなか次の一巡に入りにくい」(寺尾社長)。コロナ禍の特需で潜在的な購入層に製品が行き渡ってしまい、収束すると急激に販売数が落ちた。) 追い打ちをかけたのは急激な円安だ。バルミューダは工場を持たないファブレスで、中国や台湾など海外を中心に複数の工場へ製造を委託している。円安によって海外で製造している商品の製造原価が上昇し、採算性が悪化した。 そこで値上げに踏み切ると、さらに売り上げが落ちる悪循環に陥った。すでに撤退したスマートフォン事業のために従業員数を増やしていたこともあり、人件費がかさんで大幅な赤字に転落してしまった。 苦戦を強いられているのはバルミューダだけではない。国内家電最大手のパナソニック ホールディングス(HD)は、白物家電事業の一部を収益性の改善が必要な「課題事業」の1つだと明らかにした』、「バルミューダは工場を持たないファブレスで、中国や台湾など海外を中心に複数の工場へ製造を委託している。円安によって海外で製造している商品の製造原価が上昇し、採算性が悪化した。 そこで値上げに踏み切ると、さらに売り上げが落ちる悪循環に陥った。すでに撤退したスマートフォン事業のために従業員数を増やしていたこともあり、人件費がかさんで大幅な赤字に転落」、なるほど。
・『中国家電の”マネシタ電器”に パナソニックの家電事業は2021年度以降、3期連続の営業減益に沈む。パナソニックHDの楠見雄規社長は「(家電事業会社の)くらしアプライアンス社全体ではそこそこの収益を出しているが、調理家電や空調が期待ほどの収益を出していない。(中略)すでにトップは交代させた」と語る。 2023年12月に新たに家電事業のトップに就任した堂埜茂氏は、収益性の改善が進んでいない理由を「一生使わないであろう機能を取り除けていないのが原因だ」と説明する。 「例えば電子レンジ。1000個ぐらい機能があって多くのセンサーが入っているが、本当に必要なのか。ほとんど移動させない炊飯器にコードを収納できるリールが必要か、と考えていくとシンプルにできる」(堂埜氏)。そして「よくないプライドを捨て、世界で通用する製品を作っている中国メーカーの“マネシタ”電器になる」と続ける。) 大手から新興まで厳しい事業環境に苦しめられる中、気を吐くメーカーもある。炊飯器で国内最大手の象印マホービンだ。調理家電が売上高の約7割を占める同社は、2025年度までの中期経営計画で「調理家電の国内トップブランド確立」をブチ上げた。 2023年11月期の調理家電部門の売上高は586億円。2024年11月期は612億円を計画し、国内外の調理家電が業績を牽引する。 同社の堀本光則・商品企画部長は「性能が高いのは当たり前。お客様が本当に求めている機能は何なのか徹底的に調査し、それをちょうどいい価格で買ってもらえるかどうか」が開発のポイントだと語る。 その一例が炊飯器の最上位モデル「炎舞炊き」だ。競合他社の製品が続々とインターネットと接続できるIoT機能を搭載し、スマートフォンなどと連携させる機能を導入する中、象印はネットへの接続機能をつけていない』、「収益性の改善が進んでいない理由を「一生使わないであろう機能を取り除けていないのが原因だ」と説明する。 「例えば電子レンジ。1000個ぐらい機能があって多くのセンサーが入っているが、本当に必要なのか。ほとんど移動させない炊飯器にコードを収納できるリールが必要か、と考えていくとシンプルにできる」(堂埜氏)。そして「よくないプライドを捨て、世界で通用する製品を作っている中国メーカーの“マネシタ”電器になる」と続ける・・・気を吐くメーカーもある。炊飯器で国内最大手の象印マホービンだ。調理家電が売上高の約7割を占める同社は、2025年度までの中期経営計画で「調理家電の国内トップブランド確立」をブチ上げた。 2023年11月期の調理家電部門の売上高は586億円。2024年11月期は612億円を計画し、国内外の調理家電が業績を牽引する。 同社の堀本光則・商品企画部長は「性能が高いのは当たり前。お客様が本当に求めている機能は何なのか徹底的に調査し、それをちょうどいい価格で買ってもらえるかどうか」が開発のポイントだと語る。 その一例が炊飯器の最上位モデル「炎舞炊き」だ。競合他社の製品が続々とインターネットと接続できるIoT機能を搭載し、スマートフォンなどと連携させる機能を導入する中、象印はネットへの接続機能をつけていない」、「象印マホービン・・・調理家電が売上高の約7割を占める同社・・・「性能が高いのは当たり前。お客様が本当に求めている機能は何なのか徹底的に調査し、それをちょうどいい価格で買ってもらえるかどうか」が開発のポイントだと語る」、なるほど。
・『IoT先駆者がこだわったこと 同社は2001年から湯沸かしポットを利用すると家族の携帯電話に通知が飛ぶ「みまもりポット」を展開するなど、通信機能を搭載した家電の開発では隠れた先駆者だ。 それでもあえて通信機能を入れなかったのは「おいしいご飯を炊くという本質のためには、優先順位が低い機能」(堀本氏)だったから。炎舞炊きではネットにつながる代わりに、ご飯を炊くたびに炊き上がりを評価するボタンが表示され、炊飯器が利用者の好みを学習していく。 デザイン性にも気を配る。「かつては台所と居間が別の住宅が多かったが、リビング・ダイニング・キッチンが1つの空間という住宅が増え、家電製品がつねに目につく場所に置かれるようになった」(堀本氏)からだ。 2022年には17年ぶりにオー ブンレンジの新製品を発売するなど、つまずく大手や新興を尻目に今後もさらに攻勢を強める構えだ。) 人口減少によって国内家電市場が緩やかに縮小していく中、家電メーカー各社の戦略は二分されつつある。 バルミューダや象印のような新興・中堅の家電メーカーは、それぞれが得意とする製品の付加価値を高め、大手メーカーが手薄なマーケットでシェアを伸ばそうとしている。 例えばバルミューダは2023年にホットプレートの新製品を発売した。実勢価格で3.3万円程度の高級機種だが、「中高年の男性を中心に、お金に余裕のある層に受けている」(同社)という。同じ価格帯に既存メーカーの製品がなかったこともあり、発売から1週間で5000台を売り上げた』、「バルミューダや象印のような新興・中堅の家電メーカーは、それぞれが得意とする製品の付加価値を高め、大手メーカーが手薄なマーケットでシェアを伸ばそうとしている」、なるほど。
・『パナソニックはPB受託製造に意欲 一方で、洗濯機や冷蔵庫など大型家電が中心の大手家電メーカーの間では他社との協業や、パートナーを模索する動きが広がっている。 パナソニックは、量販店などの小売業者が展開するプライベートブランド製品の受託製造を開始する構えだ。日立製作所は国内家電事業会社の資本構成変更も含めて、すでにパートナー探しを進めている。 三菱電機は東洋経済の取材に対し書面で「機器単体での販売から家電の使用状況や運転データなどを活用したソリューションを展開していく中で、各社との連携や協業を図る可能性はあり得る」と回答した。 大手企業は海外投資家などから「営業利益率10%以上」といった目標を突きつけられ、半ば強制的に収益性の低い事業の再編を求められている。このまま収益性が低い状況が続けば、将来的な成長性の乏しい国内家電事業は再編の対象となる可能性が高いだろう。 消費者1人ひとりの生活を支える家電で国内メーカーは生き残れるのか。それとも台頭している中国など海外メーカーに市場を明け渡すことになるのか。各メーカーに残された時間は少ない』、「大型家電が中心の大手家電メーカーの間では他社との協業や、パートナーを模索する動きが広がっている。 パナソニックは、量販店などの小売業者が展開するプライベートブランド製品の受託製造を開始する構えだ。日立製作所は国内家電事業会社の資本構成変更も含めて、すでにパートナー探しを進めている」、なるほど。「大手企業は海外投資家などから「営業利益率10%以上」といった目標を突きつけられ、半ば強制的に収益性の低い事業の再編を求められている。このまま収益性が低い状況が続けば、将来的な成長性の乏しい国内家電事業は再編の対象となる可能性が高いだろう。 消費者1人ひとりの生活を支える家電で国内メーカーは生き残れるのか。それとも台頭している中国など海外メーカーに市場を明け渡すことになるのか。各メーカーに残された時間は少ない」、「家電で国内メーカーは生き残れるのか。それとも台頭している中国など海外メーカーに市場を明け渡すことになるのか」、分岐点が近づきつつあるようだ。
先ずは、本年3月1日付けマネーポストWEB「日本電産で大量退職 元幹部社員が告白「永守重信会長への過剰な忖度が蔓延している」」を紹介しよう。
https://www.moneypost.jp/999170
