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不動産(その7)(「日本の水が外国から狙われている」のは本当か 土地の所有者が、その地下水も所有できる実態、野村不動産 「超高級タワマン」のトラブルに購入者が大激怒、マンションはついに「売り時」 不動産バブルが潮時といえる理由) [産業動向]

不動産については、昨年10月18日に取上げた。今日は、(その7)(「日本の水が外国から狙われている」のは本当か 土地の所有者が、その地下水も所有できる実態、野村不動産 「超高級タワマン」のトラブルに購入者が大激怒、マンションはついに「売り時」 不動産バブルが潮時といえる理由)である。

先ずは、本年5月25日付け東洋経済オンラインが掲載した 水ジャーナリストの橋本 淳司氏による「「日本の水が外国から狙われている」のは本当か 土地の所有者が、その地下水も所有できる実態」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/429632
・『日本の水資源が外国から狙われている――。こんな話を聞いたことがある人は少なくないだろう。実際、世界中で水不足が発生する中、世界各地で水争奪戦は激化している。 「自分が住んでいる地域は関係ない」と思うことなかれ。例えば、あなたが所有する土地の近くに誰かが土地を取得し、その誰かが外国資本だった場合、あなたが使う水にどんな影響があるだろうか』、興味深そうだ。
・『北海道の森林を買う外国勢  「都市伝説でしょ?」と言われていた、外国資本の土地買収が明らかになったのは、いまから10年以上も前のことだ。 2010年、北海道が外国資本による森林の売買状況の調査を行った。すると、道内の私有林7か所、計406ヘクタールがすでに外国資本に買われていた。1ヘクタールは100メートル×100メートルだから野球グラウンドくらいの大きさ。それが406個分買われていたのだ。 場所は、倶知安町とニセコ町が各2件、砂川市、蘭越町、日高町が各1件。購入者の内訳は、企業が4件(中国企業3件、英国企業1件)、個人が3件(オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールの3カ国)だった。 利用目的は、資産保有、牧草地用で、水目的とはされていなかったのだが、この時、北海道議会が政府に提出した意見書には、こう書かれていた。「我が国における現行の土地制度は、近年急速に進行している世界規模での国土や水資源の争奪に対して無力であると言わざるをえない」。 なぜ北海道議会は「土地を買われた」ことを「水資源の争奪」と解釈したのか。実は、森林を取得した場合、保安林等の法的規制がかかっていなければ、所有者は比較的自由に開発できる。木を伐採してもよいし、温泉を掘っても、地下水を汲み上げてもいいと考えられる。 日本の土地取引は所有者と購入希望者の合意で成立し、取得後の所有権は非常に強い。そして、民法第207条には、「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ」と規定されている。法的には、土地の所有者に、その地下にある水の利用権があると解釈されている。 北海道議会の動きは、国や地方自治体に大きなインパクトを与えた。各地の市町村議会では「うちは大丈夫か?」といった行政への質問が相次いだ。議員は、「水源林が予想外の地権者に渡り、乱開発や過度の取水で住民の生活が脅かされるようになっては手遅れ。いますぐ手を打つ必要がある」と口を揃えた。 これに対して行政側は「現時点で外国資本による大規模な森林買収の動きは確認していない」とし、「事態に適切に対応するため組織を設置する」などと回答した』、「行政側」がこんな寝ぼけた対応をしているようでは心配だ。
・『外国人による土地取得の規制がない日本  日本には現状、安全保障上の懸念がある地域でも外国資本による土地取得の規制はなく、外国人であっても自由に所有可能だ。外国人が土地を所有できる国はアジアでは珍しい。共産圏である中国、ベトナムなどは外国人の土地所有を認めていないし、韓国、インド、シンガポールなどでは土地の所有は可能だが、いずれも条件つきとなる。 農水省が2010年から公表し始めた外資による山林買収状況によると(累計値)、2010年は43件、831ヘクタールだったのが、2020年には465件、7560ヘクタールと10年間で面積は9倍に拡大。農地は2018年から公表され、2020年は3件、47ヘクタールだ。 一見少ないが、日本人や日本法人をダミー的に登記名義人にしたケースや未届出のケースはカウントされていない。 また、太陽光発電、風力発電の用地(推定20万ヘクタール)の中にも外資分が相当あるが、こちらも詳細は不明だ。政府のこれまでの調査では、中国系資本が太陽光発電などのエネルギー事業者として買収にかかわったとみられる土地は、全国で約1700カ所に上る。リゾート開発なども含めた中国系資本が自衛隊施設などの周辺で土地買収にかかわったとみられる事例も約80カ所確認されている。 こうした中で、重要なのは「水は誰のものか」という問題だ。日本では、水は長らく「私のもの」と解釈されてきた。1896年の大審院の判決では、「地下水の使用権は土地所有者に付従するものであるから、土地所有者は自由に使用し得る」とされた。 1938年の大審院判決はさらに強く、「土地所有者はその所有権の効力として、その所有地を掘削して地下水を湧出させて使用することができ、たとえそのために水脈を同じくするほかの土地の湧水に影響を及ぼしても、その土地の所有者は、前者は地下水の使用を妨げることはできない」とされた』、「大審院判決」とは時代があまりに違い過ぎる。
・『法律が実態に即していない現状  だが、これは手掘り井戸で小規模な取水しかできなかった時代の話であり、揚水技術の発達した現代は明らかに状況が違う。 また、土地は動かないが、水は動いている。地下水は地面の下にじっと止まっているものではなく、所有外の土地から流れて、所有する土地を通過し、所有外の土地へと流れていく。だから土地所有者のものであるという考え方は、そもそも実態と異なっているのだ。 例えば、飲料水メーカーの取水口があるとしよう。このメーカーは自分の土地の下にある自分の水を汲み上げているわけではなく、自分の土地の下を流れる地域の共有財産を汲み上げていることになる。 こうした中、日本でも戦後になると、「私水論」を前提としながらも、公の立場から地下水の汲み上げや汚染を制限する考え方が登場した。1960年代には、地盤沈下問題を受け、「工業用水法」や「ビル用水法(建築物地下水の採取の規制に関する法律)」が、1970年代には「水質汚濁防止法」が制定された。ただし、これらは地盤沈下や水質汚染などを防止するもので、直接的に地下水を管理する法律ではない。 1970年代半ばには「地下水法案」も公水論をベースに提案されたが、地下水を利用する企業の反対、地下水を管理したい省庁間の綱引きなどから成立しなかった。 2014年に成立した水循環基本法では「水は国民共有の財産」と定められている。ただ、あくまで理念法であり、具体的に地下水の保全や活用について触れたものではない。 対策として独自に条例を設けている自治体もある。条例は2タイプに分けられる。1つは土地取引のルール、もう1つは地下水の保全や活用に関するルールだ。 土地取引のルールの代表は、北海道の「水資源の保全に関する条例」だろう。内容は、①水資源保全地域を指定、②指定された区域内の土地の権利を移転する場合には、土地所有者は契約の3カ月前までに届出を行わなくてはならない、というものだ。 地下水の保全や活用に関するルールの代表は、熊本県の「地下水保全条例」だろう。地下水を大口取水する事業者は知事の許可が必要としている。この条例は地下水を「私の水」ではなく「公共の水」であるとしていることが特徴で、地下水は水循環の一部であり、県民の生活、地域経済の共通の基盤である公共水であると明記されている』、「地下水法案」の復活も真剣に検討すべきだろう。
・『条例制定も容易ではない  だが、条例制定に二の足を踏む自治体も多い。 問題は3つある。1つ目は、条例が適切かどうか。自治体としては、不適切な条例を作って、行政訴訟などのトラブルが起きるのは避けたい。2つ目は、自治体内が必ずしも一枚岩ではないこと。地下水保全を考えるグループがある一方で、地下水を資源として販売するなど積極的に活用したいグループがある。3つ目は、自治体間の調整。地下水の流れは自治体の垣根を超えるケースがあり、近隣自治体と考え方が違う場合にどう調整をつけるかなどに頭を悩ませている。 なかでも1つ目の「条例が適正かどうか」は大きな問題だ。「国に地下水に関する法律がないのに独自の規制をつくるのは不安」「行きすぎた規制をつくって行政訴訟になるのが怖い」というのが悩みだ。 土地取引ルールについて捕捉すると、前述の通り、日本には現在、土地取得に関して外資規制がなく、これを問題視する向きから「重要土地等調査法案」の審議が始まっている。自衛隊基地や国境離島など安全保障上重要な土地の利用を規制するというものだ。 法案は、防衛関係施設や原子力発電所、空港など重要インフラの周囲約1キロと国境離島を「注視区域」に指定。また、自衛隊の司令部や無人の国境離島など、特に重要な場所は「特別注視区域」と位置づけ、一定面積以上の土地取引について、当事者に氏名、国籍、利用目的の事前届け出を義務付ける。 現在、淡水は世界的に不足し、外国資本による地下水独占が住民の生活を脅かすケースが各地でおきている。今後は一層の水不足が懸念されており、同じ事態が日本で起こらない保証はまったくない。だから「外国資本が水を狙っている」という主張は理解できる』、なるほど。
・『地下水に関する一定のルールが必要  しかし、注意しなくてはならないのは、地下水を汲み上げ過ぎ、周辺に迷惑をかけるのは外国資本だけではない、ということだ。あらゆる利用者に、その可能性がある。 また、地下水があるのは森林などの水源地だけではない。地下水が大量にあるのはむしろ盆地や平野部だ。平野部では土地取引は活発に行われており、規制をかけるのも難しい。 外国資本に限らず、土地取得者による地下水濫用を避けるには、地下水に関する一定のルールが必要だろう。さまざまな議論があるなかで、今年3月、有識者で構成される水循環基本法フォローアップ委員会は「水循環基本法への地下水関連規定の追加に関する報告書」を、水制度改革議員連盟石原伸晃代表へ提出している。報告書では、地下水採取の制限を条例で定めることができる規定を条文に追加することについて提案している。 地下水の状況は地域ごとに異なるため、国が平均的なルールを作るより、自治体が主導して地元の状況にあったルール作りをすることが望ましい。そして、国はそれを後ろから支えるべきである。 たとえば、「地下水の見える化」だ。表流水と地表水の最大の違いは、目に見えるか、見えないか。地表水は人の目に触れるから実態把握が容易であり、課題がわかりやすい。一方で、地下水は実態把握が難しい。現状把握の調査について、国は支援すべきであろう。 さらに言えば、ゴールはルールをつくることではない。ルールができたあとの運用が大事だ。地域の地下水利用者が、それぞれ状況に応じて、保全しながら活用することだ』、「地下水の状況は地域ごとに異なるため、国が平均的なルールを作るより、自治体が主導して地元の状況にあったルール作りをすることが望ましい。そして、国はそれを後ろから支えるべきである」、その通りなのだろう。

次に、6月14日付けFRIDAY「野村不動産 「超高級タワマン」のトラブルに購入者が大激怒」を紹介しよう。
https://friday.kodansha.co.jp/article/185690
・『施工は清水建設、総戸数716戸で商業施設直結 ファミリー層に人気の再開発エリアに完成した「億ション」で大トラブル 設計図と違う! 耐火、耐水、防音設備に重大な欠陥があることが次々に判明 「私はサラリーマンとして働いて、30年以上かけて貯めてきたお金と退職金をつぎ込んで、8000万円以上のこのマンションを買いました。私も妻も60代後半なので、余生は都心から離れた場所に住みたいと思っていたんです。あの有名な不動産会社と建設会社が手掛けているから、間違いない物件だと安心していました。でも、それは大きな間違いでした。苦労して手に入れたタワマンは欠陥だらけだったんです……」 本誌の取材に答えた購入者のTさんはそう声を震わせた。 今、大規模な再開発が行われている東京都小金井市に聳(そび)える駅直結の超高級ツインタワーマンション『プラウドタワー武蔵小金井クロス』をめぐって大騒動が起きている。スーパーゼネコンの清水建設が施工を担当し、売り主は大手デベロッパーの野村不動産。総戸数は716戸で、価格は4LDKで最高1億9000万円だ。Tさんが言う。 「欠陥が明らかになったのは今年2月下旬でした。上階の足音がうるさいということで、管理組合の一人が民間検査会社の『日本建築検査研究所』に調査を依頼したんです。最初は防音設備にだけ問題があると思っていたのですが、調査で次々に他の欠陥も見つかったんです」 Tさんが本誌に提供した『建物調査報告書』は、全44ページにわたって重大な「施工不良」の実態を明らかにしていた。 本誌は調査を担当した建築検査士の岩山健一氏に取材を申し込み、話を聞いた。 「私が調査して見つかった欠陥は①防音設備 ②耐火設備 ③耐水設備の主に三つです。①については上下階の間にある二重床の支持脚(階を持ち上げるための脚)に遮音性のゴムが使われていない箇所が発見されました。その結果、音が響いてしまっていたんです。②は全戸に付いているメーターボックス内に使う石膏ボードの貼り方に問題がありました。石膏ボードを貼り付ける際に打つタッカー(留め金)の間隔が、国土交通大臣が定める基準を満たしていませんでした。 ここにはガスの配管などが入っています。ボードの固定が甘いと、発火した際に延焼が起きやすくなります。③はトイレ内の手洗い付近の壁には耐水石膏ボードを使用しなければいけないのに、普通の石膏ボードを使用していたんです。当然、湿気に弱くなり、腐食の原因になります」 3月27日には野村不動産と清水建設の責任者が同席して、説明会が開かれたが、Tさんの不信感は深まるばかりだったという。 「両社の責任者は、専門用語ばかりを並べた説明で購入者を困惑させたり、 『手元が暗くて確認が不十分だった』 『チェック項目から抜けていた』などと、呆(あき)れた言い訳を繰り返すばかりでした。補償についても、うやむやなままで、 『資産価値を守るため』と言って購入者に口止めもしました」 1週間後、両社はマンションの理事会で「施工不良」を認めて、購入者に謝罪したものの、住民の疑念は晴れていない』、「野村不動産」、「清水建設」と超一流の組み合わせなのに、信じられないような工事ミスだ。
・『「両社は『設計図通りに変更する』と言い、補償はこれから協議をしていく予定です。しかし、一度の調査でこれだけ問題が出てきたので、他にも重大な欠陥があるんじゃないかと不安が募(つの)るばかりです」(Tさん) 前出の岩山氏もこう指摘する。 「そもそも購入前に見せられていた設計図通りに工事が行われていなかったことが大問題です。手抜き工事も甚(はなは)だしいと言っていいと思います。欠陥が見つかった場所だけを調べて、問題を解決したというのは無理があるでしょう。とくに法令基準を満たしていない耐火設備に関しては、目視で確認できない部分があります。一度販売を中止して、他に欠陥がないか、未入居の部屋も解体するなどして、大規模な検査が行われるべきです」 しかし、驚くことに問題が解決していないにもかかわらず、野村不動産は物件の販売を続けているという。 一連の問題について野村不動産と清水建設に質問状を送付したところ、双方から次のような回答があった。 「個人資産に係ることであるため、コメントは差し控えさせていただきます」 購入者は日々の暮らしを脅(おびや)かされている。一刻も早い誠実な対応が求められる』、「法令基準を満たしていない耐火設備に関しては、目視で確認できない部分があります」、「問題が解決しいないにもかかわらず、野村不動産は物件の販売を続けているという」、コンプライアンスにはうるさい筈の「野村不動産」は、一体、どうなってしまったのだろう。

第三に、7月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したスタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタントの沖有人氏による「マンションはついに「売り時」、不動産バブルが潮時といえる理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/275468
・『マンションの「売り時」「買い時」というテーマはいつも、悩ましい。だが、日本銀行による金融緩和が長期化するも、物価目標が達成されない中、コロナ禍で都心の家賃相場が低迷している。となれば、不動産価格急落の「Xデー」に備えるべき状況が近づいていると考えるべきではないだろうか』、興味深そうだ。
・『今、売却した人は割高で大成功 戸建ても竣工前に売れてしまう  コロナショックで経済的な大打撃はあったものの、不動産価格は大幅に高騰している。こうした不動産インフレが起こると、「今は買い時か?」「今は売り時か?」の議論が盛んになる。高騰はいつまでも続かない。だからこそ、潮目の変わるタイミングはとても重要になってくる。 先日、相談を受けていた方が、新築マンションの契約申し込みをし、現在の自宅を相場よりも高く売ることに成功した。相場が高騰している中、割安な価格で販売中だった新築マンションの申し込みが急増していることや、中古マンションが高値で飛ぶように売れていく様を見て決断したということだ。今でも絶妙なタイミングでの英断だったと思う。相場は高いが、買うときは割安に、売るときは割高に取引することはいつでもできるものだ。 マンション価格の高騰は、中古価格の値上がりが顕著で、1年前と比較して1~2割上がっている。その主たる要因は金融緩和だが、それは後述する。加えて、巣ごもり時間が長く、リモートワークとリモート授業が多いために、「もう1部屋需要」が明確であることで家を探している人が増えている。需要が急増しても供給は急には増やせないため、在庫が急速に減少しているのだ。 その結果、新築マンションは期を追うごとに値上がりするという、これまでにないことが起きている。通常、1期目に売り出されるものが人気住戸で、期が進むほど不人気住戸が残り、最後は値引きを行うのが常であったことを考えると、今の需要過多ぶりがよく分かる。 戸建てでも同じことが起きている。新築分譲戸建ては売れ行きが良過ぎて、値下げ幅が大幅に縮小し、着工直後に売り出されるものの、竣工するまでに売れてしまうことが多い』、「新築マンションは期を追うごとに値上がりするという、これまでにないことが起きている」、「新築分譲戸建ては売れ行きが良過ぎて、値下げ幅が大幅に縮小し・・・竣工するまでに売れてしまうことが多い」、ともに絶好調のようだ。
・『コロナ禍で悪化しているのは賃貸市場 日銀が家賃下落を憂慮する理由  住宅の中でも、持ち家市場は価格が高騰しているが、賃貸市場は需給が大幅に緩んでいる。都市圏を中心に供給される賃貸住宅は、都市圏への人口流入が急減したために需要が増えなくなっている。人口密度の高い都市圏では新型コロナウイルスの感染者が多く、新たに流入してくる人が減ったのだ。 稼働率は急減し、高稼働率ゆえの賃料の値上げという従来の手法は、単身者向けを中心に終焉を迎えつつある。回復見込みは立っておらず、ワクチン接種が一定以上進まないと情勢は変わりそうにない。家賃が下がると不都合な人は賃貸オーナーだけではない。最もこれを憂慮するのは、日本銀行だったりする。 家賃は需給バランス、つまり稼働率や空室率と連動して決まる。しかし、不動産価格において需給バランスは限定的にしか影響しない。影響する場合は、在庫が少なくて、値上がりするときだけだ。 需給が緩いので価格が下がるという事態は、ほぼ起きたことない。それは、販売が長期化しても売る側が価格を下げずに我慢する体力があるからである。誰も好んで価格を下げる人はいない。 では、不動産価格はどうやって決まるか。それは、資金の流れで決まる。不動産を現金で買う人はほぼいない。大多数はローンを借りて購入している。会計が分かる人からすると、貸借対照表(バランスシート)の資産とほぼ同額の負債が乗ってくるものだ。 このローンが借りやすい状態であれば、不動産の取引が成立しやすい。だから、金融緩和をすると、不動産価格はインフレする。それが、アベノミクス以降、8年以上続いている。金融緩和している日銀は、そんなことは百も承知で異次元の金融緩和を続けているのである。 コロナショック後の不動産価格の高騰は、金融緩和されているところに需給バランスがひっ迫したので生じたといえる。そして日銀は、金融緩和による資産インフレは容認している。それ自体を狙っているわけではないが、遠回しに、この国にとっては悪くないと思っている。 資産を持っているのはその多くが高齢者で、膨れる資産が国の借金返済に寄与するからだ。しかし、それを目的に金融緩和をしているのではなく、あくまでも副作用のようなものでしかない。 日銀は、物価が上がり、インフレターゲット2%に届くことを目標にしていると何度となく明言している。だが、黒田東彦総裁の任期があと2年となり、8年も続けてきた金融緩和で目標達成をできそうにない。 そんな折に、住宅価格が値上がりして、買える人がかなり限定されるほど高くなった。その一方で、家賃は値下がりが始まっている。消費者物価指数には家賃が含まれているため、物価を押し下げ始めている。 ワクチン接種が済むまでは都市圏への人の流入は最小限に抑えられ、賃貸の需給は悪化を続けるだろう。2020年度の都区部の人口は流出超過で、出ていく人の方が多かった。こうなると、新築の供給戸数分だけ空室が発生する事態になる。家賃が需給バランスの悪化で安くなることは容易に予想される』、「都区部の人口は流出超過で、出ていく人の方が多かった・・・新築の供給戸数分だけ空室が発生する事態になる。家賃が需給バランスの悪化で安くなることは容易に予想」、その通りなのだろう。
・『「総量規制」を断行した日銀の過去を思う 欲を張らずに「頭と尻尾はくれてやれ」  異次元の金融緩和を続けてきたので、その逆である金融引き締めは容易ではない。特に、コロナ禍の不景気の中でそんなことをしたら、経済的に何が起きるか想像もできない。しかし日銀は過去にバブル景気を崩壊させるため、総量規制という不動産へのお金の流れを止めた過去を持つ。今回も不動産インフレを容認せず、賃貸市場の需給を緩めないようにするために金融引き締めをすることは考えられないだろうか。 例えば、都市圏で賃貸需要が減退している中、供給を抑制させて需給悪化を抑えることは、できなくはない。実際、スルガ銀行の不正融資前後から個人投資家への不動産投資資金はかなり厳しくなっている。その際は、日銀ではなく、金融庁が指図をしている。 今回も、主体的に金融を引き締めるのは金融庁である可能性が高い。その場合、何が都合が悪いのかというと、賃貸マンションを供給しているデベロッパーは分譲と賃貸が一体であり、お金の流れを賃貸だけ抑えるということが実行できるのか、注目しておかなければならない。 不動産へのお金の流れが潤沢になって8年がたつ。いつか終わるならば、そろそろそのリスクに備える必要がある。しかし悲しいかな、デベロッパーという業種は方向転換するのに2年はかかる。それは、用地仕入れから竣工まで、少なくともその程度の期間を要するからだ。 つまり、賃貸市場が崩れて、分譲市場が値上がりすると分かっても、2年後でないと対応できない。そこで考えるべきことは、売り手に有利な「売り時」は今から2年間の中でピークを迎える可能性があるということだ。 販売期間は約3カ月かかることを考えると、売却を決断するには、明らかにいい時期を迎えているといえる。不動産の価格が下落するときは、バブル崩壊の時もリーマンショックの時もそうだったが、ある日突然、「サドンデス」となり急落するものだ。 そんな不動産価格の特性を考えると、株式取引の格言である次の言葉を思い出す。 「頭と尻尾はくれてやれ」(注) 自宅で不労所得を得た金額は、「住まいサーフィン」の査定結果では平均2000万円を超えている。あまり欲張らずに利益確定して、賃貸に引っ越すのも悪くない。その時期は、すでに到来している』、なるほど。
(注)「頭と尻尾はくれてやれ」:「頭と尻尾はそれぞれ天井、底値を確認するためのコストと考え、買い逃がし、売り逃しをしないために積極的に無視しましょう(トレダビ)。
タグ:不動産 東洋経済オンライン FRIDAY ダイヤモンド・オンライン 沖有人 (その7)(「日本の水が外国から狙われている」のは本当か 土地の所有者が、その地下水も所有できる実態、野村不動産 「超高級タワマン」のトラブルに購入者が大激怒、マンションはついに「売り時」 不動産バブルが潮時といえる理由) 橋本 淳司 「「日本の水が外国から狙われている」のは本当か 土地の所有者が、その地下水も所有できる実態」 「行政側」がこんな寝ぼけた対応をしているようでは心配だ。 「大審院判決」とは時代があまりに違い過ぎる。 「地下水法案」の復活も真剣に検討すべきだろう。 「地下水の状況は地域ごとに異なるため、国が平均的なルールを作るより、自治体が主導して地元の状況にあったルール作りをすることが望ましい。そして、国はそれを後ろから支えるべきである」、その通りなのだろう。 「野村不動産 「超高級タワマン」のトラブルに購入者が大激怒」 「野村不動産」、「清水建設」と超一流の組み合わせなのに、信じられないような工事ミスだ。 「問題が解決しいないにもかかわらず、野村不動産は物件の販売を続けているという」、コンプライアンスにはうるさい筈の「野村不動産」は、一体、どうなってしまったのだろう。 「マンションはついに「売り時」、不動産バブルが潮時といえる理由」 「新築マンションは期を追うごとに値上がりするという、これまでにないことが起きている」、「新築分譲戸建ては売れ行きが良過ぎて、値下げ幅が大幅に縮小し・・・竣工するまでに売れてしまうことが多い」、ともに絶好調のようだ。 「都区部の人口は流出超過で、出ていく人の方が多かった・・・新築の供給戸数分だけ空室が発生する事態になる。家賃が需給バランスの悪化で安くなることは容易に予想」、その通りなのだろう。 (注)「頭と尻尾はくれてやれ」:「頭と尻尾はそれぞれ天井、底値を確認するためのコストと考え、買い逃がし、売り逃しをしないために積極的に無視しましょう(トレダビ)。 あまり欲張らずに利益確定して、賃貸に引っ越すのも悪くない。その時期は、すでに到来している
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外食産業(その3)(ロイヤルホスト「双日と提携」で業績復活なるか ノウハウに魅力 航空関連ビジネス再建に本腰、コロナ禍も快走!マックが「店外」で圧倒する真因 最高益の裏に持ち帰り・宅配の"綿密戦略"あり、かっぱ寿司社長がデータ不正取得で告訴…背後にある「回転ずし戦争」の熾烈) [産業動向]

外食産業については、昨年11月18日に取上げた。今日は、(その3)(ロイヤルホスト「双日と提携」で業績復活なるか ノウハウに魅力 航空関連ビジネス再建に本腰、コロナ禍も快走!マックが「店外」で圧倒する真因 最高益の裏に持ち帰り・宅配の"綿密戦略"あり、かっぱ寿司社長がデータ不正取得で告訴…背後にある「回転ずし戦争」の熾烈)である。

先ずは、3月24日付け東洋経済オンライン「ロイヤルホスト「双日と提携」で業績復活なるか ノウハウに魅力、航空関連ビジネス再建に本腰」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/418147
・『売上高は前期比40%減の843億円、営業損益は前期の46億円の黒字から192億円の赤字に転落。最終赤字は275億円――。 レストラン「ロイヤルホスト」などを展開するロイヤルホールディングス(HD)の2020年12月期決算は、非常に厳しい結果となった。 ロイヤルHDの主要事業は大きく5つある。ロイヤルホストや「てんや」などの外食事業、「リッチモンドホテル」を展開するホテル事業、空港や高速道路などでの食堂事業(コントラクト事業)、関西国際空港などでの機内食事業、そしてセントラルキッチンの運営などを行う食品事業だ』、なるほど。
・『崩れた「完璧なポートフォリオ」  リスク分散を図る多角化経営は安定的で、ロイヤルHDの強みでもあった。例えば、2018年12月期は台風21号が関西国際空港を襲い、機内食事業が大きな被害を受けた。しかし、ホテル事業が伸び、営業利益は微減益に踏みとどまる。外食企業の多角化経営は珍しく、業界内でも異彩を放っていた。 「ロイヤルHDの事業は隙がない、完璧な事業ポートフォリオだと思っていた」。ある上場居酒屋チェーンの社長はそう振り返る。 しかし、コロナ禍で状況は一変。リスクが分散されていたはずの全事業で甚大な被害が出た。外出自粛やインバウンド(訪日客)喪失により外食、ホテル、機内食、コントラクトが深刻なダメージを受け、付随して食品事業も低迷。2020年12月期は主要5事業すべてが赤字に転落した。 同社はロイヤルホストなど不採算店舗70店程度を閉鎖し、315人の希望退職も実施した。減損処理などで特別損失が大きく膨らみ、多額の最終赤字計上を余儀なくされた。2019年末に49.6%あった自己資本比率は2020年末には19.7%へ急落した。 苦境を脱するウルトラCとして2月15日に発表したのが総合商社・双日との資本業務提携だ。第三者割当増資により双日から100億円、みずほ銀行や日本政策投資銀行などから60億円を調達。双日には新株予約権も発行し、最大78億円の追加調達を行う構えだ。 同日の会見でロイヤルHDの菊地唯夫会長は、「アライアンスの必要性については(2020年の)9月ごろから感じていた」と語った。出資額や期待されるシナジー、スピード感などを考慮して双日を選んだという。 一方、非資源事業の強化が経営課題の双日にとって、ロイヤルHDへの出資は願ってもない話だった。同社の藤本昌義社長は「(ロイヤルHDへの出資提案は)渡りに船という感じだった。(ロイヤルHDは)われわれがもっていない顧客基盤を持っており、千載一遇のチャンス」と顔をほころばせる』、「完璧な事業ポートフォリオだと思っていた」、「しかし、コロナ禍で状況は一変。リスクが分散されていたはずの全事業で甚大な被害が出た。外出自粛やインバウンド(訪日客)喪失により外食、ホテル、機内食、コントラクトが深刻なダメージを受け、付随して食品事業も低迷。2020年12月期は主要5事業すべてが赤字に転落」、コロナ禍の影響は予想外のダメージを与えたようだ。
・『なぜ双日を選んだのか  ロイヤルHDは、双日のネットワークを生かした物流・調達面での経営効率化や、海外展開などでシナジー効果をにらむ。だが、双日は売上高で総合商社第7位。東南アジアで小売事業を展開しているとはいえ、双日同様に有力な食品子会社を持つ三菱商事や伊藤忠商事、川上部門に強い丸紅などには大きく水をあけられている。提携相手が双日である必然性はみえてこない。 しかし、菊地会長は「仮に総合商社すべてを選べるとしても、双日さんを選んだ」と断言する。大きな理由が、双日の持つ航空機産業や空港運営での経験だ。 双日は、航空機の累計販売件数では900機以上と国内シェア第1位だ。「ボーイングの販売代理店としても60年以上の歴史を有しており、国内外でのエアラインとの関係も強固」(藤本社長)。オセアニアのパラオ国際空港の運営を手がけたり、グループ会社であるJALUXが空港内売店「BLUE SKY」を展開するなど、空港関連事業のノウハウも豊富だ。) 主要5事業の中で、ロイヤルHDが最も手を焼いているのが祖業である機内食事業で、空港内のコントラクト事業も厳しい。2020年12月の月次売上高はそれぞれ前年同月比85%減、同60.4%減と低調で、他事業と比べてもコロナ禍からの回復の遅れが鮮明となっている。 菊地会長は「(機内食事業は)誰かの力を借りないと立て直せない」と判断。機内食事業を担う100%子会社「ロイヤルインフライトケイタリング」の持ち分60%を双日に譲渡し、ロイヤルHDは出資比率を40%に引き下げて持ち分法適用会社に移行する。機内食事業の喫緊の課題は製造工場の稼働率向上で、今後は双日の多様な販路とノウハウを使い、空港内店舗などさまざまな需要を掘り起こしていく』、「機内食事業」で「持ち分60%を双日に譲渡」、はなかなかいい組み合わせだ。
・『外食は「てんや」に回復の兆し  今回の双日との提携について、外食業界に詳しい、いちよし経済研究所の鮫島誠一郎主席研究員も「機内食の販路を広げることが期待できる」と評価する。 一方、航空関連以外の事業は基本的に自力再建路線をもくろむ。「昨年10~11月にホテルの平均稼働率は7割を超えた。インバウンドがないと厳しいホテルも片手の指の数ぐらいはあるが、国内で人が動けば基本的にホテル事業は回復していく」。菊地会長はホテル事業の先行きをこのように見通す。 鮫島氏も空港内以外のコントラクト事業の先行きは明るいと語る。「百貨店内店舗がやや苦戦するだろうが、介護施設などはコロナのクラスターが発生しない限り、需要が戻っていくだろう」 外食事業や食品事業でも明るい兆しが見え始めた。1つがてんやの回復だ。2回目の緊急事態宣言下では、定価650円の上天丼弁当(並盛)を500円で販売するなどの持ち帰り向け施策が奏功。既存店の売上高も、1月が前年同月比10.7%減、2月も同3.4%減とほぼ前年並みに戻りつつある。 コロナ影響の大きかった都心の駅前立地店が多かったてんやだが、2020年12月に郊外型モデルとなる「天ぷらてんや」を神奈川県平塚市に出店。モデルが確立すれば徐々に出店数を増やしていき、最終的にはフランチャイズ方式での多店舗展開を狙う。 レストラン「ロイヤルホスト」も2月の既存店売上高は昨年同月比23.6%減。2020年10月には前年比4.7%減まで戻した実績を鑑みると、行政からの時短要請がなくなれば、売り上げ回復も期待できる』、「外食事業や食品事業でも明るい兆しが見え始めた」のは確かなようだ。
・『調達資金の一部を食品事業に投入  一方、コロナ禍で家庭用の冷凍食品「ロイヤルデリ」は急伸した。「レストランクオリティの味を家庭でも楽しめる」というコンセプトのもと、自社のセントラルキッチンで作った冷凍食品を販売している。 巣ごもり消費による需要増で、2020年1~3月と比べ、同10~12月の売り上げは約6.6倍に伸びた。 かつて業界屈指の優等生とされたロイヤルHDも、コロナという外的要因によって業績は悪化した。「われわれの事業はヒトが移動することで成り立っていたビジネスだということを改めて感じた」と菊地会長は振り返る。 双日や銀行団から調達した資金の一部は、冷食をはじめとする食品事業の設備強化に充てる考え。「さらなる販路拡大のため(多様なチャネルをもつ)双日さんの力を借りたい」(ロイヤルHDの黒須康宏社長)と今後の展開に期待を寄せる。双日との提携がロイヤルHDの「復活への狼煙」となる』、「ロイヤルHDの「復活への狼煙」」は果たして上がるのだろうか。

