ハラスメント(その23)(「ジャニー氏は1万円を渡して…」ジャニーズ性加害問題 もし今の法律で裁かれていたら?、海外記者がジャニ会見で感じた日本の「ヤバさ」 「悪いおじいちゃん」のために開かれた家族会議のような奇妙さ、楽天・安楽智大「クビ」待ったなし! 暴行、パワハラ、タカリだけじゃない問題児ぶり) [社会]
ハラスメントについては、本年8月16日に取上げた。今日は、(その23)(「ジャニー氏は1万円を渡して…」ジャニーズ性加害問題 もし今の法律で裁かれていたら?、海外記者がジャニ会見で感じた日本の「ヤバさ」 「悪いおじいちゃん」のために開かれた家族会議のような奇妙さ、楽天・安楽智大「クビ」待ったなし! 暴行、パワハラ、タカリだけじゃない問題児ぶり)である。
先ずは、本年9月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの鎌田和歌氏による「「ジャニー氏は1万円を渡して…」ジャニーズ性加害問題、もし今の法律で裁かれていたら?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328852
・『ジャニーズ事務所の性加害問題について「外部専門家による再発防止特別チーム」が「調査報告書」を発表したのは2023年8月末。この中で、故・ジャニー喜多川氏による長年にわたる性虐待の実態が、被害者からの証言の形で記されていた。しかし、いわゆる「男性も性被害者」として認める法改正がなされたのは17年になってからのことだ。法改正が遅れたことによる影響を改めて振り返ってみたい』、興味深そうだ。
・『衝撃的な「ヒアリング結果」 「調査報告書」では、ジャニー氏による性加害は1950年代から2010年代半ばまで続いていたものであり、被害に遭った少年が多数いることが認定された。 また、その原因は4つ「ジャニー氏の性嗜好異常」「メリー氏による放置と隠蔽」「ジャニーズ事務所の不作為」「被害の潜在化を招いた関係性における権力構造」と指摘されている。 ジャニー氏の個人による問題と、隠蔽した組織の問題の両方があり、さらにその背景には「マスメディアの沈黙」「業界の問題」があったという指摘を、マスコミや業界関係者は重く受け止めなければならないだろう。被害の一端を知りながら、あるいは薄々勘づいていながら、ほぼ全ての人が何も行動を起こさなかったのだ。 調査報告書の中で、特に読む人に衝撃を与えたのが、性加害についての「ヒアリング結果」だろう。この中では具体的にどのような被害があったのかについて、匿名の証言が列挙されている。 「ジャニー氏は1万円を渡してきたので、これは売春のようだと思った」「私が被害を受けている間、周囲のジャニーズJr.たちは見て見ぬふりをしていた」といった証言が悲痛である。 性犯罪については、近年大きな変化があった。23年7月、性犯罪に関する刑法が改正され「不同意性交等罪」や「性交同意年齢の引き上げ」があったことが大きく報道されている。 ただ、今回のポイントは「男性が性被害にあった場合」への対処の遅れに注目したい』、「性犯罪については、近年大きな変化があった。23年7月、性犯罪に関する刑法が改正され「不同意性交等罪」や「性交同意年齢の引き上げ」があったことが大きく報道されている。 ただ、今回のポイントは「男性が性被害にあった場合」への対処の遅れに注目したい」、なるほど。
・『「強姦罪」から名称変更された意味 男性の性被害に関して言えば、6年前の17年の時点で大きな改正があった。 それは、従来の「強姦罪・凖強姦罪」が「強制性交等罪・凖強制性交等罪」に名称変更されたという点だ。ネット上で「罪名を変更しても厳罰化しなければ意味がない」というコメントを見かけたことがあるが、これは単なる名称変更ではない。 それまでの刑法では、暴行や脅迫を用いて膣性交(女性器への男性器の挿入)を行うことを「強姦罪」としていたが、改正後は膣性交だけではなく、口腔性交と肛門性交の強要が同等に裁かれることとなったからだ。この改正が「男性も被害者に」と報道されたのは、このためである。また、「強姦」は「女性を姦淫する」という意味であるため、名称が変更され、やや違和感のある罪名となったのである(23年の改正で、不同意性交等罪に改められた)。 2017年以前は、口腔性交や肛門性交の強要は「強制わいせつ罪」であり、懲役6月~10年の罪だったため、男性に対する性犯罪は女性に対する性犯罪よりも「軽く」捉えられていたと言える。 そんな状況だったのが、17年の改正で「強制性交等罪(旧強姦罪)」の量刑が、懲役3年以上から懲役5年以上に引き上げられることで、厳罰化が進んだのである』、「17年の改正で「強制性交等罪(旧強姦罪)」の量刑が、懲役3年以上から懲役5年以上に引き上げられることで、厳罰化が進んだ」、「厳罰化」は望ましい』、「「強姦罪・凖強姦罪」が「強制性交等罪・凖強制性交等罪」に名称変更された・・・それまでの刑法では、暴行や脅迫を用いて膣性交・・・を行うことを「強姦罪」としていたが、改正後は膣性交だけではなく、口腔性交と肛門性交の強要が同等に裁かれることとなったからだ。この改正が「男性も被害者に」と報道されたのは、このためである」、なるほど。
・『男児複数人への性加害、懲役20年のケースも 「調査報告書」を見ると、口腔性交をされたという証言は多く、中には肛門性交をされたという証言もある。これらは、現在の基準であれば懲役5年以上の「不同意性交等罪(17年7月~23年7月12日までは強制性交等罪)」となる。 22年の裁判で、男児に対する性的暴行で逮捕された元ベビーシッターの男に対して懲役20年が言い渡された。この事件の被害児童は20人、強制性交等罪での立件が22件、強制わいせつ罪が14件と報道されている。 仮定の話に意味はないが、現在の基準で故・ジャニー喜多川氏が裁かれていたとすれば、相当重い懲役となったはずである。 しかし、ジャニー氏の存命中にこの問題が発覚していてもどうであったか……。故・ジャニー喜多川氏の加害行為は、わかっている範囲で1950年代から2010年代半ばという。17年の法改正より前の被害については、口腔性交・肛門性交の強要は「強制わいせつ罪」だった。 もちろん、そもそも被害申告できなかった人が多いので刑事事件になった可能性は低いが、それでも法改正がもっと早く行われていれば、「男性の性被害」に関する意識の変化はそれだけ早かったかもしれない』、「故・ジャニー喜多川氏の加害行為は、わかっている範囲で1950年代から2010年代半ばという。17年の法改正より前の被害については、口腔性交・肛門性交の強要は「強制わいせつ罪」だった。 もちろん、そもそも被害申告できなかった人が多いので刑事事件になった可能性は低いが、それでも法改正がもっと早く行われていれば、「男性の性被害」に関する意識の変化はそれだけ早かったかもしれない」、その通りだろう。
・『13~15歳の被害が多いのはなぜか また、もう一つのポイントは性交同意年齢だろう。 調査報告書を見ると、被害に遭った年齢は10代前半に集中している。「13~14歳時」「14~15歳時」「中学1年頃」「中学2年頃」といった証言が多い。 23年の刑法改正まで、日本の性交同意年齢は男女関係なく13歳だった(法改正後は16歳に引き上げ)。 13歳未満の者に対しては、性的行為をした時点でアウトだが、13歳に達していた場合、「暴行・脅迫」が用いられたどうかが問われていた(23年の改正前刑法)。 「調査報告書」の中では、ジャニー氏が性的行為に及んだ際に明確な暴行や脅迫があったとは記されていない。だからといって、彼の行為が「同意のある性行為」だったと考える人は、今やほぼいないだろうが、これらについて「被害」を立証することは、当時の法律や認識では難易度が高かっただろう。「嫌ならなぜ抵抗しなかったのか」「男の子なのだから逃げようと思えば逃げられたはずだ」と言われてしまったであろうことは容易に想像できる。 23年の法改正では性的同意年齢が16歳に引き上げられ、「経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって不利益を憂慮させること」も、「不同意性交等罪」を成り立たせる事由の一つとされた。 この条件が当時もあったのであれば、ジャニー氏による加害行為は訴えやすかったはずだ』、「23年の法改正では性的同意年齢が16歳に引き上げられ、「経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって不利益を憂慮させること」も、「不同意性交等罪」を成り立たせる事由の一つとされた。 この条件が当時もあったのであれば、ジャニー氏による加害行為は訴えやすかったはずだ」、その通りだ。
・『時効の問題 23年の改正では、性犯罪の時効についても変更があった。 不同意性交等罪(改正前は強制性交等罪・凖強制性交等罪)は10年から15年、不同意わいせつ罪(改正前は強制わいせつ罪)は7年から12年に時効が引き上げられた。ただし改正以前に行われた行為については、時効はそれぞれ10年、7年のままである。※ただし改正以前の事件でも改正までに時効を迎えていなければ、改正後の時効が適用される。 口腔性交と肛門性交の強要が強制性交にあたるようになったのが2017年だが、強制性交等罪にあたる被害については、そもそも2017年の法改正以降しか問うことができないということだ(それ以前の口腔性交、肛門性交の強要は強制わいせつ罪なので、さかのぼれるのは2016年までだ)。 ジャニー喜多川氏は19年に亡くなっているが、死去の直前まで加害行為があったとすれば、被疑者死亡ながら時効を迎えていない被害もあるのだろう。「ジャニーズ性加害問題当事者の会」は9月4日の会見で刑事告発を行う考えを明らかにしているが、告発を行う人がいるのであれば、この期間(時効が過ぎていない期間)での被害なのではないか。 性被害は被害申告までに時間がかかる場合が多く、特に子どもの頃の被害は被害に気づくまでにも時間がかかるといわれる。23年の法改正では、未成年の被害は、成人を迎えるまで時効がストップされることになったが、それでも、最大で33歳までに被害を申告しなければ時効となる。 今回、被害を打ち明けた当事者の人々の中には、40~50代以上も多い。これをどう考えるかは、今後社会に向けても問われることとなりそうだ。 【追記】27段落目:※ただし改正以前の事件でも改正までに時効を迎えていなければ、改正後の時効が適用される (2023年9月27日9:50 ダイヤモンド編集部)』、「性被害は被害申告までに時間がかかる場合が多く、特に子どもの頃の被害は被害に気づくまでにも時間がかかるといわれる。23年の法改正では、未成年の被害は、成人を迎えるまで時効がストップされることになったが、それでも、最大で33歳までに被害を申告しなければ時効となる」、なるほど。
次に、9月9日付け東洋経済オンライン「海外記者がジャニ会見で感じた日本の「ヤバさ」、「悪いおじいちゃん」のために開かれた家族会議のような奇妙さ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/700654
・『9月7日に開かれたジャニーズ事務所の劇的な会見は、私が日本で経験したジャーナリスト人生の中で最も奇妙な体験の1つだった。 ジャニーズ事務所は、これ以上ないほど積極的に報道陣を迎え入れた。日本人、外国人、主要メディア、フリーランスのジャーナリストなど、誰でも参加できた。しかも、会見は14時から4時間以上続いた。何十台ものカメラやビデオカメラが彼らを見守った。どんな質問もタブーではなかった。報道陣が望めば、何日でも続いただろう』、「劇的な会見は、私が日本で経験したジャーナリスト人生の中で最も奇妙な体験の1つだった。ジャニーズ事務所は、これ以上ないほど積極的に報道陣を迎え入れた。日本人、外国人、主要メディア、フリーランスのジャーナリストなど、誰でも参加できた。しかも、会見は14時から4時間以上続いた」、なるほど。
・『「家族会議」のような奇妙な会見 しかし、長引けば長引くほど、私たちが知ることは少なくなっていった。すべての瞬間が妙に空虚だった。まるで家族会議が開かれ、そこにいる人が皆で一緒に癒やされようとしているようにさえ感じられた。 ジャニー喜多川の何十年にも及ぶ少年への性的加害が認められたにもかかわらず、会場全体がジャニーズ事務所の存続を望んでいるような雰囲気さえあった。 おそらく会見会場にいる誰もが、自ら調査をしなかったことを恥ずかしく思っていただろう。ジャニーズ事務所はそのトップであったジャニー喜多川が、何百人もの少年に性的加害をしながらジャーナリストからファンまでをその巨大な軌道に取り込み、劣化させ、見て見ぬ振りをさせることに見事に成功してきた。) 会見では、ジャニー喜多川は、その旧態依然とした振る舞いが長い時を経てようやく露呈した、孤独で卑劣な「おじいちゃん」として描かれたが、はたしてそうだろうか? 会見直前、私は日刊ゲンダイデジタルに掲載された記事に目を引かれた。そこには、2005年に発売された元ジャニーズJr.の山崎正人氏が、木山将吾のペンネームで書いた『Smapへーそして、すべてのジャニーズタレントへ』が紹介され、ジャニーズの東山紀之新社長が後輩たちにしていた振る舞いが書かれていた。 「彼はマージャンだけではなく、人のパンツを脱がすことが大好きだった。僕も何度もヒガシに背後からパンツを引きずり下ろされ、イタズラされたことがある。そして、パンツを脱いだままよろける姿でいる僕に、ヒガシは『こっちへ来い!』と命令しながら、無理やりに僕の手を引いて、マージャン卓のある部屋まで引き摺っていくのだ」 記事によると、連れていかれた先ではジャニー喜多川が待っており、時折、性器を触られることもあったという。 もし木山の主張が事実でないなら、東山は木山を名誉毀損で訴えるべきだ。記者会見で筆者を含めて複数の記者がこの点について尋ねると、東山の答えはどんどんと変わっていった。 筆者が最初に尋ねたときは「中身は読んでいないが、事実ではないと思う」としていたが、別の記者が同様の質問をすると、「したかもしれないし、していないかもしれない。よく思い出せない」という趣旨の発言をした。だが、こんなシーンを忘れることができるだろうか』、「東山紀之新社長が後輩たちにしていた振る舞いが書かれていた。 「彼はマージャンだけではなく、人のパンツを脱がすことが大好きだった。僕も何度もヒガシに背後からパンツを引きずり下ろされ、イタズラされたことがある。そして、パンツを脱いだままよろける姿でいる僕に、ヒガシは『こっちへ来い!』と命令しながら、無理やりに僕の手を引いて、マージャン卓のある部屋まで引き摺っていくのだ」 記事によると、連れていかれた先ではジャニー喜多川が待っており、時折、性器を触られることもあったという」、「東山紀之新社長」までが事実上の加害者の1人だったとは驚いた。
・『アルコール依存症の治療をバーテンダーに任せるよう 私は彼自身に個人的な不満はないが、ジャニー喜多川の「お気に入りの息子」である彼にジャニーズ事務所の更生を担当させるのは、バーテンダーにアルコール依存症対策プログラムを担当させるようなものだ。 東山はジャニーズ事務所の再生にもっとも不向きな人物である。彼に任せることは、性的加害、そしてその隠蔽を可能にした「喜多川システム」の共犯者たちに庇護を与えることになりかねない。) 日本の刑法では、酒気帯び運転をした場合、助手席の同乗者にも運転させた責任がある。バーテンダーには酒を提供した責任がある。 同じ理屈が、ジャニー喜多川の捕食行為を何十年も野放しにしてきた東山や藤島ジュリー景子前社長、その他の側近メンバーにも当てはまらないだろうか?真実は、ジャニー喜多川1人で罪を犯すことはできなかった、ということだ。彼が捕食することを可能にしていた環境があり、彼の悪癖を“助ける”者たちがいた可能性もある。 ジャニーズのタレントたちにも責任の一端はないのだろうか。彼らが有名であるほど、大人であるほどその責任は重い。多くは「知らなかった」というが、正確には「知らないふりをしてきた」というべきだろう。東山は、その最たる例なのではないか。 そして、彼らが見て見ぬ振りをし、真実から目を背け続けたことで、真実を知る機会を奪われた多くの少年たちが、彼らのようなスターになることを夢見てジャニーズに集まってきたのだ』、「東山はジャニーズ事務所の再生にもっとも不向きな人物である。彼に任せることは、性的加害、そしてその隠蔽を可能にした「喜多川システム」の共犯者たちに庇護を与えることになりかねない・・・ジャニーズのタレントたちにも責任の一端はないのだろうか。彼らが有名であるほど、大人であるほどその責任は重い。多くは「知らなかった」というが、正確には「知らないふりをしてきた」というべきだろう。東山は、その最たる例なのではないか。 そして、彼らが見て見ぬ振りをし、真実から目を背け続けたことで、真実を知る機会を奪われた多くの少年たちが、彼らのようなスターになることを夢見てジャニーズに集まってきたのだ」、なるほど。
・『外圧がなければ放置されたままだった 秘密によって集団が引き裂かれる物語では、しばしば部外者がその秘密を暴露する。今回はBBCのジャーナリストだ。 モンスターになる前のジャニー喜多川は、たんに心に問題を抱えた人間だったのかもしれない。 彼のそうした問題が早い段階で見抜かれ、有罪判決や治療によって、キャリアの早い段階から正しい方向に戻っていたなら、その素晴らしい才能を善のためだけの力として発揮できたかもしれない。 だが結局、彼は何十年も自分の好きに振る舞うことが許されていた。日本のメディアは、なぜ自分たちは一部の人々にはとんでもなく小さなネタで嫌がらせをする一方で、大きなネタは眠らせておくのか疑問に思うべきだ。) ジャニー喜多川が何百人もの人間を自由破壊できる一方で、不倫した俳優が事務所から契約を解除されたり、マスコミから執拗な取材を受けたりするのはなぜか。経済的、社会的衰退のために、海外への日本に関する報道が減少し、日本にポジティブな影響を与えてきた「外圧」が減っている今、日本のメディアはこのことを自ら真剣に考えるべきだ』、「日本のメディアは、なぜ自分たちは一部の人々にはとんでもなく小さなネタで嫌がらせをする一方で、大きなネタは眠らせておくのか疑問に思うべきだ・・・ジャニー喜多川が何百人もの人間を自由破壊できる一方で、不倫した俳優が事務所から契約を解除されたり、マスコミから執拗な取材を受けたりするのはなぜか」、確かに「日本のメディア」の姿勢は歪んでいる。
・『「ジャニーズ問題」はすべての日本人の問題だ ジャニーズの物語はすべての人に影響を与えるものであり、それは今やすべての人の責任である。社会にとってこれほど悪質な実績を持つ企業と関係を続けるかどうかは、スポンサー企業の判断に委ねられている。スポンサー企業は、ジャニーズ事務所や、同事務所を支援した企業との関係を完全に断ち切るべきである。 より責任が重いのはテレビ局だ。テレビ局の中には、早々にジャニーズ事務所所属タレントの番組出演について変更する予定がない旨を表明した局もあるが、開いた口が塞がらない。 テレビ局は、ジャニーズと組むことで社会的責任を回避するのをやめるべきだ。テレビ朝日はこれからも『#裸の少年』を放送するつもりなのだろうか。大手テレビ局が、こんなタイトルの番組を放送するのは普通なのだろうか?テレビ朝日のウェブサイトにある「ESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組み」が何と空々しいことか。 テレビ各局は、「未来志向」の声明を出しているが、本当にそれだけですますつもりなのだろうか。最低でも第三者委員会を立ち上げ、ジャニー喜多川の性加害について、いつ認識し、それがなぜ報道に至らなかったのか、いつ、誰による圧力や働きかけがあったのかについて、詳らかにすることこそ、メディアとしての責任だろう。 ジャニー喜多川は、残念ながらこの世で最後の異常性癖者ではない。何の検証もしないで、また彼のような人物が現れたとき、メディアはいったいどうやって再発防止を図るつもりなのだろうか』、「テレビ各局は、「未来志向」の声明を出しているが、本当にそれだけですますつもりなのだろうか。最低でも第三者委員会を立ち上げ、ジャニー喜多川の性加害について、いつ認識し、それがなぜ報道に至らなかったのか、いつ、誰による圧力や働きかけがあったのかについて、詳らかにすることこそ、メディアとしての責任だろう」、同感である。
第三に、11月27日付け日刊ゲンダイ「楽天・安楽智大「クビ」待ったなし! 暴行、パワハラ、タカリだけじゃない問題児ぶり」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/332546
・『救いようがないとはこのことだ。楽天の安楽智大(27)が複数の同僚選手から暴力行為などのパワハラ被害を訴えられた件である。 関係者によると、安楽は後輩選手に対して恒常的にパワハラ行為を働いていた。すでに楽天を退団した選手は、2021年の春季キャンプ中に平手で頭部付近を殴られ、むち打ち症状に。試合前にロッカールームで「倒立しろ」と命令され、パンツごとズボンを脱がされた挙げ句、イチモツに靴下をかぶせられたと訴える選手もいる。 パワハラ疑惑を認めて謝罪した球団は安楽に自宅待機を命じるとともに、25日に予定されていた契約更改を無期限延期に。仙台の地元マスコミ関係者は、「先輩選手からは礼儀正しいと評判だった。かねて派手な夜遊びは懸念されていましたが……」と、こう続ける』、「安楽は後輩選手に対して恒常的にパワハラ行為を働いていた・・・試合前にロッカールームで「倒立しろ」と命令され、パンツごとズボンを脱がされた挙げ句、イチモツに靴下をかぶせられたと訴える選手もいる。 パワハラ疑惑を認めて謝罪した球団は安楽に自宅待機を命じるとともに、25日に予定されていた契約更改を無期限延期に」、「パワハラ」というより運動部のノリでやったようだ。それも「パワハラ」であることは間違いないが・・・。
・『後輩足蹴動画が拡散 「ネット上では、選手同士の記念撮影の際、安楽らしき人物が後列から前例にいた選手を足蹴にする画像、動画が拡散している。後輩を小突いたり蹴とばしたりするのは日常茶飯事。強引に食事に誘ったり、合コンのセッティングを強要するなどコキ使うことも。一部報道では10人程度の同僚選手がパワハラを告発したとありますが、ある選手に言わせると、安楽は粘着質で一度キレると見境がなくなるといいます。食事の誘いを断ると、『散々、世話してやったのに』と言わんばかりに逆上され、夜中にもかかわらず、執拗に嫌がらせの電話やメールをされた。バカ、アホと散々暴言を吐かれ、ノイローゼ気味になった選手もいます」』、「安楽は粘着質で一度キレると見境がなくなるといいます。食事の誘いを断ると、『散々、世話してやったのに』と言わんばかりに逆上され、夜中にもかかわらず、執拗に嫌がらせの電話やメールをされた。バカ、アホと散々暴言を吐かれ、ノイローゼ気味になった選手もいます」、悪質だ。
・『中田翔や山川穂高よりタチが悪い スポニチによると、ある選手は「罰金」と称してお金を要求されることがあったと告白。そのメールのやりとりを保存しているという。 「このままいけば11月末が締め切りの保留者名簿から外れ、“クビ”になる可能性もある」とは、前出のマスコミ関係者。 「世間がコンプライアンスに厳しい目を向ける時代に、暴力と日常的なパワハラも明らかになった。21年は中田翔が同僚選手への暴行で無期限謹慎(後に巨人へ無償トレード)、今年は西武の山川穂高が女性問題でこちらも無期限の公式戦出場停止処分を受けた。安楽がやったことは、中田や山川よりもタチが悪いと見る向きもある」 古株の評論家が言う。 「昔は酒の一気飲みを強要されるのは序の口。かつてパのある投手は納会の余興として人前で先輩投手に素っ裸にさせられ、体中がアザだらけになるほどベルトでムチ打たれた。警察沙汰になるようなことも球団が内々でもみ消してきたから大した問題にはならなかっただけのことです。暴力、パワハラの類いは減りつつあるものの、そもそもプロ野球界は不祥事に対して甘い。女性問題に絡み、ヤクザに1億円を支払うような人物が監督を務めるくらいですから」』、「安楽がやったことは、中田や山川よりもタチが悪いと見る向きもある」 古株の評論家が言う」、なるほど。
・『高校時代の「カメムシ事件」 不祥事が多いのはアマ球界も同じ。高校野球では部員の飲酒、喫煙に加え、指導者による体罰や部員同士の暴力沙汰は枚挙にいとまがない。日本学生野球協会はこの2カ月だけでも16件の処分を決定。10月には部内のイジメが発覚した宮崎・小林西に3カ月の対外試合禁止を言い渡している。 「西日本のある私立高では、監督が試合で守備のミスをした選手に至近距離から強烈なノックを打って前歯を折ったそうです。アマ球界はいまだ勝利至上主義が根強く、小学生のリトルリーグからパワハラ気質の指導者が跋扈している。そういう環境で育った選手が勝てば何をやっても許されると勘違いするのも当然です。アマ時代の過度な上下関係をそのまま持ち込む安楽のような人間がいても不思議ではありません」(スポーツライター) そういえば安楽は、済美高(愛媛)3年時に部内での恒常的な暴力とイジメが発覚。1年間の対外試合禁止処分が言い渡されている。上級生が下級生にカメムシを食べさせたり、灯油を飲ませようとするなど、悪質極まりない行為は大きな批判を集めた。 安楽本人はこの件に関わっていないとされたが、1位指名を検討していた一部球団は「プロ入り後にその問題が蒸し返されて、加害者のひとりとして名前が出るようなことになったら困る」などとして、指名回避をしたとされる。 仮に楽天をクビになっても救いの手を差し伸べる球団があるのか……』、「安楽は、済美高(愛媛)3年時に部内での恒常的な暴力とイジメが発覚。1年間の対外試合禁止処分が言い渡されている。上級生が下級生にカメムシを食べさせたり、灯油を飲ませようとするなど、悪質極まりない行為は大きな批判を集めた・・・仮に楽天をクビになっても救いの手を差し伸べる球団があるのか……」、昔からハラスメントで有名だったようだ。きちんと指導してくれる人がいなかったのだろうか。
先ずは、本年9月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの鎌田和歌氏による「「ジャニー氏は1万円を渡して…」ジャニーズ性加害問題、もし今の法律で裁かれていたら?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328852
・『ジャニーズ事務所の性加害問題について「外部専門家による再発防止特別チーム」が「調査報告書」を発表したのは2023年8月末。この中で、故・ジャニー喜多川氏による長年にわたる性虐待の実態が、被害者からの証言の形で記されていた。しかし、いわゆる「男性も性被害者」として認める法改正がなされたのは17年になってからのことだ。法改正が遅れたことによる影響を改めて振り返ってみたい』、興味深そうだ。
・『衝撃的な「ヒアリング結果」 「調査報告書」では、ジャニー氏による性加害は1950年代から2010年代半ばまで続いていたものであり、被害に遭った少年が多数いることが認定された。 また、その原因は4つ「ジャニー氏の性嗜好異常」「メリー氏による放置と隠蔽」「ジャニーズ事務所の不作為」「被害の潜在化を招いた関係性における権力構造」と指摘されている。 ジャニー氏の個人による問題と、隠蔽した組織の問題の両方があり、さらにその背景には「マスメディアの沈黙」「業界の問題」があったという指摘を、マスコミや業界関係者は重く受け止めなければならないだろう。被害の一端を知りながら、あるいは薄々勘づいていながら、ほぼ全ての人が何も行動を起こさなかったのだ。 調査報告書の中で、特に読む人に衝撃を与えたのが、性加害についての「ヒアリング結果」だろう。この中では具体的にどのような被害があったのかについて、匿名の証言が列挙されている。 「ジャニー氏は1万円を渡してきたので、これは売春のようだと思った」「私が被害を受けている間、周囲のジャニーズJr.たちは見て見ぬふりをしていた」といった証言が悲痛である。 性犯罪については、近年大きな変化があった。23年7月、性犯罪に関する刑法が改正され「不同意性交等罪」や「性交同意年齢の引き上げ」があったことが大きく報道されている。 ただ、今回のポイントは「男性が性被害にあった場合」への対処の遅れに注目したい』、「性犯罪については、近年大きな変化があった。23年7月、性犯罪に関する刑法が改正され「不同意性交等罪」や「性交同意年齢の引き上げ」があったことが大きく報道されている。 ただ、今回のポイントは「男性が性被害にあった場合」への対処の遅れに注目したい」、なるほど。
・『「強姦罪」から名称変更された意味 男性の性被害に関して言えば、6年前の17年の時点で大きな改正があった。 それは、従来の「強姦罪・凖強姦罪」が「強制性交等罪・凖強制性交等罪」に名称変更されたという点だ。ネット上で「罪名を変更しても厳罰化しなければ意味がない」というコメントを見かけたことがあるが、これは単なる名称変更ではない。 それまでの刑法では、暴行や脅迫を用いて膣性交(女性器への男性器の挿入)を行うことを「強姦罪」としていたが、改正後は膣性交だけではなく、口腔性交と肛門性交の強要が同等に裁かれることとなったからだ。この改正が「男性も被害者に」と報道されたのは、このためである。また、「強姦」は「女性を姦淫する」という意味であるため、名称が変更され、やや違和感のある罪名となったのである(23年の改正で、不同意性交等罪に改められた)。 2017年以前は、口腔性交や肛門性交の強要は「強制わいせつ罪」であり、懲役6月~10年の罪だったため、男性に対する性犯罪は女性に対する性犯罪よりも「軽く」捉えられていたと言える。 そんな状況だったのが、17年の改正で「強制性交等罪(旧強姦罪)」の量刑が、懲役3年以上から懲役5年以上に引き上げられることで、厳罰化が進んだのである』、「17年の改正で「強制性交等罪(旧強姦罪)」の量刑が、懲役3年以上から懲役5年以上に引き上げられることで、厳罰化が進んだ」、「厳罰化」は望ましい』、「「強姦罪・凖強姦罪」が「強制性交等罪・凖強制性交等罪」に名称変更された・・・それまでの刑法では、暴行や脅迫を用いて膣性交・・・を行うことを「強姦罪」としていたが、改正後は膣性交だけではなく、口腔性交と肛門性交の強要が同等に裁かれることとなったからだ。この改正が「男性も被害者に」と報道されたのは、このためである」、なるほど。
・『男児複数人への性加害、懲役20年のケースも 「調査報告書」を見ると、口腔性交をされたという証言は多く、中には肛門性交をされたという証言もある。これらは、現在の基準であれば懲役5年以上の「不同意性交等罪(17年7月~23年7月12日までは強制性交等罪)」となる。 22年の裁判で、男児に対する性的暴行で逮捕された元ベビーシッターの男に対して懲役20年が言い渡された。この事件の被害児童は20人、強制性交等罪での立件が22件、強制わいせつ罪が14件と報道されている。 仮定の話に意味はないが、現在の基準で故・ジャニー喜多川氏が裁かれていたとすれば、相当重い懲役となったはずである。 しかし、ジャニー氏の存命中にこの問題が発覚していてもどうであったか……。故・ジャニー喜多川氏の加害行為は、わかっている範囲で1950年代から2010年代半ばという。17年の法改正より前の被害については、口腔性交・肛門性交の強要は「強制わいせつ罪」だった。 もちろん、そもそも被害申告できなかった人が多いので刑事事件になった可能性は低いが、それでも法改正がもっと早く行われていれば、「男性の性被害」に関する意識の変化はそれだけ早かったかもしれない』、「故・ジャニー喜多川氏の加害行為は、わかっている範囲で1950年代から2010年代半ばという。17年の法改正より前の被害については、口腔性交・肛門性交の強要は「強制わいせつ罪」だった。 もちろん、そもそも被害申告できなかった人が多いので刑事事件になった可能性は低いが、それでも法改正がもっと早く行われていれば、「男性の性被害」に関する意識の変化はそれだけ早かったかもしれない」、その通りだろう。
・『13~15歳の被害が多いのはなぜか また、もう一つのポイントは性交同意年齢だろう。 調査報告書を見ると、被害に遭った年齢は10代前半に集中している。「13~14歳時」「14~15歳時」「中学1年頃」「中学2年頃」といった証言が多い。 23年の刑法改正まで、日本の性交同意年齢は男女関係なく13歳だった(法改正後は16歳に引き上げ)。 13歳未満の者に対しては、性的行為をした時点でアウトだが、13歳に達していた場合、「暴行・脅迫」が用いられたどうかが問われていた(23年の改正前刑法)。 「調査報告書」の中では、ジャニー氏が性的行為に及んだ際に明確な暴行や脅迫があったとは記されていない。だからといって、彼の行為が「同意のある性行為」だったと考える人は、今やほぼいないだろうが、これらについて「被害」を立証することは、当時の法律や認識では難易度が高かっただろう。「嫌ならなぜ抵抗しなかったのか」「男の子なのだから逃げようと思えば逃げられたはずだ」と言われてしまったであろうことは容易に想像できる。 23年の法改正では性的同意年齢が16歳に引き上げられ、「経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって不利益を憂慮させること」も、「不同意性交等罪」を成り立たせる事由の一つとされた。 この条件が当時もあったのであれば、ジャニー氏による加害行為は訴えやすかったはずだ』、「23年の法改正では性的同意年齢が16歳に引き上げられ、「経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって不利益を憂慮させること」も、「不同意性交等罪」を成り立たせる事由の一つとされた。 この条件が当時もあったのであれば、ジャニー氏による加害行為は訴えやすかったはずだ」、その通りだ。
・『時効の問題 23年の改正では、性犯罪の時効についても変更があった。 不同意性交等罪(改正前は強制性交等罪・凖強制性交等罪)は10年から15年、不同意わいせつ罪(改正前は強制わいせつ罪)は7年から12年に時効が引き上げられた。ただし改正以前に行われた行為については、時効はそれぞれ10年、7年のままである。※ただし改正以前の事件でも改正までに時効を迎えていなければ、改正後の時効が適用される。 口腔性交と肛門性交の強要が強制性交にあたるようになったのが2017年だが、強制性交等罪にあたる被害については、そもそも2017年の法改正以降しか問うことができないということだ(それ以前の口腔性交、肛門性交の強要は強制わいせつ罪なので、さかのぼれるのは2016年までだ)。 ジャニー喜多川氏は19年に亡くなっているが、死去の直前まで加害行為があったとすれば、被疑者死亡ながら時効を迎えていない被害もあるのだろう。「ジャニーズ性加害問題当事者の会」は9月4日の会見で刑事告発を行う考えを明らかにしているが、告発を行う人がいるのであれば、この期間(時効が過ぎていない期間)での被害なのではないか。 性被害は被害申告までに時間がかかる場合が多く、特に子どもの頃の被害は被害に気づくまでにも時間がかかるといわれる。23年の法改正では、未成年の被害は、成人を迎えるまで時効がストップされることになったが、それでも、最大で33歳までに被害を申告しなければ時効となる。 今回、被害を打ち明けた当事者の人々の中には、40~50代以上も多い。これをどう考えるかは、今後社会に向けても問われることとなりそうだ。 【追記】27段落目:※ただし改正以前の事件でも改正までに時効を迎えていなければ、改正後の時効が適用される (2023年9月27日9:50 ダイヤモンド編集部)』、「性被害は被害申告までに時間がかかる場合が多く、特に子どもの頃の被害は被害に気づくまでにも時間がかかるといわれる。23年の法改正では、未成年の被害は、成人を迎えるまで時効がストップされることになったが、それでも、最大で33歳までに被害を申告しなければ時効となる」、なるほど。
次に、9月9日付け東洋経済オンライン「海外記者がジャニ会見で感じた日本の「ヤバさ」、「悪いおじいちゃん」のために開かれた家族会議のような奇妙さ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/700654
・『9月7日に開かれたジャニーズ事務所の劇的な会見は、私が日本で経験したジャーナリスト人生の中で最も奇妙な体験の1つだった。 ジャニーズ事務所は、これ以上ないほど積極的に報道陣を迎え入れた。日本人、外国人、主要メディア、フリーランスのジャーナリストなど、誰でも参加できた。しかも、会見は14時から4時間以上続いた。何十台ものカメラやビデオカメラが彼らを見守った。どんな質問もタブーではなかった。報道陣が望めば、何日でも続いただろう』、「劇的な会見は、私が日本で経験したジャーナリスト人生の中で最も奇妙な体験の1つだった。ジャニーズ事務所は、これ以上ないほど積極的に報道陣を迎え入れた。日本人、外国人、主要メディア、フリーランスのジャーナリストなど、誰でも参加できた。しかも、会見は14時から4時間以上続いた」、なるほど。
・『「家族会議」のような奇妙な会見 しかし、長引けば長引くほど、私たちが知ることは少なくなっていった。すべての瞬間が妙に空虚だった。まるで家族会議が開かれ、そこにいる人が皆で一緒に癒やされようとしているようにさえ感じられた。 ジャニー喜多川の何十年にも及ぶ少年への性的加害が認められたにもかかわらず、会場全体がジャニーズ事務所の存続を望んでいるような雰囲気さえあった。 おそらく会見会場にいる誰もが、自ら調査をしなかったことを恥ずかしく思っていただろう。ジャニーズ事務所はそのトップであったジャニー喜多川が、何百人もの少年に性的加害をしながらジャーナリストからファンまでをその巨大な軌道に取り込み、劣化させ、見て見ぬ振りをさせることに見事に成功してきた。) 会見では、ジャニー喜多川は、その旧態依然とした振る舞いが長い時を経てようやく露呈した、孤独で卑劣な「おじいちゃん」として描かれたが、はたしてそうだろうか? 会見直前、私は日刊ゲンダイデジタルに掲載された記事に目を引かれた。そこには、2005年に発売された元ジャニーズJr.の山崎正人氏が、木山将吾のペンネームで書いた『Smapへーそして、すべてのジャニーズタレントへ』が紹介され、ジャニーズの東山紀之新社長が後輩たちにしていた振る舞いが書かれていた。 「彼はマージャンだけではなく、人のパンツを脱がすことが大好きだった。僕も何度もヒガシに背後からパンツを引きずり下ろされ、イタズラされたことがある。そして、パンツを脱いだままよろける姿でいる僕に、ヒガシは『こっちへ来い!』と命令しながら、無理やりに僕の手を引いて、マージャン卓のある部屋まで引き摺っていくのだ」 記事によると、連れていかれた先ではジャニー喜多川が待っており、時折、性器を触られることもあったという。 もし木山の主張が事実でないなら、東山は木山を名誉毀損で訴えるべきだ。記者会見で筆者を含めて複数の記者がこの点について尋ねると、東山の答えはどんどんと変わっていった。 筆者が最初に尋ねたときは「中身は読んでいないが、事実ではないと思う」としていたが、別の記者が同様の質問をすると、「したかもしれないし、していないかもしれない。よく思い出せない」という趣旨の発言をした。だが、こんなシーンを忘れることができるだろうか』、「東山紀之新社長が後輩たちにしていた振る舞いが書かれていた。 「彼はマージャンだけではなく、人のパンツを脱がすことが大好きだった。僕も何度もヒガシに背後からパンツを引きずり下ろされ、イタズラされたことがある。そして、パンツを脱いだままよろける姿でいる僕に、ヒガシは『こっちへ来い!』と命令しながら、無理やりに僕の手を引いて、マージャン卓のある部屋まで引き摺っていくのだ」 記事によると、連れていかれた先ではジャニー喜多川が待っており、時折、性器を触られることもあったという」、「東山紀之新社長」までが事実上の加害者の1人だったとは驚いた。
・『アルコール依存症の治療をバーテンダーに任せるよう 私は彼自身に個人的な不満はないが、ジャニー喜多川の「お気に入りの息子」である彼にジャニーズ事務所の更生を担当させるのは、バーテンダーにアルコール依存症対策プログラムを担当させるようなものだ。 東山はジャニーズ事務所の再生にもっとも不向きな人物である。彼に任せることは、性的加害、そしてその隠蔽を可能にした「喜多川システム」の共犯者たちに庇護を与えることになりかねない。) 日本の刑法では、酒気帯び運転をした場合、助手席の同乗者にも運転させた責任がある。バーテンダーには酒を提供した責任がある。 同じ理屈が、ジャニー喜多川の捕食行為を何十年も野放しにしてきた東山や藤島ジュリー景子前社長、その他の側近メンバーにも当てはまらないだろうか?真実は、ジャニー喜多川1人で罪を犯すことはできなかった、ということだ。彼が捕食することを可能にしていた環境があり、彼の悪癖を“助ける”者たちがいた可能性もある。 ジャニーズのタレントたちにも責任の一端はないのだろうか。彼らが有名であるほど、大人であるほどその責任は重い。多くは「知らなかった」というが、正確には「知らないふりをしてきた」というべきだろう。東山は、その最たる例なのではないか。 そして、彼らが見て見ぬ振りをし、真実から目を背け続けたことで、真実を知る機会を奪われた多くの少年たちが、彼らのようなスターになることを夢見てジャニーズに集まってきたのだ』、「東山はジャニーズ事務所の再生にもっとも不向きな人物である。彼に任せることは、性的加害、そしてその隠蔽を可能にした「喜多川システム」の共犯者たちに庇護を与えることになりかねない・・・ジャニーズのタレントたちにも責任の一端はないのだろうか。彼らが有名であるほど、大人であるほどその責任は重い。多くは「知らなかった」というが、正確には「知らないふりをしてきた」というべきだろう。東山は、その最たる例なのではないか。 そして、彼らが見て見ぬ振りをし、真実から目を背け続けたことで、真実を知る機会を奪われた多くの少年たちが、彼らのようなスターになることを夢見てジャニーズに集まってきたのだ」、なるほど。
・『外圧がなければ放置されたままだった 秘密によって集団が引き裂かれる物語では、しばしば部外者がその秘密を暴露する。今回はBBCのジャーナリストだ。 モンスターになる前のジャニー喜多川は、たんに心に問題を抱えた人間だったのかもしれない。 彼のそうした問題が早い段階で見抜かれ、有罪判決や治療によって、キャリアの早い段階から正しい方向に戻っていたなら、その素晴らしい才能を善のためだけの力として発揮できたかもしれない。 だが結局、彼は何十年も自分の好きに振る舞うことが許されていた。日本のメディアは、なぜ自分たちは一部の人々にはとんでもなく小さなネタで嫌がらせをする一方で、大きなネタは眠らせておくのか疑問に思うべきだ。) ジャニー喜多川が何百人もの人間を自由破壊できる一方で、不倫した俳優が事務所から契約を解除されたり、マスコミから執拗な取材を受けたりするのはなぜか。経済的、社会的衰退のために、海外への日本に関する報道が減少し、日本にポジティブな影響を与えてきた「外圧」が減っている今、日本のメディアはこのことを自ら真剣に考えるべきだ』、「日本のメディアは、なぜ自分たちは一部の人々にはとんでもなく小さなネタで嫌がらせをする一方で、大きなネタは眠らせておくのか疑問に思うべきだ・・・ジャニー喜多川が何百人もの人間を自由破壊できる一方で、不倫した俳優が事務所から契約を解除されたり、マスコミから執拗な取材を受けたりするのはなぜか」、確かに「日本のメディア」の姿勢は歪んでいる。
・『「ジャニーズ問題」はすべての日本人の問題だ ジャニーズの物語はすべての人に影響を与えるものであり、それは今やすべての人の責任である。社会にとってこれほど悪質な実績を持つ企業と関係を続けるかどうかは、スポンサー企業の判断に委ねられている。スポンサー企業は、ジャニーズ事務所や、同事務所を支援した企業との関係を完全に断ち切るべきである。 より責任が重いのはテレビ局だ。テレビ局の中には、早々にジャニーズ事務所所属タレントの番組出演について変更する予定がない旨を表明した局もあるが、開いた口が塞がらない。 テレビ局は、ジャニーズと組むことで社会的責任を回避するのをやめるべきだ。テレビ朝日はこれからも『#裸の少年』を放送するつもりなのだろうか。大手テレビ局が、こんなタイトルの番組を放送するのは普通なのだろうか?テレビ朝日のウェブサイトにある「ESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組み」が何と空々しいことか。 テレビ各局は、「未来志向」の声明を出しているが、本当にそれだけですますつもりなのだろうか。最低でも第三者委員会を立ち上げ、ジャニー喜多川の性加害について、いつ認識し、それがなぜ報道に至らなかったのか、いつ、誰による圧力や働きかけがあったのかについて、詳らかにすることこそ、メディアとしての責任だろう。 ジャニー喜多川は、残念ながらこの世で最後の異常性癖者ではない。何の検証もしないで、また彼のような人物が現れたとき、メディアはいったいどうやって再発防止を図るつもりなのだろうか』、「テレビ各局は、「未来志向」の声明を出しているが、本当にそれだけですますつもりなのだろうか。最低でも第三者委員会を立ち上げ、ジャニー喜多川の性加害について、いつ認識し、それがなぜ報道に至らなかったのか、いつ、誰による圧力や働きかけがあったのかについて、詳らかにすることこそ、メディアとしての責任だろう」、同感である。
第三に、11月27日付け日刊ゲンダイ「楽天・安楽智大「クビ」待ったなし! 暴行、パワハラ、タカリだけじゃない問題児ぶり」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/332546
・『救いようがないとはこのことだ。楽天の安楽智大(27)が複数の同僚選手から暴力行為などのパワハラ被害を訴えられた件である。 関係者によると、安楽は後輩選手に対して恒常的にパワハラ行為を働いていた。すでに楽天を退団した選手は、2021年の春季キャンプ中に平手で頭部付近を殴られ、むち打ち症状に。試合前にロッカールームで「倒立しろ」と命令され、パンツごとズボンを脱がされた挙げ句、イチモツに靴下をかぶせられたと訴える選手もいる。 パワハラ疑惑を認めて謝罪した球団は安楽に自宅待機を命じるとともに、25日に予定されていた契約更改を無期限延期に。仙台の地元マスコミ関係者は、「先輩選手からは礼儀正しいと評判だった。かねて派手な夜遊びは懸念されていましたが……」と、こう続ける』、「安楽は後輩選手に対して恒常的にパワハラ行為を働いていた・・・試合前にロッカールームで「倒立しろ」と命令され、パンツごとズボンを脱がされた挙げ句、イチモツに靴下をかぶせられたと訴える選手もいる。 パワハラ疑惑を認めて謝罪した球団は安楽に自宅待機を命じるとともに、25日に予定されていた契約更改を無期限延期に」、「パワハラ」というより運動部のノリでやったようだ。それも「パワハラ」であることは間違いないが・・・。
・『後輩足蹴動画が拡散 「ネット上では、選手同士の記念撮影の際、安楽らしき人物が後列から前例にいた選手を足蹴にする画像、動画が拡散している。後輩を小突いたり蹴とばしたりするのは日常茶飯事。強引に食事に誘ったり、合コンのセッティングを強要するなどコキ使うことも。一部報道では10人程度の同僚選手がパワハラを告発したとありますが、ある選手に言わせると、安楽は粘着質で一度キレると見境がなくなるといいます。食事の誘いを断ると、『散々、世話してやったのに』と言わんばかりに逆上され、夜中にもかかわらず、執拗に嫌がらせの電話やメールをされた。バカ、アホと散々暴言を吐かれ、ノイローゼ気味になった選手もいます」』、「安楽は粘着質で一度キレると見境がなくなるといいます。食事の誘いを断ると、『散々、世話してやったのに』と言わんばかりに逆上され、夜中にもかかわらず、執拗に嫌がらせの電話やメールをされた。バカ、アホと散々暴言を吐かれ、ノイローゼ気味になった選手もいます」、悪質だ。
・『中田翔や山川穂高よりタチが悪い スポニチによると、ある選手は「罰金」と称してお金を要求されることがあったと告白。そのメールのやりとりを保存しているという。 「このままいけば11月末が締め切りの保留者名簿から外れ、“クビ”になる可能性もある」とは、前出のマスコミ関係者。 「世間がコンプライアンスに厳しい目を向ける時代に、暴力と日常的なパワハラも明らかになった。21年は中田翔が同僚選手への暴行で無期限謹慎(後に巨人へ無償トレード)、今年は西武の山川穂高が女性問題でこちらも無期限の公式戦出場停止処分を受けた。安楽がやったことは、中田や山川よりもタチが悪いと見る向きもある」 古株の評論家が言う。 「昔は酒の一気飲みを強要されるのは序の口。かつてパのある投手は納会の余興として人前で先輩投手に素っ裸にさせられ、体中がアザだらけになるほどベルトでムチ打たれた。警察沙汰になるようなことも球団が内々でもみ消してきたから大した問題にはならなかっただけのことです。暴力、パワハラの類いは減りつつあるものの、そもそもプロ野球界は不祥事に対して甘い。女性問題に絡み、ヤクザに1億円を支払うような人物が監督を務めるくらいですから」』、「安楽がやったことは、中田や山川よりもタチが悪いと見る向きもある」 古株の評論家が言う」、なるほど。
・『高校時代の「カメムシ事件」 不祥事が多いのはアマ球界も同じ。高校野球では部員の飲酒、喫煙に加え、指導者による体罰や部員同士の暴力沙汰は枚挙にいとまがない。日本学生野球協会はこの2カ月だけでも16件の処分を決定。10月には部内のイジメが発覚した宮崎・小林西に3カ月の対外試合禁止を言い渡している。 「西日本のある私立高では、監督が試合で守備のミスをした選手に至近距離から強烈なノックを打って前歯を折ったそうです。アマ球界はいまだ勝利至上主義が根強く、小学生のリトルリーグからパワハラ気質の指導者が跋扈している。そういう環境で育った選手が勝てば何をやっても許されると勘違いするのも当然です。アマ時代の過度な上下関係をそのまま持ち込む安楽のような人間がいても不思議ではありません」(スポーツライター) そういえば安楽は、済美高(愛媛)3年時に部内での恒常的な暴力とイジメが発覚。1年間の対外試合禁止処分が言い渡されている。上級生が下級生にカメムシを食べさせたり、灯油を飲ませようとするなど、悪質極まりない行為は大きな批判を集めた。 安楽本人はこの件に関わっていないとされたが、1位指名を検討していた一部球団は「プロ入り後にその問題が蒸し返されて、加害者のひとりとして名前が出るようなことになったら困る」などとして、指名回避をしたとされる。 仮に楽天をクビになっても救いの手を差し伸べる球団があるのか……』、「安楽は、済美高(愛媛)3年時に部内での恒常的な暴力とイジメが発覚。1年間の対外試合禁止処分が言い渡されている。上級生が下級生にカメムシを食べさせたり、灯油を飲ませようとするなど、悪質極まりない行為は大きな批判を集めた・・・仮に楽天をクビになっても救いの手を差し伸べる球団があるのか……」、昔からハラスメントで有名だったようだ。きちんと指導してくれる人がいなかったのだろうか。
タグ:「23年の法改正では性的同意年齢が16歳に引き上げられ、「経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって不利益を憂慮させること」も、「不同意性交等罪」を成り立たせる事由の一つとされた。 この条件が当時もあったのであれば、ジャニー氏による加害行為は訴えやすかったはずだ」、その通りだ。 「故・ジャニー喜多川氏の加害行為は、わかっている範囲で1950年代から2010年代半ばという。17年の法改正より前の被害については、口腔性交・肛門性交の強要は「強制わいせつ罪」だった。 もちろん、そもそも被害申告できなかった人が多いので刑事事件になった可能性は低いが、それでも法改正がもっと早く行われていれば、「男性の性被害」に関する意識の変化はそれだけ早かったかもしれない」、その通りだろう。 「17年の改正で「強制性交等罪(旧強姦罪)」の量刑が、懲役3年以上から懲役5年以上に引き上げられることで、厳罰化が進んだ」、「厳罰化」は望ましい』、「「強姦罪・凖強姦罪」が「強制性交等罪・凖強制性交等罪」に名称変更された・・・それまでの刑法では、暴行や脅迫を用いて膣性交・・・を行うことを「強姦罪」としていたが、改正後は膣性交だけではなく、口腔性交と肛門性交の強要が同等に裁かれることとなったからだ。この改正が「男性も被害者に」と報道されたのは、このためである」、なるほど。 「性犯罪については、近年大きな変化があった。23年7月、性犯罪に関する刑法が改正され「不同意性交等罪」や「性交同意年齢の引き上げ」があったことが大きく報道されている。 ただ、今回のポイントは「男性が性被害にあった場合」への対処の遅れに注目したい」、なるほど。 鎌田和歌氏による「「ジャニー氏は1万円を渡して…」ジャニーズ性加害問題、もし今の法律で裁かれていたら?」 ダイヤモンド・オンライン ハラスメント (その23)(「ジャニー氏は1万円を渡して…」ジャニーズ性加害問題 もし今の法律で裁かれていたら?、海外記者がジャニ会見で感じた日本の「ヤバさ」 「悪いおじいちゃん」のために開かれた家族会議のような奇妙さ、楽天・安楽智大「クビ」待ったなし! 暴行、パワハラ、タカリだけじゃない問題児ぶり) 「性被害は被害申告までに時間がかかる場合が多く、特に子どもの頃の被害は被害に気づくまでにも時間がかかるといわれる。23年の法改正では、未成年の被害は、成人を迎えるまで時効がストップされることになったが、それでも、最大で33歳までに被害を申告しなければ時効となる」、なるほど。 東洋経済オンライン「海外記者がジャニ会見で感じた日本の「ヤバさ」、「悪いおじいちゃん」のために開かれた家族会議のような奇妙さ」 「劇的な会見は、私が日本で経験したジャーナリスト人生の中で最も奇妙な体験の1つだった。ジャニーズ事務所は、これ以上ないほど積極的に報道陣を迎え入れた。日本人、外国人、主要メディア、フリーランスのジャーナリストなど、誰でも参加できた。しかも、会見は14時から4時間以上続いた」、なるほど。 「東山紀之新社長が後輩たちにしていた振る舞いが書かれていた。 「彼はマージャンだけではなく、人のパンツを脱がすことが大好きだった。僕も何度もヒガシに背後からパンツを引きずり下ろされ、イタズラされたことがある。そして、パンツを脱いだままよろける姿でいる僕に、ヒガシは『こっちへ来い!』と命令しながら、無理やりに僕の手を引いて、マージャン卓のある部屋まで引き摺っていくのだ」 記事によると、連れていかれた先ではジャニー喜多川が待っており、時折、性器を触られることもあったという」、「東山紀之新社長」までが事実上の加 害者の1人だったとは驚いた。 「東山はジャニーズ事務所の再生にもっとも不向きな人物である。彼に任せることは、性的加害、そしてその隠蔽を可能にした「喜多川システム」の共犯者たちに庇護を与えることになりかねない・・・ジャニーズのタレントたちにも責任の一端はないのだろうか。彼らが有名であるほど、大人であるほどその責任は重い。多くは「知らなかった」というが、正確には「知らないふりをしてきた」というべきだろう。東山は、その最たる例なのではないか。 そして、彼らが見て見ぬ振りをし、真実から目を背け続けたことで、真実を知る機会を奪われた多くの少年たちが、彼らのようなスターになることを夢見てジャニーズに集まってきたのだ」、なるほど。 「日本のメディアは、なぜ自分たちは一部の人々にはとんでもなく小さなネタで嫌がらせをする一方で、大きなネタは眠らせておくのか疑問に思うべきだ・・・ジャニー喜多川が何百人もの人間を自由破壊できる一方で、不倫した俳優が事務所から契約を解除されたり、マスコミから執拗な取材を受けたりするのはなぜか」、確かに「日本のメディア」の姿勢は歪んでいる。 「テレビ各局は、「未来志向」の声明を出しているが、本当にそれだけですますつもりなのだろうか。最低でも第三者委員会を立ち上げ、ジャニー喜多川の性加害について、いつ認識し、それがなぜ報道に至らなかったのか、いつ、誰による圧力や働きかけがあったのかについて、詳らかにすることこそ、メディアとしての責任だろう」、同感である。 日刊ゲンダイ「楽天・安楽智大「クビ」待ったなし! 暴行、パワハラ、タカリだけじゃない問題児ぶり」 「安楽は後輩選手に対して恒常的にパワハラ行為を働いていた・・・試合前にロッカールームで「倒立しろ」と命令され、パンツごとズボンを脱がされた挙げ句、イチモツに靴下をかぶせられたと訴える選手もいる。 パワハラ疑惑を認めて謝罪した球団は安楽に自宅待機を命じるとともに、25日に予定されていた契約更改を無期限延期に」、「パワハラ」というより運動部のノリでやったようだ。 「安楽は粘着質で一度キレると見境がなくなるといいます。食事の誘いを断ると、『散々、世話してやったのに』と言わんばかりに逆上され、夜中にもかかわらず、執拗に嫌がらせの電話やメールをされた。バカ、アホと散々暴言を吐かれ、ノイローゼ気味になった選手もいます」、悪質だ。 「安楽がやったことは、中田や山川よりもタチが悪いと見る向きもある」 古株の評論家が言う」、なるほど。 「安楽は、済美高(愛媛)3年時に部内での恒常的な暴力とイジメが発覚。1年間の対外試合禁止処分が言い渡されている。上級生が下級生にカメムシを食べさせたり、灯油を飲ませようとするなど、悪質極まりない行為は大きな批判を集めた・・・仮に楽天をクビになっても救いの手を差し伸べる球団があるのか……」、昔からハラスメントで有名だったようだ。きちんと指導してくれる人がいなかったのだろうか。
保育園(待機児童)問題(その13)(2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している、「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に、"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?) [社会]
保育園(待機児童)問題については、2021年5月8日に取上げた。久しぶりの今日は、(その13)(2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している、「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に、"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?)である。
先ずは、本年2月9日付けPRESIDENT Onlineが掲載した労働経済ジャーナリストの小林 美希氏による「2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/66268
・『幼稚園や保育園で「園児の置き去り事故」が相次いでいる。労働ジャーナリストの小林美希さんは「諸悪の根源は安倍政権の下で進んだ待機児童対策だ。園の数はここ10年で急増したが、保育士の労働環境は悪化しており、保育の質が低下している」という――』、興味深そうだ。
・『「いつ置き去り事故が起こってもおかしくない」 「子どもを公園に置いて園に帰ってきてしまう。少し前なら、あり得ないことが起こっているのです」 都内の認可保育園の小田明子園長(仮名、60代半ば)は、驚きを隠せない。小田園長は公立保育園も含めて40年以上、保育現場に携わっている。現在は私立の認可保育園の園長で、これまで大きな事故もなく過ごしてきたが、1年ほど前に保育士が2歳の園児を公園に置いたまま散歩から帰ってきてしまい、肝を冷やした。 園児がいないことに気づき、慌てて園長と保育者数人とで外を探すと、近隣の住民に保護され、ことなきを得た。もしも誤って道路に飛び出していれば交通事故に遭っていたかもしれないと思い、身震いした。担任保育士は経験が浅く、ケガが起きないように見るので精一杯。「早く保育園に帰って、給食の準備をしなければ」という焦りがあって、園児の点呼を忘れていたという。 こうした事態に小田園長は頭を悩ます。 「園児が全員いるかどうか点呼することは、基本中の基本です。公園に着いた時はもちろん、遊んでいる最中、園に帰る時も全員が揃っているか、常に確認する。それが、業務に追われて目の前の子どもが見えなくなっているのです。いつ置き去り事故が起こってもおかしくない環境なのです」』、「園児が全員いるかどうか点呼することは、基本中の基本です。公園に着いた時はもちろん、遊んでいる最中、園に帰る時も全員が揃っているか、常に確認する。それが、業務に追われて目の前の子どもが見えなくなっているのです。いつ置き去り事故が起こってもおかしくない環境なのです」、なるほど。
・『20人の子どもたちを4畳半程度のスペースに… それというのも小田園長が勤める法人は、保育園の数を増やして事業拡大することと利益を上げることを優先させている。人件費を抑えるため、保育士は低賃金で人員体制はギリギリという状態なのだ。若手が疲弊して、2~3年で辞めていく。そうしたなかで起こった置き去りだった。 他の都内の私立の認可保育園でも、園児が保育園から一人で出ていこうとしていた。たまたま居合わせた保護者の飯田恵さん(仮名、40代)が止めたが、その後の対応が不十分だった。飯田さんは、「子どもが勝手に出ていかないようにと、登園時やお迎えラッシュの時間帯は20人もの子どもたちが、4畳半程度のスペースに囲った柵のなかに詰め込まれるようになりました」と憤りを隠せない。 日頃から、園児同士の噛みつき、ひっかきも多い。大きなすり傷に気づいた飯田さんが理由を尋ねても、担任の保育士は「見ていなかったので分からない」と言うだけ。改善を求めてもケガが続いたことから、飯田さんは「これではいつ子どもが死ぬかも分からない」と子どもを転園させた』、「人件費を抑えるため、保育士は低賃金で人員体制はギリギリという状態なのだ。若手が疲弊して、2~3年で辞めていく。そうしたなかで起こった置き去りだった・・・大きなすり傷に気づいた飯田さんが理由を尋ねても、担任の保育士は「見ていなかったので分からない」と言うだけ。改善を求めてもケガが続いたことから、飯田さんは「これではいつ子どもが死ぬかも分からない」と子どもを転園させた」、「転園」とは賢明な判断だ。
・『安倍政権下で保育は「儲かるビジネス」と化した 福岡県中間市や静岡県牧之原市で起こった通園バス園児死亡事件は、出欠確認が徹底されないことによって園児がバスに置き去りになった。この事件は、保育の基本中の基本である園児の出欠確認ができないほど、現場の質が劣化していることを意味する。 園児が置き去りにされる、不適切な保育が横行するなどの保育の質の低下は、保育士の労働環境の悪化が大きく影響しているのだ。 その背景にあるのは、安倍晋三政権下で待機児童対策が目玉政策となり、急ピッチで保育園が作られるようになったことだ。 公的な保育園は、2013年度の2万4038カ所から22年度は3万9244カ所へと大幅に増えた。安倍政権が「株式会社に受け皿整備を担ってもらう」という方針を打ち出したことで、営利企業による認可保育園は13年の488カ所から21年に3151カ所にまで急増した(厚生労働省「社会福祉施設等調査」)。 保育園の増加ペースに人材が追い付かないうえ、事業者のモラルが低下。保育を「3兆円を超える市場」と捉え、儲けるために参入する事業者が雨後の筍のように現れた。利益を出すために人件費が削られ、保育士の労働環境が劣悪になった』、「公的な保育園は、2013年度の2万4038カ所から22年度は3万9244カ所へと大幅に増えた。安倍政権が「株式会社に受け皿整備を担ってもらう」という方針を打ち出したことで、営利企業による認可保育園は13年の488カ所から21年に3151カ所にまで急増した・・・保育園の増加ペースに人材が追い付かないうえ、事業者のモラルが低下。保育を「3兆円を超える市場」と捉え、儲けるために参入する事業者が雨後の筍のように現れた。利益を出すために人件費が削られ、保育士の労働環境が劣悪になった」、なるほど。
・『人件費がほかの費目に流用できるようになった かつて、認可保育園は公共性の高さから自治体か社会福祉法人しか設置・運営ができなかった。それが2000年の規制緩和によって、営利企業、宗教法人、NPO法人の参入が容認された。それと同時に、私立の認可保育園に支払われる運営費の使途の規制緩和である「委託費の弾力運用」が大幅に認められるようになった。 私立の認可保育園の運営費は「委託費」と呼ばれ、税金を主な原資とする。委託費の算定基準である「公定価格」では、人件費は基本的な部分だけでも全体の約8割を占める。人件費のほか、玩具や絵本を買うなど保育に要する「事業費」が約1割、職員の福利厚生費などの「管理費」が約1割必要だと国が想定し、委託費が各園に支払われている。 「委託費の弾力運用」が認められると、それまであった「人件費は人件費に使う」という使途制限が緩和され、人件費分を事業費や管理費へ流用するという各費目の相互流用のほか、同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費への流用などが許されるようになった。 ある程度の経営の自由度は必要だが、自民党政権下で規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている。そこに目をつけた事業者は、人件費を抑えて事業を拡大し、利益を得ていったのだ』、「人件費分を事業費や管理費へ流用するという各費目の相互流用のほか、同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費への流用などが許されるようになった。 ある程度の経営の自由度は必要だが、自民党政権下で規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている。そこに目をつけた事業者は、人件費を抑えて事業を拡大し、利益を得ていったのだ」、なるほど。
・『565万円→381万円…200万円はどこに消えたのか その結果、委託費の8割以上を占めるはずの人件費が抑え込まれた。東京都による2018年度実績の調査では、都内の社会福祉法人の人件費支出の割合は7割、株式会社では5割にとどまり、その傾向は今も変わっていない。 委託費を算出するための「公定価格」は全国8つの地域区分に分かれ、それぞれ単価が異なる。公定価格が最も高い東京23区で見てみると、2021年度の保育士一人当たりの基本的な賃金年額は約442万円となる。 営利企業が集中して進出する東京23区では、その442万円に処遇改善費が加わると、単純計算だが、最大で約565万円の賃金が公費で出ていることになる。しかし、東京23区で実際に保育士が手にとる賃金は約381万円と少ない(内閣府「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」2018年度実績)。計算上、公費から出る賃金額と実際に保育士に支払われる金額の差が、最大で年間200万円近くになる。その差はどこに消えるのか』、「計算上、公費から出る賃金額と実際に保育士に支払われる金額の差が、最大で年間200万円近くになる。その差はどこに消えるのか」、「差」が「最大で年間200万円近く」とは無視出来ない額だ。
・『基準より人員を多く雇う保育園はあるが… ただ、賃金が低くなる正当な理由もある。人件費は基本的には最低配置基準に沿って出るため、基準より多く雇えば一人当たりの賃金が低くなるケースがある。 認可保育園などの保育士の最低配置基準は、0歳児が園児3人に対して保育士1人(「3対1」)、1~2歳児が「6対1」、3歳児が「20対1」、4~5歳児が「30対1」となっている。4~5歳児の基準は戦後から70年以上も変わっていないため、この体制では不十分だと判断して人員を多く雇う保育園は多く、ひとつの認可保育園で平均3~4人を多く配置している(内閣府調査)。このように保育士の多い園では、一人当たりの賃金が低くなってもやむを得ない事情がある。 とはいえ冒頭のように、配置基準ギリギリにして人件費を抑える保育園は少なくない。利益重視の事業者は営利企業でも社会福祉法人でも、「コストコントロール」を図るため、「保育士の適正配置」「職員配置の適正化」を掲げている。つまり「人件費カットのため、最低配置基準を守れば人員体制はギリギリでいい」(複数の業界関係者)という考え方だ』、「保育士の最低配置基準」では不十分として、「ひとつの認可保育園で平均3~4人を多く配置している」、他方で、「最低配置基準を守れば人員体制はギリギリでいい」・・・という考え方」をとるところも多い。
・『都内30カ所で違反が常態化している ある中堅企業傘下の保育園で働いていた保育士は「園児の欠席が多いと、配置基準上で保育士が余るので、他園にヘルプに出されました。普段みていない園児を保育するのは不安でした。職員の数に余裕がないため、誰かが急に休むと、とたんに配置基準を割ってしまいます。これでは、いつ事故が起きてもおかしくないと思って辞めました」と話す。 1年半ほど前に筆者は東京都が認可保育園に対して行った2017~19年度の監査結果について調べており、「保育士が適正に配置されていない」などの文書指摘を受けた保育園が都内で合計153カ所に上った。 それらの違反の詳細について都に情報開示請求を行うと、「保育士配置違反が常態化している」「無資格者しかいない時間帯がある」などの実態が明らかになった。保育士配置違反が常態化している園と違反状態が長く続いていると見られる園は合計30カ所もあった。そもそも少ない配置基準でさえ守られないのでは、保育士は疲弊し、子どもの安全を守ることは難しいだろう』、「保育士配置違反が常態化している園と違反状態が長く続いていると見られる園は合計30カ所もあった。そもそも少ない配置基準でさえ守られないのでは、保育士は疲弊し、子どもの安全を守ることは難しいだろう」、なるほど。
・『6年間で保育事故は3.5倍に 保育士の配置基準については、2014年3月の段階で、1歳児を現行の園児6人に対し保育士1人(「6:1」)から「5:1」へ、4~5歳児は「30:1」から「25:1」にすると国は計画し、必要な予算を約1300億円と試算していた(「子ども・子育て支援新制度における『量的拡充』と『質の改善』について」)。 配置基準の引き上げは保育業界の長年の悲願であり、ようやく2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充することで、大規模園の4~5歳児の「25対1」の実現が図られる。これを第一歩に、抜本的な改善が必要だ。 保育事故は年々増えている。内閣府の「教育・保育施設等における事故報告集計」から、認可保育園で起こった死亡・負傷等の事故件数を見ると、2015年の344件から2021年は1191件となり、この6年で3.5倍近く増えている。 2021年の保育事故の状況を詳しく見ると、負傷等のうち最も多いのが骨折の937件、その他(指の切断、唇、歯の裂傷等を含む)が242件あり、意識不明が8件、火傷が2件、死亡が2件だった。年齢別では、保育士配置が手薄になる4~5歳の多さが目立ち、それぞれ246件、404件だった』、「認可保育園で起こった死亡・負傷等の事故件数を見ると・・・2015年の344件から2021年は1191件となり、この6年で3.5倍近く増えている・・・2021年の保育事故の状況を詳しく見ると、負傷等のうち最も多いのが骨折の937件、その他(指の切断、唇、歯の裂傷等を含む)が242件あり、意識不明が8件、火傷が2件、死亡が2件だ」、大変だ。
・『事業者が利益を得るための制度ばかりが変わっていく 政府は1月27日、通園バス園児置き去りの再発防止のための調査結果を公表した。通園バスをもつ保育園などのうち約2割に乗降時の子どもの安全管理に課題があったとしている。4月からは通園バスに安全装置の設置が義務付けられるが、問題の本質は保育士不足や保育の質の低下であり、保育士の労働条件の改善こそが急務の課題だ。 4月にこども家庭庁が発足する今こそ、最低配置基準の引き上げを行い、それと同時に前述した「委託費の弾力運用」の規制を強化して人件費の流出を食い止めなければ、保育士の労働環境は変わらない。保育士が守られなければ、犠牲になるのは子どもたちだ。 この国は、保育事業者が利益を得るための制度は次々に変えていくが、保育現場で子どもが命を落としても、子どもにとって必要な制度は変わらない。保育は児童福祉法に基づく福祉行政の一貫として行われていることを忘れてはならない』、「問題の本質は保育士不足や保育の質の低下であり、保育士の労働条件の改善こそが急務の課題だ・・・「委託費の弾力運用」の規制を強化して人件費の流出を食い止めなければ、保育士の労働環境は変わらない。保育士が守られなければ、犠牲になるのは子どもたちだ」、同感である。
次に、4月24日付け東洋経済オンラインが掲載したフェリス女学院大学 文学部英語英米文学科 助教の関口 洋平氏による「「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/667340
・『日常のいたるところで濫用され、消費されている「イクメン」という表現。2022年10月から改正育児・介護休業法により「産後パパ育休」が施行され、この4月からは育児休業取得状況の公表が義務化。「イクメン」という言葉の流布から10年以上が経ち、再び注目されるキーワードになった今こそ、その意味を構造的に問いなおすことが必要なのではないだろうか。 本稿は、子育ての話題の中でも特に議論を呼ぶ「保育園」を取り巻く問題について、検証する。自身も子育て中のアメリカ研究者が「イクメン」という言葉そのものに疑義を抱くところから始まる最新著書『「イクメン」を疑え!』(集英社新書)より、一部抜粋・再構成してお届けします。 アメリカでは保育園の設置基準が統一されていないのに対して、日本では国が認可保育所の条件を定めている。どの認可保育所を利用しても最低限の質は担保されているので、利用者は比較的安心して子どもを預けることができる。日本に住む私たちにとって、そうした質の高い保育は「育児のネットワーク」の重要な一部をなしている。 ところが、ここ20年あまりの新自由主義的な潮流のなかで、育児に対する公的な支援は日本でも徐々に削減されてきた。一言で言えば、日本においても保育の市場化が急速に進んだのである。本稿では少子化や待機児童といった日本独自の事情を勘案しつつ、新自由主義が日本の保育に与えた影響を検討したい』、「ここ20年あまりの新自由主義的な潮流のなかで、育児に対する公的な支援は日本でも徐々に削減されてきた。一言で言えば、日本においても保育の市場化が急速に進んだのである。本稿では少子化や待機児童といった日本独自の事情を勘案しつつ、新自由主義が日本の保育に与えた影響を検討したい」、なるほど。
・『保育園から「突然の通告」 はじめに、ここではひとつの具体例を紹介したい。東京都目黒区在住の竹内冬美さんは、いわゆる「保活」の末に2019年から区立保育園を利用し始めた。その区立園は評判どおりに保育の質が高く、2021年からは第二子も預けることができて満足していた――そんな矢先の4月半ばである。 竹内さんは保育園から1枚の薄い藁半紙を受け取った。その紙に掲載されていたQRコードを読み取って区のホームページを見ると、その区立園が数年後に別の区立園と統合されたうえで民営化されることが事務的に記されていた。) 青天の霹靂としか言いようのない保育園民営化計画を知って、竹内さんは困惑と怒りの混ざった感情を抱いたという。 慣れ親しんだ保育士がいなくなったとき、子どもたちはどのような反応をするだろうか?新しい保育園において保育の質はどこまで保持されるのだろうか?あるいは、公立の保育園がそれまで担ってきた公的役割─地域の避難所や子育て支援の拠点としての機能、障がい者の受け入れなど─はどうなるのだろうか?区による一方的な決定に疑問を感じた竹内さんたち保護者は、区立園の存続に向けた活動を始めた(※1)。 この例からもわかるとおり、保育園民営化は現在に至るまでさまざまな自治体において重要な争点になっている。だが、民営化の議論は近年に始まったことではない』、「保育園民営化は現在に至るまでさまざまな自治体において重要な争点になっている。だが、民営化の議論は近年に始まったことではない」、なるほど。
・『「待機児童ゼロ作戦」で目指したこと 日本において保育への公的支出がカットされ始めたのは、1980年代のことである。公立保育園の数が1983年に過去最多を記録した一方で、この時代には保育園運営費の国家負担率が徐々に削減されていった。公立保育園にのみ多額の公費が投入されることや、公立保育士の賃金の高さなどが批判されたのである。 このような流れのなかで、鈴木善幸内閣・中曽根康弘内閣の第二次臨時行政調査会は、保育園の民営化をひとつの目標として掲げた。 ところが、この時代には「生活可能な、主体的に働くことを選んでいる共働き層への保育サービスの供給は『公費の乱用』と指摘された」というから、待機児童の増大と少子化を背景とした現在の保育園民営化とは事情が大きく異なる(※2)。 共働きの家庭が現在ほど一般的でなかったこの時代においては、保育園の数を増やすどころか、むしろ抑制することが課題とされたのである。事実、1980年を境に保育園の入所児童数は緩やかに減少していった(※3)。 そのような方針を一変させる要因となったのが、1990年のいわゆる「1.57ショック」である。1973年には2.14であった合計特殊出生率(ひとりの女性が一生の間に産む子どもの数)は急速に低下し、1989年に1.57となったのだ。 この衝撃を受けて、政府は少子化対策としてさまざまな政策を矢継ぎ早に策定した。1994年の「エンゼルプラン」、1999年の「新エンゼルプラン」、2003年の次世代育成支援対策推進法・少子化社会対策基本法などがその一例である。 (※1)2021年8月21日、個人インタビュー。 (※2)萩原久美子「保育供給主体の多元化と公務員保育士─公共セクターから見るジェンダー平等政策の陥穽」『社会政策』8.3(2017年)66頁。 (※3)汐見稔幸・松本園子・髙田文子・矢治夕起・森川敬子『日本の保育の歴史子ども観と保育の歴史150年』(萌文書林、2017年)318頁。) 一連の少子化対策のなかで重視されたのが、保育園の量的な拡大だった。2001年に発足した小泉純一郎内閣は「待機児童ゼロ作戦」を掲げ、2002年度から3年間で15万人の保育園児の受け入れ増を目指した。「聖域なき構造改革」というキャッチフレーズを掲げて小泉政権が新自由主義的な政策を推進したことはよく知られているが、「待機児童ゼロ作戦」もその延長線上にある。 保育園の量的拡大を実現するために重用されたのは、規制緩和と民営化という二本柱であった。産業構造の変化により、いわゆる「家族賃金モデル」(父親がひとりで家族全員を養うことができるだけの賃金を終身雇用制により保障するシステム)が崩壊し、共働き世帯が増加していたことも相まって、これらの改革は急速に進行した』、「公立保育園の数が1983年に過去最多を記録した一方で、この時代には保育園運営費の国家負担率が徐々に削減されていった。公立保育園にのみ多額の公費が投入されることや、公立保育士の賃金の高さなどが批判されたのである。 このような流れのなかで、鈴木善幸内閣・中曽根康弘内閣の第二次臨時行政調査会は、保育園の民営化をひとつの目標として掲げた。 ところが、この時代には「生活可能な、主体的に働くことを選んでいる共働き層への保育サービスの供給は『公費の乱用』と指摘された」というから、待機児童の増大と少子化を背景とした現在の保育園民営化とは事情が大きく異なる(※2)。 共働きの家庭が現在ほど一般的でなかったこの時代においては、保育園の数を増やすどころか、むしろ抑制することが課題とされた・・・そのような方針を一変させる要因となったのが、1990年のいわゆる「1.57ショック」である。1973年には2.14であった合計特殊出生率(ひとりの女性が一生の間に産む子どもの数)は急速に低下し、1989年に1.57となったのだ。 この衝撃を受けて、政府は少子化対策としてさまざまな政策を矢継ぎ早に策定・・・一連の少子化対策のなかで重視されたのが、保育園の量的な拡大だった。2001年に発足した小泉純一郎内閣は「待機児童ゼロ作戦」を掲げ、2002年度から3年間で15万人の保育園児の受け入れ増を目指した・・・保育園の量的拡大を実現するために重用されたのは、規制緩和と民営化という二本柱であった。産業構造の変化により、いわゆる「家族賃金モデル」・・・が崩壊し、共働き世帯が増加していたことも相まって、これらの改革は急速に進行した」、これまでの流れが要領良く整理されている。
・『規制緩和で起こった「詰め込み保育」の弊害 新自由主義改革が保育という領域に与えた影響を理解するために、まずは規制緩和という側面に注目してみよう。 小泉政権が促進したのは、保育園の入所定員の「弾力化」である。「弾力化」とは耳慣れない言葉かもしれないが、規制を緩和して制度を柔軟に適用するということであり、この文脈では、「詰め込み保育」を意味している。この改革により、待機児童が多い自治体では、保育園の定員を超えて(年度初めは15%増しまで、年度途中は25%増しまで、年度後半は無制限)子どもを預かることが認められた。 小泉政権は保育園の入所定員だけでなく、保育士の配置基準も緩和した。1998年には常勤の保育士を原則とする規定が撤廃され、基準配置数の2割までという条件付きで短時間勤務保育士(非常勤保育士)を配置することが認められた。 小泉政権はこの規制緩和をさらに推し進め、非常勤保育士の上限を撤廃した。各クラスに1?2名以上常勤の保育士がいれば、あとはすべて非常勤保育士でもよくなったのである。 入所定員の弾力化や保育士の配置基準の緩和は、待機児童を減らすという意味では一定の効果があった。その一方で、規制緩和により保育の質が低下したこともまた事実である。 常勤の保育士が原則であったのは、保育士が頻繁に入れ替わると子どもが安定した人間関係を築けないからである。保育園に定員が設定されているのは、キャパシティを超えて園児を受け入れると十分に目が行き届かず、事故の可能性が高まるからだ。) 事実、保育園で起きた痛ましい死亡事故に関する報道は後を絶たない。ジャーナリストの猪熊弘子によれば、「事故が起きた施設の多くは、保育室の面積が非常に狭く、職員が少なく、無資格者や資格を持っていたとしても経験の少ない場合がほとんど」であり、「余裕のない保育施設の運営が、子どもの死亡事故を招いている」という(※4)。 事故を起こした個々の保育施設を責めることは簡単だが、その背後に構造的な要因が潜んでいることが看過されてはならない』、「「事故が起きた施設の多くは、保育室の面積が非常に狭く、職員が少なく、無資格者や資格を持っていたとしても経験の少ない場合がほとんど」であり、「余裕のない保育施設の運営が、子どもの死亡事故を招いている」という」、重大な指摘だ。
・『「保育園民営化」の推進で何が起こったか 待機児童対策のために政府が重視したもうひとつの方針が、民営化である。2000年には営利企業も認可保育所に参入できるようになった。自治体か社会福祉法人しか認可保育所を設置・運営してはならないという規制が撤廃されたのである。 小泉政権は、民営化の流れをさらに加速させた。2003年に内閣府により発表された報告書では、「保育サービスの需要は今後ますます増大し、将来有望な市場となる」一方で、「株式会社の参入を認めるなど規制緩和が進んだにもかかわらず、そのメリットが利用者にきちんと還元されて」いないことが問題視された(※5)。 公立保育園では「効率的に経営が行われて」おらず、規制緩和の徹底により民間企業の参入を促すことが必要である、というのがこの報告書の結論である。公立保育園のコスパの悪さを強調する一方で保育サービスが将来的に有望な市場であることを明記するこの報告書には、「すべての領域を金銭化する」新自由主義の基本方針が明確に反映されている。 この報告書の議論を受け、2004年にはいわゆる三位一体改革の一環として公立保育園の運営費が一般財源化された。それまでは国庫補助負担金という形で保育園の運営のためだけに使える予算が自治体へ支給されていたが、この補助金の廃止によって用途が特定されない予算が自治体に支給され、自治体ごとにその予算を自由に割り振れるようになったのである。 (※4)猪熊弘子『「子育て」という政治少子化なのになぜ待機児童が生まれるのか?』(角川SSC新書、2014年)101頁。 (※5)内閣府国民生活局物価政策課「保育サービス市場の現状と課題─『保育サービス価格に関する研究会』報告書─」2003年。) この一般財源化を機に、多くの自治体は保育園関連の予算を大幅にカットした。その結果、先述したような民営化による混乱が2000年代には続発した(※6)。また、公立・私立を問わず、保育士の非正規雇用化が進んだ。 慢性的な財政難に苦しむ自治体にとって、民営化によるコスト削減は魅力的である。民営化や統廃合が進むにつれて公営保育園の数は徐々に減り、2007年には私営保育園の数を下回った。2021年時点で、公営保育園が7919カ所あるのに対し、私営保育園は2万2076カ所である。 2000年の時点では公営・私営それぞれ1万2707カ所と9492カ所であったので、保育園の総数が増えていること、また公営・私営の割合が著しく逆転していることがわかる(図 ※7)』、 「慢性的な財政難に苦しむ自治体にとって、民営化によるコスト削減は魅力的である。民営化や統廃合が進むにつれて公営保育園の数は徐々に減り、2007年には私営保育園の数を下回った。2021年時点で、公営保育園が7919カ所あるのに対し、私営保育園は2万2076カ所である。 2000年の時点では公営・私営それぞれ1万2707カ所と9492カ所であったので、保育園の総数が増えていること、また公営・私営の割合が著しく逆転していることがわかる」、これほど「公営」と「私営」の割合が「逆転」したとは、衝撃的だ。
・『保育の質が低下することへの懸念 誤解しないでほしいのだが、私は民間の保育園や非正規の保育士は質が低いと主張したいわけではないし、公立の保育園が完璧であると言いたいわけでもない。私の個人的な経験から言っても、民間であれ、非正規であれ、有能で熱心な保育士は数多く存在している。 問題は、拙速な民営化によって保育の質が担保されないような構造ができ上がってしまったことなのだ。待機児童問題の深刻さを考えれば、営利企業の参入という判断は妥当であったかもしれない。だが、それによって保育の質が低下し、子どもを安心して預けられないのでは元も子もないはずである。 ※6)2000年代の保育園民営化については、たとえば以下の文献を参照。汐見稔幸・近藤幹生・普光院亜紀『保育園民営化を考える』(岩波ブックレット、2005年)、二宮厚美『構造改革と保育のゆくえ』(青木書店、2003年)、平松知子『保育は人保育は文化ある保育園民営化を受託した保育園の話』(ひとなる書房、2010年)。(※7)厚生労働省、平成12年?令和3年社会福祉施設等調査』、「問題は、拙速な民営化によって保育の質が担保されないような構造ができ上がってしまったことなのだ。待機児童問題の深刻さを考えれば、営利企業の参入という判断は妥当であったかもしれない。だが、それによって保育の質が低下し、子どもを安心して預けられないのでは元も子もないはずである」、「質の低下」は今後、問題化必至の由々しい問題だ。
第三に、 5月4日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの小林 美希氏による「"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/669534
・『国会中継などで見かける大臣と議員の激しい論戦。その内容を注視して見たことはあるだろうか。 そこでは日本の未来を左右する重要な論点が多く扱われている。今の日本において見逃せない論点とは何か。ジャーナリストの小林美希さんが国会でとくに話題となった議論をたどりながら、問題の焦点に迫る。今回は「保育」の問題について取り上げる。 岸田文雄首相が大々的に掲げる「異次元の少子化対策」。保育園の通園バスに置き去りになって園児が死亡した事故や、保育士による虐待事件が相次ぐなど、保育の業界では事件・事故が続いている。そうした中、子どもを守る保育士の数を増やすべきと、人員増が求められている。 保育園には園児の年齢ごとに保育士の最低配置基準があり、現在、保育士1人で1~2歳児を6人、4~5歳児を30人みることができる。それでは保育士の負担が重いうえ、子どもたちに充分に目が行き届かないと、保育士の配置基準を引き上げることが検討課題になっている。 昨年来、国会では連日この問題が取り上げられ、当事者の運動も広がりを見せたことから、「配置基準が今年こそ引き上げられるのではないか」と期待がかかった。しかし3月末に発表された「異次元の少子化対策」の「たたき台」では、基準の「引き上げ」ではなく、手厚い保育を実施する園への運営費上乗せという「改善」に留まった。いったい配置基準引き上げを巡り、国会ではどんな論戦が行われ、議論の現在地はどうなっているのか』、興味深そうだ。
・『戦後から続いてきた「配置基準」をめぐる攻防 2022年11月9日、衆議院の厚生労働委員会では、大西健介議員が”難事”に向かった。持ち時間の多くを割いて説いたのは、保育士の最低配置基準引き上げの重要性についてだ。 認可保育園には保育士の最低配置基準が決められており、他のタイプの公的保育園もその基準に倣っている。配置基準が決められたのは戦後間もない1948年で、それ以降、大きく変わっていないことが問題視されている。 振り返れば基準が置かれた1948年の当初、0~1歳児は園児10人を保育士1人でみる「10対1」だった。0歳児は1967年に「6対1」へ、1998年に「3対1」へと基準が手厚い方向に変更された。 1~2歳児は1967年に「6対1」になって以降、50年以上変わっていない。4~5歳児は75年前からずっと「30対1」のまま。海外を見てみると、英国では保育者の持つ資格によるが、3歳以上5歳未満が「13対1」や「8対1」、ドイツは州ごとに異なるが3歳児未満の平均が「4.5対1」、3~6歳児が「11.8対1」や「8.6対1」などの厚みがある(厚生労働省の委託事業「諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会」報告書2019年)。日本の基準引き上げは長年の課題だ。 大西議員は「基本的な考え方を聞いていきたい。大臣には是非、御自身のお言葉で、率直にお考えを」と切り出した。 「1歳児の基準は私が生まれた頃から変わっていない。4~5歳児は基準制定の1948年以来、70年以上変わっていないのです。1948年は戦後の第1次ベビーブーム。当時の出生数は約268万人、そして、昨年(2021年)の出生数は81万人。全く世の中が変わってしまっているのに、保育士の配置基準は変わっていない。ある種、異常なことだと思うが、大臣の率直な意見をお聞かせいただきたいと思います」(大西議員) 国会で議員が質問する内容は、事前に各省府庁に通告されて官僚が答弁を作り、それを基に閣僚が答えていく。大西議員は、大臣に対して官僚が作った答弁書を読むのではなく、大臣自身の言葉を求めた』、大西議員の質問はポイントを突いており、私も知りたいものだ。
・『ところが加藤勝信厚生労働相が説明し始めたのは、2015年度に行われた3歳児の配置改善についてだった。国は2014年に配置基準を引き上げる計画を立ており、一部は改善されている。 当時、消費税の税率を引き上げる際に、保育園の数を増やす「量的拡充」のための施策に必要な0.7兆円を消費税で賄い、そのなかで3歳児の配置基準の「20対1」を「15対1」にすると計画された。基準そのものは引き上げられなかったが、消費税を財源に「15対1」体制をとる園の運営費を「加算」して支給する形で、2015年度に改善した。 また、消費税以外を財源とする0.3兆円で「質の改善」を行うとして、1歳児の「6対1」を「5対1」へ、4~5歳児の「30対1」を「25対1」に引き上げるなどの計画が立てられた。それら保育の質を向上するための施策は「0.3兆円メニュー」と呼ばれているが、財源がないことを理由に2014年以降、実現しなかった。 加藤大臣は、「(目標としている)4~5歳児の配置改善は実施できていない。このことは強く認識をしているところ。引き続き、財源をしっかり確保する努力をしていきたい」と、淡々と答弁書を読み上げた。 大西議員は「答弁を読むのではなくて、70年前と今の社会、子どもを取り巻く状況は全く違う。70年で1回も配置基準が変わらないことが、率直に言って、これは普通ですか」と強調した。) ここで、愛知県の保育園関係者が結成した「子どもたちにもう1人保育士を!実行委員会」が2022年2月~3月に行ったアンケート調査の内容が紹介された。現場で実際に働く保育士が考える、保育士1人が受け持つ子どもの適切な人数は何人なのか。 国の基準は1歳児が「6対1」だが、保育士の約半数が「3対1」と答えている。同様に4~5歳児の国の基準は「30対1」だが、現場で最も多かったのは4歳児が15人、5歳児が20人だった。 大西議員は「これが現場の受け止めなんです。実際の配置基準と大きく乖離していることについて大臣の受け止めをお聞きしたいと思います」と重ねた』、初めの質問への答弁は完全にポイントをズラした官僚答弁だ。これに対し、「現場で実際に働く保育士が考える、保育士1人が受け持つ子どもの適切な人数は何人なのか」を「アンケート調査」をもとに質問するとはさすがだ。「加藤大臣」の不誠実な官僚答弁には僕でも頭にくる。
