外食産業(その6)(くら寿司「一律3万円賃上げ」大胆な給与改定の意味 米国子で躍進、IT企業の側面も持つなか待遇改善、【美食家の結論】「食べログは信用できるか?」に対する納得の回答、そりゃ話題にもなるわ…ガストの「神コスパ」フレンチ、味も接客もすべてが「やり過ぎ」だった!) [産業動向]
外食産業については、本年5月2日に取上げた。今日は、(その6)(くら寿司「一律3万円賃上げ」大胆な給与改定の意味 米国子で躍進、IT企業の側面も持つなか待遇改善、【美食家の結論】「食べログは信用できるか?」に対する納得の回答、そりゃ話題にもなるわ…ガストの「神コスパ」フレンチ、味も接客もすべてが「やり過ぎ」だった!)である。
先ずは、6月5日付け東洋経済オンラインが掲載した未来調達研究所の坂口 孝則氏による「くら寿司「一律3万円賃上げ」大胆な給与改定の意味 米国子で躍進、IT企業の側面も持つなか待遇改善」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/759408
・『意外に知られていない事実に、くら寿司の子会社、Kura Sushi USAの快進撃がある。同社はアメリカで2008年に設立され、2009年から寿司レストランを全米で展開している。2019年にはアメリカ・ナスダック市場に上場もしている』、「Kura Sushi USA」が「快進撃」しているとは頼もしい。
・『アメリカくら寿司の快進撃 その後、世界的にはコロナ禍に突入。しかし、Kura Sushi USAにとっては追い風になった。自宅ですごす時間が増え、さらにテイクアウトやデリバリーが一般的になった。そしてハンバーガーばかりではなく、本格的な日本の寿司も食したい需要が高まった。2024年はさほど株価が好調とまではいえない。ただし、2019年からの中期的スパンで見ると、株価は爆上がりしている。 同社は寿司を提供するだけではなく、アメリカに回転寿司というエンターテインメントショーを展開していると思ったほうがわかりやすい。 日本で培ったハイブリッドレーン(注文した寿司が客先めがけて飛んでくるレーン)。空き皿を貯めると開始するゲーム。配膳のロボット。さらにスマホでの注文まで。レストランがライバルというより、アミューズメントパークがライバルとさえいえる。) そして、エンタメの土台となるハイブリッドレーンの管理、ゲーム、ロボット、スマホ注文への処理、そして回転寿司の廃棄量削減のための需要管理……。これらを見ると、くら寿司とは飲食店チェーンでありながら、同時に高度なIT企業ともいえる側面を有している』、「レストランがライバルというより、アミューズメントパークがライバルとさえいえる。) そして、エンタメの土台となるハイブリッドレーンの管理、ゲーム、ロボット、スマホ注文への処理、そして回転寿司の廃棄量削減のための需要管理……。これらを見ると、くら寿司とは飲食店チェーンでありながら、同時に高度なIT企業ともいえる側面を有している」、なるほど。
・『月給3万円アップの日本くら寿司 話は日本のくら寿司に移る。 先日、くら寿司は全社員を対象に約10%のベースアップを実施するとした。基本給を3万円引き上げる。これは当然に初任給にも反映され、23万円が26万円になる。このすがすがしいニュースは多くに歓迎された。社会的に賃上げがブームになっていることと、人手不足感が高まっているので、理解できる経営判断としたものが多かったようだ。 ここで計算してみよう。日本のくら寿司には従業員が約1700人いる。平均年齢は31.5歳で、同社の平均年収は約460万円だ。 1700×3万円×12≒6億1200万円となる。つまり人件費が基本給のアップ分で6億円ほど上昇する。また1人当たりは36万円(=3万円×12)の年収増となる。これを2つの観点から比較する。 まず1つ目は経営成績の観点から。現在くら寿司は2024年第1四半期が最新の発表内容となる。そこで見ると、売上高は前期の513億円から561億円に急増。 前期の営業損失から、営業利益も17億円に急増している。 四半期の数字について、「厳しい環境は続いているものの、人流の増加に伴う売上高の増加等により、全般的に好調に転じてきております」「旺盛なインバウンド需要を取り込むべく、今後とも都市部を中心に積極的な店舗展開を図ってまいります」と前向きな言葉を決算短信で述べた。先行投資がかさんでいる北米事業も損失幅がやや縮小した。 次に2つ目の観点から。他の値と比べてみよう。同社の平均年収は約460万円で、これが月に3万円のベースアップと紹介した。まず日本平均の給与所得者の平均は令和4年分で458万円。これに対して、上場企業の給与平均はさまざまな調査があるが640万円ほどを示す結果が多い。 なお、私は年齢を無視しているので、強引な分析・比較であることは承知している。ただ、同社はもともと日本の平均給与なみの水準であり、上場企業平均からすると低い水準になる。どこまでを飲食業とカウントするかで結果は異なるが、飲食で上場企業であれば平均年収が500万円くらいの企業は多い。 つまり、この2点目の観点からも、くら寿司がベースアップをすることに理由があるように思われる』、「同社はもともと日本の平均給与なみの水準であり、上場企業平均からすると低い水準になる。どこまでを飲食業とカウントするかで結果は異なるが、飲食で上場企業であれば平均年収が500万円くらいの企業は多い。 つまり、この2点目の観点からも、くら寿司がベースアップをすることに理由があるように思われる」、なるほど。
・『くら寿司のすごさ これから飲食店に求められるのは、もちろん商品開発やサービスを追い求めることにある。ただ、冒頭でKura Sushi USAの話をしたように、IT企業の側面がある。私自身、某回転寿司チェーンを取材して感じたが、そこらの企業が想像できないほどDX(デジタルトランスフォーメーション)化を進めており、高度なシステムが稼働し続けている。 考えてみてほしい。あらゆる時間に予約や注文が入り、それを難なくこなして時間通りにオペレーションするのだ。 さらに、IT開発だけではない。外食企業がひしめくなか、店舗開発・立地検索を行い、さらにインバウンド対応、ほぼ毎週のように開催される店舗イベントを立案・実施し、労務管理を行い、各店舗をうまくマネジメントせねばならない。つまり相当に高度な人材が必要だ。 くら寿司の場合は積極的に出店を続け、さらに海外事業にも力をいれるとしている。ならば、より働く場所としての魅力を高めて、新卒・中途採用に力をいれる必要がある。 定額減税が3月に決まって6月に実施されるというバタバタで、事務処理担当者の鬱憤や不満がたまっている。さらに電気代があがり、さらに夏の猛暑で野菜等の値上がりが予想されている。名目賃金は上がっても、実質賃金はまだマイナスを続けている。そんなときに、くら寿司のベースアップ3万円の発表があった。 そこには覚悟を感じたし、一気に10%アップという大胆さも合わさって人々の印象に残ることになった。 それにしても——と私は感じるのだ。 くら寿司が狙った、とは思わないが、このタイミングでの発表はかなりの宣伝効果があっただろうし、人材を集める際にプラスの効果があるだろう。さすがに6億円ぶんの効果があった、とまではいわないが、金銭で計算した際のPR効果はかなりのものだろう。 くら寿司のベースアップは、その宣伝効果も含めて、企業行動に示唆を与える』、「外食企業がひしめくなか、店舗開発・立地検索を行い、さらにインバウンド対応、ほぼ毎週のように開催される店舗イベントを立案・実施し、労務管理を行い、各店舗をうまくマネジメントせねばならない。つまり相当に高度な人材が必要だ・・・くら寿司のベースアップ3万円の発表があった。 そこには覚悟を感じたし、一気に10%アップという大胆さも合わさって人々の印象に残ることになった」、なるほど。
・『くら寿司の最近の店の様子 高い天井にぶら下がる大きな提灯(上)と、待ち受けスペースには大きな浮世絵(中)と、タッチパネル(下)。利便性とエンタメ性がミックスしている』、コメント省略。
次に、6月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した「美食家」の浜田岳文氏による「【美食家の結論】「食べログは信用できるか?」に対する納得の回答」を紹介しよう。
・『美食=高級とは限らない。料理の背後にある歴史や文化、シェフのクリエイティビティを理解することで、食事はより美味しくなる! コスパや評判にとらわれることなく、料理といかに向き合うべきか? 本能的な「うまい」だけでいいのか? 人生をより豊かにする知的体験=美食と再定義する前代未聞の書籍『美食の教養』が刊行される。イェール大を経て、世界127カ国・地域を食べ歩く美食家の著者の思考と哲学が、食べ手、作り手の価値観を一新させる1冊だ。本稿では、同書の一部を特別に掲載する』、「イェール大を経て、世界127カ国・地域を食べ歩く美食家の著者の思考と哲学が、食べ手、作り手の価値観を一新させる1冊だ」、本格的な「美食」本だ。
・『美食の教養 「食べログ」の妥当性を考える 日本の食べログは、いろいろな批判もありますが、個人的にはレストランを頻繁に食べ歩いている人の感覚とそれなりに合致していると僕は感じています。もちろん、僕個人がその点数や順位に100%賛同するかというと、そんなことはありません。 自分が気に入らない店がたとえばトップ10に2、3軒入っているからといって食べログは信用できない、という人もいますが、点数は不特定多数の評価をアルゴリズムによって集計した結果でしかないので、そんなものだと思います。 逆に、より多くの人が、食べログより妥当性がある、と感じるランキングはあるでしょうか? 比較的OAD(※Opinionated About Dining/アメリカ人フーディーのスティーブ・プロトニキが立ち上げたレストランリスト)がいい線いっていると個人的には思うものの、多分現時点では存在しない。完璧でないからといって食べログに文句をいっている人は、逆にどれだけ食べログに期待しているの、と思ってしまいます。 食べログの評価システムと特徴は、そのアルゴリズムにあります。あくまで僕の印象ですが、食べログのアルゴリズムは、サクラなどの不正の影響を削ぐことを最重要視していると思っています。 具体的にいうと、いろんなお店で実際に食べていて、影響力のあるレビュアーは、配点のウエイトが高い。だから、そういう人が点数をつけると、お店の総合点が目に見えて動くことがあります。逆に、特定のお店を陥れる目的で捨てアカウントをどんどん作って悪い評価をつけたり、逆に自分のお店の評価を上げようと5点をつけたりしても、ほとんど影響がありません。 もちろん、どんな方法論も完璧ではありません。食べログの場合、影響力のあるレビュアーが力を持ちすぎる、という懸念はあるでしょう。また、新しくオープンした店は、そういうレビュアーが何人か食べに行って評価するまで、点数がつかない、もしくは基準点の3点近くにとどまってしまう、という課題もあります。つまり、不正を防止する代償として、速報性が犠牲になっている側面があります』、「食べログの評価システムと特徴は、そのアルゴリズムにあります。あくまで僕の印象ですが、食べログのアルゴリズムは、サクラなどの不正の影響を削ぐことを最重要視していると思っています」、なるほど。
・『世界一の美食家の「食べログ」活用術 このことは、逆に食べログを使いこなすコツにもつながります。 僕は、全体のランキングや点数を見ることはあまりありません。知っているお店がほとんどだし、細かな点数や順位の上下には意味がないと思っているからです。 ではどう使っているか。それは、新しくオープンした注目店舗の検索に使っているのです。具体的にどうやるか。それは、エリアやキーワードを指定した先のお店のリストの画面で、タブを「ランキング」から「ニューオープン」に切り替えるのです。このままだとファストフードチェーンなども入ってきてしまうので、最低金額やジャンルなどで切る。そうすると、より見やすいリストになります。あの有名店の支店ができたんだ、とか、あの店の二番手が独立したんだ、とかここで気づくことも多い。 あとは、写真が気になる店は、コメントを見てみる。すると、まだコメントが5件ほどしかついていないけど、どれも4点超え。ヘビーレビュアーはまだ来ていないけどレビューの内容がサクラっぽくない。こうやって、いち早く注目のお店を見つけています。 また、食べログは他のレビュアーをフォローして、その人の投稿がタイムラインに流れてくるようにすることもできます。自分と好みや考え方が似ている人のおすすめは、場合によって点数評価以上に役に立つことがあります。どのレビュアーが好みに合うのかわからなければ、まずは、僕も参加していますが「グルメ著名人」のアカウントをフォローするところから始めてもいいかもしれません。 最近は、自社メディアの「食べログマガジン」の記事も充実してきました。ここでもニューオープンの店が情報発信されていて、参考になると思います。 (本稿は書籍『美食の教養 世界一の美食家が知っていること』より一部を抜粋・編集したものです) (浜田 岳文氏の略歴はリンク先参照)』、「タブを「ランキング」から「ニューオープン」に切り替えるのです。このままだとファストフードチェーンなども入ってきてしまうので、最低金額やジャンルなどで切る。そうすると、より見やすいリストになります。あの有名店の支店ができたんだ、とか、あの店の二番手が独立したんだ、とかここで気づくことも多い。 あとは、写真が気になる店は、コメントを見てみる。すると、まだコメントが5件ほどしかついていないけど、どれも4点超え。ヘビーレビュアーはまだ来ていないけどレビューの内容がサクラっぽくない。こうやって、いち早く注目のお店を見つけています」、なるほど有効そうだ。
第三に、11月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したイトモス研究所所長の小倉健一氏による「そりゃ話題にもなるわ…ガストの「神コスパ」フレンチ、味も接客もすべてが「やり過ぎ」だった!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/354911
・『ファミリーレストランのガストがまさかのフレンチコースを提供――。「白金台L’allium進藤佳明シェフ監修 至福のフレンチコース」がSNSで「おいしそう」「これは行くしかない」と話題になっている。実際に食べてみて、見えてきた魅力と課題をレポートする』、「ガスト」で「「神コスパ」フレンチ」とは興味深そうだ。
・『常識破り、驚きのフレンチコース 11月13日に発表されたすかいらーくホールディングス(HD)の2024年度第3四半期決算説明資料によれば、すかいらーくHDは2024年1月から9月までの決算を発表し、売上高は前年同期比311億円増の2947億円、当期利益は前年比230%超の105億円となった。 既存店の売上高は前年比111.5%と大きく伸び、新規出店や業態転換も好調で増収増益を実現した。この結果、年間目標である130億円の80%以上をすでに達成しており、過去5年の平均進捗率も上回る好調ぶりだ。 しかし、売り上げに対する営業利益率は、前年の7.6%から7.1%に少し下がった。利益が増えた一方で、コストが増加したことなどが原因と考えられる。 すかいらーくHDが運営する3049店舗(10月31日現在)のうち、圧倒的な店舗数を誇るのが1246店ある「ガスト」だ。他にも私が好きなレストランチェーンだと、バーミヤン(362店舗)、むさしの森珈琲(85店舗)、La Ohana(23店舗)なども運営をしている。 基幹チェーンであるガストにおいて、業界を戸惑わせる常識破りのメニューが発表された。その名も「白金台L’allium進藤佳明シェフ監修 至福のフレンチコース」だ』、狙いは何なのだろう。
・『これで本当に1990円!? そりゃ話題にもなるわ…ガストの「神コスパ」フレンチ、味も接客もすべてが「やり過ぎ」だった! ガストの特徴は、公式HPに《幅広い客層・利用動機に対応するファミリーレストラン。洋食を中心に多様なジャンルの料理を提供する「お値打ち感」重視のレストラン》とあるように、安価で提供されるコスパ重視のレストランチェーンである。 そんなファミレスで、まさかのフレンチコースを提供するという企画だ。マーケティングの常識からは遠く離れたことをなぜガストはやることになったのか? その謎の答えを求めて、ガストの錦糸町北口店へ向かった。 まず、お品書きだ。このコースが税込み1990円だという。
・『白金台L’allium進藤佳明シェフ監修 至福のフレンチコース Entrée 3種の前菜盛り合わせ サーモンマリネのグジェール アンディーブの柚子ビネグレット和え 帆立のバターソテー Soupe カリフラワースープ ~カリカリパンチェッタとクルトン添え~ Plat ビーフ100%ハンバーグ ペリグーソース ~ごぼうのチップをのせて~ ライスorパン Dessert ブランマンジェプラリネ ※食後にお持ちいたします あまりメニューの詳細をゴチャゴチャ書き並べても読みにくいと思ったので割愛するが、前菜のメニューにはこんな注意書きが添えてあった。 「チーズを練りこんだシュー生地に、サーモンと玉ねぎのレモンマリネを乗せました。手で持ってお召し上がりくださいませ。Cheese-filled choux pastry topped with lemon-marinated salmon and onionsI put it on top. Please hold it in your hands and enjoy」』、
・『気になるお味と「圧勝」ポイント そりゃ話題にもなるわ…ガストの「神コスパ」フレンチ、味も接客もすべてが「やり過ぎ」だった! コースのすべての料理でこういった説明がある。ユーザーフレンドリーを目指したというよりは、それっぽい雰囲気を出そうと努力しているように感じる。 人手不足の時代に、自動配膳ロボット「ネコニャン(仮)」ではなく、わざわざ人間が料理を運び、料理の説明をしてくれた。 ちなみに、ネコニャンと私が勝手に呼んでいた配膳ロボットの名を調べたら、店舗ごとに違うようで、「チーズインハンバーグ太郎」とか「デミニャン」とか「田中さん」とか、好きなように名前がつけられているようだ。 それっぽく雰囲気づくりをすることは、高級フレンチでは当たり前のことなのだが、ガストでは少し無理があるように感じた。 隣の席では女子高生2人組がドリンクバーを飲んでいて、もう一方では家族連れがハンバーグとポテトをガツガツ食べていた。フレンチレストランとはちょっと違う雰囲気である。 コースは、前菜を除いて総じて非常においしかった。コスパ感としては、セブンイレブンのお弁当やお惣菜コーナーで同程度のものを食べようとしたら、同じ金額くらいかかるかなという感触だ。 ガストのハンバーグはとにかくどのメニューもおいしいのだが、このコースのハンバーグもやはりウマかった。デザートも良かった。 コスパという意味で他のフランス料理に圧勝していると思うのは、コース料金には入っていないものの、別途ドリンクバーを頼めば炭酸水をいくらでも飲めるところだろう。カジュアルフレンチでも、炭酸水は案外いい値段がするところが多いものだ。今回は心置きなく、フレンチと炭酸水を楽しめた』、「隣の席では女子高生2人組がドリンクバーを飲んでいて、もう一方では家族連れがハンバーグとポテトをガツガツ食べていた。フレンチレストランとはちょっと違う雰囲気である・・・別途ドリンクバーを頼めば炭酸水をいくらでも飲める」、なるほど。
・『見えてきた課題 そりゃ話題にもなるわ…ガストの「神コスパ」フレンチ、味も接客もすべてが「やり過ぎ」だった! ただ、いくつか課題も感じた。この人手不足のご時世、わざわざ人間が配膳するのは、店舗を運営する店長としては頭の痛い問題だろう。価格も、高級メニューに走ろうとして、結局コスパに走ったようなイメージだ。 ガストのフレンチコースが、これからの大きな戦略の中に明確に位置付けられているのなら良いのだが、単発では「ガストに高級メニューがある」というイメージはつかないし、コスパ重視の客にフレンチコースは厳しい評価を受けそうだ。 レストラン経営では、レベニューマネジメントが必要な業態である。 レベニューマネジメントとは、「商品やサービスを最も効果的に売り、できるだけ多くの収益を得る方法」を指す。この手法は特に「期限がある商品やサービス」に適しており、航空業界での成功がきっかけとなり、ホテルやレストランなどの業界でも注目されるようになった。 たとえば、飛行機やレストランの空席は、お客が座らないとそのまま無駄になってしまう。飛行機が出発した後や、レストランの営業が終了した後では、その空席で売り上げはあげられないからだ。 このような「期限付き」の商品やサービスを効率よく販売するため、レベニューマネジメントでは需要に応じた価格設定が重要となる。 ガストのような低価格帯のレストランでは、以下のような特徴があることが調査(「レベニューマネジメント、ヘドニック・プライスモデルとオペレーション属性の効果」)でわかっている』、なるほど。
・『おいしさも、接客も、雰囲気づくりも過剰 ・低価格レストランでは、顧客は「雰囲気」「料理の品質」「サービスの品質」について、逆U字型の満足度を示す。 ・高価格帯のレストランでは、食事だけでなく「特別な体験」を求めるため、雰囲気がその体験価値を大きく高める要因となるが、低価格レストランでは清潔感や快適さなどが基本的な期待値を満たせば、それ以上の豪華さを追求しても価格評価に大きな変化はない。 ・ファミリーレストランなどでは「十分おいしい」段階を超えた品質向上は、顧客が価格に見合わないと感じる可能性が高い ・スピーディーで正確なサービスが求められる低価格帯では、基本的なサービスの改善が価格にプラスの影響を与える。しかし、一定以上のサービス水準(たとえば、過剰な接客)はコスト増加に繋がる一方で、価格評価への影響は少なくなる。 こうしたことを考えると、このガストのフレンチコース戦略は「おいしさも、接客も、雰囲気づくりも過剰」ということになる。真面目なものづくりをする上で、しっかりとしたフレンチシェフに監修してもらい、律儀に配膳、料理説明をするのも良いところはあると思う。 配膳する手間をかけるのなら、デザートに花火でも刺してインスタ映えを狙う。もしくは、せっかくハンバーグを店で焼いているのであれば「炭焼きレストランさわやか」のハンバーグのように、目の前で焼くような演出を仕掛けていく方が、努力として正しい方向性なのではないだろうか。 値段からしてコスパはとてもいいし、総じておいしいのだが、ガストの客に受け入れられるのか少々心配だ。) (メニュー表はリンク先参照)「真面目なものづくりをする上で、しっかりとしたフレンチシェフに監修してもらい、律儀に配膳、料理説明をするのも良いところはあると思う。 配膳する手間をかけるのなら、デザートに花火でも刺してインスタ映えを狙う。もしくは、せっかくハンバーグを店で焼いているのであれば「炭焼きレストランさわやか」のハンバーグのように、目の前で焼くような演出を仕掛けていく方が、努力として正しい方向性なのではないだろうか。 値段からしてコスパはとてもいいし、総じておいしいのだが、ガストの客に受け入れられるのか少々心配だ」、その通りだ。
先ずは、6月5日付け東洋経済オンラインが掲載した未来調達研究所の坂口 孝則氏による「くら寿司「一律3万円賃上げ」大胆な給与改定の意味 米国子で躍進、IT企業の側面も持つなか待遇改善」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/759408
・『意外に知られていない事実に、くら寿司の子会社、Kura Sushi USAの快進撃がある。同社はアメリカで2008年に設立され、2009年から寿司レストランを全米で展開している。2019年にはアメリカ・ナスダック市場に上場もしている』、「Kura Sushi USA」が「快進撃」しているとは頼もしい。
・『アメリカくら寿司の快進撃 その後、世界的にはコロナ禍に突入。しかし、Kura Sushi USAにとっては追い風になった。自宅ですごす時間が増え、さらにテイクアウトやデリバリーが一般的になった。そしてハンバーガーばかりではなく、本格的な日本の寿司も食したい需要が高まった。2024年はさほど株価が好調とまではいえない。ただし、2019年からの中期的スパンで見ると、株価は爆上がりしている。 同社は寿司を提供するだけではなく、アメリカに回転寿司というエンターテインメントショーを展開していると思ったほうがわかりやすい。 日本で培ったハイブリッドレーン(注文した寿司が客先めがけて飛んでくるレーン)。空き皿を貯めると開始するゲーム。配膳のロボット。さらにスマホでの注文まで。レストランがライバルというより、アミューズメントパークがライバルとさえいえる。) そして、エンタメの土台となるハイブリッドレーンの管理、ゲーム、ロボット、スマホ注文への処理、そして回転寿司の廃棄量削減のための需要管理……。これらを見ると、くら寿司とは飲食店チェーンでありながら、同時に高度なIT企業ともいえる側面を有している』、「レストランがライバルというより、アミューズメントパークがライバルとさえいえる。) そして、エンタメの土台となるハイブリッドレーンの管理、ゲーム、ロボット、スマホ注文への処理、そして回転寿司の廃棄量削減のための需要管理……。これらを見ると、くら寿司とは飲食店チェーンでありながら、同時に高度なIT企業ともいえる側面を有している」、なるほど。
・『月給3万円アップの日本くら寿司 話は日本のくら寿司に移る。 先日、くら寿司は全社員を対象に約10%のベースアップを実施するとした。基本給を3万円引き上げる。これは当然に初任給にも反映され、23万円が26万円になる。このすがすがしいニュースは多くに歓迎された。社会的に賃上げがブームになっていることと、人手不足感が高まっているので、理解できる経営判断としたものが多かったようだ。 ここで計算してみよう。日本のくら寿司には従業員が約1700人いる。平均年齢は31.5歳で、同社の平均年収は約460万円だ。 1700×3万円×12≒6億1200万円となる。つまり人件費が基本給のアップ分で6億円ほど上昇する。また1人当たりは36万円(=3万円×12)の年収増となる。これを2つの観点から比較する。 まず1つ目は経営成績の観点から。現在くら寿司は2024年第1四半期が最新の発表内容となる。そこで見ると、売上高は前期の513億円から561億円に急増。 前期の営業損失から、営業利益も17億円に急増している。 四半期の数字について、「厳しい環境は続いているものの、人流の増加に伴う売上高の増加等により、全般的に好調に転じてきております」「旺盛なインバウンド需要を取り込むべく、今後とも都市部を中心に積極的な店舗展開を図ってまいります」と前向きな言葉を決算短信で述べた。先行投資がかさんでいる北米事業も損失幅がやや縮小した。 次に2つ目の観点から。他の値と比べてみよう。同社の平均年収は約460万円で、これが月に3万円のベースアップと紹介した。まず日本平均の給与所得者の平均は令和4年分で458万円。これに対して、上場企業の給与平均はさまざまな調査があるが640万円ほどを示す結果が多い。 なお、私は年齢を無視しているので、強引な分析・比較であることは承知している。ただ、同社はもともと日本の平均給与なみの水準であり、上場企業平均からすると低い水準になる。どこまでを飲食業とカウントするかで結果は異なるが、飲食で上場企業であれば平均年収が500万円くらいの企業は多い。 つまり、この2点目の観点からも、くら寿司がベースアップをすることに理由があるように思われる』、「同社はもともと日本の平均給与なみの水準であり、上場企業平均からすると低い水準になる。どこまでを飲食業とカウントするかで結果は異なるが、飲食で上場企業であれば平均年収が500万円くらいの企業は多い。 つまり、この2点目の観点からも、くら寿司がベースアップをすることに理由があるように思われる」、なるほど。
・『くら寿司のすごさ これから飲食店に求められるのは、もちろん商品開発やサービスを追い求めることにある。ただ、冒頭でKura Sushi USAの話をしたように、IT企業の側面がある。私自身、某回転寿司チェーンを取材して感じたが、そこらの企業が想像できないほどDX(デジタルトランスフォーメーション)化を進めており、高度なシステムが稼働し続けている。 考えてみてほしい。あらゆる時間に予約や注文が入り、それを難なくこなして時間通りにオペレーションするのだ。 さらに、IT開発だけではない。外食企業がひしめくなか、店舗開発・立地検索を行い、さらにインバウンド対応、ほぼ毎週のように開催される店舗イベントを立案・実施し、労務管理を行い、各店舗をうまくマネジメントせねばならない。つまり相当に高度な人材が必要だ。 くら寿司の場合は積極的に出店を続け、さらに海外事業にも力をいれるとしている。ならば、より働く場所としての魅力を高めて、新卒・中途採用に力をいれる必要がある。 定額減税が3月に決まって6月に実施されるというバタバタで、事務処理担当者の鬱憤や不満がたまっている。さらに電気代があがり、さらに夏の猛暑で野菜等の値上がりが予想されている。名目賃金は上がっても、実質賃金はまだマイナスを続けている。そんなときに、くら寿司のベースアップ3万円の発表があった。 そこには覚悟を感じたし、一気に10%アップという大胆さも合わさって人々の印象に残ることになった。 それにしても——と私は感じるのだ。 くら寿司が狙った、とは思わないが、このタイミングでの発表はかなりの宣伝効果があっただろうし、人材を集める際にプラスの効果があるだろう。さすがに6億円ぶんの効果があった、とまではいわないが、金銭で計算した際のPR効果はかなりのものだろう。 くら寿司のベースアップは、その宣伝効果も含めて、企業行動に示唆を与える』、「外食企業がひしめくなか、店舗開発・立地検索を行い、さらにインバウンド対応、ほぼ毎週のように開催される店舗イベントを立案・実施し、労務管理を行い、各店舗をうまくマネジメントせねばならない。つまり相当に高度な人材が必要だ・・・くら寿司のベースアップ3万円の発表があった。 そこには覚悟を感じたし、一気に10%アップという大胆さも合わさって人々の印象に残ることになった」、なるほど。
・『くら寿司の最近の店の様子 高い天井にぶら下がる大きな提灯(上)と、待ち受けスペースには大きな浮世絵(中)と、タッチパネル(下)。利便性とエンタメ性がミックスしている』、コメント省略。
次に、6月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した「美食家」の浜田岳文氏による「【美食家の結論】「食べログは信用できるか?」に対する納得の回答」を紹介しよう。
・『美食=高級とは限らない。料理の背後にある歴史や文化、シェフのクリエイティビティを理解することで、食事はより美味しくなる! コスパや評判にとらわれることなく、料理といかに向き合うべきか? 本能的な「うまい」だけでいいのか? 人生をより豊かにする知的体験=美食と再定義する前代未聞の書籍『美食の教養』が刊行される。イェール大を経て、世界127カ国・地域を食べ歩く美食家の著者の思考と哲学が、食べ手、作り手の価値観を一新させる1冊だ。本稿では、同書の一部を特別に掲載する』、「イェール大を経て、世界127カ国・地域を食べ歩く美食家の著者の思考と哲学が、食べ手、作り手の価値観を一新させる1冊だ」、本格的な「美食」本だ。
・『美食の教養 「食べログ」の妥当性を考える 日本の食べログは、いろいろな批判もありますが、個人的にはレストランを頻繁に食べ歩いている人の感覚とそれなりに合致していると僕は感じています。もちろん、僕個人がその点数や順位に100%賛同するかというと、そんなことはありません。 自分が気に入らない店がたとえばトップ10に2、3軒入っているからといって食べログは信用できない、という人もいますが、点数は不特定多数の評価をアルゴリズムによって集計した結果でしかないので、そんなものだと思います。 逆に、より多くの人が、食べログより妥当性がある、と感じるランキングはあるでしょうか? 比較的OAD(※Opinionated About Dining/アメリカ人フーディーのスティーブ・プロトニキが立ち上げたレストランリスト)がいい線いっていると個人的には思うものの、多分現時点では存在しない。完璧でないからといって食べログに文句をいっている人は、逆にどれだけ食べログに期待しているの、と思ってしまいます。 食べログの評価システムと特徴は、そのアルゴリズムにあります。あくまで僕の印象ですが、食べログのアルゴリズムは、サクラなどの不正の影響を削ぐことを最重要視していると思っています。 具体的にいうと、いろんなお店で実際に食べていて、影響力のあるレビュアーは、配点のウエイトが高い。だから、そういう人が点数をつけると、お店の総合点が目に見えて動くことがあります。逆に、特定のお店を陥れる目的で捨てアカウントをどんどん作って悪い評価をつけたり、逆に自分のお店の評価を上げようと5点をつけたりしても、ほとんど影響がありません。 もちろん、どんな方法論も完璧ではありません。食べログの場合、影響力のあるレビュアーが力を持ちすぎる、という懸念はあるでしょう。また、新しくオープンした店は、そういうレビュアーが何人か食べに行って評価するまで、点数がつかない、もしくは基準点の3点近くにとどまってしまう、という課題もあります。つまり、不正を防止する代償として、速報性が犠牲になっている側面があります』、「食べログの評価システムと特徴は、そのアルゴリズムにあります。あくまで僕の印象ですが、食べログのアルゴリズムは、サクラなどの不正の影響を削ぐことを最重要視していると思っています」、なるほど。
・『世界一の美食家の「食べログ」活用術 このことは、逆に食べログを使いこなすコツにもつながります。 僕は、全体のランキングや点数を見ることはあまりありません。知っているお店がほとんどだし、細かな点数や順位の上下には意味がないと思っているからです。 ではどう使っているか。それは、新しくオープンした注目店舗の検索に使っているのです。具体的にどうやるか。それは、エリアやキーワードを指定した先のお店のリストの画面で、タブを「ランキング」から「ニューオープン」に切り替えるのです。このままだとファストフードチェーンなども入ってきてしまうので、最低金額やジャンルなどで切る。そうすると、より見やすいリストになります。あの有名店の支店ができたんだ、とか、あの店の二番手が独立したんだ、とかここで気づくことも多い。 あとは、写真が気になる店は、コメントを見てみる。すると、まだコメントが5件ほどしかついていないけど、どれも4点超え。ヘビーレビュアーはまだ来ていないけどレビューの内容がサクラっぽくない。こうやって、いち早く注目のお店を見つけています。 また、食べログは他のレビュアーをフォローして、その人の投稿がタイムラインに流れてくるようにすることもできます。自分と好みや考え方が似ている人のおすすめは、場合によって点数評価以上に役に立つことがあります。どのレビュアーが好みに合うのかわからなければ、まずは、僕も参加していますが「グルメ著名人」のアカウントをフォローするところから始めてもいいかもしれません。 最近は、自社メディアの「食べログマガジン」の記事も充実してきました。ここでもニューオープンの店が情報発信されていて、参考になると思います。 (本稿は書籍『美食の教養 世界一の美食家が知っていること』より一部を抜粋・編集したものです) (浜田 岳文氏の略歴はリンク先参照)』、「タブを「ランキング」から「ニューオープン」に切り替えるのです。このままだとファストフードチェーンなども入ってきてしまうので、最低金額やジャンルなどで切る。そうすると、より見やすいリストになります。あの有名店の支店ができたんだ、とか、あの店の二番手が独立したんだ、とかここで気づくことも多い。 あとは、写真が気になる店は、コメントを見てみる。すると、まだコメントが5件ほどしかついていないけど、どれも4点超え。ヘビーレビュアーはまだ来ていないけどレビューの内容がサクラっぽくない。こうやって、いち早く注目のお店を見つけています」、なるほど有効そうだ。
第三に、11月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したイトモス研究所所長の小倉健一氏による「そりゃ話題にもなるわ…ガストの「神コスパ」フレンチ、味も接客もすべてが「やり過ぎ」だった!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/354911
・『ファミリーレストランのガストがまさかのフレンチコースを提供――。「白金台L’allium進藤佳明シェフ監修 至福のフレンチコース」がSNSで「おいしそう」「これは行くしかない」と話題になっている。実際に食べてみて、見えてきた魅力と課題をレポートする』、「ガスト」で「「神コスパ」フレンチ」とは興味深そうだ。
・『常識破り、驚きのフレンチコース 11月13日に発表されたすかいらーくホールディングス(HD)の2024年度第3四半期決算説明資料によれば、すかいらーくHDは2024年1月から9月までの決算を発表し、売上高は前年同期比311億円増の2947億円、当期利益は前年比230%超の105億円となった。 既存店の売上高は前年比111.5%と大きく伸び、新規出店や業態転換も好調で増収増益を実現した。この結果、年間目標である130億円の80%以上をすでに達成しており、過去5年の平均進捗率も上回る好調ぶりだ。 しかし、売り上げに対する営業利益率は、前年の7.6%から7.1%に少し下がった。利益が増えた一方で、コストが増加したことなどが原因と考えられる。 すかいらーくHDが運営する3049店舗(10月31日現在)のうち、圧倒的な店舗数を誇るのが1246店ある「ガスト」だ。他にも私が好きなレストランチェーンだと、バーミヤン(362店舗)、むさしの森珈琲(85店舗)、La Ohana(23店舗)なども運営をしている。 基幹チェーンであるガストにおいて、業界を戸惑わせる常識破りのメニューが発表された。その名も「白金台L’allium進藤佳明シェフ監修 至福のフレンチコース」だ』、狙いは何なのだろう。
・『これで本当に1990円!? そりゃ話題にもなるわ…ガストの「神コスパ」フレンチ、味も接客もすべてが「やり過ぎ」だった! ガストの特徴は、公式HPに《幅広い客層・利用動機に対応するファミリーレストラン。洋食を中心に多様なジャンルの料理を提供する「お値打ち感」重視のレストラン》とあるように、安価で提供されるコスパ重視のレストランチェーンである。 そんなファミレスで、まさかのフレンチコースを提供するという企画だ。マーケティングの常識からは遠く離れたことをなぜガストはやることになったのか? その謎の答えを求めて、ガストの錦糸町北口店へ向かった。 まず、お品書きだ。このコースが税込み1990円だという。
・『白金台L’allium進藤佳明シェフ監修 至福のフレンチコース Entrée 3種の前菜盛り合わせ サーモンマリネのグジェール アンディーブの柚子ビネグレット和え 帆立のバターソテー Soupe カリフラワースープ ~カリカリパンチェッタとクルトン添え~ Plat ビーフ100%ハンバーグ ペリグーソース ~ごぼうのチップをのせて~ ライスorパン Dessert ブランマンジェプラリネ ※食後にお持ちいたします あまりメニューの詳細をゴチャゴチャ書き並べても読みにくいと思ったので割愛するが、前菜のメニューにはこんな注意書きが添えてあった。 「チーズを練りこんだシュー生地に、サーモンと玉ねぎのレモンマリネを乗せました。手で持ってお召し上がりくださいませ。Cheese-filled choux pastry topped with lemon-marinated salmon and onionsI put it on top. Please hold it in your hands and enjoy」』、
・『気になるお味と「圧勝」ポイント そりゃ話題にもなるわ…ガストの「神コスパ」フレンチ、味も接客もすべてが「やり過ぎ」だった! コースのすべての料理でこういった説明がある。ユーザーフレンドリーを目指したというよりは、それっぽい雰囲気を出そうと努力しているように感じる。 人手不足の時代に、自動配膳ロボット「ネコニャン(仮)」ではなく、わざわざ人間が料理を運び、料理の説明をしてくれた。 ちなみに、ネコニャンと私が勝手に呼んでいた配膳ロボットの名を調べたら、店舗ごとに違うようで、「チーズインハンバーグ太郎」とか「デミニャン」とか「田中さん」とか、好きなように名前がつけられているようだ。 それっぽく雰囲気づくりをすることは、高級フレンチでは当たり前のことなのだが、ガストでは少し無理があるように感じた。 隣の席では女子高生2人組がドリンクバーを飲んでいて、もう一方では家族連れがハンバーグとポテトをガツガツ食べていた。フレンチレストランとはちょっと違う雰囲気である。 コースは、前菜を除いて総じて非常においしかった。コスパ感としては、セブンイレブンのお弁当やお惣菜コーナーで同程度のものを食べようとしたら、同じ金額くらいかかるかなという感触だ。 ガストのハンバーグはとにかくどのメニューもおいしいのだが、このコースのハンバーグもやはりウマかった。デザートも良かった。 コスパという意味で他のフランス料理に圧勝していると思うのは、コース料金には入っていないものの、別途ドリンクバーを頼めば炭酸水をいくらでも飲めるところだろう。カジュアルフレンチでも、炭酸水は案外いい値段がするところが多いものだ。今回は心置きなく、フレンチと炭酸水を楽しめた』、「隣の席では女子高生2人組がドリンクバーを飲んでいて、もう一方では家族連れがハンバーグとポテトをガツガツ食べていた。フレンチレストランとはちょっと違う雰囲気である・・・別途ドリンクバーを頼めば炭酸水をいくらでも飲める」、なるほど。
・『見えてきた課題 そりゃ話題にもなるわ…ガストの「神コスパ」フレンチ、味も接客もすべてが「やり過ぎ」だった! ただ、いくつか課題も感じた。この人手不足のご時世、わざわざ人間が配膳するのは、店舗を運営する店長としては頭の痛い問題だろう。価格も、高級メニューに走ろうとして、結局コスパに走ったようなイメージだ。 ガストのフレンチコースが、これからの大きな戦略の中に明確に位置付けられているのなら良いのだが、単発では「ガストに高級メニューがある」というイメージはつかないし、コスパ重視の客にフレンチコースは厳しい評価を受けそうだ。 レストラン経営では、レベニューマネジメントが必要な業態である。 レベニューマネジメントとは、「商品やサービスを最も効果的に売り、できるだけ多くの収益を得る方法」を指す。この手法は特に「期限がある商品やサービス」に適しており、航空業界での成功がきっかけとなり、ホテルやレストランなどの業界でも注目されるようになった。 たとえば、飛行機やレストランの空席は、お客が座らないとそのまま無駄になってしまう。飛行機が出発した後や、レストランの営業が終了した後では、その空席で売り上げはあげられないからだ。 このような「期限付き」の商品やサービスを効率よく販売するため、レベニューマネジメントでは需要に応じた価格設定が重要となる。 ガストのような低価格帯のレストランでは、以下のような特徴があることが調査(「レベニューマネジメント、ヘドニック・プライスモデルとオペレーション属性の効果」)でわかっている』、なるほど。
・『おいしさも、接客も、雰囲気づくりも過剰 ・低価格レストランでは、顧客は「雰囲気」「料理の品質」「サービスの品質」について、逆U字型の満足度を示す。 ・高価格帯のレストランでは、食事だけでなく「特別な体験」を求めるため、雰囲気がその体験価値を大きく高める要因となるが、低価格レストランでは清潔感や快適さなどが基本的な期待値を満たせば、それ以上の豪華さを追求しても価格評価に大きな変化はない。 ・ファミリーレストランなどでは「十分おいしい」段階を超えた品質向上は、顧客が価格に見合わないと感じる可能性が高い ・スピーディーで正確なサービスが求められる低価格帯では、基本的なサービスの改善が価格にプラスの影響を与える。しかし、一定以上のサービス水準(たとえば、過剰な接客)はコスト増加に繋がる一方で、価格評価への影響は少なくなる。 こうしたことを考えると、このガストのフレンチコース戦略は「おいしさも、接客も、雰囲気づくりも過剰」ということになる。真面目なものづくりをする上で、しっかりとしたフレンチシェフに監修してもらい、律儀に配膳、料理説明をするのも良いところはあると思う。 配膳する手間をかけるのなら、デザートに花火でも刺してインスタ映えを狙う。もしくは、せっかくハンバーグを店で焼いているのであれば「炭焼きレストランさわやか」のハンバーグのように、目の前で焼くような演出を仕掛けていく方が、努力として正しい方向性なのではないだろうか。 値段からしてコスパはとてもいいし、総じておいしいのだが、ガストの客に受け入れられるのか少々心配だ。) (メニュー表はリンク先参照)「真面目なものづくりをする上で、しっかりとしたフレンチシェフに監修してもらい、律儀に配膳、料理説明をするのも良いところはあると思う。 配膳する手間をかけるのなら、デザートに花火でも刺してインスタ映えを狙う。もしくは、せっかくハンバーグを店で焼いているのであれば「炭焼きレストランさわやか」のハンバーグのように、目の前で焼くような演出を仕掛けていく方が、努力として正しい方向性なのではないだろうか。 値段からしてコスパはとてもいいし、総じておいしいのだが、ガストの客に受け入れられるのか少々心配だ」、その通りだ。
タグ:東洋経済オンライン (その6)(くら寿司「一律3万円賃上げ」大胆な給与改定の意味 米国子で躍進、IT企業の側面も持つなか待遇改善、【美食家の結論】「食べログは信用できるか?」に対する納得の回答、そりゃ話題にもなるわ…ガストの「神コスパ」フレンチ、味も接客もすべてが「やり過ぎ」だった!) 外食産業 坂口 孝則氏による「くら寿司「一律3万円賃上げ」大胆な給与改定の意味 米国子で躍進、IT企業の側面も持つなか待遇改善」 「Kura Sushi USA」が「快進撃」しているとは頼もしい。 「レストランがライバルというより、アミューズメントパークがライバルとさえいえる。) そして、エンタメの土台となるハイブリッドレーンの管理、ゲーム、ロボット、スマホ注文への処理、そして回転寿司の廃棄量削減のための需要管理……。これらを見ると、くら寿司とは飲食店チェーンでありながら、同時に高度なIT企業ともいえる側面を有している」、なるほど。 「同社はもともと日本の平均給与なみの水準であり、上場企業平均からすると低い水準になる。どこまでを飲食業とカウントするかで結果は異なるが、飲食で上場企業であれば平均年収が500万円くらいの企業は多い。 つまり、この2点目の観点からも、くら寿司がベースアップをすることに理由があるように思われる」、なるほど。 「外食企業がひしめくなか、店舗開発・立地検索を行い、さらにインバウンド対応、ほぼ毎週のように開催される店舗イベントを立案・実施し、労務管理を行い、各店舗をうまくマネジメントせねばならない。つまり相当に高度な人材が必要だ・・・くら寿司のベースアップ3万円の発表があった。 そこには覚悟を感じたし、一気に10%アップという大胆さも合わさって人々の印象に残ることになった」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン 浜田岳文氏による「【美食家の結論】「食べログは信用できるか?」に対する納得の回答」 「イェール大を経て、世界127カ国・地域を食べ歩く美食家の著者の思考と哲学が、食べ手、作り手の価値観を一新させる1冊だ」、本格的な「美食」本だ。 「食べログの評価システムと特徴は、そのアルゴリズムにあります。あくまで僕の印象ですが、食べログのアルゴリズムは、サクラなどの不正の影響を削ぐことを最重要視していると思っています」、なるほど。 「タブを「ランキング」から「ニューオープン」に切り替えるのです。このままだとファストフードチェーンなども入ってきてしまうので、最低金額やジャンルなどで切る。そうすると、より見やすいリストになります。あの有名店の支店ができたんだ、とか、あの店の二番手が独立したんだ、とかここで気づくことも多い。 あとは、写真が気になる店は、コメントを見てみる。すると、まだコメントが5件ほどしかついていないけど、どれも4点超え。ヘビーレビュアーはまだ来ていないけどレビューの内容がサクラっぽくない。こうやって、いち早く注目のお店を見つけています」、なるほど有効そうだ。 小倉健一氏による「そりゃ話題にもなるわ…ガストの「神コスパ」フレンチ、味も接客もすべてが「やり過ぎ」だった!」 「ガスト」で「「神コスパ」フレンチ」とは興味深そうだ。 「真面目なものづくりをする上で、しっかりとしたフレンチシェフに監修してもらい、律儀に配膳、料理説明をするのも良いところはあると思う。 配膳する手間をかけるのなら、デザートに花火でも刺してインスタ映えを狙う。もしくは、せっかくハンバーグを店で焼いているのであれば「炭焼きレストランさわやか」のハンバーグのように、目の前で焼くような演出を仕掛けていく方が、努力として正しい方向性なのではないだろうか。 値段からしてコスパはとてもいいし、総じておいしいのだが、ガストの客に受け入れられるのか少々心配だ」、その通りだ。
エネルギー(その14)(「洋上風力汚職」で風力発電協会の残念すぎる検証 検証委員の1人は「秋本議員に個人献金」の過去、市長には土建業者から「多額献金」が…!北海道釧路市「メガソーラー激増」の知られざる背景) [産業動向]
エネルギーについては、昨年12月21日に取上げた。今日は、(その14)(「洋上風力汚職」で風力発電協会の残念すぎる検証 検証委員の1人は「秋本議員に個人献金」の過去、市長には土建業者から「多額献金」が…!北海道釧路市「メガソーラー激増」の知られざる背景)である。
先ずは、8月30日付け東洋経済オンライン「「洋上風力汚職」で風力発電協会の残念すぎる検証 検証委員の1人は「秋本議員に個人献金」の過去」を紹介しよう。「最初から着地点が決まっていた。結論ありきの検証だ」。日本風力発電協会(JWPA)が7月22日に公表した「検証報告書」について、ある会員企業の社員は憤る。 JWPAは風力発電の業界団体で、約500社のメーカーや発電事業者などが加盟。近年は洋上風力に関する政策提言を積極的に行ってきたが、昨年10月に資源エネルギー庁から行政指導を受けた。「第三者の関与の下で協会の意思決定および活動のあり方等を検証するように」という内容だ。 指導のきっかけとなったのは、洋上風力を舞台とした秋本真利衆議院議員と日本風力開発・元社長の受託収賄事件だ。事件前の秋本議員は自民党に所属、再生可能エネルギー普及拡大議員連盟の事務局長を務め、風力発電の普及を推進してきた。 東京地検特捜部は、元社長が国会質問などを依頼し、秋本議員がその見返りに賄賂を受け取ったとして昨年9月に2人を起訴した。秋本議員は起訴内容を否認している』、「東京地検特捜部は、元社長が国会質問などを依頼し、秋本議員がその見返りに賄賂を受け取ったとして昨年9月に2人を起訴した。秋本議員は起訴内容を否認」、「秋本議員が受けた傷。
・『霞が関から「出禁扱い」に この汚職事件には、JWPAも一定の関与があったのではないかと取りざたされてきた。加藤仁代表理事は日本風力開発の副会長(いずれも当時)。ほかにも同社の関係者がJWPAの要職に就いており、日本風力開発の強い影響下にあったからだ。 秋本議員らが起訴された日、JWPAはHP上で贈収賄疑惑への関与を否定するとともに「協会活動が特定の役職員や法人の意向に左右されることはない」と意見表明した。 しかし翌月にエネ庁から指導を受ける。JWPAは、「エネ庁はおろか、環境省など霞が関全体で出禁の扱い」(業界関係者)となった。 このようなことを背景にJWPAは、東京大学先端科学技術研究センターの飯田誠・特任准教授を座長とする検証委員会を立ち上げた。飯田氏は洋上風力に関する国の審議会で委員を務めている。) 同委員会は、JWPAの意思決定および活動のあり方について問題点を検証することを目的に掲げ、「贈収賄事件は検討事項ではない」(JWPA広報)とした。ただ報告書では秋本議員との関わりについても紙幅を割いている。 そこでの結論は「違法性はない」。秋本議員とは交友関係を築いてきたが、JWPAから国会で質問をしてくれるように働きかけた事実は確認されなかったとする。秋本議員のほうから、風力関係の質問をするので質問事項を提出してほしいと要請を受けて対応したときも、なんらかの利益を供与した事実は確認されなかったという。 そのうえで贈収賄事件については、検察の起訴によって協会が潔白だということは明白になったと主張。「特定の会員企業に経済的・人的に依存していたことが特定企業の発言力の大きさにつながった可能性がある」と指摘している。 秋本議員とJWPAとの関係に不適切なものはなかったというわけだが、検証委員会による検証範囲はきわめて狭い』、「秋本議員とJWPAとの関係に不適切なものはなかったというわけだが、検証委員会による検証範囲はきわめて狭い」、なるほど。
・洋上風力汚職の構図 どのような過程で日本風力開発が影響力を強めていったのか。日本風力開発の元社長が自らの思惑を通すためにJWPAに働きかけることはなかったのか等については触れられていない。一部幹部の“暴走”についてもなぜチェック機能が働かなかったのかという視点が弱い内容になっている』、「どのような過程で日本風力開発が影響力を強めていったのか。日本風力開発の元社長が自らの思惑を通すためにJWPAに働きかけることはなかったのか等については触れられていない。一部幹部の“暴走”についてもなぜチェック機能が働かなかったのかという視点が弱い内容になっている」、なるほど。
・『2020年の昼食会での「秋本発言」(2021年12月末、大型洋上風力の事業者公募において、三菱商事などの企業連合が3海域のプロジェクトを独占し「総取り」した。それ以前の動きも検証の対象になっていない。 事業者公募の結果が出た後、JWPAは直ちに入札ルールを変更すべきだと提言。呼応するかのように秋本議員は翌年2月の国会で、事業者公募の際の評価基準の見直しを訴えた。三菱商事陣営の総取りで洋上風力への事業参入の目論見が崩れた企業の1つが日本風力開発だった。 報告書は総取りを受けたJWPAの提言について、「きわめて閉鎖的に取りまとめが行われ、不適切だった」とし、「執行部の自負や思い込みが強すぎたものと考えられる」と総括している。 この公募の結果が出る約1年前の2020年9月。JWPA会員企業と秋本議員の間で昼食会が開かれた。官房長官だった菅義偉氏が出席する予定だったが、首相に就任したため欠席。菅氏の名代として出席したのが秋本議員だった。 その席で秋本議員は、洋上風力の公募入札ルールについて「具体的な“味付け”をエネ庁に指示している」と強調。入札ではベスタス社(デンマーク)製の風車を採用するよう昼食会に出席した企業に繰り返し求めていた。 国内産業への経済波及効果という点では、三菱重工が出資しているベスタスが有望だ。ほかの欧米メーカー製では経済波及効果を得られないと秋本議員は考えていたようだ。 MHIベスタスジャパンの社長は、現在JWPAで副代表理事を務める山田正人氏だ。2020年の昼食会のやり取りについて確認すると、「確かにそうしたやり取りがあった」と認めた一方で、「何の前触れもなくそういう話が出たので他事業者も聞き流した」と述べた。 だが山田氏は、報告書のメディア向け説明会の場で矛盾した発言をしている。秋本議員との間において、入札の方向性や個社の戦略に関わるやり取りは「把握している限りなかった」と言明しているのだ。 昼食会の出席者リストには、山田氏、コスモエネルギーホールディングス(HD)の子会社コスモエコパワーの眞鍋修一氏(JWPA元理事)、中村成人JWPA専務理事の名があった。この3人は今回、検証委員会の委員を務めている。現在の代表理事である秋吉優氏(ユーラスエナジーHD副社長)の名もリストにある。 秋本議員とJWPAの距離が接近する契機になったとみられるのが、2020年に開催された「洋上風力の産業競争力強化に向けた官民協議会」だ。この官民協議会で、アジアでも有数の洋上風力の導入目標を初めて策定した。 秋本議員は官民協議会の発案者を自負し、関係企業に自身への支援を強く求めていた。こうした秋本議員の振る舞いは、検証委員会の検証対象からすっぽりと抜け落ちている。 「(エネ庁からは)官民協議会にさかのぼって秋本先生とどういう付き合いをしてきたかは問題視されていない。さかのぼって議論する必要はないということでこの報告書はまとまっている」(山田氏)』、「こうした秋本議員の振る舞いは、検証委員会の検証対象からすっぽりと抜け落ちている」、なるほど。
・『検証委員会の人選に疑問あり 冒頭に記した会員企業の社員のように最初から検証には期待していなかったという声は少なくない。そもそも検証委員会の人選に問題があるからだという。 問題を起こした当事者やその当事者に近しい人物を排して検証委員会を設置するのがセオリーだが、JWPAは定石に反して委員を選任した。検証対象となるのはJWPAの旧体制における意思決定と活動のあり方だ。ところが3人いる協会側委員のうち、山田氏と中村氏の2人は旧体制の幹部だ。 それだけではない。元代表理事の加藤氏は、山田氏にとって三菱重工時代の上司。同じく旧体制で副代表理事だった祓川清氏(当時は日本風力開発グループ企業の最高顧問)は、中村氏のユーラスエナジーホールディングス時代の部下だ。) 疑問はまだある。検証委員会で「第三者」と位置づけられた委員だ。 6人いる第三者委員の一人が、西村あさひ法律事務所・外国法共同事業の平尾覚弁護士だ。JWPAは秋本議員の贈収賄事件への対応をめぐり、同弁護士に相談をしていた。 メディア向け説明会で検証委員会座長の飯田氏は、「弁護士の仕事柄、(仕事ごとの)線引きはしっかり引かれている」と強調。説明会から数日後、JWPAの広報担当者から届いたメールには、平尾弁護士との委任契約は委員会設立時には終了しており、「客観性と中立性は保たれている」と記されていた。 利害関係のない第三者だとするJWPAの説明に、納得できる人はどの程度いるのだろうか』、「利害関係のない第三者だとするJWPAの説明に、納得できる人はどの程度いるのだろうか」、なるほど。
・『第三者なのかあやふやな委員 前述した昼食会の出席リストに名があった眞鍋氏も第三者委員だ。ところが旧体制で理事を務めていただけでなく、秋本議員に5年間で60万円を個人献金していた。個人献金自体に法的な問題はないものの、秋本議員の支援者が第三者として委員に就いたことの適切性は問われてしかるべきだ』、「秋本議員の支援者が第三者として委員に就いたことの適切性は問われてしかるべきだ」、その通りだ。
・『日本風力発電協会の旧体制と検証委員会 山田氏は、眞鍋氏が個人献金していた事実は認識しているとし、「協会の過去の経緯や歴史を把握していることから選任したため、第三者としては認識していない」(山田氏)と釈明した。 JWPAからは8月29日時点で平尾氏や眞鍋氏を第三者とする報告書の内容を修正していない。これで報告書の信頼性を確保することができるだろうか。 運営体制改善の取り組みなどをまとめた完了報告書をエネ庁に提出したことをもって、JWPAの「霞が関への出禁」は解除された。JWPAは体制の改革などを進めているが、関係者の処分は行わない。「(運営ルールの不備など)協会自体の問題というのが結論」(秋吉代表理事)だからだ。 検証委員会を通じたJWPAの膿を出し切るチャンスは失われた。こうした対応を会員企業は許容するのか。社会の目は会員企業のガバナンス意識をも問うている』、「社会の目は会員企業のガバナンス意識をも問うている」、その通りだ。
次に、10月21日付け現代ビジネスが掲載した「市長には土建業者から「多額献金」が…!北海道釧路市「メガソーラー激増」の知られざる背景」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/139086?imp=0
・『釧路市内を車で走っていると、雄大な湿原のなかに、突如として太陽光パネルの海が現れる。なぜ、釧路なのか。なぜ、外資系業者の参入を止められないのか。住民、土建業者、市長、徹底取材した。 前編記事『市の職員は「把握しきれない数です」とポツリ…!止まらない「メガソーラー開発」、外資系企業が釧路に群がる「裏事情」』より続く。
・『言い出したのは小泉進次郎 開発によって災害リスクも高まるとして、今年5月には地元住民が2万人の署名と計画中止を求める要望書を市長に提出した。音別町で歯科医院を経営する村上有二氏は、こう怒りを露にする。 「日本海溝・千島海溝沿い地震の想定津波高は20mを超えますが、メガソーラーの計画場所は津波災害警戒区域なのです。もし津波が起きてパネルが湿原に散乱すれば回収はほぼ不可能だし、パネルから火災が起きた場合には消防のアクセス道路がありません。大雨時の増水で湿原の中を走るJR根室線が脱線する危険性もあります。 しかし、開発を進める外資系企業はメガソーラーを投機対象としか考えておらず、さまざまなリスクを考慮していない。しかも、そうして発電された電気を使うのは、都市部の人たちなのです』、「「日本海溝・千島海溝沿い地震の想定津波高は20mを超えますが、メガソーラーの計画場所は津波災害警戒区域なのです。もし津波が起きてパネルが湿原に散乱すれば回収はほぼ不可能だし、パネルから火災が起きた場合には消防のアクセス道路がありません。大雨時の増水で湿原の中を走るJR根室線が脱線する危険性もあります」、なるほど。
・『湿原に30万枚のパネルを敷き詰めた「すずらん釧路町太陽光発電所」 村上氏ら住民たちは、「そもそも国立公園内にメガソーラーを作ると言い出したのは小泉進次郎です」と憤る。進次郎氏が環境大臣だった'20年に、国立公園内で再生可能エネルギー発電所の設置を進める規制緩和を打ち出したことが、開発を加速させたというのだ。 太陽光発電の強引な工事はほかの場所でも起きている。市街地から30kmほど北西にある阿寒町に今年8月に完成したスペイン系事業者のメガソーラーは、事前の住民説明会もないまま民家の近くに建てられてしまい、住民が健康被害を受けた。 現地を訪れると、民家の真後ろに5000枚を超えるパネルが建っていた。住民は憤懣やるかたない様子でこう語る』、「市街地から30kmほど北西にある阿寒町に今年8月に完成したスペイン系事業者のメガソーラーは、事前の住民説明会もないまま民家の近くに建てられてしまい、住民が健康被害を受けた。 現地を訪れると、民家の真後ろに5000枚を超えるパネルが建っていた。住民は憤懣やるかたない様子でこう語る」、「住民説明会」抜きに「メガソーラー」が建てられてしまいというのは酷い話だ。
・『市長と地元土建業者の「関係」 「工事の際に鉄骨を打ち込む音がキンキンとうるさくて右耳が難聴になりました。2階の西側の部屋がパネルからの照り返しで暑くなってしまい、1階の部屋でエアコンをつけて寝ている。文句を言ったら業者から恫喝され、排水路を私たちの家の水路に繋げようとするなどヒドイ嫌がらせを受けました。こんなことがあって良いのでしょうか」 こうした太陽光発電の負の側面を抑えるために釧路市では昨年、「釧路市自然と共生する太陽光発電施設の設置に関するガイドライン」を作成し、さらに踏み込んだ規制を行うために条例化の作業も進めている。だが、今年9月に公表された条例案の骨子には、太陽光発電の抑制区域に肝心の「市街化調整区域」が含まれていないことがわかり、骨抜きの条例だと批判を浴びている。 背景には何があるのか。 4期目を務める釧路市の蝦名大也市長は、かねてから太陽光発電の規制に及び腰だと地元紙や環境保護関係者から批判されてきた。取材を進めると、市長と開発を進める地元土建業者の「癒着」を指摘する声も聞こえてくる。 「市長は太陽光に関わる地元土建業者のA社から多額の献金を受けていると言われている。そのため、強い姿勢で条例化に踏み切れないと囁かれているのです。こうした状況を地元紙は『支持基盤に配慮か』と報じ、市長が『太陽光を規制する条例を作るならA社の了承を得ないと』と言っているのを聞いた人もいます。 さらにA社と関係の深い市内の古参土地コンサルタント会社のB社が、外資を含めた多くの太陽光工事に絡んでいることも問題です。B社は土地取得に関する申請書類の偽造など、強引な行為を繰り返している」(道の行政関係者)』、「A社と関係の深い市内の古参土地コンサルタント会社のB社が、外資を含めた多くの太陽光工事に絡んでいることも問題です。B社は土地取得に関する申請書類の偽造など、強引な行為を繰り返している」、なるほど。