次に、6月13日付け東洋経済オンライン「コロナ禍も快走!マックが「店外」で圧倒する真因 最高益の裏に持ち帰り・宅配の"綿密戦略"あり」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/433772
・『快進撃はどこまで続くか――。 新型コロナウイルスが痛撃した外食産業において、数少ない勝ち組とされる日本マクドナルドホールディングス(HD)。今2021年12月期の第1四半期(1~3月期)は、売上高758億円(前年同期比5.0%増)、営業益92億円(同19.7%増)と好スタートを切った。 2020年度も営業利益は過去最高を更新したが、今2021年度はそれを上回る、売上高2995億円(前期比3.9%増)、営業利益320億円(同2.3%増)を計画。直近4~5月の既存店売上高も前年超えが続いている』、「快進撃はどこまで続くか」は確かに注目点だ。
・『CMでも「コロナ特別対応」  コロナ禍でも顧客の利用拡大を導いた要因の1つが、コロナ対策や商品を巧みにアピールしたCM戦略での工夫だ。 コロナ感染拡大当初は、衛生管理の取り組みなど安心・安全をアピールした。「コロナ初期はスピード重視。簡素な広告で、非接触での商品購入も可能であることなどをいち早く伝えることに注力した」(日本マクドナルドのズナイデン房子・最高マーケティング責任者)。 商品の打ち出しでは、値段の安さを全面的に押し出す手法から転換。堺雅人さん起用のチキンマックナゲットのCMは「親子間の会話」をテーマにした内容で打ち出し、月見バーガーでも同様のテーマを踏襲した。コロナ禍だからこそ「人と人とのつながり」にフォーカスしたCMは反響を呼び、CM総合研究所のCM好感度調査(2020年1~12月度)では企業別で総合1位を獲得した。 とはいえマクドナルドも多くの飲食店と同様、コロナの影響を少なからず受けた。 オフィス街を中心に来店客が減った結果、2021年1~3月期の既存店の客数は前年同期比4.6%減。一方で客単価が同14.2%増えた。郊外や住宅街の家族客を中心に、持ち帰りでのまとめ買いが伸びて客数の落ち込みを吸収した形だ。 1971年に出した日本1号店が持ち帰り専門だったこともあり、従来「店外戦略」には強かったマクドナルド。コロナ禍での躍進の裏には、この店外戦略において、矢継ぎ早に新規策を打ち出し需要を取り込んだ成果が大きい。 代表例が、コロナ前からほぼ全店で導入されていた、商品をスマートフォン等で事前に注文・決済できる「モバイルオーダー」のブラッシュアップだ。 モバイルオーダー利用には専用アプリのインストールが必要だったが、2020年4月に同機能をマクドナルド公式アプリ(2020年3月末時点で累計ダウンロード数6600万件)に追加して統合。 同年9月には、アプリのインストールや会員登録すら必要ない、Webサイト経由のオーダーにも対応できるようにした。 車を利用する顧客向けの対策も強化。コロナ禍ではドライブスルーの利用が急増し、専用レーンや店前の道路では渋滞が頻発した。そこで大型店ではレーンを増設し、小型店も受け取りポイントを増やすなどの改善策を進めた。 モバイルオーダーで事前に注文して店舗内の駐車場で待っていれば、顧客の車までスタッフが届けにきてくれる新サービス「パーク&ゴー」も投入。2020年5月に導入を始め、2021年3月末時点での対応店舗数は860店と急ピッチで拡大した』、「1971年に出した日本1号店が持ち帰り専門だったこともあり、従来「店外戦略」には強かったマクドナルド。コロナ禍での躍進の裏には、この店外戦略において、矢継ぎ早に新規策を打ち出し需要を取り込んだ成果が大きい」、創業時の強味がいまだに強味になるというのはすごいことだ。
・『今年中に全都道府県で宅配に対応  一連の対応の速さについて、ある外食チェーン幹部は舌を巻く。「コロナ禍で多くの飲食店が一斉にテイクアウトに踏み切ったが、付け焼き刃程度で売り上げの数%にすら届いていないケースも多い。もともとテイクアウトに強いマックに本腰を入れられたら到底かなわない」。 自社の宅配サービス「マックデリバリー」の対応店舗数は2019年末に257店だったが、2021年3月末には756店に拡大。ウーバーイーツの対応店舗拡充に加え、昨秋には出前館も導入し、何らかの宅配に対応する店舗は2021年3月末時点で1629店(全店の約55%)となった。2021年度中には宅配を47都道府県すべてに導入する方針という。 さらに、読売新聞の販売店の配達スタッフがマックデリバリーの配送業務を担う、業種の垣根を超えた取り組みも進めている。「デリバリーでは住所が不明確なケースもあるが、地域を知り尽くしている新聞配達員なら、スピーディーなデリバリーが可能」(中澤啓二執行役員)。 数々の取り組みが好循環を生む中、今年3月、約7年間にわたり日本マクドナルドHDを率いてきたサラ・カサノバ社長が退任。後任の社長には元取締役の日色保氏が就き、カサノバ氏は会長職に就任した。 日色社長はジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人社長を経て、2018年に日本マクドナルドHDへ入社。2019年3月には事業会社である日本マクドナルド社の社長に就任していた。 マクドナルド入社当初から「組織や人材の育成経験が豊富」(カサノバ氏)との評価を受けていた日色氏。優秀な人材の採用と育成に注力する方針を掲げる。 同社では2020年度は店舗数こそ微増程度だったが、採用を重点的に強化し、働くクルーの数は1年間で約15万人から約17万人へと急増。目下、宅配業務と店舗業務両方をこなせるクルーの育成にも注力しており、今後さらに人材への投資を強める考えだ。 改装など店舗投資も積極化させる。活況ゆえに、店舗では顧客の待ち時間が長くなるケースも多発。そのためドライブスルーのレーン増設に加え、ハンバーガーの製造能力が2倍になるような新型キッチンの導入も進める』、「読売新聞の販売店の配達スタッフがマックデリバリーの配送業務を担う、業種の垣根を超えた取り組みも進めている」、面白いアイデアだが、「新聞販売店」を警戒するユーザーもいることは要注意だ。
・『ファストフードの競争は熾烈化  3月までは店外でのまとめ買い需要が好決算に結び付いた日本マクドナルドだが、直近の既存店の客単価を見ると、前年の反動で4月は9.7%減、5月は13.7%減と前年同月割れが続く。客数増により既存店売上高自体は伸びを確保しているものの、店舗改装や購買利便性を上げる施策のさらなる投入により、客数拡大をどこまで維持できるかが、今後の成長の鍵を握るだろう。 足元では、多くのプレーヤーがコロナ禍でも堅調なファストフード業態に参入している。 松屋フーズホールディングスはライスバーガー専門店「米(my)バーガー/こめ松」を4月よりデリバリー限定で展開。ロイヤルホールディングスも5月にバターチキン専門店「Lucky Rocky Chicken」を出店し、鳥貴族ホールディングスも8月に新業態「トリキバーガー」を都内でオープンする予定だ。 大手を中心に、モバイルオーダーや宅配などマクドナルドが強みをもつ領域を強化する動きが広まり、胃袋を取り合う争いは苛烈化している。マクドナルドも絶えずサービスをブラッシュアップできなければ、コロナ禍で磨いた「勝利の方程式」が通用し続ける保証はない。)数々の取り組みが好循環を生む中、今年3月、約7年間にわたり日本マクドナルドHDを率いてきたサラ・カサノバ社長が退任。後任の社長には元取締役の日色保氏が就き、カサノバ氏は会長職に就任した。 日色社長はジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人社長を経て、2018年に日本マクドナルドHDへ入社。2019年3月には事業会社である日本マクドナルド社の社長に就任していた。 マクドナルド入社当初から「組織や人材の育成経験が豊富」(カサノバ氏)との評価を受けていた日色氏。優秀な人材の採用と育成に注力する方針を掲げる。 同社では2020年度は店舗数こそ微増程度だったが、採用を重点的に強化し、働くクルーの数は1年間で約15万人から約17万人へと急増。目下、宅配業務と店舗業務両方をこなせるクルーの育成にも注力しており、今後さらに人材への投資を強める考えだ。 改装など店舗投資も積極化させる。活況ゆえに、店舗では顧客の待ち時間が長くなるケースも多発。そのためドライブスルーのレーン増設に加え、ハンバーガーの製造能力が2倍になるような新型キッチンの導入も進める。 ▽ファストフードの競争は熾烈化(3月までは店外でのまとめ買い需要が好決算に結び付いた日本マクドナルドだが、直近の既存店の客単価を見ると、前年の反動で4月は9.7%減、5月は13.7%減と前年同月割れが続く。客数増により既存店売上高自体は伸びを確保しているものの、店舗改装や購買利便性を上げる施策のさらなる投入により、客数拡大をどこまで維持できるかが、今後の成長の鍵を握るだろう。 足元では、多くのプレーヤーがコロナ禍でも堅調なファストフード業態に参入している。 松屋フーズホールディングスはライスバーガー専門店「米(my)バーガー/こめ松」を4月よりデリバリー限定で展開。ロイヤルホールディングスも5月にバターチキン専門店「Lucky Rocky Chicken」を出店し、鳥貴族ホールディングスも8月に新業態「トリキバーガー」を都内でオープンする予定だ。 大手を中心に、モバイルオーダーや宅配などマクドナルドが強みをもつ領域を強化する動きが広まり、胃袋を取り合う争いは苛烈化している。マクドナルドも絶えずサービスをブラッシュアップできなければ、コロナ禍で磨いた「勝利の方程式」が通用し続ける保証はない』、「多くのプレーヤーがコロナ禍でも堅調なファストフード業態に参入」、競争が一段と激化するなかで、「マクドナルド」は「勝利の方程式」をどう磨いていくのか注目される。

第三に、7月8日付け日刊ゲンダイ「かっぱ寿司社長がデータ不正取得で告訴…背後にある「回転ずし戦争」の熾烈」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/291596
・『回転ずしチェーン「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトの田辺公己社長(45)が、営業秘密を不正に受け取っていたとして、同業大手の「はま寿司」から不正競争防止法違反の疑いで告訴された。警視庁は先月28日、カッパ本社や田辺社長の自宅を家宅捜索した。 田辺氏は、はま寿司の親会社「ゼンショーHD」出身で、元はま寿司の取締役だった。2020年11月、カッパの顧問に転じた直後から12月中旬にかけて、数回にわたり、元同僚からはま寿司社内で共有されていた日次売り上げデータなどを、個人的にメールで送付してもらっていた。その後、田辺氏は副社長を経て、21年2月、カッパの社長に就任している。田辺氏は東海大開発」工学部卒。はま寿司の取締役を務めた後17年と18年に同じくゼンショー傘下のジョリーパスタとココスジャパンの社長を歴任している。 外食大手のコロワイドが、300億円を投じ、社運をかけてカッパを買収したのは14年10月。かつてカッパは業界内で圧倒的なシェアを誇っていたが、「安かろう、まずかろう」という悪いイメージを払拭できないまま、業界4位に低迷。21年3月期の前期売上高は、3位のはま寿司に倍近い差をつけられている。コロワイド創業者の蔵人金男会長はカッパを買収して以来、社長のクビを5回スゲ替えるなど異常事態が続いていた。データの不正取得の背景には、売り上げが伸びない田辺氏の焦りがあったのかもしれない』、「コロワイド創業者の蔵人金男会長はカッパを買収して以来、社長のクビを5回スゲ替えるなど異常事態が続いていた」、それにしても、「田辺氏」はかつて「はま寿司の取締役を務めた」とはいえ、「かっぱ寿司」社長なのに、「はま寿司社内で共有されていた日次売り上げデータなどを、個人的にメールで送付してもらっていた」、驚くような違法行為だ。
・『■「はま寿司」から転職後3カ月で社長就任  外食ジャーナリストの中村芳平氏がこう言う。 「ライバル会社に移ったとはいえ、はま寿司が元取締役を告訴までしたということは、両者の関係はもともとうまくいっていなかったのではないか。田辺氏も、はま寿司に残っていても出世の目がないとみて、出たのでしょう。自らコロワイドに売り込んだ可能性もあります。親会社のコロワイ1としても、メリットがなければ受け入れない。しかもコロワイドに移籍して、わずか3カ月で社長に就任している。田辺氏は不正取得をしてでも、実績を上げなければならない立場だったのでしょう」 ここ数年、ライバル会社に移った社員が「内部情報」を持ち出すケースが相次いでいる。19年には、アシックスからプーマの関連会社に転職した社員によるデータの持ち出しが発覚。21年にはソフトバンクから楽天モバイルに移った社員が5Gに関する情報を持ち出し、それぞれ摘発されている。 「回転ずし業界はトップのスシローが商品開発力や人材育成において、一歩も二歩も抜け出している。その一方で、このままではカッパは先細りするだけです。コロワイドはカッパを買収した際、1年か2年で立て直せると踏んでいた。ところが今のコロワイドには、立て直せる人材もおらず、育てる能力もない。だから今回のような事件が起きてしまったのでしょう」(中村芳平氏) ただでさえ、不振にあえいでいるというのに、イメージダウンは必至だ』、「今のコロワイドには、立て直せる人材もおらず、育てる能力もない。だから今回のような事件が起きてしまったのでしょう」、お粗末極まる事件だ。
タグ:外食産業 東洋経済オンライン 日刊ゲンダイ (その3)(ロイヤルホスト「双日と提携」で業績復活なるか ノウハウに魅力 航空関連ビジネス再建に本腰、コロナ禍も快走!マックが「店外」で圧倒する真因 最高益の裏に持ち帰り・宅配の"綿密戦略"あり、かっぱ寿司社長がデータ不正取得で告訴…背後にある「回転ずし戦争」の熾烈) 「ロイヤルホスト「双日と提携」で業績復活なるか ノウハウに魅力、航空関連ビジネス再建に本腰」 「完璧な事業ポートフォリオだと思っていた」、「しかし、コロナ禍で状況は一変。リスクが分散されていたはずの全事業で甚大な被害が出た。外出自粛やインバウンド(訪日客)喪失により外食、ホテル、機内食、コントラクトが深刻なダメージを受け、付随して食品事業も低迷。2020年12月期は主要5事業すべてが赤字に転落」、コロナ禍の影響は予想外のダメージを与えたようだ。 「機内食事業」で「持ち分60%を双日に譲渡」、はなかなかいい組み合わせだ。 「外食事業や食品事業でも明るい兆しが見え始めた」のは確かなようだ 「ロイヤルHDの「復活への狼煙」」は果たして上がるのだろうか。 「コロナ禍も快走!マックが「店外」で圧倒する真因 最高益の裏に持ち帰り・宅配の"綿密戦略"あり」 「快進撃はどこまで続くか」は確かに注目点だ 「1971年に出した日本1号店が持ち帰り専門だったこともあり、従来「店外戦略」には強かったマクドナルド。コロナ禍での躍進の裏には、この店外戦略において、矢継ぎ早に新規策を打ち出し需要を取り込んだ成果が大きい」、創業時の強味がいまだに強味になるというのはすごいことだ。 「読売新聞の販売店の配達スタッフがマックデリバリーの配送業務を担う、業種の垣根を超えた取り組みも進めている」、面白いアイデアだが、「新聞販売店」を警戒するユーザーもいることは要注意だ。 「多くのプレーヤーがコロナ禍でも堅調なファストフード業態に参入」、競争が一段と激化するなかで、「マクドナルド」は「勝利の方程式」をどう磨いていくのか注目される。 「かっぱ寿司社長がデータ不正取得で告訴…背後にある「回転ずし戦争」の熾烈」 「コロワイド創業者の蔵人金男会長はカッパを買収して以来、社長のクビを5回スゲ替えるなど異常事態が続いていた」、それにしても、「田辺氏」はかつて「はま寿司の取締役を務めた」とはいえ、「かっぱ寿司」社長なのに、「はま寿司社内で共有されていた日次売り上げデータなどを、個人的にメールで送付してもらっていた」、驚くような違法行為だ。 「今のコロワイドには、立て直せる人材もおらず、育てる能力もない。だから今回のような事件が起きてしまったのでしょう」、お粗末極まる事件だ。
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テスラ(その1)(テスラを侮る人に知ってほしい「評価される訳」 利益の源泉をハードからソフトへ移しつつある、焦点:起こるべくして起きたテスラの「中国トラブル」、コラム:ビットコインで方針一転 テスラの根深いガバナンス問題、テスラの運転支援システム「人身事故続発」のなぜ 運転手の監視ゆるい?オートパイロットの盲点) [産業動向]

今日は、テスラ(その1)(テスラを侮る人に知ってほしい「評価される訳」 利益の源泉をハードからソフトへ移しつつある、焦点:起こるべくして起きたテスラの「中国トラブル」、コラム:ビットコインで方針一転 テスラの根深いガバナンス問題、テスラの運転支援システム「人身事故続発」のなぜ 運転手の監視ゆるい?オートパイロットの盲点)を取上げよう。なお、EVでは、5月20日に取上げた。

先ずは、本年4月19日付け東洋経済オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「テスラを侮る人に知ってほしい「評価される訳」 利益の源泉をハードからソフトへ移しつつある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/422534
・『テスラの時価総額はトヨタの3倍  テスラは、自動車のハードとソフトの切り離しに成功し、「購入後にインターネット経由でアップグレードできる」という新しいビジネスモデルを確立した。EV(電気自動車)や自動運転の時代になると、自動車メーカーの付加価値の源泉はハードからソフトに移行せざるをえないが、それを実現する仕組みができたのだ。テスラの時価総額がトヨタを抜いたのは、そのためだ。 アメリカのEV専業の自動車メーカー、テスラの株価は、2020年1月には100ドル程度だったが、2021年1月末には880ドルになった。 その時価総額は、2020年1月末に1000億ドル(約10兆9900億円)を突破し、フォルクスワーゲンを抜いた。そして、7月1日には、トヨタ自動車を抜いて、自動車メーカーとして世界第1位になった。 2021年4月中旬の株価は680ドル程度。時価総額は6498億ドルで、トヨタ自動車の2157億ドルの約3倍だ。 テスラの年間販売台数は、わずか50万台だ。それに対して、トヨタは1000万台を超える。利益も、トヨタが年間2兆円超であるのに対して、テスラはごく最近まで赤字を続けていた。 それなのに、なぜ時価総額が世界一になるのだろうか? これからは、ガソリン車の生産は禁止され、自動車はEVになるからか?しかし、EVを生産しているのはテスラだけではない。 「単なるバブルではないか」、と多くの人が考えるだろう。事実、そのように解説した記事もたくさんある。 しかし、テスラの株価急騰は、バブルだとして切り捨ててしまうことのできない、非常に重要な変化を反映している。 テスラは、これまでなかったまったく新しいビジネスモデルを構築しつつあるのだ。 このことを知るには、テスラ社のウェブサイトにアクセスして、「コネクティビティ」や「アップグレード」というページを見るとよい。) 「コネクティビティ」とは、音楽やメディアのストリーミング、交通情報表示など、データを必要とする機能の利用だ。購入時に「スタンダード」であっても、購入後に月額990円を払えば、機能がより高度の「プレミアムコネクティビティ」を利用できる。 「アップグレード」とは、購入後に、車の機能アップさせることだ。購入者のニーズに合わせてテスラ車をカスタマイズできる。 来店する必要はなく、Wi-Fiに接続して、ボタンを押すだけでよい。 つまり、購入した後で、車を買い替えたりハードウェアを取り替えたりすることなく、機能をアップデートすることができるのだ。 例えば、「Model S」には、低価格モデルの「Model S 60」と高価格モデルの「Model S 75」がある。低価格モデルのバッテリーの容量は、高価格モデルのそれより小さい。 「Model S 60」を購入したユーザーが、使っているうちに、「やはり大容量バッテリーのほうがよかった」と考えたとする。そして、購入したときよりは所得も増えていたとする。 そんなときには、Wi-Fiに接続してアップグレードのボタンを押し、9000ドル払うことに同意すれば、それで完了だ』、「テスラの時価総額はトヨタの3倍」は、私も「単なるバブルではないか」と考えていたが、「自動車のハードとソフトの切り離しに成功し、「購入後にインターネット経由でアップグレードできる」という新しいビジネスモデルを確立した」、とは確かに画期的で、時価総額もそれを反映している可能性がありそうだ。
・『自動運転もインターネット経由で可能に  購入後にアップできるのは、以上だけではない。 購入したときにつけなかったナビが必要になったら、簡単に購入できる。 クルマを買ったときには暖房シートをつけなかったが、その後寒い地域に転居して、必要になったとする。この場合も、ソフトウェアをアップデートするだけでよい。 さらに驚くべきことに、同じ手続きで、より高度な自動運転もできるようになるのだ。 自動運転には、レベル1からレベル5までのレベルがある。テスラの最新モデル車は、完全自動運転に必要な半導体をすでに搭載している。 また、「FSD(フルセルフドライビング)」という自動運転ソフトが提供されており、適時更新することで、より高度の自動運転が可能となる。 現在の自動運転機能は高速道路など一定の条件下に限られているが、ソフトウェアの更新によって、複雑な市街地での自動運転技術も可能になるという(ただし、テスラ車が2021年末までにレベル5の完全自動運転機能を実現するのは難しいと見られている)。) 「購入した後で機能をアップグレードできる」と聞くと、最初は魔術のように思える。 だがよく考えてみると、スマートフォンでは、日常的にやっていることだ。新しいアプリをダウンロードすれば、新しい機能が使えるようになる。 また、ゲームアプリなどでは、「アプリ内課金」というものがある。 アプリのダウンロードと基本機能は無料。そして、追加機能を購入するのは有料という仕組みだ。 ソフトウェアであれば、いちいち修理工場に持っていかなくとも、インターネットを通じてアップデートできる。それはスマートフォンであろうが自動車であろうが、同じことだ。 テスラのビジネスモデルは、自動車版の「アプリ内課金」なのである。 テスラは、最初に高性能なモデルを製造し、つぎに機能を制限したモデルを割引料金で販売するのだ。 そして、購入後のアップグレードという方式を可能にすることによって、低価格モデルを簡単に提供し、それによって売り上げを伸ばすことができる』、「最初に高性能なモデルを製造し、つぎに機能を制限したモデルを割引料金で販売するのだ。 そして、購入後のアップグレードという方式を可能にすることによって、低価格モデルを簡単に提供し、それによって売り上げを伸ばすことができる」、確かに上手い方法だ。
・『ハードとソフトの切り離し  ここまできて、「納得がいかない」と首をひねる方が多いのではないだろうか? カーナビのアップグレードをインターネット経由でできるのは、わかる。自動運転も、内容は高度だが、ソフトウェアであることに変わりはないから、インターネット経由でアップグレードできるのもわかる。 しかし、バッテリーや暖房シートは、ハードウェアだ。 それらを、なぜインターネットでアップグレードできるのだろう? この手品の種明かしは、あっけないほど簡単だ。 低価格モデルである「Model S 60」には、高価格モデルである「Model S 75」に搭載されているのと同じバッテリーが、最初から搭載されているのだ。 ただし、ソフトウェアを調整して、その容量を20パーセント落としているのである。 だから、低価格モデルと高価格モデルを生産するために、テスラは、バッテリーパックを2種類作ったり、組み立てラインを2種類用意したりする必要はない。プログラムに数行を付け加えるだけで終わりだ。 ただし、こうしたことができるのは、車のハードウェアとソフトウェアの切り離しを実現できたからだ。 いまの自動車には、ソフトウェアによって制御される部品が多数ある。しかし、システムごとに、ハードとソフトが結びついており、切り離せない。 これでは、上で述べたようなことはできない。 テスラは「モデル3」以降、ハードとソフトの切り離しを実現したのだ。これは、伝統的メーカーよりも6年以上も早かった。そのために、上で述べた「購入後のアップグレード」という新しいビジネスモデルを導入できたのである。) 以上のようなシステムを通じて、テスラは顧客の車両から走行データを収集できる。 これは、自動運転のシステムを開発するための貴重なビッグデータになる。 走行距離でいえば、グーグルの子会社であるウェイモが圧倒的なデータを蓄積している。しかし、テスラは顧客の車両からそれよりさらに多くのデータを収集している可能性がある。 だから、自動運転の分野でも、テスラが世界のトップになる可能性がある。 2019年、テスラは、完全自動運転技術を使ってライドシェア市場に参入する構想を発表した。これは、「テスラネットワーク(自動運転タクシーネットワーク)構想」と呼ばれる。 これを用いると、テスラ車の所有者は、自分が乗らない時間には、自分の車を自動運転モードのタクシーとすることによって、収益を得ることができる。 また、テスラは、Uberと同じように、利用のたびに顧客からプラットフォーム料金を徴収できるだろう。 これも、テスラの収益に寄与することになる』、「低価格モデルである「Model S 60」には、高価格モデルである「Model S 75」に搭載されているのと同じバッテリーが、最初から搭載されているのだ。 ただし、ソフトウェアを調整して、その容量を20パーセント落としているのである。 だから、低価格モデルと高価格モデルを生産するために、テスラは、バッテリーパックを2種類作ったり、組み立てラインを2種類用意したりする必要はない。プログラムに数行を付け加えるだけで終わりだ。 ただし、こうしたことができるのは、車のハードウェアとソフトウェアの切り離しを実現できたからだ」、「ハードウェアとソフトウェアの切り離し」とは画期的だ。「「テスラネットワーク・・・構想」・・・を用いると、テスラ車の所有者は、自分が乗らない時間には、自分の車を自動運転モードのタクシーとすることによって、収益を得ることができる」、面白い構想だ。
・『ソフトウェアの価値を利用できるこれまでの自動車産業は、ハードウェアの生産だった。 EVになると部品数が劇的に減少し、組み立ても容易になることから、ビジネスモデルの再構築が必要といわれてきた。 それは、ソフトウェアによって付加価値を生むような仕組みだ。 自動運転になれば、ソフトウェアの比重が増大し、自動車産業は、ハードウェアの生産ではなく、ソフトウェアを付加価値の源泉とせざるをえなくなる。 現在のような系列構造と巨大な生産体系を維持しようとすれば、制御不能なレガシーになってしまう危険がある。 テスラは、以上で述べたビジネスモデルを開発したことにより、ソフトウェアによって収益をあげることに成功したのだ。 ソフトウェアとデータに利益の源泉が移れば、爆発的な成長が可能になる。これこそが、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれる企業群が実現したことだ。テスラは、自動車の生産において、そのことを可能にしつつある。 その時価総額が急激に増加している基本的な理由は、ここにある。 日本の自動車産業は、このように大きな変化に対応できるのだろうか?』、「日本の自動車産業」はエンジンというレガシーを抱えているだけに、「対応」は容易ではなさそうだ、

次に、4月24日付けロイター「焦点:起こるべくして起きたテスラの「中国トラブル」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/tesla-china-idJPKBN2CA0KY
・『テスラが販売台数の急増に見合うサービス態勢を整えることに四苦八苦していた中、中国でテスラへの反感がこれまでにじわじわと蓄積されていた以上、起こるべくして起きた事態とも言える。 テスラはメディアによる一斉攻撃を浴び、規制当局の「お叱り」も受けた。これは外国の大手ブランドにとって中国がいかに危険な場所になり得るか、そして国家の厳しい統制を受けたメディアが批判姿勢に転じた場合、たった1つの苦情案件処理の間違いがいかに大変な危機に転じ得るかを物語っている。 またテスラと言えば業界の慣習を顧みないことで知られ、その象徴的存在が創業者のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)だ。めったに誤りを認めない企業文化は米国でこそ、それなりのファンを獲得しているものの、中国では逆効果でしかない。マスク氏の名声ゆえに、中国政府は外国自動車メーカーとして初めてテスラに地元企業と合弁なしの事業展開を認めたのは確かだが、今やテスラはずっと長い歴史を持つライバルメーカーたちが何年も前に得た教訓を学びつつある。 テスラが直面するトラブルは、主に同社の北米事業に関係しているとはいえ、マスク氏や経営幹部らが認識してきた問題の大きさも浮き彫りにしている。ハードウエアに不具合が生じた場合に車両を修理する能力が、猛スピードで伸びる販売台数に圧倒されてしまったのだ。 カークホーン最高財務責任者(CFO)は1月、投資家に対して「サービスの拡充がテスラの将来戦略にとって本当に大事になっている」と認めた。 では今週、テスラはどんな事態に見舞われたのか。発端は上海国際モーターショーが始まった19日、ブレーキが効かないという苦情に対するテスラ側の対応に怒った1人の顧客女性がテスラの展示車両の屋根に上り、不満を叫んだことだ。この動画はソーシャルメディアで拡散された。 騒動がさらに拡大したのは、テスラの対外関係担当バイスプレジデント、グレース・タオ氏がこの女性が「やらせ」ではないかと疑問を呈した後だった。 タオ氏は地元メディアのインタビューで「事実は分からないが多分、彼女はかなりのプロで、(誰かが)背後にいるはずだと思う。われわれは妥協するつもりはない。これは新車開発のプロセスにすぎない」と発言。直後にテスラはあわてて火消しに走り、報道の撤回を求めてきた、とこのメディアが20日、メッセージアプリの微信(ウィーチャット)で明かした。 <次第に弱気化> テスラのコメントは次第に「前非を悔いる」姿勢へと転じていく。当初の「妥協せず」から20日は「謝罪と自主的な調査」の表明に変わり、そして21日夜には「規制当局と協力して調査」していると説明した。 国営新華社通信は、テスラの謝罪は「不誠実」だと述べた上で、「問題のある上級幹部」の更迭を要求。共産党機関紙、人民日報系のタブロイド「環球時報」もタオ氏の発言を取り上げてテスラの「大失態」と呼び、中国に進出している外国企業にとって1つの教訓になると解説した。 中国国営中央テレビ(CCTV)の報道番組の元総合司会者で2014年にテスラに入ったタオ氏には連絡が取れず、テスラもさらなるコメント要請には応じていない。 調査会社シノ・オート・インサイツのアナリスト、テュー・リー氏は「中国ではテスラ車の品質とサービスに関する不平不満がソーシャルメディア上にずっと書き込まれている。そのほとんどを同社の地元チームは20日まで無視してきたようだ」と述べた。 中国で販売されるテスラ車は、同社の上海工場で生産されており人気が高い。世界一の大きさを持つ中国EV市場において、テスラの販売シェアは30%を占める』、これは確かに広報対応のお粗末さによる部分も大きいようだ。
・『<マスク氏は沈黙> だがテスラへのプレッシャーは積み重なっていた。 先月には、中国人民解放軍が車載カメラなどから軍事機密が漏れる懸念を理由にテスラ車の利用を禁止した、と複数の関係者がロイターに語った。その翌日、マスク氏はオンラインイベントで「もしテスラが中国であれどこであれ、スパイ活動のために車両を使っていれば、工場は閉鎖されてしまう」と強調し、すぐにスパイ行為を否定した。 テスラは昨年、米国の広報チームをほとんど解体したようだが、中国では引き続き広報担当者を雇用している。 それでも外部との対話に関する限り、テスラが大きく依存しているのはマスク氏のツイッターだ。マスク氏のアカウントは5000万人超のフォロワーを抱えている。ただ22日までの時点で、今回の中国における問題でマスク氏は沈黙したまま。一方、短文投稿サイトの微博(ウェイボ)にはテスラ車オーナーから突然の加速やハンドルの不調といった品質面のクレームが殺到している。 環球時報の胡錫進編集長は22日、テスラを中国から追い出すつもりはないと強調。「われわれの究極のゴールは、外国企業に中国市場へ適応し、中国の法規制をしっかり守るとともに、中国の文化と消費者を尊重して中国経済にとってプラス要素になってもらうことにある。それが教訓であれ支援であれ、全ては同じ目標を示している」と述べた』、「今回の中国における問題でマスク氏は沈黙したまま」、当面、「沈黙」を続ける方がよさそうだ。
「コラム
第三に、5月15日付けロイター「ビットコインで方針一転、テスラの根深いガバナンス問題」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/tesla-bitcoi-breakingviews-idJPKBN2CV0BK
・『暗号資産(仮想通貨)ビットコインは、最も名高い応援団メンバーを失った。米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が12日、ビットコインによるEV購入の受け付け停止をツイッターで表明したのだ。その理由として「採掘(マイニング)と決済のための化石燃料、特に石炭の使用が急増していること」を挙げた。マスク氏の言い分は正しい。だがそうした決定は、ビットコイン自体よりもテスラが抱える問題を、より浮き彫りにしている。 マスク氏は業界の事情を薄々知っている誰かから、ビットコイン採掘のための発電に「ダーティー」なエネルギーが膨大に必要だと教わったのかもしれない。実際、ケンブリッジ大学オルタナティブ金融センターによる調査の最新データを見ると、ビットコイン採掘者が現在使用している電力は年間ベースで147テラワット時と、英国の年間電力消費のほぼ半分に達することが分かる。採掘者が使う電力のうち、大部分が水力である再生可能エネルギー発電の比率は39%にすぎない。 マスク氏は、温室効果ガス排出量ゼロのエネルギー導入を加速する企業の「テクノキング」を自称する人物だ。3カ月前にビットコインを支払い手段として受け入れると決めた時、その彼が電力使用の実態を知らなかったか、あえて軽視していたことになる。 「マスター・オブ・コイン」の肩書を持つカークホーン最高財務責任者(CFO)もこの計画に同意した。カークホーン氏は第1・四半期決算発表後の電話会議で、テスラが手軽でリスクの低いリターンを得る手段として現金15億ドル(約1650億円)をビットコインに換えたと説明した。日々2桁台の変動率を示すビットコインについて、恐るべき油断ぶりを露呈する発言だ。 ビットコインの受け付け停止という「手のひら返し」は、テスラのCEOにして筆頭株主であるマスク氏への監視が相変わらず緩い実態を強く示唆している。米金融規制当局が改善を働きかけてきたが、その甲斐もなかった。 マスク氏は以前、EV生産で何度も「大風呂敷」を広げた挙げ句、納車目標を達成することができなかった。マスク氏が2016年に手掛けた太陽光発電企業の買収は、いとこが設立した同社の救済目的だったのではないかとの疑念もくすぶっている。その2年後にマスク氏は、テスラの非公開化を検討しているとツイッターに投稿し、証券法に違反。2000万ドルの罰金を支払った上に、会長職を退任せざるを得なくなった。 マスク氏のこうした振る舞いを許したのは、同氏の友人や家族で固められた取締役会の怠惰だ。取締役の構成はその時からある程度変化し、年金積立金管理運用独立法人(GPIF)の最高投資責任者だった水野弘道氏など、適格な人物が社外取締役に加わっている。とはいえこの「新体制」でさえマスク氏の行動をそれほど制御できていないのは、何とも心配すべき兆候だ。 ●背景となるニュース *暗号資産(仮想通貨)ビットコインは12日、価格が一時13%急落した。テスラのマスク最高経営責任者(CEO)が、ビットコインでの電気自動車(EV)購入受け付けを停止するとツイッターに投稿したことが原因。マスク氏は「ビットコインの採掘(マイニング)と決済で化石燃料、特に石炭の使用が急増していることをわれわれは懸念している」とつぶやいた。 *テスラは、採掘作業がより持続可能なエネルギーに移行すればすぐにこの受け付け停止措置を解除する方針。マスク氏は、エネルギー消費の少ない他の暗号資産にも目を向けていると述べた。 *テスラは2月8日、それまでに15億ドル相当のビットコインを購入したことを明らかにするとともに、決済でビットコインを受け入れる意向を示した。同社はその後、保有分の約1割を売却した。マスク氏は今回、テスラは残りのビットコインを売るつもりはないと明言した。(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)』、「ビットコイン採掘者が現在使用している電力は・・・英国の年間電力消費のほぼ半分に達する」、とは確かに壮大な無駄だ。しかし、「マスク氏」がそんなことも知らずにいたとも思えない。いずれにしろ、同氏の発言のブレにより「ビットコイン」価格が乱高下させたのは、好ましいことではない。