・ これに対し加藤大臣は、またも「3歳児の配置改善を行った」と成果を強調。そして、「1歳児、4~5歳児についての宿題を果たすべく、しっかり財源も確保し実現できるよう努力したい」と、”財源確保”を理由に逃げるかのような答弁をするにとどまった。 業を煮やした大西議員は「繰り返しになりますけれど、私が最初に聞いたのは、50年、70年変わっていない、これが変ですよねという話ですよね。配置基準と現場の感覚が全く違うことを大臣に認めていただきたいんです」と語尾を強め、畳みかけた。 「1歳児、2歳児は、国の基準では6対1です。これで災害の時に子どもの安全を守ることができるのでしょうかということを聞きたいんです。例えばアンケートの自由記載の部分では、次のような回答がありました。 『子どもの発達には個人差があり、1歳児でも歩けない子どもがいるなか、6対1の配置では全く十分でない。おんぶ、だっこ、両手をつないで守れるのは4人まで。残り2人を声かけで避難など到底、無理』 大臣は、1歳児や2歳児6人に保育士1人という配置で、例えば地震などの災害が起きた場合、火事が起きた場合、安全を守ることができるとお思いになりますでしょうか」 ここでも問いに答えない加藤大臣。「地域の関係機関と連携して必要な協力が得られるよう努めるなどの対応をお示ししているところ。保育所には安全計画、それに沿った対応をお願いできるよう努力したい」と、論点をずらした。 大西議員は「全く、かみ合っていないと思うんですよ。安全計画を立てても、おんぶ、だっこ、両手をつないで4人、これしか無理なんです。逃げられないですよ。だから、これでは安全を守れないですよね、ということを言っているんです」と怒りを露わにした。) これは災害には限らない。アンケートの別の回答も切実だ。 「『3歳児18人を1人で担任していた時に、まだお漏らしをする子も多い中、便の始末にかかっている間に、部屋にいる子がけんかで、かみつきがあったり、椅子に上って大人の事務戸棚からセロテープをとろうとしてテープカッターを落としてしまい、テープカッターの刃の部分で隣にいた子の頭を切ってしまい3針縫うけがをさせてしまったことがあります』。 場面が思い浮かぶようなリアルなエピソードですが、3歳児は今、20対1の配置基準です。こういう配置基準だと、今言ったように目が届かなくて事故が起こるのが避けられないと私は思うのですが、これは大臣、いかがでしょうか」(大西議員) 加藤大臣は質問には答えず「保育士の皆さんは大変なご苦労をいただいているというふうに承知したおります」と言って、保育士の補助を行う保育補助者の雇い上げに必要な費用、業務の効率化のための登園管理システムの導入するためのICT化の推進など保育士の負担軽減策を行っていると細かな説明を始めた。 大西議員は「またかみ合ってない。子どもの発達という点でも、ぎりぎりの人数でやっている現状というのは、私は問題だと思っています」と指摘した。 そして、再びアンケート結果に話を戻した。アンケートでは「国の保育士配置基準が改善されればどのようなよい点があるか」という質問に対して、「1人ひとりにじっくり向き合える」「子どもたちの主体性を大切にし、いろんなことに挑戦したり、なかなかできない遊びを保障できる」「事務負担も分担してサービス残業も減る」「一人の負担も減るからメンタル的なしんどさも解消され、保育士を辞める人も減る」という回答が寄せられた。 大西議員が「子どもの発達、保育士の退職防止のためにも配置基準の見直しは必要。大臣、いかがでしょうか」と質問してやっと、加藤大臣は「今の基準を保持していくべきだということを申し上げているのではなく、既に、1歳児、4~5歳児は見直していくことを決めている」と国のスタンスに言及したのだった。とはいえ、「それを進めるにあたって安定的な財源をどう確保するか議論を進めたい」と、またも財源論。 大西議員は「決まって、この話になり、お金がないからできないと言って50年、70年やってこなかった。保育の質が置き去りになっているのは大問題。もう財源の確保を言い訳にしないで、必要なことはやる。こども家庭庁ができ、今まさにそのタイミングが来ている。加藤大臣、是非、ご決断いただきたいと思います」と迫った。 「政治判断が下されれば、予算は作られる」というのが永田町と霞が関の”常識”でもある。1歳児と4~5歳児の配置基準を引き上げるために必要な予算は、年に約1300億円。国家予算の規模からすれば、決して大きすぎる額ではない。) この問題に迫っているのは、大西議員だけではない。この質疑の1カ月前、2022年10月20日の参議院予算委員会では、片山大介議員が予算確保の必要性について岸田首相に迫り、10年前から実現しない「0.3兆円メニュー」の存在を改めて掘り起こしていた。 片山議員(画像:衆議院インターネット審議中継より) 「10年前の子ども・子育て関連三法の付帯決議で、配置基準の改善に必要な予算の確保を図るということを求めています。当時の民主党、自民党、公明党の三党で社会保障の一体改革のなかの確認書で、保育の質を上げようという話になっている。俗にいう0.3兆円メニューですが、あれから10年経っても実現されていないのです」 岸田首相は明言を避けたが「おっしゃるように、保育の質と予算とのバランスは考えていかなければならない課題だと思います。時代の変化のなかで果たすべき役割との関係で考えていく課題であると認識します」と含みを持たせるような答弁をした。 2023年に入って岸田首相が「異次元の少子化対策」を掲げ、政府は3月末に「たたき台」をまとめた。保育士の配置基準の改善のほかの主な対策は、①児童手当の所得制限の撤廃、②育児休業の給付金の拡充、③高等教育の経済負担の軽減策―――。他にも、出産費用の保険適用化、学校給食の無償化など、多岐に渡る政策が並んだ。 統一地方選を前に高所得者層の不満を解消すべく、児童手当の所得制限の撤廃がフォーカスされるなかでの「たたき台」の発表だった。 議論が児童手当の所得制限の撤廃に集中するあまり、国会周辺では「財源が児童手当の拡充にもっていかれては、配置基準の引き上げに予算がかけられないのではないか」という心配があった。「厚生労働省や内閣府は何年も前から配置基準の引き上げを行おうとしていたが、安倍晋三政権で保育園や幼稚園の無償化政策が行われた時も多額の予算が割かれてしまった」(関係者)という経緯もある。 岸田首相が「子ども予算倍増」と言う一方で、配置基準引き上げについて政府は煮え切らない。複数の関係者が「3月末に出た『たたき台』に向けて、内閣府と厚労省からは配置基準の引き上げは必須として、他の質の向上に関する政策も含めてすべて提出されていた」としており、「要望を受け取った小倉將信少子化担当大臣が頭を抱えていたようだ」と明かす。一方で、「国会でも大きく取り上げられ、さすがに今回は配置基準を変えるだろう」との見方も強まったが、結局のところ基準の「引き上げ」ではなく「改善」に留まった。 今後、「たたき台」をベースに岸田首相を議長とした「こども未来戦略会議」での議論を経て必要な政策や予算、財源が6月の「骨太の方針」までに示される。 こども家庭庁が発足して間もない4月4日、参議院の内閣委員会では井上哲士議員も配置基準を「引き上げ」るのか「改善」なのかを追及すると、小倉大臣が「基準の引き上げは行わない」と答えた。) 「最低基準を引き上げた場合、すべての保育園で基準をクリアする必要が出るため、保育士確保で現場に混乱が生じる可能性もあります。現状、様々な園において基準に達しないということも起こる可能性がある」(小倉大臣) この答弁に対して井上議員は、保育士の資格を持ちながら保育士として働いていない潜在保育士の多さを指摘。「厚生労働省の資料では、2019年で保育士の有資格者は160万7000人いるが、保育所などで働いているのは62万6000人で38.9%に過ぎない」と切り返した。 井上議員(画像:参議院インターネット審議中継より) そして、井上議員は「配置基準の抜本改定は、魅力とやりがいのある職場につながる。基準どおり配置できない保育園ができるということでない。これだけの資格者がいるわけですから、保育士が保育園で働けるようにするためにも1人当たりの子ども数を減らす点で、基準の改定は待ったなしだ」と小倉大臣に詰め寄った。 多くの国会議員が基準引き上げを求めるなか、国が言い訳にする保育士確保の問題には疑問が残る。 2022年12月の段階で、認可保育園全体の約2割が既に「チーム保育推進加算」という運営費の上乗せ制度を使って4~5歳児の「25対1」を図っている実態を、内閣府は把握していた。そのうえで、現場が「25対1」でない園の定員分布を分析。「121人以上の大規模な認可保育園が全体の約2割を占め、その4歳児クラス、5歳児クラスの人数が平均で25人を超えている」(内閣府、当時)として、2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充したのだ。つまり、既に大半の園で「25対1」になっているのだ。 1歳児の配置については、東京都などの自治体が上乗せ補助を行い「5対1」を既に実現しているケースが少なくない。出生数減少により定員割れしている保育園が急増するなか、行政サイドからも「待機児童が多かった数年前であれば基準引き上げで混乱が生じてしまうが、今は状況が違う。最初は加算方式でも、何年かかけて基準を引き上げればいい」との見方がある。一方で、複数の国会議員が「保育園経営に近い立場の国会議員が、基準引き上げに猛烈に反対した」と明かす。 都市部や地方の複数の保育園経営者、業界団体の役員などは「園の評判が悪いことで保育士が集まらない場合があるだろうが、現状、配置基準が引き上げられても保育士確保に問題はない」と口を揃える。たとえ直ちに配置基準の引き上げとならなくても、数年後に基準を変えると宣言して猶予期間を作るなど、工夫はできる。今後の国会論戦でも国を動かす議論は見られるだろうか』、「2022年12月の段階で、認可保育園全体の約2割が既に「チーム保育推進加算」という運営費の上乗せ制度を使って4~5歳児の「25対1」を図っている実態を、内閣府は把握していた。そのうえで、現場が「25対1」でない園の定員分布を分析。「121人以上の大規模な認可保育園が全体の約2割を占め、その4歳児クラス、5歳児クラスの人数が平均で25人を超えている」(内閣府、当時)として、2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充したのだ。つまり、既に大半の園で「25対1」になっているのだ・・・複数の国会議員が「保育園経営に近い立場の国会議員が、基準引き上げに猛烈に反対した」と明かす・・・たとえ直ちに配置基準の引き上げとならなくても、数年後に基準を変えると宣言して猶予期間を作るなど、工夫はできる。今後の国会論戦でも国を動かす議論は見られるだろうか」、「国を動かす議論」を期待したい。
先ずは、本年2月9日付けPRESIDENT Onlineが掲載した労働経済ジャーナリストの小林 美希氏による「2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/66268
・『幼稚園や保育園で「園児の置き去り事故」が相次いでいる。労働ジャーナリストの小林美希さんは「諸悪の根源は安倍政権の下で進んだ待機児童対策だ。園の数はここ10年で急増したが、保育士の労働環境は悪化しており、保育の質が低下している」という――』、興味深そうだ。
・『「いつ置き去り事故が起こってもおかしくない」 「子どもを公園に置いて園に帰ってきてしまう。少し前なら、あり得ないことが起こっているのです」 都内の認可保育園の小田明子園長(仮名、60代半ば)は、驚きを隠せない。小田園長は公立保育園も含めて40年以上、保育現場に携わっている。現在は私立の認可保育園の園長で、これまで大きな事故もなく過ごしてきたが、1年ほど前に保育士が2歳の園児を公園に置いたまま散歩から帰ってきてしまい、肝を冷やした。 園児がいないことに気づき、慌てて園長と保育者数人とで外を探すと、近隣の住民に保護され、ことなきを得た。もしも誤って道路に飛び出していれば交通事故に遭っていたかもしれないと思い、身震いした。担任保育士は経験が浅く、ケガが起きないように見るので精一杯。「早く保育園に帰って、給食の準備をしなければ」という焦りがあって、園児の点呼を忘れていたという。 こうした事態に小田園長は頭を悩ます。 「園児が全員いるかどうか点呼することは、基本中の基本です。公園に着いた時はもちろん、遊んでいる最中、園に帰る時も全員が揃っているか、常に確認する。それが、業務に追われて目の前の子どもが見えなくなっているのです。いつ置き去り事故が起こってもおかしくない環境なのです」』、「園児が全員いるかどうか点呼することは、基本中の基本です。公園に着いた時はもちろん、遊んでいる最中、園に帰る時も全員が揃っているか、常に確認する。それが、業務に追われて目の前の子どもが見えなくなっているのです。いつ置き去り事故が起こってもおかしくない環境なのです」、なるほど。
・『20人の子どもたちを4畳半程度のスペースに… それというのも小田園長が勤める法人は、保育園の数を増やして事業拡大することと利益を上げることを優先させている。人件費を抑えるため、保育士は低賃金で人員体制はギリギリという状態なのだ。若手が疲弊して、2~3年で辞めていく。そうしたなかで起こった置き去りだった。 他の都内の私立の認可保育園でも、園児が保育園から一人で出ていこうとしていた。たまたま居合わせた保護者の飯田恵さん(仮名、40代)が止めたが、その後の対応が不十分だった。飯田さんは、「子どもが勝手に出ていかないようにと、登園時やお迎えラッシュの時間帯は20人もの子どもたちが、4畳半程度のスペースに囲った柵のなかに詰め込まれるようになりました」と憤りを隠せない。 日頃から、園児同士の噛みつき、ひっかきも多い。大きなすり傷に気づいた飯田さんが理由を尋ねても、担任の保育士は「見ていなかったので分からない」と言うだけ。改善を求めてもケガが続いたことから、飯田さんは「これではいつ子どもが死ぬかも分からない」と子どもを転園させた』、「人件費を抑えるため、保育士は低賃金で人員体制はギリギリという状態なのだ。若手が疲弊して、2~3年で辞めていく。そうしたなかで起こった置き去りだった・・・大きなすり傷に気づいた飯田さんが理由を尋ねても、担任の保育士は「見ていなかったので分からない」と言うだけ。改善を求めてもケガが続いたことから、飯田さんは「これではいつ子どもが死ぬかも分からない」と子どもを転園させた」、「転園」とは賢明な判断だ。
・『安倍政権下で保育は「儲かるビジネス」と化した 福岡県中間市や静岡県牧之原市で起こった通園バス園児死亡事件は、出欠確認が徹底されないことによって園児がバスに置き去りになった。この事件は、保育の基本中の基本である園児の出欠確認ができないほど、現場の質が劣化していることを意味する。 園児が置き去りにされる、不適切な保育が横行するなどの保育の質の低下は、保育士の労働環境の悪化が大きく影響しているのだ。 その背景にあるのは、安倍晋三政権下で待機児童対策が目玉政策となり、急ピッチで保育園が作られるようになったことだ。 公的な保育園は、2013年度の2万4038カ所から22年度は3万9244カ所へと大幅に増えた。安倍政権が「株式会社に受け皿整備を担ってもらう」という方針を打ち出したことで、営利企業による認可保育園は13年の488カ所から21年に3151カ所にまで急増した(厚生労働省「社会福祉施設等調査」)。 保育園の増加ペースに人材が追い付かないうえ、事業者のモラルが低下。保育を「3兆円を超える市場」と捉え、儲けるために参入する事業者が雨後の筍のように現れた。利益を出すために人件費が削られ、保育士の労働環境が劣悪になった』、「公的な保育園は、2013年度の2万4038カ所から22年度は3万9244カ所へと大幅に増えた。安倍政権が「株式会社に受け皿整備を担ってもらう」という方針を打ち出したことで、営利企業による認可保育園は13年の488カ所から21年に3151カ所にまで急増した・・・保育園の増加ペースに人材が追い付かないうえ、事業者のモラルが低下。保育を「3兆円を超える市場」と捉え、儲けるために参入する事業者が雨後の筍のように現れた。利益を出すために人件費が削られ、保育士の労働環境が劣悪になった」、なるほど。
・『人件費がほかの費目に流用できるようになった かつて、認可保育園は公共性の高さから自治体か社会福祉法人しか設置・運営ができなかった。それが2000年の規制緩和によって、営利企業、宗教法人、NPO法人の参入が容認された。それと同時に、私立の認可保育園に支払われる運営費の使途の規制緩和である「委託費の弾力運用」が大幅に認められるようになった。 私立の認可保育園の運営費は「委託費」と呼ばれ、税金を主な原資とする。委託費の算定基準である「公定価格」では、人件費は基本的な部分だけでも全体の約8割を占める。人件費のほか、玩具や絵本を買うなど保育に要する「事業費」が約1割、職員の福利厚生費などの「管理費」が約1割必要だと国が想定し、委託費が各園に支払われている。 「委託費の弾力運用」が認められると、それまであった「人件費は人件費に使う」という使途制限が緩和され、人件費分を事業費や管理費へ流用するという各費目の相互流用のほか、同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費への流用などが許されるようになった。 ある程度の経営の自由度は必要だが、自民党政権下で規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている。そこに目をつけた事業者は、人件費を抑えて事業を拡大し、利益を得ていったのだ』、「人件費分を事業費や管理費へ流用するという各費目の相互流用のほか、同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費への流用などが許されるようになった。 ある程度の経営の自由度は必要だが、自民党政権下で規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている。そこに目をつけた事業者は、人件費を抑えて事業を拡大し、利益を得ていったのだ」、なるほど。
・『565万円→381万円…200万円はどこに消えたのか その結果、委託費の8割以上を占めるはずの人件費が抑え込まれた。東京都による2018年度実績の調査では、都内の社会福祉法人の人件費支出の割合は7割、株式会社では5割にとどまり、その傾向は今も変わっていない。 委託費を算出するための「公定価格」は全国8つの地域区分に分かれ、それぞれ単価が異なる。公定価格が最も高い東京23区で見てみると、2021年度の保育士一人当たりの基本的な賃金年額は約442万円となる。 営利企業が集中して進出する東京23区では、その442万円に処遇改善費が加わると、単純計算だが、最大で約565万円の賃金が公費で出ていることになる。しかし、東京23区で実際に保育士が手にとる賃金は約381万円と少ない(内閣府「幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査」2018年度実績)。計算上、公費から出る賃金額と実際に保育士に支払われる金額の差が、最大で年間200万円近くになる。その差はどこに消えるのか』、「計算上、公費から出る賃金額と実際に保育士に支払われる金額の差が、最大で年間200万円近くになる。その差はどこに消えるのか」、「差」が「最大で年間200万円近く」とは無視出来ない額だ。
・『基準より人員を多く雇う保育園はあるが… ただ、賃金が低くなる正当な理由もある。人件費は基本的には最低配置基準に沿って出るため、基準より多く雇えば一人当たりの賃金が低くなるケースがある。 認可保育園などの保育士の最低配置基準は、0歳児が園児3人に対して保育士1人(「3対1」)、1~2歳児が「6対1」、3歳児が「20対1」、4~5歳児が「30対1」となっている。4~5歳児の基準は戦後から70年以上も変わっていないため、この体制では不十分だと判断して人員を多く雇う保育園は多く、ひとつの認可保育園で平均3~4人を多く配置している(内閣府調査)。このように保育士の多い園では、一人当たりの賃金が低くなってもやむを得ない事情がある。 とはいえ冒頭のように、配置基準ギリギリにして人件費を抑える保育園は少なくない。利益重視の事業者は営利企業でも社会福祉法人でも、「コストコントロール」を図るため、「保育士の適正配置」「職員配置の適正化」を掲げている。つまり「人件費カットのため、最低配置基準を守れば人員体制はギリギリでいい」(複数の業界関係者)という考え方だ』、「保育士の最低配置基準」では不十分として、「ひとつの認可保育園で平均3~4人を多く配置している」、他方で、「最低配置基準を守れば人員体制はギリギリでいい」・・・という考え方」をとるところも多い。
・『都内30カ所で違反が常態化している ある中堅企業傘下の保育園で働いていた保育士は「園児の欠席が多いと、配置基準上で保育士が余るので、他園にヘルプに出されました。普段みていない園児を保育するのは不安でした。職員の数に余裕がないため、誰かが急に休むと、とたんに配置基準を割ってしまいます。これでは、いつ事故が起きてもおかしくないと思って辞めました」と話す。 1年半ほど前に筆者は東京都が認可保育園に対して行った2017~19年度の監査結果について調べており、「保育士が適正に配置されていない」などの文書指摘を受けた保育園が都内で合計153カ所に上った。 それらの違反の詳細について都に情報開示請求を行うと、「保育士配置違反が常態化している」「無資格者しかいない時間帯がある」などの実態が明らかになった。保育士配置違反が常態化している園と違反状態が長く続いていると見られる園は合計30カ所もあった。そもそも少ない配置基準でさえ守られないのでは、保育士は疲弊し、子どもの安全を守ることは難しいだろう』、「保育士配置違反が常態化している園と違反状態が長く続いていると見られる園は合計30カ所もあった。そもそも少ない配置基準でさえ守られないのでは、保育士は疲弊し、子どもの安全を守ることは難しいだろう」、なるほど。
・『6年間で保育事故は3.5倍に 保育士の配置基準については、2014年3月の段階で、1歳児を現行の園児6人に対し保育士1人(「6:1」)から「5:1」へ、4~5歳児は「30:1」から「25:1」にすると国は計画し、必要な予算を約1300億円と試算していた(「子ども・子育て支援新制度における『量的拡充』と『質の改善』について」)。 配置基準の引き上げは保育業界の長年の悲願であり、ようやく2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充することで、大規模園の4~5歳児の「25対1」の実現が図られる。これを第一歩に、抜本的な改善が必要だ。 保育事故は年々増えている。内閣府の「教育・保育施設等における事故報告集計」から、認可保育園で起こった死亡・負傷等の事故件数を見ると、2015年の344件から2021年は1191件となり、この6年で3.5倍近く増えている。 2021年の保育事故の状況を詳しく見ると、負傷等のうち最も多いのが骨折の937件、その他(指の切断、唇、歯の裂傷等を含む)が242件あり、意識不明が8件、火傷が2件、死亡が2件だった。年齢別では、保育士配置が手薄になる4~5歳の多さが目立ち、それぞれ246件、404件だった』、「認可保育園で起こった死亡・負傷等の事故件数を見ると・・・2015年の344件から2021年は1191件となり、この6年で3.5倍近く増えている・・・2021年の保育事故の状況を詳しく見ると、負傷等のうち最も多いのが骨折の937件、その他(指の切断、唇、歯の裂傷等を含む)が242件あり、意識不明が8件、火傷が2件、死亡が2件だ」、大変だ。
・『事業者が利益を得るための制度ばかりが変わっていく 政府は1月27日、通園バス園児置き去りの再発防止のための調査結果を公表した。通園バスをもつ保育園などのうち約2割に乗降時の子どもの安全管理に課題があったとしている。4月からは通園バスに安全装置の設置が義務付けられるが、問題の本質は保育士不足や保育の質の低下であり、保育士の労働条件の改善こそが急務の課題だ。 4月にこども家庭庁が発足する今こそ、最低配置基準の引き上げを行い、それと同時に前述した「委託費の弾力運用」の規制を強化して人件費の流出を食い止めなければ、保育士の労働環境は変わらない。保育士が守られなければ、犠牲になるのは子どもたちだ。 この国は、保育事業者が利益を得るための制度は次々に変えていくが、保育現場で子どもが命を落としても、子どもにとって必要な制度は変わらない。保育は児童福祉法に基づく福祉行政の一貫として行われていることを忘れてはならない』、「問題の本質は保育士不足や保育の質の低下であり、保育士の労働条件の改善こそが急務の課題だ・・・「委託費の弾力運用」の規制を強化して人件費の流出を食い止めなければ、保育士の労働環境は変わらない。保育士が守られなければ、犠牲になるのは子どもたちだ」、同感である。
次に、4月24日付け東洋経済オンラインが掲載したフェリス女学院大学 文学部英語英米文学科 助教の関口 洋平氏による「「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/667340
・『日常のいたるところで濫用され、消費されている「イクメン」という表現。2022年10月から改正育児・介護休業法により「産後パパ育休」が施行され、この4月からは育児休業取得状況の公表が義務化。「イクメン」という言葉の流布から10年以上が経ち、再び注目されるキーワードになった今こそ、その意味を構造的に問いなおすことが必要なのではないだろうか。 本稿は、子育ての話題の中でも特に議論を呼ぶ「保育園」を取り巻く問題について、検証する。自身も子育て中のアメリカ研究者が「イクメン」という言葉そのものに疑義を抱くところから始まる最新著書『「イクメン」を疑え!』(集英社新書)より、一部抜粋・再構成してお届けします。 アメリカでは保育園の設置基準が統一されていないのに対して、日本では国が認可保育所の条件を定めている。どの認可保育所を利用しても最低限の質は担保されているので、利用者は比較的安心して子どもを預けることができる。日本に住む私たちにとって、そうした質の高い保育は「育児のネットワーク」の重要な一部をなしている。 ところが、ここ20年あまりの新自由主義的な潮流のなかで、育児に対する公的な支援は日本でも徐々に削減されてきた。一言で言えば、日本においても保育の市場化が急速に進んだのである。本稿では少子化や待機児童といった日本独自の事情を勘案しつつ、新自由主義が日本の保育に与えた影響を検討したい』、「ここ20年あまりの新自由主義的な潮流のなかで、育児に対する公的な支援は日本でも徐々に削減されてきた。一言で言えば、日本においても保育の市場化が急速に進んだのである。本稿では少子化や待機児童といった日本独自の事情を勘案しつつ、新自由主義が日本の保育に与えた影響を検討したい」、なるほど。
・『保育園から「突然の通告」 はじめに、ここではひとつの具体例を紹介したい。東京都目黒区在住の竹内冬美さんは、いわゆる「保活」の末に2019年から区立保育園を利用し始めた。その区立園は評判どおりに保育の質が高く、2021年からは第二子も預けることができて満足していた――そんな矢先の4月半ばである。 竹内さんは保育園から1枚の薄い藁半紙を受け取った。その紙に掲載されていたQRコードを読み取って区のホームページを見ると、その区立園が数年後に別の区立園と統合されたうえで民営化されることが事務的に記されていた。) 青天の霹靂としか言いようのない保育園民営化計画を知って、竹内さんは困惑と怒りの混ざった感情を抱いたという。 慣れ親しんだ保育士がいなくなったとき、子どもたちはどのような反応をするだろうか?新しい保育園において保育の質はどこまで保持されるのだろうか?あるいは、公立の保育園がそれまで担ってきた公的役割─地域の避難所や子育て支援の拠点としての機能、障がい者の受け入れなど─はどうなるのだろうか?区による一方的な決定に疑問を感じた竹内さんたち保護者は、区立園の存続に向けた活動を始めた(※1)。 この例からもわかるとおり、保育園民営化は現在に至るまでさまざまな自治体において重要な争点になっている。だが、民営化の議論は近年に始まったことではない』、「保育園民営化は現在に至るまでさまざまな自治体において重要な争点になっている。だが、民営化の議論は近年に始まったことではない」、なるほど。
・『「待機児童ゼロ作戦」で目指したこと 日本において保育への公的支出がカットされ始めたのは、1980年代のことである。公立保育園の数が1983年に過去最多を記録した一方で、この時代には保育園運営費の国家負担率が徐々に削減されていった。公立保育園にのみ多額の公費が投入されることや、公立保育士の賃金の高さなどが批判されたのである。 このような流れのなかで、鈴木善幸内閣・中曽根康弘内閣の第二次臨時行政調査会は、保育園の民営化をひとつの目標として掲げた。 ところが、この時代には「生活可能な、主体的に働くことを選んでいる共働き層への保育サービスの供給は『公費の乱用』と指摘された」というから、待機児童の増大と少子化を背景とした現在の保育園民営化とは事情が大きく異なる(※2)。 共働きの家庭が現在ほど一般的でなかったこの時代においては、保育園の数を増やすどころか、むしろ抑制することが課題とされたのである。事実、1980年を境に保育園の入所児童数は緩やかに減少していった(※3)。 そのような方針を一変させる要因となったのが、1990年のいわゆる「1.57ショック」である。1973年には2.14であった合計特殊出生率(ひとりの女性が一生の間に産む子どもの数)は急速に低下し、1989年に1.57となったのだ。 この衝撃を受けて、政府は少子化対策としてさまざまな政策を矢継ぎ早に策定した。1994年の「エンゼルプラン」、1999年の「新エンゼルプラン」、2003年の次世代育成支援対策推進法・少子化社会対策基本法などがその一例である。 (※1)2021年8月21日、個人インタビュー。 (※2)萩原久美子「保育供給主体の多元化と公務員保育士─公共セクターから見るジェンダー平等政策の陥穽」『社会政策』8.3(2017年)66頁。 (※3)汐見稔幸・松本園子・髙田文子・矢治夕起・森川敬子『日本の保育の歴史子ども観と保育の歴史150年』(萌文書林、2017年)318頁。) 一連の少子化対策のなかで重視されたのが、保育園の量的な拡大だった。2001年に発足した小泉純一郎内閣は「待機児童ゼロ作戦」を掲げ、2002年度から3年間で15万人の保育園児の受け入れ増を目指した。「聖域なき構造改革」というキャッチフレーズを掲げて小泉政権が新自由主義的な政策を推進したことはよく知られているが、「待機児童ゼロ作戦」もその延長線上にある。 保育園の量的拡大を実現するために重用されたのは、規制緩和と民営化という二本柱であった。産業構造の変化により、いわゆる「家族賃金モデル」(父親がひとりで家族全員を養うことができるだけの賃金を終身雇用制により保障するシステム)が崩壊し、共働き世帯が増加していたことも相まって、これらの改革は急速に進行した』、「公立保育園の数が1983年に過去最多を記録した一方で、この時代には保育園運営費の国家負担率が徐々に削減されていった。公立保育園にのみ多額の公費が投入されることや、公立保育士の賃金の高さなどが批判されたのである。 このような流れのなかで、鈴木善幸内閣・中曽根康弘内閣の第二次臨時行政調査会は、保育園の民営化をひとつの目標として掲げた。 ところが、この時代には「生活可能な、主体的に働くことを選んでいる共働き層への保育サービスの供給は『公費の乱用』と指摘された」というから、待機児童の増大と少子化を背景とした現在の保育園民営化とは事情が大きく異なる(※2)。 共働きの家庭が現在ほど一般的でなかったこの時代においては、保育園の数を増やすどころか、むしろ抑制することが課題とされた・・・そのような方針を一変させる要因となったのが、1990年のいわゆる「1.57ショック」である。1973年には2.14であった合計特殊出生率(ひとりの女性が一生の間に産む子どもの数)は急速に低下し、1989年に1.57となったのだ。 この衝撃を受けて、政府は少子化対策としてさまざまな政策を矢継ぎ早に策定・・・一連の少子化対策のなかで重視されたのが、保育園の量的な拡大だった。2001年に発足した小泉純一郎内閣は「待機児童ゼロ作戦」を掲げ、2002年度から3年間で15万人の保育園児の受け入れ増を目指した・・・保育園の量的拡大を実現するために重用されたのは、規制緩和と民営化という二本柱であった。産業構造の変化により、いわゆる「家族賃金モデル」・・・が崩壊し、共働き世帯が増加していたことも相まって、これらの改革は急速に進行した」、これまでの流れが要領良く整理されている。
・『規制緩和で起こった「詰め込み保育」の弊害 新自由主義改革が保育という領域に与えた影響を理解するために、まずは規制緩和という側面に注目してみよう。 小泉政権が促進したのは、保育園の入所定員の「弾力化」である。「弾力化」とは耳慣れない言葉かもしれないが、規制を緩和して制度を柔軟に適用するということであり、この文脈では、「詰め込み保育」を意味している。この改革により、待機児童が多い自治体では、保育園の定員を超えて(年度初めは15%増しまで、年度途中は25%増しまで、年度後半は無制限)子どもを預かることが認められた。 小泉政権は保育園の入所定員だけでなく、保育士の配置基準も緩和した。1998年には常勤の保育士を原則とする規定が撤廃され、基準配置数の2割までという条件付きで短時間勤務保育士(非常勤保育士)を配置することが認められた。 小泉政権はこの規制緩和をさらに推し進め、非常勤保育士の上限を撤廃した。各クラスに1?2名以上常勤の保育士がいれば、あとはすべて非常勤保育士でもよくなったのである。 入所定員の弾力化や保育士の配置基準の緩和は、待機児童を減らすという意味では一定の効果があった。その一方で、規制緩和により保育の質が低下したこともまた事実である。 常勤の保育士が原則であったのは、保育士が頻繁に入れ替わると子どもが安定した人間関係を築けないからである。保育園に定員が設定されているのは、キャパシティを超えて園児を受け入れると十分に目が行き届かず、事故の可能性が高まるからだ。) 事実、保育園で起きた痛ましい死亡事故に関する報道は後を絶たない。ジャーナリストの猪熊弘子によれば、「事故が起きた施設の多くは、保育室の面積が非常に狭く、職員が少なく、無資格者や資格を持っていたとしても経験の少ない場合がほとんど」であり、「余裕のない保育施設の運営が、子どもの死亡事故を招いている」という(※4)。 事故を起こした個々の保育施設を責めることは簡単だが、その背後に構造的な要因が潜んでいることが看過されてはならない』、「「事故が起きた施設の多くは、保育室の面積が非常に狭く、職員が少なく、無資格者や資格を持っていたとしても経験の少ない場合がほとんど」であり、「余裕のない保育施設の運営が、子どもの死亡事故を招いている」という」、重大な指摘だ。
・『「保育園民営化」の推進で何が起こったか 待機児童対策のために政府が重視したもうひとつの方針が、民営化である。2000年には営利企業も認可保育所に参入できるようになった。自治体か社会福祉法人しか認可保育所を設置・運営してはならないという規制が撤廃されたのである。 小泉政権は、民営化の流れをさらに加速させた。2003年に内閣府により発表された報告書では、「保育サービスの需要は今後ますます増大し、将来有望な市場となる」一方で、「株式会社の参入を認めるなど規制緩和が進んだにもかかわらず、そのメリットが利用者にきちんと還元されて」いないことが問題視された(※5)。 公立保育園では「効率的に経営が行われて」おらず、規制緩和の徹底により民間企業の参入を促すことが必要である、というのがこの報告書の結論である。公立保育園のコスパの悪さを強調する一方で保育サービスが将来的に有望な市場であることを明記するこの報告書には、「すべての領域を金銭化する」新自由主義の基本方針が明確に反映されている。 この報告書の議論を受け、2004年にはいわゆる三位一体改革の一環として公立保育園の運営費が一般財源化された。それまでは国庫補助負担金という形で保育園の運営のためだけに使える予算が自治体へ支給されていたが、この補助金の廃止によって用途が特定されない予算が自治体に支給され、自治体ごとにその予算を自由に割り振れるようになったのである。 (※4)猪熊弘子『「子育て」という政治少子化なのになぜ待機児童が生まれるのか?』(角川SSC新書、2014年)101頁。 (※5)内閣府国民生活局物価政策課「保育サービス市場の現状と課題─『保育サービス価格に関する研究会』報告書─」2003年。) この一般財源化を機に、多くの自治体は保育園関連の予算を大幅にカットした。その結果、先述したような民営化による混乱が2000年代には続発した(※6)。また、公立・私立を問わず、保育士の非正規雇用化が進んだ。 慢性的な財政難に苦しむ自治体にとって、民営化によるコスト削減は魅力的である。民営化や統廃合が進むにつれて公営保育園の数は徐々に減り、2007年には私営保育園の数を下回った。2021年時点で、公営保育園が7919カ所あるのに対し、私営保育園は2万2076カ所である。 2000年の時点では公営・私営それぞれ1万2707カ所と9492カ所であったので、保育園の総数が増えていること、また公営・私営の割合が著しく逆転していることがわかる(図 ※7)』、 「慢性的な財政難に苦しむ自治体にとって、民営化によるコスト削減は魅力的である。民営化や統廃合が進むにつれて公営保育園の数は徐々に減り、2007年には私営保育園の数を下回った。2021年時点で、公営保育園が7919カ所あるのに対し、私営保育園は2万2076カ所である。 2000年の時点では公営・私営それぞれ1万2707カ所と9492カ所であったので、保育園の総数が増えていること、また公営・私営の割合が著しく逆転していることがわかる」、これほど「公営」と「私営」の割合が「逆転」したとは、衝撃的だ。
・『保育の質が低下することへの懸念 誤解しないでほしいのだが、私は民間の保育園や非正規の保育士は質が低いと主張したいわけではないし、公立の保育園が完璧であると言いたいわけでもない。私の個人的な経験から言っても、民間であれ、非正規であれ、有能で熱心な保育士は数多く存在している。 問題は、拙速な民営化によって保育の質が担保されないような構造ができ上がってしまったことなのだ。待機児童問題の深刻さを考えれば、営利企業の参入という判断は妥当であったかもしれない。だが、それによって保育の質が低下し、子どもを安心して預けられないのでは元も子もないはずである。 ※6)2000年代の保育園民営化については、たとえば以下の文献を参照。汐見稔幸・近藤幹生・普光院亜紀『保育園民営化を考える』(岩波ブックレット、2005年)、二宮厚美『構造改革と保育のゆくえ』(青木書店、2003年)、平松知子『保育は人保育は文化ある保育園民営化を受託した保育園の話』(ひとなる書房、2010年)。(※7)厚生労働省、平成12年?令和3年社会福祉施設等調査』、「問題は、拙速な民営化によって保育の質が担保されないような構造ができ上がってしまったことなのだ。待機児童問題の深刻さを考えれば、営利企業の参入という判断は妥当であったかもしれない。だが、それによって保育の質が低下し、子どもを安心して預けられないのでは元も子もないはずである」、「質の低下」は今後、問題化必至の由々しい問題だ。
第三に、 5月4日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの小林 美希氏による「"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/669534
・『国会中継などで見かける大臣と議員の激しい論戦。その内容を注視して見たことはあるだろうか。 そこでは日本の未来を左右する重要な論点が多く扱われている。今の日本において見逃せない論点とは何か。ジャーナリストの小林美希さんが国会でとくに話題となった議論をたどりながら、問題の焦点に迫る。今回は「保育」の問題について取り上げる。 岸田文雄首相が大々的に掲げる「異次元の少子化対策」。保育園の通園バスに置き去りになって園児が死亡した事故や、保育士による虐待事件が相次ぐなど、保育の業界では事件・事故が続いている。そうした中、子どもを守る保育士の数を増やすべきと、人員増が求められている。 保育園には園児の年齢ごとに保育士の最低配置基準があり、現在、保育士1人で1~2歳児を6人、4~5歳児を30人みることができる。それでは保育士の負担が重いうえ、子どもたちに充分に目が行き届かないと、保育士の配置基準を引き上げることが検討課題になっている。 昨年来、国会では連日この問題が取り上げられ、当事者の運動も広がりを見せたことから、「配置基準が今年こそ引き上げられるのではないか」と期待がかかった。しかし3月末に発表された「異次元の少子化対策」の「たたき台」では、基準の「引き上げ」ではなく、手厚い保育を実施する園への運営費上乗せという「改善」に留まった。いったい配置基準引き上げを巡り、国会ではどんな論戦が行われ、議論の現在地はどうなっているのか』、興味深そうだ。
・『戦後から続いてきた「配置基準」をめぐる攻防 2022年11月9日、衆議院の厚生労働委員会では、大西健介議員が”難事”に向かった。持ち時間の多くを割いて説いたのは、保育士の最低配置基準引き上げの重要性についてだ。 認可保育園には保育士の最低配置基準が決められており、他のタイプの公的保育園もその基準に倣っている。配置基準が決められたのは戦後間もない1948年で、それ以降、大きく変わっていないことが問題視されている。 振り返れば基準が置かれた1948年の当初、0~1歳児は園児10人を保育士1人でみる「10対1」だった。0歳児は1967年に「6対1」へ、1998年に「3対1」へと基準が手厚い方向に変更された。 1~2歳児は1967年に「6対1」になって以降、50年以上変わっていない。4~5歳児は75年前からずっと「30対1」のまま。海外を見てみると、英国では保育者の持つ資格によるが、3歳以上5歳未満が「13対1」や「8対1」、ドイツは州ごとに異なるが3歳児未満の平均が「4.5対1」、3~6歳児が「11.8対1」や「8.6対1」などの厚みがある(厚生労働省の委託事業「諸外国における保育の質の捉え方・示し方に関する研究会」報告書2019年)。日本の基準引き上げは長年の課題だ。 大西議員は「基本的な考え方を聞いていきたい。大臣には是非、御自身のお言葉で、率直にお考えを」と切り出した。 「1歳児の基準は私が生まれた頃から変わっていない。4~5歳児は基準制定の1948年以来、70年以上変わっていないのです。1948年は戦後の第1次ベビーブーム。当時の出生数は約268万人、そして、昨年(2021年)の出生数は81万人。全く世の中が変わってしまっているのに、保育士の配置基準は変わっていない。ある種、異常なことだと思うが、大臣の率直な意見をお聞かせいただきたいと思います」(大西議員) 国会で議員が質問する内容は、事前に各省府庁に通告されて官僚が答弁を作り、それを基に閣僚が答えていく。大西議員は、大臣に対して官僚が作った答弁書を読むのではなく、大臣自身の言葉を求めた』、大西議員の質問はポイントを突いており、私も知りたいものだ。
・『ところが加藤勝信厚生労働相が説明し始めたのは、2015年度に行われた3歳児の配置改善についてだった。国は2014年に配置基準を引き上げる計画を立ており、一部は改善されている。 当時、消費税の税率を引き上げる際に、保育園の数を増やす「量的拡充」のための施策に必要な0.7兆円を消費税で賄い、そのなかで3歳児の配置基準の「20対1」を「15対1」にすると計画された。基準そのものは引き上げられなかったが、消費税を財源に「15対1」体制をとる園の運営費を「加算」して支給する形で、2015年度に改善した。 また、消費税以外を財源とする0.3兆円で「質の改善」を行うとして、1歳児の「6対1」を「5対1」へ、4~5歳児の「30対1」を「25対1」に引き上げるなどの計画が立てられた。それら保育の質を向上するための施策は「0.3兆円メニュー」と呼ばれているが、財源がないことを理由に2014年以降、実現しなかった。 加藤大臣は、「(目標としている)4~5歳児の配置改善は実施できていない。このことは強く認識をしているところ。引き続き、財源をしっかり確保する努力をしていきたい」と、淡々と答弁書を読み上げた。 大西議員は「答弁を読むのではなくて、70年前と今の社会、子どもを取り巻く状況は全く違う。70年で1回も配置基準が変わらないことが、率直に言って、これは普通ですか」と強調した。) ここで、愛知県の保育園関係者が結成した「子どもたちにもう1人保育士を!実行委員会」が2022年2月~3月に行ったアンケート調査の内容が紹介された。現場で実際に働く保育士が考える、保育士1人が受け持つ子どもの適切な人数は何人なのか。 国の基準は1歳児が「6対1」だが、保育士の約半数が「3対1」と答えている。同様に4~5歳児の国の基準は「30対1」だが、現場で最も多かったのは4歳児が15人、5歳児が20人だった。 大西議員は「これが現場の受け止めなんです。実際の配置基準と大きく乖離していることについて大臣の受け止めをお聞きしたいと思います」と重ねた』、初めの質問への答弁は完全にポイントをズラした官僚答弁だ。これに対し、「現場で実際に働く保育士が考える、保育士1人が受け持つ子どもの適切な人数は何人なのか」を「アンケート調査」をもとに質問するとはさすがだ。「加藤大臣」の不誠実な官僚答弁には僕でも頭にくる。
・ これに対し加藤大臣は、またも「3歳児の配置改善を行った」と成果を強調。そして、「1歳児、4~5歳児についての宿題を果たすべく、しっかり財源も確保し実現できるよう努力したい」と、”財源確保”を理由に逃げるかのような答弁をするにとどまった。 業を煮やした大西議員は「繰り返しになりますけれど、私が最初に聞いたのは、50年、70年変わっていない、これが変ですよねという話ですよね。配置基準と現場の感覚が全く違うことを大臣に認めていただきたいんです」と語尾を強め、畳みかけた。 「1歳児、2歳児は、国の基準では6対1です。これで災害の時に子どもの安全を守ることができるのでしょうかということを聞きたいんです。例えばアンケートの自由記載の部分では、次のような回答がありました。 『子どもの発達には個人差があり、1歳児でも歩けない子どもがいるなか、6対1の配置では全く十分でない。おんぶ、だっこ、両手をつないで守れるのは4人まで。残り2人を声かけで避難など到底、無理』 大臣は、1歳児や2歳児6人に保育士1人という配置で、例えば地震などの災害が起きた場合、火事が起きた場合、安全を守ることができるとお思いになりますでしょうか」 ここでも問いに答えない加藤大臣。「地域の関係機関と連携して必要な協力が得られるよう努めるなどの対応をお示ししているところ。保育所には安全計画、それに沿った対応をお願いできるよう努力したい」と、論点をずらした。 大西議員は「全く、かみ合っていないと思うんですよ。安全計画を立てても、おんぶ、だっこ、両手をつないで4人、これしか無理なんです。逃げられないですよ。だから、これでは安全を守れないですよね、ということを言っているんです」と怒りを露わにした。) これは災害には限らない。アンケートの別の回答も切実だ。 「『3歳児18人を1人で担任していた時に、まだお漏らしをする子も多い中、便の始末にかかっている間に、部屋にいる子がけんかで、かみつきがあったり、椅子に上って大人の事務戸棚からセロテープをとろうとしてテープカッターを落としてしまい、テープカッターの刃の部分で隣にいた子の頭を切ってしまい3針縫うけがをさせてしまったことがあります』。 場面が思い浮かぶようなリアルなエピソードですが、3歳児は今、20対1の配置基準です。こういう配置基準だと、今言ったように目が届かなくて事故が起こるのが避けられないと私は思うのですが、これは大臣、いかがでしょうか」(大西議員) 加藤大臣は質問には答えず「保育士の皆さんは大変なご苦労をいただいているというふうに承知したおります」と言って、保育士の補助を行う保育補助者の雇い上げに必要な費用、業務の効率化のための登園管理システムの導入するためのICT化の推進など保育士の負担軽減策を行っていると細かな説明を始めた。 大西議員は「またかみ合ってない。子どもの発達という点でも、ぎりぎりの人数でやっている現状というのは、私は問題だと思っています」と指摘した。 そして、再びアンケート結果に話を戻した。アンケートでは「国の保育士配置基準が改善されればどのようなよい点があるか」という質問に対して、「1人ひとりにじっくり向き合える」「子どもたちの主体性を大切にし、いろんなことに挑戦したり、なかなかできない遊びを保障できる」「事務負担も分担してサービス残業も減る」「一人の負担も減るからメンタル的なしんどさも解消され、保育士を辞める人も減る」という回答が寄せられた。 大西議員が「子どもの発達、保育士の退職防止のためにも配置基準の見直しは必要。大臣、いかがでしょうか」と質問してやっと、加藤大臣は「今の基準を保持していくべきだということを申し上げているのではなく、既に、1歳児、4~5歳児は見直していくことを決めている」と国のスタンスに言及したのだった。とはいえ、「それを進めるにあたって安定的な財源をどう確保するか議論を進めたい」と、またも財源論。 大西議員は「決まって、この話になり、お金がないからできないと言って50年、70年やってこなかった。保育の質が置き去りになっているのは大問題。もう財源の確保を言い訳にしないで、必要なことはやる。こども家庭庁ができ、今まさにそのタイミングが来ている。加藤大臣、是非、ご決断いただきたいと思います」と迫った。 「政治判断が下されれば、予算は作られる」というのが永田町と霞が関の”常識”でもある。1歳児と4~5歳児の配置基準を引き上げるために必要な予算は、年に約1300億円。国家予算の規模からすれば、決して大きすぎる額ではない。) この問題に迫っているのは、大西議員だけではない。この質疑の1カ月前、2022年10月20日の参議院予算委員会では、片山大介議員が予算確保の必要性について岸田首相に迫り、10年前から実現しない「0.3兆円メニュー」の存在を改めて掘り起こしていた。 片山議員(画像:衆議院インターネット審議中継より) 「10年前の子ども・子育て関連三法の付帯決議で、配置基準の改善に必要な予算の確保を図るということを求めています。当時の民主党、自民党、公明党の三党で社会保障の一体改革のなかの確認書で、保育の質を上げようという話になっている。俗にいう0.3兆円メニューですが、あれから10年経っても実現されていないのです」 岸田首相は明言を避けたが「おっしゃるように、保育の質と予算とのバランスは考えていかなければならない課題だと思います。時代の変化のなかで果たすべき役割との関係で考えていく課題であると認識します」と含みを持たせるような答弁をした。 2023年に入って岸田首相が「異次元の少子化対策」を掲げ、政府は3月末に「たたき台」をまとめた。保育士の配置基準の改善のほかの主な対策は、①児童手当の所得制限の撤廃、②育児休業の給付金の拡充、③高等教育の経済負担の軽減策―――。他にも、出産費用の保険適用化、学校給食の無償化など、多岐に渡る政策が並んだ。 統一地方選を前に高所得者層の不満を解消すべく、児童手当の所得制限の撤廃がフォーカスされるなかでの「たたき台」の発表だった。 議論が児童手当の所得制限の撤廃に集中するあまり、国会周辺では「財源が児童手当の拡充にもっていかれては、配置基準の引き上げに予算がかけられないのではないか」という心配があった。「厚生労働省や内閣府は何年も前から配置基準の引き上げを行おうとしていたが、安倍晋三政権で保育園や幼稚園の無償化政策が行われた時も多額の予算が割かれてしまった」(関係者)という経緯もある。 岸田首相が「子ども予算倍増」と言う一方で、配置基準引き上げについて政府は煮え切らない。複数の関係者が「3月末に出た『たたき台』に向けて、内閣府と厚労省からは配置基準の引き上げは必須として、他の質の向上に関する政策も含めてすべて提出されていた」としており、「要望を受け取った小倉將信少子化担当大臣が頭を抱えていたようだ」と明かす。一方で、「国会でも大きく取り上げられ、さすがに今回は配置基準を変えるだろう」との見方も強まったが、結局のところ基準の「引き上げ」ではなく「改善」に留まった。 今後、「たたき台」をベースに岸田首相を議長とした「こども未来戦略会議」での議論を経て必要な政策や予算、財源が6月の「骨太の方針」までに示される。 こども家庭庁が発足して間もない4月4日、参議院の内閣委員会では井上哲士議員も配置基準を「引き上げ」るのか「改善」なのかを追及すると、小倉大臣が「基準の引き上げは行わない」と答えた。) 「最低基準を引き上げた場合、すべての保育園で基準をクリアする必要が出るため、保育士確保で現場に混乱が生じる可能性もあります。現状、様々な園において基準に達しないということも起こる可能性がある」(小倉大臣) この答弁に対して井上議員は、保育士の資格を持ちながら保育士として働いていない潜在保育士の多さを指摘。「厚生労働省の資料では、2019年で保育士の有資格者は160万7000人いるが、保育所などで働いているのは62万6000人で38.9%に過ぎない」と切り返した。 井上議員(画像:参議院インターネット審議中継より) そして、井上議員は「配置基準の抜本改定は、魅力とやりがいのある職場につながる。基準どおり配置できない保育園ができるということでない。これだけの資格者がいるわけですから、保育士が保育園で働けるようにするためにも1人当たりの子ども数を減らす点で、基準の改定は待ったなしだ」と小倉大臣に詰め寄った。 多くの国会議員が基準引き上げを求めるなか、国が言い訳にする保育士確保の問題には疑問が残る。 2022年12月の段階で、認可保育園全体の約2割が既に「チーム保育推進加算」という運営費の上乗せ制度を使って4~5歳児の「25対1」を図っている実態を、内閣府は把握していた。そのうえで、現場が「25対1」でない園の定員分布を分析。「121人以上の大規模な認可保育園が全体の約2割を占め、その4歳児クラス、5歳児クラスの人数が平均で25人を超えている」(内閣府、当時)として、2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充したのだ。つまり、既に大半の園で「25対1」になっているのだ。 1歳児の配置については、東京都などの自治体が上乗せ補助を行い「5対1」を既に実現しているケースが少なくない。出生数減少により定員割れしている保育園が急増するなか、行政サイドからも「待機児童が多かった数年前であれば基準引き上げで混乱が生じてしまうが、今は状況が違う。最初は加算方式でも、何年かかけて基準を引き上げればいい」との見方がある。一方で、複数の国会議員が「保育園経営に近い立場の国会議員が、基準引き上げに猛烈に反対した」と明かす。 都市部や地方の複数の保育園経営者、業界団体の役員などは「園の評判が悪いことで保育士が集まらない場合があるだろうが、現状、配置基準が引き上げられても保育士確保に問題はない」と口を揃える。たとえ直ちに配置基準の引き上げとならなくても、数年後に基準を変えると宣言して猶予期間を作るなど、工夫はできる。今後の国会論戦でも国を動かす議論は見られるだろうか』、「2022年12月の段階で、認可保育園全体の約2割が既に「チーム保育推進加算」という運営費の上乗せ制度を使って4~5歳児の「25対1」を図っている実態を、内閣府は把握していた。そのうえで、現場が「25対1」でない園の定員分布を分析。「121人以上の大規模な認可保育園が全体の約2割を占め、その4歳児クラス、5歳児クラスの人数が平均で25人を超えている」(内閣府、当時)として、2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充したのだ。つまり、既に大半の園で「25対1」になっているのだ・・・複数の国会議員が「保育園経営に近い立場の国会議員が、基準引き上げに猛烈に反対した」と明かす・・・たとえ直ちに配置基準の引き上げとならなくても、数年後に基準を変えると宣言して猶予期間を作るなど、工夫はできる。今後の国会論戦でも国を動かす議論は見られるだろうか」、「国を動かす議論」を期待したい。
タグ:(その13)(2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している、「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に、"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?) 保育園(待機児童)問題 PRESIDENT ONLINE 小林 美希氏による「2歳児を公園に置き去りにして帰ってくる…全国の保育園で「昔にはあり得なかったこと」が起きている根本原因 保育が「儲かるビジネス」になり、質が低下している」 「園児が全員いるかどうか点呼することは、基本中の基本です。公園に着いた時はもちろん、遊んでいる最中、園に帰る時も全員が揃っているか、常に確認する。それが、業務に追われて目の前の子どもが見えなくなっているのです。いつ置き去り事故が起こってもおかしくない環境なのです」、なるほど。 「人件費を抑えるため、保育士は低賃金で人員体制はギリギリという状態なのだ。若手が疲弊して、2~3年で辞めていく。そうしたなかで起こった置き去りだった・・・大きなすり傷に気づいた飯田さんが理由を尋ねても、担任の保育士は「見ていなかったので分からない」と言うだけ。改善を求めてもケガが続いたことから、飯田さんは「これではいつ子どもが死ぬかも分からない」と子どもを転園させた」、「転園」とは賢明な判断だ。 「公的な保育園は、2013年度の2万4038カ所から22年度は3万9244カ所へと大幅に増えた。安倍政権が「株式会社に受け皿整備を担ってもらう」という方針を打ち出したことで、営利企業による認可保育園は13年の488カ所から21年に3151カ所にまで急増した・・・保育園の増加ペースに人材が追い付かないうえ、事業者のモラルが低下。 保育を「3兆円を超える市場」と捉え、儲けるために参入する事業者が雨後の筍のように現れた。利益を出すために人件費が削られ、保育士の労働環境が劣悪になった」、なるほど。 「人件費分を事業費や管理費へ流用するという各費目の相互流用のほか、同一法人が運営する他の保育園や介護施設への流用、施設整備費への流用などが許されるようになった。 ある程度の経営の自由度は必要だが、自民党政権下で規制緩和が繰り返され、今では委託費の年間収入の4分の1もの金額を他の費目に流用できるようになっている。そこに目をつけた事業者は、人件費を抑えて事業を拡大し、利益を得ていったのだ」、なるほど。 「計算上、公費から出る賃金額と実際に保育士に支払われる金額の差が、最大で年間200万円近くになる。その差はどこに消えるのか」、「差」が「最大で年間200万円近く」とは無視出来ない額だ。 「保育士の最低配置基準」では不十分として、「ひとつの認可保育園で平均3~4人を多く配置している」、他方で、「最低配置基準を守れば人員体制はギリギリでいい」・・・という考え方」をとるところも多い。 「保育士配置違反が常態化している園と違反状態が長く続いていると見られる園は合計30カ所もあった。そもそも少ない配置基準でさえ守られないのでは、保育士は疲弊し、子どもの安全を守ることは難しいだろう」、なるほど。 「認可保育園で起こった死亡・負傷等の事故件数を見ると・・・2015年の344件から2021年は1191件となり、この6年で3.5倍近く増えている・・・2021年の保育事故の状況を詳しく見ると、負傷等のうち最も多いのが骨折の937件、その他(指の切断、唇、歯の裂傷等を含む)が242件あり、意識不明が8件、火傷が2件、死亡が2件だ」、大変だ。 「問題の本質は保育士不足や保育の質の低下であり、保育士の労働条件の改善こそが急務の課題だ・・・「委託費の弾力運用」の規制を強化して人件費の流出を食い止めなければ、保育士の労働環境は変わらない。保育士が守られなければ、犠牲になるのは子どもたちだ」、同感である。 東洋経済オンライン 関口 洋平氏による「「保育園の重大事故」園だけを責められない問題点 「待機児童ゼロ作戦」によって本末転倒な状況に」 「ここ20年あまりの新自由主義的な潮流のなかで、育児に対する公的な支援は日本でも徐々に削減されてきた。一言で言えば、日本においても保育の市場化が急速に進んだのである。本稿では少子化や待機児童といった日本独自の事情を勘案しつつ、新自由主義が日本の保育に与えた影響を検討したい」、なるほど。 「保育園民営化は現在に至るまでさまざまな自治体において重要な争点になっている。だが、民営化の議論は近年に始まったことではない」、なるほど。 「公立保育園の数が1983年に過去最多を記録した一方で、この時代には保育園運営費の国家負担率が徐々に削減されていった。公立保育園にのみ多額の公費が投入されることや、公立保育士の賃金の高さなどが批判されたのである。 このような流れのなかで、鈴木善幸内閣・中曽根康弘内閣の第二次臨時行政調査会は、保育園の民営化をひとつの目標として掲げた。 ところが、この時代には「生活可能な、主体的に働くことを選んでいる共働き層への保育サービスの供給は『公費の乱用』と指摘された」というから、待機児童の増大と少子化を背景とした現在 共働きの家庭が現在ほど一般的でなかったこの時代においては、保育園の数を増やすどころか、むしろ抑制することが課題とされた・・・そのような方針を一変させる要因となったのが、1990年のいわゆる「1.57ショック」である。1973年には2.14であった合計特殊出生率(ひとりの女性が一生の間に産む子どもの数)は急速に低下し、1989年に1.57となったのだ。 この衝撃を受けて、政府は少子化対策としてさまざまな政策を矢継ぎ早に策定・・・ 一連の少子化対策のなかで重視されたのが、保育園の量的な拡大だった。2001年に発足した小泉純一郎内閣は「待機児童ゼロ作戦」を掲げ、2002年度から3年間で15万人の保育園児の受け入れ増を目指した・・・保育園の量的拡大を実現するために重用されたのは、規制緩和と民営化という二本柱であった。産業構造の変化により、いわゆる「家族賃金モデル」・・・が崩壊し、共働き世帯が増加していたことも相まって、これらの改革は急速に進行した」、これまでの流れが要領良く整理されている。 「「事故が起きた施設の多くは、保育室の面積が非常に狭く、職員が少なく、無資格者や資格を持っていたとしても経験の少ない場合がほとんど」であり、「余裕のない保育施設の運営が、子どもの死亡事故を招いている」という」、重大な指摘だ。 「慢性的な財政難に苦しむ自治体にとって、民営化によるコスト削減は魅力的である。民営化や統廃合が進むにつれて公営保育園の数は徐々に減り、2007年には私営保育園の数を下回った。2021年時点で、公営保育園が7919カ所あるのに対し、私営保育園は2万2076カ所である。 2000年の時点では公営・私営それぞれ1万2707カ所と9492カ所であったので、保育園の総数が増えていること、また公営・私営の割合が著しく逆転していることがわかる」、これほど「公営」と「私営」の割合が「逆転」したとは、衝撃的だ。 「問題は、拙速な民営化によって保育の質が担保されないような構造ができ上がってしまったことなのだ。待機児童問題の深刻さを考えれば、営利企業の参入という判断は妥当であったかもしれない。だが、それによって保育の質が低下し、子どもを安心して預けられないのでは元も子もないはずである」、「質の低下」は今後、問題化必至の由々しい問題だ。 小林 美希氏による「"国会での論戦"で見えた「日本の保育」重大争点 「異次元の少子化対策」保育においてはどうなのか?」 大西議員の質問はポイントを突いており、私も知りたいものだ。 初めの質問への答弁は完全にポイントをズラした官僚答弁だ。これに対し、「現場で実際に働く保育士が考える、保育士1人が受け持つ子どもの適切な人数は何人なのか」を「アンケート調査」をもとに質問するとはさすがだ。「加藤大臣」の不誠実な官僚答弁には僕でも頭にくる。 「2022年12月の段階で、認可保育園全体の約2割が既に「チーム保育推進加算」という運営費の上乗せ制度を使って4~5歳児の「25対1」を図っている実態を、内閣府は把握していた。そのうえで、現場が「25対1」でない園の定員分布を分析。「121人以上の大規模な認可保育園が全体の約2割を占め、その4歳児クラス、5歳児クラスの人数が平均で25人を超えている」(内閣府、当時)として、2023年度から「チーム保育推進加算」を拡充したのだ。つまり、既に大半の園で「25対1」になっているのだ・・・ 複数の国会議員が「保育園経営に近い立場の国会議員が、基準引き上げに猛烈に反対した」と明かす・・・たとえ直ちに配置基準の引き上げとならなくても、数年後に基準を変えると宣言して猶予期間を作るなど、工夫はできる。今後の国会論戦でも国を動かす議論は見られるだろうか」、「国を動かす議論」を期待したい。
不登校(その3)(いじめより多い原因不明の「無気力」不登校 親はどう向き合えばいい?、不登校29万9048人で過去最多 「日本の教育」はすでに崩壊していると言える訳 大人の同調圧力が子どもを追い詰めている、日本の「不登校」という言葉は時代錯誤?「学校に行かない」選択をしたオードリー・タン氏へ母が編み出した教育法) [社会]
不登校については、2021年6月14日に取上げた。今日は、(その3)(いじめより多い原因不明の「無気力」不登校 親はどう向き合えばいい?、不登校29万9048人で過去最多 「日本の教育」はすでに崩壊していると言える訳 大人の同調圧力が子どもを追い詰めている、日本の「不登校」という言葉は時代錯誤?「学校に行かない」選択をしたオードリー・タン氏へ母が編み出した教育法)である。
先ずは、本年10月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した清談社の吉岡 暁氏による「いじめより多い原因不明の「無気力」不登校、親はどう向き合えばいい?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/329381
・『小中学生の不登校が24万5000人と過去最多を更新した。コロナ禍の影響なのか、それとも何か別の要因があるのか。自身の教師経験を元に描いた『コミックエッセイ 不登校日誌 教師と保護者による心のサポート術』(廣済堂出版)(以下『不登校日誌』)の著者、観世あみ氏に不登校急増の理由について話を聞いた』、興味深そうだ。
・『小中学生の不登校が初めて20万人超に 昨年発表された文部科学省の調査によると、小・中学生の不登校が全国で約24万5000人と過去最多を記録した。小学生が約8万人、中学生が約16万人にも上り、「不登校」が20万人を超えるのは初めてだという。この場合の「不登校」とは、1年間で学校を30日以上欠席した児童の数だが、ここに不登校傾向のある「隠れ不登校」の子どもも含めると、その総数はさらに多くなるだろう。 2010年の不登校児童数は約12万2000人。約10年間で不登校は倍以上に増えており、なかでも過去最多を記録した21年度は、前年度から約5万人増と急激な増加を見せている。 この急増の背景について、コロナ禍による臨時休校やさまざまな制約によって「生活リズムが乱れやすく、交友関係を築くことが難しくなり、登校意欲が湧きにくい状況だった」と文科省は推測している。急増の背景には、やはりコロナが大きく関係しているのだろうか。 「影響は少なからずあると思いますが、統計を見ると2020年以前から不登校は年々増え続けており、必ずしもコロナのせい、とも言い切れません。不登校になる動機も多様化、複雑化しています。それぞれの事例を見ると『勉強意欲の低下』や『部活や友人関係の悩み』『将来への不安』『倦怠(けんたい)感』など、いくつかの要因が重なっている場合が多いんです」 そう話すのは、不登校児童の実態を描いたコミックエッセイ『不登校日誌』の著者で、元教師の観世あみ氏だ。観世氏は自身の教師時代の経験を基に、子どもたちの間で広がっている「不登校問題」に向き合ってきた。 「一ついえるのは、昔より不登校のハードルが下がっていること。子どもたちの間で、不登校が身近なものになっているんです。不登校の人数が今よりも少なかった昔と比べ、今は身近な子どもが不登校になるケースが格段に増えています。兄弟が不登校だったり、クラスに不登校が複数人いることが当たり前だったりと、不登校が『よくあること』へ変化してきている印象です」』、「「一ついえるのは、昔より不登校のハードルが下がっていること。子どもたちの間で、不登校が身近なものになっているんです。不登校の人数が今よりも少なかった昔と比べ、今は身近な子どもが不登校になるケースが格段に増えています。兄弟が不登校だったり、クラスに不登校が複数人いることが当たり前だったりと、不登校が『よくあること』へ変化してきている印象です」、なるほど。
・『不登校で最多の要因は本人の無気力 そんななか、不登校に至った理由を生徒本人ですらわかっていない場合も増えているという。 「不登校、となると、まず『いじめ』が原因と考える人もいると思うのですが、実は統計上、いじめが原因の不登校というのは意外と少ないんです。文科省の令和3年度不登校児童の実態調査によると、一番多い要因は『本人の無気力』。これは小学生、中学生どちらにも共通していて、無気力の背景にもいろいろな要素が絡み合い、複合的なストレスが不登校につながっていると考えられます」 生徒自身、明確な理由がわからないという「無気力不登校」。理由のハッキリしない不登校に子どもが陥ったとき、親はどのように対処すべきなのか。 「家庭内の空気、親御さんのメンタルを明るく穏やかに保つことは重要です。一番身近な大人の心をまず安定させて、過剰に焦ったり不安を感じたりしないようにしましょう。生活の基盤である家庭環境は子のメンタルにも大きく影響し、家庭が安心できる場所になっている場合、子のストレス耐性は強くなる傾向にあると感じます。教師時代の経験を振り返っても、環境の変化や家庭内のストレスが子どもの漠然とした不安・無気力感につながっているのでは、と考えられるケースがいくつかありました」 とはいえ、不登校=家庭に問題がある、と誤解してほしくないと観世氏は続ける。 「子どもが不登校になると、保護者の方も不安を抱えることになると思います。自分を責める親御さんも多く、真面目な人ほど思い詰めてしまう。でも理由がハッキリしない不登校の場合、大人がどれだけ心を尽くしても解決に向かわないことはたくさんあります。自分を責めず、一人で抱え込まない。不登校は保護者だけで解決できる単純な問題ではないので、学校や外部機関と連携しながら、お子さんをサポートしていく必要があります」』、「自分を責める親御さんも多く、真面目な人ほど思い詰めてしまう。でも理由がハッキリしない不登校の場合、大人がどれだけ心を尽くしても解決に向かわないことはたくさんあります。自分を責めず、一人で抱え込まない。不登校は保護者だけで解決できる単純な問題ではないので、学校や外部機関と連携しながら、お子さんをサポートしていく必要があります」、なるほど。
・『「学校に行きなさい!」が子どもをさらに追い詰める とはいえ、子どもが「学校に行きたくない」と言い出したときは思い詰めず穏やかに…といっても限界がある。親として、子どもとどのような向き合い方をするのがベストなのか? 「まずは『話を聞いて、寄り添う』こと。不登校は本人がさほど気にしていないように見えても、実際すごくつらくストレスもかかるものです。休みを重ねれば気持ちは焦り、落ち込み、さらに不安感も強くなって動けなくなるという負のループに陥ります。そういう状態の子どもに『学校に行きなさい!』と頭ごなしに強制してもさらに追い詰めてしまうだけなので、まずは『不登校=子どもの心身のSOS』と捉え、共感的態度を意識してみましょう」 無理に家庭内のみで解決しようとせず、学校側や不登校児童のための適応指導教室、民間団体が運営するフリースクールなどの外部機関も頼り、風通しをよくすることも重要だ。 「教師との相性もあると思います。学校側の対応に不満がある場合は学級担任から管理職、管理職の次は教育委員会と、相談先を広げていくことも視野に入れてみてください。また学校だけでなく、教育支援センターや外部の専門家を頼ってみることで解決策が見つかる場合もあります」 選択肢をいくつか持つことで、仮に学校側との連携がうまくいかなかった場合も対応策を考えることができるという。 「不登校生徒の保護者の方に話を聞くと『教育委員会に紹介されたスクールソーシャルワーカーを頼ったらお子さんと相性が良く、家でも明るく過ごせることが増えた』ということもあったようです。保護者と子どもと学校という三者だけでなく、子どもに合った支援方法を提示できるように、選択肢を増やしておくことは大切です」 具体的な解決策を模索するとともに、不登校のメリット・デメリットを知っておいた方がいいだろう。 「明確なデメリットとして学校の授業に相当する学習時間を自宅で確保するのは非常に難しく、多感な時期に不登校による心理的ストレスがかかることは見逃せません。とはいえ、多様な生き方が今は肯定されている時代であり、不登校になっても人生が終わるわけではない。不登校を乗り越えて活躍している方も多いです。不登校が悪いことだと考え込みすぎることが一番良くないことなのではないでしょうか」 昨今、SNS上では「学校に行かないこと」を肯定するインフルエンサーや著名人のエピソードも増えている。「不登校=悪」という前提自体が、変化のときを迎えているのかもしれない。 「これは『不登校日誌』にも書いたのですが、不登校が難しい問題だと思って壁を作るのは良くないことだと思っています。不登校の子どもも、学校に登校している他の子どもと同じように、生活があって、趣味があって、将来があります。不登校であろうとなかろうと、一人の人間であることには変わりがない。そこは忘れてはいけません。不登校になった、という一点だけを気にするのではなく、目の前の子どもが何を感じ、何を思い、何を考えているのか…そうした、子どもが抱える想いを理解し、寄り添ってあげてください。不登校のまま過ごすのか、復学支援をするのか、いずれの道を選ぶにしても大事なことは同じです」 子どもを一人の人間として尊重し、向き合う。それができた時、その子どもにとって本当に必要な支援が何か、周りの大人はどうすべきなのかが見えてくるだろう』、「「教師との相性もあると思います。学校側の対応に不満がある場合は学級担任から管理職、管理職の次は教育委員会と、相談先を広げていくことも視野に入れてみてください。また学校だけでなく、教育支援センターや外部の専門家を頼ってみることで解決策が見つかる場合もあります」 選択肢をいくつか持つことで、仮に学校側との連携がうまくいかなかった場合も対応策を考えることができるという・・・不登校が難しい問題だと思って壁を作るのは良くないことだと思っています。不登校の子どもも、学校に登校している他の子どもと同じように、生活があって、趣味があって、将来があります。不登校であろうとなかろうと、一人の人間であることには変わりがない。そこは忘れてはいけません。不登校になった、という一点だけを気にするのではなく、目の前の子どもが何を感じ、何を思い、何を考えているのか…そうした、子どもが抱える想いを理解し、寄り添ってあげてください。不登校のまま過ごすのか、復学支援をするのか、いずれの道を選ぶにしても大事なことは同じです」 子どもを一人の人間として尊重し、向き合う。それができた時、その子どもにとって本当に必要な支援が何か、周りの大人はどうすべきなのかが見えてくるだろう」、なるほど。
次に、10月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した同時通訳者でArt of Communication代表の田中慶子氏とノンフィクション・ライターの近藤弥生子氏の対談「日本の「不登校」という言葉は時代錯誤?「学校に行かない」選択をしたオードリー・タン氏へ母が編み出した教育法」を紹介しよう。
・『同時通訳者として、ビル・ゲイツ、デビッド・ベッカム、ダライ・ラマ、オードリー・タンなど世界のトップリーダーと至近距離で仕事をしてきた田中慶子さん。「多様性とコミュニケーション」や「生きた英語」をテーマに、現代のコミュニケーションのあり方を考えていきます。今回は、台湾のデジタル大臣のオードリー・タン氏に関する書籍を多数出版している、台湾在住のノンフィクション・ライターの近藤弥生子氏と対談。「学校に行かない」という選択をしたオードリー氏の事例を発端に、学校へ行かずに勉強する「自主学習」というありかた、「不登校」という表現への違和感、従来の学校システムと多様性のバランス、自分でカリキュラムを組み立てて学習するオルタナティブスクールについて、日本と台湾の教育や文化の違いや親和性などを語り合った』、興味深そうだ。
・『台湾のオルタナティブ教育「自主学習」とは? (田中慶子氏の略歴はリンク先参照) 田中慶子(以下、田中) 近藤さんは、台湾のデジタル大臣のオードリー・タン(以下、オードリー)さんに関する本を多数出されていますね。来年には台湾の教育に関する本が出版される予定と聞きました。 近藤弥生子(以下、近藤) オードリーさんの母、リー・ヤーチン(以下、リー)さんが書いた、「自主学習」をするための、心得や経験をまとめた本の翻訳書です。 田中 「自主学習」とは何ですか? 近藤 日本語に合う言葉がないんです。オードリーさんは、中学2年生の頃、学校に行くのをやめるという「選択」をしました。 そして、学校の勉強に相当する学習を、自分で組み立てながら行ってきました。台湾ではそのことを「自主学習」と呼びます。 オードリーさんが自主学習の選択をしたことに、リーさんは母として当初は大変戸惑い、そして受け入れます。 現在の台湾では、「学校に行かない」という選択肢は珍しいことではなく、その学校が合わなかったらすぐに転校することも日常茶飯事です。でも当時の台湾では、子どもが「学校に行かない」選択をすると違法扱いとなり、保護者が政府から罰せられました。 そのような中、リーさんは、オードリーさんの自主学習をサポートし、その経験をもとに、教育者として頭角を現すようになります。そして、台湾のそれまでのメインストリームだった教育に対し、オルタナティブ教育を実践する学校「種子学苑(※)」を1994年に設立します。その一連の物語や課題、ノウハウなどを記した本で、同じ状況にある人や保護者の指南書でもあります。 ※現:「種の親子実験小学校」 田中 自主学習は、例えばどのようなことをするのでしょうか? 近藤 「1週間で何をどういうふうに勉強するか」をプランニングして実施するのですが、勉強の中には、哲学クラブへ通ったり、大学の授業を単発で受講したり、自由研究をしたり、ということも含まれます。 ですので、家にずっとこもって学習するわけではなく、外にも出ていきますし、誰かと一緒にWebサイトをつくってみるなど、他人とコラボレーションすることもあります。それが自主学習なんです。 田中 それはいいですね。リサーチ能力やプロジェクトマネジメントなどの技能が向上しますね。 近藤 オードリーさんはいわゆる「ギフテッド(※天才的な能力を持つ人)」ですが、子どもにだってさまざまなタイプがいて、主張があって、選択肢がある。そのことを学校側に理解してもらえなかったんですね。 最近、日本である学校の校長先生とお話したのですが、その校長先生は昔、ある生徒に「私が学校に適応できないのではなく、学校が私たちに適応していないだけでしょう」と言われて、ハッとしたと言っていました。 日本は、よほどのことがないと転校するのが難しいですよね。逃げ場が与えられていない、限られた場所だけでやっていかなければならないというのは、すごいプレッシャーだと思うんです。) 「学校に行かない子」は「勉強をやめた子」ではない (近藤弥生子の略歴はリンク先参照) 田中 その通りだと思います。私も元不登校生でしたが、日本では「学校に行っていない」=「勉強をやめた子」という固定観念がものすごく強いんです。 今、日本は、不登校の生徒が24万人いて(※)、過去最多です。 ※2022年10月27日公表の文部科学省「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、2021年度における小中学生の不登校数は24万4940人。毎年増加の傾向にある それだけいると、もはや珍しいケースとは言えませんよね。学校に行かなくても学んでいる子はたくさんいます。それなのにその規模の子どもたちを包括するようなオルタナティブとなる教育がありません。 ですから、台湾の自主学習のように、「既存のカリキュラムを学校で受けなくても、学ぶことは可能なんだ」という発想は、今の日本にこそ必要かもしれません。 日本の「不登校」という表現は、非常によくないですよね。学校に行かずに家で学ぶことを「ホームスクーリング(homeschooling)」と言うこともありますが、リーさんの言う自主学習ともやっぱり違う気がします。 日本では「独学」がちょっとしたブームですが、これとはまた違ったニュアンスなのでしょうか。 近藤 独学は、それを勧める人たちによってさまざまな定義がなされていると思いますが、個人的な印象としては、目的を遂げる手段として学ぶ、というイメージです。それももちろん、大切なのですが、自主学習は、自己分析も含め「自分が今、本当に何をやりたいか」を勘案したうえで、自分の人生を見据えて、自分の学びのカリキュラムを、自分で組み立てていく。そのようなイメージでしょうか。 田中 なるほど。独学の機運の高まりは、これまでの日本の教育カリキュラムに限界がきていることの表れだと思うんです。そういう意味でも、やはり、自主学習という観点は、これからの日本の教育の参考になりそうです。 近藤さんが以前に書かれた『オードリー・タン 母の手記「成長戦争」 自分、そして世界との和解』(KADOKAWA)内で、学校へ行かないという選択をしたオードリーさんに対し、「何で君だけが行かなくていいの? 僕だって本当は行きたくないのに」と周囲から責められるエピソードが紹介されていました。 おふたり 私も「みんな我慢して学校へ行っているのに、あなただけ行かなくていいなんて、ずるい」とよく言われました。その時に思ったのは、そして、今も思うのは、「みんなが我慢して通わなければならない学校は、なくてもいいのではないか」ということです。 現在の一般的な学校は、明治以後、日本が発展していく段階にあって、西洋から多くを学び、必死につくってきた学校システムの流れを汲んでいるのだと思います。みんなががんばり、そして日本を強くしたいという気持ちが、いつしか、「こうあらねばならぬ」と、それに従わない他人を許せない場になってしまった。 もちろん大多数の子どもたちはそこにフィットしているので、既存の学校は必要なものです。他方で、24万人の子どもたちが不登校という現実があり、我慢しながら学校へ行っている子たちも含めると、「今の学校が合わない」と感じている子どもは、もっといるはずです。社会で「ダイバーシティ」がうたわれているのに、教育業界ではなかなかダイバーシティが進んでいない印象です。 近藤 リーさんが、オードリーさんに合うような学校を探していた時に、ある児童哲学クラブで子どもたちと話していると、このような意見が出たんです』、「オードリーさんは、中学2年生の頃、学校に行くのをやめるという「選択」をしました。 そして、学校の勉強に相当する学習を、自分で組み立てながら行ってきました。台湾ではそのことを「自主学習」と呼びます。 オードリーさんが自主学習の選択をしたことに、リーさんは母として当初は大変戸惑い、そして受け入れます。 現在の台湾では、「学校に行かない」という選択肢は珍しいことではなく、その学校が合わなかったらすぐに転校することも日常茶飯事です。でも当時の台湾では、子どもが「学校に行かない」選択をすると違法扱いとなり、保護者が政府から罰せられました。 そのような中、リーさんは、オードリーさんの自主学習をサポートし、その経験をもとに、教育者として頭角を現すようになります。そして、台湾のそれまでのメインストリームだった教育に対し、オルタナティブ教育を実践する学校「種子学苑(※)」を1994年に設立」・・・オードリーさんはいわゆる「ギフテッド・・・」ですが、子どもにだってさまざまなタイプがいて、主張があって、選択肢がある。そのことを学校側に理解してもらえなかったんですね・・・日本では「独学」がちょっとしたブームですが、これとはまた違ったニュアンスなのでしょうか。 近藤 独学は、それを勧める人たちによってさまざまな定義がなされていると思いますが、個人的な印象としては、目的を遂げる手段として学ぶ、というイメージです。それももちろん、大切なのですが、自主学習は、自己分析も含め「自分が今、本当に何をやりたいか」を勘案したうえで、自分の人生を見据えて、自分の学びのカリキュラムを、自分で組み立てていく。そのようなイメージでしょうか」、なるほど。
・『転校を繰り返しても「教育に前向きだ」と思える社会の寛大さ 近藤 「自分たちで勉強の内容を決めさせてくれたら、僕はもっと上手に勉強できるのに。大人が全部決めてしまうからできないんだよ」と。 それをヒントに、リーさんは、「すべて自分で決めることのできる学校が必要なんだ」と考えて、自分でカリキュラムを作れる、オルタナティブな学校をつくったんです。 小学校の低学年には、最小限の必須科目はありますが、その後はカリキュラムをどんどん自分で組み立てるようにする。そして自身の得意分野を伸ばしてもらう、というのが、リーさんの提唱している自主学習です。20年以上前に、そうしたオルタナティブ教育の基礎を確立し、現在、それを実施するための「実験学校」と呼ばれる学校が、台湾で増えています。AI、スポーツ、言語に特化した学校など、特徴もさまざまです。 田中 「カリキュラムを自分で組み立てる」というのは、「自分たちで勉強の内容を決める」ということですものね。 近藤 日本のように平均的なカリキュラムを一斉に施すのではなく、選択肢を用意するんです。実験学校に通い始めたけれど合わなかったという場合は、ほかの実験学校へ容易に転校も可能ですし、公立の学校や私立の学校とも、比較的スムーズに行き来することができます。 学校の選択を誤って転校したとしても、後ろ指をさされることがない。むしろ、その子の良いところを伸ばすためにその子に合った学校を積極的に探している、教育に前向きだ、とさえ思われる。台湾社会もそのあたりに非常に寛大になってきています。 田中 日本でも少しずつ変わってきてはいますが、以前は、学校に行かなければそのまま「社会からドロップアウトした」というネガティブなイメージが付きまとい、本人の中にもそれがコンプレックスとして残っていた。そう考えると、台湾のその事例は、子どもたちにはもちろんのこと、会社や家庭以外のサードプレイスや、学ぶ場所、人とつながれる場所を求めている大人にも、参考になりますよね。 近藤 たとえオードリーさんのようなギフテッドでなくても、子どもにはひとりひとり、素敵な個性が備わっているはずで、その部分を伸ばしていきたい、と、現在、翻訳中のリーさんの本に書かれています。「お隣の台湾ではこうした教育方法が伸びてきている」ということを、日本の読者に伝えたいんです。原著は、20年近く前に出版されたものです。 今回、翻訳本を出すことになったのは、「今の日本にこそ、この本が必要だ」という、担当編集者さんの並々ならぬ熱意がありました。私は翻訳という立場で携わらせていただき、慶子さんの同時通訳もそうだと思いますが、こうした、異なる文化の価値観を伝えるという点に、「翻訳」の意味や醍醐味がある気がしています』、「リーさんは、「すべて自分で決めることのできる学校が必要なんだ」と考えて、自分でカリキュラムを作れる、オルタナティブな学校をつくったんです。 小学校の低学年には、最小限の必須科目はありますが、その後はカリキュラムをどんどん自分で組み立てるようにする。そして自身の得意分野を伸ばしてもらう、というのが、リーさんの提唱している自主学習です。20年以上前に、そうしたオルタナティブ教育の基礎を確立し、現在、それを実施するための「実験学校」と呼ばれる学校が、台湾で増えています。AI、スポーツ、言語に特化した学校など、特徴もさまざまです」、隣国の「台湾」でこんな先進的な教育が行われていたとは、初めて知った。「今の日本にこそ、この本が必要だ」、同感である。
・『フォロワーとしては優秀かもしれないがリーダーシップを取ることができない 田中「日本人はリーダーシップを取れない」とよく言われますが、仕方がない面もあると思うんです。 日本では、小さい頃から「言われたことをきちんと守れる子」が優秀だとされてきました。でも、そうした人が、教えられたことを覚え、大学受験に合格し、大学を出て企業に入って、与えられた仕事をしっかりとこなす。そして急にリーダー的なポジションにつくことになる。 フォロワーとしては優秀だったかもしれませんが、自分で考えて、決めて、行動して、責任を取るという、リーダーの訓練はほとんどしてきていない。特に今のように変化が激しい時代、従来の画一的なカリキュラムの中で従順に学ぶことが良しとされているシステム内では、変化に柔軟に対応できる人が育たないのは、当然といえば当然です。 近藤 今、「日本の教育状況をなんとかしないと大変なことになる」と、多くの人が口々に言っていますよね。危機意識が出てきているという意味では、スピード感の違いはありますが、大きな変化の兆しが生まれ始めているということなので、良いことだなと思っています』、「日本では、小さい頃から「言われたことをきちんと守れる子」が優秀だとされてきました。でも、そうした人が、教えられたことを覚え、大学受験に合格し、大学を出て企業に入って、与えられた仕事をしっかりとこなす。そして急にリーダー的なポジションにつくことになる。 フォロワーとしては優秀だったかもしれませんが、自分で考えて、決めて、行動して、責任を取るという、リーダーの訓練はほとんどしてきていない。特に今のように変化が激しい時代、従来の画一的なカリキュラムの中で従順に学ぶことが良しとされているシステム内では、変化に柔軟に対応できる人が育たないのは、当然といえば当然です。 近藤 今、「日本の教育状況をなんとかしないと大変なことになる」と、多くの人が口々に言っていますよね。危機意識が出てきているという意味では、スピード感の違いはありますが、大きな変化の兆しが生まれ始めているということなので、良いことだなと思っています』、なるほど。
・『ようやく手に入れた民主主義を守るため今の台湾は「人任せにしない」 近藤 そして、最近、日本と台湾との関係で思うのは、これまで、日本にとっての台湾の位置づけは、「日本の近くに台湾があるよね」「台湾って親日だよね」ぐらいな感じで、そこまで台湾の存在を強く意識していたわけではなく、大国・日本を慕ってくれている隣人、という、少し「上から目線」の雰囲気があったと思うんです。 以前、あるメディアで台湾について書いた原稿で、「日本が台湾から学ぶ点があるかもしれない」と記したところ、「それは読者に受け入れられないと思う」と、担当編集者さんに指摘されて、修正したことがありました。 でも、ここ数年の、それこそオードリーさんの活躍も含めた、コロナ禍における台湾政府の、機敏かつ、積極的な立ち回りなどを日本人が見聞きしたことで、台湾に対する意識に変化が生まれました。「台湾から学ぶべき点がたくさんある」という雰囲気に変わってきていて、今こそこうした本が受け入れられる、とても良いチャンスだと思っています。 田中 以前、仕事でオードリーさんの通訳をしたときに、台湾は、日本の統治下だったり、独裁政権下だったりしたので、ようやく手に入れた現在の民主主義をとても大事にしている、とおっしゃっていたことが印象的でした。 藤 そうなんです。今の台湾は、社会全体で「人任せにしない」という雰囲気があります。少しでも油断すると、今の民主主義が奪われて、独裁者の時代に逆戻りするのではという恐れの気持ちが強いんです。だからこそ、権力を持つ者から目を離さないですし、ブラックボックスを絶対に許さないんです。 田中 なるほど。オードリーさんは、人々から何か声が上がったときには、すぐに反応して、経緯や事情をきちんと開示し、透明性を持って対応するということが、いかに大事かを話されていました。 オードリーさんの活躍も含め、透明性の重要性を認識している社会、ダイバーシティを大切にする学校教育、半導体製造のTSMCといった企業の躍進など、日本側の台湾を見る目も変わらざるを得ない状況になってきているんですね』、「ここ数年の、それこそオードリーさんの活躍も含めた、コロナ禍における台湾政府の、機敏かつ、積極的な立ち回りなどを日本人が見聞きしたことで、台湾に対する意識に変化が生まれました。「台湾から学ぶべき点がたくさんある」という雰囲気に変わってきていて、今こそこうした本が受け入れられる、とても良いチャンスだと思っています」、その通りだ。
・『年長者や専門家による定義から始めるな 社会を変える時こそ対話と多様性が重要 藤 台湾出身のジル・チャンさんのビジネス書『「静かな人」の戦略書』がヒットしたりもしていますね。これまで、台湾人が書いたビジネス書や自己啓発書が、日本で出版されたことはほとんどありませんでした。今回の自主学習の本の内容も、おそらく読者にとって新鮮だと思います。 田中 「人任せにしない社会」は重要ですね。そのような中、日本社会が苦手なのは、やはりコミュニケーションです。大多数の意見、あるいは、立場が上の人の意見に対し、反対意見や、「ネガティブに捉えられかねない」ことは、発言しにくい。結果、変えたほうがいいことがあっても言いづらくなり、人任せになってしまう。 何かを良い方向へと変えていくためには、既存の選択肢とは別の選択肢を出していくことが絶対的に必要です。表面的な意見だけではなく、多様な視点からの意見を生かすには、垣根を越えたコミュニケーションは不可欠です。 コミュニケーションがなく、多様性が尊重されない社会では、オードリーさんのような才能は開花することなくつぶされてしまう。恐ろしいですよね。オードリーさん自身、自殺も考えるほどのつらい思いを経験されています。 才能を持っていたけれど、従来のシステムに合わずにつぶされていった人は、相当な数いるはずです。それを乗り越えて社会の変革に貢献したオードリーさんやリーさんの存在は大きいですね。従来のシステムになじまない、あのようなすごい人がいるんだと、多様性を受け入れやすくなる。 近藤 おっしゃるとおりで、社会を変える時こそ、対話と多様性は重要だと思います。 日本では何かを始めるとき、「不登校とはこういうもので」とか「自主学習とはこういうもので」と、年長者や専門家による定義からスタートします。そうではなくて、「不登校ってそもそもどういうことだろう」とか「自主学習って何だろう」とかを、みんなで話し合って、粗々のオリジナルでいいから、どう定義できるかを、まずはその場で考えてみることに大きな意味があるのではないでしょうか。 田中 あくまでざっくりとした表現ですが、欧米では、意見が分かれるとロジカルに白黒はっきりさせようとする傾向が比較的強いように思えます。もちろん、ロジカルに話したり、ロジカルに決めたりすることも重要です。 一方で、日本を含めた東洋は、良くも悪くもあいまいにしたがります。それは、ネガティブ・ケイパビリティとでも言うべき、曖昧なものを曖昧なままで受け入れる能力で、それも必要だと思うんです。その意味では、日本は本来、多様性を受け入れることは得意なのではないかと思うんです。 近藤 そうですね。変化のきっかけさえあれば、その特性を良い方向へ一気に発揮することができるかもしれません。もちろん違うところもたくさんありますが、東アジア同士、共通する文化や歴史も多く、親和性が高いので、お互いに学び合うことができる。台湾の成功事例はとても参考になるのではないかと思います。 台湾人はもともと日本のことを好きな人が多いですが、日本でも「日本の近くに位置している国」というだけでなく、「日本の身近な国」として知ろうとする人が増えてきていて、とてもうれしいです。私ももっともっと台湾のことを勉強したいと思います』、「日本社会が苦手なのは、やはりコミュニケーションです。大多数の意見、あるいは、立場が上の人の意見に対し、反対意見や、「ネガティブに捉えられかねない」ことは、発言しにくい。結果、変えたほうがいいことがあっても言いづらくなり、人任せになってしまう。 何かを良い方向へと変えていくためには、既存の選択肢とは別の選択肢を出していくことが絶対的に必要です。表面的な意見だけではなく、多様な視点からの意見を生かすには、垣根を越えたコミュニケーションは不可欠です。 コミュニケーションがなく、多様性が尊重されない社会では、オードリーさんのような才能は開花することなくつぶされてしまう。恐ろしいですよね。オードリーさん自身、自殺も考えるほどのつらい思いを経験されています。 才能を持っていたけれど、従来のシステムに合わずにつぶされていった人は、相当な数いるはずです。それを乗り越えて社会の変革に貢献したオードリーさんやリーさんの存在は大きいですね』、同感である。
先ずは、本年10月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した清談社の吉岡 暁氏による「いじめより多い原因不明の「無気力」不登校、親はどう向き合えばいい?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/329381
・『小中学生の不登校が24万5000人と過去最多を更新した。コロナ禍の影響なのか、それとも何か別の要因があるのか。自身の教師経験を元に描いた『コミックエッセイ 不登校日誌 教師と保護者による心のサポート術』(廣済堂出版)(以下『不登校日誌』)の著者、観世あみ氏に不登校急増の理由について話を聞いた』、興味深そうだ。
・『小中学生の不登校が初めて20万人超に 昨年発表された文部科学省の調査によると、小・中学生の不登校が全国で約24万5000人と過去最多を記録した。小学生が約8万人、中学生が約16万人にも上り、「不登校」が20万人を超えるのは初めてだという。この場合の「不登校」とは、1年間で学校を30日以上欠席した児童の数だが、ここに不登校傾向のある「隠れ不登校」の子どもも含めると、その総数はさらに多くなるだろう。 2010年の不登校児童数は約12万2000人。約10年間で不登校は倍以上に増えており、なかでも過去最多を記録した21年度は、前年度から約5万人増と急激な増加を見せている。 この急増の背景について、コロナ禍による臨時休校やさまざまな制約によって「生活リズムが乱れやすく、交友関係を築くことが難しくなり、登校意欲が湧きにくい状況だった」と文科省は推測している。急増の背景には、やはりコロナが大きく関係しているのだろうか。 「影響は少なからずあると思いますが、統計を見ると2020年以前から不登校は年々増え続けており、必ずしもコロナのせい、とも言い切れません。不登校になる動機も多様化、複雑化しています。それぞれの事例を見ると『勉強意欲の低下』や『部活や友人関係の悩み』『将来への不安』『倦怠(けんたい)感』など、いくつかの要因が重なっている場合が多いんです」 そう話すのは、不登校児童の実態を描いたコミックエッセイ『不登校日誌』の著者で、元教師の観世あみ氏だ。観世氏は自身の教師時代の経験を基に、子どもたちの間で広がっている「不登校問題」に向き合ってきた。 「一ついえるのは、昔より不登校のハードルが下がっていること。子どもたちの間で、不登校が身近なものになっているんです。不登校の人数が今よりも少なかった昔と比べ、今は身近な子どもが不登校になるケースが格段に増えています。兄弟が不登校だったり、クラスに不登校が複数人いることが当たり前だったりと、不登校が『よくあること』へ変化してきている印象です」』、「「一ついえるのは、昔より不登校のハードルが下がっていること。子どもたちの間で、不登校が身近なものになっているんです。不登校の人数が今よりも少なかった昔と比べ、今は身近な子どもが不登校になるケースが格段に増えています。兄弟が不登校だったり、クラスに不登校が複数人いることが当たり前だったりと、不登校が『よくあること』へ変化してきている印象です」、なるほど。