・『京都・桂川のほとりのプレハブ小屋で日本電産が産声を上げてから今年でちょうど50年。現会長の永守重信氏(78)ら4人でスタートした会社は、いまや売上高2兆円に迫る世界最大手のモーターメーカーとなった。その日本電産で社員の「大量退職」が起きている。彼らはなぜ辞めたのか──会社を去った者たちの肉声をジャーナリストの大清水友明氏がレポートする。【前後編の前編】 日本電産はグループ全体の従業員は11万人を超えるが、本体の社員は2500人あまり。この規模の会社で昨年4月から12月末までに292人の社員が退職。とりわけ冬のボーナスが支給された昨年12月は77人が退社していたことが筆者の取材で分かった。 今年1月24日に行なわれた決算説明会では2023年3月期の連結純利益が前期比56%減の600億円と予測するなど業績にブレーキがかかるなか、足元では人材流出が止まらないのだ。元幹部社員のA氏も昨年、日本電産を退社した一人。 「ひと言で言うなら、時代にそぐわない経営理念について行けなくなったからです」 そう話すA氏は、国内の大手製造業から日本電産に転職した当時から違和感を覚えたと証言する。 「トップへの過剰な忖度が蔓延している企業だと感じました」 彼の言う「トップ」とは日本電産の創業者にして会長の永守氏のこと。入社にあたって永守氏から「売上高10兆円企業を目指そう」と声をかけられた。人を惹きつけるカリスマ性を持った人物に映ったが、困惑したのは入社後に永守氏と食事をした時のこと。 「永守さんの著書に、時間がもったいないから食事では早飯をせよと書いてあったので手早く済ませたのです。永守さんから『おまえ、早いな』と声をかけられましたが、問題は食後。秘書室の社員から『なぜ早く食べたのか』と言われ、『会長が弁当箱の蓋を開けてから蓋を開け、会長が箸を置いてから箸を置くように』と指導された。ここまで細かく言われるのかと驚きました」(A氏) 日本電産では永守氏の存在は絶対である。それを社内に徹底させる存在が秘書室だった。) 「永守さんが私のいた部署を視察することになり、事前に秘書室から注意事項を告げられました。そのなかで驚いたのが、『ブラインドの角度を斜めにしてはいけない』です。永守さんを見下していることになり失礼だというのです」(同前) 日本電産社内の不文律は他にもある。例えば、永守氏への挨拶で「お疲れさまです」は厳禁。元日以外は休まないと公言する疲れ知らずの永守氏に失礼だからだという。代わりに「ご苦労さまです」と声がけするそうだ」(同前)』、「「永守さんの著書に、時間がもったいないから食事では早飯をせよと書いてあったので手早く済ませたのです。永守さんから『おまえ、早いな』と声をかけられましたが、問題は食後。秘書室の社員から『なぜ早く食べたのか』と言われ、『会長が弁当箱の蓋を開けてから蓋を開け、会長が箸を置いてから箸を置くように』と指導された。ここまで細かく言われるのかと驚きました・・・日本電産では永守氏の存在は絶対である。それを社内に徹底させる存在が秘書室だった・・・ブラインドの角度を斜めにしてはいけない』です。永守さんを見下していることになり失礼だというのです」、「ブラインドの角度を斜めにしてはいけない』です。永守さんを見下していることになり失礼」、は理解できない。
・『「休みたい奴は辞めろ」 日本電産では全役員や統括部長らが出席する経営会議が月に2回開かれる。永守氏にそれぞれの事業本部が目標の達成状況を報告するが、業績の思わしくない事業本部の幹部は永守氏から厳しく叱責される。 「特にターゲットになっていたのが車載事業本部です。日産や三菱自動車から移ってきた人たちが多かったのですが、期待した通りの業績をあげられないと、『日産や三菱自動車のような3T企業の感性を早く捨てろ!』と怒鳴るのです」(同前) 3T企業とは、「低成長、低収益、低株価」の企業を指す。車載事業はガソリン車からEVへの世界的なシフトが進むなかで大きく成長が見込まれる分野であるが、中国メーカーとの競争が激しく業績は思うように伸びない。 テコ入れのために2020年にそれまで日産のナンバー3だった関潤氏を社長に招いて車載事業本部の責任者とした。だが、原料高や生産拠点である中国のロックダウンの影響などで低迷が続いた。 永守氏は経営会議の場ばかりか、幹部らへの一斉メールで関氏をはじめとする車載事業本部の幹部らを激しく詰めた。A氏の手もとに残るその一部にはこうある。 〈48年前に自宅で日本電産を創業して、死ぬ想いでここまで持ってきた日本電産を君達のような腐り切った人間に潰されてたまるか! 自動車業界からやってきた社長が、AMEC事業(※編集部注:車載事業)をもっともっと良くしてくれるだろうと期待してきたのに、全く逆にどんどん事業が悪化してきて、遂に名ばかり社長のもとで更に倒産への道を歩み出しているのをみて、怒り狂うどころか悲しくて涙が出て止まらない〉 なお、永守氏の要求への回答は「実現を目指します」や「頑張ります」ではダメなのだという。 「模範解答は『死ぬ気で実現します』です。『死ぬ』というワードが入ると永守さんは喜ぶ」(同前)) 日本電産ではこうした幹部が出席する会議は週末に開かれる。 「しかも土日は永守さんから幹部に一斉メールが次々と送られてくるので、これに即座に回答しなければなりません。精神的に全く休めませんが、永守さんは『代わりはいくらでもいる。休みたい奴は辞めろ』と公言しています」(同前) 社長だった関氏は週末も会議やメールのやり取りに追われる習慣をなくすよう永守氏に進言していたと報じられた。会議に出席する幹部だけでなく、その幹部をサポートするため中間管理職の社員も出社しなくてはならず、疲弊感が全社的に広がっていたからだ。 ところが、関氏の進言を日本電産が長年培ってきた企業文化を崩壊させるものと受け止めた永守氏は、これに激しく反発。車載事業本部の業績低迷もあって、関氏は昨年9月に社長退任へと追い込まれた。 「日本電産の企業文化を守ると言って、私たちのような外部のメーカーから移ってきた人材の提案を受け止めようともしないのです。これだけ外部人材を大量に採用しておきながら、です。関氏の退任騒動を受け、多くの社員は張り詰めた糸がプツリと切れてしまった。その結果が大量退職に繋がった点は否めません」(同前)(後編につづく)』、「しかも土日は永守さんから幹部に一斉メールが次々と送られてくるので、これに即座に回答しなければなりません。精神的に全く休めませんが、永守さんは『代わりはいくらでもいる。休みたい奴は辞めろ』と公言しています」(同前) 社長だった関氏は週末も会議やメールのやり取りに追われる習慣をなくすよう永守氏に進言していたと報じられた。会議に出席する幹部だけでなく、その幹部をサポートするため中間管理職の社員も出社しなくてはならず、疲弊感が全社的に広がっていたからだ。 ところが、関氏の進言を日本電産が長年培ってきた企業文化を崩壊させるものと受け止めた永守氏は、これに激しく反発。車載事業本部の業績低迷もあって、関氏は昨年9月に社長退任へと追い込まれた」、これでは「社員の「大量退職」」は当然だ。
次に、3月2日付けマネーポストWEB「日本電産で大量退職 元社員が辟易とした“永守イズム”と「物品購入に5回値切り」等の社内ルール」を紹介しよう。
https://www.moneypost.jp/999176
・『京都・桂川のほとりのプレハブ小屋で日本電産が産声を上げてから今年でちょうど50年。現会長の永守重信氏(78)ら4人でスタートした会社は、いまや売上高2兆円に迫る世界最大手のモーターメーカーとなった。その日本電産で社員の「大量退職」が起きている。彼らはなぜ辞めたのか──会社を去った者たちの肉声をジャーナリストの大清水友明氏がレポートする』、興味深そうだ。
・競合他社のシェア拡大 日本電産で課長職にいたB氏も昨年退社した一人だった。前職場が他社との経営統合を機にリストラを進めたため転職先を探すうちに日本電産を紹介された。 「採用後に本社で研修を受けましたが、永守イズムとは何かといった精神論が中心でした。研修中に永守会長が考案したPB商品を配られたのですが、ゴミは社外で捨てるよう指示される。以前社内のゴミ箱に捨てられているのを見つけた永守会長が『ワシの商品を捨てるとは何ごとか!』と怒ったからだそう」(B氏) 社員になると、「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」など永守氏の経営理念をまとめた小冊子「挑戦への道」が配布される。冊子にはシリアルナンバーが振られ、社外に持ち出すことはできない。待っているのはこの小冊子の輪読会だ。 「部署ごとに4~5人で『今日はどこそこのページを読もう』と決めて読んだ後に、感想を発表しあうのです。車載事業本部のように他社からの転職組が多い部署は渋々やりますが、小型モータ事業本部のように古株の社員が多い部署は『永守信者』も多く、熱心にやっていました」(同前) まるで。だが永守氏が新しい著書を出版するたびに役職者以上は購入するよう強く指示され、買ったことを総務部に報告しなくてはならなかった。 困ったのが物品の購買にあたって「5回値切り交渉をする」という社内ルール。徹底的に経費を抑え込むことをよしとする永守氏の考えに基づいたもので、上司の決裁を得るには稟議書に値切り交渉の履歴を添付しなくてはならない。) 「相手先のなかには、日本電産はそういうルールだと承知して最初はわざと高めの価格を提示してくるところもあって、本末転倒です。こうした風土に次第について行けなくなり、退社を決めました」(同前) 続いて証言するC氏も昨年に日本電産を退職した。在職中は課長職にあったが、困惑したのは人事評価の制度である。 日本電産では四半期ごとに社員を5段階で評価する。それも絶対評価でなく、全体の10%に1、20%に2をつけるといった相対評価をしなくてはならなかった。 「1や2の評価が出ると給料やボーナスに大きく影響するため、若い社員が意欲を失って辞めてしまいかねない。そのため管理職は部下に『今回だけだから勘弁して』と言って順繰りに1や2の評価をつけているのが実態です。 職場では常に誰それが転職したとか、あそこの会社が転職の狙い目だといった噂が飛び交っていました。経験のあるベテランが育ちにくく、日本電産では10年勤務すれば『プロパー社員』扱いをするほどです」(C氏) 日本電産がモーター事業で一人勝ちを収める時代は終わった。車載事業の要でもある電動アクスル(EVの基幹デバイス)は、トヨタや日産、ホンダら自動車メーカーを始め欧米企業もシェアを拡大するなど、競合他社がひしめく。 この正念場にあって、古い精神論に拘泥する姿勢は、企業としての成長を阻害し社員を不幸にするばかりではないか。) なお一連の大量退社について編集部から日本電産に質問したところ、 「当社が公表していない人事上の秘密情報に該当する事項を含みますので、回答を差し控えさせていただきます」(代理人弁護士) とのことだった。昨年8月に亡くなった稲盛和夫氏は、日本電産と同じく京都を代表するメーカーの京セラを一代で築いた名経営者だ。 その稲盛氏は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」を経営理念として掲げた。いま一度、すべての経営者に噛み締めてもらいたい言葉である。 (了。