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情報セキュリティー・サイバー犯罪(その11)(世界中で発生、Windows「画面が真っ青」の原因 850万台に及ぶシステム障害はなぜ起きたのか、サイバー攻撃を受けて「身代金を払ってしまった企業」は一体どうなるのか?、「デンソーの最高機密」はこうして中国人の手に渡った…パソコン破壊の痛恨事態はなぜ起きた?) [社会]

情報セキュリティー・サイバー犯罪については、本年6月21日に取上げた。今日は、(その11)(世界中で発生、Windows「画面が真っ青」の原因 850万台に及ぶシステム障害はなぜ起きたのか、サイバー攻撃を受けて「身代金を払ってしまった企業」は一体どうなるのか?、「デンソーの最高機密」はこうして中国人の手に渡った…パソコン破壊の痛恨事態はなぜ起きた?)である。

先ずは、本年7月22日付け東洋経済オンラインが掲載したウェブライターのタニグチ ムネノリ氏による「世界中で発生、Windows「画面が真っ青」の原因 850万台に及ぶシステム障害はなぜ起きたのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/782101
・『飛行機のフライトが中断され、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンも窓口でのチケットの販売を一時中止するなど広範囲に影響が及んでいる世界規模のコンピューター障害。なぜこのような大問題が発生したのだろうか。 7月19日、世界中の、主に業務システムに使われているWindowsコンピューターで画面が真っ青になるエラーが発生し、世の中を大混乱に陥れた。この問題は、コンピューターの歴史において過去最大と言われるまでに影響範囲が拡大している』、興味深そうだ。
・『ブルースクリーン表示の意味  世界中のコンピューターで最も多く使用されている基本ソフトウェア(オペレーティングシステム。OSと略される)であるWindowsは、OSとしての機能続行ができないほどの障害が発生したときに、青い背景に白字でエラーに関する情報を表示するBSoDとよばれる画面を表示して、機能を停止するようになっている。 BSoDは「Blue Screen of Death」の頭文字を取った略称で、直訳すると「死の青画面」となる。日本では単に「ブルースクリーン」と呼ばれることが多いこの画面の本来の役割は、開発者に対し、発生した不具合に関する情報を表示することだ。) 今回、世界中で発生したBSoDの問題は非常に広範囲に及んでおり、空港を含む各種交通機関や医療機関、金融機関、スターバックスなどの飲食店、さらに、日本国内ではテーマパークのユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどもその影響を受けた。BSoDが発生した企業や組織は一時的にサービス提供や各種業務を中断せざるをえない状況になり、記事執筆時点(7月21日)においても、まだ問題から回復できていないシステムやサービスもあるようだ』、「BSoDは「Blue Screen of Death」の頭文字を取った略称で、直訳すると「死の青画面」となる。日本では単に「ブルースクリーン」と呼ばれることが多いこの画面の本来の役割は、開発者に対し、発生した不具合に関する情報を表示することだ・・・BSoDの問題は非常に広範囲に及んでおり、空港を含む各種交通機関や医療機関、金融機関、スターバックスなどの飲食店、さらに、日本国内ではテーマパークのユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどもその影響を受けた。BSoDが発生した企業や組織は一時的にサービス提供や各種業務を中断せざるをえない状況になり、記事執筆時点(7月21日)においても、まだ問題から回復できていないシステムやサービスもあるようだ」、大変だ。
・『コンピューターウイルスではない  コンピューターに障害が起きる原因は多々あるが、そのひとつには、コンピューターウイルスなど不正プログラムの侵入が挙げられる。最近では、悪意ある者がコンピューターの脆弱性を突いて企業や各種機関に不正プログラムを侵入させ、その組織内のコンピューターを一斉に暗号化、ロックがかかった状態にしてしてしまい、困り果てたターゲット企業に解除キーを購入させようとする、ランサムウェア(身代金要求ソフトウェア)の被害が拡大している。 しかし、7月19日に世界中で一斉に業務システムにBSoDを引き起こしたのはランサムウェアではなく、問題を引き起こすコンピューターウイルスなどの侵入を防止するために導入されている、企業向けのセキュリティソフトウェアで発生した不具合が原因であることがわかっている。 問題となったのはクラウドストライク(CrowdStrike)社のセキュリティ対策ソフトウェア『Falcon プラットフォーム』のWindows版だ。このソフトは「Falcon Sensor」と称するプログラムを用いて、組織内のネットワークに接続されているコンピューター端末の状態を収集・監視し、ウイルスやサイバー攻撃とみられる不審な挙動を検知したときに、管理下にあるコンピューターを保護する機能を提供する。 コンピューターウイルスは、日々新しいものが作り出されており、人々に知られていない未知の脆弱性を突いてシステムに侵入を試みることが多い。そのため、セキュリティ対策ソフトウェアも定期的にウイルスなどの情報を更新して提供することで、つねに最善の対策環境を維持する。ところが、7月19日の朝(日本時間)にクラウドストライクが配信したアップデートファイルには「Falcon Sensor」に関する重大な欠陥が含まれており、これを適用したシステムが実行不可能になる不具合を引き起こした結果、人々が呆然とBSoDを眺める状況を作り出した。) インターネット上の各種サービスの稼働状況を伝えるウェブサイトDowndetector.comでは、日本時間19日午前8時40分前後から、Microsoft Storeや業務向けのMicrosoft 365サービスについての問題が報告され始めた。また、その約1時間後にはマイクロソフトもこの問題を認識していることをX (旧Twitter)で報告した。 また、マイクロソフトのステータスページでは、業務用クラウドサービスであるMicrosoft Azureが影響を受けているとし「クラウドストライク Falconエージェントを実行しているWindowsクライアントおよびWindows Serverを実行中の仮想マシンに影響する問題が確認されており、バグチェック画面(BSoD)が発生し、再起動中の状態でシステムが停止してしまう可能性がある」と記載されていた』、「7月19日の朝(日本時間)にクラウドストライクが配信したアップデートファイルには「Falcon Sensor」に関する重大な欠陥が含まれており、これを適用したシステムが実行不可能になる不具合を引き起こした結果、人々が呆然とBSoDを眺める状況を作り出した・・・セキュリティ対策ソフトウェアでの」不具合とは皮肉なものだ。
・『クラウドストライクの説明は?  クラウドストライクのジョージ・カーツCEOは、日本時間7月19日午後6時45分に、この問題に関して「これはセキュリティに関する問題やサイバー攻撃ではない。すでに問題は特定・分離され、修正プログラムを配布している」とXを通じて発表した。 また、同社のブログにもより詳しい情報を提供しつつ、ユーザー企業に対し「悪意のある人たちがこのような事象を悪用しようとする」可能性があるため警戒を怠らず、クラウドストライクの「正規の担当者」と連絡を取り合うよう呼びかけた。 これは、問題がクラウドストライクのソフトウェアによるものだとの報道が報じられるなかで、顧客企業に対してクラウドストライクのスタッフになりすました人物から電話がかかってきたり、セキュリティの専門家を自称する人物が、サイバー攻撃に狙われている証拠があると主張してコンタクトを取ってくる事例が報告されるようになってきたからだ。 中には、今回発生した問題を自動的に修復するスクリプト(プログラムコードの一種)を有償で提供すると持ちかけるものさえあるとのことだ。もちろん、そんな出所不明のスクリプトを適用して、その結果コンピューターウイルスやランサムウェアを仕込まれたりすれば、目も当てられない惨事になりかねないので、うかつに信用してはいけない。) 一方、Windowsを提供するマイクロソフトのサティア・ナデラCEOも、日本時間7月20日午前1時ごろに「我々はこの問題を認識しており、クラウドストライクおよび業界全体と緊密に協力し、顧客のシステムを安全にオンラインに戻すための技術的なガイダンスとサポートを提供している」と述べた』、「クラウドストライクのジョージ・カーツCEOは、日本時間7月19日午後6時45分に、この問題に関して「これはセキュリティに関する問題やサイバー攻撃ではない。すでに問題は特定・分離され、修正プログラムを配布している」とXを通じて発表した。 また、同社のブログにもより詳しい情報を提供しつつ、ユーザー企業に対し「悪意のある人たちがこのような事象を悪用しようとする」可能性があるため警戒を怠らず、クラウドストライクの「正規の担当者」と連絡を取り合うよう呼びかけた」、賢明な措置だ。
・『シェアの高さが仇に  クラウドストライクFalcon SensorにはMac版やLinux版もあるが、今回の問題はWindows版に提供されたアップデートファイルに問題が含まれていたことで発生した。本来なら、コンピューターウイルスなどの悪意あるソフトウェアがシステムに侵入することで引き起こす不具合を、その対策ソフトウェアが引き起こしてしまったというのは皮肉な話だ。 これほどまでに広範囲に影響が及んだのは、クラウドストライクがこの分野で最も人気の高いソフトウェアだったからでもある。IT専門の調査会社IDCが2023年2月に発表したレポートによれば、コンピューターシステム端末用セキュリティ対策ソフトウェアの市場シェアは、クラウドストライクが17.7%を占めている。これは、マイクロソフトが自社で提供するソリューションの16.4%を抑える、首位の成績だ。 すでに問題を修正しシステムを再び正常に戻す方法は公開されており、今後この問題は終息に向かうはずだ。また、クラウドストライクは問題に遭遇した顧客に対し、システムを修復するための対策ガイダンスなどを提供する情報ハブとなるページを新たに作成、同社ウェブサイト上に公開した。 マイクロソフトは、約850万台のWindowsコンピューターがクラウドストライクの障害により影響を受けたと発表した。この数字は全世界で稼働するWindowsコンピューターの約1%未満だとされている。マイクロソフトのエンタープライズおよびOSセキュリティ担当副社長デビッド・ウェストン氏は「(影響を受けたデバイスの)割合こそ小さいものの、多くの重要なサービスを運営する企業がクラウドストライクを使用していることが、広範囲にわたる経済的、社会的影響を反映した」と述べた。) では、企業や組織の情報システム管理者の立場から、このようなシステム障害が再び起こるのを避けるにはどうすればいいだろうか。 考えられる方法としては、定期的なソフトウェアのアップデートを段階的に適用することが挙げられる。この方法はまず最初に、一部の影響の少ない端末にのみアップデートを導入し、たとえば24時間なり、ある程度様子を見る時間を経てから、他の端末にもアップデート作業を展開するやり方だ。 この方法が適用可能か、また妥当か否かは個々のシステムで事情が異なるはずなので前もって検討が必要だが、これならアップデートに欠陥があったとしても被害は最小限に抑えられるだろう。もちろん、セキュリティ対策ソフトウェアのメーカーが緊急性を訴えている場合などに速やかな対応が可能な体制も必要となる』、「このようなシステム障害が再び起こるのを避けるにはどうすればいいだろうか。 考えられる方法としては、定期的なソフトウェアのアップデートを段階的に適用することが挙げられる。この方法はまず最初に、一部の影響の少ない端末にのみアップデートを導入し、たとえば24時間なり、ある程度様子を見る時間を経てから、他の端末にもアップデート作業を展開するやり方だ」、賢明だ。
・『6月のイベントで語っていたこと  クラウドストライクのプライバシーおよびサイバー ポリシー担当副社長兼顧問のドリュー・バグリー氏は、6月に開催されたサイバーセキュリティに関するワシントン・ポスト主催のイベントで「デジタルリスク」に対し回復力のあるITシステムを構築する必要性を語っていた。 同氏はこのイベントにおける講演で「我々は安全な方法でコードを開発し、その成果物を検証しなければならない」とし、「デジタルエコシステムにおけるリスクを増やすのではなく減らすような、回復力のある方法でソフトウェアを展開することが、非常に重要だ」と述べていた。いま、その言葉をしみじみとかみしめているのは、クラウドストライクの人々かもしれない』、「「デジタルエコシステムにおけるリスクを増やすのではなく減らすような、回復力のある方法でソフトウェアを展開することが、非常に重要だ」、確かにその通りだが、「クラウドストライク」こそが最もかみしめるべきだろう。

次に、7月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したやさしいビジネススクール学長の中川功一氏による「サイバー攻撃を受けて「身代金を払ってしまった企業」は一体どうなるのか?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/347710
・『KADOKAWAが大規模なサイバー攻撃を受けた。システム障害や情報漏えいなど被害は広範囲にわたるが、まだ全容は分かっていない。今回のニュースによって、サイバー攻撃の恐ろしさを実感した人も多いのではないだろうか。われわれがこの事例を踏まえて学ぶべきこととは何か、考えてみたい』、興味深そうだ。
・『KADOKAWAハッカー攻撃から1カ月 いまだ完全復旧には至らず  出版やアニメ、教育など多様な事業を手掛ける大手エンターテインメント企業、KADOKAWAが受けた大規模なハッカー攻撃の被害が、日がたつにつれて明らかになってきた。 子会社ドワンゴが手掛ける「ニコニコ動画」がサービス停止となったり、出版流通システムにも影響が出たりするなど、幅広い領域で打撃を受けた。加えて、KADOKAWAの発表によれば、従業員や一部の取引先などの個人情報が流出した可能性が高い。 ただ、ハッカーによる攻撃から1カ月以上が過ぎた今も、完全復旧には至っておらず、全容解明には至っていない。 このニュースは、決して人ごとではない。 サイバーセキュリティー大手の米プルーフポイントが発表したレポート「State of the Phish 2024」によると、2023年の1年間でランサムウエア(KADOKAWAが感染したものと同種の、データを人質にするウイルスソフト)の感染を経験した日本の組織は、実に38%にも上る。これでも日本は諸外国よりはるかに状況は良い方で、世界平均では69%となっている。 では、もし攻撃の対象者となってしまったら、われわれはどのように対応すればいいのだろうか』、「ハッカーによる攻撃から1カ月以上が過ぎた今も、完全復旧には至っておらず、全容解明には至っていない」、「1カ月以上が過ぎた今も」こうした状態とは深刻だ。
・『情報セキュリティーは「企業価値」の重要構成要素だ  KADOKAWAが受けたサイバー攻撃は、ランサムウエアという手口のものだ。データを暗号化して見えないようにしたり、動作不能にしたりした後、状態を回復するために身代金を要求する。 良くも悪くもそれに備えるための損害保険までが用意されているため、企業側も容易に身代金を払ってしまう。かくして、反社会勢力にとっては比較的容易かつ安全に資金獲得ができる手段として、ランサムウエアは世界的に流行している。 KADOKAWAの事例から第一に学ぶべきことは、今日、企業価値というものは、高い競争力の事業だけでなく、それを取り巻く何重もの“防護膜”によってできあがっているということだ。つまり、事業そのものだけでなく、情報セキュリティーをはじめとする事業のサステナビリティーを高める取り組みの重要性が、過去に例を見ないほどに高まっているということである。すばらしい事業はそれだけでは成り立たない。それを維持していくことができる仕組みづくりが、重要な鍵を握る』、「情報セキュリティーをはじめとする事業のサステナビリティーを高める取り組みの重要性が、過去に例を見ないほどに高まっている」、なるほど。
・『身代金支払いに応じるべきか 最善の選択は?  そしてもう一つ学ぶべきなのは、犯罪集団から身代金を要求された際の基本的なベストチョイスは、「毅然として要求をはねつける」ということだ。 KADOKAWAへの攻撃について犯行声明を行ったハッカー集団は、同社と身代金交渉を行ったことをほのめかした。今回、実際支払いがあったか否かは明らかになっていないが、海外では支払いに応じるケースも少なくないという。 ただ、先述の通り、最善の選択は支払わないことだと筆者は考える。 1970年代までは世界中で頻発していた飛行機のハイジャックは、現代ではほとんど起こらなくなった。その理由は、1978年に採択された「航空機ハイジャックに関する声明(ボン声明)」である。航空機ハイジャックの要求には決して応じず、徹底的に鎮圧することが、世界の主要国間で決議された。その結果、ハイジャックはリターンの可能性が限りなく低く、リスクの大きな行為であるとして、避けられるようになった。 日本企業のランサムウエア被害が諸外国に比べて少ないのも、実はまったく同じ構造にある。日本企業はこれまで、諸外国と比較して、ランサムウエアによる身代金要求にあまり応じてこなかった。反社会勢力に資金提供することが、どのような事情においても法律に違反することになるほか、社会規範としても忌避されるためである(皆さんも「そもそもメールを開くな」と会社から指導されているはずだ)。 また、日本は災害多発国であることから、バックアップを取る文化があり、仮にデータが暗号化されても復旧することができるのが一般的となっていることも大きい。 日本企業が交渉のテーブルに着かないことは、世界の反社会ハッカー集団に広く知られていた。組織的な犯罪を抑止するには、犯罪行為のリターンを限りなく小さくすることが効果的だ。これは、社会学・政治学・経済学などで広く知られている事実だ』、「日本企業はこれまで、諸外国と比較して、ランサムウエアによる身代金要求にあまり応じてこなかった。反社会勢力に資金提供することが、どのような事情においても法律に違反することになるほか、社会規範としても忌避されるためである」、なるほど。
・『身代金の支払いに応じてもデータが復旧する可能性は低い  では、もし身代金を払うとどうなるのか。 前述のプルーフポイントの調査によれば、日本企業の場合、1回目の身代金支払いでデータやシステムが復旧した企業はわずか17%に過ぎない。それ以外の企業では、その後に追加要求が行われているという。 その理由は、ストレートに言って足元を見られるからだ。日本企業は、一般的には交渉のテーブルにつかない。そんな中で、交渉に乗ってくる企業がいたとすれば、犯罪集団側は「この会社は相当に困っているに違いない」と認識する。それゆえ、足元を見られてもっと要求されてしまう。 相手は反社会組織だ。要求に応えたとて、約束通りにデータが復旧する保証はどこにもない。皆さんは、「反社会勢力の要求に応じて、良い方向に転がることはない」ということを肝に銘じておいてもらいたい。 再三の指摘となるが、KADOKAWAの事例は人ごとではない。われわれはもう一度、自社の姿勢を振り返り、学びを得る必要がある。サイバーセキュリティーの重要性を再認識し、反社会勢力の脅しには屈しないこと。いずれも、事業のサステナビリティーを高めるという意味で、現代ビジネスに欠かせない重要論点と認識しておきたい』、「相手は反社会組織だ。要求に応えたとて、約束通りにデータが復旧する保証はどこにもない。皆さんは、「反社会勢力の要求に応じて、良い方向に転がることはない」ということを肝に銘じておいてもらいたい。 再三の指摘となるが、KADOKAWAの事例は人ごとではない。われわれはもう一度、自社の姿勢を振り返り、学びを得る必要がある。サイバーセキュリティーの重要性を再認識し、反社会勢力の脅しには屈しないこと。いずれも、事業のサステナビリティーを高めるという意味で、現代ビジネスに欠かせない重要論点と認識しておきたい」、その通りだ。

第三に、9月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した株式会社ラックのナショナルセキュリティ研究所のシニアコンサルタントの上田篤盛氏と、日本カウンターインテリジェンス協会代表理事・外交・安全保障アカデミーOASISフェローの稲村 悠氏による「「デンソーの最高機密」はこうして中国人の手に渡った…パソコン破壊の痛恨事態はなぜ起きた?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/349910
・『無形の「知識」の獲得が目的のため、摘発が困難とされる中国人スパイ。かつてのような工作員の外交官への偽装がなくなったことで、背後に潜んでいる大きな組織を見えにくくさせた不気味な「千粒の砂」戦略に追った。本稿は、上田篤盛・稲村 悠『カウンターインテリジェンス 防諜論』(育鵬社)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『中国の軍関係者が防衛省元技官に接近?  中国の諜報活動は、その国家的関与が強く疑われながらも明確に立証されない、むしろ明確に立証させない巧妙さが特徴だ。 2000年2月、防衛庁(現防衛省)の元技官が、潜水艦の船体に使われる特殊鋼材「高張力鋼」に関する資料を持ち出し、元技官の知人である埼玉県の食品輸入業者に渡していた。 この業者は、在日中国大使館の武官らと密接なつながりがあり、中国国家当局との緊密な関係性が窺えたとされる。また元技官は、この知人に誘われて現職中に中国への渡航を約30回も行っていたことが判明している。 この事件は警視庁公安部が2007年2月、窃盗容疑で元技官を書類送検したが、背景には深刻な事情があることが明らかになってきた。 元技官は資料を持ち出した後、現職時に業者とともに北京に渡航。業者が「あなたに来てもらわないと困る」と強く言って北京に誘った。元技官は渡航中に北京のホテルで素性の分からない中国人と面会している。 元技官は、「中国政府関係者だと思った」と供述。その中国人は、中国軍人民解放軍等軍事関係者だった可能性がある。(中略) 業者の自宅を捜索したところ、潜水艦に使うゴム材の資料が見つかり、別の元技官が「自分の研究内容を書き直して業者に渡した」と認めた。その業者も「中国に渡航して、資料の大半を軍関係者に渡した」と話していた。 業者の自宅には、防衛庁が進める装備近代化に関する資料も残されていた。資料には最近の研究テーマや目的、予算額などが書かれていた。2人以外にも、中国のスパイになった人物がいた可能性があるということだ。(北村滋『経済安全保障異形の大国、中国を直視せよ』中央公論新社、2022年)) この事件は、中国軍が元技官の保有する軍事技術に狙いをつけて、エージェントの食品業者を使い、元技官を中国に連れ出して親中感情を醸成し、日本当局が立件できない中国において情報の授受を行うという巧妙さが光っている』、「元技官は、この知人に誘われて現職中に中国への渡航を約30回も行っていたことが判明」、こんなに親中国の人物が機密に関わる業務をしていたこと自体が、驚きだ。
・『最新技術を狙う中国人エンジニア  2007年3月には、大手自動車部品メーカー「デンソー」の中国人技術者の楊魯川(当時41歳)が、自動車関連製品の図面を大量にダウンロードし、無断で持ち出すという事件があった。 報道によれば、持ち出されたデータは、産業用ロボットや各種センサー、ディーゼル燃料の噴射装置などのデータで、このうち約280種類はデンソーの最高機密とされる最先端技術に関するものも含まれていたが、この中国人技術者が同社のデータを入手している時期に、中国に複数回帰国していた。 楊は1986年に中国の大学を卒業後、ミサイル等を開発・製造する中国国営の中国航天工業総公司(当時)に就職。その後、1990年に来日し、都内の工業系大学への留学を経て、2001年にデンソーに入社した。 また、楊は会社に無断で、日本の自動車業界企業に所属する中国籍のエンジニアや留学生らが作った団体「在日華人汽車工程師協会」の副会長も務め、中国地方政府等の訪日団のアテンドを務めたり、同会総会を駐日中国大使館で開催したりしていた。 この事件の教訓は、初動対応の甘さが主因となり、楊の逮捕が見送られた点にある。報道によれば、デンソーの調査担当社員が楊の自宅に同行し、会社のパソコンの返却と私有パソコンの提出を求めたが、担当社員は外で待たされ、約1時間後に部屋に入ると、私有パソコンが破壊されていたという。 その後、会社側は愛知県警に相談したが、証拠が不十分だったため、名古屋地検は楊を処分保留で釈放した。証拠が隠滅されたことで、事実関係が解明されず、立件が不可能と判断されたのである。 日本国内では、民間企業や大学、独立行政法人で働く中国人が増加している。日本の大学には多くの中国人留学生が学んでおり、彼らが卒業後に日本の民間企業などに直接入社すれば、警戒感が薄れることになるかもしれない。 しかし、中国情報機関の統制下で情報活動に加担している者も存在する可能性があることには要注意である』、「中国情報機関の統制下で情報活動に加担している者も存在する可能性があることには要注意である」、その通りだ。「私有パソコンの提出を求めたが、担当社員は外で待たされ、約1時間後に部屋に入ると、私有パソコンが破壊されていたという」、明確な書庫隠滅で起訴できなかったのだろうか。
・『工作員が不要の「千粒の砂」作戦とは  中国による諜報事件は、ロシアや北朝鮮による諜報事件と比較して検挙件数が少ないのが実態である。その理由としては、中国の諜報活動は日中交流関係や経済活動を隠れ蓑にして行われており、それら一般的な活動と諜報活動が混然一体となっているからだ。 2022年7月に、米連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ長官と英国防諜機関MI5のケン・マッカラム長官がロンドンで史上初めての合同記者会見を行い、「中国共産党は、かつてのように外交官を偽装する工作員を使わない。『千粒の砂』と呼ぶ戦略で、さまざまなチャネルを通じて情報を集める」と指摘している。 中国のスパイ活動は、従来、ロシアの手法とは異なる。ロシアは「1人のエージェントがバケツ一杯の砂を運ぶ」のに対し、中国は「1人の収集員が砂1粒を運び、人海戦術によって砂をバケツ一杯にする」とされてきた。 最近の西側の説明では、「ロシアは夜間に潜水艦から少数の人員で行動するのに対し、中国は多数の人員で明るい時間帯に活動する」と表現されている。 中国はリスクを回避しつつ、軍民官学を問わず、合法と非合法を問わず、さまざまな階層や企業パートナーを通じてあらゆる情報を収集している。 このスパイ活動は一見非効率的であり、同じターゲットに複数のスパイが接触することで混乱が生じる可能性もあるが、全体的には安全で効果的な手法だと見られている。 米国は、中国のスパイ活動に対して、FBIによる司法的逮捕・拘束といった冷戦時代のソ連スパイへの対処方法では通じないと考えている。なぜなら、中国においてはスパイ行為自体が曖昧であり、その法的認定や容疑者の特定が容易ではないからである。) 中国は機密情報を獲得するという考え方も異なる。ロシアが政治・軍事に関する文書や特定の軍事技術といった「現物」の獲得を重視するのに対し、中国スパイは政治的な影響力の行使や民間の経済・技術の情報収集など、幅広い目的を持つ。 中国は、対象が有する秘密に関連する「知識」の獲得を重視する。知識は無形であるので摘発が難しく、摘発されたとしても証拠が不十分であるため、立件は容易ではない。 一方で、現在ではサイバー空間上に多くの情報が存在するため、中国の「千粒の砂」戦略は本当に有効なのかという議論もあるようだ』、「中国は、対象が有する秘密に関連する「知識」の獲得を重視する。知識は無形であるので摘発が難しく、摘発されたとしても証拠が不十分であるため、立件は容易ではない」、中国側は日本企業の駐在員をスパイ容疑で逮捕するケースが増えている。日本も交換用にもう少し幅広くスパイ容疑で逮捕してもよいのではないか。
・『金銭面や精神面の支援などで対象者の政治家を依存させる  中国の諜報活動の手法について、元公安調査庁金沢事務所長の藤谷昌敏氏は、「中国情報機関によるアセット(協力者)獲得の特徴は、例えば、展示会等における商用を機会とした接触、趣味や飲食の場で偶然を装う接触などを端緒として、その後、ターゲットと1対1で面談し、相手の性格、嗜好、弱点や不満等を聞き出す。 そして最初は製品のパンフレットの入手程度の軽い仕事を頼んで反応を見、次第に要求する情報のレベルを上げていく。相手が給与や人事の不満を抱えていることが分かれば、金銭の授受や有利な条件での転職を勧めてくる」(日本戦略研究フォーラムウェブサイト「経済安全保障を積極的に推進する日本政府、公安調査庁との連携に期待」)としている。) この手法はロシアのリクルート手法と大差はない。中国も、基本的には金銭的に依存させるほか、イデオロギーの部分で共鳴する者を取り込む。「脅迫」することもあろうが、それでは継続性が得られない可能性も残るほか、特に組織を裏切るというリスクが大きくなる。 中国の政治工作の例では、政治工作部門が、対象者である政治家の金銭的不安定を「弱み」とし、そこに付け込んで脅迫するのではなく、金銭的・政治的・精神的支援をすることで依存させ長期運営を果たしているケースもある。 「デンソーの最高機密」はこうして中国人の手に渡った…パソコン破壊の痛恨事態はなぜ起きた? また、必ずしも工作活動によってイデオロギーを共鳴させるのではなく、既に同じ方向性のイデオロギーを持つ人物にアプローチし、イデオロギー上でいわば協力関係を結ぶほか、支援するといった手法もとられる。 一方で、ロシア機関員と大きく異なるのは、中国機関員は日本人と容貌が似ており、しかも、日本国内に多くの中国人コミュニティを持ち、広大な人的ネットワークを有していることだ。それを活用し、「千粒の砂」戦略により多様なチャネルから情報を収集する。 そのため、個々人の動機による活動と中国の諜報活動によるものが混在し、明確に中国国家による諜報活動だと指摘できない。むしろその状況こそが脅威となっている』、「個々人の動機による活動と中国の諜報活動によるものが混在し、明確に中国国家による諜報活動だと指摘できない。むしろその状況こそが脅威となっている」、同感である。
タグ:「「デジタルエコシステムにおけるリスクを増やすのではなく減らすような、回復力のある方法でソフトウェアを展開することが、非常に重要だ」、確かにその通りだが、「クラウドストライク」こそが最もかみしめるべきだろう。 「このようなシステム障害が再び起こるのを避けるにはどうすればいいだろうか。 考えられる方法としては、定期的なソフトウェアのアップデートを段階的に適用することが挙げられる。この方法はまず最初に、一部の影響の少ない端末にのみアップデートを導入し、たとえば24時間なり、ある程度様子を見る時間を経てから、他の端末にもアップデート作業を展開するやり方だ」、賢明だ。 「クラウドストライクのジョージ・カーツCEOは、日本時間7月19日午後6時45分に、この問題に関して「これはセキュリティに関する問題やサイバー攻撃ではない。すでに問題は特定・分離され、修正プログラムを配布している」とXを通じて発表した。 また、同社のブログにもより詳しい情報を提供しつつ、ユーザー企業に対し「悪意のある人たちがこのような事象を悪用しようとする」可能性があるため警戒を怠らず、クラウドストライクの「正規の担当者」と連絡を取り合うよう呼びかけた」、賢明な措置だ。 「7月19日の朝(日本時間)にクラウドストライクが配信したアップデートファイルには「Falcon Sensor」に関する重大な欠陥が含まれており、これを適用したシステムが実行不可能になる不具合を引き起こした結果、人々が呆然とBSoDを眺める状況を作り出した・・・セキュリティ対策ソフトウェアでの」不具合とは皮肉なものだ。 BSoDが発生した企業や組織は一時的にサービス提供や各種業務を中断せざるをえない状況になり、記事執筆時点(7月21日)においても、まだ問題から回復できていないシステムやサービスもあるようだ」、大変だ。 「BSoDは「Blue Screen of Death」の頭文字を取った略称で、直訳すると「死の青画面」となる。日本では単に「ブルースクリーン」と呼ばれることが多いこの画面の本来の役割は、開発者に対し、発生した不具合に関する情報を表示することだ・・・BSoDの問題は非常に広範囲に及んでおり、空港を含む各種交通機関や医療機関、金融機関、スターバックスなどの飲食店、さらに、日本国内ではテーマパークのユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどもその影響を受けた。 タニグチ ムネノリ氏による「世界中で発生、Windows「画面が真っ青」の原因 850万台に及ぶシステム障害はなぜ起きたのか」 東洋経済オンライン (その11)(世界中で発生、Windows「画面が真っ青」の原因 850万台に及ぶシステム障害はなぜ起きたのか、サイバー攻撃を受けて「身代金を払ってしまった企業」は一体どうなるのか?、「デンソーの最高機密」はこうして中国人の手に渡った…パソコン破壊の痛恨事態はなぜ起きた?) 情報セキュリティー・サイバー犯罪 ダイヤモンド・オンライン 中川功一氏による「サイバー攻撃を受けて「身代金を払ってしまった企業」は一体どうなるのか?」 「ハッカーによる攻撃から1カ月以上が過ぎた今も、完全復旧には至っておらず、全容解明には至っていない」、「1カ月以上が過ぎた今も」こうした状態とは深刻だ。 「情報セキュリティーをはじめとする事業のサステナビリティーを高める取り組みの重要性が、過去に例を見ないほどに高まっている」、なるほど。 「日本企業はこれまで、諸外国と比較して、ランサムウエアによる身代金要求にあまり応じてこなかった。反社会勢力に資金提供することが、どのような事情においても法律に違反することになるほか、社会規範としても忌避されるためである」、なるほど。 「相手は反社会組織だ。要求に応えたとて、約束通りにデータが復旧する保証はどこにもない。皆さんは、「反社会勢力の要求に応じて、良い方向に転がることはない」ということを肝に銘じておいてもらいたい。 再三の指摘となるが、KADOKAWAの事例は人ごとではない。われわれはもう一度、自社の姿勢を振り返り、学びを得る必要がある。 サイバーセキュリティーの重要性を再認識し、反社会勢力の脅しには屈しないこと。いずれも、事業のサステナビリティーを高めるという意味で、現代ビジネスに欠かせない重要論点と認識しておきたい」、その通りだ。 上田篤盛氏 稲村 悠氏 「「デンソーの最高機密」はこうして中国人の手に渡った…パソコン破壊の痛恨事態はなぜ起きた?」 上田篤盛・稲村 悠『カウンターインテリジェンス 防諜論』(育鵬社) 「元技官は、この知人に誘われて現職中に中国への渡航を約30回も行っていたことが判明」、こんなに親中国の人物が機密に関わる業務をしていたこと自体が、驚きだ。 「中国情報機関の統制下で情報活動に加担している者も存在する可能性があることには要注意である」、その通りだ。「私有パソコンの提出を求めたが、担当社員は外で待たされ、約1時間後に部屋に入ると、私有パソコンが破壊されていたという」、明確な書庫隠滅で起訴できなかったのだろうか。 「中国は、対象が有する秘密に関連する「知識」の獲得を重視する。知識は無形であるので摘発が難しく、摘発されたとしても証拠が不十分であるため、立件は容易ではない」、中国側は日本企業の駐在員をスパイ容疑で逮捕するケースが増えている。日本も交換用にもう少し幅広くスパイ容疑で逮捕してもよいのではないか。 「個々人の動機による活動と中国の諜報活動によるものが混在し、明確に中国国家による諜報活動だと指摘できない。むしろその状況こそが脅威となっている」、同感である。
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ハラスメント(その26)(兵庫県知事問題4題:兵庫県知事の“パワハラ人格”が作られるまで 「いい奴」だったはずが、知事就任後は「周囲はドン引き」、兵庫・斎藤元彦知事を巡る「疑惑告発文書問題」で2人目の職員死亡…安倍政権下の森友事件のような展開に、自殺職員が詰問される“証拠音声”を入手!「なんでそれを知っとるんやって聞きよんやろが!」知事側近が高圧取り調べ…《斎藤元彦知事は公開拒否》、《女優さんのインスタみたいやな》斎藤元彦知事の“外見へのこだわり”「化粧室で1時間髪型チェック」「控え室がないとSAかコンビ [社会]

ハラスメントについては、本年6月30日に取上げた。今日は、(その26)(兵庫県知事問題4題:兵庫県知事の“パワハラ人格”が作られるまで 「いい奴」だったはずが、知事就任後は「周囲はドン引き」、兵庫・斎藤元彦知事を巡る「疑惑告発文書問題」で2人目の職員死亡…安倍政権下の森友事件のような展開に、自殺職員が詰問される“証拠音声”を入手!「なんでそれを知っとるんやって聞きよんやろが!」知事側近が高圧取り調べ…《斎藤元彦知事は公開拒否》、《女優さんのインスタみたいやな》斎藤元彦知事の“外見へのこだわり”「化粧室で1時間髪型チェック」「控え室がないとSAかコンビニに必ず立ち寄って…」次々に明らかになる調査結果、「経営者や記者から軒並み評判がよかったのに…」“おねだり&パワハラ知事”以前の斎藤元彦氏を知るジャーナリストが見た“豹変”の呆れるきっかけ)である。

先ずは、7月24日付けYahooニュースが転載したデイリー新潮「兵庫県知事の“パワハラ人格”が作られるまで 「いい奴」だったはずが、知事就任後は「周囲はドン引き」」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/bc30bbc3ec6f52799a693956d34a7fb65a3baf15
・『「パワハラ的な言動なんて見たことも聞いたこともない」(兵庫県の齋藤元彦知事(46)のパワハラや“おねだり体質”を告発した渡瀬康英元西播磨県民局長(60)が自死した問題。齋藤知事をよく知る同級生らに取材すると、意外な“素顔”が見えてきて……。 齋藤知事は、兵庫県神戸市須磨区の生まれ。実家はケミカルシューズ製造業だった。地元・神戸市立若宮小学校を卒業し、愛媛県松山市の私立愛光学園中学に入学したのだが、自身のHPで〈実は、私立中学入試で第一志望であった六甲中学校(神戸市灘区)を受験したのですが……〉と明かしている。 親元を離れて、中高6年間は愛光学園の寮で過ごしたという。同級生の一人が当時を振り返る。 「さいちゃん(齋藤氏)とは寮で一緒にご飯を食べたし、お風呂にも入った仲ですけど、いい奴としか言いようがないですよ。頭も良かったし、スポーツも全般的にできました」 別の同級生も、 「自分は寮生活でも部活のソフトボール部でも一緒に過ごした間柄ですが、彼のパワハラ的な言動なんて見たことも聞いたこともありません。体育祭なんかでも、中心になって活躍していたイメージ。そういう時にクラスをまとめる役割を果たしていましたから、やはりリーダー的な資質があったのでしょう」 などと褒めそやす。続けて明かすには、 「彼も入っている、愛光学園同級生のグループLINEがあります。今回のことで、そこに応援のメッセージを送ったんですよ。そしたら、彼からみんなに対して“感謝しています”という趣旨の返事が来て。大変な状況なのに律儀な奴だなって思いました」 意外にも、中高の同級生らから聞こえるのは、好意的な証言ばかりなのだ』、「親元を離れて、中高6年間は愛光学園の寮で過ごしたという。同級生の一人が当時を振り返る。 「さいちゃん(齋藤氏)とは寮で一緒にご飯を食べたし、お風呂にも入った仲ですけど、いい奴としか言いようがないですよ。頭も良かったし、スポーツも全般的にできました」、なるほど。
・『旧自治省系は「組織自体がパワハラの塊」  東大経済学部卒業後、総務省に入省。一貫して旧自治省畑を歩み、各県府庁の重要ポストに派遣された。 その古巣の総務省関係者に話を聞くと、先の同級生らと異なった見方を示す。 「プライドが高いタイプだと聞いたことはあります。経歴を見ると、30代中盤にして秘書課秘書専門官になっていますよね。これは結構、ポイントが高い。宮城県の財政課長なども歴任していますし、省内で出世街道を歩んでいたのは間違いない」 さらに続けて、 「旧自治省系は警察の次に上意下達の縦社会。組織自体がパワハラの塊です。加えて、総務省にカネを握られているものだから、各県庁の職員は中央から派遣されてくる総務官僚に文句を言えない雰囲気がある。若くして地方で重要なポストを務めることで、勘違いしてしまう人がいるんです」 総務省の独特な土壌が齋藤氏を形作ったと示唆するのだ』、「東大経済学部卒業後、総務省に入省。一貫して旧自治省畑を歩み、各県府庁の重要ポストに派遣された。 その古巣の総務省関係者に話を聞くと、先の同級生らと異なった見方を示す。 「プライドが高いタイプだと聞いたことはあります。経歴を見ると、30代中盤にして秘書課秘書専門官になっていますよね。これは結構、ポイントが高い。宮城県の財政課長なども歴任していますし、省内で出世街道を歩んでいたのは間違いない」 さらに続けて、 「旧自治省系は警察の次に上意下達の縦社会。組織自体がパワハラの塊です。加えて、総務省にカネを握られているものだから、各県庁の職員は中央から派遣されてくる総務官僚に文句を言えない雰囲気がある。若くして地方で重要なポストを務めることで、勘違いしてしまう人がいるんです」、「「旧自治省系は警察の次に上意下達の縦社会。組織自体がパワハラの塊です」、なるほど。
・『知事の椅子にしがみつく姿勢を崩さない齋藤氏  さる兵庫県議は齋藤氏をこう評する。 「齋藤知事は“コミュ障”なんですよ。コミュニケーションが取れないからか、知事はすぐに怒りだす。それだけならまだしも、“俺は怒ったことをすぐに忘れるんや、ハハハ”なんて自慢する。周囲はドン引きですよ」 2021年、大阪府の財政課長時代に自民党と日本維新の会に担がれて県知事選への出馬を決めた時には、すでに今の人格に仕上がっていたのだろう。 一連の疑惑に関して、齋藤氏は代理人を通じておおむね否定。その上で、 「県政の立て直し、信頼回復に向けて、日々の業務を一つ一つしっかりと遂行していくことが私の責任だと考えています」 と、知事の椅子にしがみつく姿勢を隠さないのだった――。7月25日発売の「週刊新潮」では、県知事の来歴を併せ、騒動の全容について報じる。 「週刊新潮」2024年8月1日号 掲載』、「齋藤知事は“コミュ障”なんですよ。コミュニケーションが取れないからか、知事はすぐに怒りだす。それだけならまだしも、“俺は怒ったことをすぐに忘れるんや、ハハハ”なんて自慢する。周囲はドン引きですよ」、「コミュ障”」で、「“俺は怒ったことをすぐに忘れるんや」とは質が悪い。

次に、7月25日付け日刊ゲンダイ「兵庫・斎藤元彦知事を巡る「疑惑告発文書問題」で2人目の職員死亡…安倍政権下の森友事件のような展開に」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/358156
・『不正を嫌った公務員が心身を壊した揚げ句、自死に追い込まれる。安倍政権下で起きた大阪・森友学園の国有地売買を巡る財務省の決算文書改ざん事件のような展開になってきた。 兵庫県の男性幹部職員が斎藤元彦知事(46)を巡る「違法行為」や「贈答品の受取」、「パワハラ」など7項目の疑惑について告発文書を作成していた問題のことだ。 この男性職員が自ら命を絶っていたと報じられたのに続き、告発文書の中で多忙な業務を理由に療養中と言及されていた元課長の男性職員も4月に死亡していたという。 共同通信などの報道によると、元課長の死因も自殺とみられ、職場の有志らが元課長の子どものために「遺児育英資金」を集めようとしたところ、県幹部が止めていたという。  県は個人情報保護を理由に元課長が亡くなったことを公表しておらず、斎藤知事も会見で「遺族の意向で公表していなかった」と説明。だが、公表の判断はともかく、職場有志らによる「遺児育英資金」を募る動きにストップをかけるのは不自然ではないか』、「元課長の死因も自殺とみられ、職場の有志らが元課長の子どものために「遺児育英資金」を集めようとしたところ、県幹部が止めていたという。  県は個人情報保護を理由に元課長が亡くなったことを公表しておらず、斎藤知事も会見で「遺族の意向で公表していなかった」と説明。だが、公表の判断はともかく、職場有志らによる「遺児育英資金」を募る動きにストップをかけるのは不自然ではないか」、酷い話だ。
・『今の政治家が口にする「責任」とは一体何なのか  告発文書の問題が判明したのは3月末。詳しい理由は分からないが、2人の職員が亡くなったのは事実であり、異様、異常と指摘せざるを得ないだろう。 常識的な感覚を持った政治家であれば、自身に対する数々の疑惑が指摘され、因果関係は分からないとはいえ、職員が相次いで不慮の死を遂げたことついて責任を感じて辞職するだろう。それが「責任を取る」ということだ。 ところが斎藤知事はそんな気はサラサラなし。会見でも記者の質問をはぐらかしつつ、「さまざまな指摘や批判がある一方で、心から応援してくれる人もいるので、感謝しながら、しっかり県政を担っていくのが私のやるべき責任だ」などと言い放つ始末だ。) こうした政治家が「居座り」続けるような姿勢に対し、SNS上ではこんな声がある。 《政治家が好き勝手なことをやり、その尻拭いをさせられる公務員はイエスマンになるか、責任を感じて自死する。森友事件と同じ構図》 《どんなに批判され、辞職を求められても辞めない。そのうち国民は忘れる、と思っているのが自民党国会議員。これが地方の首長にまで伝播している》 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件でも、岸田文雄首相(66)は「責任」を繰り返していたが、何もせず。今の政治家が口にする「責任」とは一体何なのか。 日刊ゲンダイでは7月12日配信の記事『兵庫・維新系パワハラ県知事の「犠牲者」はもう1人いる! 別の職員の自殺「隠蔽」の疑い』にて職員2人が亡くなっていたことを問題視していた。該当記事は、関連記事【もっと読む】にある。必読だ』、「《政治家が好き勝手なことをやり、その尻拭いをさせられる公務員はイエスマンになるか、責任を感じて自死する。森友事件と同じ構図》 《どんなに批判され、辞職を求められても辞めない。そのうち国民は忘れる、と思っているのが自民党国会議員。これが地方の首長にまで伝播している」、なるほど。

