宗教(その13)(「カルト後遺症」の深刻 オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ、ベストセラー著者が語る「旧統一教会問題」と「カルト教祖の共通点」 ロビン・ダンバー氏インタビュー) [社会]
宗教については、本年1月25日に取上げた。今日は、(その13)(「カルト後遺症」の深刻 オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ、ベストセラー著者が語る「旧統一教会問題」と「カルト教祖の共通点」 ロビン・ダンバー氏インタビュー)である。
先ずは、本年1月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した中央大学教授の高橋徹氏による「「カルト後遺症」の深刻、オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336762
・『若者の不安や不満につけ込む、カルト宗教団体の勧誘は巧みである。親が気づいたときにはもう遅く、離脱は困難だ。しかも、たとえ運良く脱カルトしたとしても、マインドコントロール下で刻み込まれたカルト的思考や行動様式は、数十年たっても消えないという。※本稿は、『「オウム死刑囚 父の手記」と国家権力』(現代書館)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『逮捕されて父母を泣かせてようやくわかったカルトの罪 金沢市の中心部から車で約一時間、真宗大谷派の浄専寺住職、平野喜之は2007(平成19)年に活動を始めた「『生きて罪を償う』井上嘉浩さんを死刑から守る会」の事務局長を務め、10年以上、嘉浩を支援してきた。平野が井上嘉浩から受け取った手紙は、188通にのぼる。 嘉浩の手紙にはこうある。 「突き詰めますと、麻原を信じたことそのものが罪のはじまりであり、全ての罪の責任は私にあります」 「人にとって救いとは一体何なのでしょうか?その答えがあるとうぬぼれたことが私がオウムに入り大罪を犯しました原因の一つであると今私は考えています」 「麻原は仏教やヨーガの心を変容させていく技術や薬物まで悪用して、徹底的に信者の社会規範や善悪の根本となる個としての人格を破壊していき、代わりに麻原の手足として動く人格を刷り込んでいきました。これが麻原が構築したマインドコントロールです」 「(※編集部注/最高裁で死刑が言い渡された2009年12月10日の)翌日、午前中に両親が面会に参りました。両親がぐったりとしつつ、それでも気丈に振る舞う姿を見て、涙をこらえるのが精一杯でした。父母が、自分たちが悪かったと、なんの責任もないのに、自分たちをせめる姿を見て本当に申し訳ないと、ただただ申し訳ないと、言葉がありませんでした」 「日々、まだ執行されないだろうと思いつつ、いや、わからんぞと、夜明けが恐ろしくもあり、そういうことにとらわれること自体、被害者の方々に申し訳ないと思いつつ、このままでは死にきれない心も消えません。このようなもだえも罪の報いの一つとして静かに見つめている自分もおります」 平野は静かに思いを語った。 「彼にしかできない真相解明とか、彼にしかできないオウム入信者に対して脱会を呼びかけるとか、そういう使命があったと思います。それを果たすことが償うということになったと思いますし、私たちの『守る会』のやっていたことは彼の罪の自覚を深めていくということに集中して支援してきました。罪の自覚を深めることによって本当の心からの被害者への謝罪ができると思います」 教団が救済の名のもとに多くの信徒を集め急拡大し、数々の凶悪事件を起こしていった軌跡は「平成」と重なる。「平成の事件は平成のうちに決着させたい」という政府の思惑だろうか、2018(平成30)年の7月、オウム死刑囚13人の死刑が執行された。) その中の一人が井上嘉浩だった。ホーリーネーム(教団内の宗教名)はアーナンダ。オウム真理教の諜報省トップで、教祖の「側近中の側近」、「修行の天才」、「神通並びなきもの」といわれた教団幹部である。 『生きて罪を償う』井上嘉浩さんを死刑から守る会」は嘉浩の死刑が執行されたことで解散した。機関誌「悲」は16号の追悼号(2018年12月発行)で役目を終えた』、「「平成の事件は平成のうちに決着させたい」という政府の思惑だろうか、2018(平成30)年の7月、オウム死刑囚13人の死刑が執行された」、「死刑囚」の執行が遅れるのが普通だが、「政府の思惑」で異例の執行となったようだ。
・『マインドコントロールが解けてもカルトの傷は残る 平野がもう一つ活動の重点に置いているのが「カルト後遺症」の問題だ。一連のオウム事件がきっかけで誕生した日本脱カルト協会(JSCPR)によると、カルト教団から脱会した人の多くが何らかの『後遺症』に苦しむという。 代表的な症状としては、「神から裁かれるのではないか」という不安感、「自分は裏切り者であり、天罰が下るのではないか」という恐怖感などがあげられる。無理もない話で、身も心も奉じてきた団体の価値観を失い、それまでの理想やアイデンティティをすべて失うことになるからだ。 音楽や映像、においなど些細なことが引き金になり脱会前の心理状態に戻ってしまう、いわゆる「フラッシュバック」もほとんどの人が体験する。 また、せっかく家に戻っても家族や友人、知人との人間関係に悩み、睡眠障害や摂食不良に陥るという例もある。そもそもカルトの多くは、教祖を『父』や『母』としているので、現実の家族に対しては否定的な思いを抱くよう誘導していることが多い。 「何か悪いことが起こると、霊の祟りではないかと、とっさに考えてしまう」と話すのは、日本脱カルト協会の理事で、日本基督教団白河教会牧師の竹迫之だ。 竹迫は1967(昭和42)年、秋田市生まれ。高校3年の時に当時の統一教会(現世界平和統一家庭連合)に勧誘され入会した。「霊感商法」が世間に知られるようになった1980年代半ばのころである。 「マインドコントロールが目指すものは、コントロールする人に対する依存なんです。私の場合は何をするにも指示をしてくれる人の指示を仰ぐというライフスタイルが身についていましたね。なんでも自分で好きに選んでいいよと言われると、かえって何を選んでいいのか分からず混乱する。この依存から離脱するということがマインドコントロールが解けるということなんです。しかし、マインドコントロールは解けても、後遺症は残るんです」) 脱会して十年以上たったころのある体験を竹迫は話してくれた。 「教会の階段を降りていたところ、3段ぐらい踏み外して落ちちゃった。その拍子に左足を3カ所も骨折してしまったんです。そのとき、とっさに霊の祟りではないかと発想が浮かんできた。典型的なカルト後遺症です」 悪いことが起こると、その説明を求めてしまう。竹迫は統一教会を脱会して37年になるが、いまだにそういう瞬間があるという。 「何か不運な目にあったときに、自分に悪いところがあったからではないかと、その原因を追求したくなるものですね。その祟りから逃れるために何かしなくてはいけないという強烈な衝動がわいてくる。私は、マインドコントロール自体は解けているのは間違いないとは思うのですが、けれども後遺症として残っている」』、「悪いことが起こると、その説明を求めてしまう。竹迫は統一教会を脱会して37年になるが、いまだにそういう瞬間があるという・・・カルト後遺症です」、なるほど。
・『被害者どころか支援者にすら独善と映ったオウム元死刑囚 さて、嘉浩にカルト後遺症はあったのだろうか。フォトジャーナリストで『宗教事件の内側 精神を呪縛される人びと』や『カルト宗教事件の深層 「スピリチュアル・アビュース」の論理』などの著書がある藤田庄市は「独善的な修行者意識」という言葉で、嘉浩の後遺症を言い表した。 藤田が注目したのは、目黒公証役場事件で父親を失った仮谷実と嘉浩とのやり取りだった。嘉浩は「亡くなった人たちのことを考えて、できるだけ苦しみを自分に課していきたい」と謝罪したのに対し、仮谷は「被告が苦しんでも、私たちは助からない」と返し、「自らに苦しみを課しても遺族の救済にならない」と突き放した。 「独善的な」とは、修行を続けることにより、人間性も宗教的にも世間より高いところにいるという意識である。 「井上君は麻原教祖とは対決して、『オウムを脱会する』と宣言はしているのだけれども、考え方であるとか、独善的な修行者意識というものは残っていたのではないか。脱会したからといって、カルト思考、カルト的考え方は簡単にはなくならない」と藤田は指摘している。 平野も嘉浩にカルト後遺症を感じていたという。) 「井上君のご両親には申し訳ないが……2018年だったと思うが、『生きて罪を償う会』の内部で、支援を見直そうという声が上がっていた。生来の性格なのか、カルトの後遺症なのか見極めは難しいかもしれないけれども、『麻原は井上君に、こういう指示の仕方をしていたのだ』と感じられるような指示の仕方が井上君から我々『生きて罪を償う会』に対してありました。カルトの怖さは脱会後にも後遺症となって残る。教義から抜けても人間関係の持ち方とか、指示命令系統とかそういうところに残るのではないか」 独善的とも映る嘉浩の振る舞いについて、竹迫はカルト後遺症が影響していた可能性があると話す』、「カルトの怖さは脱会後にも後遺症となって残る。教義から抜けても人間関係の持ち方とか、指示命令系統とかそういうところに残るのではないか」、なるほど。
・『「カルト後遺症」の深刻、オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ 高橋徹「オウム死刑囚 父の手記」と国家権力(現代書館) 「誰もが権力を振るう立場に魅力を感じます。嘉浩君の場合は、教祖の、麻原の振る舞いを見ていたために、それが増幅されていったのではないでしょうか。自分もやってもいいんだというお墨付きをもらった状態です。高校生のうちから入信したため、『人と人との関係はフラットであるべきだ』という考えに触れたことがなかったのではないでしょうか」。 子供をカルトに取られた親の苦痛を平野はこう話した。神奈川県の教会で出会ったある母親の話である。 「私たちは二重に傷つくのです。一つ目は『子供をカルトにとられたこと』、二つ目は『子供がカルトにとられたのはあなたたちのせいでしょうと世間から偏見の目で見られること』です。私の家庭は上手くいっていました。子供がカルトにとられたのは、勧誘が巧みだっただけでしょうと言いたい」 平野は言う。 「世間には、カルトにとられたのは家族のせいだ、やっぱり家族が悪いと誤解する人がいます。片や親自身が『子供の責任を取らなければいけない』と思い詰める人も少なからずいます。日本では特に『子供の罪は親の罪』として、責任を感じる姿が美化されすぎるきらいがあるのではないでしょうか。そのために親が苦しめられることがあります」 井上家に、嘉浩がまだ幼いころの写真が残っている。自宅の前で、ブルーの短パン、アニメのキャラクターがプリントされた白いポロシャツを着て、上下に動かすことができる透明なシールドが付いた戦隊もののヘルメットをかぶって、無邪気に笑っていた。 「もし神が許してくれるなら、どんなことをしてでも、あのころに戻りたいと思います」 私が嘉浩の父に初めて会った日、父はそう話した』、「「私たちは二重に傷つくのです。一つ目は『子供をカルトにとられたこと』、二つ目は『子供がカルトにとられたのはあなたたちのせいでしょうと世間から偏見の目で見られること』です・・・日本では特に『子供の罪は親の罪』として、責任を感じる姿が美化されすぎるきらいがあるのではないでしょうか。そのために親が苦しめられることがあります」、やはり「カルト後遺症」は深刻なようだ。
次に、3月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際ジャーナリストの大野和基氏による「ベストセラー著者が語る「旧統一教会問題」と「カルト教祖の共通点」 ロビン・ダンバー氏インタビュー」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340568
・『無宗教国ニッポンで、ロビン・ダンバー著『宗教の起原』(白揚社)がベストセラーとなっている。著者は、人間の安定的な集団サイズの上限が「150」であると導き出し、人類学のノーベル賞と称される「トマス・ハクスリー記念賞」を受賞した人物だ。本書では、「私たちはいかに信じる心を獲得したのか」「人類進化の過程で『神』はなぜ生まれたのか」「カルト宗教はなぜ次々と生まれ、人々を惹きつけるのか」といった、人類と宗教を巡る根源的な問いを追求している。著者に、日本の旧統一教会問題なども含めて話を聞いた』、興味深そうだ。
・『「カルト宗教」とは何か Q:本書の執筆のために、幅広くリサーチをしたと思いますが、最大の発見は? A:結束したコミュニティーを作る際の宗教の役割と宗教の儀式が、脳の「エンドルフィン物質」を活性化することが分かりました。この物質は、人間のフレンドシップを構築するのに使われます。礼拝中の人の脳を調べると、儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していたのです。 Q:あなたが無神論者であるからこそ、偏見なくこの本が書けたのでしょうか。 (ロビン・ダンバー氏の略歴はリンク先参照) A:そうですね、私は特定の宗教に何のコミットメントもありません。私は幼少時アフリカで育ったので、さまざまな種類のキリスト教、イスラム教、シーク教、後に仏教、ヒンズー教も経験しました』、「結束したコミュニティーを作る際の宗教の役割と宗教の儀式が、脳の「エンドルフィン物質」を活性化することが分かりました。この物質は、人間のフレンドシップを構築するのに使われます。礼拝中の人の脳を調べると、儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していたのです」、「儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していた」、とは初めて知った。
・『Q:本書には「カルト」の章がありますが、これほど深くリサーチをすると、「カルトの作り方」を熟知しているのでは? カルトにおける「教祖」というのは、人生において大きな危機を経験していることが非常に多いです。全財産を失ったとか、大病をして死にかけたとかね。そして自分の殻に閉じこもって、ひどく落ち込んだ経験があります。その間に、宇宙の真実のようなことに目覚めて、それを信じるようになるのです。 宇宙を支配しているものについて斬新なアイデアを持ち、周囲を根気強く納得させます。でないとみんなに笑われて、排除されて終わりです。だから多くのカルトはいささかクレイジーな人が教祖になっているのです。 ほとんどのカルトは、社会的な真実を持つようになり、宗教に変わっていきます。他の人に優しくしたり、慈善を施したりします。一方で宗教にならないカルトは、非常にクレイジーな教義を持っているので、普通は長続きしません。続くケースは非常にまれですね。カルトは教祖のためだけにあり、それ以外の人は搾取されるものなのです。 Q:カルトというとネガティブな響きがあります。日本では政界と旧統一教会の密な関係が報道され続けています。どういう条件で、宗教がカルトになるのでしょうか。) その逆です。つまり世界の全ての宗教は、仏教であれ、神道であれ、キリスト教であれ、イスラム教であれ、シーク教であれ、カルトとして始まっています。宗教とは、「ある真実を発見した」と信じることや、「神のメッセンジャー」を名乗るカリスマ性のあるリーダーを中心に、ローカルで小さなカルトとして始まる、というのが私の見方です。 カルトは時に、ネガティブな含みがありますが、決して全てのカルトが悪いわけではありません。一方で、カルトは簡単に悪くなる可能性も秘めています。ただ、先述したように全ての宗教はカルトから始まり、信奉者が増えて非常に大きなコミュニティーになると、「もはやカルトではなく宗教である」と呼びたくなるのです。 ほとんど全ての宗教は、下部から絶えずカルトが発生している状態とも言えます。神道だって末端でさまざまな団体がありますよね? そして、神道だけでなく仏教を混合した信仰を抱く人もいます。 明らかなのは、末端に出てきたカルトは異端であることが多いことです。正しいセオリーを伝道しているわけではないので、有害になる可能性があります。時に、そうした小さなカルトが暴走してどんどん拡大し、世界的な宗教になることもあります。 キリスト教やイスラム教は、元はと言えばユダヤ教の産物でした。そして、他の多くの宗教がインドや地中海沿岸地方にも入ってきました。キリスト教やイスラム教はさかのぼると、ゾロアスター教に起源があります。 Q:カルトが宗教になる条件は何でしょうか。 A:サイズだけです。多くの異なる国で、かなり広い地域で多くの人が信仰するようになると宗教になります。と同時に大きな宗教にとって非常に重要なことは、正式な教義と儀式があることです。一方で小規模のカルトには盤石な教義はなく、ころころ変わる傾向があります。また、儀式もフォーマルでないことが多い。 Q:カルトについてbrainwashing(洗脳)という言葉を使いますが、宗教について〈洗脳〉という言葉を使いますか? A:yes and noです。カルトと宗教の間には、微妙な区別があります。カルトは往々にして厳格な罰をもって、行動や信じるべきことを強制します。一方で、宗教は強制ではなく「説得」によって行います。つまり、もう少しリラックスしているイメージです。他方で、例えばキリスト教の歴史をたどると、異教徒や正しい教義を信じない者に対して差別や迫害をしていた時代もありました。 いずれにせよbrainwashingは、宗教上の信条であれ、政治的信条であれ、一つのコミュニティーが結束し続けるためには、世界中ですべての信条に当てはまると思います』、「カルトにおける「教祖」というのは、人生において大きな危機を経験していることが非常に多いです。全財産を失ったとか、大病をして死にかけたとかね。そして自分の殻に閉じこもって、ひどく落ち込んだ経験があります。その間に、宇宙の真実のようなことに目覚めて、それを信じるようになるのです。 宇宙を支配しているものについて斬新なアイデアを持ち、周囲を根気強く納得させます。でないとみんなに笑われて、排除されて終わりです。だから多くのカルトはいささかクレイジーな人が教祖になっているのです。 ほとんどのカルトは、社会的な真実を持つようになり、宗教に変わっていきます。他の人に優しくしたり、慈善を施したりします。一方で宗教にならないカルトは、非常にクレイジーな教義を持っているので、普通は長続きしません。続くケースは非常にまれですね。カルトは教祖のためだけにあり、それ以外の人は搾取されるものなのです・・・全ての宗教はカルトから始まり、信奉者が増えて非常に大きなコミュニティーになると、「もはやカルトではなく宗教である」と呼びたくなるのです。 ほとんど全ての宗教は、下部から絶えずカルトが発生している状態とも言えます。神道だって末端でさまざまな団体がありますよね? そして、神道だけでなく仏教を混合した信仰を抱く人もいます。 明らかなのは、末端に出てきたカルトは異端であることが多いことです。正しいセオリーを伝道しているわけではないので、有害になる可能性があります。時に、そうした小さなカルトが暴走してどんどん拡大し、世界的な宗教になることもあります。 キリスト教やイスラム教は、元はと言えばユダヤ教の産物でした。そして、他の多くの宗教がインドや地中海沿岸地方にも入ってきました。キリスト教やイスラム教はさかのぼると、ゾロアスター教に起源があります・・・カルトが宗教になる条件は何でしょうか。 A:サイズだけです。多くの異なる国で、かなり広い地域で多くの人が信仰するようになると宗教になります。と同時に大きな宗教にとって非常に重要なことは、正式な教義と儀式があることです。一方で小規模のカルトには盤石な教義はなく、ころころ変わる傾向があります。また、儀式もフォーマルでないことが多い。 Q:カルトについてbrainwashing(洗脳)という言葉を使いますが、宗教について〈洗脳〉という言葉を使いますか? A:yes and noです。カルトと宗教の間には、微妙な区別があります。カルトは往々にして厳格な罰をもって、行動や信じるべきことを強制します。一方で、宗教は強制ではなく「説得」によって行います。つまり、もう少しリラックスしているイメージです。他方で、例えばキリスト教の歴史をたどると、異教徒や正しい教義を信じない者に対して差別や迫害をしていた時代もありました。 いずれにせよbrainwashingは、宗教上の信条であれ、政治的信条であれ、一つのコミュニティーが結束し続けるためには、世界中ですべての信条に当てはまると思います」、なるほど。
・『宗教は戦争を引き起こすが… Q:宗教は時に戦争の原因になります。それでも、宗教には有益な面の方が多いのでしょうか。 A:確かに、宗教は宗教戦争を引き起こします。宗教というのは、絆の強いコミュニティーを作るためにあるので、真の信奉者とそうではない人と対比させることで、絆を強化することが往々にしてあるのです。 全体的には、やはり有益な面の方が多いでしょう。帰属感を作り出します。また、少なくとも信者同士では素行が良くなり、老人や病人や貧しい人に施しもします。 一人の内面に、複数の宗教が存在している場合もあります。日本人がその典型です。結婚式は神道で行い、葬儀は仏教でやるということが日本ではよくありますよね? これは、世界的にはまれなケースです。宗教にあまり意識がないからでしょう。 宗教の歴史を振り返ると、異なる宗教で互いの儀式や教義を借り合うことが往々にしてあります。キリスト教の中でも、ユダヤ教を経由してゾロアスター教から、非常に強い影響を受けています。また、儀式や教義の点では、明らかに古い仏教からの影響も見られます。 Q:あなたは、人間が安定的な関係性を維持できる人数の上限がおおむね「150」であると説きましたね(「ダンバー数」)。その150という数字は、宗教とも関係あるのでしょうか? A:寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています。また、19世紀の米国では移住者が増え続け、人々はコミュニティーを作り、密接な関係を維持しながら暮らしていましたが、その中で宗教のベースがあるコミュニティーでは、150人が平均でした。 これは私の調査とは別のものですが、プロテスタントの集会では100人以下だと教会や神父をサポートするのに十分ではなく、1人当たりの負担金額が大きすぎるという研究結果も出ています。一方で、200人を超えると帰属意識がなくなってきます。つまり、100人と200人の間に全てがうまくいくsweet spot(最大の利益が見込めるところ)があるということです』、「宗教は宗教戦争を引き起こします。宗教というのは、絆の強いコミュニティーを作るためにあるので、真の信奉者とそうではない人と対比させることで、絆を強化することが往々にしてあるのです。 全体的には、やはり有益な面の方が多いでしょう。帰属感を作り出します。また、少なくとも信者同士では素行が良くなり、老人や病人や貧しい人に施しもします。 一人の内面に、複数の宗教が存在している場合もあります。日本人がその典型です。結婚式は神道で行い、葬儀は仏教でやるということが日本ではよくありますよね? これは、世界的にはまれなケースです・・・あなたは、人間が安定的な関係性を維持できる人数の上限がおおむね「150」であると説きましたね(「ダンバー数」)。その150という数字は、宗教とも関係あるのでしょうか? A:寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています。また、19世紀の米国では移住者が増え続け、人々はコミュニティーを作り、密接な関係を維持しながら暮らしていましたが、その中で宗教のベースがあるコミュニティーでは、150人が平均でした。 これは私の調査とは別のものですが、プロテスタントの集会では100人以下だと教会や神父をサポートするのに十分ではなく、1人当たりの負担金額が大きすぎるという研究結果も出ています。一方で、200人を超えると帰属意識がなくなってきます。つまり、100人と200人の間に全てがうまくいくsweet spot(最大の利益が見込めるところ)があるということです」、「寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています」、「寺や教会における集会に最適規模」があるとは初めて知ったが、なんとなく感覚的な印象と一致するようだ。
先ずは、本年1月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した中央大学教授の高橋徹氏による「「カルト後遺症」の深刻、オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336762
・『若者の不安や不満につけ込む、カルト宗教団体の勧誘は巧みである。親が気づいたときにはもう遅く、離脱は困難だ。しかも、たとえ運良く脱カルトしたとしても、マインドコントロール下で刻み込まれたカルト的思考や行動様式は、数十年たっても消えないという。※本稿は、『「オウム死刑囚 父の手記」と国家権力』(現代書館)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『逮捕されて父母を泣かせてようやくわかったカルトの罪 金沢市の中心部から車で約一時間、真宗大谷派の浄専寺住職、平野喜之は2007(平成19)年に活動を始めた「『生きて罪を償う』井上嘉浩さんを死刑から守る会」の事務局長を務め、10年以上、嘉浩を支援してきた。平野が井上嘉浩から受け取った手紙は、188通にのぼる。 嘉浩の手紙にはこうある。 「突き詰めますと、麻原を信じたことそのものが罪のはじまりであり、全ての罪の責任は私にあります」 「人にとって救いとは一体何なのでしょうか?その答えがあるとうぬぼれたことが私がオウムに入り大罪を犯しました原因の一つであると今私は考えています」 「麻原は仏教やヨーガの心を変容させていく技術や薬物まで悪用して、徹底的に信者の社会規範や善悪の根本となる個としての人格を破壊していき、代わりに麻原の手足として動く人格を刷り込んでいきました。これが麻原が構築したマインドコントロールです」 「(※編集部注/最高裁で死刑が言い渡された2009年12月10日の)翌日、午前中に両親が面会に参りました。両親がぐったりとしつつ、それでも気丈に振る舞う姿を見て、涙をこらえるのが精一杯でした。父母が、自分たちが悪かったと、なんの責任もないのに、自分たちをせめる姿を見て本当に申し訳ないと、ただただ申し訳ないと、言葉がありませんでした」 「日々、まだ執行されないだろうと思いつつ、いや、わからんぞと、夜明けが恐ろしくもあり、そういうことにとらわれること自体、被害者の方々に申し訳ないと思いつつ、このままでは死にきれない心も消えません。このようなもだえも罪の報いの一つとして静かに見つめている自分もおります」 平野は静かに思いを語った。 「彼にしかできない真相解明とか、彼にしかできないオウム入信者に対して脱会を呼びかけるとか、そういう使命があったと思います。それを果たすことが償うということになったと思いますし、私たちの『守る会』のやっていたことは彼の罪の自覚を深めていくということに集中して支援してきました。罪の自覚を深めることによって本当の心からの被害者への謝罪ができると思います」 教団が救済の名のもとに多くの信徒を集め急拡大し、数々の凶悪事件を起こしていった軌跡は「平成」と重なる。「平成の事件は平成のうちに決着させたい」という政府の思惑だろうか、2018(平成30)年の7月、オウム死刑囚13人の死刑が執行された。) その中の一人が井上嘉浩だった。ホーリーネーム(教団内の宗教名)はアーナンダ。オウム真理教の諜報省トップで、教祖の「側近中の側近」、「修行の天才」、「神通並びなきもの」といわれた教団幹部である。 『生きて罪を償う』井上嘉浩さんを死刑から守る会」は嘉浩の死刑が執行されたことで解散した。機関誌「悲」は16号の追悼号(2018年12月発行)で役目を終えた』、「「平成の事件は平成のうちに決着させたい」という政府の思惑だろうか、2018(平成30)年の7月、オウム死刑囚13人の死刑が執行された」、「死刑囚」の執行が遅れるのが普通だが、「政府の思惑」で異例の執行となったようだ。
・『マインドコントロールが解けてもカルトの傷は残る 平野がもう一つ活動の重点に置いているのが「カルト後遺症」の問題だ。一連のオウム事件がきっかけで誕生した日本脱カルト協会(JSCPR)によると、カルト教団から脱会した人の多くが何らかの『後遺症』に苦しむという。 代表的な症状としては、「神から裁かれるのではないか」という不安感、「自分は裏切り者であり、天罰が下るのではないか」という恐怖感などがあげられる。無理もない話で、身も心も奉じてきた団体の価値観を失い、それまでの理想やアイデンティティをすべて失うことになるからだ。 音楽や映像、においなど些細なことが引き金になり脱会前の心理状態に戻ってしまう、いわゆる「フラッシュバック」もほとんどの人が体験する。 また、せっかく家に戻っても家族や友人、知人との人間関係に悩み、睡眠障害や摂食不良に陥るという例もある。そもそもカルトの多くは、教祖を『父』や『母』としているので、現実の家族に対しては否定的な思いを抱くよう誘導していることが多い。 「何か悪いことが起こると、霊の祟りではないかと、とっさに考えてしまう」と話すのは、日本脱カルト協会の理事で、日本基督教団白河教会牧師の竹迫之だ。 竹迫は1967(昭和42)年、秋田市生まれ。高校3年の時に当時の統一教会(現世界平和統一家庭連合)に勧誘され入会した。「霊感商法」が世間に知られるようになった1980年代半ばのころである。 「マインドコントロールが目指すものは、コントロールする人に対する依存なんです。私の場合は何をするにも指示をしてくれる人の指示を仰ぐというライフスタイルが身についていましたね。なんでも自分で好きに選んでいいよと言われると、かえって何を選んでいいのか分からず混乱する。この依存から離脱するということがマインドコントロールが解けるということなんです。しかし、マインドコントロールは解けても、後遺症は残るんです」) 脱会して十年以上たったころのある体験を竹迫は話してくれた。 「教会の階段を降りていたところ、3段ぐらい踏み外して落ちちゃった。その拍子に左足を3カ所も骨折してしまったんです。そのとき、とっさに霊の祟りではないかと発想が浮かんできた。典型的なカルト後遺症です」 悪いことが起こると、その説明を求めてしまう。竹迫は統一教会を脱会して37年になるが、いまだにそういう瞬間があるという。 「何か不運な目にあったときに、自分に悪いところがあったからではないかと、その原因を追求したくなるものですね。その祟りから逃れるために何かしなくてはいけないという強烈な衝動がわいてくる。私は、マインドコントロール自体は解けているのは間違いないとは思うのですが、けれども後遺症として残っている」』、「悪いことが起こると、その説明を求めてしまう。竹迫は統一教会を脱会して37年になるが、いまだにそういう瞬間があるという・・・カルト後遺症です」、なるほど。
・『被害者どころか支援者にすら独善と映ったオウム元死刑囚 さて、嘉浩にカルト後遺症はあったのだろうか。フォトジャーナリストで『宗教事件の内側 精神を呪縛される人びと』や『カルト宗教事件の深層 「スピリチュアル・アビュース」の論理』などの著書がある藤田庄市は「独善的な修行者意識」という言葉で、嘉浩の後遺症を言い表した。 藤田が注目したのは、目黒公証役場事件で父親を失った仮谷実と嘉浩とのやり取りだった。嘉浩は「亡くなった人たちのことを考えて、できるだけ苦しみを自分に課していきたい」と謝罪したのに対し、仮谷は「被告が苦しんでも、私たちは助からない」と返し、「自らに苦しみを課しても遺族の救済にならない」と突き放した。 「独善的な」とは、修行を続けることにより、人間性も宗教的にも世間より高いところにいるという意識である。 「井上君は麻原教祖とは対決して、『オウムを脱会する』と宣言はしているのだけれども、考え方であるとか、独善的な修行者意識というものは残っていたのではないか。脱会したからといって、カルト思考、カルト的考え方は簡単にはなくならない」と藤田は指摘している。 平野も嘉浩にカルト後遺症を感じていたという。) 「井上君のご両親には申し訳ないが……2018年だったと思うが、『生きて罪を償う会』の内部で、支援を見直そうという声が上がっていた。生来の性格なのか、カルトの後遺症なのか見極めは難しいかもしれないけれども、『麻原は井上君に、こういう指示の仕方をしていたのだ』と感じられるような指示の仕方が井上君から我々『生きて罪を償う会』に対してありました。カルトの怖さは脱会後にも後遺症となって残る。教義から抜けても人間関係の持ち方とか、指示命令系統とかそういうところに残るのではないか」 独善的とも映る嘉浩の振る舞いについて、竹迫はカルト後遺症が影響していた可能性があると話す』、「カルトの怖さは脱会後にも後遺症となって残る。教義から抜けても人間関係の持ち方とか、指示命令系統とかそういうところに残るのではないか」、なるほど。
・『「カルト後遺症」の深刻、オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ 高橋徹「オウム死刑囚 父の手記」と国家権力(現代書館) 「誰もが権力を振るう立場に魅力を感じます。嘉浩君の場合は、教祖の、麻原の振る舞いを見ていたために、それが増幅されていったのではないでしょうか。自分もやってもいいんだというお墨付きをもらった状態です。高校生のうちから入信したため、『人と人との関係はフラットであるべきだ』という考えに触れたことがなかったのではないでしょうか」。 子供をカルトに取られた親の苦痛を平野はこう話した。神奈川県の教会で出会ったある母親の話である。 「私たちは二重に傷つくのです。一つ目は『子供をカルトにとられたこと』、二つ目は『子供がカルトにとられたのはあなたたちのせいでしょうと世間から偏見の目で見られること』です。私の家庭は上手くいっていました。子供がカルトにとられたのは、勧誘が巧みだっただけでしょうと言いたい」 平野は言う。 「世間には、カルトにとられたのは家族のせいだ、やっぱり家族が悪いと誤解する人がいます。片や親自身が『子供の責任を取らなければいけない』と思い詰める人も少なからずいます。日本では特に『子供の罪は親の罪』として、責任を感じる姿が美化されすぎるきらいがあるのではないでしょうか。そのために親が苦しめられることがあります」 井上家に、嘉浩がまだ幼いころの写真が残っている。自宅の前で、ブルーの短パン、アニメのキャラクターがプリントされた白いポロシャツを着て、上下に動かすことができる透明なシールドが付いた戦隊もののヘルメットをかぶって、無邪気に笑っていた。 「もし神が許してくれるなら、どんなことをしてでも、あのころに戻りたいと思います」 私が嘉浩の父に初めて会った日、父はそう話した』、「「私たちは二重に傷つくのです。一つ目は『子供をカルトにとられたこと』、二つ目は『子供がカルトにとられたのはあなたたちのせいでしょうと世間から偏見の目で見られること』です・・・日本では特に『子供の罪は親の罪』として、責任を感じる姿が美化されすぎるきらいがあるのではないでしょうか。そのために親が苦しめられることがあります」、やはり「カルト後遺症」は深刻なようだ。
次に、3月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際ジャーナリストの大野和基氏による「ベストセラー著者が語る「旧統一教会問題」と「カルト教祖の共通点」 ロビン・ダンバー氏インタビュー」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340568
・『無宗教国ニッポンで、ロビン・ダンバー著『宗教の起原』(白揚社)がベストセラーとなっている。著者は、人間の安定的な集団サイズの上限が「150」であると導き出し、人類学のノーベル賞と称される「トマス・ハクスリー記念賞」を受賞した人物だ。本書では、「私たちはいかに信じる心を獲得したのか」「人類進化の過程で『神』はなぜ生まれたのか」「カルト宗教はなぜ次々と生まれ、人々を惹きつけるのか」といった、人類と宗教を巡る根源的な問いを追求している。著者に、日本の旧統一教会問題なども含めて話を聞いた』、興味深そうだ。
・『「カルト宗教」とは何か Q:本書の執筆のために、幅広くリサーチをしたと思いますが、最大の発見は? A:結束したコミュニティーを作る際の宗教の役割と宗教の儀式が、脳の「エンドルフィン物質」を活性化することが分かりました。この物質は、人間のフレンドシップを構築するのに使われます。礼拝中の人の脳を調べると、儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していたのです。 Q:あなたが無神論者であるからこそ、偏見なくこの本が書けたのでしょうか。 (ロビン・ダンバー氏の略歴はリンク先参照) A:そうですね、私は特定の宗教に何のコミットメントもありません。私は幼少時アフリカで育ったので、さまざまな種類のキリスト教、イスラム教、シーク教、後に仏教、ヒンズー教も経験しました』、「結束したコミュニティーを作る際の宗教の役割と宗教の儀式が、脳の「エンドルフィン物質」を活性化することが分かりました。この物質は、人間のフレンドシップを構築するのに使われます。礼拝中の人の脳を調べると、儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していたのです」、「儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していた」、とは初めて知った。
・『Q:本書には「カルト」の章がありますが、これほど深くリサーチをすると、「カルトの作り方」を熟知しているのでは? カルトにおける「教祖」というのは、人生において大きな危機を経験していることが非常に多いです。全財産を失ったとか、大病をして死にかけたとかね。そして自分の殻に閉じこもって、ひどく落ち込んだ経験があります。その間に、宇宙の真実のようなことに目覚めて、それを信じるようになるのです。 宇宙を支配しているものについて斬新なアイデアを持ち、周囲を根気強く納得させます。でないとみんなに笑われて、排除されて終わりです。だから多くのカルトはいささかクレイジーな人が教祖になっているのです。 ほとんどのカルトは、社会的な真実を持つようになり、宗教に変わっていきます。他の人に優しくしたり、慈善を施したりします。一方で宗教にならないカルトは、非常にクレイジーな教義を持っているので、普通は長続きしません。続くケースは非常にまれですね。カルトは教祖のためだけにあり、それ以外の人は搾取されるものなのです。 Q:カルトというとネガティブな響きがあります。日本では政界と旧統一教会の密な関係が報道され続けています。どういう条件で、宗教がカルトになるのでしょうか。) その逆です。つまり世界の全ての宗教は、仏教であれ、神道であれ、キリスト教であれ、イスラム教であれ、シーク教であれ、カルトとして始まっています。宗教とは、「ある真実を発見した」と信じることや、「神のメッセンジャー」を名乗るカリスマ性のあるリーダーを中心に、ローカルで小さなカルトとして始まる、というのが私の見方です。 カルトは時に、ネガティブな含みがありますが、決して全てのカルトが悪いわけではありません。一方で、カルトは簡単に悪くなる可能性も秘めています。ただ、先述したように全ての宗教はカルトから始まり、信奉者が増えて非常に大きなコミュニティーになると、「もはやカルトではなく宗教である」と呼びたくなるのです。 ほとんど全ての宗教は、下部から絶えずカルトが発生している状態とも言えます。神道だって末端でさまざまな団体がありますよね? そして、神道だけでなく仏教を混合した信仰を抱く人もいます。 明らかなのは、末端に出てきたカルトは異端であることが多いことです。正しいセオリーを伝道しているわけではないので、有害になる可能性があります。時に、そうした小さなカルトが暴走してどんどん拡大し、世界的な宗教になることもあります。 キリスト教やイスラム教は、元はと言えばユダヤ教の産物でした。そして、他の多くの宗教がインドや地中海沿岸地方にも入ってきました。キリスト教やイスラム教はさかのぼると、ゾロアスター教に起源があります。 Q:カルトが宗教になる条件は何でしょうか。 A:サイズだけです。多くの異なる国で、かなり広い地域で多くの人が信仰するようになると宗教になります。と同時に大きな宗教にとって非常に重要なことは、正式な教義と儀式があることです。一方で小規模のカルトには盤石な教義はなく、ころころ変わる傾向があります。また、儀式もフォーマルでないことが多い。 Q:カルトについてbrainwashing(洗脳)という言葉を使いますが、宗教について〈洗脳〉という言葉を使いますか? A:yes and noです。カルトと宗教の間には、微妙な区別があります。カルトは往々にして厳格な罰をもって、行動や信じるべきことを強制します。一方で、宗教は強制ではなく「説得」によって行います。つまり、もう少しリラックスしているイメージです。他方で、例えばキリスト教の歴史をたどると、異教徒や正しい教義を信じない者に対して差別や迫害をしていた時代もありました。 いずれにせよbrainwashingは、宗教上の信条であれ、政治的信条であれ、一つのコミュニティーが結束し続けるためには、世界中ですべての信条に当てはまると思います』、「カルトにおける「教祖」というのは、人生において大きな危機を経験していることが非常に多いです。全財産を失ったとか、大病をして死にかけたとかね。そして自分の殻に閉じこもって、ひどく落ち込んだ経験があります。その間に、宇宙の真実のようなことに目覚めて、それを信じるようになるのです。 宇宙を支配しているものについて斬新なアイデアを持ち、周囲を根気強く納得させます。でないとみんなに笑われて、排除されて終わりです。だから多くのカルトはいささかクレイジーな人が教祖になっているのです。 ほとんどのカルトは、社会的な真実を持つようになり、宗教に変わっていきます。他の人に優しくしたり、慈善を施したりします。一方で宗教にならないカルトは、非常にクレイジーな教義を持っているので、普通は長続きしません。続くケースは非常にまれですね。カルトは教祖のためだけにあり、それ以外の人は搾取されるものなのです・・・全ての宗教はカルトから始まり、信奉者が増えて非常に大きなコミュニティーになると、「もはやカルトではなく宗教である」と呼びたくなるのです。 ほとんど全ての宗教は、下部から絶えずカルトが発生している状態とも言えます。神道だって末端でさまざまな団体がありますよね? そして、神道だけでなく仏教を混合した信仰を抱く人もいます。 明らかなのは、末端に出てきたカルトは異端であることが多いことです。正しいセオリーを伝道しているわけではないので、有害になる可能性があります。時に、そうした小さなカルトが暴走してどんどん拡大し、世界的な宗教になることもあります。 キリスト教やイスラム教は、元はと言えばユダヤ教の産物でした。そして、他の多くの宗教がインドや地中海沿岸地方にも入ってきました。キリスト教やイスラム教はさかのぼると、ゾロアスター教に起源があります・・・カルトが宗教になる条件は何でしょうか。 A:サイズだけです。多くの異なる国で、かなり広い地域で多くの人が信仰するようになると宗教になります。と同時に大きな宗教にとって非常に重要なことは、正式な教義と儀式があることです。一方で小規模のカルトには盤石な教義はなく、ころころ変わる傾向があります。また、儀式もフォーマルでないことが多い。 Q:カルトについてbrainwashing(洗脳)という言葉を使いますが、宗教について〈洗脳〉という言葉を使いますか? A:yes and noです。カルトと宗教の間には、微妙な区別があります。カルトは往々にして厳格な罰をもって、行動や信じるべきことを強制します。一方で、宗教は強制ではなく「説得」によって行います。つまり、もう少しリラックスしているイメージです。他方で、例えばキリスト教の歴史をたどると、異教徒や正しい教義を信じない者に対して差別や迫害をしていた時代もありました。 いずれにせよbrainwashingは、宗教上の信条であれ、政治的信条であれ、一つのコミュニティーが結束し続けるためには、世界中ですべての信条に当てはまると思います」、なるほど。
・『宗教は戦争を引き起こすが… Q:宗教は時に戦争の原因になります。それでも、宗教には有益な面の方が多いのでしょうか。 A:確かに、宗教は宗教戦争を引き起こします。宗教というのは、絆の強いコミュニティーを作るためにあるので、真の信奉者とそうではない人と対比させることで、絆を強化することが往々にしてあるのです。 全体的には、やはり有益な面の方が多いでしょう。帰属感を作り出します。また、少なくとも信者同士では素行が良くなり、老人や病人や貧しい人に施しもします。 一人の内面に、複数の宗教が存在している場合もあります。日本人がその典型です。結婚式は神道で行い、葬儀は仏教でやるということが日本ではよくありますよね? これは、世界的にはまれなケースです。宗教にあまり意識がないからでしょう。 宗教の歴史を振り返ると、異なる宗教で互いの儀式や教義を借り合うことが往々にしてあります。キリスト教の中でも、ユダヤ教を経由してゾロアスター教から、非常に強い影響を受けています。また、儀式や教義の点では、明らかに古い仏教からの影響も見られます。 Q:あなたは、人間が安定的な関係性を維持できる人数の上限がおおむね「150」であると説きましたね(「ダンバー数」)。その150という数字は、宗教とも関係あるのでしょうか? A:寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています。また、19世紀の米国では移住者が増え続け、人々はコミュニティーを作り、密接な関係を維持しながら暮らしていましたが、その中で宗教のベースがあるコミュニティーでは、150人が平均でした。 これは私の調査とは別のものですが、プロテスタントの集会では100人以下だと教会や神父をサポートするのに十分ではなく、1人当たりの負担金額が大きすぎるという研究結果も出ています。一方で、200人を超えると帰属意識がなくなってきます。つまり、100人と200人の間に全てがうまくいくsweet spot(最大の利益が見込めるところ)があるということです』、「宗教は宗教戦争を引き起こします。宗教というのは、絆の強いコミュニティーを作るためにあるので、真の信奉者とそうではない人と対比させることで、絆を強化することが往々にしてあるのです。 全体的には、やはり有益な面の方が多いでしょう。帰属感を作り出します。また、少なくとも信者同士では素行が良くなり、老人や病人や貧しい人に施しもします。 一人の内面に、複数の宗教が存在している場合もあります。日本人がその典型です。結婚式は神道で行い、葬儀は仏教でやるということが日本ではよくありますよね? これは、世界的にはまれなケースです・・・あなたは、人間が安定的な関係性を維持できる人数の上限がおおむね「150」であると説きましたね(「ダンバー数」)。その150という数字は、宗教とも関係あるのでしょうか? A:寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています。また、19世紀の米国では移住者が増え続け、人々はコミュニティーを作り、密接な関係を維持しながら暮らしていましたが、その中で宗教のベースがあるコミュニティーでは、150人が平均でした。 これは私の調査とは別のものですが、プロテスタントの集会では100人以下だと教会や神父をサポートするのに十分ではなく、1人当たりの負担金額が大きすぎるという研究結果も出ています。一方で、200人を超えると帰属意識がなくなってきます。つまり、100人と200人の間に全てがうまくいくsweet spot(最大の利益が見込めるところ)があるということです」、「寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています」、「寺や教会における集会に最適規模」があるとは初めて知ったが、なんとなく感覚的な印象と一致するようだ。
タグ:宗教 (その13)(「カルト後遺症」の深刻 オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ、ベストセラー著者が語る「旧統一教会問題」と「カルト教祖の共通点」 ロビン・ダンバー氏インタビュー) ダイヤモンド・オンライン 高橋徹氏による「「カルト後遺症」の深刻、オウム元死刑囚が洗脳から脱した後も“麻原彰晃化”したワケ」 「オウム死刑囚 父の手記」と国家権力』(現代書館) 「「平成の事件は平成のうちに決着させたい」という政府の思惑だろうか、2018(平成30)年の7月、オウム死刑囚13人の死刑が執行された」、「死刑囚」の執行が遅れるのが普通だが、「政府の思惑」で異例の執行となったようだ。 「悪いことが起こると、その説明を求めてしまう。竹迫は統一教会を脱会して37年になるが、いまだにそういう瞬間があるという・・・カルト後遺症です」、なるほど。 「カルトの怖さは脱会後にも後遺症となって残る。教義から抜けても人間関係の持ち方とか、指示命令系統とかそういうところに残るのではないか」、なるほど。 「「私たちは二重に傷つくのです。一つ目は『子供をカルトにとられたこと』、二つ目は『子供がカルトにとられたのはあなたたちのせいでしょうと世間から偏見の目で見られること』です・・・日本では特に『子供の罪は親の罪』として、責任を感じる姿が美化されすぎるきらいがあるのではないでしょうか。そのために親が苦しめられることがあります」、やはり「カルト後遺症」は深刻なようだ。 大野和基氏による「ベストセラー著者が語る「旧統一教会問題」と「カルト教祖の共通点」 ロビン・ダンバー氏インタビュー」 ロビン・ダンバー著『宗教の起原』(白揚社) 「結束したコミュニティーを作る際の宗教の役割と宗教の儀式が、脳の「エンドルフィン物質」を活性化することが分かりました。この物質は、人間のフレンドシップを構築するのに使われます。礼拝中の人の脳を調べると、儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していたのです」、「儀式が脳内のエンドルフィンを活性化していた」、とは初めて知った。 「カルトにおける「教祖」というのは、人生において大きな危機を経験していることが非常に多いです。全財産を失ったとか、大病をして死にかけたとかね。そして自分の殻に閉じこもって、ひどく落ち込んだ経験があります。その間に、宇宙の真実のようなことに目覚めて、それを信じるようになるのです。 宇宙を支配しているものについて斬新なアイデアを持ち、周囲を根気強く納得させます。でないとみんなに笑われて、排除されて終わりです。だから多くのカルトはいささかクレイジーな人が教祖になっているのです。 ほとんどのカルトは、社会的な真実を持つようになり、宗教に変わっていきます。他の人に優しくしたり、慈善を施したりします。一方で宗教にならないカルトは、非常にクレイジーな教義を持っているので、普通は長続きしません。続くケースは非常にまれですね。カルトは教祖のためだけにあり、それ以外の人は搾取されるものなのです・・・全ての宗教はカルトから始まり、信奉者が増えて非常に大きなコミュニティーになると、「もはやカルトではなく宗教である」と呼びたくなるのです。 ほとんど全ての宗教は、下部から絶えずカルトが発生している状態とも言えます。神道だって末端でさまざまな団体がありますよね? そして、神道だけでなく仏教を混合した信仰を抱く人もいます。 明らかなのは、末端に出てきたカルトは異端であることが多いことです。正しいセオリーを伝道しているわけではないので、有害になる可能性があります。時に、そうした小さなカルトが暴走してどんどん拡大し、世界的な宗教になることもあります。 キリスト教やイスラム教は、元はと言えばユダヤ教の産物でした。そして、他の多くの宗教がインドや地中海沿 岸地方にも入ってきました。キリスト教やイスラム教はさかのぼると、ゾロアスター教に起源があります・・・カルトが宗教になる条件は何でしょうか。 A:サイズだけです。多くの異なる国で、かなり広い地域で多くの人が信仰するようになると宗教になります。と同時に大きな宗教にとって非常に重要なことは、正式な教義と儀式があることです。一方で小規模のカルトには盤石な教義はなく、ころころ変わる傾向があります。また、儀式もフォーマルでないことが多い。 Q:カルトについてbrainwashing(洗脳)という言葉を使いますが、宗教について〈洗脳〉という言葉を使いますか? A:yes and noです。カルトと宗教の間には、微妙な区別があります。カルトは往々にして厳格な罰をもって、行動や信じるべきことを強制します。一方で、宗教は強制ではなく「説得」によって行います。つまり、もう少しリラックスしているイメージです。他方で、例えばキリスト教の歴史をたどると、異教徒や正しい教義を信じない者に対して差別や迫害をしていた時代もありました。 いずれにせよbrainwashingは、宗教上の信条であれ、政治的信条であれ、一つのコミュニティーが結束し続けるためには、世界中ですべての信条に当てはまると思います」、なるほど。 「宗教は宗教戦争を引き起こします。宗教というのは、絆の強いコミュニティーを作るためにあるので、真の信奉者とそうではない人と対比させることで、絆を強化することが往々にしてあるのです。 全体的には、やはり有益な面の方が多いでしょう。帰属感を作り出します。また、少なくとも信者同士では素行が良くなり、老人や病人や貧しい人に施しもします。 一人の内面に、複数の宗教が存在している場合もあります。日本人がその典型です。結婚式は神道で行い、葬儀は仏教でやるということが日本ではよくありますよね? これは、世界的にはまれなケ ースです・・・あなたは、人間が安定的な関係性を維持できる人数の上限がおおむね「150」であると説きましたね(「ダンバー数」)。その150という数字は、宗教とも関係あるのでしょうか? A:寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています。また、19世紀の米国では移住者が増え続け、人々はコミュニティーを作り、密接な関係を維持しながら暮らしていましたが、その中で宗教のベースがあるコミュニティーでは、150人が平均でした。 これは私の調査とは別のものですが、プロテスタントの集会では100人以下だと教会や神父をサポートするのに十分ではなく、1人当たりの負担金額が大きすぎるという研究結果も出ています。一方で、200人を超えると帰属意識がなくなってきます。つまり、100人と200人の間に全てがうまくいくsweet spot(最大の利益が見込めるところ)があるということです」、「寺や教会における集会は150人が最適規模だと分かっています」、「寺や教会における集会に最適規模」があるとは初めて知ったが、なんとなく感覚的な印象と一致するよ
司法(その18)(「特捜検察」の暴走 なぜ無罪判決が相次ぐのか ストーリー優先で証拠集め、調書は検事の作文、警察の「やりすぎ職務質問」5時間拘束!塩を“薬物”と誤解 尿検査シロでも…これ違法?、ロースクール制度は「文科省と法務省の設計ミスが一番の失敗」柴山昌彦・元文科相が激白) [社会]
司法については、昨年5月19日に取上げた。今日は、(その18)(「特捜検察」の暴走 なぜ無罪判決が相次ぐのか ストーリー優先で証拠集め、調書は検事の作文、警察の「やりすぎ職務質問」5時間拘束!塩を“薬物”と誤解 尿検査シロでも…これ違法?、ロースクール制度は「文科省と法務省の設計ミスが一番の失敗」柴山昌彦・元文科相が激白)である。 なお、タイトルから「の歪み」を削除した。
先ずは、昨年9月4日付け東洋経済オンライン「「特捜検察」の暴走、なぜ無罪判決が相次ぐのか ストーリー優先で証拠集め、調書は検事の作文」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/698489
・『司法試験の受験者数が激減。弁護士は「食えない」「AIが代替する」と敬遠され、若き裁判官の離職が相次ぎ、検察官は供述をねじ曲げるーー。『週刊東洋経済』の9月4日(月)発売号(9月9日号)では、「弁護士・裁判官・検察官」を特集。実態とともに、司法インフラの瓦解の足音をお伝えする。 「お試しで逮捕、起訴なんてことはありえないんだよ。俺たちはいいかげんな仕事はできないんだよ。人の人生狂わせる権力持ってるから、こんなちっぽけな誤審とかで人を殺すことだってできるんですよ。失敗したら腹を切らなきゃいけないんだよ。命かけてるんだよ、俺たちは。あなたたちみたいに金をかけているんじゃねえんだ。金なんかよりも大事な命と人の人生を天秤にかけてこっちは仕事をしてるんだよ。なめるんじゃねーよ。必死なんだよ」 これは大阪地検特捜部の田渕大輔検事(肩書は当時、以下同じ)が、不動産開発会社プレサンスコーポレーションの小林桂樹・執行役員の取り調べで放った言葉だ。2019年12月のことだ』、「俺たちはいいかげんな仕事はできないんだよ。人の人生狂わせる権力持ってるから、こんなちっぽけな誤審とかで人を殺すことだってできるんですよ。失敗したら腹を切らなきゃいけないんだよ。命かけてるんだよ、俺たちは。あなたたちみたいに金をかけているんじゃねえんだ。金なんかよりも大事な命と人の人生を天秤にかけてこっちは仕事をしてるんだよ。なめるんじゃねーよ。必死なんだよ」、何と思い上がった姿勢なのだろう。驚いた。
・『人生は狂わされた 田渕の言葉どおり、プレサンスの山岸忍社長の人生は狂わされた。否認をし続けた山岸は248日間勾留された。勾留中に社長を辞任し、自分が創業したプレサンスの株を同業他社に売却した。 ところが山岸の逮捕、起訴は検察の大チョンボだった。田渕は小林にウソの供述をさせていた。大阪地裁はそのことを見抜き、山岸に無罪を言い渡した。検察は控訴を断念した。 飛ぶ鳥を落とす勢いだったプレサンスを経営危機に陥れておきながら、大阪地検から当事者の山岸に謝罪の言葉はまったくない。 厚生労働省の雇用均等・児童家庭局、村木厚子局長事件で無罪を勝ち取った弘中惇一郎弁護士は、近著『特捜検察の正体』の中でプレサンス事件について「大阪地検特捜部は村木事件と同じ過ちを繰り返してしまった」と書いている。) 村木事件をきっかけに導入された取り調べの録音録画がされている中で、田渕は取調室の机をたたき、小林を侮辱し、精神的苦痛を与えた。大阪地裁は「録音録画された中でこのような取り調べが行われたこと自体が驚くべき由々しき事態」と指摘している。 弘中は前出の著書の中で、検察が事件をでっち上げる手法を20に分類している。村木事件など過去に受任した冤罪(えんざい)事件での手法だが、これらは今もなお使われている。 例えばプレサンス事件では「山岸が横領を知っていた」という誤った見立てで証拠集めをした(上表の手法1)。長期勾留し山岸を心身ともに追い込んだ(同9)。 公安警察が立件した大川原化工機事件は検察の手法そのままだ。「生物兵器に転用可能と知っていて不正に輸出した」という誤った見立てをし(手法1)、温度の上がらない箇所があるという客観的・科学的事実には目をつぶり(同2)、警部補が供述調書をひたすら作文した(同3)。調書に「不正に」などの化粧を施して真実らしさを装った(同17)。検察は公安警察の言いなりになって大川原化工機の大川原正明社長らを起訴した』、「弘中は前出の著書の中で、検察が事件をでっち上げる手法を20に分類している。村木事件など過去に受任した冤罪(えんざい)事件での手法だが、これらは今もなお使われている。 例えばプレサンス事件では「山岸が横領を知っていた」という誤った見立てで証拠集めをした(上表の手法1)。長期勾留し山岸を心身ともに追い込んだ(同9)。 公安警察が立件した大川原化工機事件は検察の手法そのままだ。「生物兵器に転用可能と知っていて不正に輸出した」という誤った見立てをし(手法1)、温度の上がらない箇所があるという客観的・科学的事実には目をつぶり(同2)、警部補が供述調書をひたすら作文した(同3)。調書に「不正に」などの化粧を施して真実らしさを装った(同17)。検察は公安警察の言いなりになって大川原化工機の大川原正明社長らを起訴した」、なるほど。
・『最大の武器は人質司法 検察の権力の源泉は何か。元検察官の郷原信郎弁護士は「人質司法が最大の武器だ」と指摘する。 検察は容疑者を逮捕すると48時間拘束できる。裁判所に勾留が認められると10日間拘束でき、再度同じ手続きでさらに10日間延長できる。つまり逮捕から最長で22日間拘束できる。) 起訴されれば法律上は保釈が可能となる。しかしそれは容疑を認めた場合に限られる。否認し続けると起訴後、口裏合わせや証拠隠滅、逃亡のおそれがあるとし、検察は保釈に猛反対する。特捜事件の場合、裁判所は検察に追従する傾向が顕著だ。 なぜ検察は長期勾留で被疑者を追い込むのか。郷原弁護士は「裁判で争わせないようにするためだ」と指摘する。法廷では検察官が罪状を読み上げ、被告が容疑を認める。まるで儀式だ。後は執行猶予をつけるかどうかだけで、検察が負けることはない。刑事事件の有罪率が99.8%と高いことの原因の1つにもなっている。 企業にとって長期勾留の経済的ダメージは大きい。それを見透かして、「罪を認めてさっさと保釈されたほうが得、という考え方をする人もいるよ」と、自白を巧妙に促す検察官もいるくらいだ。 人質司法に頼るあまり特捜検察の質が低下。「刑事事件としての立件の当否を判断する能力が劣ってきている」(郷原弁護士)。誤った見立てで経営者・企業人を逮捕・起訴・長期勾留。供述調書をねじ曲げてきたのが検察の実態だ』、「元検察官の郷原信郎弁護士は「人質司法が最大の武器だ」と指摘する。 検察は容疑者を逮捕すると48時間拘束できる。裁判所に勾留が認められると10日間拘束でき、再度同じ手続きでさらに10日間延長できる。つまり逮捕から最長で22日間拘束できる・・・人質司法に頼るあまり特捜検察の質が低下。「刑事事件としての立件の当否を判断する能力が劣ってきている」(郷原弁護士)。誤った見立てで経営者・企業人を逮捕・起訴・長期勾留。供述調書をねじ曲げてきたのが検察の実態だ・・・企業にとって長期勾留の経済的ダメージは大きい。それを見透かして、「罪を認めてさっさと保釈されたほうが得、という考え方をする人もいるよ」と、自白を巧妙に促す検察官もいるくらいだ」、全く卑劣この上ない検察官だ。
・『検察官同一体の原則 検察庁には「検察官同一体の原則」というものがある。何事も上に伺いを立て、検察官によって違ったことを言ってはならない。 大川原社長は国と東京都を相手に賠償訴訟をしている。その裁判に、大川原社長らを起訴した塚部貴子検事が証人喚問された。別の検事が社長らの起訴を取り消しているというのに、塚部は「当時の判断に間違いがあったとは思わない」とし、謝罪しなかった。 証人台の塚部をほぼ正面の原告席から見ていた大川原社長には「言いたくないことを言わされているたびに検事の顔色が赤黒く変わったように見えた。個人の意思を抑えてしまうからダメなんだ。上司に『違う』と言える検察組織にしていかないと、国としてやばい」。大川原社長は組織を率いる企業経営者として、検察という組織のいびつさを危惧している。(一部敬称略)』、「大川原社長らを起訴した塚部貴子検事が証人喚問された。別の検事が社長らの起訴を取り消しているというのに、塚部は「当時の判断に間違いがあったとは思わない」とし、謝罪しなかった。 証人台の塚部をほぼ正面の原告席から見ていた大川原社長には「言いたくないことを言わされているたびに検事の顔色が赤黒く変わったように見えた。個人の意思を抑えてしまうからダメなんだ。上司に『違う』と言える検察組織にしていかないと、国としてやばい」。大川原社長は組織を率いる企業経営者として、検察という組織のいびつさを危惧している」、その通りだ。
次に、本年3月8日付けダイヤモンド・オンラインが転載した弁護士ドットコムニュース「警察の「やりすぎ職務質問」5時間拘束!塩を“薬物”と誤解、尿検査シロでも…これ違法?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340025
・『職務質問を受けて荷物を見せたら、財布の中に入れていた「お清めの塩」を違法薬物と勘違いされ、尿検査をする羽目になった――。このような体験をした人から、弁護士ドットコムに「さすがに行き過ぎでは」との相談が寄せられている。 相談者によると、警察は財布の中の「塩」をみつけると、簡易検査をしたという。結果は陰性だったが「塩だとの確証がない」との理由で警察署に連行され、写真を撮られたり、書類を書かされたりしたそうだ。尿検査も陰性だったが、解放されたのは職務質問を受けてから5時間後だったという。 「高圧的な態度をとられて精神的にも苦痛だったが、謝罪の一言もなかった」と相談者は憤りを感じている様子だ。警察に苦情を申し立てる術はないのか。警視庁刑事としての経験も有する澤井康生弁護士に聞いた。Qは聞き手の質問、Aは澤井康生弁護士の回答)』、「職務質問を受けて荷物を見せたら、財布の中に入れていた「お清めの塩」を違法薬物と勘違いされ、尿検査をする羽目になった・・・結果は陰性だったが「塩だとの確証がない」との理由で警察署に連行され、写真を撮られたり、書類を書かされたりしたそうだ。尿検査も陰性だったが、解放されたのは職務質問を受けてから5時間後だったという」、なるほど。
・『警察官の対応「ただちに違法性は認められない」 Q:今回の警察の対応に法的な問題はないのでしょうか。 A:警察官がおこなった措置は、職務質問とそれに付随する所持品検査ならびに尿検査になります。職務質問は警察官職務執行法2条1項に基づき、警察官が対象者の人定事項などを質問する行為です。強制力はないので、あくまで任意ということになります。 所持品検査については明文規定はありませんが、最高裁の判例によれば、職務質問に付随しておこなうことができるとされています(最高裁昭和53年6月20日判決)。こちらも原則として強制力はなく、あくまで任意ということになります。 警察官は職務質問から始めて所持品検査をおこなった結果、違法薬物と疑われる白い粉末が出てきたことから警察署への任意同行を求め、任意での尿検査をおこなっています。すべての手続きは対象者の同意を得て任意でおこなっているため、違法性は認められません。 Q:相談者によると、簡易検査(あるいは予試験:薬物簡易試験)の結果は陰性だったとのことです。 A:警察官は検査の結果だけではなく、自供、対象物の状況、色、包装、所持態様、対象者の身体的状況など他の状況証拠を総合的に判断して、嫌疑の有無を判断することになります。 今回のケースの具体的な状況は不明ですが、簡易検査の結果は「陰性」だったものの他に不審事由があったのかもしれません。ここまでのプロセスについては、ただちに違法性は認められないといえるでしょう』、「警察官は職務質問から始めて所持品検査をおこなった結果、違法薬物と疑われる白い粉末が出てきたことから警察署への任意同行を求め、任意での尿検査をおこなっています。すべての手続きは対象者の同意を得て任意でおこなっているため、違法性は認められません」、なるほど。
・『5時間の留め置き「違法」の可能性も… Q:相談者は、職務質問を受けてから5時間後にようやく解放されたようです。長時間その場に留め置くことは、法的に問題ないのでしょうか。 参考判例として、神戸地裁姫路支部令和2年6月26日判決があります。覚醒剤の自己使用の事案について、警察署に任意同行された後に帰宅の意思を表示したにもかかわらず、6時間以上にわたって留め置きされた行為の違法性が問題となった事案です。 裁判所は、捜査の適法性の判断基準として「時系列的に必要性、緊急性なども考慮した上、具体的状況のもとで相当と認められる限度内にあるか否かを判断する」としました。 そのうえで、本人が強く帰宅を求めたのであれば、いったん帰らせたうえで追尾などの他の手段を考えることなく本人を留め置いた行為は「任意捜査として許容される留め置きの限度を超えている」と示しました。 この裁判例は、本人が実際に覚醒剤を自己使用し、強制採尿令状の請求に着手していた事案です。対して、今回のケースは覚醒剤ではなく「塩」なので、捜査の必要性、緊急性は高いとはいえないでしょう。 具体的な状況はわかりませんが、相談者が帰宅の意思を明確に示していたにもかかわらず、5時間にわたり留め置いた場合であれば、違法と判断される可能性も否定はできません。 Q:警察官の対応に疑問を感じた場合、苦情を申し立てることはできますか。 A:はい。警察法79条の規定に基づき、公安委員会に対して書面により、苦情の申し出ができます。公安委員会は誠実に処理し、処理結果を書面で申出者に通知するとされています』、「相談者が帰宅の意思を明確に示していたにもかかわらず、5時間にわたり留め置いた場合であれば、違法と判断される可能性も否定はできません。 Q:警察官の対応に疑問を感じた場合、苦情を申し立てることはできますか。 A:はい。警察法79条の規定に基づき、公安委員会に対して書面により、苦情の申し出ができます。公安委員会は誠実に処理し、処理結果を書面で申出者に通知するとされています」、なるほど。
第三に、3月15日付けダイヤモンド・オンラインが転載した弁護士ドットコムニュース「ロースクール制度は「文科省と法務省の設計ミスが一番の失敗」柴山昌彦・元文科相が激白」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340458
・『2024年3月に開校20年を迎えるロースクール(法科大学院)は、スタート直後こそ多様な人材が集まったものの、次第に入学者数は減り、司法試験の受験者数も低迷した。 これを受けて、国は2019年、法学部3年とロースクール2年の教育課程「法曹コース(いわゆる3+2)」を新設するとともに、「在学中受験」を可能にするなど、法曹志願者数の回復に向けて“テコ入れ”を図った。この時、ロースクールを所管する文部科学省で大臣を務めていたのが弁護士出身の柴山昌彦衆議院議員だ。 脱サラ後司法試験に合格するまで7年かかったという柴山氏は、「博打のような司法試験の結果一発」ではなく「卒業できれば7~8割の人が合格できる『プロセスによる選抜』」を実現し得る存在として、ロースクールには当初大きな期待を寄せていたという。 しかし、いざ始まった新司法試験では合格率が5割超えすら1度もなく、20%台の低空飛行が続いた。 「文部科学省と法務省が初めにしっかり制度設計をしておかなくてはいけなかったことが一番の失敗」と話す柴山氏に、この20年の振り返りとこれからの法曹養成について聞いた。(Qは聞き手の質問、Aは柴山氏の回答)』、「「博打のような司法試験の結果一発」ではなく「卒業できれば7~8割の人が合格できる『プロセスによる選抜』」を実現し得る存在として、ロースクールには当初大きな期待を寄せていたという。 しかし、いざ始まった新司法試験では合格率が5割超えすら1度もなく、20%台の低空飛行が続いた・・・「文部科学省と法務省が初めにしっかり制度設計をしておかなくてはいけなかったことが一番の失敗」と話す柴山氏」、なるほど。
・『一番の失敗は「当初の制度設計」 Q:柴山議員は民間企業での勤務を経て旧司法試験を合格して弁護士になっています。2004年のロースクール開校をどのように見ていましたか。) A:私が大学生だった1980年代は旧司法試験の合格率が1%台の年もあり、10~20年受験している人も珍しくありませんでした。当時の国会でも問題になって、「人生を空費して社会的な損失だ」などと言われてました。 私も民間企業を辞めてから最終合格まで7年かかりましたが、やはり大変厳しい思いをしましたし、不合格を繰り返すことはメンタル的にも非常に辛かった。「司法試験は博打」だと本当に思っていました。 博打と思わせるほど難関な試験に合格する人たちの集団という要素が法曹の社会的地位を高めていたというのはあると思います。 しかし、私に言わせれば、その“既得権益”の上にいる法曹は新しい時代の要請、特に国際的なニーズに応えられていなかった。早くから「このままではだめだ」「司法試験の結果のみという点ではなく、司法試験を受験するまでのプロセスを線で評価すべき」という声はたくさん出ていたにもかかわらずです。 若年層の合格者を増やすことも大事だと思っていましたので、ロースクールの導入及び合格者の拡大で、プロセスによる選抜で若い人たちが合格しやすくなるとともに、法曹人口が増え、多様性や競争によって“既得権益”が打破され業界全体がより活性化するのではないか。そんな思いでロースクールには非常に期待していました。 Q:開校初年度は社会人経験者が半数近く入学するなど、多様な人材の確保・育成に向けて好スタートを切ったかのように見えました。 A:アメリカのロースクール生は、入学してからものすごく勉強します。過酷と言われるほどの学生生活を送るようですが、そこまで頑張らないと卒業させてもらえません。その代わり、卒業できた人は7~8割が司法試験で合格できる。 日本のロースクールでも質の高い、そして進級が難しい厳格な評価をして、卒業できた人は同じように7~8割が合格する。そうなることを期待していましたし、当初はそうなる予定だったはずです。 社会人経験者の入学者もこれまでのキャリアを捨てても7~8割が合格できるならと、ロースクールの門を叩いた人はいたと思います。 Q:いざ新司法試験が始まってみると、初年度の合格率が48.3%で徐々に低下し、4回目からの10年ほどは20%台の低空飛行が続きました。 A:忸怩(じくじ)たる思いです。 雨後の筍のように、大学側が儲かるからといって猫も杓子もロースクールを作るということは想定できていなかったと思います。 決められた合格者数に対して多くのロースクールが作られれば、「司法試験合格者数」というデジタルな数値で綺麗にランク付けされてしまいます。合格率の高低でロースクール間に序列ができることは間違いないし、合格率の低いロースクールは淘汰されざるを得ない宿命にある。 こんなことはわかっていたことですから、私はロースクールができた当初から、「手厚い在校生への支援」と「厳格な評価」の両輪でやっていくべきだと思って教育行政に携わってきましたし、ロースクールの質の確保と再編は絶対必要だと文科省に再三訴えていました。 ところが、文科省の再編の動きは極めて鈍かった。結局ロースクールの再編・統合の動きは鈍く、司法試験を実施している法務省は法曹の質を確保する方向で動いた結果、理想と現実の間にものすごいギャップが生まれてしまいました。 Q:質の確保についてはどうでしょうか。 A:十分に確保できる仕組みでスタートしたとは言い難いと思います。 A:法曹養成の仕組みは基本的にアプレンティスシップ(徒弟制度)で、司法試験を合格した新人はいわば「丁稚」です。司法修習では検察庁や裁判所で実務の“修行”をおこないますが、起案書を出すと、ズタズタになって直されます。 修習を終えた後も同様です。新人は叩かれしごかれて、時間をかけて真のプロフェッショナルになっていくものなんです。にもかかわらず、いきなり新人が急増したら、徒弟制度で育てることなんてできるわけがない。 私自身は法曹人口を増やすべきだという立場ですが、それでも法曹養成の宿命、つまりしっかりと育て上げるというアプレンティスシップな仕組みの中で、急激な拡大というのは物理的に無理があったと考えています。 結局、弁護士人口を増やしたけれども、既存の法律事務所ではとても抱えきれない状況になり、修習後にいきなり独立(即独)する人も出ました。司法研修所を出ただけで、指導してくれる人もいない中いきなり競争にさらされれば、質を高める余裕なんてありません。 弁護士需要と供給の拡大、法科大学院の再編統合、これらの要素をきちんとグリップをきかせて計画を立てていくことが必要だったのではないでしょうか。 合格率についても同様です。 当初の目標では合格者数3000人、合格率7~8割という数値が掲げられていました。単純な数値上の話ではありますが、たとえばロースクール入学者数を4000人前後に絞れば達成できそうに思われます。 しかし、実際には全国で最大74校ものロースクールが開校し、制度開始から数年は入学者数が5500人を上回る一方、合格者数は最大で2000人を少し上回る数にとどまりました。これでは合格率7~8割が実現するはずもありません。 ロースクールの校数や入学者数といった全体の総量をどうするか。文部科学省と法務省がこの点を初めにしっかり制度設計をしておかなくてはいけなかった。これが一番の失敗だと思います。
「当初の目標では合格者数3000人、合格率7~8割という数値が掲げられていました。単純な数値上の話ではありますが、たとえばロースクール入学者数を4000人前後に絞れば達成できそうに思われます。 しかし、実際には全国で最大74校ものロースクールが開校し、制度開始から数年は入学者数が5500人を上回る一方、合格者数は最大で2000人を少し上回る数にとどまりました。これでは合格率7~8割が実現するはずもありません』、「ロースクールの校数や入学者数といった全体の総量をどうするか。文部科学省と法務省がこの点を初めにしっかり制度設計をしておかなくてはいけなかった。これが一番の失敗だと思います」、なるほど。
・『Q:法曹人口を増やすべきだという立場とのことですが、どの程度必要だと考えていますか。 A:具体的な数値を申し上げるのは難しいですが、国民性や法の浸透度というのが無関係ではないと思います。国民がどれほど法的サービスを具体的に求めているのか。法曹の数が、人口比でアメリカに比べて何倍も少ないというような単純な比較はすべきでありません。 ただ、国民性が違うとはいっても、これだけ社会がグローバル化していく中、丁々発止で訴訟などで海外と渡り合うためには、国際法に強い人材を含め、法曹の質と量を充実させることはすごく重要だと思っています。 また、国内でも法曹人口が十分でない地域もあります。それによってもし泣き寝入りしている弱い立場の方が一人でもいるとすれば、それはとても不幸なことですし、やはり法曹はまだまだ日本では足りていないと考えています』、「これだけ社会がグローバル化していく中、丁々発止で訴訟などで海外と渡り合うためには、国際法に強い人材を含め、法曹の質と量を充実させることはすごく重要だと思っています。 また、国内でも法曹人口が十分でない地域もあります。それによってもし泣き寝入りしている弱い立場の方が一人でもいるとすれば、それはとても不幸なことですし、やはり法曹はまだまだ日本では足りていないと考えています」、なるほど。
・『法曹コース創設や在学中受験の実現「理想に一歩近づいた」 Q:ロースクールは現在34校と最盛期の半分以下になるなど状況は変化しています。柴山議員が文部科学大臣だった際、「法曹コース(3+2)」を創設し、ロースクール在学中の受験も可能にしました。 ロースクール進学者数の低迷は、結局のところ、「ロースクールに魅力がない」と見られているからです。卒業しても司法試験に合格できるかどうかわからないうえ、膨大な時間と費用がかかる。メリットが少ないのに負担が多いものを選ぶ人はなかなかいないですよね。 優秀な人材であれば短い期間で合格できる仕組みを作って、「この仕組みで卒業した人はなかなかいい」と評価されるようにすることは、絶対やらなくてはいけないと思っていました。 「3+2」については、時間と費用のデメリットを抑えつつ、司法試験を受験するまでのプロセスを線で評価する仕組みを維持する形として、予備試験の存在をすごく意識しました。 Q:2023年の司法試験では法曹コースの学生が初めて在学中受験をし、合格率は「65.24%」。2022年度の既修者コースを修了した者の合格率「62.82%」、既修者コースに通う在学中受験者全体の合格率「63.31%」をわずかに上回りました。 A:手前味噌ですが、「ロースクールのあるべき理想に一歩近づいた」と自負しています。法曹コースへの進学を考えている方々がこの数字を見てどう感じるかだと思います。ただ、予備試験を経由した人の9割以上が合格していることもまた事実です。 法曹コースに進むと勉強に追われ過ぎるという声もありますが、その分学費の奨学金化や成績優秀者の学費減免などを実施するなど十分なメリットを用意し、法曹コースでしっかり成績を残した人は高い合格率でしかも早く法曹資格を得られる、という道筋をぜひつけてほしいと期待しています。そのために在学中受験も可能にしたわけですから。 Q:法曹コース進学は法学部での教育とセットになっているため、社会人経験者などは事実上入れません。 社会人から転身して弁護士として第2の道を歩みたいという方に大勢集まってもらいたいというのが、ロースクール開校当初の理想だったわけですから、そういった方々にとって魅力あるロースクールでなくてはならないというのは今後の大きな課題だと認識しています』、「2023年の司法試験では法曹コースの学生が初めて在学中受験をし、合格率は「65.24%」。2022年度の既修者コースを修了した者の合格率「62.82%」、既修者コースに通う在学中受験者全体の合格率「63.31%」をわずかに上回りました。 A:手前味噌ですが、「ロースクールのあるべき理想に一歩近づいた」と自負しています。法曹コースへの進学を考えている方々がこの数字を見てどう感じるかだと思います。ただ、予備試験を経由した人の9割以上が合格していることもまた事実です」、なるほど。