前編から読む)』、「社員になると、「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」など永守氏の経営理念をまとめた小冊子「挑戦への道」が配布される。冊子にはシリアルナンバーが振られ、社外に持ち出すことはできない。待っているのはこの小冊子の輪読会だ。 「部署ごとに4~5人で『今日はどこそこのページを読もう』と決めて読んだ後に、感想を発表しあうのです。車載事業本部のように他社からの転職組が多い部署は渋々やりますが、小型モータ事業本部のように古株の社員が多い部署は『永守信者』も多く、熱心にやっていました」(同前)」、まるで新興宗教のようだ。「困ったのが物品の購買にあたって「5回値切り交渉をする」という社内ルール。徹底的に経費を抑え込むことをよしとする永守氏の考えに基づいたもので、上司の決裁を得るには稟議書に値切り交渉の履歴を添付しなくてはならない。) 「相手先のなかには、日本電産はそういうルールだと承知して最初はわざと高めの価格を提示してくるところもあって、本末転倒です。こうした風土に次第について行けなくなり、退社を決めました」(同前)・・・この正念場にあって、古い精神論に拘泥する姿勢は、企業としての成長を阻害し社員を不幸にするばかりではないか」、その通りだ。「稲盛氏は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」を経営理念として掲げた」、自分のことしか考えない「永守氏」とは大きな違いだ。「永守氏」にもその爪の垢でも煎じて飲んでほしいものだ。
第三に、6月3日付け東洋経済オンライン「「バルミューダとパナソニック」失速した根本原因 家電で稼ぐのは至難の業、大手と中堅で温度差」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/757950
・『「デザインでは先駆者だったが、ほかのメーカーのデザインが良くなり、しかも私たちの製品より低価格で提供されている。そしてそれを乗り越えるだけの販売力が維持できていない」 新興家電メーカー・バルミューダの寺尾玄社長は5月10日決算会見で、悔しさをにじませてそう語った。同社は2023年12月期決算で、13億7500万円の営業赤字に転落した。 バルミューダは2015年に発売した、パンをおいしく焼けるトースターが大ヒット。その後も電気ケトルや炊飯器など、従来のイメージを覆すようなおしゃれなデザインや斬新なアイデアで一世を風靡した。 2020年には東証マザーズ市場(現グロース市場)に上場を果たし、コロナ禍では巣ごもり需要を捉えて大幅に売り上げを伸ばしてきた』、「新興家電メーカー」が勢いを維持するのはなかなか困難なようだ。
・『購入層に商品が行き渡った が、足元は反動減に苦しんでいる。赤字だった2023年度から、2024年度は1億5000万円の営業黒字へ大幅改善を目指しているが、5月10日に発表した2024年度第1四半期(1~3月期)は2億3600万円の営業赤字と水面下。前期から続く旧製品の在庫処理などが響いた。 バルミューダの家電は「売れる数が一般的な製品と比べると少なく、買う人たちが買ってしまうとなかなか次の一巡に入りにくい」(寺尾社長)。コロナ禍の特需で潜在的な購入層に製品が行き渡ってしまい、収束すると急激に販売数が落ちた。) 追い打ちをかけたのは急激な円安だ。バルミューダは工場を持たないファブレスで、中国や台湾など海外を中心に複数の工場へ製造を委託している。円安によって海外で製造している商品の製造原価が上昇し、採算性が悪化した。 そこで値上げに踏み切ると、さらに売り上げが落ちる悪循環に陥った。すでに撤退したスマートフォン事業のために従業員数を増やしていたこともあり、人件費がかさんで大幅な赤字に転落してしまった。 苦戦を強いられているのはバルミューダだけではない。国内家電最大手のパナソニック ホールディングス(HD)は、白物家電事業の一部を収益性の改善が必要な「課題事業」の1つだと明らかにした』、「バルミューダは工場を持たないファブレスで、中国や台湾など海外を中心に複数の工場へ製造を委託している。円安によって海外で製造している商品の製造原価が上昇し、採算性が悪化した。 そこで値上げに踏み切ると、さらに売り上げが落ちる悪循環に陥った。すでに撤退したスマートフォン事業のために従業員数を増やしていたこともあり、人件費がかさんで大幅な赤字に転落」、なるほど。
・『中国家電の”マネシタ電器”に パナソニックの家電事業は2021年度以降、3期連続の営業減益に沈む。パナソニックHDの楠見雄規社長は「(家電事業会社の)くらしアプライアンス社全体ではそこそこの収益を出しているが、調理家電や空調が期待ほどの収益を出していない。(中略)すでにトップは交代させた」と語る。 2023年12月に新たに家電事業のトップに就任した堂埜茂氏は、収益性の改善が進んでいない理由を「一生使わないであろう機能を取り除けていないのが原因だ」と説明する。 「例えば電子レンジ。1000個ぐらい機能があって多くのセンサーが入っているが、本当に必要なのか。ほとんど移動させない炊飯器にコードを収納できるリールが必要か、と考えていくとシンプルにできる」(堂埜氏)。そして「よくないプライドを捨て、世界で通用する製品を作っている中国メーカーの“マネシタ”電器になる」と続ける。) 大手から新興まで厳しい事業環境に苦しめられる中、気を吐くメーカーもある。炊飯器で国内最大手の象印マホービンだ。調理家電が売上高の約7割を占める同社は、2025年度までの中期経営計画で「調理家電の国内トップブランド確立」をブチ上げた。 2023年11月期の調理家電部門の売上高は586億円。2024年11月期は612億円を計画し、国内外の調理家電が業績を牽引する。 同社の堀本光則・商品企画部長は「性能が高いのは当たり前。お客様が本当に求めている機能は何なのか徹底的に調査し、それをちょうどいい価格で買ってもらえるかどうか」が開発のポイントだと語る。 その一例が炊飯器の最上位モデル「炎舞炊き」だ。競合他社の製品が続々とインターネットと接続できるIoT機能を搭載し、スマートフォンなどと連携させる機能を導入する中、象印はネットへの接続機能をつけていない』、「収益性の改善が進んでいない理由を「一生使わないであろう機能を取り除けていないのが原因だ」と説明する。 「例えば電子レンジ。1000個ぐらい機能があって多くのセンサーが入っているが、本当に必要なのか。ほとんど移動させない炊飯器にコードを収納できるリールが必要か、と考えていくとシンプルにできる」(堂埜氏)。そして「よくないプライドを捨て、世界で通用する製品を作っている中国メーカーの“マネシタ”電器になる」と続ける・・・気を吐くメーカーもある。炊飯器で国内最大手の象印マホービンだ。調理家電が売上高の約7割を占める同社は、2025年度までの中期経営計画で「調理家電の国内トップブランド確立」をブチ上げた。 2023年11月期の調理家電部門の売上高は586億円。2024年11月期は612億円を計画し、国内外の調理家電が業績を牽引する。 同社の堀本光則・商品企画部長は「性能が高いのは当たり前。お客様が本当に求めている機能は何なのか徹底的に調査し、それをちょうどいい価格で買ってもらえるかどうか」が開発のポイントだと語る。 その一例が炊飯器の最上位モデル「炎舞炊き」だ。競合他社の製品が続々とインターネットと接続できるIoT機能を搭載し、スマートフォンなどと連携させる機能を導入する中、象印はネットへの接続機能をつけていない」、「象印マホービン・・・調理家電が売上高の約7割を占める同社・・・「性能が高いのは当たり前。お客様が本当に求めている機能は何なのか徹底的に調査し、それをちょうどいい価格で買ってもらえるかどうか」が開発のポイントだと語る」、なるほど。
・『IoT先駆者がこだわったこと 同社は2001年から湯沸かしポットを利用すると家族の携帯電話に通知が飛ぶ「みまもりポット」を展開するなど、通信機能を搭載した家電の開発では隠れた先駆者だ。 それでもあえて通信機能を入れなかったのは「おいしいご飯を炊くという本質のためには、優先順位が低い機能」(堀本氏)だったから。炎舞炊きではネットにつながる代わりに、ご飯を炊くたびに炊き上がりを評価するボタンが表示され、炊飯器が利用者の好みを学習していく。 デザイン性にも気を配る。「かつては台所と居間が別の住宅が多かったが、リビング・ダイニング・キッチンが1つの空間という住宅が増え、家電製品がつねに目につく場所に置かれるようになった」(堀本氏)からだ。 2022年には17年ぶりにオー ブンレンジの新製品を発売するなど、つまずく大手や新興を尻目に今後もさらに攻勢を強める構えだ。) 人口減少によって国内家電市場が緩やかに縮小していく中、家電メーカー各社の戦略は二分されつつある。 バルミューダや象印のような新興・中堅の家電メーカーは、それぞれが得意とする製品の付加価値を高め、大手メーカーが手薄なマーケットでシェアを伸ばそうとしている。 例えばバルミューダは2023年にホットプレートの新製品を発売した。実勢価格で3.3万円程度の高級機種だが、「中高年の男性を中心に、お金に余裕のある層に受けている」(同社)という。同じ価格帯に既存メーカーの製品がなかったこともあり、発売から1週間で5000台を売り上げた』、「バルミューダや象印のような新興・中堅の家電メーカーは、それぞれが得意とする製品の付加価値を高め、大手メーカーが手薄なマーケットでシェアを伸ばそうとしている」、なるほど。