第三に、8月24日付け文春オンライン「《兵庫県知事パワハラ疑惑に新展開》自殺職員が詰問される“証拠音声”を入手!「なんでそれを知っとるんやって聞きよんやろが!」知事側近が高圧取り調べ…《斎藤元彦知事は公開拒否》」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/73007
・『斎藤元彦・兵庫県知事(46)のパワハラなどを告発する文書を作成した県職員X氏(故人)。そのX氏が受けていた県側の“事情聴取”の音声を「週刊文春」が入手した。 X氏が告発文書を作成し、7月7日に「死をもって抗議する」というメッセージを遺し自殺したことに端を発する県知事のパワハラ疑惑。県職員を対象に行われたアンケートでは、およそ4割が知事のパワハラを見聞きしたなどと回答したことが報じられ、大きな話題となった』、「県職員を対象に行われたアンケートでは、およそ4割が知事のパワハラを見聞きしたなどと回答」、なるほど。
・『自殺職員への“詰問音声”を入手  これまで「週刊文春」では兵庫県知事と県知事から重用されている幹部4人の「牛タン倶楽部」の面々が自殺した職員などに行ってきた個人攻撃や兵庫県知事に固執する斎藤氏の人柄、斎藤氏の不透明な事務所費などの政治資金の問題などを報じてきた。 そして、今回「週刊文春」が入手したのが、斎藤知事の指示を受けた片山安孝副知事(当時)がX氏に詰め寄る録音データだ。 音声データには斎藤知事の指示を受けた片山副知事によるX氏への取り調べが録音されており、中には「なんでそれを知っとるんやって聞きよんやろが!」などとX氏を強い口調で詰問する生々しい様子も残されていた。さまざまな言い方で詰め寄られたX氏はこの聴取を受けた約3か月後の7月7日、「死をもって抗議する」とのメッセージを遺して自殺した。 X氏への聴取の内容については8月20日の知事定例記者会見でも報道陣が追及したが……。 「知事は『噂話を集めて作成した』との文言以外は公表しないと強調し、音声データなどの公開を拒みました。知事にとって都合の良い文言だけを抜粋して公表する姿勢は『卑怯だ』と批判されています」(県庁担当記者) では、公開を拒んだ「音声データ」には何が残されていたのか。 現在配信中の「週刊文春電子版」では、音声データに残されたやりとりを詳しく報じている』、「「知事は『噂話を集めて作成した』との文言以外は公表しないと強調し、音声データなどの公開を拒みました。知事にとって都合の良い文言だけを抜粋して公表する姿勢は『卑怯だ』と批判されています』、「知事にとって都合の良い文言だけを抜粋して公表する姿勢は『卑怯だ』と批判されています」、その通りだ。

第四に、8月26日付けNEWSポストセブン「《女優さんのインスタみたいやな》斎藤元彦知事の“外見へのこだわり”「化粧室で1時間髪型チェック」「控え室がないとSAかコンビニに必ず立ち寄って…」次々に明らかになる調査結果」を紹介しよう。
・『兵庫県・斎藤元彦知事がパワハラ疑惑などを内部告発されるなか、職員2人が死亡した問題。兵庫県議会の「百条委員会(調査特別委員会)」は7月31日から県職員を対象に、「知事が贈与品を受け取っていること」「知事のパワーハラスメント」などについて聞いてアンケート調査を実施しており、8月23日にその「中間報告」が公表された。 斎藤知事は20日時点で定例記者会見でアンケート調査に触れており、「県庁においては仕事ですから、やはり厳しく、時には必要な注意というものは大事だと考えています」とコメントしていた。県庁で働くある男性職員は、「だんだんと職場が変な雰囲気になってますよ」と困惑気味に話す。 「僕は直接的に関わってないので、なんとも言えないですけど、元々パワハラとか、机を蹴ったとかそういう話は色んなところから聞こえていました。 最近、職員のあいだで、急に強い口調で喋ったりして、『厳しい指導は必要なんや』なんて言うのが流行ってるんです。もちろん冗談で、斎藤知事の真似をしてね。ジョークを飛ばすんですよ」 県庁職員の間では斎藤知事の話でもちきりのようだが、それもそのはず、前述のアンケート調査では県職員約9700人のうち約4割が、知事のパワハラについて見聞きしたことがあったと回答している。公表された中間報告には自由回答で寄せられた意見も多数掲載されたが、在阪マスコミ関係者は「斎藤知事の“ナルシストぶり”に言及する記述が多い」と話す。) 「マスコミやSNSで“知事の顔”を前面に押し出し、露出させることにこだわった一方、その“見栄え”にもすごくこだわっていたようです。イベント時、知事専用の控室、姿見、三面鏡が必須だったということは、複数の職員が言及しています。 本人のSNSを見ても、同じような表情の自撮り写真が目立ったり、イベントの時なんかは同じような場面で表情の違うカットを何枚も載せるんですよ。記者の間では“女優さんのインスタみたいやな”と噂になっていました」』、「県職員を対象に・・・アンケート調査・・・では約4割が、知事のパワハラについて見聞きしたことがあったと回答・・・自由回答で寄せられた意見も多数掲載されたが、在阪マスコミ関係者は「斎藤知事の“ナルシストぶり”に言及する記述が多い」、「ナルシストぶり」とは言い得て妙だ、
・『「専用の顔加工ソフトを使用」  アンケートの中間報告にも、斎藤知事が“見栄え”を気にするあまりに職員を困らせていたエピソードが記されていた。以下は自由記述からの抜粋である。 〈出張先では外見を確認するためのトイレ(鏡)が必須であり、秘書課や出張先の関係者が知事導線の確認等に多大な労力を費やしていると聞いたことがあります〉 〈トイレに入ると1時間ほど出てくることはなく、髪型のチェックをしている。途中で声をかけると、異常なほど不機嫌になる〉) 〈控室が用意出来ない現場に行くときに必ず高速道路の最後のSAやコンビニの洗面所に立ち寄る 後部座席からカーナビを覗き込んでナビの到着予定時間で予定より遅れそうになったら叱責された〉 〈広報に使う写真には常に専用の顔加工ソフトを使っており、広報課の職員は写真の出来が悪いと叱責されると聞いたことがあります〉 自身のXのプロフィール欄には《対話と現場主義を徹底し、「躍動する兵庫」の実現に向けて県政を前に進めていきます》と記している斎藤知事。“見栄え”を過度に気にして周囲に迷惑をかける姿は、「対話と現場主義を徹底」していると言えるのだろうか』、「〈出張先では外見を確認するためのトイレ(鏡)が必須であり、秘書課や出張先の関係者が知事導線の確認等に多大な労力を費やしていると聞いたことがあります〉 〈トイレに入ると1時間ほど出てくることはなく、髪型のチェックをしている。途中で声をかけると、異常なほど不機嫌になる〉 〈控室が用意出来ない現場に行くときに必ず高速道路の最後のSAやコンビニの洗面所に立ち寄る 後部座席からカーナビを覗き込んでナビの到着予定時間で予定より遅れそうになったら叱責された・・・〈広報に使う写真には常に専用の顔加工ソフトを使っており、広報課の職員は写真の出来が悪いと叱責される・・・“見栄え”を過度に気にして周囲に迷惑をかける姿は、「対話と現場主義を徹底」していると言えるのだろうか」、なるほど。
・『情報提供募集  「NEWSポストセブン」では、情報・タレコミを募集しています。情報提供フォームまたは、下記の「公式X」のDMまで情報をお寄せください。 ・情報提供フォーム:https://www.news-postseven.com/information XのDMは@news_postsevenまでお送りください!』、読者とのやり取りは重要だ。

第五に、9月3日付け文春オンライン「「経営者や記者から軒並み評判がよかったのに…」“おねだり&パワハラ知事”以前の斎藤元彦氏を知るジャーナリストが見た“豹変”の呆れるきっかけ」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/73199#goog_rewarded
・『兵庫県の斎藤元彦知事はなぜ辞めないのだろう? 最大の謎である。いや、辞めれば済むという話ではないのだが、例えばどういう気持ちになれば次の発言ができるのか。 『兵庫県の斎藤元彦知事、パワハラ体質問われ「過去取り戻せない」「もっといい知事に」…百条委員会の証人尋問』(読売新聞オンライン8月30日) 3月に斎藤知事をめぐる疑惑が浮上して以降、すでに2人の職員が死亡している(自死とみられる)。 そのうちの1人が、この春まで兵庫県で西播磨県民局長を務めていた男性職員のX氏だ(※以下「X氏」)。X氏は斎藤知事を告発した文書を報道機関などに送付したら寄ってたかって追い詰められ、処分された。「寄ってたかって」の部分は重要なので後半に詳しく書く。 X氏の告発には2023年11月23日に開催された阪神タイガースとオリックス・バファローズのリーグ優勝を記念したパレードもあった。文書には、兵庫県は「必要経費を補うため、信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせた」旨の告発もあった。 パレードを担当した課長は不正行為と難しい調整に精神がもたず、うつ病を発症したと記されていたが、4月に亡くなっていたことが7月末に公表された』、「阪神タイガースとオリックス・バファローズのリーグ優勝を記念したパレードもあった。文書には、兵庫県は「必要経費を補うため、信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせた」旨の告発もあった・・・ パレードを担当した課長は不正行為と難しい調整に精神がもたず、うつ病を発症したと記されていたが、4月に亡くなっていたことが7月末に公表された」、なるほど。
・『2人の職員が死亡...斎藤知事が言い放った“衝撃発言”  こうして2人の職員が亡くなっているのだが、百条委員会で斎藤知事は自身の振る舞いを問われて「過去は取り戻せない」「もっといい知事に」と平然と言ったのである。ゾッとする。 県議会の調査委員会が県職員に行ったアンケートの中間報告には「カニの持ち帰り」などのおねだり例やパワハラ疑惑も報告されていた。インパクトが強いエピソードの数々なのでそこに目が向けられるのもわかる。 しかし今回最も論じられなければいけないのは「公益通報つぶし」ではないか? X氏が告発文書を一部の報道機関や県議に送付すると、県はX氏が文書作成者だと断定し、X氏の公用PCを押収した。その2日後、斎藤知事は定例会見で「業務時間中に『嘘八百』を含め、文書を作って流す行為は公務員として失格だ」と述べた。 県はX氏を停職3カ月の懲戒処分にした。X氏は7月7日に急死。「死をもって抗議する」という文言を遺していた』、「今回最も論じられなければいけないのは「公益通報つぶし」ではないか? X氏が告発文書を一部の報道機関や県議に送付すると、県はX氏が文書作成者だと断定し、X氏の公用PCを押収した。その2日後、斎藤知事は定例会見で「業務時間中に『嘘八百』を含め、文書を作って流す行為は公務員として失格だ」と述べた。 県はX氏を停職3カ月の懲戒処分にした。X氏は7月7日に急死。「死をもって抗議する」という文言を遺していた」、「公益通報つぶし」は本当に酷い。
・『なぜ斎藤知事は責任を取らないのだろうか  こうした公益通報つぶしが明らかになっているのに、なぜ斎藤知事は責任を取らないのだろう。そう思った私は7月に大阪へある人の話を聞きに行った。元神戸新聞の記者で現在はノンフィクションライターの松本創氏である。 松本氏は維新政治を深く取材しており、著書には『誰が「橋下徹」をつくったか――大阪都構想とメディアの迷走』(140B/2016年度日本ジャーナリスト会議賞受賞)など多数。最新刊は編著で『大阪・関西万博 「失敗」の本質』(ちくま新書)がある。 実は、松本氏は斎藤元彦氏を以前から取材していたという。ではどんな人物だったのか。 「知事になる前から取材していましたが、ああいうキャラクターの片鱗も見せなかった。首長、議員、経営者、記者......軒並み評判がよかった。彼の人物像は兵庫県知事就任の前と後で、明らかな断絶があります 」』、「松本氏は斎藤元彦氏を以前から取材していたという。ではどんな人物だったのか。 「知事になる前から取材していましたが、ああいうキャラクターの片鱗も見せなかった。首長、議員、経営者、記者......軒並み評判がよかった。彼の人物像は兵庫県知事就任の前と後で、明らかな断絶があります 」、なるほど。
・『斎藤知事が「ああなってしまった」ワケ  なんと、今の姿は想像できないという。ではなぜああなってしまったのか。どう考えますか? 「彼の人生の目標は知事になること自体ではなかったか? というのが現時点での仮説です。だから自分は最大限に尊重されるべきだし、何でも言い分が通ると思っているのではないかと」 斎藤氏の「元彦」という名前は祖父が付けた。金井元彦・元兵庫県知事から取ったという。知事のイスに座ること自体が目標となった人物は目的を達成した瞬間に豹変したという見立てである。 松本氏は「彼は知事になって何をやりたいのかわからなかった」とも述べた。そして今回の問題の本質について次のように語った。 「あと、やはり斎藤氏個人の資質の問題と、それに乗じた4人組(牛タン倶楽部)のように兵庫県庁の組織的問題の両面があるということには留意しておきたい」 多くの報道がどうしても斎藤氏個人のエピソードに終始してる感があるが、兵庫県庁の上層部のありようにも問題があったという』、「彼の人生の目標は知事になること自体ではなかったか? というのが現時点での仮説です。だから自分は最大限に尊重されるべきだし、何でも言い分が通ると思っているのではないかと・・・斎藤氏の「元彦」という名前は祖父が付けた。金井元彦・元兵庫県知事から取ったという。知事のイスに座ること自体が目標となった人物は目的を達成した瞬間に豹変したという見立てである・・・4人組(牛タン倶楽部)のように兵庫県庁の組織的問題の両面があるということには留意しておきたい」、なるほど。
・『X氏が告発した“牛タン倶楽部”とはなにか?  問題の核心に入ってきた。ここでおさらいしよう。4人組(牛タン倶楽部)とは何か。松本氏に話を聞いた際に私の手元には「週刊文春」(7月25日号)があったのだが「この記事には兵庫問題が詳しく書かれている」というので引用する。 《そもそもX氏が告発したのは斎藤知事だけではない。片山副知事、県職員の総務部長、産業労働部長、若者・Z世代応援等調整担当理事の四人への言及がある》(7月25日号) ではこの4人はどこで知り合ったのか。) 2013~16年に当時総務官僚だった斎藤知事が宮城県に出向していたころ、東日本大震災の復興関連で、兵庫県も職員を派遣することが多かった。するとこの4人組と斎藤知事は仲良くなり、 《いつも仙台でつるんでいた。兵庫県庁では知事以下五人を『牛タン倶楽部』と陰で呼んでいます。》(県職員・7月25日号) 2021年に知事となった斎藤氏は「牛タン倶楽部」のメンバーを側近として重用した。 《県庁職員とのコミュニケーションを拒み、四人組への依存を深めていくばかり。敵対的と見なされた者は次々と排除された。最近は斎藤に意見できる職員は誰もいなくなっていた》(県OB・7月25日号)  ▽X氏の告発を「寄ってたかって」追い詰めた人々の正体(いかがだろうか。こうした状況下でX氏が告発したのだ。しかし、知事が勢い任せに「嘘八百」と口にしてしまったことで、県はあの文書を「嘘八百」と結論づけるための内部調査しかできなくなったという。  県はX氏のパソコンを押収し、私的な文章も見つけた。この文章は4人組によって県議や県職員に漏れたという。告発文書をめぐり、百条委員会の設置が求められると、今度は維新会派の県議たちの間にもX氏の私的な文章が流出したようで、 《維新の岸口実県議と増山誠県議が、百条委員会の場でX氏のPCに入っていた全てのファイルを公開するよう強く主張し始めた》(自民県議・7月25日号)  こうして知事、4人組、強硬な2人の維新県議に「寄ってたかって」追い詰められたX氏。公益通報とは何か、そして兵庫県政の実態をあらためて問うべきではないか。 斎藤氏が知事に当選した2021年の選挙では自民と維新が斎藤氏に相乗りした。出馬前は大阪府の財政課長で松井一郎・吉村洋文両知事の維新府政を3年間支えた。それゆえ「製造責任者」として維新に注目が集まるのだが維新関連ではこんな記事も出始めている。 『維新批判票? 初の現職市長落選 党幹部「完敗」に衝撃 大阪・箕面』(毎日新聞8月27日)  2010年の結党以来、維新公認の現職首長が落選するのは初めてだった。その要因に「大阪・関西万博」と「自民派閥の政治資金パーティー裏金問題を受けた政治資金規正法の改正を巡り、日本維新が『政策活動費』の領収書の10年後公開で自民と合意したこと」、そして「斎藤知事」問題が言われている。 兵庫県のパワハラ知事問題は維新問題であることがわかる。これで慌てて維新が斎藤批判に動き出したら、それもまた維新っぽい展開なのだが』、「2013~16年に当時総務官僚だった斎藤知事が宮城県に出向していたころ、東日本大震災の復興関連で、兵庫県も職員を派遣することが多かった。するとこの4人組と斎藤知事は仲良くなり、 《いつも仙台でつるんでいた。兵庫県庁では知事以下五人を『牛タン倶楽部』と陰で呼んでいます・・・知事が勢い任せに「嘘八百」と口にしてしまったことで、県はあの文書を「嘘八百」と結論づけるための内部調査しかできなくなったという。  県はX氏のパソコンを押収し、私的な文章も見つけた。この文章は4人組によって県議や県職員に漏れたという・・・知事、4人組、強硬な2人の維新県議に「寄ってたかって」追い詰められたX氏。公益通報とは何か、そして兵庫県政の実態をあらためて問うべきではないか・・・2010年の結党以来、維新公認の現職首長が落選するのは初めてだった。その要因に「大阪・関西万博」と「自民派閥の政治資金パーティー裏金問題を受けた政治資金規正法の改正を巡り、日本維新が『政策活動費』の領収書の10年後公開で自民と合意したこと」、そして「斎藤知事」問題が言われている」、やはり「維新」の命運を左右するほど重大な問題になってきた。当面、要注目だ。
タグ:ハラスメント (その26)(兵庫県知事問題4題:兵庫県知事の“パワハラ人格”が作られるまで 「いい奴」だったはずが、知事就任後は「周囲はドン引き」、兵庫・斎藤元彦知事を巡る「疑惑告発文書問題」で2人目の職員死亡…安倍政権下の森友事件のような展開に、自殺職員が詰問される“証拠音声”を入手!「なんでそれを知っとるんやって聞きよんやろが!」知事側近が高圧取り調べ…《斎藤元彦知事は公開拒否》、《女優さんのインスタみたいやな》斎藤元彦知事の“外見へのこだわり”「化粧室で1時間髪型チェック」「控え室がないとSAかコンビ yahooニュース デイリー新潮「兵庫県知事の“パワハラ人格”が作られるまで 「いい奴」だったはずが、知事就任後は「周囲はドン引き」」 「親元を離れて、中高6年間は愛光学園の寮で過ごしたという。同級生の一人が当時を振り返る。 「さいちゃん(齋藤氏)とは寮で一緒にご飯を食べたし、お風呂にも入った仲ですけど、いい奴としか言いようがないですよ。頭も良かったし、スポーツも全般的にできました」、なるほど。 「「旧自治省系は警察の次に上意下達の縦社会。組織自体がパワハラの塊です」、なるほど。 「齋藤知事は“コミュ障”なんですよ。コミュニケーションが取れないからか、知事はすぐに怒りだす。それだけならまだしも、“俺は怒ったことをすぐに忘れるんや、ハハハ”なんて自慢する。周囲はドン引きですよ」、「コミュ障”」で、「“俺は怒ったことをすぐに忘れるんや」とは質が悪い。 日刊ゲンダイ「兵庫・斎藤元彦知事を巡る「疑惑告発文書問題」で2人目の職員死亡…安倍政権下の森友事件のような展開に」 「元課長の死因も自殺とみられ、職場の有志らが元課長の子どものために「遺児育英資金」を集めようとしたところ、県幹部が止めていたという。  県は個人情報保護を理由に元課長が亡くなったことを公表しておらず、斎藤知事も会見で「遺族の意向で公表していなかった」と説明。だが、公表の判断はともかく、職場有志らによる「遺児育英資金」を募る動きにストップをかけるのは不自然ではないか」、酷い話だ。 「《政治家が好き勝手なことをやり、その尻拭いをさせられる公務員はイエスマンになるか、責任を感じて自死する。森友事件と同じ構図》 《どんなに批判され、辞職を求められても辞めない。そのうち国民は忘れる、と思っているのが自民党国会議員。これが地方の首長にまで伝播している」、なるほど。 文春オンライン「《兵庫県知事パワハラ疑惑に新展開》自殺職員が詰問される“証拠音声”を入手!「なんでそれを知っとるんやって聞きよんやろが!」知事側近が高圧取り調べ…《斎藤元彦知事は公開拒否》」 「県職員を対象に行われたアンケートでは、およそ4割が知事のパワハラを見聞きしたなどと回答」、なるほど。 「「知事は『噂話を集めて作成した』との文言以外は公表しないと強調し、音声データなどの公開を拒みました。知事にとって都合の良い文言だけを抜粋して公表する姿勢は『卑怯だ』と批判されています』、「知事にとって都合の良い文言だけを抜粋して公表する姿勢は『卑怯だ』と批判されています」、その通りだ。 NEWSポストセブン「《女優さんのインスタみたいやな》斎藤元彦知事の“外見へのこだわり”「化粧室で1時間髪型チェック」「控え室がないとSAかコンビニに必ず立ち寄って…」次々に明らかになる調査結果」 「県職員を対象に・・・アンケート調査・・・では約4割が、知事のパワハラについて見聞きしたことがあったと回答・・・自由回答で寄せられた意見も多数掲載されたが、在阪マスコミ関係者は「斎藤知事の“ナルシストぶり”に言及する記述が多い」、「ナルシストぶり」とは言い得て妙だ、 「〈出張先では外見を確認するためのトイレ(鏡)が必須であり、秘書課や出張先の関係者が知事導線の確認等に多大な労力を費やしていると聞いたことがあります〉 〈トイレに入ると1時間ほど出てくることはなく、髪型のチェックをしている。途中で声をかけると、異常なほど不機嫌になる〉 〈控室が用意出来ない現場に行くときに必ず高速道路の最後のSAやコンビニの洗面所に立ち寄る 後部座席からカーナビを覗き込んでナビの到着予定時間で予定より遅れそうになったら叱責された・・・ 〈広報に使う写真には常に専用の顔加工ソフトを使っており、広報課の職員は写真の出来が悪いと叱責される・・・“見栄え”を過度に気にして周囲に迷惑をかける姿は、「対話と現場主義を徹底」していると言えるのだろうか」、なるほど。 読者とのやり取りは重要だ。 文春オンライン「「経営者や記者から軒並み評判がよかったのに…」“おねだり&パワハラ知事”以前の斎藤元彦氏を知るジャーナリストが見た“豹変”の呆れるきっかけ」 「阪神タイガースとオリックス・バファローズのリーグ優勝を記念したパレードもあった。文書には、兵庫県は「必要経費を補うため、信用金庫への県補助金を増額し、それを募金としてキックバックさせた」旨の告発もあった・・・ パレードを担当した課長は不正行為と難しい調整に精神がもたず、うつ病を発症したと記されていたが、4月に亡くなっていたことが7月末に公表された」、なるほど。 「今回最も論じられなければいけないのは「公益通報つぶし」ではないか? X氏が告発文書を一部の報道機関や県議に送付すると、県はX氏が文書作成者だと断定し、X氏の公用PCを押収した。その2日後、斎藤知事は定例会見で「業務時間中に『嘘八百』を含め、文書を作って流す行為は公務員として失格だ」と述べた。 県はX氏を停職3カ月の懲戒処分にした。X氏は7月7日に急死。「死をもって抗議する」という文言を遺していた」、「公益通報つぶし」は本当に酷い。 「松本氏は斎藤元彦氏を以前から取材していたという。ではどんな人物だったのか。 「知事になる前から取材していましたが、ああいうキャラクターの片鱗も見せなかった。首長、議員、経営者、記者......軒並み評判がよかった。彼の人物像は兵庫県知事就任の前と後で、明らかな断絶があります 」、なるほど。 「彼の人生の目標は知事になること自体ではなかったか? というのが現時点での仮説です。だから自分は最大限に尊重されるべきだし、何でも言い分が通ると思っているのではないかと・・・斎藤氏の「元彦」という名前は祖父が付けた。金井元彦・元兵庫県知事から取ったという。知事のイスに座ること自体が目標となった人物は目的を達成した瞬間に豹変したという見立てである・・・4人組(牛タン倶楽部)のように兵庫県庁の組織的問題の両面があるということには留意しておきたい」、なるほど。 「2013~16年に当時総務官僚だった斎藤知事が宮城県に出向していたころ、東日本大震災の復興関連で、兵庫県も職員を派遣することが多かった。するとこの4人組と斎藤知事は仲良くなり、 《いつも仙台でつるんでいた。兵庫県庁では知事以下五人を『牛タン倶楽部』と陰で呼んでいます・・・知事が勢い任せに「嘘八百」と口にしてしまったことで、県はあの文書を「嘘八百」と結論づけるための内部調査しかできなくなったという。 県はX氏のパソコンを押収し、私的な文章も見つけた。この文章は4人組によって県議や県職員に漏れたという・・・知事、4人組、強硬な2人の維新県議に「寄ってたかって」追い詰められたX氏。公益通報とは何か、そして兵庫県政の実態をあらためて問うべきではないか・・・2010年の結党以来、維新公認の現職首長が落選するのは初めてだった。その要因に「大阪・関西万博」と「自民派閥の政治資金パーティー裏金問題を受けた政治資金規正法の改正を巡り、日本維新が『政策活動費』の領収書の10年後公開で自民と合意したこと」、そして「斎藤知 事」問題が言われている」、やはり「維新」の命運を左右するほど重大な問題になってきた。当面、要注目だ。
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大学(その16)(卓越大内定の東北大、研究資金の申請で虚偽疑惑 「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員採択、「解体的出直しをはかる」“東京女子医大の闇”女帝・岩本絹子氏の理事長退任が確定的に!「7日に臨時理事会が開催され、理事長辞職を勧告予定」 東京女子医の闇#21、《東京女子医大“理事長解任”を決定》封印された内部告発「カネに強い執着心」「異論に報復人事」第三者委員会が暴いた女帝の正体「破壊された医療現場を死守する医師の矜持」 東京女子医の闇#22) [社会]

大学については、本年3月23日に取上げた。今日は、(その16)(卓越大内定の東北大、研究資金の申請で虚偽疑惑 「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員採択、「解体的出直しをはかる」“東京女子医大の闇”女帝・岩本絹子氏の理事長退任が確定的に!「7日に臨時理事会が開催され、理事長辞職を勧告予定」 東京女子医の闇#21、《東京女子医大“理事長解任”を決定》封印された内部告発「カネに強い執着心」「異論に報復人事」第三者委員会が暴いた女帝の正体「破壊された医療現場を死守する医師の矜持」 東京女子医の闇#22)である。

先ずは、本年4月23日付け東洋経済オンライン「卓越大内定の東北大、研究資金の申請で虚偽疑惑 「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員採択」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/749273
・『政府が若手研究者の安定雇用促進を目的に実施する「卓越研究員事業」に、東北大学が要件を満たさない雇用制度で2019年度と2020年度に申し込み、研究支援の補助金を得ていた疑いが極めて濃いことが東洋経済による取材で分かった。 政府が「卓越研究員」として認定した優秀な若手研究者を、国公立大学などの研究機関がいくつかの要件を満たす形で雇用すれば、研究機関が補助金を得られる卓越研究員事業。この要件のうち最も基本的なものが、若手研究者を「テニュアトラック」で採用していることだ』、興味深そうだ。
・『「名ばかりテニュアトラック」で申請  テニュアトラックとは、研究機関が若手研究者を将来的に無期雇用になれるチャンス付きの有期雇用で受け入れる制度をいう。 まずは3~5年程度の有期雇用でスタートするが、その期間内に、”もれなく””公正な”審査を受ける機会を与える必要がある。そして、審査に合格すれば「テニュア」と呼ばれる無期雇用のポストに昇格させる。 あらかじめテニュアトラックの採用人数と同じ数のテニュアのポストは確保しておき、合否は相対評価ではなく絶対評価で決める。つまり、若手研究者本人が結果さえ出せば必ずテニュアになれるというスキームで、アカデミアの世界では国際的に認知されている。当然、文部科学省もそのように明確に定義している。 しかし、東北大学は、無期雇用のポストをあらかじめ用意していない「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員事業に申し込み、文科省は実態を問題視せずに採択していたようだ。 東北大学が2018年度に創設し、2020年度まで学際科学フロンティア研究所で実施していた「東北大学テニュアトラック制度」が、本来のテニュアトラックではない問題については、2023年秋に東洋経済オンライン『卓越大内定・東北大が「名ばかりテニュアトラック」』で報じた。 制度の趣旨とかけ離れた実態について、東北大学の小谷元子理事は、「東北大学テニュアトラック制度はテニュアトラック制度ではないので、誤解のないようにしていただきたい」などと弁明。東北大学の制度は、名称にテニュアトラックという言葉を使っているが、「本来の制度とは別物の独自のもので、元から研究者にはテニュア審査の機会を与えるとは約束していない」などと説明していた(『東北大、「名ばかりテニュアトラック」への言い分』)。) 過去に東北大学が卓越研究員事業に採択された事例があることから、東洋経済は文科省に情報公開請求し、東北大学の卓越研究員事業への申請書を確認した。 その結果、2019年度と2020年度分に関して雇用条件の欄などに「東北大学テニュアトラック制度に基づく雇用」「学際研を活用した『東北大学版テニュアトラック制度』により卓越研究員を採用する」などの記載があった。 そのため、東北大学に対して、「卓越研究員事業の申請書にある東北大学テニュアトラック制度は、本来のテニュアトラック制度ではないため、卓越研究員事業の採択要件を満たしていないのではないか」と質問したところ、「文科省の示す要件に基づき申請を行い、審査の結果、採択されている」(広報室)と文書で回答があった。 2019年度や2020年度と、小谷理事が東洋経済のインタビューに応じた2023年秋では、同じ東北大学テニュアトラック制度でも中身が違うとでもいうのだろうか』、「若手研究者本人が結果さえ出せば必ずテニュアになれるというスキームで、アカデミアの世界では国際的に認知されている。当然、文部科学省もそのように明確に定義している。 しかし、東北大学は、無期雇用のポストをあらかじめ用意していない「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員事業に申し込み、文科省は実態を問題視せずに採択していたようだ・・・東北大学の制度は、名称にテニュアトラックという言葉を使っているが、「本来の制度とは別物の独自のもので、元から研究者にはテニュア審査の機会を与えるとは約束していない」などと説明していた」、なるほど。
・『東北大の若手研究者が文科省に告発メール  実は2019年当時、東北大学の学際研に所属していた複数の若手研究者が、文科省の人材政策課人材政策推進室に対し、東北大学テニュアトラック制度が名ばかりのもので、ほとんどテニュアになれないことや、それにもかかわらず卓越研究員事業に申請していることを告発する内部通報のメールを送っていた。 東洋経済は今回、その際のメールのやり取りを入手した。 それによると、人材政策推進室の担当者は、「東北大学に確認しましたが、東北大学のテニュアトラック制度のスキームとして、(中略)あらかじめテニュアポストの確保は行っているとのことでした」などと内部通報者に返信していた。文科省としては東北大学の説明を受け入れ、「東北大学テニュアトラック制度には問題はない」と結論づけていた。 ㊤2019年に文科省が内部告発者に返信したメール。東北大学への事情聴取の結果として「あらかじめテニュアポストの確保は行っているとのことでした」とある/㊦2023年秋、東北大学は「予めテニュアポジションが用意された採用ではない」と文書で東洋経済に回答した(記者撮影) だが、前述のように2023年秋の東洋経済の取材に対し小谷理事は、「東北大学テニュアトラック制度はテニュアトラック制度ではない」と明言している。口頭だけでなく、文書でも「本(東北大学テニュアトラック)制度は、予めテニュアポジションが用意された採用ではない」と記している。 そこで今回、文科省に一連の経緯を説明したうえで、東北大学テニュアトラックによる卓越研究員事業の申請に問題がなかったのかただした。 すると、人材政策推進室長の髙見暁子室長は改めて東北大学に確認を行ったとして、「東北大学によると、東北大学テニュアトラック制度で採用した研究者については、必ずしもそのまま卓越研究員事業に申請したのではなく、申請に当たって(卓越研究員事業の条件に沿うように例外的に)テニュアポストをあらかじめ用意したということだった」と述べ、これ以上の調査はしない見解を示した。) ここまでの東北大学の主張を時系列に整理すると以下のようになる。 ・東北大学テニュアトラック制度は、あらかじめテニュアポストを確保している本来のテニュアトラック制度である(2019年の文科省のヒヤリングに対する説明) ・東北大学テニュアトラック制度はテニュアトラック制度ではない。あらかじめテニュアポストを用意していない(2023年秋の東洋経済の取材に対する回答) ・東北大学テニュアトラック制度の研究者でも、卓越研究員事業に申請したものは、本来のテニュアトラックである(今回の東洋経済の指摘を受けた文科省・髙見室長への説明) つまり、東北大学テニュアトラック制度はテニュアトラック制度ではないが、例外的に一部、本来のテニュアトラックでの雇用が存在していたことになる』、「東北大学テニュアトラック制度はテニュアトラック制度ではないが、例外的に一部、本来のテニュアトラックでの雇用が存在していたことになる」、なるほど。
・『申請書の中に「名ばかり」の証拠  しかし、東北大学のこうした説明を真に受けることはできない。 東北大学は当時の卓越研究員事業の申請書に、テニュアトラックで採用された若手研究者が審査を経てテニュアのポストに昇格できる条件について「優れた業績を有すると認められた場合」という本人への評価のみにとどまらず、「かつメンター部局(理学部や工学部など受け入れ先の学部)の採用計画に合致する場合」と記していたからだ。 繰り返しになるが、テニュアトラック制度では若手研究者がテニュアへの昇格審査に合格した場合に就くテニュアのポストは、テニュアトラックとしての採用時にあらかじめ確保しておかなければならない。そのため、本来のテニュアトラック制度なのであれば、テニュアへの昇格条件として「採用計画に合致する場合」という但し書きが付くことはありえない。 この申請書の記述内容からみても、東北大学が卓越研究員事業に申請したポストはやはり、あらかじめテニュアポストを用意していない名ばかりテニュアトラックだったように映る。 研究者の雇用問題に詳しい一般社団法人「科学・政策と社会研究室」の榎木英介代表は、「東北大学の主張は詭弁、後付け、言い訳にしか見えない。これが国際卓越研究大学になる大学なのかと唖然とする。こうしたやり方を許せば研究の世界でのモラルハザード(道徳観や倫理観の欠如)につながる。東北大学には組織体として問題があり、国際卓越研究大学に値するものではない」と指摘する。 東北大学は新たに設けられた「国際卓越研究大学」に、今2024年度に認定される見通しだ。そうなれば、東京大学や京都大学を差し置いて、東北大学が卓越大の第1号となり、政府が設立したファンドから年間数百億円規模の支援を受けられる。当然、それに見合う高いガバナンスが求められるはずだ』、「こうしたやり方を許せば研究の世界でのモラルハザード(道徳観や倫理観の欠如)につながる。東北大学には組織体として問題があり、国際卓越研究大学に値するものではない」と指摘・・・東北大学は新たに設けられた「国際卓越研究大学」に、今2024年度に認定される見通しだ。そうなれば、東京大学や京都大学を差し置いて、東北大学が卓越大の第1号となり、政府が設立したファンドから年間数百億円規模の支援を受けられる。当然、それに見合う高いガバナンスが求められるはずだ」、こんなに問題のある「東北大学」を「卓越大の第1号」とすべきではない。「卓越大」制度に泥を塗ることになりかねない。

次に、8月6日付け文春オンライン「「解体的出直しをはかる」“東京女子医大の闇”女帝・岩本絹子氏の理事長退任が確定的に!「7日に臨時理事会が開催され、理事長辞職を勧告予定」 東京女子医の闇#21」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/72581
・『8月5日午後5時から、東京女子医科大学(東京・新宿区)で行われていた一連の疑惑に関する、第三者委員会の調査報告書の説明会で、岩本絹子氏が、理事長を退任する方向で理事らが合意したことが明らかになった。 説明会に参加した女子医大関係者によると、 「7日に臨時理事会が開催され、岩本氏に理事長辞職を勧告する予定。理事や監事も全員辞職して、解体的な出直しをはかることになる」という。 2日に公表された、第三者委員会の調査報告書で、経営手腕や多額の疑惑のカネについて厳しく批判された岩本氏に対して、周囲は辞任を勧めていたが、本人は態度を保留していた。 理事会では、過半数の同意があれば、理事長を解任できるため、岩本氏の理事長退任は不可避となった。 「週刊文春」ではジャーナリストの岩澤倫彦氏が8月1日、多額の不透明なカネや、高度医療に欠かせない集中治療室を崩壊させるなど、乱脈経営が際立っている東京女子医科大学について調査していた第三者委員会が、厳しい評価の報告書をまとめたことを報じた(#20)。 「女子医大の理事会は解散すべき、という第三者委員会の指摘に衝撃を受けました。これは岩本絹子理事長に対する実質的な辞任勧告だと思います」 といった女子医大関係者の声が聞こえてくるなど、東京女子医大を支配してきた女帝の進退に注目が集まっていた』、「「女子医大の理事会は解散すべき、という第三者委員会の指摘に衝撃を受けました。これは岩本絹子理事長に対する実質的な辞任勧告だと思います」、その通りだろう。