第四に、7月12日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「テスラの運転支援システム「人身事故続発」のなぜ 運転手の監視ゆるい?オートパイロットの盲点」を紹介しよう。
・『2019年8月のある日。ベンジャミン・マルドナドさんは10代の息子を乗せてカリフォルニア州の高速道路を運転していた。サッカー大会の帰りだった。前を走っていたトラックが速度を落としたため、方向指示器を点滅させて右に車線変更した数秒後、マルドナドさんの運転するフォード「エクスプローラー」は、運転支援システム「オートパイロット」を使って時速約100キロメートルで走行していたテスラ「モデル3」とぶつかった』、なるほど。
・『衝突の一瞬前までテスラ車を減速せず  このテスラ車が撮影した6秒間の動画および同車に記録されたデータからは、オートパイロットも運転手も、衝突のほんの一瞬前まで車を減速させていなかったことがわかる。 オートパイロットとは、車両が自らステアリング、ブレーキ、アクセルを操るというテスラご自慢のシステムだ。警察の報告書によると、助手席に乗っていたジョバニ・マルドナドさん(15)はシートベルトを着用しておらず、車外に投げ出されて死亡した。 テスラの主力工場から7キロと離れていない場所で起きたこの事故は、テスラを相手取った訴訟に発展している。オートパイロット絡みの事故は本件も含め全体として増えており、技術的な欠陥を指摘する声が強まっている。ライバルメーカーが採用する同様のシステムの開発にも疑問符がつく可能性がある。 2003年に設立されたテスラとそのCEOイーロン・マスク氏は、自動車業界に派手な挑戦を挑み、熱狂的なファンや顧客を巻き込んで、既存の自動車メーカーも一目を置かざるをえない電気自動車の新たなスタンダードをつくり出している。テスラの時価総額は現在、大手自動車メーカー数社分を足し合わせた額よりも大きくなっている。) だが、オートパイロットに関連した事故は、そうしたテスラの地位を脅かす要因ともなりかねない。規制当局が行動に乗り出す可能性が浮上しているためだ。アメリカ運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は現在、オートパイロットが関連した事故約20件について調査を進めている。 2016年以降、オートパイロットが障害物の検知に失敗して発生した事故で、テスラ車を運転していた人の少なくとも3人が死亡している。うち2件は、高速道路を横切るトレーラーに対してオートパイロットがブレーキをかけなかったケース。もう1件は、コンクリート壁を認識できずに激突したケースだ。 NHTSAは6月、2016年以降にオートパイロットが関与した8件の事故で少なくとも10人が死亡したことを示すリストを公開した。ここにはジョバニ・マルドナドさんの死亡事故は含まれていない』、「2016年以降にオートパイロットが関与した8件の事故で少なくとも10人が死亡」、「事故」が予想以上に多いことに驚かされた。
・『事故を未然に防ぐシステムのはずが…  テスラの信用は揺らぎ、自動運転の専門家からは「マスク氏とテスラが唱えてきたほかの主張も疑問視せざるをえない」といった声があがるようになっている。例えばマスク氏はこれまでに何度も、テスラは完全自動運転の完成に近づいていると公言してきた。完全自動運転とは、ほとんどの状況下で車両の自律運転が可能となる技術を指す。テスラ以外の自動車メーカーやテクノロジー企業が「実現は何年も先になる」としている技術だ。 マスク氏とテスラは、数回にわたるコメントの求めに応じなかった。 オートパイロットは「自動運転システム」ではない。車線変更などの運転操作を代行し、事故を未然に防ぐ「運転支援」を目的としたソフトウェア、カメラ、センサーによって構成されるシステムだからだ。テスラの幹部は、操作をコンピューターに委ねれば、ミスを犯したり、注意散漫になったりしがちな人間の運転よりも安全になると主張している。 テスラで人工知能部門の責任者を務めるアンドレイ・カーパシー氏は6月、自動運転に関するオンラインワークショップで次のように語った。「コンピューターは(運転中に)インスタグラムをチェックしたりしない」。 オートパイロットが作動している間、運転手が緊張を緩めるのはいいが、完全に気をそらすことは想定されていない。ステアリングをきちんと保持し、視線を道路から外さず、いざシステムが混乱したり、障害物や危険な交通状況を認識できなかったりした場合には、いつでも運転を代われるようにしておくことが大前提になっているわけだ。) ところがオートパイロットの作動中、前方を見ている以外にほとんどやることのなくなった運転手には、誘惑に負けて注意がおろそかになってしまう人もいる。ツイッターなどではこれまでも、テスラ車の運転席に座りながら読書したり眠ったりする運転手の動画が投稿されてきた。 問題が浮上すると、テスラはたいてい運転手を責めてきた。オートパイロットの使用中にステアリングから手を離したり、安全確認を怠ったりする運転手が悪い、という理屈だ。 だが、オートパイロットに関連した事故を調査した国家運輸安全委員会(NTSB)は、同システムには不適切な使用を防ぐ仕組みや運転手に対する効果的な監視が欠けていると結論づけている』、「オートパイロットは「自動運転システム」ではない。車線変更などの運転操作を代行し、事故を未然に防ぐ「運転支援」を目的としたソフトウェア、カメラ、センサーによって構成されるシステムだからだ」、誤解され易いところだ。「テスラの幹部は、操作をコンピューターに委ねれば、ミスを犯したり、注意散漫になったりしがちな人間の運転よりも安全になると主張」、しかし、「オートパイロットの作動中、前方を見ている以外にほとんどやることのなくなった運転手には、誘惑に負けて注意がおろそかになってしまう人もいる」、こうした建前と現実のギャップを無視する訳にはいかない。
・『他社に劣るゆるい監視システム  ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターなどが提供している類似のシステムは、運転手の視線をカメラで追跡し、運転手がよそ見をすると警告が出る仕組みになっている。GMの運転支援システム「スーパークルーズ」では、警告が数回続くと機能がオフになり、運転手が自ら運転しなければならなくなる。 これに対しオートパイロットは運転手の視線を追跡せず、ステアリングに手を置いているかどうかだけを監視する。運転手がステアリングに手を置いている時間が1回あたり数秒だったとしても、作動し続ける場合もある。 カーネギーメロン大学で自動運転を研究するラジ・ラジクマール教授によれば、「簡単にだませるうえ、あまり一貫した監視がなされていないため、本質的に脆弱な監視システム」ということになる。 NHTSAは現時点で、オートパイロットの変更や無効化をテスラに強制しているわけではないが、6月には、この種のシステムに関する事故の報告をすべての自動車メーカーに義務づけると発表した。) テスラに対しては、今年に入ってからだけでもいくつもの訴訟が起こされている。フロリダ州キー・ラーゴで2019年に発生した事故に関連して今年4月に同州裁判所に提訴された事案も、その1つだ。 オートパイロットを作動させたテスラ「モデルS」がT字型交差点で停止できず、路肩に駐車していたシボレー「タホ」に衝突し、ナイベル・レオンさん(22)が死亡した。カリフォルニア州では、バンで走行中にオートパイロットを作動させていたテスラ車に後方から追突され、脊椎に重傷を負ったダレル・カイルさん(55)が5月に訴えを起こしている』、「テスラ」の「監視システム」が「オートパイロットは運転手の視線を追跡せず、ステアリングに手を置いているかどうかだけを監視する」というのは深刻な問題だ。私でも居眠り防止のため、視線の「監視システム」をつけている。
・『オートパイロットには欠陥があると提訴  ジョバニ・マルドナドさんが死亡した事故は、テスラ車に記録された動画とデータが入手可能になった珍しい事案だ。マルドナドさんの弁護士を務めるベンジャミン・スワンソン氏はテスラから動画とデータを入手し、ニューヨーク・タイムズと共有した。 ベンジャミン・マルドナドさんと妻のアドリアナ・ガルシアさんはテスラを相手取ってカリフォルニア州アラメダ郡高等裁判所に提訴。訴状では、オートパイロットには欠陥があり、交通状況に対応できなかったとしている。運転手も被告とされた。 オートパイロットが誤作動、もしくは欠陥を抱えていたとの申し立てに対し、テスラはまだ裁判資料の中で反応を示していない。ただ、テスラの弁護士を務めるライアン・マッカーシー氏がスワンソン氏の事務所に送った電子メールは法廷に証拠として提出されており、その中でマッカーシー氏は次のように述べていた。責任はテスラでなく、運転手にある――。 事故を起こしたテスラ車に保存された動画には、同車が中央の車線を飛ばしながら左右の車を追い抜いていく様子が映っている。マルドナドさんがウィンカーを出したのは衝突の4秒前。エクスプローラーは左側の車線にとどまったまま方向指示器を4回点滅。5回目の点滅で中央のレーンへと車線を変えた。裁判資料によると、マルドナドさんはバックミラーでテスラ車が急接近してくるのに気づき、元の車線に戻ろうとしたという。 テスラ車はこの動画のほぼ最初から最後まで時速約111キロを維持していたが、衝突の直前には一時的に時速112キロを超過、速度を落としたのは最後の1秒だったことが車両のデータから明らかになっている。(執筆:Neal E. Boudette記者)』、「カリフォルニア州アラメダ郡高等裁判所」での裁判の行方が大いに注目される。
タグ:ロイター 東洋経済オンライン The New York Times 野口 悠紀雄 テスラ (その1)(テスラを侮る人に知ってほしい「評価される訳」 利益の源泉をハードからソフトへ移しつつある、焦点:起こるべくして起きたテスラの「中国トラブル」、コラム:ビットコインで方針一転 テスラの根深いガバナンス問題、テスラの運転支援システム「人身事故続発」のなぜ 運転手の監視ゆるい?オートパイロットの盲点) 「テスラを侮る人に知ってほしい「評価される訳」 利益の源泉をハードからソフトへ移しつつある」 「テスラの時価総額はトヨタの3倍」は、私も「単なるバブルではないか」と考えていたが、「自動車のハードとソフトの切り離しに成功し、「購入後にインターネット経由でアップグレードできる」という新しいビジネスモデルを確立した」、とは確かに画期的で、時価総額もそれを反映している可能性がありそうだ。 「最初に高性能なモデルを製造し、つぎに機能を制限したモデルを割引料金で販売するのだ。 そして、購入後のアップグレードという方式を可能にすることによって、低価格モデルを簡単に提供し、それによって売り上げを伸ばすことができる」、確かに上手い方法だ。 「低価格モデルである「Model S 60」には、高価格モデルである「Model S 75」に搭載されているのと同じバッテリーが、最初から搭載されているのだ。 ただし、ソフトウェアを調整して、その容量を20パーセント落としているのである。 だから、低価格モデルと高価格モデルを生産するために、テスラは、バッテリーパックを2種類作ったり、組み立てラインを2種類用意したりする必要はない。プログラムに数行を付け加えるだけで終わりだ。 ただし、こうしたことができるのは、車のハードウェアとソフトウェアの切り離しを実現 「ハードウェアとソフトウェアの切り離し」とは画期的だ。「「テスラネットワーク・・・構想」・・・を用いると、テスラ車の所有者は、自分が乗らない時間には、自分の車を自動運転モードのタクシーとすることによって、収益を得ることができる」、面白い構想だ。 「日本の自動車産業」はエンジンというレガシーを抱えているだけに、「対応」は容易ではなさそうだ、 「焦点:起こるべくして起きたテスラの「中国トラブル」 これは確かに広報対応のお粗末さによる部分も大きいようだ。 「今回の中国における問題でマスク氏は沈黙したまま」、当面、「沈黙」を続ける方がよさそうだ。 「ビットコインで方針一転、テスラの根深いガバナンス問題」 「ビットコイン採掘者が現在使用している電力は・・・英国の年間電力消費のほぼ半分に達する」、とは確かに壮大な無駄だ。しかし、「マスク氏」がそんなことも知らずにいたとも思えない。いずれにしろ、同氏の発言のブレにより「ビットコイン」価格が乱高下させたのは、好ましいことではない。 「テスラの運転支援システム「人身事故続発」のなぜ 運転手の監視ゆるい?オートパイロットの盲点」 「2016年以降にオートパイロットが関与した8件の事故で少なくとも10人が死亡」、「事故」が予想以上に多いことに驚かされた。 「オートパイロットは「自動運転システム」ではない。車線変更などの運転操作を代行し、事故を未然に防ぐ「運転支援」を目的としたソフトウェア、カメラ、センサーによって構成されるシステムだからだ」、誤解され易いところだ。 「テスラの幹部は、操作をコンピューターに委ねれば、ミスを犯したり、注意散漫になったりしがちな人間の運転よりも安全になると主張」、しかし、「オートパイロットの作動中、前方を見ている以外にほとんどやることのなくなった運転手には、誘惑に負けて注意がおろそかになってしまう人もいる」、こうした建前と現実のギャップを無視する訳にはいかない。 「テスラ」の「監視システム」が「オートパイロットは運転手の視線を追跡せず、ステアリングに手を置いているかどうかだけを監視する」というのは深刻な問題だ。私でも居眠り防止のため、視線の「監視システム」をつけている 「カリフォルニア州アラメダ郡高等裁判所」での裁判の行方が大いに注目される。
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携帯・スマホ(その6)(転職社員がデータ漏洩… ソフトバンクが楽天モバイル提訴で「10億円請求」の不可解、楽天グループ<上>中国大手テンセントの出資が政治問題化、楽天グループ<下>携帯電話基地局の先行投資で大赤字) [産業動向]

携帯・スマホについては、5月23日に取上げた。今日は、(その6)(転職社員がデータ漏洩… ソフトバンクが楽天モバイル提訴で「10億円請求」の不可解、楽天グループ<上>中国大手テンセントの出資が政治問題化、楽天グループ<下>携帯電話基地局の先行投資で大赤字)である。

先ずは、6月1日付けデイリー新潮「転職社員がデータ漏洩… ソフトバンクが楽天モバイル提訴で「10億円請求」の不可解」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/06011103/?all=1&page=1
・『ソフトバンク(以下=SB)が産声を上げたのは1981年9月、博多駅を南に6キロ下った雑餉隈(ざっしょのくま)というレトロな商店街の一角だったという。先月の決算発表会で、当時の事務所近くの踏み切りの写真を紹介しながら、孫正義会長(63)はしみじみと原風景を振り返ってみせた。 以来40年──。目下、孫会長率いるSBは絶頂期を迎えていると言って差し支えなかろう。2021年3月期の純利益は4兆9900億円に達し、これは3年前にトヨタ自動車が記録した2兆4939億円を抜き、国内企業のレコードである。孫会長自身、もはや立志伝中の人物というレベルを超えた成功者となり、発言力も日本の政治家を遥かに凌いでいる。5月22日にTwitterで「今、国民の8割以上が延期か中止を希望しているオリンピック。誰が何の権利で強行するのだろうか」と呟いたことが、各紙の紙面を賑わせたことからも明らかだ。 だが、古来より「好事魔多し」という。 「順風満帆に見えるSBにアキレス腱があるとすれば、ライバル企業、楽天モバイルとの裁判ではないでしょうか」 と話すのは、大手紙の警視庁担当記者である。 「5月6日、SBが楽天モバイルを相手に、10億円の損害賠償の訴訟を起こしたことがニュースになりました。SBから楽天モバイルに転職し逮捕された40代の技術者による、データの不正持ち出し事件の関連です。SB側は1000億円の損害賠償請求権があると主張し、そのうちの10億円分の支払いを求めています。しかし実のところ、本当にそんな巨額の被害があったのかというと、少しハッタリが過ぎるというのが、現在の警視庁当局の見立てなのです」 簡単に事件を振り返っておくと、2019年12月いっぱいでSBを退職した携帯電話基地局設置の技術者が、楽天モバイルに入社したのは翌年1月。彼は退職する前、業務で使用していた複数のデータを自分の私的なGメールに送付し、退職後にもSBのサーバーにアクセスしていた。 これに気づいたSBは調査を行い警視庁に告訴。その結果、2020年8月、楽天モバイルなどに家宅捜索が行われ、技術者のPCが押収された。驚いた楽天モバイルは、社内サーバーに残っていた技術者のファイル数千点を、警視庁とSBに開示したという。その中には確かに、彼がSBから持ち出したNTTの光ファイバーの位置データや電柱情報が含まれていたのである。警視庁担当記者が続ける。 「しかし困ったことに、そのデータには特別の価値がないことがわかってきました。具体的に言うと、光ファイバーの位置情報というのは、携帯電話会社であればNTTから無料で提供を受けることができるデータ。もう一つの電柱位置に関しても、NTT東日本分が100万円、西日本分が100万円、2つを合わせても200万円程度の価値に過ぎません。また、どちらのデータについても、すでに楽天モバイルが正規ルートで入手していたため、特に組織として必要としていなかったことが判明したのです」 そもそも楽天モバイルの直属の上司は、この技術者がSBのデータを持っていたことも寝耳に水。当初は組織ぐるみの悪質な産業スパイ事件ではないかと意気込んでいた、SBや警視庁の目論見は大きく外れてしまったのだという』、「SB側は1000億円の損害賠償請求権があると主張し、そのうちの10億円分の支払いを求めています。しかし実のところ、本当にそんな巨額の被害があったのかというと、少しハッタリが過ぎるというのが、現在の警視庁当局の見立て」、「光ファイバーの位置情報というのは、携帯電話会社であればNTTから無料で提供を受けることができるデータ。もう一つの電柱位置に関しても、NTT東日本分が100万円、西日本分が100万円、2つを合わせても200万円程度の価値に過ぎません。また、どちらのデータについても、すでに楽天モバイルが正規ルートで入手していたため、特に組織として必要としていなかったことが判明」、とすれば、「SB側」の提訴の狙いは何なのだろう。
・『役に立たないデータ  見込み違いだったことは、被疑者の逮捕後の取り扱いからも透けて見える。 問題の技術者は、家宅捜索から5カ月後の今年1月12日に逮捕され、23日後の2月4日に保釈されている。 「警察に逮捕された被疑者は2日後に送検されます。そして検察の聴取を1日受け、その翌日から通常は10日間のサイクルを2回勾留されて起訴になります。つまり合計23日の間、勾留される計算。その後、立場が被疑者から被告人に代わり、罪が重い場合や証拠隠滅の恐れがあるケースでは、被告人勾留となって表に出られませんが、今回はすんなりと保釈されています。もし10億円を盗んだ泥棒だったら、こんなに簡単に釈放されませんよね」(同) つまり、転職した技術者が不正にSBのデータを持ち出した事実は間違いなかったものの、どうやら実態として大きな被害があったとは見なされなかったわけだ。 携帯電話の事情に詳しい業界誌記者が解説する。 「どこの電柱にSBのアンテナが設置されているのかという情報を、楽天が欲しがったのではないかとも疑われたのですが、専門家に聞くと、それはないだろうという返事でした。というのも、SBと楽天では割り当てられた周波数が全く別。わかりやすく言えば、SBの電波のほうが届きやすい。だからアンテナ設置のメソッドを真似しても意味がないそうなのです」 価値もなく、意味もなく、ただただ厄介なデータを知らずに持ち込まれたとすれば、楽天は貰い事故と泣くしかない。捜査関係者が言う。 「なぜそんな役にも立たないデータを持ち出したのかが疑問ですが、被疑者はこんな大事になるとは思わず、ほんの軽い気持ちだったようです。彼は川崎の高校を卒業した後、コーヒーメーカーや郵便局、通信工事会社などに勤めた後、2004年ごろ、ソフトバンクに入社しました。コンピューターの専門家でもなく、現場でスキルを身に着けたタイプ。だからデータを取った時も、自分が普段使っているGメールアドレスに送っているくらいで、隠そうという意図もなかったようです」 軽率な行動が予想もしない災いを招いてしまう典型パターンだが、そんなお粗末な内情がSBと楽天、警視庁という三者の間で共有された矢先、10億円訴訟のニュースが飛び出し、警視庁も楽天も腰を抜かしたのである。 裁判所担当デスクも驚いたという。 「実は楽天モバイル側とSBは東京地裁の仲介により、3月半ばに和解の審尋調書を作成しています。これはSBが楽天に対し、取られたデータの利用停止を求める仮処分命令申立てを行ったことに対応した和解です。今後お互いに誹謗中傷、名誉棄損、業務妨害に当たる言動を行わないという一項目が入っていて、一般的には手打ちが行われたと見なされていました。不思議なのは、1000億円の請求権があるのに10億円を請求するという訴訟の手法で、これは極めて珍しい。おそらく、裁判を起こす時の申立手数料が、請求額1000億円の場合は1億602万円掛かるのに比べ、10億円の場合は302万円で済むという現実的な費用が関係しているのでしょうが……」 だが、本当に実質的な損害が生じていなかったとすれば、10億円訴訟の見通しはSBにとって決して明るいものではない。先制攻撃を仕掛けたはいいが、法廷の場で楽天モバイルから反撃を受け、損害を実証できなければ、被害者の顔をして法外な請求を行うボッタクリ企業の汚名を着せられかねない』、「SBと楽天では割り当てられた周波数が全く別。わかりやすく言えば、SBの電波のほうが届きやすい。だからアンテナ設置のメソッドを真似しても意味がないそうなのです」、「000億円の請求権があるのに10億円を請求するという訴訟の手法で、これは極めて珍しい。おそらく、裁判を起こす時の申立手数料が、請求額1000億円の場合は1億602万円掛かるのに比べ、10億円の場合は302万円で済むという現実的な費用が関係しているのでしょうが……」、「SB」側のやり方も酷くケチ臭い。大きく手を振り上げた割には、ネズミ1匹で終わる可能性もありそうだ。

次に、6月2日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの有森隆氏による「楽天グループ<上>中国大手テンセントの出資が政治問題化」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/289945
・『三木谷浩史会長兼社長の起死回生の大勝負は成功するのだろうか? 4月1日、社名を楽天グループに変更。第三者割当増資で2423億円を調達した。 内訳は日本郵政が1500億円、中国ネット大手の騰訊控股(テンセント)グループが657億円、米小売り最大手ウォルマート・ストアーズが166億円を出資。ほかに、三木谷氏の息子や娘たちの資産管理会社・三木谷興産とスピリットが合わせて100億円を拠出した。日本郵政が楽天の発行済み株式の8・3%を保有する第4位の大株主、テンセントが同3・65%で第5位になった』、なりふり構わず資本調達した感じだ。
・『「経済安保」の観点から  テンセントの出資が「経済安保」の観点から楽天を揺るがす問題に発展した。菅義偉首相が渡米し、バイデン大統領との首脳会談を間近に控えており、首相官邸で開いた会議で「米政府の対応」がホットな議題となった。 トランプ前大統領は今年1月、テンセントのアプリに関し、米国内の取引を禁じようと考え、大統領令に署名した。民間技術が軍事転用される恐れがある中国への情報漏洩を防止するのが目的で、「安全保障上の措置」と強調した。 政権が交代しても米国のテンセントへの厳しい評価は変わっていない。官邸がテンセントの出資を懸念した理由もここにあった。 菅首相とバイデン大統領が初めて臨んだ4月16日の首脳会談で、日米の経済安保協力は主要議題となった。安全性の高い第5世代移動通信ネットワーク「5G」の推進や、半導体など重要物資の供給網(サプライチェーン)構築での協力の拡大で合意した。 バイデン政権は安全保障や経済を巡って対立する中国の覇権を警戒し、安全保障上、特に重要な製品のサプライチェーンの脱中国依存を目指している。 日米首脳会談の4日後の4月20日、共同通信が「日米、楽天を共同監視 中国への情報流出を警戒」と報じた。〈テンセントの子会社が3月末に楽天の大株主となったことを踏まえ、日米の顧客情報がテンセントを通じて中国当局に筒抜けになる事態を警戒。日本政府が外為法に基づいて楽天から定期的に聞き取り調査を行い、米当局と内容を共有することで中国への情報流出リスクに連携して対処する〉という内容だった。 米欧は相次いで中国企業による投資規制を強化したが、日本は出遅れていた。「日本が中国への技術輸出の抜け穴になっている」との批判を招きかねない。そこで経済産業省が中心になって19年末に外為法を改正した。 改正外為法では、外国の投資家が指定業種の上場企業の株式を取得する際に、事前届け出が必要な基準値を従来の10%から1%に引き下げた。国の安全を損なう恐れが大きい業種を武器製造、原子力、電力、通信に絞り込んだ。携帯電話事業の楽天は、この対象に入る。 ただし、「非公開の技術情報にアクセスしない」「自ら役員に就任しない」などの条件を満たした場合には、事前届け出を免除する制度を導入した。テンセント子会社の出資は1%を上回るが、テンセントは事前届け出をしていない。楽天は「テンセントは純投資で、免除ルールをクリアしていると認識していた」とした。 楽天がどう説明しようと、テンセントの楽天への出資は経済安全保障上のテーマに浮上したのである。 この事態に三木谷会長兼社長はいら立ちを隠さない。4月30日、楽天モバイルがiPhoneを扱うことになった記者会見の場で「基本的にはエクイティー(株式)出資で、取締役の派遣などもない。何をそんなに大騒ぎしているのか全く意味が分からない」と反論した。「(テンセント子会社は)米テスラなどにも投資している一種のベンチャーキャピタルだ」とも述べた。) 三木谷氏が実態をきちんと把握していないことを露呈したような発言と受け取られた。 「テスラはEV(電気自動車)屋だろ。楽天は情報通信会社。通信は国の安全を左右するインフラを担っているという社会的責任について理解が不足している」(自民党の商工族議員) “裸の王様”の三木谷氏に、きちんと情報を伝える政府関係者も側近もいないということなのだろうか? 三木谷氏は5月14日に放送された米CNNテレビのインタビューで〈新型コロナウイルスの世界的流行が収まらない中で東京五輪の開催は「自殺行為だ」と〉菅首相を間接的に批判した。〈日本政府の新型コロナ対応について「10点満点で2点」〉と辛口の採点をした。 「コロナ敗戦」を追及することで「かつては“盟友”といわれた菅首相に、しっぺ返しをした」(永田町筋)との指摘も出た。=つづく』、「「テスラはEV(電気自動車)屋だろ。楽天は情報通信会社。通信は国の安全を左右するインフラを担っているという社会的責任について理解が不足している」、との批判はその通りだ。「「コロナ敗戦」を追及することで「かつては“盟友”といわれた菅首相に、しっぺ返しをした」(永田町筋)との指摘」、本当は「菅首相に、しっぺ返し」するほどの余裕はない筈だ。

第三に、この続き、6月3日付け日刊ゲンダイ「楽天グループ<下>携帯電話基地局の先行投資で大赤字」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/290000
・『三木谷浩史会長兼社長は2017年12月、「第4の携帯キャリアー」宣言をした。業界関係者は、これには度肝を抜かれた。NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3社が設備投資を終えている4Gに今さら参入しても太刀打ちできないことが分かっていたからだ。 既存大手の3社寡占に業を煮やした安倍晋三政権の菅義偉官房長官は、三木谷氏を“変革者”に見立て、「料金引き下げの急先鋒になれ」と促した。菅氏は18年8月、「携帯電話料金は4割下げられる」と爆弾発言。「(19年10月の楽天の参入によって)通信料金は様変わりするだろう」と語っていた。 ところが第4のキャリアーとして参入するはずだった楽天モバイルが、基地局の整備の遅れで、いきなりつまずいた。 20年4月、楽天はようやく携帯電話事業に参入した。だが、携帯電話業界を取り巻く環境は急変していた。菅氏が値下げカードとしてまず切ったのは、国策会社NTTによるNTTドコモの完全子会社化だった。 昨年9月、菅政権の誕生とともに、NTTドコモは携帯電話料金の値下げ策を打ち出した。これにKDDI、ソフトバンクも追随。“官製値下げ”が実現した』、「楽天モバイルが、基地局の整備の遅れで」、「つまずいた」以上、「NTTドコモ」を中心とした「“官製値下げ”」、で対応せざるを得なかったのだろう。
・『ユーザー集めたら高値で売却、との憶測も  三木谷氏にしてみれば、「2階に上がってハシゴを外された」心境だったろう。これで携帯電話事業から撤退するかと思いきや、「4位にとどまるつもりはない。圧倒的な地位を築く」とオンライン会見で攻めの姿勢を強調した。基地局を整備するため、大規模な第三者割当増資を敢行。日本郵政や中国ネット大手のテンセントの子会社など計5社を引受先に2423億円を調達した。 楽天モバイルの4Gと5Gの基地局整備に充当する。 さらに、データ1ギガバイトまで無料。「ユーザーを集めるだけ集め、(楽天モバイルを)高値で売却するのでは」(携帯電話業界の首脳)などという、うがった見方が浮上したほどだった。 三木谷氏は日本全国に郵便局網を持つ日本郵政との提携の可能性に懸けたのか? 2万4000局ある郵便局の屋上に携帯電話の基地局を設置できれば、基地局の立地難は一気に解消する。郵便局に特設ブースを設け、オンラインで楽天ケータイを取り扱うというアイデアを披露した。 楽天モバイルの実店舗は全国に600店しかない。大手3社は2000店舗を超えており楽天の3倍以上だ。「三木谷流の起死回生策」(前出の業界首脳)と呼ばれた。 実質的な国有会社といえる日本郵政(政府の出資比率は56.8%。財務大臣名義)が、楽天モバイルの基地局整備のために巨額の投資をすることが許されるのか。日本郵政の楽天との提携のメリットは何なのか。「そもそも、郵政は国内での新規投資は考えていなかったはずだ」(日本郵政の元役員)。楽天主導の数々の構想に疑問が噴出した。 永田町には「菅政権による、かたちを変えた楽天救済策」(自民党の通信族議員)といった指摘もある。 19年12月期決算から基地局などへの先行投資が急激に膨らんでいる。20年12月期連結決算(国際会計基準)の純損失は1141億円。21年1~3月期も251億円の赤字のままだ。最終赤字は3四半期連続である。 21年夏までに自社回線による人口カバー率を96%と、5年前倒しする計画で4Gと5Gの基地局投資は合計1兆円になる。既に4000億円強を投じたが、今後、5000億~6000億円が必要になる。 楽天カードが順調で金融事業が稼ぎ頭となっている。金融事業を本体から切り出して新規株式公開(IPO)するかもしれない。 いずれにしても、この難局を切り抜けるウルトラCはなさそうだ』、「菅政権による、かたちを変えた楽天救済策」、うがった見方だが、案外、いいところを突いているかも知れない。「この難局を切り抜けるウルトラCはなさそうだ」、さて「楽天」は如何に「難局を切り抜ける」のだろうか、大いに見物だ。
タグ:携帯 日刊ゲンダイ デイリー新潮 有森隆 ・スマホ (その6)(転職社員がデータ漏洩… ソフトバンクが楽天モバイル提訴で「10億円請求」の不可解、楽天グループ<上>中国大手テンセントの出資が政治問題化、楽天グループ<下>携帯電話基地局の先行投資で大赤字) 「転職社員がデータ漏洩… ソフトバンクが楽天モバイル提訴で「10億円請求」の不可解」 「SB側は1000億円の損害賠償請求権があると主張し、そのうちの10億円分の支払いを求めています。しかし実のところ、本当にそんな巨額の被害があったのかというと、少しハッタリが過ぎるというのが、現在の警視庁当局の見立て」、 「光ファイバーの位置情報というのは、携帯電話会社であればNTTから無料で提供を受けることができるデータ。もう一つの電柱位置に関しても、NTT東日本分が100万円、西日本分が100万円、2つを合わせても200万円程度の価値に過ぎません。また、どちらのデータについても、すでに楽天モバイルが正規ルートで入手していたため、特に組織として必要としていなかったことが判明」、とすれば、「SB側」の提訴の狙いは何なのだろう。 「SBと楽天では割り当てられた周波数が全く別。わかりやすく言えば、SBの電波のほうが届きやすい。だからアンテナ設置のメソッドを真似しても意味がないそうなのです」、 「000億円の請求権があるのに10億円を請求するという訴訟の手法で、これは極めて珍しい。おそらく、裁判を起こす時の申立手数料が、請求額1000億円の場合は1億602万円掛かるのに比べ、10億円の場合は302万円で済むという現実的な費用が関係しているのでしょうが……」、「SB」側のやり方も酷くケチ臭い。大きく手を振り上げた割には、ネズミ1匹で終わる可能性もありそうだ。 「楽天グループ<上>中国大手テンセントの出資が政治問題化」 なりふり構わず資本調達した感じだ。 「「テスラはEV(電気自動車)屋だろ。楽天は情報通信会社。通信は国の安全を左右するインフラを担っているという社会的責任について理解が不足している」、との批判はその通りだ。 「「コロナ敗戦」を追及することで「かつては“盟友”といわれた菅首相に、しっぺ返しをした」(永田町筋)との指摘」、本当は「菅首相に、しっぺ返し」するほどの余裕はない筈だ。 「楽天グループ<下>携帯電話基地局の先行投資で大赤字」 「楽天モバイルが、基地局の整備の遅れで」、「つまずいた」以上、「NTTドコモ」を中心とした「“官製値下げ”」、で対応せざるを得なかったのだろう。 「菅政権による、かたちを変えた楽天救済策」、うがった見方だが、案外、いいところを突いているかも知れない。 「この難局を切り抜けるウルトラCはなさそうだ」、さて「楽天」は如何に「難局を切り抜ける」のだろうか、大いに見物だ。
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自動車(一般)(その5)(自工会豊田会長「3度目の警告」 岐路に立つエンジン、コロナ禍で露呈「トヨタ生産方式」の決定的な弱点 利益を出すために無駄を省きすぎた末路、「トヨタが車を売らなくなる日」が目前に迫る意味 脱・製販分離で中古車を新車ラインに流す妙技) [産業動向]