・『不登校で最多の要因は本人の無気力 そんななか、不登校に至った理由を生徒本人ですらわかっていない場合も増えているという。 「不登校、となると、まず『いじめ』が原因と考える人もいると思うのですが、実は統計上、いじめが原因の不登校というのは意外と少ないんです。文科省の令和3年度不登校児童の実態調査によると、一番多い要因は『本人の無気力』。これは小学生、中学生どちらにも共通していて、無気力の背景にもいろいろな要素が絡み合い、複合的なストレスが不登校につながっていると考えられます」 生徒自身、明確な理由がわからないという「無気力不登校」。理由のハッキリしない不登校に子どもが陥ったとき、親はどのように対処すべきなのか。 「家庭内の空気、親御さんのメンタルを明るく穏やかに保つことは重要です。一番身近な大人の心をまず安定させて、過剰に焦ったり不安を感じたりしないようにしましょう。生活の基盤である家庭環境は子のメンタルにも大きく影響し、家庭が安心できる場所になっている場合、子のストレス耐性は強くなる傾向にあると感じます。教師時代の経験を振り返っても、環境の変化や家庭内のストレスが子どもの漠然とした不安・無気力感につながっているのでは、と考えられるケースがいくつかありました」 とはいえ、不登校=家庭に問題がある、と誤解してほしくないと観世氏は続ける。 「子どもが不登校になると、保護者の方も不安を抱えることになると思います。自分を責める親御さんも多く、真面目な人ほど思い詰めてしまう。でも理由がハッキリしない不登校の場合、大人がどれだけ心を尽くしても解決に向かわないことはたくさんあります。自分を責めず、一人で抱え込まない。不登校は保護者だけで解決できる単純な問題ではないので、学校や外部機関と連携しながら、お子さんをサポートしていく必要があります」』、「自分を責める親御さんも多く、真面目な人ほど思い詰めてしまう。でも理由がハッキリしない不登校の場合、大人がどれだけ心を尽くしても解決に向かわないことはたくさんあります。自分を責めず、一人で抱え込まない。不登校は保護者だけで解決できる単純な問題ではないので、学校や外部機関と連携しながら、お子さんをサポートしていく必要があります」、なるほど。
・『「学校に行きなさい!」が子どもをさらに追い詰める とはいえ、子どもが「学校に行きたくない」と言い出したときは思い詰めず穏やかに…といっても限界がある。親として、子どもとどのような向き合い方をするのがベストなのか? 「まずは『話を聞いて、寄り添う』こと。不登校は本人がさほど気にしていないように見えても、実際すごくつらくストレスもかかるものです。休みを重ねれば気持ちは焦り、落ち込み、さらに不安感も強くなって動けなくなるという負のループに陥ります。そういう状態の子どもに『学校に行きなさい!』と頭ごなしに強制してもさらに追い詰めてしまうだけなので、まずは『不登校=子どもの心身のSOS』と捉え、共感的態度を意識してみましょう」 無理に家庭内のみで解決しようとせず、学校側や不登校児童のための適応指導教室、民間団体が運営するフリースクールなどの外部機関も頼り、風通しをよくすることも重要だ。 「教師との相性もあると思います。学校側の対応に不満がある場合は学級担任から管理職、管理職の次は教育委員会と、相談先を広げていくことも視野に入れてみてください。また学校だけでなく、教育支援センターや外部の専門家を頼ってみることで解決策が見つかる場合もあります」 選択肢をいくつか持つことで、仮に学校側との連携がうまくいかなかった場合も対応策を考えることができるという。 「不登校生徒の保護者の方に話を聞くと『教育委員会に紹介されたスクールソーシャルワーカーを頼ったらお子さんと相性が良く、家でも明るく過ごせることが増えた』ということもあったようです。保護者と子どもと学校という三者だけでなく、子どもに合った支援方法を提示できるように、選択肢を増やしておくことは大切です」 具体的な解決策を模索するとともに、不登校のメリット・デメリットを知っておいた方がいいだろう。 「明確なデメリットとして学校の授業に相当する学習時間を自宅で確保するのは非常に難しく、多感な時期に不登校による心理的ストレスがかかることは見逃せません。とはいえ、多様な生き方が今は肯定されている時代であり、不登校になっても人生が終わるわけではない。不登校を乗り越えて活躍している方も多いです。不登校が悪いことだと考え込みすぎることが一番良くないことなのではないでしょうか」 昨今、SNS上では「学校に行かないこと」を肯定するインフルエンサーや著名人のエピソードも増えている。「不登校=悪」という前提自体が、変化のときを迎えているのかもしれない。 「これは『不登校日誌』にも書いたのですが、不登校が難しい問題だと思って壁を作るのは良くないことだと思っています。不登校の子どもも、学校に登校している他の子どもと同じように、生活があって、趣味があって、将来があります。不登校であろうとなかろうと、一人の人間であることには変わりがない。そこは忘れてはいけません。不登校になった、という一点だけを気にするのではなく、目の前の子どもが何を感じ、何を思い、何を考えているのか…そうした、子どもが抱える想いを理解し、寄り添ってあげてください。不登校のまま過ごすのか、復学支援をするのか、いずれの道を選ぶにしても大事なことは同じです」 子どもを一人の人間として尊重し、向き合う。それができた時、その子どもにとって本当に必要な支援が何か、周りの大人はどうすべきなのかが見えてくるだろう』、「「教師との相性もあると思います。学校側の対応に不満がある場合は学級担任から管理職、管理職の次は教育委員会と、相談先を広げていくことも視野に入れてみてください。また学校だけでなく、教育支援センターや外部の専門家を頼ってみることで解決策が見つかる場合もあります」 選択肢をいくつか持つことで、仮に学校側との連携がうまくいかなかった場合も対応策を考えることができるという・・・不登校が難しい問題だと思って壁を作るのは良くないことだと思っています。不登校の子どもも、学校に登校している他の子どもと同じように、生活があって、趣味があって、将来があります。不登校であろうとなかろうと、一人の人間であることには変わりがない。そこは忘れてはいけません。不登校になった、という一点だけを気にするのではなく、目の前の子どもが何を感じ、何を思い、何を考えているのか…そうした、子どもが抱える想いを理解し、寄り添ってあげてください。不登校のまま過ごすのか、復学支援をするのか、いずれの道を選ぶにしても大事なことは同じです」 子どもを一人の人間として尊重し、向き合う。それができた時、その子どもにとって本当に必要な支援が何か、周りの大人はどうすべきなのかが見えてくるだろう」、なるほど。
次に、10月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した同時通訳者でArt of Communication代表の田中慶子氏とノンフィクション・ライターの近藤弥生子氏の対談「日本の「不登校」という言葉は時代錯誤?「学校に行かない」選択をしたオードリー・タン氏へ母が編み出した教育法」を紹介しよう。
・『同時通訳者として、ビル・ゲイツ、デビッド・ベッカム、ダライ・ラマ、オードリー・タンなど世界のトップリーダーと至近距離で仕事をしてきた田中慶子さん。「多様性とコミュニケーション」や「生きた英語」をテーマに、現代のコミュニケーションのあり方を考えていきます。今回は、台湾のデジタル大臣のオードリー・タン氏に関する書籍を多数出版している、台湾在住のノンフィクション・ライターの近藤弥生子氏と対談。「学校に行かない」という選択をしたオードリー氏の事例を発端に、学校へ行かずに勉強する「自主学習」というありかた、「不登校」という表現への違和感、従来の学校システムと多様性のバランス、自分でカリキュラムを組み立てて学習するオルタナティブスクールについて、日本と台湾の教育や文化の違いや親和性などを語り合った』、興味深そうだ。
・『台湾のオルタナティブ教育「自主学習」とは? (田中慶子氏の略歴はリンク先参照) 田中慶子(以下、田中) 近藤さんは、台湾のデジタル大臣のオードリー・タン(以下、オードリー)さんに関する本を多数出されていますね。来年には台湾の教育に関する本が出版される予定と聞きました。 近藤弥生子(以下、近藤) オードリーさんの母、リー・ヤーチン(以下、リー)さんが書いた、「自主学習」をするための、心得や経験をまとめた本の翻訳書です。 田中 「自主学習」とは何ですか? 近藤 日本語に合う言葉がないんです。オードリーさんは、中学2年生の頃、学校に行くのをやめるという「選択」をしました。 そして、学校の勉強に相当する学習を、自分で組み立てながら行ってきました。台湾ではそのことを「自主学習」と呼びます。 オードリーさんが自主学習の選択をしたことに、リーさんは母として当初は大変戸惑い、そして受け入れます。 現在の台湾では、「学校に行かない」という選択肢は珍しいことではなく、その学校が合わなかったらすぐに転校することも日常茶飯事です。でも当時の台湾では、子どもが「学校に行かない」選択をすると違法扱いとなり、保護者が政府から罰せられました。 そのような中、リーさんは、オードリーさんの自主学習をサポートし、その経験をもとに、教育者として頭角を現すようになります。そして、台湾のそれまでのメインストリームだった教育に対し、オルタナティブ教育を実践する学校「種子学苑(※)」を1994年に設立します。その一連の物語や課題、ノウハウなどを記した本で、同じ状況にある人や保護者の指南書でもあります。 ※現:「種の親子実験小学校」 田中 自主学習は、例えばどのようなことをするのでしょうか? 近藤 「1週間で何をどういうふうに勉強するか」をプランニングして実施するのですが、勉強の中には、哲学クラブへ通ったり、大学の授業を単発で受講したり、自由研究をしたり、ということも含まれます。 ですので、家にずっとこもって学習するわけではなく、外にも出ていきますし、誰かと一緒にWebサイトをつくってみるなど、他人とコラボレーションすることもあります。それが自主学習なんです。 田中 それはいいですね。リサーチ能力やプロジェクトマネジメントなどの技能が向上しますね。 近藤 オードリーさんはいわゆる「ギフテッド(※天才的な能力を持つ人)」ですが、子どもにだってさまざまなタイプがいて、主張があって、選択肢がある。そのことを学校側に理解してもらえなかったんですね。 最近、日本である学校の校長先生とお話したのですが、その校長先生は昔、ある生徒に「私が学校に適応できないのではなく、学校が私たちに適応していないだけでしょう」と言われて、ハッとしたと言っていました。 日本は、よほどのことがないと転校するのが難しいですよね。逃げ場が与えられていない、限られた場所だけでやっていかなければならないというのは、すごいプレッシャーだと思うんです。) 「学校に行かない子」は「勉強をやめた子」ではない (近藤弥生子の略歴はリンク先参照) 田中 その通りだと思います。私も元不登校生でしたが、日本では「学校に行っていない」=「勉強をやめた子」という固定観念がものすごく強いんです。 今、日本は、不登校の生徒が24万人いて(※)、過去最多です。 ※2022年10月27日公表の文部科学省「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、2021年度における小中学生の不登校数は24万4940人。毎年増加の傾向にある それだけいると、もはや珍しいケースとは言えませんよね。学校に行かなくても学んでいる子はたくさんいます。それなのにその規模の子どもたちを包括するようなオルタナティブとなる教育がありません。 ですから、台湾の自主学習のように、「既存のカリキュラムを学校で受けなくても、学ぶことは可能なんだ」という発想は、今の日本にこそ必要かもしれません。 日本の「不登校」という表現は、非常によくないですよね。学校に行かずに家で学ぶことを「ホームスクーリング(homeschooling)」と言うこともありますが、リーさんの言う自主学習ともやっぱり違う気がします。 日本では「独学」がちょっとしたブームですが、これとはまた違ったニュアンスなのでしょうか。 近藤 独学は、それを勧める人たちによってさまざまな定義がなされていると思いますが、個人的な印象としては、目的を遂げる手段として学ぶ、というイメージです。それももちろん、大切なのですが、自主学習は、自己分析も含め「自分が今、本当に何をやりたいか」を勘案したうえで、自分の人生を見据えて、自分の学びのカリキュラムを、自分で組み立てていく。そのようなイメージでしょうか。 田中 なるほど。独学の機運の高まりは、これまでの日本の教育カリキュラムに限界がきていることの表れだと思うんです。そういう意味でも、やはり、自主学習という観点は、これからの日本の教育の参考になりそうです。 近藤さんが以前に書かれた『オードリー・タン 母の手記「成長戦争」 自分、そして世界との和解』(KADOKAWA)内で、学校へ行かないという選択をしたオードリーさんに対し、「何で君だけが行かなくていいの? 僕だって本当は行きたくないのに」と周囲から責められるエピソードが紹介されていました。 おふたり 私も「みんな我慢して学校へ行っているのに、あなただけ行かなくていいなんて、ずるい」とよく言われました。その時に思ったのは、そして、今も思うのは、「みんなが我慢して通わなければならない学校は、なくてもいいのではないか」ということです。 現在の一般的な学校は、明治以後、日本が発展していく段階にあって、西洋から多くを学び、必死につくってきた学校システムの流れを汲んでいるのだと思います。みんなががんばり、そして日本を強くしたいという気持ちが、いつしか、「こうあらねばならぬ」と、それに従わない他人を許せない場になってしまった。 もちろん大多数の子どもたちはそこにフィットしているので、既存の学校は必要なものです。他方で、24万人の子どもたちが不登校という現実があり、我慢しながら学校へ行っている子たちも含めると、「今の学校が合わない」と感じている子どもは、もっといるはずです。社会で「ダイバーシティ」がうたわれているのに、教育業界ではなかなかダイバーシティが進んでいない印象です。 近藤 リーさんが、オードリーさんに合うような学校を探していた時に、ある児童哲学クラブで子どもたちと話していると、このような意見が出たんです』、「オードリーさんは、中学2年生の頃、学校に行くのをやめるという「選択」をしました。 そして、学校の勉強に相当する学習を、自分で組み立てながら行ってきました。台湾ではそのことを「自主学習」と呼びます。 オードリーさんが自主学習の選択をしたことに、リーさんは母として当初は大変戸惑い、そして受け入れます。 現在の台湾では、「学校に行かない」という選択肢は珍しいことではなく、その学校が合わなかったらすぐに転校することも日常茶飯事です。でも当時の台湾では、子どもが「学校に行かない」選択をすると違法扱いとなり、保護者が政府から罰せられました。 そのような中、リーさんは、オードリーさんの自主学習をサポートし、その経験をもとに、教育者として頭角を現すようになります。そして、台湾のそれまでのメインストリームだった教育に対し、オルタナティブ教育を実践する学校「種子学苑(※)」を1994年に設立」・・・オードリーさんはいわゆる「ギフテッド・・・」ですが、子どもにだってさまざまなタイプがいて、主張があって、選択肢がある。そのことを学校側に理解してもらえなかったんですね・・・日本では「独学」がちょっとしたブームですが、これとはまた違ったニュアンスなのでしょうか。 近藤 独学は、それを勧める人たちによってさまざまな定義がなされていると思いますが、個人的な印象としては、目的を遂げる手段として学ぶ、というイメージです。それももちろん、大切なのですが、自主学習は、自己分析も含め「自分が今、本当に何をやりたいか」を勘案したうえで、自分の人生を見据えて、自分の学びのカリキュラムを、自分で組み立てていく。そのようなイメージでしょうか」、なるほど。
・『転校を繰り返しても「教育に前向きだ」と思える社会の寛大さ 近藤 「自分たちで勉強の内容を決めさせてくれたら、僕はもっと上手に勉強できるのに。大人が全部決めてしまうからできないんだよ」と。 それをヒントに、リーさんは、「すべて自分で決めることのできる学校が必要なんだ」と考えて、自分でカリキュラムを作れる、オルタナティブな学校をつくったんです。 小学校の低学年には、最小限の必須科目はありますが、その後はカリキュラムをどんどん自分で組み立てるようにする。そして自身の得意分野を伸ばしてもらう、というのが、リーさんの提唱している自主学習です。20年以上前に、そうしたオルタナティブ教育の基礎を確立し、現在、それを実施するための「実験学校」と呼ばれる学校が、台湾で増えています。AI、スポーツ、言語に特化した学校など、特徴もさまざまです。 田中 「カリキュラムを自分で組み立てる」というのは、「自分たちで勉強の内容を決める」ということですものね。 近藤 日本のように平均的なカリキュラムを一斉に施すのではなく、選択肢を用意するんです。実験学校に通い始めたけれど合わなかったという場合は、ほかの実験学校へ容易に転校も可能ですし、公立の学校や私立の学校とも、比較的スムーズに行き来することができます。 学校の選択を誤って転校したとしても、後ろ指をさされることがない。むしろ、その子の良いところを伸ばすためにその子に合った学校を積極的に探している、教育に前向きだ、とさえ思われる。台湾社会もそのあたりに非常に寛大になってきています。 田中 日本でも少しずつ変わってきてはいますが、以前は、学校に行かなければそのまま「社会からドロップアウトした」というネガティブなイメージが付きまとい、本人の中にもそれがコンプレックスとして残っていた。そう考えると、台湾のその事例は、子どもたちにはもちろんのこと、会社や家庭以外のサードプレイスや、学ぶ場所、人とつながれる場所を求めている大人にも、参考になりますよね。 近藤 たとえオードリーさんのようなギフテッドでなくても、子どもにはひとりひとり、素敵な個性が備わっているはずで、その部分を伸ばしていきたい、と、現在、翻訳中のリーさんの本に書かれています。「お隣の台湾ではこうした教育方法が伸びてきている」ということを、日本の読者に伝えたいんです。原著は、20年近く前に出版されたものです。 今回、翻訳本を出すことになったのは、「今の日本にこそ、この本が必要だ」という、担当編集者さんの並々ならぬ熱意がありました。私は翻訳という立場で携わらせていただき、慶子さんの同時通訳もそうだと思いますが、こうした、異なる文化の価値観を伝えるという点に、「翻訳」の意味や醍醐味がある気がしています』、「リーさんは、「すべて自分で決めることのできる学校が必要なんだ」と考えて、自分でカリキュラムを作れる、オルタナティブな学校をつくったんです。 小学校の低学年には、最小限の必須科目はありますが、その後はカリキュラムをどんどん自分で組み立てるようにする。そして自身の得意分野を伸ばしてもらう、というのが、リーさんの提唱している自主学習です。20年以上前に、そうしたオルタナティブ教育の基礎を確立し、現在、それを実施するための「実験学校」と呼ばれる学校が、台湾で増えています。AI、スポーツ、言語に特化した学校など、特徴もさまざまです」、隣国の「台湾」でこんな先進的な教育が行われていたとは、初めて知った。「今の日本にこそ、この本が必要だ」、同感である。
・『フォロワーとしては優秀かもしれないがリーダーシップを取ることができない 田中「日本人はリーダーシップを取れない」とよく言われますが、仕方がない面もあると思うんです。 日本では、小さい頃から「言われたことをきちんと守れる子」が優秀だとされてきました。でも、そうした人が、教えられたことを覚え、大学受験に合格し、大学を出て企業に入って、与えられた仕事をしっかりとこなす。そして急にリーダー的なポジションにつくことになる。 フォロワーとしては優秀だったかもしれませんが、自分で考えて、決めて、行動して、責任を取るという、リーダーの訓練はほとんどしてきていない。特に今のように変化が激しい時代、従来の画一的なカリキュラムの中で従順に学ぶことが良しとされているシステム内では、変化に柔軟に対応できる人が育たないのは、当然といえば当然です。 近藤 今、「日本の教育状況をなんとかしないと大変なことになる」と、多くの人が口々に言っていますよね。危機意識が出てきているという意味では、スピード感の違いはありますが、大きな変化の兆しが生まれ始めているということなので、良いことだなと思っています』、「日本では、小さい頃から「言われたことをきちんと守れる子」が優秀だとされてきました。でも、そうした人が、教えられたことを覚え、大学受験に合格し、大学を出て企業に入って、与えられた仕事をしっかりとこなす。そして急にリーダー的なポジションにつくことになる。 フォロワーとしては優秀だったかもしれませんが、自分で考えて、決めて、行動して、責任を取るという、リーダーの訓練はほとんどしてきていない。特に今のように変化が激しい時代、従来の画一的なカリキュラムの中で従順に学ぶことが良しとされているシステム内では、変化に柔軟に対応できる人が育たないのは、当然といえば当然です。 近藤 今、「日本の教育状況をなんとかしないと大変なことになる」と、多くの人が口々に言っていますよね。危機意識が出てきているという意味では、スピード感の違いはありますが、大きな変化の兆しが生まれ始めているということなので、良いことだなと思っています』、なるほど。
・『ようやく手に入れた民主主義を守るため今の台湾は「人任せにしない」 近藤 そして、最近、日本と台湾との関係で思うのは、これまで、日本にとっての台湾の位置づけは、「日本の近くに台湾があるよね」「台湾って親日だよね」ぐらいな感じで、そこまで台湾の存在を強く意識していたわけではなく、大国・日本を慕ってくれている隣人、という、少し「上から目線」の雰囲気があったと思うんです。 以前、あるメディアで台湾について書いた原稿で、「日本が台湾から学ぶ点があるかもしれない」と記したところ、「それは読者に受け入れられないと思う」と、担当編集者さんに指摘されて、修正したことがありました。 でも、ここ数年の、それこそオードリーさんの活躍も含めた、コロナ禍における台湾政府の、機敏かつ、積極的な立ち回りなどを日本人が見聞きしたことで、台湾に対する意識に変化が生まれました。「台湾から学ぶべき点がたくさんある」という雰囲気に変わってきていて、今こそこうした本が受け入れられる、とても良いチャンスだと思っています。 田中 以前、仕事でオードリーさんの通訳をしたときに、台湾は、日本の統治下だったり、独裁政権下だったりしたので、ようやく手に入れた現在の民主主義をとても大事にしている、とおっしゃっていたことが印象的でした。 藤 そうなんです。今の台湾は、社会全体で「人任せにしない」という雰囲気があります。少しでも油断すると、今の民主主義が奪われて、独裁者の時代に逆戻りするのではという恐れの気持ちが強いんです。だからこそ、権力を持つ者から目を離さないですし、ブラックボックスを絶対に許さないんです。 田中 なるほど。オードリーさんは、人々から何か声が上がったときには、すぐに反応して、経緯や事情をきちんと開示し、透明性を持って対応するということが、いかに大事かを話されていました。 オードリーさんの活躍も含め、透明性の重要性を認識している社会、ダイバーシティを大切にする学校教育、半導体製造のTSMCといった企業の躍進など、日本側の台湾を見る目も変わらざるを得ない状況になってきているんですね』、「ここ数年の、それこそオードリーさんの活躍も含めた、コロナ禍における台湾政府の、機敏かつ、積極的な立ち回りなどを日本人が見聞きしたことで、台湾に対する意識に変化が生まれました。「台湾から学ぶべき点がたくさんある」という雰囲気に変わってきていて、今こそこうした本が受け入れられる、とても良いチャンスだと思っています」、その通りだ。
・『年長者や専門家による定義から始めるな 社会を変える時こそ対話と多様性が重要 藤 台湾出身のジル・チャンさんのビジネス書『「静かな人」の戦略書』がヒットしたりもしていますね。これまで、台湾人が書いたビジネス書や自己啓発書が、日本で出版されたことはほとんどありませんでした。今回の自主学習の本の内容も、おそらく読者にとって新鮮だと思います。 田中 「人任せにしない社会」は重要ですね。そのような中、日本社会が苦手なのは、やはりコミュニケーションです。大多数の意見、あるいは、立場が上の人の意見に対し、反対意見や、「ネガティブに捉えられかねない」ことは、発言しにくい。結果、変えたほうがいいことがあっても言いづらくなり、人任せになってしまう。 何かを良い方向へと変えていくためには、既存の選択肢とは別の選択肢を出していくことが絶対的に必要です。表面的な意見だけではなく、多様な視点からの意見を生かすには、垣根を越えたコミュニケーションは不可欠です。 コミュニケーションがなく、多様性が尊重されない社会では、オードリーさんのような才能は開花することなくつぶされてしまう。恐ろしいですよね。オードリーさん自身、自殺も考えるほどのつらい思いを経験されています。 才能を持っていたけれど、従来のシステムに合わずにつぶされていった人は、相当な数いるはずです。それを乗り越えて社会の変革に貢献したオードリーさんやリーさんの存在は大きいですね。従来のシステムになじまない、あのようなすごい人がいるんだと、多様性を受け入れやすくなる。 近藤 おっしゃるとおりで、社会を変える時こそ、対話と多様性は重要だと思います。 日本では何かを始めるとき、「不登校とはこういうもので」とか「自主学習とはこういうもので」と、年長者や専門家による定義からスタートします。そうではなくて、「不登校ってそもそもどういうことだろう」とか「自主学習って何だろう」とかを、みんなで話し合って、粗々のオリジナルでいいから、どう定義できるかを、まずはその場で考えてみることに大きな意味があるのではないでしょうか。 田中 あくまでざっくりとした表現ですが、欧米では、意見が分かれるとロジカルに白黒はっきりさせようとする傾向が比較的強いように思えます。もちろん、ロジカルに話したり、ロジカルに決めたりすることも重要です。 一方で、日本を含めた東洋は、良くも悪くもあいまいにしたがります。それは、ネガティブ・ケイパビリティとでも言うべき、曖昧なものを曖昧なままで受け入れる能力で、それも必要だと思うんです。その意味では、日本は本来、多様性を受け入れることは得意なのではないかと思うんです。 近藤 そうですね。変化のきっかけさえあれば、その特性を良い方向へ一気に発揮することができるかもしれません。もちろん違うところもたくさんありますが、東アジア同士、共通する文化や歴史も多く、親和性が高いので、お互いに学び合うことができる。台湾の成功事例はとても参考になるのではないかと思います。 台湾人はもともと日本のことを好きな人が多いですが、日本でも「日本の近くに位置している国」というだけでなく、「日本の身近な国」として知ろうとする人が増えてきていて、とてもうれしいです。私ももっともっと台湾のことを勉強したいと思います』、「日本社会が苦手なのは、やはりコミュニケーションです。大多数の意見、あるいは、立場が上の人の意見に対し、反対意見や、「ネガティブに捉えられかねない」ことは、発言しにくい。結果、変えたほうがいいことがあっても言いづらくなり、人任せになってしまう。 何かを良い方向へと変えていくためには、既存の選択肢とは別の選択肢を出していくことが絶対的に必要です。表面的な意見だけではなく、多様な視点からの意見を生かすには、垣根を越えたコミュニケーションは不可欠です。 コミュニケーションがなく、多様性が尊重されない社会では、オードリーさんのような才能は開花することなくつぶされてしまう。恐ろしいですよね。オードリーさん自身、自殺も考えるほどのつらい思いを経験されています。 才能を持っていたけれど、従来のシステムに合わずにつぶされていった人は、相当な数いるはずです。それを乗り越えて社会の変革に貢献したオードリーさんやリーさんの存在は大きいですね』、同感である。
タグ:不登校 (その3)(いじめより多い原因不明の「無気力」不登校 親はどう向き合えばいい?、不登校29万9048人で過去最多 「日本の教育」はすでに崩壊していると言える訳 大人の同調圧力が子どもを追い詰めている、日本の「不登校」という言葉は時代錯誤?「学校に行かない」選択をしたオードリー・タン氏へ母が編み出した教育法) ダイヤモンド・オンライン 吉岡 暁氏による「いじめより多い原因不明の「無気力」不登校、親はどう向き合えばいい?」 『コミックエッセイ 不登校日誌 教師と保護者による心のサポート術』(廣済堂出版) 「「一ついえるのは、昔より不登校のハードルが下がっていること。子どもたちの間で、不登校が身近なものになっているんです。不登校の人数が今よりも少なかった昔と比べ、今は身近な子どもが不登校になるケースが格段に増えています。兄弟が不登校だったり、クラスに不登校が複数人いることが当たり前だったりと、不登校が『よくあること』へ変化してきている印象です」、なるほど。 「自分を責める親御さんも多く、真面目な人ほど思い詰めてしまう。でも理由がハッキリしない不登校の場合、大人がどれだけ心を尽くしても解決に向かわないことはたくさんあります。自分を責めず、一人で抱え込まない。不登校は保護者だけで解決できる単純な問題ではないので、学校や外部機関と連携しながら、お子さんをサポートしていく必要があります」、なるほど。 「「教師との相性もあると思います。学校側の対応に不満がある場合は学級担任から管理職、管理職の次は教育委員会と、相談先を広げていくことも視野に入れてみてください。また学校だけでなく、教育支援センターや外部の専門家を頼ってみることで解決策が見つかる場合もあります」 選択肢をいくつか持つことで、仮に学校側との連携がうまくいかなかった場合も対応策を考えることができるという・・・不登校が難しい問題だと思って壁を作るのは良くないことだと思っています。 不登校の子どもも、学校に登校している他の子どもと同じように、生活があって、趣味があって、将来があります。不登校であろうとなかろうと、一人の人間であることには変わりがない。そこは忘れてはいけません。不登校になった、という一点だけを気にするのではなく、目の前の子どもが何を感じ、何を思い、何を考えているのか…そうした、子どもが抱える想いを理解し、寄り添ってあげてください。不登校のまま過ごすのか、復学支援をするのか、いずれの道を選ぶにしても大事なことは同じです」 子どもを一人の人間として尊重し、向き合う。 それができた時、その子どもにとって本当に必要な支援が何か、周りの大人はどうすべきなのかが見えてくるだろう」、なるほど。 田中慶子氏 近藤弥生子氏の対談「日本の「不登校」という言葉は時代錯誤?「学校に行かない」選択をしたオードリー・タン氏へ母が編み出した教育法」 「オードリーさんは、中学2年生の頃、学校に行くのをやめるという「選択」をしました。 そして、学校の勉強に相当する学習を、自分で組み立てながら行ってきました。台湾ではそのことを「自主学習」と呼びます。 オードリーさんが自主学習の選択をしたことに、リーさんは母として当初は大変戸惑い、そして受け入れます。 現在の台湾では、「学校に行かない」という選択肢は珍しいことではなく、その学校が合わなかったらすぐに転校することも日常茶飯事です。でも当時の台湾では、子どもが「学校に行かない」選択をすると違法扱いとなり、保護者が政府から罰せられました。 そのような中、リーさんは、オードリーさんの自主学習をサポートし、その経験をもとに、教育者として頭角を現すようになります。そして、台湾のそれまでのメインストリームだった教育に対し、オルタナティブ教育を実践する学校「種子学苑(※)」を1994年に設立」 ・・・オードリーさんはいわゆる「ギフテッド・・・」ですが、子どもにだってさまざまなタイプがいて、主張があって、選択肢がある。そのことを学校側に理解してもらえなかったんですね・・・日本では「独学」がちょっとしたブームですが、これとはまた違ったニュアンスなのでしょうか。 近藤 独学は、それを勧める人たちによってさまざまな定義がなされていると思いますが、個人的な印象としては、目的を遂げる手段として学ぶ、というイメージです。それももちろん、大切なのですが、自主学習は、自己分析も含め「自分が今、本当に何をやりたいか 」を勘案したうえで、自分の人生を見据えて、自分の学びのカリキュラムを、自分で組み立てていく。そのようなイメージでしょうか」、なるほど。 「リーさんは、「すべて自分で決めることのできる学校が必要なんだ」と考えて、自分でカリキュラムを作れる、オルタナティブな学校をつくったんです。 小学校の低学年には、最小限の必須科目はありますが、その後はカリキュラムをどんどん自分で組み立てるようにする。そして自身の得意分野を伸ばしてもらう、というのが、リーさんの提唱している自主学習です。20年以上前に、そうしたオルタナティブ教育の基礎を確立し、現在、それを実施するための「実験学校」と呼ばれる学校が、台湾で増えています。 AI、スポーツ、言語に特化した学校など、特徴もさまざまです」、隣国の「台湾」でこんな先進的な教育が行われていたとは、初めて知った。「今の日本にこそ、この本が必要だ」、同感である。 「日本では、小さい頃から「言われたことをきちんと守れる子」が優秀だとされてきました。でも、そうした人が、教えられたことを覚え、大学受験に合格し、大学を出て企業に入って、与えられた仕事をしっかりとこなす。そして急にリーダー的なポジションにつくことになる。 フォロワーとしては優秀だったかもしれませんが、自分で考えて、決めて、行動して、責任を取るという、リーダーの訓練はほとんどしてきていない。 特に今のように変化が激しい時代、従来の画一的なカリキュラムの中で従順に学ぶことが良しとされているシステム内では、変化に柔軟に対応できる人が育たないのは、当然といえば当然です。 近藤 今、「日本の教育状況をなんとかしないと大変なことになる」と、多くの人が口々に言っていますよね。危機意識が出てきているという意味では、スピード感の違いはありますが、大きな変化の兆しが生まれ始めているということなので、良いことだなと思っています』、なるほど。 「ここ数年の、それこそオードリーさんの活躍も含めた、コロナ禍における台湾政府の、機敏かつ、積極的な立ち回りなどを日本人が見聞きしたことで、台湾に対する意識に変化が生まれました。「台湾から学ぶべき点がたくさんある」という雰囲気に変わってきていて、今こそこうした本が受け入れられる、とても良いチャンスだと思っています」、その通りだ。 「日本社会が苦手なのは、やはりコミュニケーションです。大多数の意見、あるいは、立場が上の人の意見に対し、反対意見や、「ネガティブに捉えられかねない」ことは、発言しにくい。結果、変えたほうがいいことがあっても言いづらくなり、人任せになってしまう。 何かを良い方向へと変えていくためには、既存の選択肢とは別の選択肢を出していくことが絶対的に必要です。 表面的な意見だけではなく、多様な視点からの意見を生かすには、垣根を越えたコミュニケーションは不可欠です。 コミュニケーションがなく、多様性が尊重されない社会では、オードリーさんのような才能は開花することなくつぶされてしまう。恐ろしいですよね。オードリーさん自身、自殺も考えるほどのつらい思いを経験されています。 才能を持っていたけれど、従来のシステムに合わずにつぶされていった人は、相当な数いるはずです。それを乗り越えて社会の変革に貢献したオードリーさんやリーさんの存在は大きいですね』、同感である。
女性活躍(その29)(東大卒・山口真由が 松川るい氏のパリ視察炎上で考えた「女性議員」の育成問題、女性取締役はお飾り?タレント取締役に意味はある?ハーバードの専門家が出した答えとは コリーン・アマーマン氏インタビュー(後編)、女性活躍が進まない会社の言い訳ランキング!2位「経営が上向くのか?」 1位は?) [社会]
女性活躍については、本年9月9日に取上げた。今日は、(その29)(東大卒・山口真由が 松川るい氏のパリ視察炎上で考えた「女性議員」の育成問題、女性取締役はお飾り?タレント取締役に意味はある?ハーバードの専門家が出した答えとは コリーン・アマーマン氏インタビュー(後編)、女性活躍が進まない会社の言い訳ランキング!2位「経営が上向くのか?」 1位は?)である。
先ずは、10月11日付けFRaUが掲載した信州大学特任教授の山口 真由氏による「東大卒・山口真由が、松川るい氏のパリ視察炎上で考えた「女性議員」の育成問題」を紹介しよう。
・『信州大学特任教授で、法学博士・ニューヨーク州弁護士の山口真由さん。東大卒の才女として様々なメディアで活躍するが、Twitterでのつぶやきはコミカルで飾らないものが多い。FRaUwebの連載では、そんな意外な「素顔」を率直に綴っていただいている。 今回は、今年8月におこなわれた自民党の松川るい氏らによるフランス・パリ視察において、彼女たちがエッフェル塔前で撮った写真をSNSにアップし、非難が殺到した件について。松川氏は8月下旬に女性局長を辞任し、9月29日付で副幹事長に就いている。パリ視察の炎上、そして辞任、副幹事長就任にいたるまでの流れについて、山口さんが感じたことを綴っていただいた』、興味深そうだ。
・『なぜパリ視察がここまで炎上したのか 研修でフランスを訪れた松川るいさんが2人の地方議員と一緒にエッフェル塔の前でポーズを決めた写真をSNSに投稿して炎上したのは2ヵ月ほど前のことだった。費用に税金が投入されていないか、子どもを連れての研究が不適切ではないか――瞬く間に火の海と化したSNSに恐れをなして、当時の私は何も言えなかった。 責任を取る形で女性局長を辞任した彼女が、党の副幹事長に任命された先月末、またしても若干の波紋が広がっている。非難のひとつひとつには確かに理由がある。だが多少は冷静に語れるいま、本音を言えば、糾弾の激しさと罪の重さとが不釣り合いにも見えていた。同時期に受託収賄という刑事の疑惑をかけられた秋本真利議員の方がよほどひっそりとしているではないか。 それだけ潜在的に彼女のアンチが多かったのだろうか。外務省のキャリア、トレードマークはロングに伸ばした黒髪と胸元で結ばれた長い真珠のネックレス、さらに能弁な彼女は多くの討論番組の常連となり、次世代の女性政治家として頭角を現す。一方で、こうしたキラキラした要素の1つ1つが反感の源にもなる。 そして、円安やインフレの影響をもろに受けて旅行にも行けないと嘆く人々の前に、パリ、エッフェル塔、ポーズ……というキラキラの三重奏は、充満したガソリンを前にマッチの火をするようなものだったのだろう。 この騒動について「代議士とは『エリート』を選ぶものなのか、それとも『自分たちみたいな人』を選ぶものなのか。じつは議員内閣制には二つの発想があって、どちらも間違ってない」と三浦瑠麗さんが投稿しているが、松川さんはその「エリート性」ゆえに過剰に罰せられたという気がしてならない。 だが、ここで私が問いたいのは、なぜ男性社会の中で生きる女性たちは必要以上に「エリート性」を強調しなくてはならないのかということだ』、「円安やインフレの影響をもろに受けて旅行にも行けないと嘆く人々の前に、パリ、エッフェル塔、ポーズ……というキラキラの三重奏は、充満したガソリンを前にマッチの火をするようなものだったのだろう。 この騒動について「代議士とは『エリート』を選ぶものなのか、それとも『自分たちみたいな人』を選ぶものなのか。じつは議員内閣制には二つの発想があって、どちらも間違ってない」と三浦瑠麗さんが投稿しているが、松川さんはその「エリート性」ゆえに過剰に罰せられたという気がしてならない・・・ここで私が問いたいのは、なぜ男性社会の中で生きる女性たちは必要以上に「エリート性」を強調しなくてはならないのかということだ」、なるほど。
・『男社会に存在する「独自の教育システム」 例えば、2016年の大統領選挙では、ドナルド・トランプ氏が多くの労働者に「自分たちみたいな人」と思わせるのに成功した一方で、ヒラリー・クリントン氏はどこまでも「エリート」にしか見えず、共感を得るのに失敗した。父の不動産事業を引き継いだトランプ氏の方が、衣料品店を営む両親のもとから巣立ったクリントン氏よりも、見方によっては恵まれているにもかかわらず、である。 政治家という“大衆を相手にする職業”において、「自分たちみたいな人」と親近感を得るのがなによりも票への近道のはずだ。例えば、菅義偉さんは秋田の田舎出身、身ひとつで上京した叩き上げの苦労人というイメージを意図的に作り上げていた。その実、菅さんのお父様はイチゴ農家としてかなり成功した地元の名士で、お母様はあの時代の女性で教師という地域のエリート層である。菅さんの生い立ちの描き方は、自らをあえてダウングレードして庶民の目線を演出しているようにも見える。 安藤優子さんの『自民党の女性認識 「イエ中心主義」の政治指向』(明石書店、2022年)を読むと、自民党の国会議員の最大の輩出源は「地方議員」と「議員秘書」である。衆議院議員小此木彦三郎さんの秘書として家族同然の扱いを受けながら、横浜市議に当選し、国会議員へとステップアップしていった菅さんはまさにその典型だ。 安藤さんの本によれば、自民党の国会議員は、盆暮れの飲み会含めきめ細かく地方議員の面倒を見るのだという。そうやって選挙の最前線で闘ってくれる「自前の兵隊」を作る。おそらく、こういう集票のイロハは、秘書として仕えた国会議員を「オヤジ」と慕うみたいな、あの手の雰囲気の中で伝授されていくのだ。 そう、男社会には独自の教育システムが存在する。脈々と受け継がれた基盤はそう簡単には揺らがない。この安定感が男たちの自信の源になるのだろう。だから、地元に密着した親しみやすさという、あえての「下から目線」を強調できるのだという気もする。 ところが、女性議員には地方議員や議員秘書出身者が極端に少ない。官僚、弁護士、アナウンサーやジャーナリストといった「エリート」が「オヤジ」から一本釣りされる。そういう女性政治家たちはこれでもかというほど自身の華々しい経歴を書き連ねてなんだか嫌味である。 安藤さんの本によれば「県議は党派を超えて『同じ釜の飯を食ってきたという同族意識』が強く、突然ぽっと出てきたような『若くて、学歴がある』候補には冷ややかな傾向がある」とのこと。「エリート」性を強調するほどに、「自分たちみたいな人」から遠ざかって地元からも浮いていく』、「自民党の国会議員は、盆暮れの飲み会含めきめ細かく地方議員の面倒を見るのだという。そうやって選挙の最前線で闘ってくれる「自前の兵隊」を作る。おそらく、こういう集票のイロハは、秘書として仕えた国会議員を「オヤジ」と慕うみたいな、あの手の雰囲気の中で伝授されていくのだ。 そう、男社会には独自の教育システムが存在する。脈々と受け継がれた基盤はそう簡単には揺らがない。この安定感が男たちの自信の源になるのだろう・・・ところが、女性議員には地方議員や議員秘書出身者が極端に少ない。官僚、弁護士、アナウンサーやジャーナリストといった「エリート」が「オヤジ」から一本釣りされる。そういう女性政治家たちはこれでもかというほど自身の華々しい経歴を書き連ねてなんだか嫌味である・・・「県議は党派を超えて『同じ釜の飯を食ってきたという同族意識』が強く、突然ぽっと出てきたような『若くて、学歴がある』候補には冷ややかな傾向がある」とのこと。「エリート」性を強調するほどに、「自分たちみたいな人」から遠ざかって地元からも浮いていく」、なるほど。
・『構造の歪みを個人の肩に載せすぎている でも他にどうすればよいのだろう。永田町を夢見る男たちの頭上を一足飛びに駆け上がるエクスキューズとして、「エリート」性を押し出すしかないのだ。ここに構造的な悪循環がある。 松川さんだけじゃなくて今井絵理子さんだって批判されたじゃないか。「エリート」性を強調するから嫌われるという道理はないといわれるかもしれない。確かにその通り。でも「エリート」性を「タレント」性に言い換えれば、真逆のようで極めてよく似た構造が見えてくる。 地元の人脈や地縁を「オヤジ」から徐々に引き継ぐという過程を経ずに、「オヤジ」から一本釣りされた女性政治家にとっては知名度が唯一の武器なのだ。だから、「エリート」性なり「タレント」性なりを売りにメディアへの露出を増やすしかないだろう。 思うに、「女性活躍」の旗を振られ、女性の「登用」をわかりやすく数字で顕在化させたいいまの日本社会には、女性を「育成」するシステムがない。伝統的に根付いてきた年長者を「オヤジ」と慕う男社会の疑似家族から、女性は排除されてきたからだ。 「エリート」性を強調すれば庶民の生活を知らないのにと、「タレント」議員であれば政治を知らないのにと真逆の方向から批判される女性政治家は、いずれにしろ、多くの場合、下からゆっくりと持ち上げられるのではなく、上から急激に一本釣りされている。システマティックな育成を経ずにアドホックに登用されているのだ。 批判するなというつもりは毛頭ない。税金の使い道は厳しい目でチェックされるべきだし、研修の成果を知りたいというのは当然だと思う。 だが、構造の歪みを個人の肩に乗っけすぎてやしないか。エッフェル塔の前でポーズを決めた政治家に辞任を迫るような言論すらある。だが、それではいつまで経っても女性議員なんて増えないだろう。子育てしながら地元と往復する葛藤みたいな、「自分たちみたいな人」の素顔を彼女たちが素直にさらせる日が来るといいのにな』、「「エリート」性を強調すれば庶民の生活を知らないのにと、「タレント」議員であれば政治を知らないのにと真逆の方向から批判される女性政治家は、いずれにしろ、多くの場合、下からゆっくりと持ち上げられるのではなく、上から急激に一本釣りされている。システマティックな育成を経ずにアドホックに登用されているのだ」、なるほど。
次に、10月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家/コンサルタントの佐藤智恵氏による「女性取締役はお飾り?タレント取締役に意味はある?ハーバードの専門家が出した答えとは コリーン・アマーマン氏インタビュー(後編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330725
・『『ガラスの天井を破る戦略人事』の著者、ハーバードビジネススクールのコリーン・アマーマン氏は、日本の育休制度を「世界の中でも最も手厚い」と評価する。一方で、制度利用者が増えない現状には疑問を呈する。今の日本が抱える、ジェンダー平等実現への根深い課題とは。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵) >>前編から読む』、興味深そうだ。
・『ジェンダー平等には「男性の意識改革」が不可欠だ 佐藤智恵(以下、佐藤) 『ガラスの天井を破る戦略人事』では、ジェンダー平等を実現するためには男性側の当事者意識を高めて、協力してもらうことが不可欠だと繰り返し述べています。なぜ、男性の意識や行動が実現への鍵となってくるのでしょうか。 コリーン・アマーマン(以下、アマーマン) なぜなら権力を持っている人の大半は、男性だからです。変革を起こすには、何よりも権力が必要です。この問題に本気で取り組んでくれる男性リーダーがいなければ、ジェンダー不平等は永遠に解消されないままです。 例えば、米食品メーカー、キャンベルスープカンパニーの元CEOのダグ・コナント氏は、CEO就任早々、女性の活用を経営戦略の核として掲げ、女性リーダーの登用や育成に尽力し、企業再生に成功しました。また、英BBCのジャーナリスト、ロス・アトキンス氏は、自分のニュース番組の出演者の男女比を50:50にするプロジェクトを始め、その後、この取り組みはBBC全体へ広がっていきました。結局のところ、影響力のある地位に就いている男性が動いてくれなければ、扉は開かないのです。 佐藤 どういう男性リーダーが、女性の味方になってくれやすいのでしょうか。) アマーマン 私たちの調査では、「娘を持つ男性リーダー」「仕事をしている母親を持つ男性リーダー」は、ジェンダー平等の価値を理解し、働く女性の味方になってくれやすいことが分かっています。このほかにも、「マイノリティーの立場に置かれたことのある男性リーダー」も女性の登用に理解を示してくれやすいという結果があります。つまり、男性が実際に行動してくれるかどうかは、個人的な動機によるところが大きいのです。 日本の女性役員や女性管理職にも、まずはこうした男性を味方につけることを推奨したいですね。男性を巻き込んでジェンダー平等を推進したほうが、大きなインパクトを与えられるからです』、「「娘を持つ男性リーダー」「仕事をしている母親を持つ男性リーダー」は、ジェンダー平等の価値を理解し、働く女性の味方になってくれやすいことが分かっています。このほかにも、「マイノリティーの立場に置かれたことのある男性リーダー」も女性の登用に理解を示してくれやすいという結果があります・・・日本の女性役員や女性管理職にも、まずはこうした男性を味方につけることを推奨したいですね。男性を巻き込んでジェンダー平等を推進したほうが、大きなインパクトを与えられるからです」、なるほど。
・『育休を取らない男性社員が象徴する 「男女平等後進国日本」の姿 佐藤 本書では、組織の上に行けば行くほど女性の数が減ってくるのは、人事評価において男性よりも厳しい基準で評価されるからだ、と述べていますが、男性のどのような「アンコンシャス・バイアス」(無意識の思い込み)が女性の昇進を妨げていると思いますか。 アマーマン 一般的に、女性は、男性の上司からも同僚からも部下からも実際の地位よりも低く見られがちです。その主因となっているのが、男性側に「女性のリーダーとしての能力は男性よりも低い」という思い込みがあることです。そしてこのバイアスが、女性の採用、昇進、報酬を決める上で大きな影響を及ぼしています。ですから、まずは男性が知らず知らずのうちに女性を厳しく評価していることを男性に認識してもらうことが必要です。 また、「子どもを持つ女性は、子どもに気を取られて、仕事をおろそかにする傾向がある」という偏見を持っている男性もいます。子どもがいる女性の生涯年収や、子どもがいる女性が採用される確率は、子どものいない女性に比べても低いですが、このような「母親ペナルティー」(母親が採用・賃金において不利益を被ること)の背景にあるのも、男性のアンコンシャス・バイアスです。 こうした偏見を解消していくことは、会社の成長にとってもプラスとなりますから、「アンコンシャス・バイアス」の解消を男女共有の目標として掲げ、さまざまな研修などを行っていくことが大切です。 ただし、重要なのは、女性側が、男性を厳しく追及したり、非難したりしないこと。「もしかしたら気付いていないかもしれないけれど、それは『アンコンシャス・バイアス』かもしれないよ」といった感じで、さりげなく指摘するのがいいでしょう。) 佐藤 世界経済フォーラム(WEF)の2023年版「世界ジェンダーギャップ報告書」によれば、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位で、一向に改善の兆しが見られません。日本政府も日本企業も「ジェンダー平等に取り組んでいる」と言ってはいるものの、なぜ大きく改善しないのでしょうか。 アマーマン この問題を解決するには、政府の政策と個人の意識改革の両方が必要です。政策で特に重要なのが、税制です。女性が高収入を得たり、社会で活躍するのを阻んだりするような税制になっていないでしょうか。男性が働き、女性が子育てをすることが前提の税制になっていないでしょうか。まずはそこから変えていくことが必要でしょう。 また個人、特に男性の意識改革については、先ほど申し上げた通り、アンコンシャス・バイアスを取り除くことが何よりも大切です。会社では社内研修を実施するとともに、女性の登用が組織にとってもプラスになると考えるような組織風土を醸成していくことが大切です。 日本には世界の中でも最も手厚い育児休業制度があるのに、男性がこの制度を利用したがらないのは、興味深い現象です。正しい制度はあるのに、利用すれば自分のキャリアにとってマイナスになると考えてしまうのは、なぜでしょうか。そこに、ジェンダー平等が進まない根本的な要因があるように思います。 多くの国々においてジェンダー平等を実現するのが難しいのは、どの国の社会にも「男性はこれをやるべき」「女性はこれをやるべき」といった伝統的な規範があるからです。人々の文化や思想を変えるには長い時間がかかります。だからこそ、粘り強く取り組みを続けることが大切です』、「男性側に「女性のリーダーとしての能力は男性よりも低い」という思い込みがあることです。そしてこのバイアスが、女性の採用、昇進、報酬を決める上で大きな影響を及ぼしています。ですから、まずは男性が知らず知らずのうちに女性を厳しく評価していることを男性に認識してもらうことが必要です・・・多くの国々においてジェンダー平等を実現するのが難しいのは、どの国の社会にも「男性はこれをやるべき」「女性はこれをやるべき」といった伝統的な規範があるからです。人々の文化や思想を変えるには長い時間がかかります。だからこそ、粘り強く取り組みを続けることが大切です」、なるほど。
・『タレント社外取の起用は是か非か 女性役員に求められること 佐藤 ジェンダークオータ制(議会の議席や取締役会の人数などの一定割合を女性に割り当てる制度)の導入は有効だと思いますか。) アマーマン クオータ制導入の是非については、賛否両論があります。ただ、私は数値目標の設定やクオータ制の導入は、ジェンダー平等を推進する上で有効だと思います。 なぜなら、具体的な数値を掲げれば、「これは真剣に達成しなくてはならないものだ」という認識を持ってもらえるからです。「女性を増やさなければいけません」というような曖昧な目標では人は動かない。「何%がわが社の目標です」と伝えなければ、前には進まないのです。 ここで重要なのは、単に数値目標を掲げるだけではなく、なぜ多様性を実現することが不可欠なのかを理解してもらう教育を並行して行うことです。また、経営者自らが率先して、なぜ重要なのかを説明しなくてはなりません。「何のために行うのか」について社員が納得しなければ、自ら率先して実現しようとは思わないからです。 佐藤 本書では、仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンが、2010年、取締役会へのクオータ制の導入に伴い、「ファッションショーの常連だから」という理由でベルナデット・シラク氏(元フランス大統領夫人)を取締役に起用したことを指摘しています。 同じように、日本でも俳優・タレント・元スポーツ選手などの著名人を社外取締役に任命する事例が散見されますが、こうした現象は、女性取締役を増やす上で通らなくてはならない道なのでしょうか。 アマーマン 一般的には、専門知識、経営経験のあるなしにかかわらず、女性ゼロよりも女性がいるほうが、企業価値向上につながるのは確かです。 しかし、私が本書の「女性取締役はお飾りか」という項で言いたかったのは、「著名人を取締役に任命して安易に数合わせをするよりも、経済界には多くの有能な女性がいるのだから、その中から積極的に候補者を探しませんか」という点なのです。女性役員は、若い女子学生や女性社員にとってもロールモデルとなりますから、長期的には、経済界の中でいかに女性役員候補のパイプラインを構築していけるかが、重要になってきます。 もちろん、会社は取締役候補を外部から探してくるだけでなく、内部でも育成していかなければなりません。女性管理職がリーダーシップを学ぶ機会やスキルを身につける機会を提供することも必要です』、「私が本書の「女性取締役はお飾りか」という項で言いたかったのは、「著名人を取締役に任命して安易に数合わせをするよりも、経済界には多くの有能な女性がいるのだから、その中から積極的に候補者を探しませんか」という点なのです」、なるほど。
・『日本の女性リーダーに活用してほしい「WCD」 佐藤 アメリカでは、ハーバードビジネススクールの女性エグゼクティブ養成講座「ウィメン・オン・ボード」の修了生や、世界的な女性役員ネットワーク「ウィメン・コーポレート・ディレクターズ(WCD)」が、女性の取締役を増やすのに大きな役割を果たしていると聞いています。日本にもWCDの支部がありますが、日本の女性リーダーはこうしたネットワークをどのように活用していったらよいでしょうか。 アマーマン ハーバードビジネススクールの「ウィメン・オン・ボード」の参加者は修了後も交流を続け、お互いに取締役ポジションを紹介し合ったり、助言をし合ったりするなど、活発な活動を行っています。 また2001年にアメリカで創設されたWCDも、女性役員が集い、交流する場を提供するとともに、企業に取締役候補者を紹介するなど、女性役員を増やすためのさまざまな活動を行っています。WCDは、世界には実績と資質を兼ね備えた女性ビジネスリーダーがたくさんいることを多くの企業や経営者に知ってもらう上で、重要な役割を果たしていると思います。 日本のようにジェンダー不平等が根強い国においては、WCDのような女性役員のネットワークは特に価値あるものです。日本企業では、役員レベルにほとんど女性がいないため、日本の女性役員は、他の女性役員と意見交換する機会も少ないでしょう。こうした女性役員同士が助け合う場は、今後、さらに女性役員を増やしていく上で大きな役割を果たしていくと思います。 佐藤 最後に『ガラスの天井を破る戦略人事』を通じて、日本の読者に最も伝えたいことは何ですか。 アマーマン この本が日本で出版されたことをとてもうれしく思っています。私が日本の皆さんに最も伝えたいのは、ジェンダー平等の実現は全ての人が取り組むべき世界共通の課題であることです。ですから、女性だけではなく、男性にもぜひ読んでいただきたいですし、役員だけではなく、中間管理職の方々にも読んでいただきたい。そして、この本が日本のジェンダー平等に向けた取り組みの一助となることを願っています。(コリーン・アマーマン氏、’佐藤智恵氏の略歴はリンク先参照)』、「ハーバードビジネススクールの女性エグゼクティブ養成講座「ウィメン・オン・ボード」「の参加者は修了後も交流を続け、お互いに取締役ポジションを紹介し合ったり、助言をし合ったりするなど、活発な活動を行っています。 また2001年にアメリカで創設されたWCDも、女性役員が集い、交流する場を提供するとともに、企業に取締役候補者を紹介するなど、女性役員を増やすためのさまざまな活動を行っています。WCDは、世界には実績と資質を兼ね備えた女性ビジネスリーダーがたくさんいることを多くの企業や経営者に知ってもらう上で、重要な役割を果たしていると思います。 日本のようにジェンダー不平等が根強い国においては、WCDのような女性役員のネットワークは特に価値あるものです」、なるほど。
第三に、10月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した株式会社羽生プロ代表取締役社長、著作家・メディアプロデューサーの羽生祥子氏による「女性活躍が進まない会社の言い訳ランキング!2位「経営が上向くのか?」、1位は?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328049
・『先日発表された世界経済フォーラムの男女格差報告で、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位と過去最低を更新、先進国で最下位という結果になった。「多様性」が叫ばれる時代でも、なぜ日本の男女格差は埋まらないのか。「男女平等」と言いつつも、女性の活躍が一向にすすまない企業にありがちな言い訳を紐解く。本稿は羽生祥子著『SDGs、ESG経営に必須! 多様性って何ですか? D&I、ジェンダー平等入門』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです』、「世界経済フォーラムの男女格差報告で、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位と過去最低を更新、先進国で最下位という結果」、いつものことながら恥ずかしい結果だ。
・『女性だけ特別視する必要あるの? 中長期の視点がなく、「女性活躍がなかなか進まない」と悩んでいる企業が世の中にはたくさんあります。ダイバーシティ推進担当者は頑張って取り組んでいるのに、現場や上層部の反対の声にあって困っているという声も、本当によく聞きます。そこで、毎月多数の記事を発信している『日経xwoman』の取材を経てわかった多様性がない企業によくある言い訳を挙げたいと思います』、興味深そうだ。
・『【言い訳トップ1】「女性だけ特別視する必要あるの?」 このセリフ、読者の皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?または、自分で言ったことがあるという方も少なくないと思います。さらにこのトップ1の言い訳は、実は女性自身が発言することが多いのも特徴です。具体的には、こういった内容です。 ・仕事の場では、男性も女性も関係ない ・実力主義でやっているので、性別で区別する必要はない ・自分は実力で認められたのであって、女性だから認められたのではない ・女性にだけ「ゲタ」を履かせて持ち上げるのはずるい ・LGBTQと自認している人もいるのに、今どき男女比率で測るのは古い うーん、どれもすべて正しくて、間違ったことを言ってないような気がしますね。こんな言葉をかけられて反論や説得できずに困っている人事部の方々が目に浮かびます。しかし、この考え方こそが、世界に比して日本の女性活躍が遅れに遅れている理由なのです』、「この考え方こそが、世界に比して日本の女性活躍が遅れに遅れている理由なのです」、なるほど。
・『【言い訳トップ2】「D&Iやって、経営が上向くのか?」 この発言は、上層部がダイバーシティ推進の意義を理解しておらず、取り組みそのものがない会社でよく聞きます。または、社長など経営トップ本人はよく理解しているけれども、中間管理職など、現場に下ろしたときにささやかれる言葉です。具体的にはこんな意味の発言です。 ・ダイバーシティは人権問題であって、経営戦略とは関係がない ・女性を大事にすることは重要。だが業績がよくなることはない ・コロナ禍で業績が落ちて大変なので、悪いけれどD&Iをやっている余裕はない ・社長はカッコイイ顔をしたいだけで、現場は売り上げ確保で苦労する ・利益が出て、余ったおカネがあったらD&I室を立ち上げよう』、まったくやる気がなさそうな言い訳だ。
・『女性がみんなバリバリ働きたいとは限らない 【言い訳トップ3】「管理職に該当するような女性がいない」 女性登用がキーワードになってきた最近、急浮上してきた言い訳です。 ・女性管理職比率を上げたい。でも社内に適当な女性がいない ・取締役は、営業や社外交渉、新規事業など厳しいので女性には荷が重い ・ちょうど50代くらいの役員適齢期に、女性の絶対数が少ない ・今はいないが、最近は出産しても働くので、10年待てば女性管理職も出てくるだろう この発言は悪気がないので、つい同調してしまいがちです、しかし、こういったマインドのままだと、10年たっても現状とあまり代わり映えのしない単一な組織として取り残されてしまいます』、「こういったマインドのままだと、10年たっても現状とあまり代わり映えのしない単一な組織として取り残されてしまいます」、その通りだろう。
・『【言い訳トップ4】「D&IはOKだけど、女性活躍はNGなんです」 この発言は、ダイバーシティやインクルージョンといった、カタカナ人事用語が浸透してきた数年前からよく聞くようになりました。私が社外研修セミナーなどに呼ばれ、女性活躍やジェンダー平等について講演をするときに、演目に「男女平等」と入れないでほしいと頼まれた経験は何度かあります。このような主旨の発言です。 ・ダイバーシティなら弊社は推進したい。しかし、女性だけに限ると不公平感が出る ・若手からも、女性活躍という言葉は不人気。別の角度から多様化を進めたい ・ジェンダーという言葉を使うと男性が怖がるので、性別の話はしない ・男女平等はもう古いので、LGBTQや人種のテーマを扱いたい 「総論賛成、各論反対」の典型とも言える事例ですね。これに似たような発言に、「SDGsは、環境問題を中心に取り組んでいます。ジェンダー平等はちょっとウチでは…」というものもあります。日本の組織や個人は、「男女平等」や「女性活躍」という言葉が、本当に苦手なんだなぁと感じます。しかし、言葉をカタカナ用語に変えて薄めていると、本来の目的や問題を見失い、ごまかしの対応策になってしまう危険があるのです』、「言葉をカタカナ用語に変えて薄めていると、本来の目的や問題を見失い、ごまかしの対応策になってしまう危険がある」、その通りで危険だ。
・『【言い訳トップ5】「女性がみんな、バリバリ働きたいとは限らない」 これは人事の担当者から、「女性管理職研修を社内に導入しようとしたときに、周囲から反対意見として上がる声なんです」と、半ば嘆きのようなかたちで相談されます。実際、管理職登用のために女性社員の育成に向き合っていると、否応なくぶち当たる“育成の壁”です。 ・全員が全員、管理職や取締役になるような企業なんてない ・子育てや介護がある時期は、ペースダウンして働きたい女性もいるだろう ・多様性というなら、管理職を目指さない女性を認めることも大事 組織作りの話と、個人の性格やライフステージの話が混同されがちなことも特徴です。 シンプルなことですが、男性だって皆がみな、バリバリ働きたいとは考えていません。家庭や趣味の時間の方が大切だという考えの男性もいらっしゃいます。特に若い世代では、自分時間を仕事と同じように大切にする生き方が、性別を問わずに求められています。育児休業を取りたい男性が増えているように、労働以外の時間を豊かに過ごすことへの熱は高まりつつあります。バリバリ働いて、リーダーシップにあふれる男性ばかりではないのは、皆さんの職場を見回してみても実感するのではないでしょうか? こう考えると、「バリバリ働きたい人ばかりではない」という理由で、女性にだけキャリアアップの機会を与えないのはアンバランスだということがわかると思います。性別や年齢によらず、職場でのあらゆる機会を公平・公正に提供する姿勢が重要になってきます』、「バリバリ働いて、リーダーシップにあふれる男性ばかりではないのは、皆さんの職場を見回してみても実感するのではないでしょうか? こう考えると、「バリバリ働きたい人ばかりではない」という理由で、女性にだけキャリアアップの機会を与えないのはアンバランスだということがわかると思います。性別や年齢によらず、職場でのあらゆる機会を公平・公正に提供する姿勢が重要になってきます」、その通りだ。こういった「言い訳」に騙されないようにしたいものだ。
なお、明日、明後日は更新を休むので、30日にご期待を!
先ずは、10月11日付けFRaUが掲載した信州大学特任教授の山口 真由氏による「東大卒・山口真由が、松川るい氏のパリ視察炎上で考えた「女性議員」の育成問題」を紹介しよう。
・『信州大学特任教授で、法学博士・ニューヨーク州弁護士の山口真由さん。東大卒の才女として様々なメディアで活躍するが、Twitterでのつぶやきはコミカルで飾らないものが多い。FRaUwebの連載では、そんな意外な「素顔」を率直に綴っていただいている。 今回は、今年8月におこなわれた自民党の松川るい氏らによるフランス・パリ視察において、彼女たちがエッフェル塔前で撮った写真をSNSにアップし、非難が殺到した件について。松川氏は8月下旬に女性局長を辞任し、9月29日付で副幹事長に就いている。パリ視察の炎上、そして辞任、副幹事長就任にいたるまでの流れについて、山口さんが感じたことを綴っていただいた』、興味深そうだ。
・『なぜパリ視察がここまで炎上したのか 研修でフランスを訪れた松川るいさんが2人の地方議員と一緒にエッフェル塔の前でポーズを決めた写真をSNSに投稿して炎上したのは2ヵ月ほど前のことだった。費用に税金が投入されていないか、子どもを連れての研究が不適切ではないか――瞬く間に火の海と化したSNSに恐れをなして、当時の私は何も言えなかった。 責任を取る形で女性局長を辞任した彼女が、党の副幹事長に任命された先月末、またしても若干の波紋が広がっている。非難のひとつひとつには確かに理由がある。だが多少は冷静に語れるいま、本音を言えば、糾弾の激しさと罪の重さとが不釣り合いにも見えていた。同時期に受託収賄という刑事の疑惑をかけられた秋本真利議員の方がよほどひっそりとしているではないか。 それだけ潜在的に彼女のアンチが多かったのだろうか。外務省のキャリア、トレードマークはロングに伸ばした黒髪と胸元で結ばれた長い真珠のネックレス、さらに能弁な彼女は多くの討論番組の常連となり、次世代の女性政治家として頭角を現す。一方で、こうしたキラキラした要素の1つ1つが反感の源にもなる。 そして、円安やインフレの影響をもろに受けて旅行にも行けないと嘆く人々の前に、パリ、エッフェル塔、ポーズ……というキラキラの三重奏は、充満したガソリンを前にマッチの火をするようなものだったのだろう。 この騒動について「代議士とは『エリート』を選ぶものなのか、それとも『自分たちみたいな人』を選ぶものなのか。じつは議員内閣制には二つの発想があって、どちらも間違ってない」と三浦瑠麗さんが投稿しているが、松川さんはその「エリート性」ゆえに過剰に罰せられたという気がしてならない。 だが、ここで私が問いたいのは、なぜ男性社会の中で生きる女性たちは必要以上に「エリート性」を強調しなくてはならないのかということだ』、「円安やインフレの影響をもろに受けて旅行にも行けないと嘆く人々の前に、パリ、エッフェル塔、ポーズ……というキラキラの三重奏は、充満したガソリンを前にマッチの火をするようなものだったのだろう。 この騒動について「代議士とは『エリート』を選ぶものなのか、それとも『自分たちみたいな人』を選ぶものなのか。じつは議員内閣制には二つの発想があって、どちらも間違ってない」と三浦瑠麗さんが投稿しているが、松川さんはその「エリート性」ゆえに過剰に罰せられたという気がしてならない・・・ここで私が問いたいのは、なぜ男性社会の中で生きる女性たちは必要以上に「エリート性」を強調しなくてはならないのかということだ」、なるほど。
・『男社会に存在する「独自の教育システム」 例えば、2016年の大統領選挙では、ドナルド・トランプ氏が多くの労働者に「自分たちみたいな人」と思わせるのに成功した一方で、ヒラリー・クリントン氏はどこまでも「エリート」にしか見えず、共感を得るのに失敗した。父の不動産事業を引き継いだトランプ氏の方が、衣料品店を営む両親のもとから巣立ったクリントン氏よりも、見方によっては恵まれているにもかかわらず、である。 政治家という“大衆を相手にする職業”において、「自分たちみたいな人」と親近感を得るのがなによりも票への近道のはずだ。例えば、菅義偉さんは秋田の田舎出身、身ひとつで上京した叩き上げの苦労人というイメージを意図的に作り上げていた。その実、菅さんのお父様はイチゴ農家としてかなり成功した地元の名士で、お母様はあの時代の女性で教師という地域のエリート層である。菅さんの生い立ちの描き方は、自らをあえてダウングレードして庶民の目線を演出しているようにも見える。 安藤優子さんの『自民党の女性認識 「イエ中心主義」の政治指向』(明石書店、2022年)を読むと、自民党の国会議員の最大の輩出源は「地方議員」と「議員秘書」である。衆議院議員小此木彦三郎さんの秘書として家族同然の扱いを受けながら、横浜市議に当選し、国会議員へとステップアップしていった菅さんはまさにその典型だ。 安藤さんの本によれば、自民党の国会議員は、盆暮れの飲み会含めきめ細かく地方議員の面倒を見るのだという。そうやって選挙の最前線で闘ってくれる「自前の兵隊」を作る。おそらく、こういう集票のイロハは、秘書として仕えた国会議員を「オヤジ」と慕うみたいな、あの手の雰囲気の中で伝授されていくのだ。 そう、男社会には独自の教育システムが存在する。脈々と受け継がれた基盤はそう簡単には揺らがない。この安定感が男たちの自信の源になるのだろう。だから、地元に密着した親しみやすさという、あえての「下から目線」を強調できるのだという気もする。 ところが、女性議員には地方議員や議員秘書出身者が極端に少ない。官僚、弁護士、アナウンサーやジャーナリストといった「エリート」が「オヤジ」から一本釣りされる。そういう女性政治家たちはこれでもかというほど自身の華々しい経歴を書き連ねてなんだか嫌味である。 安藤さんの本によれば「県議は党派を超えて『同じ釜の飯を食ってきたという同族意識』が強く、突然ぽっと出てきたような『若くて、学歴がある』候補には冷ややかな傾向がある」とのこと。「エリート」性を強調するほどに、「自分たちみたいな人」から遠ざかって地元からも浮いていく』、「自民党の国会議員は、盆暮れの飲み会含めきめ細かく地方議員の面倒を見るのだという。そうやって選挙の最前線で闘ってくれる「自前の兵隊」を作る。おそらく、こういう集票のイロハは、秘書として仕えた国会議員を「オヤジ」と慕うみたいな、あの手の雰囲気の中で伝授されていくのだ。 そう、男社会には独自の教育システムが存在する。脈々と受け継がれた基盤はそう簡単には揺らがない。この安定感が男たちの自信の源になるのだろう・・・ところが、女性議員には地方議員や議員秘書出身者が極端に少ない。官僚、弁護士、アナウンサーやジャーナリストといった「エリート」が「オヤジ」から一本釣りされる。そういう女性政治家たちはこれでもかというほど自身の華々しい経歴を書き連ねてなんだか嫌味である・・・「県議は党派を超えて『同じ釜の飯を食ってきたという同族意識』が強く、突然ぽっと出てきたような『若くて、学歴がある』候補には冷ややかな傾向がある」とのこと。「エリート」性を強調するほどに、「自分たちみたいな人」から遠ざかって地元からも浮いていく」、なるほど。
・『構造の歪みを個人の肩に載せすぎている でも他にどうすればよいのだろう。永田町を夢見る男たちの頭上を一足飛びに駆け上がるエクスキューズとして、「エリート」性を押し出すしかないのだ。ここに構造的な悪循環がある。 松川さんだけじゃなくて今井絵理子さんだって批判されたじゃないか。「エリート」性を強調するから嫌われるという道理はないといわれるかもしれない。確かにその通り。でも「エリート」性を「タレント」性に言い換えれば、真逆のようで極めてよく似た構造が見えてくる。 地元の人脈や地縁を「オヤジ」から徐々に引き継ぐという過程を経ずに、「オヤジ」から一本釣りされた女性政治家にとっては知名度が唯一の武器なのだ。だから、「エリート」性なり「タレント」性なりを売りにメディアへの露出を増やすしかないだろう。 思うに、「女性活躍」の旗を振られ、女性の「登用」をわかりやすく数字で顕在化させたいいまの日本社会には、女性を「育成」するシステムがない。伝統的に根付いてきた年長者を「オヤジ」と慕う男社会の疑似家族から、女性は排除されてきたからだ。 「エリート」性を強調すれば庶民の生活を知らないのにと、「タレント」議員であれば政治を知らないのにと真逆の方向から批判される女性政治家は、いずれにしろ、多くの場合、下からゆっくりと持ち上げられるのではなく、上から急激に一本釣りされている。システマティックな育成を経ずにアドホックに登用されているのだ。 批判するなというつもりは毛頭ない。税金の使い道は厳しい目でチェックされるべきだし、研修の成果を知りたいというのは当然だと思う。 だが、構造の歪みを個人の肩に乗っけすぎてやしないか。エッフェル塔の前でポーズを決めた政治家に辞任を迫るような言論すらある。だが、それではいつまで経っても女性議員なんて増えないだろう。子育てしながら地元と往復する葛藤みたいな、「自分たちみたいな人」の素顔を彼女たちが素直にさらせる日が来るといいのにな』、「「エリート」性を強調すれば庶民の生活を知らないのにと、「タレント」議員であれば政治を知らないのにと真逆の方向から批判される女性政治家は、いずれにしろ、多くの場合、下からゆっくりと持ち上げられるのではなく、上から急激に一本釣りされている。システマティックな育成を経ずにアドホックに登用されているのだ」、なるほど。
次に、10月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家/コンサルタントの佐藤智恵氏による「女性取締役はお飾り?タレント取締役に意味はある?ハーバードの専門家が出した答えとは コリーン・アマーマン氏インタビュー(後編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330725
・『『ガラスの天井を破る戦略人事』の著者、ハーバードビジネススクールのコリーン・アマーマン氏は、日本の育休制度を「世界の中でも最も手厚い」と評価する。一方で、制度利用者が増えない現状には疑問を呈する。今の日本が抱える、ジェンダー平等実現への根深い課題とは。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵) >>前編から読む』、興味深そうだ。
・『ジェンダー平等には「男性の意識改革」が不可欠だ 佐藤智恵(以下、佐藤) 『ガラスの天井を破る戦略人事』では、ジェンダー平等を実現するためには男性側の当事者意識を高めて、協力してもらうことが不可欠だと繰り返し述べています。なぜ、男性の意識や行動が実現への鍵となってくるのでしょうか。 コリーン・アマーマン(以下、アマーマン) なぜなら権力を持っている人の大半は、男性だからです。変革を起こすには、何よりも権力が必要です。この問題に本気で取り組んでくれる男性リーダーがいなければ、ジェンダー不平等は永遠に解消されないままです。 例えば、米食品メーカー、キャンベルスープカンパニーの元CEOのダグ・コナント氏は、CEO就任早々、女性の活用を経営戦略の核として掲げ、女性リーダーの登用や育成に尽力し、企業再生に成功しました。また、英BBCのジャーナリスト、ロス・アトキンス氏は、自分のニュース番組の出演者の男女比を50:50にするプロジェクトを始め、その後、この取り組みはBBC全体へ広がっていきました。結局のところ、影響力のある地位に就いている男性が動いてくれなければ、扉は開かないのです。 佐藤 どういう男性リーダーが、女性の味方になってくれやすいのでしょうか。) アマーマン 私たちの調査では、「娘を持つ男性リーダー」「仕事をしている母親を持つ男性リーダー」は、ジェンダー平等の価値を理解し、働く女性の味方になってくれやすいことが分かっています。このほかにも、「マイノリティーの立場に置かれたことのある男性リーダー」も女性の登用に理解を示してくれやすいという結果があります。つまり、男性が実際に行動してくれるかどうかは、個人的な動機によるところが大きいのです。 日本の女性役員や女性管理職にも、まずはこうした男性を味方につけることを推奨したいですね。男性を巻き込んでジェンダー平等を推進したほうが、大きなインパクトを与えられるからです』、「「娘を持つ男性リーダー」「仕事をしている母親を持つ男性リーダー」は、ジェンダー平等の価値を理解し、働く女性の味方になってくれやすいことが分かっています。このほかにも、「マイノリティーの立場に置かれたことのある男性リーダー」も女性の登用に理解を示してくれやすいという結果があります・・・日本の女性役員や女性管理職にも、まずはこうした男性を味方につけることを推奨したいですね。男性を巻き込んでジェンダー平等を推進したほうが、大きなインパクトを与えられるからです」、なるほど。
・『育休を取らない男性社員が象徴する 「男女平等後進国日本」の姿 佐藤 本書では、組織の上に行けば行くほど女性の数が減ってくるのは、人事評価において男性よりも厳しい基準で評価されるからだ、と述べていますが、男性のどのような「アンコンシャス・バイアス」(無意識の思い込み)が女性の昇進を妨げていると思いますか。 アマーマン 一般的に、女性は、男性の上司からも同僚からも部下からも実際の地位よりも低く見られがちです。その主因となっているのが、男性側に「女性のリーダーとしての能力は男性よりも低い」という思い込みがあることです。そしてこのバイアスが、女性の採用、昇進、報酬を決める上で大きな影響を及ぼしています。ですから、まずは男性が知らず知らずのうちに女性を厳しく評価していることを男性に認識してもらうことが必要です。 また、「子どもを持つ女性は、子どもに気を取られて、仕事をおろそかにする傾向がある」という偏見を持っている男性もいます。子どもがいる女性の生涯年収や、子どもがいる女性が採用される確率は、子どものいない女性に比べても低いですが、このような「母親ペナルティー」(母親が採用・賃金において不利益を被ること)の背景にあるのも、男性のアンコンシャス・バイアスです。 こうした偏見を解消していくことは、会社の成長にとってもプラスとなりますから、「アンコンシャス・バイアス」の解消を男女共有の目標として掲げ、さまざまな研修などを行っていくことが大切です。 ただし、重要なのは、女性側が、男性を厳しく追及したり、非難したりしないこと。「もしかしたら気付いていないかもしれないけれど、それは『アンコンシャス・バイアス』かもしれないよ」といった感じで、さりげなく指摘するのがいいでしょう。) 佐藤 世界経済フォーラム(WEF)の2023年版「世界ジェンダーギャップ報告書」によれば、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位で、一向に改善の兆しが見られません。日本政府も日本企業も「ジェンダー平等に取り組んでいる」と言ってはいるものの、なぜ大きく改善しないのでしょうか。 アマーマン この問題を解決するには、政府の政策と個人の意識改革の両方が必要です。政策で特に重要なのが、税制です。女性が高収入を得たり、社会で活躍するのを阻んだりするような税制になっていないでしょうか。男性が働き、女性が子育てをすることが前提の税制になっていないでしょうか。まずはそこから変えていくことが必要でしょう。 また個人、特に男性の意識改革については、先ほど申し上げた通り、アンコンシャス・バイアスを取り除くことが何よりも大切です。会社では社内研修を実施するとともに、女性の登用が組織にとってもプラスになると考えるような組織風土を醸成していくことが大切です。 日本には世界の中でも最も手厚い育児休業制度があるのに、男性がこの制度を利用したがらないのは、興味深い現象です。正しい制度はあるのに、利用すれば自分のキャリアにとってマイナスになると考えてしまうのは、なぜでしょうか。そこに、ジェンダー平等が進まない根本的な要因があるように思います。 多くの国々においてジェンダー平等を実現するのが難しいのは、どの国の社会にも「男性はこれをやるべき」「女性はこれをやるべき」といった伝統的な規範があるからです。人々の文化や思想を変えるには長い時間がかかります。だからこそ、粘り強く取り組みを続けることが大切です』、「男性側に「女性のリーダーとしての能力は男性よりも低い」という思い込みがあることです。そしてこのバイアスが、女性の採用、昇進、報酬を決める上で大きな影響を及ぼしています。ですから、まずは男性が知らず知らずのうちに女性を厳しく評価していることを男性に認識してもらうことが必要です・・・多くの国々においてジェンダー平等を実現するのが難しいのは、どの国の社会にも「男性はこれをやるべき」「女性はこれをやるべき」といった伝統的な規範があるからです。人々の文化や思想を変えるには長い時間がかかります。だからこそ、粘り強く取り組みを続けることが大切です」、なるほど。
・『タレント社外取の起用は是か非か 女性役員に求められること 佐藤 ジェンダークオータ制(議会の議席や取締役会の人数などの一定割合を女性に割り当てる制度)の導入は有効だと思いますか。) アマーマン クオータ制導入の是非については、賛否両論があります。ただ、私は数値目標の設定やクオータ制の導入は、ジェンダー平等を推進する上で有効だと思います。 なぜなら、具体的な数値を掲げれば、「これは真剣に達成しなくてはならないものだ」という認識を持ってもらえるからです。「女性を増やさなければいけません」というような曖昧な目標では人は動かない。「何%がわが社の目標です」と伝えなければ、前には進まないのです。 ここで重要なのは、単に数値目標を掲げるだけではなく、なぜ多様性を実現することが不可欠なのかを理解してもらう教育を並行して行うことです。また、経営者自らが率先して、なぜ重要なのかを説明しなくてはなりません。「何のために行うのか」について社員が納得しなければ、自ら率先して実現しようとは思わないからです。 佐藤 本書では、仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンが、2010年、取締役会へのクオータ制の導入に伴い、「ファッションショーの常連だから」という理由でベルナデット・シラク氏(元フランス大統領夫人)を取締役に起用したことを指摘しています。 同じように、日本でも俳優・タレント・元スポーツ選手などの著名人を社外取締役に任命する事例が散見されますが、こうした現象は、女性取締役を増やす上で通らなくてはならない道なのでしょうか。 アマーマン 一般的には、専門知識、経営経験のあるなしにかかわらず、女性ゼロよりも女性がいるほうが、企業価値向上につながるのは確かです。 しかし、私が本書の「女性取締役はお飾りか」という項で言いたかったのは、「著名人を取締役に任命して安易に数合わせをするよりも、経済界には多くの有能な女性がいるのだから、その中から積極的に候補者を探しませんか」という点なのです。女性役員は、若い女子学生や女性社員にとってもロールモデルとなりますから、長期的には、経済界の中でいかに女性役員候補のパイプラインを構築していけるかが、重要になってきます。 もちろん、会社は取締役候補を外部から探してくるだけでなく、内部でも育成していかなければなりません。女性管理職がリーダーシップを学ぶ機会やスキルを身につける機会を提供することも必要です』、「私が本書の「女性取締役はお飾りか」という項で言いたかったのは、「著名人を取締役に任命して安易に数合わせをするよりも、経済界には多くの有能な女性がいるのだから、その中から積極的に候補者を探しませんか」という点なのです」、なるほど。
・『日本の女性リーダーに活用してほしい「WCD」 佐藤 アメリカでは、ハーバードビジネススクールの女性エグゼクティブ養成講座「ウィメン・オン・ボード」の修了生や、世界的な女性役員ネットワーク「ウィメン・コーポレート・ディレクターズ(WCD)」が、女性の取締役を増やすのに大きな役割を果たしていると聞いています。日本にもWCDの支部がありますが、日本の女性リーダーはこうしたネットワークをどのように活用していったらよいでしょうか。 アマーマン ハーバードビジネススクールの「ウィメン・オン・ボード」の参加者は修了後も交流を続け、お互いに取締役ポジションを紹介し合ったり、助言をし合ったりするなど、活発な活動を行っています。 また2001年にアメリカで創設されたWCDも、女性役員が集い、交流する場を提供するとともに、企業に取締役候補者を紹介するなど、女性役員を増やすためのさまざまな活動を行っています。WCDは、世界には実績と資質を兼ね備えた女性ビジネスリーダーがたくさんいることを多くの企業や経営者に知ってもらう上で、重要な役割を果たしていると思います。 日本のようにジェンダー不平等が根強い国においては、WCDのような女性役員のネットワークは特に価値あるものです。日本企業では、役員レベルにほとんど女性がいないため、日本の女性役員は、他の女性役員と意見交換する機会も少ないでしょう。こうした女性役員同士が助け合う場は、今後、さらに女性役員を増やしていく上で大きな役割を果たしていくと思います。 佐藤 最後に『ガラスの天井を破る戦略人事』を通じて、日本の読者に最も伝えたいことは何ですか。 アマーマン この本が日本で出版されたことをとてもうれしく思っています。私が日本の皆さんに最も伝えたいのは、ジェンダー平等の実現は全ての人が取り組むべき世界共通の課題であることです。ですから、女性だけではなく、男性にもぜひ読んでいただきたいですし、役員だけではなく、中間管理職の方々にも読んでいただきたい。そして、この本が日本のジェンダー平等に向けた取り組みの一助となることを願っています。(コリーン・アマーマン氏、’佐藤智恵氏の略歴はリンク先参照)』、「ハーバードビジネススクールの女性エグゼクティブ養成講座「ウィメン・オン・ボード」「の参加者は修了後も交流を続け、お互いに取締役ポジションを紹介し合ったり、助言をし合ったりするなど、活発な活動を行っています。 また2001年にアメリカで創設されたWCDも、女性役員が集い、交流する場を提供するとともに、企業に取締役候補者を紹介するなど、女性役員を増やすためのさまざまな活動を行っています。WCDは、世界には実績と資質を兼ね備えた女性ビジネスリーダーがたくさんいることを多くの企業や経営者に知ってもらう上で、重要な役割を果たしていると思います。 日本のようにジェンダー不平等が根強い国においては、WCDのような女性役員のネットワークは特に価値あるものです」、なるほど。
第三に、10月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した株式会社羽生プロ代表取締役社長、著作家・メディアプロデューサーの羽生祥子氏による「女性活躍が進まない会社の言い訳ランキング!2位「経営が上向くのか?」、1位は?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328049
・『先日発表された世界経済フォーラムの男女格差報告で、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位と過去最低を更新、先進国で最下位という結果になった。「多様性」が叫ばれる時代でも、なぜ日本の男女格差は埋まらないのか。「男女平等」と言いつつも、女性の活躍が一向にすすまない企業にありがちな言い訳を紐解く。本稿は羽生祥子著『SDGs、ESG経営に必須! 多様性って何ですか? D&I、ジェンダー平等入門』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです』、「世界経済フォーラムの男女格差報告で、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位と過去最低を更新、先進国で最下位という結果」、いつものことながら恥ずかしい結果だ。
・『女性だけ特別視する必要あるの? 中長期の視点がなく、「女性活躍がなかなか進まない」と悩んでいる企業が世の中にはたくさんあります。ダイバーシティ推進担当者は頑張って取り組んでいるのに、現場や上層部の反対の声にあって困っているという声も、本当によく聞きます。そこで、毎月多数の記事を発信している『日経xwoman』の取材を経てわかった多様性がない企業によくある言い訳を挙げたいと思います』、興味深そうだ。
・『【言い訳トップ1】「女性だけ特別視する必要あるの?」 このセリフ、読者の皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?または、自分で言ったことがあるという方も少なくないと思います。さらにこのトップ1の言い訳は、実は女性自身が発言することが多いのも特徴です。具体的には、こういった内容です。 ・仕事の場では、男性も女性も関係ない ・実力主義でやっているので、性別で区別する必要はない ・自分は実力で認められたのであって、女性だから認められたのではない ・女性にだけ「ゲタ」を履かせて持ち上げるのはずるい ・LGBTQと自認している人もいるのに、今どき男女比率で測るのは古い うーん、どれもすべて正しくて、間違ったことを言ってないような気がしますね。こんな言葉をかけられて反論や説得できずに困っている人事部の方々が目に浮かびます。しかし、この考え方こそが、世界に比して日本の女性活躍が遅れに遅れている理由なのです』、「この考え方こそが、世界に比して日本の女性活躍が遅れに遅れている理由なのです」、なるほど。
・『【言い訳トップ2】「D&Iやって、経営が上向くのか?」 この発言は、上層部がダイバーシティ推進の意義を理解しておらず、取り組みそのものがない会社でよく聞きます。または、社長など経営トップ本人はよく理解しているけれども、中間管理職など、現場に下ろしたときにささやかれる言葉です。具体的にはこんな意味の発言です。 ・ダイバーシティは人権問題であって、経営戦略とは関係がない ・女性を大事にすることは重要。だが業績がよくなることはない ・コロナ禍で業績が落ちて大変なので、悪いけれどD&Iをやっている余裕はない ・社長はカッコイイ顔をしたいだけで、現場は売り上げ確保で苦労する ・利益が出て、余ったおカネがあったらD&I室を立ち上げよう』、まったくやる気がなさそうな言い訳だ。
・『女性がみんなバリバリ働きたいとは限らない 【言い訳トップ3】「管理職に該当するような女性がいない」 女性登用がキーワードになってきた最近、急浮上してきた言い訳です。 ・女性管理職比率を上げたい。でも社内に適当な女性がいない ・取締役は、営業や社外交渉、新規事業など厳しいので女性には荷が重い ・ちょうど50代くらいの役員適齢期に、女性の絶対数が少ない ・今はいないが、最近は出産しても働くので、10年待てば女性管理職も出てくるだろう この発言は悪気がないので、つい同調してしまいがちです、しかし、こういったマインドのままだと、10年たっても現状とあまり代わり映えのしない単一な組織として取り残されてしまいます』、「こういったマインドのままだと、10年たっても現状とあまり代わり映えのしない単一な組織として取り残されてしまいます」、その通りだろう。
・『【言い訳トップ4】「D&IはOKだけど、女性活躍はNGなんです」 この発言は、ダイバーシティやインクルージョンといった、カタカナ人事用語が浸透してきた数年前からよく聞くようになりました。私が社外研修セミナーなどに呼ばれ、女性活躍やジェンダー平等について講演をするときに、演目に「男女平等」と入れないでほしいと頼まれた経験は何度かあります。このような主旨の発言です。 ・ダイバーシティなら弊社は推進したい。しかし、女性だけに限ると不公平感が出る ・若手からも、女性活躍という言葉は不人気。別の角度から多様化を進めたい ・ジェンダーという言葉を使うと男性が怖がるので、性別の話はしない ・男女平等はもう古いので、LGBTQや人種のテーマを扱いたい 「総論賛成、各論反対」の典型とも言える事例ですね。これに似たような発言に、「SDGsは、環境問題を中心に取り組んでいます。ジェンダー平等はちょっとウチでは…」というものもあります。日本の組織や個人は、「男女平等」や「女性活躍」という言葉が、本当に苦手なんだなぁと感じます。しかし、言葉をカタカナ用語に変えて薄めていると、本来の目的や問題を見失い、ごまかしの対応策になってしまう危険があるのです』、「言葉をカタカナ用語に変えて薄めていると、本来の目的や問題を見失い、ごまかしの対応策になってしまう危険がある」、その通りで危険だ。
・『【言い訳トップ5】「女性がみんな、バリバリ働きたいとは限らない」 これは人事の担当者から、「女性管理職研修を社内に導入しようとしたときに、周囲から反対意見として上がる声なんです」と、半ば嘆きのようなかたちで相談されます。実際、管理職登用のために女性社員の育成に向き合っていると、否応なくぶち当たる“育成の壁”です。 ・全員が全員、管理職や取締役になるような企業なんてない ・子育てや介護がある時期は、ペースダウンして働きたい女性もいるだろう ・多様性というなら、管理職を目指さない女性を認めることも大事 組織作りの話と、個人の性格やライフステージの話が混同されがちなことも特徴です。 シンプルなことですが、男性だって皆がみな、バリバリ働きたいとは考えていません。家庭や趣味の時間の方が大切だという考えの男性もいらっしゃいます。特に若い世代では、自分時間を仕事と同じように大切にする生き方が、性別を問わずに求められています。育児休業を取りたい男性が増えているように、労働以外の時間を豊かに過ごすことへの熱は高まりつつあります。バリバリ働いて、リーダーシップにあふれる男性ばかりではないのは、皆さんの職場を見回してみても実感するのではないでしょうか? こう考えると、「バリバリ働きたい人ばかりではない」という理由で、女性にだけキャリアアップの機会を与えないのはアンバランスだということがわかると思います。性別や年齢によらず、職場でのあらゆる機会を公平・公正に提供する姿勢が重要になってきます』、「バリバリ働いて、リーダーシップにあふれる男性ばかりではないのは、皆さんの職場を見回してみても実感するのではないでしょうか? こう考えると、「バリバリ働きたい人ばかりではない」という理由で、女性にだけキャリアアップの機会を与えないのはアンバランスだということがわかると思います。性別や年齢によらず、職場でのあらゆる機会を公平・公正に提供する姿勢が重要になってきます」、その通りだ。こういった「言い訳」に騙されないようにしたいものだ。
なお、明日、明後日は更新を休むので、30日にご期待を!