第三に、この続きを、8月8日付け文春オンライン「《東京女子医大“理事長解任”を決定》封印された内部告発「カネに強い執着心」「異論に報復人事」第三者委員会が暴いた女帝の正体「破壊された医療現場を死守する医師の矜持」 東京女子医の闇#22」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/72755
・『7日に開かれた東京女子医科大学の臨時理事会で、岩本絹子氏(77)が理事長を解任された。最後まで辞任を拒否した女帝は、約5億円かけて改装した理事長室の立ち入りを禁じられ、“赤い巨塔”から追放されたのである。 関係者によると、一連の不正行為で巨額の損失を受けた女子医大は、損害賠償請求と被害届を出す検討に入るという。 「ターニングポイントは文春報道。不正なカネの具体的な疑義を示しているのに客観的な調査をせず、疑いの当事者である理事長・岩本絹子氏らの主張を、大学の言い分として教職員、保護者、文科省に説明した。これはとんでもないこと」 一連の疑惑やガバナンスの調査を行った、第三者委員会の竹内朗弁護士はこう指摘した。高度医療に定評があった女子医大病院を、徹底的に破壊した女帝とは、何者だったのか? そして、不正の内部告発を生かさなかった人物の告白とは──』、「高度医療に定評があった女子医大病院を、徹底的に破壊した女帝とは、何者だったのか? そして、不正の内部告発を生かさなかった人物の告白とは──」、興味深そうだ。
・『女帝を退任に追い込んだ第三者委員会の報告書  現在77歳の岩本氏は、1973年に東京女子医大を卒業。8年後、東京・江戸川区で同級生A氏と共同で産婦人科医院を開業した。 今年3月29日、警視庁捜査二課が特別背任容疑で、岩本氏の自宅など関係先に一斉家宅捜索を行なった。家宅捜索が続く午後6時30分頃、黒のワゴン車に小柄な女性が乗り込んだ。フードを目深に下ろして顔は見えない。 待機していた報道カメラマンたちが、一斉にワゴン車に駆け寄って取り囲む。女性はフードを少し上げ、窓ガラスに並んだカメラのレンズを見回した。メガネの奥に光る、ギョロリとした大きな目。東京女子医大の女帝といわれる、岩本氏だった。 文部科学省はこの家宅捜索を重視して、一連の不正行為やガバナンスについて、独立した調査を行う第三者委員会の設置を東京女子医大に指導する。 第三者委員会には、去年まで検察ナンバー2だった山上秀明弁護士ら4人が選任された。これに合計20人の弁護士と、58人の公認会計士などが加わり、4月10日から女子医大関係者や取引先などの調査を開始。岩本氏のヒヤリングは延べ5回にわたったという。 そして8月2日、全247ページの調査報告書を公表、岩本氏を中心にした、不正な資金の流れを解明して、その責任を厳しく指摘した。 「岩本氏は、副理事長となって経営統括理事となったその瞬間から、資金の不正支出・利益相反行為の疑義を生ぜしめる行為に手を染めていたことになる。(中略)金銭に対する強い執着心と、本法人に対する忠実性の欠如を見て取ることができる」(調査報告書P236)』、「第三者委員会には、去年まで検察ナンバー2だった山上秀明弁護士ら4人が選任された。これに合計20人の弁護士と、58人の公認会計士などが加わり」、これ以上ないほど重厚な布陣には、心底驚かされた、
・『「不正に資金を還流させた」と認定  週刊文春が岩本氏らの“疑惑のカネ”を報道したのは、2022年4月。同年7月からは文春オンラインで、側近らを交えた不透明なカネの流れを追及してきた。(#1、#2、#3、#18、週刊文春電子版「疑惑のダミー会社と女帝をつなぐ『第三の女』と白ベンツ」など) 岩本氏らは文春報道について“フェイクニュースである”と強弁。形ばかりの調査を行い、教職員に配布した文書で、このように主張していた。 「記事で指摘された点は違法・不当なものではないとのことであり、既に執筆した記者等に対して厳重に抗議しておりますが、今後然るべき法的措置を講じる所存です」(令和4年6月10日付) 疑惑の一つは、岩本氏が会長を兼任する同窓会の至誠会から、女子医大に職員を出向させたとして給与を架空請求していた疑いである。 岩本氏は、女子医大の副理事長に就任した翌2015年、人事課、経理課、購買・管財課、建築設計室を管理する「経営統括部」を新設して、自ら担当理事に就き経営の実権を握る。その経営統括部に至誠会から職員を出向させ、女子医大が給与を負担していた。だが、業務実態はほとんどなかった。 第三者委員会の調査によると、総額約2.5億円(2015年1月~2020年6月)の給与は、専用の管理口座にプールされて、2021年3月には岩本氏の側近X(報告書ではE)や、側近Y(同F)らに各1000万円が支給されていた。この疑惑について、第三者委員会では次のように認定している。 「岩本氏は、本法人の理事長(副理事長)と至誠会の代表理事を兼任するという立場を利用し、本法人経営統括部で勤務していた者に対して、 至誠会という自身が大きな影響力を及ぼしていた存在を道具として不正に資金を還流させたものと認められる」(調査報告書P54)』、「岩本氏は、本法人の理事長(副理事長)と至誠会の代表理事を兼任するという立場を利用し、本法人経営統括部で勤務していた者に対して、 至誠会という自身が大きな影響力を及ぼしていた存在を道具として不正に資金を還流させた」、文春の調査報道の華々しい成果だ。
・『封印された内部告発  私立学校法では、「監事」に学校法人のガバナンスを監視する責任を定めている。実は2019年に、当時の評議員だった女子医大OGが、前述した出向職員の架空請求疑惑について、監事の一人に内部告発をしていたことが、取材で新たに判明した。 「至誠会の職員から『出向職員として自分の名前が使われている』という相談を受けました。それで2019年7月25日に、新宿のホテルのラウンジで監事の1人と会い、架空請求が行われている可能性が高いと話して、調査を依頼しました。 しかし何も調査はされず、監事からは『私たちがすべきことは冷静に岩本先生を支えることです。メールはこれを最後にさせていただきます』というメッセージが届きました。その時に内部告発は揉み消された、と思いました」(元評議員の医師) この監事は、岩本氏と女子医大の同級生で、現在は同大の名誉教授の肩書を持つ。 2019年に内部告発を受けた時、どのように対応したのか、話を聞いた。 「その頃、新宿のバーで会ってお話しはしました。ただ、内部告発と言える内容だったか……。申し訳ありませんが、はっきり覚えていません」(Qは聞き手の質問) Q:その頃は、岩本氏を信じていた? 「私は同級生として、彼女を守るつもりでいたので、絶対的に信頼していたんです。吉岡家(創立者一族)でもあるし。岩本さんの悪口を聞くと、『いや、彼女はそんな人じゃないから。本当はいい人だよ、優しい人だよ』と庇っていました」 Q:創立者一族だから特別扱い? 「そうです。彼女は学生の頃から、自分は吉岡家だというプライドがあって、『私は吉岡家だから、この大学を守っていく義務がある』みたいな感じで言っていました」 Q:他に内部告発は? 「文書が届きましたが、信じられなかったんです。まさかと思って。それをY(岩本氏の側近)に『書いてあることは本当?』と言って渡したら、調べてみますと。そして『全部嘘でした』という返事をくれました。今思うと、犯人に証拠を渡したようなものです」 Q:調査報告書を読んでどう感じた? 「監事として責任を非常に感じています。ただ、知る術がないわけです。彼女は裏で全部やっていたわけだし、もちろん理事会にも出さない。(疑惑のカネは)文春の記事で分かったくらいです。本当にびっくりしましたけど」 岩本氏に対する内部告発を側近に渡せば、どのような結果になるのか、予想はつくはずだ。同級生や創立者一族という理由で「守る」というのであれば、監事としての職責を放棄していたことに等しい』、「岩本氏に対する内部告発を側近に渡せば、どのような結果になるのか、予想はつくはずだ。同級生や創立者一族という理由で「守る」というのであれば、監事としての職責を放棄していたことに等しい」、その通りだ。
・『「給与の二重払い」と特別背任容疑  至誠会の出向契約は、2020年1月に元宝塚トップスター・彩輝なお氏の親族が経営するケネス&セルジオ社との業務委託契約に切り替えられた。岩本氏は無名時代から彩輝氏の大ファンで、理事長就任のパーティでは花束の贈呈を受けている間柄である。 女子医大との業務委託契約は月額350万円。そのうち側近Xは月額給与200万円、側近Yは50万円、その他にXらの飲食等にケネス社名義のクレジットカードで月額70万円が用意された。マージンとしてケネス社に支払われたのは、月額30万円のみ。 その後、岩本氏の専属運転手である甥の人件費として、女子医大は月額60万円を同社に追加で支払っていた。費用総額は3年間で1億円超。週刊文春が「利益相反の疑いがある」として報道すると、ケネス社の意向で業務委託契約はすぐに解除された。(※すべて税別の金額) 文春報道を受けて、女子医大は文科省に対し、「助言を受けた実績があることを踏まえ、ケネス社を選定した」などと報告していた。しかし、同社と女子医大にそれまで取引実績はなく、“虚偽報告”だったと第三者委員会は指摘、側近XとYが、同社と至誠会から同時に給与を得ていたことは、「給与の二重払い」だと認定した。警視庁が捜査している、特別背任容疑が成立する可能性が高い。 また、岩本氏が経営していた産婦人科病院の女性従業員Z(報告書ではO)が、業務実態のないダミー会社の社長を務め、女子医大の受注業者からキックバックを受けた疑惑もある。(週刊文春電子版オリジナル「疑惑のダミー会社と女帝をつなぐ『第三の女』と白ベンツ」) 岩本氏が女子医大の実権を握った2015年から、大型施設のスクラップ&ビルドが相次いだ。 その際、側近Xが解体業者や不動産会社、設計事務所などに働きかけ、Zのダミー会社と多額のコンサルタント契約を結ばせていた。解体業者との契約だけでも1億円を超す。 この疑惑について、第三者委員会は厳しく批判した。 「E氏(側近X)の行為は、職務上の地位を悪用して狡猾。 岩本氏はヒアリングにおいて『知らなかった』旨を述べたが、一連の還流に岩本氏が全く関与していなかったとは認めがたく、仮に岩本氏が知らなかったとしても、経営統括理事であった岩本氏には重大な管理責任が認められる」(調査報告書P76より要約)』、「岩本氏が女子医大の実権を握った2015年から、大型施設のスクラップ&ビルドが相次いだ。 その際、側近Xが解体業者や不動産会社、設計事務所などに働きかけ、Zのダミー会社と多額のコンサルタント契約を結ばせていた。解体業者との契約だけでも1億円を超す。 この疑惑について、第三者委員会は厳しく批判」、なるほど。
・『経営危機を招いた「高度医療に対する関心の薄さ」  現在、女子医大病院は病床稼働率が約5割と、危機的な経営が続く。 海外から専門医を招聘するなど、苦労の末に立ち上げた小児集中治療室(PICU)について、岩本氏は収益性や専門医の給与額を理由に、わずか半年で解体した。これが引き金となって、成人の集中治療室も機能停止となり、臓器移植がストップ。医療ミスによる死亡事故も発生するなど、医療安全の体制が崩壊してしまった。 第三者委員会は、岩本氏について「大学病院という高度医療機関において臨床に携わった経験も実績も乏しく、本病院がPICUなど高度医療施設を備えて、患者や地域医療に貢献しようとすることに対する理解も関心も薄かった」と指摘。 5日に行われた、女子医大の教職員に向けた説明会で、副委員長の竹内弁護士は次のように補足した。 「PICU について、医療安全の確立とか、中長期的な業績の向上、医療現場の士気向上よりも、目先の儲かる、儲からないという話に経営判断が間違ってしまった。 岩本氏がやってきた経営は、一言で言うと人件費のカット。それによって、現場が大きく疲弊した。人的資源を破壊し、組織の持続可能性を危機にさらす財務施策が、現在のような窮状に追い込んだものであり、経営責任は極めて重い」』、「苦労の末に立ち上げた小児集中治療室(PICU)について、岩本氏は収益性や専門医の給与額を理由に、わずか半年で解体した。これが引き金となって、成人の集中治療室も機能停止となり、臓器移植がストップ。医療ミスによる死亡事故も発生するなど、医療安全の体制が崩壊してしまった。 第三者委員会は、岩本氏について「大学病院という高度医療機関において臨床に携わった経験も実績も乏しく、本病院がPICUなど高度医療施設を備えて、患者や地域医療に貢献しようとすることに対する理解も関心も薄かった」と指摘・・・岩本氏がやってきた経営は、一言で言うと人件費のカット。それによって、現場が大きく疲弊した。人的資源を破壊し、組織の持続可能性を危機にさらす財務施策が、現在のような窮状に追い込んだものであり、経営責任は極めて重い」、その通りだ。
・『多くの教職員の前で失脚した女帝  「この度は世間をお騒がせしてしまい、大変申し訳なく思い、本日は理事一同のお詫びということで参集いたしました。誠に申し訳ありませんでした」 ステージの上に立った理事長の岩本氏は、一応の謝罪を述べると頭を下げた。一人を除き勢揃いした理事と監事もそれに続く。 8月5日午後6時過ぎ、850人収容の東京女子医大・弥生記念講堂は、集まった教職員でほぼ満席。第三者委員会の調査報告書を受けて、岩本氏ら経営陣の進退に関心が集まっていた。 「厳しい内容でございますが、真摯に受け止めて改善していくことをお約束いたします。しかしながら弁護士に伺いましたところ、(調査報告書には)事実と多少違うところもあるし、このまま全てを(受け入れるのは)女子医大のイメージが非常に悪い。学生や職員のために、内容を一旦検証、精査して、私や理事監事の辞任も含めて検討させていただきたい」 会場がどよめいた。第三者委員会の指摘を受けても岩本氏は何も反省せず、理事長の座に残る意向を示したのである。だが、この発言を受けてすぐにマイクを握った人がいた。 「すみません、理事の石黒からですが、理事長先生がおっしゃった内容は、理事・監事全員の総意ではございません」 続いて立った肥塚直美常務理事(病院長を兼務)は、第三者委員会の調査報告書が公開された翌3日、岩本氏を除き、理事と監事が集まったことを明かした。協議の結果、岩本氏には理事長を辞職してもらうことが妥当、理事たちも経営責任を明確にするため、全員辞職することになったという。 そして、石黒直子理事が岩本氏の発言を改めて否定した。 「調査報告書に更なる検討を立ち上げることは、いたしません。しっかり第三者委員会に検討を行っていただきましたので、これに則って我々はやっていく。ご賛同の理事・監事の先生は、立っていただけますか」 促されて、ステージ上にいた理事と監事の全員が立ち上がった。女子医大を支配してきた岩本氏に、役員たちが反旗を翻した瞬間である。 この時、岩本氏は憮然とした表情を浮かべた。側近中の側近として、これまで最も積極的に岩本氏を擁護してきた石黒理事に裏切られ、命運は尽きた。 たとえ自ら辞任しなくても、女子医大の規約では、役員の過半数の同意で理事長職を解任することは可能なので、岩本氏の失脚はこの時に確定したのである』、「第三者委員会の調査報告書が公開された翌3日、岩本氏を除き、理事と監事が集まったことを明かした。協議の結果、岩本氏には理事長を辞職してもらうことが妥当、理事たちも経営責任を明確にするため、全員辞職することになったという・・・しっかり第三者委員会に検討を行っていただきましたので、これに則って我々はやっていく。ご賛同の理事・監事の先生は、立っていただけますか」 促されて、ステージ上にいた理事と監事の全員が立ち上がった。女子医大を支配してきた岩本氏に、役員たちが反旗を翻した瞬間である」、最後はもろいものだ。
・『患者を守る若き女医の静かな怒り  質疑応答では、一人の女子医大OGの医師が、こんな問いを投げかけた。 「私は循環器内科で 10 年目のスタッフです。赤ちゃんの頃に女子医大で先天性の心臓疾患手術を受けて、ずっとここに通って死ぬ時もここがいいという患者さんの主治医をしています。だから、あなた方に責任を問う必要がある。 理事長のお金の問題だけじゃなく、この数年に女子医大の内部で起きたことについて、説明があまりに足らないというのが今の感想です」 これに岩本氏は相変わらずの持論を述べた。 「調査報告書では全部、ダメダメダメって書いてあるわけですよね。しかも推測で書いてあるとこもありまして。これを受け入れたら、特に学生さんたちが可哀想だ、という声も上がっております。(報告書を)全部のんだら、本当に女子医大ってどういう学校だって話になります」 「この数年、理事長と学長が代わってから、ポリクリ(医学生の臨床実習)に回ってくる学生は、『学校が楽しくない』と言っています。 学生が可哀想というのは、こっちの台詞ですよ。こんな混乱を招いて、学生に面と向かって説明したことはありますか」(前出・循環器内科の女医) 「学生に関して、私はよく分かりませんが……」(岩本氏) 他人事のような回答に、会場からは失笑がもれる。この日も岩本氏は最後まで、辞任するとは明言しなかった』、「「学生に関して、私はよく分かりませんが……」(岩本氏) 他人事のような回答に、会場からは失笑がもれる」、なるほど。
・『イバラの道の先にある東京女子医大の未来  第三者委員会の報告書の中には、呆れるようなことも記載されていた。 岩本氏は、至誠会の会長を去年解任されるまで、自らに対して至誠会から中元と歳暮として3万円分の商品券を贈らせていたのである。 コロナ禍だった2020年の夏、女子医大は職員のボーナスカットを宣言して、社会の大きな批判を浴びた。その後、ボーナス支給に方針を転換したが、前年のほぼ半分の1ヶ月分でしかない。 女子医大の教職員は、この10年ほど給与のベースアップはほとんどない。しかし、今回の調査で岩本氏の報酬だけは、2015年当時の約1800万円から、2023年に約3200万円と72%も増加させていたことが分かった。岩本氏の報酬額を上げたのは「本人の判断」と関係者は証言している。 また、報告書にはこんな記述もある。 「(岩本氏は)自身の考えとは異なる意見を述べる者に対しては、自身の権力基盤を脅かす存在として敵視し、組織から排除することを繰り返し行った。それまでどんなに気心が知れている間柄であっても、一度異論を述べた者を突如として敵視し、(中略)報復と疑われる不適切な人事措置を講じてまで、組織から排除した」(調査報告書P236) 週刊文春が2022年に報道した“疑惑のカネ”をめぐって、取材に協力したとして2人の事務職員が、この報復的な人事措置によって懲戒解雇の処分を受けた。同様に合理性を欠いた理由で懲戒処分を連発することで、岩本氏は恐怖政治による支配を続けてきたのである。 私たちが長期間にわたって「東京女子医大の闇」の連載を続け、女帝らの問題を追及してきたのは、この大学病院を必要とする患者が数多く存在するからだ。高度医療は一朝一夕に実現しない。 そして惨憺たる診療現場に踏みとどまり、患者を守り続けている医療スタッフがいる以上、スラップ訴訟を受けても引き下がるつもりはなかった。 女帝が退場しても、医療スタッフの確保や財政の立て直しなど、女子医大にはイバラの道が続く。 これから先も、私たちはしっかり見守り続けるつもりだ』、「コロナ禍だった2020年の夏、女子医大は職員のボーナスカットを宣言して、社会の大きな批判を浴びた。その後、ボーナス支給に方針を転換したが、前年のほぼ半分の1ヶ月分でしかない。 女子医大の教職員は、この10年ほど給与のベースアップはほとんどない。しかし、今回の調査で岩本氏の報酬だけは、2015年当時の約1800万円から、2023年に約3200万円と72%も増加させていたことが分かった・・・女帝が退場しても、医療スタッフの確保や財政の立て直しなど、女子医大にはイバラの道が続く。 これから先も、私たちはしっかり見守り続けるつもりだ」、今後の文春の監視に期待したい。 
タグ:東洋経済オンライン「卓越大内定の東北大、研究資金の申請で虚偽疑惑 「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員採択」 (その16)(卓越大内定の東北大、研究資金の申請で虚偽疑惑 「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員採択、「解体的出直しをはかる」“東京女子医大の闇”女帝・岩本絹子氏の理事長退任が確定的に!「7日に臨時理事会が開催され、理事長辞職を勧告予定」 東京女子医の闇#21、《東京女子医大“理事長解任”を決定》封印された内部告発「カネに強い執着心」「異論に報復人事」第三者委員会が暴いた女帝の正体「破壊された医療現場を死守する医師の矜持」 東京女子医の闇#22) 大学 「若手研究者本人が結果さえ出せば必ずテニュアになれるというスキームで、アカデミアの世界では国際的に認知されている。当然、文部科学省もそのように明確に定義している。 しかし、東北大学は、無期雇用のポストをあらかじめ用意していない「名ばかりテニュアトラック」で卓越研究員事業に申し込み、文科省は実態を問題視せずに採択していたようだ・・・ 東北大学の制度は、名称にテニュアトラックという言葉を使っているが、「本来の制度とは別物の独自のもので、元から研究者にはテニュア審査の機会を与えるとは約束していない」などと説明していた」、なるほど。 「東北大学テニュアトラック制度はテニュアトラック制度ではないが、例外的に一部、本来のテニュアトラックでの雇用が存在していたことになる」、なるほど。 「こうしたやり方を許せば研究の世界でのモラルハザード(道徳観や倫理観の欠如)につながる。東北大学には組織体として問題があり、国際卓越研究大学に値するものではない」と指摘・・・東北大学は新たに設けられた「国際卓越研究大学」に、今2024年度に認定される見通しだ。そうなれば、東京大学や京都大学を差し置いて、東北大学が卓越大の第1号となり、政府が設立したファンドから年間数百億円規模の支援を受けられる。当然、それに見合う高いガバナンスが求められるはずだ」、 こんなに問題のある「東北大学」を「卓越大の第1号」とすべきではない。「卓越大」制度に泥を塗ることになりかねない。 文春オンライン「「解体的出直しをはかる」“東京女子医大の闇”女帝・岩本絹子氏の理事長退任が確定的に!「7日に臨時理事会が開催され、理事長辞職を勧告予定」 東京女子医の闇#21」 「「女子医大の理事会は解散すべき、という第三者委員会の指摘に衝撃を受けました。これは岩本絹子理事長に対する実質的な辞任勧告だと思います」、その通りだろう。 文春オンライン「《東京女子医大“理事長解任”を決定》封印された内部告発「カネに強い執着心」「異論に報復人事」第三者委員会が暴いた女帝の正体「破壊された医療現場を死守する医師の矜持」 東京女子医の闇#22」 「高度医療に定評があった女子医大病院を、徹底的に破壊した女帝とは、何者だったのか? そして、不正の内部告発を生かさなかった人物の告白とは──」、興味深そうだ。 「第三者委員会には、去年まで検察ナンバー2だった山上秀明弁護士ら4人が選任された。これに合計20人の弁護士と、58人の公認会計士などが加わり」、これ以上ないほど重厚な布陣には、心底驚かされた、 「岩本氏は、本法人の理事長(副理事長)と至誠会の代表理事を兼任するという立場を利用し、本法人経営統括部で勤務していた者に対して、 至誠会という自身が大きな影響力を及ぼしていた存在を道具として不正に資金を還流させた」、文春の調査報道の華々しい成果だ。 「岩本氏に対する内部告発を側近に渡せば、どのような結果になるのか、予想はつくはずだ。同級生や創立者一族という理由で「守る」というのであれば、監事としての職責を放棄していたことに等しい」、その通りだ。 「岩本氏が女子医大の実権を握った2015年から、大型施設のスクラップ&ビルドが相次いだ。 その際、側近Xが解体業者や不動産会社、設計事務所などに働きかけ、Zのダミー会社と多額のコンサルタント契約を結ばせていた。解体業者との契約だけでも1億円を超す。 この疑惑について、第三者委員会は厳しく批判」、なるほど。 「苦労の末に立ち上げた小児集中治療室(PICU)について、岩本氏は収益性や専門医の給与額を理由に、わずか半年で解体した。これが引き金となって、成人の集中治療室も機能停止となり、臓器移植がストップ。医療ミスによる死亡事故も発生するなど、医療安全の体制が崩壊してしまった。 第三者委員会は、岩本氏について「大学病院という高度医療機関において臨床に携わった経験も実績も乏しく、本病院がPICUなど高度医療施設を備えて、患者や地域医療に貢献しようとすることに対する理解も関心も薄かった」と指摘・・・ 岩本氏がやってきた経営は、一言で言うと人件費のカット。それによって、現場が大きく疲弊した。人的資源を破壊し、組織の持続可能性を危機にさらす財務施策が、現在のような窮状に追い込んだものであり、経営責任は極めて重い」、その通りだ。 「第三者委員会の調査報告書が公開された翌3日、岩本氏を除き、理事と監事が集まったことを明かした。協議の結果、岩本氏には理事長を辞職してもらうことが妥当、理事たちも経営責任を明確にするため、全員辞職することになったという・・・しっかり第三者委員会に検討を行っていただきましたので、これに則って我々はやっていく。ご賛同の理事・監事の先生は、立っていただけますか」 促されて、ステージ上にいた理事と監事の全員が立ち上がった。女子医大を支配してきた岩本氏に、役員たちが反旗を翻した瞬間である」、最後はもろいものだ。 「「学生に関して、私はよく分かりませんが……」(岩本氏) 他人事のような回答に、会場からは失笑がもれる」、なるほど。 「コロナ禍だった2020年の夏、女子医大は職員のボーナスカットを宣言して、社会の大きな批判を浴びた。その後、ボーナス支給に方針を転換したが、前年のほぼ半分の1ヶ月分でしかない。 女子医大の教職員は、この10年ほど給与のベースアップはほとんどない。しかし、今回の調査で岩本氏の報酬だけは、2015年当時の約1800万円から、2023年に約3200万円と72%も増加させていたことが分かった・・・女帝が退場しても、医療スタッフの確保や財政の立て直しなど、女子医大にはイバラの道が続く。 これから先も、私たちはしっか り見守り続けるつもりだ」、今後の文春の監視に期待したい。
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災害(その19)(高をくくっていないか「巨大地震」への財政の備え 復旧・復興の国債増発のため平時にすべきこと、「から騒ぎ」だった南海トラフ巨大地震 日本の地震予知に欠けている重要な視点とは) [社会]

災害については、本年8月14日に取上げた。今日は、(その19)(高をくくっていないか「巨大地震」への財政の備え 復旧・復興の国債増発のため平時にすべきこと、「から騒ぎ」だった南海トラフ巨大地震 日本の地震予知に欠けている重要な視点とは)である。

先ずは、8月14日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学 経済学部教授の土居 丈朗氏による「高をくくっていないか「巨大地震」への財政の備え 復旧・復興の国債増発のため平時にすべきこと」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/799116
・『8月8日に、宮崎県で最大震度6弱の揺れを観測したマグニチュード7.1の地震があり、これを受けて気象庁は南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)を発表した。この発表は、南海トラフ地震臨時情報制度発足以来初めてのことである。 自然災害は起きてほしくはないが、いかに備えるかは重要である。残念ながら、いざ大きな自然災害が起こると、民間で大きな損害が生じる。 南海トラフ地震については、内閣府が2019年6月に「南海トラフ巨大地震の被害想定について(経済的な被害)」を公表している。これによると、南海トラフ地震が起きると、より被害が大きい陸側ケースで資産等の被害額は171.6兆円、波及して生じる生産の低下や交通の寸断などによる経済活動への影響額は合わせて42.1兆円にのぼるという。 政府が推計した資本ストック被害額は、1995年の阪神・淡路大震災では10兆円弱、2011年の東日本大震災では約17兆円だったから、南海トラフ地震は桁違いである』、「内閣府が2019年6月に「南海トラフ巨大地震の被害想定について(経済的な被害)」を公表している。これによると、南海トラフ地震が起きると、より被害が大きい陸側ケースで資産等の被害額は171.6兆円、波及して生じる生産の低下や交通の寸断などによる経済活動への影響額は合わせて42.1兆円にのぼるという。 政府が推計した資本ストック被害額は、1995年の阪神・淡路大震災では10兆円弱、2011年の東日本大震災では約17兆円だったから、南海トラフ地震は桁違いである」、確かに恐ろしい規模の被害だ。
・『巨大災害の後には債務が増大  この被害額や影響額の中には、国家財政状況の悪化や株価下落、物価高騰の影響は含まれていない。 これまでわが国で起きた巨大災害では、発災直後に政府が民間を財政的に支援してきた。その財源は、大半を国債で賄っていた。 内閣府の「国民経済計算」によると、巨大災害発生後のわが国の一般政府の債務残高は、次のような経緯をたどった。 阪神・淡路大震災が起きた1995年には、1994年度末の約402兆円から1995年度末に452兆円へと50兆円増えた。対GDP比でみると、1994年度末の78.5%から1995年度末には86.1%へと7.6%上昇した。 東日本大震災が起きた2011年には、2010年度末の約927兆円から2011年度末に約993兆円へと66兆円増えた。対GDP比でみると、2010年度末の183.6%から2011年度末には198.6%へと15.0%上昇した。 新型コロナが流行し始めて緊急事態宣言が出された2020年には、2019年度末の約1252兆円から2020年度末に約1313兆円へと61兆円増えた。対GDP比でみると、2019年度末の224.7%から2020年度末には243.6%へと18.9%上昇した。 政府債務対GDP比の上昇幅は、これらの年度を除いた1995年度以降の平均では5%程度だから、巨大災害発生の年には上昇幅が大きいことがわかる。 やはり、大きな災害が起こると、初動で政府が民間を支援することになり、その財源を災害直後は増税で賄うわけにはいかず、国債を増発して支援することになるから、このように政府債務は増大する。) 債務残高の増加額だけだと、災害直前のGDPの約10%程度だが、災害が生じるとGDPも落ち込むから、対GDP比でみるとさらに大きく上昇することになる。 他方で、巨大災害発生後の復旧・復興によって、経済活動が活性化されてGDPが大きく増えて、増税しなくても税収が多く入って政府債務対GDP比が低下に転じるということはあっただろうか。 残念ながら、わが国では阪神・淡路大震災や東日本大震災の後でもそうしたエビデンスはない。 おまけに、わが国の政府支出の規模は、復旧・復興の事業が終われば不要となるから、その分だけ縮小するかと思いきや、さまざまな要因で巨大災害発生前の水準には戻らず、むしろさらに拡大することが常態化している。今般のコロナ禍でも、コロナ対策が終わっても、防衛費やこども予算などで政府支出は膨張しており、縮小する様子はない。 こんな財政運営では、巨大災害が起きずとも、政府債務対GDP比は拡大の一途である』、「他方で、巨大災害発生後の復旧・復興によって、経済活動が活性化されてGDPが大きく増えて、増税しなくても税収が多く入って政府債務対GDP比が低下に転じるということはあっただろうか。 残念ながら、わが国では阪神・淡路大震災や東日本大震災の後でもそうしたエビデンスはない。 おまけに、わが国の政府支出の規模は、復旧・復興の事業が終われば不要となるから、その分だけ縮小するかと思いきや、さまざまな要因で巨大災害発生前の水準には戻らず、むしろさらに拡大することが常態化している。今般のコロナ禍でも、コロナ対策が終わっても、防衛費やこども予算などで政府支出は膨張しており、縮小する様子はない。 こんな財政運営では、巨大災害が起きずとも、政府債務対GDP比は拡大の一途である」、由々しい野放図さだ。
・『政府がお金を借りにくくなっている  これまでは、巨大災害の直後に政府が借金をして民間を支援することができていたが、今後も必ずそのようにできるという保証はない。 まず、国債の消化は以前に比べて苦しくなっている。コロナ禍での国債消化は象徴的だった。 東洋経済オンラインの拙稿「2021年度予算、『短期国債が4割』の異常事態短期債借り換えに奔走、コロナ対策の高い代償」でも詳述したが、コロナ禍では、新規に発行する国債(当年度の新発国債だけでなく借換債も含む)の過半は、2年以下の満期でしか発行できなかった。量的金融緩和策の下だったにもかかわらず、である。 政府はコロナ対策のため国債を大量発行しようにも、金融機関はコロナ後の先行き不安がある中で長期債を追加的に大量購入する余裕はなかったのである。) 加えて、2010年代は日本銀行がデフレ脱却のために国債を大量に買い入れていたが、現在ではもはやそうではない。 2024年3月に、日銀はマイナス金利政策だけでなく、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)もETF(上場投資信託)とJ-REIT(不動産投資信託)の新規買い入れもやめた。今や、国債の買い入れ額の減額についてペースを見計らっている。 今後は、これまでのように日銀頼みで国債の大量増発はできない』、「2024年3月に、日銀はマイナス金利政策だけでなく、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)もETF(上場投資信託)とJ-REIT(不動産投資信託)の新規買い入れもやめた。今や、国債の買い入れ額の減額についてペースを見計らっている。 今後は、これまでのように日銀頼みで国債の大量増発はできない」、その通りだ。
・『「日銀が国債を買えばいい」はもう通じない  巨大災害発生直後ぐらい日銀は特別な対応をするだろう、とみるのは甘い。 災害発生直後には、復旧のための物資が必要となる一方で、生産設備が被災すると生産が滞る。供給が落ち込む一方で需要が増えるから、物価の上昇圧力が高まる。そんな状況で、日銀は金融緩和政策を積極的にはできない。東日本大震災はデフレ下だったから顕著にそうはならなかったが、現在は逆に物価が上がり始めている。 緊急時でも、政府が臨時的に長期債を低利で大量増発できる、と高をくくってはいけない。国債金利も上がり始めており、災害対応で巨額の国債増発が必要になって、必要な金額を発行できたとしても、それには相当な利払い費を後に要することになる。 そう考えると、巨大災害発生後の復旧・復興のために必要とする国債増発を、市場を混乱させないような規模でできるような財政運営を平時から心がけることが重要となる。 緊急時には、当該年度予算のための新発国債と、当該年度に満期を迎えて借り換える借換債に、臨時的な国債増発が加わる。これらを合計した国債発行が、市場で円滑に行える程度に抑制できるかが問われる。そのカギとなるのは、当該年度予算のための新発国債の抑制に他ならない。 巨大災害が仮に起きたとしても、復旧・復興のための国債増発が支障なくできる程度に、平時から新発国債を抑制し、財政余力を確保しておかなければならない』、「緊急時でも、政府が臨時的に長期債を低利で大量増発できる、と高をくくってはいけない。国債金利も上がり始めており、災害対応で巨額の国債増発が必要になって、必要な金額を発行できたとしても、それには相当な利払い費を後に要することになる。 そう考えると、巨大災害発生後の復旧・復興のために必要とする国債増発を、市場を混乱させないような規模でできるような財政運営を平時から心がけることが重要となる・・・そのカギとなるのは、当該年度予算のための新発国債の抑制に他ならない。 巨大災害が仮に起きたとしても、復旧・復興のための国債増発が支障なくできる程度に、平時から新発国債を抑制し、財政余力を確保しておかなければならない」、その通りだ。

次に、8月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元週刊文春・月刊文芸春秋編集長の木俣正剛氏による「「から騒ぎ」だった南海トラフ巨大地震、日本の地震予知に欠けている重要な視点とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/348931
・『「巨大地震注意」は何事もなく解除 社会が被った予想以上の影響  私は元編集者で地震の専門家ではありませんが、逆に専門家の言うことも「まずは疑ってかかる」ということを、仕事上の責任だと思っています。 8月8日に宮崎で地震が起こり、政府は「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」を召集、その夜には南海トラフ地震臨時情報として「巨大地震注意」という文言が日本中にあふれました。日本中がバニックになり、お盆の連休に期待していた観光地の宿泊施設では予約のキャンセルが相次ぎ、新幹線は徐行し、人々は食料品の買い出しに走りました。 そんな中、私も建設、消防、自衛隊、自治体などに関わるキーマンたちに意見を聞き、日本が最低限取り組むべき防災・減災対策についてまとめた記事を寄稿しました(https://diamond.jp/articles/-/348677)。しかし、たった1週間後の15日に「巨大地震注意」の呼びかけは解除となりました。 日本は地震大国ですから、地震への警戒は常にすべきですが、何十年も国家予算をかけて、政府と気象庁が「地震予知連絡会」を運営しているのに、予知を成功させたことがなく、また珍しく「巨大地震注意」という予告を出したのに、「地震活動などに特段の異常が観測されなかった」と、明確な説明がないまま収束しました。この機に、地震予知の方法を見直してもいいのではないかと思います。 もちろん、巨大地震のリスクを常に分析し、少しでも不安が生じれば国民に早期の警戒を呼びかけることは、国家として必要不可欠な仕事の一つです。今回は事前に決められたルールの範囲で適正に発出された呼びかけでもあったことでしょう。1週間で解除されましたが、引き続き国民一人一人が警戒を続けるべきです。とはいえ、これだけの影響を社会に与えることが改めてわかったのだから、予知の精度を上げていくことも、同じくらい重要なテーマだと思うのです。 そもそも論になってしまいますが、ロバート・ゲラー東大教授は「地震予知が科学的に不可能である」と主張していました。彼によると、(1)日本政府が使用している確率論的地震動予測地図は、実際の地震発生場所と一致しないことが多く、その信頼性に疑問がある、(2)地震の前兆を観測することは非常に難しく、短期的な地震予知は現実的ではない、ということです。 実際、予知に成功していないわけですから、この主張は一定の説得力があります』、「ロバート・ゲラー東大教授は「地震予知が科学的に不可能である」と主張していました。彼によると、(1)日本政府が使用している確率論的地震動予測地図は、実際の地震発生場所と一致しないことが多く、その信頼性に疑問がある、(2)地震の前兆を観測することは非常に難しく、短期的な地震予知は現実的ではない、ということです」、これまでの常識は抜本的に見直す必要がありそうだ。
・『プレート理論は定説ではなくなりつつある? 疑問を投げかける専門家の気になる主張  特に、地震予知連絡会や気象庁、政府が地震が起きる度に説明の中心としているプレート理論そのものが、世界的に見て定説とまでは言い切れるものではなくなっているということを主張する学者は少なからずいるのが実情です。そのことを、日本のメディアは吟味してから報道すべきです。 これについて、詳しく述べましょう。もともとプレート理論は仮説として有力視され、1969年に開催された米国のランドマークペンローズ会議で発表されました。出席した日本人科学者は、初めてこの理論を知り、その理論を信じ、いつしか「仮説」から「真理」のように解釈してしまいました。そして地震予知連絡会が作られ、莫大な予算が投じられて、新しい視点や理論が出てきても、なかなか受け容れられない仕組みになってしまっていると言われます。 科学は常に進歩します。DNA解析で日本人のルーツに関する研究が大きく変わったように、地球の内部に関する調査も50年前から進歩しました。私に新しい調査結果を教えてくれたのは、埼玉大学名誉教授(地質学)の角田史雄氏と元内閣情報調査室参事官の藤和彦氏による『徹底図解 メガ地震がやってくる!』(ビジネス社)という書籍でした。この書籍の内容を参照しながら、論を進めましょう(引用は「要約」になるので、詳しくは本書をお読みください)。 本書によると、かつては地球の内部を調べる方法がなく、推測によって、地下100kmまでの範囲内に硬い岩盤(プレート)があるという理論が主流でした(400キロという説もあります)。しかしこの10年ほどで新しい研究が進みました。米国地質研究所は、人間に使うMRIを巨大にしたような装置を使ってさらに地下深くの状況を解明することに成功し、660kmまでのデータを公開しました。同時に世界火山学会(スミソニアン博物館)も、火山爆発とマントルのたまり具合を詳細にデータで発表しています。 この調査でわかったことは、プレートに関する従来の説を覆すものでした。プレート説の根幹は、地中深くにあるマントル(地球内部の地殻と核との間の層。溶けると溶岩流のような状態になる)の対流によって隆起した山脈(海嶺)から生まれたプレートが十数枚あり、それがぶつかるか、片方の下部に沈むと地震や火山噴火を誘発するというものです。 しかし、このMRI(正式名はMT=マントルトモグラフィー)の調査では、太平洋の底には地下1000キロまで温かいマントルが流れているものの、巨大プレートを形成するための強い関連性はないこと、またプレートは地下すべてを覆っているものではなく、厚さもなくて、巨大地震のエネルギーを生み出せるほどのパワーはないことが指摘されました。そしてプレートは常に一定方向に遠距離移動しており、実際には時計回りに回転していて、いずれ衝突し地震が起こるという「沈み込み理論」は適合しないということです。) 確かにそう考えると、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など、最大震度7を記録している地震はすべてプレート境界面以外で起こっています。そして予知もできませんでした。また海外に目を転じても、大規模地震の震源とされる太平洋プレートから2500kmも離れた中国四川省で起きたM8の大地震の説明がつきません。 となると、8月当初、日本中に警告が発せられていた南海トラフ地震の発生理由も、ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界で起こるという理論が基になっているので、疑問がわいてきます』、「このMRI(正式名はMT=マントルトモグラフィー)の調査では、太平洋の底には地下1000キロまで温かいマントルが流れているものの、巨大プレートを形成するための強い関連性はないこと、またプレートは地下すべてを覆っているものではなく、厚さもなくて、巨大地震のエネルギーを生み出せるほどのパワーはないことが指摘されました。そしてプレートは常に一定方向に遠距離移動しており、実際には時計回りに回転していて、いずれ衝突し地震が起こるという「沈み込み理論」は適合しないということです。 確かにそう考えると、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など、最大震度7を記録している地震はすべてプレート境界面以外で起こっています。そして予知もできませんでした。また海外に目を転じても、大規模地震の震源とされる太平洋プレートから2500kmも離れた中国四川省で起きたM8の大地震の説明がつきません」、なるほど。
・『最先端の調査が行われる一方 過去の巨大地震を根拠とした推論も  もっとも、地震予知連絡会の調査もいい加減なものではありません。国土地理院が設置した約1300カ所の電子基準点から得られるデータを基に、人工知能(AI)と物理モデルを組み合わせたハイブリッドな解析手法を用いた「MEGA地震予測」のシステムを駆使しています。今回宮崎で地震が起きたとき、南海トラフ地震との関連性を発表するのに時間がかかったのは、まさにこのシステムでの計算に2時間も全力を傾けていたからです。 が、メディアの報道を見ると、南海トラフ地震が起こる確率は、むしろ過去の巨大地震を根拠としたアバウトな推理になってしまっています。1854年の安政東海地震、安政南海地震から約90年後に昭和東南海地震、昭和南海地震が起きたため、今はそれから80年たっているから、次の大地震発生まであと10年しか猶予がないというものです。 一方、「日向灘はもともと群発地震が起こっていたところで、最初の南海トラフには入っていなかった。ましてや、それが南海(四国、和歌山)から駿河、房総半島まで及ぶとは思えない」と言う地震学者もいます。地震の専門家からメディアにいたるまで、どうも目線が合っていないように感じてしまいます。 話を最新の調査結果に戻すと、(1)マントル対流による摩擦熱ではプレートを動かすことはできない、(2)そもそもプレートを生む海嶺の下にはマントル対流がない、という説が唱えられ始めました。米国地質研究所の調査画像によれば、地球の地下1000kmに及ぶ冷たく巨大な岩の柱がマントル対流を遮っているそうです。 一方、地下200kmの環太平洋火山・地震帯が日本をすっぽり覆っていること、その下の熱いマントルが南太平洋から東アフリカへと伸びる「熱の移送路」があることも判明しました。 そこで地質学者である角田氏は、大地震の真犯人は地球内部からの高熱流(地表の下410kmから660kmにある、上部マントルと下部マントルに挟まれる遷移層=マグマと岩石が混じった状態のもの)ではないかと推理しました。彼自身が語っているように、これはまだ仮説にすぎません。しかし、もともと海域の理論であるプレート説が陸の地震に拡大解釈された感は否めません。) たまたま日本の場合、地形的に特殊な場所にあり、プレートが起こした地震と解釈できる部分があったため、学者の多くがプレート説に取り憑かれてしまったというのです。 実はプレートを動かしているのは、もっと地球の深奥にある高熱流であり、プレートはその共犯者でしかないと角田氏は推理しています。つまり無縁ではないのですが、マントルが地震を起こして、下から突き上げられたプレートが動いて最終仕上げをするという構造になっており、前述のようにプレートそのものには大きなエネルギーを放出する力はないということで、「プレートを追いかけても、地震予知はできない」というのが氏の仮説の結論です。 そして、地球には黒潮のようなマントルの流れが三つあり、そのうち二つが日本列島の下にあります。M7以上の地震の半分が日本で起こるのは、そのためだというのです。 「角田仮説」では、地球の深層で5回以上M5以上の深発地震が起こり、それが3回続くと、確実にそのマントル対流上で大地震が起こるそうです。たとえば阪神淡路大震災のときは、5カ月前と2カ月前にフィジーとジャワで起きていました。東日本大震災のときは、約1カ月の間にフィジーとフィリピンで10回起きていました。熊本地震の場合も、小笠原とフィジーで5回起きています』、「プレートそのものには大きなエネルギーを放出する力はないということで、「プレートを追いかけても、地震予知はできない」というのが氏の仮説の結論です。 そして、地球には黒潮のようなマントルの流れが三つあり、そのうち二つが日本列島の下にあります。M7以上の地震の半分が日本で起こるのは、そのためだというのです・・・地球の深層で5回以上M5以上の深発地震が起こり、それが3回続くと、確実にそのマントル対流上で大地震が起こるそうです。たとえば阪神淡路大震災のときは、5カ月前と2カ月前にフィジーとジャワで起きていました。東日本大震災のときは、約1カ月の間にフィジーとフィリピンで10回起きていました。熊本地震の場合も、小笠原とフィジーで5回起きています」、なるほど。
・『様々な仮説を検証しながら自ら警戒して備えるべき  このように、過去の大地震と深層地震と火山の関係を調べると、過去に起きた86回に及ぶM7以上の大地震は、すべてこの例に当てはまると本書は伝えています。 本書には、大地震が次にどこで起こるかという予測も詳述されていますが、ネタばれになるので、紹介するのはやめておきます。もともとは、政府側にいて地震予知連絡会が地震を予知できないことに不審感を持った藤氏が、自身の仮説を紹介するために出版したもので、近いうちに南海トラフ地震にポイントを絞った新刊も上梓されるそうです。 もちろん、日向灘では群発地震が続いています。そして確率論ではありますが、昭和東南海地震から80年という注意喚起にも、それなりの説得力はあります。ですから読者諸氏には、引き続き警戒を緩めないでほしいと思います。日本は地震大国。そしてここで紹介した話も、今のところ仮説にすぎません。科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです』、「過去の大地震と深層地震と火山の関係を調べると、過去に起きた86回に及ぶM7以上の大地震は、すべてこの例に当てはまると本書は伝えています・・・もともとは、政府側にいて地震予知連絡会が地震を予知できないことに不審感を持った藤氏が、自身の仮説を紹介するために出版したもので、近いうちに南海トラフ地震にポイントを絞った新刊も上梓されるそうです。 もちろん、日向灘では群発地震が続いています。そして確率論ではありますが、昭和東南海地震から80年という注意喚起にも、それなりの説得力はあります。ですから読者諸氏には、引き続き警戒を緩めないでほしいと思います。日本は地震大国。そしてここで紹介した話も、今のところ仮説にすぎません。科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです」、「地震」に関しては、決定的な理論は確立していないとはいえ、科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです」、その通りなのだろう。 
タグ:(その19)(高をくくっていないか「巨大地震」への財政の備え 復旧・復興の国債増発のため平時にすべきこと、「から騒ぎ」だった南海トラフ巨大地震 日本の地震予知に欠けている重要な視点とは) 災害 東洋経済オンライン 土居 丈朗氏による「高をくくっていないか「巨大地震」への財政の備え 復旧・復興の国債増発のため平時にすべきこと」 「内閣府が2019年6月に「南海トラフ巨大地震の被害想定について(経済的な被害)」を公表している。これによると、南海トラフ地震が起きると、より被害が大きい陸側ケースで資産等の被害額は171.6兆円、波及して生じる生産の低下や交通の寸断などによる経済活動への影響額は合わせて42.1兆円にのぼるという。 政府が推計した資本ストック被害額は、1995年の阪神・淡路大震災では10兆円弱、2011年の東日本大震災では約17兆円だったから、南海トラフ地震は桁違いである」、確かに恐ろしい規模の被害だ。 「他方で、巨大災害発生後の復旧・復興によって、経済活動が活性化されてGDPが大きく増えて、増税しなくても税収が多く入って政府債務対GDP比が低下に転じるということはあっただろうか。 残念ながら、わが国では阪神・淡路大震災や東日本大震災の後でもそうしたエビデンスはない。 おまけに、わが国の政府支出の規模は、復旧・復興の事業が終われば不要となるから、その分だけ縮小するかと思いきや、さまざまな要因で巨大災害発生前の水準には戻らず、むしろさらに拡大することが常態化している。 今般のコロナ禍でも、コロナ対策が終わっても、防衛費やこども予算などで政府支出は膨張しており、縮小する様子はない。 こんな財政運営では、巨大災害が起きずとも、政府債務対GDP比は拡大の一途である」、由々しい野放図さだ。 「2024年3月に、日銀はマイナス金利政策だけでなく、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)もETF(上場投資信託)とJ-REIT(不動産投資信託)の新規買い入れもやめた。今や、国債の買い入れ額の減額についてペースを見計らっている。 今後は、これまでのように日銀頼みで国債の大量増発はできない」、その通りだ。 「緊急時でも、政府が臨時的に長期債を低利で大量増発できる、と高をくくってはいけない。国債金利も上がり始めており、災害対応で巨額の国債増発が必要になって、必要な金額を発行できたとしても、それには相当な利払い費を後に要することになる。 そう考えると、巨大災害発生後の復旧・復興のために必要とする国債増発を、市場を混乱させないような規模でできるような財政運営を平時から心がけることが重要となる・・・そのカギとなるのは、当該年度予算のための新発国債の抑制に他ならない。 巨大災害が仮に起きたとしても、復旧・復興のための 国債増発が支障なくできる程度に、平時から新発国債を抑制し、財政余力を確保しておかなければならない」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 木俣正剛氏による「「から騒ぎ」だった南海トラフ巨大地震、日本の地震予知に欠けている重要な視点とは」 「ロバート・ゲラー東大教授は「地震予知が科学的に不可能である」と主張していました。彼によると、(1)日本政府が使用している確率論的地震動予測地図は、実際の地震発生場所と一致しないことが多く、その信頼性に疑問がある、(2)地震の前兆を観測することは非常に難しく、短期的な地震予知は現実的ではない、ということです」、これまでの常識は抜本的に見直す必要がありそうだ。 「このMRI(正式名はMT=マントルトモグラフィー)の調査では、太平洋の底には地下1000キロまで温かいマントルが流れているものの、巨大プレートを形成するための強い関連性はないこと、またプレートは地下すべてを覆っているものではなく、厚さもなくて、巨大地震のエネルギーを生み出せるほどのパワーはないことが指摘されました。そしてプレートは常に一定方向に遠距離移動しており、実際には時計回りに回転していて、いずれ衝突し地震が起こるという「沈み込み理論」は適合しないということです。 確かにそう考えると、阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震など、最大震度7を記録している地震はすべてプレート境界面以外で起こっています。そして予知もできませんでした。また海外に目を転じても、大規模地震の震源とされる太平洋プレートから2500kmも離れた中国四川省で起きたM8の大地震の説明がつきません」、なるほど。 「プレートそのものには大きなエネルギーを放出する力はないということで、「プレートを追いかけても、地震予知はできない」というのが氏の仮説の結論です。 そして、地球には黒潮のようなマントルの流れが三つあり、そのうち二つが日本列島の下にあります。M7以上の地震の半分が日本で起こるのは、そのためだというのです・・・地球の深層で5回以上M5以上の深発地震が起こり、それが3回続くと、確実にそのマントル対流上で大地震が起こるそうです。 たとえば阪神淡路大震災のときは、5カ月前と2カ月前にフィジーとジャワで起きていました。東日本大震災のときは、約1カ月の間にフィジーとフィリピンで10回起きていました。熊本地震の場合も、小笠原とフィジーで5回起きています」、なるほど。 「過去の大地震と深層地震と火山の関係を調べると、過去に起きた86回に及ぶM7以上の大地震は、すべてこの例に当てはまると本書は伝えています・・・もともとは、政府側にいて地震予知連絡会が地震を予知できないことに不審感を持った藤氏が、自身の仮説を紹介するために出版したもので、近いうちに南海トラフ地震にポイントを絞った新刊も上梓されるそうです。 もちろん、日向灘では群発地震が続いています。 そして確率論ではありますが、昭和東南海地震から80年という注意喚起にも、それなりの説得力はあります。ですから読者諸氏には、引き続き警戒を緩めないでほしいと思います。日本は地震大国。そしてここで紹介した話も、今のところ仮説にすぎません。科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです」、 「地震」に関しては、決定的な理論は確立していないとはいえ、科学的にははっきりしたことはわかっていないのだから、自ら警戒して備えるしかないのです」、その通りなのだろう。
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歴史問題(その20)(旧日本軍の失敗から今こそ学ぶべき 現代日本企業の「失敗の本質」とは、「勝算の低い戦争」に日本が突き進んだ背景事情 行動経済学で紐解く 日本軍部の心理、《インパール作戦の裏側で》牟田口廉也中将の第15軍がビルマに建てた「清明荘」の正体とは「将校専用の慰安所であり 下士官の慰安所も昼間から…」) [社会]