自動車(一般)については、2月1日に取上げた。今日は、(その5)(自工会豊田会長「3度目の警告」 岐路に立つエンジン、コロナ禍で露呈「トヨタ生産方式」の決定的な弱点 利益を出すために無駄を省きすぎた末路、「トヨタが車を売らなくなる日」が目前に迫る意味 脱・製販分離で中古車を新車ラインに流す妙技)である。

先ずは、4月27日付け日経ビジネスオンライン「自工会豊田会長「3度目の警告」 岐路に立つエンジン」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00109/042700084/
・『「私たちの目指すゴールはカーボンニュートラル(炭素中立)なのであって、その道筋は1つではない。脱炭素の出口を狭めないでほしい」 4月22日、日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は定例会見に臨み、ガソリン車廃止に傾く国の政策に異議を唱えた。会見時間をほぼ丸々使い切って脱炭素政策に警告を発するのは、昨年12月以来、3度目のことだ(関連記事:「100万人が雇用失う」自工会・豊田会長、再エネ遅れに危機感)。 菅義偉内閣は昨年10月、日本が2050年までに炭素中立を実現する目標を宣言。昨年12月にその工程表である「グリーン成長戦略」で、30年代半ばまでに乗用車の新車販売でガソリン車をゼロにすることを掲げた。 自工会は炭素中立に全力で協力すると表明済みだが、そのための方法が日本の自動車産業の競争力を削(そ)ぐものであってはならないというのが豊田会長の主張だ。約3万点あるガソリン車の部品のうち、1万点は内燃機関に関連するとされ、「ガソリン車を禁止すればその雇用が失われる。噴射技術など日本が培ってきた強みも失われてしまう」と訴えた』、「自工会」「会長」としては当然の主張だ。
・『「e-fuel」で内燃機関延命  そこで提言したのがバイオマス(生物資源)燃料や水素などから作る液体燃料「e-fuel」の普及だ。ガソリンから切り替えれば内燃機関からの二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に減らせるという。 全国に約7800万台ある保有車のほとんどがハイブリッド車(HV)を含めエンジン駆動であり、自動車の長寿命化も進んでいる。そうした車両からのCO2排出削減のためにも燃料の脱炭素化が重要だとした。政策が電動車普及一辺倒になってしまえばそのチャンスを見過ごすとの問題提起だ。 ただし、e-fuelは既存の燃料に比べて高コストで現状は大量供給も難しい。化石燃料の改質で水素を作るとCO2が出るため、再生可能エネルギーやCCS(CO2の回収・貯留)技術を利用する必要があり、量産のハードルは高い。 そんな中、驚きのニュースが舞い込んだ。内燃機関の技術を磨いて国内自動車大手の最後発からのし上がったホンダが、ガソリン車を手放す覚悟を決めたのだ。40年までに世界の新車販売を全て電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)にする目標を発表した(関連記事:ホンダ、40年に新車を全てEV・FCVに「高い目標こそ奮い立つ」)。) 世界では内燃機関への包囲網が広がっている。米ワシントン州議会は4月15日、乗用車の新車の販売・登録を、30年以降は動力が電気モーターのみの車両に限る法案を可決した。 トヨタもEVの市場投入のギアを一段引き上げた。19日に開幕した上海国際自動車ショーで、SUBARUと開発した新EVシリーズ「TOYOTA bZ」を発表。従来は4車種だったEVを25年までに15車種へと大きく広げる。 菅首相は22日、30年度に日本の温暖化ガス排出量を13年度比で46%削減すると表明。従来目標の同26%減から大幅に引き上げた。ただし、19年度実績は同14%減にとどまる。「英断だが、残り10年でどうやって積み上げるのか」と有識者も首をかしげるほど高い目標の下、主要排出源である自動車の産業界はあらゆる手を尽くさなければならない状況に追い込まれている。 「自動車産業を脱炭素政策のペースメーカーにしてほしい」。豊田会長は会見でそう繰り返した。気候変動を巡る国際情勢や市場の急激な変化に自動車産業の裾野が取り残されており、基幹産業のピラミッドが崩壊すれば日本経済が危機に陥ると警告する。 欧・米・中の自動車メーカーに加え、米アップルや中国・華為技術(ファーウェイ)などの新規参入組がEVで攻勢をかける。国境を越えて新旧勢が入り乱れる「100年に1度の大変革」の中、盟主トヨタは「全方位」の戦いに突き進む。CO2排出量の削減に貢献してきたHVを支える自社や部品メーカーの付加価値や雇用を守りつつ、炭素中立に向けた構造転換も急がなくてはならない。豊田会長の焦燥はしばらく続きそうだ』、確かに「残り10年で」「32%削減」するのは困難そうだ。「米アップルや中国・華為技術(ファーウェイ)などの新規参入組がEVで攻勢」、「100年に1度の大変革」をどう乗り切っていくのか、大いに注目される。

次に、6月9日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「コロナ禍で露呈「トヨタ生産方式」の決定的な弱点 利益を出すために無駄を省きすぎた末路」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/433160
・『現代世界の成り立ちを語るとき、産業効率に飛躍的な進歩をもたらした大先生としてトヨタ自動車の名前は外せない。この日本の自動車メーカーは、部品を必要なときに必要なだけ工場に届けることで在庫を極限までそぎ落とす「ジャスト・イン・タイム(JIT)」生産方式の先駆者だ。 半世紀以上にわたり、このアプローチは世界中の企業を魅了してきた。その影響力は自動車業界の枠をはるかに超える。ファッション、食品加工、製薬など、さまざまな業種の企業が機動性を保つためにJITを取り入れ、市場の変化への対応とコスト削減を両立させてきた』、確かに「JIT」は数少ない日本発の経営管理手法だ。
・『本家本元の自動車業界が「ガス欠」  ところがコロナ禍による経済の混乱で、在庫を持たない経営のメリットに疑念が生じている。「一部の業界はJITを徹底するあまり混乱に打たれ弱くなったのではないか」との懸念にあらためて火がついたのだ。パンデミックが工場の操業を妨げ、世界の物流を混乱に陥れたことで、世界各国は電子機器から木材、衣料品に至る広範な物不足に悩まされている。 激しく揺れ動く世界経済にJITは追いつけていない。 JITへの過度な依存は、同生産方式を生み出した自動車業界に最も顕著に表れている。自動車メーカーは、主にアジアで生産されている半導体不足に苦しめられている。半導体は自動車生産に欠かすことのできない重要部品だ。その半導体が十分に手に入らなくなったことから、自動車の組立ラインはインド、アメリカ、ブラジルなど、さまざまな地域で停止を余儀なくされている。 物不足が広範囲にわたって持続している現状から見えてくるのは、いかにJITの発想が商業活動を支配するようになったか、だ。ナイキなどのアパレルブランドが小売店に対し店頭在庫を積み増しさせるのに苦労しているのは、ある意味でJITの影響だ。建設会社が塗料やシーリング材の調達に難儀する一因もJITにある。パンデミックの初期段階では個人用保護具が悲惨なまでに不足し、最前線で働く医療従事者が半ば「丸腰」となったが、こうした事態を招いた主因もJITにあった。 JITはビジネス界においては、まさに革命といっても過言ではない。在庫をスリムに保つことで、大手小売店は売り場スペースを一段と有効活用し、さらに幅広い種類の商品を陳列できるようになった。無駄のないリーンな生産方式のおかげで、企業はコストの大幅削減と同時に新製品への迅速な切り替えが可能となった。 こうした強みは企業に付加価値をもたらし、イノベーションを促し、商売を加速させた。それゆえコロナ危機が沈静化した後も、JITが長期にわたって力を持ち続けるのは間違いない。JITによって浮かせたコストで企業は配当や自社株買いを行い、株主に報いてもきた』、「JIT」は物が潤沢に溢れ、必要であれば直ちに入手できる環境を前提にしていたが、この前提が成立しなくなったようだ。
・『利益拡大に前のめりすぎた?  それでも、今回の物不足をきっかけに、次のような疑問が浮かび上がっている。「一部企業は在庫削減による利益拡大に前のめりとなりすぎたのではないか、そのせいで想定できた事態への備えを怠る結果となったのではないか」という疑問だ。 マサチューセッツ大学の経済学者ウィリアム・ラゾニックは「必要な投資が行われなかった」と話す。 世界経済を襲う物不足は、もちろん在庫の引き締めだけに起因するわけではない。新型コロナウイルスの感染拡大で港湾労働者やトラック運転手が以前のように働けなくなり、アジアの工場で生産され、北アメリカやヨーロッパに海上輸送される製品の荷下ろしや流通が滞った。 製材所の操業もパンデミックで停滞し、木材不足からアメリカの住宅建設が進まなくなった。メキシコ湾の石油化学工場が大寒波で停止したことも、主要製品の供給不足につながった。 こうした状況がとりわけ痛手となった企業には、コロナ危機となる以前から、そぎ落とした在庫で切り盛りしていたところが少なくない。 さらに、多くの企業はJITの徹底と同時に、中国、インドといった低賃金国のサプライヤー(調達先)への依存度を深め、国際輸送の混乱が直撃する構図となっていた。今年3月にはスエズ運河で大型コンテナ船が座礁し、ヨーロッパとアジアを結ぶ主要な水路が封鎖される事態となったが、このように歯車がちょっと狂っただけで被害が増幅するメカニズムだ。 「人々は(無駄を徹底して削る)この種のリーン思考を取り入れ、それをサプライチェーンに適用したが、これは低コストで信頼性の高い輸送が利用できることが大前提になっていた」とハーバード・ビジネス・スクール(HBS)で国際貿易を専門とするウィリー・C・シーは語る。「そして、このシステムはいくつかのショックに見舞われている」。 ペンシルベニア州コンショホッケンでは、アンドリュー・ロマノが文字どおり船の到着を待ちわびていた。 ロマノは全世界から化学製品を調達し、塗料やインクなどを製造する工場に販売するバンホーン・メッツ・アンド・カンパニーの販売担当バイスプレジデントだが、同社は建材メーカーに販売する特殊用途の樹脂を十分に確保できていなかった。 その樹脂を供給しているアメリカのサプライヤーも、中国の石油化学工場から、ある素材が調達できずにいた。 ロマノの得意先である塗料メーカーは、完成品の出荷に必要な金属缶が十分に手に入らないことから、化学薬品の発注を手控えていた。「すべてが連鎖している。もうしっちゃかめっちゃかだ」とロマノは言う。 もっとも、JITとグローバルなサプライチェーン(供給網)に過度に依存するリスクはコロナ禍となる前からすでに明らかになっていた。専門家らはその帰結について何十年と警鐘を鳴らし続けてきた。 例えば、1999年に台湾を揺るがした地震では、半導体工場がストップした。2011年に日本に甚大な被害を及ぼした地震と津波でも、工場の停止や物流の停滞から自動車部品や半導体が足りなくなった。さらに同年にタイで発生した洪水でも、コンピューターに使うハードディスクドライブ(HDD)の生産が急落した。 こうした災害が起こるたびに、「企業は在庫を積み増し、サプライヤーを多様化する必要がある」との議論がかまびすしくなった』、「多くの企業はJITの徹底と同時に、中国、インドといった低賃金国のサプライヤー(調達先)への依存度を深め、国際輸送の混乱が直撃する構図となっていた」、「こうした災害が起こるたびに、「企業は在庫を積み増し、サプライヤーを多様化する必要がある」との議論がかまびすしくなった」、その結果はどうだったのだろう。
・『それでも企業はリスク承知で突き進む  しかし、多国籍企業はこうした事態となっても、それまでの手法を改めることなく突き進んだ。 これまでJITを売り込んできたコンサルタントは現在、「サプライチェーン・レジリエンス」の伝道者となっている。サプライチェーン・レジリエンスとは、強靱で復元力の強い調達網を意味する近頃はやりのバズワードだ。 結局のところ、JITはこれまで企業に利益をもたらし続けてきた。こうした単純な理由から、企業のJIT依存は今後も続いていくに違いない。 「まさに『企業が経営の重要な判断基準として低コストの追求をやめるのかどうか』という点が問題になっているわけだが、企業行動が変わるとも思えない」とHBSのシーは話す。「消費者は危機的な状況にでもならない限り、レジリエンスにお金を払ったりはしないものだ」』、「多国籍企業はこうした事態となっても、それまでの手法を改めることなく突き進んだ」、「結局のところ、JITはこれまで企業に利益をもたらし続けてきた。こうした単純な理由から、企業のJIT依存は今後も続いていくに違いない」、なるほど。

第三に、6月20日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの桃田 健史氏による「「トヨタが車を売らなくなる日」が目前に迫る意味 脱・製販分離で中古車を新車ラインに流す妙技」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/435166
・『ついにトヨタが、クルマの商流を根本的に変える大仕事に着手する。新車から中古車、そして廃棄されるまでの“クルマの一生”をメーカーが管理する資産運用体制が、今後トヨタを筆頭に本格化しそうだ。 具体的にどのようなことなのか、直近のトヨタの正式発表事項から紹介する。 2021年6月7日、“トヨタとKINTO、「人に寄り添って進化するクルマ」に挑戦~GRヤリス “モリゾウセレクション”をKINTO限定で取扱い開始~”というオンラインでの記者発表があった。 KINTOはトヨタが2019年2月に始めた、いわゆるサブスク(サブスクリプションモデル)で、保険や税金を含んだ定額の月額料金で新車を販売する、これまでの“売り切り型”とは異なる新車販売の手法だ。 また、「GRヤリス」は世界ラリー選手権(WRC)に参戦するラリー競技車から技術的なフィードバックを受けた少量生産のハイパフォーマンスカーで、“モリゾウ”は豊田章男社長が車両開発ドライバーやレーサーとして活動するときの愛称である』、「クルマの商流を根本的に変える大仕事に着手」、どういうことだろう。
・『クルマも「ソフトウェアアップデート」の時代へ この発表で注目されるのは、クルマのソフトウェアを顧客の運転特性に応じてアップデートすること。専門の「GRガレージ」で、担当者がユーザーと協議しながら話を進めるというメニューだ。 この話は、レースやサーキット走行といったクルマ好きに向けたサービスだけにとどまらず、「(将来的には)安心安全を実現するため多様なモデルでの展開を視野に入れている」(トヨタ幹部)という。 クルマに関連したデータ管理については、2010年代から自動車業界とIT・通信業界の間で、コネクテッドカーという領域で議論が進んできた。 一般的に、スマホなどパーソナル通信機器が1~2年で新型化するのに対して、クルマのフルモデルチェンジは6年前後で、車歴でみれば10年を超える。そのため、自動車メーカーとしてハードウェアのアップデートは難しくても、ソフトウェアを最新化することで最新サービスを顧客に提供できるという仕組みだ。 こうしたクルマのソフトウェアアップデートには、「新車売り切り型よりKINTOのほうが相性がよい」とトヨタは見る。KINTOでのクルマの所有権は、トヨタ直系のサービス提供企業である株式会社KINTOに帰属している。) 顧客に対して個人情報保護を明確にしたうえで、新車を売り切り型にしないほうが、市場に出回るクルマの情報を自社でコントロールしやすいからだ。 さらに、この記者発表の中で、新車または中古車として市場に出回ったクルマの内外装のカスタマイズについても、KINTOとしてさらなる検討を行う旨の発言があった。これは、2020年1月から実験的に始めた、中古車版「KINTO ONE」の応用との印象を持った』、「こうしたクルマのソフトウェアアップデートには、「新車売り切り型よりKINTOのほうが相性がよい」、その通りだ。
・『中古車を新車製造ラインに流す、重大な意味  前述の会見の4日後、トヨタの製造部門の統括者による“未来を拓く大切なものづくり”というオンライン会見があった。 この中で、「KINTOで取り扱う中古車をリノベーションし、ワクワクするような車に仕立て直して提供することにトライする」、また「中古とは思えない質感、あるいは他にはない外観や内装の提供など、お客様にとって自分だけの1台をお届けすると同時に、循環型社会にも貢献していきたい」という、自動車メーカーとしてこれまで経験のない領域へ本気で踏み込む姿勢を明らかにした。 記者との質疑応答では、トヨタ側は中古車リノベーションをする場所について販売店、または新車の「最終組立工場内にサブラインを設置する可能性がある」と説明した。 新車の製造ラインに“中古車が出戻ってくる”ことは、メルセデス・ベンツやマツダなどが“旧車レストア“として新車とは別工場で対応する事例はあるが、新車製造ラインとして見ればこれまでの自動車産業界の商流では“ありえない話”であり、販売店にとしては“極めて重大な事案”として捉えている。 なぜならば、自動車商流の根源である“製販分離の終焉”につながりかねないからだ。 改めて商流として自動車産業を見てみると、自動車メーカーは自動車部品メーカーに対して部品の開発や生産を依頼し、またボディの原料である鋼板などを仕入れ、最終組立工場でボディ(板金)、溶接、塗装、組み立て、検査という製造ラインを通じて新車を製造。新車は最終組立工場から出荷され、国内や海外の新車正規販売店で卸売り販売される。 新車正規販売店は、日本の場合、マツダやスバルなどメーカーが直接資本を投じる形式が多いメーカーもあるが、近年は地場企業が主体の傾向が強まっている。トヨタの場合、東京中心部を管轄する「トヨタモビリティ東京」がトヨタの直接資本である。そのほか、海外では各メーカーとも、地場企業による販売店経営が主流だ。 さて、日本のトヨタ大手ディーラー経営者が「トヨタの顧客は我々販売店だ」と言い切るように、メーカーは文字通り製造専業社であり、その販売部門は正規販売店向けの卸売り事業にとどまる。 顧客が新車購入する際に対面するのは、あくまでも販売店であり、メーカー直接ではない。中には販売店と顧客情報を共通するシステムを有するメーカーもあるが、基本的に顧客情報は販売店に帰属する場合が多いのが実情だ。筆者が自動車メーカー各社幹部らと定常的な意見交換をする中で、そのように解釈している。 このように新車の製造と卸売り・小売りとの間には大きな壁があり、一般的に“製販分離“と呼ばれる。この常識が、前述のKINTO新事業によって崩れる可能性が出てきたのだ。 繰り返して説明するが、KINTOでも新たな取り組みはメーカーが新車を製造した後、メーカー直属企業が資産として新車を保有し、経年劣化した後はリノベーションした中古車として再びサブスク化するという商流サイクルの創出だ。そして、商流の中でのデータ管理を定常的に行う。 こうした新しい商流により計画的な生産体制も可能となり、結果的に生産台数は減少傾向に転じる可能性があるが、メーカーが販売サービスに直接関与することで、メーカーが関わる事業はトータルで拡大し収益性も高まる。さらに、LCA(ライフサイクルアセスメント)の観点でのCO2排出量の管理もしやすくなるという利点がある。 そうなると、困るのは新車正規販売店だ。販売店の事業形態は販売・修理業からサービスプロバイダーへの転換といわれて久しいが、多くの販売店は、いまだに旧態依然とした業態から脱却するための明確な方向性は示すことができていない』、「新車の製造ラインに“中古車が出戻ってくる”ことは、メルセデス・ベンツやマツダなどが“旧車レストア“として新車とは別工場で対応する事例はあるが、新車製造ラインとして見ればこれまでの自動車産業界の商流では“ありえない話”であり、販売店にとしては“極めて重大な事案”として捉えている。 なぜならば、自動車商流の根源である“製販分離の終焉”につながりかねないからだ」、確かに革命的な変化だ。「困るのは新車正規販売店だ。販売店の事業形態は販売・修理業からサービスプロバイダーへの転換といわれて久しいが、多くの販売店は、いまだに旧態依然とした業態から脱却するための明確な方向性は示すことができていない」、その通りだろう。
・『販売は「オンライン」が当たり前に  さらに、販売店にとっては“EVシフトにおけるオンライン販売”という大きな時代の変化にも直面している。 例えば、ボルボは2030年までにグローバルで全モデルをEV化するとし、日本市場では2021年秋発売予定のEVの「C40 Recharge」を完全オンライン販売とし、販売店はそのサポート役にまわると発表した。 また、日産は2021年6月4日にEVの日本仕様「アリア limited」予約販売開始を発表した際、アリアにおいてもオンライン販売を積極的に展開することを示唆している。 EVは駆動用バッテリーの経年劣化の管理や充電インフラとのマッチングなど、データ管理の重要性が高い面もあり、オンラインによるサブスク販売との相性がいいと考えられる。 コネクテッド技術の開発とEVシフトによって、自動車産業の製販分離の解消が数年以内に一気に進むのかもしれない。今後の業界動向を注視していきたい』、「自動車産業の製販分離の解消が数年以内に一気に進むのかもしれない」、「今後の業界動向」が大きな注目点だ。
タグ:自動車 東洋経済オンライン The New York Times 日経ビジネスオンライン (一般) 桃田 健史 (その5)(自工会豊田会長「3度目の警告」 岐路に立つエンジン、コロナ禍で露呈「トヨタ生産方式」の決定的な弱点 利益を出すために無駄を省きすぎた末路、「トヨタが車を売らなくなる日」が目前に迫る意味 脱・製販分離で中古車を新車ラインに流す妙技) 「自工会豊田会長「3度目の警告」 岐路に立つエンジン」 「自工会」「会長」としては当然の主張だ。 確かに「残り10年で」「32%削減」するのは困難そうだ。「米アップルや中国・華為技術(ファーウェイ)などの新規参入組がEVで攻勢」、「100年に1度の大変革」をどう乗り切っていくのか、大いに注目される。 「コロナ禍で露呈「トヨタ生産方式」の決定的な弱点 利益を出すために無駄を省きすぎた末路」 確かに「JIT」は数少ない日本発の経営管理手法だ。 「JIT」は物が潤沢に溢れ、必要であれば直ちに入手できる環境を前提にしていたが、この前提が成立しなくなったようだ。 「多くの企業はJITの徹底と同時に、中国、インドといった低賃金国のサプライヤー(調達先)への依存度を深め、国際輸送の混乱が直撃する構図となっていた」、「こうした災害が起こるたびに、「企業は在庫を積み増し、サプライヤーを多様化する必要がある」との議論がかまびすしくなった」、その結果はどうだったのだろう。 「多国籍企業はこうした事態となっても、それまでの手法を改めることなく突き進んだ」、「結局のところ、JITはこれまで企業に利益をもたらし続けてきた。こうした単純な理由から、企業のJIT依存は今後も続いていくに違いない」、なるほど。 「「トヨタが車を売らなくなる日」が目前に迫る意味 脱・製販分離で中古車を新車ラインに流す妙技」 「クルマの商流を根本的に変える大仕事に着手」、どういうことだろう。 「こうしたクルマのソフトウェアアップデートには、「新車売り切り型よりKINTOのほうが相性がよい」、その通りだ。 「新車の製造ラインに“中古車が出戻ってくる”ことは、メルセデス・ベンツやマツダなどが“旧車レストア“として新車とは別工場で対応する事例はあるが、新車製造ラインとして見ればこれまでの自動車産業界の商流では“ありえない話”であり、販売店にとしては“極めて重大な事案”として捉えている。 なぜならば、自動車商流の根源である“製販分離の終焉”につながりかねないからだ」、確かに革命的な変化だ。「困るのは新車正規販売店だ。販売店の事業形態は販売・修理業からサービスプロバイダーへの転換といわれて久しいが、多くの販売店は、 「自動車産業の製販分離の解消が数年以内に一気に進むのかもしれない」、「今後の業界動向」が大いに注目される。 「今後の業界動向」が大きな注目点だ。
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電機産業(その3)(バルミューダ 一目置かれる「芸術経営」の神髄 電機大手も見習う手法 目指すは売上高24兆円?、日本電産「満を持しての後継指名」で狙う躍進 日産出身の関社長がCEOに 永守氏は会長に専念、パナソニック「巨額買収」 不安拭えぬ2つの理由 次世代に負の遺産残す「ジンクス」を断てるか) [産業動向]

電機産業については、昨年2月24日に取上げた。今日は、(その3)(バルミューダ 一目置かれる「芸術経営」の神髄 電機大手も見習う手法 目指すは売上高24兆円?、日本電産「満を持しての後継指名」で狙う躍進 日産出身の関社長がCEOに 永守氏は会長に専念、パナソニック「巨額買収」 不安拭えぬ2つの理由 次世代に負の遺産残す「ジンクス」を断てるか)である。

先ずは、本年1月13日付け東洋経済オンライン「バルミューダ、一目置かれる「芸術経営」の神髄 電機大手も見習う手法、目指すは売上高24兆円?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/402821
・『長引くコロナ禍で増えた「おうち時間」により、2020年によく売れた家電がある。『バルミューダ ザ・トースター』だ。 トースターの上部に付属の小さなコップで少量の水を注ぐことで、パンが焼けたときに「窯から出したばかりのような味」が再現できる点を売りにする。 価格は2万5850円とトースターの平均価格の4倍強の高級品。だが、2015年の発売から累計で100万台以上売れており、2020年4~6月期には販売台数の過去最高を更新した』、「平均価格の4倍強の高級品」が「2015年の発売から累計で100万台以上売れており」、とはすごい。
・『規模で勝る大手メーカーも一目置く  このトースターを看板商品に、空調家電、調理家電、掃除機などを展開するバルミューダ。同社が、2020年12月16日に東証マザーズへ上場した。当日は3社が上場したため買いは分散すると思われたが、公募価格より6割高い3150円の初値をつけた。足元の株価は5660円(1月7日現在)と順調なスタートを切っている。 2003年、元ミュージシャンの寺尾玄社長が1人で創業したバルミューダ(当時の社名はバルミューダデザイン)。その規模は、2020年12月期で売上高約120億円(前年同期比14.0%増)、当期純利益は約8億円(同26.9%増)となる見込み。売上高で比較すると、パナソニックの家電事業が2兆3700億円(2021年3月期の見込み)、日立製作所も4530億円(同)と、大手家電メーカーが圧倒する。 【2021年1月14日13時50分追記】初出時の表記を一部修正いたします。 それにもかかわらず、「(バルミューダから)学ばせていただくことは多い」(ある総合電機メーカー家電事業部の幹部)と、お手本としてみる向きがある。既存メーカーが学び取りたい、バルミューダの「強み」とはいったい何なのか。 1つは、自社工場を持たず、中国や台湾、国内の工場に製造委託することで、自社では企画開発と販売に注力する「水平分業体制」を敷いていることだ。ゆえに、営業利益率は10%と高い(パナソニックは3%、日立は5%。いずれも今期の見込み)。ただ、同様の戦略はソニーのゲーム機や一部の家電、任天堂、海外ではアメリカ・アップルなどがつとに採用している。 むしろバルミューダならではの強みといえるのが、すでに市場が成熟しきった汎用品の市場で、相場にとらわれない高単価で製品を販売していることだ。 同社が展開する扇風機やトースター、炊飯器などは、通常であれば製品の老朽化や故障などにより、「必要だから買い替える」際にしか需要は発生しない。さらに、春と冬の2度、商品の入れ替えを行い、新型が発売されるため「型落ち品」はセール対象となって価格競争が巻き起こる』、「市場が成熟しきった汎用品の市場で、相場にとらわれない高単価で製品を販売」するには、デザインなど何らかの強味がある筈だ。
・『社長がだいたいの販売価格を決定  一方、バルミューダの商品の値付けは独特だ。寺尾社長が、この商品であればいくらまで出す、という「消費者感覚」(寺尾社長)に基づいて、開発の初期段階でだいたいの販売価格を決めてしまう。他社製品については「全然見ていない」(同、以下のカギカッコ内も同じ)。 さらに、1つの商品に対して展開するのは「バルミューダ ザ・〇〇」という1つの型だけで、廉価版など価格のバラエティーはない。一度発売したら、5年、10年と1つの型を発売し続け、定価販売が基本だ。 では、消費者はバルミューダのどのような点に価値を見出し、相場より高い家電を買っていくのだろうか。2020年12月下旬に行ったインタビューで、寺尾社長はこう解説する。 「バルミューダは、クリエイティビティーによってお客様に選ばれている会社です。クリエイティブとは、簡単にいえば『創意工夫』のこと。昨日までなかった方法を生み出すことです。当社は、創意工夫をして1つの商品を開発し、そこにいくつも工夫を重ねていく。たとえば、従来のトースターとバルミューダのトースターにはいくつも違いがある」 寺尾社長曰く、その1つが製品の「芸術性」を最高潮にまで高める工夫をしていることだという。たとえば、「そよ風のような扇風機」「窯から出したばかりのパンの味を再現するトースター」といったものだ。 これを担うのが、社長直轄の「クリエイティブチーム」だ。同チームでは、商品を購入することで消費者が得られる体験を設定する。それに基づいて、社内で「原理試作品」と呼ばれる製品の原型を作る。デザインを担うのもこのチームで、高年収の男性が多くを占める顧客から「デザイン家電」と支持される所以(ゆえん)はここにある。 芸術性を高めるうえでは、多くの場合で技術上の工夫が必要になるという。同社の場合は、エンジニアとクリエイティブチームが作った試作品とのすり合わせにより、短期間でブラッシュアップしていく』、『創意工夫』で「「芸術性」を最高潮にまで高める工夫をしている」、とは大したものだ。
・『カタログの表紙は「厚切りトースト」  トースターの場合は、「①水を投入して蒸気を発生させる②ヒーターの温度制御を細かく設定する」という2つの技術的な工夫をすることで、「窯から出したばかりのパンような味」を実現させた。 商品の見せ方にも工夫を凝らす。たとえば、トースターを発売したときは、商品のカタログの表紙に家電そのものを登場させず、焼けた厚切りトーストを並べた。 物語仕立ての開発背景も、バルミューダのブランド力を支える。たとえば、2020年11月に発売された掃除機には「これまでクイックルワイパー派で、掃除機を使うのがおっくうだった寺尾社長が、自分でも欲しいと思える理想的な掃除機を作り出すまで」という物語が用意されている。 この3つの工夫を重ねたうえで、品質管理や生産技術の検討、資金繰りなどを経て、委託先が量産に入るというのが、バルミューダの製品開発の基本スキームなのである。 こうした斬新な開発を担う社員の中には、「日の丸家電」からの転職者たちが多い。幹部クラスでも、取締役ビジネスオペレーション部長にパイオニア出身者、商品設計部長にソニーのエレキ事業の生産部門出身者が名を連ねている。どちらも、一時は業績不振に苦しんだ企業。そこでの失敗経験が、バルミューダでの斬新な企画・開発に生きているのかもしれない』、「物語仕立ての開発背景も、バルミューダのブランド力を支える」、「斬新な開発を担う社員の中には、「日の丸家電」からの転職者たちが多い」、なるほど。
・『課題の管理体制を上場前に改善  もっとも、バルミューダにもアキレス腱がある。品質管理だ。2017年には扇風機、2018年にはトースター、そして2019年には電子レンジのリコールを発表している。中でも打撃が大きかったのは、トースターのリコールだ。スチーム機能での不具合による製品の自主回収・無償交換により、2018年12月期の業績は当期純利益が前年同期比95.7%減の3564万円となった。 実は、バルミューダがIPO(新規株式公開)を志した2015年前時点では、こうした品質をはじめ、コストなども含めた「管理体制」を強化することが、上場の目的だったという。 「売上高30億円くらいまでは『勘と気合とラッキー』で乗り切ることができた。だが、月次決算すら満足に出せない状態でそれ以上は大きくなれないと感じた。『こんな車、運転できねえ』と思って」(寺尾社長)。そこで同社の管理体制を”上場企業品質”に向上させるために使ったのが、上場を目指すという手だった。 その甲斐あって、「以前と比べものにならないくらい良い会社になったと自負している」と寺尾社長は胸を張る。では、名実ともに上場会社となったバルミューダはこれから、何を目指していくのか。 1つが、規模の拡大だ。そのために足元で推し進めているのが、客単価のさらなる向上である。2020年11月に発売された掃除機は税込み5万9400円と、これまでのバルミューダ製品で最も高価な製品だ。同社は、本商品に続けていくつかの新製品を投入し、このクリーナー事業を100億円規模にまで育てる見込みだ。 単価向上のうえでは、上場前に展開してきた生活家電というジャンルにはこだわらない。「客単価の高いものは、一般的に技術の集積度が高いもの。基盤にいくつ部品が乗っているかが重要だ」(寺尾氏)。今後は、2020年6月に発売されたスピーカーのようなAV(オーディオ・ビジュアル)家電のみならず、「家電以外のこともやっていくと思う」と示唆する』、生産を全て外部委託している以上、「品質管理」には殊の外、注意する必要があり、「リコール」が相次いだのも頷ける。
・『120億円の売上高を2000倍に?  さらに、顧客基盤の拡大にも資金を投入する。上場で調達した資金の使途の3分の1は、広告宣伝などのマーケティング費だ。実はこれまで、バルミューダはテレビなどのメディア広告をほとんど打ってこなかったという。 現在、同社のブランド認知度は5割弱だが、これは商品の口コミや、広報活動によるメディアなどへの掲載などによるものだ。今後は、マスメディア向けのCMを打つことで、同社の製品のイメージを直接訴えかける狙いだ。 寺尾社長は、同社の成長目標についてこう語る。「創業初年度の売上高は600万円だった。18年経った今年は約120億円。2000倍になっている。私のポリシーとして、『一度できたことは必ずもう一度できる』というものがある」 計算すると、売上高24兆円になる。もし実現すれば、日本のトヨタやアメリカのアップルの背中が見えてくる規模だ。壮大な目標だが、規模拡大の過程でバルミューダが核とする「芸術性」を際立たせ続けることができるかが問われる』、販売チャネルの説明はなかったが、家電量販店は使っているのだろうか。面白い家電メーカーが出来たものだ。