タグ:「この考え方こそが、世界に比して日本の女性活躍が遅れに遅れている理由なのです」、なるほど。 ・・・ここで私が問いたいのは、なぜ男性社会の中で生きる女性たちは必要以上に「エリート性」を強調しなくてはならないのかということだ」、なるほど。 「円安やインフレの影響をもろに受けて旅行にも行けないと嘆く人々の前に、パリ、エッフェル塔、ポーズ……というキラキラの三重奏は、充満したガソリンを前にマッチの火をするようなものだったのだろう。 この騒動について「代議士とは『エリート』を選ぶものなのか、それとも『自分たちみたいな人』を選ぶものなのか。じつは議員内閣制には二つの発想があって、どちらも間違ってない」と三浦瑠麗さんが投稿しているが、松川さんはその「エリート性」ゆえに過剰に罰せられたという気がしてならない 山口 真由氏による「東大卒・山口真由が、松川るい氏のパリ視察炎上で考えた「女性議員」の育成問題」 FRaU 「男性側に「女性のリーダーとしての能力は男性よりも低い」という思い込みがあることです。そしてこのバイアスが、女性の採用、昇進、報酬を決める上で大きな影響を及ぼしています。ですから、まずは男性が知らず知らずのうちに女性を厳しく評価していることを男性に認識してもらうことが必要です・・・多くの国々においてジェンダー平等を実現するのが難しいのは、どの国の社会にも「男性はこれをやるべき」「女性はこれをやるべき」といった伝統的な規範があるからです。人々の文化や思想を変えるには長い時間がかかります。だからこそ、粘り強く 【言い訳トップ2】「D&Iやって、経営が上向くのか?」 (その29)(東大卒・山口真由が 松川るい氏のパリ視察炎上で考えた「女性議員」の育成問題、女性取締役はお飾り?タレント取締役に意味はある?ハーバードの専門家が出した答えとは コリーン・アマーマン氏インタビュー(後編)、女性活躍が進まない会社の言い訳ランキング!2位「経営が上向くのか?」 1位は?) なお、明日、明後日は更新を休むので、30日にご期待を! 「こういったマインドのままだと、10年たっても現状とあまり代わり映えのしない単一な組織として取り残されてしまいます」、その通りだろう。 佐藤智恵氏による「女性取締役はお飾り?タレント取締役に意味はある?ハーバードの専門家が出した答えとは コリーン・アマーマン氏インタビュー(後編)」 ほど。 ダイヤモンド・オンライン 女性活躍 羽生祥子氏による「女性活躍が進まない会社の言い訳ランキング!2位「経営が上向くのか?」、1位は?」 「「娘を持つ男性リーダー」「仕事をしている母親を持つ男性リーダー」は、ジェンダー平等の価値を理解し、働く女性の味方になってくれやすいことが分かっています。このほかにも、「マイノリティーの立場に置かれたことのある男性リーダー」も女性の登用に理解を示してくれやすいという結果があります・・・日本の女性役員や女性管理職にも、まずはこうした男性を味方につけることを推奨したいですね。男性を巻き込んでジェンダー平等を推進したほうが、大きなインパクトを与えられるからです」、なるほど。 「自民党の国会議員は、盆暮れの飲み会含めきめ細かく地方議員の面倒を見るのだという。そうやって選挙の最前線で闘ってくれる「自前の兵隊」を作る。おそらく、こういう集票のイロハは、秘書として仕えた国会議員を「オヤジ」と慕うみたいな、あの手の雰囲気の中で伝授されていくのだ。 そう、男社会には独自の教育システムが存在する。脈々と受け継がれた基盤はそう簡単には揺らがない。この安定感が男たちの自信の源になるのだろう こういった「言い訳」に騙されないようにしたいものだ。 「バリバリ働いて、リーダーシップにあふれる男性ばかりではないのは、皆さんの職場を見回してみても実感するのではないでしょうか? こう考えると、「バリバリ働きたい人ばかりではない」という理由で、女性にだけキャリアアップの機会を与えないのはアンバランスだということがわかると思います。性別や年齢によらず、職場でのあらゆる機会を公平・公正に提供する姿勢が重要になってきます」、その通りだ。 取り組みを続けることが大切です」、なるほど。 ・・・ところが、女性議員には地方議員や議員秘書出身者が極端に少ない。官僚、弁護士、アナウンサーやジャーナリストといった「エリート」が「オヤジ」から一本釣りされる。そういう女性政治家たちはこれでもかというほど自身の華々しい経歴を書き連ねてなんだか嫌味である・・・「県議は党派を超えて『同じ釜の飯を食ってきたという同族意識』が強く、突然ぽっと出てきたような『若くて、学歴がある』候補には冷ややかな傾向がある」とのこと。「エリート」性を強調するほどに、「自分たちみたいな人」から遠ざかって地元からも浮いていく」、なる 【言い訳トップ4】「D&IはOKだけど、女性活躍はNGなんです」 女性がみんなバリバリ働きたいとは限らない 【言い訳トップ3】「管理職に該当するような女性がいない」 まったくやる気がなさそうな言い訳だ。 「「エリート」性を強調すれば庶民の生活を知らないのにと、「タレント」議員であれば政治を知らないのにと真逆の方向から批判される女性政治家は、いずれにしろ、多くの場合、下からゆっくりと持ち上げられるのではなく、上から急激に一本釣りされている。システマティックな育成を経ずにアドホックに登用されているのだ」、なるほど。 WCDは、世界には実績と資質を兼ね備えた女性ビジネスリーダーがたくさんいることを多くの企業や経営者に知ってもらう上で、重要な役割を果たしていると思います。 日本のようにジェンダー不平等が根強い国においては、WCDのような女性役員のネットワークは特に価値あるものです」、なるほど。 「ハーバードビジネススクールの女性エグゼクティブ養成講座「ウィメン・オン・ボード」「の参加者は修了後も交流を続け、お互いに取締役ポジションを紹介し合ったり、助言をし合ったりするなど、活発な活動を行っています。 また2001年にアメリカで創設されたWCDも、女性役員が集い、交流する場を提供するとともに、企業に取締役候補者を紹介するなど、女性役員を増やすためのさまざまな活動を行っています。 「私が本書の「女性取締役はお飾りか」という項で言いたかったのは、「著名人を取締役に任命して安易に数合わせをするよりも、経済界には多くの有能な女性がいるのだから、その中から積極的に候補者を探しませんか」という点なのです」、なるほど。 【言い訳トップ1】「女性だけ特別視する必要あるの?」 「世界経済フォーラムの男女格差報告で、日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位と過去最低を更新、先進国で最下位という結果」、いつものことながら恥ずかしい結果だ。 【言い訳トップ5】「女性がみんな、バリバリ働きたいとは限らない」 「言葉をカタカナ用語に変えて薄めていると、本来の目的や問題を見失い、ごまかしの対応策になってしまう危険がある」、その通りで危険だ。
宗教(その13)(旧統一教会への解散請求…「次の標的はホストクラブ」をデタラメと笑えない理由、自民党と旧統一教会、50年以上の「おつきあい」 選挙に欠かせなくなった信者ボランティア、解散命令請求じゃない!旧統一教会と政治のズブズブを「絶縁」させる唯一の方法とは?) [社会]
宗教については、本年9月24日に取上げた。今日は、(その13)(旧統一教会への解散請求…「次の標的はホストクラブ」をデタラメと笑えない理由、自民党と旧統一教会、50年以上の「おつきあい」 選挙に欠かせなくなった信者ボランティア、解散命令請求じゃない!旧統一教会と政治のズブズブを「絶縁」させる唯一の方法とは?)である。
先ずは、10月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「旧統一教会への解散請求…「次の標的はホストクラブ」をデタラメと笑えない理由」を紹介しよう。
・『旧統一教会の次に「解散」させられるものとは 10月13日にも、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に対する解散命令請求がいよいよ出される見込みだという。 「霊感商法の被害者が救われる第一歩だ」と喜んでいる人も多いだろうが、残念ながら今回の動きは「自民党は旧統一教会とスパッと決別しました」という選挙前のパフォーマンス的な意味合いが強く、被害者救済につながるものではない。 これから始まる長い裁判の間、教団側は「任意団体」に格下げされることに備えて、当然ながら、財産を韓国本部に移したり、組織もスリム化していく。これまで礼拝や集会に使ってきた建物などもすべて処分されてしまう可能性もある。そしてカネもなくなり、人もいなくなった「宗教サークル」に被害者救済が十分にできるわけがない。 例えば、ジャニーズ事務所が今このタイミングで解散して市民団体になって、300人以上の被害を訴える人々に満足のいく補償ができるのかを想像してみたらいいだろう。 つまり、今回の解散命令は「世論」と「被害者」をスッキリさせる「ガス抜き」にしかならないのだ。「ガス抜き」ならまだマシだ。最悪、日本社会にさまざま災いと混乱を生み出す「パンドラの箱」になってしまう恐れもあるのだ。 それは具体的に何か。個人的に危ないと思っているのは、ホストクラブに代表される「恋愛商法」の規制だ。 ご存じのように、ホストの世界では「客と店員」という関係を超越して、客に恋心を抱かせて「オレがナンバーワンになるのを一緒に支えてほしい」なんて甘い言葉をささやいて、大金を貢がせる「色恋営業」と呼ばれる稼ぎ方がある。 これが「マインドコントロールで金をだましとる詐欺」として規制の対象となっていく恐れがあるのだ』、「今回の解散命令は「世論」と「被害者」をスッキリさせる「ガス抜き」にしかならないのだ。「ガス抜き」ならまだマシだ。最悪、日本社会にさまざま災いと混乱を生み出す「パンドラの箱」になってしまう恐れもあるのだ。 それは具体的に何か。個人的に危ないと思っているのは、ホストクラブに代表される「恋愛商法」の規制だ。 ご存じのように、ホストの世界では「客と店員」という関係を超越して、客に恋心を抱かせて「オレがナンバーワンになるのを一緒に支えてほしい」なんて甘い言葉をささやいて、大金を貢がせる「色恋営業」と呼ばれる稼ぎ方がある。 これが「マインドコントロールで金をだましとる詐欺」として規制の対象となっていく恐れがある」、なるほど。
・『ホストクラブと客の関係に似ている 「はあ?そんな飛躍した無茶苦茶な話がまかり通るわけがないだろ、しかもホストの営業手腕をカルト宗教の洗脳と一緒にするなんて職業差別だ!」と怒りに震えるホストの皆さんもいるだろう。しかし、残念ながら「旧統一教会問題」が注目を集めてから、「ホスト被害者」を「カルト被害者」と同一視する人が増えている。 わかりやすいのは、旧統一教会の解散命令請求がでる見込みだという情報が流れたタイミングで、「弁護士ドットコム」が報じた以下のニュースだ。 《「結婚しよう」ホストにニセ住所の婚姻届を渡され、大金つぎこむ…玄秀盛さんが語る「相談急増」の背景》(弁護士ドットコム10月7日) 記事によれば、今年7月に設立された「青少年を守る父母の連絡協議会」にこんな「相談」が多数寄せられたという。 「娘がホストにハマり、900万円の借金があると言われています」 「ホストに貢ぐために、風俗で働くという娘を止めたい」 「弁護士がいきなり、『お嬢さんがつくったホストクラブへの借金600万円を払ってほしい』と乗り込んできた」 このような親たちの悲痛な叫びを聞いて、「ん?最近こんな話をよく見たな」と思うだろう。そう、マスコミに登場をする旧統一教会の「元信者」「信者の家族」の皆さんが訴えていることとテイストが非常によく似ている。信仰にのめりこむ人も、ホストにのめりこむ女性も、家族からすれば「洗脳されてカネをだまし取られている被害者」なのだ。 実際、このニュースに対して「Yahoo!ニュースエキスパート」の碓井真史・新潟青陵大学大学院教授はこのようにコメントをされている。 =========================
<娘がホストにハマったら→カルト宗教から脱会させるような覚悟をせよ> 悪質で巧みなホストのワナにハマった女性は、カルト宗教の信者のような状態になります。私は両方見ていますが、似ていると感じました』、「悪質で巧みなホストのワナにハマった女性は、カルト宗教の信者のような状態になります。私は両方見ていますが、似ていると感じました」、恐ろしいものだ。
・『「ツケ」でアリ地獄…抜け出せない仕組みを社会が容認 そして、もうひとつホストと新興宗教が重なる部分があるのは、「高額献金」がもたらす悲劇が長年野放しにされ、最近になって「規制」の必要性を訴えられている点だ。 先ほどの記事の中で、「青少年を守る父母の連絡協議会」が入る公益社団法人「日本駆け込み寺」の理事である玄秀盛氏も下記の通り、提言されているが、実は近年、ホストクラブの「売掛」を法律で規制すべきという声が増している。 《一晩で50万円や100万円の支払いになるなんて、普通の女性が支払える金額じゃない。25歳以下の「青少年」に対しては、「売掛禁止条例」を作るしかない。もう東京都に対しては働きかけている》(同上) 「売掛」とは「ツケ」のことだ。ホストクラブの上客は1本何十万円のシャンパンやらを入れる。しかし、若い女性などは当然そんな大金をキャッシュでポーンと払えない。じゃあどうするのかというと、「ツケ」で飲む。その代金はホストクラブやホスト側が肩代わりをして後で女性へ請求する。そこでもし女性が返済できない場合、キャバクラや風俗にあっせんされる。そして細々と返済しながらまた「ツケ飲み」をして、アリ地獄のようにハマっていく。 しかも、近年この「アリ地獄」が犯罪の引き金にもなっている。先日、マッチングアプリで知り合った男性から、恋愛感情を利用し現金約2700万円をだまし取ったとして「頂き女子りりちゃん」と名乗る女が詐欺容疑で逮捕されたことも記憶に新しいだろう。実はこの女性、SNSでこんなことを「告白」している。 ========================= 「20~22歳では300万ホストに使うと褒められて23歳からは1000万が当たり前になって24歳では1000万じゃ足りないって世界になって、もうだれか止めてって思っててはやく抜け出したくて、誰かにおかしいから辞めなって言って欲しかった」 「私は今25歳で風俗と詐欺で何億か稼いで手元に1円も残らずホストさんの応援に使ってしまいました」 ========================= いかがだろう』、「実は近年、ホストクラブの「売掛」を法律で規制すべきという声が増している。 《一晩で50万円や100万円の支払いになるなんて、普通の女性が支払える金額じゃない。25歳以下の「青少年」に対しては、「売掛禁止条例」を作るしかない・・・「私は今25歳で風俗と詐欺で何億か稼いで手元に1円も残らずホストさんの応援に使ってしまいました」、なるほど。
・『マスコミが報じている、「カルトにハマって抜け出せない被害者」のイメージとまるっきり重ならないか。 実はこのような「ホストがもたらす悲劇」は筆者が事件記者をやっていた25年前から「ありふれた話」だった。繁華街を舞台にしいた凄惨な殺人事件などを取材すると、若い母親がホストに狂って子どもをネグレクトしたとか、ホストに風俗へ売られてメンタルをやられた女性などが、かなりの確率で登場した。2010年、大阪市内で母親が自宅アパートに幼児2人を放置して餓死させるという痛ましい事件があったが、これも原因は母親がホスト遊びにハマッていたからだ。 しかし、こんな「悲劇」が何度も繰り返されても、「ホストを規制せよ」という議論は盛り上がらない。ホストの業界団体が政界工作をして自民党とズブズブだったから……なんてわけではなく、過去の旧統一教会報道と同じで、瞬間風速的に注目を集めてもすぐに忘れ去られて、政治家もマスコミも特に問題視しなくなったのだ。むしろ、社会から受け入れられていくようになった。 それを象徴するのが、テレビ局だ。「ホスト相続しちゃいました」(カンテレ)、「田園ボーイズ」(TVK)、「埼玉のホスト」(TBS)、「貴族誕生 −PRINCE OF LEGEND−」(日本テレビ)、「トドメの接吻」(日本テレビ)などホストを題材にしたドラマが定期的に放映されている。 アイドルや若手俳優がホストを演じているうちに、ホストは若い男が一獲千金をつかむ憧れの職業となった。「ホストで借金まみれになる女性もいるにはいるけれど、それは自分の意志で貢いだのものだから自己責任じゃん」という感じで、「恋愛商法」を社会が受け入れるようになっていたのだ』、「こんな「悲劇」が何度も繰り返されても、「ホストを規制せよ」という議論は盛り上がらない・・・過去の旧統一教会報道と同じで、瞬間風速的に注目を集めてもすぐに忘れ去られて、政治家もマスコミも特に問題視しなくなったのだ。むしろ、社会から受け入れられていくようになった。 それを象徴するのが、テレビ局だ。「ホスト相続しちゃいました」(カンテレ)、「田園ボーイズ」(TVK)、「埼玉のホスト」(TBS)、「貴族誕生 −PRINCE OF LEGEND−」(日本テレビ)、「トドメの接吻」(日本テレビ)などホストを題材にしたドラマが定期的に放映されている」、「ホストを題材にしたドラマ」がそれほど多く「放映」されているとは初めて知った。
・『「自分の意志で貢いでいる」という考え方を否定 ところが、山上徹也被告が事件を起こして、「旧統一教会問題」が注目を集めて、「高額献金を払う=マインドコントロール」という話が連日のようにマスコミで騒がれるようになると、風向きが急に変わった。先ほど述べたように「家族」が徐々に声を上げて、被害者支援団体に相談が増えてきたからだ。この流れが、今回の旧統一教会への解散命令請求で一気に加速する恐れがある。 なぜかというと、これまで「恋愛商法」をセーフとしてきた「自分の意志で貢いだものだから自己責任じゃん」というロジックを、日本政府が全否定したからだ。 ご存じのように、マスコミや教団を追及するジャーナリストや弁護士の主張では、旧統一教会の信者が「高額献金」や「霊感商法」をしているのは「マインドコントロール」のせいという説明だ。日本国内の信者は、「韓国にいる韓鶴子総裁」にだまされているのですべて「気の毒な被害者」だという位置付けだ。 だから、信者を洗脳から解いてあげるためにも、1日でも早く教団の宗教法人格をはく奪して、金集めできないほど弱体化させなくてはいけない、というのがジャーナリストや弁護士の主張だ。 これに教団や現役信者たちは真っ向から反論をしている。自分たちはマインドコントロールなど受けていなくて、あくまで「信仰心」に基づいて、自分の意志で献金をしていると主張している。誰かに強要をされたものでもだまされたものではなく、納得して自分が稼いだお金を貢いでいるというのだ。 しかし、今回、文化庁が教団の解散請求を認めるという話だ。それはつまり、指摘される「霊感商法」について「悪質性・継続性・組織性」が認められたということなので、教団側の「自分の意志で貢いでいる」という主張を全否定したということだ。 これは旧統一教会以外の新興宗教にとっても「死刑宣告」をされたようなものだ。 本連載の《旧統一教会の解散請求秒読みで「第2の過払い金バブル」が来る!寄付金・献金が標的に》の中でも触れたように、理屈上はあらゆる新興宗教をターゲットにできる。反政府運動にも利用できる。自民と連立を組む公明党の支持母体・創価学会の被害を訴える「元信者」をたくさん集めて民事訴訟を起こして、政府に迫れば連立も解消させられる。「社会的に問題がある団体」とは関係を断つと岸田首相が宣言している以上、自民党は「問題」を指摘された団体はすべて切らなくてはいけない。 こういうカオスなことになることに加えて、ホスト業界も致命的なダメージだ。 神や天国の存在を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」を国家が否定した。この理屈が通るのなら、ホストから「ナンバーワンになったら一緒になろう」という言葉を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」も当然、否定されなくてはいけないからだ』、「これまで「恋愛商法」をセーフとしてきた「自分の意志で貢いだものだから自己責任じゃん」というロジックを、日本政府が全否定したからだ。 ご存じのように、マスコミや教団を追及するジャーナリストや弁護士の主張では、旧統一教会の信者が「高額献金」や「霊感商法」をしているのは「マインドコントロール」のせいという説明だ。日本国内の信者は、「韓国にいる韓鶴子総裁」にだまされているのですべて「気の毒な被害者」だという位置付けだ。 だから、信者を洗脳から解いてあげるためにも、1日でも早く教団の宗教法人格をはく奪して、金集めできないほど弱体化させなくてはいけない、というのがジャーナリストや弁護士の主張」、「神や天国の存在を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」を国家が否定した。この理屈が通るのなら、ホストから「ナンバーワンになったら一緒になろう」という言葉を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」も当然、否定されなくてはいけないからだ」、確かにその通りだ。
・『わかりやすい「被害」があれば「少数派」は無視? 「そんな無茶苦茶な話があるわけがない」と笑うかもしれない。しかし、他の宗教団体でも当たり前のようにやっている「超自然的な話をされて、それを信じた信者がたくさん献金をする」という宗教団体に対して、国家が「解散命令請求」をするのだ。世界的に見てもかなり珍しい「信教の自由の侵害」を我々は目撃している。 こんな「無茶苦茶」がまかり通る国ならば、「ホスト規制」があってもおかしくはない。 旧統一教会の被害者は「人生を狂わされた」というが、旧統一教会があるので人生が救われたという人もいる。マスコミが取材しないだけで、たくさんいる。 ホストも同じだ。これまで述べたようにホストで人生が狂った女性や、幼い子どもはたくさんいる。しかし、ホストで救われた、ホストクラブが生きがいだという女性もたくさんいる。 今の日本社会ではそういう多角的な見方を、マスコミもしないし、政府もしないし、大衆もしない。わかりやすい「被害」が確認されれば、そういう「少数派」の声は無視していいのだ。それを政府が認めたというのが、実は今回の政府の解散命令請求の本当の「意味」だ。 今はバカな妄想だと笑っているだろう。しかし、今から20年前くらいに、「サラ金に払いすぎた利息が返ってくる時代が来る」なんて言ったら「お前はバカか」と笑われだはずだ。では、今はどうなっている……? 「霊感商法」の次に「恋愛商法」がボロカスに叩かれる日も、そう遠くないのではないか』、「他の宗教団体でも当たり前のようにやっている「超自然的な話をされて、それを信じた信者がたくさん献金をする」という宗教団体に対して、国家が「解散命令請求」をするのだ。世界的に見てもかなり珍しい「信教の自由の侵害」を我々は目撃している。 こんな「無茶苦茶」がまかり通る国ならば、「ホスト規制」があってもおかしくはない」、ただ、宗教でもカルトとなると、西欧諸国でも規制する国はある。日本だけが「無茶」をしている訳ではない。
次に、10月16日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏による「自民党と旧統一教会、50年以上の「おつきあい」 選挙に欠かせなくなった信者ボランティア」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/705815
・『「大事なことは、過去の歴史の事象が、いまにどのようにつながってくるのかということを理解することです」という池上彰さん。大学での集中講義を基にまとめられた『池上彰の日本現代史集中講義』は、旧統一教会と自民党の関わり、政治とメディアの関係など、戦後、現代の日本をつくってきたさまざまな事象を池上さんが現代史の観点から解説しています。今回は、旧統一教会と自民党、特に安倍派との長く深い関係について、本書から一部抜粋・編集して取り上げます』、興味深そうだ。
・『1960年代から続く自民党と旧統一教会の蜜月 第2次大戦後、世界はアメリカを中心とする西側諸国とソ連・東欧を中心とする東側諸国に分裂しました。日本の政治も東西冷戦を反映し、アメリカと仲良くやっていこうという自由民主党と、ソ連・中国との関係を重視する社会党・共産党が対峙するようになりました。 1960年代から1970年代にかけて、日本でも社会党や共産党が勢力を伸ばし、社会主義・共産主義をうたう学生運動が激しさを増していました。いまとなっては信じられないという方も多いでしょうが、やがて日本でも社会主義や共産主義による革命が起きるのではないかという危機意識が、保守派や財界を中心に広まっていたのです。 東西冷戦の最前線である韓国で生まれた旧統一教会は1968年、反共産主義を掲げる政治組織「国際勝共(しょうきょう)連合」を韓国と日本で創設しました。 日本での国際勝共連合の発起人のひとりとして名を連ね、創設を後押ししたとされるのが、安倍晋三元首相の祖父、岸信介元首相です。) 国際勝共連合の名誉会長は笹川良一氏が務めました。1970年代から1990年代にかけて日本船舶振興会のテレビCMに出演し、「一日一善」「人類みな兄弟」と訴えていた姿を覚えている方も多いでしょう。終戦直後、岸信介元首相、児玉誉士夫(よしお)氏とともに「A級戦犯」容疑者として東京巣鴨拘置所に収監され、後にマスコミから「右翼のドン」と称された人物です。 こうして自由民主党の中でも保守派にあたる勢力と旧統一教会は、反共産主義という共通の政治意識で結びつきを強めるようになったのです。 旧統一教会はアメリカにも影響力を広めようとしました。たとえば「ワシントンタイムズ」という新聞の発刊です。 聞いたことがあるような、ないような名前ですね。「ニューヨークタイムズ」「ワシントンポスト」という権威のある有力紙に似せたネーミングです』、「韓国で生まれた旧統一教会は1968年、反共産主義を掲げる政治組織「国際勝共(しょうきょう)連合」を韓国と日本で創設」、歴史は古いようだ。「日本での国際勝共連合の発起人のひとりとして名を連ね、創設を後押ししたとされるのが・・・岸信介元首相・・・国際勝共連合の名誉会長は笹川良一氏が務めました」、なるほど。
・『旧統一教会は選挙を通じて自民党との関わりを強めた ソ連や中国、そして中国との関係を重視する民主党を非難する論調を展開し、共和党への浸透を図りました。のちにドナルド・トランプにも大きな影響を与えたといわれ、こうした活動の資金にも日本で集金された莫大な献金が流れたとされています。 一方、日本では、選挙を通じて自民党との関わりを強めました。教団関係者がボランティアとして選挙運動を支えるようになったのです。 公職選挙法により金銭のやりとりが厳しく制限されている日本の選挙運動では、ボランティアの協力が欠かせません。選挙カーの運転手や「ウグイス嬢」といったスタッフにのみ日当を支払うことができますが、たとえば「○○候補に投票をしてください」と一軒一軒呼びかけの電話をするのは無報酬のボランティアです。配布するビラに一枚一枚、選挙管理委員会のシール(証紙)を貼る作業など、多くの活動にボランティアが必要となります。 一般市民のボランティアを集めるのは本当に大変です。 アメリカなどでは、候補者の政策に賛同した学生や市民が自発的に協力することも珍しくありませんが、日本ではあまり聞いたことがありませんよね。 そこで重宝されるのが組織の力です。共産党や公明党には熱心な支持者がいるため、大勢のスタッフが動員できますし、投票も見込めます。農業や建設業といった政治の影響を受けやすい業界の関連団体にも一定の動員力があります。しかし、こうした基盤を持たない多くの候補者はボランティア集めに苦労しています。) 旧統一教会は選挙運動を支えるボランティアとして信者を送り込み、多くの政治家と関係を築くことに成功しました。選挙のたびに確実に戦力になってくれる旧統一教会は多くの政治家に重宝され、選挙に欠かせない存在になったのです』、「ドナルド・トランプにも大きな影響を与えたといわれ、こうした活動の資金にも日本で集金された莫大な献金が流れた・・・日本では、選挙を通じて自民党との関わりを強めました。教団関係者がボランティアとして選挙運動を支えるようになったのです。 公職選挙法により金銭のやりとりが厳しく制限されている日本の選挙運動では、ボランティアの協力が欠かせません。選挙カーの運転手や「ウグイス嬢」といったスタッフにのみ日当を支払うことができますが、たとえば「○○候補に投票をしてください」と一軒一軒呼びかけの電話をするのは無報酬のボランティアです。配布するビラに一枚一枚、選挙管理委員会のシール(証紙)を貼る作業など、多くの活動にボランティアが必要となります・・・旧統一教会は選挙運動を支えるボランティアとして信者を送り込み、多くの政治家と関係を築くことに成功しました。選挙のたびに確実に戦力になってくれる旧統一教会は多くの政治家に重宝され、選挙に欠かせない存在になった」、なるほど。
・『名前を変更できたのは安倍派のおかげ? 岸信介元首相の時代に始まった旧統一教会と自民党の関わりは、安倍晋太郎元外相を経て、安倍晋三元首相へと引き継がれました。 自民党はもともと自由党と日本民主党という2つの政党が一緒になってできた経緯もあり、実にさまざまな思想を持つ政治家が集まっている組織です。安倍派に代表される保守派もいれば、岸田首相につながるリベラルな政治家もいます。旧統一教会や国際勝共連合が接近したのは、自民党の中でも保守的な勢力である清和会(安倍派)でした。 2015年、旧統一教会は世界平和統一家庭連合へと名称を変更しました。かつて霊感商法で有名になってしまった過去を水に流そうとしたのでしょうか。教団は1997年から名称変更を文化庁に相談していました。 ようやく名称変更が認められた2015年は第2次安倍内閣時代。当時の下村博文文部科学大臣は安倍派の重鎮です。下村氏を巡っては、旧統一教会の関連団体から推薦状を受け取ったこと、選挙の際に旧統一教会や関連団体のボランティアの協力を受けたことなどが報道されています。 かねて安倍派と深い関係にあった旧統一教会が文部科学大臣に影響力を及ぼし、自分たちに有利になる名称変更を勝ち取った。そう勘ぐられるのも無理はありません。 旧統一教会との関わりを指摘された際、「名前が変わっていたからわからなかった」と主張した政治家もいます。 本当に別の団体だと考えた人もいるかもしれませんが、少なくとも、改名によって言い訳、言い逃れの余地ができてしまったことは間違いありません。 宗教団体や信者が政治に関わることに何も問題はありません。ただし、国が特定の宗教団体に対して有利なはからいをすれば政教分離に反します。仮に法的に問題がないとしても、そもそも反社会的な活動で社会問題となった宗教団体の協力を受けるという時点で、政治家のモラルが問われそうです。 旧統一教会との関わりを取り沙汰されている政治家たちは、宗教団体をただ「票」としてしか捉えていないのかもしれません。そうした脇の甘い意識ゆえに足をすくわれてしまったと言えるのではないでしょうか。 そもそも、政策で政治家を選び、選挙を積極的に手伝おうという人が大勢いれば、疑惑を招くような団体の動員力が当てにされることも減るでしょう。政治家のモラルだけでなく、国民の政治への関わり方も、この問題の根幹にありそうです』、「2015年、旧統一教会は世界平和統一家庭連合へと名称を変更しました。かつて霊感商法で有名になってしまった過去を水に流そうとしたのでしょうか。教団は1997年から名称変更を文化庁に相談していました。 ようやく名称変更が認められた2015年は第2次安倍内閣時代。当時の下村博文文部科学大臣は安倍派の重鎮です。下村氏を巡っては、旧統一教会の関連団体から推薦状を受け取ったこと、選挙の際に旧統一教会や関連団体のボランティアの協力を受けたことなどが報道されています。 かねて安倍派と深い関係にあった旧統一教会が文部科学大臣に影響力を及ぼし、自分たちに有利になる名称変更を勝ち取った・・・少なくとも、改名によって言い訳、言い逃れの余地ができてしまったことは間違いありません・・・国が特定の宗教団体に対して有利なはからいをすれば政教分離に反します。仮に法的に問題がないとしても、そもそも反社会的な活動で社会問題となった宗教団体の協力を受けるという時点で、政治家のモラルが問われそうです。 旧統一教会との関わりを取り沙汰されている政治家たちは、宗教団体をただ「票」としてしか捉えていないのかもしれません。そうした脇の甘い意識ゆえに足をすくわれてしまったと言えるのではないでしょうか」、その通りだ。
第三に、10月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「解散命令請求じゃない!旧統一教会と政治のズブズブを「絶縁」させる唯一の方法とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330715
・『文部科学省が、旧統一教会に対する解散命令を東京地裁に請求した。命令が確定した場合は教団の宗教法人格が取り消される。ただし、安倍元首相の暗殺事件を機に問題視されてきた「政治と宗教」の関係が、これで解消されるかは疑問が残る。自民党をはじめとする政党と教団の関係は複雑に入り組んでいるからだ。では、この「あしき慣行」はどうすれば失われるのか』、興味深そうだ。
・『旧統一教会への「解散命令」で「政治と宗教」の問題は解決するのか? 文部科学省は10月13日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会、以下「教団」)に対する解散命令を東京地方裁判所に請求した。 文科省はこれまで、教団を巡る高額な献金や霊感商法の問題について、宗教法人法に基づく「質問権」の行使によって実態の把握を目指してきた。また、被害を訴える元信者らへの聞き取り調査も進めてきた。 ここにきて解散命令を出したということは、教団に解散を請求するのに十分な証拠がそろったとみられる。そして今後は、東京地裁が解散命令の適否を司法判断する。教団側はこれに強く反発し、最高裁まで争う構えだ。解散命令の確定まで長期間を要する可能性がある。 教団はかつて、高額な壺や印鑑を信者に売りつけて資金を集めていた。それが明るみに出て批判を浴びた後は、「勧誘」という真の目的を隠して一般市民に近づき、親しくなってから入信させる巧妙な手法に切り替えた。入信させた後で「先祖の因縁で不幸になる」などと恐怖を与え、「逃れるには多額の献金が必要」などと迫るのだ。 こうした悪質な手法の被害者といえるのは、信者本人だけではない。安倍晋三元首相を銃撃したとして殺人罪などで起訴されている山上徹也被告など、親が教団に高額な献金をしたことで家族が崩壊し、人生を破壊された「宗教2世」の問題も引き起こしている。 このような犯罪行為や人権侵害は厳しく罰せられるべきだ。また、教団の被害者救済は何よりも優先されるべきことだ(本連載第309回・p4)。教団への解散命令の請求は、そのための大きな一歩であろう。 ただし解散命令が確定しても、教団の宗教法人格が取り消され、税制上の優遇措置などが失われるだけだ。「任意団体」として活動を続けることは可能である。この処分だけで、長年問題視されてきた「政治と宗教」の問題が解決するかは疑問である。 岸田文雄首相や茂木敏充自由民主党幹事長は「自民党は教団との関係を完全に絶った」と主張しているが、それは本当なのだろうか。教団と政治の関係は複雑に入り組んでおり、簡単に切れるものではないように思える』、「今後は、東京地裁が解散命令の適否を司法判断する。教団側はこれに強く反発し、最高裁まで争う構えだ。解散命令の確定まで長期間を要する可能性がある・・・教団はかつて、高額な壺や印鑑を信者に売りつけて資金を集めていた。それが明るみに出て批判を浴びた後は、「勧誘」という真の目的を隠して一般市民に近づき、親しくなってから入信させる巧妙な手法に切り替えた。入信させた後で「先祖の因縁で不幸になる」などと恐怖を与え、「逃れるには多額の献金が必要」などと迫るのだ。 こうした悪質な手法の被害者といえるのは、信者本人だけではない・・・山上徹也被告など、親が教団に高額な献金をしたことで家族が崩壊し、人生を破壊された「宗教2世」の問題も引き起こしている・・・解散命令が確定しても、教団の宗教法人格が取り消され、税制上の優遇措置などが失われるだけだ。「任意団体」として活動を続けることは可能である。この処分だけで、長年問題視されてきた「政治と宗教」の問題が解決するかは疑問である。 岸田文雄首相や茂木敏充自由民主党幹事長は「自民党は教団との関係を完全に絶った」と主張しているが、それは本当なのだろうか。教団と政治の関係は複雑に入り組んでおり、簡単に切れるものではないように思える」、その通りだ。
・『教団の信者が「政治家の秘書」に政治と宗教「ズブズブ」の実態 過去の関係を振り返ってみよう。政治家が教団関連のイベントに祝電を送る。あるいは出席してあいさつする。逆に、政治家が団体関係者に政治資金パーティーの券を購入してもらう。こうした「議員と支持者」のような付き合いは、これまで当然のように行われてきた。 教団の信者が、国会議員の公設秘書や私設秘書として雇用されるケースもあった。信者が選挙の応援をボランティアで行うこともあった。選挙スタッフがやりたがらないような雑用も熱心にやるので重宝されてきたのだ。 その関係は中央だけでなく、地方の政界にも広がっていた。都道府県議会や市議会議員、地方の政党、後援会、支持団体なども教団と深く関わってきた。地方自治体が後援する各種イベントの裏側で、教団と政治家が結び付いている例も見られた。 例えば「世界平和と日韓友好」を掲げて、若者らが自転車で走行する「ピースロード」というイベント。教団の関連団体が共催している企画だが、その実行委員会には地元選出の国会議員や地方議員が参加していた。 また、教団は「平和ボランティア隊」を組織し、日本全国で自然災害からの復興支援を実施。2011年の東日本大震災から始まり、さまざまな大規模災害の現場にボランティア隊を派遣してきた。 ボランティア隊は教団であることを隠さず、災害現場での勤勉な働きぶりで高く評価された。19年に台風15号が上陸して記録的な暴風を巻き起こしたときは、大規模停電などの被害が出た千葉県を支援。南房総市の社会福祉協議会(社協)が「世界平和統一家庭連合 平和ボランティア隊 UPeace」宛てに感謝状を贈った。 この「社協」とは全国に約1800ある団体で、地域社会における民間福祉事業やボランティア活動の推進支援を行っている。教団は、この社協への寄付も行ってきた。一般的に、社協の運営資金は地方自治体の予算からの補助金だ。しかし、財政赤字に悩む自治体もあり、社協への補助金は十分ではない。そのため、教団からの寄付は主要な財源となってきたのだ。 要するに、教団は国政だけでなく、地方の行政・福祉などにも深く関わってきた。議員や自治体は、教団から票や寄付金、ボランティアを得る。そして教団は社会的信用を得る。安倍元首相の暗殺事件が起こるまでは、そうした「ギブ・アンド・テイク」の関係が出来上がっていたのだ』、「政治家が教団関連のイベントに祝電を送る。あるいは出席してあいさつする。逆に、政治家が団体関係者に政治資金パーティーの券を購入してもらう。こうした「議員と支持者」のような付き合いは、これまで当然のように行われてきた。 教団の信者が、国会議員の公設秘書や私設秘書として雇用されるケースもあった。信者が選挙の応援をボランティアで行うこともあった。選挙スタッフがやりたがらないような雑用も熱心にやるので重宝されてきたのだ。 その関係は中央だけでなく、地方の政界にも広がっていた。都道府県議会や市議会議員、地方の政党、後援会、支持団体なども教団と深く関わってきた。地方自治体が後援する各種イベントの裏側で、教団と政治家が結び付いている例も見られた・・・地方自治体が後援する各種イベントの裏側で、教団と政治家が結び付いている例も見られた。 例えば「世界平和と日韓友好」を掲げて、若者らが自転車で走行する「ピースロード」というイベント。教団の関連団体が共催している企画だが、その実行委員会には地元選出の国会議員や地方議員が参加していた。 また、教団は「平和ボランティア隊」を組織し、日本全国で自然災害からの復興支援を実施。2011年の東日本大震災から始まり、さまざまな大規模災害の現場にボランティア隊を派遣してきた。 ボランティア隊は教団であることを隠さず、災害現場での勤勉な働きぶりで高く評価された。19年に台風15号が上陸して記録的な暴風を巻き起こしたときは、大規模停電などの被害が出た千葉県を支援。南房総市の社会福祉協議会(社協)が「世界平和統一家庭連合 平和ボランティア隊 UPeace」宛てに感謝状を贈った。 この「社協」とは全国に約1800ある団体で、地域社会における民間福祉事業やボランティア活動の推進支援を行っている。教団は、この社協への寄付も行ってきた。一般的に、社協の運営資金は地方自治体の予算からの補助金だ。しかし、財政赤字に悩む自治体もあり、社協への補助金は十分ではない。そのため、教団からの寄付は主要な財源となってきたのだ。要するに、教団は国政だけでなく、地方の行政・福祉などにも深く関わってきた。議員や自治体は、教団から票や寄付金、ボランティアを得る。そして教団は社会的信用を得る。安倍元首相の暗殺事件が起こるまでは、そうした「ギブ・アンド・テイク」の関係が出来上がっていたのだ」、地方でも「教団」ががっちりと食い込んでいる様子は、想像以上で、根絶は容易ではなさそうだ。
・『「政治と宗教」のつながりは何らかの形で残るだろう そして事件後、教団と政治の関係が世論の批判にさらされると、政党などは一斉に教団との関係解消に動いた。そして「教団との関係は一切ない」という旨の発表をし始めた。ただ繰り返しになるが、政党などが「自浄作用」を働かせ、これだけ深く政治に食い込んだ団体と関係を切ることは難しいと筆者は考える。 というのも、国会議員の選挙を実質的に仕切るのは、選挙区の首長、地方議員、スタッフらである(第314回・p4)。その中には、信者であることを隠して紛れ込んでいる人がいるかもしれない。 そうした末端の信者は、教団の教義を純粋に信じて、政治・行政やボランティアの活動に一生懸命取り組んでいる人たちだ。前述の通り、選挙スタッフがやりたがらないような雑用もこなすので、働きぶりも優秀だ。そうした人々を探し出して排除するのは至難の業である。 また、過去に教団の支援を得ていた国会議員には、選挙に弱い若手も多かった。自力での票集めが難しいからこそ、教団の力を借りたのだ。実際に自民党では「各業界団体の票だけでは足りない議員について、教団が認めてくれれば、その票を割り振る」ことをしていたという(第309回・p4)。 そうした“ギリギリ当選”を続けてきた議員が、一度票をもらった団体との関係を簡単に断ち切れるのだろうか。「政治家は、選挙に落ちればタダの人」である。 さらに、教団が保守的な思想の団体であることも重要なポイントだ。仮に解散命令が確定しても、教団関係者が左派野党に投票する可能性は極めて低いといえる(第309回・p3)。信者が「勝手に」自民党の政治家を応援し、選挙で一票を投じるかもしれないのだ。そして、それを止めることは誰にもできない。 日本では「政教分離」の原則の下、宗教団体が政治活動を行うこと自体は違法ではない(第309回・p5)。また、自由民主主義社会における、有権者の権利は守られねばならない。そのため、信者の「投票先」まで制限することは現実的に難しい。これを実行しようとすると、プライバシーや人権の侵害になり、宗教弾圧につながる危険性もある。 そのため、今後も何らかの形で「政治と宗教」のつながりは残っていくだろう。では、この「あしき慣行」はどうすれば失われるのか』、「末端の信者は、教団の教義を純粋に信じて、政治・行政やボランティアの活動に一生懸命取り組んでいる人たちだ。前述の通り、選挙スタッフがやりたがらないような雑用もこなすので、働きぶりも優秀だ。そうした人々を探し出して排除するのは至難の業である。 また、過去に教団の支援を得ていた国会議員には、選挙に弱い若手も多かった。自力での票集めが難しいからこそ、教団の力を借りたのだ・・・今後も何らかの形で「政治と宗教」のつながりは残っていくだろう。では、この「あしき慣行」はどうすれば失われるのか」、残念ながら「失われる」のは殆ど期待できない。
・『「政治と宗教」の問題を解決する唯一の方法とは? その答えは極めてシンプルだ。国民が政治に関心を持ち、投票に積極的に参加し、「宗教団体による組織票」が選挙の勝敗を左右しない状況をつくることである。 何しろ、21年に行われた第49回衆議院議員総選挙における投票率は55.93%にとどまっている(総務省調べ)。そうした状況下では、政治家が有権者にさまざまな便宜を図り、その代わりに自身に投票してもらう「日本型どぶ板選挙」がいまだに有効な集票手段となる(第309回・p4)。 この「日本型どぶ板選挙」とは、政治家が選挙で票を得るために、どんな所へでも訪ねていき、どんなことでもする選挙を指す。勝つためなら何でもありだ。その結果、さまざまな集票団体に宗教団体が紛れ込み、政治との関係が深まってきた経緯がある。 そもそも多くの政党の議員は、初めて党公認の候補者となって選挙に出馬する前から宗教団体と関係があるわけではない。候補者として選挙区に入るとき、党や派閥の幹部、地元のベテランのスタッフから、支持団体など票を入れてくれる組織や人にあいさつをするように指示される。 候補者はわけもわからず、言われるがまま、選挙に勝つために多くの組織や人に頭を下げる。こうした支持団体に、教団をはじめとする宗教団体が紛れ込んでいる。そこから「ギブ・アンド・テイク」の付き合いが始まり、集票において便宜を図ってもらうようになる。 とはいえ、選挙において、政党の政策や政治家の人物像を見極めて投票するのは国民である。一人一人が有権者として責任ある投票行動ができるようになり、「集票マシーン」としての宗教団体が機能しなくなれば、どうなるだろうか。 政党・政治家と宗教団体の双方にとって、接点を持つ意味は薄れるはずだ。前述した「勝手に応援(投票)する信者」はいるかもしれないが、組織的なつながりは次第に解消していくだろう。他の支持団体との関係も含め、「日本型どぶ板選挙」は終わりに近づくことになる。 安倍元首相の暗殺事件以降、「政治と宗教」関連のニュースを見るたびに「まったく最近の政治家は…」と批判してきた人は多いかもしれない。だが、そうした人々がどれだけ投票に足を運んでいるだろうか。日本の政治を変えるには、むしろ国民自身が変わらなければならないということだ』、「日本の政治を変えるには、むしろ国民自身が変わらなければならないということだ」、筋論ではあるが、百年河清を待つようなものだ。
先ずは、10月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「旧統一教会への解散請求…「次の標的はホストクラブ」をデタラメと笑えない理由」を紹介しよう。
・『旧統一教会の次に「解散」させられるものとは 10月13日にも、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に対する解散命令請求がいよいよ出される見込みだという。 「霊感商法の被害者が救われる第一歩だ」と喜んでいる人も多いだろうが、残念ながら今回の動きは「自民党は旧統一教会とスパッと決別しました」という選挙前のパフォーマンス的な意味合いが強く、被害者救済につながるものではない。 これから始まる長い裁判の間、教団側は「任意団体」に格下げされることに備えて、当然ながら、財産を韓国本部に移したり、組織もスリム化していく。これまで礼拝や集会に使ってきた建物などもすべて処分されてしまう可能性もある。そしてカネもなくなり、人もいなくなった「宗教サークル」に被害者救済が十分にできるわけがない。 例えば、ジャニーズ事務所が今このタイミングで解散して市民団体になって、300人以上の被害を訴える人々に満足のいく補償ができるのかを想像してみたらいいだろう。 つまり、今回の解散命令は「世論」と「被害者」をスッキリさせる「ガス抜き」にしかならないのだ。「ガス抜き」ならまだマシだ。最悪、日本社会にさまざま災いと混乱を生み出す「パンドラの箱」になってしまう恐れもあるのだ。 それは具体的に何か。個人的に危ないと思っているのは、ホストクラブに代表される「恋愛商法」の規制だ。 ご存じのように、ホストの世界では「客と店員」という関係を超越して、客に恋心を抱かせて「オレがナンバーワンになるのを一緒に支えてほしい」なんて甘い言葉をささやいて、大金を貢がせる「色恋営業」と呼ばれる稼ぎ方がある。 これが「マインドコントロールで金をだましとる詐欺」として規制の対象となっていく恐れがあるのだ』、「今回の解散命令は「世論」と「被害者」をスッキリさせる「ガス抜き」にしかならないのだ。「ガス抜き」ならまだマシだ。最悪、日本社会にさまざま災いと混乱を生み出す「パンドラの箱」になってしまう恐れもあるのだ。 それは具体的に何か。個人的に危ないと思っているのは、ホストクラブに代表される「恋愛商法」の規制だ。 ご存じのように、ホストの世界では「客と店員」という関係を超越して、客に恋心を抱かせて「オレがナンバーワンになるのを一緒に支えてほしい」なんて甘い言葉をささやいて、大金を貢がせる「色恋営業」と呼ばれる稼ぎ方がある。 これが「マインドコントロールで金をだましとる詐欺」として規制の対象となっていく恐れがある」、なるほど。
・『ホストクラブと客の関係に似ている 「はあ?そんな飛躍した無茶苦茶な話がまかり通るわけがないだろ、しかもホストの営業手腕をカルト宗教の洗脳と一緒にするなんて職業差別だ!」と怒りに震えるホストの皆さんもいるだろう。しかし、残念ながら「旧統一教会問題」が注目を集めてから、「ホスト被害者」を「カルト被害者」と同一視する人が増えている。 わかりやすいのは、旧統一教会の解散命令請求がでる見込みだという情報が流れたタイミングで、「弁護士ドットコム」が報じた以下のニュースだ。 《「結婚しよう」ホストにニセ住所の婚姻届を渡され、大金つぎこむ…玄秀盛さんが語る「相談急増」の背景》(弁護士ドットコム10月7日) 記事によれば、今年7月に設立された「青少年を守る父母の連絡協議会」にこんな「相談」が多数寄せられたという。 「娘がホストにハマり、900万円の借金があると言われています」 「ホストに貢ぐために、風俗で働くという娘を止めたい」 「弁護士がいきなり、『お嬢さんがつくったホストクラブへの借金600万円を払ってほしい』と乗り込んできた」 このような親たちの悲痛な叫びを聞いて、「ん?最近こんな話をよく見たな」と思うだろう。そう、マスコミに登場をする旧統一教会の「元信者」「信者の家族」の皆さんが訴えていることとテイストが非常によく似ている。信仰にのめりこむ人も、ホストにのめりこむ女性も、家族からすれば「洗脳されてカネをだまし取られている被害者」なのだ。 実際、このニュースに対して「Yahoo!ニュースエキスパート」の碓井真史・新潟青陵大学大学院教授はこのようにコメントをされている。 =========================
<娘がホストにハマったら→カルト宗教から脱会させるような覚悟をせよ> 悪質で巧みなホストのワナにハマった女性は、カルト宗教の信者のような状態になります。私は両方見ていますが、似ていると感じました』、「悪質で巧みなホストのワナにハマった女性は、カルト宗教の信者のような状態になります。私は両方見ていますが、似ていると感じました」、恐ろしいものだ。
・『「ツケ」でアリ地獄…抜け出せない仕組みを社会が容認 そして、もうひとつホストと新興宗教が重なる部分があるのは、「高額献金」がもたらす悲劇が長年野放しにされ、最近になって「規制」の必要性を訴えられている点だ。 先ほどの記事の中で、「青少年を守る父母の連絡協議会」が入る公益社団法人「日本駆け込み寺」の理事である玄秀盛氏も下記の通り、提言されているが、実は近年、ホストクラブの「売掛」を法律で規制すべきという声が増している。 《一晩で50万円や100万円の支払いになるなんて、普通の女性が支払える金額じゃない。25歳以下の「青少年」に対しては、「売掛禁止条例」を作るしかない。もう東京都に対しては働きかけている》(同上) 「売掛」とは「ツケ」のことだ。ホストクラブの上客は1本何十万円のシャンパンやらを入れる。しかし、若い女性などは当然そんな大金をキャッシュでポーンと払えない。じゃあどうするのかというと、「ツケ」で飲む。その代金はホストクラブやホスト側が肩代わりをして後で女性へ請求する。そこでもし女性が返済できない場合、キャバクラや風俗にあっせんされる。そして細々と返済しながらまた「ツケ飲み」をして、アリ地獄のようにハマっていく。 しかも、近年この「アリ地獄」が犯罪の引き金にもなっている。先日、マッチングアプリで知り合った男性から、恋愛感情を利用し現金約2700万円をだまし取ったとして「頂き女子りりちゃん」と名乗る女が詐欺容疑で逮捕されたことも記憶に新しいだろう。実はこの女性、SNSでこんなことを「告白」している。 ========================= 「20~22歳では300万ホストに使うと褒められて23歳からは1000万が当たり前になって24歳では1000万じゃ足りないって世界になって、もうだれか止めてって思っててはやく抜け出したくて、誰かにおかしいから辞めなって言って欲しかった」 「私は今25歳で風俗と詐欺で何億か稼いで手元に1円も残らずホストさんの応援に使ってしまいました」 ========================= いかがだろう』、「実は近年、ホストクラブの「売掛」を法律で規制すべきという声が増している。 《一晩で50万円や100万円の支払いになるなんて、普通の女性が支払える金額じゃない。25歳以下の「青少年」に対しては、「売掛禁止条例」を作るしかない・・・「私は今25歳で風俗と詐欺で何億か稼いで手元に1円も残らずホストさんの応援に使ってしまいました」、なるほど。
・『マスコミが報じている、「カルトにハマって抜け出せない被害者」のイメージとまるっきり重ならないか。 実はこのような「ホストがもたらす悲劇」は筆者が事件記者をやっていた25年前から「ありふれた話」だった。繁華街を舞台にしいた凄惨な殺人事件などを取材すると、若い母親がホストに狂って子どもをネグレクトしたとか、ホストに風俗へ売られてメンタルをやられた女性などが、かなりの確率で登場した。2010年、大阪市内で母親が自宅アパートに幼児2人を放置して餓死させるという痛ましい事件があったが、これも原因は母親がホスト遊びにハマッていたからだ。 しかし、こんな「悲劇」が何度も繰り返されても、「ホストを規制せよ」という議論は盛り上がらない。ホストの業界団体が政界工作をして自民党とズブズブだったから……なんてわけではなく、過去の旧統一教会報道と同じで、瞬間風速的に注目を集めてもすぐに忘れ去られて、政治家もマスコミも特に問題視しなくなったのだ。むしろ、社会から受け入れられていくようになった。 それを象徴するのが、テレビ局だ。「ホスト相続しちゃいました」(カンテレ)、「田園ボーイズ」(TVK)、「埼玉のホスト」(TBS)、「貴族誕生 −PRINCE OF LEGEND−」(日本テレビ)、「トドメの接吻」(日本テレビ)などホストを題材にしたドラマが定期的に放映されている。 アイドルや若手俳優がホストを演じているうちに、ホストは若い男が一獲千金をつかむ憧れの職業となった。「ホストで借金まみれになる女性もいるにはいるけれど、それは自分の意志で貢いだのものだから自己責任じゃん」という感じで、「恋愛商法」を社会が受け入れるようになっていたのだ』、「こんな「悲劇」が何度も繰り返されても、「ホストを規制せよ」という議論は盛り上がらない・・・過去の旧統一教会報道と同じで、瞬間風速的に注目を集めてもすぐに忘れ去られて、政治家もマスコミも特に問題視しなくなったのだ。むしろ、社会から受け入れられていくようになった。 それを象徴するのが、テレビ局だ。「ホスト相続しちゃいました」(カンテレ)、「田園ボーイズ」(TVK)、「埼玉のホスト」(TBS)、「貴族誕生 −PRINCE OF LEGEND−」(日本テレビ)、「トドメの接吻」(日本テレビ)などホストを題材にしたドラマが定期的に放映されている」、「ホストを題材にしたドラマ」がそれほど多く「放映」されているとは初めて知った。
・『「自分の意志で貢いでいる」という考え方を否定 ところが、山上徹也被告が事件を起こして、「旧統一教会問題」が注目を集めて、「高額献金を払う=マインドコントロール」という話が連日のようにマスコミで騒がれるようになると、風向きが急に変わった。先ほど述べたように「家族」が徐々に声を上げて、被害者支援団体に相談が増えてきたからだ。この流れが、今回の旧統一教会への解散命令請求で一気に加速する恐れがある。 なぜかというと、これまで「恋愛商法」をセーフとしてきた「自分の意志で貢いだものだから自己責任じゃん」というロジックを、日本政府が全否定したからだ。 ご存じのように、マスコミや教団を追及するジャーナリストや弁護士の主張では、旧統一教会の信者が「高額献金」や「霊感商法」をしているのは「マインドコントロール」のせいという説明だ。日本国内の信者は、「韓国にいる韓鶴子総裁」にだまされているのですべて「気の毒な被害者」だという位置付けだ。 だから、信者を洗脳から解いてあげるためにも、1日でも早く教団の宗教法人格をはく奪して、金集めできないほど弱体化させなくてはいけない、というのがジャーナリストや弁護士の主張だ。 これに教団や現役信者たちは真っ向から反論をしている。自分たちはマインドコントロールなど受けていなくて、あくまで「信仰心」に基づいて、自分の意志で献金をしていると主張している。誰かに強要をされたものでもだまされたものではなく、納得して自分が稼いだお金を貢いでいるというのだ。 しかし、今回、文化庁が教団の解散請求を認めるという話だ。それはつまり、指摘される「霊感商法」について「悪質性・継続性・組織性」が認められたということなので、教団側の「自分の意志で貢いでいる」という主張を全否定したということだ。 これは旧統一教会以外の新興宗教にとっても「死刑宣告」をされたようなものだ。 本連載の《旧統一教会の解散請求秒読みで「第2の過払い金バブル」が来る!寄付金・献金が標的に》の中でも触れたように、理屈上はあらゆる新興宗教をターゲットにできる。反政府運動にも利用できる。自民と連立を組む公明党の支持母体・創価学会の被害を訴える「元信者」をたくさん集めて民事訴訟を起こして、政府に迫れば連立も解消させられる。「社会的に問題がある団体」とは関係を断つと岸田首相が宣言している以上、自民党は「問題」を指摘された団体はすべて切らなくてはいけない。 こういうカオスなことになることに加えて、ホスト業界も致命的なダメージだ。 神や天国の存在を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」を国家が否定した。この理屈が通るのなら、ホストから「ナンバーワンになったら一緒になろう」という言葉を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」も当然、否定されなくてはいけないからだ』、「これまで「恋愛商法」をセーフとしてきた「自分の意志で貢いだものだから自己責任じゃん」というロジックを、日本政府が全否定したからだ。 ご存じのように、マスコミや教団を追及するジャーナリストや弁護士の主張では、旧統一教会の信者が「高額献金」や「霊感商法」をしているのは「マインドコントロール」のせいという説明だ。日本国内の信者は、「韓国にいる韓鶴子総裁」にだまされているのですべて「気の毒な被害者」だという位置付けだ。 だから、信者を洗脳から解いてあげるためにも、1日でも早く教団の宗教法人格をはく奪して、金集めできないほど弱体化させなくてはいけない、というのがジャーナリストや弁護士の主張」、「神や天国の存在を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」を国家が否定した。この理屈が通るのなら、ホストから「ナンバーワンになったら一緒になろう」という言葉を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」も当然、否定されなくてはいけないからだ」、確かにその通りだ。
・『わかりやすい「被害」があれば「少数派」は無視? 「そんな無茶苦茶な話があるわけがない」と笑うかもしれない。しかし、他の宗教団体でも当たり前のようにやっている「超自然的な話をされて、それを信じた信者がたくさん献金をする」という宗教団体に対して、国家が「解散命令請求」をするのだ。世界的に見てもかなり珍しい「信教の自由の侵害」を我々は目撃している。 こんな「無茶苦茶」がまかり通る国ならば、「ホスト規制」があってもおかしくはない。 旧統一教会の被害者は「人生を狂わされた」というが、旧統一教会があるので人生が救われたという人もいる。マスコミが取材しないだけで、たくさんいる。 ホストも同じだ。これまで述べたようにホストで人生が狂った女性や、幼い子どもはたくさんいる。しかし、ホストで救われた、ホストクラブが生きがいだという女性もたくさんいる。 今の日本社会ではそういう多角的な見方を、マスコミもしないし、政府もしないし、大衆もしない。わかりやすい「被害」が確認されれば、そういう「少数派」の声は無視していいのだ。それを政府が認めたというのが、実は今回の政府の解散命令請求の本当の「意味」だ。 今はバカな妄想だと笑っているだろう。しかし、今から20年前くらいに、「サラ金に払いすぎた利息が返ってくる時代が来る」なんて言ったら「お前はバカか」と笑われだはずだ。では、今はどうなっている……? 「霊感商法」の次に「恋愛商法」がボロカスに叩かれる日も、そう遠くないのではないか』、「他の宗教団体でも当たり前のようにやっている「超自然的な話をされて、それを信じた信者がたくさん献金をする」という宗教団体に対して、国家が「解散命令請求」をするのだ。世界的に見てもかなり珍しい「信教の自由の侵害」を我々は目撃している。 こんな「無茶苦茶」がまかり通る国ならば、「ホスト規制」があってもおかしくはない」、ただ、宗教でもカルトとなると、西欧諸国でも規制する国はある。日本だけが「無茶」をしている訳ではない。
次に、10月16日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏による「自民党と旧統一教会、50年以上の「おつきあい」 選挙に欠かせなくなった信者ボランティア」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/705815
・『「大事なことは、過去の歴史の事象が、いまにどのようにつながってくるのかということを理解することです」という池上彰さん。大学での集中講義を基にまとめられた『池上彰の日本現代史集中講義』は、旧統一教会と自民党の関わり、政治とメディアの関係など、戦後、現代の日本をつくってきたさまざまな事象を池上さんが現代史の観点から解説しています。今回は、旧統一教会と自民党、特に安倍派との長く深い関係について、本書から一部抜粋・編集して取り上げます』、興味深そうだ。
・『1960年代から続く自民党と旧統一教会の蜜月 第2次大戦後、世界はアメリカを中心とする西側諸国とソ連・東欧を中心とする東側諸国に分裂しました。日本の政治も東西冷戦を反映し、アメリカと仲良くやっていこうという自由民主党と、ソ連・中国との関係を重視する社会党・共産党が対峙するようになりました。 1960年代から1970年代にかけて、日本でも社会党や共産党が勢力を伸ばし、社会主義・共産主義をうたう学生運動が激しさを増していました。いまとなっては信じられないという方も多いでしょうが、やがて日本でも社会主義や共産主義による革命が起きるのではないかという危機意識が、保守派や財界を中心に広まっていたのです。 東西冷戦の最前線である韓国で生まれた旧統一教会は1968年、反共産主義を掲げる政治組織「国際勝共(しょうきょう)連合」を韓国と日本で創設しました。 日本での国際勝共連合の発起人のひとりとして名を連ね、創設を後押ししたとされるのが、安倍晋三元首相の祖父、岸信介元首相です。) 国際勝共連合の名誉会長は笹川良一氏が務めました。1970年代から1990年代にかけて日本船舶振興会のテレビCMに出演し、「一日一善」「人類みな兄弟」と訴えていた姿を覚えている方も多いでしょう。終戦直後、岸信介元首相、児玉誉士夫(よしお)氏とともに「A級戦犯」容疑者として東京巣鴨拘置所に収監され、後にマスコミから「右翼のドン」と称された人物です。 こうして自由民主党の中でも保守派にあたる勢力と旧統一教会は、反共産主義という共通の政治意識で結びつきを強めるようになったのです。 旧統一教会はアメリカにも影響力を広めようとしました。たとえば「ワシントンタイムズ」という新聞の発刊です。 聞いたことがあるような、ないような名前ですね。「ニューヨークタイムズ」「ワシントンポスト」という権威のある有力紙に似せたネーミングです』、「韓国で生まれた旧統一教会は1968年、反共産主義を掲げる政治組織「国際勝共(しょうきょう)連合」を韓国と日本で創設」、歴史は古いようだ。「日本での国際勝共連合の発起人のひとりとして名を連ね、創設を後押ししたとされるのが・・・岸信介元首相・・・国際勝共連合の名誉会長は笹川良一氏が務めました」、なるほど。
・『旧統一教会は選挙を通じて自民党との関わりを強めた ソ連や中国、そして中国との関係を重視する民主党を非難する論調を展開し、共和党への浸透を図りました。のちにドナルド・トランプにも大きな影響を与えたといわれ、こうした活動の資金にも日本で集金された莫大な献金が流れたとされています。 一方、日本では、選挙を通じて自民党との関わりを強めました。教団関係者がボランティアとして選挙運動を支えるようになったのです。 公職選挙法により金銭のやりとりが厳しく制限されている日本の選挙運動では、ボランティアの協力が欠かせません。選挙カーの運転手や「ウグイス嬢」といったスタッフにのみ日当を支払うことができますが、たとえば「○○候補に投票をしてください」と一軒一軒呼びかけの電話をするのは無報酬のボランティアです。配布するビラに一枚一枚、選挙管理委員会のシール(証紙)を貼る作業など、多くの活動にボランティアが必要となります。 一般市民のボランティアを集めるのは本当に大変です。 アメリカなどでは、候補者の政策に賛同した学生や市民が自発的に協力することも珍しくありませんが、日本ではあまり聞いたことがありませんよね。 そこで重宝されるのが組織の力です。共産党や公明党には熱心な支持者がいるため、大勢のスタッフが動員できますし、投票も見込めます。農業や建設業といった政治の影響を受けやすい業界の関連団体にも一定の動員力があります。しかし、こうした基盤を持たない多くの候補者はボランティア集めに苦労しています。) 旧統一教会は選挙運動を支えるボランティアとして信者を送り込み、多くの政治家と関係を築くことに成功しました。選挙のたびに確実に戦力になってくれる旧統一教会は多くの政治家に重宝され、選挙に欠かせない存在になったのです』、「ドナルド・トランプにも大きな影響を与えたといわれ、こうした活動の資金にも日本で集金された莫大な献金が流れた・・・日本では、選挙を通じて自民党との関わりを強めました。教団関係者がボランティアとして選挙運動を支えるようになったのです。 公職選挙法により金銭のやりとりが厳しく制限されている日本の選挙運動では、ボランティアの協力が欠かせません。選挙カーの運転手や「ウグイス嬢」といったスタッフにのみ日当を支払うことができますが、たとえば「○○候補に投票をしてください」と一軒一軒呼びかけの電話をするのは無報酬のボランティアです。配布するビラに一枚一枚、選挙管理委員会のシール(証紙)を貼る作業など、多くの活動にボランティアが必要となります・・・旧統一教会は選挙運動を支えるボランティアとして信者を送り込み、多くの政治家と関係を築くことに成功しました。選挙のたびに確実に戦力になってくれる旧統一教会は多くの政治家に重宝され、選挙に欠かせない存在になった」、なるほど。
・『名前を変更できたのは安倍派のおかげ? 岸信介元首相の時代に始まった旧統一教会と自民党の関わりは、安倍晋太郎元外相を経て、安倍晋三元首相へと引き継がれました。 自民党はもともと自由党と日本民主党という2つの政党が一緒になってできた経緯もあり、実にさまざまな思想を持つ政治家が集まっている組織です。安倍派に代表される保守派もいれば、岸田首相につながるリベラルな政治家もいます。旧統一教会や国際勝共連合が接近したのは、自民党の中でも保守的な勢力である清和会(安倍派)でした。 2015年、旧統一教会は世界平和統一家庭連合へと名称を変更しました。かつて霊感商法で有名になってしまった過去を水に流そうとしたのでしょうか。教団は1997年から名称変更を文化庁に相談していました。 ようやく名称変更が認められた2015年は第2次安倍内閣時代。当時の下村博文文部科学大臣は安倍派の重鎮です。下村氏を巡っては、旧統一教会の関連団体から推薦状を受け取ったこと、選挙の際に旧統一教会や関連団体のボランティアの協力を受けたことなどが報道されています。 かねて安倍派と深い関係にあった旧統一教会が文部科学大臣に影響力を及ぼし、自分たちに有利になる名称変更を勝ち取った。そう勘ぐられるのも無理はありません。 旧統一教会との関わりを指摘された際、「名前が変わっていたからわからなかった」と主張した政治家もいます。 本当に別の団体だと考えた人もいるかもしれませんが、少なくとも、改名によって言い訳、言い逃れの余地ができてしまったことは間違いありません。 宗教団体や信者が政治に関わることに何も問題はありません。ただし、国が特定の宗教団体に対して有利なはからいをすれば政教分離に反します。仮に法的に問題がないとしても、そもそも反社会的な活動で社会問題となった宗教団体の協力を受けるという時点で、政治家のモラルが問われそうです。 旧統一教会との関わりを取り沙汰されている政治家たちは、宗教団体をただ「票」としてしか捉えていないのかもしれません。そうした脇の甘い意識ゆえに足をすくわれてしまったと言えるのではないでしょうか。 そもそも、政策で政治家を選び、選挙を積極的に手伝おうという人が大勢いれば、疑惑を招くような団体の動員力が当てにされることも減るでしょう。政治家のモラルだけでなく、国民の政治への関わり方も、この問題の根幹にありそうです』、「2015年、旧統一教会は世界平和統一家庭連合へと名称を変更しました。かつて霊感商法で有名になってしまった過去を水に流そうとしたのでしょうか。教団は1997年から名称変更を文化庁に相談していました。 ようやく名称変更が認められた2015年は第2次安倍内閣時代。当時の下村博文文部科学大臣は安倍派の重鎮です。下村氏を巡っては、旧統一教会の関連団体から推薦状を受け取ったこと、選挙の際に旧統一教会や関連団体のボランティアの協力を受けたことなどが報道されています。 かねて安倍派と深い関係にあった旧統一教会が文部科学大臣に影響力を及ぼし、自分たちに有利になる名称変更を勝ち取った・・・少なくとも、改名によって言い訳、言い逃れの余地ができてしまったことは間違いありません・・・国が特定の宗教団体に対して有利なはからいをすれば政教分離に反します。仮に法的に問題がないとしても、そもそも反社会的な活動で社会問題となった宗教団体の協力を受けるという時点で、政治家のモラルが問われそうです。 旧統一教会との関わりを取り沙汰されている政治家たちは、宗教団体をただ「票」としてしか捉えていないのかもしれません。そうした脇の甘い意識ゆえに足をすくわれてしまったと言えるのではないでしょうか」、その通りだ。
第三に、10月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「解散命令請求じゃない!旧統一教会と政治のズブズブを「絶縁」させる唯一の方法とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330715
・『文部科学省が、旧統一教会に対する解散命令を東京地裁に請求した。命令が確定した場合は教団の宗教法人格が取り消される。ただし、安倍元首相の暗殺事件を機に問題視されてきた「政治と宗教」の関係が、これで解消されるかは疑問が残る。自民党をはじめとする政党と教団の関係は複雑に入り組んでいるからだ。では、この「あしき慣行」はどうすれば失われるのか』、興味深そうだ。
・『旧統一教会への「解散命令」で「政治と宗教」の問題は解決するのか? 文部科学省は10月13日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会、以下「教団」)に対する解散命令を東京地方裁判所に請求した。 文科省はこれまで、教団を巡る高額な献金や霊感商法の問題について、宗教法人法に基づく「質問権」の行使によって実態の把握を目指してきた。また、被害を訴える元信者らへの聞き取り調査も進めてきた。 ここにきて解散命令を出したということは、教団に解散を請求するのに十分な証拠がそろったとみられる。そして今後は、東京地裁が解散命令の適否を司法判断する。教団側はこれに強く反発し、最高裁まで争う構えだ。解散命令の確定まで長期間を要する可能性がある。 教団はかつて、高額な壺や印鑑を信者に売りつけて資金を集めていた。それが明るみに出て批判を浴びた後は、「勧誘」という真の目的を隠して一般市民に近づき、親しくなってから入信させる巧妙な手法に切り替えた。入信させた後で「先祖の因縁で不幸になる」などと恐怖を与え、「逃れるには多額の献金が必要」などと迫るのだ。 こうした悪質な手法の被害者といえるのは、信者本人だけではない。安倍晋三元首相を銃撃したとして殺人罪などで起訴されている山上徹也被告など、親が教団に高額な献金をしたことで家族が崩壊し、人生を破壊された「宗教2世」の問題も引き起こしている。 このような犯罪行為や人権侵害は厳しく罰せられるべきだ。また、教団の被害者救済は何よりも優先されるべきことだ(本連載第309回・p4)。教団への解散命令の請求は、そのための大きな一歩であろう。 ただし解散命令が確定しても、教団の宗教法人格が取り消され、税制上の優遇措置などが失われるだけだ。「任意団体」として活動を続けることは可能である。この処分だけで、長年問題視されてきた「政治と宗教」の問題が解決するかは疑問である。 岸田文雄首相や茂木敏充自由民主党幹事長は「自民党は教団との関係を完全に絶った」と主張しているが、それは本当なのだろうか。教団と政治の関係は複雑に入り組んでおり、簡単に切れるものではないように思える』、「今後は、東京地裁が解散命令の適否を司法判断する。教団側はこれに強く反発し、最高裁まで争う構えだ。解散命令の確定まで長期間を要する可能性がある・・・教団はかつて、高額な壺や印鑑を信者に売りつけて資金を集めていた。それが明るみに出て批判を浴びた後は、「勧誘」という真の目的を隠して一般市民に近づき、親しくなってから入信させる巧妙な手法に切り替えた。入信させた後で「先祖の因縁で不幸になる」などと恐怖を与え、「逃れるには多額の献金が必要」などと迫るのだ。 こうした悪質な手法の被害者といえるのは、信者本人だけではない・・・山上徹也被告など、親が教団に高額な献金をしたことで家族が崩壊し、人生を破壊された「宗教2世」の問題も引き起こしている・・・解散命令が確定しても、教団の宗教法人格が取り消され、税制上の優遇措置などが失われるだけだ。「任意団体」として活動を続けることは可能である。この処分だけで、長年問題視されてきた「政治と宗教」の問題が解決するかは疑問である。 岸田文雄首相や茂木敏充自由民主党幹事長は「自民党は教団との関係を完全に絶った」と主張しているが、それは本当なのだろうか。教団と政治の関係は複雑に入り組んでおり、簡単に切れるものではないように思える」、その通りだ。
・『教団の信者が「政治家の秘書」に政治と宗教「ズブズブ」の実態 過去の関係を振り返ってみよう。政治家が教団関連のイベントに祝電を送る。あるいは出席してあいさつする。逆に、政治家が団体関係者に政治資金パーティーの券を購入してもらう。こうした「議員と支持者」のような付き合いは、これまで当然のように行われてきた。 教団の信者が、国会議員の公設秘書や私設秘書として雇用されるケースもあった。信者が選挙の応援をボランティアで行うこともあった。選挙スタッフがやりたがらないような雑用も熱心にやるので重宝されてきたのだ。 その関係は中央だけでなく、地方の政界にも広がっていた。都道府県議会や市議会議員、地方の政党、後援会、支持団体なども教団と深く関わってきた。地方自治体が後援する各種イベントの裏側で、教団と政治家が結び付いている例も見られた。 例えば「世界平和と日韓友好」を掲げて、若者らが自転車で走行する「ピースロード」というイベント。教団の関連団体が共催している企画だが、その実行委員会には地元選出の国会議員や地方議員が参加していた。 また、教団は「平和ボランティア隊」を組織し、日本全国で自然災害からの復興支援を実施。2011年の東日本大震災から始まり、さまざまな大規模災害の現場にボランティア隊を派遣してきた。 ボランティア隊は教団であることを隠さず、災害現場での勤勉な働きぶりで高く評価された。19年に台風15号が上陸して記録的な暴風を巻き起こしたときは、大規模停電などの被害が出た千葉県を支援。南房総市の社会福祉協議会(社協)が「世界平和統一家庭連合 平和ボランティア隊 UPeace」宛てに感謝状を贈った。 この「社協」とは全国に約1800ある団体で、地域社会における民間福祉事業やボランティア活動の推進支援を行っている。教団は、この社協への寄付も行ってきた。一般的に、社協の運営資金は地方自治体の予算からの補助金だ。しかし、財政赤字に悩む自治体もあり、社協への補助金は十分ではない。そのため、教団からの寄付は主要な財源となってきたのだ。 要するに、教団は国政だけでなく、地方の行政・福祉などにも深く関わってきた。議員や自治体は、教団から票や寄付金、ボランティアを得る。そして教団は社会的信用を得る。安倍元首相の暗殺事件が起こるまでは、そうした「ギブ・アンド・テイク」の関係が出来上がっていたのだ』、「政治家が教団関連のイベントに祝電を送る。あるいは出席してあいさつする。逆に、政治家が団体関係者に政治資金パーティーの券を購入してもらう。こうした「議員と支持者」のような付き合いは、これまで当然のように行われてきた。 教団の信者が、国会議員の公設秘書や私設秘書として雇用されるケースもあった。信者が選挙の応援をボランティアで行うこともあった。選挙スタッフがやりたがらないような雑用も熱心にやるので重宝されてきたのだ。 その関係は中央だけでなく、地方の政界にも広がっていた。都道府県議会や市議会議員、地方の政党、後援会、支持団体なども教団と深く関わってきた。地方自治体が後援する各種イベントの裏側で、教団と政治家が結び付いている例も見られた・・・地方自治体が後援する各種イベントの裏側で、教団と政治家が結び付いている例も見られた。 例えば「世界平和と日韓友好」を掲げて、若者らが自転車で走行する「ピースロード」というイベント。教団の関連団体が共催している企画だが、その実行委員会には地元選出の国会議員や地方議員が参加していた。 また、教団は「平和ボランティア隊」を組織し、日本全国で自然災害からの復興支援を実施。2011年の東日本大震災から始まり、さまざまな大規模災害の現場にボランティア隊を派遣してきた。 ボランティア隊は教団であることを隠さず、災害現場での勤勉な働きぶりで高く評価された。19年に台風15号が上陸して記録的な暴風を巻き起こしたときは、大規模停電などの被害が出た千葉県を支援。南房総市の社会福祉協議会(社協)が「世界平和統一家庭連合 平和ボランティア隊 UPeace」宛てに感謝状を贈った。 この「社協」とは全国に約1800ある団体で、地域社会における民間福祉事業やボランティア活動の推進支援を行っている。教団は、この社協への寄付も行ってきた。一般的に、社協の運営資金は地方自治体の予算からの補助金だ。しかし、財政赤字に悩む自治体もあり、社協への補助金は十分ではない。そのため、教団からの寄付は主要な財源となってきたのだ。要するに、教団は国政だけでなく、地方の行政・福祉などにも深く関わってきた。議員や自治体は、教団から票や寄付金、ボランティアを得る。そして教団は社会的信用を得る。安倍元首相の暗殺事件が起こるまでは、そうした「ギブ・アンド・テイク」の関係が出来上がっていたのだ」、地方でも「教団」ががっちりと食い込んでいる様子は、想像以上で、根絶は容易ではなさそうだ。
・『「政治と宗教」のつながりは何らかの形で残るだろう そして事件後、教団と政治の関係が世論の批判にさらされると、政党などは一斉に教団との関係解消に動いた。そして「教団との関係は一切ない」という旨の発表をし始めた。ただ繰り返しになるが、政党などが「自浄作用」を働かせ、これだけ深く政治に食い込んだ団体と関係を切ることは難しいと筆者は考える。 というのも、国会議員の選挙を実質的に仕切るのは、選挙区の首長、地方議員、スタッフらである(第314回・p4)。その中には、信者であることを隠して紛れ込んでいる人がいるかもしれない。 そうした末端の信者は、教団の教義を純粋に信じて、政治・行政やボランティアの活動に一生懸命取り組んでいる人たちだ。前述の通り、選挙スタッフがやりたがらないような雑用もこなすので、働きぶりも優秀だ。そうした人々を探し出して排除するのは至難の業である。 また、過去に教団の支援を得ていた国会議員には、選挙に弱い若手も多かった。自力での票集めが難しいからこそ、教団の力を借りたのだ。実際に自民党では「各業界団体の票だけでは足りない議員について、教団が認めてくれれば、その票を割り振る」ことをしていたという(第309回・p4)。 そうした“ギリギリ当選”を続けてきた議員が、一度票をもらった団体との関係を簡単に断ち切れるのだろうか。「政治家は、選挙に落ちればタダの人」である。 さらに、教団が保守的な思想の団体であることも重要なポイントだ。仮に解散命令が確定しても、教団関係者が左派野党に投票する可能性は極めて低いといえる(第309回・p3)。信者が「勝手に」自民党の政治家を応援し、選挙で一票を投じるかもしれないのだ。そして、それを止めることは誰にもできない。 日本では「政教分離」の原則の下、宗教団体が政治活動を行うこと自体は違法ではない(第309回・p5)。また、自由民主主義社会における、有権者の権利は守られねばならない。そのため、信者の「投票先」まで制限することは現実的に難しい。これを実行しようとすると、プライバシーや人権の侵害になり、宗教弾圧につながる危険性もある。 そのため、今後も何らかの形で「政治と宗教」のつながりは残っていくだろう。では、この「あしき慣行」はどうすれば失われるのか』、「末端の信者は、教団の教義を純粋に信じて、政治・行政やボランティアの活動に一生懸命取り組んでいる人たちだ。前述の通り、選挙スタッフがやりたがらないような雑用もこなすので、働きぶりも優秀だ。そうした人々を探し出して排除するのは至難の業である。 また、過去に教団の支援を得ていた国会議員には、選挙に弱い若手も多かった。自力での票集めが難しいからこそ、教団の力を借りたのだ・・・今後も何らかの形で「政治と宗教」のつながりは残っていくだろう。では、この「あしき慣行」はどうすれば失われるのか」、残念ながら「失われる」のは殆ど期待できない。
・『「政治と宗教」の問題を解決する唯一の方法とは? その答えは極めてシンプルだ。国民が政治に関心を持ち、投票に積極的に参加し、「宗教団体による組織票」が選挙の勝敗を左右しない状況をつくることである。 何しろ、21年に行われた第49回衆議院議員総選挙における投票率は55.93%にとどまっている(総務省調べ)。そうした状況下では、政治家が有権者にさまざまな便宜を図り、その代わりに自身に投票してもらう「日本型どぶ板選挙」がいまだに有効な集票手段となる(第309回・p4)。 この「日本型どぶ板選挙」とは、政治家が選挙で票を得るために、どんな所へでも訪ねていき、どんなことでもする選挙を指す。勝つためなら何でもありだ。その結果、さまざまな集票団体に宗教団体が紛れ込み、政治との関係が深まってきた経緯がある。 そもそも多くの政党の議員は、初めて党公認の候補者となって選挙に出馬する前から宗教団体と関係があるわけではない。候補者として選挙区に入るとき、党や派閥の幹部、地元のベテランのスタッフから、支持団体など票を入れてくれる組織や人にあいさつをするように指示される。 候補者はわけもわからず、言われるがまま、選挙に勝つために多くの組織や人に頭を下げる。こうした支持団体に、教団をはじめとする宗教団体が紛れ込んでいる。そこから「ギブ・アンド・テイク」の付き合いが始まり、集票において便宜を図ってもらうようになる。 とはいえ、選挙において、政党の政策や政治家の人物像を見極めて投票するのは国民である。一人一人が有権者として責任ある投票行動ができるようになり、「集票マシーン」としての宗教団体が機能しなくなれば、どうなるだろうか。 政党・政治家と宗教団体の双方にとって、接点を持つ意味は薄れるはずだ。前述した「勝手に応援(投票)する信者」はいるかもしれないが、組織的なつながりは次第に解消していくだろう。他の支持団体との関係も含め、「日本型どぶ板選挙」は終わりに近づくことになる。 安倍元首相の暗殺事件以降、「政治と宗教」関連のニュースを見るたびに「まったく最近の政治家は…」と批判してきた人は多いかもしれない。だが、そうした人々がどれだけ投票に足を運んでいるだろうか。日本の政治を変えるには、むしろ国民自身が変わらなければならないということだ』、「日本の政治を変えるには、むしろ国民自身が変わらなければならないということだ」、筋論ではあるが、百年河清を待つようなものだ。
