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災害(その14)(「成城、田園調布、自由が丘まで」高級住宅街が次々と壊滅…?最新理論が警告する東京「大地震で消滅する町」マップ、「世田谷、目黒、杉並区も危ない!」最新指標が警告する「東京の住みたい街ランキング上位」でも危険な街の名前、「史上最大の南海トラフ地震・宝永地震」と「富士山の宝永大噴火」の発生はわずか49日差だった…そして今観測され始めたヤバすぎる「富士山大噴火の予兆」、「明日来てもおかしくない大災厄」《南海トラフ地震と富士山大噴火のダブルパンチ》の被害規模がヤバすぎる…「想定死者数34万人 30 [社会]

災害については、本年3月27日に取上げた。今日は、(その14)(「成城、田園調布、自由が丘まで」高級住宅街が次々と壊滅…?最新理論が警告する東京「大地震で消滅する町」マップ、「世田谷、目黒、杉並区も危ない!」最新指標が警告する「東京の住みたい街ランキング上位」でも危険な街の名前、「史上最大の南海トラフ地震・宝永地震」と「富士山の宝永大噴火」の発生はわずか49日差だった…そして今観測され始めたヤバすぎる「富士山大噴火の予兆」、「明日来てもおかしくない大災厄」《南海トラフ地震と富士山大噴火のダブルパンチ》の被害規模がヤバすぎる…「想定死者数34万人 30mの津波 長期大規模停電…」)である。

先ずは、5月6日付け現代ビジネス「「成城、田園調布、自由が丘まで」高級住宅街が次々と壊滅…?最新理論が警告する東京「大地震で消滅する町」マップ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/109799?imp=0
・『「東京都を襲ひて一瞬の間に之を粉砕し尽したり」。100年前の未曽有の地震を、当時の新聞はこう報じた。来る天災に備え、少しでも生き残る確率を上げたい―東京に安心できる場所はあるのか。 ▽住んでいる町のリスクを知ろう(1923年9月1日11時58分、東京を壊滅的な状況に追い込んだ関東大震災から今年で100年の節目を迎える。そして今、我々は再び大地震の危機に頻している。「今後30年以内の発生確率が70%」といわれる首都直下地震だ。 '22年に東京都が10年ぶりに見直した被害想定によれば、起こりうる最大クラスの「都心南部直下地震」(M7.3)では、約20万棟の建物が全壊・全焼、約6100人が死亡すると試算されている。 もちろん、この数字はあくまで想定値にすぎない。東京での大地震という「国難」の前では、より多くの人命が失われる可能性もある。 まずは「自分の住んでいる町はどれだけ危険なのか?」を知ることが、準備となる。そこで今回、だいち災害リスク研究所の所長であり、地盤災害のプロフェッショナルである横山芳春氏に、地震の最新理論に基づき、東京の中で被害が大きくなる可能性が高い町を分析してもらった。 「よく参考にされるのが、都が公表している『地震に関する地域危険度測定調査』です。これは、大地震が発生した際のリスクに関して、5年に一度、行政上の区画である町丁目をすべて調べ上げ、危険度の順位付けをしたものです」』、『地震に関する地域危険度測定調査』は確かに見やすい。https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/chousa_6/home.htm
・『「山の手」も危ない  実際に'22年に公表された、最新の「地震に関する地域危険度測定調査」を調べてみた。危険度が高い上位5つの町丁目は以下の通りだ。 1位/荒川区荒川6丁目 2位/荒川区町屋4丁目 3位/足立区柳原2丁目 4位/足立区千住柳町 5位/墨田区京島2丁目 こうして見ると、荒川区、足立区、墨田区と、「下町」エリアが上位に来ていると分かる。危険とされている理由のひとつは、その軟弱な地盤だ。 「東京都は東西に長く、西ほど標高が高い地形となっています。詳しく見ると、西から関東山地、多摩丘陵、武蔵野台地、東京低地と分類できます。 山地は数百万年以上、丘陵地は100万年などと長い時間をかけて自然の地層の重みで締め固められているため、硬く揺れにくいことが多い。しかし、いわゆる下町は、東京湾が内陸に入り組んでいた頃の泥と砂の堆積物でできた低地に属します。地層の歴史は長くても5000年ほどと浅く、緩い地盤で揺れやすいわけです」 下町は危ない。これは紛れもない事実のようだ。では、武蔵野台地の東端にあたる「山の手」はどうだろうか。 「高台は地盤が強い」というのは定説であり、住宅を買う上での目安とする人も少なくないはずだ。だが、横山氏の解説では、そんな常識が覆る。 「確かに数万年以上前に作られた武蔵野台地は、概ね固い地盤です。しかし、ここ最近の研究で、台地の地盤の地下に、厚い泥の層からなる緩い地盤がある場所がいくつも見つかっています。こうした場所は低地と同等か、それ以上に揺れやすく、地震に弱いのです」』、「台地の地盤の地下に、厚い泥の層からなる緩い地盤がある場所がいくつも見つかっています。こうした場所は低地と同等か、それ以上に揺れやすく、地震に弱いのです」、そんな場所があるとは初めて知った。
・『高級住宅地が次々全滅  では、そんな「隠れ揺れスポット」ともいえる町を探すにはどうすればいいのか。横山氏が注目するのが「表層地盤増幅率」という数値だ。 「表層地盤増幅率の数値が大きい場所ほど、地盤は弱く、地震の揺れも大きくなります。例えば増幅率1.0の町と2.0の町とでは、揺れ幅の大きさは2倍になり、震度の階級も1~2級変わるのです。目安としては1.6~1.8程度で注意が必要となり、2.0以上になると特に揺れやすい危険な場所と考えたほうがいいでしょう」 各地の表層地盤増幅率は、国立研究開発法人防災科学技術研究所が運営するウェブサイト「地震ハザードステーション」内にあるJ-SHIS Map(https://www.j-shis.bosai.go.jp/map/)で確認できる。それをまとめたハザードマップが上の通りである。さっそく東京の町々を見ていこう。 先述の通り、都の調査で危険度が判明した下町エリアは総じて「地盤が弱い危険地域」と再確認できた。東京の「住みたい街ランキング」上位に名を連ねる北千住が2.66、赤羽が2.09と、いずれも2以上を示した。 「下町と同じく、2以上の増幅率が密集しているのが湾岸エリアです。2.31の豊洲など、埋め立て地は基本的に地盤が非常に弱い場所が多いと考えるべきです」 後編記事『「世田谷、目黒、杉並区も危ない…」最新指標《表層地盤増幅率》が警告する「東京の住みたい街ランキング上位」で危険な街はどこなのか』に続く』、「後編記事」を見てみよう。

次に、5月6日付け現代ビジネス「「世田谷、目黒、杉並区も危ない!」最新指標が警告する「東京の住みたい街ランキング上位」でも危険な街の名前」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/109802?imp=0
・『「東京都を襲ひて一瞬の間に之を粉砕し尽したり」。100年前の未曽有の地震を、当時の新聞はこう報じた。来る天災に備え、少しでも生き残る確率を上げたい―東京に安心できる場所はあるのか。 前編記事『「成城、田園調布、自由が丘まで…」高級住宅街が次々と壊滅…?【関東大震災から100年目の検証】最新理論が警告する東京「大地震で消滅する町」マップ』から続く』、興味深そうだ。
・『人気住宅地も危険  新興住宅地として栄える湾岸エリアに対して、昔から高級住宅地が集まっている世田谷区はどうか。同区は、武蔵野台地の南縁部に位置し、地理的には、ほぼ全域が高台にあるといえる。だが、実は多くの隠れ揺れスポットが眠るエリアだ。 「地盤の面で安心といわれてきた世田谷区の高級住宅街ですが、成城が1.80、田園調布が1.93と、表層地盤増幅率が高い町が潜んでいます。逆に、区の南側、多摩川に面した氾濫平野で知られる二子玉川は1.58ほど。砂利が運ばれる川沿いのほうが、かえって地盤が強い傾向にあることが分かっています」 「住みたい街ランキング」第1位に輝く、若者に人気の町、三軒茶屋も1.72と、注意が必要。また、区の中でも商店街が賑わいを見せるなど、比較的庶民的といわれている千歳烏山に至っては2.04となっている。 世田谷区と並び、落ち着きのある住宅地が多い目黒区の場合、代表的な中目黒は1.52と、比較的地盤が固くなっている。だが、そこから南西に進んでいくと、危険度は一気に跳ね上がる。 「要注意なのは、区内でも人気の高い自由が丘で、増幅率は1.95もあります。この付近は、台地が河川によって削られた谷底低地であり、特に自由が丘は古地図で調べると、『西谷畑』という名前の田んぼだったと分かります。つまり、地盤の下に多くの水を含んでおり、大変緩いのです」 目黒区は今でこそほとんどが暗渠化されているが、かつては谷あいにいくつもの川が流れており、多くの谷底低地が生まれた。閑静な住宅地である碑文谷、武蔵小山の増幅率が、2.37、2.23と、きわめて高いのがその証左だ。 同じ谷底低地では、中央線沿線の町々も危ない。三軒茶屋に次ぐ人気を誇る高円寺の1.78を始め、荻窪は2.01にも達する。 「武蔵野台地の中央部に位置する杉並区は、高円寺~荻窪間のエリアがちょうど北の妙正寺川、南の善福寺川に挟まれており、その分、谷底低地も散在しています。また、このエリアは、古い木造住宅が密集しています。地震による火災時に燃え広がる危険度が高い点から、より注意が必要です」』、「「地盤の面で安心といわれてきた世田谷区の高級住宅街ですが、成城が1.80、田園調布が1.93と、表層地盤増幅率が高い町が潜んでいます。逆に、区の南側、多摩川に面した氾濫平野で知られる二子玉川は1.58ほど。砂利が運ばれる川沿いのほうが、かえって地盤が強い傾向にあることが分かっています」、「目黒区の場合、代表的な中目黒は1.52と、比較的地盤が固くなっている。だが、そこから南西に進んでいくと、危険度は一気に跳ね上がる。 「要注意なのは、区内でも人気の高い自由が丘で、増幅率は1.95もあります。この付近は、台地が河川によって削られた谷底低地であり、特に自由が丘は古地図で調べると、『西谷畑』という名前の田んぼだったと分かります。つまり、地盤の下に多くの水を含んでおり、大変緩いのです」 目黒区は今でこそほとんどが暗渠化されているが、かつては谷あいにいくつもの川が流れており、多くの谷底低地が生まれた。閑静な住宅地である碑文谷、武蔵小山の増幅率が、2.37、2.23と、きわめて高いのがその証左だ」、かなり細かくみていく必要がありそうだ。
・『皇居周辺なら安全か?  ここまで、大地震で消滅する危険性のある町々を見てきた。では逆に、首都直下クラスの地震が起きても安全といえる場所はあるだろうか。 「揺れやすさの観点では、最も安全なのは千代田区の中心部でしょうか。皇居は1.20、永田町の国会議事堂は1.16と、地盤の強さが見て取れます」 このエリアはかつて江戸城があった。江戸城は防衛上の理由から台地に建てられたのは当然のこと、当時すでに地盤固めの作業も施されていたという。そのため、江戸城付近とその西側にある町は今でも都内屈指の地震に強い傾向にある。 だが、例外がないわけではない。 「江戸城周りの町でも、揺れやすい場所はあります。関東大震災の震度を評価した研究では、皇居は震度5弱の揺れと判定されていますが、すぐ北に位置する竹橋は震度7と判定されています。現在も、増幅率は1.91で、近隣とは一線を画す大きさであり、やはり細かく見ていく必要があります」 かつて大名屋敷があった文京区小石川。その中でも春日駅付近のエリアはタワマン建設が進んでいるが、増幅率は1.93を示す危険な場所だ。ここは古くから台地より水が流れ込む、水はけの悪い場所で知られており、その溜まり水が地盤の弱さへとつながっている』、「最も安全なのは千代田区の中心部でしょうか。皇居は1.20、永田町の国会議事堂は1.16と、地盤の強さが見て取れます」、「関東大震災の震度を評価した研究では、皇居は震度5弱の揺れと判定されていますが、すぐ北に位置する竹橋は震度7と判定されています。現在も、増幅率は1.91で、近隣とは一線を画す大きさであり、やはり細かく見ていく必要があります」、なるほど。
・『家一軒ごとに地盤は異なる  また、今年7月に虎ノ門ヒルズ ステーションタワーが竣工を控えるなど再開発が進む港区虎ノ門も2.06と高い。ここにはかつて江戸城の外堀と溜池があったことで知られる。 J-SHIS Mapを使えば、誰でも簡単に250m四方ごとの表層地盤増幅率を確認し、自分の住んでいる町が地震で揺れやすい地域かどうか分かる。その上で、横山氏は「さらに地震対策をするなら」と前置きして、こう語る。 「私は'16年の熊本地震などの被災地を実地調査してきましたが、わずか数軒隣り、道路一本隔てただけでも、家屋の被害状況が大きく違う様子を目にしてきました。家一軒ごとに地盤の状況は異なり、揺れやすさも変わることを知ってほしい。 今は表層地盤増幅率を宅地ごとに計測できる『微動探査』という調査技術が進歩し、民間でも調べてくれる会社があります。もし緩い地盤と判明したら、家の耐震性を強化するなどの対策をとりましょう」 自分の住まいが置かれている状況を今一度確認し、「その日」に備えたい』、「熊本地震などの被災地を実地調査してきましたが、わずか数軒隣り、道路一本隔てただけでも、家屋の被害状況が大きく違う様子を目にしてきました。家一軒ごとに地盤の状況は異なり、揺れやすさも変わることを知ってほしい」、「家一軒ごとに地盤の状況は異なり、揺れやすさも変わる」、きめ細かくみていく必要がありそうだ。

第三に、6月6日付け現代ビジネス「「史上最大の南海トラフ地震・宝永地震」と「富士山の宝永大噴火」の発生はわずか49日差だった…そして今観測され始めたヤバすぎる「富士山大噴火の予兆」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/110961?imp=0
:長きにわたり眠りについていた山がついに目を覚ます。様々な事象で無理やり叩き起こされ、ストレスは最高潮。溜まりに溜まったエネルギーが噴出し、地上に降り注げば、人間などひとたまりもない』、「富士山大噴火」とは不気味だ。
・『巨大地震の前触れか 「また地震か……」  日本中の誰もがそう感じたに違いない。5月22日、伊豆諸島の新島・神津島近海でM5.3、最大震度5弱の地震が発生した。 5月に入り、震度5以上の地震が立て続けに発生しているのは周知の通りだ。GW終盤の5日に発生した石川県能登地方の地震を皮切りに、11日に千葉県南部、13日には鹿児島県のトカラ列島近海でも観測されている。 ここへきて不気味な活動を見せる日本列島―、危惧されるのは、今後30年以内に70~80%の確率で発生するとされる「南海トラフ地震」への影響だ。武蔵野学院大学特任教授で地震学者の島村英紀氏はこう語る。 「南海トラフ地震のような海溝型の巨大地震の前には、内陸直下型の地震が活発化する例が、過去いくつもあります。昭和の東南海地震('44年)、南海地震('46年)の前には、1000人以上の死者を出した鳥取地震('43年)がありました。今、頻発している内陸直下型地震が南海トラフ地震の『前兆』である可能性は十分にあります」 そうなると気がかりなのが、南海トラフ地震発生のXデー。専門家の間で警戒されているのが「2035年」だ。これは文部科学省の特別機関・地震調査研究推進本部も利用する「高知県室戸岬を使った時間予測」に基づいている。 室戸岬近くの室津港は南海トラフの巨大地震の前に沈降し、後に隆起するといった関係性があると見られている。これまでの発生サイクルは90~265年であり、前回の南海地震に最短の90年を当てはめると、2035年頃になる、というわけだ』、「「南海トラフ地震のような海溝型の巨大地震の前には、内陸直下型の地震が活発化する例が、過去いくつもあります・・・今、頻発している内陸直下型地震が南海トラフ地震の『前兆』である可能性は十分にあります」 そうなると気がかりなのが、南海トラフ地震発生のXデー。専門家の間で警戒されているのが「2035年」だ。これは文部科学省の特別機関・地震調査研究推進本部も利用する「高知県室戸岬を使った時間予測」に基づいている」、「2035年」とはもうじきだ。
・『南海トラフ地震で富士山噴火の可能性  しかし、島村氏はこの予測に疑問を呈す。 「予測の根拠とされた室津港ですが、実は江戸期に工事されており、地盤隆起のデータの信憑性が揺らいでいます。私は想定より早く、2020年代中に南海トラフ地震が起こるかもしれないと考えています」 南海トラフ地震のタイムリミットは迫る。だが、怖いのは地震だけだろうか。本当に恐ろしいのは、その先に待つ”大災厄”だ。島村氏が続ける。 「地震と連動して起きる富士山噴火を無視することはできません。富士山が最後に大噴火したのは、1707年のことです。この宝永大噴火の49日前に、南海トラフ史上最大の地震と呼ばれる宝永地震(推定M8.6)が起きています。次の南海トラフ地震で再び富士山噴火が誘発される可能性は非常に高い」 歴史は繰り返す。事実、富士山がいつ噴火してもおかしくないといえる「6つの前兆現象」が存在する。さっそく見ていこう』、「次の南海トラフ地震で再び富士山噴火が誘発される可能性は非常に高い」、大変だ。
・『今すぐ噴火しても不思議ではない  現時点で、富士山は約300年もの間、火山活動を休んでいる状態だ。しかし、油断はできない。というのも、富士山は歴史的に見て頻繁に噴火してきた活火山だからだ。 山梨県富士山科学研究所富士山火山防災研究センター長の吉本充宏氏が語る。 「特に大規模とされた『三大噴火』として、宝永噴火以外に延暦噴火(800~802年)と貞観噴火(864~866年)があります。間隔がわずか約60年しかないように、西暦1000年くらいまで富士山は頻繁に噴火する活火山だったのです」 富士山火山防災対策協議会の資料によれば、5600年前まで遡って富士山の地層を調査したところ、180層の堆積物が確認されたことから、平均して約30年に一度の頻度で噴火してきたという見解もある。歴史を鑑みれば、今すぐに噴火しても不思議ではない。 富士山の地下で不気味な動きが起こっている。火山活動が活発化すると多く発生することから、噴火の前触れといわれる「深部低周波地震」の急増だ。吉本氏が続ける。 「火山で起こる深部低周波地震とは、火山の非常に深い部分、マグマ溜まりの上部で起こる、人体では感知できないほどの小さな地震を指します。これは休眠中だったマグマの活動が始まった時に起きますが、富士山でも'00年秋頃から急増し、今も常時起こっている状態です」 気象庁による富士山の観測データを見ても明らかだ。'21年に88回だった深部低周波地震は、'22年に141回と、実に1.5倍以上になっている。 「週刊現代」2023年6月3・10日号より 後編記事『「明日来てもおかしくない大災厄」《南海トラフ地震と富士山大噴火のダブルパンチ》の被害規模がヤバすぎる…「想定死者数34万人、30mの津波、溶岩流、長期大規模停電…」』に続く』、「平均して約30年に一度の頻度で噴火してきたという見解もある。歴史を鑑みれば、今すぐに噴火しても不思議ではない。 富士山の地下で不気味な動きが起こっている。火山活動が活発化すると多く発生することから、噴火の前触れといわれる「深部低周波地震」の急増だ。吉本氏が続ける・・・富士山でも'00年秋頃から急増し、今も常時起こっている状態です」 気象庁による富士山の観測データを見ても明らかだ。'21年に88回だった深部低周波地震は、'22年に141回と、実に1.5倍以上になっている」、「今すぐに噴火しても不思議ではない」とは不気味だ。

第四に、6月6日付け現代ビジネス「「明日来てもおかしくない大災厄」《南海トラフ地震と富士山大噴火のダブルパンチ》の被害規模がヤバすぎる…「想定死者数34万人、30mの津波、長期大規模停電…」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/110962?imp=0
・『長きにわたり眠りについていた山がついに目を覚ます。様々な事象で無理やり叩き起こされ、ストレスは最高潮。溜まりに溜まったエネルギーが噴出し、地上に降り注げば、人間などひとたまりもない。 前編記事『「史上最大の南海トラフ地震・宝永地震」と「富士山の宝永大噴火」の発生はわずか49日差だった…そして今観測され始めたヤバすぎる「富士山大噴火の予兆」』より続く』、興味深そうだ。
・『地下はマグマでパンパン  マグマの動きが活発になれば、やがて地表にも影響が現れる。前出の島村氏は富士山近辺で地殻変動が起きていると指摘する。 「異常が起き始めたのは数年前からです。河口湖の水が減少したり、静岡県富士宮市で地下水が溢れてきたりといった報告が出ています。2年前には富士山の登山道の一つである滝沢林道に割れ目が走る現象も起きています」 すでに地下はマグマでパンパンの状態。そこに追い打ちをかけるように地震のエネルギーによる圧力がかかれば、いよいよ噴火は秒読みとなる。 実は'11年に一度、「富士山噴火は回避できない」といわれるほどの危険水域に至ったことがある。東日本大震災の4日後、静岡県東部でM6.4の大地震が起きた時だ。富士宮市では震度6強が観測されたが、この時、富士山直下の断層が約1mも上下に動いたことが観測された。 「断層が大きく動いたことで、富士山のマグマ溜まりの天井部分が割れたと見られています。そのためマグマがこの割れ目から噴出すると予想されました。奇跡的に噴火こそ免れましたが、10年以上経った今も、東日本大震災による圧力がかかっている状況には変わりありません」(島村氏)』、「すでに地下はマグマでパンパンの状態。そこに追い打ちをかけるように地震のエネルギーによる圧力がかかれば、いよいよ噴火は秒読みとなる」、「東日本大震災の4日後、静岡県東部でM6.4の大地震が起きた時だ。富士宮市では震度6強が観測されたが、この時、富士山直下の断層が約1mも上下に動いたことが観測された。 「断層が大きく動いたことで、富士山のマグマ溜まりの天井部分が割れたと見られています。そのためマグマがこの割れ目から噴出すると予想されました。奇跡的に噴火こそ免れましたが、10年以上経った今も、東日本大震災による圧力がかかっている状況には変わりありません」、微妙なバランス下にあるようだ。
・『連動する2つの地震  そして今年5月に入り、前述した群発地震は、南海トラフだけでなく、富士山にも影響を及ぼしている。それが新島・神津島の地震との連動だ。 富士山と新島・神津島は、海を隔てて直線距離にして約100kmしか離れていない。両者は共に「富士火山帯」に属しているのだ。 「富士火山帯は伊豆諸島から箱根、そして富士山にまで及びます。同じ火山帯の線上にある場所は連動して、火山性地震や噴火を引き起こしやすい。当然、富士山噴火との関連も疑われます」(島村氏) 富士山との連動が予期される直近の「異変」は日本だけにとどまらない。5月19日に起きた、南太平洋にあるニューカレドニアのローヤリティー諸島付近での巨大地震(M7.7)がそうだ。 なぜ連動するのか。それは震源であるローヤリティー諸島は、日本列島も属する「環太平洋造山帯」に含まれているからだ。この環太平洋造山帯、その名の通り、太平洋を囲むように形成されているが、その特徴に造山帯内で大地震と大規模な火山噴火が連動して起きるというものがある。そのため、造山帯は別名「炎の輪」とも呼ばれている。 '16年の熊本地震が良い例だ。本震が発生した同年4月16日、エクアドルでもM7・8の大地震が発生した。すると翌日、同じ環太平洋造山帯上にあるアメリカ・クリーブランド山、メキシコ・コリマ山、チリ・ビジャリカ山が3つ同時に噴火したのだ。 ローヤリティー諸島の地震が引き金になって富士山に”着火”する。その可能性も否定できない』、「富士山との連動が予期される直近の「異変」は日本だけにとどまらない。5月19日に起きた、南太平洋にあるニューカレドニアのローヤリティー諸島付近での巨大地震(M7.7)がそうだ。 なぜ連動するのか。それは震源であるローヤリティー諸島は、日本列島も属する「環太平洋造山帯」に含まれているからだ」、「ローヤリティー諸島の地震が引き金になって富士山に”着火”する。その可能性も否定できない」、そんなに遠くの火山が連動しているとは、初めて知った。
・『富士山噴火が及ぼす甚大な影響  では、南海トラフ地震などと連動する形で富士山が噴火するという最悪なケースが起きた場合、どれほどの被害に見舞われるのか。それを示したのが左頁の図だ。 プレート境界を震源にM9級の超巨大地震が発生。愛知県名古屋市、静岡県浜松市、四国全域など153市町村を震度7の揺れが襲う。その後、30m超の大津波が九州から関東の沿岸部に到達する。この間、最短で3分だ。さらに本震の1~2ヵ月以内に、宝永噴火の時と同じように、富士山が噴火する。まず危険なのは溶岩流だ。前出の吉本氏が解説する。 「火口のできる場所によっては、富士山麓の市街地に2時間で到達します。規模が大きくなると神奈川県にまで届く場合もあります。主要交通網にも届き、寸断を余儀なくされるでしょう」 周辺自治体だけでなく、遠く離れた首都圏にも影響が及ぶ。火山灰だ。吉本氏が続ける。 噴火の規模や風向きによって首都圏で数cmから10cmもの火山灰が積もる恐れがあります。何より心配なのが交通網への影響です。灰が道路に積もると車両の走行が困難になります。また、湿った灰が碍子(送電するのに必要な器具)に付着すると、絶縁破壊が起こり、大規模な停電を引き起こすことも考えられます」 停電によって、あらゆるコンピュータが機能不全に陥れば、首都機能は麻痺。加えて舞い上がる火山灰が原因で気管支喘息や角膜剥離を引き起こす人も続出する。 政府の試算に基づけば、南海トラフ地震、富士山噴火による想定死者数の合算値は約34万人。その1人にならないためにも、と吉本氏はこう警告する。 「300年間噴火していない富士山ですが、実はその理由すら研究者の間でも分かっていません。それほど未知の火山であることを今一度、理解してもらいたいです」 明日、噴火してもおかしくない。それくらいの心構えが求められている』、「南海トラフ地震などと連動する形で富士山が噴火するという最悪なケースが起きた場合、どれほどの被害に見舞われるのか・・・プレート境界を震源にM9級の超巨大地震が発生。愛知県名古屋市、静岡県浜松市、四国全域など153市町村を震度7の揺れが襲う。その後、30m超の大津波が九州から関東の沿岸部に到達する。この間、最短で3分だ。さらに本震の1~2ヵ月以内に、宝永噴火の時と同じように、富士山が噴火する。まず危険なのは溶岩流だ・・・「火口のできる場所によっては、富士山麓の市街地に2時間で到達します。規模が大きくなると神奈川県にまで届く場合もあります。主要交通網にも届き、寸断を余儀なくされるでしょう」 周辺自治体だけでなく、遠く離れた首都圏にも影響が及ぶ。火山灰だ。吉本氏が続ける。 噴火の規模や風向きによって首都圏で数cmから10cmもの火山灰が積もる恐れがあります」、「湿った灰が碍子・・・に付着すると、絶縁破壊が起こり、大規模な停電を引き起こすことも考えられます」 停電によって、あらゆるコンピュータが機能不全に陥れば、首都機能は麻痺。加えて舞い上がる火山灰が原因で気管支喘息や角膜剥離を引き起こす人も続出する。 政府の試算に基づけば、南海トラフ地震、富士山噴火による想定死者数の合算値は約34万人」、「「300年間噴火していない富士山ですが、実はその理由すら研究者の間でも分かっていません。それほど未知の火山であることを今一度、理解してもらいたいです」、さらに私が最も懸念するのは、原発が火山灰で運転できなくなり、冷却不能に追い込まれ、福島原発と同様の事故を起こすことだ。原発を抱える中での、大地震、大噴火の影響は、被害をさらに深刻にさせる懸念が強い。 
タグ:「「南海トラフ地震のような海溝型の巨大地震の前には、内陸直下型の地震が活発化する例が、過去いくつもあります・・・今、頻発している内陸直下型地震が南海トラフ地震の『前兆』である可能性は十分にあります」 そうなると気がかりなのが、南海トラフ地震発生のXデー。専門家の間で警戒されているのが「2035年」だ。これは文部科学省の特別機関・地震調査研究推進本部も利用する「高知県室戸岬を使った時間予測」に基づいている」、「2035年」とはもうじきだ。 「富士山大噴火」とは不気味だ。 現代ビジネス「「史上最大の南海トラフ地震・宝永地震」と「富士山の宝永大噴火」の発生はわずか49日差だった…そして今観測され始めたヤバすぎる「富士山大噴火の予兆」」 「熊本地震などの被災地を実地調査してきましたが、わずか数軒隣り、道路一本隔てただけでも、家屋の被害状況が大きく違う様子を目にしてきました。家一軒ごとに地盤の状況は異なり、揺れやすさも変わることを知ってほしい」、「家一軒ごとに地盤の状況は異なり、揺れやすさも変わる」、きめ細かくみていく必要がありそうだ。 「最も安全なのは千代田区の中心部でしょうか。皇居は1.20、永田町の国会議事堂は1.16と、地盤の強さが見て取れます」、「関東大震災の震度を評価した研究では、皇居は震度5弱の揺れと判定されていますが、すぐ北に位置する竹橋は震度7と判定されています。現在も、増幅率は1.91で、近隣とは一線を画す大きさであり、やはり細かく見ていく必要があります」、なるほど。 (その14)(「成城、田園調布、自由が丘まで」高級住宅街が次々と壊滅…?最新理論が警告する東京「大地震で消滅する町」マップ、「世田谷、目黒、杉並区も危ない!」最新指標が警告する「東京の住みたい街ランキング上位」でも危険な街の名前、「史上最大の南海トラフ地震・宝永地震」と「富士山の宝永大噴火」の発生はわずか49日差だった…そして今観測され始めたヤバすぎる「富士山大噴火の予兆」、「明日来てもおかしくない大災厄」《南海トラフ地震と富士山大噴火のダブルパンチ》の被害規模がヤバすぎる…「想定死者数34万人 30 災害 政府の試算に基づけば、南海トラフ地震、富士山噴火による想定死者数の合算値は約34万人」、「「300年間噴火していない富士山ですが、実はその理由すら研究者の間でも分かっていません。それほど未知の火山であることを今一度、理解してもらいたいです」、さらに私が最も懸念するのは、原発が火山灰で運転できなくなり、冷却不能に追い込まれ、福島原発と同様の事故を起こすことだ。原発を抱える中での、大地震、大噴火の影響は、被害をさらに深刻にさせる懸念が強い。 奈川県にまで届く場合もあります。主要交通網にも届き、寸断を余儀なくされるでしょう」 周辺自治体だけでなく、遠く離れた首都圏にも影響が及ぶ。火山灰だ。吉本氏が続ける。 噴火の規模や風向きによって首都圏で数cmから10cmもの火山灰が積もる恐れがあります」、「湿った灰が碍子・・・に付着すると、絶縁破壊が起こり、大規模な停電を引き起こすことも考えられます」 停電によって、あらゆるコンピュータが機能不全に陥れば、首都機能は麻痺。加えて舞い上がる火山灰が原因で気管支喘息や角膜剥離を引き起こす人も続出する。 「南海トラフ地震などと連動する形で富士山が噴火するという最悪なケースが起きた場合、どれほどの被害に見舞われるのか・・・プレート境界を震源にM9級の超巨大地震が発生。愛知県名古屋市、静岡県浜松市、四国全域など153市町村を震度7の揺れが襲う。その後、30m超の大津波が九州から関東の沿岸部に到達する。この間、最短で3分だ。さらに本震の1~2ヵ月以内に、宝永噴火の時と同じように、富士山が噴火する。まず危険なのは溶岩流だ・・・「火口のできる場所によっては、富士山麓の市街地に2時間で到達します。規模が大きくなると神 「富士山との連動が予期される直近の「異変」は日本だけにとどまらない。5月19日に起きた、南太平洋にあるニューカレドニアのローヤリティー諸島付近での巨大地震(M7.7)がそうだ。 なぜ連動するのか。それは震源であるローヤリティー諸島は、日本列島も属する「環太平洋造山帯」に含まれているからだ」、「ローヤリティー諸島の地震が引き金になって富士山に”着火”する。その可能性も否定できない」、そんなに遠くの火山が連動しているとは、初めて知った。 「断層が大きく動いたことで、富士山のマグマ溜まりの天井部分が割れたと見られています。そのためマグマがこの割れ目から噴出すると予想されました。奇跡的に噴火こそ免れましたが、10年以上経った今も、東日本大震災による圧力がかかっている状況には変わりありません」、微妙なバランス下にあるようだ。 「すでに地下はマグマでパンパンの状態。そこに追い打ちをかけるように地震のエネルギーによる圧力がかかれば、いよいよ噴火は秒読みとなる」、「東日本大震災の4日後、静岡県東部でM6.4の大地震が起きた時だ。富士宮市では震度6強が観測されたが、この時、富士山直下の断層が約1mも上下に動いたことが観測された。 現代ビジネス「「明日来てもおかしくない大災厄」《南海トラフ地震と富士山大噴火のダブルパンチ》の被害規模がヤバすぎる…「想定死者数34万人、30mの津波、長期大規模停電…」」 気象庁による富士山の観測データを見ても明らかだ。'21年に88回だった深部低周波地震は、'22年に141回と、実に1.5倍以上になっている」、「今すぐに噴火しても不思議ではない」とは不気味だ。 「平均して約30年に一度の頻度で噴火してきたという見解もある。歴史を鑑みれば、今すぐに噴火しても不思議ではない。 富士山の地下で不気味な動きが起こっている。火山活動が活発化すると多く発生することから、噴火の前触れといわれる「深部低周波地震」の急増だ。吉本氏が続ける・・・富士山でも'00年秋頃から急増し、今も常時起こっている状態です」 「次の南海トラフ地震で再び富士山噴火が誘発される可能性は非常に高い」、大変だ。 うだ。 「要注意なのは、区内でも人気の高い自由が丘で、増幅率は1.95もあります。この付近は、台地が河川によって削られた谷底低地であり、特に自由が丘は古地図で調べると、『西谷畑』という名前の田んぼだったと分かります。つまり、地盤の下に多くの水を含んでおり、大変緩いのです」 目黒区は今でこそほとんどが暗渠化されているが、かつては谷あいにいくつもの川が流れており、多くの谷底低地が生まれた。閑静な住宅地である碑文谷、武蔵小山の増幅率が、2.37、2.23と、きわめて高いのがその証左だ」、かなり細かくみていく必要がありそ 「「地盤の面で安心といわれてきた世田谷区の高級住宅街ですが、成城が1.80、田園調布が1.93と、表層地盤増幅率が高い町が潜んでいます。逆に、区の南側、多摩川に面した氾濫平野で知られる二子玉川は1.58ほど。砂利が運ばれる川沿いのほうが、かえって地盤が強い傾向にあることが分かっています」、「目黒区の場合、代表的な中目黒は1.52と、比較的地盤が固くなっている。だが、そこから南西に進んでいくと、危険度は一気に跳ね上がる。 現代ビジネス「「世田谷、目黒、杉並区も危ない!」最新指標が警告する「東京の住みたい街ランキング上位」でも危険な街の名前」 「後編記事」を見てみよう。 「台地の地盤の地下に、厚い泥の層からなる緩い地盤がある場所がいくつも見つかっています。こうした場所は低地と同等か、それ以上に揺れやすく、地震に弱いのです」、そんな場所があるとは初めて知った。 『地震に関する地域危険度測定調査』は確かに見やすい。https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/chousa_6/home.htm 現代ビジネス「「成城、田園調布、自由が丘まで」高級住宅街が次々と壊滅…?最新理論が警告する東京「大地震で消滅する町」マップ」
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宗教(その10)(【橋爪大三郎・特別講義】日本人が知らない 中国を動かす「儒教の本質」とは?、「下関は統一教会の聖地」論争の不毛 信者も地元民も寝耳に水だったワケ、「安倍晋三元首相」暗殺の闇 なぜ祖父・岸信介は「統一教会教祖」の釈放嘆願書をレーガン大統領に送ったのか) [社会]

宗教(その10)については、本年4月19日に取上げた。今日は、(【橋爪大三郎・特別講義】日本人が知らない 中国を動かす「儒教の本質」とは?、「下関は統一教会の聖地」論争の不毛 信者も地元民も寝耳に水だったワケ、「安倍晋三元首相」暗殺の闇 なぜ祖父・岸信介は「統一教会教祖」の釈放嘆願書をレーガン大統領に送ったのか)である。

先ずは、本年4月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した宗教社会学者で東京工業大学名誉教授の橋爪大三郎氏による「【橋爪大三郎・特別講義】日本人が知らない、中国を動かす「儒教の本質」とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321624
・『「死」とは何か。死はかならず、生きている途中にやって来る。それなのに、死について考えることは「やり残した夏休みの宿題」みたいになっている。死が、自分のなかではっきりかたちになっていない。私たちの多くは、そんなふうにして生きている。しかし、世界の大宗教、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教などの一神教はもちろん、仏教、神道、儒教、ヒンドゥー教など、それぞれの宗教は「人間は死んだらどうなるか」についてしっかりした考え方をもっている。 現代の知の達人であり、宗教社会学の第一人者である橋爪大三郎氏(大学院大学至善館教授、東京工業大学名誉教授)が、各宗教の「死」についての考え方を、鮮やかに説明する『死の講義』は、「この本に、はまってしまった。私たちは『死』を避けることができない。この本を読んで『死後の世界』を学んでおけば、いざというときに相当落ち着けるだろう」(西成活裕氏・東京大学教授)と評されている。今回は、著者による特別講義をお届けする』、「「死について考えることは「やり残した夏休みの宿題」みたいになっている」、「やり残した夏休みの宿題」とは言い得て妙だ。「各宗教の「死」についての考え方を、鮮やかに説明する『死の講義』、とは興味深そうだ。
・『人が人を支配するのは正しい  中国と言えば、儒教。儒教(儒学)は一神教やヒンドゥー教とまったく違った考え方なので、これは宗教なのか、と思うほどです。でも、宗教だと言ってよい。 儒教の根底にあるのは、つぎの考え方です。 [儒教の原理] 人が人を支配するのは、正しい。 人が人を支配することを、政治といいます。政治はどの社会にもある。どの社会でも正当化されているだろう。 でも中国文明では、政治の地位が高い。無条件で正当だと考える。政治がすべてを解決すると考える点に、特徴があります。 これを、一神教と比較してみましょう。 一神教の原理。それは、「神が人を支配するのは、正しい」です。これは、無条件で正しい。ならば、人が人を支配するのは、無条件で正しくはない。 それが正しいのは、「神がそれを命じた場合」に限られる。 そこで西欧では、地上で神の代理をつとめる教会が、王や貴族など統治者より優位に立っていました。教会が認めないと、王は正しい統治者でない。政教分離です。 政治は相対化される、ということです。 中国には、天の考え方があります。天は、神と違って、地上にその代理人がいない。教会がない。中国の統治者(皇帝)は、天命を受けて政治をしている、と主張します。 その証拠があるかというと、特にない。実力で、皇帝になれてしまうということです。儒教はそれを認めます。つまり、皇帝が、天命を受けて、人を支配するのは正しい』、「一神教の原理。それは、「神が人を支配するのは、正しい」です。これは、無条件で正しい。ならば、人が人を支配するのは、無条件で正しくはない。 それが正しいのは、「神がそれを命じた場合」に限られる。 そこで西欧では、地上で神の代理をつとめる教会が、王や貴族など統治者より優位に立っていました。教会が認めないと、王は正しい統治者でない。政教分離です。 政治は相対化される」、「中国には、天の考え方があります。天は、神と違って、地上にその代理人がいない。教会がない。中国の統治者(皇帝)は、天命を受けて政治をしている、と主張します。 その証拠があるかというと、特にない。実力で、皇帝になれてしまうということです。儒教はそれを認めます。つまり、皇帝が、天命を受けて、人を支配するのは正しい」、「儒教」など中国流の考え方は、「統治者」には好都合だ。
・『儒教は、社会秩序をつくり出す  儒教の役割は、中国に、社会秩序をつくり出すことです。 社会がばらばらにならないように、まず、政府が必要。政府は、権力を独占し、税金を集め、官僚が統治を行ない、軍隊が平和を維持する。この全体が政治ですが、これが正しい。 中国全体では、皇帝が1番、皇太子が2番、…と地方の役所の末端まで順番がついていて、上の命令に従う。忠です。 忠とは、政治的リーダーに従うこと。政治の秩序は、経済よりも文化芸術よりも宗教よりも上です。 つぎに、社会の末端では、親族の秩序をつくり出します。儒教は、親族の年長者、とくに親に従うことを要求する。孝です。 忠は官僚だけの義務ですが、孝はすべての中国人の義務。長幼の序は、地域社会に秩序をうみ出し、社会の末端を安定させます』、「忠は官僚だけの義務ですが、孝はすべての中国人の義務。長幼の序は、地域社会に秩序をうみ出し、社会の末端を安定させます」、なるほど。
・『儒教のメカニズム  儒教は、誰が誰に従えばいいのかという順序(序列)を配当するメカニズムです。 政治の領域では、人びとは能力によって抜擢される。皇帝だけは、世襲で決まる。そして、統治階級の人びとは順番がついて、政治秩序が安定します。 親族の領域では、人びとは年齢によって順番がつく。中国は父系社会なので、父系の親族集団をつくります。それが大きくまとまって、安定した秩序をつくり出す。 この秩序は永遠の昔から決まっていて、正しいものなので、これに従うのが人間の道である。そう、儒教の経典に書いてあります。 道徳と宗教と政治が一体化している。それ以外に人間の正しい生き方はない、という考え方です。 以上をまとめると、忠:政治的リーダー(とくに皇帝)に服従する  孝:親族の年長者(とくに親)に服従する  孝は、忠よりも絶対的。親に対する服従は無条件なのです。中国の農業は家族経営なので、孝を強調することで、経営基盤が安定する。税収が増え、政府にとってもメリットがあるのです』、「この秩序は永遠の昔から決まっていて、正しいものなので、これに従うのが人間の道である・・・道徳と宗教と政治が一体化している。それ以外に人間の正しい生き方はない、という考え方です。 以上をまとめると、忠:政治的リーダー(とくに皇帝)に服従する  孝:親族の年長者(とくに親)に服従する  孝は、忠よりも絶対的。親に対する服従は無条件なのです。中国の農業は家族経営なので、孝を強調することで、経営基盤が安定する。税収が増え、政府にとってもメリットがあるのです」、「為政者」には本当に好都合な考え方だ。
・『現在の中国社会と儒教  この儒教の考え方が現代化して広がったものが現代の中国共産党です。中央の官僚機構は総書記が1番で、国務院総理が2番で、政治局常務委員のつぎは政治局員で、中央委員で、…と全部順番が決まっています。 ただし、中国共産党はもう、儒教の古典を読みません。代わりに党の重要文献を読む。そして党の重要文献は、ころころ入れ替わる。はじめは毛沢東選集で、つぎは鄧小平理論で、江沢民や胡錦涛の文献があって、いまは習近平思想です。 学習会に参加させられ、試験もあります。中国共産党では、指導者が変わると、文献が変わる。状況や政策に合わせて、頭の中身をつぎつぎ上書きして行かないといけない。儒教っぽいスタイルだが儒教ではない、権威主義的な独裁政権ができあがっています。 ※本原稿は、2022年11月に大学院大学至善館で行なった講演(https://shizenkan.ac.jp/event/religions_oc2023/)をもとに、再編集したものです。 (橋爪大三郎氏の略歴はリンク先参照)』、「儒教の考え方が現代化して広がったものが現代の中国共産党です」、「儒教っぽいスタイルだが儒教ではない、権威主義的な独裁政権ができあがっています」、確かにその通りだ。

次に、4月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「「下関は統一教会の聖地」論争の不毛、信者も地元民も寝耳に水だったワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/322187
・『「下関は聖地」発言に反感持つ人が出ても致し方ない?  「謝罪を表明し、次の国政選挙までSNSのトップに掲げておいて反省すべき」 「読解力がないことが証明されたな」「知ったかするな、下関の恥さらしめ」 先ごろ衆議院・山口4区補欠選挙に出馬したジャーナリスト・有田芳生氏の「下関は旧統一教会の聖地」という発言を批判した芸能人らがSNSで叩かれている。 事の経緯を振り返ろう。 今回の騒動の発端は、有田氏が選挙演説中に「下関って統一教会(世界平和統一家庭連合=旧統一教会)の聖地なんです」と発言し、それがSNS上で切り取られて炎上したことだ。有田氏本人もツイートされているが、この発言は2年前の旧統一教会幹部の発言に基づいている。教祖・文鮮明氏が日本に入国して80周年を記念した教団の式典が21年3月に開かれ、韓国から来日した方相逸・神日本大陸会長が講演の最後にこのように発言をした。 「山口の下関は聖地と同等の場所です」 これは信者向けの新聞でも報じられている「事実」だ。そのため有田氏の「聖地発言」を「印象操作」「根拠がない」などと批判したお笑い芸人・田村淳さんや、タレントの国生さゆりさんが逆に「事実をねじ曲げている」「勉強不足」などと「正義の鉄槌」を下されているというわけだ。 しかも、「軽蔑する」とツイートした国生さんにいたっては、有田氏のもとに「統一教会裁判の弁護士」から名誉毀損に認定されるので訴訟を検討すべきというメールがきたというから、炎上どころでは済まないかもしれない。 さて、こういう騒動を聞くと、善良な日本人の皆さんの中には、「反日カルト」と腐敗した自民党を叩きのめそうと日々頑張ってくださっているジャーナリスト(有田氏)の足を引っ張るようなことをして恥ずかしくないのか――などと、芸能人に憤りを感じるという方も多いことだろう。 ただ、田村さんや国生さんの肩を持つわけではないが、彼らのように有田氏の「聖地発言」に対して反感を抱いたり、イチャモンをつけたりしてしまう人が一定数現れてしまうのも、しょうがないのではないかという気もしている。 ひとくちに「聖地」と聞いても、そこからイメージすることは十人十色だからだ』、「有田氏の「聖地発言」」、自体が説明不足で誤解を生み易いのも事実だ。
・『「聖地」という言葉の重みは個々で異なることが論争の原因  「聖地」とはどんなものをイメージするだろうか。 ある人はメッカのように、信者たちが毎年ある時期になると、大挙して巡礼に押し寄せる光景を思い描く。信者が誰しも憧れる地で、教団としてもそこを拠点に勢力を拡大してきた事実もある。当然、周辺住民たちも「ここはそういう場所」という認識を持つ、という「自他共に認める聖地」である。 一方で、もっとゆるい「聖地」を連想する人もいるはずだ。その団体から「神」として崇められるような人が、若い時に住んでいたとか、悟りを開いたなどという“ゆかりの地”的なスポットだ。信者は教祖のことを愛してやまないので、その足跡はすべて聖なるものになる。少しでも教祖を感じたくて個人的に現地に赴く。これは人気マンガやアニメの舞台をファンが訪ね歩く「聖地巡礼」と似た感覚だ。 このように「聖地」イメージに、人によって大きな開きがあることが今回のののしり合いの原因ではないか、と個人的には思っている。 どういうことか、他の宗教を例に説明しよう。例えば、幸福の科学では故・大川隆法総裁が生まれた四国・徳島が「聖地」となっており、教団としても以下のように巡礼を呼びかけている。 <四国・徳島には、聖地・四国正心館のほかに、聖地・川島特別支部や聖地・四国本部精舎、聖地エル・カンターレ生誕館があります。これらの地を巡礼し、主エル・カンターレの臥竜の時代に思いを馳せて精進の決意を新たにしましょう>(幸福の科学ホームページ) こういう施設があって信者が押し寄せることは当然、周辺住民なら知っている。だから、もし有田氏がこの地から立候補して、「徳島は幸福の科学の聖地」と叫んだところで、「まあ、そうですけどね」という感じで、あまりいい気分はしないが住民も批判しないだろう。 だが、今回、有田氏の「下関は旧統一教会の聖地」「この土地から自民党との癒着が全国に広がっていった」と叫ぶと、一部の下関市民や下関出身の田村さんはカチンときて批判をした。 なぜかというと、彼らの中で下関は「そういう類の聖地」ではないと思っているからだ』、前述の「「聖地発言」」、自体が説明不足で誤解を生み易い」、ことのためだ。
・『旧統一教会サイドも「聖地認定」していない  「それはそっちの知識不足が悪い!鈴木エイトさんや有田さんの本を読んでしっかり勉強しておけ」という怒声が飛んできそうだが、旧統一教会にそこまで関心のない地元の方が、そういう認識になるのもしょうがない部分もある。 実は有田氏が指摘した「下関は旧統一教会の聖地」という話は、当の信者たちの間でもそれほど有名な話ではない。筆者も知り合いの信者何人かに確認したが、「そうなんですか?」「はじめて聞きました」と首を傾げていた。すっとぼけているようでもなく、心から素直に驚いていた。 なぜこういうリアクションになるかというと、教団としてのオフィシャルな「聖地」は、文鮮明氏が1965年に来日した際に定めた、東京、名古屋、大阪、高松、広島、福岡、札幌、仙台の8カ所だからだ。だから、幸福の科学のように教団として「下関に行って巡礼しましょう」なんて呼びかけもしていない。 教祖も教団も「聖地認定」していない。信者が大挙して押し寄せて“下関詣”もしていない。 だから、下関市民からすれば今回の有田氏の発言は寝耳に水だった。その中で、「何をワケのわからないデマを流しているんだ!」といきり立ってしまう人が現れるのは、サヨクやウヨクだというイデオロギー関係なくしょうがないのではないか。 だが、一方で、有田氏らのように旧統一教会を追いかけてきたジャーナリストや弁護士センセイたちの間では、下関が旧統一教会の聖地だというのは、「議論するのも馬鹿らしい常識」「基礎知識」でもある。冒頭で紹介したように、教団幹部が言及しているという「事実」もある。 なぜこんな奇妙な現象が起きるのか』、「有田氏らのように旧統一教会を追いかけてきたジャーナリストや弁護士センセイたちの間では、下関が旧統一教会の聖地だというのは、「議論するのも馬鹿らしい常識」「基礎知識」でもある」、専門家特有の思い上がり的な色彩もあるようだ。
・『ゆかりがあれば「聖地」ってことに…早稲田大学も「聖地」?  実はこの謎を読み解く鍵は、「早稲田大学」にある。何を隠そう、この大学の周辺も下関と同様に、「旧統一教会の聖地」だからだ。 『早稲田大の周辺、なぜ旧統一教会の「聖地」に?住民から困惑の声も(毎日新聞22年12月2日)』 この記事は、早稲田大周辺で文鮮明教祖のゆかりの地を巡礼する世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者たちの映像がYouTubeで流れていることを報じたものだ。 先ほど紹介したように、文鮮明氏は下関から日本に入った。そして、41年から43年にかけて早稲田大学付属早稲田高等工学校に留学していた。こういう経緯があるので、信者からすれば、早稲田大学周辺というのは、「真のお父様ゆかりの地」という認識だ。その中で、熱心な信者はツアーのように、その歴史的足跡をたどっているのだ。 もちろん、教団はこのような「聖地巡礼」を信者に対して、オフィシャルに呼びかけているわけではない。しかし、毎日新聞がカギカッコ付きで「聖地」と報じているように、信者が聖なる場所だと考えているこことも事実だ。要するに、「みなし聖地」というか「准聖地」のような扱いなのだ。 筆者は、下関もこれと同じだと考えている。それを示すのが、有田氏も引用している方相逸・神日本大陸会長の「山口の下関は聖地と同等の場所です」という発言だ。下関が紛れもない聖地ならば、「下関は聖地です」とスパッと断言すればいい。聞いているのはみな信者なのだから、誰かに気を使って、言葉を濁す理由もない。 しかし、方相逸氏は「聖地と同等の場所です」と言っている。つまり、講演の最後で会場となった下関を持ち上げるというか、「聖地ではないけれど、聖地みたいにありがたい場所じゃないですか、ねえ、みなさん」とリップサービスをしたのではないか。 つまり、下関は確かに「旧統一教会の聖地」ではあるのだが、一般の人が思い描くような信者がわんさか訪れて、信仰を強めていくというような「聖地」ではなく、「ゆかりの地」であって、一般人の我々が理解できるニュアンスとしては、先ほど申し上げたようなアニメやマンガの舞台をファンたちが「聖地」と呼ぶような感覚ではないのか。 「はい、出ました!名誉毀損!有田センセイ、このバカをさっさと訴えてください」という怒りの声が聞こえてきそうだが、筆者は「聖地」という言葉の「受け取る側の認識ギャップ」を指摘しただけで、有田氏や旧統一教会の専門家の皆さんのおっしゃることを批判も否定もするつもりは毛頭ない。 しかも、「聖地」がどうかはさておき、有田氏が主張するように、旧統一教会にとって「下関」という土地が政治的に重要な場所であることは間違いない。有田氏らが選挙戦で訴えたように、安倍晋三元首相と、父・晋太郎氏の政治的地盤だからだ』、「下関は確かに「旧統一教会の聖地」ではあるのだが、一般の人が思い描くような信者がわんさか訪れて、信仰を強めていくというような「聖地」ではなく、「ゆかりの地」であって、一般人の我々が理解できるニュアンスとしては、先ほど申し上げたようなアニメやマンガの舞台をファンたちが「聖地」と呼ぶような感覚ではないのか」、なるほど。
・『選挙で強めの言葉は理解できるが、「法的措置」はいかがなものか  文鮮明氏の反共思想に理解を示したことから距離が縮まったと言われる、安倍元首相の祖父、岸信介元首相の地盤は、旧山口2区で主に山口市が拠点だ。また、安倍家ももともとは長門市が本家で、この地で江戸時代から続く大庄屋だった。つまり、岸家も安倍家も、もともと下関とはそこまで強い繋がりがあったわけではないのだ。 それが、安倍晋太郎氏が1958年に旧山口1区から出馬する際に、下関にも事務所が開設される。そして、その翌年59年、既に韓国で活動をしていた旧統一教会が日本に初進出を果たした。 下関から日本に入った文鮮明氏の宗教が日本に入ってきたのとほぼ同じタイミングで、文氏と信頼関係を結んだ岸信介氏の娘婿が下関に事務所を開設する――。 反自民で政治家をやっていて安倍王国で票を得ようと思ったら、この「奇妙な一致」にフォーカスを当ててそこを叩かないわけがない。「選挙」というものはきれいごとだけでは勝てない。時にライバルを引きずり下ろすくらいのことをしなければいけないものだ。その流れで「下関は旧統一教会の聖地」という強めのワードが飛び出してしまうのも、よく理解できる。 つまり、有田氏の今回の「聖地」発言は、一部の人には誤解を招いてしまったが、反自民という「政治運動」をされていることを踏まえれば、出るべくして出るような類の発言なのだ。 そういう意味では、有田氏の今回の発言は、野党政治家としては妥当だとは思う。しかし、発言を批判されて、すぐに法的措置みたいなのをチラつかせたのは、結果としてあまりイメージがよろしくなかったのでは、と個人的には感じる。 特に立憲民主党は先ごろも、小西洋之衆議員議員らが国会での発言を切り取られたとしてメディアに法的措置を示唆した、と話題になった。政治家なので、自分の主張にそぐわない批判者を黙らせたいという気持ちがあることは理解できるが、権力者がそれを乱発すると、「スラップ訴訟(批判や反対などに対する封じこめの手段としておこす訴訟のこと)」と批判を受ける恐れもある。 また、長いこと危機管理をやってきた立場で言わせていただくと、政治家やメディア、ジャーナリストという「言論」でメシを食う人が、何か言われてすぐに法的措置を持ち出すというのは、「今まで自分は散々人のことを批判してきたのに、批判される側になるとそれか」という感じで、ネガイメージが広まってしまうケースもある。 もちろん、犯罪を犯したなど社会的評価を著しく貶めるような事実無根の誹謗中傷には迅速に対応すべきだが、今回の「聖地論争」のような多様な意見があるものの場合、やはり有田氏のような高名なジャーナリストは、弁護士に何をアドバイスされようとも、まずは「言論」で国生さんの誤解を解いていただきたかったな、と思う。 いやいや、決して批判などではありませんので、どうか法的措置だけはご勘弁を』、「犯罪を犯したなど社会的評価を著しく貶めるような事実無根の誹謗中傷には迅速に対応すべきだが、今回の「聖地論争」のような多様な意見があるものの場合、やはり有田氏のような高名なジャーナリストは、弁護士に何をアドバイスされようとも、まずは「言論」で国生さんの誤解を解いていただきたかったな、と思う」、同感である。