歴史問題については、本年4月23日に取上げた。今日は、(その20)(旧日本軍の失敗から今こそ学ぶべき 現代日本企業の「失敗の本質」とは、「勝算の低い戦争」に日本が突き進んだ背景事情 行動経済学で紐解く 日本軍部の心理、《インパール作戦の裏側で》牟田口廉也中将の第15軍がビルマに建てた「清明荘」の正体とは「将校専用の慰安所であり 下士官の慰安所も昼間から…」)である。

先ずは、4月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したクライス&カンパニー顧問・Tably代表の及川卓也氏による「旧日本軍の失敗から今こそ学ぶべき、現代日本企業の「失敗の本質」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/342705
・『マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏が、組織論の名著として薦める『失敗の本質』。「現代の組織にとっても学ぶところが多い」というその本のポイントを、及川氏が分かりやすく解説する』、興味深そうだ。
・『日本軍の組織的欠陥に「失敗の本質」を学ぶ  前回記事『新社会人に薦める珠玉の3冊、活字の達人が「人生を変える読書法」を手ほどき』でお薦めした『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(以下、『失敗の本質』)は、私が10年以上、何度も読み返してきた1冊です。 『失敗の本質』はタイトル通り、第2次世界大戦中の日本軍の組織について、戦史と組織論を専門とする計6名の研究者が著した研究の書。ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦を取り上げています。初版は1984年で、ダイヤモンド社から発行されました。 組織としての日本軍の失敗を、現代組織の反面教師として活用することを目的に書かれた本書は、大東亜戦争(本書では戦場が太平洋地域に限定されていなかったという意味で、あえてこの呼び方が使われています)を通じて明らかになった非合理的かつ非効率な行動の背景に組織的な欠陥があり、これが日本の敗戦を招いたと論じます。 著者の1人で組織論を専門とする経営学者の野中郁次郎氏は、本書執筆のきっかけについて後年、「日本企業のケーススタディをもとにした研究を進めるうち、成功例だけでは一面的になると失敗例を探したが、企業からの協力が得られなかった」と振り返り、「日本軍の失敗の研究ならできるのではないか」との助言を得て、調査を進めるために防衛大学校へ移籍した経緯を明かしています。 今の現役世代にとっては第2次世界大戦は遠い過去、歴史の中の出来事にすぎないかもしれません。しかし、この本は純粋に読み物としても面白く、幅広い読者にお薦めできる書物です』、「組織としての日本軍の失敗を、現代組織の反面教師として活用することを目的に書かれた本書は、大東亜戦争(本書では戦場が太平洋地域に限定されていなかったという意味で、あえてこの呼び方が使われています)を通じて明らかになった非合理的かつ非効率な行動の背景に組織的な欠陥があり、これが日本の敗戦を招いたと論じます」、なるほど。
・『明確な目的を持つ米軍 目的のブレが目立つ日本軍  ここからは、太平洋戦争における日本軍失敗の組織論的要因について、現代日本の企業・組織と照らし合わせながら読み解いていきましょう。 1つ目は「目的のブレ」です。 日本海軍・軍令部の戦略は短期決戦を目指し、太平洋を越えて来る米国艦隊を日本近海で迎え撃って、艦隊決戦によって一挙に撃破することを企図していました。計画の背景には、日本の海軍力拡張を抑制しようとする国際的な圧力があります。ワシントンおよびロンドンの海軍軍縮条約に批准したことで、日本は主力艦の保有数を制限されていたのです。 しかし、実戦部隊の最高指揮官である山本五十六連合艦隊司令長官は、積極的な作戦思想を持っていました。山本長官は、攻撃の時期や場所を決めて来攻できる優勢な敵に対し、劣勢な立場での防御戦では勝利が望めないと考え、敵に対して自主的かつ積極的な作戦を展開することを主張。その最たる例が、1941年の真珠湾奇襲攻撃です。山本長官の目的は、敵の不意をついて初動で圧倒し、続く攻勢で米国の士気を喪失させ、結果として優位な講和条件を引き出すことにありました。 いずれも「有利な講和に持ち込む」という目的は共通していましたが、この2つには根本的な思想のブレがあり、それがその後も続いたのです。 対する米国には、日本本土の直撃、直接上陸作戦による戦争終結という共通した明確な目的がありました。米国の対日戦略の基本を定めた「オレンジ計画改訂案」は、長期戦と大きな犠牲を予測。西大西洋のマーシャルおよびカロリン諸島を起点に日本の委任統治領を逐次攻略し、補給線を確保しながら徐々に進攻することを想定していました。歴史を後から振り返ると、実際この通りのプロセスを経ています』、「山本五十六連合艦隊司令長官は、積極的な作戦思想を持っていました。山本長官は、攻撃の時期や場所を決めて来攻できる優勢な敵に対し、劣勢な立場での防御戦では勝利が望めないと考え、敵に対して自主的かつ積極的な作戦を展開することを主張。その最たる例が、1941年の真珠湾奇襲攻撃です。山本長官の目的は、敵の不意をついて初動で圧倒し、続く攻勢で米国の士気を喪失させ、結果として優位な講和条件を引き出すことにありました。 いずれも「有利な講和に持ち込む」という目的は共通していましたが、この2つには根本的な思想のブレがあり、それがその後も続いたのです・・・米国には、日本本土の直撃、直接上陸作戦による戦争終結という共通した明確な目的がありました。米国の対日戦略の基本を定めた「オレンジ計画改訂案」は、長期戦と大きな犠牲を予測。西大西洋のマーシャルおよびカロリン諸島を起点に日本の委任統治領を逐次攻略し、補給線を確保しながら徐々に進攻することを想定していました。歴史を後から振り返ると、実際この通りのプロセスを経ています』、なるほど。
・『現代の日本企業にも見られる目的のブレ  日本軍は各作戦においても目的が不明瞭で、現場に徹底されていませんでした。 ミッドウェー作戦には、ミッドウェー島攻略と誘い出した敵艦隊の駆逐という2つの目的がありました。山本長官は後者を真の目的としていたようですが、現場指揮官の南雲忠一第一航空艦隊司令長官は、ミッドウェー攻略を重視。この目的の食い違いに加え、米国の攻撃機の襲来時期をミッドウェー島攻略の後と予想していたため、空母の航空機は陸用爆弾に転換作業中であり、被害が増大しました。 レイテ沖海戦においても、米上陸軍の補給を断つため輸送船団を攻撃することが目的であったにも関わらず、栗田健男司令官率いる連合艦隊主力が日本軍の伝統的な艦隊決戦に固執し、中央部の意図と異なる行動を取っています。 一方、米国は目的が明確でした。ミッドウェー作戦では、目的を日本の空母に限定。太平洋艦隊ニミッツ司令長官は、「空母以外には手を出すな」と厳命していました。ミッドウェー戦について、ニミッツ長官は回顧録で「日本の失敗の原因は2つの目的を持っていたことだ」と振り返っています。 さて、今日の日本企業においても、このような目的の不明瞭さや、マネジメントと現場との間の理解の不一致による目的のブレは見受けられます。 よくある例は、新規事業自体の成功を期待しているはずのマネジメント層が、うまくいかなかったときのことを恐れて「新規事業開発を通じて人材を育成する」といった別のメッセージを発してしまうケースです。これでは現場は困難な新規事業の成功を目指さず、人材育成に寄った施策を展開して、「オープンイノベーションを通じた学び」などが成果とされてしまいます。 また、「新規事業が既存事業に悪影響を与えないようにする」ような姿勢を取ってしまうのも、目的が二重になってしまっている例です。既存事業への依存から新しい取り組みが後回しになれば、結果として新興企業に市場を奪われるリスクがあります。それが分かっているのに、“虫のいい目標”を採用してしまっているのです』、「新規事業自体の成功を期待しているはずのマネジメント層が、うまくいかなかったときのことを恐れて「新規事業開発を通じて人材を育成する」といった別のメッセージを発してしまうケースです。これでは現場は困難な新規事業の成功を目指さず、人材育成に寄った施策を展開して、「オープンイノベーションを通じた学び」などが成果とされてしまいます。 また、「新規事業が既存事業に悪影響を与えないようにする」ような姿勢を取ってしまうのも、目的が二重になってしまっている例です。既存事業への依存から新しい取り組みが後回しになれば、結果として新興企業に市場を奪われるリスクがあります。それが分かっているのに、“虫のいい目標”を採用してしまっているのです」、なるほど。
・『相互の信頼関係を高めて組織内の意思統一を図るには  2つ目に「組織における意思統一のあり方」を取り上げましょう。 『失敗の本質』では、指揮系統の中での意思伝達における日本軍の失敗を指摘しています。上で述べたようにミッドウェー海戦やレイテ沖海戦では、上層部と現場指揮官の間で目的に関する理解が一致していなかったことが、戦略的失敗につながったと示されています。インパール作戦でも、現地のインド進攻を目的とする部隊と、ビルマ防衛を主目的とする上級司令部との間で理解の不一致があったにも関わらず、その不同意が上層部から明確に伝えられずに作戦が失敗しています。 一方米国は、ニミッツ長官と部下の現場指揮官・スプルーアンス少将が、ハワイで住居をともにして価値や情報、作戦構想の共有に努めていたといいます。スプルーアンス少将も参謀と、空母「エンタープライズ」の甲板上で散歩をしながら長時間にわたって議論を重ね、相互の信頼関係を高めていました。そして作戦計画についての検討を進めると同時に、価値観の統一を図ったといいます。 戦後日本の企業組織を見ると、昭和の高度経済成長期には社員を家族のように親密に扱う会社も多く、社員旅行や運動会などを通じて価値観の共有を図っていました。今でもそういう企業もありますが、現代の日本ではワークライフバランスの重視やハラスメント教育など、昭和時代の問題点を見直そうという動きが強くなっています。昭和の悪しき習慣を一掃したのはよいのですが、組織内でのオープンなコミュニケーションも同時に取りづらくなり、意思疎通や価値観の統一が図れなくなるケースも増えているように思います。 もちろん、必要以上のウエットさはむしろ敬遠されますし、部下のプライベートに踏み込みすぎるのも良いことではありません。ただ、それなら新しい時代に合わせたチームビルディングや1on1ミーティングなどの手法を試すなど、上司と部下との間で意思統一を図る方法があるのではないでしょうか』、「インパール作戦でも、現地のインド進攻を目的とする部隊と、ビルマ防衛を主目的とする上級司令部との間で理解の不一致があったにも関わらず、その不同意が上層部から明確に伝えられずに作戦が失敗・・・ニミッツ長官と部下の現場指揮官・スプルーアンス少将が、ハワイで住居をともにして価値や情報、作戦構想の共有に努めていたといいます。スプルーアンス少将も参謀と、空母「エンタープライズ」の甲板上で散歩をしながら長時間にわたって議論を重ね、相互の信頼関係を高めていました。そして作戦計画についての検討を進めると同時に、価値観の統一を図ったといいます」、米国の方が努力したようだ。
・『米国にもあった組織内対立 合理的判断の有無が明暗を分ける(3つ目は「組織内の対立」です。 『失敗の本質』では組織内の対立も日本軍敗戦の原因として挙げられています。対立はいくつかの部分で起きていますが、ここでは海軍と陸軍の対立を例として取り上げます。 ガダルカナル戦やレイテ戦では、陸海軍が策略を通じ合って共同で作戦に当たることはかなわず、むしろガダルカナル島では陸海軍の思惑の違いが防御に転じるべき時点を見誤らせ、犠牲を大きくしました。レイテ戦は本格的な陸海空一体の統合作戦として戦われるはずでしたが、陸海軍の間どころか、海軍内部の統合作戦さえ実現しませんでした。 『失敗の本質』では言及されていませんが、実はマッカーサーとニミッツは対立することも多く、そこへ空軍の独立的地位を確立しようとするヘンリー・アーノルド司令官も加わっての縄張り争いが繰り広げられていました。しかし米軍では、合理的な判断を優先させる組織文化が確立されていたようで、さらにルーズベルト大統領直下の組織が軍全体を指揮していました。組織内の対立がむしろ、成果を競い合う原動力として機能していた節もあります。 今の日本の企業・組織にもよく似た問題はあり、多くの会社で事業部間、あるいは営業担当と開発担当の間などに対立があると聞きます。その要因には、全社としての目的遂行の意識の弱さ、トップダウンの弱さがあり、組織文化が醸成されていないこともあると考えられます。 旧日本軍において敵とは本来、海軍から見た陸軍、陸軍から見た海軍ではなく、共通であるはずです。ところが陸軍はアジアを、海軍は太平洋を主戦場と見ていたため、統一された敵と目的を持てず、互いの戦略を良しとしないところがありました。 同じように今の日本企業でも、例えば営業と開発の間で互いに目的が統一されていないがゆえの対立というのはよくある話です。 米国企業でも組織内の対立はあります。しかし米国の場合は株主責任がより強く働き、CEOが更迭されることも頻繁で、常に正しいことを遂行する能力と結果責任が求められます。業績が悪化した際にはトップの責任問題として扱われ、組織の運営にメリハリがある点は日本の多くの企業と異なります。 『失敗の本質』の中で何度も語られていることの1つは、「日本の組織文化では合理的な意思決定よりも、多分に情緒や空気を重んじる傾向がある」という点です。それは現代の日本企業の中にも根強く残っているように思います』、「旧日本軍において敵とは本来、海軍から見た陸軍、陸軍から見た海軍ではなく、共通であるはずです。ところが陸軍はアジアを、海軍は太平洋を主戦場と見ていたため、統一された敵と目的を持てず、互いの戦略を良しとしないところがありました・・・米国企業でも組織内の対立はあります。しかし米国の場合は株主責任がより強く働き、CEOが更迭されることも頻繁で、常に正しいことを遂行する能力と結果責任が求められます。業績が悪化した際にはトップの責任問題として扱われ、組織の運営にメリハリがある点は日本の多くの企業と異なります・・・日本の組織文化では合理的な意思決定よりも、多分に情緒や空気を重んじる傾向がある」という点です。それは現代の日本企業の中にも根強く残っているように思います」、なるほど。
・『失敗を認めない空気が失敗から学べない体質を生む  4つ目のポイントは「学習の欠如」です。 『失敗の本質』では、戦略策定の方法論について「日本軍は帰納的、米軍は演繹的」と述べられています。 ある法則から個別の問題を解く演繹法と、経験した事実の中から一般的な法則を見つける帰納法は本来、双方を常に循環させることが必要です。本書ではしかし、「日本軍は事実から法則を析出するという本来の意味での帰納法も持たなかった」としています。そして日本軍の戦略策定について、「多分に情緒や空気が支配する傾向」があり、「科学的思考が、組織の思考のクセとして共有されるまでには至っていなかった」と指摘します。 日本軍の「状況ごとにときには場当たり的に対応し、それらの結果を積み上げていく思考方法」について、この本では「客観的事実の尊重とその行為の結果のフィードバックと一般化が頻繁に行われるかぎりにおいて、とりわけ不確実な状況下において、きわめて有効なはずであった」としています。これはまさに今でいう仮説検証サイクルを表しています。 しかし、戦時中実際に起きていたのは「対人関係、人的ネットワーク関係に対する配慮が優先し、失敗の経験から積極的に学び取ろうとする姿勢の欠如」でした。「本人も反省している。これ以上傷に塩を塗ることはない」といった“空気”が場を支配していたのです。この根底には、失敗を失敗と認めない文化があると考えられます。 対する米国は、真珠湾攻撃からの学びとして大艦巨砲主義からすばやく脱却。技術革新を基盤として航空機を兵の主力とする転換を行っています。 さて、今日の日本企業の状況はどうでしょうか。今でも日本の組織では失敗を許さない空気が支配しており、リスクを避ける姿勢がまん延しています。 障害が起きた際の模範的な対応を考えれば分かりますが、本来は失敗した個人を責めるのではなく、組織として失敗に至ったプロセスを客観的に検証し、二度と起こさないために改善を図ることが次の学びとなります。また、いくつもの小さな失敗から学ぶことが重要です。しかし実際には失敗を認めないがゆえに、その積み重ねによる大きな失敗でことが発覚することがよくあります。 今日の事業における仮説検証は戦時下と異なり、基本的には命を賭ける必要はありません。しかし、それでも失敗を許さない、失敗を失敗と認めない傾向がいまだに残っているのです。事業での失敗は学びの機会とすべきですが、今の日本の企業文化では、その機会が十分に活用されていないと感じられます。) ▽物資の重要性は認識されたが 人材確保の考えがまだ甘い日本(ほかにも『失敗の本質』には、組織論からは少し外れますが注目すべきポイントがいくつかあるので紹介しましょう。 1つは「補給」について。書籍では日本軍の敗戦の一因が補給不足だと指摘しています。特にガダルカナル戦やインパール作戦ではそれが顕著でした。短期決戦ですぐに陣地を取り返し、敵から食料や物資を奪うことができるという楽観的な予想のみを前提に計画を進めたのです。 『失敗の本質』の中では、日本軍にはコンティンジェンシープラン(想定外の事態が起きたときに実施する施策)が欠如していたと何度も指摘されています。また作戦が失敗したときに、補給路の確保を重視する認識にも欠けていました。一方、米国は補給路の重要性を理解していたため、長く伸びた日本軍の太平洋上の補給路をいかに断つか、戦略的に動いています。 現代の日本では、企業活動における物資補給の重要性は認識されています。特に製造業におけるサプライチェーンの確保は、総じてうまくいっていると言えるでしょう。ただし人的リソースの確保についてはまだ弱い部分もあり、物流の2024年問題をはじめ、解決すべき課題が山積しています。 これまでは人を増やさずに、現場の練度向上、改善努力で賄ってきた企業も多いと思いますが、それだけに頼ることは危険です。太平洋戦争においても、練度の高い人材の喪失と補給不足が敗戦の一因となっています。旧日本軍の状況は、現代における人材管理の課題と類似したところがあるのではないでしょうか』、「日本の組織文化では合理的な意思決定よりも、多分に情緒や空気を重んじる傾向がある」という点です。それは現代の日本企業の中にも根強く残っているように思います・・・太平洋戦争においても、練度の高い人材の喪失と補給不足が敗戦の一因となっています。旧日本軍の状況は、現代における人材管理の課題と類似したところがあるのではないでしょうか」、なるほど。
・『戦時中からハード偏重でソフトが弱かった日本  『失敗の本質』を読んでいて、私が驚いたことがあります。1984年に出版され、戦時中の組織論を取り上げたこの本には、「ソフトウェア」というキーワードが登場するのです。日本軍の技術体系ではハードウェアに対してソフトウェアの開発が弱体であったとの指摘がそれで、ここでいうソフトウェアとはレーダーや通信などの情報システムを指します。) 日本軍は情報を取得し、分析し、適切に活用する能力において劣っていたということですが、現代の日本においてもハードウェア偏重主義の姿勢は変わっていないという感想を持ちました。 『失敗の本質』における私の最後の注目ポイントは、ものづくりにおける標準化についてです。本書には標準化と大量生産の重要性が挙げられています。米軍は最初から物量戦を見越して、次々と戦艦や飛行機を作るための資源確保・投入を繰り返していました。そのため「いかに標準品を大量に作るか」という、その後の製造業につながる発想をこのときに導入しています。 現代の日本の製造業には大量生産の能力はありますが、カスタムメード的なアプローチは残っています。ヨーロッパのコンポーネント化された部品を組み合わせるやり方ではなく、すり合わせで統合する手法もよく取られます。 IT業界に目を向けても、標準品を大量に普及させているのはマイクロソフトやアップルのような企業です。日本はこの分野でも、まだ戦時中の失敗の本質からしっかりと学びきれていないのかもしれません』、「日本軍は情報を取得し、分析し、適切に活用する能力において劣っていたということですが、現代の日本においてもハードウェア偏重主義の姿勢は変わっていないという感想を持ちました・・・IT業界に目を向けても、標準品を大量に普及させているのはマイクロソフトやアップルのような企業です。日本はこの分野でも、まだ戦時中の失敗の本質からしっかりと学びきれていないのかもしれません」、なるほど。
・『「負けに不思議の負けなし」 失敗からの学びを生かす  『失敗の本質』著者の1人の野中氏は、後に新聞に著したコラムでも「失敗を題材にし、そこから学ぶべき」と述べています。 私の好きな言葉に、故・野村克也監督が江戸時代の剣術書から引用した「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という名言があります。うまくいったケースより、失敗からの方が学べることは多いのです。社外には出せなくても、企業・組織の中では失敗をきちんと共有できるようにすべきだと考えます。 今の言葉なら「アンチパターン」とでも言い換えられるでしょうか。「こうすると失敗する」というパターンには、いくつかの法則があるのです。そうした法則をしっかりと共有し、そこからの学びを生かして同じ失敗を繰り返さないよう努めなければなりません。 (クライス&カンパニー顧問/Tably代表 及川卓也、構成/ムコハタワカコ)』、「野村克也監督が江戸時代の剣術書から引用した「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という名言があります。うまくいったケースより、失敗からの方が学べることは多いのです」、確かに上手い「名言」だ。

次に、8月15日付け東洋経済オンラインが掲載した東京大学名誉教授の井堀 利宏氏による「「勝算の低い戦争」に日本が突き進んだ背景事情 行動経済学で紐解く、日本軍部の心理」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/802902
・『「軍部の台頭」「日中戦争の泥沼化」「資源確保のため」など……かつて日本がアメリカに戦争を仕掛けた原因はさまざまな学問で研究対象になり、現在では多くの事実が明らかにされています。 なぜ勝算が低い戦争に日本の軍部は突き進んだのでしょうか。経済学的にその理由を紐解くときに見えてくるのは、意外にも人間の心理面でした。 ※本記事は、書籍『超速・経済学の授業』から一部抜粋・大幅加筆したものです』、興味深そうだ。
・『なぜ勝算の低い戦争に突入したのか  1941年12月、日本はアメリカに攻撃を仕掛けました。いわゆる真珠湾攻撃です。その結果、1945年の終戦まで国内外で多くの犠牲者を生みました。 「両者の国力の差は歴然だったのに、なぜ日本は勝算の低い戦争に突入したのか」。多くの人がこのように疑問に感じたことがあるはずです。現在では経済学などを中心に、その理由は次の2つの理論で説明できると言われています。 日本が戦争を仕掛けたことを説明する理論 ・パワーシフト理論 ・プロスペクト理論 ひとつはパワーシフト理論という考え方です。パワーシフト理論とは、国際政治学の理論のひとつで、国と国の力関係が急激に変化したり、不安定になったりした場合、戦争に発展しやすいという考え方です。 特に衰退する国の場合、国力の低下を不安に感じて、敵対国に早めに戦争を仕掛けるインセンティブが働くとされています。 1941年12月、日本が真珠湾攻撃で第2次世界大戦に参戦した頃のアメリカと日本を比較すると、アメリカは世界恐慌で受けた不況から脱出して景気が回復していました。 一方の日本は次の理由から経済力が弱まることが見込まれていました。 まず、エネルギー資源の問題です。当時、日本はアメリカから石油を輸入していましたが、アメリカは日本への石油の供給を停止することを決定していました。石油輸入の7割をアメリカに頼っていたので、供給が止まってしまうと日本の備蓄量で賄ったとしても、2~3年で底をつくことが見込まれていました。 次に戦力面です。ヨーロッパで第2次世界大戦が始まった1939年の頃、太平洋地域での日米の戦艦や空母による軍事力の差はそれほどありませんでした。なぜなら、アメリカは、その軍事力を欧州の戦争に振り向けていたからです。ところが、アメリカは大国の経済力で、太平洋地域の軍事力を増強しつつありました。 そのため、数年後には太平洋地域での軍事力の面でも、不利な状況に追い込まれることが濃厚となっていたのです。実際、零式艦上戦闘機(零戦)は約1万機が生産されたものの、 アメリカは戦争中に約30万機の航空機を生産しました。こうした状況を踏まえて、日本はアメリカとの差が拡大する前に戦争を仕掛けるのが得策と考えました。 国力が低下することがわかっているなら、いまのうちに戦争を仕掛けたほうが有利だからです。まさしく、パワーシフト理論が働いたのです』、「日本はアメリカとの差が拡大する前に戦争を仕掛けるのが得策と考えました・・・まさしく、パワーシフト理論が働いたのです」、なるほど。
・『プロスペクト理論はリスクを評価する  勝算の低い戦争に突入したことを説明するもうひとつの理論は、2002年にノーベル経済学賞を受賞した、ダニエル・カーネマン氏とエイモス・トベルスキー氏によって発表されたプロスペクト理論です。 (画像:『超速・経済学の授業』より) 行動経済学に基づくプロスペクト理論では、損失を受ける場合にはリスク愛好的(追求的)な行動をとる傾向があることがわかっています。さらに私たちには高い確率ほど低く評価し、低い確率ほど高く評価するという心理傾向があるとも想定されています。) わかりやすい例が宝くじです。宝くじでは1億円が当たる確率はとても低いのに、「もしかしたら当たるかもしれない」といった非合理的で歪んだ判断をすることがありますよね。多くの人は日々の生活のなかでも「確率を正しく認識できず」に行動を取っているのです。 当時の状況で考えてみましょう。まず、実際、当時の軍部が有力な経済学者に日本の国力でアメリカに勝てるのかどうか、シミュレーションを実施させたところ、多くの経済学者の答えは「ノー」でした』、「プロスペクト理論では、損失を受ける場合にはリスク愛好的(追求的)な行動をとる傾向があることがわかっています・・・私たちには高い確率ほど低く評価し、低い確率ほど高く評価するという心理傾向があるとも想定されています」、なるほど。
・『日本にあった2つの選択肢  日本の国力とアメリカの国力の差から開戦しても勝算が低いことは軍部もわかっていたのです。そのうえで、日本には2つの選択肢がありました。 日本の2つの選択肢 ① アメリカに戦争を仕掛けない ② アメリカに戦争を仕掛ける ①はアメリカの資金凍結・石油禁輸措置などの経済制裁によって日本の国力は弱ってきており、このままでは2~3年後にはアメリカにひれ伏すことになる。それでも戦争を避けることで破滅的な損失を防げるので、これをやむを得ないと考える。 ②は高い確率で決定的な敗北を喫するが、極めて少ない確率で日本に勝算がある。すなわち、日本が東南アジアを占領すると、イギリスに対して優位に立てる。これには欧州戦線で同盟国のドイツが欧州で勝利する可能性があることを想定していました。) もしそうなればアメリカは、日本と戦うメリットが少なくなるため、戦争をやめて日本に有利な形で和解の道を選択することも考えられたわけです。 ①では確実に損失が発生します。 ②では極めて少ない確率ですが、開戦したほうがよい結果が得られるかもしれません。 プロスペクト理論では、開戦する場合の(高い確率での)損失よりも(極めて低い確率での)利得のほうをより大きく評価します。 かなりリスキーな選択ですが、そのリスクある選択が冒険的な気分へと昇華していき、日本は開戦へと突き進んでいったということが説明できるのです。 冷静な確率論で考えるのではなく、勝つ可能性を過大評価する心理的な圧力が働いたと考えれば、日本の参戦理由を理解しやすいかもしれません。 世界各地では現在も戦争や紛争が発生していますが、戦争と経済がどれほど深い関係にあることか、さらに我々がいかに不確実な考えに基づいた行動をするのか理解できたのではないでしょうか。 イデオロギーや感情論ではなく、経済との関係から戦争を見つめ直す。そうすることで、私たちは世の中の空気に流されない冷静な見方ができるはずです』、「プロスペクト理論では、開戦する場合の(高い確率での)損失よりも(極めて低い確率での)利得のほうをより大きく評価します。 かなりリスキーな選択ですが、そのリスクある選択が冒険的な気分へと昇華していき、日本は開戦へと突き進んでいったということが説明できるのです。 冷静な確率論で考えるのではなく、勝つ可能性を過大評価する心理的な圧力が働いたと考えれば、日本の参戦理由を理解しやすいかもしれません」、なるほど。

第三に、8月15日付け文春オンラインが掲載した石動 竜仁氏による「《インパール作戦の裏側で》牟田口廉也中将の第15軍がビルマに建てた「清明荘」の正体とは「将校専用の慰安所であり、下士官の慰安所も昼間から…」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/72844
・『権力が集中するところに腐敗もまた集中するのはいつの時代も変わらないことだが、それが中央政府から遠く離れた場所で、大きな権力を持つ組織ならばなおさらのことだ。 第二次世界大戦において日本軍が占領した地域の中で最も西に位置するビルマ(現・ミャンマー)での醜聞はまさにそうだったかもしれない。「史上最悪の作戦」と呼ばれることの多いインパール作戦の悲惨な結果と相まって、ビルマにおける日本軍上層部の醜聞は今も数多く伝えられている。 日本人に広く知られたインパール作戦のイメージは、ノンフィクション作家の高木俊朗によるところが大きいだろう。『インパール』、『抗命』、『全滅』、『憤死』、『戦死』(いずれも文春文庫)の「インパール5部作」は高木の代表作として知られている』、興味深そうだ。
・『前線の将兵の死闘の裏で、司令部は何をしていたのか  このインパール5部作の中で批判的に言及されているのが牟田口廉也中将だ。第15軍司令官としてインパール作戦を主導したが、インパール作戦への否定的評価に加え、司令部のお膝元に料亭を建てて芸者を集めて遊興に浸った等、「愚将」との表現も残る彼のイメージは、高木の著作によるところも大きいとする意見もある。 こうした高木の著作における牟田口中将の特異なエピソードや個性について、後年になって高木による創作か誇張ではないかという意見も出ていた。高木の記述には出典が明示されていないことも多いためだ。しかし、高木の著作における牟田口中将や彼が率いた第15軍の醜聞は出典を確認できるものも多い。 また、牟田口中将の連隊長時代に副官を務めた河野又四郎が、戦後に高木の著作を読んで手紙(立命館大学国際平和ミュージアム所蔵)を書いている。 筆者がその手紙を確認したところ「牟田口将軍の性格については貴書に散見する各種の場面に於ける言動が盧溝橋事件のときと符節を合す如く感ぜられます」と、高木の著作における牟田口中将の性格は自分の知るものと同じだった事を記していた。よく知る人物からも、高木の著作に牟田口中将像に不自然なところはないという評価だった。 これを踏まえた上で、高木による牟田口中将や第15軍にまつわる著名な醜聞のうち、出典の確認が取れたものや、補完する情報が存在するもの。つまり、確度が高いものを本稿では紹介したい。前線の将兵の死闘の裏で、司令部は何をしていたのか。 牟田口中将と第15軍の話に欠かせないのが、第15軍司令部の置かれたメイミョウ(現・ピン・ウー・ルウィン)にあった料亭「清明荘」だ。高木の著作には清明荘で遊興に明け暮れる第十五軍首脳たちが描かれている。おそらく、戦時中に外地にあったもっとも知られている料亭だろう』、悲惨なインパール作戦を立案した「牟田口中将」が、「第15軍司令部の置かれたメイミョウ(現・ピン・ウー・ルウィン)にあった料亭「清明荘」だ。高木の著作には清明荘で遊興に明け暮れ」ていたとは、フザケタ話だ。
・『「メイミョウの清明荘ではパーマの女たちが美しく化粧し…」  現在、料亭は遊興飲食を行う料理店というのが一般的だが、風俗営業法が存在しなかった戦前・戦中は性的なサービスもしばしば伴い、それは清明荘も同じだった。 ある元軍医は清明荘をこのように紹介している。 高級将校のためには軍司令部お抱えの料亭清明荘があり、内地から芸者が沢山きていた。もちろん我々見習士官などのゆける所でなく、各隊の隊長クラスがかち合わないようにスケジュールを決めて遊びにいっていた。うちの病院でも上級者数名が馴染みをつくっていた。曜日が変れば他隊の何某の女になるわけで、これを称して○○兄弟という。 では、清明荘はどのような料亭だったのだろうか。高木も引用している第15軍の報道班員だった朝日新聞の成田利一記者は、次のように記述している。 内地では婦人達がモンペに火叩き装束で女らしい生活をかなぐり捨てている時に、メイミョウの清明荘ではパーマの女たちが美しく化粧し、絹物の派手な着物に白足袋姿で「お一つどうぞ」と酌に出て来る。鳥肉や乙な吸物、口取り、酒は現地製だが日本酒、ウィスキー、ブランデー、板前の腕は大したこともないが、盛りつけの器類は皆内地から運んだ立派な皿小鉢だ。) 清明荘は内地以上の贅沢な空間であったようだ。しかし、内地ですら窮乏生活をしている中、なぜビルマの山の中でこれほど豪勢な料亭が営業できたのだろうか。当の第15軍司令部で勤務していた下級将校の中井悟四郎は次のように書いている。 高級将校の此等遊興費は、機密費なる魔物で支弁されて居たようである。 機密費の問題は近年もたびたび政治問題化しているが、戦時中もさして変わらなかったようだ。 「若い男の群に若い女が必要なことは肯けない訳ではないが…」 戦時中、日本軍が進出した地域に料亭があったところは珍しくない。しかし、料亭にまつわる醜聞は第15軍をはじめとするビルマ方面軍の管轄のものが多く残っている。それだけ高木の著作の影響が大きかったこともあるのかもしれない。しかし、多くの戦地を見てきた軍人が、メイミョウの空気の異様さを指摘している。 戦時中から「作戦の神様」と称えられる一方で、虐殺への関与や自決強要など、毀誉褒貶の激しさでは帝国軍人の中でもトップクラスといえる辻政信大佐だが、インパール作戦中止から1週間後の1944年7月10日、メイミョウに第33軍参謀として着任する。この時、メイミョウから第15軍司令部は前進しており、そこに第33軍が来た形だ。メイミョウ周辺地形の確認に出た辻は、その光景に違和感を覚える。 仕事始めに早速その日、メイミョウ周辺の地形を一巡すると、緑滴る林間に色とりどりの和服姿でシャナリシャナリと逍遥する乙女の群が目についた。 中国でも滅多に見られない風景だ。森の中に一際目立つ建物には翠明荘(引用者注:清明荘の誤認か)と書いた看板がかけられてある。将校専用の慰安所であり、その界隈の下士官の慰安所も昼間から大入満員の盛況を呈している。 陽が陰を呼ぶのは宇宙の真理である。若い男の群に若い女が必要なことは肯けない訳ではないが、インパールで数万の将兵が餓死しているとき、同じビルマのしかも隣接軍でこのような行状が許されるものであろうか。 上記の初出は1950年の酣灯社版だが、旧字が多用されているので原書房版を引用した。記述自体は変わらない。) 辻は他地域と違うメイミョウの空気を目の当たりにし、空気の一新を決意したという。辻の記述は引用に注意が必要だが、この記述の初出は1950年でメイミョウの異様さを指摘するものとしては最古に属する。辻以外にもメイミョウの浮ついた空気を指摘する記述は多く、またそれに辻が不満を公言していたのも、同時期の軍人の記述で確認できる』、「辻以外にもメイミョウの浮ついた空気を指摘する記述は多く、またそれに辻が不満を公言していたのも、同時期の軍人の記述で確認できる」、当然だろう。
・『慰安婦調達の作戦は電光石火だった  こうしたメイミョウの空気を醸成した第15軍について、辻は「敵の反抗もないままに各兵団とも居住、慰安の設備に貴重な二年を空費したらしい」と手厳しい。実際、ビルマを制圧してからインパール作戦までの2年間で、牟田口中将が慰安施設の整備に他の司令官より注力していたことを窺わせる証言があった。 民間の慰安所経営者が慰安婦を連れてラングーン港に着くと、菊兵団(第18師団の通称。第15軍司令になる前の牟田口中将が師団長を務めていた)の橋本参謀が待ち構えており、「師団司令部に連れていく」と有無を言わせず日本人慰安婦を連れ去っていった証言が残っている(西野瑠美子『従軍慰安婦と十五年戦争』明石書店)。 当時、慰安婦について不文律のランク付けがあり、一番が日本人、次に朝鮮人、中国人ときて、最後に現地人がくるというものがあった。つまり、はるばるラングーンまでやってきた橋本参謀が、一番価値が高い慰安婦を連れ去ったのだ。橋本参謀は牟田口中将のお気に入りとして知られており、牟田口中将の意志を受けて慰安婦調達にラングーンまでやってきたと見るべきだろう。他の部隊に先んじた電光石火の作戦である。 ここまで示したように、牟田口中将の醜聞に関しては、複数の証言から裏付けられるものも多い。しかし、彼だけに、そして彼が指揮した第15軍だけに問題があったのだろうか。後編では、第15軍の上位部隊であるビルマ方面軍全体に視野を広げてみよう』、「内地では婦人達がモンペに火叩き装束で女らしい生活をかなぐり捨てている時に、メイミョウの清明荘ではパーマの女たちが美しく化粧し、絹物の派手な着物に白足袋姿で「お一つどうぞ」と酌に出て来る。鳥肉や乙な吸物、口取り、酒は現地製だが日本酒、ウィスキー、ブランデー、板前の腕は大したこともないが、盛りつけの器類は皆内地から運んだ立派な皿小鉢だ。 清明荘は内地以上の贅沢な空間であったようだ・・・はるばるラングーンまでやってきた橋本参謀が、一番価値が高い慰安婦を連れ去ったのだ。橋本参謀は牟田口中将のお気に入りとして知られており、牟田口中将の意志を受けて慰安婦調達にラングーンまでやってきたと見るべきだろう。他の部隊に先んじた電光石火の作戦である」、こんな贅沢三昧を現地の高級将校が送っていたとは、内地との余りのギャップに驚かされると同時に、特権を振りかざしていた高級将校らに対し怒りを覚えた。 
タグ:歴史問題 「組織としての日本軍の失敗を、現代組織の反面教師として活用することを目的に書かれた本書は、大東亜戦争(本書では戦場が太平洋地域に限定されていなかったという意味で、あえてこの呼び方が使われています)を通じて明らかになった非合理的かつ非効率な行動の背景に組織的な欠陥があり、これが日本の敗戦を招いたと論じます」、なるほど。 「野村克也監督が江戸時代の剣術書から引用した「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という名言があります。うまくいったケースより、失敗からの方が学べることは多いのです」、確かに上手い「名言」だ。 「日本軍は情報を取得し、分析し、適切に活用する能力において劣っていたということですが、現代の日本においてもハードウェア偏重主義の姿勢は変わっていないという感想を持ちました・・・IT業界に目を向けても、標準品を大量に普及させているのはマイクロソフトやアップルのような企業です。日本はこの分野でも、まだ戦時中の失敗の本質からしっかりと学びきれていないのかもしれません」、なるほど。 「日本の組織文化では合理的な意思決定よりも、多分に情緒や空気を重んじる傾向がある」という点です。それは現代の日本企業の中にも根強く残っているように思います・・・太平洋戦争においても、練度の高い人材の喪失と補給不足が敗戦の一因となっています。旧日本軍の状況は、現代における人材管理の課題と類似したところがあるのではないでしょうか」、なるほど。 しかし米国の場合は株主責任がより強く働き、CEOが更迭されることも頻繁で、常に正しいことを遂行する能力と結果責任が求められます。業績が悪化した際にはトップの責任問題として扱われ、組織の運営にメリハリがある点は日本の多くの企業と異なります・・・日本の組織文化では合理的な意思決定よりも、多分に情緒や空気を重んじる傾向がある」という点です。それは現代の日本企業の中にも根強く残っているように思います」、なるほど。 「旧日本軍において敵とは本来、海軍から見た陸軍、陸軍から見た海軍ではなく、共通であるはずです。ところが陸軍はアジアを、海軍は太平洋を主戦場と見ていたため、統一された敵と目的を持てず、互いの戦略を良しとしないところがありました・・・米国企業でも組織内の対立はあります。 そして作戦計画についての検討を進めると同時に、価値観の統一を図ったといいます」、米国の方が努力したようだ。 「インパール作戦でも、現地のインド進攻を目的とする部隊と、ビルマ防衛を主目的とする上級司令部との間で理解の不一致があったにも関わらず、その不同意が上層部から明確に伝えられずに作戦が失敗・・・ニミッツ長官と部下の現場指揮官・スプルーアンス少将が、ハワイで住居をともにして価値や情報、作戦構想の共有に努めていたといいます。スプルーアンス少将も参謀と、空母「エンタープライズ」の甲板上で散歩をしながら長時間にわたって議論を重ね、相互の信頼関係を高めていました。 また、「新規事業が既存事業に悪影響を与えないようにする」ような姿勢を取ってしまうのも、目的が二重になってしまっている例です。既存事業への依存から新しい取り組みが後回しになれば、結果として新興企業に市場を奪われるリスクがあります。それが分かっているのに、“虫のいい目標”を採用してしまっているのです」、なるほど。 「新規事業自体の成功を期待しているはずのマネジメント層が、うまくいかなかったときのことを恐れて「新規事業開発を通じて人材を育成する」といった別のメッセージを発してしまうケースです。これでは現場は困難な新規事業の成功を目指さず、人材育成に寄った施策を展開して、「オープンイノベーションを通じた学び」などが成果とされてしまいます。 、それがその後も続いたのです・・・米国には、日本本土の直撃、直接上陸作戦による戦争終結という共通した明確な目的がありました。米国の対日戦略の基本を定めた「オレンジ計画改訂案」は、長期戦と大きな犠牲を予測。西大西洋のマーシャルおよびカロリン諸島を起点に日本の委任統治領を逐次攻略し、補給線を確保しながら徐々に進攻することを想定していました。歴史を後から振り返ると、実際この通りのプロセスを経ています』、なるほど。 「山本五十六連合艦隊司令長官は、積極的な作戦思想を持っていました。山本長官は、攻撃の時期や場所を決めて来攻できる優勢な敵に対し、劣勢な立場での防御戦では勝利が望めないと考え、敵に対して自主的かつ積極的な作戦を展開することを主張。その最たる例が、1941年の真珠湾奇襲攻撃です。山本長官の目的は、敵の不意をついて初動で圧倒し、続く攻勢で米国の士気を喪失させ、結果として優位な講和条件を引き出すことにありました。 いずれも「有利な講和に持ち込む」という目的は共通していましたが、この2つには根本的な思想のブレがあり (その20)(旧日本軍の失敗から今こそ学ぶべき 現代日本企業の「失敗の本質」とは、「勝算の低い戦争」に日本が突き進んだ背景事情 行動経済学で紐解く 日本軍部の心理、《インパール作戦の裏側で》牟田口廉也中将の第15軍がビルマに建てた「清明荘」の正体とは「将校専用の慰安所であり 下士官の慰安所も昼間から…」) 東洋経済オンライン 井堀 利宏氏による「「勝算の低い戦争」に日本が突き進んだ背景事情 行動経済学で紐解く、日本軍部の心理」 『超速・経済学の授業』 「日本はアメリカとの差が拡大する前に戦争を仕掛けるのが得策と考えました・・・まさしく、パワーシフト理論が働いたのです」、なるほど。 「プロスペクト理論では、損失を受ける場合にはリスク愛好的(追求的)な行動をとる傾向があることがわかっています・・・私たちには高い確率ほど低く評価し、低い確率ほど高く評価するという心理傾向があるとも想定されています」、なるほど。 「プロスペクト理論では、開戦する場合の(高い確率での)損失よりも(極めて低い確率での)利得のほうをより大きく評価します。 かなりリスキーな選択ですが、そのリスクある選択が冒険的な気分へと昇華していき、日本は開戦へと突き進んでいったということが説明できるのです。 冷静な確率論で考えるのではなく、勝つ可能性を過大評価する心理的な圧力が働いたと考えれば、日本の参戦理由を理解しやすいかもしれません」、なるほど。 文春オンライン 石動 竜仁氏による「《インパール作戦の裏側で》牟田口廉也中将の第15軍がビルマに建てた「清明荘」の正体とは「将校専用の慰安所であり、下士官の慰安所も昼間から…」 悲惨なインパール作戦を立案した「牟田口中将」が、「第15軍司令部の置かれたメイミョウ(現・ピン・ウー・ルウィン)にあった料亭「清明荘」だ。高木の著作には清明荘で遊興に明け暮れ」ていたとは、フザケタ話だ。 「辻以外にもメイミョウの浮ついた空気を指摘する記述は多く、またそれに辻が不満を公言していたのも、同時期の軍人の記述で確認できる」、当然だろう。 「内地では婦人達がモンペに火叩き装束で女らしい生活をかなぐり捨てている時に、メイミョウの清明荘ではパーマの女たちが美しく化粧し、絹物の派手な着物に白足袋姿で「お一つどうぞ」と酌に出て来る。鳥肉や乙な吸物、口取り、酒は現地製だが日本酒、ウィスキー、ブランデー、板前の腕は大したこともないが、盛りつけの器類は皆内地から運んだ立派な皿小鉢だ。 清明荘は内地以上の贅沢な空間であったようだ・・・はるばるラングーンまでやってきた橋本参謀が、一番価値が高い慰安婦を連れ去ったのだ。橋本参謀は牟田口中将のお気に入りとして知られており、牟田口中将の意志を受けて慰安婦調達にラングーンまでやってきたと見るべきだろう。他の部隊に先んじた電光石火の作戦である」、こんな贅沢三昧を現地の高級将校が送っていたとは、内地との余りのギャップに驚かされると同時に、特権を振りかざしていた高級将校らに対し怒りを覚えた。
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積水ハウス事件(その5)(あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 衝撃の「地面師詐欺」の語られなかった真相 短期集中連載・第1回、仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回、社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回) [社会]