次に、4月24日付け東洋経済オンライン「日本電産「満を持しての後継指名」で狙う躍進 日産出身の関社長がCEOに、永守氏は会長に専念」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/424670
・『長らく日本電産の最大のリスクとも言われてきた、創業者・永守重信会長兼CEO(最高経営責任者)の後継者問題に解決の光が見えてきた。 同社は4月22日に関潤社長COO(最高執行責任者)をCEOに昇格させる人事を発表した。永守氏は会長職に留任する。同日発表された決算も売上高1兆6180億円(前年同期比5.4%増)、営業利益1600億円(同47.4%増)と増収増益で、当初の会社予想も上回った。 関氏は新型コロナの感染拡大や米中対立など未曾有の外部環境下でも、日本電産の業績を成長させた。また日産自動車副COOの経歴もあり、今後日本電産の成長軸となる車載分野に詳しい。カリスマ経営者である永守氏から後継者に対する権限委譲が順調に進んでいることを印象づけた』、興味深そうだ。
・『苦悩していた「後継者問題」が解決へ  「後継者問題を株主から言われ続け、解決しようとしてきた」。4月22日に開かれた同社のオンライン決算説明会の冒頭で、永守氏はまず今回の人事について語った。 日本電産は1973年の創業以来、創業者の永守氏が率いて急成長を遂げてきた。一方、有価証券報告書に記載される事業等リスクでは、ガバナンス上の課題の一つとして「NIDEC(日本電産)代表取締役会長である永守重信(氏)への依存に係るリスク」(2020年3月期有価証券報告書)が明記されるほど、後継者問題は深刻だった。 永守氏は関氏について「経営手法も(自分と)似ており、決断力や人格などもCEOの後継者としてふさわしい」と強調。そのうえで「会社のビジネスの内容も変わってきており、その分野の得意な人が集まって、会社を成長させていくことが大事」(永守氏)と、拡大する車載向けビジネスを関氏がいっそう成長させられるとして、CEOの後継に推す理由を説明した。 過去、永守氏は後継者選びに苦労してきた。2013年から日本電産入りしたものの2015年に日本電産を去ってルネサスエレクトロニクスの社長に転じた呉文精氏、2018年6月に日本電産の社長に就任したものの関氏の社長就任に伴い副社長となった吉本浩之氏などがその例だ。 いずれも永守氏が求めた経営成績を残せなかったほか、吉本氏の社長就任を機に導入した、役員間で議論しながら経営を進める集団指導体制について「創業以来の最大の間違い」と永守氏は振り返り、最終的にいずれも後継者となれなかった。 日産から日本電産に移籍し、2020年4月に社長COOに就任した関氏について永守氏は、2020年2月の会見で「今回こそは立派な人材が見つかって、気持ちが安らかになった」と評価。だが前例を見れば、実際に永守氏の期待に応えられるかは未知数だった。投資家や業界関係者からこの点に注目が集まっていた』、「今回こそは」「後継者問題」は解決するのだろうか。
・『永守氏は「本来のトップの役割」に専念  関氏は社長就任後に統括した家電や産業用事業で固定費削減などの構造改革を断行。就任前の同事業の営業利益率が約5%だったのに対し、2021年1~3月期には9.8%まで引き上げた。 またEV分野への先行費用が負担となっている車載事業でも成果を出した。コロナ禍の落ち込みで2020年4~6月期は営業赤字に沈んだ同事業を、原価低減や市場シェア拡大などで2020年10~12月期以降は営業利益率7%以上を維持するまでの底上げに成功している。 こうした成果は全社的な収益力の向上にも貢献し、社長就任から1年間の”見極め期間”を経て今回の関氏のCEO昇格が実現し、日本電産の後継者問題に答えを出したといえそうだ。 今後、永守氏は「将来像や事業展開など、本来の経営トップとして(の役割で、会社の)あるべき姿を考える」。一方、関氏はCEOとして経営判断と執行の責任を一体化したスピーディーな運営体制の構築を担っていく。 ただ、関氏がCEOに就任する今回の人事で日本電産の経営方針が大きく変わるかといえばそうではない。) これまでも同社は「ツートップ体制」と称する経営体制を敷いてきた。具体的には、永守氏がM&A戦略など中長期の経営戦略や精密小型モーター分野などを統括し、関氏が車載や家電、産業向けモーターの分野を統括するというものだ。 CEO就任で関氏が統括する事業分野は拡大するが、「毎週、関と2人で話し合うことは続け、フレキシブルに経営する」(永守氏)。加えて「CEOが変わっても、会社ががらりと変わることはない」(同)とも説明した。 永守氏の権限を関氏に一挙に委譲し厳密な役割分担を行うというよりも、あくまで即断即決に最適な体制に移行するのが狙いというわけだ』、「毎週、関と2人で話し合うことは続け、フレキシブルに経営する」(永守氏)。加えて「CEOが変わっても、会社ががらりと変わることはない」(同)とも説明」、余り大きな変化はなさそうだ。
・『スピード経営がEV攻略のカギ  こうした体制を構築することで、とくに成長を加速させたい分野がEV関連だ。日本電産はEVの心臓部といえるトラクションモーター(駆動モーター)に注力している。すでに同社のトラクションモーターを採用した車種の販売台数は累計で約13万台に上る。今後も2025年に年間250万台、2030年に同1000万台という急成長の戦略を描く。 EVは既存の自動車メーカーだけでなく、スマートフォンなど電子機器を手掛けている異業種企業からの参入も期待されている。関氏はEVに参入しようとする異業種企業について、「今引き合いがあるものだと、来年には立ち上げてほしいという(オーダーが来る)」など、既存の自動車業界に比べケタ違いに短い時間軸を要求される点を指摘する。 EV関連については、すでに日本電産にも「異業種から声掛けがきている」(関氏)。そのほか、同社自体がiPhoneなどの受託製造を行う台湾の鴻海精密工業が主導するEVプラットフォーム「MIH」に参画するなど、拡販に向け積極的に手を打っている。 動きが速いEV業界でシェアを拡大するためにも、工場建設などの大規模投資を迅速に決定できるようになる必要がある。 長年の懸案だった後継者問題にようやくメドをつけた今、永守氏と関氏が次に問われるのは、目標として掲げる2030年度売上高10兆円への道筋をつけられるかどうかだ。今回の関CEO就任人事がいい決断だったかは、その進捗が明らかにしていくだろう』、今回の「後継指名」が上手くいくかどうか、大いに注目される。

第三に、4月30日付け東洋経済オンライン「パナソニック「巨額買収」、不安拭えぬ2つの理由 次世代に負の遺産残す「ジンクス」を断てるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/425539
・『成長への妙策か、それとも不相応な愚策か――。 パナソニックが総額71億ドル(約7700億円)でかねての出資先であるアメリカのソフトウェア企業・ブルーヨンダーを買収する。パナソニックにとっては、2011年に約8000億円を投じ行った三洋電機などの買収以来の巨額案件となる パナソニックは成長の柱となる新事業の創出に苦戦しており、近年は売上高7~8兆円前後での足踏み状態を続けている。今回の買収によってブルーヨンダーが手掛けるサプライチェーンマネジメント分野の事業成長を加速させ、全社の業績底上げを狙う』、今回こそは大丈夫といえるのだろうか。
・『株価には投資家らの「危惧」が表れた  だが、パナソニックの過去を振り返ると楽観はできない。成長を見込んで巨額を投じた事業が想定どおりに寄与せず、たびたび業績の足を引っ張ってきたためだ。今回も投資家らの危惧が株価に表れた。買収発表のあった4月23日、パナソニックの株価は一時前日比4.9%安まで落ち込んだ。 「パナソニックにとって大きな意味を持つこの買収をなんとしても成功させるために、全社を挙げて取り組んでいきたい」。4月1日付けで津賀一宏社長からパナソニックのCEO(最高経営責任者)の職を引き継いだ楠見雄規氏は、23日の会見でブルーヨンダー買収への決意を示した。 ブルーヨンダーが手がけるのはサプライチェーンマネジメントを支援するソフトウェア。生産や流通の現場で効率化を図るためのものだ。具体的は、工場や物流倉庫、小売店舗などで製品の需要予測や在庫管理などを行うソフトウェアを提供し、顧客企業の収益改善につなげている。 同社の2020年度の売上高は約10億ドル(約1080億円)。一見規模は大きくないが、サプライチェーンマネジメントのソフトウェア専門企業としては世界最大だ。保有する特許数も400超と競合他社を大きく上回り、3000社を超える顧客企業には米コカ・コーラ社や英ユニリーバ、米スターバックスなどが名を連ねる。 売り切りではなく、継続的に課金するリカーリング型のビジネスを主力とし、売上高に対するEBITDA比率は約24%と高収益だ。 パナソニックとブルーヨンダーは2019年11月に協業を開始、2020年7月にはパナソニックがブルーヨンダー株を20%取得し関係を深めてきた。 もともとパナソニックは法人向け事業として、センサーや通信機器など得意のハードウェアを用いた製造現場の自動化支援、倉庫や店舗の省人化支援を手掛けてきた。同社はこれらの法人向けシステム事業を、2022年4月に予定する持株会社化で「現場プロセス事業」として主力分野と位置づけ、成長を加速させたい考えだ』、「2019年11月に協業を開始」しているのだから、「ブルーヨンダー」の実態については十分知っているのだろうか。
・『成長目指すための「不可欠なピース」  法人向けシステム事業を率いるパナソニックの樋口泰行代表取締役専務は「当社の事業ポートフォリオにソフトウェアやソリューションが加わるのは大きな意味がある」と話す。ブルーヨンダーの買収で知見が足りなかったソフトウェア分野を強化できるからだ。 今回の買収を経てパナソニックが実現を目指すのは、「オートノマス(自律的な)サプライチェーン」という壮大な未来だ。サプライチェーンの上流から下流まで、ソフトウェアと現場に設置したデバイスやセンサーを連携させ、自動運転のようなオペレーションを構築するという。 楠見氏は「サプライチェーンの現場から無駄や滞留が自律的に省かれる世界を実現する」と意気込み、ブルーヨンダーについて「革命的なソリューションを生み出すのに不可欠なピース」と買収への熱い思いを語った。 パナソニックは調査会社のデータを基に、サプライチェーンマネジメント分野の市場規模が現在の180億ドル(約1兆9000億円)から2024年には280億ドル(約3兆円)以上に拡大する見込みを示している。成長市場で着実にシェアを取り、収益につなげる狙いだ。 だがここで問われるのは、パナソニックに巨額買収で成果を出せるだけの実力があるかどうかだ。) 振り返れば、1991年に脱家電を目指してアメリカの映画大手MCA(現NBCユニバーサル)を買収したが、わずか4年後に8割の株式を手放した。 2011年には三洋電機とパナソニック電工を完全子会社化したものの、全社の売上高は2011年3月期の8兆6926億円から2020年3月期の7兆4906億円へとむしろ減少。買収目的である三洋電機が得意とした角形電池はトヨタ自動車が主導する共同出資会社になり、太陽電池の生産は2021年度中に撤退する。いずれも選択と集中の結果、成長につながらなかった。 樋口氏は「日本企業は買収後の統合作業が得意でなく、パナソニックも例外ではない」と認めたうえで、「ブルーヨンダーの経営がおかしくなるようなことは絶対にしないようにする」と強調した。 両社は協業から1年半かけて関係を深化させてきたほか、すでに樋口氏も2020年7月からブルーヨンダーの取締役として経営に関与してきた。「サプライチェーンの革新という意味では(両社とも)同じ思いを抱いているので、自然と相乗効果を生み出せるはずだ」(樋口氏)と自信を見せる』、「樋口泰行」氏は、「パナソニック」から「ハーバード・ビジネス・スクール」に留学、その後、日本ヒューレット・パッカード社社長、ダイエー社長、日本マイクロソフト社長などを歴任、古巣の「パナソニック」に戻った異色の経歴(Wikipedia)。同氏が「自然と相乗効果を生み出せるはずだ」(樋口氏)と自信を見せる」、のであれば、大丈夫なのかも知れない。
・『失敗のジンクスを絶てるか  ただ、統合作業さえうまく行けば安泰かというとそうではない。 パナソニックの場合、買収案件かどうかにかかわらず、成長領域と位置づけ巨額投資を行った事業がたちまち不採算化し、全社的な停滞をも招いた事案が複数ある。約6000億円を投じたものの液晶テレビとの競争に敗れたプラズマテレビ、数千億円を投じながらテスラ向け電池などで赤字を出し一時「再挑戦事業」に格下げされていた車載事業などがその代表例だ。 プラズマテレビからは2012年に社長に就任した津賀一宏氏の”大ナタ”で撤退。車載事業は2019年4月に同事業部門のトップに就いた楠見氏が固定費削減など構造改革を進め、黒字化まで復調させた。トップ肝いりで巨額投資を行った事業にやがて危機が生じ、次世代の経営陣が立て直すという事態が繰り返されている。 樋口氏は買収先の選定について「すでに経営基盤が安定していて、しっかりした経営者がいることが基準。リカーリング比率が高い会社しか考えてなかった」と話す。「戦う場所を賢く選ばなければコモディティー化や競争激化にさらされるが、(ブルーヨンダーの事業は)参入障壁が高く顧客基盤も持っている」(樋口氏)と、パナソニック社内で堅実な経営判断が行われたことを強調する。 パナソニックのある役員は「投じたお金がどこかに消え、そのツケが次世代に回るのはパナソニックの悪い癖」と苦笑する。悪癖を絶ち、パナソニックが成長路線に回帰するためのピースとしてブルーヨンダーを生かせるか。6月に社長に就任し、持株会社化する新生パナソニックを率いる楠見氏の手腕が問われる』、「楠見氏」や「樋口氏」の「手腕」が見物のようだ。
タグ:東洋経済オンライン 電機産業 (その3)(バルミューダ 一目置かれる「芸術経営」の神髄 電機大手も見習う手法 目指すは売上高24兆円?、日本電産「満を持しての後継指名」で狙う躍進 日産出身の関社長がCEOに 永守氏は会長に専念、パナソニック「巨額買収」 不安拭えぬ2つの理由 次世代に負の遺産残す「ジンクス」を断てるか) 「バルミューダ、一目置かれる「芸術経営」の神髄 電機大手も見習う手法、目指すは売上高24兆円?」 「平均価格の4倍強の高級品」が「2015年の発売から累計で100万台以上売れており」、とはすごい。 「市場が成熟しきった汎用品の市場で、相場にとらわれない高単価で製品を販売」するには、デザインなど何らかの強味がある筈だ。 『創意工夫』で「「芸術性」を最高潮にまで高める工夫をしている」、とは大したものだ。 「物語仕立ての開発背景も、バルミューダのブランド力を支える」、「斬新な開発を担う社員の中には、「日の丸家電」からの転職者たちが多い」、なるほど。 生産を全て外部委託している以上、「品質管理」には殊の外、注意する必要があり、「リコール」が相次いだのも頷ける。 販売チャネルの説明はなかったが、家電量販店は使っているのだろうか。面白い家電メーカーが出来たものだ。 「日本電産「満を持しての後継指名」で狙う躍進 日産出身の関社長がCEOに、永守氏は会長に専念」 「今回こそは」「後継者問題」は解決するのだろうか。 「毎週、関と2人で話し合うことは続け、フレキシブルに経営する」(永守氏)。加えて「CEOが変わっても、会社ががらりと変わることはない」(同)とも説明」、余り大きな変化はなさそうだ 今回の「後継指名」が上手くいくかどうか、大いに注目される。 「パナソニック「巨額買収」、不安拭えぬ2つの理由 次世代に負の遺産残す「ジンクス」を断てるか」 今回こそは大丈夫といえるのだろうか。 「2019年11月に協業を開始」しているのだから、「ブルーヨンダー」の実態については十分知っているのだろうか。 「樋口泰行」氏は、「パナソニック」から「ハーバード・ビジネス・スクール」に留学、その後、日本ヒューレット・パッカード社社長、ダイエー社長、日本マイクロソフト社長などを歴任、古巣の「パナソニック」に戻った異色の経歴(Wikipedia)。同氏が「自然と相乗効果を生み出せるはずだ」(樋口氏)と自信を見せる」、のであれば、大丈夫なのかも知れない。 「楠見氏」や「樋口氏」の「手腕」が見物のようだ。
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電力・ガス自由化(その1)(大寒波とLNG不足が直撃、電力逼迫の「異常事態」 市場価格は急騰 発電所トラブルが追い打ち、「電力自由化は失敗だった」節電要請が目前に迫るほど日本の電力網は弱っている 「こうなったら停電させたらいい」、「アマゾンに電力市場を乗っ取られる」国の"電力政策の失敗"がもたらす最悪のシナリオ 肝煎りの「新電力」は次々と破綻へ) [産業動向]

今日は、電力・ガス自由化(その1)(大寒波とLNG不足が直撃、電力逼迫の「異常事態」 市場価格は急騰 発電所トラブルが追い打ち、「電力自由化は失敗だった」節電要請が目前に迫るほど日本の電力網は弱っている 「こうなったら停電させたらいい」、「アマゾンに電力市場を乗っ取られる」国の"電力政策の失敗"がもたらす最悪のシナリオ 肝煎りの「新電力」は次々と破綻へ)を取上げよう。

先ずは、本年1月14日付け東洋経済オンライン「大寒波とLNG不足が直撃、電力逼迫の「異常事態」 市場価格は急騰、発電所トラブルが追い打ち」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/403804
・『10年に1度とも言われる大寒波が襲来し、全国規模で電力の需給が逼迫している。 1月8日の平均気温(沖縄を除く)は2020年1月8日と比べて約8℃も低下。九州では1月7日に冬季として過去最大の電力需要を記録した。 3連休明けの1月12日も電力需給の逼迫は続き、関西電力エリアでは、午前8時台に電力供給に対する総需要の割合を示す電力の使用率が99%に達した。大手電力会社でつくる電気事業連合会や各電力会社は家庭や企業に節電を呼びかけているが、電力の需給は「綱渡りが続いている」(市場関係者)』、興味深そうだ。
・『厳しさ増す発電用LNGの調達  今回、電力需要は2020年12月下旬から急増した。余剰電力を売り買いする日本卸電力市場では取引価格が急騰。年が明けると需給はさらに逼迫し、1月12日午前8時台のスポット市場の取引価格は、1キロワット時当たり200円という史上最高値を記録した。これは需給逼迫以前の40倍近い水準だ。スポット価格はその後も高値更新を続けている。 逼迫の原因として、火力発電所の燃料であるLNG(液化天然ガス)の調達難が指摘されている。LNG火力発電所は日本全体の発電電力量の約4割を占め、電力需要の増減にスピーディーに対応できる強みがある。ところが、LNGはその性質上、長期にわたる備蓄ができないうえに、調達そのものが厳しくなっている。 あるエネルギー業界関係者は、LNGのスポット価格の高騰に驚きを隠さない。「新型コロナウイルスの感染拡大で需要が減っていた2020年4月当時の100万BTU(英国熱量単位)当たり4ドル弱だったものが、最近では約28ドルをつけている。これまで20ドルを大きく超えることはなかった」。 電力会社の輸入代理業務を担う三井物産も「新型コロナの影響でLNGの需要見通しが不透明だった中で、寒波によって電力需要が急増し、在庫繰りが難しくなった」(広報担当者)と説明している。 LNG需給がタイト化している要因について、中国や韓国の需要急増やオーストラリアのLNGプロジェクトでの設備トラブル、パナマ運河の渋滞なども挙がっている。 寒波とともに電力需給を逼迫させたのが、LNG火力と並ぶ主力電源である石炭火力発電所の設備トラブルだ。長崎県にある九州電力の最新鋭の石炭火力発電所(松浦発電所2号機、出力100万キロワット)は2020年12月29日にボイラーの付属設備で不具合が発生し、出力を50%に落として運転を続けざるをえない状況だ。 同じ長崎県にあるJ-POWERの石炭火力発電所(松島火力発電所2号機、50万キロワット)も石炭を細かく砕く装置の故障により、1月7日夜に運転を停止。補助燃料の重油で発電する異例の対応を決め、1月14日の運転再開を目指している』、「LNGはその性質上、長期にわたる備蓄ができない」、扱いがやっかいそうだ。
・『相次ぐトラブルや不具合  J-POWERではほかにも、神奈川県の磯子火力発電所2号機(60万キロワット)がコンベアトラブルにより、2020年10月20日に運転を停止。現在、同1号機(60万キロワット)および2号機とも出力を下げた状態での運転を続けている。また、徳島県の橘湾火力発電所1号機(105万キロワット)も2020年12月25日にタービンの損傷により計画外停止に直面。現在、復旧に向けて作業中だ。 関電のエリアでは、同社の原子力発電所4基が設備トラブルや定期検査で稼働を停止しているうえ、石油火力の御坊発電所3号機(60万キロワット)で1月4日の起動時に不具合が発生。LNG火力の姫路第二発電所既設6号機(60万キロワット)でもメインタービンの軸受け温度の上昇により、出力抑制を余儀なくされている。 他のLNG火力発電所でも、燃料であるLNGの確保状況をにらみつつ、低い出力での稼働を余儀なくされている発電所が少なくない。 東北電力は東新潟や仙台などの発電所で、出力を下げた制限運転を続けている。同社は「寒波が継続した場合に、LNGの在庫不足が起こらないように先々を見越しての対応であり、LNGの不足が生じている状況ではない」と説明するが、東京電力と中部電力が折半出資する最大手の発電会社・JERAなど多くの電力会社がLNG火力発電所の制限運転を続けている。 電力会社間での電力融通を取り仕切る電力広域的運営推進機関は1月3日以降、ほぼ毎日のように電力会社から他電力会社へ電力を送るよう指示を出している。特に厳しいのが西日本エリアで、東北電力や東京電力の送配電子会社などに対して、九電や関電、中国電力などに向けて融通の指示が出されている。 電気事業連合会は、日本ガス協会や石油連盟を通じ、都市ガス会社や石油会社に発電用燃料を供給するよう要請している。また、電力会社は海運会社に対し、LNG燃料輸送船の運航速度を上げ、LNG基地への到着を前倒しするよう求めている』、「トラブルや不具合」も一定程度を超すと需給に深刻な影響を与える。「電気事業連合会は、日本ガス協会や石油連盟を通じ、都市ガス会社や石油会社に発電用燃料を供給するよう要請」、ライバルに頭を下げざるを得ないというのは事態の深刻さを示しているようだ。
・『需給逼迫は長期化の可能性も  ただ、電力の需給逼迫は長期化する可能性が高く、「東日本大震災当時よりも厳しい」(市場関係者)との声も聞こえる。大震災当時は地震や津波による火力発電所の被害に加え、福島第一原子力発電所で重大事故が発生。東北や関東にある原発が軒並み稼働を停止した。 それに対し、「今回は、西日本を含めて全国規模での需要急増の継続に燃料の確保が追いつかない点に違いがある。政府は電力会社任せにせず、国民に向けて節電の必要性を広く周知すべきだ。LNG在庫が払底してからでは手遅れになる」(同関係者)という。 「今のような状況が数週間続くと、資金繰りに支障が出て経営が立ちゆかなくなる新電力も出てくる」(新電力幹部)という声もあがる。電力需給の逼迫は、さまざまな悪影響を各方面に及ぼす可能性がある』、「電力の需給逼迫は長期化する可能性が高く、「東日本大震災当時よりも厳しい」、冬場でもこんなに深刻化するようなら、夏場、しかもテレビ観戦が増える東京五輪を乗り切れるのだろうか。

次に、1月24日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの坂本 竜一郎氏による「「電力自由化は失敗だった」節電要請が目前に迫るほど日本の電力網は弱っている 「こうなったら停電させたらいい」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/42629
・『日本の電力小売りの全面自由化から4月で5年。新規参入が相次ぎ、新電力の販売電力量は全体の約2割を占める規模まで拡大している。しかし、この冬の一連の電力不足が日本の電力網の脆弱性と新電力の経営難を浮き彫りにしている――』、「新電力の販売電力量は全体の約2割を占める規模まで拡大」、しかしその基盤は脆弱なようだ。
・『関電が大阪ガスに頭を下げてLNGの融通を要請  「節電という言葉は使うな」「停電が起きてもいいんですか」――。 まだおとそ気分の抜けきらない1月の3連休。経済産業省・資源エネルギー庁と電力の業界団体である電気事業連合会(電事連)の幹部たちが休日にもかかわらず電話越しにやりあっていた。 「10年に一度」と言われる寒波の襲来で全国的に気温が低下。北陸地方では豪雪のため、北陸自動車道では車が立ち往生するなど、厳しい寒さが続いた。原子力発電所への依存率が大手電力で最も高い関西電力では、年末から電力不足が懸念され、どうやって年末年始を乗り切るか、幹部たちが連日頭を抱えていた。 福井県にある高浜や美浜などの原発の再稼働が遅れ、それを補う液化天然ガス(LNG)を発電燃料とする火力発電所の燃料タンクが底を突いていたためだ。 「どんなに高い値段で買ってもいい。とにかくLNGをかき集めろ」。関電では社長以下の“指令”のもと、LNGの取り次ぎをする大手商社などに確保を要請した。しかし、すぐに調達できるLNGはない。あとのない関電は最後の手段として、家庭向け電力の販売でしのぎを削る商売敵の大阪ガスに頭を下げ、LNGの融通を要請した』、「関電」は何故「LNG」調達戦略を間違ったのだろう。
・『電事連は「国民への節電要請」を求めたが、経産省らは拒否  電力業界も、それまで手をこまぬいていたわけではない。大手電力会社間で余剰電力を融通しあっていたが、寒波は全国規模で広がったため、大手電力間での融通にも限界がきてしまった。 電力は需要と供給が一致しないと停電してしまう。需要に供給が追いつかない事態が続く中、電事連は「電力消費を極力抑えてもらうよう、広く国民や企業に訴えてもらいたい。場合によっては節電要請を求めたい」と所管の経済産業省や資源エネルギー庁に訴えた。 しかし、新型コロナウイルス感染拡大で各家庭は巣ごもりしている。「暖房を切るなどの節電は、高齢者らが亡くなるリスクを高める」として、どちらも節電要請にはクビを縦に振らない。 それ以上に経産省やエネ庁が恐れていた理由が他にある。首相官邸だ。 「菅政権が最大の産業政策として掲げる脱・炭素(カーボン・ニュートラル)政策に水を差すことになる。新型コロナウイルス感染拡大で支持率が急落している中で『節電要請』となると、看板政策の脱・炭素政策も腰砕けになる」(経産省関係者)と電事連の申し入れをはねつけたのだ。ここで火力発電の燃料不足など思い起こさせたくない思惑というわけだ』、「新型コロナウイルス感染拡大で支持率が急落している中で『節電要請』となると、看板政策の脱・炭素政策も腰砕けになる」・・・と電事連の申し入れをはねつけた」、政府の主張は余りに政治的だ。
・『「電力自由化を進めれば停電が起きるのは、子供でもわかること」  さらに、政府が発する節電要請は10年前の東日本大震災などの非常時に出される類いのものだ。連休中で企業活動が止まり、電力消費量が減っているタイミングで出たとしたら、まさに電力供給の「危機的状態」を露呈することになる。 官邸を恐れる経産省は大手電力会社間の電力融通や、石油・ガス業界からのLNGなど燃料確保の自助努力を押しつけた。電力大手幹部はこう憤る。 「こうなったら停電させたらいい。電力改革と称して自由化を迫っていて、停電の懸念が出てくると、『業界で何とかしろ。電力会社は何をやっているんだ』と頭越しにどなりつけてくる。停電が相次ぐ米カリフォルニアなどで明らかになっているように、電力自由化にかじを切ることは、そういうリスクも抱えるということは子供でもわかるはずだ」 今、日本は世界最大のLNG輸入国だ。世界的にダブつき、長く価格が低迷しているLNGが、なぜ国内で不足しているのか。原発停止以降、石炭や石油より環境負荷が低いLNG火力へのシフトも進み、国内の発電総量の4割を占めるようになった。原発が止まって使用量が増えているにしても、LNGの調達難は即、電力危機につながるだけにその管理は徹底しているはずだ』、「LNG火力へのシフトも進み、国内の発電総量の4割を占めるようになった」、脱原発の頼もしい味方のようだ。
・『貯蔵期間が2カ月しかないLNGは、石炭や石油に比べて扱いづらい  大手証券アナリストは「これも電力自由化の功罪だ」と指摘する。 気化しやすいLNGは2カ月くらいしか貯蔵できない。このため、一般には2~3カ月先の注文を豪州や東南アジア、米国など産ガス国と交わす。しかし、市況低迷に伴いスポット(随時契約)で調達するほうが長期契約するよりも「この1年ほどは4分の1くらいで買えた」(大手電力幹部)ため、電力各社ともスポット調達に傾斜した。 さらに余分に調達した場合には、2カ月しか持たないLNGを「賞味期限」がきれる前に転売するしかない。現に余ったLNGを売却した九州電力は、昨年度約180億円もの売却損を計上するなど、「貯蔵が利く石炭や石油に比べて扱いづらい」(同大手電力幹部)。自由化でコスト削減に必死の中で、LNGの在庫をいかに抑えるかということは大きな経営課題となる。 そこを寒波が突いた。太陽光も豪雨や日照不足で頼りにならない。となればLNG火力に頼るしかない。だが、ぎりぎりに切り詰めていたLNGの在庫が払底する事態を招いたのだ。九州電力ではJパワーの石炭火力発電所に石油を流し込んで急きょ、発電する慌てようだった』、「気化しやすいLNGは2カ月くらいしか貯蔵できない」、「余分に調達した場合には、・・・LNGを「賞味期限」がきれる前に転売するしかない。現に余ったLNGを売却した九州電力は、昨年度約180億円もの売却損を計上」、難しいものだ。
・『自由化で進められた「発送電分離」で情報連携に弊害  電力会社の電力の需要予測を困難にした理由は他にもある。 自由化で電力会社は発送電分離を迫られた。自由化前のように、発電から配送電、小売りまで一社で一貫して手掛けていた体制では、小売り・営業部門から企業や家庭などの電力の消費動向がリアルタイムにあがり、それに応じて発電・送電部門が燃料調達や発電所の稼働を調整できた。 しかし、自由化後は発電、配送電、小売りがそれぞれ別会社になった。「各社間の情報連携がうまくいかず、供給責任をどこが担うのか、責任の押しつけ合いになってしまった面はある」(前出の大手電力幹部)という。 寒波はお隣の中国や韓国も襲った。さらに中国はいち早く経済が回復したためLNGの需要が伸びている。韓国も石炭火力からLNG火力への転換を進めている。また、東アジアの需要が急に跳ね上がったために米国から来るLNG船がパナマ運河で渋滞したり、豪州やマレーシアのLNGプラントが故障したりするなど「不運」も重なった』、「発電、配送電、小売りがそれぞれ別会社になった。「各社間の情報連携がうまくいかず」、今後は学習効果が働いて、「情報連携」を円滑化しようと努力する筈だ。
・『新電力の1月分電気料金が通常時の2倍以上になる恐れ  一連の全国的な電力需給の逼迫は自由化の目玉である新電力各社の経営も直撃している。自前の発電所を持たない新電力が「商材」となる電力を調達する卸売価格が高騰しているためだ。 今年に入り、1月分の電気料金が通常時の2倍以上になる恐れも出てきた。LNG不足で火力の発電量が減ったため、大手電力が卸市場に出すガス火力の電力も減るためだ。寒波の影響で需要が増加し、スポット価格が高騰した。 日本卸電力取引所(JEPX)の指標価格は1月中旬に一時1キロワット時あたり150円台と、12月上旬と比べて約25倍に上がった。一般的に家庭の電気料金は1キロワット時あたり20円台の場合が多い。新電力が販売する電力を全て市場調達に頼る場合、単純計算で電力を1キロワット時売るたびに100円超の赤字となる水準だ。 一部の新電力は市場価格を電気料金に直接反映する販売プランを採用している。ダイレクトパワー(東京・新宿)や自然電力(福岡市)によると、1月分の電気料金は通常時の2倍以上になる可能性があるという』、「市場価格を電気料金に直接反映する販売プランを採用している」「新電力」は市場から淘汰されてしまうだろう。
・『新電力Looopは複数の新電力と事業の譲り受けを協議  新電力の中では経営危機に直面する事業者も出てきている。新電力のLooop(東京・台東)は複数の新電力と事業の譲り受けに向けた協議を始めた。急騰する卸売価格をそのまま電力料金に反映すれば顧客離れは避けられない。 新電力事業の競争環境が厳しさを増す中、ある事業者は「ただでもいいから事業を引き取ってくれる先を探している」と打ち明ける。 事態を重く見た経済産業省は新電力を支援する対策を発表した。 事前の販売計画と実際の販売量にズレが生じた際に支払う「インバランス」料金について、新電力が電力供給を受けた大手電力会社などに支払う金額に上限を設ける。これは1月17日の電力供給分から適用した。 インバランス料金はJEPXと連動している。昨年12月前半は1キロワット時あたり4円台の時もあったが、1月以後は高いときで220円と新電力の経営を圧迫している。経済産業省はインバランス料金に1キロワット時あたり200円の上限価格を設けて影響を軽減する。 それでも「インバランス料金の見直しだけでは効果は限定的だ」(大手証券アナリスト)との声もあり、追加の対策が必要になる可能性もある』、「インバランス料金」での「上限価格」は、リスク管理の基本だが、これまでが設けてなかったとはお粗末極まりない。
・『今冬の電力不足が浮き彫りにした日本の電力網の脆弱性  日本の電力小売りの全面自由化からこの4月で5年を迎える。新規参入が相次ぎ、新電力の販売電力量は全体の約2割を占める規模まで拡大している。しかし、この冬の一連の電力不足が日本の電力網の脆弱ぜいじゃく性を浮き彫りにした。 不完全な電力自由化と、急速な再生エネルギーシフトで混乱に拍車をかける脱・炭素政策。「再エネは安定供給に難があることは誰でもわかる話。そこをどう埋めていくのか。再エネで跳ね上がる電気料金を誰が負担するのかも議論が進んでいない」(前出の大手電力幹部)。 東電福島第1原発の事故から10年が経つ。だが、菅政権は選挙を気にして原発について正面からの議論を避けている。新型コロナウイルス感染が止まらない中、菅政権はまた重い課題を一つ抱え込んだ』、「菅政権」が「原発について正面からの議論を避けている」のは困ったことだ。

