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宇宙(その4)(インフレーション理論による「宇宙誕生のシナリオ」が革新的すぎる… 厳密な計算が示した「衝撃の結論」、この世界は「無数にある宇宙」のひとつに過ぎない…物理学者たちが「マルチバース」を信じる「深すぎる理由」、「宇宙は人類のために設計されている」説が、あながち間違いとも言えないワケ…物理学から考える「この世界の存在理由」) [科学技術]

宇宙については、本年11月14日に取上げた。今日は、(その4)(インフレーション理論による「宇宙誕生のシナリオ」が革新的すぎる… 厳密な計算が示した「衝撃の結論」、この世界は「無数にある宇宙」のひとつに過ぎない…物理学者たちが「マルチバース」を信じる「深すぎる理由」、「宇宙は人類のために設計されている」説が、あながち間違いとも言えないワケ…物理学から考える「この世界の存在理由」)である。

先ずは、3月2日付け現代ビジネスが掲載した佐藤勝彦氏による「インフレーション理論による「宇宙誕生のシナリオ」が革新的すぎる… 厳密な計算が示した「衝撃の結論」」を紹介しよう。
・『宇宙はどのように始まったのか…… これまで多くの物理学者たちが挑んできた難問だ。火の玉から始まったとするビッグバン理論が有名だが、未だよくわかっていない点も多い。 そこで提唱されたのが「インフレーション理論」である。本連載では、インフレーション理論の世界的権威が、そのエッセンスをわかりやすく解説。宇宙創生の秘密に迫る、物理学の叡智をご紹介する。 *本記事は、佐藤勝彦著『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです』、興味深そうだ。
・『これが「元祖インフレーション理論」だ  では、私が1981年に考え出した、元祖インフレーション理論を説明していきましょう。 宇宙の誕生直後、四つの力がそれぞれ、真空の相転移によって枝分かれをしたことはお話ししました。実は、これらの相転移のうち、2番目に起きた相転移によって強い力と電磁気力が枝分かれをするときに、まさに水が氷になるのと同様の現象が起きることがわかったのです。 水から氷に相転移するとき、エネルギーは高い状態から低い状態になります。これは秩序がない状態からある状態に変わるからです。水はH2O分子がランダムに動く秩序のない状態ですが、氷になって分子が結晶格子を組むと、秩序がある状態になります。そして水が氷に相転移するときには、333.5ジュール毎グラムの潜熱が生まれます。これは、秩序が「ない」状態よりも、秩序が「ある」状態のほうがエネルギーが低くなるため、その落差が熱として出てくるわけです。 宇宙は誕生したとき、水と似たような秩序のない状態でした。そして、空っぽのようで実は物理的な実体を持つ真空の空間自体が、実はエネルギーを持っていたのです。このエネルギーのことを「真空のエネルギー」といいます。繰り返しますが生まれたての宇宙は秩序のない状態ですから「真空のエネルギー」は高い状態にありました。 ところで、生まれたての宇宙空間自体にこのようなエネルギーがあるのならば、空間と時間についての方程式であるアインシュタイン方程式にも当然、普通の物質のエネルギーとともに、この真空のエネルギーも代入して計算しなければならないはずです。 そう考えて私が実際に計算してみたところ、この真空のエネルギーは互いに押し合う力として働くということがわかりました。物質のエネルギーのように互いに引き合う力(引力)とは違い、互いに押し合い、空間を押し広げようとする力(斥力)として働くのです。そして、生まれたての宇宙は、この真空のエネルギーの力によって急激な加速膨張をすることが、すぐに計算できたのです』、「生まれたての宇宙は、この真空のエネルギーの力によって急激な加速膨張をすることが、すぐに計算できたのです」、なるほど。
・『膨張を「インフレーション」と命名  さて、真空のエネルギーが空間を急激に押し広げると、宇宙の温度は急激に下がり、真空の相転移が起こります。このとき、まさに水が氷になるときに潜熱が発生するのと同じように、落差のエネルギーは熱のエネルギーとなります。真空のエネルギーが、熱のエネルギーに変わるということです。しかも、水ならば周辺の空間に熱を奪われることで氷になりますが、宇宙空間ではその潜熱が空間内に出てくるため、宇宙全体が火の玉になるほどのエネルギーになるのです。 こうしたことを考え合わせると、次のような宇宙初期のシナリオが描き出されてきました。 宇宙は、真空のエネルギーが高い状態で誕生しました。その直後、10のマイナス44乗秒後に、最初の相転移によって重力がほかの三つの力と枝分かれをします。いわゆる「インフレーション」は、そのあと10のマイナス36乗秒後頃、強い力が残りの二つの力と枝分かれをする相転移のときに起こりました。真空のエネルギーによって急激な加速膨張が起こり、10のマイナス35乗秒からマイナス34乗秒というほんのわずかな時間で、宇宙は急激に大きくなりました。その規模は、10の43乗倍とされています。 想像することが難しいと思いますが、そのような膨張が起きれば、1ナノメートル(1メートルの10億分の1)ほどの宇宙でも、私たちの宇宙(100億光年レベル)よりずっと大きくすることができるのです。 急激な加速膨張によって、宇宙のエネルギー密度は急激に減少し、宇宙の温度も急激に低下します。しかし、それによってすぐにまた真空の相転移が起こるため、前に説明した潜熱が出てきて、宇宙は熱い火の玉となるのです。これを「再熱化」といいます。 ビッグバン理論では「宇宙が火の玉になる」といわれていますが、実はそれは、宇宙が最初から火の玉として生まれ、そのエネルギーによって爆発的に膨張したのではなく、真空のエネルギーが宇宙を急激に押し広げるとともに相転移によって熱エネルギーに変わり、そのときに火の玉になったということだったのです。 以上が、インフレーション理論が描き出した宇宙のはじまりのシナリオです』、「真空のエネルギーが宇宙を急激に押し広げるとともに相転移によって熱エネルギーに変わり、そのときに火の玉になったということだったのです。 以上が、インフレーション理論が描き出した宇宙のはじまりのシナリオ」、なるほど。
・『数々の難問に、インフレーション理論はどう答える?  ではインフレーション理論は、ビッグバン理論がかかえる多様な問題を解決することができるのでしょうか。 まず、「モノポール問題」から見ていきます。モノポール問題とは、モノポール(磁気単極子)というものが理論上、宇宙の中にたくさんできることになってしまうという問題です。このことは、つまるところ力の統一理論から導かれる宇宙像と、現実の観測によって正しいとされているビッグバン理論が描く宇宙像とが矛盾してしまうことを意味しているのです。これでは、ビッグバン理論がつぶれるか、力の統一理論がつぶれるかのどちらかになってしまいます。 宇宙が生まれて以降の発展を示した図「インフレーションによる指数関数的な宇宙膨張」を見てください。 (図:インフレーションによる指数関数的な宇宙膨張 はリンク先参照) この図では、各断面の輪の大きさが宇宙の大きさを表していて、いちばん下の輪が宇宙のはじまりの頃に真空のエネルギーによって加速度的に急激な膨張をした宇宙の大きさです。 数学的にいえば指数関数的な膨張を起こしたことになるために、私はこのモデルを考え出した当初、「指数関数的膨張モデル」と呼んでいました。指数関数的膨張とは、簡単にいえば倍々ゲームで大きくなるということです。ある時間で倍になったものが、また同じだけの時間で倍に、さらに倍に…と大きくなることです。 これは私が高齢の方によく言う冗談ですが、もしもお孫さんが「お小遣いをちょうだい。1日目は1円でいいよ。2日目はその倍の2円。3日目は、その倍の4円と増やしていって、1ヵ月くれたらあとは何もいらないから」とねだってきたとき、最初の額が小さいので欲のない孫だと思って「ああいいよ」と言うと大変なことになります。31日目の額は、2の30乗、つまり10億円を超えてしまうのです。 このような倍々ゲームを100回も繰り返せば、素粒子のような小さな宇宙でも、何億光年もの宇宙にすることができます。 そこでモノポールについて考えると、実は宇宙のはじまりには実際に、多くのモノポールができていたと考えてもよいのです。そこへインフレーションが起きて、たとえばモノポールを含むわずかな空間が1000億光年の彼方に押しやられたとします。すると、1000億光年の彼方には、確かにモノポールは存在することになります。しかし、そんな場所と、われわれの知る宇宙には、直接の因果関係がありません。われわれの知りえる観測可能な宇宙は、せいぜい100億光年とか200億光年ほどの大きさです。 そのようなはるか遠くの宇宙に押しやられたモノポールが、われわれの知りえる宇宙の中にないのは、当然ということになります。つまり、存在はしていても観測できないという矛盾が解決されるのです』、「実は宇宙のはじまりには実際に、多くのモノポールができていたと考えてもよいのです。そこへインフレーションが起きて、たとえばモノポールを含むわずかな空間が1000億光年の彼方に押しやられたとします。すると、1000億光年の彼方には、確かにモノポールは存在することになります。しかし、そんな場所と、われわれの知る宇宙には、直接の因果関係がありません。われわれの知りえる観測可能な宇宙は、せいぜい100億光年とか200億光年ほどの大きさです」、なるほど。