・『予備試験の存在「その実益は否定し得ない」 Q:予備試験の位置づけはどう考えていますか。 A:法曹コースであってもロースクールに通えない事情の方もいるでしょうから、あらゆる人に門戸を開くという観点から、補充的な形では今後も残していくべきものだと思います。ただ、今のままの仕組みで続けていくかは、もう少し精査する必要があるかもしれません。 Q:具体的には何を精査する必要があるのでしょうか。 A:予備試験はロースクールを経て受験するコースに対する補充的な意味の位置づけだと考えていますし、合格者数からして現状もその役割で落ち着いています。 司法試験の受験資格を得られるという点で、ロースクールを卒業したのと同等の学力が認められるというのが制度上の建前ですが、本当に同等といえるのかどうか。ロースクールと予備試験のいずれかに法曹志望者が偏るのならば、志望者の実力(レベル)で調整することを考えるのも一案です。 私が受験生時代に、旧司法試験の多浪を防ぐため、受験回数の制限が議論されました。結果として、回数制限ではなく受験回数による特別合格枠、いわゆる「丙案」制度が1996年の試験から導入されました。 受験回数3回までの受験生を優先的に合格させることで合格者の若年化を図るというものです。受験回数の少ない受験生にとっては恩恵ですが、その裏で、合格できる順位だった多浪生がはじかれていました。 たとえば、合格者1000人で特別合格枠が200人だった場合、制度対象外の受験生だと、試験結果の順位は801番目でも、1001~1200番目が全員制度対象の受験生だったらそちらが優先され、実力では801番目でも不合格ということになっていました。同じ司法試験を受けても、受験者の属性によって最低点が違っていたわけです。 「丙案」制度には様々な批判もありましたし、その後合格者がさらに増えたことで2004年以降は廃止されましたが、個人的には、異なる経路や経験によって合否の結果が変わってくることは政策的にあり得ないことではないと思っています。 Q:仕事を辞めるリスクまではとれない社会人にとって、予備試験は重要な選択肢になっているように見受けられます。 A:その実益は否定し得ないと思います。また、予備試験に合格できる実力があるならば、その道が最短であることも事実です。ただし何度も申し上げますように、予備試験はあくまで補充的という位置づけです。) Q:法曹界の採用では、若い合格者が優遇される傾向にあります。 A:多様な人材が活躍する法曹界を目指すという理念からすれば、間違いなく本末転倒な事態だと思っています。 脱サラして弁護士になった身としては、弁護士からサラリーマンやキャリア公務員になる、サラリーマンやキャリア公務員が弁護士になる、というような法曹という職を軸にしたキャリアのリボルビング(回転)が、これからもっと必要になってくると思うんです。 そういった人材を養成する場としてロースクールが一定の役割を果たすというのが私の理想です。 法曹コースを出て20代半ばで判事補になって、ずっと裁判官としてキャリアを積んでいくという道が駄目だと言っているわけではありません。でも最高裁判事を見ても、弁護士や検察官からなる人もいれば、外交官や法学者からなる人もいます。そういう多様性が法曹界でもっと広くあっていいのではないでしょうか。 裁判所や検察庁、大手法律事務所などの採用側が、もう少し長期的なビジョンを持って、年齢だけでなく、真に有益な人材を採用してほしいと思います。 法律の世界でも専門分野の細分化が著しく進んでいます。法律の知識だけで解決できる問題ばかりではありません。たとえば建築関係の紛争で1級建築士の資格を持つ弁護士がいたり、医療訴訟で医師免許を持つ弁護士がいたりすることが紛争解決にどれほど有益か。「国民のための司法」という観点からも、異分野の専門知識を持つ法曹がいることは大変望ましいことです。 Q:法曹養成のあり方について、国は今後どう向き合っていくのでしょうか。 A:既に令和6年度の予算は閣議決定をされ、所属する自民党では重点要望項目などを審査しています。国際情勢を踏まえたバランス感覚と法的思考能力をあわせ持つ人材を広く確保育成する方針です。 検察官出身の赤根智子さんが2018年、日本の法曹として初めて国際刑事裁判所(ICC)判事に就任しましたが、これからも国際的な分野で活躍できる法曹をしっかりと養成していくためには、幅の広いバッググラウンドをもった法曹が必要だろうと思っています。 また、裁判所の予算についても、これまでの37億円から57億円に増額されます。ロースクール制度の今後の在り方については引き続き、政府としてまた国会として取り組まなければならない重要な課題だと認識しています。 Q:法曹養成の課題について、国会内での盛り上がりはどうでしょうか。 A:残念ながら国会内で問題意識を熱心に取り組んでいる議員は多くありません。 法務と文科の両方に取り組んでいた方々は問題意識を強く持ってくださっています。問題意識が高い人たちで国家の様々な改革を後押ししていくことが大事だろうと思います。 法務省と文部科学省とではカルチャーが違います。そこを統べて物事を進めるためには、政治のイニシアチブが必要だと認識しています。 私の大臣時代におこなったロースクール改革も大きなものだったと思っていますし、何とかうまくものにしていけばいいのではないかという見通しが立ったのではないかと自負しています。「柴山の言うことなんて当てになんないよ」と言われるかもしれませんけどね(笑)。 Q:立法府の一員である柴山議員はどう取り組んでいくつもりでいますか。 A:私は現在、党の政調会長代理で、政務調査会での重点担当分野として大臣をしていた文部科学省分野と法務分野が割り当てられており、法曹養成と向かい合えるポジションにいます。 質・量・多様性、この3つをキーワードとして法曹養成にこれからもしっかりと関わっていきたいと考えています』、「弁護士からサラリーマンやキャリア公務員になる、サラリーマンやキャリア公務員が弁護士になる、というような法曹という職を軸にしたキャリアのリボルビング(回転)が、これからもっと必要になってくると思うんです。 そういった人材を養成する場としてロースクールが一定の役割を果たすというのが私の理想です・・・最高裁判事を見ても、弁護士や検察官からなる人もいれば、外交官や法学者からなる人もいます。そういう多様性が法曹界でもっと広くあっていいのではないでしょうか。 裁判所や検察庁、大手法律事務所などの採用側が、もう少し長期的なビジョンを持って、年齢だけでなく、真に有益な人材を採用してほしいと思います・・・法務省と文部科学省とではカルチャーが違います。そこを統べて物事を進めるためには、政治のイニシアチブが必要だと認識しています」、ずれにしろ、「ロースクール」の役割が当初想定されたのとは、大きく異なっている。ここでもう一度、今後の在り方を冷静に考え直す時期に来ているのではなかろうか。
先ずは、昨年9月4日付け東洋経済オンライン「「特捜検察」の暴走、なぜ無罪判決が相次ぐのか ストーリー優先で証拠集め、調書は検事の作文」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/698489
・『司法試験の受験者数が激減。弁護士は「食えない」「AIが代替する」と敬遠され、若き裁判官の離職が相次ぎ、検察官は供述をねじ曲げるーー。『週刊東洋経済』の9月4日(月)発売号(9月9日号)では、「弁護士・裁判官・検察官」を特集。実態とともに、司法インフラの瓦解の足音をお伝えする。 「お試しで逮捕、起訴なんてことはありえないんだよ。俺たちはいいかげんな仕事はできないんだよ。人の人生狂わせる権力持ってるから、こんなちっぽけな誤審とかで人を殺すことだってできるんですよ。失敗したら腹を切らなきゃいけないんだよ。命かけてるんだよ、俺たちは。あなたたちみたいに金をかけているんじゃねえんだ。金なんかよりも大事な命と人の人生を天秤にかけてこっちは仕事をしてるんだよ。なめるんじゃねーよ。必死なんだよ」 これは大阪地検特捜部の田渕大輔検事(肩書は当時、以下同じ)が、不動産開発会社プレサンスコーポレーションの小林桂樹・執行役員の取り調べで放った言葉だ。2019年12月のことだ』、「俺たちはいいかげんな仕事はできないんだよ。人の人生狂わせる権力持ってるから、こんなちっぽけな誤審とかで人を殺すことだってできるんですよ。失敗したら腹を切らなきゃいけないんだよ。命かけてるんだよ、俺たちは。あなたたちみたいに金をかけているんじゃねえんだ。金なんかよりも大事な命と人の人生を天秤にかけてこっちは仕事をしてるんだよ。なめるんじゃねーよ。必死なんだよ」、何と思い上がった姿勢なのだろう。驚いた。
・『人生は狂わされた 田渕の言葉どおり、プレサンスの山岸忍社長の人生は狂わされた。否認をし続けた山岸は248日間勾留された。勾留中に社長を辞任し、自分が創業したプレサンスの株を同業他社に売却した。 ところが山岸の逮捕、起訴は検察の大チョンボだった。田渕は小林にウソの供述をさせていた。大阪地裁はそのことを見抜き、山岸に無罪を言い渡した。検察は控訴を断念した。 飛ぶ鳥を落とす勢いだったプレサンスを経営危機に陥れておきながら、大阪地検から当事者の山岸に謝罪の言葉はまったくない。 厚生労働省の雇用均等・児童家庭局、村木厚子局長事件で無罪を勝ち取った弘中惇一郎弁護士は、近著『特捜検察の正体』の中でプレサンス事件について「大阪地検特捜部は村木事件と同じ過ちを繰り返してしまった」と書いている。) 村木事件をきっかけに導入された取り調べの録音録画がされている中で、田渕は取調室の机をたたき、小林を侮辱し、精神的苦痛を与えた。大阪地裁は「録音録画された中でこのような取り調べが行われたこと自体が驚くべき由々しき事態」と指摘している。 弘中は前出の著書の中で、検察が事件をでっち上げる手法を20に分類している。村木事件など過去に受任した冤罪(えんざい)事件での手法だが、これらは今もなお使われている。 例えばプレサンス事件では「山岸が横領を知っていた」という誤った見立てで証拠集めをした(上表の手法1)。長期勾留し山岸を心身ともに追い込んだ(同9)。 公安警察が立件した大川原化工機事件は検察の手法そのままだ。「生物兵器に転用可能と知っていて不正に輸出した」という誤った見立てをし(手法1)、温度の上がらない箇所があるという客観的・科学的事実には目をつぶり(同2)、警部補が供述調書をひたすら作文した(同3)。調書に「不正に」などの化粧を施して真実らしさを装った(同17)。検察は公安警察の言いなりになって大川原化工機の大川原正明社長らを起訴した』、「弘中は前出の著書の中で、検察が事件をでっち上げる手法を20に分類している。村木事件など過去に受任した冤罪(えんざい)事件での手法だが、これらは今もなお使われている。 例えばプレサンス事件では「山岸が横領を知っていた」という誤った見立てで証拠集めをした(上表の手法1)。長期勾留し山岸を心身ともに追い込んだ(同9)。 公安警察が立件した大川原化工機事件は検察の手法そのままだ。「生物兵器に転用可能と知っていて不正に輸出した」という誤った見立てをし(手法1)、温度の上がらない箇所があるという客観的・科学的事実には目をつぶり(同2)、警部補が供述調書をひたすら作文した(同3)。調書に「不正に」などの化粧を施して真実らしさを装った(同17)。検察は公安警察の言いなりになって大川原化工機の大川原正明社長らを起訴した」、なるほど。
・『最大の武器は人質司法 検察の権力の源泉は何か。元検察官の郷原信郎弁護士は「人質司法が最大の武器だ」と指摘する。 検察は容疑者を逮捕すると48時間拘束できる。裁判所に勾留が認められると10日間拘束でき、再度同じ手続きでさらに10日間延長できる。つまり逮捕から最長で22日間拘束できる。) 起訴されれば法律上は保釈が可能となる。しかしそれは容疑を認めた場合に限られる。否認し続けると起訴後、口裏合わせや証拠隠滅、逃亡のおそれがあるとし、検察は保釈に猛反対する。特捜事件の場合、裁判所は検察に追従する傾向が顕著だ。 なぜ検察は長期勾留で被疑者を追い込むのか。郷原弁護士は「裁判で争わせないようにするためだ」と指摘する。法廷では検察官が罪状を読み上げ、被告が容疑を認める。まるで儀式だ。後は執行猶予をつけるかどうかだけで、検察が負けることはない。刑事事件の有罪率が99.8%と高いことの原因の1つにもなっている。 企業にとって長期勾留の経済的ダメージは大きい。それを見透かして、「罪を認めてさっさと保釈されたほうが得、という考え方をする人もいるよ」と、自白を巧妙に促す検察官もいるくらいだ。 人質司法に頼るあまり特捜検察の質が低下。「刑事事件としての立件の当否を判断する能力が劣ってきている」(郷原弁護士)。誤った見立てで経営者・企業人を逮捕・起訴・長期勾留。供述調書をねじ曲げてきたのが検察の実態だ』、「元検察官の郷原信郎弁護士は「人質司法が最大の武器だ」と指摘する。 検察は容疑者を逮捕すると48時間拘束できる。裁判所に勾留が認められると10日間拘束でき、再度同じ手続きでさらに10日間延長できる。つまり逮捕から最長で22日間拘束できる・・・人質司法に頼るあまり特捜検察の質が低下。「刑事事件としての立件の当否を判断する能力が劣ってきている」(郷原弁護士)。誤った見立てで経営者・企業人を逮捕・起訴・長期勾留。供述調書をねじ曲げてきたのが検察の実態だ・・・企業にとって長期勾留の経済的ダメージは大きい。それを見透かして、「罪を認めてさっさと保釈されたほうが得、という考え方をする人もいるよ」と、自白を巧妙に促す検察官もいるくらいだ」、全く卑劣この上ない検察官だ。
・『検察官同一体の原則 検察庁には「検察官同一体の原則」というものがある。何事も上に伺いを立て、検察官によって違ったことを言ってはならない。 大川原社長は国と東京都を相手に賠償訴訟をしている。その裁判に、大川原社長らを起訴した塚部貴子検事が証人喚問された。別の検事が社長らの起訴を取り消しているというのに、塚部は「当時の判断に間違いがあったとは思わない」とし、謝罪しなかった。 証人台の塚部をほぼ正面の原告席から見ていた大川原社長には「言いたくないことを言わされているたびに検事の顔色が赤黒く変わったように見えた。個人の意思を抑えてしまうからダメなんだ。上司に『違う』と言える検察組織にしていかないと、国としてやばい」。大川原社長は組織を率いる企業経営者として、検察という組織のいびつさを危惧している。(一部敬称略)』、「大川原社長らを起訴した塚部貴子検事が証人喚問された。別の検事が社長らの起訴を取り消しているというのに、塚部は「当時の判断に間違いがあったとは思わない」とし、謝罪しなかった。 証人台の塚部をほぼ正面の原告席から見ていた大川原社長には「言いたくないことを言わされているたびに検事の顔色が赤黒く変わったように見えた。個人の意思を抑えてしまうからダメなんだ。上司に『違う』と言える検察組織にしていかないと、国としてやばい」。大川原社長は組織を率いる企業経営者として、検察という組織のいびつさを危惧している」、その通りだ。
次に、本年3月8日付けダイヤモンド・オンラインが転載した弁護士ドットコムニュース「警察の「やりすぎ職務質問」5時間拘束!塩を“薬物”と誤解、尿検査シロでも…これ違法?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340025
・『職務質問を受けて荷物を見せたら、財布の中に入れていた「お清めの塩」を違法薬物と勘違いされ、尿検査をする羽目になった――。このような体験をした人から、弁護士ドットコムに「さすがに行き過ぎでは」との相談が寄せられている。 相談者によると、警察は財布の中の「塩」をみつけると、簡易検査をしたという。結果は陰性だったが「塩だとの確証がない」との理由で警察署に連行され、写真を撮られたり、書類を書かされたりしたそうだ。尿検査も陰性だったが、解放されたのは職務質問を受けてから5時間後だったという。 「高圧的な態度をとられて精神的にも苦痛だったが、謝罪の一言もなかった」と相談者は憤りを感じている様子だ。警察に苦情を申し立てる術はないのか。警視庁刑事としての経験も有する澤井康生弁護士に聞いた。Qは聞き手の質問、Aは澤井康生弁護士の回答)』、「職務質問を受けて荷物を見せたら、財布の中に入れていた「お清めの塩」を違法薬物と勘違いされ、尿検査をする羽目になった・・・結果は陰性だったが「塩だとの確証がない」との理由で警察署に連行され、写真を撮られたり、書類を書かされたりしたそうだ。尿検査も陰性だったが、解放されたのは職務質問を受けてから5時間後だったという」、なるほど。
・『警察官の対応「ただちに違法性は認められない」 Q:今回の警察の対応に法的な問題はないのでしょうか。 A:警察官がおこなった措置は、職務質問とそれに付随する所持品検査ならびに尿検査になります。職務質問は警察官職務執行法2条1項に基づき、警察官が対象者の人定事項などを質問する行為です。強制力はないので、あくまで任意ということになります。 所持品検査については明文規定はありませんが、最高裁の判例によれば、職務質問に付随しておこなうことができるとされています(最高裁昭和53年6月20日判決)。こちらも原則として強制力はなく、あくまで任意ということになります。 警察官は職務質問から始めて所持品検査をおこなった結果、違法薬物と疑われる白い粉末が出てきたことから警察署への任意同行を求め、任意での尿検査をおこなっています。すべての手続きは対象者の同意を得て任意でおこなっているため、違法性は認められません。 Q:相談者によると、簡易検査(あるいは予試験:薬物簡易試験)の結果は陰性だったとのことです。 A:警察官は検査の結果だけではなく、自供、対象物の状況、色、包装、所持態様、対象者の身体的状況など他の状況証拠を総合的に判断して、嫌疑の有無を判断することになります。 今回のケースの具体的な状況は不明ですが、簡易検査の結果は「陰性」だったものの他に不審事由があったのかもしれません。ここまでのプロセスについては、ただちに違法性は認められないといえるでしょう』、「警察官は職務質問から始めて所持品検査をおこなった結果、違法薬物と疑われる白い粉末が出てきたことから警察署への任意同行を求め、任意での尿検査をおこなっています。すべての手続きは対象者の同意を得て任意でおこなっているため、違法性は認められません」、なるほど。
・『5時間の留め置き「違法」の可能性も… Q:相談者は、職務質問を受けてから5時間後にようやく解放されたようです。長時間その場に留め置くことは、法的に問題ないのでしょうか。 参考判例として、神戸地裁姫路支部令和2年6月26日判決があります。覚醒剤の自己使用の事案について、警察署に任意同行された後に帰宅の意思を表示したにもかかわらず、6時間以上にわたって留め置きされた行為の違法性が問題となった事案です。 裁判所は、捜査の適法性の判断基準として「時系列的に必要性、緊急性なども考慮した上、具体的状況のもとで相当と認められる限度内にあるか否かを判断する」としました。 そのうえで、本人が強く帰宅を求めたのであれば、いったん帰らせたうえで追尾などの他の手段を考えることなく本人を留め置いた行為は「任意捜査として許容される留め置きの限度を超えている」と示しました。 この裁判例は、本人が実際に覚醒剤を自己使用し、強制採尿令状の請求に着手していた事案です。対して、今回のケースは覚醒剤ではなく「塩」なので、捜査の必要性、緊急性は高いとはいえないでしょう。 具体的な状況はわかりませんが、相談者が帰宅の意思を明確に示していたにもかかわらず、5時間にわたり留め置いた場合であれば、違法と判断される可能性も否定はできません。 Q:警察官の対応に疑問を感じた場合、苦情を申し立てることはできますか。 A:はい。警察法79条の規定に基づき、公安委員会に対して書面により、苦情の申し出ができます。公安委員会は誠実に処理し、処理結果を書面で申出者に通知するとされています』、「相談者が帰宅の意思を明確に示していたにもかかわらず、5時間にわたり留め置いた場合であれば、違法と判断される可能性も否定はできません。 Q:警察官の対応に疑問を感じた場合、苦情を申し立てることはできますか。 A:はい。警察法79条の規定に基づき、公安委員会に対して書面により、苦情の申し出ができます。公安委員会は誠実に処理し、処理結果を書面で申出者に通知するとされています」、なるほど。
第三に、3月15日付けダイヤモンド・オンラインが転載した弁護士ドットコムニュース「ロースクール制度は「文科省と法務省の設計ミスが一番の失敗」柴山昌彦・元文科相が激白」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/340458
・『2024年3月に開校20年を迎えるロースクール(法科大学院)は、スタート直後こそ多様な人材が集まったものの、次第に入学者数は減り、司法試験の受験者数も低迷した。 これを受けて、国は2019年、法学部3年とロースクール2年の教育課程「法曹コース(いわゆる3+2)」を新設するとともに、「在学中受験」を可能にするなど、法曹志願者数の回復に向けて“テコ入れ”を図った。この時、ロースクールを所管する文部科学省で大臣を務めていたのが弁護士出身の柴山昌彦衆議院議員だ。 脱サラ後司法試験に合格するまで7年かかったという柴山氏は、「博打のような司法試験の結果一発」ではなく「卒業できれば7~8割の人が合格できる『プロセスによる選抜』」を実現し得る存在として、ロースクールには当初大きな期待を寄せていたという。 しかし、いざ始まった新司法試験では合格率が5割超えすら1度もなく、20%台の低空飛行が続いた。 「文部科学省と法務省が初めにしっかり制度設計をしておかなくてはいけなかったことが一番の失敗」と話す柴山氏に、この20年の振り返りとこれからの法曹養成について聞いた。(Qは聞き手の質問、Aは柴山氏の回答)』、「「博打のような司法試験の結果一発」ではなく「卒業できれば7~8割の人が合格できる『プロセスによる選抜』」を実現し得る存在として、ロースクールには当初大きな期待を寄せていたという。 しかし、いざ始まった新司法試験では合格率が5割超えすら1度もなく、20%台の低空飛行が続いた・・・「文部科学省と法務省が初めにしっかり制度設計をしておかなくてはいけなかったことが一番の失敗」と話す柴山氏」、なるほど。
・『一番の失敗は「当初の制度設計」 Q:柴山議員は民間企業での勤務を経て旧司法試験を合格して弁護士になっています。2004年のロースクール開校をどのように見ていましたか。) A:私が大学生だった1980年代は旧司法試験の合格率が1%台の年もあり、10~20年受験している人も珍しくありませんでした。当時の国会でも問題になって、「人生を空費して社会的な損失だ」などと言われてました。 私も民間企業を辞めてから最終合格まで7年かかりましたが、やはり大変厳しい思いをしましたし、不合格を繰り返すことはメンタル的にも非常に辛かった。「司法試験は博打」だと本当に思っていました。 博打と思わせるほど難関な試験に合格する人たちの集団という要素が法曹の社会的地位を高めていたというのはあると思います。 しかし、私に言わせれば、その“既得権益”の上にいる法曹は新しい時代の要請、特に国際的なニーズに応えられていなかった。早くから「このままではだめだ」「司法試験の結果のみという点ではなく、司法試験を受験するまでのプロセスを線で評価すべき」という声はたくさん出ていたにもかかわらずです。 若年層の合格者を増やすことも大事だと思っていましたので、ロースクールの導入及び合格者の拡大で、プロセスによる選抜で若い人たちが合格しやすくなるとともに、法曹人口が増え、多様性や競争によって“既得権益”が打破され業界全体がより活性化するのではないか。そんな思いでロースクールには非常に期待していました。 Q:開校初年度は社会人経験者が半数近く入学するなど、多様な人材の確保・育成に向けて好スタートを切ったかのように見えました。 A:アメリカのロースクール生は、入学してからものすごく勉強します。過酷と言われるほどの学生生活を送るようですが、そこまで頑張らないと卒業させてもらえません。その代わり、卒業できた人は7~8割が司法試験で合格できる。 日本のロースクールでも質の高い、そして進級が難しい厳格な評価をして、卒業できた人は同じように7~8割が合格する。そうなることを期待していましたし、当初はそうなる予定だったはずです。 社会人経験者の入学者もこれまでのキャリアを捨てても7~8割が合格できるならと、ロースクールの門を叩いた人はいたと思います。 Q:いざ新司法試験が始まってみると、初年度の合格率が48.3%で徐々に低下し、4回目からの10年ほどは20%台の低空飛行が続きました。 A:忸怩(じくじ)たる思いです。 雨後の筍のように、大学側が儲かるからといって猫も杓子もロースクールを作るということは想定できていなかったと思います。 決められた合格者数に対して多くのロースクールが作られれば、「司法試験合格者数」というデジタルな数値で綺麗にランク付けされてしまいます。合格率の高低でロースクール間に序列ができることは間違いないし、合格率の低いロースクールは淘汰されざるを得ない宿命にある。 こんなことはわかっていたことですから、私はロースクールができた当初から、「手厚い在校生への支援」と「厳格な評価」の両輪でやっていくべきだと思って教育行政に携わってきましたし、ロースクールの質の確保と再編は絶対必要だと文科省に再三訴えていました。 ところが、文科省の再編の動きは極めて鈍かった。結局ロースクールの再編・統合の動きは鈍く、司法試験を実施している法務省は法曹の質を確保する方向で動いた結果、理想と現実の間にものすごいギャップが生まれてしまいました。 Q:質の確保についてはどうでしょうか。 A:十分に確保できる仕組みでスタートしたとは言い難いと思います。 A:法曹養成の仕組みは基本的にアプレンティスシップ(徒弟制度)で、司法試験を合格した新人はいわば「丁稚」です。司法修習では検察庁や裁判所で実務の“修行”をおこないますが、起案書を出すと、ズタズタになって直されます。 修習を終えた後も同様です。新人は叩かれしごかれて、時間をかけて真のプロフェッショナルになっていくものなんです。にもかかわらず、いきなり新人が急増したら、徒弟制度で育てることなんてできるわけがない。 私自身は法曹人口を増やすべきだという立場ですが、それでも法曹養成の宿命、つまりしっかりと育て上げるというアプレンティスシップな仕組みの中で、急激な拡大というのは物理的に無理があったと考えています。 結局、弁護士人口を増やしたけれども、既存の法律事務所ではとても抱えきれない状況になり、修習後にいきなり独立(即独)する人も出ました。司法研修所を出ただけで、指導してくれる人もいない中いきなり競争にさらされれば、質を高める余裕なんてありません。 弁護士需要と供給の拡大、法科大学院の再編統合、これらの要素をきちんとグリップをきかせて計画を立てていくことが必要だったのではないでしょうか。 合格率についても同様です。 当初の目標では合格者数3000人、合格率7~8割という数値が掲げられていました。単純な数値上の話ではありますが、たとえばロースクール入学者数を4000人前後に絞れば達成できそうに思われます。 しかし、実際には全国で最大74校ものロースクールが開校し、制度開始から数年は入学者数が5500人を上回る一方、合格者数は最大で2000人を少し上回る数にとどまりました。これでは合格率7~8割が実現するはずもありません。 ロースクールの校数や入学者数といった全体の総量をどうするか。文部科学省と法務省がこの点を初めにしっかり制度設計をしておかなくてはいけなかった。これが一番の失敗だと思います。
「当初の目標では合格者数3000人、合格率7~8割という数値が掲げられていました。単純な数値上の話ではありますが、たとえばロースクール入学者数を4000人前後に絞れば達成できそうに思われます。 しかし、実際には全国で最大74校ものロースクールが開校し、制度開始から数年は入学者数が5500人を上回る一方、合格者数は最大で2000人を少し上回る数にとどまりました。これでは合格率7~8割が実現するはずもありません』、「ロースクールの校数や入学者数といった全体の総量をどうするか。文部科学省と法務省がこの点を初めにしっかり制度設計をしておかなくてはいけなかった。これが一番の失敗だと思います」、なるほど。
・『Q:法曹人口を増やすべきだという立場とのことですが、どの程度必要だと考えていますか。 A:具体的な数値を申し上げるのは難しいですが、国民性や法の浸透度というのが無関係ではないと思います。国民がどれほど法的サービスを具体的に求めているのか。法曹の数が、人口比でアメリカに比べて何倍も少ないというような単純な比較はすべきでありません。 ただ、国民性が違うとはいっても、これだけ社会がグローバル化していく中、丁々発止で訴訟などで海外と渡り合うためには、国際法に強い人材を含め、法曹の質と量を充実させることはすごく重要だと思っています。 また、国内でも法曹人口が十分でない地域もあります。それによってもし泣き寝入りしている弱い立場の方が一人でもいるとすれば、それはとても不幸なことですし、やはり法曹はまだまだ日本では足りていないと考えています』、「これだけ社会がグローバル化していく中、丁々発止で訴訟などで海外と渡り合うためには、国際法に強い人材を含め、法曹の質と量を充実させることはすごく重要だと思っています。 また、国内でも法曹人口が十分でない地域もあります。それによってもし泣き寝入りしている弱い立場の方が一人でもいるとすれば、それはとても不幸なことですし、やはり法曹はまだまだ日本では足りていないと考えています」、なるほど。
・『法曹コース創設や在学中受験の実現「理想に一歩近づいた」 Q:ロースクールは現在34校と最盛期の半分以下になるなど状況は変化しています。柴山議員が文部科学大臣だった際、「法曹コース(3+2)」を創設し、ロースクール在学中の受験も可能にしました。 ロースクール進学者数の低迷は、結局のところ、「ロースクールに魅力がない」と見られているからです。卒業しても司法試験に合格できるかどうかわからないうえ、膨大な時間と費用がかかる。メリットが少ないのに負担が多いものを選ぶ人はなかなかいないですよね。 優秀な人材であれば短い期間で合格できる仕組みを作って、「この仕組みで卒業した人はなかなかいい」と評価されるようにすることは、絶対やらなくてはいけないと思っていました。 「3+2」については、時間と費用のデメリットを抑えつつ、司法試験を受験するまでのプロセスを線で評価する仕組みを維持する形として、予備試験の存在をすごく意識しました。 Q:2023年の司法試験では法曹コースの学生が初めて在学中受験をし、合格率は「65.24%」。2022年度の既修者コースを修了した者の合格率「62.82%」、既修者コースに通う在学中受験者全体の合格率「63.31%」をわずかに上回りました。 A:手前味噌ですが、「ロースクールのあるべき理想に一歩近づいた」と自負しています。法曹コースへの進学を考えている方々がこの数字を見てどう感じるかだと思います。ただ、予備試験を経由した人の9割以上が合格していることもまた事実です。 法曹コースに進むと勉強に追われ過ぎるという声もありますが、その分学費の奨学金化や成績優秀者の学費減免などを実施するなど十分なメリットを用意し、法曹コースでしっかり成績を残した人は高い合格率でしかも早く法曹資格を得られる、という道筋をぜひつけてほしいと期待しています。そのために在学中受験も可能にしたわけですから。 Q:法曹コース進学は法学部での教育とセットになっているため、社会人経験者などは事実上入れません。 社会人から転身して弁護士として第2の道を歩みたいという方に大勢集まってもらいたいというのが、ロースクール開校当初の理想だったわけですから、そういった方々にとって魅力あるロースクールでなくてはならないというのは今後の大きな課題だと認識しています』、「2023年の司法試験では法曹コースの学生が初めて在学中受験をし、合格率は「65.24%」。2022年度の既修者コースを修了した者の合格率「62.82%」、既修者コースに通う在学中受験者全体の合格率「63.31%」をわずかに上回りました。 A:手前味噌ですが、「ロースクールのあるべき理想に一歩近づいた」と自負しています。法曹コースへの進学を考えている方々がこの数字を見てどう感じるかだと思います。ただ、予備試験を経由した人の9割以上が合格していることもまた事実です」、なるほど。
・『予備試験の存在「その実益は否定し得ない」 Q:予備試験の位置づけはどう考えていますか。 A:法曹コースであってもロースクールに通えない事情の方もいるでしょうから、あらゆる人に門戸を開くという観点から、補充的な形では今後も残していくべきものだと思います。ただ、今のままの仕組みで続けていくかは、もう少し精査する必要があるかもしれません。 Q:具体的には何を精査する必要があるのでしょうか。 A:予備試験はロースクールを経て受験するコースに対する補充的な意味の位置づけだと考えていますし、合格者数からして現状もその役割で落ち着いています。 司法試験の受験資格を得られるという点で、ロースクールを卒業したのと同等の学力が認められるというのが制度上の建前ですが、本当に同等といえるのかどうか。ロースクールと予備試験のいずれかに法曹志望者が偏るのならば、志望者の実力(レベル)で調整することを考えるのも一案です。 私が受験生時代に、旧司法試験の多浪を防ぐため、受験回数の制限が議論されました。結果として、回数制限ではなく受験回数による特別合格枠、いわゆる「丙案」制度が1996年の試験から導入されました。 受験回数3回までの受験生を優先的に合格させることで合格者の若年化を図るというものです。受験回数の少ない受験生にとっては恩恵ですが、その裏で、合格できる順位だった多浪生がはじかれていました。 たとえば、合格者1000人で特別合格枠が200人だった場合、制度対象外の受験生だと、試験結果の順位は801番目でも、1001~1200番目が全員制度対象の受験生だったらそちらが優先され、実力では801番目でも不合格ということになっていました。同じ司法試験を受けても、受験者の属性によって最低点が違っていたわけです。 「丙案」制度には様々な批判もありましたし、その後合格者がさらに増えたことで2004年以降は廃止されましたが、個人的には、異なる経路や経験によって合否の結果が変わってくることは政策的にあり得ないことではないと思っています。 Q:仕事を辞めるリスクまではとれない社会人にとって、予備試験は重要な選択肢になっているように見受けられます。 A:その実益は否定し得ないと思います。また、予備試験に合格できる実力があるならば、その道が最短であることも事実です。ただし何度も申し上げますように、予備試験はあくまで補充的という位置づけです。) Q:法曹界の採用では、若い合格者が優遇される傾向にあります。 A:多様な人材が活躍する法曹界を目指すという理念からすれば、間違いなく本末転倒な事態だと思っています。 脱サラして弁護士になった身としては、弁護士からサラリーマンやキャリア公務員になる、サラリーマンやキャリア公務員が弁護士になる、というような法曹という職を軸にしたキャリアのリボルビング(回転)が、これからもっと必要になってくると思うんです。 そういった人材を養成する場としてロースクールが一定の役割を果たすというのが私の理想です。 法曹コースを出て20代半ばで判事補になって、ずっと裁判官としてキャリアを積んでいくという道が駄目だと言っているわけではありません。でも最高裁判事を見ても、弁護士や検察官からなる人もいれば、外交官や法学者からなる人もいます。そういう多様性が法曹界でもっと広くあっていいのではないでしょうか。 裁判所や検察庁、大手法律事務所などの採用側が、もう少し長期的なビジョンを持って、年齢だけでなく、真に有益な人材を採用してほしいと思います。 法律の世界でも専門分野の細分化が著しく進んでいます。法律の知識だけで解決できる問題ばかりではありません。たとえば建築関係の紛争で1級建築士の資格を持つ弁護士がいたり、医療訴訟で医師免許を持つ弁護士がいたりすることが紛争解決にどれほど有益か。「国民のための司法」という観点からも、異分野の専門知識を持つ法曹がいることは大変望ましいことです。 Q:法曹養成のあり方について、国は今後どう向き合っていくのでしょうか。 A:既に令和6年度の予算は閣議決定をされ、所属する自民党では重点要望項目などを審査しています。国際情勢を踏まえたバランス感覚と法的思考能力をあわせ持つ人材を広く確保育成する方針です。 検察官出身の赤根智子さんが2018年、日本の法曹として初めて国際刑事裁判所(ICC)判事に就任しましたが、これからも国際的な分野で活躍できる法曹をしっかりと養成していくためには、幅の広いバッググラウンドをもった法曹が必要だろうと思っています。 また、裁判所の予算についても、これまでの37億円から57億円に増額されます。ロースクール制度の今後の在り方については引き続き、政府としてまた国会として取り組まなければならない重要な課題だと認識しています。 Q:法曹養成の課題について、国会内での盛り上がりはどうでしょうか。 A:残念ながら国会内で問題意識を熱心に取り組んでいる議員は多くありません。 法務と文科の両方に取り組んでいた方々は問題意識を強く持ってくださっています。問題意識が高い人たちで国家の様々な改革を後押ししていくことが大事だろうと思います。 法務省と文部科学省とではカルチャーが違います。そこを統べて物事を進めるためには、政治のイニシアチブが必要だと認識しています。 私の大臣時代におこなったロースクール改革も大きなものだったと思っていますし、何とかうまくものにしていけばいいのではないかという見通しが立ったのではないかと自負しています。「柴山の言うことなんて当てになんないよ」と言われるかもしれませんけどね(笑)。 Q:立法府の一員である柴山議員はどう取り組んでいくつもりでいますか。 A:私は現在、党の政調会長代理で、政務調査会での重点担当分野として大臣をしていた文部科学省分野と法務分野が割り当てられており、法曹養成と向かい合えるポジションにいます。 質・量・多様性、この3つをキーワードとして法曹養成にこれからもしっかりと関わっていきたいと考えています』、「弁護士からサラリーマンやキャリア公務員になる、サラリーマンやキャリア公務員が弁護士になる、というような法曹という職を軸にしたキャリアのリボルビング(回転)が、これからもっと必要になってくると思うんです。 そういった人材を養成する場としてロースクールが一定の役割を果たすというのが私の理想です・・・最高裁判事を見ても、弁護士や検察官からなる人もいれば、外交官や法学者からなる人もいます。そういう多様性が法曹界でもっと広くあっていいのではないでしょうか。 裁判所や検察庁、大手法律事務所などの採用側が、もう少し長期的なビジョンを持って、年齢だけでなく、真に有益な人材を採用してほしいと思います・・・法務省と文部科学省とではカルチャーが違います。そこを統べて物事を進めるためには、政治のイニシアチブが必要だと認識しています」、ずれにしろ、「ロースクール」の役割が当初想定されたのとは、大きく異なっている。ここでもう一度、今後の在り方を冷静に考え直す時期に来ているのではなかろうか。
タグ:司法 (その18)(「特捜検察」の暴走 なぜ無罪判決が相次ぐのか ストーリー優先で証拠集め、調書は検事の作文、警察の「やりすぎ職務質問」5時間拘束!塩を“薬物”と誤解 尿検査シロでも…これ違法?、ロースクール制度は「文科省と法務省の設計ミスが一番の失敗」柴山昌彦・元文科相が激白) 東洋経済オンライン「「特捜検察」の暴走、なぜ無罪判決が相次ぐのか ストーリー優先で証拠集め、調書は検事の作文」 「俺たちはいいかげんな仕事はできないんだよ。人の人生狂わせる権力持ってるから、こんなちっぽけな誤審とかで人を殺すことだってできるんですよ。失敗したら腹を切らなきゃいけないんだよ。命かけてるんだよ、俺たちは。あなたたちみたいに金をかけているんじゃねえんだ。金なんかよりも大事な命と人の人生を天秤にかけてこっちは仕事をしてるんだよ。なめるんじゃねーよ。必死なんだよ」、何と思い上がった姿勢なのだろう。驚いた。 「弘中は前出の著書の中で、検察が事件をでっち上げる手法を20に分類している。村木事件など過去に受任した冤罪(えんざい)事件での手法だが、これらは今もなお使われている。 例えばプレサンス事件では「山岸が横領を知っていた」という誤った見立てで証拠集めをした(上表の手法1)。長期勾留し山岸を心身ともに追い込んだ(同9)。 公安警察が立件した大川原化工機事件は検察の手法そのままだ。 例えばプレサンス事件では「山岸が横領を知っていた」という誤った見立てで証拠集めをした(上表の手法1)。長期勾留し山岸を心身ともに追い込んだ(同9)。 公安警察が立件した大川原化工機事件は検察の手法そのままだ。「生物兵器に転用可能と知っていて不正に輸出した」という誤った見立てをし(手法1)、温度の上がらない箇所があるという客観的・科学的事実には目をつぶり(同2)、警部補が供述調書をひたすら作文した(同3)。調書に「不正に」などの化粧を施して真実らしさを装った(同17)。検察は公安警察の言いなりになって大川原 正明社長らを起訴した」、なるほど。 「元検察官の郷原信郎弁護士は「人質司法が最大の武器だ」と指摘する。 検察は容疑者を逮捕すると48時間拘束できる。裁判所に勾留が認められると10日間拘束でき、再度同じ手続きでさらに10日間延長できる。つまり逮捕から最長で22日間拘束できる・・・人質司法に頼るあまり特捜検察の質が低下。「刑事事件としての立件の当否を判断する能力が劣ってきている」(郷原弁護士)。誤った見立てで経営者・企業人を逮捕・起訴・長期勾留。供述調書をねじ曲げてきたのが検察の実態だ・・・ 企業にとって長期勾留の経済的ダメージは大きい。それを見透かして、「罪を認めてさっさと保釈されたほうが得、という考え方をする人もいるよ」と、自白を巧妙に促す検察官もいるくらいだ」、全く卑劣この上ない検察官だ。 「大川原社長らを起訴した塚部貴子検事が証人喚問された。別の検事が社長らの起訴を取り消しているというのに、塚部は「当時の判断に間違いがあったとは思わない」とし、謝罪しなかった。 証人台の塚部をほぼ正面の原告席から見ていた大川原社長には「言いたくないことを言わされているたびに検事の顔色が赤黒く変わったように見えた。個人の意思を抑えてしまうからダメなんだ。上司に『違う』と言える検察組織にしていかないと、国としてやばい」。大川原社長は組織を率いる企業経営者として、検察という組織のいびつさを危惧している」、その通り だ。 ダイヤモンド・オンライン 弁護士ドットコムニュース「警察の「やりすぎ職務質問」5時間拘束!塩を“薬物”と誤解、尿検査シロでも…これ違法?」 「職務質問を受けて荷物を見せたら、財布の中に入れていた「お清めの塩」を違法薬物と勘違いされ、尿検査をする羽目になった・・・結果は陰性だったが「塩だとの確証がない」との理由で警察署に連行され、写真を撮られたり、書類を書かされたりしたそうだ。尿検査も陰性だったが、解放されたのは職務質問を受けてから5時間後だったという」、なるほど。 「警察官は職務質問から始めて所持品検査をおこなった結果、違法薬物と疑われる白い粉末が出てきたことから警察署への任意同行を求め、任意での尿検査をおこなっています。すべての手続きは対象者の同意を得て任意でおこなっているため、違法性は認められません」、なるほど。 「相談者が帰宅の意思を明確に示していたにもかかわらず、5時間にわたり留め置いた場合であれば、違法と判断される可能性も否定はできません。 Q:警察官の対応に疑問を感じた場合、苦情を申し立てることはできますか。 A:はい。警察法79条の規定に基づき、公安委員会に対して書面により、苦情の申し出ができます。公安委員会は誠実に処理し、処理結果を書面で申出者に通知するとされています」、なるほど。 弁護士ドットコムニュース「ロースクール制度は「文科省と法務省の設計ミスが一番の失敗」柴山昌彦・元文科相が激白」 「「博打のような司法試験の結果一発」ではなく「卒業できれば7~8割の人が合格できる『プロセスによる選抜』」を実現し得る存在として、ロースクールには当初大きな期待を寄せていたという。 しかし、いざ始まった新司法試験では合格率が5割超えすら1度もなく、20%台の低空飛行が続いた・・・「文部科学省と法務省が初めにしっかり制度設計をしておかなくてはいけなかったことが一番の失敗」と話す柴山氏」、なるほど。 「ロースクールの校数や入学者数といった全体の総量をどうするか。文部科学省と法務省がこの点を初めにしっかり制度設計をしておかなくてはいけなかった。これが一番の失敗だと思います」、なるほど。 「これだけ社会がグローバル化していく中、丁々発止で訴訟などで海外と渡り合うためには、国際法に強い人材を含め、法曹の質と量を充実させることはすごく重要だと思っています。 また、国内でも法曹人口が十分でない地域もあります。それによってもし泣き寝入りしている弱い立場の方が一人でもいるとすれば、それはとても不幸なことですし、やはり法曹はまだまだ日本では足りていないと考えています」、なるほど。 「2023年の司法試験では法曹コースの学生が初めて在学中受験をし、合格率は「65.24%」。2022年度の既修者コースを修了した者の合格率「62.82%」、既修者コースに通う在学中受験者全体の合格率「63.31%」をわずかに上回りました。 A:手前味噌ですが、「ロースクールのあるべき理想に一歩近づいた」と自負しています。法曹コースへの進学を考えている方々がこの数字を見てどう感じるかだと思います。ただ、予備試験を経由した人の9割以上が合格していることもまた事実です」、なるほど。 「弁護士からサラリーマンやキャリア公務員になる、サラリーマンやキャリア公務員が弁護士になる、というような法曹という職を軸にしたキャリアのリボルビング(回転)が、これからもっと必要になってくると思うんです。 そういった人材を養成する場としてロースクールが一定の役割を果たすというのが私の理想です・・・最高裁判事を見ても、弁護士や検察官からなる人もいれば、外交官や法学者からなる人もいます。 そういう多様性が法曹界でもっと広くあっていいのではないでしょうか。 裁判所や検察庁、大手法律事務所などの採用側が、もう少し長期的なビジョンを持って、年齢だけでなく、真に有益な人材を採用してほしいと思います・・・法務省と文部科学省とではカルチャーが違います。そこを統べて物事を進めるためには、政治のイニシアチブが必要だと認識しています」、ずれにしろ、「ロースクール」の役割が当初想定されたのとは、大きく異なっている。ここでもう一度、今後の在り方を冷静に考え直す時期に来ているのではなかろうか。
外国人問題(その9)(「特高マインド」が脈々と ウィシュマさんの死によって判明した入管の異常な体質、じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」、日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」 地区ごとの特徴、埼玉・川口市のクルド人問題が紛糾!「外国人差別」と叫ぶ人が知らない暗黒史) [社会]
外国人問題については、昨年3月29日に取上げた。今日は、(その9)(「特高マインド」が脈々と ウィシュマさんの死によって判明した入管の異常な体質、じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」、日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」 地区ごとの特徴、埼玉・川口市のクルド人問題が紛糾!「外国人差別」と叫ぶ人が知らない暗黒史)である。
先ずは、昨年7月6日付けAERAdot「「特高マインド」が脈々と ウィシュマさんの死によって判明した入管の異常な体質」を紹介しよう。
・『名古屋入管で収容中に死亡したスリランカ人女性ウィシュマさんの監視カメラ映像が法廷で上映された。だが彼女の死後も、命を軽視する入管の体質は変わっていない。弁護士が指摘する「特高マインド」とは何か。AERA 2023年7月10日号の記事を紹介する。 ウィシュマさんの遺族代理人の高橋済(わたる)弁護士は、根底には入管に横たわる「特高マインド」があると指摘する。 特別高等警察、略して「特高」。戦前、思想犯や反政府活動などを弾圧してきた秘密警察だ。戦後、特高は解体されるが、その関係者の少なからぬ部分が入管に携わるようになったといわれる。その特高マインドが今も脈々と入管に流れていると感じると、高橋弁護士は言う。 「在留資格のない外国人は『憲法の番外地』、つまり、人権を認めないというのが入管の考え方としてあります。収容者を『制圧行為』と称し、多数の職員で暴行を加えるなど人権を無視する事例は施設内で度々起きています。これは、外国人は取り締まりの対象であり社会に危害を加える存在だという、戦前の特高のマインドが今も引き継がれているからだと思います」 同時に、こうした入管の体質を許してきたのは、日本人が少なからず持っている外国人への差別心とも関係しているという。 5月、日本維新の会の梅村みずほ議員は国会で、ウィシュマさんは「ハンストによる体調不良で亡くなったかもしれない」などと発言した。根拠のない発言にウィシュマさんの遺族は強く抗議したが、こうした言動の根っこには、外国人に対する差別心があると高橋弁護士は話す。 「日本は同質性が高い社会のため、多かれ少なかれ、外国人は自分たちの社会に危害を加えるという、漠然とした差別心があると思います」 そうした中、6月9日に改正入管法が国会で成立した。難民申請が3回目以降の申請者は「相当の理由」が示されなければ送還できるようになる。今後は入管への収容者も増えていくと考えられ、このままでは第2、第3のウィシュマさんが出る恐れがある。 STARTの松井さんは、「今まで以上に収容者への基本的人権の侵害は許されないと発信していく必要がある」と話す。 「救済されるべき人たちは救済されなければならず、強制的に送り返すことは絶対にしてはいけない。そのためにも、強制的に送り返すという入管の方針を転換していく必要があります」』、「在留資格のない外国人は『憲法の番外地』、つまり、人権を認めないというのが入管の考え方としてあります。収容者を『制圧行為』と称し、多数の職員で暴行を加えるなど人権を無視する事例は施設内で度々起きています。これは、外国人は取り締まりの対象であり社会に危害を加える存在だという、戦前の特高のマインドが今も引き継がれているからだと思います」、『憲法の番外地』とは言い得て妙だ。
・『根本的な見直しが必要 STARTの千種さんは、「施設内で起きる問題を可視化していくことが重要」と話した。 「入管が一番恐れているのは、収容されている当事者たちが団結して自分たちに向かってくることです。そのためにも、入管で起きている問題を、収容されている人たちと一緒に取り上げて声にして社会的に明らかにし、入管が変わらざるを得ない状況をつくりあげていくことです。それが、これ以上、施設で亡くなる人を出さないためにも重要です」 高橋弁護士は、まずは「制度の土台から変えていく必要がある」と指摘する。 「小手先の改革で常勤医師を配置しても何も変わりません。いまは全ての権限が入管に集中しているため、収容するかしないかは入管の裁量次第で決まります。本来は、どのような人を収容するかは法律でルールを明文化し、裁判所が判断していくよう整備しなければいけません。これは、国連の自由権規約委員会からも、改善を求められていることです」 そして最終的には、巨大な裁量権を持つ入管を解体することが必要だという。解体し、収容の判断は裁判所が行い、運用は民間に委託するなどし、難民保護は第三者機関が行う。入管は、入管の本来の目的である強制送還の業務だけを担うようにするなど、抜本的な入管行政の見直しが不可欠だ、と。 「同時に、日本人の中にある外国人に対する差別心をなくしていく教育を子どもも大人も行うなど、社会全体で変わっていく必要があります」(高橋弁護士)』、「本来は、どのような人を収容するかは法律でルールを明文化し、裁判所が判断していくよう整備しなければいけません。これは、国連の自由権規約委員会からも、改善を求められていることです」 そして最終的には、巨大な裁量権を持つ入管を解体することが必要だという。解体し、収容の判断は裁判所が行い、運用は民間に委託するなどし、難民保護は第三者機関が行う。入管は、入管の本来の目的である強制送還の業務だけを担うようにするなど、抜本的な入管行政の見直しが不可欠だ、と。 「同時に、日本人の中にある外国人に対する差別心をなくしていく教育を子どもも大人も行うなど、社会全体で変わっていく必要があります」、その通りだ。
次に、7月10日付け現代ビジネスが掲載した中島 恵氏による「じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/112849?imp=0
・『東京に拠点を持つ中国人 近年、国内の政治情勢などを背景に、日本に移住する中国人が増えているが、在日中国人が最も多く住んでいる地域はどこか、ご存じだろうか。法務省の在留外国人統計(2022年6月末時点)によると、それは東京都で、約22万2000人となっている。在日中国人総数は約75万人なので、約3~4分の1が東京都に居住していることになる(続いて多いのは、埼玉県、神奈川県、大阪府、千葉県の順)。 さらに、都内での居住地域を細かく見てみると、最も多いのは江東区だった。2位は足立区、3位は江戸川区、4位は新宿区、5位は板橋区となっており、新宿区を除いて住宅地のイメージが強い地区となっている。中華料理店が多いイメージがある池袋を含む豊島区などはトップ5には入っていない。 なぜ、中国人はこれらの地域に多く住んでいるのか。同じ在日中国人でも、居住地域によって住んでいる人の特徴に違いはあるのか。各行政区の中国人に関する詳細な情報はないが、私はこれらの地区に住む中国人の知人に話を聞き、そこに住む理由を聞いてみた。そこから浮かび上がってきたものは――。』、興味深そうだ。
・『「亀戸は庶民的で中国食材店も多い」 「中国人の友人から、この付近(江東区亀戸)はとにかく物価が安くて、庶民的で、中国食材店も多いから住みやすいよ、と勧められたので、数年前に移り住みました。会社は新宿なので、最寄りのJR総武線亀戸駅から1本で行けるし、出張のときには東京駅にも10分ほどでアクセスできるので、かなり便利ですよ」 こう語るのは、IT企業に勤務する30代の中国人男性Aさん。10年以上前、中国の東北部から来日し、日系、中国系企業に勤務してきた。以前は千葉県に住んでいたが、勤務先がある新宿に少しでも近いほうがよいと考えて、亀戸に移ったという。) 亀戸は、「亀戸天神」や「亀戸餃子」などがあり、下町の庶民的なイメージがある。 その通り、駅から徒歩5分の距離には「亀戸五丁目中央通商店街」があり、レタスが2個で98円など激安の青果店や、Aさんが話していた中国食材店が数軒ある。連続して商店が軒を連ねているわけではないため、同じ総武線の(荒川を超えた江戸川区にある)新小岩、小岩などの商店街と比べると賑わっているというほどではなく、「中国人比率」はそれほど高くないように感じる。 だが、Aさんによると、同商店街から西方向に数分歩いた距離にある「亀戸二丁目団地」では中国人を多く見かけるという。 「私自身もそこに住んでいるのですが、とにかく中国人が多いですよ。家賃が安いし、ここには中国の団地みたいな雰囲気があるんです。団地の真ん中に中庭があり、クルマが中まで入ってこないので、小さな子どもが遊んでいても安心。交通量の多い道路に面したマンションよりも、建物に囲われている分、安心感があるんです」(Aさん) 私もこの団地に足を運んだことがあるが、UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)の物件で、保証人が不要であること、家賃が比較的安いこと(UR都市機構のウェブサイトによると、1LDK~3Kまでで約8万4000円~約13万3000円)、敷地内に激安スーパーがあるという諸条件が、中国人比率が全体の5割近い埼玉県川口市の芝園団地と酷似している』、確かに「亀戸」は「下町の庶民的なイメージ」に溢れている。
・『中国人ネットワーク 同じ江東区に、もう一ヵ所、中国人が急速に増えている地域がある。豊洲だ。 地下鉄有楽町線の豊洲駅に降り立つと、高層ビルやタワーマンションが複数そびえ立っており、亀戸と違って、生活感はまったく感じられない。) 私は今年5月に出版した『中国人が日本を買う理由』の中で、豊洲のタワーマンション(約7000万円)を購入した20代の若者のことを書いた。この若者が豊洲に引っ越してきたのは22年春。 彼は私に「中国人の友人から、中国人の間でいま豊洲の人気が上がっていると聞き、20年に一室購入しました。上層階から海が見渡せる眺望も気に入りました」と話していた。 このように、江東区内には、下町風情が漂い、激安店が多い亀戸と、新興都市としてオフィスビルが立ち並ぶ豊洲という2つの対照的な地区がある。公共交通機関も、JR総武線、地下鉄有楽町線、東西線、都営新宿線があり、いずれも都心へのアクセスがいい。それが(在日中国人が住む地域として)1位にランクインした理由の一つかもしれないと感じた。では、2位以下はどうなっているのか。 江東区の次に中国人が多いのは足立区だ。以前はあまりイメージがよくないという日本人もいたが、リクルートが実施している「SUUMO住みたい町ランキング2023首都圏版」では北千住が28位にランクインするなど、近年は人気が上がっている。 駅前にはルミネやマルイなどのファッションビルも立ち並んでいる北千住。駅前に中国をイメージするものはほとんどないが、住宅街や、近隣の竹ノ塚駅のほうまで行ってみると、中華食材店、中華料理店が増えている。 私の知人の中国人も北千住に住んでいるが、彼は「知り合いの中国人不動産屋から、建売のいい一軒家があると紹介されたのが北千住でした。庭つきの家で子どもを伸び伸びと育てたいと、ここにしました。日比谷線の沿線に勤務先があるので便利なんです」と、引っ越してきた理由を話した。 3位の江戸川区は前述した江東区と同じ路線上にあり、千葉県に近い。江東区と同じく、庶民的な商店が多く、家賃や物価が安い。JR総武線の平井駅付近には外国人留学生向けの日本語学校や、中国人専門の大学受験予備校があり、亀戸や小岩と並んで中国人率が非常に高い。 同じ江戸川区葛西に住む知人の中国人は「東西線の葛西や行徳にも中国人が多いですが、平井は第二の高田馬場になるような気がする」と話す。 その高田馬場があるのが4位の新宿区だ。歌舞伎町、大久保などの歓楽街のイメージがあるが、中国人にとっては、日本語学校や専門学校が多いところというイメージ。3年前に中国の高校を卒業後に来日した女性、Bさんは、高田馬場にある日本語学校に入学するのと同時に、同じ駅前にある大学受験予備校にも入学。その予備校の担当者から住居を紹介され、高田馬場にマンションを借りた。日本語学校、大学受験予備校、不動産店のいずれの担当者も中国人だ。 高田馬場駅前を降りると、大学受験予備校の看板が多数並んでいる。そこに通う中国人留学生を目当てにした「ガチ中華」の店も多く、早稲田大学まで続く早稲田通り沿いには、中国で人気の飲食チェーン店が軒を連ねている。 以前、駅前の大学受験予備校でアルバイトをしていたという中国人男性は、「この町が気に入り、受験が終わっても、この町に住み続けるという友だちが少なくないです」と話していた。5位は板橋区。板橋区は池袋がある豊島区に隣接しており、JR埼京線、都営三田線、東武東上線、地下鉄有楽町線・副都心線が走っている。都営三田線を除いた路線はすべて池袋駅につながっており、通勤に便利な割に家賃が比較的安く、庶民的なエリアだ。 このように、中国人が多い地区のトップ5を見てみると、共通点が浮かび上がってくる。それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ。これらの情報は中国人が頻繁に使っているSNS、ウィーチャットで流れてくる。それを見て、さらに、そこに人が集住するという流れになっている。 【後編】『日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」』では、これまでの在日中国人とは様相の異なる「在日中国人」が増えてきたことについて説明する』、「中国人が多い地区のトップ5を見てみると、共通点が浮かび上がってくる。それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ」、なるほど。
第三に、7月10日付け現代ビジネスが掲載した中島 恵氏による「日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」 地区ごとの特徴」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/112850?imp=0
・『近年、国内の政治情勢などを背景に、日本に移住する中国人が増えているが、在日中国人が最も多く住んでいる地域はどこか、ご存じだろうか。法務省の在留外国人統計(2022年6月末時点)によると、それは東京都で、約22万2000人となっている。在日中国人総数は約75万人なので、約3~4分の1が東京都に居住していることになる(続いて多いのは、埼玉県、神奈川県、大阪府、千葉県の順)。 さらに、都内での居住地域を細かく見てみると、最も多いのは江東区だった。2位は足立区、3位は江戸川区、4位は新宿区、5位は板橋区となっており、新宿区を除いて住宅地のイメージが強い地区となっている。中華料理店が多いイメージがある池袋を含む豊島区などはトップ5には入っていない。 なぜ、中国人はこれらの地域に多く住んでいるのか。同じ在日中国人でも、居住地域によって住んでいる人の特徴に違いはあるのか。各行政区の中国人に関する詳細な情報はないが、私はこれらの地区に住む中国人の知人に話を聞き、そこに住む理由を聞いてみた。 【前編】『じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」』で詳しく説明したが、共通点が浮かび上がってくる。 それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ。これらの情報は中国人が頻繁に使っているSNS、ウィーチャットで流れてくる。 それを見て、さらに、そこに人が集住するという流れになっている』、「共通点が浮かび上がってくる。 それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ」、なるほど。
・『「馴染みのある地区」を選ばない だが、近年来日した富裕層の人の中には、これら、長年日本に住んでいる在日中国人にとって「馴染みのある地区」を選ばない人が増えている。タワーマンションが多い豊洲だけは例外だが、近年、日本に移住してきた人に、どこに住んでいるかと聞いてみると、港区、品川区、渋谷区、という答えが返ってきた。 むろん、「中国人富裕層が住む地区の統計」といったものは存在しないので、あくまでも私が取材した範囲内の話だが、彼らは、日本在住歴が長い中国人とは異なるネットワークを持っており、そこで得た情報によって居住区を決めているようだ。) 2年前、日本にある大手中国系IT企業に駐在員としてやってきた30代の男性は、会社の総務部の手配で港区を推薦されたため、そこに住み始めたと話してくれた。 「会社は大手町にあり、そこから近いので六本木の賃貸マンションに住んでいます。私は東京に詳しくなく、地理もよくわかりませんが、ここは治安もいいし、ステータスの面でも満足できると思いました。家賃は30万円以上しますが、会社負担です。 いまは駐在員ですけど、1年以内に、投資目的でこの近くにマンションを購入しようと考えています。他の駐在員仲間も六本木や麻布に多く住んでいますよ。仕事で遅くなっても、タクシーですぐに帰宅できるし、東京タワーも見える眺めのいいマンションなので気に入っています」 その男性によると、富裕層の友人の中には、森ビルが手掛けている高級マンション「麻布台ヒルズ」を購入している人が何人もいるという。彼が入っている駐在員や富裕層のSNSグループには、頻繁に高級物件の情報が流れてくるので、彼自身も投資用に購入したいと話していた』、「近年、日本に移住してきた人に、どこに住んでいるかと聞いてみると、港区、品川区、渋谷区、という答えが返ってきた・・・会社は大手町にあり、そこから近いので六本木の賃貸マンションに住んでいます。私は東京に詳しくなく、地理もよくわかりませんが、ここは治安もいいし、ステータスの面でも満足できると思いました。家賃は30万円以上しますが、会社負担です・・・他の駐在員仲間も六本木や麻布に多く住んでいますよ。仕事で遅くなっても、タクシーですぐに帰宅できるし、東京タワーも見える眺めのいいマンションなので気に入っています」、「中国人」といっても、昔から住んでいる人たちと、最近の人たちは生活スタイル、所得などで大きな差があるようだ。
・『通勤する必要のない富裕層の在日中国人 また、近年来日した富裕層の特徴として挙げられるのが、「日本語があまりできない」ことだ。10年以上前に来日した中国人は、日本の大学を卒業し、日本企業に勤務している人が多い。 彼らは日本社会にある程度溶け込んでおり、日本人と同等の給料を得て生活していることから、日本人と似たような消費意識を持っている。記事の前半で紹介したように、物価が安く、商店街があり、勤務先へのアクセスがいいところに住みたいという日本人のような考え方の人が多いが、近年来日した中国人は感覚がかなり異なるようだ。 彼らの多くは30~50代の働き盛りだが、中国で財を成した人が多く、日本に移住してからはどこかに通勤する必要がない。そして、子ども連れで来日する場合、子どもを日本のインターナショナルスクールに通わせたいと考えている人が多い。 そのため、ある中国人は「港区、目黒区などにあるインターナショナルスクールを検討しているので、住居もその近くにしたい」と話していた。品川区に住む私の知人の中国人も、子どもが虎ノ門にあるインターナショナル幼稚園に通っているため、その近くで物件を探したと言っていた。 これらの富裕層はまだごく一握りしかおらず、在日中国人の中で少数派だが、今後、中国の情勢によって、移住者はもっと増える可能性もある。だが、すでに約75万人に上っている在日中国人の大半は、前編で紹介したような一般会社員などであり、中国人が多く集住している地区を好む傾向があることがわかる。 こうした傾向は、東京都の次に多い埼玉県、神奈川県などでも同様で、埼玉県でいえば川口市、神奈川県でいえば横浜市がそれに当たる。ふだん、すぐそばに住んでいても、その存在について深く考える機会の少ない在日中国人。 だが、その居住地区をよく見てみると、来日した時期や収入などによる彼らの傾向や層、最近の特徴といったものが見えてくるのではないだろうか』、「近年来日した中国人は感覚がかなり異なるようだ。 彼らの多くは30~50代の働き盛りだが、中国で財を成した人が多く、日本に移住してからはどこかに通勤する必要がない。そして、子ども連れで来日する場合、子どもを日本のインターナショナルスクールに通わせたいと考えている人が多い。 そのため、ある中国人は「港区、目黒区などにあるインターナショナルスクールを検討しているので、住居もその近くにしたい」と話していた・・・在日中国人の大半は、前編で紹介したような一般会社員などであり、中国人が多く集住している地区を好む傾向があることがわかる。 こうした傾向は、東京都の次に多い埼玉県、神奈川県などでも同様で、埼玉県でいえば川口市、神奈川県でいえば横浜市がそれに当たる」、その通りなのだろう。
第四に、2月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「埼玉・川口市のクルド人問題が紛糾!「外国人差別」と叫ぶ人が知らない暗黒史」を紹介しよう。
・『深刻化する「川口クルド人問題」は「ヘイト」なのか SNSでたびたび話題になっていた埼玉県川口市の「クルド人問題」が、ついに国会で取り上げられることになった。 日本維新の会の高橋英明衆院議員が、国会質疑で「ちょっとひどい状況だ」「早急に一斉取り締まりを」などと発言したのである。 ……と言われても、関東圏以外の方は「クルド?何それ?」というリアクションの方も多いと思うので、NHK首都圏ニュースの解説を引用させていただく。 《埼玉県川口市で2023年7月、病院に100人近くの外国人が集結する騒動が発生しました。川口市ではトルコから来たクルド人のコミュニティーが拡大し、ゴミ出しのルールや生活習慣などの違いによる、住民との摩擦も目立っています》(NHK首都圏ナビ、2月2日) この問題がややこしいのは「摩擦どころではない」という住民もかなりいることだ。「敷地の駐車場を壊された」「深夜に大音量をかけた改造車が住宅街を暴走する」などの「被害」を訴える人もおり、21年10月にはこんな「悲劇」まで起きている。 「19歳のクルド人少年がトラックで県道を暴走し、横断中の69歳男性をはねて死亡させ、逃走した。少年の所持品に運転免許証はなかったという。事件後、少年は出国しようとしたところを逮捕された」(産経新聞、23年7月30日) そこで、23年6月、川口市議会は「一部の外国人は、資材置き場周辺や住宅密集地などで暴走行為やあおり運転を繰り返し、窃盗や傷害などの犯罪も見過ごすことはできない」との取り締まり強化の意見書を可決した。 同年9月には川口市も国に対して、「不法行為を行う外国人においては、法に基づき厳格に対処(強制送還等)していただきたい」という要望書を提出した。そこからだいぶタイムラグがあったものの、ここにきてようやく川口市の訴えが国会にまでたどり着いた――という流れだ。 しかし、そんな高橋議員による国会質疑は「ヘイトスピーチ」だとボロカスに叩かれている。 共同通信社は配信記事の中で、《「不確かな情報を基にした国会議員による外国人差別だ」と専門家も批判している》(2月27日)とバッサリ。SNSでも「議員を辞めろ」と辛辣な声が挙がっているほか、以下のように日本の「黒歴史」と重ねて警鐘を鳴らす人々もいる。 「これでは関東大震災で流言飛語を広めた連中と同じじゃないか」 ご存じのように、関東大震災下、多くの朝鮮人が虐殺されたが、その原因は「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などの「デマ」が拡散されたから、とされている。今回の高橋議員や川口市・市議会の主張している「被害」というのもそれと同じく、クルド人迫害につなげるためにねつ造された「デマ」だというのだ。 ただ、報道対策アドバイザーとして、実際に企業などを悩ます「悪質なデマ」の対策にも携わってきた経験から言わせていただくと、本当に関東大震災の悲劇を繰り返したくないのならば、川口市や市議会が要望している「一部外国人の不法行為への取り締まり強化」をすべきだ。 「デマ」が、ヘイトクライムや集団暴力を引き起こす時、そこには必ず「恐怖」や「憎悪」が存在する。 川口市からの訴えを国が無視して、一部外国人の不法行為を放置し続ければ、「外国人への恐怖や憎悪」はさらにふくれ上がる。そして、中には「国が守ってくれないなら、自分たちの身は自分で守るしかない」と過激な外国人排斥運動へ傾倒する者もあらわれる。 つまり、「外国人ヘイト」のムードを醸成させないためにも、国が「不法行為をする一部の外国人を厳しく取り締まる」という毅然とした態度を見せて、市民の「不安」を払拭しておくべきなのだ』、「外国人ヘイト」のムードを醸成させないためにも、国が「不法行為をする一部の外国人を厳しく取り締まる」という毅然とした態度を見せて、市民の「不安」を払拭しておくべきなのだ」、なるほど。
・『朝鮮人虐殺はなぜ起きた?「恐怖」にあおられた庶民の暴走 なぜそこまで市民のメンタルヘルスに気を遣うのかというと、「外国人ヘイト」は一部のレイシストが起こすものより、市民がパニックになって引き起こす方がはるかに悪質で残酷だからだ。 関東大震災で朝鮮人を日本刀や鎌やこん棒を手に虐殺してまわったのは、警察や憲兵など治安維持をする人たちではない。善良な一般市民たちが、自衛のために結成した「自警団」だ。 そこでちょっと想像力を働かせて考えていただきたい。普段は暴力と無縁の生活を送っていた良き夫であり、良き息子のような人々が、「朝鮮人が火をつけた」「井戸に毒を入れた」といううわさを聞いたくらいで人を殺めることができるだろうか。 最近、映画も公開されて話題になった「福田村事件」でも描かれているが、当時の「自警団」はすさまじく、各所で検問所をつくって、朝鮮人だと見るや、子どもでも妊婦でもお構いなしに殺している。命ごいをする一家まで殺して、勢い余って「しゃべれない」という理由だけで、日本人の聴覚障がい者にまで手をかけた。 「デマにあおられた」だけで、同じ人間にここまで酷い仕打ちができるわけがない。 では、一体何が善良な市民を暴徒にさせたのかというと、「恐怖」である。「不逞鮮人が怖くてパニックになって、自分や家族を守るために目に入るすべての朝鮮人を排除した」のである(※不逞鮮人=戦前の日本において、韓国併合後の日本政府に不満を持つ朝鮮出身者や、満洲の朝鮮人反体制派、朝鮮独立運動家、犯罪者などをこのように呼んだ)。 実はこの惨劇にはちゃんと伏線がある。「デマ」が流れるはるか前から、日本の善良な市民たちの間では、朝鮮人は「何をしでかすかわからないヤバい連中」というイメージが確立していたのだ』、「当時の「自警団」はすさまじく、各所で検問所をつくって、朝鮮人だと見るや、子どもでも妊婦でもお構いなしに殺している。命ごいをする一家まで殺して、勢い余って「しゃべれない」という理由だけで、日本人の聴覚障がい者にまで手をかけた・・・一体何が善良な市民を暴徒にさせたのかというと、「恐怖」である。「不逞鮮人が怖くてパニックになって、自分や家族を守るために目に入るすべての朝鮮人を排除した」のである・・・「デマ」が流れるはるか前から、日本の善良な市民たちの間では、朝鮮人は「何をしでかすかわからないヤバい連中」というイメージが確立していたのだ」、なるほど。
・『「殺られる前にこっちから殺ってやる――」という集団パニック 要因のひとつが、震災の4年前、1919年に朝鮮全土で盛り上がった「三・一独立運動」だ。これによって、日本本土にも朝鮮人の活動家が多く入ってきたのだ。爆弾を隠し持っていたところを摘発されるなんて報道も増えていくなかで、朝鮮人のイメージも急速に悪化していく。それがうかがえる一節が、震災の前年に出版された、当時のベストセラー作家・加藤美侖氏の「刑法知識 罪なき人も油断すな」(朝香屋書店)の中にある。 「例えば政府の転覆とか国土の潜窃などがその例だ。(中略)昔は年中内乱騒ぎがあつたことを歴史が教へるが、今日の聖代に於ては、まあ不逞鮮人でもなければそんな馬鹿をする者があるまい」(66ページ) この時期の一般庶民の間では、「不逞鮮人=国家転覆や国土の略奪を狙うテロリスト」という恐怖のイメージが定着していたのだ。 もちろん、同時期の時局講演などを見ると、新聞などの「不逞鮮人」という呼び方は朝鮮人にとっては侮辱なので改めるべきだというような良識派の声もあった。しかし、現実には「良い朝鮮人」と「不逞鮮人」を見分けることなどできないということで、いつの間にやら「不逞鮮人」というテロリストイメージが「朝鮮人」全体にまで広がってしまう。外見的には日本人とほとんど違いがなく、言葉を発しないと朝鮮人だとわからないため、恐怖にさらなる拍車がかかった。 つまり、1923年の日本には「日本人のふりをしている朝鮮人が、いつ爆弾などで攻撃を仕掛けてくるのか」と、内心ビクビクしながら日常生活を送っていた市民が山ほどいたのである。そんな時、関東大震災が起きて「放火をしている」「井戸に毒を」といううわさ話があちこちから聞こえたら、市民たちは恐怖でパニックに陥るだろう。 しかし、いつまでも恐れていてもしょうがない。守るべき家族や大切な人がいるのだ。そうなると、彼らは家にある日本刀やこん棒、鎌などを手にとってこう思うはずだ。 「殺られる前にこっちから殺ってやる――」 つまり、平時は暴力などとは無縁の日本人たちが、何の罪もない朝鮮人たちを無慈悲に殺せたのは「デマのせい」というのは表面的な話にすぎないのだ。何年もかけてふくれ上がってきた朝鮮人に対する恐怖が、地震によって制御することができなくなって、「集団パニック」に陥ったからなのだ』、「平時は暴力などとは無縁の日本人たちが、何の罪もない朝鮮人たちを無慈悲に殺せたのは「デマのせい」というのは表面的な話にすぎないのだ。何年もかけてふくれ上がってきた朝鮮人に対する恐怖が、地震によって制御することができなくなって、「集団パニック」に陥ったからなのだ」、「集団パニック」とは本当に恐ろしい。
・『「恐怖」にいる住民の声を無視すると「ヘイト」につながる 「そんなバカな」と思われるかもしれないが、人類の歴史を振り返ると、敵対する人々を大量虐殺するような時には、往々にしてこの「恐怖が引き起こす集団パニック」がある。 わかりやすいのは、1994年のルワンダの大量虐殺だ。これはフツ族が隣人であるツチ族の人々を容赦なく殺したという悲劇だが、その引き金になったのは「恐怖」だ。 フツ族である大統領が搭乗した飛行機が追撃された。それをラジオで聴いたフツ族の人々は「自分も襲われるか」と恐怖のどん底に落ちた。そんな時、ラジオからこんな言葉が聞こえてきた。 「殺らなければ殺られる――」 さて、こういう話を聞くと、なぜ筆者が埼玉県の「不法行為をする外国人」の取り締まりを強化すべきだと主張しているのか、理解していただけたのではないか。 川口市や川口市議の意見書のもとになったように、一部のクルド人の皆さんの振る舞いに「恐怖」を感じている住民がいることはまぎれもない事実だ。そのような人々の声を国が無視したところで、彼らの恐怖や不安は消えない。 「外国人との共生社会」を掲げる人たちからすれば、「外国人差別をやめて受け入れればいいのだ」という事なのだろう。しかし、そう簡単に自分の考えを変えられない人たちが一定数いるというのも、この社会の「多様性」だ。 では、川口市の訴えを無視して、取り締まり強化もせず、ただただ「共生」を呼びかけていたら、恐怖を感じている住民はどうなっていくのかというと、これまで以上に外国人を怖がる。 当たり前だ。「怖い」と訴える人たちを力で抑えつけて「怖がるな!怖がる貴様がおかしい」とか説教をしたところで、態度を硬化させて事態を悪化させていくだけだろう。 つまり、これまで不法行為をするクルド人だけに不安を感じていた人たちが、「クルド人を受け入れろ!」「このレイシストめ!」と攻撃されることで態度を硬化させて、何の問題も起こしていない「善良なクルド人」に対してまで恐怖や憎悪を抱いてしまうのである。 ただ、それよりも最悪なのは、国がこの問題を放置し続けたら、「自分の身は自分で守るしかない」と考える人々が、「自警団」のようなものを組織してしまう恐れがあることだ』、「これまで不法行為をするクルド人だけに不安を感じていた人たちが、「クルド人を受け入れろ!」「このレイシストめ!」と攻撃されることで態度を硬化させて、何の問題も起こしていない「善良なクルド人」に対してまで恐怖や憎悪を抱いてしまうのである。 ただ、それよりも最悪なのは、国がこの問題を放置し続けたら、「自分の身は自分で守るしかない」と考える人々が、「自警団」のようなものを組織してしまう恐れがあることだ」、なるほど。