・『パナソニックはPB受託製造に意欲 一方で、洗濯機や冷蔵庫など大型家電が中心の大手家電メーカーの間では他社との協業や、パートナーを模索する動きが広がっている。 パナソニックは、量販店などの小売業者が展開するプライベートブランド製品の受託製造を開始する構えだ。日立製作所は国内家電事業会社の資本構成変更も含めて、すでにパートナー探しを進めている。 三菱電機は東洋経済の取材に対し書面で「機器単体での販売から家電の使用状況や運転データなどを活用したソリューションを展開していく中で、各社との連携や協業を図る可能性はあり得る」と回答した。 大手企業は海外投資家などから「営業利益率10%以上」といった目標を突きつけられ、半ば強制的に収益性の低い事業の再編を求められている。このまま収益性が低い状況が続けば、将来的な成長性の乏しい国内家電事業は再編の対象となる可能性が高いだろう。 消費者1人ひとりの生活を支える家電で国内メーカーは生き残れるのか。それとも台頭している中国など海外メーカーに市場を明け渡すことになるのか。各メーカーに残された時間は少ない』、「大型家電が中心の大手家電メーカーの間では他社との協業や、パートナーを模索する動きが広がっている。 パナソニックは、量販店などの小売業者が展開するプライベートブランド製品の受託製造を開始する構えだ。日立製作所は国内家電事業会社の資本構成変更も含めて、すでにパートナー探しを進めている」、なるほど。「大手企業は海外投資家などから「営業利益率10%以上」といった目標を突きつけられ、半ば強制的に収益性の低い事業の再編を求められている。このまま収益性が低い状況が続けば、将来的な成長性の乏しい国内家電事業は再編の対象となる可能性が高いだろう。 消費者1人ひとりの生活を支える家電で国内メーカーは生き残れるのか。それとも台頭している中国など海外メーカーに市場を明け渡すことになるのか。各メーカーに残された時間は少ない」、「家電で国内メーカーは生き残れるのか。それとも台頭している中国など海外メーカーに市場を明け渡すことになるのか」、分岐点が近づきつつあるようだ。
タグ:マネーポストWEB「日本電産で大量退職 元社員が辟易とした“永守イズム”と「物品購入に5回値切り」等の社内ルール」 会議に出席する幹部だけでなく、その幹部をサポートするため中間管理職の社員も出社しなくてはならず、疲弊感が全社的に広がっていたからだ。 ところが、関氏の進言を日本電産が長年培ってきた企業文化を崩壊させるものと受け止めた永守氏は、これに激しく反発。車載事業本部の業績低迷もあって、関氏は昨年9月に社長退任へと追い込まれた」、これでは「社員の「大量退職」」は当然だ。 「しかも土日は永守さんから幹部に一斉メールが次々と送られてくるので、これに即座に回答しなければなりません。精神的に全く休めませんが、永守さんは『代わりはいくらでもいる。休みたい奴は辞めろ』と公言しています」(同前) 社長だった関氏は週末も会議やメールのやり取りに追われる習慣をなくすよう永守氏に進言していたと報じられた。 日本電産では永守氏の存在は絶対である。それを社内に徹底させる存在が秘書室だった・・・ブラインドの角度を斜めにしてはいけない』です。永守さんを見下していることになり失礼だというのです」、「ブラインドの角度を斜めにしてはいけない』です。永守さんを見下していることになり失礼」、は理解できない。 「「永守さんの著書に、時間がもったいないから食事では早飯をせよと書いてあったので手早く済ませたのです。永守さんから『おまえ、早いな』と声をかけられましたが、問題は食後。秘書室の社員から『なぜ早く食べたのか』と言われ、『会長が弁当箱の蓋を開けてから蓋を開け、会長が箸を置いてから箸を置くように』と指導された。ここまで細かく言われるのかと驚きました・・・ 日本電産はグループ全体の従業員は11万人を超えるが、本体の社員は2500人あまり。この規模の会社で昨年4月から12月末までに292人の社員が退職。とりわけ冬のボーナスが支給された昨年12月は77人が退社していた マネーポストWEB「日本電産で大量退職 元幹部社員が告白「永守重信会長への過剰な忖度が蔓延している」」 (その6)(日本電産で大量退職 元幹部社員が告白「永守重信会長への過剰な忖度が蔓延している」、日本電産で大量退職 元社員が辟易とした“永守イズム”と「物品購入に5回値切り」等の社内ルール、「バルミューダとパナソニック」失速した根本原因 家電で稼ぐのは至難の業、大手と中堅で温度差) 電機産業 「社員になると、「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」など永守氏の経営理念をまとめた小冊子「挑戦への道」が配布される。冊子にはシリアルナンバーが振られ、社外に持ち出すことはできない。待っているのはこの小冊子の輪読会だ。 「部署ごとに4~5人で『今日はどこそこのページを読もう』と決めて読んだ後に、感想を発表しあうのです。 車載事業本部のように他社からの転職組が多い部署は渋々やりますが、小型モータ事業本部のように古株の社員が多い部署は『永守信者』も多く、熱心にやっていました」(同前)」、まるで新興宗教のようだ。「困ったのが物品の購買にあたって「5回値切り交渉をする」という社内ルール。徹底的に経費を抑え込むことをよしとする永守氏の考えに基づいたもので、上司の決裁を得るには稟議書に値切り交渉の履歴を添付しなくてはならない。 「相手先のなかには、日本電産はそういうルールだと承知して最初はわざと高めの価格を提示してくるところもあって、本末転倒です。こうした風土に次第について行けなくなり、退社を決めました」(同前)・・・この正念場にあって、古い精神論に拘泥する姿勢は、企業としての成長を阻害し社員を不幸にするばかりではないか」、その通りだ。「稲盛氏は、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」を経営理念として掲げた」、自分のことしか考えない「永守氏」とは大きな違いだ。「永守氏」にもその爪の垢で 煎じて飲んでほしいものだ。 「新興家電メーカー」が勢いを維持するのはなかなか困難なようだ。 「バルミューダは工場を持たないファブレスで、中国や台湾など海外を中心に複数の工場へ製造を委託している。円安によって海外で製造している商品の製造原価が上昇し、採算性が悪化した。 そこで値上げに踏み切ると、さらに売り上げが落ちる悪循環に陥った。すでに撤退したスマートフォン事業のために従業員数を増やしていたこともあり、人件費がかさんで大幅な赤字に転落」、なるほど。 「収益性の改善が進んでいない理由を「一生使わないであろう機能を取り除けていないのが原因だ」と説明する。 「例えば電子レンジ。1000個ぐらい機能があって多くのセンサーが入っているが、本当に必要なのか。ほとんど移動させない炊飯器にコードを収納できるリールが必要か、と考えていくとシンプルにできる」(堂埜氏)。そして「よくないプライドを捨て、世界で通用する製品を作っている中国メーカーの“マネシタ”電器になる」と続ける・・・ 気を吐くメーカーもある。炊飯器で国内最大手の象印マホービンだ。調理家電が売上高の約7割を占める同社は、2025年度までの中期経営計画で「調理家電の国内トップブランド確立」をブチ上げた。 2023年11月期の調理家電部門の売上高は586億円。2024年11月期は612億円を計画し、国内外の調理家電が業績を牽引する。 同社の堀本光則・商品企画部長は「性能が高いのは当たり前。お客様が本当に求めている機能は何なのか徹底的に調査し、それをちょうどいい価格で買ってもらえるかどうか」が開発のポイントだと語る。 その一例が炊飯器の最上位モデル「炎舞炊き」だ。競合他社の製品が続々とインターネットと接続できるIoT機能を搭載し、スマートフォンなどと連携させる機能を導入する中、象印はネットへの接続機能をつけていない」、「象印マホービン・・・調理家電が売上高の約7割を占める同社・・・「性能が高いのは当たり前。お客様が本当に求めている機能は何なのか徹底的に調査し、それをちょうどいい価格で買ってもらえるかどうか」が開発のポイントだと語る」、なるほど。 「バルミューダや象印のような新興・中堅の家電メーカーは、それぞれが得意とする製品の付加価値を高め、大手メーカーが手薄なマーケットでシェアを伸ばそうとしている」、なるほど。 「大型家電が中心の大手家電メーカーの間では他社との協業や、パートナーを模索する動きが広がっている。 パナソニックは、量販店などの小売業者が展開するプライベートブランド製品の受託製造を開始する構えだ。日立製作所は国内家電事業会社の資本構成変更も含めて、すでにパートナー探しを進めている」、なるほど。 「大手企業は海外投資家などから「営業利益率10%以上」といった目標を突きつけられ、半ば強制的に収益性の低い事業の再編を求められている。このまま収益性が低い状況が続けば、将来的な成長性の乏しい国内家電事業は再編の対象となる可能性が高いだろう。 消費者1人ひとりの生活を支える家電で国内メーカーは生き残れるのか。それとも台頭している中国など海外メーカーに市場を明け渡すことになるのか。各メーカーに残された時間は少ない」、「家電で国内メーカーは生き残れるのか。それとも台頭している中国など海外メーカーに市場を明け渡す ことになるのか」、分岐点が近づきつつあるようだ。
半導体産業(その13)(国策ラピダスとTSMC"2つの戦略"で決定的な差 早大・長内教授「ビジネスにストーリーがない」、政府支援の光と影「半導体人材」が増えぬ深刻事情 東大・竹内氏「AI半導体で日本に勝ち筋はある」) [産業動向]
半導体産業については、本年4月11日に取上げた。今日は、(その13)(国策ラピダスとTSMC"2つの戦略"で決定的な差 早大・長内教授「ビジネスにストーリーがない」、政府支援の光と影「半導体人材」が増えぬ深刻事情 東大・竹内氏「AI半導体で日本に勝ち筋はある」)であう。
先ずは、本年4月30日付け東洋経済オンライン「国策ラピダスとTSMC"2つの戦略"で決定的な差 早大・長内教授「ビジネスにストーリーがない」を紹介しよう。