第三に、5月7日付けデイリー新潮が掲載したジャーナリストの徳本栄一郎氏による「「安倍晋三元首相」暗殺の闇 なぜ祖父・岸信介は「統一教会教祖」の釈放嘆願書をレーガン大統領に送ったのか」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05071100/?all=1
・『75年前、GHQの指示で巣鴨拘置所から岸信介氏が釈放された。その岸氏は後に統一教会の教祖、文鮮明氏の釈放を求める文書を米大統領に送る。共産勢力の脅威に対抗するためだ。安倍元総理暗殺の裏で受け継がれてきた保守人脈と宗教の癒着に迫る』、「岸氏は後に統一教会の教祖、文鮮明氏の釈放を求める文書を米大統領に送る。共産勢力の脅威に対抗するためだ」、そんな以前からつながりがあったとは、初めて知った。
・『「やがて起きる出来事は、必ず事前に影を投げかけている」  この予言めいた言葉を残したのは、古代ローマの政治家で哲学者でもあるキケロだった。歴史を変えた戦争や革命、あるいは感染症も決して唐突に襲ってくるのではない。そこに至るまで、いくつも前兆があり、多くの思惑が重なり、やがてクライマックスへ導かれる。 その意味で、奈良の大和西大寺駅前で起きた安倍晋三元総理の暗殺も、そうしたエピソードの一つかもしれない。 世界平和統一家庭連合、旧統一教会の信仰にはまり、多額の献金を繰り返した母、そのために家庭が崩壊したと恨む山上徹也容疑者は、安倍元総理に2発の銃弾を撃ち込んだ。 報道によると、本人は取り調べに対し、「安倍は統一教会とつながりがあると思っていた」「教団を海外から日本に招き入れたのは、(安倍の祖父の)岸信介元総理だ。だから安倍を殺した」旨を供述したという。 その論理はおよそ身勝手で、到底正当化できるものではない。が、凶行に至るまでに、過去、薄暗く長い影が差していたのも事実だ。それを象徴したのが、本誌(「週刊新潮」)2022年7月28日号で紹介した、岸元総理がロナルド・レーガン米大統領に宛てた書簡だった。 日付は1984年11月26日、脱税容疑で起訴され、米連邦刑務所に収監された統一教会の創始者、文鮮明を自由の身にしてほしいという。 〈文尊師は、現在、不当にも拘禁されています。貴殿のご協力を得て、私は是が非でも、出来る限り早く、彼が不当な拘禁から解放されるよう、お願いしたいと思います〉 〈文尊師は、誠実な男であり、自由の理念の促進と共産主義の誤りを正すことに生涯をかけて取り組んでいると私は理解しております〉 すでに当時、日本では統一教会の若者への勧誘や「霊感商法」が社会問題になっていた。その創始者である韓国人「脱税犯」の釈放を、日本の元総理が現職の大統領に訴えた。 それだけでも異様なのだが、そもそもなぜ岸は、こうした要請を送ったのか。その原点と言える、もう一つの古ぼけた文書がある。日付は終戦間もない1947年4月24日、A級戦犯として牢獄につながれた岸を釈放してくれという要請だった。 作成したのは、東京のGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)で諜報や治安維持を担当するG2(参謀第2部)だ。GHQの法務局、国際検察局などへの文書は、巣鴨拘置所にいる岸信介を自由の身にするよう促していた。 〈重要なのは、公式記録では、彼と国家主義または拡張主義的イデオロギー団体とのつながりを示す証拠は全くないということだ〉 〈極東国際軍事裁判での主な戦犯容疑者の訴追は終わったが、岸の満州での活動で十分な証拠がなく、また大政翼賛会での活動も起訴に不十分な場合、G2は、岸を巣鴨拘置所から釈放するよう勧告する〉 日米開戦を決めた東條内閣で商工大臣だった岸が、戦争遂行に深く関わったことはよく知られる。開戦詔書にも署名し、そのため敗戦の年、1945年9月に逮捕され、幽囚の日々を送っていた。 そして、それと同じく検察が注目したのが、戦前の満州での経歴だった』、「GHQ・・・で諜報や治安維持を担当するG2(参謀第2部)だ。GHQの法務局、国際検察局などへの文書は、巣鴨拘置所にいる岸信介を自由の身にするよう促していた」、既に対日政策が後述のように、「逆コース」へと変わっていたようだ。
・『「満州ギャング」  1930年代、日本の傀儡(かいらい)国家、満州国に赴任した岸は、その経済運営を一手に担った。表向き、中国人の大臣がいたが飾りに過ぎず、実権は日本人の官僚が握った。石炭や鉄鋼、自動車など重工業の開発計画を練り、資金を配分し、企業を統制する。それを支えたのが満州の絶対権力者、関東軍だ。 いわば金と権力、人脈を駆使する統治手法で、それをGHQの岸ファイルは、「軍事国家資本主義」「満州ギャング」と形容した。そのギャングの親玉を牢獄から出してくれ、という。これまた異様に聞こえるが、背景には当時の差し迫った脅威、共産主義がある。 すでに東西冷戦が始まり、米国とソ連は世界中で鎬(しのぎ)を削っていた。岸釈放が要請された1947年はCIA(米中央情報局)が創設され、日本でも共産党が過激化していく。 そうした中で占領初期、GHQの力点は、日本の徹底した民主化と軍備放棄に置かれた。すなわち政治犯の釈放と戦犯の逮捕、旧指導者の追放である。また農地解放や財閥解体、労働組合の育成など国家システムを改造してしまう勢いだった。 これに対し、行き過ぎた改革は日本を弱体化し、かえって共産勢力を伸ばすとの懸念が出始める。特に戦前から三井、三菱財閥と縁の深いニューヨークの財界は不満で、米議会やマスコミを使って政界工作を行った。 その結果、大物戦犯は釈放され、財閥解体は骨抜きになり、追放された官僚や実業家も続々と復帰していった。いわゆる占領方針の「逆コース」で、それを見事に示すGHQ指令書がある。 1948年12月23日付けで、翌日のクリスマス・イブに、巣鴨拘置所の戦犯容疑者15名を釈放しろという。そのリストの中に岸信介、児玉誉士夫、笹川良一の名前があった。 いずれもA級戦犯で、やがて岸は政界に復帰し、総理へ上り詰め、児玉や笹川も大物右翼として君臨した。そして、文鮮明が反共を掲げて創設した政治団体「国際勝共連合」を支援していった。 こうして見ると、岸がレーガン大統領に送った文の釈放要請と、G2による岸の釈放勧告は一本の糸でつながる。東西冷戦下、不倶戴天の敵であるソ連との戦いだ。 自由と民主主義を掲げる西側は絶対的正義で、何としても勝たねばならない。そのためなら満州ギャングだろうが、A級戦犯だろうが娑婆に出す。また霊感商法で、献金を強いられ、信者の家庭が崩壊しようと構わない。ましてや脱税など問題ではない。共産主義の脅威に比べ、そんなのは些事に過ぎないとの理屈だった。 1982年7月、ニューヨーク連邦地裁は、脱税容疑で起訴された文鮮明に懲役18カ月、罰金2万5千ドルの実刑判決を言い渡した。70年代初め、米国内にある銀行口座の利子、そして統一教会の関連会社から受領した株式を所得申告に入れなかった容疑である。 弁護側は、口座は教会に属し、文は管財人に過ぎず、そうした手法は他の宗教団体でも見られると反論した。判決を受けて上告したが、1984年5月、米連邦最高裁は棄却、文は同年7月からコネチカット州ダンベリーの刑務所に収監された。岸がレーガンに釈放を求めたのは、その4カ月後である。 だが、それは決して彼一人の思いつきなどではなかったのだ』、「GHQの岸ファイルは、「軍事国家資本主義」「満州ギャング」と形容した。そのギャングの親玉を牢獄から出してくれ、という。これまた異様に聞こえるが、背景には当時の差し迫った脅威、共産主義がある。 すでに東西冷戦が始まり、米国とソ連は世界中で鎬(しのぎ)を削っていた。岸釈放が要請された1947年はCIA(米中央情報局)が創設され、日本でも共産党が過激化していく」、「行き過ぎた改革は日本を弱体化し、かえって共産勢力を伸ばすとの懸念が出始める。特に戦前から三井、三菱財閥と縁の深いニューヨークの財界は不満で、米議会やマスコミを使って政界工作を行った。 その結果、大物戦犯は釈放され、財閥解体は骨抜きになり、追放された官僚や実業家も続々と復帰していった。いわゆる占領方針の「逆コース」で、それを見事に示すGHQ指令書がある。 1948年12月23日付けで、翌日のクリスマス・イブに、巣鴨拘置所の戦犯容疑者15名を釈放しろという。そのリストの中に岸信介、児玉誉士夫、笹川良一の名前があった」、「児玉誉士夫、笹川良一」もこの時に釈放されたとは初めて知った。
・『外務省を迂回か  同年11月、東京で「世界言論人会議」という国際会議が開かれた。これは世界中から約700名のジャーナリスト、学者が集まり、マスコミのあり方を話し合うもので、その最中、議長名でレーガン大統領に書簡が出された。 〈米国で文尊師は評判のよい人物ではありません。彼は共産主義に強硬な姿勢を取り、伝統的な価値観を支持してまいりました〉 〈宗教と報道の自由を掲げる合衆国憲法修正第1条の名の下、速やかな是正措置を取るようお勧めいたします〉 要は、大統領恩赦を与えてほしいという要請だ。この会議の創設者こそ、誰あろう文鮮明であり、東京で名誉議長として登壇したのが岸だった。 さらに翌月、今度は文の代理人を務めるワシントンの大手法律事務所もレーガンに書簡を送った。そもそも裁判の進め方に問題があり、憲法上の疑義があるという。 たった1カ月の間に相次いだ大統領への直訴、これは明らかに統一教会と連携している。岸の働きかけも、その一環とみてよい。それに対し米国政府はどう応じたか。 筆者は、岸の書簡はすでに5年前、カリフォルニア州のロナルド・レーガン大統領図書館で入手していた。ところが、レーガンからの返書は国家安全保障を理由に公開されなかった。それが今回、改めて照会すると手に入ったのだ。 日付は1985年3月5日、文面はまず、レーガン再選に寄せられた岸の祝辞への礼から始まる。そして最近、文の仮釈放が却下され、弁護士が恩赦を要請してきたという。 〈要請は現在、司法省で検討しており、その過程で貴殿の考えも慎重に考察されるものと保証します。見解を伝えていただき感謝します〉 明らかに、やんわりと拒否するニュアンスだ。そして返書を出す前、司法長官代理が大統領の法律顧問にメモを送った。恩赦に反対との内容で、それとは別に、文の裁判記録もホワイトハウスに届けられる。その焦点は、ニューヨークの銀行にある個人口座だった。 70年代初め、文はチェース・マンハッタン銀行に口座を開き、3年間で約160万ドル、そのほとんどを現金で預けた。そこで発生した利子や教会の関連会社から受領した株式を申告しなかったのだが、前述の通り、弁護人は、文は管財人に過ぎないと主張した。 ところが記録によると、資産の一部が、ニューヨーク郊外の文が住む高級住宅の購入費や子供の学費に回されていたという。さらに興味を引くのが偽装工作疑惑である。 口座の金を信者の献金に見せるため、虚偽の入金記録を作ったという。そこで使われたのが「日本家族ファンド」なる帳簿で、数百の日本人信者の名前、献金額、その日付が載っていた。これを担当したのが統一教会の在米日本人幹部の神山威(たける)で、文と共に起訴され、懲役6カ月、罰金5千ドルの判決を受けた。 米国の脱税裁判は図らずも、統一教会の資金ネットワークの片鱗をさらしたのだった。しかも70年代末、米韓関係を調べた米下院の委員会は、文らが祭政一致の世界政府樹立をめざしていたと指摘した。 そして岸も、自分の働きかけが一種のヤバさを含むのを感じ取ったようだ。 レーガンへの書簡を託したのは、当時アール・エフ・ラジオ日本社長の遠山景久、通訳として同行したのが日系2世で元GHQ将校のキャピー原田だった。遠山は、東京の世界言論人会議で反共を訴える講演を行い、原田は、巣鴨拘置所にいた岸の釈放に動いた一人だ。 信頼できる友人を通じて米国に接触し、文釈放を呼びかける。また、その返書も西新橋にあった岸事務所に届けられた。これは取りも直さず、日本の外務省を通していないことを示唆した。外務省を通せば当然、大臣を巻き込み、下手すると将来の政治キャリアに関わる。それを避けるには水面下で進めるしかない。 当時の外務大臣は岸の娘婿の安倍晋太郎、そして、その息子で秘書官を務めていたのが、若き日の晋三だった』、「東京で「世界言論人会議」という国際会議が開かれた。これは世界中から約700名のジャーナリスト、学者が集まり、マスコミのあり方を話し合うもので、その最中、議長名でレーガン大統領に書簡が出された。 〈米国で文尊師は評判のよい人物ではありません。彼は共産主義に強硬な姿勢を取り、伝統的な価値観を支持してまいりました〉 〈宗教と報道の自由を掲げる合衆国憲法修正第1条の名の下、速やかな是正措置を取るようお勧めいたします〉 要は、大統領恩赦を与えてほしいという要請だ。この会議の創設者こそ、誰あろう文鮮明」、「文鮮明」は自らが創設した会議で、恥ずかしげもなく自らの釈放を要求したとは、まさに茶番だ。「「日本家族ファンド」なる帳簿で、数百の日本人信者の名前、献金額、その日付が載っていた。これを担当したのが統一教会の在米日本人幹部の神山威(たける)で、文と共に起訴され、懲役6カ月、罰金5千ドルの判決を受けた」、こんなつながりがあったことは初めて知った。
・『岸のトラウマ  それでも、ここである疑問が残る。そこまで統一教会のヤバさを感じつつ、なぜ岸は、彼らとの関係を深めたのか。その裏には、戦後最大の政治イベント「60年安保闘争」があったと思われる。 1960年の春、国会議事堂周辺は、まるで革命前夜のような混乱に陥っていた。連日、学生や労働組合員、一般市民ら数万人が集まり、議事堂や総理官邸を取り囲んだ。口々に「安保反対!」「岸を倒せ!」と叫び、路上は地響きすら感じられた。 岸内閣が進める日米安全保障条約の改定、それが米国の戦争に巻き込まれるとの国民の懸念を呼んだ。与党の強引な国会運営もあり、大勢の群衆が詰めかけ、機動隊は放水と催涙ガスで応じる。 渋谷の南平台にある岸の自宅にもデモ隊が押しよせ、それは孫の晋三にとっても強烈な記憶だったらしい。当時、晋三は小学校に入る前で、両親や兄と祖父の家によく遊びに行ったという。 「しかしそこも、しばしばデモ隊に取り囲まれることがあった。『アンポ、ハンターイ!』のシュプレヒコールが繰り返され、石やねじって火をつけた新聞紙が投げ込まれた」 「母とわたしたち二人は、社旗を立てた新聞社の車にそうっと乗せてもらって、祖父の家にいった。子どもだったわたしたちには、遠くからのデモ隊の声が、どこか祭りの囃子(はやし)のように聞こえたものだ。祖父や父を前に、ふざけて『アンポ、ハンタイ、アンポ、ハンタイ』と足踏みすると、父や母は『アンポ、サンセイ、といいなさい』と、冗談まじりにたしなめた。祖父は、それをニコニコしながら、愉快そうに見ているだけだった」(安倍晋三著、『新しい国へ』文春新書) だが、孫の前では好々爺(や)然としても、内心、岸のはらわたは煮えくり返っていたようだ。結局、その年の6月、新安保条約は成立したが、岸内閣は退陣に追い込まれる。そして晩年、あそこまでデモが盛り上がった裏には、中国とソ連の工作があったとふり返った。 「彼らが、安保改定の実現を阻止し、日米間にクサビを打ち込むために全力を傾けたことは、彼らにすれば当然の行動であった。確証を握っているわけではないが、このために彼らが投入した物量は、相当の額であろうと推測される。 彼らは、共産党や社会党のような、日本国内の“外郭団体”はもちろん、労働組合内部のシンパに指令を与え、これらシンパが一般組合員や学生に工作して大衆運動の盛り上がりを図った。また、進歩的文化人と称せられるグループが、彼らのちょうちん持ちの役を演じた」(『岸信介回顧録 保守合同と安保改定』廣済堂出版) そして、これら文化人は、共産主義者のどう喝におびえ、政策も理解せず、時代の寵児と錯覚する「売文口舌の徒輩」と批判する。国会と自宅を取り巻いたデモへの恨みがにじむが、この60年安保が岸のトラウマになったのは間違いない』、「この60年安保が岸のトラウマになったのは間違いない」、その通りだろう。
・『反安保を支援した財界  ちょうどこの頃、韓国から日本に進出したのが統一教会だった。南平台にある岸の自宅の隣に本部が置かれ、反共を旗印に「国際勝共連合」が生まれる。左翼に敵愾心を燃やす岸には、この上なく心強い援軍だったはずだ。 これ以降、両者は連携を深めるが、反共のためなら「霊感商法」など取るに足らなかったのだろう。だが、ここで岸は重大な勘違いをしていた可能性がある。 拙著『田中清玄 二十世紀を駆け抜けた快男児』(文藝春秋)で述べたが、岸を憎んだのは共産勢力だけでなく、じつは日本の財界もだった。総理就任以来、岸は、あの満州を彷彿させる経済統制を進めていた。戦中からの友人を政府の要職に就け、企業への介入を強め、それに危機感を抱いたのが財界だ。 このままだと、本当に岸の家来にされてしまう。口では資本主義、自由主義と言ってるが、あの満州国と同じだ。体のいい独裁じゃないか──これが彼らの本音ではなかったか。 そして財界の一部は、右翼の黒幕の田中清玄を通じ、デモ隊の左翼学生を支援していた。右とか左とかイデオロギーではないのだ。 それでも晋三にとって、祖父は尊敬の対象以外の何物でもなかったようだ。 「祖父は、幼いころからわたしの目には、国の将来をどうすべきか、そればかり考えていた真摯な政治家としか映っていない。それどころか、世間のごうごうたる非難を向こうに回して、その泰然とした態度には、身内ながら誇らしく思うようになっていった。間違っているのは、安保反対を叫ぶかれらのほうではないか。長じるにしたがって、わたしは、そう思うようになった」(『新しい国へ』) やがて成長した晋三は、政策も吟味せず革新、反権力を叫ぶ人々をうさんくさく感じ、「保守」という言葉に親近感を覚えたという。そして祖父と共に左翼と戦ってくれた統一教会、その人脈を受け継いでいく。 岸は90歳で天寿を全うするが、その2年後の1989年、東西対立の象徴だったベルリンの壁が崩壊した。やがてソ連が解体し、冷戦も終わるが、統一教会と自民党の関係は残った。そして、それは、かつての反共の同志から目先の選挙支援に変わってしまう。 まさにその間、山上徹也は、家庭を崩壊させた統一教会、それとつながる岸信介、安倍晋三へ憎悪を募らせていた。どす黒い感情はマグマのようにたまり、その帰結点が2022年7月8日、大和西大寺駅前の銃声だった。 そこへ至るまでの薄暗い影、それは75年前のクリスマス前日、巣鴨拘置所を出た岸から伸びていた。その影に何が隠されたか、封印が解かれるのは、これからである』、「60年安保闘争」の時には岸らの保守勢力にとっては、「反共」の「統一教会」は頼りがいがあったのだろう。「そこへ至るまでの薄暗い影・・・その影に何が隠されたか、封印が解かれるのは、これからである」、「封印が解かれる」のが楽しみだ。何が出てくるのだろうか。
タグ:宗教 (その10)(【橋爪大三郎・特別講義】日本人が知らない 中国を動かす「儒教の本質」とは?、「下関は統一教会の聖地」論争の不毛 信者も地元民も寝耳に水だったワケ、「安倍晋三元首相」暗殺の闇 なぜ祖父・岸信介は「統一教会教祖」の釈放嘆願書をレーガン大統領に送ったのか) ダイヤモンド・オンライン 橋爪大三郎氏による「【橋爪大三郎・特別講義】日本人が知らない、中国を動かす「儒教の本質」とは?」 「「死について考えることは「やり残した夏休みの宿題」みたいになっている」、「やり残した夏休みの宿題」とは言い得て妙だ。「各宗教の「死」についての考え方を、鮮やかに説明する『死の講義』、とは興味深そうだ。 「一神教の原理。それは、「神が人を支配するのは、正しい」です。これは、無条件で正しい。ならば、人が人を支配するのは、無条件で正しくはない。 それが正しいのは、「神がそれを命じた場合」に限られる。 そこで西欧では、地上で神の代理をつとめる教会が、王や貴族など統治者より優位に立っていました。教会が認めないと、王は正しい統治者でない。政教分離です。 政治は相対化される」、「中国には、天の考え方があります。 天は、神と違って、地上にその代理人がいない。教会がない。中国の統治者(皇帝)は、天命を受けて政治をしている、と主張します。 その証拠があるかというと、特にない。実力で、皇帝になれてしまうということです。儒教はそれを認めます。つまり、皇帝が、天命を受けて、人を支配するのは正しい」、「儒教」など中国流の考え方は、「統治者」には好都合だ。 「忠は官僚だけの義務ですが、孝はすべての中国人の義務。長幼の序は、地域社会に秩序をうみ出し、社会の末端を安定させます」、なるほど。 「この秩序は永遠の昔から決まっていて、正しいものなので、これに従うのが人間の道である・・・道徳と宗教と政治が一体化している。それ以外に人間の正しい生き方はない、という考え方です。 以上をまとめると、忠:政治的リーダー(とくに皇帝)に服従する  孝:親族の年長者(とくに親)に服従する  孝は、忠よりも絶対的。親に対する服従は無条件なのです。 中国の農業は家族経営なので、孝を強調することで、経営基盤が安定する。税収が増え、政府にとってもメリットがあるのです」、「為政者」には本当に好都合な考え方だ。 「儒教の考え方が現代化して広がったものが現代の中国共産党です」、「儒教っぽいスタイルだが儒教ではない、権威主義的な独裁政権ができあがっています」、確かにその通りだ。 窪田順生氏による「「下関は統一教会の聖地」論争の不毛、信者も地元民も寝耳に水だったワケ」 「有田氏の「聖地発言」」、自体が説明不足で誤解を生み易いのも事実だ。 前述の「「聖地発言」」、自体が説明不足で誤解を生み易い」、ことのためだ。 「有田氏らのように旧統一教会を追いかけてきたジャーナリストや弁護士センセイたちの間では、下関が旧統一教会の聖地だというのは、「議論するのも馬鹿らしい常識」「基礎知識」でもある」、専門家特有の思い上がり的な色彩もあるようだ。 「下関は確かに「旧統一教会の聖地」ではあるのだが、一般の人が思い描くような信者がわんさか訪れて、信仰を強めていくというような「聖地」ではなく、「ゆかりの地」であって、一般人の我々が理解できるニュアンスとしては、先ほど申し上げたようなアニメやマンガの舞台をファンたちが「聖地」と呼ぶような感覚ではないのか」、なるほど。 「犯罪を犯したなど社会的評価を著しく貶めるような事実無根の誹謗中傷には迅速に対応すべきだが、今回の「聖地論争」のような多様な意見があるものの場合、やはり有田氏のような高名なジャーナリストは、弁護士に何をアドバイスされようとも、まずは「言論」で国生さんの誤解を解いていただきたかったな、と思う」、同感である。 デイリー新潮 徳本栄一郎氏による「「安倍晋三元首相」暗殺の闇 なぜ祖父・岸信介は「統一教会教祖」の釈放嘆願書をレーガン大統領に送ったのか」 「岸氏は後に統一教会の教祖、文鮮明氏の釈放を求める文書を米大統領に送る。共産勢力の脅威に対抗するためだ」、そんな以前からつながりがあったとは、初めて知った。 「GHQ・・・で諜報や治安維持を担当するG2(参謀第2部)だ。GHQの法務局、国際検察局などへの文書は、巣鴨拘置所にいる岸信介を自由の身にするよう促していた」、既に対日政策が後述のように、「逆コース」へと変わっていたようだ。 「GHQの岸ファイルは、「軍事国家資本主義」「満州ギャング」と形容した。そのギャングの親玉を牢獄から出してくれ、という。これまた異様に聞こえるが、背景には当時の差し迫った脅威、共産主義がある。 すでに東西冷戦が始まり、米国とソ連は世界中で鎬(しのぎ)を削っていた。岸釈放が要請された1947年はCIA(米中央情報局)が創設され、日本でも共産党が過激化していく」、「行き過ぎた改革は日本を弱体化し、かえって共産勢力を伸ばすとの懸念が出始める。特に戦前から三井、三菱財閥と縁の深いニューヨークの財界は不満で、米議会 やマスコミを使って政界工作を行った。 その結果、大物戦犯は釈放され、財閥解体は骨抜きになり、追放された官僚や実業家も続々と復帰していった。いわゆる占領方針の「逆コース」で、それを見事に示すGHQ指令書がある。 1948年12月23日付けで、翌日のクリスマス・イブに、巣鴨拘置所の戦犯容疑者15名を釈放しろという。そのリストの中に岸信介、児玉誉士夫、笹川良一の名前があった」、「児玉誉士夫、笹川良一」もこの時に釈放されたとは初めて知った。 「東京で「世界言論人会議」という国際会議が開かれた。これは世界中から約700名のジャーナリスト、学者が集まり、マスコミのあり方を話し合うもので、その最中、議長名でレーガン大統領に書簡が出された。 〈米国で文尊師は評判のよい人物ではありません。彼は共産主義に強硬な姿勢を取り、伝統的な価値観を支持してまいりました〉 〈宗教と報道の自由を掲げる合衆国憲法修正第1条の名の下、速やかな是正措置を取るようお勧めいたします〉 要は、大統領恩赦を与えてほしいという要請だ。この会議の創設者こそ、誰あろう文鮮明」、 「文鮮明」は自らが創設した会議で、恥ずかしげもなく自らの釈放を要求したとは、まさに茶番だ。「「日本家族ファンド」なる帳簿で、数百の日本人信者の名前、献金額、その日付が載っていた。これを担当したのが統一教会の在米日本人幹部の神山威(たける)で、文と共に起訴され、懲役6カ月、罰金5千ドルの判決を受けた」、こんなつながりがあったことは初めて知った。 「この60年安保が岸のトラウマになったのは間違いない」、その通りだろう。 「60年安保闘争」の時には岸らの保守勢力にとっては、「反共」の「統一教会」は頼りがいがあったのだろう。「そこへ至るまでの薄暗い影・・・その影に何が隠されたか、封印が解かれるのは、これからである」、「封印が解かれる」のが楽しみだ。何が出てくるのだろうか。
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悪徳商法(その6)(「指の骨が砕けるほどの拍手で歓迎」入会者を2日間で洗脳する巨大イベントのヤバい光景 幕張メッセ3000人の前で芸能人が…、大学生を狙う「闇堕ち」の罠の実態 カルト宗教・闇バイト・特殊詐欺…、「アムウェイ」にハマる人々のありふれた心理 10年取材して見えた「ねずみ算式」の魔術) [社会]

悪徳商法については、2020年10月30日に取上げた。久しぶりの今日は、(その6)(「指の骨が砕けるほどの拍手で歓迎」入会者を2日間で洗脳する巨大イベントのヤバい光景 幕張メッセ3000人の前で芸能人が…、大学生を狙う「闇堕ち」の罠の実態 カルト宗教・闇バイト・特殊詐欺…、「アムウェイ」にハマる人々のありふれた心理 10年取材して見えた「ねずみ算式」の魔術)である。

先ずは、2021年3月20日付けPRESIDENT Onlineが掲載したライターの雨宮 純氏による「「指の骨が砕けるほどの拍手で歓迎」入会者を2日間で洗脳する巨大イベントのヤバい光景 幕張メッセ3000人の前で芸能人が…」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/44233
・『マルチ商法などの悪徳商法は、どのようにして構成員を集めているのか。ライターの雨宮純氏は「その手法はカルト集団と類似しており、手口が分かっていても簡単には抜け出せない。勢力は拡大しており、幕張メッセに約3000人を集めて、有名芸能人のネタ披露を催したこともある」という——。(第4回)』、「幕張メッセに約3000人を集めて」とは本格的だ。
・『「君ら、何かの宗教とちゃうよね?」  「君ら、何かの宗教とちゃうよね?」 大規模コンベンションセンターのステージでは、テレビでよく見る若手芸人がネタを披露した後、こう不安げに茶化して、参加者約3000人の笑いを取る。これは悪徳商法集団の「環境」で開催されている「全体会議」の一コマだ。 「初回参加のDさんです! 意気込みをどうぞ!」 別のプログラムでは、ステージ上に会員が立ち、求められるままに一言メッセージを述べる。すると、約3000人の構成員たちが異常にも思える拍手で祝福する。 この連載で取り上げている悪徳商法集団の「環境」では、多額の上納金や不衛生なシェアハウス、激しい勧誘といった負担を構成員に強いている。このような負荷を掛けながらも大勢に所属させ続けるため、「環境」ではセミナーで繰り返し承認を与えて動機付けを行っている。 本稿では彼らのセミナーと、そこで与えられた承認により団体の活動を手伝わせる「プロジェクト」という名のタダ働きの実態について迫る。なお、前回と同じく元会員への取材をもとに構成している』、私が環境やセミナーでネット検索しても、一般的なものが多いためか、肝心のものには行き着かなかった。
・『2泊3日でセミナー漬けにされる  「環境」のセミナーには、大きく分けて内部セミナーと外部セミナーがある。このうち優先度が高いのが外部セミナーだ。これは外部の業者に委託しているセミナーで、入会者全員に勧められる基礎コースは2泊3日で行われ、会場は大阪にあるという。 この期間中、入会者は全員セミナー漬けにされる。セミナー費用は約10万円で、東京に住んでいた脱会者のDさんの場合は宿泊交通費を入れると10万円を越えたという。もちろん、全額自己負担だ。「部外者にはセミナーの内容を口外しない」という趣旨の誓約書を書かされているため全容は語らなかったが、集団を密室に閉じ込め、精神的に動揺させられるゲームや瞑想を行うようだ。 また、外部セミナーと言いつつトレーナー役は全員師匠やリーダー(一定数の勧誘実績がある構成員)で、人生の目標も「環境」での活動に結び付けられる。 そして、このセミナーの最後には、ある意味で“強制的に感動させる演出”が待っていた』、「外部セミナー」は「外部の業者に委託している」とはいえ、「基礎コースは2泊3日」、「セミナー費用は約10万円」、「トレーナー役は全員師匠やリーダー」、「外部委託」は形式に過ぎず、実質的には「環境」が仕切っているようだ。
・『感動的な演出で“スイッチを押されたかのよう”に泣いてしまった  「セミナーの最後に『家族や友人、師匠のことを思い浮かべて下さい』と言われて瞑想が始まり、しばらくして促されるままに後ろを振り向くと、紹介者が立っていたんです。そして『これから一緒に頑張っていこう』という内容の手紙を渡されます。 ずっと密室で過ごしていたのと、感動的な音楽が掛かっていたこともあり、気付いたら感動し泣いていました。今思い返すと、まるで何かのスイッチを押されたようでした。」 自己啓発セミナーでは巧妙な集団心理操作が行われ、運営側が狙った心理状態へと誘導される。これにより勧誘にいそしむ動機を植え付けていると考えられ、外部のセミナーを優先して受けさせていることもうなずける。 また「環境」には多種多様な内部セミナーがある。入会するとまず100人規模の「スタートアップセミナー」が行われ、これが終わるとマインドセットや活動内容を学ぶ「基礎トレ」、その復習やロールプレーイングを丸一日かけて行う300人規模の「ワークショップ」が行われる。 そのほかにも、各管轄で結果を出しているメンバーが表彰されスピーチをする500人規模の「ビジネスセッション」というイベント性の高いセミナーもあるという。 これを1カ月サイクルで毎週末に繰り返していく。「環境」では、「成果=やる前提×やり方×やる量」という方程式が重要視されており、やる前提とやり方を基礎トレで学び、やる量である現場をこなすことで成果につながると指導される』、「内部セミナー」はかなり組織的なようだ。「感動的な演出で“スイッチを押されたかのよう”に泣いてしまった」、通常はクールな執筆者でも泣くとは驚かされた。
・『「指の骨が砕けるほどの拍手を!」と指示される  また、セミナーでは入会数はもちろんのこと「初参加」「新規友人数」「プロジェクト参加(プロジェクトについては後述)」といった形で行う表彰が毎回行われる。表彰の基準は厳しくないため、真面目に活動していればかなりの割合で表彰されるが、これにちょっとした高揚感があるそうだ。 セミナーではオーバーリアクションが推奨されており、表彰されると耳が割れんばかりの拍手が沸き起こるという。これは幹部から「指の骨が砕けるほどの拍手を!」と指示されているからだ。 この他にも師匠の話を聞く『師匠の部屋』や、師匠がさらに上位の幹部に質問する『東京カリスマ』など、幹部とのコミュニケーションが取れるセミナーもあるという。また、脱会者のDさんがもっとも記憶に残っていると語ったのが、「自己投資」と呼ばれる毎月15万円の上納金を達成していると参加できる限定セミナーだ。 このセミナーは上納金を支払っているだけで「自己投資を達成した」ということで表彰される。活動の成果ではなく、単にお金を払っているだけで表彰されることに衝撃を受けたという。 「環境」では毎週末のセミナーを通じてある種の勧誘マニュアルを教え込んでいるが、それは同時に承認の場にもなっている。数百人の前で熱烈に承認される場を普段から得られている人は稀であり、頻繁に承認儀礼を行うことで所属の動機付けをしていると考えられる。 そして、この動機付けとして団体内で強く機能しているのが「全体会議」だ』、「セミナーでは・・・表彰されると耳が割れんばかりの拍手が沸き起こるという。これは幹部から「指の骨が砕けるほどの拍手を!」と指示されているからだ」、カルト的な儀式そのものだ。
・『有名芸能人も多く参加する「全体会議」  「全体会議」というのは毎月行われる「環境」全体のセミナーで、月初か月末の土日で開催される。例年は関東か関西のコンベンションセンターで開催されていたが、数千人が集まるイベントということもあって昨年の緊急事態宣言でいったん中断された。 だが、宣言解除後に復活し、今年の緊急事態宣言発令後も行われているようだ。内容としてはセミナーや表彰のほか、ゲストを招いてのインタビューや余興など、さまざまなプログラムが用意されている。また、テレビでよく見る芸能人もトークショーなどに参加していたという。 全体会議の様子。 筆者が確認したゲスト一覧には、テレビにもよく出演している辛口で有名な女性芸能人や若手お笑い芸人など、芸能人が数多く含まれていた。「有名芸能人がゲストとして来ているのを見ると、すごい団体に入会したような気持ちになった」とDさんが語っており、この芸能人のゲスト出演によって、入会者の心をつかんでいたと考えられる。 芸能人への出演交渉は、クラウドファンディングなどの運営を行う「環境」のフロント団体が取り仕切っているという。なお、現在でもフロント団体のホームページには、全体会議のゲストも含めた芸能人へのインタビュー記事が掲載されている。 また、初回参加の場合は、それだけで紹介者も含め会場の座席を前方に設定される。前方に座れるのは成果を出している人で、団体内では名誉なことだとされている。 さらに、新規入会というだけで壇上に上がることができ、表彰された上にスピーチの機会まで与えられる。数千人の前で拍手されるという非日常的な経験をすることで、多くの参加者が充実した気分を味わうという。このように新規参加者に充実感を与える仕組みを作っているのだ』、「芸能人のゲスト出演によって、入会者の心をつかんでいたと考えられる。 芸能人への出演交渉は、クラウドファンディングなどの運営を行う「環境」のフロント団体が取り仕切っている」、「新規入会というだけで壇上に上がることができ、表彰された上にスピーチの機会まで与えられる。数千人の前で拍手されるという非日常的な経験をすることで、多くの参加者が充実した気分を味わう」、よく練られた仕組みだ。
・『オンラインサロンでは身分証明書を提出させている  ほかにも、「太っている人集合」や「童貞集合」というミニイベントも開催されていたようだ。普通なら指摘されたくないネガティブな特徴だが、壇上で顔を売れるのは気分が良いため、多くの構成員が登壇していたという。 普段は自分から言うと恥ずかしい特徴も、それを材料にして目立ち、肯定されるのは快感だ。これには強引に自己開示を行わせ、承認することでカタルシスを得させて組織への所属欲求を高める効果があると考えられる。 「全体会議」は関東か関西で行われるため、長距離移動が多く発生する。その実態も過酷なものだった。 「『全体会議』への移動には『環境』が借り上げたバスが使われます。バスは四列シートで、人数が多いため補助席で過ごす人もいました。金曜日の夜に出発し、月曜日の朝に帰ってくるのですが、そのまま出社するためスーツを持ち込む人も多かったです。 補助席で東京から大阪と聞くとハードに聞こえると思いますが、当時は普段から深夜まで勧誘やミーティングをしていたため、何も現場を入れる必要のない出発前はむしろ楽でした。さらに、月曜日に帰ってきた日か、その翌日の夜には振り返りのミーティングが設定されていました。 学習してから48時間以内に振り返りを行うことで、内容を定着させるためです。また、『全体会議』に参加するためには、『環境』が管理している月額1万円のオンラインサロンに登録する必要があり、これが参加チケット代わりとなっています。この登録にはなぜか運転免許証やパスポートといった身分証明書の画像提出が必要でした。」 「環境」ではオンラインサロン登録時に身分証明書を提出させるため、ここで主な個人情報を握られてしまう。このため、取材の中でも身元割れが強く警戒されており、実際に取材を直前でキャンセルした脱会者がいた』、「普通なら指摘されたくないネガティブな特徴だが、壇上で顔を売れるのは気分が良いため、多くの構成員が登壇していたという。 普段は自分から言うと恥ずかしい特徴も、それを材料にして目立ち、肯定されるのは快感だ。これには強引に自己開示を行わせ、承認することでカタルシスを得させて組織への所属欲求を高める効果があると考えられる」、確かによく出来た仕組みだ。「『全体会議』への移動には『環境』が借り上げたバスが使われます。バスは四列シートで、人数が多いため補助席で過ごす人もいました。金曜日の夜に出発し、月曜日の朝に帰ってくるのですが、そのまま出社するためスーツを持ち込む人も多かったです」、「月曜日の朝に帰ってくるのですが、そのまま出社するためスーツを持ち込む人も多かった」、信じられないようなハードスケジュールだ。
・『構成員を動員して通販サイトのランキングを操作  「全体会議」をはじめとしたセミナーの運営は構成員によって行われており、無給であるという。「環境」ではこのような活動を「プロジェクト」と呼ぶ。 具体的には、店舗の手伝いが「店舗プロジェクト」、大規模イベントや出版の手伝いが「全体プロジェクト」と呼ばれている。「店舗プロジェクト」はオーガニックショップ開店準備や仕入れの手伝い、飲食店の従業員などを指す。 飲食店の場合は給料をもらえることがあるようだが、オーガニックショップの場合はほぼ無給。このため、無給労働を行わせる場合は、従業員ではなくインターンとして働く趣旨の誓約書を書かされるという。 また、「全体プロジェクト」というのはイベントや出版の手伝いがメインだ。全体会議の開催前にスタッフ募集のメールが流され、構成員はGoogleフォームで応募する。 この際、応募条件には「自己投資15万円達成」や「勧誘実績3人以上」といった参加資格が設けられている。出版については、幹部が出版した本をWeb購入するよう指示され、恣意的にランキングを上昇させていたという。 同様に、団体が応援するアーティストの曲を同時期にダウンロードしたり、師匠のブログにアクセスすることもあったようだ。しかも、支払いは自腹である。一方で、「プロジェクト」に参加しているとセミナーで表彰されるため、無給労働や自腹購入と引き換えに構成員に承認を与える仕組みになっていたと考えられる』、「「プロジェクト」に参加しているとセミナーで表彰されるため、無給労働や自腹購入と引き換えに構成員に承認を与える仕組みになっていたと考えられる」、なるほど。
・『勧誘の初期段階で連絡を絶つべき  「環境」はさまざまセミナーで承認機会を繰り返し用意し、芸能人を呼んで組織の大きさを印象付け、特に新入りは特別扱いして組織に染めていく。集団の前で繰り返し承認する方法はカルト集団と類似しており、所属への強力な動機付けとなっている。 そうして所属し続けているうちに、15万円の上納金を支払うだけでなく、「プロジェクト」という名のタダ働きにも参加してしまう。数千人の前で壇上に立ち、はちきれんばかりの拍手を向けられれば、手口が分かっていても心理的影響を受けることは十分に考えられる。勧誘の初期段階で連絡を絶つことを強くおすすめする。 【第1回】「洗脳するまで目的は伝えない」起業を夢みてセミナーに通った20代女性の悲惨な末路 【第2回】「月20万円でカビだらけのシェアハウス住まい」起業を夢みる若者を狙う洗脳の実態 【第3回】「高級外車でタワマンに送り…」起業志望者を地獄に落とすマルチ勧誘の手口』、「集団の前で繰り返し承認する方法はカルト集団と類似しており、所属への強力な動機付けとなっている。 そうして所属し続けているうちに、15万円の上納金を支払うだけでなく、「プロジェクト」という名のタダ働きにも参加してしまう。数千人の前で壇上に立ち、はちきれんばかりの拍手を向けられれば、手口が分かっていても心理的影響を受けることは十分に考えられる。勧誘の初期段階で連絡を絶つことを強くおすすめする」、その通りだ。

次に、本年2月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した三菱総合研究所による「大学生を狙う「闇堕ち」の罠の実態、カルト宗教・闇バイト・特殊詐欺…」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/318235
・『若者による闇バイトが社会問題になっています。効率よく高収入を得られると軽い気持ちで応募したところ、特殊詐欺の片棒を担がされるハメに……。2022年4月1日には、20歳から18歳への成年年齢の引き下げが施行されました。つまり大学生になる方のほとんどが成年となります。自分の判断でできることが増える分、そこにつけ込んでくる悪質な業者が出てくることも事実。大学生になればそういったリスクも新たに増えてきますが、どのように対応すればいいのでしょうか?そこで今回は『大学生が狙われる50の危険』(青春出版社刊)から大学生になるときに知っておくべきリスクについて抜粋し、紹介します』、興味深そうだ。
・『新入生勧誘にひそむ“わな”  大学でのクラブやサークル活動は、学生生活を彩る貴重な課外活動です。学部や学科、学年を超えた新しい出会いに加え、他大学の学生との交流の場も待っています。 入学時期は、クラブやサークルにとって新しい仲間を集める大切な時期で、キャンパスやSNS上で活発な勧誘活動が繰り広げられます。同じ大学に入学する仲間とのSNSを通じた交流は、入学前から始まる場合もあり、友だちができたり、いろいろな情報交換ができたりと良い面もあります。 しかし、中には怪しい参加者も紛れているかもしれません。実際に会ったことのない人との交流には注意が必要です。) たとえば、勧誘時とは話が異なり、ひとたび足を踏み入れてしまうとなかなか抜け出せなくなるような怪しい団体も存在します。表向きは文化系のサークルを装い、さまざまなボランティア活動や国際交流を行っていると言ったり、スポーツ系のサークルを装って初めてでも気軽に始められるなどと言ったりして本来の活動を隠し、あの手この手で新入生を勧誘します。 しかし、実態としては反社会的な活動を行っていたり、教祖の経済的搾取などのために信者を利用したりする団体もあります』、「反社会的な活動を行っていたり、教祖の経済的搾取などのために信者を利用したりする団体もあります」、開放的になった「新入生」にこのような問題ある「団体」が、「本来の活動を隠し、あの手この手で新入生を勧誘します」、とは困ったことだ。
・『宗教団体からの勧誘が毎年トラブルの上位に  大学生協のアンケート調査『CAMPUS LIFE DATA 2021』で、大学入学後に遭遇したトラブルでは「宗教団体からのしつこい勧誘」が毎年上位となっています。こうした勧誘は、入学式の季節に限らず1年を通して行われています。 こうした団体に入ると、次のような危険に遭遇する恐れがあります。 ●会費と称して大金を払わされる ●さまざまな活動への参加を強要され、授業への出席が困難になる ●やめようと思っても抜け出すことができない ●自らも勧誘活動に手を染め、貴重な友人を失ってしまう  不審に思ったらまずは断り、友人や両親、大学に相談することが重要です』、「宗教団体からのしつこい勧誘」には、確かに多くの「危険に遭遇する恐れがあります」、「不審に思ったらまずは断り、友人や両親、大学に相談することが重要です」、その通りだ。
・『勧誘を断りにくいケースなどはすぐに信頼できる人に相談を  最近では、多くの大学で注意を喚起する呼びかけやチラシなどを準備し、オリエンテーションなどでその危険性を学生に伝えるようにしています。悪質な団体には、オリエンテーション前や入学手続きのころから勧誘活動を始めるところもありますので、十分に注意してください。 断る勇気、抜け出す勇気が必要です。簡単に断れないケースや友だち、親にも相談しにくい場合もあるかもしれません。そのようなときは大学の相談窓口などを利用しましょう。 一人で悩んでいても問題は解決しません。一歩、踏み出す努力をしてみてください。それだけで、悩みが解消されることも多いのです』、「勧誘を断りにくいケースなどはすぐに信頼できる人に相談を」、その通りだ。
・『“ネット上のプライバシー”実は個人の特定は現実よりも簡単  あなたはインターネット上でなら身元を明かさずに行動できると思っていませんか? 実は、インターネット上での行為は現実(リアル)社会よりも特定が簡単なのです。 なぜなら、情報を掲載する際には必ずインターネット接続会社や携帯電話会社のネットワークを通じて情報が送られますし、SNSや掲示板などではログ(過去のやりとりの記録)が保管されています。 たとえばSNSのアカウントに名前を登録していなかったとしても、スマートフォンで撮った写真にはGPS情報(位置情報)が埋め込まれていることがあるので、そこから場所を特定することができます。天気などの話題から地域を特定することも可能です。 よくやりとりをしている友人のアカウントに本名や学校名などが登録されていて、そこから通学する学校などを特定されることもあります。投稿した自動車の写真でバックミラーに所在地の情報が映っていたり、写真に写っている人の瞳に撮影者が写り込んでいたりしたというケースもあります。 このようなやり方を組み合わせることで、かなりの確率で個人が特定できます』、「“ネット上のプライバシー”実は個人の特定は現実よりも簡単」、なので大いに気を付けるべきだ。
・『ネット詐欺には就活生の不安や悩みにつけ込むものもある!  インターネット上には数多くの重要な情報や有益な情報が存在します。しかし情報を掲載するだけであれば誰でもできるため、間違った情報やあなたをダマそうとしている情報も少なくありません。 大学生が引っかかりやすいものとして就活詐欺があります。 たとえば、就活を有利にするために、SNSに掲載されている情報から無料のセミナーに参加してみると、そこで有料のセミナーに誘われることがあります。 就活詐欺のバリエーションはさまざまあり、就活では見た目が重要だからとエステの勧誘につなげたり、企業の面接対策、筆記試験対策の講座や、自己啓発セミナーにつなげたり、もしくは有名企業の社員とのネットワークを作る場に案内したりというものがあります。 これらは実際に就活に役に立つケースもないわけではないようですが、たいていの場合、そんなにお金をかけなくても手に入る情報や、会社の説明会に行けば手に入るような情報でしかないものも少なくないようです』、「ネット詐欺には就活生の不安や悩みにつけ込むものもある!」ので、十分に気を付けるべきだろう。
・『詐欺の片棒を担ぎ逮捕される学生も  インターネット上には現実にはないうまい話がある、裏技があると思ってしまう人がなぜか多いのですが、基本的にそのような都合のいい話はあり得ない、ということを覚えておいてください。 口コミで信頼できると書いてあったとしても、それすら悪質サイトがばらまいている情報かもしれないというのがインターネットの世界です。 さらには、みなさん自身が、これらのサクラをやるというアルバイト募集を見かけることがあるかもしれません。しかし、高額なアルバイト代につられて手を染めるようなことは決してしないでください。アルバイトであっても大学生が詐欺容疑、組織犯罪処罰法容疑(組織的詐欺)で逮捕された事例があります』、NO FREE LUNCH(タダ飯より怖いものはない)との言葉をかみしめて、気を付けたいところだ。
・『知らないうちに資金洗浄に協力してしまったケースも  最近では手口がさらに巧妙になっていて、実際にお金が振り込まれるという詐欺もあります。 SNSなどで○万円、△人限定で配っていますという書き込みを見かけることもありますが、これに実際に申し込むと当選連絡が来て、口座番号などの登録を求められます。) 当初は、この情報を転売されるという詐欺が横行していましたが、最近ではその口座に本当にお金が振り込まれます。 ただ、当初約束された金額よりも多めに振り込まれていて、お金を振り込んだという人から「振り込みすぎたので◇◇万円をATMで引き出して、□□という公園に持ってきてくれませんか」などという連絡が来ます。これに対応すると、実はこのお金は犯罪収益で、知らないうちにオレオレ詐欺の出し子になっているというものです。 そもそも振り込まれた時点で資金洗浄に協力していることになるのです。 お金のやりとりが発生する場合は特に気をつけなくてはなりません。 大学という新生活を迎えるということは、こうした詐欺などのリスクのほかにも地震や大雨などの災害や交通事故など様々なリスクに自分で対応していく必要が出てきます。 そうした時に「知らなかった…」でせっかくの大学生活を台無しにしないために、“リスクの存在”を知っておくことが重要です』、「大学という新生活を迎えるということは、こうした詐欺などのリスクのほかにも地震や大雨などの災害や交通事故など様々なリスクに自分で対応していく必要が出てきます・・・“リスクの存在”を知っておくことが重要です」、同感である。