・『「自警団」は暴走する。だから国が取り締まるべき 関東大震災で悲劇の舞台装置となったことからもわかるように「自警団」が危ないのは、「外国人ヘイト」につながることだけでなく、「オレたちのルール」で人を裁くことにある。震災当時の資料を見ると、「朝鮮人はバレないように帽子を被るはずなので、お前のように帽子を被る奴は怪しい」と検問所で詰問されて、確証のないまま殺された人もいる。 こういう「自警団の暴走」を防いで、善良な外国人の安全を守るためにも、国がしっかりとした方針を定めて、不法行為をする外国人を取り締まったり、難民申請中の人たちへの処遇もしっかり定めたりすべきだ。国外退去させられるわけでもなく、在留を認められるわけでもないという「宙ぶらりん」だから、正規の仕事もできず、外国人コミュニティの中で違法な仕事に従事せざるを得ないという外国人もたくさんいるのだ。 「不逞鮮人」を取り締まることができず、結果として日本社会に「朝鮮人に対する恐怖」を広めてしまったように、一部の不法行為をする外国人をしっかりと取り締まることができないと、「外国人はすべて怪しい」という偏ったものの見方を広めてしまう。 そういう「偏った正義」にもっとも弱いのが、善良な一般市民だ。 今、SNSで相手を自殺に追い込むまで誹謗中傷するような人が「自分は社会のために正しいことをしている」と思い込んでいるように、震災時に朝鮮人を虐殺した自警団の多くは「自分は日本のために正しいことをした」と胸を張った、と記録にある。 このような「市民による正義の暴走」を防ぐには、先回りをして国家が「正義」を示すしかない。国が外国人への取り締まりを強化する、と聞くと脊髄反射で「外国人ヘイトだ!」「差別だ!」と批判をする人が多いが、外国人への恐怖や偏見を軽減することで、「善良な外国人」の人権や安全を守ることができるというメリットもある。 外国人だろうが日本人だろうが、不法行為は厳しく取り締まるということこそが、「外国人との共生社会」になるための第一歩なのではないか』、「「市民による正義の暴走」を防ぐには、先回りをして国家が「正義」を示すしかない。国が外国人への取り締まりを強化する、と聞くと脊髄反射で「外国人ヘイトだ!」「差別だ!」と批判をする人が多いが、外国人への恐怖や偏見を軽減することで、「善良な外国人」の人権や安全を守ることができるというメリットもある。 外国人だろうが日本人だろうが、不法行為は厳しく取り締まるということこそが、「外国人との共生社会」になるための第一歩なのではないか」、その通りだ。
先ずは、昨年7月6日付けAERAdot「「特高マインド」が脈々と ウィシュマさんの死によって判明した入管の異常な体質」を紹介しよう。
・『名古屋入管で収容中に死亡したスリランカ人女性ウィシュマさんの監視カメラ映像が法廷で上映された。だが彼女の死後も、命を軽視する入管の体質は変わっていない。弁護士が指摘する「特高マインド」とは何か。AERA 2023年7月10日号の記事を紹介する。 ウィシュマさんの遺族代理人の高橋済(わたる)弁護士は、根底には入管に横たわる「特高マインド」があると指摘する。 特別高等警察、略して「特高」。戦前、思想犯や反政府活動などを弾圧してきた秘密警察だ。戦後、特高は解体されるが、その関係者の少なからぬ部分が入管に携わるようになったといわれる。その特高マインドが今も脈々と入管に流れていると感じると、高橋弁護士は言う。 「在留資格のない外国人は『憲法の番外地』、つまり、人権を認めないというのが入管の考え方としてあります。収容者を『制圧行為』と称し、多数の職員で暴行を加えるなど人権を無視する事例は施設内で度々起きています。これは、外国人は取り締まりの対象であり社会に危害を加える存在だという、戦前の特高のマインドが今も引き継がれているからだと思います」 同時に、こうした入管の体質を許してきたのは、日本人が少なからず持っている外国人への差別心とも関係しているという。 5月、日本維新の会の梅村みずほ議員は国会で、ウィシュマさんは「ハンストによる体調不良で亡くなったかもしれない」などと発言した。根拠のない発言にウィシュマさんの遺族は強く抗議したが、こうした言動の根っこには、外国人に対する差別心があると高橋弁護士は話す。 「日本は同質性が高い社会のため、多かれ少なかれ、外国人は自分たちの社会に危害を加えるという、漠然とした差別心があると思います」 そうした中、6月9日に改正入管法が国会で成立した。難民申請が3回目以降の申請者は「相当の理由」が示されなければ送還できるようになる。今後は入管への収容者も増えていくと考えられ、このままでは第2、第3のウィシュマさんが出る恐れがある。 STARTの松井さんは、「今まで以上に収容者への基本的人権の侵害は許されないと発信していく必要がある」と話す。 「救済されるべき人たちは救済されなければならず、強制的に送り返すことは絶対にしてはいけない。そのためにも、強制的に送り返すという入管の方針を転換していく必要があります」』、「在留資格のない外国人は『憲法の番外地』、つまり、人権を認めないというのが入管の考え方としてあります。収容者を『制圧行為』と称し、多数の職員で暴行を加えるなど人権を無視する事例は施設内で度々起きています。これは、外国人は取り締まりの対象であり社会に危害を加える存在だという、戦前の特高のマインドが今も引き継がれているからだと思います」、『憲法の番外地』とは言い得て妙だ。
・『根本的な見直しが必要 STARTの千種さんは、「施設内で起きる問題を可視化していくことが重要」と話した。 「入管が一番恐れているのは、収容されている当事者たちが団結して自分たちに向かってくることです。そのためにも、入管で起きている問題を、収容されている人たちと一緒に取り上げて声にして社会的に明らかにし、入管が変わらざるを得ない状況をつくりあげていくことです。それが、これ以上、施設で亡くなる人を出さないためにも重要です」 高橋弁護士は、まずは「制度の土台から変えていく必要がある」と指摘する。 「小手先の改革で常勤医師を配置しても何も変わりません。いまは全ての権限が入管に集中しているため、収容するかしないかは入管の裁量次第で決まります。本来は、どのような人を収容するかは法律でルールを明文化し、裁判所が判断していくよう整備しなければいけません。これは、国連の自由権規約委員会からも、改善を求められていることです」 そして最終的には、巨大な裁量権を持つ入管を解体することが必要だという。解体し、収容の判断は裁判所が行い、運用は民間に委託するなどし、難民保護は第三者機関が行う。入管は、入管の本来の目的である強制送還の業務だけを担うようにするなど、抜本的な入管行政の見直しが不可欠だ、と。 「同時に、日本人の中にある外国人に対する差別心をなくしていく教育を子どもも大人も行うなど、社会全体で変わっていく必要があります」(高橋弁護士)』、「本来は、どのような人を収容するかは法律でルールを明文化し、裁判所が判断していくよう整備しなければいけません。これは、国連の自由権規約委員会からも、改善を求められていることです」 そして最終的には、巨大な裁量権を持つ入管を解体することが必要だという。解体し、収容の判断は裁判所が行い、運用は民間に委託するなどし、難民保護は第三者機関が行う。入管は、入管の本来の目的である強制送還の業務だけを担うようにするなど、抜本的な入管行政の見直しが不可欠だ、と。 「同時に、日本人の中にある外国人に対する差別心をなくしていく教育を子どもも大人も行うなど、社会全体で変わっていく必要があります」、その通りだ。
次に、7月10日付け現代ビジネスが掲載した中島 恵氏による「じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/112849?imp=0
・『東京に拠点を持つ中国人 近年、国内の政治情勢などを背景に、日本に移住する中国人が増えているが、在日中国人が最も多く住んでいる地域はどこか、ご存じだろうか。法務省の在留外国人統計(2022年6月末時点)によると、それは東京都で、約22万2000人となっている。在日中国人総数は約75万人なので、約3~4分の1が東京都に居住していることになる(続いて多いのは、埼玉県、神奈川県、大阪府、千葉県の順)。 さらに、都内での居住地域を細かく見てみると、最も多いのは江東区だった。2位は足立区、3位は江戸川区、4位は新宿区、5位は板橋区となっており、新宿区を除いて住宅地のイメージが強い地区となっている。中華料理店が多いイメージがある池袋を含む豊島区などはトップ5には入っていない。 なぜ、中国人はこれらの地域に多く住んでいるのか。同じ在日中国人でも、居住地域によって住んでいる人の特徴に違いはあるのか。各行政区の中国人に関する詳細な情報はないが、私はこれらの地区に住む中国人の知人に話を聞き、そこに住む理由を聞いてみた。そこから浮かび上がってきたものは――。』、興味深そうだ。
・『「亀戸は庶民的で中国食材店も多い」 「中国人の友人から、この付近(江東区亀戸)はとにかく物価が安くて、庶民的で、中国食材店も多いから住みやすいよ、と勧められたので、数年前に移り住みました。会社は新宿なので、最寄りのJR総武線亀戸駅から1本で行けるし、出張のときには東京駅にも10分ほどでアクセスできるので、かなり便利ですよ」 こう語るのは、IT企業に勤務する30代の中国人男性Aさん。10年以上前、中国の東北部から来日し、日系、中国系企業に勤務してきた。以前は千葉県に住んでいたが、勤務先がある新宿に少しでも近いほうがよいと考えて、亀戸に移ったという。) 亀戸は、「亀戸天神」や「亀戸餃子」などがあり、下町の庶民的なイメージがある。 その通り、駅から徒歩5分の距離には「亀戸五丁目中央通商店街」があり、レタスが2個で98円など激安の青果店や、Aさんが話していた中国食材店が数軒ある。連続して商店が軒を連ねているわけではないため、同じ総武線の(荒川を超えた江戸川区にある)新小岩、小岩などの商店街と比べると賑わっているというほどではなく、「中国人比率」はそれほど高くないように感じる。 だが、Aさんによると、同商店街から西方向に数分歩いた距離にある「亀戸二丁目団地」では中国人を多く見かけるという。 「私自身もそこに住んでいるのですが、とにかく中国人が多いですよ。家賃が安いし、ここには中国の団地みたいな雰囲気があるんです。団地の真ん中に中庭があり、クルマが中まで入ってこないので、小さな子どもが遊んでいても安心。交通量の多い道路に面したマンションよりも、建物に囲われている分、安心感があるんです」(Aさん) 私もこの団地に足を運んだことがあるが、UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)の物件で、保証人が不要であること、家賃が比較的安いこと(UR都市機構のウェブサイトによると、1LDK~3Kまでで約8万4000円~約13万3000円)、敷地内に激安スーパーがあるという諸条件が、中国人比率が全体の5割近い埼玉県川口市の芝園団地と酷似している』、確かに「亀戸」は「下町の庶民的なイメージ」に溢れている。
・『中国人ネットワーク 同じ江東区に、もう一ヵ所、中国人が急速に増えている地域がある。豊洲だ。 地下鉄有楽町線の豊洲駅に降り立つと、高層ビルやタワーマンションが複数そびえ立っており、亀戸と違って、生活感はまったく感じられない。) 私は今年5月に出版した『中国人が日本を買う理由』の中で、豊洲のタワーマンション(約7000万円)を購入した20代の若者のことを書いた。この若者が豊洲に引っ越してきたのは22年春。 彼は私に「中国人の友人から、中国人の間でいま豊洲の人気が上がっていると聞き、20年に一室購入しました。上層階から海が見渡せる眺望も気に入りました」と話していた。 このように、江東区内には、下町風情が漂い、激安店が多い亀戸と、新興都市としてオフィスビルが立ち並ぶ豊洲という2つの対照的な地区がある。公共交通機関も、JR総武線、地下鉄有楽町線、東西線、都営新宿線があり、いずれも都心へのアクセスがいい。それが(在日中国人が住む地域として)1位にランクインした理由の一つかもしれないと感じた。では、2位以下はどうなっているのか。 江東区の次に中国人が多いのは足立区だ。以前はあまりイメージがよくないという日本人もいたが、リクルートが実施している「SUUMO住みたい町ランキング2023首都圏版」では北千住が28位にランクインするなど、近年は人気が上がっている。 駅前にはルミネやマルイなどのファッションビルも立ち並んでいる北千住。駅前に中国をイメージするものはほとんどないが、住宅街や、近隣の竹ノ塚駅のほうまで行ってみると、中華食材店、中華料理店が増えている。 私の知人の中国人も北千住に住んでいるが、彼は「知り合いの中国人不動産屋から、建売のいい一軒家があると紹介されたのが北千住でした。庭つきの家で子どもを伸び伸びと育てたいと、ここにしました。日比谷線の沿線に勤務先があるので便利なんです」と、引っ越してきた理由を話した。 3位の江戸川区は前述した江東区と同じ路線上にあり、千葉県に近い。江東区と同じく、庶民的な商店が多く、家賃や物価が安い。JR総武線の平井駅付近には外国人留学生向けの日本語学校や、中国人専門の大学受験予備校があり、亀戸や小岩と並んで中国人率が非常に高い。 同じ江戸川区葛西に住む知人の中国人は「東西線の葛西や行徳にも中国人が多いですが、平井は第二の高田馬場になるような気がする」と話す。 その高田馬場があるのが4位の新宿区だ。歌舞伎町、大久保などの歓楽街のイメージがあるが、中国人にとっては、日本語学校や専門学校が多いところというイメージ。3年前に中国の高校を卒業後に来日した女性、Bさんは、高田馬場にある日本語学校に入学するのと同時に、同じ駅前にある大学受験予備校にも入学。その予備校の担当者から住居を紹介され、高田馬場にマンションを借りた。日本語学校、大学受験予備校、不動産店のいずれの担当者も中国人だ。 高田馬場駅前を降りると、大学受験予備校の看板が多数並んでいる。そこに通う中国人留学生を目当てにした「ガチ中華」の店も多く、早稲田大学まで続く早稲田通り沿いには、中国で人気の飲食チェーン店が軒を連ねている。 以前、駅前の大学受験予備校でアルバイトをしていたという中国人男性は、「この町が気に入り、受験が終わっても、この町に住み続けるという友だちが少なくないです」と話していた。5位は板橋区。板橋区は池袋がある豊島区に隣接しており、JR埼京線、都営三田線、東武東上線、地下鉄有楽町線・副都心線が走っている。都営三田線を除いた路線はすべて池袋駅につながっており、通勤に便利な割に家賃が比較的安く、庶民的なエリアだ。 このように、中国人が多い地区のトップ5を見てみると、共通点が浮かび上がってくる。それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ。これらの情報は中国人が頻繁に使っているSNS、ウィーチャットで流れてくる。それを見て、さらに、そこに人が集住するという流れになっている。 【後編】『日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」』では、これまでの在日中国人とは様相の異なる「在日中国人」が増えてきたことについて説明する』、「中国人が多い地区のトップ5を見てみると、共通点が浮かび上がってくる。それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ」、なるほど。
第三に、7月10日付け現代ビジネスが掲載した中島 恵氏による「日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」 地区ごとの特徴」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/112850?imp=0
・『近年、国内の政治情勢などを背景に、日本に移住する中国人が増えているが、在日中国人が最も多く住んでいる地域はどこか、ご存じだろうか。法務省の在留外国人統計(2022年6月末時点)によると、それは東京都で、約22万2000人となっている。在日中国人総数は約75万人なので、約3~4分の1が東京都に居住していることになる(続いて多いのは、埼玉県、神奈川県、大阪府、千葉県の順)。 さらに、都内での居住地域を細かく見てみると、最も多いのは江東区だった。2位は足立区、3位は江戸川区、4位は新宿区、5位は板橋区となっており、新宿区を除いて住宅地のイメージが強い地区となっている。中華料理店が多いイメージがある池袋を含む豊島区などはトップ5には入っていない。 なぜ、中国人はこれらの地域に多く住んでいるのか。同じ在日中国人でも、居住地域によって住んでいる人の特徴に違いはあるのか。各行政区の中国人に関する詳細な情報はないが、私はこれらの地区に住む中国人の知人に話を聞き、そこに住む理由を聞いてみた。 【前編】『じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」』で詳しく説明したが、共通点が浮かび上がってくる。 それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ。これらの情報は中国人が頻繁に使っているSNS、ウィーチャットで流れてくる。 それを見て、さらに、そこに人が集住するという流れになっている』、「共通点が浮かび上がってくる。 それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ」、なるほど。
・『「馴染みのある地区」を選ばない だが、近年来日した富裕層の人の中には、これら、長年日本に住んでいる在日中国人にとって「馴染みのある地区」を選ばない人が増えている。タワーマンションが多い豊洲だけは例外だが、近年、日本に移住してきた人に、どこに住んでいるかと聞いてみると、港区、品川区、渋谷区、という答えが返ってきた。 むろん、「中国人富裕層が住む地区の統計」といったものは存在しないので、あくまでも私が取材した範囲内の話だが、彼らは、日本在住歴が長い中国人とは異なるネットワークを持っており、そこで得た情報によって居住区を決めているようだ。) 2年前、日本にある大手中国系IT企業に駐在員としてやってきた30代の男性は、会社の総務部の手配で港区を推薦されたため、そこに住み始めたと話してくれた。 「会社は大手町にあり、そこから近いので六本木の賃貸マンションに住んでいます。私は東京に詳しくなく、地理もよくわかりませんが、ここは治安もいいし、ステータスの面でも満足できると思いました。家賃は30万円以上しますが、会社負担です。 いまは駐在員ですけど、1年以内に、投資目的でこの近くにマンションを購入しようと考えています。他の駐在員仲間も六本木や麻布に多く住んでいますよ。仕事で遅くなっても、タクシーですぐに帰宅できるし、東京タワーも見える眺めのいいマンションなので気に入っています」 その男性によると、富裕層の友人の中には、森ビルが手掛けている高級マンション「麻布台ヒルズ」を購入している人が何人もいるという。彼が入っている駐在員や富裕層のSNSグループには、頻繁に高級物件の情報が流れてくるので、彼自身も投資用に購入したいと話していた』、「近年、日本に移住してきた人に、どこに住んでいるかと聞いてみると、港区、品川区、渋谷区、という答えが返ってきた・・・会社は大手町にあり、そこから近いので六本木の賃貸マンションに住んでいます。私は東京に詳しくなく、地理もよくわかりませんが、ここは治安もいいし、ステータスの面でも満足できると思いました。家賃は30万円以上しますが、会社負担です・・・他の駐在員仲間も六本木や麻布に多く住んでいますよ。仕事で遅くなっても、タクシーですぐに帰宅できるし、東京タワーも見える眺めのいいマンションなので気に入っています」、「中国人」といっても、昔から住んでいる人たちと、最近の人たちは生活スタイル、所得などで大きな差があるようだ。
・『通勤する必要のない富裕層の在日中国人 また、近年来日した富裕層の特徴として挙げられるのが、「日本語があまりできない」ことだ。10年以上前に来日した中国人は、日本の大学を卒業し、日本企業に勤務している人が多い。 彼らは日本社会にある程度溶け込んでおり、日本人と同等の給料を得て生活していることから、日本人と似たような消費意識を持っている。記事の前半で紹介したように、物価が安く、商店街があり、勤務先へのアクセスがいいところに住みたいという日本人のような考え方の人が多いが、近年来日した中国人は感覚がかなり異なるようだ。 彼らの多くは30~50代の働き盛りだが、中国で財を成した人が多く、日本に移住してからはどこかに通勤する必要がない。そして、子ども連れで来日する場合、子どもを日本のインターナショナルスクールに通わせたいと考えている人が多い。 そのため、ある中国人は「港区、目黒区などにあるインターナショナルスクールを検討しているので、住居もその近くにしたい」と話していた。品川区に住む私の知人の中国人も、子どもが虎ノ門にあるインターナショナル幼稚園に通っているため、その近くで物件を探したと言っていた。 これらの富裕層はまだごく一握りしかおらず、在日中国人の中で少数派だが、今後、中国の情勢によって、移住者はもっと増える可能性もある。だが、すでに約75万人に上っている在日中国人の大半は、前編で紹介したような一般会社員などであり、中国人が多く集住している地区を好む傾向があることがわかる。 こうした傾向は、東京都の次に多い埼玉県、神奈川県などでも同様で、埼玉県でいえば川口市、神奈川県でいえば横浜市がそれに当たる。ふだん、すぐそばに住んでいても、その存在について深く考える機会の少ない在日中国人。 だが、その居住地区をよく見てみると、来日した時期や収入などによる彼らの傾向や層、最近の特徴といったものが見えてくるのではないだろうか』、「近年来日した中国人は感覚がかなり異なるようだ。 彼らの多くは30~50代の働き盛りだが、中国で財を成した人が多く、日本に移住してからはどこかに通勤する必要がない。そして、子ども連れで来日する場合、子どもを日本のインターナショナルスクールに通わせたいと考えている人が多い。 そのため、ある中国人は「港区、目黒区などにあるインターナショナルスクールを検討しているので、住居もその近くにしたい」と話していた・・・在日中国人の大半は、前編で紹介したような一般会社員などであり、中国人が多く集住している地区を好む傾向があることがわかる。 こうした傾向は、東京都の次に多い埼玉県、神奈川県などでも同様で、埼玉県でいえば川口市、神奈川県でいえば横浜市がそれに当たる」、その通りなのだろう。
第四に、2月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「埼玉・川口市のクルド人問題が紛糾!「外国人差別」と叫ぶ人が知らない暗黒史」を紹介しよう。
・『深刻化する「川口クルド人問題」は「ヘイト」なのか SNSでたびたび話題になっていた埼玉県川口市の「クルド人問題」が、ついに国会で取り上げられることになった。 日本維新の会の高橋英明衆院議員が、国会質疑で「ちょっとひどい状況だ」「早急に一斉取り締まりを」などと発言したのである。 ……と言われても、関東圏以外の方は「クルド?何それ?」というリアクションの方も多いと思うので、NHK首都圏ニュースの解説を引用させていただく。 《埼玉県川口市で2023年7月、病院に100人近くの外国人が集結する騒動が発生しました。川口市ではトルコから来たクルド人のコミュニティーが拡大し、ゴミ出しのルールや生活習慣などの違いによる、住民との摩擦も目立っています》(NHK首都圏ナビ、2月2日) この問題がややこしいのは「摩擦どころではない」という住民もかなりいることだ。「敷地の駐車場を壊された」「深夜に大音量をかけた改造車が住宅街を暴走する」などの「被害」を訴える人もおり、21年10月にはこんな「悲劇」まで起きている。 「19歳のクルド人少年がトラックで県道を暴走し、横断中の69歳男性をはねて死亡させ、逃走した。少年の所持品に運転免許証はなかったという。事件後、少年は出国しようとしたところを逮捕された」(産経新聞、23年7月30日) そこで、23年6月、川口市議会は「一部の外国人は、資材置き場周辺や住宅密集地などで暴走行為やあおり運転を繰り返し、窃盗や傷害などの犯罪も見過ごすことはできない」との取り締まり強化の意見書を可決した。 同年9月には川口市も国に対して、「不法行為を行う外国人においては、法に基づき厳格に対処(強制送還等)していただきたい」という要望書を提出した。そこからだいぶタイムラグがあったものの、ここにきてようやく川口市の訴えが国会にまでたどり着いた――という流れだ。 しかし、そんな高橋議員による国会質疑は「ヘイトスピーチ」だとボロカスに叩かれている。 共同通信社は配信記事の中で、《「不確かな情報を基にした国会議員による外国人差別だ」と専門家も批判している》(2月27日)とバッサリ。SNSでも「議員を辞めろ」と辛辣な声が挙がっているほか、以下のように日本の「黒歴史」と重ねて警鐘を鳴らす人々もいる。 「これでは関東大震災で流言飛語を広めた連中と同じじゃないか」 ご存じのように、関東大震災下、多くの朝鮮人が虐殺されたが、その原因は「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などの「デマ」が拡散されたから、とされている。今回の高橋議員や川口市・市議会の主張している「被害」というのもそれと同じく、クルド人迫害につなげるためにねつ造された「デマ」だというのだ。 ただ、報道対策アドバイザーとして、実際に企業などを悩ます「悪質なデマ」の対策にも携わってきた経験から言わせていただくと、本当に関東大震災の悲劇を繰り返したくないのならば、川口市や市議会が要望している「一部外国人の不法行為への取り締まり強化」をすべきだ。 「デマ」が、ヘイトクライムや集団暴力を引き起こす時、そこには必ず「恐怖」や「憎悪」が存在する。 川口市からの訴えを国が無視して、一部外国人の不法行為を放置し続ければ、「外国人への恐怖や憎悪」はさらにふくれ上がる。そして、中には「国が守ってくれないなら、自分たちの身は自分で守るしかない」と過激な外国人排斥運動へ傾倒する者もあらわれる。 つまり、「外国人ヘイト」のムードを醸成させないためにも、国が「不法行為をする一部の外国人を厳しく取り締まる」という毅然とした態度を見せて、市民の「不安」を払拭しておくべきなのだ』、「外国人ヘイト」のムードを醸成させないためにも、国が「不法行為をする一部の外国人を厳しく取り締まる」という毅然とした態度を見せて、市民の「不安」を払拭しておくべきなのだ」、なるほど。
・『朝鮮人虐殺はなぜ起きた?「恐怖」にあおられた庶民の暴走 なぜそこまで市民のメンタルヘルスに気を遣うのかというと、「外国人ヘイト」は一部のレイシストが起こすものより、市民がパニックになって引き起こす方がはるかに悪質で残酷だからだ。 関東大震災で朝鮮人を日本刀や鎌やこん棒を手に虐殺してまわったのは、警察や憲兵など治安維持をする人たちではない。善良な一般市民たちが、自衛のために結成した「自警団」だ。 そこでちょっと想像力を働かせて考えていただきたい。普段は暴力と無縁の生活を送っていた良き夫であり、良き息子のような人々が、「朝鮮人が火をつけた」「井戸に毒を入れた」といううわさを聞いたくらいで人を殺めることができるだろうか。 最近、映画も公開されて話題になった「福田村事件」でも描かれているが、当時の「自警団」はすさまじく、各所で検問所をつくって、朝鮮人だと見るや、子どもでも妊婦でもお構いなしに殺している。命ごいをする一家まで殺して、勢い余って「しゃべれない」という理由だけで、日本人の聴覚障がい者にまで手をかけた。 「デマにあおられた」だけで、同じ人間にここまで酷い仕打ちができるわけがない。 では、一体何が善良な市民を暴徒にさせたのかというと、「恐怖」である。「不逞鮮人が怖くてパニックになって、自分や家族を守るために目に入るすべての朝鮮人を排除した」のである(※不逞鮮人=戦前の日本において、韓国併合後の日本政府に不満を持つ朝鮮出身者や、満洲の朝鮮人反体制派、朝鮮独立運動家、犯罪者などをこのように呼んだ)。 実はこの惨劇にはちゃんと伏線がある。「デマ」が流れるはるか前から、日本の善良な市民たちの間では、朝鮮人は「何をしでかすかわからないヤバい連中」というイメージが確立していたのだ』、「当時の「自警団」はすさまじく、各所で検問所をつくって、朝鮮人だと見るや、子どもでも妊婦でもお構いなしに殺している。命ごいをする一家まで殺して、勢い余って「しゃべれない」という理由だけで、日本人の聴覚障がい者にまで手をかけた・・・一体何が善良な市民を暴徒にさせたのかというと、「恐怖」である。「不逞鮮人が怖くてパニックになって、自分や家族を守るために目に入るすべての朝鮮人を排除した」のである・・・「デマ」が流れるはるか前から、日本の善良な市民たちの間では、朝鮮人は「何をしでかすかわからないヤバい連中」というイメージが確立していたのだ」、なるほど。
・『「殺られる前にこっちから殺ってやる――」という集団パニック 要因のひとつが、震災の4年前、1919年に朝鮮全土で盛り上がった「三・一独立運動」だ。これによって、日本本土にも朝鮮人の活動家が多く入ってきたのだ。爆弾を隠し持っていたところを摘発されるなんて報道も増えていくなかで、朝鮮人のイメージも急速に悪化していく。それがうかがえる一節が、震災の前年に出版された、当時のベストセラー作家・加藤美侖氏の「刑法知識 罪なき人も油断すな」(朝香屋書店)の中にある。 「例えば政府の転覆とか国土の潜窃などがその例だ。(中略)昔は年中内乱騒ぎがあつたことを歴史が教へるが、今日の聖代に於ては、まあ不逞鮮人でもなければそんな馬鹿をする者があるまい」(66ページ) この時期の一般庶民の間では、「不逞鮮人=国家転覆や国土の略奪を狙うテロリスト」という恐怖のイメージが定着していたのだ。 もちろん、同時期の時局講演などを見ると、新聞などの「不逞鮮人」という呼び方は朝鮮人にとっては侮辱なので改めるべきだというような良識派の声もあった。しかし、現実には「良い朝鮮人」と「不逞鮮人」を見分けることなどできないということで、いつの間にやら「不逞鮮人」というテロリストイメージが「朝鮮人」全体にまで広がってしまう。外見的には日本人とほとんど違いがなく、言葉を発しないと朝鮮人だとわからないため、恐怖にさらなる拍車がかかった。 つまり、1923年の日本には「日本人のふりをしている朝鮮人が、いつ爆弾などで攻撃を仕掛けてくるのか」と、内心ビクビクしながら日常生活を送っていた市民が山ほどいたのである。そんな時、関東大震災が起きて「放火をしている」「井戸に毒を」といううわさ話があちこちから聞こえたら、市民たちは恐怖でパニックに陥るだろう。 しかし、いつまでも恐れていてもしょうがない。守るべき家族や大切な人がいるのだ。そうなると、彼らは家にある日本刀やこん棒、鎌などを手にとってこう思うはずだ。 「殺られる前にこっちから殺ってやる――」 つまり、平時は暴力などとは無縁の日本人たちが、何の罪もない朝鮮人たちを無慈悲に殺せたのは「デマのせい」というのは表面的な話にすぎないのだ。何年もかけてふくれ上がってきた朝鮮人に対する恐怖が、地震によって制御することができなくなって、「集団パニック」に陥ったからなのだ』、「平時は暴力などとは無縁の日本人たちが、何の罪もない朝鮮人たちを無慈悲に殺せたのは「デマのせい」というのは表面的な話にすぎないのだ。何年もかけてふくれ上がってきた朝鮮人に対する恐怖が、地震によって制御することができなくなって、「集団パニック」に陥ったからなのだ」、「集団パニック」とは本当に恐ろしい。
・『「恐怖」にいる住民の声を無視すると「ヘイト」につながる 「そんなバカな」と思われるかもしれないが、人類の歴史を振り返ると、敵対する人々を大量虐殺するような時には、往々にしてこの「恐怖が引き起こす集団パニック」がある。 わかりやすいのは、1994年のルワンダの大量虐殺だ。これはフツ族が隣人であるツチ族の人々を容赦なく殺したという悲劇だが、その引き金になったのは「恐怖」だ。 フツ族である大統領が搭乗した飛行機が追撃された。それをラジオで聴いたフツ族の人々は「自分も襲われるか」と恐怖のどん底に落ちた。そんな時、ラジオからこんな言葉が聞こえてきた。 「殺らなければ殺られる――」 さて、こういう話を聞くと、なぜ筆者が埼玉県の「不法行為をする外国人」の取り締まりを強化すべきだと主張しているのか、理解していただけたのではないか。 川口市や川口市議の意見書のもとになったように、一部のクルド人の皆さんの振る舞いに「恐怖」を感じている住民がいることはまぎれもない事実だ。そのような人々の声を国が無視したところで、彼らの恐怖や不安は消えない。 「外国人との共生社会」を掲げる人たちからすれば、「外国人差別をやめて受け入れればいいのだ」という事なのだろう。しかし、そう簡単に自分の考えを変えられない人たちが一定数いるというのも、この社会の「多様性」だ。 では、川口市の訴えを無視して、取り締まり強化もせず、ただただ「共生」を呼びかけていたら、恐怖を感じている住民はどうなっていくのかというと、これまで以上に外国人を怖がる。 当たり前だ。「怖い」と訴える人たちを力で抑えつけて「怖がるな!怖がる貴様がおかしい」とか説教をしたところで、態度を硬化させて事態を悪化させていくだけだろう。 つまり、これまで不法行為をするクルド人だけに不安を感じていた人たちが、「クルド人を受け入れろ!」「このレイシストめ!」と攻撃されることで態度を硬化させて、何の問題も起こしていない「善良なクルド人」に対してまで恐怖や憎悪を抱いてしまうのである。 ただ、それよりも最悪なのは、国がこの問題を放置し続けたら、「自分の身は自分で守るしかない」と考える人々が、「自警団」のようなものを組織してしまう恐れがあることだ』、「これまで不法行為をするクルド人だけに不安を感じていた人たちが、「クルド人を受け入れろ!」「このレイシストめ!」と攻撃されることで態度を硬化させて、何の問題も起こしていない「善良なクルド人」に対してまで恐怖や憎悪を抱いてしまうのである。 ただ、それよりも最悪なのは、国がこの問題を放置し続けたら、「自分の身は自分で守るしかない」と考える人々が、「自警団」のようなものを組織してしまう恐れがあることだ」、なるほど。
・『「自警団」は暴走する。だから国が取り締まるべき 関東大震災で悲劇の舞台装置となったことからもわかるように「自警団」が危ないのは、「外国人ヘイト」につながることだけでなく、「オレたちのルール」で人を裁くことにある。震災当時の資料を見ると、「朝鮮人はバレないように帽子を被るはずなので、お前のように帽子を被る奴は怪しい」と検問所で詰問されて、確証のないまま殺された人もいる。 こういう「自警団の暴走」を防いで、善良な外国人の安全を守るためにも、国がしっかりとした方針を定めて、不法行為をする外国人を取り締まったり、難民申請中の人たちへの処遇もしっかり定めたりすべきだ。国外退去させられるわけでもなく、在留を認められるわけでもないという「宙ぶらりん」だから、正規の仕事もできず、外国人コミュニティの中で違法な仕事に従事せざるを得ないという外国人もたくさんいるのだ。 「不逞鮮人」を取り締まることができず、結果として日本社会に「朝鮮人に対する恐怖」を広めてしまったように、一部の不法行為をする外国人をしっかりと取り締まることができないと、「外国人はすべて怪しい」という偏ったものの見方を広めてしまう。 そういう「偏った正義」にもっとも弱いのが、善良な一般市民だ。 今、SNSで相手を自殺に追い込むまで誹謗中傷するような人が「自分は社会のために正しいことをしている」と思い込んでいるように、震災時に朝鮮人を虐殺した自警団の多くは「自分は日本のために正しいことをした」と胸を張った、と記録にある。 このような「市民による正義の暴走」を防ぐには、先回りをして国家が「正義」を示すしかない。国が外国人への取り締まりを強化する、と聞くと脊髄反射で「外国人ヘイトだ!」「差別だ!」と批判をする人が多いが、外国人への恐怖や偏見を軽減することで、「善良な外国人」の人権や安全を守ることができるというメリットもある。 外国人だろうが日本人だろうが、不法行為は厳しく取り締まるということこそが、「外国人との共生社会」になるための第一歩なのではないか』、「「市民による正義の暴走」を防ぐには、先回りをして国家が「正義」を示すしかない。国が外国人への取り締まりを強化する、と聞くと脊髄反射で「外国人ヘイトだ!」「差別だ!」と批判をする人が多いが、外国人への恐怖や偏見を軽減することで、「善良な外国人」の人権や安全を守ることができるというメリットもある。 外国人だろうが日本人だろうが、不法行為は厳しく取り締まるということこそが、「外国人との共生社会」になるための第一歩なのではないか」、その通りだ。
タグ:外国人問題 (その9)(「特高マインド」が脈々と ウィシュマさんの死によって判明した入管の異常な体質、じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」、日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」 地区ごとの特徴、埼玉・川口市のクルド人問題が紛糾!「外国人差別」と叫ぶ人が知らない暗黒史) AERAdot「「特高マインド」が脈々と ウィシュマさんの死によって判明した入管の異常な体質」 「在留資格のない外国人は『憲法の番外地』、つまり、人権を認めないというのが入管の考え方としてあります。収容者を『制圧行為』と称し、多数の職員で暴行を加えるなど人権を無視する事例は施設内で度々起きています。これは、外国人は取り締まりの対象であり社会に危害を加える存在だという、戦前の特高のマインドが今も引き継がれているからだと思います」、『憲法の番外地』とは言い得て妙だ。 「本来は、どのような人を収容するかは法律でルールを明文化し、裁判所が判断していくよう整備しなければいけません。これは、国連の自由権規約委員会からも、改善を求められていることです」 そして最終的には、巨大な裁量権を持つ入管を解体することが必要だという。解体し、収容の判断は裁判所が行い、運用は民間に委託するなどし、難民保護は第三者機関が行う。 入管は、入管の本来の目的である強制送還の業務だけを担うようにするなど、抜本的な入管行政の見直しが不可欠だ、と。 「同時に、日本人の中にある外国人に対する差別心をなくしていく教育を子どもも大人も行うなど、社会全体で変わっていく必要があります」、その通りだ。 現代ビジネス 中島 恵氏による「じつはいま中国人が急速に増えている「日本の都市」があった…その名前と「移住の理由」」 確かに「亀戸」は「下町の庶民的なイメージ」に溢れている。 「中国人が多い地区のトップ5を見てみると、共通点が浮かび上がってくる。それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ」、なるほど。 中島 恵氏による「日本に移住する中国人が「住む場所」に変化が起きていた…その「驚愕の実態」 地区ごとの特徴」 「共通点が浮かび上がってくる。 それは、比較的物価が安く、中国人の生活に欠かせない中国食材店や中華料理店が多いこと、10年以上前に来日した中国人がすでに多く住んでいて、安心感があること、中国人のネットワークで不動産物件を紹介された人が多いこと、都心への交通アクセスがよいこと、などだ」、なるほど。 「近年、日本に移住してきた人に、どこに住んでいるかと聞いてみると、港区、品川区、渋谷区、という答えが返ってきた・・・会社は大手町にあり、そこから近いので六本木の賃貸マンションに住んでいます。私は東京に詳しくなく、地理もよくわかりませんが、ここは治安もいいし、ステータスの面でも満足できると思いました。家賃は30万円以上しますが、会社負担です・・・ 他の駐在員仲間も六本木や麻布に多く住んでいますよ。仕事で遅くなっても、タクシーですぐに帰宅できるし、東京タワーも見える眺めのいいマンションなので気に入っています」、「中国人」といっても、昔から住んでいる人たちと、最近の人たちは生活スタイル、所得などで大きな差があるようだ。 「近年来日した中国人は感覚がかなり異なるようだ。 彼らの多くは30~50代の働き盛りだが、中国で財を成した人が多く、日本に移住してからはどこかに通勤する必要がない。そして、子ども連れで来日する場合、子どもを日本のインターナショナルスクールに通わせたいと考えている人が多い。 そのため、ある中国人は「港区、目黒区などにあるインターナショナルスクールを検討しているので、住居もその近くにしたい」と話していた・・・ 在日中国人の大半は、前編で紹介したような一般会社員などであり、中国人が多く集住している地区を好む傾向があることがわかる。 こうした傾向は、東京都の次に多い埼玉県、神奈川県などでも同様で、埼玉県でいえば川口市、神奈川県でいえば横浜市がそれに当たる」、その通りなのだろう。 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生氏による「埼玉・川口市のクルド人問題が紛糾!「外国人差別」と叫ぶ人が知らない暗黒史」 「外国人ヘイト」のムードを醸成させないためにも、国が「不法行為をする一部の外国人を厳しく取り締まる」という毅然とした態度を見せて、市民の「不安」を払拭しておくべきなのだ」、なるほど。 「当時の「自警団」はすさまじく、各所で検問所をつくって、朝鮮人だと見るや、子どもでも妊婦でもお構いなしに殺している。命ごいをする一家まで殺して、勢い余って「しゃべれない」という理由だけで、日本人の聴覚障がい者にまで手をかけた・・・一体何が善良な市民を暴徒にさせたのかというと、「恐怖」である。「不逞鮮人が怖くてパニックになって、自分や家族を守るために目に入るすべての朝鮮人を排除した」のである・・・ 「デマ」が流れるはるか前から、日本の善良な市民たちの間では、朝鮮人は「何をしでかすかわからないヤバい連中」というイメージが確立していたのだ」、なるほど。 「平時は暴力などとは無縁の日本人たちが、何の罪もない朝鮮人たちを無慈悲に殺せたのは「デマのせい」というのは表面的な話にすぎないのだ。何年もかけてふくれ上がってきた朝鮮人に対する恐怖が、地震によって制御することができなくなって、「集団パニック」に陥ったからなのだ」、「集団パニック」とは本当に恐ろしい。 「これまで不法行為をするクルド人だけに不安を感じていた人たちが、「クルド人を受け入れろ!」「このレイシストめ!」と攻撃されることで態度を硬化させて、何の問題も起こしていない「善良なクルド人」に対してまで恐怖や憎悪を抱いてしまうのである。 ただ、それよりも最悪なのは、国がこの問題を放置し続けたら、「自分の身は自分で守るしかない」と考える人々が、「自警団」のようなものを組織してしまう恐れがあることだ」、なるほど。 「「市民による正義の暴走」を防ぐには、先回りをして国家が「正義」を示すしかない。国が外国人への取り締まりを強化する、と聞くと脊髄反射で「外国人ヘイトだ!」「差別だ!」と批判をする人が多いが、外国人への恐怖や偏見を軽減することで、「善良な外国人」の人権や安全を守ることができるというメリットもある。 外国人だろうが日本人だろうが、不法行為は厳しく取り締まるということこそが、「外国人との共生社会」になるための第一歩なのではないか」、その通りだ。
災害(その16)(能登半島地震 防災対策の権威が語る「反省と教訓」 防災と初動対応が遅れた背景に2つの原因、災害時トイレ「断水」復旧になぜ時間がかかるのか 阪神・淡路大震災では仮復旧まで1カ月間要した、災害時に備えたい「携帯トイレ」4人家族の必要数 「使い方」や「使うタイミング」も知っておくこと) [社会]
災害については、本年2月4日に取上げた。今日は、(その16)(能登半島地震 防災対策の権威が語る「反省と教訓」 防災と初動対応が遅れた背景に2つの原因、災害時トイレ「断水」復旧になぜ時間がかかるのか 阪神・淡路大震災では仮復旧まで1カ月間要した、災害時に備えたい「携帯トイレ」4人家族の必要数 「使い方」や「使うタイミング」も知っておくこと)である。
先ずは、本年2月15日東洋経済オンライン「能登半島地震、防災対策の権威が語る「反省と教訓」 防災と初動対応が遅れた背景に2つの原因」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/734427
・『2024年元日を襲った能登半島地震では200人を上回る人命が失われるなど、深刻な被害が発生した。阪神淡路大震災をはじめとして多くの自然災害に向き合い、防災対策の見直しを提唱してきた室﨑益輝・神戸大学名誉教授は「反省すべき点が多くある」と指摘する(Qは聞き手の質問、Aは室﨑氏の回答)。 Q:今回の災害の大きさや深刻度についてどのようにとらえておられますか。 A:とんでもない地震が起きたというか、想像を絶する地震が起きた。家屋の損壊状況もすさまじいものだし、道路という道路が破壊されました。そういった被災状況だっただけに、過去がこうだったから今回こうだとは言えない部分はあります。ただ、救いを求めている被災者がたくさんいる現実にどう応えていくか。行政のみならず、私たち一人ひとりを含む社会全体の責任だと思っています』、「とんでもない地震が起きたというか、想像を絶する地震が起きた。家屋の損壊状況もすさまじいものだし、道路という道路が破壊されました・・・救いを求めている被災者がたくさんいる現実にどう応えていくか。行政のみならず、私たち一人ひとりを含む社会全体の責任だと思っています」、なるほど。
・『すぐに救援に駆けつけられなかった Q:能登半島地震の発生から1カ月余りが経過しました。これまでを振り返って、どのような教訓や反省点がありますか。 A:震災の教訓を引き出すには、失敗体験をしっかり踏まえなければならない。今回の地震では、助けを求めている被災者のところに救援隊がすぐに駆けつけることができなかった。これが大きな反省点だったと思います。 その根源をたどると、大きく2つの誤ちがあったと言えます。 1つ目の過ちは事前の被害想定の甘さです。 能登地方でこれほど大きな地震は起きるはずがないという思い込みも含めてのことですが、国、石川県ともきわめて小さな地震しか想定していなかった。その結果として、事前の準備がきちんとできていなかった。 孤立集落があちこちで発生する事態を見越していれば、備蓄対策のあり方も違っていたし、平時の情報通信が途絶しても連絡を取れる衛星携帯電話を配備するといった事前準備もやっていたはずです。) 2つ目の過ちは、地震発生直後に被災状況の把握がスムーズにできなかったことが、初動対応の遅れにつながったという点です。 政府は当初、災害対策基本法に基づく態勢としては最も下のクラスの「特定災害対策本部」の設置にとどめた。これを「非常災害対策本部」に格上げし、同本部の会議を初めて開催したのは翌1月2日の午前9時過ぎのことでした。 初動態勢の構築が遅れた結果、自衛隊投入の規模も当初の1000人規模から小出しになってしまった。 (室﨑益輝氏の略歴はリンク先参照) Q:石川県の地域防災計画(地震災害対策編)では、「能登半島北方沖」を震源とする地震としてはマグニチュード7.0を想定し、被害の概況についても「死者数7人、建物全壊120棟」「ごく局地的な災害で、災害度は低い」とされていました。四半世紀にわたってその想定は見直しがなされていませんでした。石川県の災害危機管理アドバイザーを務め、県防災会議震災対策部会長でもある室﨑さんは、2023年2月の同部会で、地震被害想定の抜本的な見直しを決定したという発言をしています。 同部会で被害想定の見直しをしようとしていたことは事実です。 2020年12月以降の奥能登の珠洲市一帯での群発地震をきっかけに、いずれ大きな地震が起きるという緊迫感が芽生えていました。 それを踏まえ、国の地震調査研究推進本部による長期評価や被害想定が出されていなくても、石川県として能登半島でこれから起きる地震の想定をしっかりやろうということで、2023年から議論を始めていました。 しかし、結果的には作業が間に合わなかった』、「今回の地震では、助けを求めている被災者のところに救援隊がすぐに駆けつけることができなかった。これが大きな反省点だったと思います。 その根源をたどると、大きく2つの誤ちがあったと言えます。 1つ目の過ちは事前の被害想定の甘さです。 能登地方でこれほど大きな地震は起きるはずがないという思い込みも含めてのことですが、国、石川県ともきわめて小さな地震しか想定していなかった」、前石川県知事が産業を呼び込むため、震災の想定を低く抑えたと言われている。事実とすれば、許し難い行為だ。「2つ目の過ちは、地震発生直後に被災状況の把握がスムーズにできなかったことが、初動対応の遅れにつながったという点です。 政府は当初、災害対策基本法に基づく態勢としては最も下のクラスの「特定災害対策本部」の設置にとどめた。これを「非常災害対策本部」に格上げし、同本部の会議を初めて開催したのは翌1月2日の午前9時過ぎのことでした。 初動態勢の構築が遅れた結果、自衛隊投入の規模も当初の1000人規模から小出しになってしまった」、なるほど。
・『国の評価を待つという受け身の姿勢だった Q:石川県の幹部の発言として、国の長期評価の策定・公表を待ってから対策をするという姿勢が長く続いていたという報道があります。その点についてどのように感じていましたか。 A:結果論ですが、そのような待ちの姿勢ではいけなかった。県域のどこにどのような活断層があり、どのくらいの確率で動くかについて、国の長期評価の策定を待ってから対策を話し合うという姿勢が、今回の地震で問われた。 他方で国土交通省が2014年9月に取りまとめた「日本海における大規模地震に関する調査検討会」の報告書では、能登半島沖に活断層があり、津波被害を起こすことが指摘されていました。 ただ、石川県においては、どの活断層がどのように連動するか否かについては、国の科学的知見の発表を踏まえて検討すればいいという姿勢でした。その結果として、地震被害の想定の抜本的見直しが遅れてしまいました。 国のトップダウンに基づく防災ではなく、地方自治体から動くボトムアップの防災に切り替えるには、自ら独自に積極的に被害の想定をしなければならない。 加えてもう一つ問われていることが、社会の前提条件がどんどん変わってきているということです。その社会の変化を想定に反映しなければならない。高齢化や過疎化が進んでいる中で、四半世紀も被害想定の見直しを放置していたということ自体、間違っていたと思います。) Q:政府の初動態勢をどのように評価していますか。 A:マグニチュード7.6(暫定値)というのは、阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)や熊本地震よりも大きな地震が起きたことを意味しています。そうだとすると、多くの家屋が倒壊し、たくさんの人が生命の危機にさらされていることは、直後に想像できたはず。 これからは、現地からの報告を待つのではなく、直後に公表される地震の大きさや形状によって、初動対応のスイッチを入れるようにしなければならない。 たとえばマグニチュード7.6であれば、道路が寸断されているということを想定して、海や空からの救助にも早急に着手すべきです。 従来の緊急消防隊の派遣のシステムのまま動いていたのでは、救助活動はうまく進まない。繰り返しになりますが、地震発生直後の情報把握のシステムおよび初動対応のシステムを抜本的に見直さなければいけない』、「石川県の幹部の発言として、国の長期評価の策定・公表を待ってから対策をするという姿勢が長く続いていたという報道があります。その点についてどのように感じていましたか。 A:結果論ですが、そのような待ちの姿勢ではいけなかった。県域のどこにどのような活断層があり、どのくらいの確率で動くかについて、国の長期評価の策定を待ってから対策を話し合うという姿勢が、今回の地震で問われた・・・社会の前提条件がどんどん変わってきているということです。その社会の変化を想定に反映しなければならない。高齢化や過疎化が進んでいる中で、四半世紀も被害想定の見直しを放置していたということ自体、間違っていたと思います・・・地震発生直後の情報把握のシステムおよび初動対応のシステムを抜本的に見直さなければいけない」、その通りだ。
・『モデルにすべきは中越地震時の「山古志方式」 Q:地震発生直後には避難所が開設され、2月3日には仮設住宅への入居が始まりました。 地震を生き延びた人が、その後の健康状態の悪化などによって死亡する「災害関連死」を防がなければならない。そのためには、人々の1日1日の苦しみをいかに和らげるかが重要です。もう一つ重要なことは、苦しみの期間をいかに短くできるかです。 国の災害救助法のルールに基づけば、避難所の開設は原則1週間、応急仮設住宅は本来、20日以内に着工しなければならない。 ただ、現実を見ると、いずれもだいぶ日数がオーバーしている。仮設住宅については1~2カ月遅れでの着工という事態が生じています。 被災者の苦しみの総量を下げるためにも、迅速に仮設住宅を供給しなければならない。そういう意識をどれだけ持って取り組んでいるのかということが問われています。 Q:石川県の発表によれば、応急的な住まいについては3月末までに約1万5000戸を用意する計画です。仮設住宅の提供のあり方についてはどのような配慮が必要でしょうか。 A:モデルにすべきは、2004年の新潟県中越地震の時の「山古志方式」だと思います。 被害の大きかった旧山古志村(現・長岡市)の住民のために長岡市内に仮設住宅団地が作られ、そこに山古志村の人たちはコミュニティ単位で入居しました。そして旧山古志村では2~3年かけてがれきの撤去や道路の整備が実施され、再び住民が帰還できました。 今回も金沢市のスポーツセンターの敷地に1万棟くらいの仮設住宅団地を作り、コミュニティごとに入居するといったような取り組みがあってもいいのではないか。 そこに高校の分校や輪島塗りの工房も一緒に作るといったやり方をすれば、コミュニティを維持できます。) Q:石川県の計画では、約1万5000戸のうち、約8000戸を石川県外の公営住宅によって賄うということになっています。 人々がばらばらになってしまうので良くない。孤立死をもたらすことになりかねない。なるべく多くの人たちがまとまり、お互いにつながり合うことが重要です。 Q:災害救助法では、被災者への「炊き出しその他による食品の給与」が定められています。今回の地震では、一部の2次避難所で食事の費用を徴収している例があると指摘されています。 これ自体は災害救助法違反です。同法では食事の提供の義務がある。ホテルに収容したらおしまいということではないのです。 Q:なぜこうしたことが起きているのでしょうか。石川県自体が災害対応に慣れていないということでしょうか。 A:石川県というよりも、日本の自治体のどこも災害対応に慣れておらず、経験がつながっていないことに原因があります。行政の担当者は2~3年で代わってしまうため、ノウハウと経験が蓄積しない。 石川県も2007年の能登半島地震では素晴らしい対応をしているのに、その対応が今回見られていないというのは、まさに経験を蓄積し、継承するシステムがないことに原因があると言えます。 石川県に、阪神淡路大震災や東日本大震災、中越地震の経験をどれだけしっかり伝えたか、私たち伝える側の責任ももっと問われないといけない』、「石川県も2007年の能登半島地震では素晴らしい対応をしているのに、その対応が今回見られていないというのは、まさに経験を蓄積し、継承するシステムがないことに原因があると言えます」、なるほど。
・『原子力災害時の体制も抜本見直しを Q:今回の地震では原子力発電所の重大事故には至らずに済みました。ただ、原発事故を含む複合災害に発展した場合、あらかじめ定められていた防災計画が機能しなかったのではないかと見られています。 最大級の地震を想定して、原発そのものの防災計画を見直さなければならない。 もう一つの問題は、原子力災害時の避難の問題です。今回の地震では道路があちこちで寸断し、住民の孤立が発生した。道路が使えない前提で避難計画を作らなければならない。 福島原発事故のような最悪の事態に備え、そうしたことが起きた時にどうするのかという前提に立って、対策を講じなければならないと思っています。 Q:能登半島地震では、ボランティアの受け入れをめぐり賛否の議論が起きました。今行っても迷惑になるという言い方がSNSなどでなされ、行政からも「今はまだ来ないでください」というメッセージが発信されました。 ボランティアは言われてする活動ではないのです。そこに困った人がいれば、迷惑をかけないように最大限の配慮をしながらも、被災者の元に駆けつけなければならない。 ボランティアセンターができたから行きましょうとか、ボランティアは来るなと言われたので行かないというのではなく、そこに支援を求めている人がいるかどうかを判断の基軸にすべきです。 今回のようにボランティアの自主性が失われ、必要なボランティアが被災地に入らないという事態になると、助かる命も助からなくなってしまう。ボランティア側もきちんとリテラシーを持ち、マナーをわきまえたうえで活動すればいいと思います』、「今回のようにボランティアの自主性が失われ、必要なボランティアが被災地に入らないという事態になると、助かる命も助からなくなってしまう。ボランティア側もきちんとリテラシーを持ち、マナーをわきまえたうえで活動すればいいと思います」、その通りだ。
次に、2月26日付け東洋経済オンラインが掲載した日本トイレ研究所代表理事の加藤 篤氏による「災害時トイレ「断水」復旧になぜ時間がかかるのか 阪神・淡路大震災では仮復旧まで1カ月間要した」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/733845
・『能登半島地震でも多く取り上げられた「災害時のトイレをどうするか」問題。 トイレ環境の大切さを広めるべく奔走する「日本トイレ研究所」の代表理事・加藤篤さんが、“トイレ”の視点から防災のノウハウをやさしく解説した『トイレからはじめる防災ハンドブック』より一部の内容を抜粋。忘れたころにやってくる災害への備え、そして起こった後の対応のポイントについて、3回にわたって掲載します。 第1回は、災害とトイレをめぐる基本的な知識をお伝えします』、興味深そうだ。
・『自然災害の発生後にすべきこと ■発災3時間以内に約4割の人がトイレに行く 自然災害の発生後にすべきことは何でしょうか?地震や豪雨などが起きたときに真っ先にすべきなのは、自分の命を守ること、そして安全な場所に避難することです。ここまでの行動は、全員一致するでしょう。 問題はこのあとです。避難所では避難者の誘導や場所の確保、水・食料の配給などに多くの人が奔走します。もちろんこれらは大切ですが、それと同じくらい重要なのに、忘れられがちなことがあります。それが「トイレ対応」です。 大きな災害が起きると水洗トイレは使えなくなります。しかし、私たちの排泄は待ってくれません。) 2016年4月に発生した熊本地震での調査によると、発災後3時間以内にトイレに行きたくなった人は38.5%、6時間以内では72.9%にのぼります。 発災後6時間は大混乱状態で、おそらくこの約7割の人は水を飲んでおらず、食事も摂っていないはずです。それにもかかわらず、トイレに行きたくなるのです。つまり、水・食料より先にトイレ対応が必要ということです。私たちはこの事実から目をそらしてはいけないのです。(地震後、何時間でトイレに行きたくなったか? はリンク先参照)』、「発災後6時間は大混乱状態で、おそらくこの約7割の人は水を飲んでおらず、食事も摂っていないはずです。それにもかかわらず、トイレに行きたくなるのです。つまり、水・食料より先にトイレ対応が必要ということです」、なるほど。
・『断水したら水洗トイレが使えない ■水洗トイレには給水と排水の両方必要 断水したら水洗トイレが使えないことは、多くの人が理解しています。水洗トイレは目の前の大小便を水で流し去ってくれる便利なシステムなので、水が無ければ機能しません。 断水の原因は主に2つあります。1つは給水管等の給水装置や配水施設が破損して水を届けられなくなること。もう1つは停電でポンプなどの設備が作動しなくなり、水が届けられなくなることです。 ところが、給水に問題が無くても、水洗トイレは使えなくなることがあります。それは、排水に支障がある場合です。理由は、流れていく先がなくなるからです。 排水に問題が生じる要因としては、排水管が外れる・閉塞する・逆こう配になる、下水道や下水処理場、浄化槽が機能していない、などが考えられます。このような場合、無理に汚水を流すと、どこかからあふれることになります。 給水と排水、それに電気のすべてが機能してこそ、水洗トイレは使用できるようになります。日頃、目にしているのは便器だけですが、その裏に壮大な水洗トイレシステムがあることを知っておいてください。(水洗トイレが機能するためには? はリンク先参照)』、「給水と排水、それに電気のすべてが機能してこそ、水洗トイレは使用できるようになります」、なるほど。
・『■水道の仮復旧までは1カ月以上かかる 私たちは1日に複数回トイレに行きます。水洗トイレを使うには、もちろん水が必要です。節水型の便器でも、1回あたりの洗浄で概ね6?8リットル程度の水を使用します。仮に5回行くとしたら、合計で30?40リットルの水を使うことになります。 水を便器に供給するためには、まず河川などから引いた水を処理する浄水場が機能していることが前提です。また、浄水場からポンプ場を経由して各建物に水を運ぶ配水管が正常であることも必要です。そして、これらの過程では電力も欠かせません。 このため、大きな災害で停電すると断水が発生します。阪神・淡路大震災では約127万戸が断水し、仮復旧が完了するまでに1カ月以上を要しました。また、東日本大震災で被災した地方公共団体へのアンケート調査では、上水道の仮復旧までに要した日数は、平均35日間だったことがわかっています。 この間、トイレの洗浄に必要な水量を人力で供給するのは容易でありません。断水で洗浄水が確保できない場合に、トイレ機能を確保する方法の検討が必要です。 (阪神・淡路大震災のときはどうだった? はリンク先参照)』、「阪神・淡路大震災では約127万戸が断水し、仮復旧が完了するまでに1カ月以上を要しました。また、東日本大震災で被災した地方公共団体へのアンケート調査では、上水道の仮復旧までに要した日数は、平均35日間だった・、かなり長期になるようだ。
・『トイレに行きたくない理由 ■安心できないトイレで起こる問題 トイレを我慢する、つまりトイレに行きたくないと感じてしまう原因は人それぞれ異なります。臭かったり、汚れていたりするトイレは、誰もが避けたくなるものです。 特に女性や子どもであれば、暗がりにあるトイレは怖いでしょう。 寒い時期には、屋外のトイレは使いたくありません。風雨などの悪天候時も同様です。遠くにあって行くのが大変なトイレも使いづらいです。 また、男女共用しかない場合や、数が少なくてトイレ待ちの行列ができる場合も困ります。車いす利用者や足腰が悪い人は、段差があるトイレや和式便器が使えません。和式便器は、慣れていない子どもにとっても困難です。) このようにトイレを不便、もしくは不快と感じてしまうきっかけが1つでもあると、私たちはトイレになるべく行かなくてすむように、意識的にも無意識的にも、水分摂取を控えがちになり、その結果として体調を崩してしまいます。 平成16年新潟県中越地震に関する住民アンケート調査(小千谷市・川口町編)でも、かなりの人が、トイレを理由に水分を控えていたことがわかります。 (避難所で体験した”困ったことと”は? はリンク先参照)』、「トイレを不便、もしくは不快と感じてしまうきっかけが1つでもあると、私たちはトイレになるべく行かなくてすむように、意識的にも無意識的にも、水分摂取を控えがちになり、その結果として体調を崩してしまいます」、大いに気を付けたいことだ。
・『汚染された手を口や鼻に… ■不衛生なトイレは感染症の温床になる トイレを使用する際、ほとんどの人が同じ箇所に触れます。例えば、ドアの取っ手、鍵、便座のフタ、便座、トイレットペーパーホルダー、洗浄レバーやボタン、手洗い場の蛇口です。 これらが汚染されていた場合、ウイルスや細菌が人の手を介して伝播することになります。 単に手が汚れるだけでは感染しませんが、私たちは無意識に手で顔に触れているため、目や口、鼻の粘膜を通じて感染するリスクが小さくありません。 手洗いやトイレ掃除が十分にできない不衛生なトイレを不特定多数の人が使用し続けると、感染性胃腸炎などのウイルス感染症に罹患するリスクを高め、集団感染を引き起こします。 東日本大震災では、石巻赤十字病院などの調査で、津波被害のあった石巻市および東松島市、女川町にある公立学校や公民館など、計272カ所の避難所のうち、約4割のトイレで汚物処理が十分にできず、少なくとも約50人に下痢、約20人に嘔吐の症状が見られました。 感染症予防の観点からも、トイレを衛生的に保つことは非常に重要です』、「東日本大震災では、石巻赤十字病院などの調査で・・・計272カ所の避難所のうち、約4割のトイレで汚物処理が十分にできず、少なくとも約50人に下痢、約20人に嘔吐の症状が見られました。 感染症予防の観点からも、トイレを衛生的に保つことは非常に重要です』、その通りだろう。
第三に、3月4日付け東洋経済オンラインが掲載した日本トイレ研究所代表理事の加藤 篤氏による「災害時に備えたい「携帯トイレ」4人家族の必要数 「使い方」や「使うタイミング」も知っておくこと」を紹介しよう。
・『能登半島地震でも多く取り上げられた「災害時のトイレをどうするか」問題。 トイレ環境の大切さを広めるべく奔走する「日本トイレ研究所」の代表理事・加藤篤さんが、“トイレ”の視点から防災のノウハウをやさしく解説した『トイレからはじめる防災ハンドブック』より一部の内容を抜粋、忘れたころにやってくる災害への備え、そして起こった後の対応のポイントについて、3回にわたって掲載します。 第2回では、備えておきたい防災グッズ「携帯トイレ」についてお伝えします』、興味深そうだ。
・『災害時に使う携帯トイレとは? ■後悔しない携帯トイレの選び方・使い方 携帯トイレとは、便器に設置して使用する袋式のトイレです。袋の中に排泄し、吸収シートや凝固剤で大小便を吸収・凝固させます。 給排水設備が損傷して水洗トイレが使用できないときでも、便器に取りつければすぐに使用できることが利点です。また、使い慣れたトイレ室を活用できるため安心です。 一方、いくつかの注意点があります。) まず携帯トイレを選ぶ際は、大小便をしっかり吸収・凝固できること、一定期間保管しても液体に戻らないこと、臭気対策が施されていることなどをチェックしてください。衛生的な問題が生じないよう、性能の良いものを選びましょう。 また、使用時に直接便器に取り付けることはおすすめしません。 先に45リットル程度のポリ袋を便器に被せてから便座を下ろし、その上に携帯トイレを取り付けましょう。こうすれば、携帯トイレの交換時に水が滴ることはありません。 以下を参考に、事前に使い慣れておくことをおすすめします。(携帯トイレを使うときのポイントは? はリンク先参照)』、「携帯トイレとは、便器に設置して使用する袋式のトイレです。袋の中に排泄し、吸収シートや凝固剤で大小便を吸収・凝固させます・・・携帯トイレを選ぶ際は、大小便をしっかり吸収・凝固できること、一定期間保管しても液体に戻らないこと、臭気対策が施されていることなどをチェックしてください」、なるほど。
・『まずはトイレに携帯トイレを設置 ■災害発生直後は設備点検より先に携帯トイレを 前回の記事で紹介したように、発災から3時間以内に約4割の人がトイレに行きたくなったというデータがあります。発災後3時間でできることは、命を守り、安全な場所に避難して安否確認をすることぐらいではないでしょうか。 このような大混乱のなか、私たちは水や食料のことを心配すると思いますが、実はそれより先にトイレが必要になるのです。 急いですべきことは、避難所や自宅、オフィスなどのトイレに携帯トイレを取り付けることです。もちろん、トイレの天井が壊れていたり、トイレブースが倒壊していたりして、トイレが危険な場合はこの限りではありません。 私たちはトイレに行くとき、誰かに申告して行くわけではありません。基本的には各々が便意や尿意を催したときに誰にも言わずにトイレに行きます。体調を崩して嘔吐することもあると思います。 そのため、どのタイミングで誰がトイレに行くのかはわかりません。停電していても、断水に気づかずに排泄してしまうことが考えられます。) そんなとき、便器に携帯トイレが取り付けてあれば、災害時のトイレ対応であることに気づきます。携帯トイレの使用方法はわからない人がほとんどですので、ポスターやスタッフを介して伝えることも必要です。 給排水設備の点検等は、携帯トイレを取り付けてから実施してください。さきに点検を行っていると、その間にトイレを使用されてしまうからです。設備点検の結果、問題ないことがわかれば、携帯トイレを取り外せばよいだけです。 これまでの震災や豪雨災害において、携帯トイレを活用することでその場を乗り切った事例はあります。繰り返しになりますが、災害時はできるだけ早く携帯トイレを取り付けることが必要です』、「給排水設備の点検等は、携帯トイレを取り付けてから実施してください。さきに点検を行っていると、その間にトイレを使用されてしまうからです。設備点検の結果、問題ないことがわかれば、携帯トイレを取り外せばよいだけです」、なるほど。
・『知っておきたい携帯トイレの使い方 ■災害前に周知しておきたい携帯トイレの使い方 災害時のトイレの初動対応として携帯トイレを用いることが有効です。 しかし、避難者の多くは携帯トイレを知りません。見たこともなければ使い方もわかりません。間違った使い方をしてしまうと不衛生な状態になり、集団感染を引き起こすことにもつながります。 そこで、大事なのが使用方法の周知徹底です。 災害が起きてからでは遅いので、平時の啓発が重要になります。防災訓練や学校での授業、地域のイベントなど、あらゆる機会を活用して伝えることが必要です。動画を活用することも有効です。 災害が起きてしまった後の周知方法は、これまでの経験者の話を踏まえると、主に2つの方法が考えられます。 1つめはイラストや図を用いてポスターを作成し、トイレに掲示することです。2つめはトイレ前にスタッフを配置することです。実際に、東日本大震災の避難所や西日本豪雨の際の病院などで実施されました。 これら2つの方法を両方実施することになると思います。災害時の負担を軽減するためにも平時の啓発を重視したいものです。(携帯トイレの使い方は? はリンク先参照)』、家庭用の場合でも「イラストや図を用いてポスターを作成し、トイレに掲示することです」は通用しそうだ。
・『■使用済みの携帯トイレはフタつきの入れ物で保管 携帯トイレを使用したあとの取り扱い方法について説明します。市町村への確認が必要ではありますが、概ね可燃ごみとして収集・処理されます。 可燃ごみとして収集するということは、ごみ収集車などで運ぶことになります。災害時は地盤沈下や液状化、浸水、建物倒壊などで道路が塞がれてしまう可能性があります。通常であれば、すぐに実施できたごみ収集でも、災害時は思うようにいきません。 災害の規模や被災状況によっても異なりますが、少なくとも数日間は、各自で使用済み携帯トイレを保管することが求められます。 携帯トイレの中身は大小便ですので、臭気対策が必要になります。また、直射日光があたると袋の劣化につながるので、フタつきの入れ物などに入れてベランダや庭など、生活空間と切り離した場所に保管することが必要です』、「少なくとも数日間は、各自で使用済み携帯トイレを保管することが求められます。 携帯トイレの中身は大小便ですので、臭気対策が必要になります。また、直射日光があたると袋の劣化につながるので、フタつきの入れ物などに入れてベランダや庭など、生活空間と切り離した場所に保管することが必要です」、なるほど。
・『どれくらいの数が必要になるか ■「人数×回数×日数」で携帯トイレを常備 自宅で避難生活を送るには、携帯トイレの備えが欠かせません。では、携帯トイレはどのくらい必要になるのでしょうか? 携帯トイレの必要数を計算するには、避難生活を送る人数、1日当×たりの排泄回数、そして避難生活を送る日数を想定する必要があります。これらがわかれば、「人数×排泄回数×避難日数」という計算式で、携帯トイレの必要数を導き出すことができます。 ここでは仮に4人家族を想定してみます。排泄回数は1人ひとり異なりますので、それぞれが実際に数えてみることをおすすめします。 内閣府(防災担当)が作成した「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」では、1日当たりの平均的なトイレ使用回数の目安は「5回」と記載されています。 避難日数は災害規模によって大きく異なりますが、国が定める「防災基本計画」では、住民に対して最低3日間、推奨1週間分の携帯トイレ・簡易トイレ、トイレットペーパーなどを備蓄することを啓発するように記載されています。 以上をまとめると、4人家族であれば次のような計算になり、140回分の携帯トイレが必要になります』、「4人×5回×7日」で「140回分」というわけだ。早速、ホームセンターで買ってみたい。
先ずは、本年2月15日東洋経済オンライン「能登半島地震、防災対策の権威が語る「反省と教訓」 防災と初動対応が遅れた背景に2つの原因」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/734427
・『2024年元日を襲った能登半島地震では200人を上回る人命が失われるなど、深刻な被害が発生した。阪神淡路大震災をはじめとして多くの自然災害に向き合い、防災対策の見直しを提唱してきた室﨑益輝・神戸大学名誉教授は「反省すべき点が多くある」と指摘する(Qは聞き手の質問、Aは室﨑氏の回答)。 Q:今回の災害の大きさや深刻度についてどのようにとらえておられますか。 A:とんでもない地震が起きたというか、想像を絶する地震が起きた。家屋の損壊状況もすさまじいものだし、道路という道路が破壊されました。そういった被災状況だっただけに、過去がこうだったから今回こうだとは言えない部分はあります。ただ、救いを求めている被災者がたくさんいる現実にどう応えていくか。行政のみならず、私たち一人ひとりを含む社会全体の責任だと思っています』、「とんでもない地震が起きたというか、想像を絶する地震が起きた。家屋の損壊状況もすさまじいものだし、道路という道路が破壊されました・・・救いを求めている被災者がたくさんいる現実にどう応えていくか。行政のみならず、私たち一人ひとりを含む社会全体の責任だと思っています」、なるほど。
・『すぐに救援に駆けつけられなかった Q:能登半島地震の発生から1カ月余りが経過しました。これまでを振り返って、どのような教訓や反省点がありますか。 A:震災の教訓を引き出すには、失敗体験をしっかり踏まえなければならない。今回の地震では、助けを求めている被災者のところに救援隊がすぐに駆けつけることができなかった。これが大きな反省点だったと思います。 その根源をたどると、大きく2つの誤ちがあったと言えます。 1つ目の過ちは事前の被害想定の甘さです。 能登地方でこれほど大きな地震は起きるはずがないという思い込みも含めてのことですが、国、石川県ともきわめて小さな地震しか想定していなかった。その結果として、事前の準備がきちんとできていなかった。 孤立集落があちこちで発生する事態を見越していれば、備蓄対策のあり方も違っていたし、平時の情報通信が途絶しても連絡を取れる衛星携帯電話を配備するといった事前準備もやっていたはずです。) 2つ目の過ちは、地震発生直後に被災状況の把握がスムーズにできなかったことが、初動対応の遅れにつながったという点です。 政府は当初、災害対策基本法に基づく態勢としては最も下のクラスの「特定災害対策本部」の設置にとどめた。これを「非常災害対策本部」に格上げし、同本部の会議を初めて開催したのは翌1月2日の午前9時過ぎのことでした。 初動態勢の構築が遅れた結果、自衛隊投入の規模も当初の1000人規模から小出しになってしまった。 (室﨑益輝氏の略歴はリンク先参照) Q:石川県の地域防災計画(地震災害対策編)では、「能登半島北方沖」を震源とする地震としてはマグニチュード7.0を想定し、被害の概況についても「死者数7人、建物全壊120棟」「ごく局地的な災害で、災害度は低い」とされていました。四半世紀にわたってその想定は見直しがなされていませんでした。石川県の災害危機管理アドバイザーを務め、県防災会議震災対策部会長でもある室﨑さんは、2023年2月の同部会で、地震被害想定の抜本的な見直しを決定したという発言をしています。 同部会で被害想定の見直しをしようとしていたことは事実です。 2020年12月以降の奥能登の珠洲市一帯での群発地震をきっかけに、いずれ大きな地震が起きるという緊迫感が芽生えていました。 それを踏まえ、国の地震調査研究推進本部による長期評価や被害想定が出されていなくても、石川県として能登半島でこれから起きる地震の想定をしっかりやろうということで、2023年から議論を始めていました。 しかし、結果的には作業が間に合わなかった』、「今回の地震では、助けを求めている被災者のところに救援隊がすぐに駆けつけることができなかった。これが大きな反省点だったと思います。 その根源をたどると、大きく2つの誤ちがあったと言えます。 1つ目の過ちは事前の被害想定の甘さです。 能登地方でこれほど大きな地震は起きるはずがないという思い込みも含めてのことですが、国、石川県ともきわめて小さな地震しか想定していなかった」、前石川県知事が産業を呼び込むため、震災の想定を低く抑えたと言われている。事実とすれば、許し難い行為だ。「2つ目の過ちは、地震発生直後に被災状況の把握がスムーズにできなかったことが、初動対応の遅れにつながったという点です。 政府は当初、災害対策基本法に基づく態勢としては最も下のクラスの「特定災害対策本部」の設置にとどめた。これを「非常災害対策本部」に格上げし、同本部の会議を初めて開催したのは翌1月2日の午前9時過ぎのことでした。 初動態勢の構築が遅れた結果、自衛隊投入の規模も当初の1000人規模から小出しになってしまった」、なるほど。
・『国の評価を待つという受け身の姿勢だった Q:石川県の幹部の発言として、国の長期評価の策定・公表を待ってから対策をするという姿勢が長く続いていたという報道があります。その点についてどのように感じていましたか。 A:結果論ですが、そのような待ちの姿勢ではいけなかった。県域のどこにどのような活断層があり、どのくらいの確率で動くかについて、国の長期評価の策定を待ってから対策を話し合うという姿勢が、今回の地震で問われた。 他方で国土交通省が2014年9月に取りまとめた「日本海における大規模地震に関する調査検討会」の報告書では、能登半島沖に活断層があり、津波被害を起こすことが指摘されていました。 ただ、石川県においては、どの活断層がどのように連動するか否かについては、国の科学的知見の発表を踏まえて検討すればいいという姿勢でした。その結果として、地震被害の想定の抜本的見直しが遅れてしまいました。 国のトップダウンに基づく防災ではなく、地方自治体から動くボトムアップの防災に切り替えるには、自ら独自に積極的に被害の想定をしなければならない。 加えてもう一つ問われていることが、社会の前提条件がどんどん変わってきているということです。その社会の変化を想定に反映しなければならない。高齢化や過疎化が進んでいる中で、四半世紀も被害想定の見直しを放置していたということ自体、間違っていたと思います。) Q:政府の初動態勢をどのように評価していますか。 A:マグニチュード7.6(暫定値)というのは、阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)や熊本地震よりも大きな地震が起きたことを意味しています。そうだとすると、多くの家屋が倒壊し、たくさんの人が生命の危機にさらされていることは、直後に想像できたはず。 これからは、現地からの報告を待つのではなく、直後に公表される地震の大きさや形状によって、初動対応のスイッチを入れるようにしなければならない。 たとえばマグニチュード7.6であれば、道路が寸断されているということを想定して、海や空からの救助にも早急に着手すべきです。 従来の緊急消防隊の派遣のシステムのまま動いていたのでは、救助活動はうまく進まない。繰り返しになりますが、地震発生直後の情報把握のシステムおよび初動対応のシステムを抜本的に見直さなければいけない』、「石川県の幹部の発言として、国の長期評価の策定・公表を待ってから対策をするという姿勢が長く続いていたという報道があります。その点についてどのように感じていましたか。 A:結果論ですが、そのような待ちの姿勢ではいけなかった。県域のどこにどのような活断層があり、どのくらいの確率で動くかについて、国の長期評価の策定を待ってから対策を話し合うという姿勢が、今回の地震で問われた・・・社会の前提条件がどんどん変わってきているということです。その社会の変化を想定に反映しなければならない。高齢化や過疎化が進んでいる中で、四半世紀も被害想定の見直しを放置していたということ自体、間違っていたと思います・・・地震発生直後の情報把握のシステムおよび初動対応のシステムを抜本的に見直さなければいけない」、その通りだ。