・『A社から市長への多額の献金 実際、政治資金収支報告書を見ると、'13年以降、A社とその社長から蝦名市長が責任者となっている政治団体などへわたったカネは約700万円。トータルではその数倍が献金されているとも言われている。 またB社の代表者についても、土地登記の際の委任状の名前を勝手に変更して'19年と'20年に法務大臣から戒告処分を受けただけではなく、市役所との協議記録を偽造したことが明らかになっている。 前述した音別町と阿寒町の工事にも2社が絡んでいて、被害を受けた阿寒町の住民を「恫喝」したのはB社の代表だったという。筆者は釧路市とこの住民が交わした記録文書も確認したが、そこには「『お宅の横を道路にしてもいいんだぞ』と(B社の代表から)恫喝された」との一文が残っていた。 市長との「癒着疑惑」についてA社に取材を申し込むと、同社の役員が対応した。 「(献金に関しては)蝦名市長のお父さんがウチの会社にいた縁で長年の付き合いがあります。そのため、蝦名氏が釧路市議会議員になった'93年当時から支援をしているのです。支援は釧路市の発展のためにしているので見返りを求めるものではないし、献金でウチの仕事が増えたということもありません」
・『「電気が必要ないの?」 B社の代表にも話を聞くと、「行政処分を受けた原因はほかの書類とつけ間違えただけ」と釈明したうえで、太陽光発電の現状を話しだした。 うちの会社で扱っている案件には外資も多い。実績があるからどんどん客が来る。とにかく太陽光に関係する仕事が忙しくて昨年は5日しか休めなかった。外資がどんどん入ってくるのは、彼らは太陽光ファンドを作り、売電収入による配当と利回りを見込んで投資家が集まっているから。今や外国企業にとってメガソーラーは完全に投機対象なんです」 そして、メガソーラーのリスクについて聞くと、こう声を荒らげた。 「災害なんてどこででも起きるもの!もし市街化調整区域で太陽光を作らせないと言うのなら国が土地を買い取るべきだ。太陽光に反対する人たちは電気が必要ないの? そんなに嫌なら家のブレーカーを落とせばいい!」 太陽光発電をめぐる様々な問題に、当の蝦名市長はどう答えるのか。質問書を送付すると、概ね次のように回答した』、。
・『市長は「現実的ではない」と語るが 「(太陽光条例で市街化調整区域を抑制区域に含めることに関しては)市街化調整区域内には約4万5000筆の土地があり、膨大な所有者数になる。同区域内に法的な規制を設けるためには地権者等との調整を図ることが必要なため現実的ではありません。 太陽光発電施設の設置については、各法律をはじめ、国で定めたルールがあるため、本市の豊かな自然や、希少な野生生物の保護を検討するには、太陽光発電施設の設置に係る条例の中では規制の限界があり、自然保護を目的とした新たな手法が必要と考えております。そのため、(自然環境を主語とした)新たな条例の制定を視野に環境省とも協議を開始したところです。 (地元土建業者との癒着に関しては)そのような事実は一切なく、市長選に向けた意図的な声や報道と疑わざるを得ません」 北海道教育大学釧路校教授で市の環境審議会の委員を務める伊原禎雄氏は、市長の姿勢にこう疑問を投げかける。 「市街化調整区域で建築物を建てることは法律で規制されていますが、太陽光パネルは非建築物の扱いのため条例で建設を規制できないというのが市の説明です。しかし、他の市町村では規制しているところもある。できるにも関わらず制定中の条例ではやらず、別の条例にわけることは理解できません。そもそもキタサンショウウオを市の文化財として保護する一方、取り締まる法律がないから生息域に太陽光パネルを置いても構わないというのでは矛盾しています。市長には責任を持って欲しい」 さらに、釧路市環境審議会会長の神田房行氏(元北海道教育大学教授)もこう指摘する。 「市が次に進めると言う『自然環境を主語にした条例』は、骨抜きの太陽光条例を批判された市長が市街化調整区域を規制しないかわりに代案として言い出したものです。一見、良い取り組みに聞こえますが、自然環境や希少種の保護条例で土地を保護区に指定するには地権者と契約を締結する必要があって相当ハードルが高く、すでに保護されている公有地や保護団体の保護地くらいしか保護区指定できません。一方、現在制定中の太陽光条例では地権者の同意がなくても、広域で太陽光の規制ができるため、釧路に殺到している外資ソーラーなどから守るには太陽光条例で厳しい規制をかけるのがすぐに取り組めて有効なのです」 市街化調整区域などへの太陽光発電を規制する条例を6年前に設けた大阪府箕面市を取材したところ、地権者からの同意は得ていないと言う。つまり、神田氏が指摘するよう、太陽光条例であれば地権者の同意不要で市街化調整区域への設置規制ができるのだ。 釧路市長選は10月27日に行われ、5期目を目指す蝦名氏と太陽光規制に柔軟な姿勢を見せる他候補との対決が注目される。15万人の市民が行く末を見守っている』、「太陽光条例であれば地権者の同意不要で市街化調整区域への設置規制ができるのだ。 釧路市長選は10月27日に行われ、5期目を目指す蝦名氏と太陽光規制に柔軟な姿勢を見せる他候補との対決が注目される。15万人の市民が行く末を見守っている」、「NHKスペシャルで袴田事件を取り扱った「雪冤の歳月」を観終わったが、真実を追求する難しさを改めて痛感させられた。
タグ:エネルギー (その14)(「洋上風力汚職」で風力発電協会の残念すぎる検証 検証委員の1人は「秋本議員に個人献金」の過去、市長には土建業者から「多額献金」が…!北海道釧路市「メガソーラー激増」の知られざる背景) 「東京地検特捜部は、元社長が国会質問などを依頼し、秋本議員がその見返りに賄賂を受け取ったとして昨年9月に2人を起訴した。秋本議員は起訴内容を否認」、「秋本議員が受けた傷。 「秋本議員とJWPAとの関係に不適切なものはなかったというわけだが、検証委員会による検証範囲はきわめて狭い」、なるほど。 「どのような過程で日本風力開発が影響力を強めていったのか。日本風力開発の元社長が自らの思惑を通すためにJWPAに働きかけることはなかったのか等については触れられていない。一部幹部の“暴走”についてもなぜチェック機能が働かなかったのかという視点が弱い内容になっている」、なるほど。 「(エネ庁からは)官民協議会にさかのぼって秋本先生とどういう付き合いをしてきたかは問題視されていない。さかのぼって議論する必要はないということでこの報告書はまとまっている」(山田氏)』、「こうした秋本議員の振る舞いは、検証委員会の検証対象からすっぽりと抜け落ちている」、なるほど。 「利害関係のない第三者だとするJWPAの説明に、納得できる人はどの程度いるのだろうか」、なるほど。 「秋本議員の支援者が第三者として委員に就いたことの適切性は問われてしかるべきだ」、その通りだ。 「社会の目は会員企業のガバナンス意識をも問うている」、その通りだ。 現代ビジネス 「市長には土建業者から「多額献金」が…!北海道釧路市「メガソーラー激増」の知られざる背景」 「「日本海溝・千島海溝沿い地震の想定津波高は20mを超えますが、メガソーラーの計画場所は津波災害警戒区域なのです。もし津波が起きてパネルが湿原に散乱すれば回収はほぼ不可能だし、パネルから火災が起きた場合には消防のアクセス道路がありません。大雨時の増水で湿原の中を走るJR根室線が脱線する危険性もあります」、なるほど。 「市街地から30kmほど北西にある阿寒町に今年8月に完成したスペイン系事業者のメガソーラーは、事前の住民説明会もないまま民家の近くに建てられてしまい、住民が健康被害を受けた。 現地を訪れると、民家の真後ろに5000枚を超えるパネルが建っていた。住民は憤懣やるかたない様子でこう語る」、「住民説明会」抜きに「メガソーラー」が建てられてしまいというのは酷い話だ。 「A社と関係の深い市内の古参土地コンサルタント会社のB社が、外資を含めた多くの太陽光工事に絡んでいることも問題です。B社は土地取得に関する申請書類の偽造など、強引な行為を繰り返している」、なるほど。 「太陽光条例であれば地権者の同意不要で市街化調整区域への設置規制ができるのだ。 釧路市長選は10月27日に行われ、5期目を目指す蝦名氏と太陽光規制に柔軟な姿勢を見せる他候補との対決が注目される。15万人の市民が行く末を見守っている」、「NHKスペシャルで袴田事件を取り扱った「雪冤の歳月」を観終わったが、真実を追求する難しさを改めて痛感させられた。
ゼネコン(その1)(清水建設が「役員報酬返上」に及ぶ営業利益905億円“下方修正”の衝撃!ゼネコン決算大ピンチ ゼネコン業界決算報(2023年8~12月四半期編)、ゼネコンよりサブコンが上?建設業界の新秩序 下請けとは「殿様と家来」の関係だったが…、ゼネコン各社が軒並み増収の中 清水建設の不調が際立った理由とは?) [産業動向]
ゼネコンについては、不良債権問題ではしばしば取り上げられたが、問題の終息と共に、鎮静化し、現在は一般的な問題が出る程度である。今日は、(その1)(清水建設が「役員報酬返上」に及ぶ営業利益905億円“下方修正”の衝撃!ゼネコン決算大ピンチ ゼネコン業界決算報(2023年8~12月四半期編)、ゼネコンよりサブコンが上?建設業界の新秩序 下請けとは「殿様と家来」の関係だったが…、ゼネコン各社が軒並み増収の中 清水建設の不調が際立った理由とは?)である。
先ずは、本年3月15日付けダイヤモンド・オンライン「清水建設が「役員報酬返上」に及ぶ営業利益905億円“下方修正”の衝撃!ゼネコン決算大ピンチ ゼネコン業界決算報(2023年8~12月四半期編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340477
・『2020年に始まったコロナ禍による落ち込みを脱した日本経済。ただ、元通りになったわけではない。デジタル化や脱炭素の潮流が加速し、円安や物価高の影響も続く。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は大成建設、鹿島などの「ゼネコン」業界4社について解説する』、興味深そうだ。
・『ゼネコン4社は増収も利益面は大ピンチ 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のゼネコン業界4社。対象期間は2023年8~12月期の四半期(4社いずれも23年10~12月期)としている。 各社の増収率は以下の通りだった。 ・大成建設 増収率:5.7%(四半期の売上高4082億円) ・鹿島 増収率:11.9%(四半期の売上高6888億円) ・大林組 増収率:20.0%(四半期の売上高6202億円) ・清水建設 増収率:3.5%(四半期の売上高5116億円) ゼネコン4社はいずれも増収となった。第3四半期累計の売上高においても、各社は前年同期の実績を上回っている。 ただし第3四半期累計の利益面に目を向けると、清水建設は520億円の営業赤字、209億円の最終赤字に転落。大成建設は営業利益が前年同期比58.2%減、純利益も同39.9%減と大きく落ち込んだ。 また、大林組は営業利益が前年同期比22.1%減、純利益が同16.0%減という結果だった。残る鹿島は営業利益が同9.5%増、純利益が同6.7%減と、営業利益のみプラスで着地した。だが純利益は減益となっており、ゼネコン4社が軒並み利益面で苦しんでいることがうかがえる。 なぜ、各社の利益面は大打撃を受けているのか。 次ページでは各社の増収率の推移を紹介するとともに、利益面についても詳しく解説する。) ゼネコン業界4社について、対象期間における増収率(前年同期比)は以下の通りだった。 各社の状況を詳しく見ていこう』、「ゼネコン4社が軒並み利益面で苦しんでいる・・・なぜ、各社の利益面は大打撃を受けているのか」、なぜだろう。
・『大成建設 23年10~12月期における売上高は4082億円、前年同期比増収率は5.7%だった。 この3カ月は同社の24年3月期第3四半期に当たる。9カ月間の累計売上高は1兆1463億円(前年同期比3.8%増)。第2四半期までの累計売上高は7381億円(同2.7%増)だった。 四半期増収率(前年同期比)は、直前の四半期(23年7~9月期)に続いてプラスとなっている。 大成建設における第3四半期累計の利益面は、営業利益が前年同期比58.2%減の175億円、純利益が同39.9%減の198億円だった。 大幅減益の要因を探るべく、大成建設のセグメント別業績(第3四半期累計)を見てみると、次のような結果だった。 ・土木事業:売上高3102億円(前年同期比14.5%増)、営業利益307億円(同51.8%増) ・建築事業:売上高7352億円(同0.6%減)、営業損失287億円(前年同期は122億円の黒字) ・開発事業:売上高930億円(同6.5%増)、営業利益145億円(同59.6%増) 他の2事業は堅調に推移していたものの、主力の建築事業が減収と営業赤字に陥り、全社の業績を圧迫していることが分かった。建築事業では、東京都世田谷区の本庁舎整備工事で工程遅延が起き、損失を計上したことが響いた。また、建設コスト上昇に伴う「物価スライド協議」が合意に至らず、一部の国内工事で収支が悪化した。 このほか、賃上げに伴う人件費の増加や、投資計画に基づく技術開発費の増加も、全社での大幅減益につながった』、「主力の建築事業が減収と営業赤字に陥り、全社の業績を圧迫していることが分かった。建築事業では、東京都世田谷区の本庁舎整備工事で工程遅延が起き、損失を計上したことが響いた。また、建設コスト上昇に伴う「物価スライド協議」が合意に至らず、一部の国内工事で収支が悪化した。 このほか、賃上げに伴う人件費の増加や、投資計画に基づく技術開発費の増加も、全社での大幅減益につながった」、なるほど。
・『鹿島 23年10~12月期における売上高は6888億円、前年同期比増収率は11.9%だった。 この3カ月は同社の24年3月期第3四半期に当たる。9カ月間の累計売上高は1兆9946億円(前年同期比13.8%増)。第2四半期までの累計売上高は1兆3058億円(同14.8%増)だった。 四半期増収率(前年同期比)は、21年4~6月期(22年3月期第1四半期)から11四半期連続でプラスとなっている。 鹿島における第3四半期累計の利益面は、営業利益が前年同期比9.5%増の1021億円、純利益が同6.7%減の766億円。海外開発事業における営業外収益の減少が最終減益につながった』、「鹿島における第3四半期累計の利益面は・・・純利益が同6.7%減の766億円。海外開発事業における営業外収益の減少が最終減益につながった」、なるほど。
・『大林組 23年10~12月期における売上高は6202億円、前年同期比増収率は20.0%だった。 この3カ月は同社の24年3月期第3四半期に当たる。9カ月間の累計売上高は1兆7015億円(前年同期比18.1%増)。第2四半期までの累計売上高は1兆814億円(同17.0%増)だった。 四半期増収率(前年同期比)は、23年4~6月期(24年3月期第1四半期)から3四半期連続でプラスとなっている。 大林組における第3四半期累計の利益面は、営業利益が前年同期比22.1%減の512億円、純利益が同16.0%減の475億円と、いずれも2桁減益だった。 同社の決算資料によると、主な減益要因は下記の3点である。 ・前年同期に発生した大型不動産の売却に伴う反動減の影響 ・子会社の海外土木事業で貸倒引当金を計上した影響 ・販売費及び一般管理費(人件費や研究開発費など)の増加 なお大林組では23年9月、JR東京駅・八重洲口付近のビル開発現場で鉄骨が落下。作業員2人が死亡する事故が発生した。 だが同社は、24年3月期の通期連結業績予想を下方修正していない。その理由について「八重洲の事故の影響を除けば、国内土木の利益の進捗や、政策保有株式の売却益など、プラス要素の方が多いため」としている。 また、「損益や工期への影響がまだ見えていないものの、来期の業績に大きな影響があると考えて頂かなくてもよい」と、決算説明会での質疑応答で説明している』、「大林組の主な減益要因は下記の3点である。 ・前年同期に発生した大型不動産の売却に伴う反動減の影響 ・子会社の海外土木事業で貸倒引当金を計上した影響 ・販売費及び一般管理費(人件費や研究開発費など)の増加」、なるほど。
・『清水建設 23年10~12月期における売上高は5116億円、前年同期比増収率は3.5%だった。 この3カ月は同社の24年3月期第3四半期に当たる。9カ月間の累計売上高は1兆4485億円(前年同期比9.7%増)。第2四半期までの累計売上高は9369億円(前年同期比13.4%増)だった。 四半期増収率(前年同期比)は、21年10~12月期から9四半期連続でプラスとなっている。 清水建設における第3四半期累計の利益面は、営業損失が520億円(前年同期は282億円の黒字)、最終損失が209億円(前年同期は215億円の黒字)と、両指標ともに赤字に転落した。 資材価格・エネルギー価格の高騰によって厳しい経営状況が続く中、清水建設では国内外における複数の大型建築工事で採算が悪化し、工事損失引当金を計上した。第3四半期累計の工事損失引当金の総額は1215億円に上る(前年同期は655億円)。低採算の工事が会社全体の利益を押し下げる結果となった。 対抗策として、保有株式を売却するなどして前年同期の約4倍に相当する246億円の固定資産売却益を計上したものの、採算悪化の影響をカバーするには至らず、最終利益も赤字に転落した。 また清水建設は、下記2点などを理由に、24年3月期の通期利益予想を大幅に下方修正した(いずれも決算資料より/売り上げ予想は上方修正)。 ・今後も設備工事価格、労務費などを中心にさらなる建設コストの上昇が見込まれること ・過年度に工事損失引当金を計上した海外大型建築工事で、地中障害の発生に伴う工程遅延や労務費の増加、円安の影響などにより見積総原価が増大し、さらなる工事損失の発生が見込まれること 具体的な業績予想額は次の通りだ。 ・売上高:前期比2.4%増の1兆9800億円(前回予想から350億円増) ・営業損益:330億円の赤字(前回予想から905億円減) ・純損益:100億円の黒字(前回予想から400億円減) 資材価格高騰の影響を吸収するべく、顧客との契約条件を引き上げることから売り上げ予想を上方修正したものの、利益面は苦戦が長引くもようだ。 なお、通期決算の終わりが近づいている第3四半期決算の発表というタイミングで、これほど大幅な業績の下方修正が行われるのは異例だ。 清水建設はその経営責任を重く受け止め、社長と副社長2人が月額報酬 30%の5カ月分を返上するなど、役員報酬の返上を表明。また「全社レベルでの受注前審査の一層の厳格化」をはじめとした再発防止策も併せて発表した』、「清水建設では国内外における複数の大型建築工事で採算が悪化し、工事損失引当金を計上した。第3四半期累計の工事損失引当金の総額は1215億円に上る(前年同期は655億円)。低採算の工事が会社全体の利益を押し下げる・・・過年度に工事損失引当金を計上した海外大型建築工事で、地中障害の発生に伴う工程遅延や労務費の増加、円安の影響などにより見積総原価が増大し、さらなる工事損失の発生が見込まれる」、なるほど。
次に、3月25日付け東洋経済オンライン「ゼネコンよりサブコンが上?建設業界の新秩序 下請けとは「殿様と家来」の関係だったが…」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/742587
・『変革の意識が乏しく、昔ながらの慣習が数多く残る「レガシー産業」の建設業界に、時間外労働の上限規制の適用という「2024年問題」が襲いかかる。 『週刊東洋経済』3月30日号の特集は「ゼネコン下剋上」。変革ののろしが上がる。 「今は力関係でいえばゼネコンよりサブコンのほうが上だ」。複数のゼネコン関係者はこう嘆く。 建設業界は元請けであるゼネコンを頂点に、重層構造になっている。仕事を発注するゼネコンと、受注する側であるサブコン(空調設備や電気設備などの専門工事会社)を含む下請け会社との間には、「殿様と家来の関係」(内装工事会社の社長)と言われるほど明確な上下関係があった。 しかし今、そのヒエラルキー構造が変わりつつある。 「引き受けてくれるサブコンをなかなか見つけられなかった」と肩を落とすのは上場中堅ゼネコン・大豊(だいほう)建設の幹部・A氏。2月9日、大豊建設は今2024年3月期の最終損益が16億円の赤字に転落する、と公表した。 「湯水のごとくお金がかかった」 理由は、あるホテルの建築工事で「最終段階の設備工事に入ったところで、サブコンが万歳した(工事を放棄した)」(A氏)ためだ。デザイン性の高いホテルにもかかわらず、そのサブコンは施工仕様を十分に認識していなかった。工事をこなせないと、今年1月に入って突如判断したという。 引き受けてくれる別のサブコンを何とか見つけたが、「2月の竣工に向けて超突貫工事となり、湯水のごとくお金がかかった」(A氏)。 準大手ゼネコンの社員も「最近、サブコンは工事を簡単には引き受けてくれなくなった」と話す。足元では工事発注者からの受注を決める前に、まずサブコンを確保するというゼネコンが増えている』、「建設業界は元請けであるゼネコンを頂点に、重層構造になっている。仕事を発注するゼネコンと、受注する側であるサブコン(空調設備や電気設備などの専門工事会社)を含む下請け会社との間には、「殿様と家来の関係」(内装工事会社の社長)と言われるほど明確な上下関係があった。 しかし今、そのヒエラルキー構造が変わりつつある。 「引き受けてくれるサブコンをなかなか見つけられなかった」と肩を落とすのは上場中堅ゼネコン・大豊(だいほう)建設の幹部・A氏。2月9日、大豊建設は今2024年3月期の最終損益が16億円の赤字に転落する、と公表した。 「湯水のごとくお金がかかった」 理由は、あるホテルの建築工事で「最終段階の設備工事に入ったところで、サブコンが万歳した(工事を放棄した)」(A氏)ためだ。デザイン性の高いホテルにもかかわらず、そのサブコンは施工仕様を十分に認識していなかった』、「工事をこなせないと、今年1月に入って突如判断したという。 引き受けてくれる別のサブコンを何とか見つけたが、「2月の竣工に向けて超突貫工事となり、湯水のごとくお金がかかった」(A氏)。 準大手ゼネコンの社員も「最近、サブコンは工事を簡単には引き受けてくれなくなった」と話す。足元では工事発注者からの受注を決める前に、まずサブコンを確保するというゼネコンが増えている」、なるほど。
・『3つの新秩序が生まれつつある 建設業界は「2024年問題」への対応に必死だ。「働き方改革関連法」に基づく規制が4月から適用され、時間外労働を月45時間・年360時間以内に収めなければならない。労使合意で36(サブロク)協定を結んでいても年720時間が上限とされる。違反した場合は刑事罰の対象になる。 長時間労働の慢性化や若者の流入不足など多くの構造問題を抱える建設業界は規制適用を変革の好機と捉える。「今年がラストチャンス。変革しなければ人が業界に入ってこない」(協同組合東京鉄筋工業協会の飛田良樹理事長)。 変革機運が高まっており、2024年問題を機に、建設業界には「下剋上」ともいえる3つの新秩序が生まれつつある。 1つ目は冒頭で述べたゼネコンとサブコンの立場の逆転だ。「かつては工事代金や工期を厳しくする『サブコンいじめ』があったが、今はとてもそんなことはできない」(準大手ゼネコン幹部)。 サブコンは、半導体工場や製薬工場など、空調や電気に高度な設備を求める工事も多く手がける。近年はこうした利益率の高い工事の選別受注を強化している。 工場の設備工事はゼネコン経由ではなく、メーカーから直接受注することも多い。「直接受注したほうが利益率は数%高い」(大手サブコンの幹部)という。 今やサブコンにそっぽを向かれると自分たちの工事が進まないこともあり、ゼネコンはサブコンなど協力会社の囲い込みを強化する。戸田建設は「協力会社に選んでいただけるゼネコンになる」(山嵜俊博副社長)と、サブコンなどとの連携を密にする。「最近はスーパーゼネコンがサブコンを接待でもてなしている」(土木工事会社の幹部)といった声も聞こえる。) 2つ目はハウスメーカーがゼネコンを凌駕しつつあることだ。 ゼネコンは長年、住宅を手がけるハウスメーカーを下に見る傾向にあった。だが大和ハウス工業が準大手ゼネコンのフジタを傘下に入れるなどゼネコン化して、業容を拡大。大和ハウスの23年3月期の売上高は5兆円に迫り、ゼネコン首位の鹿島の2倍超に膨らんだ。 「2024年問題」でも大和ハウスは先手を打つ。ゼネコンは工事現場の4週8休(週休2日制)の実現が約8割だが、大和ハウスは「かなり前から4週8休ベースの受注」(村田誉之副社長)をしており、今ではおよそ90%の工事現場で実現している。 生産性の低さが指摘されるゼネコンに対し、大和ハウスはDXでも先行する。20年に建設デジタル推進部を設置し、「相当な額をDX領域に投資してきた。2024年問題を見据えてデジタル技術を積極的に活用する」(村田氏)』、「2024年問題を機に、建設業界には「下剋上」ともいえる3つの新秩序が生まれつつある。 1つ目は冒頭で述べたゼネコンとサブコンの立場の逆転だ。「かつては工事代金や工期を厳しくする『サブコンいじめ』があったが、今はとてもそんなことはできない」(準大手ゼネコン幹部)・・・サブコンは、半導体工場や製薬工場など、空調や電気に高度な設備を求める工事も多く手がける。近年はこうした利益率の高い工事の選別受注を強化している。 工場の設備工事はゼネコン経由ではなく、メーカーから直接受注することも多い。「直接受注したほうが利益率は数%高い」(大手サブコンの幹部)という。 今やサブコンにそっぽを向かれると自分たちの工事が進まないこともあり、ゼネコンはサブコンなど協力会社の囲い込みを強化する。戸田建設は「協力会社に選んでいただけるゼネコンになる」・・・2つ目はハウスメーカーがゼネコンを凌駕しつつあることだ。 ゼネコンは長年、住宅を手がけるハウスメーカーを下に見る傾向にあった。だが大和ハウス工業が準大手ゼネコンのフジタを傘下に入れるなどゼネコン化して、業容を拡大。大和ハウスの23年3月期の売上高は5兆円に迫り、ゼネコン首位の鹿島の2倍超に膨らんだ。 「2024年問題」でも大和ハウスは先手を打つ。ゼネコンは工事現場の4週8休(週休2日制)の実現が約8割だが、大和ハウスは「かなり前から4週8休ベースの受注」(村田誉之副社長)をしており、今ではおよそ90%の工事現場で実現している。 生産性の低さが指摘されるゼネコンに対し、大和ハウスはDXでも先行する」、なるほど。
・『デベロッパーとの力関係 新秩序の3つ目はゼネコンがデベロッパーへの発言を強めていることだ。 再開発工事を発注するデベロッパーの立場は圧倒的に強い。最近は大型再開発が多く、工事代金が巨額化し、失注したときの痛手が大きいため受注競争が激化。大手ゼネコンは、工事代金のダンピング(不当な安値受注)だけでなく、工期のダンピング(短工期の受注)にも手を染めた。 しかし足元ではゼネコンもデベロッパーに対する発言を強め、工期の適正化に動いている。鹿島の天野裕正社長は「われわれの工期の提案を理解していただけなければ、受注できなくてもやむなしとする事例も出てきている」と語る。 ゼネコンの業界団体である日建連も後押しする。23年7月、「適正工期確保宣言」を掲げ、会員企業に徹底するように呼びかけた。「建設業の働き方として土曜日に仕事をするのは当たり前という常識を変えなければならない」と日建連の山本徳治事務総長は話す。 3月8日には政府が、工期のダンピングを禁止する建設業法改正案を閣議決定した。 いびつだった業界構造が2024年問題をきっかけに改善され、労働環境の向上につながれば理想的だ。だが、対応に手をこまねいている中堅・中小ゼネコンは多い。 労働環境が変わらず、若者の就労が減り続ければ「将来的にインフラ構築を手がける人材が極端に不足する」(準大手ゼネコン社員)。社会問題に発展する懸念があるだけに、建設業界は本気の意識改革が求められる』、「新秩序の3つ目はゼネコンがデベロッパーへの発言を強めていることだ。 再開発工事を発注するデベロッパーの立場は圧倒的に強い。最近は大型再開発が多く、工事代金が巨額化し、失注したときの痛手が大きいため受注競争が激化。大手ゼネコンは、工事代金のダンピング(不当な安値受注)だけでなく、工期のダンピング(短工期の受注)にも手を染めた。 しかし足元ではゼネコンもデベロッパーに対する発言を強め、工期の適正化に動いている・・・3月8日には政府が、工期のダンピングを禁止する建設業法改正案を閣議決定した。 いびつだった業界構造が2024年問題をきっかけに改善され、労働環境の向上につながれば理想的だ。だが、対応に手をこまねいている中堅・中小ゼネコンは多い。 労働環境が変わらず、若者の就労が減り続ければ「将来的にインフラ構築を手がける人材が極端に不足する」・・・社会問題に発展する懸念があるだけに、建設業界は本気の意識改革が求められる」、その通りだ。
第三に、9月10日付けダイヤモンド・オンライン「ゼネコン各社が軒並み増収の中、清水建設の不調が際立った理由とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/350104
・『2020年に始まったコロナ禍による落ち込みを脱した日本経済。ただ、元通りになったわけではない。デジタル化や脱炭素の潮流が加速し、物価高の影響も続く。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は大成建設、鹿島など「ゼネコン」業界4社について解説する』、興味深そうだ。
・『大成建設は約4割の大幅増収 清水建設は4社で唯一、減収 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のゼネコン業界4社。対象期間は2024年4~6月期の四半期としている。 各社の増収率は以下の通りだった。 ・大成建設 増収率:39.0%(四半期の売上高4571億円) ・鹿島 増収率:5.1%(四半期の売上高6132億円) ・大林組 増収率:17.9%(四半期の売上高5747億円) ・清水建設 増収率:マイナス9.1%(四半期の売上高4010億円) ゼネコン業界の主要4社では、大成建設、鹿島、大林組が前年同期比で増収、清水建設が減収となった。 大成建設は前年同期比で4割近い大幅増収となった一方で、清水建設は4社で唯一、減収に陥り、増収率には大きな差が付いている。それぞれの増収、減収の要因は何だったのか。 次ページでは各社の増収率の推移を紹介するとともに、2社の業績について解説する』、「大成建設」と「清水建設」の業績を詳しく、合わせて「鹿島建設」「大林組」の業績もみよう。
・『大成建設 24年4~6月期における売上高は4571億円、前年同期比増収率は39.0%だった。この3カ月は同社の25年3月期第1四半期に当たる。 四半期増収率(前年同期比)は、24年3月期第2四半期から4四半期連続でプラスとなっている。 25年3月期第1四半期は前年同期比で4割近い大幅増収となった大成建設。その要因は何だったのか。 25年3月期第1四半期の売上高をセグメント別に見ると、土木事業が売上高1280億円(前年同期比36.1%増)、建築事業が売上高3009億円(同41.5%増)、開発事業が売上高262億円(同33.8%増)といずれも前年同期比で3~4割の増収だった。 土木事業では、手持工事高が増加した。建築事業では、首都圏大型工事の施工が最盛期を迎えており、増収につながった。また、土木、建築いずれの事業においても、前期に建設大手のピーエス三菱(24年7月にピーエス・コンストラクションに社名変更)を連結子会社化したことによる増収効果があった。 利益面では、営業利益188億円、純利益234億円となった。前年同期に当たる24年3月期第1四半期は80億円の営業赤字、23億円の純損失となっていた。 営業利益が黒字化した主な要因としては、建築事業が先述の通り大きく増収したこと、また同事業の利益率が改善したことがある。本連載でも取り上げた通り、前年同期に当たる24年3月期第1四半期には、首都圏の大型案件などで工事損失引当金を計上したことが営業赤字につながっていた(2023年10月11日配信『大成建設がゼネコン4社で「独り負け」最終赤字、施工不良問題の他にもトラブル多発』参照)。25年3月期第1四半期は、こうした損失計上からの反動もあり、一転、黒字化したというわけだ。 25年3月期通期では、売上高1兆9900億円(前期比12.7%増)、営業利益870億円(同228.5%増)、純利益650億円(同61.4%増)と増収、そして大幅増益を見込む』、「大成建設・・・前年同期に当たる24年3月期第1四半期には、首都圏の大型案件などで工事損失引当金を計上したことが営業赤字につながっていた・・・25年3月期第1四半期は、こうした損失計上からの反動もあり、一転、黒字化したというわけだ」、なるほど。
・『鹿島 24年4~6月期における売上高は6132億円、前年同期比増収率は5.1%だった。この3カ月は同社の25年3月期第1四半期に当たる。 四半期増収率(前年同期比)は、22年3月期第1四半期から13四半期連続でプラスとなっている』、略。
・『大林組 24年4~6月期における売上高は5747億円、前年同期比増収率は17.9%だった。この3カ月は同社の25年3月期第1四半期に当たる。 四半期増収率(前年同期比)は、24年3月期第1四半期から5四半期連続でプラスとなっている』、略。
・『清水建設 24年4~6月期における売上高は4010億円、前年同期比増収率はマイナス9.1%だった。この3カ月は同社の25年3月期第1四半期に当たる。 四半期増収率(前年同期比)は、24年3月期第4四半期から2四半期連続でマイナスに陥っている。 25年3月期第1四半期では、ゼネコン主要4社で唯一前年同期比減収となった清水建設。その要因は何だったのか。 25年3月期第1四半期のセグメント別売上高は、以下の通りだった。 建設事業:売上高2832億円(前年同期比18.1%減) 投資開発事業:売上高89億円(同21.5%増) 道路舗装事業:売上高311億円(同2.6%増) 投資開発事業や道路舗装事業は前年同期比で増収だったが、主力の建設事業が2桁減収に陥った。 連結決算における建設事業の売上高の内訳については開示されていないが、清水建設単体の建設事業については、建築と土木で売上高がそれぞれ発表されているので見てみると、建築事業が売上高2203億円(前年同期比24.4%減)、土木事業が売上高656億円(同17.3%増)となっている(いずれも25年3月期第1四半期)。 建築事業については、国内が売上高2089億円(同26.6%減)、海外が売上高114億円(同63.6%増)となっており、国内における売上高が減少していることが分かる。さらに内訳を見てみると、官公庁が売上高198億円(同8.1%減)、民間が1891億円(同28.1%減)となっていて、民間向けの売上高が大きく減少している。 連結決算に話を戻そう。25年3月期第1四半期では、営業利益18億円(前年同期比70.2%減)、純利益24億円(同87.1%減)と大幅減益となった。完成工事高の減少により完成工事総利益が減少したことや、販売費及び一般管理費が増加したことが減益につながった。 25年3月期通期では、売上高1兆8000億円(前期比10.2%減)、営業利益410億円(前期は247億円の営業赤字)、純利益400億円(前期比133.0%増)を見込む。売上高は減収となるが、黒字転換を目指す』、「清水建設・・・道路舗装事業:売上高311億円(同2.6%増) 投資開発事業や道路舗装事業は前年同期比で増収だったが、主力の建設事業が2桁減収に陥った・・・25年3月期通期では、売上高1兆8000億円(前期比10.2%減)、営業利益410億円(前期は247億円の営業赤字)、純利益400億円(前期比133.0%増)を見込む。売上高は減収となるが、黒字転換を目指す」、やはり「清水建設」は「25年3月期通期」でも苦しいようだ。
先ずは、本年3月15日付けダイヤモンド・オンライン「清水建設が「役員報酬返上」に及ぶ営業利益905億円“下方修正”の衝撃!ゼネコン決算大ピンチ ゼネコン業界決算報(2023年8~12月四半期編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340477
・『2020年に始まったコロナ禍による落ち込みを脱した日本経済。ただ、元通りになったわけではない。デジタル化や脱炭素の潮流が加速し、円安や物価高の影響も続く。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は大成建設、鹿島などの「ゼネコン」業界4社について解説する』、興味深そうだ。
・『ゼネコン4社は増収も利益面は大ピンチ 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のゼネコン業界4社。対象期間は2023年8~12月期の四半期(4社いずれも23年10~12月期)としている。 各社の増収率は以下の通りだった。 ・大成建設 増収率:5.7%(四半期の売上高4082億円) ・鹿島 増収率:11.9%(四半期の売上高6888億円) ・大林組 増収率:20.0%(四半期の売上高6202億円) ・清水建設 増収率:3.5%(四半期の売上高5116億円) ゼネコン4社はいずれも増収となった。第3四半期累計の売上高においても、各社は前年同期の実績を上回っている。 ただし第3四半期累計の利益面に目を向けると、清水建設は520億円の営業赤字、209億円の最終赤字に転落。大成建設は営業利益が前年同期比58.2%減、純利益も同39.9%減と大きく落ち込んだ。 また、大林組は営業利益が前年同期比22.1%減、純利益が同16.0%減という結果だった。残る鹿島は営業利益が同9.5%増、純利益が同6.7%減と、営業利益のみプラスで着地した。だが純利益は減益となっており、ゼネコン4社が軒並み利益面で苦しんでいることがうかがえる。 なぜ、各社の利益面は大打撃を受けているのか。 次ページでは各社の増収率の推移を紹介するとともに、利益面についても詳しく解説する。) ゼネコン業界4社について、対象期間における増収率(前年同期比)は以下の通りだった。 各社の状況を詳しく見ていこう』、「ゼネコン4社が軒並み利益面で苦しんでいる・・・なぜ、各社の利益面は大打撃を受けているのか」、なぜだろう。
・『大成建設 23年10~12月期における売上高は4082億円、前年同期比増収率は5.7%だった。 この3カ月は同社の24年3月期第3四半期に当たる。9カ月間の累計売上高は1兆1463億円(前年同期比3.8%増)。第2四半期までの累計売上高は7381億円(同2.7%増)だった。 四半期増収率(前年同期比)は、直前の四半期(23年7~9月期)に続いてプラスとなっている。 大成建設における第3四半期累計の利益面は、営業利益が前年同期比58.2%減の175億円、純利益が同39.9%減の198億円だった。 大幅減益の要因を探るべく、大成建設のセグメント別業績(第3四半期累計)を見てみると、次のような結果だった。 ・土木事業:売上高3102億円(前年同期比14.5%増)、営業利益307億円(同51.8%増) ・建築事業:売上高7352億円(同0.6%減)、営業損失287億円(前年同期は122億円の黒字) ・開発事業:売上高930億円(同6.5%増)、営業利益145億円(同59.6%増) 他の2事業は堅調に推移していたものの、主力の建築事業が減収と営業赤字に陥り、全社の業績を圧迫していることが分かった。建築事業では、東京都世田谷区の本庁舎整備工事で工程遅延が起き、損失を計上したことが響いた。また、建設コスト上昇に伴う「物価スライド協議」が合意に至らず、一部の国内工事で収支が悪化した。 このほか、賃上げに伴う人件費の増加や、投資計画に基づく技術開発費の増加も、全社での大幅減益につながった』、「主力の建築事業が減収と営業赤字に陥り、全社の業績を圧迫していることが分かった。建築事業では、東京都世田谷区の本庁舎整備工事で工程遅延が起き、損失を計上したことが響いた。また、建設コスト上昇に伴う「物価スライド協議」が合意に至らず、一部の国内工事で収支が悪化した。 このほか、賃上げに伴う人件費の増加や、投資計画に基づく技術開発費の増加も、全社での大幅減益につながった」、なるほど。
・『鹿島 23年10~12月期における売上高は6888億円、前年同期比増収率は11.9%だった。 この3カ月は同社の24年3月期第3四半期に当たる。9カ月間の累計売上高は1兆9946億円(前年同期比13.8%増)。第2四半期までの累計売上高は1兆3058億円(同14.8%増)だった。 四半期増収率(前年同期比)は、21年4~6月期(22年3月期第1四半期)から11四半期連続でプラスとなっている。 鹿島における第3四半期累計の利益面は、営業利益が前年同期比9.5%増の1021億円、純利益が同6.7%減の766億円。海外開発事業における営業外収益の減少が最終減益につながった』、「鹿島における第3四半期累計の利益面は・・・純利益が同6.7%減の766億円。海外開発事業における営業外収益の減少が最終減益につながった」、なるほど。
・『大林組 23年10~12月期における売上高は6202億円、前年同期比増収率は20.0%だった。 この3カ月は同社の24年3月期第3四半期に当たる。9カ月間の累計売上高は1兆7015億円(前年同期比18.1%増)。第2四半期までの累計売上高は1兆814億円(同17.0%増)だった。 四半期増収率(前年同期比)は、23年4~6月期(24年3月期第1四半期)から3四半期連続でプラスとなっている。 大林組における第3四半期累計の利益面は、営業利益が前年同期比22.1%減の512億円、純利益が同16.0%減の475億円と、いずれも2桁減益だった。 同社の決算資料によると、主な減益要因は下記の3点である。 ・前年同期に発生した大型不動産の売却に伴う反動減の影響 ・子会社の海外土木事業で貸倒引当金を計上した影響 ・販売費及び一般管理費(人件費や研究開発費など)の増加 なお大林組では23年9月、JR東京駅・八重洲口付近のビル開発現場で鉄骨が落下。作業員2人が死亡する事故が発生した。 だが同社は、24年3月期の通期連結業績予想を下方修正していない。その理由について「八重洲の事故の影響を除けば、国内土木の利益の進捗や、政策保有株式の売却益など、プラス要素の方が多いため」としている。 また、「損益や工期への影響がまだ見えていないものの、来期の業績に大きな影響があると考えて頂かなくてもよい」と、決算説明会での質疑応答で説明している』、「大林組の主な減益要因は下記の3点である。 ・前年同期に発生した大型不動産の売却に伴う反動減の影響 ・子会社の海外土木事業で貸倒引当金を計上した影響 ・販売費及び一般管理費(人件費や研究開発費など)の増加」、なるほど。
・『清水建設 23年10~12月期における売上高は5116億円、前年同期比増収率は3.5%だった。 この3カ月は同社の24年3月期第3四半期に当たる。9カ月間の累計売上高は1兆4485億円(前年同期比9.7%増)。第2四半期までの累計売上高は9369億円(前年同期比13.4%増)だった。 四半期増収率(前年同期比)は、21年10~12月期から9四半期連続でプラスとなっている。 清水建設における第3四半期累計の利益面は、営業損失が520億円(前年同期は282億円の黒字)、最終損失が209億円(前年同期は215億円の黒字)と、両指標ともに赤字に転落した。 資材価格・エネルギー価格の高騰によって厳しい経営状況が続く中、清水建設では国内外における複数の大型建築工事で採算が悪化し、工事損失引当金を計上した。第3四半期累計の工事損失引当金の総額は1215億円に上る(前年同期は655億円)。低採算の工事が会社全体の利益を押し下げる結果となった。 対抗策として、保有株式を売却するなどして前年同期の約4倍に相当する246億円の固定資産売却益を計上したものの、採算悪化の影響をカバーするには至らず、最終利益も赤字に転落した。 また清水建設は、下記2点などを理由に、24年3月期の通期利益予想を大幅に下方修正した(いずれも決算資料より/売り上げ予想は上方修正)。 ・今後も設備工事価格、労務費などを中心にさらなる建設コストの上昇が見込まれること ・過年度に工事損失引当金を計上した海外大型建築工事で、地中障害の発生に伴う工程遅延や労務費の増加、円安の影響などにより見積総原価が増大し、さらなる工事損失の発生が見込まれること 具体的な業績予想額は次の通りだ。 ・売上高:前期比2.4%増の1兆9800億円(前回予想から350億円増) ・営業損益:330億円の赤字(前回予想から905億円減) ・純損益:100億円の黒字(前回予想から400億円減) 資材価格高騰の影響を吸収するべく、顧客との契約条件を引き上げることから売り上げ予想を上方修正したものの、利益面は苦戦が長引くもようだ。 なお、通期決算の終わりが近づいている第3四半期決算の発表というタイミングで、これほど大幅な業績の下方修正が行われるのは異例だ。 清水建設はその経営責任を重く受け止め、社長と副社長2人が月額報酬 30%の5カ月分を返上するなど、役員報酬の返上を表明。また「全社レベルでの受注前審査の一層の厳格化」をはじめとした再発防止策も併せて発表した』、「清水建設では国内外における複数の大型建築工事で採算が悪化し、工事損失引当金を計上した。第3四半期累計の工事損失引当金の総額は1215億円に上る(前年同期は655億円)。低採算の工事が会社全体の利益を押し下げる・・・過年度に工事損失引当金を計上した海外大型建築工事で、地中障害の発生に伴う工程遅延や労務費の増加、円安の影響などにより見積総原価が増大し、さらなる工事損失の発生が見込まれる」、なるほど。
次に、3月25日付け東洋経済オンライン「ゼネコンよりサブコンが上?建設業界の新秩序 下請けとは「殿様と家来」の関係だったが…」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/742587
・『変革の意識が乏しく、昔ながらの慣習が数多く残る「レガシー産業」の建設業界に、時間外労働の上限規制の適用という「2024年問題」が襲いかかる。 『週刊東洋経済』3月30日号の特集は「ゼネコン下剋上」。変革ののろしが上がる。 「今は力関係でいえばゼネコンよりサブコンのほうが上だ」。複数のゼネコン関係者はこう嘆く。 建設業界は元請けであるゼネコンを頂点に、重層構造になっている。仕事を発注するゼネコンと、受注する側であるサブコン(空調設備や電気設備などの専門工事会社)を含む下請け会社との間には、「殿様と家来の関係」(内装工事会社の社長)と言われるほど明確な上下関係があった。 しかし今、そのヒエラルキー構造が変わりつつある。 「引き受けてくれるサブコンをなかなか見つけられなかった」と肩を落とすのは上場中堅ゼネコン・大豊(だいほう)建設の幹部・A氏。2月9日、大豊建設は今2024年3月期の最終損益が16億円の赤字に転落する、と公表した。 「湯水のごとくお金がかかった」 理由は、あるホテルの建築工事で「最終段階の設備工事に入ったところで、サブコンが万歳した(工事を放棄した)」(A氏)ためだ。デザイン性の高いホテルにもかかわらず、そのサブコンは施工仕様を十分に認識していなかった。工事をこなせないと、今年1月に入って突如判断したという。 引き受けてくれる別のサブコンを何とか見つけたが、「2月の竣工に向けて超突貫工事となり、湯水のごとくお金がかかった」(A氏)。 準大手ゼネコンの社員も「最近、サブコンは工事を簡単には引き受けてくれなくなった」と話す。足元では工事発注者からの受注を決める前に、まずサブコンを確保するというゼネコンが増えている』、「建設業界は元請けであるゼネコンを頂点に、重層構造になっている。仕事を発注するゼネコンと、受注する側であるサブコン(空調設備や電気設備などの専門工事会社)を含む下請け会社との間には、「殿様と家来の関係」(内装工事会社の社長)と言われるほど明確な上下関係があった。 しかし今、そのヒエラルキー構造が変わりつつある。 「引き受けてくれるサブコンをなかなか見つけられなかった」と肩を落とすのは上場中堅ゼネコン・大豊(だいほう)建設の幹部・A氏。2月9日、大豊建設は今2024年3月期の最終損益が16億円の赤字に転落する、と公表した。 「湯水のごとくお金がかかった」 理由は、あるホテルの建築工事で「最終段階の設備工事に入ったところで、サブコンが万歳した(工事を放棄した)」(A氏)ためだ。デザイン性の高いホテルにもかかわらず、そのサブコンは施工仕様を十分に認識していなかった』、「工事をこなせないと、今年1月に入って突如判断したという。 引き受けてくれる別のサブコンを何とか見つけたが、「2月の竣工に向けて超突貫工事となり、湯水のごとくお金がかかった」(A氏)。 準大手ゼネコンの社員も「最近、サブコンは工事を簡単には引き受けてくれなくなった」と話す。足元では工事発注者からの受注を決める前に、まずサブコンを確保するというゼネコンが増えている」、なるほど。
・『3つの新秩序が生まれつつある 建設業界は「2024年問題」への対応に必死だ。「働き方改革関連法」に基づく規制が4月から適用され、時間外労働を月45時間・年360時間以内に収めなければならない。労使合意で36(サブロク)協定を結んでいても年720時間が上限とされる。違反した場合は刑事罰の対象になる。 長時間労働の慢性化や若者の流入不足など多くの構造問題を抱える建設業界は規制適用を変革の好機と捉える。「今年がラストチャンス。変革しなければ人が業界に入ってこない」(協同組合東京鉄筋工業協会の飛田良樹理事長)。 変革機運が高まっており、2024年問題を機に、建設業界には「下剋上」ともいえる3つの新秩序が生まれつつある。 1つ目は冒頭で述べたゼネコンとサブコンの立場の逆転だ。「かつては工事代金や工期を厳しくする『サブコンいじめ』があったが、今はとてもそんなことはできない」(準大手ゼネコン幹部)。 サブコンは、半導体工場や製薬工場など、空調や電気に高度な設備を求める工事も多く手がける。近年はこうした利益率の高い工事の選別受注を強化している。 工場の設備工事はゼネコン経由ではなく、メーカーから直接受注することも多い。「直接受注したほうが利益率は数%高い」(大手サブコンの幹部)という。 今やサブコンにそっぽを向かれると自分たちの工事が進まないこともあり、ゼネコンはサブコンなど協力会社の囲い込みを強化する。戸田建設は「協力会社に選んでいただけるゼネコンになる」(山嵜俊博副社長)と、サブコンなどとの連携を密にする。「最近はスーパーゼネコンがサブコンを接待でもてなしている」(土木工事会社の幹部)といった声も聞こえる。) 2つ目はハウスメーカーがゼネコンを凌駕しつつあることだ。 ゼネコンは長年、住宅を手がけるハウスメーカーを下に見る傾向にあった。だが大和ハウス工業が準大手ゼネコンのフジタを傘下に入れるなどゼネコン化して、業容を拡大。大和ハウスの23年3月期の売上高は5兆円に迫り、ゼネコン首位の鹿島の2倍超に膨らんだ。 「2024年問題」でも大和ハウスは先手を打つ。ゼネコンは工事現場の4週8休(週休2日制)の実現が約8割だが、大和ハウスは「かなり前から4週8休ベースの受注」(村田誉之副社長)をしており、今ではおよそ90%の工事現場で実現している。 生産性の低さが指摘されるゼネコンに対し、大和ハウスはDXでも先行する。20年に建設デジタル推進部を設置し、「相当な額をDX領域に投資してきた。2024年問題を見据えてデジタル技術を積極的に活用する」(村田氏)』、「2024年問題を機に、建設業界には「下剋上」ともいえる3つの新秩序が生まれつつある。 1つ目は冒頭で述べたゼネコンとサブコンの立場の逆転だ。「かつては工事代金や工期を厳しくする『サブコンいじめ』があったが、今はとてもそんなことはできない」(準大手ゼネコン幹部)・・・サブコンは、半導体工場や製薬工場など、空調や電気に高度な設備を求める工事も多く手がける。近年はこうした利益率の高い工事の選別受注を強化している。 工場の設備工事はゼネコン経由ではなく、メーカーから直接受注することも多い。「直接受注したほうが利益率は数%高い」(大手サブコンの幹部)という。 今やサブコンにそっぽを向かれると自分たちの工事が進まないこともあり、ゼネコンはサブコンなど協力会社の囲い込みを強化する。戸田建設は「協力会社に選んでいただけるゼネコンになる」・・・2つ目はハウスメーカーがゼネコンを凌駕しつつあることだ。 ゼネコンは長年、住宅を手がけるハウスメーカーを下に見る傾向にあった。だが大和ハウス工業が準大手ゼネコンのフジタを傘下に入れるなどゼネコン化して、業容を拡大。大和ハウスの23年3月期の売上高は5兆円に迫り、ゼネコン首位の鹿島の2倍超に膨らんだ。 「2024年問題」でも大和ハウスは先手を打つ。ゼネコンは工事現場の4週8休(週休2日制)の実現が約8割だが、大和ハウスは「かなり前から4週8休ベースの受注」(村田誉之副社長)をしており、今ではおよそ90%の工事現場で実現している。 生産性の低さが指摘されるゼネコンに対し、大和ハウスはDXでも先行する」、なるほど。
・『デベロッパーとの力関係 新秩序の3つ目はゼネコンがデベロッパーへの発言を強めていることだ。 再開発工事を発注するデベロッパーの立場は圧倒的に強い。最近は大型再開発が多く、工事代金が巨額化し、失注したときの痛手が大きいため受注競争が激化。大手ゼネコンは、工事代金のダンピング(不当な安値受注)だけでなく、工期のダンピング(短工期の受注)にも手を染めた。 しかし足元ではゼネコンもデベロッパーに対する発言を強め、工期の適正化に動いている。鹿島の天野裕正社長は「われわれの工期の提案を理解していただけなければ、受注できなくてもやむなしとする事例も出てきている」と語る。 ゼネコンの業界団体である日建連も後押しする。23年7月、「適正工期確保宣言」を掲げ、会員企業に徹底するように呼びかけた。「建設業の働き方として土曜日に仕事をするのは当たり前という常識を変えなければならない」と日建連の山本徳治事務総長は話す。 3月8日には政府が、工期のダンピングを禁止する建設業法改正案を閣議決定した。 いびつだった業界構造が2024年問題をきっかけに改善され、労働環境の向上につながれば理想的だ。だが、対応に手をこまねいている中堅・中小ゼネコンは多い。 労働環境が変わらず、若者の就労が減り続ければ「将来的にインフラ構築を手がける人材が極端に不足する」(準大手ゼネコン社員)。社会問題に発展する懸念があるだけに、建設業界は本気の意識改革が求められる』、「新秩序の3つ目はゼネコンがデベロッパーへの発言を強めていることだ。 再開発工事を発注するデベロッパーの立場は圧倒的に強い。最近は大型再開発が多く、工事代金が巨額化し、失注したときの痛手が大きいため受注競争が激化。大手ゼネコンは、工事代金のダンピング(不当な安値受注)だけでなく、工期のダンピング(短工期の受注)にも手を染めた。 しかし足元ではゼネコンもデベロッパーに対する発言を強め、工期の適正化に動いている・・・3月8日には政府が、工期のダンピングを禁止する建設業法改正案を閣議決定した。 いびつだった業界構造が2024年問題をきっかけに改善され、労働環境の向上につながれば理想的だ。だが、対応に手をこまねいている中堅・中小ゼネコンは多い。 労働環境が変わらず、若者の就労が減り続ければ「将来的にインフラ構築を手がける人材が極端に不足する」・・・社会問題に発展する懸念があるだけに、建設業界は本気の意識改革が求められる」、その通りだ。
第三に、9月10日付けダイヤモンド・オンライン「ゼネコン各社が軒並み増収の中、清水建設の不調が際立った理由とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/350104
・『2020年に始まったコロナ禍による落ち込みを脱した日本経済。ただ、元通りになったわけではない。デジタル化や脱炭素の潮流が加速し、物価高の影響も続く。その結果、企業によって業績の明暗が分かれている。格差の要因を探るべく、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は大成建設、鹿島など「ゼネコン」業界4社について解説する』、興味深そうだ。
・『大成建設は約4割の大幅増収 清水建設は4社で唯一、減収 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下のゼネコン業界4社。対象期間は2024年4~6月期の四半期としている。 各社の増収率は以下の通りだった。 ・大成建設 増収率:39.0%(四半期の売上高4571億円) ・鹿島 増収率:5.1%(四半期の売上高6132億円) ・大林組 増収率:17.9%(四半期の売上高5747億円) ・清水建設 増収率:マイナス9.1%(四半期の売上高4010億円) ゼネコン業界の主要4社では、大成建設、鹿島、大林組が前年同期比で増収、清水建設が減収となった。 大成建設は前年同期比で4割近い大幅増収となった一方で、清水建設は4社で唯一、減収に陥り、増収率には大きな差が付いている。それぞれの増収、減収の要因は何だったのか。 次ページでは各社の増収率の推移を紹介するとともに、2社の業績について解説する』、「大成建設」と「清水建設」の業績を詳しく、合わせて「鹿島建設」「大林組」の業績もみよう。
・『大成建設 24年4~6月期における売上高は4571億円、前年同期比増収率は39.0%だった。この3カ月は同社の25年3月期第1四半期に当たる。 四半期増収率(前年同期比)は、24年3月期第2四半期から4四半期連続でプラスとなっている。 25年3月期第1四半期は前年同期比で4割近い大幅増収となった大成建設。その要因は何だったのか。 25年3月期第1四半期の売上高をセグメント別に見ると、土木事業が売上高1280億円(前年同期比36.1%増)、建築事業が売上高3009億円(同41.5%増)、開発事業が売上高262億円(同33.8%増)といずれも前年同期比で3~4割の増収だった。 土木事業では、手持工事高が増加した。建築事業では、首都圏大型工事の施工が最盛期を迎えており、増収につながった。また、土木、建築いずれの事業においても、前期に建設大手のピーエス三菱(24年7月にピーエス・コンストラクションに社名変更)を連結子会社化したことによる増収効果があった。 利益面では、営業利益188億円、純利益234億円となった。前年同期に当たる24年3月期第1四半期は80億円の営業赤字、23億円の純損失となっていた。 営業利益が黒字化した主な要因としては、建築事業が先述の通り大きく増収したこと、また同事業の利益率が改善したことがある。本連載でも取り上げた通り、前年同期に当たる24年3月期第1四半期には、首都圏の大型案件などで工事損失引当金を計上したことが営業赤字につながっていた(2023年10月11日配信『大成建設がゼネコン4社で「独り負け」最終赤字、施工不良問題の他にもトラブル多発』参照)。25年3月期第1四半期は、こうした損失計上からの反動もあり、一転、黒字化したというわけだ。 25年3月期通期では、売上高1兆9900億円(前期比12.7%増)、営業利益870億円(同228.5%増)、純利益650億円(同61.4%増)と増収、そして大幅増益を見込む』、「大成建設・・・前年同期に当たる24年3月期第1四半期には、首都圏の大型案件などで工事損失引当金を計上したことが営業赤字につながっていた・・・25年3月期第1四半期は、こうした損失計上からの反動もあり、一転、黒字化したというわけだ」、なるほど。
・『鹿島 24年4~6月期における売上高は6132億円、前年同期比増収率は5.1%だった。この3カ月は同社の25年3月期第1四半期に当たる。 四半期増収率(前年同期比)は、22年3月期第1四半期から13四半期連続でプラスとなっている』、略。
・『大林組 24年4~6月期における売上高は5747億円、前年同期比増収率は17.9%だった。この3カ月は同社の25年3月期第1四半期に当たる。 四半期増収率(前年同期比)は、24年3月期第1四半期から5四半期連続でプラスとなっている』、略。
・『清水建設 24年4~6月期における売上高は4010億円、前年同期比増収率はマイナス9.1%だった。この3カ月は同社の25年3月期第1四半期に当たる。 四半期増収率(前年同期比)は、24年3月期第4四半期から2四半期連続でマイナスに陥っている。 25年3月期第1四半期では、ゼネコン主要4社で唯一前年同期比減収となった清水建設。その要因は何だったのか。 25年3月期第1四半期のセグメント別売上高は、以下の通りだった。 建設事業:売上高2832億円(前年同期比18.1%減) 投資開発事業:売上高89億円(同21.5%増) 道路舗装事業:売上高311億円(同2.6%増) 投資開発事業や道路舗装事業は前年同期比で増収だったが、主力の建設事業が2桁減収に陥った。 連結決算における建設事業の売上高の内訳については開示されていないが、清水建設単体の建設事業については、建築と土木で売上高がそれぞれ発表されているので見てみると、建築事業が売上高2203億円(前年同期比24.4%減)、土木事業が売上高656億円(同17.3%増)となっている(いずれも25年3月期第1四半期)。 建築事業については、国内が売上高2089億円(同26.6%減)、海外が売上高114億円(同63.6%増)となっており、国内における売上高が減少していることが分かる。さらに内訳を見てみると、官公庁が売上高198億円(同8.1%減)、民間が1891億円(同28.1%減)となっていて、民間向けの売上高が大きく減少している。 連結決算に話を戻そう。25年3月期第1四半期では、営業利益18億円(前年同期比70.2%減)、純利益24億円(同87.1%減)と大幅減益となった。完成工事高の減少により完成工事総利益が減少したことや、販売費及び一般管理費が増加したことが減益につながった。 25年3月期通期では、売上高1兆8000億円(前期比10.2%減)、営業利益410億円(前期は247億円の営業赤字)、純利益400億円(前期比133.0%増)を見込む。売上高は減収となるが、黒字転換を目指す』、「清水建設・・・道路舗装事業:売上高311億円(同2.6%増) 投資開発事業や道路舗装事業は前年同期比で増収だったが、主力の建設事業が2桁減収に陥った・・・25年3月期通期では、売上高1兆8000億円(前期比10.2%減)、営業利益410億円(前期は247億円の営業赤字)、純利益400億円(前期比133.0%増)を見込む。売上高は減収となるが、黒字転換を目指す」、やはり「清水建設」は「25年3月期通期」でも苦しいようだ。