・『ところで、宇宙の年齢はたしか137億年のはずでは…  ここで読者のみなさんは「宇宙の年齢はたしか137億年のはずなのに、なぜ1000億光年も先にまで宇宙が広がっているなどと言うのか?」と不審に思われるかもしれません。もっともな疑問です。しかし実は、インフレーション(指数関数的膨張)によって、宇宙は光の速度よりも速く膨張していたことがわかっているのです。なにしろ1ナノメートルよりも小さな宇宙が、わずか10のマイナス35乗秒からマイナス34乗秒後の間に、137億光年よりも大きな宇宙へと膨張するのですから。 実は、指数関数的な急激な膨張とはこのように、「困ったものはすべて宇宙の彼方に押しやることができる」という大変都合のいい話なのです。こうした考えを最初に示したのは私と共同研究者のM・アインホルンなのですが、このあたりのことが意外にも世界的にはあまり知られていないのが残念ではあります』、「インフレーション(指数関数的膨張)によって、宇宙は光の速度よりも速く膨張していたことがわかっているのです。なにしろ1ナノメートルよりも小さな宇宙が、わずか10のマイナス35乗秒からマイナス34乗秒後の間に、137億光年よりも大きな宇宙へと膨張するのですから」、なるほど。
・『その難問、インフレーション理論が解決!  インフレーションの効能は、このほかにもいろいろあります。 最初の大きな仕事はなんといっても、素粒子よりも小さい初期宇宙を指数関数的膨張によって一人前の宇宙にして、真空の相転移による潜熱を生じさせ、宇宙を火の玉にしたことでしょう。ビッグバン理論では「特異点から始まった宇宙がなぜ火の玉になったか」を、説明することができなかったのです。 それから、初期宇宙には非常に小さな量子ゆらぎしかなかったのですが、これをインフレーションという急激な膨張によって大きく引き伸ばしてやることで、のちに星や銀河や銀河団を構成するタネをつくれることがわかっています。これによってまた一つビッグバン理論の困難、宇宙構造の起源が説明できないという問題を解決したことになります。 「宇宙がなぜ平坦か」という平坦性問題も、インフレーションモデルが解決します。 たとえば、私たちは丸い地球の上に立っている自分をイメージすることはできますが、「地球が丸い」ということを直接的に認識するのはなかなか難しいはずです。自分の体に比べて地球の半径が非常に大きいために、なかなかわからないのです。もし地球の半径が数キロメートルしかなければ、人間にもすぐに丸いことがわかるでしょう。 実は、宇宙も同様なのです。初期の宇宙が曲がっていたとしても、それがインフレーションによって巨大に引き伸ばされれば、人間には曲がっていることがわからなくなってしまうのです。宇宙はもしかしたら、現在でもわずかに曲がっているかもしれません。しかし、宇宙が指数関数的膨張をしてあまりにも巨大になったために、それを観測することができないのです。これで平坦性問題も説明することができます。 このように、ビッグバン理論におけるさまざまな困難が、インフレーション理論によって解決してしまうのです。 現在では多くの研究者によって、インフレーション理論の改良モデルが数えきれないほど提案されていますが、私とグースらが考えた元祖インフレーション理論と呼ばれているものは、このような姿をしています。 さらに「インフレーション宇宙論」シリーズの連載記事では、宇宙物理学の最前線を紹介していく。 【続き<「何も無いところから宇宙が生まれた」って言うけど、一体どういうこと…第一級の物理学者がわかりやすく解説>を読む】 〈インフレーション宇宙論〉各回記事はこちらから ▽インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか(多くの人に知ってほしい「宇宙のはじまり」の話 提唱者が思いきりやさしく書いた1番わかりやすいインフレーション理論入門 ――宇宙の誕生から終焉まで そしてマルチバースを予言―― 宇宙は火の玉から始まったとするビッグバン理論では、特異点すなわち「神の一撃」を認めざるをえない。物理学の言葉だけで宇宙創生を記述したい、という著者の願いがインフレーション理論を生み、現在では宇宙創生の標準理論として認知された。その内容を万人が理解できるよう書かれた、最も平明なインフレーション理論の入門書! 《目次》 第1章 インフレーション理論以前の宇宙像 第2章 インフレーション理論の誕生 第3章 観測が示したインフレーションの証拠と新たな謎 第4章 インフレーションが予測する宇宙の未来 第5章 インフレーションが予言するマルチバース 第6章 「人間原理」という考え方)』、「宇宙は火の玉から始まったとするビッグバン理論では、特異点すなわち「神の一撃」を認めざるをえない。物理学の言葉だけで宇宙創生を記述したい、という著者の願いがインフレーション理論を生み、現在では宇宙創生の標準理論として認知された。その内容を万人が理解できるよう書かれた、最も平明なインフレーション理論の入門書!」、なるほど。

次に、3月2日付け現代ビジネスが掲載した佐藤勝彦氏による「この世界は「無数にある宇宙」のひとつに過ぎない…物理学者たちが「マルチバース」を信じる「深すぎる理由」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/124963
・『宇宙はどのように始まったのか…… これまで多くの物理学者たちが挑んできた難問だ。火の玉から始まったとするビッグバン理論が有名だが、未だよくわかっていない点も多い。 そこで提唱されたのが「インフレーション理論」である。本連載では、インフレーション理論の世界的権威が、そのエッセンスをわかりやすく解説。宇宙創生の秘密に迫る、物理学の叡智をご紹介する。 *本記事は、佐藤勝彦著『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです』、興味深そうだ。
・『ユニバースからマルチバースへ  近年、さまざまな研究の成果から、マルチバース(multiverse)という言葉が流行してきています。宇宙は一つ(uni)ではなく、多数(multi)であるというのです。実は私のインフレーション理論でも多数の宇宙が生まれることは予言されていて、本書でも「子宇宙」「孫宇宙」という言葉がときどき出てきました。そのほかにもさまざまな理論によって、宇宙は多様に存在しているらしいと考えられるようになり、マルチバースという言葉が定着しつつあるのです。 そこで、ここからはマルチバースの話をしていきます。なかには少しイメージするのが難しい内容もあるかもしれませんが、あまり細部にこだわらず気楽に読み進めてください』、「マルチバース(multiverse)という言葉が流行してきています。宇宙は一つ(uni)ではなく、多数(multi)であるというのです」、なるほど。
・『無数の「子宇宙」「孫宇宙」  インフレーション理論はビッグバン理論の困難を解決してきただけではなく、まったく新しい宇宙の描像を描き出してもいます。それは、宇宙が急激な膨張をするとき、早くにインフレーションを起こして膨張している場所と、インフレーションをまだ起こしていない場所とが小さな泡のようにいくつも混在することによって、多数の「子宇宙」や「孫宇宙」が生まれてくるというものです。 これは、私と共同研究者が1982年頃に説いたことなのですが、インフレーションで宇宙が急激な膨張をするとき、宇宙全体が手を携えていっせいに大きくなるとは限りません。互いに連絡がとれないような遠いところまで、同時に、同様にインフレーションが起きるという必然性はないのです。つまり、でこぼこだらけの膨張を起こす可能性は十分にあるわけです。 これは現在の宇宙のような数百億光年という「小さな」スケールの話ではありません。われわれの宇宙を超えた、とてつもなく大きな話です。そういうスケールで見ると、インフレーションを起こして急膨張をしている場所と、インフレーションが終わって緩やかな膨張をしている場所が宇宙にはいくつも混在していると考えられるのです』、「現在の宇宙のような数百億光年という「小さな」スケールの話ではありません。われわれの宇宙を超えた、とてつもなく大きな話です。そういうスケールで見ると、インフレーションを起こして急膨張をしている場所と、インフレーションが終わって緩やかな膨張をしている場所が宇宙にはいくつも混在していると考えられる」、なるほど。