第三に、5月20日付け東洋経済オンラインが掲載した作家・ジャーナリストの金田 信一郎氏による「「アムウェイ」にハマる人々のありふれた心理 10年取材して見えた「ねずみ算式」の魔術」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/671967
・『私は原稿を喫茶店で書くようにしている。すると、いやでも聞こえてくるのが、大きい声で話すマダムたちの会話だ。マスク着用の緩和もあって、先日も「あの話」が店内に響きわたっていた。 「世の中って、絶対に儲かる仕組みってあるのよねえ」 チラッと見る。バッチリ化粧をしたマダムが、知人を前にして、自信たっぷりに話している。 「え、それ大丈夫?」 「って思うでしょ。私も最初は疑って勉強したわよ。先生に質問してさ。家にもお邪魔して、確信したわ。世界が違うのよ」 知人は黙ってお茶を飲む。 「奥さんも親戚もやってるのよ。で、みんな余裕なわけ。冬は全員、ハワイに飛んで、コンドミニアムで過ごしてるからね」 「で、どういう仕組みなの?」 「私も勉強中だから、まず100万円やってみる。それで、詳しくなったら話すね」 「なんで100万円かかるの?」 「最低限の投資よ。そういう仕組みなの。そんなの何百倍、何千倍になって返ってくるんだから」』、有閑マダムたちのいかにもありそうな会話だ。
・『「夢の生活」見せてカネを投じさせる  怪しい話である。1つ言えることは、「絶対に儲かる」なんて都合のいい話が、世の中に転がっていないことだ。超低利の普通預金でも銀行破綻というリスクがある。そんな中で、百倍、千倍を狙う投資は超高リスクである。まあ、字のごとく、「投(げる)資(金)」、つまり「投げ銭」になるだろう。おそらく、マダムの100万円は返ってこない。 「それは犯罪じゃないか。なんで、止めてやらないんだ!」。そんなお叱りの声もあるだろう。だが、残念ながら、これは犯罪行為ではない。元締めが特殊詐欺グループの「ルフィ」のような人物なら別だが、合法的なビジネスとして成立しているケースが多い。 夢の生活を見せて、会員を増やしてカネを投じさせる。そのカネは組織ピラミッドの頂点に位置する一部の人に集中配分される。 私は、そんなネットワークビジネスを長らく見続けてきた。 原点は、やはり喫茶店だった。 新人記者時代、PR会社の女性社員と喫茶店で会った。それまで、中小企業の情報を提供してくれていた彼女は、この日、席に座るなり洗剤の話を始めた。その洗剤は洗浄効果が高いという。どうやら、いつもの企業紹介ではなく、その洗剤を買う会員になれ、ということらしい。 「いや、自分で洗濯しないんで」 そう言って、やんわりと断ろうとすると、奇怪な話を始めた。 「使わなくてもいいの。良さを周りの人に伝えれば、今の会社より高い収入が入るから」 「いや、そもそも、その良さがわからないから、友人に伝えられないしなあ。キックバックがあるなんて、後ろめたいし……」 その瞬間の彼女の冷めた表情が忘れられない。すぐに伝票をつかんで立ち上がり、出て行った。それがアムウェイとの出会いだった。) それから、私は日本アムウェイの本社に通うようになった。当時は上場企業だったので、決算発表や会見を開く。だが、「怪しい」という風評から、大手メディアの記者はほとんど参加しない。 いつしか私は歓待を受けるようになった。なにせ、熱心に通い、質問を続けるのだから。そして、一緒に飲みに行くようになり、本音も聞けるようになった。 パーティーにも出席させてもらった。広い会場に幹部やディストリビューター(販売員)が出席する。私のテーブルの女性は、分厚いアルバムを見せてくれた。国内と米国に豪邸があり、プールで泳いだり、ワイングラスを傾ける写真が並ぶ。 夢の生活を見せつけるのである』、「日本アムウェイ」については、1997年に国会で問題が取り上げられて以降、マスコミに叩かれ、2000年には売上がピーク比半減、9月には上場廃止、10月には米国でも上場廃止になった。
・『ネットワークビジネスの収益構造  私は分析記事を書くため、約10年間、あらゆるネットワークビジネスに顔を出した(もちろん、会員にはなっていない)。そこには、さまざまな商品があった。せっけん・洗剤、化粧品、サプリ、健康飲料、浄水器、羽毛布団などなど。 商品には共通の特徴がある。費用対効果がわかりにくいのだ。高額でも「効果がある」と言えば、真偽を確かめることが難しい。 あるセミナーで、トップ販売員がこんな説明をしていた。 「このサプリ、ほかの商品に比べて高すぎる。そういうバカなことを言う人がいます。そういう人には、こう言ってください。あなたが赤いフェラーリに乗っていて、赤いカローラに乗っている人に『同じ赤いクルマだね』って言われたら怒るでしょ、って。同じにされちゃ困るんですよ」 え、その例え話、ヤバいでしょ。苦笑いをしながら横を見ると、皆まじめな顔でうなずいている。 マジか。彼らはそう言って売り込んでいくのか。これでは議論のすり替えではないか。 だが、彼らにとっては、そんなことはどうでもいい。手っ取り早く、自分の傘下に人を集めるトーク術がほしいのである。納得しない人は「はい、さようなら」だ。 そんなネットワークビジネスの収益構造を紐解(ひもと)くカギがある。アムウェイは上場時、財務諸表を公開していた。それを時系列で見ると、売上高を10として、原価3、販売手数料3、その他コスト2、という比率を続けている。ほぼブレない。販売員への報奨は約3割で固定されている。ちなみに同様の商品を扱うメーカーの平均原価率は5割程度。アムウェイ製品の価格が高いのは、多額のボーナスを支払うためとも読める。 そのボーナスも、組織ピラミッドの上位層に集中的に投下する。集中的な配分で「夢の生活」をする成功者を見せつけるのだ。 おおまかに言うと、自分が勧誘した販売員グループが月間に100万円を大きく超える売り上げ実績をあげられるようになれば、自身の年収が数百万円に達するレベルに手が届く。そこから上に行けば、アムウェイの仕事だけで生活できる(かもしれない)。 「目の前にニンジンをぶら下げて走らせる。だから(会社が)急成長できる。一方でマネーゲームになりやすく、ボーナス目当ての無理な販売や在庫を抱えるトラブルが発生しやすい」(業界団体幹部) 社会問題になっても、このビジネスは永遠に消えない。なぜならば、「楽をして、ぜいたくな生活がしたい」という人々の夢が消えることはないからだ。 だからして、100万円を払って夢を追うマダムは、これからも現れる。横で私は「そのカネで2000回、コーヒーが飲めるのに」とソロバンをはじく。 だが、それは2000回、原稿をシコシコと書き続けることを意味する。一方、マダムは札束が1000倍になる夢を見る。 どっちのカネの使い方がいいのか、それは私にもわからない。 
【情報提供をお願いします】東洋経済ではあなたの周りの「ヤバい会社」「ヤバい仕事」の情報を募っています。ご協力いただける方はこちらへ』、「ネットワークビジネス」と筆者は名付けているが、典型的なねずみ講である。上層部は優雅に暮らせるだろうが、それ以外、特に末端になるほど悲惨な暮らしを余儀なくされるのが実態だ。筆者は「どっちのカネの使い方がいいのか、それは私にもわからない」と逃げているが、悲惨さを取上げていないので、およそ不完全な記事だ。 
タグ:「幕張メッセに約3000人を集めて」とは本格的だ。 雨宮 純氏による「「指の骨が砕けるほどの拍手で歓迎」入会者を2日間で洗脳する巨大イベントのヤバい光景 幕張メッセ3000人の前で芸能人が…」 PRESIDENT ONLINE (その6)(「指の骨が砕けるほどの拍手で歓迎」入会者を2日間で洗脳する巨大イベントのヤバい光景 幕張メッセ3000人の前で芸能人が…、大学生を狙う「闇堕ち」の罠の実態 カルト宗教・闇バイト・特殊詐欺…、「アムウェイ」にハマる人々のありふれた心理 10年取材して見えた「ねずみ算式」の魔術) 悪徳商法 私が環境やセミナーでネット検索しても、一般的なものが多いためか、肝心のものには行き着かなかった。 「外部セミナー」は「外部の業者に委託している」とはいえ、「基礎コースは2泊3日」、「セミナー費用は約10万円」、「トレーナー役は全員師匠やリーダー」、「外部委託」は形式に過ぎず、実質的には「環境」が仕切っているようだ。 「内部セミナー」はかなり組織的なようだ。 「感動的な演出で“スイッチを押されたかのよう”に泣いてしまった」、通常はクールな執筆者でも泣くとは驚かされた。 「セミナーでは・・・表彰されると耳が割れんばかりの拍手が沸き起こるという。これは幹部から「指の骨が砕けるほどの拍手を!」と指示されているからだ」、カルト的な儀式そのものだ。 「芸能人のゲスト出演によって、入会者の心をつかんでいたと考えられる。 芸能人への出演交渉は、クラウドファンディングなどの運営を行う「環境」のフロント団体が取り仕切っている」、「新規入会というだけで壇上に上がることができ、表彰された上にスピーチの機会まで与えられる。数千人の前で拍手されるという非日常的な経験をすることで、多くの参加者が充実した気分を味わう」、よく練られた仕組みだ。 「普通なら指摘されたくないネガティブな特徴だが、壇上で顔を売れるのは気分が良いため、多くの構成員が登壇していたという。 普段は自分から言うと恥ずかしい特徴も、それを材料にして目立ち、肯定されるのは快感だ。これには強引に自己開示を行わせ、承認することでカタルシスを得させて組織への所属欲求を高める効果があると考えられる」、確かによく出来た仕組みだ。 「『全体会議』への移動には『環境』が借り上げたバスが使われます。バスは四列シートで、人数が多いため補助席で過ごす人もいました。金曜日の夜に出発し、月曜日の朝に帰ってくるのですが、そのまま出社するためスーツを持ち込む人も多かったです」、「月曜日の朝に帰ってくるのですが、そのまま出社するためスーツを持ち込む人も多かった」、信じられないようなハードスケジュールだ。 「「プロジェクト」に参加しているとセミナーで表彰されるため、無給労働や自腹購入と引き換えに構成員に承認を与える仕組みになっていたと考えられる」、なるほど。 「集団の前で繰り返し承認する方法はカルト集団と類似しており、所属への強力な動機付けとなっている。 そうして所属し続けているうちに、15万円の上納金を支払うだけでなく、「プロジェクト」という名のタダ働きにも参加してしまう。数千人の前で壇上に立ち、はちきれんばかりの拍手を向けられれば、手口が分かっていても心理的影響を受けることは十分に考えられる。勧誘の初期段階で連絡を絶つことを強くおすすめする」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 三菱総合研究所による「大学生を狙う「闇堕ち」の罠の実態、カルト宗教・闇バイト・特殊詐欺…」 『大学生が狙われる50の危険』(青春出版社刊) 「反社会的な活動を行っていたり、教祖の経済的搾取などのために信者を利用したりする団体もあります」、開放的になった「新入生」にこのような問題ある「団体」が、「本来の活動を隠し、あの手この手で新入生を勧誘します」、とは困ったことだ。 「宗教団体からのしつこい勧誘」には、確かに多くの「危険に遭遇する恐れがあります」、「不審に思ったらまずは断り、友人や両親、大学に相談することが重要です」、その通りだ。 「勧誘を断りにくいケースなどはすぐに信頼できる人に相談を」、その通りだ。 「“ネット上のプライバシー”実は個人の特定は現実よりも簡単」、なので大いに気を付けるべきだ。 「ネット詐欺には就活生の不安や悩みにつけ込むものもある!」ので、十分に気を付けるべきだろう。 NO FREE LUNCH(タダ飯より怖いものはない)との言葉をかみしめて、気を付けたいところだ。 「大学という新生活を迎えるということは、こうした詐欺などのリスクのほかにも地震や大雨などの災害や交通事故など様々なリスクに自分で対応していく必要が出てきます・・・“リスクの存在”を知っておくことが重要です」、同感である。 東洋経済オンライン 金田 信一郎氏による「「アムウェイ」にハマる人々のありふれた心理 10年取材して見えた「ねずみ算式」の魔術」 有閑マダムたちのいかにもありそうな会話だ。 「日本アムウェイ」については、1997年に国会で問題が取り上げられて以降、マスコミに叩かれ、2000年には売上がピーク比半減、9月には上場廃止、10月には米国でも上場廃止になった。 「ネットワークビジネス」と筆者は名付けているが、典型的なねずみ講である。上層部は優雅に暮らせるだろうが、それ以外、特に末端になるほど悲惨な暮らしを余儀なくされるのが実態だ。筆者は「どっちのカネの使い方がいいのか、それは私にもわからない」と逃げているが、悲惨さを取上げていないので、およそ不完全な記事だ。
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ハラスメント(その21)(女性記者が“告発”できないのはなぜ? 細田衆院議長「セクハラ疑惑」報道から見えてきた マスコミ業界の“体質” 、ジャニー喜多川氏の性加害を“なかったこと”にした博報堂の言い分 ジャニーズ事務所への配慮を公言、【スクープ】市川猿之助が共演者やスタッフに“過剰な性的スキンシップ”のセクハラ・パワハラ「拒否した途端に外された」、市川猿之助の浮世離れしたハラスメント体質 「お前らは家畜だよ!」と弟子を怒鳴り散らす) [社会]

ハラスメントについては、昨年5月22日に取上げた。今日は、(その21)(女性記者が“告発”できないのはなぜ? 細田衆院議長「セクハラ疑惑」報道から見えてきた マスコミ業界の“体質” 、ジャニー喜多川氏の性加害を“なかったこと”にした博報堂の言い分 ジャニーズ事務所への配慮を公言、【スクープ】市川猿之助が共演者やスタッフに“過剰な性的スキンシップ”のセクハラ・パワハラ「拒否した途端に外された」、市川猿之助の浮世離れしたハラスメント体質 「お前らは家畜だよ!」と弟子を怒鳴り散らす)である。

先ずは、昨年5月31日付け文春オンライン「女性記者が“告発”できないのはなぜ? 細田衆院議長「セクハラ疑惑」報道から見えてきた、マスコミ業界の“体質”」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/54751
・『細田博之衆院議長の「セクハラ」問題。週刊文春が2週にわたり報道した。 流れをおさらいする。まず5月19日発売の週刊文春が『細田博之議長 女性記者に深夜に「今から家に来ないか」』という記事を掲載。 大勢の政治部記者から文春に“告発”が寄せられたとし、細田氏が過去に複数の女性記者らにセクハラ発言を繰り返していたと報道。たとえば女性記者が細田氏に取材をすると「添い寝をしたら教えてあげる」と言われたという話が“常識”のように記者たちの間に広まっているという。 実際に文春が被害に遭っていたといわれるA記者に話を聞くと「無かったと言えば、嘘になりますね」というコメントが。さらにB記者は「深夜に本人から『今から来ないか?』」と電話がかかってきた。断るわけにもいかず、足を運びました。自宅に呼ばれたのは、私だけではないと聞きます」と証言。 こうした話は本当なのか文春が細田事務所に事実関係を尋ねたところ、期日までに回答が無かった。しかし報道後に細田氏は「事実無根」と抗議。 すると翌週の週刊文春(5月26日発売号)で、細田セクハラ問題の第2弾を報じたのだ。タイトルと見出しはこれ』、本当に手クセが悪い人物が、何と衆議院議長というのだから、日本政治のおさとが知れ、みっともないことだ。
・『「うちに来て」細田衆院議長の嘘を暴く「セクハラ記録」  ・女性記者たちの告発「二人きりで会いたい」「愛してる」 ・党女性職員が周囲に嘆いた「お尻を触られた」 ・最も狙われた女性記者が漏らした「文春はほぼ正しい」 ・カードゲーム仲間人妻の告白「抱きしめたいと言われ…」 どれを読んでもギョッとする。細田氏はこの報道に対し、改めて抗議する文書を出し、「通常国会閉会後、訴訟も視野に入れて検討したい」などと真っ向から反論した。 ここまでが現時点の流れである』、「訴訟」は単なる脅しだろう。
・『「最も狙われている」女性記者の回答  さて、細田氏とは別に、私にはどうしても気になる点があったのです。それは取材する記者の側のことだ。 記事の後半に「H記者」が登場している。多数の記者から、細田氏に「最も狙われている」と言われていた女性記者である。 以前からH記者は国会議員のセクハラ発言に強い問題意識を持ち「女性記者は多かれ少なかれ経験している。被害が出た時に担当を外せば解決する問題ではない」と話していたという。前週の文春記事についても「文春はしっかり取材している。記事の内容はほぼ正しい」などと周囲に語っていた。 そんななか文春がH記者に事実確認のために電話をした。ここでH記者から出た言葉は、 「それについては即答できる状況にないんです」「考える時間も必要なので、またご連絡させて下さい」 というもの。 翌日、H記者から文春に電話があった。その内容は「やはり今、お答えできることはありません……」という“回答”だった』、何故なのだろう。
・『彼女たちが“告発”できない理由  記事では細田氏の「セクハラ記録」を提供した人物が次のように解説している。 「大手マスコミは、自社の女性記者が細田氏から受けたセクハラ発言を把握しているはずです。ただ、彼女たちはオフレコ取材が前提なので、同僚に迷惑がかかるのでは、とも悩んでいる。自ら名乗り出ることは容易ではありません。上層部としても“貴重な情報源”である細田氏を守りたいから、『あったこと』をなかなか報じられずにいます」 この「解説」を何度も読み返してしまった。恐ろしいことが書かれているではないか。 セクハラ、パワハラ被害にあった人が「仕事のために」被害をなかなか言いだせないという状況がもし本当なら、これは新聞業界、もしくはマスコミ業界全体の問題だと思う。 これは「マスコミ論」でもある。そう思って今回の細田氏のセクハラ疑惑をめぐる報道を新聞各紙で確認するとサラッとしている印象を受ける。 朝日新聞は社説で『細田氏の言動 衆院議長の資質欠く』(5月28日)と書いた。 《女性記者らに対するセクハラの指摘に対し、説明責任を果たそうとしない。これでは、議長の資質に欠けるというほかなく、国会に対する国民の信頼をも損ないかねない。》 確かにそうなのだが、まず自社の政治部記者に詳しく尋ねたらどうなのだろう。そのほうが何か新事実や新証言が出てくるのではないか? 「野党は、引き続き追及する構えだ」(5月27日)とも書いているが、どこか他人事である。でも、実は政治家のセクハラ問題は、マスコミがいちばん「知っている」のでは? 私はいま朝日を例に挙げたが、ほかの新聞社やテレビ局も同じだ』、「彼女たちはオフレコ取材が前提なので、同僚に迷惑がかかるのでは、とも悩んでいる。自ら名乗り出ることは容易ではありません。上層部としても“貴重な情報源”である細田氏を守りたいから、『あったこと』をなかなか報じられずにいます」、「セクハラ、パワハラ被害にあった人が「仕事のために」被害をなかなか言いだせないという状況がもし本当なら、これは新聞業界、もしくはマスコミ業界全体の問題だと思う」、「実は政治家のセクハラ問題は、マスコミがいちばん「知っている」のでは?」、まさに「マスコミ論」だ。
・『「女性の番記者を付けている社が目立ちます」  「細田氏の女性好きは昔から有名です。(略)『細田氏は女性にしか話さない』と言われ、女性の番記者を付けている社が目立ちます」(ベテラン政治記者、週刊文春5月19日発売号) 私は政治面によくある「関係者」「党幹部」「重鎮」など、匿名だからこそ言えるコメントを読むのも好きだ。役に立つと思っている。しかし女性記者がパワハラやセクハラに遭っても言いだせない上で成立するものなら、私も楽しんではいられない。 いやいや、取材はそれだけじゃないよ、ちゃんとやってるよ、と言うなら今回の「政治家のセクハラと取材者」の問題を取り上げてほしい。私は嫌味や皮肉で言ってるのではなくマスコミ内部の姿勢を見たいのです。 今回の件で2018年の「財務省セクハラ」問題を思い出した人も多いだろう。女性記者にセクハラ発言を繰り返したと報じられて財務省事務次官・福田淳一氏が辞任した件。あれも発端は週刊誌報道だった。あのときは「週刊新潮」で、今回は「週刊文春」。女性記者へのセクハラは自社の媒体ではなく、週刊誌に訴えてやっと報じられる案件なのか。 細田セクハラ問題は、やはりマスコミ論でもある』、「女性記者へのセクハラは自社の媒体ではなく、週刊誌に訴えてやっと報じられる案件なのか。 細田セクハラ問題は、やはりマスコミ論でもある」、誠に情けないことだ。

次に、本年5月16日付け文春オンライン「ジャニー喜多川氏の性加害を“なかったこと”にした博報堂の言い分 ジャニーズ事務所への配慮を公言」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/62859
・『5月14日21時、ジャニーズ事務所が公式HPで動画を配信し、藤島ジュリー景子社長自らが「創業者ジャニー喜多川の性加害問題について、世の中を大きくお騒がせしておりますこと心よりお詫び申し上げます。何よりまず被害を訴えられている方々に対して深く、深くお詫び申し上げます」などと語った。 ジャニー氏(享年87)の性加害については、1999年に「週刊文春」が14週にわたって報じ、キャンペーン開始直後の1999年11月、ジャニー氏とジャニーズ事務所は、小社・文藝春秋に対し名誉毀損の損害賠償を求めて提訴。2003年の東京高裁判決では、性加害が認定され、翌年、最高裁で確定した。しかし、多数の元ジャニーズ・ジュニアの証言によれば、これ以降も性加害は続いていた。判決後も性加害が続いてきた理由の一つにあると見られるのが、ジャニーズ事務所とビジネスで深くつながるメディアや広告代理店による性加害“黙殺”だ。そうした実例の一つが、日本を代表する大手広告代理店の博報堂の原稿削除問題である。本件を報じた「週刊文春」4月20日号の記事を公開する。(初出:週刊文春 2023年4月20日号 肩書きは公開時のまま)。 「ジャニーズを優先してこっちをないがしろにして。誠実ではないですよね」 そう憤るのは、批評家の矢野利裕氏である。 大手広告代理店・博報堂が発行している『広告』。 「博報堂の社員が編集に携わっています。その号の特集テーマに沿った、様々な筆者の論考・対談などが掲載される。2019年からは小野直紀氏が編集長を務めている」(博報堂社員) いま問題となっているのは、「文化」をテーマとした最新号(3月31日発売)。この号では、矢野氏と社会学者の田島悠来氏が「ジャニーズは、いかに大衆文化たりうるのか」というテーマで対談している。この中で、矢野氏がジャニー喜多川氏のセクシャルハラスメントや、ジャニーズ事務所のメディアへの影響力について言及した発言が、博報堂の広報室長の判断で勝手に削除されていたのだ。 この件が公になったのは、3月31日。矢野氏の「note」への投稿だった。矢野氏が語る。 「対談は去年12月1日にZoomでしました。編集長の小野氏も同席しました」』、「2003年の東京高裁判決では、性加害が認定され、翌年、最高裁で確定した。しかし・・・これ以降も性加害は続いていた。判決後も性加害が続いてきた理由の一つにあると見られるのが、ジャニーズ事務所とビジネスで深くつながるメディアや広告代理店による性加害“黙殺”だ」、「矢野氏と社会学者の田島悠来氏が「ジャニーズは、いかに大衆文化たりうるのか」というテーマで対談している。この中で、矢野氏がジャニー喜多川氏のセクシャルハラスメントや、ジャニーズ事務所のメディアへの影響力について言及した発言が、博報堂の広報室長の判断で勝手に削除されていた」、悪質だ。
・『「性犯罪」という言葉を「ハラスメント」に修正  英BBCがジャニー氏の問題を取り上げた番組の取材も受けていた矢野氏。話の流れで、性加害についても触れることになった。 『ジャニーズの文化は、ジャニー氏の自宅である合宿所での濃密な人間関係と共に培われた。ただそれが一方で性犯罪を生んだ』などと言いました。客観的な事実として語った。裁判で認定されたことも言った覚えがあります」(同前) 編集部から届いた原稿では性犯罪という言葉はハラスメントに修正されたが、「編集部としてはそのラインなんだと割り切った」(同前)。矢野氏は原稿に手を入れて返送。そこではジャニーズが帝国と呼ばれるほど影響力を持つことを述べた上で、こう発言している。 〈囲い込み、独占するようなコントロールをマスメディアに対して影響力を持ってやってきて……。いまの時代はとくに、メディアの独占的なコントロールやハラスメントなどはその問題性を追及されるべきところだと思います〉 矢野氏が驚いたのは、12月23日の編集部からのメールの内容だ。 「『弊社の確認により、修正が入る可能性があります。もし大きな修正となりましたらご連絡致します』などと書かれていました。この後にまだあるんだと」』、「「性犯罪」という言葉を「ハラスメント」に修正」、これだけでイメージ悪化を緩和できるので、悪質だ。
・『〈ビジネスパートナーであるジャニーズ事務所への配慮〉  その後、連絡はなく、3月末に雑誌が届く。すると先ほどの発言が削除されており、対談の最後にこう注意書きが記されていた。 〈ビジネスパートナーであるジャニーズ事務所への配慮の観点から、博報堂広報室長の判断により一部表現を削除しています〉 これを見た矢野氏は、すぐさまnoteを執筆する。 「外の人間が話している者の責任で語っていることを、広報室長の判断で削除するというのがよくわからなかった。気分としては、変ですねぇっていう」 すると小野氏も4月4日、noteに投稿。広報室長から削除要求があった際に抗議したが、聞き入れられなかったと明かした。 ジャニーズへの「配慮」により、ハラスメントの文言を削除した博報堂。水島正幸社長に見解を尋ねたが、「会社の方に」と繰り返すばかり。広報室に性加害を容認したかのような判断が適切かなどと聞くと、概ね以下のように回答した。 「記事は最終的には博報堂広報室長がその内容について確認をしています。この件に限らず配慮が必要と判断した原稿に関しては、編集長と相談の上、修正の必要性などの判断をおこなっています。矢野氏へは、ご迷惑をおかけしたことにつきましてお詫びさせていただきたいと考えております」 かくしてジャニーズの性加害は、なかったことにされていく。 【動画】ジャニー氏性加害 元ジュニア橋田康氏(37)が語った13歳の時の性被害とジュリー社長の会見に感じた”問題点”  ジャニー喜多川“性加害” 新たな被害者が実名顔出し告白「話をしたら両親は泣きました」 〈回答全文公開〉ジャニーズ事務所スポンサー116社+テレビ局6社独自アンケート「説明文書の評価は?」「ジャニー氏の性加害への見解は?」
「ジャニーさんに15回されました」被害少年がついに実名、顔出し告発』、「ジャニーズへの「配慮」により、ハラスメントの文言を削除した博報堂」、「かくしてジャニーズの性加害は、なかったことにされていく」、情けない限りだ。「博報堂」以外にも、事実を知っていて隠蔽に協力していたマスコミの罪も重い。

第三に、5月18日付けNEWSポストセブン「【スクープ】市川猿之助が共演者やスタッフに“過剰な性的スキンシップ”のセクハラ・パワハラ「拒否した途端に外された」」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20230518_1870283.html?DETAIL
・『厳然たる上下関係のもと、密室で繰り広げられていたのは、あられもない痴態だった──。歌舞伎俳優の市川猿之助(47才)によるセクハラ・パワハラ行為が浮かび上がってきた、いったい何があったというのだろうか。 「奮闘歌舞伎公演」の名にふさわしく、市川猿之助は舞台上を縦横無尽に立ち廻り、ワイヤーに吊られて舞う「宙乗り」には万雷の拍手が起きた。 明治座(東京・中央区)で5月3日にスタートした『市川猿之助奮闘歌舞伎公演』で、猿之助は演目の異なる昼夜の2公演に出演中だ(28日まで)。昼の部では、1979年に植田紳爾の作・演出で初演されて以来、今回が2度目となる「不死鳥よ 波濤を越えて ─平家物語異聞─」を上演している。 猿之助は、“不死鳥”をほうふつとさせる白い衣装に身を包み宙乗りするほか、歌唱も披露。夜の部では三代目猿之助(現・市川猿翁・83才)が1984年に明治座で初演した「御贔屓繋馬」を、約40年ぶりに上演し、クライマックスの大喜利所作事「蜘蛛の絲宿直噺」では、6役早替わりの変化舞踊で観客を圧倒した。舞台に立つだけでなく、昼夜ともに演出も猿之助自身が務めており、名実ともに「猿之助の公演」だ。 「300人ほどいる歌舞伎役者の中でも、自分の名前を前面に出して大きな興行を打てるのは、成田屋の市川團十郎(45才)や音羽屋の尾上菊之助(45才)などほんの一握り。澤瀉屋の中心である猿之助は、歌舞伎はもちろん、大河ドラマ『風林火山』(NHK、2007年)に武田信玄役でドラマ初出演を果たして以降、『半沢直樹』(TBS系、2020年)や『鎌倉殿の13人』(NHK、2022年)などの話題作にも出演経験があり、トップレベルの人気を誇ります。当然、集客力も折り紙付きで、いまの歌舞伎界の屋台骨を支える名優、トップスターと言っていい」(歌舞伎関係者) さらに澤瀉屋は、「ワンピース歌舞伎」など新作歌舞伎にも積極的で、歌舞伎役者だけでなく、現代劇の俳優やアクション俳優など、幅広い役者たちを束ねる存在だ。しかし、澤瀉屋一門を引っ張る猿之助の行動に不安を覚える声が漏れてくる──。 「猿之助さんの舞台に立った経験を持つある役者は、猿之助さんとの“関係性”にかなり苦悩していました。たとえば、地方興行などの際、頻繁に猿之助さんのホテルの部屋に誘われ、お酒につきあわされていた。そればかりか“隣に寝なさい”と指示され、横になると布団の中に潜り込んできて、キスをされたり、身体を弄ばれたりと過剰な性的スキンシップをされるというのです」(劇場関係者) 拒絶という手段に訴えられないのは、一門で絶対的な力を持つリーダーの猿之助と、一門の弟子筋や俳優、スタッフの力関係に理由がある。 「師匠と弟子、座長と役者・裏方の関係は絶対で、無言の圧力のなかで、間違っても口答えしたりすることはできません。性被害に悩んだ役者も“がまんするしかない”と無言で耐えていたといいます。厳然たる上下関係を感じ、泣き寝入りするしかないんです。澤瀉屋周辺では、そうした猿之助さんの行動は知られた話で、周囲は、“今日は彼が腕枕要員だったんだな”という目で見るばかりだと言います」(前出・劇場関係者) 別の劇場関係者が続ける。 「劇場のスタッフが、猿之助さんからキスを求められたことがあったそうです。そのスタッフは猿之助さんの公演に携わってきていた人でしたが、キスを拒否した途端、次の公演から担当を外されてしまいました。それがキスを拒絶したことが理由なのかはわかりませんが、周囲はそう理解しています」) 猿之助の周囲では、そうした証言が後を絶たない。ある澤瀉屋関係者が告白する。 「猿之助さんは陽気でチャーミングで洒脱で、“いいお兄さんキャラ”なのはその通りです。ただ、夜にお酒を飲んだ後、2人きりになるのが怖いんです。私の場合はタクシーで手をつなぐのは当たり前で、キスをされたり、下半身を好き勝手にされたりする程度でしたが、周りにはもっと深刻な接触を求められている人もいました。 拒否したらどうなるか。舞台で役を与えられなかったり、無視されたり、スタッフなら仕事を取り上げられたり……。狭い世界なので断るのは本当に勇気がいることなんです」 ハリウッド発の「#Me Too」運動を例に挙げずとも、性加害やハラスメントは許されざるべき行為で、社会の視線は厳しさを増している。 5月14日、ジャニーズ事務所は、前社長であるジャニー喜多川氏の性加害問題を巡って、現社長の藤島ジュリー景子氏が動画で謝罪し見解を発表した。ジャニー氏に対しては、元ジャニーズJr.のカウアン・オカモト氏が性被害を訴えたほか、ほかの少年も被害を受けていたことを4月の記者会見で明かした。ほかにも複数の元ジャニーズJr.が性被害を証言しており、実態解明を求める世間の声に応えた格好だ。 また、宝塚歌劇団は、元演出家との間で訴訟に発展している。発端は、昨年12月に元演出家による歌劇団の演出助手への性加害や、団員へのパワハラが報じられたことだった。退団を迫られたと主張する元演出家はハラスメントを「事実無根」として、従業員としての地位確認と未払い賃金などの支払いを求める訴えを起こした。一方、歌劇団は報道当時「ハラスメント事案があったことは弊団として確認」とコメントし、毅然とした対応をとった格好だった。 いま、社会全体が性加害やハラスメントに向き合おうとしている。当事者が自身を省みることはもちろん、組織としても性加害やハラスメントの防止に目を光らせなければならないのは当然のことだ』、「集客力も折り紙付きで、いまの歌舞伎界の屋台骨を支える名優、トップスターと言っていい」(歌舞伎関係者) さらに澤瀉屋は、「ワンピース歌舞伎」など新作歌舞伎にも積極的で、歌舞伎役者だけでなく、現代劇の俳優やアクション俳優など、幅広い役者たちを束ねる存在だ。しかし、澤瀉屋一門を引っ張る猿之助の行動に不安を覚える声が漏れてくる──。 「猿之助さんの舞台に立った経験を持つある役者は、猿之助さんとの“関係性”にかなり苦悩していました。たとえば、地方興行などの際、頻繁に猿之助さんのホテルの部屋に誘われ、お酒につきあわされていた。そればかりか“隣に寝なさい”と指示され、横になると布団の中に潜り込んできて、キスをされたり、身体を弄ばれたりと過剰な性的スキンシップをされるというのです」(劇場関係者) 拒絶という手段に訴えられないのは、一門で絶対的な力を持つリーダーの猿之助と、一門の弟子筋や俳優、スタッフの力関係に理由がある」、ここまで「過剰な性的スキンシップをされる」噂はかなり広まっていた筈なので、自殺した父親が注意すべきだった。
・『「お風呂に入ったら」  猿之助のご乱行は、それに留まらない。前出のある澤瀉屋関係者が明かす。 「コロナ禍の前から、誕生日会や新年会、忘年会、公演の打ち上げといった名目で、猿之助さんが主催するパーティーが頻繁に行われていました。参加するのは、澤瀉屋の一門にいる若手の歌舞伎役者や、猿之助さんの興行などに出演する舞台俳優やアクション俳優などです。 ただコロナ禍を迎え、飲食店など人目がある場所での大人数の集まりは憚られるようになった。そのため、ここ数年は歌舞伎座近くの名門高級ホテルのスイートルームや、横浜や鎌倉、葉山、河口湖などの隠れ家的な高級ホテルを一棟貸し切ったりして、ドンチャン騒ぎをやっていました。コロナ禍になる前より、周囲の目がないところで身内ばかりで遊べるので、“淫靡な濃厚接触”がよりエスカレートしたんです」) 5月8日に新型コロナは感染症法上の「5類」に移行し、日常は戻りつつある。しかし、コロナが猛威を振るっていた期間中は、歌舞伎に限らず、舞台公演の関係者や、コンサートに携わる音楽関係者が細心の注意を払っていた。 「もちろん、どんなに気をつけていても感染してしまうことはあります。ですが、猿之助さんのように主役級だと、簡単に代役を立てられない。公演が中止になれば、歌舞伎興行を行う松竹にも、一門にも大打撃です。もちろん、チケットを買って観劇するお客さんにもご迷惑がかかります。にもかかわらず、人目を忍んだパーティーはコロナが猛威を振るう時期にも行われていました」(芸能関係者) 猿之助は、2021年7月30日と、2022年7月22日に新型コロナ感染を松竹を通じて発表した。1回目では、翌8月の「八月花形歌舞伎」には代役が立てられたが、2回目はほかの感染者がいたことも背景に、「七月大歌舞伎」は7日間休演になった。 「1度目の感染の直前にも、猿之助さん主催のパーティーは開かれていました」(前出・芸能関係者) 『女性セブン』が確認したところ、2021年7月7~8日に神奈川県葉山町にあるホテル、7月29~30日には、神奈川県鎌倉市材木座のホテルで内々のパーティーが行われたという。前者は東京と神奈川にまん延防止等重点措置が取られていたタイミングであり、後者に至っては、東京は緊急事態宣言下にあった。 「コロナ感染への意識の低さもさることながら、そのパーティーも、夜が深くなると雰囲気が変わります。猿之助さんが“お風呂に入ったら”とすすめることがあり、参加者が複数人で一緒に入浴させられるんです。 そのうちに、猿之助さんも酔っ払ってきて一緒に入浴することもありましたし、手を握ったり、体を触ってスキンシップをとったり、キスをするといったことは、平然と行われていました。猿之助さんの周囲では、パワハラにセクハラを上乗せしたような行為が日常茶飯事です。 内心ではそれを嫌がっている人もいます。ですが、次の猿之助さんの公演にかかわることができるかどうかなど考えると、拒否できない雰囲気になるんです」(前出・芸能関係者) ここでもまた、猿之助が興行で持つ大きな「パワー」が厳然と影響をおよぼしているのだ。 「一般社会では、絶対に許されませんよ。ですが、猿之助さんはそういった行為が、許されないことだと認識できていないようにも感じられるんです。澤瀉屋のリーダーという立場上、誰も“それはおかしいことだよ”と注意できない。当たり前のように行われ、それがエスカレートして、上下関係で下にあたる人の気持ちをまったく考えられなくなってしまう。まるで“裸の王様”です。 もし発覚したら社会的にも、組織のなかでも処罰されるようなことでも、誰にも指摘されないので、猿之助さんは、ある意味で無邪気に“悪気”なくやっているようなんです」(前出・劇場関係者)) 本誌『女性セブン』は5月15日夜、公演後の猿之助を直撃した。飲食店から出てきた猿之助は笑顔だったが、本誌が名乗ると途端に不機嫌な表情を浮かべ、「答える義務はありません」とだけ話した。 ハラスメント行為は、歌舞伎界という特殊な世界で、興行にまつわって起きた。その興行のほとんどに携わり、各々の歌舞伎役者と業務委託契約を結ぶ松竹にも、責任の一端はあるはずだ。調査、指導をすべきではないのか。松竹に見解を求めた。 「(猿之助のハラスメントについては)プライベートの動向については、俳優と弊社は雇用関係に無いこともあり、弊社が関与・管理することには限界がございます。ご指摘の事象は承知しておりません。 (コロナ禍のパーティーについては)市川猿之助が休演に至りましたことは遺憾でございますが、現状では、弊社から市川猿之助に対し、申し入れをすべきと判断する確たる事実は把握しておりません。 (今後の対応については)ハラスメント行為は決して許されないものであり、俳優の私行においても社会規範や倫理を逸脱する行為は厳に慎むべきと考えております。公演製作・主催企業としての社会的責任の見地から、弊社の興行等に関連した看過し難い事象の発生が懸念されました場合には事実確認を行い、適正に対応して参る所存です」』、「ここ数年は歌舞伎座近くの名門高級ホテルのスイートルームや、横浜や鎌倉、葉山、河口湖などの隠れ家的な高級ホテルを一棟貸し切ったりして、ドンチャン騒ぎをやっていました。コロナ禍になる前より、周囲の目がないところで身内ばかりで遊べるので、“淫靡な濃厚接触”がよりエスカレートしたんです」、「「コロナ感染への意識の低さもさることながら、そのパーティーも、夜が深くなると雰囲気が変わります。猿之助さんが“お風呂に入ったら”とすすめることがあり、参加者が複数人で一緒に入浴させられるんです。 そのうちに、猿之助さんも酔っ払ってきて一緒に入浴することもありましたし、手を握ったり、体を触ってスキンシップをとったり、キスをするといったことは、平然と行われていました。猿之助さんの周囲では、パワハラにセクハラを上乗せしたような行為が日常茶飯事です。 内心ではそれを嫌がっている人もいます。ですが、次の猿之助さんの公演にかかわることができるかどうかなど考えると、拒否できない雰囲気になるんです」(前出・芸能関係者) ここでもまた、猿之助が興行で持つ大きな「パワー」が厳然と影響をおよぼしているのだ」、「ハラスメント行為は、歌舞伎界という特殊な世界で、興行にまつわって起きた。その興行のほとんどに携わり、各々の歌舞伎役者と業務委託契約を結ぶ松竹にも、責任の一端はあるはずだ。調査、指導をすべきではないのか。松竹に見解を求めた。 「(猿之助のハラスメントについては)プライベートの動向については、俳優と弊社は雇用関係に無いこともあり、弊社が関与・管理することには限界がございます。ご指摘の事象は承知しておりません。現状では、弊社から市川猿之助に対し、申し入れをすべきと判断する確たる事実は把握しておりません」、と逃げているが、やはり責任は重大だと思う。