・『モデルにすべきは中越地震時の「山古志方式」 Q:地震発生直後には避難所が開設され、2月3日には仮設住宅への入居が始まりました。 地震を生き延びた人が、その後の健康状態の悪化などによって死亡する「災害関連死」を防がなければならない。そのためには、人々の1日1日の苦しみをいかに和らげるかが重要です。もう一つ重要なことは、苦しみの期間をいかに短くできるかです。 国の災害救助法のルールに基づけば、避難所の開設は原則1週間、応急仮設住宅は本来、20日以内に着工しなければならない。 ただ、現実を見ると、いずれもだいぶ日数がオーバーしている。仮設住宅については1~2カ月遅れでの着工という事態が生じています。 被災者の苦しみの総量を下げるためにも、迅速に仮設住宅を供給しなければならない。そういう意識をどれだけ持って取り組んでいるのかということが問われています。 Q:石川県の発表によれば、応急的な住まいについては3月末までに約1万5000戸を用意する計画です。仮設住宅の提供のあり方についてはどのような配慮が必要でしょうか。 A:モデルにすべきは、2004年の新潟県中越地震の時の「山古志方式」だと思います。 被害の大きかった旧山古志村(現・長岡市)の住民のために長岡市内に仮設住宅団地が作られ、そこに山古志村の人たちはコミュニティ単位で入居しました。そして旧山古志村では2~3年かけてがれきの撤去や道路の整備が実施され、再び住民が帰還できました。 今回も金沢市のスポーツセンターの敷地に1万棟くらいの仮設住宅団地を作り、コミュニティごとに入居するといったような取り組みがあってもいいのではないか。 そこに高校の分校や輪島塗りの工房も一緒に作るといったやり方をすれば、コミュニティを維持できます。) Q:石川県の計画では、約1万5000戸のうち、約8000戸を石川県外の公営住宅によって賄うということになっています。 人々がばらばらになってしまうので良くない。孤立死をもたらすことになりかねない。なるべく多くの人たちがまとまり、お互いにつながり合うことが重要です。 Q:災害救助法では、被災者への「炊き出しその他による食品の給与」が定められています。今回の地震では、一部の2次避難所で食事の費用を徴収している例があると指摘されています。 これ自体は災害救助法違反です。同法では食事の提供の義務がある。ホテルに収容したらおしまいということではないのです。 Q:なぜこうしたことが起きているのでしょうか。石川県自体が災害対応に慣れていないということでしょうか。 A:石川県というよりも、日本の自治体のどこも災害対応に慣れておらず、経験がつながっていないことに原因があります。行政の担当者は2~3年で代わってしまうため、ノウハウと経験が蓄積しない。 石川県も2007年の能登半島地震では素晴らしい対応をしているのに、その対応が今回見られていないというのは、まさに経験を蓄積し、継承するシステムがないことに原因があると言えます。 石川県に、阪神淡路大震災や東日本大震災、中越地震の経験をどれだけしっかり伝えたか、私たち伝える側の責任ももっと問われないといけない』、「石川県も2007年の能登半島地震では素晴らしい対応をしているのに、その対応が今回見られていないというのは、まさに経験を蓄積し、継承するシステムがないことに原因があると言えます」、なるほど。
・『原子力災害時の体制も抜本見直しを Q:今回の地震では原子力発電所の重大事故には至らずに済みました。ただ、原発事故を含む複合災害に発展した場合、あらかじめ定められていた防災計画が機能しなかったのではないかと見られています。 最大級の地震を想定して、原発そのものの防災計画を見直さなければならない。 もう一つの問題は、原子力災害時の避難の問題です。今回の地震では道路があちこちで寸断し、住民の孤立が発生した。道路が使えない前提で避難計画を作らなければならない。 福島原発事故のような最悪の事態に備え、そうしたことが起きた時にどうするのかという前提に立って、対策を講じなければならないと思っています。 Q:能登半島地震では、ボランティアの受け入れをめぐり賛否の議論が起きました。今行っても迷惑になるという言い方がSNSなどでなされ、行政からも「今はまだ来ないでください」というメッセージが発信されました。 ボランティアは言われてする活動ではないのです。そこに困った人がいれば、迷惑をかけないように最大限の配慮をしながらも、被災者の元に駆けつけなければならない。 ボランティアセンターができたから行きましょうとか、ボランティアは来るなと言われたので行かないというのではなく、そこに支援を求めている人がいるかどうかを判断の基軸にすべきです。 今回のようにボランティアの自主性が失われ、必要なボランティアが被災地に入らないという事態になると、助かる命も助からなくなってしまう。ボランティア側もきちんとリテラシーを持ち、マナーをわきまえたうえで活動すればいいと思います』、「今回のようにボランティアの自主性が失われ、必要なボランティアが被災地に入らないという事態になると、助かる命も助からなくなってしまう。ボランティア側もきちんとリテラシーを持ち、マナーをわきまえたうえで活動すればいいと思います」、その通りだ。
次に、2月26日付け東洋経済オンラインが掲載した日本トイレ研究所代表理事の加藤 篤氏による「災害時トイレ「断水」復旧になぜ時間がかかるのか 阪神・淡路大震災では仮復旧まで1カ月間要した」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/733845
・『能登半島地震でも多く取り上げられた「災害時のトイレをどうするか」問題。 トイレ環境の大切さを広めるべく奔走する「日本トイレ研究所」の代表理事・加藤篤さんが、“トイレ”の視点から防災のノウハウをやさしく解説した『トイレからはじめる防災ハンドブック』より一部の内容を抜粋。忘れたころにやってくる災害への備え、そして起こった後の対応のポイントについて、3回にわたって掲載します。 第1回は、災害とトイレをめぐる基本的な知識をお伝えします』、興味深そうだ。
・『自然災害の発生後にすべきこと ■発災3時間以内に約4割の人がトイレに行く 自然災害の発生後にすべきことは何でしょうか?地震や豪雨などが起きたときに真っ先にすべきなのは、自分の命を守ること、そして安全な場所に避難することです。ここまでの行動は、全員一致するでしょう。 問題はこのあとです。避難所では避難者の誘導や場所の確保、水・食料の配給などに多くの人が奔走します。もちろんこれらは大切ですが、それと同じくらい重要なのに、忘れられがちなことがあります。それが「トイレ対応」です。 大きな災害が起きると水洗トイレは使えなくなります。しかし、私たちの排泄は待ってくれません。) 2016年4月に発生した熊本地震での調査によると、発災後3時間以内にトイレに行きたくなった人は38.5%、6時間以内では72.9%にのぼります。 発災後6時間は大混乱状態で、おそらくこの約7割の人は水を飲んでおらず、食事も摂っていないはずです。それにもかかわらず、トイレに行きたくなるのです。つまり、水・食料より先にトイレ対応が必要ということです。私たちはこの事実から目をそらしてはいけないのです。(地震後、何時間でトイレに行きたくなったか? はリンク先参照)』、「発災後6時間は大混乱状態で、おそらくこの約7割の人は水を飲んでおらず、食事も摂っていないはずです。それにもかかわらず、トイレに行きたくなるのです。つまり、水・食料より先にトイレ対応が必要ということです」、なるほど。
・『断水したら水洗トイレが使えない ■水洗トイレには給水と排水の両方必要 断水したら水洗トイレが使えないことは、多くの人が理解しています。水洗トイレは目の前の大小便を水で流し去ってくれる便利なシステムなので、水が無ければ機能しません。 断水の原因は主に2つあります。1つは給水管等の給水装置や配水施設が破損して水を届けられなくなること。もう1つは停電でポンプなどの設備が作動しなくなり、水が届けられなくなることです。 ところが、給水に問題が無くても、水洗トイレは使えなくなることがあります。それは、排水に支障がある場合です。理由は、流れていく先がなくなるからです。 排水に問題が生じる要因としては、排水管が外れる・閉塞する・逆こう配になる、下水道や下水処理場、浄化槽が機能していない、などが考えられます。このような場合、無理に汚水を流すと、どこかからあふれることになります。 給水と排水、それに電気のすべてが機能してこそ、水洗トイレは使用できるようになります。日頃、目にしているのは便器だけですが、その裏に壮大な水洗トイレシステムがあることを知っておいてください。(水洗トイレが機能するためには? はリンク先参照)』、「給水と排水、それに電気のすべてが機能してこそ、水洗トイレは使用できるようになります」、なるほど。
・『■水道の仮復旧までは1カ月以上かかる 私たちは1日に複数回トイレに行きます。水洗トイレを使うには、もちろん水が必要です。節水型の便器でも、1回あたりの洗浄で概ね6?8リットル程度の水を使用します。仮に5回行くとしたら、合計で30?40リットルの水を使うことになります。 水を便器に供給するためには、まず河川などから引いた水を処理する浄水場が機能していることが前提です。また、浄水場からポンプ場を経由して各建物に水を運ぶ配水管が正常であることも必要です。そして、これらの過程では電力も欠かせません。 このため、大きな災害で停電すると断水が発生します。阪神・淡路大震災では約127万戸が断水し、仮復旧が完了するまでに1カ月以上を要しました。また、東日本大震災で被災した地方公共団体へのアンケート調査では、上水道の仮復旧までに要した日数は、平均35日間だったことがわかっています。 この間、トイレの洗浄に必要な水量を人力で供給するのは容易でありません。断水で洗浄水が確保できない場合に、トイレ機能を確保する方法の検討が必要です。 (阪神・淡路大震災のときはどうだった? はリンク先参照)』、「阪神・淡路大震災では約127万戸が断水し、仮復旧が完了するまでに1カ月以上を要しました。また、東日本大震災で被災した地方公共団体へのアンケート調査では、上水道の仮復旧までに要した日数は、平均35日間だった・、かなり長期になるようだ。
・『トイレに行きたくない理由 ■安心できないトイレで起こる問題 トイレを我慢する、つまりトイレに行きたくないと感じてしまう原因は人それぞれ異なります。臭かったり、汚れていたりするトイレは、誰もが避けたくなるものです。 特に女性や子どもであれば、暗がりにあるトイレは怖いでしょう。 寒い時期には、屋外のトイレは使いたくありません。風雨などの悪天候時も同様です。遠くにあって行くのが大変なトイレも使いづらいです。 また、男女共用しかない場合や、数が少なくてトイレ待ちの行列ができる場合も困ります。車いす利用者や足腰が悪い人は、段差があるトイレや和式便器が使えません。和式便器は、慣れていない子どもにとっても困難です。) このようにトイレを不便、もしくは不快と感じてしまうきっかけが1つでもあると、私たちはトイレになるべく行かなくてすむように、意識的にも無意識的にも、水分摂取を控えがちになり、その結果として体調を崩してしまいます。 平成16年新潟県中越地震に関する住民アンケート調査(小千谷市・川口町編)でも、かなりの人が、トイレを理由に水分を控えていたことがわかります。 (避難所で体験した”困ったことと”は? はリンク先参照)』、「トイレを不便、もしくは不快と感じてしまうきっかけが1つでもあると、私たちはトイレになるべく行かなくてすむように、意識的にも無意識的にも、水分摂取を控えがちになり、その結果として体調を崩してしまいます」、大いに気を付けたいことだ。
・『汚染された手を口や鼻に… ■不衛生なトイレは感染症の温床になる トイレを使用する際、ほとんどの人が同じ箇所に触れます。例えば、ドアの取っ手、鍵、便座のフタ、便座、トイレットペーパーホルダー、洗浄レバーやボタン、手洗い場の蛇口です。 これらが汚染されていた場合、ウイルスや細菌が人の手を介して伝播することになります。 単に手が汚れるだけでは感染しませんが、私たちは無意識に手で顔に触れているため、目や口、鼻の粘膜を通じて感染するリスクが小さくありません。 手洗いやトイレ掃除が十分にできない不衛生なトイレを不特定多数の人が使用し続けると、感染性胃腸炎などのウイルス感染症に罹患するリスクを高め、集団感染を引き起こします。 東日本大震災では、石巻赤十字病院などの調査で、津波被害のあった石巻市および東松島市、女川町にある公立学校や公民館など、計272カ所の避難所のうち、約4割のトイレで汚物処理が十分にできず、少なくとも約50人に下痢、約20人に嘔吐の症状が見られました。 感染症予防の観点からも、トイレを衛生的に保つことは非常に重要です』、「東日本大震災では、石巻赤十字病院などの調査で・・・計272カ所の避難所のうち、約4割のトイレで汚物処理が十分にできず、少なくとも約50人に下痢、約20人に嘔吐の症状が見られました。 感染症予防の観点からも、トイレを衛生的に保つことは非常に重要です』、その通りだろう。
第三に、3月4日付け東洋経済オンラインが掲載した日本トイレ研究所代表理事の加藤 篤氏による「災害時に備えたい「携帯トイレ」4人家族の必要数 「使い方」や「使うタイミング」も知っておくこと」を紹介しよう。
・『能登半島地震でも多く取り上げられた「災害時のトイレをどうするか」問題。 トイレ環境の大切さを広めるべく奔走する「日本トイレ研究所」の代表理事・加藤篤さんが、“トイレ”の視点から防災のノウハウをやさしく解説した『トイレからはじめる防災ハンドブック』より一部の内容を抜粋、忘れたころにやってくる災害への備え、そして起こった後の対応のポイントについて、3回にわたって掲載します。 第2回では、備えておきたい防災グッズ「携帯トイレ」についてお伝えします』、興味深そうだ。
・『災害時に使う携帯トイレとは? ■後悔しない携帯トイレの選び方・使い方 携帯トイレとは、便器に設置して使用する袋式のトイレです。袋の中に排泄し、吸収シートや凝固剤で大小便を吸収・凝固させます。 給排水設備が損傷して水洗トイレが使用できないときでも、便器に取りつければすぐに使用できることが利点です。また、使い慣れたトイレ室を活用できるため安心です。 一方、いくつかの注意点があります。) まず携帯トイレを選ぶ際は、大小便をしっかり吸収・凝固できること、一定期間保管しても液体に戻らないこと、臭気対策が施されていることなどをチェックしてください。衛生的な問題が生じないよう、性能の良いものを選びましょう。 また、使用時に直接便器に取り付けることはおすすめしません。 先に45リットル程度のポリ袋を便器に被せてから便座を下ろし、その上に携帯トイレを取り付けましょう。こうすれば、携帯トイレの交換時に水が滴ることはありません。 以下を参考に、事前に使い慣れておくことをおすすめします。(携帯トイレを使うときのポイントは? はリンク先参照)』、「携帯トイレとは、便器に設置して使用する袋式のトイレです。袋の中に排泄し、吸収シートや凝固剤で大小便を吸収・凝固させます・・・携帯トイレを選ぶ際は、大小便をしっかり吸収・凝固できること、一定期間保管しても液体に戻らないこと、臭気対策が施されていることなどをチェックしてください」、なるほど。
・『まずはトイレに携帯トイレを設置 ■災害発生直後は設備点検より先に携帯トイレを 前回の記事で紹介したように、発災から3時間以内に約4割の人がトイレに行きたくなったというデータがあります。発災後3時間でできることは、命を守り、安全な場所に避難して安否確認をすることぐらいではないでしょうか。 このような大混乱のなか、私たちは水や食料のことを心配すると思いますが、実はそれより先にトイレが必要になるのです。 急いですべきことは、避難所や自宅、オフィスなどのトイレに携帯トイレを取り付けることです。もちろん、トイレの天井が壊れていたり、トイレブースが倒壊していたりして、トイレが危険な場合はこの限りではありません。 私たちはトイレに行くとき、誰かに申告して行くわけではありません。基本的には各々が便意や尿意を催したときに誰にも言わずにトイレに行きます。体調を崩して嘔吐することもあると思います。 そのため、どのタイミングで誰がトイレに行くのかはわかりません。停電していても、断水に気づかずに排泄してしまうことが考えられます。) そんなとき、便器に携帯トイレが取り付けてあれば、災害時のトイレ対応であることに気づきます。携帯トイレの使用方法はわからない人がほとんどですので、ポスターやスタッフを介して伝えることも必要です。 給排水設備の点検等は、携帯トイレを取り付けてから実施してください。さきに点検を行っていると、その間にトイレを使用されてしまうからです。設備点検の結果、問題ないことがわかれば、携帯トイレを取り外せばよいだけです。 これまでの震災や豪雨災害において、携帯トイレを活用することでその場を乗り切った事例はあります。繰り返しになりますが、災害時はできるだけ早く携帯トイレを取り付けることが必要です』、「給排水設備の点検等は、携帯トイレを取り付けてから実施してください。さきに点検を行っていると、その間にトイレを使用されてしまうからです。設備点検の結果、問題ないことがわかれば、携帯トイレを取り外せばよいだけです」、なるほど。
・『知っておきたい携帯トイレの使い方 ■災害前に周知しておきたい携帯トイレの使い方 災害時のトイレの初動対応として携帯トイレを用いることが有効です。 しかし、避難者の多くは携帯トイレを知りません。見たこともなければ使い方もわかりません。間違った使い方をしてしまうと不衛生な状態になり、集団感染を引き起こすことにもつながります。 そこで、大事なのが使用方法の周知徹底です。 災害が起きてからでは遅いので、平時の啓発が重要になります。防災訓練や学校での授業、地域のイベントなど、あらゆる機会を活用して伝えることが必要です。動画を活用することも有効です。 災害が起きてしまった後の周知方法は、これまでの経験者の話を踏まえると、主に2つの方法が考えられます。 1つめはイラストや図を用いてポスターを作成し、トイレに掲示することです。2つめはトイレ前にスタッフを配置することです。実際に、東日本大震災の避難所や西日本豪雨の際の病院などで実施されました。 これら2つの方法を両方実施することになると思います。災害時の負担を軽減するためにも平時の啓発を重視したいものです。(携帯トイレの使い方は? はリンク先参照)』、家庭用の場合でも「イラストや図を用いてポスターを作成し、トイレに掲示することです」は通用しそうだ。
・『■使用済みの携帯トイレはフタつきの入れ物で保管 携帯トイレを使用したあとの取り扱い方法について説明します。市町村への確認が必要ではありますが、概ね可燃ごみとして収集・処理されます。 可燃ごみとして収集するということは、ごみ収集車などで運ぶことになります。災害時は地盤沈下や液状化、浸水、建物倒壊などで道路が塞がれてしまう可能性があります。通常であれば、すぐに実施できたごみ収集でも、災害時は思うようにいきません。 災害の規模や被災状況によっても異なりますが、少なくとも数日間は、各自で使用済み携帯トイレを保管することが求められます。 携帯トイレの中身は大小便ですので、臭気対策が必要になります。また、直射日光があたると袋の劣化につながるので、フタつきの入れ物などに入れてベランダや庭など、生活空間と切り離した場所に保管することが必要です』、「少なくとも数日間は、各自で使用済み携帯トイレを保管することが求められます。 携帯トイレの中身は大小便ですので、臭気対策が必要になります。また、直射日光があたると袋の劣化につながるので、フタつきの入れ物などに入れてベランダや庭など、生活空間と切り離した場所に保管することが必要です」、なるほど。
・『どれくらいの数が必要になるか ■「人数×回数×日数」で携帯トイレを常備 自宅で避難生活を送るには、携帯トイレの備えが欠かせません。では、携帯トイレはどのくらい必要になるのでしょうか? 携帯トイレの必要数を計算するには、避難生活を送る人数、1日当×たりの排泄回数、そして避難生活を送る日数を想定する必要があります。これらがわかれば、「人数×排泄回数×避難日数」という計算式で、携帯トイレの必要数を導き出すことができます。 ここでは仮に4人家族を想定してみます。排泄回数は1人ひとり異なりますので、それぞれが実際に数えてみることをおすすめします。 内閣府(防災担当)が作成した「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」では、1日当たりの平均的なトイレ使用回数の目安は「5回」と記載されています。 避難日数は災害規模によって大きく異なりますが、国が定める「防災基本計画」では、住民に対して最低3日間、推奨1週間分の携帯トイレ・簡易トイレ、トイレットペーパーなどを備蓄することを啓発するように記載されています。 以上をまとめると、4人家族であれば次のような計算になり、140回分の携帯トイレが必要になります』、「4人×5回×7日」で「140回分」というわけだ。早速、ホームセンターで買ってみたい。
タグ:(その16)(能登半島地震 防災対策の権威が語る「反省と教訓」 防災と初動対応が遅れた背景に2つの原因、災害時トイレ「断水」復旧になぜ時間がかかるのか 阪神・淡路大震災では仮復旧まで1カ月間要した、災害時に備えたい「携帯トイレ」4人家族の必要数 「使い方」や「使うタイミング」も知っておくこと) 災害 東洋経済オンライン「能登半島地震、防災対策の権威が語る「反省と教訓」 防災と初動対応が遅れた背景に2つの原因」 「とんでもない地震が起きたというか、想像を絶する地震が起きた。家屋の損壊状況もすさまじいものだし、道路という道路が破壊されました・・・救いを求めている被災者がたくさんいる現実にどう応えていくか。行政のみならず、私たち一人ひとりを含む社会全体の責任だと思っています」、なるほど。 「今回の地震では、助けを求めている被災者のところに救援隊がすぐに駆けつけることができなかった。これが大きな反省点だったと思います。 その根源をたどると、大きく2つの誤ちがあったと言えます。 1つ目の過ちは事前の被害想定の甘さです。 能登地方でこれほど大きな地震は起きるはずがないという思い込みも含めてのことですが、国、石川県ともきわめて小さな地震しか想定していなかった」、前石川県知事が産業を呼び込むため、震災の想定を低く抑えたと言われている。事実とすれば、許し難い行為だ。 「2つ目の過ちは、地震発生直後に被災状況の把握がスムーズにできなかったことが、初動対応の遅れにつながったという点です。 政府は当初、災害対策基本法に基づく態勢としては最も下のクラスの「特定災害対策本部」の設置にとどめた。これを「非常災害対策本部」に格上げし、同本部の会議を初めて開催したのは翌1月2日の午前9時過ぎのことでした。 初動態勢の構築が遅れた結果、自衛隊投入の規模も当初の1000人規模から小出しになってしまった」、なるほど。 「石川県の幹部の発言として、国の長期評価の策定・公表を待ってから対策をするという姿勢が長く続いていたという報道があります。その点についてどのように感じていましたか。 A:結果論ですが、そのような待ちの姿勢ではいけなかった。県域のどこにどのような活断層があり、どのくらいの確率で動くかについて、国の長期評価の策定を待ってから対策を話し合うという姿勢が、今回の地震で問われた・・・ 社会の前提条件がどんどん変わってきているということです。その社会の変化を想定に反映しなければならない。高齢化や過疎化が進んでいる中で、四半世紀も被害想定の見直しを放置していたということ自体、間違っていたと思います・・・地震発生直後の情報把握のシステムおよび初動対応のシステムを抜本的に見直さなければいけない」、その通りだ。 「今回のようにボランティアの自主性が失われ、必要なボランティアが被災地に入らないという事態になると、助かる命も助からなくなってしまう。ボランティア側もきちんとリテラシーを持ち、マナーをわきまえたうえで活動すればいいと思います」、その通りだ。 東洋経済オンライン 加藤 篤氏による「災害時トイレ「断水」復旧になぜ時間がかかるのか 阪神・淡路大震災では仮復旧まで1カ月間要した」 「発災後6時間は大混乱状態で、おそらくこの約7割の人は水を飲んでおらず、食事も摂っていないはずです。それにもかかわらず、トイレに行きたくなるのです。つまり、水・食料より先にトイレ対応が必要ということです」、なるほど。 「給水と排水、それに電気のすべてが機能してこそ、水洗トイレは使用できるようになります」、なるほど。 「阪神・淡路大震災では約127万戸が断水し、仮復旧が完了するまでに1カ月以上を要しました。また、東日本大震災で被災した地方公共団体へのアンケート調査では、上水道の仮復旧までに要した日数は、平均35日間だった・、かなり長期になるようだ。 「トイレを不便、もしくは不快と感じてしまうきっかけが1つでもあると、私たちはトイレになるべく行かなくてすむように、意識的にも無意識的にも、水分摂取を控えがちになり、その結果として体調を崩してしまいます」、大いに気を付けたいことだ。 「東日本大震災では、石巻赤十字病院などの調査で・・・計272カ所の避難所のうち、約4割のトイレで汚物処理が十分にできず、少なくとも約50人に下痢、約20人に嘔吐の症状が見られました。 感染症予防の観点からも、トイレを衛生的に保つことは非常に重要です』、その通りだろう。 加藤 篤氏による「災害時に備えたい「携帯トイレ」4人家族の必要数 「使い方」や「使うタイミング」も知っておくこと」 「携帯トイレとは、便器に設置して使用する袋式のトイレです。袋の中に排泄し、吸収シートや凝固剤で大小便を吸収・凝固させます・・・携帯トイレを選ぶ際は、大小便をしっかり吸収・凝固できること、一定期間保管しても液体に戻らないこと、臭気対策が施されていることなどをチェックしてください」、なるほど。 「給排水設備の点検等は、携帯トイレを取り付けてから実施してください。さきに点検を行っていると、その間にトイレを使用されてしまうからです。設備点検の結果、問題ないことがわかれば、携帯トイレを取り外せばよいだけです」、なるほど。 家庭用の場合でも「イラストや図を用いてポスターを作成し、トイレに掲示することです」は通用しそうだ。 「少なくとも数日間は、各自で使用済み携帯トイレを保管することが求められます。 携帯トイレの中身は大小便ですので、臭気対策が必要になります。また、直射日光があたると袋の劣化につながるので、フタつきの入れ物などに入れてベランダや庭など、生活空間と切り離した場所に保管することが必要です」、なるほど。 「4人×5回×7日」で「140回分」というわけだ。早速、ホームセンターで買ってみたい。
環境問題(その13)(追跡 “PFAS汚染” 高濃度地域 住民に不安広がる、北海道「釧路湿原」侵食するソーラーパネルの深刻 天然記念物も生息する日本最大の湿原に異変、不名誉な「化石賞」の常連となった日本...深刻すぎる化石燃料「依存症」の理由は いったい何なのか?) [社会]
環境問題については、2022年4月23日に取上げた。今日は、(その13)(追跡 “PFAS汚染” 高濃度地域 住民に不安広がる、北海道「釧路湿原」侵食するソーラーパネルの深刻 天然記念物も生息する日本最大の湿原に異変、不名誉な「化石賞」の常連となった日本...深刻すぎる化石燃料「依存症」の理由は いったい何なのか?)である。
先ずは、2022年5月15日付けNHK「追跡 “PFAS汚染” 高濃度地域 住民に不安広がる」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/minplus/0019/topic133.html
・『全国各地で検出が相次いでいる有機フッ素化合物=PFAS。その一部は発がん性や子どもの発育への影響などの有害性が指摘されています。環境省がこれまでに発表している調査結果をNHKが独自にまとめたところ、国の暫定指針値、1リットルあたり50ナノグラム(PFOS・PFOAの合計)を超える値が検出された地点は全国で139にのぼりました。このうち特に高い値が確認されているのが大阪府や沖縄県、東京都などで、これらの地域では住民の血液からも高い値のPFASが検出されるなど不安が広がっています。各地の実態を取材しました』、興味深そうだ。
・『大阪:水や野菜、血液まで・・・ 工場由来のPFAS汚染 【関西地方 地下水で指針値を超えた場所】 ※地下水の正確な調査地は公表されていないため、自治体の役所・役場の所在地を示しています。 139地点のうち、最も高い値が確認されているのが大阪府です。 製造業の工場が点在する大阪府摂津市では2007年以降、大阪府の調査で市内の水路や井戸などで高い値のPFASが相次いで検出されています。 最新の調査(2022年8月)で最も高い値が確認されているのは、市内に住む男性が所有する畑で、家庭用の野菜や果物を作るために使っていた井戸水です。3年前、井戸水のPFAS濃度が指針値の440倍=22000ng/Lにのぼっていたことが判明。その後の調査でも毎年20000ng/Lを超える値が検出され続けています。また、研究者が詳しい調査を行ったところ、土壌や野菜などからも相次いで検出されました。(京都大学 小泉昭夫名誉教授・原田浩二准教授調べ) ※環境省のデータに反映されていない府の調査の数値です。環境省データでは最大値が大阪市の5500ng/Lとなっています。 さらに2021年、工場周辺の住民を対象に行われた血液検査でも、男性の血中からは128.1ng/mLのPFASが検出され、アメリカの学術機関全米アカデミーズが示した「PFAS臨床ガイダンス」で、特に注意が必要とされる指針値20ng/mL(PFOSなど7種類のPFASの合計値)を大きく上回っていました。男性を含め検査を受けた9人全員がアメリカの指針値を上回り、5人が100ng/mLを超えていました。 血中濃度の高さはPFASを含んだ野菜を食べていたことが原因なのではないか-。健康への影響を心配した男性は野菜作りを諦めることにしました。 「この畑ではよく葉物が育つんですよ。本当に潤沢に作って食べていたので、それが食べられなくなるというのは気持ちとしてはもうやりきれないです。でも私が食べてしまったらそれを見て孫が食べたら大変ですし、もうやめるしかないですよね」 摂津市内のPFAS汚染の主な原因とされているのが、空調機器の大手メーカー、ダイキン工業淀川製作所です。この工場ではフッ素樹脂やゴム製品の製造に必要な助剤など、1960 年代後半からPFASの一つPFOAを製造・使用してきました。 ダイキン工業はNHKの取材に対し、次のように回答しています。 ダイキン工業の回答+当社は過去にPFOAを淀川製作所で製造・使用していたため、敷地外の PFOAについては、当社が発生源の一つであると認識しております。 +2009年から現在に至るまで、敷地内の地下水の汲み上げ・浄化を実施しています。 その結果、周辺の地下水、流域河川における PFOA 濃度は経年的に低下傾向にあると認識しています。現在、指針値を超えるPFOA 濃度の地下水が敷地外に流出しないように、費用をかけて、遮水壁の設置や浄化設備の増強・改善に向けて取り組んでいます。 しかし住民からは、今も工場周辺で高い値が検出されていることから、工場の敷地内だけでなく、敷地の外の対策や補償についての協議を求める声が上がっています。 40年以上摂津市内で暮らしてきた50代の女性は、PFASの汚染が広範囲に及んでいる可能性を危惧しています。子どもの頃からこの地域で暮らしてきた女性は、工場でPFOAの製造が始まった当時、市内ではまだインフラの整備が進んでおらず、雨が降ると下水や排水があふれることが多かったと話します。 「大雨が降ると田んぼなのか道なのかがわからず、雨水がすぐにはけないで引いていかない状態が続いていました。小学校でも運動場の水が1週間くらいはけないような土地柄だったので、工場から排出されたPFASが広範囲に広がっていても不思議ではないと思っています」 かつて自身の子どもがPFASとの関連が指摘されている病気を患った経験があることから、健康への影響を懸念しているという女性。ダイキンに対して、工場周辺の汚染の責任をとり、さらなる調査や水の浄化を進めてほしいと訴えています 「空気清浄機などの機械を作っている会社が、水や土を汚染している原因になっているという状況がとても矛盾しているように感じています。地域住民の健康調査を行うなど前向きな対応をとってほしいと強く思います」 こうしたなか3月、摂津市議会では健康影響の解明と指針の整備を求める意見書を可決。地下水などが飲み水だけでなく農業用水にも利用されているとして、+血液に関する分析方法と目標値等の調査研究 +食品中のPFOAについての含有実態調査などを国に求めました。 摂津市民を中心とする「PFOA汚染問題を考える会」環境省へ署名提出 また、摂津市民を中心とした市民団体も国に対して2万3千筆の署名を提出し、健康調査や流出防止などの対策を求めています』、「工場周辺の住民を対象に行われた血液検査でも、男性の血中からは128.1ng/mLのPFASが検出され、アメリカの学術機関全米アカデミーズが示した「PFAS臨床ガイダンス」で、特に注意が必要とされる指針値20ng/mL(PFOSなど7種類のPFASの合計値)を大きく上回っていました。男性を含め検査を受けた9人全員がアメリカの指針値を上回り、5人が100ng/mLを超えていました」、汚染状況は酷そうだ。「ダイキンに対して・・・「空気清浄機などの機械を作っている会社が、水や土を汚染している原因になっているという状況がとても矛盾しているように感じています」との批判はもっともだ。
・『沖縄:原因はアメリカ軍か 基地周辺で相次ぐ検出 【沖縄 河川など公共用水域で指針値を超えた場所】 一方、河川などの公共用水域で最も高い値が確認されているのが、在日アメリカ軍専用施設の7割が集中している沖縄県です。2016年、沖縄県が嘉手納基地周辺で水道水の水源にもなっている河川で高い濃度で検出されていることを発表。日本でPFAS汚染が大きく注目されるきっかけとなりました。 以降、基地周辺にある複数の河川や湧き水、さらに一時は水道水からも高濃度のPFASが検出されています。 沖縄県環境保全課が独自に行っている調査では、2022年6月の最新の結果で47か所のうち33か所で暫定指針値を超えていました。県はPFASを含む泡消火剤を利用してきたアメリカ軍基地が汚染源である可能性が高いと考えていますが、基地内での立入調査が実現しておらず、いまも特定には至っていません。 こうしたなか県内では2022年、市民グループ「PFAS汚染から市民の命を守る連絡会」が基地周辺に住む人など387人を対象に血液検査を実施しました。PFOS・PFOA・PFHxS・PFNAなどの血中濃度を調べたところ、宜野湾市や北谷町など基地周辺の5つの自治体の329人の平均は23.3ng/mL(4物質の合計)。 環境省の全国調査(2021年)の平均と比べて2.7倍で、アメリカの指針値を超過する人は52.9%にのぼっています。 嘉手納基地の近く北谷町に暮らす徳田伝さん(68)
30年以上嘉手納基地の近く、北谷町に暮らす徳田伝さん(68)もその一人。血液検査を受けたところ4つのPFASの合計で 27.1ng/mLが検出され、アメリカの指針値を上回る結果となりました。(PFOS 11.9 PFOA 3.3 PFHxS 9.7 PFNA 2.2) 日頃から水の摂取には気を遣い、飲み水はミネラルウォーターにしてきましたが、経済的な面を考慮すると、煮物やスープなど料理にまでミネラルウォーターを使うことはできず、水道水を利用せざるをえないと言います。 「過去に浄水場の水から高い値が出ていたので飲み水については意識していましたが、検査結果の数字を見てびっくりしました。『まさか』とショックを受けましたね。そこまで自分自身が汚染されているということには、考えが及んでいませんでした。この先、健康被害が出てこないか不安を感じます。できるだけ今の水の使い方を変えたほうがいいとは思いますが、生活上はどうしても水道水に頼らざるを得ないのが難しいところです」 現在、水道水から目標値を超える値は検出されていませんが、徳田さんは早急な汚染源の特定と対策を求めています。 徳田伝さん 「米国内でも基地周辺のPFAS汚染が問題になっていますし、現状から見たら沖縄も基地由来の可能性がとても高いと思います。でも基地の中の調査すらできない状態が続いていて、正直なところ住民の健康が軽んじられているように感じます。私たちが安心して生活できるような対応を国にも米軍にもとってもらいたいです」)(以下省略)』、「「PFAS汚染から市民の命を守る連絡会」が基地周辺に住む人など387人を対象に血液検査を実施しました。PFOS・PFOA・PFHxS・PFNAなどの血中濃度を調べたところ、宜野湾市や北谷町など基地周辺の5つの自治体の329人の平均は23.3ng/mL(4物質の合計)。 環境省の全国調査(2021年)の平均と比べて2.7倍で、アメリカの指針値を超過する人は52.9%にのぼっています・・・できるだけ今の水の使い方を変えたほうがいいとは思いますが、生活上はどうしても水道水に頼らざるを得ないのが難しいところです」 現在、水道水から目標値を超える値は検出されていませんが、徳田さんは早急な汚染源の特定と対策を求めています」、なるほど。
次に、2022年6月2日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの河野 博子氏による「北海道「釧路湿原」侵食するソーラーパネルの深刻 天然記念物も生息する日本最大の湿原に異変」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/676109
・『43年前に日本初のラムサール条約湿地として登録され、自然環境の再生・保全が進められてきた釧路湿原。そこに大小さまざまな太陽光発電施設が出現し「このままでは、湿原がソーラーパネルの海になってしまう」と環境団体や専門家が危惧している。半信半疑で現地を訪れると、太陽光発電の拡大圧を受け、市民団体や自治体が対抗策を探っていた』、東京の近くでも、八ヶ岳の麓の清里近辺は晴れの日が多いことから、「太陽光発電施設」が集中している。
・『太陽光発電施設が7年で5.5倍へ急増 釧路自然保護協会をはじめ地元9団体が3月17日付けで「要望書」を、釧路湿原自然再生協議会(市民団体、専門家、国、道、市町村などで構成)が4月18日付けで「提言」を釧路市に提出した。いすれも太陽光発電施設の建設ラッシュを憂い、対策を求めている。 釧路湿原といえば、総面積2.6万ヘクタールの日本最大の湿原で、1980年にラムサール条約湿地として登録され、国指定の特別天然記念物タンチョウをはじめ貴重な動植物が生息していることで知られる。湿原は、かつて「役に立たない土地」として扱われた。現在は、洪水調整機能や炭素吸収機能を含め、重要な場所として注目されている。 その湿原の代表格である釧路湿原で太陽光発電施設の乱立とは、本当だろうか。関東地方のメガソーラー問題を取材してきた私は「心配しすぎではないか」とさえ思った。しかし行ってみると、太陽光発電の存在は際立っていた。空港から釧路市内へのバスの車窓からもあちこちにソーラーパネルを散見し、釧路外環状道路などの高速道路を車で走ると、ソーラーパネル群が光って見えた。 資源エネルギー庁のデータをもとに釧路市がまとめた「太陽光発電施設の推移」によると、2014年6月の時点で同市内の太陽光発電施設は96施設だったが、2021年6月には527施設へと5.5倍に増えた。このうち出力1000kW以上のメガソーラーは1か所から21カ所へと急増している。) 特に建設が目立つのが、1987年に指定された国立公園区域の外、南部の湿原地帯。市街化調整区域として開発が抑制されてきたが、太陽光発電施設は建築基準法上の建物ではないため設置できる。釧路市には景観条例があり、高さ8メートルを超える工作物を設ける際には届け出が求められるが、ソーラーパネル設置には必要ない。 釧路湿原は積雪量が比較的少なく、日照時間が長い。それになんといっても平坦な土地で、市街化調整区域の近くには送配電網があり、太陽光パネルにつなぐことができる。太陽光発電施設が次々に出現した背景には、こうした「好条件」があった』、「2014年6月の時点で同市内の太陽光発電施設は96施設だったが、2021年6月には527施設へと5.5倍に増えた。このうち出力1000kW以上のメガソーラーは1か所から21カ所へと急増・・・特に建設が目立つのが、1987年に指定された国立公園区域の外、南部の湿原地帯。市街化調整区域として開発が抑制されてきたが、太陽光発電施設は建築基準法上の建物ではないため設置できる。釧路市には景観条例があり、高さ8メートルを超える工作物を設ける際には届け出が求められるが、ソーラーパネル設置には必要ない。釧路湿原は積雪量が比較的少なく、日照時間が長い。それになんといっても平坦な土地で、市街化調整区域の近くには送配電網があり、太陽光パネルにつなぐことができる。太陽光発電施設が次々に出現した背景には、こうした「好条件」があった」、なるほど。
・『発電施設付近でタンチョウの営巣を確 市街化調整区域の湿原に並ぶソーラーパネルの近くに行ってみた。釧路市鶴野にある発電所は、大阪の発電事業者が3年前に運転を開始し出力は約2000kW近くある。パネルが並ぶ南端から見ると、土砂を入れて整地したうえでパネルを設置したとわかる。 NPO法人「トラストサルン釧路」の副理事長でタンチョウの研究者、松本文雄さんによると、この発電所の付近はNGOによる調査でタンチョウの営巣が確認されてきた場所。また、日本野鳥の会・釧路支部長の黒澤信道さん(66歳)によると、タカの仲間で環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類のチュウヒも繁殖していた。 「野鳥観察仲間が繁殖を確認していた。チュウヒはネズミなど湿原の小動物を食べるが、こうしたエサ動物がいなくなるし、用心深い鳥なので、もう巣を作る状況ではないと思う」と黒澤さんは残念そうだ。 このメガソーラーから西に8キロ、市街化調整区域の釧路市山花にある太陽光発電施設を見た。法律で発電設備、発電事業者、保守点検責任者の連絡先、運転開始年月日などを書いた看板の設置が定められているが見当たらない。周囲の湿原に比べて高さ2メートルほどの盛り土をし、パネルが設置されている。 この発電施設付近で昨年春、タンチョウの営巣が確認された。タンチョウは樹木の上に巣を作るコウノトリなどと異なり、湿原の中にヨシなどで巣を作り卵を抱く。) 釧路市山花の太陽光施設のすぐそばにタンチョウの営巣地を見つけたのは、NPO法人・環境把握推進ネットワーク-PEG理事長の照井滋晴さん(40歳)。実はタンチョウの調査ではなく、両生類のキタサンショウウオの調査をしていて、たまたま見つけた。 キタサンショウウオは、釧路市指定の天然記念物。3年前に環境省のレッドリストで「準絶滅危惧種」から「絶滅危惧IB類」へと危険度が2ランク上がった。 昨年1月には種の保存法に基づき、販売目的の捕獲が厳罰化されるなど保護策が強化された。体長11センチと小さく湿原の中で生まれ、動いてもせいぜい100mという狭い範囲で生涯を過ごす。 照井さんは釧路教育大学在学中から研究を続ける。「可愛らしいということもあるが、そもそも1954年まで北海道にいることすら知られていなかった。生態や生息状況はわからないことだらけで、研究をやめられなくなった」と語る』、生態系の保存も重要な使命だ。
・『キタサンショウウオの生息適地で建設ラッシュ 釧路市文化財保護条例に基づき研究・保護活動を行う釧路市立博物館は、照井さんはじめ京都大学などの研究者とともに、これまでの知見をもとに「釧路市内キタサンショウウオ生息適地マップ」を作成した。その結果、生息適地と太陽光発電施設の設置が進むエリアが重なることが判明した。 市は、この生息適地マップを2021年から公表。現在は市のホームページ上で示され「太陽光パネルを設置したい」「土地を整地したい」という地権者や事業者に向けて「キタサンショウウオの保全に協力して」と呼びかけている。 その結果、市博物館の担当者のもとには地権者や事業者からの問い合わせが増えた。2021年12月から1年間に「そこは生息適地です」と答えたものだけで22件に上った。 キタサンショウウオの生息適地が広がり、実際に生息が確認された場所も多い釧路市南部の市街化調整区域。そこはまた太陽光発電事業者がパネルを貼りたい場所であり、建設ラッシュが起きている。) 出力50kW未満の小規模な太陽光発電施設の場合、研究者や市の関係者が知らないうちに出現したケースも多い。今年4月に運転開始した太陽光発電施設の場合、道を挟んで反対側と同様の湿原だったが、あっという間に整地されてパネルが並んだ。 こうしたソーラーパネルの「拡大圧」に、どう対抗するのか。キタサンショウウオの研究と保全活動を続ける照井さんに聞くと、意外な言葉が返ってきた。「基本的に太陽光の事業って止まらないと僕は思う。事業者は合法的にやられていて別に悪いことをしているわけではない。再生可能エネルギー自体、推進されているわけだし」 誰も損をしない方法はないのだろうか。照井さんは考え、キタサンショウウオが生息し、すぐそばまで太陽光発電施設が迫る小さな土地を買い取ったらどうだろうか、と思いついた。昔、自然保護や空港建設反対運動の際の戦術、「一坪地主」に似ているかもしれない。 「インターネットで調べてみたところ、太陽光発電用地とか資材置き場にどうですかと、100坪くらいの土地が何か所も売りに出ていた。キタサンショウウオの生息地も何か所か見つかった。かつて原野商法により売られた土地もあるので、土地を買い取る活動を進めれば安く売りたいとか、寄付したいと思う人もいるかもしれない」と照井さん。 今年3月には、2カ所の土地(合計1400㎡強)を計百数十万円で購入した。照井さんが代表を務めるNPO法人は、調査研究活動のほか環境アセスメント調査の仕事もしており、購入費は法人の資金から捻出した。35年前から土地を買い取り、自然保護地を作って観察会を開く活動を続けるNPO法人「トラストサルン釧路」などの団体にも相談して、今後、小さな土地の買い取りを進めるという』、「「釧路市内キタサンショウウオ生息適地マップ」を作成した。その結果、生息適地と太陽光発電施設の設置が進むエリアが重なることが判明した。 市は、この生息適地マップを2021年から公表。現在は市のホームページ上で示され「太陽光パネルを設置したい」「土地を整地したい」という地権者や事業者に向けて「キタサンショウウオの保全に協力して」と呼びかけている。 その結果、市博物館の担当者のもとには地権者や事業者からの問い合わせが増えた」、「市」が指導力を発揮して保護に力を入れてほしいものだ。
・『国立公園区域内にもメガソーラー 国立公園区域外の湿原での太陽光発電建設ラッシュを見てきたが、メガソーラーは国立公園区域内にもある。釧路町の町有地に建つ「釧路町トリトウシ原野太陽光発電所」は大林組のグループ会社が建て、2017年4月に運転開始した。このメガソーラーの事業者は自然環境や野鳥などへの影響を調査しているが「外部に公表していない」(大林クリーンエナジー)。 前出の日本野鳥の会・釧路支部長の黒澤さんは建設が始まる前の2014年、調査を担当した研究者から相談を受けたため事業地に来てみた。国営草地化事業により牧草地にされた後、使われず放置されていた場所で、すでに湿原ではなかった。) 黒澤さんはその事業地を歩き、タンチョウの羽がごっそり落ちていたのを見つけた。「タンチョウは換羽時期、つばさの羽が抜けるシーズンは安全な場所に退避し身を隠すんです。そういう場所になっていたのでしょう」 「事業地を休息やエサ探しに利用していたタンチョウは見られなくなった。でもノビタキなどの小さな草原性の鳥は、それほど減っていないものもあったと聞いている。それはソーラーパネルを設置する時の工法と関係している」と黒澤さんは指摘する。 盛り土をして地盤を固めるのではなく鉄パイプを刺す工法を取ったことで、周辺の自然環境への悪影響が減ったという。「太陽光発電施設をどうしても建てたいという事業者には、環境や生態系に影響が少ない工法をとってもらうことも一つの手になる」と黒澤さんは考える』、「釧路市立博物館は・・・これまでの知見をもとに「釧路市内キタサンショウウオ生息適地マップ」を作成した・・・市は、この生息適地マップを2021年から公表。現在は市のホームページ上で示され「太陽光パネルを設置したい」「土地を整地したい」という地権者や事業者に向けて「キタサンショウウオの保全に協力して」と呼びかけている。 その結果、市博物館の担当者のもとには地権者や事業者からの問い合わせが増えた。2021年12月から1年間に「そこは生息適地です」と答えたものだけで22件に上った・・・盛り土をして地盤を固めるのではなく鉄パイプを刺す工法を取ったことで、周辺の自然環境への悪影響が減ったという。「太陽光発電施設をどうしても建てたいという事業者には、環境や生態系に影響が少ない工法をとってもらうことも一つの手になる」と黒澤さんは考える」、なるほど。
・『釧路市は条例化を視野にガイドライン公表へ 釧路湿原の太陽光発電の問題は昨年12月以来、毎日新聞(ウェブ版)や北海道新聞などが取り上げて波紋を広げた。鶴居村が「美しい景観等と太陽光発電事業との共生に関する条例」を昨年1月に制定するなど釧路湿原の釧路川流域5市町村は動き出していた。釧路市の蝦名大也市長は今年3月、市議会で「条例化を視野にガイドラインを作る」と表明した。 釧路市は6月中旬に始まる市議会定例会でガイドラインを公表し、その後、条例化の検討に入る。「まずはガイドラインで釧路湿原という豊かな自然環境を守っていくということを明確に打ち出す」(市環境保全課)としている。 国の関係省庁、関連自治体、専門家、市民団体で構成する「釧路湿原自然再生協議会」は今年秋、設立20年を迎える。釧路川の蛇行復元事業などにより、自然環境の回復が進む。協議会会長の中村太士・北海道大学農学研究院教授は「日本最大の淡水魚イトウの生息が確認され、自然産卵の野生サケが増えた」と振り返る。 ようやく自然が回復してきた今、浮上した太陽光発電施設の乱立問題。中村会長は「生物にとって重要な場所を明らかにして、市の条例でこういう場所は建設を抑制する、こういう場所は建設方法について市や関係者と協議する、というように具体的に地図の上で見える化する必要がある。景観が損なわれ観光に悪影響を及ぼすという懸念も大きい」と指摘している』、「ようやく自然が回復してきた今、浮上した太陽光発電施設の乱立問題。中村会長は「生物にとって重要な場所を明らかにして、市の条例でこういう場所は建設を抑制する、こういう場所は建設方法について市や関係者と協議する、というように具体的に地図の上で見える化する必要がある。景観が損なわれ観光に悪影響を及ぼすという懸念も大きい」と指摘」、その通りだ。
第三に、2023年12月5日付けNewsweek日本版が掲載した在英ジャーナリストの木村正人氏による「不名誉な「化石賞」の常連となった日本...深刻すぎる化石燃料「依存症」の理由は、いったい何なのか?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kimura/2023/12/post-239_1.php
・『<気候変動対策の交渉を妨げる国に贈られる、不名誉な「今日の化石賞」で2位になった日本。環境への取り組みはどう見られているのか> [ドバイ発]アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでの国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で3日、交渉の進展を妨げる国に授与される不名誉な「今日の化石賞」が発表された。1位は海底石油・天然ガス開発を再開するニュージーランド、2位は化石燃料に公的資金を提供する日本、3位は「損失と損害」基金にあまり資金を出さなかった米国だ。 「 今日の化石賞」は1999年に始まり、COP期間中、世界的な環境団体ネットワーク、気候行動ネットワーク(CAN)のメンバーが投票して決めている。ニュージーランドは先住民の声に耳を傾け、2018年に海底石油・ガス開発を禁止したものの、新政権はこの方針を撤回する方針で、環境団体から厳しい目が向けられている。 いまや「化石賞」の常連となった日本について、CANは「岸田文雄首相は『世界の脱炭素化に貢献する』と主張する2つのイニシアチブでグリーンよりもグリーンであるかのように見せたいようだが、国内およびアジア全域で石炭とガスの寿命を延ばそうとしているのが透けて見える」と苦言を呈する。 「これは水素やアンモニアを化石燃料と混焼し、火力発電所をずっと先まで稼働させるグリーンウォッシュ(注)以外の何ものでもない。アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)イニシアチブを通じ、混焼技術を使って石炭・ガス火力発電所を稼働させ続けるよう東南アジアに売り込みをかけ、自然エネルギーを3倍にする世界的な目標達成を妨げている」と指摘する』、「今日の化石賞」でNZに次ぐ2位とは不名誉なことだ。(注)グリーンウォッシュ:環境配慮をしているように装いごまかすこと、上辺だけの欺瞞(ぎまん)的な環境訴求を表すWikipedia。
・『「さよなら化石燃料」は可能なのか 「ファイナンスデー」の4日、世界各国の市民団体は岸田首相に対して新たな化石燃料プロジェクトへの資金提供を停止し、再生可能エネルギーへの支援に移行するよう求めるアクションを起こした。COP28会場の一角でピカチュウも加わり、「さよなら化石燃料」のシュプレヒコールを連呼した。 バングラデシュの市民団体「ウォーターキーパーズ・バングラデシュ」コーディネーター、シャリフ・ジャミル氏は筆者に「日本は1971年の独立以来、バングラデシュ最大の開発パートナーだ。日本はバングラデシュで石炭火力発電所の建設に投資している。バングラデシュ政府に化石燃料を優先したエネルギー政策を策定するよう提案している」と語る。) 「現在、石炭に続いてLNG(液化天然ガス)基地やガスインフラをバングラデシュに建設することを持ちかけている。日本からの支援は必要だが、環境汚染はだめだ。バングラデシュのような人口密度の高い国で環境汚染が起これば大惨事になる。日本には持続可能でグリーンな再エネプロジェクトに資金を提供してほしい」と訴える。 「LNG(液化天然ガス)基地やガスインフラをバングラデシュに建設することを持ちかけている。バングラデシュは未開発の自然エネルギーの『金脈』だ。1年間を通じて太陽光が降り注いでいる。私たちは日本が化石燃料によるエネルギー拡大を行わないよう真の友好関係を望んでいる」とジャミル氏はいう』、「日本はLNG(液化天然ガス)基地やガスインフラをバングラデシュに建設することを持ちかけている・・・バングラデシュのような人口密度の高い国で環境汚染が起これば大惨事になる・・・バングラデシュは日本が化石燃料によるエネルギー拡大を行わないよう真の友好関係を望んでいる」とジャミル氏はいう」、なるほど。
・『日本の気候変動政策を歪める業界団体 国際環境NGO 350.orgジャパンの伊与田昌慶氏は「日本は世界で汚い石炭とのアンモニア混焼、危険な原子力、二酸化炭素回収・貯留技術のCCS/CCUSといったまやかしの解決策を売り込む商人の役割を果たしてきた。岸田首相がG7(主要7カ国)広島サミットで合意された『化石燃料フェーズアウト』に言及しなかったことも理解に苦しむ」と語る。 日本の気候変動対策がここまで遅れた理由はいったい何なのか。ロンドンを拠点にする世界的な非営利シンクタンク「インフルエンスマップ」が2020年8月に発表した報告書「日本の経済・業界団体と気候変動政策」で気候変動・エネルギー政策に対する日本の経済・業界団体の立場を分析している。 それによると、業界団体を通じて気候変動・エネルギー政策への働きかけを徹底して行っていたセクターは国内総生産(GDP)の1割にも満たない鉄鋼、電力、自動車、セメント、電気機器、石油・石油化学、石炭関連業界だった。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の提唱する政策と比較すると、こうした業界団体からの働きかけは概して後ろ向きだ。 業界団体の中で最も後ろ向きで激しい働きかけを行っていたのは日本鉄鋼連盟と電気事業連合会。これに対してGDPの7割を超える小売、金融サービス、物流、建設、不動産を代表する業界団体は働きかけをほとんど行っていない。さらにイオンをはじめ数多くの企業が事業の電力を100% 再エネで賄うという明確な目標を掲げていた』、「業界団体の中で最も後ろ向きで激しい働きかけを行っていたのは日本鉄鋼連盟と電気事業連合会」、さもありなんだ。
・『海外の化石燃料事業に世界第2位の公的資金を提供する日本 化石燃料からクリーンエネルギーへの移行を促進する国際組織オイル・チェンジ・インターナショナルの報告書によると、日本は海外の化石燃料事業にカナダに次いで世界第2位の公的資金を提供している。20~22年にかけ、カナダ、日本、イタリアはそれぞれ少なくとも年平均105億ドル、69億ドル、29億ドルを供与していた。3カ国でG7全体の8割だ。 カナダは22年末までに化石燃料への国際的な公的資金提供を打ち切るという公約を果たし、23年末までに国内の補助金も打ち切ることを約束している。1位のカナダが化石燃料事業への資金提供を大幅に減らすことになるため、2位の日本、3位のイタリアが最大の化石燃料資金供与国となる可能性が高い。 ガスでは日本が世界最大だ。オイル・チェンジ・インターナショナルは4月、別の報告書で日本が12~26年、海外で建設されるLNGプロジェクトに提供する資金は世界最大の397億ドルにのぼると指摘している。「化石燃料にさよならと言うべきなのに日本は怠ってきた。日本は気候危機の悪化を金銭面で支える世界最大の国だ」とFoE Japanの長田大輝氏は語る。 過当競争や収縮傾向の市場で競争相手が撤退した後、生き残った企業が市場を独占することを「残存者利益」という。議長国UAEは世界で再エネ容量を3倍にし、エネルギー効率改善率を2倍にする目標を掲げる。これを受け、118カ国政府が30年までに世界の再エネ容量を3倍にすると約束した。日本は化石燃料にしがみつき、残存者利益を狙うつもりなのか』、「1位のカナダが化石燃料事業への資金提供を大幅に減らすことになるため、2位の日本、3位のイタリアが最大の化石燃料資金供与国となる可能性が高い。 ガスでは日本が世界最大だ・・・化石燃料にさよならと言うべきなのに日本は怠ってきた。日本は気候危機の悪化を金銭面で支える世界最大の国だ・・・議長国UAEは世界で再エネ容量を3倍にし、エネルギー効率改善率を2倍にする目標を掲げる。これを受け、118カ国政府が30年までに世界の再エネ容量を3倍にすると約束した。日本は化石燃料にしがみつき、残存者利益を狙うつもりなのか」、恥ずかしい限りだ。
先ずは、2022年5月15日付けNHK「追跡 “PFAS汚染” 高濃度地域 住民に不安広がる」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/minplus/0019/topic133.html
・『全国各地で検出が相次いでいる有機フッ素化合物=PFAS。その一部は発がん性や子どもの発育への影響などの有害性が指摘されています。環境省がこれまでに発表している調査結果をNHKが独自にまとめたところ、国の暫定指針値、1リットルあたり50ナノグラム(PFOS・PFOAの合計)を超える値が検出された地点は全国で139にのぼりました。このうち特に高い値が確認されているのが大阪府や沖縄県、東京都などで、これらの地域では住民の血液からも高い値のPFASが検出されるなど不安が広がっています。各地の実態を取材しました』、興味深そうだ。
・『大阪:水や野菜、血液まで・・・ 工場由来のPFAS汚染 【関西地方 地下水で指針値を超えた場所】 ※地下水の正確な調査地は公表されていないため、自治体の役所・役場の所在地を示しています。 139地点のうち、最も高い値が確認されているのが大阪府です。 製造業の工場が点在する大阪府摂津市では2007年以降、大阪府の調査で市内の水路や井戸などで高い値のPFASが相次いで検出されています。 最新の調査(2022年8月)で最も高い値が確認されているのは、市内に住む男性が所有する畑で、家庭用の野菜や果物を作るために使っていた井戸水です。3年前、井戸水のPFAS濃度が指針値の440倍=22000ng/Lにのぼっていたことが判明。その後の調査でも毎年20000ng/Lを超える値が検出され続けています。また、研究者が詳しい調査を行ったところ、土壌や野菜などからも相次いで検出されました。(京都大学 小泉昭夫名誉教授・原田浩二准教授調べ) ※環境省のデータに反映されていない府の調査の数値です。環境省データでは最大値が大阪市の5500ng/Lとなっています。 さらに2021年、工場周辺の住民を対象に行われた血液検査でも、男性の血中からは128.1ng/mLのPFASが検出され、アメリカの学術機関全米アカデミーズが示した「PFAS臨床ガイダンス」で、特に注意が必要とされる指針値20ng/mL(PFOSなど7種類のPFASの合計値)を大きく上回っていました。男性を含め検査を受けた9人全員がアメリカの指針値を上回り、5人が100ng/mLを超えていました。 血中濃度の高さはPFASを含んだ野菜を食べていたことが原因なのではないか-。健康への影響を心配した男性は野菜作りを諦めることにしました。 「この畑ではよく葉物が育つんですよ。本当に潤沢に作って食べていたので、それが食べられなくなるというのは気持ちとしてはもうやりきれないです。でも私が食べてしまったらそれを見て孫が食べたら大変ですし、もうやめるしかないですよね」 摂津市内のPFAS汚染の主な原因とされているのが、空調機器の大手メーカー、ダイキン工業淀川製作所です。この工場ではフッ素樹脂やゴム製品の製造に必要な助剤など、1960 年代後半からPFASの一つPFOAを製造・使用してきました。 ダイキン工業はNHKの取材に対し、次のように回答しています。 ダイキン工業の回答+当社は過去にPFOAを淀川製作所で製造・使用していたため、敷地外の PFOAについては、当社が発生源の一つであると認識しております。 +2009年から現在に至るまで、敷地内の地下水の汲み上げ・浄化を実施しています。 その結果、周辺の地下水、流域河川における PFOA 濃度は経年的に低下傾向にあると認識しています。現在、指針値を超えるPFOA 濃度の地下水が敷地外に流出しないように、費用をかけて、遮水壁の設置や浄化設備の増強・改善に向けて取り組んでいます。 しかし住民からは、今も工場周辺で高い値が検出されていることから、工場の敷地内だけでなく、敷地の外の対策や補償についての協議を求める声が上がっています。 40年以上摂津市内で暮らしてきた50代の女性は、PFASの汚染が広範囲に及んでいる可能性を危惧しています。子どもの頃からこの地域で暮らしてきた女性は、工場でPFOAの製造が始まった当時、市内ではまだインフラの整備が進んでおらず、雨が降ると下水や排水があふれることが多かったと話します。 「大雨が降ると田んぼなのか道なのかがわからず、雨水がすぐにはけないで引いていかない状態が続いていました。小学校でも運動場の水が1週間くらいはけないような土地柄だったので、工場から排出されたPFASが広範囲に広がっていても不思議ではないと思っています」 かつて自身の子どもがPFASとの関連が指摘されている病気を患った経験があることから、健康への影響を懸念しているという女性。ダイキンに対して、工場周辺の汚染の責任をとり、さらなる調査や水の浄化を進めてほしいと訴えています 「空気清浄機などの機械を作っている会社が、水や土を汚染している原因になっているという状況がとても矛盾しているように感じています。地域住民の健康調査を行うなど前向きな対応をとってほしいと強く思います」 こうしたなか3月、摂津市議会では健康影響の解明と指針の整備を求める意見書を可決。地下水などが飲み水だけでなく農業用水にも利用されているとして、+血液に関する分析方法と目標値等の調査研究 +食品中のPFOAについての含有実態調査などを国に求めました。 摂津市民を中心とする「PFOA汚染問題を考える会」環境省へ署名提出 また、摂津市民を中心とした市民団体も国に対して2万3千筆の署名を提出し、健康調査や流出防止などの対策を求めています』、「工場周辺の住民を対象に行われた血液検査でも、男性の血中からは128.1ng/mLのPFASが検出され、アメリカの学術機関全米アカデミーズが示した「PFAS臨床ガイダンス」で、特に注意が必要とされる指針値20ng/mL(PFOSなど7種類のPFASの合計値)を大きく上回っていました。男性を含め検査を受けた9人全員がアメリカの指針値を上回り、5人が100ng/mLを超えていました」、汚染状況は酷そうだ。「ダイキンに対して・・・「空気清浄機などの機械を作っている会社が、水や土を汚染している原因になっているという状況がとても矛盾しているように感じています」との批判はもっともだ。
・『沖縄:原因はアメリカ軍か 基地周辺で相次ぐ検出 【沖縄 河川など公共用水域で指針値を超えた場所】 一方、河川などの公共用水域で最も高い値が確認されているのが、在日アメリカ軍専用施設の7割が集中している沖縄県です。2016年、沖縄県が嘉手納基地周辺で水道水の水源にもなっている河川で高い濃度で検出されていることを発表。日本でPFAS汚染が大きく注目されるきっかけとなりました。 以降、基地周辺にある複数の河川や湧き水、さらに一時は水道水からも高濃度のPFASが検出されています。 沖縄県環境保全課が独自に行っている調査では、2022年6月の最新の結果で47か所のうち33か所で暫定指針値を超えていました。県はPFASを含む泡消火剤を利用してきたアメリカ軍基地が汚染源である可能性が高いと考えていますが、基地内での立入調査が実現しておらず、いまも特定には至っていません。 こうしたなか県内では2022年、市民グループ「PFAS汚染から市民の命を守る連絡会」が基地周辺に住む人など387人を対象に血液検査を実施しました。PFOS・PFOA・PFHxS・PFNAなどの血中濃度を調べたところ、宜野湾市や北谷町など基地周辺の5つの自治体の329人の平均は23.3ng/mL(4物質の合計)。 環境省の全国調査(2021年)の平均と比べて2.7倍で、アメリカの指針値を超過する人は52.9%にのぼっています。 嘉手納基地の近く北谷町に暮らす徳田伝さん(68)
30年以上嘉手納基地の近く、北谷町に暮らす徳田伝さん(68)もその一人。血液検査を受けたところ4つのPFASの合計で 27.1ng/mLが検出され、アメリカの指針値を上回る結果となりました。(PFOS 11.9 PFOA 3.3 PFHxS 9.7 PFNA 2.2) 日頃から水の摂取には気を遣い、飲み水はミネラルウォーターにしてきましたが、経済的な面を考慮すると、煮物やスープなど料理にまでミネラルウォーターを使うことはできず、水道水を利用せざるをえないと言います。 「過去に浄水場の水から高い値が出ていたので飲み水については意識していましたが、検査結果の数字を見てびっくりしました。『まさか』とショックを受けましたね。そこまで自分自身が汚染されているということには、考えが及んでいませんでした。この先、健康被害が出てこないか不安を感じます。できるだけ今の水の使い方を変えたほうがいいとは思いますが、生活上はどうしても水道水に頼らざるを得ないのが難しいところです」 現在、水道水から目標値を超える値は検出されていませんが、徳田さんは早急な汚染源の特定と対策を求めています。 徳田伝さん 「米国内でも基地周辺のPFAS汚染が問題になっていますし、現状から見たら沖縄も基地由来の可能性がとても高いと思います。でも基地の中の調査すらできない状態が続いていて、正直なところ住民の健康が軽んじられているように感じます。私たちが安心して生活できるような対応を国にも米軍にもとってもらいたいです」)(以下省略)』、「「PFAS汚染から市民の命を守る連絡会」が基地周辺に住む人など387人を対象に血液検査を実施しました。PFOS・PFOA・PFHxS・PFNAなどの血中濃度を調べたところ、宜野湾市や北谷町など基地周辺の5つの自治体の329人の平均は23.3ng/mL(4物質の合計)。 環境省の全国調査(2021年)の平均と比べて2.7倍で、アメリカの指針値を超過する人は52.9%にのぼっています・・・できるだけ今の水の使い方を変えたほうがいいとは思いますが、生活上はどうしても水道水に頼らざるを得ないのが難しいところです」 現在、水道水から目標値を超える値は検出されていませんが、徳田さんは早急な汚染源の特定と対策を求めています」、なるほど。
次に、2022年6月2日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの河野 博子氏による「北海道「釧路湿原」侵食するソーラーパネルの深刻 天然記念物も生息する日本最大の湿原に異変」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/676109
・『43年前に日本初のラムサール条約湿地として登録され、自然環境の再生・保全が進められてきた釧路湿原。そこに大小さまざまな太陽光発電施設が出現し「このままでは、湿原がソーラーパネルの海になってしまう」と環境団体や専門家が危惧している。半信半疑で現地を訪れると、太陽光発電の拡大圧を受け、市民団体や自治体が対抗策を探っていた』、東京の近くでも、八ヶ岳の麓の清里近辺は晴れの日が多いことから、「太陽光発電施設」が集中している。
・『太陽光発電施設が7年で5.5倍へ急増 釧路自然保護協会をはじめ地元9団体が3月17日付けで「要望書」を、釧路湿原自然再生協議会(市民団体、専門家、国、道、市町村などで構成)が4月18日付けで「提言」を釧路市に提出した。いすれも太陽光発電施設の建設ラッシュを憂い、対策を求めている。 釧路湿原といえば、総面積2.6万ヘクタールの日本最大の湿原で、1980年にラムサール条約湿地として登録され、国指定の特別天然記念物タンチョウをはじめ貴重な動植物が生息していることで知られる。湿原は、かつて「役に立たない土地」として扱われた。現在は、洪水調整機能や炭素吸収機能を含め、重要な場所として注目されている。 その湿原の代表格である釧路湿原で太陽光発電施設の乱立とは、本当だろうか。関東地方のメガソーラー問題を取材してきた私は「心配しすぎではないか」とさえ思った。しかし行ってみると、太陽光発電の存在は際立っていた。空港から釧路市内へのバスの車窓からもあちこちにソーラーパネルを散見し、釧路外環状道路などの高速道路を車で走ると、ソーラーパネル群が光って見えた。 資源エネルギー庁のデータをもとに釧路市がまとめた「太陽光発電施設の推移」によると、2014年6月の時点で同市内の太陽光発電施設は96施設だったが、2021年6月には527施設へと5.5倍に増えた。このうち出力1000kW以上のメガソーラーは1か所から21カ所へと急増している。) 特に建設が目立つのが、1987年に指定された国立公園区域の外、南部の湿原地帯。市街化調整区域として開発が抑制されてきたが、太陽光発電施設は建築基準法上の建物ではないため設置できる。釧路市には景観条例があり、高さ8メートルを超える工作物を設ける際には届け出が求められるが、ソーラーパネル設置には必要ない。 釧路湿原は積雪量が比較的少なく、日照時間が長い。それになんといっても平坦な土地で、市街化調整区域の近くには送配電網があり、太陽光パネルにつなぐことができる。太陽光発電施設が次々に出現した背景には、こうした「好条件」があった』、「2014年6月の時点で同市内の太陽光発電施設は96施設だったが、2021年6月には527施設へと5.5倍に増えた。このうち出力1000kW以上のメガソーラーは1か所から21カ所へと急増・・・特に建設が目立つのが、1987年に指定された国立公園区域の外、南部の湿原地帯。市街化調整区域として開発が抑制されてきたが、太陽光発電施設は建築基準法上の建物ではないため設置できる。釧路市には景観条例があり、高さ8メートルを超える工作物を設ける際には届け出が求められるが、ソーラーパネル設置には必要ない。釧路湿原は積雪量が比較的少なく、日照時間が長い。それになんといっても平坦な土地で、市街化調整区域の近くには送配電網があり、太陽光パネルにつなぐことができる。太陽光発電施設が次々に出現した背景には、こうした「好条件」があった」、なるほど。
・『発電施設付近でタンチョウの営巣を確 市街化調整区域の湿原に並ぶソーラーパネルの近くに行ってみた。釧路市鶴野にある発電所は、大阪の発電事業者が3年前に運転を開始し出力は約2000kW近くある。パネルが並ぶ南端から見ると、土砂を入れて整地したうえでパネルを設置したとわかる。 NPO法人「トラストサルン釧路」の副理事長でタンチョウの研究者、松本文雄さんによると、この発電所の付近はNGOによる調査でタンチョウの営巣が確認されてきた場所。また、日本野鳥の会・釧路支部長の黒澤信道さん(66歳)によると、タカの仲間で環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類のチュウヒも繁殖していた。 「野鳥観察仲間が繁殖を確認していた。チュウヒはネズミなど湿原の小動物を食べるが、こうしたエサ動物がいなくなるし、用心深い鳥なので、もう巣を作る状況ではないと思う」と黒澤さんは残念そうだ。 このメガソーラーから西に8キロ、市街化調整区域の釧路市山花にある太陽光発電施設を見た。法律で発電設備、発電事業者、保守点検責任者の連絡先、運転開始年月日などを書いた看板の設置が定められているが見当たらない。周囲の湿原に比べて高さ2メートルほどの盛り土をし、パネルが設置されている。 この発電施設付近で昨年春、タンチョウの営巣が確認された。タンチョウは樹木の上に巣を作るコウノトリなどと異なり、湿原の中にヨシなどで巣を作り卵を抱く。) 釧路市山花の太陽光施設のすぐそばにタンチョウの営巣地を見つけたのは、NPO法人・環境把握推進ネットワーク-PEG理事長の照井滋晴さん(40歳)。実はタンチョウの調査ではなく、両生類のキタサンショウウオの調査をしていて、たまたま見つけた。 キタサンショウウオは、釧路市指定の天然記念物。3年前に環境省のレッドリストで「準絶滅危惧種」から「絶滅危惧IB類」へと危険度が2ランク上がった。 昨年1月には種の保存法に基づき、販売目的の捕獲が厳罰化されるなど保護策が強化された。体長11センチと小さく湿原の中で生まれ、動いてもせいぜい100mという狭い範囲で生涯を過ごす。 照井さんは釧路教育大学在学中から研究を続ける。「可愛らしいということもあるが、そもそも1954年まで北海道にいることすら知られていなかった。生態や生息状況はわからないことだらけで、研究をやめられなくなった」と語る』、生態系の保存も重要な使命だ。
・『キタサンショウウオの生息適地で建設ラッシュ 釧路市文化財保護条例に基づき研究・保護活動を行う釧路市立博物館は、照井さんはじめ京都大学などの研究者とともに、これまでの知見をもとに「釧路市内キタサンショウウオ生息適地マップ」を作成した。その結果、生息適地と太陽光発電施設の設置が進むエリアが重なることが判明した。 市は、この生息適地マップを2021年から公表。現在は市のホームページ上で示され「太陽光パネルを設置したい」「土地を整地したい」という地権者や事業者に向けて「キタサンショウウオの保全に協力して」と呼びかけている。 その結果、市博物館の担当者のもとには地権者や事業者からの問い合わせが増えた。2021年12月から1年間に「そこは生息適地です」と答えたものだけで22件に上った。 キタサンショウウオの生息適地が広がり、実際に生息が確認された場所も多い釧路市南部の市街化調整区域。そこはまた太陽光発電事業者がパネルを貼りたい場所であり、建設ラッシュが起きている。) 出力50kW未満の小規模な太陽光発電施設の場合、研究者や市の関係者が知らないうちに出現したケースも多い。今年4月に運転開始した太陽光発電施設の場合、道を挟んで反対側と同様の湿原だったが、あっという間に整地されてパネルが並んだ。 こうしたソーラーパネルの「拡大圧」に、どう対抗するのか。キタサンショウウオの研究と保全活動を続ける照井さんに聞くと、意外な言葉が返ってきた。「基本的に太陽光の事業って止まらないと僕は思う。事業者は合法的にやられていて別に悪いことをしているわけではない。再生可能エネルギー自体、推進されているわけだし」 誰も損をしない方法はないのだろうか。照井さんは考え、キタサンショウウオが生息し、すぐそばまで太陽光発電施設が迫る小さな土地を買い取ったらどうだろうか、と思いついた。昔、自然保護や空港建設反対運動の際の戦術、「一坪地主」に似ているかもしれない。 「インターネットで調べてみたところ、太陽光発電用地とか資材置き場にどうですかと、100坪くらいの土地が何か所も売りに出ていた。キタサンショウウオの生息地も何か所か見つかった。かつて原野商法により売られた土地もあるので、土地を買い取る活動を進めれば安く売りたいとか、寄付したいと思う人もいるかもしれない」と照井さん。 今年3月には、2カ所の土地(合計1400㎡強)を計百数十万円で購入した。照井さんが代表を務めるNPO法人は、調査研究活動のほか環境アセスメント調査の仕事もしており、購入費は法人の資金から捻出した。35年前から土地を買い取り、自然保護地を作って観察会を開く活動を続けるNPO法人「トラストサルン釧路」などの団体にも相談して、今後、小さな土地の買い取りを進めるという』、「「釧路市内キタサンショウウオ生息適地マップ」を作成した。その結果、生息適地と太陽光発電施設の設置が進むエリアが重なることが判明した。 市は、この生息適地マップを2021年から公表。現在は市のホームページ上で示され「太陽光パネルを設置したい」「土地を整地したい」という地権者や事業者に向けて「キタサンショウウオの保全に協力して」と呼びかけている。 その結果、市博物館の担当者のもとには地権者や事業者からの問い合わせが増えた」、「市」が指導力を発揮して保護に力を入れてほしいものだ。
・『国立公園区域内にもメガソーラー 国立公園区域外の湿原での太陽光発電建設ラッシュを見てきたが、メガソーラーは国立公園区域内にもある。釧路町の町有地に建つ「釧路町トリトウシ原野太陽光発電所」は大林組のグループ会社が建て、2017年4月に運転開始した。このメガソーラーの事業者は自然環境や野鳥などへの影響を調査しているが「外部に公表していない」(大林クリーンエナジー)。 前出の日本野鳥の会・釧路支部長の黒澤さんは建設が始まる前の2014年、調査を担当した研究者から相談を受けたため事業地に来てみた。国営草地化事業により牧草地にされた後、使われず放置されていた場所で、すでに湿原ではなかった。) 黒澤さんはその事業地を歩き、タンチョウの羽がごっそり落ちていたのを見つけた。「タンチョウは換羽時期、つばさの羽が抜けるシーズンは安全な場所に退避し身を隠すんです。そういう場所になっていたのでしょう」 「事業地を休息やエサ探しに利用していたタンチョウは見られなくなった。でもノビタキなどの小さな草原性の鳥は、それほど減っていないものもあったと聞いている。それはソーラーパネルを設置する時の工法と関係している」と黒澤さんは指摘する。 盛り土をして地盤を固めるのではなく鉄パイプを刺す工法を取ったことで、周辺の自然環境への悪影響が減ったという。「太陽光発電施設をどうしても建てたいという事業者には、環境や生態系に影響が少ない工法をとってもらうことも一つの手になる」と黒澤さんは考える』、「釧路市立博物館は・・・これまでの知見をもとに「釧路市内キタサンショウウオ生息適地マップ」を作成した・・・市は、この生息適地マップを2021年から公表。現在は市のホームページ上で示され「太陽光パネルを設置したい」「土地を整地したい」という地権者や事業者に向けて「キタサンショウウオの保全に協力して」と呼びかけている。 その結果、市博物館の担当者のもとには地権者や事業者からの問い合わせが増えた。2021年12月から1年間に「そこは生息適地です」と答えたものだけで22件に上った・・・盛り土をして地盤を固めるのではなく鉄パイプを刺す工法を取ったことで、周辺の自然環境への悪影響が減ったという。「太陽光発電施設をどうしても建てたいという事業者には、環境や生態系に影響が少ない工法をとってもらうことも一つの手になる」と黒澤さんは考える」、なるほど。