・『「ワームホール」と呼ばれるふしぎな現象も…  そうすると、とても不思議な現象が起こることがわかりました。周囲よりも遅れてインフレーションを起こした領域は、先にインフレーションを起こして宇宙規模の大きさを持った周囲の領域から見ると、表面は急激に押し縮められているけれども、その領域自体は光速を超える速さで急激に膨張して見えるということが、相対性理論から導き出されたのです。 まるでブラックホールでもつくっているかのように表面が急激に押し縮められている領域が、全体としては急激に膨張している。一見矛盾するこの問題に、当初、私自身も悩みました。しかし、何度計算しなおしても、まちがいではありません。 ところが、さまざまな可能性を探っているうちに、次のような描像が見えてきたのです。実は、表面を急激に押し縮められている部分は、虫食い穴のような小さな空間になりながら、周囲の空間と、新たにインフレーションを起こした空間をつないでいる。そして、新たにインフレーションを起こした空間は急激に膨張して、やがて新しい宇宙になる、というものです。これならば、周囲から表面を急激に押し縮められている空間が、なおかつ急激に膨張するということが矛盾なく説明できます。 こうして、すでにインフレーションの終わっている領域を親宇宙とするならば、急膨張した場所が子宇宙となり、さらに遅れて孫宇宙が生まれるというように、まん丸い親宇宙から、いくつものマッシュルームでも生えてくるように、無数の子宇宙、孫宇宙が生まれるというモデルができあがったのです。 押し縮められる虫食い穴のような空間のことをワームホールと呼んでいます。 これらの子宇宙、孫宇宙は、ワームホールもやがて消えて、親宇宙とは完全に因果関係の切れた、独立した宇宙になっていきます。 これが、インフレーション理論が予言するマルチバースの考え方です』、「これらの子宇宙、孫宇宙は、ワームホールもやがて消えて、親宇宙とは完全に因果関係の切れた、独立した宇宙になっていきます。 これが、インフレーション理論が予言するマルチバースの考え方です」、なるほど。
・『量子論は必然的に「マルチバース」へ  ところで、アレキサンダー・ビレンケンなどが考えた量子論的な宇宙論では、宇宙は「無」から創生されるという話を前にしました。とすると、無の状態から生まれる宇宙は当然ながら、私たちの宇宙だけでなければならない理由はなく、いくらでも別の宇宙ができる可能性があると考えられます。そして無から生まれた多数の宇宙はそれぞれインフレーションを起こし、子宇宙、孫宇宙を生みながら大きくなっていくわけですから、どうしたって宇宙はユニバース(universe=一つの宇宙) ではなく、マルチバース(multiverse=多数の宇宙)にならざるをえない。これが、最近の宇宙論の考え方です。 (図 インフレーションによるマルチバースのモデル はリンク先参照) 無からの創生という考え方だけでもいくらでも宇宙ができますし、インフレーションによっても多重発生をしていくのです。 では、別の宇宙が存在していることが実際にわかるのかと聞かれれば、わからないとしか答えようがありません。というのも、別の宇宙であるということは、その宇宙との間で因果関係が切れているということだからです。因果関係が切れていれば、こちら側の宇宙からいくら観測を試みても、できるはずがないのです。逆にもし、観測ができて存在が証明できれば、因果関係があるということになりますから、それは別の宇宙ではなく同じ宇宙ということになります』、「別の宇宙であるということは、その宇宙との間で因果関係が切れているということだからです。因果関係が切れていれば、こちら側の宇宙からいくら観測を試みても、できるはずがないのです。逆にもし、観測ができて存在が証明できれば、因果関係があるということになりますから、それは別の宇宙ではなく同じ宇宙ということになります」、なるほど。
・『宇宙にも「淘汰」がある?  マルチバースにおける物理法則では、こんな奇妙な考え方も出てきています。 無数にある宇宙の、無数にある物理法則は、自然選択で淘汰されるというのです。つまり、あたかも生物における進化論のようなアナロジーが、そのまま宇宙についても適用できるのではないかという考え方です。 何ともすごい着想です。現在の物理法則を持っている宇宙は、生存競争に打ち勝って、いちばん多く存在する宇宙になったのではないかというのです。リー・スモーリンという物理学者が考えたことですが、ここでわかりにくいのは生存競争とは何かということでしょう。 この考え方によれば、重力定数や強い力の定数といった定数ごとに、多様な宇宙があります。その中で宇宙が生まれて死んで、生まれて死んで、を繰り返すうちに、自然淘汰されていく宇宙があり、ある形の宇宙が多くなっていく。そして私たちは、そのいちばん多くなった宇宙に住んでいるのではないかというのです(図「淘汰される宇宙のイメージ」)。 (図:淘汰される宇宙のイメージ はリンク先参照) もちろん、現在の理論でこんなことが言えるわけではありません。そこで、彼はモデルをつくって、仮定をおいて進化を考えました。その仮定とは、一つの宇宙にブラックホールが生まれると、そのブラックホールには別の新しい宇宙が生まれるのだというものです。これは何の根拠もない仮定で、そんなことが証明されたことはありません。私はインフレーション理論に則って、ワームホールができたら別の宇宙ができるという話はしましたが、ブラックホールが生まれたら別の宇宙ができるというような話はないのです。 それはともかく、この仮定に沿って話を続けましょう。ここで、ブラックホールの誕生によって新しくできた宇宙の物理法則は、元の宇宙とは少しだけずれるというのです。言ってみれば、宇宙の物理法則というのは生物の遺伝子と同じようなもので、世代交代するうち突然変異によって少しだけ変化するというわけです。これはまさに、生物の進化の特徴です。 こうして、何世代にもわたるたくさんの宇宙の進化が生物の場合と同じように進めば、いずれはブラックホールをたくさんつくる宇宙が自然選択で栄えることになるといいます。彼の言い方によれば、現在の物理法則がこのような値になっているのは、この物理法則を持つ私たちの宇宙に多くのブラックホールがあるがゆえに、その値になっているというのです。 大変面白いアイデアではありますが、現実の法則でこのような理屈が説明できるわけではありません。いまの時点ではまだ、ひとつの面白いお話ということになると思います。 さらに「インフレーション宇宙論」シリーズの連載記事では、宇宙物理学の最前線を紹介していく。 【続き<「宇宙は人類のために設計されている」説が、あながち間違いとも言えないワケ…物理学から考える「この世界の存在理由」>を読む】 〈インフレーション宇宙論〉各回記事はこちらから インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』、今後の「インフレーション宇宙論」の展開に期待したい。

第三に、3月2日付け現代ビジネスが掲載した佐藤勝彦氏による「「宇宙は人類のために設計されている」説が、あながち間違いとも言えないワケ…物理学から考える「この世界の存在理由」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/124967
・『宇宙はどのように始まったのか…… これまで多くの物理学者たちが挑んできた難問だ。火の玉から始まったとするビッグバン理論が有名だが、未だよくわかっていない点も多い。 そこで提唱されたのが「インフレーション理論」である。本連載では、インフレーション理論の世界的権威が、そのエッセンスをわかりやすく解説。宇宙創生の秘密に迫る、物理学の叡智をご紹介する。 *本記事は、佐藤勝彦著『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです』、興味深そうだ。