タグ:「清水建設・・・道路舗装事業:売上高311億円(同2.6%増) 投資開発事業や道路舗装事業は前年同期比で増収だったが、主力の建設事業が2桁減収に陥った・・・25年3月期通期では、売上高1兆8000億円(前期比10.2%減)、営業利益410億円(前期は247億円の営業赤字)、純利益400億円(前期比133.0%増)を見込む。売上高は減収となるが、黒字転換を目指す」、やはり「清水建設」は「25年3月期通期」でも苦しいようだ。 「大成建設・・・前年同期に当たる24年3月期第1四半期には、首都圏の大型案件などで工事損失引当金を計上したことが営業赤字につながっていた・・・25年3月期第1四半期は、こうした損失計上からの反動もあり、一転、黒字化したというわけだ」、なるほど。 「工事をこなせないと、今年1月に入って突如判断したという。 引き受けてくれる別のサブコンを何とか見つけたが、「2月の竣工に向けて超突貫工事となり、湯水のごとくお金がかかった」(A氏)。 準大手ゼネコンの社員も「最近、サブコンは工事を簡単には引き受けてくれなくなった」と話す。足元では工事発注者からの受注を決める前に、まずサブコンを確保するというゼネコンが増えている」、なるほど。 「大成建設」と「清水建設」の業績を詳しく、合わせて「鹿島建設」「大林組」の業績もみよう。 「建設業界は元請けであるゼネコンを頂点に、重層構造になっている。仕事を発注するゼネコンと、受注する側であるサブコン(空調設備や電気設備などの専門工事会社)を含む下請け会社との間には、「殿様と家来の関係」(内装工事会社の社長)と言われるほど明確な上下関係があった。 しかし今、そのヒエラルキー構造が変わりつつある。 「引き受けてくれるサブコンをなかなか見つけられなかった」と肩を落とすのは上場中堅ゼネコン・大豊(だいほう)建設の幹部・A氏。2月9日、大豊建設は今2024年3月期の最終損益が16億円の赤字に転落す 東洋経済オンライン「ゼネコンよりサブコンが上?建設業界の新秩序 下請けとは「殿様と家来」の関係だったが…」 ダイヤモンド・オンライン「ゼネコン各社が軒並み増収の中、清水建設の不調が際立った理由とは?」 いびつだった業界構造が2024年問題をきっかけに改善され、労働環境の向上につながれば理想的だ。だが、対応に手をこまねいている中堅・中小ゼネコンは多い。 労働環境が変わらず、若者の就労が減り続ければ「将来的にインフラ構築を手がける人材が極端に不足する」・・・社会問題に発展する懸念があるだけに、建設業界は本気の意識改革が求められる」、その通りだ。 「新秩序の3つ目はゼネコンがデベロッパーへの発言を強めていることだ。 再開発工事を発注するデベロッパーの立場は圧倒的に強い。最近は大型再開発が多く、工事代金が巨額化し、失注したときの痛手が大きいため受注競争が激化。大手ゼネコンは、工事代金のダンピング(不当な安値受注)だけでなく、工期のダンピング(短工期の受注)にも手を染めた。 しかし足元ではゼネコンもデベロッパーに対する発言を強め、工期の適正化に動いている・・・3月8日には政府が、工期のダンピングを禁止する建設業法改正案を閣議決定した。 2倍超に膨らんだ。 「2024年問題」でも大和ハウスは先手を打つ。ゼネコンは工事現場の4週8休(週休2日制)の実現が約8割だが、大和ハウスは「かなり前から4週8休ベースの受注」(村田誉之副社長)をしており、今ではおよそ90%の工事現場で実現している。 生産性の低さが指摘されるゼネコンに対し、大和ハウスはDXでも先行する」、なるほど。 益率は数%高い」(大手サブコンの幹部)という。 今やサブコンにそっぽを向かれると自分たちの工事が進まないこともあり、ゼネコンはサブコンなど協力会社の囲い込みを強化する。戸田建設は「協力会社に選んでいただけるゼネコンになる」・・・2つ目はハウスメーカーがゼネコンを凌駕しつつあることだ。 ゼネコンは長年、住宅を手がけるハウスメーカーを下に見る傾向にあった。だが大和ハウス工業が準大手ゼネコンのフジタを傘下に入れるなどゼネコン化して、業容を拡大。大和ハウスの23年3月期の売上高は5兆円に迫り、ゼネコン首位の鹿島の 「2024年問題を機に、建設業界には「下剋上」ともいえる3つの新秩序が生まれつつある。 1つ目は冒頭で述べたゼネコンとサブコンの立場の逆転だ。「かつては工事代金や工期を厳しくする『サブコンいじめ』があったが、今はとてもそんなことはできない」(準大手ゼネコン幹部)・・・サブコンは、半導体工場や製薬工場など、空調や電気に高度な設備を求める工事も多く手がける。近年はこうした利益率の高い工事の選別受注を強化している。 工場の設備工事はゼネコン経由ではなく、メーカーから直接受注することも多い。「直接受注したほうが利 「清水建設では国内外における複数の大型建築工事で採算が悪化し、工事損失引当金を計上した。第3四半期累計の工事損失引当金の総額は1215億円に上る(前年同期は655億円)。低採算の工事が会社全体の利益を押し下げる・・・過年度に工事損失引当金を計上した海外大型建築工事で、地中障害の発生に伴う工程遅延や労務費の増加、円安の影響などにより見積総原価が増大し、さらなる工事損失の発生が見込まれる」、なるほど。 「大林組の主な減益要因は下記の3点である。 ・前年同期に発生した大型不動産の売却に伴う反動減の影響 ・子会社の海外土木事業で貸倒引当金を計上した影響 ・販売費及び一般管理費(人件費や研究開発費など)の増加」、なるほど。 「鹿島における第3四半期累計の利益面は・・・純利益が同6.7%減の766億円。海外開発事業における営業外収益の減少が最終減益につながった」、なるほど。 鹿島 「主力の建築事業が減収と営業赤字に陥り、全社の業績を圧迫していることが分かった。建築事業では、東京都世田谷区の本庁舎整備工事で工程遅延が起き、損失を計上したことが響いた。また、建設コスト上昇に伴う「物価スライド協議」が合意に至らず、一部の国内工事で収支が悪化した。 このほか、賃上げに伴う人件費の増加や、投資計画に基づく技術開発費の増加も、全社での大幅減益につながった」、なるほど。 大成建設 「ゼネコン4社が軒並み利益面で苦しんでいる・・・なぜ、各社の利益面は大打撃を受けているのか」、なぜだろう。 ダイヤモンド・オンライン「清水建設が「役員報酬返上」に及ぶ営業利益905億円“下方修正”の衝撃!ゼネコン決算大ピンチ ゼネコン業界決算報(2023年8~12月四半期編)」 (その1)(清水建設が「役員報酬返上」に及ぶ営業利益905億円“下方修正”の衝撃!ゼネコン決算大ピンチ ゼネコン業界決算報(2023年8~12月四半期編)、ゼネコンよりサブコンが上?建設業界の新秩序 下請けとは「殿様と家来」の関係だったが…、ゼネコン各社が軒並み増収の中 清水建設の不調が際立った理由とは?) ゼネコン
鉄道(その14)(阪急電鉄「プライベース」乗りたくなる仕掛け ハイグレードの有料着席サービスが7月に開始、実はイギリスにはない?日本の線路幅「狭軌」の謎 世界各国の「軌間」が映し出す国際情勢と歴史、三菱重工、知られざる「鉄道メーカー」の世界戦略 「架線レス」武器に新交通システムで営業攻勢) [産業動向]
鉄道については、本年7月26日に取上げた。今日は、(その14)(阪急電鉄「プライベース」乗りたくなる仕掛け ハイグレードの有料着席サービスが7月に開始、実はイギリスにはない?日本の線路幅「狭軌」の謎 世界各国の「軌間」が映し出す国際情勢と歴史、三菱重工、知られざる「鉄道メーカー」の世界戦略 「架線レス」武器に新交通システムで営業攻勢)である。
先ずは、8月24日付け東洋経済オンラインが掲載した鉄道ジャーナル編集部による「阪急電鉄「プライベース」乗りたくなる仕掛け ハイグレードの有料着席サービスが7月に開始」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/808195
・『鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2024年10月号「満を持して…ハイグレード座席サービス阪急PRiVACE」を再構成した記事を掲載します』、興味深そうだ。
・『鉄道ファン以外の関心も惹き付ける特別感 2024年7月21日、日曜日の営業開始から日の浅い平日、阪急電鉄大阪梅田駅の京都線のりば1号線に立った。頭端式ホームの付け根はPRiVACE(プライベース)の紹介が飾り付けられ、優雅な横断幕は宝塚線・神戸線のホームを含めて天井から吊り下げられている。中ほど4号車の場所に「乗車位置」と案内があり、上方に「座席指定サービス/空席状況」のディスプレイが設置されている。11時発、11時20分発、12時発とも残席わずかの△印が出ていた。 入手した指定席は11時発の京都河原町行き特急11010号の11A。スタートダッシュの時期だから平日日中と言えども席があるか心配になって2日前にネット予約を覗いてみると、案の定、頃合いの時間帯はかなりの席が埋まっており、1人掛け席の残1をなんとか押さえた。事前予約の多くは鉄道ファンと予測していたのだが、当日のそこに立つと、いかにも…の人がいないではないが、女性同士や熟年夫婦、夏休みも始まり小学生を連れた親子などと幅広い。物見高い関西ゆえか、阪急が送り出した特別感をもった座席指定車両は一般の関心も相当に惹き付けている。) この指定券購入は、各自スマホ等を使ってWebページから行うのを基本としている。発売開始は14日前。券売機や事務室での駅売りはない。今や主たる利用層は券売機などに立ち寄らないから、と割り切った。その場で空席があれば乗車列車のアテンダントからの購入もできるが、他の列車は押さえられない。もちろんWeb購入の場合の決済は、必然的にクレジットカード、それかPayPayになる。アテンダントからの購入は交通系ICカードか現金で対応する。 プライベース非連結の10時50分発特急が発車すると、その後すぐに京都河原町発の列車が到着、それが特急11010号となる。今回のプライベースは新形式車両2300系の登場と合わせたものだが、2300系でフル組成の編成はまだ1本だけで、他は既存形式9300系の中間にプライベース2350形を組み込んでいる。現れたのも9300系編成だった。 従前から折り返しの手順は、降車側ドアを閉めて転換クロスシートをバタンと自動で一斉反転させ、乗車側ドアを開いた。しかし、プライベースの回転リクライニングシートでは全席の同時回転は前後で干渉するため、1列おきの2段階アクションが必要になる。そのため操作は他車と別個に、アテンダントが車内確認してから行い、少しだけ時間を要する。だから、ドアは開くも「車内準備中」の札を吊り下げたロープが張られており、簡易な清掃を終えてロープを外して、乗車開始となる』、「事前予約の多くは鉄道ファンと予測していたのだが、当日のそこに立つと、いかにも…の人がいないではないが、女性同士や熟年夫婦、夏休みも始まり小学生を連れた親子などと幅広い。物見高い関西ゆえか、阪急が送り出した特別感をもった座席指定車両は一般の関心も相当に惹き付けている・・・プライベースの回転リクライニングシートでは全席の同時回転は前後で干渉するため、1列おきの2段階アクションが必要になる。そのため操作は他車と別個に、アテンダントが車内確認してから行い、少しだけ時間を要する。だから、ドアは開くも「車内準備中」の札を吊り下げたロープが張られており、簡易な清掃を終えてロープを外して、乗車開始となる」、なるほど。
・『「すごいね」の声も上がる阪急のインテリア 車両真ん中という一風変わった配置のデッキから客室へ踏み込む。全体にブラウン系の落ち着いた空間が広がり、おのずと大声は自制しつつ静かに着席…といった雰囲気ではあるが、それでも「すごいね」との声が聞こえる。細かい観察はこれから行うとして、片側2人掛け、片側1人掛け配置の大きな座席は、濃い茶色の木製フレームと「ゴールデンオリーブ」と称する濃緑のモケットが相まって阪急らしいレトロモダンと言うか、クラシック寄りの重厚さがある。ホワイトベージュの革の枕カバーには、「PRiVACE」とロゴが入っている。) 神戸線特急、宝塚線急行と並んで三複線に滑り出すと、やがて他線の列車をリードして中津を通過、淀川橋梁の渡河となった。客室内は全面的にカーペット敷きのために足の感触が柔らかいとともに、吸音性をもつため、鉄橋を渡る音は心持ち静かだろうか。十三に停車。京都側車室は全席が埋まった。おそらく大阪側の車室も同様と思う。 続いて千里線接続の淡路に停車。大規模な連立化工事が進んでおり高い高架橋がそびえているが、まだ桁が渡っていない部分も残る。以後は京都線特急らしい爽快な足取りとなり、阪急の路線上にあるOsaka Metro堺筋線の東吹田検車場を右に見たのち、続いて過日に報道向け試乗会でも訪れた正雀車庫を構える正雀を通過する』、「片側2人掛け、片側1人掛け配置の大きな座席は、濃い茶色の木製フレームと「ゴールデンオリーブ」と称する濃緑のモケットが相まって阪急らしいレトロモダンと言うか、クラシック寄りの重厚さがある。ホワイトベージュの革の枕カバーには、「PRiVACE」とロゴが入っている」、なるほど。
・『試乗会で伝えられたプライベースの魅力 さてと、試乗会での取材成果を交えながら、プライベースのあれこれに目を向けてゆきたい。 客室は中央デッキを挟んで前後2室。座席番号は大阪側車室が1?7番と若く、京都側は8?14番の数字が続く。 旅行者としては大阪梅田から乗る機会が多いので感覚的に大阪→京都の向きを下りのように捉えがちだが、京阪間の路線はJRは言わずもがな、阪急京都線も京阪電車も京都→大阪方向が下りである。そのため阪急京都線の1号車は大阪梅田方先頭車で、京都行きでは座席番号も数字の若い方が後ろになるわけだ。 大阪側車室は京都行き上り列車において進行右側が1人掛け、京都側車室は左側が1人掛けである。そして、どちらも1人掛け席をA席とし、2人掛け席はBC席となる。つまり前後車室でABCの並びが逆転するので、1人掛け席で好みの車窓を楽しみつつ過ごしたい場合など番号に留意する必要がある。予約時に「座席を選択する」で指定できる。 ドアを中央にして車室を分けた理由は、一つは車両の姿としての差別化、そして乗降口が1か所という構造では片端に寄せるより中央の方が乗降性が高いこと、さらにコンパクトな空間が実現すること?との説明だった。 阪急電鉄において、次期京都線特急車の導入と抱き合わせつつ、座席指定車両の具体的検討を始めたのは2020年の後半だった。今回阪急では、コンセプトを煮詰めることにじっくり1年の時間をかけた。まずは京阪神在住者2千人にWebアンケートを行い、さらに指定席車両の利用意向が高い人々にインタビュー調査を重ねて方向性を見出した。やはりニーズが高いのは混雑する通勤時で、したがってメインターゲットはラッシュ時の通勤客、属性としては20歳代?50歳代の男性、20歳代・30歳代の女性となった。そして今の時代、公共空間の中でも個の空間が欲しいという要求が高いことから、「プライベート感覚」がコンセプトの柱に据えられた。ちょうど開発がコロナ禍の最中だったため、非接触への欲求がとても高まっていたこともある。 その具現化がプライベースなのだ。 試乗会の際、「阪急電車の声の人」こと下間都代子氏は、「プライベースは、”日常の移動時間をプライベートな空間で過ごす自分時間へ”をコンセプトとし、プライベートと、英語で場所を表すプレイスを掛け合わせた名称です。阪急電車らしさはそのままに、お客様に快適な自分時間を過ごしていただけるよう、プライベート感と快適性を兼ね備えた上質な空間づくりを目指したデザインとしています」 と説明。外観やインテリアの特徴を述べ、阪急電車を象徴するマルーンにゴールドラインやステンドグラスをイメージした乗降ドアの窓などで特別感を持たせ、デッキ部の壁面は木目調と大理石調のデザイン、柔らかなダウンライトで上質さを演出したと伝えた。 座席は座面幅と足元を広く取った。リクライニングに加えて周囲からの視線を遮る大きなヘッドレストや2列席にはパーティションを設け、個々にリラックスできる空間を感じてもらえるよう、細部までこだわったそうだ』、「阪急電車らしさはそのままに、お客様に快適な自分時間を過ごしていただけるよう、プライベート感と快適性を兼ね備えた上質な空間づくりを目指したデザインとしています」 と説明。外観やインテリアの特徴を述べ、阪急電車を象徴するマルーンにゴールドラインやステンドグラスをイメージした乗降ドアの窓などで特別感を持たせ、デッキ部の壁面は木目調と大理石調のデザイン、柔らかなダウンライトで上質さを演出したと伝えた。 座席は座面幅と足元を広く取った。リクライニングに加えて周囲からの視線を遮る大きなヘッドレストや2列席にはパーティションを設け、個々にリラックスできる空間を感じてもらえるよう、細部までこだわったそうだ」、なるほど。
次に、9月4日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリストのさかい もとみ氏による「実はイギリスにはない?日本の線路幅「狭軌」の謎 世界各国の「軌間」が映し出す国際情勢と歴史」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/821098
・『日本に鉄道が走り出してから150年以上が経った。JR在来線をはじめ、日本の多くの鉄道の「軌間」、つまり線路の幅は、国際標準の1435mmより狭い1067mmの「狭軌」だ。 鉄道建設当時、イギリスから派遣された技術者は、山が多く平地も限られている日本で建設に有利であるとして狭軌を導入した。一方、60年前に走り出した新幹線は高速運転のため、国際標準軌を採用した。 日本だけでなく、一つの国の中でも異なる軌間が存在するため列車の直通が困難というケースがあるが、軌間には技術的な理由だけでなく、昔も今も「国際政治」が大きく絡んでいる。どうして複数の軌間が存在することになったのか。世界各国の事情を俯瞰しながら考えてみることにしたい』、「日本だけでなく、一つの国の中でも異なる軌間が存在するため列車の直通が困難というケースがあるが、軌間には技術的な理由だけでなく、昔も今も「国際政治」が大きく絡んでいる。どうして複数の軌間が存在することになったのか。世界各国の事情を俯瞰しながら考えてみることにしたい」、なるほど。
・『日本の「狭軌」はどこからきた? 1825年にイギリスで鉄道が初めて走り出して以降、19世紀後半には各国でレールが敷かれ、鉄道は勃興期を迎える。日本最初の鉄道は1872年、東京―横浜間(現在の新橋―桜木町間)に開業した。この際、イギリスから技師を招いて技術を導入したのはよく知られている事実だ。 【写真】日本の在来線より60cmも広いインドの軌間、ロシアゲージと標準軌が重なるウクライナ、日本と同じNZや南アフリカ…国内の珍しい線路も 一方で軌間について調べてみると、日本の狭軌、1067mm規格で敷かれた鉄道は、実は都市間を結ぶような本格的な鉄道としてはイギリスには存在していない。 なぜこんなことが起きたのか。) イギリスは当時世界各地にあった植民地で、鉄道敷設にかかる面積がより小さく、少ない予算で広範囲に鉄道網が拡大できる「狭軌」を採用していた。そうした経緯の下、イギリスは日本への鉄道技術導入の際、それを応用した。 日本で「狭軌」と呼んでいる1067mm軌間は、海外、とくに英語圏では、日本の鉄道よりも開業は遅かったものの、南アフリカのケープ州で採用された軌間であることから、「ケープゲージ」とも呼ばれている。ケープゲージは、イギリスの植民地支配の影響下にあった国々、例えばオーストラリア(主にクイーンズランド州)やニュージーランドでも用いられている。 イギリス本国でも導入例はあったものの、これら各国のように都市間を結ぶ鉄道ではなく、路面電車やケーブルカーなどだった。 ちなみに「本線級の路線で世界最古の1067mm軌間」を名乗るのは、1865年7月開通のオーストラリア・クイーンズランド州に敷設された鉄道だ。ただ、1862年6月にノルウェーの首都オスロ郊外に1067mm軌間の鉄道が敷設された記録もある。いずれにせよ、日本の鉄道開業前後の時期にはイギリス本国以外、植民地などで採用が広がっていた軌間といえるだろう』、「イギリスは当時世界各地にあった植民地で、鉄道敷設にかかる面積がより小さく、少ない予算で広範囲に鉄道網が拡大できる「狭軌」を採用していた。そうした経緯の下、イギリスは日本への鉄道技術導入の際、それを応用した。 日本で「狭軌」と呼んでいる1067mm軌間は、海外、とくに英語圏では、日本の鉄道よりも開業は遅かったものの、南アフリカのケープ州で採用された軌間であることから、「ケープゲージ」とも呼ばれている」、なるほど。
・『黎明期の試行錯誤が生んだ「超広軌」 一方、イギリス本国では後に「国際標準軌」となる1435mm軌間を採用したが、当時のイギリスはまさに産業革命のさなかで、黎明期にはさまざまな軌間の鉄道が存在した。 その代表格が、1830年代から1840年代にかけて、著名な鉄道・建築技術者イザムバード・キングダム・ブルネルがグレート・ウェスタン鉄道(Great Western Railway=GWR)の建設に採用した2140mmという軌間だ。実に、日本の狭軌の倍もある。 この「超広軌」といえる線路幅は、列車の安定性が増して乗り心地が向上することや、より強力な機関車によって高速での運行が可能になるとして考えられた。この広軌鉄道のために造られた蒸気機関車の動輪直径は、最大で約8フィート(約2440mm)もあったという。 だが、レール間隔が広いため、軌道や橋梁、トンネルなどのインフラ設備を通常より大きく頑丈に造らなければならず、その結果、敷設にかかる建設コストが標準軌に比べて割高だった。乗り入れなど効率的な運行と安全性から標準軌が普及する中、超広軌の路線運営は長続きせず、1893年までに汎用性の高い標準軌鉄道に付け替えられた。 欧州大陸の主要国はイギリスでの成功にならって標準軌を採用し、現在もそれを引き継いでいる。アメリカも同様の軌間を採用した。こうして「国際標準」化したわけだ。) しかし、標準軌がすべての国に受け入れられたわけではない。各国にはそれぞれ異なる事情があったからだ。 軌間の決定に関わる要素はさまざまだが、大きくは鉄道の用途や地形、経済的な背景が影響している。一般的には、高速・長距離の輸送を担う鉄道は列車をより安定して走らせられる標準軌やそれより広い広軌、日本の在来線のように山岳区間が多い国では「狭軌」が採用された例が多い。「氷河急行」で有名なスイスの山岳鉄道も、日本よりやや狭い1000mm(1m)の狭軌だ。 一方でスペインのように、険しい地形でも強力な機関車を走らせられるよう、標準軌より広い1668mmを採用した例もある。ポルトガルも同じ軌間のため「イベリアゲージ」と呼ばれる。 だが、それだけではなく、軍事的、政治的な問題も深く関わっている。鉄道が各国に広まった19世紀や20世紀初頭の国際政治がもたらした結果が、今も引き継がれているのだ』、「2140mmという軌間だ・・・この「超広軌」といえる線路幅は、列車の安定性が増して乗り心地が向上することや、より強力な機関車によって高速での運行が可能になるとして考えられた。この広軌鉄道のために造られた蒸気機関車の動輪直径は、最大で約8フィート(約2440mm)もあったという。 だが、レール間隔が広いため、軌道や橋梁、トンネルなどのインフラ設備を通常より大きく頑丈に造らなければならず、その結果、敷設にかかる建設コストが標準軌に比べて割高だった。乗り入れなど効率的な運行と安全性から標準軌が普及する中、超広軌の路線運営は長続きせず、1893年までに汎用性の高い標準軌鉄道に付け替えられた・・・欧州大陸の主要国はイギリスでの成功にならって標準軌を採用し、現在もそれを引き継いでいる。アメリカも同様の軌間を採用した。こうして「国際標準」化したわけだ。) しかし、標準軌がすべての国に受け入れられたわけではない。各国にはそれぞれ異なる事情があったからだ。 軌間の決定に関わる要素はさまざまだが、大きくは鉄道の用途や地形、経済的な背景が影響している・・・日本の在来線のように山岳区間が多い国では「狭軌」が採用された例が多い。「氷河急行」で有名なスイスの山岳鉄道も、日本よりやや狭い1000mm(1m)の狭軌だ。 一方でスペインのように、険しい地形でも強力な機関車を走らせられるよう、標準軌より広い1668mmを採用した例もある。ポルトガルも同じ軌間のため「イベリアゲージ」と呼ばれる。 だが、それだけではなく、軍事的、政治的な問題も深く関わっている。鉄道が各国に広まった19世紀や20世紀初頭の国際政治がもたらした結果が、今も引き継がれているのだ」、なるほど。
・『軍事や「植民地主義」の影響も 欧州各国と国土を接していた帝政ロシアは、独自の1520mmという軌間を選んだ。実際には定かではないが、これは軍事上の観点により、外国の列車をロシア領に侵入させないようにしたいという思惑があったからだといわれることが多い。 かつて広大な国土を擁していたソビエト連邦では、鉄道網をこの1520mm軌間で敷設した。このため、冷戦終結後に独立した各国は国境で台車ごと交換を余儀なくされるなど、欧州主要国との直通運転で頭を悩ます事態となっている。 そして、今まさに大きな影響を受けているのが、ロシアに侵攻されているウクライナだ。 ウクライナの鉄道網はソ連時代の1520mmで、そのままでは基本的にロシアなど旧ソ連圏の国にしか乗り入れできない。そこで、現在加盟を目指している欧州連合(EU)との経済的な連結強化の一環として、鉄道網の標準軌への改軌を進めている。 すでに西部の国境付近では、標準軌鉄道の建設が進んでいるほか、ポーランドに近い地域では標準軌車両を入れるための路線設計も進んでいるという。こうした動きはEUの支援を受けながら、ウクライナの復興と欧州との経済統合に向けた重要なプロジェクトとして推進されている。) 19世紀末期から20世紀にかけての欧州列強による植民地主義も影響している。前述のようにイギリスが植民地での鉄道敷設用に用いた「ケープゲージ」もその一例だが、現在でも顕著に当時のレール規格が残る例としては、旧フランス領インドシナ、つまり現在のベトナムやカンボジアに敷かれた1m幅の線路がある。 その寸法から「メーターゲージ」と呼ばれるフランスが敷いた線路は、一部が中国国内に延びていた(現在は廃線)。また、フランス植民地ではなかったが、同じ規格の線路がタイ、マレーシアを経て、シンガポールまで延びており、東南アジアでは一般的な軌間となっている。 しかし、軌間が1mとなると、線路設計や地盤を整備しても、運用できる実用的な最高速度は日本の在来線の一般的な速度と同様、おおむね時速120kmほどにとどまる。そこに登場したのが、中国の鉄道技術だ』、「帝政ロシアは、独自の1520mmという軌間を選んだ。実際には定かではないが、これは軍事上の観点により、外国の列車をロシア領に侵入させないようにしたいという思惑があったからだといわれることが多い。 かつて広大な国土を擁していたソビエト連邦では、鉄道網をこの1520mm軌間で敷設した。このため、冷戦終結後に独立した各国は国境で台車ごと交換を余儀なくされるなど、欧州主要国との直通運転で頭を悩ます事態となっている・・・ウクライナの鉄道網はソ連時代の1520mmで、そのままでは基本的にロシアなど旧ソ連圏の国にしか乗り入れできない。そこで、現在加盟を目指している欧州連合(EU)との経済的な連結強化の一環として、鉄道網の標準軌への改軌を進めている・・・現在でも顕著に当時のレール規格が残る例としては、旧フランス領インドシナ、つまり現在のベトナムやカンボジアに敷かれた1m幅の線路がある・・・「メーターゲージ」と呼ばれるフランスが敷いた線路は・・・フランス植民地ではなかったが、同じ規格の線路がタイ、マレーシアを経て、シンガポールまで延びており、東南アジアでは一般的な軌間となっている。 しかし、軌間が1mとなると、線路設計や地盤を整備しても、運用できる実用的な最高速度は日本の在来線の一般的な速度と同様、おおむね時速120kmほどにとどまる。そこに登場したのが、中国の鉄道技術だ」、なるほど。
・『中国「一帯一路」も「軌間」の戦略? 中国は「一帯一路」の名の下に、インフラ輸出の拡大を通じ自国の経済成長を促進したいというお題目を掲げ、東南アジア地域との経済的つながりの強化や、自国領土からインド洋への進出経路の確保といった軍事的目標もあって、メーターゲージより大量かつ高速に輸送できる標準軌鉄道や高速鉄道の敷設を積極的に行っている。 具体的には、2022年12月に開通した「中国ラオス鉄道(LCR)」が顕著な例だ。中国からの乗り入れを前提に、ラオス国内区間も中国の鉄道と同じ標準軌で建設された。 さらに中国は、LCRを延伸する形でタイ、マレーシアとの鉄道リンクの完成を目指し、実際に両国で鉄道敷設工事を進めている。既存のメーターゲージ鉄道との接続を考えない形で建設を進めていることが気になるところだ。 こうして現在も、鉄道の軌間は政治的な思惑と切り離せない関係にある。) 世界各国には、ここまで挙げた以外にもさまざまな軌間が存在する。さらに特筆できるものをいくつか紹介したい。 かつてイギリス植民地だったインドでは、1676mmという超広軌の線路が国土の大部分に張り巡らされている。これは重い貨物の輸送や長大な編成の長距離旅客輸送に適しており、隣接するパキスタンやバングラデシュの一部、スリランカでも採用されている。 インドはメーターゲージや狭軌鉄道も多かったが、1676mmへの改軌を急速に推進。主要幹線はこの軌間となっている。一方、日本の技術支援で建設が進む、いわゆる「インド新幹線」は日本と同じく標準軌を前提に工事が行われている』、「中国は「一帯一路」の名の下に、インフラ輸出の拡大を通じ自国の経済成長を促進したいというお題目を掲げ、東南アジア地域との経済的つながりの強化や、自国領土からインド洋への進出経路の確保といった軍事的目標もあって、メーターゲージより大量かつ高速に輸送できる標準軌鉄道や高速鉄道の敷設を積極的に行っている・・・インドでは、1676mmという超広軌の線路が国土の大部分に張り巡らされている。これは重い貨物の輸送や長大な編成の長距離旅客輸送に適しており、隣接するパキスタンやバングラデシュの一部、スリランカでも採用されている・・・日本の技術支援で建設が進む、いわゆる「インド新幹線」は日本と同じく標準軌を前提に工事が行われている」、なるほど。
・『アイルランドも独自の軌間 標準軌と異なる軌間としてよく挙げられるのは、前述したスペインの1668mm「イベリアゲージ」だろう。隣接する標準軌のフランスとの直通に手間がかかるため、日本では実用化に至っていないフリーゲージ(軌間可変)車両が古くから開発され、運用してきた経緯がある。 高速列車「AVE」などが走る高速新線は標準軌で造られているため、在来線だけが通るローカル都市などへの乗り入れのために国内でも軌間可変車両が使われ、中間駅にそのための基地も設けられている。在来線のほうが高速新線(新幹線)より軌間が広いという、日本とは逆のパターンだ。 このほか、大ブリテン島の西にあるアイルランド島の鉄道ネットワークは、1600mmという独特の軌間が使われている。イギリスやアイルランドの度量衡で5フィート3インチという規格で造ったものだが、たまたまメートル法では1600mmという「ちょうどの数字」となった。 アイルランド島の北側の一部は英領北アイルランドで、線路はそこまで延びているが、「標準軌の故郷」とも言えるイギリスの一部ながら、まったく異なる軌間の鉄道が走っているという事実が興味深い。現在この軌間は「ケルティックゲージ」と呼ばれている。 鉄道の軌間の違いは、単なる技術的選択にとどまらない。各国の政治的戦略や、経済的背景が深く関与していることを改めて意識してみると興味深いものだ』、「スペインの1668mm「イベリアゲージ」だろう。隣接する標準軌のフランスとの直通に手間がかかるため、日本では実用化に至っていないフリーゲージ(軌間可変)車両が古くから開発され、運用してきた経緯がある。 高速列車「AVE」などが走る高速新線は標準軌で造られているため、在来線だけが通るローカル都市などへの乗り入れのために国内でも軌間可変車両が使われ、中間駅にそのための基地も設けられている。在来線のほうが高速新線(新幹線)より軌間が広いという、日本とは逆のパターンだ・・・アイルランド島の鉄道ネットワークは、1600mmという独特の軌間が使われている。イギリスやアイルランドの度量衡で5フィート3インチという規格で造ったものだが、たまたまメートル法では1600mmという「ちょうどの数字」となった」、なるほど。
第三に、10月21日付け東洋経済オンライン「三菱重工、知られざる「鉄道メーカー」の世界戦略 「架線レス」武器に新交通システムで営業攻勢」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/834559?display=b
・『9月24日から27日にかけてドイツ・ベルリンで開催された国際鉄道見本市「イノトランス」では、ドイツのシーメンス、フランスのアルストム、中国中車といった車両製造の大手企業の展示が目立った。 日本勢も車両組み立てから電機品やインフラ製造まで30を超える企業・団体が出展した。日立製作所や三菱電機のように単独で大型のブースを構え、派手なディスプレイを施して客の目を惹きつける企業もあったが、日本鉄道システム輸出組合(JORSA)のパビリオンに共同出展した企業・団体もあった』、「ドイツ・ベルリンで開催された国際鉄道見本市「イノトランス」」は、欧州では鉄道が大手を振るっているだけにさぞ賑やかなのだろう。
・『「AGT」で存在感 JORSAパビリオンは巨大なホールをほぼ丸ごと借り切り、フロアの中央はJORSAの商談スペース。それを取り囲むように16の企業・団体がブースを構える。フロアの制約上、独自ブースのような派手な展示はせずパネル展示にとどまるブースが多かった。 ただ、「イノトランスは新規の顧客獲得よりも既知の顧客との情報交換が主目的である」と話す企業担当者もいて、情報交換だけであればパネル展示で十分という判断なのだろう。 そんな中、パネルの前で足を止めた客に対してその内容をスタッフが一生懸命説明しているブースがあった。 「ブースは小さいが、意気込みではシーメンスやアルストムに負けていません」――。 熱を帯びた口調でこう話したのは三菱重工業の説明員である。同社はJORSAパビリオンに出展した事業者の1社である。 車両は新開発の蓄電デバイスが供給する電力で走行する。駅に停車すると、客の乗降時間内という短時間内に駅で急速充電し、次の駅に向かうための電力を確保する。給電レールが不要になったことも建設コストやメンテナンスコストの削減につながる。駅間が長ければ長くなるほどより多くの電力が必要となり、短時間で十分な電力をチャージできないかもしれないが、都市部や空港のターミナル間であれば駅間も短く問題なさそうだ。 そして、「架線レスによって建設コストを抑えることができるとともに、メンテナンスコストも減ります」と担当者が説明する。これが架線レスの最大のメリットである。 また、同社のAGTは国内、海外ともに軌道の両側の壁に取り付けられたガイドレールに車両の案内輪を押し当て、これに沿って進む「側面案内方式」が多い。この場合はガイドレールが2本ということになるが、今回、中央下部に1本だけガイドレールを設ける「中央案内方式」も新たにラインナップに加えた。 同社では過去に中央案内方式の実績もあり、「海外のお客様から1本のガイドレールシステムのご要望があり、レパートリーに追加した」としている。中央案内方式は軌道を小型化できるメリットがある。架線レスと組み合わせればさらに効果は大きくなりそうだ』、「三菱重工業の説明員である。同社はJORSAパビリオンに出展した事業者の1社である。 車両は新開発の蓄電デバイスが供給する電力で走行する。駅に停車すると、客の乗降時間内という短時間内に駅で急速充電し、次の駅に向かうための電力を確保する。給電レールが不要になったことも建設コストやメンテナンスコストの削減につながる。駅間が長ければ長くなるほどより多くの電力が必要となり、短時間で十分な電力をチャージできないかもしれないが、都市部や空港のターミナル間であれば駅間も短く問題なさそうだ。 そして、「架線レスによって建設コストを抑えることができるとともに、メンテナンスコストも減ります」と担当者が説明する。これが架線レスの最大のメリットである・・・中央下部に1本だけガイドレールを設ける「中央案内方式」も新たにラインナップに加えた。 同社では過去に中央案内方式の実績もあり、「海外のお客様から1本のガイドレールシステムのご要望があり、レパートリーに追加した」としている。中央案内方式は軌道を小型化できるメリットがある。架線レスと組み合わせればさらに効果は大きくなりそうだ」、なるほど。
・『軌道の小型化で採用広がるか 軌道の小型化はほかにもメリットがある。従来の同社のAGTは最小曲線半径が30mだったが、これをさらに小さくできるのだ。 通常、AGTは道路の上などに建設されることが多いため、道路のカーブに合わせてAGTの軌道もカーブする。つまり、よりきついカーブにも対応できるようになるということだ。ブースに掲げられたパネルには「22.5m」という表示があったが、「現在開発段階であり、来年春以降に予定している正式発表の際には数値変更の可能性がある」という。 まだパンフレットもできあがっていない、誕生したばかりのシステムだけに、「営業活動はこれから」とのことだが、従来の鉄道よりも優れた点の多いシステムだけに、同社がAGTで実績をあげていない地域でも展開できる可能性がある。日立や川重といった伝統的な鉄道メーカーだけでなく、三菱重工の動向も要注目だ』、「誕生したばかりのシステムだけに、「営業活動はこれから」とのことだが、従来の鉄道よりも優れた点の多いシステムだけに、同社がAGTで実績をあげていない地域でも展開できる可能性がある。日立や川重といった伝統的な鉄道メーカーだけでなく、三菱重工の動向も要注目だ」、その通りだ。
先ずは、8月24日付け東洋経済オンラインが掲載した鉄道ジャーナル編集部による「阪急電鉄「プライベース」乗りたくなる仕掛け ハイグレードの有料着席サービスが7月に開始」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/808195
・『鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2024年10月号「満を持して…ハイグレード座席サービス阪急PRiVACE」を再構成した記事を掲載します』、興味深そうだ。
・『鉄道ファン以外の関心も惹き付ける特別感 2024年7月21日、日曜日の営業開始から日の浅い平日、阪急電鉄大阪梅田駅の京都線のりば1号線に立った。頭端式ホームの付け根はPRiVACE(プライベース)の紹介が飾り付けられ、優雅な横断幕は宝塚線・神戸線のホームを含めて天井から吊り下げられている。中ほど4号車の場所に「乗車位置」と案内があり、上方に「座席指定サービス/空席状況」のディスプレイが設置されている。11時発、11時20分発、12時発とも残席わずかの△印が出ていた。 入手した指定席は11時発の京都河原町行き特急11010号の11A。スタートダッシュの時期だから平日日中と言えども席があるか心配になって2日前にネット予約を覗いてみると、案の定、頃合いの時間帯はかなりの席が埋まっており、1人掛け席の残1をなんとか押さえた。事前予約の多くは鉄道ファンと予測していたのだが、当日のそこに立つと、いかにも…の人がいないではないが、女性同士や熟年夫婦、夏休みも始まり小学生を連れた親子などと幅広い。物見高い関西ゆえか、阪急が送り出した特別感をもった座席指定車両は一般の関心も相当に惹き付けている。) この指定券購入は、各自スマホ等を使ってWebページから行うのを基本としている。発売開始は14日前。券売機や事務室での駅売りはない。今や主たる利用層は券売機などに立ち寄らないから、と割り切った。その場で空席があれば乗車列車のアテンダントからの購入もできるが、他の列車は押さえられない。もちろんWeb購入の場合の決済は、必然的にクレジットカード、それかPayPayになる。アテンダントからの購入は交通系ICカードか現金で対応する。 プライベース非連結の10時50分発特急が発車すると、その後すぐに京都河原町発の列車が到着、それが特急11010号となる。今回のプライベースは新形式車両2300系の登場と合わせたものだが、2300系でフル組成の編成はまだ1本だけで、他は既存形式9300系の中間にプライベース2350形を組み込んでいる。現れたのも9300系編成だった。 従前から折り返しの手順は、降車側ドアを閉めて転換クロスシートをバタンと自動で一斉反転させ、乗車側ドアを開いた。しかし、プライベースの回転リクライニングシートでは全席の同時回転は前後で干渉するため、1列おきの2段階アクションが必要になる。そのため操作は他車と別個に、アテンダントが車内確認してから行い、少しだけ時間を要する。だから、ドアは開くも「車内準備中」の札を吊り下げたロープが張られており、簡易な清掃を終えてロープを外して、乗車開始となる』、「事前予約の多くは鉄道ファンと予測していたのだが、当日のそこに立つと、いかにも…の人がいないではないが、女性同士や熟年夫婦、夏休みも始まり小学生を連れた親子などと幅広い。物見高い関西ゆえか、阪急が送り出した特別感をもった座席指定車両は一般の関心も相当に惹き付けている・・・プライベースの回転リクライニングシートでは全席の同時回転は前後で干渉するため、1列おきの2段階アクションが必要になる。そのため操作は他車と別個に、アテンダントが車内確認してから行い、少しだけ時間を要する。だから、ドアは開くも「車内準備中」の札を吊り下げたロープが張られており、簡易な清掃を終えてロープを外して、乗車開始となる」、なるほど。
・『「すごいね」の声も上がる阪急のインテリア 車両真ん中という一風変わった配置のデッキから客室へ踏み込む。全体にブラウン系の落ち着いた空間が広がり、おのずと大声は自制しつつ静かに着席…といった雰囲気ではあるが、それでも「すごいね」との声が聞こえる。細かい観察はこれから行うとして、片側2人掛け、片側1人掛け配置の大きな座席は、濃い茶色の木製フレームと「ゴールデンオリーブ」と称する濃緑のモケットが相まって阪急らしいレトロモダンと言うか、クラシック寄りの重厚さがある。ホワイトベージュの革の枕カバーには、「PRiVACE」とロゴが入っている。) 神戸線特急、宝塚線急行と並んで三複線に滑り出すと、やがて他線の列車をリードして中津を通過、淀川橋梁の渡河となった。客室内は全面的にカーペット敷きのために足の感触が柔らかいとともに、吸音性をもつため、鉄橋を渡る音は心持ち静かだろうか。十三に停車。京都側車室は全席が埋まった。おそらく大阪側の車室も同様と思う。 続いて千里線接続の淡路に停車。大規模な連立化工事が進んでおり高い高架橋がそびえているが、まだ桁が渡っていない部分も残る。以後は京都線特急らしい爽快な足取りとなり、阪急の路線上にあるOsaka Metro堺筋線の東吹田検車場を右に見たのち、続いて過日に報道向け試乗会でも訪れた正雀車庫を構える正雀を通過する』、「片側2人掛け、片側1人掛け配置の大きな座席は、濃い茶色の木製フレームと「ゴールデンオリーブ」と称する濃緑のモケットが相まって阪急らしいレトロモダンと言うか、クラシック寄りの重厚さがある。ホワイトベージュの革の枕カバーには、「PRiVACE」とロゴが入っている」、なるほど。
・『試乗会で伝えられたプライベースの魅力 さてと、試乗会での取材成果を交えながら、プライベースのあれこれに目を向けてゆきたい。 客室は中央デッキを挟んで前後2室。座席番号は大阪側車室が1?7番と若く、京都側は8?14番の数字が続く。 旅行者としては大阪梅田から乗る機会が多いので感覚的に大阪→京都の向きを下りのように捉えがちだが、京阪間の路線はJRは言わずもがな、阪急京都線も京阪電車も京都→大阪方向が下りである。そのため阪急京都線の1号車は大阪梅田方先頭車で、京都行きでは座席番号も数字の若い方が後ろになるわけだ。 大阪側車室は京都行き上り列車において進行右側が1人掛け、京都側車室は左側が1人掛けである。そして、どちらも1人掛け席をA席とし、2人掛け席はBC席となる。つまり前後車室でABCの並びが逆転するので、1人掛け席で好みの車窓を楽しみつつ過ごしたい場合など番号に留意する必要がある。予約時に「座席を選択する」で指定できる。 ドアを中央にして車室を分けた理由は、一つは車両の姿としての差別化、そして乗降口が1か所という構造では片端に寄せるより中央の方が乗降性が高いこと、さらにコンパクトな空間が実現すること?との説明だった。 阪急電鉄において、次期京都線特急車の導入と抱き合わせつつ、座席指定車両の具体的検討を始めたのは2020年の後半だった。今回阪急では、コンセプトを煮詰めることにじっくり1年の時間をかけた。まずは京阪神在住者2千人にWebアンケートを行い、さらに指定席車両の利用意向が高い人々にインタビュー調査を重ねて方向性を見出した。やはりニーズが高いのは混雑する通勤時で、したがってメインターゲットはラッシュ時の通勤客、属性としては20歳代?50歳代の男性、20歳代・30歳代の女性となった。そして今の時代、公共空間の中でも個の空間が欲しいという要求が高いことから、「プライベート感覚」がコンセプトの柱に据えられた。ちょうど開発がコロナ禍の最中だったため、非接触への欲求がとても高まっていたこともある。 その具現化がプライベースなのだ。 試乗会の際、「阪急電車の声の人」こと下間都代子氏は、「プライベースは、”日常の移動時間をプライベートな空間で過ごす自分時間へ”をコンセプトとし、プライベートと、英語で場所を表すプレイスを掛け合わせた名称です。阪急電車らしさはそのままに、お客様に快適な自分時間を過ごしていただけるよう、プライベート感と快適性を兼ね備えた上質な空間づくりを目指したデザインとしています」 と説明。外観やインテリアの特徴を述べ、阪急電車を象徴するマルーンにゴールドラインやステンドグラスをイメージした乗降ドアの窓などで特別感を持たせ、デッキ部の壁面は木目調と大理石調のデザイン、柔らかなダウンライトで上質さを演出したと伝えた。 座席は座面幅と足元を広く取った。リクライニングに加えて周囲からの視線を遮る大きなヘッドレストや2列席にはパーティションを設け、個々にリラックスできる空間を感じてもらえるよう、細部までこだわったそうだ』、「阪急電車らしさはそのままに、お客様に快適な自分時間を過ごしていただけるよう、プライベート感と快適性を兼ね備えた上質な空間づくりを目指したデザインとしています」 と説明。外観やインテリアの特徴を述べ、阪急電車を象徴するマルーンにゴールドラインやステンドグラスをイメージした乗降ドアの窓などで特別感を持たせ、デッキ部の壁面は木目調と大理石調のデザイン、柔らかなダウンライトで上質さを演出したと伝えた。 座席は座面幅と足元を広く取った。リクライニングに加えて周囲からの視線を遮る大きなヘッドレストや2列席にはパーティションを設け、個々にリラックスできる空間を感じてもらえるよう、細部までこだわったそうだ」、なるほど。
次に、9月4日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリストのさかい もとみ氏による「実はイギリスにはない?日本の線路幅「狭軌」の謎 世界各国の「軌間」が映し出す国際情勢と歴史」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/821098
・『日本に鉄道が走り出してから150年以上が経った。JR在来線をはじめ、日本の多くの鉄道の「軌間」、つまり線路の幅は、国際標準の1435mmより狭い1067mmの「狭軌」だ。 鉄道建設当時、イギリスから派遣された技術者は、山が多く平地も限られている日本で建設に有利であるとして狭軌を導入した。一方、60年前に走り出した新幹線は高速運転のため、国際標準軌を採用した。 日本だけでなく、一つの国の中でも異なる軌間が存在するため列車の直通が困難というケースがあるが、軌間には技術的な理由だけでなく、昔も今も「国際政治」が大きく絡んでいる。どうして複数の軌間が存在することになったのか。世界各国の事情を俯瞰しながら考えてみることにしたい』、「日本だけでなく、一つの国の中でも異なる軌間が存在するため列車の直通が困難というケースがあるが、軌間には技術的な理由だけでなく、昔も今も「国際政治」が大きく絡んでいる。どうして複数の軌間が存在することになったのか。世界各国の事情を俯瞰しながら考えてみることにしたい」、なるほど。
・『日本の「狭軌」はどこからきた? 1825年にイギリスで鉄道が初めて走り出して以降、19世紀後半には各国でレールが敷かれ、鉄道は勃興期を迎える。日本最初の鉄道は1872年、東京―横浜間(現在の新橋―桜木町間)に開業した。この際、イギリスから技師を招いて技術を導入したのはよく知られている事実だ。 【写真】日本の在来線より60cmも広いインドの軌間、ロシアゲージと標準軌が重なるウクライナ、日本と同じNZや南アフリカ…国内の珍しい線路も 一方で軌間について調べてみると、日本の狭軌、1067mm規格で敷かれた鉄道は、実は都市間を結ぶような本格的な鉄道としてはイギリスには存在していない。 なぜこんなことが起きたのか。) イギリスは当時世界各地にあった植民地で、鉄道敷設にかかる面積がより小さく、少ない予算で広範囲に鉄道網が拡大できる「狭軌」を採用していた。そうした経緯の下、イギリスは日本への鉄道技術導入の際、それを応用した。 日本で「狭軌」と呼んでいる1067mm軌間は、海外、とくに英語圏では、日本の鉄道よりも開業は遅かったものの、南アフリカのケープ州で採用された軌間であることから、「ケープゲージ」とも呼ばれている。ケープゲージは、イギリスの植民地支配の影響下にあった国々、例えばオーストラリア(主にクイーンズランド州)やニュージーランドでも用いられている。 イギリス本国でも導入例はあったものの、これら各国のように都市間を結ぶ鉄道ではなく、路面電車やケーブルカーなどだった。 ちなみに「本線級の路線で世界最古の1067mm軌間」を名乗るのは、1865年7月開通のオーストラリア・クイーンズランド州に敷設された鉄道だ。ただ、1862年6月にノルウェーの首都オスロ郊外に1067mm軌間の鉄道が敷設された記録もある。いずれにせよ、日本の鉄道開業前後の時期にはイギリス本国以外、植民地などで採用が広がっていた軌間といえるだろう』、「イギリスは当時世界各地にあった植民地で、鉄道敷設にかかる面積がより小さく、少ない予算で広範囲に鉄道網が拡大できる「狭軌」を採用していた。そうした経緯の下、イギリスは日本への鉄道技術導入の際、それを応用した。 日本で「狭軌」と呼んでいる1067mm軌間は、海外、とくに英語圏では、日本の鉄道よりも開業は遅かったものの、南アフリカのケープ州で採用された軌間であることから、「ケープゲージ」とも呼ばれている」、なるほど。
・『黎明期の試行錯誤が生んだ「超広軌」 一方、イギリス本国では後に「国際標準軌」となる1435mm軌間を採用したが、当時のイギリスはまさに産業革命のさなかで、黎明期にはさまざまな軌間の鉄道が存在した。 その代表格が、1830年代から1840年代にかけて、著名な鉄道・建築技術者イザムバード・キングダム・ブルネルがグレート・ウェスタン鉄道(Great Western Railway=GWR)の建設に採用した2140mmという軌間だ。実に、日本の狭軌の倍もある。 この「超広軌」といえる線路幅は、列車の安定性が増して乗り心地が向上することや、より強力な機関車によって高速での運行が可能になるとして考えられた。この広軌鉄道のために造られた蒸気機関車の動輪直径は、最大で約8フィート(約2440mm)もあったという。 だが、レール間隔が広いため、軌道や橋梁、トンネルなどのインフラ設備を通常より大きく頑丈に造らなければならず、その結果、敷設にかかる建設コストが標準軌に比べて割高だった。乗り入れなど効率的な運行と安全性から標準軌が普及する中、超広軌の路線運営は長続きせず、1893年までに汎用性の高い標準軌鉄道に付け替えられた。 欧州大陸の主要国はイギリスでの成功にならって標準軌を採用し、現在もそれを引き継いでいる。アメリカも同様の軌間を採用した。こうして「国際標準」化したわけだ。) しかし、標準軌がすべての国に受け入れられたわけではない。各国にはそれぞれ異なる事情があったからだ。 軌間の決定に関わる要素はさまざまだが、大きくは鉄道の用途や地形、経済的な背景が影響している。一般的には、高速・長距離の輸送を担う鉄道は列車をより安定して走らせられる標準軌やそれより広い広軌、日本の在来線のように山岳区間が多い国では「狭軌」が採用された例が多い。「氷河急行」で有名なスイスの山岳鉄道も、日本よりやや狭い1000mm(1m)の狭軌だ。 一方でスペインのように、険しい地形でも強力な機関車を走らせられるよう、標準軌より広い1668mmを採用した例もある。ポルトガルも同じ軌間のため「イベリアゲージ」と呼ばれる。 だが、それだけではなく、軍事的、政治的な問題も深く関わっている。鉄道が各国に広まった19世紀や20世紀初頭の国際政治がもたらした結果が、今も引き継がれているのだ』、「2140mmという軌間だ・・・この「超広軌」といえる線路幅は、列車の安定性が増して乗り心地が向上することや、より強力な機関車によって高速での運行が可能になるとして考えられた。この広軌鉄道のために造られた蒸気機関車の動輪直径は、最大で約8フィート(約2440mm)もあったという。 だが、レール間隔が広いため、軌道や橋梁、トンネルなどのインフラ設備を通常より大きく頑丈に造らなければならず、その結果、敷設にかかる建設コストが標準軌に比べて割高だった。乗り入れなど効率的な運行と安全性から標準軌が普及する中、超広軌の路線運営は長続きせず、1893年までに汎用性の高い標準軌鉄道に付け替えられた・・・欧州大陸の主要国はイギリスでの成功にならって標準軌を採用し、現在もそれを引き継いでいる。アメリカも同様の軌間を採用した。こうして「国際標準」化したわけだ。) しかし、標準軌がすべての国に受け入れられたわけではない。各国にはそれぞれ異なる事情があったからだ。 軌間の決定に関わる要素はさまざまだが、大きくは鉄道の用途や地形、経済的な背景が影響している・・・日本の在来線のように山岳区間が多い国では「狭軌」が採用された例が多い。「氷河急行」で有名なスイスの山岳鉄道も、日本よりやや狭い1000mm(1m)の狭軌だ。 一方でスペインのように、険しい地形でも強力な機関車を走らせられるよう、標準軌より広い1668mmを採用した例もある。ポルトガルも同じ軌間のため「イベリアゲージ」と呼ばれる。 だが、それだけではなく、軍事的、政治的な問題も深く関わっている。鉄道が各国に広まった19世紀や20世紀初頭の国際政治がもたらした結果が、今も引き継がれているのだ」、なるほど。
・『軍事や「植民地主義」の影響も 欧州各国と国土を接していた帝政ロシアは、独自の1520mmという軌間を選んだ。実際には定かではないが、これは軍事上の観点により、外国の列車をロシア領に侵入させないようにしたいという思惑があったからだといわれることが多い。 かつて広大な国土を擁していたソビエト連邦では、鉄道網をこの1520mm軌間で敷設した。このため、冷戦終結後に独立した各国は国境で台車ごと交換を余儀なくされるなど、欧州主要国との直通運転で頭を悩ます事態となっている。 そして、今まさに大きな影響を受けているのが、ロシアに侵攻されているウクライナだ。 ウクライナの鉄道網はソ連時代の1520mmで、そのままでは基本的にロシアなど旧ソ連圏の国にしか乗り入れできない。そこで、現在加盟を目指している欧州連合(EU)との経済的な連結強化の一環として、鉄道網の標準軌への改軌を進めている。 すでに西部の国境付近では、標準軌鉄道の建設が進んでいるほか、ポーランドに近い地域では標準軌車両を入れるための路線設計も進んでいるという。こうした動きはEUの支援を受けながら、ウクライナの復興と欧州との経済統合に向けた重要なプロジェクトとして推進されている。) 19世紀末期から20世紀にかけての欧州列強による植民地主義も影響している。前述のようにイギリスが植民地での鉄道敷設用に用いた「ケープゲージ」もその一例だが、現在でも顕著に当時のレール規格が残る例としては、旧フランス領インドシナ、つまり現在のベトナムやカンボジアに敷かれた1m幅の線路がある。 その寸法から「メーターゲージ」と呼ばれるフランスが敷いた線路は、一部が中国国内に延びていた(現在は廃線)。また、フランス植民地ではなかったが、同じ規格の線路がタイ、マレーシアを経て、シンガポールまで延びており、東南アジアでは一般的な軌間となっている。 しかし、軌間が1mとなると、線路設計や地盤を整備しても、運用できる実用的な最高速度は日本の在来線の一般的な速度と同様、おおむね時速120kmほどにとどまる。そこに登場したのが、中国の鉄道技術だ』、「帝政ロシアは、独自の1520mmという軌間を選んだ。実際には定かではないが、これは軍事上の観点により、外国の列車をロシア領に侵入させないようにしたいという思惑があったからだといわれることが多い。 かつて広大な国土を擁していたソビエト連邦では、鉄道網をこの1520mm軌間で敷設した。このため、冷戦終結後に独立した各国は国境で台車ごと交換を余儀なくされるなど、欧州主要国との直通運転で頭を悩ます事態となっている・・・ウクライナの鉄道網はソ連時代の1520mmで、そのままでは基本的にロシアなど旧ソ連圏の国にしか乗り入れできない。そこで、現在加盟を目指している欧州連合(EU)との経済的な連結強化の一環として、鉄道網の標準軌への改軌を進めている・・・現在でも顕著に当時のレール規格が残る例としては、旧フランス領インドシナ、つまり現在のベトナムやカンボジアに敷かれた1m幅の線路がある・・・「メーターゲージ」と呼ばれるフランスが敷いた線路は・・・フランス植民地ではなかったが、同じ規格の線路がタイ、マレーシアを経て、シンガポールまで延びており、東南アジアでは一般的な軌間となっている。 しかし、軌間が1mとなると、線路設計や地盤を整備しても、運用できる実用的な最高速度は日本の在来線の一般的な速度と同様、おおむね時速120kmほどにとどまる。そこに登場したのが、中国の鉄道技術だ」、なるほど。
・『中国「一帯一路」も「軌間」の戦略? 中国は「一帯一路」の名の下に、インフラ輸出の拡大を通じ自国の経済成長を促進したいというお題目を掲げ、東南アジア地域との経済的つながりの強化や、自国領土からインド洋への進出経路の確保といった軍事的目標もあって、メーターゲージより大量かつ高速に輸送できる標準軌鉄道や高速鉄道の敷設を積極的に行っている。 具体的には、2022年12月に開通した「中国ラオス鉄道(LCR)」が顕著な例だ。中国からの乗り入れを前提に、ラオス国内区間も中国の鉄道と同じ標準軌で建設された。 さらに中国は、LCRを延伸する形でタイ、マレーシアとの鉄道リンクの完成を目指し、実際に両国で鉄道敷設工事を進めている。既存のメーターゲージ鉄道との接続を考えない形で建設を進めていることが気になるところだ。 こうして現在も、鉄道の軌間は政治的な思惑と切り離せない関係にある。) 世界各国には、ここまで挙げた以外にもさまざまな軌間が存在する。さらに特筆できるものをいくつか紹介したい。 かつてイギリス植民地だったインドでは、1676mmという超広軌の線路が国土の大部分に張り巡らされている。これは重い貨物の輸送や長大な編成の長距離旅客輸送に適しており、隣接するパキスタンやバングラデシュの一部、スリランカでも採用されている。 インドはメーターゲージや狭軌鉄道も多かったが、1676mmへの改軌を急速に推進。主要幹線はこの軌間となっている。一方、日本の技術支援で建設が進む、いわゆる「インド新幹線」は日本と同じく標準軌を前提に工事が行われている』、「中国は「一帯一路」の名の下に、インフラ輸出の拡大を通じ自国の経済成長を促進したいというお題目を掲げ、東南アジア地域との経済的つながりの強化や、自国領土からインド洋への進出経路の確保といった軍事的目標もあって、メーターゲージより大量かつ高速に輸送できる標準軌鉄道や高速鉄道の敷設を積極的に行っている・・・インドでは、1676mmという超広軌の線路が国土の大部分に張り巡らされている。これは重い貨物の輸送や長大な編成の長距離旅客輸送に適しており、隣接するパキスタンやバングラデシュの一部、スリランカでも採用されている・・・日本の技術支援で建設が進む、いわゆる「インド新幹線」は日本と同じく標準軌を前提に工事が行われている」、なるほど。
・『アイルランドも独自の軌間 標準軌と異なる軌間としてよく挙げられるのは、前述したスペインの1668mm「イベリアゲージ」だろう。隣接する標準軌のフランスとの直通に手間がかかるため、日本では実用化に至っていないフリーゲージ(軌間可変)車両が古くから開発され、運用してきた経緯がある。 高速列車「AVE」などが走る高速新線は標準軌で造られているため、在来線だけが通るローカル都市などへの乗り入れのために国内でも軌間可変車両が使われ、中間駅にそのための基地も設けられている。在来線のほうが高速新線(新幹線)より軌間が広いという、日本とは逆のパターンだ。 このほか、大ブリテン島の西にあるアイルランド島の鉄道ネットワークは、1600mmという独特の軌間が使われている。イギリスやアイルランドの度量衡で5フィート3インチという規格で造ったものだが、たまたまメートル法では1600mmという「ちょうどの数字」となった。 アイルランド島の北側の一部は英領北アイルランドで、線路はそこまで延びているが、「標準軌の故郷」とも言えるイギリスの一部ながら、まったく異なる軌間の鉄道が走っているという事実が興味深い。現在この軌間は「ケルティックゲージ」と呼ばれている。 鉄道の軌間の違いは、単なる技術的選択にとどまらない。各国の政治的戦略や、経済的背景が深く関与していることを改めて意識してみると興味深いものだ』、「スペインの1668mm「イベリアゲージ」だろう。隣接する標準軌のフランスとの直通に手間がかかるため、日本では実用化に至っていないフリーゲージ(軌間可変)車両が古くから開発され、運用してきた経緯がある。 高速列車「AVE」などが走る高速新線は標準軌で造られているため、在来線だけが通るローカル都市などへの乗り入れのために国内でも軌間可変車両が使われ、中間駅にそのための基地も設けられている。在来線のほうが高速新線(新幹線)より軌間が広いという、日本とは逆のパターンだ・・・アイルランド島の鉄道ネットワークは、1600mmという独特の軌間が使われている。イギリスやアイルランドの度量衡で5フィート3インチという規格で造ったものだが、たまたまメートル法では1600mmという「ちょうどの数字」となった」、なるほど。
第三に、10月21日付け東洋経済オンライン「三菱重工、知られざる「鉄道メーカー」の世界戦略 「架線レス」武器に新交通システムで営業攻勢」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/834559?display=b
・『9月24日から27日にかけてドイツ・ベルリンで開催された国際鉄道見本市「イノトランス」では、ドイツのシーメンス、フランスのアルストム、中国中車といった車両製造の大手企業の展示が目立った。 日本勢も車両組み立てから電機品やインフラ製造まで30を超える企業・団体が出展した。日立製作所や三菱電機のように単独で大型のブースを構え、派手なディスプレイを施して客の目を惹きつける企業もあったが、日本鉄道システム輸出組合(JORSA)のパビリオンに共同出展した企業・団体もあった』、「ドイツ・ベルリンで開催された国際鉄道見本市「イノトランス」」は、欧州では鉄道が大手を振るっているだけにさぞ賑やかなのだろう。
・『「AGT」で存在感 JORSAパビリオンは巨大なホールをほぼ丸ごと借り切り、フロアの中央はJORSAの商談スペース。それを取り囲むように16の企業・団体がブースを構える。フロアの制約上、独自ブースのような派手な展示はせずパネル展示にとどまるブースが多かった。 ただ、「イノトランスは新規の顧客獲得よりも既知の顧客との情報交換が主目的である」と話す企業担当者もいて、情報交換だけであればパネル展示で十分という判断なのだろう。 そんな中、パネルの前で足を止めた客に対してその内容をスタッフが一生懸命説明しているブースがあった。 「ブースは小さいが、意気込みではシーメンスやアルストムに負けていません」――。 熱を帯びた口調でこう話したのは三菱重工業の説明員である。同社はJORSAパビリオンに出展した事業者の1社である。 車両は新開発の蓄電デバイスが供給する電力で走行する。駅に停車すると、客の乗降時間内という短時間内に駅で急速充電し、次の駅に向かうための電力を確保する。給電レールが不要になったことも建設コストやメンテナンスコストの削減につながる。駅間が長ければ長くなるほどより多くの電力が必要となり、短時間で十分な電力をチャージできないかもしれないが、都市部や空港のターミナル間であれば駅間も短く問題なさそうだ。 そして、「架線レスによって建設コストを抑えることができるとともに、メンテナンスコストも減ります」と担当者が説明する。これが架線レスの最大のメリットである。 また、同社のAGTは国内、海外ともに軌道の両側の壁に取り付けられたガイドレールに車両の案内輪を押し当て、これに沿って進む「側面案内方式」が多い。この場合はガイドレールが2本ということになるが、今回、中央下部に1本だけガイドレールを設ける「中央案内方式」も新たにラインナップに加えた。 同社では過去に中央案内方式の実績もあり、「海外のお客様から1本のガイドレールシステムのご要望があり、レパートリーに追加した」としている。中央案内方式は軌道を小型化できるメリットがある。架線レスと組み合わせればさらに効果は大きくなりそうだ』、「三菱重工業の説明員である。同社はJORSAパビリオンに出展した事業者の1社である。 車両は新開発の蓄電デバイスが供給する電力で走行する。駅に停車すると、客の乗降時間内という短時間内に駅で急速充電し、次の駅に向かうための電力を確保する。給電レールが不要になったことも建設コストやメンテナンスコストの削減につながる。駅間が長ければ長くなるほどより多くの電力が必要となり、短時間で十分な電力をチャージできないかもしれないが、都市部や空港のターミナル間であれば駅間も短く問題なさそうだ。 そして、「架線レスによって建設コストを抑えることができるとともに、メンテナンスコストも減ります」と担当者が説明する。これが架線レスの最大のメリットである・・・中央下部に1本だけガイドレールを設ける「中央案内方式」も新たにラインナップに加えた。 同社では過去に中央案内方式の実績もあり、「海外のお客様から1本のガイドレールシステムのご要望があり、レパートリーに追加した」としている。中央案内方式は軌道を小型化できるメリットがある。架線レスと組み合わせればさらに効果は大きくなりそうだ」、なるほど。
・『軌道の小型化で採用広がるか 軌道の小型化はほかにもメリットがある。従来の同社のAGTは最小曲線半径が30mだったが、これをさらに小さくできるのだ。 通常、AGTは道路の上などに建設されることが多いため、道路のカーブに合わせてAGTの軌道もカーブする。つまり、よりきついカーブにも対応できるようになるということだ。ブースに掲げられたパネルには「22.5m」という表示があったが、「現在開発段階であり、来年春以降に予定している正式発表の際には数値変更の可能性がある」という。 まだパンフレットもできあがっていない、誕生したばかりのシステムだけに、「営業活動はこれから」とのことだが、従来の鉄道よりも優れた点の多いシステムだけに、同社がAGTで実績をあげていない地域でも展開できる可能性がある。日立や川重といった伝統的な鉄道メーカーだけでなく、三菱重工の動向も要注目だ』、「誕生したばかりのシステムだけに、「営業活動はこれから」とのことだが、従来の鉄道よりも優れた点の多いシステムだけに、同社がAGTで実績をあげていない地域でも展開できる可能性がある。日立や川重といった伝統的な鉄道メーカーだけでなく、三菱重工の動向も要注目だ」、その通りだ。