・『世界最先端となる「2ナノ」世代の半導体量産を目指す国策企業のラピダス。これまでに政府から最大9200億円の支援を受けることが発表されている。 同業の半導体製造受託企業(ファウンドリー)で世界トップの台湾TSMCとの競合を避けるため、ラピダスは数量を追わず製造のスピードを重視するという「中規模ファウンドリー」戦略を打ち出している。同社について「ビジネスへの考え方がまったく見えてこない」と指摘するのは、『半導体逆転戦略』を上梓した早稲田大学大学院経営管理研究科の長内厚教授だ。 経営学の観点から、ラピダスの問題はどこにあるのか(Qは聞き手の質問、Aは長内教授の回答)』、「経営学の観点から、ラピダスの問題はどこにあるのか」とは興味深そうだ。
・『失敗をトレースする懸念 Q:ラピダスの経営戦略を、どう評価しますか。 A:ラピダスは日本のエレクトロニクス産業が失敗してきたプロセスをそのままトレースしそうな気がしてならない。 問題点は2つある。1つは、どう他社と差をつけるのかが怪しいことだ。 2ナノの技術ではアメリカのIBMと、製造装置ではベルギーの半導体研究機関であるimecと提携している。ただ多くのエンジニアが指摘しているが、どちらも量産のノウハウを持っているわけではない。規模を追わない中規模ファウンドリーで、本当にコスト競争力のある半導体が作れるのかという指摘もある。 量産できたとしても、2ナノであることが差別化要因にならない可能性が大きい。TSMCもサムスン電子も2025年から2ナノの生産を開始すると言っている。 ラピダスはうまくいっても2027年。今誰も作ってないから一見差があるように見えているだけで、2年後の状況を考えたときに本当にそうなのかはわからない。) もう1つは、誰に売るのかが怪しいことだ。 たとえばTSMCの熊本工場は、すでにトヨタやソニーなど顧客が見えている。自動車産業では半導体需要がますます増えるし、ソニーのCMOSイメージセンサー向けのロジック半導体需要はこれからも旺盛だろう。 ラピダスにはそうしたストーリーがなく、とにかく「技術的に新しいものを作ればAIか何か向けに売れるはず」という思い込みがある。戦略の基本は「どう製品を差別化するか」と「どう敵がいない新しい市場に出るか」。こうしたビジネスのありように対する考えが、まったく見えてこない』、「ラピダスにはそうしたストーリーがなく、とにかく「技術的に新しいものを作ればAIか何か向けに売れるはず」という思い込みがある」、甘い見方だ。
・『TSMCのさまざまな施策 Q:ビジネスのありようとは、具体的にどのようなものでしょうか? A:TSMC創業者のモリス・チャンは、台湾当局のプロジェクトで新規開発案件を進めるとき、エンジニアにビジネスマインドを持たせるために「フィフティ・フィフィ」の制度を導入した。開発費の50%は税金から出す、残り50%はエンジニアが自分で民間からの投資を募ってこいと。 (長内氏の略歴はリンク先参照)そうすることで、ビジネス的にありえないストーリーでは出資が得られず研究が前に進まない。結果的にエンジニアがビジネスマインドを高めていくしかなかった。 そういうさまざまな施策があって今のTSMCがある。技術習得からビジネスまで、エンジニアが全体を見られる状態を作ったことが大きかった。 日本のエンジニアが単に技術領域でがんばっても、TSMCには絶対になれない。TSMCより規模の小さいファウンドリーを目指して、この業界で本当に生き残れるのかは怪しい。) Q:ラピダスは差別化戦略として、新しい製造方法を導入することで製造期間を大幅に短縮することを掲げています。 A:戦略の可能性が狭すぎる。スピード戦略を掲げて、達成できなかったときにどうするのか。プランBがない。そうとうな額の公費を長い間つぎ込んだ末にプランBがないというのは、許される状況ではない。 もちろんラピダスが追い詰められた結果、そこでブレイクスルーを生み出す可能性はゼロじゃない。もしかしたらTSMCをはじめ大手企業は、規模が大きいのでラピダスのような効率化を図らなくてもよかっただけなのかもしれない。でもラピダスが実現できたら、競合も同じことをやり始めるだろう。そのとき、ラピダスの優位性は何になるのか』、「ラピダスは差別化戦略として、新しい製造方法を導入することで製造期間を大幅に短縮することを掲げています。 A:戦略の可能性が狭すぎる。スピード戦略を掲げて、達成できなかったときにどうするのか。プランBがない。そうとうな額の公費を長い間つぎ込んだ末にプランBがないというのは、許される状況ではない」、厳しいようだが、その通りだ。
・『装置・材料メーカーはラピダスが最優先ではない Q:量産に欠かせない装置や材料メーカーとの連携にも、疑問を呈しています。 A:国が前のめりだからこそ、 各社の思惑が読みにくくなっている。出資会社も含めて前向きな意思表示をせざるを得なくなっている。装置や材料など関連メーカーにとって、何社かある顧客の1つとして一定のリップサービスは必要かもしれない。でも海外の大手メーカーよりも最優先でラピダスに協力するわけではないだろう。 だから、とにかく半導体生産では数を追うことが重要。生産数が増えれば、それだけ装置や材料メーカーにとって重要顧客になる。 Q:とはいえ、これまでに1兆円近くの公費が投入されています。これからラピダスが目指すべき方向とは。 A:量産を目指すのなら、なぜ量産ノウハウを持っている会社と提携しないのかが不思議だ。現状では研究機関のimecやIBMと協力しているのみ。ラピダスの小池淳義社長は日立製作所時代、台湾大手ファウンドリーであるUMCと合弁を組んだ経験もある。なぜ今回はそういう経験のあるファウンドリーを巻き込んでいないのか。) できない事情があるのかもしれないが、もし軽視しているのだとしたら非常に問題だ。「韓国や台湾にできることは日本でもできるんだ」という根拠のない精神論で彼らと手を組んでいないのだとするともったいない。 逆に、自分たちでは量産を目指さないのも1つのやり方かもしれない。アメリカに製品のノウハウを提供するようなテスト用ラインだけを持った会社になるというような。 もしくは日本でしか作れないものを作るという意味では、NTTが開発している光電融合技術の開発を担う。この技術の成否も、日本にとっては世界をリードできるかどうか重要なポイントだ。そうすれば、少なくとも2030年までのストーリーが見えてくるはず。 つまり、何かしらのビジネスの仕掛けとしてラピダスにしかできないことを考えていく。その中の1つに、UMCをはじめ韓国や台湾と協業していくという考え方があるのではないか』、「これからラピダスが目指すべき方向とは。 A:量産を目指すのなら、なぜ量産ノウハウを持っている会社と提携しないのかが不思議だ。現状では研究機関のimecやIBMと協力しているのみ。ラピダスの小池淳義社長は日立製作所時代、台湾大手ファウンドリーであるUMCと合弁を組んだ経験もある。なぜ今回はそういう経験のあるファウンドリーを巻き込んでいないのか。) できない事情があるのかもしれないが、もし軽視しているのだとしたら非常に問題だ。「韓国や台湾にできることは日本でもできるんだ」という根拠のない精神論で彼らと手を組んでいないのだとするともったいない。 逆に、自分たちでは量産を目指さないのも1つのやり方かもしれない。アメリカに製品のノウハウを提供するようなテスト用ラインだけを持った会社になるというような。 もしくは日本でしか作れないものを作るという意味では、NTTが開発している光電融合技術の開発を担う。この技術の成否も、日本にとっては世界をリードできるかどうか重要なポイント」、その通りだ。
・『TSMC熊本工場にはストーリーがある Q:一方でTSMC熊本には対照的な評価をしています。 A:今までの日本の技術戦略とはかなり様相が違う。 元々、経済産業省としては先端半導体の工場を誘致していたが、結果的には10年以上前の技術の半導体工場を作ることになった。それでも日本に誘致する意味があると判断したのだ。 ソニーや自動車産業というビジネスのストーリーが見えていて、それに必要な技術水準がある。必ずしも最先端技術が必要なのではない、というストーリーを実際に実現させたこと自体が日本では画期的だ。 加えて、第2工場、第3工場と連続的に投資を進めていっているところも理想的。既存工場からの利益を次の投資に回すという当たり前のことをやっている。 「現行の技術で失敗したけど、新しい技術で挽回するんです」という発想を日本は繰り返してきた。だがこれでは投資の原資がどんどん先細っていくので、結局いつまで経っても勝てない。こうした点がラピダスとは対照的だ。) Q:今は別々で動いている、TSMC熊本とラピダスのプロジェクトをつなげる提案もしています。 2つのプロジェクトを1つの戦略でまとめる会社を実際に作るかどうかは別として、新しいプロジェクトや投資を行うためには、基本的には既存のビジネスから得た収益を流すに尽きる。それができる構図を日本としてどう作るかが重要だ。 政府は両方にお金を出している立場なので、そうした連携にうまく持っていければベストだ。 Q:そもそも、政府が特定の産業や企業に多額の公費を投入することの是非についてはどう考えますか? A:中途半端な投資は意味がないので、ある程度まとまった額を拠出したことは評価できる。あとは、まとまった額を出すからには、簡単に諦めないでほしいということだけ。中途半端に進めて、結局アメリカに売却するというのが、いちばん避けなければならないストーリーだ。 著者フォローすると、石阪 友貴さんの最新記事をメールでお知らせします』、「「政府が特定の産業や企業に多額の公費を投入することの是非についてはどう考えますか?A:中途半端な投資は意味がないので、ある程度まとまった額を拠出したことは評価できる。あとは、まとまった額を出すからには、簡単に諦めないでほしいということだけ。中途半端に進めて、結局アメリカに売却するというのが、いちばん避けなければならないストーリーだ」、なるほど。
次に、5月30日付け東洋経済オンライン「政府支援の光と影「半導体人材」が増えぬ深刻事情 東大・竹内氏「AI半導体で日本に勝ち筋はある」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/753499
