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リニア新幹線(その10)(川勝知事知事6題:川勝知事がリニア問題の解決策などすべて放り投げて辞職…そのヤバすぎる「正体」、川勝知事が残した“最悪の置き土産”…意味のなかった「リニア騒動」の全貌、川勝平太知事が「リニア中央新幹線」反対姿勢を強めた2013年に何があったのか、静岡リニア「開業10年遅れ」JR東海の経営大丈夫? 突然辞任、川勝知事の「置き土産」が及ぼす影響、自民党がさらなる窮地へ…? 川勝知事の後任選挙の「驚きの実態」) [産業動向]

昨日に続いて、リニア新幹線である。今日は、(その10)(川勝知事知事6題:川勝知事がリニア問題の解決策などすべて放り投げて辞職…そのヤバすぎる「正体」、川勝知事が残した“最悪の置き土産”…意味のなかった「リニア騒動」の全貌、川勝平太知事が「リニア中央新幹線」反対姿勢を強めた2013年に何があったのか、静岡リニア「開業10年遅れ」JR東海の経営大丈夫? 突然辞任、川勝知事の「置き土産」が及ぼす影響、自民党がさらなる窮地へ…? 川勝知事の後任選挙の「驚きの実態」)である。

先ずは、本年4月12日付け現代ビジネスが掲載した小林 一哉氏による「静岡・川勝知事がリニア問題の解決策などすべて放り投げて辞職…そのヤバすぎる「正体」」を紹介しよう。
・『無責任すぎる川勝知事  静岡県の静岡県の川勝平太知事は、リニア問題の解決策など示さず、一切合切をすべて放り投げた。 もともと大井川流域の首長たちは、川勝知事にリニア問題を一任することで、リニア問題の決着とともに、東海道新幹線静岡空港新駅の設置など何らかの地域振興をもたらすことを期待していた。 それなのに、リニア南アルプストンネル静岡工区着工への手立ても示さず、また流域の期待にも何らこたえず、混乱だけを巻き起こしたまま、静岡県庁から去ることになった。 あまりに無責任な姿勢だが、これが川勝知事の「正体」である。 「あたかも、水は一部戻してやるから、ともかく工事をさせろという態度に、わたしの堪忍袋の緒が切れました」 2017年10月10日の定例会見が、川勝知事による静岡県の「リニア騒動」の始まりだった。 当時、JR東海と大井川流域の利水者11団体と静岡工区着工に向けた基本協定を結ぶ詰めの交渉が行われている最中だった。 ところが、川勝知事は「堪忍袋の緒が切れた」と怒りを露わにしたあと、「水問題に具体的な対応を示すことなく、静岡県民に誠意を示すといった姿勢がないことを心から憤っている」などとさらにヒートアップした。 そして、「勝手にトンネルを掘りなさんな」と基本協定の交渉にストップを掛ける「ちゃぶ台返し」をしてしまう。 この日の知事会見を皮切りに、川勝知事による無理難題の言いたい放題、やりたい放題が始まり、まさに「リニア騒動」と呼ばれるさまざまな混乱が続くことになった。 2018年夏から、静岡県とJR東海との『対話』が始まったが、現在まで何らの進展も見られない』、「2018年夏から、静岡県とJR東海との『対話』が始まったが、現在まで何らの進展も見られない」、そんなに長く続いているとは、改めて問題の深刻さを再認識した。
・『自分の非を自覚せず  「リニア騒動」の混乱に収拾はつかず、ことし7年目を迎えた矢先だった。 4月1日の新規採用職員の訓示で、「職業差別発言」を行ったと糾弾されると、川勝知事は突然、2日夕方に辞意を表明、3日、辞職にいたる理由などを説明する会見を行った。 当初、6月19日の県議会開会に合わせて、辞職する方向だったが、急きょ10日午前に、静岡県議会議長に辞表を提出した。 このままいけば、川勝知事は5月10日に自動的に退職することになる。 これで、川勝知事本人の引き起こした「リニア騒動」の幕がいったん、引かれるが、静岡県のリニア問題が解決したわけではない。 県議会議長への辞表提出後、川勝知事は10日午後、今後のリニア問題への対応などをテーマとした定例会見にのぞんだ。 辞意表明の翌日、3日の会見で辞職するいちばんの理由を「リニア問題の区切りがついたから」などと述べた。 このため、記者から「リニア沿線の都府県でつくる建設促進期成同盟会会長の愛知県の大村(秀章)知事から、ひと区切りというのは違うのではないかと批判の声があった」と投げ掛けられた。 川勝知事は 「リニア問題に関してこれを放り出すことはできない。どのような道筋が描けるか、これが本県にとって重要課題だ。国のリニア静岡工区モニタリング会議座長の矢野(弘典)さんを信じている。まかせられる。モニタリングは、工事の日程、事業計画と不可分であるというのが矢野さんの意見だ。ここでやっていければいい。矢野さんにバトンタッチできる」 などと何度も矢野座長の名前を挙げた。) 実際には、リニア問題の区切りがついたわけでも、道筋が描かれたのでもなく、昔から懇意の矢野座長に「リニア騒動」の混乱すべてを放り投げたに過ぎない。 誰が考えても、川勝知事が反リニアを貫き、リニア妨害を繰り返していたことを見透かされていた。 これに対して、川勝知事は「わたしどもは早期開業に対して、足を引っ張っているようなことをしたことは一度もない」と大見得を切った。 このような嘘を平気で口にするのが、川勝知事の「正体」である。 川勝知事の「正体」は、2022年夏のリニア南アルプス工事現場の視察と建設促進期成同盟会での発言を振り返れば、いちばんわかりやすい。 後編『川勝知事が残した“最悪の置き土産”…意味のなかった「リニア騒動」の全貌』で詳しく解説する』、「リニア問題に関してこれを放り出すことはできない。どのような道筋が描けるか、これが本県にとって重要課題だ。国のリニア静岡工区モニタリング会議座長の矢野(弘典)さんを信じている。まかせられる。モニタリングは、工事の日程、事業計画と不可分であるというのが矢野さんの意見だ。ここでやっていければいい。矢野さんにバトンタッチできる」 などと何度も矢野座長の名前を挙げた」、「矢野座長」の考え方はどうなのだろう。

次に、4月12日付け現代ビジネスが掲載した小林 一哉氏による「川勝知事が残した“最悪の置き土産”…意味のなかった「リニア騒動」の全貌 『知事失格』のらく印が押されたまま」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/127644
・『静岡県の川勝平太知事は、リニア問題の解決策など示さず、一切合切をすべて放り投げた。あまりに無責任な姿勢を見せた川勝知事だが、彼のこの「正体」は、2022年夏のリニア南アルプス工事現場の視察と建設促進期成同盟会での発言を振り返れば、いちばんわかりやすい。 前編『静岡・川勝知事がリニア問題の解決策などすべて放り投げて辞職…そのヤバすぎる「正体」』、興味深そうだ。
・『川勝知事に寄せる期待は「虚しい」ばかり  静岡県は2022年7月14日、リニアの早期開業を目指す沿線都府県の「建設促進期成同盟会」への加盟を許可された。 同年8月9日に初めて開かれたオンラインの総会で、川勝知事は「2027年品川―名古屋間の開業、2037年大阪までの延伸開業を目指す同盟会の立場を共有する」、「リニア整備の促進を目指してスピード感を持って課題の解決に取り組む」と同盟会加盟に際しての誓約を表明した。 沿線知事らは川勝知事の「正体」を何ら知らずに、「早期全線開業を目指す態勢が整った」と期待を寄せたのだ。 その前日の8日、川勝知事はリニア南アルプストンネル静岡工区で最大規模の残土置き場が計画される燕沢(つばくろさわ)と東京電力RPの田代ダムを視察した。 その際の発言を承知していれば、川勝知事への期待がいかに虚しいかわかったはずだった。 JR東海は同年4月、東電RPの内諾を得た上で、田代ダムの取水抑制案という、川勝知事の求める県境付近での工事中の「全量戻し」に対する解決策を発表した。 このため、大勢のメディアを引き連れての田代ダム視察を行った。 視察には、県地質構造・水資源専門部会の森下祐一部会長(静岡大学客員教授)、塩坂邦雄委員(株式会社サイエンス技師長)が同行した。 まず、大井川流域の大規模崩壊地である赤崩(あかくずれ)を車中から視察した。 塩坂委員が「畑薙山断層帯は非常に弱い地層であり、大量の突発湧水が出る恐れがある」などと警告した。 塩坂委員は、トンネル建設予定地の断層は「背斜構造となっていて力の掛かり具合が複雑であり、地下水枯渇の恐れがある」などの持論を披露して、地下トンネル建設に強い疑問を投げ掛けた。これが県専門部会委員の役割である』、「塩坂委員が「畑薙山断層帯は非常に弱い地層であり、大量の突発湧水が出る恐れがある」などと警告した。 塩坂委員は、トンネル建設予定地の断層は「背斜構造となっていて力の掛かり具合が複雑であり、地下水枯渇の恐れがある」などの持論を披露して、地下トンネル建設に強い疑問を投げ掛けた。これが県専門部会委員の役割」、なるほど。
・『川勝知事の‟置き土産‟が今後もテーマに  燕沢の視察では、森下部会長とともに川勝知事が新たな課題を突きつけた。 JR東海担当者は高さ65メートル、長さ290メートル、奥行き600メートルで、トンネル工事で発生する残土の大半、約360万㎥を盛り土するツバクロ残土置き場の計画を説明した。 この説明に対して、川勝知事は、過去に土石流が起きていることを指摘した上で、「深層崩壊について検討されておらず、残土置き場にふさわしくない。極めて不適切」と強く否定したのだ。 JR東海は、残土置き場として標高約2千メートルに予定した扇沢を山体崩壊の危険性から取りやめた経緯から、燕沢での崩壊対策などを県専門部会で詳しく説明してきた。 過去の論文等を基に燕沢周辺での深層崩壊の可能性は非常に低いことにも触れた。 ところが、川勝知事は燕沢に強い否定意見を述べたのだ。 視察時の知事の否定意見そのままに、県はことし2月5日の会見で、JR東海との新たな「対話項目」に、ツバクロ残土置き場計画について、斜面崩壊のリスク、土石流の緩衝地帯の機能低下など広域的な複合リスクを挙げている。 川勝知事の言うように、本当に「残土置き場にふさわしくない。極めて不適切」だとすれば、いまから代替地を探すのは極めて困難であり、トンネル工事そのものができなくなる。 川勝知事の‟置き土産‟が今後も県専門部会の「対話」のテーマとなるのだ。 また、川勝知事は田代ダム取水抑制案も否定した。 視察に同行した、山梨県早川町の辻一幸町長が「大井川、早川は間ノ岳が源流であり、いうなれば同じ流域だ。南アルプスのリニアトンネル建設を成功させることで地元を活性化させていくことがわたしの使命」などと述べ、田代ダム取水抑制案を強く支持する意向を述べた。 ところが、川勝知事は「濁水ではなく清流の水が戻ってくるのだから、田代ダム取水抑制案の実現に向けて県専門部会でJR東海は説明してほしい。取水抑制による大井川への放流は地域貢献であり、リニア工事中の全量戻しにはならない」と、「全量戻しの解決策ではない」と否定してしまう。) 翌日9日の定例会見で、知事の意向をあらためて確認すると、川勝知事は「全量戻しとはトンネル掘削中に出る水をちゃんと循環させて戻すということで、中間報告の中身とは違う」などあらためて田代ダム取水抑制案は全量戻しにならないと否定した。 静岡県は、いまだに「全量戻し」とは、県外流出した湧水をそのまま戻すことであり、田代ダム取水抑制案は単なる代替策であるという立場を崩していない。 川勝知事は、南アルプスの工事現場視察で、リニア問題の解決へはほど遠い発言を繰り返し、翌日の期成同盟会総会での「スピード感を持った課題解決」とは真逆の発言をしている』、「川勝知事は、南アルプスの工事現場視察で、リニア問題の解決へはほど遠い発言を繰り返し、翌日の期成同盟会総会での「スピード感を持った課題解決」とは真逆の発言をしている」、どちらが本音なのだろう。
・『「リニア騒動」は無駄な時間だった  この2日間だけを見ても、川勝知事がリニアの早期開業の足を引っ張ってきたことは明らかである。 同じ会見で、テレビ静岡の記者が「知事就任以来、13年の間に、中部横断自動車道とか新東名など、鉄道以外でもさまざまな公共工事が行われている。今後、行われる工事に対しても、(県外流出する湧水の)全量戻しを求めていくという理解でよろしいか」とただした。 これに対して、川勝知事は「リニアに関連して、あれが62万人の命の水になっている。しかも、(大井川の水の状況は)カツカツの状態になっているということだから、全量戻しというのは、掘削中に出るすべての水を戻すことだと有識者会議で言っているわけで、全量戻しは(JR東海のリニア工事という)個別具体的な話だ」と答えた。 この発言に対して、記者は「静岡経済新聞の小林氏(筆者)が本(『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太静岡県知事「命の水」の嘘』飛鳥新社)を上梓されて、62万人というのは事実ではなくて、実際は26万人ではないかという記載があった。この本の中には、知事が嘘を述べているという記述もある。(同書を)読んだあと、事実でないということであれば知事は法的措置等を取るのか?」と尋ねた。 川勝知事は「いちいち、いちいちですね、すべてのジャーナリストが書かれたことに対処するという、いまのところはそういうスタンスを持っていない」などと否定した。 その後も、筆者はウェブ記事を中心に川勝知事のさまざまな「嘘」を紹介してきたが、川勝知事から何らかの対応を受けたことはない。 川勝知事による「リニア騒動」はいったい、何だったのか、5年余という、あまりにもムダな時間が流れた。 結局、拙著の題名通り『知事失格』のらく印が押されたまま退場することになった』、「その後も、筆者はウェブ記事を中心に川勝知事のさまざまな「嘘」を紹介してきたが、川勝知事から何らかの対応を受けたことはない。 川勝知事による「リニア騒動」はいったい、何だったのか、5年余という、あまりにもムダな時間が流れた。 結局、拙著の題名通り『知事失格』のらく印が押されたまま退場することになった」、その通りだ。

第三に、4月14日付け文春オンライン「川勝平太知事が「リニア中央新幹線」反対姿勢を強めた2013年に何があったのか「JR東海は本当にやってくれるのか」という不信の始まりは…」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/70207
・『リニア中央新幹線の構想は、全国新幹線鉄道整備法に基づき、1973年に「基本計画路線」としてリストアップされたことに始まる。起点は東京都、終点は大阪市で、主な経由地は甲府市、名古屋市、奈良市だ。  JR東海が発足する1987年よりも前のことだから、日本鉄道建設公団が建設し、国鉄が営業主体になる計画だった。しかし国鉄の赤字問題の影響で整備計画が作られないまま、構想は塩漬け状態にあった』、「JR東海が発足する1987年よりも前のことだから、日本鉄道建設公団が建設し、国鉄が営業主体になる計画だった。しかし国鉄の赤字問題の影響で整備計画が作られないまま、構想は塩漬け状態にあった」、なるほど。
・『JR東海が「自己資金でやります」と手を挙げて動き出した   国鉄が分割民営化され、JRグループが発足したあと、東北新幹線の盛岡~新青森間、北陸新幹線、九州新幹線などの計画は再開されたが、国の財源が足りないため開通まで時間がかかった。  これらの新幹線が開通しないと、次の新幹線に着手できない。だから中央新幹線はずっと待たされていた。それにしびれを切らしたJR東海が「自分でやります。自己資金でやります」と手を挙げたことで計画は動き出した。  JR東海が中央新幹線を急ぐのには2つ切実な理由があった。  1つは東海道新幹線の輸送量がパンクしかけていたこと。東名阪の移動需要が旺盛で、「のぞみ」を増発しても追いつかない。なんとか1時間にのぞみ12本を運行する「のぞみ12本ダイヤ」までたどり着いたけれど、これが増発の限界だ。「ひかり」や「こだま」も増やしたいところだが、「のぞみ」が優先されていた。  もう1つは、東海道新幹線の老朽化だ。開業から半世紀が過ぎて、トンネルや鉄橋などの構造物は抜本的な点検、改修が必要になってきた。国鉄時代にも水曜日などに半日運休を実施して若返り工事を実施していたが、昨年の災害運休の後に起きた大混雑を見れば判るように、もはや半日運休にすることすら許されない輸送量なのだ。  南海トラフ地震を視野に入れた耐震工事も含め、必要によっては鉄橋の架け替えも必要になる。そうなれば半日ではすまない。日本で最も速い鉄道を振替輸送する鉄道は存在しない。だから、新たに作らなくてはいけない』、「これらの新幹線が開通しないと、次の新幹線に着手できない。だから中央新幹線はずっと待たされていた。それにしびれを切らしたJR東海が「自分でやります。自己資金でやります」と手を挙げたことで計画は動き出した・・・2つ切実な理由があった。  1つは東海道新幹線の輸送量がパンクしかけていたこと。東名阪の移動需要が旺盛で、「のぞみ」を増発しても追いつかない。なんとか1時間にのぞみ12本を運行する「のぞみ12本ダイヤ」までたどり着いたけれど、これが増発の限界だ。「ひかり」や「こだま」も増やしたいところだが、「のぞみ」が優先されていた。  もう1つは、東海道新幹線の老朽化だ。開業から半世紀が過ぎて、トンネルや鉄橋などの構造物は抜本的な点検、改修が必要になってきた。国鉄時代にも水曜日などに半日運休を実施して若返り工事を実施していたが、昨年の災害運休の後に起きた大混雑を見れば判るように、もはや半日運休にすることすら許されない輸送量なのだ」、なるほど。
・『最初の不幸は、JR東海が建設まで引き受けたこと   リニア中央新幹線の静岡工区がここまでこじれた原因の1つは、「建設主体がJRTT鉄道・運輸機構(独立行政法人 鉄道建設・運輸施設整備支援機構)ではなかったから」だと思う。  中央新幹線は国の基本計画路線であり、国策である。だからJR東海が建設したとしても民間事業ではない。国が、建設主体としてJR東海を指名したという形をとる。  過去の新幹線は建設主体が鉄建公団(現・JRTT鉄道・運輸機構)で、JR各社が営業主体を担っていた。しかし中央新幹線は建設主体もJR東海が担った。じつはこれがボタンの掛け違いの始まりだ。  整備新幹線の建設は、自治体の強い要請を受けて政府が決定し、地方自治体の財源確保や並行在来線分離などの条件を満たし、環境アセスメント手続きを経てRJTT鉄道・運輸機構が着工する。  しかしリニア中央新幹線は、環境アセスメント手続きが終わったらすぐに着工だ。実際には設計を発注し、建設会社が工事に携わる。  JRTT鉄道・運輸機構の役割がJR東海に替わっただけのように見えるが、JRTT鉄道・運輸機構が持っていた新幹線建設のノウハウの中で最も大きな要素は沿線自治体とのコミュニケーションだ。  鉄道建設業界関係者からこんな話を聞いた。 トンネル建設現場から残土が出る。トラックがバンバン通る。それは困るという自治体があるわけです。そんなとき、鉄建公団(当時)は地元とよく話し合って、ダンプのすれ違い場所や警備員の配置など決めた。なるべく予算を抑え、地元も納得する形をとってきた。しかしJR東海は、では道路を拡幅しましょうと言ってすぐ実行する。スピード感があるし、地元としても広い道路が残る。結果としては良いのだけれども、お金で解決して地元を納得させるというやりかたになっている」  地元とのコミュニケーションが希薄なまま工事を進めようとする反動がもっとも大きく出た場所が静岡工区といえる。環境アセスメントが終わってから着工までには、河川や道路などについて地域の自治体から許可をもらう必要がある。鉄建公団には「地域を説得する」という地道な努力とノウハウがあったが、残念ながら新幹線建設が初めてのJR東海にはその知見がなかった。  いままでの整備新幹線が、環境アセスメントが終わればスムーズに着工できたのは、鉄建公団~JRTT鉄道・運輸機構の実績と信頼による。  残土問題や、川や地下水の水涸れ問題は今までもあったが、地元と話し合って、自治体と共同して補償もしてきた。西九州新幹線の時も渇水が起きたが、トンネルからの導水管や新たな井戸を掘って水田に放水している。その実績と信頼があった。  しかしJR東海は地元との対話が少なく、新幹線を作った実績がないので信用度も低い。静岡県の心配は「本当にやってくれるのか」という点だった』、「JR東海は、では道路を拡幅しましょうと言ってすぐ実行する。スピード感があるし、地元としても広い道路が残る。結果としては良いのだけれども、お金で解決して地元を納得させるというやりかたになっている」  地元とのコミュニケーションが希薄なまま工事を進めようとする反動がもっとも大きく出た場所が静岡工区といえる。環境アセスメントが終わってから着工までには、河川や道路などについて地域の自治体から許可をもらう必要がある。鉄建公団には「地域を説得する」という地道な努力とノウハウがあったが、残念ながら新幹線建設が初めてのJR東海にはその知見がなかった。  いままでの整備新幹線が、環境アセスメントが終わればスムーズに着工できたのは、鉄建公団~JRTT鉄道・運輸機構の実績と信頼による。  残土問題や、川や地下水の水涸れ問題は今までもあったが、地元と話し合って、自治体と共同して補償もしてきた。西九州新幹線の時も渇水が起きたが、トンネルからの導水管や新たな井戸を掘って水田に放水している。その実績と信頼があった。  しかしJR東海は地元との対話が少なく、新幹線を作った実績がないので信用度も低い。静岡県の心配は「本当にやってくれるのか」という点だった」、「JR東海」には、「鉄建公団」のような「ノウハウ」がなく、「地元との対話が少なく」、「新幹線を作った実績がないので信用度も低い。静岡県の心配は「本当にやってくれるのか」という点」、なるほど。
・『静岡県の態度が頑なになった決定的なタイミング   静岡県が頑なになったのは、JR東海が2013年の環境影響評価準備書で「トンネルの湧水により、大井川上流域の水は毎秒2立方メートル減少する」と公表してからだ。トンネルによって湧水が発生し、大井川の水が減る。民間企業のJR東海が本当に補償してくれるのか、と不安になったのだ。川勝知事は知事意見として、「静岡県内で発生した水はすべて大井川に戻すこと」と附した。  約2年後、JR東海は解決策として毎秒1.3立方メートルを導水路トンネルで戻し、残りは必要に応じてポンプアップで戻すとした。  JR東海は「水利用に影響が生じた場合にその影響の程度に応じて代替水源の確保などの環境保全措置を実施する予定です」「トンネル内湧水を汲み上げて、非常口から大井川に戻すのも一つの選択肢と考えています」と、減った水量に応じて対応する姿勢だった。  しかし川勝知事は「県民の命の水だ。全量を戻せ」と再度主張した。  しかも「一滴たりとも」と、まるで戯曲「ヴェニスの商人」のようなことを言う。それにJR東海も、売り言葉に買い言葉のように「全量戻す」と約束した。もともと環境影響評価はそうなっている。  しかし静岡県側はこれで収まらない。ポンプの数と位置を説明しろ、本当にそこに置けるのか、など根掘り葉掘り問いただした。その中には「将来、リニア中央新幹線が廃線になったらどのように埋め戻すのか」など、行きすぎた項目もあった。完全に「JR東海の言うことは信用できない」という態度だ。  ただJR東海の回答書も、お世辞にもわかりやすいものとは言えなかった。表計算ソフトのセルにびっしりと文字を並べた書類を非専門家が読み解けるかは不明だ。  もし建設主体がJRTT鉄道・運輸機構ならば、事前に手厚く説明をして、ここまでこじれてはいなかっただろう。  国が東海道新幹線の限界を把握し、もっと早く中央新幹線に着手していれば、JR東海が直接建設することはなかったし、静岡県とこじれることもなかっただろう。その意味では国にも責任がある』、「国が東海道新幹線の限界を把握し、もっと早く中央新幹線に着手していれば、JR東海が直接建設することはなかったし、静岡県とこじれることもなかっただろう。その意味では国にも責任がある」、「国にも責任がある」とは初めて知ったが、正論だ。

第四に、4月14日付け文春オンラインが掲載した杉山 淳一氏による「川勝平太知事の辞任で「静岡県vs.JR東海」の対決構図は終わるのか 反リニア新幹線で固めた「専門家会議問題」も…」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/70207
・『リニア新幹線問題を考えるうえで重要なのは、川勝平太知事のJRとの対決姿勢が一定程度静岡県民に支持されていたという事実だろう。  筆者の友人の静岡県出身者によると、静岡県民のJR東海に対する好感度は他県よりも低いようだ。「のぞみを静岡に停めてほしい」「東海道新幹線に静岡空港駅を作ってほしい」という要望をJR東海は却下していたことが理由だという』、「静岡県民のJR東海に対する好感度は他県よりも低いようだ。「のぞみを静岡に停めてほしい」「東海道新幹線に静岡空港駅を作ってほしい」という要望をJR東海は却下していたことが理由」、「川勝知事」の反対の背後には県民の支持があったとは初めて知った。
・『「静岡県vs JR東海」という構図での煽りあいが勃発   のぞみの静岡停車については、「のぞみ通行税」としても話題になった。2002年の静岡県議会で「通過するだけののぞみとひかりの乗車人数に応じて地方税を課したらどうか」という議論があり、当時の石川嘉延静岡県知事が「検討に値する」と答弁したのだ。  静岡空港駅の地下を通る東海道新幹線に駅を設置する運動も県をあげて実施し、調査予算も計上していた。  静岡県内には熱海、三島、新富士、静岡、掛川、浜松と6つの新幹線停車駅があり、沿線都府県でもっとも多い。すでに東海道新幹線に優遇された県ともいえる。しかし需要バランスも均衡しており、どれか1つを主要駅としてまとめられないという事情があり、JR東海はリニア中央新幹線の開通後は東海道新幹線の静岡県駅停車を増やすと説明している。  しかし静岡空港駅はJR東海にとって需要がない。そもそも、運営がうまくいっていない静岡空港駅を活性化するために生まれた案であり、JR東海の責任はない。  川勝知事は、静岡空港を首都圏の第三空港にしたいと発言したことがある。成田、羽田につぐ首都圏の第三空港となれば、国の支援も受けやすくなることを見越してのことだろう。そしてそのためには、東海道新幹線の駅を作って東京へのアクセスを良くしたい、ということだ。  とはいえJR東海から見れば、静岡県が首都圏第三空港になってから新幹線の駅を作るかを検討したいところだろう。そこで話は止まっていた。  静岡県民の中にうっすらとあった「JR東海が言うことを聞いてくれない」という感情を知っているからこそ、地元紙の静岡新聞は“県民の側”に立ち、専用のSNSアカウントまで作ってJR東海批判を繰り広げた。  大井川の水量問題は、静岡県の「命の水」の危機として対立を煽る報道は全国紙やテレビなどに伝播し「静岡県vs JR東海」の構図は鮮明になっていった』、「川勝知事は、静岡空港を首都圏の第三空港にしたいと発言したことがある。成田、羽田につぐ首都圏の第三空港となれば、国の支援も受けやすくなることを見越してのことだろう。そしてそのためには、東海道新幹線の駅を作って東京へのアクセスを良くしたい、ということだ。  とはいえJR東海から見れば、静岡県が首都圏第三空港になってから新幹線の駅を作るかを検討したいところだろう。そこで話は止まっていた・・・大井川の水量問題は、静岡県の「命の水」の危機として対立を煽る報道は全国紙やテレビなどに伝播し「静岡県vs JR東海」の構図は鮮明になっていった」、なるほど。
・『知事の真のゴールはリニア新幹線が「静岡県内を通らないこと」   いま思えば、川勝知事にとっての真のゴールは「静岡県内を通らないこと」だったのだろう。だからこそ「リニア中央新幹線には賛成の立場」なのだ。しかしJR東海から良い返事がなければ国土交通省へ要請し、国土交通省が要求を蹴れば環境省へ赴く。そうやって実際の工事はどんどん遅れていった。  静岡県の働きかけに応じて、国土交通省はリニア中央新幹線の「水問題」「生物環境問題」について「有識者会議」を立ち上げた。当初は国もJR東海に対して「きちんと説明するように」と指示していたが、それでは収まらないという判断だ。  2020年から13回にわたる長い議論の末、水問題に関しては「JR東海の考え方、対処によって中流下流域に影響なし」という「中間報告」を出した。ちなみに中間報告は行政用語で「議論終了」を意味する。 「生物環境問題」も有識者会議によって、22年6月8日から14回にわたり検討された。該当地域の生物環境は地下水ではなく地表から浅いところの表層水で維持されていることがわかった。  ただし、自然環境は「なにがおきるかわからない」不確実性があるため、35の沢のうちトンネルと交差する11の沢を選び、トンネル側に水が流出しないように凝固剤で固めることとした。その上で、定期的に現地調査を行う「順応的管理」を実施する。これは遠隔モニターではなく、実際に登山して調査するという。これも決着である。  最後の「トンネル掘土」の置場について、JR東海は山中の3カ所を選定した。土地所有者とも合意済みで、山奥のためダンプカーが人里を走ることもない。重金属など毒性のある成分を含む「要対策土」は遮水シールドで密封する。また、降雨時は排水をまとめて水質を検査し、基準を満たす水を川へ流す。  この対策について静岡市の難波喬司市長も「JR東海の設置方法で概ね問題ない」と表明した。難波氏は、国土交通省で港湾局災害対策室長を務めた技術官僚出身である。  川勝知事は「その場所は深層崩壊の懸念がある」と反発したが、難波市長は「盛り土はむしろ下流域への崩壊を防ぐ。大規模な土砂崩れの予測と対策は河川管理者の県の責任」でありJR東海は責任を負わないという見解を示した。そもそも鉄道の盛り土は「ただの土砂捨て場」ではない。東海道新幹線だって盛土の部分はたくさんある。盛り土は鉄道技術による「建築物」なのだ。  これで静岡県が懸念する「水問題」「環境問題」「盛り土問題」は解決したことになる』、「国土交通省はリニア中央新幹線の「水問題」「生物環境問題」について「有識者会議」を立ち上げた。当初は国もJR東海に対して「きちんと説明するように」と指示していたが、それでは収まらないという判断だ。  2020年から13回にわたる長い議論の末、水問題に関しては「JR東海の考え方、対処によって中流下流域に影響なし」という「中間報告」を出した。ちなみに中間報告は行政用語で「議論終了」を意味する・・・静岡市の難波喬司市長も「JR東海の設置方法で概ね問題ない」と表明した。難波氏は、国土交通省で港湾局災害対策室長を務めた技術官僚出身である。  川勝知事は「その場所は深層崩壊の懸念がある」と反発したが、難波市長は「盛り土はむしろ下流域への崩壊を防ぐ。大規模な土砂崩れの予測と対策は河川管理者の県の責任」でありJR東海は責任を負わないという見解を示した。そもそも鉄道の盛り土は「ただの土砂捨て場」ではない。東海道新幹線だって盛土の部分はたくさんある。盛り土は鉄道技術による「建築物」なのだ。  これで静岡県が懸念する「水問題」「環境問題」「盛り土問題」は解決したことになる」、なるほど。
・『反リニア中央新幹線で固めた専門家会議の行方は…   しかし静岡県は国の有識者会議の結論を受けて「2019年に提出したJR東海との対話を要する事項47項目のうち、30項目が終わっていない」とし、引き続き県が独自に結成した専門家会議で議論すると主張した。これでは甲子園で優勝校が決まったのに、もう一度地方予選をやらないと結果を認めないというようなものだ。あるいは、最高裁で判決が出たのに、もういちど地方裁判所に訴えるというべきか。  しかし、川勝知事の突然の辞任によって静岡県庁はハシゴを外された形になった。こんどは静岡県庁の引っ込みが付かない。反リニア中央新幹線で固めた専門家会議をどうクリアしていくかは今後の課題になる。  国の有識者会議の検討と同時期に、JR東海は大井川流域の人々に説明会を開いて事業への理解を求めていた。もっと早くやっておくべきだったとも言えるが、川勝知事が2018年に「JR東海との交渉を知事戦略室に集約する」として、JR東海と流域の直接対話を禁じていた経緯もある。説明会の後、流域の自治体は少しずつJR東海に理解を示し、「県は情報を伝えてくれなかった」「県の話とは違う」という声が出始めていた。  この頃から、川勝知事の不規則な発言が増えている。「静岡工区だけが遅れているわけではない。他の工区も遅れている」と神奈川県を批判して神奈川県知事に反論されたこともある。確かに他の工区も遅れているが、静岡工区は「着工できていない」状態だ。この差は大きい。  リニア中央新幹線の部分開業について、JR東海などは東京~名古屋間を指しているけれども、川勝氏は東京~甲府間を指し「JR東海も部分開業と言っている」と発言した。国のモニタリング会議は有識者会議の状況を確認する会議であるところ、川勝氏は「JR東海の素行をモニタリングする」ような勘違いと思われる発言もした。もはや報道する側も川勝知事の本意がつかめない様子だった。 長く鉄道取材を続けてきた人間として、静岡県はリニア中央新幹線の着工の可否という段階を終わらせて、補償の形を詰める段階に入るべきだと思う。川勝知事の後を決める選挙で、候補者にはぜひ国の有識者会議の結果を受け入れるか、反発を続けていくかを明確にして県民の意見を問うてほしいものだ。  選挙で静岡県民がどのような判断をするかはともかく、次の静岡県知事は、川勝氏より話が通じる人であってほしいと願わずにはいられない』、「JR東海は大井川流域の人々に説明会を開いて事業への理解を求めていた。もっと早くやっておくべきだったとも言えるが、川勝知事が2018年に「JR東海との交渉を知事戦略室に集約する」として、JR東海と流域の直接対話を禁じていた経緯もある。説明会の後、流域の自治体は少しずつJR東海に理解を示し、「県は情報を伝えてくれなかった」「県の話とは違う」という声が出始めていた・・・川勝知事の後を決める選挙で、候補者にはぜひ国の有識者会議の結果を受け入れるか、反発を続けていくかを明確にして県民の意見を問うてほしいものだ。  選挙で静岡県民がどのような判断をするかはともかく、次の静岡県知事は、川勝氏より話が通じる人であってほしいと願わずにはいられない」、その通りだ。

第五に、4月15日付け東洋経済オンライン「静岡リニア「開業10年遅れ」JR東海の経営大丈夫? 突然辞任、川勝知事の「置き土産」が及ぼす影響」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/747607
・『静岡県の川勝平太知事が4月10日、県議会の中沢公彦議長に辞表を提出した。1日、県庁の新入職員への訓示で職業差別と取られかねない発言をしたことが辞任の引き金となったが、3日の辞任会見や10日の定例記者会見では、「リニア中央新幹線の問題に一区切りついた」ことも辞任の理由の1つに挙げた』、興味深そうだ。
・『リニア問題「一区切り」とは?  「一区切り」とは何を指すのか。川勝知事が静岡工区の着工を認めない根拠の1つとしてきた南アルプスの生物多様性への影響などについて、県は「47項目のうち30項目で対話が終わっていない」としているので、この問題ではない。「一区切り」とは、3月29日に国土交通省で開催されたモニタリング会議でJR東海の澤田尚夫常務執行役員が「静岡工区の着工から開業まで10年程度かかる」と説明したことだ。今すぐ着工しても品川―名古屋間の開業は2034年となる。さらに、矢野弘典座長から静岡工区の工事の進め方について問われると、高速長尺先進ボーリングに3~6カ月、工事ヤードの整備に6カ月、トンネル掘削工事に10年程度、ガイドウェイ設置工事などについて2年程度かかるという見方を示した。 この発言を受け、川勝知事は3日の会見で「2027年というくびきが外れた。JR東海の事業計画は根本的に崩れた。今から工事を始めても13年弱かかり、静岡工区の完了は2037年になる」と話した。どうやら、JR東海が2027年開業という旗印を下ろしたことをもって、一区切りついたと考えているようなのだ。) ただ、本当にそれが目的であれば、JR東海は2020年6月に2027年の開業が間に合わないことを実質的に認めている。そもそもJR東海は2017年11月に静岡工区の工事契約を締結し、この時点で着工から開業まで10年という見方を示していた。その後、2020年6月に「今月中の着工が2027年開業のギリギリのタイミング」として、川勝知事にトンネル工事の前段階としてヤード整備の許可を願い出た。本来なら全体の工事は10年かかるところ、人材や機材をやりくりしてすべての工程が順調に進めば2027年に間に合う可能性があると判断したためだ。しかし、この提案は拒否され、2020年6月の時点で2027年開業は事実上不可能となった。 2023年12月、JR東海は「2027年」とされていた品川―名古屋間の開業時期を「2027年以降」に変更することを国土交通省に申請し認可を得た。開業が遅れることが「事実上」ではなく、正式に決まった。 川勝知事はこの時点で「JR東海は旗印を下ろした」と宣言してもよかった。しかし、JR東海は具体的な開業時期について明示しなかった。静岡工区がいつ着工できるかわからない以上、明示しないのは当たり前なのだが、なぜか川勝知事は「以降」と書いてあるのだから、「2027年開業の旗印を下ろしていない」と受け止めた。今回、「今から始めても10年かかる」という発言で、川勝知事はようやく「一区切りついた」と納得した』、「今回、「今から始めても10年かかる」という発言で、川勝知事はようやく「一区切りついた」と納得した」、なるほど。
・『工事「13年弱」JR東海は否定  以上のことからわかるとおり、3月29日のJR東海の発言は川勝知事が「一区切り」というほど重要なものでもない。JR東海は「今から工事を始めても10年」の根拠について、2017年時点の計画をそのまま適用しているにすぎない。2020年6月の段階では7年に短縮できる可能性があると考えていたが、長野県内や山梨県内の工事の状況から判断すると現在では短縮は難しいとしている。さらに、川勝知事がそれぞれの手順を単純に足して13年弱としていることについては「並行して進めることができる作業もあるため実際には10年程度」としており、川勝知事の13年という発言を否定している。 静岡のせいでリニア開業が遅れるという批判をかわすため、川勝知事は神奈川県駅(仮称)と山梨県駅(仮称)の間を先行開業させる構想を唱えてきた。リニア問題は一区切りついたと主張する川勝知事に対し、「部分開業させることが目的ではなかったのか」という質問が10日の会見で報道陣から出た。 川勝知事は「私が勝手に言っているわけではない」として、2010年5月に開催された国のリニア中央新幹線小委員会でJR東海が「(神奈川県駅と山梨県駅の間にある山梨リニア)実験線の延伸完成から間断なく(品川―名古屋間の工事に)着手することが重要」と説明していることを踏まえ、「延伸完成とは駅と駅がつながって営業できるようになることを指す」と述べ、部分開業はJR東海のアイデアだとした。しかし、実験線の延伸完成とは2008年に工事が始まり2013年に完成した42.8kmへの延伸工事のことである。この点でも川勝知事の発言は正しくない。 それはさておき、南アルプスの生物多様性の議論を道半ばで放り出し、矢野座長に後を任せるという。では、矢野座長が川勝知事の意に沿う形でモニタリング会議を進めるのだろうか。さすがにそれは考えにくい。NEXCO中日本の元会長として実務経験を持つ矢野座長は3月29日のモニタリング会議でも「小異を捨てて大同につくという精神で進めてほしい」と発言している。小異というのが県が協議が必要と主張する30項目であるのは明らかだ。 川勝知事の辞任に合わせるかのように、県の専門部会が12日、昨年10月以来半年ぶりに開催された。後任知事の意向次第では今後の議論の方向が着工容認に傾く可能性もある。 では、南アルプスの環境などの問題ではなく、JR東海が事業計画を変更したことをなぜ「一区切りついた」というのだろう。その理由として1つ思い当たるのが、富士山静岡空港をめぐる川勝知事とJR東海の確執だ。リニア計画決定前の2010年7月、ルートや経済効果などを検討する国の会議に川勝知事が参加し、東海道新幹線が富士山静岡空港の真下を通っていることを踏まえ、空港に隣接した新駅を設置する提案を行った。2011年5月に同会議がまとめた報告書には東海道新幹線の「新駅設置の可能性」について触れられていた。場所についての記載はないが、川勝知事はリニアが開業すれば空港の真下に新駅ができると信じた』、「南アルプスの生物多様性の議論を道半ばで放り出し、矢野座長に後を任せるという。では、矢野座長が川勝知事の意に沿う形でモニタリング会議を進めるのだろうか。さすがにそれは考えにくい。NEXCO中日本の元会長として実務経験を持つ矢野座長は3月29日のモニタリング会議でも「小異を捨てて大同につくという精神で進めてほしい」と発言している。小異というのが県が協議が必要と主張する30項目であるのは明らかだ・・・リニア計画決定前の2010年7月、ルートや経済効果などを検討する国の会議に川勝知事が参加し、東海道新幹線が富士山静岡空港の真下を通っていることを踏まえ、空港に隣接した新駅を設置する提案を行った。2011年5月に同会議がまとめた報告書には東海道新幹線の「新駅設置の可能性」について触れられていた。場所についての記載はないが、川勝知事はリニアが開業すれば空港の真下に新駅ができると信じた」、なるほど。
・『知事が示した「リニア工事の代償」  川勝知事は空港新駅設置に向け、2015年6月から有識者からなる技術検討委員会をスタートさせた。新駅完成後は県庁の一部機能を空港近くに移転する案まで飛び出した。しかし、JR東海は空港新駅構想には一貫して否定的であり、川勝知事のリニアに対する姿勢も次第に硬化。業を煮やした川勝知事は2016年9月の県議会答弁で、「リニアと既存の新幹線との関係にも念頭を置きながら、JR東海が静岡県のために何ができるか」と発言し、新駅とリニア問題をセットにしてJR東海に働きかけを行っていく意向を示した。それもうまくいかず、その結果が、2017年10月の突然の反対表明である。 2019年6月の定例会見では川勝知事は「リニア工事は静岡県にまったくメリットがなく、工事を受け入れるための“代償”が必要」と発言、具体的な代償の内容について「各県の駅建設費の平均くらいの費用が目安になる」と言い切った。2019年の時点でもまだ新駅にこだわっていたのだ。空港新駅計画をつぶされた腹いせがリニアの事業計画変更という筋書き。このように両者を結びつけるのは、やや強引だろうか。 4月4日、JR東海はリニアに関する今後の発注見通しを発表した。そこには山梨県駅の新設工事の工期が約80カ月、飯田市内に建設される高架橋の工期が約70カ月となっている記載があった。今すぐ契約を締結して工事に着手したとしても工事完了の時期は2030〜2031年ということになる。川勝知事にしてみれば「ほかの工区でも工事が遅れていることが証明された」ということになるが、これも正しい見方とはいえない。静岡工区の完成が遅れることがはっきりした以上、ほかの工区を無理して2027年に完成させる必要はないのだ。) むしろ気になるのは、リニアの開業遅れがJR東海の経営に与える影響だ。 短期的・中期的にはまったく影響ないどころか、財務面ではプラスとなる。東海道新幹線の収益力は高い。コロナ禍前の2018年度におけるJR東海の運輸セグメントの業績は売上高1兆4613億円に対して営業利益は6648億円だった。売上高営業利益率は45.4%である。ここから在来線の収支を差し引いた東海道新幹線の利益率がさらに高いことは、容易に想像できる。 コロナ禍の影響が残る2023年度の業績予想においても運輸セグメントの売上高1兆3670億円、営業利益4980億円。リニア計画を作成した時点の運輸セグメントの収支見通し(2006〜2010年度業績予想の5年平均)は売上高1兆2049円、営業利益3485億円なので、リニア開業前の収支想定を大きく上回っている。今後コロナ禍の影響が減れば収支は2018度の実績に近づいていく。収支が想定を上回っているだけでなく、リニア開業が10年遅れれば、JR東海は東海道新幹線で得た利益を内部留保する期間が10年延びる。2008年度から2018年度の10年間でJR東海の利益剰余金は2兆円以上増えた。今後もそのペースで蓄積できれば、財務面での安定性は増す』、「リニアの開業遅れがJR東海の経営に与える影響だ。 短期的・中期的にはまったく影響ないどころか、財務面ではプラスとなる。東海道新幹線の収益力は高い・・・リニア計画を作成した時点の運輸セグメントの収支見通し・・・は売上高1兆2049円、営業利益3485億円なので、リニア開業前の収支想定を大きく上回っている。今後コロナ禍の影響が減れば収支は2018度の実績に近づいていく。収支が想定を上回っているだけでなく、リニア開業が10年遅れれば、JR東海は東海道新幹線で得た利益を内部留保する期間が10年延びる。2008年度から2018年度の10年間でJR東海の利益剰余金は2兆円以上増えた。今後もそのペースで蓄積できれば、財務面での安定性は増す」、開業の遅れれば、「東海道新幹線で得た利益を内部留保する期間が10年延びる」、「JR東海」にとっては好ましい結果だ。
・『「開業10年遅れ」が生む懸念  しかし、長期的には話が違ってくる。リニアが開業すれば工事費用の減価償却が始まる。品川―名古屋間だけで約7兆円の工事費がかかる。車両や橋梁など固定資産の種類によって償却期間はさまざまだが、仮に全額をトンネルの税務上の耐用年数である60年で定額償却すれば毎年1166億円の減価償却費が発生する。そのため、リニア開業前の利益水準を下回る可能性がある。その後は名古屋開業後に連続して行われる名古屋―新大阪間の工事費用の減価償却が控えている。これらの点はリニアの事業計画に織り込み済みだが、想定外の事態としては開業が10年遅れると、総額3兆円の財政投融資の返済時期と重なってしまう。 返済期限は2055年から2056年にかけて。JR東海は「10年程度かけて返済する」としており、2046年頃から返済を始める計画だ。本来のスケジュールであれば2046年とは大阪開業から9年経ち、経営が安定している時期である。しかし、開業が10年以上遅れた場合、開業直前の資金需要が増える時期と財政投融資の返済時期が重なる可能性がある。この点についてJR東海に問い合わせると、「返済額は金融機関からの借り換えなどで対応し、健全経営と安定配当を堅持する」と回答した。 さらに怖いのは、東京―名古屋―大阪という日本の大動脈輸送の二重系化の完成が遅れることだ。リニアが完成しないことには東海道新幹線は長期間にわたる部分運休を伴う大規模な改修工事は難しいし、リニアの完成前に大規模な大災害が発生して東海道新幹線が寸断されれば、JR東海の収入は激減する。最悪の場合、それが借り換え計画に影響を及ぼす可能性するある。JR東海としては、川勝知事の「手柄」であるリニア開業10年遅れの間に巨大災害が起きないことを祈るばかりであろう』、「さらに怖いのは、東京―名古屋―大阪という日本の大動脈輸送の二重系化の完成が遅れることだ。リニアが完成しないことには東海道新幹線は長期間にわたる部分運休を伴う大規模な改修工事は難しいし、リニアの完成前に大規模な大災害が発生して東海道新幹線が寸断されれば、JR東海の収入は激減する。最悪の場合、それが借り換え計画に影響を及ぼす可能性するある。JR東海としては、川勝知事の「手柄」であるリニア開業10年遅れの間に巨大災害が起きないことを祈るばかりであろう」、その通りだ。