第四に、この続きを、5月18日付けNEWSポストセブン「市川猿之助の浮世離れしたハラスメント体質 「お前らは家畜だよ!」と弟子を怒鳴り散らす」を紹介しよう。
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・『歌舞伎の名門「澤瀉屋」を率いる市川猿之助(47才)の浮世離れしたハラスメント体質が浮かび上がった。歌舞伎界でもトップレベルの人気を誇る猿之助だが、劇場関係者はこう証言する。 「猿之助さんの舞台に立った経験を持つある役者は、猿之助さんとの“関係性”にかなり苦悩していました。たとえば、地方興行などの際、頻繁に猿之助さんのホテルの部屋に誘われ、お酒につきあわされていた。そればかりか“隣に寝なさい”と指示され、横になると布団の中に潜り込んできて、キスをされたり、身体を弄ばれたりと過剰な性的スキンシップをされるというのです」(劇場関係者) こういった証言は後を絶たず、ある澤瀉屋関係者はこう告白する。 「猿之助さんは陽気でチャーミングで洒脱で、“いいお兄さんキャラ”なのはその通りです。ただ、夜にお酒を飲んだ後、2人きりになるのが怖いんです。私の場合はタクシーで手をつなぐのは当たり前で、キスをされたり、下半身を好き勝手にされたりする程度でしたが、周りにはもっと深刻な接触を求められている人もいました。 拒否したらどうなるか。舞台で役を与えられなかったり、無視されたり、スタッフなら仕事を取り上げられたり……。狭い世界なので断るのは本当に勇気がいることなんです」(澤瀉屋関係者) また、猿之助はコロナ禍においてパーティーを開いていたという。 「コロナ禍の前から、誕生日会や新年会、忘年会、公演の打ち上げといった名目で、猿之助さんが主催するパーティーが頻繁に行われていました。参加するのは、澤瀉屋の一門にいる若手の歌舞伎役者や、猿之助さんの興行などに出演する舞台俳優やアクション俳優などです。 ただコロナ禍を迎え、飲食店など人目がある場所での大人数の集まりは憚られるようになった。そのため、ここ数年は歌舞伎座近くの名門高級ホテルのスイートルームや、横浜や鎌倉、葉山、河口湖などの隠れ家的な高級ホテルを一棟貸し切ったりして、ドンチャン騒ぎをやっていました。コロナ禍になる前より、周囲の目がないところで身内ばかりで遊べるので、“淫靡な濃厚接触”がよりエスカレートしたんです」(前出・澤瀉屋関係者) そのパーティーでは、猿之助の指示で複数の参加者が入浴させられたことがあったほか、酔っ払った猿之助も一緒に入浴し、参加者にキスをしたり、体を触ったりなどのスキンシップが平然と行われていたというのだ。 「澤瀉屋」という屋号は、初代猿之助の生家が、薬草の澤瀉を扱う薬屋だったことに由来するという。初代猿之助は、九代目市川團十郎に成田屋を破門にされた後に澤瀉屋を掲げ「市川猿之助」「市川段四郎」の名跡を二枚看板としてきた。澤瀉屋には「猿翁」の名跡もあるが、「猿之助」の名を後継者に譲った人間が名乗る隠居名のため、猿之助がれっきとした中心である。 「猿之助さんは、もともとの『市川亀治郎』を終生名乗りたいと公言していたし、父親の『段四郎』を継ぐかもしれないと考えていたはずです。しかし、風向きが変わったのは、伯父で三代目猿之助(当代の猿翁)が高齢と体調不良のため猿之助を退くことになり、当時の亀治郎に白羽の矢が立ったこと。2012年に『四代目猿之助』を襲名すると、それまで古典歌舞伎ばかり演じていたのが一転、新作へと没頭していきました」(歌舞伎関係者)) かねて、「猿之助」という名跡は歌舞伎界に新風を送り込む存在だった。 「二代目は大正の時代に海外の演劇の感覚を歌舞伎に持ち込み、特にロシアバレエの要素を加えた立体感のある振り付けが反響を呼びました。三代目の功績は1986年の『スーパー歌舞伎』の旗揚げでしょう。古典芸能とは対となる現代風歌舞伎で、第1作の『ヤマトタケル』は語り継がれる名作です」(前出・歌舞伎関係者) 猿之助自身、その名跡が持つ特性を理解していた。 《僕が継承すべきは、作品をそのまま真似ることではなく、“猿之助”の精神だと思っています。その最たるものが、成功した作品でも常に洗い直す心。亀治郎時代は自分の工夫を加えることはできませんでしたが、僕はもう猿之助です》(『婦人画報』2014年11月号) 実際、猿之助はスーパー歌舞伎をさらに昇華させ、大人気コミックを基にして2015年に『ワンピース』を初演し好評を博した。2024年にはこちらも人気コミックの『鬼滅の刃』の歌舞伎上演を控えている。 「名門・澤瀉屋において『猿之助』の力は絶大です。今回の明治座の公演もそうですが、座頭として自分の名を冠する興行ですから、演目や内容の決定に始まり、キャスティングにも意見が反映されます。そればかりか、舞台を裏側で支える劇場関係者、衣装関係者、大道具関係者なども、猿之助の一言の影響力は大きく、権力が集中する立場にあるんです。トップ役者であると同時に、有力プロデューサーでもあるわけです」(前出・歌舞伎関係者) 興行の成否に重大な責任を負うからこその構図だが、歪な力関係をもたらしてしまったようだ。 「かつて、猿之助さんは一門の弟子に向かって“弟子なんか家畜だからな! お前らは家畜だよ!”と怒鳴り散らしたことがあったと言います。澤瀉屋のリーダーとして絶大な力を持っている分、一門に関係する役者たちは猿之助さんには絶対に逆らえない。そうした業務上の上下関係が、一般社会で言うハラスメント行為に発展してしまっているのです。 もちろん猿之助さんは独身なので、業務上の上下関係があっても、お互いが求め合えば自由恋愛です。ただ、業務で優越な立場にある側が性的な関係を求めることは、相手の受け止め方によってはパワハラやセクハラにあたるのはいまや常識です」(前出・劇場関係者) それでも拒絶できないのは、先述したように、猿之助が興行において絶対的な権力を持っている構図にある。こんな証言もある。 「ある俳優は猿之助と深い関係だった。ところが、あるときに関係を断ったら舞台に上げてもらえなくなったばかりか、一定期間、楽屋にさえ出入りできなくなったそうです」(別の劇場関係者) そうしたことが重なり、「猿之助さんを拒絶したら怖い」というイメージが、一門の中には充満しているのだという。 「逆に、仕事のため、将来のためと自分に言い聞かせてがまんすれば、猿之助さんの覚えがめでたくなり、芸歴や実力には不相応ともいえる『役』を与えてもらえるんです。近年はそれが露骨になっている。10年、20年と歌舞伎をやってきた役者がエキストラのような役をやり、覚えめでたい駆け出しのアクション俳優が突然、新作歌舞伎で大役を任されるんです。 一方、そうして役をもらった役者は、周囲からは“猿之助のお気に入りなんだろう”“役をもらうために媚を売っているのだろう”などとうがった見られ方をされて、それもつらい状況なんです」(前出・劇場関係者)』、「「かつて、猿之助さんは一門の弟子に向かって“弟子なんか家畜だからな! お前らは家畜だよ!”と怒鳴り散らしたことがあったと言います。澤瀉屋のリーダーとして絶大な力を持っている分、一門に関係する役者たちは猿之助さんには絶対に逆らえない。そうした業務上の上下関係が、一般社会で言うハラスメント行為に発展してしまっているのです」、こんなに増長してしまってはどうしようもない。「猿之助さんは独身なので、業務上の上下関係があっても、お互いが求め合えば自由恋愛です。ただ、業務で優越な立場にある側が性的な関係を求めることは、相手の受け止め方によってはパワハラやセクハラにあたるのはいまや常識です」、「「名門・澤瀉屋において『猿之助』の力は絶大です。今回の明治座の公演もそうですが、座頭として自分の名を冠する興行ですから、演目や内容の決定に始まり、キャスティングにも意見が反映されます。そればかりか、舞台を裏側で支える劇場関係者、衣装関係者、大道具関係者なども、猿之助の一言の影響力は大きく、権力が集中する立場にあるんです。トップ役者であると同時に、有力プロデューサーでもあるわけです」、やはりこうした異常な世界を許容していた「松竹」の責任も重大だ。
・『レモンを「甘い」と感じるまで稽古しろ  歌舞伎の伝統が長い歴史を紡ぐなかで、その世界の特殊性も醸成されていった。「師匠」と「弟子」の関係は絶対であると同時に、師匠の引き立てをもらうことで、歌舞伎役者は初めて舞台に立つことができる。しかし、「芸の相伝」と「ハラスメント」の境界が曖昧なのもまた事実だ。 「歌舞伎界には、“とにかく汗を流して、汗を流して、レモンをなめたときに『甘い』と感じるまで踊らなければ、稽古したとはいえない”という話があります。まるで昭和の部活動で、科学的とはまったく言えない。しかし、そういった考えがまかり通る世界なのです」(前出・歌舞伎関係者) 旧態依然とした上下関係に、ハラスメントは隠されている。2001年、当代一の女形と呼び声高い坂東玉三郎(73才)は、元弟子(当時19才)とその母親から1200万円を求める民事訴訟を起こされている。元弟子の入門直後の1996年、地方公演で宿泊したホテルで、玉三郎がズボンの上から弟子の股間を触ったことへの精神的苦痛にともなう慰謝料請求だった。 また、昨年8月、市川中車(香川照之、57才)の銀座クラブホステスへの性加害が『週刊新潮』で報じられた。 「表舞台から姿を消すきっかけになった性加害は銀座の夜の女性に対するものでしたが、騒動渦中には『週刊文春』で、香川さんの理詰めの叱責を繰り返し受けた若手の男性マネジャーが精神を病み、退職を余儀なくされたとも報じられました」(スポーツ紙記者) さらに本誌『女性セブン』は、今年4月27日発売号で、尾上菊之助と、一門に長年仕えた弟子・尾上音三郎(50才)の衝突を詳報した。菊之助の長男・丑之助(9才)への指導を巡って、菊之助は音三郎を繰り返し叱責。菊之助は音三郎を自宅に呼びつけたうえ散々に罵倒し、「息子に土下座しろ!」と迫ったこともあったという。 ハラスメント行為は、歌舞伎界という特殊な世界で、興行にまつわって起きた。その興行のほとんどに携わり、各々の歌舞伎役者と業務委託契約を結ぶ松竹にも、責任の一端はあるはずだ。調査、指導をすべきではないのか。松竹に見解を求めた。 「(猿之助のハラスメントについては)プライベートの動向については、俳優と弊社は雇用関係に無いこともあり、弊社が関与・管理することには限界がございます。ご指摘の事象は承知しておりません。 (コロナ禍のパーティーについては)市川猿之助が休演に至りましたことは遺憾でございますが、現状では、弊社から市川猿之助に対し、申し入れをすべきと判断する確たる事実は把握しておりません。 (今後の対応については)ハラスメント行為は決して許されないものであり、俳優の私行においても社会規範や倫理を逸脱する行為は厳に慎むべきと考えております。公演製作・主催企業としての社会的責任の見地から、弊社の興行等に関連した看過し難い事象の発生が懸念されました場合には事実確認を行い、適正に対応して参る所存です」 歌舞伎は世界に轟く伝統芸能だ。守らなければならない文化である。しかし、それは時代が求める「健全性」に即していることが大前提だろう。社会が性加害やハラスメントの捉え方を変容させたように、歌舞伎界もまた、変わるべきときを迎えているのかもしれない。 ※女性セブン2023年6月1日号』、「その興行のほとんどに携わり、各々の歌舞伎役者と業務委託契約を結ぶ松竹にも、責任の一端はあるはずだ。調査、指導をすべきではないのか。松竹に見解を求めた。 「(猿之助のハラスメントについては)プライベートの動向については、俳優と弊社は雇用関係に無いこともあり、弊社が関与・管理することには限界がございます。ご指摘の事象は承知しておりません。 (コロナ禍のパーティーについては)市川猿之助が休演に至りましたことは遺憾でございますが、現状では、弊社から市川猿之助に対し、申し入れをすべきと判断する確たる事実は把握しておりません」、と責任を否定しているが、「市川猿之助」以外にも、「坂東玉三郎」、「香川照之」、「尾上菊之助と、一門に長年仕えた弟子・尾上音三郎(50才)の衝突」、など多くの問題を引き起こしている。やはり、様々な問題を放置してきた「松竹」の責任は本当に重大なようだ。  
タグ:「訴訟」は単なる脅しだろう。 本当に手クセが悪い人物が、何と衆議院議長というのだから、日本政治のおさとが知れ、みっともないことだ。 文春オンライン「女性記者が“告発”できないのはなぜ? 細田衆院議長「セクハラ疑惑」報道から見えてきた、マスコミ業界の“体質”」 「セクハラ、パワハラ被害にあった人が「仕事のために」被害をなかなか言いだせないという状況がもし本当なら、これは新聞業界、もしくはマスコミ業界全体の問題だと思う」、「実は政治家のセクハラ問題は、マスコミがいちばん「知っている」のでは?」、まさに「マスコミ論」だ。 「彼女たちはオフレコ取材が前提なので、同僚に迷惑がかかるのでは、とも悩んでいる。自ら名乗り出ることは容易ではありません。上層部としても“貴重な情報源”である細田氏を守りたいから、『あったこと』をなかなか報じられずにいます」、 何故なのだろう。 ハラスメント (その21)(女性記者が“告発”できないのはなぜ? 細田衆院議長「セクハラ疑惑」報道から見えてきた マスコミ業界の“体質” 、ジャニー喜多川氏の性加害を“なかったこと”にした博報堂の言い分 ジャニーズ事務所への配慮を公言、【スクープ】市川猿之助が共演者やスタッフに“過剰な性的スキンシップ”のセクハラ・パワハラ「拒否した途端に外された」、市川猿之助の浮世離れしたハラスメント体質 「お前らは家畜だよ!」と弟子を怒鳴り散らす) 「女性記者へのセクハラは自社の媒体ではなく、週刊誌に訴えてやっと報じられる案件なのか。 細田セクハラ問題は、やはりマスコミ論でもある」、誠に情けないことだ。 文春オンライン「ジャニー喜多川氏の性加害を“なかったこと”にした博報堂の言い分 ジャニーズ事務所への配慮を公言」 「2003年の東京高裁判決では、性加害が認定され、翌年、最高裁で確定した。しかし・・・これ以降も性加害は続いていた。判決後も性加害が続いてきた理由の一つにあると見られるのが、ジャニーズ事務所とビジネスで深くつながるメディアや広告代理店による性加害“黙殺”だ」、「矢野氏と社会学者の田島悠来氏が「ジャニーズは、いかに大衆文化たりうるのか」というテーマで対談している。この中で、矢野氏がジャニー喜多川氏のセクシャルハラスメントや、ジャニーズ事務所のメディアへの影響力について言及した発言が、博報堂の広報室長の判断で 勝手に削除されていた」、悪質だ。 「「性犯罪」という言葉を「ハラスメント」に修正」、これだけでイメージ悪化を緩和できるので、悪質だ。 「ジャニーズへの「配慮」により、ハラスメントの文言を削除した博報堂」、「かくしてジャニーズの性加害は、なかったことにされていく」、情けない限りだ。「博報堂」以外にも、事実を知っていて隠蔽に協力していたマスコミの罪も重い。 NEWSポストセブン「【スクープ】市川猿之助が共演者やスタッフに“過剰な性的スキンシップ”のセクハラ・パワハラ「拒否した途端に外された」」 「集客力も折り紙付きで、いまの歌舞伎界の屋台骨を支える名優、トップスターと言っていい」(歌舞伎関係者) さらに澤瀉屋は、「ワンピース歌舞伎」など新作歌舞伎にも積極的で、歌舞伎役者だけでなく、現代劇の俳優やアクション俳優など、幅広い役者たちを束ねる存在だ。しかし、澤瀉屋一門を引っ張る猿之助の行動に不安を覚える声が漏れてくる──。 「猿之助さんの舞台に立った経験を持つある役者は、猿之助さんとの“関係性”にかなり苦悩していました。たとえば、地方興行などの際、頻繁に猿之助さんのホテルの部屋に誘われ、お酒につきあわされていた。そればかりか“隣に寝なさい”と指示され、横になると布団の中に潜り込んできて、キスをされたり、身体を弄ばれたりと過剰な性的スキンシップをされるというのです」(劇場関係者) 拒絶という手段に訴えられないのは、一門で絶対的な力を持つリーダーの猿之助と、一門の弟子筋や俳優、スタッフの力関係に理由がある」、ここまで「過剰な性的スキンシップをされる」噂はかなり広まっていた筈なので、自殺した父親が注意すべきだった。 「ここ数年は歌舞伎座近くの名門高級ホテルのスイートルームや、横浜や鎌倉、葉山、河口湖などの隠れ家的な高級ホテルを一棟貸し切ったりして、ドンチャン騒ぎをやっていました。コロナ禍になる前より、周囲の目がないところで身内ばかりで遊べるので、“淫靡な濃厚接触”がよりエスカレートしたんです」、「「コロナ感染への意識の低さもさることながら、そのパーティーも、夜が深くなると雰囲気が変わります。猿之助さんが“お風呂に入ったら”とすすめることがあり、参加者が複数人で一緒に入浴させられるんです。 そのうちに、猿之助さんも酔っ払ってきて一緒に入浴することもありましたし、手を握ったり、体を触ってスキンシップをとったり、キスをするといったことは、平然と行われていました。猿之助さんの周囲では、パワハラにセクハラを上乗せしたような行為が日常茶飯事です。 内心ではそれを嫌がっている人もいます。ですが、次の猿之助さんの公演にかかわることができるかどうかなど考えると、拒否できない雰囲気になるんです」(前出・芸能関係者) ここでもまた、猿之助が興行で持つ大きな「パワー」が厳然と影響をおよぼしているのだ」、 「ハラスメント行為は、歌舞伎界という特殊な世界で、興行にまつわって起きた。その興行のほとんどに携わり、各々の歌舞伎役者と業務委託契約を結ぶ松竹にも、責任の一端はあるはずだ。調査、指導をすべきではないのか。松竹に見解を求めた。 「(猿之助のハラスメントについては)プライベートの動向については、俳優と弊社は雇用関係に無いこともあり、弊社が関与・管理することには限界がございます。ご指摘の事象は承知しておりません。現状では、弊社から市川猿之助に対し、申し入れをすべきと判断する確たる事実は把握しておりません」、と逃 げているが、やはり責任は重大だと思う。 NEWSポストセブン「市川猿之助の浮世離れしたハラスメント体質 「お前らは家畜だよ!」と弟子を怒鳴り散らす」 「「かつて、猿之助さんは一門の弟子に向かって“弟子なんか家畜だからな! お前らは家畜だよ!”と怒鳴り散らしたことがあったと言います。澤瀉屋のリーダーとして絶大な力を持っている分、一門に関係する役者たちは猿之助さんには絶対に逆らえない。そうした業務上の上下関係が、一般社会で言うハラスメント行為に発展してしまっているのです」、こんなに増長してしまってはどうしようもない。 「猿之助さんは独身なので、業務上の上下関係があっても、お互いが求め合えば自由恋愛です。ただ、業務で優越な立場にある側が性的な関係を求めることは、相手の受け止め方によってはパワハラやセクハラにあたるのはいまや常識です」、「「名門・澤瀉屋において『猿之助』の力は絶大です。今回の明治座の公演もそうですが、座頭として自分の名を冠する興行ですから、演目や内容の決定に始まり、キャスティングにも意見が反映されます。 そればかりか、舞台を裏側で支える劇場関係者、衣装関係者、大道具関係者なども、猿之助の一言の影響力は大きく、権力が集中する立場にあるんです。トップ役者であると同時に、有力プロデューサーでもあるわけです」、やはりこうした異常な世界を許容していた「松竹」の責任も重大だ。 「その興行のほとんどに携わり、各々の歌舞伎役者と業務委託契約を結ぶ松竹にも、責任の一端はあるはずだ。調査、指導をすべきではないのか。松竹に見解を求めた。 「(猿之助のハラスメントについては)プライベートの動向については、俳優と弊社は雇用関係に無いこともあり、弊社が関与・管理することには限界がございます。ご指摘の事象は承知しておりません。 (コロナ禍のパーティーについては)市川猿之助が休演に至りましたことは遺憾でございますが、現状では、弊社から市川猿之助に対し、申し入れをすべきと判断する確たる事実は把握して おりません」、と責任を否定しているが、「市川猿之助」以外にも、「坂東玉三郎」、「香川照之」、「尾上菊之助と、一門に長年仕えた弟子・尾上音三郎(50才)の衝突」、など多くの問題を引き起こしている。やはり、様々な問題を放置してきた「松竹」の責任は本当に重大なようだ。
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司法の歪み(その17)(有罪判決でも返り咲いた37歳の美濃加茂市長が語る検察の矛盾「河井事件は不問。法は不平等」〈dot.〉、なぜ日本の刑事事件の99.5%が有罪になるのか…「捜査能力が高いから」ではない驚きの理由 何が何でも有罪にするやり方が横行している、「刑務所が無料の老人ホーム化」「刑務官は廃墟のような家に…」 杉良太郎が64年間、刑務所改革に取り組み続ける理由) [社会]

司法の歪みについては、2021年10月8日に取上げた。久しぶりの今日は、(その17)(有罪判決でも返り咲いた37歳の美濃加茂市長が語る検察の矛盾「河井事件は不問。法は不平等」〈dot.〉、なぜ日本の刑事事件の99.5%が有罪になるのか…「捜査能力が高いから」ではない驚きの理由 何が何でも有罪にするやり方が横行している、「刑務所が無料の老人ホーム化」「刑務官は廃墟のような家に…」 杉良太郎が64年間、刑務所改革に取り組み続ける理由)である。

先ずは、昨年2月3日付けAERAdo「有罪判決でも返り咲いた37歳の美濃加茂市長が語る検察の矛盾「河井事件は不問。法は不平等」〈dot.〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2022020200033.html?page=1
・『「有罪判決を受けて、また選ばれるという市長は私の他にいないでしょう。今も再審請求中で最後まで争うつもりです。せっかくなので稀有な経験を市政に反映させていきたいですね」 こう苦笑するのは、1月23日投開票の岐阜県美濃加茂市で4度目の当選を果たした、藤井浩人市長(37)だ。 藤井氏が28歳で美濃加茂市選挙に初当選したのは2013年。当時は、全国最年少市長だった。 だが、そのキャリアは1年あまりで暗転する。藤井氏が美濃加茂市議時代に愛知県の浄水設備会社の社長から、現金30万円を受け取ったとして2014年6月、受託収賄罪の容疑で愛知県警と岐阜県警に逮捕された。 藤井氏は一貫して無罪を主張し、市長職にとどまった。 そして、一審の名古屋地裁で無罪判決とされた。しかし、2016年11月の控訴審では一転して有罪判決が言い渡される。 そこで、同年12月に市長を辞職し、出直し選挙に出馬し、圧勝。 事件については最高裁に上告したが、2017年12月に棄却され確定、公民権も3年停止となり、辞職を余儀なくされた。 藤井氏は市長時代の幹部、伊藤誠一氏を「後継」として推し、後を託した。 2020年12月に執行猶予が満了、公民権停止も終わった藤井氏は21年末、市長選に出馬を表明する。 市長選は藤井氏が後継を託した現職の伊藤氏と一騎打ちとなった。藤井氏は出馬に至った心境をこう振り返る。 「伊藤氏に後をお願いしたのは私です。尊敬する方でもあり、出馬するのは複雑な心境でした。なぜ出馬したのか、それは選挙の最大の争点、市役所の移転、建設場所の問題です。市内のホテルを取り壊しそこに建てると伊藤氏は説明したが、市民からは反対意見も多かった。私には事件の経験がある。被告という立場でしたが、徹底的に情報公開して、警察や検察、裁判所のおかしいところなど問題をどんどん発信してきた」 藤井氏はそのおかげで地裁では無罪判決を勝ち取り、最高裁まで戦い、再審請求もできた、という』、「美濃加茂市長」をめぐる冤罪問題については、このブログでも元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏による記事を、2017年5月18日、12月14日、12月19日、2018年3月23日に紹介した。「市長選は藤井氏が後継を託した現職の伊藤氏と一騎打ちとなった」、「伊藤氏」は「藤井氏」が出馬するにも拘らず、選挙に出て、「藤井氏」に敗れたようだ。
・『「2016年の出直し選挙で勝てたのも、自身の情報公開で事件が冤罪だと市民に理解していただけたからです。市役所の移転計画は、4か所の候補地があるのに、なぜホテルを取り壊して建て替えが必要なのか。そのプロセス、過程が判然としない。一部の意見、偏った情報で進んでいるのではないかと市民が不信感を抱いていたので、出馬を決意した」 名古屋高裁への再審請求を公表したのは、昨年11月30日と選挙が差し迫っていた。 「再審請求をすれば、また裁判があって、市政に支障をきたさないか」との声が市民から寄せられた。藤井氏はこう話す。 「これも市長時代から、自分の事件についても積極的に情報公開してきたことで、市民にも事件の概要はご理解いただいていた。多くの方が無罪をとも言ってくださった。再審請求についても、司法制度を詳しく説明することで、不安が払しょくされ、私の思いが通じたと思います」 藤井氏のホームページには、有罪判決を隠すどころか、<前科者と呼ばれても政治家として闘うワケ 私は誰に嵌められたのか>と堂々と書いている。 その姿勢が評価されたのか、選挙の結果はダブルスコアに近い大差での圧勝だった。 「市役所は新しくしなければならないと思うが、建設場所や規模、予算などは白紙にして市民に意見を聞いて、考えたい」 最近、藤井氏が気になったというのが2019年の参院選で2900万円をばらまいて、公職選挙法違反(買収)に問われ、有罪が確定している河井克行、案里夫妻の事件だ。 河井夫妻からカネを受け取った被買収の広島県議ら地方議員ら99人を検察が不起訴としていた。しかし、後に検察審査会では99人の地方議員のうち35人を起訴相当と議決した。 藤井氏と同じ市長という立場で、河井夫妻から150万円を受け取り辞職に追い込まれた、元三原市長の天満祥典氏も起訴相当だった。藤井氏は河井事件と自身の事件とで、矛盾した対応をする検察にこう怒る。) 「私の支援者の中には『藤井君より桁違いのカネもらって、罪に問われない、不起訴はおかしい』と言ってきた方もいらっしゃる。その通りです。国民から選ばれた検察審査会こそ正義がある。検察の不起訴って、法の下の平等ってなんでしょうか」 市長に返り咲いても、事件は再審請求で徹底的に争うと公言する。 「私が冤罪に陥れられた事件の事実を警察、検察、裁判所が正面から受け入れようとしない。警察には長時間、過酷な取り調べで真実を言っても聞く耳を持たなかった。私を有罪にするストーリーに沿った都合のいい話だけをしろ、という傲慢さだった。私が容疑を認めないと検察は贈賄側と連日、打合せを繰り返し、でっち上げを法廷で証言させる。私は名古屋地裁で無罪となったが、有罪とした名古屋高裁は一度も私の被告人質問を認めなかった。つまり、話を聞かないまま、判決を出した。このまま引き下がることはできません。警察、検察、裁判所はある意味、国民の最後の砦ですから、正義がないと困ります。市長としてのこの経験をもとにしっかりと地方行政が腐敗しないよう取り組みたい」』、「有罪とした名古屋高裁は一度も私の被告人質問を認めなかった」、「このまま引き下がることはできません。警察、検察、裁判所はある意味、国民の最後の砦ですから、正義がないと困ります。市長としてのこの経験をもとにしっかりと地方行政が腐敗しないよう取り組みたい」、「このまま引き下がることはできません」の意味は不明だが、今後の活躍を期待したい。

次に、5月16日付けPRESIDENT Onlineが掲載した郷原総合コンプライアンス法律事務所代表弁護士の郷原 信郎氏による「なぜ日本の刑事事件の99.5%が有罪になるのか…「捜査能力が高いから」ではない驚きの理由 何が何でも有罪にするやり方が横行している」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/69468
・『日本の刑事事件では、起訴されると有罪になる確率は99.5%を超える。なぜこれほど高いのか。弁護士の郷原信郎さんは「検察の捜査能力が高いわけではなく、内情は起訴内容に都合のいい自白を引き出すまで、被告人の身柄を延々と拘束する『人質司法』が横行している。そこには、特捜部等の判断で事件化される『立件型事件』特有の構図がある」という――。 ※本稿は、郷原信郎『“歪んだ法”に壊される日本 事件・事故の裏側にある「闇」』(KADOKAWA)の第1章「刑事司法が『普通の市民』に牙をむくとき」を加筆、再編集したものです』、「被告人の身柄を延々と拘束する『人質司法』」と、「特捜部等の判断で事件化される『立件型事件』特有の構図」、をクローズアップしたのは興味深い。
・『大阪地検特捜部による「人質司法」の非道  大阪市に本社を置く総合ディベロッパー・プレサンスコーポレーション元社長の山岸忍氏は、大阪地検特捜部に逮捕されたが、無実を訴えていた同氏の保釈は6回にわたって却下され、248日にわたって勾留された。典型的な「人質司法」だった。2021年11月に一審無罪判決に対して検察は控訴を断念、無罪が確定した山岸氏は、取調べ担当検察官らの不法行為について国賠訴訟を提起している。 大阪地検特捜部の証拠改ざん事件等の不祥事の際には、検察は、「引き返す勇気」を強調していたが、山岸氏の事件では、逮捕、勾留容疑について、当初の見立てが誤っていたことが明らかになっても、検察は、引き返そうとしないどころか、山岸氏の無罪の訴えを、「人質司法」で封じ込めようとする「非道」を続けた。山岸氏のように、検察と戦い勝利するケースは、極めて稀だ。 そのような刑事司法の脅威に、突然さらされるのは、普通に仕事をし、暮らしている企業人や市民だ。読者の貴方にとっても、決して他人事ではない。拙著『“歪んだ法”に壊される日本 事件・事故の裏側にある「闇」』(KADOKAWA)第1章では、銀行出身の経営コンサルタント、人材紹介サービスの起業家など「普通の市民」が、検察捜査の脅威にさらされ、圧し潰されいく“恐ろしい現実”を描いている』、「プレサンスコーポレーション事件」の話は、初めて知った。「保釈は6回にわたって却下され、248日にわたって勾留された。典型的な「人質司法」だった。2021年11月に一審無罪判決に対して検察は控訴を断念、無罪が確定した山岸氏は、取調べ担当検察官らの不法行為について国賠訴訟を提起している」、「国賠訴訟を提起」は当然だ。
・『「発生型事件」と「立件型事件」  日本では、日々、現場警察官の犯罪捜査、犯人検挙、検察官の捜査・処理などによって犯人が検挙され、事件の真相が解明され、大部分の事件については「適切な刑事処分」が行われている。しかし、その中でも、警察・検察の誤った判断によって事件が立件され、逮捕・起訴が行われることもあり得る。そのような場合に、裁判所が、被告人の無罪主張に十分に耳を傾け、「疑わしきは被告人の利益に」という原則にしたがっていると言えるのか、そこには多くの疑問がある。 刑事裁判の展開も、窃盗、強盗、殺人などのように被害の「発生」によって捜査が開始される「発生型事件」と贈収賄、経済犯罪などのように、捜査機関が刑事事件としての「立件」の判断をする「立件型事件」とでは、かなり状況が異なる。) 「発生型犯罪」では、人が殺された、物が盗まれた、強奪された、という被害が現実に発生し、被害者がいる。 警察は、犯罪発生を受けて捜査を開始し、犯人を特定し、逮捕し、犯罪を立証する証拠を収集する。それを受けて、検察官は十分な証拠があると判断すれば起訴し、公判で有罪判決を得るための立証を行う。犯罪発生から、検挙、起訴、裁判という流れになるのは必然であり、捜査機関側には、事件が発生している以上、捜査をやるかやらないかの選択や裁量の余地はない。 しかし、贈収賄、経済犯罪、脱税などのような「立件型事件」はそうではない。捜査を開始する契機となるネタ、端緒には様々なものがあり、一方で、捜査に投入できる人員、予算は限られている。多くの端緒の中のどれを捜査の対象とするのか、どれだけの捜査のリソースを投入するのかは、その捜査機関の幹部の価値判断、政策判断による。同程度に犯罪の疑いがあっても、捜査機関内部での「検討と判断」の結果、捜査に着手しないこともあるし、内偵捜査だけで強制捜査などの本格的な捜査には至らないこともある。 「発生型」「立件型」いずれでも、捜査機関が判断を間違えることはあり得るが、「判断の誤り」の可能性が生じた場合の構図が大きく異なる』、なるほど。
・『「立件型」の冤罪には「真犯人」はいない  「発生型」であれば、もし、犯人ではない人間が逮捕され、それを検察が起訴したとすれば、別に真犯人がいるということになる。その場合、警察、検察の捜査や公判での立証活動は、逮捕・起訴された者にとっては「冤罪えんざい」であるとともに、真犯人の検挙を妨げる行為だったことになる。それゆえ、被疑者が無実だと訴え、被告人が無罪を主張しても、そして、犯人であることへの疑問が生じても、警察、検察は誤認逮捕、誤認起訴であることは容易に認めようとしない。 しかし、被害があり、事件は存在しているのであるから、警察が犯人検挙に向けて捜査をすること、検察が誰かを犯人として起訴すること自体は当然であり、「捜査をしない」ということでは済まない。捜査を行ったこと自体には問題はなく、「犯人の特定」に問題があったということだ。 一方、「立件型」の場合は、被害が発生したわけでもなく、誰かが被害を訴えているわけでもない。「その事件を刑事事件として立件し捜査の対象とする」と捜査機関側が判断して捜査を始めたものだ。 もし仮に、その前提事実が異なっていて、捜査機関が判断を誤った疑いが生じた場合、それは犯罪自体が存在しなかった疑いが生じるのであり、別に真犯人がいるということではない』、「「立件型」の場合は、被害が発生したわけでもなく、誰かが被害を訴えているわけでもない。「その事件を刑事事件として立件し捜査の対象とする」と捜査機関側が判断して捜査を始めたものだ。 もし仮に、その前提事実が異なっていて、捜査機関が判断を誤った疑いが生じた場合、それは犯罪自体が存在しなかった疑いが生じるのであり、別に真犯人がいるということではない」、なるほど。
・『「立件型」では、有罪判決断念で捜査機関の面子がつぶれる  しかし、実際には、「立件型」の事件の場合、捜査機関側は被疑者が無実だと訴え、被告人が無罪を主張し、捜査機関側の当初の判断が誤っていた可能性が生じても、誤りを認めようとはしない。有罪判決に持ち込むために異常なまでの拘こだわりを見せる。不利な状況になっても、決して諦めない。まさに、山岸氏の事件がその典型例だ。 それは、有罪判決を断念することで、その事件を「立件」したこと自体が間違っていたと認めることになり、捜査機関側の面子がつぶれ、立件の判断をしたことの責任が問われることになるからだ。 このように、同じ刑事事件でも、「発生型」と「立件型」では、事件をめぐる構造が大きく異なる。しかも、一般的に言えば「発生型」の事件は、犯罪の世界とかなり親和性を持っている人間が犯人とされる場合が多いが、「立件型」の事件は、それまで犯罪とは全く縁がなかった「普通の市民」が突然に犯罪の疑いを受けることも多い』、「「立件型」では、有罪判決断念で捜査機関の面子がつぶれる」、みっともともないが、やむを得ない。「有罪判決に持ち込むために異常なまでの拘こだわりを見せる。不利な状況になっても、決して諦めない」、こうした「捜査機関側」の無用なこだわりは止めてほしいものだ。
・『無罪主張をすれば、身柄拘束が延々と続く  立件の判断が不合理で理不尽なものであっても、捜査機関側は、一度立件したら、決して引き返そうとしない。検察官は、有罪判決を得ることに拘り続ける。そこで、無罪主張を抑え込むための手段として使われるのが、犯罪事実を否認し、無罪主張をしようとする被告人は、身柄拘束が延々と続くという「人質司法」だ。 裁判所も、「人質司法」を容認して保釈を認めず、捜査機関や検察官の主張を何とか認めようとし、被告人の訴えに耳を傾けようとしない。 特捜検察が関わった「立件型」事件での「人質司法」の代表的事例が、冒頭でも述べた山岸氏の冤罪事件だ。 山岸氏はある土地の売買をめぐり、業務上横領容疑で大阪地検特捜部に逮捕、起訴された。自身の横領容疑についての逮捕から裁判までの経過を描いた迫真のノンフィクション『負けへんで! 東証一部上場企業社長vs地検特捜部』(文藝春秋)には、248日に及ぶ勾留中の記録が克明に綴られている』、「捜査機関側は」ともかく、「裁判所も、「人質司法」を容認して保釈を認めず、捜査機関や検察官の主張を何とか認めようとし、被告人の訴えに耳を傾けようとしない」、中立であるべき「裁判所」が「捜査機関側」に偏っているのでは、公正は期待できない。
・『検察官はデタラメな意見書を書いて保釈を妨害していた  山岸氏の保釈請求は、検察の強硬な反対意見で、却下され続けた。「人質司法」で耐えられない状況に追い込んで、無罪主張を断念させようとしているとしか思えないやり方だった。その検察の反対意見を受け入れ、裁判所は保釈を却下し続けた。 国賠訴訟の対象にはなっていないが、堀木博司という当時の大阪地検特捜部の検察官が、人間の心を持っているとは思えない冷酷非道な意見書を書いて保釈を妨害していたことが、山岸氏の著書で赤裸々に描かれている。保釈請求が却下されたワンシーンを以下に抜粋する。山岸氏にとっては、実に勾留から約半年が経過した5度目の保釈請求だったという。 極めつけは、〈被告人の精神的肉体的負担が限界に達している〉という請求書の記載への反論だった。 弁護人が誇張なくありのまま記載したわたしの現状について、検察官は、〈裏付け資料がない〉〈3月から5月まで平日毎日弁護人と接見している。4月30日と5月25日には合計4時間以上も接見している〉などと言って、〈被告人の精神的肉体的負担が限界に達しているとは到底思えない〉と冷笑した』、「〈3月から5月まで平日毎日弁護人と接見している。4月30日と5月25日には合計4時間以上も接見している〉などと言って、〈被告人の精神的肉体的負担が限界に達しているとは到底思えない〉と冷笑した」、確かに「冷酷非道な意見書」だ。
・『三畳一間の部屋に閉じ込められ、何もできない  こんな無責任な言い草があるだろうか。検察官は、自分がやっていることがわかっていないのだ。〈断固として保釈を許可すべきでない〉とコピペで張り付けただけの意見書のせいで、わたしがどれだけ苦しんでいるか、まったく認識していない。だからこんないい加減なことが言えるのだ。暴力を振るった加害者が、「被害者は全然痛がっていませんよ」と言うようなものである。 前年12月16日に逮捕されてから、半年弱である。その間、わたしは狭い三畳一間の部屋に閉じ込められ、どこにも行けず、やりたいこともできず、好きなものも食べられず、一日の行動を逐一管理されて過ごしている。 就寝の時間も起床の時間も運動の時間も食事の時間も、自分では決められない。テレビも見られない。電話もメールもできない。会いたい人と会うことができない。話したい人と話すことができない。(中略) この堀木意見書が提出された翌日、大阪地方裁判所は保釈請求を却下、準抗告も特別抗告も棄却されてしまった。(山岸忍『負けへんで! 東証一部上場企業社長vs地検特捜部』第三章「通らぬ保釈請求と持ち株売却」より一部抜粋)』、「三畳一間の部屋に閉じ込められ、何もできない」、しかし、「この堀木意見書が提出された翌日、大阪地方裁判所は保釈請求を却下、準抗告も特別抗告も棄却されてしまった」、裁判官もいい加減だ。
・『これは「権力ヤクザ」による監禁犯罪である  山岸氏によると、堀木検事は自身がそれまでに提出した(保釈請求に反対する)意見書の文面を「コピペ」しながら、情緒的で論理性を欠いた意見書の提出による対応に終始したという。それをもって、裁判所も保釈申請を却下し、山岸氏は結果、248日もの拘留を強いられ、「拘禁症状」も心身に表れるなど、大きな負担を強いられることとなった。 このような悪辣あくらつなやり方で、山岸氏を痛めつけ続けた堀木検事は、このような意見書を裁判所に提出したことの責任は全く問われず、今は、東京地検特捜部に所属し、保釈に対してデタラメな内容を書き並べた意見書を書いて強硬に保釈に反対するという「非道」を繰り返している。 プレサンス事件で典型的に表れた特捜検察のやり方は、まさに「権力ヤクザ」そのものであり、「人質司法」を悪用した“監禁犯罪”と言っても過言ではない。)』、「堀木検事は自身がそれまでに提出した(保釈請求に反対する)意見書の文面を「コピペ」しながら、情緒的で論理性を欠いた意見書の提出による対応に終始したという。それをもって、裁判所も保釈申請を却下し、山岸氏は結果、248日もの拘留を強いられ、「拘禁症状」も心身に表れるなど、大きな負担を強いられることとなった」、「悪辣あくらつなやり方で、山岸氏を痛めつけ続けた堀木検事は、このような意見書を裁判所に提出したことの責任は全く問われず、今は、東京地検特捜部に所属し、保釈に対してデタラメな内容を書き並べた意見書を書いて強硬に保釈に反対するという「非道」を繰り返している」、「プレサンス事件で典型的に表れた特捜検察のやり方は、まさに「権力ヤクザ」そのものであり、「人質司法」を悪用した“監禁犯罪”と言っても過言ではない」、同感である。

第三に、2月3日付けデイリー新潮「「刑務所が無料の老人ホーム化」「刑務官は廃墟のような家に…」 杉良太郎が64年間、刑務所改革に取り組み続ける理由」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/02041057/?all=1
・『半世紀を優に超えて歌手や俳優として活躍する杉良太郎(78)は、60年以上にわたって私財を投じた福祉活動に取り組んできた。「特別矯正監」「特別防犯対策監」などに任じられている杉は、どのように矯正施設の改革に携わってきたのか。その思いを本人が語った。 15歳の時に刑務所の慰問を始め、国内外で福祉活動を続けて64年が過ぎました。人からはよく「なぜ」「どうして」と聞かれますが、そういう質問が一番困ります。自分でも明確な答えを持ち合わせていないからですが、おそらくこれは私の性分。生まれる前、母親の胎内にいた頃に染みついた、一種の性(さが)だと思います。母は「人に親切、慈悲、情け」が口癖のような人でしたから。 現在は法務省・特別矯正監(永久委嘱)、厚生労働省・健康行政特別参与、警察庁・特別防犯対策監(永久委嘱)として福祉活動だけではなく対策活動を行う機会も増えています。すでに全国の税関、刑務所は視察を終えており、警察はこの2月、すべての都道府県警察本部を訪問し終えます。その後は各警察署にも足を運び、現場に近い声を聞いて対策に生かす考えです』、「杉良太郎」氏が、「60年以上にわたって私財を投じた福祉活動に取り組んできた」とは初めて知った。
・『名誉矯正監になった理由  なぜ、全国を回る必要があるのか。例えば警察組織にしてもそれぞれの地域特有の県民性や地域性があります。だから、治安の維持という使命は同じでも、アプローチの仕方は微妙に異なる。それは私が矯正監として接している、受刑者や刑務官たちも同じです。 私が矯正施設で見るのは、彼らがどんな所で生まれ育ち、なぜ犯罪を起こしたのかという、根っこのところ。私が矯正監に任命されるまでには、幾つかの段階がありました。まず、15歳から始めた慰問を続けるうちに一日所長として視察するようになった。すると当時、5~6人の閣僚が集まる席があって、「何十年も取り組んでいる杉さんが一日だけの所長っていうのはおかしいんじゃないの?」という話になり、その後「一日所長じゃなく、何かポジションを作れないのか」と、法務大臣に伝えたという。そんなことはまったく知りませんでしたが、名誉矯正監や名誉所長という肩書きを受けてくれないか、と打診をいただきました。 そもそも私は「名誉」では引き受けたくなかったのですが、お飾りではないということを念押しし、名誉矯正監を拝命しました』、「そもそも私は「名誉」では引き受けたくなかったのですが、お飾りではないということを念押しし、名誉矯正監を拝命しました」、なるほど。
・『刑務官に「何が欲しいか」と聞くと…  それまでは受刑者の更生を促進する活動が中心でしたが、刑務官や職員の方の規律や指揮監督、処遇といったあらゆる角度から矯正施設の問題に取り組むようになりました。とくに現場の声を聞くことを大切にし、その後も全国の矯正施設を回り続けました。「なるべく若い人たちの意見を聞きたい」と思っても、所長や部長などの上司が横にいると、彼らはなかなか率直な気持ちを言えません。だから、看守長ぐらいまでの中堅クラスにメンバーを限定し、話を聞いていきました。 多くは30代半ばから後半ぐらいです。処遇から教育、経理や医務といったすべての部門から出席してもらいます。最初はまったく意見が出ませんでしたが、こちらから「日頃、仕事をする中での不満を聞かせてほしい」と促したら、多くの声が上がるようになりました。 例えば、勤続年数によって時計がもらえる制度がありました。私が「時計をもらってうれしいか?」と尋ねると「うれしくない」と。「じゃあ、うれしくないものはうれしくないと言いなさい」と話した。それで「本当は何が欲しいんだ?」と聞くと「長期休暇です」と言う。 当時は休日にポケベルが鳴ったり、受刑者が過剰収容されていた関係で仕事が多くて息つく暇もない。長期休暇がないから、お盆に墓参りすら行けないとも。「それじゃあ、まずは長期休暇を出そう」と、すぐに本省に掛け合って休暇制度を見直しました。長期の休暇が取れないことは、離職率の上昇にもつながるからです』、「勤続年数によって時計がもらえる制度がありました。私が「時計をもらってうれしいか?」と尋ねると「うれしくない」と・・・「本当は何が欲しいんだ?」と聞くと「長期休暇です」と言う。 当時は休日にポケベルが鳴ったり、受刑者が過剰収容されていた関係で仕事が多くて息つく暇もない。長期休暇がないから、お盆に墓参りすら行けないとも。「それじゃあ、まずは長期休暇を出そう」と、すぐに本省に掛け合って休暇制度を見直しました。長期の休暇が取れないことは、離職率の上昇にもつながるからです」、素人ならではの発想が上手くいった例だろう。
・『自己犠牲の精神  刑務官がしっかり受刑者を指導・監督できるようになるには、広い知識や見聞、人間的な包容力を持つことも大切です。塀の中しか知らないような世間知らずでは務まりません。長期休暇を活用して、旅行も含めて見聞を広め、体験を重ねることも重要なのです。 また、この仕事は成果が見えにくいという側面があるので、職員にはやりがいとプライドを持たせることが必要です。自身の職業へのプライド、誇りがなければ、海千山千の受刑者にはなかなか対峙できません。そこで、専門官を作るなど、刑務官の心理面での育成につながることも考えました。 刑務官たちが最も喜んだのは、彼らが住む官舎の改善でした。これを言うと大抵の人に驚かれますが、刑務官を含めた職員たちに「刑務所と自分たちの官舎と、どっちを先にリフォームしてほしい?」と尋ねると、100人が100人とも「刑務所を先にお願いします」と答えます。職場を優先してほしいというわけです。 世間的にはこうしたイメージは薄いかもしれませんが、職員たちも人間です。受刑者に情が移るのか、「ちょっとでも甘い物を食べさせてあげたい」とか「少しでも処遇を良くしてあげたい」という気持ちの人が多い。自己犠牲の精神というのか、自分より受刑者の待遇改善を優先する意識が強いんです。だから私は、「あまりそっち寄りに行くなよ。被害者を忘れるな」と注意しているほどです』、「職員たちも人間です。受刑者に情が移るのか、「ちょっとでも甘い物を食べさせてあげたい」とか「少しでも処遇を良くしてあげたい」という気持ちの人が多い。自己犠牲の精神というのか、自分より受刑者の待遇改善を優先する意識が強いんです。だから私は、「あまりそっち寄りに行くなよ。被害者を忘れるな」と注意しているほどです」、なるほど。
・『刑務官は6畳と4畳半の2間で子どもを育てている  官舎というと「公務員住宅だから、さぞ良いところに住んでいるんだろう」といったイメージが強いと思います。赤坂や青山の国会議員宿舎などの印象があるからでしょうが、とくに地方にある国家公務員宿舎の多くは、想像以上に老朽化が進んでいるのが現状です。 施設課長が「居住環境を改善しないと職員が居着かない」と訴えてきたことがあります。そこで実際に足を運び、「どうしていままでこの事実を誰も口にしなかったのか?」と、気付けなかった自分にもがくぜんとしたことがあります。 視察に行く前に、法務省の職員に「間取りは幾つ?」と聞いたら「二間あります」という。私は「8畳と6畳の二間かな」と想像しましたが、実際には6畳と4畳半でした。いまどき4畳半なんて一間に含まれるのかと驚きましてね。受刑者には三食が付き、夜中でもガードマンが見回ってくれるから安心で安全な住環境にある。一方で、彼らを監督する刑務官は6畳と4畳半、そして台所という狭い部屋で、子どもを育てていることが分かった。 すぐに全国の官舎の写真を取り寄せ、それを超党派の再犯防止議員連盟のメンバーたちに見ていただいた。それで「近いうちに川越少年刑務所に行きます。みなさんも一緒に来て下さい」とお誘いしました』、「彼らを監督する刑務官は6畳と4畳半、そして台所という狭い部屋で、子どもを育てていることが分かった」、「全国の官舎の写真を取り寄せ、それを超党派の再犯防止議員連盟のメンバーたちに見ていただいた。それで「近いうちに川越少年刑務所に行きます。みなさんも一緒に来て下さい」とお誘いしました」、なかなか上手い仕掛けだ。
・『「これ、廃墟じゃないですか」  実際に現地を視察した後で、議員の方たちに「みなさんはここに住めますか?」と聞くと、全員が「住めません」と口をそろえた。中には「これ、廃墟じゃないですか」と驚く議員までいたほどです。そこで私は「ご自分が住めないところに、職員に住めと言うのはいかがなものでしょう」と窘(たしな)めるように続けた。率直な印象として「ひどいな、こんな住宅がまだあるのか」というほど老朽化が進んでいたので、いまも少しずつ住宅の建て替えやリフォームを進めているところです。 警察官とは違って、刑務所の職員にはなかなか陽が当たらない。子どもに「お父さんは何の仕事?」と聞かれて「刑務官だよ、とは言いにくい」と話す職員はいまも少なくありません。「自分の子どもに胸を張れない」というのです。だから私は全国の施設を回って「プライドを持て」と、指導したり勇気づけたりしてきたのです』、「実際に現地を視察した後で、議員の方たちに「みなさんはここに住めますか?」と聞くと、全員が「住めません」と口をそろえた。中には「これ、廃墟じゃないですか」と驚く議員までいたほどです」、巧みな誘導だ。
・『医官の処遇改善  刑務所に勤務する医師である、医官の離職も深刻な問題でした。以前の規則では、彼らが診療の対象にできるのは受刑者に限られていました。国家公務員だからというだけで、刑務官がちょっと体調を崩した時でも診察すらできない。以前はこんな非常識なことがまかり通っていたんです。だから私は、刑務官はもとより、近所に住む町の人々も診られるようにすべきだと訴えたことがありました。 医官は刑務所の近くに住んでいます。同じ地域の人々の理解や信頼は、人間的な触れ合いや結びつきから生まれてきます。高額な予算を投じて最新鋭のMRIを導入したのに、それを使ってもらえるのは受刑者だけ。それではあまりにもったいない。だから、医官の仕事は臨床に限らず、希望すれば研究もしていいようにした。給与水準のアップを含めた処遇改善にも手を付けて、医官の離職率が下がるように工夫したわけです』、「高額な予算を投じて最新鋭のMRIを導入したのに、それを使ってもらえるのは受刑者だけ。それではあまりにもったいない。だから、医官の仕事は臨床に限らず、希望すれば研究もしていいようにした。給与水準のアップを含めた処遇改善にも手を付けて、医官の離職率が下がるように工夫したわけです」、素人的発想が役人的慣行を打破した好例だ。
・『「長く刑務所にいたい」という受刑者たち  さまざまな刑務所の改革には、受刑者の処遇改善も不可欠です。ところが衣食住の快適さが増すと、居心地の良さから「長くここに置いて下さい」と訴える受刑者が増えてしまった。当たり前ですが、刑務所は「置いて下さい」なんて言われる場所じゃありません。 とくに高齢の受刑者ほどその傾向が強い。理由の多くは「出所したら死ぬしかない」「保険証がないから医者に診てもらえない」というもので、実際、持病があったり、身寄りがなくて出所しても身を置く場所がないんです。一方で刑務所なら食事はあるし、布団で寝られます。病気をすれば治療だって受けられますから、受刑者が高齢になればなるほど刑務所を「無料の老人ホーム」みたいな感覚で捉えているんですね。 刑務所にもさまざまな種類がありますが、最近は医療刑務所が非常に大きな役割を持つ時代だと感じます。違法な薬物に関する治療もありますが、心臓や脳の病気をはじめ、がんを患う受刑者も珍しくはありません。 麻薬や薬物の常習者の更生には、専門の病院や施設で徹底的に対応する必要があります。専門医も必要ですが、何よりものすごい手間がかかるんですよ』、「刑務所なら食事はあるし、布団で寝られます。病気をすれば治療だって受けられますから、受刑者が高齢になればなるほど刑務所を「無料の老人ホーム」みたいな感覚で捉えているんですね」、これは由々しい問題だ。
・『受刑者の認知症問題  加えて最近の医療刑務所の守備範囲はかなり広がっていますが、喫緊の課題の一つが、仮に受刑者が刑務所内で認知症を発症したらどうするか、という問題です。自分が誰だか認識できない受刑者にはどう罪を償わせればいいのか。こういった贖罪のあり方の本質に関わる問題への対処など、刑務官の役割やありようは大きく変化しています。 心臓病や胃がんという具合に脳の機能に影響がない時はいいですが、アルツハイマー型認知症などの場合は罪を犯した事実やその罪名どころか、自分の名前すら覚えていないこともあります。入る刑務所もA級(犯罪傾向の進んでいない者)とB級(再犯や累犯、反社会的勢力といった犯罪傾向の進んでいる者)、L級(刑期が10年以上の者)などの等級によって分かれますが、長期で入っている人は症状がどんどん進んでしまいます。 認知症を患う受刑者の面倒、つまり介護も刑務官の任務とするのか。あるいは、別に収容する施設を造るのか。仮に介護施設を造った場合、刑務所とは異なる環境で生活する受刑者は本当に罪を償っているといえるのか。そもそも、介護施設が罪を償う場所になり得るのか、といった問題も出てきます』、「認知症を患う受刑者の面倒、つまり介護も刑務官の任務とするのか。あるいは、別に収容する施設を造るのか。仮に介護施設を造った場合、刑務所とは異なる環境で生活する受刑者は本当に罪を償っているといえるのか。そもそも、介護施設が罪を償う場所になり得るのか、といった問題も出てきます」、これは審議会などで有識者の意見を参考にすべきだろう。
・『資格取得まで導いても出所すると…  かねて私は、刑務官が受刑者の介護に苦労していることを知って、「これは本来の刑務所の姿じゃない」と感じていました。だから刑務官だけでなく受刑者も介護ができるよう、さらに出所後にその経験が生かせるようにと、刑務所で介護福祉士の国家資格を取得できるようにしました。 ところが、ここで新たな問題が出てきました。仮に500人の介護資格を手にした受刑者がいたとして、その中の何人が出所後に介護職に就くのか。私の感覚ではせいぜい30人ぐらいだと思います。そもそも受刑者には勤労意欲が乏しかったり、働くのが苦手という人が多い。幾らこっちが「再犯防止につながるように」と資格取得まで導いても、ほとんどが出所したら働かない。 よく耳にする話に「出所後に雇ってくれるところがないので働けない」「収入が得られないから再犯してしまう」というものがありますが、「働きたくない」「仕事は苦手」という人たちの再犯率を下げることが、いかに難しいかということがお分かりいただけるでしょう』、「刑務官だけでなく受刑者も介護ができるよう、さらに出所後にその経験が生かせるようにと、刑務所で介護福祉士の国家資格を取得できるようにしました」、「そもそも受刑者には勤労意欲が乏しかったり、働くのが苦手という人が多い。幾らこっちが「再犯防止につながるように」と資格取得まで導いても、ほとんどが出所したら働かない」、確かに悩ましい問題だ。
・『欧米では寄付が節税対策に  私は平成8年に「名誉矯正監」を、平成20年に「特別矯正監」を拝命し、それに伴って私の役割も変わってきました。最も大きなものは、改善すべき点を明確にして必要な予算を獲得することです。平成28年4月に発生した熊本地震の後には刑務所や少年院などすべての刑事施設を、地震や津波、河川の氾濫といった災害が起きた際、市民が避難場所として利用できるようにしました。 本来、こうした取り組みは政治の役割かもしれません。しかし、特別矯正監という立場だからこそできることがある。だから私は全国の矯正施設を回り、目で見て耳で聞いて問題点を炙(あぶ)り出している。それがいまの私の役割だからです。東日本大震災で炊き出しなどの支援活動をした時など、これまでには「売名だ」とか「偽善では」と言われました。しかし、私はただ自分にできること、すべきだと思ったことを行動に移してきたに過ぎません。 ところで、日本と欧米のボランティアや寄付のありようには大きな違いがあります。文化や習慣も異なるからでしょうが、実は税制面でも大きな差があります。 例えばアメリカでは、個人が100万円をチャリティーとして寄付すると、手続きをすることでほぼ全額が所得から控除される。つまりは税金対策にもなるわけです。日本で杉良太郎が1億円を寄付するのと、ハリウッドスターが1億円を寄付するのとでは本質的な意味合いがまったく異なる。それを多くの日本人はご存じない。 いま、私がどこかの慈善団体に1億円を寄付したとしても、控除されて戻ってくる額はごくわずかです。もちろん、私はそれも寄付しますが、アメリカで1億円を寄付したら、日本よりも還付される額ははるかに多いんです』、日本の寄付金控除は極めて僅かだが、その拡大は別途検討すべき課題だ。
・『1億円借金してまで寄付  日本テレビに「24時間テレビ 愛は地球を救う」というチャリティー番組がありますね。以前その会場へ、新聞紙に包んだ現金を会社の経理担当に持って行かせたことがありました。すると、たまたまテレビに映った彼を見た税務署の職員から「あれは杉さんの会社の人ですよね。課税の対象です」と連絡がきたことがあります。世間の多くは「寄付金は全額が控除の対象になる」と思っているようです。ところが実際は違います。日本は軽々に寄付ができない制度になっているんです。 昭和61年ごろに中国に残留していた日本人孤児の問題に取り組んだ時、自分で何とか4億円は都合できたものの、どうしても残りの1億円が不足したことがありました。そこで住友銀行(当時)の磯田一郎会長に「5億円のうち4億円は用意できたけど1億円足りない。1億円、私の体を担保に貸して下さい」とお願いに行ったんです。 会長は「銀行は体を担保に金を貸さないよ。だけど杉さん、老後はどうすんの?」と。私は「お粥を啜って生きていきますから」と答えた。そうしたら会長は1億円を融資して下さった。返済額は利子を含めて1億7500万円になりましたが、会長は「金を借りてまで寄付する人は初めてだ」と仰っていましたね』、「中国に残留していた日本人孤児の問題に取り組んだ時、自分で何とか4億円は都合できたものの、どうしても残りの1億円が不足したことがありました」、「住友銀行」で「1億円借金してまで寄付」、とは大したものだ。
・『刑務所を株式会社に  私は十数年以上前から刑務所の株式会社化を提言しています。これは民営化や半官半民とはまったく異なる世界初の試みです。受刑者の数が減少傾向にあるいま、廃止される刑務所などを活用し、株式会社化して運営したい。ここを社宅付きの職場にして、出所者や定年退職した刑務官たちを雇い入れる。互いに見知った関係ですから何でも相談できるだけでなく、出所者は得た収入から1カ月に千円でも2千円でも被害者への送金が可能になる。いつまでも被害者のことを心に留める意識が大切ですから、その一助となる取り組みとして、近いうちに本格化させるつもりです。 そこでは受刑者が出所後に即戦力として仕事を得られるよう、畜産や農業などの知識と技術を教えたい。すでに網走刑務所では「網走監獄和牛」という名前でA5ランクの黒毛和牛を育成したり、〈おつとめごくろうさまです〉といったロゴ入りのTシャツを販売していますし、鹿児島刑務所では日本茶に加えて紅茶作りが始まっています。函館少年刑務所では〈〇(マル)獄シリーズ〉という、「獄」の文字を丸で囲ったデザインがプリントされた前掛けや手提げバッグなど数多くのグッズが人気を集めています。 ▽達成感はない(このように、私は刑務所を一種のブランドにして新たな価値を生み出そうと考えている。そこが元受刑者の再就職先になれば、彼らの勤労意欲の喚起だけでなく、働くことの意味を理解させられると思うからです。 私は法務省のほかにも、厚生労働省で予防医療や未病という概念の普及と対策活動を、警察庁で特殊詐欺対策を中心とした防犯のあり方や、犯罪加担者を減らす取り組みに従事しています。私の活動は多岐にわたりますが、すべてに共通して言えるのは、「自分ができること」や「こうすべきだ」と思ったら、それを、すぐ行動に移してきたということです。 とはいえ、私は一度も「やってよかった」というような達成感や満足を覚えたことがありません。次々と問題が出てきますし、新たなアイデアが浮かんでくるからです。私にはいまも多くの課題が残されていますから、この道はずっと続いていく。まだまだ、これからですよ。 杉 良太郎(すぎりょうたろう) 昭和19年兵庫県生まれ。同40年に歌手デビュー。同42年にNHK「文五捕物絵図」の主演で脚光を浴び、以降は長年にわたってテレビや舞台で活躍。法務大臣顕彰、文部科学大臣表彰など数々の大臣表彰にとどまらず、紫綬褒章や芸能人として初めて緑綬褒章も受けた。平成26年に内閣総理大臣より感謝状を贈呈されたほか、同28年には長年にわたる国内外での文化交流が評価され文化功労者に選出されている』、「十数年以上前から刑務所の株式会社化を提言しています。これは民営化や半官半民とはまったく異なる世界初の試みです。受刑者の数が減少傾向にあるいま、廃止される刑務所などを活用し、株式会社化して運営したい。ここを社宅付きの職場にして、出所者や定年退職した刑務官たちを雇い入れる」、これは難しい課題もありそうだが、今後の展開を注目したい。
タグ:AERAdo「有罪判決でも返り咲いた37歳の美濃加茂市長が語る検察の矛盾「河井事件は不問。法は不平等」〈dot.〉」 司法の歪み (その17)(有罪判決でも返り咲いた37歳の美濃加茂市長が語る検察の矛盾「河井事件は不問。法は不平等」〈dot.〉、なぜ日本の刑事事件の99.5%が有罪になるのか…「捜査能力が高いから」ではない驚きの理由 何が何でも有罪にするやり方が横行している、「刑務所が無料の老人ホーム化」「刑務官は廃墟のような家に…」 杉良太郎が64年間、刑務所改革に取り組み続ける理由) 「美濃加茂市長」をめぐる冤罪問題については、このブログでも元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏による記事を、2017年5月18日、12月14日、12月19日、2018年3月23日に紹介した。「市長選は藤井氏が後継を託した現職の伊藤氏と一騎打ちとなった」、「伊藤氏」は「藤井氏」が出馬するにも拘らず、選挙に出て、「藤井氏」に敗れたようだ。 「有罪とした名古屋高裁は一度も私の被告人質問を認めなかった」、「このまま引き下がることはできません。警察、検察、裁判所はある意味、国民の最後の砦ですから、正義がないと困ります。市長としてのこの経験をもとにしっかりと地方行政が腐敗しないよう取り組みたい」、「このまま引き下がることはできません」の意味は不明だが、今後の活躍を期待したい。 PRESIDENT ONLINE 郷原 信郎氏による「なぜ日本の刑事事件の99.5%が有罪になるのか…「捜査能力が高いから」ではない驚きの理由 何が何でも有罪にするやり方が横行している」 郷原信郎『“歪んだ法”に壊される日本 事件・事故の裏側にある「闇」』(KADOKAWA) 「被告人の身柄を延々と拘束する『人質司法』」と、「特捜部等の判断で事件化される『立件型事件』特有の構図」、をクローズアップしたのは興味深い。 「プレサンスコーポレーション事件」の話は、初めて知った。「保釈は6回にわたって却下され、248日にわたって勾留された。典型的な「人質司法」だった。2021年11月に一審無罪判決に対して検察は控訴を断念、無罪が確定した山岸氏は、取調べ担当検察官らの不法行為について国賠訴訟を提起している」、「国賠訴訟を提起」は当然だ。 「「立件型」の場合は、被害が発生したわけでもなく、誰かが被害を訴えているわけでもない。「その事件を刑事事件として立件し捜査の対象とする」と捜査機関側が判断して捜査を始めたものだ。 もし仮に、その前提事実が異なっていて、捜査機関が判断を誤った疑いが生じた場合、それは犯罪自体が存在しなかった疑いが生じるのであり、別に真犯人がいるということではない」、なるほど。 「「立件型」では、有罪判決断念で捜査機関の面子がつぶれる」、みっともともないが、やむを得ない。「有罪判決に持ち込むために異常なまでの拘こだわりを見せる。不利な状況になっても、決して諦めない」、こうした「捜査機関側」の無用なこだわりは止めてほしいものだ。 「捜査機関側は」ともかく、「裁判所も、「人質司法」を容認して保釈を認めず、捜査機関や検察官の主張を何とか認めようとし、被告人の訴えに耳を傾けようとしない」、中立であるべき「裁判所」が「捜査機関側」に偏っているのでは、公正は期待できない。 「〈3月から5月まで平日毎日弁護人と接見している。4月30日と5月25日には合計4時間以上も接見している〉などと言って、〈被告人の精神的肉体的負担が限界に達しているとは到底思えない〉と冷笑した」、確かに「冷酷非道な意見書」だ。 「三畳一間の部屋に閉じ込められ、何もできない」、しかし、「この堀木意見書が提出された翌日、大阪地方裁判所は保釈請求を却下、準抗告も特別抗告も棄却されてしまった」、裁判官もいい加減だ。 「堀木検事は自身がそれまでに提出した(保釈請求に反対する)意見書の文面を「コピペ」しながら、情緒的で論理性を欠いた意見書の提出による対応に終始したという。それをもって、裁判所も保釈申請を却下し、山岸氏は結果、248日もの拘留を強いられ、「拘禁症状」も心身に表れるなど、大きな負担を強いられることとなった」、 「悪辣あくらつなやり方で、山岸氏を痛めつけ続けた堀木検事は、このような意見書を裁判所に提出したことの責任は全く問われず、今は、東京地検特捜部に所属し、保釈に対してデタラメな内容を書き並べた意見書を書いて強硬に保釈に反対するという「非道」を繰り返している」、「プレサンス事件で典型的に表れた特捜検察のやり方は、まさに「権力ヤクザ」そのものであり、「人質司法」を悪用した“監禁犯罪”と言っても過言ではない」、同感である。 デイリー新潮「「刑務所が無料の老人ホーム化」「刑務官は廃墟のような家に…」 杉良太郎が64年間、刑務所改革に取り組み続ける理由」 「杉良太郎」氏が、「60年以上にわたって私財を投じた福祉活動に取り組んできた」とは初めて知った。 「そもそも私は「名誉」では引き受けたくなかったのですが、お飾りではないということを念押しし、名誉矯正監を拝命しました」、なるほど。 「勤続年数によって時計がもらえる制度がありました。私が「時計をもらってうれしいか?」と尋ねると「うれしくない」と・・・「本当は何が欲しいんだ?」と聞くと「長期休暇です」と言う。 当時は休日にポケベルが鳴ったり、受刑者が過剰収容されていた関係で仕事が多くて息つく暇もない。長期休暇がないから、お盆に墓参りすら行けないとも。 「それじゃあ、まずは長期休暇を出そう」と、すぐに本省に掛け合って休暇制度を見直しました。長期の休暇が取れないことは、離職率の上昇にもつながるからです」、素人ならではの発想が上手くいった例だろう。 「職員たちも人間です。受刑者に情が移るのか、「ちょっとでも甘い物を食べさせてあげたい」とか「少しでも処遇を良くしてあげたい」という気持ちの人が多い。自己犠牲の精神というのか、自分より受刑者の待遇改善を優先する意識が強いんです。だから私は、「あまりそっち寄りに行くなよ。被害者を忘れるな」と注意しているほどです」、なるほど。 「彼らを監督する刑務官は6畳と4畳半、そして台所という狭い部屋で、子どもを育てていることが分かった」、「全国の官舎の写真を取り寄せ、それを超党派の再犯防止議員連盟のメンバーたちに見ていただいた。それで「近いうちに川越少年刑務所に行きます。みなさんも一緒に来て下さい」とお誘いしました」、なかなか上手い仕掛けだ。 「実際に現地を視察した後で、議員の方たちに「みなさんはここに住めますか?」と聞くと、全員が「住めません」と口をそろえた。中には「これ、廃墟じゃないですか」と驚く議員までいたほどです」、巧みな誘導だ。 「高額な予算を投じて最新鋭のMRIを導入したのに、それを使ってもらえるのは受刑者だけ。それではあまりにもったいない。だから、医官の仕事は臨床に限らず、希望すれば研究もしていいようにした。給与水準のアップを含めた処遇改善にも手を付けて、医官の離職率が下がるように工夫したわけです」、素人的発想が役人的慣行を打破した好例だ。 「刑務所なら食事はあるし、布団で寝られます。病気をすれば治療だって受けられますから、受刑者が高齢になればなるほど刑務所を「無料の老人ホーム」みたいな感覚で捉えているんですね」、これは由々しい問題だ。 「認知症を患う受刑者の面倒、つまり介護も刑務官の任務とするのか。あるいは、別に収容する施設を造るのか。仮に介護施設を造った場合、刑務所とは異なる環境で生活する受刑者は本当に罪を償っているといえるのか。そもそも、介護施設が罪を償う場所になり得るのか、といった問題も出てきます」、これは審議会などで有識者の意見を参考にすべきだろう。 「刑務官だけでなく受刑者も介護ができるよう、さらに出所後にその経験が生かせるようにと、刑務所で介護福祉士の国家資格を取得できるようにしました」、「そもそも受刑者には勤労意欲が乏しかったり、働くのが苦手という人が多い。幾らこっちが「再犯防止につながるように」と資格取得まで導いても、ほとんどが出所したら働かない」、確かに悩ましい問題だ。 日本の寄付金控除は極めて僅かだが、その拡大は別途検討すべき課題だ。 「中国に残留していた日本人孤児の問題に取り組んだ時、自分で何とか4億円は都合できたものの、どうしても残りの1億円が不足したことがありました」、「住友銀行」で「1億円借金してまで寄付」、とは大したものだ。 「十数年以上前から刑務所の株式会社化を提言しています。これは民営化や半官半民とはまったく異なる世界初の試みです。受刑者の数が減少傾向にあるいま、廃止される刑務所などを活用し、株式会社化して運営したい。ここを社宅付きの職場にして、出所者や定年退職した刑務官たちを雇い入れる」、これは難しい課題もありそうだが、今後の展開を注目したい。
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高齢化社会(その22)(精神科医が70歳からの「シニア恋愛」を勧めるワケ アウトプットできる人は「前頭葉」が元気な人、更年期に起こりやすい「ブレインフォグ」って一体なに?症状と対処法、増える70歳以上のシニア破産 身近な転落の経路 現役時は乗り切っても 人生の終盤に落とし穴) [社会]