・『国策として怒涛の勢いで進められている、半導体産業への支援。経済産業省は2年度続けて1兆〜2兆円規模の予算を計上し、台湾の半導体製造受託大手TSMCの熊本工場や国策半導体企業ラピダスへの巨額支援を相次いで決めている。 一方で、支援について「今後は何を作るか、回路設計が重要になる」と指摘するのは、東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻の竹内健教授だ。同氏は東芝で回路設計エンジニアとしてNANDフラッシュメモリーの開発に携わってきた。半導体生産を軸とする政府支援を、どう見ているのか(Qは聞き手の質問、Aは竹内教授の回答)』、興味深そうだ。
・『モノだけでなく、人材への投資も重要 Q:国の半導体政策をどう評価していますか。 A:TSMCやラピダスなど半導体の製造・開発に関する助成・支援は、日本が強みを持つ素材産業や製造装置メーカーには追い風だ。次は「何を作るか」という回路設計への支援に力を入れる必要がある。 AIを実行するコンピューター・半導体の研究開発には、製造よりははるかに少ない投資でよい。製造工場などモノへの投資だけでなく、回路設計者という人材への投資も重要になる。 Q:何を作るのか、というのは重要なポイントのはずです。なぜ設計分野の重要性が理解されづらいのでしょうか。 A:大きな理由としては、産業界の受け皿が減ってしまった。日本の半導体メーカーの多くが負けてしまったことが影響している。30年前には世界の半導体メーカーの売上高ランキング上位の多くを日本企業が占めていたが、今ではトップ10に入っていない。) 政府予算は合理的に判断が行われ、収益が上がる分野に投資される。「日本は半導体には長年投資してきたのに、産業は振るわない」「事業化の出口が不透明では、大学への研究開発投資も難しい」と言われてしまったら、私のように以前から半導体に携わってきた人間は返す言葉もない。 その一方、伝統的な電機メーカーとは一線を画して、異業種やスタートアップが半導体の回路設計に乗り出しているのは明るい兆しだ。AIスタートアップのプリファードネットワークスが、プロセッサーを自ら開発していることは有名だし、自動運転など特定サービスを狙うスタートアップが半導体チップの設計まで手がけだしている。 これはGAFAMが半導体を手がけている動きと似ている。AIのアルゴリズムからソフトウェア、半導体の回路設計まで、もう一度作り直す。複数の技術を融合し、コンピューター全体を最適化する時代が来ている』、「AIのアルゴリズムからソフトウェア、半導体の回路設計まで、もう一度作り直す。複数の技術を融合し、コンピューター全体を最適化する時代が来ている」、なるほど。
・『企業は人材育成に投資する余力がない Q:かつてリストラ対象だった、半導体エンジニアが活躍できる場は増えています。 (竹内教授の略歴はリンク先参照) 新しい半導体開発の現場で、私と同世代や先輩世代、かつて日本の半導体メーカーを牽引し、その後に苦境を味わった方たちが活躍されていて頼もしい。 でも今後を考えると、不安も感じる。昭和のノスタルジーと言われるかもしれないが、かつての日本の電機メーカー・半導体メーカーは人材を育成していた。 私自身も育ててもらった一人で、かつて在籍した東芝、今のキオクシアには感謝している。) 私以外にも今、日本の大学で半導体の研究を行っている教員には、半導体メーカー出身者が多い。そういった人材の育成機関としての企業は、今どうなっているか不安を感じる。最近は海外留学の社内制度もなくなってきているとも聞く。 企業は人材育成に大きな投資をするような余裕は、もはやないのかもしれない。大学は人材育成に関しても、今まで以上にがんばる必要がある。 Q:このままでは、日本からエヌビディアのような半導体企業が生まれる可能性が、限りなくゼロになってしまう。 A:世界中でAI半導体の開発ブームが起きている。「エヌビディアの独り勝ちに挑む」という面もあるだろう。ただ、データセンター向けについては、大量のGPU(画像処理装置)の確保など巨額投資が必要で、もう日本勢がGAFAMと正面から競合するのは難しいかもしれない。 一方で、ネットワークと端末などをつなぐIoT(モノのインターネット化)には、日本が得意とする事業やサービスがある。自動車をはじめとする交通システムや、セキュリティ、製造業などのリアルな現場でも、今後はAIが浸透していくと予想されている。 熟練工など現場の人が持つノウハウ・暗黙知を、AIで代替していくのは必然だろう。こうした日本が得意とするサービスに向けたAI処理を実行する半導体であれば、日本にも勝機があるのでは』、「熟練工など現場の人が持つノウハウ・暗黙知を、AIで代替していくのは必然だろう。こうした日本が得意とするサービスに向けたAI処理を実行する半導体であれば、日本にも勝機があるのでは」、なるほど。
・『半導体を学ぶ学生が増えている Q:東大生の半導体への関心に変化は出てきていますか? A:半導体を学ぼうとする学生は、増えている。今の若い人たちは、リーマンショック後に日本の電機産業が苦境に陥り、リストラを繰り返したことを知らない。最先端の技術開発への純粋な興味はあるが、昔の「半導体立国ニッポン」といったノスタルジー的な半導体への思い入れもなければ、半導体へのネガティブな感情も薄い。) 大学でも以前は「半導体に興味がない」と学生が言うのなら、それが時代の趨勢で仕方ないと思っていた。冬の時代が長く続いたときは、研究室でも「AI研究」などを前面に掲げ、「半導体はAIを実現するための手段」と脇役扱いでやってきた。 しかし最近は、学生から「なぜ半導体の回路設計の研究をやらないのですか?」と聞かれるようになり、風向きが変わってきた。半導体関係の授業を受ける学生も増える一方だ』、「半導体を学ぼうとする学生は、増えている・・・昔の「半導体立国ニッポン」といったノスタルジー的な半導体への思い入れもなければ、半導体へのネガティブな感情も薄い・・・最近は、学生から「なぜ半導体の回路設計の研究をやらないのですか?」と聞かれるようになり、風向きが変わってきた。半導体関係の授業を受ける学生も増える一方だ」、「学生」が関心を示してきたとは、好ましい傾向だ。
・『受け皿が外資系企業になっている Q:これから半導体業界へ就職する若者が増えてくるのでは。 A:今や半導体の研究開発を本格的にできる日本企業は限られている。就職先の受け皿が少ない。一方、TSMCやアップルなど外資系企業が日本に半導体の開発拠点を作る動きが進んでおり、そこの半導体部門に就職する学生は増えている。 彼らには無限の可能性がある。日本という枠にとどまらず、たとえばTSMCだったら台湾本社に乗り込み、世界の最先端の技術開発を牽引してほしい。 日本に残るわれわれには、研究開発や人材育成の面で大きな課題がある。私自身も「政府が投資してくれないから研究が進まない」などと泣き言をいっている場合ではない。円安を契機に、大学の研究者も海外企業から積極的な投資を求めるなど、大学にも新たな知恵が必要とされている。 半導体の冬の時代を経験した身としては、日本でも半導体が盛り上がってきたのは嬉しいと同時に、身が引き締まる思いだ。産官学の力を結集するならば、半導体製造にとどまらず、日本が強みを持つ現場の事業・サービスを牽引できるように、AI半導体の回路設計を推進していきたい』、「私自身も「政府が投資してくれないから研究が進まない」などと泣き言をいっている場合ではない。円安を契機に、大学の研究者も海外企業から積極的な投資を求めるなど、大学にも新たな知恵が必要とされている。 半導体の冬の時代を経験した身としては、日本でも半導体が盛り上がってきたのは嬉しいと同時に、身が引き締まる思いだ。産官学の力を結集するならば、半導体製造にとどまらず、日本が強みを持つ現場の事業・サービスを牽引できるように、AI半導体の回路設計を推進していきたい」、力強い展望と決意表明だ。
先ずは、本年4月30日付け東洋経済オンライン「国策ラピダスとTSMC"2つの戦略"で決定的な差 早大・長内教授「ビジネスにストーリーがない」を紹介しよう。
・『世界最先端となる「2ナノ」世代の半導体量産を目指す国策企業のラピダス。これまでに政府から最大9200億円の支援を受けることが発表されている。 同業の半導体製造受託企業(ファウンドリー)で世界トップの台湾TSMCとの競合を避けるため、ラピダスは数量を追わず製造のスピードを重視するという「中規模ファウンドリー」戦略を打ち出している。同社について「ビジネスへの考え方がまったく見えてこない」と指摘するのは、『半導体逆転戦略』を上梓した早稲田大学大学院経営管理研究科の長内厚教授だ。 経営学の観点から、ラピダスの問題はどこにあるのか(Qは聞き手の質問、Aは長内教授の回答)』、「経営学の観点から、ラピダスの問題はどこにあるのか」とは興味深そうだ。
・『失敗をトレースする懸念 Q:ラピダスの経営戦略を、どう評価しますか。 A:ラピダスは日本のエレクトロニクス産業が失敗してきたプロセスをそのままトレースしそうな気がしてならない。 問題点は2つある。1つは、どう他社と差をつけるのかが怪しいことだ。 2ナノの技術ではアメリカのIBMと、製造装置ではベルギーの半導体研究機関であるimecと提携している。ただ多くのエンジニアが指摘しているが、どちらも量産のノウハウを持っているわけではない。規模を追わない中規模ファウンドリーで、本当にコスト競争力のある半導体が作れるのかという指摘もある。 量産できたとしても、2ナノであることが差別化要因にならない可能性が大きい。TSMCもサムスン電子も2025年から2ナノの生産を開始すると言っている。 ラピダスはうまくいっても2027年。今誰も作ってないから一見差があるように見えているだけで、2年後の状況を考えたときに本当にそうなのかはわからない。) もう1つは、誰に売るのかが怪しいことだ。 たとえばTSMCの熊本工場は、すでにトヨタやソニーなど顧客が見えている。自動車産業では半導体需要がますます増えるし、ソニーのCMOSイメージセンサー向けのロジック半導体需要はこれからも旺盛だろう。 ラピダスにはそうしたストーリーがなく、とにかく「技術的に新しいものを作ればAIか何か向けに売れるはず」という思い込みがある。戦略の基本は「どう製品を差別化するか」と「どう敵がいない新しい市場に出るか」。こうしたビジネスのありように対する考えが、まったく見えてこない』、「ラピダスにはそうしたストーリーがなく、とにかく「技術的に新しいものを作ればAIか何か向けに売れるはず」という思い込みがある」、甘い見方だ。