第六に、4月21日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの宮原 健太氏による「自民党がさらなる窮地へ…? 川勝知事の後任選挙の「驚きの実態」 明らかになってきた調査結果」を紹介しよう。
・『与野党対決の選挙  「野菜を売ったり、牛の世話をしたり、モノを作ったりとは違って、皆様方は頭脳、知性の高い方たちです」 新年度早々、静岡県庁の新入職員に対する訓示で、とんでもない職業差別的な発言をして電撃辞職することとなった川勝平太知事。 5月9日告示、26日投開票と短期決戦で行われる知事選を巡っては、4月18日に自民党が元副知事の大村慎一氏を、立憲民主党と国民民主党が元浜松市長の鈴木康友氏を推薦する方針を固め、与野党対決の構図が決まった。 永田町では自民と立憲が知事選に向けて実施した情勢調査の内容が出回っている。 自民党が実施した調査によると鈴木氏が39.9ポイントを獲得し、大村氏の29.3ポイントから10ポイント以上リード。 立憲が実施した調査でも鈴木氏が28.2ポイントを獲得し、大村氏の20.9ポイントに対して差をつけている。 調査結果を見て永田町関係者は「もともと衆議院議員や浜松市長を歴任してきた鈴木氏が知名度で優っている分、数字が良く出ているのだろう」と分析した。 一般的に短期決戦で行われる選挙では、すでに地域に浸透している知名度の高い候補が有利となる。 今回の発言があった当初、川勝氏は6月議会冒頭で辞職する意向を示していたが、「県政の空白を短くする」として辞表提出を4月10日に前倒し。 その背景には、知事選の投開票までの期間を短くすることで、鈴木氏が有利になるよう取り計らったという事情もあったという。) こうした舞台作りのために働きかけたとされているのが、浜松市に本社を置くスズキの相談役、鈴木修氏だ。 「鈴木修氏は川勝氏や鈴木康友氏を支援してきており、自身の意中の人物が次の知事となるように調整したのだろう」と永田町関係者は語る。 それに対して自民は大村氏側に付き、非自民として活動してきた川勝氏なきあとの知事の座奪還を目指す。 自民県連の増田享大幹事長は4月18日、大村氏を支援する理由について「全県的な視点で課題を捉えている」と話したが、浜松市の地域色がついている鈴木氏よりも、大村氏のほうが県内全域からの支持が得やすいと踏み、形勢逆転を目指していく戦略のようだ。 もし自民が「全敗」したら… 急転直下の辞任劇から、5月投開票という短期決戦となった静岡県知事選。 与野党対決となったことを受けて、4月28日投開票の衆院3補選に続いて、岸田政権の求心力や、与野党の力関係を測るバロメーターとしても機能することになりそうだ。 もし、自民党が3補選で全敗を喫し、静岡県知事選でも敗れることとなれば、岸田政権にとっては大きな痛手となり、国政運営や解散戦略、今年9月の自民党総裁選にも影響が生じ得るだろう。 奇しくも静岡県は、自民党を揺るがす裏金問題において、安倍派座長として離党勧告を受けた塩谷立衆院議員のお膝元でもある。 地域の課題に加えて、国政の問題も様々問われる中で、静岡県民はどちらの候補を選ぶか判断を迫られることとなる。 さらに【つづき】「自民党がいよいよ窮地へ…ナンバー2・茂木幹事長がついに口にした「驚愕のひと言」」の記事では、自民党がいま迎えている大きな危機について報じている』、「自民党が元副知事の大村慎一氏を、立憲民主党と国民民主党が元浜松市長の鈴木康友氏を推薦する方針を固め、与野党対決の構図が決まった・・・自民党が実施した調査によると鈴木氏が39.9ポイントを獲得し、大村氏の29.3ポイントから10ポイント以上リード。 立憲が実施した調査でも鈴木氏が28.2ポイントを獲得し、大村氏の20.9ポイントに対して差をつけている」、「鈴木康友氏」のリニア問題への姿勢はまだ不明だが、「スズキの相談役、鈴木修氏」がバックにいるようなので、少なくとも中立だろう。「JR東海」としては一安心だろう。
タグ:(その10)(川勝知事知事6題:川勝知事がリニア問題の解決策などすべて放り投げて辞職…そのヤバすぎる「正体」、川勝知事が残した“最悪の置き土産”…意味のなかった「リニア騒動」の全貌、川勝平太知事が「リニア中央新幹線」反対姿勢を強めた2013年に何があったのか、静岡リニア「開業10年遅れ」JR東海の経営大丈夫? 突然辞任、川勝知事の「置き土産」が及ぼす影響、自民党がさらなる窮地へ…? 川勝知事の後任選挙の「驚きの実態」) 小林 一哉氏による「静岡・川勝知事がリニア問題の解決策などすべて放り投げて辞職…そのヤバすぎる「正体」」 リニア新幹線 現代ビジネス 「2018年夏から、静岡県とJR東海との『対話』が始まったが、現在まで何らの進展も見られない」、そんなに長く続いているとは、改めて問題の深刻さを再認識した。 「リニア問題に関してこれを放り出すことはできない。どのような道筋が描けるか、これが本県にとって重要課題だ。国のリニア静岡工区モニタリング会議座長の矢野(弘典)さんを信じている。まかせられる。モニタリングは、工事の日程、事業計画と不可分であるというのが矢野さんの意見だ。ここでやっていければいい。矢野さんにバトンタッチできる」 などと何度も矢野座長の名前を挙げた」、「矢野座長」の考え方はどうなのだろう。 小林 一哉氏による「川勝知事が残した“最悪の置き土産”…意味のなかった「リニア騒動」の全貌 『知事失格』のらく印が押されたまま」 「塩坂委員が「畑薙山断層帯は非常に弱い地層であり、大量の突発湧水が出る恐れがある」などと警告した。 塩坂委員は、トンネル建設予定地の断層は「背斜構造となっていて力の掛かり具合が複雑であり、地下水枯渇の恐れがある」などの持論を披露して、地下トンネル建設に強い疑問を投げ掛けた。これが県専門部会委員の役割」、なるほど。 「川勝知事は、南アルプスの工事現場視察で、リニア問題の解決へはほど遠い発言を繰り返し、翌日の期成同盟会総会での「スピード感を持った課題解決」とは真逆の発言をしている」、どちらが本音なのだろう。 「その後も、筆者はウェブ記事を中心に川勝知事のさまざまな「嘘」を紹介してきたが、川勝知事から何らかの対応を受けたことはない。 川勝知事による「リニア騒動」はいったい、何だったのか、5年余という、あまりにもムダな時間が流れた。 結局、拙著の題名通り『知事失格』のらく印が押されたまま退場することになった」、その通りだ。 文春オンライン「川勝平太知事が「リニア中央新幹線」反対姿勢を強めた2013年に何があったのか「JR東海は本当にやってくれるのか」という不信の始まりは…」 「JR東海が発足する1987年よりも前のことだから、日本鉄道建設公団が建設し、国鉄が営業主体になる計画だった。しかし国鉄の赤字問題の影響で整備計画が作られないまま、構想は塩漬け状態にあった」、なるほど。 「これらの新幹線が開通しないと、次の新幹線に着手できない。だから中央新幹線はずっと待たされていた。それにしびれを切らしたJR東海が「自分でやります。自己資金でやります」と手を挙げたことで計画は動き出した・・・2つ切実な理由があった。  1つは東海道新幹線の輸送量がパンクしかけていたこと。東名阪の移動需要が旺盛で、「のぞみ」を増発しても追いつかない。なんとか1時間にのぞみ12本を運行する「のぞみ12本ダイヤ」までたどり着いたけれど、これが増発の限界だ。「ひかり」や「こだま」も増やしたいところだが、「のぞみ」 を増発しても追いつかない。なんとか1時間にのぞみ12本を運行する「のぞみ12本ダイヤ」までたどり着いたけれど、これが増発の限界だ。「ひかり」や「こだま」も増やしたいところだが、「のぞみ」が優先されていた。  もう1つは、東海道新幹線の老朽化だ。開業から半世紀が過ぎて、トンネルや鉄橋などの構造物は抜本的な点検、改修が必要になってきた。国鉄時代にも水曜日などに半日運休を実施して若返り工事を実施していたが、昨年の災害運休の後に起きた大混雑を見れば判るように、もはや半日運休にすることすら許されない輸送量なのだ」、 なるほど。 「JR東海は、では道路を拡幅しましょうと言ってすぐ実行する。スピード感があるし、地元としても広い道路が残る。結果としては良いのだけれども、お金で解決して地元を納得させるというやりかたになっている」  地元とのコミュニケーションが希薄なまま工事を進めようとする反動がもっとも大きく出た場所が静岡工区といえる。環境アセスメントが終わってから着工までには、河川や道路などについて地域の自治体から許可をもらう必要がある。鉄建公団には「地域を説得する」という地道な努力とノウハウがあったが、残念ながら新幹線建設が初めての JR東海にはその知見がなかった。  いままでの整備新幹線が、環境アセスメントが終わればスムーズに着工できたのは、鉄建公団~JRTT鉄道・運輸機構の実績と信頼による。  残土問題や、川や地下水の水涸れ問題は今までもあったが、地元と話し合って、自治体と共同して補償もしてきた。西九州新幹線の時も渇水が起きたが、トンネルからの導水管や新たな井戸を掘って水田に放水している。その実績と信頼があった。 しかしJR東海は地元との対話が少なく、新幹線を作った実績がないので信用度も低い。静岡県の心配は「本当にやってくれるのか」という点だった」、「JR東海」には、「鉄建公団」のような「ノウハウ」がなく、「地元との対話が少なく」、「新幹線を作った実績がないので信用度も低い。静岡県の心配は「本当にやってくれるのか」という点」、なるほど。 「国が東海道新幹線の限界を把握し、もっと早く中央新幹線に着手していれば、JR東海が直接建設することはなかったし、静岡県とこじれることもなかっただろう。その意味では国にも責任がある」、「国にも責任がある」とは初めて知ったが、正論だ。 文春オンライン 杉山 淳一氏による「川勝平太知事の辞任で「静岡県vs.JR東海」の対決構図は終わるのか 反リニア新幹線で固めた「専門家会議問題」も…」 「静岡県民のJR東海に対する好感度は他県よりも低いようだ。「のぞみを静岡に停めてほしい」「東海道新幹線に静岡空港駅を作ってほしい」という要望をJR東海は却下していたことが理由」、「川勝知事」の反対の背後には県民の支持があったとは初めて知った。 「川勝知事は、静岡空港を首都圏の第三空港にしたいと発言したことがある。成田、羽田につぐ首都圏の第三空港となれば、国の支援も受けやすくなることを見越してのことだろう。そしてそのためには、東海道新幹線の駅を作って東京へのアクセスを良くしたい、ということだ。  とはいえJR東海から見れば、静岡県が首都圏第三空港になってから新幹線の駅を作るかを検討したいところだろう。そこで話は止まっていた・・・大井川の水量問題は、静岡県の「命の水」の危機として対立を煽る報道は全国紙やテレビなどに伝播し「静岡県vs JR東海」の構 図は鮮明になっていった」、なるほど。 「国土交通省はリニア中央新幹線の「水問題」「生物環境問題」について「有識者会議」を立ち上げた。当初は国もJR東海に対して「きちんと説明するように」と指示していたが、それでは収まらないという判断だ。  2020年から13回にわたる長い議論の末、水問題に関しては「JR東海の考え方、対処によって中流下流域に影響なし」という「中間報告」を出した。ちなみに中間報告は行政用語で「議論終了」を意味する・・・ 静岡市の難波喬司市長も「JR東海の設置方法で概ね問題ない」と表明した。難波氏は、国土交通省で港湾局災害対策室長を務めた技術官僚出身である。  川勝知事は「その場所は深層崩壊の懸念がある」と反発したが、難波市長は「盛り土はむしろ下流域への崩壊を防ぐ。大規模な土砂崩れの予測と対策は河川管理者の県の責任」でありJR東海は責任を負わないという見解を示した。そもそも鉄道の盛り土は「ただの土砂捨て場」ではない。東海道新幹線だって盛土の部分はたくさんある。盛り土は鉄道技術による「建築物」なのだ。  これで静岡県が懸念す る「水問題」「環境問題」「盛り土問題」は解決したことになる」、なるほど。 「JR東海は大井川流域の人々に説明会を開いて事業への理解を求めていた。もっと早くやっておくべきだったとも言えるが、川勝知事が2018年に「JR東海との交渉を知事戦略室に集約する」として、JR東海と流域の直接対話を禁じていた経緯もある。説明会の後、流域の自治体は少しずつJR東海に理解を示し、「県は情報を伝えてくれなかった」「県の話とは違う」という声が出始めていた・・・川勝知事の後を決める選挙で、候補者にはぜひ国の有識者会議の結果を受け入れるか、反発を続けていくかを明確にして県民の意見を問うてほしいものだ。 選挙で静岡県民がどのような判断をするかはともかく、次の静岡県知事は、川勝氏より話が通じる人であってほしいと願わずにはいられない」、その通りだ。 東洋経済オンライン「静岡リニア「開業10年遅れ」JR東海の経営大丈夫? 突然辞任、川勝知事の「置き土産」が及ぼす影響」 「今回、「今から始めても10年かかる」という発言で、川勝知事はようやく「一区切りついた」と納得した」、なるほど。 「南アルプスの生物多様性の議論を道半ばで放り出し、矢野座長に後を任せるという。では、矢野座長が川勝知事の意に沿う形でモニタリング会議を進めるのだろうか。さすがにそれは考えにくい。NEXCO中日本の元会長として実務経験を持つ矢野座長は3月29日のモニタリング会議でも「小異を捨てて大同につくという精神で進めてほしい」と発言している。小異というのが県が協議が必要と主張する30項目であるのは明らかだ・・・ リニア計画決定前の2010年7月、ルートや経済効果などを検討する国の会議に川勝知事が参加し、東海道新幹線が富士山静岡空港の真下を通っていることを踏まえ、空港に隣接した新駅を設置する提案を行った。2011年5月に同会議がまとめた報告書には東海道新幹線の「新駅設置の可能性」について触れられていた。場所についての記載はないが、川勝知事はリニアが開業すれば空港の真下に新駅ができると信じた」、なるほど。 「リニアの開業遅れがJR東海の経営に与える影響だ。 短期的・中期的にはまったく影響ないどころか、財務面ではプラスとなる。東海道新幹線の収益力は高い・・・リニア計画を作成した時点の運輸セグメントの収支見通し・・・は売上高1兆2049円、営業利益3485億円なので、リニア開業前の収支想定を大きく上回っている。今後コロナ禍の影響が減れば収支は2018度の実績に近づいていく。収支が想定を上回っているだけでなく、リニア開業が10年遅れれば、JR東海は東海道新幹線で得た利益を内部留保する期間が10年延びる。 2008年度から2018年度の10年間でJR東海の利益剰余金は2兆円以上増えた。今後もそのペースで蓄積できれば、財務面での安定性は増す」、開業の遅れれば、「東海道新幹線で得た利益を内部留保する期間が10年延びる」、「JR東海」にとっては好ましい結果だ。 「さらに怖いのは、東京―名古屋―大阪という日本の大動脈輸送の二重系化の完成が遅れることだ。リニアが完成しないことには東海道新幹線は長期間にわたる部分運休を伴う大規模な改修工事は難しいし、リニアの完成前に大規模な大災害が発生して東海道新幹線が寸断されれば、JR東海の収入は激減する。最悪の場合、それが借り換え計画に影響を及ぼす可能性するある。JR東海としては、川勝知事の「手柄」であるリニア開業10年遅れの間に巨大災害が起きないことを祈るばかりであろう」、その通りだ。 宮原 健太氏による「自民党がさらなる窮地へ…? 川勝知事の後任選挙の「驚きの実態」 明らかになってきた調査結果」 「自民党が元副知事の大村慎一氏を、立憲民主党と国民民主党が元浜松市長の鈴木康友氏を推薦する方針を固め、与野党対決の構図が決まった・・・自民党が実施した調査によると鈴木氏が39.9ポイントを獲得し、大村氏の29.3ポイントから10ポイント以上リード。 立憲が実施した調査でも鈴木氏が28.2ポイントを獲得し、大村氏の20.9ポイントに対して差をつけている」、「鈴木康友氏」のリニア問題への姿勢はまだ不明だが、「スズキの相談役、鈴木修氏」がバックにいるようなので、少なくとも中立だろう。「JR東海」としては一安心だ ろう。
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リニア新幹線(その9)(「知性格差」5題:早稲田を出てオックスフォード大学で博士号を取得…静岡・川勝知事「職業差別」発言に隠された日本の「知性格差」という問題、「江戸時代の日本人の識字率は世界イチ」という説は「嘘」だった…!882人調査から読み解く、日本の「知性格差」、日本人の「2人に1人」は自分の名前さえ書けなかった…!?明治期時代の日本の「知的格差」驚きの実態、「日本人の識字率は極めて高かった」という「神話」はなぜ生まれたのか…1948年 GHQが命じた「大規模調査」の結果を再検証、多くの日本人は「確 [産業動向]

リニア新幹線については、本年1月4日に取上げた。今日は、(その9)(「知性格差」5題:早稲田を出てオックスフォード大学で博士号を取得…静岡・川勝知事「職業差別」発言に隠された日本の「知性格差」という問題、「江戸時代の日本人の識字率は世界イチ」という説は「嘘」だった…!882人調査から読み解く、日本の「知性格差」、日本人の「2人に1人」は自分の名前さえ書けなかった…!?明治期時代の日本の「知的格差」驚きの実態、「日本人の識字率は極めて高かった」という「神話」はなぜ生まれたのか…1948年 GHQが命じた「大規模調査」の結果を再検証、多くの日本人は「確率」という概念を正しく理解できない…日本社会にひそむ「教育水準の格差」の現実)である。明日は、川勝知事に関連したテーマを取上げる予定である。

先ずは、4月12日付け現代ビジネスが掲載した佐藤 喬氏による「早稲田を出てオックスフォード大学で博士号を取得…静岡・川勝知事「職業差別」発言に隠された日本の「知性格差」という問題」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/127652?imp=0
・『「差別発言」の内容を分解してみると…  静岡県の川勝平太知事が新規採用職員に向けて述べた訓示に、特定の職業を指して「知性が低い」などとする差別的発言が含まれていたとして広く批判された。川勝は、当初は新聞報道の「切り取り」のせいだなどと述べて頑張ったが、まもなく辞職を表明した。 訓示の全文を確認すると、「知性」のくだりで川勝が言いたかったらしいことは、大きく次の三点に要約できそうだ。 1(県庁勤務者は)勉強して知性を磨くべきである 2 知性の程度には個人差がある(「自分の知性がこの人に及ばないなと思っても……」) 3 第一・二次産業従事者は知性が低い(「野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはモノを作ったりとかということと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方たちです」) 問題になったのは3の発言で、批判されるのは当然である。だが、1と2についてはどうだろうか。 1について批判する者はいないだろう。知性に価値があることや勉強の必要性は常識とされ、すべての学校では勉強が推奨されている。2は公の場での発言としては微妙だが、内心でこう考えている人間は多そうだ。3の発言がなく、1と2だけだったら、おそらく辞任は免れたのではないか』、「3の発言がなく、1と2だけだったら、おそらく辞任は免れたのではないか」、なるほど。
・『そもそも「知性」とは何か  朝日新聞は4月5日の社説で川勝発言を批判したが、1の点はもちろん、2についても批判することを慎重に避けた印象を受ける。そして「社会の一員としてそれぞれの日々を懸命に生きる他者の知性のあり方に、敬意を持って欲しい。」と書いているが、この一文はむしろ、知性の質や量に個人差があることを匂わせている。 だが、もしそうだとしても、「他者の知性のあり方」とは具体的にどのようなものか。 川勝はもともとは経済学者で、学部と修士課程では早稲田大学で学び、その後オックスフォード大学で博士号を得ている。いかにも「知性」の高そうな経歴だが、そもそも知性とはなんだろうか。 知性に大きな価値があり、さらにもし知性に個人差があるなら、我々の中にも川勝と同じ、知性によって他者を差別する気分が潜んでいたりはしないか? あいまいであるにも関わらず、現代社会で圧倒的な価値を持ってしまった「知性」の実態に、客観的な資料から迫ってみよう。 たとえば、知的な能力の基盤ともいえる読み書き能力については、少しだけデータが残されているようだ。 『「江戸時代の日本人の識字率は世界イチ」という説は「嘘」だった…!882人調査から読み解く、日本の「知性格差」』に続く』、「あいまいであるにも関わらず、現代社会で圧倒的な価値を持ってしまった「知性」の実態に、客観的な資料から迫ってみよう」、なるほど… 

次に、4月12日付け現代ビジネスが掲載した佐藤 喬氏による「「江戸時代の日本人の識字率は世界イチ」という説は「嘘」だった…!882人調査から読み解く、日本の「知性格差」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/127653?imp=0
・『江戸の庶民は文字が読めた?  まるで人間のような自然な作文をするAIが話題になった2023年、いくつかの新聞が、「読み書き」を巡る目立たないニュースを報じた。それは、国立国語研究所(東京)が、1948年以来実に75年ぶりに、全国的な識字率の調査を試みているというものだ。 誰もが読み書きできるはずのこの日本で、どうしてわざわざ識字率などを調べるのか。そう感じる日本人は多いと思われる。記事のひとつで国立国語研究所准教授の野山広が言うように、日本では「読み書きができない人はほぼいないと長く信じられてきた」からだ。 だが、野山も言うように、それは「共同幻想」である。 「日本人なら誰でも読み書きができるはず」という幻想は、極めて根強い。どのくらい根強いかというと、時間を遡り、歴史上の事実をも塗り替えたほどだ。 江戸時代や明治時代の日本人の識字率は高かったとか、大半が読み書きできたとか、大胆なものでは識字率が世界一だったとかいう言説をよく目にする。たとえば「江戸文化歴史研究家」を名乗る作家の瀧島有はこう書いている。 「江戸後期、日本は『江戸の町の人口』の他に、もう一つ、世界トップクラスを誇ったものがあります。それは『庶民』の識字率。全国平均では約60%以上、江戸の町では約70%以上でした。江戸の町の『実際』は、おそらく約80%以上だろうと言われています」 こういった認識は半ば常識になっているが、結論を先に書けば、誤りである、もしくは著しく誇張されていることが研究によって明らかになっている。こういった俗論は主に1970年代以降、ロナルド・ドーアらによる寺子屋教育の過大評価などによって広まったらしいが、実はドーア本人は後にその見解を訂正している(『日本人のリテラシー』リチャード・ルビンジャー、柏書房など)』、「世界トップクラスを誇ったものがあります。それは『庶民』の識字率。全国平均では約60%以上、江戸の町では約70%以上でした。江戸の町の『実際』は、おそらく約80%以上だろうと言われています」 こういった認識は半ば常識になっているが、結論を先に書けば、誤りである、もしくは著しく誇張されていることが研究によって明らかになっている」、なるほど。
・『「新聞」を読めたのはたったの1.7%  では、当時の日本人の読み書き能力はどのようなものだったのか。 江戸時代末期の日本人の8割以上は農民だったため、「普通の日本人」の識字能力を知るためには、農民についてのデータが欠かせない。だが、多くの研究者も認めるように、江戸時代はもちろん明治時代に入っても、農民の識字率に関する資料は極めて少ない。 しかし、過去の日本人の識字能力に関心がある者の間では有名な、極めて貴重な資料が一つ残されている。それは、1881年(明治14年)に長野県の北安曇郡常盤村(現・大町市)で、15歳以上の「男子」882人を対象に行われた調査である。 村民の読み書き能力を八段階に分けたこの調査によると、自分の名前や村名さえ読み書きできない者が35.4%存在したらしい。彼らには識字能力がないことになるが、では残りの65%の男子が読み書きできたかというと、まったくそうではない。 生活上の必要があっただろう出納帳を書けるものはなんとか14.5%いたが、「普通ノ書簡」および「証書類」を自分で書けるものはわずか4.4%、社会の動きを知るために必要な「公布達」や「新聞論説」を読めるものに至っては、882人中15名、1.7%しかいない(「近代日本のリテラシー研究序説」島村直己など)。 しかも忘れてはならないのは、この調査は女性を対象外としていた点である。明治時代の識字率には地域によりかなりのばらつきがあるが、女性の識字能力が男性よりも大幅に劣っていた点は全国に共通している。したがって、当時の常盤村の住民全体の読み書き能力は、上の数値よりもかなり落ちる可能性が高い。女性を含めると、村で新聞を読めた人間は1%程度しかいなかったのではないだろうか。 日本人の「2人に1人」は自分の名前さえ書けなかった…!?明治期時代の日本の「知的格差」驚きの実態』に続く…』、「極めて貴重な資料が一つ残されている。それは、1881年(明治14年)に長野県の北安曇郡常盤村(現・大町市)で、15歳以上の「男子」882人を対象に行われた調査である。 村民の読み書き能力を八段階に分けたこの調査によると、自分の名前や村名さえ読み書きできない者が35.4%存在したらしい。彼らには識字能力がないことになるが、では残りの65%の男子が読み書きできたかというと、まったくそうではない。 生活上の必要があっただろう出納帳を書けるものはなんとか14.5%いたが、「普通ノ書簡」および「証書類」を自分で書けるものはわずか4.4%、社会の動きを知るために必要な「公布達」や「新聞論説」を読めるものに至っては、882人中15名、1.7%しかいない』、「自分の名前や村名さえ読み書きできない者が35.4%存在・・・必要な「公布達」や「新聞論説」を読めるものに至っては・・・1.7%しかいない」、一般的に信じられている姿は全く信頼性に欠けるようだ。

第三に、4月12日付け現代ビジネスが掲載した佐藤 喬氏による「日本人の「2人に1人」は自分の名前さえ書けなかった…!?明治期時代の日本の「知的格差」驚きの実態」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/127654?imp=0
・『「江戸時代の日本人の識字率は高かった」「大半が読み書きできた」さらには「日本は識字率が世界一」……こういった言説はネットだけでなく、書籍でも散見される。しかし、本当にそうだったのか。たとえば1881年(明治14年)、長野県の北安曇郡常盤村(現・大町市)にて15歳以上の男子882人を対象に行われた調査では、「証書類」を自分で書けるものはわずか4.4%、社会の動きを知るために必要な「公布達」や「新聞論説」を読めるものに至っては1.7%しかいなかった。引き続き、日本人の「知性格差」についてみていこう。 『「江戸時代の日本人の識字率は世界イチ」という説は「嘘」だった…!882人調査から読み解く、日本の「知性格差」』より続く…』、やはり伝承とは当てにならないものだ。
・『識字率が最も低かった鹿児島県  長野県の北安曇郡常盤村の調査の結果は、決して例外的ではない。当時の他の資料と照らし合わせると、常盤村の住人の読み書き能力は全国的には高い方だった可能性さえある。 常盤村の調査が貴重なのは、読み書き能力を細かく段階に分けた点にあるが、同時期の1890年前後に、当時の文部省が全国の数県で「自署率」、すなわち自分の名前を書けるかどうかの調査を行っている。この調査によると、近江商人の本拠地であり、調査の対象となった県でもっとも識字率が高い滋賀県の男性では90%近くが自分の名前を書けたが、女性では50%前後しかない。 逆に最も識字率が低い鹿児島県では、男子でも40%前後は自分の名前が書けず、女子に至っては、自分の名前が書けた者は4~8%前後しかいない(「近代日本のリテラシー研究序説」島村直己、「識字能力・識字率の歴史的推移――日本の経験」斉藤泰雄など)。また、読み書きができるものの割合は、士族階層や農村部の指導層など社会の上層ほど高く、農村内部にもかなりの格差があった可能性が高い(『日本人のリテラシー』リチャード・ルビンジャー、柏書房など)。 このように識字率にはかなりの階層差・地域差・男女差があったが、ある研究者は、識字レベルが滋賀県と鹿児島県のおよそ中間だった岡山県の数値(男子の50~60%、女子の30%前後が自分の名前を書けた)が全国平均に近かったのではないかと推測している(「識字能力・識字率の歴史的推移――日本の経験」斉藤泰雄)。先の長野県常盤村では男子の約65%が自分の名前を書けたので、常盤村の識字レベルは平均的か、むしろやや上回っていたかもしれない』、「調査の対象となった県でもっとも識字率が高い滋賀県の男性では90%近くが自分の名前を書けたが、女性では50%前後しかない。 逆に最も識字率が低い鹿児島県では、男子でも40%前後は自分の名前が書けず、女子に至っては、自分の名前が書けた者は4~8%前後しかいない・・・先の長野県常盤村では男子の約65%が自分の名前を書けたので、常盤村の識字レベルは平均的か、むしろやや上回っていたかもしれない」、なるほど。
・『読み書き能力を持つのは、社会の上層のごく一部  忘れてはならないのは、この調査の数字はあくまで自分の名前を書ける者の割合であって、「自由に読み書きできる者」の割合はずっと低くなる点だ。「識字率」の定義は実は難しいが、少なくとも今の一般的な文脈では、かろうじて自分の名前を書けるだけで、日常的な文章も新聞も読めないようでは「識字」に含まれないだろう。 明治期の識字について多くの研究がある東北大学の八鍬友広は、自署能力に加えて文通する能力についても調べた明治初期の和歌山県の調査の例をひき、そこでは文通可能なリテラシーを持っていた男子は自署できた者の1/4以下の約10%だったと述べている(「明治期滋賀県における自署率調査」八鍬友広)。 この割合は、自署できた男子の1割強だけが普通の書簡を読めたとする先の常盤村のデータよりもかなり高いが、当時の調査の正確さに限界がある以上、詳細な議論はあまり意味がないだろう。いずれにしても、自由に読み書きができた者は、自分の名前だけが読み書きできる者よりずっと少なかったと考えるのは自然ではある。 ということは、女性を含めると(日本人のリテラシーを考えるときに女性を排除する理由はない)半数前後が自分の名前さえ書けなかったと思われる明治初期の日本では、圧倒的多数は自由な読み書きができなかったことになる。特に、常盤村の調査からも分かるように、社会の動きを知る手段である新聞等を読めた人間の割合は、人口の数%に過ぎなかったのではないか。 読み書き能力は、知的な能力の基礎であると言わざるを得ない。だが、明治時代の初期でさえ、読み書き能力を持つのは、社会の上層のごく一部の人間に限られていた。 本や新聞を読む/書くなどの知的な活動に参加する機会や能力には、前出のルビンジャーが繰り返し強調するように、社会階層・地域・性によって著しい格差があったのである。それはつまり、豊かさや身分に格差があったように、知的能力にも、本人の力ではどうしようもない格差があった可能性を示唆している。 では、その格差は、今日では解消されているのだろうか? 次回『「日本人の識字率は極めて高かった」という「神話」はなぜ生まれたのか…1948年、GHQが命じた「大規模調査」の結果を再検証』に続く』、「明治時代の初期でさえ、読み書き能力を持つのは、社会の上層のごく一部の人間に限られていた。 本や新聞を読む/書くなどの知的な活動に参加する機会や能力には、前出のルビンジャーが繰り返し強調するように、社会階層・地域・性によって著しい格差があったのである。それはつまり、豊かさや身分に格差があったように、知的能力にも、本人の力ではどうしようもない格差があった可能性を示唆している」、なるほど。

第四に、4月12日付け現代ビジネスが掲載した佐藤 喬氏による「「日本人の識字率は極めて高かった」という「神話」はなぜ生まれたのか…1948年、GHQが命じた「大規模調査」の結果を再検証」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/128138?imp=0
・『連載第1回『「江戸時代の日本人の識字率は世界イチ」という説は「嘘」だった…!882人調査から読み解く、日本の「知性格差」』  日本語が読めない大学生たち  前回、日本人の大半は明治時代初期、つまりほんの数世代前までは読み書きができなかったことを資料によって確認した。読み書きの力や知的なものに触れる機会・能力はまったく平等ではなく、著しい格差があったのである。 しかし、それは明治時代の、しかも初頭の話ではある。戦後や現代ではどうだろうか? たしかに、近年は社会的な格差がよく話題になる。だが、そこで語られる「格差」の内容はほとんどが経済・金銭的なもので、文化的・知的な格差は見て見ぬふりをされている。 しかし、文化格差について研究を続けてきた社会学者が「日本社会は文化的には平等だ」という主張を「文化的平等神話」と切り捨てるように(※1)、経済以外でも重大な格差があることは、少なくとも専門家の間では知られているらしい。 知的格差がすっかり忘れ去られた2011年、全国の大学生を対象に数学能力の調査を行った数学研究者である新井紀子は、結果を見て愕然とした。数学の能力以前に、簡単な日本語で書かれた問題文を理解できなかったり、初歩的な論理展開もできない学生があまりにも多かったのである。そして、その力は大学の偏差値が低いほど低かった。 驚いた新井は全国の中高生を対象に読解力の調査を実施したが、結果は、上記の調査を後押しするものだった。「中学校を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない」「学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない」などの惨憺たる実態が明らかになったのである』、「新井は全国の中高生を対象に読解力の調査を実施したが、結果は、上記の調査を後押しするものだった。「中学校を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない」「学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない」などの惨憺たる実態が明らかになった」、「数学の能力以前に、簡単な日本語で書かれた問題文を理解できなかったり、初歩的な論理展開もできない学生があまりにも多かった」というのは驚くべきことだ。
・『「字が読めない日本人は1.7%だけ」のウソ  この調査では、中学生のうちは歳とともに読解力が伸びる傾向があるのに、高校では伸びが止まることも確認された。それはつまり、かなりの成人も読解力に問題を抱えていることを示唆している。 また、読解力はやはり学校の偏差値と「極めて強い」正の相関があり、家庭の経済力と負の相関があった。つまり読解能力や論理的思考力には著しい社会的格差があることが判明したのだった。 新井は「(基礎的読解力調査は)これまで世界中で誰もやっていません」とも記しているが、少なくとも、前回書いたように読解力の調査は明治時代初頭にもあり、そこでも著しい格差が示されている。 明治と平成の日本社会には知的格差があるらしい。では、その間に位置する昭和ではどうか。 1948年に、GHQの指示によって15歳から64歳までの16,820名を対象にした大規模な読み書き能力の調査が全国で行われた(「日本人の読み書き能力調査」)。規模の大きさや科学的な手法を取り入れている点で、この調査の信頼性は高い。読み書き能力を広く扱う問題は全90問で、1問1点の90点満点だった。 結論を先に記すと、得点がゼロ点の者は1.7%しかいなかった。この結果はその後独り歩きし、「敗戦直後でも100%近い日本人が読み書きできた」とか「日本人の識字率の高さにGHQが驚愕した」といった神話となって今も生き残っているが、実は近年、その解釈が正しくなく、実態はむしろ逆だったことが専門家によって指摘されている。 まず、たしかに98.3%の日本人は一問以上正解できたわけだが、たとえば一問だけ正解して他はすべて不正解だった者を「識字能力がある」とすることには無理がある。さらに、全90問のうち65問は四択ないし五択の選択問題で、適当に回答しても一定の点数が得られてしまうため、ゼロ点をとることが極めて難しかったことがわかっている。この点に着目したある研究によると、この調査で得点がゼロになる確率は0.000015%しかないという。 したがってゼロ点だった1.7%は、はじめから回答しようとしなかった可能性が高い(※3)』、「GHQの指示によって15歳から64歳までの16,820名を対象にした大規模な読み書き能力の調査が全国で行われた(・・・)。規模の大きさや科学的な手法を取り入れている点で、この調査の信頼性は高い。読み書き能力を広く扱う問題は全90問で、1問1点の90点満点だった。 結論を先に記すと、得点がゼロ点の者は1.7%しかいなかった・・・98.3%の日本人は一問以上正解できたわけだが、たとえば一問だけ正解して他はすべて不正解だった者を「識字能力がある」とすることには無理がある。さらに、全90問のうち65問は四択ないし五択の選択問題で、適当に回答しても一定の点数が得られてしまうため、ゼロ点をとることが極めて難しかったことがわかっている」、なるほど。
・『日本人の半数は新聞が読めなかった!  また、言語政策を研究する角知行は調査対象者に送られた案内状が難解な漢字を含む文章で書かれていたため読み書き能力が低いものはその段階で脱落した疑いがあることや、心身にハンディキャップを持つ人々を排除していたことなども指摘している(※4)。さらに付け加えるなら、若い世代より識字能力が低かっただろう65歳以上の者も調査対象から外されている。 要するに、当時の日本人の本当の読み書き能力は、この調査から受ける印象よりかなり低い可能性が高い。 では、実態はどのようなものだったのか。識字能力は「ある/ない」と白黒つけられるものではなく程度問題なので定量化は難しいが、角は先の論文で、新聞の文章についての問いの正答率から、調査対象者の半数弱は新聞の読解にも困難を抱えていただろうと推測している。加えて先ほどの対象者の偏りを考慮すると、1948年の日本人の実に半数前後は、新聞をまともに読めなかった可能性が否定できない。 新聞を読めるものは人口の一割もいなかったと推測できる明治初期に比べると、約半世紀の教育の普及によって、日本人の読み書き能力がかなり向上したことがわかる。しかし、それでもなお、読み書きに不自由しない日本人はせいぜい2人に1人程度だったのである。 ちなみに、この調査は「日本人の識字率の高さを示したことでGHQが推進しようとしていた日本語のローマ字化を防いだ」という文脈で取り上げられることも多いが、先の論文の執筆者の一人である横山詔一によると、その主張の根拠は弱いという。 横山は、実態とはかなり異なる伝説が広まった理由として、敗戦後の行き場を失ったナショナリズムを挙げている。「みんなで戦後の復興を頑張ろうとしていた当時、日本人がある意味で自信を持てる内容だったのだろうと思う。『自分たちには能力があるんだ』『頑張れば発展できるんだ』という発信は、国民の胸にストンと落ちる部分があったのではないか」(※5)。 後編『多くの日本人は「確率」という概念を正しく理解できない…日本社会にひそむ「教育水準の格差」の現実』に続く』、「1948年の日本人の実に半数前後は、新聞をまともに読めなかった可能性が否定できない。 新聞を読めるものは人口の一割もいなかったと推測できる明治初期に比べると、約半世紀の教育の普及によって、日本人の読み書き能力がかなり向上したことがわかる。しかし、それでもなお、読み書きに不自由しない日本人はせいぜい2人に1人程度だったのである・・・敗戦後の行き場を失ったナショナリズムを挙げている。「みんなで戦後の復興を頑張ろうとしていた当時、日本人がある意味で自信を持てる内容だったのだろうと思う。『自分たちには能力があるんだ』『頑張れば発展できるんだ』という発信は、国民の胸にストンと落ちる部分があったのではないか」、そんな時代背景も影響するとは奥が深いようだ。