高齢化社会については、本年4月21日に取上げた。今日は、(その22)(精神科医が70歳からの「シニア恋愛」を勧めるワケ アウトプットできる人は「前頭葉」が元気な人、更年期に起こりやすい「ブレインフォグ」って一体なに?症状と対処法、増える70歳以上のシニア破産 身近な転落の経路 現役時は乗り切っても 人生の終盤に落とし穴)である。

先ずは、本年5月4日付け東洋経済オンラインが掲載した精神科医の和田 秀樹 氏による「精神科医が70歳からの「シニア恋愛」を勧めるワケ アウトプットできる人は「前頭葉」が元気な人」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/665500
・『年をとったらあとはひっそりと枯れていく……。一昔前ならあたりまえのような生き方ですが、そんな生き方に大反論をしているのが精神科医の和田秀樹さんです。70歳を過ぎてからは、むしろ自由にやりたいことをやるべき、とくに恋愛がお勧めだと語ります。人生100年時代、「ときめく心」がなぜ必要なのかを、和田さんの最新刊『70歳からのボケない勉強法』から抜粋、再編集して紹介します』、「70歳を過ぎてからは、むしろ自由にやりたいことをやるべき、とくに恋愛がお勧めだと語ります」、「「ときめく心」がなぜ必要なのか」、なにやら嬉しくなる話だ。
・『脳の萎縮は「前頭葉」から始まる  認知症にはさまざまなタイプがありますが、もっとも多いアルツハイマー型認知症の場合、脳の前頭葉から萎縮が進んでいきます。 前頭葉は脳の前方にある領域です。意欲、思考、感情、創造性などを司るとされ、非常に大事な部位なのですが、実は、前頭葉は脳のほかの部位に比べて、老化が始まるのが早いといわれています。一般的には40代から、早い人では30代から前頭葉の萎縮が始まります。 老化で前頭葉が萎縮すると、脳を使うことがおっくうになります。あなた自身または身近な人に、こんな現象が起きていませんか。 ・実際にやってみることをせず、あれこれ考えただけであきらめてしまう ・異論を受け入れることができなくて、ガンコになる ・思考が凝り固まり、人の話を鵜呑みにしてしまう ・感情が平坦になり、何をしてもつまらなく感じる ・ささいなことでイライラし、しかも、なかなかおさまらない  このようなことが年をとって起きてきたら、前頭葉の萎縮が始まっているかもしれません。) 前頭葉が活発に働いている人は、ひとつの物事を前にして、たくさんの答えを出していけます。つまり、思考のスイッチをどんどん切り替えることができますし、何か問題があるときでも安易に投げ出さず、よく考えることができるのです。 前頭葉が関わっているとされているのはアウトプットする機能です。インプット機能は側頭葉(言語理解)や頭頂葉(計算能力)が担っていると考えられています。つまり、これまで蓄積してきた記憶や知識をひっぱり出すのは前頭葉なのです。 だから、非常に高度な内容でも、いつも繰り返している単調な作業ならば、側頭葉や頭頂葉でこなすことができます。しかし、想定外のこと、先の読めないことに対処するのは前頭葉です。つまり、答えがいくつも考えられるような問題を考えるためには前頭葉が元気でなければなりません』、「前頭葉は脳のほかの部位に比べて、老化が始まるのが早いといわれています。一般的には40代から、早い人では30代から前頭葉の萎縮が始まります。 老化で前頭葉が萎縮すると、脳を使うことがおっくうになります」、「想定外のこと、先の読めないことに対処するのは前頭葉です。つまり、答えがいくつも考えられるような問題を考えるためには前頭葉が元気でなければなりません」、なるほど。
・『熟年離婚の陰にホルモンの男女差あり  前頭葉の最大の敵は「ルーティン」です。正解がひとつとは限らない問題や予想外の出来事に対処するのが前頭葉ですから、同じことを繰り返して慣れっこになった状況がずっと続くと、前頭葉を使うチャンスが訪れないまま、脳の老化が加速してしまいます。 このルーティンについて説明するときに、よく私が挙げる例が「恋愛」です。昨今、同居期間20年以上の、いわゆる「熟年離婚」が増えているそうです。厚生労働省の統計(2020年)によると、全体の離婚件数のうち2割以上が熟年離婚でした。 熟年離婚の割合が増加している背景として、女性の社会進出や年金の分割など社会経済的な理由はよく知られています。しかし、これとは別に、男女の身体的な差について、ひとつ知っておくべきことがあります。 男性は、加齢によって男性ホルモンの分泌が減ります。男性ホルモンが減ると、どんどん意欲を失っていきます。一方、女性は閉経後、男性ホルモンが増えるので、以前より元気で活動的になる人が多いのです。すると、必然的に夫婦ふたりで楽しむ機会も減り、一緒に暮らす意味も薄れてくるでしょう。 もし、夫婦のあいだでまともな会話がなくなって久しいというのであれば、熟年離婚の決断をするのも悪いことではありません。だらだらと惰性で結婚生活を続けているだけという状態は、前頭葉にも多大なストレスをかけて老化を早めます。マンネリに慣れるよりも、いっそ婚姻関係の解消を検討してみるというのは、けっして悪いことではないと思います。) 味気ないルーティンと化した結婚生活は前頭葉の敵ですが、シニアの恋愛は前頭葉を元気にします。恋愛は、展開の読めない出来事の連続です。相手を観察して好みや気分を推し量ったり、身だしなみに気を配ったり、食事に誘うための店を検索したり、ケンカのあとに謝るきっかけを探したり。正解がひとつではない問題ばかりです。 若いころなら恋愛マニュアルや雑誌の情報を頼りにするかもしれませんが、シニアの皆さんはそういった知識はすでに頭に入っていますし、経験値もそれなりにあります。そうした知識や経験=コンテンツを臆せずアウトプットしていけば、若いころとは違う、シニア恋愛ならではの喜びやときめきが待っているでしょう。先の読めない状況で、どう振る舞えばよいのか。前頭葉をフル回転させながら、恋愛を楽しんでください。 前頭葉の萎縮を進行させないために、どうすればよいのか。とにかく前頭葉の血流を増やすことです。そのためには、新しいこと、新しい情報、新しい人との交流に関心を持ち、積極的にアプローチして「へえ」「なるほど」「おもしろい」などと感情面での刺激を経験することがきわめて有効です。恋愛中は誰しもドキドキしたり、ワクワクしたり、感情を揺さぶられ続けます。前頭葉の活性化のためにも、老後の楽しい暮らしのためにも、シニア恋愛を大いにおすすめしたいと思います』、「男女の身体的な差について、ひとつ知っておくべきことがあります。 男性は、加齢によって男性ホルモンの分泌が減ります。男性ホルモンが減ると、どんどん意欲を失っていきます。一方、女性は閉経後、男性ホルモンが増えるので、以前より元気で活動的になる人が多いのです。すると、必然的に夫婦ふたりで楽しむ機会も減り、一緒に暮らす意味も薄れてくるでしょう」、「必然的に夫婦ふたりで楽しむ機会も減り、一緒に暮らす意味も薄れてくるでしょう。 もし、夫婦のあいだでまともな会話がなくなって久しいというのであれば、熟年離婚の決断をするのも悪いことではありません。だらだらと惰性で結婚生活を続けているだけという状態は、前頭葉にも多大なストレスをかけて老化を早めます。マンネリに慣れるよりも、いっそ婚姻関係の解消を検討してみるというのは、けっして悪いことではないと思います。 味気ないルーティンと化した結婚生活は前頭葉の敵ですが、シニアの恋愛は前頭葉を元気にします。恋愛は、展開の読めない出来事の連続です。相手を観察して好みや気分を推し量ったり、身だしなみに気を配ったり、食事に誘うための店を検索したり、ケンカのあとに謝るきっかけを探したり。正解がひとつではない問題ばかりです」、その通りだ。
・『70歳からは「頭のよさ」より「楽しさ」を大切に  私たちはこれまで、医学の進歩によって多くの病気を克服してきました。日本人の平均寿命はまだまだ延びていくでしょう。たとえば近い将来、がんの治療法が発見されるのではないかという話も聞こえてきます。いずれはiPS細胞に関する技術が、老化した臓器を若返らせることも可能にするでしょう。 しかし、医学の進歩がどれだけ目覚ましくても、脳の老化を止めたり、脳を再生したりすることはできません。ここで私が申し上げたいのは、私たちはただ健康でいられれば幸せなのだろうかということです。70歳を過ぎても健康である、それのみに甘んじているのはよいことなのでしょうか。) 私が提唱している「70歳からの勉強」は、楽しい生き方を探すための大切なスキルです。人生後半を楽しめるような生き方を模索するための勉強です。それまでの勉強の目的が「頭がよくなること=知識を蓄えること」だったのが、70歳からは楽しさを探す、つまり、よりよい人生を楽しむための勉強になるのだと私は思っています』、「私が提唱している「70歳からの勉強」は、楽しい生き方を探すための大切なスキルです。人生後半を楽しめるような生き方を模索するための勉強です。それまでの勉強の目的が「頭がよくなること=知識を蓄えること」だったのが、70歳からは楽しさを探す、つまり、よりよい人生を楽しむための勉強になるのだと私は思っています」、「私が提唱している「70歳からの勉強」は、楽しい生き方を探すための大切なスキルです。人生後半を楽しめるような生き方を模索するための勉強です・・・70歳からは楽しさを探す、つまり、よりよい人生を楽しむための勉強になるのだ」、「よりよい人生を楽しむための勉強になる」、というのは結構なことだ。
・『高齢者こそがリスキリングに取り組むべき  最近、リスキリングの重要性が叫ばれるようになりました。リスキリングとは「DX時代を迎えるなか、技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために、新しい知識やスキルを学ぶこと」です。国はリスキリングに取り組む企業を支援し、社内でのリスキリングに積極的に投資する企業も増えています。私は、高齢者こそがリスキリングに取り組むべきだと思っています。 世界最高齢のプログラマー、若宮正子さんは、「高齢者もリスキリングして社会参加する必要があると思います。人生100年時代です。学び続ければ、80~90代でも社会貢献できます」と語っています。 若宮さんは現在87歳ですが、なんと81歳のときにiPhoneアプリを開発しました。アップル社CEOのティム・クック氏は自社イベントに若宮さんを招待しました。社会貢献にはいろいろな形があります。「70歳からの勉強」は自分の好きなこと、得意なことを伸ばすのに最適な勉強法です。そうして得た知見やスキルをアウトプットし続ければ、やがて社会貢献につながるでしょう。 勉強は自分自身を強くして、人生の選択肢を増やすものです。それは何歳になっても変わりません。勉強は、あなたの人生を豊かにしてくれる「最高の道具」です。好きなことや得意なことを伸ばして、恋愛を楽しみ、社会貢献をする。「70歳の勉強」は、そんな喜びや楽しみに満ちた毎日を過ごすための勉強なのです』、「世界最高齢のプログラマー、若宮正子さんは、「高齢者もリスキリングして社会参加する必要があると思います。人生100年時代です。学び続ければ、80~90代でも社会貢献できます」と語っています。 若宮さんは現在87歳ですが、なんと81歳のときにiPhoneアプリを開発しました。アップル社CEOのティム・クック氏は自社イベントに若宮さんを招待しました。社会貢献にはいろいろな形があります」、確かに「若宮正子さん」は素晴らしいが、あくまで例外と考えるべきではなかろうか。

次に、5月13日付けWomen’sHealth「更年期に起こりやすい「ブレインフォグ」って一体なに?症状と対処法」を紹介しよう。
https://www.womenshealthmag.com/jp/wellness/a39921788/brain-fog-during-menopause-is-a-reality-we-need-to-talk-about-20220515/
・『女性の約3分の2は、閉経に伴って記憶力が低下する。 生理が12カ月連続で来なかった女性は閉経したことになる。この自然な現象が睡眠や体調に及ぼす影響は、広く認知されるようになってきた。でも、閉経に伴う「認知機能の低下」が女性に及ぼす影響を知る人は未だに少ない。 閉経に伴う認知機能(思考力、推論力、記憶力)の低下は、ほとんどの場合わずかなもので、場合によっては一時的。でも、それで仕事に悪い影響が出たり、認知症が心配になったりする人がいるのは否めない。今回は、オーストラリア版ウィメンズヘルスから更年期の女性に起こる「ブレインフォグ」について見ていこう』、「女性の約3分の2は、閉経に伴って記憶力が低下する」、こんなに割合が高いとは初めて知った。「ブレインフォグ」とは何なのだろう。
・『閉経と更年期  閉経は、生殖可能期間の終わりを告げる現象で、平均49歳で卵胞が枯渇したときに自然と起こる。 また、卵巣がんのリスクを下げる目的などで、卵巣を2つとも取り除く手術を受けた場合にも閉経が訪れる。 生殖可能期間から閉経後までの4~10年は、俗にいう閉経周辺期または更年期。 更年期の症状には、ホットフラッシュや寝汗といった血管運動症状、膣の乾燥、不眠、うつ、不安、ブレインフォグなどがある。こういった症状とは10年近いつき合いになることも』、「生殖可能期間から閉経後までの4~10年は、俗にいう閉経周辺期または更年期。 更年期の症状には、ホットフラッシュや寝汗といった血管運動症状、膣の乾燥、不眠、うつ、不安、ブレインフォグなどがある。こういった症状とは10年近いつき合いになることも」、「10年近いつき合い」とはずいぶん長いようだ。
・『ブレインフォグとは  更年期の女性の6割強は、認知機能の低下を訴える。 人の名前を覚えたり、会話のなかで適切な言葉を見つけたりするのが難しくなったという人もいれば、集中力や決断力が衰えたという人もいる。最近の論文レビューによると、この本人だけが認知機能の低下を自覚している状態を指す“主観的認知機能障害”は、記憶力、回想力、情報処理力のテスト結果に表れるそう。 更年期の女性は、言語記憶(新しい言葉を覚えたり暗記したりする能力)、発話流ちょう性(記憶から素早く言葉を取り出す能力)、注意力のテストで苦労しがち』、「ブレインフォグとは  更年期の女性の6割強は、認知機能の低下を訴える。 人の名前を覚えたり、会話のなかで適切な言葉を見つけたりするのが難しくなったという人もいれば、集中力や決断力が衰えたという人もいる」、「本人だけが認知機能の低下を自覚している状態を指す“主観的認知機能障害”は、記憶力、回想力、情報処理力のテスト結果に表れるそう」、なるほど。
・『更年期と仕事  認知機能の低下といってもわずかなもので、職場におけるパフォーマンスも通常は正常な範囲に収まるけれど、子育てが落ち着いて、経験的にも年齢的にも「これから」というタイミングで更年期の症状が出てしまい、出鼻をくじかれる女性は多い。 更年期の症状が仕事に及ぼす影響に注目する研究者は増えており、いくつかのエビデンスは、更年期の症状で職場における生産性と満足度が低下する可能性を示している。 その要因の1つとして挙げられるのが集中力と記憶力の低下。更年期の女性を職場にとどめておくのは、彼女たち自身のためにも、現代の職場における多様性を広げるためにも重要なこと』、「更年期の症状で職場における生産性と満足度が低下する可能性を示している。 その要因の1つとして挙げられるのが集中力と記憶力の低下。更年期の女性を職場にとどめておくのは、彼女たち自身のためにも、現代の職場における多様性を広げるためにも重要なこと」、なるほど。
・『ブレインフォグが起こる仕組み  “ブレインフォグ”は医学用語でも心理学用語でもないけれど、更年期の“思考にモヤがかかった状態”を適切に表現する一般用語。 更年期で認知機能が低下するのは、単に歳をとったからじゃない。閉経に伴って卵巣ホルモンの分泌量が減り、最終的に失われることが主な要因。 卵巣から分泌されるエストラジオール(エストロゲンの一種)とプロゲステロンは強力な脳内化学物質で、脳を守り、思考力と記憶力を高めるとされている。ゆえにエストラジオールの減少と喪失は、認知機能の低下につながるといわれている。 ほかの更年期の症状が一切なくても、認知機能の低下が見られることはある。よって、認知機能の低下は、ほかの更年期の症状が引き起こすものじゃない。とはいえ、更年期のうつ、不安、不眠、血管運動症状が認知機能の低下を促す可能性は否定できない』、「更年期で認知機能が低下するのは・・・閉経に伴って卵巣ホルモンの分泌量が減り、最終的に失われることが主な要因。 卵巣から分泌されるエストラジオール・・・とプロゲステロンは強力な脳内化学物質で、脳を守り、思考力と記憶力を高めるとされている。ゆえにエストラジオールの減少と喪失は、認知機能の低下につながるといわれている」、「更年期のうつ、不安、不眠、血管運動症状が認知機能の低下を促す可能性は否定できない」、なるほど。
・『ブレインフォグとアルツハイマー病  アルツハイマー病は認知症のもっとも一般的な形態で、残念ながら、女性であること自体がリスクファクター。これは女性の寿命が男性より長いからじゃない。 原因は、閉経に伴うエストラジオールの喪失。これまでの研究により、手術による45歳以前の早期閉経は、認知症のリスクを高め、認知機能の低下を加速させることが分かっているそう。 更年期とアルツハイマー病の初期ではもの忘れや発話流ちょう性の低下といった似たような症状が現れるため、更年期の女性の多くは認知症を懸念する。 でも、65歳以前で始まる若年性認知症は家族歴がある場合を除き、非常に稀。更年期でもの忘れをはじめとする認知機能の低下が見られるのは、よくあることだし、いたって普通』、「アルツハイマー病は認知症のもっとも一般的な形態で、残念ながら、女性であること自体がリスクファクター。これは女性の寿命が男性より長いからじゃない。 原因は、閉経に伴うエストラジオールの喪失。これまでの研究により、手術による45歳以前の早期閉経は、認知症のリスクを高め、認知機能の低下を加速させることが分かっているそう」、初めて知った。
・『ブレインフォグを防ぐには  認知機能の低下にはエストロゲンの減少が関わっているけれど、ホルモン補充療法で認知機能が向上するとは限らない(エビデンスが限られている)。 もっと研究が進まないと、生活習慣を変えることでブレインフォグが改善するともいい切れない。ただ、エクササイズが中年期の認知機能を向上させることは分かっているし、マインドフルネスと瞑想が役立つ可能性はある。 オーストラリアのモナシュ大学は、更年期の認知症状に対する理解を深める目的で、45~60歳の女性を対象としたオンラインアンケートを行っている(2022年1月時点)。 違法薬物の使用、処方薬の乱用、喫煙、過剰な飲酒をしないのも効果的な予防策。また、地中海式ダイエットなどの非加工の植物性食品が中心の食生活、社会との密接なつながりや関わり、高い水準の教育は、認知機能の保護に役立つとされている。 ※この記事は当初、『The Conversation』に掲載されました』、「もっと研究が進まないと、生活習慣を変えることでブレインフォグが改善するともいい切れない。ただ、エクササイズが中年期の認知機能を向上させることは分かっているし、マインドフルネスと瞑想が役立つ可能性はある」、もっと研究が進んでほしいものだ。

第三に、5月17日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの山田 稔氏による「増える70歳以上のシニア破産、身近な転落の経路 現役時は乗り切っても、人生の終盤に落とし穴」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/671499
・『日本の総人口は50年後に8700万人と現在の7割に減少し、65歳以上の人口が4割になるーー。 4月に発表された国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の将来推計人口は、あらためて我々に衝撃を与えた。 社人研から2018年に発表された「日本の世帯数の将来推計」では、今から7年後の2030年に単独世帯が2025万と全体の約4割を占め、75歳以上の単独世帯は500万を突破するとも予測されていた。その推移は以下のグラフの通りだ。 (※外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) 人口の減少に伴い、総世帯数は減少していくが、65歳以上の単独シニア世帯は増え続けていく。2040年には65歳以上の単独シニア世帯が全体の約18%に、65歳以上世帯に占める割合は4割に達する。 老人ホームなどの施設に入っていない一人暮らしの「独居率」(対象世代人口に対する割合)は、65歳以上では2030年に男性18.2%、女性23.9%、2040年に男性20.8%、女性24.5%へ。こうして「高齢者ソロ社会」に突入していくことになる。) 高齢者単身世帯の増加で懸念されるのが、シニア破産の急増だ。総務省の家計調査(2022年)によると、65歳以上の高齢者単身世帯の実収入は月額13万4915円。税金、社会保険料が1万2356円なので、可処分所得は12万2559円となっている。一方、消費支出は14万3139円だから、不足額は2万580円。年間では約24万7000円の赤字となる。 収入では社会保障給付(年金など)が12万円余りで9割を占め、事業・内職収入が1707円、仕送り金769円という状況だ。支出でもっとも多いのは食費の3万7485円で全体の4分の1。次いで多いのが意外なことに交際費で1万7893円で12.5%、光熱・水道、交通・通信、教養娯楽がそれぞれ1万4000円程度となっている。 1日あたり約1200円の食費でまかない、普段は読書や音楽を楽しみ、月に何度かは友人らとの付き合いに興じる。そんなつつましい暮らしぶりが目に浮かぶようだ。 もっとも、このデータはあくまで平均値である。たとえば住居費が1万2746円となっているが、都会の賃貸住宅に暮らしている場合はその3~4倍はかかる。それだけ毎月の赤字額が増えている可能性がある。いずれにしても、家計データからは資産を取り崩していかなければ暮らしていけないことが数字からもうかがえる』、「不足額は2万580円。年間では約24万7000円の赤字となる」、「家計データからは資産を取り崩していかなければ暮らしていけないことが数字からもうかがえる」、なるほど。
・『60代以上のシニア破産が全体の4分の1を占める  当然ながら生活が破綻するケースも増えている。日本弁護士連合会(日弁連)の「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」では、60歳代以上の「シニア破産」は全体の4分の1を占めている。このうち60歳代の破産は16.37%。2002年の14.23%から約2%増えただけだが、深刻なのは70歳代以上だ。2.73%から9.35%へと大幅に増加している。 破産に至った負債の原因(全世代)は、「生活苦・低所得」が25.68%、「病気・医療費」9.70%、「負債の返済(保証以外)」8.53%、「失業・転職」7.32%、「事業資金」6.71%、「生活用品の購入」6.14%など。このほかに「浪費・遊興費」4.73%、「ギャンブル」2.99%と、破産者自身の行動に起因する例もみられる。これらのうち、事業資金以外は引退した高齢者にとっても切実な問題であることは間違いない。) サラリーマン生活を過ごしてきたシニアには、定年時に退職金という資産が手に入る。厚労省の調査では大卒のモデル退職金額は2563万9000円(令和2年度・調査対象=資本金5億円以上の大企業92社)となっている。従業員300人未満の中小企業は東京都調査で1091万8000円(令和3年・調査対象276社)だった。 注意すべきは、定年退職後にスタートする年金生活において、退職金が満額残せるとは限らないことだ。筆者の知人のファイナンシャルプランナーがこう指摘する。 「退職時までに住宅ローンを完済している人がどれだけいるでしょうか。ある大手建設企業の管理職だった方は、3000万円の退職金のうち1200万円は住宅ローンの繰り上げ返済に充て、実質1800万円で年金生活に入りました。この方は大企業で退職金額も恵まれていたからまだいいのですが、中小企業勤務の方が1000万円を住宅ローンの完済に充てれば、残りはほとんどなくなってしまうこともあります。40代以降になって億ションのような高額物件を35年ローンで購入した人たちは、定年時にもローンがかなり残っている点に留意するべきです」』、「「退職時までに住宅ローンを完済している人がどれだけいるでしょうか。ある大手建設企業の管理職だった方は、3000万円の退職金のうち1200万円は住宅ローンの繰り上げ返済に充て、実質1800万円で年金生活に入りました。この方は大企業で退職金額も恵まれていたからまだいいのですが、中小企業勤務の方が1000万円を住宅ローンの完済に充てれば、残りはほとんどなくなってしまうこともあります」、「40代以降になって億ションのような高額物件を35年ローンで購入した人たちは、定年時にもローンがかなり残っている点に留意するべきです」、その通りだ。
・『現役時の感覚で暮らし続けると…  また、年金生活に突入したにもかかわらず、生活水準を落とせないパターンもよくあるという。週末のゴルフや友人との会食など、現役時代は会社の経費でまかなえたものもあっただろうが、組織を離れればそうはいかない。すべて自腹である。時間ができたからと毎週のようにゴルフや付き合いをしていれば、毎月の「不足額」はどんどん膨らんでいく。毎月の赤字が10万円とすれば年間120万円、10年間では1200万円にもなる。10年後に退職金はどれだけ残っているだろうか。 定年を迎える段階で住宅ローン以外の借金を抱え込んでいるケースも少なからずある。 「子どもの教育費やふだんの贅沢な生活のため銀行カードローンなどに手を出していた人、高齢の親の介護が長期化し、家計の資金繰りが苦しく多重債務に陥っていて退職金はその返済に充てざるを得なかった人などがいます。その結果、退職後に住宅ローンが残ってしまったケースがあります。 また、退職金対象者にはさまざまな誘惑が待ち構えています。マンション投資や株、投資信託、高級車、海外クルーズツアーなどです。これらに資金を回して、結局は大きく目減りさせてしまう人も少なくありません」(前出のファイナンシャルプランナー)) また、定年を機に熟年離婚した人、年金生活の中で伴侶を亡くした人などは、それまでの暮らしから生活環境や経済状況が激変してしまう。精神的にもダメージを受けやすい。先の家計調査データでは、単身シニアの生活は年間約25万円の赤字だから、20年でも500万円。1000万円以上の退職金があれば十分暮らしていけるだろうと思いがちだが、データはあくまで平均値。平均から外れるケースもある。 施設にいる老親の介護問題、自身の健康問題、住居の修繕費用、自動車の維持費、長引く物価高など経済的な悩みは尽きない。いつ本人が介護を受ける側になるか分からない。一人暮らしの人が介護を必要とする場合、「主たる介護者」の約半数が事業者というデータもある。医療費に自身の介護費用も加われば生活は一気に暗転するかもしれない。 孤独な単身シニアを狙ったロマンス詐欺やオレオレ詐欺などの被害者となるケース、あるいは孤独感からギャンブル依存に陥ったり、万引きに手を出したりするケースも報告されている。破産にまで至らなくても落とし穴にはまる危険性が常につきまとうということだ』、「年金生活に突入した」以上、「生活水準を落とすべきだ」、「退職金対象者にはさまざまな誘惑が待ち構えています。マンション投資や株、投資信託、高級車、海外クルーズツアーなどです」、「破産にまで至らなくても落とし穴にはまる危険性が常につきまとう」、ことを踏まえて冷静に判断すべきだ。
・『孤独な単身生活を避けるには  ここまで悲観的なシナリオに言及してきたが、単身生活をエンジョイしているシニアがいることも事実だ。都内に住んでいた70代前半の男性は妻を亡くした後、住んでいたマンションを売却して千葉に移り住み、ゴルフや釣り、趣味で始めた菜園の作業に興じている。 75歳の女性は夫と死別後、地域のボランティア活動に週1回参加しているほか、着付け技能士の資格を活かして結婚式や成人式などで活躍。それなりの収入も得ている。このほかにも、65歳を過ぎてから人と触れ合う仕事をしたいからとコンビニで働き始めたというケースなど、単身ライフをポジティブに過ごしている人も少なくない。短時間のパートや得意分野を活かしたアルバイトで月に5万円、10万円の収入と他人との触れ合いがあれば、生活環境はずいぶんと変わってくる。 労働力調査(総務省=2022年平均)によると、65歳以上の就業者数は19年連続で増加し、912万人もいる。このうち70歳以上が527万人となっている。この20年間で65歳以上は1.9倍に、70歳以上は2.3倍と激増している。働かざるを得ないと言えばそれまでだが、人手不足の業種を中心にシニアが働くことができる環境があることは紛れもない事実。シニア生活のスタート地点に立つ段階で、大きな負債や健康不安を抱えていない限り、ポジティブな生き方に向けた選択肢は確実に広がっている。 人口減、高齢化が急速に進んでいくなか、ソロ高齢者は確実に増加していく。その時にどんな生き方をするのか。悲観的になるだけでなく、柔軟な発想でとらえ、備えていきたいテーマである』、私の場合は、まだ女房も元気なので、「ソロ」生活はまだだが、今後の様々な環境変化にそなえたシミュレーションはしておきたい。
タグ:「想定外のこと、先の読めないことに対処するのは前頭葉です。つまり、答えがいくつも考えられるような問題を考えるためには前頭葉が元気でなければなりません」、なるほど。 「前頭葉は脳のほかの部位に比べて、老化が始まるのが早いといわれています。一般的には40代から、早い人では30代から前頭葉の萎縮が始まります。 老化で前頭葉が萎縮すると、脳を使うことがおっくうになります」、 「70歳を過ぎてからは、むしろ自由にやりたいことをやるべき、とくに恋愛がお勧めだと語ります」、「「ときめく心」がなぜ必要なのか」、なにやら嬉しくなる話だ。 和田 秀樹 氏による「精神科医が70歳からの「シニア恋愛」を勧めるワケ アウトプットできる人は「前頭葉」が元気な人」 東洋経済オンライン 高齢化社会(その22)(精神科医が70歳からの「シニア恋愛」を勧めるワケ アウトプットできる人は「前頭葉」が元気な人、更年期に起こりやすい「ブレインフォグ」って一体なに?症状と対処法、増える70歳以上のシニア破産 身近な転落の経路 現役時は乗り切っても 人生の終盤に落とし穴) 「必然的に夫婦ふたりで楽しむ機会も減り、一緒に暮らす意味も薄れてくるでしょう。 もし、夫婦のあいだでまともな会話がなくなって久しいというのであれば、熟年離婚の決断をするのも悪いことではありません。だらだらと惰性で結婚生活を続けているだけという状態は、前頭葉にも多大なストレスをかけて老化を早めます。マンネリに慣れるよりも、いっそ婚姻関係の解消を検討してみるというのは、けっして悪いことではないと思います。 「男女の身体的な差について、ひとつ知っておくべきことがあります。 男性は、加齢によって男性ホルモンの分泌が減ります。男性ホルモンが減ると、どんどん意欲を失っていきます。一方、女性は閉経後、男性ホルモンが増えるので、以前より元気で活動的になる人が多いのです。すると、必然的に夫婦ふたりで楽しむ機会も減り、一緒に暮らす意味も薄れてくるでしょう」、 味気ないルーティンと化した結婚生活は前頭葉の敵ですが、シニアの恋愛は前頭葉を元気にします。恋愛は、展開の読めない出来事の連続です。相手を観察して好みや気分を推し量ったり、身だしなみに気を配ったり、食事に誘うための店を検索したり、ケンカのあとに謝るきっかけを探したり。正解がひとつではない問題ばかりです」、その通りだ。 「私が提唱している「70歳からの勉強」は、楽しい生き方を探すための大切なスキルです。人生後半を楽しめるような生き方を模索するための勉強です。それまでの勉強の目的が「頭がよくなること=知識を蓄えること」だったのが、70歳からは楽しさを探す、つまり、よりよい人生を楽しむための勉強になるのだと私は思っています」、 「私が提唱している「70歳からの勉強」は、楽しい生き方を探すための大切なスキルです。人生後半を楽しめるような生き方を模索するための勉強です・・・70歳からは楽しさを探す、つまり、よりよい人生を楽しむための勉強になるのだ」、「よりよい人生を楽しむための勉強になる」、というのは結構なことだ。 確かに「若宮正子さん」は素晴らしいが、あくまで例外と考えるべきではなかろうか。 Women’sHealth「更年期に起こりやすい「ブレインフォグ」って一体なに?症状と対処法」 「生殖可能期間から閉経後までの4~10年は、俗にいう閉経周辺期または更年期。 更年期の症状には、ホットフラッシュや寝汗といった血管運動症状、膣の乾燥、不眠、うつ、不安、ブレインフォグなどがある。こういった症状とは10年近いつき合いになることも」、「10年近いつき合い」とはずいぶん長いようだ。 「ブレインフォグとは  更年期の女性の6割強は、認知機能の低下を訴える。 人の名前を覚えたり、会話のなかで適切な言葉を見つけたりするのが難しくなったという人もいれば、集中力や決断力が衰えたという人もいる」、「本人だけが認知機能の低下を自覚している状態を指す“主観的認知機能障害”は、記憶力、回想力、情報処理力のテスト結果に表れるそう」、なるほど。 「更年期の症状で職場における生産性と満足度が低下する可能性を示している。 その要因の1つとして挙げられるのが集中力と記憶力の低下。更年期の女性を職場にとどめておくのは、彼女たち自身のためにも、現代の職場における多様性を広げるためにも重要なこと」、なるほど。 「更年期で認知機能が低下するのは・・・閉経に伴って卵巣ホルモンの分泌量が減り、最終的に失われることが主な要因。 卵巣から分泌されるエストラジオール・・・とプロゲステロンは強力な脳内化学物質で、脳を守り、思考力と記憶力を高めるとされている。ゆえにエストラジオールの減少と喪失は、認知機能の低下につながるといわれている」、「更年期のうつ、不安、不眠、血管運動症状が認知機能の低下を促す可能性は否定できない」、なるほど。 「アルツハイマー病は認知症のもっとも一般的な形態で、残念ながら、女性であること自体がリスクファクター。これは女性の寿命が男性より長いからじゃない。 原因は、閉経に伴うエストラジオールの喪失。これまでの研究により、手術による45歳以前の早期閉経は、認知症のリスクを高め、認知機能の低下を加速させることが分かっているそう」、初めて知った。 「もっと研究が進まないと、生活習慣を変えることでブレインフォグが改善するともいい切れない。ただ、エクササイズが中年期の認知機能を向上させることは分かっているし、マインドフルネスと瞑想が役立つ可能性はある」、もっと研究が進んでほしいものだ。 山田 稔氏による「増える70歳以上のシニア破産、身近な転落の経路 現役時は乗り切っても、人生の終盤に落とし穴」 「不足額は2万580円。年間では約24万7000円の赤字となる」、「家計データからは資産を取り崩していかなければ暮らしていけないことが数字からもうかがえる」、なるほど。 「「退職時までに住宅ローンを完済している人がどれだけいるでしょうか。ある大手建設企業の管理職だった方は、3000万円の退職金のうち1200万円は住宅ローンの繰り上げ返済に充て、実質1800万円で年金生活に入りました。この方は大企業で退職金額も恵まれていたからまだいいのですが、中小企業勤務の方が1000万円を住宅ローンの完済に充てれば、残りはほとんどなくなってしまうこともあります」、 「40代以降になって億ションのような高額物件を35年ローンで購入した人たちは、定年時にもローンがかなり残っている点に留意するべきです」、その通りだ。 「年金生活に突入した」以上、「生活水準を落とすべきだ」、「退職金対象者にはさまざまな誘惑が待ち構えています。マンション投資や株、投資信託、高級車、海外クルーズツアーなどです」、「破産にまで至らなくても落とし穴にはまる危険性が常につきまとう」、ことを踏まえて冷静に判断すべきだ。 、私の場合は、まだ女房も元気なので、「ソロ」生活はまだだが、今後の様々な環境変化にそなえたシミュレーションはしておきたい。
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相次ぐ警察の重大ミス(その8)(なぜ警察は助けを求める人を見殺しにするのか…「博多ストーカー殺人事件」を防げなかった根本原因 法律があれば犯罪がなくなると錯覚している、あの時本腰を入れていれば…「ルフィ事件」被害拡大の裏に日本の警察の“怠慢”、警視庁公安部の闇 報告書に「私が言ってもないことが書かれている」 防衛医大校長がずさんな捜査に怒り) [社会]

相次ぐ警察の重大ミスについては、2020年4月10日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その8)(なぜ警察は助けを求める人を見殺しにするのか…「博多ストーカー殺人事件」を防げなかった根本原因 法律があれば犯罪がなくなると錯覚している、あの時本腰を入れていれば…「ルフィ事件」被害拡大の裏に日本の警察の“怠慢”、警視庁公安部の闇 報告書に「私が言ってもないことが書かれている」 防衛医大校長がずさんな捜査に怒り)である。