・『釧路市は条例化を視野にガイドライン公表へ 釧路湿原の太陽光発電の問題は昨年12月以来、毎日新聞(ウェブ版)や北海道新聞などが取り上げて波紋を広げた。鶴居村が「美しい景観等と太陽光発電事業との共生に関する条例」を昨年1月に制定するなど釧路湿原の釧路川流域5市町村は動き出していた。釧路市の蝦名大也市長は今年3月、市議会で「条例化を視野にガイドラインを作る」と表明した。 釧路市は6月中旬に始まる市議会定例会でガイドラインを公表し、その後、条例化の検討に入る。「まずはガイドラインで釧路湿原という豊かな自然環境を守っていくということを明確に打ち出す」(市環境保全課)としている。 国の関係省庁、関連自治体、専門家、市民団体で構成する「釧路湿原自然再生協議会」は今年秋、設立20年を迎える。釧路川の蛇行復元事業などにより、自然環境の回復が進む。協議会会長の中村太士・北海道大学農学研究院教授は「日本最大の淡水魚イトウの生息が確認され、自然産卵の野生サケが増えた」と振り返る。 ようやく自然が回復してきた今、浮上した太陽光発電施設の乱立問題。中村会長は「生物にとって重要な場所を明らかにして、市の条例でこういう場所は建設を抑制する、こういう場所は建設方法について市や関係者と協議する、というように具体的に地図の上で見える化する必要がある。景観が損なわれ観光に悪影響を及ぼすという懸念も大きい」と指摘している』、「ようやく自然が回復してきた今、浮上した太陽光発電施設の乱立問題。中村会長は「生物にとって重要な場所を明らかにして、市の条例でこういう場所は建設を抑制する、こういう場所は建設方法について市や関係者と協議する、というように具体的に地図の上で見える化する必要がある。景観が損なわれ観光に悪影響を及ぼすという懸念も大きい」と指摘」、その通りだ。
第三に、2023年12月5日付けNewsweek日本版が掲載した在英ジャーナリストの木村正人氏による「不名誉な「化石賞」の常連となった日本...深刻すぎる化石燃料「依存症」の理由は、いったい何なのか?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kimura/2023/12/post-239_1.php
・『<気候変動対策の交渉を妨げる国に贈られる、不名誉な「今日の化石賞」で2位になった日本。環境への取り組みはどう見られているのか> [ドバイ発]アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでの国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で3日、交渉の進展を妨げる国に授与される不名誉な「今日の化石賞」が発表された。1位は海底石油・天然ガス開発を再開するニュージーランド、2位は化石燃料に公的資金を提供する日本、3位は「損失と損害」基金にあまり資金を出さなかった米国だ。 「 今日の化石賞」は1999年に始まり、COP期間中、世界的な環境団体ネットワーク、気候行動ネットワーク(CAN)のメンバーが投票して決めている。ニュージーランドは先住民の声に耳を傾け、2018年に海底石油・ガス開発を禁止したものの、新政権はこの方針を撤回する方針で、環境団体から厳しい目が向けられている。 いまや「化石賞」の常連となった日本について、CANは「岸田文雄首相は『世界の脱炭素化に貢献する』と主張する2つのイニシアチブでグリーンよりもグリーンであるかのように見せたいようだが、国内およびアジア全域で石炭とガスの寿命を延ばそうとしているのが透けて見える」と苦言を呈する。 「これは水素やアンモニアを化石燃料と混焼し、火力発電所をずっと先まで稼働させるグリーンウォッシュ(注)以外の何ものでもない。アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)イニシアチブを通じ、混焼技術を使って石炭・ガス火力発電所を稼働させ続けるよう東南アジアに売り込みをかけ、自然エネルギーを3倍にする世界的な目標達成を妨げている」と指摘する』、「今日の化石賞」でNZに次ぐ2位とは不名誉なことだ。(注)グリーンウォッシュ:環境配慮をしているように装いごまかすこと、上辺だけの欺瞞(ぎまん)的な環境訴求を表すWikipedia。
・『「さよなら化石燃料」は可能なのか 「ファイナンスデー」の4日、世界各国の市民団体は岸田首相に対して新たな化石燃料プロジェクトへの資金提供を停止し、再生可能エネルギーへの支援に移行するよう求めるアクションを起こした。COP28会場の一角でピカチュウも加わり、「さよなら化石燃料」のシュプレヒコールを連呼した。 バングラデシュの市民団体「ウォーターキーパーズ・バングラデシュ」コーディネーター、シャリフ・ジャミル氏は筆者に「日本は1971年の独立以来、バングラデシュ最大の開発パートナーだ。日本はバングラデシュで石炭火力発電所の建設に投資している。バングラデシュ政府に化石燃料を優先したエネルギー政策を策定するよう提案している」と語る。) 「現在、石炭に続いてLNG(液化天然ガス)基地やガスインフラをバングラデシュに建設することを持ちかけている。日本からの支援は必要だが、環境汚染はだめだ。バングラデシュのような人口密度の高い国で環境汚染が起これば大惨事になる。日本には持続可能でグリーンな再エネプロジェクトに資金を提供してほしい」と訴える。 「LNG(液化天然ガス)基地やガスインフラをバングラデシュに建設することを持ちかけている。バングラデシュは未開発の自然エネルギーの『金脈』だ。1年間を通じて太陽光が降り注いでいる。私たちは日本が化石燃料によるエネルギー拡大を行わないよう真の友好関係を望んでいる」とジャミル氏はいう』、「日本はLNG(液化天然ガス)基地やガスインフラをバングラデシュに建設することを持ちかけている・・・バングラデシュのような人口密度の高い国で環境汚染が起これば大惨事になる・・・バングラデシュは日本が化石燃料によるエネルギー拡大を行わないよう真の友好関係を望んでいる」とジャミル氏はいう」、なるほど。
・『日本の気候変動政策を歪める業界団体 国際環境NGO 350.orgジャパンの伊与田昌慶氏は「日本は世界で汚い石炭とのアンモニア混焼、危険な原子力、二酸化炭素回収・貯留技術のCCS/CCUSといったまやかしの解決策を売り込む商人の役割を果たしてきた。岸田首相がG7(主要7カ国)広島サミットで合意された『化石燃料フェーズアウト』に言及しなかったことも理解に苦しむ」と語る。 日本の気候変動対策がここまで遅れた理由はいったい何なのか。ロンドンを拠点にする世界的な非営利シンクタンク「インフルエンスマップ」が2020年8月に発表した報告書「日本の経済・業界団体と気候変動政策」で気候変動・エネルギー政策に対する日本の経済・業界団体の立場を分析している。 それによると、業界団体を通じて気候変動・エネルギー政策への働きかけを徹底して行っていたセクターは国内総生産(GDP)の1割にも満たない鉄鋼、電力、自動車、セメント、電気機器、石油・石油化学、石炭関連業界だった。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の提唱する政策と比較すると、こうした業界団体からの働きかけは概して後ろ向きだ。 業界団体の中で最も後ろ向きで激しい働きかけを行っていたのは日本鉄鋼連盟と電気事業連合会。これに対してGDPの7割を超える小売、金融サービス、物流、建設、不動産を代表する業界団体は働きかけをほとんど行っていない。さらにイオンをはじめ数多くの企業が事業の電力を100% 再エネで賄うという明確な目標を掲げていた』、「業界団体の中で最も後ろ向きで激しい働きかけを行っていたのは日本鉄鋼連盟と電気事業連合会」、さもありなんだ。
・『海外の化石燃料事業に世界第2位の公的資金を提供する日本 化石燃料からクリーンエネルギーへの移行を促進する国際組織オイル・チェンジ・インターナショナルの報告書によると、日本は海外の化石燃料事業にカナダに次いで世界第2位の公的資金を提供している。20~22年にかけ、カナダ、日本、イタリアはそれぞれ少なくとも年平均105億ドル、69億ドル、29億ドルを供与していた。3カ国でG7全体の8割だ。 カナダは22年末までに化石燃料への国際的な公的資金提供を打ち切るという公約を果たし、23年末までに国内の補助金も打ち切ることを約束している。1位のカナダが化石燃料事業への資金提供を大幅に減らすことになるため、2位の日本、3位のイタリアが最大の化石燃料資金供与国となる可能性が高い。 ガスでは日本が世界最大だ。オイル・チェンジ・インターナショナルは4月、別の報告書で日本が12~26年、海外で建設されるLNGプロジェクトに提供する資金は世界最大の397億ドルにのぼると指摘している。「化石燃料にさよならと言うべきなのに日本は怠ってきた。日本は気候危機の悪化を金銭面で支える世界最大の国だ」とFoE Japanの長田大輝氏は語る。 過当競争や収縮傾向の市場で競争相手が撤退した後、生き残った企業が市場を独占することを「残存者利益」という。議長国UAEは世界で再エネ容量を3倍にし、エネルギー効率改善率を2倍にする目標を掲げる。これを受け、118カ国政府が30年までに世界の再エネ容量を3倍にすると約束した。日本は化石燃料にしがみつき、残存者利益を狙うつもりなのか』、「1位のカナダが化石燃料事業への資金提供を大幅に減らすことになるため、2位の日本、3位のイタリアが最大の化石燃料資金供与国となる可能性が高い。 ガスでは日本が世界最大だ・・・化石燃料にさよならと言うべきなのに日本は怠ってきた。日本は気候危機の悪化を金銭面で支える世界最大の国だ・・・議長国UAEは世界で再エネ容量を3倍にし、エネルギー効率改善率を2倍にする目標を掲げる。これを受け、118カ国政府が30年までに世界の再エネ容量を3倍にすると約束した。日本は化石燃料にしがみつき、残存者利益を狙うつもりなのか」、恥ずかしい限りだ。
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介護(その9)(親の介護で一家離散 2000万円超の負担も…「ビジネスケアラー」の過酷すぎる現実、2040年「要介護人口1000万人」時代 介護費用1.4倍と負担さらに重く、東大卒エリートが泣きじゃくった日…アルツハイマーの母を介護 NGワードだった「生活保護」) [社会]
介護については、昨年12月14日に取上げた。今日は、(その9)(親の介護で一家離散 2000万円超の負担も…「ビジネスケアラー」の過酷すぎる現実、2040年「要介護人口1000万人」時代 介護費用1.4倍と負担さらに重く、東大卒エリートが泣きじゃくった日…アルツハイマーの母を介護 NGワードだった「生活保護」)である。
先ずは、昨年12月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した株式会社リクシス創業者・代表取締役副社長 CSOの酒井 穣氏による「親の介護で一家離散、2000万円超の負担も…「ビジネスケアラー」の過酷すぎる現実」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/332342
・『2025年以降の日本では、団塊世代の親の介護に追われるビジネスケアラーが急速に増加すると予測されている。ビジネスケアラーとは、「働きながら介護する人」「仕事と介護を両立している人」のこと。介護にかかる莫大な費用に終わりの見えない介護期間……働き盛りの介護リスクにあなたは備えているだろうか。本稿は、酒井穣『ビジネスケアラー 働きながら親の介護をする人たち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『介護で仕事を辞めたら再就職できず できても年収は男性4割、女性5割減少 介護のために仕事を辞めてしまった場合、再就職までにかかる期間はどれくらいだと思いますか? この期間として統計的に最多となっているのは1年以上です(男性の38.5%、女性の52.2%)。1年以上も仕事から離れていて、条件のよい就職先が見つかると思いますか?現実として、運よくあらたな職場を得たとしても、収入は男性で4割減、女性で半減するというデータがあります。 介護を理由に仕事を辞めるなら、まず、1年以上収入が途絶え、再就職できたとしても今の半分程度の年収になっても生きていけるだけの貯金が必要です。貯金が足りないまま辞めてしまえば、親が資産家でもないかぎり、あなたは生活保護を申請することになります。 ご存じのとおり、生活保護は、申請さえすれば簡単に受けられるというものでもありません。仮に住宅ローンや自動車ローンが残っていれば、そうした資産を手放すことになり、一家離散という可能性さえ出てくるのです(脅しではなく、現実です。個人的にも、こうして一家離散したケースを複数聞いています) 介護は、いちど始まると、いつ終わりになるか予想ができません。子育てとは真逆で、介護は、時間とともに負担が増えるという特徴もあります。 介護期間の目安となるのは、平均寿命から健康寿命(心身健康でいられる年数)を引いた年数です。日本でこれは、だいたい10年程度(男性8.7年、女性12.1年/2019年)になります。ですから介護生活は、少なくとも10年は続くことを想定しておく必要があります。) しかも、この期間のうちに、老化をともないながら、親の健康状態は悪化していくのが普通です。はじめは半身不随などの身体的な問題だったところに、認知症(重度化すると意思の疎通ができなくなる)も重なってきたりします。 仕事を辞め年収が半分になって10年も経つと、ビジネスケアラーとして働き続けた場合からは想像もできないほどの貧困になります。 さらに今後の日本は、物価高になっていくと予想されています。いつ終わるともしれない介護に悩まされながら金銭的にも厳しくなると、精神的な余裕がなくなり、虐待にもつながることもあります。 あなたの親は、自分の愛する子どもが、自分の介護のせいで、そうした状態になることを本当に望んでいるでしょうか』、「介護期間の目安となるのは、平均寿命から健康寿命(心身健康でいられる年数)を引いた年数です。日本でこれは、だいたい10年程度(男性8.7年、女性12.1年/2019年)になります。ですから介護生活は、少なくとも10年は続くことを想定しておく必要があります・・・仕事を辞め年収が半分になって10年も経つと、ビジネスケアラーとして働き続けた場合からは想像もできないほどの貧困になります」、なるほど。
・『介護の負担額は平均月7、8万円 介護期間の見積もりは平均14年 金銭的な話をすると「うちの親にはそれなりに資産があるから大丈夫」と考える人もいるかもしれません。しかしそれは、本当でしょうか。先回りしておきますが、介護には相当なお金がかかり、仮に資産が十分にあったとしても、大丈夫ではありません。 そもそも、介護にかかるお金(介護保険でカバーされない自己負担部分)がいくらくらいになるのか、誰もが不安に思っているでしょう。 これを実際のデータで見ると、バリアフリー化や介護ベッド、緊急対応の交通費や宿泊費といった初期費用(一時費用/自己負担)としてかかっているのは、平均で80万~90万円程度でした(この数字はバラツキが大きいため注意も必要です)。また、毎月かかっている費用(自己負担)は、平均で7万~8万円程度になります。 脅しではなく、日本の社会保障は、少子高齢化と税収の低迷を受けて、劣化していくでしょう。ですから、このような介護にかかるお金の平均もまた、今後、必ず上がっていきます。そのうえ、おそらくは物価も上がっていくことになるのです。 冷静に考えれば、これからの介護の費用が実質的に上がっていくことは、想定に入れておく必要があることがわかるでしょう。 それでは実際に、介護をしている人々は、どう考えているのでしょう。) まず、実際に想定されている介護期間の平均は、169.4カ月(14年1カ月)でした。先に10年は想定しておくべきであることを述べましたが、多くの人は、それ以上の期間を想定して準備しているのです。なんとなく、子育てと同じ程度の期間が想定されていることは興味深いですね。 もちろん、実際にこれだけの期間がかかるかどうかは、それぞれに事情が異なるため、なんとも言えないところではあります。ただ、平均的には、それだけの期間の見積もりをしているという点に位は意味があります。 客観的に考えると、毎月の実質的な費用(自己負担)となる平均7万~8万円が、169.4カ月間かかり続けることを想定するのが普通ということです。 ここから介護のランニングコストは、合計で約1186万~1355万円となります。初期費用も考えれば、1266万~1445万円の費用です。 かなりの大金ですが、しかもこれは平均であって、運が悪ければもっとかかることも考えておかなくてはなりません。 さらにこの想定では、介護が必要になる人が1人という計算になっていることにも注意してください。両親同時に介護が必要になるケースも多数あり、その場合は、単純に2倍とはならないものの、2000万円以上の準備が必要になると考えられます。 ピンピンコロリと、介護を必要とせずに亡くなる人(急死)は、全体の5%程度に過ぎません。基本的には、誰もが、何らかの介護を受けながら亡くなっていくと想定しておくべきでしょう。 しかも、ここまでの話は、あくまでも介護にかかる費用に関することに限定されています。このほかにも家賃や住宅ローン、生活費や各種税金などのためのお金も必要になることを忘れないでください。長い闘病生活などがある場合もまた、想定しておくべき費用は大きくなります。 ここで、日本の高齢者の貯蓄額は、世帯平均で1268万円です。この数字だけを見ると、意外と貯蓄があるように感じられるかもしれません。これだけの貯蓄があれば、年金と合わせれば、2000万円程度の介護費用はなんとかなりそうにも感じられます。 しかしこの数字は、富裕層が押し上げているにすぎません。実際に、貯蓄額が1000万円以下の世帯は、全体の過半数(57.9%)になっています。生活費のことを考えれば、約6割の高齢者が、介護のための費用が準備できていないと結論づけることができるのです。) ここまでの話を総括すると、・親に2000万円を超える預貯金があって年金もしっかりもらえている ・両親が同時ではなく、どちらか一方の介護だけが必要 という条件が成立するときだけ、ギリギリではあるものの、親の介護のために子どもがお金を持ち出す必要がない可能性もあります。 ただ、この2つの条件が当てはまる人は少数というのが現実です。仮に、この2つの条件に当てはまる場合でも、生活レベルが高く、毎月の出費も平均以上ということであれば、安心はできません。 親の介護費用は、親の年金や預貯金でやりくりするのが基本です。しかし現実には、親の介護のために子どもがお金を持ち出すというのは、程度問題ではあれ、まず避けられません。 そんなとき、自分が介護で仕事を辞めていたらどうなるでしょう。自分の収入が途絶えていたら、持ち出すお金もありません。そうなれば、親の介護は、介護のプロにお願いすることもできず、自分の手でやらなければならなくなるでしょう。 それでも、なんとか自分の手で介護を乗り切れたとしましょう。しかし将来、いざ自分自身に介護が必要になった場合は、どうするのでしょう。誰かに介護をしてもらう必要が出てきたとき、自分のための貯蓄が不十分であれば、一体、誰に自分の介護をお願いするのでしょう。 親の介護に対してお金を持ち出すためだけでなく、将来の自分自身に必要となる介護のお金のためにも、介護離職という選択肢は、非常に厳しい(とても贅沢な)ものになります』、「ピンピンコロリと、介護を必要とせずに亡くなる人(急死)は、全体の5%程度に過ぎません。基本的には、誰もが、何らかの介護を受けながら亡くなっていくと想定しておくべきでしょう」、誰もが理想とする「ピンピンコロリ」は「全体の5%程度に過ぎません・・・実際に、貯蓄額が1000万円以下の世帯は、全体の過半数(57.9%)になっています。生活費のことを考えれば、約6割の高齢者が、介護のための費用が準備できていないと結論づけることができる・・・親の介護に対してお金を持ち出すためだけでなく、将来の自分自身に必要となる介護のお金のためにも、介護離職という選択肢は、非常に厳しい(とても贅沢な)ものになります」、なるほど。
次に、本年1月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「2040年「要介護人口1000万人」時代、介護費用1.4倍と負担さらに重く」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337375
・『介護地獄はますます深刻化する 介護のための離職者も10万人に近づく 介護が必要な要支援・介護認定者数は、2021年度末で約690 万人 となった(第1号被保険者だけでは約680万人、注1)。公的介護保険制度がスタートした00年度の認定者数約256万人に比べると、約2.7倍だ。 一方で、厚生労働省の雇用動向調査によると、21年に個人的理由で離職した人のうち「介護・看護」を理由とする人は約9.5万人に上った。いったん要介護状態になると、そこから抜け出せないことが多い。家族に要介護者が出れば、その家族は大きな影響を受けざるをえない。 介護は多くの人が直面する深刻な問題となっているが、40年頃には、要介護認定者数は約988万人に達すると推計されている(注2)。 老々介護や介護離職など「介護地獄」は、今後はますます深刻化する。介護問題への対応は社会全体の最重要課題だ』、「介護は多くの人が直面する深刻な問題となっているが、40年頃には、要介護認定者数は約988万人に達すると推計されている」、なるほど。
・『介護認定、65歳以上では全体の2割だが 85歳以上では6割、介護を受けないのは稀なこと 介護保険制度のもとで、介護サービスの対象になっている65歳以上の第1号被保険者のなかで、何らかの介護認定を受けている人は全体の18.9%、つまり2割弱だ。(図表1) 決して低い比率ではないが、それでも、5人に4人は介護・支援が必要にならないような気がする。 (図表1 第1号被保険者の状況 はリンク先参照) しかし、実はそうではない。このことは、データで確かめられる。要支援・介護になる人の比率を年齢階級別に示すと、図表2のとおりだ。 18.9%という数字は、第1号被保険者の全ての年齢階級についての平均値だが、要支援・介護の必要性は年齢が上がると急上昇するからだ。 (図表2 年齢別要支援要介護比率(男女計、単位 %) はリンク先参照) 図表2に示されているように、要支援・介護の比率は、85歳以上になると58.8%にもなる。夫婦が同年齢と仮定すれば、夫婦のどちらも要支援・介護になる確率が34.6%もある。どちらかが要支援・介護になる確率は48.9%と、半分近くになる。どちらも要支援・介護にならない確率は、17.0%でしかない。 85歳以上になると、介護という問題から全く逃れられていられるのはむしろ稀な事態になってしまうのだ。何かの拍子に転んで骨折し、介護が必要な状況になるということなどがごく普通に起きてしまう。 このように、18.9%という数字は大いにミスリーディングだ。介護問題の深刻度は、年齢の差を考慮しない平均値では理解できないものなのだ。 しかも介護は高齢者だけの問題ではない。若くて自分自身は介護が必要なくても、両親が要介護状態になるという問題が起きる。 こう考えると、介護問題は全ての日本人にとって最重要の問題の一つということができる』、「18.9%という数字は、第1号被保険者の全ての年齢階級についての平均値だが、要支援・介護の必要性は年齢が上がると急上昇・・・要支援・介護の比率は、85歳以上になると58.8%にもなる。夫婦が同年齢と仮定すれば、夫婦のどちらも要支援・介護になる確率が34.6%もある。どちらかが要支援・介護になる確率は48.9%と、半分近くになる。どちらも要支援・介護にならない確率は、17.0%でしかない・・・介護問題の深刻度は、年齢の差を考慮しない平均値では理解できないものなのだ。 しかも介護は高齢者だけの問題ではない。若くて自分自身は介護が必要なくても、両親が要介護状態になるという問題が起きる」、なるほど。
・『介護費用、単純計算で2040年に1.4倍 労働人口は8割に減少、負担はより重く 公的介護制度が維持されることを誰もが切実に望んでいる。だが、それは決して容易なことではない。 要介護認定者数は2040年頃ピークになり、「要介護人口1000万人」時代になる。現在、約690 万人が988万人になるのだから、単純に考えれば介護に要する費用は現在の1.43倍になる。 財源の面から制度の維持がこのままでは難しくなるだろう。 現在、介護保険からの給付金に要する費用は、保険料50%、公費50%で分担している。公費のうちの負担割合は国が25%、都道府県が12.5%、市町村が12.5%だ。この分担割合を変えないとすれば、公費も保険料総額も1.43倍に引き上げる必要がある。 これ自体が極めて困難な課題だが、負担のかなりの部分を背負わなければならない労働年齢人口(15~64歳の人口)が、20年の 7508万人から40年の6213万人へと約82.7%に減るため、労働人口一人当たりでみれば負担率はもっと上がる。 第1号被保険者の保険料の21年の全国平均は1カ月あたり6014円だ。しかし、所得が多ければ、年間保険料は20万円を超えている』、「「要介護人口1000万人」時代になる。現在、約690 万人が988万人になるのだから、単純に考えれば介護に要する費用は現在の1.43倍になる。 財源の面から制度の維持がこのままでは難しくなるだろう・・・労働年齢人口(15~64歳の人口)が、20年の 7508万人から40年の6213万人へと約82.7%に減るため、労働人口一人当たりでみれば負担率はもっと上がる」、なるほど。
・『高所得者の保険料や自己負担 24年度に引き上げの議論 2023年11月6日の社会保障審議会の介護保険部会で、介護保険料の引き上げ案が示された。部会では65歳以上の高齢者について、給与や年金などの年間所得水準が高い人たちの介護保険料を引き上げる案が了承され、24年度の制度改正での実現を目指すこととされた。 厚生労働省は、24年度から引き上げる方針だ。給与や配当、年金など年間の合計所得420万円以上の人を対象に、それぞれ所得に応じて階層を細分化して負担額を上げる。 介護サービスの負担は保険料だけではない。介護保険制度では、介護サービスを受ける人の自己負担がある。自己負担の仕組みは、サービスの種類や本人の所得などによって決まる極めて複雑なものになっているが、基本は次のとおりだ。 自己負担率は基本1割だが、所得が多くなれば2割・3割負担になる。所得が多く、介護費用が多額であれば、自己負担額もかなり高くなる(ただし、「高額介護サービス費における負担限度額」の制度があるため、無制限に増えるわけではない) ただそれでも所得が高い階層では月額4万4400円だから、かなりの額だ。 政府は、24年度に介護サービス利用費の自己負担についても、2割自己負担の対象を広げる方針を示し、少子化対策の財源確保に向けた社会保障改革の計画「改革工程」の素案に盛り込んだ。 改革工程は、23年12月5日の経済財政諮問会議で示され、28年度までに金融所得や資産を考慮した負担の在り方を検討するという。 当初は23年中に自己負担の拡大の具体案をまとめるとされていたが、この問題の検討は24年度以降に引き続き行われることになる。 介護地獄の緩和のためには負担増の問題にきちんと向き合う必要がある。 注1 厚生労働省「令和3年度 介護保険事業状況報告(年報)」。なお、第1号被保険者は65歳以上の人で、第2号保険者は40歳以上65歳未満の医療保険加入者。 注2 経済産業省「将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会」(平成30年3月)』、「自己負担率は基本1割だが、所得が多くなれば2割・3割負担になる。所得が多く、介護費用が多額であれば、自己負担額もかなり高くなる(ただし、「高額介護サービス費における負担限度額」の制度があるため、無制限に増えるわけではない) ただそれでも所得が高い階層では月額4万4400円だから、かなりの額だ・・・28年度までに金融所得や資産を考慮した負担の在り方を検討するという・・・介護地獄の緩和のためには負担増の問題にきちんと向き合う必要がある」、その通りだが、高所得層には高負担を受け入れる覚悟が必要なようだ。
第三に、1月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したNPO法人二十四の瞳・社会福祉士の山崎 宏氏による「東大卒エリートが泣きじゃくった日…アルツハイマーの母を介護、NGワードだった「生活保護」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337898
・『日本では年々、働きながら在宅介護を行う「ビジネスケアラー」が増えています。しかし、子育てと違い、何年で終わるか分からない上にだんだん負担が重くなっていく介護を自宅で行うのは本当に大変です。仕事との両立に悩んだり、妻に離婚されてしまったりと、さらなる不幸に襲われることも珍しくありません。筆者のところにも、たくさんのビジネスケアラーから相談が持ちかけられます。今回は、ある東大卒エリートのケースを紹介します』、興味深そうだ。
・『今年、ビジネスケアラーは300万人を超える 2025年、団塊世代の全員が75歳以上の後期高齢者になり、働きながら在宅介護を行う「ビジネスケアラー」が300万人を超える見込みです。そうなると注目されるのが、介護離職問題です。 「人は誰しも、自分は正しいと思っている。特別だ、人とは違う、と思っている。(本気になれば)まだまだ自分はデキると思っている」 何かの本でそんなフレーズを読んだことがあります。長年いろいろな人の相談に応じていると、この傾向がもっとも顕著だと感じるのが高学歴の人です』、「2025年、団塊世代の全員が75歳以上の後期高齢者になり、働きながら在宅介護を行う「ビジネスケアラー」が300万人を超える見込みです。そうなると注目されるのが、介護離職問題です」、なるほど。
・『東大卒ビジネスエリートからの相談 東京大学を卒業し、ビジネス界で活躍してきた60歳の男性、Aさん。学歴が高いことで自己評価が高い彼は、「自分は人とは違う、まだまだデキる」と思っているタイプです。東大を卒業した後、官僚や政治家ではなく、一部上場企業でのキャリアを歩んできた彼は、出世競争に敗れ、年齢とともに困難な状況に直面していました。 Aさんからの相談は、解決に至るまでにかなりの時間を要しました。半年くらいの間に、面談を5回も行いました。というのは、彼にとって都合が悪い事実を小出しにしてくるのです。最初から全て話してくれればいいのに……とも思いましたが、彼が心を整理するためには、それだけの時間が必要だったということなのでしょう。 Aさんの92歳の母親はアルツハイマー型認知症を患い、第二フェーズに突入していました。第二フェーズとは、初期の認知障害フェーズから、徘徊(はいかい)や暴言、不潔行為といった周辺症状(問題行動)へ移行した状態です。 最初に相談を受けたとき、Aさんは、5年以上介護を続けている64歳の妻から離婚を切り出されたと言っていました。半年ほどたち、最終的に義母の介護に限界を覚えた妻は、実家へ帰ってしまいました。八方塞がりになった彼は、ようやく覚悟を決めることができました。プライドの高い彼は、「最後まで母の面倒を見ることができない嫌悪感」「母親を施設に預けることへの罪悪感」「親族や近隣住民への負い目」「福祉へのスティグマ(偏見、蔑視)」に苦しみ、これらの感情を消化するのに半年以上の時間を要したということでしょう』、「一部上場企業でのキャリアを歩んできた彼は、出世競争に敗れ、年齢とともに困難な状況に直面していました。 Aさんからの相談は、解決に至るまでにかなりの時間を要しました。半年くらいの間に、面談を5回も行いました。というのは、彼にとって都合が悪い事実を小出しにしてくるのです。最初から全て話してくれればいいのに……とも思いましたが、彼が心を整理するためには、それだけの時間が必要だったということなのでしょう」、プライドが高いのに、「出世競争に敗れ」た現実を受け入れるのは時間がかかる筈だ。
・『「施設より在宅介護のほうが安い」は間違い ビジネスケアラーの人たちの中は、Aさんと似た感情を持つ人が多くいます。「親を扶養から外し、生活保護を受給すれば施設に入れられますよ」とアドバイスしても、心の整理がつかず、仕事と家庭、そして介護のバランスを取ろうと苦悩しながら、在宅介護を続けています。 一方、親の側も、「施設はお金がかかるから」と考え、娘や息子の家で介護を受け続けます。実際には、子どもたちが買い物や食事、掃除洗濯、見守りといったコスト(お金や時間)を肩代わりしてくれているので、見かけ上、施設に入るよりも安くなっているに過ぎません。家事代行サービスを利用すれば、月額約10万円はかかるでしょう。 しかし、親の介護状況が悪化したり、認知症の症状が進んでいったりすると、子どもたちの感情は徐々にネガティブなものに変わっていきます。介護はいつ終わるかが分からない上、終結に至るまで7~8年かかるのが当たり前。しかも出産・育児と異なり、どんどん負担は重くなっていくのです。その間、老いて壊れていく親と閉じられた空間で時間を共有し続けるのですから、当初は親孝行と思っていた気持ちに変化が生じるのも自然なことです』、「介護はいつ終わるかが分からない上、終結に至るまで7~8年かかるのが当たり前。しかも出産・育児と異なり、どんどん負担は重くなっていくのです。その間、老いて壊れていく親と閉じられた空間で時間を共有し続けるのですから、当初は親孝行と思っていた気持ちに変化が生じるのも自然なことです」、その通りだ。
・『解決策をアドバイスしても、Aさんが納得しなかった理由は…… こうして家族で在宅介護を行った末に、親の死を迎えたビジネスケアラーたちが感じるのは、悲しみよりもむしろ安堵感です。長年の介護生活を経て、彼らは人生をやり直すことの難しさと、長い期間にわたる自己犠牲の日々を振り返り、亡くなった親に対するネガティブな気持ちを抱えながら生きていくことになるのです。これは悲しいことです。親への感謝や報恩の思いから始まった介護が、最終的には「親のせいで……」という恨みに変わることを意味します。お墓参りをしても、墓前で愚痴をこぼすようになってしまっては、天国の親御さんも浮かばれません。 東大卒のAさんのケースは、この問題の典型例です。私はAさんに、最初の面談のときから伝えてきました。 ・親にとって、(自宅で、介護の素人である嫁に介護してもらうより)施設のほうがはるかに安心・安全で快適 ・配偶者(妻)に義母の介護をする義務はない ・「お金がないから施設に入れない」ということはない。方法はある ・親は、自分のことで子どもの仕事や家庭に支障をきたすことを望んでいない ・ご自身の人生を取り戻してほしいし、配偶者にもそうしてあげてほしい 半年以上にわたる全5回の面談で、私が伝えたことは一貫して同じです。さらにAさんの母親の状態から考えると、個室で過ごさせるよりも、スタッフの出入りが頻繁な(特別養護老人ホーム、もしくは介護老人保健施設の)多床室がベターとも伝えていました。 公的施設だけでなく、最近は民間の施設でも生活保護受給者を受け入れるところが増えてきた、という話もしたのですが、今思うと、Aさん本人から経済事情について言及される前に余計なことを言ってしまったと、反省しています。高学歴でプライドが高い彼にしてみれば、「生活保護」はNGワード、禁句だったのです』、「高学歴でプライドが高い彼にしてみれば、「生活保護」はNGワード、禁句だったのです」、扱い難さでは、並外れているようだ。
・『東大卒の相談者が泣き崩れた瞬間 最終的にAさんは、なぜ母親を施設に入れると決心が付いたのか? そのきっかけは意外なものでした。 よくよく話を聞いてみると、彼は月額14万5000円までなら負担できると言うのです。それであれば生活保護を受けなくても余裕で施設に入れる、と伝えたところ、驚いたことに彼は、声を上げて泣きながらその場に崩れ落ちたのです。号泣も号泣、大号泣でした。いつも彼が行きつけにしているビストロの個室で会っていたのですが、本当に個室でよかったです。 それは、彼がはじめて感情をあらわにした瞬間でした。泣きじゃくりながら、繰り返し繰り返し、自分の情けなさを口にしていました。それから30分は話になりませんでした。でも、涙が枯れた後に今後の進め方についてガイダンスすると、すんなりと納得してもらうことができました。 彼には二つの選択肢を提示しました。具体的には、「都内の(特別養護老人ホームか介護老人保健施設の)多床室施設」と、「遠方にある民間施設、サ高住(医療法人が経営する、サービス付き高齢者向け住宅)の個室」です。結局、彼は南九州のサ高住を見学に行くことにし、同時に母親のショートステイの手配をしました』、「彼は月額14万5000円までなら負担できると言うのです。それであれば生活保護を受けなくても余裕で施設に入れる、と伝えたところ、驚いたことに彼は、声を上げて泣きながらその場に崩れ落ちたのです。号泣も号泣、大号泣でした・・・彼は南九州のサ高住を見学に行くことに」、なるほど。
・『「お金がないから在宅介護しかない」は誤解 しこたま涙を流した後、Aさんはつき物が落ちたように、穏やかな表情と口調になりました。人はこんなにも変わるんだ、とちょっと感動したほどです。「東大卒も人の子だな」なんて思ってしまったのは、私の東大コンプレックスでしょうか……。 涙を流すことで、心にたまっていた澱(おり)のような感情が解放され、気持ちが浄化されることを「カタルシス」と呼んだのは、古代ギリシャの哲学者アリストテレスです。東大卒ビジネスエリートの大号泣を目の当たりにして、2000年以上前にこのことを『悲劇論』の中で書き残したアリストテレスは、途方もなく偉大な人物だ……などと考えていたのでした。 冒頭に書いたとおり、ビジネスケアラーはどんどん増えています。ビジネスケアラーの皆さんに伝えたいのは、「自分で介護を行う以外にも選択肢がある」ということです。真の親孝行とは、仕事や家庭に支障をきたしながら、自己犠牲の下で親の介護をすることではありません。仕事を頑張って、幸せな家庭を築いて、毎日を笑顔で過ごしてほしい。心からそう願っています』、「ビジネスケアラーの皆さんに伝えたいのは、「自分で介護を行う以外にも選択肢がある」ということです。真の親孝行とは、仕事や家庭に支障をきたしながら、自己犠牲の下で親の介護をすることではありません。仕事を頑張って、幸せな家庭を築いて、毎日を笑顔で過ごしてほしい。心からそう願っています」、その通りだ。
先ずは、昨年12月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した株式会社リクシス創業者・代表取締役副社長 CSOの酒井 穣氏による「親の介護で一家離散、2000万円超の負担も…「ビジネスケアラー」の過酷すぎる現実」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/332342
・『2025年以降の日本では、団塊世代の親の介護に追われるビジネスケアラーが急速に増加すると予測されている。ビジネスケアラーとは、「働きながら介護する人」「仕事と介護を両立している人」のこと。介護にかかる莫大な費用に終わりの見えない介護期間……働き盛りの介護リスクにあなたは備えているだろうか。本稿は、酒井穣『ビジネスケアラー 働きながら親の介護をする人たち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『介護で仕事を辞めたら再就職できず できても年収は男性4割、女性5割減少 介護のために仕事を辞めてしまった場合、再就職までにかかる期間はどれくらいだと思いますか? この期間として統計的に最多となっているのは1年以上です(男性の38.5%、女性の52.2%)。1年以上も仕事から離れていて、条件のよい就職先が見つかると思いますか?現実として、運よくあらたな職場を得たとしても、収入は男性で4割減、女性で半減するというデータがあります。 介護を理由に仕事を辞めるなら、まず、1年以上収入が途絶え、再就職できたとしても今の半分程度の年収になっても生きていけるだけの貯金が必要です。貯金が足りないまま辞めてしまえば、親が資産家でもないかぎり、あなたは生活保護を申請することになります。 ご存じのとおり、生活保護は、申請さえすれば簡単に受けられるというものでもありません。仮に住宅ローンや自動車ローンが残っていれば、そうした資産を手放すことになり、一家離散という可能性さえ出てくるのです(脅しではなく、現実です。個人的にも、こうして一家離散したケースを複数聞いています) 介護は、いちど始まると、いつ終わりになるか予想ができません。子育てとは真逆で、介護は、時間とともに負担が増えるという特徴もあります。 介護期間の目安となるのは、平均寿命から健康寿命(心身健康でいられる年数)を引いた年数です。日本でこれは、だいたい10年程度(男性8.7年、女性12.1年/2019年)になります。ですから介護生活は、少なくとも10年は続くことを想定しておく必要があります。) しかも、この期間のうちに、老化をともないながら、親の健康状態は悪化していくのが普通です。はじめは半身不随などの身体的な問題だったところに、認知症(重度化すると意思の疎通ができなくなる)も重なってきたりします。 仕事を辞め年収が半分になって10年も経つと、ビジネスケアラーとして働き続けた場合からは想像もできないほどの貧困になります。 さらに今後の日本は、物価高になっていくと予想されています。いつ終わるともしれない介護に悩まされながら金銭的にも厳しくなると、精神的な余裕がなくなり、虐待にもつながることもあります。 あなたの親は、自分の愛する子どもが、自分の介護のせいで、そうした状態になることを本当に望んでいるでしょうか』、「介護期間の目安となるのは、平均寿命から健康寿命(心身健康でいられる年数)を引いた年数です。日本でこれは、だいたい10年程度(男性8.7年、女性12.1年/2019年)になります。ですから介護生活は、少なくとも10年は続くことを想定しておく必要があります・・・仕事を辞め年収が半分になって10年も経つと、ビジネスケアラーとして働き続けた場合からは想像もできないほどの貧困になります」、なるほど。
・『介護の負担額は平均月7、8万円 介護期間の見積もりは平均14年 金銭的な話をすると「うちの親にはそれなりに資産があるから大丈夫」と考える人もいるかもしれません。しかしそれは、本当でしょうか。先回りしておきますが、介護には相当なお金がかかり、仮に資産が十分にあったとしても、大丈夫ではありません。 そもそも、介護にかかるお金(介護保険でカバーされない自己負担部分)がいくらくらいになるのか、誰もが不安に思っているでしょう。 これを実際のデータで見ると、バリアフリー化や介護ベッド、緊急対応の交通費や宿泊費といった初期費用(一時費用/自己負担)としてかかっているのは、平均で80万~90万円程度でした(この数字はバラツキが大きいため注意も必要です)。また、毎月かかっている費用(自己負担)は、平均で7万~8万円程度になります。 脅しではなく、日本の社会保障は、少子高齢化と税収の低迷を受けて、劣化していくでしょう。ですから、このような介護にかかるお金の平均もまた、今後、必ず上がっていきます。そのうえ、おそらくは物価も上がっていくことになるのです。 冷静に考えれば、これからの介護の費用が実質的に上がっていくことは、想定に入れておく必要があることがわかるでしょう。 それでは実際に、介護をしている人々は、どう考えているのでしょう。) まず、実際に想定されている介護期間の平均は、169.4カ月(14年1カ月)でした。先に10年は想定しておくべきであることを述べましたが、多くの人は、それ以上の期間を想定して準備しているのです。なんとなく、子育てと同じ程度の期間が想定されていることは興味深いですね。 もちろん、実際にこれだけの期間がかかるかどうかは、それぞれに事情が異なるため、なんとも言えないところではあります。ただ、平均的には、それだけの期間の見積もりをしているという点に位は意味があります。 客観的に考えると、毎月の実質的な費用(自己負担)となる平均7万~8万円が、169.4カ月間かかり続けることを想定するのが普通ということです。 ここから介護のランニングコストは、合計で約1186万~1355万円となります。初期費用も考えれば、1266万~1445万円の費用です。 かなりの大金ですが、しかもこれは平均であって、運が悪ければもっとかかることも考えておかなくてはなりません。 さらにこの想定では、介護が必要になる人が1人という計算になっていることにも注意してください。両親同時に介護が必要になるケースも多数あり、その場合は、単純に2倍とはならないものの、2000万円以上の準備が必要になると考えられます。 ピンピンコロリと、介護を必要とせずに亡くなる人(急死)は、全体の5%程度に過ぎません。基本的には、誰もが、何らかの介護を受けながら亡くなっていくと想定しておくべきでしょう。 しかも、ここまでの話は、あくまでも介護にかかる費用に関することに限定されています。このほかにも家賃や住宅ローン、生活費や各種税金などのためのお金も必要になることを忘れないでください。長い闘病生活などがある場合もまた、想定しておくべき費用は大きくなります。 ここで、日本の高齢者の貯蓄額は、世帯平均で1268万円です。この数字だけを見ると、意外と貯蓄があるように感じられるかもしれません。これだけの貯蓄があれば、年金と合わせれば、2000万円程度の介護費用はなんとかなりそうにも感じられます。 しかしこの数字は、富裕層が押し上げているにすぎません。実際に、貯蓄額が1000万円以下の世帯は、全体の過半数(57.9%)になっています。生活費のことを考えれば、約6割の高齢者が、介護のための費用が準備できていないと結論づけることができるのです。) ここまでの話を総括すると、・親に2000万円を超える預貯金があって年金もしっかりもらえている ・両親が同時ではなく、どちらか一方の介護だけが必要 という条件が成立するときだけ、ギリギリではあるものの、親の介護のために子どもがお金を持ち出す必要がない可能性もあります。 ただ、この2つの条件が当てはまる人は少数というのが現実です。仮に、この2つの条件に当てはまる場合でも、生活レベルが高く、毎月の出費も平均以上ということであれば、安心はできません。 親の介護費用は、親の年金や預貯金でやりくりするのが基本です。しかし現実には、親の介護のために子どもがお金を持ち出すというのは、程度問題ではあれ、まず避けられません。 そんなとき、自分が介護で仕事を辞めていたらどうなるでしょう。自分の収入が途絶えていたら、持ち出すお金もありません。そうなれば、親の介護は、介護のプロにお願いすることもできず、自分の手でやらなければならなくなるでしょう。 それでも、なんとか自分の手で介護を乗り切れたとしましょう。しかし将来、いざ自分自身に介護が必要になった場合は、どうするのでしょう。誰かに介護をしてもらう必要が出てきたとき、自分のための貯蓄が不十分であれば、一体、誰に自分の介護をお願いするのでしょう。 親の介護に対してお金を持ち出すためだけでなく、将来の自分自身に必要となる介護のお金のためにも、介護離職という選択肢は、非常に厳しい(とても贅沢な)ものになります』、「ピンピンコロリと、介護を必要とせずに亡くなる人(急死)は、全体の5%程度に過ぎません。基本的には、誰もが、何らかの介護を受けながら亡くなっていくと想定しておくべきでしょう」、誰もが理想とする「ピンピンコロリ」は「全体の5%程度に過ぎません・・・実際に、貯蓄額が1000万円以下の世帯は、全体の過半数(57.9%)になっています。生活費のことを考えれば、約6割の高齢者が、介護のための費用が準備できていないと結論づけることができる・・・親の介護に対してお金を持ち出すためだけでなく、将来の自分自身に必要となる介護のお金のためにも、介護離職という選択肢は、非常に厳しい(とても贅沢な)ものになります」、なるほど。
次に、本年1月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「2040年「要介護人口1000万人」時代、介護費用1.4倍と負担さらに重く」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337375
・『介護地獄はますます深刻化する 介護のための離職者も10万人に近づく 介護が必要な要支援・介護認定者数は、2021年度末で約690 万人 となった(第1号被保険者だけでは約680万人、注1)。公的介護保険制度がスタートした00年度の認定者数約256万人に比べると、約2.7倍だ。 一方で、厚生労働省の雇用動向調査によると、21年に個人的理由で離職した人のうち「介護・看護」を理由とする人は約9.5万人に上った。いったん要介護状態になると、そこから抜け出せないことが多い。家族に要介護者が出れば、その家族は大きな影響を受けざるをえない。 介護は多くの人が直面する深刻な問題となっているが、40年頃には、要介護認定者数は約988万人に達すると推計されている(注2)。 老々介護や介護離職など「介護地獄」は、今後はますます深刻化する。介護問題への対応は社会全体の最重要課題だ』、「介護は多くの人が直面する深刻な問題となっているが、40年頃には、要介護認定者数は約988万人に達すると推計されている」、なるほど。
・『介護認定、65歳以上では全体の2割だが 85歳以上では6割、介護を受けないのは稀なこと 介護保険制度のもとで、介護サービスの対象になっている65歳以上の第1号被保険者のなかで、何らかの介護認定を受けている人は全体の18.9%、つまり2割弱だ。(図表1) 決して低い比率ではないが、それでも、5人に4人は介護・支援が必要にならないような気がする。 (図表1 第1号被保険者の状況 はリンク先参照) しかし、実はそうではない。このことは、データで確かめられる。要支援・介護になる人の比率を年齢階級別に示すと、図表2のとおりだ。 18.9%という数字は、第1号被保険者の全ての年齢階級についての平均値だが、要支援・介護の必要性は年齢が上がると急上昇するからだ。 (図表2 年齢別要支援要介護比率(男女計、単位 %) はリンク先参照) 図表2に示されているように、要支援・介護の比率は、85歳以上になると58.8%にもなる。夫婦が同年齢と仮定すれば、夫婦のどちらも要支援・介護になる確率が34.6%もある。どちらかが要支援・介護になる確率は48.9%と、半分近くになる。どちらも要支援・介護にならない確率は、17.0%でしかない。 85歳以上になると、介護という問題から全く逃れられていられるのはむしろ稀な事態になってしまうのだ。何かの拍子に転んで骨折し、介護が必要な状況になるということなどがごく普通に起きてしまう。 このように、18.9%という数字は大いにミスリーディングだ。介護問題の深刻度は、年齢の差を考慮しない平均値では理解できないものなのだ。 しかも介護は高齢者だけの問題ではない。若くて自分自身は介護が必要なくても、両親が要介護状態になるという問題が起きる。 こう考えると、介護問題は全ての日本人にとって最重要の問題の一つということができる』、「18.9%という数字は、第1号被保険者の全ての年齢階級についての平均値だが、要支援・介護の必要性は年齢が上がると急上昇・・・要支援・介護の比率は、85歳以上になると58.8%にもなる。夫婦が同年齢と仮定すれば、夫婦のどちらも要支援・介護になる確率が34.6%もある。どちらかが要支援・介護になる確率は48.9%と、半分近くになる。どちらも要支援・介護にならない確率は、17.0%でしかない・・・介護問題の深刻度は、年齢の差を考慮しない平均値では理解できないものなのだ。 しかも介護は高齢者だけの問題ではない。若くて自分自身は介護が必要なくても、両親が要介護状態になるという問題が起きる」、なるほど。
・『介護費用、単純計算で2040年に1.4倍 労働人口は8割に減少、負担はより重く 公的介護制度が維持されることを誰もが切実に望んでいる。だが、それは決して容易なことではない。 要介護認定者数は2040年頃ピークになり、「要介護人口1000万人」時代になる。現在、約690 万人が988万人になるのだから、単純に考えれば介護に要する費用は現在の1.43倍になる。 財源の面から制度の維持がこのままでは難しくなるだろう。 現在、介護保険からの給付金に要する費用は、保険料50%、公費50%で分担している。公費のうちの負担割合は国が25%、都道府県が12.5%、市町村が12.5%だ。この分担割合を変えないとすれば、公費も保険料総額も1.43倍に引き上げる必要がある。 これ自体が極めて困難な課題だが、負担のかなりの部分を背負わなければならない労働年齢人口(15~64歳の人口)が、20年の 7508万人から40年の6213万人へと約82.7%に減るため、労働人口一人当たりでみれば負担率はもっと上がる。 第1号被保険者の保険料の21年の全国平均は1カ月あたり6014円だ。しかし、所得が多ければ、年間保険料は20万円を超えている』、「「要介護人口1000万人」時代になる。現在、約690 万人が988万人になるのだから、単純に考えれば介護に要する費用は現在の1.43倍になる。 財源の面から制度の維持がこのままでは難しくなるだろう・・・労働年齢人口(15~64歳の人口)が、20年の 7508万人から40年の6213万人へと約82.7%に減るため、労働人口一人当たりでみれば負担率はもっと上がる」、なるほど。
・『高所得者の保険料や自己負担 24年度に引き上げの議論 2023年11月6日の社会保障審議会の介護保険部会で、介護保険料の引き上げ案が示された。部会では65歳以上の高齢者について、給与や年金などの年間所得水準が高い人たちの介護保険料を引き上げる案が了承され、24年度の制度改正での実現を目指すこととされた。 厚生労働省は、24年度から引き上げる方針だ。給与や配当、年金など年間の合計所得420万円以上の人を対象に、それぞれ所得に応じて階層を細分化して負担額を上げる。 介護サービスの負担は保険料だけではない。介護保険制度では、介護サービスを受ける人の自己負担がある。自己負担の仕組みは、サービスの種類や本人の所得などによって決まる極めて複雑なものになっているが、基本は次のとおりだ。 自己負担率は基本1割だが、所得が多くなれば2割・3割負担になる。所得が多く、介護費用が多額であれば、自己負担額もかなり高くなる(ただし、「高額介護サービス費における負担限度額」の制度があるため、無制限に増えるわけではない) ただそれでも所得が高い階層では月額4万4400円だから、かなりの額だ。 政府は、24年度に介護サービス利用費の自己負担についても、2割自己負担の対象を広げる方針を示し、少子化対策の財源確保に向けた社会保障改革の計画「改革工程」の素案に盛り込んだ。 改革工程は、23年12月5日の経済財政諮問会議で示され、28年度までに金融所得や資産を考慮した負担の在り方を検討するという。 当初は23年中に自己負担の拡大の具体案をまとめるとされていたが、この問題の検討は24年度以降に引き続き行われることになる。 介護地獄の緩和のためには負担増の問題にきちんと向き合う必要がある。 注1 厚生労働省「令和3年度 介護保険事業状況報告(年報)」。なお、第1号被保険者は65歳以上の人で、第2号保険者は40歳以上65歳未満の医療保険加入者。 注2 経済産業省「将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会」(平成30年3月)』、「自己負担率は基本1割だが、所得が多くなれば2割・3割負担になる。所得が多く、介護費用が多額であれば、自己負担額もかなり高くなる(ただし、「高額介護サービス費における負担限度額」の制度があるため、無制限に増えるわけではない) ただそれでも所得が高い階層では月額4万4400円だから、かなりの額だ・・・28年度までに金融所得や資産を考慮した負担の在り方を検討するという・・・介護地獄の緩和のためには負担増の問題にきちんと向き合う必要がある」、その通りだが、高所得層には高負担を受け入れる覚悟が必要なようだ。
第三に、1月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したNPO法人二十四の瞳・社会福祉士の山崎 宏氏による「東大卒エリートが泣きじゃくった日…アルツハイマーの母を介護、NGワードだった「生活保護」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/337898
・『日本では年々、働きながら在宅介護を行う「ビジネスケアラー」が増えています。しかし、子育てと違い、何年で終わるか分からない上にだんだん負担が重くなっていく介護を自宅で行うのは本当に大変です。仕事との両立に悩んだり、妻に離婚されてしまったりと、さらなる不幸に襲われることも珍しくありません。筆者のところにも、たくさんのビジネスケアラーから相談が持ちかけられます。今回は、ある東大卒エリートのケースを紹介します』、興味深そうだ。
・『今年、ビジネスケアラーは300万人を超える 2025年、団塊世代の全員が75歳以上の後期高齢者になり、働きながら在宅介護を行う「ビジネスケアラー」が300万人を超える見込みです。そうなると注目されるのが、介護離職問題です。 「人は誰しも、自分は正しいと思っている。特別だ、人とは違う、と思っている。(本気になれば)まだまだ自分はデキると思っている」 何かの本でそんなフレーズを読んだことがあります。長年いろいろな人の相談に応じていると、この傾向がもっとも顕著だと感じるのが高学歴の人です』、「2025年、団塊世代の全員が75歳以上の後期高齢者になり、働きながら在宅介護を行う「ビジネスケアラー」が300万人を超える見込みです。そうなると注目されるのが、介護離職問題です」、なるほど。
・『東大卒ビジネスエリートからの相談 東京大学を卒業し、ビジネス界で活躍してきた60歳の男性、Aさん。学歴が高いことで自己評価が高い彼は、「自分は人とは違う、まだまだデキる」と思っているタイプです。東大を卒業した後、官僚や政治家ではなく、一部上場企業でのキャリアを歩んできた彼は、出世競争に敗れ、年齢とともに困難な状況に直面していました。 Aさんからの相談は、解決に至るまでにかなりの時間を要しました。半年くらいの間に、面談を5回も行いました。というのは、彼にとって都合が悪い事実を小出しにしてくるのです。最初から全て話してくれればいいのに……とも思いましたが、彼が心を整理するためには、それだけの時間が必要だったということなのでしょう。 Aさんの92歳の母親はアルツハイマー型認知症を患い、第二フェーズに突入していました。第二フェーズとは、初期の認知障害フェーズから、徘徊(はいかい)や暴言、不潔行為といった周辺症状(問題行動)へ移行した状態です。 最初に相談を受けたとき、Aさんは、5年以上介護を続けている64歳の妻から離婚を切り出されたと言っていました。半年ほどたち、最終的に義母の介護に限界を覚えた妻は、実家へ帰ってしまいました。八方塞がりになった彼は、ようやく覚悟を決めることができました。プライドの高い彼は、「最後まで母の面倒を見ることができない嫌悪感」「母親を施設に預けることへの罪悪感」「親族や近隣住民への負い目」「福祉へのスティグマ(偏見、蔑視)」に苦しみ、これらの感情を消化するのに半年以上の時間を要したということでしょう』、「一部上場企業でのキャリアを歩んできた彼は、出世競争に敗れ、年齢とともに困難な状況に直面していました。 Aさんからの相談は、解決に至るまでにかなりの時間を要しました。半年くらいの間に、面談を5回も行いました。というのは、彼にとって都合が悪い事実を小出しにしてくるのです。最初から全て話してくれればいいのに……とも思いましたが、彼が心を整理するためには、それだけの時間が必要だったということなのでしょう」、プライドが高いのに、「出世競争に敗れ」た現実を受け入れるのは時間がかかる筈だ。
・『「施設より在宅介護のほうが安い」は間違い ビジネスケアラーの人たちの中は、Aさんと似た感情を持つ人が多くいます。「親を扶養から外し、生活保護を受給すれば施設に入れられますよ」とアドバイスしても、心の整理がつかず、仕事と家庭、そして介護のバランスを取ろうと苦悩しながら、在宅介護を続けています。 一方、親の側も、「施設はお金がかかるから」と考え、娘や息子の家で介護を受け続けます。実際には、子どもたちが買い物や食事、掃除洗濯、見守りといったコスト(お金や時間)を肩代わりしてくれているので、見かけ上、施設に入るよりも安くなっているに過ぎません。家事代行サービスを利用すれば、月額約10万円はかかるでしょう。 しかし、親の介護状況が悪化したり、認知症の症状が進んでいったりすると、子どもたちの感情は徐々にネガティブなものに変わっていきます。介護はいつ終わるかが分からない上、終結に至るまで7~8年かかるのが当たり前。しかも出産・育児と異なり、どんどん負担は重くなっていくのです。その間、老いて壊れていく親と閉じられた空間で時間を共有し続けるのですから、当初は親孝行と思っていた気持ちに変化が生じるのも自然なことです』、「介護はいつ終わるかが分からない上、終結に至るまで7~8年かかるのが当たり前。しかも出産・育児と異なり、どんどん負担は重くなっていくのです。その間、老いて壊れていく親と閉じられた空間で時間を共有し続けるのですから、当初は親孝行と思っていた気持ちに変化が生じるのも自然なことです」、その通りだ。
・『解決策をアドバイスしても、Aさんが納得しなかった理由は…… こうして家族で在宅介護を行った末に、親の死を迎えたビジネスケアラーたちが感じるのは、悲しみよりもむしろ安堵感です。長年の介護生活を経て、彼らは人生をやり直すことの難しさと、長い期間にわたる自己犠牲の日々を振り返り、亡くなった親に対するネガティブな気持ちを抱えながら生きていくことになるのです。これは悲しいことです。親への感謝や報恩の思いから始まった介護が、最終的には「親のせいで……」という恨みに変わることを意味します。お墓参りをしても、墓前で愚痴をこぼすようになってしまっては、天国の親御さんも浮かばれません。 東大卒のAさんのケースは、この問題の典型例です。私はAさんに、最初の面談のときから伝えてきました。 ・親にとって、(自宅で、介護の素人である嫁に介護してもらうより)施設のほうがはるかに安心・安全で快適 ・配偶者(妻)に義母の介護をする義務はない ・「お金がないから施設に入れない」ということはない。方法はある ・親は、自分のことで子どもの仕事や家庭に支障をきたすことを望んでいない ・ご自身の人生を取り戻してほしいし、配偶者にもそうしてあげてほしい 半年以上にわたる全5回の面談で、私が伝えたことは一貫して同じです。さらにAさんの母親の状態から考えると、個室で過ごさせるよりも、スタッフの出入りが頻繁な(特別養護老人ホーム、もしくは介護老人保健施設の)多床室がベターとも伝えていました。 公的施設だけでなく、最近は民間の施設でも生活保護受給者を受け入れるところが増えてきた、という話もしたのですが、今思うと、Aさん本人から経済事情について言及される前に余計なことを言ってしまったと、反省しています。高学歴でプライドが高い彼にしてみれば、「生活保護」はNGワード、禁句だったのです』、「高学歴でプライドが高い彼にしてみれば、「生活保護」はNGワード、禁句だったのです」、扱い難さでは、並外れているようだ。
・『東大卒の相談者が泣き崩れた瞬間 最終的にAさんは、なぜ母親を施設に入れると決心が付いたのか? そのきっかけは意外なものでした。 よくよく話を聞いてみると、彼は月額14万5000円までなら負担できると言うのです。それであれば生活保護を受けなくても余裕で施設に入れる、と伝えたところ、驚いたことに彼は、声を上げて泣きながらその場に崩れ落ちたのです。号泣も号泣、大号泣でした。いつも彼が行きつけにしているビストロの個室で会っていたのですが、本当に個室でよかったです。 それは、彼がはじめて感情をあらわにした瞬間でした。泣きじゃくりながら、繰り返し繰り返し、自分の情けなさを口にしていました。それから30分は話になりませんでした。でも、涙が枯れた後に今後の進め方についてガイダンスすると、すんなりと納得してもらうことができました。 彼には二つの選択肢を提示しました。具体的には、「都内の(特別養護老人ホームか介護老人保健施設の)多床室施設」と、「遠方にある民間施設、サ高住(医療法人が経営する、サービス付き高齢者向け住宅)の個室」です。結局、彼は南九州のサ高住を見学に行くことにし、同時に母親のショートステイの手配をしました』、「彼は月額14万5000円までなら負担できると言うのです。それであれば生活保護を受けなくても余裕で施設に入れる、と伝えたところ、驚いたことに彼は、声を上げて泣きながらその場に崩れ落ちたのです。号泣も号泣、大号泣でした・・・彼は南九州のサ高住を見学に行くことに」、なるほど。
・『「お金がないから在宅介護しかない」は誤解 しこたま涙を流した後、Aさんはつき物が落ちたように、穏やかな表情と口調になりました。人はこんなにも変わるんだ、とちょっと感動したほどです。「東大卒も人の子だな」なんて思ってしまったのは、私の東大コンプレックスでしょうか……。 涙を流すことで、心にたまっていた澱(おり)のような感情が解放され、気持ちが浄化されることを「カタルシス」と呼んだのは、古代ギリシャの哲学者アリストテレスです。東大卒ビジネスエリートの大号泣を目の当たりにして、2000年以上前にこのことを『悲劇論』の中で書き残したアリストテレスは、途方もなく偉大な人物だ……などと考えていたのでした。 冒頭に書いたとおり、ビジネスケアラーはどんどん増えています。ビジネスケアラーの皆さんに伝えたいのは、「自分で介護を行う以外にも選択肢がある」ということです。真の親孝行とは、仕事や家庭に支障をきたしながら、自己犠牲の下で親の介護をすることではありません。仕事を頑張って、幸せな家庭を築いて、毎日を笑顔で過ごしてほしい。心からそう願っています』、「ビジネスケアラーの皆さんに伝えたいのは、「自分で介護を行う以外にも選択肢がある」ということです。真の親孝行とは、仕事や家庭に支障をきたしながら、自己犠牲の下で親の介護をすることではありません。仕事を頑張って、幸せな家庭を築いて、毎日を笑顔で過ごしてほしい。心からそう願っています」、その通りだ。
タグ:酒井 穣氏による「親の介護で一家離散、2000万円超の負担も…「ビジネスケアラー」の過酷すぎる現実」 ダイヤモンド・オンライン 「一部上場企業でのキャリアを歩んできた彼は、出世競争に敗れ、年齢とともに困難な状況に直面していました。 Aさんからの相談は、解決に至るまでにかなりの時間を要しました。半年くらいの間に、面談を5回も行いました。というのは、彼にとって都合が悪い事実を小出しにしてくるのです。最初から全て話してくれればいいのに……とも思いましたが、彼が心を整理するためには、それだけの時間が必要だったということなのでしょう」、プライドが高いのに、「出世競争に敗れ」た現実を受け入れるのは時間がかかる筈だ。 「2025年、団塊世代の全員が75歳以上の後期高齢者になり、働きながら在宅介護を行う「ビジネスケアラー」が300万人を超える見込みです。そうなると注目されるのが、介護離職問題です」、なるほど。 山崎 宏氏による「東大卒エリートが泣きじゃくった日…アルツハイマーの母を介護、NGワードだった「生活保護」」 「自己負担率は基本1割だが、所得が多くなれば2割・3割負担になる。所得が多く、介護費用が多額であれば、自己負担額もかなり高くなる(ただし、「高額介護サービス費における負担限度額」の制度があるため、無制限に増えるわけではない) ただそれでも所得が高い階層では月額4万4400円だから、かなりの額だ・・・28年度までに金融所得や資産を考慮した負担の在り方を検討するという・・・介護地獄の緩和のためには負担増の問題にきちんと向き合う必要がある」、その通りだが、高所得層には高負担を受け入れる覚悟が必要なようだ。 「「要介護人口1000万人」時代になる。現在、約690 万人が988万人になるのだから、単純に考えれば介護に要する費用は現在の1.43倍になる。 財源の面から制度の維持がこのままでは難しくなるだろう・・・労働年齢人口(15~64歳の人口)が、20年の 7508万人から40年の6213万人へと約82.7%に減るため、労働人口一人当たりでみれば負担率はもっと上がる」、なるほど。 若くて自分自身は介護が必要なくても、両親が要介護状態になるという問題が起きる」、なるほど。 「18.9%という数字は、第1号被保険者の全ての年齢階級についての平均値だが、要支援・介護の必要性は年齢が上がると急上昇・・・要支援・介護の比率は、85歳以上になると58.8%にもなる。夫婦が同年齢と仮定すれば、夫婦のどちらも要支援・介護になる確率が34.6%もある。どちらかが要支援・介護になる確率は48.9%と、半分近くになる。どちらも要支援・介護にならない確率は、17.0%でしかない・・・介護問題の深刻度は、年齢の差を考慮しない平均値では理解できないものなのだ。 しかも介護は高齢者だけの問題ではない。 「介護は多くの人が直面する深刻な問題となっているが、40年頃には、要介護認定者数は約988万人に達すると推計されている」、なるほど。 野口悠紀雄氏による「2040年「要介護人口1000万人」時代、介護費用1.4倍と負担さらに重く」 護のお金のためにも、介護離職という選択肢は、非常に厳しい(とても贅沢な)ものになります」、なるほど。 「ピンピンコロリと、介護を必要とせずに亡くなる人(急死)は、全体の5%程度に過ぎません。基本的には、誰もが、何らかの介護を受けながら亡くなっていくと想定しておくべきでしょう」、誰もが理想とする「ピンピンコロリ」は「全体の5%程度に過ぎません・・・実際に、貯蓄額が1000万円以下の世帯は、全体の過半数(57.9%)になっています。生活費のことを考えれば、約6割の高齢者が、介護のための費用が準備できていないと結論づけることができる・・・親の介護に対してお金を持ち出すためだけでなく、将来の自分自身に必要となる介 「ビジネスケアラーの皆さんに伝えたいのは、「自分で介護を行う以外にも選択肢がある」ということです。真の親孝行とは、仕事や家庭に支障をきたしながら、自己犠牲の下で親の介護をすることではありません。仕事を頑張って、幸せな家庭を築いて、毎日を笑顔で過ごしてほしい。心からそう願っています」、その通りだ。 「彼は月額14万5000円までなら負担できると言うのです。それであれば生活保護を受けなくても余裕で施設に入れる、と伝えたところ、驚いたことに彼は、声を上げて泣きながらその場に崩れ落ちたのです。号泣も号泣、大号泣でした・・・彼は南九州のサ高住を見学に行くことに」、なるほど。 「高学歴でプライドが高い彼にしてみれば、「生活保護」はNGワード、禁句だったのです」、扱い難さでは、並外れているようだ。 「介護はいつ終わるかが分からない上、終結に至るまで7~8年かかるのが当たり前。しかも出産・育児と異なり、どんどん負担は重くなっていくのです。その間、老いて壊れていく親と閉じられた空間で時間を共有し続けるのですから、当初は親孝行と思っていた気持ちに変化が生じるのも自然なことです」、その通りだ。 「介護期間の目安となるのは、平均寿命から健康寿命(心身健康でいられる年数)を引いた年数です。日本でこれは、だいたい10年程度(男性8.7年、女性12.1年/2019年)になります。ですから介護生活は、少なくとも10年は続くことを想定しておく必要があります・・・仕事を辞め年収が半分になって10年も経つと、ビジネスケアラーとして働き続けた場合からは想像もできないほどの貧困になります」、なるほど。 酒井穣『ビジネスケアラー 働きながら親の介護をする人たち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン) (その9)(親の介護で一家離散 2000万円超の負担も…「ビジネスケアラー」の過酷すぎる現実、2040年「要介護人口1000万人」時代 介護費用1.4倍と負担さらに重く、東大卒エリートが泣きじゃくった日…アルツハイマーの母を介護 NGワードだった「生活保護」) 介護
災害(その15)(“能登群発地震”の原因は「東京ドーム23杯分の水」 去年5月の地震後に研究者が指摘していた「一番怖いシナリオ」、能登半島地震、北陸の観光地から上がる「悲鳴」 風評被害に資金繰り 閉業を考える温泉旅館も、「次は富士山の大噴火」は本当か?調べてわかった現状と“不安な備え”、富士山噴火でこの国が「大打撃」を受ける…火山灰の「意外な恐怖」) [社会]
災害については、2023年6月7日に取上げた。今日は、(その15)(“能登群発地震”の原因は「東京ドーム23杯分の水」 去年5月の地震後に研究者が指摘していた「一番怖いシナリオ」、能登半島地震、北陸の観光地から上がる「悲鳴」 風評被害に資金繰り 閉業を考える温泉旅館も、「次は富士山の大噴火」は本当か?調べてわかった現状と“不安な備え”、富士山噴火でこの国が「大打撃」を受ける…火山灰の「意外な恐怖」)である。
先ずは、先ずは、本年1月2日付けTBSニュースDIGが掲載した「“能登群発地震”の原因は「東京ドーム23杯分の水」 去年5月の地震後に研究者が指摘していた「一番怖いシナリオ」」を紹介しよう。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/538817?display=1
・『元日に石川県能登地方で最大震度7を観測した地震。被災地では大規模火災や津波の被害が徐々に明らかになってきています。珠洲市周辺ではおよそ3年にわたって活発な地震活動が続いていて、珠洲市では2023年5月にも、震度6強を観測していました。 この震度6強の後、研究者の間では大きく分けて2つのシナリオが考えられていました。そのうち「一番怖いシナリオ」と考えていたのが、「流体が活断層の深い所に達して、それがきっかけで大地震が起こる」こと。2023年5月のM6.5の地震が、“珠洲沖セグメント”と呼ばれる活断層でも地震を誘発するという考えです。 京都大学防災研究所の西村卓也教授は「活断層が隣にあるということは、隣で火事が起こっているのと同じような状態。危ない状態であることは間違いない」と指摘していました。2023年6月に取材した解説記事です。 (以下、情報は2023年6月時点のもの) 石川県珠洲市(すずし)周辺では2年半にわたって活発な地震活動が続いています。震度1以上の地震はこれまで400回以上に上り、2023年5月5日にはマグニチュード(M)6.5の地震で最大震度6強の揺れを観測しました。政府の地震調査委員会は、一連の地震活動は「当分続く可能性がある」として、今後も強い揺れに注意するよう呼びかけています。地震はなぜ起こるのか、いつまで続くのか。研究の最前線を取材しました』、「石川県珠洲市(すずし)周辺では2年半にわたって活発な地震活動が続いています。震度1以上の地震はこれまで400回以上に上り、2023年5月5日にはマグニチュード(M)6.5の地震で最大震度6強の揺れを観測しました。政府の地震調査委員会は、一連の地震活動は「当分続く可能性がある」として、今後も強い揺れに注意するよう呼びかけています」、突然ではなく、起こるべくして起きたようだ。
・『能登半島先端にある“本州最少の市” 石川県珠洲市は、県庁所在地の金沢市から車で2時間余り、日本海に突き出た能登半島の先端に位置しています。塩田(えんでん)と呼ばれる砂浜で海水を乾かして作る塩や、市内で産出される珪藻土を使った七輪、独特の黒色に仕上がる「珠洲焼」などが特産品として知られています。一方、人口約1万3000人のうち、半数以上は65歳以上の高齢者で、深刻な過疎化・高齢化に直面しています。 能登半島周辺では過去にも規模の大きな地震が発生しています。1993年2月7日の能登半島沖地震(M6.6)では、当時の震度階級で、輪島市で震度5を観測し、珠洲市を中心に30人がけがをしました。また1人が死亡、338人がけがをした2007年3月25日の能登半島地震(M6.9)では、珠洲市でも震度5強の揺れを記録しました』、どうやら「能登半島」は「地震」の巣のようだ。
・『「震度5弱~6強ありうる」 研究者が2年前から警鐘 珠洲市周辺で地震活動が活発になったのは2020年12月ごろ。当初は、珠洲市南部の飯田地区周辺で活動が活発でしたが、その後、震源が徐々に西側の若山地区や、日本海に面した大谷地区・狼煙(のろし)地区など、北側・東側の領域にも広がっていき、東西南北4つの震源域に分類されるようになりました。 研究者の間では、早い段階から規模の大きな地震への警戒が高まっていました。金沢大学の平松良浩教授は2021年7月の取材に対し「震度5弱、6弱、6強の揺れになることは考えられる」と指摘していました。 2021年9月16日にはM5.1の地震が発生し、珠洲市で最大震度5弱を観測。さらに2022年6月19日にはM5.4(最大震度6弱)、翌20日にはM5.0(5強)の地震が相次いで発生しました。地震活動はその後も収束することなく、震度1以上の地震は2021年は70回、2022年は195回に上りました』、「研究者の間では、早い段階から規模の大きな地震への警戒が高まっていました。金沢大学の平松良浩教授は2021年7月の取材に対し「震度5弱、6弱、6強の揺れになることは考えられる」と指摘していました。 2021年9月16日にはM5.1の地震が発生し、珠洲市で最大震度5弱を観測。さらに2022年6月19日にはM5.4(最大震度6弱)、翌20日にはM5.0(5強)の地震が相次いで発生しました。地震活動はその後も収束することなく、震度1以上の地震は2021年は70回、2022年は195回に上りました」、なるほど。
・『「群発地震」とは 収束まで数年かかるケースも このように長い期間にわたって続く地震活動を「群発地震」と呼びます。 日本国内で起こる典型は「本震―余震型」と呼ばれるもので、一度大きな地震が発生した後、時間が経過するにつれて余震の回数が少なくなっていくパターンです。これに対し「群発地震」は、明確に本震と呼べる大きな地震がなく、長期間にわたって地震を繰り返していく現象です。収束まで数年かかるケースもあり、1965年から1970年にかけて長野県で発生した「松代群発地震」では震度1以上の有感地震が6万回を超えました。 群発地震は活火山の周辺で多くみられる現象ですが、珠洲市の周辺では活火山は知られていません。なぜ火山がない地域で、これほど長く地震が続いているのでしょうか』、「日本国内で起こる典型は「本震―余震型」と呼ばれるもので、一度大きな地震が発生した後、時間が経過するにつれて余震の回数が少なくなっていくパターンです。これに対し「群発地震」は、明確に本震と呼べる大きな地震がなく、長期間にわたって地震を繰り返していく現象です。収束まで数年かかるケースもあり、1965年から1970年にかけて長野県で発生した「松代群発地震」では震度1以上の有感地震が6万回を超えました。 群発地震は活火山の周辺で多くみられる現象ですが、珠洲市の周辺では活火山は知られていません。なぜ火山がない地域で、これほど長く地震が続いているのでしょうか」、確かに不思議だ。