・『宇宙は人類のために絶妙にデザインされている?  本連載の締めくくりに、宇宙を考えるうえで避けて通れない「人間原理(Anthropic Principle)」の話をしていきましょう。 現在の宇宙の法則の中には、さまざまな物理定数があります。たとえば強い力、電磁気力、重力などの力の強さもそうです。つまり具体的に決まっている数値のことですね。これらの定数をよく見ると、まるで人類が誕生するように値が調節されているとしか思えないものがあるのです。たとえば、電磁気力の強さを少しでも変えると、生命は生まれなくなってしまいます。強い力の値をちょっと弱くすると、星の中で元素を合成するトリプルアルファ反応というものが起こらなくなります。これは3個のヘリウム4の原子核が結合して炭素12ができる核融合反応ですが、この反応が起きないと、炭素や酸素といった生命に不可欠な元素が生成されなくなるのです。 これらの例に限らず、われわれが住む宇宙は、人類を含めた生命をつくるために絶妙にデザインされているように見えるのです。これは否定しようのない観測事実です。 このような話を聞くと、「ああ、やはり神様は人間を創造するようにこの世界を設計されたんだなあ」と思う人もあるかもしれません。しかし、科学者がそのように考えるわけにはいきませんから、このような物理定数のナゾをどう解決するかが重要な問題になります。人間原理も、この問題への答えとして考えられてきたものなのです。 これまで人間原理については、いろいろな研究者が自分の見解を述べていて、量子脳理論のアイデアでも知られるロジャー・ペンローズはこう言っています。 「神様がわれわれの住んでいる宇宙と同じような宇宙を創り出すためには、途方もなく小さな空間の中の小さな定数が必要である」 つまり、適当に物理定数を決めても、決していまの宇宙はできない。神様はよほど注意深くならなければならない、というのです。そして、どこから出てきた数字かわかりませんが、われわれの住む宇宙がつくれる確率は、10の10の123乗分の1だと、すこぶる具体的な数値を示しています。 この数字はおそらくジョークだとは思いますが、それくらいとてつもない精度で選択をしていかなければ、いまのような宇宙はできっこないというわけです。そして、なぜいまの宇宙がそうなっているかという問題は、人間原理でしか説明できないというのです』、「とてつもない精度で選択をしていかなければ、いまのような宇宙はできっこないというわけです。そして、なぜいまの宇宙がそうなっているかという問題は、人間原理でしか説明できないというのです」、その通りだ。
・『宇宙の法則が少し違ったら人類はどうなっていた?  アメリカの理論物理学者テグマークが、電磁気力や、強い力が、われわれの宇宙とは違う多様な値をとった場合を考えたグラフがあります(図「テグマークのグラフ」)。 難しい言葉もありますが、要するにこれによると、2つの力の値が変わると炭素原子が不安定になったり、水素原子が生まれなかったり、重水素が不安定であったりなど、多様な不都合が生じます。その結果、知的生命体が誕生するのに都合のいい領域はごくわずかしか残りません。四つの力のうち、二つの力だけで考えても、これほどまで制限されるのです。 テグマークはまた、空間の次元や時間の次元を変えるという考え方でも生命体存在の可能性を考えています。 時間がわれわれの世界と同じ1次元の場合は、空間が1次元や2次元だと単純すぎて多様な構造が生まれず、一方で空間が4次元にまでなると不安定になるとしています。たとえば原子核のまわりを回っている電子も、次元の大きな世界では不安定になって原子核に落ち込んでしまうようになります。これでは多様な構造を安定してつくることはできません。結局は、3次元が多様な構造をつくるのには適しているというのです。 時間の次元が多い宇宙については、4次元以上だと不安定な宇宙になるのだそうです。しかし、時間の次元が増えるというのはどういうことか私にはわかりません。それこそ腕時計が二つ必要になる世界でしょうか? 冗談はさておき、時間の次元がゼロの場合は、彼も想像不可能としています。 テグマークの主張はともかく、私たち人類はよほどの条件が整わなければこの宇宙に存在できないことは確かなのです』、「私たち人類はよほどの条件が整わなければこの宇宙に存在できないことは確かなのです」、確かに偶然とha
いえ、恐ろしいものだ。
・『人間は「選ばれし存在」か?  およそ50年前、プリンストン大学の物理学者ロバート・ディッケは、もし宇宙が現在のようにきわめて平坦でなければ、人間は存在していない、だから人間は選ばれた存在であると言いました。 もし、宇宙を創ったときに、神様がいまよりも弱い勢いで膨張させたとすると、膨張はすぐに止まってしまい、1000万年後あるいは1億年後に膨張は止まって、つぶれてしまう宇宙になります。そういう宇宙では十分に生命は進化できず、人類は生まれないことになってしまいます。 一方、神様が宇宙を膨張させる力が強すぎた場合は、膨張する速度が速すぎて、ガスが十分に固まる前に宇宙が膨張してしまいますから、ガスが固まれません。つまり、星もできません。ですから炭素も酸素もつくられず、生命も人類も生まれてきません。 このように考えると、神様はきわめて慎重に、曲率がゼロになるように宇宙を創造したということになりますが、それは非常に困難なことです。これが「平坦性問題」です。この問題を説明するためにディッケは、人類は曲率がゼロに近いきわめて平坦な宇宙にだけ住むことができる。だからこの宇宙は平坦な宇宙なのだ、と言ったのです。 この平坦性問題は、インフレーション理論によって解決したことも前にお話ししました。ごく簡単に言えば、神様の力を借りなくても、インフレーションさえ起こせば、曲率ゼロの宇宙を創ることができるからです。インフレーションによって一様で平坦な宇宙ができるため、平坦性問題は人間原理を使わなくても、物理学で説明できるようになったのです。 「人間原理」という言葉を最初に使ったのは、ブランドン・カーターです。 読者のみなさんはコペルニクスをご存じでしょう。地球は宇宙の中心にあるのではなく、太陽のまわりを回っているという地動説を考えた人です。このコペルニクスの考え方を太陽系だけに限らず、あらゆる一般的なことに敷衍したものをコペルニクスの原理と言います。人類は世界の中心にいるわけではなく、宇宙においては人類といえどもワンオブゼムの存在であるという考え方です。 カーターは、このコペルニクスの原理に対する逆の考え方として、人間原理という言葉を使ったようです。宇宙は人間を生むようにつくられていると見ることができるとして、人間を特別な存在として考えるべきであるというのです』、「カーターは、このコペルニクスの原理に対する逆の考え方として、人間原理という言葉を使ったようです。宇宙は人間を生むようにつくられていると見ることができるとして、人間を特別な存在として考えるべきであるというのです」、なるほど。
・『強い人間原理、弱い人間原理  やがて人間原理は、「弱い人間原理」と、「強い人間原理」に分かれます。 弱い人間原理とは、いまあるこの宇宙のあり方を決める数値(宇宙の初期条件など)は、なぜ人間が存在するのに都合よく定められているのかを問うものです。そのよい例はディッケの平坦性問題で、人間が宇宙に存在することから、宇宙は平坦になるよう微調整されたとする考え方です。ただし、やはり平坦性問題のように、インフレーション理論を使えば物理法則だけで説明できるものもあります。 これに対し、強い人間原理は、物理学の基本法則・物理定数や、宇宙や空間の次元などは、人間が存在できるようにつくられているというものです。2次元でも4次元でもだめで、3次元でなければならないとテグマークが言うのも、この強い人間原理です。 こうした人間原理が出てくるのは、ある意味で当然のことだと私は思います。なぜなら、いま私たちは物理法則を持っていて、その法則には多様なパラメーター、つまり数値がのぼっていますが、それらがどうしてそんな数値になっているのか、私たちは知らないからです。たとえば電気の力を表す微細構造定数という値は、137.035…分の1という数値になっていますが、なぜ、これが電気の強さになるのかもわかっていないのです。そうである以上、その値が人間が存在できるように決められたという考え方が出てきてもしかたないのです。 将来もしも、超ひも理論がめざす究極の物理法則、この方程式ひとつを解きさえすれば四つの力すべてがわかるという超大統一理論ができたとき、その方程式の中に何ひとつ数字(定数)がなく、すべては幾何学の問題だけに帰して、それだけで自動的に現在ある多様なパラメーターの数値がすべて導き出せるといったことになれば、人間原理など必要ありません。その理論さえあれば、この世界がつくれることになるからです。 しかし、かりに何らかの数字がまだ残っていたとしたら、そのときは問題です。その数値はなぜそうなるのか、説明がつかないからです。そのときは、人間原理のようなものを考えなくてはならないかもしれません。 今後の研究によって、そこがどうなるのかはわかりません。ただ、私は物理学者として、究極の物理法則となる超大統一理論には、そういうパラメーターがいっさい残っていないことが理想だと思っています』、「私は物理学者として、究極の物理法則となる超大統一理論には、そういうパラメーターがいっさい残っていないことが理想だと思っています」、面白い意気込みだ。