タグ:「ドナルド・トランプにも大きな影響を与えたといわれ、こうした活動の資金にも日本で集金された莫大な献金が流れた・・・日本では、選挙を通じて自民党との関わりを強めました。教団関係者がボランティアとして選挙運動を支えるようになったのです。 公職選挙法により金銭のやりとりが厳しく制限されている日本の選挙運動では、ボランティアの協力が欠かせません。 その関係は中央だけでなく、地方の政界にも広がっていた。都道府県議会や市議会議員、地方の政党、後援会、支持団体なども教団と深く関わってきた。地方自治体が後援する各種イベントの裏側で、教団と政治家が結び付いている例も見られた・・・地方自治体が後援する各種イベントの裏側で、教団と政治家が結び付いている例も見られた。 例えば「世界平和と日韓友好」を掲げて、若者らが自転車で走行する「ピースロード」というイベント。教団の関連団体が共催している企画だが、その実行委員会には地元選出の国会議員や地方議員が参加していた。 「政治家が教団関連のイベントに祝電を送る。あるいは出席してあいさつする。逆に、政治家が団体関係者に政治資金パーティーの券を購入してもらう。こうした「議員と支持者」のような付き合いは、これまで当然のように行われてきた。 教団の信者が、国会議員の公設秘書や私設秘書として雇用されるケースもあった。信者が選挙の応援をボランティアで行うこともあった。選挙スタッフがやりたがらないような雑用も熱心にやるので重宝されてきたのだ。 「任意団体」として活動を続けることは可能である。この処分だけで、長年問題視されてきた「政治と宗教」の問題が解決するかは疑問である。 岸田文雄首相や茂木敏充自由民主党幹事長は「自民党は教団との関係を完全に絶った」と主張しているが、それは本当なのだろうか。教団と政治の関係は複雑に入り組んでおり、簡単に切れるものではないように思える」、その通りだ。 入信させた後で「先祖の因縁で不幸になる」などと恐怖を与え、「逃れるには多額の献金が必要」などと迫るのだ。 こうした悪質な手法の被害者といえるのは、信者本人だけではない・・・山上徹也被告など、親が教団に高額な献金をしたことで家族が崩壊し、人生を破壊された「宗教2世」の問題も引き起こしている・・・解散命令が確定しても、教団の宗教法人格が取り消され、税制上の優遇措置などが失われるだけだ。 (その13)(旧統一教会への解散請求…「次の標的はホストクラブ」をデタラメと笑えない理由、自民党と旧統一教会、50年以上の「おつきあい」 選挙に欠かせなくなった信者ボランティア、解散命令請求じゃない!旧統一教会と政治のズブズブを「絶縁」させる唯一の方法とは?) 宗教 「日本の政治を変えるには、むしろ国民自身が変わらなければならないということだ」、筋論ではあるが、百年河清を待つようなものだ。 「こんな「悲劇」が何度も繰り返されても、「ホストを規制せよ」という議論は盛り上がらない・・・過去の旧統一教会報道と同じで、瞬間風速的に注目を集めてもすぐに忘れ去られて、政治家もマスコミも特に問題視しなくなったのだ。むしろ、社会から受け入れられていくようになった。 それを象徴するのが、テレビ局だ。 「実は近年、ホストクラブの「売掛」を法律で規制すべきという声が増している。 《一晩で50万円や100万円の支払いになるなんて、普通の女性が支払える金額じゃない。25歳以下の「青少年」に対しては、「売掛禁止条例」を作るしかない・・・「私は今25歳で風俗と詐欺で何億か稼いで手元に1円も残らずホストさんの応援に使ってしまいました」、なるほど。 「悪質で巧みなホストのワナにハマった女性は、カルト宗教の信者のような状態になります。私は両方見ていますが、似ていると感じました」、恐ろしいものだ。 ご存じのように、ホストの世界では「客と店員」という関係を超越して、客に恋心を抱かせて「オレがナンバーワンになるのを一緒に支えてほしい」なんて甘い言葉をささやいて、大金を貢がせる「色恋営業」と呼ばれる稼ぎ方がある。 これが「マインドコントロールで金をだましとる詐欺」として規制の対象となっていく恐れがある」、なるほど。 「今回の解散命令は「世論」と「被害者」をスッキリさせる「ガス抜き」にしかならないのだ。「ガス抜き」ならまだマシだ。最悪、日本社会にさまざま災いと混乱を生み出す「パンドラの箱」になってしまう恐れもあるのだ。 それは具体的に何か。個人的に危ないと思っているのは、ホストクラブに代表される「恋愛商法」の規制だ。 窪田順生氏による「旧統一教会への解散請求…「次の標的はホストクラブ」をデタラメと笑えない理由」 「韓国で生まれた旧統一教会は1968年、反共産主義を掲げる政治組織「国際勝共(しょうきょう)連合」を韓国と日本で創設」、歴史は古いようだ。「日本での国際勝共連合の発起人のひとりとして名を連ね、創設を後押ししたとされるのが・・・岸信介元首相・・・国際勝共連合の名誉会長は笹川良一氏が務めました」、なるほど。 池上 彰氏による「自民党と旧統一教会、50年以上の「おつきあい」 選挙に欠かせなくなった信者ボランティア」 東洋経済オンライン 「他の宗教団体でも当たり前のようにやっている「超自然的な話をされて、それを信じた信者がたくさん献金をする」という宗教団体に対して、国家が「解散命令請求」をするのだ。世界的に見てもかなり珍しい「信教の自由の侵害」を我々は目撃している。 こんな「無茶苦茶」がまかり通る国ならば、「ホスト規制」があってもおかしくはない」、ただ、宗教でもカルトとなると、西欧諸国でも規制する国はある。日本だけが「無茶」をしている訳ではない。 だから、信者を洗脳から解いてあげるためにも、1日でも早く教団の宗教法人格をはく奪して、金集めできないほど弱体化させなくてはいけない、というのがジャーナリストや弁護士の主張」、「神や天国の存在を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」を国家が否定した。この理屈が通るのなら、ホストから「ナンバーワンになったら一緒になろう」という言葉を信じて、自分が幸せになるため、自分自身で納得をしたうえでお金を払った人の「自由意志」も当然、否定されなくてはいけないからだ」、確かにそ 「これまで「恋愛商法」をセーフとしてきた「自分の意志で貢いだものだから自己責任じゃん」というロジックを、日本政府が全否定したからだ。 ご存じのように、マスコミや教団を追及するジャーナリストや弁護士の主張では、旧統一教会の信者が「高額献金」や「霊感商法」をしているのは「マインドコントロール」のせいという説明だ。日本国内の信者は、「韓国にいる韓鶴子総裁」にだまされているのですべて「気の毒な被害者」だという位置付けだ。 「ホスト相続しちゃいました」(カンテレ)、「田園ボーイズ」(TVK)、「埼玉のホスト」(TBS)、「貴族誕生 −PRINCE OF LEGEND−」(日本テレビ)、「トドメの接吻」(日本テレビ)などホストを題材にしたドラマが定期的に放映されている」、「ホストを題材にしたドラマ」がそれほど多く「放映」されているとは初めて知った。 ダイヤモンド・オンライン 「今後は、東京地裁が解散命令の適否を司法判断する。教団側はこれに強く反発し、最高裁まで争う構えだ。解散命令の確定まで長期間を要する可能性がある・・・教団はかつて、高額な壺や印鑑を信者に売りつけて資金を集めていた。それが明るみに出て批判を浴びた後は、「勧誘」という真の目的を隠して一般市民に近づき、親しくなってから入信させる巧妙な手法に切り替えた。 上久保誠人氏による「解散命令請求じゃない!旧統一教会と政治のズブズブを「絶縁」させる唯一の方法とは?」 旧統一教会との関わりを取り沙汰されている政治家たちは、宗教団体をただ「票」としてしか捉えていないのかもしれません。そうした脇の甘い意識ゆえに足をすくわれてしまったと言えるのではないでしょうか」、その通りだ。 かねて安倍派と深い関係にあった旧統一教会が文部科学大臣に影響力を及ぼし、自分たちに有利になる名称変更を勝ち取った・・・少なくとも、改名によって言い訳、言い逃れの余地ができてしまったことは間違いありません・・・国が特定の宗教団体に対して有利なはからいをすれば政教分離に反します。仮に法的に問題がないとしても、そもそも反社会的な活動で社会問題となった宗教団体の協力を受けるという時点で、政治家のモラルが問われそうです。 「2015年、旧統一教会は世界平和統一家庭連合へと名称を変更しました。かつて霊感商法で有名になってしまった過去を水に流そうとしたのでしょうか。教団は1997年から名称変更を文化庁に相談していました。 ようやく名称変更が認められた2015年は第2次安倍内閣時代。当時の下村博文文部科学大臣は安倍派の重鎮です。下村氏を巡っては、旧統一教会の関連団体から推薦状を受け取ったこと、選挙の際に旧統一教会や関連団体のボランティアの協力を受けたことなどが報道されています。 選挙カーの運転手や「ウグイス嬢」といったスタッフにのみ日当を支払うことができますが、たとえば「○○候補に投票をしてください」と一軒一軒呼びかけの電話をするのは無報酬のボランティアです。配布するビラに一枚一枚、選挙管理委員会のシール(証紙)を貼る作業など、多くの活動にボランティアが必要となります・・・旧統一教会は選挙運動を支えるボランティアとして信者を送り込み、多くの政治家と関係を築くことに成功しました。選挙のたびに確実に戦力になってくれる旧統一教会は多くの政治家に重宝され、選挙に欠かせない存在になった」、 は殆ど期待できない。 「末端の信者は、教団の教義を純粋に信じて、政治・行政やボランティアの活動に一生懸命取り組んでいる人たちだ。前述の通り、選挙スタッフがやりたがらないような雑用もこなすので、働きぶりも優秀だ。そうした人々を探し出して排除するのは至難の業である。 また、過去に教団の支援を得ていた国会議員には、選挙に弱い若手も多かった。自力での票集めが難しいからこそ、教団の力を借りたのだ・・・今後も何らかの形で「政治と宗教」のつながりは残っていくだろう。では、この「あしき慣行」はどうすれば失われるのか」、残念ながら「失われる」の 安倍元首相の暗殺事件が起こるまでは、そうした「ギブ・アンド・テイク」の関係が出来上がっていたのだ」、地方でも「教団」ががっちりと食い込んでいる様子は、想像以上で、根絶は容易ではなさそうだ。 この「社協」とは全国に約1800ある団体で、地域社会における民間福祉事業やボランティア活動の推進支援を行っている。教団は、この社協への寄付も行ってきた。一般的に、社協の運営資金は地方自治体の予算からの補助金だ。しかし、財政赤字に悩む自治体もあり、社協への補助金は十分ではない。そのため、教団からの寄付は主要な財源となってきたのだ。要するに、教団は国政だけでなく、地方の行政・福祉などにも深く関わってきた。議員や自治体は、教団から票や寄付金、ボランティアを得る。そして教団は社会的信用を得る。 また、教団は「平和ボランティア隊」を組織し、日本全国で自然災害からの復興支援を実施。2011年の東日本大震災から始まり、さまざまな大規模災害の現場にボランティア隊を派遣してきた。 ボランティア隊は教団であることを隠さず、災害現場での勤勉な働きぶりで高く評価された。19年に台風15号が上陸して記録的な暴風を巻き起こしたときは、大規模停電などの被害が出た千葉県を支援。南房総市の社会福祉協議会(社協)が「世界平和統一家庭連合 平和ボランティア隊 UPeace」宛てに感謝状を贈った。
幼児虐待(その9)(《虐待禁止条例を撤回》 自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が“北川景子似”受付嬢と「不倫キス」写真 「こちらのほうが子どもへの“虐待”では…」、虐待禁止条例 「不倫キス」写真に続き…》自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が政務活動費1700万円を“身内企業”に還流させた疑い 田村氏は「不適切な点はない」と主張、「お留守番禁止」「ゲームは1日1時間」…県民をナメた条例案はなぜ生まれるのか?) [社会]
幼児虐待については、本年4月25日に取上げた。今日は、(その9)(《虐待禁止条例を撤回》 自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が“北川景子似”受付嬢と「不倫キス」写真 「こちらのほうが子どもへの“虐待”では…」、虐待禁止条例 「不倫キス」写真に続き…》自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が政務活動費1700万円を“身内企業”に還流させた疑い 田村氏は「不適切な点はない」と主張、「お留守番禁止」「ゲームは1日1時間」…県民をナメた条例案はなぜ生まれるのか?)である。
先ずは、本年10月12日付け文春オンライン「《虐待禁止条例を撤回》 自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が“北川景子似”受付嬢と「不倫キス」写真 「こちらのほうが子どもへの“虐待”では…」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/66364
・『「週刊文春」が入手した4枚の写真。トレードマークの赤いネクタイを締めた男性が傍らの女性の首に手を回し、満面の笑みを浮かべながらピースサインで収まっている。テーブルの下では互いの手が重なり合い、仲睦まじい様子だ。そして、互いに頬を寄せ合うほどまでに密着すると――』、「虐待禁止条例」を期待していたのに、いきなり不倫の状況説明とは驚かされた。
・『埼玉の「虐待禁止条例」に批判が噴出 自民党の埼玉県議団が提出し、10月6日に埼玉県議会の委員会で可決された「虐待禁止条例」の一部改正案が全国的に物議を醸した。その内容は、成人の「養護者」が小学3年生以下の子どもを放置することを禁じ、小学4~6年生については努力義務とするものだ。想定する禁止事項として「短時間でも子どもに留守番をさせる」「子ども同士で公園で遊ばせる」「子どもだけ家に残し、ごみ捨てに行く」などを列挙。子どもを自宅や車に放置すると「虐待」とみなされ、罰則こそないものの県民にも通報を義務づけていた。 だが、「共働きの家庭にとっては現実的でない」などの批判が噴出。その結果、13日に本会議で採決が行われ可決される見通しだったところから一転、「説明不足」だったとして10日に改正案を取り下げる事態に追い込まれた。 今回の条例改正を主導していたのが、県議団の団長を務める田村琢実県議(51)だ。1971年生まれの田村氏は埼玉県内の高校を卒業後、放送大学に進学。故・中山太郎衆議院議員の秘書として政治の世界に飛び込んだ。2003年、埼玉県議会選に挑戦するも落選。再挑戦となった2007年の県議会選で20,702票を獲得し、初当選を果たす。2019年の選挙で4期目の当選後、2020年には埼玉県議会議長に就任した』、育児の実態を無視した「虐待禁止条例」が、成立寸前まで行ったのは不思議だ。
・『若手を味方につけて委員会を押し切った 埼玉県議の1人がその人物像を語る。 「自分に従順な後輩を作るのが上手いタイプ。若手議員を20人くらい引き連れてキャバクラなどに行き、田村氏が奢るのです。そうすることで、県議団の中で彼に逆らえない雰囲気を作る。今年の4月に団長に就任してからより一層強権的になっています。現在、埼玉県議会は全国でも突出して議員提案条例が多いのですが、それを主導しているのが田村氏。条例を数多く作ることが仕事だと考えている節があり、選挙の時のアピール材料に使っている。今回の『虐待禁止条例』の改正案には『これでは虐待者をたくさん生み出してしまう』という不満が党内からも出ていましたが、結局若手を味方につけて委員会を押し切りました」』』、「「自分に従順な後輩を作るのが上手いタイプ。若手議員を20人くらい引き連れてキャバクラなどに行き、田村氏が奢るのです。そうすることで、県議団の中で彼に逆らえない雰囲気を作る。今年の4月に団長に就任してからより一層強権的になっています」、そんなことしたら、政治資金がいくらあっても足りなくなりそうだ。「埼玉県議会は全国でも突出して議員提案条例が多いのですが、それを主導しているのが田村氏」、どうせ粗製乱造なのだろうが、意欲だけは評価できそうだ。自民党の県議のなかには、子育て経験者も多いと思われるが、彼らが「虐待禁止条例」に反対しなかったのは何故だろう。
・『県議団の受付嬢と親密な関係に ところが――。 「田村先生には奥様がいるのですが、かつて自民党県議団の受付嬢A子さんと親密な関係にありました。それを裏付ける写真があります」 田村氏の知人から、「週刊文春」編集部にそんな“通報”が入ったのは10月8日のことだった。入手した写真は全部で4枚。撮影日は2019年1月24日、場所は埼玉県内の飲食店だ。冒頭に触れたように、2人は体を密着させ、手を繋いでいる。そして、田村氏がA子さんの頬にキスまでしているのだ。 「県議団の受付は派遣会社から一日3~4人程派遣されてくるのですが、田村先生はA子さんのことをとても気に入っていました。彼女は県庁内でも北川景子似の美人で知られており、田村先生も『あの子可愛いよね』と周囲に話し、別の受付の人に『一緒に飲みたいから今度飲み会を設定してよ』と迫っていました。そうして実現したのが写真の飲み会です。ただ、2人でというわけにはいかないので、他の自民党の県議2人ともう1人受付の人が加わり、計5人の会になったのです」(同前)) 田村氏自身が改正案の“虐待”のような行動を取っていた この飲み会で2人の関係が急速に進展する。 「会が進むとお酒の力も手伝ってか、田村先生がA子さんに気に入っていることを伝えました。すると、彼女も田村先生のことがタイプだったようで意気投合。隣同士で座った2人は大胆にも手を繋ぎ、田村先生がA子さんの頬にキスをしたのです。彼女も嬉しそうにしていました。そのまま飲み会の途中で2人だけで店を出て行ってしまい……。この日から関係が始まったと聞きました。ただ、田村先生には奥様がいるし、A子さんには当時単身赴任中だった夫と子どもがいる。いわば、“ダブル不倫”のようなものです」(同前) 前出の県議が嘆息する。 「田村氏と会っている間、A子さんのお子さんには保護者の目が行き届いていないわけですよね。子どもの健全育成を掲げて『虐待禁止条例』の改正案を推し進める一方、自身は改正案でいうところの“虐待”のような行動を取っていた。言動の不一致が甚だしすぎます」 「週刊文春」は事実関係を確認するべく、10月10日昼、田村氏の事務所に質問状を送付。さらに10日夕方、本人の携帯電話にもショートメッセージで質問状を送ったところ、「開封済み」にはなったものの、期限までに返答はなかった。この間、田村氏が率いる自民党県議団は「虐待禁止条例」の改正案の撤回を発表した。 その直後の10日夜、早速、インターネットTV「ABEMA」に出演し、撤回の経緯や自説を披露してみせた田村氏。だが、「不倫キス」写真は撤回――とはいかなかったようだ』、「“ダブル不倫”」は望ましくないが、大人である以上、目くじらを立てるほどでもない。しかし、「田村氏と会っている間、A子さんのお子さんには保護者の目が行き届いていないわけですよね。子どもの健全育成を掲げて『虐待禁止条例』の改正案を推し進める一方、自身は改正案でいうところの“虐待”のような行動を取っていた。言動の不一致が甚だしすぎます」、ことは重大な問題だ。
次に、10月18日付け文春オンライン「《虐待禁止条例、「不倫キス」写真に続き…》自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が政務活動費1700万円を“身内企業”に還流させた疑い 田村氏は「不適切な点はない」と主張」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/66483
・『「虐待禁止条例」改正案の撤回を巡って物議を醸している自民党埼玉県議団の団長、田村琢実・埼玉県議(52)が、自身が過去に設立した個人企業に公金である政務活動費約1700万円を還流させている疑いがあることが、「週刊文春」の取材でわかった。田村氏は代理人弁護士を通じて「不適切な点はない」としている。 自民党の埼玉県議団が提出し、10月6日に埼玉県議会の委員会で可決された「虐待禁止条例」の一部改正案。その内容は、成人の「養護者」が小学3年生以下の子どもを放置することを禁じ、小学4~6年生については努力義務とするものだ。「短時間でも子どもに留守番をさせる」などが禁止事項に挙げられ、県民にも通報を義務づけていた。だが、「共働きの家庭にとっては現実的でない」などの批判が噴出。結果、「説明不足」だったとして10日に改正案を取り下げる事態に追い込まれた。 条例改正を主導していたのが、県議団団長の田村氏だった。2007年の県議選で初当選。2019年の県議選で4期目の当選後、2020年には埼玉県議会議長に就任した。その田村氏を巡り、「週刊文春」は10月12日配信のスクープ速報で、“北川景子似”の受付嬢との「不倫キス」写真を報じている(田村氏からは期限までに回答はなかった)』、「「説明不足」だったとして10日に改正案を取り下げる事態に追い込まれた」、実際には「説明不足」というより、本質的な問題だ。
・『埼玉県議団から田村氏設立の会社への支出が次々と 今回、新たに発覚したのは、田村氏の政務活動費の使途に関する不透明な実態だ。埼玉県議には給与とは別に、1人当たり政務活動費が年間600万円分支給されている。田村氏の使途で、目立つのが「株式会社TMコーポレーション」への支出だ。例えば、昨年4月28日には、広報誌「チャレンジスピリッツ」の制作・印刷・封入代として、同社に20万5168円を支出し、このうち政務活動費から13万3884円を充当している。 加えて、埼玉県議団も今年2月28日、「県議団ニュース」の印刷費等として同社に113万9930円を支出し、このうち政務活動費から110万5732円を充当している。こうした「TMコーポレーション」への支出に充てられた政活費を合計すると、過去3年間で1700万円を超えていた。 この「TMコーポレーション」は元々、田村氏が2003年に設立した会社で、当時は「有限会社タムラコーポレーション」という名称だった。以降、代表取締役を務める傍ら、2007年に県議選に初当選。その後、2013年に「有限会社TMコーポレーション」へと商号変更している。さらに2015年に現在の「株式会社TMコーポレーション」に再び商号変更し、2018年には知人のS氏が代表取締役に就いていた』、第一の記事で「若手議員を20人くらい引き連れてキャバクラなどに行き、田村氏が奢るのです。そうすることで、県議団の中で彼に逆らえない雰囲気を作る」、原資はこうした不正、「「TMコーポレーション」への支出に充てられた政活費を合計すると、過去3年間で1700万円を超えていた」が当てられたいた可能性がある。
・『多額の公金が“身内”のようなTM社に流れている構図 県議会関係者が指摘する。 「S氏は薬局関係の会社を経営しており、名義貸しのようなもの。県議会は政活費の運用指針で、親族や本人が代表を務める会社への支出には慎重な対応を求めており、表向き代表を降りたのでしょう。ただ、現在も田村氏が、毎年同じレイアウトに文章をはめ込んでいると聞きます。しかもTM社の印刷費はネット業者の2~3倍の価格。不当に多額の公金が“身内”のようなTM社に流れている構図で、党内からも疑問の声が上がっています」 田村氏に事実関係の確認を求める質問状を送付したところ、代理人弁護士名で主に以下のような回答があった。 「有限会社TMコーポレーション(株式会社TMコーポレーションに商号変更。以下、「同社」といいます。)は、田村氏が埼玉県議会議員に就任する前の2003年に同氏が設立したものですが、2013年、田村氏が100パーセント保有していた同社株式は全て第三者に譲渡されており、同社取締役からも退任しています。妻(回答は実名)も同時に同社取締役から退任しております。それ以降、田村氏(及び妻)は同社の経営に一切関与しておらず、同社を実質的に支配しているとの事実もございません。 また、『チャレンジスピリッツ』の印刷は同社が信頼できる印刷業者である等の理由から同社に発注したものです。『県議団ニュース』については、田村氏が同社を県議団に紹介し、同社に相見積もりを依頼したことはありますが、その後の発注業務は県議団において処理されているため、同社に発注された理由の詳細については分かりかねます。 埼玉県議会制定の『政務活動費の運用指針』において、『配偶者、被扶養者、同居者など生計を一にする者や自らが代表者・役員等の地位にある法人に対する支出は、実費の弁償ではないとみなされるおそれがあるため慎重な対応を要する。』とされていますが、事実関係は上記のとおりであり、同社に対する印刷発注の支払いに政務活動費が充てられたことは、上記『政務活動費の運用指針』に何ら抵触せず、不適切な点はないものと存じます」 政活費に詳しい神戸学院大の上脇博之教授が指摘する。 「公金である政活費の使途には極めて高い透明性が求められます。県議が形式的に取締役を務めていなくても、実質的にその人の会社となれば、運用指針に抵触し得る。相場よりも金額が高ければ、差額分が寄附に当たりかねない。十分な説明が求められます」 10月18日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および10月19日(木)発売の「週刊文春」では、田村氏と受付嬢の「不倫キス」写真の詳細のほか、TMコーポレーションの現代表取締役S氏との一問一答などについても報じている』、「上脇博之教授が指摘する。「公金である政活費の使途には極めて高い透明性が求められます。県議が形式的に取締役を務めていなくても、実質的にその人の会社となれば、運用指針に抵触し得る。相場よりも金額が高ければ、差額分が寄附に当たりかねない。十分な説明が求められます」、現実には、「2013年、田村氏が100パーセント保有していた同社株式は全て第三者に譲渡されており、同社取締役からも退任しています」と形式だけ整えたようだ。「『県議団ニュース』については、田村氏が同社を県議団に紹介し、同社に相見積もりを依頼したことはありますが、その後の発注業務は県議団において処理されているため、同社に発注された理由の詳細については分かりかねます」、不利な事実は開示しない姿勢のようだ。やはり、「TMコーポレーション」は大いに問題があるようだ。
第三に、10月20日付けダイヤモンド・オンライン「「お留守番禁止」「ゲームは1日1時間」…県民をナメた条例案はなぜ生まれるのか?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330606
・『先日、明らかになった子どもを車内や自宅などに放置することを禁じる埼玉県虐待禁止条例の改正案は、全国から批判が殺到。罰則はないが、子どもを置いて短時間のゴミ出しなども場合によっては「虐待」にあたるという内容に「現実的ではない」「親を追い詰める」などの声があがり、改正案を提出した自民党埼玉県議団は撤回を余儀なくされた。一方、3年半前に、同じく全国的に炎上したのが「ゲームは1日60分まで」という時間の目安を盛り込んだ「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」だ。『ルポ ゲーム条例 なぜゲームが狙われるのか』(河出書房新社)を上梓した瀬戸内海放送の山下洋平記者に改めて条例の問題点と現在地を聞いた』、興味深そうだ
・『大ざっぱな条例内容と水増しされたパブコメ 「埼玉県の条例改正案について報道で知ったとき、香川県のゲーム条例とよく似ているなとまず感じました。保護者に過度な責任を押し付けるような中身もそうですが、それまであまり注目されていなかったのに成立の直前になって全国から批判が集まったところもです。ただ、大きく違うのは、埼玉では案が取り下げられたのに対し、香川県議会は強行して条例を成立させてしまったところです」 こう話すのは瀬戸内海放送の山下洋平記者だ。2020年、香川県で施行された「ネット・ゲーム依存症対策条例」について現在まで追及を続けている。ネットやゲームの利用時間などに言及した条例としては日本初。しかし、その条例の中身には問題点も多く、不透明な点が多くあった。 条例の問題点を山下氏はこう語る。) 「ネット・ゲームの依存防止という目的そのものは否定しませんが、内容や制定過程がとにかく雑です。まず、ゲーム依存症という定義自体が科学的・医学的に定まっていません。治療の現場を取材すると、長時間ゲームをしている人の中には、学校生活などでつまずきがあり、引きこもった結果としてゲームに逃げ込んでいる人がいるなど複合的な要因があり、ゲーム自体が依存の要因になっているとは必ずしもいえません。『うちの子、ゲームばかりして宿題もしないし大丈夫かしら』と親が心配するレベルの子どもたちはたくさんいると思いますが、彼らは学校に行き、社会生活もできている。条例はこの両者を一緒くたにして考えているから『ゲームは1日60分を目安に』などという対策が出てくるのだと思います」 山下氏はこうした疑問をもとに、香川県に対し、ゲームへの依存による通院、入院者の数や推移のデータを要求したこともあった。 「でも、そんなことは調べてないって言うんです。対象となる母数もわからないのに条例の効果をどうやって測定するのか。どこの誰に向けた条例なのかが、まったく判然としないのです」 実際、2020年1月に条例の素案が公表された直後には、県職員が「ネット・ゲームの規制という結論ありきで、当事者たる子どもを交えた議論のないまま県議会の委員会内で一方的に話が進められていることに強い危機感を覚え、私はこの条例の制定に反対します」という意見を実名で出した。 さらに、条例の制定過程には作為性が見られた。条例の素案にあった「ゲームは1日60分まで」という時間規制(のちに家庭でのルールづくりの目安に修正)にはネットを中心に「時代に逆行している」などという反対意見が噴出し、炎上状態となった。しかし、その後、寄せられたパブリックコメントでは8割以上が賛成意見だったのだ。しかも、通常では多くて十数件のところが、全国的に注目されたとはいえ、寄せられたのは2600件以上と異例の多さだった。 「私は8割が賛成ということに違和感を持ち、すぐにパブコメ原本を情報公開請求をしました。しかし、開示前に条例は可決。その後、開示された原本を見ると、賛成意見の中には判で押したように似たような文言が多数あったのです」 実際、「条例通過により、明るい未来を期待して賛成します」「ゲーム依存により、判断の乏しい大人を生み出さないために、賛同します」というような同じ言い回しのメールが、短い時間でそれぞれ120件以上も送られていた』、「寄せられたパブリックコメントでは8割以上が賛成意見だったのだ。しかも、通常では多くて十数件のところが、全国的に注目されたとはいえ、寄せられたのは2600件以上と異例の多さだった・・・賛成意見の中には判で押したように似たような文言が多数あった・・・「条例通過により、明るい未来を期待して賛成します」「ゲーム依存により、判断の乏しい大人を生み出さないために、賛同します」というような同じ言い回しのメールが、短い時間でそれぞれ120件以上も送られていた」、こんな不正な操作で「条例通過」を図ったとは、酷い話だ。
・『施行2年での見直し条項も その動きはまったくなし このような不透明な制定過程に疑問を抱いた山下氏は、成立した後も取材を重ねた。条例が憲法違反にあたると県を訴えた高校生や、ゲームクリエーターらゲーム関係者、さらには知人に頼まれてパブコメで賛成意見を送ってしまったという住民などにも取材をした。 しかし、香川県議会は誠実な説明を行わないばかりか「なかったことにしよう」という姿勢すら見て取れるという。) 「ゲーム条例の付則に、施行2年を目途とした、いわゆる見直し条項があるにもかかわらず、今なおまったくその動きは見られません。国に先駆けてネット・ゲーム依存への対策をするという旗を掲げたにもかかわらず、条例施行後、新しい取り組みをしたり、その成果を発信して他の自治体に広げていったりという機運もまるでない。『作ったら作りっぱなし』という姿勢に、何のための条例なの?と感じざるを得ません。そうした怒りから、今回の書籍の執筆にも至りました」 件のゲーム条例は「子どものネット・ゲーム依存症につながるようなコンピュータゲームの利用に当たっては、1日当たりの利用時間が60分まで(学校等の休業日にあっては、90分まで)」などという文言があるが、あくまでそれは親の努力義務という立て付けだ。罰則もないため、住民にとっても今や過去の産物になりつつある。 「県民に聞いても『ああ、そういえばそんな条例がありましたね』という反応なんです。議員たちも『もう触れるな』という空気です。各所から批判があり、不透明な過程があったにもかかわらず、何の説明もなく、作ったらそれで終わり。条例の価値をおとしめた条例だと思います。それでも条例に基づいた依存対策として年間約1000万円の予算が投じられ、我々の税金が使われ続けています」』、「国に先駆けてネット・ゲーム依存への対策をするという旗を掲げたにもかかわらず、条例施行後、新しい取り組みをしたり、その成果を発信して他の自治体に広げていったりという機運もまるでない。『作ったら作りっぱなし』という姿勢に、何のための条例なの?と感じざるを得ません。そうした怒りから、今回の書籍の執筆にも至りました・・・「県民に聞いても『ああ、そういえばそんな条例がありましたね』という反応なんです。議員たちも『もう触れるな』という空気です。各所から批判があり、不透明な過程があったにもかかわらず、何の説明もなく、作ったらそれで終わり。条例の価値をおとしめた条例だと思います。それでも条例に基づいた依存対策として年間約1000万円の予算が投じられ、我々の税金が使われ続けています」」、なるほど。
・『「県民が舐められている」香川県議会の高額視察費用 ちなみに、香川県議会によるこうした不透明な行いはゲーム条例以外にもある。今年11月に予定している知事と議員らの海外訪問において、議員1人当たりの費用が約263万円だという計画を発表。その高額さに市民団体や一部議員から批判の声が上がり、宿泊先ホテルのグレードを下げるなどして3割ほど減額することになった。議員の死去や辞退で参加は当初計画の半数の4人になったが、それでも知事や随行職員を含めた9人の派遣費用は1000万円を超える見込みだ』、「議員の死去や辞退で参加は当初計画の半数の4人になったが、それでも知事や随行職員を含めた9人」、「知事」、「議員」「4人」、「随行職員」は4人も行く必要があるのだろうか。
・『「お留守番禁止」「ゲームは1日1時間」…県民をナメた条例案はなぜ生まれるのか? 瀬戸内海放送の山下洋平記者の著者『ルポ ゲーム条例 なぜゲームが狙われるのか』(河出書房新社)
「香川県議会は2017年に行った欧州視察で、昼間からビールで乾杯する様子などを報じられています。裁判所はこの視察を「実質的には観光」と指摘し、旅費全額にあたる約600万円の返還を命じる判決が出たばかり。にもかかわらず、今回また高額な海外派遣費用が問題になっている。選挙で選ばれているとはいえ、県民が舐められているとしか思えません。そして、これはなにも香川県だけの問題ではなく、全国、そして国会においても同様だと思います」 しかし、メディア側にも為政者の傲慢(ごうまん)さを招いた要因があると山下氏は語る。) 「私もゲーム条例の取材を始めたのは、制定直前でした。もっと早くからメディアとして議会の動向をチェックしていれば、と反省しています。また、報道機関の運営上、仕方ないのですが、大手メディアでも短期間で異動があったり、記者の数自体が減ったりとひとつの問題に対してとことん追及することが難しくなっています。独自の報道がなく、横並びで同じようなニュースを伝えるなどマスコミの存在意義への危機も感じます。そのようなこともあり、香川県議も含めた政治家たちは『ほとぼりが冷めるのを待つ』という思考になっていると思うので、しっかり監視しているという姿勢を持っていきたいですね。そういう思いもあって、ほとんどの社が取り上げなくなった今でもゲーム条例の取材を続けています」 「そもそもが、しつこい性格なんです」と話す山下氏だが、現在はゲーム条例の他に目を光らせるテーマがある。 「旧香川県立体育館の問題についてです。世界的な建築家の丹下健三が設計し、和船のような特徴的な外観から『船の体育館』とも呼ばれる建築的価値が高い建造物です。保存を求める声や活用したいという民間団体もありましたが、解体が決まりました。この解体についての意思決定の過程も、ゲーム条例同様不透明なんです。香川県に限らず、こうした貴重な建築物が老朽化とともに壊されています。それらを守る方法や意思決定のあり方について取材をしていきたいと考えています」 「ほとぼりを冷めさせない」と話す山下氏。それは、有権者にも必要な姿勢だろう』、「「香川県議会は2017年に行った欧州視察で、昼間からビールで乾杯する様子などを報じられています。裁判所はこの視察を「実質的には観光」と指摘し、旅費全額にあたる約600万円の返還を命じる判決が出たばかり。にもかかわらず、今回また高額な海外派遣費用が問題になっている。選挙で選ばれているとはいえ、県民が舐められているとしか思えません」、「旅費全額にあたる約600万円の返還を命じる判決」、上告したので、「返還」はまだしてないのだろうか。「大手メディアでも短期間で異動があったり、記者の数自体が減ったりとひとつの問題に対してとことん追及することが難しくなっています。独自の報道がなく、横並びで同じようなニュースを伝えるなどマスコミの存在意義への危機も感じます。そのようなこともあり、香川県議も含めた政治家たちは『ほとぼりが冷めるのを待つ』という思考になっていると思うので、しっかり監視しているという姿勢を持っていきたいですね」、「丹下健三が設計し、和船のような特徴的な外観から『船の体育館』とも呼ばれる建築的価値が高い建造物です。保存を求める声や活用したいという民間団体もありましたが、解体が決まりました。この解体についての意思決定の過程も、ゲーム条例同様不透明」、ローカルメディアにも頑張って欲しいものだ。
先ずは、本年10月12日付け文春オンライン「《虐待禁止条例を撤回》 自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が“北川景子似”受付嬢と「不倫キス」写真 「こちらのほうが子どもへの“虐待”では…」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/66364
・『「週刊文春」が入手した4枚の写真。トレードマークの赤いネクタイを締めた男性が傍らの女性の首に手を回し、満面の笑みを浮かべながらピースサインで収まっている。テーブルの下では互いの手が重なり合い、仲睦まじい様子だ。そして、互いに頬を寄せ合うほどまでに密着すると――』、「虐待禁止条例」を期待していたのに、いきなり不倫の状況説明とは驚かされた。
・『埼玉の「虐待禁止条例」に批判が噴出 自民党の埼玉県議団が提出し、10月6日に埼玉県議会の委員会で可決された「虐待禁止条例」の一部改正案が全国的に物議を醸した。その内容は、成人の「養護者」が小学3年生以下の子どもを放置することを禁じ、小学4~6年生については努力義務とするものだ。想定する禁止事項として「短時間でも子どもに留守番をさせる」「子ども同士で公園で遊ばせる」「子どもだけ家に残し、ごみ捨てに行く」などを列挙。子どもを自宅や車に放置すると「虐待」とみなされ、罰則こそないものの県民にも通報を義務づけていた。 だが、「共働きの家庭にとっては現実的でない」などの批判が噴出。その結果、13日に本会議で採決が行われ可決される見通しだったところから一転、「説明不足」だったとして10日に改正案を取り下げる事態に追い込まれた。 今回の条例改正を主導していたのが、県議団の団長を務める田村琢実県議(51)だ。1971年生まれの田村氏は埼玉県内の高校を卒業後、放送大学に進学。故・中山太郎衆議院議員の秘書として政治の世界に飛び込んだ。2003年、埼玉県議会選に挑戦するも落選。再挑戦となった2007年の県議会選で20,702票を獲得し、初当選を果たす。2019年の選挙で4期目の当選後、2020年には埼玉県議会議長に就任した』、育児の実態を無視した「虐待禁止条例」が、成立寸前まで行ったのは不思議だ。
・『若手を味方につけて委員会を押し切った 埼玉県議の1人がその人物像を語る。 「自分に従順な後輩を作るのが上手いタイプ。若手議員を20人くらい引き連れてキャバクラなどに行き、田村氏が奢るのです。そうすることで、県議団の中で彼に逆らえない雰囲気を作る。今年の4月に団長に就任してからより一層強権的になっています。現在、埼玉県議会は全国でも突出して議員提案条例が多いのですが、それを主導しているのが田村氏。条例を数多く作ることが仕事だと考えている節があり、選挙の時のアピール材料に使っている。今回の『虐待禁止条例』の改正案には『これでは虐待者をたくさん生み出してしまう』という不満が党内からも出ていましたが、結局若手を味方につけて委員会を押し切りました」』』、「「自分に従順な後輩を作るのが上手いタイプ。若手議員を20人くらい引き連れてキャバクラなどに行き、田村氏が奢るのです。そうすることで、県議団の中で彼に逆らえない雰囲気を作る。今年の4月に団長に就任してからより一層強権的になっています」、そんなことしたら、政治資金がいくらあっても足りなくなりそうだ。「埼玉県議会は全国でも突出して議員提案条例が多いのですが、それを主導しているのが田村氏」、どうせ粗製乱造なのだろうが、意欲だけは評価できそうだ。自民党の県議のなかには、子育て経験者も多いと思われるが、彼らが「虐待禁止条例」に反対しなかったのは何故だろう。
・『県議団の受付嬢と親密な関係に ところが――。 「田村先生には奥様がいるのですが、かつて自民党県議団の受付嬢A子さんと親密な関係にありました。それを裏付ける写真があります」 田村氏の知人から、「週刊文春」編集部にそんな“通報”が入ったのは10月8日のことだった。入手した写真は全部で4枚。撮影日は2019年1月24日、場所は埼玉県内の飲食店だ。冒頭に触れたように、2人は体を密着させ、手を繋いでいる。そして、田村氏がA子さんの頬にキスまでしているのだ。 「県議団の受付は派遣会社から一日3~4人程派遣されてくるのですが、田村先生はA子さんのことをとても気に入っていました。彼女は県庁内でも北川景子似の美人で知られており、田村先生も『あの子可愛いよね』と周囲に話し、別の受付の人に『一緒に飲みたいから今度飲み会を設定してよ』と迫っていました。そうして実現したのが写真の飲み会です。ただ、2人でというわけにはいかないので、他の自民党の県議2人ともう1人受付の人が加わり、計5人の会になったのです」(同前)) 田村氏自身が改正案の“虐待”のような行動を取っていた この飲み会で2人の関係が急速に進展する。 「会が進むとお酒の力も手伝ってか、田村先生がA子さんに気に入っていることを伝えました。すると、彼女も田村先生のことがタイプだったようで意気投合。隣同士で座った2人は大胆にも手を繋ぎ、田村先生がA子さんの頬にキスをしたのです。彼女も嬉しそうにしていました。そのまま飲み会の途中で2人だけで店を出て行ってしまい……。この日から関係が始まったと聞きました。ただ、田村先生には奥様がいるし、A子さんには当時単身赴任中だった夫と子どもがいる。いわば、“ダブル不倫”のようなものです」(同前) 前出の県議が嘆息する。 「田村氏と会っている間、A子さんのお子さんには保護者の目が行き届いていないわけですよね。子どもの健全育成を掲げて『虐待禁止条例』の改正案を推し進める一方、自身は改正案でいうところの“虐待”のような行動を取っていた。言動の不一致が甚だしすぎます」 「週刊文春」は事実関係を確認するべく、10月10日昼、田村氏の事務所に質問状を送付。さらに10日夕方、本人の携帯電話にもショートメッセージで質問状を送ったところ、「開封済み」にはなったものの、期限までに返答はなかった。この間、田村氏が率いる自民党県議団は「虐待禁止条例」の改正案の撤回を発表した。 その直後の10日夜、早速、インターネットTV「ABEMA」に出演し、撤回の経緯や自説を披露してみせた田村氏。だが、「不倫キス」写真は撤回――とはいかなかったようだ』、「“ダブル不倫”」は望ましくないが、大人である以上、目くじらを立てるほどでもない。しかし、「田村氏と会っている間、A子さんのお子さんには保護者の目が行き届いていないわけですよね。子どもの健全育成を掲げて『虐待禁止条例』の改正案を推し進める一方、自身は改正案でいうところの“虐待”のような行動を取っていた。言動の不一致が甚だしすぎます」、ことは重大な問題だ。
次に、10月18日付け文春オンライン「《虐待禁止条例、「不倫キス」写真に続き…》自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が政務活動費1700万円を“身内企業”に還流させた疑い 田村氏は「不適切な点はない」と主張」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/66483
・『「虐待禁止条例」改正案の撤回を巡って物議を醸している自民党埼玉県議団の団長、田村琢実・埼玉県議(52)が、自身が過去に設立した個人企業に公金である政務活動費約1700万円を還流させている疑いがあることが、「週刊文春」の取材でわかった。田村氏は代理人弁護士を通じて「不適切な点はない」としている。 自民党の埼玉県議団が提出し、10月6日に埼玉県議会の委員会で可決された「虐待禁止条例」の一部改正案。その内容は、成人の「養護者」が小学3年生以下の子どもを放置することを禁じ、小学4~6年生については努力義務とするものだ。「短時間でも子どもに留守番をさせる」などが禁止事項に挙げられ、県民にも通報を義務づけていた。だが、「共働きの家庭にとっては現実的でない」などの批判が噴出。結果、「説明不足」だったとして10日に改正案を取り下げる事態に追い込まれた。 条例改正を主導していたのが、県議団団長の田村氏だった。2007年の県議選で初当選。2019年の県議選で4期目の当選後、2020年には埼玉県議会議長に就任した。その田村氏を巡り、「週刊文春」は10月12日配信のスクープ速報で、“北川景子似”の受付嬢との「不倫キス」写真を報じている(田村氏からは期限までに回答はなかった)』、「「説明不足」だったとして10日に改正案を取り下げる事態に追い込まれた」、実際には「説明不足」というより、本質的な問題だ。
・『埼玉県議団から田村氏設立の会社への支出が次々と 今回、新たに発覚したのは、田村氏の政務活動費の使途に関する不透明な実態だ。埼玉県議には給与とは別に、1人当たり政務活動費が年間600万円分支給されている。田村氏の使途で、目立つのが「株式会社TMコーポレーション」への支出だ。例えば、昨年4月28日には、広報誌「チャレンジスピリッツ」の制作・印刷・封入代として、同社に20万5168円を支出し、このうち政務活動費から13万3884円を充当している。 加えて、埼玉県議団も今年2月28日、「県議団ニュース」の印刷費等として同社に113万9930円を支出し、このうち政務活動費から110万5732円を充当している。こうした「TMコーポレーション」への支出に充てられた政活費を合計すると、過去3年間で1700万円を超えていた。 この「TMコーポレーション」は元々、田村氏が2003年に設立した会社で、当時は「有限会社タムラコーポレーション」という名称だった。以降、代表取締役を務める傍ら、2007年に県議選に初当選。その後、2013年に「有限会社TMコーポレーション」へと商号変更している。さらに2015年に現在の「株式会社TMコーポレーション」に再び商号変更し、2018年には知人のS氏が代表取締役に就いていた』、第一の記事で「若手議員を20人くらい引き連れてキャバクラなどに行き、田村氏が奢るのです。そうすることで、県議団の中で彼に逆らえない雰囲気を作る」、原資はこうした不正、「「TMコーポレーション」への支出に充てられた政活費を合計すると、過去3年間で1700万円を超えていた」が当てられたいた可能性がある。
・『多額の公金が“身内”のようなTM社に流れている構図 県議会関係者が指摘する。 「S氏は薬局関係の会社を経営しており、名義貸しのようなもの。県議会は政活費の運用指針で、親族や本人が代表を務める会社への支出には慎重な対応を求めており、表向き代表を降りたのでしょう。ただ、現在も田村氏が、毎年同じレイアウトに文章をはめ込んでいると聞きます。しかもTM社の印刷費はネット業者の2~3倍の価格。不当に多額の公金が“身内”のようなTM社に流れている構図で、党内からも疑問の声が上がっています」 田村氏に事実関係の確認を求める質問状を送付したところ、代理人弁護士名で主に以下のような回答があった。 「有限会社TMコーポレーション(株式会社TMコーポレーションに商号変更。以下、「同社」といいます。)は、田村氏が埼玉県議会議員に就任する前の2003年に同氏が設立したものですが、2013年、田村氏が100パーセント保有していた同社株式は全て第三者に譲渡されており、同社取締役からも退任しています。妻(回答は実名)も同時に同社取締役から退任しております。それ以降、田村氏(及び妻)は同社の経営に一切関与しておらず、同社を実質的に支配しているとの事実もございません。 また、『チャレンジスピリッツ』の印刷は同社が信頼できる印刷業者である等の理由から同社に発注したものです。『県議団ニュース』については、田村氏が同社を県議団に紹介し、同社に相見積もりを依頼したことはありますが、その後の発注業務は県議団において処理されているため、同社に発注された理由の詳細については分かりかねます。 埼玉県議会制定の『政務活動費の運用指針』において、『配偶者、被扶養者、同居者など生計を一にする者や自らが代表者・役員等の地位にある法人に対する支出は、実費の弁償ではないとみなされるおそれがあるため慎重な対応を要する。』とされていますが、事実関係は上記のとおりであり、同社に対する印刷発注の支払いに政務活動費が充てられたことは、上記『政務活動費の運用指針』に何ら抵触せず、不適切な点はないものと存じます」 政活費に詳しい神戸学院大の上脇博之教授が指摘する。 「公金である政活費の使途には極めて高い透明性が求められます。県議が形式的に取締役を務めていなくても、実質的にその人の会社となれば、運用指針に抵触し得る。相場よりも金額が高ければ、差額分が寄附に当たりかねない。十分な説明が求められます」 10月18日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および10月19日(木)発売の「週刊文春」では、田村氏と受付嬢の「不倫キス」写真の詳細のほか、TMコーポレーションの現代表取締役S氏との一問一答などについても報じている』、「上脇博之教授が指摘する。「公金である政活費の使途には極めて高い透明性が求められます。県議が形式的に取締役を務めていなくても、実質的にその人の会社となれば、運用指針に抵触し得る。相場よりも金額が高ければ、差額分が寄附に当たりかねない。十分な説明が求められます」、現実には、「2013年、田村氏が100パーセント保有していた同社株式は全て第三者に譲渡されており、同社取締役からも退任しています」と形式だけ整えたようだ。「『県議団ニュース』については、田村氏が同社を県議団に紹介し、同社に相見積もりを依頼したことはありますが、その後の発注業務は県議団において処理されているため、同社に発注された理由の詳細については分かりかねます」、不利な事実は開示しない姿勢のようだ。やはり、「TMコーポレーション」は大いに問題があるようだ。
第三に、10月20日付けダイヤモンド・オンライン「「お留守番禁止」「ゲームは1日1時間」…県民をナメた条例案はなぜ生まれるのか?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330606
・『先日、明らかになった子どもを車内や自宅などに放置することを禁じる埼玉県虐待禁止条例の改正案は、全国から批判が殺到。罰則はないが、子どもを置いて短時間のゴミ出しなども場合によっては「虐待」にあたるという内容に「現実的ではない」「親を追い詰める」などの声があがり、改正案を提出した自民党埼玉県議団は撤回を余儀なくされた。一方、3年半前に、同じく全国的に炎上したのが「ゲームは1日60分まで」という時間の目安を盛り込んだ「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」だ。『ルポ ゲーム条例 なぜゲームが狙われるのか』(河出書房新社)を上梓した瀬戸内海放送の山下洋平記者に改めて条例の問題点と現在地を聞いた』、興味深そうだ
・『大ざっぱな条例内容と水増しされたパブコメ 「埼玉県の条例改正案について報道で知ったとき、香川県のゲーム条例とよく似ているなとまず感じました。保護者に過度な責任を押し付けるような中身もそうですが、それまであまり注目されていなかったのに成立の直前になって全国から批判が集まったところもです。ただ、大きく違うのは、埼玉では案が取り下げられたのに対し、香川県議会は強行して条例を成立させてしまったところです」 こう話すのは瀬戸内海放送の山下洋平記者だ。2020年、香川県で施行された「ネット・ゲーム依存症対策条例」について現在まで追及を続けている。ネットやゲームの利用時間などに言及した条例としては日本初。しかし、その条例の中身には問題点も多く、不透明な点が多くあった。 条例の問題点を山下氏はこう語る。) 「ネット・ゲームの依存防止という目的そのものは否定しませんが、内容や制定過程がとにかく雑です。まず、ゲーム依存症という定義自体が科学的・医学的に定まっていません。治療の現場を取材すると、長時間ゲームをしている人の中には、学校生活などでつまずきがあり、引きこもった結果としてゲームに逃げ込んでいる人がいるなど複合的な要因があり、ゲーム自体が依存の要因になっているとは必ずしもいえません。『うちの子、ゲームばかりして宿題もしないし大丈夫かしら』と親が心配するレベルの子どもたちはたくさんいると思いますが、彼らは学校に行き、社会生活もできている。条例はこの両者を一緒くたにして考えているから『ゲームは1日60分を目安に』などという対策が出てくるのだと思います」 山下氏はこうした疑問をもとに、香川県に対し、ゲームへの依存による通院、入院者の数や推移のデータを要求したこともあった。 「でも、そんなことは調べてないって言うんです。対象となる母数もわからないのに条例の効果をどうやって測定するのか。どこの誰に向けた条例なのかが、まったく判然としないのです」 実際、2020年1月に条例の素案が公表された直後には、県職員が「ネット・ゲームの規制という結論ありきで、当事者たる子どもを交えた議論のないまま県議会の委員会内で一方的に話が進められていることに強い危機感を覚え、私はこの条例の制定に反対します」という意見を実名で出した。 さらに、条例の制定過程には作為性が見られた。条例の素案にあった「ゲームは1日60分まで」という時間規制(のちに家庭でのルールづくりの目安に修正)にはネットを中心に「時代に逆行している」などという反対意見が噴出し、炎上状態となった。しかし、その後、寄せられたパブリックコメントでは8割以上が賛成意見だったのだ。しかも、通常では多くて十数件のところが、全国的に注目されたとはいえ、寄せられたのは2600件以上と異例の多さだった。 「私は8割が賛成ということに違和感を持ち、すぐにパブコメ原本を情報公開請求をしました。しかし、開示前に条例は可決。その後、開示された原本を見ると、賛成意見の中には判で押したように似たような文言が多数あったのです」 実際、「条例通過により、明るい未来を期待して賛成します」「ゲーム依存により、判断の乏しい大人を生み出さないために、賛同します」というような同じ言い回しのメールが、短い時間でそれぞれ120件以上も送られていた』、「寄せられたパブリックコメントでは8割以上が賛成意見だったのだ。しかも、通常では多くて十数件のところが、全国的に注目されたとはいえ、寄せられたのは2600件以上と異例の多さだった・・・賛成意見の中には判で押したように似たような文言が多数あった・・・「条例通過により、明るい未来を期待して賛成します」「ゲーム依存により、判断の乏しい大人を生み出さないために、賛同します」というような同じ言い回しのメールが、短い時間でそれぞれ120件以上も送られていた」、こんな不正な操作で「条例通過」を図ったとは、酷い話だ。
・『施行2年での見直し条項も その動きはまったくなし このような不透明な制定過程に疑問を抱いた山下氏は、成立した後も取材を重ねた。条例が憲法違反にあたると県を訴えた高校生や、ゲームクリエーターらゲーム関係者、さらには知人に頼まれてパブコメで賛成意見を送ってしまったという住民などにも取材をした。 しかし、香川県議会は誠実な説明を行わないばかりか「なかったことにしよう」という姿勢すら見て取れるという。) 「ゲーム条例の付則に、施行2年を目途とした、いわゆる見直し条項があるにもかかわらず、今なおまったくその動きは見られません。国に先駆けてネット・ゲーム依存への対策をするという旗を掲げたにもかかわらず、条例施行後、新しい取り組みをしたり、その成果を発信して他の自治体に広げていったりという機運もまるでない。『作ったら作りっぱなし』という姿勢に、何のための条例なの?と感じざるを得ません。そうした怒りから、今回の書籍の執筆にも至りました」 件のゲーム条例は「子どものネット・ゲーム依存症につながるようなコンピュータゲームの利用に当たっては、1日当たりの利用時間が60分まで(学校等の休業日にあっては、90分まで)」などという文言があるが、あくまでそれは親の努力義務という立て付けだ。罰則もないため、住民にとっても今や過去の産物になりつつある。 「県民に聞いても『ああ、そういえばそんな条例がありましたね』という反応なんです。議員たちも『もう触れるな』という空気です。各所から批判があり、不透明な過程があったにもかかわらず、何の説明もなく、作ったらそれで終わり。条例の価値をおとしめた条例だと思います。それでも条例に基づいた依存対策として年間約1000万円の予算が投じられ、我々の税金が使われ続けています」』、「国に先駆けてネット・ゲーム依存への対策をするという旗を掲げたにもかかわらず、条例施行後、新しい取り組みをしたり、その成果を発信して他の自治体に広げていったりという機運もまるでない。『作ったら作りっぱなし』という姿勢に、何のための条例なの?と感じざるを得ません。そうした怒りから、今回の書籍の執筆にも至りました・・・「県民に聞いても『ああ、そういえばそんな条例がありましたね』という反応なんです。議員たちも『もう触れるな』という空気です。各所から批判があり、不透明な過程があったにもかかわらず、何の説明もなく、作ったらそれで終わり。条例の価値をおとしめた条例だと思います。それでも条例に基づいた依存対策として年間約1000万円の予算が投じられ、我々の税金が使われ続けています」」、なるほど。
・『「県民が舐められている」香川県議会の高額視察費用 ちなみに、香川県議会によるこうした不透明な行いはゲーム条例以外にもある。今年11月に予定している知事と議員らの海外訪問において、議員1人当たりの費用が約263万円だという計画を発表。その高額さに市民団体や一部議員から批判の声が上がり、宿泊先ホテルのグレードを下げるなどして3割ほど減額することになった。議員の死去や辞退で参加は当初計画の半数の4人になったが、それでも知事や随行職員を含めた9人の派遣費用は1000万円を超える見込みだ』、「議員の死去や辞退で参加は当初計画の半数の4人になったが、それでも知事や随行職員を含めた9人」、「知事」、「議員」「4人」、「随行職員」は4人も行く必要があるのだろうか。
・『「お留守番禁止」「ゲームは1日1時間」…県民をナメた条例案はなぜ生まれるのか? 瀬戸内海放送の山下洋平記者の著者『ルポ ゲーム条例 なぜゲームが狙われるのか』(河出書房新社)
「香川県議会は2017年に行った欧州視察で、昼間からビールで乾杯する様子などを報じられています。裁判所はこの視察を「実質的には観光」と指摘し、旅費全額にあたる約600万円の返還を命じる判決が出たばかり。にもかかわらず、今回また高額な海外派遣費用が問題になっている。選挙で選ばれているとはいえ、県民が舐められているとしか思えません。そして、これはなにも香川県だけの問題ではなく、全国、そして国会においても同様だと思います」 しかし、メディア側にも為政者の傲慢(ごうまん)さを招いた要因があると山下氏は語る。) 「私もゲーム条例の取材を始めたのは、制定直前でした。もっと早くからメディアとして議会の動向をチェックしていれば、と反省しています。また、報道機関の運営上、仕方ないのですが、大手メディアでも短期間で異動があったり、記者の数自体が減ったりとひとつの問題に対してとことん追及することが難しくなっています。独自の報道がなく、横並びで同じようなニュースを伝えるなどマスコミの存在意義への危機も感じます。そのようなこともあり、香川県議も含めた政治家たちは『ほとぼりが冷めるのを待つ』という思考になっていると思うので、しっかり監視しているという姿勢を持っていきたいですね。そういう思いもあって、ほとんどの社が取り上げなくなった今でもゲーム条例の取材を続けています」 「そもそもが、しつこい性格なんです」と話す山下氏だが、現在はゲーム条例の他に目を光らせるテーマがある。 「旧香川県立体育館の問題についてです。世界的な建築家の丹下健三が設計し、和船のような特徴的な外観から『船の体育館』とも呼ばれる建築的価値が高い建造物です。保存を求める声や活用したいという民間団体もありましたが、解体が決まりました。この解体についての意思決定の過程も、ゲーム条例同様不透明なんです。香川県に限らず、こうした貴重な建築物が老朽化とともに壊されています。それらを守る方法や意思決定のあり方について取材をしていきたいと考えています」 「ほとぼりを冷めさせない」と話す山下氏。それは、有権者にも必要な姿勢だろう』、「「香川県議会は2017年に行った欧州視察で、昼間からビールで乾杯する様子などを報じられています。裁判所はこの視察を「実質的には観光」と指摘し、旅費全額にあたる約600万円の返還を命じる判決が出たばかり。にもかかわらず、今回また高額な海外派遣費用が問題になっている。選挙で選ばれているとはいえ、県民が舐められているとしか思えません」、「旅費全額にあたる約600万円の返還を命じる判決」、上告したので、「返還」はまだしてないのだろうか。「大手メディアでも短期間で異動があったり、記者の数自体が減ったりとひとつの問題に対してとことん追及することが難しくなっています。独自の報道がなく、横並びで同じようなニュースを伝えるなどマスコミの存在意義への危機も感じます。そのようなこともあり、香川県議も含めた政治家たちは『ほとぼりが冷めるのを待つ』という思考になっていると思うので、しっかり監視しているという姿勢を持っていきたいですね」、「丹下健三が設計し、和船のような特徴的な外観から『船の体育館』とも呼ばれる建築的価値が高い建造物です。保存を求める声や活用したいという民間団体もありましたが、解体が決まりました。この解体についての意思決定の過程も、ゲーム条例同様不透明」、ローカルメディアにも頑張って欲しいものだ。
タグ:文春オンライン「《虐待禁止条例、「不倫キス」写真に続き…》自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が政務活動費1700万円を“身内企業”に還流させた疑い 田村氏は「不適切な点はない」と主張」 「“ダブル不倫”」は望ましくないが、大人である以上、目くじらを立てるほどでもない。しかし、「田村氏と会っている間、A子さんのお子さんには保護者の目が行き届いていないわけですよね。子どもの健全育成を掲げて『虐待禁止条例』の改正案を推し進める一方、自身は改正案でいうところの“虐待”のような行動を取っていた。言動の不一致が甚だしすぎます」、ことは重大な問題だ。 「埼玉県議会は全国でも突出して議員提案条例が多いのですが、それを主導しているのが田村氏」、どうせ粗製乱造なのだろうが、意欲だけは評価できそうだ。自民党の県議のなかには、子育て経験者も多いと思われるが、彼らが「虐待禁止条例」に反対しなかったのは何故だろう。 「「自分に従順な後輩を作るのが上手いタイプ。若手議員を20人くらい引き連れてキャバクラなどに行き、田村氏が奢るのです。そうすることで、県議団の中で彼に逆らえない雰囲気を作る。今年の4月に団長に就任してからより一層強権的になっています」、そんなことしたら、政治資金がいくらあっても足りなくなりそうだ。 (その9)(《虐待禁止条例を撤回》 自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が“北川景子似”受付嬢と「不倫キス」写真 「こちらのほうが子どもへの“虐待”では…」、虐待禁止条例 「不倫キス」写真に続き…》自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が政務活動費1700万円を“身内企業”に還流させた疑い 田村氏は「不適切な点はない」と主張、「お留守番禁止」「ゲームは1日1時間」…県民をナメた条例案はなぜ生まれるのか?) 育児の実態を無視した「虐待禁止条例」が、成立寸前まで行ったのは不思議だ。 幼児虐待 「虐待禁止条例」を期待していたのに、いきなり不倫の状況説明とは驚かされた。 文春オンライン「《虐待禁止条例を撤回》 自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が“北川景子似”受付嬢と「不倫キス」写真 「こちらのほうが子どもへの“虐待”では…」 ダイヤモンド・オンライン「「お留守番禁止」「ゲームは1日1時間」…県民をナメた条例案はなぜ生まれるのか?」 議員たちも『もう触れるな』という空気です。各所から批判があり、不透明な過程があったにもかかわらず、何の説明もなく、作ったらそれで終わり。条例の価値をおとしめた条例だと思います。それでも条例に基づいた依存対策として年間約1000万円の予算が投じられ、我々の税金が使われ続けています」」、なるほど。 『ルポ ゲーム条例 なぜゲームが狙われるのか』(河出書房新社) 「国に先駆けてネット・ゲーム依存への対策をするという旗を掲げたにもかかわらず、条例施行後、新しい取り組みをしたり、その成果を発信して他の自治体に広げていったりという機運もまるでない。『作ったら作りっぱなし』という姿勢に、何のための条例なの?と感じざるを得ません。そうした怒りから、今回の書籍の執筆にも至りました・・・「県民に聞いても『ああ、そういえばそんな条例がありましたね』という反応なんです。 「寄せられたパブリックコメントでは8割以上が賛成意見だったのだ。しかも、通常では多くて十数件のところが、全国的に注目されたとはいえ、寄せられたのは2600件以上と異例の多さだった・・・賛成意見の中には判で押したように似たような文言が多数あった・・・「条例通過により、明るい未来を期待して賛成します」「ゲーム依存により、判断の乏しい大人を生み出さないために、賛同します」というような同じ言い回しのメールが、短い時間でそれぞれ120件以上も送られていた」、こんな不正な操作で「条例通過」を図ったとは、酷い話だ。 「『県議団ニュース』については、田村氏が同社を県議団に紹介し、同社に相見積もりを依頼したことはありますが、その後の発注業務は県議団において処理されているため、同社に発注された理由の詳細については分かりかねます」、不利な事実は開示しない姿勢のようだ。やはり、「TMコーポレーション」は大いに問題があるようだ。 「「香川県議会は2017年に行った欧州視察で、昼間からビールで乾杯する様子などを報じられています。裁判所はこの視察を「実質的には観光」と指摘し、旅費全額にあたる約600万円の返還を命じる判決が出たばかり。にもかかわらず、今回また高額な海外派遣費用が問題になっている。選挙で選ばれているとはいえ、県民が舐められているとしか思えません」、 「「説明不足」だったとして10日に改正案を取り下げる事態に追い込まれた」、実際には「説明不足」というより、本質的な問題だ。 第一の記事で「若手議員を20人くらい引き連れてキャバクラなどに行き、田村氏が奢るのです。そうすることで、県議団の中で彼に逆らえない雰囲気を作る」、原資はこうした不正、「「TMコーポレーション」への支出に充てられた政活費を合計すると、過去3年間で1700万円を超えていた」が当てられたいた可能性がある。 「上脇博之教授が指摘する。「公金である政活費の使途には極めて高い透明性が求められます。県議が形式的に取締役を務めていなくても、実質的にその人の会社となれば、運用指針に抵触し得る。相場よりも金額が高ければ、差額分が寄附に当たりかねない。十分な説明が求められます」、現実には、「2013年、田村氏が100パーセント保有していた同社株式は全て第三者に譲渡されており、同社取締役からも退任しています」と形式だけ整えたようだ。 「議員の死去や辞退で参加は当初計画の半数の4人になったが、それでも知事や随行職員を含めた9人」、「知事」、「議員」「4人」、「随行職員」は4人も行く必要があるのだろうか。 「旅費全額にあたる約600万円の返還を命じる判決」、上告したので、「返還」はまだしてないのだろうか。「大手メディアでも短期間で異動があったり、記者の数自体が減ったりとひとつの問題に対してとことん追及することが難しくなっています。独自の報道がなく、横並びで同じようなニュースを伝えるなどマスコミの存在意義への危機も感じます。そのようなこともあり、香川県議も含めた政治家たちは『ほとぼりが冷めるのを待つ』という思考になっていると思うので、しっかり監視しているという姿勢を持っていきたいですね」、「丹下健三が設計し、 和船のような特徴的な外観から『船の体育館』とも呼ばれる建築的価値が高い建造物です。保存を求める声や活用したいという民間団体もありましたが、解体が決まりました。この解体についての意思決定の過程も、ゲーム条例同様不透明」、ローカルメディアにも頑張って欲しいものだ。
高齢化社会(その25)(高齢者のスポーツは「早死+寝たきり」のリスクが高まる!? 医大名誉教授「運動不足以上に気をつけたいこと」 足腰を痛めて動けなくなり、あっという間に老いてしまう、これを続ければ認知症グレーゾーンからUターンできる…認知機能が平均34%アップした「インターバル速歩」 生活習慣病やうつ 睡眠障害 骨粗しょう症の改善にも役立つ、老後の楽しみを一気に奪う「サルコペニア」の恐怖 健康寿命を延ばす「たん活」「貯筋」のススメ) [社会]
高齢化社会については、本年9月29日に取上げた。今日は、(その25)(高齢者のスポーツは「早死+寝たきり」のリスクが高まる!? 医大名誉教授「運動不足以上に気をつけたいこと」 足腰を痛めて動けなくなり、あっという間に老いてしまう、これを続ければ認知症グレーゾーンからUターンできる…認知機能が平均34%アップした「インターバル速歩」 生活習慣病やうつ 睡眠障害 骨粗しょう症の改善にも役立つ、老後の楽しみを一気に奪う「サルコペニア」の恐怖 健康寿命を延ばす「たん活」「貯筋」のススメ)である。
先ずは、本年10月7日付けPRESIDENT Onlineが掲載した浜松医科大学名誉教授 医学博士の高田明和氏による「高齢者のスポーツは「早死+寝たきり」のリスクが高まる!? 医大名誉教授「運動不足以上に気をつけたいこと」 足腰を痛めて動けなくなり、あっという間に老いてしまう」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/72574
・『うつや認知症を招く老化を遅らせるにはどうすればいいか。浜松医科大学名誉教授の高田明和さんは「65歳以降、いわゆる老化に伴い多くなる孤立状態になると、うつの症状が出てくる。また、うつになると認知症を引き起こしやすくなる。これらの負の連鎖を避けるためには、生涯現役が理想という幻想を捨て、日々のちょっとした生きがいを持つといい」という――。 ※本稿は、高田明和『65歳からの孤独を楽しむ練習 いつもハツラツな人』(三笠書房)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『「不安」「孤独感」「うつ」の相関関係 肉体の衰えと孤独感には、非常に深い関係があります。 やはりちょうど肉体の耐用年数を超えた65歳くらいから、心を病む人が非常に増えてきます。 私の周りで多いのは、うつ病になるケースで、不眠の症状が出る人が増えています。社会的地位を失ったことや、人間関係を損なってしまっただとか、自分が陥った状況についてくよくよと思い悩んでいるうちに、寝つけなくなってしまうのでしょう。 それから、妻に先立たれて一人になった夫は、認知症になってしまうケースが多くあります。孤独感を忘れよう、亡くなった妻のことは考えないようにしようとするせいか、思考停止の状態が、だんだんと認知機能を衰えさせるのでしょう。 「不安」と「孤独感」と「うつ」は、いずれも脳の扁桃体と帯状回(注)という部分が関連しています。 人が孤立状態に置かれると、脳の帯状回がだんだんと正常に機能しなくなり、その影響で、不安障害の傾向が出てきて、やがて、やる気や食欲も低下し、うつの症状が出てきます。 さらには、うつになると、「アミロイドβ」と呼ばれる、脳内に生じるゴミのようなタンパク質が脳から排除されなくなります。これがどんどん蓄積していくと、脳細胞が壊れ、アルツハイマー型認知症が引き起こされます』、「人が孤立状態に置かれると、脳の帯状回がだんだんと正常に機能しなくなり、その影響で、不安障害の傾向が出てきて、やがて、やる気や食欲も低下し、うつの症状が出てきます。 さらには、うつになると、「アミロイドβ」と呼ばれる、脳内に生じるゴミのようなタンパク質が脳から排除されなくなります。これがどんどん蓄積していくと、脳細胞が壊れ、アルツハイマー型認知症が引き起こされます」、なるほど。 (注)帯状回:大脳の内側面において、脳梁の辺縁を前後方向に走る脳回(Wikipedia)
・『老化を遅らせる練習 ここから逆算して考えれば、年を取ったら、うつを引き起こす原因となる状態を避けることで、認知症になるリスクをかなり減らせることになります。 そのために重要なことの1つめが、本書で詳しく述べている「腸内環境を整えること」です。食事を改善することが、腸内環境を整え、認知症の対策にもなることが、最近の研究でわかってきました。 2つめは、「生きがいを持つこと」。生きがいを持っている人であれば、こうした「孤立→不安→うつ」の悪循環に陥りにくいことはすでにわかっています。 のんびりお茶でも飲もうかと思ったら、仕事の依頼の電話がくる――そんな忙しい人であれば、不安になっている暇なんてないでしょう。 こう書くと「仕事がない人はどうするんだ?」と思うでしょうが、たとえば、これまで専業主婦として会社勤めの経験がない女性でも、孤立からうつになる人は、男性よりもずっと少ないことが判明しています。 それは、たとえ誰とも会わなくても、食事を作ったり掃除をしたり、家事のさまざまな「やるべきこと」があるせいで、十分に生きがいのある忙しい毎日を過ごしているからです。 「生きがい」とは、時が経つのを忘れるほど夢中になれる“特別なもの”ばかりを指すのではないのです。スーパーの特売日に目的のものを特価で買うこと、植木に花を咲かせること、道のごみを拾うことなど、どんな小さなことでも十分に当てはまるのです。 孤立感から、認知症などの病気になる人とならない人の違いは、年を取ってからのライフスタイルや考え方に大きく左右されるということです。 ほかにどんなライフスタイルや考え方が孤独感を招くのか、どんどん明かしていきましょう』、「うつを引き起こす原因となる状態を避けることで、認知症になるリスクをかなり減らせる・・・そのために重要なことの1つめが・・・「腸内環境を整えること」です。食事を改善することが、腸内環境を整え、認知症の対策にもなることが、最近の研究でわかってきました」、「認知症」や「うつ」と関係なさそうな「腸内環境を整えること」、とは「腸」は重要な臓器のようだ。「2つめは、「生きがいを持つこと」。生きがいを持っている人であれば、こうした「孤立→不安→うつ」の悪循環に陥りにくいことはすでにわかっています。「生きがい」とは、時が経つのを忘れるほど夢中になれる“特別なもの”ばかりを指すのではないのです。スーパーの特売日に目的のものを特価で買うこと、植木に花を咲かせること、道のごみを拾うことなど、どんな小さなことでも十分に当てはまるのです。」、なるほど。
・『孤独な寝たきりになる高齢者の共通点 肉体が衰えて病気になると、ときには死へと誘導するような致命的な孤独感が生じます。だとすれば、私たちにできる「老化を遅らせる練習」の3つめは、「体を酷使しないこと」です。 高齢者に対しては、「日々、足腰を鍛えなさい」と、運動を推奨する風潮があります。でも私は、そんなに無理をする必要などない、と考えます。 今88歳の私がしている「運動」といえば、スーパーまで歩いて買い物に行くことと、都心にある出版社に電車に乗って出向くことくらいです。 ただ、マンションの外に出るときは、エレベーターは目的の1階手前の階で降りるようにしています。そして1階分12段の階段を自分の足で上ったり下りたりしています。このようにして一日4往復くらいすれば、十分体力を維持できます。 また、このくらいの軽い運動をすれば、自分の体力がまだまだ衰えていないことを確認できますし、何かのスポーツをするよりずっと簡単で、確たる自信にもなります。 この程度でまったく構わないのではないか、と思っているのです。 ウォーキングはおろか、少しの散歩すら、本当は必要ないのではないでしょうか。 足腰の関節などの耐用年数からいっても、世の中の筋トレブームにつられて無理に「運動しよう」なんて考える必要は、まったくないと思っています。 もちろん、苦もなく楽しく動けるならば、それに越したことはありません。山登りもいいし、マラソンだっていい。若いころにしていたスポーツを、年寄り仲間と楽しむことは否定しません。 ただ、私の周りで、高齢になってまでスポーツをやっていた人は、どういうわけか皆、早くに亡くなっているのです。あるいは、寝たきりになっています。 そういう事実ともあいまって、「運動すれば健康的になる」という常識は、「軽い運動をすれば健康的になる」という程度に解釈して、汗だくになって息があがるほどのハードな運動はやめておいたほうがいいと思うのです。 苦痛に顔をゆがめてまで健康になろうとする必要はないし、日々練習をして「大会で優勝しよう」なんて気張る必要もないでしょう』、「私たちにできる「老化を遅らせる練習」の3つめは、「体を酷使しないこと」です。 高齢者に対しては、「日々、足腰を鍛えなさい」と、運動を推奨する風潮があります。でも私は、そんなに無理をする必要などない、と考えます。 今88歳の私がしている「運動」といえば、スーパーまで歩いて買い物に行くことと、都心にある出版社に電車に乗って出向くことくらいです。 ただ、マンションの外に出るときは、エレベーターは目的の1階手前の階で降りるようにしています。そして1階分12段の階段を自分の足で上ったり下りたりしています。このようにして一日4往復くらいすれば、十分体力を維持できます」、「私の周りで、高齢になってまでスポーツをやっていた人は、どういうわけか皆、早くに亡くなっているのです。あるいは、寝たきりになっています。 そういう事実ともあいまって、「運動すれば健康的になる」という常識は、「軽い運動をすれば健康的になる」という程度に解釈して、汗だくになって息があがるほどのハードな運動はやめておいたほうがいいと思うのです」、やはり過ぎたるは及ばざるが如しのようだ。
・『運動不足以上に気をつけるべきリスク こう書くと、ゴルフとかテニス、マラソンなど、あらゆるスポーツを生きがいとしている人たちから批判されるかもしれません。 楽しんでやっている分には構わないし、私はそういう方に対して「やめなさい」とまで言うつもりはありません。 しかし、高齢になっても続けている以上は、「それができなくなったとき」のことを想定しておいてほしいとは思います。 というのも、体力もあって積極的にスポーツを楽しんでいた方が、身体機能の衰えや足腰を痛めたことをきっかけに、思うように運動ができなくなり、孤独感を増してしまうケースがとても多いからです。 特にチームスポーツをやっていた人は、元気に運動を続けている仲間の姿と自分を比較して、チームに迷惑をかける心配も含め、まるで自分が脱落してしまったかのような疎外感を覚えてしまいがちです。そこから、うつになってしまう方が多くいます。 だから運動を楽しむのであれば、あまり「競い合うこと」や「チームプレー」に熱心にならないこと。 ゴルフのスコアも、マラソンのタイムも、一日に歩く歩数も、年を取ったら下がるのが当たり前なのです。ただ、その下がり具合を誰かと競い合っても意味がありません。 運動をしてはいけないというのではなく、人間の体は、高齢になっても若い時と同じようにハードな運動ができるようにはできていないことを知っておいてください。 運動不足で老いてしまうこと以上に、「無理な運動をしたせいで足腰を痛めて動けなくなり、それがきっかけで、あっという間に老いてしまうリスク」のほうを、心配するべきでしょう』、「特にチームスポーツをやっていた人は、元気に運動を続けている仲間の姿と自分を比較して、チームに迷惑をかける心配も含め、まるで自分が脱落してしまったかのような疎外感を覚えてしまいがちです。そこから、うつになってしまう方が多くいます。 だから運動を楽しむのであれば、あまり「競い合うこと」や「チームプレー」に熱心にならないこと」、「人間の体は、高齢になっても若い時と同じようにハードな運動ができるようにはできていないことを知っておいてください。 運動不足で老いてしまうこと以上に、「無理な運動をしたせいで足腰を痛めて動けなくなり、それがきっかけで、あっという間に老いてしまうリスク」のほうを、心配するべきでしょう」、なるほど。
・『「生涯現役」という幻想も、孤独感を招く 年を取ってから執着してはいけないのは、運動の強度だけでなく、仕事や社会的な役割についても同じかもしれません。 もちろん、経済的な事情から「仕事をして収入を得なくてはいけない」人はいるでしょう。でも、そうではないのに、何歳になっても「仕事をするべきだ」ということはないですし、いつまでも現役でいる人が偉いわけでも、幸せなわけでもありません。 医学の分野にはいつまでも現役の人が多いのですが、早期に引退したからといって悪いわけではないし、仕事を辞めたって人生を大いに楽しんでいる人は大勢います。 世の中は、「高齢でも、仕事をしている人が素晴らしい」と、むやみやたらに崇め奉るのですが、そんな幻想に惑わされてはいけません。 すでに述べたように、私たちの肉体は70歳や80歳を超えたら、正常に使えるようにはできていません。したがって仕事年齢だって、本来は70歳以上を想定してはいないわけです。だから一般的には65歳くらいで定年になっています。 しかし、人生が長くなった結果、私たちは想定外の努力をしなければならなくなりました。 たとえばあるマンションで、高校の校長先生だった方が、管理人の仕事を引き受けていたとしましょう。そうやって仕事をしていることは賞賛されるべきことですし、管理人よりも校長先生のほうが偉いということもありません。時間に余裕があるし、本人が楽しんでやっているならば、何も問題はないことです。 しかし、もし、「なんで校長だった私が、この仕事をしなければいけないんだ」とか、「校長までやった人間に世の中は冷たい」などと感じるようであれば、そこからたちまち疎外感や孤独感が、広がっていきます。 それに、家でのんびりしている状態とくらべれば、やはり体に負担がかかるのは事実です。なんだかんだいって管理人さんの仕事は忙しいものですから、それなりに体をケアしながら、無理をせずに仕事をしていく必要があるでしょう。 というわけで、「老化を遅らせる練習」の4つめは、「生涯現役が理想! という幻想を捨てること」です』、「あるマンションで、高校の校長先生だった方が、管理人の仕事を引き受けていたとしましょう。そうやって仕事をしていることは賞賛されるべきことですし、管理人よりも校長先生のほうが偉いということもありません。時間に余裕があるし、本人が楽しんでやっているならば、何も問題はないことです。 しかし、もし、「なんで校長だった私が、この仕事をしなければいけないんだ」とか、「校長までやった人間に世の中は冷たい」などと感じるようであれば、そこからたちまち疎外感や孤独感が、広がっていきます」、「「老化を遅らせる練習」の4つめは、「生涯現役が理想! という幻想を捨てること」です」、なるほど。
・元部下との関係性の変化は当然 引退後も仕事を続けることは、生きがいにもなるし、人間関係を維持したり新しく築いたりするきっかけにもなりますから推奨すべきことです。私も執筆の仕事をしているおかげで、心身ともに健康な生活ができているのは確かです。 ただ、多くの場合、現役のころよりも権限は少なくなるし、言い分も通らなくなります。現役時代にそれなりの地位にいて部下たちから丁重に扱われていたのに、引退して顧問のような立場になったとたん、部下が持ち上げてくれなくなり、言うことを聞いてくれなくなることは、よくあります。 現役時代は上下関係が厳格だったので、部下もそれなりに気をつかわなければならなかったのが、そうした関係性がなくなれば、元部下も自分の仕事があるから、いちいちあなたに構ってばかりもいられません。 ときには元部下に、これみよがしに邪険にされることがあるかもしれませんが、それは現役時代にあなたが相手に辛く当たっていたからでしょう。多くの場合は親子関係と同じで、必ずしも元部下がリスペクトの気持ちを忘れたわけではないのです。ただ、関係性が変化しただけです。 こうした変化を素直に受け入れられるならば、年を取って仕事をしても問題はありません。けれども、「現役と同じように自分は大切に扱われるべきだ」と心のどこかで思っていれば、そうならない現状を淋しく感じ、自信を喪失していくことは多くなります』、「必ずしも元部下がリスペクトの気持ちを忘れたわけではないのです。ただ、関係性が変化しただけです。 こうした変化を素直に受け入れられるならば、年を取って仕事をしても問題はありません。けれども、「現役と同じように自分は大切に扱われるべきだ」と心のどこかで思っていれば、そうならない現状を淋しく感じ、自信を喪失していくことは多くなります」、なるほど。
・『90歳で元気な人が認知症になった理由 私の知人に、100歳近くまで現役で、非常に健康だったある大学の名誉教授の方がいました。 ところがキャリアの最後で、大きなミスを犯してしまったのです。人間関係における判断を間違えたのです。 偉くなると、周りにあれこれいろいろな企みや思惑、嫉妬を抱えた人たちが近づいてきます。そうした人たちに、あることないこと吹き込まれ、自分が一番信頼していた部下を、自らの手で排除するように唆されてしまったのです。 その後、彼は自分の過ちに気づいたのですが、もはやあとの祭りです。野に下った部下を、呼び戻すことはかないませんでした。 すると突然、彼は認知症になり、施設に入って2年ほどで亡くなってしまいました。 90歳を超えてもあれほど頭の切れた人が、まさか認知症になるとは、私は考えもしませんでした。てっきり、仕事中にポックリ逝くのだろうと思っていたくらいです。 そのときは、年を取ることの怖さを感じたものです』、「100歳近くまで現役で、非常に健康だったある大学の名誉教授の方がいました。 ところがキャリアの最後で、大きなミスを犯してしまったのです・・・偉くなると、周りにあれこれいろいろな企みや思惑、嫉妬を抱えた人たちが近づいてきます。そうした人たちに、あることないこと吹き込まれ、自分が一番信頼していた部下を、自らの手で排除するように唆されてしまったのです。 その後、彼は自分の過ちに気づいたのですが、もはやあとの祭りです。野に下った部下を、呼び戻すことはかないませんでした。 すると突然、彼は認知症になり、施設に入って2年ほどで亡くなってしまいました」、考えようによっては、「自分の過ち」で苦しめられるよりは、「認知症」になって幸せだったのかも知れない。
・『高齢になったら執着は捨てる アルツハイマー病による認知症(アルツハイマー型認知症)は、一般的には加齢とともに脳内にアミロイドβというタンパク質が蓄積していき、それが脳細胞に影響を与えるために起こるとされていますが、若年でかかる人もおり、なぜ、アミロイドβが蓄積するのか正確な原因はわかっていません。 ちなみに、「認知症」というのは病名ではなく、表面に現れた症状のことを指します。そして、認知症を引き起こす原因は1つではありません。 頭部の外傷で起こることもあるし、糖尿病などの生活習慣病やアルツハイマー病が原因であることもあるし、レビー小体の蓄積や遺伝性の場合もあります。 すでに述べたように、アルツハイマー型認知症には、うつが大きくかかわっています。孤独感や自信喪失、挫折感などで、耐えられないほどの精神的な苦しみがある人は、アルツハイマー型認知症になりやすいわけです。 実際に、アルツハイマー型認知症になった人を見れば、「人生をかけて、自分が立ててきた学説がダメになった」とか、「今までの自分の功績が否定された」など、何か取り返しのつかない大きな失敗をしたと思い込んでいる場合が多くあります。もちろん、伴侶を失ったことに対する喪失感が、認知症の発症を促すこともあるでしょう。 だからアルツハイマー型認知症を避けるために大切なのは、高齢になったら、もう執着は捨てることです。 世の中は変化していくのですから、仕事で成し遂げたことも日々どんどん更新されるし、下の人間が上の人間をどんどん追い越していくのも当然だ――そのように認識を改めましょう。そうした変化は、人類にとってむしろ喜ばしい進化発展であり、自分が否定されているわけでは決してないのです。 というわけで、「老化を遅らせる練習」の5つめは、「過去の実績に執着しない」ということです。 それでも、どうしても執着が捨てられないのなら、いっそ自分が属していた世界から完全に離れることです。 いつまでも「尊敬されていたい」とか、「下の人間に優越感を持ちたい」と考えているかぎり、現実とのギャップに打ちのめされるだけ。 だから、そうした苦しい思いをしないですむように、その世界から離れるのです。引退者は引退者として、まったく違った人生を楽しむほうが、きっと心穏やかでいられ、楽しくもあるはずです』、「世の中は変化していくのですから、仕事で成し遂げたことも日々どんどん更新されるし、下の人間が上の人間をどんどん追い越していくのも当然だ――そのように認識を改めましょう。そうした変化は、人類にとってむしろ喜ばしい進化発展であり、自分が否定されているわけでは決してないのです。 というわけで、「老化を遅らせる練習」の5つめは、「過去の実績に執着しない」ということです」、確かにその通りだろう。