第三に、6月11日付けPRESIDENT Online「「アマゾンに電力市場を乗っ取られる」国の"電力政策の失敗"がもたらす最悪のシナリオ 肝煎りの「新電力」は次々と破綻へ」を紹介しよう。
・『欧州に引きずられる形で脱炭素を菅政権が掲げたツケ  5月14日、梶山弘志経済産業相は閣議後の記者会見で「今夏の電力需給が全国的にここ数年で最も厳しくなる」と述べた。これを受けて、新電力各社の間からは「大手電力が巻き返しか」との声が相次いで漏れた。 経産省によると、電力の供給力の余裕度を示す予備率は北海道と沖縄を除くエリアで7月に3.7%、8月は3.8%を見込んでいる。安定供給には最低でも3%が必要なことを考えると、需給面でギリギリの水準となる。 東京電力福島第一原子力発電所の事故直後には全国の原発が止まり、予備率がマイナスになったこともあるが、それを除けば今夏の予備率はここ数年で最も低い。さらに今年の冬は、夏以上に厳しくなる恐れもある。 こうした状況について、大手電力の中からは「年明けの時期にもかなり電力は逼迫ひっぱくした。その混乱を未然に防ぐ意味での大臣の表明かもしれないが、乗り切れるかどうか不安だ」との声が漏れる。その一方、「日本のエネルギーの現状をしっかり見極めないなかで欧州に引きずられる形で脱炭素を菅政権が掲げたツケが回ってきた」と冷めた見方もある』、「日本のエネルギーの現状をしっかり見極めないなかで欧州に引きずられる形で脱炭素を菅政権が掲げたツケが回ってきた」、言い得て妙だ。
・『特に懸念されるのが「LNG不足」の再来  今夏や次の冬の電力不足の原因は大手電力が火力発電所の休廃止が相次いで進み、電力の供給力が落ちているからだ。新電力の中では「電力の供給力を上げるためには『やはり原発が必要だ』という世論を誘導するためではないのか」といぶかしむ向きも多い。 実際、足元の卸電力市場の取引価格は再び上昇してきている。日本卸電力取引所(JEPX)で毎日取引するスポット価格(24時間平均)は5月の平均が1キロワット時7円前後で推移。20年5月の月間平均値である4円台に比べ6割ほど高い。 スポット価格は1月に寒波の襲来と発電燃料の不足で150円超まで急騰した。その後、2~3月は前年同期に近い水準に戻ったが、足元で再び上げ足を速めている。企業活動が回復してきたのと、火力発電の燃料となる液化天然ガス(LNG)の在庫も減ってきているからだ。 特に懸念されるのがこの冬に問題になったLNG不足の再来だ。コロナ感染で大手電力はLNGの在庫を絞ってきた。そこに寒波が到来して電力の需要が急騰したために電力不足が生じたわけだが、もう一つ、LNGを巡っては不安材料が持ち上がってきた。東南アジアでのLNG需要の高まりだ』、「東南アジアでのLNG需要の高まり」はやむを得ない。
・『フィリピン、タイ、ベトナムがLNG輸入を拡大中  フィリピンでは同国電力大手のファーストジェンが来年の初輸入に向けて、6月に基幹設備の建設を開始した。同国唯一のマランパヤのガス田は27年にも枯渇すると推定され、発電量の2割を占める天然ガス火力発電が立ち行かなくなる可能性が高まっている。同国の電力需要は40年まで年5%以上増加する見通しだ。 タイやベトナムでもLNGの調達拡大が進む。タイは民間企業へのLNG輸入が20年に解禁された。これまで国営エネルギー会社のタイ石油公社(PTT)が独占してきたが、民間電力大手のガルフ・エナジー・デベロップメントや財閥Bグリム系の企業にもLNGの取引免許が与えられた。タイもフィリピンと同様、国産の天然ガスが枯渇傾向にある。このため、11年から始めたLNG輸入を37年に約320億立方メートルと18年の6倍超に増やす計画だ。 まだ輸入実績がないベトナムでも、国営石油最大手のペトロベトナムグループが南部のバリアブンタウ省で22年にもLNG基地を稼働させるなど、約10カ所で基地プロジェクトが進行中だ』、石炭火力より環境によいので、LNGシフトは当然だ。
・『新電力を経営破綻に追い込んだ「電力不足での料金高騰」  自国でのLNG枯渇に加え、脱炭素の世界的な流れも東南アジア各国がLNGの調達を急がせている。石炭火力に比べて二酸化炭素(CO2)の排出量の低減につながる天然ガスの活用は重みを増している。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、20年の世界のLNG需要のうち東南アジアは5%程度だったが、30年には13%程度まで伸び、世界の需要を牽引するという。現在、世界需要の約2割を占める日本や、急速に調達を増やす中国にとっても無視できない存在になる。 LNG争奪戦の過熱でスポット価格がまた高騰するようだと、自前の電源を持たない新電力は、経営への打撃が再び深刻化する。通常、暖房不需要期となる5月は余ったLNGを消費する期間だが、「今年は電力余剰が少なく、余ったLNGを使ってつくる安値の電気の入札がかなり減っている」と経産省は警戒する。 新電力は今年に入り、3月に大手の一角を占めるF-Power(エフパワー)が経営破綻した。東京地裁に会社更生法適用を申請、負債総額は464億円(帝国データバンク)で今年最大の倒産案件となった。低料金を武器に18年4月には販売電力量で新電力首位に立ち、売り上げも1000億円を超えた。 しかし、急成長の半面、自前電源だけでは需要に追いつかず、電力卸市場からの調達を拡大していったのがあだとなった。調達できなかった電力分を大手電力に穴埋めしてもらったかわりに支払う200億円にも及ぶインバランス料金が発生。折からの電力不足による料金高騰で通常の10倍を超える支払いを迫られ、破綻に追い込まれた』、「電力卸市場からの調達」に依存している「新電力」の相次ぐ破綻は、やむを得ないだろう。
・『自前の電源を持たない新電力の破綻は止まらない  さらに、新電力ベンチャーのパネイルも5月に東京地裁に民事再生法の適用を申請した。主力の電力小売事業で安値受注を続け、収益が悪化していた。AIを活用した電力管理システムの開発計画を打ち出し、大企業との提携にも乗り出していたが、実現できずに経営が行き詰まった。 16年の電力小売り全面自由化以降、大手電力以外の異業種から参入した新電力の事業者は約700社に増えた。新電力の販売電力量は全体の約2割まで占めるまでになった。自由化による電気料金引き下げを目指してきた政府だが、今夏や冬の電力が再び逼迫し、卸価格が高騰すれば自前の電源を持たない新電力の破綻は止まらないだろう。 経産省もインバランス料金の上限や分割支払いなどを導入して新電力の経営を支援しているが、「過去の安売り合戦で新電力各社の体力はかなり奪われている」(新電力幹部)との声は多く、予断を許さない。 大手電力の経営も厳しい。この年明けの電力不足への対応のために高騰したLNGの調達を余儀なくされたため、電力大手各社の前期の業績は大幅な減益となった。ライバルの大阪ガスからLNGの「おすそ分け」を受けた関西電力はようやく稼ぎ頭の原発の再稼働にこぎつけたが、多くの大手ではまだ多くが止まったままだ。 特にこれから迎える冬にかけて予備率が3%を切るともいわれている東電は、柏崎刈羽原発での相次ぐ不祥事で、原発再稼働に向けて動きづらい状況が続いている』、「東電」の「柏崎刈羽原発」問題でのお粗末さは、同社のやる気を疑いたくなるほどだ。
・『アマゾンのデータセンター7つで、消費電力は原発1基分  LNGの値上がりによる発電コストの上昇や原発の停止など利益がそがれる中、大手電力が再エネに充てる余裕はなくなってきている。その間隙を縫うように、再生エネルギーの分野では米アマゾン・ドット・コムは大手商社などと組んで、日本国内に独自の発電所を建設することを検討している。 アマゾンは日本にある自社のデータセンター向けに独自に発電所を建設する計画を進めている。太陽光や洋上風力で得た再生エネルギーをアマゾンのデータセンターに供給する。すでに複数の商社に発電所建設を持ち掛け、協議している。 アマゾンの計画ではこの独自発電所の最大発電能力は数十万キロワット。大型データセンターは1カ所で原子力発電所の10分の1にあたる10万キロワットの電力を消費する。アマゾンは国内に7カ所のデータセンターを持つが、すべて再生エネで賄うとすると、原発1基分に相当する規模になる。 東京電力など大手電力にとってみれば、有数の大口需要家であるアマゾン向けの電力供給契約は喉から手が出るほど欲しいところだ。しかし、今、大手電力にアマゾン専用の大規模の再生エネ発電所を建設する余裕はない。 アマゾンは水面下で東電などと交渉していたが、ガス火力や原発の再稼働を見込む中で、東電など大手電力の再エネへの取り組みは遅れている。「東電の煮え切らない態度にしびれを切らしたアマゾンが大手商社に持ち込んで入札となった」(大手投資銀行幹部)という。 仮に大手商社がアマゾンからの受注を獲得すれば、東電など大手電力の取引先はまた一つ減ることになる』、「東電の煮え切らない態度にしびれを切らしたアマゾンが大手商社に持ち込んで入札となった」、「アマゾン」との取引を逃したのは「東電」の身から出た錆だ。
・『洋上風力発電は規模に勝る欧州勢の草刈り場になる恐れ  ここにきてトヨタ自動車が取引先の部品メーカーに対して、再エネ活用による脱炭素の取り組みを要請するなど、大口需要家が再エネへのシフトを急いでいる。この受注合戦に乗り遅れるようだと、大手電力はいよいよ原発の再稼働に頼らざるを得なくなる。 政府はこの夏に中期の電源構成を決めるエネルギー基本計画を打ち出す予定だ。2030年の再生エネの比率を現在の18%(19年度)から30%台後半まで引き上げる見通しだが、自由化で期待した新電力は退潮の一途だ。 再エネで有望視される洋上風力発電も規模に勝る欧州勢の草刈り場になりそうだ。再エネを系統電力網に流す規制が不完全な状態にしたまま進めた自由化の中で、脱炭素政策を掲げたことで電力業界は混迷の度を深めている。 こうした状況下でアマゾンが日本の電力市場に進出すれば、インパクトは強烈だろう。東日本大震災以降、原発を含めたエネルギー問題を放置してきた政治の不作為のツケはあまりにも大きい』、ベースロード電源になり得る「洋上風力発電」はともかく、地熱発電が環境規制などの理由で殆ど実用化されてないのは残念だ。
タグ:東洋経済オンライン PRESIDENT ONLINE 電力・ガス自由化 (その1)(大寒波とLNG不足が直撃、電力逼迫の「異常事態」 市場価格は急騰 発電所トラブルが追い打ち、「電力自由化は失敗だった」節電要請が目前に迫るほど日本の電力網は弱っている 「こうなったら停電させたらいい」、「アマゾンに電力市場を乗っ取られる」国の"電力政策の失敗"がもたらす最悪のシナリオ 肝煎りの「新電力」は次々と破綻へ) 「大寒波とLNG不足が直撃、電力逼迫の「異常事態」 市場価格は急騰、発電所トラブルが追い打ち」 「LNGはその性質上、長期にわたる備蓄ができない」、扱いがやっかいそうだ。 「トラブルや不具合」も一定程度を超すと需給に深刻な影響を与える。「電気事業連合会は、日本ガス協会や石油連盟を通じ、都市ガス会社や石油会社に発電用燃料を供給するよう要請」、ライバルに頭を下げざるを得ないというのは事態の深刻さを示しているようだ。 「電力の需給逼迫は長期化する可能性が高く、「東日本大震災当時よりも厳しい」、冬場でもこんなに深刻化するようなら、夏場、しかもテレビ観戦が増える東京五輪を乗り切れるのだろうか。 坂本 竜一郎 「「電力自由化は失敗だった」節電要請が目前に迫るほど日本の電力網は弱っている 「こうなったら停電させたらいい」」 「新電力の販売電力量は全体の約2割を占める規模まで拡大」、しかしその基盤は脆弱なようだ。 「関電」は何故「LNG」調達戦略を間違ったのだろう。 「新型コロナウイルス感染拡大で支持率が急落している中で『節電要請』となると、看板政策の脱・炭素政策も腰砕けになる」・・・と電事連の申し入れをはねつけた」、政府の主張は余りに政治的だ。 「LNG火力へのシフトも進み、国内の発電総量の4割を占めるようになった」、脱原発の頼もしい味方のようだ 「気化しやすいLNGは2カ月くらいしか貯蔵できない」、「余分に調達した場合には、・・・LNGを「賞味期限」がきれる前に転売するしかない。現に余ったLNGを売却した九州電力は、昨年度約180億円もの売却損を計上」、難しいものだ。 「発電、配送電、小売りがそれぞれ別会社になった。「各社間の情報連携がうまくいかず」、今後は学習効果が働いて、「情報連携」を円滑化しようと努力する筈だ。 「市場価格を電気料金に直接反映する販売プランを採用している」「新電力」は市場から淘汰されてしまうだろう。 「インバランス料金」での「上限価格」は、リスク管理の基本だが、これまでが設けてなかったとはお粗末極まりない。 「菅政権」が「原発について正面からの議論を避けている」のは困ったことだ。 「「アマゾンに電力市場を乗っ取られる」国の"電力政策の失敗"がもたらす最悪のシナリオ 肝煎りの「新電力」は次々と破綻へ」 「日本のエネルギーの現状をしっかり見極めないなかで欧州に引きずられる形で脱炭素を菅政権が掲げたツケが回ってきた」、言い得て妙だ 「東南アジアでのLNG需要の高まり」はやむを得ない。 石炭火力より環境によいので、LNGシフトは当然だ。 「電力卸市場からの調達」に依存している「新電力」の相次ぐ破綻は、やむを得ないだろう。 「東電」の「柏崎刈羽原発」問題でのお粗末さは、同社のやる気を疑いたくなるほどだ。 「東電の煮え切らない態度にしびれを切らしたアマゾンが大手商社に持ち込んで入札となった」、「アマゾン」との取引を逃したのは「東電」の身から出た錆だ。 ベースロード電源になり得る「洋上風力発電」はともかく、地熱発電が環境規制などの理由で殆ど実用化されてないのは残念だ。
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半導体産業(その3)(バイデン「半導体サミット」の衝撃 日本は半導体の技術流出防止を強化せよ、ルネサス 「凄惨工場火災」でも増益宣言の必然 「1カ月生産停止」を吹き飛ばす半導体特需、韓国サムスン電子と台湾TSMCの「競争力格差」が広がるこれだけの理由) [産業動向]

半導体産業については、4月6日に取上げた。今日は、(その3)(バイデン「半導体サミット」の衝撃 日本は半導体の技術流出防止を強化せよ、ルネサス 「凄惨工場火災」でも増益宣言の必然 「1カ月生産停止」を吹き飛ばす半導体特需、韓国サムスン電子と台湾TSMCの「競争力格差」が広がるこれだけの理由)である。

先ずは、4月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「半「バイデン導体サミット」の衝撃、日本は半導体の技術流出防止を強化せよ」を紹介しよう。
・『バイデン政権による“半導体サミット”では、米国がより多くの半導体の確保を急いでいることが明らかになった。日本の半導体企業が競争力を発揮するために、政府は本腰を入れて当該分野の強化をすべきだ』、“半導体サミット”はどのようなものだったのだろう。
・『米バイデン政権が“半導体サミット”を開催 狙いは“Made in USA”の半導体生産能力の増強(4月12日、米バイデン政権が半導体など19社の企業幹部と意見交換する、いわゆる“半導体サミット”を行った。その一つの狙いは、ファウンドリー最大手の台湾積体電路製造(TSMC)などに対して、米国内での半導体生産能力を高めることで、海外企業・海外生産への依存度を引き下げることだ。 今回の“半導体サミット”の背景には、中国との対立の構図がある。共産党政権主導で中国は高い経済成長を実現し、軍事力を強化して国際世論への影響力を強めた。もし、中国が台湾を攻撃すれば米国の覇権は揺らぐ。そのリスクに対応するため、安全保障の面からも米国は“Made in USA”の半導体生産能力を増強する必要がある。 また、今回のサミットには、米国半導体産業への支援をより重視するバイデン政権の姿勢を示す狙いもあった。それは、バイデン大統領が、米国内の当該分野の企業に手厚い支援を行うと示したことからも明らかだ。現在、台湾は世界の半導体生産の64%を占め、韓国企業が17%を担っている。中国ファウンドリー産業も成長する中、米半導体企業の競争力がどうなるかは見通しづらい。 “半導体サミット”開催で明確になったことは、米国が米国産業を守るため、より多くの半導体の確保を急いでいることだ。それは、わが国の半導体関連企業が競争力を発揮するために、重要な追い風になる可能性がある。そうした企業の競争力向上に向けて、わが国政府は本腰を入れて当該分野の強化を目指すことが求められる』、「わが国の半導体関連企業が競争力を発揮するために、重要な追い風になる可能性がある」、「追い風」とは有り難いが、見逃さずに乗ってゆく必要がある。
・『経済と安全保障の両面で半導体不足に焦る米国  米国メディアの報道によると、12日のバイデン政権との会合に呼ばれた企業は次の19社とみられる。[1]ゼネラル・モーターズ、[2]フォード・モーター、[3]ステランティス、[4]カミンズ、[5]パッカー、[6]ピストン・グループ(以上、自動車関連)、[7]ノースロップ・グラマン(防衛)、[8]メドトロニック(医療機器)、[9]AT&T(情報通信)、[10]グーグル(ITプラットフォーマー)、[11]デル、[12] HP (以上、PCメーカー) 、[13]インテル、[14]TSMC(台)、[15]サムスン電子(韓)、[16]グローバルファウンドリーズ、[17]スカイウォーター・テクノロジー、[18]NXPセミコンダクターズ(蘭)、[19]マイクロンテクノロジー(以上、半導体メーカー)。 19社の顔触れを見ると、バイデン大統領が経済と安全保障の両面で、足元の半導体不足に危機感を強めていることが確認できる。その問題を解決するために、同氏は、米国内での半導体生産を増やしたい。半導体の需要者と供給者に分けて会合の内容を考察すると、自動車関連([1]から[6])、防衛([7])、医療([8])、ITサービスや機器([10]~[12])の企業が、インテルなどに増産を要請したというのが一般的な解釈だろう。ただ、事実はより複雑だ。自前での微細化に行き詰まったインテルが、一部のチップの生産をTSMCに委託するとの観測も出てきたからだ。 総合的に考えると、半導体サミットの狙いの一つは、米国政府が海外企業に“踏み絵”を迫ったことにある。バイデン政権は、TSMCとサムスン電子という世界の2大ファウンドリーに、米国企業の半導体需要を明示し、米国内に追加の工場を建設して需要に応えるよう求めた。特に、TSMCは、最新鋭のステルス戦闘機F35などに用いられる軍用チップを製造している。そのため、台湾海峡の緊迫感が高まる状況は、米軍の即応力に影響を与えるリスクファクターと化している』、「TSMC」が「軍用チップを製造している」のであれば、当然、米国内生産を求められるだろう。
・『注目される新興ファウンドリー 純粋な米国資本のスカイウォーター  もう一つのポイントは、米国政府が半導体産業の成長を積極的にサポートすることだ。それは、米国の新興ファウンドリーのスカイウォーターの参加から確認できる。わが国では認知度が低い同社だが、半導体業界では注目度が高まっている。その要因の一つとして、スカイウォーターは米国資本の企業である。米大手ファウンドリーのグローバルファウンドリーズには、中東資本が入っている。タワージャズはイスラエル系企業だ。安全保障面から純粋な米国資本のファウンドリーの重要性は高まっている。 また、そのビジネスモデルも注目される。スカイウォーターは、旧式の製造ラインを用いて、軍用・民生用のチップを製造する。TSMCなどとの差別化のために同社が重視するのが、顧客が欲する技術のアイデア創出段階から支援を行い、それを基にして顧客の求めるチップの設計・開発から受託製造までを行うことだ。端的に言えば、AIなどの先端技術を駆使した、カスタマイゼーションの強化とコスト低減だ。そのためにスカイウォーターはグーグルと連携してオープンソースでの半導体の設計・開発プロジェクトを進めている。 つまり、半導体マーケットは、TSMCが強力に推進する微細化=最先端の生産技術がすべてではない。最終製品のサイズが異なれば、使われるチップの大きさも違う。使途によっては、高電圧や高温多湿など、過酷な環境でも確実に作動しなければならない。バイデン政権は、半導体の微細化に関してはTSMCの力を自国側につなぎ止めつつインテルなどの生産体制を支援し、それ以外の分野では米国内の既存の生産設備と、最先端のIT技術を結び付けることによって、半導体の生産力引き上げを目指していると言える』、「半導体マーケットは、TSMCが強力に推進する微細化=最先端の生産技術がすべてではない。最終製品のサイズが異なれば、使われるチップの大きさも違う」、「新興ファウンドリー」にも存在価値があるようだ。
・『パワー半導体分野で世界シェア高い日本企業 政府は基礎研究と技術流出防止を強化せよ  一方、中国共産党政権は、半導体産業の育成に産業補助金や海外企業からの技術移転をさらに強化し、米国に対抗するだろう。中国企業によるAI開発、スマートフォン市場でのシェア獲得を踏まえると、その力は軽視できない。 IT先端分野を中心に、米中の対立は激化するだろう。半導体サミット後の日米首脳会談、アーミテージ元国務副長官の訪台は、そうした展開を見越した行動だ。それに加えて、米財務省は台湾を為替操作の疑いがあると指摘した。ただ、為替操作国の認定は見送った。米国が自国の利害を守るために是々非々の姿勢をとっている点は冷静に考えなければならない。 安全保障を米国に頼るわが国は、米国との関係を最優先しなければならない。その一方で、民間レベルでの中国企業との取引に関しては、わが国企業の生産技術が国内独自の要素を用いたものであることを米国に伝え、理解の獲得を目指さなければならない。 そのための一つの要素として、汎用型の半導体分野でわが国企業が競争力を維持していることは重要だ。パワー半導体分野では三菱電機、東芝、富士電機などが一定の世界シェアを持つ。画像処理センサ(CMOSイメージセンサ)ではソニーが世界トップの地位を維持している。 世界的な半導体不足は当面続くだろう。それは本邦企業が収益を獲得し、より効率的な生産体制の確立や基礎研究を強化する好機だ。その上でわが国の半導体が米中双方からより必要とされれば(口で言うほど容易なことではないが)、わが国は民間レベルでの対中取引の重要性を米国に伝え、相応の賛同を得ることは可能だろう。 米国は経済運営のゲームチェンジを進めている。わが国政府は企業の基礎研究などをサポートしつつ、海外に技術が流出しないよう体制を強化しなければならない。そうした取り組みが遅れると、中長期的な企業の競争力および経済の安定に大きな影響を及ぼしかねない』、「わが国政府は企業の基礎研究などをサポートしつつ、海外に技術が流出しないよう体制を強化しなければならない」、同感である。

次に、5月1日付け東洋経済オンライン「ルネサス、「凄惨工場火災」でも増益宣言の必然 「1カ月生産停止」を吹き飛ばす半導体特需」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/426165
・『工場火災の凄惨な印象をはねのける、好スタートとなった。 半導体大手のルネサスエレクトロニクス(以下、ルネサス)は4月28日、3月の工場火災事故後初めてとなる決算を発表。2021年12月期の第1四半期(1~3月期)決算(国際会計基準)は、売上高が前年同期比14%増の2036億円、営業利益は同126%増の301億円だった。 ルネサスといえば、3月19日に主力の那珂工場(茨城県ひたちなか市)で大規模火災が発生したばかり。大型の直径300ミリのウェハーを加工する「N3棟」において、1階クリーンルーム内のメッキ工程に使う装置で過電流が発生して出火。23台の製造装置が焼損した』、「火災事故」の影響はまだ現れてないのだろうか。
・『火災影響あっても増収増益予想  火災直後は、製造途中の「仕掛かり品」を完成品まで加工して出荷を続けたが、仕掛かり品も底をついた4月半ばには、那珂工場からの出荷が完全にストップした。そのため、火災事故が1~3月期の業績に与える影響は軽微で、大きな押し下げ要因が作用するのは、4~6月期になる。 ところがルネサスは決算説明会で、4~6月期に関しても前年同期と比べて売上高、利益とも大きく伸びる計画を打ち出した(通年の業績予想は非開示)。 「凄惨な状況だった」(ルネサスの柴田英利社長)火災事故の影響をもろに受けるにもかかわらず、4~6月期も好業績が続くのはなぜなのか。 火災があった工場はルネサスにとって主力の生産ライン。ここで作る製品の月商は170億円程度と、ルネサス全体の売り上げの3割弱に当たる。) ルネサスによると、1カ月の生産停止と、その後の段階的な生産再開により、230億円分の売り上げ機会を損失した。代替生産などで補い、純粋な売り上げ影響額は170億円程度にとどまる一方、火災の被害を受けた在庫の処分や、工場の原状回復・補修費用などに伴い、年間の営業利益を240億円程度押し下げる。 こうした圧迫要因があっても、4~6月期の営業利益は250億円前後と、前年同期の172億円から大幅な増益になる見通しだ。 背景には、半導体の需給が世界的に逼迫していることがある。昨年は新型コロナ感染拡大により一時的に需要が落ち込んだものの、その後は急速に回復。特にテレワークが広く普及したことで、半導体を多く必要とするパソコンやディスプレー向けの需要が高まっている。 加えて、職場や自宅から同じ情報にアクセスできるようにデータベースのクラウド化も進み、データセンターの能力増強といった需要も根強い』、「火災事故の影響をもろに受ける」「4~6月期も好業績」、なのは、「半導体の需給が世界的に逼迫」したためのようだ。
・『「作ったそばから消費される」  ルネサスの売り上げの約半分を占める自動車の生産に必要な半導体も、急激に回復した需要に対し、供給が追いついていない。コロナによる経済の停滞が長引くと踏んだ自動車メーカーは、余分な在庫を抱えないようにするため、半導体メーカーに発注のキャンセルや繰り延べを行った。しかしその後、自動車販売は急回復し、一転して大量の半導体が必要になった。 そのため、自動車向けの半導体はルネサスの火災事故以前から深刻な不足に陥っていた。ドイツのフォルクスワーゲンは傘下の複数ブランドで1~3月の生産を減らしたほか、日産自動車やホンダなども年明けから生産調整を余儀なくされている。 そこに今回の火災が直撃、半導体不足に拍車をかける形となった。「在庫はボトム(底)の水準。今後は作ったそばから消費されていく」(柴田社長)状況で、2022年前半まではフル稼働に近い繁忙が継続すると見込む。) 2020年春は新型コロナウイルスが世界中に蔓延し始めた時期。各国で厳しいロックダウンが行われ、あらゆるものの需要が「どん底」の状態だった。たとえば2020年4月の国内の新車販売台数は、前年同月比28.6%減に急落(日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会調べ)、欧米ではさらに大きな落ち込みとなった。増収増益が続く背景には、昨年の4~6月期のハードルが低いという一面もある。 火災からの復旧が早かったことも重要なポイントだ。N3棟は火災から1カ月も経たない4月17日に生産を再開した。4月19日に開いた記者会見で柴田社長は、「国内だけでなく海外からも、通常では考えられない支援をいただいた」と話した』、「海外からも、通常では考えられない支援をいただいた」、とはどういうことなのだろう。
・『「奇跡的回復」の裏に多くの支援  自動車の生産に支障を来している状況が日本や世界の経済に与えるインパクトを鑑みて、多くの関係者が復旧に協力した。事情を斟酌した製造装置メーカーが、ルネサス向けの納入を優先する特別対応もあったようだ。 また、ほかの工場でも生産が可能な製品については、自社の西条工場(愛媛県西条市)や、台湾の受託製造大手TSMCに委託して代替生産するなどのリカバリー策もあった。 柴田社長自身も「奇跡的な回復」と評するほどの順調な立ち直りを見せ、決算発表の翌営業日・4月30日の同社の株価は3.2%高の1275円(終値)に上昇した。株式マーケットも、想定を上回る好調ぶりと受け止めているようだ。 このまま業績や株価が好調に推移すれば、ルネサスの筆頭株主で32.1%の株式を持つド・政府系ファンINCJのエグジット(投資回収)が進むことも考えられる。 フル稼働状態さなかの火災事故による生産停止に見舞われたルネサス。計画通りの好業績を維持できるかが、"完全復旧"への試金石となる』、「INCJのエグジット」が順調に進んでほしいものだ。