・『マルチバースと人間原理  読者のみなさんは、これまでの話をどう思われたでしょうか。「宇宙は人間が生まれるようにつくられている」と主張するかのような考え方など、科学にはほど遠いと思われたのではないでしょうか。たしかに人間原理を疑似科学や宗教的なものと見なしている人もいるようです。しかし、実はホーキングも弱い人間原理を支持しているなど、科学者の間でも人間原理への評価はさまざまに分かれているのです。 私自身はといえば、さきほども述べたように、物理学の法則だけでこの世界のことをすべて説明できれば理想的だと考えています。人間原理という概念を物理学は安易にうけいれるべきではないというのが基本的な立場です。ただ、最近の人間原理の考え方には、科学的に認められるものが生まれてきているとも考えています。 それは、マルチバースの考え方に立った人間原理です。インフレーション理論が予言するように、宇宙が子宇宙、孫宇宙…と無数に生まれているならば、それぞれの宇宙が持つ物理法則もまた無数に存在するはずです。それらの中には、人間が生存するのにちょうどよい物理法則があっても不思議ではありません。そして、私たちの宇宙がたまたま、そういう物理法則を持つ宇宙だったのだ、とする考え方です。 これにはみなさんも納得できるのではないでしょうか。この宇宙を認識する主体である私たち人間は、ほかの宇宙を認識することはできません。だから、たった一つの宇宙がたまたま人間に都合のいいよう絶妙にデザインされていることを不思議に感じますが、実はそれは、無数にある宇宙の中で私たちの宇宙がたまたま、人間が生まれるのに都合のいい宇宙だったにすぎないというわけです。そのような宇宙だからこそ生まれた人間が、この宇宙の物理法則について認識していくと、それは人間が生まれるように都合よくできていた、これは言ってみれば当たり前のことです。そして、そのような私たちの宇宙が、たとえペンローズが言ったように10の10の123乗分の1というわずかな確率でしかつくられないとしても、宇宙が無数にあるのなら、そのうちの一つが私たちの宇宙であっても何も不思議ではありません。 このように、インフレーション理論が予言するマルチバースという宇宙像を前提にすると、人間原理についても論理的な説明が可能になってくるのです。 さらに「インフレーション宇宙論」シリーズの連載記事では、宇宙物理学の最前線を紹介していく。 【初回<「ビッグバン」の前に何が起きていたのか教えよう…「宇宙の起源」のナゾを解く新理論の「スゴすぎる中身」>を読む】 〈インフレーション宇宙論〉各回記事はこちらから インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』、「宇宙が無数にあるのなら、そのうちの一つが私たちの宇宙であっても何も不思議ではありません。 このように、インフレーション理論が予言するマルチバースという宇宙像を前提にすると、人間原理についても論理的な説明が可能になってくるのです」」、分かったようで分からない話だ。少し難し過ぎたのかも知れない。
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生命科学(その4)(養老孟司×菊池愛騎 熱血対談3題:「光に集まるなら 昼間は全部太陽に向かうはずでしょ」昔から解明されないナゾ…夜の灯りに虫が集まるのはなぜ?、「子どもの虫離れ」が進む一方 虫好きな女性は増えている? 日本人が“虫に親しみを感じる”理由とは、「人間って相当にアホだと思いません?」「地面をガチンガチンに固めてしまって…」解剖学者・養老孟司が“環境問題”に思うこと) [科学技術]

生命科学については、本年5月8日に取上げた。今日は、(その4)(養老孟司×菊池愛騎 熱血対談3題:「光に集まるなら 昼間は全部太陽に向かうはずでしょ」昔から解明されないナゾ…夜の灯りに虫が集まるのはなぜ?、「子どもの虫離れ」が進む一方 虫好きな女性は増えている? 日本人が“虫に親しみを感じる”理由とは、「人間って相当にアホだと思いません?」「地面をガチンガチンに固めてしまって…」解剖学者・養老孟司が“環境問題”に思うこと)である。

先ずは、8月21日付け文春オンラインが掲載した解剖学者の養老孟司氏とクワガタ・ハンターの菊池愛騎氏による熱血対談「「光に集まるなら、昼間は全部太陽に向かうはずでしょ」昔から解明されないナゾ…夜の灯りに虫が集まるのはなぜ?」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/72873
・『虫好きで知られる養老孟司(86)さんと、最強のクワガタ・ハンター菊池愛騎(39)さんとの対談が実現した。養老さんはゾウムシを求めて、80代の今も海外まで採集に行くほどエネルギッシュだ。 一方の菊池さんは、最強の採集家集団“インフィニティー・ブラック”の二代目リーダー。彼らが探し求めるのは日本昆虫界のスーパースター・オオクワガタだ。採集難易度が極めて高いにもかかわらず、メンバーは新規生息地発見に挑む。断崖絶壁や雪山、真夜中の森での熊や心霊現象にも怯まない。好きな虫がゾウムシとオオクワガタであっても、ともに自然界のロマンに引き寄せられているのは同じだ。 菊池さんの属するインフィニティー・ブラックの活動を3年にわたって追った『オオクワガタに人生を懸けた男たち』(野澤亘伸著・双葉社刊)より、二人の熱血対談を紹介する。(全3回の1回目/続きを読む)』、興味深そうだ。
・『わからないから面白い  養老孟司(以下、養老) 僕はラオスやブータン、マレーシアによく採集に行くんですけど、「何が採れるんですか?」って聞かれる。採れるものがわかっていたら行かないよ。今の人はなんでも計画通りじゃないと気が済まない。 菊池愛騎(以下、キクリン) オオクワガタの採集でも、それと近い部分があります。いるってわかっている場所には特に興味がないですね。いるかどうかわからないから、探すのが楽しい。 養老 僕はゾウムシ屋なんだけど、場所によって個体に変異があることが多い。だから同じ種類でも丁寧に採るので、標本の数が増えてどうしようもない(笑)。  キクリン 自分はオオクワガタも地域ごとの違いを感じています。それは虫の動きとか生態的な部分で形になって現れている部分がありますね。 養老 僕はオオクワガタを採ったことがないんです。生きた姿にお会いしたことがない(笑)。 キクリン 場所によって昆虫の個体や生態に少しずつ違いが現れてくるのは、地形の成り立ちの歴史に関係あるんでしょうか? 養老 完全に歴史でしょう。孤立した集団はひとりでに遺伝子が特定のタイプに固定していきます。1個の遺伝子じゃなくて全体ですね。 キクリン 自分が気になっていることがありまして、雪国のオオクワガタは雪が積もるような低い場所には滅多に(卵を)産まないんです。でも山梨とか平地の里山にいる個体は関係なく産む。雪国で産まなくなったのは、低いところに産まれた子たちが絶えてしまったからでしょうか? 学習するってことはないと思うんですけど。 養老 学習はしないでしょう。ただ、本当かどうか昔から言いますよね。雪の多いところはカマキリの卵が高いところにある、と。 キクリン 夏にはその場所に雪が降るなんてわかりませんから、たぶん湿度に反応してるんだと思います。雪はけがいい場所では、低いところでも生んでいたりするんです。ここには雪が積もらないことを想像できないだろうから、そうなると湿度を感知しているとしか思えない。 養老 他に彼らが何かを察知する要素としては、例えば我々には菌類が見えてない。菌類の生態系が違っている可能性もある。菌は見えないので、研究が遅れてるんですよ。  キクリン 虫は感知してますよね。) 養老 もちろん。ゾウムシはずいぶん菌食いのやつが多い。キノコを食うやつはもうヒゲナガゾウムシに特殊化してますからね。僕が学生の頃と比べて一番変わったのは生物を3つに分けることです。動物、植物、菌類という。今、虫が減ってるのには、菌類の構成が変わっている可能性がある。 キクリン その要因は、どんなことが考えられるのでしょうか? 養老 人が土をいじるからでしょう。農耕の歴史が1万年ある。一昨年(2022年)、ゲイブ・ブラウンっていう人の本が出たんです。『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』(NHK出版)。これはアメリカの農家の話です。化学肥料をやらない、除草剤をまかない、殺虫剤をまかない。いわゆる有機農業ですね。プラス、耕さない。ジャガイモを作るなら、自分の畑に種イモを置いて。上に枯れ草をかけて終わり。普通は掘るでしょ。 そうすると菌が網の目のように土に構造を作ってるのを壊してしまう。ほとんど目に見えないから、そういう構造に注意してこなかった。それからもう一つは人間の癖でね、やっぱり、種イモを置いただけでジャガイモができたっていうと気に入らないんじゃないですか。額に汗してその成果が得られたっていう気持ちをもちたいから。でも、自然に関してはほっとけばいいんです。雑草も何もかも生やしておいて、その中に作物を置いていく。それでダメなものはダメだと諦めるしかない』、「『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』(NHK出版)。これはアメリカの農家の話です。化学肥料をやらない、除草剤をまかない、殺虫剤をまかない。いわゆる有機農業ですね。プラス、耕さない。ジャガイモを作るなら、自分の畑に種イモを置いて。上に枯れ草をかけて終わり。普通は掘るでしょ。 そうすると菌が網の目のように土に構造を作ってるのを壊してしまう。ほとんど目に見えないから、そういう構造に注意してこなかった。それからもう一つは人間の癖でね、やっぱり、種イモを置いただけでジャガイモができたっていうと気に入らないんじゃないですか。額に汗してその成果が得られたっていう気持ちをもちたいから。でも、自然に関してはほっとけばいいんです」、「有機農業」のメリットの一部を理解できた。