・『本当に「脳に効くトレーニング」の中身 最近は、認知症を予防するために、パズルや間違い探し、クイズや計算ドリルを解くといった、いわゆる「脳トレーニング(脳トレ)」が流行っています。ただ、これが実際に予防に効果あるかといえば、大いに疑問です。 というのも、脳の一部分を酷使したところで認知症対策にならないことは、すでに医学的に証明されているからです。それは、コンピューターのように優秀で明晰な頭脳を日々鍛えている囲碁や将棋の名人でさえも、認知症になることからも明らかです。 逆に、無理に好きでもない脳トレをして、それ自体がストレスになるのであれば、うつの原因になってしまうことすらあるでしょう。 それよりも、積極的に新しい知識を吸収したり、今、あなたがしているように本を読んだり、文章を書いたり絵を描いたりといった活動をするほうが、よほど脳の海馬の細胞は増えていきます。 そんなふうに好奇心や創作欲を満たしていくことこそ、本当の意味での「脳トレーニング」ではないでしょうか。 というわけで、「老化を遅らせる練習」の6つめは、「好奇心や創作意欲を満たしていく」です。 ちなみに、認知症の原因の中でも上位を占めるアルツハイマー病は、脳神経が変性し、脳細胞が萎縮していく病です。 最近になり、アルツハイマー型認知症は薬で進行を遅くすることができるようになりました。でも高額なわりに、遅らせる程度は20~25%のみ。たとえば85歳くらいで始まる認知症が、88歳くらいで始まるようにする効果しか、今のところありません。 しかも、認知症を引き起こす病気は、ほかにいくつもあるわけです。ですから、「アルツハイマー型認知症だけの発症を延ばしたところでリスクは変わらない」とする考え方もあります。 でも、「3年も遅らせることができるなら、朗報だ」と考えることもできます。そのご家族にしてみれば、3年間の介護負担があるかないかの差は大きいからです。 ところで、今、世界は、アルツハイマー病と腸内細菌との関係に注目しています(残念ながら日本での研究は遅れています)。 アルツハイマー病を発生させる要因が解明されれば、将来はかなりの割合で認知症を抑えることができるでしょう』、「無理に好きでもない脳トレをして、それ自体がストレスになるのであれば、うつの原因になってしまうことすらあるでしょう。 それよりも、積極的に新しい知識を吸収したり、今、あなたがしているように本を読んだり、文章を書いたり絵を描いたりといった活動をするほうが、よほど脳の海馬の細胞は増えていきます。 そんなふうに好奇心や創作欲を満たしていくことこそ、本当の意味での「脳トレーニング」ではないでしょうか。 というわけで、「老化を遅らせる練習」の6つめは、「好奇心や創作意欲を満たしていく」です」、「世界は、アルツハイマー病と腸内細菌との関係に注目しています(残念ながら日本での研究は遅れています)」、この分野の研究がもっと進むことを願うばかりだ。
次に、10月16日付けPRESIDENT Onlineが掲載した認知症専門医の朝田 隆氏による「これを続ければ認知症グレーゾーンからUターンできる…認知機能が平均34%アップした「インターバル速歩」 生活習慣病やうつ、睡眠障害、骨粗しょう症の改善にも役立つ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/74656?page=1
・『認知症には、健常者と認知症の中間にあたるグレーゾーン(軽度認知障害)の段階がある。認知症専門医の朝田隆さんは「認知症の予防には筋肉を鍛えることが重要だ。筋肉が動くときに分泌されるマイオカインが脳の神経細胞を増やす働きをする。歩き方を少し変えるだけで、筋力も認知機能もアップさせることができる」という――。 ※本稿は、朝田隆『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』(アスコム)の一部を再編集したものです』、「歩き方を少し変えるだけで、筋力も認知機能もアップさせることができる」、とは有り難い話だ。
・『筋トレで頭の回転がよくなったQさん 脳の働きを高めるには、運動も欠かせません。広告代理店に勤務しているQさん(62歳・男性)は、持ち前のひらめきやアイディアを生かして、数多くのクライアントの広告を手掛け、高い評価を得てきました。 ところが、40歳を過ぎた頃から頭の回転が鈍くなってきたことを自覚し、「もう第一線から退くしかないのかな」と悩んでいたそうです。そんなとき、健康診断で血圧と血糖値、肥満度の指標であるBMI値が高いことを指摘され、日常的に運動することをすすめられました。 そこで気分転換も兼ねてジムへ通い、マシンを使ったウォーキングと筋トレを始めたところ、パソコンに向かっているときはまったく思い浮かばなかったアイディアが、運動している最中にふっとひらめくことが増えたといいます。 運動を続けるうちに、仕事の勘がどんどん戻ってきて、また自信をもって働けるようになったことがうれしいと、Qさんは話します。 また、健康診断の数値も改善され、筋トレによって体が引き締まったことから、家族の間で「お父さんカッコよくなった」と大評判。そのことがまた運動を続けるモチベーションとなり、最近は奥さんと一緒にジムへ行き、帰りにレストランで食事をするという新たな楽しみが増えたとおっしゃっていました』、「40歳を過ぎた頃から頭の回転が鈍くなってきたことを自覚し、「もう第一線から退くしかないのかな」と悩んでいたそうです。そんなとき、健康診断で血圧と血糖値、肥満度の指標であるBMI値が高いことを指摘され、日常的に運動することをすすめられました。 そこで気分転換も兼ねてジムへ通い、マシンを使ったウォーキングと筋トレを始めたところ、パソコンに向かっているときはまったく思い浮かばなかったアイディアが、運動している最中にふっとひらめくことが増えた」、素晴らしい効果だ。「運動を続けるうちに、仕事の勘がどんどん戻ってきて、また自信をもって働けるようになったことがうれしい・・・健康診断の数値も改善され、筋トレによって体が引き締まったことから、家族の間で「お父さんカッコよくなった」と大評判。そのことがまた運動を続けるモチベーションとなり、最近は奥さんと一緒にジムへ行き、帰りにレストランで食事をするという新たな楽しみが増えた」、これほど運動が効果あるとは、私も驚かされた。
・『筋肉が増えると、脳の神経細胞も増える Qさんのように、「運動を始めてから頭の働きがよくなった」とおっしゃる人はたくさんいます。認知症に対しても運動の効果はバツグンで、日常的な活動量の多い高齢者ほど、認知症の発症率が低い傾向にあることが知られています。 運動によって脳の働きが高まる理由としては、脳の血流が増えることがよくあげられます。もちろん、それは確かですが、それ以上に注目したいのが“筋肉”です。筋肉が動くときに分泌されるマイオカインという物質のなかには、脳の神経細胞が減るのを防ぐだけでなく、脳の神経細胞を増やす働きをするものが存在するという研究が報告されているのです。 以前は、筋肉は脳からの一方的な指令で動いていると思われていました。 しかし実際には、筋肉からも絶えず脳にシグナルが送られていて、筋肉が動くこと自体が脳の活性化に寄与することがわかってきています。 つまり、筋肉を鍛えている人は脳の神経細胞も一緒に増やしているということです。 「脳の神経細胞って、大人になってからでも増えるの?」と、驚く人もいるでしょう。 おっしゃるように、少し前までは、脳の神経細胞は成人後に増えることはないと考えられていました。しかし現在は、脳の神経細胞は年をとっても増えることがわかっており、ハーバード大学医学部のレイティ博士は、「運動こそが、脳の神経細胞を増やすために最も効果が期待できる」と述べています』、「運動によって脳の働きが高まる理由としては、脳の血流が増えることがよくあげられます・・・それ以上に注目したいのが“筋肉”です。筋肉が動くときに分泌されるマイオカインという物質のなかには、脳の神経細胞が減るのを防ぐだけでなく、脳の神経細胞を増やす働きをするものが存在する・・・以前は、筋肉は脳からの一方的な指令で動いていると思われていました。 しかし実際には、筋肉からも絶えず脳にシグナルが送られていて、筋肉が動くこと自体が脳の活性化に寄与することがわかってきています。 つまり、筋肉を鍛えている人は脳の神経細胞も一緒に増やしているということです」、「脳」や「筋肉」についてのこれまでの知識が陳腐化してることに、改めて驚かされた。
・『筋肉が萎縮したマウスは記憶障害になった さらに運動には、感情や思考に関係するドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌を促す効果もあるといわれており、認知症グレーゾーン(MCI:軽度認知障害)の初期に見られる「めんどうくさい」を改善するうえでも最適です。 逆に、運動不足によって筋肉(骨格筋)が萎縮すると、それだけでアルツハイマー型認知症の発症につながることが、富山大学の東田とうだ千尋教授らの動物実験で明らかにされています。マウス(若齢のアルツハイマー病モデルマウス)に筋肉の萎縮を誘発したところ、そうでないマウスにくらべて若年例でも記憶障害が発症していたというのです。 認知症の予防、および認知症グレーゾーンからの回復を果たすうえで、運動習慣は不可欠といえます』、「運動には、感情や思考に関係するドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌を促す効果もあるといわれており、認知症グレーゾーン(MCI:軽度認知障害)の初期に見られる「めんどうくさい」を改善するうえでも最適です・・・認知症の予防、および認知症グレーゾーンからの回復を果たすうえで、運動習慣は不可欠といえます」、「運動」の重要性を再認識した。
・『認知機能が平均34%アップした「すごい歩き方」 中高年の方から「足腰を鍛えるために、毎日ウォーキングをしています」という声がよく聞かれます。ウォーキングは、呼吸で取り入れた酸素を使って脂肪を燃やす有酸素運動。健康増進やダイエットには最適です。 しかし、ただ歩くだけのウォーキングでは、認知症対策に必要な「筋力の増強」にまではつながらないことが、中高年を対象とした調査で明らかにされています。せっかく歩くなら、しっかりと筋肉をつけて、認知症予防にも役立てましょう。 そこでおすすめなのが、ウォーキングよりも、「インターバル速歩」です。 インターバル速歩とは、筋肉に負荷をかける「さっさか歩き」と、負荷の少ない「ゆっくり歩き」を交互に繰り返すウォーキング法の一つ。筋力や持久力を無理なく高めることができる中高年向けのトレーニング法として、信州大学大学院特任教授の能勢博先生らが提唱しているものです。 高齢者を対象にインターバル速歩を5カ月間行ってもらった研究によると、参加した人の体力が平均6%向上したといいます。さらに、参加者のうち2割は認知症グレーゾーンと診断されていましたが、インターバル速歩を行ったあとは、認知機能が平均34%も改善されていたそうです(能勢先生が理事長を務めるNPO法人 熟年体育大学リサーチセンターの研究より)』、「ただ歩くだけのウォーキングでは、認知症対策に必要な「筋力の増強」にまではつながらない・・・そこでおすすめなのが、ウォーキングよりも、「インターバル速歩」です。 インターバル速歩とは、筋肉に負荷をかける「さっさか歩き」と、負荷の少ない「ゆっくり歩き」を交互に繰り返すウォーキング法の一つ。筋力や持久力を無理なく高めることができる中高年向けのトレーニング法として、信州大学大学院特任教授の能勢博先生らが提唱しているものです。 高齢者を対象にインターバル速歩を5カ月間行ってもらった研究によると、参加した人の体力が平均6%向上したといいます。さらに、参加者のうち2割は認知症グレーゾーンと診断されていましたが、インターバル速歩を行ったあとは、認知機能が平均34%も改善されていたそうです」、「認知機能が平均34%も改善されていた」、とは効能あらたかだ。ただ、私の場合、散歩は後ろ向き歩きも組み合わせているので、「インターバル速歩」を採り入れる余地は残念ながら殆どない。
・『「ちょっとキツい」と感じる程度がいい また、インターバル速歩は、認知症および認知症グレーゾーンの危険因子とされている生活習慣病やうつ、睡眠障害、骨粗しょう症などの改善にも役立つことが明らかにされています』、「インターバル速歩は、認知症および認知症グレーゾーンの危険因子とされている生活習慣病やうつ、睡眠障害、骨粗しょう症などの改善にも役立つ」、ここまで効果が大きいのであれば、前向きの過程で、「インターバル速歩」を採り入れてみたい。
・『インターバル速歩のやり方 ① 3分間「さっさか歩き」をしたあと、次の3分間は「ゆっくり歩き」をします。 ② ①を1日5セット以上行います(1セットずつ、時間を空けて行ってもOK)。 ③ 週4日以上を目標に行い、5カ月以上続けます。 さっさか歩きは「ちょっとキツい」と感じる程度が目安。ゆっくり歩くときは、呼吸を整えながら、自分にとって「ラクなペース」で。ただし、目線や姿勢、歩幅などは、図表1で示した正しいフォームを崩さないように意識しましょう。 【図表1】インターバル速歩のやり方出所=『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』 インターバル速歩によって太ももの筋力が向上すると、転倒予防にも役立ちます。最近は、インターバル速歩の歩く速さを切り替えるタイミング(3分)を教えてくれたり、歩行ペースを記録できるスマートフォン用の無料アプリもあります。 ストップウォッチや腕時計でもよいですが、歩くことに意識を集中するうえでは、スマホアプリを使ったほうが便利です。なお、持病があって通院している人は、主治医と相談してから行ってください』、私は携帯を持たない主義だが、「スマホ」がここまで便利になってくると、考え直さざるを得ない。
・『「フラダンス」がインナーマッスルをフル稼働させる 「時間を測りながら歩くなんてめんどう」 「もっとラクで楽しい筋トレ法はないの?」 「めんどうくさい脳」になっている方からは、そんな声が聞こえてきそうですね。 インターバル速歩は、決してめんどうなトレーニングではありません。とはいえ、まずは運動に興味をもっていただくことが大事なので、エモーショナルなときめきがプラスされた楽しい筋トレとして、フラダンスを紹介しましょう。 フラダンスは、「ハンドモーション」と呼ばれるしなやかで美しい手の動きが特徴的な、ハワイの伝統的な踊りです。ゆっくりとした優雅な動きは、一見、筋トレとはかけ離れた印象がありますが、下半身の負荷は結構なものです。 はだしの足裏と足指で地面をしっかりとらえながら、重心を低くした姿勢でひざを曲げて立ち、絶えず腰を左右に振ってステップを踏む。こうした姿勢で踊っていると、足の指先から太もも、お尻、腰、背中に至るまで、インナーマッスルがフル稼働を余儀なくされます。筋肉のなかでいちばん大きな太ももの筋肉が鍛えられることで、基礎代謝が上がり、太りにくい体になっていきます。 【図表2】筋トレになるフラダンス出所=『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』 優雅な手の動きも見た目よりハードで、腕の筋トレになるほか、その繊細な動きを覚えるために脳も大いに刺激されます。また、長く続けるうちに体幹が鍛えられて体のバランスが安定し、転倒しにくい体づくりにもつながります。 活気を取り戻し、マイナス感情を低下させる効果も さらに、福岡大学スポーツ科学部の森口哲史教授が40~50代の女性を対象に行った調査では、フラダンスのレッスンを2時間受けた人は、「活気」が高まった一方で、「緊張」「抑うつ」「疲労」などのマイナスの感情は低下していたと報告されています。 フラダンスは、心理面にもよい影響を及ぼすということです。 フラダンスは、もともと文字をもたなかったハワイの人たちが、自分の気持ちを伝えるために踊ったものといわれています。華やかな衣装を身にまとって踊れば、よりエモーショナルなときめきが高まり、脳の活性化につながります。日本では、フラダンスというと女性のイメージが強いですが、男性の筋トレ、脳トレとしても最適です。 実際に、最近はフラダンス教室へ通う男性も少しずつ増えているようです』、「ゆっくりとした優雅な動きは、一見、筋トレとはかけ離れた印象がありますが、下半身の負荷は結構なものです・・・足の指先から太もも、お尻、腰、背中に至るまで、インナーマッスルがフル稼働を余儀なくされます。筋肉のなかでいちばん大きな太ももの筋肉が鍛えられることで、基礎代謝が上がり、太りにくい体になっていきます・・・日本では、フラダンスというと女性のイメージが強いですが、男性の筋トレ、脳トレとしても最適です」、私も一度、試してみたい。
第三に、10月9日付け東洋経済オンラインが掲載したライターの堀尾 大悟氏による「老後の楽しみを一気に奪う「サルコペニア」の恐怖 健康寿命を延ばす「たん活」「貯筋」のススメ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/706946
・『いくつになっても、旅行に出かけたり、好きなものを食べたりし続けたりしたいもの。そのためには、タンパク質を積極的にとりながら運動をすることで「筋力」を蓄えることが重要だと、諏訪中央病院の名誉院長、鎌田實氏は説く。 同氏と生島ヒロシ氏との共著書である『70歳からの「貯筋」習慣』では、高齢者が長く健康を保つために、体の筋肉を蓄える「貯筋」の大切さを提唱している。「がんばらない健康法」を提唱する鎌田さんに、その「貯筋」に長く取り組む食事や運動のポイントを聞いた(Qは聞き手の質問、Aは鎌田氏の回答)』、「がんばらない健康法」とは興味深そうだ。
・『お金よりも「筋力」が減るほうが大変 Q:40~50代の世代にとって、両親は70~80代に差し掛かっていて、この先いつまで健康でいてくれるか気になります。 A:誰しも、80歳、90歳を超えても、自由に旅行したり、食事を楽しめるような老後を過ごしたいものだし、息子さん、娘さんもそれを望むのは当然ですよね。 そのためには遊ぶお金を貯めておく「貯金」ももちろん大事ですが、おいしいカツ丼を食べるのも、日帰り温泉に行くのも1000円札があればできること。実はお金よりも、「筋肉」が減ることのほうが、老後の楽しみを奪ってしまうのです。 40歳を過ぎると筋肉は毎年1~2%ずつ減っていき、 70歳を過ぎると「サルコペニア」に陥る人が増えていきます。サルコペニアとは加齢に伴い筋肉量が減少し、身体機能が低下する現象のことです。東京都健康長寿医療センター研究所は、75~79歳では男女ともに約2割が、80歳以上では男性の約3割、女性の約半数がサルコペニアに該当する、との調査結果を発表しています。) Q:サルコペニアになると、どういった支障が生じるのでしょうか。 A:サルコペニアになると、歩く、立ち上がるといった日常生活の基本動作に支障が生じ、転倒や骨折のリスクが高まります。そして、要介護の一歩手前の虚弱な状態である「フレイル」に至ります。サルコペニア、そしてフレイルを避けるためにも、日ごろの「貯筋」が70歳からの人生の充実度を決めるといってもいいでしょう。 Q:高齢者が人生を楽しむためにも「貯筋」が必要だということがわかりました。具体的にはどのように「貯筋」を実践すればよいですか? A:「貯筋」には大きく2つの柱があります。「たん活」と「運動」です。「たん活」とは、「タンパク質いっぱいの食生活」のこと。タンパク質は、言うまでもなく筋肉をつくる材料です。しかし、高齢になるとともに食が細くなってしまい、タンパク質が不足しがちになると、サルコペニアに陥るリスクが高まります。 タンパク質を摂取する目安は、体重1キログラムあたり1グラム以上とされていますが、これでは今ある筋肉をキープするので精一杯。体重1キログラムあたり1.2グラム以上を目標としましょう。 60キログラムの人であれば72グラムですね』、「実はお金よりも、「筋肉」が減ることのほうが、老後の楽しみを奪ってしまうのです。 40歳を過ぎると筋肉は毎年1~2%ずつ減っていき、 70歳を過ぎると「サルコペニア」に陥る人が増えていきます。サルコペニアとは加齢に伴い筋肉量が減少し、身体機能が低下する現象のことです。東京都健康長寿医療センター研究所は、75~79歳では男女ともに約2割が、80歳以上では男性の約3割、女性の約半数がサルコペニアに該当する、との調査結果」、「75~79歳では男女ともに約2割が、80歳以上では男性の約3割、女性の約半数がサルコペニアに該当」、かなり高い割合だ。「サルコペニアになると、歩く、立ち上がるといった日常生活の基本動作に支障が生じ、転倒や骨折のリスクが高まります。そして、要介護の一歩手前の虚弱な状態である「フレイル」に至ります。サルコペニア、そしてフレイルを避けるためにも、日ごろの「貯筋」が70歳からの人生の充実度を決めるといってもいいでしょう」、「貯筋」には大きく2つの柱があります。「たん活」と「運動」です。「たん活」とは、「タンパク質いっぱいの食生活」のこと。タンパク質は、言うまでもなく筋肉をつくる材料です。しかし、高齢になるとともに食が細くなってしまい、タンパク質が不足しがちになると、サルコペニアに陥るリスクが高まります。 タンパク質を摂取する目安は、体重1キログラムあたり1グラム以上とされていますが、これでは今ある筋肉をキープするので精一杯。体重1キログラムあたり1.2グラム以上を目標としましょう。 60キログラムの人であれば72グラムですね」、なるほど。
・『「たん活」のイチオシは高野豆腐 Q:「たん活」のためには何を食べればよいですか。 A:肉・魚の動物性タンパク質が基本となります。動物性の油は生きていくうえでの活力にもつながります。僕の周りを見ても、90歳を過ぎても元気な人にはお肉が好きな人が多いです。共著者の生島ヒロシさんは、毎日肉と魚を食べる「ダブルたん活」を実践しています。 でも、お肉には脂肪が含まれるので、食べ過ぎずに植物性タンパク質で補うことも大事です。特に、豆腐や納豆などの大豆製品がお勧めです。 僕のイチオシは、高タンパクで低糖質の高野豆腐。高野豆腐には中性脂肪や悪玉コレステロールの上昇を抑える「レジスタントタンパク」が豊富に含まれているので、食後に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」も防いでくれます。 さらに、亜鉛、鉄、カルシウムといったミネラルも豊富。高野豆腐を 粉末状にした粉豆腐は小麦粉の代わりにもなり、僕はお好み焼きを作るときに使っています。間食が好きな人には大豆チップスもお勧めですよ。) Q:食べ過ぎて肥満を気にする人もいると思います。 A:確かに肥満は糖尿病や高血圧といった生活習慣病の原因の1つではありますが、僕は著書や講演で「ダイエットしましょう」と言ったことがありません。 なぜなら、日本人の多くは、メタボ健診の刷り込みが強く、肥満を過度に気にする「肥満パラドックス」に陥っているからです。 60歳、70歳を過ぎてから躍起になって体重を落とす必要はありません。食事制限で痩せようなんてもってのほか。気にすべきは「太っていないか」より「筋肉が落ちていないか」です。 Q:「たん活」と並ぶ、「貯筋」のもう1つの柱が「運動」です。 A:運動は、筋肉をつくるだけでなくさまざまな「いいこと」をもたらしてくれます。 運動すると、筋肉から「マイオカイン」という筋肉作動性物質が分泌されます。マイオカインには30種類ほどあり、その1つであるイリシンが血流に乗って脳に届くと、神経細胞を活性化し、血圧や、血糖値を下げる働きをします。 がんや認知症のリスクも下げる「究極の若返りホルモン」ともいわれています。 また、筋トレをすると男性ホルモンの「テストステロン」が分泌されます。 僕は「なにくそホルモン」と言っているのですが、人生の壁にぶつかっても、その壁を壊して前に進むことができるチャレンジング・ホルモンです。 生島ヒロシさんは、多額の借金を抱えながらも仕事が減ってきてピンチだった時期に、空いた時間で筋トレをしていたそうです。結果、ぐっすり眠ることができ、その後の仕事でいい循環が生まれ、借金も完済できた。その頃の生島さんは、筋トレすることで「なにくそホルモン」が出ていたのでしょうね』、「僕のイチオシは、高タンパクで低糖質の高野豆腐。高野豆腐には中性脂肪や悪玉コレステロールの上昇を抑える「レジスタントタンパク」が豊富に含まれているので、食後に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」も防いでくれます」、「運動すると、筋肉から「マイオカイン」という筋肉作動性物質が分泌されます。マイオカインには30種類ほどあり、その1つであるイリシンが血流に乗って脳に届くと、神経細胞を活性化し、血圧や、血糖値を下げる働きをします。 がんや認知症のリスクも下げる「究極の若返りホルモン」ともいわれています。 また、筋トレをすると男性ホルモンの「テストステロン」が分泌されます。 僕は「なにくそホルモン」と言っているのですが、人生の壁にぶつかっても、その壁を壊して前に進むことができるチャレンジング・ホルモンです」、なるほど。
・『犬の散歩は「ウォーキング」ではない Q:高齢者の運動といえば「ウォーキング」が代名詞ですね。 A:確かにウォーキングは気軽に取り組みやすいのですが、よく犬の散歩を「ウォーキング」と称している人がいますね。申し訳ないけど、これは間違った考えです。犬のペースに合わせて散歩してもほとんど筋肉はつきませんから。 東京都健康長寿医療センター研究所の発表によると、歩幅が狭い人は広い人に比べて認知機能低下のリスクが3倍以上高く、特に女性の場合は通常の5.8倍も高い、とされています。 だから犬の散歩とは別に、歩幅をできるだけ広くとってウォーキングを行ってください。 ただ、歩幅を広くといっても70歳を過ぎると頑張りすぎてひざを痛めたり、呼吸が乱れてしまいます。僕が考案した「鎌田式ウォーキング」は、速歩きと遅歩きを組み合わせた「速遅歩き」。 3分間の速歩きの後は3分間の遅歩きでゆっくり腹式呼吸をしながら副交感神経を刺激して血圧や脈拍を整え、また3分間の速歩きに戻る、を繰り返します』、「犬の散歩を「ウォーキング」と称している人がいますね。申し訳ないけど、これは間違った考えです。犬のペースに合わせて散歩してもほとんど筋肉はつきませんから・・・歩幅が狭い人は広い人に比べて認知機能低下のリスクが3倍以上高く、特に女性の場合は通常の5.8倍も高い、とされています。 だから犬の散歩とは別に、歩幅をできるだけ広くとってウォーキングを行ってください。 ただ、歩幅を広くといっても70歳を過ぎると頑張りすぎてひざを痛めたり、呼吸が乱れてしまいます。僕が考案した「鎌田式ウォーキング」は、速歩きと遅歩きを組み合わせた「速遅歩き 。 3分間の速歩きの後は3分間の遅歩きでゆっくり腹式呼吸をしながら副交感神経を刺激して血圧や脈拍を整え、また3分間の速歩きに戻る、を繰り返します」、「速遅歩き」は第二の記事での「インターバル速歩」と同じだ。
・『「貯筋」はウォーキングだけではできない Q:この「速遅歩き」なら、運動習慣のない高齢者でも実践できそうですね。 A:「貯筋」のためにはウォーキングだけでは不十分で、筋トレも必要です。でも、筋トレも多くの高齢者にとってはハードルが高いですよね。僕が勧めるのは「鎌田式スロー・スクワット」と「鎌田式かかと落とし」。スロー・スクワットでお尻や太ももなどの大きな筋肉を、かかと落としで「第二の心臓」といわれるふくらはぎを刺激し、全身の血流を促します。筋トレに慣れないうちは、テーブルなどにつかまりながらやってもかまいません。 Q:高齢者でも取り組みやすい筋トレを教えていただきました。ただ、特に運動習慣のないの人にとってはよほど頑張って取り組まないと……。 A:いえいえ、頑張りすぎるとかえって長続きしませんよ。僕の健康法は「食べるな」とか「ダイエットしろ」なんて言ったことがありません。基本的にはおいしいものを食べるために僕たちは生きているのだから、「頑張って運動しなきゃ」と思わずに「体を動かしておけばこれからもおいしいお酒やごはんを楽しめるぞ」と思えたほうが、長続きすると思います。) 運動が苦手な人に僕が勧めているのは「ながら運動」。例えば歯磨きしながらスクワットをする。料理のとき、お鍋に火が回るのを待つ間にかかと落としをする。テレビの野球中継を観ていてチェンジになったらスクワットをする――と決めてしまうのです。 この「ながら運動」は高齢者だけでなく、忙しいビジネスパーソンの方にも有効です。通勤中に、電車の吊り革につかまった時にかかと落としをする。駅から会社に行くまでの間に「幅広ウォーキング」をする。お昼休憩のとき、少し遠回りをして「鎌田式ウォーキング」をして、レストランまで行く――。「ながら運動」を日常生活に上手に取り入れればだんだんと習慣化できて、今度はやっているうちに楽しくなってきます』、「「貯筋」のためにはウォーキングだけでは不十分で、筋トレも必要です。でも、筋トレも多くの高齢者にとってはハードルが高いですよね。僕が勧めるのは「鎌田式スロー・スクワット」と「鎌田式かかと落とし」。スロー・スクワットでお尻や太ももなどの大きな筋肉を、かかと落としで「第二の心臓」といわれるふくらはぎを刺激し、全身の血流を促します。筋トレに慣れないうちは、テーブルなどにつかまりながらやってもかまいません」、なるほど。
・『運動を続ける「コツ」 Q:運動が楽しくなってくるんですか? A:運動を続けると「ドーパミン」という快感ホルモンが分泌されます。子どもがテストでいい点数を取ったときにほめてあげると、子どもが「もっと頑張っていい点数を取ろう」とうれしくなってもっと勉強しますよね。それがドーパミンです。 僕はスポーツジムに通っていますが、50キロのバーベルを担いでスクワットができると、トレーナーから「50キロのバーベルを担げる70歳以上の人なんかいませんよ!」とほめられる。そうするとうれしくなって「50キロ以上の重さにチャレンジしよう」と思える。これもドーパミンの仕業です。 運動を続けるコツは、夫婦間でほめ合う、あるいは「オレ、すごいかもしれないな」と自分で自分をほめ、ドーパミンを出すこと。気づかないうちに運動が楽しくなり、習慣化していきますよ』、「運動を続けるコツは、夫婦間でほめ合う、あるいは「オレ、すごいかもしれないな」と自分で自分をほめ、ドーパミンを出すこと。気づかないうちに運動が楽しくなり、習慣化していきますよ」、確かにこれならヤル気が出そうだ。
先ずは、本年10月7日付けPRESIDENT Onlineが掲載した浜松医科大学名誉教授 医学博士の高田明和氏による「高齢者のスポーツは「早死+寝たきり」のリスクが高まる!? 医大名誉教授「運動不足以上に気をつけたいこと」 足腰を痛めて動けなくなり、あっという間に老いてしまう」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/72574
・『うつや認知症を招く老化を遅らせるにはどうすればいいか。浜松医科大学名誉教授の高田明和さんは「65歳以降、いわゆる老化に伴い多くなる孤立状態になると、うつの症状が出てくる。また、うつになると認知症を引き起こしやすくなる。これらの負の連鎖を避けるためには、生涯現役が理想という幻想を捨て、日々のちょっとした生きがいを持つといい」という――。 ※本稿は、高田明和『65歳からの孤独を楽しむ練習 いつもハツラツな人』(三笠書房)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『「不安」「孤独感」「うつ」の相関関係 肉体の衰えと孤独感には、非常に深い関係があります。 やはりちょうど肉体の耐用年数を超えた65歳くらいから、心を病む人が非常に増えてきます。 私の周りで多いのは、うつ病になるケースで、不眠の症状が出る人が増えています。社会的地位を失ったことや、人間関係を損なってしまっただとか、自分が陥った状況についてくよくよと思い悩んでいるうちに、寝つけなくなってしまうのでしょう。 それから、妻に先立たれて一人になった夫は、認知症になってしまうケースが多くあります。孤独感を忘れよう、亡くなった妻のことは考えないようにしようとするせいか、思考停止の状態が、だんだんと認知機能を衰えさせるのでしょう。 「不安」と「孤独感」と「うつ」は、いずれも脳の扁桃体と帯状回(注)という部分が関連しています。 人が孤立状態に置かれると、脳の帯状回がだんだんと正常に機能しなくなり、その影響で、不安障害の傾向が出てきて、やがて、やる気や食欲も低下し、うつの症状が出てきます。 さらには、うつになると、「アミロイドβ」と呼ばれる、脳内に生じるゴミのようなタンパク質が脳から排除されなくなります。これがどんどん蓄積していくと、脳細胞が壊れ、アルツハイマー型認知症が引き起こされます』、「人が孤立状態に置かれると、脳の帯状回がだんだんと正常に機能しなくなり、その影響で、不安障害の傾向が出てきて、やがて、やる気や食欲も低下し、うつの症状が出てきます。 さらには、うつになると、「アミロイドβ」と呼ばれる、脳内に生じるゴミのようなタンパク質が脳から排除されなくなります。これがどんどん蓄積していくと、脳細胞が壊れ、アルツハイマー型認知症が引き起こされます」、なるほど。 (注)帯状回:大脳の内側面において、脳梁の辺縁を前後方向に走る脳回(Wikipedia)
・『老化を遅らせる練習 ここから逆算して考えれば、年を取ったら、うつを引き起こす原因となる状態を避けることで、認知症になるリスクをかなり減らせることになります。 そのために重要なことの1つめが、本書で詳しく述べている「腸内環境を整えること」です。食事を改善することが、腸内環境を整え、認知症の対策にもなることが、最近の研究でわかってきました。 2つめは、「生きがいを持つこと」。生きがいを持っている人であれば、こうした「孤立→不安→うつ」の悪循環に陥りにくいことはすでにわかっています。 のんびりお茶でも飲もうかと思ったら、仕事の依頼の電話がくる――そんな忙しい人であれば、不安になっている暇なんてないでしょう。 こう書くと「仕事がない人はどうするんだ?」と思うでしょうが、たとえば、これまで専業主婦として会社勤めの経験がない女性でも、孤立からうつになる人は、男性よりもずっと少ないことが判明しています。 それは、たとえ誰とも会わなくても、食事を作ったり掃除をしたり、家事のさまざまな「やるべきこと」があるせいで、十分に生きがいのある忙しい毎日を過ごしているからです。 「生きがい」とは、時が経つのを忘れるほど夢中になれる“特別なもの”ばかりを指すのではないのです。スーパーの特売日に目的のものを特価で買うこと、植木に花を咲かせること、道のごみを拾うことなど、どんな小さなことでも十分に当てはまるのです。 孤立感から、認知症などの病気になる人とならない人の違いは、年を取ってからのライフスタイルや考え方に大きく左右されるということです。 ほかにどんなライフスタイルや考え方が孤独感を招くのか、どんどん明かしていきましょう』、「うつを引き起こす原因となる状態を避けることで、認知症になるリスクをかなり減らせる・・・そのために重要なことの1つめが・・・「腸内環境を整えること」です。食事を改善することが、腸内環境を整え、認知症の対策にもなることが、最近の研究でわかってきました」、「認知症」や「うつ」と関係なさそうな「腸内環境を整えること」、とは「腸」は重要な臓器のようだ。「2つめは、「生きがいを持つこと」。生きがいを持っている人であれば、こうした「孤立→不安→うつ」の悪循環に陥りにくいことはすでにわかっています。「生きがい」とは、時が経つのを忘れるほど夢中になれる“特別なもの”ばかりを指すのではないのです。スーパーの特売日に目的のものを特価で買うこと、植木に花を咲かせること、道のごみを拾うことなど、どんな小さなことでも十分に当てはまるのです。」、なるほど。
・『孤独な寝たきりになる高齢者の共通点 肉体が衰えて病気になると、ときには死へと誘導するような致命的な孤独感が生じます。だとすれば、私たちにできる「老化を遅らせる練習」の3つめは、「体を酷使しないこと」です。 高齢者に対しては、「日々、足腰を鍛えなさい」と、運動を推奨する風潮があります。でも私は、そんなに無理をする必要などない、と考えます。 今88歳の私がしている「運動」といえば、スーパーまで歩いて買い物に行くことと、都心にある出版社に電車に乗って出向くことくらいです。 ただ、マンションの外に出るときは、エレベーターは目的の1階手前の階で降りるようにしています。そして1階分12段の階段を自分の足で上ったり下りたりしています。このようにして一日4往復くらいすれば、十分体力を維持できます。 また、このくらいの軽い運動をすれば、自分の体力がまだまだ衰えていないことを確認できますし、何かのスポーツをするよりずっと簡単で、確たる自信にもなります。 この程度でまったく構わないのではないか、と思っているのです。 ウォーキングはおろか、少しの散歩すら、本当は必要ないのではないでしょうか。 足腰の関節などの耐用年数からいっても、世の中の筋トレブームにつられて無理に「運動しよう」なんて考える必要は、まったくないと思っています。 もちろん、苦もなく楽しく動けるならば、それに越したことはありません。山登りもいいし、マラソンだっていい。若いころにしていたスポーツを、年寄り仲間と楽しむことは否定しません。 ただ、私の周りで、高齢になってまでスポーツをやっていた人は、どういうわけか皆、早くに亡くなっているのです。あるいは、寝たきりになっています。 そういう事実ともあいまって、「運動すれば健康的になる」という常識は、「軽い運動をすれば健康的になる」という程度に解釈して、汗だくになって息があがるほどのハードな運動はやめておいたほうがいいと思うのです。 苦痛に顔をゆがめてまで健康になろうとする必要はないし、日々練習をして「大会で優勝しよう」なんて気張る必要もないでしょう』、「私たちにできる「老化を遅らせる練習」の3つめは、「体を酷使しないこと」です。 高齢者に対しては、「日々、足腰を鍛えなさい」と、運動を推奨する風潮があります。でも私は、そんなに無理をする必要などない、と考えます。 今88歳の私がしている「運動」といえば、スーパーまで歩いて買い物に行くことと、都心にある出版社に電車に乗って出向くことくらいです。 ただ、マンションの外に出るときは、エレベーターは目的の1階手前の階で降りるようにしています。そして1階分12段の階段を自分の足で上ったり下りたりしています。このようにして一日4往復くらいすれば、十分体力を維持できます」、「私の周りで、高齢になってまでスポーツをやっていた人は、どういうわけか皆、早くに亡くなっているのです。あるいは、寝たきりになっています。 そういう事実ともあいまって、「運動すれば健康的になる」という常識は、「軽い運動をすれば健康的になる」という程度に解釈して、汗だくになって息があがるほどのハードな運動はやめておいたほうがいいと思うのです」、やはり過ぎたるは及ばざるが如しのようだ。
・『運動不足以上に気をつけるべきリスク こう書くと、ゴルフとかテニス、マラソンなど、あらゆるスポーツを生きがいとしている人たちから批判されるかもしれません。 楽しんでやっている分には構わないし、私はそういう方に対して「やめなさい」とまで言うつもりはありません。 しかし、高齢になっても続けている以上は、「それができなくなったとき」のことを想定しておいてほしいとは思います。 というのも、体力もあって積極的にスポーツを楽しんでいた方が、身体機能の衰えや足腰を痛めたことをきっかけに、思うように運動ができなくなり、孤独感を増してしまうケースがとても多いからです。 特にチームスポーツをやっていた人は、元気に運動を続けている仲間の姿と自分を比較して、チームに迷惑をかける心配も含め、まるで自分が脱落してしまったかのような疎外感を覚えてしまいがちです。そこから、うつになってしまう方が多くいます。 だから運動を楽しむのであれば、あまり「競い合うこと」や「チームプレー」に熱心にならないこと。 ゴルフのスコアも、マラソンのタイムも、一日に歩く歩数も、年を取ったら下がるのが当たり前なのです。ただ、その下がり具合を誰かと競い合っても意味がありません。 運動をしてはいけないというのではなく、人間の体は、高齢になっても若い時と同じようにハードな運動ができるようにはできていないことを知っておいてください。 運動不足で老いてしまうこと以上に、「無理な運動をしたせいで足腰を痛めて動けなくなり、それがきっかけで、あっという間に老いてしまうリスク」のほうを、心配するべきでしょう』、「特にチームスポーツをやっていた人は、元気に運動を続けている仲間の姿と自分を比較して、チームに迷惑をかける心配も含め、まるで自分が脱落してしまったかのような疎外感を覚えてしまいがちです。そこから、うつになってしまう方が多くいます。 だから運動を楽しむのであれば、あまり「競い合うこと」や「チームプレー」に熱心にならないこと」、「人間の体は、高齢になっても若い時と同じようにハードな運動ができるようにはできていないことを知っておいてください。 運動不足で老いてしまうこと以上に、「無理な運動をしたせいで足腰を痛めて動けなくなり、それがきっかけで、あっという間に老いてしまうリスク」のほうを、心配するべきでしょう」、なるほど。
・『「生涯現役」という幻想も、孤独感を招く 年を取ってから執着してはいけないのは、運動の強度だけでなく、仕事や社会的な役割についても同じかもしれません。 もちろん、経済的な事情から「仕事をして収入を得なくてはいけない」人はいるでしょう。でも、そうではないのに、何歳になっても「仕事をするべきだ」ということはないですし、いつまでも現役でいる人が偉いわけでも、幸せなわけでもありません。 医学の分野にはいつまでも現役の人が多いのですが、早期に引退したからといって悪いわけではないし、仕事を辞めたって人生を大いに楽しんでいる人は大勢います。 世の中は、「高齢でも、仕事をしている人が素晴らしい」と、むやみやたらに崇め奉るのですが、そんな幻想に惑わされてはいけません。 すでに述べたように、私たちの肉体は70歳や80歳を超えたら、正常に使えるようにはできていません。したがって仕事年齢だって、本来は70歳以上を想定してはいないわけです。だから一般的には65歳くらいで定年になっています。 しかし、人生が長くなった結果、私たちは想定外の努力をしなければならなくなりました。 たとえばあるマンションで、高校の校長先生だった方が、管理人の仕事を引き受けていたとしましょう。そうやって仕事をしていることは賞賛されるべきことですし、管理人よりも校長先生のほうが偉いということもありません。時間に余裕があるし、本人が楽しんでやっているならば、何も問題はないことです。 しかし、もし、「なんで校長だった私が、この仕事をしなければいけないんだ」とか、「校長までやった人間に世の中は冷たい」などと感じるようであれば、そこからたちまち疎外感や孤独感が、広がっていきます。 それに、家でのんびりしている状態とくらべれば、やはり体に負担がかかるのは事実です。なんだかんだいって管理人さんの仕事は忙しいものですから、それなりに体をケアしながら、無理をせずに仕事をしていく必要があるでしょう。 というわけで、「老化を遅らせる練習」の4つめは、「生涯現役が理想! という幻想を捨てること」です』、「あるマンションで、高校の校長先生だった方が、管理人の仕事を引き受けていたとしましょう。そうやって仕事をしていることは賞賛されるべきことですし、管理人よりも校長先生のほうが偉いということもありません。時間に余裕があるし、本人が楽しんでやっているならば、何も問題はないことです。 しかし、もし、「なんで校長だった私が、この仕事をしなければいけないんだ」とか、「校長までやった人間に世の中は冷たい」などと感じるようであれば、そこからたちまち疎外感や孤独感が、広がっていきます」、「「老化を遅らせる練習」の4つめは、「生涯現役が理想! という幻想を捨てること」です」、なるほど。
・元部下との関係性の変化は当然 引退後も仕事を続けることは、生きがいにもなるし、人間関係を維持したり新しく築いたりするきっかけにもなりますから推奨すべきことです。私も執筆の仕事をしているおかげで、心身ともに健康な生活ができているのは確かです。 ただ、多くの場合、現役のころよりも権限は少なくなるし、言い分も通らなくなります。現役時代にそれなりの地位にいて部下たちから丁重に扱われていたのに、引退して顧問のような立場になったとたん、部下が持ち上げてくれなくなり、言うことを聞いてくれなくなることは、よくあります。 現役時代は上下関係が厳格だったので、部下もそれなりに気をつかわなければならなかったのが、そうした関係性がなくなれば、元部下も自分の仕事があるから、いちいちあなたに構ってばかりもいられません。 ときには元部下に、これみよがしに邪険にされることがあるかもしれませんが、それは現役時代にあなたが相手に辛く当たっていたからでしょう。多くの場合は親子関係と同じで、必ずしも元部下がリスペクトの気持ちを忘れたわけではないのです。ただ、関係性が変化しただけです。 こうした変化を素直に受け入れられるならば、年を取って仕事をしても問題はありません。けれども、「現役と同じように自分は大切に扱われるべきだ」と心のどこかで思っていれば、そうならない現状を淋しく感じ、自信を喪失していくことは多くなります』、「必ずしも元部下がリスペクトの気持ちを忘れたわけではないのです。ただ、関係性が変化しただけです。 こうした変化を素直に受け入れられるならば、年を取って仕事をしても問題はありません。けれども、「現役と同じように自分は大切に扱われるべきだ」と心のどこかで思っていれば、そうならない現状を淋しく感じ、自信を喪失していくことは多くなります」、なるほど。
・『90歳で元気な人が認知症になった理由 私の知人に、100歳近くまで現役で、非常に健康だったある大学の名誉教授の方がいました。 ところがキャリアの最後で、大きなミスを犯してしまったのです。人間関係における判断を間違えたのです。 偉くなると、周りにあれこれいろいろな企みや思惑、嫉妬を抱えた人たちが近づいてきます。そうした人たちに、あることないこと吹き込まれ、自分が一番信頼していた部下を、自らの手で排除するように唆されてしまったのです。 その後、彼は自分の過ちに気づいたのですが、もはやあとの祭りです。野に下った部下を、呼び戻すことはかないませんでした。 すると突然、彼は認知症になり、施設に入って2年ほどで亡くなってしまいました。 90歳を超えてもあれほど頭の切れた人が、まさか認知症になるとは、私は考えもしませんでした。てっきり、仕事中にポックリ逝くのだろうと思っていたくらいです。 そのときは、年を取ることの怖さを感じたものです』、「100歳近くまで現役で、非常に健康だったある大学の名誉教授の方がいました。 ところがキャリアの最後で、大きなミスを犯してしまったのです・・・偉くなると、周りにあれこれいろいろな企みや思惑、嫉妬を抱えた人たちが近づいてきます。そうした人たちに、あることないこと吹き込まれ、自分が一番信頼していた部下を、自らの手で排除するように唆されてしまったのです。 その後、彼は自分の過ちに気づいたのですが、もはやあとの祭りです。野に下った部下を、呼び戻すことはかないませんでした。 すると突然、彼は認知症になり、施設に入って2年ほどで亡くなってしまいました」、考えようによっては、「自分の過ち」で苦しめられるよりは、「認知症」になって幸せだったのかも知れない。
・『高齢になったら執着は捨てる アルツハイマー病による認知症(アルツハイマー型認知症)は、一般的には加齢とともに脳内にアミロイドβというタンパク質が蓄積していき、それが脳細胞に影響を与えるために起こるとされていますが、若年でかかる人もおり、なぜ、アミロイドβが蓄積するのか正確な原因はわかっていません。 ちなみに、「認知症」というのは病名ではなく、表面に現れた症状のことを指します。そして、認知症を引き起こす原因は1つではありません。 頭部の外傷で起こることもあるし、糖尿病などの生活習慣病やアルツハイマー病が原因であることもあるし、レビー小体の蓄積や遺伝性の場合もあります。 すでに述べたように、アルツハイマー型認知症には、うつが大きくかかわっています。孤独感や自信喪失、挫折感などで、耐えられないほどの精神的な苦しみがある人は、アルツハイマー型認知症になりやすいわけです。 実際に、アルツハイマー型認知症になった人を見れば、「人生をかけて、自分が立ててきた学説がダメになった」とか、「今までの自分の功績が否定された」など、何か取り返しのつかない大きな失敗をしたと思い込んでいる場合が多くあります。もちろん、伴侶を失ったことに対する喪失感が、認知症の発症を促すこともあるでしょう。 だからアルツハイマー型認知症を避けるために大切なのは、高齢になったら、もう執着は捨てることです。 世の中は変化していくのですから、仕事で成し遂げたことも日々どんどん更新されるし、下の人間が上の人間をどんどん追い越していくのも当然だ――そのように認識を改めましょう。そうした変化は、人類にとってむしろ喜ばしい進化発展であり、自分が否定されているわけでは決してないのです。 というわけで、「老化を遅らせる練習」の5つめは、「過去の実績に執着しない」ということです。 それでも、どうしても執着が捨てられないのなら、いっそ自分が属していた世界から完全に離れることです。 いつまでも「尊敬されていたい」とか、「下の人間に優越感を持ちたい」と考えているかぎり、現実とのギャップに打ちのめされるだけ。 だから、そうした苦しい思いをしないですむように、その世界から離れるのです。引退者は引退者として、まったく違った人生を楽しむほうが、きっと心穏やかでいられ、楽しくもあるはずです』、「世の中は変化していくのですから、仕事で成し遂げたことも日々どんどん更新されるし、下の人間が上の人間をどんどん追い越していくのも当然だ――そのように認識を改めましょう。そうした変化は、人類にとってむしろ喜ばしい進化発展であり、自分が否定されているわけでは決してないのです。 というわけで、「老化を遅らせる練習」の5つめは、「過去の実績に執着しない」ということです」、確かにその通りだろう。
・『本当に「脳に効くトレーニング」の中身 最近は、認知症を予防するために、パズルや間違い探し、クイズや計算ドリルを解くといった、いわゆる「脳トレーニング(脳トレ)」が流行っています。ただ、これが実際に予防に効果あるかといえば、大いに疑問です。 というのも、脳の一部分を酷使したところで認知症対策にならないことは、すでに医学的に証明されているからです。それは、コンピューターのように優秀で明晰な頭脳を日々鍛えている囲碁や将棋の名人でさえも、認知症になることからも明らかです。 逆に、無理に好きでもない脳トレをして、それ自体がストレスになるのであれば、うつの原因になってしまうことすらあるでしょう。 それよりも、積極的に新しい知識を吸収したり、今、あなたがしているように本を読んだり、文章を書いたり絵を描いたりといった活動をするほうが、よほど脳の海馬の細胞は増えていきます。 そんなふうに好奇心や創作欲を満たしていくことこそ、本当の意味での「脳トレーニング」ではないでしょうか。 というわけで、「老化を遅らせる練習」の6つめは、「好奇心や創作意欲を満たしていく」です。 ちなみに、認知症の原因の中でも上位を占めるアルツハイマー病は、脳神経が変性し、脳細胞が萎縮していく病です。 最近になり、アルツハイマー型認知症は薬で進行を遅くすることができるようになりました。でも高額なわりに、遅らせる程度は20~25%のみ。たとえば85歳くらいで始まる認知症が、88歳くらいで始まるようにする効果しか、今のところありません。 しかも、認知症を引き起こす病気は、ほかにいくつもあるわけです。ですから、「アルツハイマー型認知症だけの発症を延ばしたところでリスクは変わらない」とする考え方もあります。 でも、「3年も遅らせることができるなら、朗報だ」と考えることもできます。そのご家族にしてみれば、3年間の介護負担があるかないかの差は大きいからです。 ところで、今、世界は、アルツハイマー病と腸内細菌との関係に注目しています(残念ながら日本での研究は遅れています)。 アルツハイマー病を発生させる要因が解明されれば、将来はかなりの割合で認知症を抑えることができるでしょう』、「無理に好きでもない脳トレをして、それ自体がストレスになるのであれば、うつの原因になってしまうことすらあるでしょう。 それよりも、積極的に新しい知識を吸収したり、今、あなたがしているように本を読んだり、文章を書いたり絵を描いたりといった活動をするほうが、よほど脳の海馬の細胞は増えていきます。 そんなふうに好奇心や創作欲を満たしていくことこそ、本当の意味での「脳トレーニング」ではないでしょうか。 というわけで、「老化を遅らせる練習」の6つめは、「好奇心や創作意欲を満たしていく」です」、「世界は、アルツハイマー病と腸内細菌との関係に注目しています(残念ながら日本での研究は遅れています)」、この分野の研究がもっと進むことを願うばかりだ。
次に、10月16日付けPRESIDENT Onlineが掲載した認知症専門医の朝田 隆氏による「これを続ければ認知症グレーゾーンからUターンできる…認知機能が平均34%アップした「インターバル速歩」 生活習慣病やうつ、睡眠障害、骨粗しょう症の改善にも役立つ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/74656?page=1
・『認知症には、健常者と認知症の中間にあたるグレーゾーン(軽度認知障害)の段階がある。認知症専門医の朝田隆さんは「認知症の予防には筋肉を鍛えることが重要だ。筋肉が動くときに分泌されるマイオカインが脳の神経細胞を増やす働きをする。歩き方を少し変えるだけで、筋力も認知機能もアップさせることができる」という――。 ※本稿は、朝田隆『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』(アスコム)の一部を再編集したものです』、「歩き方を少し変えるだけで、筋力も認知機能もアップさせることができる」、とは有り難い話だ。
・『筋トレで頭の回転がよくなったQさん 脳の働きを高めるには、運動も欠かせません。広告代理店に勤務しているQさん(62歳・男性)は、持ち前のひらめきやアイディアを生かして、数多くのクライアントの広告を手掛け、高い評価を得てきました。 ところが、40歳を過ぎた頃から頭の回転が鈍くなってきたことを自覚し、「もう第一線から退くしかないのかな」と悩んでいたそうです。そんなとき、健康診断で血圧と血糖値、肥満度の指標であるBMI値が高いことを指摘され、日常的に運動することをすすめられました。 そこで気分転換も兼ねてジムへ通い、マシンを使ったウォーキングと筋トレを始めたところ、パソコンに向かっているときはまったく思い浮かばなかったアイディアが、運動している最中にふっとひらめくことが増えたといいます。 運動を続けるうちに、仕事の勘がどんどん戻ってきて、また自信をもって働けるようになったことがうれしいと、Qさんは話します。 また、健康診断の数値も改善され、筋トレによって体が引き締まったことから、家族の間で「お父さんカッコよくなった」と大評判。そのことがまた運動を続けるモチベーションとなり、最近は奥さんと一緒にジムへ行き、帰りにレストランで食事をするという新たな楽しみが増えたとおっしゃっていました』、「40歳を過ぎた頃から頭の回転が鈍くなってきたことを自覚し、「もう第一線から退くしかないのかな」と悩んでいたそうです。そんなとき、健康診断で血圧と血糖値、肥満度の指標であるBMI値が高いことを指摘され、日常的に運動することをすすめられました。 そこで気分転換も兼ねてジムへ通い、マシンを使ったウォーキングと筋トレを始めたところ、パソコンに向かっているときはまったく思い浮かばなかったアイディアが、運動している最中にふっとひらめくことが増えた」、素晴らしい効果だ。「運動を続けるうちに、仕事の勘がどんどん戻ってきて、また自信をもって働けるようになったことがうれしい・・・健康診断の数値も改善され、筋トレによって体が引き締まったことから、家族の間で「お父さんカッコよくなった」と大評判。そのことがまた運動を続けるモチベーションとなり、最近は奥さんと一緒にジムへ行き、帰りにレストランで食事をするという新たな楽しみが増えた」、これほど運動が効果あるとは、私も驚かされた。
・『筋肉が増えると、脳の神経細胞も増える Qさんのように、「運動を始めてから頭の働きがよくなった」とおっしゃる人はたくさんいます。認知症に対しても運動の効果はバツグンで、日常的な活動量の多い高齢者ほど、認知症の発症率が低い傾向にあることが知られています。 運動によって脳の働きが高まる理由としては、脳の血流が増えることがよくあげられます。もちろん、それは確かですが、それ以上に注目したいのが“筋肉”です。筋肉が動くときに分泌されるマイオカインという物質のなかには、脳の神経細胞が減るのを防ぐだけでなく、脳の神経細胞を増やす働きをするものが存在するという研究が報告されているのです。 以前は、筋肉は脳からの一方的な指令で動いていると思われていました。 しかし実際には、筋肉からも絶えず脳にシグナルが送られていて、筋肉が動くこと自体が脳の活性化に寄与することがわかってきています。 つまり、筋肉を鍛えている人は脳の神経細胞も一緒に増やしているということです。 「脳の神経細胞って、大人になってからでも増えるの?」と、驚く人もいるでしょう。 おっしゃるように、少し前までは、脳の神経細胞は成人後に増えることはないと考えられていました。しかし現在は、脳の神経細胞は年をとっても増えることがわかっており、ハーバード大学医学部のレイティ博士は、「運動こそが、脳の神経細胞を増やすために最も効果が期待できる」と述べています』、「運動によって脳の働きが高まる理由としては、脳の血流が増えることがよくあげられます・・・それ以上に注目したいのが“筋肉”です。筋肉が動くときに分泌されるマイオカインという物質のなかには、脳の神経細胞が減るのを防ぐだけでなく、脳の神経細胞を増やす働きをするものが存在する・・・以前は、筋肉は脳からの一方的な指令で動いていると思われていました。 しかし実際には、筋肉からも絶えず脳にシグナルが送られていて、筋肉が動くこと自体が脳の活性化に寄与することがわかってきています。 つまり、筋肉を鍛えている人は脳の神経細胞も一緒に増やしているということです」、「脳」や「筋肉」についてのこれまでの知識が陳腐化してることに、改めて驚かされた。
・『筋肉が萎縮したマウスは記憶障害になった さらに運動には、感情や思考に関係するドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌を促す効果もあるといわれており、認知症グレーゾーン(MCI:軽度認知障害)の初期に見られる「めんどうくさい」を改善するうえでも最適です。 逆に、運動不足によって筋肉(骨格筋)が萎縮すると、それだけでアルツハイマー型認知症の発症につながることが、富山大学の東田とうだ千尋教授らの動物実験で明らかにされています。マウス(若齢のアルツハイマー病モデルマウス)に筋肉の萎縮を誘発したところ、そうでないマウスにくらべて若年例でも記憶障害が発症していたというのです。 認知症の予防、および認知症グレーゾーンからの回復を果たすうえで、運動習慣は不可欠といえます』、「運動には、感情や思考に関係するドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌を促す効果もあるといわれており、認知症グレーゾーン(MCI:軽度認知障害)の初期に見られる「めんどうくさい」を改善するうえでも最適です・・・認知症の予防、および認知症グレーゾーンからの回復を果たすうえで、運動習慣は不可欠といえます」、「運動」の重要性を再認識した。
・『認知機能が平均34%アップした「すごい歩き方」 中高年の方から「足腰を鍛えるために、毎日ウォーキングをしています」という声がよく聞かれます。ウォーキングは、呼吸で取り入れた酸素を使って脂肪を燃やす有酸素運動。健康増進やダイエットには最適です。 しかし、ただ歩くだけのウォーキングでは、認知症対策に必要な「筋力の増強」にまではつながらないことが、中高年を対象とした調査で明らかにされています。せっかく歩くなら、しっかりと筋肉をつけて、認知症予防にも役立てましょう。 そこでおすすめなのが、ウォーキングよりも、「インターバル速歩」です。 インターバル速歩とは、筋肉に負荷をかける「さっさか歩き」と、負荷の少ない「ゆっくり歩き」を交互に繰り返すウォーキング法の一つ。筋力や持久力を無理なく高めることができる中高年向けのトレーニング法として、信州大学大学院特任教授の能勢博先生らが提唱しているものです。 高齢者を対象にインターバル速歩を5カ月間行ってもらった研究によると、参加した人の体力が平均6%向上したといいます。さらに、参加者のうち2割は認知症グレーゾーンと診断されていましたが、インターバル速歩を行ったあとは、認知機能が平均34%も改善されていたそうです(能勢先生が理事長を務めるNPO法人 熟年体育大学リサーチセンターの研究より)』、「ただ歩くだけのウォーキングでは、認知症対策に必要な「筋力の増強」にまではつながらない・・・そこでおすすめなのが、ウォーキングよりも、「インターバル速歩」です。 インターバル速歩とは、筋肉に負荷をかける「さっさか歩き」と、負荷の少ない「ゆっくり歩き」を交互に繰り返すウォーキング法の一つ。筋力や持久力を無理なく高めることができる中高年向けのトレーニング法として、信州大学大学院特任教授の能勢博先生らが提唱しているものです。 高齢者を対象にインターバル速歩を5カ月間行ってもらった研究によると、参加した人の体力が平均6%向上したといいます。さらに、参加者のうち2割は認知症グレーゾーンと診断されていましたが、インターバル速歩を行ったあとは、認知機能が平均34%も改善されていたそうです」、「認知機能が平均34%も改善されていた」、とは効能あらたかだ。ただ、私の場合、散歩は後ろ向き歩きも組み合わせているので、「インターバル速歩」を採り入れる余地は残念ながら殆どない。
・『「ちょっとキツい」と感じる程度がいい また、インターバル速歩は、認知症および認知症グレーゾーンの危険因子とされている生活習慣病やうつ、睡眠障害、骨粗しょう症などの改善にも役立つことが明らかにされています』、「インターバル速歩は、認知症および認知症グレーゾーンの危険因子とされている生活習慣病やうつ、睡眠障害、骨粗しょう症などの改善にも役立つ」、ここまで効果が大きいのであれば、前向きの過程で、「インターバル速歩」を採り入れてみたい。
・『インターバル速歩のやり方 ① 3分間「さっさか歩き」をしたあと、次の3分間は「ゆっくり歩き」をします。 ② ①を1日5セット以上行います(1セットずつ、時間を空けて行ってもOK)。 ③ 週4日以上を目標に行い、5カ月以上続けます。 さっさか歩きは「ちょっとキツい」と感じる程度が目安。ゆっくり歩くときは、呼吸を整えながら、自分にとって「ラクなペース」で。ただし、目線や姿勢、歩幅などは、図表1で示した正しいフォームを崩さないように意識しましょう。 【図表1】インターバル速歩のやり方出所=『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』 インターバル速歩によって太ももの筋力が向上すると、転倒予防にも役立ちます。最近は、インターバル速歩の歩く速さを切り替えるタイミング(3分)を教えてくれたり、歩行ペースを記録できるスマートフォン用の無料アプリもあります。 ストップウォッチや腕時計でもよいですが、歩くことに意識を集中するうえでは、スマホアプリを使ったほうが便利です。なお、持病があって通院している人は、主治医と相談してから行ってください』、私は携帯を持たない主義だが、「スマホ」がここまで便利になってくると、考え直さざるを得ない。
・『「フラダンス」がインナーマッスルをフル稼働させる 「時間を測りながら歩くなんてめんどう」 「もっとラクで楽しい筋トレ法はないの?」 「めんどうくさい脳」になっている方からは、そんな声が聞こえてきそうですね。 インターバル速歩は、決してめんどうなトレーニングではありません。とはいえ、まずは運動に興味をもっていただくことが大事なので、エモーショナルなときめきがプラスされた楽しい筋トレとして、フラダンスを紹介しましょう。 フラダンスは、「ハンドモーション」と呼ばれるしなやかで美しい手の動きが特徴的な、ハワイの伝統的な踊りです。ゆっくりとした優雅な動きは、一見、筋トレとはかけ離れた印象がありますが、下半身の負荷は結構なものです。 はだしの足裏と足指で地面をしっかりとらえながら、重心を低くした姿勢でひざを曲げて立ち、絶えず腰を左右に振ってステップを踏む。こうした姿勢で踊っていると、足の指先から太もも、お尻、腰、背中に至るまで、インナーマッスルがフル稼働を余儀なくされます。筋肉のなかでいちばん大きな太ももの筋肉が鍛えられることで、基礎代謝が上がり、太りにくい体になっていきます。 【図表2】筋トレになるフラダンス出所=『認知症グレーゾーンからUターンした人がやっていること』 優雅な手の動きも見た目よりハードで、腕の筋トレになるほか、その繊細な動きを覚えるために脳も大いに刺激されます。また、長く続けるうちに体幹が鍛えられて体のバランスが安定し、転倒しにくい体づくりにもつながります。 活気を取り戻し、マイナス感情を低下させる効果も さらに、福岡大学スポーツ科学部の森口哲史教授が40~50代の女性を対象に行った調査では、フラダンスのレッスンを2時間受けた人は、「活気」が高まった一方で、「緊張」「抑うつ」「疲労」などのマイナスの感情は低下していたと報告されています。 フラダンスは、心理面にもよい影響を及ぼすということです。 フラダンスは、もともと文字をもたなかったハワイの人たちが、自分の気持ちを伝えるために踊ったものといわれています。華やかな衣装を身にまとって踊れば、よりエモーショナルなときめきが高まり、脳の活性化につながります。日本では、フラダンスというと女性のイメージが強いですが、男性の筋トレ、脳トレとしても最適です。 実際に、最近はフラダンス教室へ通う男性も少しずつ増えているようです』、「ゆっくりとした優雅な動きは、一見、筋トレとはかけ離れた印象がありますが、下半身の負荷は結構なものです・・・足の指先から太もも、お尻、腰、背中に至るまで、インナーマッスルがフル稼働を余儀なくされます。筋肉のなかでいちばん大きな太ももの筋肉が鍛えられることで、基礎代謝が上がり、太りにくい体になっていきます・・・日本では、フラダンスというと女性のイメージが強いですが、男性の筋トレ、脳トレとしても最適です」、私も一度、試してみたい。
第三に、10月9日付け東洋経済オンラインが掲載したライターの堀尾 大悟氏による「老後の楽しみを一気に奪う「サルコペニア」の恐怖 健康寿命を延ばす「たん活」「貯筋」のススメ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/706946
・『いくつになっても、旅行に出かけたり、好きなものを食べたりし続けたりしたいもの。そのためには、タンパク質を積極的にとりながら運動をすることで「筋力」を蓄えることが重要だと、諏訪中央病院の名誉院長、鎌田實氏は説く。 同氏と生島ヒロシ氏との共著書である『70歳からの「貯筋」習慣』では、高齢者が長く健康を保つために、体の筋肉を蓄える「貯筋」の大切さを提唱している。「がんばらない健康法」を提唱する鎌田さんに、その「貯筋」に長く取り組む食事や運動のポイントを聞いた(Qは聞き手の質問、Aは鎌田氏の回答)』、「がんばらない健康法」とは興味深そうだ。
・『お金よりも「筋力」が減るほうが大変 Q:40~50代の世代にとって、両親は70~80代に差し掛かっていて、この先いつまで健康でいてくれるか気になります。 A:誰しも、80歳、90歳を超えても、自由に旅行したり、食事を楽しめるような老後を過ごしたいものだし、息子さん、娘さんもそれを望むのは当然ですよね。 そのためには遊ぶお金を貯めておく「貯金」ももちろん大事ですが、おいしいカツ丼を食べるのも、日帰り温泉に行くのも1000円札があればできること。実はお金よりも、「筋肉」が減ることのほうが、老後の楽しみを奪ってしまうのです。 40歳を過ぎると筋肉は毎年1~2%ずつ減っていき、 70歳を過ぎると「サルコペニア」に陥る人が増えていきます。サルコペニアとは加齢に伴い筋肉量が減少し、身体機能が低下する現象のことです。東京都健康長寿医療センター研究所は、75~79歳では男女ともに約2割が、80歳以上では男性の約3割、女性の約半数がサルコペニアに該当する、との調査結果を発表しています。) Q:サルコペニアになると、どういった支障が生じるのでしょうか。 A:サルコペニアになると、歩く、立ち上がるといった日常生活の基本動作に支障が生じ、転倒や骨折のリスクが高まります。そして、要介護の一歩手前の虚弱な状態である「フレイル」に至ります。サルコペニア、そしてフレイルを避けるためにも、日ごろの「貯筋」が70歳からの人生の充実度を決めるといってもいいでしょう。 Q:高齢者が人生を楽しむためにも「貯筋」が必要だということがわかりました。具体的にはどのように「貯筋」を実践すればよいですか? A:「貯筋」には大きく2つの柱があります。「たん活」と「運動」です。「たん活」とは、「タンパク質いっぱいの食生活」のこと。タンパク質は、言うまでもなく筋肉をつくる材料です。しかし、高齢になるとともに食が細くなってしまい、タンパク質が不足しがちになると、サルコペニアに陥るリスクが高まります。 タンパク質を摂取する目安は、体重1キログラムあたり1グラム以上とされていますが、これでは今ある筋肉をキープするので精一杯。体重1キログラムあたり1.2グラム以上を目標としましょう。 60キログラムの人であれば72グラムですね』、「実はお金よりも、「筋肉」が減ることのほうが、老後の楽しみを奪ってしまうのです。 40歳を過ぎると筋肉は毎年1~2%ずつ減っていき、 70歳を過ぎると「サルコペニア」に陥る人が増えていきます。サルコペニアとは加齢に伴い筋肉量が減少し、身体機能が低下する現象のことです。東京都健康長寿医療センター研究所は、75~79歳では男女ともに約2割が、80歳以上では男性の約3割、女性の約半数がサルコペニアに該当する、との調査結果」、「75~79歳では男女ともに約2割が、80歳以上では男性の約3割、女性の約半数がサルコペニアに該当」、かなり高い割合だ。「サルコペニアになると、歩く、立ち上がるといった日常生活の基本動作に支障が生じ、転倒や骨折のリスクが高まります。そして、要介護の一歩手前の虚弱な状態である「フレイル」に至ります。サルコペニア、そしてフレイルを避けるためにも、日ごろの「貯筋」が70歳からの人生の充実度を決めるといってもいいでしょう」、「貯筋」には大きく2つの柱があります。「たん活」と「運動」です。「たん活」とは、「タンパク質いっぱいの食生活」のこと。タンパク質は、言うまでもなく筋肉をつくる材料です。しかし、高齢になるとともに食が細くなってしまい、タンパク質が不足しがちになると、サルコペニアに陥るリスクが高まります。 タンパク質を摂取する目安は、体重1キログラムあたり1グラム以上とされていますが、これでは今ある筋肉をキープするので精一杯。体重1キログラムあたり1.2グラム以上を目標としましょう。 60キログラムの人であれば72グラムですね」、なるほど。
・『「たん活」のイチオシは高野豆腐 Q:「たん活」のためには何を食べればよいですか。 A:肉・魚の動物性タンパク質が基本となります。動物性の油は生きていくうえでの活力にもつながります。僕の周りを見ても、90歳を過ぎても元気な人にはお肉が好きな人が多いです。共著者の生島ヒロシさんは、毎日肉と魚を食べる「ダブルたん活」を実践しています。 でも、お肉には脂肪が含まれるので、食べ過ぎずに植物性タンパク質で補うことも大事です。特に、豆腐や納豆などの大豆製品がお勧めです。 僕のイチオシは、高タンパクで低糖質の高野豆腐。高野豆腐には中性脂肪や悪玉コレステロールの上昇を抑える「レジスタントタンパク」が豊富に含まれているので、食後に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」も防いでくれます。 さらに、亜鉛、鉄、カルシウムといったミネラルも豊富。高野豆腐を 粉末状にした粉豆腐は小麦粉の代わりにもなり、僕はお好み焼きを作るときに使っています。間食が好きな人には大豆チップスもお勧めですよ。) Q:食べ過ぎて肥満を気にする人もいると思います。 A:確かに肥満は糖尿病や高血圧といった生活習慣病の原因の1つではありますが、僕は著書や講演で「ダイエットしましょう」と言ったことがありません。 なぜなら、日本人の多くは、メタボ健診の刷り込みが強く、肥満を過度に気にする「肥満パラドックス」に陥っているからです。 60歳、70歳を過ぎてから躍起になって体重を落とす必要はありません。食事制限で痩せようなんてもってのほか。気にすべきは「太っていないか」より「筋肉が落ちていないか」です。 Q:「たん活」と並ぶ、「貯筋」のもう1つの柱が「運動」です。 A:運動は、筋肉をつくるだけでなくさまざまな「いいこと」をもたらしてくれます。 運動すると、筋肉から「マイオカイン」という筋肉作動性物質が分泌されます。マイオカインには30種類ほどあり、その1つであるイリシンが血流に乗って脳に届くと、神経細胞を活性化し、血圧や、血糖値を下げる働きをします。 がんや認知症のリスクも下げる「究極の若返りホルモン」ともいわれています。 また、筋トレをすると男性ホルモンの「テストステロン」が分泌されます。 僕は「なにくそホルモン」と言っているのですが、人生の壁にぶつかっても、その壁を壊して前に進むことができるチャレンジング・ホルモンです。 生島ヒロシさんは、多額の借金を抱えながらも仕事が減ってきてピンチだった時期に、空いた時間で筋トレをしていたそうです。結果、ぐっすり眠ることができ、その後の仕事でいい循環が生まれ、借金も完済できた。その頃の生島さんは、筋トレすることで「なにくそホルモン」が出ていたのでしょうね』、「僕のイチオシは、高タンパクで低糖質の高野豆腐。高野豆腐には中性脂肪や悪玉コレステロールの上昇を抑える「レジスタントタンパク」が豊富に含まれているので、食後に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」も防いでくれます」、「運動すると、筋肉から「マイオカイン」という筋肉作動性物質が分泌されます。マイオカインには30種類ほどあり、その1つであるイリシンが血流に乗って脳に届くと、神経細胞を活性化し、血圧や、血糖値を下げる働きをします。 がんや認知症のリスクも下げる「究極の若返りホルモン」ともいわれています。 また、筋トレをすると男性ホルモンの「テストステロン」が分泌されます。 僕は「なにくそホルモン」と言っているのですが、人生の壁にぶつかっても、その壁を壊して前に進むことができるチャレンジング・ホルモンです」、なるほど。
・『犬の散歩は「ウォーキング」ではない Q:高齢者の運動といえば「ウォーキング」が代名詞ですね。 A:確かにウォーキングは気軽に取り組みやすいのですが、よく犬の散歩を「ウォーキング」と称している人がいますね。申し訳ないけど、これは間違った考えです。犬のペースに合わせて散歩してもほとんど筋肉はつきませんから。 東京都健康長寿医療センター研究所の発表によると、歩幅が狭い人は広い人に比べて認知機能低下のリスクが3倍以上高く、特に女性の場合は通常の5.8倍も高い、とされています。 だから犬の散歩とは別に、歩幅をできるだけ広くとってウォーキングを行ってください。 ただ、歩幅を広くといっても70歳を過ぎると頑張りすぎてひざを痛めたり、呼吸が乱れてしまいます。僕が考案した「鎌田式ウォーキング」は、速歩きと遅歩きを組み合わせた「速遅歩き」。 3分間の速歩きの後は3分間の遅歩きでゆっくり腹式呼吸をしながら副交感神経を刺激して血圧や脈拍を整え、また3分間の速歩きに戻る、を繰り返します』、「犬の散歩を「ウォーキング」と称している人がいますね。申し訳ないけど、これは間違った考えです。犬のペースに合わせて散歩してもほとんど筋肉はつきませんから・・・歩幅が狭い人は広い人に比べて認知機能低下のリスクが3倍以上高く、特に女性の場合は通常の5.8倍も高い、とされています。 だから犬の散歩とは別に、歩幅をできるだけ広くとってウォーキングを行ってください。 ただ、歩幅を広くといっても70歳を過ぎると頑張りすぎてひざを痛めたり、呼吸が乱れてしまいます。僕が考案した「鎌田式ウォーキング」は、速歩きと遅歩きを組み合わせた「速遅歩き 。 3分間の速歩きの後は3分間の遅歩きでゆっくり腹式呼吸をしながら副交感神経を刺激して血圧や脈拍を整え、また3分間の速歩きに戻る、を繰り返します」、「速遅歩き」は第二の記事での「インターバル速歩」と同じだ。
・『「貯筋」はウォーキングだけではできない Q:この「速遅歩き」なら、運動習慣のない高齢者でも実践できそうですね。 A:「貯筋」のためにはウォーキングだけでは不十分で、筋トレも必要です。でも、筋トレも多くの高齢者にとってはハードルが高いですよね。僕が勧めるのは「鎌田式スロー・スクワット」と「鎌田式かかと落とし」。スロー・スクワットでお尻や太ももなどの大きな筋肉を、かかと落としで「第二の心臓」といわれるふくらはぎを刺激し、全身の血流を促します。筋トレに慣れないうちは、テーブルなどにつかまりながらやってもかまいません。 Q:高齢者でも取り組みやすい筋トレを教えていただきました。ただ、特に運動習慣のないの人にとってはよほど頑張って取り組まないと……。 A:いえいえ、頑張りすぎるとかえって長続きしませんよ。僕の健康法は「食べるな」とか「ダイエットしろ」なんて言ったことがありません。基本的にはおいしいものを食べるために僕たちは生きているのだから、「頑張って運動しなきゃ」と思わずに「体を動かしておけばこれからもおいしいお酒やごはんを楽しめるぞ」と思えたほうが、長続きすると思います。) 運動が苦手な人に僕が勧めているのは「ながら運動」。例えば歯磨きしながらスクワットをする。料理のとき、お鍋に火が回るのを待つ間にかかと落としをする。テレビの野球中継を観ていてチェンジになったらスクワットをする――と決めてしまうのです。 この「ながら運動」は高齢者だけでなく、忙しいビジネスパーソンの方にも有効です。通勤中に、電車の吊り革につかまった時にかかと落としをする。駅から会社に行くまでの間に「幅広ウォーキング」をする。お昼休憩のとき、少し遠回りをして「鎌田式ウォーキング」をして、レストランまで行く――。「ながら運動」を日常生活に上手に取り入れればだんだんと習慣化できて、今度はやっているうちに楽しくなってきます』、「「貯筋」のためにはウォーキングだけでは不十分で、筋トレも必要です。でも、筋トレも多くの高齢者にとってはハードルが高いですよね。僕が勧めるのは「鎌田式スロー・スクワット」と「鎌田式かかと落とし」。スロー・スクワットでお尻や太ももなどの大きな筋肉を、かかと落としで「第二の心臓」といわれるふくらはぎを刺激し、全身の血流を促します。筋トレに慣れないうちは、テーブルなどにつかまりながらやってもかまいません」、なるほど。
・『運動を続ける「コツ」 Q:運動が楽しくなってくるんですか? A:運動を続けると「ドーパミン」という快感ホルモンが分泌されます。子どもがテストでいい点数を取ったときにほめてあげると、子どもが「もっと頑張っていい点数を取ろう」とうれしくなってもっと勉強しますよね。それがドーパミンです。 僕はスポーツジムに通っていますが、50キロのバーベルを担いでスクワットができると、トレーナーから「50キロのバーベルを担げる70歳以上の人なんかいませんよ!」とほめられる。そうするとうれしくなって「50キロ以上の重さにチャレンジしよう」と思える。これもドーパミンの仕業です。 運動を続けるコツは、夫婦間でほめ合う、あるいは「オレ、すごいかもしれないな」と自分で自分をほめ、ドーパミンを出すこと。気づかないうちに運動が楽しくなり、習慣化していきますよ』、「運動を続けるコツは、夫婦間でほめ合う、あるいは「オレ、すごいかもしれないな」と自分で自分をほめ、ドーパミンを出すこと。気づかないうちに運動が楽しくなり、習慣化していきますよ」、確かにこれならヤル気が出そうだ。