積水ハウス事件については、2020年5月12日に取上げた。今日は、(その5)(あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 衝撃の「地面師詐欺」の語られなかった真相 短期集中連載・第1回、仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回、社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回)である。

先ずは、本年8月10日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 衝撃の「地面師詐欺」の語られなかった真相 短期集中連載・第1回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/images/134772?skin=images&imp=0
・『ハウスメーカー、デベロッパーとして国内最大手の積水ハウスが、50億円以上ものカネを騙し取られた2018年の「地面師詐欺」事件は、いまも多くの謎に包まれている。15人以上の逮捕者を出す大捕物になったものの、不起訴になった容疑者も多数いて、公判でもすべてが明らかになったとは言い難い。 このたび、事件をモデルにしたドラマ「地面師たち」(原作・新庄耕)の配信がNetflixでスタートし、大反響を呼んでいる。ノンフィクション作家・森功氏の文庫『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』には、ドラマでは描かれなかった数々の知られざる事実が記されており、その内容を7回連続で公開する』、興味深そうだ。
・『ストップされた工事  通報を受けた警視庁大崎警察署の捜査員が現場に駆け付けたのは、2017年6月1日の昼過ぎのことだった。 「あなたたちは、どちらの方ですか」 積水ハウス工務部の担当者たちは、パトカーから降りてきた警察官にいきなりそう誰何(すいか)された。工務部とは文字どおり、デベロッパーが建設工事にとりかかる前に現場の調査をし、資材を調達する先発隊だ。積水ハウスの工務部の社員も、そのために現場で作業をしようとしていたのだが、そこへ警察官が現れること自体、まったく事情が呑み込めない。まさに面食らった。 現場はJR山手線の五反田駅から徒歩3分、目黒川を渡ったところにある旅館「海喜館(うみきかん)」の玄関先だ。不動産代金を払い込んで売買契約が成立したはずの積水ハウスの社員が、古くなった建物の取り壊し準備を始めた。旅館の周辺に赤いカラーコーンを配置し、測量を始めようとした。その矢先の出来事だ。とつぜんパトカーがサイレンを鳴らして駆け付け、周囲が大騒ぎになったのである。 通報したのは旅館の持ち主、海老澤佐妃子(えびさわ・さきこ)の異母弟から頼まれた弁護士だった。警察官がやって来るのとほぼ同時に、その弁護士も旅館の玄関先に現れた。驚いたのは積水ハウスのほうだ。 「ここは持ち主からうちが買いとったんです。それで、測量を始めたところですが……」 二人の工務部員のうちの一人が、警察官にそう説明した。そこへ通報した弁護士が割って入った。 「あんた方、何を言っているんですか。私こそ持ち主の依頼でここへ来ています」 すでに旅館の土地建物の売買契約を済ませていたはずの積水側にとっては、まさに寝耳に水だ。 「あなたこそ何を言っているんだ。こっちは支払いも済ませているんだよ。なのに、何の権利があって邪魔するんだ」 だが、弁護士も負けていない。 「私の依頼人は海老澤さんから相続する人なんだ。ここは売ってないんだから、測量なんか絶対にさせないよ」) 史上空前「55億円」の被害 近所の商店主が、たまたまその騒ぎを見ていた。当日の出来事をこう振り返った。 「しばらく揉めていたのですが、泡を喰った積水ハウスの人が、うちの店に駆けこんできたんです。そうして『これは、海老澤佐妃子さんじゃないんですか?』とパスポートの写真を見せながら、僕に確認するのです。その写真は海老澤さんとは似ても似つかない別人でした。それで、僕が『まったく似てないので、違う人だと思うよ』と教えてあげると、彼らは青ざめてね。一人は急いで走り去っちゃった。二人のうち残った若い方の人に『オタクたち、おそらく騙されてるよ』って言ってやったんです」 残された積水ハウスの担当者は、商店主のその言葉に呆然として立ちすくんだ。「営業部が本人を確認したし、旅館の内覧もおこなったはずなのに……」工務部の若い担当者は、消え入るような声でそうつぶやいた。かたわらの商店主に説明するというより、ひとりごちるように、こう言葉を続けた。  
「そういえば、俺たちが『旅館で本契約を取り交わしたい』と先方に申し出たとき、向こうは変だった。『あまり佐妃子さんの容態がよくないから、旅館じゃなくホテルでやりたい』と断られたもんな。あっ、そのホテルに来た女がこの写真の……ああ、どうしよう」 もはや積水ハウスが前代未聞の不動産詐欺に遭ったのは、明らかだ。それでもあきらめきれない積水ハウス側では、事件が判明した6月1日から10日まで、旅館「海喜館」の周囲を封鎖した。その日の夜から、建物に誰も寄り付かないよう、制服のガードマンたちが24時間、この古ぼけた旅館を見張るようになる。 地主になりすまして不動産を騙し取る地面師詐欺は、昨今のマンションブームに加え、東京五輪を控えて地価が高騰してきた都内の優良物件が狙われる傾向が強い。五反田駅の至近に建つ旅館「海喜館」は、老朽化して長らく営業もしていない。近所でも地主の海老澤佐妃子を見かけなくなっていたという。まさに地面師にとって狙い目だった。 50件とも100件とも言われる警視庁管内の地面師詐欺のなかでも、積水ハウスのケースは飛び抜けてスケールが大きい。事件が発覚したあとの8月2日付の積水ハウスの発表によれば、2000平米(およそ600坪)の土地をはじめとした一連の不動産取引総額は70億円にのぼる。うち積水ハウスは63億円をニセ地主に支払い、最終的に55億5000万円もの大金をまんまと騙し取られたのである。紛れもなく、これまで類を見ない史上最大の地面師詐欺である』、「2000平米(およそ600坪)の土地をはじめとした一連の不動産取引総額は70億円にのぼる。うち積水ハウスは63億円をニセ地主に支払い、最終的に55億5000万円もの大金をまんまと騙し取られたのである。紛れもなく、これまで類を見ない史上最大の地面師詐欺である」、なるほど。
・『老舗旅館・海喜館の成り立ち  地面師事件には、それぞれに特徴がある。不動産のプロが騙されるケースはさほど珍しくないが、なかでも積水ハウスの件は、騙された会社の規模が群を抜いている。 大和ハウス、住友林業とともに、日本のハウスメーカー御三家の一角を占め、2018年1月の決算では大和ハウスに次ぐ2兆1593億円を売り上げた業界のリーディングカンパニーだ。マンション開発も手掛ける日本屈指のデベロッパーでもある。取引における経験や知識も豊富だ。そんな業界のガリバー企業が、なぜこうも簡単に巨額の不動産代金を騙し取られたのか。 積水ハウス事件の複雑怪奇なカラクリを追う。 事件に巻き込まれた地主の海老澤佐妃子は1944年、五反田のこの地で生まれた。生まれた頃、すでに両親が海喜館を経営しており、彼女は旅館で育った。 「もともと海喜館は佐妃子さんのお父さんが始めた旅館でした。なにしろ場所がいいので人気があり、ずいぶん繁盛していました」 旅館の周囲を歩くと、古くから住んでいる町内会の役員に出会うことができた。 「お父さんはとても羽振りがよく、やがて奥さん以外にも愛人をつくってしまいました。それで夫婦が揉めたんです。あげくお父さんが家を出て行き、外腹(ほかばら)の男の子までつくってしまった。以来、母娘の二人暮らしになり、旅館は佐妃子さんのお母さんが切り盛りするようになりました。お母さんの時代、旅館はずっと賑わっていましたよ」 そう説明してくれた。戦前から花街として栄えてきた五反田では、いまもその名残がある。夜になると、ピンクサロンや個室マッサージなど、風俗店のネオンサインに若いサラリーマンの酔客が吸い寄せられる。事件の舞台となった海喜館は、そんな花街から少し隔てた目黒川沿いの老舗旅館として栄えてきた。 1975年12月23日、夫に代わり旅館を経営してきた佐妃子の実母きよが他界し、佐妃子がこの不動産を相続した。町内会の役員は、その頃のこともよく覚えていた。 「佐妃子さんは、相続後もしばらく板前さんや仲居さんを使って海喜館を経営していました。このあたりは商店が多くてね、町内会の行事にも積極的に参加してくれました」』、「地主の海老澤佐妃子は1944年、五反田のこの地で生まれた。生まれた頃、すでに両親が海喜館を経営しており、彼女は旅館で育った。 「もともと海喜館は佐妃子さんのお父さんが始めた旅館でした。なにしろ場所がいいので人気があり、ずいぶん繁盛していました」・・・事件の舞台となった海喜館は、そんな花街から少し隔てた目黒川沿いの老舗旅館として栄えてきた。 1975年12月23日、夫に代わり旅館を経営してきた佐妃子の実母きよが他界し、佐妃子がこの不動産を相続した。町内会の役員は、その頃のこともよく覚えていた。 「佐妃子さんは、相続後もしばらく板前さんや仲居さんを使って海喜館を経営していました」、なるほど。
・『二人の大物地面師  もともと海喜館は宴会などもおこなえる大きな旅館だった。日本中が空前の好景気に沸いたバブル時代はもとより、バブル崩壊後も出張サラリーマンの宿泊客を目当てに営業を続け、それなりに経営はうまくいっていたようだ。だが、施設が古くなっていくにつれ、近隣に建設されたビジネスホテルに押されるようになり、経営は次第に苦しくなっていった。町内会の役員が続ける。 「旅館の経営が成り立っていたのは、10年前まででしょうかね。そうなると、場所がいいからね。『旅館を廃業してマンション経営をしないか』『スポーツジムをやらないか』と、不動産会社の営業マンやら、マンションデベロッパーの社員やら、ヤクザ風の不動産ブローカーにいたるまで、いろんな人が佐妃子さんに近づいて来るようになった。彼らは客を装って旅館に泊まってね、彼女が接客に出てくると、『旅館を売ってほしい』とうるさくて、佐妃子さんも嫌気がさしていたんだよ。しまいに佐妃子さんは常連客しか泊めなくなってね。旅館は絶対に売らない、って頑なに言い続けてきたんです」 そんな状態が何年も続いてきた。それでは経営がうまくいくはずもない。海老澤佐妃子は2015年3月、旅館を廃業した。といっても売る気はなく、その後もしばらく板前といっしょに旅館に住み続けた。が、やがて体調を崩してしまう。生来、身体の丈夫なほうでなかった佐妃子は、すでに古希を過ぎていた。町内会の役員はさらにこう言った。 「僕が最後に旅館で佐妃子さんを見かけたのは、廃業届を出してから2年ほど経った17年の2月ごろでした。それから姿を見ていません」 近所で姿を見かけなくなったのは、彼女が入院したからだ。当然のごとく主が入院中の旅館は、人の出入りが途絶えた。瞬く間に無人の廃墟のように荒れ果てていった。 そんな高齢の地主の変化を見逃さなかったのが、地面師たちである。 詳しくは後述するが、今度の計画に加わった輩が、この古ぼけた旅館に出没するようになるのは、彼女が入院する少し前のことだった。地面師グループは、一見するとマンションデベロッパーや不動産ブローカーと見分けがつかない。が、彼らは土地を買って開発するつもりなど毛頭ない。土地を材料にいかにして金を手にするか、それだけが目的であり、そこでいろんな手段を駆使する。そうしてそれまでの不動産ブローカーたちに交じりながら、地面師たちが海喜館の周囲に出没するようになっていた。 「海喜館の詐欺で最初に計画を立てたのが、マイクと北田の二人でしょう。警視庁も彼らが当初から絡んでいたと睨んで捜査を進めてきました」 そう明かしてくれたのは、海喜館について地面師たちの動きを調査してきた東京都内の不動産業者だ。この「マイク」と「北田」とは、内田マイクと北田文明のことを指す。二人はともに、業界にその名の知れ渡った大物地面師である。 第2回【あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 暗躍した2人の「スター地面師」の正体】につづく。 【地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団】2018年、「積水ハウスが地面師に55億円以上を騙し取られた」というニュースに日本中が驚いた。そもそも、地面師とはなんなのか。「不動産の持ち主になりすまし、勝手に不動産を転売して大儲けする」詐欺集団で、騙されるのは、デベロッパーや不動産業者などの「プロ」たち。被害者の中には積水ハウスを筆頭に、信じられないような大手が含まれている。本書は、その複雑で巧妙すぎる手口をすべて記す――購入はこちらから』、「海老澤佐妃子は2015年3月、旅館を廃業した。といっても売る気はなく、その後もしばらく板前といっしょに旅館に住み続けた。が、やがて体調を崩してしまう。生来、身体の丈夫なほうでなかった佐妃子は、すでに古希を過ぎていた。町内会の役員はさらにこう言った。 「僕が最後に旅館で佐妃子さんを見かけたのは、廃業届を出してから2年ほど経った17年の2月ごろでした。それから姿を見ていません」 近所で姿を見かけなくなったのは、彼女が入院したからだ。当然のごとく主が入院中の旅館は、人の出入りが途絶えた。瞬く間に無人の廃墟のように荒れ果てていった・・・地面師たちが海喜館の周囲に出没するようになっていた」、なるほど。

次に、8月10日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/134778?imp=0
・『ハウスメーカー、デベロッパーとして国内最大手の積水ハウスが、50億円以上ものカネを騙し取られた2018年の「地面師詐欺」事件は、いまも多くの謎に包まれている。15人以上の逮捕者を出す大捕物になったものの、不起訴になった容疑者も多数いて、公判でもすべてが明らかになったとは言い難い。 このたび、事件をモデルにしたドラマ「地面師たち」(原作・新庄耕)の配信がNetflixでスタートし、大反響を呼んでいる。ノンフィクション作家・森功氏の文庫『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』には、ドラマでは描かれなかった数々の知られざる事実が記されており、その内容を7回連続で公開する』、興味深そうだ。 
・『政界や芸能界ともつながっていた  積水ハウスの払い込み窓口となったIKUTAについては、さすがに民事訴訟の資料からは大きな金の流れは見えない。オーナーの生田におよそ10億円が渡っている、という新聞報道もあった。 が、実際にそれがすべて生田の懐に入ったかどうかは不明だ。 ちなみに生田は政界や芸能界にも知己の多いある種の著名人でもある。会社の所在地が元代議士の小林興起事務所に登記され、小林夫人の明子も役員として名を連ねていたことでも、注目を集めてきた。まだ事件が摘発される前、その小林興起に取材した。 「詐欺が表沙汰になってから、初めて私どもの事務所にIKUTAが登記されていることを知りました」 はじめは、そんな話をして埒が明かなかった小林事務所だが、当人に確認してもらうとニュアンスが変わってきた。 「小林の記憶によれば、IKUTAから小林事務所に登記を置かせてほしいと依頼があったのが(事件の)2年ほど前だそうです。当時、支援企業の対応を任せていた秘書が、小林が落選中だったので事務所に何か利益になればいい、という思いもあって話を持ってきたそうです。その方(生田のこと)ともお会いし、女性向けの美容、健康事業をする会社だとのことで夫人も名前を貸した。 ですが、実際には何の事業もスタートしませんでした。事務所のスペースを貸す窓口の秘書は家賃収入なども期待していたが、それもまったく発生しませんでした。先方からは、『今回はこんなことになってしまって申し訳ない。ただ、自分も騙された側で小林事務所にはご迷惑をかけないので、ご心配なく』とご連絡があり、『自分は積水ハウスさんに繋いだだけ。まさか本人確認もしないでこの案件を進めていたとは理解できない』と言っているそうです」』、「『自分は積水ハウスさんに繋いだだけ」との言い訳は事実に近いのだろう。
・『調査報告書の裏事情  「分譲マンション用地の取引事故に関する経緯概要等のご報告」 犯行から9ヵ月後の2018年3月6日、積水ハウス株式会社代表取締役社長、仲井嘉浩の名でこう題した発表がなされた。 平成29(二〇一七)年8月2日付で発表いたしました『分譲マンション用地の購入に関する取引事故につきまして』(以下、「本件」といいます。)に関し、社外役員による『調査対策委員会』の平成30年1月24日付調査報告書を受領いたしました。これを受けまして、当社としての本件に関する経緯概要並びに再発防止に向けた取組み等を以下の通りご報告いたします〉 その〈1.事件の経緯概要〉という項目でこう記している。 〈東京マンション事業部が担当する業務のなかで、東京都品川区西五反田の土地建物(以下、「本件不動産」といいます。)につき、その所有者と称するA氏(後に、偽者と判明しました。)から、その知人の仲介者が実質的に経営する会社(以下、「X社」といいます。)を中間の売買当事者とし、X社から転売される形式で、当社がこれを買い受けることとなりました。4月24日、A氏とX社の間の売買契約、X社と当社との間の売買契約という2件の売買契約を同時に締結するとともに、所有権移転の仮登記申請手続を行った上で、手付金を支払い、仮登記が完了しました〉 繰り返すまでもなく、A氏がニセ海老澤佐妃子の羽毛田正美で、X社がIKUTA社である。 これではほとんど事件の詳細がわからない。報告書にはこうも書かれている。 〈なお、事件経緯のご報告につきましては、捜査上の機密保持への配慮のため、これ以上の詳細説明は差し控えさせていただきます〉』、「事件経緯のご報告につきましては、捜査上の機密保持への配慮のため、これ以上の詳細説明は差し控えさせていただきます」、こんなことでは実態解明は期待できない。
・『60億円の行方  とどのつまり60億円あまりを手にしたのは誰か。 そこが事件解明の焦点になる。事件はこれで終わらない。「調査対策委員会」の事件の経緯概要はこう続く。 〈売買契約締結後、本件不動産の取引に関連した複数のリスク情報が、当社の複数の部署に、訪問、電話、文書通知等の形で届くようになりましたが、当社の関係部署は、これらのリスク情報を取引妨害の嫌がらせの類であると判断していました。そのため、本件不動産の所有権移転登記を完全に履行することによって、これらが鎮静化することもあるだろうと考え、6月1日に残代金支払いを実施し、所有権移転登記申請手続を進めましたが、6月9日に、登記申請却下の通知が届き、A氏の詐称が判明しました。当社は、直ちにA氏との間での留保金の相殺手続を実施し、実質的被害額は約55億5千万円となりました〉 そもそも積水ハウスが17年8月に公表した詐欺の被害額は63億円だった。総額70億円の取引総額からすると、7億円も少ない。さらに次の調査委員会で特定した〈実質的被害額〉となると、そこからさらに8億円近く減り、55億5000万円としている。その分、積水ハウスが被害を免れていることになるが、実質的な被害とは何を意味するのか。そこには妙なカラクリがある。 前述したように、積水ハウスと地面師グループとの取引は、五反田駅前の海喜館だけではなかった。海老澤佐妃子のなりすましは、なぜかこれとは別に積水ハウスのマンションを購入する契約を結んでいる。それが中野区にある「グランドメゾン江古田の杜」という名称の分譲マンションだ。積水側は地面師詐欺に遭っている取引の渦中、このマンションの一一戸の部屋を海老澤のなりすまし役に売るべく、交渉を重ねて契約までしているのである』、「積水ハウスと地面師グループとの取引は、五反田駅前の海喜館だけではなかった。海老澤佐妃子のなりすましは、なぜかこれとは別に積水ハウスのマンションを購入する契約を結んでいる。それが中野区にある「グランドメゾン江古田の杜」という名称の分譲マンションだ。積水側は地面師詐欺に遭っている取引の渦中、このマンションの一一戸の部屋を海老澤のなりすまし役に売るべく、交渉を重ねて契約までしている」、なるほど。
・『金額の誤差が意味するもの  積水ハウスでは63億円を払い込み総額とし、手付金を14億円として残りの49億円を契約当日の2017年6月1日に払ったとする。その金額が先の民事訴訟や〈事実経過報告〉のそれと微妙にずれている。民事訴訟では売買代金を60億円、手付金を12億円としてきた。 一方、積水側は払い込んだ63億円からニセ佐妃子に売ったマンションの売買代金を差し引いた金額の55億5000万円について、実質的な詐欺の被害額として発表している。これらの誤差は何を意味するのか。先の不動産業者が指摘する。 「マンションの売買を担当したのは、東京マンション事業部であり、その際、ニセの海老澤佐妃子が担当者と直接契約しています。つまりニセモノが積水ハウスに何度も足を運んでいて、なりすましに気づいていないということになる。そんな話がありえるでしょうか。積水ハウスが発表した第三者委員会の調査報告書ではこの点がすっぽり隠されています。それは隠さなければならない事情があったからではないか」 積水側が海喜館の購入代金を支払うついでに、せっかくだから分譲マンション販売の営業をかけた。表面的に見れば、単なる営業努力の成果のように感じる。が、こと地面師案件だけにそう単純とは言い切れないかもしれない』、「積水側が海喜館の購入代金を支払うついでに、せっかくだから分譲マンション販売の営業をかけた。表面的に見れば、単なる営業努力の成果のように感じる。が、こと地面師案件だけにそう単純とは言い切れないかもしれない」、確かに不透明だ。
・『不自然な取引の理由とは...  ニセ地主を仕立て上げる地面師事件では、なりすまし役と買い手の接触をできるだけ減らすのが彼らの常道である。 理由はニセモノだとバレないようにするためだ。ニセ地主を取引現場に登場させるのは、たいてい一度きりで、取引の細かいやり取りについては、手馴れた地面師グループの交渉役がおこなう。 だが、積水ハウス事件では、肝心かなめの旅館の売買とは別に、なりすまし役がマンションの購入契約を結んでいる。それ自体が極めて奇異なのである。積水ハウスは取引総額70億円のうちマンションの内金6億7390万円を差し引いたおよそ63億円をまるまる騙しとられているのではないか。 そんな疑いも浮かぶ。発表した被害額との差を含め、不自然な取引や微妙な金額の誤差の裏には、表沙汰にできない何らかの理由があるのではないか。 事件は日本を代表する住宅建設会社の経営を揺らした。騙されたその責任をめぐり、会社のツートップが反目し、あげくにクーデター騒動に発展する。 最終回【社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末】につづく』、「肝心かなめの旅館の売買とは別に、なりすまし役がマンションの購入契約を結んでいる。それ自体が極めて奇異なのである。積水ハウスは取引総額70億円のうちマンションの内金6億7390万円を差し引いたおよそ63億円をまるまる騙しとられているのではないか。 そんな疑いも浮かぶ。発表した被害額との差を含め、不自然な取引や微妙な金額の誤差の裏には、表沙汰にできない何らかの理由があるのではないか」、確かに不合理な点が多過ぎる。「表沙汰にできない何らかの理由がある」のであれば、由々しいことだ。実態解明の第二弾が出て、解明してほしいものだ。

第三に、8月10日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/134779?imp=0
・『ハウスメーカー、デベロッパーとして国内最大手の積水ハウスが、50億円以上ものカネを騙し取られた2018年の「地面師詐欺」事件は、いまも多くの謎に包まれている。15人以上の逮捕者を出す大捕物になったものの、不起訴になった容疑者も多数いて、公判でもすべてが明らかになったとは言い難い。 このたび、事件をモデルにしたドラマ「地面師たち」(原作・新庄耕)の配信がNetflixでスタートし、大反響を呼んでいる。ノンフィクション作家・森功氏の文庫『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』には、ドラマでは描かれなかった数々の知られざる事実が記されており、その内容を7回連続で公開する』、興味深そうだ。 
・『会長追い落としクーデターの「舞台裏」 それは、事件から半年あまり経った2018年1月24日の出来事だった。 「ではこれより取締役会を開催します」 午後2時ちょうど、大阪市北区の積水ハウス本社で、会長の和田勇が議長として、重役会の開催宣言をした。76歳(取締役会当時。以下同)の和田は細身の身体に似合わないハリのある声をしている。取締役会のメインテーマが、東京・五反田の海喜館をめぐる地面師詐欺なのは言うまでもない。和田はすぐにその議題に入った。 「本日、調査対策委員会が進めてきた調査報告書が提出されました。執行の責任者には極めて重い責任があります」 積水ハウスでは事件を公表したひと月後の9月、社外監査役と社外取締役らで調査対策委員会を立ち上げ、事件の経緯を調べてきた。その調査結果の報告がなされたのが、この日だったのである。和田を含めた9人の社内役員に加え、2人の社外取締役を加えた11人の内外の重役が会議に参加していた。 「したがって最初に、最も重い責任者である阿部俊則社長の退任を求めます」 和田はそう切り出した。社長解任の緊急動議である。戸建て住宅のハウスメーカーとしてスタートした積水ハウスは、近年のマンションやリゾート施設の開発、さらには海外事業も手掛け、業績を伸ばしてきた。 その立て役者が和田であり、実力会長として業界に名を馳せてきた。10歳違いの阿部を社長に引き立て、バックアップしてきたともいえる。いわば2人は師弟関係にあったのだが、その弟分の社長をばっさり切り捨てようとしたことになる。それほど事件の衝撃は大きかった』、「10歳違いの阿部を社長に引き立て、バックアップしてきたともいえる。いわば2人は師弟関係にあったのだが、その弟分の社長をばっさり切り捨てようとしたことになる」、その割には動議が否決されるなど、手際の悪さが目立つ。
・『阿部社長の「反撃」  半面、実は社長の解任については、本番の前に開かれた社外取締役会でも諮られていたので、すでに情報が漏れ伝わっていた。そのため出席した重役たちのあいだにはさほどの驚きも、混乱もない。 まるで予定されていた行事であるかのように、採決へと進んだ。事前におこなわれた社外取締役2人の協議では、阿部の退任に異論はなく、和田の申し出が了承されていたからでもある。解任動議の当事者である阿部は、ひとり会議室をあとにし、10人の重役による社長退任の決議が粛々とおこなわれた。 しかしその緊急動議の採決は予想外の結果に終わった。賛成5に対して反対も5――。数だけでみると真っ二つに割れているように思えるが、阿部を外した10人の出席者の内実は、社外の2人と会長である和田以外に2人の賛成しか取り付けられなかったことになる。むろん過半数にも達していない。そのため、社長の解任動議は流れてしまう。 すると今度は、会議室に呼び戻された社長の阿部が反撃に出た。 「私は混乱を招いた(取締役会の)議長解任を提案します。新たな議長として、稲垣士郎副社長を提案します」 すでにこの時点で勝敗は、決していたともいえる。単純に計算すると、内外11人の全取締役のうち、和田派は5人、一方の阿部派は本人を入れると6人だ。その計算どおり、議長交代が6対5で可決された。そして返す刀で阿部が立ちあがって告げた。 「ここで、会長である和田氏の解任を提案します」 こうなると、退席した和田の一票が減る。そうして10人の重役の投票により、会長の解任動議が6対4で可決されたのである。 社長の阿部は、もとよりこの日のクーデターを想定して動いてきたに違いない。08年に社長の座に就いて以来10年ものあいだ、会長の和田の顔色をうかがいながら、経営にあたってきた。とりわけ東京の不動産ブームに乗り、マンション事業を推し進めてきたが、まさにそこで躓いたのである。 危機感を抱いた阿部は取締役会に先立つ17年12月には、マンション事業部本部長を務めてきた常務執行役の三谷和司に詰め腹を切らせた。東京シャーメゾン事業本部長で同じ常務の堀内容介にマンション事業を兼務させ、法務部長や不動産部長の部長職を解くといった更迭人事に手を付けていった。 そうしておいて自らは、和田に代わって会長に就任すべく、事件直後から動いた。 「今度の件で、君に社長を任せたい、と思っているのだけど、どうかな」 そう囁かれたのが、常務執行役の仲井嘉浩だった。仲井は阿部にとってひと回り以上年齢が下の52歳で、和田からするとふた回り違う。大幅な若返り人事でもある。なにより社長の椅子を約束する打診を断るはずもなかった』、「阿部」は「自らは、和田に代わって会長に就任すべく、事件直後から動いた」。手際よい防衛線だ。
・『主犯格を取り逃がす  こうして和田退任のレールを敷いた上で臨んだのが、先の取締役会だったのである。阿部会長、仲井社長という新たな布陣を決めた重役会のあと、阿部が会見に臨んだ。 「五反田の件の責任はどうなるのですか。今度の社長人事はその結果でしょうか」 そう尋ねる質問が相次いだ。それは無理もない。五反田の海喜館取引に積極的に乗り出したのが、当の阿部だった。自ら現地の視察にも訪れ、社内では社長案件と呼ばれてきた。が、阿部は自らの取り組みはむろん、取締役会でのクーデターのことなどおくびにも出さず、こう言い張った。 「それは関係ありません。(若返りのための)人事刷新です」 3月5日には、個人株主が阿部を善管注意義務違反などで訴え、損害賠償と遅延損害金の支払いを求める請求をおこなった。そのあたりから、警視庁による本格的な捜査が始まる。 「2017年度内の3月中には、地面師グループをいっせい摘発できるのではないか」 取材してきた記者のあいだではそう事件の早期解明が囁かれた。17年8月以来、ずっと燻ってきた事件摘発の期待が高まったが、警視庁の捜査はそこからずれ込んでいく。 「8月末の新捜査二課長への交代を待って、9月はじめの捜査着手ではないか」 「すでに事件は警視総監マターなので、三浦正充さんが総監に着任する九月半ばかな」 そんなさまざまな検挙情報が駆け巡ってきた末、ついに警視庁は10月16日、海喜館を舞台に暗躍した地面師グループ8人の逮捕にこぎ着けたのである。 これだけの一斉検挙となると、一つの警察署には収容できない。身柄の拘束先は、当人の住居や留置所の空き状況によって異なった。逮捕第一陣となった8人の氏名と逮捕時の年齢、留置した警察署を改めて挙げると、生田剛(46)が渋谷署、近藤久美(35)が原宿署、佐藤隆(67)が赤坂署、永田浩資(54)が目白署、小林護(54)が代々木署、秋葉紘子(74)が原宿署、羽毛田正美(63)が東京湾岸署、常世田吉弘(67)が戸塚署だ。 事件におけるそれぞれの役割を記すと、IKUTAホールディングスの生田と近藤が積水ハウスとの取引窓口で、佐藤は小山とともに行動してきた首謀者の手下、小林は運転手役だ。指定暴力団住吉会の重鎮だった小林楠扶の息子であり、そのことも一部で話題になった。また秋葉は犯行における重要な役回りをした。持ち主のなりすまし役を引き込む手配師である。その秋葉から旅館の持ち主、海老澤佐妃子のなりすまし役に任命されたのが羽毛田で、彼女の内縁の夫役が常世田だ。 警視庁は逮捕予定者を15人前後と定め、捜査に着手した。この第一陣の8人が逮捕された4日後の20日、逃げていた佐々木利勝(59)を逮捕し、三田署に留置した。佐々木は地主のニセ振込口座づくりを担い、9人目の逮捕者となる。27日には連絡係の岡本吉弘(42)が出頭し、29日、11人目の逮捕者となったのがあの北田文明だった。その後の三木勝博(63)、武井美幸(57)と合わせると、警視庁はここまでで13人に縄を打ったことになる。 だがその実、あろうことか、警視庁は肝心の主犯格の一人であるカミンスカスこと旧姓小山操(58)を取り逃がしている』、「肝心の主犯格の一人であるカミンスカスこと旧姓小山操(58)を取り逃がしている」とは致命的なミスだ。
・『なぜ取り逃がしたのか  第一陣検挙の3日前にあたる10月13日1時15分、NHKをはじめとしたマスコミ環視のなか、小山は羽田空港からフィリピン航空ファーストクラスに乗り、悠々と高飛びした。事情通によれば、その経緯は以下の通りだという。 「何度も取り調べを受け、捜査が迫っているのを知った小山は当初、仲間の三木と関釜フェリーに乗って下関から韓国の釜山に渡ろうとした。航空便より船便のほうが港の監視態勢が緩いと考えたからです。しかし三木に誘いを断られたあげく、早朝の船便に間に合わず、いったんは韓国行きを断念した。しかし、いよいよ捜査の手が近づくと、愛人のいるフィリピンに向かうことを思い立ったのです。はじめ成田空港からJAL便に乗ろうとしたところ、日本の航空会社は警察に通報する危険性が高いと思い直し、羽田から出ているフィリピン航空に切り替えたと聞いています」 関釜フェリーの件はマスコミにも漏れていなかったようだが、そのあとの足取りはしっかり新聞やテレビ、週刊誌の記者にとらえられ、報じられている。警視庁にとっては大失態であるが、新聞やテレビがさほど問題にしないのは、捜査当局から睨まれ、警察情報からシャットアウトされるのを恐れるからだろう。 記者がそこまでつかんでいるのに、なぜ警視庁は肝心の主犯を取り逃がしてしまったのか。 「そのせいで、犯行グループに内通している警視庁OBがいたのではないか、とも囁かれています」(事情通) むろん小山は国際指名手配され、その後逮捕された。 事件の奥行きはもっと深い。これまで書いてきたように、積水ハウス事件を企画・立案したのは、小山ではなく、内田マイクであり、北田文明である。たとえば第一陣の逮捕組である永田は内田の連絡役であり、55億5000万円を振り分けるための銀行口座を用意して9人目の逮捕者となった佐々木は、北田の指示を仰いできた。それぞれ、内田グループ、北田グループとして、他の地面師事件でも名前が挙がってきた。さらに積水ハウスの預金小切手を現金化する役割を担った土井淑雄(63)という存在も明らかになっている。私が北田と遭遇した時に取材をしていた、あの地面師である。土井は事件のなかで金融チームを結成し、現金を振り分ける役割を担ってきたとされる。 入院していた地主の海老澤佐妃子は、この決済直後の6月24日に病院で息を引き取った。地面師たちはそこを狙いすましたかのようでもある。 なかでも内田と北田という二人の大物地面師は積水ハウス事件を計画立案した。そして警視庁は11月20日、14人目の積水事件犯として内田を逮捕した。文字どおり神出鬼没の詐欺集団を率いてきた大物2人を手中に収めた。 だが、経営トップの“クーデター騒動”にまで発展した事件で騙しとられた55億5000万円は、闇の住人たちの手で分配され、すでに溶けてなくなったとみたほうがいい』、「警視庁にとっては大失態であるが、新聞やテレビがさほど問題にしないのは、捜査当局から睨まれ、警察情報からシャットアウトされるのを恐れるからだろう・・・積水ハウス事件を企画・立案したのは、小山ではなく、内田マイクであり、北田文明である。たとえば第一陣の逮捕組である永田は内田の連絡役であり、55億5000万円を振り分けるための銀行口座を用意して9人目の逮捕者となった佐々木は、北田の指示を仰いできた。それぞれ、内田グループ、北田グループとして、他の地面師事件でも名前が挙がってきた・・・警視庁は11月20日、14人目の積水事件犯として内田を逮捕した。文字どおり神出鬼没の詐欺集団を率いてきた大物2人を手中に収めた。 だが、経営トップの“クーデター騒動”にまで発展した事件で騙しとられた55億5000万円は、闇の住人たちの手で分配され、すでに溶けてなくなったとみたほうがいい」、「55億5000万円」が「すでに溶けてなくなったとみたほうがいい」、鮮やかな手口だ。 
タグ:積水ハウス事件 (その5)(あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 衝撃の「地面師詐欺」の語られなかった真相 短期集中連載・第1回、仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回、社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回) 現代ビジネス 森 功氏による「あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 衝撃の「地面師詐欺」の語られなかった真相 短期集中連載・第1回」 森功氏の文庫『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』 「2000平米(およそ600坪)の土地をはじめとした一連の不動産取引総額は70億円にのぼる。うち積水ハウスは63億円をニセ地主に支払い、最終的に55億5000万円もの大金をまんまと騙し取られたのである。紛れもなく、これまで類を見ない史上最大の地面師詐欺である」、なるほど。 「地主の海老澤佐妃子は1944年、五反田のこの地で生まれた。生まれた頃、すでに両親が海喜館を経営しており、彼女は旅館で育った。 「もともと海喜館は佐妃子さんのお父さんが始めた旅館でした。なにしろ場所がいいので人気があり、ずいぶん繁盛していました」・・・事件の舞台となった海喜館は、そんな花街から少し隔てた目黒川沿いの老舗旅館として栄えてきた。 1975年12月23日、夫に代わり旅館を経営してきた佐妃子の実母きよが他界し、佐妃子がこの不動産を相続した。町内会の役員は、その頃のこともよく覚えていた。 「佐妃子さんは、相続後もしばらく板前さんや仲居さんを使って海喜館を経営していました」、なるほど。 「海老澤佐妃子は2015年3月、旅館を廃業した。といっても売る気はなく、その後もしばらく板前といっしょに旅館に住み続けた。が、やがて体調を崩してしまう。生来、身体の丈夫なほうでなかった佐妃子は、すでに古希を過ぎていた。町内会の役員はさらにこう言った。 「僕が最後に旅館で佐妃子さんを見かけたのは、廃業届を出してから2年ほど経った17年の2月ごろでした。それから姿を見ていません」 近所で姿を見かけなくなったのは、彼女が入院したからだ。当然のごとく主が入院中の旅館は、人の出入りが途絶えた。瞬く間に無人の廃墟のように荒れ果てていった・・・地面師たちが海喜館の周囲に出没するようになっていた」、なるほど。 森 功氏による「仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回」 「『自分は積水ハウスさんに繋いだだけ」との言い訳は事実に近いのだろう。 「事件経緯のご報告につきましては、捜査上の機密保持への配慮のため、これ以上の詳細説明は差し控えさせていただきます」、こんなことでは実態解明は期待できない。 「積水ハウスと地面師グループとの取引は、五反田駅前の海喜館だけではなかった。海老澤佐妃子のなりすましは、なぜかこれとは別に積水ハウスのマンションを購入する契約を結んでいる。それが中野区にある「グランドメゾン江古田の杜」という名称の分譲マンションだ。積水側は地面師詐欺に遭っている取引の渦中、このマンションの一一戸の部屋を海老澤のなりすまし役に売るべく、交渉を重ねて契約までしている」、なるほど。 「積水側が海喜館の購入代金を支払うついでに、せっかくだから分譲マンション販売の営業をかけた。表面的に見れば、単なる営業努力の成果のように感じる。が、こと地面師案件だけにそう単純とは言い切れないかもしれない」、確かに不透明だ。 「肝心かなめの旅館の売買とは別に、なりすまし役がマンションの購入契約を結んでいる。それ自体が極めて奇異なのである。積水ハウスは取引総額70億円のうちマンションの内金6億7390万円を差し引いたおよそ63億円をまるまる騙しとられているのではないか。 そんな疑いも浮かぶ。発表した被害額との差を含め、不自然な取引や微妙な金額の誤差の裏には、表沙汰にできない何らかの理由があるのではないか」、確かに不合理な点が多過ぎる。 「表沙汰にできない何らかの理由がある」のであれば、由々しいことだ。実態解明の第二弾が出て、解明してほしいものだ。 森 功氏による「社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回」 「10歳違いの阿部を社長に引き立て、バックアップしてきたともいえる。いわば2人は師弟関係にあったのだが、その弟分の社長をばっさり切り捨てようとしたことになる」、その割には動議が否決されるなど、手際の悪さが目立つ。 「阿部社長「は「自らは、和田に代わって会長に就任すべく、事件直後から動いた」。手際よい防衛線だ。 「肝心の主犯格の一人であるカミンスカスこと旧姓小山操(58)を取り逃がしている」とは致命的なミスだ。 「警視庁にとっては大失態であるが、新聞やテレビがさほど問題にしないのは、捜査当局から睨まれ、警察情報からシャットアウトされるのを恐れるからだろう・・・ 積水ハウス事件を企画・立案したのは、小山ではなく、内田マイクであり、北田文明である。たとえば第一陣の逮捕組である永田は内田の連絡役であり、55億5000万円を振り分けるための銀行口座を用意して9人目の逮捕者となった佐々木は、北田の指示を仰いできた。それぞれ、内田グループ、北田グループとして、他の地面師事件でも名前が挙がってきた・・・ 警視庁は11月20日、14人目の積水事件犯として内田を逮捕した。文字どおり神出鬼没の詐欺集団を率いてきた大物2人を手中に収めた。 だが、経営トップの“クーデター騒動”にまで発展した事件で騙しとられた55億5000万円は、闇の住人たちの手で分配され、すでに溶けてなくなったとみたほうがいい」、「55億5000万円」が「すでに溶けてなくなったとみたほうがいい」、鮮やかな手口だ。
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災害(その18)新刊『首都防衛』での「最悪の被害想定」6題(「まさか死んでないよな…」ある日突然、日本人を襲う大災害「最悪のシミュレーション」、首都直下地震は「日本危機」である…「死者3500人」「経済被害21兆円」知られざる想定の実態、「南海トラフ巨大地震」が発生する日…命を守るために知っておきたい「最悪の被害想定」、じつは起こり得る…南海トラフ巨大地震と首都直下地震の「連動」がやってくるかもしれない、「本当に地獄みたいだ」二つの大地震が一度に東京を襲い 「日本経済が壊滅的被害」を受ける未来、巨大地震で [社会]