第三に、5月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「韓国サムスン電子と台湾TSMCの「競争力格差」が広がるこれだけの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/270418
・『半導体2大ファウンドリーである台湾積体電路製造(TSMC)と韓国サムスン電子の業績は堅調に推移している。ただ、中長期で考えると、最先端技術と生産能力の向上に取り組むTSMCとサムスン電子の競争力格差は広がる可能性がありそうだ』、興味深そうだ。
・『半導体争奪戦は3年続く 日本企業にとって正念場  世界的に半導体の不足が深刻だ。2018年春以降の米中対立や、5G投資の盛り上がりで需給がタイトになったことに加えて、想定外の日米の半導体工場の操業停止などにより、“半導体争奪戦”の様相を呈している。米インテルのパット・ゲルシンガーCEOが「需給ひっ迫の解消には2~3年かかるだろう」と述べるほど、事態は深刻だ。 そうした状況下、各国企業が台湾積体電路製造(TSMC)や韓国のサムスン電子などからの半導体確保を急ぎ、半導体の市場価格は上昇している。当面、世界の主要メーカーであるTSMCやサムスン電子などの業績は堅調に推移するだろう。ただ、やや長めの目線で考えると、最先端の半導体生産能力の向上に取り組むTSMCとサムスン電子の競争力格差は広がる可能性がありそうだ。 半導体争奪戦は、ある意味では、わが国の半導体部材メーカーなどにとって追い風になる可能性がある。わが国企業るかは半導体の製造装置や主要部材のサプライヤーとして、世界的にしっかりしたポジションを持っているからだ。 重要なポイントは、今後、その地位をさらに高め、収益性を確保できる事業展開を目指すことだ。そのためには企業の取り組みだけでなく、政府が積極的に規制改革や企業の研究開発支援を推進することを考えるべきだ。それができないと、有力なビジネスチャンスを逃すだけではなく、中長期的なわが国経済の成長を実現することは難しくなる。ある意味では、わが国にとって正念場が来ているといえるだろう』、「半導体争奪戦は、ある意味では、わが国の半導体部材メーカーなどにとって追い風になる可能性がある。わが国企業るかは半導体の製造装置や主要部材のサプライヤーとして、世界的にしっかりしたポジションを持っているからだ」、「有力なビジネスチャンス」を活かしてもらいたいものだ。
・『TSMCは生産技術の確立に集中 EUV露光装置も多数調達  世界最大のファウンドリーであるTSMCは、米中をはじめ世界各国にとって必要不可欠の半導体供給者の地位をより強固なものにしつつある。同社の強みは、他社が設計・開発を行った半導体の生産に特化していることだ。それによって、アップルやNVIDIAなどの米国企業は設備投資を負担することなく、半導体の機能の向上に注力できる。TSMCは顧客の要求を満たす生産技術の確立に集中できる。 逆に言えば、TSMCが競合他社を上回る設備投資を実行し、成長を実現したのは、取り組むべき内容が明確だからだ。その象徴として、TSMCは半導体の回路線幅を小さくする「微細化」への取り組みを強化している。現時点で最先端の5ナノメートルの回路線幅の半導体に関して、TSMCは安定生産を実現した唯一の企業だ。 その背景には、TSMCが5ナノメートルの半導体生産に不可欠なEUV(極端紫外線)露光装置を、蘭ASMLから数多く調達できたことがある。現在EUV露光装置を生産できるのはASMLのみだ。 それに加えて、わが国企業が強みを持つ高純度のフォトレジストやシリコンウエハーなどの調達に関しても、TSMCは本邦メーカーとの関係を強化してきた。強固なサプライチェーン・マネジメントを基礎にTSMCは微細化への取り組みを進め、より多くの生産ニーズを取り込んでいる。同社が次世代の2ナノメートルの半導体生産ラインの確立を目指しているのは、アップルやNVIDIAがその生産力を頼っているからだ。 見方を変えれば、世界各国の企業にとって、どれだけのTSMCの生産ラインを確保できるかが、競争力を左右する。米アリゾナ州においてTSMCが追加の工場建設を計画しているのは、米国にとって同社の生産技術が“覇権の維持”に不可欠だからだ』、「最先端の5ナノメートルの回路線幅の半導体に関して、TSMCは安定生産を実現した唯一の企業だ。 その背景には、TSMCが5ナノメートルの半導体生産に不可欠なEUV(極端紫外線)露光装置を、蘭ASMLから数多く調達できたことがある」、「わが国企業が強みを持つ高純度のフォトレジストやシリコンウエハーなどの調達に関しても、TSMCは本邦メーカーとの関係を強化」、「世界各国の企業にとって、どれだけのTSMCの生産ラインを確保できるかが、競争力を左右する」、ここまでくると、主客逆転だ。
・『スピード感で劣るサムスン電子 国際世論における韓国の立場も逆風  TSMCに次ぐ世界第2位のファウンドリーである韓国のサムスン電子の業績は、足元では良好だ。テキサス州での寒波による工場の操業停止という想定外の影響はあったが、短期的に同社の業績は堅調に推移するだろう。なぜなら、当面、世界的な半導体不足は続く可能性があるからだ。 しかし、サムスン電子の競争力は、中長期的には不透明だ。その背景には、いくつかの要因がある。 まず、同社はファンドリー特化の企業ではない。サムスン電子には家電、スマートフォン、垂直統合型の半導体メモリ事業があり、それに加えて、ファンドリー事業の強化に取り組まなければならない。それゆえ事業運営のスピード感と技術向上の両面で、同社がTSMCを上回ることは難しい。米クアルコムは昨年、サムスン電子に発注した5ナノメートルのチップ生産をTSMCに振り替えたとみられている。それは、最先端分野での技術力の差が大きかったからだろう。 次に、国際世論における韓国の立場は、サムスン電子の事業運営に逆風だ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、安全保障面を米国に頼っているにもかかわらず、経済面での中国重視姿勢を強め、北朝鮮との融和を重視してきた。 その状況下、主要先進国の企業は、安全保障にかかわる最先端の半導体製造装置や関連資材の対韓輸出に細心の注意を払わなければならない。昨年10月にサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長がASMLを訪問しEUV露光装置の確保を目指したのは、技術面に加えて、世界経済における韓国の立場が不安定化していることへの危機感の裏返しだった。 ASMLは技術面で優位性があり、さらなる成長が見込めるTSMCとの取引を重視しているように見える。中国への技術流出を恐れる米国がTSMCを重視していることも大きい。朴槿恵前大統領への贈賄罪などに問われた、経営トップの李副会長の収監も加わり、半導体メーカーとしてのサムスン電子とTSMCとの差は拡大するだろう』、「サムスン電子」にとっては、「文在寅」政権の「中国重視姿勢」「北朝鮮との融和を重視」が逆風になっているようだ。
・『中韓の素材企業が価格競争力で攻勢 日本に必要な「規制改革」の真価  TSMCもサムスン電子も、わが国企業が生産する微細な半導体部材や製造装置を必要としている。最先端の半導体生産を中心に米中対立の先鋭化が見込まれる展開は、わが国企業にとって 「最後のチャンス」と考えるべきだ。 重要なことは、かつての本邦半導体産業の競争力が、半導体部材や機械メーカーの比較優位性のベースになっていることだ。1980年代後半から90年頃まで、わが国の総合電機メーカーは世界の半導体市場で50%程度のシェアがあった。半導体メーカーの要求を満たすために各企業が素材や機械関連の技術を磨き、今日がある。 かつて世界の半導体市場で存在感を発揮した日立製作所は現在、選択と集中を進めて、社会インフラとソフトウエアの結合による成長を追求している。東芝は事業体制の立て直しのために、メモリ半導体事業を売却した。 ソニーのCMOSイメージセンサや三菱電機が生産するパワー半導体など、ニッチな半導体分野で競争力を発揮する企業はあるものの、日本企業が最先端のロジック、メモリの半導体分野で存在感を発揮することは困難だ。 他方で、中国や韓国では素材メーカーなどが価格競争力をつけている。このように考えると、世界各国の企業がTSMCの半導体生産ラインを争奪し、TSMCがわが国の微細かつ精緻なモノづくりの力を必要としている状況は、わが国企業が成長できる「最後のチャンス」だ。 米国は中国の台頭を抑えるために半導体産業への支援を強化し始めた。わが国企業がチャンスをつかむために、政策の重要性はかつてないほど高まっている。わが国政府は、最先端分野での研究開発の強化などを、より積極的に支援しなければならない。その意味において菅政権が掲げた「規制改革」の真価が問われている』、「わが国企業が成長できる「最後のチャンス」」を大いに活かしてもらいたいものだ。
タグ:東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 半導体産業 (その3)(バイデン「半導体サミット」の衝撃 日本は半導体の技術流出防止を強化せよ、ルネサス 「凄惨工場火災」でも増益宣言の必然 「1カ月生産停止」を吹き飛ばす半導体特需、韓国サムスン電子と台湾TSMCの「競争力格差」が広がるこれだけの理由) 「半「バイデン導体サミット」の衝撃、日本は半導体の技術流出防止を強化せよ」 バイデン政権による“半導体サミット 「わが国の半導体関連企業が競争力を発揮するために、重要な追い風になる可能性がある」、「追い風」とは有り難い 「追い風」とは有り難いが、見逃さずに乗ってゆく必要がある。 「TSMC」が「軍用チップを製造している」のであれば、当然、米国内生産を求められるだろう。 「半導体マーケットは、TSMCが強力に推進する微細化=最先端の生産技術がすべてではない。最終製品のサイズが異なれば、使われるチップの大きさも違う」、「新興ファウンドリー」にも存在価値があるようだ。 「わが国政府は企業の基礎研究などをサポートしつつ、海外に技術が流出しないよう体制を強化しなければならない」、同感である。 「ルネサス、「凄惨工場火災」でも増益宣言の必然 「1カ月生産停止」を吹き飛ばす半導体特需」 「火災事故」の影響はまだ現れてないのだろうか 「火災事故の影響をもろに受ける」「4~6月期も好業績」、なのは、「半導体の需給が世界的に逼迫」したためのようだ。 「海外からも、通常では考えられない支援をいただいた」、とはどういうことなのだろう。 「INCJのエグジット」が順調に進んでほしいものだ。 「韓国サムスン電子と台湾TSMCの「競争力格差」が広がるこれだけの理由」 半導体争奪戦は3年続く 「半導体争奪戦は、ある意味では、わが国の半導体部材メーカーなどにとって追い風になる可能性がある。わが国企業るかは半導体の製造装置や主要部材のサプライヤーとして、世界的にしっかりしたポジションを持っているからだ」、「有力なビジネスチャンス」を活かしてもらいたいものだ。 「最先端の5ナノメートルの回路線幅の半導体に関して、TSMCは安定生産を実現した唯一の企業だ。 その背景には、TSMCが5ナノメートルの半導体生産に不可欠なEUV(極端紫外線)露光装置を、蘭ASMLから数多く調達できたことがある」、「わが国企業が強みを持つ高純度のフォトレジストやシリコンウエハーなどの調達に関しても、TSMCは本邦メーカーとの関係を強化」、「世界各国の企業にとって、どれだけのTSMCの生産ラインを確保できるかが、競争力を左右する」、ここまでくると、主客逆転だ。 「サムスン電子」にとっては、「文在寅」政権の「中国重視姿勢」「北朝鮮との融和を重視」が逆風になっているようだ。 「わが国企業が成長できる「最後のチャンス」」を大いに活かしてもらいたいものだ。
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携帯・スマホ(その5)(「日本はスマホに支配された異常な国だ」天才哲学者がそう断言する理由 マルクス・ガブリエルは警告する、「スマホ依存」はどれだけ人間の脳と知性を破壊しているか 子供にスマホを与えなかったジョブズとシリコンバレーの偽善、京セラ「ガラパゴス」スマホがたどり着いた境地 バッテリー交換可 石鹸で洗える耐久性を追求、ソフトバンクが楽天モバイルと元社員を提訴 損害賠償請求額は1000億円まで拡大の可能性も) [産業動向]

携帯・スマホについては、3月5日に取上げた。今日は、(その5)(「日本はスマホに支配された異常な国だ」天才哲学者がそう断言する理由 マルクス・ガブリエルは警告する、「スマホ依存」はどれだけ人間の脳と知性を破壊しているか 子供にスマホを与えなかったジョブズとシリコンバレーの偽善、京セラ「ガラパゴス」スマホがたどり着いた境地 バッテリー交換可 石鹸で洗える耐久性を追求、ソフトバンクが楽天モバイルと元社員を提訴 損害賠償請求額は1000億円まで拡大の可能性も)である。

先ずは、5月5日付けPRESIDENT Onlineが掲載した哲学者のマルクス・ガブリエル氏による「「日本はスマホに支配された異常な国だ」天才哲学者がそう断言する理由 マルクス・ガブリエルは警告する」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/45599
・『世界中から注目を集める哲学者マルクス・ガブリエルは、「日本はもっともデジタルインフラに批判が少ない国で、完全にスマホに支配されている。コミュニケーションの仕方も特異だ」と指摘する。若き天才の目に映る日本人の特徴とは――。 ※本稿は、マルクス・ガブリエル著、大野和基インタビュー・編、髙田亜樹訳『つながり過ぎた世界の先に』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです(本稿の一部の翻訳は、大井美紗子氏が担当)』、「マルクス・ガブリエル」氏はNHK番組にもよく出てくるドイツの哲学者で、興味深そうだ。
・『「日本人は共同体を重んじる」はウソ  日本人は先進国の中で最も社会的に孤立しているというデータがあるそうですね(ミシガン大学による「世界価値観調査」)。社会的に孤立するとは、家族、友人、同僚以外の人と会う機会が少ないということです。 日本人を含むアジア人は共同体を、ヨーロッパ人は個を尊重するという悪しきステレオタイプがありますが、この調査結果は、このステレオタイプを否定する社会学的証拠になり得ます。 データによるとドイツは全体で下位から5位、ヨーロッパ全体だと同じく4位のようですね。実際、ドイツ人は(日本人よりも)群れで行動する傾向があると思うのです。ドイツ社会では、人と一緒にお酒を飲んだり、散歩をしたりすることが非常に重要な役割を果たしています。これをドイツ語では散歩を意味するSpaziergangと呼びます。このような文化はドイツ全土に見られます。 また、ドイツ人のソーシャメディアに対する態度は、日本人とはまったく異なります。ドイツ人が人との直接の社会的接触を、デジタルな接触に置き換えることは非常に稀です。 一方、日本では様々な理由でデジタルな交流がずっと普及していると認識しています。 その原因の一つは、東京の住環境と人口の多さでしょう。ある基準によれば、東京は狭い面積に人がひしめく世界一の大都市であるわけです。このような状況が人を孤立化させています』、確かに「ドイツ人」はビアホールなどで大勢で飲むのが好きなようだ。「ドイツ人が人との直接の社会的接触を、デジタルな接触に置き換えることは非常に稀です。 一方、日本では様々な理由でデジタルな交流がずっと普及している」、なるほど。
・『日本はスマホに支配されたサイバー独裁国家  日本はおそらく最もデジタルなインフラに対する批判が少ない国だと思います。中国でもデジタル化が進んでいますが、監視国家が国民にデジタル化を強制しているのであって、国民が自ら望んでいるわけではありません。ところが日本と韓国、特に日本は、常にサイバー独裁の最先端を行っていたのです。 2012年か2013年に、私が初めて日本を訪れたときに最初に感じたことがこれです。「なんということだ、この国は完全なサイバー独裁だ!」と思ったのです。すべての人が完全にスマートフォンに支配され、行動を統制されている。たとえ偶然であっても、他人の体に一切触れてはならないというルールがあるように感じられました』、「日本と韓国、特に日本は、常にサイバー独裁の最先端を行っていた」、「サイバー独裁の最先端」とは大げさとも思うが、「ガブリエル」氏の率直な印象のようだ。
・『冷静に議論ができない日本人  日本人のコミュニケーションの特異な点を、もう一つ挙げましょう。 日本人は互いに意見が対立したとき、他の地域とはずいぶん異なるやり方でマネジメントします。対立の合理的な解消のプロセスや本物のディベートを導入する余地は、もっとあるはずです。日本人の一般的な生活の中に、そういったものを増やすべきだと思うのです。対立を避けようとするのではなく、むしろ対立を増やす、対立にさらされる機会を増やすべきです。そして、しっかりディベートを行うのです。 ユルゲン・ハーバーマスの社会論に、大変いいアイディアがあります。冷静にディベートをしたかったら、ディベートの時間・空間をきちんと設定するべきだというのです。スペースがあれば、対立が起きても完全に個人的な対立にはなりません。物騒な衝突に発展するかもしれないような重要な問題も、冷静に語り合う力強いディベートが必要です。 それには、クラブやメディア、会議、イベントなど、何らかのプラットフォームが必要になります。正反対の意見を持つ二人の人間が同じスペース内で怒声を浴びせ合うのではなく、相反する提案を掲げる二人が、どちらが正しいのかを決めるための対話に入る、そういう理由でディベートは行われるべきです。哲学のディベートは、まさにそのようにして行われます』、確かに、「日本人」は「冷静に議論ができない」、「対立」を極力避け、「ディベート」はやり方すら知らない。
・『「お前のいうことは間違い」という理不尽  私は今、現代の最も興味深く最も素晴らしい論理学者の一人である、グレアム・プリースト(ニューヨーク市立大学特別教授)と共著を作っており、プリーストはドイツに一カ月滞在していました。もしわれわれ二人が、「相手が論理のレベルで何か間違いを犯した」と互いに思ったら、我々の間には対立が生まれます。私は反論するでしょうし、彼も反論してくるでしょう。プリーストが「お前は間違っている」と言い、私は「お前こそ間違っている」と言い返す。 でもわれわれは科学者、哲学者です。そうやって怒鳴り合う代わりに、二人で椅子に腰かけてこうやって話すことができるでしょう。 「さて、君は何と言った? なぜそう思ったんだい? その意見を裏付けるものは? 君が間違いを犯したと僕が思うのは、こういう理由からだよ。裏付けはこうだ」。それから賛否をリスト化して、最後にそれを二人で眺め、合理的な根拠を検討するのです。そのようにして導き出される結論は、お互いの妥協点のどこかに落ち着くでしょう。 彼の信じることには私の見解より優れたところがあるでしょうし、私の信じることにも彼の見解より優れたところがあるだろうからです。それを統合したら、よりよい信念のシステムが生まれます。これが哲学的なディベートの仕組みです。 もし議論がただの反論になってしまったら──例えば「あなたみたいな人たちは、いつも同じことを言う」──こんな言葉は、ディベートの場で出すべきではありません。「あなたみたいな人たち」という時点で、お話にならない。こうしたやり取りは、すべてロジカルな議論の基本法則に基づいて行われなければなりません。 人格攻撃論法は許されるべきではない。人格攻撃というのは、「お前が言うことは間違いだ。なぜならお前が言うからだ」という考え方ですが、それが正しいことは決してありません。ただの誤謬です』、「日本」でも「ディベート」を中学生あたりから本格的に教えてゆくべきだろう。ただ、教える人への訓練も必要になるので、数十年がかりの息の長い取り組みになるだろう。

次に、5月21日付けJBPress「「スマホ依存」はどれだけ人間の脳と知性を破壊しているか 子供にスマホを与えなかったジョブズとシリコンバレーの偽善」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65322
・『スウェーデンの精神科医、アンデシュ・ハンセン氏は「人間の進化の見地」から、スマホによる人間の脳や心身への影響を分析してきた。前作『一流の頭脳』(2016年)はスウェーデンで60万部のベストセラーとなり、世界20カ国以上で翻訳されている。 私たちは1日に平均して2600回以上スマホを触り、10分に1回スマホを手に取っている。3人に1人は(18歳から24歳では半数が)夜中にも少なくとも1回はスマホをチェックする。今やあまりにも当たり前に私たちの生活に入り込んでいるスマホやSNS。しかし、スマホが絶え間なく私たちの気を散らし続けることによって、脳は蝕まれ、睡眠障害やうつ、集中力の低下を引き起こすリスクがある。 スマホが持つ中毒性や依存性、わが子にデジタル・デバイスを与えないIT企業幹部たち、削がれ続ける集中力の保ち方、SNSで低くなる若い女性の自己肯定感、スマホに翻弄されない手段について──。『スマホ脳』(新潮新書)の著者であるハンセン氏に話を聞いた。(Qは聞き手の質問。長野光 シード・プランニング研究員) Q:メッセージのやり取りやSNS、エンターテインメントやゲームなど、たくさんの刺激をもたらすスマホがドーパミンを放出させ、その結果、人間はスマホがないと麻薬が切れたように禁断症状を感じることがある、と本書で述べられています。人間はどれほど強くスマホに依存しているのでしょうか。 アンデシュ・ハンセン氏(以下、ハンセン):人間の脳は、考えたり、心地よいと感じたりするためにあるのではなく「生存のため」にあります。狩猟・採集をしていた時代と現代社会とでは、人間のライフスタイルは大きく違います。しかし、生物学的には人間の脳は変わっていません。私たちの脳は、デジタル社会に適応するようにできていないんです。 私自身もスマホのない生活はできないし、その利便性はよく理解しています。デジタル社会のすべてを否定するつもりはありません。しかし、スマホが一般的になってからのこの10年間、人類の行動やコミュニケーション、お互いを比べ合う手段は非常に大きく変化しています。それは私たちの脳にとって未知の世界です。長期的な影響についてはまだ何も分かっていません。 私たちはスマホを気にしないで1日を過ごすことは、もうできなくなっています。新しいニュースがあるかもしれない、メールやメッセージが来ているかもしれない。自分のスマホがどこにあるか、常に把握しておきたい。ドーパミンは、この「かもしれない」という期待に反応します』、「私たちはスマホを気にしないで1日を過ごすことは、もうできなくなっています。新しいニュースがあるかもしれない、メールやメッセージが来ているかもしれない。自分のスマホがどこにあるか、常に把握しておきたい。ドーパミンは、この「かもしれない」という期待に反応します」、脳内快楽物質の「ドーパミン」まで出てくるのであれば、ヤセ我慢しても無駄だろう。
・『スマホ依存とギャンブルの類似性  「ある音が聞こえたらジュースがもらえる」というマウスの実験があります。マウスのドーパミンレベルは、実はジュースをもらって飲んでいる時ではなく、音を聞いた時に上昇します。さらに、音が聞こえてもジュースが「時々しかもらえない」方が、ドーパミンの量が増えました。 脳はこの「恐らくもらえるだろう」という状況が好きで、だから「当たるかもしれない、当たる可能性がある」と期待するギャンブルを好みます。しかし、この「もしかしたら?かもしれない」という不確かな結果への偏愛は、デジタル社会ではネガティブな影響をもたらします。 例えばSNSに写真を投稿したら、友だちが「いいね」を押してくれているか、何か更新がないか、スマホを手に取って確かめたいという衝動をよりかき立てます。「いいね」が増えたかもしれないから見てみようと思うのは「ポーカーをもう1ゲームだけ、次こそ勝てるはず」というのと同じメカニズムなんです。 スウェーデンだけではなく全世界で、精神的な不調を訴える人は増えています。とりわけ若者に顕著です。WHO(世界保健機関)は、生まれてから最初の数年で脳が大きく発達するので、5歳以下の子供はデジタル・デバイスの使用に注意すべきだと警告しています。 スウェーデンでは、この20年で睡眠障害の若者が11倍に増加しました。ある調査によると若者の約3分の1が、スマホをベッドの中に入れて寝ています。(サイドテーブルに置くのではなく!)生まれてからずっとスマホが手元にあるような子供や若者への長期的な影響には特に注意し、心身へのリスクを回避する必要があります。 人間の精神や脳がどう機能しているか。スマホが人間の脳にどう影響するのか。心理的にいかにスマホに取り込まれていくか。デジタルテクノロジーの素晴らしさとともに、その強い副作用についてももっと議論し、理解すべきです。そして、人間の生物性や精神性に適した、依存性の低い技術があればそれを選択していくべきです。 Q:IT企業のトップやスマホやアプリなどの開発者は、人間が快感や刺激に弱いとよく認識していて、スマホに依存するような仕組みを作っている。その一方で、自分たちが生み出したテクノロジーに恐怖を感じ、罪悪感を持っていると本書に書かれています』、「脳はこの「恐らくもらえるだろう」という状況が好きで、だから「当たるかもしれない、当たる可能性がある」と期待するギャンブルを好みます」、初めて知った。「生まれてからずっとスマホが手元にあるような子供や若者への長期的な影響には特に注意し、心身へのリスクを回避する必要があります」、その通りだ。
・『自分の子供にiPadの使用を制限したジョブズ  ハンセン:IT企業の開発者は、私たちの関心や注目をいかに引きつけるか、心理学や脳科学を応用して、私たちの脆弱な精神に訴える様々な仕組みを生み出しています。 衝撃的なのは、これらの商品を提供しているIT企業の幹部たちが自分たちは非常に注意深く、スマホやタブレット端末を使用しているということです。自分の子供にはスマホを与えていません。 アップルの創業者スティーブ・ジョブズは世の中にiPadの素晴らしさを説きましたが、自分の子供にはiPadに触る時間を厳しく制限し、しかもそのことを黙っていました。マイクロソフト社のビル・ゲイツも、自分の子どもが14歳になるまでスマホを持たせませんでした。アップル社のCEOティム・クックは、「もしあなたが人の目よりスマホを見ている時間が長いなら、それは間違ったことだ」と発言しました。つまりアップル社の製品を使い過ぎるな、と言っているんです。 「いいね」ボタンを開発したジャスティン・ローゼンスタインは、ヘロインに匹敵する依存性があるとして自分のスマホに使用を制限するアプリをインストールしたと明かしています。そして、後悔したようにこう言っています。「製品を作る時には最善を尽くしたが、その思ってもみなかったような悪影響に気づいたのは後になってからだ」と。 テクノロジーに精通している人ほど、そのネガティブな影響を知っています。なんという偽善でしょうか。シリコンバレーのエリートたちは毎学期2万ドル、3万ドルもの学費をかけて、スマホを遠ざけてくれる学校に自分の子どもたちを通わせているのですから。 Q:学校ではタブレット端末の導入など教育のデジタル化が進められています。しかし、学習効果を見ると、手書きの方が記憶しやすく、スマホやタブレット端末はインターネットと繋がっているので勉強に集中しきれないという調査結果を本書で紹介されています』、「これらの商品を提供しているIT企業の幹部たちが自分たちは非常に注意深く、スマホやタブレット端末を使用しているということです。自分の子供にはスマホを与えていません」、実にズルイやり方で、許せない。
・『学びの質はデジタルより紙の方が上  ハンセン:同じ文章を紙(本)で読むのと、パソコンやスマホのスクリーン上で読むのでは、紙の方が多くを学ぶことができ、学びの質も高くなります。書かれている内容がシンプルなことであればそれほど違いはないのですが、内容が複雑になるほど紙の方が深く理解できます。 就学前の子供を対象にした調査で、「手で紙に書く」という運動能力が文字を読む能力と深く関わっていると示されています。小さい頃から長時間スマホやタブレット端末を使用している子供は、のちのち算数や理論科目を学ぶために必要な運動技能を習得できていないという警告もあります。 成績が上位の生徒は、学ぶツールにそれほど大きな影響を受けません。しかし勉強で苦労している子たちは、紙とデジタル・デバイスでその学習効果には大きな差がありました。タブレット端末より紙で学んだ方が、成績が上がることが分かったのです。気が散りづらいのでしょう。集中力や記憶力、言語能力については、スマホをやっている時間が短い子供と、睡眠時間の長い子供の方がいい結果が出ています。 Q:人間は複数のことを同時にはできない、マルチタスクは集中力や思考力を奪う。しかしスマホは「ながら」になりやすい。スマホは人間の思考する能力を奪っているのでしょうか。 ハンセン:人間は二つのことを同時に行うことはできません。できていると思っていたとしても、それは一つの行動からもう一つの行動へ移っているだけです。短時間に行ったり来たりするプロセスを繰り返して、前にしていたことに意識を奪われているので、効果的に脳を使っているわけではありません。マルチタスクをこなすことに自信がある、という人もいますが、実際「マルチタスクが得意と答えた人」のほとんどは、集中がかなり苦手だという調査結果があります。 現代社会において価値があるのは「集中力」です。勉強をしながらSNSをチェックしたり、スマホをスクロールしながら仕事をしたりしていては、学ぶために余計な時間がかかり、脳にとっても非効率です。深い思考に辿り着かないし、学ぶ喜びもないし、生きる助けにもなっていません。 邪魔が入ると気が散るのは、人間が生きるための習性です。かつて人間は、現在のように癌や心臓病で亡くなるのではなく、動物に襲われ、感染症にかかり、飢餓や事故、争いによって死にました。寿命も短かった。そういう世界では常に周囲に注意を払う必要がありました。集中力は重要ですが、切れやすいものなのです。私自身も、集中したい時や読書の時、患者と会う時、原稿を執筆する時は、集中力が削がれないようにスマホを別の部屋に置くようにしています。 Q:スマホをたくさん使うほど、なぜ人はうつになるのでしょうか』、「タブレット端末より紙で学んだ方が、成績が上がることが分かったのです。気が散りづらいのでしょう。集中力や記憶力、言語能力については、スマホをやっている時間が短い子供と、睡眠時間の長い子供の方がいい結果が出ています」、「私自身も、集中したい時や読書の時、患者と会う時、原稿を執筆する時は、集中力が削がれないようにスマホを別の部屋に置くようにしています」、なるほど。
・『スマホの負の影響に飲み込まれない方法  ハンセン:睡眠や運動、人と会うことはもっとも重要なことです。だから、寝なくなり、運動しなくなり、実際に人と対面する機会も減ると、不安やうつになりやすくなります。大事なことは「スマホで何をするのか」ではなく、「スマホを使うことによって何をしなくなるのか」なのです。 SNS上で自分と他人を比較することが大きなストレスになります。これはとくに思春期の女性に強い影響があります(男子はSNS利用よりゲームに費やす時間が長いので影響が少ない)。 SNSには他人と自分を比べる構造的な性質があるので、全世界的にメンタルヘルスを脅かす問題があります。自分がヒエラルキーのどこに位置しているのかという認識は、私たちの精神の健康に大きく関係します。ヒエラルキーの中で下降していると感じると、みんなより自分がだめだと思って不安感やうつ症状が増します。 人間は150人くらいのコミュニティの中の、さらに20~30人との比較の中で生きてきました。しかし、SNSによってヒエラルキーの形成や認識をする対象の人数が激増し、他人の体型や成功、お金、持ち物すべてがあなたを脅かすようになりました。 本当は、それは人生そのものではなく、見かけの一面に過ぎないのですが、それは10代や20代の若い人にはわからないかもしれない。みんなが自分より賢く、美しく、成功しているように感じてしまう。1日に4~6時間もスマホに触れることによって、若者の不安とうつのリスクはより高まっています。 Q:スマホの負の影響についてよく分かりました。しかし、友人や家族とのやり取り、ニュース、情報検索、ネットショッピング、娯楽すべてがスマホの中にあり、なかなか遠ざけることができません。 ハンセン:私自身もスマホなしでは生活できませんが、よく眠り、集中力を高めて、元気に過ごしたい人は、例えば次のようなことをやってみてください。 +自分のスマホの利用時間を把握する +集中したい時は別の部屋に置く +人と会っている時はスマホを遠ざけて目の前の相手に集中する +学習能力が低下するので教室では使わない +寝る時には電源を切る +SNSでは積極的に交流したい人だけフォローする』、「男子はSNS利用よりゲームに費やす時間が長いので影響が少ない」、とは面白い。その通りなのだろう。
・『「スマホ脳」から脱却するメタ認知のススメ  Q:精神科医として、患者が自分の感情を理解して言語化し、苦しみを言葉にできれば対策が立てられ、治療に繋がると本書で述べられています。スマホやSNSによるストレスを言葉にできれば、スマホに翻弄されないということでしょうか。 ハンセン:不安やうつの症状は、必ずしも病気というわけではなく、人間として正常な反応です。人間が生存し、繁殖するためには、周囲に注意を払い警戒し、事故など悪い出来事が起こるかもしれないと恐れることは非常に重要なことです。時には頭からブランケットを被って隠れることも、生き抜くためには必要です。 メンタルヘルスの治療のゴールは、患者に自分の精神を舞台に上げて、自分で客席から見てもらうことです。自分の感情を一歩下がって客観視し、自分の思考を観察するのです。言葉にしてストレスの理由を見極めて距離をとること、これを「メタ認知」と言います。これは非常に意味のあることなので、ぜひやってみてください。この「メタ認知」を今のデジタル社会に援用すると、一歩下がって「だから私は今スマホを手に取るのだ」と理解することができる。無意識にスマホを弄ってしまうのではなく、自分のドーパミンシステムがスマホに乗っ取られていると自覚することができます(構成:添田愛沙)』、「メタ認知」は一般人でも出来るのだろうか、何か「訓練」が必要となるのではないか。

第三に、5月6日付け東洋経済オンライン「京セラ「ガラパゴス」スマホがたどり着いた境地 バッテリー交換可、石鹸で洗える耐久性を追求」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/426156
・『マホ時代を迎え、苦しい戦いを強いられてきた日本企業の携帯端末事業が息を吹き返しつつある。京セラとソニーの2021年3月期の携帯端末事業はコロナ禍にあっても採算性が向上、いずれも大幅に利益を伸ばした。 両社は不採算市場からの撤退や生産体制の見直しで、少ない販売台数でも利益を出せる体制を作ることに成功。多額の設備投資で大量に販売するアップルのiPhoneなどと正面衝突せず、特定用途に特化することでコアなファンをつかむ路線を着実に歩んでいる』、「京セラとソニー」の「携帯端末事業」が、「採算性が向上、いずれも大幅に利益を伸ばした」とは結構なことだ。
・『スペック以外で差異を追求  電子部品大手の京セラは、海や山などのアウトドアや工事現場など厳しい環境下でも使える「タフスマホ」で他社と差別化をはかっている。 2014年に「TORQUE(トルク)」ブランドで販売を開始し、2021年3月には5代目となる機種を投入。京セラのスマホとして初めて5G対応を果たした。対応する半導体が高価なため、投入を見送ってきたが、「世の中に5Gがあって当然という流れが広がってきた」(通信機器事業担当の厳島圭司常務)として対応に踏み切った。 スマホメーカーは軽量や高精細カメラといった性能で勝負するか、中国メーカーのように安さを売りにするかで競争を繰り広げている。だが、トルクは他社のスマホと比べて安価なわけではなく、搭載する半導体なども特別に高性能なわけではない。 代わりにファンにアピールしているのは、スペック表に現れないところでの差異化だ。トルクの事業開発を担当する辻岡正典氏は「他社スマホとのスペック上の比較は商品企画の上でほとんど重視していない」と話す。 例えばバッテリー。他社スマホより充電容量の大きなバッテリーを搭載し、交換しやすい作りにしている。トルクはアウトドア環境で利用されることが多く、ユーザーから「気軽に充電する場所がない」という悩みが寄せられていた。 5代目トルクは、ハンドソープで洗ったり、アルコール除菌シートでふいたりしても壊れないようにした。ハンドソープでトルクを洗うユーザーいるという報告があったためだ。耐久性も、アメリカ国防総省が採用する基準をクリアするほど頑丈で、辻岡氏とともにトルク事業を統括する京セラの湯浅紀生氏は、「これほどまでに厳しい要件を課すスマホはほかにない」と言い切る。) トルクブランドのこれまでの累計販売台数は約140万台と、日本国内だけで年間に1500万台以上売るiPhoneと比べれば、極めて小粒な存在だ。ただ、コアなファン層をがっちりつかむために、ユーザーイベントなどに開発者が直接赴き、ユーザーの意見の取り込みに力を入れている。 京セラが重視しているのがファンコミュニティーの強化だ。2016年には初めてのファンイベントを開催したとき、当初見込みの20倍にもなる1000人の応募があった。「われわれの商品に、コアなファンがついてくれていると痛感した出来事だった」。湯浅氏はそう振り返る。 それ以降は定期的なイベントの開催やオウンドメディアの開設に取り組んだ。法人向けビジネスが主流の京セラは、こうした消費者向けの取り組みに慣れておらず、試行錯誤の連続だったという』、「京セラは、海や山などのアウトドアや工事現場など厳しい環境下でも使える「タフスマホ」で他社と差別化をはかっている」、面白い戦略だ。
・『今後は5G技術の活用も視野に  湯浅氏は「ユーザーからの声を聞くと、この製品は本当に愛されていると感じる。実際多くのユーザーはトルクシリーズをずっと使っていて『これ以外のスマホは持てない』と言ってくれる」と話す。 京セラに寄せられるユーザーからのエピソードも独特で、「海の中に落としたけれども呼び出しができて、画面が光ったので救出できた」「バイクで転倒して自分はケガをしたけれど、トルクは無事だった」といった声があがる。 ユーザーからの声重視は他社製品との差異化にもつながっている。バッテリーを取り外せるようにすることはスマホメーカーにとって本来は合理的ではない選択だ。耐久性を高めることも、顧客の買い替えを抑制してしまう。それでもこうした策を採るのはユーザーからの支持があるからだ。 今後追求するのは5Gをはじめとする最新技術の活用だ。すでに、カメラの画面に気温や位置情報などを重ね合わせる「アクションオーバーレイ」という機能を実装した。もともとスマホに備わっているGPSなどのデータを簡単に統合することでアクションカメラとして使える。アウトドア空間ではつながりづらい5G通信が今後、山や海でもつながりやすくなれば、動画配信などの用途が広がると見込む。 京セラの通信機器事業は2020年、30周年を迎えた。かつてはカメラなどコンシューマー向け商品を多く抱えていた。その後、撤退が続き、スマホがほぼ唯一のコンシューマー製品となった。工場の統合などで黒字を生み出せるようになったが、収益性がなければ待ち受けるのは事業売却や撤退だ。 世界に目を向けると、韓国のLG電子が7月でのスマホ事業からの撤退を決めた。ファーウェイがアメリカからの規制で大幅に出荷台数を減らすなどの特殊事情があっても、スマホのコモディティ化と上位企業による寡占化の流れは止まらない。 京セラの湯浅氏が「われわれの製品は万人受けしない。それでも必要な人がいる限り作り続けたい。そのためにはきちんと稼げる体制を作るのは不可欠だ」と語るが、京セラの「トルク」もこの厳しいスマホ事業の例外ではない』、「京セラの「トルクが「厳しいスマホ事業」環境を取り切ってほしいものだ。