タグ:鉄道 (その14)(阪急電鉄「プライベース」乗りたくなる仕掛け ハイグレードの有料着席サービスが7月に開始、実はイギリスにはない?日本の線路幅「狭軌」の謎 世界各国の「軌間」が映し出す国際情勢と歴史、三菱重工、知られざる「鉄道メーカー」の世界戦略 「架線レス」武器に新交通システムで営業攻勢) 東洋経済オンライン 鉄道ジャーナル編集部による「阪急電鉄「プライベース」乗りたくなる仕掛け ハイグレードの有料着席サービスが7月に開始」 「事前予約の多くは鉄道ファンと予測していたのだが、当日のそこに立つと、いかにも…の人がいないではないが、女性同士や熟年夫婦、夏休みも始まり小学生を連れた親子などと幅広い。物見高い関西ゆえか、阪急が送り出した特別感をもった座席指定車両は一般の関心も相当に惹き付けている・・・プライベースの回転リクライニングシートでは全席の同時回転は前後で干渉するため、1列おきの2段階アクションが必要になる。 そのため操作は他車と別個に、アテンダントが車内確認してから行い、少しだけ時間を要する。だから、ドアは開くも「車内準備中」の札を吊り下げたロープが張られており、簡易な清掃を終えてロープを外して、乗車開始となる」、なるほど。 「片側2人掛け、片側1人掛け配置の大きな座席は、濃い茶色の木製フレームと「ゴールデンオリーブ」と称する濃緑のモケットが相まって阪急らしいレトロモダンと言うか、クラシック寄りの重厚さがある。ホワイトベージュの革の枕カバーには、「PRiVACE」とロゴが入っている」、なるほど。 「阪急電車らしさはそのままに、お客様に快適な自分時間を過ごしていただけるよう、プライベート感と快適性を兼ね備えた上質な空間づくりを目指したデザインとしています」 と説明。外観やインテリアの特徴を述べ、阪急電車を象徴するマルーンにゴールドラインやステンドグラスをイメージした乗降ドアの窓などで特別感を持たせ、デッキ部の壁面は木目調と大理石調のデザイン、柔らかなダウンライトで上質さを演出したと伝えた。 座席は座面幅と足元を広く取った。リクライニングに加えて周囲からの視線を遮る大きなヘッドレストや2列席にはパーティションを設け、個々にリラックスできる空間を感じてもらえるよう、細部までこだわったそうだ」、なるほど。 さかい もとみ氏による「実はイギリスにはない?日本の線路幅「狭軌」の謎 世界各国の「軌間」が映し出す国際情勢と歴史」 「日本だけでなく、一つの国の中でも異なる軌間が存在するため列車の直通が困難というケースがあるが、軌間には技術的な理由だけでなく、昔も今も「国際政治」が大きく絡んでいる。どうして複数の軌間が存在することになったのか。世界各国の事情を俯瞰しながら考えてみることにしたい」、なるほど。 「イギリスは当時世界各地にあった植民地で、鉄道敷設にかかる面積がより小さく、少ない予算で広範囲に鉄道網が拡大できる「狭軌」を採用していた。そうした経緯の下、イギリスは日本への鉄道技術導入の際、それを応用した。 日本で「狭軌」と呼んでいる1067mm軌間は、海外、とくに英語圏では、日本の鉄道よりも開業は遅かったものの、南アフリカのケープ州で採用された軌間であることから、「ケープゲージ」とも呼ばれている」、なるほど。 「2140mmという軌間だ・・・この「超広軌」といえる線路幅は、列車の安定性が増して乗り心地が向上することや、より強力な機関車によって高速での運行が可能になるとして考えられた。この広軌鉄道のために造られた蒸気機関車の動輪直径は、最大で約8フィート(約2440mm)もあったという。 だが、レール間隔が広いため、軌道や橋梁、トンネルなどのインフラ設備を通常より大きく頑丈に造らなければならず、その結果、敷設にかかる建設コストが標準軌に比べて割高だった。 乗り入れなど効率的な運行と安全性から標準軌が普及する中、超広軌の路線運営は長続きせず、1893年までに汎用性の高い標準軌鉄道に付け替えられた・・・欧州大陸の主要国はイギリスでの成功にならって標準軌を採用し、現在もそれを引き継いでいる。アメリカも同様の軌間を採用した。こうして「国際標準」化したわけだ。) しかし、標準軌がすべての国に受け入れられたわけではない。各国にはそれぞれ異なる事情があったからだ。 軌間の決定に関わる要素はさまざまだが、大きくは鉄道の用途や地形、経済的な背景が影響している・・・日本の在来線のように山岳区間が多い国では「狭軌」が採用された例が多い。「氷河急行」で有名なスイスの山岳鉄道も、日本よりやや狭い1000mm(1m)の狭軌だ。 一方でスペインのように、険しい地形でも強力な機関車を走らせられるよう、標準軌より広い1668mmを採用した例もある。ポルトガルも同じ軌間のため「イベリアゲージ」と呼ばれる。 だが、それだけではなく、軍事的、政治的な問題も深く関わっている。鉄道が各国に広まっ た19世紀や20世紀初頭の国際政治がもたらした結果が、今も引き継がれているのだ」、なるほど。 「帝政ロシアは、独自の1520mmという軌間を選んだ。実際には定かではないが、これは軍事上の観点により、外国の列車をロシア領に侵入させないようにしたいという思惑があったからだといわれることが多い。 かつて広大な国土を擁していたソビエト連邦では、鉄道網をこの1520mm軌間で敷設した。このため、冷戦終結後に独立した各国は国境で台車ごと交換を余儀なくされるなど、欧州主要国との直通運転で頭を悩ます事態となっている・・・ ウクライナの鉄道網はソ連時代の1520mmで、そのままでは基本的にロシアなど旧ソ連圏の国にしか乗り入れできない。そこで、現在加盟を目指している欧州連合(EU)との経済的な連結強化の一環として、鉄道網の標準軌への改軌を進めている・・・現在でも顕著に当時のレール規格が残る例としては、旧フランス領インドシナ、つまり現在のベトナムやカンボジアに敷かれた1m幅の線路がある・・・「メーターゲージ」と呼ばれるフランスが敷いた線路は・・・ フランス植民地ではなかったが、同じ規格の線路がタイ、マレーシアを経て、シンガポールまで延びており、東南アジアでは一般的な軌間となっている。 しかし、軌間が1mとなると、線路設計や地盤を整備しても、運用できる実用的な最高速度は日本の在来線の一般的な速度と同様、おおむね時速120kmほどにとどまる。そこに登場したのが、中国の鉄道技術だ」、なるほど。 「中国は「一帯一路」の名の下に、インフラ輸出の拡大を通じ自国の経済成長を促進したいというお題目を掲げ、東南アジア地域との経済的つながりの強化や、自国領土からインド洋への進出経路の確保といった軍事的目標もあって、メーターゲージより大量かつ高速に輸送できる標準軌鉄道や高速鉄道の敷設を積極的に行っている・・・ インドでは、1676mmという超広軌の線路が国土の大部分に張り巡らされている。これは重い貨物の輸送や長大な編成の長距離旅客輸送に適しており、隣接するパキスタンやバングラデシュの一部、スリランカでも採用されている・・・日本の技術支援で建設が進む、いわゆる「インド新幹線」は日本と同じく標準軌を前提に工事が行われている」、なるほど。 「スペインの1668mm「イベリアゲージ」だろう。隣接する標準軌のフランスとの直通に手間がかかるため、日本では実用化に至っていないフリーゲージ(軌間可変)車両が古くから開発され、運用してきた経緯がある。 高速列車「AVE」などが走る高速新線は標準軌で造られているため、在来線だけが通るローカル都市などへの乗り入れのために国内でも軌間可変車両が使われ、中間駅にそのための基地も設けられている。在来線のほうが高速新線(新幹線)より軌間が広いという、日本とは逆のパターンだ・・・ アイルランド島の鉄道ネットワークは、1600mmという独特の軌間が使われている。イギリスやアイルランドの度量衡で5フィート3インチという規格で造ったものだが、たまたまメートル法では1600mmという「ちょうどの数字」となった」、なるほど。 東洋経済オンライン「三菱重工、知られざる「鉄道メーカー」の世界戦略 「架線レス」武器に新交通システムで営業攻勢」 「ドイツ・ベルリンで開催された国際鉄道見本市「イノトランス」」は、欧州では鉄道が大手を振るっているだけにさぞ賑やかなのだろう。 「三菱重工業の説明員である。同社はJORSAパビリオンに出展した事業者の1社である。 車両は新開発の蓄電デバイスが供給する電力で走行する。駅に停車すると、客の乗降時間内という短時間内に駅で急速充電し、次の駅に向かうための電力を確保する。給電レールが不要になったことも建設コストやメンテナンスコストの削減につながる。駅間が長ければ長くなるほどより多くの電力が必要となり、短時間で十分な電力をチャージできないかもしれないが、都市部や空港のターミナル間であれば駅間も短く問題なさそうだ。 そして、「架線レスによって建設コストを抑えることができるとともに、メンテナンスコストも減ります」と担当者が説明する。これが架線レスの最大のメリットである・・・中央下部に1本だけガイドレールを設ける「中央案内方式」も新たにラインナップに加えた。 同社では過去に中央案内方式の実績もあり、「海外のお客様から1本のガイドレールシステムのご要望があり、レパートリーに追加した」としている。中央案内方式は軌道を小型化できるメリットがある。架線レスと組み合わせればさらに効果は大きくなりそうだ」、なるほど。 「誕生したばかりのシステムだけに、「営業活動はこれから」とのことだが、従来の鉄道よりも優れた点の多いシステムだけに、同社がAGTで実績をあげていない地域でも展開できる可能性がある。日立や川重といった伝統的な鉄道メーカーだけでなく、三菱重工の動向も要注目だ」、その通りだ。
不動産(その12)(放置なら億単位の賠償も、空き家コスト徹底解剖 固定資産税は最大で6倍に膨れ上がるおそれ、赤坂・溜池の「アパホテル」地面師事件3題:「大都会の狭間にぽっかりとあいた異様な空間」...アパホテルが騙された12億の地面師事件の現場となった土地の“奇妙な変遷”、「10億越えの好物件」を相続したはずの「資産家兄弟」が行方不明...赤坂2丁目の駐車場が《アパホテル地面師事件》の舞台に選ばれた衝撃の「経緯」、中間業者を二枚も噛ませる周到な手口で行われた赤坂・溜池の「アパホテル」地面師事件) [産業動向]
不動産については、昨年9月6日に取上げた。今日は、(その12)(放置なら億単位の賠償も、空き家コスト徹底解剖 固定資産税は最大で6倍に膨れ上がるおそれ、赤坂・溜池の「アパホテル」地面師事件3題:「大都会の狭間にぽっかりとあいた異様な空間」...アパホテルが騙された12億の地面師事件の現場となった土地の“奇妙な変遷”、「10億越えの好物件」を相続したはずの「資産家兄弟」が行方不明...赤坂2丁目の駐車場が《アパホテル地面師事件》の舞台に選ばれた衝撃の「経緯」、中間業者を二枚も噛ませる周到な手口で行われた赤坂・溜池の「アパホテル」地面師事件)である。
先ずは、10月21日付け東洋経済オンライン「放置なら億単位の賠償も、空き家コスト徹底解剖 固定資産税は最大で6倍に膨れ上がるおそれ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/834278
・『少子高齢化の進展とともに深刻化している「空き家」の増加。関連トラブルの増加などもあり、放置への対策が喫緊の課題となっている。『週刊東洋経済』10月26日号の第1特集は「実家の終活」だ。空き家をめぐって進行している問題や活況を呈し始めた関連ビジネス、実家をめぐる諸問題の解決策を紹介している。 空き家の倒壊によって隣家が全壊し、住んでいた親子3人が亡くなったことで、2億0860万円の損害額が発生──。 これは公益財団法人の日本住宅総合センターが、空き家をめぐる損害賠償リスクについて試算したものだ。 空き家を放置したことで想定される最悪のケースではあるが、空き家の外壁落下による死亡事故(被害者が小学生)というケースでも、試算損害額は5630万円とかなり高額だ。 見る人によっては、危機感をいたずらにあおるような試算に映るかもしれない。だが、地震や台風といった自然災害が激甚化する中、空き家を放置することによって痛ましい事故が生じる可能性は、決して低いとはいえない』、「公益財団法人の日本住宅総合センターが、空き家をめぐる損害賠償リスクについて試算したものだ。 空き家を放置したことで想定される最悪のケースではあるが、空き家の外壁落下による死亡事故(被害者が小学生)というケースでも、試算損害額は5630万円とかなり高額だ」、なるほど。
・『「管理不全空き家」を新設 まさにそれが、国や自治体が空き家を解消しようと躍起になっている理由の1つでもある。 国は昨年6月、空き家対策の特別措置法を改正し、問題のある空き家の対象を広げた。「管理不全空き家」という区分を新設したのだ。これにより、以前からある「特定空き家」(=周囲に著しい悪影響を及ぼす空き家)の一歩手前の状態でも自治体が指導できるようになった。屋根材が一部破損していたり、庭木が腐朽していたりといった、管理が行き届いていない状態が認定の基準だ。 自治体から管理不全空き家の指導を受けたにもかかわらず改善されない場合は「勧告」処分となる。その場合、税負担を軽減できる特例措置が解除されてしまう。) 特例措置とは、固定資産税などの課税対象額を減額するというもの。解除されると、固定資産税では負担が最大で6倍に跳ね上がる。実際には激変緩和措置があるため、一気に6倍になることはないが、それでも税負担が3倍超に拡大するというケースが大半だ』、「国は昨年6月、空き家対策の特別措置法を改正し、問題のある空き家の対象を広げた。「管理不全空き家」という区分を新設したのだ。これにより、以前からある「特定空き家」(=周囲に著しい悪影響を及ぼす空き家)の一歩手前の状態でも自治体が指導できるようになった。屋根材が一部破損していたり、庭木が腐朽していたりといった、管理が行き届いていない状態が認定の基準だ。 自治体から管理不全空き家の指導を受けたにもかかわらず改善されない場合は「勧告」処分となる。その場合、税負担を軽減できる特例措置が解除されてしまう。 特例措置とは、固定資産税などの課税対象額を減額するというもの。解除されると、固定資産税では負担が最大で6倍に跳ね上がる。実際には激変緩和措置があるため、一気に6倍になることはないが、それでも税負担が3倍超に拡大するというケースが大半だ」、なるほど。
・『早期の処分がカギ また、適切な管理をしていたとしても、空き家を維持するコストは年々膨らむ。下図を見てほしい。空き家数が全国トップ級の東京都世田谷区が試算したものだ。空き家となった実家を処分するときの経済的負担を、経過年数などに応じて3つのケースに分けて試算している。 ポイントとなるのは、空き家を売却(譲渡)したときの所得に、一定の条件下で適用される3000万円の特別控除を利用できるかどうか。 相続開始日(親が亡くなった日)から3年後の年末までに売却することが、所得税の特別控除の適用を受ける条件の1つになっている。そのため、処分をずるずると先延ばしにしてしまうと、売却時の所得税負担が大幅に増えることになる。加えて、毎年の固定資産税や基本料金分の水道・電気代、庭木の伐採費用など、年間30万円超の維持コストものしかかってくる。 すぐに売却したケース1と、10年後に売却したケース2では、負担額に1000万円近くも差が出てしまう。さらに、経年劣化によって家屋を解体(除却)しなければいけなくなったケース3では、400万円超の除却費用が追加でのしかかってくる計算だ。 空き家にホームレスが忍び込み、居間で亡くなっていたことで事故物件になってしまった──。そうした事例も起きており、空き家はリスクの塊だ。いざというときに早期に手を打てるよう、生前から親とよく話し合い、準備を怠らないようにしたい』、「東京都世田谷区が試算したものだ。空き家となった実家を処分するときの経済的負担を、経過年数などに応じて3つのケースに分けて試算している。 ポイントとなるのは、空き家を売却(譲渡)したときの所得に、一定の条件下で適用される3000万円の特別控除を利用できるかどうか。 相続開始日(親が亡くなった日)から3年後の年末までに売却することが、所得税の特別控除の適用を受ける条件の1つになっている。そのため、処分をずるずると先延ばしにしてしまうと、売却時の所得税負担が大幅に増えることになる。加えて、毎年の固定資産税や基本料金分の水道・電気代、庭木の伐採費用など、年間30万円超の維持コストものしかかってくる。 すぐに売却したケース1と、10年後に売却したケース2では、負担額に1000万円近くも差が出てしまう・・・相続開始日(親が亡くなった日)から3年後の年末までに売却することが、所得税の特別控除の適用を受ける条件の1つになっている。そのため、処分をずるずると先延ばしにしてしまうと、売却時の所得税負担が大幅に増えることになる・・・毎年の固定資産税や基本料金分の水道・電気代、庭木の伐採費用など、年間30万円超の維持コストものしかかってくる」、なるほど。
次に、11月4日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「「大都会の狭間にぽっかりとあいた異様な空間」...アパホテルが騙された12億の地面師事件の現場となった土地の“奇妙な変遷”」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/138854?imp=0
・『今Netflixで話題の「地面師」...地主一家全員の死も珍しくなかった終戦直後、土地所有者になりすまし土地を売る彼らは、書類が焼失し役人の数も圧倒的に足りない主要都市を舞台に暗躍し始めた。そして80年がたった今では、さらに洗練された手口で次々と犯行を重ね、警察組織や不動産業界を翻弄している。 そのNetflix「地面師たち」の主要な参考文献となったのが、ノンフィクション作家・森功氏の著書『地面師』だ。小説とは違う、すべて本当にあった話で構成されるノンフィクションだけに、その内容はリアルで緊張感に満ちている。 同書より、時にドラマより恐ろしい、本物の地面師たちの最新手口をお届けしよう。 『地面師』連載第48回 「高齢女性が1億のビルを主治医に贈与しようとしているらしい」...病院を舞台に、持ち主の知らぬ間に「融資や売却が繰り返される」地面師詐欺に発展』より続く』、「本物の地面師たちの最新手口をお届けしよう」、興味深そうだ。
・『大都会の異様な空間 アパ事件は、名のある大手企業が騙されたという点で、積水ハウスの事件と似ていなくもない。実は、なりすまし役の手配師も同一人物であり、バックには大物地面師の影がちらつく。だが、積水ハウスとは異なる特徴もある。事件を振り返る。 その土地は、外堀通りの旧日商岩井ビルから6本木通りに抜ける道路沿いにある。オフィスビルや飲食店のテナントビルが犇めき合い、昼夜問わず人通りが絶えない。そんな都心の一等地に不似合いな駐車場だ。 道路に面した東側以外、三方をオフィスビルに囲まれている。登記簿を見ると、その四角い土地の面積は378平米、114坪ほどある。実際、現場に行ってみると、けっこう広い。 地面はアスファルトではなく、傷んだ古いコンクリート張りで、道路側の金網には月極めの駐車場である旨の表示とレンタカー会社が「カーシェア」の看板を掲げている。道路から向かって右手には鋼鉄製の屋根があり、どうやらそこが月極めの駐車スペースのようだ。左手の野ざらしになっているところにカーシェア用の青い小型車が停まっていた。 思い返せば、この駐車場の前は何度も車や徒歩で通った覚えがある。だが、こんなに広いスペースがあったとは気づかなかった。改めて見ると、大都会の狭間にぽっかりとあいた異様な空間に思えた』、「外堀通りの旧日商岩井ビルから6本木通りに抜ける道路沿いにある・・・四角い土地の面積は378平米、114坪ほどある。実際、現場に行ってみると、けっこう広い。 地面はアスファルトではなく、傷んだ古いコンクリート張りで、道路側の金網には月極めの駐車場である旨の表示とレンタカー会社が「カーシェア」の看板を掲げている」、なるほど。
・『“10億越え”の好物件 「なぜ赤坂2丁目の一角のここだけ、ビルが建っていないのか、ビジネスホテルでも建てれば繁盛するだろうに」 そう感じたのは、むろん私だけではなかった。 外国人観光客によるインバウンドでにぎわってきた東京の都心は、ひと頃、極端なホテル不足に陥った。ビジネスホテルを中心に全国に400近い宿泊施設をチェーン展開してきたアパグループが、この土地に目を付けるのは、むしろ当然といえたかもしれない。知り合いの不動産業者に評価を求めると、百坪あまりの土地の価値だけで10億円をくだらない、と口をそろえた。それほどの好物件といえる。 不動産登記上の「所有権保存」者、つまりもとの“駐車場”の地主は、港区麻布竹谷町(現在の南麻布)に住んでいた鈴木善美となっている。1967年7月、そこから銀座の「鈴木保善株式会社」に売却されたことになっている。鈴木保善という社名は、おそらく社長の善美から付けたのだろう。地主である鈴木家の資産管理会社だ』、「アパグループが、この土地に目を付けるのは、むしろ当然といえたかもしれない。知り合いの不動産業者に評価を求めると、百坪あまりの土地の価値だけで10億円をくだらない、と口をそろえた。それほどの好物件・・・“駐車場”の地主は、港区麻布竹谷町(現在の南麻布)に住んでいた鈴木善美となっている。1967年7月、そこから銀座の「鈴木保善株式会社」に売却されたことになっている。鈴木保善という社名は、おそらく社長の善美から付けたのだろう。地主である鈴木家の資産管理会社だ」、なるほど。
・『所有権は地主から老舗料亭へ 善美が亡くなったあとの1969年8月、鈴木保善は同族会社の「有限会社万安樓」という会社に吸収合併され、登記上も69年8月に有限会社万安樓に所有権が移っている。「万安樓」は鈴木家が経営してきた銀座の老舗料亭である。 かつて木挽町と呼ばれた現在の銀座一丁目あたりにあった万安樓は、鈴木家が明治15年に創業した。高い黒塀で囲まれた高級日本料理店だ。広大な屋敷のなかでは夜な夜な日本を動かす政財界の宴席が開かれてきた。 そこを三菱地所が買い取り、銀座初の25階建て高さ95メートルの高層マンション「銀座タワー」として開発した。敷地を売った鈴木家に残った資産は計り知れない。その鈴木家の資産管理会社として存続してきた万安樓が、赤坂の月極め駐車場を管理してきたのである。 ところが万安樓に土地の所有権が移ってから44年も経た2013年8月7日、とつぜん駐車場の売買登記がなされた。有り体にいえば、それが今度の事件のはじまりだ。 『「10億越えの好物件」を相続したはずの「資産家兄弟」が行方不明...赤坂2丁目の駐車場が《アパホテル地面師事件》の舞台に選ばれた衝撃の「経緯」』へ続く』、「善美が亡くなったあとの1969年8月、鈴木保善は同族会社の「有限会社万安樓」という会社に吸収合併され、登記上も69年8月に有限会社万安樓に所有権が移っている。「万安樓」は鈴木家が経営してきた銀座の老舗料亭である・・・そこを三菱地所が買い取り、銀座初の25階建て高さ95メートルの高層マンション「銀座タワー」として開発した。敷地を売った鈴木家に残った資産は計り知れない。その鈴木家の資産管理会社として存続してきた万安樓が、赤坂の月極め駐車場を管理してきたのである。 ところが万安樓に土地の所有権が移ってから44年も経た2013年8月7日、とつぜん駐車場の売買登記がなされた。有り体にいえば、それが今度の事件のはじまりだ」、なるほど。
第三に、この続きを11月4日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「「10億越えの好物件」を相続したはずの「資産家兄弟」が行方不明...赤坂2丁目の駐車場が《アパホテル地面師事件》の舞台に選ばれた衝撃の「経緯」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/138855?imp=0
・・・・突然の売買登記 万安樓に土地の所有権が移ってから44年も経た2013年8月7日、とつぜん駐車場の売買登記がなされた。有り体にいえば、それが今度の事件のはじまりだ。 「事を知ったのは、まさに勝手に登記がなされていた頃、駐車場のお客さまからの一本の電話でした。お客様が、この土地を買ったという人から『この先、ここに車を停めてもらっては困るので、移動させてくれ』と突然言われたらしい。それで、『いったいどうなっているのですか』と電話がかかってきたのです。こちらにしても、何のことかわからない。それは驚きましたよ」 そう打ち明けてくれたのが、当の資産管理会社だ。電話で初めて事態を知ったという。 もとの所有者である鈴木善美には仙吉と武という2人の息子がいた。父親である善美の死後、息子たちへの相続がなされないままだった。44年ものあいだ有限会社万安樓の所有になってきたからだ』、「もとの所有者である鈴木善美には仙吉と武という2人の息子がいた。父親である善美の死後、息子たちへの相続がなされないままだった。44年ものあいだ有限会社万安樓の所有になってきたからだ」、なるほど。
・『行方不明の資産家兄弟 不動産ブローカーたちのあいだでは、仙吉と武の兄弟がくだんの土地を相続したものとされてきたが、万安樓そのものが鈴木家の資産管理会社なので、そこが所有し、管理すること自体は問題でもない。だが、その一方で、一等地を相続したと信じられてきた資産家兄弟は、長らく行方知れずのままだとも伝えられた。地面師にとっては、まさにそこが付け目だったに違いない。 計画を立案したのは、おそらく名うての司法書士、亀野だったのだろう。資産家兄弟の情報を聞き込んだ。鈴木善美の息子のうち、兄の仙吉は1926(大正15)年生まれで2018年当時で92歳だった。また3歳違いの弟の武は、29(昭和4)年生まれなので89歳だ。鈴木兄弟は高齢のため認知症で施設に入所していた。 地面師グループがそれを知っていたかどうか、そこは定かではなく、実は兄弟が行方不明になっているという見当違いから、犯行を思いついたのかもしれない。ただし、それは地面師グループにとってどちらでもいいことだ。真の持ち主と買い手の連絡が取りづらい状況にあることが好都合なのである』、「一等地を相続したと信じられてきた資産家兄弟は、長らく行方知れずのままだとも伝えられた。地面師にとっては、まさにそこが付け目だったに違いない。 計画を立案したのは、おそらく名うての司法書士、亀野だったのだろう。資産家兄弟の情報を聞き込んだ。鈴木善美の息子のうち、兄の仙吉は1926(大正15)年生まれで2018年当時で92歳だった。また3歳違いの弟の武は、29(昭和4)年生まれなので89歳だ。鈴木兄弟は高齢のため認知症で施設に入所していた」、なるほど。
・『標的は「アパホテル」 そうして鈴木仙吉、武兄弟のなりすましを仕立てた。相続人と吹聴されてきた鈴木兄弟の“不在”を奇貨とし、くだんの土地を第三者に売り払ってひと儲けしようと企んだ。売り先に選ばれたのが、全国にホテルチェーンを展開して日の出の勢いだったアパグループだったのである。 2013年6月、問題の土地取引が動き始めた。鈴木兄弟のなりすまし役を手配したのが、豊島区に住む秋葉紘子だった。積水ハウスの事件にも出てくる。通称「池袋の女芸能プロダクション社長」である。表向き秋葉は職業をビルの清掃員と称してきたが、むろん仮の姿に違いない。事件当時70歳を目前にしていた。 秋葉紘子は、あの内田マイクとも親しく、長らく2人は連携してきた。正体不明の高齢者の知り合いが多い。女性資産家が白骨死体で発見された新橋4丁目のなりすまし事件でも、みずからなりすまし役として登場したが、本業はプロダクションの女社長と異名をとるとおり、手配師である。 『中間業者を二枚も噛ませる周到な手口で行われた赤坂・溜池の「アパホテル」地面師事件...逮捕された中間業者の「弁明」とは』へ続く』、「相続人と吹聴されてきた鈴木兄弟の“不在”を奇貨とし、くだんの土地を第三者に売り払ってひと儲けしようと企んだ。売り先に選ばれたのが、全国にホテルチェーンを展開して日の出の勢いだったアパグループだった・・・鈴木兄弟のなりすまし役を手配したのが、豊島区に住む秋葉紘子だった。積水ハウスの事件にも出てくる。通称「池袋の女芸能プロダクション社長」である」、「秋葉紘子」が「積水ハウスの事件」に続いて再び登場するとは意外に狭い社会のようだ。
第四に、この続きえを、11月4日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「中間業者を二枚も噛ませる周到な手口で行われた赤坂・溜池の「アパホテル」地面師事件...逮捕された中間業者の「弁明」とは」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/138856?imp=0
・・・・10越えの物件の売却先探し アパ事件において秋葉紘子は松本敬三と西川光雄という老人を鈴木兄弟のなりすまし役に仕立てた。松本は戦前の1931(昭和6)年2月18日生まれで事件当時82歳だった。一方の西川は仙吉と同じ26年9月20日生まれの86歳だった。なぜか歳の若い松本が兄の仙吉役に選ばれ、高齢の西川が弟の武役を務めることになる。 鈴木家の資産を譲り受けた兄弟が、赤坂の一等地を売却する——。 宮田や亀野たちは、そんな話を仕立て、知り合いの不動産業者に声をかけた。 五反田の海喜館ほどの広さはないが、坪当たりの価値はこちらのほうが高い。いくらマンションやホテルの建設ラッシュとはいえ、10億円はくだらない土地を購入して開発できる業者は、そうはいない。 その売却先探しのパートナーが、千代田区隼町の不動産会社「クレオス」だった』、「秋葉紘子は松本敬三と西川光雄という老人を鈴木兄弟のなりすまし役に仕立てた・・・鈴木家の資産を譲り受けた兄弟が、赤坂の一等地を売却する——・・・10億円はくだらない土地を購入して開発できる業者は、そうはいない。 その売却先探しのパートナーが、千代田区隼町の不動産会社「クレオス」だった」、なるほど。
・『グレーゾーンの中間業者 繰り返すまでもなく、クレオスの白根は宮田や亀野たちとともに東向島の事件で逮捕された不動産ブローカーである。が、起訴を免かれている。 地面師事件では、計画を立案して行動に移す詐欺それ自体の実行犯たちに加え、第三者の不動産業者がしばしば登場する。その多くは中間省略という手続きで、登記簿上にも社名が残らない。その実、不動産業者として地上げに加わり、最終的に土地を買って開発するデベロッパーを見つけてくる。中間業者としての役割を担う。 これまで見てきたように、中間業者が初めからなりすましという詐欺行為を知って犯行に加担しているか、といえば、必ずしもそうとは言い切れない。地上げ情報や開発業者の人脈のある不動産業者だからこそ地面師の頭目が力を借り、彼らに純粋な転売益を落としてやるというパターンもある。したがって、クレオスが詐欺の謀議に加わっていたかどうかは微妙なところだ。 彼らは赤坂の一等地の売買取引について、ダイリツ、クレオスという中間業者を二枚噛ませ、アパが買い取る形をとった。ダイリツはもともとパチンコ業者が創業し、宮田が事実上、あとを引き継いだ会社だ。そして、赤坂の駐車場は、鈴木兄弟が相続したものと見せかけ、ダイリツからクレオス、アパへと転売された。エンドユーザーであるアパの物件買い取り価格は、実に12億6000万円という大きな不動産取引である』、「地面師事件では、計画を立案して行動に移す詐欺それ自体の実行犯たちに加え、第三者の不動産業者がしばしば登場する。その多くは中間省略という手続きで、登記簿上にも社名が残らない。その実、不動産業者として地上げに加わり、最終的に土地を買って開発するデベロッパーを見つけてくる。中間業者としての役割を担う・・・彼らは赤坂の一等地の売買取引について、ダイリツ、クレオスという中間業者を二枚噛ませ、アパが買い取る形をとった。ダイリツはもともとパチンコ業者が創業し、宮田が事実上、あとを引き継いだ会社だ。そして、赤坂の駐車場は、鈴木兄弟が相続したものと見せかけ、ダイリツからクレオス、アパへと転売された。エンドユーザーであるアパの物件買い取り価格は、実に12億6000万円という大きな不動産取引である」、なるほど。
・『小柄な初老の不動産ブローカー 折しも、不動産業界で事件の評判が持ちあがっていた渦中の17年6月、ダイリツから物件を購入したクレオス社長の白根学に目黒区にあるウェスティンホテル東京で会うことができた。1階の奥にあるバーで待ち合わせると、そこに60代と思しき小柄な初老の男がやって来た。濃紺の地味なスーツを着て、黒い布製のショルダーバッグを肩にぶら下げ、重そうなキャリーバッグを引いている。それが白根だった。 「いや、すっかり遅くなってすみません。場所を間違えてしまって。そのうえ道が混んでいまして、申し訳ありません」 予定より1時間近く遅刻した。言い訳をしながら、汗だくの白根が平身低頭の態で名刺を差し出した。私は思わず、彼の手にしている大きなキャリーバッグに視線がいった。 「お待ちしていました。ひょっとして海外にご出張されていたのですか」 そう尋ねると、キャリーバッグを開けながら答えた。 「いえいえ、ぜんぶ書類なんです。いつ、どこで必要になるかわからないので、こうしていろんな物件の資料を持ち歩いています。そうでないと、不安なので」 キャリーバッグだけではなく、ショルダーバッグにも不動産物件の書類がぎっしり詰まっていた。重い荷物を抱えながら、毎日、取引先を飛び回っているという』、「彼の手にしている大きなキャリーバッグに視線がいった。 「お待ちしていました。ひょっとして海外にご出張されていたのですか」 そう尋ねると、キャリーバッグを開けながら答えた。 「いえいえ、ぜんぶ書類なんです。いつ、どこで必要になるかわからないので、こうしていろんな物件の資料を持ち歩いています。そうでないと、不安なので」 キャリーバッグだけではなく、ショルダーバッグにも不動産物件の書類がぎっしり詰まっていた。重い荷物を抱えながら、毎日、取引先を飛び回っているという」、念のためであれば、PDF化すれば、「ショルダーバッグ」すらいらないと思うが、パソコンに弱いのであれば、汗をかいて、重い「キャリーバッグ」や「ショルダーバッグ」を持ち歩く必要があるのだろう。ご苦労なことだ。
先ずは、10月21日付け東洋経済オンライン「放置なら億単位の賠償も、空き家コスト徹底解剖 固定資産税は最大で6倍に膨れ上がるおそれ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/834278
・『少子高齢化の進展とともに深刻化している「空き家」の増加。関連トラブルの増加などもあり、放置への対策が喫緊の課題となっている。『週刊東洋経済』10月26日号の第1特集は「実家の終活」だ。空き家をめぐって進行している問題や活況を呈し始めた関連ビジネス、実家をめぐる諸問題の解決策を紹介している。 空き家の倒壊によって隣家が全壊し、住んでいた親子3人が亡くなったことで、2億0860万円の損害額が発生──。 これは公益財団法人の日本住宅総合センターが、空き家をめぐる損害賠償リスクについて試算したものだ。 空き家を放置したことで想定される最悪のケースではあるが、空き家の外壁落下による死亡事故(被害者が小学生)というケースでも、試算損害額は5630万円とかなり高額だ。 見る人によっては、危機感をいたずらにあおるような試算に映るかもしれない。だが、地震や台風といった自然災害が激甚化する中、空き家を放置することによって痛ましい事故が生じる可能性は、決して低いとはいえない』、「公益財団法人の日本住宅総合センターが、空き家をめぐる損害賠償リスクについて試算したものだ。 空き家を放置したことで想定される最悪のケースではあるが、空き家の外壁落下による死亡事故(被害者が小学生)というケースでも、試算損害額は5630万円とかなり高額だ」、なるほど。
・『「管理不全空き家」を新設 まさにそれが、国や自治体が空き家を解消しようと躍起になっている理由の1つでもある。 国は昨年6月、空き家対策の特別措置法を改正し、問題のある空き家の対象を広げた。「管理不全空き家」という区分を新設したのだ。これにより、以前からある「特定空き家」(=周囲に著しい悪影響を及ぼす空き家)の一歩手前の状態でも自治体が指導できるようになった。屋根材が一部破損していたり、庭木が腐朽していたりといった、管理が行き届いていない状態が認定の基準だ。 自治体から管理不全空き家の指導を受けたにもかかわらず改善されない場合は「勧告」処分となる。その場合、税負担を軽減できる特例措置が解除されてしまう。) 特例措置とは、固定資産税などの課税対象額を減額するというもの。解除されると、固定資産税では負担が最大で6倍に跳ね上がる。実際には激変緩和措置があるため、一気に6倍になることはないが、それでも税負担が3倍超に拡大するというケースが大半だ』、「国は昨年6月、空き家対策の特別措置法を改正し、問題のある空き家の対象を広げた。「管理不全空き家」という区分を新設したのだ。これにより、以前からある「特定空き家」(=周囲に著しい悪影響を及ぼす空き家)の一歩手前の状態でも自治体が指導できるようになった。屋根材が一部破損していたり、庭木が腐朽していたりといった、管理が行き届いていない状態が認定の基準だ。 自治体から管理不全空き家の指導を受けたにもかかわらず改善されない場合は「勧告」処分となる。その場合、税負担を軽減できる特例措置が解除されてしまう。 特例措置とは、固定資産税などの課税対象額を減額するというもの。解除されると、固定資産税では負担が最大で6倍に跳ね上がる。実際には激変緩和措置があるため、一気に6倍になることはないが、それでも税負担が3倍超に拡大するというケースが大半だ」、なるほど。
・『早期の処分がカギ また、適切な管理をしていたとしても、空き家を維持するコストは年々膨らむ。下図を見てほしい。空き家数が全国トップ級の東京都世田谷区が試算したものだ。空き家となった実家を処分するときの経済的負担を、経過年数などに応じて3つのケースに分けて試算している。 ポイントとなるのは、空き家を売却(譲渡)したときの所得に、一定の条件下で適用される3000万円の特別控除を利用できるかどうか。 相続開始日(親が亡くなった日)から3年後の年末までに売却することが、所得税の特別控除の適用を受ける条件の1つになっている。そのため、処分をずるずると先延ばしにしてしまうと、売却時の所得税負担が大幅に増えることになる。加えて、毎年の固定資産税や基本料金分の水道・電気代、庭木の伐採費用など、年間30万円超の維持コストものしかかってくる。 すぐに売却したケース1と、10年後に売却したケース2では、負担額に1000万円近くも差が出てしまう。さらに、経年劣化によって家屋を解体(除却)しなければいけなくなったケース3では、400万円超の除却費用が追加でのしかかってくる計算だ。 空き家にホームレスが忍び込み、居間で亡くなっていたことで事故物件になってしまった──。そうした事例も起きており、空き家はリスクの塊だ。いざというときに早期に手を打てるよう、生前から親とよく話し合い、準備を怠らないようにしたい』、「東京都世田谷区が試算したものだ。空き家となった実家を処分するときの経済的負担を、経過年数などに応じて3つのケースに分けて試算している。 ポイントとなるのは、空き家を売却(譲渡)したときの所得に、一定の条件下で適用される3000万円の特別控除を利用できるかどうか。 相続開始日(親が亡くなった日)から3年後の年末までに売却することが、所得税の特別控除の適用を受ける条件の1つになっている。そのため、処分をずるずると先延ばしにしてしまうと、売却時の所得税負担が大幅に増えることになる。加えて、毎年の固定資産税や基本料金分の水道・電気代、庭木の伐採費用など、年間30万円超の維持コストものしかかってくる。 すぐに売却したケース1と、10年後に売却したケース2では、負担額に1000万円近くも差が出てしまう・・・相続開始日(親が亡くなった日)から3年後の年末までに売却することが、所得税の特別控除の適用を受ける条件の1つになっている。そのため、処分をずるずると先延ばしにしてしまうと、売却時の所得税負担が大幅に増えることになる・・・毎年の固定資産税や基本料金分の水道・電気代、庭木の伐採費用など、年間30万円超の維持コストものしかかってくる」、なるほど。
次に、11月4日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「「大都会の狭間にぽっかりとあいた異様な空間」...アパホテルが騙された12億の地面師事件の現場となった土地の“奇妙な変遷”」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/138854?imp=0
・『今Netflixで話題の「地面師」...地主一家全員の死も珍しくなかった終戦直後、土地所有者になりすまし土地を売る彼らは、書類が焼失し役人の数も圧倒的に足りない主要都市を舞台に暗躍し始めた。そして80年がたった今では、さらに洗練された手口で次々と犯行を重ね、警察組織や不動産業界を翻弄している。 そのNetflix「地面師たち」の主要な参考文献となったのが、ノンフィクション作家・森功氏の著書『地面師』だ。小説とは違う、すべて本当にあった話で構成されるノンフィクションだけに、その内容はリアルで緊張感に満ちている。 同書より、時にドラマより恐ろしい、本物の地面師たちの最新手口をお届けしよう。 『地面師』連載第48回 「高齢女性が1億のビルを主治医に贈与しようとしているらしい」...病院を舞台に、持ち主の知らぬ間に「融資や売却が繰り返される」地面師詐欺に発展』より続く』、「本物の地面師たちの最新手口をお届けしよう」、興味深そうだ。
・『大都会の異様な空間 アパ事件は、名のある大手企業が騙されたという点で、積水ハウスの事件と似ていなくもない。実は、なりすまし役の手配師も同一人物であり、バックには大物地面師の影がちらつく。だが、積水ハウスとは異なる特徴もある。事件を振り返る。 その土地は、外堀通りの旧日商岩井ビルから6本木通りに抜ける道路沿いにある。オフィスビルや飲食店のテナントビルが犇めき合い、昼夜問わず人通りが絶えない。そんな都心の一等地に不似合いな駐車場だ。 道路に面した東側以外、三方をオフィスビルに囲まれている。登記簿を見ると、その四角い土地の面積は378平米、114坪ほどある。実際、現場に行ってみると、けっこう広い。 地面はアスファルトではなく、傷んだ古いコンクリート張りで、道路側の金網には月極めの駐車場である旨の表示とレンタカー会社が「カーシェア」の看板を掲げている。道路から向かって右手には鋼鉄製の屋根があり、どうやらそこが月極めの駐車スペースのようだ。左手の野ざらしになっているところにカーシェア用の青い小型車が停まっていた。 思い返せば、この駐車場の前は何度も車や徒歩で通った覚えがある。だが、こんなに広いスペースがあったとは気づかなかった。改めて見ると、大都会の狭間にぽっかりとあいた異様な空間に思えた』、「外堀通りの旧日商岩井ビルから6本木通りに抜ける道路沿いにある・・・四角い土地の面積は378平米、114坪ほどある。実際、現場に行ってみると、けっこう広い。 地面はアスファルトではなく、傷んだ古いコンクリート張りで、道路側の金網には月極めの駐車場である旨の表示とレンタカー会社が「カーシェア」の看板を掲げている」、なるほど。
・『“10億越え”の好物件 「なぜ赤坂2丁目の一角のここだけ、ビルが建っていないのか、ビジネスホテルでも建てれば繁盛するだろうに」 そう感じたのは、むろん私だけではなかった。 外国人観光客によるインバウンドでにぎわってきた東京の都心は、ひと頃、極端なホテル不足に陥った。ビジネスホテルを中心に全国に400近い宿泊施設をチェーン展開してきたアパグループが、この土地に目を付けるのは、むしろ当然といえたかもしれない。知り合いの不動産業者に評価を求めると、百坪あまりの土地の価値だけで10億円をくだらない、と口をそろえた。それほどの好物件といえる。 不動産登記上の「所有権保存」者、つまりもとの“駐車場”の地主は、港区麻布竹谷町(現在の南麻布)に住んでいた鈴木善美となっている。1967年7月、そこから銀座の「鈴木保善株式会社」に売却されたことになっている。鈴木保善という社名は、おそらく社長の善美から付けたのだろう。地主である鈴木家の資産管理会社だ』、「アパグループが、この土地に目を付けるのは、むしろ当然といえたかもしれない。知り合いの不動産業者に評価を求めると、百坪あまりの土地の価値だけで10億円をくだらない、と口をそろえた。それほどの好物件・・・“駐車場”の地主は、港区麻布竹谷町(現在の南麻布)に住んでいた鈴木善美となっている。1967年7月、そこから銀座の「鈴木保善株式会社」に売却されたことになっている。鈴木保善という社名は、おそらく社長の善美から付けたのだろう。地主である鈴木家の資産管理会社だ」、なるほど。
・『所有権は地主から老舗料亭へ 善美が亡くなったあとの1969年8月、鈴木保善は同族会社の「有限会社万安樓」という会社に吸収合併され、登記上も69年8月に有限会社万安樓に所有権が移っている。「万安樓」は鈴木家が経営してきた銀座の老舗料亭である。 かつて木挽町と呼ばれた現在の銀座一丁目あたりにあった万安樓は、鈴木家が明治15年に創業した。高い黒塀で囲まれた高級日本料理店だ。広大な屋敷のなかでは夜な夜な日本を動かす政財界の宴席が開かれてきた。 そこを三菱地所が買い取り、銀座初の25階建て高さ95メートルの高層マンション「銀座タワー」として開発した。敷地を売った鈴木家に残った資産は計り知れない。その鈴木家の資産管理会社として存続してきた万安樓が、赤坂の月極め駐車場を管理してきたのである。 ところが万安樓に土地の所有権が移ってから44年も経た2013年8月7日、とつぜん駐車場の売買登記がなされた。有り体にいえば、それが今度の事件のはじまりだ。 『「10億越えの好物件」を相続したはずの「資産家兄弟」が行方不明...赤坂2丁目の駐車場が《アパホテル地面師事件》の舞台に選ばれた衝撃の「経緯」』へ続く』、「善美が亡くなったあとの1969年8月、鈴木保善は同族会社の「有限会社万安樓」という会社に吸収合併され、登記上も69年8月に有限会社万安樓に所有権が移っている。「万安樓」は鈴木家が経営してきた銀座の老舗料亭である・・・そこを三菱地所が買い取り、銀座初の25階建て高さ95メートルの高層マンション「銀座タワー」として開発した。敷地を売った鈴木家に残った資産は計り知れない。その鈴木家の資産管理会社として存続してきた万安樓が、赤坂の月極め駐車場を管理してきたのである。 ところが万安樓に土地の所有権が移ってから44年も経た2013年8月7日、とつぜん駐車場の売買登記がなされた。有り体にいえば、それが今度の事件のはじまりだ」、なるほど。
第三に、この続きを11月4日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「「10億越えの好物件」を相続したはずの「資産家兄弟」が行方不明...赤坂2丁目の駐車場が《アパホテル地面師事件》の舞台に選ばれた衝撃の「経緯」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/138855?imp=0
・・・・突然の売買登記 万安樓に土地の所有権が移ってから44年も経た2013年8月7日、とつぜん駐車場の売買登記がなされた。有り体にいえば、それが今度の事件のはじまりだ。 「事を知ったのは、まさに勝手に登記がなされていた頃、駐車場のお客さまからの一本の電話でした。お客様が、この土地を買ったという人から『この先、ここに車を停めてもらっては困るので、移動させてくれ』と突然言われたらしい。それで、『いったいどうなっているのですか』と電話がかかってきたのです。こちらにしても、何のことかわからない。それは驚きましたよ」 そう打ち明けてくれたのが、当の資産管理会社だ。電話で初めて事態を知ったという。 もとの所有者である鈴木善美には仙吉と武という2人の息子がいた。父親である善美の死後、息子たちへの相続がなされないままだった。44年ものあいだ有限会社万安樓の所有になってきたからだ』、「もとの所有者である鈴木善美には仙吉と武という2人の息子がいた。父親である善美の死後、息子たちへの相続がなされないままだった。44年ものあいだ有限会社万安樓の所有になってきたからだ」、なるほど。
・『行方不明の資産家兄弟 不動産ブローカーたちのあいだでは、仙吉と武の兄弟がくだんの土地を相続したものとされてきたが、万安樓そのものが鈴木家の資産管理会社なので、そこが所有し、管理すること自体は問題でもない。だが、その一方で、一等地を相続したと信じられてきた資産家兄弟は、長らく行方知れずのままだとも伝えられた。地面師にとっては、まさにそこが付け目だったに違いない。 計画を立案したのは、おそらく名うての司法書士、亀野だったのだろう。資産家兄弟の情報を聞き込んだ。鈴木善美の息子のうち、兄の仙吉は1926(大正15)年生まれで2018年当時で92歳だった。また3歳違いの弟の武は、29(昭和4)年生まれなので89歳だ。鈴木兄弟は高齢のため認知症で施設に入所していた。 地面師グループがそれを知っていたかどうか、そこは定かではなく、実は兄弟が行方不明になっているという見当違いから、犯行を思いついたのかもしれない。ただし、それは地面師グループにとってどちらでもいいことだ。真の持ち主と買い手の連絡が取りづらい状況にあることが好都合なのである』、「一等地を相続したと信じられてきた資産家兄弟は、長らく行方知れずのままだとも伝えられた。地面師にとっては、まさにそこが付け目だったに違いない。 計画を立案したのは、おそらく名うての司法書士、亀野だったのだろう。資産家兄弟の情報を聞き込んだ。鈴木善美の息子のうち、兄の仙吉は1926(大正15)年生まれで2018年当時で92歳だった。また3歳違いの弟の武は、29(昭和4)年生まれなので89歳だ。鈴木兄弟は高齢のため認知症で施設に入所していた」、なるほど。
・『標的は「アパホテル」 そうして鈴木仙吉、武兄弟のなりすましを仕立てた。相続人と吹聴されてきた鈴木兄弟の“不在”を奇貨とし、くだんの土地を第三者に売り払ってひと儲けしようと企んだ。売り先に選ばれたのが、全国にホテルチェーンを展開して日の出の勢いだったアパグループだったのである。 2013年6月、問題の土地取引が動き始めた。鈴木兄弟のなりすまし役を手配したのが、豊島区に住む秋葉紘子だった。積水ハウスの事件にも出てくる。通称「池袋の女芸能プロダクション社長」である。表向き秋葉は職業をビルの清掃員と称してきたが、むろん仮の姿に違いない。事件当時70歳を目前にしていた。 秋葉紘子は、あの内田マイクとも親しく、長らく2人は連携してきた。正体不明の高齢者の知り合いが多い。女性資産家が白骨死体で発見された新橋4丁目のなりすまし事件でも、みずからなりすまし役として登場したが、本業はプロダクションの女社長と異名をとるとおり、手配師である。 『中間業者を二枚も噛ませる周到な手口で行われた赤坂・溜池の「アパホテル」地面師事件...逮捕された中間業者の「弁明」とは』へ続く』、「相続人と吹聴されてきた鈴木兄弟の“不在”を奇貨とし、くだんの土地を第三者に売り払ってひと儲けしようと企んだ。売り先に選ばれたのが、全国にホテルチェーンを展開して日の出の勢いだったアパグループだった・・・鈴木兄弟のなりすまし役を手配したのが、豊島区に住む秋葉紘子だった。積水ハウスの事件にも出てくる。通称「池袋の女芸能プロダクション社長」である」、「秋葉紘子」が「積水ハウスの事件」に続いて再び登場するとは意外に狭い社会のようだ。
第四に、この続きえを、11月4日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「中間業者を二枚も噛ませる周到な手口で行われた赤坂・溜池の「アパホテル」地面師事件...逮捕された中間業者の「弁明」とは」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/138856?imp=0
・・・・10越えの物件の売却先探し アパ事件において秋葉紘子は松本敬三と西川光雄という老人を鈴木兄弟のなりすまし役に仕立てた。松本は戦前の1931(昭和6)年2月18日生まれで事件当時82歳だった。一方の西川は仙吉と同じ26年9月20日生まれの86歳だった。なぜか歳の若い松本が兄の仙吉役に選ばれ、高齢の西川が弟の武役を務めることになる。 鈴木家の資産を譲り受けた兄弟が、赤坂の一等地を売却する——。 宮田や亀野たちは、そんな話を仕立て、知り合いの不動産業者に声をかけた。 五反田の海喜館ほどの広さはないが、坪当たりの価値はこちらのほうが高い。いくらマンションやホテルの建設ラッシュとはいえ、10億円はくだらない土地を購入して開発できる業者は、そうはいない。 その売却先探しのパートナーが、千代田区隼町の不動産会社「クレオス」だった』、「秋葉紘子は松本敬三と西川光雄という老人を鈴木兄弟のなりすまし役に仕立てた・・・鈴木家の資産を譲り受けた兄弟が、赤坂の一等地を売却する——・・・10億円はくだらない土地を購入して開発できる業者は、そうはいない。 その売却先探しのパートナーが、千代田区隼町の不動産会社「クレオス」だった」、なるほど。
・『グレーゾーンの中間業者 繰り返すまでもなく、クレオスの白根は宮田や亀野たちとともに東向島の事件で逮捕された不動産ブローカーである。が、起訴を免かれている。 地面師事件では、計画を立案して行動に移す詐欺それ自体の実行犯たちに加え、第三者の不動産業者がしばしば登場する。その多くは中間省略という手続きで、登記簿上にも社名が残らない。その実、不動産業者として地上げに加わり、最終的に土地を買って開発するデベロッパーを見つけてくる。中間業者としての役割を担う。 これまで見てきたように、中間業者が初めからなりすましという詐欺行為を知って犯行に加担しているか、といえば、必ずしもそうとは言い切れない。地上げ情報や開発業者の人脈のある不動産業者だからこそ地面師の頭目が力を借り、彼らに純粋な転売益を落としてやるというパターンもある。したがって、クレオスが詐欺の謀議に加わっていたかどうかは微妙なところだ。 彼らは赤坂の一等地の売買取引について、ダイリツ、クレオスという中間業者を二枚噛ませ、アパが買い取る形をとった。ダイリツはもともとパチンコ業者が創業し、宮田が事実上、あとを引き継いだ会社だ。そして、赤坂の駐車場は、鈴木兄弟が相続したものと見せかけ、ダイリツからクレオス、アパへと転売された。エンドユーザーであるアパの物件買い取り価格は、実に12億6000万円という大きな不動産取引である』、「地面師事件では、計画を立案して行動に移す詐欺それ自体の実行犯たちに加え、第三者の不動産業者がしばしば登場する。その多くは中間省略という手続きで、登記簿上にも社名が残らない。その実、不動産業者として地上げに加わり、最終的に土地を買って開発するデベロッパーを見つけてくる。中間業者としての役割を担う・・・彼らは赤坂の一等地の売買取引について、ダイリツ、クレオスという中間業者を二枚噛ませ、アパが買い取る形をとった。ダイリツはもともとパチンコ業者が創業し、宮田が事実上、あとを引き継いだ会社だ。そして、赤坂の駐車場は、鈴木兄弟が相続したものと見せかけ、ダイリツからクレオス、アパへと転売された。エンドユーザーであるアパの物件買い取り価格は、実に12億6000万円という大きな不動産取引である」、なるほど。
・『小柄な初老の不動産ブローカー 折しも、不動産業界で事件の評判が持ちあがっていた渦中の17年6月、ダイリツから物件を購入したクレオス社長の白根学に目黒区にあるウェスティンホテル東京で会うことができた。1階の奥にあるバーで待ち合わせると、そこに60代と思しき小柄な初老の男がやって来た。濃紺の地味なスーツを着て、黒い布製のショルダーバッグを肩にぶら下げ、重そうなキャリーバッグを引いている。それが白根だった。 「いや、すっかり遅くなってすみません。場所を間違えてしまって。そのうえ道が混んでいまして、申し訳ありません」 予定より1時間近く遅刻した。言い訳をしながら、汗だくの白根が平身低頭の態で名刺を差し出した。私は思わず、彼の手にしている大きなキャリーバッグに視線がいった。 「お待ちしていました。ひょっとして海外にご出張されていたのですか」 そう尋ねると、キャリーバッグを開けながら答えた。 「いえいえ、ぜんぶ書類なんです。いつ、どこで必要になるかわからないので、こうしていろんな物件の資料を持ち歩いています。そうでないと、不安なので」 キャリーバッグだけではなく、ショルダーバッグにも不動産物件の書類がぎっしり詰まっていた。重い荷物を抱えながら、毎日、取引先を飛び回っているという』、「彼の手にしている大きなキャリーバッグに視線がいった。 「お待ちしていました。ひょっとして海外にご出張されていたのですか」 そう尋ねると、キャリーバッグを開けながら答えた。 「いえいえ、ぜんぶ書類なんです。いつ、どこで必要になるかわからないので、こうしていろんな物件の資料を持ち歩いています。そうでないと、不安なので」 キャリーバッグだけではなく、ショルダーバッグにも不動産物件の書類がぎっしり詰まっていた。重い荷物を抱えながら、毎日、取引先を飛び回っているという」、念のためであれば、PDF化すれば、「ショルダーバッグ」すらいらないと思うが、パソコンに弱いのであれば、汗をかいて、重い「キャリーバッグ」や「ショルダーバッグ」を持ち歩く必要があるのだろう。ご苦労なことだ。
タグ:「国は昨年6月、空き家対策の特別措置法を改正し、問題のある空き家の対象を広げた。「管理不全空き家」という区分を新設したのだ。これにより、以前からある「特定空き家」(=周囲に著しい悪影響を及ぼす空き家)の一歩手前の状態でも自治体が指導できるようになった。屋根材が一部破損していたり、庭木が腐朽していたりといった、管理が行き届いていない状態が認定の基準だ。 自治体から管理不全空き家の指導を受けたにもかかわらず改善されない場合は「勧告」処分となる。その場合、税負担を軽減できる特例措置が解除されてしまう。 「公益財団法人の日本住宅総合センターが、空き家をめぐる損害賠償リスクについて試算したものだ。 空き家を放置したことで想定される最悪のケースではあるが、空き家の外壁落下による死亡事故(被害者が小学生)というケースでも、試算損害額は5630万円とかなり高額だ」、なるほど。 東洋経済オンライン「放置なら億単位の賠償も、空き家コスト徹底解剖 固定資産税は最大で6倍に膨れ上がるおそれ」 (その12)(放置なら億単位の賠償も、空き家コスト徹底解剖 固定資産税は最大で6倍に膨れ上がるおそれ、赤坂・溜池の「アパホテル」地面師事件3題:「大都会の狭間にぽっかりとあいた異様な空間」...アパホテルが騙された12億の地面師事件の現場となった土地の“奇妙な変遷”、「10億越えの好物件」を相続したはずの「資産家兄弟」が行方不明...赤坂2丁目の駐車場が《アパホテル地面師事件》の舞台に選ばれた衝撃の「経緯」、中間業者を二枚も噛ませる周到な手口で行われた赤坂・溜池の「アパホテル」地面師事件) 不動産 毎年の固定資産税や基本料金分の水道・電気代、庭木の伐採費用など、年間30万円超の維持コストものしかかってくる」、なるほど。 加えて、毎年の固定資産税や基本料金分の水道・電気代、庭木の伐採費用など、年間30万円超の維持コストものしかかってくる。 すぐに売却したケース1と、10年後に売却したケース2では、負担額に1000万円近くも差が出てしまう・・・相続開始日(親が亡くなった日)から3年後の年末までに売却することが、所得税の特別控除の適用を受ける条件の1つになっている。そのため、処分をずるずると先延ばしにしてしまうと、売却時の所得税負担が大幅に増えることになる・・・ 「東京都世田谷区が試算したものだ。空き家となった実家を処分するときの経済的負担を、経過年数などに応じて3つのケースに分けて試算している。 ポイントとなるのは、空き家を売却(譲渡)したときの所得に、一定の条件下で適用される3000万円の特別控除を利用できるかどうか。 相続開始日(親が亡くなった日)から3年後の年末までに売却することが、所得税の特別控除の適用を受ける条件の1つになっている。そのため、処分をずるずると先延ばしにしてしまうと、売却時の所得税負担が大幅に増えることになる。 特例措置とは、固定資産税などの課税対象額を減額するというもの。解除されると、固定資産税では負担が最大で6倍に跳ね上がる。実際には激変緩和措置があるため、一気に6倍になることはないが、それでも税負担が3倍超に拡大するというケースが大半だ」、なるほど。 現代ビジネス 森 功氏による「「大都会の狭間にぽっかりとあいた異様な空間」...アパホテルが騙された12億の地面師事件の現場となった土地の“奇妙な変遷”」 「本物の地面師たちの最新手口をお届けしよう」、興味深そうだ。 「外堀通りの旧日商岩井ビルから6本木通りに抜ける道路沿いにある・・・四角い土地の面積は378平米、114坪ほどある。実際、現場に行ってみると、けっこう広い。 地面はアスファルトではなく、傷んだ古いコンクリート張りで、道路側の金網には月極めの駐車場である旨の表示とレンタカー会社が「カーシェア」の看板を掲げている」、なるほど。 「アパグループが、この土地に目を付けるのは、むしろ当然といえたかもしれない。知り合いの不動産業者に評価を求めると、百坪あまりの土地の価値だけで10億円をくだらない、と口をそろえた。それほどの好物件・・・“駐車場”の地主は、港区麻布竹谷町(現在の南麻布)に住んでいた鈴木善美となっている。1967年7月、そこから銀座の「鈴木保善株式会社」に売却されたことになっている。鈴木保善という社名は、おそらく社長の善美から付けたのだろう。地主である鈴木家の資産管理会社だ」、なるほど。 「善美が亡くなったあとの1969年8月、鈴木保善は同族会社の「有限会社万安樓」という会社に吸収合併され、登記上も69年8月に有限会社万安樓に所有権が移っている。「万安樓」は鈴木家が経営してきた銀座の老舗料亭である・・・そこを三菱地所が買い取り、銀座初の25階建て高さ95メートルの高層マンション「銀座タワー」として開発した。敷地を売った鈴木家に残った資産は計り知れない。その鈴木家の資産管理会社として存続してきた万安樓が、赤坂の月極め駐車場を管理してきたのである。 ところが万安樓に土地の所有権が移ってから44 年も経た2013年8月7日、とつぜん駐車場の売買登記がなされた。有り体にいえば、それが今度の事件のはじまりだ」、なるほど。 森 功氏による「「10億越えの好物件」を相続したはずの「資産家兄弟」が行方不明...赤坂2丁目の駐車場が《アパホテル地面師事件》の舞台に選ばれた衝撃の「経緯」」 「もとの所有者である鈴木善美には仙吉と武という2人の息子がいた。父親である善美の死後、息子たちへの相続がなされないままだった。44年ものあいだ有限会社万安樓の所有になってきたからだ」、なるほど。 「一等地を相続したと信じられてきた資産家兄弟は、長らく行方知れずのままだとも伝えられた。地面師にとっては、まさにそこが付け目だったに違いない。 計画を立案したのは、おそらく名うての司法書士、亀野だったのだろう。資産家兄弟の情報を聞き込んだ。鈴木善美の息子のうち、兄の仙吉は1926(大正15)年生まれで2018年当時で92歳だった。また3歳違いの弟の武は、29(昭和4)年生まれなので89歳だ。鈴木兄弟は高齢のため認知症で施設に入所していた」、なるほど。 「相続人と吹聴されてきた鈴木兄弟の“不在”を奇貨とし、くだんの土地を第三者に売り払ってひと儲けしようと企んだ。売り先に選ばれたのが、全国にホテルチェーンを展開して日の出の勢いだったアパグループだった・・・鈴木兄弟のなりすまし役を手配したのが、豊島区に住む秋葉紘子だった。積水ハウスの事件にも出てくる。通称「池袋の女芸能プロダクション社長」である」、「秋葉紘子」が「積水ハウスの事件」に続いて再び登場するとは意外に狭い社会のようだ。 森 功氏による「中間業者を二枚も噛ませる周到な手口で行われた赤坂・溜池の「アパホテル」地面師事件...逮捕された中間業者の「弁明」とは」 「秋葉紘子は松本敬三と西川光雄という老人を鈴木兄弟のなりすまし役に仕立てた・・・鈴木家の資産を譲り受けた兄弟が、赤坂の一等地を売却する——・・・10億円はくだらない土地を購入して開発できる業者は、そうはいない。 その売却先探しのパートナーが、千代田区隼町の不動産会社「クレオス」だった」、なるほど。 「地面師事件では、計画を立案して行動に移す詐欺それ自体の実行犯たちに加え、第三者の不動産業者がしばしば登場する。その多くは中間省略という手続きで、登記簿上にも社名が残らない。その実、不動産業者として地上げに加わり、最終的に土地を買って開発するデベロッパーを見つけてくる。中間業者としての役割を担う・・・彼らは赤坂の一等地の売買取引について、ダイリツ、クレオスという中間業者を二枚噛ませ、アパが買い取る形をとった。ダイリツはもともとパチンコ業者が創業し、宮田が事実上、あとを引き継いだ会社だ。 そして、赤坂の駐車場は、鈴木兄弟が相続したものと見せかけ、ダイリツからクレオス、アパへと転売された。エンドユーザーであるアパの物件買い取り価格は、実に12億6000万円という大きな不動産取引である」、なるほど。 「彼の手にしている大きなキャリーバッグに視線がいった。 「お待ちしていました。ひょっとして海外にご出張されていたのですか」 そう尋ねると、キャリーバッグを開けながら答えた。 「いえいえ、ぜんぶ書類なんです。いつ、どこで必要になるかわからないので、こうしていろんな物件の資料を持ち歩いています。そうでないと、不安なので」 キャリーバッグだけではなく、ショルダーバッグにも不動産物件の書類がぎっしり詰まっていた。 重い荷物を抱えながら、毎日、取引先を飛び回っているという」、念のためであれば、PDF化すれば、「ショルダーバッグ」すらいらないと思うが、パソコンに弱いのであれば、汗をかいて、重い「キャリーバッグ」や「ショルダーバッグ」を持ち歩く必要があるのだろう。ご苦労なことだ。