・『TSMCのさまざまな施策 Q:ビジネスのありようとは、具体的にどのようなものでしょうか? A:TSMC創業者のモリス・チャンは、台湾当局のプロジェクトで新規開発案件を進めるとき、エンジニアにビジネスマインドを持たせるために「フィフティ・フィフィ」の制度を導入した。開発費の50%は税金から出す、残り50%はエンジニアが自分で民間からの投資を募ってこいと。 (長内氏の略歴はリンク先参照)そうすることで、ビジネス的にありえないストーリーでは出資が得られず研究が前に進まない。結果的にエンジニアがビジネスマインドを高めていくしかなかった。 そういうさまざまな施策があって今のTSMCがある。技術習得からビジネスまで、エンジニアが全体を見られる状態を作ったことが大きかった。 日本のエンジニアが単に技術領域でがんばっても、TSMCには絶対になれない。TSMCより規模の小さいファウンドリーを目指して、この業界で本当に生き残れるのかは怪しい。) Q:ラピダスは差別化戦略として、新しい製造方法を導入することで製造期間を大幅に短縮することを掲げています。 A:戦略の可能性が狭すぎる。スピード戦略を掲げて、達成できなかったときにどうするのか。プランBがない。そうとうな額の公費を長い間つぎ込んだ末にプランBがないというのは、許される状況ではない。 もちろんラピダスが追い詰められた結果、そこでブレイクスルーを生み出す可能性はゼロじゃない。もしかしたらTSMCをはじめ大手企業は、規模が大きいのでラピダスのような効率化を図らなくてもよかっただけなのかもしれない。でもラピダスが実現できたら、競合も同じことをやり始めるだろう。そのとき、ラピダスの優位性は何になるのか』、「ラピダスは差別化戦略として、新しい製造方法を導入することで製造期間を大幅に短縮することを掲げています。 A:戦略の可能性が狭すぎる。スピード戦略を掲げて、達成できなかったときにどうするのか。プランBがない。そうとうな額の公費を長い間つぎ込んだ末にプランBがないというのは、許される状況ではない」、厳しいようだが、その通りだ。
・『装置・材料メーカーはラピダスが最優先ではない Q:量産に欠かせない装置や材料メーカーとの連携にも、疑問を呈しています。 A:国が前のめりだからこそ、 各社の思惑が読みにくくなっている。出資会社も含めて前向きな意思表示をせざるを得なくなっている。装置や材料など関連メーカーにとって、何社かある顧客の1つとして一定のリップサービスは必要かもしれない。でも海外の大手メーカーよりも最優先でラピダスに協力するわけではないだろう。 だから、とにかく半導体生産では数を追うことが重要。生産数が増えれば、それだけ装置や材料メーカーにとって重要顧客になる。 Q:とはいえ、これまでに1兆円近くの公費が投入されています。これからラピダスが目指すべき方向とは。 A:量産を目指すのなら、なぜ量産ノウハウを持っている会社と提携しないのかが不思議だ。現状では研究機関のimecやIBMと協力しているのみ。ラピダスの小池淳義社長は日立製作所時代、台湾大手ファウンドリーであるUMCと合弁を組んだ経験もある。なぜ今回はそういう経験のあるファウンドリーを巻き込んでいないのか。) できない事情があるのかもしれないが、もし軽視しているのだとしたら非常に問題だ。「韓国や台湾にできることは日本でもできるんだ」という根拠のない精神論で彼らと手を組んでいないのだとするともったいない。 逆に、自分たちでは量産を目指さないのも1つのやり方かもしれない。アメリカに製品のノウハウを提供するようなテスト用ラインだけを持った会社になるというような。 もしくは日本でしか作れないものを作るという意味では、NTTが開発している光電融合技術の開発を担う。この技術の成否も、日本にとっては世界をリードできるかどうか重要なポイントだ。そうすれば、少なくとも2030年までのストーリーが見えてくるはず。 つまり、何かしらのビジネスの仕掛けとしてラピダスにしかできないことを考えていく。その中の1つに、UMCをはじめ韓国や台湾と協業していくという考え方があるのではないか』、「これからラピダスが目指すべき方向とは。 A:量産を目指すのなら、なぜ量産ノウハウを持っている会社と提携しないのかが不思議だ。現状では研究機関のimecやIBMと協力しているのみ。ラピダスの小池淳義社長は日立製作所時代、台湾大手ファウンドリーであるUMCと合弁を組んだ経験もある。なぜ今回はそういう経験のあるファウンドリーを巻き込んでいないのか。) できない事情があるのかもしれないが、もし軽視しているのだとしたら非常に問題だ。「韓国や台湾にできることは日本でもできるんだ」という根拠のない精神論で彼らと手を組んでいないのだとするともったいない。 逆に、自分たちでは量産を目指さないのも1つのやり方かもしれない。アメリカに製品のノウハウを提供するようなテスト用ラインだけを持った会社になるというような。 もしくは日本でしか作れないものを作るという意味では、NTTが開発している光電融合技術の開発を担う。この技術の成否も、日本にとっては世界をリードできるかどうか重要なポイント」、その通りだ。
・『TSMC熊本工場にはストーリーがある Q:一方でTSMC熊本には対照的な評価をしています。 A:今までの日本の技術戦略とはかなり様相が違う。 元々、経済産業省としては先端半導体の工場を誘致していたが、結果的には10年以上前の技術の半導体工場を作ることになった。それでも日本に誘致する意味があると判断したのだ。 ソニーや自動車産業というビジネスのストーリーが見えていて、それに必要な技術水準がある。必ずしも最先端技術が必要なのではない、というストーリーを実際に実現させたこと自体が日本では画期的だ。 加えて、第2工場、第3工場と連続的に投資を進めていっているところも理想的。既存工場からの利益を次の投資に回すという当たり前のことをやっている。 「現行の技術で失敗したけど、新しい技術で挽回するんです」という発想を日本は繰り返してきた。だがこれでは投資の原資がどんどん先細っていくので、結局いつまで経っても勝てない。こうした点がラピダスとは対照的だ。) Q:今は別々で動いている、TSMC熊本とラピダスのプロジェクトをつなげる提案もしています。 2つのプロジェクトを1つの戦略でまとめる会社を実際に作るかどうかは別として、新しいプロジェクトや投資を行うためには、基本的には既存のビジネスから得た収益を流すに尽きる。それができる構図を日本としてどう作るかが重要だ。 政府は両方にお金を出している立場なので、そうした連携にうまく持っていければベストだ。 Q:そもそも、政府が特定の産業や企業に多額の公費を投入することの是非についてはどう考えますか? A:中途半端な投資は意味がないので、ある程度まとまった額を拠出したことは評価できる。あとは、まとまった額を出すからには、簡単に諦めないでほしいということだけ。中途半端に進めて、結局アメリカに売却するというのが、いちばん避けなければならないストーリーだ。 著者フォローすると、石阪 友貴さんの最新記事をメールでお知らせします』、「「政府が特定の産業や企業に多額の公費を投入することの是非についてはどう考えますか?A:中途半端な投資は意味がないので、ある程度まとまった額を拠出したことは評価できる。あとは、まとまった額を出すからには、簡単に諦めないでほしいということだけ。中途半端に進めて、結局アメリカに売却するというのが、いちばん避けなければならないストーリーだ」、なるほど。
次に、5月30日付け東洋経済オンライン「政府支援の光と影「半導体人材」が増えぬ深刻事情 東大・竹内氏「AI半導体で日本に勝ち筋はある」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/753499
・『国策として怒涛の勢いで進められている、半導体産業への支援。経済産業省は2年度続けて1兆〜2兆円規模の予算を計上し、台湾の半導体製造受託大手TSMCの熊本工場や国策半導体企業ラピダスへの巨額支援を相次いで決めている。 一方で、支援について「今後は何を作るか、回路設計が重要になる」と指摘するのは、東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻の竹内健教授だ。同氏は東芝で回路設計エンジニアとしてNANDフラッシュメモリーの開発に携わってきた。半導体生産を軸とする政府支援を、どう見ているのか(Qは聞き手の質問、Aは竹内教授の回答)』、興味深そうだ。