第五に、4月12日付け現代ビジネスが掲載した佐藤 喬氏による「多くの日本人は「確率」という概念を正しく理解できない…日本社会にひそむ「教育水準の格差」の現実」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/128137?imp=0
・『「日本人の識字率は極めて高い」「経済格差はあっても、文化的には平等」といった言説は、ネットはもちろん書籍でもよく見られるものだ。こうした主張の根拠とされがちなのは1948年に16,820名を対象に実施された「日本人の読み書き能力調査」で、「完全文盲が1.7%」という結果が出ている。だが近年、この結果を再検証した研究によって、当時の日本人の識字率はもっと低い可能性があることがわかってきた。 『「日本人の識字率は極めて高かった」という「神話」はなぜ生まれたのか…1948年、GHQが命じた「大規模調査」の結果を再検証』より続く』、興味深そうだ。…
・『知的格差から逃れられない日本社会  小熊英二は日本人の読み書き能力についてのこの調査結果を「都市と農村、上層と下層の知的階層格差」の表れだとしている(※1)が、たしかに成績には世代差以外にも、地域や学歴による差があった(※2)。 要するに、明治にも、昭和にも、そして2010年代にも日本社会には読み書き能力の格差があり、したがっておそらく、今もあるということだ。新井紀子は読解力の格差をはじめて見つけたのではなく、戦後長らく忘れられていた知的格差を、ようやく再発見したというべきかもしれない。 ここまで見てきたのは主に読み書きや言葉を扱う能力の格差だが、読み書き能力は広く知的な力の基盤だし、そもそも日本社会では教育水準にも格差があるため、日本社会での知的能力の格差が読解力だけに留まると考えることは難しい。たとえば最終学歴が高校の人間と、大学院で博士号を取った人間の知的パフォーマンスになにも差が出なかったら、むしろおかしい。 東日本大震災後の福島県を中心に、原発事故の影響について130回以上の講演をした被ばく医療の専門家である神谷研二は、住民との知的なコミュニケーションの難しさを感じたと振り返っている。 「(放射線の発がんリスクについて伝えるためには)確率の話になるわけですが、住民の側からすると理解が難しい。一般に危険か危険でないか、日常的には『あるかないか』で考えるわけですから、確率的に考えるということが今までの習慣の中にないんですよね」』、「原発事故の影響について130回以上の講演をした被ばく医療の専門家である神谷研二は、住民との知的なコミュニケーションの難しさを感じたと振り返っている。 「(放射線の発がんリスクについて伝えるためには)確率の話になるわけですが、住民の側からすると理解が難しい。一般に危険か危険でないか、日常的には『あるかないか』で考えるわけですから、確率的に考えるということが今までの習慣の中にないんですよね」、「住民の側からすると理解が難しい。一般に危険か危険でないか、日常的には『あるかないか』で考えるわけですから、確率的に考えるということが今までの習慣の中にないんですよね」、確かに「確率的に考える」のには慣れていない人は殆どだろう。
・『日本社会にひそむ教育格差  神谷はもちろん、難関大学(広島大学医学部)を出て、博士号も取得している。研究者としては標準的な学歴かも知れないが、日本社会では例外的な高学歴だと言っていい。 一方で、日本人の過半数は大学を出ていない。2023年の大学進学率こそ過去最高の57・7%を記録しているが、これは若年層の数値である。日本の大学進学率は徐々に上昇してきたので、全日本人を対象にすると大卒率ははるかに低くなる。たとえば、社会学者の吉川徹は2019年時点では「日本人の7割近くが非大卒」と推定している。 さらには地方ほど非大卒層の割合は増える傾向があるため、神谷の講演を聞きに来た住人の相当数は大学を出ていなかっただろうし、ましてや博士号持ちなどほとんどいなかっただろう。 両者の間に教育水準の大きな差があったことと、「確率」という概念が住民に伝わらなかったこと。この二つの事実の間に、何らかの関係はないだろうか。 そのヒントは、日本社会にひそむ教育格差にあるかもしれない。次回に続く… 』、「社会学者の吉川徹は2019年時点では「日本人の7割近くが非大卒」と推定している。 さらには地方ほど非大卒層の割合は増える傾向があるため、神谷の講演を聞きに来た住人の相当数は大学を出ていなかっただろうし、ましてや博士号持ちなどほとんどいなかっただろう。 両者の間に教育水準の大きな差があったことと、「確率」という概念が住民に伝わらなかったこと。この二つの事実の間に、何らかの関係はないだろうか。 そのヒントは、日本社会にひそむ教育格差にあるかもしれない」、「次回に続く」とあるので、探したがまだ出版されてないようだ。このシリーズは「教育格差」を取上げ、本題の「リニア」とは関係がないので、ここでお許し頂きたい。ただ、次回は「リニア」と密接に関係しているので、大いにご期待を! 
タグ:リニア新幹線 (その9)(「知性格差」5題:早稲田を出てオックスフォード大学で博士号を取得…静岡・川勝知事「職業差別」発言に隠された日本の「知性格差」という問題、「江戸時代の日本人の識字率は世界イチ」という説は「嘘」だった…!882人調査から読み解く、日本の「知性格差」、日本人の「2人に1人」は自分の名前さえ書けなかった…!?明治期時代の日本の「知的格差」驚きの実態、「日本人の識字率は極めて高かった」という「神話」はなぜ生まれたのか…1948年 GHQが命じた「大規模調査」の結果を再検証、多くの日本人は「確 現代ビジネス 佐藤 喬氏による「早稲田を出てオックスフォード大学で博士号を取得…静岡・川勝知事「職業差別」発言に隠された日本の「知性格差」という問題」 「3の発言がなく、1と2だけだったら、おそらく辞任は免れたのではないか」、なるほど。 「あいまいであるにも関わらず、現代社会で圧倒的な価値を持ってしまった「知性」の実態に、客観的な資料から迫ってみよう」、なるほど… 佐藤 喬氏による「「江戸時代の日本人の識字率は世界イチ」という説は「嘘」だった…!882人調査から読み解く、日本の「知性格差」」 「世界トップクラスを誇ったものがあります。それは『庶民』の識字率。全国平均では約60%以上、江戸の町では約70%以上でした。江戸の町の『実際』は、おそらく約80%以上だろうと言われています」 こういった認識は半ば常識になっているが、結論を先に書けば、誤りである、もしくは著しく誇張されていることが研究によって明らかになっている」、なるほど。 「極めて貴重な資料が一つ残されている。それは、1881年(明治14年)に長野県の北安曇郡常盤村(現・大町市)で、15歳以上の「男子」882人を対象に行われた調査である。 村民の読み書き能力を八段階に分けたこの調査によると、自分の名前や村名さえ読み書きできない者が35.4%存在したらしい。彼らには識字能力がないことになるが、では残りの65%の男子が読み書きできたかというと、まったくそうではない。 生活上の必要があっただろう出納帳を書けるものはなんとか14.5%いたが、「普通ノ書簡」および「証書類」を自分で書けるものはわずか4.4%、社会の動きを知るために必要な「公布達」や「新聞論説」を読めるものに至っては、882人中15名、1.7%しかいない』、「自分の名前や村名さえ読み書きできない者が35.4%存在・・・必要な「公布達」や「新聞論説」を読めるものに至っては・・・1.7%しかいない」、一般的に信じられている姿は全く信頼性に欠けるようだ。 佐藤 喬氏による「日本人の「2人に1人」は自分の名前さえ書けなかった…!?明治期時代の日本の「知的格差」驚きの実態」 やはり伝承とは当てにならないものだ。 「調査の対象となった県でもっとも識字率が高い滋賀県の男性では90%近くが自分の名前を書けたが、女性では50%前後しかない。 逆に最も識字率が低い鹿児島県では、男子でも40%前後は自分の名前が書けず、女子に至っては、自分の名前が書けた者は4~8%前後しかいない・・・先の長野県常盤村では男子の約65%が自分の名前を書けたので、常盤村の識字レベルは平均的か、むしろやや上回っていたかもしれない」、なるほど。 「明治時代の初期でさえ、読み書き能力を持つのは、社会の上層のごく一部の人間に限られていた。 本や新聞を読む/書くなどの知的な活動に参加する機会や能力には、前出のルビンジャーが繰り返し強調するように、社会階層・地域・性によって著しい格差があったのである。それはつまり、豊かさや身分に格差があったように、知的能力にも、本人の力ではどうしようもない格差があった可能性を示唆している」、なるほど。 佐藤 喬氏による「「日本人の識字率は極めて高かった」という「神話」はなぜ生まれたのか…1948年、GHQが命じた「大規模調査」の結果を再検証」 「新井は全国の中高生を対象に読解力の調査を実施したが、結果は、上記の調査を後押しするものだった。「中学校を卒業する段階で、約3割が(内容理解を伴わない)表層的な読解もできない」「学力中位の高校でも、半数以上が内容理解を要する読解はできない」などの惨憺たる実態が明らかになった」、「数学の能力以前に、簡単な日本語で書かれた問題文を理解できなかったり、初歩的な論理展開もできない学生があまりにも多かった」というのは驚くべきことだ。 「GHQの指示によって15歳から64歳までの16,820名を対象にした大規模な読み書き能力の調査が全国で行われた(・・・)。規模の大きさや科学的な手法を取り入れている点で、この調査の信頼性は高い。読み書き能力を広く扱う問題は全90問で、1問1点の90点満点だった。 結論を先に記すと、得点がゼロ点の者は1.7%しかいなかった・・・ 98.3%の日本人は一問以上正解できたわけだが、たとえば一問だけ正解して他はすべて不正解だった者を「識字能力がある」とすることには無理がある。さらに、全90問のうち65問は四択ないし五択の選択問題で、適当に回答しても一定の点数が得られてしまうため、ゼロ点をとることが極めて難しかったことがわかっている」、なるほど。 「1948年の日本人の実に半数前後は、新聞をまともに読めなかった可能性が否定できない。 新聞を読めるものは人口の一割もいなかったと推測できる明治初期に比べると、約半世紀の教育の普及によって、日本人の読み書き能力がかなり向上したことがわかる。しかし、それでもなお、読み書きに不自由しない日本人はせいぜい2人に1人程度だったのである・・・敗戦後の行き場を失ったナショナリズムを挙げている。 「みんなで戦後の復興を頑張ろうとしていた当時、日本人がある意味で自信を持てる内容だったのだろうと思う。『自分たちには能力があるんだ』『頑張れば発展できるんだ』という発信は、国民の胸にストンと落ちる部分があったのではないか」、そんな時代背景も影響するとは奥が深いようだ。 佐藤 喬氏による「多くの日本人は「確率」という概念を正しく理解できない…日本社会にひそむ「教育水準の格差」の現実」 「原発事故の影響について130回以上の講演をした被ばく医療の専門家である神谷研二は、住民との知的なコミュニケーションの難しさを感じたと振り返っている。 「(放射線の発がんリスクについて伝えるためには)確率の話になるわけですが、住民の側からすると理解が難しい。一般に危険か危険でないか、日常的には『あるかないか』で考えるわけですから、確率的に考えるということが今までの習慣の中にないんですよね」、 「住民の側からすると理解が難しい。一般に危険か危険でないか、日常的には『あるかないか』で考えるわけですから、確率的に考えるということが今までの習慣の中にないんですよね」、確かに「確率的に考える」のには慣れていない人は殆どだろう。 「社会学者の吉川徹は2019年時点では「日本人の7割近くが非大卒」と推定している。 さらには地方ほど非大卒層の割合は増える傾向があるため、神谷の講演を聞きに来た住人の相当数は大学を出ていなかっただろうし、ましてや博士号持ちなどほとんどいなかっただろう。 両者の間に教育水準の大きな差があったことと、「確率」という概念が住民に伝わらなかったこと。この二つの事実の間に、何らかの関係はないだろうか。 そのヒントは、日本社会にひそむ教育格差にあるかもしれない」、 「次回に続く」とあるので、探したがまだ出版されてないようだ。このシリーズは「教育格差」を取上げ、本題の「リニア」とは関係がないので、ここでお許し頂きたい。ただ、次回は「リニア」と密接に関係しているので、大いにご期待を!
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その他公共交通(その1)(北海道「鉄道・バス」、利用者無視の公共交通政策 鈴木知事の支離滅裂な姿勢が混乱を招いた?、東京メトロが今年度いよいよ株式上場か?政治に翻弄された「民営化20年」) [産業動向]

今日は、その他公共交通(その1)(北海道「鉄道・バス」、利用者無視の公共交通政策 鈴木知事の支離滅裂な姿勢が混乱を招いた?、東京メトロが今年度いよいよ株式上場か?政治に翻弄された「民営化20年」)を取上げよう。

先ずは、本年4月2日付け東洋経済オンラインが掲載した 経済ジャーナリストの櫛田 泉氏による「北海道「鉄道・バス」、利用者無視の公共交通政策 鈴木知事の支離滅裂な姿勢が混乱を招いた?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/743468
・『鈴木直道知事の対応を巡って北海道議会では答弁が用意できないとして2024年2月28日に予定していた北海道議会が開催できず、異例の「延会」となる事態が発生した。北海道議会が「延会」となるのは記録が残る1967年以降、道政史上初の失態だ』、「北海道議会では答弁が用意できないとして2024年2月28日に予定していた北海道議会が開催できず、異例の「延会」となる事態が発生した。北海道議会が「延会」となるのは記録が残る1967年以降、道政史上初の失態」、みっともない事態だ。
・『議会軽視で自民会派と溝  問題となったのは、鈴木知事の北海道の観光振興予算に関する答弁。この答弁を巡り自民会派と事前の調整がつかなかったことが延会の原因だ。発端は、新年度の観光振興予算を巡る動きだった。当初は、「引き続きインバウンドの誘客のための海外への広報活動が必要」として26億円を要望しており道側からも前向きな回答を示されていたというが、実際に道議会の予算審議で提示された金額は14億円と半減されていた。これに対して、道の観光振興予算の大半を執行する北海道観光振興機構は新年度の予算が要求額よりも大幅に削減されたことに対して不満を抱いた。) この後、地元紙が報じたところによると、議会手続き前にもかかわらず鈴木知事は、札幌市内で同機構の小金澤健司会長と面会し、追加予算案などについて説明したという。鈴木知事のこうした行動を知事側の自民会派は問題視。「議会手続き前に特定団体に予算執行を予測させるようなことがあれば、議会軽視で看過できない」と遺憾の意を表明した。 このため、2月28日に予定していた第1回定例道議会では、鈴木知事の観光振興に関する答弁を巡り自民会派と道側の事前の調整がつかなくなったことから議会を開催できない状況となり、異例の「延会」となった。この日、自民会派の安住太伸幹事長は記者団に対し「知事は観光振興に力を入れると言ってきたが、具体的な中身が全く示されていない。知事を支えることが困難になりかねない」と述べている。 翌29日には議会は再開されたが、鈴木知事はこれを受け「外部への追加予算案の説明をしたといった事実はない」と答弁しているが、自民会派の中堅議員は「何も予算の話をしていないなんて誰も信じない」と苦笑した。また、野党側も「審議の根底が崩れることになる」と知事の行動を批判。道議会は荒れ模様となった』、「議会手続き前にもかかわらず鈴木知事は、札幌市内で同機構の小金澤健司会長と面会し、追加予算案などについて説明したという。鈴木知事のこうした行動を知事側の自民会派は問題視。「議会手続き前に特定団体に予算執行を予測させるようなことがあれば、議会軽視で看過できない」と遺憾の意を表明した。 このため、2月28日に予定していた第1回定例道議会では、鈴木知事の観光振興に関する答弁を巡り自民会派と道側の事前の調整がつかなくなったことから議会を開催できない状況となり、異例の「延会」となった」、完全に「鈴木知事」の不手際だ。
・『鈴木知事の支離滅裂な政策姿勢  鈴木知事は「観光振興に力を入れる」方針を示しているものの、2019年の知事就任前に市長を務めていた夕張市は観光振興とはかけ離れた状況に置かれている。 市長在任中だった2017年、夕張市所有の「ホテルマウントレースイ」「マウントレースイスキー場」など観光4施設を中国系企業に格安の2億4000万円で売却する。しかし、2019年にこの中国系企業は約15億円で観光4施設を香港系ファンドに転売し、その後、施設の運営会社は倒産した。このときの負債総額は8億3000万円であったが、一般債権者は全額を踏み倒され夕張市の経済が破壊されたことは2022年11月2日付記事(北の鉄路切り捨て鈴木知事「夕張市長時の問題点」)で詳しく触れている。「北海道の不動産取得を目的とした計画倒産だったのではないか」という疑念の声もいまだ絶えない。 現在は、「マウントレースイスキー場」はかろうじて営業を再開しているものの、スキー場に隣接した「ホテルマウントレースイ」は閉鎖したままだ。スキー場は、夕張市近隣から自家用車で訪れる地元客がまばらな状況で、インバウンドの波は及んでいない。こうした状況の中でも、夕張市は2024年の観光入込客数の目標を60万人としており、目標達成に向けて観光ホームページの更新、観光案内看板整備、市内観光マップの更新作業に取り組んではいる。しかし、2022年の観光入込客数は23万6000人にとどまっており、2023年12月6日に行われた夕張市の定例市議会で厚谷司市長は「目標達成は厳しい状況であることは事実」と答弁している。) なお、市長自らがJR北海道に対して石勝線夕張支線の廃線を提案した「攻めの廃線」前の2015年から2018年までは夕張市の観光入込客数は50万人台で推移していることから、「攻めの廃線」と「中国系企業への観光4施設の売却」がダブルパンチで夕張市の衰退に拍車をかけたといっても過言ではない。 こうした状況に対し、全国各地の地域が抱える問題に精通する日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介氏は「多くの国では鉄道に乗ること自体が観光資源として認知されていることからインバウンド来訪の波は鉄道のある地域に波及しやすい傾向がある」と指摘する。 実際に北海道のインバウンド誘致は一定の成果を見せており、この冬の観光シーズンは札幌から函館や帯広、網走方面に向かう特急列車は大混雑となっていたほか、ニセコリゾートエリアの玄関口となる函館本線の倶知安―小樽間でも日中に通常運行される2両編成のH100形では途中の余市駅で乗客の積み残しが発生する事態が生じたことなどから、急きょ3両編成のキハ201系が投入され輸送力の増強が図られた。 さらに藻谷氏は、「北海道ではせっかく存在していた鉄道が廃止されてしまったために、優れた景観を持つにもかかわらずインバウンド来訪の波が及んでいない地域もあるのは残念だ。つい最近の廃止事例である日高本線などについては、維持を北海道だけの判断に任せず、インバウンド振興という国策的な観点から対処を考えるべきだったのではないか」と続けた』、「市長自らがJR北海道に対して石勝線夕張支線の廃線を提案した「攻めの廃線」前の2015年から2018年までは夕張市の観光入込客数は50万人台で推移していることから、「攻めの廃線」と「中国系企業への観光4施設の売却」がダブルパンチで夕張市の衰退に拍車をかけたといっても過言ではない」、「攻めの廃線」など言葉遊びに過ぎない。何故、こんな馬鹿な「廃線を提案」が行われたのだろう。「中国系企業への観光4施設の売却」も不透明だ。それにしても「鈴木知事の支離滅裂な政策姿勢」は大いに問題だ。
・『東京―名古屋間に匹敵する距離が廃線に  鈴木知事就任以降、道は北海道の鉄道維持のために積極的な財政支出をしようとはせず、北海道の鉄道ネットワークの破壊を続けている。知事就任以降に廃止された鉄道路線は2020年5月の札沼線(学園都市線)北海道医療大学―新十津川間47.6km、2021年4月の日高本線鵡川―様似間116.0km、2023年4月の留萌本線石狩沼田―留萌間35.7km、2024年4月の根室本線富良野―新得間81.7kmで、その総距離は297.1kmに及ぶ。さらに、2026年3月31日限りで留萌本線深川―石狩沼田間14.4kmも廃止となる見込みで、この距離を加えると311.5kmの鉄道路線が廃止となり、この距離は東海道新幹線の東京―名古屋間に匹敵する。 鉄道だけではない。北海道新幹線の並行在来線問題では道が廃止の方針を決めた函館本線の長万部―倶知安―小樽間140.2kmについて、近年深刻化するバスドライバー不足を背景にバス転換協議が中断に追い込まれた。鈴木知事には、北海道が全体的に活気づくような筋の通った政策立案を望みたいが、その思いは届くのだろうか』、「東京―名古屋間に匹敵する距離が廃線」と、「鈴木知事」は「廃線」で何を狙っているのだろうか。

次に、4月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏による「東京メトロが今年度いよいよ株式上場か?政治に翻弄された「民営化20年」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339256
・『東京メトロは4月1日、民営化から20年の節目を迎えた。筆者が入社したのは民営化2年目のこと。当時、株式上場・完全民営化は「目前」とされたが、いまだ実現はしていない。前身である帝都高速度交通営団(営団地下鉄)から始まった、完全民営化への取り組みの歴史を振り返る』、興味深そうだ。
・『私鉄・東京地下鉄道から始まる東京の地下鉄史  東京メトロが創立20周年と聞いて、時間の流れの早さをしみじみと感じる。2017年まで同社に勤務していた筆者は、大学3年生だった2004年秋に就職活動を開始して「エントリー」すると、2005年春に試験、面談を行い、民営化2年目の2006年4月に入社した。 一つ上の代は、エントリー時点では帝都高速度交通営団(営団地下鉄)であり、二つ上の世代は、入社のタイミングで東京メトロに改組された「一期生」。そうなると、我々の世代こそが、採用のスタートから全て東京メトロだった「新世代」と言えるかもしれない。 営団地下鉄といってもピンと来ない人が増えているだろうから簡単に説明しておくと、東京の地下鉄史は1927年に開業した私鉄・東京地下鉄道に始まるが、やがて資金的な限界に直面したため、国の主導で特殊法人「帝都高速度交通営団」を設立した。 物々しい名前が示すように、戦時中に誕生した組織だったが、戦後も引き続き営団体制が存続。後に東京都も地下鉄建設に参入し、一つの都市に営団地下鉄と都営地下鉄という二つの地下鉄が存在することになった。 営団の民営化が唱えられるようになったのは1980年代初頭のことだ。オイルショック後の財政悪化を受けて、政府は1981年3月に「臨時行政調査会」を設置し、国鉄や電電公社(現NTT)など三公社五現業と特殊法人の整理、民営化方針を決定した。 その後、「臨時行政改革推進審議会(行革審)」が設置され、破綻状態に陥っていた国鉄を中心に議論を進めていったが、営団についても1986年、国鉄改革を踏まえ「国鉄の新経営形態移行時にあわせ、特殊会社に改組するとともに、できるだけ早く完全民営化すべきだ」との意見が出された。 そして最終答申に「5年以内に可及的速やかに特殊会社に改組し、地下鉄ネットワークがほぼ概成して、路線運営が主たる業務になる時点において、公的資本を含まない完全民営企業とする」との方針が盛り込まれ、営団の民営化が動き出した』、「東京の地下鉄史は1927年に開業した私鉄・東京地下鉄道に始まるが、やがて資金的な限界に直面したため、国の主導で特殊法人「帝都高速度交通営団」を設立した。 物々しい名前が示すように、戦時中に誕生した組織だったが、戦後も引き続き営団体制が存続。後に東京都も地下鉄建設に参入し、一つの都市に営団地下鉄と都営地下鉄という二つの地下鉄が存在することになった・・・「臨時行政改革推進審議会(行革審)」が設置され、破綻状態に陥っていた国鉄を中心に議論を進めていったが、営団についても1986年、国鉄改革を踏まえ「国鉄の新経営形態移行時にあわせ、特殊会社に改組するとともに、できるだけ早く完全民営化すべきだ」との意見が出された。 そして最終答申に「5年以内に可及的速やかに特殊会社に改組し、地下鉄ネットワークがほぼ概成して、路線運営が主たる業務になる時点において、公的資本を含まない完全民営企業とする」との方針が盛り込まれ、営団の民営化が動き出した」、なるほど。
・『完全民営化へのステップである特殊法人  前述のように営団は、民営企業では負担できない莫大な建設費を公的な信用を背景に調達し、新線建設を促進するために設立された。建設が終了し、「路線運営が主たる業務」になれば民営企業になっても差し支えない、というわけだ。 なおここでいう特殊会社とは、公益上の目的のため法律によって設立された株式会社を指す。特定の政策を遂行するために設置された、完全民営化を前提としない特殊会社もあるが、特殊法人民営化の過程で設置される特殊会社は、完全民営化の第一段階に位置づけられる。) 特殊会社は形式上、民営会社だが、国や自治体が保有株式をすべて売却した時点で「完全民営化」となる。内実の見えない特殊法人がそのまま株を売り出しても投資家は尻込みするだろう。そこで民営形態のもと安定的な利益を継続的に確保できる会社とした上で、株を市場に放出する。特殊会社はそのステップだ。 JR東日本・JR西日本・JR東海・JR九州も、国鉄民営化当初は国が全株式を保有する特殊会社だったが、全株式を売却した。一方、経営再建中のJR北海道・JR四国は特殊会社のままである。そして東京メトロもまた、国と都が全株式を保有する特殊会社である(都営地下鉄がありながら営団にも出資していた経緯はややこしいのでここでは省く)』、「特殊会社は形式上、民営会社だが、国や自治体が保有株式をすべて売却した時点で「完全民営化」となる。内実の見えない特殊法人がそのまま株を売り出しても投資家は尻込みするだろう。そこで民営形態のもと安定的な利益を継続的に確保できる会社とした上で、株を市場に放出する。特殊会社はそのステップだ」、なるほど。
・『新線建設の終了と表裏一体だった営団民営化  こうして動き出した営団民営化だが、すぐに足踏みとなる。当時、着工したばかりの7号線(南北線)に加え、1985年の運輸政策審議会答申第7号に盛り込まれた11号線(半蔵門線)の押上延伸、13号線(副都心線)の計画が浮上し、「地下鉄ネットワークの概成」には時間を要することが見えてきたからだ。 政府は「5年以内」の期限を目前にした1990年12月、「可及的速やかに特殊会社への改組を図るため、その具体的措置等について検討する」と目標を棚上げしたが、1995年に、「帝都高速度交通営団については完全民営化する。その第一段階として現在建設中の7号線、11号線が完成した時点をめどに特殊会社化を図る」と具体的な目標を設定した。 2000年9月に南北線が全通し、2003年春に半蔵門線押上開業のめどが立ったことで、国土交通省と営団は、押上開業からおおむね1年後の特殊会社化を要望。2001年12月の閣議決定「特殊法人等整理合理化計画」に、2004年春の特殊会社化が明記された。 上述のように、営団民営化とは新線建設の終了と表裏一体であったが、営団は1999年になって地下鉄13号線の免許を申請し、さらなる新線建設に乗り出している。13号線の計画自体は1972年から存在したが、東京の地下鉄整備は12号線(都営大江戸線)で建設は終了する予定だった。ところが小渕恵三内閣が1998年に策定した「緊急経済対策」で状況は変わった。補正予算に13号線が盛り込まれ、「最後の新線」が動き出したのである。 ただ7号線、11号線のケースとは異なり、13号線建設は民営化スケジュールとは切り離された。2004年に東京メトロが発足した後も建設工事は続き、2008年6月に副都心線として開業。営団時代からの新線建設はようやく完了した。 国鉄の事例に見られるように、民営化の象徴といえるのが関連事業の展開だ。公営鉄道は公的な資金を投入して建設、営業するため、公有資産を用いた金もうけは公営の趣旨に反するとともに、民業圧迫になるとして関連事業は制約されている。 ただ民営鉄道事業者がルーツで、設立当初は民間資本を導入していた営団は、国鉄と比べて規制は緩く、古くから子会社を通じて駅ビルなどの経営を行っていた。 民営化方針が示された1986年には、公益上支障がない限りという条件で業務範囲の大幅な拡大が認められ、東急・京王と共同で開発した「渋谷マークシティ」や、「メトロ・エム後楽園」「ベルビー赤坂」などの駅併設商業施設、高架下店舗、光ファイバー賃貸事業などを展開している。 帝都高速度交通営団法は、国鉄やJR、NTTなど各特殊会社の会社法よりも規制が緩かったが、民営化でさらに緩和され、関連事業の展開や社債の募集、事業計画の策定が認可事項ではなくなった。これがおおむね、民営化直前の流れである』、「民営鉄道事業者がルーツで、設立当初は民間資本を導入していた営団は、国鉄と比べて規制は緩く、古くから子会社を通じて駅ビルなどの経営を行っていた。 民営化方針が示された1986年には、公益上支障がない限りという条件で業務範囲の大幅な拡大が認められ、東急・京王と共同で開発した「渋谷マークシティ」や、「メトロ・エム後楽園」「ベルビー赤坂」などの駅併設商業施設、高架下店舗、光ファイバー賃貸事業などを展開している。帝都高速度交通営団法は、国鉄やJR、NTTなど各特殊会社の会社法よりも規制が緩かったが、民営化でさらに緩和され、関連事業の展開や社債の募集、事業計画の策定が認可事項ではなくなった。これがおおむね、民営化直前の流れである」、なるほど。
・『完全民営化を遠ざけた石原都政の「地下鉄一元化」論  筆者が東京メトロに入社した2006年、社内は「民営化」に高揚していた。国鉄民営化が議論から決定まで数年で駆け抜けたのに対し、営団は20年弱を要した。民営化方針が固まった1980年代後半以降に入団(営団時代は入社ではなく入団といった)した総合職は、既に課長級になっていたのである。 東京地下鉄株式会社法は付則に「できる限り速やかにこの法律の廃止、その保有する株式の売却その他の必要な措置を講ずるものとする」と定めていた。関連事業の積極的な展開で経営基盤を確立し、最後の新線である副都心線が開業すれば、いよいよ株式上場し、完全民営化が達成される。それは間近であると思われた。 ところが副都心線開業の2年後、そろそろ上場というタイミングで石原都政がぶち上げたのが「地下鉄一元化」論だ。この問題はさまざまなプレーヤーが、時期ごとに異なる思惑を持って関与したので、本稿では立ち入らない。重要なのは、目前にあったはずの完全民営化が遠ざかってしまったという事実だ。 しばしば勘違いされるが、株式上場は株主が決めることである。もちろん会社側も上場に備えた準備をしなければならないのだが、最終的に株主が売らないと言えば上場はできない。東京メトロの株式は国が53.4%、都が46.6%という絶妙のバランスで保有しており、かろうじて国が主導権を握っている。国だけ売却すれば、都が東京メトロを支配しかねない。 その後、猪瀬都政、舛添都政、小池都政と変遷する中で「一元化論」は後退したが、都はメトロ株を国に対する交渉カードとして使い、落としどころとして「売却を受け入れる見返り」を模索してきた。 この辺りの経緯は過去記事で取り上げたので詳細は省くが、副都心線で打ち止めだったはずの地下鉄新線建設を東京メトロが引き受ける代わりに、都が株式売却を認め、国と都がひとまず保有株の半分ずつを売却することになった。 都は2024年度予算にメトロ株の売却に関する費用を計上し、売却に向けた準備が本格化している。株式市場は日経平均4万円を超える好況で、条件が良いうちに売却したいだろうから、くしくもメトロが創立20周年を迎える今年度に上場が実現するかもしれない』、「副都心線開業の2年後、そろそろ上場というタイミングで石原都政がぶち上げたのが「地下鉄一元化」論だ。この問題はさまざまなプレーヤーが、時期ごとに異なる思惑を持って関与したので、本稿では立ち入らない。重要なのは、目前にあったはずの完全民営化が遠ざかってしまったという事実だ。その後、猪瀬都政、舛添都政、小池都政と変遷する中で「一元化論」は後退したが、都はメトロ株を国に対する交渉カードとして使い、落としどころとして「売却を受け入れる見返り」を模索してきた・・・副都心線で打ち止めだったはずの地下鉄新線建設を東京メトロが引き受ける代わりに、都が株式売却を認め、国と都がひとまず保有株の半分ずつを売却することになった。 都は2024年度予算にメトロ株の売却に関する費用を計上し、売却に向けた準備が本格化している。株式市場は日経平均4万円を超える好況で、条件が良いうちに売却したいだろうから、くしくもメトロが創立20周年を迎える今年度に上場が実現するかもしれない」、「今年度に上場が実現するかもしれない」、というのは初めて知った。
・『上場後のビジョンが見えない東京メトロ  ただ外部から見た東京メトロは、あまり変わったように思えない。3月25日発表の「2024年度事業計画」は、安全対策に309億円、旅客サービスに362億円など、計1146億円の設備投資予算を策定。うち約3割(約350億円)を新規不動産取得・開発、自動運転、技術開発などの「成長投資」に使うとしている。 個別の項目には「DX」や「ESG」などはやりのワードは並ぶが、結局はキャッシュフローの多くを鉄道の機能強化に振り向けており、関連事業(都市・生活創造事業)への投資は1割強。物件は変わってもメニュー自体は代わり映えしない。これでは上場しても何かが変わるとは思えない。 だが、それも仕方のない話なのかもしれない。メトロ(営団)にとって、上場とは国策として決まった話であり、上場自体が目的であり目標だった。もちろん社会的な信用が高まるとか、株式市場から資金調達が可能になるとか、それらしい目的を立てることはできるのだが、上場しなければ困る理由はなく、その先の明確なビジョンが見えない。 都心の地下を走る地下鉄はビジネスの可能性が無限と思われがちだ。しかし、莫大な建設費がかかる地下鉄は、なるべく自社用地を持たず、設備は必要最小限で建設するため、自由に使える資産は実は少ない。 変電所など業務用地に施設を一体化したビルの建設は、可能な範囲で終わっている。新規にビルを建てるとなると、新規の土地取得や周辺地権者との連携が不可欠なので、鉄道事業者としてのアドバンテージはほぼない。 「Echika」などの駅構内開発も、都合のいいスペースはほぼ使い切っており、また、地下を掘って新規のスペースを作るなどということは到底、採算が合わない。地上に豊富な土地を保有するJRとは条件が全く異なるのである。 これは筆者が在籍していた頃から感じていたことであり、実際に社内の一部にもそういう空気は漂っていた。上場という「ゴール」が見えてきた今、東京メトロはどのような会社になり、どのような事業を展開したいのか、投資家ならずともビジョンを問う声はますます高まることだろう』、「新規にビルを建てるとなると、新規の土地取得や周辺地権者との連携が不可欠なので、鉄道事業者としてのアドバンテージはほぼない。 「Echika」などの駅構内開発も、都合のいいスペースはほぼ使い切っており、また、地下を掘って新規のスペースを作るなどということは到底、採算が合わない。地上に豊富な土地を保有するJRとは条件が全く異なるのである・・・上場という「ゴール」が見えてきた今、東京メトロはどのような会社になり、どのような事業を展開したいのか、投資家ならずともビジョンを問う声はますます高まることだろう』、どうも、「上場」しても余り変わりばえしなさそうだ。これは、株式の評価額にも影響するだろう。  
タグ:その他公共交通 (その1)(北海道「鉄道・バス」、利用者無視の公共交通政策 鈴木知事の支離滅裂な姿勢が混乱を招いた?、東京メトロが今年度いよいよ株式上場か?政治に翻弄された「民営化20年」) 東洋経済オンライン 櫛田 泉氏による「北海道「鉄道・バス」、利用者無視の公共交通政策 鈴木知事の支離滅裂な姿勢が混乱を招いた?」 「北海道議会では答弁が用意できないとして2024年2月28日に予定していた北海道議会が開催できず、異例の「延会」となる事態が発生した。北海道議会が「延会」となるのは記録が残る1967年以降、道政史上初の失態」、みっともない事態だ。 「議会手続き前にもかかわらず鈴木知事は、札幌市内で同機構の小金澤健司会長と面会し、追加予算案などについて説明したという。鈴木知事のこうした行動を知事側の自民会派は問題視。「議会手続き前に特定団体に予算執行を予測させるようなことがあれば、議会軽視で看過できない」と遺憾の意を表明した。 このため、2月28日に予定していた第1回定例道議会では、鈴木知事の観光振興に関する答弁を巡り自民会派と道側の事前の調整がつかなくなったことから議会を開催できない状況となり、異例の「延会」となった」、完全に「鈴木知事」の不手際だ 「市長自らがJR北海道に対して石勝線夕張支線の廃線を提案した「攻めの廃線」前の2015年から2018年までは夕張市の観光入込客数は50万人台で推移していることから、「攻めの廃線」と「中国系企業への観光4施設の売却」がダブルパンチで夕張市の衰退に拍車をかけたといっても過言ではない」、「攻めの廃線」など言葉遊びに過ぎない。何故、こんな馬鹿な「廃線を提案」が行われたのだろう。「中国系企業への観光4施設の売却」も不透明だ。それにしても「鈴木知事の支離滅裂な政策姿勢」は大いに問題だ。 「東京―名古屋間に匹敵する距離が廃線」と、「鈴木知事」は「廃線」で何を狙っているのだろうか。 ダイヤモンド・オンライン 枝久保達也氏による「東京メトロが今年度いよいよ株式上場か?政治に翻弄された「民営化20年」」 「東京の地下鉄史は1927年に開業した私鉄・東京地下鉄道に始まるが、やがて資金的な限界に直面したため、国の主導で特殊法人「帝都高速度交通営団」を設立した。 物々しい名前が示すように、戦時中に誕生した組織だったが、戦後も引き続き営団体制が存続。後に東京都も地下鉄建設に参入し、一つの都市に営団地下鉄と都営地下鉄という二つの地下鉄が存在することになった・・・ 「臨時行政改革推進審議会(行革審)」が設置され、破綻状態に陥っていた国鉄を中心に議論を進めていったが、営団についても1986年、国鉄改革を踏まえ「国鉄の新経営形態移行時にあわせ、特殊会社に改組するとともに、できるだけ早く完全民営化すべきだ」との意見が出された。 そして最終答申に「5年以内に可及的速やかに特殊会社に改組し、地下鉄ネットワークがほぼ概成して、路線運営が主たる業務になる時点において、公的資本を含まない完全民営企業とする」との方針が盛り込まれ、営団の民営化が動き出した」、なるほど。 「特殊会社は形式上、民営会社だが、国や自治体が保有株式をすべて売却した時点で「完全民営化」となる。内実の見えない特殊法人がそのまま株を売り出しても投資家は尻込みするだろう。そこで民営形態のもと安定的な利益を継続的に確保できる会社とした上で、株を市場に放出する。特殊会社はそのステップだ」、なるほど。 「民営鉄道事業者がルーツで、設立当初は民間資本を導入していた営団は、国鉄と比べて規制は緩く、古くから子会社を通じて駅ビルなどの経営を行っていた。 民営化方針が示された1986年には、公益上支障がない限りという条件で業務範囲の大幅な拡大が認められ、東急・京王と共同で開発した「渋谷マークシティ」や、「メトロ・エム後楽園」「ベルビー赤坂」などの駅併設商業施設、高架下店舗、光ファイバー賃貸事業などを展開している。 帝都高速度交通営団法は、国鉄やJR、NTTなど各特殊会社の会社法よりも規制が緩かったが、民営化でさらに緩和され、関連事業の展開や社債の募集、事業計画の策定が認可事項ではなくなった。これがおおむね、民営化直前の流れである」、なるほど。 「副都心線開業の2年後、そろそろ上場というタイミングで石原都政がぶち上げたのが「地下鉄一元化」論だ。この問題はさまざまなプレーヤーが、時期ごとに異なる思惑を持って関与したので、本稿では立ち入らない。重要なのは、目前にあったはずの完全民営化が遠ざかってしまったという事実だ。その後、猪瀬都政、舛添都政、小池都政と変遷する中で「一元化論」は後退したが、都はメトロ株を国に対する交渉カードとして使い、落としどころとして「売却を受け入れる見返り」を模索してきた・・・ 副都心線で打ち止めだったはずの地下鉄新線建設を東京メトロが引き受ける代わりに、都が株式売却を認め、国と都がひとまず保有株の半分ずつを売却することになった。 都は2024年度予算にメトロ株の売却に関する費用を計上し、売却に向けた準備が本格化している。株式市場は日経平均4万円を超える好況で、条件が良いうちに売却したいだろうから、くしくもメトロが創立20周年を迎える今年度に上場が実現するかもしれない」、「今年度に上場が実現するかもしれない」、というのは初めて知った。 「新規にビルを建てるとなると、新規の土地取得や周辺地権者との連携が不可欠なので、鉄道事業者としてのアドバンテージはほぼない。 「Echika」などの駅構内開発も、都合のいいスペースはほぼ使い切っており、また、地下を掘って新規のスペースを作るなどということは到底、採算が合わない。地上に豊富な土地を保有するJRとは条件が全く異なるのである・・・ 上場という「ゴール」が見えてきた今、東京メトロはどのような会社になり、どのような事業を展開したいのか、投資家ならずともビジョンを問う声はますます高まることだろう』、どうも、「上場」しても余り変わりばえしなさそうだ。これは、株式の評価額にも影響するだろう。
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半導体産業(その12)(東エレク レーザーテックは快進撃も…日本の半導体製造装置メーカーは実は「地滑り的敗戦」をしていた!、日本政府が「1兆円」を注ぎ込む「あとに退けない一大事業」の勝算は? 事業軌道に乗せるためにも「不可欠な条件」、TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと) [産業動向]

半導体産業については、2月24日に取上げた。今日は、(その12)(東エレク レーザーテックは快進撃も…日本の半導体製造装置メーカーは実は「地滑り的敗戦」をしていた!、日本政府が「1兆円」を注ぎ込む「あとに退けない一大事業」の勝算は? 事業軌道に乗せるためにも「不可欠な条件」、TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと)である。

先ずは、本年4月5日付けダイヤモンド・オンライン「東エレク、レーザーテックは快進撃も…日本の半導体製造装置メーカーは実は「地滑り的敗戦」をしていた!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/341305
・『半導体株高をけん引する日本の製造装置メーカー。東京エレクトロンやレーザーテックなど、高い世界シェアで業界をリードしている企業が多い一方で、業界全体を見渡してみると深刻な状況に陥っている。市場規模が大きく、成長性が高い製品と分野で負けが続き、日本全体ではシェアが急落、米国に突き放され欧州に抜かれる状況になっているのだ。強い日本の製造装置業界に何が起こっているのか。特集『高成長&高年収! 半導体160社図鑑』の#5では、有望銘柄とその強みと共に、一見好調な製造業界の構造的問題について取り上げた』、興味深そうだ。
・『株価が130倍、20倍に暴騰した製造装置銘柄  その強さの秘密と本当の実力は  今の半導体関連株の高値をけん引する最大の立役者が半導体製造装置株だ。2014年には2000円台で推移していた東京エレクトロン(TEL)株は、現在なんと20倍の4万円台を付けている。 同じ製造装置のディスコ株は14年には3000円台で同じく16倍、14年に300円台だったレーザーテックは130倍の4万円台にまで伸びた。同期間でデバイスのルネサスエレクトロニクスは約2倍、素材の信越化学工業は約4倍の伸びだ。これに比較してもいかに装置株の伸び方が異常か分かるだろう。 「世界シェアトップ」「世界で他のどこにもできない技術を持つ」というきらびやかな修飾語が製造装置業界には付いて回る。そもそも、なぜ日本の製造装置は強いのか。歴史をひもといてみよう。 1980年代日本のデバイス企業が世界トップだった時代に、一蓮托生で製造技術を磨き併走することで成長してきたのが製造装置メーカーだ。 その後90年代以降、日本のデバイスメーカーは次々と凋落、事業撤退や縮小をしていく。だが、装置メーカーはその後台頭してきた韓国、台湾、それに米国のデバイス企業に広く製造装置を販売することで、事業を拡大してきた。 「経営のスピードが速く、経営者が事業に愛情を持ち、顧客との信頼関係を大事にするという経営スタイルが、アジア・米国の顧客企業にも受け入れられた。最初は欧米のものを優先するスタンスだった顧客も徐々に日本メーカーの製品に切り替えてくれるようになり、シェアを伸ばしていった」と、20年来製造装置企業の分析を行っているモルガン・スタンレーMUFG証券の和田木哲哉シニアアナリストは解説する。 中でも最近特異的に伸びているのが、生成AIのビジネスに絡む装置を販売できている企業だ。 例えば生成AI半導体に使われる米エヌビディアのGPU(グラフィックプロセッサユニット)を生産するのに必要なのが、最先端の微細加工が可能なEUV露光装置(極端紫外線を使い、シリコンウエハーに回路を焼き付けるための装置)だが、EUV向けのマスク(回路を焼き付ける元となる原板)検査技術を世界で唯一持っているのがレーザーテックだ。 EUVの登場と普及で、以前は100億円企業だった同社は売上高が10倍の1000億円規模に伸びた。同様に、GPUを動かすにはHBM(広帯域高速メモリー)という次世代DRAM(一時記憶用のメモリー)が必要だが、このHBM関連ビジネスに深く絡める研磨装置メーカーのディスコや検査装置メーカーのアドバンテストなどが大きく伸びている、といった具合だ。 今後半導体製造装置株に投資する場合は、どのような視点が必要なのか。さらに、一見絶好調の製造装置業界にアキレス腱はないのか。 実は、絶好調に見える製造装置業界だが、意外にも国内企業全体として見た場合、非常に危機的な状況にあるという。なにしろ、かつて5割を占めていたシェアは、23%に下がり欧州に抜かれて3番手になってしまっているからだ。これほど株価も高く市場に評価されている企業が多数あるだけに、意外な事実だ。その理由と企業ごとの注目ポイントや、中長期的な展望について和田木シニアアナリストに分析してもらった』、「絶好調に見える製造装置業界だが、意外にも国内企業全体として見た場合、非常に危機的な状況にあるという。なにしろ、かつて5割を占めていたシェアは、23%に下がり欧州に抜かれて3番手になってしまっているからだ」。なるほど。
・『既存・新規事業とも強い東京エレクトロンと業界トップの収益性のディスコに要注目  企業別に見ていこう。まずは代表格のTELだ。 多数の装置を抱える製造装置のデパートであるTELだが、特にコータ・デベロッパー(シリコンウエハー上に回路を焼き付けるための感光剤を塗り、現像する装置)、熱処理装置(シリコンウエハーを高温で熱して酸化、薄膜を形成する装置)、エッチング(回路を現像した後余分な部分を剥ぎ取るための装置)といった装置でシェアが昔から高い。「人材レベル、営業力、マーケティング力が向上し、既存ビジネスのシェアが上がっているのみならず、これまでの2倍以上の価格で売れる優れもののオンリーワン新製品を投入しており、収益性が向上している。高シェアを取れているコータ・デベロッパーでも大手の顧客との関係性が極めて良好で、ライバルを寄せ付けない」と和田木シニアアナリストは評価する。 さらに、グラインダ(ウエハーの裏側を研磨して薄くする装置)、ダイサー(ウエハーをチップごとに切り分ける装置)などで高シェアを持つのがディスコだ。売上高営業利益率では業界トップで「独自の経営スタンスを持ち、新興企業が価格競争を仕掛けてくるカテゴリに対しても高い競争力を維持している」(和田木シニアアナリスト)。 また、アドバンテストは、前ページで取り上げたようにGPUとHBM向けのテスタ(製品状態になった半導体を最終検査する装置)で他社を大きく突き放すシェアを握る。米テラダインというライバルはいるものの、その追撃を許さない状態になっている。また、米中摩擦で米国産の半導体製造装置が買えない中国メーカーからの受注を一手に引き受けることができたのも、好業績に貢献した。 装置各社の業績推移予測と将来の給与の伸びを見てみよう。下記にまとめた。 (図表:製造装置企業の業績予測 はリンク先参照) 市場データ企業IFISによる市場コンセンサス予想でも、これらの企業の売上高成長率は著しい。そしてIFISデータを基にダイヤモンド編集部で試算(試算方法は上記図注参照)した将来の給与水準は若干減少傾向にある企業が多い。そもそもこれらはエレクトロニクス業界最強の給与水準にある企業で、さすがにこれらがこのまま右肩上がりで伸び続けるのは厳しそうだという。それでもアドバンテストやローツェなどまだ伸びしろがありそうな企業もある。 このように、日本の製造装置業界は最強に見える。だが、実は全体を見渡してみると由々しき事態が進行している。前述した通り、90年は米国を上回り、世界のシェアの約5割を押さえていた日本は、この30年間で地滑り的にシェアを落としているのだ。 23年の日本のシェアはモルガン・スタンレーMUFG証券の推定によると23%。つまり、これまで3番手だった欧州にも抜かれてしまったということになる。 (図:国籍別半導体製造装置のシェアの推移 はリンク先参照) どうしてこうしたことが起こったのか。その理由の一つには「日本の装置メーカーが、成長市場や規模の大きい市場を多数取りこぼしている」ことがあると和田木シニアアナリストは指摘する。 以下は、モルガン・スタンレーMUFG証券作成の半導体の製造装置の市場規模と成長率の分布図だ。さらに、日本企業が50%以上のシェアを押さえている装置を編集部でマーキングしてみた。これで見ると、市場規模が大きいのはエッチング装置、露光装置、枚葉式CVD装置(シリコンウエハーに膜を付ける装置)などだ。そして成長率が高いのはマスク検査装置、ALD(新方式の成膜装置)などとなる。 ところが、このどちらも、日本企業はシェアが取れていない。 (図:装置別に見た成長率と市場規模の関係 はリンク先参照) 例えば、現在最先端品を作るのに欠かせなくなったEUV露光装置は、オランダASMLが独占的に供給している。露光装置は、ニコンとキヤノンの2社がシェアを牛耳る状態が2000年代まで続いていた。そこをASMLが新たな露光方式であるEUVで一気にひっくり返してしまったのだ。 日本の2社は現状ではEUVに対しては打ち手がなく、最先端の微細化には対応できない旧来方式の装置での事業に依存するしかなくなり、シェアを大きく落としてしまった。 これまで取り上げてきた日本が強い市場は、全体の規模からするとそこまで大きいわけではない。エッチング装置で2位に付けているTELや、EUVのレーザーテックなど一部を除くと、小さなしかも今後の成長率がいまひとつの池での高シェアを取っているにすぎない、ということになる。 この事態には、この30年間最先端の半導体技術を磨くための場が、国内には不在だった影響もありそうだ。前述のASMLは、ベルギーに拠点を置く世界最大級の独立系半導体研究開発機関、アイメックと密接な連携を行っている。 「近隣にこうした研究所があることは、新規で伸びる技術の見極めや、それを持ち帰り自社で行う開発・検証のスピード、それに顧客へのマーケティング面でも明らかに有利に働く」(和田木アナリスト)。欧州には先端技術をいち早く見いだし製品化するためのエコシステムがあるのだ。 各デバイスメーカーが国内での量産や先端技術の開発から次々と撤退してきた日本とは、環境面でかなりの差が生まれてしまった。 経済産業省が追加出資を発表した国策半導体会社ラピダスの設立に、各製造装置メーカーが期待を寄せるのはこのためだ。同社の東哲郎会長はTELで会長・社長職を長く務めた中興の祖でもある。国内でもう一度最先端半導体を作る、という一見無謀なチャレンジには、TELの経営を通して日本の半導体産業の失われた20年間を目撃しており、なんらかの打開策が国として必要という思いがあるからなのかもしれない。 失われた20年間を独自の経営努力で切り抜け、成長してきた輝かしい実績を持つ装置メーカー。だがさらなる成長のためには、国内の半導体産業全体の底上げが欠かせない。それには装置メーカーのみならず、国全体としての強化策と、その成否が鍵を握るのだ』、「日本の製造装置業界は最強に見える。だが、実は全体を見渡してみると由々しき事態が進行している。前述した通り、90年は米国を上回り、世界のシェアの約5割を押さえていた日本は、この30年間で地滑り的にシェアを落としているのだ。 23年の日本のシェアはモルガン・スタンレーMUFG証券の推定によると23%。つまり、これまで3番手だった欧州にも抜かれてしまったということになる・・・どうしてこうしたことが起こったのか。その理由の一つには「日本の装置メーカーが、成長市場や規模の大きい市場を多数取りこぼしている」ことがある・・・現在最先端品を作るのに欠かせなくなったEUV露光装置は、オランダASMLが独占的に供給している。露光装置は、ニコンとキヤノンの2社がシェアを牛耳る状態が2000年代まで続いていた。そこをASMLが新たな露光方式であるEUVで一気にひっくり返してしまったのだ。 日本の2社は現状ではEUVに対しては打ち手がなく、最先端の微細化には対応できない旧来方式の装置での事業に依存するしかなくなり、シェアを大きく落としてしまった」、「これまで3番手だった欧州にも抜かれてしまった」、など誠に残念な結果だ。