電気自動車(EV)(その15)(ニデック(上)在籍2年のソニーグループ出身・岸田光哉副社長を社長に起用した理由、ニデック(下)カリスマ経営者が自動車メーカーのEVシフトを読み違えて大きく躓いた、真逆じゃん!「シャープのEV」と「ソニーのEV」比べてわかった歴然の違い) [産業動向]
電気自動車(EV)については、本年3月31日に取上げた。今日は、その(15)(ニデック(上)在籍2年のソニーグループ出身・岸田光哉副社長を社長に起用した理由、ニデック(下)カリスマ経営者が自動車メーカーのEVシフトを読み違えて大きく躓いた、真逆じゃん!「シャープのEV」と「ソニーのEV」比べてわかった歴然の違い)である。
先ずは、本年4月10日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの有森隆氏による「ニデック(上)在籍2年のソニーグループ出身・岸田光哉副社長を社長に起用した理由」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/338681
・『ニデックの長年の課題だった後継者問題は決着するのだろうか。2月14日、4月1日付で副社長の岸田光哉(64)が社長に就く人事を発表した。最高経営責任者(CEO)の座も、創業者の永守重信(79)から岸田に譲る。 永守は今後も代表権を持ち、新設されたグローバルグループ代表として成長の要となるM&A(合併・買収)を主導する。 永守の番頭を自任する社長の小部博志(75)は代表権のない会長になった。後継者問題は今度こそ決着を見るのか。 永守は1973年、プレハブ小屋で日本電産(現ニデック)を4人で創業。これまで70件以上のM&Aを重ね、売上高2兆2000億円、グループ社員数10万7000人の大企業に育て上げたカリスマ経営者だ。 それでも80歳を目前にした永守の後継者選びは迷走した。内部からの昇格ではなく、外部から優秀な経営者を招くことにこだわった。2013年のカルソニックカンセイ(現マレリ)元社長の呉文精に始まり、シャープ元社長の片山幹雄、日産自動車出身の吉本浩之を次々と招聘してきたが、いずれもお眼鏡にかなわず、社を去った。) 特に日産自動車の元副COO(最高執行責任者)関潤(62)については、社長に加えてCEO職も譲ったことから本命とみられていたが、永守が首を縦に振ることはなく、22年に退任した。 創業期からの補佐役の小部がショートリリーフとして社長を務めたが、世代交代が進まない状況を不安視する声が社内外から強まっていた。 日本電産からニデックに社名変更した23年4月1日、5人の副社長を指名。このうちの1人を1年後の24年4月に社長に昇格させることになった。 副社長になったのはプロパー社員ではない。全員が中途入社組。北尾宣久(12年入社)と西本達也(同09年)は三井住友銀行出身。大塚俊之(同04年)は埼玉銀行(現りそな銀行)出身。小関敏彦(同18年)は東京大学の副学長を務めた研究者で、永守が理事長を務める京都先端科学大学の副学長に納まっている。 ソニー(現ソニーグループ=G)出身の岸田は、日本電産への入社が22年1月で、社歴は5人の中で最も短い。 選ばれたのは在籍が2年余という岸田だった。岸田は香川県出身で、京都大学教育学部卒業後、83年ソニー入社。生産本部長やスマートフォンの事業子会社の社長などを歴任。赤字だったスマホ事業の立て直しで辣腕を振るった。日本電産に入社すると不振が続く車載事業の本部長として再建にあたってきた。 一流企業のエリートを引っ張ってきて後継候補に据えるという手法は、これまでのやり方とまったく変わらない。 「真の生え抜き社長が誕生するのは早くて4年後。岸田の次の社長候補として、28年にはプロパーの社長候補が出てくる。次を担えそうな人材を早く育てていきたい」と永守は今後の展望を語る。 昨年3月の時点では「新体制発表に伴って代表権を返上する」と言明していたが、この約束を完全に反故にし、永守は代表権を持ち続けることになった。これではニデックの表紙はまったく変わらないことになる。「海外のM&Aには代表権が必要」というのが代表権を持ち続ける理由だが、説得力に乏しい。ニデックのドン、永守体制は不変なのだ。 「業績を上げてくれ。株価を上げてくれ。言いたいことはそれだけだ」としているが、思い通りにいかなければ、いつでも強権を発動できる。 業績&株価という2つの課題を達成できなければ、前任者たちと同じで、あっさり見切りをつけられることになる。 =敬称略、つづく』、「80歳を目前にした永守の後継者選びは迷走した。内部からの昇格ではなく、外部から優秀な経営者を招くことにこだわった。2013年のカルソニックカンセイ(現マレリ)元社長の呉文精に始まり、シャープ元社長の片山幹雄、日産自動車出身の吉本浩之を次々と招聘してきたが、いずれもお眼鏡にかなわず、社を去った。) 特に日産自動車の元副COO(最高執行責任者)関潤(62)については、社長に加えてCEO職も譲ったことから本命とみられていたが、永守が首を縦に振ることはなく、22年に退任・・・ニデックに社名変更した23年4月1日、5人の副社長を指名。このうちの1人を1年後の24年4月に社長に昇格させることになった。 副社長になったのはプロパー社員ではない。全員が中途入社組。北尾宣久(12年入社)と西本達也(同09年)は三井住友銀行出身。大塚俊之(同04年)は埼玉銀行(現りそな銀行)出身。小関敏彦(同18年)は東京大学の副学長を務めた研究者で、永守が理事長を務める京都先端科学大学の副学長に納まっている。 ソニー(現ソニーグループ=G)出身の岸田は、日本電産への入社が22年1月で、社歴は5人の中で最も短い。 選ばれたのは在籍が2年余という岸田だった。岸田は香川県出身で、京都大学教育学部卒業後、83年ソニー入社。生産本部長やスマートフォンの事業子会社の社長などを歴任。赤字だったスマホ事業の立て直しで辣腕を振るった。日本電産に入社すると不振が続く車載事業の本部長として再建にあたってきた。 一流企業のエリートを引っ張ってきて後継候補に据えるという手法は、これまでのやり方とまったく変わらない。 「真の生え抜き社長が誕生するのは早くて4年後。岸田の次の社長候補として、28年にはプロパーの社長候補が出てくる。次を担えそうな人材を早く育てていきたい」と永守は今後の展望を語る。 昨年3月の時点では「新体制発表に伴って代表権を返上する」と言明していたが、この約束を完全に反故にし、永守は代表権を持ち続けることになった」、今度は「代表権を持ち続ける」ので、余り変わりばえしないようだ。
次に、4月11日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの有森隆氏による「ニデック(下)カリスマ経営者が自動車メーカーのEVシフトを読み違えて大きく躓いた」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/338733
・『永守重信グローバルグループ代表の現状を一言で言うなら、カリスマ経営者が自動車メーカーのEV(電気自動車)シフトを読み違えて大きくつまずいたということだろう。 1月24日に2024年3月期の第3四半期決算(国際会計基準)を発表。これに併せて24年3月期通期の売上高を2兆3000億円(前期比2.5%増)と従来計画比1000億円上方修正する一方、営業利益は同400億円減の1800億円(同80.1%増)、純利益は同300億円減の1350億円(同3倍増)に下方修正した。2年ぶりに最高益を更新することもなくなった。 (EV向けの 電動) 駆動部品「イーアクスル」事業が振るわず、450億円の構造改革費用を計上することが利益を下方修正した原因だ。中国のEV市場の価格競争が激化し、同社が主力とする高性能品では採算を取ることが難しく、同事業は赤字が続いている。 第3四半期での下方修正は2年連続だ。ちょうど1年前に23年3月期の業績見通しを営業利益で1000億円、当期利益で1050億円下方修正した。) 昨年、創業50周年を迎え、4月には社名を日本電産からニデックに変更した。大きな節目を前に、経営が岐路に立っていることを数字が物語っていた。 創業者の永守重信会長の怒りは凄まじかった。 「外部からみえた方々(前経営陣を指す)が非常に好き放題の経営をやられて、大きな負の遺産を作って去っていった。それにより生じたゴミを今期中に全てきれいにする」 決算の大幅な下方修正に踏み切った原因を前社長の関潤など外部から登用した幹部に押し付けた格好だ。 永守はEV向け 電動駆動装置「イーアクスル」事業の戦略を従来のシェア重視から収益重視に転換した。営業利益1000億円の下方修正は「一過性の出来事だと思ってよい。来期(24年3月期)は成長していく。特に大きく転換するのが車載事業だ。500億円の構造改革費を計上したイーアクスルは来期は確実に利益が出るようになる」と自信満々に語っていた。 ところが、永守の読みは大きく外れた。全てのイーアクスル製品が営業赤字。それだけでは済まず、同事業で再び構造改革(450億円を再計上)を余儀なくされた。) 今回の下方修正により、通期の売上高営業利益率の予想は修正前の10%から7.8%まで低下する。永守はかねて「営業利益率が10%を下回る事業は赤字だ」と語ってきた。イーアクスル事業が会社全体の足を引っ張るほどの不調ぶりであることが浮き彫りになった。 車載事業を統括し、EV向けイーアクスル事業を担当する岸田を、「社歴2年にすぎない。大丈夫なのか」と不安視する声があることを承知の上で社長に起用した。 これまでの永守は、自分は最終責任を負わず、「任せたよ」と言って社長にした人物に全責任を押し付けてきた。だが、もう、そんな逃げ道はない。 30年度に売上高10兆円という壮大な目標を掲げている。車載事業で高水準の世界シェアを取る必要がある。 「ソニー出身の岸田を後継社長に指名したのは、ソニーとホンダが共同開発しているEVとの連携を考えているからかもしれない。ソニー・ホンダが、はたしてニデックの技術を高く評価しているのかどうかだ。越えなければならないハードルは高くて遠い」(証券アナリスト)) 創業者は焦っている。株価(4月9日終値6157円)を昨年高値の8706円(23年7月24日)に戻すことだ。客観的に見て、経営者(=永守)の信用が失墜してしまった今は、この目標の達成はかなり難しい。 会員制情報誌は「岸田はイーアクスルの後始末のために据えたのではないか」との外部の声を拾っているが、永守の胸の内は誰も知らない。=敬称略』、「これまでの永守は、自分は最終責任を負わず、「任せたよ」と言って社長にした人物に全責任を押し付けてきた。だが、もう、そんな逃げ道はない。 30年度に売上高10兆円という壮大な目標を掲げている。車載事業で高水準の世界シェアを取る必要がある」、「逃げ道」を失った「永守」は、目標が達成できなかった場合、どう言い訳をするのだろう。
第三に、9月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「真逆じゃん!「シャープのEV」と「ソニーのEV」比べてわかった歴然の違い」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/350744
・『9月17日、家電大手のシャープが親会社の鴻海(ホンハイ)精密工業と組んで開発するEVの試作車を発表しました。家電メーカーの自動車業界への参入という点では、ホンダと合弁企業をつくったソニーが先行しています。「シャープ×鴻海」と「ホンダ×ソニー」両者のEVの開発コンセプトは真逆です。どちらが未来を見据えているのでしょうか? ▽シャープのEV、ソニーのEV 比べて分かった歴然の違い(家電大手のシャープが9月17日、親会社の鴻海精密工業と組んで開発するEVの試作車を発表しました。 ミニバンタイプの車で名称は「LDK+(エルディーケープラス)」というのですが、この名称には自宅のリビングの拡張空間という意味合いがあるそうです。 近年、家電メーカーやスマホメーカーが自動車業界に参入するという動きが強まっています。 中国ではスマホ大手のシャオミが発売するEVのスポーツカーが売れています。鴻海はEV事業についてはMIHというコンソーシアムを立ち上げ、EVのプラットフォームを提供するビジネスモデルでこの領域に参入しています。 鴻海のプラットフォームは、すでに台湾の自動車メーカーがこれを活用したEVを発売しています。シャープについてもこのプラットフォームを活用し、車のインテリア部分の開発がシャープ、車台(プラットフォーム)と製造を鴻海が担当することになりそうです。 さて、同じく家電メーカーの参入という点では、ホンダと合弁企業「ソニー・ホンダモビリティ」をつくったソニーが先行しています。 2025年に高級車アフィーラの受注を始める計画で、車のプラットフォームはホンダのEVと共通化、先進運転支援システムもホンダが提供し、車内を「感動空間」にする役割をソニーが担当しています。 両社の動きを眺めると非常に興味深いのが、ふたつの陣営で開発コンセプトが真逆だという点です。3つの視点でその違いを比較してみたいと思います』、「ふたつの陣営で開発コンセプトが真逆だ」、とは興味深そうだ。
・『違い1 外見重視か居住性重視か? 今回発表されたシャープのLDK+はワンボックスカーです。未来的な外観デザインではありますが、形は四角い箱で、雰囲気は業務用の商用車そのものです。 一方で、これまで何回かメディアの前で披露されてきたソニーの試作車はどれもスポーティーな外観のデザインでした。 どちらが売れそうかというとソニーですが、どちらが発想が突き抜けて新しいかというとシャープだと思います。というのも、シャープのLDK+のコンセプトは「居住性」に振り切っているからです。 車内でガンガン音楽をかけながら夜のハイウェイを疾走するならソニーのほうが断然イケているのでしょう。ただ、乗り心地だけを考えると、外見がイケてなくても真四角の直方体の方が居住性は断然いいものです。 これは旧来のクラウンのタクシーと、最近主流の箱型のジャパンタクシーのどちらの居住性がいいかを思い浮かべていただけると実感できるのではないでしょうか。 車を流線形にするか箱型にするか?これは未来の車がどのような使われ方をするかを想像する視点の違いで考えが分かれます。少なくともソニーとシャープはこの視点がはっきりと別方向に分かれている点が面白いのです』、「車を流線形にするか箱型にするか?これは未来の車がどのような使われ方をするかを想像する視点の違いで考えが分かれます」、なるほど。
・『違い2 先進国市場か中国アジア市場か? 実際に発売される時期が近付いているソニー・ホンダと、まだコンセプトカー段階のシャープを比較するのは若干早計かもしれませんが、両者のコンセプトを比較すると想定している市場がどうやら違いそうです。 ソニーの場合、2026年に日米欧の先進国でのユーザーをターゲットにした売り方を想定しているように感じます。 ソニーが提供する車内空間での「感動」の一例としては、先ごろ世界10万局のラジオを聴くことができるアメリカのTuneIn(チューンイン)というサービスを採用することを発表しました。 ソニーの強みを考えると、今後、ソニーグループの音楽、映画、ゲームなどとの連携に加えて、スマートスピーカーを通じたAIサービスなどが搭載されることが予想されます。あくまでイメージですが、アマゾンが提供するオーディブルのような音声読書サービスや、DAZNの提供するスポーツコンテンツなどが搭載された車が登場することになるでしょう。 一方でシャープの場合、車を売ろうとするメーカーが普通に考える「需要」をあまり気にしていないように感じます。 車の場合、ドライバー=購入者になるケースが多いのですが、シャープのLDK+はドライバーが販売上のターゲットには見えません。なにしろシャープが取材協力したニュースの映像でも運転席は映されず、リビングの部分しかハイライトされていません。 ではこのシャープの試作車のような車を利用するのはどのようなユーザーなのでしょうか?普通に考えると3種類のユーザーが想定できます。) ひとつは運転手を抱えている利用者です。これは企業のオーナーをイメージするとわかりやすいかもしれません。誰かに運転させて自分は車内で仕事をしたり映画をみたりするような利用者です。 ふたつめに考えられるのがタクシーの乗客で、これはひとつめの利用形態と似ています。 そして3つめは出かけた先の駐車場で停車中にリビングを利用するシーンです。キャンピングカーのベッドがないような利用イメージというとわかりやすいでしょうか? 営業マンが休憩したり、商談の合間に仮オフィスとしてパソコンに向かって見積書を作ったりリモート会議に出席するイメージです。 ただこの3つめの利用イメージだと、すでに商業用のワンボックスが似た使われ方をしています。そして実際のビジネスでの利用シーンでは営業なら荷台に大量の商品やサンプルが、工事関係者なら大量の機材が置かれるので、コンセプトカーのようにリビングでくつろぐ余裕はそれほどないかもしれません。 だとすればシャープの車の主たる用途は1と2の「誰かに運転させて自分はくつろぐ」という用途になるのでしょう。 これは市場の大きさとしては圧倒的に新興国や途上国向けです。なにしろ運転手の人件費が安いので、ちょっとした中小企業の経営者は、普通に運転手を雇えるわけです。 鴻海が考えるMIHのプラットフォームでは、いずれNVIDIAが供給する自動運転プラットフォームも搭載されることが視野に入っていると思われますが、その場合でも規制緩和の観点で真っ先に販売される市場はおそらく中国でしょう。 ちなみに、面白い予測があります。 先進国では今、いったんEVシフトの流れがスローダウンしています。もともと日本はEV化が遅れているのですが、欧米の推進派だった大手メーカーが計画を見直したりしているのです。 結果として2030年頃までの世界のEV需要を引っ張るのは中国とアジア、南米になるのではないかという予測があります。 だとすれば市場成長の恩恵にあずかるのは意外とソニーよりもシャープだということになるかもしれません』、「シャープの車の主たる用途は1と2の「誰かに運転させて自分はくつろぐ」という用途になるのでしょう。 これは市場の大きさとしては圧倒的に新興国や途上国向けです。なにしろ運転手の人件費が安いので、ちょっとした中小企業の経営者は、普通に運転手を雇えるわけです・・・2030年頃までの世界のEV需要を引っ張るのは中国とアジア、南米になるのではないかという予測があります。 だとすれば市場成長の恩恵にあずかるのは意外とソニーよりもシャープだということになるかもしれません」、なるほど。
・『違い3 それぞれの潜在的な競争相手 ソニーもシャープも、既存の自動車メーカーのコンセプトとは違う視点で、未来のモビリティのブルーオーシャン的な領域を狙っているように思えます。 しかしそのブルーオーシャンにはそれぞれ異なる競争相手がいそうです。さらに、それぞれの競争相手は自動車メーカーではなさそうです。 ソニーが目指す車内の感動空間は大手自動車メーカーの中では独自性がありますが、中国の新興EVメーカーは同じ方向で競っています。 同時にコンテンツプロバイダーも同じ方向での車内体験向上を目指しています。たとえば私が所有するBYDのコンパクトカーには音楽配信のSpotifyが標準装備されています。 EVで「運転をしながらコンテンツを楽しむ」という制約があるうちは動画ではなく音楽コンテンツ中心のサービスに頼ることになり、その観点での競争ではソニーと競合には差がつきにくいという制約を感じます。 これが自動運転のレベルが進んだ場合、たとえばレベル4になって基本的にドライバーに運転手としての責任が生じなくなった未来では、車内でドライバーが映像コンテンツを楽しむようになります。その未来は意外と近いかもしれません。 その場合には実はソニーのアフィーラよりも、シャープの試作車のように65インチのテレビを車内に搭載して、利用者が後ろ向きに座るような車の方が、優れたエンタメ体験を受けられるようになるかもしれません。 だったらソニーも65インチを搭載すればいいと思うかもしれませんが、進化はそこで止まらない可能性もあります。車の車内で本格的な感動体験を想定するのであれば、大画面テレビよりもアップルビジョンプロのようなヘッドセット型のハードウェアを装着したほうがよりイマーシブの度合いは高くなります。 そして、そのような未来になると車の車種は何でもよくなってしまいます。 要するに来たるべき自動運転の時代になると、感動体験は車内でも、自宅でも、場合によっては飲食店の席に座っていても同じようにGAFAMから提供されるかもしれないのです。 このようにソニーが目指す方向では、結局のところコンテンツプロバイダーが未来の本当の競争相手になるかもしれません』、「来たるべき自動運転の時代になると、感動体験は車内でも、自宅でも、場合によっては飲食店の席に座っていても同じようにGAFAMから提供されるかもしれないのです。 このようにソニーが目指す方向では、結局のところコンテンツプロバイダーが未来の本当の競争相手になるかもしれません」、なるほど。
・『シャープのEVの「未来の競争相手」は家電メーカーかもしれない さて、シャープの進化の方向についてはどうでしょう? 実はEVの居住性についてはシャープが考えているように家電との親和性が非常に高いものがあります。日常的にEVを使う立場で、ガソリン車時代と違って便利になったのが乗る前にスマホでエアコンが始動できることです。そしてエアコンはシャープの主力取扱商品のひとつです。 さらにテスラに搭載されている機能で意外と役立つのが、空気清浄機能です。うっかりひどい排ガスのトラックの後ろにつけてしまったときなど、素早く車内の空気を入れ替えることができます。実はこれもシャープの得意領域でしょう。 シャープが目指すリビングの拡張というコンセプトをつきつめると、結局は家電と家具の搭載勝負になっていきます。 駐車場で仕事をするだけでなく移動中にテレビを見ながらコーラとハンバーガーとポテトチップスで飲食をするシーンまでを考えると、冷蔵庫に加えて、軽く手を洗う水回りぐらいまでは欲しいところです。 そうなると究極には、車のオーナー個々人の興味にあわせて必要な家電を車載する未来がやってきそうです。 世の中の進化によっては、車も自宅のリビングと同じで、購入直後は空室の状態でよいわけです。結局のところ、シャープの未来の競争相手は既に競合している家電メーカーということになるかもしれません。 さて、このようにシャープとソニーのEV参入について未来予測の視点で比較をしてみましたが、基本的には家電メーカーにもビジネスチャンスがあるという点は間違いないでしょう。 懸念点はこの記事で述べさせていただきましたが、先行参入することでブランドを確立できるメリットは当然あるわけで、この後に参入してくる家電メーカーよりも戦いやすいことは事実でしょう。 むしろEV計画を遅らせている日米欧の大手自動車メーカー各社の方が、ソニーとシャープの動きを脅威に感じるべきなのかもしれません』、「基本的には家電メーカーにもビジネスチャンスがあるという点は間違いないでしょう。 懸念点はこの記事で述べさせていただきましたが、先行参入することでブランドを確立できるメリットは当然あるわけで、この後に参入してくる家電メーカーよりも戦いやすいことは事実でしょう。 むしろEV計画を遅らせている日米欧の大手自動車メーカー各社の方が、ソニーとシャープの動きを脅威に感じるべきなのかもしれません」、その通りなのかも知れない。
先ずは、本年4月10日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの有森隆氏による「ニデック(上)在籍2年のソニーグループ出身・岸田光哉副社長を社長に起用した理由」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/338681
・『ニデックの長年の課題だった後継者問題は決着するのだろうか。2月14日、4月1日付で副社長の岸田光哉(64)が社長に就く人事を発表した。最高経営責任者(CEO)の座も、創業者の永守重信(79)から岸田に譲る。 永守は今後も代表権を持ち、新設されたグローバルグループ代表として成長の要となるM&A(合併・買収)を主導する。 永守の番頭を自任する社長の小部博志(75)は代表権のない会長になった。後継者問題は今度こそ決着を見るのか。 永守は1973年、プレハブ小屋で日本電産(現ニデック)を4人で創業。これまで70件以上のM&Aを重ね、売上高2兆2000億円、グループ社員数10万7000人の大企業に育て上げたカリスマ経営者だ。 それでも80歳を目前にした永守の後継者選びは迷走した。内部からの昇格ではなく、外部から優秀な経営者を招くことにこだわった。2013年のカルソニックカンセイ(現マレリ)元社長の呉文精に始まり、シャープ元社長の片山幹雄、日産自動車出身の吉本浩之を次々と招聘してきたが、いずれもお眼鏡にかなわず、社を去った。) 特に日産自動車の元副COO(最高執行責任者)関潤(62)については、社長に加えてCEO職も譲ったことから本命とみられていたが、永守が首を縦に振ることはなく、22年に退任した。 創業期からの補佐役の小部がショートリリーフとして社長を務めたが、世代交代が進まない状況を不安視する声が社内外から強まっていた。 日本電産からニデックに社名変更した23年4月1日、5人の副社長を指名。このうちの1人を1年後の24年4月に社長に昇格させることになった。 副社長になったのはプロパー社員ではない。全員が中途入社組。北尾宣久(12年入社)と西本達也(同09年)は三井住友銀行出身。大塚俊之(同04年)は埼玉銀行(現りそな銀行)出身。小関敏彦(同18年)は東京大学の副学長を務めた研究者で、永守が理事長を務める京都先端科学大学の副学長に納まっている。 ソニー(現ソニーグループ=G)出身の岸田は、日本電産への入社が22年1月で、社歴は5人の中で最も短い。 選ばれたのは在籍が2年余という岸田だった。岸田は香川県出身で、京都大学教育学部卒業後、83年ソニー入社。生産本部長やスマートフォンの事業子会社の社長などを歴任。赤字だったスマホ事業の立て直しで辣腕を振るった。日本電産に入社すると不振が続く車載事業の本部長として再建にあたってきた。 一流企業のエリートを引っ張ってきて後継候補に据えるという手法は、これまでのやり方とまったく変わらない。 「真の生え抜き社長が誕生するのは早くて4年後。岸田の次の社長候補として、28年にはプロパーの社長候補が出てくる。次を担えそうな人材を早く育てていきたい」と永守は今後の展望を語る。 昨年3月の時点では「新体制発表に伴って代表権を返上する」と言明していたが、この約束を完全に反故にし、永守は代表権を持ち続けることになった。これではニデックの表紙はまったく変わらないことになる。「海外のM&Aには代表権が必要」というのが代表権を持ち続ける理由だが、説得力に乏しい。ニデックのドン、永守体制は不変なのだ。 「業績を上げてくれ。株価を上げてくれ。言いたいことはそれだけだ」としているが、思い通りにいかなければ、いつでも強権を発動できる。 業績&株価という2つの課題を達成できなければ、前任者たちと同じで、あっさり見切りをつけられることになる。 =敬称略、つづく』、「80歳を目前にした永守の後継者選びは迷走した。内部からの昇格ではなく、外部から優秀な経営者を招くことにこだわった。2013年のカルソニックカンセイ(現マレリ)元社長の呉文精に始まり、シャープ元社長の片山幹雄、日産自動車出身の吉本浩之を次々と招聘してきたが、いずれもお眼鏡にかなわず、社を去った。) 特に日産自動車の元副COO(最高執行責任者)関潤(62)については、社長に加えてCEO職も譲ったことから本命とみられていたが、永守が首を縦に振ることはなく、22年に退任・・・ニデックに社名変更した23年4月1日、5人の副社長を指名。このうちの1人を1年後の24年4月に社長に昇格させることになった。 副社長になったのはプロパー社員ではない。全員が中途入社組。北尾宣久(12年入社)と西本達也(同09年)は三井住友銀行出身。大塚俊之(同04年)は埼玉銀行(現りそな銀行)出身。小関敏彦(同18年)は東京大学の副学長を務めた研究者で、永守が理事長を務める京都先端科学大学の副学長に納まっている。 ソニー(現ソニーグループ=G)出身の岸田は、日本電産への入社が22年1月で、社歴は5人の中で最も短い。 選ばれたのは在籍が2年余という岸田だった。岸田は香川県出身で、京都大学教育学部卒業後、83年ソニー入社。生産本部長やスマートフォンの事業子会社の社長などを歴任。赤字だったスマホ事業の立て直しで辣腕を振るった。日本電産に入社すると不振が続く車載事業の本部長として再建にあたってきた。 一流企業のエリートを引っ張ってきて後継候補に据えるという手法は、これまでのやり方とまったく変わらない。 「真の生え抜き社長が誕生するのは早くて4年後。岸田の次の社長候補として、28年にはプロパーの社長候補が出てくる。次を担えそうな人材を早く育てていきたい」と永守は今後の展望を語る。 昨年3月の時点では「新体制発表に伴って代表権を返上する」と言明していたが、この約束を完全に反故にし、永守は代表権を持ち続けることになった」、今度は「代表権を持ち続ける」ので、余り変わりばえしないようだ。
次に、4月11日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの有森隆氏による「ニデック(下)カリスマ経営者が自動車メーカーのEVシフトを読み違えて大きく躓いた」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/338733
・『永守重信グローバルグループ代表の現状を一言で言うなら、カリスマ経営者が自動車メーカーのEV(電気自動車)シフトを読み違えて大きくつまずいたということだろう。 1月24日に2024年3月期の第3四半期決算(国際会計基準)を発表。これに併せて24年3月期通期の売上高を2兆3000億円(前期比2.5%増)と従来計画比1000億円上方修正する一方、営業利益は同400億円減の1800億円(同80.1%増)、純利益は同300億円減の1350億円(同3倍増)に下方修正した。2年ぶりに最高益を更新することもなくなった。 (EV向けの 電動) 駆動部品「イーアクスル」事業が振るわず、450億円の構造改革費用を計上することが利益を下方修正した原因だ。中国のEV市場の価格競争が激化し、同社が主力とする高性能品では採算を取ることが難しく、同事業は赤字が続いている。 第3四半期での下方修正は2年連続だ。ちょうど1年前に23年3月期の業績見通しを営業利益で1000億円、当期利益で1050億円下方修正した。) 昨年、創業50周年を迎え、4月には社名を日本電産からニデックに変更した。大きな節目を前に、経営が岐路に立っていることを数字が物語っていた。 創業者の永守重信会長の怒りは凄まじかった。 「外部からみえた方々(前経営陣を指す)が非常に好き放題の経営をやられて、大きな負の遺産を作って去っていった。それにより生じたゴミを今期中に全てきれいにする」 決算の大幅な下方修正に踏み切った原因を前社長の関潤など外部から登用した幹部に押し付けた格好だ。 永守はEV向け 電動駆動装置「イーアクスル」事業の戦略を従来のシェア重視から収益重視に転換した。営業利益1000億円の下方修正は「一過性の出来事だと思ってよい。来期(24年3月期)は成長していく。特に大きく転換するのが車載事業だ。500億円の構造改革費を計上したイーアクスルは来期は確実に利益が出るようになる」と自信満々に語っていた。 ところが、永守の読みは大きく外れた。全てのイーアクスル製品が営業赤字。それだけでは済まず、同事業で再び構造改革(450億円を再計上)を余儀なくされた。) 今回の下方修正により、通期の売上高営業利益率の予想は修正前の10%から7.8%まで低下する。永守はかねて「営業利益率が10%を下回る事業は赤字だ」と語ってきた。イーアクスル事業が会社全体の足を引っ張るほどの不調ぶりであることが浮き彫りになった。 車載事業を統括し、EV向けイーアクスル事業を担当する岸田を、「社歴2年にすぎない。大丈夫なのか」と不安視する声があることを承知の上で社長に起用した。 これまでの永守は、自分は最終責任を負わず、「任せたよ」と言って社長にした人物に全責任を押し付けてきた。だが、もう、そんな逃げ道はない。 30年度に売上高10兆円という壮大な目標を掲げている。車載事業で高水準の世界シェアを取る必要がある。 「ソニー出身の岸田を後継社長に指名したのは、ソニーとホンダが共同開発しているEVとの連携を考えているからかもしれない。ソニー・ホンダが、はたしてニデックの技術を高く評価しているのかどうかだ。越えなければならないハードルは高くて遠い」(証券アナリスト)) 創業者は焦っている。株価(4月9日終値6157円)を昨年高値の8706円(23年7月24日)に戻すことだ。客観的に見て、経営者(=永守)の信用が失墜してしまった今は、この目標の達成はかなり難しい。 会員制情報誌は「岸田はイーアクスルの後始末のために据えたのではないか」との外部の声を拾っているが、永守の胸の内は誰も知らない。=敬称略』、「これまでの永守は、自分は最終責任を負わず、「任せたよ」と言って社長にした人物に全責任を押し付けてきた。だが、もう、そんな逃げ道はない。 30年度に売上高10兆円という壮大な目標を掲げている。車載事業で高水準の世界シェアを取る必要がある」、「逃げ道」を失った「永守」は、目標が達成できなかった場合、どう言い訳をするのだろう。
第三に、9月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「真逆じゃん!「シャープのEV」と「ソニーのEV」比べてわかった歴然の違い」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/350744
・『9月17日、家電大手のシャープが親会社の鴻海(ホンハイ)精密工業と組んで開発するEVの試作車を発表しました。家電メーカーの自動車業界への参入という点では、ホンダと合弁企業をつくったソニーが先行しています。「シャープ×鴻海」と「ホンダ×ソニー」両者のEVの開発コンセプトは真逆です。どちらが未来を見据えているのでしょうか? ▽シャープのEV、ソニーのEV 比べて分かった歴然の違い(家電大手のシャープが9月17日、親会社の鴻海精密工業と組んで開発するEVの試作車を発表しました。 ミニバンタイプの車で名称は「LDK+(エルディーケープラス)」というのですが、この名称には自宅のリビングの拡張空間という意味合いがあるそうです。 近年、家電メーカーやスマホメーカーが自動車業界に参入するという動きが強まっています。 中国ではスマホ大手のシャオミが発売するEVのスポーツカーが売れています。鴻海はEV事業についてはMIHというコンソーシアムを立ち上げ、EVのプラットフォームを提供するビジネスモデルでこの領域に参入しています。 鴻海のプラットフォームは、すでに台湾の自動車メーカーがこれを活用したEVを発売しています。シャープについてもこのプラットフォームを活用し、車のインテリア部分の開発がシャープ、車台(プラットフォーム)と製造を鴻海が担当することになりそうです。 さて、同じく家電メーカーの参入という点では、ホンダと合弁企業「ソニー・ホンダモビリティ」をつくったソニーが先行しています。 2025年に高級車アフィーラの受注を始める計画で、車のプラットフォームはホンダのEVと共通化、先進運転支援システムもホンダが提供し、車内を「感動空間」にする役割をソニーが担当しています。 両社の動きを眺めると非常に興味深いのが、ふたつの陣営で開発コンセプトが真逆だという点です。3つの視点でその違いを比較してみたいと思います』、「ふたつの陣営で開発コンセプトが真逆だ」、とは興味深そうだ。
・『違い1 外見重視か居住性重視か? 今回発表されたシャープのLDK+はワンボックスカーです。未来的な外観デザインではありますが、形は四角い箱で、雰囲気は業務用の商用車そのものです。 一方で、これまで何回かメディアの前で披露されてきたソニーの試作車はどれもスポーティーな外観のデザインでした。 どちらが売れそうかというとソニーですが、どちらが発想が突き抜けて新しいかというとシャープだと思います。というのも、シャープのLDK+のコンセプトは「居住性」に振り切っているからです。 車内でガンガン音楽をかけながら夜のハイウェイを疾走するならソニーのほうが断然イケているのでしょう。ただ、乗り心地だけを考えると、外見がイケてなくても真四角の直方体の方が居住性は断然いいものです。 これは旧来のクラウンのタクシーと、最近主流の箱型のジャパンタクシーのどちらの居住性がいいかを思い浮かべていただけると実感できるのではないでしょうか。 車を流線形にするか箱型にするか?これは未来の車がどのような使われ方をするかを想像する視点の違いで考えが分かれます。少なくともソニーとシャープはこの視点がはっきりと別方向に分かれている点が面白いのです』、「車を流線形にするか箱型にするか?これは未来の車がどのような使われ方をするかを想像する視点の違いで考えが分かれます」、なるほど。
・『違い2 先進国市場か中国アジア市場か? 実際に発売される時期が近付いているソニー・ホンダと、まだコンセプトカー段階のシャープを比較するのは若干早計かもしれませんが、両者のコンセプトを比較すると想定している市場がどうやら違いそうです。 ソニーの場合、2026年に日米欧の先進国でのユーザーをターゲットにした売り方を想定しているように感じます。 ソニーが提供する車内空間での「感動」の一例としては、先ごろ世界10万局のラジオを聴くことができるアメリカのTuneIn(チューンイン)というサービスを採用することを発表しました。 ソニーの強みを考えると、今後、ソニーグループの音楽、映画、ゲームなどとの連携に加えて、スマートスピーカーを通じたAIサービスなどが搭載されることが予想されます。あくまでイメージですが、アマゾンが提供するオーディブルのような音声読書サービスや、DAZNの提供するスポーツコンテンツなどが搭載された車が登場することになるでしょう。 一方でシャープの場合、車を売ろうとするメーカーが普通に考える「需要」をあまり気にしていないように感じます。 車の場合、ドライバー=購入者になるケースが多いのですが、シャープのLDK+はドライバーが販売上のターゲットには見えません。なにしろシャープが取材協力したニュースの映像でも運転席は映されず、リビングの部分しかハイライトされていません。 ではこのシャープの試作車のような車を利用するのはどのようなユーザーなのでしょうか?普通に考えると3種類のユーザーが想定できます。) ひとつは運転手を抱えている利用者です。これは企業のオーナーをイメージするとわかりやすいかもしれません。誰かに運転させて自分は車内で仕事をしたり映画をみたりするような利用者です。 ふたつめに考えられるのがタクシーの乗客で、これはひとつめの利用形態と似ています。 そして3つめは出かけた先の駐車場で停車中にリビングを利用するシーンです。キャンピングカーのベッドがないような利用イメージというとわかりやすいでしょうか? 営業マンが休憩したり、商談の合間に仮オフィスとしてパソコンに向かって見積書を作ったりリモート会議に出席するイメージです。 ただこの3つめの利用イメージだと、すでに商業用のワンボックスが似た使われ方をしています。そして実際のビジネスでの利用シーンでは営業なら荷台に大量の商品やサンプルが、工事関係者なら大量の機材が置かれるので、コンセプトカーのようにリビングでくつろぐ余裕はそれほどないかもしれません。 だとすればシャープの車の主たる用途は1と2の「誰かに運転させて自分はくつろぐ」という用途になるのでしょう。 これは市場の大きさとしては圧倒的に新興国や途上国向けです。なにしろ運転手の人件費が安いので、ちょっとした中小企業の経営者は、普通に運転手を雇えるわけです。 鴻海が考えるMIHのプラットフォームでは、いずれNVIDIAが供給する自動運転プラットフォームも搭載されることが視野に入っていると思われますが、その場合でも規制緩和の観点で真っ先に販売される市場はおそらく中国でしょう。 ちなみに、面白い予測があります。 先進国では今、いったんEVシフトの流れがスローダウンしています。もともと日本はEV化が遅れているのですが、欧米の推進派だった大手メーカーが計画を見直したりしているのです。 結果として2030年頃までの世界のEV需要を引っ張るのは中国とアジア、南米になるのではないかという予測があります。 だとすれば市場成長の恩恵にあずかるのは意外とソニーよりもシャープだということになるかもしれません』、「シャープの車の主たる用途は1と2の「誰かに運転させて自分はくつろぐ」という用途になるのでしょう。 これは市場の大きさとしては圧倒的に新興国や途上国向けです。なにしろ運転手の人件費が安いので、ちょっとした中小企業の経営者は、普通に運転手を雇えるわけです・・・2030年頃までの世界のEV需要を引っ張るのは中国とアジア、南米になるのではないかという予測があります。 だとすれば市場成長の恩恵にあずかるのは意外とソニーよりもシャープだということになるかもしれません」、なるほど。
・『違い3 それぞれの潜在的な競争相手 ソニーもシャープも、既存の自動車メーカーのコンセプトとは違う視点で、未来のモビリティのブルーオーシャン的な領域を狙っているように思えます。 しかしそのブルーオーシャンにはそれぞれ異なる競争相手がいそうです。さらに、それぞれの競争相手は自動車メーカーではなさそうです。 ソニーが目指す車内の感動空間は大手自動車メーカーの中では独自性がありますが、中国の新興EVメーカーは同じ方向で競っています。 同時にコンテンツプロバイダーも同じ方向での車内体験向上を目指しています。たとえば私が所有するBYDのコンパクトカーには音楽配信のSpotifyが標準装備されています。 EVで「運転をしながらコンテンツを楽しむ」という制約があるうちは動画ではなく音楽コンテンツ中心のサービスに頼ることになり、その観点での競争ではソニーと競合には差がつきにくいという制約を感じます。 これが自動運転のレベルが進んだ場合、たとえばレベル4になって基本的にドライバーに運転手としての責任が生じなくなった未来では、車内でドライバーが映像コンテンツを楽しむようになります。その未来は意外と近いかもしれません。 その場合には実はソニーのアフィーラよりも、シャープの試作車のように65インチのテレビを車内に搭載して、利用者が後ろ向きに座るような車の方が、優れたエンタメ体験を受けられるようになるかもしれません。 だったらソニーも65インチを搭載すればいいと思うかもしれませんが、進化はそこで止まらない可能性もあります。車の車内で本格的な感動体験を想定するのであれば、大画面テレビよりもアップルビジョンプロのようなヘッドセット型のハードウェアを装着したほうがよりイマーシブの度合いは高くなります。 そして、そのような未来になると車の車種は何でもよくなってしまいます。 要するに来たるべき自動運転の時代になると、感動体験は車内でも、自宅でも、場合によっては飲食店の席に座っていても同じようにGAFAMから提供されるかもしれないのです。 このようにソニーが目指す方向では、結局のところコンテンツプロバイダーが未来の本当の競争相手になるかもしれません』、「来たるべき自動運転の時代になると、感動体験は車内でも、自宅でも、場合によっては飲食店の席に座っていても同じようにGAFAMから提供されるかもしれないのです。 このようにソニーが目指す方向では、結局のところコンテンツプロバイダーが未来の本当の競争相手になるかもしれません」、なるほど。
・『シャープのEVの「未来の競争相手」は家電メーカーかもしれない さて、シャープの進化の方向についてはどうでしょう? 実はEVの居住性についてはシャープが考えているように家電との親和性が非常に高いものがあります。日常的にEVを使う立場で、ガソリン車時代と違って便利になったのが乗る前にスマホでエアコンが始動できることです。そしてエアコンはシャープの主力取扱商品のひとつです。 さらにテスラに搭載されている機能で意外と役立つのが、空気清浄機能です。うっかりひどい排ガスのトラックの後ろにつけてしまったときなど、素早く車内の空気を入れ替えることができます。実はこれもシャープの得意領域でしょう。 シャープが目指すリビングの拡張というコンセプトをつきつめると、結局は家電と家具の搭載勝負になっていきます。 駐車場で仕事をするだけでなく移動中にテレビを見ながらコーラとハンバーガーとポテトチップスで飲食をするシーンまでを考えると、冷蔵庫に加えて、軽く手を洗う水回りぐらいまでは欲しいところです。 そうなると究極には、車のオーナー個々人の興味にあわせて必要な家電を車載する未来がやってきそうです。 世の中の進化によっては、車も自宅のリビングと同じで、購入直後は空室の状態でよいわけです。結局のところ、シャープの未来の競争相手は既に競合している家電メーカーということになるかもしれません。 さて、このようにシャープとソニーのEV参入について未来予測の視点で比較をしてみましたが、基本的には家電メーカーにもビジネスチャンスがあるという点は間違いないでしょう。 懸念点はこの記事で述べさせていただきましたが、先行参入することでブランドを確立できるメリットは当然あるわけで、この後に参入してくる家電メーカーよりも戦いやすいことは事実でしょう。 むしろEV計画を遅らせている日米欧の大手自動車メーカー各社の方が、ソニーとシャープの動きを脅威に感じるべきなのかもしれません』、「基本的には家電メーカーにもビジネスチャンスがあるという点は間違いないでしょう。 懸念点はこの記事で述べさせていただきましたが、先行参入することでブランドを確立できるメリットは当然あるわけで、この後に参入してくる家電メーカーよりも戦いやすいことは事実でしょう。 むしろEV計画を遅らせている日米欧の大手自動車メーカー各社の方が、ソニーとシャープの動きを脅威に感じるべきなのかもしれません」、その通りなのかも知れない。
タグ:電気自動車(EV) (その15)(ニデック(上)在籍2年のソニーグループ出身・岸田光哉副社長を社長に起用した理由、ニデック(下)カリスマ経営者が自動車メーカーのEVシフトを読み違えて大きく躓いた、真逆じゃん!「シャープのEV」と「ソニーのEV」比べてわかった歴然の違い) 日刊ゲンダイ 有森隆氏による「ニデック(上)在籍2年のソニーグループ出身・岸田光哉副社長を社長に起用した理由」 「80歳を目前にした永守の後継者選びは迷走した。内部からの昇格ではなく、外部から優秀な経営者を招くことにこだわった。2013年のカルソニックカンセイ(現マレリ)元社長の呉文精に始まり、シャープ元社長の片山幹雄、日産自動車出身の吉本浩之を次々と招聘してきたが、いずれもお眼鏡にかなわず、社を去った。) 特に日産自動車の元副COO(最高執行責任者)関潤(62)については、社長に加えてCEO職も譲ったことから本命とみられていたが、永守が首を縦に振ることはなく、22年に退任・・・ニデックに社名変更した23年4月1日 、5人の副社長を指名。このうちの1人を1年後の24年4月に社長に昇格させることになった。 副社長になったのはプロパー社員ではない。全員が中途入社組。北尾宣久(12年入社)と西本達也(同09年)は三井住友銀行出身。大塚俊之(同04年)は埼玉銀行(現りそな銀行)出身。小関敏彦(同18年)は東京大学の副学長を務めた研究者で、永守が理事長を務める京都先端科学大学の副学長に納まっている。 ソニー(現ソニーグループ=G)出身の岸田は、日本電産への入社が22年1月で、社歴は5人の中で最も短い。 選ばれたのは在籍が2年余 という岸田だった。岸田は香川県出身で、京都大学教育学部卒業後、83年ソニー入社。生産本部長やスマートフォンの事業子会社の社長などを歴任。赤字だったスマホ事業の立て直しで辣腕を振るった。日本電産に入社すると不振が続く車載事業の本部長として再建にあたってきた。 一流企業のエリートを引っ張ってきて後継候補に据えるという手法は、これまでのやり方とまったく変わらない。 「真の生え抜き社長が誕生するのは早くて4年後。岸田の次の社長候補として、28年にはプロパーの社長候補が出てくる。次を担えそうな人材を早く育てていきたい」と永守は今後の展望を語る。 昨年3月の時点では「新体制発表に伴って代表権を返上する」と言明していたが、この約束を完全に反故にし、永守は代表権を持ち続けることになった」、今度は「代表権を持ち続ける」ので、余り変わりばえしないようだ。 有森隆氏による「ニデック(下)カリスマ経営者が自動車メーカーのEVシフトを読み違えて大きく躓いた」 「これまでの永守は、自分は最終責任を負わず、「任せたよ」と言って社長にした人物に全責任を押し付けてきた。だが、もう、そんな逃げ道はない。 30年度に売上高10兆円という壮大な目標を掲げている。車載事業で高水準の世界シェアを取る必要がある」、「逃げ道」を失った「永守」は、目標が達成できなかった場合、どう言い訳をするのだろう。 ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「真逆じゃん!「シャープのEV」と「ソニーのEV」比べてわかった歴然の違い」 「ふたつの陣営で開発コンセプトが真逆だ」、とは興味深そうだ。 「車を流線形にするか箱型にするか?これは未来の車がどのような使われ方をするかを想像する視点の違いで考えが分かれます」、なるほど。 「シャープの車の主たる用途は1と2の「誰かに運転させて自分はくつろぐ」という用途になるのでしょう。 これは市場の大きさとしては圧倒的に新興国や途上国向けです。なにしろ運転手の人件費が安いので、ちょっとした中小企業の経営者は、普通に運転手を雇えるわけです・・・2030年頃までの世界のEV需要を引っ張るのは中国とアジア、南米になるのではないかという予測があります。 だとすれば市場成長の恩恵にあずかるのは意外とソニーよりもシャープだということになるかもしれません」、なるほど。 ・『違い3 それぞれの潜在的な競争相手 ソニーもシャープも、既存の自動車メーカーのコンセプトとは違う視点で、未来のモビリティのブルーオーシャン的な領域を狙っているように思えます。 しかしそのブルーオーシャンにはそれぞれ異なる競争相手がいそうです。さらに、それぞれの競争相手は自動車メーカーではなさそうです。 ソニーが目指す車内の感動空間は大手自動車メーカーの中では独自性がありますが、中国の新興EVメーカーは同じ方向で競っています。 同時にコンテンツプロバイダーも同じ方向での車内体験向上を目指しています。たとえば私が所有するBYDのコンパクトカーには音楽配信のSpotifyが標準装備されています。 EVで「運転をしながらコンテンツを楽しむ」という制約があるうちは動画ではなく音楽コンテンツ中心のサービスに頼ることになり、その観点での競争ではソニーと競合には差がつきにくいという制約を感じます。 これが自動運転のレベルが進んだ場合、たとえばレベル4になって基本的にドライバーに運転手としての責任が生じなくなった未来では、車内でドライバーが映像コンテンツを楽しむようになります。その未来は意外と近いかもしれません。 その場合には実はソニーのアフィーラよりも、シャープの試作車のように65インチのテレビを車内に搭載して、利用者が後ろ向きに座るような車の方が、優れたエンタメ体験を受けられるようになるかもしれません。 だったらソニーも65インチを搭載すればいいと思うかもしれませんが、進化はそこで止まらない可能性もあります。車の車内で本格的な感動体験を想定するのであれば、大画面テレビよりもアップルビジョンプロのようなヘッドセット型のハードウェアを装着したほうがよりイマーシブの度合いは高くなります。 そして、そのような未来になると車の車種は何でもよくなってしまいます。 要するに来たるべき自動運転の時代になると、感動体験は車内でも、自宅でも、場合によっては飲食店の席に座っていても同じようにGAFAMから提供されるかもしれない のです。 このようにソニーが目指す方向では、結局のところコンテンツプロバイダーが未来の本当の競争相手になるかもしれません』、「来たるべき自動運転の時代になると、感動体験は車内でも、自宅でも、場合によっては飲食店の席に座っていても同じようにGAFAMから提供されるかもしれないのです。 このようにソニーが目指す方向では、結局のところコンテンツプロバイダーが未来の本当の競争相手になるかもしれません」、なるほど。 「基本的には家電メーカーにもビジネスチャンスがあるという点は間違いないでしょう。 懸念点はこの記事で述べさせていただきましたが、先行参入することでブランドを確立できるメリットは当然あるわけで、この後に参入してくる家電メーカーよりも戦いやすいことは事実でしょう。 むしろEV計画を遅らせている日米欧の大手自動車メーカー各社の方が、ソニーとシャープの動きを脅威に感じるべきなのかもしれません」、その通りなのかも知れない。
農畜産林業(その4)(ついに支店長が自爆営業を強要…職員が決死の覚悟で明かす「JAのノルマ地獄」のヤバすぎる実態、「令和のコメ騒動」不足解消でも楽観できない事情 人口減少社会で「農地改革」が進まない本当の理由) [産業動向]
農畜産林業については、2020年3月17日に取上げた。久しぶりの今日は、(その4)(ついに支店長が自爆営業を強要…職員が決死の覚悟で明かす「JAのノルマ地獄」のヤバすぎる実態、「令和のコメ騒動」不足解消でも楽観できない事情 人口減少社会で「農地改革」が進まない本当の理由)である。
先ずは、昨年5月19日付け現代ビジネス「ついに支店長が自爆営業を強要…職員が決死の覚悟で明かす「JAのノルマ地獄」のヤバすぎる実態」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/110260?imp=0
・『共済の過大なノルマ達成のため、JA職員が何十万円もの自腹支払いを強制される「自爆営業」。農水省による監督指針の改正で、少なからず改善したかと思われたが、実はある「抜け道」が存在していた。 前編記事「「顧客をダマして契約獲得」「隠ぺい工作も行われた」JA職員が告発する「いまだに続くヤバすぎる農協のノルマ」の実態」に引き続き紹介する』、興味深そうだ。
・『支店長が「自爆」を強要 「監督指針が改正されたおかげなのか、従来よりも(ノルマの)ポイントは減りました。ただ、それでも負担は大きく、自爆するしかありません」 共済の知識や営業の経験を蓄える場が一般職に設けられていない点も昨年度までと変わらない。毎年度初めに1回開催される1時間程度の研修会があるだけだ。 「これだけの研修で新商品の中身を理解し、顧客に合った売り方を身に着けるなんて無理。一般職は、共済の営業に関しては素人同然なんです」 既述の事業推進部長による一斉メールには、職員が共済の知識や営業の経験が乏しい場合には、当人からの相談に応じてそれらを補う機会を設ける旨が記されていた。 「ただ、普段の仕事が忙しくて、とても上司に相談して研修を受ける余裕はないし、誰もやっていません」 より深刻なのは、今年度に入ってからも支店長が自爆を強要してきたことだ。 「さすがに以前のように職員を別室に呼んで詰問するという、あからさまなことはしなくなりました。 ただ、達成の見込みがなさそうな職員の机の上に日別の『実績報告書』を置いてノルマがこなせていないことについてプレッシャーをかけたり、その職員に『期日までの日数はわずかしかないが、ちゃんとこなせるんだろうな』と脅したりしてきたんです」』、「さすがに以前のように職員を別室に呼んで詰問するという、あからさまなことはしなくなりました。 ただ、達成の見込みがなさそうな職員の机の上に日別の『実績報告書』を置いてノルマがこなせていないことについてプレッシャーをかけたり、その職員に『期日までの日数はわずかしかないが、ちゃんとこなせるんだろうな』と脅したりしてきたんです」、なるほど
・『正直には答えられない「事前チェックシート」 以上の事態は、既述した「不祥事件」の扱いとなる三つの要因のうち、(1)と(2)に該当する疑いがある。さらに、(3)の要因に相当する事態も起きているという。 渡辺さんがその証拠だというのが、同JAが新たに作成した「職員契約にかかる事前チェックシート」だ。これは、職員や生計を同じくするその家族が新たに共済の契約をする場合、それが「不必要な共済契約」でないことを対外的に証明するための文書である。 文書には、「はい」か「いいえ」のいずれかを記載する項目が3つある。 その内容をかいつまんで説明すると、「ノルマを達成するための契約ではない」「『不必要な共済契約』に該当しない」「不祥事件扱いになる要因に該当しない」だ。これらすべてに「はい」とチェックされたことが確認されなければ共済契約は結べないとされる。これとは別に契約理由を書く欄もある。 ただ、自爆を強要している張本人である支店長らの確認が入るというのに、職員がチェック項目に正直に答えられるはずがない。実際にはノルマを達成するための不必要な契約であるにもかかわらず、そうは答えられないのだ。 おまけに契約理由の欄に書く文章は、あらかじめ決められているという』、「自爆を強要している張本人である支店長らの確認が入るというのに、職員がチェック項目に正直に答えられるはずがない。実際にはノルマを達成するための不必要な契約であるにもかかわらず、そうは答えられないのだ。 おまけに契約理由の欄に書く文章は、あらかじめ決められているという」、全く形式だけで実質的な中身がない。
・『何の意味もない「解約新規」という抜け道 「LAが自爆と見なされないような書き方を教えてきます」 こう証言する渡辺さん自身、今年度になってからも不本意ながらも自爆した。そのために差し出したのは、家族の名義で契約していた、自然災害や火災など建物に関する損害を保障する「建物更生共済」だ。 同JAでは、この共済で次のような手順を踏んで「解約新規」をすれば、保障内容を変えずにノルマのポイントを稼げるという。すなわち、契約者の名義をいったん第三者にしてから解約し、その日のうちに元の名義で新たに入り直すのだ。 渡辺さんは今年度のノルマをこなせそうになかった。そこで、この手順に従って家族の名義をいったん自分名義に変更してから解約し、その日のうちに保障額を従来通りにして家族の名義で再び入り直した。ただ、当初契約した時より予定利率が下がっているので、掛け金は少しだけ上がった。 「ノルマのためという以外に何の意味もない『解約新規』ですから、家族は納得していないようでした」 チェックシートの契約理由の欄には、LAからの指示に従って次のように書いた。 〈見直しをする際に保障額に不安を覚えた。転換もできない内容だったので、改めて加入し直すことにした〉 「保障額は新旧の契約ともに同額なのに、矛盾した文章ですよね。でもLAによれば、これで『不必要な契約』とみなされないそうです。私と同じ方法で建物更生共済の解約新規をした職員は何人もいます。彼らの解約理由の欄を見れば、きっとみんな同じ文章ですよ。農協を挙げて、自爆の隠蔽が行われているんです」』、『解約新規』は私がかって金融機関に勤務していた当時もあった慣行で、懐かしい。
・『ノルマに追われ、公民館の契約更新を「放置」 職員がノルマを達成するため、顧客に不利益をもたらす事態も変わらずに続いているという。 渡辺さんがその一例として挙げたのは、あるLAが行政機関を騙した次の手口だ。このLAは公民館を保障対象にする建物更生共済の契約を得ていた。それが昨年末か年明けかに満期を迎えることになった。常識的なLAなら、すぐに契約の更新を打診するはずだ。 ところが、このLAは意図的に放置したという。'22年度のノルマを達成済みだったため、それ以上にポイントを稼ぐ必要がなかったからだ。むしろゼロスタートになる新年度に入ってから新たに契約してもらったほうがLAにとってはありがたい。そうした利己的な理由から、このLAは公民館が2ヵ月ほど無共済のままであることを見て見ぬふりをしたという。 関東地方のあるJAのLAによると、「ノルマに追われたLAがよく使う手です」という』、「'22年度のノルマを達成済みだったため、それ以上にポイントを稼ぐ必要がなかったからだ。むしろゼロスタートになる新年度に入ってから新たに契約してもらったほうがLAにとってはありがたい。そうした利己的な理由から、このLAは公民館が2ヵ月ほど無共済のままであることを見て見ぬふりをしたという」、「2ヵ月ほど無共済の」期間に事故がなかったのは幸運だ。
・『渡辺さんによる一連の証言についてJA山梨みらいに取材したものの、「一切回答しない」(共済部)とのことだった。 渡辺さんは「少なくとも山梨県では、ほかのJAでもノルマや自爆がなくなっていないようです」と語る。筆者の元には他県の複数のJA職員からの「新年度になってむしろノルマが増えた」という声も聞こえてくる。 農水省は「今も自爆営業をしているなら監督官庁である都道府県に届け出てほしい」(協同組織課)と呼びかけている。JAの「ノルマ地獄」が是正される日は来るのか』、「農水省」などの監督官庁の自粛呼びかけが空虚に響くようだ。
次に、本年9月20日付け東洋経済オンラインが掲載した経済ジャーナリストの岩崎 博充氏による「「令和のコメ騒動」不足解消でも楽観できない事情 人口減少社会で「農地改革」が進まない本当の理由」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/827633
・『コメの品薄が話題になっている中で、いまその原因についてさまざまな分析や検証が進んでいる。インバウンドの外国人によるコメの消費量が増えたとか、気候変動の影響などが指摘されているが、問題の本質は日本の農業政策そのものにある、という指摘も数多い。 地方の農家の数は、毎年すさまじい勢いで減少し続けており、耕作面積も年々確実に減少している。とりわけ、ロシアによるウクライナ侵攻以来、世界的な食料不足が叫ばれ、今や食料政策は軍事力同様に重要な防衛要因となっている。 そんな状況の中で、今年の5月に改正された「食料・農業・農村基本法」(以下、基本法)が注目されている。今後の日本の食料行政、農業行政に大きな影響を与える改正と言っていいだろう。にもかかわらず、マスコミではあまり注目されていない。日本の食料事情や農業行政の根幹に関わる大きなターニングポイントとなるのか……。基本法の概要と我々への影響を考える』、興味深そうだ。
・『輸入頼りの食料政策から自給自足へ転換? 日本の農業が窮地に立たされていることはよく知られている。コメの品薄もその一端と言っていいだろう。今のところ今年のコメは豊作であり、深刻なコメ不足には至っていないものの、日本の農業政策は大きな軌道修正を求められていると言っても過言ではない。 実際に2000年の「基幹的農業従事者(専業農家)」は2000年には240万人いたのが、2023年には116万人に減少。農地面積も2023年は430万ヘクタールだが、ピーク時の1961年と比較すると約3割減少したことになる。 とりわけ、深刻なのが農業従事者の高齢化だ。75歳以上の基幹的農業従事者数は、2000年には全体の13%だったのが、2023年には36%に増加している。人口減少とともに進んできた地方の過疎化が、農業に深刻な影響を与えていると言っていいだろう。) 耕地面積の利用率という面でも、430万ヘクタールのうち91%しか利用されていない。1割は放置されているのが現状だ。そんな状況の中で、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、日本の農業政策は大きな転換点を迎えている。食料自給率の低下を放置して、アメリカなどの食料輸出国から輸入すれば賄えるという基本方針が、ここにきて輸入だけでは賄い切れない現実が見えてきたからだ。 そんな状況の中で、今年5月に成立したのが日本の農業行政の憲法とも言われる「食料・農業・農村基本法」の改正だ。現代の時代に即したものにしようと、政府が戦後続けてきた政策を大きく転換させるものになろうとしている。ちなみに、今回の基本法改正に基づいた農業政策の指針となる基本計画作りを、2025年3月をめどに作成し閣議決定する予定になっている』、「今年5月に成立したのが日本の農業行政の憲法とも言われる「食料・農業・農村基本法」の改正だ。現代の時代に即したものにしようと、政府が戦後続けてきた政策を大きく転換させるものになろうとしている」、なるほど。