タグ:朝田 隆氏による「これを続ければ認知症グレーゾーンからUターンできる…認知機能が平均34%アップした「インターバル速歩」 生活習慣病やうつ、睡眠障害、骨粗しょう症の改善にも役立つ」 というわけで、「老化を遅らせる練習」の6つめは、「好奇心や創作意欲を満たしていく」です」、「世界は、アルツハイマー病と腸内細菌との関係に注目しています(残念ながら日本での研究は遅れています)」、この分野の研究がもっと進むことを願うばかりだ。 PRESIDENT ONLINE (その25)(高齢者のスポーツは「早死+寝たきり」のリスクが高まる!? 医大名誉教授「運動不足以上に気をつけたいこと」 足腰を痛めて動けなくなり、あっという間に老いてしまう、これを続ければ認知症グレーゾーンからUターンできる…認知機能が平均34%アップした「インターバル速歩」 生活習慣病やうつ 睡眠障害 骨粗しょう症の改善にも役立つ、老後の楽しみを一気に奪う「サルコペニア」の恐怖 健康寿命を延ばす「たん活」「貯筋」のススメ) 高齢化社会 「無理に好きでもない脳トレをして、それ自体がストレスになるのであれば、うつの原因になってしまうことすらあるでしょう。 それよりも、積極的に新しい知識を吸収したり、今、あなたがしているように本を読んだり、文章を書いたり絵を描いたりといった活動をするほうが、よほど脳の海馬の細胞は増えていきます。 そんなふうに好奇心や創作欲を満たしていくことこそ、本当の意味での「脳トレーニング」ではないでしょうか。 ただ、私の場合、散歩は後ろ向き歩きも組み合わせているので、「インターバル速歩」を採り入れる余地は残念ながら殆どない。 「世の中は変化していくのですから、仕事で成し遂げたことも日々どんどん更新されるし、下の人間が上の人間をどんどん追い越していくのも当然だ――そのように認識を改めましょう。そうした変化は、人類にとってむしろ喜ばしい進化発展であり、自分が否定されているわけでは決してないのです。 というわけで、「老化を遅らせる練習」の5つめは、「過去の実績に執着しない」ということです」、確かにその通りだろう。 運動不足で老いてしまうこと以上に、「無理な運動をしたせいで足腰を痛めて動けなくなり、それがきっかけで、あっという間に老いてしまうリスク」のほうを、心配するべきでしょう」、なるほど。 「特にチームスポーツをやっていた人は、元気に運動を続けている仲間の姿と自分を比較して、チームに迷惑をかける心配も含め、まるで自分が脱落してしまったかのような疎外感を覚えてしまいがちです。そこから、うつになってしまう方が多くいます。 だから運動を楽しむのであれば、あまり「競い合うこと」や「チームプレー」に熱心にならないこと」、「人間の体は、高齢になっても若い時と同じようにハードな運動ができるようにはできていないことを知っておいてください。 そういう事実ともあいまって、「運動すれば健康的になる」という常識は、「軽い運動をすれば健康的になる」という程度に解釈して、汗だくになって息があがるほどのハードな運動はやめておいたほうがいいと思うのです」、やはり過ぎたるは及ばざるが如しのようだ。 ただ、マンションの外に出るときは、エレベーターは目的の1階手前の階で降りるようにしています。そして1階分12段の階段を自分の足で上ったり下りたりしています。このようにして一日4往復くらいすれば、十分体力を維持できます」、「私の周りで、高齢になってまでスポーツをやっていた人は、どういうわけか皆、早くに亡くなっているのです。あるいは、寝たきりになっています。 「私たちにできる「老化を遅らせる練習」の3つめは、「体を酷使しないこと」です。 高齢者に対しては、「日々、足腰を鍛えなさい」と、運動を推奨する風潮があります。でも私は、そんなに無理をする必要などない、と考えます。 今88歳の私がしている「運動」といえば、スーパーまで歩いて買い物に行くことと、都心にある出版社に電車に乗って出向くことくらいです。 「2つめは、「生きがいを持つこと」。生きがいを持っている人であれば、こうした「孤立→不安→うつ」の悪循環に陥りにくいことはすでにわかっています。「生きがい」とは、時が経つのを忘れるほど夢中になれる“特別なもの”ばかりを指すのではないのです。スーパーの特売日に目的のものを特価で買うこと、植木に花を咲かせること、道のごみを拾うことなど、どんな小さなことでも十分に当てはまるのです。」、なるほど。 ほかにどんなライフスタイルや考え方が孤独感を招くのか、どんどん明かしていきましょう』、「うつを引き起こす原因となる状態を避けることで、認知症になるリスクをかなり減らせる・・・そのために重要なことの1つめが・・・「腸内環境を整えること」です。食事を改善することが、腸内環境を整え、認知症の対策にもなることが、最近の研究でわかってきました」、「認知症」や「うつ」と関係なさそうな「腸内環境を整えること」、とは「腸」は重要な臓器のようだ。 「生きがい」とは、時が経つのを忘れるほど夢中になれる“特別なもの”ばかりを指すのではないのです。スーパーの特売日に目的のものを特価で買うこと、植木に花を咲かせること、道のごみを拾うことなど、どんな小さなことでも十分に当てはまるのです。 孤立感から、認知症などの病気になる人とならない人の違いは、年を取ってからのライフスタイルや考え方に大きく左右されるということです。 (注)帯状回:大脳の内側面において、脳梁の辺縁を前後方向に走る脳回(Wikipedia) 「人が孤立状態に置かれると、脳の帯状回がだんだんと正常に機能しなくなり、その影響で、不安障害の傾向が出てきて、やがて、やる気や食欲も低下し、うつの症状が出てきます。 さらには、うつになると、「アミロイドβ」と呼ばれる、脳内に生じるゴミのようなタンパク質が脳から排除されなくなります。これがどんどん蓄積していくと、脳細胞が壊れ、アルツハイマー型認知症が引き起こされます」、なるほど。 高田明和『65歳からの孤独を楽しむ練習 いつもハツラツな人』(三笠書房) 高田明和氏による「高齢者のスポーツは「早死+寝たきり」のリスクが高まる!? 医大名誉教授「運動不足以上に気をつけたいこと」 足腰を痛めて動けなくなり、あっという間に老いてしまう」 「実はお金よりも、「筋肉」が減ることのほうが、老後の楽しみを奪ってしまうのです。 40歳を過ぎると筋肉は毎年1~2%ずつ減っていき、 70歳を過ぎると「サルコペニア」に陥る人が増えていきます。サルコペニアとは加齢に伴い筋肉量が減少し、身体機能が低下する現象のことです。東京都健康長寿医療センター研究所は、75~79歳では男女ともに約2割が、80歳以上では男性の約3割、女性の約半数がサルコペニアに該当する、との調査結果」、 「がんばらない健康法」とは興味深そうだ。 堀尾 大悟氏による「老後の楽しみを一気に奪う「サルコペニア」の恐怖 健康寿命を延ばす「たん活」「貯筋」のススメ」 東洋経済オンライン すると突然、彼は認知症になり、施設に入って2年ほどで亡くなってしまいました」、考えようによっては、「自分の過ち」で苦しめられるよりは、「認知症」になって幸せだったのかも知れない。 「100歳近くまで現役で、非常に健康だったある大学の名誉教授の方がいました。 ところがキャリアの最後で、大きなミスを犯してしまったのです・・・偉くなると、周りにあれこれいろいろな企みや思惑、嫉妬を抱えた人たちが近づいてきます。そうした人たちに、あることないこと吹き込まれ、自分が一番信頼していた部下を、自らの手で排除するように唆されてしまったのです。 その後、彼は自分の過ちに気づいたのですが、もはやあとの祭りです。野に下った部下を、呼び戻すことはかないませんでした。 「必ずしも元部下がリスペクトの気持ちを忘れたわけではないのです。ただ、関係性が変化しただけです。 こうした変化を素直に受け入れられるならば、年を取って仕事をしても問題はありません。けれども、「現役と同じように自分は大切に扱われるべきだ」と心のどこかで思っていれば、そうならない現状を淋しく感じ、自信を喪失していくことは多くなります」、なるほど。 しかし、もし、「なんで校長だった私が、この仕事をしなければいけないんだ」とか、「校長までやった人間に世の中は冷たい」などと感じるようであれば、そこからたちまち疎外感や孤独感が、広がっていきます」、「「老化を遅らせる練習」の4つめは、「生涯現役が理想! という幻想を捨てること」です」、なるほど。 「あるマンションで、高校の校長先生だった方が、管理人の仕事を引き受けていたとしましょう。そうやって仕事をしていることは賞賛されるべきことですし、管理人よりも校長先生のほうが偉いということもありません。時間に余裕があるし、本人が楽しんでやっているならば、何も問題はないことです。 高齢者を対象にインターバル速歩を5カ月間行ってもらった研究によると、参加した人の体力が平均6%向上したといいます。さらに、参加者のうち2割は認知症グレーゾーンと診断されていましたが、インターバル速歩を行ったあとは、認知機能が平均34%も改善されていたそうです」、「認知機能が平均34%も改善されていた」、とは効能あらたかだ。 「ただ歩くだけのウォーキングでは、認知症対策に必要な「筋力の増強」にまではつながらない・・・そこでおすすめなのが、ウォーキングよりも、「インターバル速歩」です。 インターバル速歩とは、筋肉に負荷をかける「さっさか歩き」と、負荷の少ない「ゆっくり歩き」を交互に繰り返すウォーキング法の一つ。筋力や持久力を無理なく高めることができる中高年向けのトレーニング法として、信州大学大学院特任教授の能勢博先生らが提唱しているものです。 「運動には、感情や思考に関係するドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌を促す効果もあるといわれており、認知症グレーゾーン(MCI:軽度認知障害)の初期に見られる「めんどうくさい」を改善するうえでも最適です・・・認知症の予防、および認知症グレーゾーンからの回復を果たすうえで、運動習慣は不可欠といえます」、「運動」の重要性を再認識した。 逆に、運動不足によって筋肉(骨格筋)が萎縮すると、それだけでアルツハイマー型認知症の発症につながることが、富山大学の東田とうだ千尋教授らの動物実験で明らかにされています。マウス(若齢のアルツハイマー病モデルマウス)に筋肉の萎縮を誘発したところ、そうでないマウスにくらべて若年例でも記憶障害が発症していたというのです。 認知症の予防、および認知症グレーゾーンからの回復を果たすうえで、運動習慣は不可欠といえます』、 つまり、筋肉を鍛えている人は脳の神経細胞も一緒に増やしているということです」、「脳」や「筋肉」についてのこれまでの知識が陳腐化してることに、改めて驚かされた。 ・『筋肉が萎縮したマウスは記憶障害になった さらに運動には、感情や思考に関係するドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌を促す効果もあるといわれており、認知症グレーゾーン(MCI:軽度認知障害)の初期に見られる「めんどうくさい」を改善するうえでも最適です。 「運動によって脳の働きが高まる理由としては、脳の血流が増えることがよくあげられます・・・それ以上に注目したいのが“筋肉”です。筋肉が動くときに分泌されるマイオカインという物質のなかには、脳の神経細胞が減るのを防ぐだけでなく、脳の神経細胞を増やす働きをするものが存在する・・・以前は、筋肉は脳からの一方的な指令で動いていると思われていました。 しかし実際には、筋肉からも絶えず脳にシグナルが送られていて、筋肉が動くこと自体が脳の活性化に寄与することがわかってきています。 「運動を続けるうちに、仕事の勘がどんどん戻ってきて、また自信をもって働けるようになったことがうれしい・・・健康診断の数値も改善され、筋トレによって体が引き締まったことから、家族の間で「お父さんカッコよくなった」と大評判。そのことがまた運動を続けるモチベーションとなり、最近は奥さんと一緒にジムへ行き、帰りにレストランで食事をするという新たな楽しみが増えた」、これほど運動が効果あるとは、私も驚かされた。 「40歳を過ぎた頃から頭の回転が鈍くなってきたことを自覚し、「もう第一線から退くしかないのかな」と悩んでいたそうです。そんなとき、健康診断で血圧と血糖値、肥満度の指標であるBMI値が高いことを指摘され、日常的に運動することをすすめられました。 そこで気分転換も兼ねてジムへ通い、マシンを使ったウォーキングと筋トレを始めたところ、パソコンに向かっているときはまったく思い浮かばなかったアイディアが、運動している最中にふっとひらめくことが増えた」、素晴らしい効果だ。 「歩き方を少し変えるだけで、筋力も認知機能もアップさせることができる」、とは有り難い話だ。 筋肉のなかでいちばん大きな太ももの筋肉が鍛えられることで、基礎代謝が上がり、太りにくい体になっていきます・・・日本では、フラダンスというと女性のイメージが強いですが、男性の筋トレ、脳トレとしても最適です」、私も一度、試してみたい。 「ゆっくりとした優雅な動きは、一見、筋トレとはかけ離れた印象がありますが、下半身の負荷は結構なものです・・・足の指先から太もも、お尻、腰、背中に至るまで、インナーマッスルがフル稼働を余儀なくされます。 、私は携帯を持たない主義だが、「スマホ」がここまで便利になってくると、考え直さざるを得ない。 「インターバル速歩は、認知症および認知症グレーゾーンの危険因子とされている生活習慣病やうつ、睡眠障害、骨粗しょう症などの改善にも役立つ」、ここまで効果が大きいのであれば、前向きの過程で、「インターバル速歩」を採り入れてみたい。 「運動を続けるコツは、夫婦間でほめ合う、あるいは「オレ、すごいかもしれないな」と自分で自分をほめ、ドーパミンを出すこと。気づかないうちに運動が楽しくなり、習慣化していきますよ」、確かにこれならヤル気が出そうだ。 「「貯筋」のためにはウォーキングだけでは不十分で、筋トレも必要です。でも、筋トレも多くの高齢者にとってはハードルが高いですよね。僕が勧めるのは「鎌田式スロー・スクワット」と「鎌田式かかと落とし」。スロー・スクワットでお尻や太ももなどの大きな筋肉を、かかと落としで「第二の心臓」といわれるふくらはぎを刺激し、全身の血流を促します。筋トレに慣れないうちは、テーブルなどにつかまりながらやってもかまいません」、なるほど。 ただ、歩幅を広くといっても70歳を過ぎると頑張りすぎてひざを痛めたり、呼吸が乱れてしまいます。僕が考案した「鎌田式ウォーキング」は、速歩きと遅歩きを組み合わせた「速遅歩き 。 3分間の速歩きの後は3分間の遅歩きでゆっくり腹式呼吸をしながら副交感神経を刺激して血圧や脈拍を整え、また3分間の速歩きに戻る、を繰り返します」、「速遅歩き」は第二の記事での「インターバル速歩」と同じだ。 「犬の散歩を「ウォーキング」と称している人がいますね。申し訳ないけど、これは間違った考えです。犬のペースに合わせて散歩してもほとんど筋肉はつきませんから・・・歩幅が狭い人は広い人に比べて認知機能低下のリスクが3倍以上高く、特に女性の場合は通常の5.8倍も高い、とされています。 だから犬の散歩とは別に、歩幅をできるだけ広くとってウォーキングを行ってください。 「運動すると、筋肉から「マイオカイン」という筋肉作動性物質が分泌されます。マイオカインには30種類ほどあり、その1つであるイリシンが血流に乗って脳に届くと、神経細胞を活性化し、血圧や、血糖値を下げる働きをします。 がんや認知症のリスクも下げる「究極の若返りホルモン」ともいわれています。 また、筋トレをすると男性ホルモンの「テストステロン」が分泌されます。 僕は「なにくそホルモン」と言っているのですが、人生の壁にぶつかっても、その壁を壊して前に進むことができるチャレンジング・ホルモンです」、なるほど。 「僕のイチオシは、高タンパクで低糖質の高野豆腐。高野豆腐には中性脂肪や悪玉コレステロールの上昇を抑える「レジスタントタンパク」が豊富に含まれているので、食後に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」も防いでくれます」、 「たん活」と「運動」です。「たん活」とは、「タンパク質いっぱいの食生活」のこと。タンパク質は、言うまでもなく筋肉をつくる材料です。しかし、高齢になるとともに食が細くなってしまい、タンパク質が不足しがちになると、サルコペニアに陥るリスクが高まります。 タンパク質を摂取する目安は、体重1キログラムあたり1グラム以上とされていますが、これでは今ある筋肉をキープするので精一杯。体重1キログラムあたり1.2グラム以上を目標としましょう。 60キログラムの人であれば72グラムですね」、なるほど。 「75~79歳では男女ともに約2割が、80歳以上では男性の約3割、女性の約半数がサルコペニアに該当」、かなり高い割合だ。「サルコペニアになると、歩く、立ち上がるといった日常生活の基本動作に支障が生じ、転倒や骨折のリスクが高まります。そして、要介護の一歩手前の虚弱な状態である「フレイル」に至ります。サルコペニア、そしてフレイルを避けるためにも、日ごろの「貯筋」が70歳からの人生の充実度を決めるといってもいいでしょう」、「貯筋」には大きく2つの柱があります。
キシダノミクス(その9)(ついに国民の「大ブーイング」を”無視”しはじめた岸田総理…もはや「危険レベル」の総理に永田町で出回る「怪文書」の衝撃中身、れぞ岸田自民党!レイシスト杉田水脈氏とエッフェル松川るい氏が“復活”のメチャクチャ、【独自】自民党情勢調査で「自民41減」「公明10減」…岸田首相は絶句 11月解散を本当に決断できるのか) [社会]
キシダノミクスについては、本年9月23日に取上げた。今日は、(その9)(ついに国民の「大ブーイング」を”無視”しはじめた岸田総理…もはや「危険レベル」の総理に永田町で出回る「怪文書」の衝撃中身、れぞ岸田自民党!レイシスト杉田水脈氏とエッフェル松川るい氏が“復活”のメチャクチャ、【独自】自民党情勢調査で「自民41減」「公明10減」…岸田首相は絶句 11月解散を本当に決断できるのか)である。
先ずは、8月26日付け現代ビジネスが掲載した教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師の清水 克彦政治氏による「ついに国民の「大ブーイング」を”無視”しはじめた岸田総理…もはや「危険レベル」の総理に永田町で出回る「怪文書」の衝撃中身」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/115129?imp=0
・『岸田政権は「危険水域」で動けず 「本日、ここに、我々3人は、日米韓パートナーシップの新時代を開いていく決意を示します」 8月18日、ワシントン郊外にあるアメリカ大統領専用の別荘、キャンプ・デービッドで、バイデン大統領や韓国の尹錫悦大統領とともに共同会見に臨んだ岸田首相は、満足そうな表情を見せた。 キャンプ・デービッドは、歴代のアメリカの大統領が、重視する外国の首脳を招き、打ち解けた雰囲気で会談を行う際に利用されてた場所だ。1986年には中曽根首相が招かれ、レーガン大統領と「ロン・ヤス」関係を築き、2001年には小泉首相がブッシュ大統領とキャッチボールを楽しんだことでも知られている。 そのような由緒ある場所に招かれたこと、そしてそこで、中国などを念頭に、日米韓3か国による安全保障面での連携を強化し、「政権が代わっても協力関係を継続する」などとする「キャンプ・デービッド原則」を打ち出せたことは、岸田首相にとって、今年5月のG7広島サミットに次ぐ晴れ舞台にはなった。 とはいえ、岸田首相の前途には暗雲が立ち込めているままだ。 「解散? やれるわけがないよ。ガソリン価格の高騰だって、不満の矛先は岸田さんに向けられる。解散したら自民党は惨敗。10月解散の可能性なんて99%ないね」 とは、自民党議員から聞こえてくる本音である。実際、岸田政権への支持率は、毎日新聞や時事通信による世論調査で、「危険水域」とされる20%台まで落ち込んでいる。 ここで想起されるのが、先ごろ東京・永田町で出回った、岸田政権の低空飛行を受けての怪文書だ。それにはこんな記述が見られた。) 「(来年の)総裁選には出ないかもな…。首相はポツリとこう漏らした」 「衆院解散・総選挙について、今秋はおろか来年の党総裁任期までに断行できず、退陣を余儀なくされる」 さすがにこの内容を鵜呑みにする議員や記者はいないものの、現在の岸田首相を取り巻く状況を思えば、「こんな風に書かれるのもむべなるかな」と言うほかない。なぜなら、やることなすこと、理解が得られないものばかりだからだ』、「岸田政権への支持率は、毎日新聞や時事通信による世論調査で、「危険水域」とされる20%台まで落ち込んでいる。 ここで想起されるのが、先ごろ東京・永田町で出回った、岸田政権の低空飛行を受けての怪文書だ。それにはこんな記述が見られた。 「(来年の)総裁選には出ないかもな…。首相はポツリとこう漏らした」 「衆院解散・総選挙について、今秋はおろか来年の党総裁任期までに断行できず、退陣を余儀なくされる」 さすがにこの内容を鵜呑みにする議員や記者はいないものの、現在の岸田首相を取り巻く状況を思えば、「こんな風に書かれるのもむべなるかな」と言うほかない」、「首相は」かなり追い込まれているようだ。
・『反転攻勢の糸口すらない岸田政権 政治が高校野球やラグビーなら、どんなに押されているゲームでも、試合中、1度や2度は反転攻勢の流れが来ることがあるものだ。ところが、岸田首相には、現在はもとより、近未来も、支持率を好転させる材料がない。 ・最側近、木原誠二官房副長官をめぐる疑惑が払拭できない ・自民党内で汚職疑惑やフランス「物見遊山」研修問題が尾を引く』、「現在はもとより、近未来も、支持率を好転させる材料がない」、これは深刻だ。
・『現在のマイナス材料は理解が得られないものばかり ・マイナンバー問題で収束の兆しが見えない(8月8日に公表した総点検の中間報告では累計8000件超の誤りを確認。目標どおり11月末までに総点検を完了できたとしても、その後にミスが発覚すれば完全に信頼を失う。特にマイナ保険証に関しては、各種世論調査で過半数の人が「必要」と感じていない)。 ・最側近、木原誠二官房副長官をめぐる疑惑が払拭できない(「週刊文春」で木原氏の“愛人と隠し子問題”が表面化。続いて、妻の元夫の“不審死問題”問題。も浮上。木原氏が何の説明もしていないという問題に加え、岸田首相の傍に、頼れる側近が不在となった点も大打撃。)・自民党内で汚職疑惑やフランス「物見遊山」研修問題が尾を引く(秋本真利衆院議員が風力発電をめぐる収賄疑惑で離党。松川るい女性局長(その後、辞任)らのフランス研修も「まるで観光」と批判を浴びた。秋本、松川両氏の議員辞職を求める声に、「出処進退は政治家本人が…」などと常套句で返せば、支持率はさらに下がる可能性がある』、「現在のマイナス材料は理解が得られないものばかり」、その通りだ。
・近未来のマイナス材料も理解が得られそうにない ・福島第1原発処理水の海洋放出で批判を浴びるのは不可避(8月20日、岸田首相の福島訪問、そして22日の関係閣僚会議で処理水の海洋放出が決まり、24日から放出が始まった。 政府と東京電力は2015年、福島県の漁協に「関係者の理解なしには(処理水の)いかなる処分も行わない」と約束している。風評被害対策や漁業継続への基金(約800億円)創設だけでは、十分な理解を得たとは言いがたい。早速、中国は、「日本の海産物全面禁輸」という岸田政権も想定外の措置に踏み切った。 また、多核種除去設備(ALPS)で取り除くセシウムやストロンチウム等の放射性物質を最終的にどのように処分するのか明示されていない点も問題。 ・レギュラーガソリン「1L=200円」時代への怒り(ガソリン価格の急騰で、9月末で打ち切られる石油元売り各社への補助金の延長は不可避。ガソリン価格は物価全体の高騰につながるため、国民の実質賃金を減らさない施策、たとえば、ガソリン税の一部を軽減する「トリガー条項」発動、もしくは、ガソリン・電気・ガス料金への補助金継続に踏み切らなければ、二重課税を余儀なくされている国民の不満は岸田政権に向けられる。 ・中国の不動産大手の中国恒大集団のアメリカ連邦破産法の適用申請での余波(中国の不動産バブル崩壊で、日本企業の中国向け輸出が減る。それだけでなく、中国富裕層が日本の不動産に投資するようになり、マンション価格がアップしてしまう。岸田政権としては「注視する」だけでは済まなくなる。 ・難しくなった電撃的訪朝(小泉訪朝時のようなパイプ役が存在せず協議が進んでいない。仮に訪朝できたとしても、訪朝に見合う拉致被害者や特定失踪者の帰国が期待できない。ただ、岸田首相は5月27日、「私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」と述べており、結果が求められる。 ・自民党役員人事と内閣改造は両刃の剣(茂木敏充幹事長の交代、小渕優子元経産相の抜擢などがあれば波紋を拡げる。特に小渕氏を重要ポストに起用すれば、女性抜擢になる一方、「ドリル問題」(政治資金規正法違反事件で、証拠隠滅のため、会計書類などを保存したパソコンにドリルで穴を開けた疑惑)が再燃する』、「難しくなった電撃的訪朝」については、何か「パイプ」の当てがあるのかと思っていたら、どうもなさそうだ。いずれにしろ、余りいい材料はなさそうだ。
・『頼みの綱は、安倍派の内紛と菅グループの失速 そうした中で、唯一、頼みの綱と言えるのが、自民党最大派閥、安倍派の内紛と「ポスト岸田」に影響を与える菅グループの失速であろう。 このうち、安倍元首相死去のあと「会長」不在の安倍派は、8月17日、総会を開き、代表となる「座長」に塩谷立会長代理が就く新体制を了承した。当面は会長を置かず、主なメンバーが参加する「常任幹事会」を設け、その取りまとめ役を塩谷氏が担うというものだ。 新設される「常任幹事会」は、「5人衆」と呼ばれる、松野博一官房長官、萩生田光一政調会長、西村康稔経済産業相、高木毅国会対策委員長、世耕弘成参院幹事長、そして、当選回数ごとの代表者らで運営されるが、こういう集団指導体制は脆い。 筆者が在京ラジオ局で政治キャップを務めていた頃、最大派閥だった小渕派は、2000年に小渕元首相、竹下元首相が亡くなったのを契機に、派閥の求心力と党内への影響力が著しく低下した。 「5人衆」と下村博文元文部科学相ら古株の議員との間で確執が続く安倍派も同じ運命をたどるように思えてならない。 「誰かがトップになれば混乱に拍車がかかる。萩生田氏では統一教会の影が残り、過去に女性下着窃盗疑惑が浮上した高木氏だと『安倍派=パンツ派』と呼ばれかねない。西村氏のように、2025年までに首相になるという野心を隠さず、自家用車のナンバーを『2025』にするような人もちょっと…」(総会を取材した在京局政治記者) 「マスメディアは、亀裂だ、分裂だと騒ぐが、安倍派の状況は1年前と全く変わっていない。去年の記事を今もそのまま掲載できるくらい変化がない。所属議員が100人もいる大派閥が簡単に割れたりしない」(安倍派中堅議員) つまり、安倍派は分裂せず存続する反面、来年秋の自民党総裁選挙で岸田首相の対抗馬を、派閥として擁立できないということだ。これまでどおり、最大派閥の安倍派が岸田首相支持を継続するなら、第4派閥のトップにすぎない岸田首相にとってはプラスになる。) もう1つは菅グループの失速である。前回の総裁選挙で菅氏らが支持した河野行革相(当時)は、デジタル相としてマイナカード問題の渦中にあり、菅氏を「政界のおやじ」と慕い、河野氏の側近を自認してきた秋本氏は、先に述べた収賄疑惑で離党を余儀なくされた。これらの影響で菅氏は倒閣に動きにくくなった。これも岸田首相には好材料だ』、「頼みの綱は、安倍派の内紛と菅グループの失速」、敵失しかないというのは情けない限りだ。
・『高い「壁」だらけの岸田首相が手にした本とは? 岸田首相は、夏休みに入る前、10冊程度の本を購入している。その中の1冊が、村上春樹氏の長編小説『街とその不確かな壁』(新潮社)である。 ネタバレにならない程度に言えば、「壁」と「影」がキーワードの作品で、「弱いぼく」が、自分という存在の不確かさなどを深掘りしていくというストーリーだ。 高校野球で言えば、守備でエラーが続き無死満塁、ラグビーで言えば、ゴールライン寸前まで押し込まれている状況にある岸田首相。最大の壁は、国民の理解を得ることである。 その意味では高い「壁」だらけだが、岸田首相が、現在の「弱いぼく」をどう見つめ、首相という地位や支持率という不確かさをどのように感じたのか、読後の感想を聞いてみたいものである。 ・・・・・ さらに関連記事『自民党に大激震…!麻生太郎が地方紙でベラベラ語った「次の総理候補、オレならこう評価する」』では、いま起きている“もうひとつの異変”について、紹介する』、購入した1冊が、「村上春樹氏の長編小説『街とその不確かな壁』」で、「「弱いぼく」が、自分という存在の不確かさなどを深掘りしていくというストーリーだ」。確かに「読後の感想を聞いてみたいものである」、その通りだ。
次に、9月30日付け日刊ゲンダイ「これぞ岸田自民党!レイシスト杉田水脈氏とエッフェル松川るい氏が“復活”のメチャクチャ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/329884
・『 自民党最大派閥に性懲りもなく配慮したのか、その後ろに控える岩盤保守層への媚なのか。 岸田首相が実施した内閣改造・党役員人事に伴い、29日の総務会で残りのポストが決まった。札幌法務局に「レイシスト」と断じられたも同然の杉田水脈衆院議員(比例中国)や、“エッフェル姉さん”とあだ名される松川るい参院議員(大阪選挙区)がそこそこの役職をゲット。いずれも安倍派で、ハレーションを引き起こしている。 政界で一、二を争うネトウヨの杉田氏は先日、アイヌ民族らへの差別投稿をめぐって札幌法務局から「人権侵犯」を認定されたばかり。一連の言動で昨年末に総務政務官を更迭されて無役だったが、環境部会長代理に就いた。部会長に次ぐナンバー2だ。自民の部会は政策分野ごとに設けられ、政府提出法案の審査や政策立案に携わる。選良を辞すべき人間が環境政策に影響力を持つなんて、メチャクチャだ。 「当初は外交部会長代理で調整されていましたが、人事案が漏れ伝わると、あちこちから反発の声が上がった。ネトウヨ丸出しでギャンギャンやられたら、関係国と不要な摩擦を引き起こしかねない。それで、格下の環境部会へ差し替えられた。もっとも、本人は反省の色ゼロ。法務局から〈アイヌ文化を学んで発言を注意するように〉と啓発されたとの報道に、〈アイヌ文化を学ぶようにとか、具体的な啓発なんかなかった〉と文句を垂れています」(自民党中堅議員)) 副幹事長に就任した“エッフェル姉さん”もしかり。問題のフランス研修を「まじめな研修だった」と言い張ったものの、報告書などを公表することもなく、8月下旬に女性局長を辞任して雲隠れ。ケジメをつけずに表舞台に復帰した。 「あの騒動前はBSの報道番組などに引っ張りダコ。米国隷従で、中韓に対して強硬発言を繰り返していました。改憲、防衛費大幅増、敵基地攻撃能力の保有、非核三原則の見直しに賛成するタカ派。地元・大阪では冷たい視線を向けられていますが、タカ派ウケする“論客”としてまだ使い道があるということでしょう」(与党関係者) 岸田自民党が「女性活躍社会」を実現するなんて、どだいムリなのだ』、「ネトウヨの杉田氏・・・「当初は外交部会長代理で調整されていましたが、人事案が漏れ伝わると、あちこちから反発の声が上がった。ネトウヨ丸出しでギャンギャンやられたら、関係国と不要な摩擦を引き起こしかねない。それで、格下の環境部会へ差し替えられた」、当然だろう。「“エッフェル姉さん”・・・「あの騒動前はBSの報道番組などに引っ張りダコ。米国隷従で、中韓に対して強硬発言を繰り返していました。改憲、防衛費大幅増、敵基地攻撃能力の保有、非核三原則の見直しに賛成するタカ派。地元・大阪では冷たい視線を向けられていますが、タカ派ウケする“論客”としてまだ使い道があるということでしょう」、外務省出身でもこんな右翼がいるとは驚かされた。
第三に、10月9日付けYahooニュースが現代ビジネスを転載した「【独自】自民党情勢調査で「自民41減」「公明10減」…岸田首相は絶句、11月解散を本当に決断できるのか」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f769889954dfd429efa88360bf63fe9c54f83790
・『リサーチ会社の数字を何度も確認した首相 「びっくりしたね。こんなに人気がないとは……」と話すのは、自民党の閣僚経験者のひとりだ。この人物が手にしていたのは、岸田文雄首相が解散総選挙のタイミングを計るため、自民党が複数のリサーチ会社に依頼していた世論調査の結果だ。 その数字は以下だ。 現有議席→選挙後議席 自民 261→220(41議席減) 公明 32→22(10議席減) 立民 96→108(12議席増) 維新 41→69(28議席増) 国民 10→16(6議席増) 共産 10→14(4議席増) 2021年10月に投開票された前回の衆議院選挙は、岸田首相の就任間もなく実施され、当初「大幅減」とされた予想を覆して、自民党は単独過半数を得た。連立を組む公明党も3議席を伸ばして、与党圧勝に終わった。 だが今回、自民党の世論調査によれば、現在から40議席以上を失う驚きの結果だ。公明党は10議席減と、自民党以上の「惨敗」というのだ。 かたや野党に目を向けると、立憲民主党は12議席を上積みし、100の大台を超える。今年春の統一地方選でも躍進した維新は、30議席近くアップする予想だ。自公の連立入りも囁かれる国民民主党は6議席を増やし、共産党も4議席増える調査結果だ。 前出の閣僚経験者が打ち明ける。 「いま出回っているこの世論調査の数字は、いくつかあるリサーチ会社のうちの1つのもの。数字を見た岸田首相は何度も数字を確認したといい、『うーん』とうなったままだったそうだ。 岸田首相が総裁選まで1年を切る中で、追い込まれた形での解散総選挙は避けたい。衆議院選挙に勝って国民の信任を得たうえ、総裁選では無投票再選を果たすのがベストシナリオだ。来年春をすぎれば、追い込まれた印象を受け、総裁選にはマイナスになる。あと半年ほどで解散総選挙を打たないと、首相の座が危ういことになります」』、「自民党の世論調査によれば、現在から40議席以上を失う驚きの結果だ。公明党は10議席減と、自民党以上の「惨敗」というのだ。 かたや野党に目を向けると、立憲民主党は12議席を上積みし、100の大台を超える。今年春の統一地方選でも躍進した維新は、30議席近くアップする予想だ。自公の連立入りも囁かれる国民民主党は6議席を増やし、共産党も4議席増える調査結果だ」、「岸田首相が総裁選まで1年を切る中で、追い込まれた形での解散総選挙は避けたい。衆議院選挙に勝って国民の信任を得たうえ、総裁選では無投票再選を果たすのがベストシナリオだ。来年春をすぎれば、追い込まれた印象を受け、総裁選にはマイナスになる。あと半年ほどで解散総選挙を打たないと、首相の座が危ういことになります」、なるほど。
・『公明党幹部「うちだけは的中」 10議席減が予測された公明党は、自民党以上に厳しい。 これまで公明党は、大阪と兵庫に限っては自公連立の掟を破ったうえで維新と組んできた。しかし維新は「公明党との『握り』はもうしない」と、公明党が大阪・兵庫で維持する6小選挙区の候補者を発表した。維新の勢いから、公明党が勝てる道筋はまるで見えない。 公明党幹部は肩を落としてこう語る。 「この世論調査の数字は、自民党内で解散総選挙を先延ばししたい勢力が『盛った』感があります。自民党はここまでは減らさないでしょう。しかし、うち(公明党)だけは、ほぼ的中している数字ではないか。ひょっとするとこれ以上減らすかもしれない。もし10議席落とせば党の存亡にかかわります」 問題は、この状況下で岸田総理が解散をいつ決断するかだ。もちろん鍵は総裁選にある。 「自民党の総裁選というのは、選挙に勝てる顔かどうかです。歴史を見ればよくわかります」 こう語るのは、宏池会(現岸田派)のスタッフを経て自民党の政務調査役として敏腕をふるった政治評論家の田村重信氏だ。 近年の自民党で長期政権だったのは安倍晋三元首相、小泉純一郎元首相が代表的で、どちらも選挙に強いことで知られた。岸田首相は2021年の衆議院選挙、2022年の参議院選挙と2連勝中だ』、「これまで公明党は、大阪と兵庫に限っては自公連立の掟を破ったうえで維新と組んできた。しかし維新は「公明党との『握り』はもうしない」と、公明党が大阪・兵庫で維持する6小選挙区の候補者を発表した。維新の勢いから、公明党が勝てる道筋はまるで見えない」、「公明党幹部は・・・「この世論調査の数字は、自民党内で解散総選挙を先延ばししたい勢力が『盛った』感があります。自民党はここまでは減らさないでしょう。しかし、うち(公明党)だけは、ほぼ的中している数字ではないか。ひょっとするとこれ以上減らすかもしれない。もし10議席落とせば党の存亡にかかわります」、なるほど。
・『10月22日の補選が試金石 だが、来年9月に予定される自民党総裁選まで、2連勝の神通力が保たれるかは不透明だ。9月には内閣改造と自民党役員人事を行ったものの、新鮮味もサプライズもない人選で、支持率が浮上することはなかった。 秋の臨時国会の会期は明確になっていないが、10月20日頃召集の方針だ。ここでの「冒頭解散」だけでなく、臨時国会で経済対策と補正予算案を審議してから11月に解散して12月に投開票するという「想定日程」も出回っている。 《11月の第3週、20日ころに解散して、12月5日公示、17日投票》《11月24日に補正予算案を採決、本会議で解散》 という「総務省案」が、繰り返し何度もバージョンアップされて出回っている。 自民党の代議士からは、もはや選挙モードだという声も挙がる。 「いつ解散があってもおかしくない。夜も誰かと一杯飲んで、情報収集をしないと、落ち着かない」 「解散総選挙がいつあってもいいように、ポスター用の撮影をやったばかりです。5月ごろにも撮ったから2度目になります。仕方ないですが……」 10月22日は、参院徳島・高知と衆院長崎4区の補選の投開票日となっている。2つの選挙区とも自民党VS野党候補の激突だ。 10月5日に告示された参院徳島・高知選挙区は、与党が西内健氏(前高知県議)、野党は広田一氏(元衆議院議員)の戦い。9月末実施の世論調査では西内氏が30・6%で、野党・広田氏の38・4%に差を付けられている。 10月14日には岸田首相自ら徳島入りする予定だが「逆転は厳しい」(自民党の徳島県議)との声しきりだ。 選挙の責任者は「ドリル優子」こと、小渕優子選対委員長。岸田派の国会議員は言う。 「この補選を落とせば、ドリル優子の責任論が噴出して岸田首相の任命責任も問われる。小渕氏は選挙応援に行こうとしているが、イメージが最悪なので来ないでほしいと、当の陣営から呼ばれていない。岸田首相以上の人気のなさで、ドリル優子の抜擢は大失敗だ」 前出の評論家・田村氏はこう見る。 「解散総選挙が近いか、来年に先延ばしするか補選の結果次第でしょう。国政選挙ですから、非常に重い。補選に2つとも勝てば年内解散はありえますが、一つでも落とせば早期にはやれない」 とりあえずは10月22日の補選に注目ということのようだ。 ・・・・ さらに関連記事『ついに国民の「大ブーイング」を”無視”しはじめた岸田総理…もはや「危険レベル」の総理に永田町で出回る「怪文書」の衝撃中身』では、いま起きている“もうひとつの異変”について、詳報しています』、「参院徳島・高知選挙区・・・9月末実施の世論調査では与党の西内氏が30・6%で、野党・広田氏の38・4%に差を付けられている・・・「逆転は厳しい」(自民党の徳島県議)との声しきりだ・・・補選に2つとも勝てば年内解散はありえますが、一つでも落とせば早期にはやれない」 とりあえずは10月22日の補選(参院徳島・高知選挙区)に注目ということのようだ」、やはり早期の総選挙は難しそうだ。
先ずは、8月26日付け現代ビジネスが掲載した教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師の清水 克彦政治氏による「ついに国民の「大ブーイング」を”無視”しはじめた岸田総理…もはや「危険レベル」の総理に永田町で出回る「怪文書」の衝撃中身」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/115129?imp=0
・『岸田政権は「危険水域」で動けず 「本日、ここに、我々3人は、日米韓パートナーシップの新時代を開いていく決意を示します」 8月18日、ワシントン郊外にあるアメリカ大統領専用の別荘、キャンプ・デービッドで、バイデン大統領や韓国の尹錫悦大統領とともに共同会見に臨んだ岸田首相は、満足そうな表情を見せた。 キャンプ・デービッドは、歴代のアメリカの大統領が、重視する外国の首脳を招き、打ち解けた雰囲気で会談を行う際に利用されてた場所だ。1986年には中曽根首相が招かれ、レーガン大統領と「ロン・ヤス」関係を築き、2001年には小泉首相がブッシュ大統領とキャッチボールを楽しんだことでも知られている。 そのような由緒ある場所に招かれたこと、そしてそこで、中国などを念頭に、日米韓3か国による安全保障面での連携を強化し、「政権が代わっても協力関係を継続する」などとする「キャンプ・デービッド原則」を打ち出せたことは、岸田首相にとって、今年5月のG7広島サミットに次ぐ晴れ舞台にはなった。 とはいえ、岸田首相の前途には暗雲が立ち込めているままだ。 「解散? やれるわけがないよ。ガソリン価格の高騰だって、不満の矛先は岸田さんに向けられる。解散したら自民党は惨敗。10月解散の可能性なんて99%ないね」 とは、自民党議員から聞こえてくる本音である。実際、岸田政権への支持率は、毎日新聞や時事通信による世論調査で、「危険水域」とされる20%台まで落ち込んでいる。 ここで想起されるのが、先ごろ東京・永田町で出回った、岸田政権の低空飛行を受けての怪文書だ。それにはこんな記述が見られた。) 「(来年の)総裁選には出ないかもな…。首相はポツリとこう漏らした」 「衆院解散・総選挙について、今秋はおろか来年の党総裁任期までに断行できず、退陣を余儀なくされる」 さすがにこの内容を鵜呑みにする議員や記者はいないものの、現在の岸田首相を取り巻く状況を思えば、「こんな風に書かれるのもむべなるかな」と言うほかない。なぜなら、やることなすこと、理解が得られないものばかりだからだ』、「岸田政権への支持率は、毎日新聞や時事通信による世論調査で、「危険水域」とされる20%台まで落ち込んでいる。 ここで想起されるのが、先ごろ東京・永田町で出回った、岸田政権の低空飛行を受けての怪文書だ。それにはこんな記述が見られた。 「(来年の)総裁選には出ないかもな…。首相はポツリとこう漏らした」 「衆院解散・総選挙について、今秋はおろか来年の党総裁任期までに断行できず、退陣を余儀なくされる」 さすがにこの内容を鵜呑みにする議員や記者はいないものの、現在の岸田首相を取り巻く状況を思えば、「こんな風に書かれるのもむべなるかな」と言うほかない」、「首相は」かなり追い込まれているようだ。
・『反転攻勢の糸口すらない岸田政権 政治が高校野球やラグビーなら、どんなに押されているゲームでも、試合中、1度や2度は反転攻勢の流れが来ることがあるものだ。ところが、岸田首相には、現在はもとより、近未来も、支持率を好転させる材料がない。 ・最側近、木原誠二官房副長官をめぐる疑惑が払拭できない ・自民党内で汚職疑惑やフランス「物見遊山」研修問題が尾を引く』、「現在はもとより、近未来も、支持率を好転させる材料がない」、これは深刻だ。
・『現在のマイナス材料は理解が得られないものばかり ・マイナンバー問題で収束の兆しが見えない(8月8日に公表した総点検の中間報告では累計8000件超の誤りを確認。目標どおり11月末までに総点検を完了できたとしても、その後にミスが発覚すれば完全に信頼を失う。特にマイナ保険証に関しては、各種世論調査で過半数の人が「必要」と感じていない)。 ・最側近、木原誠二官房副長官をめぐる疑惑が払拭できない(「週刊文春」で木原氏の“愛人と隠し子問題”が表面化。続いて、妻の元夫の“不審死問題”問題。も浮上。木原氏が何の説明もしていないという問題に加え、岸田首相の傍に、頼れる側近が不在となった点も大打撃。)・自民党内で汚職疑惑やフランス「物見遊山」研修問題が尾を引く(秋本真利衆院議員が風力発電をめぐる収賄疑惑で離党。松川るい女性局長(その後、辞任)らのフランス研修も「まるで観光」と批判を浴びた。秋本、松川両氏の議員辞職を求める声に、「出処進退は政治家本人が…」などと常套句で返せば、支持率はさらに下がる可能性がある』、「現在のマイナス材料は理解が得られないものばかり」、その通りだ。
・近未来のマイナス材料も理解が得られそうにない ・福島第1原発処理水の海洋放出で批判を浴びるのは不可避(8月20日、岸田首相の福島訪問、そして22日の関係閣僚会議で処理水の海洋放出が決まり、24日から放出が始まった。 政府と東京電力は2015年、福島県の漁協に「関係者の理解なしには(処理水の)いかなる処分も行わない」と約束している。風評被害対策や漁業継続への基金(約800億円)創設だけでは、十分な理解を得たとは言いがたい。早速、中国は、「日本の海産物全面禁輸」という岸田政権も想定外の措置に踏み切った。 また、多核種除去設備(ALPS)で取り除くセシウムやストロンチウム等の放射性物質を最終的にどのように処分するのか明示されていない点も問題。 ・レギュラーガソリン「1L=200円」時代への怒り(ガソリン価格の急騰で、9月末で打ち切られる石油元売り各社への補助金の延長は不可避。ガソリン価格は物価全体の高騰につながるため、国民の実質賃金を減らさない施策、たとえば、ガソリン税の一部を軽減する「トリガー条項」発動、もしくは、ガソリン・電気・ガス料金への補助金継続に踏み切らなければ、二重課税を余儀なくされている国民の不満は岸田政権に向けられる。 ・中国の不動産大手の中国恒大集団のアメリカ連邦破産法の適用申請での余波(中国の不動産バブル崩壊で、日本企業の中国向け輸出が減る。それだけでなく、中国富裕層が日本の不動産に投資するようになり、マンション価格がアップしてしまう。岸田政権としては「注視する」だけでは済まなくなる。 ・難しくなった電撃的訪朝(小泉訪朝時のようなパイプ役が存在せず協議が進んでいない。仮に訪朝できたとしても、訪朝に見合う拉致被害者や特定失踪者の帰国が期待できない。ただ、岸田首相は5月27日、「私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」と述べており、結果が求められる。 ・自民党役員人事と内閣改造は両刃の剣(茂木敏充幹事長の交代、小渕優子元経産相の抜擢などがあれば波紋を拡げる。特に小渕氏を重要ポストに起用すれば、女性抜擢になる一方、「ドリル問題」(政治資金規正法違反事件で、証拠隠滅のため、会計書類などを保存したパソコンにドリルで穴を開けた疑惑)が再燃する』、「難しくなった電撃的訪朝」については、何か「パイプ」の当てがあるのかと思っていたら、どうもなさそうだ。いずれにしろ、余りいい材料はなさそうだ。
・『頼みの綱は、安倍派の内紛と菅グループの失速 そうした中で、唯一、頼みの綱と言えるのが、自民党最大派閥、安倍派の内紛と「ポスト岸田」に影響を与える菅グループの失速であろう。 このうち、安倍元首相死去のあと「会長」不在の安倍派は、8月17日、総会を開き、代表となる「座長」に塩谷立会長代理が就く新体制を了承した。当面は会長を置かず、主なメンバーが参加する「常任幹事会」を設け、その取りまとめ役を塩谷氏が担うというものだ。 新設される「常任幹事会」は、「5人衆」と呼ばれる、松野博一官房長官、萩生田光一政調会長、西村康稔経済産業相、高木毅国会対策委員長、世耕弘成参院幹事長、そして、当選回数ごとの代表者らで運営されるが、こういう集団指導体制は脆い。 筆者が在京ラジオ局で政治キャップを務めていた頃、最大派閥だった小渕派は、2000年に小渕元首相、竹下元首相が亡くなったのを契機に、派閥の求心力と党内への影響力が著しく低下した。 「5人衆」と下村博文元文部科学相ら古株の議員との間で確執が続く安倍派も同じ運命をたどるように思えてならない。 「誰かがトップになれば混乱に拍車がかかる。萩生田氏では統一教会の影が残り、過去に女性下着窃盗疑惑が浮上した高木氏だと『安倍派=パンツ派』と呼ばれかねない。西村氏のように、2025年までに首相になるという野心を隠さず、自家用車のナンバーを『2025』にするような人もちょっと…」(総会を取材した在京局政治記者) 「マスメディアは、亀裂だ、分裂だと騒ぐが、安倍派の状況は1年前と全く変わっていない。去年の記事を今もそのまま掲載できるくらい変化がない。所属議員が100人もいる大派閥が簡単に割れたりしない」(安倍派中堅議員) つまり、安倍派は分裂せず存続する反面、来年秋の自民党総裁選挙で岸田首相の対抗馬を、派閥として擁立できないということだ。これまでどおり、最大派閥の安倍派が岸田首相支持を継続するなら、第4派閥のトップにすぎない岸田首相にとってはプラスになる。) もう1つは菅グループの失速である。前回の総裁選挙で菅氏らが支持した河野行革相(当時)は、デジタル相としてマイナカード問題の渦中にあり、菅氏を「政界のおやじ」と慕い、河野氏の側近を自認してきた秋本氏は、先に述べた収賄疑惑で離党を余儀なくされた。これらの影響で菅氏は倒閣に動きにくくなった。これも岸田首相には好材料だ』、「頼みの綱は、安倍派の内紛と菅グループの失速」、敵失しかないというのは情けない限りだ。
・『高い「壁」だらけの岸田首相が手にした本とは? 岸田首相は、夏休みに入る前、10冊程度の本を購入している。その中の1冊が、村上春樹氏の長編小説『街とその不確かな壁』(新潮社)である。 ネタバレにならない程度に言えば、「壁」と「影」がキーワードの作品で、「弱いぼく」が、自分という存在の不確かさなどを深掘りしていくというストーリーだ。 高校野球で言えば、守備でエラーが続き無死満塁、ラグビーで言えば、ゴールライン寸前まで押し込まれている状況にある岸田首相。最大の壁は、国民の理解を得ることである。 その意味では高い「壁」だらけだが、岸田首相が、現在の「弱いぼく」をどう見つめ、首相という地位や支持率という不確かさをどのように感じたのか、読後の感想を聞いてみたいものである。 ・・・・・ さらに関連記事『自民党に大激震…!麻生太郎が地方紙でベラベラ語った「次の総理候補、オレならこう評価する」』では、いま起きている“もうひとつの異変”について、紹介する』、購入した1冊が、「村上春樹氏の長編小説『街とその不確かな壁』」で、「「弱いぼく」が、自分という存在の不確かさなどを深掘りしていくというストーリーだ」。確かに「読後の感想を聞いてみたいものである」、その通りだ。
次に、9月30日付け日刊ゲンダイ「これぞ岸田自民党!レイシスト杉田水脈氏とエッフェル松川るい氏が“復活”のメチャクチャ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/329884
・『 自民党最大派閥に性懲りもなく配慮したのか、その後ろに控える岩盤保守層への媚なのか。 岸田首相が実施した内閣改造・党役員人事に伴い、29日の総務会で残りのポストが決まった。札幌法務局に「レイシスト」と断じられたも同然の杉田水脈衆院議員(比例中国)や、“エッフェル姉さん”とあだ名される松川るい参院議員(大阪選挙区)がそこそこの役職をゲット。いずれも安倍派で、ハレーションを引き起こしている。 政界で一、二を争うネトウヨの杉田氏は先日、アイヌ民族らへの差別投稿をめぐって札幌法務局から「人権侵犯」を認定されたばかり。一連の言動で昨年末に総務政務官を更迭されて無役だったが、環境部会長代理に就いた。部会長に次ぐナンバー2だ。自民の部会は政策分野ごとに設けられ、政府提出法案の審査や政策立案に携わる。選良を辞すべき人間が環境政策に影響力を持つなんて、メチャクチャだ。 「当初は外交部会長代理で調整されていましたが、人事案が漏れ伝わると、あちこちから反発の声が上がった。ネトウヨ丸出しでギャンギャンやられたら、関係国と不要な摩擦を引き起こしかねない。それで、格下の環境部会へ差し替えられた。もっとも、本人は反省の色ゼロ。法務局から〈アイヌ文化を学んで発言を注意するように〉と啓発されたとの報道に、〈アイヌ文化を学ぶようにとか、具体的な啓発なんかなかった〉と文句を垂れています」(自民党中堅議員)) 副幹事長に就任した“エッフェル姉さん”もしかり。問題のフランス研修を「まじめな研修だった」と言い張ったものの、報告書などを公表することもなく、8月下旬に女性局長を辞任して雲隠れ。ケジメをつけずに表舞台に復帰した。 「あの騒動前はBSの報道番組などに引っ張りダコ。米国隷従で、中韓に対して強硬発言を繰り返していました。改憲、防衛費大幅増、敵基地攻撃能力の保有、非核三原則の見直しに賛成するタカ派。地元・大阪では冷たい視線を向けられていますが、タカ派ウケする“論客”としてまだ使い道があるということでしょう」(与党関係者) 岸田自民党が「女性活躍社会」を実現するなんて、どだいムリなのだ』、「ネトウヨの杉田氏・・・「当初は外交部会長代理で調整されていましたが、人事案が漏れ伝わると、あちこちから反発の声が上がった。ネトウヨ丸出しでギャンギャンやられたら、関係国と不要な摩擦を引き起こしかねない。それで、格下の環境部会へ差し替えられた」、当然だろう。「“エッフェル姉さん”・・・「あの騒動前はBSの報道番組などに引っ張りダコ。米国隷従で、中韓に対して強硬発言を繰り返していました。改憲、防衛費大幅増、敵基地攻撃能力の保有、非核三原則の見直しに賛成するタカ派。地元・大阪では冷たい視線を向けられていますが、タカ派ウケする“論客”としてまだ使い道があるということでしょう」、外務省出身でもこんな右翼がいるとは驚かされた。
第三に、10月9日付けYahooニュースが現代ビジネスを転載した「【独自】自民党情勢調査で「自民41減」「公明10減」…岸田首相は絶句、11月解散を本当に決断できるのか」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f769889954dfd429efa88360bf63fe9c54f83790
・『リサーチ会社の数字を何度も確認した首相 「びっくりしたね。こんなに人気がないとは……」と話すのは、自民党の閣僚経験者のひとりだ。この人物が手にしていたのは、岸田文雄首相が解散総選挙のタイミングを計るため、自民党が複数のリサーチ会社に依頼していた世論調査の結果だ。 その数字は以下だ。 現有議席→選挙後議席 自民 261→220(41議席減) 公明 32→22(10議席減) 立民 96→108(12議席増) 維新 41→69(28議席増) 国民 10→16(6議席増) 共産 10→14(4議席増) 2021年10月に投開票された前回の衆議院選挙は、岸田首相の就任間もなく実施され、当初「大幅減」とされた予想を覆して、自民党は単独過半数を得た。連立を組む公明党も3議席を伸ばして、与党圧勝に終わった。 だが今回、自民党の世論調査によれば、現在から40議席以上を失う驚きの結果だ。公明党は10議席減と、自民党以上の「惨敗」というのだ。 かたや野党に目を向けると、立憲民主党は12議席を上積みし、100の大台を超える。今年春の統一地方選でも躍進した維新は、30議席近くアップする予想だ。自公の連立入りも囁かれる国民民主党は6議席を増やし、共産党も4議席増える調査結果だ。 前出の閣僚経験者が打ち明ける。 「いま出回っているこの世論調査の数字は、いくつかあるリサーチ会社のうちの1つのもの。数字を見た岸田首相は何度も数字を確認したといい、『うーん』とうなったままだったそうだ。 岸田首相が総裁選まで1年を切る中で、追い込まれた形での解散総選挙は避けたい。衆議院選挙に勝って国民の信任を得たうえ、総裁選では無投票再選を果たすのがベストシナリオだ。来年春をすぎれば、追い込まれた印象を受け、総裁選にはマイナスになる。あと半年ほどで解散総選挙を打たないと、首相の座が危ういことになります」』、「自民党の世論調査によれば、現在から40議席以上を失う驚きの結果だ。公明党は10議席減と、自民党以上の「惨敗」というのだ。 かたや野党に目を向けると、立憲民主党は12議席を上積みし、100の大台を超える。今年春の統一地方選でも躍進した維新は、30議席近くアップする予想だ。自公の連立入りも囁かれる国民民主党は6議席を増やし、共産党も4議席増える調査結果だ」、「岸田首相が総裁選まで1年を切る中で、追い込まれた形での解散総選挙は避けたい。衆議院選挙に勝って国民の信任を得たうえ、総裁選では無投票再選を果たすのがベストシナリオだ。来年春をすぎれば、追い込まれた印象を受け、総裁選にはマイナスになる。あと半年ほどで解散総選挙を打たないと、首相の座が危ういことになります」、なるほど。
・『公明党幹部「うちだけは的中」 10議席減が予測された公明党は、自民党以上に厳しい。 これまで公明党は、大阪と兵庫に限っては自公連立の掟を破ったうえで維新と組んできた。しかし維新は「公明党との『握り』はもうしない」と、公明党が大阪・兵庫で維持する6小選挙区の候補者を発表した。維新の勢いから、公明党が勝てる道筋はまるで見えない。 公明党幹部は肩を落としてこう語る。 「この世論調査の数字は、自民党内で解散総選挙を先延ばししたい勢力が『盛った』感があります。自民党はここまでは減らさないでしょう。しかし、うち(公明党)だけは、ほぼ的中している数字ではないか。ひょっとするとこれ以上減らすかもしれない。もし10議席落とせば党の存亡にかかわります」 問題は、この状況下で岸田総理が解散をいつ決断するかだ。もちろん鍵は総裁選にある。 「自民党の総裁選というのは、選挙に勝てる顔かどうかです。歴史を見ればよくわかります」 こう語るのは、宏池会(現岸田派)のスタッフを経て自民党の政務調査役として敏腕をふるった政治評論家の田村重信氏だ。 近年の自民党で長期政権だったのは安倍晋三元首相、小泉純一郎元首相が代表的で、どちらも選挙に強いことで知られた。岸田首相は2021年の衆議院選挙、2022年の参議院選挙と2連勝中だ』、「これまで公明党は、大阪と兵庫に限っては自公連立の掟を破ったうえで維新と組んできた。しかし維新は「公明党との『握り』はもうしない」と、公明党が大阪・兵庫で維持する6小選挙区の候補者を発表した。維新の勢いから、公明党が勝てる道筋はまるで見えない」、「公明党幹部は・・・「この世論調査の数字は、自民党内で解散総選挙を先延ばししたい勢力が『盛った』感があります。自民党はここまでは減らさないでしょう。しかし、うち(公明党)だけは、ほぼ的中している数字ではないか。ひょっとするとこれ以上減らすかもしれない。もし10議席落とせば党の存亡にかかわります」、なるほど。
・『10月22日の補選が試金石 だが、来年9月に予定される自民党総裁選まで、2連勝の神通力が保たれるかは不透明だ。9月には内閣改造と自民党役員人事を行ったものの、新鮮味もサプライズもない人選で、支持率が浮上することはなかった。 秋の臨時国会の会期は明確になっていないが、10月20日頃召集の方針だ。ここでの「冒頭解散」だけでなく、臨時国会で経済対策と補正予算案を審議してから11月に解散して12月に投開票するという「想定日程」も出回っている。 《11月の第3週、20日ころに解散して、12月5日公示、17日投票》《11月24日に補正予算案を採決、本会議で解散》 という「総務省案」が、繰り返し何度もバージョンアップされて出回っている。 自民党の代議士からは、もはや選挙モードだという声も挙がる。 「いつ解散があってもおかしくない。夜も誰かと一杯飲んで、情報収集をしないと、落ち着かない」 「解散総選挙がいつあってもいいように、ポスター用の撮影をやったばかりです。5月ごろにも撮ったから2度目になります。仕方ないですが……」 10月22日は、参院徳島・高知と衆院長崎4区の補選の投開票日となっている。2つの選挙区とも自民党VS野党候補の激突だ。 10月5日に告示された参院徳島・高知選挙区は、与党が西内健氏(前高知県議)、野党は広田一氏(元衆議院議員)の戦い。9月末実施の世論調査では西内氏が30・6%で、野党・広田氏の38・4%に差を付けられている。 10月14日には岸田首相自ら徳島入りする予定だが「逆転は厳しい」(自民党の徳島県議)との声しきりだ。 選挙の責任者は「ドリル優子」こと、小渕優子選対委員長。岸田派の国会議員は言う。 「この補選を落とせば、ドリル優子の責任論が噴出して岸田首相の任命責任も問われる。小渕氏は選挙応援に行こうとしているが、イメージが最悪なので来ないでほしいと、当の陣営から呼ばれていない。岸田首相以上の人気のなさで、ドリル優子の抜擢は大失敗だ」 前出の評論家・田村氏はこう見る。 「解散総選挙が近いか、来年に先延ばしするか補選の結果次第でしょう。国政選挙ですから、非常に重い。補選に2つとも勝てば年内解散はありえますが、一つでも落とせば早期にはやれない」 とりあえずは10月22日の補選に注目ということのようだ。 ・・・・ さらに関連記事『ついに国民の「大ブーイング」を”無視”しはじめた岸田総理…もはや「危険レベル」の総理に永田町で出回る「怪文書」の衝撃中身』では、いま起きている“もうひとつの異変”について、詳報しています』、「参院徳島・高知選挙区・・・9月末実施の世論調査では与党の西内氏が30・6%で、野党・広田氏の38・4%に差を付けられている・・・「逆転は厳しい」(自民党の徳島県議)との声しきりだ・・・補選に2つとも勝てば年内解散はありえますが、一つでも落とせば早期にはやれない」 とりあえずは10月22日の補選(参院徳島・高知選挙区)に注目ということのようだ」、やはり早期の総選挙は難しそうだ。
タグ:「参院徳島・高知選挙区・・・9月末実施の世論調査では与党の西内氏が30・6%で、野党・広田氏の38・4%に差を付けられている・・・「逆転は厳しい」(自民党の徳島県議)との声しきりだ・・・補選に2つとも勝てば年内解散はありえますが、一つでも落とせば早期にはやれない」 とりあえずは10月22日の補選(参院徳島・高知選挙区)に注目ということのようだ」、やはり早期の総選挙は難しそうだ。 自民党はここまでは減らさないでしょう。しかし、うち(公明党)だけは、ほぼ的中している数字ではないか。ひょっとするとこれ以上減らすかもしれない。もし10議席落とせば党の存亡にかかわります」、なるほど。 「これまで公明党は、大阪と兵庫に限っては自公連立の掟を破ったうえで維新と組んできた。しかし維新は「公明党との『握り』はもうしない」と、公明党が大阪・兵庫で維持する6小選挙区の候補者を発表した。維新の勢いから、公明党が勝てる道筋はまるで見えない」、「公明党幹部は・・・「この世論調査の数字は、自民党内で解散総選挙を先延ばししたい勢力が『盛った』感があります。 「岸田首相が総裁選まで1年を切る中で、追い込まれた形での解散総選挙は避けたい。衆議院選挙に勝って国民の信任を得たうえ、総裁選では無投票再選を果たすのがベストシナリオだ。来年春をすぎれば、追い込まれた印象を受け、総裁選にはマイナスになる。あと半年ほどで解散総選挙を打たないと、首相の座が危ういことになります」、なるほど。 「自民党の世論調査によれば、現在から40議席以上を失う驚きの結果だ。公明党は10議席減と、自民党以上の「惨敗」というのだ。 かたや野党に目を向けると、立憲民主党は12議席を上積みし、100の大台を超える。今年春の統一地方選でも躍進した維新は、30議席近くアップする予想だ。自公の連立入りも囁かれる国民民主党は6議席を増やし、共産党も4議席増える調査結果だ」、 現代ビジネスを転載した「【独自】自民党情勢調査で「自民41減」「公明10減」…岸田首相は絶句、11月解散を本当に決断できるのか」 yahooニュース 清水 克彦政治氏による「ついに国民の「大ブーイング」を”無視”しはじめた岸田総理…もはや「危険レベル」の総理に永田町で出回る「怪文書」の衝撃中身」 現代ビジネス 「“エッフェル姉さん”・・・「あの騒動前はBSの報道番組などに引っ張りダコ。米国隷従で、中韓に対して強硬発言を繰り返していました。改憲、防衛費大幅増、敵基地攻撃能力の保有、非核三原則の見直しに賛成するタカ派。地元・大阪では冷たい視線を向けられていますが、タカ派ウケする“論客”としてまだ使い道があるということでしょう」、外務省出身でもこんな右翼がいるとは驚かされた。 (その9)(ついに国民の「大ブーイング」を”無視”しはじめた岸田総理…もはや「危険レベル」の総理に永田町で出回る「怪文書」の衝撃中身、れぞ岸田自民党!レイシスト杉田水脈氏とエッフェル松川るい氏が“復活”のメチャクチャ、【独自】自民党情勢調査で「自民41減」「公明10減」…岸田首相は絶句 11月解散を本当に決断できるのか) 「ネトウヨの杉田氏・・・「当初は外交部会長代理で調整されていましたが、人事案が漏れ伝わると、あちこちから反発の声が上がった。ネトウヨ丸出しでギャンギャンやられたら、関係国と不要な摩擦を引き起こしかねない。それで、格下の環境部会へ差し替えられた」、当然だろう。 日刊ゲンダイ「これぞ岸田自民党!レイシスト杉田水脈氏とエッフェル松川るい氏が“復活”のメチャクチャ」 キシダノミクス 購入した1冊が、「村上春樹氏の長編小説『街とその不確かな壁』」で、「「弱いぼく」が、自分という存在の不確かさなどを深掘りしていくというストーリーだ」。確かに「読後の感想を聞いてみたいものである」、その通りだ。 「頼みの綱は、安倍派の内紛と菅グループの失速」、敵失しかないというのは情けない限りだ。 「難しくなった電撃的訪朝」については、何か「パイプ」の当てがあるのかと思っていたら、どうもなさそうだ。いずれにしろ、余りいい材料はなさそうだ。 「現在のマイナス材料は理解が得られないものばかり」、その通りだ。 「現在はもとより、近未来も、支持率を好転させる材料がない」、これは深刻だ。 さすがにこの内容を鵜呑みにする議員や記者はいないものの、現在の岸田首相を取り巻く状況を思えば、「こんな風に書かれるのもむべなるかな」と言うほかない」、「首相は」かなり追い込まれているようだ。 「岸田政権への支持率は、毎日新聞や時事通信による世論調査で、「危険水域」とされる20%台まで落ち込んでいる。 ここで想起されるのが、先ごろ東京・永田町で出回った、岸田政権の低空飛行を受けての怪文書だ。それにはこんな記述が見られた。 「(来年の)総裁選には出ないかもな…。首相はポツリとこう漏らした」 「衆院解散・総選挙について、今秋はおろか来年の党総裁任期までに断行できず、退陣を余儀なくされる」
外国人問題(その10)(埼玉県川口市や蕨市に住む「ワラビスタン」の「ビッグボス」が ついに重い口を開いた!県警の機動隊まで出動した「クルド人騒動」…そのウラで起きていたこと、埼玉の川口市や蕨市に移り住む「ワラビスタン」の「ビッグボス」がはじめて明かした 「壮絶すぎる過去」、「殺されるかもしれない…」埼玉県川口市や蕨市で暮らす「ワラビスタン」の「ビッグボス」が感じた恐怖と「たった一つの願い」) [社会]
昨日に続いて、外国人問題(その10)(埼玉県川口市や蕨市に住む「ワラビスタン」の「ビッグボス」が ついに重い口を開いた!県警の機動隊まで出動した「クルド人騒動」…そのウラで起きていたこと、埼玉の川口市や蕨市に移り住む「ワラビスタン」の「ビッグボス」がはじめて明かした 「壮絶すぎる過去」、「殺されるかもしれない…」埼玉県川口市や蕨市で暮らす「ワラビスタン」の「ビッグボス」が感じた恐怖と「たった一つの願い」)を取上げよう。
先ずは、本年10月8日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの野田 洋人氏による「埼玉県川口市や蕨市に住む「ワラビスタン」の「ビッグボス」が、ついに重い口を開いた!県警の機動隊まで出動した「クルド人騒動」…そのウラで起きていたこと」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/117032#lnsjwlofps6ozmm46g
・『前の記事「『アパートの共用廊下には食べ残しの弁当が放置され、腐敗臭が…埼玉県川口市や蕨市の「ワラビスタン」に怯えて暮らす、在日クルド人たちの意外すぎる「日常生活と本音」』では、クルド人がひそかに抱える苦悩について紹介した。 この記事では、『埼玉県川口市、蕨市…通称「ワラビスタン」!日本に暮らす2000人以上のクルド人をまとめる「ビッグボス」の正体』で触れた、「ビッグボス」への接触に成功、そのインタビューを公開する』、「ワラビスタン」の「ビッグボスへの「インタビュー」とは興味深そうだ。
・『なぜ彼らの多くは解体業に従事するのか 日本に住むクルド人の多くは、解体業を主な仕事としている。埼玉県川口市内には解体業を専門とした会社が多数設立され、その多くがクルド人による経営という。 なぜ、解体業にクルド人が集まるのか。 外環道に近い一帯(赤芝新田)には、解体業者の集まったエリアがある。起伏に富んだ土地には学校や個人の住宅、造園業者の敷地もあるが、一際目を引くのが、背の高い金属のプレートで周囲を覆って内部を見ることができないようにした、通称「ヤード」と呼ばれる解体業者の資材置き場である。 彼らに取材をかけたが、明らかにこちらを敵視した様子のまま、話を聞くことができなかったので、その地域に長年居を構える日本人住民に声をかけてみた』、「背の高い金属のプレートで周囲を覆って内部を見ることができないようにした、通称「ヤード」と呼ばれる解体業者の資材置き場である」、何やら取材には勇気が入りそうだ。
・『「日本ではないみたいな光景」 「15年くらい前から彼らが入ってきたのですよ。もともとは畑しかなかったこの地域に、外国人の乗る車が増えてきた時には驚きましたよ。彼らはすぐ近くに住んでいるわけではないので、あいさつをする程度。話すことはしていません。 朝の5時頃になると、従業員たちがどんどん集まります。その光景はまるで日本ではないみたいです。あの高い塀があるので中がどうなっているのか、詳しい様子は分かりませんが、重機やダンプ、砂利などが積んでありました。 朝の出勤前と夕方の仕事終わりの時間帯には、ダンプやトラック、乗用車も入り乱れるものだから、このあたりは激しく渋滞します。歩く人はそれほどいないけれど、時間帯によっては学校に通う子どもたちの通学路にもなりますので、事故がないかヒヤヒヤしています。 それと、音楽はうるさいね。何もない静かなところでしょう。週末や平日の仕事終わりに大音量で音楽をかけてお肉かなんかを焼いて食べたりしているのです。そんな音楽を耳にしていると、日本も変わってきたなと心から思いますよ。少子高齢化で外国人の力を借りなければならないのですよね。 その彼らを『追い出せ』という日本人もいますが、それは違うのではないかと思いますよ。安い賃金で働いてくれる彼らの代わりなど、いないでしょう。しっかりと税金も納めてくれてますしね。 地域に住んでいる我々にとっては、過激な排斥運動など、在日のクルド人と衝突をするのはやめてほしい。そういう活動をしている連中は地元の人間ではないし、決して責任取りませんからね。お願いだからこのまま静かにしてほしいですよ」 川口市内の工務店社長もこう語る。) 「解体屋をやっているのは、ほとんどクルド人です。日本の業者より安いし、仕事が早いからどんどん増えていった。危ないし、利益を出すことが難しいから、日本人はやりたがらないのです。奴らは力も強いし、重機の扱いも上手い。どこかで親玉がいるはずだよ」 なかなかクルド人に接触できない中、「解体業の会社を川口で最初に始めたクルド人が今もいるらしい」といった情報が、市内のある金融関係に従事する男性から寄せられた。 「若い人は別かもしれませんが、川口のクルド人の中で彼を知らない人などいないはずですよ。彼らは横のつながりが濃密ですからね。クルド人のほぼ全ての男性が解体業関係で働いています。その解体業を最初に始めた人です』、「クルド人のほぼ全ての男性が解体業関係で働いています。その解体業を最初に始めた人」、なるほど。
・『一大産業の礎を築き上げた「ビッグボス」 国内に住むクルド人であれば、彼の存在を知らない者はほとんどいないという。 1990年代初頭に入国し、川口市に居住したクルド人の第1世代。日本人女性と結婚し、多くの職を渡り歩いた末に、自ら起業した。クルド系初の解体業の会社の経営者となってから約15年――。 多くのクルド人が彼の会社で経験を積み、独立起業した。その数は100社を超える。そのほぼ全てが、川口市に本社や資材置き場を置いている。まさに一大産業の礎を築き上げた張本人ということになる。 あるクルド人は彼を「ビックパパ」と呼び、またあるクルド人は「ビックボス」と称した。 そんな彼と、川口市内にある彼の会社のヤード(資材置き場)で会うことになった』、「1990年代初頭に入国し、川口市に居住したクルド人の第1世代。日本人女性と結婚し、多くの職を渡り歩いた末に、自ら起業した。クルド系初の解体業の会社の経営者となってから約15年――。 多くのクルド人が彼の会社で経験を積み、独立起業した。その数は100社を超える。そのほぼ全てが、川口市に本社や資材置き場を置いている。まさに一大産業の礎を築き上げた張本人ということになる」、まさに「ビックボス」だ。
・『中肉中背で瞳は薄いグリーン 何度か断られたが、彼に近い複数の人物に話を通してから、話を伺いに行きたいこと、もし、断るならそれで構わないことを伝えてもらい日時を決め、足を運んだ。 約束の時間前に到着すると、「ビッグボス」はすでに待機していた。筆者が名刺を差し出すと、彼も日本式の挨拶をしながら名刺を差し出した。諸般の事情があって、彼の名前を出すことはできない。入り口からヤードに入ると、ユンボやダンプが視界に入る。解体で使われる道具類は整理され、棚に収納されていた。 中肉中背の「ビッグボス」は、薄いグリーンの瞳でジッとこちらの目を見て「何を聞きたいの?」と口にした。 先日の事件のこと、その後緊張状態にあるクルド人と日本人との関係について、在日クルド人を代表して話を聞きたいと伝えた。 彼はしばし考えた後、「どうぞ」と静かに記者を椅子に座らせると、ゆっくりとした口調で話し始めた』、なるほど。
・『喧嘩を止めるために集まっていた 「あの事件のことですね。ここで結婚をしていたクルド人夫婦がいたのです。二人はとても仲が良かったのです。でも、女性が別のクルド人男性を好きになってしまって、(その男性と)二人で埼玉から神奈川に逃げてしまいました。 その後、時間が経って女性はトルコに帰り、男性だけが川口に戻ってきた。彼は私のところで勉強して、3年くらい前に親族と一緒に会社を作った人です。彼が戻って来たことを知った女性の弟とその親族が、彼を追いかけてナイフを使ったわけです。 クルド社会では日本よりも男女の関係には厳しいのです。それと、帰ってきた男性のお金に関わるトラブルもあって、その両方の原因があって喧嘩になったのです。 マスコミでは、病院前でクルド人100人が乱闘騒ぎをしたという報道になっていますが、本当は、それ以上の喧嘩にならないよう、双方の親族や友人たちが集まったのです。 喧嘩を止めるために集まったのに、大勢で喧嘩をしたという逆の報道になってしまった。その場で警察がたくさん出てきて、互いに興奮した結果があの騒ぎだと思ってます。 もちろん病院や川口市民に迷惑をかけてしまったことは心から申し訳ないと考えています。事件後、すぐに関係者を通じてクルド人を代表して病院や役所の関係者に謝りに行きました」』、「マスコミでは、病院前でクルド人100人が乱闘騒ぎをしたという報道になっていますが、本当は、それ以上の喧嘩にならないよう、双方の親族や友人たちが集まったのです。 喧嘩を止めるために集まったのに、大勢で喧嘩をしたという逆の報道になってしまった。その場で警察がたくさん出てきて、互いに興奮した結果があの騒ぎだと思ってます」、「マスコミが表面的な報道だけだったのは残念だ。 「もちろん病院や川口市民に迷惑をかけてしまったことは心から申し訳ないと考えています。事件後、すぐに関係者を通じてクルド人を代表して病院や役所の関係者に謝りに行きました」、群れを作るのはよくない。また、ナイフなどの刃物を持ち歩くのも、日本では危険で避けるべき習慣だ。
・『ビッグボスの「本当の気持ち」 「日本人に対して申し訳ないです。ごめんなさい。でも、これ本当の私の気持ち。日本のメディアはクルド人のことであれば、ほんの小さなことでも大きく報道します。内容が事実ではなくても、クルド人が悪いように報道します。 それはどういうことかというと、クルド人に対する日本マスコミの考え方なのだと思います。クルド人に話を聞いていないことも理由です。 もちろん、ナイフを使って喧嘩をしたことはよくないことです。彼らも話し合って解決すればよかったのです。そうしたらあんなことにはならなかった。喧嘩はどこの国でもありますが、よくないことです。 怒ってしまったまま、我慢できないまま、それを止められない人同士が喧嘩になります。悲しいことですが、クルド人の中にもそういう人がいたのです。喧嘩の後、病院に大勢で集まったこともよくない事でした。そのことについても心から謝ります。ごめんなさい。 私たちクルド人の中にも、良くない人はいます。私は以前から日本に住むのであれば、この国のルールを守るよう、みんなに伝えています。車のルールや日本の法律のことなどを教えていますが、守らない人もいる。そういう人は日本から出ていけばいいとも思います。 真面目に仕事をして暮らしているクルド人も迷惑をしています。そういう真面目な人がほとんどなのです。このことでクルド人全体を悪い人たちだと考えないでほしいのです」・・・・・ 次の記事『埼玉の川口市や蕨市に移り住む「ワラビスタン」の「ビッグボス」がはじめて明かした、「壮絶すぎる過去」』では、トルコから日本に逃れたあと、いまや日本に暮らす2000人以上のクルド人をまとめるまでの存在となった「ビッグボス」の、現在に至るまでの日々をさらに紹介します』、「クルド人に対する日本マスコミの考え方なのだと思います。クルド人に話を聞いていないことも理由です」、当事者の話も聞かずに記事にするては問題だ。「怒ってしまったまま、我慢できないまま、それを止められない人同士が喧嘩になります。悲しいことですが、クルド人の中にもそういう人がいたのです。喧嘩の後、病院に大勢で集まったこともよくない事でした。そのことについても心から謝ります。ごめんなさい。 私たちクルド人の中にも、良くない人はいます。私は以前から日本に住むのであれば、この国のルールを守るよう、みんなに伝えています。車のルールや日本の法律のことなどを教えていますが、守らない人もいる。そういう人は日本から出ていけばいいとも思います」、なるほど。
次に、この続きを10月8日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの野田 洋人氏による「埼玉の川口市や蕨市に移り住む「ワラビスタン」の「ビッグボス」がはじめて明かした、「壮絶すぎる過去」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/117029#lnsjxcorerqirgys3tj
・『この前の記事『埼玉県川口市や蕨市に住む「ワラビスタン」の「ビッグボス」が、ついに重い口を開いた!県警の機動隊まで出動した「クルド人騒動」…そのウラで起こっていたこと』では、今年7月に埼玉県・川口市の救急指定病院前で起きた、約100人のクルド人による騒動発生の「本当の理由」について紹介した。 この記事では、トルコから日本に逃れたあと、いまや日本に暮らす2000人以上のクルド人をまとめるまでの存在になった「ビッグボス」が明かした、壮絶な過去を紹介します』、興味深そうだ。
・『どこまでいっても「外人」 「日本のメディアはクルド人に対して、悪い気持ちのまま報道してしまうのではないかと思います。私たちは犯罪者ではないです。自分たちの国がなくて普通に暮らすことができなかったから日本に来たのです。 もちろん迷惑をかけるために来たのではないです。日本語は難しいです。私は仕事を通じて話が出来るようになりましたけれど、言葉の出来ないクルド人もたくさんいます。 勉強をしたくても、その機会を得られないクルド人もたくさんいます。この国に暮らすのであれば、日本人達との関係を大事にしなければならない。 でも、日本人と同じようなことをしてはダメですよ。この国で働いて、税金を納めているから、何をしてもいいということは違うの。 日本語を話せても、日本人と結婚していても、一緒に仕事をしていても、友だちになっても、どこまでいっても『外人』なのです。日本はアメリカやヨーロッパとは違うのです。日本ではいつまでたっても『外人』のままなのです。そういう気持ちが、どうしてもたくさんの日本人の中にはあるのだと思う。 あくまで『外人』なのです。悲しいです」』、「この国で働いて、税金を納めているから、何をしてもいいということは違うの。 日本語を話せても、日本人と結婚していても、一緒に仕事をしていても、友だちになっても、どこまでいっても『外人』なのです。日本はアメリカやヨーロッパとは違うのです。日本ではいつまでたっても『外人』のままなのです」、「あくまで『外人』なのです。悲しいです」、なるほど。
・『いちばん考えていたのは「生きること」 「一緒に働いていても、私が外国人ですから、日本人は差別をします。でも、それは当たり前なのかもしれない。私が働くことで、日本人たちの仕事を奪っていることになりますから。 仕事をするときには時間を守ることは当たり前です。決められた時間前に現場について準備をします。ゴミなどを残したりしないで早く、丁寧に仕事をします。 少しでもミスをすると『外人だから』と言われてしまう。仕事をもらうためには、少しのミスもなくしっかりとやらなければ。すぐに暇になってしまう。だから必死に働きます。 私はこの国に来て間違えたと思っています。ごめんなさい。でも仕方がなかったのです。 私は、1990年代初頭に日本に来ました。23歳でした。トルコからマレーシアに行き、それから日本に来ました。日本のことはほとんど知らなかった。 一番考えていたのは生きること。仕事をして、普通の生活をしたかったのです。ビザのことなど何も知らなかったです。難民という言葉も知らなかった。日本では入管に行くことなども何も知らなかった。 私より少しだけ先に(来た親戚の)おじさんが日本にいました。彼はイランにいて、ヨーロッパから日本に来たのです。 当時、イラン人がたくさん日本に来ていて、『やさしい国だ』と聞いていて、それで来たのです。おじさんも生活をするところが必要だった。それは私も同じ。おじさんはいま、日本を離れてトルコとは別の国で生活をしています」』、「私は、1990年代初頭に日本に来ました。23歳でした。トルコからマレーシアに行き、それから日本に来ました。日本のことはほとんど知らなかった。 一番考えていたのは生きること。仕事をして、普通の生活をしたかったのです。ビザのことなど何も知らなかったです。難民という言葉も知らなかった。日本では入管に行くことなども何も知らなかった。 私より少しだけ先に(来た親戚の)おじさんが日本にいました。彼はイランにいて、ヨーロッパから日本に来たのです。 当時、イラン人がたくさん日本に来ていて、『やさしい国だ』と聞いていて、それで来たのです・・・おじさんはいま、日本を離れてトルコとは別の国で生活をしています」、なるほど。
・『トルコでは普通に暮らすのが難しい 「トルコでは普通に暮らすことが難しかった。目の前でクルド人の知り合いが殴られたり、殺されたりするのはいつもでした。 生活をするための仕事をすることも難しかった。私のいた村では半年分の食糧を貯蔵します。貯蔵したら、すぐに軍隊が来て食糧も家も潰してしまうこともありました。いくつもの村が潰されました。 命を守るために山に逃げることもありました。そのあたりのことは、日本人には分からないと思う。『普通に生活できますよ、差別などありませんよ』という人もいると思いますが、もしそうであれば、これだけ世界中にクルド人が移動して問題が広がらないでしょう。世界の中でクルド人だけが難しい立場のままです。 日本の空港に着いた時には、荷物は小さなものが一つだけ。成田空港から東京駅までバスで向かいました。東京駅は大きな駅です。バスターミナルを降りると、どこに行けば良いか分かりませんでした。 日本語も何も分かりません。日本語の看板を見ても、何もわからない。東京に着けばなんとかなるだろうと思っていたのです。たくさんの人が忙しそうにしていました。誰も私のことを知らないですし、日本の言葉も分かりませんので、話しかけても無駄でした。 携帯電話のない時代でした。親戚がいる場所を探そうと思ってもどこに行けば良いのか分かりませんでした。このまま駅の近くで寝ようと思っていたところで、一人のパキスタン人から声をかけられました。 英語で彼に話をすると、『自分の住んでいるところに来て探したらいい』と提案をしてくれました。それが川口でした。それから叔父を探すことになりました。 川口にいる外国人に声をかけて、クルド人を探しました。当時はほとんどクルド人は住んでいませんでした。おじさんを探し出すのに、3ヵ月間かかりました。その間、パキスタンの彼は私からお金をとることなく、寝る場所と食事を与えてくれました。本当に感謝をしています」』、「世界の中でクルド人だけが難しい立場のままです」、国を持たない「クルド人」には本当に同情する他ない。「東京駅は大きな駅です。バスターミナルを降りると、どこに行けば良いか分かりませんでした。 日本語も何も分かりません。日本語の看板を見ても、何もわからない。東京に着けばなんとかなるだろうと思っていたのです。たくさんの人が忙しそうにしていました。誰も私のことを知らないですし、日本の言葉も分かりませんので、話しかけても無駄でした。・・・このまま駅の近くで寝ようと思っていたところで、一人のパキスタン人から声をかけられました。 英語で彼に話をすると、『自分の住んでいるところに来て探したらいい』と提案をしてくれました。それが川口でした。それから叔父を探すことになりました。 川口にいる外国人に声をかけて、クルド人を探しました。当時はほとんどクルド人は住んでいませんでした。おじさんを探し出すのに、3ヵ月間かかりました。その間、パキスタンの彼は私からお金をとることなく、寝る場所と食事を与えてくれました。本当に感謝をしています」、親切な「パキスタン」人に助けてもらったのは幸運だった。
・『心から感謝している日本人 「おじさんと出会ってから、仕事を探しに毎日歩きました。たまたま出会った日本人の親方夫妻がとてもやさしくしてくれて、私に仕事を与えてくれました。建設業です。家をつくる大工さんでした。 仕事はきつかったですし、休みはありませんでしたが、生活のためのお金を与えてくれました。それまでそういう仕事をしたことはありませんでしたが、朝から夜まで休みなく働きました。 親方の奥さんは、私のために食事や衣服の世話などをしてくれて、日本語や日本のルールなども教えてくれました。仕事が終わって、夜に部屋に帰るときに洗濯をしてくれたものを渡してくれたり、とても良くしてくれました。 今でも親交がありますが、心から感謝しています。心のやさしい日本人がいたので、今の私がいるのだと思います。たくさんの日本人は私のことを奴隷のように使いました。でも中には親方の奥様のように、人間の気持ちのある方もいたのです。 建築の仕事が暇になると、下水管の埋設の仕事などをしました。肉体労働です。労働はきつく、朝早くから夜まで働きました。怪我をすることもありました」』、「親方の奥さんは、私のために食事や衣服の世話などをしてくれて、日本語や日本のルールなども教えてくれました。仕事が終わって、夜に部屋に帰るときに洗濯をしてくれたものを渡してくれたり、とても良くしてくれました。 今でも親交がありますが、心から感謝しています」、「日本語や日本のルールなども教えてくれました」、というのは本当にラッキーだった。
・『日本にはいい人もいるけど、悪い人もいる 「日本人の中には、私のことを『外人だから』ということで馬鹿にする人が多かったです。同じ人間として認めてくれない。いい人もいるのだけれど、悪い人の方が多い。 仕事はしっかりとやらなければならないです。手を抜くとすぐに仕事がもらえなくなります。いくら仕事をしても、騙されてお金をもらえない時もありました。このままこの国にいては死んでしまう。『身体は元気でも、心が死んでしまう』と思った時期が続きました。 15年前に独立して自分で仕事をしようと思ったきっかけは、日本人の女性と付き合い、結婚をしたことが大きかったです。 解体業は建設関係の中でも日本人のいやがる仕事です。もともと外国人が働くことも多かったです。きつくて危険な仕事ですが、だからこそ真面目にやればいいのではないかと考えました。 アルバイトで少しだけ経験もありましたし、とにかく生きるために必死でした。日本の友人たちも協力をしてくれて会社を設立することができました」』、「15年前に独立して自分で仕事をしようと思ったきっかけは、日本人の女性と付き合い、結婚をしたことが大きかったです。 解体業は建設関係の中でも日本人のいやがる仕事です。もともと外国人が働くことも多かったです。きつくて危険な仕事ですが、だからこそ真面目にやればいいのではないかと考えました・・・日本の友人たちも協力をしてくれて会社を設立することができました」、なるほど。
・『川口にあるクルド人の解体業者は100社以上! 「一人で会社を設立しても仕事をもらわないとお金になりません。毎日、『仕事はありませんか』と尋ねて回りました。ほとんど無駄に終わりましたが、中には仕事を回してくれる人もいました。 私はこの国では外国人ですし、日本人以上に真面目に仕事をしないと信用してもらえません。時間を守ること、現場のルールを守ること、嘘をつかないで丁寧に仕事をしました。私にはそれしかなかったのです。 だんだんと私の仕事のやり方を分かってくれる人が多くなりました。それで仕事の量が増えていったのです。今は営業しなくても、日本の会社から仕事の依頼がたくさん来ます。 私の会社だけでなく、私のところから独立した会社にも仕事を回しています。ここ川口では、クルド人の会社だけで100社以上の解体業の会社があります。みんな私のところで経験を積んで独立をしました。 連載最終回となる記事『「殺されるかもしれない…」埼玉県川口市や蕨市で暮らす「ワラビスタン」の「ビッグボス」が感じた恐怖と「たった一つの願い」』では、「ビッグボス」が明かした「恐怖の理由」と「唯一の願い」について、詳しくお伝えします』、「私はこの国では外国人ですし、日本人以上に真面目に仕事をしないと信用してもらえません。時間を守ること、現場のルールを守ること、嘘をつかないで丁寧に仕事をしました。私にはそれしかなかったのです。 だんだんと私の仕事のやり方を分かってくれる人が多くなりました。それで仕事の量が増えていったのです。今は営業しなくても、日本の会社から仕事の依頼がたくさん来ます」、大したものだ。「ここ川口では、クルド人の会社だけで100社以上の解体業の会社があります。みんな私のところで経験を積んで独立をしました」、のれん分けした「会社だけで100社以上の解体業の会社があります」、これも立派なものだ。
第三に、この続きを、10月8日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの野田 洋人氏による「「殺されるかもしれない…」埼玉県川口市や蕨市で暮らす「ワラビスタン」の「ビッグボス」が感じた恐怖と「たった一つの願い」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/117031#lnsjy2x11mcmmjbauxk
・『前の記事『埼玉の川口市や蕨市に移り住む「ワラビスタン」の「ビッグボス」がはじめて明かした、「壮絶すぎる過去」』では、クルド人としてトルコから日本に逃れたあと、いまや日本に暮らす2000人以上のクルド人をまとめるまでの存在になった「ビッグボス」の過去について、紹介した。 これまで5回にわたってお届けしてきた「ワラビスタン」連載の最終回となるこの記事では、そんな「ビッグボス」が明かした「恐怖の理由」と「たった一つの願い」について、お伝えします』、興味深そうだ。
・『「日本の親方は怒鳴るが、私は怒鳴らない」 「解体の仕事は簡単ではありません。たくさんの危険がありますし、とても疲れます。日本の会社では親方が怒鳴ったりすることが多くありますが、私のところではそういうことはありません。 仕事のやり方がわからない人には、知っている人が丁寧に教えます。決められた期間内に、なるべく早く安全に仕事が終わるようにします。そのためには、機械の扱いやチームワークを大切にしています。一人で普通の日本人の3人分以上の仕事ができるように教育します。 個人の住宅だけではなく、大きな工場やパチンコ屋、ビルの解体もやります。500坪、1000坪単位の大きな現場もあります。最初は私も目で見て仕事を覚えました。機械の使い方、現場での動き方、誰も教えてくれないから全て自分で覚えました。 そして、自分で学んだことをどんどんクルドの仲間に教えました」』、「日本の会社では親方が怒鳴ったりすることが多くありますが、私のところではそういうことはありません」、どならないとは大したことだ。「機械の扱いやチームワークを大切にしています。一人で普通の日本人の3人分以上の仕事ができるように教育します」、「一人で普通の日本人の3人分以上の仕事ができるように教育」とは素晴らしい。 「最初は私も目で見て仕事を覚えました。機械の使い方、現場での動き方、誰も教えてくれないから全て自分で覚えました。 そして、自分で学んだことをどんどんクルドの仲間に教えました」、やはりon the jobで「教えている」ようだ。
・『「仕事のできない人」はクルド人にも日本人にもいる 「現場で出るゴミは、ルールに従ってお金を払って処分しなければなりません。そういう手続き(各種申請書など)など、クルド人には難しいこともあります。 私の会社には日本人も働いています。彼らの助けがあって仕事ができているのです。よい仕事をしたら、それだけお金を支払います。だからクルド人以外の人も働いています。彼らの生活のためにも仕事には手を抜かないで、誰からも文句を言われないように気をつけています。 在留資格を持っていても外人、クルド人ですから、少しのミスもしないように気をつけています。何度教えても理解しない人は、クルド人にも日本人にもいます。そういう人には辞めてもらいます。生きるための仕事です。遊びではありません。だから真剣なのです。 人間は何もすることがないと悪い方に物事を考えてしまいます。どんなにいい人でも、いいことを考えられなくなるのです。私だけでなく、他のクルド人も日本人もそうだと思います。 私にはこの仕事しかなかった。だから寝る時間を削って頑張ります。この仕事以外の仕事は出来ませんから。本当は先生になったり別の仕事もしたかったです。 でも、それは日本では許されない」』、「在留資格を持っていても外人、クルド人ですから、少しのミスもしないように気をつけています。何度教えても理解しない人は、クルド人にも日本人にもいます。そういう人には辞めてもらいます。生きるための仕事です。遊びではありません。だから真剣なのです」、「仕事」に対する姿勢は大したものだ。
・『「殺されるかもしれない」恐怖 「仕事が終わると、眠るまでが自分の自由な時間になります。私たちは仲間同士で話しをすることを何よりも大切に思っています。仕事のこと、悩みのこと、これから先の不安のこと、家族のことなど話す事はたくさんあります。 お酒は飲まないですし、お店に入るとお金がかかるので、外で話すことが多いです。夜まで話すことも多いので、そういう姿が日本人にはいやなのかもしれません。 私たちもできるだけこの国のルールを守ろうとしていますが、話をしているだけで警察が来て「どいてください」と邪魔に扱われることも多いです。ただ、話しをしているだけです。それでも日本の人は私たちを嫌います。どんな人でも楽しみは必要です。 日本の人の中には、『早くトルコに帰れ』と言う人もいます。この30年で、私は親に会うために2回トルコに帰りました。どちらの時にも空港で逮捕されました。10日間くらい刑務所に置かれました。 『もしかしたらこのまま自由になれないかもしれない』『トルコにいる家族と二度と会えないかもしれない』『もしかしたら殺されてしまうかもしれない』と考えてしまって、本当に怖かったです。 日本の人は、『トルコはいい国で普通に暮らせるだろう』と言います。日本人にはそうだと思います。でもクルド人には違うのです」』、「お酒は飲まないですし、お店に入るとお金がかかるので、外で話すことが多いです。夜まで話すことも多いので、そういう姿が日本人にはいやなのかもしれません。 私たちもできるだけこの国のルールを守ろうとしていますが、話をしているだけで警察が来て「どいてください」と邪魔に扱われることも多いです」、夜、大勢で集まっておしゃべりするのは、日本人にとっては耐え難そうだ。