次に、4月9日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの町田 徹氏による「日本政府が「1兆円」を注ぎ込む「あとに退けない一大事業」の勝算は? 事業軌道に乗せるためにも「不可欠な条件」を紹介しよう』、興味深そうだ。
・『追加支援を行うと発表  齋藤健・経済産業大臣は先週火曜日(4月2日)の記者会見で、政府・経済産業省が最先端半導体の受託生産を目指すRapidus(ラピダス)に対し、今2024年度中に最大で5900億円の追加支援を行うと発表した。既存の支援額(3300億円)と併せて、政府の同社に対する直接的な支援の規模は1兆円に迫ることになる。 手厚い支援の背景には、経済安全保障の観点から半導体のサプライチェーン確立が必要不可欠な状況や、ラピダスが2027年頃の量産を目指している2ナノメートルサイズの半導体が「生成AIや自動運転など日本産業全体の競争力の鍵を握るキーテクノロジーである」(斎藤経産大臣)との問題意識がある。 今回、支援が決定した資金の使途は、従来から取り組んでいる米IBM社やベルギーの研究機関imecとの共同研究、量産化へ向けた製造プロセスのふかぼり、製造装置の購入などに充てる計画だ。また、半導体業界で「後工程」と呼ばれている技術(複数の半導体を1つの基盤に収納するチップレット技術など)の開発など、新たな分野にも充てると説明している。 ただ、今回で政府による支援が終わりということはないはずである。というのは、ラピダス自身も量産開始までに総額で5兆円程度の資金が必要だと認めているからだ。 客観的に見れば、ラピダスは、政府支援の積み増しのほか、民間金融機関からの借り入れ、上場を通じた公募増資や売り出しなど、様々な資金調達を実現できないと、量産の開始前に経営が行き詰まるリスクを抱えているのが実情だ。 そこで、今週は、ラピダスがそうしたハードルを超えるために。何が必要になっているのかを考えてみたい。 かつて日本の半導体産業は世界の市場を席捲したものの、長続きしたとは言い難い。というのは、日本メーカーの半導体部門は、家電メーカー内で従属的な立場にあり、あくまでも自社の家電製品などに組み込む部品としての半導体製造がビジネスの中心で、外販は限定的な副産物という位置づけに過ぎなかったからである。 そして、政治的な激しい日米半導体摩擦の勃発に加えて、半導体の主力市場がPC用のCPUなどに移り代わるという環境の激変もあり、日本企業は揃って、半導体部門の維持に必要な巨額の先行投資に二の足を踏むようになり、衰退の道を辿った経緯があるのだ』、「かつて日本の半導体産業は世界の市場を席捲したものの、長続きしたとは言い難い。というのは、日本メーカーの半導体部門は、家電メーカー内で従属的な立場にあり、あくまでも自社の家電製品などに組み込む部品としての半導体製造がビジネスの中心で、外販は限定的な副産物という位置づけに過ぎなかったからである。 そして、政治的な激しい日米半導体摩擦の勃発に加えて、半導体の主力市場がPC用のCPUなどに移り代わるという環境の激変もあり、日本企業は揃って、半導体部門の維持に必要な巨額の先行投資に二の足を踏むようになり、衰退の道を辿った経緯があるのだ」、なるほど。
・『またとない再興のチャンス  そうした中で、千載一遇の半導体産業再興のチャンスが巡ってきた。米国が中国とのデカップリング(経済の分断)を進める中で、世界の半導体業界のトップ3の中に自国企業がインテル1社しか含まれていないうえ、そのインテルが3位とはいえ、1位の台湾TSMCや2位の韓国サムスン電子に大きく後れを取っている状況に危機感を持ったからだ。そして、米政府は密かに、日本政府・経済産業省に対し、半導体製造部門を売却し、設計などに特化するファブレス企業への変身を目指しているIBMとのエクスクルーシブな(唯一の)提携先になるファウンドリを育成する考えがないか打診してきた。そして、この打診を「渡りに船だ」とみなした、日本政府・経済産業省が受け皿会社として設立・立ち上げを促したのが、現在のラピダスだった。 かねて政府に対して、半導体産業の再興の支援を働きかけていた、半導体製造装置会社・東京エレクトロンの社長・会長経験者である東哲郎氏(現ラピダス会長)と元日立製作所半導体グループ・生産技術本部本部長の小池淳義氏(現ラピダス社長)の2人に「白羽の矢を立てた」経緯がある。 ちなみに、日、米両政府はそれぞれ、巨額の支援をして半導体業界世界一の台湾のTSMCの工場の誘致も進めている。 話を戻すと、実際のラピダスの設立は、2022年8月のことだった。同年10月の総額73億円の増資にトヨタ自動車、NTTなど8社が応じたほか、設立時に出資した個人株主もいるとはいえ、同社の資本金は依然として73億4600万円(2022年11月時点)にとどまっている。 この現状は、あまりにも過小資本だ。ラピダス自身も5兆円規模の資金が必要だと認めているように、2ナノの先端半導体の量産化を実現するためには、巨額の資金を必要とするからだ。 この巨額の資金を賄うためには、さらなる政府支援の追加や、金融機関からの借り入れだけでなく、早期の上場を通じた大型資金調達が不可欠となっている。 そして、細かい市場ごとの上場基準などはさておき、新興企業が上場するために最も必要なことは、その企業のポテンシャルを示す成長シナリオをしっかりと描き出してみせることである。 この条件を、半導体のファブレス企業から発注を受けて量産するファウンドリを目指しているラピダスにあてはめると、最も重要なことは、実績のある、実在のファブレス企業から具体的な受注契約を獲得することになる。 では、ラピダスが量産の開始を目指す3年後、つまり2027年を想定して、2ナノ半導体の供給を必要としている企業は、いったいどこになるのだろうか』、「米政府は密かに、日本政府・経済産業省に対し、半導体製造部門を売却し、設計などに特化するファブレス企業への変身を目指しているIBMとのエクスクルーシブな(唯一の)提携先になるファウンドリを育成する考えがないか打診してきた。そして、この打診を「渡りに船だ」とみなした、日本政府・経済産業省が受け皿会社として設立・立ち上げを促したのが、現在のラピダスだった・・・ラピダスの設立は、2022年8月のことだった。同年10月の総額73億円の増資にトヨタ自動車、NTTなど8社が応じたほか、設立時に出資した個人株主もいるとはいえ、同社の資本金は依然として73億4600万円・・・この現状は、あまりにも過小資本だ。ラピダス自身も5兆円規模の資金が必要だと認めているように、2ナノの先端半導体の量産化を実現するためには、巨額の資金を必要とするからだ。 この巨額の資金を賄うためには、さらなる政府支援の追加や、金融機関からの借り入れだけでなく、早期の上場を通じた大型資金調達が不可欠となっている」、なるほど。
・『ラピダスに熱視線  誰もが容易に想定できるのは、生成AIの開発でしのぎを削っているグーグルやマイクロソフトといった米国の巨大IT企業群GAFAMだ。また、トヨタやテスラといった全自動運転の実用化を急ぐ自動車メーカーも大いに2ナノサイズの先端半導体を必要としているはずである。医療機器メーカーにもニーズがありそうだ。 言い換えれば、ラピダスは、そうしたIT大手や自動車メーカー大手、医療機器メーカーから、実際に、2ナノ半導体の製造を受注してみせる必要があるのである。 つまり、政府・経済産業省だけでなく、ラピダス自身も、今回の政府支援で獲得する資金を、これまで取り組んできた前工程に加えて、後工程の開発力の獲得に充てると製造面の体制作りの重要性を強調しているが、それだけでは不十分というワケだ。 むしろ、それらの製造技術の開発・強化と並行して、2ナノ半導体の顧客の獲得が待ったなしなのである。これらの企業とは、必要なスペックを詳細に詰めたうえで、委託(受注)契約に漕ぎ着けなければならない。そして、その契約を開示することで、持続的な成長力があることを実証して見せる必要があるのである。 そして、筆者の取材によれば、こうしたIT企業や自動車メーカー、医療機器メーカーは概して、ラピダスが2ナノ半導体を量産するファウンドリとして名乗りを上げたことをかなり好意的に受け止めているとみてよさそうなのだ。 というのは、現在、ファウンドリとしてこうしたAIや全自動運転用、医療機器用の最先端の半導体の量産に対応できる企業と言えば、米半導体大手のエヌビディア1社しかなく、独り勝ち状態になりかねないと見られていたからだ。GAFAMにしろ、自動車メーカーにしろ、医療危機メーカーにしろ、そろって自社のサプライチェーンの強靭性を維持するためには、半導体の供給元を複数以上にしたいとの思いも強く持っている。それゆえ、ラピダスに対しても相応に熱い視線を送っているというワケだ。 まとめると、ラピダスは今後3年以内に、ファウンドリとして構造が複雑な2ナノサイズの最先端半導体の製造技術を確立するだけでなく、最先端の半導体を組み込んで、最先端の生成AIや全自動運転、医療機器などの製品やサービスを市場に投入する計画を持っている最先端企業からパートナーとしての信頼を獲得し、生産の委託を受けなければならない。それが上場などへの道を開いて、必要な資金を獲得して、量産を軌道に乗せるためにも不可欠な条件になっているのである』、「ラピダスは今後3年以内に、ファウンドリとして構造が複雑な2ナノサイズの最先端半導体の製造技術を確立するだけでなく、最先端の半導体を組み込んで、最先端の生成AIや全自動運転、医療機器などの製品やサービスを市場に投入する計画を持っている最先端企業からパートナーとしての信頼を獲得し、生産の委託を受けなければならない。それが上場などへの道を開いて、必要な資金を獲得して、量産を軌道に乗せるためにも不可欠な条件になっているのである」、「ラピダス」にはこうした期待に応えてもらいたいものだ。

第三に、4月11日付け東洋経済オンラインが掲載したフリージャーナリストの杉本 りうこ氏による「TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/746571
・『今、日本は半導体特需で沸きに沸いている。この熱狂の中心にいるのが半導体受託製造(ファウンドリー)の世界最大手、TSMCだ。2月に完工したTSMCの熊本工場は、日本の半導体産業と株式市場にとって大きな活性剤となっている。 この巨大企業を創業期から取材してきた台湾のハイテクジャーナリスト、林宏文氏が『TSMC 世界を動かすヒミツ」(CCCメディアハウス)』を日本で上梓。世界の半導体企業の興亡史をつぶさに見てきた林氏が、日本の半導体戦略に直言する(Qは聞き手の質問、Aは林宏文氏の回答)』、興味深そうだ。
・『TSMC熊本工場は「トヨタとアップルのため」  Q:2月にTSMCの熊本工場が完成しましたが、TSMCにとって日本で工場を建設する意義や目的はどこにあったのでしょうか。 A:日本に投資する理由については、TSMCのシーシー・ウェイCEOが過去に明確に述べています。すなわち「重要な顧客企業のため」なのだと。日本政府に請われたから、補助金が得られたからではないのだと、そうはっきり語っています。 重要な顧客の1つは、トヨタ自動車です。ウェイCEOは熊本工場の開所式にトヨタの豊田章男会長と面談した際、「(熊本工場は)TSMCが日本で半導体製造に乗り出す第一歩。ぜひトヨタの支援をいただきたい」「(自動車向け半導体が)今はTSMCにおいて小さな割合であっても、将来は伸びる。トヨタと一緒に成長したい」と語っています。 もう1つの重要な顧客は、アップルです。iPhoneはカメラ用の撮像素子(CMOSセンサー)を大量に消費しますが、それを供給しているのはソニーグループです。熊本工場が稼働すればソニーのCMOSセンサーの生産能力も上がり、結果としてアップルに貢献できます。) Q:アップルを筆頭に、TSMCの重要な顧客の多くはアメリカのハイテク企業です。重要市場であるアメリカに工場を作るのは理にかないますが、日本には作らないだろうと半導体関係者の多くは思っていました。TSMCは日本を重視するようになっているのでしょうか。 A:(リン・ホンウェン氏の略歴はリンク先参照)TSMCがアメリカをより重視してきたのは当然のことです。しかしその姿勢に、変化が生じているのではないかと私は感じています。 TSMCの経営陣は当初、アメリカのアリゾナ新工場のプロジェクトを「千載一遇の成長機会」と感じたはず。中国との半導体戦争という環境の中で、アメリカ政府はTSMCの新工場建設に巨額の公的支援を約束しましたからね。 しかし今となっては、アメリカ政府はTSMCの有力なライバルであるインテルのほうに、より大規模な支援を行うことが明らかになっています。そしてTSMCの新工場建設は、補助金がキャッシュインしないとか、技術人材が不足しているとかいった要因で遅れています。 TSMCのマーク・リュウ会長が6月に退任しますが、これははっきり言って、アメリカでの投資プロジェクトがうまくいかなかったことを受けた結果です。 一方、アメリカに比べて当初はあまり重要でないように見えた日本での工場建設は、予想以上に順調に進みました。その理由は、サプライヤーやゼネコンなど日本のパートナー企業が真剣に協力してくれたからでしょう。こういった日米の状況の変化が、TSMCの経営陣の姿勢に影響しつつあるようです。 実はTSMC創業者のモリス・チャン氏はずっと「アメリカへの投資は成功しない、アメリカの半導体製造の夢も実現しない」と言ってきました』、「今となっては、アメリカ政府はTSMCの有力なライバルであるインテルのほうに、より大規模な支援を行うことが明らかになっています。そしてTSMCの新工場建設は、補助金がキャッシュインしないとか、技術人材が不足しているとかいった要因で遅れています。 TSMCのマーク・リュウ会長が6月に退任しますが、これははっきり言って、アメリカでの投資プロジェクトがうまくいかなかったことを受けた結果です。 一方、アメリカに比べて当初はあまり重要でないように見えた日本での工場建設は、予想以上に順調に進みました。その理由は、サプライヤーやゼネコンなど日本のパートナー企業が真剣に協力してくれたからでしょう。こういった日米の状況の変化が、TSMCの経営陣の姿勢に影響しつつあるようです。実はTSMC創業者のモリス・チャン氏はずっと「アメリカへの投資は成功しない、アメリカの半導体製造の夢も実現しない」と言ってきました」、なるほど。
・『補助金で半導体産業は取り戻せるか?  Q:いつからそう指摘していたのですか。 A:アメリカのCHIPS法案(2022年に成立)が議論され始めた頃からです。チャン氏はアメリカの対中制裁には賛同しているものの、半導体製造復興政策に対しては一貫して反対してきました。) たとえば2022年8月にナンシー・ペロシ、アメリカ下院議長が台湾を訪れた際、訪台したアメリカ議員団にチャン氏はこう直言しています。 「TSMCのアリゾナ新工場が補助金の恩恵を受けられるのは喜ばしいことだ。しかし問題は、補助金を出せば半導体製造を掌握できるとアメリカが考えていることだ。事はそんなに簡単ではない。政府がお金を投じてから、実際に自国内に半導体製造業が創出されるまでには、長い道のりがある」 チャン氏がこのように断言するのは、1990年代にアメリカ・ワシントン州に現地企業と合弁で受託製造会社を作った経験からです。アメリカでの生産は、まったくうまくいきませんでした。生産コストやエンジニア、働き方をめぐる文化などの問題に直面したのです。これらの問題は、巨額を投じたからといって一朝一夕に解決できるものではありません。 TSMCの現在の経営陣はアメリカに工場を作ることについて楽観的だったのでしょうが、今となってはチャン氏の予言が正しかったと痛感しているでしょう。さらに日本での順調さが、経営陣の認識を変えつつあります。さらには、アメリカ政府に対しても大きなプレッシャーとなるのではないでしょうか』、「問題は、補助金を出せば半導体製造を掌握できるとアメリカが考えていることだ。事はそんなに簡単ではない。政府がお金を投じてから、実際に自国内に半導体製造業が創出されるまでには、長い道のりがある」 チャン氏がこのように断言するのは、1990年代にアメリカ・ワシントン州に現地企業と合弁で受託製造会社を作った経験からです。アメリカでの生産は、まったくうまくいきませんでした。生産コストやエンジニア、働き方をめぐる文化などの問題に直面したのです。これらの問題は、巨額を投じたからといって一朝一夕に解決できるものではありません」、その通りだ。
・『TSMCのライバルはIBMの技術で「失敗」  Q:日本政府は国策企業であるラピダスにも巨額の支援を行っています。ラピダスの使命は最先端のロジック半導体を国産化することですから、言い換えればTSMCのライバルも育成しているわけです。ラピダス自身は「TSMCとは競わない」と説明していますが、あなたはこの状況をどう見ていますか。 日本が半導体産業を振興すること自体は、私は非常にチャンスがあると思います。 半導体製造装置において、日本はアメリカ、オランダと並ぶ最重要国です。多くの半導体材料でも、日本企業がトップシェアを掌握しています。これは日本企業が長期的なR&D(研究開発)を重視してきた成果です。息の長いR&Dを重視する姿勢は、台湾よりも日本のほうが顕著。製造装置や材料の強みがさらに増す政策であれば、日本にとって大きな価値があると思います。) ただ、ことラピダスについては、日本の皆さんにシビアに伝えたいことがあります。 日本では先端半導体を作るプロセス技術が途絶えているため、ラピダスはIBMからの技術移転を選びましたよね。実はIBMからの技術移転は、台湾を代表する半導体メーカーも選んだことがあります。しかし失敗に終わっています。しかも企業成長を決定的に遅らせるほどの大きなつまずきとなりました。 その企業はUMC(聯華電子)です。UMCはTSMCと同様、台湾政府の支援で生まれました。当初のビジネスモデルは少し違っていたのですが、今はTSMCと同じ半導体受託製造の世界的大手です。しかもUMCの創業は1980年とTSMCより7年早い。 ところがUMCは2000年ごろを境に、TSMCに技術や業績の面で大きく引き離されてしまいました。これはUMCがIBMからの技術移転を選んだ影響が大きいと私は考えています。 2000年ごろ、当時の最先端プロセス技術である0.13マイクロメートル(130ナノメートル)をどうするかという局面で、UMCはIBMと共同開発しようと決めました。実はIBMの技術は、TSMCも検討しました。しかし当時の研究開発幹部が「IBMの工場にTSMCの技術者が行くのではなく、台湾の自社工場で研究開発をしなければ、開発成果を量産段階に反映できない」と考え、自主開発の道を選んだのです。 結果として、TSMCは2000年の研究着手から1年半で開発に成功。UMCはそこから2年遅れました。そしてこの後、TSMCとUMCの差はどんどん開いていったのです』、「UMCは2000年ごろを境に、TSMCに技術や業績の面で大きく引き離されてしまいました。これはUMCがIBMからの技術移転を選んだ影響が大きいと私は考えています。 2000年ごろ、当時の最先端プロセス技術である0.13マイクロメートル(130ナノメートル)をどうするかという局面で、UMCはIBMと共同開発しようと決めました。実はIBMの技術は、TSMCも検討しました。しかし当時の研究開発幹部が「IBMの工場にTSMCの技術者が行くのではなく、台湾の自社工場で研究開発をしなければ、開発成果を量産段階に反映できない」と考え、自主開発の道を選んだのです。 結果として、TSMCは2000年の研究着手から1年半で開発に成功。UMCはそこから2年遅れました。そしてこの後、TSMCとUMCの差はどんどん開いていったのです」、「UMC」が安易に「IBM」との「共同開発」を選択したことが、敗因になったようだ。
・『IBMからは学べないことがある  Q:ハイテクの世界で、2年分の技術差は致命的です。UMC同様、ラピダスもIBMからの技術移転でつまずくリスクも出てくるかもしれない。 A:過去に台湾企業が失敗したからと言って、ラピダスも「絶対にうまくいかない」とは断言しません。ただ台湾企業の経験を踏まえて、日本政府とラピダスにはIBMの強みと弱みを冷静に分析してもらいたいのです。 IBMが半導体技術の研究に強みがあることは事実です。しかしラピダスがやろうとしている半導体の受託製造とは、「顧客へのサービスとして半導体を製造する」というビジネスなのです。) ところがIBMは、今の最先端技術を使って半導体を量産したこともないし、ましてや受託製造のサービス業であったことはもちろんありません。 顧客のために、高度な半導体を製造することがどれだけ「辛苦」(つらい、大変)なことか想像できますか?量産ラインにおいて、どうすれば歩留まりを低減でき、半導体の品質とコストを下げられるのか。顧客からの突然の追加オーダーや、逆に思ってもみないキャンセルといった不測の事態に耐えるためには、工場の柔軟性や学習曲線をどう上げればよいのか? こういった要素は、ラボでの技術開発では得られません。IBMがこれらをどうやってラピダスに教えられるでしょうか。教えられないなら、ラピダスはどうやって学ぶのでしょうか』、「IBMが半導体技術の研究に強みがあることは事実です。しかしラピダスがやろうとしている半導体の受託製造とは、「顧客へのサービスとして半導体を製造する」というビジネスなのです。) ところがIBMは、今の最先端技術を使って半導体を量産したこともないし、ましてや受託製造のサービス業であったことはもちろんありません。 顧客のために、高度な半導体を製造することがどれだけ「辛苦」(つらい、大変)なことか想像できますか?量産ラインにおいて、どうすれば歩留まりを低減でき、半導体の品質とコストを下げられるのか。顧客からの突然の追加オーダーや、逆に思ってもみないキャンセルといった不測の事態に耐えるためには、工場の柔軟性や学習曲線をどう上げればよいのか? こういった要素は、ラボでの技術開発では得られません。IBMがこれらをどうやってラピダスに教えられるでしょうか。教えられないなら、ラピダスはどうやって学ぶのでしょうか」、その通りだ。
・『日本はかつての地位を追いかけるな  そもそも半導体というのは、何らかの夢を実現するための1つの部品に過ぎません。アップルのスティーブ・ジョブズはiPhoneの夢を実現するために独自半導体を追究しました。エヌビディアのジェンスン・ファンはAI(人工知能)の夢を実現しようとしています。こういった夢を追いかける顧客がいるからこそ、TSMCの成功があるのです。 Q:かつて日本でも、電機メーカーが家電やコンピューターなど最終製品の競争力を高めるために、半導体を自社で開発・生産していました。まず需要ありきということですね。 A:今ならたとえば、トヨタがハイブリッドカーや水素カーを世界に普及させる夢を抱いているじゃないですか。そのために半導体ができることは、かなりあります。日本はかつて半導体市場で圧倒的なシェアを持っていたため、当時の地位を取り戻したいと思うのかもしれません。 でも実のところ、自動車産業のような日本が今持っている強みをどう伸ばすかが重要。そこで必要な半導体を日本が設計さえすれば、TSMCがパートナーとなって製造することができるのです』、「でも実のところ、自動車産業のような日本が今持っている強みをどう伸ばすかが重要。そこで必要な半導体を日本が設計さえすれば、TSMCがパートナーとなって製造することができるのです」、その通りだ。
タグ:同年10月の総額73億円の増資にトヨタ自動車、NTTなど8社が応じたほか、設立時に出資した個人株主もいるとはいえ、同社の資本金は依然として73億4600万円・・・この現状は、あまりにも過小資本だ。ラピダス自身も5兆円規模の資金が必要だと認めているように、2ナノの先端半導体の量産化を実現するためには、巨額の資金を必要とするからだ。 この巨額の資金を賄うためには、さらなる政府支援の追加や、金融機関からの借り入れだけでなく、早期の上場を通じた大型資金調達が不可欠となっている」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン「東エレク、レーザーテックは快進撃も…日本の半導体製造装置メーカーは実は「地滑り的敗戦」をしていた!」 (その12)(東エレク レーザーテックは快進撃も…日本の半導体製造装置メーカーは実は「地滑り的敗戦」をしていた!、日本政府が「1兆円」を注ぎ込む「あとに退けない一大事業」の勝算は? 事業軌道に乗せるためにも「不可欠な条件」、TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと) 「絶好調に見える製造装置業界だが、意外にも国内企業全体として見た場合、非常に危機的な状況にあるという。なにしろ、かつて5割を占めていたシェアは、23%に下がり欧州に抜かれて3番手になってしまっているからだ」。なるほど。 半導体産業 ません」、その通りだ。 「米政府は密かに、日本政府・経済産業省に対し、半導体製造部門を売却し、設計などに特化するファブレス企業への変身を目指しているIBMとのエクスクルーシブな(唯一の)提携先になるファウンドリを育成する考えがないか打診してきた。そして、この打診を「渡りに船だ」とみなした、日本政府・経済産業省が受け皿会社として設立・立ち上げを促したのが、現在のラピダスだった・・・ラピダスの設立は、2022年8月のことだった。 日本の製造装置業界は最強に見える。だが、実は全体を見渡してみると由々しき事態が進行している。前述した通り、90年は米国を上回り、世界のシェアの約5割を押さえていた日本は、この30年間で地滑り的にシェアを落としているのだ。 23年の日本のシェアはモルガン・スタンレーMUFG証券の推定によると23%。つまり、これまで3番手だった欧州にも抜かれてしまったということになる・・・どうしてこうしたことが起こったのか。 「今となっては、アメリカ政府はTSMCの有力なライバルであるインテルのほうに、より大規模な支援を行うことが明らかになっています。そしてTSMCの新工場建設は、補助金がキャッシュインしないとか、技術人材が不足しているとかいった要因で遅れています。 TSMCのマーク・リュウ会長が6月に退任しますが、これははっきり言って、アメリカでの投資プロジェクトがうまくいかなかったことを受けた結果です。 杉本 りうこ氏による「TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと」 その理由の一つには「日本の装置メーカーが、成長市場や規模の大きい市場を多数取りこぼしている」ことがある・・・現在最先端品を作るのに欠かせなくなったEUV露光装置は、オランダASMLが独占的に供給している。露光装置は、ニコンとキヤノンの2社がシェアを牛耳る状態が2000年代まで続いていた。そこをASMLが新たな露光方式であるEUVで一気にひっくり返してしまったのだ。 日本の2社は現状ではEUVに対しては打ち手がなく、最先端の微細化には対応できない旧来方式の装置での事業に依存するしかなくなり、シェアを大きく落 「問題は、補助金を出せば半導体製造を掌握できるとアメリカが考えていることだ。事はそんなに簡単ではない。政府がお金を投じてから、実際に自国内に半導体製造業が創出されるまでには、長い道のりがある」 チャン氏がこのように断言するのは、1990年代にアメリカ・ワシントン州に現地企業と合弁で受託製造会社を作った経験からです。アメリカでの生産は、まったくうまくいきませんでした。生産コストやエンジニア、働き方をめぐる文化などの問題に直面したのです。これらの問題は、巨額を投じたからといって一朝一夕に解決できるものではあり 一方、アメリカに比べて当初はあまり重要でないように見えた日本での工場建設は、予想以上に順調に進みました。その理由は、サプライヤーやゼネコンなど日本のパートナー企業が真剣に協力してくれたからでしょう。こういった日米の状況の変化が、TSMCの経営陣の姿勢に影響しつつあるようです。実はTSMC創業者のモリス・チャン氏はずっと「アメリカへの投資は成功しない、アメリカの半導体製造の夢も実現しない」と言ってきました」、なるほど。 東洋経済オンライン 「ラピダスは今後3年以内に、ファウンドリとして構造が複雑な2ナノサイズの最先端半導体の製造技術を確立するだけでなく、最先端の半導体を組み込んで、最先端の生成AIや全自動運転、医療機器などの製品やサービスを市場に投入する計画を持っている最先端企業からパートナーとしての信頼を獲得し、生産の委託を受けなければならない。それが上場などへの道を開いて、必要な資金を獲得して、量産を軌道に乗せるためにも不可欠な条件になっているのである」、「ラピダス」にはこうした期待に応えてもらいたいものだ。 そして、政治的な激しい日米半導体摩擦の勃発に加えて、半導体の主力市場がPC用のCPUなどに移り代わるという環境の激変もあり、日本企業は揃って、半導体部門の維持に必要な巨額の先行投資に二の足を踏むようになり、衰退の道を辿った経緯があるのだ」、なるほど。 「かつて日本の半導体産業は世界の市場を席捲したものの、長続きしたとは言い難い。というのは、日本メーカーの半導体部門は、家電メーカー内で従属的な立場にあり、あくまでも自社の家電製品などに組み込む部品としての半導体製造がビジネスの中心で、外販は限定的な副産物という位置づけに過ぎなかったからである。 量産ラインにおいて、どうすれば歩留まりを低減でき、半導体の品質とコストを下げられるのか。顧客からの突然の追加オーダーや、逆に思ってもみないキャンセルといった不測の事態に耐えるためには、工場の柔軟性や学習曲線をどう上げればよいのか? こういった要素は、ラボでの技術開発では得られません。IBMがこれらをどうやってラピダスに教えられるでしょうか。教えられないなら、ラピダスはどうやって学ぶのでしょうか」、その通りだ。 町田 徹氏による「日本政府が「1兆円」を注ぎ込む「あとに退けない一大事業」の勝算は? 事業軌道に乗せるためにも「不可欠な条件」 「IBMが半導体技術の研究に強みがあることは事実です。しかしラピダスがやろうとしている半導体の受託製造とは、「顧客へのサービスとして半導体を製造する」というビジネスなのです。) ところがIBMは、今の最先端技術を使って半導体を量産したこともないし、ましてや受託製造のサービス業であったことはもちろんありません。 顧客のために、高度な半導体を製造することがどれだけ「辛苦」(つらい、大変)なことか想像できますか? 現代ビジネス できない」と考え、自主開発の道を選んだのです。 結果として、TSMCは2000年の研究着手から1年半で開発に成功。UMCはそこから2年遅れました。そしてこの後、TSMCとUMCの差はどんどん開いていったのです」、「UMC」が安易に「IBM」との「共同開発」を選択したことが、敗因になったようだ。 「でも実のところ、自動車産業のような日本が今持っている強みをどう伸ばすかが重要。そこで必要な半導体を日本が設計さえすれば、TSMCがパートナーとなって製造することができるのです」、その通りだ。 「UMCは2000年ごろを境に、TSMCに技術や業績の面で大きく引き離されてしまいました。これはUMCがIBMからの技術移転を選んだ影響が大きいと私は考えています。 2000年ごろ、当時の最先端プロセス技術である0.13マイクロメートル(130ナノメートル)をどうするかという局面で、UMCはIBMと共同開発しようと決めました。実はIBMの技術は、TSMCも検討しました。しかし当時の研究開発幹部が「IBMの工場にTSMCの技術者が行くのではなく、台湾の自社工場で研究開発をしなければ、開発成果を量産段階に反映 としてしまった」、「これまで3番手だった欧州にも抜かれてしまった」、など誠に残念な結果だ。
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電気自動車(EV)(その14)(「アップルカー開発断念」はEVブーム終焉のサイン?トヨタら日本勢はチャンスを活かせ、中国にEV墓場 テスラ株は暴落…「やっぱりトヨタが正しかった!」と浮かれる人が見落とす死角) [産業動向]

電気自動車(EV)については、昨年6月3日に取上げた。今日は、(その14)(「アップルカー開発断念」はEVブーム終焉のサイン?トヨタら日本勢はチャンスを活かせ、中国にEV墓場 テスラ株は暴落…「やっぱりトヨタが正しかった!」と浮かれる人が見落とす死角)である。

先ずは、本年3月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した佃モビリティ総研代表の佃 義夫氏による「アップルカー開発断念」はEVブーム終焉のサイン?トヨタら日本勢はチャンスを活かせ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340154
・『アップルカー開発中止はEVブーム終焉のサイン?  米アップルが電気自動車(EV)の開発計画を断念したと伝えられた。アップルのジェフ・ウィリアムズCOO(最高執行責任者)が社員に通達したと、米ブルームバーグが報じた。それによると、アップルカー開発チームの一部開発者はAI部門に配置転換し、アップルでは珍しいレイオフ(一時解雇)を計画しているという。 アップルといえば、スマートフォンの世界でiPhoneの存在感が非常に大きい。EV化に伴い、クルマが高度なソフトウェアを搭載する「走るスマホ」ともいわれるようになる中、そのアップルがEVに進出するということで、自動車業界からも脅威の存在としてその動向が注目されていた。 特に、自動車業界にとって100年に一度の大変革期といわれるゆえんである「CASE革命」の中核に位置する、「電動化」と「自動運転」をセットで開発するアップルカーを同社がどう具現化するかは、業界の大きな関心事だった。 脱炭素社会に向けたEVと自律走行実現のための自動運転の親和性をとらえたアップルカー。アップルは、「EVによる完全自動運転」を目指したものと受け止められていた。) しかし、10年越しとなるアップルカー開発の社内プロジェクト「タイタン」は、ここにきてEV開発を断念したと伝えられた。 この間、アップルは米本社のあるカリフォルニア州での試験走行を重ねてきた。23年の同州での走行試験の距離は約72万9000kmと前年の3.6倍に増えており、自動運転技術などの特許も数多く取得し実用化への布石を打ってきた。また、アップルカーを製造委託するファブレス企業としてのパートナーには、カナダのマグナ・インターナショナルや韓国の現代自動車グループに加え、日本の日産自動車の名前が候補として挙がったこともある。 アップルカー開発断念の背景には、アップルの完全自動運転EV開発が遅れている一方、生成AIを巡る競争環境の激変に対応が迫られているという社内事情があるようだ。加えて、これまで電動化の中で世界的にBEV(バッテリーEV)に偏向する風潮があったものの、直近でEV市場の変化や価格競争激化が生じるなど、EVの販売環境が悪化してきていることも挙げられる。 今後の注目ポイントとなるのが、このアップルカー撤退の動きが、自動車業界全体の電動化、特にBEVの拡大や戦略にどう影響するのか、あるいはBEVへの潮流が変わっていく(変わっている)転換点になるのか、ということだ。 それはすなわち、トヨタ自動車を筆頭に日本車のBEVへの出遅れが指摘されてきた見方が変化するのか、という意味でもある』、「アップルカー開発断念の背景には、アップルの完全自動運転EV開発が遅れている一方、生成AIを巡る競争環境の激変に対応が迫られているという社内事情があるようだ。加えて、これまで電動化の中で世界的にBEV(バッテリーEV)に偏向する風潮があったものの、直近でEV市場の変化や価格競争激化が生じるなど、EVの販売環境が悪化してきていることも挙げられる」、なるほど。
・『海外メーカーで相次ぐEV計画の修正  いわゆる「EVブーム」は、CO2削減を大命題に、欧州の環境規制強化や米国カリフォルニア州のZEV(ゼロエミッションビークル)規制、中国政府によるNEV(ニューエネルギービークル)規制といった、世界的な各種規制への対応から大きな潮流へと発展したものだ。) 欧州勢が独フォルクス・ワーゲン(VW)のテールゲート事件を契機に主流のディーゼル車からEVへの転換政策を一気に進めたほか、米国もGM、フォードがEVシフト計画を積極化した。さらに、中国は世界最大となった中国の国内市場を武器に、国家レベルでのNEV政策を押し出して「EV大国」にのし上がってきた。 一方で、日本ではホンダの三部敏宏社長が「脱エンジン」を宣言し、2040年までに新車をEVとFCV(燃料電池車)に100%切り替える方針を打ち出したものの、「敵は脱炭素であり、エンジン車ではない」(豊田章男トヨタ会長)とするトヨタの「マルチパスウェイ(全方位)」戦略を筆頭として「EV普及に後ろ向きだ」との批判を浴びてきたのも事実だ。 しかし、ここへきてEVブームの風向きが変わってきた。 23年は世界のEV販売が年間100万台を超えたが、急速に販売の伸びが鈍ってきている。中国では、過当な販売競争でNEV市場が荒れてきており、米国はEVよりハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の販売が伸びたことが注目されている。世界各国のエネルギー事情やEV販売の補助金を抑制する動きなどでBEVの伸びが鈍化しているのは確かだ。明らかにEVシフトの過渡期におけるひずみが起きている。 EVシフトを積極的に進めようとしていた自動車各社でも、その戦略を見直す動きが広がっている。) 米GMはかねて35年以降にエンジン車を販売しない目標を掲げており、25年後半に安価なEVを投入する計画だったが、その要であったホンダとの量販価格帯EVの共同開発を撤回した。代わりに戦略を修正し、PHV投入の方向を打ち出してきている。 米フォードもEV関連の投資計画全体のうち、120億ドルを抑制すると昨年10月に発表した。また、独メルセデス・ベンツは、30年の「完全EV化」を事実上撤回し、25年までに新車販売の最大50%がEVとPHVになるという見通しを「20年代後半」に遅らせた。 EVの成長ペースが鈍化しHVやPHVが当面の電動化の“現実解”との見方が広がる中で、トヨタを筆頭とする日本車各社は、市場に合わせた展開で巻き返しの好機を見いだしつつある。 だが、大きなうねりとしてBEVが主流になる動きは、長期的に見ると変わらないはずだ。 足元のEV鈍化に一喜一憂せず、日本車各社にはEV過渡期としての現状の“現実解”に対するアドバンテージを活かしながら、低コスト化や自動運転との親和性を活かした機能開発など、長期視点でのEV対応が求められることになるだろう。 また、アップルカーの撤退で、同じくテック企業とのコラボEVの代表であるホンダとソニーグループの共同開発車「アフィーラ」の動きにも変化があるのか、こちらにも注目したい』、「ここへきてEVブームの風向きが変わってきた。 23年は世界のEV販売が年間100万台を超えたが、急速に販売の伸びが鈍ってきている。中国では、過当な販売競争でNEV市場が荒れてきており、米国はEVよりハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の販売が伸びたことが注目されている。世界各国のエネルギー事情やEV販売の補助金を抑制する動きなどでBEVの伸びが鈍化しているのは確かだ。明らかにEVシフトの過渡期におけるひずみが起きている・・・EVの成長ペースが鈍化しHVやPHVが当面の電動化の“現実解”との見方が広がる中で、トヨタを筆頭とする日本車各社は、市場に合わせた展開で巻き返しの好機を見いだしつつある。 だが、大きなうねりとしてBEVが主流になる動きは、長期的に見ると変わらないはずだ・・・足元のEV鈍化に一喜一憂せず、日本車各社にはEV過渡期としての現状の“現実解”に対するアドバンテージを活かしながら、低コスト化や自動運転との親和性を活かした機能開発など、長期視点でのEV対応が求められることになるだろう。 また、アップルカーの撤退で、同じくテック企業とのコラボEVの代表であるホンダとソニーグループの共同開発車「アフィーラ」の動きにも変化があるのか、こちらにも注目したい」、その通りだ。