第四に、5月7日付け東洋経済オンラインが転載したブルームバーグ「ソフトバンクが楽天モバイルと元社員を提訴 損害賠償請求額は1000億円まで拡大の可能性も」を紹介しよう。
・『ソフトバンクは6日、楽天グループ傘下の楽天モバイルとソフトバンクから転職した元社員に対し、退職時に営業秘密を持ち出したとして情報の利用停止と廃棄のほか、約10億円の損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所へ提起したと発表した。 ソフトバンクの有山麻季子広報担当はブルームバーグの電話取材で、今回は楽天モバイルと元社員両者に対する10億円の損害賠償請求だが、1000億円程度まで拡大する可能性があると述べた。 楽天モバイルは、社内調査を実施したが、ソフトバンクの営業秘密を利用していたという事実は確認されておらず、裁判において正当性を主張していくとのコメントを発表した。ソフトバンクは発表資料で、同社が昨年11月から12月にかけ、楽天モバイルに対する証拠保全申し立てを行い、元社員が持ち出した営業秘密の利用停止などを求める仮処分命令申し立てを行ったことを明らかにした。 また、楽天モバイルが不正競争を通じて不当な利益を得て営業上の利益を侵害したと主張。不正競争により建設された基地局等が存在することを今後明らかにすると述べた。 ソフトバンクは今年1月、楽天モバイルに勤務する元社員(45、当時)が不正競争防止法違反容疑で警視庁に逮捕されたと発表。不正に持ち出されたのは第4世代通信技術(4G)、第5世代(5G)ネットワーク用の基地局設備や基地局同士を結ぶ固定通信網に関する技術情報などで、民事訴訟提起の可能性を示唆していた。 楽天モバイル転職のソフトバンク元社員逮捕 、情報持ち出し疑い 発表を受けた6日午後の日本株市場で、楽天G株は一時前営業日比5.8%安の1308円まで下げ幅を広げ、終値は4.1%安の1332円と4月23日以来、およそ2週間ぶりの安値となった』、「楽天モバイル」が立ち遅れていたにせよ、「ソフトバンク元社員」を引き抜くという余りにミエミエな手を使ったのには、驚かされたが、訴訟の行方はどうなるのだろう。
タグ:東洋経済オンライン ブルームバーグ JBPRESS PRESIDENT ONLINE 携帯・スマホ マルクス・ガブリエル アンデシュ・ハンセン (その5)(「日本はスマホに支配された異常な国だ」天才哲学者がそう断言する理由 マルクス・ガブリエルは警告する、「スマホ依存」はどれだけ人間の脳と知性を破壊しているか 子供にスマホを与えなかったジョブズとシリコンバレーの偽善、京セラ「ガラパゴス」スマホがたどり着いた境地 バッテリー交換可 石鹸で洗える耐久性を追求、ソフトバンクが楽天モバイルと元社員を提訴 損害賠償請求額は1000億円まで拡大の可能性も) 「「日本はスマホに支配された異常な国だ」天才哲学者がそう断言する理由 マルクス・ガブリエルは警告する」 「マルクス・ガブリエル」氏はNHK番組にもよく出てくるドイツの哲学者で、興味深そうだ。 確かに「ドイツ人」はビアホールなどで大勢で飲むのが好きなようだ。「ドイツ人が人との直接の社会的接触を、デジタルな接触に置き換えることは非常に稀です。 一方、日本では様々な理由でデジタルな交流がずっと普及している」、なるほど。 「日本と韓国、特に日本は、常にサイバー独裁の最先端を行っていた」、「サイバー独裁の最先端」とは大げさとも思うが、「ガブリエル」氏の率直な印象のようだ。 確かに、「日本人」は「冷静に議論ができない」、「対立」を極力避け、「ディベート」はやり方すら知らない。 「日本」でも「ディベート」を中学生あたりから本格的に教えてゆくべきだろう。ただ、教える人への訓練も必要になるので、数十年がかりの息の長い取り組みになるだろう。 「「スマホ依存」はどれだけ人間の脳と知性を破壊しているか 子供にスマホを与えなかったジョブズとシリコンバレーの偽善」 「私たちはスマホを気にしないで1日を過ごすことは、もうできなくなっています。新しいニュースがあるかもしれない、メールやメッセージが来ているかもしれない。自分のスマホがどこにあるか、常に把握しておきたい。ドーパミンは、この「かもしれない」という期待に反応します」、脳内快楽物質の「ドーパミン」まで出てくるのであれば、ヤセ我慢しても無駄だろう。 「脳はこの「恐らくもらえるだろう」という状況が好きで、だから「当たるかもしれない、当たる可能性がある」と期待するギャンブルを好みます」、初めて知った。 「生まれてからずっとスマホが手元にあるような子供や若者への長期的な影響には特に注意し、心身へのリスクを回避する必要があります」、その通りだ。 「これらの商品を提供しているIT企業の幹部たちが自分たちは非常に注意深く、スマホやタブレット端末を使用しているということです。自分の子供にはスマホを与えていません」、実にズルイやり方で、許せない 「タブレット端末より紙で学んだ方が、成績が上がることが分かったのです。気が散りづらいのでしょう。集中力や記憶力、言語能力については、スマホをやっている時間が短い子供と、睡眠時間の長い子供の方がいい結果が出ています」、「私自身も、集中したい時や読書の時、患者と会う時、原稿を執筆する時は、集中力が削がれないようにスマホを別の部屋に置くようにしています」、なるほど。 「男子はSNS利用よりゲームに費やす時間が長いので影響が少ない」、とは面白い。その通りなのだろう 「メタ認知」は一般人でも出来るのだろうか、何か「訓練」が必要となるのではないか。 「京セラ「ガラパゴス」スマホがたどり着いた境地 バッテリー交換可、石鹸で洗える耐久性を追求」 「京セラとソニー」の「携帯端末事業」が、「採算性が向上、いずれも大幅に利益を伸ばした」とは結構なことだ 「京セラは、海や山などのアウトドアや工事現場など厳しい環境下でも使える「タフスマホ」で他社と差別化をはかっている」、面白い戦略だ 「京セラの「トルクが「厳しいスマホ事業」環境を取り切ってほしいものだ。 ソフトバンクが楽天モバイルと元社員を提訴 損害賠償請求額は1000億円まで拡大の可能性も 「楽天モバイル」が立ち遅れていたにせよ、「ソフトバンク元社員」を引き抜くという余りにミエミエな手を使ったのには、驚かされたが、訴訟の行方はどうなるのだろう。
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鉄道(その7)(終電繰り上げ 人は消えても回送が走る不条理 「ダイヤ改正」は困難、電車は急に止められない、乗客激減で大ピンチ「ユーロスター」が破綻危機 政府支援なく「航空会社に準じた救済」求めるが、世界2大鉄道メーカー 小さくない「合併」の代償 市場寡占避けるため手放さざるをえない製品も) [産業動向]

鉄道については、2019年11月20日に取上げたままだった。今日は、(その7)(終電繰り上げ 人は消えても回送が走る不条理 「ダイヤ改正」は困難、電車は急に止められない、乗客激減で大ピンチ「ユーロスター」が破綻危機 政府支援なく「航空会社に準じた救済」求めるが、世界2大鉄道メーカー 小さくない「合併」の代償 市場寡占避けるため手放さざるをえない製品も)である。

先ずは、本年1月22日付け東洋経済オンライン「終電繰り上げ、人は消えても回送が走る不条理 「ダイヤ改正」は困難、電車は急に止められない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/405692
・『新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない状況を受け、1月7日に東京・埼玉・千葉・神奈川の1都3県に発令された緊急事態宣言。1月13日には栃木や愛知、大阪、福岡など7府県にも対象が広がった。首都圏の鉄道各社は、「夜間の外出自粛」を強く呼びかける国や自治体の要請を受け、1月20日から終電の時刻を繰り上げた。 終電の繰り上げは、夜間の保守作業時間確保などを目的に都市部のJR各線や大手私鉄各社が今春のダイヤ改正から予定している。それだけに、今回の緊急事態宣言に伴う繰り上げは「前倒し」での実施のように見えるが、内容は別物だ。 単に春からの新ダイヤと時刻が違うだけではない。繰り上がった「終電」の後も、電車そのものは走るケースが少なくないのだ』、「国や自治体の要請」に従ったフリをしただけのようだ。
・『基本のダイヤは変えずに対応  今回、首都圏で終電を繰り上げたのは、JR東日本や大手私鉄各社をはじめ、1都3県の計25事業者。今春のダイヤ改正では繰り上げを行わない予定の路線も含まれる。 JR東日本は山手線や中央線快速、京浜東北・根岸線など、首都圏の計11線区で終電時刻を繰り上げた。山手線外回りの池袋―品川間は14分程度、中央線快速の東京―武蔵小金井間は30分程度と、各線でおおむね10~30分早まっている。「要請があった1都3県の路線で、終電時刻が遅い路線を対象にした」とJRの広報担当者は話す。 20日からの終電繰り上げは、基本となるダイヤは変えずに深夜の電車を運休したり、運転区間を短縮したりすることで対応している。例えば、中央線快速の下りは東京駅0時10分発以降の4本を運休し、終電を0時06分発に繰り上げた。池袋発の山手線品川方面行きは0時38分発が最後だったが、同列車を池袋止まりにすることで0時26分発が終電になった。 ただ、運休や運転区間の短縮によって終電時刻は繰り上がるものの、「運休となった部分も『回送』として電車自体は走る」(同社広報)ケースがあるという。「翌朝の列車を走らせるために(本来の終点に)回送しなければならない」ためだ。 私鉄も同様だ。例えば、首都圏の大手私鉄の中でも終電時刻が比較的遅い西武鉄道は、本来の終電を含め深夜帯の電車を運休する形で対応するが、運休となる列車も「基本的には回送として走る」(西武鉄道広報部)。「要請への対応で急を要するため、やむをえずこのような(回送する)形になった」という。 ほかの鉄道も「すべてではないが、現行ダイヤの一部を回送として運用するものがある」(東京メトロ)、「列車によって異なるがそういった(回送する)場合もある」(京王電鉄)など、客を乗せる営業列車としては運休しても、回送として電車を走らせるケースは少なくない』、「客を乗せる営業列車としては運休しても、回送として電車を走らせるケースは少なくない」、無駄に思えるが、「夜間の外出自粛」に寄与していることは確かだ。
・『作業時間確保には効果なし  鉄道のダイヤは乗務員のシフトや車両の運用などさまざまな要素が複雑に関連しており、ダイヤ改正の準備には長期間を要する。一方、今回の終電繰り上げは緊急事態宣言発令による国や自治体の要請を受けて急きょ実施したため、車両などの運用まで変えるのは難しい。運休による終電時刻の前倒しと「運休列車の回送」は、要請に対応するための苦肉の策といえる。 鉄道各社が今春のダイヤ改正で実施する予定の終電繰り上げは、夜間の保線作業や工事の時間確保、現場の労働負荷の軽減などが大きな狙いだ。 だが、今回の繰り上げは「要請を受けた急きょの対応なので、そもそもその点は想定していない」(ある大手私鉄)。終電後に回送電車が走るケースもあり、「作業時間を確保するなどの効果はない」と複数の鉄道会社関係者はいう。 さらに、発表から実施までの期間が約1週間と短かったため、利用客への周知も課題となった。各社は駅へのポスター掲示や車内の案内放送などで告知したが、「JRなどエリアの広い鉄道は相当大変では」(大手私鉄の広報担当者)。今回の終電繰り上げは、負荷軽減どころか「苦労はむしろ増えている」と、ある私鉄社員は漏らす。 今回、国や自治体が終電の繰り上げを要請したのは、深夜の人出を減らし、コロナの蔓延を防ぐことが狙いだ。東京都の小池百合子知事は緊急事態宣言が発令された1月7日の記者会見で、都民に外出自粛などを求めるとともに「人流を抑える具体的な対策」として、鉄道各社に終電時刻の繰り上げなどを要請すると述べた。 だが、深夜の電車はコロナ感染が広まった昨年春以来、大幅に利用が減っている。 とくに減っているのが終電間際の時間帯だ。JR東日本が公開しているデータによると、昨年10月の山手線終電付近(0時台)の利用者は、コロナ禍以前の前年と比較して40%減少。ほかの鉄道も同様で、東急は23時以降に渋谷を発車する電車の混雑率がコロナ禍前と比べて東横線で49%、田園都市線で46%減少している』、「深夜の電車はコロナ感染が広まった昨年春以来、大幅に利用が減っている。とくに減っているのが終電間際の時間帯だ」、こんなにも「利用」が急減したとは初めて知った。
・『感染抑制の効果はあるのか  緊急事態宣言の発令後はさらに減っているとみられる。終電繰り上げを控えた平日、東京駅を0時06分に発車する中央線快速電車に乗ってみると、発車時点で乗客は各車両に3~4人ほど。新宿駅からは乗客が増えるものの、それでも立客の姿はほとんど見られなかった。コロナ禍以前は満員だった0時台の田園都市線下り電車も、渋谷駅発車時点で最も人の多い車両でも1人おきにシートに座れるほどだった。 深夜の人出がすでに激減している中、終電繰り上げが感染拡大防止につながるのかは疑問符が付く。 しかし、鉄道側としては国や自治体の要請を受けないわけにもいかないのが実情だ。ある鉄道関係者は「各社が終電繰り上げのダイヤ改正を予定していたから『前倒し』要請ということになったのだろうが、ダイヤ改正は簡単に前倒しできるものではない」と語る。 緊急事態宣言の期間は2月7日までだが、終電の繰り上げ期間は今のところ「当面の間」だ。迷走するコロナ対策に、ライフラインである鉄道も振り回されてる』、「深夜の人出がすでに激減している中、終電繰り上げが感染拡大防止につながるのかは疑問符が付く」、確かだが、「国や自治体の要請を受けないわけにもいかないのが実情」、大人の対応のようだ。

次に、3月17日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリストのさかい もとみ氏による「乗客激減で大ピンチ「ユーロスター」が破綻危機 政府支援なく「航空会社に準じた救済」求めるが」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/417127
・『国と欧州大陸を結ぶ国際高速列車ユーロスターが、コロナ禍による移動需要の蒸発で破綻の危機にさらされている。コロナ以前のユーロスターはビジネス需要も観光利用も極めて好調で、平均の乗車率は80%を超えていたが、新型コロナの影響により乗車率が1%まで落ちる大打撃を受けている。 欧州の鉄道会社はコロナ禍で軒並み事業環境が悪化し、救済のための政府支援が積極的に行われた。例えば、英国国内の鉄道各線は一時的に「国有化」される形となったほか、フランス政府は国鉄(SNCF)に対し、コロナ禍による利用減少だけでなくSDGs (持続可能な開発目標)を見越した財政支援を行っている。 その中で、なぜユーロスターが破綻の危機に陥っているのか。それは、運行会社のユーロスター社が会社としては英国の企業であるものの、複数国を結ぶ国際高速列車であることなどから、一筋縄ではいかない事情を抱えているためだ』、「乗車率が1%まで落ちる大打撃」、で「消滅リスク」に瀕しているのに、どういうことだろう。
・『「支援なければ消滅リスク」  コロナ禍以前のユーロスターは、ロンドンとパリ、ブリュッセル、アムステルダムをつなぐ列車を1日当たり片道約50本運行。ロンドン―パリ間は早朝から夕方まで毎時1本程度走っていた。 ところがコロナ感染拡大を受けて各国が厳しいロックダウン措置を取る中、国際間の人の動きが激減。今やロンドン―パリ便1往復と、ロンドン―ブリュッセル―アムステルダム便1往復のみまで減便された。 この状況を受け、ユーロスター社は今年1月下旬、自ら「現状は極めて深刻で、政府からの支援がなければ、ユーロスターは消滅リスクに直面する」と述べ、英政府に対し「航空会社に与えられた政府支援の融資をわれわれにも適用してほしいと改めて求めたい」と窮状を訴えた。 ユーロスターの現状については、フランス国鉄の旅客運行部門SNCF Voyageursのクリストフ・ファニシェ(Christophe Fanichet)最高経営責任者(CEO)も「非常に危機的な状況」だと認めている。しかし目下のところ、英政府の動きは重い。 法人としてのユーロスター社の登記先はロンドンにあり、れっきとした英国企業である。だが、英政府の支援が得られず立ち往生している理由として大きなポイントは2つあると筆者は考えている。 1つは、現状では英国政府や鉄道会社の資本がまったく入っていないことだ。 ここでユーロスター社の資本関係について解説しておこう。会社の設立当初は、列車が乗り入れている3カ国が応分出資しており、その割合はフランス国鉄(SNCF)が55%、英運輸省が出資するロンドン&コンチネンタル鉄道(LCR)が40%、そしてベルギー国鉄(SNCB)が5%となっていた。 ところが2014年、英政府はLCR保有のユーロスター株の民間放出を決めた』、なるほど。
・『英ではフランスの企業扱い?  その結果、英政府の保有分はカナダ・ケベック州の政府系基金が30%、アメリカのインフラ投資ファンドであるヘルメス・インフラストラクチャーが10%をそれぞれ買収。英国が拠点でありながらも、英国関連の出資者はいなくなってしまった。 英経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、「ユーロスター社は、英国においては英国の支援を受けていないフランスの企業と見なされる一方、フランスではフランスの支援を受けていない英国を拠点とする企業と見なされている」と説明。どういう根拠で支援を進めていいかさえも決まっていない状況が見え隠れする。 そしてもう1つは、英国の鉄道として「国内間列車」としての機能を持たないため、そもそも「鉄道フランチャイズ制度」の枠から外れていることだ。英国ではコロナ禍での鉄道事業の苦境を受け、実質的に運営を国有化する救済措置が講じられているが(2020年7月16日付記事「『日本式』がベスト?岐路に立つ英鉄道の民営化」参照)、ユーロスターは国際列車のため、この救済の枠に入らなかった。 英国ではコロナ禍によるロックダウンが合計3回行われたが、最初の実施からまもなく1年が経つ。ユーロスターの需要はそれ以来、「ほぼゼロ」まで収縮してしまった。運輸関係のアナリストの間では、「ユーロスターのキャッシュフローはこの夏まで持たないのではないか」とする声も聞こえてきている。 一方、「政府による救済の必要はない」と訴える英国民も少なくない。彼らの多くは「経営が厳しいのは理解できるが、株主がその責を負うべきだ」と主張する。 しかし、このまま政府支援など新たな動きがなければ、破綻手続きに入るという懸念も生まれてきている。コロナ禍という想定外の問題であるとともに、そもそも公共性の高い交通インフラをこのまま見殺しにするのは正しい道なのだろうか。 目下の最悪のシナリオは、政府支援もなく新たな出資者も出てこないというものだ。通常の破綻処理は投資銀行などが管財人となり、企業や事業の新たな買い手を探すわけだが、それが振るわない場合は資産を現金に換えて清算を進めることとなる。もっとも懸念されるのは、管財人が車両売却を進めてしまい「英国と欧州大陸を結ぶ国際高速列車サービス」が消滅してしまうことだ』、「ユーロスター社は、英国においては英国の支援を受けていないフランスの企業と見なされる一方、フランスではフランスの支援を受けていない英国を拠点とする企業と見なされている」、「ユーロスター」はなんとも難しい立場に追い込まれてしまったようだ。「目下の最悪のシナリオは、政府支援もなく新たな出資者も出てこないというものだ・・・もっとも懸念されるのは、管財人が車両売却を進めてしまい「英国と欧州大陸を結ぶ国際高速列車サービス」が消滅してしまうことだ」、こうした「最悪のシナリオ」も現実味を帯びてきたようだ。
・『最悪シナリオは車両売却  現在ユーロスターで使われている車両は、開業時に導入された「e300」(仏アルストム製11編成)と、ドイツを走る高速列車ICE3と基本設計が同じ「e320」(独シーメンス製17編成)の2タイプがある。e300は20両編成、e320は16両編成と、欧州の高速列車としては長い編成で、全長は両タイプとも約390mだ。 現在の乗車率なら編成両数を減らしてもよさそうだが、車両の構造上の問題だけでなく、ユーロスターはそれができない規程がある。英仏海峡トンネル内部の非常口への避難を前提に編成長が決まっているためだ。 トンネルの非常口は375mごとに設けてあり、編成の長さを非常口の設置間隔以上にすることで、万が一の際、編成中のどこかのドアからより早く非常口にアクセスできることが求められている。このため、需要に応じて編成を短縮するわけにもいかない。 だが、英仏海峡トンネルを通って英国―欧州大陸間を営業運転できる車両は現在、ユーロスター用に使われているものしか存在しないという。関係のない路線に車両が売却されてしまうことは避けたい事態だ。 英国と欧州大陸を結ぶ高速列車がなくなるという事態を避けるため、仮に破綻手続きが始まったとして、管財人は新規出資者を探す際に「英国―欧州大陸間を結ぶ鉄道サービスを提供できることという条件を付けるべき」(英国の鉄道アナリスト)という考え方もある。 現状ではあまり想像したくないオプションではあるが、それでも欧州ではすでに「ユーロスター」の売却先に関する予想があれこれと語られている。 目下有力視されているのはドイツ鉄道(DB)だ。何度となくドイツとロンドンとの直結を求め、さらにICEの試験車両をロンドン・セントパンクラス駅まで乗り入れるなど、さまざまな仕掛けに及んだが、現在まで実現していない。現在のユーロスターの主力車両はドイツ・シーメンス製で、DBにとっては親和性が高い』、確かに「ドイツ鉄道(DB)」は有力な候補になりそうだ。
・『貴重な国際交通をどう維持する?  これは筆者の想像だが、ダークホース的な出資者の候補として香港MTRC(香港鉄路)の名を挙げておきたい。同社は、英国の高速鉄道新線「HS2」の運行オペレーターとしてフランチャイズ獲得に向け、中国の広深鉄路公司とコンソーシアムを組み入札したが、最終候補選出の際に落選した。しかし、MTRCはすでに中国本土から乗り入れる高速鉄道の香港領内での運営、および長年にわたって広州市―九龍半島間を結ぶ直通列車の運行に携わっており、「国際列車」の経験は豊富だ。 ユーロスターの運行がなくなってしまうことは、国際交通インフラ維持の観点から見て由々しき問題だ。それに加え、欧州では環境保護の観点から500~600km程度の移動は航空機でなく列車を利用することが奨励されている。SDGsへの考慮が世界的に叫ばれる中、「島国・イギリス」への鉄道アクセスは残しておくべき貴重な交通インフラのひとつであることは疑いない。 コロナ禍の収束、あるいはワクチン接種の進展など、旅客需要回復までの道のりの予想がつけば、より短期間の融資や支援で延命できる可能性もある。破綻や売却という形での結論は見たくない、というのが大方の意見だ。はたしてどんな格好で生き延びるのだろうか』、「香港MTRC」の場合は、「中国」との関係がネックになる可能性もあろそうだ。「はたしてどんな格好で生き延びるのだろうか」、大いに注目されるところだ。

第三に、3月31日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「世界2大鉄道メーカー、小さくない「合併」の代償 市場寡占避けるため手放さざるをえない製品も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/419791
・『アルストムによるボンバルディアの鉄道部門、ボンバルディア・トランスポーテーションの買収は、欧州委員会(EC)の承認を得たことで順調に進み、2021年1月29日に正式に完了した。買収額は5.5億ユーロ(約711億7500万円)で、これは昨年2月に公表されていた5.8~6.2億ユーロよりはるかに低い額となった。 買収が完了したことで、かつて欧州鉄道メーカーのビッグ3としてしのぎを削った2社は同じ会社となり、70か国で約7万5000人の従業員を抱える巨大企業となった』、興味深そうだ。
・『弱みを相互補完  アルストムは今回のボンバルディア買収により、それまでお互いが弱いとされていた地域を相互補完でき、商業的に高いアドバンテージを持つことになったと自信を見せる。アルストムは地元フランス以外に、イタリア、スペイン、インド、東南アジア、ブラジルに拠点を確立しており、一方のボンバルディアは英国、ドイツ、北欧、中国、北米の市場を開拓している。両社が合併したことで、これらの地域すべてに商業的基盤を持つことになった。 両社の合併は、現在世界シェア1位で、近い将来に自分たちの基盤であるヨーロッパや北米市場において脅威となりかねない中国中車(CRRC)への対抗であることはよく知られている。欧州委員会からの承認を得ることができず破談になったものの、2019年に合併寸前まで至ったアルストムとシーメンスの合併話も、裏ではドイツおよびフランス政府の強力なバックアップがあったからこそと言われている。 アルストムとシーメンスの合併が破談となったのは、とりわけ信号システムと高速列車の2つの分野で市場を独占しかねない、という大きな懸念があったためだ。両社はその対応に奔走することとなったが、結局最後まで欧州委員会を納得させるだけの条件を提示することはできず、合併を諦めざるをえなかった。 欧州委員会は域内における市場の寡占を避けるため、今回の合併にもいくつかの注文を付けている。 対等合併だったシーメンスのときとは異なり、今回はアルストムがボンバルディアを買収する吸収合併だったこと、またシーメンスと違い、ボンバルディアは高速列車の技術プラットフォームは保有しているものの、製品としてラインナップはしていないため、高速列車分野における市場寡占化はないと判断されたことは大きかった。 とはいえ、競合する鉄道メーカー同士であれば、同種の製品を保有しているのは自然なことである。当然、それらのうちいくつかの技術は手放さなければならなかった』、今回の合併が認められた背景の1つに、「中国中車(CRRC)への対抗」がありそうだ
・『高速列車技術はどうなる?  では、合併後に手を離れることになったのは何か。 アルストムが基幹製品である高速列車TGVを手放すはずはない。代わりにボンバルディアの高速列車プラットフォーム「ゼフィーロ」の知的財産などは手放さなければならなくなった。 「ゼフィーロ」プラットフォームは、日立製作所のイタリア法人である日立レールS.p.Aによって製造される高速列車「ETR400型」で採用されている。現在はイタリア鉄道がフランスおよびスペイン国内での営業へ向けて追加編成を注文するなど、今も非常に関係が深いことから、日立製作所が譲渡先の筆頭候補になることは間違いないが、現時点では日立側からも特にアナウンスはされていない。 一方で、「ゼフィーロ」プラットフォームは譲渡されることなく廃止という話もある。もし日立がその技術を入手した場合、高速列車市場ではアルストムのライバルとなることから、その可能性も完全には否定できない。そうなると日立は独自の技術でETR400型の後継車種を構築する必要が出てくる。 欧州ではシーメンスと並んで多数の納入実績がある、ボンバルディアの汎用型機関車TRAXXシリーズも残され、今後は「アルストムTRAXXシリーズ」として販売されることになる。一方で、アルストムにも同様の機関車シリーズ「プリマ」がある。欧州ではまったく鳴かず飛ばずであったが、アゼルバイジャンやインド、モロッコなど、他の地域ではそれなりに販売実績があるため、その処遇は気になるところだ。 近郊列車用連接車両のボンバルディア「タレント3」とアルストム「コラディア・ポリヴァレント」は、ともに工場ごと他社へ譲渡することを決定しているが、譲渡先としてチェコのシュコダの名前が浮上している。同社は低床連接式車両の技術を獲得することで、ドイツおよびフランス市場へ本格参入したい意向だ。 とくにアルストム・コラディアに関しては欧州で注目を集める水素燃料車両の技術も含まれており、もし実現すればシュコダは次世代型低公害車両メーカーとして一躍名を馳せることになる。水素燃料車両については、アルストムはすでにフランス国鉄と最初の契約を締結しており、技術と工場が譲渡された場合、シュコダがその契約を引き継ぐことになる。 トラム車両も、両社それぞれが製品を保有していたので、いずれこれらも整理されていくことになるだろうが、現時点では具体的な情報は入ってこない。 ただし、2020年12月15日の段階で117編成の新型車両を供給する契約をボンバルディアと交わしていたベルリン交通局は、3月16日にそのデザインを公表したが、外見からはボンバルディアの製品であるFlexityをベースしているようだ。これが同シリーズの最後の契約となるのか、今後も製造が続けられるのかが注目される』、「譲渡先」候補の「チェコのシュコダ」は、「次世代型低公害車両メーカーとして一躍名を馳せることになる」、どうなるのだろう。
・『合併でやっかいな問題も  しかし一方で、すでに交わされた契約の中にはややこしい問題が発生している案件もある。パリ市内を走る高速地下鉄RER-B線は、車両老朽化に伴う置き換えを計画しており、2018年に行われた入札で(アルストムとの合併が浮上する前の)ボンバルディアとスペインのCAFによる連合が146編成+最大34編成分の追加オプションという契約を獲得した。 しかしアルストムは、新型コロナの影響による需要の変動を想定した車両導入計画、および購入後の一時的な車両保管に対して柔軟性を求める内容が契約条件に後付けで加えられたことに異議を唱え、入札を実施したフランス国鉄SNCFとパリ交通局RATPを提訴した。 アルストムとしては、いったん受注し製造した車両を需要変動によって一時的に保管しなければならなかったり、製造の途中で仕様が変更されたりする可能性があるのはリスクが高いうえ、ボンバルディアとCAFが提示した金額では十分な柔軟性を確保できず、メーカーがリスクを背負わなければならない、というのが言い分だ。 パリ司法裁判所はSNCFとRATPに対し、こうした契約後の調達条件変更などを停止するよう命じたが、それに対し両者が控訴するなど問題は複雑な方向へ向かっていた。 アルストムによるボンバルディア買収が完了したことで、状況はさらに複雑化することになった。ボンバルディアの契約はそのままアルストムが引き継ぐことになったが、契約書を確認した後、アルストム側は改めて、この契約については再交渉したいと申し出た。その理由は前述の価格面に加え、技術面においても大きな懸念があるというものだった。 アルストムの会長兼CEOのアンリ・プーパルト=ラファージュ氏は、「契約金額は、ボンバルディアが損失を出している(2021年末の営業を目指してテスト中の新型車両)RER-NGよりもさらに20%も低い」「CAFが提供する予定の台車は技術的問題を抱え、すでに供給されたブラジルの地下鉄では2年間の運転休止を伴う大問題となった」と語っており、再契約は譲れない姿勢を示した。アルストム側はSNCFとRATPに対し、CAF抜きで会議の場を設けたいと打診しており、価格面に加えて技術的に不安のあるCAF製品を排除し、すべて自社製に切り替えたい意向を示すものと考えられる。 対してSNCFとRATPは、ボンバルディア=CAFコンソーシアムに対する契約は継続されていることを確認し、「ボンバルディアを買収したアルストムは、本契約とコミットメントをすべて引き継いでいる」と譲らない姿勢だが、車両の老朽化が進んでいることから速やかな問題解決を必要としている。新型車両への置き換えは2024年には開始される予定であったが、この期限内には不可能になるとRATPは述べており、問題が長引けば納入はさらに遅れることになる』、こうしたややこしい問題は、ある意味で「合併」につきものではある。
・『世界メーカー3位に日立が浮上  さて、2社が合併した後の各鉄道メーカーの年間売り上げの最新シェアについて、現地ニュースが興味深いデータを掲載した。1位のCRRCは揺るがないものの、アルストム+ボンバルディアが2位に浮上した。ここまでは容易に想像できるが、3位にはシーメンス・モビリティと並び、なんと日立製作所が急浮上したのだ。 つまり2021年のビッグ3ならぬ「新ビッグ4」とは、「CRRC・新生アルストム・シーメンスおよび日立」ということになる。上位3社の顔触れは基本的に変わらないが、ついにそこへ肩を並べるに至った日立製作所の今後にも大いに期待したい』、「世界メーカー3位に日立が浮上」とは喜ばしいことだ。「日立」の「今後にも大いに期待したい」、同感だ。
タグ:鉄道 東洋経済オンライン 橋爪 智之 さかい もとみ (その7)(終電繰り上げ 人は消えても回送が走る不条理 「ダイヤ改正」は困難、電車は急に止められない、乗客激減で大ピンチ「ユーロスター」が破綻危機 政府支援なく「航空会社に準じた救済」求めるが、世界2大鉄道メーカー 小さくない「合併」の代償 市場寡占避けるため手放さざるをえない製品も) 「終電繰り上げ、人は消えても回送が走る不条理 「ダイヤ改正」は困難、電車は急に止められない」 「国や自治体の要請」に従ったフリをしただけのようだ。 「客を乗せる営業列車としては運休しても、回送として電車を走らせるケースは少なくない」、無駄に思えるが、「夜間の外出自粛」に寄与していることは確かだ 「深夜の電車はコロナ感染が広まった昨年春以来、大幅に利用が減っている。とくに減っているのが終電間際の時間帯だ」、こんなにも「利用」が急減したとは初めて知った。 「深夜の人出がすでに激減している中、終電繰り上げが感染拡大防止につながるのかは疑問符が付く」、確かだが、「国や自治体の要請を受けないわけにもいかないのが実情」、大人の対応のようだ。 「乗客激減で大ピンチ「ユーロスター」が破綻危機 政府支援なく「航空会社に準じた救済」求めるが」 「乗車率が1%まで落ちる大打撃」、で「消滅リスク」に瀕しているのに、どういうことだろう。 「ユーロスター社は、英国においては英国の支援を受けていないフランスの企業と見なされる一方、フランスではフランスの支援を受けていない英国を拠点とする企業と見なされている」、「ユーロスター」はなんとも難しい立場に追い込まれてしまったようだ 「目下の最悪のシナリオは、政府支援もなく新たな出資者も出てこないというものだ もっとも懸念されるのは、管財人が車両売却を進めてしまい「英国と欧州大陸を結ぶ国際高速列車サービス」が消滅してしまうことだ」、こうした「最悪のシナリオ」も現実味を帯びてきたようだ 確かに「ドイツ鉄道(DB)」は有力な候補になりそうだ。 「香港MTRC」の場合は、「中国」との関係がネックになる可能性もあろそうだ。「はたしてどんな格好で生き延びるのだろうか」、大いに注目されるところだ。 「世界2大鉄道メーカー、小さくない「合併」の代償 市場寡占避けるため手放さざるをえない製品も」 今回の合併が認められた背景の1つに、「中国中車(CRRC)への対抗」がありそうだ 「譲渡先」候補の「チェコのシュコダ」は、「次世代型低公害車両メーカーとして一躍名を馳せることになる」、なるほど どうなるのだろう こうしたややこしい問題は、ある意味で「合併」につきものではある。 「世界メーカー3位に日立が浮上」とは喜ばしいことだ。「日立」の「今後にも大いに期待したい」、同感だ
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