・『日本の土壌が豊かな理由   キクリン 山に入っていて、虫が減ったなと感じる地域はありますか? 養老 どこも減っているでしょう。 キクリン 一方で、見たことがない虫が増えていたりすることがあります。外来種だったりとか......。山林自体が減れば虫も減るのは当然だと思いますが、国土がこれだけ緑に覆われている国は世界的にも少ないんですよね? 養老 数字で計算すると、日本の山林の割合は北欧に匹敵している。北欧は木を切れないんですよ。下が永久凍土で、森を切ると湖に変わっちゃうから。でも、日本の場合は切りまくっているのに残っているんだよね。  キクリン なぜでしょう? 養老 やっぱり東南アジアモンスーン地帯というのがあるでしょう。しかも温帯でしょ。熱帯はすぐに熱帯雨林になってしまうので、表土が薄いんです。でも日本は厚い。 キクリン 黒土がこれだけある国も少ないそうですね。  養老 一つは火山があるから。長年の間に火山灰が積もる。もう一つは中国から黄砂が飛んでくる(笑)。毎年空が曇るくらい飛んでくるんだから、それが1000年経ったら大変なものです。実は、火山というのは恵みなんです。ジャレド・ダイアモンド(進化生物学者)が太平洋の島々を調べて、文明が続く島と続かない島があるという。島は資源が少ないから森を切り尽くしてしまって終わる。その中で島に森が残る条件をいろいろ挙げていますが、一つに火山が入っている。もう一つが黄砂です。 キクリン 黄砂は意外でした』、「日本の山林の割合は北欧に匹敵している。北欧は木を切れないんですよ。下が永久凍土で、森を切ると湖に変わっちゃうから。でも、日本の場合は切りまくっているのに残っているんだよね。  キクリン なぜでしょう? 養老 やっぱり東南アジアモンスーン地帯というのがあるでしょう。しかも温帯でしょ。熱帯はすぐに熱帯雨林になってしまうので、表土が薄いんです。でも日本は厚い・・・黒土がこれだけある国も少ないそうですね。  養老 一つは火山があるから。長年の間に火山灰が積もる。もう一つは中国から黄砂が飛んでくる・・・ジャレド・ダイアモンド・・・が太平洋の島々を調べて、文明が続く島と続かない島があるという。島は資源が少ないから森を切り尽くしてしまって終わる。その中で島に森が残る条件をいろいろ挙げていますが、一つに火山が入っている。もう一つが黄砂です」、なるほど。
・『人間には見えない虫の道  養老 人間には見えないものとして菌類が一つと、もう一つは気象、空気の流れです。僕らはよく吹き上げといって、尾根で待っていると虫が結構上がってくる。その近辺で採集しているといろんなものが採れます。 キクリン 山頂には蝶もよく上がってきます。 養老 蝶は尾根で連れ合いを探すという人もいますね。前にカミキリを採っている人と山梨の下部温泉に、スネケブカヒロコバネカミキリが採れるというので行ったことがある。 アカメガシワに飛んでくるというのでみんなで探したら、満開の木があった。反対側がスギ林になっていて、こんもりとした空間に、5分に1回飛んでくるんですよ。あの場所が好きなんだな。アカメガシワの花が好きなのではなくてね。 キクリン 自分はクワガタしかわからないですけど、虫が飛ぶ場所には絶対何か理由があると思っているんです。 養老 よくフェロモンというでしょう? (アンリ・)ファーブル(昆虫学者)が計算していますけどね。虫がフェロモンを四方八方に立体的に拡散すると、ものすごく薄くなる。そんなものを感じるわけがないだろうと。感じるとしても匂いの元がどこかわからないから、反対の方に行ってしまうかもしれない。そうじゃなくて、たぶん筋状に流れていると思うんですよ。 キクリン 垂れ流しになっているような感じですね。 養老 そうです。その筋にぶつかると反応して、また次の筋に飛んでいく。筋状に出ていれば、ひっかかる頻度が上がるように飛んでいけるわけです。出すのに効果的な環境も知っている。そこら中に飛んでいってしまうところでは意味がないから。 キクリン それですね。 養老 そういう微小な環境は、枝を1本切っただけでも壊れるでしょ。風の流れが変わってくる。虫サイズで考えると、ものすごく環境って微妙なんですよ。 キクリン 林道を1本切り拓いただけでも......。 養老 虫にしてみたら大きな変化です。まさに蝶道がそうですね、決まった道を通るでしょ。あれは日高敏隆さん(動物行動学者)が戦後に一生懸命に苦労して調べたもので、日向と日陰のちょうど間を飛ぶんです。蝶も日向ばかり飛んでいたら体が暑くなってしまうから、すぐ日陰に入れるようにその間を飛んでる。ライトをつけていると虫が集まるからといって、それで光源を広げるために白い布を張るというのも、違うと思っていて。光に集まるんだったら、昼間は全部太陽に向かって飛んでいくはずでしょ。そうならないからやっぱり、光と陰の間を飛ぶんだよね。  キクリン 昔から虫が光に集まる理由というのが解明されない謎だと言われていますね。 養老 僕が昔読んだ説明では、光源に対して常に一定の角度で飛んでいると。右の目に光が入ったら左の筋肉が動くように。でもたぶん灯りがあると、当然暗いところもあるわけで、その境目に対して垂直に飛んでくるんだと思うんです。 キクリン 太古の夜は月の明かりしかなく、その光は地球に対してほとんど垂直なんですよね。 養老 無限遠ですから。  キクリン だから、どう飛んでも同じ角度になる。 養老 月を頼りにしていたのが、現代ではやたら“月”だらけになっちゃった(笑)』、「虫がフェロモンを四方八方に立体的に拡散すると、ものすごく薄くなる。そんなものを感じるわけがないだろうと。感じるとしても匂いの元がどこかわからないから、反対の方に行ってしまうかもしれない。そうじゃなくて、たぶん筋状に流れていると思うんですよ。 キクリン 垂れ流しになっているような感じですね。 養老 そうです。その筋にぶつかると反応して、また次の筋に飛んでいく。筋状に出ていれば、ひっかかる頻度が上がるように飛んでいけるわけです。出すのに効果的な環境も知っている。そこら中に飛んでいってしまうところでは意味がないから。 キクリン それですね。 養老 そういう微小な環境は、枝を1本切っただけでも壊れるでしょ。風の流れが変わってくる。虫サイズで考えると、ものすごく環境って微妙なんですよ・・・光源に対して常に一定の角度で飛んでいると。右の目に光が入ったら左の筋肉が動くように。でもたぶん灯りがあると、当然暗いところもあるわけで、その境目に対して垂直に飛んでくるんだと思うんです。 キクリン 太古の夜は月の明かりしかなく、その光は地球に対してほとんど垂直なんですよね。 養老 無限遠ですから。  キクリン だから、どう飛んでも同じ角度になる。 養老 月を頼りにしていたのが、現代ではやたら“月”だらけになっちゃった(笑)」、なるほど。

次に、8月21日付け文春オンラインが掲載した解剖学者の養老孟司氏とクワガタ・ハンター菊池愛騎 氏の熱血対談「「子どもの虫離れ」が進む一方、虫好きな女性は増えている? 日本人が“虫に親しみを感じる”理由とは」を紹介しよう。
・・・・環境要求性の高い虫  菊池愛騎(以下、キクリン) オオクワガタの成虫は、棲家をとても選びます。しかし、オスとメスが潜める樹液の出ているウロやめくれは、一つの山で数カ所しかない。入れなかった成虫たちは、他のクワガタみたいに土に潜ることは基本的にしないので、外敵に食べられたりします。 養老孟司(以下、養老) 環境要求性が高い。それは、いろんな虫でよく感じます。ちょっとでも変わったら嫌だって、何か直感的に知っている。僕らは、この虫ならこの木にいるはずだって考えるんだけど、1種類の木に限っても、いない木にはいない。 キクリン まさにオオクワガタがそうです。複数の条件が全部重なった木には基本的には絶対いると思うんですけど、条件が少しでも外れると、もういない。 養老 必ずいるのは“御神木”です。 キクリン そうです。御神木は一つの山に1本ぐらいしかない。それを探すのはすごく大変なんですけど、その木さえ見つけてしまえば、行ったら絶対ついている感じです。  養老 僕は御神木を探すのが苦手。だから、どこにでもいる虫を探している。でも、中には御神木を探すのが、非常に得意な人がいてね。生物の生存本能みたいなものを内に残していて、風向きとか湿気とか匂いとか、いろんなものを総合して判断してるんだと思う。 僕はそれが鈍いんですけど、乾季のタイで虫採りをしたときに、ここには虫がいるって感じたことはある。乾季に虫が採れるところといったら、枯れたバナナの葉っぱなんですよ。湿度を含んで中に菌が入ってる。キノコが生えて、大きな虫が入っていたり。なんでこんなにいるんだってくらいに、いろんな虫が入ってます』、「僕らは、この虫ならこの木にいるはずだって考えるんだけど、1種類の木に限っても、いない木にはいない。 キクリン まさにオオクワガタがそうです。複数の条件が全部重なった木には基本的には絶対いると思うんですけど、条件が少しでも外れると、もういない。 養老 必ずいるのは“御神木”です。 キクリン そうです。御神木は一つの山に1本ぐらいしかない。それを探すのはすごく大変なんですけど、その木さえ見つけてしまえば、行ったら絶対ついている感じです・・・乾季のタイで虫採りをしたときに、ここには虫がいるって感じたことはある。乾季に虫が採れるところといったら、枯れたバナナの葉っぱなんですよ。湿度を含んで中に菌が入ってる。キノコが生えて、大きな虫が入っていたり。なんでこんなにいるんだってくらいに、いろんな虫が入ってます」、なるほど。