次に、3月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「中国にEV墓場、テスラ株は暴落…「やっぱりトヨタが正しかった!」と浮かれる人が見落とす死角」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340993
・『電気自動車(EV)大手である米テスラの株価が大幅に下落し、中国では「EV墓場」が出現している。対照的に、トヨタ自動車は、EV以外の選択肢を世界の消費者に提示し多くの需要を取り込んでいる。短期的には、この戦略は有効だろう。ただ、中長期的に世界のEVシフトは再加速する可能性が高い。日本の自動車メーカーは、どのように戦えばいいのだろうか』、「中長期的に世界のEVシフトは再加速する可能性が高い。日本の自動車メーカーは、どのように戦えばいいのだろうか」、確かに「中長期的」には「世界のEVシフトは再加速」に備える必要がありそうだ。
・『トヨタの株価が3割上がり テスラの株価が3割下がったワケ  一時期、大きく盛り上がった電気自動車(EV)に対する期待が、ここへ来て世界的に鈍化している。それは、米テスラをはじめ主要EVメーカーの株価の推移からも確認できる。年初から3月中旬までの間、エンジン車、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、EVなど全方位型の事業戦略を採るトヨタ自動車の株価は30%超上昇した。一方、それとは対照的にテスラの株価は、30%以上下落した。 中国では「EV墓場」が出現するほど、EVの供給過剰が社会問題化している。欧米の大手自動車メーカーのEV計画もやや頭打ち傾向になっている。人手不足と人件費高騰、サプライチェーン構築の遅れなどで、EVバッテリー関連のコストは想定以上に増えた。 対照的に、トヨタなどわが国の自動車メーカーは、EV以外の選択肢を世界の消費者に提示し多くの需要を取り込んでいる。短期的には、この戦略は有効だろう。 ただ、中長期的に世界のEVシフトは再加速する可能性が高い。特に、世界経済の成長の源泉として期待が高まるアジア地域で、わが国の自動車メーカーと、中国EVメーカーの競争は激化するだろう。 競争に勝ち残るため、わが国の自動車関連企業は次世代、次々世代の電動車の製造技術を早期に確立する必要がある。HVという有力な最終製品の実現に固執することなく、関連企業トップは先をにらんで必要な技術を磨き、世界に先駆けて実用化することが重要だ』、「中国EVメーカーの競争は激化するだろう。 競争に勝ち残るため、わが国の自動車関連企業は次世代、次々世代の電動車の製造技術を早期に確立する必要がある。HVという有力な最終製品の実現に固執することなく、関連企業トップは先をにらんで必要な技術を磨き、世界に先駆けて実用化することが重要だ」、その通りだ。
・『中国で「EV墓場」が社会問題 欧米の自動車大手もEVで苦戦  2023年の世界のEV販売台数は前年に比べて30%増えたものの、22年の前年比60%増に比べると、増加ペースは鈍化した。そして24年のEV販売台数は、23年と同程度か下回るとの予想もある。EV市場の成長の鈍化は、米テスラの決算でも確認できる。 1月、テスラのイーロン・マスクCEOは、24年の売上高の増加ペースが鈍化するとの見通しを示した。これにより同社の株価は下落し、投資判断を引き下げたアナリストもいる。新モデルの「サイバートラック」の生産が遅れていることに加え、電気自動車大手の中国BYDによる大幅な値下げ攻勢により、競争が一段と激化しているからだ。 中国では、不動産バブルが崩壊して個人消費の低迷が深刻になっている。地方政府の財政難もあり、EV販売への補助金が終了あるいは減少した。中国においてEVは供給過剰に陥り、経営破綻する新興EVメーカーも出ている。「1台買えば、もう1台が無料」といった信じられないセールを行う企業も現れたが、効果はほとんど出なかったようだ。 中国では行き場を失い放置される大量のEVの様子が、「EV墓場」として報道されてもいる。また、大雪時にバッテリーが消耗したことで立ち往生するEVが増えているともいう。春節(中華圏の旧正月)休暇で人々が帰省や旅行に出かけた際は、EV充電待ちの渋滞も発生した。こうした事例が広がり、消費者がEVを敬遠することに拍車をかけた。2月、中国のEV販売台数は前年同月比21.8%減の29万4000台に落ち込んだ。 翻って欧州では、自動車大手がEV計画の失敗を認める事態となっている。トヨタと世界トップの座を競う独フォルクスワーゲンは、15年に起きたディーゼルエンジンの排ガス不正問題を契機に、EVシフトを強化した。しかし、バッテリー製造コストの増加、ソフトウエアの開発力不足、充電インフラ整備の遅れなど課題は多い。同社CEO自ら「欧州EV市場は思ったほど拡大していない」との見解を示してもいる。 同様に独メルセデスは、「30年にEV専業メーカーになる」という目標を撤回し、新型エンジンの開発を進めている。また、仏ルノーは、市場環境が適さないとしてEV新会社Ampereの新規株式公開(IPO)を中止した。 米国でも欧州と似たような理由から、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォードのEV戦略が計画よりも遅れている。あるいは、レンタカー大手のハーツがEVの値崩れに直面し、経営トップが更迭されるという事例も出ている』、「中国では行き場を失い放置される大量のEVの様子が、「EV墓場」として報道されてもいる・・・大雪時にバッテリーが消耗したことで立ち往生するEVが増えているともいう。春節(中華圏の旧正月)休暇で人々が帰省や旅行に出かけた際は、EV充電待ちの渋滞も発生した・・・春節・・・休暇で人々が帰省や旅行に出かけた際は、EV充電待ちの渋滞も発生した。こうした事例が広がり、消費者がEVを敬遠することに拍車をかけた。2月、中国のEV販売台数は前年同月比21.8%減の29万4000台に落ち込んだ・・・独フォルクスワーゲンは、15年に起きたディーゼルエンジンの排ガス不正問題を契機に、EVシフトを強化した。しかし、バッテリー製造コストの増加、ソフトウエアの開発力不足、充電インフラ整備の遅れなど課題は多い。同社CEO自ら「欧州EV市場は思ったほど拡大していない」との見解を示してもいる。 同様に独メルセデスは、「30年にEV専業メーカーになる」という目標を撤回し、新型エンジンの開発を進めている。また、仏ルノーは、市場環境が適さないとしてEV新会社Ampereの新規株式公開(IPO)を中止」、なるほど。
・『全方位戦略が奏功のトヨタ 世界が優位性を再認識  中国と欧米でEVが総崩れに近い状況とは対照的に、わが国の自動車メーカーは世界市場で健闘している。車載用半導体の供給が改善されて自動車生産と輸出が回復したこと、世界で中国製EVを排除する動きが強まったことも、HVに強みを持つわが国の自動車産業に追い風だ。 現状、リチウムイオン系バッテリーを搭載したEVの供給は、中国勢が強みを持つ。その価格競争力を支えたのは、中国政府の産業政策だ。中国はBYDや世界最大の車載用バッテリーメーカーである寧徳時代新能源科技(CATL)に、産業補助金や土地を供与することでローコスト戦略を支援してきた。これは奏功して23年のCATLの業績は、世界のEV市場の成長鈍化にもかかわらず、純利益が増えるなど好調だ。 一方、欧州委員会や米国のバイデン政権は、中国製EVやバッテリーなどの主要部品に対する「締め出し策」を強化した。中国の一大政策による中国EVの低価格競争を警戒しているのだ。安全保障面でも、EVの走行データなどが中国に漏れるとの危機感が強い。 米国や欧州の政府系機関は、中国製EVを締め出すことで国・域内企業の電動車供給に弾みをつけようとしている。ところが、欧米自動車メーカーがEV生産を計画通りに進められない状況にあるのは前述した通りだ。EVからHVなどへ生産ラインを変更するのも容易ではない。 そうした中で、少ない温室効果ガス排出量と長い航続距離を両立するHVの長所が改めて評価され、トヨタをはじめとしたHVに需要が向かっている。中国でもレクサスは依然として人気ブランドである。 23年、4年連続でトヨタは世界トップの販売台数を記録した。足元では傘下のダイハツ工業の検査不正問題なども明るみになっているが、燃費のいいエンジン車、HV、PHV、FCV、EVと、さまざまなタイプを幅広く取りそろえる同社の優位性を、世界が再認識したといえる』、「燃費のいいエンジン車、HV、PHV、FCV、EVと、さまざまなタイプを幅広く取りそろえる同社(トヨタ)の優位性を、世界が再認識したといえる」、なるほど。
・『リチウムイオン電池の教訓を糧に「全固体電池」の実用化を急げ  今後、中国では新興のEVメーカーの経営破綻がさらに増えるだろう。米アップルが自前のEV、通称「アップルカー」の開発を中止する方針だという報道も出ている。これに続いて自動運転技術などの開発プロジェクトの中止、関連分野でのスタートアップ企業の淘汰も増えそうだ。米国においては金利の高止まりリスクも、EV市場の下押し要因になるだろう。 また、米国では11月5日に大統領選挙を控えている。今後は政権が自動車業界の労働組合などに配慮して、EVシフトではなくエンジン車の生産、シェールガスやオイル採掘の支援を強化するかもしれない。それらの変化は、基本的にわが国の自動車産業にプラスに働くはずだ。主要先進国の自動車市場で、わが国メーカーの競争力が向上する可能性は高い。 一方、中長期的には世界のEVシフトは加速する可能性がある。特に、タイやインドネシアなど、これまで日本の自動車メーカーが高いシェアを維持した東南アジアの国では、経済成長の牽引(けんいん)役としてEV関連産業を重視している。BYDなどの新興勢が低価格を強みに、進出を加速させるだろう。 現状、リチウムイオン系電池の低コスト化とEVのユニット組み立て型生産において、BYDの競争力は高い。一方、従来型の自動車ビジネス、すなわち、すり合わせ技術を磨き全方位型の事業戦略を推進する点で、わが国の自動車メーカーは優位性を持つ。そのため、東南アジア市場を中心に、日本勢と中国勢の競争が激しくなる可能性は高い。 わが国自動車メーカーにとって重要なのは、EVの切り札として期待される「全固体電池」など、次世代バッテリーの実用化を急ぐことだ。かつてリチウムイオン電池の研究開発は、わが国が先行した。ただ、事業化・収益化に難航した。 この教訓を糧に、日本は次世代、次々世代のバッテリー開発を強化すべきだ。そのためには世界的に優秀な人材を適切な賃金で雇うことも欠かせない。今春闘で大幅な賃上げが実現していることは、追い風になっている。 海外の自動車、半導体、IT企業などとの連携も強化し、中国勢とは差別化できるようなわが国発のEVを生み出し、バッテリー製造などの国際規格策定を主導することも本気で狙うべきだろう。こうした発想が、全方位型の自動車メーカーの戦略に加わることを期待したい』、「わが国自動車メーカーにとって重要なのは、EVの切り札として期待される「全固体電池」など、次世代バッテリーの実用化を急ぐことだ。かつてリチウムイオン電池の研究開発は、わが国が先行した。ただ、事業化・収益化に難航した。 この教訓を糧に、日本は次世代、次々世代のバッテリー開発を強化すべきだ。そのためには世界的に優秀な人材を適切な賃金で雇うことも欠かせない。今春闘で大幅な賃上げが実現していることは、追い風になっている。海外の自動車、半導体、IT企業などとの連携も強化し、中国勢とは差別化できるようなわが国発のEVを生み出し、バッテリー製造などの国際規格策定を主導することも本気で狙うべきだろう。こうした発想が、全方位型の自動車メーカーの戦略に加わることを期待したい」、同感である。
タグ:佃 義夫氏による「アップルカー開発断念」はEVブーム終焉のサイン?トヨタら日本勢はチャンスを活かせ」 ダイヤモンド・オンライン (その14)(「アップルカー開発断念」はEVブーム終焉のサイン?トヨタら日本勢はチャンスを活かせ、中国にEV墓場 テスラ株は暴落…「やっぱりトヨタが正しかった!」と浮かれる人が見落とす死角) 電気自動車(EV) 真壁昭夫氏による「中国にEV墓場、テスラ株は暴落…「やっぱりトヨタが正しかった!」と浮かれる人が見落とす死角」 また、アップルカーの撤退で、同じくテック企業とのコラボEVの代表であるホンダとソニーグループの共同開発車「アフィーラ」の動きにも変化があるのか、こちらにも注目したい」、その通りだ。 EVの成長ペースが鈍化しHVやPHVが当面の電動化の“現実解”との見方が広がる中で、トヨタを筆頭とする日本車各社は、市場に合わせた展開で巻き返しの好機を見いだしつつある。 だが、大きなうねりとしてBEVが主流になる動きは、長期的に見ると変わらないはずだ・・・足元のEV鈍化に一喜一憂せず、日本車各社にはEV過渡期としての現状の“現実解”に対するアドバンテージを活かしながら、低コスト化や自動運転との親和性を活かした機能開発など、長期視点でのEV対応が求められることになるだろう。 「ここへきてEVブームの風向きが変わってきた。 23年は世界のEV販売が年間100万台を超えたが、急速に販売の伸びが鈍ってきている。中国では、過当な販売競争でNEV市場が荒れてきており、米国はEVよりハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の販売が伸びたことが注目されている。世界各国のエネルギー事情やEV販売の補助金を抑制する動きなどでBEVの伸びが鈍化しているのは確かだ。明らかにEVシフトの過渡期におけるひずみが起きている・・・ 「アップルカー開発断念の背景には、アップルの完全自動運転EV開発が遅れている一方、生成AIを巡る競争環境の激変に対応が迫られているという社内事情があるようだ。加えて、これまで電動化の中で世界的にBEV(バッテリーEV)に偏向する風潮があったものの、直近でEV市場の変化や価格競争激化が生じるなど、EVの販売環境が悪化してきていることも挙げられる」、なるほど。 「中国では行き場を失い放置される大量のEVの様子が、「EV墓場」として報道されてもいる・・・大雪時にバッテリーが消耗したことで立ち往生するEVが増えているともいう。春節(中華圏の旧正月)休暇で人々が帰省や旅行に出かけた際は、EV充電待ちの渋滞も発生した・・・春節・・・休暇で人々が帰省や旅行に出かけた際は、EV充電待ちの渋滞も発生した。こうした事例が広がり、消費者がEVを敬遠することに拍車をかけた。2月、中国のEV販売台数は前年同月比21.8%減の29万4000台に落ち込んだ・・・ 「中国EVメーカーの競争は激化するだろう。 競争に勝ち残るため、わが国の自動車関連企業は次世代、次々世代の電動車の製造技術を早期に確立する必要がある。HVという有力な最終製品の実現に固執することなく、関連企業トップは先をにらんで必要な技術を磨き、世界に先駆けて実用化することが重要だ」、その通りだ。 「中長期的に世界のEVシフトは再加速する可能性が高い。日本の自動車メーカーは、どのように戦えばいいのだろうか」、確かに「中長期的」には「世界のEVシフトは再加速」に備える必要がありそうだ。 海外の自動車、半導体、IT企業などとの連携も強化し、中国勢とは差別化できるようなわが国発のEVを生み出し、バッテリー製造などの国際規格策定を主導することも本気で狙うべきだろう。こうした発想が、全方位型の自動車メーカーの戦略に加わることを期待したい」、同感である。 「わが国自動車メーカーにとって重要なのは、EVの切り札として期待される「全固体電池」など、次世代バッテリーの実用化を急ぐことだ。かつてリチウムイオン電池の研究開発は、わが国が先行した。ただ、事業化・収益化に難航した。 この教訓を糧に、日本は次世代、次々世代のバッテリー開発を強化すべきだ。そのためには世界的に優秀な人材を適切な賃金で雇うことも欠かせない。今春闘で大幅な賃上げが実現していることは、追い風になっている。 「燃費のいいエンジン車、HV、PHV、FCV、EVと、さまざまなタイプを幅広く取りそろえる同社(トヨタ)の優位性を、世界が再認識したといえる」、なるほど。 独フォルクスワーゲンは、15年に起きたディーゼルエンジンの排ガス不正問題を契機に、EVシフトを強化した。しかし、バッテリー製造コストの増加、ソフトウエアの開発力不足、充電インフラ整備の遅れなど課題は多い。同社CEO自ら「欧州EV市場は思ったほど拡大していない」との見解を示してもいる。 同様に独メルセデスは、「30年にEV専業メーカーになる」という目標を撤回し、新型エンジンの開発を進めている。また、仏ルノーは、市場環境が適さないとしてEV新会社Ampereの新規株式公開(IPO)を中止」、なるほど。
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ホテル(その7)(【無料公開】アパが電鉄系を大量買収!「ゾンビ化ホテル」に突き付けられる3つの究極の選択、アパホテル「コロナ禍の逆風でも業績好調」の戦略 「直販+ダイナミック・プライシング」で成功、シャトレーゼホテルに「汚部屋」批判…ホテル再生には“性悪説”が重要だ) [産業動向]

ホテルについては、昨年7月31日に取上げた。今日は、(その7)(【無料公開】アパが電鉄系を大量買収!「ゾンビ化ホテル」に突き付けられる3つの究極の選択、アパホテル「コロナ禍の逆風でも業績好調」の戦略 「直販+ダイナミック・プライシング」で成功、シャトレーゼホテルに「汚部屋」批判…ホテル再生には“性悪説”が重要だ)である。

先ずは、昨年8月2日付けダイヤモンド・オンライン「【無料公開】アパが電鉄系を大量買収!「ゾンビ化ホテル」に突き付けられる3つの究極の選択」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/305778
・『アパグループが電鉄系ビジネスホテルを大量買収するなど攻勢をかけている。アパにとってコロナ危機はチャンスでもあった。一方で宿泊客激減でゾンビ化したホテルは、ピンチを前に「三つの究極の選択肢」を突き付けられている。特集『ホテルの新・覇者』(全18回)の#14では、ゾンビ化ホテルの今後に迫る』、興味深そうだ。
・『アパにチャンス到来 電鉄系ビジネスホテルを買収  新型コロナウイルスの感染拡大により、電鉄会社のホテル売却が相次いだ。本業の鉄道における収益が伸び悩む中、インバウンド需要を当て込んで建てたビジネスホテルの事業が赤字に転落して足を引っ張ったためだ。 ホテル大手のアパグループにとってはチャンス到来。立て続けに電鉄会社のビジネスホテルを買収した(次ページに「アパグループが取得した電鉄系ホテル」のリストを掲載)。 次ページでは、アパがなぜ当該の電鉄系ホテルを選んで買ったのか、その詳細を明らかにする。さらに、宿泊客激減でゾンビ化したホテルが突き付けられている「三つの究極の選択肢」を示す』、「インバウンド需要を当て込んで建てたビジネスホテルの事業が赤字に転落して足を引っ張ったためだ・・・アパグループにとってはチャンス到来。立て続けに電鉄会社のビジネスホテルを買収した」、なるほど。
・『京急と西鉄がホテルを売却 「所有直営」だから選択できた  アパグループはコロナ禍以降、京浜急行電鉄から「京急EXイン羽田・穴守稲荷駅前」と「京急EXイン浅草橋駅前」(いずれも東京都)の2軒、西日本鉄道から「西鉄イン蒲田」(東京都)、「西鉄イン名古屋錦」(名古屋市)、「西鉄イン心斎橋」(大阪市)の3軒を買収した。 アパホテルの空白地帯にあったもの、自社ホテルと競合するエリアにあったものなどで、いずれもアパホテルにリブランドして最近リニューアルオープンした』、「京浜急行電鉄から「京急EXイン羽田・穴守稲荷駅前」と「京急EXイン浅草橋駅前」(いずれも東京都)の2軒、西日本鉄道から「西鉄イン蒲田」(東京都)、「西鉄イン名古屋錦」(名古屋市)、「西鉄イン心斎橋」(大阪市)の3軒を買収した」、なるほど。
・『アパが電鉄系を大量買収!「ゾンビ化ホテル」に突き付けられる3つの究極の選択  赤字を垂れ流して今後も厳しい状況が続く、あるいは完成直前ないし直後にコロナ禍がぶつかりオープンの見通しが立たないことで“ゾンビ化”したホテル――。そうしたホテルを抱える企業は今後どうするか決断を迫られている。 京急や西鉄のように「物件を売却」するのが一つ目の選択肢になる。ただし、この手が使えるのは土地と建物がワンセットになっている場合に限られる。 下図のように、主なホテル運営の方式には「所有直営方式」と「賃貸(リース)方式」がある。 (図表:ホテルの所有と賃貸の仕組み はリンク先参照) 所有直営方式では、土地・建物のオーナーが自ら運営する。この方式のメリットは、自らオーナーとなるため、土地・建物の賃料を払わなくていいこと。不動産取得費用は通常、金融機関からの借り入れで賄われる。そのため資金調達が必要で、短期間でのチェーン展開がしにくいというのがデメリットだ。 この方式なら、電鉄会社のようにホテルを切り売りして手元キャッシュを賄い急場をしのげる。多額の借金が残っている新築物件などは売ってもマイナスになる場合もあるが、早めに手放すことでキャッシュがこれ以上流出していくのを防ぐ手だてとなる。つまり「損切り」である。 収益用マンション開発を本業とする不動産会社、第一リアルターは大胆に損切りを決断した。同社はインバウンド需要の追い風を受け、ビジネスホテルを建てて完成後に投資家に売るという事業に乗り出していた。このホテル建て売りビジネスに2000億円以上を投じ、50棟以上のホテルを建て、業績を急激に伸ばした。「その分野では日本トップだった」と同社の奈良田隆社長は自負する。 ところが、投資したうちの1500億円分程度まで売却が終わったところでコロナ禍に直面した。ここで奈良田社長は買った土地をすぐ損切りしてでも売却すると決め、残っていた建設計画をストップした。「当社は未上場で業績予想を出す必要がない。だから自分で考えられるリスク・リターン分析だけでやれた」と奈良田社長。インバウンド需要で数百億円の利益を得ていたことに加え、コロナ禍の初期段階で“止血”したからこそ「何とか生き残れた」という』、「第一リアルターは大胆に損切りを決断した。同社はインバウンド需要の追い風を受け、ビジネスホテルを建てて完成後に投資家に売るという事業に乗り出していた。このホテル建て売りビジネスに2000億円以上を投じ、50棟以上のホテルを建て、業績を急激に伸ばした。「その分野では日本トップだった」と同社の奈良田隆社長は自負する。 ところが、投資したうちの1500億円分程度まで売却が終わったところでコロナ禍に直面した。ここで奈良田社長は買った土地をすぐ損切りしてでも売却すると決め、残っていた建設計画をストップした。「当社は未上場で業績予想を出す必要がない。だから自分で考えられるリスク・リターン分析だけでやれた」と奈良田社長。インバウンド需要で数百億円の利益を得ていたことに加え、コロナ禍の初期段階で“止血”したからこそ「何とか生き残れた」という」、賢明な手仕舞いだ。
・『「リース方式」の会社はホテル切り売りを選択できない  ホテル運営には賃貸(リース)方式もある。 ホテル会社は、不動産を持たずにオーナーから土地や建物を借りて運営する。メリットは、短期間でのチェーン展開がしやすいこと。しかし、宿泊客がゼロでもオーナーに一定の賃料を支払うという契約になっていることが多く、コロナ禍のようなケースではたちまち赤字に陥ってしまうデメリットがある。 リース方式で運営しているホテル会社は不動産がないため、ホテルを切り売りするという選択ができない。また、更地を借りてホテルは自ら建てようとしていた場合、コロナ禍で建物を建てられずに収益を出す見通しが立たないまま、地代家賃だけをオーナーに支払い続けることになるケースも。 インバウンドやビジネスの需要が戻るまで雇用調整助成金やコロナ融資などで食いつないだとしても、借り入れが膨らみ、コロナ禍が終息してもその返済に追われることになる。返済が追い付かず、金融機関が返済猶予や追い貸しに応じなくなった瞬間、息が続かなくなってしまう。 そのとき迫られる二つ目の選択肢が会社の売却、つまり「身売り」だ』、「迫られる二つ目の選択肢が会社の売却、つまり「身売り」だ」、なるほど。
・『「リース方式」のホテル会社は身売りも難しい  THEグローバル社の身売りは、世間でも話題になった。同社は京都市を中心に、2016年ごろからインバウンド向けのホテルを仕込んで建てまくり、飛ぶ鳥を落とす勢いで業績も急上昇した。 だがコロナ禍で一転、大赤字に。中国平安保険グループとSBIホールディングスが大株主である、マンションデベロッパーのアスコットに買収され、その軍門に下った。 ここで注意を払いたいのは、THEグローバル社に切り売りできる不動産があったからこそ身売りができたという点だ。 一方、ホテルバブルで業績を伸ばしてきた多くのホテル会社はリース方式で、オーナーに固定賃料を支払うために借金を重ねてきた。宿泊料収入がなくなれば、たちまち返済に行き詰まる。 それを投資家も分かっているから、オーナーとの賃料減額交渉が成立しているといったポジティブな要素でも見いだせない限り、リース方式のホテル会社は買わない。 リース方式の会社は身売りも難しいのだ』、「リース方式の会社は身売りも難しいのだ」、なるほど。
・『第三の選択はオフィスなどへの「用途転換」 三つ目の選択肢は、用途をホテル以外に変更する「用途転換(コンバージョン)」だ。 ホテル・旅館売買仲介業務やマーケット分析などを手掛けるバンガード・パートナーズには、日々売り物件の情報が入ってくる。だが、「ビジネスホテルでいい物件はあまりない」と、同社の檜山宗孝社長は言う。 「いい物件はあまりない」というのは価格面、ハード面の両方に当てはまる。価格面では売却希望価格が高く、買い手が出せる金額とのギャップが大きい。売り主はなるべく損切りしたくないため、価格を下げたがらないのだ。 ハード面では、近年造られた新しいものであっても魅力に乏しいものが多い。というのも、客室面積が小さいものが多く、今後の需要の取り込みを期待できないからだ。 ビジネスホテルは供給過多な上に、出張需要はコロナ禍前のレベルに戻らないと見立てるホテル関係者は多い。そうなると1~2人用客室の利用者は限られ、インバウンドからの3~5人用客室のニーズの方が強くなる。実際、損切りを行った第一リアルターの奈良田社長も今後、客室が広めの新たなタイプのホテル開発にチャンスを見いだしている。 バンガード・パートナーズでは最近、ビジネスホテルが供給過多の京都市で、あるホテル売却に携わった。本業が別にあって、ホテルがもうかるからちょっとやってみようという安易な考えで手を出してしまった揚げ句、失敗したというケースだ。 それでも売れればまだましだ。京都市で売りに出ている物件の中には、明らかにインバウンド狙いで住宅地に建ててしまったホテルもある。そうしたホテルは不便な場所にあるなど立地が悪く、コロナ禍以降、いまだに閉じられたままだ。 ホテルとしては価値がなく、そのままでは買い手もつかないという窮地に陥り、オフィスビルに用途転換するケースも出てきた。「客室の天井高がそれなりにあればオフィスにはできる」と檜山社長。もっとも、「採光の問題などから住宅への転用は基本的に難しい」という。 現状で需要は見込めそうもないが、ホテルとして続けたい、あるいは他への用途転換が難しい場合、ベッド数を増やしてファミリー層を取り込むなど顧客のターゲットを変えるといった策もあるにはある。だが、客室面積が小さいホテルではこれができないから、なかなか買い手がつかない。 究極ともいえる三つの選択肢。このどれも実行できなければ、残された道は倒産である。コロナ禍前から事業の急拡大によって多額の有利子負債を抱えていたり、競争激化で業績が低迷していたところは、ことさら危ない』、「ビジネスホテルは供給過多な上に、出張需要はコロナ禍前のレベルに戻らないと見立てるホテル関係者は多い。そうなると1~2人用客室の利用者は限られ、インバウンドからの3~5人用客室のニーズの方が強くなる。実際、損切りを行った第一リアルターの奈良田社長も今後、客室が広めの新たなタイプのホテル開発にチャンスを見いだしている・・・客室面積が小さいホテルではこれができないから、なかなか買い手がつかない。 究極ともいえる三つの選択肢。このどれも実行できなければ、残された道は倒産である。コロナ禍前から事業の急拡大によって多額の有利子負債を抱えていたり、競争激化で業績が低迷していたところは、ことさら危ない」、「ビジネスホテル」を取り巻く環境は厳しそうだ。

次に、8月22日付け東洋経済オンラインが掲載したボナ・ヴィータ代表取締役、BBT大学教授(マーケティング)の菅野 誠二 氏による「アパホテル「コロナ禍の逆風でも業績好調」の戦略 「直販+ダイナミック・プライシング」で成功」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/691314
・『インフレ、増税、円安、リセッションがニュースで報じられる昨今、「価格と利益」について、誰もが一度は考えたことがあるのではないでしょうか。最近、最も世間を騒がせた話題は「卵」の高騰でした。 『価格支配力とマーケティング』の著者 菅野誠二氏は、「自由に価格が設定できて、しかもお客さんが喜んで買ってくれるような、ハッピーな値付けが実現できたら夢のようではないか」と話します。 この記事では、需給が変化しやすいマーケットでも顧客価値創造をしながら価格支配力を獲得するバランスの妙を実現したアパホテルを例に解説します』、興味深そうだ。
・『他のビジネスホテルと異なる  ■出張族のインサイト  密かな楽しみ」から自社の強みを創造する  アパホテルは、コロナの逆風を経ても圧倒的な業績を示し続けている*。 目標、理念として同社は「利益の最大化ではなく、あくまで日本の住まい文化に貢献するという大義にある」としている。アパグループはホテル事業だけでなくリゾート事業、住宅事業、マンション・ビル管理事業も傘下に持つ。 *2022年11月末の連結決算で売上1,382億(過去5年CAGR 3.6%)、営業利益358億円(売上利益率25.9%)、経常利益353億円と、業界内で圧倒的な利益率を誇る。ホテルネットワークとして全国最大の 719 ホテル 110,395 室(建築・設計中、海外、FC、アパ直参画ホテルを含む)を展開 ターゲットは主に、企業の上位5%層のビジネスパーソンだ。このターゲットは急な出張の機会が多く、その際の価格弾力性が低い。会社が費用負担してくれるからである。同社の最大の強みは、「他のビジネスホテルと異なるビジネスマンの顧客インサイトの捉え方」にある。 同社がまず特定したビジネスパーソンのインサイトは「会社の出張費でポイントを貯め、それをプライベートの割引に活用することが出張族の密かな楽しみ」である。 価格弾力性が低く、同社クラスのホテル代なら、企業が支払える価格帯に設定する。 さらに、会社の経理に言えない、もう少し深いインサイトは、「急な出張を強いるのは会社都合なのだから、ホテル料金は高くなる。多めにポイントをもらえるくらいの余禄があってもよいよね」だと考えれば、同社の勝利の打ち手はダイナミック・プライシングにあると、私は理解している』、「アパホテル」は現在テレビCMを大量に流している。「「会社の出張費でポイントを貯め、それをプライベートの割引に活用することが出張族の密かな楽しみ」である。 価格弾力性が低く、同社クラスのホテル代なら、企業が支払える価格帯に設定する」、なるほど
・『ビジネスモデルの8割は「真似」  ■業界の外からダイナミック・プライシングを持ち込む  このビジネスモデル・イノベーションは、もともとは航空業界の手法である。そのため、同社のダイナミック・プライシングは世界初の取り組みではないが、日本のビジネスホテル業界に本格的に持ち込んだ企業がアパホテルなのだ。 「ダイナミック・プライシング」についてはのちほど説明するが、こうしたビジネスモデル・イノベーションを生む思考法を「アナロジー思考」と呼ぶ。 アナロジー/Analogy(類推思考)とは、他の業界の事例をアイデアの発想のもとにすることだ。単なる真似ではなく、新たなアイデアの追加が必要で、世の新規ビジネスモデルのうち80%は他業種にある業態の真似である、といわれる*。 シュンペーターの新結合の思想に同じく、新しいアイデアは既にあるアイデアの組みあわせが多いのだ』、「業界の外からダイナミック・プライシングを持ち込む  このビジネスモデル・イノベーションは、もともとは航空業界の手法である。そのため、同社のダイナミック・プライシングは世界初の取り組みではないが、日本のビジネスホテル業界に本格的に持ち込んだ企業がアパホテルなのだ」、なるほど。 
・『■ギリギリまで最高値で販売できるAIシステム  アパホテルの戦略は、「直販+ダイナミック・プライシング」だ。価格は市場ニーズに応じて一物多価で常に変化させ、価格支配力を維持する。 他社は予約サイトとの力関係上、どうしても値下げに応じて予約サイトへの割り当てを提供しがちだ。しかしアパホテルはTV広告やデジタル・マーケティングで顧客が直接予約サイトを訪れ、決済するまでをうまく誘導している。 また、コロナ禍で窮地に陥った多くのホテル事業者を底値で買収しており、これを「逆張りの投資」と呼んでいる。これまでにも幾多のホテル・観光・不動産不況時に、強靭な財務力と元谷外志雄会長の逆張り発想で、業績が低迷したホテルを底値で買収して事業規模を拡大してきた。 マーケティング・ミックスとそれを支えるシステムとしては、宿泊当日の予約が一番高価格で売れることから、キャンセル料は無料で、ギリギリまで最高値で販売できるようにAIシステムを導入している。最終判断はAIを参考にして各ホテルの支配人がそれぞれ全権を握り、効率的に稼働率を向上させつつ、平均単価をあげる仕組みがある。) ITのシステム上、ホテル比較サイトで近隣の空き部屋状況をリアルタイムで把握しながら空室在庫を分析し、1000円程度、価格をあげてプレミアムを取る。 部屋は豪華ではないが、コンパクトな部屋に大きなTVと、広く上等なベッドがあり、その上でも仕事ができるという仕様だ。徹底的にビジネスパーソンの出張に焦点を当てている。 アパホテルのホームページではロイヤルティプログラムが解説されており、ここで狙うのは「ファン化」である。 会員制度1900万人に対して平均で10%程度キャッシュバックしながら、ホテル予約サイトの宿泊料金設定は「アパ直」が最安値となるようにアパホテルが一括設定している。これによって直販サイトからの顧客流入を増やしてマージンを確保する』、「会員制度1900万人に対して平均で10%程度キャッシュバックしながら、ホテル予約サイトの宿泊料金設定は「アパ直」が最安値となるようにアパホテルが一括設定している。これによって直販サイトからの顧客流入を増やしてマージンを確保する」、なかなか賢明なやり方だ。
・『独自予約サイト利用でポイント  このロイヤルティプログラムでは、「年間利用実績(泊数等)に応じて5つの会員ステータスを用意している。「レギュラー」会員は最大9%だが最高位の「プレジデント」になると最大還元率が15%となる。これらは独自予約サイト「アパ直」経由の宿泊予約でアパポイントがたまるという仕組みだ。 また、「アパトリプルワンシステム」は、ホテル利用時スマホでアプリを使用すると「1ステップ予約」「1秒チェックイン」「1秒チェックアウト」ができる。 こと細かに顧客の使用シーンからペインを取り除いているのだ。 AIを含むITの活用とターゲット顧客に焦点を当てたビジネスモデル・イノベーションが成功の鍵である』、「AIを含むITの活用とターゲット顧客に焦点を当てたビジネスモデル・イノベーションが成功の鍵である」、大したものだ。
・『■ダイナミック・プライシングのリスクとアパホテルのコミュニケーション力  最後に「ダイナミック・プライシング」の解説をしておこう。 近年ではデジタル・マーケティングと相性のよいダイナミック・プライシングがさまざまな業界で活用されるようになってきた。従来、使用されていたアルゴリズムは、競合価格の監視や在庫量にあわせて価格を変動させる自動化レベルだった。 ここに数理、統計をもとに決定を補佐する「機械学習」や、AIが天気・イベントなどから需給に関連する変数をもとに収益最大化の選択肢を提示する「強化学習」が加わっている。 メリットは収益性の向上と在庫の低減にある。 一方でデメリットは、極端な価格変動を体感して「損した」「ぼったくりだ」など、顧客からの不信を生みかねず、ブランド棄損につながる可能性があることだ。 システム導入のコストも高く、解析のための人的能力が必要だし、一定量のデータ蓄積が必要で、成果が出るまでにそれなりの時間がかかることも懸念点である。 一時期、アパホテルに対して繁忙期の価格が高すぎるという不満がSNS上で炎上し、2017年に日経ビジネスが実施したホテル満足度調査では35社中最下位だった』、「一時期、アパホテルに対して繁忙期の価格が高すぎるという不満がSNS上で炎上し、2017年に日経ビジネスが実施したホテル満足度調査では35社中最下位だった」、こうしたデメリットを覚悟した上で、取り組んだようだ。
・『顧客満足度を向上させるために  しかし、日経ビジネスからのインタビュー**に対してアパグループの元谷外志雄代表の対応には、価格支配力への強い意思と戦略性を感じる。 一般論で言えば、価格設定がうまく機能して宿泊料金を上げれば、利用者の評価は下がる。 価格設定が不十分で、高く売れる日に安く売っていれば評価は上がる。 裏を返せば評価が低いということはそれだけ、うちは価格設定がうまいと言えなくもない。 だから非常に高い評価を維持しているホテルは、本来高く売れるのを安く売っているから評価が高いとも言える。 ……儲からないホテルはいいホテルと言えないと思います。 赤字で破綻するようなことがあれば、社会に対しても従業員にも迷惑をかけます。 ……いずれにしてもうちとしても利用者の評価を上げていこうと今、努力中です。 **『アパホテル、繁忙期の料金高騰に不満相次ぐ元谷外志雄代表・芙美子社長が夫婦で語る料金の秘密』日経ビジネス/2017年11月6日価格支配力とマーケティング 実際、顧客満足度を向上させるために価格の上限にキャップをかぶせて表示価格/正規料金の1.8倍とし、ポイントバック制度を活用して設備リニューアルを積極的に導入している。 また、各ホテルの支配人の評価基準をRevPAR/Revenue Per Available Room:販売可能な客室1室あたりの収益を稼働率×単価であらわす値としているため、稼働率が他社と比べて高い。 ダイナミック・プライシングの導入には顧客へのていねいな説明をするコミュニケーション能力が問われるのだが、同社はそれをやってのけているといえるだろう』、「ダイナミック・プライシングの導入には顧客へのていねいな説明をするコミュニケーション能力が問われるのだが、同社はそれをやってのけているといえるだろう」、経営陣の強い意志で導入したとすれば、立派なものだ。

第三に、本年3月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「シャトレーゼホテルに「汚部屋」批判…ホテル再生には“性悪説”が重要だ」を紹介しよう。
・『和洋菓子店「シャトレーゼ」を国内外で展開するシャトレーゼホールディングスが運営するホテルが話題です。スイーツでファミリー層を呼び込み稼働率をアップさせる一方で、「汚部屋」批判も集まっています。実は、シャトレーゼには「構造的な弱点」があるのです』、「シャトレーゼには「構造的な弱点」がある」、とはどういうことだろう。
・『シャトレーゼがホテル再生に着手 黒字化の裏で批判も…?  お菓子やケーキの製造直販で全国に1000店舗を展開するシャトレーゼが、ここ数年、ホテル再生を始めています。経営難に陥ったホテルや旅館を買収し、そこにシャトレーゼの価値を加えて再生するという面白い視点の再生事業です。 現在、全国に11カ所のシャトレーゼホテルを運営するところまで広がっていて、その多くで黒字化を実現したといいます。 一方でそれぞれのシャトレーゼホテルの口コミを調べてみると、全体的に評価はいい半面で、一部のホテルの評価がばらついていることに気づかされます。 実はわたしもコンサルタント歴が長いせいで、ホテル再生を手伝ったこともあります。その過程で、わたし自身はホテル再生には向いていないと思いました。 では、シャトレーゼはどうなのかというと、やはり一部のホテルは苦戦しているようです。 今回の記事ではそれらの口コミを切り口に、シャトレーゼのホテル再生事業について見ていきたいと思います』、「ホテル再生」事業と「お菓子やケーキの製造直販」事業にシナジーが働く部分が多いとは思えない、むしろマイナスの影響もあるのではなかろうか。
・『スイーツでファミリー層を呼び込み稼働率アップ! 同時に「引き算」も行っている  まず、シャトレーゼホテルとはどのようなものかを理解するために、長野駅から徒歩5分のところにあるシャトレーゼホテル長野についてご紹介したいと思います。 このホテルは、2022年9月まではメルパルク長野でした。もともと日本郵政グループのホテル事業でしたが、メルパルク全体を民営化後にワタベウェディングへ売却。そのうち長野のホテルをシャトレーゼが買収して、2023年7月にリニューアルオープンさせたものです。 シャトレーゼホテル長野では、15時~17時45分の間にチェックインするとウエルカムケーキとしてシャトレーゼのケーキをドリンク付きで食べることができます。さらに滞在中は、ホテルに2カ所あるアイスバーで好きなアイスバーが食べ放題。そして朝食のバイキングでも、店舗と同じ大きさのシャトレーゼのケーキが提供されます。 旅行サイトで見ると2人で宿泊する場合、朝食付きで一人7000円近辺が最安値となっています。今年4月には現在改装中の1階にシャトレーゼの店舗が開店する予定なので、そうなればお菓子好きにはたまらない宿泊施設になりそうです。 後述するように11のホテルはサービス内容が微妙に異なることもあるのですが、チェックイン時にウエルカムケーキが楽しめて、滞在中はアイスが食べ放題というサービスが滞在客に刺さっている様子です。 そのおかげで、シャトレーゼホテルになってからは家族客が増加したといいます。ホテル再生の方程式としては、これまでの固定客層に加えて新たにシャトレーゼのスイーツ好きな家族客が加わった分、稼働率が上がり、ホテル経営としては増収となり、黒字化しやすくなったというのが基本図式のようです。 ただ当然ですが、ホテル再生というのは簡単な仕事ではありません。前のオーナーがホテル業をやっていてうまくいかず、新しいオーナーはそれにお菓子事業を加えたらうまくいくというようなシンプルな話であれば、皆がそれをまねするはずです。 シャトレーゼホテルの場合、ホテル再生にはそのような足し算だけでなく、引き算もきちんと行っている様子です』、「チェックイン時にウエルカムケーキが楽しめて、滞在中はアイスが食べ放題というサービスが滞在客に刺さっている様子です。 そのおかげで、シャトレーゼホテルになってからは家族客が増加したといいます。ホテル再生の方程式としては、これまでの固定客層に加えて新たにシャトレーゼのスイーツ好きな家族客が加わった分、稼働率が上がり、ホテル経営としては増収となり、黒字化しやすくなったというのが基本図式のようです・・・ホテル再生というのは簡単な仕事ではありません。前のオーナーがホテル業をやっていてうまくいかず、新しいオーナーはそれにお菓子事業を加えたらうまくいくというようなシンプルな話であれば、皆がそれをまねするはずです。 シャトレーゼホテルの場合、ホテル再生にはそのような足し算だけでなく、引き算もきちんと行っている様子です」、なるほど。
・『フロントとスタッフ 「2つのムダ」をそぎ落としている  それは製造業が得意とする「ムダ取り」の手法を、サービス業であるホテル業に導入したという話です。 山梨県にあるシャトレーゼホテル旅館富士野屋は、もともと老舗の温泉旅館だったところをシャトレーゼホテルに改装したものです。その再生についてシャトレーゼの齊藤寛会長が言うには、ホテル業や旅館業には製造業から見たらムダがあるということです。 富士野屋について齊藤会長が指摘されたのは、旅館の顔でもあるフロントです。製造業の視点で見ればスペースが広いわりには結構ガラガラだというのです。それで、これは面白い発想だと思うのですが、その一番重要なスペースを玄関ではなくシャトレーゼグループの高級菓子店であるYATSUDOKIの店舗に改装するのです。 さらに、YATSUDOKIの店舗とレストランの稼働のピーク時間がずれているのもムダがあるといいます。レストランと店舗を隣接させることで、レストランが忙しい時間は店舗のスタッフが手伝えばいいし、その逆もできるというのです。 これらは製造業発想だといえば製造業発想なのですが、ある意味でサービス業の経営にとってはコロンブスの卵のような指摘です。そしてホテルの再生ですから、製造業的なムダ取りという引き算も大いに収益改善に貢献するはずです。 さて、全体としては以前の経営よりも良くなったというのがシャトレーゼホテルの評判ですが、口コミの中には厳しい意見も散見されます。それほど厳しくはないものも含めると、シャトレーゼホテルの改善点とおぼしき口コミは大きく分けて3種類あります』、「シャトレーゼホテルの改善点とおぼしき口コミは大きく分けて3種類あります」、具体的にはどんなものなのだろう。
・『シャトレーゼは組織風土的に横ぐしの運営が苦手  一つ目のかたまりとしては、これはシャトレーゼらしい批判だと思えるのですが、シャトレーゼホテルの間でサービスがそこそこ違うというのです。 あるホテルではケーキがバイキングで提供されていたのに、ここでは一つしかケーキが選べないとか、提供されるケーキが最高級のYATSUDOKIのもののホテルもあれば、安価な(でもおいしいのではありますが)シャトレーゼのホテルもあるといった具合です。 実はシャトレーゼホテルの公式ページを見ても、シャトレーゼホテルでどのようなサービスが受けられるのかは読み取れません。 予約をするためにじゃらんなどの予約サイトを訪れても、価格や部屋の広さ、設備の概要などは書いてあるのですが、顧客が一番知りたいスイーツのサービスの中身がわかる場所に書かれていない。一番ちゃんとわかるのが実は口コミのページだったりします。 そしてこれは、実にシャトレーゼらしい欠点だとわたしは感じました。シャトレーゼはホテル全体といった横ぐしの運営が組織風土的には苦手なのです。 シャトレーゼの社内はプレジデント制を敷いていて、社内に150人ものプレジデントがいらっしゃいます。株式会社シャトレーゼの場合、それぞれのプレジデントが洋菓子や和菓子など縦割りの責任者として責任を持つスタイルです。 わたしは経済評論家として、シャトレーゼは武田信玄型の経営をする企業だと考えています。 シャトレーゼの地元である山梨県甲府市は、武田信玄のおひざ元で、その信玄公は「人は城、人は石垣、人は堀」という言葉で知られるように、人を育て、その人が国そのものを形作る国造りをした人物です。たくさんの人数の社員に小さな縦割り組織の責任を持たせることで人を育てるというのは、信玄公的発想ではないでしょうか。 そのシャトレーゼが経営するホテルですから、おそらくそれぞれのホテルの再生をそれぞれの人物に責任を持たせているのでしょう。 いい意味でそれぞれのホテルが競争しながら再生させていくのでしょうけれども、そうなるとホテルごとに特色が出てくることになります。それもいいことなのですが、そのせいでブランドマネジメントという横ぐしが抜けてしまって、サービスが統一されていないというのが一つ目の課題でしょう。 さて、二番目にほぼすべてのシャトレーゼホテルの口コミに見られるのがハードウエア面の課題です。 ホテル買収後、リニューアル投資をしてシャトレーゼホテルとして再オープンするのですが、それでも「廊下のカーペットが古い」とか「共用部分の壁紙が汚れている」といった元々のホテルの古さが目に付く部分は気になるのでしょう。口コミでは、そのようなマイナスの指摘が散見されます。特に宿泊客が気にするのがWi-Fi設備が古い場合のクレームです。 限られた予算の中でホテルを再生しようとすると、当然ながらすべての改修に手が回るのは難しい。特にシャトレーゼホテルは昔からの経営でうまくいっていないホテルや旅館を改装するので、どうしても古い部分は目立ってしまうようです。この二番目のマイナス点は、わたしはそれほど気にすることではないように思います』、「たくさんの人数の社員に小さな縦割り組織の責任を持たせることで人を育てるというのは、信玄公的発想ではないでしょうか。 そのシャトレーゼが経営するホテルですから、おそらくそれぞれのホテルの再生をそれぞれの人物に責任を持たせているのでしょう。 いい意味でそれぞれのホテルが競争しながら再生させていくのでしょうけれども、そうなるとホテルごとに特色が出てくることになります。それもいいことなのですが、そのせいでブランドマネジメントという横ぐしが抜けてしまって、サービスが統一されていないというのが一つ目の課題でしょう・・・二番目にほぼすべてのシャトレーゼホテルの口コミに見られるのがハードウエア面の課題です。 ホテル買収後、リニューアル投資をしてシャトレーゼホテルとして再オープンするのですが、それでも「廊下のカーペットが古い」とか「共用部分の壁紙が汚れている」といった元々のホテルの古さが目に付く部分は気になるのでしょう」、食品企業にとっては、致命的なのではなかろうか。
・『M&Aの成功には「性悪説的な厳しさ」が必須  さて、三番目に一部のシャトレーゼホテルは他のシャトレーゼホテルよりもマイナスが大きな部分があります。それは働く人に起因する悪い口コミです。 具体例を挙げると、部屋が汚かったという口コミがあります。前の宿泊客の髪の毛が落ちていたとか、冷蔵庫に残り物が入っていたとか、きちんと清掃がなされていたらそんなことが起きないようなことが書き込まれているホテルがあります。 アメニティーが不足しているというような場合にクレームをつけたところ、「対応します」と言っておきながらチェックアウトまでに対応してもらえなかったという口コミもあります。 このようなホテルではスタッフの対応に対するクレームが多くみられることから、働く人に問題があるようです。コンサルタントとしての立場で眺めると、内部の人間関係がギスギスしている場合によくみられる症状です。 そしてこれは、ホテル再生でよくみられる課題でもあります。 ホテルの買収というものはホテル運営をする組織を一緒に買収するわけで、人も一緒に付いてきます。その人がちゃんと再生できないリスクは常にあるのです。 これはコンサル経験からくる私見ですが、M&Aがうまくいくケースは往々にして性悪説によって立った経営者が行うほうが多いように思えます。 経営が傾いた組織の中にはたちの悪い従業員も一定数いるわけで、それを早めに見抜いて厳しく処遇する、ないしはそういった従業員が悪さをしないように目を光らせて早めに手を打つといった厳しさが重要だったりするものです。 それに対して人に期待をし過ぎる経営や、人を信じやすい経営者は、M&Aの結果を出せないケースが結構あるのです。シャトレーゼは長い時間をかけて、従業員や取引先、契約農家など同じ考えを持つ人の数を増やし成長してきた会社です。 そういった強みを持つ会社は、実はM&Aによる事業再生は本質的には向いていないかもしれません。 それを避けるためには、M&Aの前に買収する企業の内部の人についてじっくりとデューデリジェンスをすべきなのですが、わずか2年ほどで11ものホテルを買収したという事実だけから推察するに、その過程が甘かったのかもしれません。 さて、このように口コミから見るといいことばかりではないように見えるシャトレーゼのホテル再生ですが、最初に申し上げたように、全体的には黒字になるホテルも多く、かつ宿泊客はシャトレーゼのファンになってくれる好循環を生んでいるようです。 若干気になるのが、ハイペースでの展開から起きるネガティブな反応だということではあるのですが、まだ再生も始まったばかり。シャトレーゼのファンとしては、うまく乗り越えてシャトレーゼホテルにも成功していただきたいと思います』、「スタッフの対応に対するクレームが多くみられることから、働く人に問題がある・・・前述の「元々のホテルの古さが目に付く部分」と合わせてみると、私には「M&A」に無理があるように思える。私も「シャトレーゼのファン」ではあるが、大きな混乱なく丸く収まってほしいものだ。 
タグ:「迫られる二つ目の選択肢が会社の売却、つまり「身売り」だ」、なるほど。 「当社は未上場で業績予想を出す必要がない。だから自分で考えられるリスク・リターン分析だけでやれた」と奈良田社長。インバウンド需要で数百億円の利益を得ていたことに加え、コロナ禍の初期段階で“止血”したからこそ「何とか生き残れた」という」、賢明な手仕舞いだ。 「第一リアルターは大胆に損切りを決断した。同社はインバウンド需要の追い風を受け、ビジネスホテルを建てて完成後に投資家に売るという事業に乗り出していた。このホテル建て売りビジネスに2000億円以上を投じ、50棟以上のホテルを建て、業績を急激に伸ばした。「その分野では日本トップだった」と同社の奈良田隆社長は自負する。 ところが、投資したうちの1500億円分程度まで売却が終わったところでコロナ禍に直面した。ここで奈良田社長は買った土地をすぐ損切りしてでも売却すると決め、残っていた建設計画をストップした。 「京浜急行電鉄から「京急EXイン羽田・穴守稲荷駅前」と「京急EXイン浅草橋駅前」(いずれも東京都)の2軒、西日本鉄道から「西鉄イン蒲田」(東京都)、「西鉄イン名古屋錦」(名古屋市)、「西鉄イン心斎橋」(大阪市)の3軒を買収した」、なるほど。 「インバウンド需要を当て込んで建てたビジネスホテルの事業が赤字に転落して足を引っ張ったためだ・・・アパグループにとってはチャンス到来。立て続けに電鉄会社のビジネスホテルを買収した」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン「【無料公開】アパが電鉄系を大量買収!「ゾンビ化ホテル」に突き付けられる3つの究極の選択」 (その7)(【無料公開】アパが電鉄系を大量買収!「ゾンビ化ホテル」に突き付けられる3つの究極の選択、アパホテル「コロナ禍の逆風でも業績好調」の戦略 「直販+ダイナミック・プライシング」で成功、シャトレーゼホテルに「汚部屋」批判…ホテル再生には“性悪説”が重要だ) ホテル 「リース方式の会社は身売りも難しいのだ」、なるほど。 「ビジネスホテルは供給過多な上に、出張需要はコロナ禍前のレベルに戻らないと見立てるホテル関係者は多い。そうなると1~2人用客室の利用者は限られ、インバウンドからの3~5人用客室のニーズの方が強くなる。実際、損切りを行った第一リアルターの奈良田社長も今後、客室が広めの新たなタイプのホテル開発にチャンスを見いだしている・・・客室面積が小さいホテルではこれができないから、なかなか買い手がつかない。 究極ともいえる三つの選択肢。このどれも実行できなければ、残された道は倒産である。コロナ禍前から事業の急拡大によって多額の有利子負債を抱えていたり、競争激化で業績が低迷していたところは、ことさら危ない」、「ビジネスホテル」を取り巻く環境は厳しそうだ。 東洋経済オンライン 菅野 誠二 氏による「アパホテル「コロナ禍の逆風でも業績好調」の戦略 「直販+ダイナミック・プライシング」で成功」 「アパホテル」は現在テレビCMを大量に流している。「「会社の出張費でポイントを貯め、それをプライベートの割引に活用することが出張族の密かな楽しみ」である。 価格弾力性が低く、同社クラスのホテル代なら、企業が支払える価格帯に設定する」、なるほど。 「業界の外からダイナミック・プライシングを持ち込む  このビジネスモデル・イノベーションは、もともとは航空業界の手法である。そのため、同社のダイナミック・プライシングは世界初の取り組みではないが、日本のビジネスホテル業界に本格的に持ち込んだ企業がアパホテルなのだ」、なるほど。 「会員制度1900万人に対して平均で10%程度キャッシュバックしながら、ホテル予約サイトの宿泊料金設定は「アパ直」が最安値となるようにアパホテルが一括設定している。これによって直販サイトからの顧客流入を増やしてマージンを確保する」、なかなか賢明なやり方だ。 「AIを含むITの活用とターゲット顧客に焦点を当てたビジネスモデル・イノベーションが成功の鍵である」、大したものだ。 「一時期、アパホテルに対して繁忙期の価格が高すぎるという不満がSNS上で炎上し、2017年に日経ビジネスが実施したホテル満足度調査では35社中最下位だった」、こうしたデメリットを覚悟した上で、取り組んだようだ。 「ダイナミック・プライシングの導入には顧客へのていねいな説明をするコミュニケーション能力が問われるのだが、同社はそれをやってのけているといえるだろう」、経営陣の強い意志で導入したとすれば、立派なものだ。 ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「シャトレーゼホテルに「汚部屋」批判…ホテル再生には“性悪説”が重要だ」 「ホテル再生」事業と「お菓子やケーキの製造直販」事業にシナジーが働く部分が多いとは思えない、むしろマイナスの影響もあるのではなかろうか。 「チェックイン時にウエルカムケーキが楽しめて、滞在中はアイスが食べ放題というサービスが滞在客に刺さっている様子です。 そのおかげで、シャトレーゼホテルになってからは家族客が増加したといいます。ホテル再生の方程式としては、これまでの固定客層に加えて新たにシャトレーゼのスイーツ好きな家族客が加わった分、稼働率が上がり、ホテル経営としては増収となり、黒字化しやすくなったというのが基本図式のようです・・・ホテル再生というのは簡単な仕事ではありません。 前のオーナーがホテル業をやっていてうまくいかず、新しいオーナーはそれにお菓子事業を加えたらうまくいくというようなシンプルな話であれば、皆がそれをまねするはずです。 シャトレーゼホテルの場合、ホテル再生にはそのような足し算だけでなく、引き算もきちんと行っている様子です」、なるほど。 「シャトレーゼホテルの改善点とおぼしき口コミは大きく分けて3種類あります」、具体的にはどんなものなのだろう。 「たくさんの人数の社員に小さな縦割り組織の責任を持たせることで人を育てるというのは、信玄公的発想ではないでしょうか。 そのシャトレーゼが経営するホテルですから、おそらくそれぞれのホテルの再生をそれぞれの人物に責任を持たせているのでしょう。 いい意味でそれぞれのホテルが競争しながら再生させていくのでしょうけれども、そうなるとホテルごとに特色が出てくることになります。それもいいことなのですが、そのせいでブランドマネジメントという横ぐしが抜けてしまって、サービスが統一されていないというのが一つ目の課題でしょう・ ・・二番目にほぼすべてのシャトレーゼホテルの口コミに見られるのがハードウエア面の課題です。 ホテル買収後、リニューアル投資をしてシャトレーゼホテルとして再オープンするのですが、それでも「廊下のカーペットが古い」とか「共用部分の壁紙が汚れている」といった元々のホテルの古さが目に付く部分は気になるのでしょう」、食品企業にとっては、致命的なのではなかろうか。 「スタッフの対応に対するクレームが多くみられることから、働く人に問題がある・・・前述の「元々のホテルの古さが目に付く部分」と合わせてみると、私には「M&A」に無理があるように思える。私も「シャトレーゼのファン」ではあるが、大きな混乱なく丸く収まってほしいものだ。
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自動車(一般)(その6)(繰り返されるトヨタ系列不正問題に見る “病” の根深さ… 日本的企業が陥る「機能不全」の根本原因とは、トヨタ・豊田章男会長に社外取締役が実名で苦言 「副社長を次々放逐して、率直に物を言う人がいなくなった」 《グループ3社で不正が連続発覚》、文春砲がトヨタに炸裂も 豊田章男は「凡人の戦略」を貫く天才だ) [産業動向]