・『自分たち以外に信用できなくなったワケ 「トルコではいつも危険がありました。いつ家族が殺されるか分からないし、家畜のように殴られたり、蹴られたりすることもありました。人間として認めてくれなかったのです。テロリストのように扱われることもあります。 クルド人の苦しみは、一部の日本人が私たちの代わりに話をしてくれていますが、経験をしていないと本当のところは分からないのだと思います。 日本は昔、戦争があって、それからは平和な国になっています。殺される危険もなく、普通に仕事ができて、友だちと自由に話ができて、家族と暮らすことができます。 でも、クルド人はいつも力のある国に利用され、捨てられてきました。長い時間、そうだったので自分たちの他に誰も信用できなくなってしまったのかもしれません。 日本人でもトルコ人でも、いろいろな考えがある。でもみんな、生きなければならないのです。どこの国でも温かい人はいます。これまでは仕事をして頑張ってきました。 でも、それは私の家族のためでした。本当に大事なのはクルド人全体のことを考えて行動することです。それができなかったら、私の人生に意味などありません。 生活はできるようになりましたが、子供たちのために学校も作りたいですし、もっと平和になるように頑張りたいです。クルド人だけでなくて、日本人もみんなが幸せになって暮らしてくことが大事です。一人だけで生きていくことなど意味がありません」』、「クルド人はいつも力のある国に利用され、捨てられてきました。長い時間、そうだったので自分たちの他に誰も信用できなくなってしまったのかもしれません・・・クルド人だけでなくて、日本人もみんなが幸せになって暮らしてくことが大事です。一人だけで生きていくことなど意味がありません」、なるほど。
・『「クルドの国ができるなら、いつ死んでもいい」 「どんなときでもできることがあります。クルド人、あと5年たつと、人口がもっと増えます。世界のクルド人がもっと増えれば、発言力が大きくなって、少し自由になるかもしれません。いつかはクルド人の国ができるといいです。 今はまだ世界のどこに行ってもクルド人は差別されます。だからいつかはクルド人の国をつくらなければならないと思います。安心して自由に暮らせる国が欲しい。それは当たり前のことなのです。私は解体の仕事もなくしてしまってもいいと思っています。 クルドの国ができるならいつ死んでも、命もいらない。 今、日本から出て行くクルド人も多いです。ドイツなどに移動するクルド人も多いです。私は世界中にいるクルドの仲間と連絡を取り合っています。 日本は数年前から国の力が階段を降りるように落ちています。観光客以外の外国人が日本に来ることはありますが、大きく数が減りました。彼らは日本以外の国を選ぶようになっています。そういう状態はこれからも続きます。 日本人が国を世界の中でどうしたらいいのか、真剣に考えた方がいいと思います。私は自分が生きるために日本に来ました。必死に働いて、結婚して、会社をつくって、クルド人が多いけれど、日本人などたくさんの人を雇って頑張ってきました。自分のためだけの会社ではないのです。 奥さんには大きな迷惑をかけました。私がクルド人だからということで、彼女の人生にも大きく迷惑をかけてしまった。そのことがあるので、私が生きている限りは彼女のためにも生きます」』、「今、日本から出て行くクルド人も多いです。ドイツなどに移動するクルド人も多いです。私は世界中にいるクルドの仲間と連絡を取り合っています・・・奥さんには大きな迷惑をかけました。私がクルド人だからということで、彼女の人生にも大きく迷惑をかけてしまった。そのことがあるので、私が生きている限りは彼女のためにも生きます」、なるほど。
・『「ビッグボス」の言葉をどう受け止めるか 「ビッグボス」による告白は以上である。 昨今、批判を浴びているクルド人の中にも、彼のような人物がいた。身体一つで異国に降り立ち、言葉を覚え、才覚のみを頼りにこの日本で人生を切り開いてきたのだ。 その生き方は多くのクルド人に尊敬され、地域住民との関係も良好に保っている。これまで彼は日本人に対して自らのことを語ってこなかった。今回、正直な気持ちを吐露してくれたのは、日本人との間で急速に顕在化した軋轢がきっかけである。 昨年2月のトルコ大地震、そして10月の入国規制の緩和以降、多くのクルド人が川口エリアを目指している。生活のスタイルを変えない彼らを受け入れる地域住民は、忍耐を強いられる場面もあるだろう。 「異質」を受け入れがたい日本人は、彼らの存在を拒絶するかもしれない。すでにその兆しはあるが、感情に端を発した排斥運動ほど、醜いものはないと思う。 日本各地で移民問題が起きている。「多様性」や「共生社会」を目指すのであれば、国も現実を直視し、取り締まりの強化だけでなく共生を促す仕組みを真剣に考えるべきなのだ。 これまでも「移民排斥」は世界のあらゆる場所で行われてきた。明治以降、日本人も南北アメリカ大陸やハワイなどへ移民として海を超えていった。現地では安価な労働力として需要が増し、人口も増えていった。 その結果、人種的偏見などから差別され、日本人排斥運動にまで高まることとなった。排斥運動の背景には、ナショナリズムの台頭と不況からくる生活苦が存在する。現在、その条件は整っている。 自分の国がない人々の気持ちを理解することは難しい。だが、彼らの育った環境を想像し、共感することは我々にもできるだろう。今後も国内には隣人として多くの外国人が住み続けることになる。彼らとの生活を円滑に進めていくためにも、改めて自分の中の差別意識を意識し、確認しておきたい』、「移民」のなかでも「クルド人」は帰る祖国もない気の毒な存在だ。「彼らの育った環境を想像し、共感することは我々にもできるだろう。今後も国内には隣人として多くの外国人が住み続けることになる。彼らとの生活を円滑に進めていくためにも、改めて自分の中の差別意識を意識し、確認しておきたい」、同感である。
先ずは、本年10月8日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの野田 洋人氏による「埼玉県川口市や蕨市に住む「ワラビスタン」の「ビッグボス」が、ついに重い口を開いた!県警の機動隊まで出動した「クルド人騒動」…そのウラで起きていたこと」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/117032#lnsjwlofps6ozmm46g
・『前の記事「『アパートの共用廊下には食べ残しの弁当が放置され、腐敗臭が…埼玉県川口市や蕨市の「ワラビスタン」に怯えて暮らす、在日クルド人たちの意外すぎる「日常生活と本音」』では、クルド人がひそかに抱える苦悩について紹介した。 この記事では、『埼玉県川口市、蕨市…通称「ワラビスタン」!日本に暮らす2000人以上のクルド人をまとめる「ビッグボス」の正体』で触れた、「ビッグボス」への接触に成功、そのインタビューを公開する』、「ワラビスタン」の「ビッグボスへの「インタビュー」とは興味深そうだ。
・『なぜ彼らの多くは解体業に従事するのか 日本に住むクルド人の多くは、解体業を主な仕事としている。埼玉県川口市内には解体業を専門とした会社が多数設立され、その多くがクルド人による経営という。 なぜ、解体業にクルド人が集まるのか。 外環道に近い一帯(赤芝新田)には、解体業者の集まったエリアがある。起伏に富んだ土地には学校や個人の住宅、造園業者の敷地もあるが、一際目を引くのが、背の高い金属のプレートで周囲を覆って内部を見ることができないようにした、通称「ヤード」と呼ばれる解体業者の資材置き場である。 彼らに取材をかけたが、明らかにこちらを敵視した様子のまま、話を聞くことができなかったので、その地域に長年居を構える日本人住民に声をかけてみた』、「背の高い金属のプレートで周囲を覆って内部を見ることができないようにした、通称「ヤード」と呼ばれる解体業者の資材置き場である」、何やら取材には勇気が入りそうだ。
・『「日本ではないみたいな光景」 「15年くらい前から彼らが入ってきたのですよ。もともとは畑しかなかったこの地域に、外国人の乗る車が増えてきた時には驚きましたよ。彼らはすぐ近くに住んでいるわけではないので、あいさつをする程度。話すことはしていません。 朝の5時頃になると、従業員たちがどんどん集まります。その光景はまるで日本ではないみたいです。あの高い塀があるので中がどうなっているのか、詳しい様子は分かりませんが、重機やダンプ、砂利などが積んでありました。 朝の出勤前と夕方の仕事終わりの時間帯には、ダンプやトラック、乗用車も入り乱れるものだから、このあたりは激しく渋滞します。歩く人はそれほどいないけれど、時間帯によっては学校に通う子どもたちの通学路にもなりますので、事故がないかヒヤヒヤしています。 それと、音楽はうるさいね。何もない静かなところでしょう。週末や平日の仕事終わりに大音量で音楽をかけてお肉かなんかを焼いて食べたりしているのです。そんな音楽を耳にしていると、日本も変わってきたなと心から思いますよ。少子高齢化で外国人の力を借りなければならないのですよね。 その彼らを『追い出せ』という日本人もいますが、それは違うのではないかと思いますよ。安い賃金で働いてくれる彼らの代わりなど、いないでしょう。しっかりと税金も納めてくれてますしね。 地域に住んでいる我々にとっては、過激な排斥運動など、在日のクルド人と衝突をするのはやめてほしい。そういう活動をしている連中は地元の人間ではないし、決して責任取りませんからね。お願いだからこのまま静かにしてほしいですよ」 川口市内の工務店社長もこう語る。) 「解体屋をやっているのは、ほとんどクルド人です。日本の業者より安いし、仕事が早いからどんどん増えていった。危ないし、利益を出すことが難しいから、日本人はやりたがらないのです。奴らは力も強いし、重機の扱いも上手い。どこかで親玉がいるはずだよ」 なかなかクルド人に接触できない中、「解体業の会社を川口で最初に始めたクルド人が今もいるらしい」といった情報が、市内のある金融関係に従事する男性から寄せられた。 「若い人は別かもしれませんが、川口のクルド人の中で彼を知らない人などいないはずですよ。彼らは横のつながりが濃密ですからね。クルド人のほぼ全ての男性が解体業関係で働いています。その解体業を最初に始めた人です』、「クルド人のほぼ全ての男性が解体業関係で働いています。その解体業を最初に始めた人」、なるほど。
・『一大産業の礎を築き上げた「ビッグボス」 国内に住むクルド人であれば、彼の存在を知らない者はほとんどいないという。 1990年代初頭に入国し、川口市に居住したクルド人の第1世代。日本人女性と結婚し、多くの職を渡り歩いた末に、自ら起業した。クルド系初の解体業の会社の経営者となってから約15年――。 多くのクルド人が彼の会社で経験を積み、独立起業した。その数は100社を超える。そのほぼ全てが、川口市に本社や資材置き場を置いている。まさに一大産業の礎を築き上げた張本人ということになる。 あるクルド人は彼を「ビックパパ」と呼び、またあるクルド人は「ビックボス」と称した。 そんな彼と、川口市内にある彼の会社のヤード(資材置き場)で会うことになった』、「1990年代初頭に入国し、川口市に居住したクルド人の第1世代。日本人女性と結婚し、多くの職を渡り歩いた末に、自ら起業した。クルド系初の解体業の会社の経営者となってから約15年――。 多くのクルド人が彼の会社で経験を積み、独立起業した。その数は100社を超える。そのほぼ全てが、川口市に本社や資材置き場を置いている。まさに一大産業の礎を築き上げた張本人ということになる」、まさに「ビックボス」だ。
・『中肉中背で瞳は薄いグリーン 何度か断られたが、彼に近い複数の人物に話を通してから、話を伺いに行きたいこと、もし、断るならそれで構わないことを伝えてもらい日時を決め、足を運んだ。 約束の時間前に到着すると、「ビッグボス」はすでに待機していた。筆者が名刺を差し出すと、彼も日本式の挨拶をしながら名刺を差し出した。諸般の事情があって、彼の名前を出すことはできない。入り口からヤードに入ると、ユンボやダンプが視界に入る。解体で使われる道具類は整理され、棚に収納されていた。 中肉中背の「ビッグボス」は、薄いグリーンの瞳でジッとこちらの目を見て「何を聞きたいの?」と口にした。 先日の事件のこと、その後緊張状態にあるクルド人と日本人との関係について、在日クルド人を代表して話を聞きたいと伝えた。 彼はしばし考えた後、「どうぞ」と静かに記者を椅子に座らせると、ゆっくりとした口調で話し始めた』、なるほど。
・『喧嘩を止めるために集まっていた 「あの事件のことですね。ここで結婚をしていたクルド人夫婦がいたのです。二人はとても仲が良かったのです。でも、女性が別のクルド人男性を好きになってしまって、(その男性と)二人で埼玉から神奈川に逃げてしまいました。 その後、時間が経って女性はトルコに帰り、男性だけが川口に戻ってきた。彼は私のところで勉強して、3年くらい前に親族と一緒に会社を作った人です。彼が戻って来たことを知った女性の弟とその親族が、彼を追いかけてナイフを使ったわけです。 クルド社会では日本よりも男女の関係には厳しいのです。それと、帰ってきた男性のお金に関わるトラブルもあって、その両方の原因があって喧嘩になったのです。 マスコミでは、病院前でクルド人100人が乱闘騒ぎをしたという報道になっていますが、本当は、それ以上の喧嘩にならないよう、双方の親族や友人たちが集まったのです。 喧嘩を止めるために集まったのに、大勢で喧嘩をしたという逆の報道になってしまった。その場で警察がたくさん出てきて、互いに興奮した結果があの騒ぎだと思ってます。 もちろん病院や川口市民に迷惑をかけてしまったことは心から申し訳ないと考えています。事件後、すぐに関係者を通じてクルド人を代表して病院や役所の関係者に謝りに行きました」』、「マスコミでは、病院前でクルド人100人が乱闘騒ぎをしたという報道になっていますが、本当は、それ以上の喧嘩にならないよう、双方の親族や友人たちが集まったのです。 喧嘩を止めるために集まったのに、大勢で喧嘩をしたという逆の報道になってしまった。その場で警察がたくさん出てきて、互いに興奮した結果があの騒ぎだと思ってます」、「マスコミが表面的な報道だけだったのは残念だ。 「もちろん病院や川口市民に迷惑をかけてしまったことは心から申し訳ないと考えています。事件後、すぐに関係者を通じてクルド人を代表して病院や役所の関係者に謝りに行きました」、群れを作るのはよくない。また、ナイフなどの刃物を持ち歩くのも、日本では危険で避けるべき習慣だ。
・『ビッグボスの「本当の気持ち」 「日本人に対して申し訳ないです。ごめんなさい。でも、これ本当の私の気持ち。日本のメディアはクルド人のことであれば、ほんの小さなことでも大きく報道します。内容が事実ではなくても、クルド人が悪いように報道します。 それはどういうことかというと、クルド人に対する日本マスコミの考え方なのだと思います。クルド人に話を聞いていないことも理由です。 もちろん、ナイフを使って喧嘩をしたことはよくないことです。彼らも話し合って解決すればよかったのです。そうしたらあんなことにはならなかった。喧嘩はどこの国でもありますが、よくないことです。 怒ってしまったまま、我慢できないまま、それを止められない人同士が喧嘩になります。悲しいことですが、クルド人の中にもそういう人がいたのです。喧嘩の後、病院に大勢で集まったこともよくない事でした。そのことについても心から謝ります。ごめんなさい。 私たちクルド人の中にも、良くない人はいます。私は以前から日本に住むのであれば、この国のルールを守るよう、みんなに伝えています。車のルールや日本の法律のことなどを教えていますが、守らない人もいる。そういう人は日本から出ていけばいいとも思います。 真面目に仕事をして暮らしているクルド人も迷惑をしています。そういう真面目な人がほとんどなのです。このことでクルド人全体を悪い人たちだと考えないでほしいのです」・・・・・ 次の記事『埼玉の川口市や蕨市に移り住む「ワラビスタン」の「ビッグボス」がはじめて明かした、「壮絶すぎる過去」』では、トルコから日本に逃れたあと、いまや日本に暮らす2000人以上のクルド人をまとめるまでの存在となった「ビッグボス」の、現在に至るまでの日々をさらに紹介します』、「クルド人に対する日本マスコミの考え方なのだと思います。クルド人に話を聞いていないことも理由です」、当事者の話も聞かずに記事にするては問題だ。「怒ってしまったまま、我慢できないまま、それを止められない人同士が喧嘩になります。悲しいことですが、クルド人の中にもそういう人がいたのです。喧嘩の後、病院に大勢で集まったこともよくない事でした。そのことについても心から謝ります。ごめんなさい。 私たちクルド人の中にも、良くない人はいます。私は以前から日本に住むのであれば、この国のルールを守るよう、みんなに伝えています。車のルールや日本の法律のことなどを教えていますが、守らない人もいる。そういう人は日本から出ていけばいいとも思います」、なるほど。
次に、この続きを10月8日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの野田 洋人氏による「埼玉の川口市や蕨市に移り住む「ワラビスタン」の「ビッグボス」がはじめて明かした、「壮絶すぎる過去」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/117029#lnsjxcorerqirgys3tj
・『この前の記事『埼玉県川口市や蕨市に住む「ワラビスタン」の「ビッグボス」が、ついに重い口を開いた!県警の機動隊まで出動した「クルド人騒動」…そのウラで起こっていたこと』では、今年7月に埼玉県・川口市の救急指定病院前で起きた、約100人のクルド人による騒動発生の「本当の理由」について紹介した。 この記事では、トルコから日本に逃れたあと、いまや日本に暮らす2000人以上のクルド人をまとめるまでの存在になった「ビッグボス」が明かした、壮絶な過去を紹介します』、興味深そうだ。
・『どこまでいっても「外人」 「日本のメディアはクルド人に対して、悪い気持ちのまま報道してしまうのではないかと思います。私たちは犯罪者ではないです。自分たちの国がなくて普通に暮らすことができなかったから日本に来たのです。 もちろん迷惑をかけるために来たのではないです。日本語は難しいです。私は仕事を通じて話が出来るようになりましたけれど、言葉の出来ないクルド人もたくさんいます。 勉強をしたくても、その機会を得られないクルド人もたくさんいます。この国に暮らすのであれば、日本人達との関係を大事にしなければならない。 でも、日本人と同じようなことをしてはダメですよ。この国で働いて、税金を納めているから、何をしてもいいということは違うの。 日本語を話せても、日本人と結婚していても、一緒に仕事をしていても、友だちになっても、どこまでいっても『外人』なのです。日本はアメリカやヨーロッパとは違うのです。日本ではいつまでたっても『外人』のままなのです。そういう気持ちが、どうしてもたくさんの日本人の中にはあるのだと思う。 あくまで『外人』なのです。悲しいです」』、「この国で働いて、税金を納めているから、何をしてもいいということは違うの。 日本語を話せても、日本人と結婚していても、一緒に仕事をしていても、友だちになっても、どこまでいっても『外人』なのです。日本はアメリカやヨーロッパとは違うのです。日本ではいつまでたっても『外人』のままなのです」、「あくまで『外人』なのです。悲しいです」、なるほど。
・『いちばん考えていたのは「生きること」 「一緒に働いていても、私が外国人ですから、日本人は差別をします。でも、それは当たり前なのかもしれない。私が働くことで、日本人たちの仕事を奪っていることになりますから。 仕事をするときには時間を守ることは当たり前です。決められた時間前に現場について準備をします。ゴミなどを残したりしないで早く、丁寧に仕事をします。 少しでもミスをすると『外人だから』と言われてしまう。仕事をもらうためには、少しのミスもなくしっかりとやらなければ。すぐに暇になってしまう。だから必死に働きます。 私はこの国に来て間違えたと思っています。ごめんなさい。でも仕方がなかったのです。 私は、1990年代初頭に日本に来ました。23歳でした。トルコからマレーシアに行き、それから日本に来ました。日本のことはほとんど知らなかった。 一番考えていたのは生きること。仕事をして、普通の生活をしたかったのです。ビザのことなど何も知らなかったです。難民という言葉も知らなかった。日本では入管に行くことなども何も知らなかった。 私より少しだけ先に(来た親戚の)おじさんが日本にいました。彼はイランにいて、ヨーロッパから日本に来たのです。 当時、イラン人がたくさん日本に来ていて、『やさしい国だ』と聞いていて、それで来たのです。おじさんも生活をするところが必要だった。それは私も同じ。おじさんはいま、日本を離れてトルコとは別の国で生活をしています」』、「私は、1990年代初頭に日本に来ました。23歳でした。トルコからマレーシアに行き、それから日本に来ました。日本のことはほとんど知らなかった。 一番考えていたのは生きること。仕事をして、普通の生活をしたかったのです。ビザのことなど何も知らなかったです。難民という言葉も知らなかった。日本では入管に行くことなども何も知らなかった。 私より少しだけ先に(来た親戚の)おじさんが日本にいました。彼はイランにいて、ヨーロッパから日本に来たのです。 当時、イラン人がたくさん日本に来ていて、『やさしい国だ』と聞いていて、それで来たのです・・・おじさんはいま、日本を離れてトルコとは別の国で生活をしています」、なるほど。
・『トルコでは普通に暮らすのが難しい 「トルコでは普通に暮らすことが難しかった。目の前でクルド人の知り合いが殴られたり、殺されたりするのはいつもでした。 生活をするための仕事をすることも難しかった。私のいた村では半年分の食糧を貯蔵します。貯蔵したら、すぐに軍隊が来て食糧も家も潰してしまうこともありました。いくつもの村が潰されました。 命を守るために山に逃げることもありました。そのあたりのことは、日本人には分からないと思う。『普通に生活できますよ、差別などありませんよ』という人もいると思いますが、もしそうであれば、これだけ世界中にクルド人が移動して問題が広がらないでしょう。世界の中でクルド人だけが難しい立場のままです。 日本の空港に着いた時には、荷物は小さなものが一つだけ。成田空港から東京駅までバスで向かいました。東京駅は大きな駅です。バスターミナルを降りると、どこに行けば良いか分かりませんでした。 日本語も何も分かりません。日本語の看板を見ても、何もわからない。東京に着けばなんとかなるだろうと思っていたのです。たくさんの人が忙しそうにしていました。誰も私のことを知らないですし、日本の言葉も分かりませんので、話しかけても無駄でした。 携帯電話のない時代でした。親戚がいる場所を探そうと思ってもどこに行けば良いのか分かりませんでした。このまま駅の近くで寝ようと思っていたところで、一人のパキスタン人から声をかけられました。 英語で彼に話をすると、『自分の住んでいるところに来て探したらいい』と提案をしてくれました。それが川口でした。それから叔父を探すことになりました。 川口にいる外国人に声をかけて、クルド人を探しました。当時はほとんどクルド人は住んでいませんでした。おじさんを探し出すのに、3ヵ月間かかりました。その間、パキスタンの彼は私からお金をとることなく、寝る場所と食事を与えてくれました。本当に感謝をしています」』、「世界の中でクルド人だけが難しい立場のままです」、国を持たない「クルド人」には本当に同情する他ない。「東京駅は大きな駅です。バスターミナルを降りると、どこに行けば良いか分かりませんでした。 日本語も何も分かりません。日本語の看板を見ても、何もわからない。東京に着けばなんとかなるだろうと思っていたのです。たくさんの人が忙しそうにしていました。誰も私のことを知らないですし、日本の言葉も分かりませんので、話しかけても無駄でした。・・・このまま駅の近くで寝ようと思っていたところで、一人のパキスタン人から声をかけられました。 英語で彼に話をすると、『自分の住んでいるところに来て探したらいい』と提案をしてくれました。それが川口でした。それから叔父を探すことになりました。 川口にいる外国人に声をかけて、クルド人を探しました。当時はほとんどクルド人は住んでいませんでした。おじさんを探し出すのに、3ヵ月間かかりました。その間、パキスタンの彼は私からお金をとることなく、寝る場所と食事を与えてくれました。本当に感謝をしています」、親切な「パキスタン」人に助けてもらったのは幸運だった。
・『心から感謝している日本人 「おじさんと出会ってから、仕事を探しに毎日歩きました。たまたま出会った日本人の親方夫妻がとてもやさしくしてくれて、私に仕事を与えてくれました。建設業です。家をつくる大工さんでした。 仕事はきつかったですし、休みはありませんでしたが、生活のためのお金を与えてくれました。それまでそういう仕事をしたことはありませんでしたが、朝から夜まで休みなく働きました。 親方の奥さんは、私のために食事や衣服の世話などをしてくれて、日本語や日本のルールなども教えてくれました。仕事が終わって、夜に部屋に帰るときに洗濯をしてくれたものを渡してくれたり、とても良くしてくれました。 今でも親交がありますが、心から感謝しています。心のやさしい日本人がいたので、今の私がいるのだと思います。たくさんの日本人は私のことを奴隷のように使いました。でも中には親方の奥様のように、人間の気持ちのある方もいたのです。 建築の仕事が暇になると、下水管の埋設の仕事などをしました。肉体労働です。労働はきつく、朝早くから夜まで働きました。怪我をすることもありました」』、「親方の奥さんは、私のために食事や衣服の世話などをしてくれて、日本語や日本のルールなども教えてくれました。仕事が終わって、夜に部屋に帰るときに洗濯をしてくれたものを渡してくれたり、とても良くしてくれました。 今でも親交がありますが、心から感謝しています」、「日本語や日本のルールなども教えてくれました」、というのは本当にラッキーだった。
・『日本にはいい人もいるけど、悪い人もいる 「日本人の中には、私のことを『外人だから』ということで馬鹿にする人が多かったです。同じ人間として認めてくれない。いい人もいるのだけれど、悪い人の方が多い。 仕事はしっかりとやらなければならないです。手を抜くとすぐに仕事がもらえなくなります。いくら仕事をしても、騙されてお金をもらえない時もありました。このままこの国にいては死んでしまう。『身体は元気でも、心が死んでしまう』と思った時期が続きました。 15年前に独立して自分で仕事をしようと思ったきっかけは、日本人の女性と付き合い、結婚をしたことが大きかったです。 解体業は建設関係の中でも日本人のいやがる仕事です。もともと外国人が働くことも多かったです。きつくて危険な仕事ですが、だからこそ真面目にやればいいのではないかと考えました。 アルバイトで少しだけ経験もありましたし、とにかく生きるために必死でした。日本の友人たちも協力をしてくれて会社を設立することができました」』、「15年前に独立して自分で仕事をしようと思ったきっかけは、日本人の女性と付き合い、結婚をしたことが大きかったです。 解体業は建設関係の中でも日本人のいやがる仕事です。もともと外国人が働くことも多かったです。きつくて危険な仕事ですが、だからこそ真面目にやればいいのではないかと考えました・・・日本の友人たちも協力をしてくれて会社を設立することができました」、なるほど。
・『川口にあるクルド人の解体業者は100社以上! 「一人で会社を設立しても仕事をもらわないとお金になりません。毎日、『仕事はありませんか』と尋ねて回りました。ほとんど無駄に終わりましたが、中には仕事を回してくれる人もいました。 私はこの国では外国人ですし、日本人以上に真面目に仕事をしないと信用してもらえません。時間を守ること、現場のルールを守ること、嘘をつかないで丁寧に仕事をしました。私にはそれしかなかったのです。 だんだんと私の仕事のやり方を分かってくれる人が多くなりました。それで仕事の量が増えていったのです。今は営業しなくても、日本の会社から仕事の依頼がたくさん来ます。 私の会社だけでなく、私のところから独立した会社にも仕事を回しています。ここ川口では、クルド人の会社だけで100社以上の解体業の会社があります。みんな私のところで経験を積んで独立をしました。 連載最終回となる記事『「殺されるかもしれない…」埼玉県川口市や蕨市で暮らす「ワラビスタン」の「ビッグボス」が感じた恐怖と「たった一つの願い」』では、「ビッグボス」が明かした「恐怖の理由」と「唯一の願い」について、詳しくお伝えします』、「私はこの国では外国人ですし、日本人以上に真面目に仕事をしないと信用してもらえません。時間を守ること、現場のルールを守ること、嘘をつかないで丁寧に仕事をしました。私にはそれしかなかったのです。 だんだんと私の仕事のやり方を分かってくれる人が多くなりました。それで仕事の量が増えていったのです。今は営業しなくても、日本の会社から仕事の依頼がたくさん来ます」、大したものだ。「ここ川口では、クルド人の会社だけで100社以上の解体業の会社があります。みんな私のところで経験を積んで独立をしました」、のれん分けした「会社だけで100社以上の解体業の会社があります」、これも立派なものだ。
第三に、この続きを、10月8日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの野田 洋人氏による「「殺されるかもしれない…」埼玉県川口市や蕨市で暮らす「ワラビスタン」の「ビッグボス」が感じた恐怖と「たった一つの願い」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/117031#lnsjy2x11mcmmjbauxk
・『前の記事『埼玉の川口市や蕨市に移り住む「ワラビスタン」の「ビッグボス」がはじめて明かした、「壮絶すぎる過去」』では、クルド人としてトルコから日本に逃れたあと、いまや日本に暮らす2000人以上のクルド人をまとめるまでの存在になった「ビッグボス」の過去について、紹介した。 これまで5回にわたってお届けしてきた「ワラビスタン」連載の最終回となるこの記事では、そんな「ビッグボス」が明かした「恐怖の理由」と「たった一つの願い」について、お伝えします』、興味深そうだ。
・『「日本の親方は怒鳴るが、私は怒鳴らない」 「解体の仕事は簡単ではありません。たくさんの危険がありますし、とても疲れます。日本の会社では親方が怒鳴ったりすることが多くありますが、私のところではそういうことはありません。 仕事のやり方がわからない人には、知っている人が丁寧に教えます。決められた期間内に、なるべく早く安全に仕事が終わるようにします。そのためには、機械の扱いやチームワークを大切にしています。一人で普通の日本人の3人分以上の仕事ができるように教育します。 個人の住宅だけではなく、大きな工場やパチンコ屋、ビルの解体もやります。500坪、1000坪単位の大きな現場もあります。最初は私も目で見て仕事を覚えました。機械の使い方、現場での動き方、誰も教えてくれないから全て自分で覚えました。 そして、自分で学んだことをどんどんクルドの仲間に教えました」』、「日本の会社では親方が怒鳴ったりすることが多くありますが、私のところではそういうことはありません」、どならないとは大したことだ。「機械の扱いやチームワークを大切にしています。一人で普通の日本人の3人分以上の仕事ができるように教育します」、「一人で普通の日本人の3人分以上の仕事ができるように教育」とは素晴らしい。 「最初は私も目で見て仕事を覚えました。機械の使い方、現場での動き方、誰も教えてくれないから全て自分で覚えました。 そして、自分で学んだことをどんどんクルドの仲間に教えました」、やはりon the jobで「教えている」ようだ。
・『「仕事のできない人」はクルド人にも日本人にもいる 「現場で出るゴミは、ルールに従ってお金を払って処分しなければなりません。そういう手続き(各種申請書など)など、クルド人には難しいこともあります。 私の会社には日本人も働いています。彼らの助けがあって仕事ができているのです。よい仕事をしたら、それだけお金を支払います。だからクルド人以外の人も働いています。彼らの生活のためにも仕事には手を抜かないで、誰からも文句を言われないように気をつけています。 在留資格を持っていても外人、クルド人ですから、少しのミスもしないように気をつけています。何度教えても理解しない人は、クルド人にも日本人にもいます。そういう人には辞めてもらいます。生きるための仕事です。遊びではありません。だから真剣なのです。 人間は何もすることがないと悪い方に物事を考えてしまいます。どんなにいい人でも、いいことを考えられなくなるのです。私だけでなく、他のクルド人も日本人もそうだと思います。 私にはこの仕事しかなかった。だから寝る時間を削って頑張ります。この仕事以外の仕事は出来ませんから。本当は先生になったり別の仕事もしたかったです。 でも、それは日本では許されない」』、「在留資格を持っていても外人、クルド人ですから、少しのミスもしないように気をつけています。何度教えても理解しない人は、クルド人にも日本人にもいます。そういう人には辞めてもらいます。生きるための仕事です。遊びではありません。だから真剣なのです」、「仕事」に対する姿勢は大したものだ。
・『「殺されるかもしれない」恐怖 「仕事が終わると、眠るまでが自分の自由な時間になります。私たちは仲間同士で話しをすることを何よりも大切に思っています。仕事のこと、悩みのこと、これから先の不安のこと、家族のことなど話す事はたくさんあります。 お酒は飲まないですし、お店に入るとお金がかかるので、外で話すことが多いです。夜まで話すことも多いので、そういう姿が日本人にはいやなのかもしれません。 私たちもできるだけこの国のルールを守ろうとしていますが、話をしているだけで警察が来て「どいてください」と邪魔に扱われることも多いです。ただ、話しをしているだけです。それでも日本の人は私たちを嫌います。どんな人でも楽しみは必要です。 日本の人の中には、『早くトルコに帰れ』と言う人もいます。この30年で、私は親に会うために2回トルコに帰りました。どちらの時にも空港で逮捕されました。10日間くらい刑務所に置かれました。 『もしかしたらこのまま自由になれないかもしれない』『トルコにいる家族と二度と会えないかもしれない』『もしかしたら殺されてしまうかもしれない』と考えてしまって、本当に怖かったです。 日本の人は、『トルコはいい国で普通に暮らせるだろう』と言います。日本人にはそうだと思います。でもクルド人には違うのです」』、「お酒は飲まないですし、お店に入るとお金がかかるので、外で話すことが多いです。夜まで話すことも多いので、そういう姿が日本人にはいやなのかもしれません。 私たちもできるだけこの国のルールを守ろうとしていますが、話をしているだけで警察が来て「どいてください」と邪魔に扱われることも多いです」、夜、大勢で集まっておしゃべりするのは、日本人にとっては耐え難そうだ。
・『自分たち以外に信用できなくなったワケ 「トルコではいつも危険がありました。いつ家族が殺されるか分からないし、家畜のように殴られたり、蹴られたりすることもありました。人間として認めてくれなかったのです。テロリストのように扱われることもあります。 クルド人の苦しみは、一部の日本人が私たちの代わりに話をしてくれていますが、経験をしていないと本当のところは分からないのだと思います。 日本は昔、戦争があって、それからは平和な国になっています。殺される危険もなく、普通に仕事ができて、友だちと自由に話ができて、家族と暮らすことができます。 でも、クルド人はいつも力のある国に利用され、捨てられてきました。長い時間、そうだったので自分たちの他に誰も信用できなくなってしまったのかもしれません。 日本人でもトルコ人でも、いろいろな考えがある。でもみんな、生きなければならないのです。どこの国でも温かい人はいます。これまでは仕事をして頑張ってきました。 でも、それは私の家族のためでした。本当に大事なのはクルド人全体のことを考えて行動することです。それができなかったら、私の人生に意味などありません。 生活はできるようになりましたが、子供たちのために学校も作りたいですし、もっと平和になるように頑張りたいです。クルド人だけでなくて、日本人もみんなが幸せになって暮らしてくことが大事です。一人だけで生きていくことなど意味がありません」』、「クルド人はいつも力のある国に利用され、捨てられてきました。長い時間、そうだったので自分たちの他に誰も信用できなくなってしまったのかもしれません・・・クルド人だけでなくて、日本人もみんなが幸せになって暮らしてくことが大事です。一人だけで生きていくことなど意味がありません」、なるほど。
・『「クルドの国ができるなら、いつ死んでもいい」 「どんなときでもできることがあります。クルド人、あと5年たつと、人口がもっと増えます。世界のクルド人がもっと増えれば、発言力が大きくなって、少し自由になるかもしれません。いつかはクルド人の国ができるといいです。 今はまだ世界のどこに行ってもクルド人は差別されます。だからいつかはクルド人の国をつくらなければならないと思います。安心して自由に暮らせる国が欲しい。それは当たり前のことなのです。私は解体の仕事もなくしてしまってもいいと思っています。 クルドの国ができるならいつ死んでも、命もいらない。 今、日本から出て行くクルド人も多いです。ドイツなどに移動するクルド人も多いです。私は世界中にいるクルドの仲間と連絡を取り合っています。 日本は数年前から国の力が階段を降りるように落ちています。観光客以外の外国人が日本に来ることはありますが、大きく数が減りました。彼らは日本以外の国を選ぶようになっています。そういう状態はこれからも続きます。 日本人が国を世界の中でどうしたらいいのか、真剣に考えた方がいいと思います。私は自分が生きるために日本に来ました。必死に働いて、結婚して、会社をつくって、クルド人が多いけれど、日本人などたくさんの人を雇って頑張ってきました。自分のためだけの会社ではないのです。 奥さんには大きな迷惑をかけました。私がクルド人だからということで、彼女の人生にも大きく迷惑をかけてしまった。そのことがあるので、私が生きている限りは彼女のためにも生きます」』、「今、日本から出て行くクルド人も多いです。ドイツなどに移動するクルド人も多いです。私は世界中にいるクルドの仲間と連絡を取り合っています・・・奥さんには大きな迷惑をかけました。私がクルド人だからということで、彼女の人生にも大きく迷惑をかけてしまった。そのことがあるので、私が生きている限りは彼女のためにも生きます」、なるほど。
・『「ビッグボス」の言葉をどう受け止めるか 「ビッグボス」による告白は以上である。 昨今、批判を浴びているクルド人の中にも、彼のような人物がいた。身体一つで異国に降り立ち、言葉を覚え、才覚のみを頼りにこの日本で人生を切り開いてきたのだ。 その生き方は多くのクルド人に尊敬され、地域住民との関係も良好に保っている。これまで彼は日本人に対して自らのことを語ってこなかった。今回、正直な気持ちを吐露してくれたのは、日本人との間で急速に顕在化した軋轢がきっかけである。 昨年2月のトルコ大地震、そして10月の入国規制の緩和以降、多くのクルド人が川口エリアを目指している。生活のスタイルを変えない彼らを受け入れる地域住民は、忍耐を強いられる場面もあるだろう。 「異質」を受け入れがたい日本人は、彼らの存在を拒絶するかもしれない。すでにその兆しはあるが、感情に端を発した排斥運動ほど、醜いものはないと思う。 日本各地で移民問題が起きている。「多様性」や「共生社会」を目指すのであれば、国も現実を直視し、取り締まりの強化だけでなく共生を促す仕組みを真剣に考えるべきなのだ。 これまでも「移民排斥」は世界のあらゆる場所で行われてきた。明治以降、日本人も南北アメリカ大陸やハワイなどへ移民として海を超えていった。現地では安価な労働力として需要が増し、人口も増えていった。 その結果、人種的偏見などから差別され、日本人排斥運動にまで高まることとなった。排斥運動の背景には、ナショナリズムの台頭と不況からくる生活苦が存在する。現在、その条件は整っている。 自分の国がない人々の気持ちを理解することは難しい。だが、彼らの育った環境を想像し、共感することは我々にもできるだろう。今後も国内には隣人として多くの外国人が住み続けることになる。彼らとの生活を円滑に進めていくためにも、改めて自分の中の差別意識を意識し、確認しておきたい』、「移民」のなかでも「クルド人」は帰る祖国もない気の毒な存在だ。「彼らの育った環境を想像し、共感することは我々にもできるだろう。今後も国内には隣人として多くの外国人が住み続けることになる。彼らとの生活を円滑に進めていくためにも、改めて自分の中の差別意識を意識し、確認しておきたい」、同感である。
外国人問題(その9)(「特高マインド」が脈々と ウィシュマさんの死によって判明した入管の異常な体質、じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」、日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」 地区ごとの特徴) [社会]
外国人問題については、本年3月29日に取上げた。今日は、(その9)(「特高マインド」が脈々と ウィシュマさんの死によって判明した入管の異常な体質、じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」、日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」 地区ごとの特徴)である。
先ずは、7月6日付けAERAdot「「特高マインド」が脈々と ウィシュマさんの死によって判明した入管の異常な体質」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/articles/-/194815?page=1
・『名古屋入管で収容中に死亡したスリランカ人女性ウィシュマさんの監視カメラ映像が法廷で上映された。だが彼女の死後も、命を軽視する入管の体質は変わっていない。弁護士が指摘する「特高マインド」とは何か。AERA 2023年7月10日号の記事を紹介する。 ウィシュマさんの遺族代理人の高橋済(わたる)弁護士は、根底には入管に横たわる「特高マインド」があると指摘する。 特別高等警察、略して「特高」。戦前、思想犯や反政府活動などを弾圧してきた秘密警察だ。戦後、特高は解体されるが、その関係者の少なからぬ部分が入管に携わるようになったといわれる。その特高マインドが今も脈々と入管に流れていると感じると、高橋弁護士は言う。 「在留資格のない外国人は『憲法の番外地』、つまり、人権を認めないというのが入管の考え方としてあります。収容者を『制圧行為』と称し、多数の職員で暴行を加えるなど人権を無視する事例は施設内で度々起きています。これは、外国人は取り締まりの対象であり社会に危害を加える存在だという、戦前の特高のマインドが今も引き継がれているからだと思います」 同時に、こうした入管の体質を許してきたのは、日本人が少なからず持っている外国人への差別心とも関係しているという。 5月、日本維新の会の梅村みずほ議員は国会で、ウィシュマさんは「ハンストによる体調不良で亡くなったかもしれない」などと発言した。根拠のない発言にウィシュマさんの遺族は強く抗議したが、こうした言動の根っこには、外国人に対する差別心があると高橋弁護士は話す。 「日本は同質性が高い社会のため、多かれ少なかれ、外国人は自分たちの社会に危害を加えるという、漠然とした差別心があると思います」 そうした中、6月9日に改正入管法が国会で成立した。難民申請が3回目以降の申請者は「相当の理由」が示されなければ送還できるようになる。今後は入管への収容者も増えていくと考えられ、このままでは第2、第3のウィシュマさんが出る恐れがある。 STARTの松井さんは、「今まで以上に収容者への基本的人権の侵害は許されないと発信していく必要がある」と話す。 「救済されるべき人たちは救済されなければならず、強制的に送り返すことは絶対にしてはいけない。そのためにも、強制的に送り返すという入管の方針を転換していく必要があります」』、「根底には入管に横たわる「特高マインド」があると指摘する。 特別高等警察、略して「特高」。戦前、思想犯や反政府活動などを弾圧してきた秘密警察だ。戦後、特高は解体されるが、その関係者の少なからぬ部分が入管に携わるようになったといわれる。その特高マインドが今も脈々と入管に流れていると感じると、高橋弁護士は言う」、いまだに「「特高マインド」がある」とは恐ろしい話だ。 「在留資格のない外国人は『憲法の番外地』、つまり、人権を認めないというのが入管の考え方としてあります」、飛んでもない話だ。
・『根本的な見直しが必要 STARTの千種さんは、「施設内で起きる問題を可視化していくことが重要」と話した。 「入管が一番恐れているのは、収容されている当事者たちが団結して自分たちに向かってくることです。そのためにも、入管で起きている問題を、収容されている人たちと一緒に取り上げて声にして社会的に明らかにし、入管が変わらざるを得ない状況をつくりあげていくことです。それが、これ以上、施設で亡くなる人を出さないためにも重要です」 高橋弁護士は、まずは「制度の土台から変えていく必要がある」と指摘する。 「小手先の改革で常勤医師を配置しても何も変わりません。いまは全ての権限が入管に集中しているため、収容するかしないかは入管の裁量次第で決まります。本来は、どのような人を収容するかは法律でルールを明文化し、裁判所が判断していくよう整備しなければいけません。これは、国連の自由権規約委員会からも、改善を求められていることです」 そして最終的には、巨大な裁量権を持つ入管を解体することが必要だという。解体し、収容の判断は裁判所が行い、運用は民間に委託するなどし、難民保護は第三者機関が行う。入管は、入管の本来の目的である強制送還の業務だけを担うようにするなど、抜本的な入管行政の見直しが不可欠だ、と。 「同時に、日本人の中にある外国人に対する差別心をなくしていく教育を子どもも大人も行うなど、社会全体で変わっていく必要があります」(高橋弁護士)』、「いまは全ての権限が入管に集中しているため、収容するかしないかは入管の裁量次第で決まります。本来は、どのような人を収容するかは法律でルールを明文化し、裁判所が判断していくよう整備しなければいけません。これは、国連の自由権規約委員会からも、改善を求められていることです」、「最終的には、巨大な裁量権を持つ入管を解体することが必要だという。解体し、収容の判断は裁判所が行い、運用は民間に委託するなどし、難民保護は第三者機関が行う。入管は、入管の本来の目的である強制送還の業務だけを担うようにするなど、抜本的な入管行政の見直しが不可欠だ、」、その通りだ。
次に、7月10日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの中島 恵氏による「じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/112850?imp=0
・『東京に拠点を持つ中国人 近年、国内の政治情勢などを背景に、日本に移住する中国人が増えているが、在日中国人が最も多く住んでいる地域はどこか、ご存じだろうか。法務省の在留外国人統計(2022年6月末時点)によると、それは東京都で、約22万2000人となっている。在日中国人総数は約75万人なので、約3~4分の1が東京都に居住していることになる(続いて多いのは、埼玉県、神奈川県、大阪府、千葉県の順)。 さらに、都内での居住地域を細かく見てみると、最も多いのは江東区だった。2位は足立区、3位は江戸川区、4位は新宿区、5位は板橋区となっており、新宿区を除いて住宅地のイメージが強い地区となっている。中華料理店が多いイメージがある池袋を含む豊島区などはトップ5には入っていない。 なぜ、中国人はこれらの地域に多く住んでいるのか。同じ在日中国人でも、居住地域によって住んでいる人の特徴に違いはあるのか。各行政区の中国人に関する詳細な情報はないが、私はこれらの地区に住む中国人の知人に話を聞き、そこに住む理由を聞いてみた。そこから浮かび上がってきたものは――』、「在日中国人が最も多く住んでいる地域は・・・東京都で、約22万2000人・・・在日中国人総数は約75万人なので、約3~4分の1が東京都に居住・・・続いて多いのは、埼玉県、神奈川県、大阪府、千葉県の順」、「大阪府」は意外に少ないようだ。
・『「亀戸は庶民的で中国食材店も多い」 「中国人の友人から、この付近(江東区亀戸)はとにかく物価が安くて、庶民的で、中国食材店も多いから住みやすいよ、と勧められたので、数年前に移り住みました。会社は新宿なので、最寄りのJR総武線亀戸駅から1本で行けるし、出張のときには東京駅にも10分ほどでアクセスできるので、かなり便利ですよ」 こう語るのは、IT企業に勤務する30代の中国人男性Aさん。10年以上前、中国の東北部から来日し、日系、中国系企業に勤務してきた。以前は千葉県に住んでいたが、勤務先がある新宿に少しでも近いほうがよいと考えて、亀戸に移ったという。 亀戸は、「亀戸天神」や「亀戸餃子」などがあり、下町の庶民的なイメージがある。 その通り、駅から徒歩5分の距離には「亀戸五丁目中央通商店街」があり、レタスが2個で98円など激安の青果店や、Aさんが話していた中国食材店が数軒ある。連続して商店が軒を連ねているわけではないため、同じ総武線の(荒川を超えた江戸川区にある)新小岩、小岩などの商店街と比べると賑わっているというほどではなく、「中国人比率」はそれほど高くないように感じる。 だが、Aさんによると、同商店街から西方向に数分歩いた距離にある「亀戸二丁目団地」では中国人を多く見かけるという。 「私自身もそこに住んでいるのですが、とにかく中国人が多いですよ。家賃が安いし、ここには中国の団地みたいな雰囲気があるんです。団地の真ん中に中庭があり、クルマが中まで入ってこないので、小さな子どもが遊んでいても安心。交通量の多い道路に面したマンションよりも、建物に囲われている分、安心感があるんです」(Aさん) 私もこの団地に足を運んだことがあるが、UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)の物件で、保証人が不要であること、家賃が比較的安いこと(UR都市機構のウェブサイトによると、1LDK~3Kまでで約8万4000円~約13万3000円)、敷地内に激安スーパーがあるという諸条件が、中国人比率が全体の5割近い埼玉県川口市の芝園団地と酷似している』、「東京」のなかでは、「江東区亀戸はとにかく物価が安くて、庶民的で、中国食材店も多いから住みやすいよ、と勧められたので、数年前に移り住みました。会社は新宿なので、最寄りのJR総武線亀戸駅から1本で行けるし、出張のときには東京駅にも10分ほどでアクセスできるので、かなり便利ですよ」(IT企業に勤務する30代の中国人男性)、なるほど。
・『中国人ネットワーク 同じ江東区に、もう一ヵ所、中国人が急速に増えている地域がある。豊洲だ。 地下鉄有楽町線の豊洲駅に降り立つと、高層ビルやタワーマンションが複数そびえ立っており、亀戸と違って、生活感はまったく感じられない。) 私は今年5月に出版した『中国人が日本を買う理由』の中で、豊洲のタワーマンション(約7000万円)を購入した20代の若者のことを書いた。この若者が豊洲に引っ越してきたのは22年春。 彼は私に「中国人の友人から、中国人の間でいま豊洲の人気が上がっていると聞き、20年に一室購入しました。上層階から海が見渡せる眺望も気に入りました」と話していた。 このように、江東区内には、下町風情が漂い、激安店が多い亀戸と、新興都市としてオフィスビルが立ち並ぶ豊洲という2つの対照的な地区がある。公共交通機関も、JR総武線、地下鉄有楽町線、東西線、都営新宿線があり、いずれも都心へのアクセスがいい。それが(在日中国人が住む地域として)1位にランクインした理由の一つかもしれないと感じた。では、2位以下はどうなっているのか。 江東区の次に中国人が多いのは足立区だ。以前はあまりイメージがよくないという日本人もいたが、リクルートが実施している「SUUMO住みたい町ランキング2023首都圏版」では北千住が28位にランクインするなど、近年は人気が上がっている。 駅前にはルミネやマルイなどのファッションビルも立ち並んでいる北千住。駅前に中国をイメージするものはほとんどないが、住宅街や、近隣の竹ノ塚駅のほうまで行ってみると、中華食材店、中華料理店が増えている。 私の知人の中国人も北千住に住んでいるが、彼は「知り合いの中国人不動産屋から、建売のいい一軒家があると紹介されたのが北千住でした。庭つきの家で子どもを伸び伸びと育てたいと、ここにしました。日比谷線の沿線に勤務先があるので便利なんです」と、引っ越してきた理由を話した。 3位の江戸川区は前述した江東区と同じ路線上にあり、千葉県に近い。江東区と同じく、庶民的な商店が多く、家賃や物価が安い。JR総武線の平井駅付近には外国人留学生向けの日本語学校や、中国人専門の大学受験予備校があり、亀戸や小岩と並んで中国人率が非常に高い。 同じ江戸川区葛西に住む知人の中国人は「東西線の葛西や行徳にも中国人が多いですが、平井は第二の高田馬場になるような気がする」と話す。 その高田馬場があるのが4位の新宿区だ。歌舞伎町、大久保などの歓楽街のイメージがあるが、中国人にとっては、日本語学校や専門学校が多いところというイメージ。3年前に中国の高校を卒業後に来日した女性、Bさんは、高田馬場にある日本語学校に入学するのと同時に、同じ駅前にある大学受験予備校にも入学。その予備校の担当者から住居を紹介され、高田馬場にマンションを借りた。日本語学校、大学受験予備校、不動産店のいずれの担当者も中国人だ。 高田馬場駅前を降りると、大学受験予備校の看板が多数並んでいる。そこに通う中国人留学生を目当てにした「ガチ中華」の店も多く、早稲田大学まで続く早稲田通り沿いには、中国で人気の飲食チェーン店が軒を連ねている。 以前、駅前の大学受験予備校でアルバイトをしていたという中国人男性は、「この町が気に入り、受験が終わっても、この町に住み続けるという友だちが少なくないです」と話していた。5位は板橋区。板橋区は池袋がある豊島区に隣接しており、JR埼京線、都営三田線、東武東上線、地下鉄有楽町線・副都心線が走っている。都営三田線を除いた路線はすべて池袋駅につながっており、通勤に便利な割に家賃が比較的安く、庶民的なエリアだ。 このように、中国人が多い地区のトップ5を見てみると、共通点が浮かび上がってくる。それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ。これらの情報は中国人が頻繁に使っているSNS、ウィーチャットで流れてくる。それを見て、さらに、そこに人が集住するという流れになっている。 【後編】『日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」』では、これまでの在日中国人とは様相の異なる「在日中国人」が増えてきたことについて説明する』、「同じ江東区に、もう一ヵ所、中国人が急速に増えている地域がある。豊洲だ・・・江東区内には、下町風情が漂い、激安店が多い亀戸と、新興都市としてオフィスビルが立ち並ぶ豊洲という2つの対照的な地区がある」、「3位の江戸川区は前述した江東区と同じ路線上にあり、千葉県に近い。江東区と同じく、庶民的な商店が多く、家賃や物価が安い。JR総武線の平井駅付近には外国人留学生向けの日本語学校や、中国人専門の大学受験予備校があり、亀戸や小岩と並んで中国人率が非常に高い」、「高田馬場があるのが4位の新宿区だ。歌舞伎町、大久保などの歓楽街のイメージがあるが、中国人にとっては、日本語学校や専門学校が多いところというイメージ」、「5位は板橋区。板橋区は池袋がある豊島区に隣接しており、JR埼京線、都営三田線、東武東上線、地下鉄有楽町線・副都心線が走っている。都営三田線を除いた路線はすべて池袋駅につながっており、通勤に便利な割に家賃が比較的安く、庶民的なエリアだ」、「中国人が多い地区のトップ5を見てみると、共通点が浮かび上がってくる。それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ」、なるほど。
第三に、7月10日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの中島 恵氏による「日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」 地区ごとの特徴」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/112849?imp=0
・・・「馴染みのある地区」を選ばない だが、近年来日した富裕層の人の中には、これら、長年日本に住んでいる在日中国人にとって「馴染みのある地区」を選ばない人が増えている。タワーマンションが多い豊洲だけは例外だが、近年、日本に移住してきた人に、どこに住んでいるかと聞いてみると、港区、品川区、渋谷区、という答えが返ってきた。 むろん、「中国人富裕層が住む地区の統計」といったものは存在しないので、あくまでも私が取材した範囲内の話だが、彼らは、日本在住歴が長い中国人とは異なるネットワークを持っており、そこで得た情報によって居住区を決めているようだ。) 2年前、日本にある大手中国系IT企業に駐在員としてやってきた30代の男性は、会社の総務部の手配で港区を推薦されたため、そこに住み始めたと話してくれた。 「会社は大手町にあり、そこから近いので六本木の賃貸マンションに住んでいます。私は東京に詳しくなく、地理もよくわかりませんが、ここは治安もいいし、ステータスの面でも満足できると思いました。家賃は30万円以上しますが、会社負担です。 いまは駐在員ですけど、1年以内に、投資目的でこの近くにマンションを購入しようと考えています。他の駐在員仲間も六本木や麻布に多く住んでいますよ。仕事で遅くなっても、タクシーですぐに帰宅できるし、東京タワーも見える眺めのいいマンションなので気に入っています」 その男性によると、富裕層の友人の中には、森ビルが手掛けている高級マンション「麻布台ヒルズ」を購入している人が何人もいるという。彼が入っている駐在員や富裕層のSNSグループには、頻繁に高級物件の情報が流れてくるので、彼自身も投資用に購入したいと話していた』、「近年来日した富裕層の人の中には、これら、長年日本に住んでいる在日中国人にとって「馴染みのある地区」を選ばない人が増えている。タワーマンションが多い豊洲だけは例外だが、近年、日本に移住してきた人に、どこに住んでいるかと聞いてみると、港区、品川区、渋谷区、という答えが返ってきた」、なるほど。
・『通勤する必要のない富裕層の在日中国人 また、近年来日した富裕層の特徴として挙げられるのが、「日本語があまりできない」ことだ。10年以上前に来日した中国人は、日本の大学を卒業し、日本企業に勤務している人が多い。 彼らは日本社会にある程度溶け込んでおり、日本人と同等の給料を得て生活していることから、日本人と似たような消費意識を持っている。記事の前半で紹介したように、物価が安く、商店街があり、勤務先へのアクセスがいいところに住みたいという日本人のような考え方の人が多いが、近年来日した中国人は感覚がかなり異なるようだ。 彼らの多くは30~50代の働き盛りだが、中国で財を成した人が多く、日本に移住してからはどこかに通勤する必要がない。そして、子ども連れで来日する場合、子どもを日本のインターナショナルスクールに通わせたいと考えている人が多い。 そのため、ある中国人は「港区、目黒区などにあるインターナショナルスクールを検討しているので、住居もその近くにしたい」と話していた。品川区に住む私の知人の中国人も、子どもが虎ノ門にあるインターナショナル幼稚園に通っているため、その近くで物件を探したと言っていた。 これらの富裕層はまだごく一握りしかおらず、在日中国人の中で少数派だが、今後、中国の情勢によって、移住者はもっと増える可能性もある。だが、すでに約75万人に上っている在日中国人の大半は、前編で紹介したような一般会社員などであり、中国人が多く集住している地区を好む傾向があることがわかる。 こうした傾向は、東京都の次に多い埼玉県、神奈川県などでも同様で、埼玉県でいえば川口市、神奈川県でいえば横浜市がそれに当たる。ふだん、すぐそばに住んでいても、その存在について深く考える機会の少ない在日中国人。 だが、その居住地区をよく見てみると、来日した時期や収入などによる彼らの傾向や層、最近の特徴といったものが見えてくるのではないだろうか』、「10年以上前に来日した中国人は、日本の大学を卒業し、日本企業に勤務している人が多い。 彼らは日本社会にある程度溶け込んでおり、日本人と同等の給料を得て生活していることから、日本人と似たような消費意識を持っている。記事の前半で紹介したように、物価が安く、商店街があり、勤務先へのアクセスがいいところに住みたいという日本人のような考え方の人が多いが、近年来日した中国人は感覚がかなり異なるようだ・・・彼らの多くは30~50代の働き盛りだが、中国で財を成した人が多く、日本に移住してからはどこかに通勤する必要がない。そして、子ども連れで来日する場合、子どもを日本のインターナショナルスクールに通わせたいと考えている人が多い。 そのため、ある中国人は「港区、目黒区などにあるインターナショナルスクールを検討しているので、住居もその近くにしたい」と話していた・・・これらの富裕層はまだごく一握りしかおらず、在日中国人の中で少数派だが、今後、中国の情勢によって、移住者はもっと増える可能性もある。だが、すでに約75万人に上っている在日中国人の大半は、前編で紹介したような一般会社員などであり、中国人が多く集住している地区を好む傾向がある」、「在日中国人の大半は・・・一般会社員などであり、中国人が多く集住している地区を好む傾向がある」、全体としてはやはり堅実なようだ。
先ずは、7月6日付けAERAdot「「特高マインド」が脈々と ウィシュマさんの死によって判明した入管の異常な体質」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/articles/-/194815?page=1
・『名古屋入管で収容中に死亡したスリランカ人女性ウィシュマさんの監視カメラ映像が法廷で上映された。だが彼女の死後も、命を軽視する入管の体質は変わっていない。弁護士が指摘する「特高マインド」とは何か。AERA 2023年7月10日号の記事を紹介する。 ウィシュマさんの遺族代理人の高橋済(わたる)弁護士は、根底には入管に横たわる「特高マインド」があると指摘する。 特別高等警察、略して「特高」。戦前、思想犯や反政府活動などを弾圧してきた秘密警察だ。戦後、特高は解体されるが、その関係者の少なからぬ部分が入管に携わるようになったといわれる。その特高マインドが今も脈々と入管に流れていると感じると、高橋弁護士は言う。 「在留資格のない外国人は『憲法の番外地』、つまり、人権を認めないというのが入管の考え方としてあります。収容者を『制圧行為』と称し、多数の職員で暴行を加えるなど人権を無視する事例は施設内で度々起きています。これは、外国人は取り締まりの対象であり社会に危害を加える存在だという、戦前の特高のマインドが今も引き継がれているからだと思います」 同時に、こうした入管の体質を許してきたのは、日本人が少なからず持っている外国人への差別心とも関係しているという。 5月、日本維新の会の梅村みずほ議員は国会で、ウィシュマさんは「ハンストによる体調不良で亡くなったかもしれない」などと発言した。根拠のない発言にウィシュマさんの遺族は強く抗議したが、こうした言動の根っこには、外国人に対する差別心があると高橋弁護士は話す。 「日本は同質性が高い社会のため、多かれ少なかれ、外国人は自分たちの社会に危害を加えるという、漠然とした差別心があると思います」 そうした中、6月9日に改正入管法が国会で成立した。難民申請が3回目以降の申請者は「相当の理由」が示されなければ送還できるようになる。今後は入管への収容者も増えていくと考えられ、このままでは第2、第3のウィシュマさんが出る恐れがある。 STARTの松井さんは、「今まで以上に収容者への基本的人権の侵害は許されないと発信していく必要がある」と話す。 「救済されるべき人たちは救済されなければならず、強制的に送り返すことは絶対にしてはいけない。そのためにも、強制的に送り返すという入管の方針を転換していく必要があります」』、「根底には入管に横たわる「特高マインド」があると指摘する。 特別高等警察、略して「特高」。戦前、思想犯や反政府活動などを弾圧してきた秘密警察だ。戦後、特高は解体されるが、その関係者の少なからぬ部分が入管に携わるようになったといわれる。その特高マインドが今も脈々と入管に流れていると感じると、高橋弁護士は言う」、いまだに「「特高マインド」がある」とは恐ろしい話だ。 「在留資格のない外国人は『憲法の番外地』、つまり、人権を認めないというのが入管の考え方としてあります」、飛んでもない話だ。
・『根本的な見直しが必要 STARTの千種さんは、「施設内で起きる問題を可視化していくことが重要」と話した。 「入管が一番恐れているのは、収容されている当事者たちが団結して自分たちに向かってくることです。そのためにも、入管で起きている問題を、収容されている人たちと一緒に取り上げて声にして社会的に明らかにし、入管が変わらざるを得ない状況をつくりあげていくことです。それが、これ以上、施設で亡くなる人を出さないためにも重要です」 高橋弁護士は、まずは「制度の土台から変えていく必要がある」と指摘する。 「小手先の改革で常勤医師を配置しても何も変わりません。いまは全ての権限が入管に集中しているため、収容するかしないかは入管の裁量次第で決まります。本来は、どのような人を収容するかは法律でルールを明文化し、裁判所が判断していくよう整備しなければいけません。これは、国連の自由権規約委員会からも、改善を求められていることです」 そして最終的には、巨大な裁量権を持つ入管を解体することが必要だという。解体し、収容の判断は裁判所が行い、運用は民間に委託するなどし、難民保護は第三者機関が行う。入管は、入管の本来の目的である強制送還の業務だけを担うようにするなど、抜本的な入管行政の見直しが不可欠だ、と。 「同時に、日本人の中にある外国人に対する差別心をなくしていく教育を子どもも大人も行うなど、社会全体で変わっていく必要があります」(高橋弁護士)』、「いまは全ての権限が入管に集中しているため、収容するかしないかは入管の裁量次第で決まります。本来は、どのような人を収容するかは法律でルールを明文化し、裁判所が判断していくよう整備しなければいけません。これは、国連の自由権規約委員会からも、改善を求められていることです」、「最終的には、巨大な裁量権を持つ入管を解体することが必要だという。解体し、収容の判断は裁判所が行い、運用は民間に委託するなどし、難民保護は第三者機関が行う。入管は、入管の本来の目的である強制送還の業務だけを担うようにするなど、抜本的な入管行政の見直しが不可欠だ、」、その通りだ。
次に、7月10日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの中島 恵氏による「じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/112850?imp=0
・『東京に拠点を持つ中国人 近年、国内の政治情勢などを背景に、日本に移住する中国人が増えているが、在日中国人が最も多く住んでいる地域はどこか、ご存じだろうか。法務省の在留外国人統計(2022年6月末時点)によると、それは東京都で、約22万2000人となっている。在日中国人総数は約75万人なので、約3~4分の1が東京都に居住していることになる(続いて多いのは、埼玉県、神奈川県、大阪府、千葉県の順)。 さらに、都内での居住地域を細かく見てみると、最も多いのは江東区だった。2位は足立区、3位は江戸川区、4位は新宿区、5位は板橋区となっており、新宿区を除いて住宅地のイメージが強い地区となっている。中華料理店が多いイメージがある池袋を含む豊島区などはトップ5には入っていない。 なぜ、中国人はこれらの地域に多く住んでいるのか。同じ在日中国人でも、居住地域によって住んでいる人の特徴に違いはあるのか。各行政区の中国人に関する詳細な情報はないが、私はこれらの地区に住む中国人の知人に話を聞き、そこに住む理由を聞いてみた。そこから浮かび上がってきたものは――』、「在日中国人が最も多く住んでいる地域は・・・東京都で、約22万2000人・・・在日中国人総数は約75万人なので、約3~4分の1が東京都に居住・・・続いて多いのは、埼玉県、神奈川県、大阪府、千葉県の順」、「大阪府」は意外に少ないようだ。
・『「亀戸は庶民的で中国食材店も多い」 「中国人の友人から、この付近(江東区亀戸)はとにかく物価が安くて、庶民的で、中国食材店も多いから住みやすいよ、と勧められたので、数年前に移り住みました。会社は新宿なので、最寄りのJR総武線亀戸駅から1本で行けるし、出張のときには東京駅にも10分ほどでアクセスできるので、かなり便利ですよ」 こう語るのは、IT企業に勤務する30代の中国人男性Aさん。10年以上前、中国の東北部から来日し、日系、中国系企業に勤務してきた。以前は千葉県に住んでいたが、勤務先がある新宿に少しでも近いほうがよいと考えて、亀戸に移ったという。 亀戸は、「亀戸天神」や「亀戸餃子」などがあり、下町の庶民的なイメージがある。 その通り、駅から徒歩5分の距離には「亀戸五丁目中央通商店街」があり、レタスが2個で98円など激安の青果店や、Aさんが話していた中国食材店が数軒ある。連続して商店が軒を連ねているわけではないため、同じ総武線の(荒川を超えた江戸川区にある)新小岩、小岩などの商店街と比べると賑わっているというほどではなく、「中国人比率」はそれほど高くないように感じる。 だが、Aさんによると、同商店街から西方向に数分歩いた距離にある「亀戸二丁目団地」では中国人を多く見かけるという。 「私自身もそこに住んでいるのですが、とにかく中国人が多いですよ。家賃が安いし、ここには中国の団地みたいな雰囲気があるんです。団地の真ん中に中庭があり、クルマが中まで入ってこないので、小さな子どもが遊んでいても安心。交通量の多い道路に面したマンションよりも、建物に囲われている分、安心感があるんです」(Aさん) 私もこの団地に足を運んだことがあるが、UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)の物件で、保証人が不要であること、家賃が比較的安いこと(UR都市機構のウェブサイトによると、1LDK~3Kまでで約8万4000円~約13万3000円)、敷地内に激安スーパーがあるという諸条件が、中国人比率が全体の5割近い埼玉県川口市の芝園団地と酷似している』、「東京」のなかでは、「江東区亀戸はとにかく物価が安くて、庶民的で、中国食材店も多いから住みやすいよ、と勧められたので、数年前に移り住みました。会社は新宿なので、最寄りのJR総武線亀戸駅から1本で行けるし、出張のときには東京駅にも10分ほどでアクセスできるので、かなり便利ですよ」(IT企業に勤務する30代の中国人男性)、なるほど。
・『中国人ネットワーク 同じ江東区に、もう一ヵ所、中国人が急速に増えている地域がある。豊洲だ。 地下鉄有楽町線の豊洲駅に降り立つと、高層ビルやタワーマンションが複数そびえ立っており、亀戸と違って、生活感はまったく感じられない。) 私は今年5月に出版した『中国人が日本を買う理由』の中で、豊洲のタワーマンション(約7000万円)を購入した20代の若者のことを書いた。この若者が豊洲に引っ越してきたのは22年春。 彼は私に「中国人の友人から、中国人の間でいま豊洲の人気が上がっていると聞き、20年に一室購入しました。上層階から海が見渡せる眺望も気に入りました」と話していた。 このように、江東区内には、下町風情が漂い、激安店が多い亀戸と、新興都市としてオフィスビルが立ち並ぶ豊洲という2つの対照的な地区がある。公共交通機関も、JR総武線、地下鉄有楽町線、東西線、都営新宿線があり、いずれも都心へのアクセスがいい。それが(在日中国人が住む地域として)1位にランクインした理由の一つかもしれないと感じた。では、2位以下はどうなっているのか。 江東区の次に中国人が多いのは足立区だ。以前はあまりイメージがよくないという日本人もいたが、リクルートが実施している「SUUMO住みたい町ランキング2023首都圏版」では北千住が28位にランクインするなど、近年は人気が上がっている。 駅前にはルミネやマルイなどのファッションビルも立ち並んでいる北千住。駅前に中国をイメージするものはほとんどないが、住宅街や、近隣の竹ノ塚駅のほうまで行ってみると、中華食材店、中華料理店が増えている。 私の知人の中国人も北千住に住んでいるが、彼は「知り合いの中国人不動産屋から、建売のいい一軒家があると紹介されたのが北千住でした。庭つきの家で子どもを伸び伸びと育てたいと、ここにしました。日比谷線の沿線に勤務先があるので便利なんです」と、引っ越してきた理由を話した。 3位の江戸川区は前述した江東区と同じ路線上にあり、千葉県に近い。江東区と同じく、庶民的な商店が多く、家賃や物価が安い。JR総武線の平井駅付近には外国人留学生向けの日本語学校や、中国人専門の大学受験予備校があり、亀戸や小岩と並んで中国人率が非常に高い。 同じ江戸川区葛西に住む知人の中国人は「東西線の葛西や行徳にも中国人が多いですが、平井は第二の高田馬場になるような気がする」と話す。 その高田馬場があるのが4位の新宿区だ。歌舞伎町、大久保などの歓楽街のイメージがあるが、中国人にとっては、日本語学校や専門学校が多いところというイメージ。3年前に中国の高校を卒業後に来日した女性、Bさんは、高田馬場にある日本語学校に入学するのと同時に、同じ駅前にある大学受験予備校にも入学。その予備校の担当者から住居を紹介され、高田馬場にマンションを借りた。日本語学校、大学受験予備校、不動産店のいずれの担当者も中国人だ。 高田馬場駅前を降りると、大学受験予備校の看板が多数並んでいる。そこに通う中国人留学生を目当てにした「ガチ中華」の店も多く、早稲田大学まで続く早稲田通り沿いには、中国で人気の飲食チェーン店が軒を連ねている。 以前、駅前の大学受験予備校でアルバイトをしていたという中国人男性は、「この町が気に入り、受験が終わっても、この町に住み続けるという友だちが少なくないです」と話していた。5位は板橋区。板橋区は池袋がある豊島区に隣接しており、JR埼京線、都営三田線、東武東上線、地下鉄有楽町線・副都心線が走っている。都営三田線を除いた路線はすべて池袋駅につながっており、通勤に便利な割に家賃が比較的安く、庶民的なエリアだ。 このように、中国人が多い地区のトップ5を見てみると、共通点が浮かび上がってくる。それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ。これらの情報は中国人が頻繁に使っているSNS、ウィーチャットで流れてくる。それを見て、さらに、そこに人が集住するという流れになっている。 【後編】『日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」』では、これまでの在日中国人とは様相の異なる「在日中国人」が増えてきたことについて説明する』、「同じ江東区に、もう一ヵ所、中国人が急速に増えている地域がある。豊洲だ・・・江東区内には、下町風情が漂い、激安店が多い亀戸と、新興都市としてオフィスビルが立ち並ぶ豊洲という2つの対照的な地区がある」、「3位の江戸川区は前述した江東区と同じ路線上にあり、千葉県に近い。江東区と同じく、庶民的な商店が多く、家賃や物価が安い。JR総武線の平井駅付近には外国人留学生向けの日本語学校や、中国人専門の大学受験予備校があり、亀戸や小岩と並んで中国人率が非常に高い」、「高田馬場があるのが4位の新宿区だ。歌舞伎町、大久保などの歓楽街のイメージがあるが、中国人にとっては、日本語学校や専門学校が多いところというイメージ」、「5位は板橋区。板橋区は池袋がある豊島区に隣接しており、JR埼京線、都営三田線、東武東上線、地下鉄有楽町線・副都心線が走っている。都営三田線を除いた路線はすべて池袋駅につながっており、通勤に便利な割に家賃が比較的安く、庶民的なエリアだ」、「中国人が多い地区のトップ5を見てみると、共通点が浮かび上がってくる。それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ」、なるほど。
第三に、7月10日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの中島 恵氏による「日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」 地区ごとの特徴」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/112849?imp=0
・・・「馴染みのある地区」を選ばない だが、近年来日した富裕層の人の中には、これら、長年日本に住んでいる在日中国人にとって「馴染みのある地区」を選ばない人が増えている。タワーマンションが多い豊洲だけは例外だが、近年、日本に移住してきた人に、どこに住んでいるかと聞いてみると、港区、品川区、渋谷区、という答えが返ってきた。 むろん、「中国人富裕層が住む地区の統計」といったものは存在しないので、あくまでも私が取材した範囲内の話だが、彼らは、日本在住歴が長い中国人とは異なるネットワークを持っており、そこで得た情報によって居住区を決めているようだ。) 2年前、日本にある大手中国系IT企業に駐在員としてやってきた30代の男性は、会社の総務部の手配で港区を推薦されたため、そこに住み始めたと話してくれた。 「会社は大手町にあり、そこから近いので六本木の賃貸マンションに住んでいます。私は東京に詳しくなく、地理もよくわかりませんが、ここは治安もいいし、ステータスの面でも満足できると思いました。家賃は30万円以上しますが、会社負担です。 いまは駐在員ですけど、1年以内に、投資目的でこの近くにマンションを購入しようと考えています。他の駐在員仲間も六本木や麻布に多く住んでいますよ。仕事で遅くなっても、タクシーですぐに帰宅できるし、東京タワーも見える眺めのいいマンションなので気に入っています」 その男性によると、富裕層の友人の中には、森ビルが手掛けている高級マンション「麻布台ヒルズ」を購入している人が何人もいるという。彼が入っている駐在員や富裕層のSNSグループには、頻繁に高級物件の情報が流れてくるので、彼自身も投資用に購入したいと話していた』、「近年来日した富裕層の人の中には、これら、長年日本に住んでいる在日中国人にとって「馴染みのある地区」を選ばない人が増えている。タワーマンションが多い豊洲だけは例外だが、近年、日本に移住してきた人に、どこに住んでいるかと聞いてみると、港区、品川区、渋谷区、という答えが返ってきた」、なるほど。
・『通勤する必要のない富裕層の在日中国人 また、近年来日した富裕層の特徴として挙げられるのが、「日本語があまりできない」ことだ。10年以上前に来日した中国人は、日本の大学を卒業し、日本企業に勤務している人が多い。 彼らは日本社会にある程度溶け込んでおり、日本人と同等の給料を得て生活していることから、日本人と似たような消費意識を持っている。記事の前半で紹介したように、物価が安く、商店街があり、勤務先へのアクセスがいいところに住みたいという日本人のような考え方の人が多いが、近年来日した中国人は感覚がかなり異なるようだ。 彼らの多くは30~50代の働き盛りだが、中国で財を成した人が多く、日本に移住してからはどこかに通勤する必要がない。そして、子ども連れで来日する場合、子どもを日本のインターナショナルスクールに通わせたいと考えている人が多い。 そのため、ある中国人は「港区、目黒区などにあるインターナショナルスクールを検討しているので、住居もその近くにしたい」と話していた。品川区に住む私の知人の中国人も、子どもが虎ノ門にあるインターナショナル幼稚園に通っているため、その近くで物件を探したと言っていた。 これらの富裕層はまだごく一握りしかおらず、在日中国人の中で少数派だが、今後、中国の情勢によって、移住者はもっと増える可能性もある。だが、すでに約75万人に上っている在日中国人の大半は、前編で紹介したような一般会社員などであり、中国人が多く集住している地区を好む傾向があることがわかる。 こうした傾向は、東京都の次に多い埼玉県、神奈川県などでも同様で、埼玉県でいえば川口市、神奈川県でいえば横浜市がそれに当たる。ふだん、すぐそばに住んでいても、その存在について深く考える機会の少ない在日中国人。 だが、その居住地区をよく見てみると、来日した時期や収入などによる彼らの傾向や層、最近の特徴といったものが見えてくるのではないだろうか』、「10年以上前に来日した中国人は、日本の大学を卒業し、日本企業に勤務している人が多い。 彼らは日本社会にある程度溶け込んでおり、日本人と同等の給料を得て生活していることから、日本人と似たような消費意識を持っている。記事の前半で紹介したように、物価が安く、商店街があり、勤務先へのアクセスがいいところに住みたいという日本人のような考え方の人が多いが、近年来日した中国人は感覚がかなり異なるようだ・・・彼らの多くは30~50代の働き盛りだが、中国で財を成した人が多く、日本に移住してからはどこかに通勤する必要がない。そして、子ども連れで来日する場合、子どもを日本のインターナショナルスクールに通わせたいと考えている人が多い。 そのため、ある中国人は「港区、目黒区などにあるインターナショナルスクールを検討しているので、住居もその近くにしたい」と話していた・・・これらの富裕層はまだごく一握りしかおらず、在日中国人の中で少数派だが、今後、中国の情勢によって、移住者はもっと増える可能性もある。だが、すでに約75万人に上っている在日中国人の大半は、前編で紹介したような一般会社員などであり、中国人が多く集住している地区を好む傾向がある」、「在日中国人の大半は・・・一般会社員などであり、中国人が多く集住している地区を好む傾向がある」、全体としてはやはり堅実なようだ。
タグ:「高田馬場があるのが4位の新宿区だ。歌舞伎町、大久保などの歓楽街のイメージがあるが、中国人にとっては、日本語学校や専門学校が多いところというイメージ」、「5位は板橋区。板橋区は池袋がある豊島区に隣接しており、JR埼京線、都営三田線、東武東上線、地下鉄有楽町線・副都心線が走っている。都営三田線を除いた路線はすべて池袋駅につながっており、通勤に便利な割に家賃が比較的安く、庶民的なエリアだ」、 「同じ江東区に、もう一ヵ所、中国人が急速に増えている地域がある。豊洲だ・・・江東区内には、下町風情が漂い、激安店が多い亀戸と、新興都市としてオフィスビルが立ち並ぶ豊洲という2つの対照的な地区がある」、「3位の江戸川区は前述した江東区と同じ路線上にあり、千葉県に近い。江東区と同じく、庶民的な商店が多く、家賃や物価が安い。JR総武線の平井駅付近には外国人留学生向けの日本語学校や、中国人専門の大学受験予備校があり、亀戸や小岩と並んで中国人率が非常に高い」、 彼らの多くは30~50代の働き盛りだが、中国で財を成した人が多く、日本に移住してからはどこかに通勤する必要がない。そして、子ども連れで来日する場合、子どもを日本のインターナショナルスクールに通わせたいと考えている人が多い。 そのため、ある中国人は「港区、目黒区などにあるインターナショナルスクールを検討しているので、住居もその近くにしたい」と話していた・・・ 「東京」のなかでは、「江東区亀戸はとにかく物価が安くて、庶民的で、中国食材店も多いから住みやすいよ、と勧められたので、数年前に移り住みました。会社は新宿なので、最寄りのJR総武線亀戸駅から1本で行けるし、出張のときには東京駅にも10分ほどでアクセスできるので、かなり便利ですよ」(IT企業に勤務する30代の中国人男性)、なるほど。 「10年以上前に来日した中国人は、日本の大学を卒業し、日本企業に勤務している人が多い。 彼らは日本社会にある程度溶け込んでおり、日本人と同等の給料を得て生活していることから、日本人と似たような消費意識を持っている。記事の前半で紹介したように、物価が安く、商店街があり、勤務先へのアクセスがいいところに住みたいという日本人のような考え方の人が多いが、近年来日した中国人は感覚がかなり異なるようだ・・・ 「在日中国人が最も多く住んでいる地域は・・・東京都で、約22万2000人・・・在日中国人総数は約75万人なので、約3~4分の1が東京都に居住・・・続いて多いのは、埼玉県、神奈川県、大阪府、千葉県の順」、「大阪府」は意外に少ないようだ。 中島 恵氏による「じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」」 現代ビジネス 政の見直しが不可欠だ、」、その通りだ。 「いまは全ての権限が入管に集中しているため、収容するかしないかは入管の裁量次第で決まります。本来は、どのような人を収容するかは法律でルールを明文化し、裁判所が判断していくよう整備しなければいけません。これは、国連の自由権規約委員会からも、改善を求められていることです」、「最終的には、巨大な裁量権を持つ入管を解体することが必要だという。解体し、収容の判断は裁判所が行い、運用は民間に委託するなどし、難民保護は第三者機関が行う。入管は、入管の本来の目的である強制送還の業務だけを担うようにするなど、抜本的な入管行 「在留資格のない外国人は『憲法の番外地』、つまり、人権を認めないというのが入管の考え方としてあります」、飛んでもない話だ。 「近年来日した富裕層の人の中には、これら、長年日本に住んでいる在日中国人にとって「馴染みのある地区」を選ばない人が増えている。タワーマンションが多い豊洲だけは例外だが、近年、日本に移住してきた人に、どこに住んでいるかと聞いてみると、港区、品川区、渋谷区、という答えが返ってきた」、なるほど。 「根底には入管に横たわる「特高マインド」があると指摘する。 特別高等警察、略して「特高」。戦前、思想犯や反政府活動などを弾圧してきた秘密警察だ。戦後、特高は解体されるが、その関係者の少なからぬ部分が入管に携わるようになったといわれる。その特高マインドが今も脈々と入管に流れていると感じると、高橋弁護士は言う」、いまだに「「特高マインド」がある」とは恐ろしい話だ。 AERAdot「「特高マインド」が脈々と ウィシュマさんの死によって判明した入管の異常な体質」 これらの富裕層はまだごく一握りしかおらず、在日中国人の中で少数派だが、今後、中国の情勢によって、移住者はもっと増える可能性もある。だが、すでに約75万人に上っている在日中国人の大半は、前編で紹介したような一般会社員などであり、中国人が多く集住している地区を好む傾向がある」、「在日中国人の大半は・・・一般会社員などであり、中国人が多く集住している地区を好む傾向がある」、全体としてはやはり堅実なようだ。 「中国人が多い地区のトップ5を見てみると、共通点が浮かび上がってくる。それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ」、なるほど。 中島 恵氏による「日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」 地区ごとの特徴」 (その9)(「特高マインド」が脈々と ウィシュマさんの死によって判明した入管の異常な体質、じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」、日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」 地区ごとの特徴) 外国人問題