・『採集圧で虫は減るのか   キクリン 人間が虫を採ることで一つの種が非常に減少したり、絶滅したりすることはあるでしょうか? 養老 ありえない。砂漠のオアシスのように、非常に限られた場所なら確かに採集圧がかかると思いますが、やっぱり環境破壊が一番大きい。  キクリン オオクワガタは知名度が高い種類というか、数が少ないことも広く認知されているので、人間が採るから減るんだ、みたいなことを言われたりします。 養老 採った分だけは確かに減りますね。 キクリン でも、自分が山に入って見ている限りは、回復するんです。例えば決まった木にオスは1頭しか入れない。メスは産卵に行くから入れ替わる。そこでオスを採ったら、違うオスが入るんですよ。もし最初のオスを採らなかったら、次のオスは入れなくて捕食されると思うのですが。 養老 どのくらい産卵するんですか? キクリン オオクワガタは産み分けをしています。1回産卵してから一度樹液に帰ってきて、また産卵に行って、というふうにしています。飼育下では1回に30個は産んでいたりします。 養老 30のうち1匹残ればいいわけですよね。だから残りの29匹は採っていいんですよ。 キクリン 本当にそのくらいの感じがします。採ろうと思っても、全く採りきれないというのが実感ですね。通常では、採集圧で虫は減らないと自分は思っています』、「採ろうと思っても、全く採りきれないというのが実感ですね。通常では、採集圧で虫は減らないと自分は思っています」、なるほど。
・『虫に親しむ土壌  キクリン 日本には虫に親しむ土壌があるように思うのですが。 養老 去年、イギリス人の女性が調べに来ていた。カルチャー・エントモロジストって言ってたな。つまり、文化人類学っていうのがあるように、文化昆虫学ということでしょう。やっぱり身近にたくさんの虫がいて、親しいからじゃないですか。僕はオーストラリアにいた時期があるけど、あそこは虫が身近にいませんからね。採っていると、とんでもないものが見つかることもあるけど、普通にいる種類は日本と全然違うんです。クワガタは変なのばっかりですよ。 キクリン 最近では日本でも子どもたちの虫離れがすごく言われるんですけど、小さいときに虫と触れ合うことが育んでくれるものって何でしょうか?  養老 言ってみれば虫は自然の象徴ですからね。触れ合うことで、背景に大自然があるっていうことにだんだん気がつく。やっぱり親しむ方がいいんじゃないですかね。だいたい小学校以降がダメなんですよ。僕、保育園の理事長を30年やってたけど、保育園の子どもは虫を好き嫌いしません。なんでも平気で捕まえるから、危なっかしいくらいです。  キクリン 子どものときってそうです。危険かどうかを、自分の目を通して学ぶんですよね。 養老 そうなんです。オーストラリアにいたときに、ドイツ人の医者の夫婦がいたんだけど、子連れで家に呼んだら、2歳の子どもが床這いしてなんでも口に入れる。向こうの家は靴で入るでしょ。「汚いよ」って言ったら、「大丈夫、食べられないものは吐き出すから」と。そういう育て方してました。虫に馴染めない子は、大抵はお母さんが嫌いなんじゃないですか。) キクリン うちは子どもが4人いるんですけど妻が虫嫌いなので、長男は最初から母親の反応を見て虫が怖いという概念をもっちゃったんです。でも次男は自分と一緒に遊んできて、そうすると毛虫でもなんでも触れる。それはダメだってやつも関係なくつかんじゃう。本当に親を見てるんだなあって思います。先生の奥さんはどうなんですか?  養老 無関心。ただうちの奥さんは目がいいんでね、一緒に行くとよく見つけます。最近は虫好きな女性も多いですけどね。 キクリン 結構ジャンルが固定されている気がします。 養老 毛虫、芋虫だね。 キクリン 男の方が虫が好きだって自己表現してるだけなのかもしれないですね。女性でも虫が好きな人はいっぱいいます。山に行っていると、自然が好きで登ってくる女性の方がたくさんいるんですよ。たぶん、そういう人は生き物が好きだから、虫好きな人も結構いると思います』、「キクリン 男の方が虫が好きだって自己表現してるだけなのかもしれないですね。女性でも虫が好きな人はいっぱいいます。山に行っていると、自然が好きで登ってくる女性の方がたくさんいるんですよ。たぶん、そういう人は生き物が好きだから、虫好きな人も結構いると思います」、なるほど。
・『とにかく虫のことを知りたい   キクリン 先ほど土壌の歴史の話をうかがいましたけども、氷河期に生き残った虫は、どんなものが多かったのでしょうか? また、それが現在に繋がっている部分としては? 養老 ラオスあたりに行くと面白いんですよ。あそこは今では熱帯と亜熱帯でしょ。だけど氷河期の頃の虫が生き残っているんです。そういう寒い系統の虫が採れるのは日本に似ているなと思う。普通は暑いと、そういう虫は標高の高いところにしかいられない。日本はそうでしょ。西日本は高い山がないので、寒い系統のやつはみんないなくなった。 ただ変なのは紀伊半島で、それが逆転する、(低地に寒い系統の)虫がいる。なぜかというと紀伊半島は渓流と谷が深い。崖面は鹿が食わないし、そういうところに生えている植物についてる蝶なんかは、むしろ渓流の下の方に残ってるんですね。そこは、言ってみれば寒いところだから。  キクリン 紀伊半島にはそういう場所があるわけですね。 養老 そういうことを調べて本を書いた人がいますよ。高校の先生だったかな? はじめは学会であまり信用してもらえなくて。紀伊半島にそんなものがいるか、ってね。 キクリン 高校の先生が書いたっていう話ですけど日本の昆虫学って基本的にアマチュアの方が進化させてきたことだと思うんですけど。 養老 だいたいその「学」っていうのは、人間が勝手に決めてる。「お前のやってるのは学じゃねえ」って言われます。僕は学会っていうのを「業界」って呼んでいるんですよ。何らかの意味で商売つながりでしょ。  キクリン なるほど、そういう話になっちゃうわけですね。 養老 僕らがやっているのは、商売じゃないもん。 キクリン だから楽しいっていうのがありますよね。商売にはできそうもない。自分の好きなことですから。  養老 面白いからやってる。それが十分な見返りですよ。 キクリン 一緒です。あと自分は知りたいっていうことだけですね。どうなっているのかを知りたい、どこにいるのかを知りたい、この時間は何やってるんだろうとか。とにかく自分がフォーカスしている虫のことを知りたいっていう一心ですね。それを見つけたときはやっぱり嬉しい』、「養老 面白いからやってる。それが十分な見返りですよ。 キクリン 一緒です。あと自分は知りたいっていうことだけですね。どうなっているのかを知りたい、どこにいるのかを知りたい、この時間は何やってるんだろうとか。とにかく自分がフォーカスしている虫のことを知りたいっていう一心ですね。それを見つけたときはやっぱり嬉しい」、なるほど。

第三に、8月21日付け文春オンラインが掲載した解剖学者の養老孟司氏とクワガタ・ハンターの菊池愛騎氏による熱血対談「「人間って相当にアホだと思いません?」「地面をガチンガチンに固めてしまって…」解剖学者・養老孟司が“環境問題”に思うこと」を紹介しよう。