自動車(一般)については、2021年7月6日に取上げた。今日は、(その6)(繰り返されるトヨタ系列不正問題に見る “病” の根深さ… 日本的企業が陥る「機能不全」の根本原因とは、トヨタ・豊田章男会長に社外取締役が実名で苦言 「副社長を次々放逐して、率直に物を言う人がいなくなった」 《グループ3社で不正が連続発覚》、文春砲がトヨタに炸裂も 豊田章男は「凡人の戦略」を貫く天才だ)である。

先ずは、本年2月15日付け弁護士JPニュース「繰り返されるトヨタ系列不正問題に見る “病” の根深さ… 日本的企業が陥る「機能不全」の根本原因とは」を紹介しよう。
https://www.ben54.jp/news/890
・『2022年に公表された日野自動車のエンジンの排ガス処理装置に関わる試験における認証不正に始まり、昨年末のダイハツ工業、今年に入ってからの豊田自動織機と、トヨタ系列の不祥事が立て続けに公表された。日本を代表する名門企業でいったい何が起きているのか…』、興味深そうだ。
・『セクショナリズム、タイト過ぎる納期の末路  日野自動車では、「みんなでクルマをつくっていない」という言葉に象徴されるセクショナリズムが指摘されている。各部署が自分の役割を果たすことに懸命で、他を振り返る余裕がなく、孤立し追い込まれた部署は不正を行うしかなかったのだ。 ダイハツ工業では、タイトすぎる納期にもかかわらず管理職が現場を支援できなかったことが指摘されている。たとえば進捗の大幅遅延で上司に相談すると、「で?」という返事しか返ってこなかったという。コーチング手法の誤った用い方だ。 このような大きな相談で、「で、君はその問題をどのように解決するつもりかね?」と質問で返されても部下は返答のしようがない。八方ふさがりで思いつめているからこそ、上司に相談しているのだ。結果、部下は「相談しても無駄」とあきらめ、不正を選択してしまった…。 豊田自動織機についても類似の状況がみられ、管理職の機能不全が指摘されている』、「日野自動車では」、「進捗の大幅遅延で上司に相談すると、「で?」という返事しか返ってこなかった」、「結果、部下は「相談しても無駄」とあきらめ、不正を選択」、マネジメントがこんな体たらくでは悲劇的だ。
・『“トヨタ”でも問題が生じる製造業の病の根深さ  「問題は発生したのと同じ次元では解決できない」(アインシュタイン) この原因を現場のコンプライアンス意識の低さやリスク感度の鈍さに求めるのは酷である。では真の原因はどこにあるのか。 この3社に対する第三者委員会報告書では管理の仕組みや教育不足など、多岐にわたって問題原因が指摘されており、それぞれ頷けるものばかりである。 ではそれらの問題を個々につぶしていけば、不正の再発は防げるのだろうか。考えてみてほしい。今回の一連の事件を起こしたのはトヨタ系列である。高度な管理システムの構築では、世界的に定評ある企業群なのだ。 それでも問題が生じてしまった…。ということは、より根本的な部分に原因を求めるしかない。改めてアインシュタインが残した言葉を改めて噛みしめるべきだろう』、「今回の一連の事件を起こしたのはトヨタ系列である。高度な管理システムの構築では、世界的に定評ある企業群なのだ。 それでも問題が生じてしまった…。ということは、より根本的な部分に原因を求めるしかない。改めてアインシュタインが残した言葉を改めて噛みしめるべきだろう」、その通りだ。
・『「任務重視型」をいまだ引きずる日本の組織  元防衛大学校教官の関口高史氏によると軍隊には『環境重視型』と『任務重視型』の二種類があるという。前者はそのときどきの環境に応じてリソース確保を行い、それが出来ないときは任務の内容を柔軟に変更する。それに対して後者は最初に任務ありきで、環境変化があっても「万難を排し、任務を遂行せよ」となる。旧日本陸軍は後者であり、悪名高きインパール作戦のように、「弾薬も食料も送れない。兵力は1/10まで減ったかもしれないが、それでも天長節(天皇誕生日)までにインパールを占領せよ」といった上級司令部からの命令がまかり通る。「ちょっと何言ってるのかわからない」である。「無い袖は振れない」というリソースの制約もあるが、日本人の命令に対する従順さへの甘えもあるだろう』、トヨタに限らず、日本企業の多くは『任務重視型』だ。
・『値引き、厳しい納期、人材不足など多重苦で成果だけは強く求められる理不尽  これは戦争時の話だが、現代の日本企業でも同じことが言える。最近、管理職向けコンプライアンス研修の受講者から、「そんなこと、中間管理職に言われてもね」という冷めた声が聞かれることが増えてきた。これが必ずしも管理職の職責放棄とはいえない点が問題である。 値引きを求められる、納期と品質要求は厳しくなる、必要な人材は与えられず、逆に育てた部下をよそに引き抜かれるという多重苦の状況で、成果実現(任務達成)だけが強く求められる。 経営陣に訴えても、「そこを何とかするのが君の仕事だ。期待してるぞ」という激励の名を借りた責任転嫁が返ってくるばかり。管理職の機能不全の背景に経営陣の機能不全が存在するのである。 これで不正の誘惑に負けなかった多くの管理職こそ賞賛されるべきだ。まさに旧陸軍の悪弊が、形を変えて現代の日本企業にも綿々と受け継がれているのである』、「管理職の機能不全の背景に経営陣の機能不全が存在するのである。 これで不正の誘惑に負けなかった多くの管理職こそ賞賛されるべきだ。まさに旧陸軍の悪弊が、形を変えて現代の日本企業にも綿々と受け継がれている」、その通りだ。
・『もはや経営陣が腹をくくって判断するしかない末期症状  いままさに日本企業は任務重視型から環境重視型へ、経営と組織運営の方向転換を迫られている。 トヨタ系列の3社の報告書に共通するのは、経営陣が現場の事情を理解せず、リソース不足を無視して当初の任務達成だけを強く求めているとの指摘である。 開発期間の短縮が必要なら、そのためのリソースを追加投入しなければならない。そのリソースを新たに調達できないなら他の開発案件から引き抜くしかない。 だとすれば一部の開発案件を中止や延期するしかないが、この判断は経営陣にしかできない。経営陣が腹をくくるべきときに「現場で何とかしろ」で済ませるから問題が起きる。難しい判断から逃げるような者を責任ある地位につけてはならない。 ここまで読んできて、「まさに当社の話を聞いているようだ」と感じている読者も多いことだろう。現場レベルの内部統制ももちろん重要だが、それだけでいまのコンプライアンス問題は防げない。経営陣が腹をくくる。それが本質的な問題解決への処方箋であろう』、「トヨタ系列の3社の報告書に共通するのは、経営陣が現場の事情を理解せず、リソース不足を無視して当初の任務達成だけを強く求めているとの指摘・・・開発期間の短縮が必要なら、そのためのリソースを追加投入しなければならない。そのリソースを新たに調達できないなら他の開発案件から引き抜くしかない。 だとすれば一部の開発案件を中止や延期するしかないが、この判断は経営陣にしかできない。経営陣が腹をくくるべきときに「現場で何とかしろ」で済ませるから問題が起きる。難しい判断から逃げるような者を責任ある地位につけてはならない・・・経営陣が腹をくくる。それが本質的な問題解決への処方箋であろう」、同感である。

次に、本年2月21日付け文春オンライン「トヨタ・豊田章男会長に社外取締役が実名で苦言 「副社長を次々放逐して、率直に物を言う人がいなくなった」 《グループ3社で不正が連続発覚》」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/69100
・『グループ会社3社での検査不正が相次いで発覚したトヨタ自動車。同社の社外取締役を務める菅原郁郎氏(66)が「週刊文春」の取材に応じ、豊田章男会長(67)の経営姿勢に苦言を呈した。 創業家出身で絶対的な存在とされる豊田会長に対する社外取締役からの苦言は、大きな波紋を呼びそうだ』、興味深そうだ。
・『豊田会長は「トヨタにものが言いづらい点もあると思う」  トヨタのグループ会社による検査不正は昨年末から立て続けに明るみに出た。子会社のダイハツ工業は昨年12月20日、車両の認証試験で過去30年以上、データの捏造や改ざんを行っていた事実を公表。「ミライース」など10車種で出荷停止を余儀なくされた。 グループ会社の豊田自動織機も1月29日、トヨタ車「ハイエース」などのエンジン認証試験で不正があった事実を公表。さらに子会社の日野自動車でも2022年、トラックなどのエンジン燃費試験で不正があったことが報告されている。 1月30日に行われたグループビジョン説明会で、豊田会長は「極めて重いことだと受け止めております」と謝罪するとともに、不正を招いた背景には「トヨタにものが言いづらい点もあると思う」などと述べた』、「トヨタ」にものが言いづらい点もあると思う」、と「豊田会長」自身が述懐するのは、どう考えても問題だ。
・『「章男さんは変わってしまった」と菅原氏   こうした中、「週刊文春」の取材に応じたのが、2018年からトヨタの社外取締役を務める菅原氏だ。1981年に旧通産省に入省。経産省製造産業局長などを歴任し、2015年に事務次官に就任。退任後、内閣官房参与を経て、現在のポストに就いた。トヨタの取締役会は10人で構成され、菅原氏は4人いる社外取締役の一人だ。 Q:菅原さんは、章男氏についてどう見ている? A:「章男さんは変わってしまった。昔は一家言持っている人たちが周りにいた。でも2020年頃からかな、副社長を次々放逐したり、3人置くと言ったり。それで置いた人もまたいなくなって。章男さんに引き上げられた人ばかりで、率直に物を言う人がいなくなりました」』、「章男さんに引き上げられた人ばかりで、率直に物を言う人がいなくなりました」、これでは取締役会として本来の役割を果たしておらず、組織としては由々しい問題だ。
・『社長の下に執行役員が21人並ぶ異例の人事  トヨタは2020年4月、「若手役員との接点を増やす」などの理由で、副社長ポスト(6人)を廃止。豊田社長(当時)の下に同格の執行役員が21人並ぶ人事に踏み切った。その後、2022年4月には「外部環境の変化に対応する」などの理由で副社長ポスト(3人)を復活。 ところが、昨年4月にその3人を交代させるなど、毎年のように異例とも呼べる人事を断行してきた。 Q:イエスマンで固めたい思惑が? A:「結果として、そうなったんじゃないかな」 2月21日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および2月22日(木)発売の「週刊文春」では、菅原氏とのより詳しい一問一答のほか、“ダイハツの天皇”こと白水宏典元会長や日野自動車社長への直撃、一般には殆ど知られていないトヨタの“迎賓館”の存在、社内で疑念の声が上がる豊田会長と元レースクイーンや元コンパニオンとの「本当の関係」、豊田会長が日経新聞を“拒絶”するようになった経緯など、トヨタグループを巡る問題について8ページにわたって特集している』、「豊田会長が日経新聞を“拒絶”するようになった経緯」、「豊田会長」は自分の言うことを聞かない「日経新聞」を遠ざけているとすれば、偉ぶった経営者の悪いクセだ。

第三に、2月29日付けダイヤモンド・オンライン イトモス研究所所長の小倉健一氏による「文春砲がトヨタに炸裂も、豊田章男は「凡人の戦略」を貫く天才だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338624
・『週刊文春電子版は「【巨弾レポート】元コンパニオンの重用、日経新聞を拒絶…豊田章男・トヨタ会長はなぜ不正を招いたのか《グループ3社で連続発覚》」特集で、トヨタに厳しい姿勢を見せている。最新の国内外のトヨタ報道を読み解く』、興味深そうだ。
・『北朝鮮でトヨタ車が 愛用される理由  北朝鮮が「トヨタ」を愛していることはあまり知られていない。昨年の北朝鮮の金正恩委員長とロシアのプーチン大統領が首脳会談を行った後で、「特別な個人的関係」の証しとして、プーチン大統領も専用リムジンとして使うロシア車の「アウルス・セナート」を贈呈している。 これまで、金委員長は、メルセデス・マイバッハのS650セダンをイタリアの企業が装甲を施したものに乗車していた。そして面白いことに、金委員長の随行員たちは皆、「トヨタ」に乗っていることが確認されている。 <国連の制裁は、贈り物であっても北朝鮮への車の供給を禁止していますが、金正恩はこれらを回避して外国製車のコレクションを維持するのに何の問題もありませんでした。金正恩のお気に入りの車はメルセデス・マイバッハS650セダンだ。金正恩はマイバッハに乗り、レクサスやトヨタのスポーツユーティリティビークルの車列と一緒に行列を組んでいます(英タイムズ紙『ウラジーミル・プーチンから金正恩への最新の贈り物』2月20日)> 車列を組むクルマといえば、実用性を重視しているということが推測されるわけで、トヨタ車へのアツい信頼が北朝鮮からも寄せられていることが明らかになった。 今回は、トヨタについて述べたい』、「金委員長の随行員たちは皆、「トヨタ」に乗っていることが確認されている・・・トヨタ車へのアツい信頼が北朝鮮からも寄せられている」、なるほど。
・『トランプ氏勝利で 電気自動車の普及が止まる可能性  今、世界では、電気自動車が、果たして本当にエンジン車に取って代わることができる存在なのかが、激しく議論されている。少し前までは、いずれガソリン車がなくなると言われていたが、電気自動車がこれ以上普及発展するためには、多くの問題を抱えていることがわかっており、それが技術的に解決できるのかどうかということだ。世界は、混沌としている。 <トランプが大統領選挙に勝利すれば、アメリカの電気自動車ブームは終わりを迎える。トランプの選挙勝利により、アメリカにおける電気自動車に対する風向きはおそらく大きく変わるだろう。2023年秋にミシガン州の自動車産業のストライキ中の労働者たちの前で、トランプは電気自動車に警鐘を鳴らし、ジョー・バイデンによるその支援を軽蔑する発言をした。 トランプは、ストライキを行っている労働者たちに対し、大手自動車会社との交渉で良い結果を得たとしても、電気自動車が彼らを無用の長物にするだろうから、それがどうでも良いと述べた。トランプは労働者たちに向かって、「お前たちが何を手に入れようと、2年後には全員がクビだ」と叫んだ (独経済メディアDeutsche Wirtschaftsnachrichten「電気自動車は内燃機関よりも故障しやすい」2月19日)> 米大統領選挙は、今日投票が行われれば、トランプ氏はバイデン大統領に勝利するような情勢であり、電気自動車の普及は止まることになるかもしれない。しかし、EU(欧州連合)では真逆の情勢だ』、「トランプ氏」が「内燃機関」優遇を続けても、「EU」では「電気自動車」と股裂き状態だ。
・『電気自動車にかじを切ったドイツ 失敗すれば「自らの足を撃つことに」  <ドイツやヨーロッパが「電気自動車」に全てを懸けており、2035年からはEU内での新車のガソリン車販売が不可能になる見込みである。中国は電気自動車とガソリン車の両方を追求している。つまり、電気自動車とガソリン車の二兎を追うのである。中国はガソリン車の禁止を排除している。ドイツおよびヨーロッパの自動車メーカーの電気自動車戦略が成功するか、そして米国、インド、ロシア、南米、アフリカ、東南アジアのような大国でガソリン車の禁止が実際に行われるかは疑問である。もしそうならなければ、ドイツの政策と自動車メーカーは自らの足を撃つことになる。その結果、ドイツの鍵産業と経済拠点としてのドイツにとって壊滅的な影響を与えるだろう(同独メディア)>  これには少し説明が必要かもしれないが、EUでは、2035年以降、環境にやさしい合成燃料(実用化・商用化は40年頃とされている)を使うエンジン車だけは例外として、エンジン車の新車販売を禁止する方針を取っているのだ。フォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツがあるドイツでは、頭の痛い問題となってくるであろう。 米国の消費者保護団体「コンシューマー・レポート」の会員を対象に毎年実施している、自動車の信頼性に関する調査によれば、電気自動車は従来のエンジン車よりも80%近く問題が多く、一般的に信頼性が低いことがわかっている。エンジン車であれば5分もすれば満杯になるガソリンの供給も、電気自動車ではだいぶ時間がかかる。寒冷地では航続距離が極端に短くなることも負担となる』、「電気自動車」の問題点は全固体電池の実用化などで今後ある程度改善が見込まれる。
・『「エンジンやるぞ!」 豊田章男の檄  こんな先行きが不透明な状況で、トヨタは何を考えているのか。その手がかりは、トヨタ自動車会長の豊田章男氏の発言にある。 <今、オートサロンの途中ですが、昨日もその会場で「エンジン(編集部注:おそらくエンジン車のこと)やるぞ!」とぶち上げました。いくらBEV(バッテリー電気自動車)が進んだとしても、市場のシェアの3割だと思います。そうすると、あとの7割はHEV(ハイブリッドカー)なり、FCEV(水素を使った燃料電池車)なり、水素エンジンなり。そして、エンジン車は必ず残ると思います。 それは規制値、政治の力ではなく、お客様や市場が決めることだと思います。 だから、全世界で勝負をしているトヨタ自動車は、フルラインナップで、マルチパスウェイをやらせていただいております(第40回NPS研究会の総会・「トヨタイムズ」1月23日)>  マルチパスウェイは、手段よりも目標到達を大事にする考え方だ。トヨタの例でいえば、電気自動車を普及することにこだわらず、エンジン性能の向上、燃料電池車、ハイブリッドカーなど、さまざまな手段でカーボンニュートラルを達成していこうということだ。エンジン部品を製造する工場・会社に、銀行がお金を貸さないという事態が発生していて、トヨタとしても強い危機感を持って、「全方位外交」を続けていくということになる』、「いくらBEV・・・が進んだとしても、市場のシェアの3割だと思います。そうすると、あとの7割はHEV・・・なり、FCEV・・・なり、水素エンジンなり。そして、エンジン車は必ず残ると思います。 それは規制値、政治の力ではなく、お客様や市場が決めることだと思います・・・トヨタ自動車は、フルラインナップで、マルチパスウェイをやらせていただいております」、「トヨタ」は余裕たっぷりのようだ。
・『「凡人中の凡人戦略」を貫く豊田氏は 称賛されてしかるべき  全方位外交、悪く言えば、八方美人であり、全てが中途半端になってしまう懸念が起きるのだが、豊田氏はそんなことは臆せずやっている。トヨタ自動車内のフルラインナップ戦略をはじめとして、マツダ、スズキ、SUBARU、ダイハツ工業、いすゞ自動車に巨額の出資をし、通信業界のNTT、KDDIに出資、ソフトバンクとは「モネ・テクノロジーズ」を立ち上げている。 豊田氏は「町工場から世界規模の自動車メーカーに成長しても、それを忘れてはならない。自分たちはクルマ屋だ。もっといいクルマをつくって、お客様に喜んでもらおう」と言っている。この言葉の意味を、全方位外交を貫いた経営スタイルと重ねて解釈をすれば、こうではないだろうか。 「将来のことは予測不可能で、EVの時代が来るかもしれないし、来ないかもしれない。フルラインナップで何が起きても大丈夫な構えをしておこう」。何か一つの分野に懸けることは一切やろうともしてこなかった、自分たちができる当たり前のことを繰り返すという「凡人中の凡人戦略」を貫いたのは、やはりこの時代に合っているし、称賛されてしかるべきではないだろうか』、「自分たちができる当たり前のことを繰り返すという「凡人中の凡人戦略」を貫いたのは、やはりこの時代に合っているし、称賛されてしかるべきではないだろうか」、いささか褒め過ぎのようだ。
・『元コンパニオンを秘書にしたって 別にいいではないか  週刊文春電子版(2月21日)の「【巨弾レポート】元コンパニオンの重用、日経新聞を拒絶…豊田章男・トヨタ会長はなぜ不正を招いたのか《グループ3社で連続発覚》」特集で、トヨタについて力の入った取材をしている。その中でも、経産省の元事務次官で、18年から社外取締役を務めている菅原郁郎(いくろう)氏のコメントは、トヨタに相当厳しいものがあった。 <昔は一家言持っている人たちが周りにいた。でも20年頃からかな、副社長を次々放逐したり、3人置くと言ったり。それで置いた人もまたいなくなって。章男さんに引き上げられた人ばかりで、率直に物を言う人がいなくなりました> トヨタは、2024年3月期の連結業績予想で、純利益は前年比83.6%増となり、過去最高の4兆5000億円となる見通しだ。これほどの過去最高益を上げてもガバナンスが悪いかのように批判を受けるのは、さすがにかわいそうに感じる。元コンパニオンを秘書にしたって別にいいではないか。赤字だった企業を利益4兆円にしたのだから、稀代の名経営者だ。誰も言ってあげないが、数字だけ見れば、豊田氏は天才ではないのか。 EVやカーボンニュートラルを巡って政治的なリスクを消すには、トヨタのように全てに手を出していくのが一番と思われる。そしてこんなことができるのも日本ではトヨタだけだ。EVをつぶすというトランプリスク、EVだけしかダメというEUリスクに直面したとき、どう転んでも勝てるトヨタの一人勝ちの時代がやってくるだろう。腐敗しきったダイハツのトヨタによる再建が楽しみでならない』、「これほどの過去最高益を上げてもガバナンスが悪いかのように批判を受けるのは、さすがにかわいそうに感じる。元コンパニオンを秘書にしたって別にいいではないか。赤字だった企業を利益4兆円にしたのだから、稀代の名経営者だ。誰も言ってあげないが、数字だけ見れば、豊田氏は天才ではないのか」、ここまで褒め言葉が並ぶと、著者の良識を疑いたくなる。「ダイハツ」を「腐敗させた」のも「トヨタ」の責任なのではなかろうか。ここで「トヨタ」経営陣に恩を売っておこうという下心が見え隠れするようだ。 
タグ:自動車(一般) (その6)(繰り返されるトヨタ系列不正問題に見る “病” の根深さ… 日本的企業が陥る「機能不全」の根本原因とは、トヨタ・豊田章男会長に社外取締役が実名で苦言 「副社長を次々放逐して、率直に物を言う人がいなくなった」 《グループ3社で不正が連続発覚》、文春砲がトヨタに炸裂も 豊田章男は「凡人の戦略」を貫く天才だ) 弁護士JPニュース「繰り返されるトヨタ系列不正問題に見る “病” の根深さ… 日本的企業が陥る「機能不全」の根本原因とは」 「日野自動車では」、「進捗の大幅遅延で上司に相談すると、「で?」という返事しか返ってこなかった」、「結果、部下は「相談しても無駄」とあきらめ、不正を選択」、マネジメントがこんな体たらくでは悲劇的だ。 「今回の一連の事件を起こしたのはトヨタ系列である。高度な管理システムの構築では、世界的に定評ある企業群なのだ。 それでも問題が生じてしまった…。ということは、より根本的な部分に原因を求めるしかない。改めてアインシュタインが残した言葉を改めて噛みしめるべきだろう」、その通りだ。 トヨタに限らず、日本企業の多くは『任務重視型』だ。 「管理職の機能不全の背景に経営陣の機能不全が存在するのである。 これで不正の誘惑に負けなかった多くの管理職こそ賞賛されるべきだ。まさに旧陸軍の悪弊が、形を変えて現代の日本企業にも綿々と受け継がれている」、その通りだ。 「トヨタ系列の3社の報告書に共通するのは、経営陣が現場の事情を理解せず、リソース不足を無視して当初の任務達成だけを強く求めているとの指摘・・・開発期間の短縮が必要なら、そのためのリソースを追加投入しなければならない。そのリソースを新たに調達できないなら他の開発案件から引き抜くしかない。 だとすれば一部の開発案件を中止や延期するしかないが、この判断は経営陣にしかできない。経営陣が腹をくくるべきときに「現場で何とかしろ」で済ませるから問題が起きる。難しい判断から逃げるような者を責任ある地位につけてはならない・・・経営陣が腹をくくる。それが本質的な問題解決への処方箋であろう」、同感である。 文春オンライン「トヨタ・豊田章男会長に社外取締役が実名で苦言 「副社長を次々放逐して、率直に物を言う人がいなくなった」 《グループ3社で不正が連続発覚》」 「トヨタ」にものが言いづらい点もあると思う」、と「豊田会長」自身が述懐するのは、どう考えても問題だ。 「章男さんに引き上げられた人ばかりで、率直に物を言う人がいなくなりました」、これでは取締役会として本来の役割を果たしておらず、組織としては由々しい問題だ。 「豊田会長が日経新聞を“拒絶”するようになった経緯」、「豊田会長」は自分の言うことを聞かない「日経新聞」を遠ざけているとすれば、偉ぶった経営者の悪いクセだ。 ダイヤモンド・オンライン 小倉健一氏による「文春砲がトヨタに炸裂も、豊田章男は「凡人の戦略」を貫く天才だ」 「金委員長の随行員たちは皆、「トヨタ」に乗っていることが確認されている・・・トヨタ車へのアツい信頼が北朝鮮からも寄せられている」、なるほど。 「トランプ氏」が「内燃機関」優遇を続けても、「EU」では「電気自動車」と股裂き状態だ。 「電気自動車」の問題点は全固体電池の実用化などで今後ある程度改善が見込まれる。 「いくらBEV・・・が進んだとしても、市場のシェアの3割だと思います。そうすると、あとの7割はHEV・・・なり、FCEV・・・なり、水素エンジンなり。そして、エンジン車は必ず残ると思います。 それは規制値、政治の力ではなく、お客様や市場が決めることだと思います・・・ トヨタ自動車は、フルラインナップで、マルチパスウェイをやらせていただいております」、「トヨタ」は余裕たっぷりのようだ。 「これほどの過去最高益を上げてもガバナンスが悪いかのように批判を受けるのは、さすがにかわいそうに感じる。元コンパニオンを秘書にしたって別にいいではないか。赤字だった企業を利益4兆円にしたのだから、稀代の名経営者だ。誰も言ってあげないが、数字だけ見れば、豊田氏は天才ではないのか」、ここまで褒め言葉が並ぶと、著者の良識を疑いたくなる。 「ダイハツ」を「腐敗させた」のも「トヨタ」の責任なのではなかろうか。ここで「トヨタ」経営陣に恩を売っておこうという下心が見え隠れするようだ。
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コンサルティング(コンサルティングとは? 就活人気の高いコンサル業界を分かりやすく解説!、米マッキンゼー 経営トップ再選も亀裂あらわ ボブ・スターンフェルズ氏が再びグローバル・マネジングパートナーに選出されたが パートナーの間に反対意見があることが明らかに、急成長モノタロウのボスコン出身社長を直撃!今に生きる コンサル時代に得た「3つのスキル」とは?) [産業動向]

本日は、コンサルティング(コンサルティングとは? 就活人気の高いコンサル業界を分かりやすく解説!、米マッキンゼー 経営トップ再選も亀裂あらわ ボブ・スターンフェルズ氏が再びグローバル・マネジングパートナーに選出されたが パートナーの間に反対意見があることが明らかに、急成長モノタロウのボスコン出身社長を直撃!今に生きる コンサル時代に得た「3つのスキル」とは?)を取上げよう。

先ずは、入門編として、2021年8月27日付けen-courege「コンサルティングとは? 就活人気の高いコンサル業界を分かりやすく解説!」を紹介しよう。
https://app.en-courage.com/articles/2021-08-27/45?locale=ja
・『コンサルティングと聞いて何をイメージするでしょうか。聞いたことはあるけれど何をしているか分からないという人も多いのではないでしょうか。この記事ではコンサルティングについて分かりやすく解説していきます。コンサルティングに適性のある人についても解説していきますので、どんな仕事かを知りたい人や興味を持った人は志望企業を考えるうえで参考にしましょう』、興味深そうだ。
・『はじめにーーコンサルティングとは? どんな仕事かを簡単に解説!  コンサルティングとは一言でいうと、相手の課題に対して解決策を示す仕事です。 もっと簡単に言えば「相手(クライアント)の困りごとを解決する仕事」。 この場合の相手は企業、経営者、個人、政府など多岐に渡ります。 困りごとを解決する相手がどんな職種・立場の人かによってコンサルティングの分類が異なります。 この記事ではまず、どんな分類があるのかを見ていきます。 分類を知ったうえで、一般企業とは大きく違う仕事の流れ、具体的な仕事内容を紹介し、コンサルティングの魅力に迫ります。 自分はコンサルティングの仕事に興味があるか、向いているか、やってみたいかを考える参考にしましょう!』、「相手(クライアント)の困りごとを解決する仕事」といっても、実際には幅広い。
・『就活でめざす代表的なコンサルティングファーム  就活をしていると「コンサルティングファーム」「コンサルタント」という言葉をよく聞きます。 コンサルティングファームとはコンサルティングの事業や実施する企業を指す言葉です。「コンサル」と略されます。 そしてコンサルタントとは「コンサルティングを行う人」を指します。 この記事では、就活で学生がめざす代表的なコンサルティングファームを、経営・戦略コンサルティング、業務コンサルティング、ITコンサルティング、金融コンサルティング、シンクタンクに分けて解説します。 「誰の困りごとを解決するのか」によってこれらは分類されます。 それでは、代表的なコンサルティングファームを見ていきましょう』、「「誰の困りごとを解決するのか」によってこれらは分類されます」、なるほど。
・『経営・戦略コンサルティング  経営者やトップマネジメントの課題を解決する仕事です。 継続して優れた業績を上げるにはどのような経営をすればいいか、 この市場には参入すべきか否か、 どんな新規事業を立ち上げれば業績が伸びるか、 などの困りごとを解決していきます。 企業の経営 層を相手に、経営戦略を練り、上記のようなアドバイスをする仕事であるため、高度な知識や分析力、リサーチ能力が要求されます。 このコンサルファームは、外資系企業が多く、グローバル展開されることが多いです。そのため英語力を必要とされる場合が多いです。 戦略コンサルを強みとする代表的な企業にはマッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストンコンサルティンググループ、ベイン・アンド・カンパニー、A.T.カーニーなどがあります』、「戦略コンサルを強みとする」ところは、最も高度で、料金も高い。
・『業務コンサルティング  前述の経営・戦略コンサルに対し、経営層というよりその下のマネージャークラスの困りごとを解決する仕事です。 経営・戦略コンサルが長期の経営ビジョンやこの市場に参入すべきかという課題解決をするのに対し、業務コンサルは「どうやって業務コストを削減するか」などのより具体的な日々のテーマ、会社が抱える困りごとに対し戦略を練り、課題解決をします。 業務コンサルといっても「どんな種類の困りごとを解決するか」によってその領域は多岐に渡ります。 例えば以下があります。 ・監査法人 企業の財務書類が法的に問題ないかをチェックする。 監査や税務の手続きなどは複雑で、専門的な知識を必要とすることが多いため、その代行をすることでクライアントの困りごとを解決する。・人事コンサル   企業が優秀な人を採用するにはどうしたらいいか、人材育成をどう行うかなど戦略を考え、課題を解決する』、「業務コンサルティング」は実務的内容だ。
・『ITコンサルティング  IT技術を駆使してクライアント企業の課題を解決する仕事です。 例えば、「商品の受発注の方法が部署によってバラバラで管理しにくい。 受発注のやり方を一元化したい」というクライアントの困りごとに、「こんなITシステムを導入すれば業務が改善されますよ」と提案、実際にシステムの導入から実装までを行います。 業務コンサルに内包されるものの、昨今はIT関連の発展が著しいため「ITコンサルはITの専門家」として業務コンサルと区別される傾向が強いです。 フューチャーアーキテクト、ワークスアプリケーションズ、日本IBMなどがあります』、この他にコンピューターメーカーも「ITコンサルティング」を提供している。
・『金融コンサルティング  資金調達などの事業戦略・M&A・不動産の投資相談などに関するコンサルティングを行います。 「新規事業立ち上げに向けて資金調達をどうしよう」「このビジネスに投資すべきか」など金融面で会社は様々な困りごとを抱えています。 金融コンサルタントは、会計や法務の専門知識を持ち、国際情勢や金融情勢にも常にアンテナを張りながら課題解決をしていきます。 PwCアドバイザリー、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーなどがあります』、ここは投資銀行が取引そのもので勝負をする世界でもある。
・『シンクタンク  元々シンクタンクとは民間や政府の経済問題を調査する研究機関を指しました。 しかしこれらの研究機関が、自らの分野で培ったリサーチ力を生かし、他企業の問題解決、つまりコンサルティングを請け負うようになったため、シンクタンクもコンサルティング業務の一つとする分類が主流となりました。 企業からの調査案件や官公庁向けのリサーチや分析、分析をもとにした政策提言などを行います。 「〇〇の分野での投資をしたいが経済動向はどうなるのだろう」などのクライアントの悩みを専門知識や独自の調査、高い分析力で解決していきます。 代表的な会社に、野村総合研究所、大和総研、日本総合研究所などがあります。 このように「誰の課題を解決するか」「どのように解決するか」によりコンサルティング事業には様々な分類があります』、なるほど。 
・『総合系コンサルティング会社  これは一つの会社のなかに、戦略コンサルの仕事も、業務コンサルの仕事もある会社を指します。 具体的にはアクセンチュア、デロイト トーマツ コンサルティング、アビームコンサルティングなどがあります。 総合系コンサルはアメリカや欧米に本社を構える外資系が多く、クライアントも大企業であるのに対し、国内独立系は日本発のコンサルティングファームです。 クライアント規模も中小企業など様々で、会社の生産・製造など現場に入り込んだコンサルティングを行います。 メーカーが製造した商品を売っていたり、銀行や保険会社が金融商品を売っているのに対し、コンサルティング会社は「課題を解決すること」を売っているといえます。 そのため、商品やエリアごとに部署が分けられるメーカーや金融業界とは仕事の流れ、部署の編成が大きく異なるのが特徴です』、「総合系コンサルはアメリカや欧米に本社を構える外資系が多く、クライアントも大企業であるのに対し、国内独立系は日本発のコンサルティングファームです。 クライアント規模も中小企業など様々で、会社の生産・製造など現場に入り込んだコンサルティングを行います」、なるほど。
・『コンサルティング会社の仕事の流れ 一般企業との大きな違い  コンサルティング会社の実際の仕事の流れを具体的に解説します。 クライアントがコンサルティング会社に依頼する。 或いはコンサルティング会社が営業をしたり、競合他社とのプレゼンをする。→ クライアントに提案を受け入れてもらえると、コンサルティング会社が正式に受注する。 → 社内から適切な人材を集め、プロジェクトチームが編成される。 → キックオフ・ミーティングでチームの顔合わせやスケジュール確認をする。 ↓ インタビューやデータ収集、解決に向けての仮説をたてる。→ チーム内で議論を重ね、課題解決方法を決定する。 → 経営層に報告。クライアントと一緒に実行支援まで行うことも。 → チームは解散し、また新しいプロジェクトに割り当てられる。 つまり、一般企業が商品・サービスやエリアなどによって部署が分けられてるのに対し、具体的な所属部署はなく、編成されたプロジェクトチームに参加して業務を担当します。 そのためプロジェクトごとに一緒に働く上司や同僚が変わります。 場合によってはプロジェクトを同時に2~3個担当することもあったり、クライアント先に常駐するケースもあります』、「プロジェクトを同時に2~3個担当する」のは、繁閑を調整する一般的な方法だ。
・『コンサルティングの役職の具体的な仕事内容とは?  上記で解説したプロジェクトチームには様々な役職の人が入っています。 役職によって仕事内容は異なります。 案件を獲得する人、人を集めプロジェクトチームを作る人、作られたチームの責任者、情報収集や資料作成をする人、集まった情報もとに分析し、仮説をたて、戦略を考える人。 それぞれ役職ごとに役割があります。 どんな役職があるのかをみていきましょう。 ・パートナー 営業をし、案件を獲得します。 コンサルティングファームを経営します。 ・マネージャー プロジェクトが始動したら、その責任者のポジションです。プロジェクトを管理し、顧客と折衝、予算などの管理も行います。 ・コンサルタント 仮説をたてて具体的な課題解決を検証していきます。 ・アナリスト 新卒入社したコンサルタントのスタートポジション。 主に情報収集、資料作成、分析、クライアントへインタビューを行います』、なるほど。
・『コンサルティングの仕事はどんな人に向いてる? 資格は必要?  どの業界のコンサルタントになるか、どの企業でコンサルティングの仕事をするかによって必要な資格は異なります。 財務系であれば簿記や公認会計士などの資格、IT系であればITストラテジストや情報技術者試験などがあります。 しかし、新卒でコンサル業界を受けるのに必ずしも資格が必要というわけではありません。 コンサルの仕事はクライアントの困りごとを解決する仕事です。 企業が自分たちで解決できてしまうような簡単な困りごとであれば、わざわざお金をかけてコンサルに依頼する必要はありません。 企業の内部の人間では解決できないから、高度な知識や分析力、情報収集力、発想力を有するコンサルに相談するのです。 そのため、資格を持っていることより、相手の課題解決に向けとにかく考えることが大切になります。 課題解決に向け考えるというのは、課題を的確に洗い出し、情報を集め、データを分析し、有効な戦略を練るということです。 論理的に考える人、アイディアを出し続けられる人に向いている職種といえます。 日頃から様々な角度で考えること、 疑問に思ったことはすぐ調べること、 もし~をしたら結果はどうなるだろう、 どんな戦略が有効的だろうと仮説をたてて考えること、 自分の考えを分かやすく、説得力を持って人に伝えられるようにすることなど、 日常のなかで「つきつめて考え、発信する力」を養う必要があります』、大企業のクライアントでは、反対派を説得する材料として「コンサル」を活用することもある。
・『コンサルティングの魅力  コンサルには働くうえでどのような魅力があるのでしょうか。 ・年収が高い 会社や分野にもよりますが入社1~3年目のアナリストで400万~800万、パートナーまでいけば2000万以上となります。 経団連の調査によると、日本の平均年収は663.2万円であるため、コンサルティングの年収は高いといえます。 ・自分が成長できる・スキルアップできる 一般的な日系企業では、やりがいが「自分の会社・部署の業績のため」「自分が仕事で担当する商品の売り上げのため」という、会社や部署に軸があるのに対し、部署編成などのないコンサルはもっと個人主義といえます。 会社のためというよりクライアントの課題解決のため、自分のキャリアアップのためという軸であることが多いでしょう。 そのため転職者も多く、コンサル業界のなかでスキルや知識など自分に合った条件の会社を探し、渡り歩く人も多いといいえます。 そういった働き方を理想とする人には合っている業界です。 ・クライアントに感謝されることでやりがいを感じられる クライアントに寄り添い、課題を洗い出し、課題解決に向けとにかく考える仕事という点で、うまくいけば感謝されますし、自分のスキルもどんどん上がっていきます。 会社内のしがらみや上下関係、変な社会慣習などもなく、実力主義の世界です。 こうした魅力がある一方、会社によっては激務であったり、「なぜそう思ったのか」を論理的に説明する能力が求められる難しさもあるといえるでしょう』、「論理的に説明する能力」は必須の「能力」だ。
・『コンサルティング会社を受けるなら就活対策は念入りに!  コンサルティングと一言でいってもその領域や仕事内容は多岐に渡ります。 論理的に、つきつめて考えることが好きな人や説明力のある人、クライアントに寄り添って課題解決をし、感謝されることにやりがいを感じたい人におすすめな業界です。 それゆえに就活でも人気が高い会社が多いです。 コンサルを目指すなら自己分析や面接対策をテスト対策をきっちりすることが必須といえます。 エンカレッジでは、たくさんの先輩方のES全文や選考体験記を公開しています。 人気業界や、有名企業に受かるためのポイントが満載!! 会員登録して、気になる例文をチェックしましょう』、ここはPRなので、紹介は省略。