・『地震とともに始まった“謎の地殻変動” 地震の原因を探るうえで1つの鍵になったのが、地震活動とともに始まった“謎の地殻変動”です。 地殻変動は、地球のマントルを覆う「地殻」に力が加わり、年に数ミリから数センチ程度、ゆっくりと動く現象です。こうした大地のわずかな動きを捉えるために、人工衛星からの電波を受信して地上の位置を正確に測る「GNSS」と呼ばれる仕組みが使われています。GNSSは衛星測位システムの総称で、中でもスマートフォンの位置情報やカーナビゲーションに利用され、広く知られているのがアメリカの「GPS」です。 国土地理院が約20キロ間隔で全国約1300か所に電子基準点を設置しているほか、近年は携帯電話会社も基地局に独自の基準点を設け、精度の高い観測を可能にしています。 断層がずれて地震が発生すると、地表では地殻変動が観測されます。言い換えれば、地殻変動を測ることで、地下で断層がどう動いたかを調べることも可能で、GNSSのデータを地震の予測に役立てようとする研究者もいます。京都大学防災研究所の西村卓也教授は、地殻変動のデータから地下の断層に溜まっているひずみを調べ、地震を予測する研究を20年以上行ってきました。 その西村教授も「前例がない」と話すほど珍しい動きが、珠洲市で起こったのです。 国土地理院が珠洲市内に設置した観測点では、地震活動が始まった2020年12月からの約1年間で、地盤が3センチほど隆起する謎の地殻変動が起こっていました。西村教授は「火山がないところで、これほど顕著な変動がみられることは今までなかった」といいます。 地殻変動の原因を探るため、西村教授や金沢大学などの研究グループは、2021年9月から、珠洲市や能登町に独自のGNSS観測機器を設置。さらにソフトバンクが提供するGNSS観測網のデータも組み合わせることで、研究グループは、2020年11月から2022年12月までに最大で約7センチの隆起を観測しました。また大谷小中学校とみさき小学校の2点間の距離が、観測を始めた2021年秋以降、約3センチ伸びるなど、珠洲市を中心に地盤が膨張する動きも捉えることに成功しました。 地殻変動が地震そのものによって引き起こされたものではないとすると、未知の何かが地盤を押し広げているはず。こうして1つの仮説が浮かび上がりました』、「2020年11月から2022年12月までに最大で約7センチの隆起を観測しました。また大谷小中学校とみさき小学校の2点間の距離が、観測を始めた2021年秋以降、約3センチ伸びるなど、珠洲市を中心に地盤が膨張する動きも捉えることに成功しました」、なるほど。
・『地震の原因は「水」? 研究者が考える群発地震のメカニズムです。2020年11月末から、大量の流体が地下深くから深さ16キロの領域にまで上昇。このとき、南側の領域で小規模な地震が繰り返し発生しました』、「研究者が考える群発地震のメカニズム」で「地震の原因は「水」?」というのは意外性がある。
・『研究者が考える群発地震のメカニズム 珠洲市の地下には、北西から南東方向に向かって傾斜する複数の断層が走っていると考えられています。流体はこの断層の隙間に流れ込み、周りの岩盤を押し広げるだけでなく、深さ14キロから16キロの領域で、地震を伴わないゆっくりとした断層の滑り=「スロースリップ」を引き起こしたと考えられています。流体は断層のさらに浅い部分にも広がり、北側の領域で地震活動が活発になりました。これまでに供給された流体の量は、およそ2900万立方メートル、東京ドーム23個分に上るとみられます。 地下の流体の移動やスロースリップが、長期にわたってこれほど精密に観測できた例は世界的に珍しく、西村教授や平松教授らの研究成果は2023年6月、国際的な学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。 ところで「流体」とはどのようなものなのでしょうか。活火山の近くで群発地震が発生するとき、流体はマグマであることが多いですが、研究者は、地震波の速さなどをもとに、珠洲市のケースでは「水」である可能性が高いと考えています。西村教授は、2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)で海水が日本列島の下に潜り込み、およそ10年かけて上昇してきた可能性もあるといいます。一方、地下深くにある流体を実際に採取するのは困難で、流体が何なのか、その正体は明らかになっていません』、「流体はマグマであることが多いですが、研究者は、地震波の速さなどをもとに、珠洲市のケースでは「水」である可能性が高いと考えています。西村教授は、2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)で海水が日本列島の下に潜り込み、およそ10年かけて上昇してきた可能性もあるといいます」、なるほど。
・『地下には流体の通り道? 「見えない水」を“見える化” 流体のありかを調べる研究も進んでいます。京都大学防災研究所の吉村令慧教授は、電流や磁気をもとに地下の構造を明らかにする研究を行っています。水などの流体は電気を通しやすいため、地下の電気の通しやすさを測ることで、流体がある領域を確認できるというのです。 こうした電気を通しやすい領域は、2007年の能登半島地震でも震源近くにあることが分かっていて、流体が地震を引き起こした可能性が指摘されています。 吉村教授らは2021年11月、珠洲市や能登町、輪島市の合わせて32か所に観測機器を設置し、地表から深さ20キロまでの構造を三次元的に解析しました。その結果、地震活動が始まった南側の領域の地下深くに、電気を通しやすい領域を発見。さらにその領域は、地震活動が活発な北側の領域に向かって続いていました。地下深くから流体が供給され、北側に流れていったとする西村教授らの仮説を裏付ける結果です。 吉村教授は「地震活動と非常に調和的な結果になっている。流体の存在を強く示唆する構造だ」としています。 研究グループは、陸上での観測機器を追加したほか、2022年9月には珠洲市周辺の海底にも機器を設置しました。今後は、連続した観測を行うことで、地震活動の推移予測につなげたいとしています』、「地下には流体の通り道? 」「水などの流体は電気を通しやすいため、地下の電気の通しやすさを測ることで、流体がある領域を確認できる」、なるほど。
・『地殻変動にも変化 収束か… 2023年3月。2年余り続いてきた地震活動の中で、研究者が初めて、収束について言及しました。 このとき、珠洲市北部の一部の地域を除いて、地殻変動も全体的に収束に向かっている様子が確認されていました。また活動の初期に大量の流体が上昇した南側の領域でも、流体の供給が1年以上、落ち着いていました。 平松教授は「変動の様子がやや収まってきている。この傾向がそのまま続くと、地震活動も徐々に落ち着くのではないか」としました。一方で「群発地震の場合、大きな地震がどういうタイミングで起こるかはかなり予測が難しい。地震活動の初期なのか、中期なのか、末期なのか、どこで最大規模の地震が起こるか分からない」として、引き続き強い揺れに注意するよう呼びかけました。 それからわずか1か月余り、震度6強の揺れが珠洲市を襲いました』、「「群発地震の場合、大きな地震がどういうタイミングで起こるかはかなり予測が難しい。地震活動の初期なのか、中期なのか、末期なのか、どこで最大規模の地震が起こるか分からない」として、引き続き強い揺れに注意するよう呼びかけました。 それからわずか1か月余り、震度6強の揺れが珠洲市を襲いました」、なるほど。
・『研究者にも“意外なタイミング”で震度6強 2023年5月5日午後2時42分ごろ、能登半島沖でM6.5の地震が発生。石川県が6月12日までにまとめたところ、1人が死亡、48人がけがをし、全壊34棟を含む944棟の住宅が被害を受けました。 研究者にとっても、この地震は驚きでした。西村教授は「ずっとこういう大きい地震が起こるのではないかという可能性は持っていたが、地震活動も地殻変動も収まってきている状況だった。あのタイミングで来るというのは若干意外だった」と明かしました』、「ずっとこういう大きい地震が起こるのではないかという可能性は持っていたが、地震活動も地殻変動も収まってきている状況だった。あのタイミングで来るというのは若干意外だった」、なるほど。
・『専門家が想定する“良いシナリオ”と“悪いシナリオ” 今後、地震活動は収束に向かうのか。5月5日のM6.5の地震の後、研究者の間では大きく分けて2つのシナリオが考えられています。 1つは、流体によって生じた断層のひずみが解消され、今後、徐々に地震活動が落ち着くという見方です。研究者が2023年3月に示したように、地殻変動は全体的に収束する傾向を見せていて、新たな流体の供給がないこともプラスに働いています。また世界的に見ても、この規模の群発地震は平均的に3年ほどで収束していて、一連の活動は終わりに近づいていると考えることができます。 一方、新たな懸念も浮上しています。5月5日の地震の前までは、震源の大部分は珠洲市北部の海岸近くに集中していました。 ところが、M6.5の地震の後、震源域が急激に北側の海域にも拡大。その震源域を横切るようにして走っているのが「珠洲沖セグメント」と呼ばれる海底活断層です。もし珠洲沖セグメントがずれ動くと、地震の規模はM7クラスに上ると予想されています。 研究者が今、「一番怖いシナリオ」と考えるのが、「流体が珠洲沖セグメントの深い所に達して、それがきっかけで大地震が起こる」こと。M6.5の地震が、珠洲沖セグメントでも地震を誘発するという考えです。西村教授は「活断層が隣にあるということは、隣で火事が起こっているのと同じような状態。危ない状態であることは間違いない」といいます。 そして海底活断層の場合、警戒をしなければならないのが「津波」です。石川県の津波浸水想定では、珠洲市北部の沿岸は地震発生から1分以内に津波が襲来すると予想されています。平松教授は「津波警報が出る前に津波が来ることも十分ありうる。強い揺れを感じたら、まずは津波の危険性を疑って避難行動をとってほしい」と呼びかけます』、「この規模の群発地震は平均的に3年ほどで収束していて、一連の活動は終わりに近づいていると考えることができます・・・新たな懸念も浮上・・・M6.5の地震の後、震源域が急激に北側の海域にも拡大。その震源域を横切るようにして走っているのが「珠洲沖セグメント」と呼ばれる海底活断層です。もし珠洲沖セグメントがずれ動くと、地震の規模はM7クラスに上ると予想されています。 研究者が今、「一番怖いシナリオ」と考えるのが、「流体が珠洲沖セグメントの深い所に達して、それがきっかけで大地震が起こる」こと。M6.5の地震が、珠洲沖セグメントでも地震を誘発するという考えです。西村教授は「活断層が隣にあるということは、隣で火事が起こっているのと同じような状態。危ない状態であることは間違いない」といいます。 そして海底活断層の場合、警戒をしなければならないのが「津波」です。石川県の津波浸水想定では、珠洲市北部の沿岸は地震発生から1分以内に津波が襲来すると予想されています」、「一番怖いシナリオ」が実現しないことを願うほかない。
次に、本年1月15日付け東洋経済オンライン「能登半島地震、北陸の観光地から上がる「悲鳴」 風評被害に資金繰り、閉業を考える温泉旅館も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/727329?display=b
・『加賀百万石――。加賀藩の領地として栄えた石川県。日本三大庭園の兼六園などがある金沢市はもちろん、和倉温泉(七尾市)、輪島朝市(輪島市)、白米千枚田(輪島市)など多くの観光地で知られている。 北陸きっての観光地を襲ったのが1月1日に発生した能登半島地震だ。1月11日時点では死者213人、安否不明者37人となっており、現在も余震がある中で捜索活動が続いている。 今回の大規模地震が観光地に与えた影響はどれほどか、その全貌はいまだ明らかになっていない。現地で宿泊施設を経営する当事者や業界団体への取材を通じて、甚大な被害と早急な支援の必要性が明らかになってきた』、興味深そうだ。
・『「建物の一部が野ざらしになっている」 「旧館と新館をつなぐジョイント部分が崩れて、建物の一部が野ざらしになっている。営業継続は不可能だ」。そう語るのは、宝仙閣グループの帽子山宗氏だ。 同グループは震源地に近い和倉温泉に施設を保有しており、甚大な被害を受けた。帽子山氏は業界団体・全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)青年部の幹部も務めており、北陸地方の被災状況の情報収集に当たっている。 震源地となった能登半島では輪島温泉も有名だが、やはり地震で大きな打撃を受けた。帽子山氏によれば、海岸線の道路は崩落し、ホテルや旅館の中も大きく隆起。その様子は一変してしまったという。) 全旅連にもこうした悲痛の声が多く寄せられている。 「館内設備の破損により一部の客室が浸水、使用不可能になった。復旧には半年程度かかる見通し」(能登半島の宿泊施設) 「外壁がはがれ、上下水道が使用不能になり、営業は不可能」(別の能登半島の宿泊施設) 被害は施設だけではない。風評被害の影響も甚大だ。北陸地方では、地震による被害が比較的少なかった能登半島以外の宿泊施設でもキャンセルが相次いでいる。 帽子山氏が運営している山代温泉(加賀市)の宿泊施設でも、6月まで宿泊予約のキャンセルが発生しており、損失額は600万円だという。同地区は石川県の南西部に位置し、地震の被害は小さかった』、「北陸地方では、地震による被害が比較的少なかった能登半島以外の宿泊施設でもキャンセルが相次いでいる。 帽子山氏が運営している山代温泉(加賀市)の宿泊施設でも、6月まで宿泊予約のキャンセルが発生しており、損失額は600万円だという」、なるほど。
・『風評被害が続けば改装を決断できない 地震が起きた正月休みは宿泊施設にとって「最大の稼ぎ時」。高価な正月限定宿泊プランを販売し、通常より豪華な食事を提供する。売り上げの機会損失も大きかった。福井県の宿からは「越前ガニを仕入れていたため、キャンセルによる損失が大きい」という声が複数上がっている。 石川県内の宿泊施設では、最大1億円を超えるキャンセル損失がすでに発生している。旅館やホテルなどの宿泊施設は固定費が重く、売り上げの減少は経営悪化に直結しやすい。また風評被害が長引けば、3~4月の繁忙期の売り上げも厳しくなる。 震源に近い宿泊施設では建物が大きな被害を受けた。営業再開には建て替えを視野に入れた大規模リニューアルが必要。ただ、風評被害による宿泊キャンセルなどが始まり、先が見通せない中で大規模改装に踏み切るという決断はしづらい。 「コロナ禍が終わり金融機関への返済計画を立てていた。宿泊客も戻ってきたので『これで返していけるぞ』というタイミングだった。かなり厳しい」と、帽子山氏は吐露する。 閉業を選択する宿泊施設が多数出てくることも予想される。) 一方で、能登半島地震の被災者を受け入れる2次避難所として、自治体が宿泊施設を借り上げて提供する動きも広がっている。 被災者はプライベートが担保された衛生的な空間で避難生活を送ることができる。宿泊施設にとっても貴重な収入となる。避難者は無料で宿泊することができ、石川県では自治体から宿泊施設へ1泊当たり最大1万円が支払われるもようだ。 だが支援はこれだけでは不十分だ。被災した宿泊施設の復興はもちろん、風評被害の払拭のためにカギとなるのはインフラだ。 立教大学観光学部の沢柳知彦特任教授は「インフラが復旧しているかどうか、旅情を損ねない程度に景観が復旧しているかが、旅行に行くかどうかの判断材料となる」と指摘する』、「2次避難所として、自治体が宿泊施設を借り上げて提供する動きも広がっている。 被災者はプライベートが担保された衛生的な空間で避難生活を送ることができる。宿泊施設にとっても貴重な収入となる。避難者は無料で宿泊することができ、石川県では自治体から宿泊施設へ1泊当たり最大1万円が支払われるもようだ」、なるほど。
・『一度解雇してしまうと、従業員が集まらない 帽子山氏も「安全に事業を継続していくためにも自治体には海岸整備をしていただきたい。安全と確信できない土地の上にある旅館を、さらに次世代に紡いでいくのはかなり暗い気持ちになる」と強調する。 インフラの整備とともに必要なのが、雇用の維持に対する支援だ。被災し、営業が不可能となっている宿泊施設は建て替えや改装が必要だが、閉業期間は長ければ数年にわたる。 その間、「一度解雇してしまうと、従業員が集まらなくなってしまう。人材確保はリスクになりえる」と沢柳氏は指摘する。 被災した宿泊施設は、施設の破損以外にも資金繰りや風評被害などまさに前途多難な状況に追い込まれている。政府や自治体には矢継ぎ早な対応が求められている』、「インフラの整備とともに必要なのが、雇用の維持に対する支援だ。被災し、営業が不可能となっている宿泊施設は建て替えや改装が必要だが、閉業期間は長ければ数年にわたる。 その間、「一度解雇してしまうと、従業員が集まらなくなってしまう。人材確保はリスクになりえる」と沢柳氏は指摘・・・被災した宿泊施設は、施設の破損以外にも資金繰りや風評被害などまさに前途多難な状況に追い込まれている。政府や自治体には矢継ぎ早な対応が求められている」、難しい問題だ。
第三に、本年1月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元週刊文春・月刊文芸春秋編集長の木俣正剛氏による「「次は富士山の大噴火」は本当か?調べてわかった現状と“不安な備え”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338152
・『災害への備えは進められるも後手に回った石川県 もちろん、富士山噴火や南海トラフ地震といった災害は、国や自治体が「起こりうること」として準備をしています。いや「はずでした」というべきでしょう。能登半島は昨年すでに大きな地震を経験し、群発地震も起きていました。しかし、地元の石川県は全くと言っていいほど備えをしていなかったことが、地震直後に判明したからです。 石川県は2012年、今回と同じ能登半島北方沖でM8.1の地震が生じうると予測していましたが、政府の有識者会議がM7.6と予測すると、地域防災計画を見直し、地震想定をM7.0へと書き換え、被害は局地的で死者は7人程度という予測に変更しました。 当時の谷本正憲知事は、企業誘致に力を入れていたため「震災が少ない地域をアピールしたかった」という説が有力です。馳浩現知事は2年前に就任。防災計画の見直しを決めましたが、国の調査結果を待っていたこともあり、十分な準備措置はとられていませんでした。 その油断のツケは高くつきました。本来は「災害時に道路のどの部分の復旧を任せる」といった計画と契約が地元の建設業者となされているものですが、石川県や市町村の多くはそれもしていませんでした。東北地方の自治体が災害前からそういう契約を結んでいたからこそ、東日本大震災では、あの大きな揺れの中で、初日から道路復旧計画が決まり、建設業者への発注ができていました。 しかし、石川県では知事が元旦に東京に滞在しており、国に対応を丸投げした形で地元にもどったため、国が派遣したゼネコンと地元建設業者の調整に難航。重要なインフラ機関との話し合いもなかったので、道路に倒れている電柱1本を取り払うにも、電柱を取り除く許可を道路復旧の担当者が北陸電力にとるという、悠長なことが繰り返されていました。これは人災としか言いようがありません。 結局、道路復旧計画の全体像が決まったのは震災から10日目。東日本大震災の教訓は何も生かされていなかったという印象を、国民に与えてしまいました。 これから2月。厳寒の時期に入る被災地では、早急な復旧、仮設住宅の建設こそ住民の生命に関わる事態であるにもかかわらず、この責任を問うメディアは少ないと思うのは私だけでしょうか。) さて、富士山です。日本は火山国で10年から20年に一度は1億立方メートル以上の大きな噴火があると言われますが、すでに30年大噴火がないことも気になります。 噴火は地震と違い、溶岩流、噴石、そして火山灰という厄介な副産物をまき散らします。また、噴火時点での風向きでそれらが飛散する地域は変わり、10日近く噴火が続くことも地震や津波と違うところです。噴火の規模次第では、日本は東西の交通網を分断され、長期間、火山灰による寒冷化と食料不足に悩むという事態に直面しかねません』、「能登半島は昨年すでに大きな地震を経験し、群発地震も起きていました。しかし、地元の石川県は全くと言っていいほど備えをしていなかったことが、地震直後に判明したからです。 石川県は2012年、今回と同じ能登半島北方沖でM8.1の地震が生じうると予測していましたが、政府の有識者会議がM7.6と予測すると、地域防災計画を見直し、地震想定をM7.0へと書き換え、被害は局地的で死者は7人程度という予測に変更しました。 当時の谷本正憲知事は、企業誘致に力を入れていたため「震災が少ない地域をアピールしたかった」という説が有力です。馳浩現知事は2年前に就任。防災計画の見直しを決めましたが、国の調査結果を待っていたこともあり、十分な準備措置はとられていませんでした。 その油断のツケは高くつきました。本来は「災害時に道路のどの部分の復旧を任せる」といった計画と契約が地元の建設業者となされているものですが、石川県や市町村の多くはそれもしていませんでした。東北地方の自治体が災害前からそういう契約を結んでいたからこそ、東日本大震災では、あの大きな揺れの中で、初日から道路復旧計画が決まり、建設業者への発注ができていました。 しかし、石川県では知事が元旦に東京に滞在しており、国に対応を丸投げした形で地元にもどったため、国が派遣したゼネコンと地元建設業者の調整に難航。重要なインフラ機関との話し合いもなかったので、道路に倒れている電柱1本を取り払うにも、電柱を取り除く許可を道路復旧の担当者が北陸電力にとるという、悠長なことが繰り返されていました。これは人災としか言いようがありません。」、今回の「地震」は初動が悪いなと思っていたら、前知事が企業誘致に力を入れていたため「震災が少ない地域をアピール」するべく、「地域防災計画を見直し、地震想定をM7.0へと書き換え、被害は局地的で死者は7人程度という予測に変更」したといった事情は、まさに犯罪的行為で、初めて知った。
・『専門機関がシミュレーション 富士山噴火が及ぼす被害とは 「中央防災会議 広域降灰対策検討ワーキンググループ」(令和2年)のレポートによると、富士山噴火をモデルケースとした首都圏での影響について、以下のように予測しています。その要旨を紹介します。 (1)鉄道/微量の降灰で地上路線の運行停止。地下路線でも、地上路線の停止による需要増大や車両・作業員の不足で能力が低下し、停電で運行は上下ともに完全停止。 (2)道路/乾燥時10センチ、降雨時3センチ以上で二厘駆動車は通行不能。視界不良などで速度低下。大渋滞が発生。 (3)物資/降灰の多いところでは、買い占めなどで食料、飲料水の不足が発生し、道路が通じなくなると、物資の配送、店舗の営業は困難となる。 (4)人の移動/徒歩も含めて帰宅困難者などが発生。空路、海路も制限が生じる。 (5)電力/0.3センチ以上で碍子(がいし)の絶縁低下により停電発生。数センチで火力発電所の吸気フィルターの交換頻度が高くなり、発電量が低下。 (6)通信/降雨時に、基地局の通信アンテナに灰が付着すると通信が阻害。停電エリアの基地局などで、非常用発電機の燃料切れが起こる可能性も。 (7)上水道/水道水は飲用に適さなくなる。停電エリアでは浄水場が停止し、断水発生。 (8)下水道/雨水の閉塞により閉塞上流から、雨水があふれ、下水道の使用も制限。 (9)建物、降雨時30センチの堆積厚で木造家屋は重みで倒壊。体育館などの緩勾配屋根の大型建物も損傷の可能性。5センチ以上の堆積厚で空調設備の室外機に不具合。 (10)健康被害/目・鼻・のど・気管支などに異常を生じることがある。 つまり、電力や道路が耐え切れないほどの降灰があると、首都圏でも完全に活動が止まってしまうのです。このような状態が何日も続き、しかも風向きが変わるごとに被害地域が変わると、救難作業も必要量が読めません。また、東日本大震災時の瓦礫の10倍の火山灰の処理が必要となります。 しかし、さすがに東京都は対応が素早くて、噴火時の火山灰は海中に捨てることもすでに法律で決定済みです。富士山に近い静岡県では、火山灰どころか、噴石、溶岩流で町がなくなるところも出てきます。静岡、山梨といった近隣県では、避難の順番や時期などが細かく決められ、茨城など噴火の影響が少ない自治体に移住地を確保することまで決定されています。 が、これはあくまでも県や国が決めたこと。各市町村が本気でそれに取り組んでいるかどうかは濃淡があると言わざるを得ません。国民は身を守るため、それぞれの市町村が本気で噴火対策をしているのか、常にチェックする必要があるでしょう』、(5)に関連して「火力発電所の吸気フィルターの交換頻度が高くなり、発電量が低下」、する他に、原発や燃料プールの冷却が出来なくなれば、原発が制御できなくなって暴走するという致命的事態になりかねない。
・『災害が起きたときに本当に必要となる発想 そして、さらに気になるのが、復旧のあとの復興についての報道です。日本の災害復興は基本的に「元に戻す」という発想が中心です。しかし今回の能登半島地震の場合、能登湾の海底が隆起して、船の運行が困難になった能登半島の大部分で、漁業が復活できるのでしょうか。町だけ元に戻しても、人が戻らなければ復興とはいえません。東日本大震災でも同様の町がありました。 海底の隆起が一段落し、最新の海図などが完成してから、本当に以前の通り漁業ができるのか、昔通りに復興すべきなのかを十二分に検討するのには、時間がかかるでしょう。その間、被災地の住民を放置しておくことはできません。 一時的には、ホテルなどを借り切っての生活や県外の公営住宅への移住など、何年も生活に耐えられる準備が必要です。私は東日本大震災後の取材で、給付金はあるものの仕事がない状態の避難民が現地で開店していた数少ないパチンコ店に列をなしているのを見ました。幸い、能登半島は農業・漁業従事者が多いので、安全な地域で農地や船を貸すといった発想も必要です』、「能登半島は農業・漁業従事者が多いので、安全な地域で農地や船を貸すといった発想も必要です」、その通りだ。
・『関東大震災を機に生まれ変わった東京の教訓 実は1923年の関東大震災では、発生の4年前には東京市長の後藤新平を中心に東京を大改造する計画が策定されていて、震災直後入閣して内務大臣となった後藤は、それを実行に移そうとしました。 それは、道路の拡張、コンクリート製の小学校建設、公園整備、鉄製の橋梁建設など斬新なものでした。地主の反対などで、当初構想にあった幹線道路幅108メートルは44メートルに縮小されるなどしたものの、それでも区画整理や延焼防止のための公園・ 道路 は、その後大きな役に立ちました。 昭和通り、靖国通り、環状5号線などはその成果です。そして、これが実現できたのは、区画整理に反対する地主などの私権制限を法律化したからでした。以前の記事「被災地をふみにじる『火事場泥棒』は実名公表で抑止できる【馳浩・石川県知事に直言】」でも述べた通り、やはり災害時には、憲法に緊急事態条項を付加して私権制限をする必要があります。 大震災や大噴火というと、我々には悲壮感しか浮かんできません。しかし、それをきっかけに日本列島を大改造し、首都圏に集中しすぎた国づくりを修正するなど、ピンチをチャンスに変えることも可能なはずです。 まずは岸田内閣に、大災害後の日本改造計画を策定していただきたいと思いますが、現状の岸田総理を見ている限り、大がかりなことは望めそうにもありません。未来予見能力と決断力をもつ政治家の出現が待たれます。 「次は富士山噴火か」と巷で不安が囁かれる中で、そんなことを考えました』、「災害時には、憲法に緊急事態条項を付加して私権制限をする必要があります」、私は「憲法改正」自体には反対だが、「災害対応」のための「緊急事態条項を付加」には賛成である。
第四に、2月1日付け現代ビジネス「富士山噴火でこの国が「大打撃」を受ける…火山灰の「意外な恐怖」」を紹介しよう。
・『首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火……過去にも起きた「恐怖の大連動」は、東京・日本をどう壊すのか。 もはや誰もが大地震から逃れられない時代、話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。 (※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)』、興味深そうだ。
・『鉄道が止まり、道路が通れず物流が停滞する 東京大学の藤井敏嗣名誉教授(山梨県富士山科学研究所所長)は「富士山で想定されている大きさの噴火は世界で数年か数十年に一回は起きているが、最近はいずれも僻地で起こっており、交通網や電気通信が発達した巨大都市で起きた例がない。首都圏のような場所では、鉄道が止まり、道路が通れず物流が停滞すること、広域停電も起こり得ることを想定しないといけない」と指摘する。 30センチも積もれば雨を含んだ火山灰の重みで木造家屋が倒壊する可能性も生じる。浄水場は水質が悪化し、浄水施設の処理能力を超えると断水になるおそれがある。東京都の水道局では浄水場に覆いをかける作業を急ピッチで進めた。防災科学技術研究所の「火山灰の健康影響」によれば、ぜんそくや気管支炎、肺気腫など健康面での影響も注意が必要という。 噴火と言えば一時的なものと思われがちだが、前回の「宝永噴火」(1707年)は12月16日から翌年の元日まで約16日間も続いたとされる。火口から東方の地域では大量の火山砂礫や火山灰が降り積もり、厚さは麓で3メートル以上、遠く離れた江戸でも4センチ程度みられたとされる。 仮に同じレベルの噴火だったとしても、令和時代の今日に2週間以上も首都機能が大打撃を受けることになれば、国家としてのマイナスは甚大だ。加えて、江戸時代に起きた巨大地震との「大連動」が生じれば、激しい揺れに襲われて壊滅的な状態に陥ったときに空からの大量の降灰が追い打ちをかけることになる。 そのときに国や自治体、そして国民には何ができるのか。最も大切な命を守るために「最悪」を想定した準備を急ぐ必要があるだろう。 本記事の抜粋元『首都防衛』では、首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山大噴火……過去にも一度起きた「恐怖の大連動」が東京・日本をどう壊すのか、命を守るために何をやるべきか、さらには最新データや数々の専門家の知見から明らかになった「最悪の被害想定・シミュレーション」をわかりやすく解説。専門家が非常時を意識してやっていることなども紹介している。まずはこの一冊で突然の災害に備えましょう。ぜひお買い求めください』、「「宝永噴火」(1707年)は12月16日から翌年の元日まで約16日間も続いたとされる。火口から東方の地域では大量の火山砂礫や火山灰が降り積もり、厚さは麓で3メートル以上、遠く離れた江戸でも4センチ程度」、この記事は短いので、単なる本の紹介になってしまったが、前述の原発被害を抜きにしても、「令和時代の今日に2週間以上も首都機能が大打撃を受けることになれば、国家としてのマイナスは甚大だ」、確かにその通りだ。
先ずは、先ずは、本年1月2日付けTBSニュースDIGが掲載した「“能登群発地震”の原因は「東京ドーム23杯分の水」 去年5月の地震後に研究者が指摘していた「一番怖いシナリオ」」を紹介しよう。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/538817?display=1
・『元日に石川県能登地方で最大震度7を観測した地震。被災地では大規模火災や津波の被害が徐々に明らかになってきています。珠洲市周辺ではおよそ3年にわたって活発な地震活動が続いていて、珠洲市では2023年5月にも、震度6強を観測していました。 この震度6強の後、研究者の間では大きく分けて2つのシナリオが考えられていました。そのうち「一番怖いシナリオ」と考えていたのが、「流体が活断層の深い所に達して、それがきっかけで大地震が起こる」こと。2023年5月のM6.5の地震が、“珠洲沖セグメント”と呼ばれる活断層でも地震を誘発するという考えです。 京都大学防災研究所の西村卓也教授は「活断層が隣にあるということは、隣で火事が起こっているのと同じような状態。危ない状態であることは間違いない」と指摘していました。2023年6月に取材した解説記事です。 (以下、情報は2023年6月時点のもの) 石川県珠洲市(すずし)周辺では2年半にわたって活発な地震活動が続いています。震度1以上の地震はこれまで400回以上に上り、2023年5月5日にはマグニチュード(M)6.5の地震で最大震度6強の揺れを観測しました。政府の地震調査委員会は、一連の地震活動は「当分続く可能性がある」として、今後も強い揺れに注意するよう呼びかけています。地震はなぜ起こるのか、いつまで続くのか。研究の最前線を取材しました』、「石川県珠洲市(すずし)周辺では2年半にわたって活発な地震活動が続いています。震度1以上の地震はこれまで400回以上に上り、2023年5月5日にはマグニチュード(M)6.5の地震で最大震度6強の揺れを観測しました。政府の地震調査委員会は、一連の地震活動は「当分続く可能性がある」として、今後も強い揺れに注意するよう呼びかけています」、突然ではなく、起こるべくして起きたようだ。
・『能登半島先端にある“本州最少の市” 石川県珠洲市は、県庁所在地の金沢市から車で2時間余り、日本海に突き出た能登半島の先端に位置しています。塩田(えんでん)と呼ばれる砂浜で海水を乾かして作る塩や、市内で産出される珪藻土を使った七輪、独特の黒色に仕上がる「珠洲焼」などが特産品として知られています。一方、人口約1万3000人のうち、半数以上は65歳以上の高齢者で、深刻な過疎化・高齢化に直面しています。 能登半島周辺では過去にも規模の大きな地震が発生しています。1993年2月7日の能登半島沖地震(M6.6)では、当時の震度階級で、輪島市で震度5を観測し、珠洲市を中心に30人がけがをしました。また1人が死亡、338人がけがをした2007年3月25日の能登半島地震(M6.9)では、珠洲市でも震度5強の揺れを記録しました』、どうやら「能登半島」は「地震」の巣のようだ。
・『「震度5弱~6強ありうる」 研究者が2年前から警鐘 珠洲市周辺で地震活動が活発になったのは2020年12月ごろ。当初は、珠洲市南部の飯田地区周辺で活動が活発でしたが、その後、震源が徐々に西側の若山地区や、日本海に面した大谷地区・狼煙(のろし)地区など、北側・東側の領域にも広がっていき、東西南北4つの震源域に分類されるようになりました。 研究者の間では、早い段階から規模の大きな地震への警戒が高まっていました。金沢大学の平松良浩教授は2021年7月の取材に対し「震度5弱、6弱、6強の揺れになることは考えられる」と指摘していました。 2021年9月16日にはM5.1の地震が発生し、珠洲市で最大震度5弱を観測。さらに2022年6月19日にはM5.4(最大震度6弱)、翌20日にはM5.0(5強)の地震が相次いで発生しました。地震活動はその後も収束することなく、震度1以上の地震は2021年は70回、2022年は195回に上りました』、「研究者の間では、早い段階から規模の大きな地震への警戒が高まっていました。金沢大学の平松良浩教授は2021年7月の取材に対し「震度5弱、6弱、6強の揺れになることは考えられる」と指摘していました。 2021年9月16日にはM5.1の地震が発生し、珠洲市で最大震度5弱を観測。さらに2022年6月19日にはM5.4(最大震度6弱)、翌20日にはM5.0(5強)の地震が相次いで発生しました。地震活動はその後も収束することなく、震度1以上の地震は2021年は70回、2022年は195回に上りました」、なるほど。
・『「群発地震」とは 収束まで数年かかるケースも このように長い期間にわたって続く地震活動を「群発地震」と呼びます。 日本国内で起こる典型は「本震―余震型」と呼ばれるもので、一度大きな地震が発生した後、時間が経過するにつれて余震の回数が少なくなっていくパターンです。これに対し「群発地震」は、明確に本震と呼べる大きな地震がなく、長期間にわたって地震を繰り返していく現象です。収束まで数年かかるケースもあり、1965年から1970年にかけて長野県で発生した「松代群発地震」では震度1以上の有感地震が6万回を超えました。 群発地震は活火山の周辺で多くみられる現象ですが、珠洲市の周辺では活火山は知られていません。なぜ火山がない地域で、これほど長く地震が続いているのでしょうか』、「日本国内で起こる典型は「本震―余震型」と呼ばれるもので、一度大きな地震が発生した後、時間が経過するにつれて余震の回数が少なくなっていくパターンです。これに対し「群発地震」は、明確に本震と呼べる大きな地震がなく、長期間にわたって地震を繰り返していく現象です。収束まで数年かかるケースもあり、1965年から1970年にかけて長野県で発生した「松代群発地震」では震度1以上の有感地震が6万回を超えました。 群発地震は活火山の周辺で多くみられる現象ですが、珠洲市の周辺では活火山は知られていません。なぜ火山がない地域で、これほど長く地震が続いているのでしょうか」、確かに不思議だ。
・『地震とともに始まった“謎の地殻変動” 地震の原因を探るうえで1つの鍵になったのが、地震活動とともに始まった“謎の地殻変動”です。 地殻変動は、地球のマントルを覆う「地殻」に力が加わり、年に数ミリから数センチ程度、ゆっくりと動く現象です。こうした大地のわずかな動きを捉えるために、人工衛星からの電波を受信して地上の位置を正確に測る「GNSS」と呼ばれる仕組みが使われています。GNSSは衛星測位システムの総称で、中でもスマートフォンの位置情報やカーナビゲーションに利用され、広く知られているのがアメリカの「GPS」です。 国土地理院が約20キロ間隔で全国約1300か所に電子基準点を設置しているほか、近年は携帯電話会社も基地局に独自の基準点を設け、精度の高い観測を可能にしています。 断層がずれて地震が発生すると、地表では地殻変動が観測されます。言い換えれば、地殻変動を測ることで、地下で断層がどう動いたかを調べることも可能で、GNSSのデータを地震の予測に役立てようとする研究者もいます。京都大学防災研究所の西村卓也教授は、地殻変動のデータから地下の断層に溜まっているひずみを調べ、地震を予測する研究を20年以上行ってきました。 その西村教授も「前例がない」と話すほど珍しい動きが、珠洲市で起こったのです。 国土地理院が珠洲市内に設置した観測点では、地震活動が始まった2020年12月からの約1年間で、地盤が3センチほど隆起する謎の地殻変動が起こっていました。西村教授は「火山がないところで、これほど顕著な変動がみられることは今までなかった」といいます。 地殻変動の原因を探るため、西村教授や金沢大学などの研究グループは、2021年9月から、珠洲市や能登町に独自のGNSS観測機器を設置。さらにソフトバンクが提供するGNSS観測網のデータも組み合わせることで、研究グループは、2020年11月から2022年12月までに最大で約7センチの隆起を観測しました。また大谷小中学校とみさき小学校の2点間の距離が、観測を始めた2021年秋以降、約3センチ伸びるなど、珠洲市を中心に地盤が膨張する動きも捉えることに成功しました。 地殻変動が地震そのものによって引き起こされたものではないとすると、未知の何かが地盤を押し広げているはず。こうして1つの仮説が浮かび上がりました』、「2020年11月から2022年12月までに最大で約7センチの隆起を観測しました。また大谷小中学校とみさき小学校の2点間の距離が、観測を始めた2021年秋以降、約3センチ伸びるなど、珠洲市を中心に地盤が膨張する動きも捉えることに成功しました」、なるほど。
・『地震の原因は「水」? 研究者が考える群発地震のメカニズムです。2020年11月末から、大量の流体が地下深くから深さ16キロの領域にまで上昇。このとき、南側の領域で小規模な地震が繰り返し発生しました』、「研究者が考える群発地震のメカニズム」で「地震の原因は「水」?」というのは意外性がある。
・『研究者が考える群発地震のメカニズム 珠洲市の地下には、北西から南東方向に向かって傾斜する複数の断層が走っていると考えられています。流体はこの断層の隙間に流れ込み、周りの岩盤を押し広げるだけでなく、深さ14キロから16キロの領域で、地震を伴わないゆっくりとした断層の滑り=「スロースリップ」を引き起こしたと考えられています。流体は断層のさらに浅い部分にも広がり、北側の領域で地震活動が活発になりました。これまでに供給された流体の量は、およそ2900万立方メートル、東京ドーム23個分に上るとみられます。 地下の流体の移動やスロースリップが、長期にわたってこれほど精密に観測できた例は世界的に珍しく、西村教授や平松教授らの研究成果は2023年6月、国際的な学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。 ところで「流体」とはどのようなものなのでしょうか。活火山の近くで群発地震が発生するとき、流体はマグマであることが多いですが、研究者は、地震波の速さなどをもとに、珠洲市のケースでは「水」である可能性が高いと考えています。西村教授は、2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)で海水が日本列島の下に潜り込み、およそ10年かけて上昇してきた可能性もあるといいます。一方、地下深くにある流体を実際に採取するのは困難で、流体が何なのか、その正体は明らかになっていません』、「流体はマグマであることが多いですが、研究者は、地震波の速さなどをもとに、珠洲市のケースでは「水」である可能性が高いと考えています。西村教授は、2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)で海水が日本列島の下に潜り込み、およそ10年かけて上昇してきた可能性もあるといいます」、なるほど。
・『地下には流体の通り道? 「見えない水」を“見える化” 流体のありかを調べる研究も進んでいます。京都大学防災研究所の吉村令慧教授は、電流や磁気をもとに地下の構造を明らかにする研究を行っています。水などの流体は電気を通しやすいため、地下の電気の通しやすさを測ることで、流体がある領域を確認できるというのです。 こうした電気を通しやすい領域は、2007年の能登半島地震でも震源近くにあることが分かっていて、流体が地震を引き起こした可能性が指摘されています。 吉村教授らは2021年11月、珠洲市や能登町、輪島市の合わせて32か所に観測機器を設置し、地表から深さ20キロまでの構造を三次元的に解析しました。その結果、地震活動が始まった南側の領域の地下深くに、電気を通しやすい領域を発見。さらにその領域は、地震活動が活発な北側の領域に向かって続いていました。地下深くから流体が供給され、北側に流れていったとする西村教授らの仮説を裏付ける結果です。 吉村教授は「地震活動と非常に調和的な結果になっている。流体の存在を強く示唆する構造だ」としています。 研究グループは、陸上での観測機器を追加したほか、2022年9月には珠洲市周辺の海底にも機器を設置しました。今後は、連続した観測を行うことで、地震活動の推移予測につなげたいとしています』、「地下には流体の通り道? 」「水などの流体は電気を通しやすいため、地下の電気の通しやすさを測ることで、流体がある領域を確認できる」、なるほど。
・『地殻変動にも変化 収束か… 2023年3月。2年余り続いてきた地震活動の中で、研究者が初めて、収束について言及しました。 このとき、珠洲市北部の一部の地域を除いて、地殻変動も全体的に収束に向かっている様子が確認されていました。また活動の初期に大量の流体が上昇した南側の領域でも、流体の供給が1年以上、落ち着いていました。 平松教授は「変動の様子がやや収まってきている。この傾向がそのまま続くと、地震活動も徐々に落ち着くのではないか」としました。一方で「群発地震の場合、大きな地震がどういうタイミングで起こるかはかなり予測が難しい。地震活動の初期なのか、中期なのか、末期なのか、どこで最大規模の地震が起こるか分からない」として、引き続き強い揺れに注意するよう呼びかけました。 それからわずか1か月余り、震度6強の揺れが珠洲市を襲いました』、「「群発地震の場合、大きな地震がどういうタイミングで起こるかはかなり予測が難しい。地震活動の初期なのか、中期なのか、末期なのか、どこで最大規模の地震が起こるか分からない」として、引き続き強い揺れに注意するよう呼びかけました。 それからわずか1か月余り、震度6強の揺れが珠洲市を襲いました」、なるほど。
・『研究者にも“意外なタイミング”で震度6強 2023年5月5日午後2時42分ごろ、能登半島沖でM6.5の地震が発生。石川県が6月12日までにまとめたところ、1人が死亡、48人がけがをし、全壊34棟を含む944棟の住宅が被害を受けました。 研究者にとっても、この地震は驚きでした。西村教授は「ずっとこういう大きい地震が起こるのではないかという可能性は持っていたが、地震活動も地殻変動も収まってきている状況だった。あのタイミングで来るというのは若干意外だった」と明かしました』、「ずっとこういう大きい地震が起こるのではないかという可能性は持っていたが、地震活動も地殻変動も収まってきている状況だった。あのタイミングで来るというのは若干意外だった」、なるほど。
・『専門家が想定する“良いシナリオ”と“悪いシナリオ” 今後、地震活動は収束に向かうのか。5月5日のM6.5の地震の後、研究者の間では大きく分けて2つのシナリオが考えられています。 1つは、流体によって生じた断層のひずみが解消され、今後、徐々に地震活動が落ち着くという見方です。研究者が2023年3月に示したように、地殻変動は全体的に収束する傾向を見せていて、新たな流体の供給がないこともプラスに働いています。また世界的に見ても、この規模の群発地震は平均的に3年ほどで収束していて、一連の活動は終わりに近づいていると考えることができます。 一方、新たな懸念も浮上しています。5月5日の地震の前までは、震源の大部分は珠洲市北部の海岸近くに集中していました。 ところが、M6.5の地震の後、震源域が急激に北側の海域にも拡大。その震源域を横切るようにして走っているのが「珠洲沖セグメント」と呼ばれる海底活断層です。もし珠洲沖セグメントがずれ動くと、地震の規模はM7クラスに上ると予想されています。 研究者が今、「一番怖いシナリオ」と考えるのが、「流体が珠洲沖セグメントの深い所に達して、それがきっかけで大地震が起こる」こと。M6.5の地震が、珠洲沖セグメントでも地震を誘発するという考えです。西村教授は「活断層が隣にあるということは、隣で火事が起こっているのと同じような状態。危ない状態であることは間違いない」といいます。 そして海底活断層の場合、警戒をしなければならないのが「津波」です。石川県の津波浸水想定では、珠洲市北部の沿岸は地震発生から1分以内に津波が襲来すると予想されています。平松教授は「津波警報が出る前に津波が来ることも十分ありうる。強い揺れを感じたら、まずは津波の危険性を疑って避難行動をとってほしい」と呼びかけます』、「この規模の群発地震は平均的に3年ほどで収束していて、一連の活動は終わりに近づいていると考えることができます・・・新たな懸念も浮上・・・M6.5の地震の後、震源域が急激に北側の海域にも拡大。その震源域を横切るようにして走っているのが「珠洲沖セグメント」と呼ばれる海底活断層です。もし珠洲沖セグメントがずれ動くと、地震の規模はM7クラスに上ると予想されています。 研究者が今、「一番怖いシナリオ」と考えるのが、「流体が珠洲沖セグメントの深い所に達して、それがきっかけで大地震が起こる」こと。M6.5の地震が、珠洲沖セグメントでも地震を誘発するという考えです。西村教授は「活断層が隣にあるということは、隣で火事が起こっているのと同じような状態。危ない状態であることは間違いない」といいます。 そして海底活断層の場合、警戒をしなければならないのが「津波」です。石川県の津波浸水想定では、珠洲市北部の沿岸は地震発生から1分以内に津波が襲来すると予想されています」、「一番怖いシナリオ」が実現しないことを願うほかない。
次に、本年1月15日付け東洋経済オンライン「能登半島地震、北陸の観光地から上がる「悲鳴」 風評被害に資金繰り、閉業を考える温泉旅館も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/727329?display=b
・『加賀百万石――。加賀藩の領地として栄えた石川県。日本三大庭園の兼六園などがある金沢市はもちろん、和倉温泉(七尾市)、輪島朝市(輪島市)、白米千枚田(輪島市)など多くの観光地で知られている。 北陸きっての観光地を襲ったのが1月1日に発生した能登半島地震だ。1月11日時点では死者213人、安否不明者37人となっており、現在も余震がある中で捜索活動が続いている。 今回の大規模地震が観光地に与えた影響はどれほどか、その全貌はいまだ明らかになっていない。現地で宿泊施設を経営する当事者や業界団体への取材を通じて、甚大な被害と早急な支援の必要性が明らかになってきた』、興味深そうだ。
・『「建物の一部が野ざらしになっている」 「旧館と新館をつなぐジョイント部分が崩れて、建物の一部が野ざらしになっている。営業継続は不可能だ」。そう語るのは、宝仙閣グループの帽子山宗氏だ。 同グループは震源地に近い和倉温泉に施設を保有しており、甚大な被害を受けた。帽子山氏は業界団体・全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)青年部の幹部も務めており、北陸地方の被災状況の情報収集に当たっている。 震源地となった能登半島では輪島温泉も有名だが、やはり地震で大きな打撃を受けた。帽子山氏によれば、海岸線の道路は崩落し、ホテルや旅館の中も大きく隆起。その様子は一変してしまったという。) 全旅連にもこうした悲痛の声が多く寄せられている。 「館内設備の破損により一部の客室が浸水、使用不可能になった。復旧には半年程度かかる見通し」(能登半島の宿泊施設) 「外壁がはがれ、上下水道が使用不能になり、営業は不可能」(別の能登半島の宿泊施設) 被害は施設だけではない。風評被害の影響も甚大だ。北陸地方では、地震による被害が比較的少なかった能登半島以外の宿泊施設でもキャンセルが相次いでいる。 帽子山氏が運営している山代温泉(加賀市)の宿泊施設でも、6月まで宿泊予約のキャンセルが発生しており、損失額は600万円だという。同地区は石川県の南西部に位置し、地震の被害は小さかった』、「北陸地方では、地震による被害が比較的少なかった能登半島以外の宿泊施設でもキャンセルが相次いでいる。 帽子山氏が運営している山代温泉(加賀市)の宿泊施設でも、6月まで宿泊予約のキャンセルが発生しており、損失額は600万円だという」、なるほど。
・『風評被害が続けば改装を決断できない 地震が起きた正月休みは宿泊施設にとって「最大の稼ぎ時」。高価な正月限定宿泊プランを販売し、通常より豪華な食事を提供する。売り上げの機会損失も大きかった。福井県の宿からは「越前ガニを仕入れていたため、キャンセルによる損失が大きい」という声が複数上がっている。 石川県内の宿泊施設では、最大1億円を超えるキャンセル損失がすでに発生している。旅館やホテルなどの宿泊施設は固定費が重く、売り上げの減少は経営悪化に直結しやすい。また風評被害が長引けば、3~4月の繁忙期の売り上げも厳しくなる。 震源に近い宿泊施設では建物が大きな被害を受けた。営業再開には建て替えを視野に入れた大規模リニューアルが必要。ただ、風評被害による宿泊キャンセルなどが始まり、先が見通せない中で大規模改装に踏み切るという決断はしづらい。 「コロナ禍が終わり金融機関への返済計画を立てていた。宿泊客も戻ってきたので『これで返していけるぞ』というタイミングだった。かなり厳しい」と、帽子山氏は吐露する。 閉業を選択する宿泊施設が多数出てくることも予想される。) 一方で、能登半島地震の被災者を受け入れる2次避難所として、自治体が宿泊施設を借り上げて提供する動きも広がっている。 被災者はプライベートが担保された衛生的な空間で避難生活を送ることができる。宿泊施設にとっても貴重な収入となる。避難者は無料で宿泊することができ、石川県では自治体から宿泊施設へ1泊当たり最大1万円が支払われるもようだ。 だが支援はこれだけでは不十分だ。被災した宿泊施設の復興はもちろん、風評被害の払拭のためにカギとなるのはインフラだ。 立教大学観光学部の沢柳知彦特任教授は「インフラが復旧しているかどうか、旅情を損ねない程度に景観が復旧しているかが、旅行に行くかどうかの判断材料となる」と指摘する』、「2次避難所として、自治体が宿泊施設を借り上げて提供する動きも広がっている。 被災者はプライベートが担保された衛生的な空間で避難生活を送ることができる。宿泊施設にとっても貴重な収入となる。避難者は無料で宿泊することができ、石川県では自治体から宿泊施設へ1泊当たり最大1万円が支払われるもようだ」、なるほど。
・『一度解雇してしまうと、従業員が集まらない 帽子山氏も「安全に事業を継続していくためにも自治体には海岸整備をしていただきたい。安全と確信できない土地の上にある旅館を、さらに次世代に紡いでいくのはかなり暗い気持ちになる」と強調する。 インフラの整備とともに必要なのが、雇用の維持に対する支援だ。被災し、営業が不可能となっている宿泊施設は建て替えや改装が必要だが、閉業期間は長ければ数年にわたる。 その間、「一度解雇してしまうと、従業員が集まらなくなってしまう。人材確保はリスクになりえる」と沢柳氏は指摘する。 被災した宿泊施設は、施設の破損以外にも資金繰りや風評被害などまさに前途多難な状況に追い込まれている。政府や自治体には矢継ぎ早な対応が求められている』、「インフラの整備とともに必要なのが、雇用の維持に対する支援だ。被災し、営業が不可能となっている宿泊施設は建て替えや改装が必要だが、閉業期間は長ければ数年にわたる。 その間、「一度解雇してしまうと、従業員が集まらなくなってしまう。人材確保はリスクになりえる」と沢柳氏は指摘・・・被災した宿泊施設は、施設の破損以外にも資金繰りや風評被害などまさに前途多難な状況に追い込まれている。政府や自治体には矢継ぎ早な対応が求められている」、難しい問題だ。
第三に、本年1月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元週刊文春・月刊文芸春秋編集長の木俣正剛氏による「「次は富士山の大噴火」は本当か?調べてわかった現状と“不安な備え”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338152
・『災害への備えは進められるも後手に回った石川県 もちろん、富士山噴火や南海トラフ地震といった災害は、国や自治体が「起こりうること」として準備をしています。いや「はずでした」というべきでしょう。能登半島は昨年すでに大きな地震を経験し、群発地震も起きていました。しかし、地元の石川県は全くと言っていいほど備えをしていなかったことが、地震直後に判明したからです。 石川県は2012年、今回と同じ能登半島北方沖でM8.1の地震が生じうると予測していましたが、政府の有識者会議がM7.6と予測すると、地域防災計画を見直し、地震想定をM7.0へと書き換え、被害は局地的で死者は7人程度という予測に変更しました。 当時の谷本正憲知事は、企業誘致に力を入れていたため「震災が少ない地域をアピールしたかった」という説が有力です。馳浩現知事は2年前に就任。防災計画の見直しを決めましたが、国の調査結果を待っていたこともあり、十分な準備措置はとられていませんでした。 その油断のツケは高くつきました。本来は「災害時に道路のどの部分の復旧を任せる」といった計画と契約が地元の建設業者となされているものですが、石川県や市町村の多くはそれもしていませんでした。東北地方の自治体が災害前からそういう契約を結んでいたからこそ、東日本大震災では、あの大きな揺れの中で、初日から道路復旧計画が決まり、建設業者への発注ができていました。 しかし、石川県では知事が元旦に東京に滞在しており、国に対応を丸投げした形で地元にもどったため、国が派遣したゼネコンと地元建設業者の調整に難航。重要なインフラ機関との話し合いもなかったので、道路に倒れている電柱1本を取り払うにも、電柱を取り除く許可を道路復旧の担当者が北陸電力にとるという、悠長なことが繰り返されていました。これは人災としか言いようがありません。 結局、道路復旧計画の全体像が決まったのは震災から10日目。東日本大震災の教訓は何も生かされていなかったという印象を、国民に与えてしまいました。 これから2月。厳寒の時期に入る被災地では、早急な復旧、仮設住宅の建設こそ住民の生命に関わる事態であるにもかかわらず、この責任を問うメディアは少ないと思うのは私だけでしょうか。) さて、富士山です。日本は火山国で10年から20年に一度は1億立方メートル以上の大きな噴火があると言われますが、すでに30年大噴火がないことも気になります。 噴火は地震と違い、溶岩流、噴石、そして火山灰という厄介な副産物をまき散らします。また、噴火時点での風向きでそれらが飛散する地域は変わり、10日近く噴火が続くことも地震や津波と違うところです。噴火の規模次第では、日本は東西の交通網を分断され、長期間、火山灰による寒冷化と食料不足に悩むという事態に直面しかねません』、「能登半島は昨年すでに大きな地震を経験し、群発地震も起きていました。しかし、地元の石川県は全くと言っていいほど備えをしていなかったことが、地震直後に判明したからです。 石川県は2012年、今回と同じ能登半島北方沖でM8.1の地震が生じうると予測していましたが、政府の有識者会議がM7.6と予測すると、地域防災計画を見直し、地震想定をM7.0へと書き換え、被害は局地的で死者は7人程度という予測に変更しました。 当時の谷本正憲知事は、企業誘致に力を入れていたため「震災が少ない地域をアピールしたかった」という説が有力です。馳浩現知事は2年前に就任。防災計画の見直しを決めましたが、国の調査結果を待っていたこともあり、十分な準備措置はとられていませんでした。 その油断のツケは高くつきました。本来は「災害時に道路のどの部分の復旧を任せる」といった計画と契約が地元の建設業者となされているものですが、石川県や市町村の多くはそれもしていませんでした。東北地方の自治体が災害前からそういう契約を結んでいたからこそ、東日本大震災では、あの大きな揺れの中で、初日から道路復旧計画が決まり、建設業者への発注ができていました。 しかし、石川県では知事が元旦に東京に滞在しており、国に対応を丸投げした形で地元にもどったため、国が派遣したゼネコンと地元建設業者の調整に難航。重要なインフラ機関との話し合いもなかったので、道路に倒れている電柱1本を取り払うにも、電柱を取り除く許可を道路復旧の担当者が北陸電力にとるという、悠長なことが繰り返されていました。これは人災としか言いようがありません。」、今回の「地震」は初動が悪いなと思っていたら、前知事が企業誘致に力を入れていたため「震災が少ない地域をアピール」するべく、「地域防災計画を見直し、地震想定をM7.0へと書き換え、被害は局地的で死者は7人程度という予測に変更」したといった事情は、まさに犯罪的行為で、初めて知った。
・『専門機関がシミュレーション 富士山噴火が及ぼす被害とは 「中央防災会議 広域降灰対策検討ワーキンググループ」(令和2年)のレポートによると、富士山噴火をモデルケースとした首都圏での影響について、以下のように予測しています。その要旨を紹介します。 (1)鉄道/微量の降灰で地上路線の運行停止。地下路線でも、地上路線の停止による需要増大や車両・作業員の不足で能力が低下し、停電で運行は上下ともに完全停止。 (2)道路/乾燥時10センチ、降雨時3センチ以上で二厘駆動車は通行不能。視界不良などで速度低下。大渋滞が発生。 (3)物資/降灰の多いところでは、買い占めなどで食料、飲料水の不足が発生し、道路が通じなくなると、物資の配送、店舗の営業は困難となる。 (4)人の移動/徒歩も含めて帰宅困難者などが発生。空路、海路も制限が生じる。 (5)電力/0.3センチ以上で碍子(がいし)の絶縁低下により停電発生。数センチで火力発電所の吸気フィルターの交換頻度が高くなり、発電量が低下。 (6)通信/降雨時に、基地局の通信アンテナに灰が付着すると通信が阻害。停電エリアの基地局などで、非常用発電機の燃料切れが起こる可能性も。 (7)上水道/水道水は飲用に適さなくなる。停電エリアでは浄水場が停止し、断水発生。 (8)下水道/雨水の閉塞により閉塞上流から、雨水があふれ、下水道の使用も制限。 (9)建物、降雨時30センチの堆積厚で木造家屋は重みで倒壊。体育館などの緩勾配屋根の大型建物も損傷の可能性。5センチ以上の堆積厚で空調設備の室外機に不具合。 (10)健康被害/目・鼻・のど・気管支などに異常を生じることがある。 つまり、電力や道路が耐え切れないほどの降灰があると、首都圏でも完全に活動が止まってしまうのです。このような状態が何日も続き、しかも風向きが変わるごとに被害地域が変わると、救難作業も必要量が読めません。また、東日本大震災時の瓦礫の10倍の火山灰の処理が必要となります。 しかし、さすがに東京都は対応が素早くて、噴火時の火山灰は海中に捨てることもすでに法律で決定済みです。富士山に近い静岡県では、火山灰どころか、噴石、溶岩流で町がなくなるところも出てきます。静岡、山梨といった近隣県では、避難の順番や時期などが細かく決められ、茨城など噴火の影響が少ない自治体に移住地を確保することまで決定されています。 が、これはあくまでも県や国が決めたこと。各市町村が本気でそれに取り組んでいるかどうかは濃淡があると言わざるを得ません。国民は身を守るため、それぞれの市町村が本気で噴火対策をしているのか、常にチェックする必要があるでしょう』、(5)に関連して「火力発電所の吸気フィルターの交換頻度が高くなり、発電量が低下」、する他に、原発や燃料プールの冷却が出来なくなれば、原発が制御できなくなって暴走するという致命的事態になりかねない。
・『災害が起きたときに本当に必要となる発想 そして、さらに気になるのが、復旧のあとの復興についての報道です。日本の災害復興は基本的に「元に戻す」という発想が中心です。しかし今回の能登半島地震の場合、能登湾の海底が隆起して、船の運行が困難になった能登半島の大部分で、漁業が復活できるのでしょうか。町だけ元に戻しても、人が戻らなければ復興とはいえません。東日本大震災でも同様の町がありました。 海底の隆起が一段落し、最新の海図などが完成してから、本当に以前の通り漁業ができるのか、昔通りに復興すべきなのかを十二分に検討するのには、時間がかかるでしょう。その間、被災地の住民を放置しておくことはできません。 一時的には、ホテルなどを借り切っての生活や県外の公営住宅への移住など、何年も生活に耐えられる準備が必要です。私は東日本大震災後の取材で、給付金はあるものの仕事がない状態の避難民が現地で開店していた数少ないパチンコ店に列をなしているのを見ました。幸い、能登半島は農業・漁業従事者が多いので、安全な地域で農地や船を貸すといった発想も必要です』、「能登半島は農業・漁業従事者が多いので、安全な地域で農地や船を貸すといった発想も必要です」、その通りだ。
・『関東大震災を機に生まれ変わった東京の教訓 実は1923年の関東大震災では、発生の4年前には東京市長の後藤新平を中心に東京を大改造する計画が策定されていて、震災直後入閣して内務大臣となった後藤は、それを実行に移そうとしました。 それは、道路の拡張、コンクリート製の小学校建設、公園整備、鉄製の橋梁建設など斬新なものでした。地主の反対などで、当初構想にあった幹線道路幅108メートルは44メートルに縮小されるなどしたものの、それでも区画整理や延焼防止のための公園・ 道路 は、その後大きな役に立ちました。 昭和通り、靖国通り、環状5号線などはその成果です。そして、これが実現できたのは、区画整理に反対する地主などの私権制限を法律化したからでした。以前の記事「被災地をふみにじる『火事場泥棒』は実名公表で抑止できる【馳浩・石川県知事に直言】」でも述べた通り、やはり災害時には、憲法に緊急事態条項を付加して私権制限をする必要があります。 大震災や大噴火というと、我々には悲壮感しか浮かんできません。しかし、それをきっかけに日本列島を大改造し、首都圏に集中しすぎた国づくりを修正するなど、ピンチをチャンスに変えることも可能なはずです。 まずは岸田内閣に、大災害後の日本改造計画を策定していただきたいと思いますが、現状の岸田総理を見ている限り、大がかりなことは望めそうにもありません。未来予見能力と決断力をもつ政治家の出現が待たれます。 「次は富士山噴火か」と巷で不安が囁かれる中で、そんなことを考えました』、「災害時には、憲法に緊急事態条項を付加して私権制限をする必要があります」、私は「憲法改正」自体には反対だが、「災害対応」のための「緊急事態条項を付加」には賛成である。
第四に、2月1日付け現代ビジネス「富士山噴火でこの国が「大打撃」を受ける…火山灰の「意外な恐怖」」を紹介しよう。
・『首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山噴火……過去にも起きた「恐怖の大連動」は、東京・日本をどう壊すのか。 もはや誰もが大地震から逃れられない時代、話題書『首都防衛』では、知らなかったでは絶対にすまされない「最悪の被害想定」が描かれ、また、防災に必要なデータ・対策が1冊にまとまっている。 (※本記事は宮地美陽子『首都防衛』から抜粋・編集したものです)』、興味深そうだ。
・『鉄道が止まり、道路が通れず物流が停滞する 東京大学の藤井敏嗣名誉教授(山梨県富士山科学研究所所長)は「富士山で想定されている大きさの噴火は世界で数年か数十年に一回は起きているが、最近はいずれも僻地で起こっており、交通網や電気通信が発達した巨大都市で起きた例がない。首都圏のような場所では、鉄道が止まり、道路が通れず物流が停滞すること、広域停電も起こり得ることを想定しないといけない」と指摘する。 30センチも積もれば雨を含んだ火山灰の重みで木造家屋が倒壊する可能性も生じる。浄水場は水質が悪化し、浄水施設の処理能力を超えると断水になるおそれがある。東京都の水道局では浄水場に覆いをかける作業を急ピッチで進めた。防災科学技術研究所の「火山灰の健康影響」によれば、ぜんそくや気管支炎、肺気腫など健康面での影響も注意が必要という。 噴火と言えば一時的なものと思われがちだが、前回の「宝永噴火」(1707年)は12月16日から翌年の元日まで約16日間も続いたとされる。火口から東方の地域では大量の火山砂礫や火山灰が降り積もり、厚さは麓で3メートル以上、遠く離れた江戸でも4センチ程度みられたとされる。 仮に同じレベルの噴火だったとしても、令和時代の今日に2週間以上も首都機能が大打撃を受けることになれば、国家としてのマイナスは甚大だ。加えて、江戸時代に起きた巨大地震との「大連動」が生じれば、激しい揺れに襲われて壊滅的な状態に陥ったときに空からの大量の降灰が追い打ちをかけることになる。 そのときに国や自治体、そして国民には何ができるのか。最も大切な命を守るために「最悪」を想定した準備を急ぐ必要があるだろう。 本記事の抜粋元『首都防衛』では、首都直下地震、南海トラフ巨大地震、富士山大噴火……過去にも一度起きた「恐怖の大連動」が東京・日本をどう壊すのか、命を守るために何をやるべきか、さらには最新データや数々の専門家の知見から明らかになった「最悪の被害想定・シミュレーション」をわかりやすく解説。専門家が非常時を意識してやっていることなども紹介している。まずはこの一冊で突然の災害に備えましょう。ぜひお買い求めください』、「「宝永噴火」(1707年)は12月16日から翌年の元日まで約16日間も続いたとされる。火口から東方の地域では大量の火山砂礫や火山灰が降り積もり、厚さは麓で3メートル以上、遠く離れた江戸でも4センチ程度」、この記事は短いので、単なる本の紹介になってしまったが、前述の原発被害を抜きにしても、「令和時代の今日に2週間以上も首都機能が大打撃を受けることになれば、国家としてのマイナスは甚大だ」、確かにその通りだ。
タグ:「2020年11月から2022年12月までに最大で約7センチの隆起を観測しました。また大谷小中学校とみさき小学校の2点間の距離が、観測を始めた2021年秋以降、約3センチ伸びるなど、珠洲市を中心に地盤が膨張する動きも捉えることに成功しました」、なるほど。 群発地震は活火山の周辺で多くみられる現象ですが、珠洲市の周辺では活火山は知られていません。なぜ火山がない地域で、これほど長く地震が続いているのでしょうか」、確かに不思議だ。 「日本国内で起こる典型は「本震―余震型」と呼ばれるもので、一度大きな地震が発生した後、時間が経過するにつれて余震の回数が少なくなっていくパターンです。これに対し「群発地震」は、明確に本震と呼べる大きな地震がなく、長期間にわたって地震を繰り返していく現象です。収束まで数年かかるケースもあり、1965年から1970年にかけて長野県で発生した「松代群発地震」では震度1以上の有感地震が6万回を超えました。 「研究者の間では、早い段階から規模の大きな地震への警戒が高まっていました。金沢大学の平松良浩教授は2021年7月の取材に対し「震度5弱、6弱、6強の揺れになることは考えられる」と指摘していました。 2021年9月16日にはM5.1の地震が発生し、珠洲市で最大震度5弱を観測。さらに2022年6月19日にはM5.4(最大震度6弱)、翌20日にはM5.0(5強)の地震が相次いで発生しました。地震活動はその後も収束することなく、震度1以上の地震は2021年は70回、2022年は195回に上りました」、なるほど。 「流体はマグマであることが多いですが、研究者は、地震波の速さなどをもとに、珠洲市のケースでは「水」である可能性が高いと考えています。西村教授は、2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)で海水が日本列島の下に潜り込み、およそ10年かけて上昇してきた可能性もあるといいます」、なるほど。 、どうやら「地震」の巣のようだ。 「ずっとこういう大きい地震が起こるのではないかという可能性は持っていたが、地震活動も地殻変動も収まってきている状況だった。あのタイミングで来るというのは若干意外だった」、なるほど。 「石川県珠洲市(すずし)周辺では2年半にわたって活発な地震活動が続いています。震度1以上の地震はこれまで400回以上に上り、2023年5月5日にはマグニチュード(M)6.5の地震で最大震度6強の揺れを観測しました。政府の地震調査委員会は、一連の地震活動は「当分続く可能性がある」として、今後も強い揺れに注意するよう呼びかけています」、突然ではなく、起こるべくして起きたようだ。 「“能登群発地震”の原因は「東京ドーム23杯分の水」 去年5月の地震後に研究者が指摘していた「一番怖いシナリオ」」 「「宝永噴火」(1707年)は12月16日から翌年の元日まで約16日間も続いたとされる。火口から東方の地域では大量の火山砂礫や火山灰が降り積もり、厚さは麓で3メートル以上、遠く離れた江戸でも4センチ程度」、この記事は短いので、単なる本の紹介になってしまったが、前述の原発被害を抜きにしても、「令和時代の今日に2週間以上も首都機能が大打撃を受けることになれば、国家としてのマイナスは甚大だ」、確かにその通りだ。 木俣正剛氏による「「次は富士山の大噴火」は本当か?調べてわかった現状と“不安な備え”」 ダイヤモンド・オンライン です。馳浩現知事は2年前に就任。防災計画の見直しを決めましたが、国の調査結果を待っていたこともあり、十分な準備措置はとられていませんでした。 その油断のツケは高くつきました。本来は「災害時に道路のどの部分の復旧を任せる」といった計画と契約が地元の建設業者となされているものですが、石川県や市町村の多くはそれもしていませんでした。東北地方の自治体が災害前からそういう契約を結んでいたからこそ、東日本大震災では、あの大きな揺れの中で、初日から道路復旧計画が決まり、建設業者への発注ができていました。 「能登半島は昨年すでに大きな地震を経験し、群発地震も起きていました。しかし、地元の石川県は全くと言っていいほど備えをしていなかったことが、地震直後に判明したからです。 石川県は2012年、今回と同じ能登半島北方沖でM8.1の地震が生じうると予測していましたが、政府の有識者会議がM7.6と予測すると、地域防災計画を見直し、地震想定をM7.0へと書き換え、被害は局地的で死者は7人程度という予測に変更しました。 当時の谷本正憲知事は、企業誘致に力を入れていたため「震災が少ない地域をアピールしたかった」という説が 震想定をM7.0へと書き換え、被害は局地的で死者は7人程度という予測に変更」したといった事情は、まさに犯罪的行為で、初めて知った。 しかし、石川県では知事が元旦に東京に滞在しており、国に対応を丸投げした形で地元にもどったため、国が派遣したゼネコンと地元建設業者の調整に難航。重要なインフラ機関との話し合いもなかったので、道路に倒れている電柱1本を取り払うにも、電柱を取り除く許可を道路復旧の担当者が北陸電力にとるという、悠長なことが繰り返されていました。これは人災としか言いようがありません。」、今回の「地震」は初動が悪いなと思っていたら、前知事が企業誘致に力を入れていたため「震災が少ない地域をアピール」するべく、「地域防災計画を見直し、地 「能登半島は農業・漁業従事者が多いので、安全な地域で農地や船を貸すといった発想も必要です」、その通りだ。 (5)に関連して「火力発電所の吸気フィルターの交換頻度が高くなり、発電量が低下」、する他に、原発や燃料プールの冷却が出来なくなれば、原発が制御できなくなって暴走するという致命的事態になりかねない。 現代ビジネス「富士山噴火でこの国が「大打撃」を受ける…火山灰の「意外な恐怖」」 「災害時には、憲法に緊急事態条項を付加して私権制限をする必要があります」、私は「憲法改正」自体には反対だが、「災害対応」のための「緊急事態条項を付加」には賛成である。 興味深そうだ。 宮地美陽子『首都防衛』 東洋経済オンライン「能登半島地震、北陸の観光地から上がる「悲鳴」 風評被害に資金繰り、閉業を考える温泉旅館も」 そして海底活断層の場合、警戒をしなければならないのが「津波」です。石川県の津波浸水想定では、珠洲市北部の沿岸は地震発生から1分以内に津波が襲来すると予想されています」、「一番怖いシナリオ」が実現しないことを願うほかない。 もし珠洲沖セグメントがずれ動くと、地震の規模はM7クラスに上ると予想されています。 研究者が今、「一番怖いシナリオ」と考えるのが、「流体が珠洲沖セグメントの深い所に達して、それがきっかけで大地震が起こる」こと。M6.5の地震が、珠洲沖セグメントでも地震を誘発するという考えです。西村教授は「活断層が隣にあるということは、隣で火事が起こっているのと同じような状態。危ない状態であることは間違いない」といいます。 「この規模の群発地震は平均的に3年ほどで収束していて、一連の活動は終わりに近づいていると考えることができます・・・新たな懸念も浮上・・・M6.5の地震の後、震源域が急激に北側の海域にも拡大。その震源域を横切るようにして走っているのが「珠洲沖セグメント」と呼ばれる海底活断層です。 「「群発地震の場合、大きな地震がどういうタイミングで起こるかはかなり予測が難しい。地震活動の初期なのか、中期なのか、末期なのか、どこで最大規模の地震が起こるか分からない」として、引き続き強い揺れに注意するよう呼びかけました。 それからわずか1か月余り、震度6強の揺れが珠洲市を襲いました」、なるほど。 「地下には流体の通り道? 」「水などの流体は電気を通しやすいため、地下の電気の通しやすさを測ることで、流体がある領域を確認できる」、なるほど。 TBSニュースDIG (その15)(“能登群発地震”の原因は「東京ドーム23杯分の水」 去年5月の地震後に研究者が指摘していた「一番怖いシナリオ」、能登半島地震、北陸の観光地から上がる「悲鳴」 風評被害に資金繰り 閉業を考える温泉旅館も、「次は富士山の大噴火」は本当か?調べてわかった現状と“不安な備え”、富士山噴火でこの国が「大打撃」を受ける…火山灰の「意外な恐怖」) 災害
高齢化社会(その25)(65歳以上の4人に1人が「賃貸入居お断り」の衝撃!“高齢住宅難民”はどうしたらいい?、年を重ねて「いい人」では脳の老化が進む…医師・和田秀樹が「理想の高齢者」と太鼓判を押す著名人の名前 大勢の人が聞きたくなる「面白い話」ができる高齢者になるには) [社会]
高齢化社会については、昨年12月27日に取上げた。今日は、(その25)(65歳以上の4人に1人が「賃貸入居お断り」の衝撃!“高齢住宅難民”はどうしたらいい?、年を重ねて「いい人」では脳の老化が進む…医師・和田秀樹が「理想の高齢者」と太鼓判を押す著名人の名前 大勢の人が聞きたくなる「面白い話」ができる高齢者になるには)である。
先ずは、昨年12月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した吉田由紀子氏による「65歳以上の4人に1人が「賃貸入居お断り」の衝撃!“高齢住宅難民”はどうしたらいい?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/335497
・『収入はあるのに家を借りられない…高齢者の“住宅難民”急増 夫婦でハウスクリーニング業を営んでいた70代の女性Aさん。夫の死後、自ら社長になり事業を受け継いできた。当然ながら十分な収入を得ていたが、ある日、大家から自宅(賃貸物件)の立ち退きを告げられてしまう。老朽化が理由だった。 仕方なく不動産屋に行ってみたところ、70代と年齢を告げた瞬間、「うちでは無理」と追い返されてしまった。Aさんは不動産屋を何軒か回ってみるが、どの店も年齢を理由に断られてしまう。住む家が見つからない…。 このような高齢者が、今急増しているのをご存じだろうか。 65歳以上の日本人(国籍保有者)は、2010年時点で約2900万人。それが2020年には約3600万人に増加。単身高齢者は、2010年には479万人だったが、2020年には671万人。2030年には795万人まで増加すると予想されている(内閣府発行の令和5年版高齢社会白書より)』、「不動産屋に行ってみたところ、70代と年齢を告げた瞬間、「うちでは無理」と追い返されてしまった。Aさんは不動産屋を何軒か回ってみるが、どの店も年齢を理由に断られてしまう。住む家が見つからない…・・・65歳以上の日本人(国籍保有者)は、2010年時点で約2900万人。それが2020年には約3600万人に増加。単身高齢者は、2010年には479万人だったが、2020年には671万人。2030年には795万人まで増加すると予想されている」、「高齢者」の住宅探しは困難になってきたようだ。
・『高齢者の住まい探しの一因は「自宅の老朽化」にある その理由を聞くため、R65不動産に取材を行った。 同社は、不動産会社に勤務していた若手社員が、高齢者の住まい探しが困難なことを知り、2016年に独立して開業した、65歳以上対象の不動産会社である。 「高齢の方が賃貸物件を探す理由はさまざまです。例えば、家族が亡くなり、小さな住まいに引っ越したい。持ち家に住んでいたが、修繕費がかかるため賃貸に住み替えたい。病院の近くに住みたいといった理由が多いです」(R65不動産・代表取締役社長・山本遼さん、以下同) 他にも、子どもの近所に引っ越したい。体が不自由になったので、1階に住みたい、という理由が多い。中でも目立つのが、老朽化のため自宅が取り壊しになってしまうケースだ。 「総務省平成25年住宅・土地統計調査によれば、現在、築40年以上の住宅が、全国に280万棟あります。高度成長期に大量に建てられた物件が、軒並み老朽化していることも、高齢者の物件探しが増えている理由の一つです」』、「高齢の方が賃貸物件を探す理由はさまざまです。例えば、家族が亡くなり、小さな住まいに引っ越したい。持ち家に住んでいたが、修繕費がかかるため賃貸に住み替えたい。病院の近くに住みたいといった理由が多いです」・・・他にも、子どもの近所に引っ越したい。体が不自由になったので、1階に住みたい、という理由が多い。中でも目立つのが、老朽化のため自宅が取り壊しになってしまうケースだ」、なるほど。