・『食料安保の強化目指した基本法改正? 今回の基本法改正では、多岐にわたって修正や新設を行っているのだが、その最大のポイントは「食料安保の強化」に取り組んでいることだ。農林水産省がまとめている「食料・農業・農村基本法改正のポイント令和6年8月」を見ると、次のような4つの点に集約される。 ①食料安全保障を基本理念に食料輸送手段の確保、食料の寄附促進の環境整備、持続可能な食料供給の促進を図ると同時に、海外における事業展開の促進、農産物の輸入に関する措置の拡大、農産物の輸出の促進など、海外からの食料輸入基盤を強固なものにする。 ②環境と調和の取れた食料システム 食品産業の健全な発展、農業における環境への影響を低減することを促進する。異常気象などに対するための食料確保をシステム化する。 ③人口減少下での農業生産性向上 農業の担い手の育成と確保を図り、農地の確保に受けて農業経営の基盤強化を図ることで、農地の確保および有効利用を推進する。さらに、先端技術(スマート農法)を活用した生産・加工・流通方式の導入、農産物の付加価値の向上などを図り、生産性向上を目指す。 ④農村や農業のインフラの整備 農地の保全を目的とした共同活動の促進、地域の資源を活用した事業活動の促進、鳥獣対策など。 単に、農業生産に関する法改正ではなく、包括的に食料を国民の手に届けるためのシステム作りを図ることで、食料安保の強化を整備しようという考えのようだ。実際に、基本法の改正とともに「食料供給困難事態対策法」を2024年6月に成立させている。戦争や大災害など有事の際の食料供給体制を整えるための法律だ。) これまでの日本の農業行政は、コメを除く穀物や肥料など、その大半を輸入に頼ってきた。今回の基本法改正では、90~100%を輸入に頼ってきた化学肥料なども、国内での生産基盤を整備する方向に転換しており、ここにきてやっと輸入だけに頼った農業政策だけではダメであることを政府が認めたといっても過言ではないだろう。食料自給率を何とか高めるための方向に舵を切り始めたと言っていい。 その背景には、従来は高い円に依存して食料は輸入さえすれば何とかなる、と考えていた政府が、1ドル=160円台にまで進んだ円安を見て、食料を輸入できなくなる時代がやってくるかもしれない……、という現実に気付いたと言っていいのかもしれない』、「90~100%を輸入に頼ってきた化学肥料なども、国内での生産基盤を整備する方向に転換しており、ここにきてやっと輸入だけに頼った農業政策だけではダメであることを政府が認めたといっても過言ではないだろう。食料自給率を何とか高めるための方向に舵を切り始めたと言っていい」、なるほど。
・『農業生産の効率向上を阻害する「農地法」の改正は? もっとも、食料の安全保障は、農業政策だけで解決できるような問題ではない。農地の効率的利用を現在よりも大幅に引き上げていく方法を考えなければならない。そのためには、現在の農業生産の向上を阻害している農地法の大幅な改正が必要だと指摘されている。 例えば、現在でも農地を取得するには、年間150日以上農作業を行う農業従事者でなければならないといった厳しい規制が存在する。市町村などが農業委員会などと共同で実施する「農用地利用集積計画」などを使えば、農業従事者以外でも農地を購入することが可能になったものの、地域の農業委員会の許可が必要になるなど、まだまだ数多くの規制が残っている。農地の流動性はまったく進んでいない。 一方、法人の農地取得も同じような状況だ。一定の要件を満たした法人である「農地所有適格法人」にならなければ、農地を取得できないことになっている。一般の株式会社は農地が取得できずに、現在のところ賃貸しか認められていない。法人が農業を始めるにあたっては基盤整備などの長期投資が不可欠だが、賃貸では限界がある。 要するに、現在の農地法では、原則として耕作する人しか農地を所有できないと言うことになっており、幅広い事業を展開する商社などが、農業生産事業に進出しようとしても、農地の確保が日本ではいまだにできないことになる。これでは日本の食料安保を守ることができない。) 実際のところ、農地を相続した人間が、簡単に農地を売却することができないのが現実だ。場所によっては「地目」の変更が可能な場合もあるが、大半の農地は農地のまま売却しようとすると、地域の農業政策委員会や都道府県知事の許可が必要になる。簡単に売却できないとなると、農地を相続した人間にとっては、管理が不十分になったり、耕作放棄の状態に陥ってしまったりする。人口減少に伴って、日本の耕作地が十分に活用されていない理由の1つと言っていい。 ちなみに、農地の売却には「2022年問題」というのもある。1992年に定められた生産緑地法によって、その期限である30年後の2022年に、農地が大量に売却されるのではないかと懸念されていた。農地として活用されていれば、生産緑地法によって固定資産税の減免措置が受けられる状況にあったのだが、その期限が2022年だったわけだ。ただ再申請によって10年延長になっているが、いずれは大量の農地が売却に向かうと予想されている。 ところが、農地法の壁によって農地の流動性はほとんど向上していない。それどころか、年々耕作放棄した農地が増え続けている。こうした現状を改めていこうというのが、今回の食料・農業・農村基本法の改正だが、農地法の抜本的な改正を予想させるような法改正には至っていない。結局のところは、農地を減らさないための農地法でしかなく、農業を活性化させるための農地法になっていない。) この法律には罰則規定もあり、出荷販売業者や輸入業者、生産業者等に対して食料確保の「計画」を届け出る指示を出すことができる。届け出の指示に従わなかった場合には、罰金が科せられ、さらに立ち会い検査等によって特定食料等の在庫を把握することも可能だ。報告の拒否や拒否の報告をした場合にも過料が適用されることになっている。 罰則規定のある法律になったことで、有事の際の食料不足をコントロールする効果を発揮できそうだが、実際にそういう事態になってみないとわからない。重要なことは、これまで輸入だけで何とかなるとしていた政府が、ロシア・ウクライナ戦争などの地政学リスクや気候変動などに直面したことで、海外から食料や肥料、エネルギーが調達できない可能性が出てきたこと。 さらに、海外から輸入できたとしても、国内にすさまじいインフレをもたらす「超円安」が発生したときには、これまでのシステムでは国民を飢えさせてしまうことに気付いたことには高く評価すべきなのかもしれない』、「現在の農地法では、原則として耕作する人しか農地を所有できないと言うことになっており、幅広い事業を展開する商社などが、農業生産事業に進出しようとしても、農地の確保が日本ではいまだにできないことになる。これでは日本の食料安保を守ることができない・・・海外から食料や肥料、エネルギーが調達できない可能性が出てきたこと。 さらに、海外から輸入できたとしても、国内にすさまじいインフレをもたらす「超円安」が発生したときには、これまでのシステムでは国民を飢えさせてしまうことに気付いたことには高く評価すべきなのかもしれない」、なるほど。
・『国際的には高い評価の日本の食料安保? 日本の農業政策は、海外に比べれば、確かに食料自給率は低いものの、今回の「米騒動」のような事態はほとんどこれまでなかった。例えば、英誌エコノミストの調査部門であるエコノミスト・インパクトが2022年9月に発表した「食料安全保障指数(GFSI)」によると、日本は調査対象の113カ国の中で6位となっている。 食料安全保障指数は、食料安保という観点から価格の手頃さ、物理的な入手のしやすさ、品質・安全性、持続可能性、適応性といった項目で数値化したものだ。そのランキングを見ると、次のようになっている。 1、フィンランド 2、アイルランド 3、ノルウェー 4、フランス 5、オランダ 6、日本 7、スウェーデン 8、カナダ 日本の食料安保は、国際的には非常に高いレベルにあると言っていい。日本の農業政策は食料自給率の低さばかりがクローズアップされてしまうが、そういう意味ではエネルギー政策に似たものがある。日本のエネルギーは、ほぼ海外に依存しているわけだが、一時的なものを覗いて、エネルギー不足に陥ったことはほとんどない。 とはいえ、近年のインフレは農業生産にも大きな影響を与えている、例えば「農業物価統計指数」よると、2023年平均の「肥料」の価格指数は147.0(2020年=100)と約5割上昇しており、家畜の餌である飼料も145.8(同)となり5割近く上昇している(日本農業新聞「23年資材価格が過去最高飼・肥料3年で1.5倍農産物へ転嫁限定的」2024年1月31日)。 そんな中で農家の出荷価格は野菜が2023年の平均で113.3(生産者価格指数、2020年=100)と1割の上昇にとどまっている。農産物全体でも107.8にとどまっており、コストを価格転嫁できていないのが現状だ。 人口減少や流動性の少ない農地売買の実態を考えると、日本の農業生産の現場は、持続可能な事業というにはほど遠い。政治家は簡単に世襲が可能だが、日本の農家は世襲すら許されない。それが、現在の日本の農業現場と言っていいだろう』、「日本の食料安保は、国際的には非常に高いレベルにあると言っていい」、意外な結果で驚いた。「コストを価格転嫁できていないのが現状だ。 人口減少や流動性の少ない農地売買の実態を考えると、日本の農業生産の現場は、持続可能な事業というにはほど遠い。政治家は簡単に世襲が可能だが、日本の農家は世襲すら許されない。それが、現在の日本の農業現場と言っていいだろう」、その通りだ。
・『緊急時には農業事業者に計画書の提出を義務化? 一方、同基本法の改正に合わせて6月に成立した「食料供給困難事態対策法」だが、政府が重要とする食料品や物資をあらかじめ指定し、世界的な不作などで供給が大きく減少した場合など、生産者に増産や備蓄を求めるという法律だ。いわば有事に備えた食料安全保障体制の整備と言っていいだろう。今までにも食料の安全確保については、さまざまな政策が存在していたが、既存の体制だけでは対応しきれない事態に備えて、例えばコメや小麦、大豆、その他の植物油脂原料、畜産物、砂糖、といった物資を特定食料として指定し、有事の際には、事業者に対して出荷・販売の調整、輸入の促進、生産・製造の促進を要請することになっている』、「既存の体制だけでは対応しきれない事態に備えて、例えばコメや小麦、大豆、その他の植物油脂原料、畜産物、砂糖、といった物資を特定食料として指定し、有事の際には、事業者に対して出荷・販売の調整、輸入の促進、生産・製造の促進を要請することになっている」、素晴らしいことだ。
先ずは、昨年5月19日付け現代ビジネス「ついに支店長が自爆営業を強要…職員が決死の覚悟で明かす「JAのノルマ地獄」のヤバすぎる実態」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/110260?imp=0
・『共済の過大なノルマ達成のため、JA職員が何十万円もの自腹支払いを強制される「自爆営業」。農水省による監督指針の改正で、少なからず改善したかと思われたが、実はある「抜け道」が存在していた。 前編記事「「顧客をダマして契約獲得」「隠ぺい工作も行われた」JA職員が告発する「いまだに続くヤバすぎる農協のノルマ」の実態」に引き続き紹介する』、興味深そうだ。
・『支店長が「自爆」を強要 「監督指針が改正されたおかげなのか、従来よりも(ノルマの)ポイントは減りました。ただ、それでも負担は大きく、自爆するしかありません」 共済の知識や営業の経験を蓄える場が一般職に設けられていない点も昨年度までと変わらない。毎年度初めに1回開催される1時間程度の研修会があるだけだ。 「これだけの研修で新商品の中身を理解し、顧客に合った売り方を身に着けるなんて無理。一般職は、共済の営業に関しては素人同然なんです」 既述の事業推進部長による一斉メールには、職員が共済の知識や営業の経験が乏しい場合には、当人からの相談に応じてそれらを補う機会を設ける旨が記されていた。 「ただ、普段の仕事が忙しくて、とても上司に相談して研修を受ける余裕はないし、誰もやっていません」 より深刻なのは、今年度に入ってからも支店長が自爆を強要してきたことだ。 「さすがに以前のように職員を別室に呼んで詰問するという、あからさまなことはしなくなりました。 ただ、達成の見込みがなさそうな職員の机の上に日別の『実績報告書』を置いてノルマがこなせていないことについてプレッシャーをかけたり、その職員に『期日までの日数はわずかしかないが、ちゃんとこなせるんだろうな』と脅したりしてきたんです」』、「さすがに以前のように職員を別室に呼んで詰問するという、あからさまなことはしなくなりました。 ただ、達成の見込みがなさそうな職員の机の上に日別の『実績報告書』を置いてノルマがこなせていないことについてプレッシャーをかけたり、その職員に『期日までの日数はわずかしかないが、ちゃんとこなせるんだろうな』と脅したりしてきたんです」、なるほど
・『正直には答えられない「事前チェックシート」 以上の事態は、既述した「不祥事件」の扱いとなる三つの要因のうち、(1)と(2)に該当する疑いがある。さらに、(3)の要因に相当する事態も起きているという。 渡辺さんがその証拠だというのが、同JAが新たに作成した「職員契約にかかる事前チェックシート」だ。これは、職員や生計を同じくするその家族が新たに共済の契約をする場合、それが「不必要な共済契約」でないことを対外的に証明するための文書である。 文書には、「はい」か「いいえ」のいずれかを記載する項目が3つある。 その内容をかいつまんで説明すると、「ノルマを達成するための契約ではない」「『不必要な共済契約』に該当しない」「不祥事件扱いになる要因に該当しない」だ。これらすべてに「はい」とチェックされたことが確認されなければ共済契約は結べないとされる。これとは別に契約理由を書く欄もある。 ただ、自爆を強要している張本人である支店長らの確認が入るというのに、職員がチェック項目に正直に答えられるはずがない。実際にはノルマを達成するための不必要な契約であるにもかかわらず、そうは答えられないのだ。 おまけに契約理由の欄に書く文章は、あらかじめ決められているという』、「自爆を強要している張本人である支店長らの確認が入るというのに、職員がチェック項目に正直に答えられるはずがない。実際にはノルマを達成するための不必要な契約であるにもかかわらず、そうは答えられないのだ。 おまけに契約理由の欄に書く文章は、あらかじめ決められているという」、全く形式だけで実質的な中身がない。
・『何の意味もない「解約新規」という抜け道 「LAが自爆と見なされないような書き方を教えてきます」 こう証言する渡辺さん自身、今年度になってからも不本意ながらも自爆した。そのために差し出したのは、家族の名義で契約していた、自然災害や火災など建物に関する損害を保障する「建物更生共済」だ。 同JAでは、この共済で次のような手順を踏んで「解約新規」をすれば、保障内容を変えずにノルマのポイントを稼げるという。すなわち、契約者の名義をいったん第三者にしてから解約し、その日のうちに元の名義で新たに入り直すのだ。 渡辺さんは今年度のノルマをこなせそうになかった。そこで、この手順に従って家族の名義をいったん自分名義に変更してから解約し、その日のうちに保障額を従来通りにして家族の名義で再び入り直した。ただ、当初契約した時より予定利率が下がっているので、掛け金は少しだけ上がった。 「ノルマのためという以外に何の意味もない『解約新規』ですから、家族は納得していないようでした」 チェックシートの契約理由の欄には、LAからの指示に従って次のように書いた。 〈見直しをする際に保障額に不安を覚えた。転換もできない内容だったので、改めて加入し直すことにした〉 「保障額は新旧の契約ともに同額なのに、矛盾した文章ですよね。でもLAによれば、これで『不必要な契約』とみなされないそうです。私と同じ方法で建物更生共済の解約新規をした職員は何人もいます。彼らの解約理由の欄を見れば、きっとみんな同じ文章ですよ。農協を挙げて、自爆の隠蔽が行われているんです」』、『解約新規』は私がかって金融機関に勤務していた当時もあった慣行で、懐かしい。
・『ノルマに追われ、公民館の契約更新を「放置」 職員がノルマを達成するため、顧客に不利益をもたらす事態も変わらずに続いているという。 渡辺さんがその一例として挙げたのは、あるLAが行政機関を騙した次の手口だ。このLAは公民館を保障対象にする建物更生共済の契約を得ていた。それが昨年末か年明けかに満期を迎えることになった。常識的なLAなら、すぐに契約の更新を打診するはずだ。 ところが、このLAは意図的に放置したという。'22年度のノルマを達成済みだったため、それ以上にポイントを稼ぐ必要がなかったからだ。むしろゼロスタートになる新年度に入ってから新たに契約してもらったほうがLAにとってはありがたい。そうした利己的な理由から、このLAは公民館が2ヵ月ほど無共済のままであることを見て見ぬふりをしたという。 関東地方のあるJAのLAによると、「ノルマに追われたLAがよく使う手です」という』、「'22年度のノルマを達成済みだったため、それ以上にポイントを稼ぐ必要がなかったからだ。むしろゼロスタートになる新年度に入ってから新たに契約してもらったほうがLAにとってはありがたい。そうした利己的な理由から、このLAは公民館が2ヵ月ほど無共済のままであることを見て見ぬふりをしたという」、「2ヵ月ほど無共済の」期間に事故がなかったのは幸運だ。
・『渡辺さんによる一連の証言についてJA山梨みらいに取材したものの、「一切回答しない」(共済部)とのことだった。 渡辺さんは「少なくとも山梨県では、ほかのJAでもノルマや自爆がなくなっていないようです」と語る。筆者の元には他県の複数のJA職員からの「新年度になってむしろノルマが増えた」という声も聞こえてくる。 農水省は「今も自爆営業をしているなら監督官庁である都道府県に届け出てほしい」(協同組織課)と呼びかけている。JAの「ノルマ地獄」が是正される日は来るのか』、「農水省」などの監督官庁の自粛呼びかけが空虚に響くようだ。
次に、本年9月20日付け東洋経済オンラインが掲載した経済ジャーナリストの岩崎 博充氏による「「令和のコメ騒動」不足解消でも楽観できない事情 人口減少社会で「農地改革」が進まない本当の理由」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/827633
・『コメの品薄が話題になっている中で、いまその原因についてさまざまな分析や検証が進んでいる。インバウンドの外国人によるコメの消費量が増えたとか、気候変動の影響などが指摘されているが、問題の本質は日本の農業政策そのものにある、という指摘も数多い。 地方の農家の数は、毎年すさまじい勢いで減少し続けており、耕作面積も年々確実に減少している。とりわけ、ロシアによるウクライナ侵攻以来、世界的な食料不足が叫ばれ、今や食料政策は軍事力同様に重要な防衛要因となっている。 そんな状況の中で、今年の5月に改正された「食料・農業・農村基本法」(以下、基本法)が注目されている。今後の日本の食料行政、農業行政に大きな影響を与える改正と言っていいだろう。にもかかわらず、マスコミではあまり注目されていない。日本の食料事情や農業行政の根幹に関わる大きなターニングポイントとなるのか……。基本法の概要と我々への影響を考える』、興味深そうだ。
・『輸入頼りの食料政策から自給自足へ転換? 日本の農業が窮地に立たされていることはよく知られている。コメの品薄もその一端と言っていいだろう。今のところ今年のコメは豊作であり、深刻なコメ不足には至っていないものの、日本の農業政策は大きな軌道修正を求められていると言っても過言ではない。 実際に2000年の「基幹的農業従事者(専業農家)」は2000年には240万人いたのが、2023年には116万人に減少。農地面積も2023年は430万ヘクタールだが、ピーク時の1961年と比較すると約3割減少したことになる。 とりわけ、深刻なのが農業従事者の高齢化だ。75歳以上の基幹的農業従事者数は、2000年には全体の13%だったのが、2023年には36%に増加している。人口減少とともに進んできた地方の過疎化が、農業に深刻な影響を与えていると言っていいだろう。) 耕地面積の利用率という面でも、430万ヘクタールのうち91%しか利用されていない。1割は放置されているのが現状だ。そんな状況の中で、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、日本の農業政策は大きな転換点を迎えている。食料自給率の低下を放置して、アメリカなどの食料輸出国から輸入すれば賄えるという基本方針が、ここにきて輸入だけでは賄い切れない現実が見えてきたからだ。 そんな状況の中で、今年5月に成立したのが日本の農業行政の憲法とも言われる「食料・農業・農村基本法」の改正だ。現代の時代に即したものにしようと、政府が戦後続けてきた政策を大きく転換させるものになろうとしている。ちなみに、今回の基本法改正に基づいた農業政策の指針となる基本計画作りを、2025年3月をめどに作成し閣議決定する予定になっている』、「今年5月に成立したのが日本の農業行政の憲法とも言われる「食料・農業・農村基本法」の改正だ。現代の時代に即したものにしようと、政府が戦後続けてきた政策を大きく転換させるものになろうとしている」、なるほど。
・『食料安保の強化目指した基本法改正? 今回の基本法改正では、多岐にわたって修正や新設を行っているのだが、その最大のポイントは「食料安保の強化」に取り組んでいることだ。農林水産省がまとめている「食料・農業・農村基本法改正のポイント令和6年8月」を見ると、次のような4つの点に集約される。 ①食料安全保障を基本理念に食料輸送手段の確保、食料の寄附促進の環境整備、持続可能な食料供給の促進を図ると同時に、海外における事業展開の促進、農産物の輸入に関する措置の拡大、農産物の輸出の促進など、海外からの食料輸入基盤を強固なものにする。 ②環境と調和の取れた食料システム 食品産業の健全な発展、農業における環境への影響を低減することを促進する。異常気象などに対するための食料確保をシステム化する。 ③人口減少下での農業生産性向上 農業の担い手の育成と確保を図り、農地の確保に受けて農業経営の基盤強化を図ることで、農地の確保および有効利用を推進する。さらに、先端技術(スマート農法)を活用した生産・加工・流通方式の導入、農産物の付加価値の向上などを図り、生産性向上を目指す。 ④農村や農業のインフラの整備 農地の保全を目的とした共同活動の促進、地域の資源を活用した事業活動の促進、鳥獣対策など。 単に、農業生産に関する法改正ではなく、包括的に食料を国民の手に届けるためのシステム作りを図ることで、食料安保の強化を整備しようという考えのようだ。実際に、基本法の改正とともに「食料供給困難事態対策法」を2024年6月に成立させている。戦争や大災害など有事の際の食料供給体制を整えるための法律だ。) これまでの日本の農業行政は、コメを除く穀物や肥料など、その大半を輸入に頼ってきた。今回の基本法改正では、90~100%を輸入に頼ってきた化学肥料なども、国内での生産基盤を整備する方向に転換しており、ここにきてやっと輸入だけに頼った農業政策だけではダメであることを政府が認めたといっても過言ではないだろう。食料自給率を何とか高めるための方向に舵を切り始めたと言っていい。 その背景には、従来は高い円に依存して食料は輸入さえすれば何とかなる、と考えていた政府が、1ドル=160円台にまで進んだ円安を見て、食料を輸入できなくなる時代がやってくるかもしれない……、という現実に気付いたと言っていいのかもしれない』、「90~100%を輸入に頼ってきた化学肥料なども、国内での生産基盤を整備する方向に転換しており、ここにきてやっと輸入だけに頼った農業政策だけではダメであることを政府が認めたといっても過言ではないだろう。食料自給率を何とか高めるための方向に舵を切り始めたと言っていい」、なるほど。
・『農業生産の効率向上を阻害する「農地法」の改正は? もっとも、食料の安全保障は、農業政策だけで解決できるような問題ではない。農地の効率的利用を現在よりも大幅に引き上げていく方法を考えなければならない。そのためには、現在の農業生産の向上を阻害している農地法の大幅な改正が必要だと指摘されている。 例えば、現在でも農地を取得するには、年間150日以上農作業を行う農業従事者でなければならないといった厳しい規制が存在する。市町村などが農業委員会などと共同で実施する「農用地利用集積計画」などを使えば、農業従事者以外でも農地を購入することが可能になったものの、地域の農業委員会の許可が必要になるなど、まだまだ数多くの規制が残っている。農地の流動性はまったく進んでいない。 一方、法人の農地取得も同じような状況だ。一定の要件を満たした法人である「農地所有適格法人」にならなければ、農地を取得できないことになっている。一般の株式会社は農地が取得できずに、現在のところ賃貸しか認められていない。法人が農業を始めるにあたっては基盤整備などの長期投資が不可欠だが、賃貸では限界がある。 要するに、現在の農地法では、原則として耕作する人しか農地を所有できないと言うことになっており、幅広い事業を展開する商社などが、農業生産事業に進出しようとしても、農地の確保が日本ではいまだにできないことになる。これでは日本の食料安保を守ることができない。) 実際のところ、農地を相続した人間が、簡単に農地を売却することができないのが現実だ。場所によっては「地目」の変更が可能な場合もあるが、大半の農地は農地のまま売却しようとすると、地域の農業政策委員会や都道府県知事の許可が必要になる。簡単に売却できないとなると、農地を相続した人間にとっては、管理が不十分になったり、耕作放棄の状態に陥ってしまったりする。人口減少に伴って、日本の耕作地が十分に活用されていない理由の1つと言っていい。 ちなみに、農地の売却には「2022年問題」というのもある。1992年に定められた生産緑地法によって、その期限である30年後の2022年に、農地が大量に売却されるのではないかと懸念されていた。農地として活用されていれば、生産緑地法によって固定資産税の減免措置が受けられる状況にあったのだが、その期限が2022年だったわけだ。ただ再申請によって10年延長になっているが、いずれは大量の農地が売却に向かうと予想されている。 ところが、農地法の壁によって農地の流動性はほとんど向上していない。それどころか、年々耕作放棄した農地が増え続けている。こうした現状を改めていこうというのが、今回の食料・農業・農村基本法の改正だが、農地法の抜本的な改正を予想させるような法改正には至っていない。結局のところは、農地を減らさないための農地法でしかなく、農業を活性化させるための農地法になっていない。) この法律には罰則規定もあり、出荷販売業者や輸入業者、生産業者等に対して食料確保の「計画」を届け出る指示を出すことができる。届け出の指示に従わなかった場合には、罰金が科せられ、さらに立ち会い検査等によって特定食料等の在庫を把握することも可能だ。報告の拒否や拒否の報告をした場合にも過料が適用されることになっている。 罰則規定のある法律になったことで、有事の際の食料不足をコントロールする効果を発揮できそうだが、実際にそういう事態になってみないとわからない。重要なことは、これまで輸入だけで何とかなるとしていた政府が、ロシア・ウクライナ戦争などの地政学リスクや気候変動などに直面したことで、海外から食料や肥料、エネルギーが調達できない可能性が出てきたこと。 さらに、海外から輸入できたとしても、国内にすさまじいインフレをもたらす「超円安」が発生したときには、これまでのシステムでは国民を飢えさせてしまうことに気付いたことには高く評価すべきなのかもしれない』、「現在の農地法では、原則として耕作する人しか農地を所有できないと言うことになっており、幅広い事業を展開する商社などが、農業生産事業に進出しようとしても、農地の確保が日本ではいまだにできないことになる。これでは日本の食料安保を守ることができない・・・海外から食料や肥料、エネルギーが調達できない可能性が出てきたこと。 さらに、海外から輸入できたとしても、国内にすさまじいインフレをもたらす「超円安」が発生したときには、これまでのシステムでは国民を飢えさせてしまうことに気付いたことには高く評価すべきなのかもしれない」、なるほど。
・『国際的には高い評価の日本の食料安保? 日本の農業政策は、海外に比べれば、確かに食料自給率は低いものの、今回の「米騒動」のような事態はほとんどこれまでなかった。例えば、英誌エコノミストの調査部門であるエコノミスト・インパクトが2022年9月に発表した「食料安全保障指数(GFSI)」によると、日本は調査対象の113カ国の中で6位となっている。 食料安全保障指数は、食料安保という観点から価格の手頃さ、物理的な入手のしやすさ、品質・安全性、持続可能性、適応性といった項目で数値化したものだ。そのランキングを見ると、次のようになっている。 1、フィンランド 2、アイルランド 3、ノルウェー 4、フランス 5、オランダ 6、日本 7、スウェーデン 8、カナダ 日本の食料安保は、国際的には非常に高いレベルにあると言っていい。日本の農業政策は食料自給率の低さばかりがクローズアップされてしまうが、そういう意味ではエネルギー政策に似たものがある。日本のエネルギーは、ほぼ海外に依存しているわけだが、一時的なものを覗いて、エネルギー不足に陥ったことはほとんどない。 とはいえ、近年のインフレは農業生産にも大きな影響を与えている、例えば「農業物価統計指数」よると、2023年平均の「肥料」の価格指数は147.0(2020年=100)と約5割上昇しており、家畜の餌である飼料も145.8(同)となり5割近く上昇している(日本農業新聞「23年資材価格が過去最高飼・肥料3年で1.5倍農産物へ転嫁限定的」2024年1月31日)。 そんな中で農家の出荷価格は野菜が2023年の平均で113.3(生産者価格指数、2020年=100)と1割の上昇にとどまっている。農産物全体でも107.8にとどまっており、コストを価格転嫁できていないのが現状だ。 人口減少や流動性の少ない農地売買の実態を考えると、日本の農業生産の現場は、持続可能な事業というにはほど遠い。政治家は簡単に世襲が可能だが、日本の農家は世襲すら許されない。それが、現在の日本の農業現場と言っていいだろう』、「日本の食料安保は、国際的には非常に高いレベルにあると言っていい」、意外な結果で驚いた。「コストを価格転嫁できていないのが現状だ。 人口減少や流動性の少ない農地売買の実態を考えると、日本の農業生産の現場は、持続可能な事業というにはほど遠い。政治家は簡単に世襲が可能だが、日本の農家は世襲すら許されない。それが、現在の日本の農業現場と言っていいだろう」、その通りだ。
・『緊急時には農業事業者に計画書の提出を義務化? 一方、同基本法の改正に合わせて6月に成立した「食料供給困難事態対策法」だが、政府が重要とする食料品や物資をあらかじめ指定し、世界的な不作などで供給が大きく減少した場合など、生産者に増産や備蓄を求めるという法律だ。いわば有事に備えた食料安全保障体制の整備と言っていいだろう。今までにも食料の安全確保については、さまざまな政策が存在していたが、既存の体制だけでは対応しきれない事態に備えて、例えばコメや小麦、大豆、その他の植物油脂原料、畜産物、砂糖、といった物資を特定食料として指定し、有事の際には、事業者に対して出荷・販売の調整、輸入の促進、生産・製造の促進を要請することになっている』、「既存の体制だけでは対応しきれない事態に備えて、例えばコメや小麦、大豆、その他の植物油脂原料、畜産物、砂糖、といった物資を特定食料として指定し、有事の際には、事業者に対して出荷・販売の調整、輸入の促進、生産・製造の促進を要請することになっている」、素晴らしいことだ。
百貨店業界(その6)(「そごう・西武売却」セブン&アイの2大誤算…経営陣は「逃げ得」できるのか?、セブン そごう・西武売却完了でも残る後味の悪さ 「実質売却額8500万円」は想定の範囲内だった、「西武池袋本店は切り売りされるのか」会社売却報道の真偽を問うと セブン&アイ井阪社長の答えは—— 決断 そごう・西武61年目のストライキ⑧、ヴィトンやエルメスを失ってしまう…セブン&アイに売られた名門百貨店の悲しき末路) [産業動向]
百貨店業界については、昨年5月17日に取上げた。今日は、(その6)(「そごう・西武売却」セブン&アイの2大誤算…経営陣は「逃げ得」できるのか?、セブン そごう・西武売却完了でも残る後味の悪さ 「実質売却額8500万円」は想定の範囲内だった、「西武池袋本店は切り売りされるのか」会社売却報道の真偽を問うと セブン&アイ井阪社長の答えは—— 決断 そごう・西武61年目のストライキ⑧、ヴィトンやエルメスを失ってしまう…セブン&アイに売られた名門百貨店の悲しき末路)である。
先ずは、昨年9月4日付け東洋経済オンライン「セブン、そごう・西武売却完了でも残る後味の悪さ 「実質売却額8500万円」は想定の範囲内だった」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/699144
・『セブン&アイ・ホールディングス(HD)は9月1日、百貨店子会社のそごう・西武をアメリカの投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループに売却した。売却先をフォートレスに決めたのが昨年11月。長期に渡った売却交渉がようやく完了した。 売却額は2200億円と一見高額。しかし売却日当日、セブン&アイは単体で1457億円の特別損失計上を発表、連結の最終利益の予想を下方修正している。 セブン&アイはなぜ損失計上を迫られたのか』、興味深そうだ。
・『2200億円は有利子負債を含めた評価 その理由は極めて単純。そごう・西武の企業価値の評価が、極めて低かったからだ。 2200億円は確かに実際の売却額だが、これは有利子負債を含めた企業価値がベースとなっている。そごう・西武はこれまで約3000億円と多額の有利子負債を抱えていた。売却に伴ってセブン&アイが自社の貸付金のうち916億円を債権放棄しており、残る有利子負債は単純計算で約2100億円。つまり、2200億円という企業価値の大部分は、有利子負債で占められていたことになる。 セブン&アイは損失計上と同時に公表したリリースで、「そごう・西武株式の譲渡価額は(中略)85百万円を見込んでおります」としているが、まさにこのことを指している。有利子負債のほかに運転資本の減少分などを考慮した「実質的な」譲渡価額が、8500万円だったということだ。 セブン&アイはこの実質的な譲渡価額と簿価との差を、株式譲渡関連特損411億円として損失計上した。そごう・西武の企業価値は当初2500億円とされていたが、売却交渉の長期化や売却後の西武池袋本店(池袋西武)のフロアプランの見直しなどに伴って、300億円減額されたことも、損失計上の要因となっている。 ただ、セブン&アイからすれば、譲渡価額8500万円は完全に想定内だったようだ。「損失を出さずに売るのは超ウルトラC」。そごう・西武の売却の過程で、セブン&アイの関係者はこう漏らしていた。 セブン&アイ側も、買収したフォートレス側も、当初から百貨店事業についてはほとんど価値を見出していなかった。逆に実質評価がマイナスにならずに売却できたことで、セブン&アイの担当者は胸をなで下ろしているかもしれない。) 損失計上には別の要因もある。売却に伴ってセブン&アイが損失補填を余儀なくされたことだ。損失補填のほとんどは前述した債権放棄額916億円だが、もう一つの理由がある。 テナントの移転・撤退に伴う「クリーニング費用」の負担だ。今後、池袋西武にはフォートレスと組む家電量販店の「ヨドバシカメラ」が出店する計画だ。そうなれば、既存のテナントは移転を強いられ、場合によっては撤退を余儀なくされる。 まだ移転が決まっていない一部の高級ブランドなど、今後新たに必要となる移転費用は新オーナーであるフォートレスが負担するが、「すでに大枠が決まっているテナントの移動については、セブン&アイ側が負担する」(ディール関係者)。損失補填の中には、このクリーニング費用の負担が含まれている模様だ。 売却スキームではヨドバシの入居によって多くのテナントの移転・撤退が見込まれ、その費用を誰が負担するかも1つの焦点だった。セブン&アイの実際の負担額は非公開だが、「今回で株式譲渡にかかわる損失は出しつくした」(セブン&アイ広報担当者)。売却後の追加負担も懸念されていたが、それは回避されたようだ。 しかし、終わったのはあくまで会計上の処理だけだ。セブン&アイの経営陣には、今後対峙しなければならない課題がなお残されている』、「今後、池袋西武にはフォートレスと組む家電量販店の「ヨドバシカメラ」が出店する計画だ。そうなれば、既存のテナントは移転を強いられ、場合によっては撤退を余儀なくされる。 まだ移転が決まっていない一部の高級ブランドなど、今後新たに必要となる移転費用は新オーナーであるフォートレスが負担するが、「すでに大枠が決まっているテナントの移動については、セブン&アイ側が負担する」、なるほど。
・『法廷の場で明らかになる取締役の責任 一つは株主対応だ。セブン&アイの株主であるそごう・西武の元社員らは、昨年11月の売却公表時に算定された同社の企業価値2500億円が不透明であるとして、井阪隆一社長らセブン&アイHD取締役に損害賠償を求める株主代表訴訟を東京地裁に提訴している。 問題は、売却先を決定する際に、井阪社長ら取締役が善管注意義務を果たしたといえるかどうかだ。今回の売却経緯を巡っては、入札の際に複数のファンドが手を挙げたものの、途中からフォートレスありきで交渉が進んだとする指摘がある。 また、売却直前になって企業価値が減額されたり、債権放棄を余儀なくされたりしたことを考えると、当初2500億円とされた企業価値の算定根拠が正当なものだったのかが、今後争点となりそうだ。) もう一つはそごう・西武の従業員の雇用問題だ。同社の労働組合は、ヨドバシの入居で百貨店の売り場面積が大きく縮小し、「雇用継続の確証が得られない」と反発。8月31日には、池袋西武で大手百貨店として61年ぶりのストライキを決行した。 この問題はフォートレスに売却された後も、くずぶり続ける。セブン&アイはかねてから「(ヨドバシの入居で)従業員の働く場所が物理的になくなり、社内での配置転換も難しい場合、当社も受け入れる用意はある」(広報担当者)としている。 しかし、セブン&アイの主力業態であるコンビニはフランチャイズビジネスであり、それほど多くの社員が必要なわけではない。さらにイトーヨーカ堂などのスーパー事業は構造改革の真っただ中。事業会社の再編に取り組んでおり、「とても人を受け入れられる状況ではない」(セブン&アイ関係者)。十分な雇用の受け皿となるかは不透明だ』、「問題は、売却先を決定する際に、井阪社長ら取締役が善管注意義務を果たしたといえるかどうかだ。今回の売却経緯を巡っては、入札の際に複数のファンドが手を挙げたものの、途中からフォートレスありきで交渉が進んだとする指摘がある。 また、売却直前になって企業価値が減額されたり、債権放棄を余儀なくされたりしたことを考えると、当初2500億円とされた企業価値の算定根拠が正当なものだったのかが、今後争点となりそうだ。) もう一つはそごう・西武の従業員の雇用問題だ」、なるほど。
・『終盤は「孤軍奮闘」状態だった井阪社長 今回、ここまで事態が混乱したのは、労組との関係が象徴するように、「最初から正直に話し合って納得を得るのではなく、ごまかしながら進めた」(ディールの関係者)からだ。 井阪社長は「事業と雇用を継続する」と主張し続ける一方、「直接の雇用者ではない」として労使交渉には応じてこなかった。初めて交渉の席についたのは8月序盤で、そこから売却完了までは1カ月にも満たない。池袋西武の地元である豊島区や駅前商店街との合意もとれないままで、説明責任を果たしたとは到底いえない。 今回の売却のプロセスでは、従業員や地元、さらに消費者というステークホルダーに対する配慮があまりに欠けていた。そして日本の小売業最大手として、百貨店をどう再生するか、そのために最大のシナジーを発揮できる売却先はどこかといった視点が、ほとんどなかったようにみえる。 責任は井阪社長にだけあるのではない。セブン&アイの関係者によると、首脳陣の一部はそごう・西武売却に際し、「『大変ですね』などと発言するだけで、井阪さんの言う『真摯な対応』をしようという姿勢ではなかった」という。この関係者は売却劇終盤の井阪社長を「孤軍奮闘していた」と哀れむ。 株式譲渡の契約から実行まで、セブン&アイは井阪体制におけるガバナンスのもろさを露呈した。今回セブン&アイが失ったものは、決して少なくないように思える』、「今回の売却のプロセスでは、従業員や地元、さらに消費者というステークホルダーに対する配慮があまりに欠けていた。そして日本の小売業最大手として、百貨店をどう再生するか、そのために最大のシナジーを発揮できる売却先はどこかといった視点が、ほとんどなかったようにみえる。 責任は井阪社長にだけあるのではない」との見方もあるが、私は、「井阪社長」の「責任は」重大だと思う。
次に、本年7月26日付け現代ビジネスが掲載した労組委員長の寺岡 泰博氏による「「西武池袋本店は切り売りされるのか」会社売却報道の真偽を問うと、セブン&アイ井阪社長の答えは—— 決断 そごう・西武61年目のストライキ⑧」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/133790?imp=0
・『「池袋の街に、百貨店を残そう!」「西武池袋本店を守ろう」 2023年8月31日、西武百貨店は終日シャッターを下ろして店を閉じ、300人を超える社員が池袋の街をデモ行進しました。 このストライキを決断し、実行したのがそごう・西武労組の寺岡泰博・中央執行委員長です。 寺岡氏は2016年に中央執行委員長に就任、待っていたのは、外資系ファンドへの新たな「会社売却」交渉でした。しかも、そごう・西武を支える中核店舗の池袋店の不動産をヨドバシカメラに売却し、店舗の半分を家電量販店に改装するというのです。 自分たちはこれまで、百貨店人としてのプライドを胸に働いてきた。会社売却しても「雇用を守る」と経営者は言うが、百貨店で働くことと、ヨドバシカメラやコンビニで働くことはまったく意味が違う。「雇用」ではなく、「雇用の場」を守ってほしい。百貨店人としてのプライドを知ってほしい――。 5000人の社員の先頭に立ち、闘いつづけた熱い男の魂の記録、寺岡氏の著書『決断 そごう・西武61年目のストライキ』より、一部を抜粋してお届けします』、「百貨店で働くことと、ヨドバシカメラやコンビニで働くことはまったく意味が違う。「雇用」ではなく、「雇用の場」を守ってほしい。百貨店人としてのプライドを知ってほしい――」、確かにその通りだろう。
・『「報道は寝耳に水」 偶然にも春闘を前にセブン&アイ労連と経営側の労使協議が予定されていた。イトーヨーカドー労組、そごう・西武労組、セブン&アイ・フードシステムズ労組などセブン&アイ各社の労組幹部が、井阪社長らセブン&アイ経営陣と賃上げについて事前協議する。 この年、われわれそごう・西武労組は春闘で具体的な賃上げを含む労働条件改定を要求提案する方針を固め、最終調整の段階に入っていたが、株式売却という衝撃のニュースが流れ、方針転換するかどうかの判断を迫られることになった。 さらにこの労使協議機会で、私はそごう・西武売却報道について井阪社長に現場の声を伝え、要望を届けようと考えていた。 私が主張したのは、「雇用の維持」と「事業の継続」、そして「情報開示」の3つである。以後2023年8月のストライキまで、この3点をブレずに一貫して言いつづけることになる。 「自分たちの店はどうなるのか、お客さま対応は、など不安の声が上がっています。事業会社が(交渉の)主語ではないとなれば、どこまでが事実なのか知りたいというのが現場の本音です。少なくとも報道が先行して混乱しないように事前に情報共有していただきたい。また、売却にあたっては百貨店価値というよりも不動産価値を打ち出しているようにも映ります。百貨店ブランドを守る、雇用を守るということは胸に留めていただきたい」 井阪社長の回答は、相変わらずとらえどころがないものだった。 「かしこまりました。ただ、報道は寝耳に水で私どもが発信したものではないということは理解していただきたい。そごう・西武は駅前立地の資産価値以外にも顧客基盤、取引先さま、優秀な社員などポテンシャルがある会社です。ベストオーナーと組めばもっとバリューが発揮できるはずです。そう考えていただきたい」 報道を肯定するわけでもないが、「絶対に売らない」というわけでもない。「報道は寝耳に水」という言葉にも、違和感があった。セブン&アイという会社は身内には秘密主義なのに、なぜかメディアには容易に経営情報が漏れる。2月7日発売の経済誌でも、セブン&アイの内部資料を入手したとして、DX戦略の頓挫の詳細を報じていた。本当に不思議な話だ』、「セブン&アイという会社は身内には秘密主義なのに、なぜかメディアには容易に経営情報が漏れる。2月7日発売の経済誌でも、セブン&アイの内部資料を入手したとして、DX戦略の頓挫の詳細を報じていた。本当に不思議な話だ」、なるほど。
・『「もう百貨店ではなくなるかもしれない」 そごう・西武の売却を検討していることを、井阪社長がはじめて公に認めたのはこの2ヵ月後、4月7日のセブン&アイの決算発表の場である。 その間、セブン&アイからはなんの発表もないにもかかわらず、「売却先」をめぐる報道は過熱していた。 〈そごう・西武、入札締め切り 売却先、セブンが絞り込みへ〉(朝日新聞2月22日付) セブン&アイ・ホールディングスは21日、傘下で百貨店を運営するそごう・西武の売却先を募る1次入札を締め切った。 〈1次入札、複数応募か〉(読売新聞2月22日付) 投資ファンドなど複数の応札があったとみられ、今後、売却額など条件面の本格的な交渉に入る。 〈1次入札に複数応募 そごう・西武売却〉(共同通信2月22日付) 三井不動産や三菱地所も入札への参加を検討していたが、見送ったもようだ。再開発による収益性を考慮しても、従業員の引き受けなどの負荷が重荷だったとみられる。 〈そごう・西武売却、魅力は? 駅近の一等地 多い「借り物」複数陣営が応札〉(朝日新聞2月25日付) 複数陣営が応札したとみられる背景にあるのが「不動産」としての魅力。国内有数の一等地に主要店を構える一方、(中略)店舗の土地や建物は「借り物」が目立つ。同社によると、西武池袋本店は建物の大半を自社で持つ一方、地権者は複数いる。 〈「そごう・西武売却」、次入札で残った顔ぶれ〉(東洋経済オンライン2月28日付) 1次入札は2月21日に締め切られ、ゴールドマン・サックスをはじめとする外資系投資銀行や、多数の投資ファンドなどが応札。その結果、米大手投資ファンドのブラックストーン・グループ、米ローン・スター、米フォートレス・インベストメント・グループ、そしてシンガポール政府投資公社(GIC)の4社が残り、2次入札に進んだという。 私たちに見えないところで、事態が激しく動いていた。 東洋経済オンラインの記事では、匿名のそごう・西武幹部が「彼らに売却されたら店舗を単なる不動産として扱われ、切り売りされて終わるのではないか。もう百貨店ではなくなるかもしれない」と語っている。たしかに、応札したのがすべて投資ファンドだということが懸念材料だった。 その後の報道によると、2次入札に進んだ4社からブラックストーンが降り、5月に行われた2次入札にはローン・スター、シンガポール政府投資公社、そしてフォートレスの3社が参加したという。 3社のうち、どこが選ばれるのか――。それも結局、日経新聞による報道が先行した。 続きは<池袋西武がヨドバシHDに買われたらどうなるか 社員と労組が恐れた「最悪の展開」>にて公開中。 百貨店人としてのプライドを守るため、5000人の社員の先頭に立ち、闘いつづけた熱い男の魂の記録『決断 そごう・西武61年目のストライキ』が絶賛発売中!』、「応札したのがすべて投資ファンドだということが懸念材料だった」、なるほど。
第三に、9月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したそごう・西武労働組合 中央執行委員長の寺岡泰博氏による「ヴィトンやエルメスを失ってしまう…セブン&アイに売られた名門百貨店の悲しき末路」を紹介しよう。
・『大手デパート「そごう・西武」の旗艦店・西武池袋本店で大改装作業が進んでいる。セブン&アイ傘下だったそごう・西武の株式を2023年9月に買収した米投資運用会社・フォートレスは、西武池袋本店の不動産を3000億円でヨドバシカメラに売った。その結果、2025年夏のグランドオープン後は、売り場面積の半分弱をヨドバシカメラが占めるようになる。こうしたM&Aの意思決定プロセスにおいて、一貫して蚊帳の外に置かれていた従業員たちの不安と苦悩を、当時の労組トップが赤裸々に語った。※本稿は、寺岡泰博『決断 そごう・西武61年目のストライキ』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『労働組合の知らぬ間にニュースで自社の重要発表が NHKのニュース速報が流れた。 「セブン&アイの取締役会が、2023年2月1日を契約実行日とするフォートレスへのそごう・西武株式譲渡を決議」 これから労組への説明というタイミングでまたもリークかーーこれで何度目だろう。つくづく溜め息が出た。 報道によると、セブン&アイはフォートレスにそごう・西武の株式を譲渡する契約を締結することを2022年11月11日の臨時取締役会で決議し、フォートレスのビジネスパートナーとしてヨドバシホールディングスが加わるという。2023年2月1日の株式譲渡の完了(クロージング)まで、「今後の協議で詰めていく」とされていた。 あとになって分かったことだが、売却後の池袋本店の大まかなフロアプランも11日の臨時取締役会で示されていた。それによると、西武池袋本店本館の北ゾーンにヨドバシカメラが入る計画だという。 池袋本店は細長い廊下のような建物で、本館は北、中央、南の3ゾーンに分かれている。池袋駅は南より北側の人流が多く、北ゾーンがもっとも集客力がある。ルイ・ヴィトン、グッチなどのハイブランドも1階北ゾーンに入居している。 フォートレスのプランでは、この北ゾーンからハイブランドを立ち退かせ、すべてヨドバシカメラにするというのである』、「池袋駅は南より北側の人流が多く、北ゾーンがもっとも集客力がある。ルイ・ヴィトン、グッチなどのハイブランドも1階北ゾーンに入居している。 フォートレスのプランでは、この北ゾーンからハイブランドを立ち退かせ、すべてヨドバシカメラにする」、なるほど。
・『労働組合としてのいらだち おカネを出す人が一番強い ヨドバシが北ゾーンに入居することにこだわっているのは、もうひとつ理由があった。池袋本店から北側に向かって歩くと左にビックカメラ、右にヤマダデンキの大型店が並ぶ。仮に現在の池袋本店の北ゾーンにヨドバシカメラが入ると、ビックカメラ、ヤマダデンキに向かう人たちをその手前でせき止めてしまうことになる。ライバルのビックカメラ、ヤマダに強力な打撃を与えることができる立地なのだ。 ヨドバシはさらに手を打っていた。 池袋本店の地下街から東側に広がる約1200坪にわたるショッピングセンター「池袋ショッピングパーク(ISP)」の株式をヨドバシホールディングスが取得する方向だというのだ。 ISPには現在約60のアパレルや飲食店、食料品店が入居するが、ここにもヨドバシカメラが入れば、さらにビックカメラ、ヤマダデンキへの人流は細ることになる。 井阪隆一社長(セブン&アイHD)に近いと見られていた社外取締役の伊藤邦雄氏でさえ、「気がついたら『ヨドバシ百貨店』になっているようなことは、やってはだめだ。あくまでそごう・西武が、百貨店として成長できるプランでなければだめなんだ」と言っていたと聞く。 しかし、「結局、おカネを出す人が一番強い」とあるアナリストが言っていたように、2000億円を出資する予定のヨドバシカメラに発言権があるのは間違いなかった。) これほど重要な決定が、労働組合にいっさいなんの説明も連絡もなく、抜き打ちのような形で実行されてしまったことに、大きな衝撃を受けた。 2022年11月11日午後の臨時中央経営協議会でそごう・西武の林拓二社長は冒頭突如立ち上がり、「申し訳ありません」とわれわれに頭を下げた。 「前日から様々な報道が先行し、当社で働く従業員の皆さまやステークホルダー(利害関係者)、お客さまに多大な不安を与えたことについて、大変申し訳なく、あらためてお詫びを申し上げます」』、「池袋本店の北ゾーンにヨドバシカメラが入ると、ビックカメラ、ヤマダデンキに向かう人たちをその手前でせき止めてしまうことになる。ライバルのビックカメラ、ヤマダに強力な打撃を与えることができる立地なのだ。 ヨドバシはさらに手を打っていた。 池袋本店の地下街から東側に広がる約1200坪にわたるショッピングセンター「池袋ショッピングパーク(ISP)」の株式をヨドバシホールディングスが取得する方向だというのだ。 ISPには現在約60のアパレルや飲食店、食料品店が入居するが、ここにもヨドバシカメラが入れば、さらにビックカメラ、ヤマダデンキへの人流は細ることになる・・・井阪隆一社長(セブン&アイHD)に近いと見られていた社外取締役の伊藤邦雄氏でさえ、「気がついたら『ヨドバシ百貨店』になっているようなことは、やってはだめだ。あくまでそごう・西武が、百貨店として成長できるプランでなければだめなんだ」と言っていたと聞く。 しかし、「結局、おカネを出す人が一番強い」とあるアナリストが言っていたように、2000億円を出資する予定のヨドバシカメラに発言権があるのは間違いなかった」、なるほど。
・『いったいどういうことなのか 労働組合の頭越しの決定 しかし、林社長に謝られても、結果は覆らない。組合側からは当然、厳しい言葉をぶつけた。 「秘密保持の観点やインサイダー取引に抵触するとの懸念から情報開示が難しい状況とのことでしたが、これだけ外部には情報漏洩をしながら、当社で働く従業員には『決定事項は何もない』とは、いったいどういうことなのか。あまりにも、働く従業員や労働組合を置き去りにした対応なのではないでしょうか」 「今後どんなにきれいなメッセージを並べられても真正面から受け止めることができません。労働組合は個人の私利私欲のために動いているわけではありません」 11月11日の中央経営協議会で「申し訳ない」と頭を下げた林社長は、その後、ある決意を固める。) 社長自ら各店舗に出向いて説明行脚する、「店舗ラウンド」をするというのである。 様々な偶然も重なって社長に抜擢されたが、林さんは本来現場の社員に非常に近い心情を持つ人である。今回の株式売却で従業員に不安が広がっていることは「謝っても謝りきれない」ので、11月16日から全10店舗を回って社員に直接思いを伝えたいという』、「様々な偶然も重なって社長に抜擢されたが、林さんは本来現場の社員に非常に近い心情を持つ人である。今回の株式売却で従業員に不安が広がっていることは「謝っても謝りきれない」ので、11月16日から全10店舗を回って社員に直接思いを伝えたいという」、なるほど。
・『社長の全店舗行脚でも拭えきれない不安 林社長はそごう神戸店、西武高槻店がエイチ・ツー・オーリテイリングに営業譲渡された際にも、現地を回って従業員と直接対話をしたことがある。経営幹部からは「かえって混乱を招く」と止められたが、林社長の意思で強行した。林氏はかつて神戸店の店長を務めた経験があり、とくに思い入れが強いということもあった。 神戸店ではかつての部下らに対し、「申し訳ありません」と深々と頭を下げたと聞いている。 11月16日から始めた全店舗行脚で、社長は営業時間前の部課長会などに参加した。 「今回のディールはそごう・西武を再成長させるためのものです。私は、セブン&アイ・ホールディングスと井阪社長を信じています。従って悪いようにはならない、させない。だから安心して目の前の業務、繁忙期を乗り切ってください」) しかし、私はその話を聞いても不安を拭いきれなかった。 林社長の気持ちは本物だろう。さもなければ、この混乱期に10店舗を回って直接現場の社員に謝罪するという行動に出るはずがない。しかしセブン&アイは、本当に「悪いようにしない」だろうか。 ちょうどこの時期、そごう広島店では本館を改装し、新館から退去して本館にまとめる作業に入っていた。今後もこのまま営業を続けていけるのか、不安が広がっていた。そしてその不安は、そごう・西武の社員すべてが共有する不安でもあった』、「しかしセブン&アイは、本当に「悪いようにしない」だろうか」、妥当な疑問だ。
・『百貨店らしくない店で高級品を買いたくない 2022年11月21日に行われたそごう・西武労働組合の臨時中央大会では、組合の各支部から厳しい声が寄せられた。 「1月末の報道(編集部注/2022年1月31日に日経新聞が報じた)以降、お取引先さまから『先の案件は依頼できない』など厳しいお言葉を頂戴することが続き、普段の営業活動に支障が出ている。事業の特性上、交渉期間や取引納入期間が長い案件が多いことも鑑み、お取引先さまに根拠のある説明ができる安心材料が早くほしいと感じている」(商事支部の組合代議員)) 「お客さまから、『百貨店らしくないお店では高級品を買いたくない』というリアルなお声を頂戴することもあります。そのような中で、当社株式売却の報道があり、実際に納品が先になる高級家具の販売がキャンセルになるといった事案も発生しました。営業体制はなにも変わらなくても、すでに報道だけでブランド毀損は始まっているのだと感じています」(池袋支部の組合代議員) お客さまからの声も報告された。 「そごう・西武は百貨店ではなくなってしまうのかという不安」 「ハレの日需要や継続的なメンテナンスが必要な高額品の買い控え」 「問い合わせに対し曖昧な受け答えしか返ってこない現状」 こうした意見は「ブランド毀損」「信用・信頼の低下」「当社および従業員への不信」という3つに集約し、経営陣に伝えた。 11月22日には、労働組合としてアメリカのフォートレス本社に意見書を送付し、事業継続や従業員の雇用維持に影響が出るプランが提示された場合、「労働組合として明確に反対する」ことを伝えた。 11月24日には、フォートレスからそごう・西武経営陣に池袋本店のフロアプランが提示されている。それによると、低層階を中心に全面積の5割がヨドバシカメラ、残った部分で百貨店を展開するという』、「実際に納品が先になる高級家具の販売がキャンセルになるといった事案も発生しました。営業体制はなにも変わらなくても、すでに報道だけでブランド毀損は始まっている・・・「ハレの日需要や継続的なメンテナンスが必要な高額品の買い控え」・・・池袋本店のフロアプランが提示されている。それによると、低層階を中心に全面積の5割がヨドバシカメラ、残った部分で百貨店を展開するという」、私は「ヨドバシカメラ」の会員だが、同社が大きく存在感を増す「西武」で買い物をしたいとは思わない。
・『ルイ・ヴィトンやエルメスを失ってしまうかもしれない 2022年11月11日のセブン&アイ臨時取締役会で示されたのは北ゾーンを中心に3割をヨドバシにする案だったようだが、結局、中央ゾーンも低層階を中心にヨドバシが入るとされていた。 フォートレス陣営は「話し合いの余地はない。これで決定です」と話したという。 もしこのプランが実行されれば、もっとも集客力のある北ゾーンと、中央ゾーンの低層階を失い、池袋本店の大きな魅力のひとつであるルイ・ヴィトン、エルメスなどのハイブランドも失うことになるかもしれない。 井阪社長から4者会談の場で「ヨドバシカメラが入るにしても低層階を占めるなどということはありません。組合員の皆さまにも、機関紙を通じてぜひそれを伝えてください」と言われていたが、この話も結果的に事実とは違った。「現時点で決定事項はない」という言い方で、その後どうなっても言い訳できるように逃げ道を残していたのだ。 「日本第3位」のデパートの座から転落し、お取引先さまから見た魅力も半減どころではないだろう。影響は他店にも及ぶ。2016年にそごう神戸店を営業譲渡したあと、大津店や西神店、徳島店など関西の店舗は軒並み営業力を落とし、結果的に営業終了に追い込まれた。) 基幹店が倒れれば、周辺も巻き込まれる。それはすでに経験済みだった。まして池袋本店は神戸店よりさらに大きな巨艦店である。その北、中央ゾーンを失うことで、そごう・西武という会社自体が今後、立ち行かなくなる可能性もありうる。 さらに、フォートレスからはじめて示されたそのフロアプランに林社長はその場では反論できず、そのまま持ち帰らざるを得なかったという。それを聞いてまた腰が抜けそうになった。 しかもこの時点で、われわれ労働組合にはいまだフロアプランが正式に提示されていない。2022年12月14日に行われた4度目の4者会談でも、井阪社長は「フロアプランは未定」と言い張った』、ここまでみえみえの嘘をつくとは驚かされた。
・『そごう・西武労組には余計な情報は与えない 「フロアプランはどうなるんですか、もう決まっているんですか」 「決まっていません。むしろそれはこれからです」 「普通に考えたら、ヨドバシがお金を出して買った土地で、自らも営業しようとすれば、自分の土地なんだから当然一番いい場所を自分が使いますよね。そうなればわれわれそごう・西武は、百貨店として生き残れなくなるんじゃないですか」) 「このディールの『主語』はあくまでそごう・西武だから、もっと言うと百貨店を知っているのはそごう・西武なんだから、ヨドバシとフォートレスと、われわれセブンではなくてそごう・西武とで誠実に協議して、リースラインを決めればいいんですよ」 「表向きはそうかもしれませんが。自分の土地は、まずは自分がここを使うと決め、残りを君らが使っていいよ、とするのが普通じゃないですか」 「そんな話ではないですから」 「株式譲渡契約が締結されましたね。その契約の中身は知りませんが、ヨドバシが西武池袋本店のどこからどこまで使うというのは、すでに契約書に盛り込まれているんですか」 「そんな契約はありません。むしろヨドバシとそごう・西武とフォートレスが誠実協議をして、面積を決めるという話になっているんだから。それはまさに、これからの話し合い次第です」 フォートレスはすでに「決定事項」としてフロアプランをそごう・西武経営陣に提示しているというのに、井阪社長は「まだ決まっていない」と言う。労組には余計な情報を与えないという姿勢がありありと感じられた。 何が真実なのか。 苛立ちと不満が募った』、「フォートレスはすでに「決定事項」としてフロアプランをそごう・西武経営陣に提示しているというのに、井阪社長は「まだ決まっていない」と言う」、百貨店ビジネスが理解できない「井阪社長」は本当に無責任だ。これまで物言う株主の圧力をかわすために、「西武」を血祭に挙げたのであれば、「西武」は浮かばれないだろう。外部株主の「伊藤邦雄」氏にも頑張ってもらいたいところだ。
先ずは、昨年9月4日付け東洋経済オンライン「セブン、そごう・西武売却完了でも残る後味の悪さ 「実質売却額8500万円」は想定の範囲内だった」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/699144
・『セブン&アイ・ホールディングス(HD)は9月1日、百貨店子会社のそごう・西武をアメリカの投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループに売却した。売却先をフォートレスに決めたのが昨年11月。長期に渡った売却交渉がようやく完了した。 売却額は2200億円と一見高額。しかし売却日当日、セブン&アイは単体で1457億円の特別損失計上を発表、連結の最終利益の予想を下方修正している。 セブン&アイはなぜ損失計上を迫られたのか』、興味深そうだ。
・『2200億円は有利子負債を含めた評価 その理由は極めて単純。そごう・西武の企業価値の評価が、極めて低かったからだ。 2200億円は確かに実際の売却額だが、これは有利子負債を含めた企業価値がベースとなっている。そごう・西武はこれまで約3000億円と多額の有利子負債を抱えていた。売却に伴ってセブン&アイが自社の貸付金のうち916億円を債権放棄しており、残る有利子負債は単純計算で約2100億円。つまり、2200億円という企業価値の大部分は、有利子負債で占められていたことになる。 セブン&アイは損失計上と同時に公表したリリースで、「そごう・西武株式の譲渡価額は(中略)85百万円を見込んでおります」としているが、まさにこのことを指している。有利子負債のほかに運転資本の減少分などを考慮した「実質的な」譲渡価額が、8500万円だったということだ。 セブン&アイはこの実質的な譲渡価額と簿価との差を、株式譲渡関連特損411億円として損失計上した。そごう・西武の企業価値は当初2500億円とされていたが、売却交渉の長期化や売却後の西武池袋本店(池袋西武)のフロアプランの見直しなどに伴って、300億円減額されたことも、損失計上の要因となっている。 ただ、セブン&アイからすれば、譲渡価額8500万円は完全に想定内だったようだ。「損失を出さずに売るのは超ウルトラC」。そごう・西武の売却の過程で、セブン&アイの関係者はこう漏らしていた。 セブン&アイ側も、買収したフォートレス側も、当初から百貨店事業についてはほとんど価値を見出していなかった。逆に実質評価がマイナスにならずに売却できたことで、セブン&アイの担当者は胸をなで下ろしているかもしれない。) 損失計上には別の要因もある。売却に伴ってセブン&アイが損失補填を余儀なくされたことだ。損失補填のほとんどは前述した債権放棄額916億円だが、もう一つの理由がある。 テナントの移転・撤退に伴う「クリーニング費用」の負担だ。今後、池袋西武にはフォートレスと組む家電量販店の「ヨドバシカメラ」が出店する計画だ。そうなれば、既存のテナントは移転を強いられ、場合によっては撤退を余儀なくされる。 まだ移転が決まっていない一部の高級ブランドなど、今後新たに必要となる移転費用は新オーナーであるフォートレスが負担するが、「すでに大枠が決まっているテナントの移動については、セブン&アイ側が負担する」(ディール関係者)。損失補填の中には、このクリーニング費用の負担が含まれている模様だ。 売却スキームではヨドバシの入居によって多くのテナントの移転・撤退が見込まれ、その費用を誰が負担するかも1つの焦点だった。セブン&アイの実際の負担額は非公開だが、「今回で株式譲渡にかかわる損失は出しつくした」(セブン&アイ広報担当者)。売却後の追加負担も懸念されていたが、それは回避されたようだ。 しかし、終わったのはあくまで会計上の処理だけだ。セブン&アイの経営陣には、今後対峙しなければならない課題がなお残されている』、「今後、池袋西武にはフォートレスと組む家電量販店の「ヨドバシカメラ」が出店する計画だ。そうなれば、既存のテナントは移転を強いられ、場合によっては撤退を余儀なくされる。 まだ移転が決まっていない一部の高級ブランドなど、今後新たに必要となる移転費用は新オーナーであるフォートレスが負担するが、「すでに大枠が決まっているテナントの移動については、セブン&アイ側が負担する」、なるほど。