次に、本年2月7日付けダイヤモンド・オンラインが転載したThe Wall Street Journal「米マッキンゼー、経営トップ再選も亀裂あらわ ボブ・スターンフェルズ氏が再びグローバル・マネジングパートナーに選出されたが、パートナーの間に反対意見があることが明らかに」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338477
・『昨年のクリスマスの少し前、米コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーの経営トップ、ボブ・スターンフェルズ氏は4万人を超えるスタッフにメモを送り、単純な質問を投げかけた。「マッキンゼーとは何か」 グローバル・マネジングパートナーのスターンフェルズ氏は、この質問には単純な答えはないと記し、2024年を迎えるに当たってマッキンゼーをどう定義するか考えるよう求めた。 この質問に答えるのは難しくなる一方だ。 コンサルティング業界に長年君臨するマッキンゼーは、大手企業や政府の指導者に助言し、未来の最高経営責任者(CEO)や国家元首を輩出してきた。そのマッキンゼーが今、自社の運営に苦労している。 スターンフェルズ氏は、自分を追い出し、2021年以降で3人目となるリーダーを就任させようとする動きを何とか切り抜けて今月1日までに過半数の票を獲得。グローバル・マネジングパートナーとして2期目を勝ち取ったが、最初の2回の投票ではパートナーから再選に十分な支持を得られなかった。 トップを選出するための投票であらわになったのは、世界で最も収益性の高いパートナーシップ制企業の一つであるマッキンゼーの内部に不満が生じていることと、3年ごとにリーダーを選ぶ権限をパートナーに与える珍しい統治構造の潜在的な欠点だ。ビジネスが順調で、何百万ドルという収入をもたらすパートナーが変化を求める理由がほとんどないときには、この構造はうまく機能する。しかしこの数年は安定しているとは決して言えない状態だった。 スターンフェルズ氏がグローバル・マネジングパートナーに就任したのは、新型コロナウイルス禍によって加速したビジネスの変化に対応するため企業がマッキンゼーの助言を求め、同社の急成長が始まった頃だった。同社は人材採用を加速、スタッフ数は2012年の水準の2倍以上に増えた。しかし経済が減速し、顧客が減るにつれ、自社のサービスに対する将来的な需要を読み違えたと批判されてきた。 この1年、マッキンゼーは人員削減を進めた。バックオフィス業務を担当していた1400人を削減し、破産処理業務の一部を段階的に縮小した。またベイン・アンド・カンパニーなど同業他社と同様に、新規採用した経営学修士号(MBA)取得者の入社時期を今年に先送りした。12月に新規に指名したパートナーは約250人で、2022年の380人から減少した。 マッキンゼーは一連のスキャンダル後、評判の修復にも努めている。麻薬性鎮痛剤「オピオイド」の販売でパーデュー・ファーマなどの製薬会社に協力したとして批判を浴びた同社は21年、パーデューに協力したことに対して5億7300万ドル(現在のレートで約850億円)の和解金を支払うと発表。その後、顧客を選ぶ上でパートナーにどの程度の裁量が認められるかが幅広く再検討された。 シニアパートナーらによると、トップクラスのコンサルティングサービスへの需要は今もある。北米担当マネジングパートナー、アストシュ・パディ氏は1月半ばのインタビューで「われわれの今の仕事の質は以前よりはるかに高い」と話した。インタビューを行ったスイス・ダボスでは、スターンフェルズ氏らマッキンゼーのパートナーが経済界のリーダーと親しく言葉を交わしていた。 スターンフェルズ氏は21年のインタビューで「世界が再び速度を落とすことはないだろう。当社の顧客は自分たちより速く動くことをわれわれに求めている」と話した。「より速く動ける世界的企業のモデルをどう作るかだ」 スターンフェルズ氏はまた、マッキンゼーの世界的なパートナーシップモデルを擁護し、適切に運用されれば同社は世界のどこからでも最良の助言を顧客に提供することができると述べた。「パートナーシップのモデルを機能させるには、視点の共有と率直な議論の実施にエネルギーを注がなければならない」と話した』、「麻薬性鎮痛剤「オピオイド」の販売でパーデュー・ファーマなどの製薬会社に協力したとして批判を浴びた同社は21年、パーデューに協力したことに対して5億7300万ドル(現在のレートで約850億円)の和解金を支払うと発表・・・経済が減速し、顧客が減るにつれ、自社のサービスに対する将来的な需要を読み違えたと批判されてきた。 この1年、マッキンゼーは人員削減を進めた。バックオフィス業務を担当していた1400人を削減し、破産処理業務の一部を段階的に縮小した。またベイン・アンド・カンパニーなど同業他社と同様に、新規採用した経営学修士号(MBA)取得者の入社時期を今年に先送りした。12月に新規に指名したパートナーは約250人で、2022年の380人から減少した」、なるほど。
・『750人のシニアパートナー  同社が抱える問題の一つはトップの選出に投票できるシニアパートナーが15年ほど前の約400人から約750人に増加し、合意形成が難しくなったことだ。シニアパートナーは60歳になる前に1期目を終えていれば誰でも選出の対象になる。 シニアパートナーは最初の投票では誰にでも投票できる。2回目の投票に進む候補者は10人に絞られる。この時点で勝者が決まらなければ、上位2人の候補者を対象に3回目の投票が行われる。 もう一つの問題はマネジングパートナーを務めることができる期数を最大3期から2期に短縮すると数年前に決定したことだ。マネジングパートナーの任期を3期(9年)から2期(6年)にすれば、若い世代が昇進できるというわけだ。しかし任期が3年1期しかなければ、または1期しかないという不安があれば、戦略を十分に実施することは難しい。 スターンフェルズ氏の前任のケビン・スニーダー氏は1期目のあと、抗議票によって2021年にトップの座を追われた。同氏は現在、ゴールドマン・サックスのアジア担当上級幹部を務めている。 スターンフェルズ氏は周囲からは決断力のあるリーダーと受け止められている。しかし同氏が関係の近い少人数のチームに頼り、パートナーシップ制企業のリーダーというより従来の最高経営責任者(CEO)のようなやり方で会社を経営していると感じていた一部のパートナーはこの3年間、そのやり方にいら立っていた。 2023年のマッキンゼーの売上高は約160億ドルに増加したが、コロナ下と比べると伸び率は鈍化した。上半期には同社がパートナーに対し、報酬の一部について受け取りの先送りを要請したが、年末までにビジネスが回復し、パートナーは報酬を全額受け取った。 スターンフェルズ氏はスタッフに送付したメモでは会社の再構築や成長の鈍化を取り上げず、その代わりに会社の評価を試みた。「今年は大変な1年だった。われわれはこの1年を切り抜けただけでなく、2024年を迎えるに当たって他とは異なる独自の立場に立っている」と述べた。 同氏はまた、マッキンゼーはコンサルティング会社であるだけでなく、スタートアップ支援組織、デザインラボ、訓練の場などでもあると述べた。「人材獲得担当者と話をするたびに、非常に多くの人がわれわれと同じ立場に立ちたいと考えていることを思い出す。毎年100万人以上が当社に応募している」とも記した。 スターンフェルズ氏の2期目で最後の任期は7月に始まる』、「スターンフェルズ氏の前任のケビン・スニーダー氏は1期目のあと、抗議票によって2021年にトップの座を追われた・・・スターンフェルズ氏は周囲からは決断力のあるリーダーと受け止められている。しかし同氏が関係の近い少人数のチームに頼り、パートナーシップ制企業のリーダーというより従来の最高経営責任者(CEO)のようなやり方で会社を経営していると感じていた一部のパートナーはこの3年間、そのやり方にいら立っていた」、「マッキンゼー」といえどもトップ人事は思うようにはいかないものらしい。

第三に、3月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した田村咲耶・MonotaRO代表執行役社長インタビュー「急成長モノタロウのボスコン出身社長を直撃!今に生きる、コンサル時代に得た「3つのスキル」とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/339658
・『「工具界のアマゾン」などと称され、MRO(修理・整備)市場に特化したEC(電子商取引)企業として急成長を遂げてきたのがMonotaRO(モノタロウ)だ。工具通販のニッチ市場で牙城を築き、2023年12月期決算まで14期連続で最高益を更新。そんな同社は今年1月、12年ぶりのトップ交代で、41歳の田村咲耶氏を新社長に起用した。同氏は外資系戦略ファームのボストン・コンサルティング・グループ(BCG)出身である。長期連載『コンサル大解剖』の本稿では、MonotaRO初の女性社長となった田村氏に、コンサル時代に培った経験を今の職務にどう生かしているのかについて、中長期的な方針などと併せて語ってもらった』、興味深そうだ。
・『急成長MonotaROのボスコン出身社長がコンサル時代に得た「3つの経験」とは?  Q:1月から社長となったMonotaROでは、今後4~5年で売上高を現状のほぼ倍増の5000億円(23年12月期の連結売上高は2543億円)にする方針を掲げています。 A:事業成長を考える上でも、コンサルタント時代の力が生きているかもしれません。 田村咲耶・MonotaRO代表執行役社長 たむら・さくや/2007年4月、外資系戦略ファームのボストン・コンサルティング・グループ(BCG)入社。GEヘルスケア・ジャパンを経て20年3月、MonotaRO入社。サプライチェーンマネジメント部門長、執行役サプライチェーンマネジメント部門長、常務執行役サプライチェーンマネジメント部門長を経て、24年1月から現職。 写真提供:MonotaRO 今まで一つ大きい市場(間接資材調達市場)で考えてきたことの精緻化をしています。攻めていく市場を「スモール」「ミッド」「ラージ」と分解して、それに合わせた事業成長戦略やサービス設計、品ぞろえ、マーケティング戦略を作っていくのが事業成長の鍵ですね。 それによって売り上げを伸ばしていくのと、コスト的にもサービスを支える物流やオペレーションを作っていくところ。あとは将来の大きな成長に向けて、日本発のモデルであるMonotaROを海外に展開していく、という構図だと思います』、「今まで一つ大きい市場(間接資材調達市場)で考えてきたことの精緻化をしています。攻めていく市場を「スモール」「ミッド」「ラージ」と分解して、それに合わせた事業成長戦略やサービス設計、品ぞろえ、マーケティング戦略を作っていくのが事業成長の鍵ですね。 それによって売り上げを伸ばしていくのと、コスト的にもサービスを支える物流やオペレーションを作っていくところ。あとは将来の大きな成長に向けて、日本発のモデルであるMonotaROを海外に展開していく、という構図だと思います」、なるほど。
・『Q:まだ売上高の数%程度である海外事業の重要性も増していきそうですが、どのような戦略を考えていますか。 韓国やインド、インドネシアに展開していますが、やはりインド市場の存在は大きいと考えています。こちらはサプライチェーン上の課題やニーズの違いなどがあり、一歩ずつ作り上げていく必要があります。今は国のニーズや、そこで求められている価値を作っている段階ですね。 インドは、とにかく国土が広い難しさがあります。日本では狭いところで、(オーダーから)次の日には届けることができても、インドではそうはいかない。規模の経済性(スケールメリット)が利く中で、どんな顧客にどのようなサービスを行うかを含めて構築していきたいところです。 Q:業績拡大が続いてきた一方、MonotaROの株価は約3年前(21年2月)に上場来高値を付けて以降、低迷が続いています。市場の高い期待に応えるには、何が必要だと考えますか。 次ページ以降では、外資系戦略ファームのボストン・コンサルティング・グループ(BCG)出身で、MonotaRO初の女性社長となった田村氏に、コンサル時代に培った経験がいかに今の職務へ生かされているのかを明かしてもらう。また、直近で低迷する株価の反発に向けた自身の役割、中長期的な方針などと併せて語ってもらった。) 株価自体はコントロールできませんが、私が期待されているのは事業成長だと考えています。前期(23年12月期)の増収率は12.5%でしたが、その前はもっと高いレベルだった(編集部注:22年12月期の増収率は19.1%、21年12月期は20.6%)中で、事業や戦略の領域を精緻化し、年率15%程度の成長を続ければ「売り上げ2倍」が近づき、株価も伴ってくると考えています。 前年比15%程度(の増収率)の絵を考えると、2028~29年頃には売上高が5000億円になる見込みです。もちろん、そのためには適切な戦略が必要ですが、それに見合う市場の余地はあると考えています。 Q:キャリアの始点は大手戦略系ファームのBCGでした。コンサルタント時代の経験は、これまでの職務へどのように役立っていますか。 A:私自身は有能なコンサルタントではなかったと思っていますが、新卒で入社してとても助かったと考えている経験が三つあります。 一つ目に、構造化・論理力が鍛えられたことです。最初は会議の議事録や、メモした内容を夜通しかけてまとめる、といった場面がよくありました。品質を担保するために一言一句直して、添削してくれるようなことは、事業会社ではなかなか難しく、コンサルのパッケージングの品質ならではであり、今でもこのような経験は財産になっていると考えています。 もう一つは、人前で話す場面が数多く経験できたことです。当時もなぜ、経営層の方が新卒生の話を真剣に聞いてくれるのだろうと思ったのですが、やはり「データや事実」を基に話すからこそ聞いてもらえる。それをたたき込んでもらいました。 三つ目に、ネットワーキングも大きな財産です。BCG時代の同期には、(AI開発の)PKSHA Technology(パークシャー・テクノロジー)の上野山さん(上野山勝也・代表取締役)や、(遠隔画像診断サービスを手掛ける)ドクターネットの長谷川さん(長谷川雅子・代表取締役社長)、(医療データ分析の)JMDCの野口さん(野口亮・代表取締役社長)などがいます。 私の代は結構、社長をしている方も多いですね。同期の他にも、後輩や先輩にいろいろな方がいて、皆興味を持って話を聞いてくれました。助け合う文化があったと思いますし、苦楽を共にした仲間の存在は大きかったと感じています。 Q:BCGのアラムナイ(同窓生)同士で集うこともあるのでしょうか。 A:アラムナイの関係性はすごく強いですね。仲間内で情報を共有することもありますし、基本的にサポートし合う文化があって、先輩からもすごく助けられてきました。 特に同時代に在籍してきた方はそうですが、元BCG同士だと、(プロジェクトを共にした)パートナーが被っていたり、御立さん(元BCG日本代表の御立尚資氏)を知っているよという会話になったり。共通の話題ができることも多いです』、「コンサルタント時代の経験は、これまでの職務へどのように役立っていますか・・・一つ目に、構造化・論理力が鍛えられたこと・・・もう一つは、人前で話す場面が数多く経験できたこと・・・三つ目に、ネットワーキングも大きな財産です・・・アラムナイの関係性はすごく強いですね。仲間内で情報を共有することもありますし、基本的にサポートし合う文化があって、先輩からもすごく助けられてきました。 特に同時代に在籍してきた方はそうですが、元BCG同士だと、(プロジェクトを共にした)パートナーが被っていたり、御立さん(元BCG日本代表の御立尚資氏)を知っているよという会話になったり。共通の話題ができることも多いです」、なるほど。
・『Q:MonotaROに話を戻せば、国内でも既存の競合であるアスクルの他、アマゾンが「アマゾンビジネス」(事業者向けのECサイト)を拡大させるなど、競争環境が激化しています。どこに差別化要素を見いだしていますか。 充実した品ぞろえや、コンサルティングを含めた営業、サプライチェーンと利便性、そこに尽きると思っています。 アマゾンより当社が選ばれるのは、やはりBtoBに特化しているため見つけやすい。早く探せるなど、現場に支持されているところがあります。そこはより強くしつつ、他社からシェアを広げていく上で、切り替えていただくには何が必要なのかを、市場を分けながら考えたいと思っています。 Q:3月の春闘が迫る時期となっていますが、高成長を続ける企業の中では、相対的に平均年収が低いように見受けられます(22年12月期の従業員710人の平均年収は585万円)。 当社もインフレなどの状況に応じて、賃上げの検討を行っています。あとは在籍者の能力向上によって、というところですね。他の会社と比べ、どういった人材を採用しているかにもよりますが、当社は長く安心して働いていただいている方が多いように感じます。 私も外資系では年収が高かったわけですが、カルチャー的には少し違うかなとも思ったりしています。社員自体が成長や仕事に満足を感じる体系にはしていきたいなと思います。 Q:人員の規模が拡大する中で、組織マネジメントも難しさを増しそうです。社長の前任である鈴木雅哉氏は以前、ダイヤモンド編集部が行ったインタビューにおいて、社員の週報のほとんどに目を通していると話していました(『“工具のアマゾン”モノタロウに死角はないのか?鈴木社長が明かす「アマゾンよりも怖い敵」』参照)。 私も社員の週報は、部門長になった時から全て読んでいますよ。社長になるとかなり解像度が上がるし、何が起こっているのか分かるところもありますね。従業員が1000~2000人規模になった時にできるか難しくなってくる中で、どういう風に社員とコミュニケーションしていくかは考えています。やり方そのものは、鈴木の時から変えているわけではありません。 Q:鈴木前社長から受けた、印象的な言葉などはありますか。 A:ずっと一緒に仕事をして、いろいろなことを話しましたが…「感謝と謙虚の気持ちを忘れずに10年頑張れ」ということですね。鈴木が(創業者の)瀬戸(欣哉氏)から受け継ぎ、今回についても当社が10年単位で経営をアップデートしていく流れの一つといえます。 私は世の中でも若い社長になると思いますが、それは先代から続いたカルチャーでもありました(前任の鈴木氏は37歳で2代目社長に就任)。私の力だけではなく、この会社をどうしたいか、という中で引き継いできた。だからこそ感謝だし、作ってくれた仕組みを良くしていきたいところです。あとは、100年続く企業にしたいと二人で話してきました。 Q:鈴木氏から言われたように10年間社長を全うする場合、4~5年後に売上高を倍増させた後、現時点でどのような目標を置きたいと考えますか。 A:次の成長につなげることですね。基本的には、前任者が作った数字のトラック(足跡)を磨いていくのと、私は例えば(売上高)1兆円であるとか、その際は違うビジネスモデルになるかもしれませんが、そうした世界も目指していかなければならないと考えています』、「アマゾンより当社が選ばれるのは、やはりBtoBに特化しているため見つけやすい。早く探せるなど、現場に支持されているところがあります。そこはより強くしつつ、他社からシェアを広げていく上で、切り替えていただくには何が必要なのかを、市場を分けながら考えたいと思っています・・・私の力だけではなく、この会社をどうしたいか、という中で引き継いできた。だからこそ感謝だし、作ってくれた仕組みを良くしていきたいところです・・・次の成長につなげることですね。基本的には、前任者が作った数字のトラック(足跡)を磨いていくのと、私は例えば(売上高)1兆円であるとか、その際は違うビジネスモデルになるかもしれませんが、そうした世界も目指していかなければならないと考えています」、「田村」新社長もなかなか優秀そうだ。今後の活躍を期待したい。
タグ:コンサルティング (コンサルティングとは? 就活人気の高いコンサル業界を分かりやすく解説!、米マッキンゼー 経営トップ再選も亀裂あらわ ボブ・スターンフェルズ氏が再びグローバル・マネジングパートナーに選出されたが パートナーの間に反対意見があることが明らかに、急成長モノタロウのボスコン出身社長を直撃!今に生きる コンサル時代に得た「3つのスキル」とは?) en-courege「コンサルティングとは? 就活人気の高いコンサル業界を分かりやすく解説!」 「相手(クライアント)の困りごとを解決する仕事」といっても、実際には幅広い。 「「誰の困りごとを解決するのか」によってこれらは分類されます」、なるほど。 「戦略コンサルを強みとする」ところは、最も高度で、料金も高い。 「業務コンサルティング」は実務的内容だ。 この他にコンピューターメーカーも「ITコンサルティング」を提供している。 ここは投資銀行が取引そのもので勝負をする世界でもある。 「総合系コンサルはアメリカや欧米に本社を構える外資系が多く、クライアントも大企業であるのに対し、国内独立系は日本発のコンサルティングファームです。 クライアント規模も中小企業など様々で、会社の生産・製造など現場に入り込んだコンサルティングを行います」、なるほど。 「プロジェクトを同時に2~3個担当する」のは、繁閑を調整する一般的な方法だ。 大企業のクライアントでは、反対派を説得する材料として「コンサル」を活用することもある。 「論理的に説明する能力」は必須の「能力」だ。 ここはPRなので、紹介は省略。 ダイヤモンド・オンライン The Wall Street Journal「米マッキンゼー、経営トップ再選も亀裂あらわ ボブ・スターンフェルズ氏が再びグローバル・マネジングパートナーに選出されたが、パートナーの間に反対意見があることが明らかに」 「麻薬性鎮痛剤「オピオイド」の販売でパーデュー・ファーマなどの製薬会社に協力したとして批判を浴びた同社は21年、パーデューに協力したことに対して5億7300万ドル(現在のレートで約850億円)の和解金を支払うと発表・・・経済が減速し、顧客が減るにつれ、自社のサービスに対する将来的な需要を読み違えたと批判されてきた。 この1年、マッキンゼーは人員削減を進めた。バックオフィス業務を担当していた1400人を削減し、破産処理業務の一部を段階的に縮小した。またベイン・アンド・カンパニーなど同業他社と同様に、新規採用した経営学修士号(MBA)取得者の入社時期を今年に先送りした。12月に新規に指名したパートナーは約250人で、2022年の380人から減少した」、なるほど。 「スターンフェルズ氏の前任のケビン・スニーダー氏は1期目のあと、抗議票によって2021年にトップの座を追われた・・・スターンフェルズ氏は周囲からは決断力のあるリーダーと受け止められている。しかし同氏が関係の近い少人数のチームに頼り、パートナーシップ制企業のリーダーというより従来の最高経営責任者(CEO)のようなやり方で会社を経営していると感じていた一部のパートナーはこの3年間、そのやり方にいら立っていた」、「マッキンゼー」といえどもトップ人事は思うようにはいかないものらしい。 田村咲耶・MonotaRO代表執行役社長インタビュー「急成長モノタロウのボスコン出身社長を直撃!今に生きる、コンサル時代に得た「3つのスキル」とは?」 「今まで一つ大きい市場(間接資材調達市場)で考えてきたことの精緻化をしています。攻めていく市場を「スモール」「ミッド」「ラージ」と分解して、それに合わせた事業成長戦略やサービス設計、品ぞろえ、マーケティング戦略を作っていくのが事業成長の鍵ですね。 それによって売り上げを伸ばしていくのと、コスト的にもサービスを支える物流やオペレーションを作っていくところ。あとは将来の大きな成長に向けて、日本発のモデルであるMonotaROを海外に展開していく、という構図だと思います」、なるほど。 「コンサルタント時代の経験は、これまでの職務へどのように役立っていますか・・・一つ目に、構造化・論理力が鍛えられたこと・・・もう一つは、人前で話す場面が数多く経験できたこと・・・三つ目に、ネットワーキングも大きな財産です・・・アラムナイの関係性はすごく強いですね。仲間内で情報を共有することもありますし、基本的にサポートし合う文化があって、先輩からもすごく助けられてきました。 特に同時代に在籍してきた方はそうですが、元BCG同士だと、(プロジェクトを共にした)パートナーが被っていたり、御立さん(元BCG日本 代表の御立尚資氏)を知っているよという会話になったり。共通の話題ができることも多いです」、なるほど。 「アマゾンより当社が選ばれるのは、やはりBtoBに特化しているため見つけやすい。早く探せるなど、現場に支持されているところがあります。そこはより強くしつつ、他社からシェアを広げていく上で、切り替えていただくには何が必要なのかを、市場を分けながら考えたいと思っています・・・私の力だけではなく、この会社をどうしたいか、という中で引き継いできた。だからこそ感謝だし、作ってくれた仕組みを良くしていきたいところです・・・ 次の成長につなげることですね。基本的には、前任者が作った数字のトラック(足跡)を磨いていくのと、私は例えば(売上高)1兆円であるとか、その際は違うビジネスモデルになるかもしれませんが、そうした世界も目指していかなければならないと考えています」、「田村」新社長もなかなか優秀そうだ。今後の活躍を期待したい。
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物流問題(その9)(ヤマト「配達員2.5万人契約終了」の大改革も すでに佐川と“明暗くっきり”のワケ、物も人も動かない… 「ドライバーが消える日」 トラック タクシー バスは深刻な人手不足だ) [産業動向]

物流問題については、2021年9月17日に取上げた。今日は、(その9)(ヤマト「配達員2.5万人契約終了」の大改革も すでに佐川と“明暗くっきり”のワケ、物も人も動かない… 「ドライバーが消える日」 トラック タクシー バスは深刻な人手不足だ)である。

先ずは、本年2月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授の矢部謙介氏による「ヤマト「配達員2.5万人契約終了」の大改革も、すでに佐川と“明暗くっきり”のワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338982
・『働き方改革に伴う「2024年問題」が懸念される物流業界。宅配大手のヤマト運輸、佐川急便はそれぞれ運賃の値上げに踏み切る。では、両社の業績はどのような状況にあるのか。それぞれの持ち株会社の決算書をひもとくと、両社には「大きな差」が生まれていることが分かる。 働き方改革に伴う「2024年問題」が懸念される物流業界。宅配大手のヤマト運輸、佐川急便はそれぞれ運賃の値上げに踏み切る。では、両社の業績はどのような状況にあるのか。それぞれの持ち株会社の決算書をひもとくと、両社には「大きな差」が生まれていることが分かる』、興味深そうだ。
・『「2024年問題」を控える物流業界  ここ10年間でヤマトと佐川に「大差」のワケとは? 働き方改革に伴う残業時間の規制により人手不足が懸念される、いわゆる「2024年問題」の到来を控えている物流業界。ともに宅配便大手の、ヤマト運輸を傘下に抱えるヤマトホールディングス(以下、ヤマトHD)と、佐川急便を持つSGホールディングス(以下、SGHD)が、相次いで値上げや構造改革に動いている。 ヤマトHDは、2024年4月1日から宅急便の届け出運賃を約2%値上げすることを発表。SGHDも、24年4月1日から宅配便の届け出運賃を平均で7%程度値上げすると発表している。 また、ヤマトHDでは23年6月に発表した日本郵政グループとの協業を踏まえて、これまで自社で行っていたクロネコDM便などの配送を日本郵便に移管。それに伴って、配達委託契約を結んでいた個人事業主(クロネコメイト)との契約を終了したと、24年2月1日に発表した。その人数は約2万5000人に上るという。 SGHDは、それに先んじて21年9月に日本郵便との提携を発表しており、小型宅配荷物の輸送や国際荷物の輸送、クール宅配便事業などでの協業を行っている。また、22年3月からは幹線輸送を2社共同で行うなど、協業の取り組みを深めてもいる。 物流業界では、働き方改革関連法により24年4月からドライバーの時間外労働時間の上限が制限されることで、輸送能力の不足や輸送コストの上昇などが見込まれる。 ヤマトHDやSGHDの値上げや構造改革は、こうした問題に対応して採算性を向上させるための打ち手であると見ることができる。一方で、実はここ約10年の間にヤマトHDとSGHDの決算書には、大きな差がついてきている。 今回は、なぜ両社の決算に大差がついたのかを見ていくことにしよう』、「今回は、なぜ両社の決算に大差がついたのかを見ていくことにしよう」、楽しみだ。
・『ヤマトHDの決算書を図解 原価率が高い物流業界  ヤマトHDの決算書から見ていく。以下の図は、ヤマトHDの23年3月期の決算書を比例縮尺図に図解したものだ。 (図_ヤマトHD23年3月期の決算書の比例縮尺図 はリンク先参照) まずは、貸借対照表(B/S)から見ていこう。B/Sの左側(資産サイド)で最大の金額を占めているのは、流動資産(約4850億円)だ。ここには、売上債権(受取手形、売掛金及び契約資産)が約2160億円、現預金が約1850億円含まれている。いずれも営業を行っていく上で必要な資産だ。 次いで大きいのは、有形固定資産(約4430億円)だ。ヤマトHDのような物流業では、営業所や物流拠点を全国各地に配置しているため、そうした施設の有形固定資産が大きくなる。 B/Sの右側(負債・純資産サイド)には、流動負債が約3450億円、固定負債が約1460億円計上されている。流動負債および固定負債には有利子負債(借入金およびリース債務)が合計で約480億円含まれている。純資産の金額は約6160億円で、自己資本比率は約56%だ。 続いて、損益計算書(P/L)についても見ていこう。営業収益(売上高に相当)が約1兆8010億円であるのに対し、営業原価(売上原価に相当)は約1兆6870億円(原価率は約94%)、販売費及び一般管理費(販管費)は約530億円(販管費率は約3%)となっており、物流業のコストは配送にかかる営業原価が中心であることがわかる。営業利益は約600億円で、売上高営業利益率(=営業利益÷営業収益)は約3%にとどまっている』、「「今回は、なぜ両社の決算に大差がついたのかを見ていくことにしよう」、なるほど。
・『ヤマトHDの決算書を図解 原価率が高い物流業界  ヤマトHDの決算書から見ていく。以下の図は、ヤマトHDの23年3月期の決算書を比例縮尺図に図解したものだ。 (図_ヤマトHD23年3月期の決算書の比例縮尺図 はリンク先参照) まずは、貸借対照表(B/S)から見ていこう。B/Sの左側(資産サイド)で最大の金額を占めているのは、流動資産(約4850億円)だ。ここには、売上債権(受取手形、売掛金及び契約資産)が約2160億円、現預金が約1850億円含まれている。いずれも営業を行っていく上で必要な資産だ。 次いで大きいのは、有形固定資産(約4430億円)だ。ヤマトHDのような物流業では、営業所や物流拠点を全国各地に配置しているため、そうした施設の有形固定資産が大きくなる。 B/Sの右側(負債・純資産サイド)には、流動負債が約3450億円、固定負債が約1460億円計上されている。流動負債および固定負債には有利子負債(借入金およびリース債務)が合計で約480億円含まれている。純資産の金額は約6160億円で、自己資本比率は約56%だ。 続いて、損益計算書(P/L)についても見ていこう。営業収益(売上高に相当)が約1兆8010億円であるのに対し、営業原価(売上原価に相当)は約1兆6870億円(原価率は約94%)、販売費及び一般管理費(販管費)は約530億円(販管費率は約3%)となっており、物流業のコストは配送にかかる営業原価が中心であることがわかる。営業利益は約600億円で、売上高営業利益率(=営業利益÷営業収益)は約3%にとどまっている』、「営業収益(売上高に相当)が約1兆8010億円であるのに対し、営業原価(売上原価に相当)は約1兆6870億円(原価率は約94%)、販売費及び一般管理費(販管費)は約530億円(販管費率は約3%)となっており、物流業のコストは配送にかかる営業原価が中心であることがわかる。営業利益は約600億円で、売上高営業利益率(=営業利益÷営業収益)は約3%にとどまっている」、なるほど。
・『売上高はヤマトHDが大きいが 収益性ではSGHDに軍配  以下の図は、SGHDにおける23年3月期の決算書を図解したものだ。 (図_SGHDにおける23年3月期の決算書 はリンク先参照) こちらもB/Sから見ていこう。左側で最大の金額を占めているのは流動資産(約4070億円)で、ここには売上債権(受取手形、営業未収入金及び契約資産)が約1840億円、現預金が約1780億円計上されている。次いで大きいのは有形固定資産(約3920億円)であり、SGHDの資産はヤマトHDと非常に良く似た構成になっていることがわかる。 B/Sの右側には流動負債が約2290億円、固定負債が約1090億円計上されており、これらには有利子負債が合計で約970億円含まれている。純資産は5670億円で、自己資本比率は約63%という水準だ。 P/Lでは、営業収益が約1兆4350億円であるのに対し、営業原価は約1兆2380億円(原価率は約86%)、販管費は約620億円(販管費率は約4%)となっている。営業利益は約1350億円で、売上高営業利益率は約9%だ。ヤマトHDに比べると約6ポイント高い。コスト構造で見ると、原価率がヤマトHDは約94%であるのに対し、SGHDでは約86%と、差がついている。 営業収益ではヤマトHDが約1兆8010億円、SGHDが約1兆4350億円とヤマトHDのほうが大きいが、営業利益ではヤマトHDが約600億円、SGHDが約1350億円となっており、SGHDに軍配が上がる。 なぜ、両社の営業利益には差が付いたのか。その理由を探るために、次のページでは両社の13年3月期のP/Lと23年3月期のP/Lを比較してみよう』、「営業利益ではヤマトHDが約600億円、SGHDが約1350億円となっており、SGHDに軍配が上がる。 なぜ、両社の営業利益には差が付いたのか・・・両社の13年3月期のP/Lと23年3月期のP/Lを比較してみよう」、比較の結論はどうなったのだろうか。
・『「二つの指標」で見えてくるヤマトHDとSGHDの成長性の違い  まず、ヤマトHDのP/Lを比較してみよう(下図)。 (図_ヤマトHDのP/Lはリンク先参照) これによれば、13年3月期の営業収益が約1兆2820億円、営業利益が約660億円であったのに対し、23年3月期はそれぞれ約1兆8010億円、約600億円となっている。営業収益は5000億円超増加している一方で、営業利益は約60億円減少している。営業収益の増加以上にコストが増加しているということだ。 ここで、ヤマトHDの各数値の変化について、成長性を分析する際に使用される「二つの指標」を当てはめて分析してみよう。 その指標とは、趨勢(すうせい)比率とCAGRである。 趨勢比率とは、基準とする年度の数字を100として、計算の対象となる年度の数字がいくつに相当するのかを見る指標だ。計算式は、「趨勢比率=(計算年度の数値÷基準年度の数値)×100」である。例としてヤマトHDにおける13年3月期の営業利益を100として23年3月期の営業利益の趨勢比率を計算してみると、約91となる。 CAGRとは、「Compound Annual Growth Rate」の頭文字を取ったもので、年平均成長率とも呼ばれる。最初の年度の数字から、毎年平均で何%成長すると最終年度の数字になるかを表したものだ。計算式は図中に示しているが、Excelでは、「CAGR=(最終年度の数値/初年度の数値)^(1/年数)-1」のように入力すると計算できる。こちらも例としてヤマトHDの営業収益について13年3月期から23年3月期にかけてのCAGRを計算してみると、約3.5%となる。 (図_連結P/Lの比較(SGHD) はリンク先参照) 続いて、SGHDのP/Lも比較してみよう(上図)。13年3月期の営業収益が約8710億円、営業利益が約310億円だったのに対し、23年3月期にはそれぞれ約1兆4350億円、約1350億円となっており、営業収益、営業利益ともに大きく増加している。 ヤマトHDと同様に営業利益の趨勢比率を計算してみると約436、営業収益のCAGRは約5.1%だった。こうした指標からも、SGHDの業績はここ10年間で大きく伸びていることが見て取れる。 では、ヤマトHDの営業利益が伸び悩む一方、SGHDの業績が大きく伸びた理由は何だったのだろうか』、「ヤマトHDの営業収益」の「CAGR」は「約3.5%」、「SGHD」の「CAGR」は「約5.1%」と大きな差となり、「SGHDの業績が大きく伸びた」ようだ。
・『長年に及ぶ「値上げ交渉」が奏功 国際物流も利益に貢献したSGHD  SGHDの利益が大きく伸びた理由を探るために、趨勢比率を時系列で分析してみよう。以下の図は、ヤマトHDとSGHDについて、13年3月期を基準年度として23年3月期までの営業収益の趨勢分析を行ったものだ。 (図_ヤマトHDとSGHDの営業収益の趨勢分析 はリンク先参照) これによると、ヤマトHDの営業収益はほぼ一貫して拡大してきたことがわかる。この間、ヤマトHDの宅急便の取扱個数は増加しており、それが収益の拡大に寄与している。 一方で、SGHDの営業収益は2014年3月期に一時的に低下している。これは、利益率の改善を目指してSGHDが荷主企業への値上げ交渉を行ったことが原因だ。 当時の報道によれば、値上げ幅は1~2割程度であったとされる(週刊東洋経済13年9月28日号)。これにより、AmazonなどをはじめとしたEC関連の大口顧客からの荷物の取扱個数が大きく減少し、一時的な収益低下を招いたというわけだ。 しかしながら、その後は単価の上昇に伴って収益は拡大傾向に転じている。また、コロナ禍に入った21年3月期以降はEC需要の大きな拡大に伴って、取扱個数が大きく増加したことも収益の拡大に寄与している。 こうしたSGHDにおける荷物の引受単価の引き上げは、利益の増加に大きく貢献した。運賃値上げによって採算性の悪いECの荷物が減少したことも、結果として収益性の改善につながった。営業利益の趨勢分析(下図)を見ると、SGHDの営業利益は2013年3月期以降、増加傾向で推移していることがわかる。 (図_営業利益の趨勢分析 はリンク先参照) その一方で、ヤマトHDの営業利益は伸び悩んでいる様子が見て取れる。単価の低い小型荷物が多く、小口の配送コストや再配達コストがかさみやすい構造になっていることが大きな要因だ。 冒頭で、2024年問題に対応するためヤマトHD、SGHDがともに値上げに踏み切ったことに触れたが、SGHDは10年以上前から値上げ交渉に継続的に取り組むとともに、コスト管理を徹底することで収益性の改善を行ってきた。その結果が、趨勢分析にも表れているといえる。 そして、SGHDの営業収益と営業利益が伸びた主な理由はもう一つある。以下の図は、事業別の営業収益と営業利益を13年3月期と23年3月期の間で比較したものだ。 (図_事業別の営業収益と営業利益(SGHD) はリンク先参照) これによれば、宅配便事業を中心としたデリバリー事業の業績拡大に加えて、企業の物流業務を包括して受託するサードパー今回は、ヤマトHDとSGHDという物流業界の2社を取り上げてその決算書を分析してきたが、直近の物流業界を取り巻く環境は厳しい。冒頭でも取り上げた2024年問題だけではなく、コロナ禍後においてEC需要が落ち込んでおり、国内の宅配便の取扱個数は減少傾向にある点も懸念材料の一つだ。 また、国際的なサプライチェーンの混乱からSGHDのロジスティクス事業の業績は大きな伸びを見せたが、その間の荷主の在庫積み増しの影響などから国際物流の市況は大きく悪化している。24年3月期第3四半期段階での通期業績予想によれば、SGHDにおけるロジスティクス事業の24年3月期営業利益は約45億円の赤字になる見込みだ。 こうした厳しい事業環境の中で、冒頭で述べたような協業をはじめとした事業構造改革による採算性向上に取り組んでいくとともに、業務の効率化を進めていくことで利益を再び拡大基調に乗せていくことができるかが問われている』、「ヤマトHDの営業収益はほぼ一貫して拡大してきたことがわかる。この間、ヤマトHDの宅急便の取扱個数は増加しており、それが収益の拡大に寄与している。 一方で、SGHDの営業収益は2014年3月期に一時的に低下している。これは、利益率の改善を目指してSGHDが荷主企業への値上げ交渉を行ったことが原因だ。 当時の報道によれば、値上げ幅は1~2割程度であったとされる(週刊東洋経済13年9月28日号)。これにより、AmazonなどをはじめとしたEC関連の大口顧客からの荷物の取扱個数が大きく減少し、一時的な収益低下を招いたというわけだ。 しかしながら、その後は単価の上昇に伴って収益は拡大傾向に転じている。また、コロナ禍に入った21年3月期以降はEC需要の大きな拡大に伴って、取扱個数が大きく増加したことも収益の拡大に寄与している・・・国際物流の市況は大きく悪化している。24年3月期第3四半期段階での通期業績予想によれば、SGHDにおけるロジスティクス事業の24年3月期営業利益は約45億円の赤字になる見込みだ。 こうした厳しい事業環境の中で、冒頭で述べたような協業をはじめとした事業構造改革による採算性向上に取り組んでいくとともに、業務の効率化を進めていくことで利益を再び拡大基調に乗せていくことができるかが問われている」、「SGHD」も一転して苦境に陥っているが、今後の展開が注目される。

次に、2月26日付け東洋経済オンライン「物も人も動かない… 「ドライバーが消える日」 トラック、タクシー、バスは深刻な人手不足だ」を紹介しよう。
・『「2024年問題」が懸念される4月まで約1カ月。トラック、タクシー、バスはいずれも人手不足が深刻だ。 『週刊東洋経済』のこの問題での特集の説明は省略。 もともと”3K労働”、”ブラック職場”などと揶揄され、なり手不足で頭打ちだったところに、2024年問題が加わる。高齢化も進んでいる。ドライバー不足に拍車がかかるのは必至だ。 朝7時から11時にタクシーがつかまらない 国内の営業用トラックの輸送能力は、このままいけば2030年に34.1%が不足するという(NX総合研究所調べ)。消費者も物流問題では、その深刻さを年々身近に感じつつある。 EC(ネット通販)の普及によって、ヤマト運輸が宅配便の総量規制や値上げを実施し、「宅配クライシス」と呼ばれたのが2017年。日本郵便が普通郵便(手紙・葉書き)の土曜配達を中止したのが2021年だった。近年では、セブン‐イレブンが弁当や総菜など日配品の配送回数について、1日4回から3回に順次変更している。 2024年問題で残業規制が適用されるのは、タクシーやバスのドライバーも事情は同じである。 タクシーの場合、2023年5月の新型コロナウイルスの5類移行を受け、日本人やインバウンド(訪日外国人)の観光が復活したという事情もある。コロナ禍でタクシードライバーが大量に離職したが、コロナ収束後も業界には戻ってこないからだ。 とくに繁華街や観光地では、目立ってタクシーがつかまらなくなった。東京ハイヤー・タクシー協会によると、都内で最もタクシーが足りない時間帯は、通勤にかかわる平日の朝7時~11時だという。 さらにはバスもドライバー不足を受け、地方で路線バスの減便・廃止が続く。 長野の長電バスは1月下旬から日曜運休に踏み切り、大阪の金剛自動車は2023年12月に路線バス事業の廃止を決断した。何と東京23区も例外でなく、足立区はコミュニティバス「はるかぜ」を減便している。バスは“地域の足”を奪われているのが実態なのだ』、「2024年問題で残業規制が適用されるのは、タクシーやバスのドライバーも事情は同じである。 タクシーの場合、2023年5月の新型コロナウイルスの5類移行を受け、日本人やインバウンド(訪日外国人)の観光が復活したという事情もある。コロナ禍でタクシードライバーが大量に離職したが、コロナ収束後も業界には戻ってこないからだ。とくに繁華街や観光地では、目立ってタクシーがつかまらなくなった」、大変だ。
・トラック87万人、タクシー23万人、バス13万人  政府は追加で対策を打つ。2月13日には物流関連2法の改正案を閣議決定。事業者にドライバーの荷待ち時間を削減する計画を義務づけ、違反すると最大100万円の罰金を課すなど、労働環境改善に懸命だ。ほかにも”多重下請け”の是正をはじめ、今国会での法改正で労働環境改善を図るが、問題はそう簡単には解消しそうにない。 国内のドライバー数はトラックが約87万人、タクシーが約23万人、バスは約13万人いる。ドライバー不足で物や人が動かない事態は、次第に顕在化しつつある。 需要の大きさに供給が追いつかず、街から消えるドライバー。本特集では、全国で物流・人流が滞る最新事情をリポートし、その処方箋について探る』、「政府は追加で対策を打つ。2月13日には物流関連2法の改正案を閣議決定。事業者にドライバーの荷待ち時間を削減する計画を義務づけ、違反すると最大100万円の罰金を課すなど、労働環境改善に懸命だ。ほかにも”多重下請け”の是正をはじめ、今国会での法改正で労働環境改善を図るが、問題はそう簡単には解消しそうにない」、焼け石に水のようなものだ。国内のドライバー数はトラックが約87万人、タクシーが約23万人、バスは約13万人いる」、マイカーの「ドライバー数」ははるかに多いので、プロの「ドライバー数」が多少減ったとしても、道路の渋滞が緩和する可能性は少なそうだ。
タグ:物流問題 (その9)(ヤマト「配達員2.5万人契約終了」の大改革も すでに佐川と“明暗くっきり”のワケ、物も人も動かない… 「ドライバーが消える日」 トラック タクシー バスは深刻な人手不足だ) ダイヤモンド・オンライン 矢部謙介氏による「ヤマト「配達員2.5万人契約終了」の大改革も、すでに佐川と“明暗くっきり”のワケ」 「今回は、なぜ両社の決算に大差がついたのかを見ていくことにしよう」、楽しみだ。 「「今回は、なぜ両社の決算に大差がついたのかを見ていくことにしよう」、なるほど。 「営業収益(売上高に相当)が約1兆8010億円であるのに対し、営業原価(売上原価に相当)は約1兆6870億円(原価率は約94%)、販売費及び一般管理費(販管費)は約530億円(販管費率は約3%)となっており、物流業のコストは配送にかかる営業原価が中心であることがわかる。営業利益は約600億円で、売上高営業利益率(=営業利益÷営業収益)は約3%にとどまっている」、なるほど。 「営業利益ではヤマトHDが約600億円、SGHDが約1350億円となっており、SGHDに軍配が上がる。 なぜ、両社の営業利益には差が付いたのか・・・両社の13年3月期のP/Lと23年3月期のP/Lを比較してみよう」、比較の結論はどうなったのだろうか。 「ヤマトHDの営業収益」の「CAGR」は「約3.5%」、「SGHD」の「CAGR」は「約5.1%」と大きな差となり、「SGHDの業績が大きく伸びた」ようだ。 「ヤマトHDの営業収益はほぼ一貫して拡大してきたことがわかる。この間、ヤマトHDの宅急便の取扱個数は増加しており、それが収益の拡大に寄与している。 一方で、SGHDの営業収益は2014年3月期に一時的に低下している。これは、利益率の改善を目指してSGHDが荷主企業への値上げ交渉を行ったことが原因だ。 当時の報道によれば、値上げ幅は1~2割程度であったとされる(週刊東洋経済13年9月28日号)。これにより、AmazonなどをはじめとしたEC関連の大口顧客からの荷物の取扱個数が大きく減少し、一時的な収益低下を招いたというわけだ。 しかしながら、その後は単価の上昇に伴って収益は拡大傾向に転じている。また、コロナ禍に入った21年3月期以降はEC需要の大きな拡大に伴って、取扱個数が大きく増加したことも収益の拡大に寄与している・・・ 国際物流の市況は大きく悪化している。24年3月期第3四半期段階での通期業績予想によれば、SGHDにおけるロジスティクス事業の24年3月期営業利益は約45億円の赤字になる見込みだ。 こうした厳しい事業環境の中で、冒頭で述べたような協業をはじめとした事業構造改革による採算性向上に取り組んでいくとともに、業務の効率化を進めていくことで利益を再び拡大基調に乗せていくことができるかが問われている」、「SGHD」も一転して苦境に陥っているが、今後の展開が注目される。
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鉄道(その12)(イギリス高速鉄道「未着工区間は中止」の衝撃 コスト増など理由 沿線からは失望と怒りの声、日本人が知らないサンマリノ 「神社」と電車の謎 短命の山岳鉄道が動態復元 ブドウ畑に鳥居が、LRTか それともバスか?中国製「ART」とは何者か レールなし 路面の白線マーカーに沿い走行) [産業動向]