一昨日に続いて、災害(その18)新刊『首都防衛』での「最悪の被害想定」6題(「まさか死んでないよな…」ある日突然、日本人を襲う大災害「最悪のシミュレーション」、首都直下地震は「日本危機」である…「死者3500人」「経済被害21兆円」知られざる想定の実態、「南海トラフ巨大地震」が発生する日…命を守るために知っておきたい「最悪の被害想定」、じつは起こり得る…南海トラフ巨大地震と首都直下地震の「連動」がやってくるかもしれない、「本当に地獄みたいだ」二つの大地震が一度に東京を襲い 「日本経済が壊滅的被害」を受ける未来、巨大地震で「経済被害が東日本大震災の10倍超に」…東京都の「被害想定」が問うもの、「富士山が噴火しても東京には影響ない」は本当か…じつは何度も「不気味な動き」が起きている)を取上げよう。

先ずは、本年8月7日付け現代ビジネスが掲載した東京都知事政務担当特別秘書の宮地 美陽子氏による「「まさか死んでないよな…」ある日突然、日本人を襲う大災害「最悪のシミュレーション」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114118
・『首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山大噴火……過去にも一度起きた「恐怖の大連動」は、東京・日本をどう壊すのか? 命を守るために、いま何をやるべきか? 東京都知事政務担当特別秘書・宮地美陽子氏による新刊『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれている。その具体的なシミュレーションとは?』、興味深そうだ。
・『ある日突然、やってくる  20××年の冬、それは現実のものとして襲いかかった。経験したことのない、突き上げるような強烈な揺れは人々の動きを瞬く間に封じ、激しい動揺と恐怖が心をへし折る。毎年の防災訓練で何度も備えてきたはずだったが、その衝撃は想定をはるかに超えていた。 室内に置かれていたテレビやパソコンは床に倒れ、食器棚からはコーヒーカップや皿が勢いよく飛び出す。窓ガラスは飛散し、タンスや本棚は不思議な動きを見せながら傾いていった。使い慣れたスマホは通信障害で機能せず、助けを呼ぶことも、家族や友人の安否を確認することもできない。テレビのニュースで情報を得ようにも停電が阻む。できることは暗闇の中で静かに待つだけだった。 すぐ近くの住宅の窓から真っ赤な炎が猛烈な勢いで吹き出し、悲鳴と怒号が響き渡る。隣家から隣家へ延焼していくのは時間の問題で、商品棚がドミノ倒しになったコンビニから逃げまどう人々の表情はこの世の終わりを感じさせる。 日本の首都を襲った大地震の規模は、M7.3。ヒト・モノ・情報が集まる東京には、地球外生命体に強襲されたような信じられない光景が広がった。江東区や江戸川区など11の区は震度7を記録し、人口の多い23区の約6割は震度6以上の揺れが起きる。6000人以上が死亡、負傷者は9万3000人を超え、ライフラインは次々とダメージを受けた』、「地震の規模は、M7.3。ヒト・モノ・情報が集まる東京には、地球外生命体に強襲されたような信じられない光景が広がった。江東区や江戸川区など11の区は震度7を記録し、人口の多い23区の約6割は震度6以上の揺れが起きる。6000人以上が死亡、負傷者は9万3000人を超え、ライフラインは次々とダメージを受けた」、なるほど。
・『ビル崩壊、大渋滞、「助けて」の声……  この日、タクシー運転手の浜田幸男(仮名)は夜の街を流していた。休憩に入ろうとした矢先、常連客からの電話が鳴り「湾岸エリアまで来て、乗せてよ」と頼まれた。「OK!10分ほどで着くから待ってて」と普段と変わらない応答でアクセルを踏み込んだとき、車が持ち上がるような激しい衝撃を感じる。 「ドッ、ドーン!」。追突されたときのものではない、地鳴りのような音が響く。それは腹底を揺さぶられるような強いものだった。都会の喧騒を上回る大音量の緊急地震速報がスマホから鳴り響き、必死でハンドルにしがみつくしかない。「車がひっくり返る、もうダメだ」と身を屈めるのがやっとだった。 最初の激しい揺れは10秒ほどだったが、1分以上に長く感じた。顔を上げたときには周囲の信号機は倒れ、道路沿いの建物は崩れている。ビルや看板の灯りは消え、歩道には瓦礫やガラスが飛び散り、呆然と立ち尽くす若者たちの姿は映画のワンシーンを見ているようだ。 やや揺れが小さくなったことを感じた浜田は、汗で湿る手で強く握りしめたスマホから家族への電話を繰り返した。だが、一向につながらない。「まさか死んでないよな……」と不安ばかりが募る。 ベテランの域に達した運転手でも見たことがない大渋滞が行く手を遮り、やむなくタクシーを路肩に放置することにした。真っ暗な道を月明かりだけを頼りに急ぎ足で自宅に向かう途中、不気味に静まり返った街では、どこからともなく「助けて」というわずかな声が風に木霊し、耳に残った。) 関西出身の浜田は、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で母を失った。日本で初めての大都市を直下とする地震で、最大震度7を記録。兵庫県を中心に6434人(災害関連死含む)が死亡、3人が行方不明、4万3792人が負傷した大地震だ。テレビやスマホからの情報が遮断される中、浜田はかつて経験した地震と似たような揺れを感じた。 路地を曲がれば自宅という場所にたどり着いたとき、浜田は顔見知りの消防団員に制止される。「立ち入り禁止になっているんです。もう行かない方がいい」。 見慣れた道の先には見るも無残な状況が広がっていた。飼い犬の散歩で知り合った近所のシニア夫婦が住む一軒家は倒壊し、あちらこちらに炎が見える。高いビルからは煙が空高く立ち上り、住み慣れた木造二階建ての自宅は隣家に助けを求めるように傾いていた。 「妻が家にいるんだよ、とにかく行かせてくれよ!」。何度も勢いよく飛び出そうとしたが、必死に制止された。不安と苛立ちが充満したとき、浜田は妻・幸子との“約束”を思い出す。 「俺は阪神・淡路大震災で母親を亡くした。今度は南海トラフ巨大地震が起きるというではないか。だから、東京に出てきたんだ。いいか、幸子。何かあったら必ず逃げてくれ。俺も逃げるから後で絶対に合流しよう」 大地震で親を失った浜田は、いざというときの対応を妻と話し合っていた。その“約束”を信じ、浜田は避難所に指定されていた小学校に向かった』、「ベテランの域に達した運転手でも見たことがない大渋滞が行く手を遮り、やむなくタクシーを路肩に放置することにした。真っ暗な道を月明かりだけを頼りに急ぎ足で自宅に向かう途中、不気味に静まり返った街では、どこからともなく「助けて」というわずかな声が風に木霊し、耳に残った・・・いざというときの対応を妻と話し合っていた。その“約束”を信じ、浜田は避難所に指定されていた小学校に向かった」、賢明なやり方だ。
・『避難所に帰宅困難者殺到、避難者同士のトラブルも  娘の香織がかつて通った校舎の一角は、ラジオから流れる声を聞き漏らすまいとする人々で溢れていた。最新の被害状況を伝え続けるアナウンサーによれば、耐震性の低い住宅は全壊し、古いビルやマンションも崩れている。木造住宅の密集地域では火災が相次ぎ、いたるところで道路は寸断され、鉄道も運行停止。広範囲で停電や断水が発生しているという悲惨な状況だった。 「あなた!」。聞き慣れた声に振り向くと、避難所の端で両手を振る幸子が目に涙を一杯にためていた。妊娠中の香織は入院先で無事が確認され、一家の心は少しだけ和らぐ。ただ、自宅を失った一家はしばらく避難所での生活を余儀なくされる。この後さらなる悲劇に襲われることになるとはそのときは知るよしもなかった。 首都直下地震の発生翌日、職場や外出先から自宅への帰還が困難になった帰宅困難者が一時滞在施設の場所がわからず、避難所にも殺到した。収容力を超える事態だ。通信の途絶に加え、スマホのバッテリーは切れ、家族らとの連絡が困難になった人々がイライラを募らせる。備蓄の飲用水や食料は限定的で、仮設トイレは衛生環境が悪化。感染症が蔓延することへの不安も広がった。 さらに自宅での避難生活を送っていた人も家庭内の備蓄が枯渇し、避難所に次々と訪れる。支援物資やボランティアの供給には地域でバラツキがみられ、人々のストレスも増すばかりだ。高齢者や既往症を持つ人は慣れない環境での生活に症状が悪化し、避難者同士のトラブルも続発する。 つづく「首都直下地震は「日本危機」である…「死者3500人」「経済被害21兆円」知られざる想定の実態」では、多くの人が知らない首都直下地震の被害想定を具体的なデータを元に詳述する。 本記事の抜粋元『首都防衛』では、首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山大噴火……過去にも一度起きた「恐怖の大連動」が東京・日本をどう壊すのか、命を守るために何をやるべきか、さらには最新データや数々の専門家の知見から明らかになった「最悪の被害想定・シミュレーション」をわかりやすく解説。専門家が非常時を意識してやっていることなども紹介している。まずはこの一冊で突然の災害に備えましょう。ぜひお買い求めください』、「「あなた!」。聞き慣れた声に振り向くと、避難所の端で両手を振る幸子が目に涙を一杯にためていた。妊娠中の香織は入院先で無事が確認され、一家の心は少しだけ和らぐ・・・自宅での避難生活を送っていた人も家庭内の備蓄が枯渇し、避難所に次々と訪れる。支援物資やボランティアの供給には地域でバラツキがみられ、人々のストレスも増すばかりだ。高齢者や既往症を持つ人は慣れない環境での生活に症状が悪化し、避難者同士のトラブルも続発する」、なるほど。

続きを、8月14日付け現代ビジネスが掲載した東京都知事政務担当特別秘書の宮地 美陽子氏による「首都直下地震は「日本危機」である…「死者3500人」「経済被害21兆円」知られざる想定の実態」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114134
・『首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山大噴火……過去にも一度起きた「恐怖の大連動」は、東京・日本をどう壊すのか? 命を守るために、いま何をやるべきか? 東京都知事政務担当特別秘書・宮地美陽子氏による新刊『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれている。その衝撃の内容とは?』、興味深そうだ。
・『首都直下地震の被害想定  首都直下地震──。 政府の中央防災会議が「今後直下の地震の発生の切迫性が高まってくることは疑いない」と南関東地域における大地震発生に警鐘を鳴らしたのは、1992年8月。 それから30年超が経過し、毎年9月1日の「防災の日」に醸成されるはずの危機感は年々失われてきた。 政府の地震調査委員会は2014年に「今後30年間に70%の確率で起きる」と指摘したが、もはや“オオカミ少年”への眼差しと似たようなものが向けられていた。 しかし、東京都が2022年5月、10年ぶりに見直した被害想定を見れば、首都を襲う直下地震のダメージは甚大だ。 都心南部直下地震が冬の夕方に発生した場合、都内の全壊する建物は約8万2200棟に上り、火災の発生で約11万8700棟が焼失。避難者は約299万人に達する。 発災直後は広範囲で停電が発生し、首都機能を維持するための計画停電が行われる可能性も生じる。 上水道は23区の約3割、多摩地域の約1割で断水。上下水の配管などが被害を受けたビルやマンションは修理しなければ水道やトイレを利用できない状況が続く。 電話やインターネットはつながらず、携帯電話の基地局が持つ非常用電源のバッテリーが枯渇した場合には利用不能状態が長引くおそれがある。 在来線や私鉄は運行がストップ。東京湾の岸壁の約7割が被害を受けて物流には大きな影響が生じ、物資不足への懸念から「買いだめ」が多発していく。 避難所で生活する人の数は自宅の備蓄がなくなる発災4日後から1週間後にかけてピークを迎え、体の不調から死亡する「災害関連死」もみられるようになる。 10年前の想定とは震源の位置や深さが異なるため、比較することは難しいものの、死者は約3500人、全壊建物は約3万4000棟、帰宅困難者は約64万人それぞれ少なくなっている。 だが、東京都が見直した2022年の被害想定が「最悪」のシミュレーションなのかと言えば、答えは「NO」だ』、「都心南部直下地震が冬の夕方に発生した場合、都内の全壊する建物は約8万2200棟に上り、火災の発生で約11万8700棟が焼失。避難者は約299万人に達する。 発災直後は広範囲で停電が発生し、首都機能を維持するための計画停電が行われる可能性も生じる。 上水道は23区の約3割、多摩地域の約1割で断水。上下水の配管などが被害を受けたビルやマンションは修理しなければ水道やトイレを利用できない状況が続く。 電話やインターネットはつながらず、携帯電話の基地局が持つ非常用電源のバッテリーが枯渇した場合には利用不能状態が長引くおそれがある・・・物資不足への懸念から「買いだめ」が多発していく。 避難所で生活する人の数は自宅の備蓄がなくなる発災4日後から1週間後にかけてピークを迎え、体の不調から死亡する「災害関連死」もみられるようになる」、なるほど。
・『直接的な経済被害は21兆円以上  仮設住宅へ移り住んだタクシー運転手の浜田幸男(仮名)は、“新拠点”での生活に適応しつつあった。 「阪神・淡路大震災を経験し、もう地震は嫌だと思って東京に来たけど、まさか2度も被害に遭うことになるとは思わなかったな」。ポツリと漏れる本音に妻・幸子も同意する。 東京都が想定した建物・インフラ損壊といった直接的な経済被害は約21兆5640億円だ。 ただ、物流停滞や生産活動の停止などの間接的な被害に加え、物価も高騰。1本100円のミネラルウォーターは100円玉を2枚投じなければ購入できなくなった。円安が急速に進行し、輸入品の価格も跳ね上がる。 大地震の首都襲来は「日本危機」につながる。老後生活のために浜田がコツコツと貯めてきたお金は実質目減りしていった。 「もう一度、ゼロからやり直さないとな……」。何とも言えない表情で口を真一文字に結んだ浜田に、幸子はそっと肩を寄せた・・・』、「大地震の首都襲来は「日本危機」につながる。老後生活のために浜田がコツコツと貯めてきたお金は実質目減りしていった」、なるほど。

第三に、この続きを、8月15日付け現代ビジネスが掲載した東京都知事政務担当特別秘書の宮地 美陽子氏による「「南海トラフ巨大地震」が発生する日…命を守るために知っておきたい「最悪の被害想定」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114143
・『都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山大噴火……過去にも一度起きた「恐怖の大連動」は、東京・日本をどう壊すのか? 命を守るために、いま何をやるべきか? 東京都知事政務担当特別秘書・宮地美陽子氏による新刊『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれている。その衝撃の内容とは?』、興味深そうだ。
・『南海トラフ巨大地震が発生する日  地震の4年後、再起に向けてタクシー運転手を続けた浜田幸男(仮名)はアパートで幸子と暮らしていた。 医療保険や生命保険(死亡保険)には加入していたものの、地震保険には未加入だった。自宅再建への国の支援金は最大300万円で、借金をしなければ建て直したり、中古物件を購入したりするだけの余力もない。土地の売却で老後資金をひとまず確保し、夫婦二人で静かに暮らす道を選んだ。 「さすがに、老後くらいは安心して暮らせるようになりたいな」。浜田は自らに言い聞かせるようにつぶやく。 だが、浜田の「不運」はなおも続いた。4歳になる娘とともに、夫・直也の転勤先である大阪に引っ越していた香織には、首都直下地震で経験した恐怖から解放されたいとの思いもあった。 もちろん、政府の地震調査委員会が2022年1月、南海トラフで今後40年以内にM8~9級の巨大地震が発生する確率を引き上げたことは知っている。前年の「80~90%」から「90%程度」とさらに高確率になったことに不安がないと言えばウソになる。 ただ、暮らし慣れた首都の悲惨な状況や友人の死というショックから早く立ち直りたいと、大阪異動の内示を受けた直也について行くことにした。 浜田のさらなる「不運」とは、南海トラフ巨大地震の発生を意味する。1995年の阪神・淡路大震災の傷を癒やそうと上京した浜田は、タクシー運転手になった直後に幸子と結ばれ、溺愛する娘・香織を授かった。 たしかに東京で首都直下地震に遭遇することになったものの、出逢いは何物にも代えがたい。加えて、高確率で起きると予想されていた南海トラフ巨大地震を東京で回避したいとの思いも強かった。まさか夫の転勤先となった大阪で娘が被災するなんて思いもしなかったことだ。 大地震が首都を襲った4年後、静岡県から宮崎県にかけて最大震度7の南海トラフ巨大地震が発生した。 最大クラスの地震により周辺地域でも震度6強の揺れが起き、太平洋沿岸は九州地方にかけて10メートルを超える大津波が襲来。猛烈な強い揺れや火災、津波によって238万棟超が全壊・焼失し、死者は32万人を超えた。) 被害は近畿や東海、四国など広範囲に及び、関西圏を中心にダメージは深刻だ。ライフラインは2710万軒が停電し、上水道は3440万人が断水、都市ガスも約180万戸で供給がストップした。道路の沈下や損傷は4万ヵ所以上で見られ、中部国際空港や関西国際空港のほか大分や宮崎、高知の空港で津波浸水が発生する。 帰宅困難者は中京都市圏で約110万人、京阪神都市圏では約270万人に達し、食料や飲料水が不足。住宅やオフィスではエレベーター内に閉じ込められる人が続出した。 被災地の経済被害は160兆円以上で、まさに史上最大級の巨大地震であることを物語る。 4年前の首都直下地震による傷が癒えない中での災禍は、国の想定を上回る大打撃になるのは間違いなかった。 連絡が思うようにとれない不安に駆られながら、自宅の居間で西方に向かって両手を合わせる浜田は「よりによって香織までが……。こんなことになるくらいなら自分が代わりになりたかった」と娘たち家族の生存をただ祈る・・・』、「大地震が首都を襲った4年後、静岡県から宮崎県にかけて最大震度7の南海トラフ巨大地震が発生した。 最大クラスの地震により周辺地域でも震度6強の揺れが起き、太平洋沿岸は九州地方にかけて10メートルを超える大津波が襲来。猛烈な強い揺れや火災、津波によって238万棟超が全壊・焼失し、死者は32万人を超えた。) 被害は近畿や東海、四国など広範囲に及び、関西圏を中心にダメージは深刻だ。ライフラインは2710万軒が停電し、上水道は3440万人が断水、都市ガスも約180万戸で供給がストップした。道路の沈下や損傷は4万ヵ所以上で見られ、中部国際空港や関西国際空港のほか大分や宮崎、高知の空港で津波浸水が発生する」、なるほど。

第四に、この続きを、8月15日付け現代ビジネスが掲載した東京都知事政務担当特別秘書の宮地 美陽子氏による「じつは起こり得る…南海トラフ巨大地震と首都直下地震の「連動」がやってくるかもしれない」を紹介しよう。
・『首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山大噴火……過去にも一度起きた「恐怖の大連動」は、東京・日本をどう壊すのか? 命を守るために、いま何をやるべきか? 東京都知事政務担当特別秘書・宮地美陽子氏による新刊『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれている。その衝撃の内容とは?』、「知らなかった」で「すませ」たいところだ。
・『壊滅的状態だが、最悪ではない  不幸中の幸いで、自宅近くの公園で家族でピクニックを楽しんでいた香織たちは無事だった。 耐震補強された大阪の社宅はひび割れが目立つ程度で、1週間ほどの備蓄もある。被災直後は電話の通話もできない状態だったが、次第に落ち着きを取り戻していった。 ただ、サプライチェーンの寸断や電力需要の抑制、生活必需品の価格高騰といった不安は尽きない。 南海トラフ巨大地震と首都直下地震の「連動」を偶然と見てはならないことは歴史が証明している。 たとえば、1854年12月23日の「安政東海地震」が発生し、翌24日には「安政南海地震」が起き、伊豆から四国までの広範囲に大きな被害をもたらした。 さらに1855年11月11日には「安政江戸地震」が発生し、東京や神奈川、千葉などで震度6以上を記録している。 西日本での地震は、東北地方の地震よりも首都圏に揺れが伝わりやすいとされる。 2011年3月の東日本大震災発生時にも首都圏は揺れたが、西日本での発生はその威力が増すと考えられているのだ。つまり、南海トラフ巨大地震が発生すれば長周期地震動が首都圏 襲うことを意味する。 東京都の被害想定ではM9級の南海トラフ巨大地震が生じれば、10分強で島嶼部に最大27メートル超の津波が押し寄せ、約1300棟の建物が全壊し、1000人近くの命が奪われるとされている。) 首都圏と関西圏、そして周辺地域がほぼ同時にダメージを受けることになれば、日本が壊滅的な状況に置かれることは想像に難くない。 だが、それでも「これが最悪のシミュレーション」というのはまだ早い。その理由は、南海トラフ巨大地震の後に富士山周辺で誘発地震があれば、富士山の噴火にも連動する可能性があるからだ。 1703年からの「大連動」が生じた歴史を忘れてはならない。 富士山は1707年の「宝永大噴火」から眠り状態にあるとみられているものの、紛れもない活火山だ。東日本大震災の後にはマグマが上昇し、山麓に亀裂が生じて地熱が上昇するなどの異変もみられてきた。ひとたび噴火すれば、火砕流や溶岩流による被害のみならず、火山灰は首都圏にも降り積もる。 つづく「『本当に地獄みたいだ』二つの大地震が一度に東京を襲い、『日本経済が壊滅的被害』を受ける未来」では、複数の自然災害が「大連動」するという最悪のシナリオについて掘り下げる』、「首都圏と関西圏、そして周辺地域がほぼ同時にダメージを受けることになれば、日本が壊滅的な状況に置かれることは想像に難くない。 だが、それでも「これが最悪のシミュレーション」というのはまだ早い。その理由は、南海トラフ巨大地震の後に富士山周辺で誘発地震があれば、富士山の噴火にも連動する可能性があるからだ・・・富士山は1707年の「宝永大噴火」から眠り状態にあるとみられているものの、紛れもない活火山だ。東日本大震災の後にはマグマが上昇し、山麓に亀裂が生じて地熱が上昇するなどの異変もみられてきた。ひとたび噴火すれば、火砕流や溶岩流による被害のみならず、火山灰は首都圏にも降り積もる』、破滅的な結果だ。

第五に、8月19日付け現代ビジネスが掲載した東京都知事政務担当特別秘書の宮地 美陽子氏による「「本当に地獄みたいだ」二つの大地震が一度に東京を襲い、「日本経済が壊滅的被害」を受ける未来」を紹介しよう。
・『首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山大噴火……過去にも一度起きた「恐怖の大連動」は、東京・日本をどう壊すのか? 命を守るために、いま何をやるべきか? 東京都知事政務担当特別秘書・宮地美陽子氏による新刊『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれている。その衝撃の内容とは?』、興味深そうだ。
・『「大連動」という恐ろしい未来  娘・香織の安全を確認したタクシー運転手の浜田幸男は「なんで映画みたいなことが俺の生きているときに起きるんだよ。本当に地獄みたいだ」と怒りと悲しみに暮れていた。 日本経済を牽引してきた企業の多くは二つの大地震で中枢機能が低下し、海外法人は撤退。東西間の交通寸断に伴う機会損失も大きく、人々の消費マインドは一気に低下した。株価は下落を続け、金利変動に伴い資金調達を困難とした企業は債務残高が増大。日本の国際競争力は急降下し、雇用状況は悪化する一方だ。 さらに事態は悪化する。香織を襲った南海トラフ巨大地震の発生から約50日後、今度は静岡県と山梨県にまたがる日本最高峰の富士山が噴火した。噴火後2時間で東京にも降灰が始まり、交通や物流などがストップ。慌てた浜田がニュースを見ると、首都圏の約1250万人に呼吸器系の健康被害を生じるおそれがあると報じていた。) 「おいおい、マジかよ」。火山灰は直接死傷する可能性はほとんどないものの、わずかでも堆積があれば交通機関は麻痺し、出勤はおろか移動することも困難になる。 2023年3月に関係自治体や国などでつくる「富士山火山防災対策協議会」がまとめた避難基本計画によれば、微塵でも降灰が始まると鉄道は早い段階で運行に支障が生じ、大部分が運行をストップ。その余波で道路交通量は激増することになるが、路面にわずか0.5センチの降灰があるだけでスリップする車が続出する。 雨天時に3センチも積もれば二輪駆動車の走行は困難となり、四輪駆動車であっても10センチ以上で通行は難しい。物流は停滞し、緊急車両の走行も困難になる。 電力は、降灰中は火力発電所の発電量が低下し、6センチ以上で停止。10センチ以上の降灰に雨が降れば倒木で電線が切断されて停電が発生する。通信は噴火直後からの大量アクセスで電話がつながりにくく、携帯電話のアンテナに火山灰が付着すれば通信障害が生じる。下水道は堆積の厚さにかかわらず断水や使用制限が起きる。 首都直下地震、南海トラフ巨大地震、そして富士山の噴火。320年ほどの時を経て再び発生した3つの巨大災害が重なるという「大連動」に、もはや浜田は空を見上げるしかなかった。「なんてこった。ハリウッド映画でも見たことがない光景だ」。アパートの窓から見える降灰は、天からの涙のように映った・・・』、「路面にわずか0.5センチの降灰があるだけでスリップする車が続出する。 雨天時に3センチも積もれば二輪駆動車の走行は困難となり、四輪駆動車であっても10センチ以上で通行は難しい。物流は停滞し、緊急車両の走行も困難になる。 電力は、降灰中は火力発電所の発電量が低下し、6センチ以上で停止。10センチ以上の降灰に雨が降れば倒木で電線が切断されて停電が発生する。通信は噴火直後からの大量アクセスで電話がつながりにくく、携帯電話のアンテナに火山灰が付着すれば通信障害が生じる。下水道は堆積の厚さにかかわらず断水や使用制限が起きる」、さらに恐ろしいのは、原子力発電所の冷却が困難になって、全ての炉がメルトダウン、放射能が撒き散らされるシナリオだ。これで日本は壊滅状態に陥る。

第六に、この続きを、8月22日付け現代ビジネスが掲載した東京都知事政務担当特別秘書の宮地 美陽子氏による「巨大地震で「経済被害が東日本大震災の10倍超に」…東京都の「被害想定」が問うもの」を紹介しよう。
・『首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山大噴火……過去にも一度起きた「恐怖の大連動」は、東京・日本をどう壊すのか? 命を守るために、いま何をやるべきか? 東京都知事政務担当特別秘書・宮地美陽子氏による新刊『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれている。その衝撃の内容とは?』、興味深そうだ。
・『関東大震災から100年  関東大震災から100年目の2023年、国や自治体は人々の命を奪い、生活をひっくり返す大災害への備えに向けた検討を重ねている。 東日本から西日本の広範囲で甚大な被害をもたらす3つの巨大災害は、静かに、だが確実に迫る。注意しなければならないのは、その3つが同時期に発生すれば、被害は「1+1+1=3」にはならないことだ。 単発で発生すれば生産拠点を移したり、安全な地を求めて移住したりすることができるが、日本全体に同時多発のダメージが広がる「大連動」はそれを許さないだろう。 被害のレベルは「3」ではなく、「5」にも、「10」にも増大する可能性があるのだ。 日を増すごとに上昇する巨大災害の発生確率を前に、私たちはいま何ができるのか。そして、いかなる心構えと準備をしておくことが大切なのか。国家の危機が生じても、生き抜くための方法と準備を考える』、なるほど。
・『「被害想定見直し」が問うもの  直下地震の到来が予想される首都・東京は2022年5月、被害想定を10年ぶりに見直した。 首都機能に大きなダメージを与えるM7.3の「都心南部直下地震」など8つのケースを想定し、発災直後から1ヵ月後までに起こり得る事態を時系列で示した災害シナリオを初めて盛り込んでいる。 電力や上水道といったライフラインは寸断され、通信や交通インフラがストップ。物資が不足し、救出・救助や被災地支援が遅れるなど被害が長期化する可能性も想定している。 そこから見て取れるのは、「私は大丈夫」と考えている人にも、自らが帰宅困難者になった場合や長期に及ぶ避難所での生活、ライフライン遮断などにいかに備えるべきかという心構えと準備の重要性である。 近隣県から一日300万人近くが往来し、海外からも観光客が押し寄せる首都に大地震が襲来すれば、そのダメージは想定を上回る事態を招く可能性も十分にある。 2023年4月、内閣府は南海トラフ巨大地震の被害想定見直しに着手し、M8級の巨大地震が連続発生するケースへの検討を重ねる。激しい揺れや大津波にいかに対処すべきなのか優先順位を練り直すものだ。 東海から九州にかけて巨大地震が生じれば、経済被害は2011年3月に起きた東日本大震災の10倍超にも達すると予想される。関東地方を含めた広い地域には10メートルを超える津波が発生し、太平洋沿岸は我が国が経験したことのないような甚大なダメージを受ける可能性が指摘される。 大地震の襲来だけではない。2023年3月には山梨、静岡、神奈川の3県と国などがつくる協議会が富士山の噴火を想定した新たな避難計画を公表した。避難の対象地域を6つのエリアに分け、気象庁が噴火警戒レベルを引き上げた場合などの対策を盛り込んでいる。 ある総務相経験者は「二つの大地震に加えて、富士山の噴火が我が国を襲えば国力は大きく減退する。明日、生じるかもしれないと思って対策と準備を進めるべきだ」と危機感を強める。今、国や自治体は巨大災害への備えに本気で向き合おうとしている・・・』、「二つの大地震に加えて、富士山の噴火が我が国を襲えば国力は大きく減退する。明日、生じるかもしれないと思って対策と準備を進めるべきだ」、なるほど。

第七に、この続きを、8月22日付け現代ビジネスが掲載した東京都知事政務担当特別秘書の宮地 美陽子氏による「「富士山が噴火しても東京には影響ない」は本当か…じつは何度も「不気味な動き」が起きている」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/114152
・『首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山大噴火……過去にも一度起きた「恐怖の大連動」は、東京・日本をどう壊すのか? 命を守るために、いま何をやるべきか? 東京都知事政務担当特別秘書・宮地美陽子氏による新刊『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれている。その衝撃の内容とは?』、興味深そうだ。
・『なぜ「首都防衛」なのか  本書のタイトルに『首都防衛』と用いたのには理由がある。 「防衛」と言えば、他国からの攻撃やテロなどから祖国、そして国民の生命を守ることを思い浮かべるだろう。 だが、国家や国民を脅威から「防ぎ守ること」に主眼を置くならば、首都直下地震や南海トラフ巨大地震、富士山噴火といった巨大災害に対しては「防衛」という言葉を用いるのがふさわしいだろう。 実際、我が国の「防衛力整備計画」(2022年策定)には、防衛力の果たすべき役割として「大規模災害等への対応」を掲げ、自衛隊が災害派遣を迅速に行うための初動対処態勢を整えていることや、震度5強以上の地震が発生した場合は航空機による情報収集を実施していることなどが記載されている。 国家の存立が危ぶまれるような事態とはいかないまでも、我が国の中枢機能が集中する首都が未曽有の自然災害によって危機に陥れば、国家の機能や力は大きく失われる。 首都直下地震や南海トラフ巨大地震という二つの巨大災害に見舞われ、東と西がほぼ同時に大打撃を受けることがあれば、それは「有事」そのものと言えるだろう。) 私が新聞記者として山梨県に赴任した2000年、300年近くも眠り続ける日本最高峰は不気味な動きを見せた。富士山は「活火山」であると主張するように地下15キロ付近で低周波地震を急増させたのだ。 翌2001年に国と富士山周辺の8自治体は「富士山火山防災協議会」を設立し、初めて国レベルのハザードマップづくりが開始されるようになったが、観光振興と危機感の醸成を同時に進めることには難しさもある。 登山者からは「富士山が噴火?そんなことは自分が生きている間にないでしょ」「噴火しても東京には影響ないよ」といった声も聞こえた。 だが、本当にそうなのか。ましてや、首都直下地震や南海トラフ巨大地震との「大連動」が生じれば、我が国には地球上で経験したことがないような悲劇が起こり得る。 加えて、激甚化する風水害や隣国からの弾道ミサイル発射も脅威だ。複合災害の襲来だけでなく、台湾海峡や尖閣諸島の緊張も日本には存在する。 私が『首都防衛』を執筆する理由は、まさにその点にある。我が国を取り巻く環境をにらめば、もはや国家や国民を守り抜くことに直結する「首都の防衛」をどうするのか、少しでも被害を軽減するために国民には何が求められているのかを考えるべきタイミングを迎えていると言えるだろう。 私は、東京都知事政務担当特別秘書として都庁内の会議や意見を聞くとともに、災害や防災の専門家、被災者から話を聞いてきた。『首都防衛』は、今を生きる人々だけでなく、後世に残したい対策の必要性と大切な人の命を守ってほしいという私の思いを詰め込んだ一冊である・・・』、「富士山噴火」で火力発電所の空気フィルターが目詰まりすれば、発電はストップし、原子力発電の冷却が困難になり、メルトダウンを起こして、やがて大爆発して放射能汚染を撒き散らす悲劇的結果をもたらす。まさに日本壊滅である。
タグ:災害 (その18)新刊『首都防衛』での「最悪の被害想定」6題(「まさか死んでないよな…」ある日突然、日本人を襲う大災害「最悪のシミュレーション」、首都直下地震は「日本危機」である…「死者3500人」「経済被害21兆円」知られざる想定の実態、「南海トラフ巨大地震」が発生する日…命を守るために知っておきたい「最悪の被害想定」、じつは起こり得る…南海トラフ巨大地震と首都直下地震の「連動」がやってくるかもしれない、「本当に地獄みたいだ」二つの大地震が一度に東京を襲い 「日本経済が壊滅的被害」を受ける未来、巨大地震で 現代ビジネス 宮地 美陽子氏による「「まさか死んでないよな…」ある日突然、日本人を襲う大災害「最悪のシミュレーション」」 宮地美陽子氏による新刊『首都防衛』 「地震の規模は、M7.3。ヒト・モノ・情報が集まる東京には、地球外生命体に強襲されたような信じられない光景が広がった。江東区や江戸川区など11の区は震度7を記録し、人口の多い23区の約6割は震度6以上の揺れが起きる。6000人以上が死亡、負傷者は9万3000人を超え、ライフラインは次々とダメージを受けた」、なるほど。 「ベテランの域に達した運転手でも見たことがない大渋滞が行く手を遮り、やむなくタクシーを路肩に放置することにした。真っ暗な道を月明かりだけを頼りに急ぎ足で自宅に向かう途中、不気味に静まり返った街では、どこからともなく「助けて」というわずかな声が風に木霊し、耳に残った・・・いざというときの対応を妻と話し合っていた。その“約束”を信じ、浜田は避難所に指定されていた小学校に向かった」、賢明なやり方だ。 「「あなた!」。聞き慣れた声に振り向くと、避難所の端で両手を振る幸子が目に涙を一杯にためていた。妊娠中の香織は入院先で無事が確認され、一家の心は少しだけ和らぐ・・・自宅での避難生活を送っていた人も家庭内の備蓄が枯渇し、避難所に次々と訪れる。支援物資やボランティアの供給には地域でバラツキがみられ、人々のストレスも増すばかりだ。高齢者や既往症を持つ人は慣れない環境での生活に症状が悪化し、避難者同士のトラブルも続発する」、なるほど。 宮地 美陽子氏による「首都直下地震は「日本危機」である…「死者3500人」「経済被害21兆円」知られざる想定の実態」 「都心南部直下地震が冬の夕方に発生した場合、都内の全壊する建物は約8万2200棟に上り、火災の発生で約11万8700棟が焼失。避難者は約299万人に達する。 発災直後は広範囲で停電が発生し、首都機能を維持するための計画停電が行われる可能性も生じる。 上水道は23区の約3割、多摩地域の約1割で断水。上下水の配管などが被害を受けたビルやマンションは修理しなければ水道やトイレを利用できない状況が続く。 電話やインターネットはつながらず、携帯電話の基地局が持つ非常用電源のバッテリーが枯渇した場合には利用不能状態が 長引くおそれがある・・・物資不足への懸念から「買いだめ」が多発していく。 避難所で生活する人の数は自宅の備蓄がなくなる発災4日後から1週間後にかけてピークを迎え、体の不調から死亡する「災害関連死」もみられるようになる」、なるほど。 「大地震の首都襲来は「日本危機」につながる。老後生活のために浜田がコツコツと貯めてきたお金は実質目減りしていった」、なるほど。 宮地 美陽子氏による「「南海トラフ巨大地震」が発生する日…命を守るために知っておきたい「最悪の被害想定」」 「大地震が首都を襲った4年後、静岡県から宮崎県にかけて最大震度7の南海トラフ巨大地震が発生した。 最大クラスの地震により周辺地域でも震度6強の揺れが起き、太平洋沿岸は九州地方にかけて10メートルを超える大津波が襲来。猛烈な強い揺れや火災、津波によって238万棟超が全壊・焼失し、死者は32万人を超えた。) 被害は近畿や東海、四国など広範囲に及び、関西圏を中心にダメージは深刻だ。ライフラインは2710万軒が停電し、上水道は3440万人が断水、都市ガスも約180万戸で供給がストップした。 道路の沈下や損傷は4万ヵ所以上で見られ、中部国際空港や関西国際空港のほか大分や宮崎、高知の空港で津波浸水が発生する」、なるほど。 宮地 美陽子氏による「じつは起こり得る…南海トラフ巨大地震と首都直下地震の「連動」がやってくるかもしれない」 「知らなかった」で「すませ」たいところだ。 破滅的な結果だ。 宮地 美陽子氏による「「本当に地獄みたいだ」二つの大地震が一度に東京を襲い、「日本経済が壊滅的被害」を受ける未来」 「路面にわずか0.5センチの降灰があるだけでスリップする車が続出する。 雨天時に3センチも積もれば二輪駆動車の走行は困難となり、四輪駆動車であっても10センチ以上で通行は難しい。物流は停滞し、緊急車両の走行も困難になる。 電力は、降灰中は火力発電所の発電量が低下し、6センチ以上で停止。10センチ以上の降灰に雨が降れば倒木で電線が切断されて停電が発生する。通信は噴火直後からの大量アクセスで電話がつながりにくく、携帯電話のアンテナに火山灰が付着すれば通信障害が生じる。 下水道は堆積の厚さにかかわらず断水や使用制限が起きる」、さらに恐ろしいのは、原子力発電所の冷却が困難になって、全ての炉がメルトダウン、放射能が撒き散らされるシナリオだ。これで日本は壊滅状態に陥る。 宮地 美陽子氏による「巨大地震で「経済被害が東日本大震災の10倍超に」…東京都の「被害想定」が問うもの」 「二つの大地震に加えて、富士山の噴火が我が国を襲えば国力は大きく減退する。明日、生じるかもしれないと思って対策と準備を進めるべきだ」、なるほど。 宮地 美陽子氏による「「富士山が噴火しても東京には影響ない」は本当か…じつは何度も「不気味な動き」が起きている」 「富士山噴火」で火力発電所の空気フィルターが目詰まりすれば、発電はストップし、原子力発電の冷却が困難になり、メルトダウンを起こして、やがて大爆発して放射能汚染を撒き散らす悲劇的結果をもたらす。まさに日本壊滅である。
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災害(その17)(災害国ニッポンの末路は中国の「属国化」だ!【養老孟司×茂木健一郎×東浩紀鼎談】、能登半島地震の避難者はなぜ減らない?地震大国ニッポンの復興を遅らせる「最悪の逃げ口実」とは) [社会]