・『法廷の場で明らかになる取締役の責任 一つは株主対応だ。セブン&アイの株主であるそごう・西武の元社員らは、昨年11月の売却公表時に算定された同社の企業価値2500億円が不透明であるとして、井阪隆一社長らセブン&アイHD取締役に損害賠償を求める株主代表訴訟を東京地裁に提訴している。 問題は、売却先を決定する際に、井阪社長ら取締役が善管注意義務を果たしたといえるかどうかだ。今回の売却経緯を巡っては、入札の際に複数のファンドが手を挙げたものの、途中からフォートレスありきで交渉が進んだとする指摘がある。 また、売却直前になって企業価値が減額されたり、債権放棄を余儀なくされたりしたことを考えると、当初2500億円とされた企業価値の算定根拠が正当なものだったのかが、今後争点となりそうだ。) もう一つはそごう・西武の従業員の雇用問題だ。同社の労働組合は、ヨドバシの入居で百貨店の売り場面積が大きく縮小し、「雇用継続の確証が得られない」と反発。8月31日には、池袋西武で大手百貨店として61年ぶりのストライキを決行した。 この問題はフォートレスに売却された後も、くずぶり続ける。セブン&アイはかねてから「(ヨドバシの入居で)従業員の働く場所が物理的になくなり、社内での配置転換も難しい場合、当社も受け入れる用意はある」(広報担当者)としている。 しかし、セブン&アイの主力業態であるコンビニはフランチャイズビジネスであり、それほど多くの社員が必要なわけではない。さらにイトーヨーカ堂などのスーパー事業は構造改革の真っただ中。事業会社の再編に取り組んでおり、「とても人を受け入れられる状況ではない」(セブン&アイ関係者)。十分な雇用の受け皿となるかは不透明だ』、「問題は、売却先を決定する際に、井阪社長ら取締役が善管注意義務を果たしたといえるかどうかだ。今回の売却経緯を巡っては、入札の際に複数のファンドが手を挙げたものの、途中からフォートレスありきで交渉が進んだとする指摘がある。 また、売却直前になって企業価値が減額されたり、債権放棄を余儀なくされたりしたことを考えると、当初2500億円とされた企業価値の算定根拠が正当なものだったのかが、今後争点となりそうだ。) もう一つはそごう・西武の従業員の雇用問題だ」、なるほど。
・『終盤は「孤軍奮闘」状態だった井阪社長 今回、ここまで事態が混乱したのは、労組との関係が象徴するように、「最初から正直に話し合って納得を得るのではなく、ごまかしながら進めた」(ディールの関係者)からだ。 井阪社長は「事業と雇用を継続する」と主張し続ける一方、「直接の雇用者ではない」として労使交渉には応じてこなかった。初めて交渉の席についたのは8月序盤で、そこから売却完了までは1カ月にも満たない。池袋西武の地元である豊島区や駅前商店街との合意もとれないままで、説明責任を果たしたとは到底いえない。 今回の売却のプロセスでは、従業員や地元、さらに消費者というステークホルダーに対する配慮があまりに欠けていた。そして日本の小売業最大手として、百貨店をどう再生するか、そのために最大のシナジーを発揮できる売却先はどこかといった視点が、ほとんどなかったようにみえる。 責任は井阪社長にだけあるのではない。セブン&アイの関係者によると、首脳陣の一部はそごう・西武売却に際し、「『大変ですね』などと発言するだけで、井阪さんの言う『真摯な対応』をしようという姿勢ではなかった」という。この関係者は売却劇終盤の井阪社長を「孤軍奮闘していた」と哀れむ。 株式譲渡の契約から実行まで、セブン&アイは井阪体制におけるガバナンスのもろさを露呈した。今回セブン&アイが失ったものは、決して少なくないように思える』、「今回の売却のプロセスでは、従業員や地元、さらに消費者というステークホルダーに対する配慮があまりに欠けていた。そして日本の小売業最大手として、百貨店をどう再生するか、そのために最大のシナジーを発揮できる売却先はどこかといった視点が、ほとんどなかったようにみえる。 責任は井阪社長にだけあるのではない」との見方もあるが、私は、「井阪社長」の「責任は」重大だと思う。
次に、本年7月26日付け現代ビジネスが掲載した労組委員長の寺岡 泰博氏による「「西武池袋本店は切り売りされるのか」会社売却報道の真偽を問うと、セブン&アイ井阪社長の答えは—— 決断 そごう・西武61年目のストライキ⑧」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/133790?imp=0
・『「池袋の街に、百貨店を残そう!」「西武池袋本店を守ろう」 2023年8月31日、西武百貨店は終日シャッターを下ろして店を閉じ、300人を超える社員が池袋の街をデモ行進しました。 このストライキを決断し、実行したのがそごう・西武労組の寺岡泰博・中央執行委員長です。 寺岡氏は2016年に中央執行委員長に就任、待っていたのは、外資系ファンドへの新たな「会社売却」交渉でした。しかも、そごう・西武を支える中核店舗の池袋店の不動産をヨドバシカメラに売却し、店舗の半分を家電量販店に改装するというのです。 自分たちはこれまで、百貨店人としてのプライドを胸に働いてきた。会社売却しても「雇用を守る」と経営者は言うが、百貨店で働くことと、ヨドバシカメラやコンビニで働くことはまったく意味が違う。「雇用」ではなく、「雇用の場」を守ってほしい。百貨店人としてのプライドを知ってほしい――。 5000人の社員の先頭に立ち、闘いつづけた熱い男の魂の記録、寺岡氏の著書『決断 そごう・西武61年目のストライキ』より、一部を抜粋してお届けします』、「百貨店で働くことと、ヨドバシカメラやコンビニで働くことはまったく意味が違う。「雇用」ではなく、「雇用の場」を守ってほしい。百貨店人としてのプライドを知ってほしい――」、確かにその通りだろう。
・『「報道は寝耳に水」 偶然にも春闘を前にセブン&アイ労連と経営側の労使協議が予定されていた。イトーヨーカドー労組、そごう・西武労組、セブン&アイ・フードシステムズ労組などセブン&アイ各社の労組幹部が、井阪社長らセブン&アイ経営陣と賃上げについて事前協議する。 この年、われわれそごう・西武労組は春闘で具体的な賃上げを含む労働条件改定を要求提案する方針を固め、最終調整の段階に入っていたが、株式売却という衝撃のニュースが流れ、方針転換するかどうかの判断を迫られることになった。 さらにこの労使協議機会で、私はそごう・西武売却報道について井阪社長に現場の声を伝え、要望を届けようと考えていた。 私が主張したのは、「雇用の維持」と「事業の継続」、そして「情報開示」の3つである。以後2023年8月のストライキまで、この3点をブレずに一貫して言いつづけることになる。 「自分たちの店はどうなるのか、お客さま対応は、など不安の声が上がっています。事業会社が(交渉の)主語ではないとなれば、どこまでが事実なのか知りたいというのが現場の本音です。少なくとも報道が先行して混乱しないように事前に情報共有していただきたい。また、売却にあたっては百貨店価値というよりも不動産価値を打ち出しているようにも映ります。百貨店ブランドを守る、雇用を守るということは胸に留めていただきたい」 井阪社長の回答は、相変わらずとらえどころがないものだった。 「かしこまりました。ただ、報道は寝耳に水で私どもが発信したものではないということは理解していただきたい。そごう・西武は駅前立地の資産価値以外にも顧客基盤、取引先さま、優秀な社員などポテンシャルがある会社です。ベストオーナーと組めばもっとバリューが発揮できるはずです。そう考えていただきたい」 報道を肯定するわけでもないが、「絶対に売らない」というわけでもない。「報道は寝耳に水」という言葉にも、違和感があった。セブン&アイという会社は身内には秘密主義なのに、なぜかメディアには容易に経営情報が漏れる。2月7日発売の経済誌でも、セブン&アイの内部資料を入手したとして、DX戦略の頓挫の詳細を報じていた。本当に不思議な話だ』、「セブン&アイという会社は身内には秘密主義なのに、なぜかメディアには容易に経営情報が漏れる。2月7日発売の経済誌でも、セブン&アイの内部資料を入手したとして、DX戦略の頓挫の詳細を報じていた。本当に不思議な話だ」、なるほど。
・『「もう百貨店ではなくなるかもしれない」 そごう・西武の売却を検討していることを、井阪社長がはじめて公に認めたのはこの2ヵ月後、4月7日のセブン&アイの決算発表の場である。 その間、セブン&アイからはなんの発表もないにもかかわらず、「売却先」をめぐる報道は過熱していた。 〈そごう・西武、入札締め切り 売却先、セブンが絞り込みへ〉(朝日新聞2月22日付) セブン&アイ・ホールディングスは21日、傘下で百貨店を運営するそごう・西武の売却先を募る1次入札を締め切った。 〈1次入札、複数応募か〉(読売新聞2月22日付) 投資ファンドなど複数の応札があったとみられ、今後、売却額など条件面の本格的な交渉に入る。 〈1次入札に複数応募 そごう・西武売却〉(共同通信2月22日付) 三井不動産や三菱地所も入札への参加を検討していたが、見送ったもようだ。再開発による収益性を考慮しても、従業員の引き受けなどの負荷が重荷だったとみられる。 〈そごう・西武売却、魅力は? 駅近の一等地 多い「借り物」複数陣営が応札〉(朝日新聞2月25日付) 複数陣営が応札したとみられる背景にあるのが「不動産」としての魅力。国内有数の一等地に主要店を構える一方、(中略)店舗の土地や建物は「借り物」が目立つ。同社によると、西武池袋本店は建物の大半を自社で持つ一方、地権者は複数いる。 〈「そごう・西武売却」、次入札で残った顔ぶれ〉(東洋経済オンライン2月28日付) 1次入札は2月21日に締め切られ、ゴールドマン・サックスをはじめとする外資系投資銀行や、多数の投資ファンドなどが応札。その結果、米大手投資ファンドのブラックストーン・グループ、米ローン・スター、米フォートレス・インベストメント・グループ、そしてシンガポール政府投資公社(GIC)の4社が残り、2次入札に進んだという。 私たちに見えないところで、事態が激しく動いていた。 東洋経済オンラインの記事では、匿名のそごう・西武幹部が「彼らに売却されたら店舗を単なる不動産として扱われ、切り売りされて終わるのではないか。もう百貨店ではなくなるかもしれない」と語っている。たしかに、応札したのがすべて投資ファンドだということが懸念材料だった。 その後の報道によると、2次入札に進んだ4社からブラックストーンが降り、5月に行われた2次入札にはローン・スター、シンガポール政府投資公社、そしてフォートレスの3社が参加したという。 3社のうち、どこが選ばれるのか――。それも結局、日経新聞による報道が先行した。 続きは<池袋西武がヨドバシHDに買われたらどうなるか 社員と労組が恐れた「最悪の展開」>にて公開中。 百貨店人としてのプライドを守るため、5000人の社員の先頭に立ち、闘いつづけた熱い男の魂の記録『決断 そごう・西武61年目のストライキ』が絶賛発売中!』、「応札したのがすべて投資ファンドだということが懸念材料だった」、なるほど。
第三に、9月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したそごう・西武労働組合 中央執行委員長の寺岡泰博氏による「ヴィトンやエルメスを失ってしまう…セブン&アイに売られた名門百貨店の悲しき末路」を紹介しよう。
・『大手デパート「そごう・西武」の旗艦店・西武池袋本店で大改装作業が進んでいる。セブン&アイ傘下だったそごう・西武の株式を2023年9月に買収した米投資運用会社・フォートレスは、西武池袋本店の不動産を3000億円でヨドバシカメラに売った。その結果、2025年夏のグランドオープン後は、売り場面積の半分弱をヨドバシカメラが占めるようになる。こうしたM&Aの意思決定プロセスにおいて、一貫して蚊帳の外に置かれていた従業員たちの不安と苦悩を、当時の労組トップが赤裸々に語った。※本稿は、寺岡泰博『決断 そごう・西武61年目のストライキ』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『労働組合の知らぬ間にニュースで自社の重要発表が NHKのニュース速報が流れた。 「セブン&アイの取締役会が、2023年2月1日を契約実行日とするフォートレスへのそごう・西武株式譲渡を決議」 これから労組への説明というタイミングでまたもリークかーーこれで何度目だろう。つくづく溜め息が出た。 報道によると、セブン&アイはフォートレスにそごう・西武の株式を譲渡する契約を締結することを2022年11月11日の臨時取締役会で決議し、フォートレスのビジネスパートナーとしてヨドバシホールディングスが加わるという。2023年2月1日の株式譲渡の完了(クロージング)まで、「今後の協議で詰めていく」とされていた。 あとになって分かったことだが、売却後の池袋本店の大まかなフロアプランも11日の臨時取締役会で示されていた。それによると、西武池袋本店本館の北ゾーンにヨドバシカメラが入る計画だという。 池袋本店は細長い廊下のような建物で、本館は北、中央、南の3ゾーンに分かれている。池袋駅は南より北側の人流が多く、北ゾーンがもっとも集客力がある。ルイ・ヴィトン、グッチなどのハイブランドも1階北ゾーンに入居している。 フォートレスのプランでは、この北ゾーンからハイブランドを立ち退かせ、すべてヨドバシカメラにするというのである』、「池袋駅は南より北側の人流が多く、北ゾーンがもっとも集客力がある。ルイ・ヴィトン、グッチなどのハイブランドも1階北ゾーンに入居している。 フォートレスのプランでは、この北ゾーンからハイブランドを立ち退かせ、すべてヨドバシカメラにする」、なるほど。
・『労働組合としてのいらだち おカネを出す人が一番強い ヨドバシが北ゾーンに入居することにこだわっているのは、もうひとつ理由があった。池袋本店から北側に向かって歩くと左にビックカメラ、右にヤマダデンキの大型店が並ぶ。仮に現在の池袋本店の北ゾーンにヨドバシカメラが入ると、ビックカメラ、ヤマダデンキに向かう人たちをその手前でせき止めてしまうことになる。ライバルのビックカメラ、ヤマダに強力な打撃を与えることができる立地なのだ。 ヨドバシはさらに手を打っていた。 池袋本店の地下街から東側に広がる約1200坪にわたるショッピングセンター「池袋ショッピングパーク(ISP)」の株式をヨドバシホールディングスが取得する方向だというのだ。 ISPには現在約60のアパレルや飲食店、食料品店が入居するが、ここにもヨドバシカメラが入れば、さらにビックカメラ、ヤマダデンキへの人流は細ることになる。 井阪隆一社長(セブン&アイHD)に近いと見られていた社外取締役の伊藤邦雄氏でさえ、「気がついたら『ヨドバシ百貨店』になっているようなことは、やってはだめだ。あくまでそごう・西武が、百貨店として成長できるプランでなければだめなんだ」と言っていたと聞く。 しかし、「結局、おカネを出す人が一番強い」とあるアナリストが言っていたように、2000億円を出資する予定のヨドバシカメラに発言権があるのは間違いなかった。) これほど重要な決定が、労働組合にいっさいなんの説明も連絡もなく、抜き打ちのような形で実行されてしまったことに、大きな衝撃を受けた。 2022年11月11日午後の臨時中央経営協議会でそごう・西武の林拓二社長は冒頭突如立ち上がり、「申し訳ありません」とわれわれに頭を下げた。 「前日から様々な報道が先行し、当社で働く従業員の皆さまやステークホルダー(利害関係者)、お客さまに多大な不安を与えたことについて、大変申し訳なく、あらためてお詫びを申し上げます」』、「池袋本店の北ゾーンにヨドバシカメラが入ると、ビックカメラ、ヤマダデンキに向かう人たちをその手前でせき止めてしまうことになる。ライバルのビックカメラ、ヤマダに強力な打撃を与えることができる立地なのだ。 ヨドバシはさらに手を打っていた。 池袋本店の地下街から東側に広がる約1200坪にわたるショッピングセンター「池袋ショッピングパーク(ISP)」の株式をヨドバシホールディングスが取得する方向だというのだ。 ISPには現在約60のアパレルや飲食店、食料品店が入居するが、ここにもヨドバシカメラが入れば、さらにビックカメラ、ヤマダデンキへの人流は細ることになる・・・井阪隆一社長(セブン&アイHD)に近いと見られていた社外取締役の伊藤邦雄氏でさえ、「気がついたら『ヨドバシ百貨店』になっているようなことは、やってはだめだ。あくまでそごう・西武が、百貨店として成長できるプランでなければだめなんだ」と言っていたと聞く。 しかし、「結局、おカネを出す人が一番強い」とあるアナリストが言っていたように、2000億円を出資する予定のヨドバシカメラに発言権があるのは間違いなかった」、なるほど。
・『いったいどういうことなのか 労働組合の頭越しの決定 しかし、林社長に謝られても、結果は覆らない。組合側からは当然、厳しい言葉をぶつけた。 「秘密保持の観点やインサイダー取引に抵触するとの懸念から情報開示が難しい状況とのことでしたが、これだけ外部には情報漏洩をしながら、当社で働く従業員には『決定事項は何もない』とは、いったいどういうことなのか。あまりにも、働く従業員や労働組合を置き去りにした対応なのではないでしょうか」 「今後どんなにきれいなメッセージを並べられても真正面から受け止めることができません。労働組合は個人の私利私欲のために動いているわけではありません」 11月11日の中央経営協議会で「申し訳ない」と頭を下げた林社長は、その後、ある決意を固める。) 社長自ら各店舗に出向いて説明行脚する、「店舗ラウンド」をするというのである。 様々な偶然も重なって社長に抜擢されたが、林さんは本来現場の社員に非常に近い心情を持つ人である。今回の株式売却で従業員に不安が広がっていることは「謝っても謝りきれない」ので、11月16日から全10店舗を回って社員に直接思いを伝えたいという』、「様々な偶然も重なって社長に抜擢されたが、林さんは本来現場の社員に非常に近い心情を持つ人である。今回の株式売却で従業員に不安が広がっていることは「謝っても謝りきれない」ので、11月16日から全10店舗を回って社員に直接思いを伝えたいという」、なるほど。
・『社長の全店舗行脚でも拭えきれない不安 林社長はそごう神戸店、西武高槻店がエイチ・ツー・オーリテイリングに営業譲渡された際にも、現地を回って従業員と直接対話をしたことがある。経営幹部からは「かえって混乱を招く」と止められたが、林社長の意思で強行した。林氏はかつて神戸店の店長を務めた経験があり、とくに思い入れが強いということもあった。 神戸店ではかつての部下らに対し、「申し訳ありません」と深々と頭を下げたと聞いている。 11月16日から始めた全店舗行脚で、社長は営業時間前の部課長会などに参加した。 「今回のディールはそごう・西武を再成長させるためのものです。私は、セブン&アイ・ホールディングスと井阪社長を信じています。従って悪いようにはならない、させない。だから安心して目の前の業務、繁忙期を乗り切ってください」) しかし、私はその話を聞いても不安を拭いきれなかった。 林社長の気持ちは本物だろう。さもなければ、この混乱期に10店舗を回って直接現場の社員に謝罪するという行動に出るはずがない。しかしセブン&アイは、本当に「悪いようにしない」だろうか。 ちょうどこの時期、そごう広島店では本館を改装し、新館から退去して本館にまとめる作業に入っていた。今後もこのまま営業を続けていけるのか、不安が広がっていた。そしてその不安は、そごう・西武の社員すべてが共有する不安でもあった』、「しかしセブン&アイは、本当に「悪いようにしない」だろうか」、妥当な疑問だ。
・『百貨店らしくない店で高級品を買いたくない 2022年11月21日に行われたそごう・西武労働組合の臨時中央大会では、組合の各支部から厳しい声が寄せられた。 「1月末の報道(編集部注/2022年1月31日に日経新聞が報じた)以降、お取引先さまから『先の案件は依頼できない』など厳しいお言葉を頂戴することが続き、普段の営業活動に支障が出ている。事業の特性上、交渉期間や取引納入期間が長い案件が多いことも鑑み、お取引先さまに根拠のある説明ができる安心材料が早くほしいと感じている」(商事支部の組合代議員)) 「お客さまから、『百貨店らしくないお店では高級品を買いたくない』というリアルなお声を頂戴することもあります。そのような中で、当社株式売却の報道があり、実際に納品が先になる高級家具の販売がキャンセルになるといった事案も発生しました。営業体制はなにも変わらなくても、すでに報道だけでブランド毀損は始まっているのだと感じています」(池袋支部の組合代議員) お客さまからの声も報告された。 「そごう・西武は百貨店ではなくなってしまうのかという不安」 「ハレの日需要や継続的なメンテナンスが必要な高額品の買い控え」 「問い合わせに対し曖昧な受け答えしか返ってこない現状」 こうした意見は「ブランド毀損」「信用・信頼の低下」「当社および従業員への不信」という3つに集約し、経営陣に伝えた。 11月22日には、労働組合としてアメリカのフォートレス本社に意見書を送付し、事業継続や従業員の雇用維持に影響が出るプランが提示された場合、「労働組合として明確に反対する」ことを伝えた。 11月24日には、フォートレスからそごう・西武経営陣に池袋本店のフロアプランが提示されている。それによると、低層階を中心に全面積の5割がヨドバシカメラ、残った部分で百貨店を展開するという』、「実際に納品が先になる高級家具の販売がキャンセルになるといった事案も発生しました。営業体制はなにも変わらなくても、すでに報道だけでブランド毀損は始まっている・・・「ハレの日需要や継続的なメンテナンスが必要な高額品の買い控え」・・・池袋本店のフロアプランが提示されている。それによると、低層階を中心に全面積の5割がヨドバシカメラ、残った部分で百貨店を展開するという」、私は「ヨドバシカメラ」の会員だが、同社が大きく存在感を増す「西武」で買い物をしたいとは思わない。
・『ルイ・ヴィトンやエルメスを失ってしまうかもしれない 2022年11月11日のセブン&アイ臨時取締役会で示されたのは北ゾーンを中心に3割をヨドバシにする案だったようだが、結局、中央ゾーンも低層階を中心にヨドバシが入るとされていた。 フォートレス陣営は「話し合いの余地はない。これで決定です」と話したという。 もしこのプランが実行されれば、もっとも集客力のある北ゾーンと、中央ゾーンの低層階を失い、池袋本店の大きな魅力のひとつであるルイ・ヴィトン、エルメスなどのハイブランドも失うことになるかもしれない。 井阪社長から4者会談の場で「ヨドバシカメラが入るにしても低層階を占めるなどということはありません。組合員の皆さまにも、機関紙を通じてぜひそれを伝えてください」と言われていたが、この話も結果的に事実とは違った。「現時点で決定事項はない」という言い方で、その後どうなっても言い訳できるように逃げ道を残していたのだ。 「日本第3位」のデパートの座から転落し、お取引先さまから見た魅力も半減どころではないだろう。影響は他店にも及ぶ。2016年にそごう神戸店を営業譲渡したあと、大津店や西神店、徳島店など関西の店舗は軒並み営業力を落とし、結果的に営業終了に追い込まれた。) 基幹店が倒れれば、周辺も巻き込まれる。それはすでに経験済みだった。まして池袋本店は神戸店よりさらに大きな巨艦店である。その北、中央ゾーンを失うことで、そごう・西武という会社自体が今後、立ち行かなくなる可能性もありうる。 さらに、フォートレスからはじめて示されたそのフロアプランに林社長はその場では反論できず、そのまま持ち帰らざるを得なかったという。それを聞いてまた腰が抜けそうになった。 しかもこの時点で、われわれ労働組合にはいまだフロアプランが正式に提示されていない。2022年12月14日に行われた4度目の4者会談でも、井阪社長は「フロアプランは未定」と言い張った』、ここまでみえみえの嘘をつくとは驚かされた。
・『そごう・西武労組には余計な情報は与えない 「フロアプランはどうなるんですか、もう決まっているんですか」 「決まっていません。むしろそれはこれからです」 「普通に考えたら、ヨドバシがお金を出して買った土地で、自らも営業しようとすれば、自分の土地なんだから当然一番いい場所を自分が使いますよね。そうなればわれわれそごう・西武は、百貨店として生き残れなくなるんじゃないですか」) 「このディールの『主語』はあくまでそごう・西武だから、もっと言うと百貨店を知っているのはそごう・西武なんだから、ヨドバシとフォートレスと、われわれセブンではなくてそごう・西武とで誠実に協議して、リースラインを決めればいいんですよ」 「表向きはそうかもしれませんが。自分の土地は、まずは自分がここを使うと決め、残りを君らが使っていいよ、とするのが普通じゃないですか」 「そんな話ではないですから」 「株式譲渡契約が締結されましたね。その契約の中身は知りませんが、ヨドバシが西武池袋本店のどこからどこまで使うというのは、すでに契約書に盛り込まれているんですか」 「そんな契約はありません。むしろヨドバシとそごう・西武とフォートレスが誠実協議をして、面積を決めるという話になっているんだから。それはまさに、これからの話し合い次第です」 フォートレスはすでに「決定事項」としてフロアプランをそごう・西武経営陣に提示しているというのに、井阪社長は「まだ決まっていない」と言う。労組には余計な情報を与えないという姿勢がありありと感じられた。 何が真実なのか。 苛立ちと不満が募った』、「フォートレスはすでに「決定事項」としてフロアプランをそごう・西武経営陣に提示しているというのに、井阪社長は「まだ決まっていない」と言う」、百貨店ビジネスが理解できない「井阪社長」は本当に無責任だ。これまで物言う株主の圧力をかわすために、「西武」を血祭に挙げたのであれば、「西武」は浮かばれないだろう。外部株主の「伊藤邦雄」氏にも頑張ってもらいたいところだ。
タグ:ダイヤモンド・オンライン 寺岡泰博氏による「ヴィトンやエルメスを失ってしまう…セブン&アイに売られた名門百貨店の悲しき末路」 寺岡泰博『決断 そごう・西武61年目のストライキ』(講談社) 「池袋駅は南より北側の人流が多く、北ゾーンがもっとも集客力がある。ルイ・ヴィトン、グッチなどのハイブランドも1階北ゾーンに入居している。 フォートレスのプランでは、この北ゾーンからハイブランドを立ち退かせ、すべてヨドバシカメラにする」、なるほど。 「池袋本店の北ゾーンにヨドバシカメラが入ると、ビックカメラ、ヤマダデンキに向かう人たちをその手前でせき止めてしまうことになる。ライバルのビックカメラ、ヤマダに強力な打撃を与えることができる立地なのだ。 ヨドバシはさらに手を打っていた。 池袋本店の地下街から東側に広がる約1200坪にわたるショッピングセンター「池袋ショッピングパーク(ISP)」の株式をヨドバシホールディングスが取得する方向だというのだ。 ISPには現在約60のアパレルや飲食店、食料品店が入居するが、ここにもヨドバシカメラが入れば、さらにビックカメラ、ヤマダデンキへの人流は細ることになる・・・井阪隆一社長(セブン&アイHD)に近いと見られていた社外取締役の伊藤邦雄氏でさえ、「気がついたら『ヨドバシ百貨店』になっているようなことは、やってはだめだ。あくまでそごう・西武が、百貨店として成長できるプランでなければだめなんだ」と言っていたと聞く。 しかし、「結局、おカネを出す人が一番強い」とあるアナリストが言っていたように、2000億円を出資する予 定のヨドバシカメラに発言権があるのは間違いなかった」、なるほど。 「様々な偶然も重なって社長に抜擢されたが、林さんは本来現場の社員に非常に近い心情を持つ人である。今回の株式売却で従業員に不安が広がっていることは「謝っても謝りきれない」ので、11月16日から全10店舗を回って社員に直接思いを伝えたいという」、なるほど。 「しかしセブン&アイは、本当に「悪いようにしない」だろうか」、妥当な疑問だ。 「実際に納品が先になる高級家具の販売がキャンセルになるといった事案も発生しました。営業体制はなにも変わらなくても、すでに報道だけでブランド毀損は始まっている・・・「ハレの日需要や継続的なメンテナンスが必要な高額品の買い控え」・・・池袋本店のフロアプランが提示されている。それによると、低層階を中心に全面積の5割がヨドバシカメラ、残った部分で百貨店を展開するという」、私は「ヨドバシカメラ」の会員だが、同社が大きく存在感を増す「西武」で買い物をしたいとは思わない。 ここまでみえみえの嘘をつくとは驚かされた。 「フォートレスはすでに「決定事項」としてフロアプランをそごう・西武経営陣に提示しているというのに、井阪社長は「まだ決まっていない」と言う」、百貨店ビジネスが理解できない「井阪社長」は本当に無責任だ。これまで物言う株主の圧力をかわすために、「西武」を血祭に挙げたのであれば、「西武」は浮かばれないだろう。外部株主の「伊藤邦雄」氏にも頑張ってもらいたいところだ。
鉄道(その13)(豪雪で露呈 オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り、「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」 自前の工場で徹底整備、JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは) [産業動向]
鉄道については、本年2月19日に取上げた。今日は、(その13)(豪雪で露呈 オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り、「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」 自前の工場で徹底整備、JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは)である。
先ずは、本年3月1日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「豪雪で露呈、オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/737656
・『2023年12月初旬、ドイツやオーストリアなど中欧と呼ばれる地域を中心に、非常に強い寒波が襲った。ミュンヘンなど大都市周辺でも、積雪は数十センチを超え、チェコ共和国南部では同国での観測史上最低となるマイナス28℃を記録した。 除雪が追い付かないほどの積雪によって交通網はマヒし、ドイツ南部からオーストリアへかけての地域は、空路・陸路ともに数日間にわたって交通機関が全面的にストップするなど大混乱となった』、大変だ。
・『主力特急車両が相次ぎダウン かつてないほどの低い気温と積雪により、除雪完了に伴う運行再開後も列車に不具合が相次いだ。オーストリア連邦鉄道(OBB)の都市間特急「レイルジェット」は2023年の時点で60本の列車がオーストリアおよびその周辺国との間を結んで運行しているが、このうちの1割にあたる6本が完全に使用不能となり、工場で修理せざるをえないという緊急事態となった。 だが、工場も修理だけではなく、日常の定期検査も並行して行わなければならないというキャパシティの問題があるため、使用不能となった編成のうちすぐに修理に取り掛かれたのは6本中4本だけだった。 ほかの54本の編成についても、一時は完全な状態で運行ができる編成がわずかに12本しかなく、残りは営業用として動かせる状態にはあるものの、ドアやトイレなどが故障した不完全な状態で営業せざるをえなかった。運行中に故障が悪化し、運転打ち切りや運休が相次ぐ結果となった。) 運休こそ逃れた列車に関しても代替運行となり、ローカル列車などに使用される通常客車を使用した列車も見られた。レイルジェットは、ビジネスクラスと呼ばれる特等席を筆頭に通常の1等・2等車、そして食堂車を連結しているが、代替の列車にはビジネスクラスや食堂車は連結されず、サービスダウンは否めなかった。 レイルジェットは、従来の客車特急列車インターシティの上位に位置する列車として2008年に誕生。客車ではあるが1両ごとに切り離しはできず、完全に固定された7両の編成を機関車が牽引・推進するもので、客車列車というよりは電車に近い。いわゆる高速列車ではないものの、最高時速は230kmに達し、洗練された内外装デザインも含め、従来型客車の旧態依然としたイメージを打ち破る車両となった。 2016年までの間に60本が製造され、チェコ鉄道にも同型車両が7本納入された。現在は、ウィーン―ザルツブルク間などの主要幹線において、新幹線で言うところの「のぞみ」や「こだま」のような、速達タイプ(RJX)と各駅停車タイプ(RJ)が設定されるなど、オーストリア国内における都市間輸送の大半をこのレイルジェットが担う形となっている』、「レイルジェットは、従来の客車特急列車インターシティの上位に位置する列車として2008年に誕生。客車ではあるが1両ごとに切り離しはできず、完全に固定された7両の編成を機関車が牽引・推進するもので、客車列車というよりは電車に近い。いわゆる高速列車ではないものの、最高時速は230kmに達し、洗練された内外装デザインも含め、従来型客車の旧態依然としたイメージを打ち破る車両となった。 2016年までの間に60本が製造され、チェコ鉄道にも同型車両が7本納入された。現在は、ウィーン―ザルツブルク間などの主要幹線において、新幹線で言うところの「のぞみ」や「こだま」のような、速達タイプ(RJX)と各駅停車タイプ(RJ)が設定されるなど、オーストリア国内における都市間輸送の大半をこのレイルジェットが担う形」、なるほど。
・『1両ごとに切り離せないレイルジェット 今回、運行開始以来大きな問題のなかったレイルジェットに、記録的な大雪と寒波という想定を超えた異常気象が襲ったことで、不具合が多発してしまった。さすがのオーストリア連邦鉄道もここまでの異常気象は想定していなかったようだが、それを差し引いても予備車がほとんどない状態で運用を回している現状について、見通しが甘かったのではないかという声も聞かれた。 予備車不足の問題もさることながら、もう1つ大きな問題となったのが、固定編成のレイルジェットならではの「不具合発生に伴う編成全体の離脱」だ。 客車の利点の1つとして、柔軟な編成が組めることが挙げられる。乗客の増減に合わせて1両単位で車両を連結・切り離しできるので、鉄道会社によっては団体客が乗車する日に1両追加で連結するということもやっていた。) これは、万が一車両の不具合が発生した際、その不具合があった車両だけを切り離し、別の運行可能な客車を代わりに連結できるということでもある。寝台車のような特殊な車両の場合は同じ設備の車両が用意できず、個室寝台の代わりがクシェット(簡易寝台)や座席車になってしまうといったことは過去に何度も発生してきたが、運休するよりはマシで、本来のサービスを受けられない乗客に対しては返金などのお詫びをして終了となる。 ところが、固定編成のレイルジェットは、故障した1両だけを切り離すということができない。ドアやトイレといった部分的な故障でも、修理するためには7両編成丸ごと工場へ入場させなければならない。 日本的に考えると、客用ドアの故障は大きなトラブルである。不具合が発生すれば工場へ即入場となるだろう。だが、今回はただでさえ故障が相次いで工場が逼迫している状況で、こう言っては何だが「たかがドア1カ所」のために編成を丸ごと工場入りさせて列車を運休することなどできない。乗客には多少の不便をかけることにはなるが、運休することを考えれば走らせたほうがまだマシなため、故障した状態のまま営業に就かせるケースが相次ぐことになる』、「固定編成のレイルジェットは、故障した1両だけを切り離すということができない。ドアやトイレといった部分的な故障でも、修理するためには7両編成丸ごと工場へ入場させなければならない。 日本的に考えると、客用ドアの故障は大きなトラブルである。不具合が発生すれば工場へ即入場となるだろう。だが、今回はただでさえ故障が相次いで工場が逼迫している状況で、こう言っては何だが「たかがドア1カ所」のために編成を丸ごと工場入りさせて列車を運休することなどできない。乗客には多少の不便をかけることにはなるが、運休することを考えれば走らせたほうがまだマシなため、故障した状態のまま営業に就かせるケースが相次ぐことになる」、これは大変だ。
・『「固定編成」は欧州に向いているのか? ヨーロッパの鉄道は過去20年で大きく変化し、列車の編成も日本のように動力分散方式の電車・ディーゼルカーや、客車列車でもそれに準ずる固定編成の列車が増えてきた。2023年冬から走り始めた夜行列車「ナイトジェット」の最新型も、ついに固定編成を採用するに至った。 ただ前述の通り、固定編成の列車はどこかに不具合が発生した場合、編成単位での工場入りが必要となる。日本と異なり不具合の発生確率が高いヨーロッパでは、故障のたびに運休が発生しては、それこそ運用が回らなくなってしまう。 ある意味では、柔軟性という面において利点のある固定されていない編成のほうが、ヨーロッパの列車運用には合っているのかもしれない』、「固定編成の列車はどこかに不具合が発生した場合、編成単位での工場入りが必要となる。日本と異なり不具合の発生確率が高いヨーロッパでは、故障のたびに運休が発生しては、それこそ運用が回らなくなってしまう。 ある意味では、柔軟性という面において利点のある固定されていない編成のほうが、ヨーロッパの列車運用には合っているのかもしれない」、その通りだ。
次に、4月20日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」、自前の工場で徹底整備」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/748914
・『鉄道黎明期より長い時間を歩んできたヨーロッパの多くの国では、車両を含む鉄道産業遺産が国や地方自治体の管理する博物館を中心に保存され、民間団体が廃車となった車両を買い取って動態保存している例も多い。そんな中、異色の存在となっているのがイタリアのFondazione FS Italiane(イタリア鉄道財団)だ。 イタリア鉄道財団は、イタリア鉄道、トレニタリア(イタリア鉄道旅客輸送子会社)、RFI(イタリア鉄道インフラ子会社)の3社のCEOが創立メンバーとなって、2013年3月6日に財団の設立趣意書および定款に署名した。2015年12月には、政府の文化遺産・活動・観光省が財団の「機関会員」として加わっている』、日本では「動態保存」は極めて少ないが、イタリアではかなり多いようだ。
・『鉄道遺産保存「財団」の財源は? 財団が設立された目的は、1839年に誕生したイタリア鉄道の膨大な歴史的・技術的遺産を国の歴史の重要な一部として強化し、無傷で将来の世代に引き渡すことで、長い歴史の中における国の成長と国家統一の象徴としての鉄道の重要性を証明することに加え、イタリア国家の利益のために、観光の面で鉄道需要の回復を刺激することが最終的な目標となっている。 その主な活動内容は、400両以上の歴史的鉄道車両の保存(うち約200両は動態保存され現在も稼働中)、イタリア鉄道に関するさまざまな文献資料の保存、ナポリ近郊のピエトラルサと、トリエステにある鉄道博物館の維持管理、運休している風光明媚な鉄道路線の観光路線としての再生などだ。もちろん、純粋な維持管理だけではなく、若い世代への技術継承も含まれる。技術者の育成は、古い技術の維持には必要不可欠なことだ。) 気になるのは財源だ。前述の3社からの資金や政府の補助金などがベースだが、不動産収入や株式運用による資産、地方自治体や企業からの寄付金なども使われている。ただし、個人からの寄付はとくに募っていない。筆者は以前に寄付を申し出たが、十分な財源があるので大丈夫と断られてしまった。このあたりは、博物館やイベントなどで寄付を募っている英国やドイツなどと異なり興味深い。 財団のロゴは、イタリア鉄道(FS)で1966~1982年に使用された、通称「テレビロゴ」(文字周囲の枠がブラウン管時代のテレビの画面に似ているところからそう呼ばれる)をベースにしている。 古典車両を維持管理するための中枢とも言うべき車両工場は全国に3カ所あり、各工場は原則的に車両の種類によって役割が分担されている。いったい、工場ではどのような作業が行われているのだろうか。財団が保有する工場の一つである、ラ・スペツィア工場を取材する機会を得た。 ▽財団の工場内部を取材(ラ・スペツィアはイタリア北西部、リグーリア州の東部に位置する人口約9万人の港町で、首都ローマとジェノヴァを結ぶ幹線上に位置する。ラ・スペツィア工場は1926年に建設され、当時はまだ三相交流方式という特殊な電化方式を採用していたイタリア国鉄の電気機関車を整備する工場として使用された。 2014年にイタリア鉄道財団へ譲渡され、以降は主に財団の保有する電気機関車の定期点検やオーバーホールのほか、動かない状態で保管されていた車両の修復作業なども請け負っている。) 工場建屋内へ入ると、戦前製の古い機関車がずらりと並んでいる。 財団の保有する車両は、1:動態保存(本線走行可能)2:動態保存(本線走行不可)3:静態保存 の3種類に大別される。 1は動く状態に完全復元され、信号などの保安装置も現在の最新システムに換装し、イベント時に本線上を走行させることが可能な車両だ。2は、電気装置などはすべて稼働状態となっていて、パンタグラフを上げて電気を通せば動かすことができるが、保安装置が現代の基準に合致しないため、構内など閉鎖された場所でのデモ走行に限られる。日本で言えば「碓氷峠鉄道文化むら」(群馬県)に保存されているEF63形電気機関車のようなものだ。3は文字通り、動力や制御装置が稼働できない状態で、博物館などで保存・展示させるための車両だ。 工場建屋の中に1両、ピカピカに磨き上げられた電気機関車がいる。E424型249号機といい、第二次大戦直後の1946年に製造された4動軸の機関車だ。主にローカル線で旅客・貨物列車の両方に使えるよう設計され、荷物や郵便を運べるように車体中央にはシャッター付きの荷室が設けられたユニークな機関車だ。 後年、近郊列車をプッシュプル運転する目的で、推進運転制御装置を搭載し、色を当時の最新塗装へ変更して使用されたが、その改造の際に元番号+200へと改番されている。つまり、オリジナルの状態ではE424型049号機だった』、「1は動く状態に完全復元され、信号などの保安装置も現在の最新システムに換装し、イベント時に本線上を走行させることが可能な車両だ。2は、電気装置などはすべて稼働状態となっていて、パンタグラフを上げて電気を通せば動かすことができるが、保安装置が現代の基準に合致しないため、構内など閉鎖された場所でのデモ走行に限られる。日本で言えば「碓氷峠鉄道文化むら」(群馬県)に保存されているEF63形電気機関車のようなものだ。3は文字通り、動力や制御装置が稼働できない状態で、博物館などで保存・展示させるための車両だ」、なるほど。
・『見えない部分も解体して徹底修復 現場で案内をしてくれた技師いわく、この車両は動かせる状態にあるが、信号装置が古い状態のままで、かつパンタグラフは現在本線上での使用を認められてない古いタイプ(FS Tipo42)を搭載しているため、本線走行はできないという(前述「2」に該当)。 ただ、現場のこだわりで車体表記は元の番号である049号機へ塗り替えており(製造銘板などは249号機のまま)、前面の目立つ位置に取り付けられていた制御回路引き通し線も撤去し、オリジナルの古いパンタグラフとともに美しい状態で保存できている、と技師は胸を張っていた。動かすことはできるので、工場内のイベントなどでは、今後も元気な様子を見ることができるだろう。) 隣の建屋では、完全に解体された625型蒸気機関車の修復が行われていた。古い車両は、外側がきれいでも内側に傷んでいる部分が多く、この625型も車体の基礎となる台枠部分が腐食して、かなり鉄板が薄くなっているのが見た目にもわかる。完全にばらした状態から修復するのは、こうした見えない部分の補強をするためである。 屋外には、整備が終わった状態の車両から整備待ちで保管されている車両まで数十両が留置されている。その中でもとくに気になったのは、現存するのがここで保管されている2両だけというALn442-448型気動車だ』、「この車両は動かせる状態にあるが、信号装置が古い状態のままで、かつパンタグラフは現在本線上での使用を認められてない古いタイプ(FS Tipo42)を搭載しているため、本線走行はできないという(前述「2」に該当)」、なるほど。
・『朽ち果てた車両を「救出」 ALn442-448型は、1955年にブレダ(現在の日立レールの前身であるアンサルドブレダの合併前の会社)で製造された気動車で、1957年のTEE(ヨーロッパ国際特急)運行開始時に使用された歴史的な車両だ。だが、数両を残してすべて解体され、ミラノの科学技術博物館に保存された1両もアスベストが問題となって展示が取りやめとなり、そのまま解体されてしまった。 最後に残ったALn442-448型2008号機は、アスベスト除去業者へ引き渡されたものの、その業者が倒産してしまい、屋外で雨ざらしとなって何年も放置され、すっかり朽ち果てていた。本来であれば解体されてもおかしくはないところだが、財団が救出して引き取ったものだ。 保管された車両を拝ませてもらった時には、あまりの朽ち果てた状態に愕然とした。実際、技師もこれからどうやって修復をしていこうかと頭を悩ませていると語っていたが、3年前に同様の状態から見事に復活し、本線走行を行っているETR252型アルレッキーノの例を見れば、必ずや復活を果たせるだろうと期待せずにはいられない。) そんな財団の悩みが、1980年代以降に製造されたいわゆる新性能車両だ。1980年代というと、ちょうどチョッパ制御やインバーター制御など、半導体技術が世に出始めた頃である。 旧来の技術である抵抗制御などは、ある意味で言えば「溶接してハンマーで叩けば直せる」アナログ式なので、技術を継承さえすれば、理論上は半永久的に残すことができる。蒸気機関車は言わずもがな、電車や電気機関車も、古い時代の車両は動態保存されている車両が多い。 一方でチョッパ制御以降の車両は、制御装置に半導体を用いていることから、故障してしまえば部品の交換以外に修理の方法がない。ところが半導体は日進月歩で進化を続けており、古くなった製品はすぐに生産中止となることから、現役の車両ですら、まだ動く車両を廃車にして、予備部品の確保(共食い)を行っている車種もある』、「チョッパ制御以降の車両は、制御装置に半導体を用いていることから、故障してしまえば部品の交換以外に修理の方法がない。ところが半導体は日進月歩で進化を続けており、古くなった製品はすぐに生産中止となることから、現役の車両ですら、まだ動く車両を廃車にして、予備部品の確保(共食い)を行っている車種もある」、確かに「半導体」導入以降は「予備部品の確保(共食い)」が必要になるようだ。
・『鉄道遺産も絵画などと同様の価値 財団は現在、1両のチョッパ制御機関車(E632型030号機)を保有している。状況次第では今後も増えていくものと考えられ、予備部品の確保はもちろんのこと、万が一部品が枯渇した際にどう対処していくのかが将来的な課題と言えよう。 絵画など多くの文化的遺産を保有し、それらの修復技術にも定評があるイタリアは、産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている。 数年前から修復作業が進められているイタリアの伝説的な鉄道車両、ETR302型セッテベッロを含め今も修復を待つ車両は多いが、これらが再び息を吹き返し、イタリアの大地を駆け抜ける日もそう遠くない未来のことだろう』、「修復技術にも定評があるイタリアは、産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、「イタリア」が「修復技術にも定評がある」、「産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、注目すべき国の1つだ。
第三に、7月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏による「JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/346902
・『JR東日本とJR西日本は7月5日、旅客輸送量や労働生産人口の減少が見込まれる中、将来にわたり鉄道輸送事業を維持発展させ、利用者への安定的な輸送サービスを提供する目的で、車両の装置・部品共通化の検討を開始したと発表した。その狙いと、今後の可能性とは』、興味深そうだ。
・『鉄道車両の全ての部品が特注品なわけではない ひとくちに車両の「共通化」といってもさまざまなレベルがある。鉄道車両は基本的にオーダーメイドだが、当然、全ての部品が特注品なわけではない。日本の鉄道車両、特に電車は日立製作所、川崎重工業の子会社である川崎車両、JR東海の子会社である日本車輛製造、JR東日本の子会社である総合車両製作所、近鉄グループの近畿車輛の5社がほとんどを占める。 例えば相模鉄道のJR直通用車両「12000系」や、東急電鉄の田園都市線「2020系」、大井町線「6020系」、目黒線「3020系」、京王電鉄京王ライナー対応車「5000系」は、JR東日本の山手線・横須賀線「E235系」と同様の標準設計「sustina」を採用し、総合車両製作所で製造されている。 また、日立製作所のアルミ車両標準設計「A-train」は、東京メトロの「10000系」以降の多くの車両や、東武鉄道の「50000系」「60000系」、西武鉄道の「20000系」「30000系」など、JR東日本、大手私鉄、公営地下鉄、海外鉄道など広く用いられている。 これらメーカーの標準設計で製造された車両は、鉄道事業者ごとの特色を出すために前面形状こそ作り分けられているものの、よく見れば、車体の側面や内装はほとんど同じであることに気づくだろう。このように衝突安全性向上や環境負荷低減に対応しつつ、コスト削減を図るのも共通化の効果だ』、「これらメーカーの標準設計で製造された車両は、鉄道事業者ごとの特色を出すために前面形状こそ作り分けられているものの、よく見れば、車体の側面や内装はほとんど同じであることに気づくだろう。このように衝突安全性向上や環境負荷低減に対応しつつ、コスト削減を図るのも共通化の効果だ」、なるほど。
・『車両設計自体を共通化することも 車体の標準設計のみならず、車両設計自体を共通化することもある。例えば東海道・山陽新幹線では、JR西日本「500系」などの独自設計の車両が走っていたこともあるが、現在は「N700S」などに共通化されている。北陸新幹線でもJR東日本とJR西日本が同一設計の「E7/W7系」を導入した。 私鉄では東京メトロと東武鉄道が、地下鉄日比谷線向けに共通設計の「13000系」と「70000系」を近畿車輛に発注している。両系列は、前面形状を除く車体と走行関係のシステムは同一で、内装も装飾以外はおおむね共通化されているが、一部に構造が異なる点もある。 近年の鉄道車両の生産数は、新幹線やJR東日本の一部形式を除けば、多くても300~400両、ほとんどは100両程度と少ないため、量産効果が小さい。特に一部列車のみ日比谷線に乗り入れる東武鉄道は、必要な編成数がそれほど多くないため、独自設計の車両を製造すると高くつく。そこで東京メトロと一括して発注することで、性能や操作性を統一するとともにコストダウンを狙った。 だが、こうした車両設計の共通化は、上記新幹線や地下鉄など運行系統がほぼ一体化している路線であればともかく、全く違う地域を走る路線では、それぞれの環境や特性にあわせる必要があるため困難だ』、「近年の鉄道車両の生産数は、新幹線やJR東日本の一部形式を除けば、多くても300~400両、ほとんどは100両程度と少ないため、量産効果が小さい。特に一部列車のみ日比谷線に乗り入れる東武鉄道は、必要な編成数がそれほど多くないため、独自設計の車両を製造すると高くつく。そこで東京メトロと一括して発注することで、性能や操作性を統一するとともにコストダウンを狙った」、なるほど。
・『両社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大 今回の発表を受け、国鉄時代に全国に導入された「103系」や「205系」のように車両自体を共通化する方向に進むのでは、という反応も見られる。しかし、ホームドアの整備が進む現代では、車両と設備の整合が必要であり、都市部の車両をJR東日本は4ドア、JR西日本は3ドアに統一しているため、完全な共通化は不可能だ。そこでまずは装置・部品の共通化から検討に着手する。 電車には電機部品(パンタグラフ、制御装置、モーター、補助電源装置、バッテリーなど)、空気圧システム(コンプレッサー、ブレーキ装置、戸閉め装置)、空調、案内装置などさまざまな装置・部品が設置されている。これらは車両メーカーが製造する部品もあれば、東芝や東洋電機製造、三菱電機のように、主要電気装置や車両機器を手掛ける電機メーカーもある。 大掛かりなシステムは各社がサプライヤーとともに一貫して設計・製造している。安定調達や競争原理を考慮すれば、無理な統一はかえって非効率、コスト増にもなりかねない。ただ部品によっては事業者ごとのニーズに応じて、似たようなものを多品種少量生産している。 これらはサプライヤーにとって儲かる仕事ではなく、今後は発注数の減少が予想されるため、業界全体の効率化を図り、限られた人員や設備を各社の得意な領域に集中したい。そこでモーター、台車のオイルダンパー、パンタグラフ、行先表示器など、可能な範囲で装置・部品の共通化に着手し、各社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大するというのが今回の発表だ』、「今後は発注数の減少が予想されるため、業界全体の効率化を図り、限られた人員や設備を各社の得意な領域に集中したい。そこでモーター、台車のオイルダンパー、パンタグラフ、行先表示器など、可能な範囲で装置・部品の共通化に着手し、各社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大するというのが今回の発表だ」、なるほど。
・『今回の共通化検討が形になるのは5~10年後か 具体的には、まずJR東日本とJR西日本が共通化の方向性など土台作りを進め、続いて他の鉄道事業者や車両メーカー、サプライヤーと意見交換をして具体的な内容を詰める。そして共通化部品調達の仕組みを構築した上で、実際の車両に展開する。 現行車両の部品の交換は現実的ではないため、共通化を取り入れた設計は今後の新型車両から導入する。つまり、今回の検討が形になるのは5年後、10年後レベルの話になる。QRコード乗車券を8事業者共同で進めるように、今後の検討で、大手私鉄が参加してさらに大きな取り組みになる可能性もある。 車両設計を完全に共通化するのは困難だが、プレスリリースには「各鉄道事業者の独自の使用となるものは今後検討」として、ドア位置や枚数、車体幅、長さ、前面形状などが挙げられている。「sustina」は車両ごとに車体構造のカスタマイズが可能であり、前述のように、すでに導入した私鉄もある。 近年JR西日本が導入した「225系」「227系」「321系」「323系」は、川崎車両と近畿車輛が担当している。JR東日本は装置・部品以上の検討は全く白紙というが、将来的にJR西日本が「sustina」を採用することもあり得るかもしれない(逆にJR東日本が車両調達先をグループ以外に変更するとは考えにくい)。 いずれにせよ、人口減少が進めば鉄道事業は縮小していく。事業が縮小すれば鉄道車両も削減され、新造車両も減少する。海外進出を進める車両メーカーもあるが、サプライヤーの多くは国内需要が中心だ。事業者のみ、メーカーのみの課題ではなく、将来にわたって鉄道システムを機能させるための検討が、今後ますます本格化しそうだ』、「現行車両の部品の交換は現実的ではないため、共通化を取り入れた設計は今後の新型車両から導入する。つまり、今回の検討が形になるのは5年後、10年後レベルの話になる。QRコード乗車券を8事業者共同で進めるように、今後の検討で、大手私鉄が参加してさらに大きな取り組みになる可能性もある・・・人口減少が進めば鉄道事業は縮小していく。事業が縮小すれば鉄道車両も削減され、新造車両も減少する。海外進出を進める車両メーカーもあるが、サプライヤーの多くは国内需要が中心だ。事業者のみ、メーカーのみの課題ではなく、将来にわたって鉄道システムを機能させるための検討が、今後ますます本格化しそうだ」、設計の共通化などによる効率化が、今後進展するのは、楽しみだ。
先ずは、本年3月1日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「豪雪で露呈、オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/737656
・『2023年12月初旬、ドイツやオーストリアなど中欧と呼ばれる地域を中心に、非常に強い寒波が襲った。ミュンヘンなど大都市周辺でも、積雪は数十センチを超え、チェコ共和国南部では同国での観測史上最低となるマイナス28℃を記録した。 除雪が追い付かないほどの積雪によって交通網はマヒし、ドイツ南部からオーストリアへかけての地域は、空路・陸路ともに数日間にわたって交通機関が全面的にストップするなど大混乱となった』、大変だ。
・『主力特急車両が相次ぎダウン かつてないほどの低い気温と積雪により、除雪完了に伴う運行再開後も列車に不具合が相次いだ。オーストリア連邦鉄道(OBB)の都市間特急「レイルジェット」は2023年の時点で60本の列車がオーストリアおよびその周辺国との間を結んで運行しているが、このうちの1割にあたる6本が完全に使用不能となり、工場で修理せざるをえないという緊急事態となった。 だが、工場も修理だけではなく、日常の定期検査も並行して行わなければならないというキャパシティの問題があるため、使用不能となった編成のうちすぐに修理に取り掛かれたのは6本中4本だけだった。 ほかの54本の編成についても、一時は完全な状態で運行ができる編成がわずかに12本しかなく、残りは営業用として動かせる状態にはあるものの、ドアやトイレなどが故障した不完全な状態で営業せざるをえなかった。運行中に故障が悪化し、運転打ち切りや運休が相次ぐ結果となった。) 運休こそ逃れた列車に関しても代替運行となり、ローカル列車などに使用される通常客車を使用した列車も見られた。レイルジェットは、ビジネスクラスと呼ばれる特等席を筆頭に通常の1等・2等車、そして食堂車を連結しているが、代替の列車にはビジネスクラスや食堂車は連結されず、サービスダウンは否めなかった。 レイルジェットは、従来の客車特急列車インターシティの上位に位置する列車として2008年に誕生。客車ではあるが1両ごとに切り離しはできず、完全に固定された7両の編成を機関車が牽引・推進するもので、客車列車というよりは電車に近い。いわゆる高速列車ではないものの、最高時速は230kmに達し、洗練された内外装デザインも含め、従来型客車の旧態依然としたイメージを打ち破る車両となった。 2016年までの間に60本が製造され、チェコ鉄道にも同型車両が7本納入された。現在は、ウィーン―ザルツブルク間などの主要幹線において、新幹線で言うところの「のぞみ」や「こだま」のような、速達タイプ(RJX)と各駅停車タイプ(RJ)が設定されるなど、オーストリア国内における都市間輸送の大半をこのレイルジェットが担う形となっている』、「レイルジェットは、従来の客車特急列車インターシティの上位に位置する列車として2008年に誕生。客車ではあるが1両ごとに切り離しはできず、完全に固定された7両の編成を機関車が牽引・推進するもので、客車列車というよりは電車に近い。いわゆる高速列車ではないものの、最高時速は230kmに達し、洗練された内外装デザインも含め、従来型客車の旧態依然としたイメージを打ち破る車両となった。 2016年までの間に60本が製造され、チェコ鉄道にも同型車両が7本納入された。現在は、ウィーン―ザルツブルク間などの主要幹線において、新幹線で言うところの「のぞみ」や「こだま」のような、速達タイプ(RJX)と各駅停車タイプ(RJ)が設定されるなど、オーストリア国内における都市間輸送の大半をこのレイルジェットが担う形」、なるほど。
・『1両ごとに切り離せないレイルジェット 今回、運行開始以来大きな問題のなかったレイルジェットに、記録的な大雪と寒波という想定を超えた異常気象が襲ったことで、不具合が多発してしまった。さすがのオーストリア連邦鉄道もここまでの異常気象は想定していなかったようだが、それを差し引いても予備車がほとんどない状態で運用を回している現状について、見通しが甘かったのではないかという声も聞かれた。 予備車不足の問題もさることながら、もう1つ大きな問題となったのが、固定編成のレイルジェットならではの「不具合発生に伴う編成全体の離脱」だ。 客車の利点の1つとして、柔軟な編成が組めることが挙げられる。乗客の増減に合わせて1両単位で車両を連結・切り離しできるので、鉄道会社によっては団体客が乗車する日に1両追加で連結するということもやっていた。) これは、万が一車両の不具合が発生した際、その不具合があった車両だけを切り離し、別の運行可能な客車を代わりに連結できるということでもある。寝台車のような特殊な車両の場合は同じ設備の車両が用意できず、個室寝台の代わりがクシェット(簡易寝台)や座席車になってしまうといったことは過去に何度も発生してきたが、運休するよりはマシで、本来のサービスを受けられない乗客に対しては返金などのお詫びをして終了となる。 ところが、固定編成のレイルジェットは、故障した1両だけを切り離すということができない。ドアやトイレといった部分的な故障でも、修理するためには7両編成丸ごと工場へ入場させなければならない。 日本的に考えると、客用ドアの故障は大きなトラブルである。不具合が発生すれば工場へ即入場となるだろう。だが、今回はただでさえ故障が相次いで工場が逼迫している状況で、こう言っては何だが「たかがドア1カ所」のために編成を丸ごと工場入りさせて列車を運休することなどできない。乗客には多少の不便をかけることにはなるが、運休することを考えれば走らせたほうがまだマシなため、故障した状態のまま営業に就かせるケースが相次ぐことになる』、「固定編成のレイルジェットは、故障した1両だけを切り離すということができない。ドアやトイレといった部分的な故障でも、修理するためには7両編成丸ごと工場へ入場させなければならない。 日本的に考えると、客用ドアの故障は大きなトラブルである。不具合が発生すれば工場へ即入場となるだろう。だが、今回はただでさえ故障が相次いで工場が逼迫している状況で、こう言っては何だが「たかがドア1カ所」のために編成を丸ごと工場入りさせて列車を運休することなどできない。乗客には多少の不便をかけることにはなるが、運休することを考えれば走らせたほうがまだマシなため、故障した状態のまま営業に就かせるケースが相次ぐことになる」、これは大変だ。
・『「固定編成」は欧州に向いているのか? ヨーロッパの鉄道は過去20年で大きく変化し、列車の編成も日本のように動力分散方式の電車・ディーゼルカーや、客車列車でもそれに準ずる固定編成の列車が増えてきた。2023年冬から走り始めた夜行列車「ナイトジェット」の最新型も、ついに固定編成を採用するに至った。 ただ前述の通り、固定編成の列車はどこかに不具合が発生した場合、編成単位での工場入りが必要となる。日本と異なり不具合の発生確率が高いヨーロッパでは、故障のたびに運休が発生しては、それこそ運用が回らなくなってしまう。 ある意味では、柔軟性という面において利点のある固定されていない編成のほうが、ヨーロッパの列車運用には合っているのかもしれない』、「固定編成の列車はどこかに不具合が発生した場合、編成単位での工場入りが必要となる。日本と異なり不具合の発生確率が高いヨーロッパでは、故障のたびに運休が発生しては、それこそ運用が回らなくなってしまう。 ある意味では、柔軟性という面において利点のある固定されていない編成のほうが、ヨーロッパの列車運用には合っているのかもしれない」、その通りだ。