先ずは、本年2月3日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの元木 昌彦氏による「なぜ警察は助けを求める人を見殺しにするのか…「博多ストーカー殺人事件」を防げなかった根本原因 法律があれば犯罪がなくなると錯覚している」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/66122
・『「女性のほうも悪かった」と自己弁護  ストーカー殺人事件はなぜなくならないのか。 2000年にストーカー規制法が成立し、2021年には「EメールやSNSメッセージの連続した送信」や「転送を前提にして空の封筒にGPS機器を入れ、送付して住所を調べる、宅配便を送り受領通知を受けることで行動を把握するといったケース」も処罰の対象にする改正が行われた。 だが、警察には年間2万件、一日50件以上の相談が寄せられ、相談に行かない人を含めると大変な数の被害者がいると思われる。 今年の1月16日夕刻、川野美樹さん(当時38歳)が、JR博多駅前の路上で頭や胸など10カ所を刺され、帰らぬ人となってしまった。 週刊文春(2月2日号、以下文春)は、なぜこの事件が起きてしまったのかを詳細に報じているので見てみたい。 川野さんは福岡県那珂川市の会社員で、11歳の娘を持つシングルマザーだった。 事件から2日後に逮捕されたのは元交際相手の飲食店店員・寺内進容疑者(31)。 「寺内は『復縁を求めたが、かなわずに刺した』と動機を語る一方、『女性のほうも悪かった』と自己を正当化する供述をしている」(社会部記者) 文春によれば、川野さんは愛知県名古屋市に生まれたが、彼女が幼い頃に両親が離婚して、女手一つで育てられたそうだ。 母親は自宅でエステ店を開き、彼女は歌が上手くて評判の美少女だった』、「歌が上手くて評判の美少女だった」のであれば、「沖縄」の「名門アクターズスクールに入所」もさもありなんだ。
・『名門アクターズスクールに入所するも…  中学生になると、 「安室ちゃんみたいに、歌って踊れるアーティストになりたい」 という夢を持つ。友人の前で安室奈美恵の『CAN YOU CELEBRATE?』を歌うと拍手喝采されたという。 そんな彼女が、沖縄のアクターズスクールに入学したいと思うようになるのは必然だった。 中学卒業後、単身で安室奈美恵やSPEEDを輩出した念願のアクターズスクールに入った。 「恩納村のムーンビーチにあった、アクターズスクール系のインターナショナル・スクール『ドリームプラネット』に通いながら日々、レッスンを受けていました。 同期は三十~五十人。美樹ちゃんは県外から来ているだけあって、エネルギーとやる気に満ち溢れ、いつも輪の中心にいた。仲間思いで誰からも慕われ、人気者でしたね」(当時の恩師) 同じ志を持った仲間と、休日は北谷町や名護市に遊びに出かけ、夢を語り合った。だが、1年余りスクールに通ったが、歌手デビューすることは叶わなかった。 歌手になる夢を諦めて、彼女が向かった先は東京だった。 下町にある家賃約6万円の単身者用マンションから、東京の狭い空を見上げて何を思ったのだろう。 「東京への憧れも強かったのでしょう。といっても働き口はなく、当時はキャバクラで働いて生計を立てていました。美人なので人気があり、彼氏にも困らなかった」(名古屋時代の知人) 母親は福岡県出身の男性と再婚して、名古屋を離れ福岡で暮らし始めたが、その結婚生活は楽ではなかったという』、「1年余りスクールに通ったが、歌手デビューすることは叶わなかった。 歌手になる夢を諦めて、彼女が向かった先は東京」、「当時はキャバクラで働いて生計を立てていました」、なるほど。
・『結婚するもほどなく離婚し、福岡へ  彼女も東京を離れる時が来た。大阪府出身の男性と結婚したのだ。2011年に長女を出産。大阪府岸和田市に移り、母親と娘3人で、東京ディズニーランドへ旅行したのは、娘が2歳の誕生日を迎える頃だったという。 だが、結婚生活は長くは続かず、数年後に離婚。母親と同じシングルマザーの道を選び、佐川急便に事務職として勤務しながら生きることになる。 「苦労はしていたが、いつも笑顔でイキイキしていた。ただ、お酒が好きで、呂律が回らなくなるまで飲むこともあった」(元夫の友人) 生きていく苦しさを酒で紛らわせていたのだろうか。 約6年前、家族ぐるみで付き合っていた友人に彼女から電話が入る。娘を育てながらの生活は大変だから、母親のいる福岡へ行くというのだ。 母親は快く娘を受け入れてくれたという。住まいは福岡市から少し離れた那珂川市にある2階建ての賃貸住宅。 彼女には歌手とは別にもう一つの夢があった。母親がエステ業界に関わっていたため、彼女も「人を綺麗にすることが好き」だったという。 自宅から歩いて行けるマンションの一室を借り、200万円以上のローンを組み、大阪府にあるエステチェーンのフランチャイズ店を開いたのだ。 だが、思惑通りにはいかず、コロナ蔓延という不幸な事態もあったためか、初期投資が回収できず間もなく店を畳んでしまった。 2020年8月に破産手続きをして、翌年4月には自己破産。 生活を立て直すために彼女が足を向けたのは、九州一の歓楽街・中洲の高級クラブ「S」だった。 寺内容疑者は「突然キレて物を投げたり、どついたり…」 昼間は派遣会社で働き、夜は蝶として舞い、週末は子育て。楽しみは大のファンである中日ドラゴンズの応援と、娘と一緒に通うジムだったという。 娘とお揃そろいのドラゴンズのユニフォームを着て、仲よくトレーニングする写真が、友人限定のフェイスブックに上げられた。 娘との笑顔の写真。思い出の沖縄にも、たびたび娘を連れて訪れていたそうである。 だが、川野さんが昨年春、中洲のバー「X」で寺内と出会ったことで大きく人生が暗転する。 「茶色の短髪に鋭く切り込んだ細い眉。関西弁を操るアヒル口の男が寺内だった」(文春) この店は「S」の系列店で、昨年1月に店を辞めていたが、時々ヘルプで店に入ることもあり、「X」のようなバーに遊びに行くこともあったという。 寺内は1991年8月生まれ。大阪市福島区で、父親が働く運輸会社の寮で育った。母親はラウンジで働いていて夜はいない。父親もほとんど家にいなかったそうだ。 そんな寺内は中学進学後に変わってきたという。 「友達の家で突然キレて物を投げたり、どついたりして喧嘩を始める。中学はお弁当だったけど、彼はいつもファミリーマートのおにぎり。部活はしてなかったが、ボクシングを習っていた」(学校関係者) 目が合っただけで殴られた生徒もいた。日に日に暴力沙汰を起こす寺内は、教師にも牙をむいた』、「結婚するもほどなく離婚し、福岡へ」、「自宅から歩いて行けるマンションの一室を借り、200万円以上のローンを組み、大阪府にあるエステチェーンのフランチャイズ店を開いたのだ。 だが、思惑通りにはいかず、コロナ蔓延という不幸な事態もあったためか、初期投資が回収できず間もなく店を畳んでしまった。 2020年8月に破産手続きをして、翌年4月には自己破産。 生活を立て直すために彼女が足を向けたのは、九州一の歓楽街・中洲の高級クラブ「S」だった」、「川野さんが昨年春、中洲のバー「X」で寺内と出会ったことで大きく人生が暗転する。 「茶色の短髪に鋭く切り込んだ細い眉。関西弁を操るアヒル口の男が寺内だった」(文春) この店は「S」の系列店で、昨年1月に店を辞めていたが、時々ヘルプで店に入ることもあり、「X」のようなバーに遊びに行くこともあったという」、「寺内は中学進学後に変わってきた・・・部活はしてなかったが、ボクシングを習っていた」・・・目が合っただけで殴られた生徒もいた。日に日に暴力沙汰を起こす寺内は、教師にも牙をむいた」かなり危険な男のようだ。
・『「俺のバックには山健組がいとるんや」  「ボクシングの強豪校に推薦が決まっていたけど、教頭先生を殴って推薦が飛んだんですわ。学校が被害届を出し、更生施設送りになったと校内で噂が立った。実際、三年生の大半は学校に来ていなかった」(同) 地元の高校に進むも中退した寺内は、大阪市中央卸売市場に勤め始めるが、祭りですれ違った同級生に対して、 「お前、金持ってるか。俺のバックには神戸の山健組がいとるんや」 と凄んだという。 髪を金色に染め、バラのタトゥーを右胸に刻んで、どっぷり夜の世界に浸かっていった。 「十三年、大坂のショーパブ『K』に二十歳そこそこの寺内が入店してきた。すると直後、酔って先輩従業員に暴行したのです。警察沙汰にはしなかったものの、本社のある東京で教育し直すことに。ところが、指導を厳しく感じたのか、あいつは二~三カ月で飛んでしまった」(元同店経営者) 逃げるように大坂に舞い戻った寺内はさまざまな飲食店を渡り歩いたという。 2015年3月、窃盗容疑で大阪府警に逮捕される。そんな寺内を拾ったのは兵庫県内のキャバクラだった。 黒服として働いていたが、見かけによらずレディファーストだったという。女性には一途で、高級バッグをプレゼントしたりしていたそうだが、信じられないほど幼稚な面があったという』、「髪を金色に染め、バラのタトゥーを右胸に刻んで、どっぷり夜の世界に浸かっていった」、「そんな寺内を拾ったのは兵庫県内のキャバクラだった。 黒服として働いていたが、見かけによらずレディファーストだったという」、なるほど。
・『「自分は別れていない。許さんぞ」  当時の交際相手はこう語っている。 「束縛が激しく、携帯を盗み見るなんて日常。友達と遊びに行くときは、いつでも連絡できるようにしておかないと彼は怒り狂うから、遊びにも行けへんかった」 その過度な束縛癖が嫌になり、彼女は警察に相談に行ったという。しかし、別れた後も家に来て、「別れてない」としつこくいい続けたそうだ。 大阪市東淀川区に知人と一緒に「ぼったくりバー」をオープンさせたが、数カ月で潰れた。 周囲に「人生をやり直す」といって、縁もゆかりもない九州へ飛び立ち、鹿児島や熊本を経て、福岡の地に足を踏み入れたのは約1年前だったそうである。 そして昨年春、川野さんと知り合い、交際を始めたという。男と女というものは不思議なものだ。寺内のどこに彼女は惹かれたのだろう。 だが寺内は本性を現し、彼女を束縛していく。寺内の言動に危険を感じた彼女が、初めて福岡県警に相談に行ったのは昨年の10月21日のことだった。 「携帯電話を盗られた。相手とも別れたい」 切羽詰まった様子で被害を訴え、その翌日、寺内に別れを告げたという。だが寺内は、「自分は別れていない。許さんぞ」と繰り返した。 10月24日に警察から警告を受け、それでも、寺内が彼女の職場に押しかけたり、電話をしたり、つきまとい行為を止めなかったため、11月26日に春日署はストーカー規制法に基づく禁止命令を出した』、「福岡の地に足を踏み入れたのは約1年前だったそうである。 そして昨年春、川野さんと知り合い、交際を始めたという。男と女というものは不思議なものだ。寺内のどこに彼女は惹かれたのだろう。 だが寺内は本性を現し、彼女を束縛していく。寺内の言動に危険を感じた彼女が、初めて福岡県警に相談に行ったのは昨年の10月21日のことだった。 「携帯電話を盗られた。相手とも別れたい」 切羽詰まった様子で被害を訴え、その翌日、寺内に別れを告げたという。だが寺内は、「自分は別れていない。許さんぞ」と繰り返した。 10月24日に警察から警告を受け、それでも、寺内が彼女の職場に押しかけたり、電話をしたり、つきまとい行為を止めなかったため、11月26日に春日署はストーカー規制法に基づく禁止命令を出した」、なるほど。
・『福岡県警の対応に問題はなかったのか  川野さんは勤務先の人材派遣会社で昇進が決まり、喜んでいたそうだ。11歳になった娘を絵画教室に送り迎えする姿は、幸せそのものに見えたという。 だがその幸せを、寺内の刃渡り20センチの刃物が切り裂いてしまったのである。 周囲を明るく照らす太陽のようだった彼女は、生きていれば39歳の誕生日だった日に、親しい友人らに囲まれて荼毘に付された。 文春は触れていないが、川野さんから相談を受けた福岡県警と那珂川市を管轄する春日署の事件対応に問題はなかったのだろうか。 たしかに、寺内の逮捕歴や威嚇、粗暴な性格などを鑑かんがみて、規制法に基づいて接近禁止令を出し、本人にも伝えたようだが、これまでの事例を見ても分かるように、「法的対応を受けることで動揺して不安を強めたり、逆恨みしたりする恐れもある」(産経新聞1/19〈木〉20:49配信)のだ。 私事で恐縮だが、はるか昔、私が月刊現代という部署にいるとき、講談社の女性社員から、妹が右翼で暴力団員を名乗る男に付きまとわれ、困っていると相談を受けたことがあった。 私は友人の右翼の大物に相談して、その男と対峙しようとなった。だが、それを察知した男は、娘ではなく身体の悪い父親を自宅から拉致し、どこかに監禁してしまったのだ。 当時はストーカー規制法などない時代で、娘が警察に相談に行っても、「民事不介入」を盾に動いてくれない』、「私が月刊現代という部署にいるとき、講談社の女性社員から、妹が右翼で暴力団員を名乗る男に付きまとわれ、困っていると相談を受けた・・・ことがあった。 私は友人の右翼の大物に相談して、その男と対峙しようとなった。だが、それを察知した男は、娘ではなく身体の悪い父親を自宅から拉致し、どこかに監禁・・・娘が警察に相談に行っても、「民事不介入」を盾に動いてくれない」、なるほど。
・『毎年のように何度も起きている  私と彼で、男のヤサを探し出して踏み込んだ。父親が縛られて地下室にいるのを見つけたが、男は逃げた後だった。ストーカーではなく父親の拉致・監禁罪で訴え、男は捕まった。だが、出てきたらまた同じことを繰り返すのではないかと数年、彼女と連絡を取り続けた。 今は規制法ができたために、当時よりはよくなったと思うが、今回のようなストーカー行為から殺人事件に至る悲劇は毎年のように何度も起きている。 朝日新聞デジタルで「ストーカー殺人」で検索すると、いくつも出てくる。 小金井ストーカー殺人未遂事件(2016年5月21日)。芸能活動を行っていた女性のファンを自称する男が、ライブハウスで彼女を刺殺しようとした。 2018年2月6日。フィリピン国籍の女性をストーカーしていた男が刃物を持って家に押し入り、一家3人を襲撃して家に火をつけた。 2020年6月。静岡県沼津市の女子大生が、同じ大学に通う21歳の男に腹や首などを刺されて殺害された。好意を抱き、一方的にLINEを送ったがブロックされたことで、「生きがいを奪われた」と逆恨みしたという。 2020年8月30日。東京中野区の38歳の女性が、元交際相手に殺害された。男はすぐカッとする性格で、別れを切り出すと、「死ぬ」「恨んでやる」というメールを送り付け、彼女の首を絞めたり殴ったりする傷害容疑で書類送検されていた。警視庁からも注意を受けていたが、犯行を止めることはできなかった』、「私と彼で、男のヤサを探し出して踏み込んだ。父親が縛られて地下室にいるのを見つけたが、男は逃げた後だった。ストーカーではなく父親の拉致・監禁罪で訴え、男は捕まった」、「今回のようなストーカー行為から殺人事件に至る悲劇は毎年のように何度も起きている。 朝日新聞デジタルで「ストーカー殺人」で検索すると、いくつも出てくる。 小金井ストーカー殺人未遂事件・・・東京中野区の38歳の女性が、元交際相手に殺害」などは、このブログでも紹介した。
・『ストーカー規制法のきっかけになった「桶川事件」  こうして見てくると、相手が一方的に好意を持ち、ストーカー行為をしてくると、女性の側(男性の場合もあるが)は、周囲に彼女を守ってくれる人間や、まれに、親身になってくれる警察官に出会えないと、自分の身を守ることは不可能かもしれないと思えてくる。 よくいわれることだが、法的な対応だけではなく、臨床心理士の面談などを通して加害者の心の問題にもアプローチしないと、根本的な解決にはならない。 しかし、今回の事件の寺内容疑者のように、粗暴で独占欲の強い人間が相手では、決め手になるとは思えない。 よく知られているように、ストーカー規制法ができたきっかけは、埼玉県桶川市で起きた女子大生殺人事件だった。 1999年10月に女子大生の猪野詩織さん(当時21歳)がJR高崎線桶川駅前で刺殺されるという事件が起きた。 当時写真週刊誌FOCUSの記者だった清水潔さんは、偶然、取材中に詩織さんと親しかった友人2人と知り合った。 2人から「詩織は小松(犯人)と警察に殺された」と聞き、詩織さんは「私が殺されたら犯人は小松」という遺言を残していたことを知る。 詩織さんは、小松(最初は偽名)とゲーセンで知り合い、付き合うようになった。自称青年実業家の小松は、高価なものをプレゼントしてくれた』、「桶川事件」は「写真週刊誌FOCUSの記者」の存在があったからこそ明らかになったようだ。
・『別れを切り出すと「徹底的にお前を潰す」  だが、そのうち態度が怪しくなり、「プレゼントの代金を払え、払えないならソープに行って働いて金を稼げ」と脅すようになった。 詩織さんは別れてほしいと何度も切り出したが、「別れるというのなら、徹底的にお前を叩き潰す」といい出し、見知らぬ男たちに尾行され、2人組が家に乗り込んできたこともあった。 家族と話し合った結果、埼玉県警上尾警察署に出向いて、相談する。だが刑事たちは、「これは事件にならない」「男と女の問題だから警察は立ち入れない」というばかり。 警察が何もしてくれないうちに事態は悪化していく。都内で彼女の写真入りのカードがバラまかれた。そこには「援助交際OK」と彼女の自宅の電話番号が書かれていた。 父親の会社に、根も葉もない中傷の匿名手紙が千通も送られてきた。そこで詩織さんは、このままでは殺されると思い立ち、警察に動いてもらうために刑事告訴することを決意する。だが警察は動かないばかりか、驚くことに、彼女の家に刑事が来て、「告訴を取り下げてほしい」といったのである。 そして惨劇が起こった』、「埼玉県警上尾警察署に出向いて、相談する。だが刑事たちは、「これは事件にならない」「男と女の問題だから警察は立ち入れない」というばかり。 警察が何もしてくれないうちに事態は悪化していく」、「警察に動いてもらうために刑事告訴することを決意する。だが警察は動かないばかりか、驚くことに、彼女の家に刑事が来て、「告訴を取り下げてほしい」といったのである。 そして惨劇が起こった」、酷い話だ。
・『12人が処分を受ける前代未聞の事態に  清水記者は、小松が池袋の性風俗店のオーナーであることを突き止め、実行犯も特定して撮影することに成功する。それらの情報を上尾署に伝えるが、動かない。 ようやく警察が動いて共犯者3人を逮捕したのは撮影してから3週間がたってからだった。主犯の小松は翌年の1月、道東の屈斜路湖で自殺体として発見された。 しかし、それだけでは終わらなかった。警察は告訴を取り下げるよういってきただけではなく、捜査や報告義務が必要になる「告訴状」を、面倒なために「被害届」に改竄していたことまで明るみに出たのである。 新聞、テレビはその間、警察から情報をもらって、彼らのいいなりに嘘情報を垂れ流していた。 「結局、改竄に関わった警察官三人は懲戒免職となり、虚偽公文書作成などの容疑で刑事責任も問われることになった。また、県警本部長を含む十二人が処分を受けるという前代未聞の事態となった」(清水潔『騙されてたまるか 調査報道の裏側』新潮新書) これは調査報道の「金字塔」としていまだに語り継がれている。 尊い命が失われたことをきっかけにできたのがストーカー規制法である。 この法律ができたために思わぬ副作用もあった。週刊誌の記者たちは取材者を追いかけ回したり、家の周りをうろうろできなくなったりしてしまったのだ。相手がストーカーだと警察に訴えれば、排除されてしまうからである』、「警察は告訴を取り下げるよういってきただけではなく、捜査や報告義務が必要になる「告訴状」を、面倒なために「被害届」に改竄していたことまで明るみに出たのである。 新聞、テレビはその間、警察から情報をもらって、彼らのいいなりに嘘情報を垂れ流していた。 「結局、改竄に関わった警察官三人は懲戒免職となり、虚偽公文書作成などの容疑で刑事責任も問われることになった。また、県警本部長を含む十二人が処分を受けるという前代未聞の事態となった」、本当に酷く腹立たしい事件だ。
・『法律があれば犯罪がなくなると錯覚しているのか  この規制法、何度も改正もしてきているが、ストーカー殺人を根絶するところまでいかないのはなぜなのだろう。 私は、警察がいまだに民事不介入のしっぽを残し、ストーカーもそうだが、家庭内の子どものDV被害にも消極的だからではないかと考えている。 それに、私の住んでいるような下町でも、警察官の巡回が少なくなったと感じている。 国家防衛という名目でテロ対策のような大犯罪に人を割かれ、昔のように「おまわりさん」として、近所を回って年寄りと話し込むというような余裕がないのであろう。 おまわりさんから警察官。そのうち特高警察となるのではないかと危惧している。ストーカーのような犯罪は、被害者に寄り添って、親身になってやらなければ、被害を防ぐことはできない。 法律だけ作れば犯罪がなくなるとでも錯覚しているのではないか。今度の事件を機に、いま一度原点に返り、ストーカー被害者を救うために何ができるのか、警察やメディアが共に、真剣に考えるべきだと、私は思う』、「この規制法、何度も改正もしてきているが、ストーカー殺人を根絶するところまでいかないのはなぜなのだろう。 私は、警察がいまだに民事不介入のしっぽを残し、ストーカーもそうだが、家庭内の子どものDV被害にも消極的だからではないかと考えている。 それに、私の住んでいるような下町でも、警察官の巡回が少なくなったと感じている。国家防衛という名目でテロ対策のような大犯罪に人を割かれ、昔のように「おまわりさん」として、近所を回って年寄りと話し込むというような余裕がないのであろう。 おまわりさんから警察官。そのうち特高警察となるのではないかと危惧している。ストーカーのような犯罪は、被害者に寄り添って、親身になってやらなければ、被害を防ぐことはできない。 法律だけ作れば犯罪がなくなるとでも錯覚しているのではないか。今度の事件を機に、いま一度原点に返り、ストーカー被害者を救うために何ができるのか、警察やメディアが共に、真剣に考えるべきだと、私は思う』、全く同感である。

次に、3月14日付け文春オンライン「あの時本腰を入れていれば…「ルフィ事件」被害拡大の裏に日本の警察の“怠慢”」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/61266
・『各地に点在する狼藉の痕跡が、元凶へと繋がっていく。その輪郭が見え始めた頃、既に1人の命が失われていた。「ルフィグループ」による犯行は、なぜ食い止められなかったのか』、興味深そうだ。
・『強盗事件の主要メンバー4人が日本に強制送還される  2月28日、強盗犯・加藤臣吾(24)を乗せた新幹線が東京駅に到着した。 「昨年12月の広島市の事件で、強盗傷害などで起訴済。この日、狛江事件にも関与したとして警視庁が再逮捕した。この事件では5人目の逮捕者」(社会部記者) 今年1月19日、東京都狛江市の民家で大塩衣与さん(90)が惨殺された強盗殺人。複数の強盗事件に関わった狂暴な永田陸人(21)ほか、最年長の野村広之(52)、都内私大生のY(19)、犯行に使うレンタカーを調達した福島聖悟(34)が逮捕されていた。 寄せ集めの兵隊を遠隔操作していた首謀者が「ルフィグループ」。主要メンバーは渡邉優樹、今村磨人(きよと)、藤田聖也(としや)(それぞれ38)、小島智信(とものぶ)(45)の4人である。 「首魁を解明、検挙することが重要だ」 露木康浩警察庁長官がそう明言したのは、狛江事件から1週間後のこと。そこから急転直下、2月2週目にはフィリピンのビクタン収容所に潜伏していた4人の身柄が日本に強制送還された。一見、スピード感ある展開だ。しかし――。 4人の逮捕容疑は、2019年、特殊詐欺に関与したとするもので、警視庁が逮捕状を取っていた。つまり、警察当局は3年以上前から後の「ルフィ」たちを認識していたことになる。) 「今村が19年、渡邉ら3人が21年にフィリピンの入管に拘束され、警視庁は警察庁を通じてフィリピンに身柄の引き渡しを求めた。だが、渡邉らは元妻など協力者に虚偽の告訴をさせたため、フィリピン側は国内で別の事件に関与したとして、引き渡し要請に応じなかった」(警視庁関係者) その間、4人は賄賂の横行する収容所内でスマホを入手。「ルフィ」や「キム」などテレグラムのアカウントを使い分け、犯行を続けた。特殊詐欺に加え、やがて強盗にも手を広げる』、「渡邉らは元妻など協力者に虚偽の告訴をさせたため、フィリピン側は国内で別の事件に関与したとして、引き渡し要請に応じなかった」、実に巧妙な「日本」への「引き渡し要請」遅延戦略だ。
・『日本の警察が本腰を入れて外交交渉をしていれば…  ルフィたちは縦割りの警察組織の間隙を突いた。 「関連事件は少なくとも14都府県、20件に及んでいた。京都府警など、フィリピンを発信源とする『ルフィ』なる指示役を把握していた警察本部もある。しかしそれらが共有され、渡邉や今村たちの存在と繋がるには、かなりタイムラグがあった」(前出・記者) 結果、ルフィの犯行に歯止めがかからず、死者を出してしまう。 「その後、日本側がフィリピンに引き渡しを要求したら、渡邉たちのスマホは押収され、虚偽告訴も退けられた。マルコス大統領が資金援助を求めて来日するタイミングでもあったが、日本の警察が本腰を入れて外交交渉をすれば、もっと早期に身柄の移送を実現できたのではないか」(警察OB)』、「死者を出してしまう・・・その後、日本側がフィリピンに引き渡しを要求したら、渡邉たちのスマホは押収され、虚偽告訴も退けられた・・・日本の警察が本腰を入れて外交交渉をすれば、もっと早期に身柄の移送を実現できたのではないか」、その通りだろう。
・『犯罪に加担する者をどう減らしていくか  被害がここまで拡大した裏には、警察の“怠慢”があったのだ。今村から強盗事件の盗品を受け取っていたとされるフィリピン人の女も日本にいたが、 「今年2月に逮捕状を取った時には、既に帰国されていた」(捜査関係者) 一方、ルフィ逮捕後も強盗や特殊詐欺が後を絶たない。2月3日、いわき市の高齢女性宅での強盗殺人事件は、実行犯もまだ逮捕されていない。ジャーナリストの多田文明氏が指摘する。 「犯罪組織の上位を摘発できるに越したことはありませんが、加担する者をどう減らしていくかも重要。実行役の入り口となる闇バイトに目を光らせる対策など、携帯会社を含めた官民一体の努力が必要です。実行役を確実に捕まえ、加担すれば必ず逮捕されることを徹底して周知すべきでしょう」 地道な捜査に、警察の威信がかかっている』、「「犯罪組織の上位を摘発できるに越したことはありませんが、加担する者をどう減らしていくかも重要。実行役の入り口となる闇バイトに目を光らせる対策など、携帯会社を含めた官民一体の努力が必要です。実行役を確実に捕まえ、加担すれば必ず逮捕されることを徹底して周知すべきでしょう」 地道な捜査に、警察の威信がかかっている」、その通りだろう。

第三に、5月8日付けデイりー新潮が掲載したジャーナリストの粟野仁雄氏による「「警視庁公安部の闇 報告書に「私が言ってもないことが書かれている」 防衛医大校長がずさんな捜査に怒り」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05081104/?all=1
・『2020年3月、大川原化工機株式会社(本社・神奈川県横浜市)の社長ら3人が「武器に転用できる機械を中国に違法輸出した」という外為法違反の容疑で警視庁公安部に逮捕された。3人は1年近く勾留された末、公判直前に起訴が取り消され、検察は事実上の「敗北」を認めた。有識者の立場で警察に意見を伝えた防衛医科大学校の四ノ宮成祥(※正しくは示へんに羊)校長は、警察が作成した報告書の内容に異議を唱える。事件の詳細については、〈警視庁公安部のお粗末すぎる捜査…国賠訴訟を起こした大川原化工機幹部が語る「中国不正輸出冤罪事件」全真相〉で解説している。 【写真】生物兵器に転用できるとされた「噴霧乾燥機(スプレードライヤ)」と大川原社長』、「3人は1年近く勾留された末、公判直前に起訴が取り消され、検察は事実上の「敗北」を認めた」、国策捜査の酷い失敗だ 
・『滅菌、殺菌、消毒を誤用  生物兵器の製造に転用できる機械の輸出を規制する外国為替及び外国貿易法(外為法)違反の対象とされたのは、大川原化工機の主力製品「噴霧乾燥機(スプレードライヤ)」だった。 規制の対象となるのは、扉を開けたり移動したりせずに内部で滅菌または殺菌できる装置という条件があった。この「滅菌」と「殺菌」の定義について、警察は微生物学を専門とする防衛医科大学校(埼玉県所沢市)の四ノ宮成祥校長に意見を求めた。 四ノ宮氏は大川原化工機事件を取り上げた2022年11月16日放送の「クローズアップ現代」(NHK総合)のインタビュー取材に応じた。その中で、自身が話したことが警察の主張に合わせた内容に変えられて報告書が作成されていることを知り、「何とかならなかったのか」と悔いた。 「警視庁の方が何度か防衛医科大学校に来られました。電話でも話を聞かれました。実は私が事前に見せてもらって『これでよければサインしてください』と言われて了承して、サインと押印した文書がひとつだけあります」と四ノ宮氏は話す。 四ノ宮氏は微生物の専門家で、病原体に係る輸出規制の関係で経済産業省とも関わりがあり、国際輸出管理レジームであるオーストラリア・グループ(AG)を担当する経産省の官僚からも意見を求められてきた。生物兵器禁止条約(BWC)の国際会議にも参加している。 「供述調書」と題されたその文書には、2018年3月28日の聴取が再現されている。 《次に、噴霧乾燥機において、定置した状態で病原菌微生物を滅菌または殺菌することが求められる範囲について説明します。結論としまして、機器内部の病原体が粉体の状態で残留している箇所と言えます》 《したがって、被曝防止という規制の趣旨を鑑みると、機器において定置滅菌又は殺菌を擁する部分は、原液を粉体化するノズルなどの微粒化装置の先から、排気口に設置されたフィルタまでであり、原液を当該装置に送り込む個所などは含まないと解されます》 四ノ宮氏は「滅菌、殺菌、消毒という言葉は、われわれ専門家の間では厳密に区別されていますが、警察が作成した報告書を確認すると、かなり誤用されていた。しかし、経産省の省令でも翻訳の間違いなどで混同して使っていることがあるので、ある程度は仕方ないとは思っていた。『この辺は違いますよ』と例示して、但し書きつきであることを十分に説明してサインしてしまった。しかし、出来た文面を見ると言葉が独り歩きしている感じでした」と振り返る。 供述調書の大半は、炭疽菌やペスト菌などの危険性を説明した内容である。噴霧乾燥機についても四ノ宮氏が詳しく述べたようになっているが、こうした機器類の構造に詳しいわけではなく、警視庁の聴取者が説明したのに合わせて返事をしていただけだという』、「「滅菌、殺菌、消毒という言葉は、われわれ専門家の間では厳密に区別されていますが、警察が作成した報告書を確認すると、かなり誤用されていた。しかし、経産省の省令でも翻訳の間違いなどで混同して使っていることがあるので、ある程度は仕方ないとは思っていた。『この辺は違いますよ』と例示して、但し書きつきであることを十分に説明してサインしてしまった。しかし、出来た文面を見ると言葉が独り歩きしている感じでした」」、「噴霧乾燥機についても四ノ宮氏が詳しく述べたようになっているが、こうした機器類の構造に詳しいわけではなく、警視庁の聴取者が説明したのに合わせて返事をしていただけだという」、「四ノ宮氏が詳しく述べたようになっているが」、事実に反することはその場で訂正を申し入れるべきだった。
・『経産省の曖昧な判断基準を逆手に取る  さらに、警視庁は四ノ宮氏が話していない内容を混ぜ込んだ内部資料を同氏の預かり知らぬところで作成していたのである。四ノ宮氏は大川原化工機の顧問弁護士の高田剛氏(和田倉門法律事務所)からその資料を受け取り、驚いたという。 2017年11月16日付の四ノ宮氏からの「聴取結果報告書」には、結論部分にこう書かれている。 《噴霧乾燥機を空運転させて熱風を送り込めば装置内部が百度以上となり、結果的に大腸菌などの病原性細菌が死滅することになるからです》 外為法の規制の対象となる「内部を殺菌することができるかどうか」の判断基準は、規制をつかさどる経産省からも明確に提示されていなかった。そのため警視庁は、容器全体を100度を超える高温にすることができれば、この規制要件に該当することにしようとした。そこで微生物学の専門家である四ノ宮氏に警視庁の思惑通りの供述をさせ、自ら打ち立てた理論を正当化しようとしたのだろう。 調書は「わたしの意見としては」と完全に四ノ宮氏の「ひとり語り」で書かれている。しかし同氏は私の取材に「全くそんなことは話していませんよ。そもそも私は微生物や病原菌の専門家ではあっても、そういう機械の専門家ではなく、そんなことを言うはずもありません」と打ち明けた。 「ひとり語り」は「一人称独白体」と言われ、警察や検察が被疑者についての供述調書で使う形式だ。取調官が「おまえ、相手が死んでも構わんと思って刺したんやろう」と言って相手が「はあ」「まあ」などと生返事をしても、「私は」としてそう語った供述調書にしてしまう。 もちろん四ノ宮氏は被疑者ではないが、警察や検察は参考意見を調書にする時もこの手法を巧みに使うのだ』、「同氏は私の取材に「全くそんなことは話していませんよ。そもそも私は微生物や病原菌の専門家ではあっても、そういう機械の専門家ではなく、そんなことを言うはずもありません」と打ち明けた。 「ひとり語り」は「一人称独白体」と言われ、警察や検察が被疑者についての供述調書で使う形式だ。取調官が「おまえ、相手が死んでも構わんと思って刺したんやろう」と言って相手が「はあ」「まあ」などと生返事をしても、「私は」としてそう語った供述調書にしてしまう」、「警察や検察」のやり方は、余りに悪どい。
・『話してもいないことが記録されていた  さらに、決定的なのが聞き取り内容を書き留めた2017年11月15日作成の「捜査メモ」である。 《一方、噴霧乾燥機は、末端付近まで100度以上の熱風がいきわたるのであれば、細菌は水分が枯渇すれば死んで感染能力を失うため、機器が機能として持つ温度で殺すことができる。》 《規制に差異があるのは、この点を理由としているのではないか。また、乾熱による滅菌・殺菌は、蒸気などと同様に一般的な方法であることから、乾熱で大腸菌などを殺菌できるのであれば、特段問題なく輸出規制に該当する機器と判断できる。》 これを読んだ四ノ宮氏は仰天した。 「『炭疽菌のように相当の高温にならないと死なない菌もある一方、大腸菌は比較的低い温度、100度にもならなくても死にます』というようなことは説明しましたが、噴霧乾燥機が100度以上にいきわたるなどということは言ってもいないし、機械の専門家でもない私にわかるはずもない。第一、噴霧乾燥機を私は見たこともないのです。ですからどの辺がどんな温度になるということも分かりません。『熱風を送り込めば装置内が100度以上になる』なんて言うはずもありません」(四ノ宮氏) 高田弁護士は「それでも、このメモを見た当時の捜査幹部らが『いけるぞ』と大川原化工機の立件に大きく歩みを進めたのです。四ノ宮氏の見解をまとめたとされる報告書は、警視庁の殺菌理論の根拠として経産省の説得に用いられました。当初、難色を示していた経産省でしたが、最終的には警視庁の殺菌理論を受け入れ、2018年10月の捜索、差し押さえとつながったのです」と説明する。 「警察は『こうした場合、大腸菌はどうなりますか? 死滅しますか?』のようにオブラードに包んだような聞き方をしてきました。私は『そういう可能性はあります』と可能性を言っただけです。それが断定したように書かれていました」と四ノ宮氏は不信感を隠さない。 こうして理論武装を行った警視庁であったが、実は大川原化工機の噴霧乾燥機は内部の構造が複雑で、熱風を送り込んでも100度以上にならない箇所がいくつか存在した。起訴後、高田弁護士から指摘を受けた検察官は、警視庁の打ち立てた殺菌理論の軌道修正を試みたものの、実験を重ねた結果、内部の細菌を死滅させる性能を有していないことを認めざるを得なくなった。大川原化工機の噴霧乾燥器は、そもそも輸出規制に抵触するものではまったくなかった。 そして、2021年8月に予定されていた公判期日の直前(なんと4日前)に突然、検察は起訴を取り消したのだ。 防衛医科大学校を何度も訪れたり、電話で四ノ宮氏からの聞き取りを実施していたのは、警視庁公安部外事第一課に所属していた安積伸介警部補である。 安積警部補が自身の判断で四ノ宮氏が言ってもいないことを「創作」し、立件に都合のよい調書やメモを仕立てたとは思われるが、報告先は第一課長の高濱裕章警視、さらには後任の高橋靖夫警視である。彼らの階級は安積警部補よりずっと上である。 階級社会の警察組織で、間に位置する警部クラスの中間管理職が、警視クラスへの報告を見ていないはずはないだろう。安積警部補から概要説明を受けた上司が同警部補に書き方を指示したか、あるいは書いてきたものを修正したのかもしれない』、「噴霧乾燥機が100度以上にいきわたるなどということは言ってもいないし、機械の専門家でもない私にわかるはずもない。第一、噴霧乾燥機を私は見たこともないのです。ですからどの辺がどんな温度になるということも分かりません。『熱風を送り込めば装置内が100度以上になる』なんて言うはずもありません」(四ノ宮氏)」、「警視庁公安部外事第一課に所属していた安積伸介警部補である。 安積警部補が自身の判断で四ノ宮氏が言ってもいないことを「創作」し、立件に都合のよい調書やメモを仕立てたとは思われるが、報告先は第一課長の高濱裕章警視、さらには後任の高橋靖夫警視である。彼らの階級は安積警部補よりずっと上である。 階級社会の警察組織で、間に位置する警部クラスの中間管理職が、警視クラスへの報告を見ていないはずはないだろう。安積警部補から概要説明を受けた上司が同警部補に書き方を指示したか、あるいは書いてきたものを修正したのかもしれない」、極めて悪質な捏造だ。
・『起訴取り消しは立証の断念ではなく隠蔽  もう一つ重要なことは、当時、四ノ宮氏が警察の目的をまったく知らずに応対していたことだ。 「捜査上の秘密なのでしょうが、警察は私への聴取中、何の目的なのかは一切言わなかった。それでも警視庁だから、テロ対策などの役に立てたくて参考意見を私に訊きに来ているのだろうとは思いました。起訴した時には『裁判で証人になっていただくかもしれませんのでよろしく』という連絡がありました。しかし、起訴の取り消しの連絡がきた記憶はありません。その後、高田弁護士から連絡がありましたが、恥ずかしいことですが大川原化工機の事件に強く興味を持つことはありませんでした」と四ノ宮氏は打ち明ける。 起訴が取り消されたのは、高田弁護士が開示請求を行い、四ノ宮氏をはじめとする有識者からの聞き取りをもとに警視庁が経産省を説得する過程が記されたメモが証拠開示されかけたのともタイミングが一致していた。「被疑事実を立証できない」と考えたからではなく、警視庁が独自の理論で経産省を説得し、無理やりに立件した事実経過を隠蔽する思惑があったのではないだろうか』、「「被疑事実を立証できない」と考えたからではなく、警視庁が独自の理論で経産省を説得し、無理やりに立件した事実経過を隠蔽する思惑があったのではないだろうか」、可能性が大いにありそうだ。
・『「申し訳なく、後悔」  起訴取り消しの際、警視庁は冤罪だったことを認めたが、謝罪ひとつなかった。  逮捕された大川原正明社長、島田順司専務、相嶋静夫顧問の3人は否認を貫いていたため、平均330日も保釈なしで勾留されていた。このうち相嶋氏は、勾留中にがんが進行しながら適切な処置を受けられずに72歳で亡くなった。現在、東京地裁では、大川原化工機が東京都と国に対して起こした約5億6000万円の損害賠償請求の裁判と、相嶋氏の妻ら家族が起こした裁判が進んでいる。 四ノ宮氏は「特定の会社の人を起訴するような目的で彼らが来ていたのなら、もう少し説明の仕方があったかもしれないと思い、亡くなった方をはじめ大川原化工機の皆様には本当に申し訳なく、後悔しています」と話す。 3月1日の東京地裁での口頭弁論で、高田弁護士は証人尋問の予定者を裁判長に説明した。大川原社長、島田氏、相嶋氏の長男の他、法に関与した経産省関係者、当時の公安部捜査官、起訴した検事らを予定している。 警視庁の捏造工作が民事訴訟の場で衆人に晒されることになるのか――。 警視庁公安部外事第一課に対して「安積警部補は四ノ宮教授が言ってもいないことを供述調書や捜査メモに記録したことは全くないか」「あったとすれば本人の判断か、それとも上司の判断か」という質問を文書で送ったところ、5月1日に同庁広報課広報4係から電話で「係争中の事案につき回答を控えさせていただきます」と予想通りの回答があった』、「逮捕された大川原正明社長、島田順司専務、相嶋静夫顧問の3人は否認を貫いていたため、平均330日も保釈なしで勾留されていた。このうち相嶋氏は、勾留中にがんが進行しながら適切な処置を受けられずに72歳で亡くなった。現在、東京地裁では、大川原化工機が東京都と国に対して起こした約5億6000万円の損害賠償請求の裁判と、相嶋氏の妻ら家族が起こした裁判が進んでいる」、「警視庁」、「経産省」、「起訴した検事ら」にとっては全くみっともない裁判だ。特に警視庁の捏造工作が民事訴訟の場で衆人に晒されることになることを期待している。裁判官が「警視庁」などに忖度して筋を曲げることのないよう要請したい。
タグ:相次ぐ警察の重大ミス (その8)(なぜ警察は助けを求める人を見殺しにするのか…「博多ストーカー殺人事件」を防げなかった根本原因 法律があれば犯罪がなくなると錯覚している、あの時本腰を入れていれば…「ルフィ事件」被害拡大の裏に日本の警察の“怠慢”、警視庁公安部の闇 報告書に「私が言ってもないことが書かれている」 防衛医大校長がずさんな捜査に怒り) PRESIDENT ONLINE 元木 昌彦氏による「なぜ警察は助けを求める人を見殺しにするのか…「博多ストーカー殺人事件」を防げなかった根本原因 法律があれば犯罪がなくなると錯覚している」 「歌が上手くて評判の美少女だった」のであれば、「沖縄」の「名門アクターズスクールに入所」もさもありなんだ。 「1年余りスクールに通ったが、歌手デビューすることは叶わなかった。 歌手になる夢を諦めて、彼女が向かった先は東京」、「当時はキャバクラで働いて生計を立てていました」、なるほど。 「結婚するもほどなく離婚し、福岡へ」、「自宅から歩いて行けるマンションの一室を借り、200万円以上のローンを組み、大阪府にあるエステチェーンのフランチャイズ店を開いたのだ。 だが、思惑通りにはいかず、コロナ蔓延という不幸な事態もあったためか、初期投資が回収できず間もなく店を畳んでしまった。 2020年8月に破産手続きをして、翌年4月には自己破産。 生活を立て直すために彼女が足を向けたのは、九州一の歓楽街・中洲の高級クラブ「S」だった」、「川野さんが昨年春、中洲のバー「X」で寺内と出会ったことで大きく人生が暗転する。 「茶色の短髪に鋭く切り込んだ細い眉。関西弁を操るアヒル口の男が寺内だった」(文春) この店は「S」の系列店で、昨年1月に店を辞めていたが、時々ヘルプで店に入ることもあり、「X」のようなバーに遊びに行くこともあったという」、 「寺内は中学進学後に変わってきた・・・部活はしてなかったが、ボクシングを習っていた」・・・目が合っただけで殴られた生徒もいた。日に日に暴力沙汰を起こす寺内は、教師にも牙をむいた」かなり危険な男のようだ。 「髪を金色に染め、バラのタトゥーを右胸に刻んで、どっぷり夜の世界に浸かっていった」、「そんな寺内を拾ったのは兵庫県内のキャバクラだった。 黒服として働いていたが、見かけによらずレディファーストだったという」、なるほど。 「福岡の地に足を踏み入れたのは約1年前だったそうである。 そして昨年春、川野さんと知り合い、交際を始めたという。男と女というものは不思議なものだ。寺内のどこに彼女は惹かれたのだろう。 だが寺内は本性を現し、彼女を束縛していく。寺内の言動に危険を感じた彼女が、初めて福岡県警に相談に行ったのは昨年の10月21日のことだった。 「携帯電話を盗られた。相手とも別れたい」 切羽詰まった様子で被害を訴え、その翌日、寺内に別れを告げたという。だが寺内は、「自分は別れていない。許さんぞ」と繰り返した。 10月24日に警察から警告を受け、それでも、寺内が彼女の職場に押しかけたり、電話をしたり、つきまとい行為を止めなかったため、11月26日に春日署はストーカー規制法に基づく禁止命令を出した」、なるほど。 「私と彼で、男のヤサを探し出して踏み込んだ。父親が縛られて地下室にいるのを見つけたが、男は逃げた後だった。ストーカーではなく父親の拉致・監禁罪で訴え、男は捕まった」、「今回のようなストーカー行為から殺人事件に至る悲劇は毎年のように何度も起きている。 朝日新聞デジタルで「ストーカー殺人」で検索すると、いくつも出てくる。 小金井ストーカー殺人未遂事件・・・東京中野区の38歳の女性が、元交際相手に殺害」などは、このブログでも紹介した。 「桶川事件」は「写真週刊誌FOCUSの記者」の存在があったからこそ明らかになったようだ。 「埼玉県警上尾警察署に出向いて、相談する。だが刑事たちは、「これは事件にならない」「男と女の問題だから警察は立ち入れない」というばかり。 警察が何もしてくれないうちに事態は悪化していく」、「警察に動いてもらうために刑事告訴することを決意する。だが警察は動かないばかりか、驚くことに、彼女の家に刑事が来て、「告訴を取り下げてほしい」といったのである。 そして惨劇が起こった」、酷い話だ。 「警察は告訴を取り下げるよういってきただけではなく、捜査や報告義務が必要になる「告訴状」を、面倒なために「被害届」に改竄していたことまで明るみに出たのである。 新聞、テレビはその間、警察から情報をもらって、彼らのいいなりに嘘情報を垂れ流していた。 「結局、改竄に関わった警察官三人は懲戒免職となり、虚偽公文書作成などの容疑で刑事責任も問われることになった。また、県警本部長を含む十二人が処分を受けるという前代未聞の事態となった」、本当に酷く腹立たしい事件だ。 「この規制法、何度も改正もしてきているが、ストーカー殺人を根絶するところまでいかないのはなぜなのだろう。 私は、警察がいまだに民事不介入のしっぽを残し、ストーカーもそうだが、家庭内の子どものDV被害にも消極的だからではないかと考えている。 それに、私の住んでいるような下町でも、警察官の巡回が少なくなったと感じている。国家防衛という名目でテロ対策のような大犯罪に人を割かれ、昔のように「おまわりさん」として、近所を回って年寄りと話し込むというような余裕がないのであろう。 おまわりさんから警察官。そのうち特高警察となるのではないかと危惧している。ストーカーのような犯罪は、被害者に寄り添って、親身になってやらなければ、被害を防ぐことはできない。 法律だけ作れば犯罪がなくなるとでも錯覚しているのではないか。今度の事件を機に、いま一度原点に返り、ストーカー被害者を救うために何ができるのか、警察やメディアが共に、真剣に考えるべきだと、私は思う』、全く同感である。 文春オンライン「あの時本腰を入れていれば…「ルフィ事件」被害拡大の裏に日本の警察の“怠慢”」 「渡邉らは元妻など協力者に虚偽の告訴をさせたため、フィリピン側は国内で別の事件に関与したとして、引き渡し要請に応じなかった」、実に巧妙な「日本」への「引き渡し要請」遅延戦略だ。 「死者を出してしまう・・・その後、日本側がフィリピンに引き渡しを要求したら、渡邉たちのスマホは押収され、虚偽告訴も退けられた・・・日本の警察が本腰を入れて外交交渉をすれば、もっと早期に身柄の移送を実現できたのではないか」、その通りだろう。 「「犯罪組織の上位を摘発できるに越したことはありませんが、加担する者をどう減らしていくかも重要。実行役の入り口となる闇バイトに目を光らせる対策など、携帯会社を含めた官民一体の努力が必要です。実行役を確実に捕まえ、加担すれば必ず逮捕されることを徹底して周知すべきでしょう」 地道な捜査に、警察の威信がかかっている」、その通りだろう。 デイりー新潮 粟野仁雄氏による「「警視庁公安部の闇 報告書に「私が言ってもないことが書かれている」 防衛医大校長がずさんな捜査に怒り」 「3人は1年近く勾留された末、公判直前に起訴が取り消され、検察は事実上の「敗北」を認めた」、国策捜査の酷い失敗だ 「「滅菌、殺菌、消毒という言葉は、われわれ専門家の間では厳密に区別されていますが、警察が作成した報告書を確認すると、かなり誤用されていた。しかし、経産省の省令でも翻訳の間違いなどで混同して使っていることがあるので、ある程度は仕方ないとは思っていた。『この辺は違いますよ』と例示して、但し書きつきであることを十分に説明してサインしてしまった。しかし、出来た文面を見ると言葉が独り歩きしている感じでした」」、 「噴霧乾燥機についても四ノ宮氏が詳しく述べたようになっているが、こうした機器類の構造に詳しいわけではなく、警視庁の聴取者が説明したのに合わせて返事をしていただけだという」、「四ノ宮氏が詳しく述べたようになっているが」、事実に反することはその場で訂正を申し入れるべきだった。 「同氏は私の取材に「全くそんなことは話していませんよ。そもそも私は微生物や病原菌の専門家ではあっても、そういう機械の専門家ではなく、そんなことを言うはずもありません」と打ち明けた。 「ひとり語り」は「一人称独白体」と言われ、警察や検察が被疑者についての供述調書で使う形式だ。取調官が「おまえ、相手が死んでも構わんと思って刺したんやろう」と言って相手が「はあ」「まあ」などと生返事をしても、「私は」としてそう語った供述調書にしてしまう」、「警察や検察」のやり方は、余りに悪どい。 「噴霧乾燥機が100度以上にいきわたるなどということは言ってもいないし、機械の専門家でもない私にわかるはずもない。第一、噴霧乾燥機を私は見たこともないのです。ですからどの辺がどんな温度になるということも分かりません。『熱風を送り込めば装置内が100度以上になる』なんて言うはずもありません」(四ノ宮氏)」、 「警視庁公安部外事第一課に所属していた安積伸介警部補である。 安積警部補が自身の判断で四ノ宮氏が言ってもいないことを「創作」し、立件に都合のよい調書やメモを仕立てたとは思われるが、報告先は第一課長の高濱裕章警視、さらには後任の高橋靖夫警視である。彼らの階級は安積警部補よりずっと上である。 階級社会の警察組織で、間に位置する警部クラスの中間管理職が、警視クラスへの報告を見ていないはずはないだろう。安積警部補から概要説明を受けた上司が同警部補に書き方を指示したか、あるいは書いてきたものを修正したのかもしれない 」、極めて悪質な捏造だ。 「「被疑事実を立証できない」と考えたからではなく、警視庁が独自の理論で経産省を説得し、無理やりに立件した事実経過を隠蔽する思惑があったのではないだろうか」、可能性が大いにありそうだ。 「逮捕された大川原正明社長、島田順司専務、相嶋静夫顧問の3人は否認を貫いていたため、平均330日も保釈なしで勾留されていた。このうち相嶋氏は、勾留中にがんが進行しながら適切な処置を受けられずに72歳で亡くなった。現在、東京地裁では、大川原化工機が東京都と国に対して起こした約5億6000万円の損害賠償請求の裁判と、相嶋氏の妻ら家族が起こした裁判が進んでいる」、 「警視庁」、「経産省」、「起訴した検事ら」にとっては全くみっともない裁判だ。特に警視庁の捏造工作が民事訴訟の場で衆人に晒されることになることを期待している。 裁判官が「警視庁」などに忖度して筋を曲げることのないよう要請したい。
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大学(その11)(技術者教育の「国立高専」 東大18人 難関国立大に多数編入、“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉、理系トップ「東工大」出身女優が語るわが母校 “新名称”と“女子枠”創設への思い、定員割れで募集停止の恵泉女学園大 「御三家」も厳しい女子大 第7回) [社会]

大学については、昨年5月2日に取上げた。今日は、(その11)(技術者教育の「国立高専」 東大18人 難関国立大に多数編入、“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉、理系トップ「東工大」出身女優が語るわが母校 “新名称”と“女子枠”創設への思い、定員割れで募集停止の恵泉女学園大 「御三家」も厳しい女子大 第7回)である。