鉄道については、昨年12月30日に取上げた。今日は、(その12)(イギリス高速鉄道「未着工区間は中止」の衝撃 コスト増など理由 沿線からは失望と怒りの声、日本人が知らないサンマリノ 「神社」と電車の謎 短命の山岳鉄道が動態復元 ブドウ畑に鳥居が、LRTか それともバスか?中国製「ART」とは何者か レールなし 路面の白線マーカーに沿い走行)である。


先ずは、昨年10月11日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリスト のさかい もとみ氏による「イギリス高速鉄道「未着工区間は中止」の衝撃 コスト増など理由、沿線からは失望と怒りの声」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/707413
・『イギリスのリシ・スナク首相は10月4日、ロンドンとイングランド北部を結ぶ高速鉄道「HS2(ハイスピード2)」の第2期区間の建設計画を取りやめると発表した。 HS2をめぐってはこの発表前の数週間、計画の縮小に関するうわさでざわついていたが、スナク首相はこれを追認する格好となった。首相は第2期区間計画の中止について、大幅なコストの増加、建設計画の遅延が主な理由と説明している。長期にわたって練られてきた大規模交通インフラ計画を断念するに至った流れを追ってみることにしたい』、興味深そうだ。
・『建設中の区間だけで終了へ  HS2は2020年、当時のボリス・ジョンソン首相が建設計画にGOサインを出した。移動時間の短縮のほか、輸送力の増加、雇用創出、ロンドンを中心とするイングランド南部に偏っている英国経済の均衡化などが開業効果として見込まれるとしている。 当初の計画では、HS2は南端のロンドンを起点にイングランド中部のバーミンガムを経て2方向に分岐し、北西側(左側)はマンチェスター、北東側(右側)はリーズに至るY字型の路線となっていた。分岐地点のやや南側にあるバーミンガムまでが第1期区間で、2029年の開業を目指して工事が進んでいる。その北側、左右に分かれる部分が第2期区間だ。このうち、リーズへの延伸は2021年に途中のイースト・ミッドランズ・パークウェイまでで打ち切ることが決まっていた。 今回、スナク首相が中止を決めたのは、第2期区間のバーミンガムから北側の部分すべてだ。したがって、HS2は現在建設が進んでいる区間だけで計画終了となる。) もっとも、第1期区間についても建設は大幅に遅れている。2029年予定の開業時には、ロンドン市内中心部にあるターミナル、ユーストン駅までの乗り入れが期待されている。しかし、10月に入って「十分な民間投資が確保されない限り、HS2は同駅まで乗り入れない」という報道が流れた。これを受け、ロンドンのサディク・カーン市長は改めて市内中心部へのHS2乗り入れを実現すべく、スナク首相に書簡を送ったという。 ユーストン駅まで乗り入れない場合、ロンドン北西部で建設が進むオールド・オーク・コモンという新駅が当初のターミナルとなる。建設にかかるコスト増もあり、「最終的にHS2はロンドンの街中まで乗り入れないかも」という臆測が依然飛び交っている。 第2期計画の中止が決まったとはいえ、何らかの代替案なしに頓挫したのでは開通を期待していた沿線住民に示しがつかない。スナク首相は英国の国政与党・保守党の党大会で第2期計画の中止を表明した際、次のような代替案を明らかにした。 【スナク首相が発表したHS2第2期建設中止に伴う代替案】 ・360億ポンドを投じ、陸上交通網のテコ入れを行う ・「ミッドランズ鉄道ハブ」の建設。ここから周辺駅50カ所とつなぐ ・幹線国道A1、A2、A5および高速道路M6をアップグレードする ・リーズにトラム(路面電車)を敷設する ・イングランド北部の道路70本の改良に資金を投入 ・ウェールズ北部の鉄道路線の電化 ・国内の主要道路の再舗装に着手 ・現在行われている「バス運賃の減免措置」(多くの地方路線が2ポンド=約360円で乗れる)を2024年12月末まで延長』、「スナク首相が中止を決めたのは、第2期区間のバーミンガムから北側の部分すべてだ。したがって、HS2は現在建設が進んでいる区間だけで計画終了となる・・・「ユーストン駅まで乗り入れない場合、ロンドン北西部で建設が進むオールド・オーク・コモンという新駅が当初のターミナルとなる」、こんなに短くなっては、高速鉄道の意味もかなり薄らぎざるを得ないだろう。
・『沿線自治体「不満と怒り」  長年にわたって「高速鉄道の恩恵」を期待していた沿線住民からは、当然のことながら失望や怒りの声が聞こえてくる。 イングランド北部、とくに高速鉄道でロンドンとの直結が約束されていたマンチェスターとその周辺の自治体首長からは怨嗟の声がやまない。例えば、グレーター・マンチェスター(広域市)のバーナム市長は、今回の決定を受け、イギリスの公共放送BBCに対し「不満と怒り」があると語っている。またデイビッド・キャメロン元首相は、「一世一代の機会が失われた」とX(旧ツイッター)に投稿している。) そして、実際に悲惨な目に遭っている人々もいる。イングランド北部でHS2の敷設計画による土地の強制収用に応じ、それまで保有していた住宅や農場を手放した人々だ。とくに畜産業を営んでいた人々は代替地の選定や移転に相当な労力を費やしており、「苦労の結果が敷設中止では困る」とし、補償の上乗せを求める声も聞こえてきている。今後、政府はこうした「計画の影響」を受けた人々にも丁寧に向き合うことが必要だろう。 一方、2大政党制の英国議会における野党・労働党は、もともとHS2への経済効果を疑問視していたこともあり、同党としては「計画の復活」を約束しない、仮に今後の選挙で政権を奪回しても、まずはコスト等の数字の精査が必要との見方を示している』、「HS2の敷設計画による土地の強制収用に応じ、それまで保有していた住宅や農場を手放した人々だ。とくに畜産業を営んでいた人々は代替地の選定や移転に相当な労力を費やしており、「苦労の結果が敷設中止では困る」とし、補償の上乗せを求める声も聞こえてきている・・・野党・労働党は、もともとHS2への経済効果を疑問視していたこともあり、同党としては「計画の復活」を約束しない、仮に今後の選挙で政権を奪回しても、まずはコスト等の数字の精査が必要との見方を示している」、なるほど。
・『日立製車両への影響は?  HS2に導入される車両をめぐっては2021年12月、日立製作所と仏アルストムが折半出資する共同事業体が同線向け車両の製造・保守事業の受注を決めている。受注したのは欧州最速となる最高時速360kmの高速列車54編成の設計・製造と、12年間に及ぶ保守業務で、契約金額は総額19億7000万ポンド(約3578億円)に及ぶ。 この契約ではあくまで第1期区間の運行用として結ばれたものであるため、今回の第2期延伸の中止決定が影響を及ぼすものではない。とはいえ、当然ながらメーカーとしては第2期分の納入にも期待を寄せていただけに、今回の決定は歓迎されざるものであろう。 衝撃的とも言えるイギリス政府の「高速鉄道建設打ち切り」の決定は、コロナ禍後の経済情勢の変化が遠因でもある。資材の高騰や賃金の上昇などに加え、オンライン会議の増加など、人々の「移動需要」が計画段階と比べて大きく変わっている。この決定が吉と出るか凶と出るか、結果を見るにも5年、10年といった長期戦になる。イギリス経済の行く末も含め、今後のHS2の展開はどうなるのだろうか』、「日立製作所と仏アルストムが折半出資する共同事業体が同線向け車両の製造・保守事業の受注を決めている。受注したのは欧州最速となる最高時速360kmの高速列車54編成の設計・製造と、12年間に及ぶ保守業務で、契約金額は総額19億7000万ポンド(約3578億円)に及ぶ。 この契約ではあくまで第1期区間の運行用として結ばれたものであるため、今回の第2期延伸の中止決定が影響を及ぼすものではない。とはいえ、当然ながらメーカーとしては第2期分の納入にも期待を寄せていただけに、今回の決定は歓迎されざるものであろう」、「この契約ではあくまで第1期区間の運行用として結ばれたものである」とはいえ、「第1期分」だけで終わるのであれば、採算は悪くならざるを得ない。これでは、「共同事業体」としては、馬鹿らしくてやっていられないだろう。

次に、本年1月5日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリストのさかい もとみ氏による「日本人が知らないサンマリノ、「神社」と電車の謎 短命の山岳鉄道が動態復元、ブドウ畑に鳥居が」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/725027
・『イタリアに周囲を囲まれた小国・サンマリノ共和国。アドリア海近くにそそり立つ岩山が国土のこの国は人口3万5000人弱、面積は"山手線の内側”ほどの60平方kmしかなく、ロープウェーこそあるものの鉄道はない。だが、「国の中枢」にあたる山頂付近のトンネルには電車が停まっており、ときおり動く姿が見られるという。 さらに、同国には欧州で初の、日本の神社本庁に認められた「神社」もある。欧州でもバチカン市国、モナコ公国に次いで面積で3番目に小さい国に、なぜ神社があるのだろう。 さまざまな疑問を解きに、現地を訪れた』、興味深そうだ。
・『「世界最古の共和国」にあった鉄道  駐日サンマリノ共和国大使館の説明によると、同国は「世界で最も古い共和国であり、唯一生き残っている都市国家」「憲法は1600年に制定され、現在も使用されているものでは世界最古」だという。 市街地に行くとまるで中世から時が止まっているかのような印象を覚える。国の創設は4世紀とされるが、これは“マリノ”という石工が石灰岩の岩山であるティターノ山の頂上に登り、そこに小さな共同体を創設したことが起源だという。 サンマリノは中世を通じて自己統治を維持、13世紀には議会に当たる最高評議会が設立され、現在もなお執政機関として存在している。近代には、ナポレオンの侵攻やイタリアとの統一運動もあったが、独立を維持。1862年に当時のイタリア王国と友好・中立条約を締結したことで都市国家として現代まで残る形となった。) 国民は、今でこそ国土のあちこちに住居を構えて住んでいるが、政治・商業の中心地はティターノ山の山頂付近に張り付く石造りの建物群が並ぶ一帯に集中している。 この中心地区の町名こそが「サンマリノ」と称されるが、海抜ほぼゼロの平地にある下界から、標高600m以上ある岩山の上まで登るための交通確保が古くからの課題であった。そこで検討されたのが、イタリア領の最も近い都市で、アドリア海に面したリミニ(Rimini)とサンマリノとを結ぶ山岳鉄道「リミニ・サンマリノ鉄道」の敷設だった。 現在も乗客を乗せて動き出しそうな車両が残っているこの鉄道だが、実際には1932年から1944年までわずか12年あまりの短命で終わっている。 こうした山岳鉄道の敷設は概して、山の上で暮らしている住民が下界との行き来を楽にするために敷設運動を起こす傾向がありそうだが、リミニ・サンマリノ鉄道ではイタリア側の出資で計画が着手された。1901年ごろには鉄道敷設計画があったとされるが、第1次世界大戦の終了から約10年を経たころ、時の宰相で独裁政権を率いたムッソリーニがサンマリノを訪問したことで、敷設計画が一気に前進、国費を投入し建設を決定した』、「山岳鉄道「リミニ・サンマリノ鉄道」」は「時の宰相で独裁政権を率いたムッソリーニがサンマリノを訪問したことで、敷設計画が一気に前進、国費を投入し建設を決定した」、なるほど。
・『戦時中の誤爆で損傷、そのまま運行停止  着工は1928年で、その後約3年をかけて約32kmの路線が完成した。当時の記録によると、約19.8kmがサンマリノ領内、残りの12.2kmがイタリア領内に敷かれていた。イタリア各地で見られる軌間950mmのナローゲージで、直流3000Vで電化されていた。路線には2カ所のループを含むトンネル17カ所があり、リミニからサンマリノまで53分で走破していた。 サンマリノは第2次世界大戦の開戦に際して中立を宣言していたものの、1944年6月に連合国軍の誤爆で鉄道は損傷。修復されることなく、翌月の7月4日に定期運行がいきなり終了してしまった。記録によると、1944年7月11日から12日にかけて、電気機関車が客車2両を牽引する運行終了の記念列車が走ったという。) 第2次世界大戦終了後、リミニ・サンマリノ鉄道の復活を期待する声はあちこちから幾度となく上がったという。しかしサンマリノの人々の願いは届かず、イタリア領内にあった同鉄道の線路は1958年から1960年にかけて完全に外されてしまった。 一方で、サンマリノ側では鉄道があった痕跡を残そうとする活動が脈々と行われている。1kmに満たない長さとはいえ、保存状態のよかった旧サンマリノ駅近くのモンターレ(Montale)トンネル前後の区間が修復され、鉄道車両の動態保存区間としてよみがえった。復活したのは2012年7月21日で、1等と3等の客室を備えた合造車の電車「AB03」と、有蓋貨車1両が不定期にトンネル内を行き来している。バッテリー動力などへの改造ではなく、実際に架線に480Vの電力を通し、架線集電の「電車」として動かせるようにしているのが心憎い。 普段「AB03」は昼夜を問わずトンネル内に停めてある。出入りも自由とあって、観光客などが写真を撮る姿も見られる』、「戦時中の誤爆で損傷、そのまま運行停止」したが、「サンマリノ側・・・1kmに満たない長さとはいえ、保存状態のよかった旧サンマリノ駅近くのモンターレ(Montale)トンネル前後の区間が修復され、鉄道車両の動態保存区間としてよみがえった」、動態保存とは大したものだ。
・『動態保存区間を延長する構想も  ちなみに現在、下界とティターノ山の山頂付近にあるサンマリノの街とを結ぶ公共交通機関はロープウェーがあるほか、イタリア鉄道(トレニタリア)のリミニ駅前からはサンマリノの街への定期路線バスが運行されており、1時間ほどで中心街まで行ける。 また、リミニの南東には空の玄関、リミニ・サンマリノ空港がある。空港敷地はイタリア領に位置しながらも、サンマリノ共和国に籍を置くプライベート機がここを拠点に登録されている。 リミニ・サンマリノ鉄道の動態保存については、モンターレトンネルのふもと側(リミニ方)の先、ループ状になっているピアッジェ(Piagge)トンネルを通った先に位置するロープウェー駅(下界側)近くまで、約3km強の区間を復元し、列車を走れるようにする構想もあるというが、果たして計画はどう進むのだろうか。) 一方、もう1つの「不思議」である神社の歴史は鉄道に比べてはるかに新しい。その創建はリミニ・サンマリノ鉄道の動態保存区間復活よりも後だ。 お正月といえば「初詣は欠かせない」という人も少なくないだろう。しかし日本から遠く離れた欧州に住む邦人にとって、神社での参拝はなかなか叶わない。そんな中、サンマリノには神社本庁に認められた欧州初の神社が建てられている。 その名も「サンマリノ神社」と称し、2011年の東日本大震災の犠牲者を追悼し、日本とサンマリノの友好関係を深めるため、2014年に創建された。鎮座式には、神社本庁総長をはじめ、故安倍晋三元首相の実母・洋子さんも参列したという。 ところで「神社がなぜサンマリノにあるのか?」という疑問を持つ人もいることだろう。由来によると、2011年の東日本大震災の犠牲者を追悼するため、マンリオ・カデロ駐日サンマリノ大使が神社本庁にこの神社の建立を相談したことがきっかけなのだという。カデロ大使は2002年から駐日大使の職にある。全ての大使の中でも在職期間が最も長いことから外交序列筆頭の駐日外交団長でもある。ちなみに、神職は現地に住むサンマリノ人で、日本で修行したフランチェスコ・ブリガンテさんという方が宮司を務める』、「リミニ・サンマリノ鉄道の動態保存については、モンターレトンネルのふもと側(リミニ方)の先、ループ状になっているピアッジェ(Piagge)トンネルを通った先に位置するロープウェー駅(下界側)近くまで、約3km強の区間を復元し、列車を走れるようにする構想もあるというが、果たして計画はどう進むのだろうか・・・2011年の東日本大震災の犠牲者を追悼するため、マンリオ・カデロ駐日サンマリノ大使が神社本庁にこの神社の建立を相談したことがきっかけなのだという。カデロ大使は2002年から駐日大使の職にある・・・神職は現地に住むサンマリノ人で、日本で修行したフランチェスコ・ブリガンテさんという方が宮司を務めるサンマリノに神社本庁のお墨付きを得た「神社」があるとは心底驚いた。
・『ブドウ畑の一角に神社  小さいながらも本殿があり、伊勢神宮と同じ「神明造」の様式を持ち、その一部は伊勢神宮が遷宮の際に用いた木材を使用。日本で組まれたのち、サンマリノに輸送されこの地で再構築されたものだ。 神社はワイン用のブドウ畑の一角に設けられており、鳥居をくぐる際には遠くにサンマリノの象徴である3つの砦を擁したティターノ山の威容を眺めることができる。ただ、この神社の立地はサンマリノ旧市街地から遠く、険しい山道をくねくねと登りながら目指すことになる。クルマがないと行きにくいのが残念だ。とはいえ、欧州の小国にある神社という貴重さは何事にも代えがたい。 欧州大陸にある小国のうち、モナコ公国とリヒテンシュタイン公国は周辺国の鉄道幹線が国の一角を通り抜ける形で敷かれている。一方でサンマリノは岩山が国土という悪条件の下、100年近く前に鉄道で下界と中心地をつなぐ「国際列車」を通すという先見性があったことは忘れてはならない。 正直なところ、日本との縁はあまりなさそうな欧州の小国・サンマリノだが、今世紀に入って、“神社がある国”にもなった。「観光鉄道の延伸」が実現すれば、”世界最古の共和国”へ電車で登るという楽しみが増える。神社と共に、日本人観光客への関心がより高まる日が来ることを期待したい』、「「観光鉄道の延伸」が実現すれば、”世界最古の共和国”へ電車で登るという楽しみが増える。神社と共に、日本人観光客への関心がより高まる日が来ることを期待したい」、同感である。

第三に、2月24日付け東洋経済オンラインが掲載したアジアン鉄道ライターの高木 聡氏による「LRTか、それともバスか?中国製「ART」とは何者か レールなし、路面の白線マーカーに沿い走行」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/736326
・『2月1日から4日にかけて、マレーシアの首都クアラルンプール近郊、プトラジャヤ地区にて中国中車(CRRC)株洲が開発を進めている「ART(Autonomous Rapid Transit)」の、東南アジアで初となる一般向け試乗会が開かれた。 日本ではまだほとんど知られていないART。見た目はLRTだが車輪はゴムタイヤで、さらに運転台には丸いハンドルまで付いている。車体も3連接で、最大5連接にまで伸ばせるというから驚きだ』、「中国中車(CRRC)株洲が開発を進めているART。見た目はLRTだが車輪はゴムタイヤで、さらに運転台には丸いハンドルまで付いている。車体も3連接で、最大5連接にまで伸ばせる」、中国製のようだが、興味深そうだ。
・『LRT並みの輸送力で低コスト  進路の制御は、ART専用に設置した道路上の白線マーカーを光学式センサーが読み取り、これに沿って走行する。丸いハンドル(ステアリングホイール)も設置しているが、これは搬入時や非常時、また車庫等での入れ換えなどの際に機動性を確保するためである。今回の試乗会も、ハンドルを使用したマニュアル運転となった。 動力はバッテリー駆動だ。ただ、各国のバッテリー式LRTで見られる充電用のパンタグラフはなく、車体側面に急速充電用のソケットがある。そういった点ではLRTではなくEVバスに分類されそうだ。実際に、車体前面にはナンバープレート設置用の枠がある。 CRRCはART開発の理由について、LRT並みの輸送力を保ちつつ、整備費用を大幅に削減できることを掲げている。ゴムタイヤ式のため加減速に優れ勾配にも強い。その反面、鉄車輪方式に比べてエネルギー効率は悪い。定員は一般的な連接バスの約2倍となる239名(3連接車体の場合)で、設計最高速度は時速70kmだ。 現在は、数十年来の懸案であったシンガポール―ジョホール間の越境都市鉄道(RTS)の開業に合わせる形での運行開始を目指しているが、実際の開業時期は不明である。 BRTはRTSのジョホール(マレーシア)側の起点から3方向に約50kmがフェーズ1整備区間として示されているが、先の関係者は、2023年末頃にプロジェクトの呼称がBRTからLRTに突如変わったという。RTSはもともとシンガポールのMRT(地下鉄)規格で建設予定だったが、2019年にマレーシア側の政治的理由で急遽LRT規格に変更された。そして、規定路線のごとく車両はCRRC株洲が受注した。 もし、ジョホール側の市内交通にARTが採用された場合、シンガポール―マレーシア間のわずかな区間に、MRT、LRT、ARTと3つのシステムが混在することになる。RTSにCRRC株洲製のLRT車両が導入されるとすれば、これに規格を合わせるという理由でジョホール側にもARTでなくLRTを導入できる。そのため、不要になったART車両が今回プトラジャヤに移動してきたようだ』、「道路上の白線マーカーを光学式センサーが読み取り、これに沿って走行する・・・ジョホール側の市内交通にARTが採用された場合、シンガポール―マレーシア間のわずかな区間に、MRT、LRT、ARTと3つのシステムが混在することになる。RTSにCRRC株洲製のLRT車両が導入されるとすれば、これに規格を合わせるという理由でジョホール側にもARTでなくLRTを導入できる。そのため、不要になったART車両が今回プトラジャヤに移動してきたようだ」、なるほど。
・『予算のない都市にARTは「朗報」となるか  プトラジャヤでは既存鉄道駅からのフィーダー交通(注)としてモノレール計画が存在していたが、コスト面から頓挫しており、ARTはそれに代わるシステムとして導入調査が進む模様である。それにしても、ARTがいかに「規格」を売り込むビジネスであるかがわかる。 おりしも2024年1月から5年間の任期で、ジョホール州のイブラヒム・イスカンダル氏が第17代マレーシア国王として即位した。同氏は高速鉄道推進派としても知られ、シンガポールの対岸にありながら公共交通整備に後れをとってきたジョホールはRTS開業とともに大変貌を遂げる可能性がある。LRTとは別にARTが導入される可能性もあり、目が離せない。 LRTを導入したくとも予算のない地域、バス輸送に任せるには心もとない、抵抗があるといった地域にとっては、朗報とも言える存在になるかもしれない。まずは、マレーシアでどのようなオペレーションが始まるか、続報を待ちたい。) 路線バスと普通鉄道の間に位置づけられる輸送システムは、主にBRT、またLRTとして世界の国々で確立している。世界のBRTは、日本のそれと異なり、一般車線から完全に分離されていることがほとんどだ。バス停は道路中央に「駅」として存在し、車内での料金支払いがないため、連接バスで一度に多くの乗客を運べて時間のロスがない。 ただ、あくまで一般車線とセパレーターで区切られた専用レーンを走るだけで、運行システム上は限りなく一般のバスに近い。よって整備費用が安価なため、先進国、途上国問わず多くの都市で導入、また導入計画がある。しかし、これより鉄道システムに近いガイドウェイ方式(走行路の側面にあるガイドに沿って走行する)は、専用軌道を最高時速100kmで走るOバーン(オーストラリア・アデレード)が知られているものの、採用例はあまり多くない。日本でも、名古屋のゆとりーとラインで採用されただけである』、「シンガポールの対岸にありながら公共交通整備に後れをとってきたジョホールはRTS開業とともに大変貌を遂げる可能性がある。LRTとは別にARTが導入される可能性もあり、目が離せない」、なるほど。
(注)フィーダー交通:交通網において幹線と接続し、支線の役割をもって運行される路線(Wikipedia)。
・『ゴムタイヤ式LRT、試行錯誤の歴史  ARTはLRTをバスに近づけた存在と呼べそうだが、ゴムタイヤで走るLRT自体は以前から存在し、1990年代から2000年代初めにかけてボンバルディアが「GLT(Guided Light Transit)」、フランスのロールが「トランスロール」として開発、実用化している。前者は運転台にハンドルを設置しているが、どちらのシステムも走行路の中央に設置した1本のガイドレールに従って走る仕組みである。 低コストで整備できるLRTを目指したこれらのシステムだが、採用例は少なく、特殊仕様の域を出ることはないままで、スペアパーツの供給などメンテナンスコストが高騰した。また、ゴムタイヤ走行による轍が道路上に発生するなどして、乗り心地が悪化した。 結局目立ったコスト削減効果は表れず、ほとんどが通常の鉄車輪式のLRTやトロリーバスなどに置き換えられ、GLTはすでに全廃された。両システムを開発したボンバルディア、ロールはともにアルストムに買収され、トランスロールの技術は同社に引き継がれている。 ARTを開発した中国でも、2007年に天津、2010年に上海でトランスロールのゴムタイヤ式LRTを導入したが、いずれも上記の理由で2023年に廃止された。) だが、中国におけるEVや自動運転技術の急速な発展により、トランスロールのようにガイドレールを使う高コストなシステムにこだわる必要はないと判断されたとしてもおかしくないだろう。CRRC株洲はシーメンスとのライセンス契約により鉄車輪式のLRTを製造しており、同社がゴムタイヤ式LRTのような交通機関であるARTを開発したのは自然な成り行きと言えるかもしれない。
ARTは2018年以降、中国国内では株洲市、西安市、上海市など6都市で運行中、または現在試験運行中である。海外展開も進めており、マレーシアのジョホールバル(2021年から)、クチン(2023年から)、プトラジャヤ(2024年から)、オーストラリアのパース(2023年から)で導入に向け、実車を用いた試運転を実施している。 また、アラブ首長国連邦のアブダビでは、3編成を用いた一般旅客も乗車可能な試験運行が2023年10月からスタートした。ただし、白線マーカー未設置のマニュアル運転で、自動車用ナンバープレートを付けての運転だ』、「ARTは2018年以降、中国国内では株洲市、西安市、上海市など6都市で運行中、または現在試験運行中である。海外展開も進めており、マレーシアのジョホールバル(2021年から)、クチン(2023年から)、プトラジャヤ(2024年から)、オーストラリアのパース(2023年から)で導入に向け、実車を用いた試運転を実施」、なるほど
・『導入は「温暖な人工的都市」  試運転はいずれも、人口集中が穏やか、かつ人工的で整然とした近代的都市計画に成功している地域が選定されていることがわかる。また、温暖な地域というのも1つのポイントだろう。降雪地区では白線の読み取りができず、スリップなどの恐れもあるため、ARTは導入できないためだ。 2018年にはインドネシア鉄道(KAI)とも導入に関わる協力覚書を結んだ。KAIの廃線跡も活かしつつ、バンドン、スラバヤ、マランなどの地方都市やバリ島に導入する計画が持ち上がったが、道路環境の悪さなどの理由で具体化には至っていない。 それでも引き続き導入に向けた調査検討が進められ、法的な部分もクリアし、最終報告書が運輸省に提出された。2020年に協力覚書は延長された。そして2024年、運輸省は現在建設中の新首都・ヌサンタラへの導入意向を示し、運輸大臣が中国で試乗もしている。道路環境がよく、人口が少ない新首都への導入は容易だろう。 現在、開業に向けて最も具体化が進んでいるのはマレーシア、サラワク州クチンの「クチン・アーバン・トランスポート・システム(KUTS)」プロジェクトだ。クチンは同州の州都であるが、人口は約33万人、人口密度は300人/平方キロメートルを超える程度で、一般的な路線バスで十分輸送を賄える都市規模である。軌道系交通の導入が計画されること自体に驚きを隠せないが、だからこそARTが採用されたとも言える。) 018年に同プロジェクトは中国によるLRT方式での整備を前提に構想されたが、高額なコストを理由に実現には至らず、翌2019年にART方式での建設が決定した。KUTSの運営主体となるサラワクメトロは、LRT方式に比べ、3分の1のコストで整備が可能であると発表している。 KUTSはスマートシティ構想の一環であるとしており、ART停留所からはフィーダー交通として自動運転バスも導入し、全ての人がARTにアクセスできるようにするという。しかも、このARTは、他都市で導入されているタイプとは異なり、水素を動力源とする全く新しい車両になっている。東南アジア初のサステナブルシティを目指す構えだが、都市開発全体を中国が売り込んでいるという背景もある。 サラワク州はKUTSプロジェクトを総額60億リンギット(約1884億円)と見積もり、ナジブ首相の提唱で設立されたサラワク開発銀行を経由し融資され、公共事業として実施される。計70kmにも及ぶフェーズ1区間のうち、クチン市中心部と隣接するサマラハン市を結ぶブルーライン(27.6km)と、クチン市中心部と空港方面を結ぶレッドライン(12.3km)の路線、車両基地建設や車両、信号システムなどの調達について、2023年末までに業者選定を済ませ着工している』、「試運転はいずれも、人口集中が穏やか、かつ人工的で整然とした近代的都市計画に成功している地域が選定されていることがわかる。また、温暖な地域というのも1つのポイントだろう。降雪地区では白線の読み取りができず、スリップなどの恐れもあるため、ARTは導入できないためだ・・・KUTSはスマートシティ構想の一環であるとしており、ART停留所からはフィーダー交通として自動運転バスも導入し、全ての人がARTにアクセスできるようにするという。しかも、このARTは、他都市で導入されているタイプとは異なり、水素を動力源とする全く新しい車両になっている。東南アジア初のサステナブルシティを目指す構えだが、都市開発全体を中国が売り込んでいるという背景もある」、中国が大手を振って受注しているのは要注意だ。
・『技術はユニークだが法的課題も  いずれもマレーシア企業と中国企業のJVが落札しており、車両は当然、CRRC株洲が納入することになるが、書類上はマレーシアの民間投資会社ECCAZとCRRC子会社の合弁会社Mobilusが受注している。このパッケージには水素式ART車両38編成、信号システム一式、ホームドア、車両基地設計などが含まれており、契約額は14億2500万リンギット(約447億6200万円)だ。 ART自体がCRRCとMobilusの共同開発であるとも説明されており、公式ページにはMobilusは今後、マレーシアのみならず、近隣諸国への営業を強化すると記載されている。KUTSのARTは、高速道路や高規格道路の一部を専用レーンとして自律走行し、交通量の多い交差点は立体交差、一部区間には高架駅も設けられる。道路信号に従って進む区間では、ART優先信号が導入される。 車両は1編成がプロトタイプとして2023年8月に到着、試運転が続けられており、2025年末までに先行区間の開業を目指している。クチンが中国国外で初のART営業区間となる可能性が高い。政治的意図はあるとは言え、ART技術は注目に値するだろう。) 一方で、課題も多いとマレーシアの運輸関係者は指摘する。まずは法令上の問題で、鉄道車両なのかバスなのかをはっきりさせないと一般運行は難しいのではないかという点である。白線マーカーから逸脱して接触事故などが起きたときの責任範囲も現状では不明で、新たな法律を作るか、法規制の緩い国や地域での導入に限られるのではないかということだ。プトラジャヤではイベント期間中、交通を規制しての運行となった。 その点で、サラワク州のクチンで具体化が進んでいることは納得がいく。同州は歴史的経緯から、マレーシアでありながら独立した強い自治権を持っており、本土のマレー半島側との行き来にはパスポートが必要で、ほぼ外国という扱いのためだ。本土側の運輸行政とも全く別の管理下にあり、本土側ではどのようなプロセスで建設を進めているかわからないという。 そして、ARTというシステムを現状でCRRCしか持っていないことを懸念しているという。導入仕様書にARTと指定された場合、必然的にCRRC車両を導入することになってしまい、結果的にコスト高になる可能性があるためだ』、「ARTというシステムを現状でCRRCしか持っていないことを懸念しているという。導入仕様書にARTと指定された場合、必然的にCRRC車両を導入することになってしまい、結果的にコスト高になる可能性があるためだ」、中国に首根っこを押さえられてしまう。
・『中国の影響力に懸念  2009年のナジブ政権以降、マレーシア政府が突出して中国寄りの姿勢を見せていることに、先述の関係者は懸念を示している。事実上の国鉄であるマレー鉄道(KTM)は、今やCRRC株洲の独占的利権になっており、今後も同社以外からの車両調達はできないだろうと言う。 RRCはマレーシアに子会社を持ち、車両調達からその後のメンテナンスまでを一手に引き受けている。「一帯一路」の肝煎りの政策でもある東海岸鉄道(ECRL)も順調に工事が進んでおり、一度は白紙に戻ったマレーシア―シンガポール間の高速鉄道も、中国規格での着工が有力視されている。乗り入れのために中国と規格を合わせるという点ではECRLも高速鉄道も中国規格の採用は理にかなっているが、独立した存在である都市鉄道やLRTは、CRRCにとって参入障壁がある。 実際に都市鉄道の分野は、欧州メーカーが存在感を示しており、中国が十分に入り込めていない分野だった。ただ、2015年にクアラルンプールの高架式LRT、Rapid KLのアンパン線の旧型車置き換えをCRRC株洲が受注したのを皮切りに、徐々に攻勢を強めている。現在建設中のサーアラム線も同社が受注している。 今回のART試乗会に供された車両は、もともと2021年にジョホールバルで試運転を行っていた車両である。当時は自動車用ナンバーを取得し、白線マーカーによる自律走行を実施していた。2017年に当時のナジブ首相によって立ち上げられた「イスカンダル マレーシアBRT」プロジェクトとしてART導入に向けた調査が進んでおり、高速鉄道の開業及び接続を前提に2021年までの開業を目指していた。) 現在は、数十年来の懸案であったシンガポール―ジョホール間の越境都市鉄道(RTS)の開業に合わせる形での運行開始を目指しているが、実際の開業時期は不明である。 BRTはRTSのジョホール(マレーシア)側の起点から3方向に約50kmがフェーズ1整備区間として示されているが、先の関係者は、2023年末頃にプロジェクトの呼称がBRTからLRTに突如変わったという。RTSはもともとシンガポールのMRT(地下鉄)規格で建設予定だったが、2019年にマレーシア側の政治的理由で急遽LRT規格に変更された。そして、規定路線のごとく車両はCRRC株洲が受注した。 もし、ジョホール側の市内交通にARTが採用された場合、シンガポール―マレーシア間のわずかな区間に、MRT、LRT、ARTと3つのシステムが混在することになる。RTSにCRRC株洲製のLRT車両が導入されるとすれば、これに規格を合わせるという理由でジョホール側にもARTでなくLRTを導入できる。そのため、不要になったART車両が今回プトラジャヤに移動してきたようだ』、いずれにしても、中国系企業が受注するようだ。
・『予算のない都市にARTは「朗報」となるか  プトラジャヤでは既存鉄道駅からのフィーダー交通としてモノレール計画が存在していたが、コスト面から頓挫しており、ARTはそれに代わるシステムとして導入調査が進む模様である。それにしても、ARTがいかに「規格」を売り込むビジネスであるかがわかる。 おりしも2024年1月から5年間の任期で、ジョホール州のイブラヒム・イスカンダル氏が第17代マレーシア国王として即位した。同氏は高速鉄道推進派としても知られ、シンガポールの対岸にありながら公共交通整備に後れをとってきたジョホールはRTS開業とともに大変貌を遂げる可能性がある。LRTとは別にARTが導入される可能性もあり、目が離せない。 LRTを導入したくとも予算のない地域、バス輸送に任せるには心もとない、抵抗があるといった地域にとっては、朗報とも言える存在になるかもしれない。まずは、マレーシアでどのようなオペレーションが始まるか、続報を待ちたい』、「LRT」、「ART」いずれにしても、中国系企業が受注、日本企業はカヤの外なのは腹が立つ。
タグ:鉄道 (その12)(イギリス高速鉄道「未着工区間は中止」の衝撃 コスト増など理由 沿線からは失望と怒りの声、日本人が知らないサンマリノ 「神社」と電車の謎 短命の山岳鉄道が動態復元 ブドウ畑に鳥居が、LRTか それともバスか?中国製「ART」とは何者か レールなし 路面の白線マーカーに沿い走行) 東洋経済オンライン さかい もとみ氏による「イギリス高速鉄道「未着工区間は中止」の衝撃 コスト増など理由、沿線からは失望と怒りの声」 「スナク首相が中止を決めたのは、第2期区間のバーミンガムから北側の部分すべてだ。したがって、HS2は現在建設が進んでいる区間だけで計画終了となる・・・「ユーストン駅まで乗り入れない場合、ロンドン北西部で建設が進むオールド・オーク・コモンという新駅が当初のターミナルとなる」、こんなに短くなっては、高速鉄道の意味もかなり薄らぎざるを得ないだろう。 「HS2の敷設計画による土地の強制収用に応じ、それまで保有していた住宅や農場を手放した人々だ。とくに畜産業を営んでいた人々は代替地の選定や移転に相当な労力を費やしており、「苦労の結果が敷設中止では困る」とし、補償の上乗せを求める声も聞こえてきている・・・野党・労働党は、もともとHS2への経済効果を疑問視していたこともあり、同党としては「計画の復活」を約束しない、仮に今後の選挙で政権を奪回しても、まずはコスト等の数字の精査が必要との見方を示している」、なるほど。 「日立製作所と仏アルストムが折半出資する共同事業体が同線向け車両の製造・保守事業の受注を決めている。受注したのは欧州最速となる最高時速360kmの高速列車54編成の設計・製造と、12年間に及ぶ保守業務で、契約金額は総額19億7000万ポンド(約3578億円)に及ぶ。 この契約ではあくまで第1期区間の運行用として結ばれたものであるため、今回の第2期延伸の中止決定が影響を及ぼすものではない。とはいえ、当然ながらメーカーとしては第2期分の納入にも期待を寄せていただけに、今回の決定は歓迎されざるものであろう」、 「この契約ではあくまで第1期区間の運行用として結ばれたものである」とはいえ、「第1期分」だけで終わるのであれば、採算は悪くならざるを得ない。これでは、「共同事業体」としては、馬鹿らしくてやっていられないだろう。 さかい もとみ氏による「日本人が知らないサンマリノ、「神社」と電車の謎 短命の山岳鉄道が動態復元、ブドウ畑に鳥居が」 「山岳鉄道「リミニ・サンマリノ鉄道」」は「時の宰相で独裁政権を率いたムッソリーニがサンマリノを訪問したことで、敷設計画が一気に前進、国費を投入し建設を決定した」、なるほど。 「戦時中の誤爆で損傷、そのまま運行停止」したが、「サンマリノ側・・・1kmに満たない長さとはいえ、保存状態のよかった旧サンマリノ駅近くのモンターレ(Montale)トンネル前後の区間が修復され、鉄道車両の動態保存区間としてよみがえった」、動態保存とは大したものだ。 「リミニ・サンマリノ鉄道の動態保存については、モンターレトンネルのふもと側(リミニ方)の先、ループ状になっているピアッジェ(Piagge)トンネルを通った先に位置するロープウェー駅(下界側)近くまで、約3km強の区間を復元し、列車を走れるようにする構想もあるというが、果たして計画はどう進むのだろうか・・・2011年の東日本大震災の犠牲者を追悼するため、マンリオ・カデロ駐日サンマリノ大使が神社本庁にこの神社の建立を相談したことがきっかけなのだという。カデロ大使は2002年から駐日大使の職にある・・・ 神職は現地に住むサンマリノ人で、日本で修行したフランチェスコ・ブリガンテさんという方が宮司を務めるサンマリノに神社本庁のお墨付きを得た「神社」があるとは心底驚いた。 「「観光鉄道の延伸」が実現すれば、”世界最古の共和国”へ電車で登るという楽しみが増える。神社と共に、日本人観光客への関心がより高まる日が来ることを期待したい」、同感である。 高木 聡氏による「LRTか、それともバスか?中国製「ART」とは何者か レールなし、路面の白線マーカーに沿い走行」 「中国中車(CRRC)株洲が開発を進めているART。見た目はLRTだが車輪はゴムタイヤで、さらに運転台には丸いハンドルまで付いている。車体も3連接で、最大5連接にまで伸ばせる」、中国製のようだが、興味深そうだ。 「道路上の白線マーカーを光学式センサーが読み取り、これに沿って走行する・・・ジョホール側の市内交通にARTが採用された場合、シンガポール―マレーシア間のわずかな区間に、MRT、LRT、ARTと3つのシステムが混在することになる。RTSにCRRC株洲製のLRT車両が導入されるとすれば、これに規格を合わせるという理由でジョホール側にもARTでなくLRTを導入できる。そのため、不要になったART車両が今回プトラジャヤに移動してきたようだ」、なるほど。 「シンガポールの対岸にありながら公共交通整備に後れをとってきたジョホールはRTS開業とともに大変貌を遂げる可能性がある。LRTとは別にARTが導入される可能性もあり、目が離せない」、なるほど。 (注)フィーダー交通:交通網において幹線と接続し、支線の役割をもって運行される路線(Wikipedia)。 「ARTは2018年以降、中国国内では株洲市、西安市、上海市など6都市で運行中、または現在試験運行中である。海外展開も進めており、マレーシアのジョホールバル(2021年から)、クチン(2023年から)、プトラジャヤ(2024年から)、オーストラリアのパース(2023年から)で導入に向け、実車を用いた試運転を実施」、なるほど 「試運転はいずれも、人口集中が穏やか、かつ人工的で整然とした近代的都市計画に成功している地域が選定されていることがわかる。また、温暖な地域というのも1つのポイントだろう。降雪地区では白線の読み取りができず、スリップなどの恐れもあるため、ARTは導入できないためだ・・・KUTSはスマートシティ構想の一環であるとしており、ART停留所からはフィーダー交通として自動運転バスも導入し、全ての人がARTにアクセスできるようにするという。 KUTSはスマートシティ構想の一環であるとしており、ART停留所からはフィーダー交通として自動運転バスも導入し、全ての人がARTにアクセスできるようにするという。しかも、このARTは、他都市で導入されているタイプとは異なり、水素を動力源とする全く新しい車両になっている。東南アジア初のサステナブルシティを目指す構えだが、都市開発全体を中国が売り込んでいるという背景もある」、中国が大手を振って受注しているのは要注意だ。 「ARTというシステムを現状でCRRCしか持っていないことを懸念しているという。導入仕様書にARTと指定された場合、必然的にCRRC車両を導入することになってしまい、結果的にコスト高になる可能性があるためだ」、中国に首根っこを押さえられてしまう。 いずれにしても、中国系企業が受注するようだ。 「LRT」、「ART」いずれにしても、中国系企業が受注、日本企業はカヤの外なのは腹が立つ。
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