・『高齢者の入居を断る主な理由は「孤独死」「家賃滞納」「認知症」 R65不動産が、2023年6月に行った高齢者の住宅に関する実態調査では、「住宅難民」の実態が明らかになった(インターネットによる調査、対象は賃貸物件探しの経験を持つ高齢者500人)。 ・賃貸住宅の部屋探し経験のある高齢者(65歳以上)は、3人に1人以上(全体の35.7%)。最も多い住み替え理由は、家賃の低い物件に住み替えるため(36.6%)。 ・高齢者の4人に1人以上(26.8%)が、年齢を理由とした賃貸住宅への入居拒否を経験。そのうち、5回以上断られた経験がある人は11.9%で、収入による差はない。 ・賃貸住宅へ入居するまでに不満を感じた点は、 1位:そもそも候補となる物件情報が少なかった(20.2%) 2位:通常よりも経済的負担(初期費用など)が大きかった(10.2%) 3位:条件に合わない物件を紹介された(7.0%) (調査結果から一部抜粋) 高齢者の4人に1人が、年齢を理由に賃貸住宅への入居を断られる現実。それが如実に数字に表れている。 「入居を断られる理由はいろいろありますが、まず、高齢の方の孤独死です。特に一人暮らしの場合、死後何日もたってから見つかるケースが少なくありません。そうなると事故物件になりますが、それを家主は恐れているのです」 加えて家賃滞納や認知症の可能性も、大きな拒否理由になっている』、「高齢者の4人に1人以上(26.8%)が、年齢を理由とした賃貸住宅への入居拒否を経験・・・入居を断られる理由はいろいろありますが、まず、高齢の方の孤独死です」、やむを得ないことだ。
・『入居者の遺品もトラブルのもと さらに面倒なのが、入居者の遺品の片付けだ。いわゆる「残置物の処理」である。入居者に身寄りがない場合、遺品は家主が片付けることになるが、実は相当な費用がかかってしまうのだ。 また、残置物と賃貸借契約は相続の対象になるため、勝手に処分すると、トラブルになる可能性もある。これも家主が高齢者の入居に難色を示す一因になっている。 2021年、この問題を解決するため、国土交通省と法務省がある条項を公開した。それは、入居者が亡くなった場合、残置物の処分と賃貸借契約の解除をスムーズに行えるようにするための「モデル契約条項」である。 さらに、今年7月には厚生労働省、国土交通省、法務省が合同で高齢者の住宅確保要配慮者への支援を拡充するための検討会をようやく立ち上げた。遅気に失したといえるが、高齢者の住宅確保に政府も動き出している。 この施策に対し、さまざまな高齢者の住宅探しを経験してきたR65不動産の山本さんは、こうコメントする。 「『残置物の処理等に関するモデル契約条項』は、残念ながら普及が進んでいません。その原因の一つに、残置物の処理を実行する『受任者』に、不動産会社を指定しにくい点があるのです」 不動産会社は、賃貸物件の契約により、収益を上げている。しかし残置物の処理を行うには、手間と費用がかかり、多大な損失を生んでしまうからだ。ちなみに受任者とは、入居者の死後事務委任を受任する人全般を指し、残置物の処理、残置物の換価や指定先への送付、賃貸借契約の解除を担う人を指す』、「残置物の処理を実行する『受任者』に、不動産会社を指定しにくい点があるのです」 不動産会社は、賃貸物件の契約により、収益を上げている。しかし残置物の処理を行うには、手間と費用がかかり、多大な損失を生んでしまうからだ」、「不動産会社」が「残置物の処理」を行う場合に、かける「手間と費用」に上限を付けることでヘッジできるのではなかろうか。
・『家主の負担が減るように契約者との契約体系は解決策の一つになる この問題に対して、山本さんは、ある解決策を実践している。 その解決策とは、入居者との契約方法に工夫を加えて家主の負担を減らすことだ。「万が一、入居者が亡くなった際は、残地物の処理と残置物の換価や指定先への送付、賃貸借契約の解除を行うことをあらかじめ契約書に盛り込んでいるのです。この契約方法により、家主の負担が軽減し、高齢者の方が入居しやすくなると考えています。実際に弊社ではこの方法を採用していて、自社が仲介した高齢者の残地物の処理等を行う受任者となるパートナーの不動産会社が全国にあります」 さらに同社は「居住支援法人」の指定も受けている。これは、住宅セーフティネット法に基づき自治体が指定した団体のことで、高齢者の賃貸住宅入居に関する情報の提供や、入居後の見守りなどの生活支援を行う団体を指す。以前はNPO法人などに限定されていたが、民間の企業も指定を受けられるよう制度が変わったのである。 また、2023年12月から大手電力会社が出資する会社と共同で「単身高齢者向けの見守りサービス」の実証実験を始める予定だ。 「政府が動き出し、高齢者の住宅難民問題は少しずつ改善されていると感じています。とはいえ、まだ十分ではありません。ですからできるだけ情報を集め、知識を身に付けて準備を整えておくことが、解決への一歩だと考えています」 同社は、他の不動産会社とパートナー制度という形で連携を取っており、全国各地へと支援の輪が広がっている。 「これからも高齢の方が入居可能な賃貸物件を増やし、いくつになっても、好きな場所に住める社会を実現したいと考えています」 ところで、冒頭で紹介したA子さん、その後どうなったかというと――R65不動産の仲介で無事に住まいを見つけ、今は新居で暮らしている。退去期限まで1カ月という切羽詰まった状態ではあったが……。(吉田由紀子/5時から作家塾(R))』、「万が一、入居者が亡くなった際は、残地物の処理と残置物の換価や指定先への送付、賃貸借契約の解除を行うことをあらかじめ契約書に盛り込んでいるのです。この契約方法により、家主の負担が軽減し、高齢者の方が入居しやすくなると考えています。実際に弊社ではこの方法を採用していて、自社が仲介した高齢者の残地物の処理等を行う受任者となるパートナーの不動産会社が全国にあります・・・さらに同社は「居住支援法人」の指定も受けている。これは、住宅セーフティネット法に基づき自治体が指定した団体のことで、高齢者の賃貸住宅入居に関する情報の提供や、入居後の見守りなどの生活支援を行う団体を指す。以前はNPO法人などに限定されていたが、民間の企業も指定を受けられるよう制度が変わったのである」、徐々に制度面でも整備されてきたようだ。
次に、本年2月2日付けPRESIDENT Onlineが掲載した精神科医の和田 秀樹氏による「年を重ねて「いい人」では脳の老化が進む…医師・和田秀樹が「理想の高齢者」と太鼓判を押す著名人の名前 大勢の人が聞きたくなる「面白い話」ができる高齢者になるには」を紹介しよう。
・『目指すべき高齢者像は何か。医師の和田秀樹さんは「前頭葉は目新しく、珍しいことを行うときに働くもので、これを使わないと脳の老化が進んでしまう。その意味でも私が目標とする『面白い高齢者』として理想的なのはタレントの高田純次さんだ。細かいことにこだわらずテキトーでいることはメンタルヘルスにもいい影響を与える」という――。 ※本稿は、和田秀樹『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『40代から始まる前頭葉萎縮のサイン 老いを遠ざけ、いつまでも元気で若々しくいるためには、「感情」を動かすことが何より大切です。なぜなら、人の老化は「知力」や「体力」よりも、まず「感情」の衰えから始まるからです。 「もの忘れが激しくなった」のは知力の老化。「昔に比べて走れなくなった」のは体力の老化。感情の老化とは「やってみよう!」という意欲やギラギラした欲望、新しいものを生み出す発想力、柔軟性、機動力などが低下する状態を指します。 人間の脳の中で真っ先に縮み始め、機能が低下するのが感情を司つかさどる前頭葉です。早い人では40代から萎縮が画像で目に見えるようになります。 ただし、記憶力や体力の衰えと違って前頭葉の機能低下は気づきにくい。これまでやってきたルーティンの仕事は、特に考えずともサクサクこなせるため自覚しにくいのですが、放っておくと、いずれは新しい物事や突発的な出来事への対処が苦手になっていきます。 徐々に感情が老化し、気づいたときには脳も体も見た目も、すべてがどっと老けてしまっているのです』、「人間の脳の中で真っ先に縮み始め、機能が低下するのが感情を司つかさどる前頭葉です。早い人では40代から萎縮が画像で目に見えるようになります。 ただし、記憶力や体力の衰えと違って前頭葉の機能低下は気づきにくい。これまでやってきたルーティンの仕事は、特に考えずともサクサクこなせるため自覚しにくいのですが、放っておくと、いずれは新しい物事や突発的な出来事への対処が苦手になっていきます。 徐々に感情が老化し、気づいたときには脳も体も見た目も、すべてがどっと老けてしまっているのです」、「前頭葉の機能低下」は恐ろしそうだ。
・『「想定外のこと」を増やせば、脳の老化は防げる 逆にいえば、感情の老化を防げば、かなり若々しさを維持できるということです。 高齢者が体力を維持するために体を使うことが重要なように、脳の機能も「思い、考え続けること」、つまり感情を動かすことが老化予防につながります。そのためには前頭葉を使うことが必要なのです。 前頭葉は「想定外なことへの対応力」という重要な働きを担っているため、「先の読めない不確実なこと」に積極的に取り組むことをおすすめします。平穏な日常生活では、前頭葉を使う機会が減り、その結果、感情が動かず、意欲が湧かなくなり、ますます脳を使わなくなるという悪循環に陥ってしまうのです。 前頭葉の機能は意欲や自発性、創造性につながるだけでなく、思考を切り替える際にも働いています。前頭葉機能が低下すると、一度カッとなると火がついたように怒り出す、いつまでも泣いているなど、感情のブレーキが利きにくくなります。これも前頭葉の機能が衰えたことが原因です。 足腰を衰えさせないために歩くことが大切なように、前頭葉も使うことが感情の老化防止につながります』、「前頭葉は「想定外なことへの対応力」という重要な働きを担っているため、「先の読めない不確実なこと」に積極的に取り組むことをおすすめします。平穏な日常生活では、前頭葉を使う機会が減り、その結果、感情が動かず、意欲が湧かなくなり、ますます脳を使わなくなるという悪循環に陥ってしまうのです」、なるほど。
・『年下に“タメ口”を使われてもいいじゃないか 前頭葉というのは目新しく、珍しいことを行うときに働くものだと私は考えています。逆に前頭葉の機能が落ちてくると生活がルーティン化し、前例踏襲型になっていきます。 早い人ですと40代くらいから前頭葉の老化が始まるわけですが、このくらいの時期からルーティン化、前例踏襲型になる人は珍しくありません。行きつけの店しか行かなくなったり、同じ著者の本しか読まなくなったりするなどです。 前頭葉を使うためには、その逆のことをすればいいことになります。 誰かに何かを誘われたときに、億劫な自分がいても、やってみよう、行ってみようと、いったんは誘いに乗る姿勢が大事。年下に“タメ口”を使われるなど、カチンとくることがあっても、「それでもいいじゃないか」と自分に言い聞かせる。若々しくいるためにお金をかけて見た目をよくしようと努力するように、感情も若々しくしておくことを心がけましょう。 誰かと出かけることが増えれば、思考も柔軟になりますから、体や脳にもいいことなのです』、「前頭葉の機能が落ちてくると生活がルーティン化し、前例踏襲型になっていきます。 早い人ですと40代くらいから前頭葉の老化が始まるわけですが、このくらいの時期からルーティン化、前例踏襲型になる人は珍しくありません」、私の場合、これに気を付ける必要がありそうだ。「誰かに何かを誘われたときに、億劫な自分がいても、やってみよう、行ってみようと、いったんは誘いに乗る姿勢が大事。年下に“タメ口”を使われるなど、カチンとくることがあっても、「それでもいいじゃないか」と自分に言い聞かせる。若々しくいるためにお金をかけて見た目をよくしようと努力するように、感情も若々しくしておくことを心がけましょう。 誰かと出かけることが増えれば、思考も柔軟になりますから、体や脳にもいいことなのです」、なるほど。
・『70代、80代になっても前頭葉は若返らせることができる 自分には誘ってくれる人がいないから、などと悲観することはありません。一人でも前頭葉を使うことはできます。 たとえば、普段行かない店で食事をする。ランチで入る店を毎日変えてみる。普段読まない著者の本を読んでみる。保守系の雑誌しか読まない人は、リベラル系の雑誌を読んでみる(もちろん、逆も同じことです)。 料理で冒険するのも前頭葉を刺激します。新しいレシピを試したり、珍しい食材を使ってみたりするといった具合です。 海外では、大学に入ると教授にけんかを売るような人が優秀とされますが、日本ではノートを一生懸命とって教授が言った通りの内容をテストで書く人が優をもらう傾向があります。会社でも新奇なことをやる人より、上司の言うことを聞く人のほうが出世しやすいようです。 要するに、これまでの人生で前頭葉を使ったことがない人が圧倒的に多いのが、日本という国の特徴だといえます。 だから、ちょっと前頭葉を使う習慣をつけると若い人より前頭葉が働き、面白い高齢者になれるのです。つまり前頭葉は若返るのです。 70代、80代になっても脳を若返らせることは十分可能です。同時に意欲の老化も防げるはずです。ぜひ意識して、前頭葉を使う習慣を続けてみてください』、「ちょっと前頭葉を使う習慣をつけると若い人より前頭葉が働き、面白い高齢者になれるのです。つまり前頭葉は若返るのです。 70代、80代になっても脳を若返らせることは十分可能です。同時に意欲の老化も防げるはずです。ぜひ意識して、前頭葉を使う習慣を続けてみてください」、よし是非、やってみたい。
・『年を重ねても素敵だなと感じる有名人 「老害」という言葉をよく聞くようになり、自分はそうならないように努めているという人は少なくないでしょう。 相手からしたらまったく興味が湧かない話を延々と聞かせたり、昔の自慢話ばかりをしたりする人が老害に当てはまります。 かといって、老害と言われるのを避けるために人の話は聞くだけにするとか、相手に合わせているだけというのでは、いいおじいさん、いいおばあさんと呼ばれるかもしれませんが、脳は老化していくばかりです。それでは面白い人とは思ってもらえません。 私が長年、高齢者を診ていて目標にするようになったのは、「面白い高齢者」になりたいということです。 理想はタレントの高田純次さんです。自由奔放な芸風で人気を集めている高田さんのように、細かいことにこだわらずテキトーでいることはメンタルヘルスにもいい影響を与えます。つまらないことで目くじらを立てる高齢者は若者にうっとうしがられるだけですから。 2021年に99歳で亡くなった瀬戸内寂聴さんも理想とする一人です。寂聴さんのように、大勢の人が話を聞きたくなるような高齢者になりたいものです』、「理想はタレントの高田純次さんです。自由奔放な芸風で人気を集めている高田さんのように、細かいことにこだわらずテキトーでいることはメンタルヘルスにもいい影響を与えます。つまらないことで目くじらを立てる高齢者は若者にうっとうしがられるだけですから。 2021年に99歳で亡くなった瀬戸内寂聴さんも理想とする一人です。寂聴さんのように、大勢の人が話を聞きたくなるような高齢者になりたいものです」、自分は「高田純次さん」とは対照的な性格だが、この際、理想形として追い求めてみたい。
・『週に4回くらい行列のできるラーメン屋に行けるか 話の面白い高齢者というのは、今の時代であれば、ネットで検索しても出てこないような経験に基づいた話ができる人。 たとえば、週に4回くらい行列のできるようなラーメン屋に行き、実際に食べてみた感想を面白おかしく話せたら、若い人だって、話を聞いてみようという気になるでしょう。70代はまだ体が十分に動く年代ですので、ぜひそうした体験を積んでいただきたい。 昔の高齢者であれば、戦争体験などが若い人が聞きたい話の定番だったでしょうが、今の70代にはそういう話は期待できません。 あるいは、飢えに直面した日本の悲惨な状態を子ども時代に経験して、今の食料安全保障は危険だと論じるには、70代は少し遅い世代かもしれません。 ただ、子ども時代に、親の給料が上がるたびに、次はテレビ、次は自動車と買う喜びを経験した高度成長期の世代なので、給料を上げるほうが景気はよくなるという話を、資本主義の富の不均衡について述べたフランスの経済学者、トマ・ピケティの理論などと結びつければ、説得力のある話が可能でしょう。 あるいは、自分たちが現役だった時代は法人税が高かったので、会社が経費を使うことに積極的で(そのほうが税金は安くなるからです)、給料も上がり続けたし、バブル期にいい思いをした話をして、減税より増税のほうが景気はよくなるという経済の常識と逆の説を展開したら、面白い高齢者と思われるかもしれません』、私の場合、どんな話をすれば、「面白い高齢者と思われる」ようになるかを考えてみたい。
・『世間の常識に囚われず、言いたいことを言ってもいい 話の面白い高齢者を目指すためには、世間一般と違う「一家言」を持つのが近道です。 高齢者から運転免許を取り上げるという風潮が高まっていますが、昔は交通事故で1万人以上も亡くなっていたのは、自動車に大して規制をかけなかったためで、その後の日本の製造業の隆盛があったのは事実です。75歳以上のドライバーによる死亡事故は年間400件もありません。 逆に、高齢者が交通事故の最大の被害者で死者数の5割を超えているなどという話も、今のご時世、興味深いでしょう。 70代というのは、ある程度パソコンを使って仕事をするのが当たり前になった世代の走りでしょう(この年代で電子カルテが使えない医者を見たことがない)。屁理屈と言われても、常識と違うデータを探すことは難しいことではありません。 和田秀樹『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)和田秀樹『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版) 少年犯罪が起こるたびにSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などの影響で、それが増えているようなニュアンスでコメントする「識者」がたくさんいる中で、ちょっとデータを検索すると2003年くらいから少年非行件数が減っていることくらいすぐわかります。私自身も経験していることですが、昔の不良の怖さは半端ではありませんでした。 こういう経験とデータを交えて話ができるのが70代の強みであり、常識に反することを思いつく、考えるというのは、前頭葉の最高のトレーニングでもあるのです。 少なくとも長く生きてきた経験から、世の中は理屈通りにいかないという立場をとることができます。その強みを活かして、前頭葉を鍛えながら、話の面白い高齢者を目指していきましょう』、私の場合、どんな話をすれば、「話の面白い高齢者」になれるかを考えてみたい。
先ずは、昨年12月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した吉田由紀子氏による「65歳以上の4人に1人が「賃貸入居お断り」の衝撃!“高齢住宅難民”はどうしたらいい?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/335497
・『収入はあるのに家を借りられない…高齢者の“住宅難民”急増 夫婦でハウスクリーニング業を営んでいた70代の女性Aさん。夫の死後、自ら社長になり事業を受け継いできた。当然ながら十分な収入を得ていたが、ある日、大家から自宅(賃貸物件)の立ち退きを告げられてしまう。老朽化が理由だった。 仕方なく不動産屋に行ってみたところ、70代と年齢を告げた瞬間、「うちでは無理」と追い返されてしまった。Aさんは不動産屋を何軒か回ってみるが、どの店も年齢を理由に断られてしまう。住む家が見つからない…。 このような高齢者が、今急増しているのをご存じだろうか。 65歳以上の日本人(国籍保有者)は、2010年時点で約2900万人。それが2020年には約3600万人に増加。単身高齢者は、2010年には479万人だったが、2020年には671万人。2030年には795万人まで増加すると予想されている(内閣府発行の令和5年版高齢社会白書より)』、「不動産屋に行ってみたところ、70代と年齢を告げた瞬間、「うちでは無理」と追い返されてしまった。Aさんは不動産屋を何軒か回ってみるが、どの店も年齢を理由に断られてしまう。住む家が見つからない…・・・65歳以上の日本人(国籍保有者)は、2010年時点で約2900万人。それが2020年には約3600万人に増加。単身高齢者は、2010年には479万人だったが、2020年には671万人。2030年には795万人まで増加すると予想されている」、「高齢者」の住宅探しは困難になってきたようだ。
・『高齢者の住まい探しの一因は「自宅の老朽化」にある その理由を聞くため、R65不動産に取材を行った。 同社は、不動産会社に勤務していた若手社員が、高齢者の住まい探しが困難なことを知り、2016年に独立して開業した、65歳以上対象の不動産会社である。 「高齢の方が賃貸物件を探す理由はさまざまです。例えば、家族が亡くなり、小さな住まいに引っ越したい。持ち家に住んでいたが、修繕費がかかるため賃貸に住み替えたい。病院の近くに住みたいといった理由が多いです」(R65不動産・代表取締役社長・山本遼さん、以下同) 他にも、子どもの近所に引っ越したい。体が不自由になったので、1階に住みたい、という理由が多い。中でも目立つのが、老朽化のため自宅が取り壊しになってしまうケースだ。 「総務省平成25年住宅・土地統計調査によれば、現在、築40年以上の住宅が、全国に280万棟あります。高度成長期に大量に建てられた物件が、軒並み老朽化していることも、高齢者の物件探しが増えている理由の一つです」』、「高齢の方が賃貸物件を探す理由はさまざまです。例えば、家族が亡くなり、小さな住まいに引っ越したい。持ち家に住んでいたが、修繕費がかかるため賃貸に住み替えたい。病院の近くに住みたいといった理由が多いです」・・・他にも、子どもの近所に引っ越したい。体が不自由になったので、1階に住みたい、という理由が多い。中でも目立つのが、老朽化のため自宅が取り壊しになってしまうケースだ」、なるほど。
・『高齢者の入居を断る主な理由は「孤独死」「家賃滞納」「認知症」 R65不動産が、2023年6月に行った高齢者の住宅に関する実態調査では、「住宅難民」の実態が明らかになった(インターネットによる調査、対象は賃貸物件探しの経験を持つ高齢者500人)。 ・賃貸住宅の部屋探し経験のある高齢者(65歳以上)は、3人に1人以上(全体の35.7%)。最も多い住み替え理由は、家賃の低い物件に住み替えるため(36.6%)。 ・高齢者の4人に1人以上(26.8%)が、年齢を理由とした賃貸住宅への入居拒否を経験。そのうち、5回以上断られた経験がある人は11.9%で、収入による差はない。 ・賃貸住宅へ入居するまでに不満を感じた点は、 1位:そもそも候補となる物件情報が少なかった(20.2%) 2位:通常よりも経済的負担(初期費用など)が大きかった(10.2%) 3位:条件に合わない物件を紹介された(7.0%) (調査結果から一部抜粋) 高齢者の4人に1人が、年齢を理由に賃貸住宅への入居を断られる現実。それが如実に数字に表れている。 「入居を断られる理由はいろいろありますが、まず、高齢の方の孤独死です。特に一人暮らしの場合、死後何日もたってから見つかるケースが少なくありません。そうなると事故物件になりますが、それを家主は恐れているのです」 加えて家賃滞納や認知症の可能性も、大きな拒否理由になっている』、「高齢者の4人に1人以上(26.8%)が、年齢を理由とした賃貸住宅への入居拒否を経験・・・入居を断られる理由はいろいろありますが、まず、高齢の方の孤独死です」、やむを得ないことだ。
・『入居者の遺品もトラブルのもと さらに面倒なのが、入居者の遺品の片付けだ。いわゆる「残置物の処理」である。入居者に身寄りがない場合、遺品は家主が片付けることになるが、実は相当な費用がかかってしまうのだ。 また、残置物と賃貸借契約は相続の対象になるため、勝手に処分すると、トラブルになる可能性もある。これも家主が高齢者の入居に難色を示す一因になっている。 2021年、この問題を解決するため、国土交通省と法務省がある条項を公開した。それは、入居者が亡くなった場合、残置物の処分と賃貸借契約の解除をスムーズに行えるようにするための「モデル契約条項」である。 さらに、今年7月には厚生労働省、国土交通省、法務省が合同で高齢者の住宅確保要配慮者への支援を拡充するための検討会をようやく立ち上げた。遅気に失したといえるが、高齢者の住宅確保に政府も動き出している。 この施策に対し、さまざまな高齢者の住宅探しを経験してきたR65不動産の山本さんは、こうコメントする。 「『残置物の処理等に関するモデル契約条項』は、残念ながら普及が進んでいません。その原因の一つに、残置物の処理を実行する『受任者』に、不動産会社を指定しにくい点があるのです」 不動産会社は、賃貸物件の契約により、収益を上げている。しかし残置物の処理を行うには、手間と費用がかかり、多大な損失を生んでしまうからだ。ちなみに受任者とは、入居者の死後事務委任を受任する人全般を指し、残置物の処理、残置物の換価や指定先への送付、賃貸借契約の解除を担う人を指す』、「残置物の処理を実行する『受任者』に、不動産会社を指定しにくい点があるのです」 不動産会社は、賃貸物件の契約により、収益を上げている。しかし残置物の処理を行うには、手間と費用がかかり、多大な損失を生んでしまうからだ」、「不動産会社」が「残置物の処理」を行う場合に、かける「手間と費用」に上限を付けることでヘッジできるのではなかろうか。
・『家主の負担が減るように契約者との契約体系は解決策の一つになる この問題に対して、山本さんは、ある解決策を実践している。 その解決策とは、入居者との契約方法に工夫を加えて家主の負担を減らすことだ。「万が一、入居者が亡くなった際は、残地物の処理と残置物の換価や指定先への送付、賃貸借契約の解除を行うことをあらかじめ契約書に盛り込んでいるのです。この契約方法により、家主の負担が軽減し、高齢者の方が入居しやすくなると考えています。実際に弊社ではこの方法を採用していて、自社が仲介した高齢者の残地物の処理等を行う受任者となるパートナーの不動産会社が全国にあります」 さらに同社は「居住支援法人」の指定も受けている。これは、住宅セーフティネット法に基づき自治体が指定した団体のことで、高齢者の賃貸住宅入居に関する情報の提供や、入居後の見守りなどの生活支援を行う団体を指す。以前はNPO法人などに限定されていたが、民間の企業も指定を受けられるよう制度が変わったのである。 また、2023年12月から大手電力会社が出資する会社と共同で「単身高齢者向けの見守りサービス」の実証実験を始める予定だ。 「政府が動き出し、高齢者の住宅難民問題は少しずつ改善されていると感じています。とはいえ、まだ十分ではありません。ですからできるだけ情報を集め、知識を身に付けて準備を整えておくことが、解決への一歩だと考えています」 同社は、他の不動産会社とパートナー制度という形で連携を取っており、全国各地へと支援の輪が広がっている。 「これからも高齢の方が入居可能な賃貸物件を増やし、いくつになっても、好きな場所に住める社会を実現したいと考えています」 ところで、冒頭で紹介したA子さん、その後どうなったかというと――R65不動産の仲介で無事に住まいを見つけ、今は新居で暮らしている。退去期限まで1カ月という切羽詰まった状態ではあったが……。(吉田由紀子/5時から作家塾(R))』、「万が一、入居者が亡くなった際は、残地物の処理と残置物の換価や指定先への送付、賃貸借契約の解除を行うことをあらかじめ契約書に盛り込んでいるのです。この契約方法により、家主の負担が軽減し、高齢者の方が入居しやすくなると考えています。実際に弊社ではこの方法を採用していて、自社が仲介した高齢者の残地物の処理等を行う受任者となるパートナーの不動産会社が全国にあります・・・さらに同社は「居住支援法人」の指定も受けている。これは、住宅セーフティネット法に基づき自治体が指定した団体のことで、高齢者の賃貸住宅入居に関する情報の提供や、入居後の見守りなどの生活支援を行う団体を指す。以前はNPO法人などに限定されていたが、民間の企業も指定を受けられるよう制度が変わったのである」、徐々に制度面でも整備されてきたようだ。
次に、本年2月2日付けPRESIDENT Onlineが掲載した精神科医の和田 秀樹氏による「年を重ねて「いい人」では脳の老化が進む…医師・和田秀樹が「理想の高齢者」と太鼓判を押す著名人の名前 大勢の人が聞きたくなる「面白い話」ができる高齢者になるには」を紹介しよう。
・『目指すべき高齢者像は何か。医師の和田秀樹さんは「前頭葉は目新しく、珍しいことを行うときに働くもので、これを使わないと脳の老化が進んでしまう。その意味でも私が目標とする『面白い高齢者』として理想的なのはタレントの高田純次さんだ。細かいことにこだわらずテキトーでいることはメンタルヘルスにもいい影響を与える」という――。 ※本稿は、和田秀樹『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『40代から始まる前頭葉萎縮のサイン 老いを遠ざけ、いつまでも元気で若々しくいるためには、「感情」を動かすことが何より大切です。なぜなら、人の老化は「知力」や「体力」よりも、まず「感情」の衰えから始まるからです。 「もの忘れが激しくなった」のは知力の老化。「昔に比べて走れなくなった」のは体力の老化。感情の老化とは「やってみよう!」という意欲やギラギラした欲望、新しいものを生み出す発想力、柔軟性、機動力などが低下する状態を指します。 人間の脳の中で真っ先に縮み始め、機能が低下するのが感情を司つかさどる前頭葉です。早い人では40代から萎縮が画像で目に見えるようになります。 ただし、記憶力や体力の衰えと違って前頭葉の機能低下は気づきにくい。これまでやってきたルーティンの仕事は、特に考えずともサクサクこなせるため自覚しにくいのですが、放っておくと、いずれは新しい物事や突発的な出来事への対処が苦手になっていきます。 徐々に感情が老化し、気づいたときには脳も体も見た目も、すべてがどっと老けてしまっているのです』、「人間の脳の中で真っ先に縮み始め、機能が低下するのが感情を司つかさどる前頭葉です。早い人では40代から萎縮が画像で目に見えるようになります。 ただし、記憶力や体力の衰えと違って前頭葉の機能低下は気づきにくい。これまでやってきたルーティンの仕事は、特に考えずともサクサクこなせるため自覚しにくいのですが、放っておくと、いずれは新しい物事や突発的な出来事への対処が苦手になっていきます。 徐々に感情が老化し、気づいたときには脳も体も見た目も、すべてがどっと老けてしまっているのです」、「前頭葉の機能低下」は恐ろしそうだ。
・『「想定外のこと」を増やせば、脳の老化は防げる 逆にいえば、感情の老化を防げば、かなり若々しさを維持できるということです。 高齢者が体力を維持するために体を使うことが重要なように、脳の機能も「思い、考え続けること」、つまり感情を動かすことが老化予防につながります。そのためには前頭葉を使うことが必要なのです。 前頭葉は「想定外なことへの対応力」という重要な働きを担っているため、「先の読めない不確実なこと」に積極的に取り組むことをおすすめします。平穏な日常生活では、前頭葉を使う機会が減り、その結果、感情が動かず、意欲が湧かなくなり、ますます脳を使わなくなるという悪循環に陥ってしまうのです。 前頭葉の機能は意欲や自発性、創造性につながるだけでなく、思考を切り替える際にも働いています。前頭葉機能が低下すると、一度カッとなると火がついたように怒り出す、いつまでも泣いているなど、感情のブレーキが利きにくくなります。これも前頭葉の機能が衰えたことが原因です。 足腰を衰えさせないために歩くことが大切なように、前頭葉も使うことが感情の老化防止につながります』、「前頭葉は「想定外なことへの対応力」という重要な働きを担っているため、「先の読めない不確実なこと」に積極的に取り組むことをおすすめします。平穏な日常生活では、前頭葉を使う機会が減り、その結果、感情が動かず、意欲が湧かなくなり、ますます脳を使わなくなるという悪循環に陥ってしまうのです」、なるほど。
・『年下に“タメ口”を使われてもいいじゃないか 前頭葉というのは目新しく、珍しいことを行うときに働くものだと私は考えています。逆に前頭葉の機能が落ちてくると生活がルーティン化し、前例踏襲型になっていきます。 早い人ですと40代くらいから前頭葉の老化が始まるわけですが、このくらいの時期からルーティン化、前例踏襲型になる人は珍しくありません。行きつけの店しか行かなくなったり、同じ著者の本しか読まなくなったりするなどです。 前頭葉を使うためには、その逆のことをすればいいことになります。 誰かに何かを誘われたときに、億劫な自分がいても、やってみよう、行ってみようと、いったんは誘いに乗る姿勢が大事。年下に“タメ口”を使われるなど、カチンとくることがあっても、「それでもいいじゃないか」と自分に言い聞かせる。若々しくいるためにお金をかけて見た目をよくしようと努力するように、感情も若々しくしておくことを心がけましょう。 誰かと出かけることが増えれば、思考も柔軟になりますから、体や脳にもいいことなのです』、「前頭葉の機能が落ちてくると生活がルーティン化し、前例踏襲型になっていきます。 早い人ですと40代くらいから前頭葉の老化が始まるわけですが、このくらいの時期からルーティン化、前例踏襲型になる人は珍しくありません」、私の場合、これに気を付ける必要がありそうだ。「誰かに何かを誘われたときに、億劫な自分がいても、やってみよう、行ってみようと、いったんは誘いに乗る姿勢が大事。年下に“タメ口”を使われるなど、カチンとくることがあっても、「それでもいいじゃないか」と自分に言い聞かせる。若々しくいるためにお金をかけて見た目をよくしようと努力するように、感情も若々しくしておくことを心がけましょう。 誰かと出かけることが増えれば、思考も柔軟になりますから、体や脳にもいいことなのです」、なるほど。
・『70代、80代になっても前頭葉は若返らせることができる 自分には誘ってくれる人がいないから、などと悲観することはありません。一人でも前頭葉を使うことはできます。 たとえば、普段行かない店で食事をする。ランチで入る店を毎日変えてみる。普段読まない著者の本を読んでみる。保守系の雑誌しか読まない人は、リベラル系の雑誌を読んでみる(もちろん、逆も同じことです)。 料理で冒険するのも前頭葉を刺激します。新しいレシピを試したり、珍しい食材を使ってみたりするといった具合です。 海外では、大学に入ると教授にけんかを売るような人が優秀とされますが、日本ではノートを一生懸命とって教授が言った通りの内容をテストで書く人が優をもらう傾向があります。会社でも新奇なことをやる人より、上司の言うことを聞く人のほうが出世しやすいようです。 要するに、これまでの人生で前頭葉を使ったことがない人が圧倒的に多いのが、日本という国の特徴だといえます。 だから、ちょっと前頭葉を使う習慣をつけると若い人より前頭葉が働き、面白い高齢者になれるのです。つまり前頭葉は若返るのです。 70代、80代になっても脳を若返らせることは十分可能です。同時に意欲の老化も防げるはずです。ぜひ意識して、前頭葉を使う習慣を続けてみてください』、「ちょっと前頭葉を使う習慣をつけると若い人より前頭葉が働き、面白い高齢者になれるのです。つまり前頭葉は若返るのです。 70代、80代になっても脳を若返らせることは十分可能です。同時に意欲の老化も防げるはずです。ぜひ意識して、前頭葉を使う習慣を続けてみてください」、よし是非、やってみたい。
・『年を重ねても素敵だなと感じる有名人 「老害」という言葉をよく聞くようになり、自分はそうならないように努めているという人は少なくないでしょう。 相手からしたらまったく興味が湧かない話を延々と聞かせたり、昔の自慢話ばかりをしたりする人が老害に当てはまります。 かといって、老害と言われるのを避けるために人の話は聞くだけにするとか、相手に合わせているだけというのでは、いいおじいさん、いいおばあさんと呼ばれるかもしれませんが、脳は老化していくばかりです。それでは面白い人とは思ってもらえません。 私が長年、高齢者を診ていて目標にするようになったのは、「面白い高齢者」になりたいということです。 理想はタレントの高田純次さんです。自由奔放な芸風で人気を集めている高田さんのように、細かいことにこだわらずテキトーでいることはメンタルヘルスにもいい影響を与えます。つまらないことで目くじらを立てる高齢者は若者にうっとうしがられるだけですから。 2021年に99歳で亡くなった瀬戸内寂聴さんも理想とする一人です。寂聴さんのように、大勢の人が話を聞きたくなるような高齢者になりたいものです』、「理想はタレントの高田純次さんです。自由奔放な芸風で人気を集めている高田さんのように、細かいことにこだわらずテキトーでいることはメンタルヘルスにもいい影響を与えます。つまらないことで目くじらを立てる高齢者は若者にうっとうしがられるだけですから。 2021年に99歳で亡くなった瀬戸内寂聴さんも理想とする一人です。寂聴さんのように、大勢の人が話を聞きたくなるような高齢者になりたいものです」、自分は「高田純次さん」とは対照的な性格だが、この際、理想形として追い求めてみたい。
・『週に4回くらい行列のできるラーメン屋に行けるか 話の面白い高齢者というのは、今の時代であれば、ネットで検索しても出てこないような経験に基づいた話ができる人。 たとえば、週に4回くらい行列のできるようなラーメン屋に行き、実際に食べてみた感想を面白おかしく話せたら、若い人だって、話を聞いてみようという気になるでしょう。70代はまだ体が十分に動く年代ですので、ぜひそうした体験を積んでいただきたい。 昔の高齢者であれば、戦争体験などが若い人が聞きたい話の定番だったでしょうが、今の70代にはそういう話は期待できません。 あるいは、飢えに直面した日本の悲惨な状態を子ども時代に経験して、今の食料安全保障は危険だと論じるには、70代は少し遅い世代かもしれません。 ただ、子ども時代に、親の給料が上がるたびに、次はテレビ、次は自動車と買う喜びを経験した高度成長期の世代なので、給料を上げるほうが景気はよくなるという話を、資本主義の富の不均衡について述べたフランスの経済学者、トマ・ピケティの理論などと結びつければ、説得力のある話が可能でしょう。 あるいは、自分たちが現役だった時代は法人税が高かったので、会社が経費を使うことに積極的で(そのほうが税金は安くなるからです)、給料も上がり続けたし、バブル期にいい思いをした話をして、減税より増税のほうが景気はよくなるという経済の常識と逆の説を展開したら、面白い高齢者と思われるかもしれません』、私の場合、どんな話をすれば、「面白い高齢者と思われる」ようになるかを考えてみたい。
・『世間の常識に囚われず、言いたいことを言ってもいい 話の面白い高齢者を目指すためには、世間一般と違う「一家言」を持つのが近道です。 高齢者から運転免許を取り上げるという風潮が高まっていますが、昔は交通事故で1万人以上も亡くなっていたのは、自動車に大して規制をかけなかったためで、その後の日本の製造業の隆盛があったのは事実です。75歳以上のドライバーによる死亡事故は年間400件もありません。 逆に、高齢者が交通事故の最大の被害者で死者数の5割を超えているなどという話も、今のご時世、興味深いでしょう。 70代というのは、ある程度パソコンを使って仕事をするのが当たり前になった世代の走りでしょう(この年代で電子カルテが使えない医者を見たことがない)。屁理屈と言われても、常識と違うデータを探すことは難しいことではありません。 和田秀樹『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)和田秀樹『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版) 少年犯罪が起こるたびにSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などの影響で、それが増えているようなニュアンスでコメントする「識者」がたくさんいる中で、ちょっとデータを検索すると2003年くらいから少年非行件数が減っていることくらいすぐわかります。私自身も経験していることですが、昔の不良の怖さは半端ではありませんでした。 こういう経験とデータを交えて話ができるのが70代の強みであり、常識に反することを思いつく、考えるというのは、前頭葉の最高のトレーニングでもあるのです。 少なくとも長く生きてきた経験から、世の中は理屈通りにいかないという立場をとることができます。その強みを活かして、前頭葉を鍛えながら、話の面白い高齢者を目指していきましょう』、私の場合、どんな話をすれば、「話の面白い高齢者」になれるかを考えてみたい。
タグ:「不動産屋に行ってみたところ、70代と年齢を告げた瞬間、「うちでは無理」と追い返されてしまった。Aさんは不動産屋を何軒か回ってみるが、どの店も年齢を理由に断られてしまう。住む家が見つからない…・・・65歳以上の日本人(国籍保有者)は、2010年時点で約2900万人。それが2020年には約3600万人に増加。単身高齢者は、2010年には479万人だったが、2020年には671万人。2030年には795万人まで増加すると予想されている」、「高齢者」の住宅探しは困難になってきたようだ。 和田秀樹『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版) 「人間の脳の中で真っ先に縮み始め、機能が低下するのが感情を司つかさどる前頭葉です。早い人では40代から萎縮が画像で目に見えるようになります。 ただし、記憶力や体力の衰えと違って前頭葉の機能低下は気づきにくい。これまでやってきたルーティンの仕事は、特に考えずともサクサクこなせるため自覚しにくいのですが、放っておくと、いずれは新しい物事や突発的な出来事への対処が苦手になっていきます。 PRESIDENT ONLINE 「ちょっと前頭葉を使う習慣をつけると若い人より前頭葉が働き、面白い高齢者になれるのです。つまり前頭葉は若返るのです。 70代、80代になっても脳を若返らせることは十分可能です。同時に意欲の老化も防げるはずです。ぜひ意識して、前頭葉を使う習慣を続けてみてください」、よし是非、やってみたい。 和田 秀樹氏による「年を重ねて「いい人」では脳の老化が進む…医師・和田秀樹が「理想の高齢者」と太鼓判を押す著名人の名前 大勢の人が聞きたくなる「面白い話」ができる高齢者になるには」 さらに同社は「居住支援法人」の指定も受けている。これは、住宅セーフティネット法に基づき自治体が指定した団体のことで、高齢者の賃貸住宅入居に関する情報の提供や、入居後の見守りなどの生活支援を行う団体を指す。以前はNPO法人などに限定されていたが、民間の企業も指定を受けられるよう制度が変わったのである」、徐々に制度面でも整備されてきたようだ。 私の場合、どんな話をすれば、「話の面白い高齢者」になれるかを考えてみたい。 私の場合、どんな話をすれば、「面白い高齢者と思われる」ようになるかを考えてみたい。 「理想はタレントの高田純次さんです。自由奔放な芸風で人気を集めている高田さんのように、細かいことにこだわらずテキトーでいることはメンタルヘルスにもいい影響を与えます。つまらないことで目くじらを立てる高齢者は若者にうっとうしがられるだけですから。 2021年に99歳で亡くなった瀬戸内寂聴さんも理想とする一人です。寂聴さんのように、大勢の人が話を聞きたくなるような高齢者になりたいものです」、自分は「高田純次さん」とは対照的な性格だが、この際、理想形として追い求めてみたい。 若々しくいるためにお金をかけて見た目をよくしようと努力するように、感情も若々しくしておくことを心がけましょう。 誰かと出かけることが増えれば、思考も柔軟になりますから、体や脳にもいいことなのです」、なるほど。 「前頭葉の機能が落ちてくると生活がルーティン化し、前例踏襲型になっていきます。 早い人ですと40代くらいから前頭葉の老化が始まるわけですが、このくらいの時期からルーティン化、前例踏襲型になる人は珍しくありません」、私の場合、これに気を付ける必要がありそうだ。「誰かに何かを誘われたときに、億劫な自分がいても、やってみよう、行ってみようと、いったんは誘いに乗る姿勢が大事。年下に“タメ口”を使われるなど、カチンとくることがあっても、「それでもいいじゃないか」と自分に言い聞かせる。 「前頭葉は「想定外なことへの対応力」という重要な働きを担っているため、「先の読めない不確実なこと」に積極的に取り組むことをおすすめします。平穏な日常生活では、前頭葉を使う機会が減り、その結果、感情が動かず、意欲が湧かなくなり、ますます脳を使わなくなるという悪循環に陥ってしまうのです」、なるほど。 うだ。 「人間の脳の中で真っ先に縮み始め、機能が低下するのが感情を司つかさどる前頭葉です。早い人では40代から萎縮が画像で目に見えるようになります。 ただし、記憶力や体力の衰えと違って前頭葉の機能低下は気づきにくい。これまでやってきたルーティンの仕事は、特に考えずともサクサクこなせるため自覚しにくいのですが、放っておくと、いずれは新しい物事や突発的な出来事への対処が苦手になっていきます。 徐々に感情が老化し、気づいたときには脳も体も見た目も、すべてがどっと老けてしまっているのです」、「前頭葉の機能低下」は恐ろしそ 「万が一、入居者が亡くなった際は、残地物の処理と残置物の換価や指定先への送付、賃貸借契約の解除を行うことをあらかじめ契約書に盛り込んでいるのです。この契約方法により、家主の負担が軽減し、高齢者の方が入居しやすくなると考えています。実際に弊社ではこの方法を採用していて、自社が仲介した高齢者の残地物の処理等を行う受任者となるパートナーの不動産会社が全国にあります・・・ 「残置物の処理を実行する『受任者』に、不動産会社を指定しにくい点があるのです」 不動産会社は、賃貸物件の契約により、収益を上げている。しかし残置物の処理を行うには、手間と費用がかかり、多大な損失を生んでしまうからだ」、「不動産会社」が「残置物の処理」を行う場合に、かける「手間と費用」に上限を付けることでヘッジできるのではなかろうか。 「高齢者の4人に1人以上(26.8%)が、年齢を理由とした賃貸住宅への入居拒否を経験・・・入居を断られる理由はいろいろありますが、まず、高齢の方の孤独死です」、やむを得ないことだ。 「高齢の方が賃貸物件を探す理由はさまざまです。例えば、家族が亡くなり、小さな住まいに引っ越したい。持ち家に住んでいたが、修繕費がかかるため賃貸に住み替えたい。病院の近くに住みたいといった理由が多いです」・・・他にも、子どもの近所に引っ越したい。体が不自由になったので、1階に住みたい、という理由が多い。中でも目立つのが、老朽化のため自宅が取り壊しになってしまうケースだ」、なるほど。 吉田由紀子氏による「65歳以上の4人に1人が「賃貸入居お断り」の衝撃!“高齢住宅難民”はどうしたらいい?」 ダイヤモンド・オンライン (その25)(65歳以上の4人に1人が「賃貸入居お断り」の衝撃!“高齢住宅難民”はどうしたらいい?、年を重ねて「いい人」では脳の老化が進む…医師・和田秀樹が「理想の高齢者」と太鼓判を押す著名人の名前 大勢の人が聞きたくなる「面白い話」ができる高齢者になるには) 高齢化社会
情報セキュリティー・サイバー犯罪(その9)(中国ハッカーが日本の防衛機密をハッキング 米国の通報で発覚、中国への情報流出 アプリ以外も危険!日本に普及中「最新中国製品」も要注意、「CISOが不在」日本企業の重大すぎる経営リスク 生成AIによる効率的なセキュリティ対策も課題) [社会]
情報セキュリティー・サイバー犯罪については、2022年5月19日に取上げた。今日は、(その9)(中国ハッカーが日本の防衛機密をハッキング 米国の通報で発覚、中国への情報流出 アプリ以外も危険!日本に普及中「最新中国製品」も要注意、「CISOが不在」日本企業の重大すぎる経営リスク 生成AIによる効率的なセキュリティ対策も課題)である。
先ずは、昨年8月8日付けForbes「中国ハッカーが日本の防衛機密をハッキング、米国の通報で発覚」を紹介しよう。
・『ワシントン・ポストは8月7日、中国の軍事ハッカーが2020年以降、日本の防衛機密ネットワークにアクセスし、米国の同盟国である日本の軍事能力や計画に関する情報にアクセスしていたと報じた。 このハッキングは米国の国家安全保障局(NSA)によって2020年秋に発見されたという。中国の人民解放軍のハッカーらは、日本の自衛隊の計画や能力、軍事的欠点の評価にアクセスするなど、深く執拗な情報収集を行っていたと、複数の米国の元高官がポスト紙に語っている。 報告を受けたNSAと米サイバー軍のトップのポール・ナカソネ陸軍大将と、当時ホワイトハウスの国家安全保障副顧問だったマシュー・ポッティンジャーが東京に急行して防衛大臣に説明を行い、首相にも伝えたとポスト紙は報じている。 このハッキングはトランプ政権下で始まったが、バイデン政権下でも続き、2021年には日本の防衛システムへの侵入が続いていることを示す新たなデータが発見され、情報漏洩が続いていることが発覚した。日米の両国は最終的に、日本の民間企業の手を借りて脆弱性を評価することに合意し、米国のNSAとサイバー軍のチームがその調査結果を確認し、情報漏洩を防ぐ方法について提言を行ったという。 フォーブスは、国務省にコメントを求めたが現時点で回答は得られていない。 「これは衝撃的なほどに酷い情報漏洩だった」とポスト紙の取材に応じた元米軍関係者は語っている。 日本の政府関係者は、ネットワークセキュリティを強化するために、今後5年間で自衛隊のサイバーセキュリティ部隊を4000人規模にすると述べている。さらに、ネットワークを24時間365日監視するサイバー司令部を発足させ、5年間で70億ドル(約1兆円)をサイバーセキュリティに費やす計画だと日本の防衛関係者はポスト紙の取材に語った。 「今回のハッキングにおける日本の当局の対応の遅さは、米国が同盟国である日本と共有する情報の量を減らすことにつながるかもしれない」と米政府関係者はポスト紙に語った』、「日本の防衛当局」の「ハッキングにおける対応の遅さ」は、」、「米国が同盟国である日本と共有する情報の量を減らすことにつながるかもしれない」、全くみっともない限りだ。
次に、昨年8月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村 悠氏による「中国への情報流出、アプリ以外も危険!日本に普及中「最新中国製品」も要注意」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327406
・『プロパガンダ工作に適したTikTokの危険性 中国企業が運営する動画共有アプリ「TikTok」について、かねてその危険性は指摘されている。 米経済誌「フォーブス」によれば、TikTokは、欧州のユーザーに向けて、中国政府のプロパガンダ機関による広告を大量に配信してきたことが、7月20日に公開された広告ライブラリーから明らかになったという。広告の中には、新疆ウイグル自治区を観光地として宣伝するものや中国によるコロナ政策を賛辞するものなどが含まれているという。 また、プロパガンダ工作に適した動画を意図的に“おすすめ動画”にして多くのユーザーに閲覧させたり、意図的に特定の動画を排除、浮上させるなど、プロパガンダにはうってつけのアプリのようだ。 さらにTikTokユーザーの情報が意図的に中国に収集される危険性も指摘されており、過去には一部のスタッフが、2人のジャーナリストを含むアメリカ市民のユーザーデータに不適切にアクセスしたと、ニューヨーク・タイムズが報じている。 TikTokのプロパガンダ機能やスパイアプリとしての危険性は広く知られつつあるが、注意すべきアプリはTikTokだけではない』、「TikTok」は、「プロパガンダ工作に適した動画を意図的に“おすすめ動画”にして多くのユーザーに閲覧させたり、意図的に特定の動画を排除、浮上させるなど、プロパガンダにはうってつけのアプリのようだ。 さらにTikTokユーザーの情報が意図的に中国に収集される危険性も指摘されており、過去には一部のスタッフが、2人のジャーナリストを含むアメリカ市民のユーザーデータに不適切にアクセスしたと、ニューヨーク・タイムズが報じている」、なるほど。
・『8月に日本でリリースされた格安ECアプリの「Temu」 「ピンドゥオドゥオ(拼多多)」というアプリをご存じだろうか。 ピンドゥオドゥオは、2015年に上海で創業した企業PDDホールディングスがリリースした、月間7億5000万人が利用する中国3位のECアプリであるが、実は、ユーザーの通話記録や文字メッセージ、写真アルバムなどに不正アクセスしていたことが明らかになっている。 CNNは、ピンドゥオドゥオに不正なコードが発見され、グーグルのアンドロイドOSの脆弱(ぜいじゃく)性を利用し、ユーザーの同意なく、携帯電話の使用内容やデータにアクセスしていることが判明したと報じている。 ピンドゥオドゥオのアプリに内蔵された不正なコードは、一度インストールすると、アプリを削除しても、不正なコードを除去することが非常に難しいとみられている。 そして、その「ピンドゥオドゥオ」をリリースしたPDDホールディングスから、格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない。 仮に、ここまで解説したアプリの運営会社に悪意がなくとも、中国には、善意の企業さえ政府の意図に従わせる法的根拠がある。 中国の国家情報法は、安全保障や治安維持のために、企業も民間人も中国政府の情報収集活動に協力しなければならないと義務づけ、中国政府は企業などが持つデータをいつでも要求できる。要は、中国政府が情報を出せと言えば、企業は従わざるを得ないのだ。同法は、日本をはじめ外国の企業も当然対象となる。 ちなみに、これは運営企業が“善意”で運営していたら、という仮定の話である。アプリの運営会社の中には、中国政府の意向に忠実で、アプリを世界で流行させ、バックドアを仕掛け、日常的に情報を収集する意図を持っている会社もあり得るだろう』、「格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない」、恐ろしいことだ。
・『アプリだけではない中国製自動車の脅威 注意すべきは、アプリだけではない。 中国製電気自動車(EV)の日本進出が進んでいる。 テスラを抜き、EV販売台数世界一となった中国自動車メーカー「比亜迪(BYD)」が日本に本格進出を開始、既に日本の交通機関にも食い込んでおり、京阪バスが京都市内を走る路線においてBYD製EVバスの運行を始めている。 ちなみに、このBYDであるが、BYDの日本法人社長の劉学亮氏が、東京新聞の取材に対し、「2010年に、金型メーカー・オギハラの館林工場を買収し、この金型企業から日本のものづくりを勉強できた」と話したという。 このオギハラは、当時世界一の金型加工技術を持っていたとされ、まさに、経済安全保障の技術流出例の典型例であった。 さて、BYDを例になぜ中国製自動車が危険なのかを述べてみたい。 中国政府の動きがヒントとなる。 中国はテスラ社製自動車の軍施設や軍関係者の居住地などへの乗り入れを禁止している。 その理由は、自動車のGPS情報による施設内の主要場所の把握や車載カメラの動画情報など多くのデータが収集されることを警戒していることにあるとみられる。 これはつまり、路線バスなどに加え、例えば宅配業者に中国製自動車を普及させ、自衛隊基地に出入りすることが可能になれば、基地内の施設の場所が容易に把握できることを意味している。 また、「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている。 中国は各国のインフラに中国製自動車を普及させることにより、自動車を通じて相手国の多大な情報を収集することが可能となる』、「路線バスなどに加え、例えば宅配業者に中国製自動車を普及させ、自衛隊基地に出入りすることが可能になれば、基地内の施設の場所が容易に把握できることを意味している。 また、「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている。 中国は各国のインフラに中国製自動車を普及させることにより、自動車を通じて相手国の多大な情報を収集することが可能となる」、大変だ。
・『米フィットネスアプリで暴かれた米軍の秘密基地 EVが位置情報をトラッキングすることで施設内の位置関係が把握できるのと同様の危険性は、GPS情報を取得するスマートフォンアプリにも指摘できる。 スマートフォンなどのGPS情報を使ってジョギングなどのアクティビティーを記録・分析できる米国発のサービスフィットネスアプリ「Strava」に搭載された機能「Heatmap」が、アメリカ軍のトップシークレットであった秘密基地の存在を浮き彫りにした。 このHeatmap機能は、アプリを使っている人がどの場所で多くのアクティビティーを行っているのかを色で示すことができる。Strava社が公開したHeatmapにアクティビティーの情報が色によって示され、米軍基地で任務にあたる兵士などがスマートフォンやスマートウォッチなどのウエアラブル端末のトラッキング機能をオンにしたままにしたことにより、その活動の全てが記録され、基地の場所が暴露されてしまった。 この画像はHeatmapで把握されたニジェールのフランス軍基地である。位置情報を収集し続けることにより、施設の形がくっきりと可視化される。フィットネスアプリにはこのような危険性が潜むのだ。 Stravaは中国製アプリではないが、いずれにせよ、中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスクはご理解いただけたのではないだろうか』、「中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスク」、確かに気を付けるべきだ。
・『日本の農業における中国製ドローンの危険性 ドローンについても、位置情報やカメラを通じた施設情報の収集の危険が指摘される。だが、問題はそれだけではない。 韓国では、農業用ドローンのシェアのうち中国製ドローンが7割を超える。 韓国自治体が農業用ドローンの支援事業を進める際、中国企業の製品に合わせた規格で入札を実施していることが背景にある。 この農業用ドローンについて、ドローンの農薬散布手法などの農業の生産性に関わる重要な農業防除データが中国に流れる可能性も指摘されており。食糧安全保障を脅かしている状態だ。 日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している。 ここまで、中国製アプリを代表に、いくつかの中国製品が日本に浸透することによる危険性について例示して解説したが、日本においてどれだけの人がこの危険性を認識しているだろうか。 その危険性に関する認識・意識が甘ければ、その脅威にのみ込まれる未来しかないだろう。 中国製品の全てを疑い、全て忌避しろとは言わないが、せめて各国で指摘されている危険性については認識し、自身で判断できる意識は持っておきたい。そして、国としても明確に危険性が指摘されている製品については、国民に知らせる責務があると考える。 いずれにせよ、カウンターインテリジェンス(防諜)の重要性について、国民の意識や関心を高めることが、迫る脅威に立ち向かう最大の防御策となるだろう』、「日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している・・・日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している・・・カウンターインテリジェンス(防諜)の重要性について、国民の意識や関心を高めることが、迫る脅威に立ち向かう最大の防御策となるだろう」、その通りだ。
次に、8月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村 悠氏による「中国への情報流出、アプリ以外も危険!日本に普及中「最新中国製品」も要注意」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327406
・『プロパガンダ工作に適したTikTokの危険性 中国企業が運営する動画共有アプリ「TikTok」について、かねてその危険性は指摘されている。 米経済誌「フォーブス」によれば、TikTokは、欧州のユーザーに向けて、中国政府のプロパガンダ機関による広告を大量に配信してきたことが、7月20日に公開された広告ライブラリーから明らかになったという。広告の中には、新疆ウイグル自治区を観光地として宣伝するものや中国によるコロナ政策を賛辞するものなどが含まれているという。 また、プロパガンダ工作に適した動画を意図的に“おすすめ動画”にして多くのユーザーに閲覧させたり、意図的に特定の動画を排除、浮上させるなど、プロパガンダにはうってつけのアプリのようだ。 さらにTikTokユーザーの情報が意図的に中国に収集される危険性も指摘されており、過去には一部のスタッフが、2人のジャーナリストを含むアメリカ市民のユーザーデータに不適切にアクセスしたと、ニューヨーク・タイムズが報じている。 TikTokのプロパガンダ機能やスパイアプリとしての危険性は広く知られつつあるが、注意すべきアプリはTikTokだけではない』、「TikTok」は情報セキュリティ上極めて問題が多い怖いソフトのようだ。
・『8月に日本でリリースされた格安ECアプリの「Temu」 「ピンドゥオドゥオ(拼多多)」というアプリをご存じだろうか。 ピンドゥオドゥオは、2015年に上海で創業した企業PDDホールディングスがリリースした、月間7億5000万人が利用する中国3位のECアプリであるが、実は、ユーザーの通話記録や文字メッセージ、写真アルバムなどに不正アクセスしていたことが明らかになっている。 CNNは、ピンドゥオドゥオに不正なコードが発見され、グーグルのアンドロイドOSの脆弱(ぜいじゃく)性を利用し、ユーザーの同意なく、携帯電話の使用内容やデータにアクセスしていることが判明したと報じている。 ピンドゥオドゥオのアプリに内蔵された不正なコードは、一度インストールすると、アプリを削除しても、不正なコードを除去することが非常に難しいとみられている。 そして、その「ピンドゥオドゥオ」をリリースしたPDDホールディングスから、格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない。 仮に、ここまで解説したアプリの運営会社に悪意がなくとも、中国には、善意の企業さえ政府の意図に従わせる法的根拠がある。 中国の国家情報法は、安全保障や治安維持のために、企業も民間人も中国政府の情報収集活動に協力しなければならないと義務づけ、中国政府は企業などが持つデータをいつでも要求できる。要は、中国政府が情報を出せと言えば、企業は従わざるを得ないのだ。同法は、日本をはじめ外国の企業も当然対象となる。 ちなみに、これは運営企業が“善意”で運営していたら、という仮定の話である。アプリの運営会社の中には、中国政府の意向に忠実で、アプリを世界で流行させ、バックドアを仕掛け、日常的に情報を収集する意図を持っている会社もあり得るだろう』、「格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない」、「日本」も大いに注意すべきだ。
・『アプリだけではない中国製自動車の脅威 注意すべきは、アプリだけではない。 中国製電気自動車(EV)の日本進出が進んでいる。 テスラを抜き、EV販売台数世界一となった中国自動車メーカー「比亜迪(BYD)」が日本に本格進出を開始、既に日本の交通機関にも食い込んでおり、京阪バスが京都市内を走る路線においてBYD製EVバスの運行を始めている。 ちなみに、このBYDであるが、BYDの日本法人社長の劉学亮氏が、東京新聞の取材に対し、「2010年に、金型メーカー・オギハラの館林工場を買収し、この金型企業から日本のものづくりを勉強できた」と話したという。 このオギハラは、当時世界一の金型加工技術を持っていたとされ、まさに、経済安全保障の技術流出例の典型例であった。 さて、BYDを例になぜ中国製自動車が危険なのかを述べてみたい。 中国政府の動きがヒントとなる。 中国はテスラ社製自動車の軍施設や軍関係者の居住地などへの乗り入れを禁止している。 その理由は、自動車のGPS情報による施設内の主要場所の把握や車載カメラの動画情報など多くのデータが収集されることを警戒していることにあるとみられる。 これはつまり、路線バスなどに加え、例えば宅配業者に中国製自動車を普及させ、自衛隊基地に出入りすることが可能になれば、基地内の施設の場所が容易に把握できることを意味している。 また、「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている。 中国は各国のインフラに中国製自動車を普及させることにより、自動車を通じて相手国の多大な情報を収集することが可能となる』、「「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている」、なるほど。
・『米フィットネスアプリで暴かれた米軍の秘密基地 EVが位置情報をトラッキングすることで施設内の位置関係が把握できるのと同様の危険性は、GPS情報を取得するスマートフォンアプリにも指摘できる。 スマートフォンなどのGPS情報を使ってジョギングなどのアクティビティーを記録・分析できる米国発のサービスフィットネスアプリ「Strava」に搭載された機能「Heatmap」が、アメリカ軍のトップシークレットであった秘密基地の存在を浮き彫りにした。 このHeatmap機能は、アプリを使っている人がどの場所で多くのアクティビティーを行っているのかを色で示すことができる。Strava社が公開したHeatmapにアクティビティーの情報が色によって示され、米軍基地で任務にあたる兵士などがスマートフォンやスマートウォッチなどのウエアラブル端末のトラッキング機能をオンにしたままにしたことにより、その活動の全てが記録され、基地の場所が暴露されてしまった。 この画像はHeatmapで把握されたニジェールのフランス軍基地である。位置情報を収集し続けることにより、施設の形がくっきりと可視化される。フィットネスアプリにはこのような危険性が潜むのだ。 Stravaは中国製アプリではないが、いずれにせよ、中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスクはご理解いただけたのではないだろうか』、「中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスク」に十分に注意する必要がある。
・『日本の農業における中国製ドローンの危険性 ドローンについても、位置情報やカメラを通じた施設情報の収集の危険が指摘される。だが、問題はそれだけではない。 韓国では、農業用ドローンのシェアのうち中国製ドローンが7割を超える。 韓国自治体が農業用ドローンの支援事業を進める際、中国企業の製品に合わせた規格で入札を実施していることが背景にある。 この農業用ドローンについて、ドローンの農薬散布手法などの農業の生産性に関わる重要な農業防除データが中国に流れる可能性も指摘されており。食糧安全保障を脅かしている状態だ。 日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している。 ここまで、中国製アプリを代表に、いくつかの中国製品が日本に浸透することによる危険性について例示して解説したが、日本においてどれだけの人がこの危険性を認識しているだろうか。 その危険性に関する認識・意識が甘ければ、その脅威にのみ込まれる未来しかないだろう。 中国製品の全てを疑い、全て忌避しろとは言わないが、せめて各国で指摘されている危険性については認識し、自身で判断できる意識は持っておきたい。そして、国としても明確に危険性が指摘されている製品については、国民に知らせる責務があると考える。 いずれにせよ、カウンターインテリジェンス(防諜)の重要性について、国民の意識や関心を高めることが、迫る脅威に立ち向かう最大の防御策となるだろう』、「中国製品の全てを疑い、全て忌避しろとは言わないが、せめて各国で指摘されている危険性については認識し、自身で判断できる意識は持っておきたい。そして、国としても明確に危険性が指摘されている製品については、国民に知らせる責務があると考える」、その通りだ。
第三に、本年1月26日付け東洋経済オンラインが掲載したライター の長谷川 敦氏による「「CISOが不在」日本企業の重大すぎる経営リスク 生成AIによる効率的なセキュリティ対策も課題」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/729787
・『日本はセキュリティ人材の不足が長らく続いているが、現場だけでなく、統括を担う「CISO(Chief Information Security Officer、最高情報セキュリティ責任者)」も足りていない。 NRIセキュアテクノロジーズが2024年1月25日に発表した「企業における情報セキュリティ実態調査 NRI Secure Insight 2023」によれば、CISOを設置している日本企業は、アメリカやオーストラリアの半数以下にとどまっている。 CISO未設置の経営リスクや人材確保のポイントについて、情報セキュリティ実態調査の監修を務めた同社DXセキュリティプラットフォーム事業本部本部長の足立道拡氏に聞いた』、「CISOを設置している日本企業は、アメリカやオーストラリアの半数以下」、致命的な立ち遅れだ。
・『経営とセキュリティの両方がわかる人材が必要 「CISOは、CEO(最高経営責任者)をはじめとする経営層と、現場のセキュリティ担当者をつなぐ『通訳』の役割を担っている」と、足立氏は言う。 経営層は、セキュリティ対策の重要性を認識していても、具体的にどのような対策を打てばよいのか理解していないケースが多い。一方の現場でも、対策の必要性について経営層をどう説得すればよいのかわからず「予算獲得が難しい」と苦しむセキュリティ担当者が多いそうだ) だからこそ、経営とセキュリティの両方を理解しているCISOの存在が不可欠だという。実際、CISOが不在の企業においては、次のようなリスクがあると足立氏は指摘する。 「CISOが不在だと、本来投じるべき予算が確保されない事態が生じやすくなる。その結果、技術的な対策ができず『従業員への注意喚起や周知』といった人的対策にとどまることも多い。 今の時代は、企業規模を問わずサイバー攻撃に遭うリスクがあるので、大企業に限らずサプライチェーンの一翼を担う中小企業も、経営層と現場をつなぐ責任者を置いてほしい。本来なら専任が望ましいが、兼務でもかまわない。現状、CIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)がCISOを兼務する形などが多い」 前述のNRIセキュアテクノロジーズの実態調査によれば、CISOを設置している企業は、アメリカでは95.5%、オーストラリアでは97.4%に達していたのに対して、日本は41.1%と大きな差が確認された。) 従業員数が多いほどCISOの設置率も高い傾向にあるが、なぜ日本企業は海外と比べて遅れているのか。足立氏はこう説明する。 「アメリカでは、2013年に重要インフラのサイバーセキュリティ強化に関する大統領令が出て以降、対策は国の重要なイシューになった。現状、』、「CISOを設置している企業は、アメリカでは95.5%、オーストラリアでは97.4%に達していたのに対して、日本は41.1%と大きな差・・・日本企業においては『セキュリティ対策はコスト』という発想が根強く、対策の必要性が認識され始めたのは2018年頃のことと捉えている。そのためCISOを担える人材が十分には育っておらず、キャリアパスが確立されていないこともあり、設置が進まない状況になっている」、なるほど。
・『「すべての能力を備えた人物」を求めないこと では、適任者が不足している中で、企業はどのように人材を確保していけばよいのだろうか。 CISOには「セキュリティの知識・技術」「戦略・会計などのビジネススキル」「リーダーシップと意思決定力」「コミュニケーションスキル」など、広範な知識やスキル、能力が求められる。今の日本では、これらをすべて兼ね備えたスーパーマンのような人材を、社内で見つけるのも外部から調達してくるのも容易ではない。 そのため、「1つでも優れた素養を持っている人物を任命し、『経験を積みながら、中長期的にCISOとして育ってもらえばいい』という意識で臨むことが大事」だと足立氏は助言する。 例えばセキュリティに関する知識や技術は不十分でも、高い統率力を備え戦略立案の経験も豊富にある人材を任命しようとすると、人材確保のハードルも下がるのではないだろうか。実際、日本のCISOは、さまざまなバックグラウンドを持つ人材が多いという。 「元CIOやセキュリティベンダー出身者などを外部から採用し、CISOに任命する動きが出てきた。この流れが浸透すると設置率は高まるのではないか。新任のCISOに不足している部分がある場合には、その分野を得意とするほかのメンバーを補佐役として置くなど、CISOをチームとして機能させていけばいい」 チーム体制を組むことは、次期CISO候補を育成していくうえでも有効だという。例えば外部からビジネススキルが高い人をCISOとして採用してチームを組んだ場合、セキュリティ対策に詳しい若手・中堅の社員が、CISOから優れたリーダーシップや経営視点を間近で学び、「経営とセキュリティの両方の視点を備えた人材」へと成長していくことが期待できる。) またCISOの設置後には、経営トップによるCISOへのバックアップが重要になると足立氏は言う。 「CISOは、普段の業務が賞賛されることはほとんどないうえ、自社がサイバー攻撃を受けて被害が発生した場合、非難を浴びることになりがち。そのためアメリカでもCISOが抱える孤立感やプレッシャーが大きな問題となっている。経営トップがCISOに対して、執行に必要な権限とリソースを与えたうえで、その立場を理解し、支援する姿勢を示さないと、社内にCISOを根づかせることは困難になる」 最近では、CISO同士がさまざまな課題や悩み事について率直に話し合える社外のコミュニティーが生まれている。そうしたつながりをつくることは、CISOの孤立を防ぐうえでも、学びを深めていくうえでも効果があるという』、「これらをすべて兼ね備えたスーパーマンのような人材を、社内で見つけるのも外部から調達してくるのも容易ではない・・・1つでも優れた素養を持っている人物を任命し、『経験を積みながら、中長期的にCISOとして育ってもらえばいい』という意識で臨むことが大事」だと足立氏は助言する」、現実的なアプローチだ。
・『セキュリティ対策をコストと考える企業に人は来ない 今回の調査では、企業規模によらず約9割の企業が「セキュリティ人材が不足している」と回答している。すでに10年以上、同様の傾向が続いているといい、セキュリティ人材が完全な売り手市場になっている中、「セキュリティ対策を単なるコストと考えている企業に人は来ないし定着もしない」と足立氏は警鐘を鳴らす。 「優秀な人材を確保するには、CISOの設置などによって、セキュリティ分野の充実に力を入れており、新しいチャレンジもできるカルチャーであることをアピールできるかが重要になる」 ただし、日本社会全体の労働生産人口が減少し、セキュリティ担当者の業務が増え続けている中では、人材確保の発想だけでは限界があり、限られた人材で業務を回せるよう効率化を図っていくことも大切になる。 今回の調査では、そうした効率化の面でも日本企業に課題があることが浮き彫りになった。生成AIの導入状況を尋ねた項目において、アメリカでは73.5%、オーストラリアでは66.2%の企業が「導入済み」と答えたのに対して、日本は18%に過ぎなかったのだ。) しかも、アメリカやオーストラリアはルールの整備にかかわらず導入率が高いのに対し、日本は従業員数1万人以上の企業で50%が導入しているものの、ほとんどがルールを整備したうえでの導入となっており、慎重さが目立つ結果となった。 (生成AIのルール整備と導入状況 はリンク先参照)』、「「セキュリティ対策を単なるコストと考えている企業に人は来ないし定着もしない」と足立氏は警鐘を鳴らす。 「優秀な人材を確保するには、CISOの設置などによって、セキュリティ分野の充実に力を入れており、新しいチャレンジもできるカルチャーであることをアピールできるかが重要になる」、なるほど。
・『生成AIへの対応が業務効率化のカギとなる また同調査では、「生成AIサービスの利用を検討するにあたり、懸念や課題となること」についても企業に尋ねているが、目立った差が出たのが「自社業務に応用できる人材の不足」を挙げる企業の割合だった。アメリカが20.4%、オーストラリアが8.0%だったのに対して、日本企業は28.7%に上る。 こうした結果について足立氏は次のように述べる。 「新しい技術のリスクを考慮することは悪いことではないが、慎重すぎるままでは、業務の効率化という点でますます後れを取るだろう。セキュリティ業務の自動化や省力化は、今後生成AIがかなり担えるようになることが考えられ、人材不足を補う有効策となりうる。経営者は、そうしたソリューションの導入にブレーキをかけるべきではない。 また生成AIを自社業務に応用できる人材を確保するには、従業員が生成AIに触れて慣れる機会を奨励することが欠かせない。素養がありそうな人に業務と生成AIの双方を学ぶ環境を提供し、ミニマムルールと共に、中長期視点で育てていく視点も必要だろう」 今後、生成AIサービスを活用したセキュリティ対策が広がっていくであろうことを踏まえても、やはりコストを含めセキュリティ戦略を設計するCISOはキーパーソンとなるだろう。CISOの設置は今、企業にとって喫緊の課題となっている』、「今後、生成AIサービスを活用したセキュリティ対策が広がっていくであろうことを踏まえても、やはりコストを含めセキュリティ戦略を設計するCISOはキーパーソンとなるだろう。CISOの設置は今、企業にとって喫緊の課題となっている」、その通りだ。
先ずは、昨年8月8日付けForbes「中国ハッカーが日本の防衛機密をハッキング、米国の通報で発覚」を紹介しよう。
・『ワシントン・ポストは8月7日、中国の軍事ハッカーが2020年以降、日本の防衛機密ネットワークにアクセスし、米国の同盟国である日本の軍事能力や計画に関する情報にアクセスしていたと報じた。 このハッキングは米国の国家安全保障局(NSA)によって2020年秋に発見されたという。中国の人民解放軍のハッカーらは、日本の自衛隊の計画や能力、軍事的欠点の評価にアクセスするなど、深く執拗な情報収集を行っていたと、複数の米国の元高官がポスト紙に語っている。 報告を受けたNSAと米サイバー軍のトップのポール・ナカソネ陸軍大将と、当時ホワイトハウスの国家安全保障副顧問だったマシュー・ポッティンジャーが東京に急行して防衛大臣に説明を行い、首相にも伝えたとポスト紙は報じている。 このハッキングはトランプ政権下で始まったが、バイデン政権下でも続き、2021年には日本の防衛システムへの侵入が続いていることを示す新たなデータが発見され、情報漏洩が続いていることが発覚した。日米の両国は最終的に、日本の民間企業の手を借りて脆弱性を評価することに合意し、米国のNSAとサイバー軍のチームがその調査結果を確認し、情報漏洩を防ぐ方法について提言を行ったという。 フォーブスは、国務省にコメントを求めたが現時点で回答は得られていない。 「これは衝撃的なほどに酷い情報漏洩だった」とポスト紙の取材に応じた元米軍関係者は語っている。 日本の政府関係者は、ネットワークセキュリティを強化するために、今後5年間で自衛隊のサイバーセキュリティ部隊を4000人規模にすると述べている。さらに、ネットワークを24時間365日監視するサイバー司令部を発足させ、5年間で70億ドル(約1兆円)をサイバーセキュリティに費やす計画だと日本の防衛関係者はポスト紙の取材に語った。 「今回のハッキングにおける日本の当局の対応の遅さは、米国が同盟国である日本と共有する情報の量を減らすことにつながるかもしれない」と米政府関係者はポスト紙に語った』、「日本の防衛当局」の「ハッキングにおける対応の遅さ」は、」、「米国が同盟国である日本と共有する情報の量を減らすことにつながるかもしれない」、全くみっともない限りだ。
次に、昨年8月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村 悠氏による「中国への情報流出、アプリ以外も危険!日本に普及中「最新中国製品」も要注意」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327406