次に、4月20日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」、自前の工場で徹底整備」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/748914
・『鉄道黎明期より長い時間を歩んできたヨーロッパの多くの国では、車両を含む鉄道産業遺産が国や地方自治体の管理する博物館を中心に保存され、民間団体が廃車となった車両を買い取って動態保存している例も多い。そんな中、異色の存在となっているのがイタリアのFondazione FS Italiane(イタリア鉄道財団)だ。 イタリア鉄道財団は、イタリア鉄道、トレニタリア(イタリア鉄道旅客輸送子会社)、RFI(イタリア鉄道インフラ子会社)の3社のCEOが創立メンバーとなって、2013年3月6日に財団の設立趣意書および定款に署名した。2015年12月には、政府の文化遺産・活動・観光省が財団の「機関会員」として加わっている』、日本では「動態保存」は極めて少ないが、イタリアではかなり多いようだ。
・『鉄道遺産保存「財団」の財源は? 財団が設立された目的は、1839年に誕生したイタリア鉄道の膨大な歴史的・技術的遺産を国の歴史の重要な一部として強化し、無傷で将来の世代に引き渡すことで、長い歴史の中における国の成長と国家統一の象徴としての鉄道の重要性を証明することに加え、イタリア国家の利益のために、観光の面で鉄道需要の回復を刺激することが最終的な目標となっている。 その主な活動内容は、400両以上の歴史的鉄道車両の保存(うち約200両は動態保存され現在も稼働中)、イタリア鉄道に関するさまざまな文献資料の保存、ナポリ近郊のピエトラルサと、トリエステにある鉄道博物館の維持管理、運休している風光明媚な鉄道路線の観光路線としての再生などだ。もちろん、純粋な維持管理だけではなく、若い世代への技術継承も含まれる。技術者の育成は、古い技術の維持には必要不可欠なことだ。) 気になるのは財源だ。前述の3社からの資金や政府の補助金などがベースだが、不動産収入や株式運用による資産、地方自治体や企業からの寄付金なども使われている。ただし、個人からの寄付はとくに募っていない。筆者は以前に寄付を申し出たが、十分な財源があるので大丈夫と断られてしまった。このあたりは、博物館やイベントなどで寄付を募っている英国やドイツなどと異なり興味深い。 財団のロゴは、イタリア鉄道(FS)で1966~1982年に使用された、通称「テレビロゴ」(文字周囲の枠がブラウン管時代のテレビの画面に似ているところからそう呼ばれる)をベースにしている。 古典車両を維持管理するための中枢とも言うべき車両工場は全国に3カ所あり、各工場は原則的に車両の種類によって役割が分担されている。いったい、工場ではどのような作業が行われているのだろうか。財団が保有する工場の一つである、ラ・スペツィア工場を取材する機会を得た。 ▽財団の工場内部を取材(ラ・スペツィアはイタリア北西部、リグーリア州の東部に位置する人口約9万人の港町で、首都ローマとジェノヴァを結ぶ幹線上に位置する。ラ・スペツィア工場は1926年に建設され、当時はまだ三相交流方式という特殊な電化方式を採用していたイタリア国鉄の電気機関車を整備する工場として使用された。 2014年にイタリア鉄道財団へ譲渡され、以降は主に財団の保有する電気機関車の定期点検やオーバーホールのほか、動かない状態で保管されていた車両の修復作業なども請け負っている。) 工場建屋内へ入ると、戦前製の古い機関車がずらりと並んでいる。 財団の保有する車両は、1:動態保存(本線走行可能)2:動態保存(本線走行不可)3:静態保存 の3種類に大別される。 1は動く状態に完全復元され、信号などの保安装置も現在の最新システムに換装し、イベント時に本線上を走行させることが可能な車両だ。2は、電気装置などはすべて稼働状態となっていて、パンタグラフを上げて電気を通せば動かすことができるが、保安装置が現代の基準に合致しないため、構内など閉鎖された場所でのデモ走行に限られる。日本で言えば「碓氷峠鉄道文化むら」(群馬県)に保存されているEF63形電気機関車のようなものだ。3は文字通り、動力や制御装置が稼働できない状態で、博物館などで保存・展示させるための車両だ。 工場建屋の中に1両、ピカピカに磨き上げられた電気機関車がいる。E424型249号機といい、第二次大戦直後の1946年に製造された4動軸の機関車だ。主にローカル線で旅客・貨物列車の両方に使えるよう設計され、荷物や郵便を運べるように車体中央にはシャッター付きの荷室が設けられたユニークな機関車だ。 後年、近郊列車をプッシュプル運転する目的で、推進運転制御装置を搭載し、色を当時の最新塗装へ変更して使用されたが、その改造の際に元番号+200へと改番されている。つまり、オリジナルの状態ではE424型049号機だった』、「1は動く状態に完全復元され、信号などの保安装置も現在の最新システムに換装し、イベント時に本線上を走行させることが可能な車両だ。2は、電気装置などはすべて稼働状態となっていて、パンタグラフを上げて電気を通せば動かすことができるが、保安装置が現代の基準に合致しないため、構内など閉鎖された場所でのデモ走行に限られる。日本で言えば「碓氷峠鉄道文化むら」(群馬県)に保存されているEF63形電気機関車のようなものだ。3は文字通り、動力や制御装置が稼働できない状態で、博物館などで保存・展示させるための車両だ」、なるほど。
・『見えない部分も解体して徹底修復 現場で案内をしてくれた技師いわく、この車両は動かせる状態にあるが、信号装置が古い状態のままで、かつパンタグラフは現在本線上での使用を認められてない古いタイプ(FS Tipo42)を搭載しているため、本線走行はできないという(前述「2」に該当)。 ただ、現場のこだわりで車体表記は元の番号である049号機へ塗り替えており(製造銘板などは249号機のまま)、前面の目立つ位置に取り付けられていた制御回路引き通し線も撤去し、オリジナルの古いパンタグラフとともに美しい状態で保存できている、と技師は胸を張っていた。動かすことはできるので、工場内のイベントなどでは、今後も元気な様子を見ることができるだろう。) 隣の建屋では、完全に解体された625型蒸気機関車の修復が行われていた。古い車両は、外側がきれいでも内側に傷んでいる部分が多く、この625型も車体の基礎となる台枠部分が腐食して、かなり鉄板が薄くなっているのが見た目にもわかる。完全にばらした状態から修復するのは、こうした見えない部分の補強をするためである。 屋外には、整備が終わった状態の車両から整備待ちで保管されている車両まで数十両が留置されている。その中でもとくに気になったのは、現存するのがここで保管されている2両だけというALn442-448型気動車だ』、「この車両は動かせる状態にあるが、信号装置が古い状態のままで、かつパンタグラフは現在本線上での使用を認められてない古いタイプ(FS Tipo42)を搭載しているため、本線走行はできないという(前述「2」に該当)」、なるほど。
・『朽ち果てた車両を「救出」 ALn442-448型は、1955年にブレダ(現在の日立レールの前身であるアンサルドブレダの合併前の会社)で製造された気動車で、1957年のTEE(ヨーロッパ国際特急)運行開始時に使用された歴史的な車両だ。だが、数両を残してすべて解体され、ミラノの科学技術博物館に保存された1両もアスベストが問題となって展示が取りやめとなり、そのまま解体されてしまった。 最後に残ったALn442-448型2008号機は、アスベスト除去業者へ引き渡されたものの、その業者が倒産してしまい、屋外で雨ざらしとなって何年も放置され、すっかり朽ち果てていた。本来であれば解体されてもおかしくはないところだが、財団が救出して引き取ったものだ。 保管された車両を拝ませてもらった時には、あまりの朽ち果てた状態に愕然とした。実際、技師もこれからどうやって修復をしていこうかと頭を悩ませていると語っていたが、3年前に同様の状態から見事に復活し、本線走行を行っているETR252型アルレッキーノの例を見れば、必ずや復活を果たせるだろうと期待せずにはいられない。) そんな財団の悩みが、1980年代以降に製造されたいわゆる新性能車両だ。1980年代というと、ちょうどチョッパ制御やインバーター制御など、半導体技術が世に出始めた頃である。 旧来の技術である抵抗制御などは、ある意味で言えば「溶接してハンマーで叩けば直せる」アナログ式なので、技術を継承さえすれば、理論上は半永久的に残すことができる。蒸気機関車は言わずもがな、電車や電気機関車も、古い時代の車両は動態保存されている車両が多い。 一方でチョッパ制御以降の車両は、制御装置に半導体を用いていることから、故障してしまえば部品の交換以外に修理の方法がない。ところが半導体は日進月歩で進化を続けており、古くなった製品はすぐに生産中止となることから、現役の車両ですら、まだ動く車両を廃車にして、予備部品の確保(共食い)を行っている車種もある』、「チョッパ制御以降の車両は、制御装置に半導体を用いていることから、故障してしまえば部品の交換以外に修理の方法がない。ところが半導体は日進月歩で進化を続けており、古くなった製品はすぐに生産中止となることから、現役の車両ですら、まだ動く車両を廃車にして、予備部品の確保(共食い)を行っている車種もある」、確かに「半導体」導入以降は「予備部品の確保(共食い)」が必要になるようだ。
・『鉄道遺産も絵画などと同様の価値 財団は現在、1両のチョッパ制御機関車(E632型030号機)を保有している。状況次第では今後も増えていくものと考えられ、予備部品の確保はもちろんのこと、万が一部品が枯渇した際にどう対処していくのかが将来的な課題と言えよう。 絵画など多くの文化的遺産を保有し、それらの修復技術にも定評があるイタリアは、産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている。 数年前から修復作業が進められているイタリアの伝説的な鉄道車両、ETR302型セッテベッロを含め今も修復を待つ車両は多いが、これらが再び息を吹き返し、イタリアの大地を駆け抜ける日もそう遠くない未来のことだろう』、「修復技術にも定評があるイタリアは、産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、「イタリア」が「修復技術にも定評がある」、「産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、注目すべき国の1つだ。
第三に、7月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏による「JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/346902
・『JR東日本とJR西日本は7月5日、旅客輸送量や労働生産人口の減少が見込まれる中、将来にわたり鉄道輸送事業を維持発展させ、利用者への安定的な輸送サービスを提供する目的で、車両の装置・部品共通化の検討を開始したと発表した。その狙いと、今後の可能性とは』、興味深そうだ。
・『鉄道車両の全ての部品が特注品なわけではない ひとくちに車両の「共通化」といってもさまざまなレベルがある。鉄道車両は基本的にオーダーメイドだが、当然、全ての部品が特注品なわけではない。日本の鉄道車両、特に電車は日立製作所、川崎重工業の子会社である川崎車両、JR東海の子会社である日本車輛製造、JR東日本の子会社である総合車両製作所、近鉄グループの近畿車輛の5社がほとんどを占める。 例えば相模鉄道のJR直通用車両「12000系」や、東急電鉄の田園都市線「2020系」、大井町線「6020系」、目黒線「3020系」、京王電鉄京王ライナー対応車「5000系」は、JR東日本の山手線・横須賀線「E235系」と同様の標準設計「sustina」を採用し、総合車両製作所で製造されている。 また、日立製作所のアルミ車両標準設計「A-train」は、東京メトロの「10000系」以降の多くの車両や、東武鉄道の「50000系」「60000系」、西武鉄道の「20000系」「30000系」など、JR東日本、大手私鉄、公営地下鉄、海外鉄道など広く用いられている。 これらメーカーの標準設計で製造された車両は、鉄道事業者ごとの特色を出すために前面形状こそ作り分けられているものの、よく見れば、車体の側面や内装はほとんど同じであることに気づくだろう。このように衝突安全性向上や環境負荷低減に対応しつつ、コスト削減を図るのも共通化の効果だ』、「これらメーカーの標準設計で製造された車両は、鉄道事業者ごとの特色を出すために前面形状こそ作り分けられているものの、よく見れば、車体の側面や内装はほとんど同じであることに気づくだろう。このように衝突安全性向上や環境負荷低減に対応しつつ、コスト削減を図るのも共通化の効果だ」、なるほど。
・『車両設計自体を共通化することも 車体の標準設計のみならず、車両設計自体を共通化することもある。例えば東海道・山陽新幹線では、JR西日本「500系」などの独自設計の車両が走っていたこともあるが、現在は「N700S」などに共通化されている。北陸新幹線でもJR東日本とJR西日本が同一設計の「E7/W7系」を導入した。 私鉄では東京メトロと東武鉄道が、地下鉄日比谷線向けに共通設計の「13000系」と「70000系」を近畿車輛に発注している。両系列は、前面形状を除く車体と走行関係のシステムは同一で、内装も装飾以外はおおむね共通化されているが、一部に構造が異なる点もある。 近年の鉄道車両の生産数は、新幹線やJR東日本の一部形式を除けば、多くても300~400両、ほとんどは100両程度と少ないため、量産効果が小さい。特に一部列車のみ日比谷線に乗り入れる東武鉄道は、必要な編成数がそれほど多くないため、独自設計の車両を製造すると高くつく。そこで東京メトロと一括して発注することで、性能や操作性を統一するとともにコストダウンを狙った。 だが、こうした車両設計の共通化は、上記新幹線や地下鉄など運行系統がほぼ一体化している路線であればともかく、全く違う地域を走る路線では、それぞれの環境や特性にあわせる必要があるため困難だ』、「近年の鉄道車両の生産数は、新幹線やJR東日本の一部形式を除けば、多くても300~400両、ほとんどは100両程度と少ないため、量産効果が小さい。特に一部列車のみ日比谷線に乗り入れる東武鉄道は、必要な編成数がそれほど多くないため、独自設計の車両を製造すると高くつく。そこで東京メトロと一括して発注することで、性能や操作性を統一するとともにコストダウンを狙った」、なるほど。
・『両社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大 今回の発表を受け、国鉄時代に全国に導入された「103系」や「205系」のように車両自体を共通化する方向に進むのでは、という反応も見られる。しかし、ホームドアの整備が進む現代では、車両と設備の整合が必要であり、都市部の車両をJR東日本は4ドア、JR西日本は3ドアに統一しているため、完全な共通化は不可能だ。そこでまずは装置・部品の共通化から検討に着手する。 電車には電機部品(パンタグラフ、制御装置、モーター、補助電源装置、バッテリーなど)、空気圧システム(コンプレッサー、ブレーキ装置、戸閉め装置)、空調、案内装置などさまざまな装置・部品が設置されている。これらは車両メーカーが製造する部品もあれば、東芝や東洋電機製造、三菱電機のように、主要電気装置や車両機器を手掛ける電機メーカーもある。 大掛かりなシステムは各社がサプライヤーとともに一貫して設計・製造している。安定調達や競争原理を考慮すれば、無理な統一はかえって非効率、コスト増にもなりかねない。ただ部品によっては事業者ごとのニーズに応じて、似たようなものを多品種少量生産している。 これらはサプライヤーにとって儲かる仕事ではなく、今後は発注数の減少が予想されるため、業界全体の効率化を図り、限られた人員や設備を各社の得意な領域に集中したい。そこでモーター、台車のオイルダンパー、パンタグラフ、行先表示器など、可能な範囲で装置・部品の共通化に着手し、各社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大するというのが今回の発表だ』、「今後は発注数の減少が予想されるため、業界全体の効率化を図り、限られた人員や設備を各社の得意な領域に集中したい。そこでモーター、台車のオイルダンパー、パンタグラフ、行先表示器など、可能な範囲で装置・部品の共通化に着手し、各社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大するというのが今回の発表だ」、なるほど。
・『今回の共通化検討が形になるのは5~10年後か 具体的には、まずJR東日本とJR西日本が共通化の方向性など土台作りを進め、続いて他の鉄道事業者や車両メーカー、サプライヤーと意見交換をして具体的な内容を詰める。そして共通化部品調達の仕組みを構築した上で、実際の車両に展開する。 現行車両の部品の交換は現実的ではないため、共通化を取り入れた設計は今後の新型車両から導入する。つまり、今回の検討が形になるのは5年後、10年後レベルの話になる。QRコード乗車券を8事業者共同で進めるように、今後の検討で、大手私鉄が参加してさらに大きな取り組みになる可能性もある。 車両設計を完全に共通化するのは困難だが、プレスリリースには「各鉄道事業者の独自の使用となるものは今後検討」として、ドア位置や枚数、車体幅、長さ、前面形状などが挙げられている。「sustina」は車両ごとに車体構造のカスタマイズが可能であり、前述のように、すでに導入した私鉄もある。 近年JR西日本が導入した「225系」「227系」「321系」「323系」は、川崎車両と近畿車輛が担当している。JR東日本は装置・部品以上の検討は全く白紙というが、将来的にJR西日本が「sustina」を採用することもあり得るかもしれない(逆にJR東日本が車両調達先をグループ以外に変更するとは考えにくい)。 いずれにせよ、人口減少が進めば鉄道事業は縮小していく。事業が縮小すれば鉄道車両も削減され、新造車両も減少する。海外進出を進める車両メーカーもあるが、サプライヤーの多くは国内需要が中心だ。事業者のみ、メーカーのみの課題ではなく、将来にわたって鉄道システムを機能させるための検討が、今後ますます本格化しそうだ』、「現行車両の部品の交換は現実的ではないため、共通化を取り入れた設計は今後の新型車両から導入する。つまり、今回の検討が形になるのは5年後、10年後レベルの話になる。QRコード乗車券を8事業者共同で進めるように、今後の検討で、大手私鉄が参加してさらに大きな取り組みになる可能性もある・・・人口減少が進めば鉄道事業は縮小していく。事業が縮小すれば鉄道車両も削減され、新造車両も減少する。海外進出を進める車両メーカーもあるが、サプライヤーの多くは国内需要が中心だ。事業者のみ、メーカーのみの課題ではなく、将来にわたって鉄道システムを機能させるための検討が、今後ますます本格化しそうだ」、設計の共通化などによる効率化が、今後進展するのは、楽しみだ。
タグ:鉄道 橋爪 智之氏による「豪雪で露呈、オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り」 「1は動く状態に完全復元され、信号などの保安装置も現在の最新システムに換装し、イベント時に本線上を走行させることが可能な車両だ。2は、電気装置などはすべて稼働状態となっていて、パンタグラフを上げて電気を通せば動かすことができるが、保安装置が現代の基準に合致しないため、構内など閉鎖された場所でのデモ走行に限られる。日本で言えば「碓氷峠鉄道文化むら」(群馬県)に保存されているEF63形電気機関車のようなものだ。3は文字通り、動力や制御装置が稼働できない状態で、博物館などで保存・展示させるための車両だ」、なるほ 枝久保達也氏による「JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは」 橋爪 智之氏による「「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」、自前の工場で徹底整備」 「固定編成の列車はどこかに不具合が発生した場合、編成単位での工場入りが必要となる。日本と異なり不具合の発生確率が高いヨーロッパでは、故障のたびに運休が発生しては、それこそ運用が回らなくなってしまう。 ある意味では、柔軟性という面において利点のある固定されていない編成のほうが、ヨーロッパの列車運用には合っているのかもしれない」、その通りだ。 「レイルジェットは、従来の客車特急列車インターシティの上位に位置する列車として2008年に誕生。客車ではあるが1両ごとに切り離しはできず、完全に固定された7両の編成を機関車が牽引・推進するもので、客車列車というよりは電車に近い。いわゆる高速列車ではないものの、最高時速は230kmに達し、洗練された内外装デザインも含め、従来型客車の旧態依然としたイメージを打ち破る車両となった。 2016年までの間に60本が製造され、チェコ鉄道にも同型車両が7本納入された。 (その13)(豪雪で露呈 オーストリア「看板特急」の落とし穴 ドア1カ所だけ故障でも「編成丸ごと」工場送り、「芸術の国」イタリアが進める鉄道保存の本気度 400両超保有の「財団」 自前の工場で徹底整備、JR東・西はなぜ車両の「脱オーダーメイド」を検討するのか?装置・部品の「共通化」構想の狙いとは) 「固定編成のレイルジェットは、故障した1両だけを切り離すということができない。ドアやトイレといった部分的な故障でも、修理するためには7両編成丸ごと工場へ入場させなければならない。 日本的に考えると、客用ドアの故障は大きなトラブルである。不具合が発生すれば工場へ即入場となるだろう。だが、今回はただでさえ故障が相次いで工場が逼迫している状況で、こう言っては何だが「たかがドア1カ所」のために編成を丸ごと工場入りさせて列車を運休することなどできない。乗客には多少の不便をかけることにはなるが、運休することを考えれば 日本では「動態保存」は極めて少ないが、イタリアではかなり多いようだ。 走らせたほうがまだマシなため、故障した状態のまま営業に就かせるケースが相次ぐことになる」、これは大変だ。 「チョッパ制御以降の車両は、制御装置に半導体を用いていることから、故障してしまえば部品の交換以外に修理の方法がない。ところが半導体は日進月歩で進化を続けており、古くなった製品はすぐに生産中止となることから、現役の車両ですら、まだ動く車両を廃車にして、予備部品の確保(共食い)を行っている車種もある」、確かに「半導体」導入以降は「予備部品の確保(共食い)」が必要になるようだ。 東洋経済オンライン 事業が縮小すれば鉄道車両も削減され、新造車両も減少する。海外進出を進める車両メーカーもあるが、サプライヤーの多くは国内需要が中心だ。事業者のみ、メーカーのみの課題ではなく、将来にわたって鉄道システムを機能させるための検討が、今後ますます本格化しそうだ」、設計の共通化などによる効率化が、今後進展するのは、楽しみだ。 「修復技術にも定評があるイタリアは、産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、「イタリア」が「修復技術にも定評がある」、「産業遺産である鉄道についても同様の価値を見出し、これらを観光資源として再生するという取り組みを、国を挙げて行っている」、注目すべき国の1つだ。 現在は、ウィーン―ザルツブルク間などの主要幹線において、新幹線で言うところの「のぞみ」や「こだま」のような、速達タイプ(RJX)と各駅停車タイプ(RJ)が設定されるなど、オーストリア国内における都市間輸送の大半をこのレイルジェットが担う形」、なるほど。 「近年の鉄道車両の生産数は、新幹線やJR東日本の一部形式を除けば、多くても300~400両、ほとんどは100両程度と少ないため、量産効果が小さい。特に一部列車のみ日比谷線に乗り入れる東武鉄道は、必要な編成数がそれほど多くないため、独自設計の車両を製造すると高くつく。そこで東京メトロと一括して発注することで、性能や操作性を統一するとともにコストダウンを狙った」、なるほど。 「この車両は動かせる状態にあるが、信号装置が古い状態のままで、かつパンタグラフは現在本線上での使用を認められてない古いタイプ(FS Tipo42)を搭載しているため、本線走行はできないという(前述「2」に該当)」、なるほど。 「現行車両の部品の交換は現実的ではないため、共通化を取り入れた設計は今後の新型車両から導入する。つまり、今回の検討が形になるのは5年後、10年後レベルの話になる。QRコード乗車券を8事業者共同で進めるように、今後の検討で、大手私鉄が参加してさらに大きな取り組みになる可能性もある・・・人口減少が進めば鉄道事業は縮小していく。 大変だ。 ど。 ダイヤモンド・オンライン 「これらメーカーの標準設計で製造された車両は、鉄道事業者ごとの特色を出すために前面形状こそ作り分けられているものの、よく見れば、車体の側面や内装はほとんど同じであることに気づくだろう。このように衝突安全性向上や環境負荷低減に対応しつつ、コスト削減を図るのも共通化の効果だ」、なるほど。 「今後は発注数の減少が予想されるため、業界全体の効率化を図り、限られた人員や設備を各社の得意な領域に集中したい。そこでモーター、台車のオイルダンパー、パンタグラフ、行先表示器など、可能な範囲で装置・部品の共通化に着手し、各社の独自性と効率化のバランスを見ながら共通化対象部品を拡大するというのが今回の発表だ」、なるほど。
コンサルティング(その2)(マッキンゼー? ボスコン? コンサル2大トップの「採用基準」はどう違う?【コンサル専門エージェントが公開】、「とりあえずコンサル業界に」就活市場で人気化が止まらない1つの納得理由 外資系コンサルティングファームが人気の理由と選考プロセスを解説) [産業動向]
コンサルティングについては、本年3月3日に取上げた。今日は、(その2)(マッキンゼー? ボスコン? コンサル2大トップの「採用基準」はどう違う?【コンサル専門エージェントが公開】、「とりあえずコンサル業界に」就活市場で人気化が止まらない1つの納得理由 外資系コンサルティングファームが人気の理由と選考プロセスを解説)である。
先ずは、本年3月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した久留須 親氏による「マッキンゼー? ボスコン? コンサル2大トップの「採用基準」はどう違う?【コンサル専門エージェントが公開】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340873
・『コンサルティング業界に特化したエージェントとして、17年間転職支援をしてきた久留須 親(くるす ちかし)氏、はコンサルティングファーム志願者の「駆け込み寺」として、マッキンゼー、BCGなどの経営戦略系ファーム、そしてアクセンチュア、デロイトなどの総合系ファームに、多くの内定者を送り出してきた。著書『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』では「ファームに入社した人の共通点」「具体的にどんな対策をすれば受かるのか」「入社後活躍する人とは」などについて、史上初めて実際に入社した3000人以上のデータを分析し「ファクトベース」で伝えている。 今回は、本書の内容から一部を抜粋・編集し、「各社の採用のポイント」を紹介する』、興味深そうだ。
・『マッキンゼーに受かる人が、全てのファームに受かるわけではない コンサルティングファームを受けるとき、最初にぜひ知って欲しいのが「カルチャーフィット」の重要性についてです。経営戦略系、総合系問わず、ファームの「難易度」は決して大学受験の偏差値ピラミッドのようなものではありません。 ピラミッド的な考え方だと「マッキンゼーの難易度が一番高く、マッキンゼーに受かる人は他社も全部受かる」と思いがちですが、実際には「マッキンゼーにしか受からなかった」という人が多いのが実状です。これは、各ファームがカルチャーフィットもしっかりと見ていることが理由かと思います。フィット感がない場合は、スキルがある程度評価できても採用を見送ったり、評価が低くなるような採用基準になっていたりします。 特に、Top-tier(トップティア)と呼ばれるマッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン コンサルティング グループ、ベイン・アンド・カンパニーは紛れもないグローバルエクセレントカンパニーですから、この3社が持つカルチャーは極めて強固で「三社三様」です。この3社全てからオファーを得た人は、私の17年の経験の中でも数人しか見たことがありません。他のファームにも、それぞれカルチャーや企業カラーがあります。商社や広告代理店、メガバンクのように、「同じ業界でもカルチャーや企業カラーが全く違う」というのと同様です。 ここで大事なことは「偏差値的な考えで志望度を決めない」ことです。なぜなら「自分が行きたいファームが自分に合っているファームとは限らない」からです。実際、あるファームではうまくパフォームできなかった人が、ファームが変わるだけで水を得た魚のようにハイパフォーマーになった、という例を数多く見てきました。 多くの人が大学受験を経験しているため「偏差値的に考えてしまう」ことは理解できます。しかし、「転職の目的はファームに入社することではなく、コンサルタントとしてパフォームすること」です。「オファーを獲得したファームが自分にフィットしている」と考える人が、最終的にうまくいきます。 「自分が行きたいファームから是が非でもオファーを獲得する」と考えるのではなく、「オファーを獲得したファームが自分にフィットしている」と考えるようにしてください』、「大事なことは「偏差値的な考えで志望度を決めない」ことです。なぜなら「自分が行きたいファームが自分に合っているファームとは限らない」からです・・・「自分が行きたいファームから是が非でもオファーを獲得する」と考えるのではなく、「オファーを獲得したファームが自分にフィットしている」と考えるようにしてください」、なるほど。
・『マッキンゼー・アンド・カンパニー マッキンゼーは、グローバルリーダーの育成を使命とするグローバルトップファームです。特に重視していることで有名なコンピテンシー(行動特性・能力)は、「リーダーシップ」です。コンサルタントのリーダーシップとは、組織のトップが発揮すべきいわゆる「人の上に立つリーダーシップ」とは異なります(詳細は、本書の中で説明しています)。採用の際は英語力が求められないファームも多いなか、マッキンゼーでは英語でのケース面接が行われます。 <採用で見られるポイント> ・極めて高いインテレクチュアルスキル:経営に関する幅広い知識や実際の事例、ビジネスのトレンドなどのファクトをおさえた戦略立案ができるとよいです。 ・卓越したリーダーシップ:「グローバルリーダーとして世の中を引っ張っていきたい」という強い意志やアスピレーションを語れるようにしておきましょう。 ・ビジネスレベルの英語力:特に会話力が求められ、英語でケース面接も行います。インテグレイティブ以外のサービスラインでは、各サービス領域における経験や高い専門性が求められます。 <特徴> マッキンゼー・アンド・カンパニーは、1926年にジェームズ・O・マッキンゼーによって設立されました。1929年にアンドリュー・トーマス(トム)・カーニーを最初のパートナーとして迎え入れ、1933年にマービン・バウアーが入社しました。1937年にマッキンゼーが急逝しますが、バウアーがニューヨークオフィスを率いて色々な経緯ののち、1947年に現在のマッキンゼー・アンド・カンパニーになります。バウアーは、マッキンゼーの成長を長期にわたってリードし、ファクトベースの分析的アプローチによる科学的・論理的な問題解決の方法論を確立したことで、「現在の経営コンサルティング業界の父」とも称されています。 日本支社は、1971年に設立されました。1972年に入社した大前研一が1975年に出版した『企業参謀 戦略的思考とはなにか』は、日本における経営コンサルティングの礎を築いた書籍といえます(50年近く経った今でもロングセラーです)。 クライアントに常に最高水準の支援を提供することを掲げていることから、時代と共にクライアントのニーズに合わせてサービス内容を拡げており、従来のジェネラルな経営コンサルティングを手掛けるインテグレイティブに加えて、デジタルやアクセラレート(実行支援)、オペレーション(サプライチェーン・マニュファクチャリングなど)、RTS(企業変革・事業再生)、クォンタムブラック(データサイエンティスト)、リープ(新規事業立案)などの多岐にわたるサービスラインを有しています。 また、グローバルで真の「One Firm(ひとつのファーム)」として運営されているのが特徴で、各国のコンサルタントが国をまたいでプロジェクトにアサインされたり、社内のナレッジ(英語で管理されている)を有効活用する観点から、英語が社内公用語となっています(応募時の必要書類も英文レジュメのみです)』、「各国のコンサルタントが国をまたいでプロジェクトにアサインされたり、社内のナレッジ(英語で管理されている)を有効活用する観点から、英語が社内公用語となっています(応募時の必要書類も英文レジュメのみです)」、なるほど。
・『ボストン コンサルティング グループ 日本支社の従業員数が世界の中でも多く、日本に根差したグローバルトップファームです。BCGが特に重視するのが「インサイト」すなわち洞察力です。洞察力については本書でも詳細に説明していますが、ロジカルシンキングから一歩進んで「独自の考えや切り口・視点があること」が求められます。 <採用で見られるポイント> ・極めて高いインテレクチュアルスキル:ロジカルかつ柔軟な発想から独自のインサイトを示すことができるとよいです。 ・アスピレーション:自分が何を大切にしていて、それを磨くためにどういうことをしてきたかを語れるようにしておきましょう。 <特徴> BCGは、1963年にアーサー・ディ・リトルから独立したブルース・ヘンダーソンらによってボストンで設立されました。今では「経営戦略」という言葉は当たり前になっていますが、初めて「戦略」という概念を経営に導入したファームです。 また、「経験曲線」や「プロダクト・ポートフォリオ・マトリクス(PPM)」、「タイムベース競争」などの画期的なアイデアを開発したのもBCGです。競合企業に対する「差別化」「優位性」の必要性をいち早く提唱し、「Insight(洞察)」「Impact(インパクト)」「Trust(信頼)」のサイクルを付加価値の源泉として捉え、重視しています。 東京オフィスは、1966年にボストンに次ぐ2番目のオフィスとして設立されました。いち早く日本市場に着目し、クライアント経営層が抱える経営戦略上の課題に対して、深い洞察からインパクトのある戦略を提案、さらに戦略の実現まで手掛けてクライアントを変革し、持続的な競合優位性を構築することで信頼を得ています。その結果、日本において最も規模が大きい経営戦略ファームとなっています。 このようなクライアントの変革を実現するために、各業界や業務領域における高い専門性を有する経営戦略コンサルタントを抱えているだけでなく、テクノロジーやデジタル、デザイン、インキュベーション創出などを手掛ける人材も有しており、アーキテクトやシステムエンジニア、データサイエンティスト、デザイナー、プロダクトマネージャーなどと経営戦略コンサルタントが協働しています。 また、東京オフィス以外にも、名古屋・大阪・京都・福岡にオフィスを構えており、グローバルファームでありながらしっかりと日本に根差したファームといえます』、「日本支社の従業員数が世界の中でも多く、日本に根差したグローバルトップファームです」、例外的存在だ。
(※本記事は、『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』から抜粋・編集したものです) (久留須 親氏については、リンク先参照)
次に、5月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したコンサルティングファーム研究会 フェルミ推定・ケース面接対策チームによる「「とりあえずコンサル業界に」就活市場で人気化が止まらない1つの納得理由 外資系コンサルティングファームが人気の理由と選考プロセスを解説」を紹介しよう。
・『今、学生や転職者から最も人気の就職先の一つがコンサルティング業界だ。数多くの志望者の中から、一握りの有望な人材を見抜くために、この業界にはフェルミ推定やケース面接と呼ばれる独特の入社試験がある。新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』は、大手コンサルティングファームで実際に出題された問題を集め、現役で活躍するコンサルタントに解答してもらうことで、コンサル流の思考法をノウハウとして凝縮した1冊だ。就活対策にはもちろんのこと、思考力のトレーニングにも最適だ。本稿では、本書執筆者の1人で現役コンサルタントのRIO氏に、外資系コンサルティングファームが人気の理由と選考プロセスについて話を聞いた(Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『「とりあえずコンサル業界に就職したい」と考える学生が増えている Q:近年コンサルティング業界が、就活で人気になっていると聞きますが、その理由はどこにあるのでしょうか。 RIO氏:最近の傾向として、とりあえずコンサルティング業界を目指そうという学生が非常に増えていて、「とりコン(とりあえずコンサル業界に就職)」という言葉も一般的になっています。 Q:なぜ、数ある業種や職種の中で「とりあえずコンサル」と考える学生が多いのでしょうか。 RIO氏:目まぐるしく変化する時代の中で、何もわからないまま一つの業界に腰を据えることをリスクだと捉えているからではないでしょうか。 その点でコンサルタントの仕事は、プロジェクトごとに様々な業界に入り込んで、クライアントの経営課題と向き合う仕事なので、将来に色々なキャリアの選択肢を残せると職業だと言えるかもしれません。 一般的な企業では、いわゆる下積みのような期間を過ごすケースが多く、気づいたときには転職するには遅い年齢になってしまうこともありえます。 コンサルティングファームの仕事は、一般的な企業ではかなり上のポジションに就かないと向き合えないような経営課題を1年目のコンサルタントから新卒であろうと関係なく、必死になって取り組むことになります。 先輩のコンサルタントたちからはもちろん、クライアント企業の経営層や担当者からも学びながらアウトプットし、フィードバックを受けるといった魅力的な成長機会を得ることができるのです』、「一般的な企業では、いわゆる下積みのような期間を過ごすケースが多く、気づいたときには転職するには遅い年齢になってしまうこともありえます。 コンサルティングファームの仕事は、一般的な企業ではかなり上のポジションに就かないと向き合えないような経営課題を1年目のコンサルタントから新卒であろうと関係なく、必死になって取り組むことになります。 先輩のコンサルタントたちからはもちろん、クライアント企業の経営層や担当者からも学びながらアウトプットし、フィードバックを受けるといった魅力的な成長機会を得ることができるのです」、確かにこれなら魅力的だ。
・『コンサルティングファームの採用プロセス Q:コンサルティングファームの一般的な選考プロセスを教えてください。 RIO氏:まずエントリーシートを提出してウェブテストを受けます。それを突破すると1次面接に呼ばれるわけですが、この段階でケース面接問題やフェルミ推定問題が出題されます。 一般的な会社における新卒採用の面接では、志望者のパーソナリティに関すること、たとえば「学生時代に力を入れたこと」などを聞かれると思いますが、そのような人物面接に加えて、「東京都の通勤ラッシュを解消するには?」といったような、志望者の思考力を試すケース面接が行われます 面接官との1対1で行われる場合もあれば、グループディスカッションや筆記テストの場合もあります。 基本的には、このような面接が2~3回実施された後、3次面接ないし4次面接の段階で、コンサルティングファームのパートナーが出てきます。 そこで、さらにケース面接を行う場合もあれば、志望者のパーソナリティを聞くような通常の人物面接が行われることもありますが、最終的にその企業のカルチャーとフィットしていると評価された志望者に内定を出すというのが一般的な選考の流れです』、「1次面接に呼ばれるわけですが、この段階でケース面接問題やフェルミ推定問題が出題されます。 一般的な会社における新卒採用の面接では、志望者のパーソナリティに関すること、たとえば「学生時代に力を入れたこと」などを聞かれると思いますが、そのような人物面接に加えて、「東京都の通勤ラッシュを解消するには?」といったような、志望者の思考力を試すケース面接が行われます 面接官との1対1で行われる場合もあれば、グループディスカッションや筆記テストの場合もあります。 基本的には、このような面接が2~3回実施された後、3次面接ないし4次面接の段階で、コンサルティングファームのパートナーが出てきます」、さすがに慎重な採用姿勢だ。
・『インターンで内定が決まる学生も RIO氏:このほか、インターンシップを通じた採用のパターンもあります。その場合は、1~2回のケース面接を行い、合格した人が「ジョブ」と呼ばれる数日間のインターンに参加します。 このインターンでは、「ある会社の新規事業を立案せよ」とか「ある会社のM&Aの戦略を検討せよ」という課題に取り組むことになります。 他のインターン参加者と協力しながら調査分析や資料作成に取り組み、最終日にはパートナーを前にプレゼンテーションを行います。 課題の合間には、コンサルティングファームの代表から話があったり、各部署の説明が行われたりもします。 インターンの当日あるいは後日、ジョブで高評価を得た人は人事部やパートナーとの面接に呼ばれ、一部の方に内定が出されます』、「ジョブで高評価を得た人は人事部やパートナーとの面接に呼ばれ、一部の方に内定が出されます」、当然だろう。
・『コンサルティング業界の採用人数は増えている Q:外資系コンサルの選考と聞くと、非常に難易度の高い、厳しい面接というイメージもありますが、実際のところどうなのでしょうか。 RIO氏:初めてフェルミ推定やケース面接の問題を目にすると、難しく感じるかもしれません。ですが、問題を繰り返し練習すれば、誰でも「回答の型」を身につけることができます。 これはコンサルタントの仕事に必要な「問題解決思考の型」「ロジカルシンキングの型」でもあります。 コンサルティングファームの選考では、必ずフェルミ推定やケース面接が実施されるので、対策を立てやすいという面もあります。事前に対策を立てることで、選考突破の可能性を大きく伸ばすことができます。 私は10年以上この業界で働いているのですが、私が就職した時と比べると、コンサルティングファームの採用人数は圧倒的に増えています。 いわゆる総合コンサルを中心に、以前は十数名しか採用しなかった企業が、数百名以上採用するようになっており、このこともコンサルティング業界への就職を希望する学生が増えている大きな要因だと思います』、「コンサルティングファームの選考では、必ずフェルミ推定やケース面接が実施されるので、対策を立てやすいという面もあります。事前に対策を立てることで、選考突破の可能性を大きく伸ばすことができます・・・総合コンサルを中心に、以前は十数名しか採用しなかった企業が、数百名以上採用するようになっており、このこともコンサルティング業界への就職を希望する学生が増えている大きな要因だと思います」、「フェルミ推定」など論理的思考に役立つ知識を勉強した学生が増えているのは、l心強い。
先ずは、本年3月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した久留須 親氏による「マッキンゼー? ボスコン? コンサル2大トップの「採用基準」はどう違う?【コンサル専門エージェントが公開】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340873
・『コンサルティング業界に特化したエージェントとして、17年間転職支援をしてきた久留須 親(くるす ちかし)氏、はコンサルティングファーム志願者の「駆け込み寺」として、マッキンゼー、BCGなどの経営戦略系ファーム、そしてアクセンチュア、デロイトなどの総合系ファームに、多くの内定者を送り出してきた。著書『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』では「ファームに入社した人の共通点」「具体的にどんな対策をすれば受かるのか」「入社後活躍する人とは」などについて、史上初めて実際に入社した3000人以上のデータを分析し「ファクトベース」で伝えている。 今回は、本書の内容から一部を抜粋・編集し、「各社の採用のポイント」を紹介する』、興味深そうだ。
・『マッキンゼーに受かる人が、全てのファームに受かるわけではない コンサルティングファームを受けるとき、最初にぜひ知って欲しいのが「カルチャーフィット」の重要性についてです。経営戦略系、総合系問わず、ファームの「難易度」は決して大学受験の偏差値ピラミッドのようなものではありません。 ピラミッド的な考え方だと「マッキンゼーの難易度が一番高く、マッキンゼーに受かる人は他社も全部受かる」と思いがちですが、実際には「マッキンゼーにしか受からなかった」という人が多いのが実状です。これは、各ファームがカルチャーフィットもしっかりと見ていることが理由かと思います。フィット感がない場合は、スキルがある程度評価できても採用を見送ったり、評価が低くなるような採用基準になっていたりします。 特に、Top-tier(トップティア)と呼ばれるマッキンゼー・アンド・カンパニー、ボストン コンサルティング グループ、ベイン・アンド・カンパニーは紛れもないグローバルエクセレントカンパニーですから、この3社が持つカルチャーは極めて強固で「三社三様」です。この3社全てからオファーを得た人は、私の17年の経験の中でも数人しか見たことがありません。他のファームにも、それぞれカルチャーや企業カラーがあります。商社や広告代理店、メガバンクのように、「同じ業界でもカルチャーや企業カラーが全く違う」というのと同様です。 ここで大事なことは「偏差値的な考えで志望度を決めない」ことです。なぜなら「自分が行きたいファームが自分に合っているファームとは限らない」からです。実際、あるファームではうまくパフォームできなかった人が、ファームが変わるだけで水を得た魚のようにハイパフォーマーになった、という例を数多く見てきました。 多くの人が大学受験を経験しているため「偏差値的に考えてしまう」ことは理解できます。しかし、「転職の目的はファームに入社することではなく、コンサルタントとしてパフォームすること」です。「オファーを獲得したファームが自分にフィットしている」と考える人が、最終的にうまくいきます。 「自分が行きたいファームから是が非でもオファーを獲得する」と考えるのではなく、「オファーを獲得したファームが自分にフィットしている」と考えるようにしてください』、「大事なことは「偏差値的な考えで志望度を決めない」ことです。なぜなら「自分が行きたいファームが自分に合っているファームとは限らない」からです・・・「自分が行きたいファームから是が非でもオファーを獲得する」と考えるのではなく、「オファーを獲得したファームが自分にフィットしている」と考えるようにしてください」、なるほど。
・『マッキンゼー・アンド・カンパニー マッキンゼーは、グローバルリーダーの育成を使命とするグローバルトップファームです。特に重視していることで有名なコンピテンシー(行動特性・能力)は、「リーダーシップ」です。コンサルタントのリーダーシップとは、組織のトップが発揮すべきいわゆる「人の上に立つリーダーシップ」とは異なります(詳細は、本書の中で説明しています)。採用の際は英語力が求められないファームも多いなか、マッキンゼーでは英語でのケース面接が行われます。 <採用で見られるポイント> ・極めて高いインテレクチュアルスキル:経営に関する幅広い知識や実際の事例、ビジネスのトレンドなどのファクトをおさえた戦略立案ができるとよいです。 ・卓越したリーダーシップ:「グローバルリーダーとして世の中を引っ張っていきたい」という強い意志やアスピレーションを語れるようにしておきましょう。 ・ビジネスレベルの英語力:特に会話力が求められ、英語でケース面接も行います。インテグレイティブ以外のサービスラインでは、各サービス領域における経験や高い専門性が求められます。 <特徴> マッキンゼー・アンド・カンパニーは、1926年にジェームズ・O・マッキンゼーによって設立されました。1929年にアンドリュー・トーマス(トム)・カーニーを最初のパートナーとして迎え入れ、1933年にマービン・バウアーが入社しました。1937年にマッキンゼーが急逝しますが、バウアーがニューヨークオフィスを率いて色々な経緯ののち、1947年に現在のマッキンゼー・アンド・カンパニーになります。バウアーは、マッキンゼーの成長を長期にわたってリードし、ファクトベースの分析的アプローチによる科学的・論理的な問題解決の方法論を確立したことで、「現在の経営コンサルティング業界の父」とも称されています。 日本支社は、1971年に設立されました。1972年に入社した大前研一が1975年に出版した『企業参謀 戦略的思考とはなにか』は、日本における経営コンサルティングの礎を築いた書籍といえます(50年近く経った今でもロングセラーです)。 クライアントに常に最高水準の支援を提供することを掲げていることから、時代と共にクライアントのニーズに合わせてサービス内容を拡げており、従来のジェネラルな経営コンサルティングを手掛けるインテグレイティブに加えて、デジタルやアクセラレート(実行支援)、オペレーション(サプライチェーン・マニュファクチャリングなど)、RTS(企業変革・事業再生)、クォンタムブラック(データサイエンティスト)、リープ(新規事業立案)などの多岐にわたるサービスラインを有しています。 また、グローバルで真の「One Firm(ひとつのファーム)」として運営されているのが特徴で、各国のコンサルタントが国をまたいでプロジェクトにアサインされたり、社内のナレッジ(英語で管理されている)を有効活用する観点から、英語が社内公用語となっています(応募時の必要書類も英文レジュメのみです)』、「各国のコンサルタントが国をまたいでプロジェクトにアサインされたり、社内のナレッジ(英語で管理されている)を有効活用する観点から、英語が社内公用語となっています(応募時の必要書類も英文レジュメのみです)」、なるほど。
・『ボストン コンサルティング グループ 日本支社の従業員数が世界の中でも多く、日本に根差したグローバルトップファームです。BCGが特に重視するのが「インサイト」すなわち洞察力です。洞察力については本書でも詳細に説明していますが、ロジカルシンキングから一歩進んで「独自の考えや切り口・視点があること」が求められます。 <採用で見られるポイント> ・極めて高いインテレクチュアルスキル:ロジカルかつ柔軟な発想から独自のインサイトを示すことができるとよいです。 ・アスピレーション:自分が何を大切にしていて、それを磨くためにどういうことをしてきたかを語れるようにしておきましょう。 <特徴> BCGは、1963年にアーサー・ディ・リトルから独立したブルース・ヘンダーソンらによってボストンで設立されました。今では「経営戦略」という言葉は当たり前になっていますが、初めて「戦略」という概念を経営に導入したファームです。 また、「経験曲線」や「プロダクト・ポートフォリオ・マトリクス(PPM)」、「タイムベース競争」などの画期的なアイデアを開発したのもBCGです。競合企業に対する「差別化」「優位性」の必要性をいち早く提唱し、「Insight(洞察)」「Impact(インパクト)」「Trust(信頼)」のサイクルを付加価値の源泉として捉え、重視しています。 東京オフィスは、1966年にボストンに次ぐ2番目のオフィスとして設立されました。いち早く日本市場に着目し、クライアント経営層が抱える経営戦略上の課題に対して、深い洞察からインパクトのある戦略を提案、さらに戦略の実現まで手掛けてクライアントを変革し、持続的な競合優位性を構築することで信頼を得ています。その結果、日本において最も規模が大きい経営戦略ファームとなっています。 このようなクライアントの変革を実現するために、各業界や業務領域における高い専門性を有する経営戦略コンサルタントを抱えているだけでなく、テクノロジーやデジタル、デザイン、インキュベーション創出などを手掛ける人材も有しており、アーキテクトやシステムエンジニア、データサイエンティスト、デザイナー、プロダクトマネージャーなどと経営戦略コンサルタントが協働しています。 また、東京オフィス以外にも、名古屋・大阪・京都・福岡にオフィスを構えており、グローバルファームでありながらしっかりと日本に根差したファームといえます』、「日本支社の従業員数が世界の中でも多く、日本に根差したグローバルトップファームです」、例外的存在だ。
(※本記事は、『「コンサルティングファームに入社したい」と思ったら読む本』から抜粋・編集したものです) (久留須 親氏については、リンク先参照)
次に、5月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したコンサルティングファーム研究会 フェルミ推定・ケース面接対策チームによる「「とりあえずコンサル業界に」就活市場で人気化が止まらない1つの納得理由 外資系コンサルティングファームが人気の理由と選考プロセスを解説」を紹介しよう。
・『今、学生や転職者から最も人気の就職先の一つがコンサルティング業界だ。数多くの志望者の中から、一握りの有望な人材を見抜くために、この業界にはフェルミ推定やケース面接と呼ばれる独特の入社試験がある。新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』は、大手コンサルティングファームで実際に出題された問題を集め、現役で活躍するコンサルタントに解答してもらうことで、コンサル流の思考法をノウハウとして凝縮した1冊だ。就活対策にはもちろんのこと、思考力のトレーニングにも最適だ。本稿では、本書執筆者の1人で現役コンサルタントのRIO氏に、外資系コンサルティングファームが人気の理由と選考プロセスについて話を聞いた(Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『「とりあえずコンサル業界に就職したい」と考える学生が増えている Q:近年コンサルティング業界が、就活で人気になっていると聞きますが、その理由はどこにあるのでしょうか。 RIO氏:最近の傾向として、とりあえずコンサルティング業界を目指そうという学生が非常に増えていて、「とりコン(とりあえずコンサル業界に就職)」という言葉も一般的になっています。 Q:なぜ、数ある業種や職種の中で「とりあえずコンサル」と考える学生が多いのでしょうか。 RIO氏:目まぐるしく変化する時代の中で、何もわからないまま一つの業界に腰を据えることをリスクだと捉えているからではないでしょうか。 その点でコンサルタントの仕事は、プロジェクトごとに様々な業界に入り込んで、クライアントの経営課題と向き合う仕事なので、将来に色々なキャリアの選択肢を残せると職業だと言えるかもしれません。 一般的な企業では、いわゆる下積みのような期間を過ごすケースが多く、気づいたときには転職するには遅い年齢になってしまうこともありえます。 コンサルティングファームの仕事は、一般的な企業ではかなり上のポジションに就かないと向き合えないような経営課題を1年目のコンサルタントから新卒であろうと関係なく、必死になって取り組むことになります。 先輩のコンサルタントたちからはもちろん、クライアント企業の経営層や担当者からも学びながらアウトプットし、フィードバックを受けるといった魅力的な成長機会を得ることができるのです』、「一般的な企業では、いわゆる下積みのような期間を過ごすケースが多く、気づいたときには転職するには遅い年齢になってしまうこともありえます。 コンサルティングファームの仕事は、一般的な企業ではかなり上のポジションに就かないと向き合えないような経営課題を1年目のコンサルタントから新卒であろうと関係なく、必死になって取り組むことになります。 先輩のコンサルタントたちからはもちろん、クライアント企業の経営層や担当者からも学びながらアウトプットし、フィードバックを受けるといった魅力的な成長機会を得ることができるのです」、確かにこれなら魅力的だ。
・『コンサルティングファームの採用プロセス Q:コンサルティングファームの一般的な選考プロセスを教えてください。 RIO氏:まずエントリーシートを提出してウェブテストを受けます。それを突破すると1次面接に呼ばれるわけですが、この段階でケース面接問題やフェルミ推定問題が出題されます。 一般的な会社における新卒採用の面接では、志望者のパーソナリティに関すること、たとえば「学生時代に力を入れたこと」などを聞かれると思いますが、そのような人物面接に加えて、「東京都の通勤ラッシュを解消するには?」といったような、志望者の思考力を試すケース面接が行われます 面接官との1対1で行われる場合もあれば、グループディスカッションや筆記テストの場合もあります。 基本的には、このような面接が2~3回実施された後、3次面接ないし4次面接の段階で、コンサルティングファームのパートナーが出てきます。 そこで、さらにケース面接を行う場合もあれば、志望者のパーソナリティを聞くような通常の人物面接が行われることもありますが、最終的にその企業のカルチャーとフィットしていると評価された志望者に内定を出すというのが一般的な選考の流れです』、「1次面接に呼ばれるわけですが、この段階でケース面接問題やフェルミ推定問題が出題されます。 一般的な会社における新卒採用の面接では、志望者のパーソナリティに関すること、たとえば「学生時代に力を入れたこと」などを聞かれると思いますが、そのような人物面接に加えて、「東京都の通勤ラッシュを解消するには?」といったような、志望者の思考力を試すケース面接が行われます 面接官との1対1で行われる場合もあれば、グループディスカッションや筆記テストの場合もあります。 基本的には、このような面接が2~3回実施された後、3次面接ないし4次面接の段階で、コンサルティングファームのパートナーが出てきます」、さすがに慎重な採用姿勢だ。
・『インターンで内定が決まる学生も RIO氏:このほか、インターンシップを通じた採用のパターンもあります。その場合は、1~2回のケース面接を行い、合格した人が「ジョブ」と呼ばれる数日間のインターンに参加します。 このインターンでは、「ある会社の新規事業を立案せよ」とか「ある会社のM&Aの戦略を検討せよ」という課題に取り組むことになります。 他のインターン参加者と協力しながら調査分析や資料作成に取り組み、最終日にはパートナーを前にプレゼンテーションを行います。 課題の合間には、コンサルティングファームの代表から話があったり、各部署の説明が行われたりもします。 インターンの当日あるいは後日、ジョブで高評価を得た人は人事部やパートナーとの面接に呼ばれ、一部の方に内定が出されます』、「ジョブで高評価を得た人は人事部やパートナーとの面接に呼ばれ、一部の方に内定が出されます」、当然だろう。
・『コンサルティング業界の採用人数は増えている Q:外資系コンサルの選考と聞くと、非常に難易度の高い、厳しい面接というイメージもありますが、実際のところどうなのでしょうか。 RIO氏:初めてフェルミ推定やケース面接の問題を目にすると、難しく感じるかもしれません。ですが、問題を繰り返し練習すれば、誰でも「回答の型」を身につけることができます。 これはコンサルタントの仕事に必要な「問題解決思考の型」「ロジカルシンキングの型」でもあります。 コンサルティングファームの選考では、必ずフェルミ推定やケース面接が実施されるので、対策を立てやすいという面もあります。事前に対策を立てることで、選考突破の可能性を大きく伸ばすことができます。 私は10年以上この業界で働いているのですが、私が就職した時と比べると、コンサルティングファームの採用人数は圧倒的に増えています。 いわゆる総合コンサルを中心に、以前は十数名しか採用しなかった企業が、数百名以上採用するようになっており、このこともコンサルティング業界への就職を希望する学生が増えている大きな要因だと思います』、「コンサルティングファームの選考では、必ずフェルミ推定やケース面接が実施されるので、対策を立てやすいという面もあります。事前に対策を立てることで、選考突破の可能性を大きく伸ばすことができます・・・総合コンサルを中心に、以前は十数名しか採用しなかった企業が、数百名以上採用するようになっており、このこともコンサルティング業界への就職を希望する学生が増えている大きな要因だと思います」、「フェルミ推定」など論理的思考に役立つ知識を勉強した学生が増えているのは、l心強い。
タグ:コンサルティング (その2)(マッキンゼー? ボスコン? コンサル2大トップの「採用基準」はどう違う?【コンサル専門エージェントが公開】、「とりあえずコンサル業界に」就活市場で人気化が止まらない1つの納得理由 外資系コンサルティングファームが人気の理由と選考プロセスを解説) ダイヤモンド・オンライン 久留須 親氏による「マッキンゼー? ボスコン? コンサル2大トップの「採用基準」はどう違う?【コンサル専門エージェントが公開】」 「大事なことは「偏差値的な考えで志望度を決めない」ことです。なぜなら「自分が行きたいファームが自分に合っているファームとは限らない」からです・・・「自分が行きたいファームから是が非でもオファーを獲得する」と考えるのではなく、「オファーを獲得したファームが自分にフィットしている」と考えるようにしてください」、なるほど。 「各国のコンサルタントが国をまたいでプロジェクトにアサインされたり、社内のナレッジ(英語で管理されている)を有効活用する観点から、英語が社内公用語となっています(応募時の必要書類も英文レジュメのみです)」、なるほど。 「日本支社の従業員数が世界の中でも多く、日本に根差したグローバルトップファームです」、例外的存在だ。 コンサルティングファーム研究会 フェルミ推定・ケース面接対策チームによる「「とりあえずコンサル業界に」就活市場で人気化が止まらない1つの納得理由 外資系コンサルティングファームが人気の理由と選考プロセスを解説」 新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』 「一般的な企業では、いわゆる下積みのような期間を過ごすケースが多く、気づいたときには転職するには遅い年齢になってしまうこともありえます。 コンサルティングファームの仕事は、一般的な企業ではかなり上のポジションに就かないと向き合えないような経営課題を1年目のコンサルタントから新卒であろうと関係なく、必死になって取り組むことになります。 先輩のコンサルタントたちからはもちろん、クライアント企業の経営層や担当者からも学びながらアウトプットし、フィードバックを受けるといった魅力的な成長機会を得ることができるのです」、確かにこれなら魅力的だ。 「1次面接に呼ばれるわけですが、この段階でケース面接問題やフェルミ推定問題が出題されます。 一般的な会社における新卒採用の面接では、志望者のパーソナリティに関すること、たとえば「学生時代に力を入れたこと」などを聞かれると思いますが、そのような人物面接に加えて、「東京都の通勤ラッシュを解消するには?」といったような、志望者の思考力を試すケース面接が行われます 面接官との1対1で行われる場合もあれば、グループディスカッションや筆記テストの場合もあります。 基本的には、このような面接が2~3回実施された後、3次 面接ないし4次面接の段階で、コンサルティングファームのパートナーが出てきます」、さすがに慎重な採用姿勢だ。 「ジョブで高評価を得た人は人事部やパートナーとの面接に呼ばれ、一部の方に内定が出されます」、当然だろう。 「コンサルティングファームの選考では、必ずフェルミ推定やケース面接が実施されるので、対策を立てやすいという面もあります。事前に対策を立てることで、選考突破の可能性を大きく伸ばすことができます・・・総合コンサルを中心に、以前は十数名しか採用しなかった企業が、数百名以上採用するようになっており、このこともコンサルティング業界への就職を希望する学生が増えている大きな要因だと思います」、 「フェルミ推定」など論理的思考に役立つ知識を勉強した学生が増えているのは、l心強い。