先ずは、本年1月30日付け日経ビジネスオンライン「技術者教育の「国立高専」 東大18人、難関国立大に多数編入」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00050/012400005/
・『国立高等専門学校(以下、高専)の卒業生の4割が、大学への編入などによって進学していることをご存じだろうか。高専は15歳から5年間一貫の技術者教育を行って、高度な専門性を持つ学生を輩出することを重要なミッションにしている。1962年から各地で設置が始まり、2022年度は高専制度創設60周年の節目の年。現在は全国に51校がある。 30年ほど前は、卒業生の7割から8割はそのまま就職していた。それが、ここ20年は就職が6割、進学が4割となっていて、東京大学をはじめとする難関国立大学に編入する学生も少なくない。理系人材が求められる中で、大学側も受け入れ体制を整えている。高専生の進学状況について見ていきたい』、「高専の卒業生の4割が、大学への編入などによって進学」、そんなに多くが「進学」しているとは初めて知った。
・『東大18人、東工大26人など国立大学に多数編入  高専は全国に51校あり、1学年に9000人以上が学んでいる。中学校を卒業して高専に入学した学生は、5年間の一貫教育によって一般的な教養と共に産業界で活躍できる専門的な知識や技術を身に付ける。 高専卒業後の進路は就職が6割、進学が4割。就職希望者の就職率は、毎年98%台から99%台と高い数字を誇る。進学については、各高専でさらに2年間高度な教育を受けることができる専攻科に進む学生が約14%、大学に主に3年次から編入する学生が約24%だ。 ここで、2021年4月に、全国の高専51校から主な大学に編入した実数を見てみたい。 300人以上を受け入れているのが、豊橋技術科学大学と長岡技術科学大学。高専の卒業生を編入で受け入れることを主な目的として設置された国立大学だ。高専からの編入が1学年の約8割を占めている。 それ以外の大学を見ると、国立大学が多いことが分かる。東京大学には18人、東京工業大学には26人が編入しているほか、旧帝大でも九州大学の57人をはじめ多くの編入生を受け入れている。 編入に当たっては高専での成績がベースになる。その上で、大学によって異なるが、推薦試験の場合は6月から7月ごろに面接が、学力試験を課す場合は8月から9月ごろに試験が行われる。 大学入試に臨むのであれば、受験勉強をする必要がある。それが、高専生の場合は、高専で5年間集中して学び、大学へは編入試験を経て3年次に進む。専門的な知識を深めた状態で3年次に編入してくる高専卒業生は、大学側にとっても「欲しい人材」になっているのだ。 国立大学が高専生の受け入れを増やしてきた一方で、私立大学でも学生確保を目指す動きがある。東京都市大学は23年度から、高専から3年次に編入する学生に対して、授業料の75%を減免する制度を始める。減免額は最大で221万4000円にも及ぶ。 私立大学の理系学部は、国立大学に比べると学費が高い。高専の卒業生に振り向いてもらえるように、今後同様の施策を打ち出す大学が他にも出てくるのではないだろうか』、「高専卒業後の進路は就職が6割、進学が4割。就職希望者の就職率は、毎年98%台から99%台と高い数字を誇る。進学については、各高専でさらに2年間高度な教育を受けることができる専攻科に進む学生が約14%、大学に主に3年次から編入する学生が約24%だ」、「編入に当たっては高専での成績がベースになる。その上で、大学によって異なるが、推薦試験の場合は6月から7月ごろに面接が、学力試験を課す場合は8月から9月ごろに試験が行われる」、「高専生の場合は、高専で5年間集中して学び、大学へは編入試験を経て3年次に進む。専門的な知識を深めた状態で3年次に編入してくる高専卒業生は、大学側にとっても「欲しい人材」になっているのだ」、「私立大学でも学生確保を目指す動きがある。東京都市大学は23年度から、高専から3年次に編入する学生に対して、授業料の75%を減免する制度を始める。減免額は最大で221万4000円にも及ぶ。 私立大学の理系学部は、国立大学に比べると学費が高い。高専の卒業生に振り向いてもらえるように、今後同様の施策を打ち出す大学が他にも出てくるのではないだろうか」、なるほど。
・『高専の役割の変化と社会からの要請  なぜ高専からの進学が増えたのか。東京都八王子市にある国立高等専門学校機構本部に進学の現状について聞いた。教育総括参事で教授の下田貞幸氏によると、高専の役割が変化してきた面があると指摘する。 「高専の制度は60年前、即戦力の中堅技術者を養成する目的でスタートしました。『大学を卒業するまで待っていられない』『ある程度知識も技術もある即戦力が早く欲しい』という企業からの声や、社会からの要請が出発点でした。 今は社会の要請が変わってきました。即戦力や中堅技術者といった言葉は使っていません。高度な知識や技術を身に付けるともに、社会の課題を解決する、社会を良くするために学ぶ場に位置づけられています。起業する学生も増えていますね」 かつては高専を卒業すると、就職する学生が7割から8割を占め、進学は2割に満たないくらいだった。それが、約30年前から20年前にかけて、各高専に専攻科ができたことで、進学する学生の割合が増えた。 併せて、高専生を編入で受け入れる大学が増えて、その人数も多くなってきた。大学側も高専の卒業生への期待が大きくなっているという。 「高専では15歳から専門教育が始まって、5年生の時点で大学卒業と同じ程度の力をつけることを目指して教育しています。実習や実験も多く経験していますし、卒業研究も5年生で取り組みます。 一通りのことをやった上で大学に編入すると、1年生から大学に入学している学生に比べて手も動き、知識もあるので、大学で研究のリーダー的な存在になっている学生も結構います。そういう意味で、大学側からは『高専から学生が欲しい』という声をよく聞くようになりました。 東京大学に編入できるような学生は、高専の中でもトップクラスであることは確かですね。そもそも高専には、中学校卒の段階で優秀な学生が来てくれている場合が多いです。そういう学生が育って、より高度な勉強や研究がしたいという意識を持つことで、東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」』、「「高専の制度は60年前、即戦力の中堅技術者を養成する目的でスタートしました。『大学を卒業するまで待っていられない』『ある程度知識も技術もある即戦力が早く欲しい』という企業からの声や、社会からの要請が出発点でした。 今は社会の要請が変わってきました。即戦力や中堅技術者といった言葉は使っていません。高度な知識や技術を身に付けるともに、社会の課題を解決する、社会を良くするために学ぶ場に位置づけられています」、「「高専では15歳から専門教育が始まって、5年生の時点で大学卒業と同じ程度の力をつけることを目指して教育しています。実習や実験も多く経験していますし、卒業研究も5年生で取り組みます。 一通りのことをやった上で大学に編入すると、1年生から大学に入学している学生に比べて手も動き、知識もあるので、大学で研究のリーダー的な存在になっている学生も結構います。そういう意味で、大学側からは『高専から学生が欲しい』という声をよく聞くようになりました。 東京大学に編入できるような学生は、高専の中でもトップクラスであることは確かですね。そもそも高専には、中学校卒の段階で優秀な学生が来てくれている場合が多いです。そういう学生が育って、より高度な勉強や研究がしたいという意識を持つことで、東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」、「東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」、とは大したものだ。
・『半数以上が大学に編入する高専も  高専全体では編入する学生の割合は約4割だが、それを超える高専もある。最も割合が高いのは、6割を超えている群馬県の群馬工業高専と新潟県の長岡工業高専だ。次いで、6割に近い兵庫県の明石工業高専が続く。千葉県の木更津工業高専と奈良県の奈良工業高専は5割を超え、九州では久留米工業高専が4割以上となっている。下田氏が次のように解説する。 「大都市圏の高専は大学に進む割合が高いですね。おそらく、大学の数が多いからではないでしょうか。長岡工業高専については、長岡技術科学大学が近くにあることも要因の一つだと思います」 さらに、高専の専攻科から、各大学の大学院に進む学生も多い。専攻科修了生の約4割が大学院に進学している。次の表は、21年4月の大学院への入学者数だ。 多い順に見ていくと、奈良先端科学技術大学院大学、東北大学、筑波大学、九州大学など、国立大学の大学院に多数進学していることが分かる。修了生は高専と専攻科で学んだことを、大学院でさらに深めていく。高度な知識と技術を持つ人材が、高専から育っているのだ』、「修了生は高専と専攻科で学んだことを、大学院でさらに深めていく。高度な知識と技術を持つ人材が、高専から育っているのだ」、期待できそうな人材だ。
・『あまり知られていない進学率の高さ  以上のように、高専からの大学編入や、その先の大学院への進学を選ぶ学生の割合は高い。にもかかわらず、学生の親世代も含め、一般にはあまり知られていないのではないだろうか。 高専のパンフレットを見ると、「卒業後の多彩なキャリアパス」として、学生の約4割が進学していることが書かれている。ただ、その記述はあっさりしている。下田氏によると、中学生に説明する際に、進学率のことはそれほど打ち出していないという。 「そういう道もありますよ、というくらいの説明しかしていないと思います。どこまで伝わっているのかは分かりません。そもそも高専自体がマイナーな存在です。中学3年生が全国で約100万人いる中で、高専に進むのは1%弱です。高校の普通科に比べると、まだまだ認識されているとは言えないですね。 高専は各都道府県の第2、第3の都市に設置されているケースが多いので、寮に入って親元を離れる学生が多いです。それも一つの要因なのか、新型コロナウイルス禍では志願者数が減りました。各高専では、それまで寮では2人部屋や3人部屋が主流だったところを、コロナ対応のために個室に変えるといった対応を取った場合もあります」 高専では現在、デジタル分野の教育に力を入れている。サイバーセキュリティー分野では、サイバー攻撃を防ぐ側として活躍できるよう、高度なレベルの教育を行っている。また、22年からは半導体人材の育成にも動き出した。AI(人工知能)やデータサイエンスなども含めて、各分野について拠点校が指定されている。女子学生が9割以上を占める、ビジネス関連の学科を置いている高専もある。「高専について理解してもらうために、教員が中学校に出向いて説明に回っています。他にも、小・中学校への出前授業や、科学技術フェアなどを開催して、高専の教育内容を知ってもらう機会をつくっています。教育内容と合わせて、高専の卒業生には多彩なキャリアパスがあることも、もっと知っていただきたいですね」 全国の高専生の4割を占める進学率は、今後も下がることはなさそうだ。15歳から専門的な知識と技術を身に付けた高専生への注目度は、今後企業だけでなく、大学からもより高まっていくのではないだろうか』、「現在、デジタル分野の教育に力を入れている。サイバーセキュリティー分野では、サイバー攻撃を防ぐ側として活躍できるよう、高度なレベルの教育を行っている。また、22年からは半導体人材の育成にも動き出した。AI(人工知能)やデータサイエンスなども含めて、各分野について拠点校が指定されている。女子学生が9割以上を占める、ビジネス関連の学科を置いている高専もある」、ずいぶん多様化しているようだ。

次に、2月5日付けAERAdot「“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023020200071.html
・『2024年度中をめどに統合を目指す東京工業大学(東工大)と東京医科歯科大学(医歯大)の統合計画案(統合案)は、1月19日に新しい統合大学名「東京科学大学」(仮称)が公表され、いよいよ現実味を帯びてきた。ネット上では「薄っぺらな軽すぎる大学名」「Fラン大学」などと揶揄され、両大学の統合を歓迎しないコメントが散見されるなど、大学の統合話にしては話題になっている。そこで、この統合案の妥当性を長い間、高等教育現場にいた者として考えてみることにした』、興味深そうだ。
・『Big Ten同士の統合は果たして実現するのか  統合案は1月中に、大学や学部の新設、大学内の教育的組織改革(改組)などの認可を判断する大学設置・学校法人審議会(設置審)に提出することも発表された。一般的に、設置審にかけるまでには文部科学省(文科省)との事前協議で計画案が了承されなければならないので、統合案は文科省からゴーサインが出されたものと考えられる。したがって今後、特別に問題がなければ両大学の統合は認可される公算が大きい。しかし、以前、勤務先の大学の学部と大学院の改組(博士課程設置など)で設置審の認可を受けた経験からすれば、両大学の統合には、いくつか問題があるように思う。詳しい統合案を読んでいないことを前提に以下、検証を試みたい。 この統合は、優れた大学として文科省から認められた指定国立大学法人同士なので、いやが上にも注目される。指定国立大学法人は、東北大学、筑波大学、東京大学、医歯大、東工大、一橋大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の10校で、北海道大学を除く旧帝国大学6校に筑波大学、医歯大、東工大、一橋大学の4校が加わって、まさにBig Ten Conference(米国カレッジスポーツ)状態となっているといえば揶揄に聞こえるかもしれない。 このなかで、名古屋大学は、正確には国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学で、岐阜大学はこの法人機構に所属し1法人機構2大学(傘下という意味でアンブレラ方式)となっている。そのほかの指定国立大学法人は1法人1大学方式である。ちなみに、国立大学法人は大学数でいえば86校あり、その組織形態のなかには上記の東海国立大学機構以外にも、北海道国立大学機構(小樽商科大学、帯広畜産大学、北見工業大学)、奈良国立大学機構(奈良教育大学、奈良女子大学)がある。なお、大学の再編・統合はそのほかでも進んでいる。) 今回の東工大と医歯大の統合は、前述のように指定国立大学法人同士であり、しかも1法人1大学を目指すという点で注目に値するが、以下に述べるように統合には疑問を感じる』、どういう「疑問」なのだろう。 
『言い尽くされた理念目標に目新しさは感じられない  ここで2022年10月14日に両大学で締結された4項目からなる基本合意のうち2項目目と3項目目の概要について言及したい。 2項目目には「多様な社会課題に立ち向かうために、理工学、医歯学、さらには情報学、リベラルアーツ・人文社会科学などを収斂させて獲得できる総合知に基づく『コンバージェンス・サイエンス』を展開します」と書かれている。また、3項目目には「教養教育と専門教育を有機的に関連させ、現代社会が直面する諸課題に対峙して、真に解決すべき 課題を設定し、解決へと導く役割を担う高度専門人材を輩出します」と謳っている。しかし、これらのことは他大学の改組の際にも言い尽くされてきた理念目標であり目新しさはどこにも感じられない。ちなみに俯瞰的・総合的教育研究を目指して、1974年に初めて広島大学に総合科学部が誕生し、その後にも他大学に同じような理念目標を掲げた学部が誕生している。 今回の東工大と医歯大の統合で、この2項目目と3項目目をどう達成するのか、特に人文社会系の教育研究をどう取り入れるのか、両大学とも理系の単科大学であることを考えると極めて心配になる』、「特に人文社会系の教育研究をどう取り入れるのか、両大学とも理系の単科大学であることを考えると極めて心配になる」、その通りだ。
・『専門バカをつくらない、は何を意味するのか  2022年11月1日、両大学の学長の話をテレビで長時間、聴いた。両大学とも、単科大学としての危機意識を持ち、理工学と医歯学を連携させて、新領域分野を創生、地球環境問題、感染症、少子高齢社会などの新たな地球規模の問題解決を目指すという。このことは、前述の基本合意の2項目目、3項目目を易しく言い換えているのだが、この目標も、以前から言い尽くされてきた大きなテーマで、まったくもって新しさを感じない。しかも、理工学と医歯学の連携は以前から、他大学内及び他大学間でも行われてきた。だから、両大学長の説明からは統合する確固たる理由が残念ながら伝わってこず、統合の理由としては説得力に欠ける。 地球規模の問題を解決するには、理工医歯系分野だけでは解決できず、人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が欠かせない。東工大学長も、“専門バカ”をつくらないという趣旨の発言を表立ってしていたことからも、両大学ともその視点の重要性を認めている。しかし、その視点は両大学の統合で達成されると考えているのか甚だ疑問である。言い過ぎかもしれないが、東工大学長の公言は、単科大学の危機意識、「職業大学からの脱皮」「職工教育の反省」とも受け取れる。 しかし、人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が重要というなら、なぜ既存の「四4大学連合」(東工大、医歯大、一橋大学、東京外国語大学)を足掛かりに4大学統合を目指さないのか分からない。これが難しいので、今回、東工大と医歯大の統合に安易に走ったとしか思えない。さらにいえば、政府が創設した国際卓越研究大学制度(2024年度から年間数百億円(1校あたり)を支援予定)に選定され易くするための統合といわれても仕方あるまい。これでは、理系寄りの中途半端な総合大学しか誕生しない最悪のシナリオになってしまうのではないかと心配する』、「“専門バカ”をつくらないという趣旨の発言を表立ってしていたことからも、両大学ともその視点の重要性を認めている。しかし、その視点は両大学の統合で達成されると考えているのか甚だ疑問である」、「人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が重要というなら、なぜ既存の「四4大学連合」(東工大、医歯大、一橋大学、東京外国語大学)を足掛かりに4大学統合を目指さないのか分からない。これが難しいので、今回、東工大と医歯大の統合に安易に走ったとしか思えない」、「政府が創設した国際卓越研究大学制度・・・を支援予定)に選定され易くするための統合といわれても仕方あるまい。これでは、理系寄りの中途半端な総合大学しか誕生しない最悪のシナリオになってしまうのではないかと心配する」、全く同感である。
・『日本は高校からすぐに医歯学部に入学する  テレビ番組での、医歯大学長の「日本は高校からすぐに医歯学部に入学する」という発言にも私は注目。この発言は直接統合の議論に関係しないのだが、統合理由として掲げた俯瞰的教育研究がなぜ日本ではなかなか進まないのかの理由として述べられた言葉だ。あまりにも人ごとの発言ともいえるが、日本の教育を考えるうえで極めて重要な指摘である。この発言は「米国流の日本版メディカルスクール化(4年制大学卒業後に医歯学部に入学)」を意味するようにも思う。大学が率先して医歯学部入学制度を変えてほしい。日本のメディカルスクール化は日本社会の「偏差値教育」の打開につながるかもしれない。幅広い教養を備えた専門家を育成する国家的な教育改革が求められるのだが』、「米国流の日本版メディカルスクール化・・・」を意味するようにも思う。大学が率先して医歯学部入学制度を変えてほしい。日本のメディカルスクール化は日本社会の「偏差値教育」の打開につながるかもしれない。幅広い教養を備えた専門家を育成する国家的な教育改革が求められる」、その通りだ。
・『統合案の先、将来は4大学統合の議論を  今回の東工大と医歯大の統合は、基本合意1項目目「両大学の尖った研究をさらに推進」を優先する、研究を主眼とした統合といえるのではないか。確かに、両大学の研究レベルは高く、統合することにより医療機器、医療材料、医療生命学、医療化学などの分野において格段の進歩が期待できるだろう。この統合は、世界的競争に打ち勝つ新たな挑戦ともいえる。文科省もそれを今回の統合に期待しているのかもしれない。 しかし、大学の役割はむしろ教育にあるといっても過言ではない。そのことを上で述べたつもりだ。公表されている統合案を設置審にかけるので、いまさら既存の四大学連合を足掛かりに、4大学統合を目指すのはもう無理なのだが、統合案の理念目標を達成するには将来的には4大学統合が不可欠な気がする。1法人1大学にするのか、それともアンブレラ方式にするのか、今現在、我が国の大学の再編・統合が進んでいるので、その進捗状況を見極める必要もある。いずれにしても大学の再編・統合は教育改革を見据えて考える必要があるように思う。 和田眞(わだ・まこと)/1946年生まれ。徳島大学名誉教授。理学博士(東京工業大学)。徳島大学大学院教授や同大学理事・副学長(教育担当)を務めた。専門は有機化学。現在、雑誌やWebメディアに「身の回りの化学」を題材に執筆している』、「公表されている統合案を設置審にかけるので、いまさら既存の四大学連合を足掛かりに、4大学統合を目指すのはもう無理なのだが、統合案の理念目標を達成するには将来的には4大学統合が不可欠な気がする。1法人1大学にするのか、それともアンブレラ方式にするのか、今現在、我が国の大学の再編・統合が進んでいるので、その進捗状況を見極める必要もある。いずれにしても大学の再編・統合は教育改革を見据えて考える必要があるように思う」、全面的に同意したい。

第三に、1月25日付けAERAdot「理系トップ「東工大」出身女優が語るわが母校 “新名称”と“女子枠”創設への思い」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023012400057.html?page=1
・『2024年度の統合を目指す東京工業大学(東工大)と東京医科歯科大学の新大学の名称が「東京科学大学」となると発表された。東工大は、同年に女性のみが出願できる「女子枠」を創設することも決まっており、大学改革を進めている。国立理系トップの東工大は女子学生が13%しかおらず、「男女差」が課題となっていた。その一方で、女子枠創設には、入試の平等性が損なわれるのでは、など疑問も上がっている。大学統合や女子枠創設について、卒業生はどう感じているのか。東工大環境・社会理工学院を卒業後、女優として活躍する山崎丹奈さんに大学への思いを聞いた。 「統合や女子枠の一報を聞いたときには、本当に驚きました。大学側が課題を感じた上で、新たな一歩を踏み出そう、改革しようという意識を感じました。東京科学大学、という名称については、シンプルで覚えやすいと思います。自分が両大学を知っている歴史以上にこれからの大学の未来は長いと思うので、新名称がなじむように、これからも変わりなくその専門性を磨いていってほしいです」 こう話すのは、2013年に東工大環境・社会理工学院(土木・環境工学系)を卒業した、女優の山崎丹奈さん(31)。学士課程(学部)の女子学生が約13%しかいないと言われる東工大において、“貴重”な女性の卒業生だ。さらに卒業生の多くが理系分野の研究職、技術職に進む中で、俳優として芸能界に入った山崎さんの経歴はかなり異色と言える。そんな山崎さんからみて、母校の改革はどう映っているのだろうか。 「確かに、入り口の入学者数を増やせば、出口も増えるわけで、女性の研究者や技術者も増えるでしょう。ただ、その仕事をするにあたって女性が働きやすい環境が整っているかといえば、受け入れ先の組織や企業で変わってくると思います。もちろん女性枠は大学ができる対応の一つだと思いますが、女性の人生をどう考えるか、という意味でソフト面でもっとやれることはあるのではないでしょうか。女子学生が増えても、たとえば、大学内の研究環境が改善しなければ、状況が良くなったとは言えないと思います」』、「女優の山崎丹奈さん」は「2013年に東工大環境・社会理工学院(土木・環境工学系)を卒業した・・・学士課程(学部)の女子学生が約13%しかいないと言われる東工大において、“貴重”な女性の卒業生だ。さらに卒業生の多くが理系分野の研究職、技術職に進む中で、俳優として芸能界に入った山崎さんの経歴はかなり異色」、この記事で「東工大」「卒業生」のなかに「女優」がいることを初めて知り、驚いた。
・『実際、山崎さんは過酷な研究環境に直面したことが、将来を考えるきっかけになった。山崎さんによると、当時の東工大では学部生の“ほぼ全員”が大学院に進学していたという。土木・環境工学科(当時)でサンゴ礁の勉強をしていた山崎さんも、最初は大学院で研究を続ける道を選んだ。 だが、明確な終わりがなく、突き詰められるだけ突き詰められてしまう研究という仕事は、山崎さんにとってハードだった。夜通し大学にいることも日常茶飯事だったという。さらに、女子学生は山崎さん1人だった時期もある。研究室に泊まることは避けたいと思い、徒歩で通える場所に引っ越したほどだった。深夜まで研究室に残る生活を強制されたわけではないが、研究を突き詰めようと思えば、“自己判断”でそうせざるを得なかった。 「女子が1人で周りがすべて男性で研究室に徹夜という状況は、今振り返ると、疑問に思うところはあります。課題に時間がかかったことは私の要領の悪さもあると思いますが、もし男性だったら引っ越さなくて済んだのかもしれないなと思います。社会に出てからは、よく『もったいない』という言われ方をされました。専門分野に進まないなんてもったいない、芸能界に入るなんてもったいない、という意味なんだろうと理解しています。ただ、この挫折があったから、自分が研究に対するストレス耐性が足りないことに気づき、女優という別の道に進むきっかけにもなったので、全てがマイナスだとは思っていません」 東工大が「女子枠」の創設を発表したのは、昨年11月のこと。25年度までに学校推薦型選抜と総合型選抜(AO入試)で計143人の「女子枠」を創設する。これにより、現在は学士課程(学部)に約13%しかいない女子学生の比率を20%以上に高めるという。女子枠は24年度入試から物質理工など4学院(学部)で先行的に開始する。総募集人数は変更せず、女子を増員した分は、一般選抜枠の人数を縮小することで調整するという』、「最後の部分にある略歴」を見ると、「幼少期は米ペンシルベニア州で育つ」と帰国子女のようだ。「土木・環境工学科(当時)でサンゴ礁の勉強をしていた山崎さんも、最初は大学院で研究を続ける道を選んだ。 だが、明確な終わりがなく、突き詰められるだけ突き詰められてしまう研究という仕事は、山崎さんにとってハードだった。夜通し大学にいることも日常茶飯事だったという・・・研究室に泊まることは避けたいと思い、徒歩で通える場所に引っ越したほどだった。深夜まで研究室に残る生活を強制されたわけではないが、研究を突き詰めようと思えば、“自己判断”でそうせざるを得なかった。 「女子が1人で周りがすべて男性で研究室に徹夜という状況は、今振り返ると、疑問に思うところはあります。課題に時間がかかったことは私の要領の悪さもあると思いますが、もし男性だったら引っ越さなくて済んだのかもしれないなと思います・・・自分が研究に対するストレス耐性が足りないことに気づき、女優という別の道に進むきっかけにもなったので、全てがマイナスだとは思っていません」、なるほど。
・『大学側は公式HPで「女子枠」創設の背景について「ダイバーシティ&インクルージョン(編集部注・多様性と受容)の取り組みの一環」「理工系分野における女性研究者・技術者を増やすこと」などとしている。日本の大学学部の女子学生の理工系分野の入学者は7%と、経済協力開発機構(OECD)加盟国(同15%)に比べて、極端に低い。こうした状況を是正しようと、名古屋大学など他の国立大学でも「女子枠」を設ける動きはある。 だが、これに対してSNS上では「女性の方が受験で有利になるのは逆差別だ」「女性の社会進出とは別の問題」など疑問視する声も上がっている。 大学側の意図や世間の反応について、山崎さんはどう思っているのだろうか。 「入試は受験生にとって、命がけといっても過言ではありません。推薦枠とはいえ女子限定で入試を行うことで、男子の一般受験生がないがしろにされていると感じないかは心配です。また、女子枠で入った生徒たちに対して、『男なら落ちていたのに女子だから受かった』など心無い言葉を投げかられないかという不安も残ります。大学側が強調する“多様性”というのも、すごく難しい言葉で、どのようにも使えてしまう。多様性は性差だけではありません。性差以外の“多様性”についても配慮しているのか、という点は考えるべきだと思います。制度を作ったら終わり、ではなく大学側はその後のフォローも必要なのではないでしょうか」 山崎さんは大学院を1年で中退し、芸能事務所に所属しながら旅行系の一般企業に就職。会社員を1年経験した後、俳優に専念して活動してきた。最近では、東京理科大卒の三浦透子さんなども活躍し、「リケジョ女優」という言葉も生まれた。山崎さんが東工大で学んだことで、俳優として生かされている部分はあるのだろうか。 「正直言って、研究内容という点ではないですね(笑)。ただ、勉強に対する姿勢だったり、課題に直面したときの精神面だったりは、大学で鍛えられたことは大きいと感じています。ムチャぶりのスケジュールになっても、何とかなるとか(笑)。あと会社員を経験したことは、組織や社会の仕組みを知ることができ、社会で生きる一人の人間として成長させてもらいました。これは演技をする上で役に立っています。女性の働き方、と言ってもそれこそ多様です。東工大の女子学生には、将来の道はひとつではないことも伝えたいと思います」 女子だから、理系だから、ということは本質ではない――唯一無二のキャリアを歩んできた山崎さんだからこそのメッセージだろう。 ◎山崎丹奈(やまざき・にな) 1991年生まれ。幼少期は米ペンシルベニア州で育つ。桐蔭学園を卒業後、東工大土木・環境工学科(当時)に入学。2009年に「ミス東工大グランプリ」に輝く。2012年に女優デビュー。17年に映画「トリノコシティ」で主演。その他、「母になる」(日本テレビ系)、「マザー・ゲーム」(TBS系)など多くのドラマに出演。一児の母として育児にも奮闘中』、「「女子枠」創設の背景について「ダイバーシティ&インクルージョン・・・の取り組みの一環」としているが、「性差以外の“多様性”についても配慮しているのか、という点は考えるべきだと思います。制度を作ったら終わり、ではなく大学側はその後のフォローも必要なのではないでしょうか」、なるほど。「女性の働き方、と言ってもそれこそ多様です。東工大の女子学生には、将来の道はひとつではないことも伝えたいと思います」 女子だから、理系だから、ということは本質ではない――唯一無二のキャリアを歩んできた山崎さんだからこそのメッセージだろう」、今後の活躍を期待したい。

第四に、4月19日付け日経ビジネスオンライン「定員割れで募集停止の恵泉女学園大 「御三家」も厳しい女子大 第7回」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00050/041200007/
・『恵泉女学園大(東京都多摩市)は2023年度の入試終了後の3月22日、今年の入学生を最後に学生の募集を停止すると発表した。入学者数の定員割れが続いたことが理由だが、他の多くの女子大も志願者を大幅に減らしている。23年度入試の結果から、女子大における志願者数の減少や、女子受験生の学部選びの変化について現状を見ていく』、興味深そうだ。
・『定員割れが続いていた恵泉女学園大  恵泉女学園大のホームページに掲載されている学生募集停止のお知らせ 「このたび、学校法人恵泉女学園は、2024年度以降の恵泉女学園大学・大学院の学生募集停止を、2023年3月20日開催の理事会において決定いたしました。(中略)18歳人口の減少、とくに近年は共学志向など社会情勢の変化の中で、入学者数の定員割れが続き、大学部門の金融資産を確保・維持することが厳しくなりました。これまで大学存続のためにあらゆる可能性を模索し、将来のありかたについて慎重に検討を重ねてまいりましたが、このたび閉学を前提とした募集停止という苦渋の決断に至りました」 これは3月22日に学校法人恵泉女学園と恵泉女学園大がホームページで発表した、学生の募集停止のお知らせだ。 恵泉女学園大は1988年に開学。東京都多摩市にキャンパスがあり、人文学部と人間社会学部、それに大学院を擁している。2022年5月1日現在のデータを見ると、2つの学部を合わせた定員1188人に対し、在籍する学生数は1028人で、定員率は86.5%となっている。前年同時期の定員率94.0%から7.5ポイントも下げていた。 入学者数の推移を見ると、13年度は2学部で466人だったが、翌14年度には346人に減少し定員割れする。そこから減少傾向は続き、17年度からは入学定員を減らしたものの、22年度は定員290人に対し入学者数は162人で、入学定員充足率は55.8%となった。 東京都内の女子大では、町田市の東京女学館大が17年に閉学した。大学入試に関する研究や情報提供を行う大学通信(東京・千代田)の井沢秀情報調査・編集部長は、恵泉女学園大の募集停止の背景を次のように分析する。 「私立大学は地方も厳しい状況ですが、東京都内でも郊外にある大学は学生を集めるのに苦慮しています。特に女子の場合、都内であればできるだけ都心の方がいいと考える受験生も多いでしょう。また、恵泉女学園大はとても素晴らしい教育を行っている大学ですが、人文系の学部しかない点も、入学者数が減少していた要因ではないでしょうか」』、「定員」を大幅引き下げたのに、「入学者」がそれ以上に減少してしまう状況では、「閉学を前提とした募集停止」はやむを得ないようだ。
・『女子大「御三家」でも志願者数が大幅減   募集停止を決めたことで恵泉女学園大が注目されたが、女子大を取り巻く環境は大きく変わってきている。特に23年度入試では、難関女子大が志願者数を減らした。次の表は、大学通信が調査した、東日本と西日本それぞれで「御三家」と呼ばれる女子大の志願者数だ。 東の御三家は津田塾大、東京女子大、日本女子大。いずれも志願者数は減少していて、特に東京女子大は前年より1486人減、前年比で83.2%と大幅に志願者数を減らした。学習院女子大、共立女子大、実践女子大、昭和女子大、清泉女子大などが前年よりも志願者数を増やしている中で、3大学の減少が目立っている。 一方、西の御三家である京都女子大、同志社女子大、神戸女学院大も志願者数が減少している。特に同志社女子大は1137人の減少、神戸女学院大は前年比61.8%と減少率が目立っている。 23年度入試では、私立大学全体で志願者数を減らした。前年比で数%の減少になる見込みで、4年連続の減少となる。その状況下で女子大の志願者数が減少するのも不思議ではないが、御三家クラスの減少幅が大きくなったのには、さまざまな要因が考えられる』、「東日本と西日本それぞれで「御三家」と呼ばれる女子大の志願者数」が減少したのは、何故なのだろう。
・『女子受験生の法学部人気が上昇  難関女子大が大きく志願者数を減らしたことについて、井沢部長は次のように指摘する。 「女子大は人文系の学部が中心ですが、以前のような人気がなくなったと言えます。人文系の学部を選ぶにしても、総合大学に進む傾向が強まりました。また、人文系以外の学部を選ぶ女子受験生が増えたという変化も出てきています」 大学通信の調査によると、23年度入試では難関大学における女子の合格者数に、これまでにない変化が見られるという。その1つが、法学部への進学だ。文系最難関であり、主に法学部に進学する東京大の文Iでは、女子の占有率が30.5%に上昇した。 「東京大では主に文学部に進学する文Ⅲで、女子の占有率は毎年40%程度と高い数字を出していました。文Ⅲが例年通りの占有率を見せている一方で、文Iでは21年度が22.8%、22年度が25.9%と右肩上がりとなり、23年度は30%を超えました。この数字はおそらく史上最高です。首都圏の女子校に話を聞いても法学部志向の生徒が増えているのは間違いなく、優秀な女子の進学先が変わってきたと言えます」 私立難関大学の法学部合格者数を高校別に見ても、トップは女子校が占めている。早稲田大では桜蔭、慶応義塾大では頌栄女子学院がトップ。さらに明治大では埼玉県立浦和第一女子、中央大では豊島岡女子学園が最も合格者を多く出した。女子校の法学部人気の高まりは顕著だ。 「法学部に進学した場合、想定される就職先の1つが公務員です。国家公務員の上級職に当たる総合職だけでなく、都道府県庁や政令指定都市、東京23区などの上級職もいろいろな仕事ができますので、就職先として魅力を感じているのではないでしょうか」と井沢部長は話す。 また、最難関でもある医学部の人気も根強い。東京大理Ⅲの女子占有率も年々上昇していて、23年度は24.7%となった。21年度の15.3%に比べると、2年間で10%近くも上昇したことになる。医学部は国立・私立ともに女子の人気は高く、将来を考えた結果として、医学部や法学部への進学が増えているのではないかと考えられる。 「医師や公務員は、女性にとっては結婚や出産を経ても影響がないキャリアと言えます。昔のように女子大で花嫁修業をするといった感覚は全くなくなりました。女子生徒自身もそうですし、親の世代の考え方も変わってきています。このような変化の中で、恵泉女学園大の募集停止は象徴的なケースと言えるのではないでしょうか」(井沢部長)』、「「医師や公務員は、女性にとっては結婚や出産を経ても影響がないキャリアと言えます。昔のように女子大で花嫁修業をするといった感覚は全くなくなりました。女子生徒自身もそうですし、親の世代の考え方も変わってきています。このような変化の中で、恵泉女学園大の募集停止は象徴的なケース」、それにしても、難関の「東大文Iでは21年度が22.8%、22年度が25.9%と右肩上がりとなり、23年度は30%を超えました」、「東京大理Ⅲの女子占有率も年々上昇していて、23年度は24.7%となった。21年度の15.3%に比べると、2年間で10%近くも上昇」、いわゆる花嫁修業のための進学が減っているのだろう。
・『女子大の理系学部新設は生き残りにつながるのか  国立や私立に限らず、女子大では新たな動きも起きている。それは理系学部の新設だ。背景には国の要請もあり、実際に動き始めている。 国立では奈良女子大が、22年4月に工学部を女子大で初めて開設した。24年4月にはお茶の水女子大が共創工学部(仮称)を新設する予定だ。その名称には、「工学と人文学・社会科学の知が協働し、共に未来の環境、社会、文化を創る」という意味が込められているという。また、私立では日本女子大が建築デザイン学部(仮称)を24年4月に開設を予定している。 理系人材の育成強化を掲げる文部科学省は22年度、既存学部を再編して理系学部の新設や拡充をする大学を財政支援しようと、3000億円の基金を創設した。このため、女子大でもさらに理系学部を新設する動きが出てくることも予想される。 ただ、23年度入試で2年目を迎えた奈良女子大工学部の前期の志願倍率は、前年度の6.3倍から2.7倍へと大幅に下がった。「理系学部を新設することが、女子大が生き残る道になるのかどうかは不透明」と井沢部長は指摘する。 「工学部など、これまでの女子大にない学部をつくる動きもありますが、工学を学ぶにしても、ある程度の規模感が必要になります。奈良女子大の場合は奈良先端科学技術大学院大学と共同で取り組んでいるので、理系の教員の充実は図れるとは思います。ただ、設備面などを考えると、やはり女子大では総合大学や理系の大学にはかなわない部分が出てくるでしょう。 女子大には就職率の良さや、面倒見の良さがあります。そういう面に引かれる受験生や、女子教育を望む受験生や保護者も一定数います。東京の郊外にある女子大や、関西の女子大が苦戦しているのは事実ですが、女子大の役割はまだまだあると思っています」(井沢部長) 女子大離れがこのまま進んでいくのかどうか、来年度以降の動向に注視したい』、「設備面などを考えると、やはり女子大では総合大学や理系の大学にはかなわない部分が出てくるでしょう」、なるほど。「女子大の役割はまだまだあると思っています」、希望的観測に過ぎないようだ。やはり、女子大の未来は厳しいと見るべきだろう。
タグ:「「高専の制度は60年前、即戦力の中堅技術者を養成する目的でスタートしました。『大学を卒業するまで待っていられない』『ある程度知識も技術もある即戦力が早く欲しい』という企業からの声や、社会からの要請が出発点でした。 今は社会の要請が変わってきました。即戦力や中堅技術者といった言葉は使っていません。高度な知識や技術を身に付けるともに、社会の課題を解決する、社会を良くするために学ぶ場に位置づけられています」、「「高専では15歳から専門教育が始まって、5年生の時点で大学卒業と同じ程度の力をつけることを目指して教 大学 (その11)(技術者教育の「国立高専」 東大18人 難関国立大に多数編入、“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉、理系トップ「東工大」出身女優が語るわが母校 “新名称”と“女子枠”創設への思い、定員割れで募集停止の恵泉女学園大 「御三家」も厳しい女子大 第7回) 日経ビジネスオンライン「技術者教育の「国立高専」 東大18人、難関国立大に多数編入」 「高専の卒業生の4割が、大学への編入などによって進学」、そんなに多くが「進学」しているとは初めて知った。 「高専卒業後の進路は就職が6割、進学が4割。就職希望者の就職率は、毎年98%台から99%台と高い数字を誇る。進学については、各高専でさらに2年間高度な教育を受けることができる専攻科に進む学生が約14%、大学に主に3年次から編入する学生が約24%だ」、「編入に当たっては高専での成績がベースになる。その上で、大学によって異なるが、推薦試験の場合は6月から7月ごろに面接が、学力試験を課す場合は8月から9月ごろに試験が行われる」、 「高専生の場合は、高専で5年間集中して学び、大学へは編入試験を経て3年次に進む。専門的な知識を深めた状態で3年次に編入してくる高専卒業生は、大学側にとっても「欲しい人材」になっているのだ」、「私立大学でも学生確保を目指す動きがある。東京都市大学は23年度から、高専から3年次に編入する学生に対して、授業料の75%を減免する制度を始める。減免額は最大で221万4000円にも及ぶ。 私立大学の理系学部は、国立大学に比べると学費が高い。高専の卒業生に振り向いてもらえるように、今後同様の施策を打ち出す大学が他にも出 てくるのではないだろうか」、なるほど。 「「高専の制度は60年前、即戦力の中堅技術者を養成する目的でスタートしました。『大学を卒業するまで待っていられない』『ある程度知識も技術もある即戦力が早く欲しい』という企業からの声や、社会からの要請が出発点でした。 今は社会の要請が変わってきました。即戦力や中堅技術者といった言葉は使っていません。高度な知識や技術を身に付けるともに、社会の課題を解決する、社会を良くするために学ぶ場に位置づけられています」、 「「高専では15歳から専門教育が始まって、5年生の時点で大学卒業と同じ程度の力をつけることを目指して教育しています。実習や実験も多く経験していますし、卒業研究も5年生で取り組みます。 一通りのことをやった上で大学に編入すると、1年生から大学に入学している学生に比べて手も動き、知識もあるので、大学で研究のリーダー的な存在になっている学生も結構います。そういう意味で、大学側からは『高専から学生が欲しい』という声をよく聞くようになりました。 東京大学に編入できるような学生は、高専の中でもトップクラスであることは確かですね。そもそも高専には、中学校卒の段階で優秀な学生が来てくれている場合が多いです。そういう学生が育って、より高度な勉強や研究がしたいという意識を持つことで、東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」、なるほど。 「修了生は高専と専攻科で学んだことを、大学院でさらに深めていく。高度な知識と技術を持つ人材が、高専から育っているのだ」、期待できそうな人材だ。 「現在、デジタル分野の教育に力を入れている。サイバーセキュリティー分野では、サイバー攻撃を防ぐ側として活躍できるよう、高度なレベルの教育を行っている。また、22年からは半導体人材の育成にも動き出した。AI(人工知能)やデータサイエンスなども含めて、各分野について拠点校が指定されている。女子学生が9割以上を占める、ビジネス関連の学科を置いている高専もある」、ずいぶん多様化しているようだ。 育しています。実習や実験も多く経験していますし、卒業研究も5年生で取り組みます。 一通りのことをやった上で大学に編入すると、1年生から大学に入学している学生に比べて手も動き、知識もあるので、大学で研究のリーダー的な存在になっている学生も結構います。そういう意味で、大学側からは『高専から学生が欲しい』という声をよく聞くようになりました。 東京大学に編入できるような学生は、高専の中でもトップクラスであることは確かですね。そもそも高専には、中学校卒の段階で優秀な学生が来てくれている場合が多いです。そういう学生が 育って、より高度な勉強や研究がしたいという意識を持つことで、東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」、「東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」、とは大したものだ。 AERAdot「“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉」 どういう「疑問」なのだろう。 「特に人文社会系の教育研究をどう取り入れるのか、両大学とも理系の単科大学であることを考えると極めて心配になる」、その通りだ。 「“専門バカ”をつくらないという趣旨の発言を表立ってしていたことからも、両大学ともその視点の重要性を認めている。しかし、その視点は両大学の統合で達成されると考えているのか甚だ疑問である」、「人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が重要というなら、なぜ既存の「四4大学連合」(東工大、医歯大、一橋大学、東京外国語大学)を足掛かりに4大学統合を目指さないのか分からない。これが難しいので、今回、東工大と医歯大の統合に安易に走ったとしか思えない」、 「政府が創設した国際卓越研究大学制度・・・を支援予定)に選定され易くするための統合といわれても仕方あるまい。これでは、理系寄りの中途半端な総合大学しか誕生しない最悪のシナリオになってしまうのではないかと心配する」、全く同感である。 「米国流の日本版メディカルスクール化・・・」を意味するようにも思う。大学が率先して医歯学部入学制度を変えてほしい。日本のメディカルスクール化は日本社会の「偏差値教育」の打開につながるかもしれない。幅広い教養を備えた専門家を育成する国家的な教育改革が求められる」、その通りだ。 「公表されている統合案を設置審にかけるので、いまさら既存の四大学連合を足掛かりに、4大学統合を目指すのはもう無理なのだが、統合案の理念目標を達成するには将来的には4大学統合が不可欠な気がする。1法人1大学にするのか、それともアンブレラ方式にするのか、今現在、我が国の大学の再編・統合が進んでいるので、その進捗状況を見極める必要もある。いずれにしても大学の再編・統合は教育改革を見据えて考える必要があるように思う」、全面的に同意したい。 AERAdot「理系トップ「東工大」出身女優が語るわが母校 “新名称”と“女子枠”創設への思い」 「女優の山崎丹奈さん」は「2013年に東工大環境・社会理工学院(土木・環境工学系)を卒業した・・・学士課程(学部)の女子学生が約13%しかいないと言われる東工大において、“貴重”な女性の卒業生だ。さらに卒業生の多くが理系分野の研究職、技術職に進む中で、俳優として芸能界に入った山崎さんの経歴はかなり異色」、この記事で「東工大」「卒業生」のなかに「女優」がいることを初めて知り、驚いた。 「最後の部分にある略歴」を見ると、「幼少期は米ペンシルベニア州で育つ」と帰国子女のようだ。「土木・環境工学科(当時)でサンゴ礁の勉強をしていた山崎さんも、最初は大学院で研究を続ける道を選んだ。 だが、明確な終わりがなく、突き詰められるだけ突き詰められてしまう研究という仕事は、山崎さんにとってハードだった。 夜通し大学にいることも日常茶飯事だったという・・・研究室に泊まることは避けたいと思い、徒歩で通える場所に引っ越したほどだった。深夜まで研究室に残る生活を強制されたわけではないが、研究を突き詰めようと思えば、“自己判断”でそうせざるを得なかった。 「女子が1人で周りがすべて男性で研究室に徹夜という状況は、今振り返ると、疑問に思うところはあります。課題に時間がかかったことは私の要領の悪さもあると思いますが、もし男性だったら引っ越さなくて済んだのかもしれないなと思います・・・自分が研究に対するストレス耐性が足り ないことに気づき、女優という別の道に進むきっかけにもなったので、全てがマイナスだとは思っていません」、なるほど。 「「女子枠」創設の背景について「ダイバーシティ&インクルージョン・・・の取り組みの一環」としているが、「性差以外の“多様性”についても配慮しているのか、という点は考えるべきだと思います。制度を作ったら終わり、ではなく大学側はその後のフォローも必要なのではないでしょうか」、なるほど。 「女性の働き方、と言ってもそれこそ多様です。東工大の女子学生には、将来の道はひとつではないことも伝えたいと思います」 女子だから、理系だから、ということは本質ではない――唯一無二のキャリアを歩んできた山崎さんだからこそのメッセージだろう」、今後の活躍を期待したい。 日経ビジネスオンライン「定員割れで募集停止の恵泉女学園大 「御三家」も厳しい女子大 第7回」 「定員」を大幅引き下げたのに、「入学者」がそれ以上に減少してしまう状況では、「閉学を前提とした募集停止」はやむを得ないようだ。 「東日本と西日本それぞれで「御三家」と呼ばれる女子大の志願者数」が減少したのは、何故なのだろう。 「「医師や公務員は、女性にとっては結婚や出産を経ても影響がないキャリアと言えます。昔のように女子大で花嫁修業をするといった感覚は全くなくなりました。女子生徒自身もそうですし、親の世代の考え方も変わってきています。このような変化の中で、恵泉女学園大の募集停止は象徴的なケース」、 それにしても、難関の「東大文Iでは21年度が22.8%、22年度が25.9%と右肩上がりとなり、23年度は30%を超えました」、「東京大理Ⅲの女子占有率も年々上昇していて、23年度は24.7%となった。21年度の15.3%に比べると、2年間で10%近くも上昇」、いわゆる花嫁修業のための進学が減っているのだろう。 「設備面などを考えると、やはり女子大では総合大学や理系の大学にはかなわない部分が出てくるでしょう」、なるほど。「女子大の役割はまだまだあると思っています」、希望的観測に過ぎないようだ。やはり、女子大の未来は厳しいと見るべきだろう。
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相続税・相続一般(その1)(「戸籍謄本全部集めて」「お父さんをおんぶして2階まで来て」「口座情報は開示できない」…銀行に無理難題を押し付けられた森永卓郎(65)が陥った“相続地獄”、70代母の資産総額、1億円超だが…50代息子「相続対策のため、母との同居を開始する」「ごめんだわ」妻の即レス【争続事例解説】) [社会]

今日は、相続税・相続一般(その1)(「戸籍謄本全部集めて」「お父さんをおんぶして2階まで来て」「口座情報は開示できない」…銀行に無理難題を押し付けられた森永卓郎(65)が陥った“相続地獄”、70代母の資産総額、1億円超だが…50代息子「相続対策のため、母との同居を開始する」「ごめんだわ」妻の即レス【争続事例解説】)である。