・『モノだけでなく、人材への投資も重要 Q:国の半導体政策をどう評価していますか。 A:TSMCやラピダスなど半導体の製造・開発に関する助成・支援は、日本が強みを持つ素材産業や製造装置メーカーには追い風だ。次は「何を作るか」という回路設計への支援に力を入れる必要がある。 AIを実行するコンピューター・半導体の研究開発には、製造よりははるかに少ない投資でよい。製造工場などモノへの投資だけでなく、回路設計者という人材への投資も重要になる。 Q:何を作るのか、というのは重要なポイントのはずです。なぜ設計分野の重要性が理解されづらいのでしょうか。 A:大きな理由としては、産業界の受け皿が減ってしまった。日本の半導体メーカーの多くが負けてしまったことが影響している。30年前には世界の半導体メーカーの売上高ランキング上位の多くを日本企業が占めていたが、今ではトップ10に入っていない。) 政府予算は合理的に判断が行われ、収益が上がる分野に投資される。「日本は半導体には長年投資してきたのに、産業は振るわない」「事業化の出口が不透明では、大学への研究開発投資も難しい」と言われてしまったら、私のように以前から半導体に携わってきた人間は返す言葉もない。 その一方、伝統的な電機メーカーとは一線を画して、異業種やスタートアップが半導体の回路設計に乗り出しているのは明るい兆しだ。AIスタートアップのプリファードネットワークスが、プロセッサーを自ら開発していることは有名だし、自動運転など特定サービスを狙うスタートアップが半導体チップの設計まで手がけだしている。 これはGAFAMが半導体を手がけている動きと似ている。AIのアルゴリズムからソフトウェア、半導体の回路設計まで、もう一度作り直す。複数の技術を融合し、コンピューター全体を最適化する時代が来ている』、「AIのアルゴリズムからソフトウェア、半導体の回路設計まで、もう一度作り直す。複数の技術を融合し、コンピューター全体を最適化する時代が来ている」、なるほど。
・『企業は人材育成に投資する余力がない Q:かつてリストラ対象だった、半導体エンジニアが活躍できる場は増えています。 (竹内教授の略歴はリンク先参照) 新しい半導体開発の現場で、私と同世代や先輩世代、かつて日本の半導体メーカーを牽引し、その後に苦境を味わった方たちが活躍されていて頼もしい。 でも今後を考えると、不安も感じる。昭和のノスタルジーと言われるかもしれないが、かつての日本の電機メーカー・半導体メーカーは人材を育成していた。 私自身も育ててもらった一人で、かつて在籍した東芝、今のキオクシアには感謝している。) 私以外にも今、日本の大学で半導体の研究を行っている教員には、半導体メーカー出身者が多い。そういった人材の育成機関としての企業は、今どうなっているか不安を感じる。最近は海外留学の社内制度もなくなってきているとも聞く。 企業は人材育成に大きな投資をするような余裕は、もはやないのかもしれない。大学は人材育成に関しても、今まで以上にがんばる必要がある。 Q:このままでは、日本からエヌビディアのような半導体企業が生まれる可能性が、限りなくゼロになってしまう。 A:世界中でAI半導体の開発ブームが起きている。「エヌビディアの独り勝ちに挑む」という面もあるだろう。ただ、データセンター向けについては、大量のGPU(画像処理装置)の確保など巨額投資が必要で、もう日本勢がGAFAMと正面から競合するのは難しいかもしれない。 一方で、ネットワークと端末などをつなぐIoT(モノのインターネット化)には、日本が得意とする事業やサービスがある。自動車をはじめとする交通システムや、セキュリティ、製造業などのリアルな現場でも、今後はAIが浸透していくと予想されている。 熟練工など現場の人が持つノウハウ・暗黙知を、AIで代替していくのは必然だろう。こうした日本が得意とするサービスに向けたAI処理を実行する半導体であれば、日本にも勝機があるのでは』、「熟練工など現場の人が持つノウハウ・暗黙知を、AIで代替していくのは必然だろう。こうした日本が得意とするサービスに向けたAI処理を実行する半導体であれば、日本にも勝機があるのでは」、なるほど。
・『半導体を学ぶ学生が増えている Q:東大生の半導体への関心に変化は出てきていますか? A:半導体を学ぼうとする学生は、増えている。今の若い人たちは、リーマンショック後に日本の電機産業が苦境に陥り、リストラを繰り返したことを知らない。最先端の技術開発への純粋な興味はあるが、昔の「半導体立国ニッポン」といったノスタルジー的な半導体への思い入れもなければ、半導体へのネガティブな感情も薄い。) 大学でも以前は「半導体に興味がない」と学生が言うのなら、それが時代の趨勢で仕方ないと思っていた。冬の時代が長く続いたときは、研究室でも「AI研究」などを前面に掲げ、「半導体はAIを実現するための手段」と脇役扱いでやってきた。 しかし最近は、学生から「なぜ半導体の回路設計の研究をやらないのですか?」と聞かれるようになり、風向きが変わってきた。半導体関係の授業を受ける学生も増える一方だ』、「半導体を学ぼうとする学生は、増えている・・・昔の「半導体立国ニッポン」といったノスタルジー的な半導体への思い入れもなければ、半導体へのネガティブな感情も薄い・・・最近は、学生から「なぜ半導体の回路設計の研究をやらないのですか?」と聞かれるようになり、風向きが変わってきた。半導体関係の授業を受ける学生も増える一方だ」、「学生」が関心を示してきたとは、好ましい傾向だ。
・『受け皿が外資系企業になっている Q:これから半導体業界へ就職する若者が増えてくるのでは。 A:今や半導体の研究開発を本格的にできる日本企業は限られている。就職先の受け皿が少ない。一方、TSMCやアップルなど外資系企業が日本に半導体の開発拠点を作る動きが進んでおり、そこの半導体部門に就職する学生は増えている。 彼らには無限の可能性がある。日本という枠にとどまらず、たとえばTSMCだったら台湾本社に乗り込み、世界の最先端の技術開発を牽引してほしい。 日本に残るわれわれには、研究開発や人材育成の面で大きな課題がある。私自身も「政府が投資してくれないから研究が進まない」などと泣き言をいっている場合ではない。円安を契機に、大学の研究者も海外企業から積極的な投資を求めるなど、大学にも新たな知恵が必要とされている。 半導体の冬の時代を経験した身としては、日本でも半導体が盛り上がってきたのは嬉しいと同時に、身が引き締まる思いだ。産官学の力を結集するならば、半導体製造にとどまらず、日本が強みを持つ現場の事業・サービスを牽引できるように、AI半導体の回路設計を推進していきたい』、「私自身も「政府が投資してくれないから研究が進まない」などと泣き言をいっている場合ではない。円安を契機に、大学の研究者も海外企業から積極的な投資を求めるなど、大学にも新たな知恵が必要とされている。 半導体の冬の時代を経験した身としては、日本でも半導体が盛り上がってきたのは嬉しいと同時に、身が引き締まる思いだ。産官学の力を結集するならば、半導体製造にとどまらず、日本が強みを持つ現場の事業・サービスを牽引できるように、AI半導体の回路設計を推進していきたい」、力強い展望と決意表明だ。
タグ:東洋経済オンライン「国策ラピダスとTSMC"2つの戦略"で決定的な差 早大・長内教授「ビジネスにストーリーがない」 「経営学の観点から、ラピダスの問題はどこにあるのか」とは興味深そうだ。 「ラピダスにはそうしたストーリーがなく、とにかく「技術的に新しいものを作ればAIか何か向けに売れるはず」という思い込みがある」、甘い見方だ。 「ラピダスは差別化戦略として、新しい製造方法を導入することで製造期間を大幅に短縮することを掲げています。 A:戦略の可能性が狭すぎる。スピード戦略を掲げて、達成できなかったときにどうするのか。プランBがない。そうとうな額の公費を長い間つぎ込んだ末にプランBがないというのは、許される状況ではない」、厳しいようだが、その通りだ。 「これからラピダスが目指すべき方向とは。 A:量産を目指すのなら、なぜ量産ノウハウを持っている会社と提携しないのかが不思議だ。現状では研究機関のimecやIBMと協力しているのみ。ラピダスの小池淳義社長は日立製作所時代、台湾大手ファウンドリーであるUMCと合弁を組んだ経験もある。なぜ今回はそういう経験のあるファウンドリーを巻き込んでいないのか。 できない事情があるのかもしれないが、もし軽視しているのだとしたら非常に問題だ。「韓国や台湾にできることは日本でもできるんだ」という根拠のない精神論で彼らと手を組んでいないのだとするともったいない。 逆に、自分たちでは量産を目指さないのも1つのやり方かもしれない。アメリカに製品のノウハウを提供するようなテスト用ラインだけを持った会社になるというような。 もしくは日本でしか作れないものを作るという意味では、NTTが開発している光電融合技術の開発を担う。この技術の成否も、日本にとっては世界をリードできるかどうか 重要なポイント」、その通りだ。 「「政府が特定の産業や企業に多額の公費を投入することの是非についてはどう考えますか?A:中途半端な投資は意味がないので、ある程度まとまった額を拠出したことは評価できる。あとは、まとまった額を出すからには、簡単に諦めないでほしいということだけ。中途半端に進めて、結局アメリカに売却するというのが、いちばん避けなければならないストーリーだ」、なるほど。 東洋経済オンライン「政府支援の光と影「半導体人材」が増えぬ深刻事情 東大・竹内氏「AI半導体で日本に勝ち筋はある」」 「AIのアルゴリズムからソフトウェア、半導体の回路設計まで、もう一度作り直す。複数の技術を融合し、コンピューター全体を最適化する時代が来ている」、なるほど。 「熟練工など現場の人が持つノウハウ・暗黙知を、AIで代替していくのは必然だろう。こうした日本が得意とするサービスに向けたAI処理を実行する半導体であれば、日本にも勝機があるのでは」、なるほど。 「半導体を学ぼうとする学生は、増えている・・・昔の「半導体立国ニッポン」といったノスタルジー的な半導体への思い入れもなければ、半導体へのネガティブな感情も薄い・・・最近は、学生から「なぜ半導体の回路設計の研究をやらないのですか?」と聞かれるようになり、風向きが変わってきた。半導体関係の授業を受ける学生も増える一方だ」、「学生」が関心を示してきたとは、好ましい傾向だ。 「私自身も「政府が投資してくれないから研究が進まない」などと泣き言をいっている場合ではない。円安を契機に、大学の研究者も海外企業から積極的な投資を求めるなど、大学にも新たな知恵が必要とされている。 半導体の冬の時代を経験した身としては、日本でも半導体が盛り上がってきたのは嬉しいと同時に、身が引き締まる思いだ。産官学の力を結集するならば、半導体製造にとどまらず、日本が強みを持つ現場の事業・サービスを牽引できるように、AI半導体の回路設計を推進していきたい」、力強い決意表明だ。