災害については、本年3月8日に取上げた。今日は、(その17)(災害国ニッポンの末路は中国の「属国化」だ!【養老孟司×茂木健一郎×東浩紀鼎談】、能登半島地震の避難者はなぜ減らない?地震大国ニッポンの復興を遅らせる「最悪の逃げ口実」とは)である。

先ずは、本年5月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した解剖学者の養老孟司氏と、脳科学者の 茂木健一郎氏と、批評家・作家の東 浩紀氏による対談「災害国ニッポンの末路は中国の「属国化」だ!【養老孟司×茂木健一郎×東浩紀鼎談】を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/341607
・『明治以来人口が拡大してきた日本は、いま人口減少局面に入っている。子どもは減り、老人は増え、GDPの世界ランクがずるずると低下するなかで、しかし天災だけは定期的にやってくる。次の大地震が人口密集地を直撃したとき、日本はどう生き残ればいいのか。現代日本が誇る三賢である養老孟司、茂木健一郎、東浩紀が、議論を交わした。※本稿は、養老孟司、茂木健一郎、東 浩紀『日本の歪み』(講談社現代新書)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『次の大震災が人口密集地で起きたら日本はどうなる?  養老 NHKで「西の半割れ」をテーマにした、南海トラフ巨大地震が来たら何が起こるのかを描いたドラマ仕立ての番組をやっていました。和歌山県沖で地震があった場合、関西一円、瀬戸内一円で震度7だそうです。当然それだけでは済まなくて、それに伴ってあちこちの活断層が連動する可能性もあるし、東側にもいずれ来ます。東南海地震もずっと来ると言われているし、南海トラフと連動して起こるかもしれない。首都直下型地震や富士山噴火が連動する可能性もある。 茂木 前回の東南海地震は1944年ですが、覚えていらっしゃいますか。 養老 覚えていないです。戦争中でしたから、報道管制で、そういう景気の悪い話はしなかった。 東 M7.9で、相当大きな地震だったようですね。 養老 そうらしいですね。 茂木 養老先生がお生まれになったのは関東大震災の14年後ですが、名残はありましたか? 養老 全くないです。でも母の話は聞いたことがあります。大震災の日は横浜の本牧に泊まっていて、歩けなくて庭に出られなかったそうです。ただ、その旅館がなぜか虎を飼っていて、なんとか庭に出たら虎がうおーと吠えていたと言っていました。 茂木 関東大震災もM7.9と言われていますね。1923年だから、今年でちょうど100年か。 養老 日本の場合は天変地異がしょっちゅう起こるので、起こった後にどう復興するかに賭けたい。NHKの番組によれば、大阪では津波が川をさかのぼって梅田まで入ってくるそうです。そうなったら大阪は壊滅します。もちろん東京にも同じことが起こる可能性が十分ある。大事なのは、その後どういう社会をつくるかということです。報道では災害による損害ばっかり言うけど、災害の後すぐに起こるのは復旧です。 具体的な課題で考えると、例えば東海地震が来たら新幹線はダメになります。浜松あたりが津波をかぶるだろうし、新丹那トンネルも断層でズレるかもしれない。そのときに、復旧するかどうか。あんなもんやめたとするのか、どうしても元に戻すのか。) 東 新幹線は戻すしかないでしょう。リニアはこれを好機と工事を中止するかもしれませんが。 養老 都内のビルだってどのくらいもつかわかりません。震度7の地震が一度しか来ないとは限らないわけで、二度三度来たときに、本当に耐えられるのか。 被害によっては、いまのような生活を続けるのは無理になります。小さな自給自足の集団を日本中に置いていくしかない。でも島根県や鳥取県の可住地面積あたりの人口密度がヨーロッパと同じくらいで、日本では過疎と言われている地域でも世界基準で見たら標準です。つまり人口もかなり減らないと、小さな自給自足の社会はやっていけないかもしれない。 東 その通りだと思います。しかし、そうなってしまうと、強い隣国に依存することになりそうです。たとえば中国。 養老 外側で見るとそういうことになりやすい。どのくらい金を必要とするのかにも関係してきます』、「日本では過疎と言われている地域でも世界基準で見たら標準です。つまり人口もかなり減らないと、小さな自給自足の社会はやっていけないかもしれない。 東 その通りだと思います。しかし、そうなってしまうと、強い隣国に依存することになりそうです。たとえば中国。 養老 外側で見るとそういうことになりやすい。どのくらい金を必要とするのかにも関係してきます」、なるほど。
・『『天災で壊滅した日本は中国の「属国」として生まれ変わる  東 現実的に考えても、人も減り、金もなくなり、小さい社会しかないという状況になったら、外国人がどっと移住してきそうですが……。 養老 そうですね。食料がない、エネルギーがない、となったら買わなければなりません。それが今年のように食糧難だ、エネルギー不足だ、円安だというときだと余計にお金がかかる。そのときに大きな額を日本に投資してくれる国があるとすれば、アメリカは時間がかかるでしょうから、おそらく中国です。 東 つまり、すごく要約すると、日本は天災によって実質壊滅し、中国の属国になることによって新しく生まれ変わるしかないのではないか、というのが養老さんのお考えでしょうか。 養老 そうですね。つまり属国とはなにかという問題です。中国の辺境は昔からたくさんあったわけで、今でも中国がないと成り立たないという状況を作ってしまえば、それは中国の一部であるのと同じことですから。政治的にどうレッテルを貼るかの話でしかない。 東 いまはそういう意見は反発が大きいかもしれませんね。) 養老 みんな不愉快かもしれないけど、いちばんありうるシナリオです。明日食べるものに困っているときに「中国のお金を受け取るべきじゃない」と言っても誰も聞きませんよ。背に腹は代えられないというのはそのことです。 東 われわれは災害の起こる国に住んでいる。だから、なるようになる、という考え方しかもてない。そんなわれわれの行く末は属国しかない。それが結論ということになりますが、それでいいのでしょうか。 養老 (笑) 茂木 アメリカの属国の次は中国の属国になると。 養老 独立とはなんだという話ですよね。 東 憲法9条と同じように、「独立」も解釈で乗り越えるのだと。 茂木 たしかに憲法9条はアメリカの属国である実態を表しているものだから、その実態が変わらないなら変えなくてもいいのかもしれないですね。養老先生がおっしゃるように、その実態に政治的に「平和主義」というレッテルを貼っているだけで。 東 現実に日本国内には、主権者である日本国民がコントロールできない外国の軍事基地がいくつもある。ロシアが北方領土を返さないのも、要は米軍基地が北方領土に作られる可能性があるからです。東京上空ですら横田基地の管理下にあって、羽田や成田に行く飛行機のルートも制限されている。ある意味、既に「独立」の意味は変えられているのかもしれません』、「現実に日本国内には、主権者である日本国民がコントロールできない外国の軍事基地がいくつもある。ロシアが北方領土を返さないのも、要は米軍基地が北方領土に作られる可能性があるからです。東京上空ですら横田基地の管理下にあって、羽田や成田に行く飛行機のルートも制限されている。ある意味、既に「独立」の意味は変えられているのかもしれません」、なるほど。
・『隣人であり続ける中国とロシアに強硬な態度を取り続けていいのか  茂木 いまでもよく覚えているのは、森喜朗さんが首相で、皆から「サメの脳」だとか言いたい放題言われていたとき、養老先生が「茂木くん、昔はああいうことは言わなかったものだよ。外交ってものがあるからね」とおっしゃったことです。いくら反対することがあっても、一国の首相は国益を代表して外国と折衝する立場である以上、そこまでバカにすることはないんだ、と。) 茂木 さすがだなと思ったんですが、それは東さんが言った「忘れる」(編集部注/平等主義的で、他人の視線を気にして、熱しやすく冷めやすく、誰かを一斉に叩いて、その人が消えたら嘘のように忘れるという日本の民主主義の歪みを、東は指摘している)ということにも関係する気がします。例えば大地震が起きたら中国から経済的支援を受けざるをえないかもしれないのだから、対中強硬策と言ってもほどほどにしようね、というのも、一つの「忘れない」ということですよね。 東 それは、鈴木宗男氏が言うように、ロシアはずっとあの位置にあって、基本的に付き合っていかなければならない国なのだからウクライナに全振りしている場合じゃないという話にもつながりますね。僕は鈴木氏の戦争理解は間違っていると思いますが、言いたいことはわかる。短期的な善悪とは別に、長期的なオプションもしたたかに抱えておかなくてはいけない。 茂木 本当にそうだよね。 東 でも、日本はそういうのこそ苦手な国なんですよ。 茂木 実際には、日本はアメリカのような軍事力があるわけでもないし、もはや経済も弱いし、条件としてはあまり偉そうなことは言えない国なんですよね。絶対的な何かをもっているというより、どこともうまくやっていかないと生存が難しい。 話は少しずれますが、僕が出会ったときには養老先生は東大医学部の現役の先生でしたが、養老先生が偉そうだったことが1度もないんですよね。イデオロギーで生きていないからなんでしょうか。例えばいま、人工知能の研究者とか、なんでそこまで偉そうなのっていう人が多いですよ。とりわけ、アメリカで人工知能やっている人たちって、俺たちが世界をつくる、みたいな勢いがある。サム・アルトマンとか、本当のトップは案外謙虚なのですが。養老先生は、なぜ謙虚なのか?  養老 知らないよ(笑)。別に何も変わりないですよ』、「実際には、日本はアメリカのような軍事力があるわけでもないし、もはや経済も弱いし、条件としてはあまり偉そうなことは言えない国なんですよね。絶対的な何かをもっているというより、どこともうまくやっていかないと生存が難しい」、なるほど。

次に、7月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「能登半島地震の避難者はなぜ減らない?地震大国ニッポンの復興を遅らせる「最悪の逃げ口実」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/346495#:~:text=%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%AF%E3%80%81%E8%83%BD%E7%99%BB%E5%8D%8A%E5%B3%B6%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86,%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%A0%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%AE%E3%81%A0%E3%80%82
・『能登半島地震の避難者数はいまだに2000人超「地震大国」日本の信じられない現状  「地震大国」と呼ばれるほど、多くの大規模地震を経験した日本の “実力”は、こんなものなのか――。 発生から半年が経過した能登半島地震において、石川県内の避難者数が7月1日時点でなんといまだに2086人もいらっしゃるというのだ。 しかも、NHKの調べでは1198人はホテルや旅館などの宿泊施設にいるそうだが、888人は「1次避難所」と呼ばれる体育館や公民館に身を寄せている。 ご存じの方も多いだろうが、先進国の中では、被災者がこのような形で半年も紛争地の難民のような生活を強いられる状況は、かなり珍しい。そもそも、日本では定番の「体育館で雑魚寝」というスタイルも、欧米の災害支援関係者から「クレイジー」と指摘されており、近年では災害ではなく避難生活で体調を崩して亡くなってしまう「災害関連死」の原因のひとつとされている。 大阪万博だ、バレーボールの五輪出場だ、大谷選手のホームランが量産体制に入っただとか、我々がお祭り気分で浮かれていた間に、そんなクレイジーな避難生活を強いられている被災者が無数にいるという事実に、ショックを受ける人も多いはずだ。 では、なぜこんなことになってしまったのかというと、マスコミに登場をする専門家によれば「地理的要因と人手不足」だという。 石川県によれば、県内で着工した仮設住宅6642戸のうち5006戸(75%)が完成しているが、半年でのこの整備状況は東日本大震災時の福島県よりも低いという。これは、能登半島という奥まった土地のせいで、被災地に入れる業者が少なく、また平地が少ないので住宅整備用の土地の確保に難航しているからだという。それに加えて、円安による建築資材の高騰や、建設業の人手不足によって、計画が思うように進まないからだというのだ。 そう聞くと、「じゃあ、しょうがないよね。現場の人たちも一生懸命頑張ってくれているんだから、まだ避難所生活をしている人は気の毒だけど、順番で回ってくるものだから、もう少し辛抱してもらえれば……」と感じる人もいるかもしれない。 ただ、個人的にはそうやって何かあるたびに「できない理由」をたくさん並べて「しょうがない」という方向へもっていくムードこそが、日本の震災復興をここまで遅くさせた「元凶」だと思っている』、「個人的にはそうやって何かあるたびに「できない理由」をたくさん並べて「しょうがない」という方向へもっていくムードこそが、日本の震災復興をここまで遅くさせた「元凶」だと思っている」、なるほど。
・『東日本大震災時から繰り返されてきた「同じ課題」  能登半島が奥まっているのはわかりきっていて、地震が起きれば道路が遮断されて物資が届かなくなるなどということは、はるか昔から指摘されてきたことだ。さらにもっと厳しいことを言わせていただくと、地震が起きてから「ヨーイドン!」で仮設住宅建設に着手しても、膨大な時間がかかることもわかりきっていた。たとえば、今から13年前の東日本大震災では1カ月後にこんな問題が起きていた。 「東日本大震災の被災地で、応急仮設住宅が不足している。被災各県は現時点で合計6万戸超が必要としているが、建設のめどが立ったのは1割程度にすぎない。国土交通省は2011年4月5日、震災後の5カ月間で6万戸を供給する目標を打ち出したが、建設の遅れが懸念されている。合板などの資材がひっ迫していることに加え、建設に適した用地確保が難しくなっていることが要因だ」(日本経済新聞2011年4月11日) ……と分析をされたところで、仮設住宅ができるわけでもない。結局、あれが悪い、これが問題だとワーワーやっている間に、被災者の中には半年以上も、体育館でダンボールの仕切りによる不自由な生活を強いられた人もいた。災害関連死も3792人にのぼった。 この13年前の教訓を受けて、政府や全国自治体では対策が検討された。地震や津波が起きた際、人手不足のこの国ではほぼ100%の確率で「仮設住宅が不足して体育館で雑魚寝状態を半年続けて災害関連死が増える」という未来がやってくるからだ。 しかし、検討されただけだった。 「予算がない」「人手がない」「何をすればいいかわからない」という感じで検討の段階でウヤムヤになってしまったのである。 つまり、石川県の「地震から半年で避難所暮らし2086人」というのは、地震大国として手をつけなくてはいけない対策を、やらなかった結果であって、「しょうがない」で済まされるような話ではないのだ』、「石川県の「地震から半年で避難所暮らし2086人」というのは、地震大国として手をつけなくてはいけない対策を、やらなかった結果であって、「しょうがない」で済まされるような話ではないのだ」、その通りだ。
・『進まない避難所建設の救世主 「ムービングハウス」の可能性  という話をすると、「偉そうに言っているけれど、じゃあどんな対策があるのさ?」と思うだろうが、今からでもやれることは山ほどある。たとえばそのひとつが、「ムービングハウス」だ。 ムービングハウスとは、国際規格の海上輸送コンテナと同じサイズ(長さ12メートル、幅2.4メートル)の移動式木造住宅のことだ。筆者は能登半島地震の9日後に《“クレイジー”な日本の避難所を救う 「ムービングハウス」とは何か》という記事で、このムービングハウスを国策として普及させて、全国自治体で備蓄品にすべきだということを提言させていただいた。 
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2401/10/news020.html  実は今回の能登半島地震の前から、ムービングハウスの普及を行う日本ムービングハウス協会は、さまざま自治体と災害時の仮設住宅建設で協定を結んでいる。なぜかというと、「人手不足と資材不足で仮設住宅ができません」という状況を回避できるからだ。 ムービングハウスはコンテナと同サイズということで大型トレーラーに積載してそのまま輸送できるので、道路さえ復旧すればすぐに被災地へ集められる。現地に建設業者が入ってプレハブを建設するよりもはるかに人手が少なくて済むことは言うまでもない。 しかも、きちんとした避難所を建てるとなると地主などと交渉をしなくてはいけないが、置くだけなので用地確保は簡単だ。設置後は電気・上下水道、ガスに接続すれば、すぐに生活ができるので、被災者にとってもありがたい。 そのスピード感は折り紙付けで、実は石川県内で初めての仮設住宅は輪島市に設置されたムービングハウスだった。 また、使い回すことができるというメリットがある。仮設住宅は建ててしまうので、被災者が出ていけば取り壊すためまた費用がかかるが、ムービングハウスは用済みになれば、別の被災地に移動すればいい。しかも、平時は研修の宿泊施設や事務所などに使ってもいいので、ムダがない。 まさしく地震大国ニッポンにピッタリな災害支援システムだが、石川県は被災するまでムービングハウス協会と協定を結んでいなかった。能登地震後の2月に協定を結んだのである。もし仮に、もともと石川県が協定を結んでいて、県内の各自治体にムービングハウスを備蓄したり、他県から受け入れる体制を整えていたりしたら、今のような状況になっていなかったかもしれないのだ』、「仮に、もともと石川県が協定を結んでいて、県内の各自治体にムービングハウスを備蓄したり、他県から受け入れる体制を整えていたりしたら、今のような状況になっていなかったかもしれないのだ」、なるほど。
・『地震が発生してから「ヨーイドン」で進歩なし  このように、日本の復興が遅い根本的な原因は、過去の震災の教訓を活かさず、「地震が発生してからヨーイドンで慌ててやる」ということにある。身も蓋もないことを言えば、地震大国のわりには「準備不足」なのだ。 これは同じく地震大国として知られる台湾と比べれば、その差は一目瞭然だ。 ご存じのように、能登半島地震からしばらくたった4月、台湾の花蓮市でも地震が発生して、迅速な災害対応が注目を集め、何かにつけて能登地震と比較された。 たとえば、能登ではなかなか避難所が開設されず、開設されても「体育館で雑魚寝」という状態が続いたが、花蓮市では地震発生からわずか3時間で避難所が開設され、そこにはプライバシーを守るためのテントだけではなく、温度調節もできるシャワー用テントや、避難者たちの疲れや緊張をほぐすマッサージや、子どもたちにはビデオゲームも用意された。 また復興のスピードも対照的だ。能登ではいまだに倒壊した建物や瓦礫の撤去が進んでいない。6月28日、石川県輪島市の坂口茂市長は、地震で倒壊した7階建てのビルについて周辺の道路にはみ出ていることから、市として解体・撤去に向け検討していると述べた、倒壊原因を調査しているにしても、半年でようやく「検討」はのんびりすぎる。 一方、台湾はどうかというと、2つのビルが倒壊した花蓮市では、急ピッチでビルの解体が進められ、地震発生翌日にはほぼ終了した。交通の復旧も早く、落石で運行停止となっていた台湾鉄道も、一夜明けた頃には線路が修復され、始発から全線で運行が再開した。 では、なぜ台湾の対応はこんなに早いのか。背景を取材したフジテレビの《台湾・地震発生3時間で避難所開設 “迅速”カギは「官民連携」 専門家「日本は自治体職員の負担が大きい」》というニュースによれば、東日本大震災や熊本地震の被災地支援を教訓に、行政部門と民間団体が連携して準備をしていたからだという。 https://www.fnn.jp/articles/-/682444?display=full なぜ我々は、台湾のようなことができないのか。過去の被災地支援を教訓に、官民が連携して危機に備えるということができないのか。 政治が悪い、縦割り行政が悪いなど、いろいろな意見があるだろうが、根本的なところでは、日本人の口癖ともいうべき「しょうがない」に象徴される「無常感」に問題があると筆者は考えている』、「政治が悪い、縦割り行政が悪いなど、いろいろな意見があるだろうが、根本的なところでは、日本人の口癖ともいうべき「しょうがない」に象徴される「無常感」に問題があると筆者は考えている」、「無常感」とは言い得て妙だ。
・『「しょうがない」で全てを正当化してはいないか  かつて外国人の経営者にインタビューをしていて、「日本人の“しょうがない”は非常に興味深いですね。めんどくさくてやりたくないことや、改革をしなくちゃいけないけれど反対が多くて手をつけたくないことも、“しょうがない”と言うと、なんとなく正当化できるじゃないですか」と言われて、妙に納得にしたことがある。 確かに、我々日本人は「しょうがない」で生きている。地震から半年経過してもなお2000人以上が避難所にいると聞いても、自治体職員や建設業の人たちだって頑張っているんだと言われれば、「しょうがない」とあきらめる。ムービングハウスがなかなか普及せず、いまだに体育館で雑魚寝スタイルの避難所があると聞いても、「自治体は財政がひっぱくしていて予算も人員もない」と言われたら、「しょうがない」と納得する。 政治や社会問題もそうだ。不正などが発覚した当初はワーワーと大騒ぎをしてみるが、マスコミやら専門家から「できない理由」「変わらない理由」を説明されると、「じゃあ、しょうがないか」とおとなしくなる。 そして、忘れる。目の前の災いや不幸を過去のものとして受け入れて、前を向いて生きていく。そんな「しょうがない」に象徴される日本人の精神性は、「災害大国」がゆえに育まれたのではないか、という意見もある。 鎌倉時代の地震や疫病などを綴ったことから、日本初の災害ルポと言われる鴨長明の『方丈記』にはこんな一説がある。 「すなはち人皆あぢきなきことを述べて、いさゝか心のにごりもうすらぐと見えしほどに、日かさなり年越えしかば、後は言の葉にかけて、いひ出づる人だになし」 大地震の直後は人々も、世の無常を口にしたりいろんなことを語っていたが、時間が経過すると、地震のことなど誰も振り返らない。つまり、「喉元過ぎれば熱さ忘れる」というやつだ。それはある意味で「前向き」で精神衛生上的にもプラスに働いていたかもしれない。 ただ、これは「復興」という点ではマイナスだ。被災地で苦しむ人々を少しでも多く救っていくには、台湾のように過去の被災地支援から学んで、しっかりと官民で準備をしなくてはいけない。 ……と苦言を呈したところで、能登の復興が急速に進むわけでもない。マスコミ報道を見ても、被災地の現状は忘れかけられているので、次の巨大地震でも同じように「仮設住宅が足りない」と言いながら、被災者は体育館で雑魚寝をしているのだろう。 この国で生きていくうえでは、このあたりは「しょうがない」と受け入れていくしかないかもしれない』、「被災地で苦しむ人々を少しでも多く救っていくには、台湾のように過去の被災地支援から学んで、しっかりと官民で準備をしなくてはいけない」、その通りだ。
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機能性表示食品制度(その6)(小林製薬“猛毒サプリ” 76人死亡でも事件化に立ちはだかる「2つの壁」とは、ついに死者100人に《小林製薬「紅麹」問題》を振り返る…結局 悪いのは会社か紅麹か それとも「意図せぬ成分」だったのか、「自然由来」「無添加」でも健康被害が起きるのはナゼ? 小林製薬「紅麹」問題でわかった《サプリ・健康食品》の恐ろしすぎる落とし穴、《小林製薬「紅麹」問題》引責辞任したはずの元会長に「月額200万円」…創業家に“異常な高待遇”を許したのは誰なのか?) [社会]

機能性表示食品制度については、4月27日に取上げた。今日は、(その6)(小林製薬“猛毒サプリ” 76人死亡でも事件化に立ちはだかる「2つの壁」とは、ついに死者100人に《小林製薬「紅麹」問題》を振り返る…結局 悪いのは会社か紅麹か それとも「意図せぬ成分」だったのか、「自然由来」「無添加」でも健康被害が起きるのはナゼ? 小林製薬「紅麹」問題でわかった《サプリ・健康食品》の恐ろしすぎる落とし穴、《小林製薬「紅麹」問題》引責辞任したはずの元会長に「月額200万円」…創業家に“異常な高待遇”を許したのは誰なのか?)である。

先ずは、7月17日付け文春オンライン「小林製薬“猛毒サプリ”、76人死亡でも事件化に立ちはだかる「2つの壁」とは」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/72060
・『「今になって何を言い始めてるんだと」 6月28日、武見敬三厚労相(72)が、怒りの矛先を向けたのは、「紅麹」問題で、新たに76件の死亡の疑いを報告した小林製薬である』、「新たに76件の死亡の疑いを報告」とは驚きだ。
・『突然増えた死亡者数  社会部記者が解説する。 今年3月に発覚した小林製薬の『紅麹』問題では、同社が製造した紅麹を原料とするサプリメントを摂取した消費者が、腎疾患などを発症。当初は、5名が死亡した疑いがあるとされていたが、その数が突然、76名に増えたのです」 死亡者数が突如増えたのはなぜか。改めて厚労省健康・生活衛生局に聞くと、 「死亡者数の更新がないため、確認をしたにも関わらず、小林製薬の判断により死亡者数の報告をしなかったことは極めて遺憾です」 と小林製薬を断罪する。 「今後、厚労省は、業務上過失致死傷罪で事件化する可能性もあることから、調査の進捗を管理する方針です」(前出・社会部記者) 業務上過失致死傷罪は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金が科される重罪である。 2000年に起こった雪印乳業(現雪印メグミルク)の集団食中毒事件では、発生当時の社長や工場長が業務上過失致死傷罪などに問われた。社長と専務は不起訴で、工場長ら現場責任者だけが有罪となった』、「業務上過失致死傷罪は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金が科される重罪である」、それにしても「小林製薬」の報告体制はデタラメだ。
・『小林製薬、事件化には2つの壁  だが小林製薬の場合、事件化には2つの壁が立ちはだかるという。まずは、「予見」の壁だ。刑法が専門の園田寿甲南大名誉教授が解説する。 「刑事である業務上過失致死傷罪の適用は、事件を具体的に予見できたかどうかが問題となります。本件はカビが製品に紛れ込んだことによって発生したものとされます。その場合、経営陣や現場の工場長にそれが予見できていた、といえるかは非常に難しい」) ポイントは3月22日の社長会見にあると指摘するのは企業問題に詳しい加藤博太郎弁護士だ。 「雪印の事件では、社長と専務は『予見不可能だった』として不起訴となりました。小林製薬も会見で『未知の成分』という言葉を使っており、健康被害が起こるとは予見ができなかったという点を主張しようとしているのではないか」 2つ目の壁は、死亡疑いの数すらまともに報告しない小林製薬の「隠蔽体質」である。 07年、表示義務のある原料名を表記せずに栄養補助食品を販売していたことが発覚。小林製薬は客からの苦情が出ても調査すらせず放置していたという。発売から5年半ほど経ってから回収に動き、「原因が分からず、対応が遅れていた」と釈明したこともある。 同社の元社員が証言する。 「Kさん(小林一雅代表取締役会長の愛称)が、恐ろしいから、クレームでもなんでも最初は隠してしまうところがある」』、「小林製薬も会見で『未知の成分』という言葉を使っており、健康被害が起こるとは予見ができなかったという点を主張しようとしているのではないか」 2つ目の壁は、死亡疑いの数すらまともに報告しない小林製薬の「隠蔽体質」である」、なるほど。
・『“隠蔽工作”は過去にも  彼が在職中も、“隠蔽工作”が行われたことがあったという。 「1990年代のことですが、当局による税務調査が入ることになった際に、当時の経理部長が、『まだ許可を得ていないものを輸入していたことが分かる書類がある。バレたらまずい』と本社の女性更衣室に隠したこともあった。今回の一件も、『都合が悪いことは黙っておけ』という会社の姿勢の表れではないか」(同前) 小林製薬に、死亡者数や過去の税務調査時の“隠蔽疑惑”などについて質問したところこう回答があった。 「6月13日に厚労省には、報告すべき事案はございませんと回答いたしました。その後、報告・公表のあり方の見直しを加速させ、報告に至りました。(過去の税務調査については)回答を差し控えます」 包み隠さず事実関係を明らかにする姿勢が、あったらよかったのだが』、「「6月13日に厚労省には、報告すべき事案はございませんと回答いたしました。その後、報告・公表のあり方の見直しを加速させ、報告に至りました」、隠蔽体質溢れた姿勢だ。これでは、進展は期待できない。

次に、8月1日付け現代ビジネス「ついに死者100人に《小林製薬「紅麹」問題》を振り返る…結局、悪いのは会社か紅麹か、それとも「意図せぬ成分」だったのか」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/134786?imp=0
・『小林製薬の「紅麴(べにこうじ)」成分入りサプリメントをめぐる健康被害問題はいまだ深刻な様相を呈している。 7月30日、同社が摂取との因果関係を調査している死者が100人に達したことが判明。厚生労働省によれば、同社による因果関係の調査は8月中までに終えるとしているが、はたして問題の解明に至るのか――。あらためて問題発生当初の状況、そして原因はどこにあるのかについて分析をしていく』、「死者が100人に達した」とは衝撃的だ。
・『小林製薬社外取締役の証言  「最初のニュースリリースを出す前日('24年3月21日)に、『重大事案』が発生したと連絡がありまして、その翌日に臨時取締役会が開かれました。それまで今回の件が議題に上がったことはないので、驚いたし、ショックでした。信頼性に対するダメージは大きいと思いますが、会社は誠意をもって対応していますし、誠実にかつ適時に情報を開示してほしいということは僕も伝えました」 小林製薬の社外取締役を務める、一橋大学名誉教授の伊藤邦雄氏は淡々と語った。 小林製薬が販売したサプリメント「紅麹コレステヘルプ」などに含まれる紅麹成分が、多数の人に健康被害をもたらした問題が深刻化している。 紅麹成分を含むサプリ摂取後に入院が必要になった患者は492人に達し、関与が疑われる死亡事例も93人確認された('24年7月10日時点)。腎疾患で亡くなった一人は、「紅麹コレステヘルプ」計35袋を定期購入し、死亡する今年2月まで約3年間摂取し続けたという』、「社外取締役を務める、一橋大学名誉教授の伊藤邦雄氏」あの「伊藤邦雄氏」が「社外取締役」をしているとは驚いた。
・『「非常に規律意識が高い会社」  小林製薬は「衛生管理をきちんと行ったうえで生産しており、製品を出荷させていただく際には微生物試験などの検査をしていた」(広報・IR部担当者)と説明するが、有害な「意図しない成分」が含まれていたことは事実である。 '24年1月15日に「サプリメントを服用した人に腎疾患がある」と医師の報告を受けてから原因物質の特定に時間を要したというが、最初の発表は3月22日とあまりに遅かった。 小林製薬は1886年に小林忠兵衛が名古屋に創業した老舗。トイレ用芳香洗浄剤「ブルーレット」や外用消炎鎮痛薬「アンメルツ」といった大ヒット商品のほか、「サラシア100」「グルコサミンEX」などのサプリメントも販売している。 「無理な成長を目指すよりは、堅実経営が売り。職種や社歴に関係なく全従業員が参加できる『アイデア提案制度』は有名で、風通しの良いアットホームな企業です。不祥事などはこれまで皆無でした」(小林製薬関係者) 会社の経営について、前出の伊藤氏もこう語る。 「同族企業ですけれど、非常に規律意識が高いです。僕が社長に意見を申し上げると、非常に慎重で丁寧に聞いてもらえます。製品をつくっている過程では、瑕疵などないと思ってきました」 しかし、紅麹サプリとの関連が疑われる健康被害と死者の数は今なお増え続けている』、「前出の伊藤氏もこう語る。 「同族企業ですけれど、非常に規律意識が高いです。僕が社長に意見を申し上げると、非常に慎重で丁寧に聞いてもらえます。製品をつくっている過程では、瑕疵などないと思ってきました」、甘過ぎる見方だ。
・『紅麴自体は何も悪くない  問題の紅麹とは、米や麦などの穀類をカビの一種である紅麹菌で発酵させたもの。鮮やかな赤色が特徴的な天然の着色料として、味噌や塩辛、せんべい、紹興酒などに幅広く使用されている。 紅麹菌の中には腎臓の病気を引き起こす有害物質「シトリニン」をつくるものもあり、'14年にはスイスで紅麹を成分とする食品の販売が禁止された。 ただし、紅麹自体を危険なものと考えるのは過剰反応だという。東京大学名誉教授の唐木英明氏が語る。 「小林製薬の紅麹菌はシトリニンを合成する遺伝子がない株を使用しています。今回は、サプリ用の原料のほんの一部に『意図しない成分』が入っており、他社の食品色素用の原料には入っていなかった。通常は起きないことが起きたとしか考えられません。紅麹自体は何も悪くない」 シトリニンは含まれていないが、「意図しない成分」は含まれていた。その理由については、何かしらの微生物や別のカビが混入して毒をつくり出した可能性や、生産工程で何者かが異物を混入した可能性もあるという。 前出の小林製薬担当者は「意図しない成分が何かをいつ発表できるかは未定」とだけ答えた』、「「意図しない成分」は含まれていた。その理由については、何かしらの微生物や別のカビが混入して毒をつくり出した可能性や、生産工程で何者かが異物を混入した可能性もあるという」、なるほど。
・【つづきを読む】・・・紹介省略・・・。

第三に、8月1日現代ビジネス「「自然由来」「無添加」でも健康被害が起きるのはナゼ? 小林製薬「紅麹」問題でわかった《サプリ・健康食品》の恐ろしすぎる落とし穴」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/134787?imp=0
・『いまだ完全な原因解明に至っていない、小林製薬の「紅麹(べにこうじ)」成分入りサプリメントを巡る健康被害問題。 前編記事『ついに死者100人に《小林製薬「紅麹」問題》を振り返る…結局、悪いのは会社か紅麹か、それとも「意図せぬ成分」だったのか』では、サプリ用の原料のほんの一部に混入していた「意図せぬ成分」の恐ろしさについて触れた。 今回の問題で改めて浮き彫りになったのは、「サプリ・健康食品」自体の怖さである。それは紅麹だけではない』、「今回の問題で改めて浮き彫りになったのは、「サプリ・健康食品」自体の怖さである」、なるほど。
・『審査を受ける必要はありません  紅麹は最近、コレステロール抑制効果のある成分が含まれているとわかり、健康食品の原料として注目されていた。健康に良いとされる成分が含まれるサプリは「機能性表示食品」に分類される。その市場規模は'18年に2153億円だったが、'23年には6865億円に拡大している。 ますます身近になった機能性表示食品は医薬品と異なり、事業者が安全性と機能性に関する科学的根拠などを消費者庁に届け出れば、審査を受ける必要は一切ない。 『病気になるサプリ 危険な健康食品』の著書がある元法政大学教授の左巻健男氏が語る。 「機能性表示食品が健康の維持や増進に役立つかといえば、非常に疑問です。食品や製薬メーカーの責任で裏付ければ良いだけですから。また、摂取量に制限がある医薬品と違って、サプリは食品ですからいくら摂取しても構いません。高齢者にサプリをたくさん買わせて、企業を儲けさせようとしているだけに思えます」 紅麹問題を受けて、3月26日、国は届け出がある全ての機能性表示食品約7000件を緊急点検する方針を表明した。さらに小林製薬は、接種後に死亡した76人について因果関係を確認するため、詳細な調査を始めている』、興味深そうだ』、「「機能性表示食品が健康の維持や増進に役立つかといえば、非常に疑問です。食品や製薬メーカーの責任で裏付ければ良いだけですから。また、摂取量に制限がある医薬品と違って、サプリは食品ですからいくら摂取しても構いません。高齢者にサプリをたくさん買わせて、企業を儲けさせようとしているだけに思えます・・・国は届け出がある全ての機能性表示食品約7000件を緊急点検する方針を表明した。さらに小林製薬は、接種後に死亡した76人について因果関係を確認するため、詳細な調査を始めている」、なるほど。
・『「自然由来」「無添加」でも要注意  サプリは医薬品よりチェックが甘いので、有害成分が含まれている可能性もある。たとえそうでなくとも、機能性表示食品やいわゆる健康食品を摂取して、健康を損ねた事例は数多ある。 たとえば、'04年には肝硬変を患っていた60代女性が粉末ウコンを毎日服用したところ、症状が悪化して死亡した。また、'03年から知人に勧められてクロレラと黒酢を服用していた60代女性は、肝障害を患った。抗がん効果があるとされるアガリクスでも、肝障害を引き起こしたと疑われる事例がある。 「サプリで健康被害が多い部位は腎臓や肝臓です。外部から入ってきた毒を分解したり排出する器官ですから、繰り返し毒にさらされると、傷んでしまうわけです」(左巻氏) 他にもローヤルゼリーでアナフィラキシーショックが起きたなど、健康食品による被害は枚挙にいとまがない。 食品表示アドバイザーの垣田達哉氏が、こう警鐘を鳴らす。 「消費者は自然由来の成分とか無添加という言葉に弱い。サプリや健康食品は副作用もないから、長年摂取しても大丈夫という先入観があります。自然由来の食品といっても、もし異物が微量でも含まれていた場合、体内に多く蓄積されてしまう危険性もあるのです」 サプリさえ飲んでいたら健康を保てると安易に信じてはならない。 【こちらも読む】『グルコサミン、ウコン、マカ、黒酢…「飲んでも効かない」サプリ一覧』 『週刊現代別冊 おとなの週刊現代 2024 vol.3 クスリの新常識と副作用のすべて』は好評発売中! 累計188万部の大人気シリーズが、大幅リニューアルでさらにわかりやすくなりました! 週刊現代の大反響記事を、加筆のうえ、ギュッとまとめた一冊です』、「ローヤルゼリーでアナフィラキシーショックが起きたなど、健康食品による被害は枚挙にいとまがない。 食品表示アドバイザーの垣田達哉氏が、こう警鐘を鳴らす。 「消費者は自然由来の成分とか無添加という言葉に弱い。サプリや健康食品は副作用もないから、長年摂取しても大丈夫という先入観があります。自然由来の食品といっても、もし異物が微量でも含まれていた場合、体内に多く蓄積されてしまう危険性もあるのです」、大いに気を付けるべきだ。