・『プロパガンダ工作に適したTikTokの危険性 中国企業が運営する動画共有アプリ「TikTok」について、かねてその危険性は指摘されている。 米経済誌「フォーブス」によれば、TikTokは、欧州のユーザーに向けて、中国政府のプロパガンダ機関による広告を大量に配信してきたことが、7月20日に公開された広告ライブラリーから明らかになったという。広告の中には、新疆ウイグル自治区を観光地として宣伝するものや中国によるコロナ政策を賛辞するものなどが含まれているという。 また、プロパガンダ工作に適した動画を意図的に“おすすめ動画”にして多くのユーザーに閲覧させたり、意図的に特定の動画を排除、浮上させるなど、プロパガンダにはうってつけのアプリのようだ。 さらにTikTokユーザーの情報が意図的に中国に収集される危険性も指摘されており、過去には一部のスタッフが、2人のジャーナリストを含むアメリカ市民のユーザーデータに不適切にアクセスしたと、ニューヨーク・タイムズが報じている。 TikTokのプロパガンダ機能やスパイアプリとしての危険性は広く知られつつあるが、注意すべきアプリはTikTokだけではない』、「TikTok」は、「プロパガンダ工作に適した動画を意図的に“おすすめ動画”にして多くのユーザーに閲覧させたり、意図的に特定の動画を排除、浮上させるなど、プロパガンダにはうってつけのアプリのようだ。 さらにTikTokユーザーの情報が意図的に中国に収集される危険性も指摘されており、過去には一部のスタッフが、2人のジャーナリストを含むアメリカ市民のユーザーデータに不適切にアクセスしたと、ニューヨーク・タイムズが報じている」、なるほど。
・『8月に日本でリリースされた格安ECアプリの「Temu」 「ピンドゥオドゥオ(拼多多)」というアプリをご存じだろうか。 ピンドゥオドゥオは、2015年に上海で創業した企業PDDホールディングスがリリースした、月間7億5000万人が利用する中国3位のECアプリであるが、実は、ユーザーの通話記録や文字メッセージ、写真アルバムなどに不正アクセスしていたことが明らかになっている。 CNNは、ピンドゥオドゥオに不正なコードが発見され、グーグルのアンドロイドOSの脆弱(ぜいじゃく)性を利用し、ユーザーの同意なく、携帯電話の使用内容やデータにアクセスしていることが判明したと報じている。 ピンドゥオドゥオのアプリに内蔵された不正なコードは、一度インストールすると、アプリを削除しても、不正なコードを除去することが非常に難しいとみられている。 そして、その「ピンドゥオドゥオ」をリリースしたPDDホールディングスから、格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない。 仮に、ここまで解説したアプリの運営会社に悪意がなくとも、中国には、善意の企業さえ政府の意図に従わせる法的根拠がある。 中国の国家情報法は、安全保障や治安維持のために、企業も民間人も中国政府の情報収集活動に協力しなければならないと義務づけ、中国政府は企業などが持つデータをいつでも要求できる。要は、中国政府が情報を出せと言えば、企業は従わざるを得ないのだ。同法は、日本をはじめ外国の企業も当然対象となる。 ちなみに、これは運営企業が“善意”で運営していたら、という仮定の話である。アプリの運営会社の中には、中国政府の意向に忠実で、アプリを世界で流行させ、バックドアを仕掛け、日常的に情報を収集する意図を持っている会社もあり得るだろう』、「格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない」、恐ろしいことだ。
・『アプリだけではない中国製自動車の脅威 注意すべきは、アプリだけではない。 中国製電気自動車(EV)の日本進出が進んでいる。 テスラを抜き、EV販売台数世界一となった中国自動車メーカー「比亜迪(BYD)」が日本に本格進出を開始、既に日本の交通機関にも食い込んでおり、京阪バスが京都市内を走る路線においてBYD製EVバスの運行を始めている。 ちなみに、このBYDであるが、BYDの日本法人社長の劉学亮氏が、東京新聞の取材に対し、「2010年に、金型メーカー・オギハラの館林工場を買収し、この金型企業から日本のものづくりを勉強できた」と話したという。 このオギハラは、当時世界一の金型加工技術を持っていたとされ、まさに、経済安全保障の技術流出例の典型例であった。 さて、BYDを例になぜ中国製自動車が危険なのかを述べてみたい。 中国政府の動きがヒントとなる。 中国はテスラ社製自動車の軍施設や軍関係者の居住地などへの乗り入れを禁止している。 その理由は、自動車のGPS情報による施設内の主要場所の把握や車載カメラの動画情報など多くのデータが収集されることを警戒していることにあるとみられる。 これはつまり、路線バスなどに加え、例えば宅配業者に中国製自動車を普及させ、自衛隊基地に出入りすることが可能になれば、基地内の施設の場所が容易に把握できることを意味している。 また、「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている。 中国は各国のインフラに中国製自動車を普及させることにより、自動車を通じて相手国の多大な情報を収集することが可能となる』、「路線バスなどに加え、例えば宅配業者に中国製自動車を普及させ、自衛隊基地に出入りすることが可能になれば、基地内の施設の場所が容易に把握できることを意味している。 また、「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている。 中国は各国のインフラに中国製自動車を普及させることにより、自動車を通じて相手国の多大な情報を収集することが可能となる」、大変だ。
・『米フィットネスアプリで暴かれた米軍の秘密基地 EVが位置情報をトラッキングすることで施設内の位置関係が把握できるのと同様の危険性は、GPS情報を取得するスマートフォンアプリにも指摘できる。 スマートフォンなどのGPS情報を使ってジョギングなどのアクティビティーを記録・分析できる米国発のサービスフィットネスアプリ「Strava」に搭載された機能「Heatmap」が、アメリカ軍のトップシークレットであった秘密基地の存在を浮き彫りにした。 このHeatmap機能は、アプリを使っている人がどの場所で多くのアクティビティーを行っているのかを色で示すことができる。Strava社が公開したHeatmapにアクティビティーの情報が色によって示され、米軍基地で任務にあたる兵士などがスマートフォンやスマートウォッチなどのウエアラブル端末のトラッキング機能をオンにしたままにしたことにより、その活動の全てが記録され、基地の場所が暴露されてしまった。 この画像はHeatmapで把握されたニジェールのフランス軍基地である。位置情報を収集し続けることにより、施設の形がくっきりと可視化される。フィットネスアプリにはこのような危険性が潜むのだ。 Stravaは中国製アプリではないが、いずれにせよ、中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスクはご理解いただけたのではないだろうか』、「中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスク」、確かに気を付けるべきだ。
・『日本の農業における中国製ドローンの危険性 ドローンについても、位置情報やカメラを通じた施設情報の収集の危険が指摘される。だが、問題はそれだけではない。 韓国では、農業用ドローンのシェアのうち中国製ドローンが7割を超える。 韓国自治体が農業用ドローンの支援事業を進める際、中国企業の製品に合わせた規格で入札を実施していることが背景にある。 この農業用ドローンについて、ドローンの農薬散布手法などの農業の生産性に関わる重要な農業防除データが中国に流れる可能性も指摘されており。食糧安全保障を脅かしている状態だ。 日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している。 ここまで、中国製アプリを代表に、いくつかの中国製品が日本に浸透することによる危険性について例示して解説したが、日本においてどれだけの人がこの危険性を認識しているだろうか。 その危険性に関する認識・意識が甘ければ、その脅威にのみ込まれる未来しかないだろう。 中国製品の全てを疑い、全て忌避しろとは言わないが、せめて各国で指摘されている危険性については認識し、自身で判断できる意識は持っておきたい。そして、国としても明確に危険性が指摘されている製品については、国民に知らせる責務があると考える。 いずれにせよ、カウンターインテリジェンス(防諜)の重要性について、国民の意識や関心を高めることが、迫る脅威に立ち向かう最大の防御策となるだろう』、「日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している・・・日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している・・・カウンターインテリジェンス(防諜)の重要性について、国民の意識や関心を高めることが、迫る脅威に立ち向かう最大の防御策となるだろう」、その通りだ。
次に、8月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村 悠氏による「中国への情報流出、アプリ以外も危険!日本に普及中「最新中国製品」も要注意」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327406
・『プロパガンダ工作に適したTikTokの危険性 中国企業が運営する動画共有アプリ「TikTok」について、かねてその危険性は指摘されている。 米経済誌「フォーブス」によれば、TikTokは、欧州のユーザーに向けて、中国政府のプロパガンダ機関による広告を大量に配信してきたことが、7月20日に公開された広告ライブラリーから明らかになったという。広告の中には、新疆ウイグル自治区を観光地として宣伝するものや中国によるコロナ政策を賛辞するものなどが含まれているという。 また、プロパガンダ工作に適した動画を意図的に“おすすめ動画”にして多くのユーザーに閲覧させたり、意図的に特定の動画を排除、浮上させるなど、プロパガンダにはうってつけのアプリのようだ。 さらにTikTokユーザーの情報が意図的に中国に収集される危険性も指摘されており、過去には一部のスタッフが、2人のジャーナリストを含むアメリカ市民のユーザーデータに不適切にアクセスしたと、ニューヨーク・タイムズが報じている。 TikTokのプロパガンダ機能やスパイアプリとしての危険性は広く知られつつあるが、注意すべきアプリはTikTokだけではない』、「TikTok」は情報セキュリティ上極めて問題が多い怖いソフトのようだ。
・『8月に日本でリリースされた格安ECアプリの「Temu」 「ピンドゥオドゥオ(拼多多)」というアプリをご存じだろうか。 ピンドゥオドゥオは、2015年に上海で創業した企業PDDホールディングスがリリースした、月間7億5000万人が利用する中国3位のECアプリであるが、実は、ユーザーの通話記録や文字メッセージ、写真アルバムなどに不正アクセスしていたことが明らかになっている。 CNNは、ピンドゥオドゥオに不正なコードが発見され、グーグルのアンドロイドOSの脆弱(ぜいじゃく)性を利用し、ユーザーの同意なく、携帯電話の使用内容やデータにアクセスしていることが判明したと報じている。 ピンドゥオドゥオのアプリに内蔵された不正なコードは、一度インストールすると、アプリを削除しても、不正なコードを除去することが非常に難しいとみられている。 そして、その「ピンドゥオドゥオ」をリリースしたPDDホールディングスから、格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない。 仮に、ここまで解説したアプリの運営会社に悪意がなくとも、中国には、善意の企業さえ政府の意図に従わせる法的根拠がある。 中国の国家情報法は、安全保障や治安維持のために、企業も民間人も中国政府の情報収集活動に協力しなければならないと義務づけ、中国政府は企業などが持つデータをいつでも要求できる。要は、中国政府が情報を出せと言えば、企業は従わざるを得ないのだ。同法は、日本をはじめ外国の企業も当然対象となる。 ちなみに、これは運営企業が“善意”で運営していたら、という仮定の話である。アプリの運営会社の中には、中国政府の意向に忠実で、アプリを世界で流行させ、バックドアを仕掛け、日常的に情報を収集する意図を持っている会社もあり得るだろう』、「格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない」、「日本」も大いに注意すべきだ。
・『アプリだけではない中国製自動車の脅威 注意すべきは、アプリだけではない。 中国製電気自動車(EV)の日本進出が進んでいる。 テスラを抜き、EV販売台数世界一となった中国自動車メーカー「比亜迪(BYD)」が日本に本格進出を開始、既に日本の交通機関にも食い込んでおり、京阪バスが京都市内を走る路線においてBYD製EVバスの運行を始めている。 ちなみに、このBYDであるが、BYDの日本法人社長の劉学亮氏が、東京新聞の取材に対し、「2010年に、金型メーカー・オギハラの館林工場を買収し、この金型企業から日本のものづくりを勉強できた」と話したという。 このオギハラは、当時世界一の金型加工技術を持っていたとされ、まさに、経済安全保障の技術流出例の典型例であった。 さて、BYDを例になぜ中国製自動車が危険なのかを述べてみたい。 中国政府の動きがヒントとなる。 中国はテスラ社製自動車の軍施設や軍関係者の居住地などへの乗り入れを禁止している。 その理由は、自動車のGPS情報による施設内の主要場所の把握や車載カメラの動画情報など多くのデータが収集されることを警戒していることにあるとみられる。 これはつまり、路線バスなどに加え、例えば宅配業者に中国製自動車を普及させ、自衛隊基地に出入りすることが可能になれば、基地内の施設の場所が容易に把握できることを意味している。 また、「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている。 中国は各国のインフラに中国製自動車を普及させることにより、自動車を通じて相手国の多大な情報を収集することが可能となる』、「「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている」、なるほど。
・『米フィットネスアプリで暴かれた米軍の秘密基地 EVが位置情報をトラッキングすることで施設内の位置関係が把握できるのと同様の危険性は、GPS情報を取得するスマートフォンアプリにも指摘できる。 スマートフォンなどのGPS情報を使ってジョギングなどのアクティビティーを記録・分析できる米国発のサービスフィットネスアプリ「Strava」に搭載された機能「Heatmap」が、アメリカ軍のトップシークレットであった秘密基地の存在を浮き彫りにした。 このHeatmap機能は、アプリを使っている人がどの場所で多くのアクティビティーを行っているのかを色で示すことができる。Strava社が公開したHeatmapにアクティビティーの情報が色によって示され、米軍基地で任務にあたる兵士などがスマートフォンやスマートウォッチなどのウエアラブル端末のトラッキング機能をオンにしたままにしたことにより、その活動の全てが記録され、基地の場所が暴露されてしまった。 この画像はHeatmapで把握されたニジェールのフランス軍基地である。位置情報を収集し続けることにより、施設の形がくっきりと可視化される。フィットネスアプリにはこのような危険性が潜むのだ。 Stravaは中国製アプリではないが、いずれにせよ、中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスクはご理解いただけたのではないだろうか』、「中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスク」に十分に注意する必要がある。
・『日本の農業における中国製ドローンの危険性 ドローンについても、位置情報やカメラを通じた施設情報の収集の危険が指摘される。だが、問題はそれだけではない。 韓国では、農業用ドローンのシェアのうち中国製ドローンが7割を超える。 韓国自治体が農業用ドローンの支援事業を進める際、中国企業の製品に合わせた規格で入札を実施していることが背景にある。 この農業用ドローンについて、ドローンの農薬散布手法などの農業の生産性に関わる重要な農業防除データが中国に流れる可能性も指摘されており。食糧安全保障を脅かしている状態だ。 日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している。 ここまで、中国製アプリを代表に、いくつかの中国製品が日本に浸透することによる危険性について例示して解説したが、日本においてどれだけの人がこの危険性を認識しているだろうか。 その危険性に関する認識・意識が甘ければ、その脅威にのみ込まれる未来しかないだろう。 中国製品の全てを疑い、全て忌避しろとは言わないが、せめて各国で指摘されている危険性については認識し、自身で判断できる意識は持っておきたい。そして、国としても明確に危険性が指摘されている製品については、国民に知らせる責務があると考える。 いずれにせよ、カウンターインテリジェンス(防諜)の重要性について、国民の意識や関心を高めることが、迫る脅威に立ち向かう最大の防御策となるだろう』、「中国製品の全てを疑い、全て忌避しろとは言わないが、せめて各国で指摘されている危険性については認識し、自身で判断できる意識は持っておきたい。そして、国としても明確に危険性が指摘されている製品については、国民に知らせる責務があると考える」、その通りだ。
第三に、本年1月26日付け東洋経済オンラインが掲載したライター の長谷川 敦氏による「「CISOが不在」日本企業の重大すぎる経営リスク 生成AIによる効率的なセキュリティ対策も課題」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/729787
・『日本はセキュリティ人材の不足が長らく続いているが、現場だけでなく、統括を担う「CISO(Chief Information Security Officer、最高情報セキュリティ責任者)」も足りていない。 NRIセキュアテクノロジーズが2024年1月25日に発表した「企業における情報セキュリティ実態調査 NRI Secure Insight 2023」によれば、CISOを設置している日本企業は、アメリカやオーストラリアの半数以下にとどまっている。 CISO未設置の経営リスクや人材確保のポイントについて、情報セキュリティ実態調査の監修を務めた同社DXセキュリティプラットフォーム事業本部本部長の足立道拡氏に聞いた』、「CISOを設置している日本企業は、アメリカやオーストラリアの半数以下」、致命的な立ち遅れだ。
・『経営とセキュリティの両方がわかる人材が必要 「CISOは、CEO(最高経営責任者)をはじめとする経営層と、現場のセキュリティ担当者をつなぐ『通訳』の役割を担っている」と、足立氏は言う。 経営層は、セキュリティ対策の重要性を認識していても、具体的にどのような対策を打てばよいのか理解していないケースが多い。一方の現場でも、対策の必要性について経営層をどう説得すればよいのかわからず「予算獲得が難しい」と苦しむセキュリティ担当者が多いそうだ) だからこそ、経営とセキュリティの両方を理解しているCISOの存在が不可欠だという。実際、CISOが不在の企業においては、次のようなリスクがあると足立氏は指摘する。 「CISOが不在だと、本来投じるべき予算が確保されない事態が生じやすくなる。その結果、技術的な対策ができず『従業員への注意喚起や周知』といった人的対策にとどまることも多い。 今の時代は、企業規模を問わずサイバー攻撃に遭うリスクがあるので、大企業に限らずサプライチェーンの一翼を担う中小企業も、経営層と現場をつなぐ責任者を置いてほしい。本来なら専任が望ましいが、兼務でもかまわない。現状、CIO(最高情報責任者)やCTO(最高技術責任者)がCISOを兼務する形などが多い」 前述のNRIセキュアテクノロジーズの実態調査によれば、CISOを設置している企業は、アメリカでは95.5%、オーストラリアでは97.4%に達していたのに対して、日本は41.1%と大きな差が確認された。) 従業員数が多いほどCISOの設置率も高い傾向にあるが、なぜ日本企業は海外と比べて遅れているのか。足立氏はこう説明する。 「アメリカでは、2013年に重要インフラのサイバーセキュリティ強化に関する大統領令が出て以降、対策は国の重要なイシューになった。現状、』、「CISOを設置している企業は、アメリカでは95.5%、オーストラリアでは97.4%に達していたのに対して、日本は41.1%と大きな差・・・日本企業においては『セキュリティ対策はコスト』という発想が根強く、対策の必要性が認識され始めたのは2018年頃のことと捉えている。そのためCISOを担える人材が十分には育っておらず、キャリアパスが確立されていないこともあり、設置が進まない状況になっている」、なるほど。
・『「すべての能力を備えた人物」を求めないこと では、適任者が不足している中で、企業はどのように人材を確保していけばよいのだろうか。 CISOには「セキュリティの知識・技術」「戦略・会計などのビジネススキル」「リーダーシップと意思決定力」「コミュニケーションスキル」など、広範な知識やスキル、能力が求められる。今の日本では、これらをすべて兼ね備えたスーパーマンのような人材を、社内で見つけるのも外部から調達してくるのも容易ではない。 そのため、「1つでも優れた素養を持っている人物を任命し、『経験を積みながら、中長期的にCISOとして育ってもらえばいい』という意識で臨むことが大事」だと足立氏は助言する。 例えばセキュリティに関する知識や技術は不十分でも、高い統率力を備え戦略立案の経験も豊富にある人材を任命しようとすると、人材確保のハードルも下がるのではないだろうか。実際、日本のCISOは、さまざまなバックグラウンドを持つ人材が多いという。 「元CIOやセキュリティベンダー出身者などを外部から採用し、CISOに任命する動きが出てきた。この流れが浸透すると設置率は高まるのではないか。新任のCISOに不足している部分がある場合には、その分野を得意とするほかのメンバーを補佐役として置くなど、CISOをチームとして機能させていけばいい」 チーム体制を組むことは、次期CISO候補を育成していくうえでも有効だという。例えば外部からビジネススキルが高い人をCISOとして採用してチームを組んだ場合、セキュリティ対策に詳しい若手・中堅の社員が、CISOから優れたリーダーシップや経営視点を間近で学び、「経営とセキュリティの両方の視点を備えた人材」へと成長していくことが期待できる。) またCISOの設置後には、経営トップによるCISOへのバックアップが重要になると足立氏は言う。 「CISOは、普段の業務が賞賛されることはほとんどないうえ、自社がサイバー攻撃を受けて被害が発生した場合、非難を浴びることになりがち。そのためアメリカでもCISOが抱える孤立感やプレッシャーが大きな問題となっている。経営トップがCISOに対して、執行に必要な権限とリソースを与えたうえで、その立場を理解し、支援する姿勢を示さないと、社内にCISOを根づかせることは困難になる」 最近では、CISO同士がさまざまな課題や悩み事について率直に話し合える社外のコミュニティーが生まれている。そうしたつながりをつくることは、CISOの孤立を防ぐうえでも、学びを深めていくうえでも効果があるという』、「これらをすべて兼ね備えたスーパーマンのような人材を、社内で見つけるのも外部から調達してくるのも容易ではない・・・1つでも優れた素養を持っている人物を任命し、『経験を積みながら、中長期的にCISOとして育ってもらえばいい』という意識で臨むことが大事」だと足立氏は助言する」、現実的なアプローチだ。
・『セキュリティ対策をコストと考える企業に人は来ない 今回の調査では、企業規模によらず約9割の企業が「セキュリティ人材が不足している」と回答している。すでに10年以上、同様の傾向が続いているといい、セキュリティ人材が完全な売り手市場になっている中、「セキュリティ対策を単なるコストと考えている企業に人は来ないし定着もしない」と足立氏は警鐘を鳴らす。 「優秀な人材を確保するには、CISOの設置などによって、セキュリティ分野の充実に力を入れており、新しいチャレンジもできるカルチャーであることをアピールできるかが重要になる」 ただし、日本社会全体の労働生産人口が減少し、セキュリティ担当者の業務が増え続けている中では、人材確保の発想だけでは限界があり、限られた人材で業務を回せるよう効率化を図っていくことも大切になる。 今回の調査では、そうした効率化の面でも日本企業に課題があることが浮き彫りになった。生成AIの導入状況を尋ねた項目において、アメリカでは73.5%、オーストラリアでは66.2%の企業が「導入済み」と答えたのに対して、日本は18%に過ぎなかったのだ。) しかも、アメリカやオーストラリアはルールの整備にかかわらず導入率が高いのに対し、日本は従業員数1万人以上の企業で50%が導入しているものの、ほとんどがルールを整備したうえでの導入となっており、慎重さが目立つ結果となった。 (生成AIのルール整備と導入状況 はリンク先参照)』、「「セキュリティ対策を単なるコストと考えている企業に人は来ないし定着もしない」と足立氏は警鐘を鳴らす。 「優秀な人材を確保するには、CISOの設置などによって、セキュリティ分野の充実に力を入れており、新しいチャレンジもできるカルチャーであることをアピールできるかが重要になる」、なるほど。
・『生成AIへの対応が業務効率化のカギとなる また同調査では、「生成AIサービスの利用を検討するにあたり、懸念や課題となること」についても企業に尋ねているが、目立った差が出たのが「自社業務に応用できる人材の不足」を挙げる企業の割合だった。アメリカが20.4%、オーストラリアが8.0%だったのに対して、日本企業は28.7%に上る。 こうした結果について足立氏は次のように述べる。 「新しい技術のリスクを考慮することは悪いことではないが、慎重すぎるままでは、業務の効率化という点でますます後れを取るだろう。セキュリティ業務の自動化や省力化は、今後生成AIがかなり担えるようになることが考えられ、人材不足を補う有効策となりうる。経営者は、そうしたソリューションの導入にブレーキをかけるべきではない。 また生成AIを自社業務に応用できる人材を確保するには、従業員が生成AIに触れて慣れる機会を奨励することが欠かせない。素養がありそうな人に業務と生成AIの双方を学ぶ環境を提供し、ミニマムルールと共に、中長期視点で育てていく視点も必要だろう」 今後、生成AIサービスを活用したセキュリティ対策が広がっていくであろうことを踏まえても、やはりコストを含めセキュリティ戦略を設計するCISOはキーパーソンとなるだろう。CISOの設置は今、企業にとって喫緊の課題となっている』、「今後、生成AIサービスを活用したセキュリティ対策が広がっていくであろうことを踏まえても、やはりコストを含めセキュリティ戦略を設計するCISOはキーパーソンとなるだろう。CISOの設置は今、企業にとって喫緊の課題となっている」、その通りだ。
タグ:情報セキュリティー・サイバー犯罪 「TikTok」は、「プロパガンダ工作に適した動画を意図的に“おすすめ動画”にして多くのユーザーに閲覧させたり、意図的に特定の動画を排除、浮上させるなど、プロパガンダにはうってつけのアプリのようだ。 さらにTikTokユーザーの情報が意図的に中国に収集される危険性も指摘されており、過去には一部のスタッフが、2人のジャーナリストを含むアメリカ市民のユーザーデータに不適切にアクセスしたと、ニューヨーク・タイムズが報じている」、なるほど。 「中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスク」、確かに気を付けるべきだ。 集することが可能となる」、大変だ。 「路線バスなどに加え、例えば宅配業者に中国製自動車を普及させ、自衛隊基地に出入りすることが可能になれば、基地内の施設の場所が容易に把握できることを意味している。 また、「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている。 中国は各国のインフラに中国製自動車を普及させることにより、自動車を通じて相手国の多大な情報を収 「格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない」、恐ろしいことだ。 稲村 悠氏による「中国への情報流出、アプリ以外も危険!日本に普及中「最新中国製品」も要注意」 「今後、生成AIサービスを活用したセキュリティ対策が広がっていくであろうことを踏まえても、やはりコストを含めセキュリティ戦略を設計するCISOはキーパーソンとなるだろう。CISOの設置は今、企業にとって喫緊の課題となっている」、その通りだ。 「「セキュリティ対策を単なるコストと考えている企業に人は来ないし定着もしない」と足立氏は警鐘を鳴らす。 「優秀な人材を確保するには、CISOの設置などによって、セキュリティ分野の充実に力を入れており、新しいチャレンジもできるカルチャーであることをアピールできるかが重要になる」、なるほど。 「これらをすべて兼ね備えたスーパーマンのような人材を、社内で見つけるのも外部から調達してくるのも容易ではない・・・1つでも優れた素養を持っている人物を任命し、『経験を積みながら、中長期的にCISOとして育ってもらえばいい』という意識で臨むことが大事」だと足立氏は助言する」、現実的なアプローチだ。 「CISOを設置している企業は、アメリカでは95.5%、オーストラリアでは97.4%に達していたのに対して、日本は41.1%と大きな差・・・日本企業においては『セキュリティ対策はコスト』という発想が根強く、対策の必要性が認識され始めたのは2018年頃のことと捉えている。そのためCISOを担える人材が十分には育っておらず、キャリアパスが確立されていないこともあり、設置が進まない状況になっている」、なるほど。 「CISOを設置している日本企業は、アメリカやオーストラリアの半数以下」、致命的な立ち遅れだ。 長谷川 敦氏による「「CISOが不在」日本企業の重大すぎる経営リスク 生成AIによる効率的なセキュリティ対策も課題」 東洋経済オンライン 「中国製品の全てを疑い、全て忌避しろとは言わないが、せめて各国で指摘されている危険性については認識し、自身で判断できる意識は持っておきたい。そして、国としても明確に危険性が指摘されている製品については、国民に知らせる責務があると考える」、その通りだ。 「中国製電気自動車も含めた、位置情報をトラッキングできる商品の普及によるリスク」に十分に注意する必要がある。 ダイヤモンド・オンライン 「日本の防衛当局」の「ハッキングにおける対応の遅さ」は、」、「米国が同盟国である日本と共有する情報の量を減らすことにつながるかもしれない」、全くみっともない限りだ。 Forbes「中国ハッカーが日本の防衛機密をハッキング、米国の通報で発覚」 「「動くスマートフォン」といわれる現代の自動車においては、例えばコネクテッドカーにおいては、ハッキングやバックドアによってナビでの検索履歴はもちろん、過去の移動ルート、さらには電子メールやメッセージ、通話履歴にアクセスされる危険性も指摘されている」、なるほど。 「格安ECアプリ「Temu」が日本でリリースされ、8月2日現在でAppstoreの無料Appランキングで1位を獲得している。さらに2位は「TikTok Lite」だ。 これらアプリによって、ユーザーの情報が同意なく収集された場合、その情報は中国による諜報(ちょうほう)活動や情報戦、プロパガンダ工作などの各種工作活動に活用されるのは言うまでもない」、「日本」も大いに注意すべきだ。 「TikTok」は情報セキュリティ上極めて問題が多い怖いソフトのようだ。 「日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している・・・日本においても、日本の農業用ドローンのうち実に7割程度が中国企業であるDJI製だと推定されており、韓国と同様の危険が顕在化している・・・カウンターインテリジェンス(防諜)の重要性について、国民の意識や関心を高めることが、迫る脅威に立ち向かう最大の防御策となるだろう」、その通りだ。 (その9)(中国ハッカーが日本の防衛機密をハッキング 米国の通報で発覚、中国への情報流出 アプリ以外も危険!日本に普及中「最新中国製品」も要注意、「CISOが不在」日本企業の重大すぎる経営リスク 生成AIによる効率的なセキュリティ対策も課題)
大学(その14)(悪質タックル→アメフト部廃部…白日にさらされた「日大」ガバナンス問題 G&I大学対談(4)、<独自>日大病院から入院を拒否され、77歳で死去…「日大のドン」 田中英壽前理事長の「最期の姿」、東北大学・次期総長に冨永悌二氏「今までなかった新しい研究大学に」大学病院長など歴任 宮城県内の新型コロナ対応を指揮 〝もやもや病〟に影響を与える遺伝子を世界で初報告した実績も) [社会]
大学については、昨年12月22日に取上げた。今日は、(その14)(悪質タックル→アメフト部廃部…白日にさらされた「日大」ガバナンス問題 G&I大学対談(4)、<独自>日大病院から入院を拒否され、77歳で死去…「日大のドン」 田中英壽前理事長の「最期の姿」、東北大学・次期総長に冨永悌二氏「今までなかった新しい研究大学に」大学病院長など歴任 宮城県内の新型コロナ対応を指揮 〝もやもや病〟に影響を与える遺伝子を世界で初報告した実績も)である。
先ずは、昨年12月19日付けダイヤモンド・オンライン「悪質タックル→アメフト部廃部…白日にさらされた「日大」ガバナンス問題 G&I大学対談(4)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336436
・『本当に子どもの力を伸ばす学校 悪質タックル→アメフト部廃部…白日にさらされた「日大」ガバナンス問題 文理学部キャンパスにある日本大学アメリカンフットボール場。その塀に貼られたスローガンに込められた意味は何だろう(東京・世田谷区) 大学通信の井沢秀さんと教育ジャーナリストの後藤健夫さんによるG&I大学対談。第2回では半世紀以上にわたって私立大出願者数トップの座にあった早稲田大の志願者数がさらに減少すること、第3回では日東駒専のくくりで日本大が沈んでいく様子などを見てきました。2023年の最後に、ガバナンス能力不足にあえぐ日本大の明日がいずこにあるのかを考えてみましょう』、興味深そうだ。
・『「学長と副学長」辞任後の展望は開けたのか Q:11月15日の理事会で、学長と副学長に辞任勧告が出された日本大。2024年1月9日から学長候補者立候補の受け付けが始まります。副学長の方は1月1日から3月31日まで、23年度内は歯学部の特任教授が就くようです。 後藤 新学長の在任期間は前任者の残り、24年4月1日から26年6月30日までとなります。22年7月に発足した林真理子理事長体制が、後述するアメリカンフットボール部の薬物問題により、わずか1年ほどでそのガバナンス不足を露呈、世間的に追い詰められています。 ヤメ検の弁護士として期待された役割を果たせなかった澤田康広副学長がクビになるのは仕方ないでしょう。酒井健夫学長は田中英壽元理事長(2008~21年)の下で総長を務めた経験(2008~11年)があるものの、第三者委員会から、林理事長とともに「ガバナンスが全く機能しなかった」と切り捨てられました。 井沢 24年も日大はガバナンスを問われることは間違いないと思います。今回、記者会見の質疑で学生新聞(日本大学新聞)の学生が切実な声を発したことが報じられ、そこまで苦しんでいるのかと思いました。今回のガバナンス問題が学生の就職に影響するとは思えないのですが、親や受験生もやはり心配します。 後藤 学長を募集するのではなく、林理事長が兼務する総長パターンでガバナンスを利かせて、その間に学長ではなく新しい理事長を探すのがベストだと思うのだけれど。まず学則を変更して、日大の教授あるいは経験者でなくても学長になれるようにして、外の血を入れることですね。その手始めに林理事長が教授経験なしでも学長になる。林理事長は有識者として十分に学長が務まると思うんです。大組織の運営経験がないのだから、課題が多岐にわたる理事長よりも課題が絞られる学長が適任だと思います。 Q:22年3月、前理事長の時に出された「日本大学再生会議」答申書に沿って、2年前に36人いた理事が現在は22人に、評議員は125人から47人へと大きく削減され、選出母体からの過度の影響を免れるよう、理事の定年制や再任を1回に限る外部人材で理事や評議員の3分の1以上を占めるようにといったガバナンス改革は形にはなってきています。 後藤 前の理事長が組織をつぶしてしまったから、組織の膿(うみ)はまだ残っている。正常な状態に戻す前に、今回の不祥事が起きてしまった。立命館アジア太平洋大学の学長公募では、大学に魅力があったから出口治明さんのような経営者が他薦で就任してくれたけれども、いまの日大で火中の栗を拾う人はいるのだろうか。 井沢 これだけ確固とした組織のガバナンスが崩れて、学校経営の経験が浅い林さんがどこまでできるのでしょう。こういうときこそ、文部科学省が人を出せばいいのにと思います。 後藤 基本的に経営は素人で、林理事長はスナックのママみたいなもの。林さんはむしろ学長にして、代わりに文科省OBを据えて時間稼ぎをしながら人を探すのがいい。でも、日本最大の私立大学であり、組織もでかすぎる。文科省関係者にはやれる人がいないかもしれない。 Q:元文科省高等教育局長が評議員にいることはいます(笑)。 後藤 現理事会だと、和田秀樹専務理事は教育に強い関心があるが、大組織を動かしたことがない。第三者委員会答申検討会議議長として12月4日の会見に出てきた久保利英明弁護士は、総会屋対策で活躍した経験もある一流の企業弁護士です。久保利弁護士のような組織をよく知る人が担ってもらえるなら悪い話ではないかもしれない。理事長は、組織を知っている人、大企業の取締役経験者でないとできないと思う。 Q:政治家には適任者はいませんか。 後藤 一応、OBということであれば古賀誠と小沢一郎がいます。彼らならビシッとやるでしょう。その後のことは知らないけど(笑)』、「林さんはむしろ学長にして、代わりに文科省OBを据えて時間稼ぎをしながら人を探すのがいい。でも、日本最大の私立大学であり、組織もでかすぎる。文科省関係者にはやれる人がいないかもしれない」、「「林さんはむしろ学長にして」、いいアイデアだ。ただ、「代わりに文科省OBを据えて時間稼ぎをしながら人を探すのがいい」、「文科省OB」は逃げ回るだろうし、適任者が果たしているのか疑問だ。
・『悪質タックルが開いたパンドラの箱 Q:悪質タックル問題(2018年5月)から5年半、今回の薬物問題で廃部が決まったアメリカンフットボール部ですが、理事まで務めた元部長が相撲部出身の元理事長の側近で、競技部OBによる学内支配の象徴でした。その後、こうした日大の「パンドラの箱」が開き、背任や脱税事件で逮捕者が出るなど、理事会のガバナンス不足を暴き出す役割を、結果として担う形になりました。 後藤 一時期、日大職員にやたらと相撲部OBがいました。広報もそうでしたが、以前ある業者が、ちょっとした掲載トラブルで就職担当の現場責任者に謝りに行ったことがあります。そうしたら、「うちの金看板に泥を塗る気か」と怒鳴られて、とても恐かったらしいです。ストレスがたまっていたのでしょう(笑)。 井沢 そういうことは、さすがにいまはないですね。今回、アメリカンフットボール部の廃部が決まりました。悪質タックル問題の後、出場停止もありトップではなくなったとはいえ、法政大や早稲田大、関西学院大あたりで選手を引き取ることはないのでしょうか。新しい組織で3部リーグからやり直しでは、いまの3年・4年生ではもう部には戻れませんから。 後藤 閉校が決まって学生募集が停止した大学は、在校生の転学先を探しますが、同情してそこより上位の大学が中途で受け入れてくれるケースもあります。日大のアメフト部対象にドラフトをやるといいかも。悪質タックル問題を受けて、田中体制の5年前に競技部改革をして、「学生ファースト」を掲げているのだから。学生にはアメフトの競技人生を歩める最大限の配慮をしてあげたいですね。 Q:この時、大学付属機関としての位置付けだった「保健体育審議会」と事務組織「保健体育事務局」を廃止しました。再発防止策として、学長によるガバナンスが直接及ぶよう、大学本部に競技スポーツ部を新たに設置しました。しかし、すでに見てきたように、ガバナンスは発揮されませんでした。総務・人事担当で、危機管理総括責任者である村井一吉常務理事は、「体調不良」ということで、12月31日付で常務理事および理事を辞任するそうです。 井沢 他大学では、3年前に部員が寮で大麻を吸って東海大野球部が無期限活動停止になっています。22年に部員が性犯罪を起こし実刑判決となった同志社大アメフト部はやはり無期限活動停止、古くは部員が強盗事件を起こした近畿大ボクシング部が廃部になっています。早稲田大の相撲部は薬物問題が目立たなくなって、日本最大規模の大学である、日大のニュースバリューが大きいということでしょう(笑)。 後藤 成人年齢に達している学生の不祥事で、大学側が謝る必要があるのかと感じることもありますが、それでも合宿所や寮は大学の施設なので、管理責任は生じる。ガバナンス問題はアメフト部だけではない。理事が競技部の監督やコーチを兼任することは禁じられたものの、推薦による入学者選抜とその後に大きな影響力がある。いわゆる田中元理事長派もまだ残っているだろう。 Q:第三者委員会報告書にも、34ある競技部は「法人でも教学でもない第三極を形成しているとの指摘も」と書かれていました。競技部入部式が別途行われ、23年度は470人が新入部員予定者だったそうです。競技部を統括する競技スポーツ部は、学務部、研究推進部、学生部と並ぶ存在ですし』、「競技部入部式が別途行われ、23年度は470人が新入部員予定者だったそうです。競技部を統括する競技スポーツ部は、学務部、研究推進部、学生部と並ぶ存在です」、「競技部」は依然大きな力を持っているようだ。
・『私学助成金不交付はいつまで続くのか Q:日大は2021年度から3年連続で私立大学等経常費補助金の不交付が決まっています。20年度には90億円ほどもらっていました。不交付の翌年度以降の取扱いというのがあって、改善努力を十分に行っていると認められたとしても、原則として翌年度は全額不交付で、2年後は75%減額、3年後は50%減額、4年後は25%減額、5年後からようやく全額交付になります。こうして見てみると、400億~500億円はもらい損ねることになりそうです。 後藤 そろそろ財務もきつくなってくるし、何よりも世間体が悪いですね。 井沢 日大は総合大学というよりも、強い学部の集合体、カレッジ制という印象です。 後藤 事務長も学部の序列はしっかりあります。付属の併設校を持っている学部の事務長が偉い。日本大学櫻丘高校(世田谷区)の文理学部、日本大学鶴ヶ丘高校(杉並区)と日本大学藤沢小中高(藤沢市)の生物資源科学部、日本大学三島高校の国際関係学部、日本大学習志野高校(船橋市)の理工学部、日本大学東北高校(郡山市)の工学部がそうですね。 井沢 学部の歴史がそのまま職員の序列につながっているようです。 後藤 それでも日大人気は下がらない。以前の記事でも指摘したように、本来、日大は明治大の後塵を拝するようなことは許されないのに。お茶の水地区のキャンパス再開発でも、明治に見下ろされてたまるか、明治よりも高い建物を建てるんだと意気込んでいたとの話も聞きました。日大法学部は中央大の法学部同様に法曹養成では定評があった。理工学部の建築は五大建築学部の一つに数えられた。土木は卒業生が全国で活躍して「社長を日本一出す大学」の基盤になった。 井沢 そもそも、23年度の一般選抜で日大の志願者は増えており、24年度は隔年現象で減る可能性が高い。東洋大が23年度入試で1万人以上志願者を減らしているので、今回の件とは関係なく、ハードルが下がったと感じる受験生が日大から東洋大に流れるケースもあるでしょう。24年度入試で日大の志願者が減少したとしても、その要因のすべてがガバナンス問題とされるのは気の毒な気がしますね。 後藤 日大は本来、面倒見のいい優しい大学です。昔は学生職員という制度があって、相撲部員とかが学生のときから職員になって、定年までいると40年超で退職金がえらい額になったものです。ただ今回は、その優しさを誤ってしまった。 Q:24年度入試がどうなるのか、年明けの次回に再び語っていただきましょう。 「ダイヤモンド社教育情報」では、twitterとfacebookで中高一貫校を中心に、学校・教育・入試に関する多彩な話題をお届けします』、「日大は2021年度から3年連続で私立大学等経常費補助金の不交付が決まっています。20年度には90億円ほどもらっていました。不交付の翌年度以降の取扱いというのがあって、改善努力を十分に行っていると認められたとしても、原則として翌年度は全額不交付で、2年後は75%減額、3年後は50%減額、4年後は25%減額、5年後からようやく全額交付になります。こうして見てみると、400億~500億円はもらい損ねることになりそうです」、「経常費補助金」の「減額」を考慮すると、財務的には苦しいことになりそうだ。
次に、本年1月14日付け現代ビジネス「<独自>日大病院から入院を拒否され、77歳で死去…「日大のドン」 田中英壽前理事長の「最期の姿」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/122866?imp=0
・『日大凋落の元凶 2008年から2021年まで理事長の座に君臨し、「日大のドン」と呼ばれた田中英壽氏が死去したことが13日、わかった。77歳だった。田中氏は複数のがんを抱えており、約1ヵ月前から入院していたという。 田中氏は青森県金木町出身。小学生のときに相撲を始め、日大に進学すると、3年時には学生横綱になった。 「現役時代の田中前理事長はアマチュア最強力士の異名を持ち、日大の一学年下には横綱になった輪島がいましたが、『輪島よりも実力が上だった』という声もあります」(日大関係者A氏) 1983年に日大相撲部の監督に就任すると、数多くの関取を輩出。1999年には日大理事となり、2008年に理事長就任。2021年までトップの座に君臨し、日本オリンピック委員会(JOC)副会長も務めた。 「アメフト部の薬物事件でガバナンス不全が問われている日大ですが、そもそも日本一のマンモス大の信用を地に落とした張本人が、かつて絶大な権力を握っていた田中前理事長です」(前出・日大関係者A氏) 長らく「日大のドン」として権勢を振るってきた田中氏だが、潮目が変わったのは2018年のアメフト部の悪質タックル問題だ。これにきっかけにトップとしての資質を疑問視され、権力の座から転げ落ちていく』、「長らく「日大のドン」として権勢を振るってきた田中氏だが、潮目が変わったのは2018年のアメフト部の悪質タックル問題だ。これにきっかけにトップとしての資質を疑問視され、権力の座から転げ落ちていく」、なるほど。
・『見る影もなかった「かつての威光」 2021年11月には医学部附属板橋病院をめぐる背任事件で、所得税法違反容疑で逮捕され、同年12月に理事長を辞任。2022年4月には有罪判決が確定した。 背任事件で逮捕されたことを受け、日大は田中前理事長と『永久に決別、影響力を排除する』と宣言し、多額の損害賠償を求め、田中前理事長名義の複数の不動産を仮差し押さえしました。 学内にはいまでも田中派の残党がいますが、改革を掲げている現執行部は田中派の一掃を目指しており、田中前理事長にかわいがってもらっていた人物は手のひらを返して現執行部にすり寄っています。 また、田中前理事長が監督を務めた相撲部のOBらも同様であり、田中前理事長と距離を置いています」(前出・日大関係者A氏)。 かつての威光は見る影もない…。それは自宅がある地元の東京・阿佐ヶ谷でも同様だった』、「田中前理事長」の「威光」は、「学内」のみならず、「地元の東京・阿佐ヶ谷」でも「見る影もない…」、なるほど。
・『夫人の親族からも総スカン 「田中さんを公私にわたって支え、『日大の女帝』といわれた征子夫人が経営する『ちゃんこ料理たなか』には毎晩のように出世を目指す日大の幹部職員が訪れ、『影の本部』なんて呼ばれていました。 当時の田中さんは近隣の飲食店にも取り巻きを引き連れて訪れていましたが、逮捕されて以来、パッタリ姿を見せなくなりました。もちろん日大職員も見かけません。 阿佐ヶ谷は征子夫人の地元ですが、田中さんは彼女の身内からも総スカンです。 昨年10月、征子夫人が亡くなって店を閉めることになりましたが、長年田中家に仕えてきた従業員への退職金を出し渋り、トラブルになったこともありました。 あまりにも誠意のない対応に対し、征子夫人を慕っていた従業員は怒り心頭で、店にあった備品を持ち出す騒ぎもありました」(近隣の飲食店経営者) 次々と人が離れていく中、田中氏を支える人物が1人だけいた。田中氏をよく知る別の日大関係者B氏が明かす』、「昨年10月、征子夫人が亡くなって店を閉めることになりましたが、長年田中家に仕えてきた従業員への退職金を出し渋り、トラブルになったこともありました」、そんなことで「トラブル」とは恐れ入る。
・『自宅に居座る謎の中国人 「田中氏は、若いころから支えてくれた奥さんが亡くなり、意気消沈の様子でした。ところが、奥さんが亡くなって1ヵ月もすると、40代の中国人女性が阿佐ヶ谷の自宅に居座るようになり、彼女の娘を含めた3人で暮らすようになりました。 実はこの女性、10年以上関係がある愛人です。水商売風の美人で、奥さんが健在のころは、田中氏が用意した新宿のマンションに娘と住んでいました。 田中氏は体調面で問題を抱えていたため、この中国人女性が身の回りの世話をしていました。昨夏は暑さが厳しく、避暑のため2人で仙台にある別荘に滞在していた時期もありましたね」 この女性は、近隣住民の間では「田中さんの世話をしている謎の中国人」として認識されていたが、取材に訪れた記者もゴミ出しをする女性の姿を何度か目撃したことがあった』、「奥さんが亡くなって1ヵ月もすると、40代の中国人女性が阿佐ヶ谷の自宅に居座るようになり、彼女の娘を含めた3人で暮らすようになりました。 実はこの女性、10年以上関係がある愛人です。水商売風の美人で、奥さんが健在のころは、田中氏が用意した新宿のマンションに娘と住んでいました。 田中氏は体調面で問題を抱えていたため、この中国人女性が身の回りの世話をしていました」、なるほど。
・『中国人女性の言いなりだった 「『ちゃんこ料理たなか』の従業員との退職金トラブルの話は私の耳にも入っていましたが、支払わないと決めたのは中国人女性のようです。 脱税で逮捕された田中氏ですが、素顔は相撲部屋の親方そのもので、気前のよさもありました。少なくともケチではありません。しかし、中国人女性の意向に従うしかなかったのでしょう。 理事長時代の田中氏は学内では敵なしの存在でしたが、面倒を見てもらった奥さんには頭が上がらず、いつも『ママ』『ママ』と頼りっきりでした。財布にしてもしっかり者の奥さんに握られていました。 奥さんの亡きあと、いまは身の回りの世話をしてくれる中国人女性の言いなりでした」(前出・日大関係者B氏) 昨年8月下旬、アロハ姿で自宅近くを散歩する田中氏 上の写真は、昨年8月下旬に田中氏の姿をとらえたものだ。目撃者が言う』、「『ちゃんこ料理たなか』の従業員との退職金トラブルの話は私の耳にも入っていましたが、支払わないと決めたのは中国人女性のようです」、何故、こんなところでケチるのだろうと思ったが、「中国人女性」の差し金だったということで納得した。
・『日大病院は入院拒否 「やたら派手なアロハを着た田中さんを目撃したのは夜19時過ぎです。田中さんよりずいぶん若い女性に手を取られながら、ゆっくりと体を左右に動かし、肩をゆすりながら歩いていました。 衰えは顕著であり、主導権を握っているのは手を取って誘導する女性にあるように見えました」 体調が悪化した田中氏は1ヵ月ほど前から入院していたというが、入院をめぐってはこんなひと幕もあったという。 「1ヵ月ほど前、田中氏から駿河台にある日大病院に『入院したい』との申し出がありましたが、病院側は『入院を認めると、コンプライアンス上の問題になります。残念ながらお受けすることはできません』ときっぱり断り、結局ほかの病院に入院することになりました」(前出・日大関係者B氏) 「日大のドン」と呼ばれた男の最期は、あまりにも悲しいものだった』、「病院側は『入院を認めると、コンプライアンス上の問題になります。残念ながらお受けすることはできません』ときっぱり断り、結局ほかの病院に入院することになりました」、通常であれば、「受け入れてしまう」のに、「コンプライアンス上の問題」で断ったとは大したものだ。断られた「田中氏」はさぞかし腹を立てたことだろう。
第三に、本年1月24日付けミヤテレ「東北大学・次期総長に冨永悌二氏「今までなかった新しい研究大学に」大学病院長など歴任 宮城県内の新型コロナ対応を指揮 〝もやもや病〟に影響を与える遺伝子を世界で初報告した実績も」を紹介しよう。
https://nordot.app/1122825473734083436?c=388701204576175201
・『大野総長の任期満了に伴って、4月から東北大学の総長となるのは、現在の副学長・冨永悌二氏。5人の候補者の中から大学外部を含む12人の委員が決めたもの。 冨永氏は福島県出身の66歳。東北大学医学部を卒業し、原因不明の「もやもや病」に影響を与える遺伝子を世界で初めて報告したほか、東北大学病院長の立場としては県内の新型コロナ対策を指揮したことなどが最大の成果として評価された』、「4月から東北大学の総長となるのは、現在の副学長・冨永悌二氏・・・東北大学病院長」、なるほど。
・『<総長選考・監察会議 小野寺 正 議長> 「大学だけではなく周りを巻き込んで方向性をきっちりと出してやっていけるという指導力。これは国際化に当たって非常に重要。高く評価している」 【日本で唯一「国際卓越研究大学」の候補として】 また、年間100億円の助成を受けて、世界トップレベルの研究を目指す国際卓越研究大学日本で唯一「国際卓越研究大学」の候補として】』、「年間100億円の助成を受けて、世界トップレベルの研究を目指す国際卓越研究大学日本で唯一「国際卓越研究大学」の候補」、なるほど。
・『<次期総長 冨永悌二氏> 「若い研究者が自由に独立して研究できるような環境を整える。日本国内のみならず海外からも優秀な研究者に来てもらい研究を推進して行く。東北大学が今までに我が国になかった新しい研究大学として発展するために力を尽くしたい」 冨永氏の就任は4月1日からで、任期は6年間』、「日本国内のみならず海外からも優秀な研究者に来てもらい研究を推進して行く」、「国際卓越研究大学」の試みは、これまでの「日本型」の公平さを取り払い、メリハリを最大限かけた革命的やり方だ。日本の風土のなかで果たして上手くいくのかに注目したい。
先ずは、昨年12月19日付けダイヤモンド・オンライン「悪質タックル→アメフト部廃部…白日にさらされた「日大」ガバナンス問題 G&I大学対談(4)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/336436
・『本当に子どもの力を伸ばす学校 悪質タックル→アメフト部廃部…白日にさらされた「日大」ガバナンス問題 文理学部キャンパスにある日本大学アメリカンフットボール場。その塀に貼られたスローガンに込められた意味は何だろう(東京・世田谷区) 大学通信の井沢秀さんと教育ジャーナリストの後藤健夫さんによるG&I大学対談。第2回では半世紀以上にわたって私立大出願者数トップの座にあった早稲田大の志願者数がさらに減少すること、第3回では日東駒専のくくりで日本大が沈んでいく様子などを見てきました。2023年の最後に、ガバナンス能力不足にあえぐ日本大の明日がいずこにあるのかを考えてみましょう』、興味深そうだ。
・『「学長と副学長」辞任後の展望は開けたのか Q:11月15日の理事会で、学長と副学長に辞任勧告が出された日本大。2024年1月9日から学長候補者立候補の受け付けが始まります。副学長の方は1月1日から3月31日まで、23年度内は歯学部の特任教授が就くようです。 後藤 新学長の在任期間は前任者の残り、24年4月1日から26年6月30日までとなります。22年7月に発足した林真理子理事長体制が、後述するアメリカンフットボール部の薬物問題により、わずか1年ほどでそのガバナンス不足を露呈、世間的に追い詰められています。 ヤメ検の弁護士として期待された役割を果たせなかった澤田康広副学長がクビになるのは仕方ないでしょう。酒井健夫学長は田中英壽元理事長(2008~21年)の下で総長を務めた経験(2008~11年)があるものの、第三者委員会から、林理事長とともに「ガバナンスが全く機能しなかった」と切り捨てられました。 井沢 24年も日大はガバナンスを問われることは間違いないと思います。今回、記者会見の質疑で学生新聞(日本大学新聞)の学生が切実な声を発したことが報じられ、そこまで苦しんでいるのかと思いました。今回のガバナンス問題が学生の就職に影響するとは思えないのですが、親や受験生もやはり心配します。 後藤 学長を募集するのではなく、林理事長が兼務する総長パターンでガバナンスを利かせて、その間に学長ではなく新しい理事長を探すのがベストだと思うのだけれど。まず学則を変更して、日大の教授あるいは経験者でなくても学長になれるようにして、外の血を入れることですね。その手始めに林理事長が教授経験なしでも学長になる。林理事長は有識者として十分に学長が務まると思うんです。大組織の運営経験がないのだから、課題が多岐にわたる理事長よりも課題が絞られる学長が適任だと思います。 Q:22年3月、前理事長の時に出された「日本大学再生会議」答申書に沿って、2年前に36人いた理事が現在は22人に、評議員は125人から47人へと大きく削減され、選出母体からの過度の影響を免れるよう、理事の定年制や再任を1回に限る外部人材で理事や評議員の3分の1以上を占めるようにといったガバナンス改革は形にはなってきています。 後藤 前の理事長が組織をつぶしてしまったから、組織の膿(うみ)はまだ残っている。正常な状態に戻す前に、今回の不祥事が起きてしまった。立命館アジア太平洋大学の学長公募では、大学に魅力があったから出口治明さんのような経営者が他薦で就任してくれたけれども、いまの日大で火中の栗を拾う人はいるのだろうか。 井沢 これだけ確固とした組織のガバナンスが崩れて、学校経営の経験が浅い林さんがどこまでできるのでしょう。こういうときこそ、文部科学省が人を出せばいいのにと思います。 後藤 基本的に経営は素人で、林理事長はスナックのママみたいなもの。林さんはむしろ学長にして、代わりに文科省OBを据えて時間稼ぎをしながら人を探すのがいい。でも、日本最大の私立大学であり、組織もでかすぎる。文科省関係者にはやれる人がいないかもしれない。 Q:元文科省高等教育局長が評議員にいることはいます(笑)。 後藤 現理事会だと、和田秀樹専務理事は教育に強い関心があるが、大組織を動かしたことがない。第三者委員会答申検討会議議長として12月4日の会見に出てきた久保利英明弁護士は、総会屋対策で活躍した経験もある一流の企業弁護士です。久保利弁護士のような組織をよく知る人が担ってもらえるなら悪い話ではないかもしれない。理事長は、組織を知っている人、大企業の取締役経験者でないとできないと思う。 Q:政治家には適任者はいませんか。 後藤 一応、OBということであれば古賀誠と小沢一郎がいます。彼らならビシッとやるでしょう。その後のことは知らないけど(笑)』、「林さんはむしろ学長にして、代わりに文科省OBを据えて時間稼ぎをしながら人を探すのがいい。でも、日本最大の私立大学であり、組織もでかすぎる。文科省関係者にはやれる人がいないかもしれない」、「「林さんはむしろ学長にして」、いいアイデアだ。ただ、「代わりに文科省OBを据えて時間稼ぎをしながら人を探すのがいい」、「文科省OB」は逃げ回るだろうし、適任者が果たしているのか疑問だ。
・『悪質タックルが開いたパンドラの箱 Q:悪質タックル問題(2018年5月)から5年半、今回の薬物問題で廃部が決まったアメリカンフットボール部ですが、理事まで務めた元部長が相撲部出身の元理事長の側近で、競技部OBによる学内支配の象徴でした。その後、こうした日大の「パンドラの箱」が開き、背任や脱税事件で逮捕者が出るなど、理事会のガバナンス不足を暴き出す役割を、結果として担う形になりました。 後藤 一時期、日大職員にやたらと相撲部OBがいました。広報もそうでしたが、以前ある業者が、ちょっとした掲載トラブルで就職担当の現場責任者に謝りに行ったことがあります。そうしたら、「うちの金看板に泥を塗る気か」と怒鳴られて、とても恐かったらしいです。ストレスがたまっていたのでしょう(笑)。 井沢 そういうことは、さすがにいまはないですね。今回、アメリカンフットボール部の廃部が決まりました。悪質タックル問題の後、出場停止もありトップではなくなったとはいえ、法政大や早稲田大、関西学院大あたりで選手を引き取ることはないのでしょうか。新しい組織で3部リーグからやり直しでは、いまの3年・4年生ではもう部には戻れませんから。 後藤 閉校が決まって学生募集が停止した大学は、在校生の転学先を探しますが、同情してそこより上位の大学が中途で受け入れてくれるケースもあります。日大のアメフト部対象にドラフトをやるといいかも。悪質タックル問題を受けて、田中体制の5年前に競技部改革をして、「学生ファースト」を掲げているのだから。学生にはアメフトの競技人生を歩める最大限の配慮をしてあげたいですね。 Q:この時、大学付属機関としての位置付けだった「保健体育審議会」と事務組織「保健体育事務局」を廃止しました。再発防止策として、学長によるガバナンスが直接及ぶよう、大学本部に競技スポーツ部を新たに設置しました。しかし、すでに見てきたように、ガバナンスは発揮されませんでした。総務・人事担当で、危機管理総括責任者である村井一吉常務理事は、「体調不良」ということで、12月31日付で常務理事および理事を辞任するそうです。 井沢 他大学では、3年前に部員が寮で大麻を吸って東海大野球部が無期限活動停止になっています。22年に部員が性犯罪を起こし実刑判決となった同志社大アメフト部はやはり無期限活動停止、古くは部員が強盗事件を起こした近畿大ボクシング部が廃部になっています。早稲田大の相撲部は薬物問題が目立たなくなって、日本最大規模の大学である、日大のニュースバリューが大きいということでしょう(笑)。 後藤 成人年齢に達している学生の不祥事で、大学側が謝る必要があるのかと感じることもありますが、それでも合宿所や寮は大学の施設なので、管理責任は生じる。ガバナンス問題はアメフト部だけではない。理事が競技部の監督やコーチを兼任することは禁じられたものの、推薦による入学者選抜とその後に大きな影響力がある。いわゆる田中元理事長派もまだ残っているだろう。 Q:第三者委員会報告書にも、34ある競技部は「法人でも教学でもない第三極を形成しているとの指摘も」と書かれていました。競技部入部式が別途行われ、23年度は470人が新入部員予定者だったそうです。競技部を統括する競技スポーツ部は、学務部、研究推進部、学生部と並ぶ存在ですし』、「競技部入部式が別途行われ、23年度は470人が新入部員予定者だったそうです。競技部を統括する競技スポーツ部は、学務部、研究推進部、学生部と並ぶ存在です」、「競技部」は依然大きな力を持っているようだ。
・『私学助成金不交付はいつまで続くのか Q:日大は2021年度から3年連続で私立大学等経常費補助金の不交付が決まっています。20年度には90億円ほどもらっていました。不交付の翌年度以降の取扱いというのがあって、改善努力を十分に行っていると認められたとしても、原則として翌年度は全額不交付で、2年後は75%減額、3年後は50%減額、4年後は25%減額、5年後からようやく全額交付になります。こうして見てみると、400億~500億円はもらい損ねることになりそうです。 後藤 そろそろ財務もきつくなってくるし、何よりも世間体が悪いですね。 井沢 日大は総合大学というよりも、強い学部の集合体、カレッジ制という印象です。 後藤 事務長も学部の序列はしっかりあります。付属の併設校を持っている学部の事務長が偉い。日本大学櫻丘高校(世田谷区)の文理学部、日本大学鶴ヶ丘高校(杉並区)と日本大学藤沢小中高(藤沢市)の生物資源科学部、日本大学三島高校の国際関係学部、日本大学習志野高校(船橋市)の理工学部、日本大学東北高校(郡山市)の工学部がそうですね。 井沢 学部の歴史がそのまま職員の序列につながっているようです。 後藤 それでも日大人気は下がらない。以前の記事でも指摘したように、本来、日大は明治大の後塵を拝するようなことは許されないのに。お茶の水地区のキャンパス再開発でも、明治に見下ろされてたまるか、明治よりも高い建物を建てるんだと意気込んでいたとの話も聞きました。日大法学部は中央大の法学部同様に法曹養成では定評があった。理工学部の建築は五大建築学部の一つに数えられた。土木は卒業生が全国で活躍して「社長を日本一出す大学」の基盤になった。 井沢 そもそも、23年度の一般選抜で日大の志願者は増えており、24年度は隔年現象で減る可能性が高い。東洋大が23年度入試で1万人以上志願者を減らしているので、今回の件とは関係なく、ハードルが下がったと感じる受験生が日大から東洋大に流れるケースもあるでしょう。24年度入試で日大の志願者が減少したとしても、その要因のすべてがガバナンス問題とされるのは気の毒な気がしますね。 後藤 日大は本来、面倒見のいい優しい大学です。昔は学生職員という制度があって、相撲部員とかが学生のときから職員になって、定年までいると40年超で退職金がえらい額になったものです。ただ今回は、その優しさを誤ってしまった。 Q:24年度入試がどうなるのか、年明けの次回に再び語っていただきましょう。 「ダイヤモンド社教育情報」では、twitterとfacebookで中高一貫校を中心に、学校・教育・入試に関する多彩な話題をお届けします』、「日大は2021年度から3年連続で私立大学等経常費補助金の不交付が決まっています。20年度には90億円ほどもらっていました。不交付の翌年度以降の取扱いというのがあって、改善努力を十分に行っていると認められたとしても、原則として翌年度は全額不交付で、2年後は75%減額、3年後は50%減額、4年後は25%減額、5年後からようやく全額交付になります。こうして見てみると、400億~500億円はもらい損ねることになりそうです」、「経常費補助金」の「減額」を考慮すると、財務的には苦しいことになりそうだ。
次に、本年1月14日付け現代ビジネス「<独自>日大病院から入院を拒否され、77歳で死去…「日大のドン」 田中英壽前理事長の「最期の姿」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/122866?imp=0
・『日大凋落の元凶 2008年から2021年まで理事長の座に君臨し、「日大のドン」と呼ばれた田中英壽氏が死去したことが13日、わかった。77歳だった。田中氏は複数のがんを抱えており、約1ヵ月前から入院していたという。 田中氏は青森県金木町出身。小学生のときに相撲を始め、日大に進学すると、3年時には学生横綱になった。 「現役時代の田中前理事長はアマチュア最強力士の異名を持ち、日大の一学年下には横綱になった輪島がいましたが、『輪島よりも実力が上だった』という声もあります」(日大関係者A氏) 1983年に日大相撲部の監督に就任すると、数多くの関取を輩出。1999年には日大理事となり、2008年に理事長就任。2021年までトップの座に君臨し、日本オリンピック委員会(JOC)副会長も務めた。 「アメフト部の薬物事件でガバナンス不全が問われている日大ですが、そもそも日本一のマンモス大の信用を地に落とした張本人が、かつて絶大な権力を握っていた田中前理事長です」(前出・日大関係者A氏) 長らく「日大のドン」として権勢を振るってきた田中氏だが、潮目が変わったのは2018年のアメフト部の悪質タックル問題だ。これにきっかけにトップとしての資質を疑問視され、権力の座から転げ落ちていく』、「長らく「日大のドン」として権勢を振るってきた田中氏だが、潮目が変わったのは2018年のアメフト部の悪質タックル問題だ。これにきっかけにトップとしての資質を疑問視され、権力の座から転げ落ちていく」、なるほど。
・『見る影もなかった「かつての威光」 2021年11月には医学部附属板橋病院をめぐる背任事件で、所得税法違反容疑で逮捕され、同年12月に理事長を辞任。2022年4月には有罪判決が確定した。 背任事件で逮捕されたことを受け、日大は田中前理事長と『永久に決別、影響力を排除する』と宣言し、多額の損害賠償を求め、田中前理事長名義の複数の不動産を仮差し押さえしました。 学内にはいまでも田中派の残党がいますが、改革を掲げている現執行部は田中派の一掃を目指しており、田中前理事長にかわいがってもらっていた人物は手のひらを返して現執行部にすり寄っています。 また、田中前理事長が監督を務めた相撲部のOBらも同様であり、田中前理事長と距離を置いています」(前出・日大関係者A氏)。 かつての威光は見る影もない…。それは自宅がある地元の東京・阿佐ヶ谷でも同様だった』、「田中前理事長」の「威光」は、「学内」のみならず、「地元の東京・阿佐ヶ谷」でも「見る影もない…」、なるほど。
・『夫人の親族からも総スカン 「田中さんを公私にわたって支え、『日大の女帝』といわれた征子夫人が経営する『ちゃんこ料理たなか』には毎晩のように出世を目指す日大の幹部職員が訪れ、『影の本部』なんて呼ばれていました。 当時の田中さんは近隣の飲食店にも取り巻きを引き連れて訪れていましたが、逮捕されて以来、パッタリ姿を見せなくなりました。もちろん日大職員も見かけません。 阿佐ヶ谷は征子夫人の地元ですが、田中さんは彼女の身内からも総スカンです。 昨年10月、征子夫人が亡くなって店を閉めることになりましたが、長年田中家に仕えてきた従業員への退職金を出し渋り、トラブルになったこともありました。 あまりにも誠意のない対応に対し、征子夫人を慕っていた従業員は怒り心頭で、店にあった備品を持ち出す騒ぎもありました」(近隣の飲食店経営者) 次々と人が離れていく中、田中氏を支える人物が1人だけいた。田中氏をよく知る別の日大関係者B氏が明かす』、「昨年10月、征子夫人が亡くなって店を閉めることになりましたが、長年田中家に仕えてきた従業員への退職金を出し渋り、トラブルになったこともありました」、そんなことで「トラブル」とは恐れ入る。
・『自宅に居座る謎の中国人 「田中氏は、若いころから支えてくれた奥さんが亡くなり、意気消沈の様子でした。ところが、奥さんが亡くなって1ヵ月もすると、40代の中国人女性が阿佐ヶ谷の自宅に居座るようになり、彼女の娘を含めた3人で暮らすようになりました。 実はこの女性、10年以上関係がある愛人です。水商売風の美人で、奥さんが健在のころは、田中氏が用意した新宿のマンションに娘と住んでいました。 田中氏は体調面で問題を抱えていたため、この中国人女性が身の回りの世話をしていました。昨夏は暑さが厳しく、避暑のため2人で仙台にある別荘に滞在していた時期もありましたね」 この女性は、近隣住民の間では「田中さんの世話をしている謎の中国人」として認識されていたが、取材に訪れた記者もゴミ出しをする女性の姿を何度か目撃したことがあった』、「奥さんが亡くなって1ヵ月もすると、40代の中国人女性が阿佐ヶ谷の自宅に居座るようになり、彼女の娘を含めた3人で暮らすようになりました。 実はこの女性、10年以上関係がある愛人です。水商売風の美人で、奥さんが健在のころは、田中氏が用意した新宿のマンションに娘と住んでいました。 田中氏は体調面で問題を抱えていたため、この中国人女性が身の回りの世話をしていました」、なるほど。
・『中国人女性の言いなりだった 「『ちゃんこ料理たなか』の従業員との退職金トラブルの話は私の耳にも入っていましたが、支払わないと決めたのは中国人女性のようです。 脱税で逮捕された田中氏ですが、素顔は相撲部屋の親方そのもので、気前のよさもありました。少なくともケチではありません。しかし、中国人女性の意向に従うしかなかったのでしょう。 理事長時代の田中氏は学内では敵なしの存在でしたが、面倒を見てもらった奥さんには頭が上がらず、いつも『ママ』『ママ』と頼りっきりでした。財布にしてもしっかり者の奥さんに握られていました。 奥さんの亡きあと、いまは身の回りの世話をしてくれる中国人女性の言いなりでした」(前出・日大関係者B氏) 昨年8月下旬、アロハ姿で自宅近くを散歩する田中氏 上の写真は、昨年8月下旬に田中氏の姿をとらえたものだ。目撃者が言う』、「『ちゃんこ料理たなか』の従業員との退職金トラブルの話は私の耳にも入っていましたが、支払わないと決めたのは中国人女性のようです」、何故、こんなところでケチるのだろうと思ったが、「中国人女性」の差し金だったということで納得した。
・『日大病院は入院拒否 「やたら派手なアロハを着た田中さんを目撃したのは夜19時過ぎです。田中さんよりずいぶん若い女性に手を取られながら、ゆっくりと体を左右に動かし、肩をゆすりながら歩いていました。 衰えは顕著であり、主導権を握っているのは手を取って誘導する女性にあるように見えました」 体調が悪化した田中氏は1ヵ月ほど前から入院していたというが、入院をめぐってはこんなひと幕もあったという。 「1ヵ月ほど前、田中氏から駿河台にある日大病院に『入院したい』との申し出がありましたが、病院側は『入院を認めると、コンプライアンス上の問題になります。残念ながらお受けすることはできません』ときっぱり断り、結局ほかの病院に入院することになりました」(前出・日大関係者B氏) 「日大のドン」と呼ばれた男の最期は、あまりにも悲しいものだった』、「病院側は『入院を認めると、コンプライアンス上の問題になります。残念ながらお受けすることはできません』ときっぱり断り、結局ほかの病院に入院することになりました」、通常であれば、「受け入れてしまう」のに、「コンプライアンス上の問題」で断ったとは大したものだ。断られた「田中氏」はさぞかし腹を立てたことだろう。
第三に、本年1月24日付けミヤテレ「東北大学・次期総長に冨永悌二氏「今までなかった新しい研究大学に」大学病院長など歴任 宮城県内の新型コロナ対応を指揮 〝もやもや病〟に影響を与える遺伝子を世界で初報告した実績も」を紹介しよう。
https://nordot.app/1122825473734083436?c=388701204576175201
・『大野総長の任期満了に伴って、4月から東北大学の総長となるのは、現在の副学長・冨永悌二氏。5人の候補者の中から大学外部を含む12人の委員が決めたもの。 冨永氏は福島県出身の66歳。東北大学医学部を卒業し、原因不明の「もやもや病」に影響を与える遺伝子を世界で初めて報告したほか、東北大学病院長の立場としては県内の新型コロナ対策を指揮したことなどが最大の成果として評価された』、「4月から東北大学の総長となるのは、現在の副学長・冨永悌二氏・・・東北大学病院長」、なるほど。
・『<総長選考・監察会議 小野寺 正 議長> 「大学だけではなく周りを巻き込んで方向性をきっちりと出してやっていけるという指導力。これは国際化に当たって非常に重要。高く評価している」 【日本で唯一「国際卓越研究大学」の候補として】 また、年間100億円の助成を受けて、世界トップレベルの研究を目指す国際卓越研究大学日本で唯一「国際卓越研究大学」の候補として】』、「年間100億円の助成を受けて、世界トップレベルの研究を目指す国際卓越研究大学日本で唯一「国際卓越研究大学」の候補」、なるほど。
・『<次期総長 冨永悌二氏> 「若い研究者が自由に独立して研究できるような環境を整える。日本国内のみならず海外からも優秀な研究者に来てもらい研究を推進して行く。東北大学が今までに我が国になかった新しい研究大学として発展するために力を尽くしたい」 冨永氏の就任は4月1日からで、任期は6年間』、「日本国内のみならず海外からも優秀な研究者に来てもらい研究を推進して行く」、「国際卓越研究大学」の試みは、これまでの「日本型」の公平さを取り払い、メリハリを最大限かけた革命的やり方だ。日本の風土のなかで果たして上手くいくのかに注目したい。
タグ:大学 (その14)(悪質タックル→アメフト部廃部…白日にさらされた「日大」ガバナンス問題 G&I大学対談(4)、<独自>日大病院から入院を拒否され、77歳で死去…「日大のドン」 田中英壽前理事長の「最期の姿」、東北大学・次期総長に冨永悌二氏「今までなかった新しい研究大学に」大学病院長など歴任 宮城県内の新型コロナ対応を指揮 〝もやもや病〟に影響を与える遺伝子を世界で初報告した実績も) ダイヤモンド・オンライン「悪質タックル→アメフト部廃部…白日にさらされた「日大」ガバナンス問題 G&I大学対談(4)」 「林さんはむしろ学長にして、代わりに文科省OBを据えて時間稼ぎをしながら人を探すのがいい。でも、日本最大の私立大学であり、組織もでかすぎる。文科省関係者にはやれる人がいないかもしれない」、「「林さんはむしろ学長にして」、いいアイデアだ。ただ、「代わりに文科省OBを据えて時間稼ぎをしながら人を探すのがいい」、「文科省OB」は逃げ回るだろうし、適任者が果たしているのか疑問だ。 「競技部入部式が別途行われ、23年度は470人が新入部員予定者だったそうです。競技部を統括する競技スポーツ部は、学務部、研究推進部、学生部と並ぶ存在です」、「競技部」は依然大きな力を持っているようだ。 「経常費補助金」の「減額」を考慮すると、財務的には苦しいことになりそうだ。 現代ビジネス「<独自>日大病院から入院を拒否され、77歳で死去…「日大のドン」 田中英壽前理事長の「最期の姿」」 「長らく「日大のドン」として権勢を振るってきた田中氏だが、潮目が変わったのは2018年のアメフト部の悪質タックル問題だ。これにきっかけにトップとしての資質を疑問視され、権力の座から転げ落ちていく」、なるほど。 「田中前理事長」の「威光」は、「学内」のみならず、「地元の東京・阿佐ヶ谷」でも「見る影もない…」、なるほど。 「昨年10月、征子夫人が亡くなって店を閉めることになりましたが、長年田中家に仕えてきた従業員への退職金を出し渋り、トラブルになったこともありました」、そんなことで「トラブル」とは恐れ入る。 「奥さんが亡くなって1ヵ月もすると、40代の中国人女性が阿佐ヶ谷の自宅に居座るようになり、彼女の娘を含めた3人で暮らすようになりました。 実はこの女性、10年以上関係がある愛人です。水商売風の美人で、奥さんが健在のころは、田中氏が用意した新宿のマンションに娘と住んでいました。 田中氏は体調面で問題を抱えていたため、この中国人女性が身の回りの世話をしていました」、なるほど。 「『ちゃんこ料理たなか』の従業員との退職金トラブルの話は私の耳にも入っていましたが、支払わないと決めたのは中国人女性のようです」、何故、こんなところでケチるのだろうと思ったが、「中国人女性」の差し金だったということで納得した。 「病院側は『入院を認めると、コンプライアンス上の問題になります。残念ながらお受けすることはできません』ときっぱり断り、結局ほかの病院に入院することになりました」、通常であれば、「受け入れてしまう」のに、「コンプライアンス上の問題」で断ったとは大したものだ。断られた「田中氏」はさぞかし腹を立てたことだろう。 ミヤテレ「東北大学・次期総長に冨永悌二氏「今までなかった新しい研究大学に」大学病院長など歴任 宮城県内の新型コロナ対応を指揮 〝もやもや病〟に影響を与える遺伝子を世界で初報告した実績も」 「4月から東北大学の総長となるのは、現在の副学長・冨永悌二氏・・・東北大学病院長」、なるほど。 「年間100億円の助成を受けて、世界トップレベルの研究を目指す国際卓越研究大学日本で唯一「国際卓越研究大学」の候補」、なるほど。 「国際卓越研究大学」の試みは、これまでの「日本型」の公平さを取り払い、メリハリを最大限かけた革命的やり方だ。日本の風土のなかで果たして上手くいくのかに注目したい。