先ずは、本年5月6日付け文春オンライン「「戸籍謄本全部集めて」「お父さんをおんぶして2階まで来て」「口座情報は開示できない」…銀行に無理難題を押し付けられた森永卓郎(65)が陥った“相続地獄”」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/62294
・『実父が亡くなった後、銀行口座、証券口座を探し当て相続税を申告するまでの10カ月間。ここでは経済アナリスト・森永卓郎が父が亡くなった後、悲しむ間もなく相続申告を行わざるを得ない苦難の日々を描いた『相続地獄』より一部抜粋してお届けする(全2回の1回目/続きを読む)』、興味深そうだ。
・『申告期限の10カ月を過ぎると脱税で立件される可能性も……  父が亡くなってから、10カ月にわたって続く「相続地獄」第1章が始まった。遺産分割協議や相続税の申告は、死去から10カ月以内に完了しなければならないと法律で決まっている。10カ月というと「1年近くあるじゃないか」と思うかもしれないが、本当にあっという間だ。皮膚感覚では「一瞬」というくらいあっという間だった。 横着して申告期限の10カ月を超過すると、脱税で立件される可能性がある。私は「経済アナリスト」という肩書きでテレビやラジオに出演し、日本中で講演会をこなし、大学の教員も務めている。立場上、脱税で捕まれば職業生命に関わる。だから正直言って、とても焦った。 相続税を節税しようとは思わなかった。天から降ってきたようなお金だからだ。ただ、とにかく期限内に正確に申告しなければ、自分の身が危うくなる。そこで父の死去直後から、相続税について猛勉強を始めた。そして、なすべき仕事を片っ端からこなしていった。 不幸中の幸いと言おうか、東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故によって、日本中に自粛ムードが漂っていた。講演会やイベントなどの予定は、軒並みキャンセルになった。 「この10年間でこんなにスケジュール表が空いていることはない」というほど暇だったおかげで、奇しくも相続対策に全力を傾注できた。もし父が亡くなったのが2011年でなければ、とてもあの膨大な作業を一人でこなすことは不可能だったと思う。 以下、私が取り組んでいった膨大な作業を、覚えている限り、ご紹介しよう。 「お父さんをおんぶして2階まで来て下さい」 まず最初に、某銀行の高田馬場支店にある父の貸金庫を開けに行った。 父が生きている間に一緒に銀行に出かけておいたおかげで、息子の私でも代理で貸金庫を開けられるように手続きは済んでいた。話は前後するが、この手続きの段階ですでに「相続地獄」の前夜は始まっていた。今思い返しても腹が立つ事件があったのだ。 半身不随になった父が、万が一のときのために、自分の貸金庫を私も開けられるようにしてくれると言った。「それも必要かな」と思って、銀行に聞くと、父と私と二人揃って銀行に出向いての手続きが必要だという。) 仕方がないので、「要介護4」の父を自家用車に乗せ、銀行まで出かけた。車イスのまま乗せられる車ではないので、自動車への乗り降りだけで大わらわだ。 ようやく銀行にたどり着くと、「貸金庫の窓口は2階にあります」と言う。「じゃあエレベーターで上がります」と言うと「ウチの銀行にエレベーターはありません」と言うではないか。 「じゃあ、悪いんですけど貸金庫の担当の人が1階に下りてきてくださいよ」) 「すみませんが、それはできません」 「えっ、どういう意味ですか」 「契約者であるお父さん本人が2階に来ていただかないことには、手続きはできません」 こんなものは嫌がらせにほかならないし、もっと言うと障碍者差別だとすら思う。目の前に車イスに乗った高齢の身体障碍者がいるというのに、「臨機応変」の「り」の字も見当たらない。いくら事情を説明しても言うことを聞いてもらえず、「とにかく2階に来てください」の一点張りだ。
 仕方がないので、銀行員に手伝ってもらいながら私が父をおんぶして、妻が横から支えながら銀行の2階に連れていった。こうしてようやく私もカギをもらい、貸金庫を開けられるようになったのだ。 実はこれが、父の生前に私がやっておいた唯一の相続対策だった。この秘策によって起死回生を図るはずだったのだが、状況は暗転する』、「横着して申告期限の10カ月を超過すると、脱税で立件される可能性がある。私は「経済アナリスト」という肩書きでテレビやラジオに出演し、日本中で講演会をこなし、大学の教員も務めている。立場上、脱税で捕まれば職業生命に関わる。だから正直言って、とても焦った」、確かに「10カ月」などあっという間だ。森永氏はまだ現役で頑張っているので、納税でミスをしては大変だ。
・『父が亡くなって初めて目の当たりにした「軍人国債」  今でも悔やまれる。なぜあのとき、父と一緒に貸金庫の中身を確認しておかなかったのだろう。人生最大のミスに近い、あまりにも致命的なミスだった。 貸金庫というからには、キャッシュカードや通帳、印鑑や貴金属、保険証券や証書が入っていると誰もが想像する。ところが父の死後、高田馬場の銀行へ出かけて貸金庫を開けてみると、そこには金目のものはほとんど入っていなかったのだ。 貸金庫の中には、大学の卒業証書や思い出のパンフレットなど、金銭的価値がまったくないシロモノがぎっしり詰まっていた。唯一金目のものといえば、軍人国債が出てきたのは意外だった。私は現行の金融商品はだいたい知っているものの、軍人国債の現物はあのとき初めて見た。 特攻隊員だった父は、一度国のために命を捨てた身だ。だから自分が軍人だったことに強い誇りをもっていた。軍人国債には切符のような紙がついていて、それを切り取るとお金と交換してくれる。誇り高き軍人である父は、もったいないことにそれを切り取らずにずっと大事にもっていた。 軍人国債には有効期限がある。有効期限が切れたものもあったのだが、何十万円分か、まだ権利が残っているものがあった。 ちなみに、相続を申告するとき税理士に「この軍人国債も申告しなければ駄目なんですかね」と訊いたところ「とにかく金目のものは全部出してください」と言われた。だから、まだ引き換え期間の到来していない切符も含めて、すべて申告した。 貸金庫に預金通帳や不動産の権利書、証券会社の口座の残高明細書といったものが入っていれば、相続対策はほとんど一件落着の予定だった。ところが、貸金庫を開けた瞬間、「まずい。これは全然手がかりがないということだぞ……」と、明日から押し寄せる膨大な作業量を覚悟した。 果たして銀行口座と証券口座は一体何個ある? 母は専業主婦だったため、手持ちの資産はヘソクリ程度しかなかった。だから母が亡くなったあとの相続対策は、何の問題にもならなかった。基礎控除の額にはるかに届かなかったからだ。もちろん、私も母からの相続は一切受けていない。問題は父だ。 父が脳出血で倒れてから、高田馬場にある実家のマンションに、私は月に2~3回足を運んでいた。そうしないと、郵便受けから郵便物があふれてしまう。その状態を放っておくと、不用心で空き巣にねらわれやすい。 郵便受けに溜まった郵便物を紙袋に入れると、実家のカギを開けて部屋に入り、ボーンとそのへんに放り投げておいた。父が亡くなったとき、それらの郵便物が部屋で山のように積み重なっていた。 実家にこもってそれらの郵便物を一つずつ開けてみることにした。その気の遠くなるような作業を経て、銀行口座が9つ、証券会社の口座が2つあることがわかった。 今はルールが変わって、銀行の全店照会(全国に散らばる本支店の横断検索)ができるようになった。2011年当時は、全店照会を頼んでもやってもらえなかった。私が「そちらの銀行に父の口座はありますか」と訊いても教えてもらえない。「××支店に口座がありますか」とまで訊かなければ、口座があるかどうかは教えてもらえなかった。 日本の金融機関は、地方銀行や信用金庫、信用組合まで含めると、全国に500くらいはある。それらの金融機関に枝葉のように支店があるわけだ。1個1個しらみつぶしに、自力で全店照会するなんて物理的にできるわけがない。だから郵便物の手がかりなどを頼りに、故人がどこの金融機関と取引していたか当たりをつけなければいけなかったのだ。 「生まれてから死ぬまでの全ての居住地で戸籍謄本を貰って来て下さい」 口座がありそうなA銀行に相談しに行ったところ、担当者はこう言う。 「とにかくお父さんが生まれてから亡くなるまでのすべての居住地の役場から、戸籍謄本をもらってきてください。そして、相続人全員の同意書をもってきていただく必要があります」) 相続人全員の同意書は、息子である私と弟の2人きりだから簡単だ。しかし、亡くなった父の銀行口座があるかどうか調べてもらうにあたり、なぜ過去のすべての居住地の戸籍謄本が必要なのだろう。銀行員は平然とこう言い放った。 「お父さんがどこかに隠し子を作っているかもしれないので、戸籍謄本が揃っていないと、銀行は相続人全員の同意があることを確認できないんです」 佐賀出身の父は、80年間の人生を通じて全国を飛び回っていた。「戸籍謄本を全部集めてきてください」と安易に言うが、毎日仕事をしている大人が、佐賀だの神戸だのにわざわざ出かけている暇なんてあるわけがない。それに旅費がいくらかかると思っているのだろう。仕方がないので、父が過去に暮らしていた自治体に電話をかけた。すると、「郵便小為替と返信用封筒を同封して、役場に申請書を出してください」と言う。腹立たしいことに、この申請書が全国統一フォーマットではない。だから自治体によって、いちいち別の文書を作成しなければならないのだ。 しかも郵便のやり取りだから、1週間以内に一つの作業が終了しない。こっちは次の作業がどんどん控えて焦っているのだが、相手は役人だからスピーディに動いてくれないのだ』、「相続を申告するとき税理士に」、やはり「税理士」も使っていたとはさすがだ。「過去のすべての居住地の戸籍謄本が必要なのだろう揃えるのには相続争いに巻き込まれることを避けるための銀行の知恵だ。私も父の相続の際には、「戸籍謄本」を揃えるのに苦労した。
・『「文京区役所は空襲で焼けたので、戸籍はありません」  相続の申告期限は、死去から10カ月以内と決まっている。作業を少しでも早く進めるため、直接足を運べる役所には極力出かけることにした。最後の最後で壁にぶつかったのは、東京都の文京区役所だ。 父はかつて文京区で暮らしていたことがある。なのに「戸籍謄本をください」と言うと「お父さんの戸籍謄本はありませんよ」と言うのだ。 「でも、確かに文京区に戸籍があったはずですよ」 「それはそうなんですけど、文京区役所は空襲で焼けましたので、そのとき焼けた戸籍の書類は残っていません」 戦争で焼けてしまったのだから、書類を出せと言っても先方もどうしようもない。文京区役所の戸籍謄本だけ抜け落ちた状態で「全部揃いました」と言って銀行にもっていったところ、銀行員が何と言ったか。 「文京区役所の書類だけ欠けてるじゃないですか」 「空襲で文京区役所が焼けたせいで、書類が残っていないんです」 「ならば、文京区役所が空襲で戸籍謄本を焼失したという証明書を取ってきてください」 どこの役場に「戸籍謄本焼失証明」なんていう書式があるというのだろうか。 文京区役所の総合相談窓口を訪れた。当然、そんな手続きをしてくれる担当部署はない。 結局、何度も交渉を重ねた挙げ句に、ようやく似たような内容の文書を作ってくれることになった』、「「空襲で文京区役所が焼けたせいで、書類が残っていない」、のを「文京区役所」側に何らかの証明書を出してもらうのは確かに凄い交渉力だ。
・『たった残高700円の口座のために……  たった一つの銀行口座を開示してもらうまでに、どれほど気の遠くなるような作業を繰り返したことか。今思い返してもゾッとする。 膨大な労力をつぎこんだ結果、父の口座が次々に明らかになっていった。父の言っていたとおり、全部で数千万円の預金が出てきた。ただ、それは合計金額で、なかには残高のほとんどない口座もあった。一番残高の少なかった銀行は、700円しかなかった。 「森永さん、この預金、どうしますか」 銀行員から訊かれた瞬間、パッと立ち上がって即答した。 「放棄します」 ふざけるのもいい加減にしてほしい。この銀行口座を開示してもらうまでに、私がどれだけ自分のお金と時間を投入したのか。たった700円しか残っていないのだったら、最初からコソッと「100円単位しか残っていないですよ」と耳打ちしてくれても良さそうなものだ。 結局、判明した父の銀行口座は9つあった。 ただ、私が探し当てることができなかった口座は、ほかにもあるのかもしれない。しかし、弟が遺品整理業者に依頼し、父の遺品は今では全部処分してしまったので、これ以上新しい口座が発見される可能性はゼロだ』、「一番残高の少なかった銀行は、700円しかなかった」、のであれば、相続放棄も当然だ。
・『もし休眠口座から払い戻されなければおカネはどこに?  10年以上取引が行われていない口座を、銀行は休眠口座へと移行する。その総額は1200億円にのぼると言われる。口座の持ち主や遺族からの請求があれば払い戻すことが可能だが、現実に払い戻されるのは1200億円のうち500億円程度しかない。残りの700億円は、政府に納付されることになっている。見つけられなければ、事実上、相続税で100%もっていかれるのと同じことになるのだ。 今は金融庁や警察庁の締めつけが強くなったため、金融機関は新しい口座を簡単に開設してくれなくなった。振り込め詐欺が頻発するようになり、使っていない銀行口座が闇社会で売買されてしまうからだ。 昔は口座を作るのがすごく簡単だった。銀行員がノルマ達成のために「口座を作ってくださいよ」とやってきて、言われるがままに口座を開設してあげると、貯金箱などの景品をプレゼントしてくれた。父の実家にも銀行の貯金箱がたくさんあったので、おそらくつきあいで口座を開いてあげたのだろう。 父が元気だったころとは違って、今ではジャパンネット銀行や楽天銀行、ソニー銀行などネット銀行も活況を呈している。ネット銀行は口座を開設したあと、やたらと郵便物なんて送ってこない。取引の記録はネット上のログイン画面で完結する。 大和証券や丸三証券などの証券会社も、ネット上の手続きで口座を開設できる。紙の文化が残っていれば遺族の手がかりになるものの、ネットバンキングとなると遺族にとっては雲をつかむような話だ。今父が亡くなり、手がかりが何もない中であのときと同じ作業をしなければならないとすれば、実に空恐ろしい』、確かに「ネット銀行」口座、「ネット証券」口座になると、「遺族にとっては雲をつかむような話だ」、気分的にはそうであっても、「相続」の基本は変わらないと思う。

次に、5月1日付け幻冬舎GOLDONLINE「70代母の資産総額、1億円超だが…50代息子「相続対策のため、母との同居を開始する」「ごめんだわ」妻の即レス【争続事例解説】」を紹介しよう。
https://gentosha-go.com/articles/-/51136
・『50代男性は、70代になった母親の相続を見越し、最も効果的な相続対策を考えていました。男性は妻に、節税実現のために生活スタイルの大転換を求めましたが、妻から一蹴されてしまいます。どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します』、興味深そうだ。
・『「70代の母の今後が、いろいろ心配になってきて…」  今回の相談者は、50代会社員の山田さんです。70代の母親の今後を心配し、筆者のもとへ相談に訪れました。 「母は5年前に父を亡くしてから、ひとり暮らしをしてきました。いまのところ元気ですが、いろいろ心配事が出てきまして…」 山田さんは2人きょうだいの長男で、3歳年下の妹がいます。いずれも20代で結婚して家を出ており、それぞれ自宅を保有しています。 未来の母親の相続のときに困らないよう、いまからできる対策をしておきたいということでした』、「未来の母親の相続のときに困らないよう、いまからできる対策をしておきたい」、いい心がけだ。
・『妻に反対され、「資産防衛」の方針が定まらず  母親の財産の内訳は、横浜市の40坪の自宅と自宅近くにある賃貸アパート、金融資産で、およそ1億5000万円です。いずれも配偶者である、山田さんの父親から相続したものです。 「母親の家を建て替えて同居すればお互いに安心ですし、節税にもなっていいのではと考えてたのですが…」 妹からは「お兄ちゃんに任せる」との言葉ももらい、意気揚々と妻に話をしたところ「ごめんだわ!」と一蹴されたといいます。 山田さんの妻は、いずれは資産を整理してホームに入ってもらった方がよいという考えをもっており、方向性が決まりそうにないというのです』、「妻に話をしたところ「ごめんだわ!」と一蹴された」ようだが、税金の支払いは。「「小規模宅地等の特例」、同居を満たせないと飛躍的に大きくなる。それでも、節税策のために自分たちの生活スタイルを変えたくないというのであれば、やむを得ないが、やはりシュミレーションはしておくべきだ
・『「小規模宅地等の特例」に固執する必要はあるか?  山田さんは、父親の相続のときに母親が資産のすべてを相続し、自宅も小規模宅地当の特例が使えて効果的だったことから、同居が節税になると知っていました。 そのため、元気なうちは別世帯でも、節税のためにいずれは同居しておかなければという思いがあり、準備に着手すべきときと考えたようです。 また、小規模宅地等の特例を使えば節税になるものの、どこのタイミングで使うことが最も効果的なのか知りたいとのご希望がおありでした。 筆者と提携先の税理士は、山田さんの説明を聞いたうえで、いくつかの提案を行いました。 居住用の特例は、同居する相続人がいれば、330㎡まで80%減額でき、確実な節税となりますが、それには「同居」「家を持たない」などいくつか要件があります。 そもそも、相続はいつ発生するかわかりません。それぞれ自分たちのペースで生活してきた成人が同居するとなると、ストレスになるのは当然です。 いくら相続税の節税になるといっても、節税ありきで人生設計を描くのはお勧めできません。何年もの間、未来の節税を目標に日常生活でストレスを抱えるなど、本末転倒ではないでしょうか。 これまでの生活を大切にし、快適な毎日を過ごすには、同居ではなく、金融資産で不動産対策をして、貸付用の特例を適用する方法も選択肢です。また、母親にはケアつきの高齢者住宅に住み替えてもらい、自宅を賃貸住宅に建替える方法も検討できます。 いくつか方法があることを説明すると、山田さんは安堵され、「妻と母と相談してみます」といってお帰りになりました。 相続対策は非常に重要ですが、そもそもの目的は、豊かで幸せな人生を送るために行うものです。家族の希望があるなら別ですが、特例の活用だけを目的に、これから先、何年続くかわからない同居生活をいやいや送っても、だれも幸せになりません。 資産防衛を行うには、近視眼的にならず、家族全員の幸せを考えたうえで、適切な方法を選択していくことが重要なのです。 ※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります』、「相続税の節税になるといっても、節税ありきで人生設計を描くのはお勧めできません」、確かに一般論としてはその通りだが。節税効果との対比も重要だ。ここでは、具体例が示されてないので、判断しようがない。
タグ:相続税・相続一般 (その1)(「戸籍謄本全部集めて」「お父さんをおんぶして2階まで来て」「口座情報は開示できない」…銀行に無理難題を押し付けられた森永卓郎(65)が陥った“相続地獄”、70代母の資産総額、1億円超だが…50代息子「相続対策のため、母との同居を開始する」「ごめんだわ」妻の即レス【争続事例解説】) 文春オンライン「「戸籍謄本全部集めて」「お父さんをおんぶして2階まで来て」「口座情報は開示できない」…銀行に無理難題を押し付けられた森永卓郎(65)が陥った“相続地獄”」 「横着して申告期限の10カ月を超過すると、脱税で立件される可能性がある。私は「経済アナリスト」という肩書きでテレビやラジオに出演し、日本中で講演会をこなし、大学の教員も務めている。立場上、脱税で捕まれば職業生命に関わる。だから正直言って、とても焦った」、確かに「10カ月」などあっという間だ。森永氏はまだ現役で頑張っているので、納税でミスをしては大変だ。 「相続を申告するとき税理士に」、やはり「税理士」も使っていたとはさすがだ。「過去のすべての居住地の戸籍謄本が必要なのだろう揃えるのには相続争いに巻き込まれることを避けるための銀行の知恵だ。私も父の相続の際には、「戸籍謄本」を揃えるのに苦労した。 「「空襲で文京区役所が焼けたせいで、書類が残っていない」、のを「文京区役所」側に何らかの証明書を出してもらうのは確かに凄い交渉力だ。 「一番残高の少なかった銀行は、700円しかなかった」、のであれば、相続放棄も当然だ。 確かに「ネット銀行」口座、「ネット証券」口座になると、「遺族にとっては雲をつかむような話だ」、気分的にはそうであっても、「相続」の基本は変わらないと思う。 幻冬舎GOLDONLINE「70代母の資産総額、1億円超だが…50代息子「相続対策のため、母との同居を開始する」「ごめんだわ」妻の即レス【争続事例解説】」 「未来の母親の相続のときに困らないよう、いまからできる対策をしておきたい」、いい心がけだ。 「妻に話をしたところ「ごめんだわ!」と一蹴された」ようだが、税金の支払いは。「「小規模宅地等の特例」、同居を満たせないと飛躍的に大きくなる。それでも、節税策のために自分たちの生活スタイルを変えたくないというのであれば、やむを得ないが、やはりシュミレーションはしておくべきだ 「相続税の節税になるといっても、節税ありきで人生設計を描くのはお勧めできません」、確かに一般論としてはその通りだが。節税効果との対比も重要だ。ここでは、具体例が示されてないので、判断しようがない。
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女性活躍(その27)(3人の女性首相が世界に示した 「辞めたい」と言える勇気、「女の子だからできない」じゃなく「やってみたらできた」へ 昭和女子中高の女性校長が語る“理系教育”、「カエル好きのお姉さん」が昭和女子中高の校長になるまで 理系教育への情熱の“根っこ”とは) [社会]

女性活躍については、本年4月12日に取上げた。今日は、(その27)(3人の女性首相が世界に示した 「辞めたい」と言える勇気、「女の子だからできない」じゃなく「やってみたらできた」へ 昭和女子中高の女性校長が語る“理系教育”、「カエル好きのお姉さん」が昭和女子中高の校長になるまで 理系教育への情熱の“根っこ”とは)である。

先ずは、本年4月27日付けNewsweek日本版が掲載したジャーナリストのイモジェン・ウェストナイツ氏による「3人の女性首相が世界に示した、「辞めたい」と言える勇気」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/woman/2023/04/post-837_1.php
・『<「辞めたのは弱いからではない」...燃え尽きた時には誰もが「辞めたい」と言える社会に成長するために、3人の女性首相が教えてくれたこととは> 政治家が自ら職を辞すのは、たいてい何らかの「へま」をやらかしたときだ。へまの度合いは、その国の文化によって異なる。 些細なこと(公務用のクレジットカードでスナック菓子を買ったスウェーデンのモナ・サーリン議員)もあれば、とんでもない話(側近の痴漢行為を知りつつ隠していたイギリスのボリス・ジョンソン首相)もある。 しかし今年に入って辞意を表明した3人の首相の場合、その理由はもっと真摯で率直なものだった。 最初は1月、2017年からニュージーランドの首相を務めていたジャシンダ・アーダーン。次いで2月には、スコットランド自治政府の首相を8年以上務めたニコラ・スタージョン。そして4月初めには、フィンランド首相のサンナ・マリンが総選挙に敗れて辞意を表明した。敗れたとはいえ個人としての人気はまだ高いのに、与党・社会民主党の党首の座も退くという。 よほどの失言でもない限り、政治家が自ら身を引く本当の理由を知るのは難しい。だが3人は驚くほど率直に、辞める理由を語っている。 「私はこの仕事の過酷さを知っているし、自分にはもうこの役目を十分に果たすだけのエネルギーがないことも知っている」と言ったのはアーダーン。一方、マリンは「私の持久力の限界が試された。(首相になってからの日々は)おそろしく困難だった」と打ち明けた。 そしてスタージョンも、首相の職に全身全霊をささげるのはもはや限界だと気付いたと語った。「この仕事が私に及ぼす身体的・精神的な打撃に、私はここへ来てようやく気付き、受け入れました」』、「最初は1月、2017年からニュージーランドの首相を務めていたジャシンダ・アーダーン」、「次いで2月には、スコットランド自治政府の首相を8年以上務めたニコラ・スタージョン」、「4月初めには、フィンランド首相のサンナ・マリンが総選挙に敗れて辞意を表明」、「よほどの失言でもない限り、政治家が自ら身を引く本当の理由を知るのは難しい。だが3人は驚くほど率直に、辞める理由を語っている」、3人の女性「首相」が相次いで辞任したとは、偶然の一致にしても不思議だ。相互に影響を与え合っていたのだろうか。
・『政治家と人間の両立?  要するに「燃え尽きた」ということだが、職を辞す政治家がこうも率直に、それを口にしたのはたぶん前代未聞。ああ、そうした私的なことを誰もが口にできる時代が来たのか、と思いたいところだ。 でも違う。この3人が注目されたのは、働きすぎはいけないと誰もが気付き始めたからじゃない。3人とも女性だったからだ。) この点については、いくつかの見方ができると思う。高い地位に就いている女性ほど仕事の過酷さを進んで認め、それ故に燃え尽きるリスクがあると正直に言えるのかもしれない。 あるいは、一般論として女性のほうが心の健康に敏感で、それについてオープンに語れるということか。一方で男性陣は今も、心の問題で職を辞すのは敗北であり、弱さの証しだと信じている。 女性が指導的な立場に就くと、家庭と仕事をきちんと両立させるよう求められるのが常だ(男性だと、そんなことは言われない)。それがプレッシャーになって、仕事を辞める女性もいる。 そもそも、政治家と人間の両立は難しいのかもしれない。「私は人間。政治家も人間。私たちは可能な限り全力を尽くす。でも限界が来る」。アーダーンは辞意表明の演説でそう言った。スタージョンも基本的に同じことを言った。「私は政治家だけれど、人間でもある」と』、「要するに「燃え尽きた」ということだが、職を辞す政治家がこうも率直に、それを口にしたのはたぶん前代未聞。ああ、そうした私的なことを誰もが口にできる時代が来たのか、と思いたいところだ。 でも違う。この3人が注目されたのは、働きすぎはいけないと誰もが気付き始めたからじゃない。3人とも女性だったからだ」、「高い地位に就いている女性ほど仕事の過酷さを進んで認め、それ故に燃え尽きるリスクがあると正直に言えるのかもしれない。 あるいは、一般論として女性のほうが心の健康に敏感で、それについてオープンに語れるということか・・・女性が指導的な立場に就くと、家庭と仕事をきちんと両立させるよう求められるのが常だ・・・それがプレッシャーになって、仕事を辞める女性もいる。 そもそも、政治家と人間の両立は難しいのかもしれない」、「「私は人間。政治家も人間。私たちは可能な限り全力を尽くす。でも限界が来る」。アーダーンは辞意表明の演説でそう言った。スタージョンも基本的に同じことを言った」、なうほど。
・『無理なら辞めるが一番  政治家も人間だなんて、思えないこともある。他人の人間性など気にもかけない政治家がたくさんいるからだ。 もちろん、今の時代にそんな振る舞いをすれば必ずしっぺ返しに会う。横柄な政治家に、私たちはおまえを最低のクズだと思っているぞと伝える方法はいくらでもある。ツイッターやメールで、いくらでも文句を言える。 そんなふうにして炎上した政治家に、私は同情しない。英国首相を務めた過去5人の男女には、私だって残飯を投げ付けてやりたい。でもネット上の誹謗中傷や脅迫が、とりわけ女性の政治家に向けられやすいのは事実だ。この4カ月で自ら職を辞した3人の首相が全て女性だったのは、そのせいかもしれない。 とはいえ、一連の辞任が「フェミニズムの今後にどんな影響を及ぼす?」なんて考えるのはやめてほしい。そんなのは愚問だ。 いま必要なのは、性別や年齢に関係なく私たち全員が、この3人の女性のレベルまで成長すること。彼女たちが辞めたのは弱いからじゃない。誰もが自分を見つめ直し、「もう私はこの仕事に全力で取り組めない」と気付いたら、正直にそう言える。そんな世の中になってほしい。) 昨年の今頃は、私も含めてほとんどのイギリス人が心から、ジョンソンの首相退陣を願っていた。彼はもうボロボロで、失態に失態を重ねるばかりで見るに堪えなかった。さっさと辞めればいい首相や大統領は、たぶんほかにもいる。なにしろすごく難しくて、きつい仕事だから。 身も心も擦り切れるまで働くタイプと、何が起きても週末はゴルフというタイプ。その中間のどこかに、きっと適当な落としどころがある。 でも個人的には、政治家に休暇など必要ないと言わんばかりの人には違和感を覚える。疲れ果て、自分の地位の重責に押しつぶされそうな人物に、重要な物事の判断を委ねるのが得策とは思えない。 残念ながら、大多数の(ええ、とりわけ男性の)政治家には、そんなふうに自分の限界に気付く機会はなさそうだ。たぶん、そういう機会を持ちたいと思ってもいない。 自分の限界を知るのは大事なことだ。もう首相の重責に耐えられないと思ったら、正直にそう告げる。国のためには、それがベストな選択だろう。違う?』、「疲れ果て、自分の地位の重責に押しつぶされそうな人物に、重要な物事の判断を委ねるのが得策とは思えない。 残念ながら、大多数の(ええ、とりわけ男性の)政治家には、そんなふうに自分の限界に気付く機会はなさそうだ。たぶん、そういう機会を持ちたいと思ってもいない。 自分の限界を知るのは大事なことだ。もう首相の重責に耐えられないと思ったら、正直にそう告げる。国のためには、それがベストな選択だろう』、同感である。

次に、5月2日付けAERAdot「「女の子だからできない」じゃなく「やってみたらできた」へ 昭和女子中高の女性校長が語る“理系教育”」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023042700055.html?page=1
・『「理科の楽しさを伝えたい」と、理系教育に尽力してきた昭和女子大学付属昭和中高の真下峯子校長。スーパーサイエンスコースを設け、大学やブリティッシュスクールとの連携にも力を入れるなど、次々と策を講じてきた。「女の子がやってみたらできちゃった、というモデルを証明したい」と話す真下校長の思いとは(Qは聞き手の質問、Aは「真下」氏の回答)』、興味深そうだ。
・『メダカの記憶を研究  Q:昭和女子大学付属昭和中高は、サイエンス教育に力を入れています。  A:2015年から学校改革を行い16年にグローバル留学コースを、18年にスーパーサイエンスコース(SS)を設けました。SSコースは当初中3からが対象だったのですが、私の校長着任後の21年から中1に引き下げました。 前校長の判断ですが、小学生のころからサイエンスに興味がある生徒に来てもらおうという、狙いがあったようです。やはり1年次からやることでスキルも厚くなるし、経験を積むことで考察も深くなります。 Q:スーパーサイエンスコースの特徴はどのような点ですか。 A:1年次から実験や研究を重視し、サイエンスの学びをトレーニングします。その蓄えた力をもって、中3の後半からテーマを決めて研究に入ります。ある生徒は、「メダカの記憶の維持」というテーマを設定しました。観察のための実験装置を作って、いつのタイミングで測ればいいのか、試行錯誤しながらいろいろな条件で観察を続けました。 この成果として、中高生の研究のための学会「サイエンスキャッスル2021関東大会」で最優秀賞を受賞するなど、SSコースを設定した芽が出始めています。 Q:理科が苦手という女子生徒は多いです。何が理科嫌いにさせているのでしょうか。 A:小学生のころは、みんな理科が好きなんです。でも中学生になったとたん、起こっている現象の理屈を考えなくてはならなくなるので、一気に難しくなりお手上げになってしまうのだと考えています。 SSコースの1年生が神奈川県・足柄の林間学寮に行ったときのことですが、車中、みんなでダンゴムシの絵を描いてみようということになったんです。私たち大人だと、普通上から見たダンゴムシを描きますよね。なかには真横の姿や、ひっくり返しておなかを描いた生徒もいて、みんなで笑ったり、感心しあったりしました。そうやって楽しむのも理科の原点なんです。 理科の第一歩は、対象物をきちんと見ること。そうすると自然に「なぜ」という疑問が湧いてきます。次のステップとして調べてみようとか、考えてみようとなる。そのときお手上げにならないように、スキルや方法をきちんと教えていくことが大切なんです。) Q:楽しむことで、理科離れを防ぐのですね。 A:昨年夏に、専門家に依頼してデータサイエンスの特別講座を開催しました。募集したところ、30人集まればいいと思っていましたが、100人近く集まりました。SSだけでなく、本科コースやグローバル留学コースの生徒も、特に中学生が大勢参加しました。みんな関心はあるのです。 実験はもちろんですが、学校全体にデータサイエンス系も、プログラミング系もできるサイエンスをつくり上げていきたい。「女の子だからできない」じゃなくて、「やってみたらできちゃった」を、証明するモデルになってほしいと思います。 Q:サイエンスを学ぶことで、どんな力がつきますか。 A:実験は、そううまくいくものではありません。100失敗して、1つ成功すればいいほう。世の中で脚光を浴びている研究の基には、失敗が山ほどあります。科学とはそういうものです。実験を繰り返し、結果が出るまでやることで、うまくいかなくてもへこたれない力がつきます。 実はその力は汎用性が高くて、社会に出て困難にぶつかったときに役にたちます。中高時代、サイエンスにがっつりと取り組んで失敗を繰り返しながらも目的に向かっていく、そういうタフな力を身につけてほしいのです』、「スーパーサイエンスコースの特徴は」、「1年次から実験や研究を重視し、サイエンスの学びをトレーニングします。その蓄えた力をもって、中3の後半からテーマを決めて研究に入ります。ある生徒は、「メダカの記憶の維持」というテーマを設定しました。観察のための実験装置を作って、いつのタイミングで測ればいいのか、試行錯誤しながらいろいろな条件で観察を続けました」、「実験は、そううまくいくものではありません。100失敗して、1つ成功すればいいほう。世の中で脚光を浴びている研究の基には、失敗が山ほどあります。科学とはそういうものです。実験を繰り返し、結果が出るまでやることで、うまくいかなくてもへこたれない力がつきます。 実はその力は汎用性が高くて、社会に出て困難にぶつかったときに役にたちます」、「実験を繰り返し、結果が出るまでやることで、うまくいかなくてもへこたれない力がつきます」、その通りだが、うまくいくよう過剰なアドバイスをしないよう抑制するのも、我慢が必要なようだ。
・『大学との連携を強化し五修生制度導入  Q:昭和女子大学の坂東眞理子理事長は、ジェンダー教育に熱心に取り組んでいます。大学との連携は。 坂東先生は、女性にいろいろなところで活躍してほしいという思いがあり、必要と思うコンテンツをどんどん取り入れてくれます。大学には実務家の教員が大勢いて、学問だけではなく、社会とどうつながっているのか実践的な学びもなさっている。本科コースのなかには探究の授業のチームで大学の研究室を訪れて、そんな先生方に指導してもらっている生徒もいます。 40年前から、高2までに卒業のための必要単位を取り、高3から昭和女子大で学ぶ「五修生制度」を取り入れています。飛び級だと高校の卒業資格が取れませんが、この制度なら取得するこができます。 今年は6人、昨年は8人がこの制度を利用しました。先日面談したある生徒は国際的な公認会計士を目指しており、高3の1年間の余裕をその勉強にあてたいと考え制度を利用したと話していました。) 昭和女子大は中国の上海交通大学や、米国のテンプル大学などとダブルディグリープログラムを結んでおり、5年間で2つの大学の学位を取ることができますが、五修生制度を使えば大学4年修了時に取ることが可能です。 23年からは、他の大学に進学する可能性も残したい生徒のために、五修生制度とは別に昭和女子大科目等履修生制度も導入しました。高校2、3年生が対象で、放課後に大学の授業を履修できます。昭和女子大に進学した場合は、それが単位として認められます。いろいろな面で、大学との連携が強化されていますね。 Q:高大連携は、他大学にも広がっています。 A:生徒たちの進路選択を広げるために、昭和女子大にないコンテンツを持っている大学との連携をしていこうと、働きかけています。現在は東京理科大、早稲田大、芝浦工業大、東京農工大、お茶の水女子大に協力していただいています。 お茶の水女子大は千葉・館山に湾岸生物教育研究所があるのですが、すぐ近くに本校の海浜学寮があるので、生徒たちが研修で訪れたときに指導いただけるように、お願いしています。 Q:大学生もメンターとして受け入れていますね。 A:昭和女子大の学生はもちろんですが、東京理科大生はチームをつくり学習サポートに入ってくれています。今年からは早稲田大も学習支援に来てくれることになりました。実験には危険もつきものですから、1つのグループに学生さんがついてくれるのは、教員にとっても安心です。 実験だけでなく、授業にも入ってサポートしてもらっています。先生と生徒は1対36ですが、先生と生徒の間に学生がいることで、授業がもっと密になる。また先生ではない、年齢の近い学生がアドバイスしてくれたり、教えてくれたりするので、生徒も気負わず素直に受け入れられます。 勉強だけでなく、学生から研究や学問の苦労話や失敗談など生の声を聞くのも、生徒にとって貴重な体験です。学生が生徒たちのロールモデルになってくれています』、「高2までに卒業のための必要単位を取り、高3から昭和女子大で学ぶ「五修生制度」を取り入れています」、「今年は6人、昨年は8人がこの制度を利用しました。先日面談したある生徒は国際的な公認会計士を目指しており、高3の1年間の余裕をその勉強にあてたいと考え制度を利用したと話していました」、「高大連携は、他大学にも広がっています。 A:生徒たちの進路選択を広げるために、昭和女子大にないコンテンツを持っている大学との連携をしていこうと、働きかけています。現在は東京理科大、早稲田大、芝浦工業大、東京農工大、お茶の水女子大に協力していただいています」、なかなかいい制度のようだ。
・『グローバル教育への挑戦  Q:主にイギリス人の子弟が通う、ブリティッシュスクールとの連携も深まっています。グローバル教育はどうなっていますか。 A:お隣がブリティッシュスクールという、物理的に非常に恵まれた環境にあります。以前はボランティア活動を一緒にする程度でしたが、先方の校長先生ともっと交流を深めましょうということで思いが一致しました。 今はグローバル留学コースや本科コースの生徒とブリティッシュの生徒が、1週間ほど授業をエクスチェンジしたり、SSコースの生徒があちらの理科の授業を受けたりしています。当然英語での授業なので、サイエンスに英語という武器が加わります。授業でのアカデミックな交流がしやすいように、両校の時間割の調整を検討しているところです。 授業以外にも、地球環境を守るための活動をしたりブックトークをしたりと、できるだけいろいろなことを一緒にやる方向で動いています。生徒たちは「ブリティッシュスクールの子たちは同年代なのにとても教養が高い」と、良い刺激を受けていますね。 グローバル留学コースは、高1のときに1年間カナダへ留学するのが必須となっています。帰国して国際系の大学を目指す生徒が多いですが、なかには海外の医学部に行きたいという生徒もいます。サイエンスコースの生徒に影響されたのでしょう。お互いに刺激し合って、進路が広がっていると感じます。 真下峯子(ましも・みねこ) 昭和女子大学付属昭和中学校・高等学校校長。埼玉県生まれ。奈良女子大学理学部卒業。埼玉県に理科の教員として赴任。埼玉県立川越女子高等学校教頭、埼玉県立総合教育センター指導主事、大妻嵐山中学校・高等学校校長などを経て2020年から現職。 <<後編:「カエル好きのお姉さん」が昭和女子中高の校長になるまで 理系教育への情熱の“根っこ”とは>>へ続く』、「お隣がブリティッシュスクールという、物理的に非常に恵まれた環境にあります・・・今はグローバル留学コースや本科コースの生徒とブリティッシュの生徒が、1週間ほど授業をエクスチェンジしたり、SSコースの生徒があちらの理科の授業を受けたりしています。当然英語での授業なので、サイエンスに英語という武器が加わります・・・授業以外にも、地球環境を守るための活動をしたりブックトークをしたりと、できるだけいろいろなことを一緒にやる方向で動いています」、「生徒たちは「ブリティッシュスクールの子たちは同年代なのにとても教養が高い」と、良い刺激を受けていますね。 グローバル留学コースは、高1のときに1年間カナダへ留学するのが必須となっています。帰国して国際系の大学を目指す生徒が多いですが、なかには海外の医学部に行きたいという生徒もいます。サイエンスコースの生徒に影響されたのでしょう。お互いに刺激し合って、進路が広がっていると感じます」、「お互いに刺激し合って、進路が広がっている」、なかなかいいことだ。

第三に、この続きを、5月2日付けAERAdot「「カエル好きのお姉さん」が昭和女子中高の校長になるまで 理系教育への情熱の“根っこ”とは」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023042700056.html?page=1
・『「女子は理数が弱いという思い込みを捨てれば、もっと可能性が広がる」と、理系教育に力を入れる昭和女子大学付属昭和中高の真下峯子校長。その情熱の根っこは、幼いころの植物や動物への関心にあった。理科の面白さを追い求めてきた真下先生のこれまで、そしてこれからの教育への思いとは。 <<前編:「女の子だからできない」じゃなく「やってみたらできた」へ 昭和女子中高の女性校長が語る“理系教育”>>より続く』、「真下峯子校長。その情熱の根っこは、幼いころの植物や動物への関心にあった」、とは興味深そうだ。
・『生き物の不思議にひかれ、生物学科へ  Q:先生ご自身は子どものころから生き物に興味があったそうですね。 A:小学生のころから、植物や動物が好きでしたね。自然の現象について、母親にいつも「どうして、どうして」と聞いていました。母親の影響も大きくて、夏休みの自由研究を一緒にやっていました。小学3年生の担任が理科の専門の先生で、自分の研究についていろいろ話してくれ、ますます理科に興味を持つようになりました。 高校の生物の発生の授業で、カエルの卵の原口背唇部という部位が中に入り込んで神経になると教わり、何でそうなるのか不思議でしょうがなかったんです。 今でいうiPS細胞なんですね。運命が決まっていない細胞が、何かのきっかけで髪の毛や皮膚になる。その仕組みが不思議で、もっと勉強したいと生物学科に進みました。 Q:奈良女子大に進学されました。 A:学びたい発生学の研究が進んでいるのは、京都大や大阪大でした。たまたま奈良女子大に母親の知り合いがおり、奈良女子大ならと許されたのです。関西まで行けばなんとかなるだろうと(笑)。 奈良女子大では京都大や大阪大の先生も教えていました。オープン講座もあって、京都大や大阪大に出かけて授業を受けたりもしていました。大学院の特論は学部の学生も聴講できるのですが、一流の先生が最先端の研究を講義してくれる。感化されましたね。 Q:その後埼玉に戻られ、教職の道に入られたわけですね。 A:事情があって、埼玉の実家に戻ることになりました。でも、生物のことは好きでしょうがない。何も持っていないとカエル好きの変わったお姉さんですが(笑)、学校の先生になれば堂々と生物に関われると。) 中学の教員免許を取ったのですが、ちょっと物足りない。そこで高校の採用試験を受けました。高校ではいろいろな材料を使いながら、授業をするのが楽しかったですね。これでもか、というほど「理科は面白いよ」と生徒に伝えました。 ただ、私1人だと担当した生徒だけにしか理科の面白さを伝えられない。もっと大勢の子どもたちに伝えるために、私と同じような考えを持ってくれる先生を育てればいいと気が付いたんです。 そこで管理職の試験を受け、埼玉県立総合教育センターの指導主事になりました。私が研修を担当した先生のなかには、スーパーサイエンスハイスクールの指定校で理科を教えている先生もいる。1人でできることは限られていますが、次世代の先生方が活躍している姿を見ると、頼もしいです』、「小学生のころから、植物や動物が好きでしたね。自然の現象について、母親にいつも「どうして、どうして」と聞いていました。母親の影響も大きくて、夏休みの自由研究を一緒にやっていました」、「小学3年生の担任が理科の専門の先生で、自分の研究についていろいろ話してくれ、ますます理科に興味を持つようになりました」、「高校の生物の発生の授業で、カエルの卵の原口背唇部という部位が中に入り込んで神経になると教わり、何でそうなるのか不思議でしょうがなかったんです。 今でいうiPS細胞なんですね。運命が決まっていない細胞が、何かのきっかけで髪の毛や皮膚になる。その仕組みが不思議で、もっと勉強したいと生物学科に進みました」、「私1人だと担当した生徒だけにしか理科の面白さを伝えられない。もっと大勢の子どもたちに伝えるために、私と同じような考えを持ってくれる先生を育てればいいと気が付いたんです。 そこで管理職の試験を受け、埼玉県立総合教育センターの指導主事になりました」、「私と同じような考えを持ってくれる先生を育てればいいと気が付いた」とはさすがだ。
・『女子校は女子の特性を生かした理系教育ができる  Q:川越女子高校では、高2での文理選択をやめ、高2までは数学をしっかりやる、としたのですよね。 川越女子高校には教頭として赴任しました。生徒は能力が高く、やる気がある。この生徒たちが、理科や数学ができない、興味がないからといって選択肢を狭めるのは、実にもったいないと思ったんです。 「好きな子はどんどんやりましょう、そうでない子もやりましょう」と、女子生徒の選択肢を広げるためには、 理系の勉強をあきらめないことだと生徒に語り続けました。その時代の子たちも30歳を過ぎて、いろいろな方面でがんばっています。 Q:世の中にはまだ、女子は理系が弱いという偏見があります。女子校にできることはありますか。 A:女子の選択の幅を狭めているのは数学や理科です。でも、女子は苦手と思い込んでいるだけ。中高の数学や理科は、コツコツやればできるんです。 鴎友学園女子中高の吉野明・前校長が、「女子校は、女子の特性に合わせた理数教育ができる」とおっしゃっていましたが、本当にその通りだと思います。 女の子のコツコツやる特性は、実は研究向き。アイデアや発想は男子が勝っているといわれますが、そんなことはありません。研究を続けていれば、新しい着眼点が出てきます。何もないところから、発見はできません。) Q:今後の課題はありますか。 A:工学系にも興味をもってくれればいいな、と。生徒や保護者は昔のイメージで、工学というと「ガテン系で油にまみれている」という先入観があるようです。工学はものごとをコントロールする、バラエティーに富んだ可能生がある魅力的な分野です。 ある媒体でそういう発信をしたところ、いろいろな会社から「本当にその通り。工学がわかる女子社員がほしい」と連絡をいただきました。クレーンを作っている加藤製作所からは「工場見学や体験にもぜひ来てほしい」と招待を受け、中2の生徒と保護者と出かけて、クレーンの試乗体験や、建機を設計している女性社員との懇談会に参加させてもらいました。 Q:奈良女子大が工学部を開設、お茶の水女子大が共創工学部(仮称)を開設予定と、女子大に工学部をつくる動きが出ています。東京工業大や東京理科大も入試に「女子枠」を設けると表明しています。 A:生徒には「今がチャンスだよ」と、話しています。「女の子だから」という思い込みを捨てて学びの選択肢を狭めなければ、可能性は広がっていることを伝えていきたいですね。(構成/柿崎明子)〇真下峯子(ましも・みねこ)昭和女子大学付属昭和中学校・高等学校校長。埼玉県生まれ。奈良女子大学理学部卒業。埼玉県に理科の教員として赴任。埼玉県立川越女子高等学校教頭、埼玉県立総合教育センター指導主事、大妻嵐山中学校・高等学校校長などを経て2020年から現職』、「女子の選択の幅を狭めているのは数学や理科です。でも、女子は苦手と思い込んでいるだけ。中高の数学や理科は、コツコツやればできるんです」、「女の子のコツコツやる特性は、実は研究向き。アイデアや発想は男子が勝っているといわれますが、そんなことはありません。研究を続けていれば、新しい着眼点が出てきます。何もないところから、発見はできません」、「今後の課題は・・・工学系にも興味をもってくれればいいな、と」、「生徒には「今がチャンスだよ」と、話しています。「女の子だから」という思い込みを捨てて学びの選択肢を狭めなければ、可能性は広がっていることを伝えていきたいですね」、今後の展開を大いに期待したい。
タグ:女性活躍 (その27)(3人の女性首相が世界に示した 「辞めたい」と言える勇気、「女の子だからできない」じゃなく「やってみたらできた」へ 昭和女子中高の女性校長が語る“理系教育”、「カエル好きのお姉さん」が昭和女子中高の校長になるまで 理系教育への情熱の“根っこ”とは) Newsweek日本版 イモジェン・ウェストナイツ氏による「3人の女性首相が世界に示した、「辞めたい」と言える勇気」 「最初は1月、2017年からニュージーランドの首相を務めていたジャシンダ・アーダーン」、「次いで2月には、スコットランド自治政府の首相を8年以上務めたニコラ・スタージョン」、「4月初めには、フィンランド首相のサンナ・マリンが総選挙に敗れて辞意を表明」、「よほどの失言でもない限り、政治家が自ら身を引く本当の理由を知るのは難しい。だが3人は驚くほど率直に、辞める理由を語っている」、3人の女性「首相」が相次いで辞任したとは、偶然の一致にしても不思議だ。相互に影響を与え合っていたのだろうか。 「要するに「燃え尽きた」ということだが、職を辞す政治家がこうも率直に、それを口にしたのはたぶん前代未聞。ああ、そうした私的なことを誰もが口にできる時代が来たのか、と思いたいところだ。 でも違う。この3人が注目されたのは、働きすぎはいけないと誰もが気付き始めたからじゃない。3人とも女性だったからだ」、 「高い地位に就いている女性ほど仕事の過酷さを進んで認め、それ故に燃え尽きるリスクがあると正直に言えるのかもしれない。 あるいは、一般論として女性のほうが心の健康に敏感で、それについてオープンに語れるということか・・・女性が指導的な立場に就くと、家庭と仕事をきちんと両立させるよう求められるのが常だ・・・それがプレッシャーになって、仕事を辞める女性もいる。 そもそも、政治家と人間の両立は難しいのかもしれない」、「「私は人間。政治家も人間。私たちは可能な限り全力を尽くす。でも限界が来る」。アーダーンは辞意表明の演説でそう言った。スタージョンも基本的に同じことを言った」、なうほど。 「疲れ果て、自分の地位の重責に押しつぶされそうな人物に、重要な物事の判断を委ねるのが得策とは思えない。 残念ながら、大多数の(ええ、とりわけ男性の)政治家には、そんなふうに自分の限界に気付く機会はなさそうだ。たぶん、そういう機会を持ちたいと思ってもいない。 自分の限界を知るのは大事なことだ。もう首相の重責に耐えられないと思ったら、正直にそう告げる。国のためには、それがベストな選択だろう』、同感である。 AERAdot「「女の子だからできない」じゃなく「やってみたらできた」へ 昭和女子中高の女性校長が語る“理系教育”」 昭和女子大学付属昭和中高の真下峯子校長 「スーパーサイエンスコースの特徴は」、「1年次から実験や研究を重視し、サイエンスの学びをトレーニングします。その蓄えた力をもって、中3の後半からテーマを決めて研究に入ります。ある生徒は、「メダカの記憶の維持」というテーマを設定しました。観察のための実験装置を作って、いつのタイミングで測ればいいのか、試行錯誤しながらいろいろな条件で観察を続けました」、 「実験は、そううまくいくものではありません。100失敗して、1つ成功すればいいほう。世の中で脚光を浴びている研究の基には、失敗が山ほどあります。科学とはそういうものです。実験を繰り返し、結果が出るまでやることで、うまくいかなくてもへこたれない力がつきます。 実はその力は汎用性が高くて、社会に出て困難にぶつかったときに役にたちます」、 「実験を繰り返し、結果が出るまでやることで、うまくいかなくてもへこたれない力がつきます」、その通りだが、うまくいくよう過剰なアドバイスをしないよう抑制するのも、我慢が必要なようだ。 「高2までに卒業のための必要単位を取り、高3から昭和女子大で学ぶ「五修生制度」を取り入れています」、「今年は6人、昨年は8人がこの制度を利用しました。先日面談したある生徒は国際的な公認会計士を目指しており、高3の1年間の余裕をその勉強にあてたいと考え制度を利用したと話していました」、「高大連携は、他大学にも広がっています。 A:生徒たちの進路選択を広げるために、昭和女子大にないコンテンツを持っている大学との連携をしていこうと、働きかけています。現在は東京理科大、早稲田大、芝浦工業大、東京農工大、お茶の水女子大に協力していただいています」、なかなかいい制度のようだ。 「お隣がブリティッシュスクールという、物理的に非常に恵まれた環境にあります・・・今はグローバル留学コースや本科コースの生徒とブリティッシュの生徒が、1週間ほど授業をエクスチェンジしたり、SSコースの生徒があちらの理科の授業を受けたりしています。当然英語での授業なので、サイエンスに英語という武器が加わります・・・授業以外にも、地球環境を守るための活動をしたりブックトークをしたりと、できるだけいろいろなことを一緒にやる方向で動いています」、 「生徒たちは「ブリティッシュスクールの子たちは同年代なのにとても教養が高い」と、良い刺激を受けていますね。 グローバル留学コースは、高1のときに1年間カナダへ留学するのが必須となっています。帰国して国際系の大学を目指す生徒が多いですが、なかには海外の医学部に行きたいという生徒もいます。サイエンスコースの生徒に影響されたのでしょう。お互いに刺激し合って、進路が広がっていると感じます」、「お互いに刺激し合って、進路が広がっている」、なかなかいいことだ。 AERAdot「「カエル好きのお姉さん」が昭和女子中高の校長になるまで 理系教育への情熱の“根っこ”とは」 「真下峯子校長。その情熱の根っこは、幼いころの植物や動物への関心にあった」、とは興味深そうだ。 「小学生のころから、植物や動物が好きでしたね。自然の現象について、母親にいつも「どうして、どうして」と聞いていました。母親の影響も大きくて、夏休みの自由研究を一緒にやっていました」、「小学3年生の担任が理科の専門の先生で、自分の研究についていろいろ話してくれ、ますます理科に興味を持つようになりました」、 「高校の生物の発生の授業で、カエルの卵の原口背唇部という部位が中に入り込んで神経になると教わり、何でそうなるのか不思議でしょうがなかったんです。 今でいうiPS細胞なんですね。運命が決まっていない細胞が、何かのきっかけで髪の毛や皮膚になる。その仕組みが不思議で、もっと勉強したいと生物学科に進みました」、「私1人だと担当した生徒だけにしか理科の面白さを伝えられない。もっと大勢の子どもたちに伝えるために、私と同じような考えを持ってくれる先生を育てればいいと気が付いたんです。 そこで管理職の試験を受け、埼玉県立総合教育センターの指導主事になりました」、「私と同じような考えを持ってくれる先生を育てればいいと気が付いた」とはさすがだ。 「女子の選択の幅を狭めているのは数学や理科です。でも、女子は苦手と思い込んでいるだけ。中高の数学や理科は、コツコツやればできるんです」、「女の子のコツコツやる特性は、実は研究向き。アイデアや発想は男子が勝っているといわれますが、そんなことはありません。研究を続けていれば、新しい着眼点が出てきます。何もないところから、発見はできません」、 「今後の課題は・・・工学系にも興味をもってくれればいいな、と」、「生徒には「今がチャンスだよ」と、話しています。「女の子だから」という思い込みを捨てて学びの選択肢を狭めなければ、可能性は広がっていることを伝えていきたいですね」、今後の展開を大いに期待したい。
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