第四に、8月5日付け現代ビジネスが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「《小林製薬「紅麹」問題》引責辞任したはずの元会長に「月額200万円」…創業家に“異常な高待遇”を許したのは誰なのか?」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/134993?imp=0
・『小林製薬に抱く大きな違和感  小林製薬が、紅こうじを含んだサプリメントの健康被害問題で混乱している。重要なポイントは、同社の“コーポレート・ガバナンス(企業統治)”の機能が不十分だったことだ。 今回の問題に対する小林製薬の対応には大きな違和感を抱く。 現場が被害を認識した初期段階で、同社の経営陣は消費者への注意喚起や商品の回収を行うべきだった。しかし、そうした対応を取らず、健康被害が報告された時点での初動も遅かった。 7月23日、創業家出身の会長と社長が辞任を発表。しかし、会長は特別顧問、社長は補償担当の取締役として残るようだ。創業家の影響力が強いとの指摘もある中、創業家出身の前経営者が組織に残ったままで、被害者が納得するとは考えづらい。 同社には社外取締役がいる。彼らが反対すれば新しい経営陣の下で抜本的な組織の変革を目指すこともできたはずだが、実現していない。取締役会が、本来期待された機能を果たしているのか疑問符もつく。 このままでは同社は存在意義を失うかもしれない。小林製薬が社会の信頼を回復するには、経営陣がガバナンスの重要性を十分に理解し、新しい企業として生まれ変わる覚悟が必要だろう』、「現場が被害を認識した初期段階で、同社の経営陣は消費者への注意喚起や商品の回収を行うべきだった。しかし、そうした対応を取らず、健康被害が報告された時点での初動も遅かった。 7月23日、創業家出身の会長と社長が辞任を発表。しかし、会長は特別顧問、社長は補償担当の取締役として残るようだ。創業家の影響力が強いとの指摘もある中、創業家出身の前経営者が組織に残ったままで、被害者が納得するとは考えづらい。 同社には社外取締役がいる。彼らが反対すれば新しい経営陣の下で抜本的な組織の変革を目指すこともできたはずだが、実現していない。取締役会が、本来期待された機能を果たしているのか疑問符もつく。 このままでは同社は存在意義を失うかもしれない。小林製薬が社会の信頼を回復するには、経営陣がガバナンスの重要性を十分に理解し、新しい企業として生まれ変わる覚悟が必要だろう」、こんな不徹底な辞任劇を認めるとは、社外取締役は何をしているのだろう。
・『初動があまりに遅すぎた  7月23日に小林製薬が公表した調査報告書から、今回の紅こうじサプリメントによる健康被害がどう発生したかを確認できる。それによると、組織全体が適切に製造ラインの保守や商品の品質管理を実行していなかったようだ。 因果関係は不明であるとしつつ、2022年11月、同社の大阪工場で、製品に用いられる原料の乾燥機が壊れ、紅こうじ菌が一定時間乾燥されないまま放置された。こうじを培養するタンクに青カビが付着していることも、現場レベルでは認識されていた。紀の川工場で適切に換気が行われていなかった恐れがあるとの従業員の認識も報告されている。いずれも、迅速かつ正確な報告が経営陣にされていなかったようだ。 2024年1月15日、同社は医師からサプリを摂取した患者が急性腎不全で入院したとの連絡も受けている。しかし3月22日の問題公表まで同社は健康被害を明らかにしなかった。さらに健康被害が疑われる死亡例も発生したが、6月末まで国に報告を行っていない。 企業としての初動はあまりに遅く、政府への報告漏れも起きている。従業員と経営陣は自社の商品の安全性、そして消費者に対する責任をどう認識し対応を考えていたのか。依然として疑問は尽きず、不明な点も多い』、社内の連絡体制などコーポレート・ガバナンスの基本がまるで出来ていないようだ。
・『取締役会は十分に機能していたか  そもそも企業は、客観的に経営陣の意思決定とオペレーションをモニターし、説明責任を果たさなければならない。そのため不可欠なのがガバナンス体制の構築で、社外取締役の登用はその一つだ。 現在、6名で構成される小林製薬の取締役会は、うち4名が社外取締役だ。しかし同社のこうした体制はほとんど機能していなかったのではないか。 7月23日の臨時取締役会で、創業家出身の小林一雅会長と長男の小林章浩社長は辞任した。ただ、それぞれ特別顧問、取締役として今後も残る。さらに社内規定で顧問報酬は月50万円と定められているにも関わらず、特別顧問に就いた一雅氏に月200万円を支払うというのだ。 創業家出身者が、健康被害に対する謝罪と補償を行うなどの理由はあるだろう。だが世間から理解を得られるかは難しいところだ。そんな状態で問題解明が進むとは考えづらい。 4人の社外取締役が、創業家の影響が残るこうした人事に反対していれば、結果は違ったかもしれない。彼らに求められるのは、企業内部とは異なる感覚や経営陣の合理的な意思決定を支える常識と良識だ』、「4人の社外取締役」のうちの1人はかの有名な一橋大の伊藤邦雄氏だ。なんとだらしないと空いた口が塞がらない。
・『事業継続が困難になる恐れも…  業は社会に必要なサービスや製品を提供し、収益を得る。その一部は従業員の賃金、取引先の利益、株主への配当などに変わる。つまり、収益を得ることと、社会的責任を果たすことは表裏一体なのだ。 問題は、利得を追及する企業側の心理が時として過剰になることだ。そうしたケースはこれまでにも多く発生してきた。経営の意思決定、財務やリスク管理などの専門家を社外取締役に登用し、誤った意思決定を防ぐ必要性は高まっている。 小林製薬の社外取締役は先の臨時取締役会で、創業家出身者を含む経営陣の大幅な入れ替えを提案するべきだったのではないか。ただ、そうした人事が実現していない以上、同社の取締役会そのものが十分に機能を果たしていなかったと考えられる。 政府も同社の対応を批判している。こうした状況が続くと、小林製薬に対する消費者や取引先企業の不信感はますます高まるだろう。状況次第で、事業継続が難しくなる恐れすらある。小林製薬の経営陣は、ゼロから会社を作る覚悟で、公明正大に事業を運営する企業文化、しっかりと機能するガバナンス体制を整備することが必要だ。 ————  【さらに詳しく】『ついに死者100人に《小林製薬「紅麹」問題》を振り返る…結局、悪いのは会社か紅麹か、それとも「意図せぬ成分」だったのか』では、社外取締役のひとりが小林製薬社内の状況を語っています』、「こうした状況が続くと、小林製薬に対する消費者や取引先企業の不信感はますます高まるだろう。状況次第で、事業継続が難しくなる恐れすらある」、そこまで追い込まれているとは、初めて知った。社長・会長へへ高級を払うような余裕があるのだろうか。
タグ:機能性表示食品制度 (その6)(小林製薬“猛毒サプリ” 76人死亡でも事件化に立ちはだかる「2つの壁」とは、ついに死者100人に《小林製薬「紅麹」問題》を振り返る…結局 悪いのは会社か紅麹か それとも「意図せぬ成分」だったのか、「自然由来」「無添加」でも健康被害が起きるのはナゼ? 小林製薬「紅麹」問題でわかった《サプリ・健康食品》の恐ろしすぎる落とし穴、《小林製薬「紅麹」問題》引責辞任したはずの元会長に「月額200万円」…創業家に“異常な高待遇”を許したのは誰なのか?) 文春オンライン「小林製薬“猛毒サプリ”、76人死亡でも事件化に立ちはだかる「2つの壁」とは」 「新たに76件の死亡の疑いを報告」とは驚きだ。 「業務上過失致死傷罪は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金が科される重罪である」、それにしても「小林製薬」の報告体制はデタラメだ。 「小林製薬も会見で『未知の成分』という言葉を使っており、健康被害が起こるとは予見ができなかったという点を主張しようとしているのではないか」 2つ目の壁は、死亡疑いの数すらまともに報告しない小林製薬の「隠蔽体質」である」、なるほど。 「「6月13日に厚労省には、報告すべき事案はございませんと回答いたしました。その後、報告・公表のあり方の見直しを加速させ、報告に至りました」、隠蔽体質溢れた姿勢だ。これでは、進展は期待できない。 現代ビジネス「ついに死者100人に《小林製薬「紅麹」問題》を振り返る…結局、悪いのは会社か紅麹か、それとも「意図せぬ成分」だったのか」 「死者が100人に達した」とは衝撃的だ。 「社外取締役を務める、一橋大学名誉教授の伊藤邦雄氏」あの「伊藤邦雄氏」が「社外取締役」をしているとは驚いた。 「前出の伊藤氏もこう語る。 「同族企業ですけれど、非常に規律意識が高いです。僕が社長に意見を申し上げると、非常に慎重で丁寧に聞いてもらえます。製品をつくっている過程では、瑕疵などないと思ってきました」、甘過ぎる見方だ。 「「意図しない成分」は含まれていた。その理由については、何かしらの微生物や別のカビが混入して毒をつくり出した可能性や、生産工程で何者かが異物を混入した可能性もあるという」、なるほど。 現代ビジネス「「自然由来」「無添加」でも健康被害が起きるのはナゼ? 小林製薬「紅麹」問題でわかった《サプリ・健康食品》の恐ろしすぎる落とし穴」 「今回の問題で改めて浮き彫りになったのは、「サプリ・健康食品」自体の怖さである」、なるほど。 「「機能性表示食品が健康の維持や増進に役立つかといえば、非常に疑問です。食品や製薬メーカーの責任で裏付ければ良いだけですから。また、摂取量に制限がある医薬品と違って、サプリは食品ですからいくら摂取しても構いません。高齢者にサプリをたくさん買わせて、企業を儲けさせようとしているだけに思えます・・・国は届け出がある全ての機能性表示食品約7000件を緊急点検する方針を表明した。さらに小林製薬は、接種後に死亡した76人について因果関係を確認するため、詳細な調査を始めている」、なるほど。 「ローヤルゼリーでアナフィラキシーショックが起きたなど、健康食品による被害は枚挙にいとまがない。 食品表示アドバイザーの垣田達哉氏が、こう警鐘を鳴らす。 「消費者は自然由来の成分とか無添加という言葉に弱い。サプリや健康食品は副作用もないから、長年摂取しても大丈夫という先入観があります。自然由来の食品といっても、もし異物が微量でも含まれていた場合、体内に多く蓄積されてしまう危険性もあるのです」、大いに気を付けるべきだ。 現代ビジネス 真壁 昭夫氏による「《小林製薬「紅麹」問題》引責辞任したはずの元会長に「月額200万円」…創業家に“異常な高待遇”を許したのは誰なのか?」 「現場が被害を認識した初期段階で、同社の経営陣は消費者への注意喚起や商品の回収を行うべきだった。しかし、そうした対応を取らず、健康被害が報告された時点での初動も遅かった。 7月23日、創業家出身の会長と社長が辞任を発表。しかし、会長は特別顧問、社長は補償担当の取締役として残るようだ。創業家の影響力が強いとの指摘もある中、創業家出身の前経営者が組織に残ったままで、被害者が納得するとは考えづらい。 同社には社外取締役がいる。彼らが反対すれば新しい経営陣の下で抜本的な組織の変革を目指すこともできたはずだが、実現していない。取締役会が、本来期待された機能を果たしているのか疑問符もつく。 このままでは同社は存在意義を失うかもしれない。小林製薬が社会の信頼を回復するには、経営陣がガバナンスの重要性を十分に理解し、新しい企業として生まれ変わる覚悟が必要だろう」、こんな不徹底な辞任劇を認めるとは、社外取締役は何をしているのだろう。 、社内の連絡体制などコーポレート・ガバナンスの基本がまるで出来ていないようだ。 「4人の社外取締役」のうちの1人はかの有名な一橋大の伊藤邦雄氏だ。なんとだらしないと空いた口が塞がらない。 「こうした状況が続くと、小林製薬に対する消費者や取引先企業の不信感はますます高まるだろう。状況次第で、事業継続が難しくなる恐れすらある」、そこまで追い込まれているとは、初めて知った。社長・会長へへ高級を払うような余裕があるのだろうか。
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女性(その30)(元中学校教師 酒豪…女性初、海上自衛隊で「海将」に昇進した近藤奈津枝さんはどんな人か、英国女性に最も多い「法律違反」の意外な中身 大半が女性、10万人弱の女性が起訴された年も、リアル「虎に翼」英国女性が法曹界で抱えた苦悩 弁護士になるまで31年 生涯男装の女性医師も) [社会]

女性については、昨年12月26日に取上げた。今日は、(その30)(元中学校教師 酒豪…女性初、海上自衛隊で「海将」に昇進した近藤奈津枝さんはどんな人か、英国女性に最も多い「法律違反」の意外な中身 大半が女性、10万人弱の女性が起訴された年も、リアル「虎に翼」英国女性が法曹界で抱えた苦悩 弁護士になるまで31年 生涯男装の女性医師も)である。なお、タイトルから「活躍」をカットした。

先ずは、本園1月23日付けデイリー新潮「元中学校教師、酒豪…女性初、海上自衛隊で「海将」に昇進した近藤奈津枝さんはどんな人か」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2024/01230620/?all=1
・『「私たちに求められるのは、この国を守り抜くため、精強かつ持続力のある地方隊をつくり上げること」──こう部下に訓示した人物が誰だかお分かりだろうか。正解は、海上自衛隊で最も階級が高い「海将」に女性で初めて昇任した近藤奈津枝氏(57)だ。 ちなみに、自衛隊で女性が「将」に昇進したのは、陸将、空将を含め初。青森県むつ市にある海上自衛隊大湊地方総監部の総監となり、昨年12月23日、着任式に臨んだ。 訓示には冒頭で紹介したもののほかに、「すべての隊員が、日曜日の夜に『月曜日に出勤するのが楽しみで仕方ない』と思える組織こそが結果を出せる」という興味深い言葉もある。  いずれにしても、それほど自衛隊に詳しくない人でも、「とてつもなく偉い人」というイメージは強いはずだ。担当記者が言う。 「海上自衛隊の“海将”は、諸外国の海軍や旧帝国海軍では“中将”に相当します。例えば、真珠湾攻撃で有名な山本五十六は1934年に海軍中将となりました。そして39年に55歳で連合艦隊司令長官に任命されています。近藤さんは、当時の山本五十六と同じ階級というわけです。海上自衛隊の普通の隊員にとっては、文字通り“神様”のように偉い人です」 その近藤氏だが、非常にユニークな経歴の持ち主でもある。1966年に山口県で生まれ、大学は地元の国立・山口大学に進んだ。そして卒業すると、中学校の臨時採用教員として国語を教えていたのだ。海上自衛隊の関係者が言う』、「海上自衛隊で最も階級が高い「海将」に女性で初めて昇任した近藤奈津枝氏(57)だ。 ちなみに、自衛隊で女性が「将」に昇進したのは、陸将、空将を含め初。青森県むつ市にある海上自衛隊大湊地方総監部の総監となり、昨年12月23日、着任式に臨んだ・・・大学は地元の国立・山口大学に進んだ。そして卒業すると、中学校の臨時採用教員として国語を教えていた」、変わった経歴だ。
・『最初は看護師  「近藤さんは市役所で自衛官募集のパンフレットを見たのがきっかけで、1989年に海上自衛隊に入隊しました。これまで自衛隊で活躍する女性といえば、92年に防衛大学校に初めて入学した女子学生たちが常に注目を集めてきました。海上自衛隊では、女性として初めて練習艦の艦長になった東良子さん(50)、初めてイージス艦の艦長となった大谷三穂さん(52)といった方々です。近藤さんは彼女らより前の世代で、まさに女性尉官のパイオニアと言っていいでしょう」 旧帝国海軍が女性に門戸を開くことはなかった。一方、1954年に発足した自衛隊は当初から女性自衛官を採用した。だが、当時の定員17万人のうち女性自衛官は144人。おまけに職種も限定され、全員が看護師だった。 「女性自衛官の草分けは医療関係者」という歴史があるため、自衛隊で初めて将官となった佐伯光(ひかる)氏(80)は海上自衛隊の医官だった。佐伯氏は2000年に自衛隊中央病院リハビリテーション科部長に就任し、翌01年に海将補に昇任。海外の階級だと「海軍少将」になる。) 「私たちに求められるのは、この国を守り抜くため、精強かつ持続力のある地方隊をつくり上げること」──こう部下に訓示した人物が誰だかお分かりだろうか。正解は、海上自衛隊で最も階級が高い「海将」に女性で初めて昇任した近藤奈津枝氏(57)だ。 ちなみに、自衛隊で女性が「将」に昇進したのは、陸将、空将を含め初。青森県むつ市にある海上自衛隊大湊地方総監部の総監となり、昨年12月23日、着任式に臨んだ。 訓示には冒頭で紹介したもののほかに、「すべての隊員が、日曜日の夜に『月曜日に出勤するのが楽しみで仕方ない』と思える組織こそが結果を出せる」という興味深い言葉もある。 いずれにしても、それほど自衛隊に詳しくない人でも、「とてつもなく偉い人」というイメージは強いはずだ。担当記者が言う。 「海上自衛隊の“海将”は、諸外国の海軍や旧帝国海軍では“中将”に相当します。例えば、真珠湾攻撃で有名な山本五十六は1934年に海軍中将となりました。そして39年に55歳で連合艦隊司令長官に任命されています。近藤さんは、当時の山本五十六と同じ階級というわけです。海上自衛隊の普通の隊員にとっては、文字通り“神様”のように偉い人です」 その近藤氏だが、非常にユニークな経歴の持ち主でもある。1966年に山口県で生まれ、大学は地元の国立・山口大学に進んだ。そして卒業すると、中学校の臨時採用教員として国語を教えていたのだ。海上自衛隊の関係者が言う』、確かに経歴は「大学は地元の国立・山口大学に進んだ。そして卒業すると、中学校の臨時採用教員として国語を教えていた」と、ユニークだ。
・『最初は看護師  「近藤さんは市役所で自衛官募集のパンフレットを見たのがきっかけで、1989年に海上自衛隊に入隊しました。これまで自衛隊で活躍する女性といえば、92年に防衛大学校に初めて入学した女子学生たちが常に注目を集めてきました。海上自衛隊では、女性として初めて練習艦の艦長になった東良子さん(50)、初めてイージス艦の艦長となった大谷三穂さん(52)といった方々です。近藤さんは彼女らより前の世代で、まさに女性尉官のパイオニアと言っていいでしょう」 旧帝国海軍が女性に門戸を開くことはなかった。一方、1954年に発足した自衛隊は当初から女性自衛官を採用した。だが、当時の定員17万人のうち女性自衛官は144人。おまけに職種も限定され、全員が看護師だった。 「女性自衛官の草分けは医療関係者」という歴史があるため、自衛隊で初めて将官となった佐伯光(ひかる)氏(80)は海上自衛隊の医官だった。佐伯氏は2000年に自衛隊中央病院リハビリテーション科部長に就任し、翌01年に海将補に昇任。海外の階級だと「海軍少将」になる』、「海上自衛隊で最も階級が高い「海将」に女性で初めて昇任した近藤奈津枝氏(57)だ」、大したものだ。

次に、6月26日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリスト・編集者のアナベル・ウィリアムズ 氏による「英国女性に最も多い「法律違反」の意外な中身 大半が女性、10万人弱の女性が起訴された年も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/764111
・『現在のペースだと男女間の賃金格差を解消するためには257年かかる――。2019年に世界経済フォーラムが発表したこの試算からもわかるように、男女の間にはいまだに大きな金融格差が存在しています。 格差が生まれる根本と平等に向けた具体策に迫る新著『女性はなぜ男性より貧しいのか?』より一部抜粋しお届けします。 ▽イギリスで起訴された女性のなかで一番多い違反は?(世界の最先進国では、女性に関して数々のことが成し遂げられてきたにもかかわらず、ジェンダーによる富の不平等という難題がまだ立ちはだかっている。ジェンダーによる賃金格差は私たちの誰もが知るところだが、まだ十分議論されていないのが、賃金格差から生まれる資産の格差だ。「資産」とは、豊かな財産やCEO並みの給料といった意味ではない。働く女性が職業生活――平均して男性より収入が少ない――を通じて貯められる総額のことだ。 イギリスでは45歳未満の年齢層で、すでに男女間の資産格差が存在する。しかも年齢とともに差が広がり、45歳から64歳の女性の平均資産額は29万3700ポンド(約5550万円)で、同じ年齢層の男性では平均37万6500ポンド(約7100万円)となっている[1]。そして、アメリカにおける資産格差はさらに大きい。アメリカの18歳から64歳の独身男性の資産額の中央値は3万1150ドル(約460万円)で、同じ年齢層の独身女性では1万5120ドル(約223万円)と、男性の半分にも満たない[2]。 では、イギリス女性が抱える経済の不平等がどんなものかを明確にイメージするため、次の質問を考えてみよう。 法律に違反して起訴された女性たちのあいだで、最も多かった違反は何だろう?万引きだろうか?公然酩酊罪か?それとも交通違反?) じつは、お金がないのでテレビの受信料が払えない、というものだ[3]。 テレビ放送やオンライン配信で番組を視聴する世帯は、法律によりイギリスの公共放送BBCの受信料として、年間157.5ポンド(約3万円)を払わなければならない。受信料の不払いは犯罪であり、起訴され、1000ポンド(約19万円)以下の罰金が科され、禁固刑を受ける場合もある。受信料不払いという、貧困ゆえの犯罪で起訴される人のうち、4分の3近くが女性で、2017年には9万6000人以上の女性が起訴された[4]。 受信料の支払いについては議論があり、主義として支払いを拒否する人もいる。しかし、一般に女性は集金が来たら応じて協力するし、受信料支払いの登録をしているのは女性のほうが多い。こうした事実から示唆されるのは、女性は受信料制度に反対しているからではなく、支払い能力がないから払えない、ということだ。 支払わなければ起訴されるというこの制度は、ジェンダーによる経済格差を考慮していない。これは、政府から義務とされている費用で、毎年すべての世帯に対し収入にかかわらず同額の支払いを求めるものだ。そして、払えるだけの余裕がない人――大半は女性――は犯罪者にされる。しかも、これは、女性がぶち当たる制度的な不利益という氷山の一角にすぎない』、「支払わなければ起訴されるというこの制度は、ジェンダーによる経済格差を考慮していない。これは、政府から義務とされている費用で、毎年すべての世帯に対し収入にかかわらず同額の支払いを求めるものだ。そして、払えるだけの余裕がない人――大半は女性――は犯罪者にされる。しかも、これは、女性がぶち当たる制度的な不利益という氷山の一角にすぎない」、その通りだ。
・『貧困の女性化  テレビ受信料は、社会科学者が「貧困の女性化」と呼ぶ問題のちょっとした一例だ。この言葉は、ダイアナ・ピアス教授が1978年に初めて生み出した造語だが、問題はまだ続いている。富と貧困をはかるどんな方法を使ったとしても、世界じゅうで、ゆりかごから墓場まで、女性は男性より劣悪な生活を送っている。先進国でも開発途上国でも、女性は貧困層の多くの部分を占め[5]、失業中であったり不安定な雇用についていたりする割合が男性より高い[6]。 世界全体では、「よい仕事」、つまりフルタイムで賃金が支払われる仕事についている男性は女性のほぼ2倍で、南アジアでは、男性が女性の3倍以上になっている[7]。 先進国においては、統計に一定の傾向が見られる。日本では、ひとり暮らしをする生産年齢の女性のうち貧困層にあたるのは31パーセントだが、男性では25パーセントだ[8]。アメリカ全土では、貧困ライン以下の収入で生活する人の割合は、女性では14パーセントだが、男性は11パーセントである[9]。) こうしたデータの数々から、貧困の女性化について垣間見ることができる。富の不平等と女性の問題は複雑で、とくに先進国では、これまであまりにも研究されてこなかった分野だ』、「富の不平等と女性の問題は複雑で、とくに先進国では、これまであまりにも研究されてこなかった分野だ」、その通りだ。
・『議論にもならないまま、取り残されていく女性  原因と結果に関する適切なデータなしには、どんな問題にも対処できない。2019年にイギリス政府は、貧困をより正確に評価するための方法を策定する計画を発表したが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより棚上げになった。ジェンダーによる経済的不平等の実態が十分に研究されず、ほとんど議論にもならないまま、女性が取り残されていく。 ヨーロッパで最も広く使われている貧困の基準は、個人または世帯の収入が当該国における世帯収入の中央値の60パーセント未満というものだ。つまり、統計専門家が各世帯の収入を調べて最も低い値から最も高い値まで順に並べ、中央の値を計算する。これが、平均的な人が生計を立てるために使っている金額だ。誰もが平均的な収入を得られるとはかぎらないが、誰もが平均的な人の収入の少なくとも60パーセントくらいは稼げるだろうと想定している。 具体的な金額で言うと、イギリスのジョゼフ・ラウントリー財団によれば、2016/2017年度、イギリスの世帯収入は、住居費を除いた可処分所得の中間値が週あたり425ポンド(約8万円)(年間2万2100ポンド〈約418万円〉)だったので、この60パーセントは1万3260ポンド(約250万円)になる。 この計算に基づき社会基準値協会では、510万人の女性、460万人の子ども、450万人の男性が貧困状態にあるとしている[10](訳注:金額と人数は経年変化を見るため計算方法の調整を行ったうえ算出したもの)。これは、女性の20パーセント、子どもの34パーセント、男性の18パーセントに相当する。 イギリスとアメリカにおける貧困の女性化のおもな要因は、1980年代以降のひとり親世帯の増加で、ひとり親の90パーセントが女性だ。アメリカの統計によれば、1960年には、貧困層のうち母親だけの世帯が占める割合は28パーセントだったが、1987年には60パーセントと、倍以上になっている[11]。イギリスでは現在、ひとり親の45パーセントが貧困状態にある。これは、その子どもも貧困のなかで暮らしていることを意味する。政府は子どもの貧困率を引き下げようと、法的拘束力のある目標値を2010年に導入したが、2016年に撤廃し、その後ふたたび導入する計画はない。) イギリスでは独身の女性(未亡人になった高齢女性とパートナーがいない若い女性を含む)全体で見ても、独身男性より貧困率が高い。しかも、ここ数年のあいだに独身男性の貧困率は下がってきた[12]。データからは、貧困の要因として障害も浮上する。貧困状態にある人のうち370万人に障害があり、障害者に女性が占める割合は男性より高く54.4パーセントだ[13]。 さて、誰が障害者の介護をするのか?家族で介護をしている人(つまり「無給の介護人」)の4分の3近くが女性だ。さらに、有給の介護職のほぼ80パーセントが女性であることを忘れてはいけない。介護は最も賃金が低い分野の一つでもある。 先進国の政府は特定の政策を通じて収入に大きな影響を及ぼすことができる。たとえば最低賃金や傷病手当等の雇用主に対する規則、税制度、社会保障制度を通じた富の再分配などだ。こうした政策を実施する際に、政府は社会における貧困と富の不平等に対して影響力を行使し、どのような社会層を支援し、どの層を冷遇するかを選ぶことができるはずだ』、「貧困状態にある人のうち370万人に障害があり、障害者に女性が占める割合は男性より高く54.4パーセントだ[13]。 さて、誰が障害者の介護をするのか?家族で介護をしている人(つまり「無給の介護人」)の4分の3近くが女性だ。さらに、有給の介護職のほぼ80パーセントが女性であることを忘れてはいけない。介護は最も賃金が低い分野の一つでもある」、なるほど。
・『女性の隠れた貧困  また、女性の貧困は男性の「庇護」の下に隠れて見えなくなっていることがある。女性は誰かと一緒に、つまり多くの場合、男性のパートナーと一緒に暮らしているときにはほぼきまって、より裕福に見えるからである。統計学者は、相対的な裕福度を調べる際に世帯の資産に着目する。これは、お金を稼ぐ人が支出を決定する人でもある単身世帯の場合にはわかりやすい方法だ。 しかし夫婦がそろっている世帯では、どちらか一人が世帯全体の「財務報告者」になったうえ、家族の資産の詳細を説明することになる。各世帯では成人の構成員のあいだで資産が平等に分けられているという想定なので、収入が少ない女性がもっと収入の多いパートナーと暮らしている場合は、統計上、より裕福な世帯層に入ってしまうのだ。 これではデータが歪められてしまい、そのため、男女間の経済格差がどの程度かを正確にはかることが難しくなる。調査をするとかならず、世帯内の男性と女性のあいだで収入が平等に分けられていないことが指摘されているからなおさらだ。) 先進国の7か国を対象としたある調査によれば、女性が家庭で自由に使える資産は、平均すると世帯全体の資産の3分の1に満たなかったという。イタリアの女性の半分は、自分自身の収入がまったくなく、政府の給付金さえ受け取っていなかった。フランス、ドイツ、イギリスでは、女性の4分の1以上が政府の給付金以外に収入がなかった[14]。これらの世帯は、調査報告上では中流階級か富裕層だとみなされるかもしれない。しかし男性がいなくなり収入のすべてをもっていかれたとすると、多くの場合、女性は生計を立てていくためのお金がほとんどなくなってしまうだろう。
・『多くの女性が経済面で男性に依存 女性はなぜ男性より貧しいのか?(統計学者がつねに、この「財務報告者は一人」という手法を使っているわけではなく、長期にわたる世帯資産調査では、婚姻関係にある成人の双方に収入を尋ねるケースもある。とはいえ、21世紀になっても、イギリスでもほかの先進国でも、多くの女性が経済面で男性に依存しているという事実は変わらない。 女性が家族の世話や家事のために有給の仕事を離れた場合、実際にはパートナーが財産を築けるよう援助していることになる。そうした女性の働きが、その男性が現在と将来にわたって収入を得る能力、貯蓄する能力、そして信用力や年金貯蓄の助けになっている。 しかし、こうした状況にある女性は個人としては貧困ということになるので、女性がおかれている不平等を正確にはかるには、このような立場の女性を「貧困」と区分すべきだと指摘されている[15]。 原注(省略) 』、「女性が家族の世話や家事のために有給の仕事を離れた場合、実際にはパートナーが財産を築けるよう援助していることになる。そうした女性の働きが、その男性が現在と将来にわたって収入を得る能力、貯蓄する能力、そして信用力や年金貯蓄の助けになっている。 しかし、こうした状況にある女性は個人としては貧困ということになるので、女性がおかれている不平等を正確にはかるには、このような立場の女性を「貧困」と区分すべきだと指摘されている」、その通りだ。

第三に、7月15日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリスト・編集者のアナベル・ウィリアムズ氏による「リアル「虎に翼」英国女性が法曹界で抱えた苦悩 弁護士になるまで31年、生涯男装の女性医師も」を紹介しよう。
・『現在のペースだと男女間の賃金格差を解消するためには257年かかる――。2019年に世界経済フォーラムが発表したこの試算からもわかるように、男女の間にはいまだに大きな金融格差が存在しています。 格差が生まれる根本と平等に向けた具体策に迫る新著『女性はなぜ男性より貧しいのか?』より一部抜粋しお届けします。 前回記事は「英国女性に最も多い『法律違反』の意外な中身」』、「現在のペースだと男女間の賃金格差を解消するためには257年かかる」、こんなに長期間かかるというのでは、事実上、「格差」は当面、残るということだ。
・『女性は弁護士になれない  女性が財産を増やし男性と平等な地位を築くには、男性と同じように稼げる能力を身につけなくてはならない。 しかし、女性が大学に行くことには激しい抵抗があり、入学がなんとか認められ勉強して試験に通っても、女性は学位を受けることができず、学んだ分野で職業につくことができなかった。 医学など最も収入が高い職業につく権利を求める女性の闘いは何十年も続いた。法律分野では、カナダとアメリカの女性が弁護士業務を行う権利を得たのちも、イギリスの女性は長いあいだ法曹界から閉め出されていた。 知的な意味でより難易度が高いとされる領域で、女性は門戸が閉ざされていた。女性のほうが生まれつき劣っているとする男性の思い込みによるものであり、女性は知能が低いので数学的、科学的、論理的な思考ができない、と考えられていたためだ。このような偏見が根強く残っていることは、次のエピソードによく表れている。) 1867年にタイプライターが発明されたとき、女性が扱うには複雑すぎると考えられていた。しかし100年後の1960年代後半、いまでは恥さらしとなったオリベッティの広告では、ブロンドの美女がタイプライターの前に座り、こんなキャプションが添えられていた。 「タイプライターがこれほど有能なら、女性は賢くなくていい」。 皮肉なことに、広告の女性は賢いなんてものではなかった。彼女の名はシェア・ハイト。有名なコロンビア大学で歴史学の博士号をとるための費用の足しにしようと、モデル業を始めたのだった。 ハイトは、タイピングのスキルがすぐれているからオリベッティに選ばれたのだろうと思っていて、自分のイメージがどういうふうに利用されたか、あとになって気づいた。 最後に笑ったのはハイトだった。著書『ハイト・リポート 新しい女性の愛と性の証言』(パシフィカ、1977年)は5000万部を売り上げ、女性が自分の体に対して抱くイメージに革命を起こした。 女性が知的に劣っているという観念は生物学的な事実だと考えられていたが、この観念が薄れはじめてもなお、女性をめぐる生物学的価値観は、私たちに不利なように利用された。大学の講義のあいだじゅう座っていることは、子宮に何らかの影響を与え、乳腺を枯渇させるのではないかと思われていた』、「カナダとアメリカの女性が弁護士業務を行う権利を得たのちも、イギリスの女性は長いあいだ法曹界から閉め出されていた。 知的な意味でより難易度が高いとされる領域で、女性は門戸が閉ざされていた。女性のほうが生まれつき劣っているとする男性の思い込みによるものであり、女性は知能が低いので数学的、科学的、論理的な思考ができない、と考えられていたためだ」、サッチャー首相を輩出した国でも「女性は長いあいだ法曹界から閉め出されていた」とは初めて知った。
・『弁護士として認められるまで31年  1888年、イライザ・オームは、イングランドの女性として初めて、法律の学位をユニバーシティ・カレッジ・ロンドンから授与された。オームは、女性はもっと権利を主張すべきであり、高い収入を得られる職業の機会が女性にも開かれるべきだと信じていた。 しかしオームは、事務弁護士として働くことを法的に認められるまで31年待たなければならなかった。) 1913年、4人の女性によって裁判所に訴訟が持ち込まれた。女性の1人はグウィネス・ベブで、オックスフォード大学で法学を学び、試験で最優等の成績をおさめたが、正式に卒業できなかった。 ベブは事務弁護士として開業するための試験を法律協会に申請したが、受験料が返金されてきた。女性は弁護士になれないので、試験場に来ても受験は認められないと書かれていた。ベブは法律協会を訴え、法律では弁護士になるのは「人(person)」と記載されているので女性も含まれる、と主張した。 法廷は、女性というジェンダー全体が「人」の定義の枠外であると論じた。「1843年の事務弁護士法の意味する範囲において、女性は人でなく(略)、それゆえに、法律協会が実施する予備試験の登録から除外されるのが妥当である」と控訴院の判決文に記されていた[41]。判決は、「法律に基づき、女性も子どもも奴隷も法曹職につくことは認められない」と述べた中世の論文を参照したものだった[42]』、根拠が「中世の論文」とは恐れ入る。 
・『オックスフォードとケンブリッジでも…  名の通った機関ほど、女性に男性と同じ地位を提供するまでに時間がかかることがよくある。このことは、こんにちでも政府の要職や法曹界、学界、金融界、医学界で男性に比べ女性が少ないという事実と呼応している。 イギリスのエリート大学であるオックスフォードとケンブリッジが女性を男性と平等に扱うようになったのは、国内の大学でいちばん遅かった。オックスフォード大学は、1920年10月になるまで女性に学位を授与しなかった。その50年近くも前からすでに、大学内に4校あった女子学生だけのカレッジで女性が学び試験に合格していたにもかかわらずだ[43]。ケンブリッジでは、1940年になってようやく、女性に学位を授与した。 しかし、こうした進展には但し書きがつく。オックスフォードでは1927年以降、女子学生の人数を最大840人、または学部学生全体の6分の1に制限していた。水門を開放すると怒涛のように流れ込むのではないかと危惧したためだ。21年後に上限が引き上げられ、さらに90人の女性を受け入れるようになったが、定員の割り当ては1957年まで撤廃されなかった。 これは経済的平等を実現するには重大な障壁だった。一流の教育はより高い収入につながるからだ。 しかし、女性がいるとほかの学生の気が散ると考えられていた。オックスフォード大学のある女子カレッジの学長は「じつに嫌な苦情だ。わがカレッジの学生がタイトスカートをはき脚を見せて座っているので、男性の試験官が落ち着かないという[44]」と書いている。するべきことに集中できない男性がいたとしても、それは女性のせいではない。) 女性は医療専門職でも同じ障害に直面した。1789年にアイルランドのコーク県で生まれたマーガレット・アン・バルクリーは、男性に変装してエディンバラ大学で医学を学び、イギリスで最初の女性医師になった。 裕福な支援者たちの協力を得てみずからをドクター・ジェームズ・バリーに仕立て上げ、有能な軍医になって南アフリカ、セントヘレナ、トリニダード・トバゴで医療に従事し、大英帝国で初めて帝王切開に成功した[45]。』、「マーガレット・アン・バルクリーは、男性に変装してエディンバラ大学で医学を学び、イギリスで最初の女性医師になった。 裕福な支援者たちの協力を得てみずからをドクター・ジェームズ・バリーに仕立て上げ、有能な軍医になって南アフリカ、セントヘレナ、トリニダード・トバゴで医療に従事し、大英帝国で初めて帝王切開に成功した」、なるほど。
・『死去して初めて…  ドクター・バリーが死去したとき、埋葬のため遺体を整えていた女性が、バリーは女性だと気づいた。事実が発覚し、ヴィクトリア朝時代のイギリスで大事件になった。女性が医師として働けるようになる50年以上も前のことだ。私なら、ドクター・バリーを10ポンド札の顔にするだろう。 バリーは細身で女性らしい顔つきだったが、この軍医が女性として生まれたとは誰も思わなかった。そのかわり「いっぷう変わっていてあまり人と交わらないバリーについて、学生たちがうわさをしはじめた。『ミスター・ジェームズ・バリーはぜったいに男ではない―間違いなく少年だ。(略)思春期にもなっていない子どもだ。根拠はたくさんあって明らかだ。彼は背が低い、体型が華奢、声が高い、繊細な顔つきで肌がなめらか[46]」。』 このばかばかしい状況は、男性と女性の知性に対する当時の期待をよく物語っている。小柄で少女のような医学生は、知能が高い早熟な男の子以外にありえなかったのだ。) 女性が職場からあからさまに除外されていなかったとしても、女性を締め出すため別のかたちの差別もあった。1982年まで、パブでは女性に対するサービスを拒むことができた。 この「男性の領地」で女性がお金を使うことを認めるかどうかは、店主次第だった。状況が変わったのは1982年11月のことで、事務弁護士のテス・ギルとジャーナリストのアナ・クートが、フリート・ストリートで人気のパブ、エル・ヴィーノに苦情を申し立てたのだ。 エル・ヴィーノでは、女性がカウンターで飲み物を注文したりカウンターの脇に立ったりすることを禁じていて、女性はテーブル席がある奥の部屋にしか入れなかった。 エル・ヴィーノの言い分は、騎士道精神を守るためというものだった。エル・ヴィーノはシティに店を構えていて、ジャーナリストや弁護士らが集まってゴシップに興じる場として愛されていた。 しかし、1970年に女性ジャーナリストの一団がカウンターに押しかけ飲み物のサービスを要求しても、経営者はまだ自分たちの方針を曲げなかった[47]。 第一審の法廷では、女性差別に当たらないと判断されたが、控訴審では、女性がバーの特定の場所にしか集まれないのであれば、職業上不利な状況におかれる可能性があると認めた。 判事は次のとおり述べた。「男性はエル・ヴィーノで飲みたければ飲める。望むならカウンターの周りに集まり友人と交流できるし、とくにジャーナリストであるなら興味深いうわさ話をいろいろ拾えるだろう。(略)男性ジャーナリストにそうしたことが認められているなら、なぜ女性には認められないのか?[48]」』、「ドクター・バリーが死去したとき、埋葬のため遺体を整えていた女性が、バリーは女性だと気づいた。事実が発覚し、ヴィクトリア朝時代のイギリスで大事件になった。女性が医師として働けるようになる50年以上も前のことだ。私なら、ドクター・バリーを10ポンド札の顔にするだろう。 バリーは細身で女性らしい顔つきだったが、この軍医が女性として生まれたとは誰も思わなかった。そのかわり「いっぷう変わっていてあまり人と交わらないバリーについて、学生たちがうわさをしはじめた」、ウソのような話だ。
・『女性用トイレがない  トイレの設備がないことは、女性が職場で不利な状況におかれみずからを向上させる機会を妨げられる理由にたびたびされてきた。ハーバード大学は、非常に長い期間にわたって、トイレがないことを理由に女子学生の医学部入学を認めなかった大学の一つだ。 医学部に女子学生の入学が認められたのは1945年のことで、女性が初めて志願してから100年近くたっていた。ハーバード大学ロー・スクールが女性に門戸を開いたのは1950年で、最初の女性が入学を志願してから79年後だった。) イェール大学医学部は、1916年に女子学生を受け入れた。経済学教授のヘンリー・ファーナムが費用を払い、女子トイレを設置したあとのことだ。 ヘンリーの娘がイェールの医学部に入ることを強く希望していたからだった[49]。アメリカで最も名高い士官学校のバージニア州立軍事学校は、1996年になるまでトイレを口実として利用していた。 女性用のトイレが十分にないという問題は、アメリカで「トイレの平等(potty parity)」として知られている。一部の専門職の職場や権力の殿堂で女性用トイレがないことは、女性が除外されていることの指標になる』、「トイレの設備がないことは、女性が職場で不利な状況におかれみずからを向上させる機会を妨げられる理由にたびたびされてきた。ハーバード大学は、非常に長い期間にわたって、トイレがないことを理由に女子学生の医学部入学を認めなかった大学の一つだ。 医学部に女子学生の入学が認められたのは1945年のことで、女性が初めて志願してから100年近くたっていた・・・女性用のトイレが十分にないという問題は、アメリカで「トイレの平等(potty parity)」として知られている。一部の専門職の職場や権力の殿堂で女性用トイレがないことは、女性が除外されていることの指標になる」、なるほど。
・『米下院に2011年まで存在したトイレの不平等  信じられないことに、アメリカの下院では2011年になるまで議場の近くに女性用トイレがなかった[50]。 男性用トイレは下院の議場のすぐ近くにあって、靴磨き台まで含むアメニティが取りそろえられ、暖炉がしつらえてある。テレビもあり、議場の進行をリアルタイムで映しているので、男性は議事を一瞬たりとも逃さずにすむ。 女性初の下院議員は1917年に誕生し、2011年には78人の女性下院議員がいたが、女性用トイレまで長い距離を歩いて行かなければならなかった。 議事次第で決められた休憩のあいだに議場まで戻って来られなくなることもよくあったが、そうすると討議の一部に参加できない。 2007年に、女性用トイレを議場からもっと近い場所に設置する計画が検討されたが、「歴史的建造物という性質上、また配管の追加工事が必要になるため、費用がかかりすぎる[51]」とされた。 長く厳しい道のりであったが、女性は、法的、社会的に最低の地位であるという足かせからようやく抜け出そうとしている。 こんにち私たち女性は、男性と同じく完全に自立した成人であり、子どもやお金や財産や将来について自分のこととして決定する力があるとされている。 しかしながら、私たちが労働力に組み込まれていくいっぽうで、歴史的に続いてきた差別の名残で、一流の仕事や高額の報酬については、女性は平等な分け前を得ることができないのだ。 原注は省略)』、「女性初の下院議員は1917年に誕生し、2011年には78人の女性下院議員がいたが、女性用トイレまで長い距離を歩いて行かなければならなかった。 議事次第で決められた休憩のあいだに議場まで戻って来られなくなることもよくあったが、そうすると討議の一部に参加できない。 2007年に、女性用トイレを議場からもっと近い場所に設置する計画が検討されたが、「歴史的建造物という性質上、また配管の追加工事が必要になるため、費用がかかりすぎる[51]」とされた。 長く厳しい道のりであったが、女性は、法的、社会的に最低の地位であるという足かせからようやく抜け出そうとしている」、米下院でも「女性用トイレを議場からもっと近い場所に設置」することが、最近まで問題化していたとは驚いた。
タグ:女性 (その30)(元中学校教師 酒豪…女性初、海上自衛隊で「海将」に昇進した近藤奈津枝さんはどんな人か、英国女性に最も多い「法律違反」の意外な中身 大半が女性、10万人弱の女性が起訴された年も、リアル「虎に翼」英国女性が法曹界で抱えた苦悩 弁護士になるまで31年 生涯男装の女性医師も) デイリー新潮「元中学校教師、酒豪…女性初、海上自衛隊で「海将」に昇進した近藤奈津枝さんはどんな人か」 「海上自衛隊で最も階級が高い「海将」に女性で初めて昇任した近藤奈津枝氏(57)だ。 ちなみに、自衛隊で女性が「将」に昇進したのは、陸将、空将を含め初。青森県むつ市にある海上自衛隊大湊地方総監部の総監となり、昨年12月23日、着任式に臨んだ・・・大学は地元の国立・山口大学に進んだ。そして卒業すると、中学校の臨時採用教員として国語を教えていた」、変わった経歴だ。 そして卒業すると、中学校の臨時採用教員として国語を教えていた」と、ユニークだ。 「海上自衛隊で最も階級が高い「海将」に女性で初めて昇任した近藤奈津枝氏(57)だ」、大したものだ。 東洋経済オンライン アナベル・ウィリアムズ 氏による「英国女性に最も多い「法律違反」の意外な中身 大半が女性、10万人弱の女性が起訴された年も」 「富の不平等と女性の問題は複雑で、とくに先進国では、これまであまりにも研究されてこなかった分野だ」、その通りだ。 「女性が家族の世話や家事のために有給の仕事を離れた場合、実際にはパートナーが財産を築けるよう援助していることになる。そうした女性の働きが、その男性が現在と将来にわたって収入を得る能力、貯蓄する能力、そして信用力や年金貯蓄の助けになっている。 しかし、こうした状況にある女性は個人としては貧困ということになるので、女性がおかれている不平等を正確にはかるには、このような立場の女性を「貧困」と区分すべきだと指摘されている」、その通りだ。 「現在のペースだと男女間の賃金格差を解消するためには257年かかる」、こんなに長期間かかるというのでは、事実上、「格差」は当面、残るということだ。 サッチャー首相を輩出した国でも「女性は長いあいだ法曹界から閉め出されていた」とは初めて知った。 「マーガレット・アン・バルクリーは、男性に変装してエディンバラ大学で医学を学び、イギリスで最初の女性医師になった。 裕福な支援者たちの協力を得てみずからをドクター・ジェームズ・バリーに仕立て上げ、有能な軍医になって南アフリカ、セントヘレナ、トリニダード・トバゴで医療に従事し、大英帝国で初めて帝王切開に成功した」、なるほど。 「ドクター・バリーが死去したとき、埋葬のため遺体を整えていた女性が、バリーは女性だと気づいた。事実が発覚し、ヴィクトリア朝時代のイギリスで大事件になった。女性が医師として働けるようになる50年以上も前のことだ。私なら、ドクター・バリーを10ポンド札の顔にするだろう。 バリーは細身で女性らしい顔つきだったが、この軍医が女性として生まれたとは誰も思わなかった。そのかわり「いっぷう変わっていてあまり人と交わらないバリーについて、学生たちがうわさをしはじめた」、ウソのような話だ。 米下院でも「女性用トイレを議場からもっと近い場所に設置」することが、最近まで問題化していたとは驚いた。
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