・・・・人間って相当にアホだと思いません?  菊池愛騎(以下、キクリン) (ナラ枯れの原因と言われる)カシノナガキクイムシについて聞きたかったんです。あれは行政的にも増殖を止めようとしてますけど。 養老孟司(以下、養老) 放っておけばいい。うちの木にも入ってますよ。でも枯れてない。必ずしも枯れてしまうわけではない。 キクリン なぜ、対策を頑張ってやってるのかがわからないんですけど......。 養老 そういう仕事があるからですよ。 キクリン なるほど。自分の家の周りも何年か前から結構入ってきていて、ナラ枯れが進行しています。でもやっている対策がとんちんかんというか、結局全く止まらずに進行している。でも、それが起きたからナラがなくなるわけじゃないと思うんです。いずれまた回復してくる。カシノナガがそこまで何か大きな影響を与えてるのかと疑問に感じているんですけども。 養老 マツ枯れのときと同じで、全然教訓になってない。子どもの頃に鎌倉のマツ並木が、全部なくなりましたからね。だから僕が知ってる虫って言ったら、マツの枯れ木につくやつばかりだよ。クロカミキリとか。 キクリン なんで爆発的にマツクイムシが増えたのでしょうか? 養老 やはり根の手入れをしなくなったからでしょう。昔は草があって、落ち葉を拾って焚き火もしていた。それが戦争中くらいから人手が足りなくなって、放置状態になっため腐葉土化した。マツにしては豊かすぎる土壌になっちゃったんですよ。そうすると湿気が高くなり、カビが出てくる。要するに菌類のバランスが変わってしまう。 キクリン 崩れるわけですか? じゃあマツ並木というのは、古くから人間の手入れが入って保たれていたと?  養老 そうなんです。例えば今、桜島の一番低い一帯がマツクイムシにかかってます。あんなところ本来は栄養なんてありそうもないでしょ? 火山が作ったできたばっかりの土地だから。 キクリン 根元の栄養からマツクイムシの被害が来るというのは......。) 養老 マツは弱いんですよ。木は葉っぱを払って、逆さまにした形で考えるんです。そうすると根っこの張り方、枝の張り方がわかる。それで言ったら、東京なんか地面をガチンガチンに固めてしまって......。  キクリン よく木が頑張ってますよね。 養老 人間って相当にアホだと思いません? 僕はよく言うんですけど、考えてなんとかなるという発想には限度がきてますよ。考えてなんとかならないことが全部問題として残っている。それを環境問題って言ってるんです。何が解決に繋がるのかわからないから、僕はいつも「しょうがない、なるようになる」って言ってますよ。なるようになるというのは、社会で生きていく上では必要な自然な感覚です。でも都会の感覚ではないんですよ。都会で「なるようになる」なんて言ったら、たちまち押しつぶされる。 キクリン 都会ではダメですか?  養老 社会の原理が違いますからね。そんなこと言ってたら、食っていけなくなるのが都会ですから。田舎は逆でしょ。耕せば収穫が得られる、そんなの嘘です。そもそもジャガイモの原種ってどうやって生きてたんですかね? 南米で、勝手に生えてたんでしょ。 『木村さんのリンゴ』(小原田泰久/Gakken)っていう本を読むとよくわかります。木村さんのリンゴ園は隣と接してるんですよ。ある日ね、隣のおじさんが来て、「木村さんが草ぼうぼうにしてるから、虫が寄ってくる」と言う。木村さんが「わかりました、あとでもう1回来てください」と。夕方になって隣のおじさんが来たら、木村さんがリンゴ園の境に立って見ている。すると、木村さんの果樹園の方から向こうに行くんじゃなくて、隣のおじさんの方から、虫がみんな飛んでくる。こっちの方がいいんだもん。草が生えてるから』、「なんで爆発的にマツクイムシが増えたのでしょうか? 養老 やはり根の手入れをしなくなったからでしょう。昔は草があって、落ち葉を拾って焚き火もしていた。それが戦争中くらいから人手が足りなくなって、放置状態になっため腐葉土化した。マツにしては豊かすぎる土壌になっちゃったんですよ。そうすると湿気が高くなり、カビが出てくる。要するに菌類のバランスが変わってしまう。 キクリン 崩れるわけですか? じゃあマツ並木というのは、古くから人間の手入れが入って保たれていたと?  養老 そうなんです。例えば今、桜島の一番低い一帯がマツクイムシにかかってます。あんなところ本来は栄養なんてありそうもないでしょ? 火山が作ったできたばっかりの土地だから。 キクリン 根元の栄養からマツクイムシの被害が来るというのは......」、なるほど。
・『今も分布を広げているのか?   キクリン 日本は氷河期が終わって、そこから暖かくなってきて最初は草原が広がり、木が生えてくる時代になる。虫が多くなり、各地に分布していくのはそのあたりからなんでしょうか? 養老 日本列島ができあがった頃のことを、頭に入れておくのが一番いいと思います。僕の頭の中では氷河期なんてついこの間のことです。日本列島成立直後を地質学者が書いた地図がありましてね、これが参考になる。いわゆる虫の多いところというのは、基本的にその頃に陸地だったところです。関東なら日光や秩父で、虫で有名なところばっかりですよ。 ゾウムシのことで調べていて気になったのが、四国の東と西。おそらくこの時期に、少なくともその前後には切れていたんだと思うんです。東で採るのと西で採るのとでは違うので。オオクワガタではどうですか? キクリン 四国の中での東と西ということですね。香川県側はよくいるんですけど、愛媛県側はなかなか採れないんで。でも、もともといたのは間違いないでしょう。分布のルート的にたぶん、対馬経由で大陸から来ている感じがします。 養老 後からできた陸地はそれまでは海だったわけで、虫は少ない。由緒正しい虫がいない。おそらくそういうところに、古くから陸だった場所にいた虫がこぼれていった。関東だと秩父と日光から広がっていったのでしょう。) キクリン オオクワガタ自体が、日本ではすごく新しい虫と言われています。縄文時代、6000年前とか7000年前とかに入ってきて、分布を広げ始めた可能性がある。 養老 日本で氷河期終わったのが1万2000年前。  キクリン そこから2000年後ぐらいに、木ができ始めたんだと思うんですよね。ブナとかミズナラなどが。 養老 東北のブナ林なんて、氷河期以降の産物です。 キクリン 森林が熟成してきて、どこかから入ってきたオオクワガタが分布していくんですけど、東北は標高が高い山間部に、西は標高が低いところにいる。西日本のブナ林にはオオクワガタはいないんですよ。東はブナ帯がメインになっているので、血統が違うんじゃないかなと思っています。もしかしたら入ってきた時期も違う。 養老 ニホンザルも、西と東が違うんだって説がありますよね。だからルーツが違うんじゃないかな。 キクリン オオクワガタは分布を広げないなんて言われていたりするんですけど、もとは分布を広げてきた。開発によって途中で絶えた場所もあり、現在では点在的にはなっているんですけど、環境が残された場所では、現在進行形で分布を広げているんじゃないかとも考えています。実際に分布を追っていった先で採れたりするので、やっぱりここまで来ているんだなって、思うことがあります』、「日本列島成立直後を地質学者が書いた地図がありましてね、これが参考になる。いわゆる虫の多いところというのは、基本的にその頃に陸地だったところです。関東なら日光や秩父で、虫で有名なところばっかりですよ・・・日本で氷河期終わったのが1万2000年前。  キクリン そこから2000年後ぐらいに、木ができ始めたんだと思うんですよね。ブナとかミズナラなどが。 養老 東北のブナ林なんて、氷河期以降の産物です・・・キクリン 森林が熟成してきて、どこかから入ってきたオオクワガタが分布していくんですけど、東北は標高が高い山間部に、西は標高が低いところにいる。西日本のブナ林にはオオクワガタはいないんですよ。東はブナ帯がメインになっているので、血統が違うんじゃないかなと思っています。もしかしたら入ってきた時期も違う」、このように歴史的に眺めてみるのも有用だ。 
タグ:生命科学 (その4)(養老孟司×菊池愛騎 熱血対談3題:「光に集まるなら 昼間は全部太陽に向かうはずでしょ」昔から解明されないナゾ…夜の灯りに虫が集まるのはなぜ?、「子どもの虫離れ」が進む一方 虫好きな女性は増えている? 日本人が“虫に親しみを感じる”理由とは、「人間って相当にアホだと思いません?」「地面をガチンガチンに固めてしまって…」解剖学者・養老孟司が“環境問題”に思うこと) 文春オンライン 養老孟司氏 菊池愛騎氏による熱血対談「「光に集まるなら、昼間は全部太陽に向かうはずでしょ」昔から解明されないナゾ…夜の灯りに虫が集まるのはなぜ?」 『オオクワガタに人生を懸けた男たち』(野澤亘伸著・双葉社刊) 「『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』(NHK出版)。これはアメリカの農家の話です。化学肥料をやらない、除草剤をまかない、殺虫剤をまかない。いわゆる有機農業ですね。プラス、耕さない。ジャガイモを作るなら、自分の畑に種イモを置いて。上に枯れ草をかけて終わり。普通は掘るでしょ。 そうすると菌が網の目のように土に構造を作ってるのを壊してしまう。ほとんど目に見えないから、そういう構造に注意してこなかった。それからもう一つは人間の癖でね、やっぱり、種イモを置いただけでジャガイモ ができたっていうと気に入らないんじゃないですか。額に汗してその成果が得られたっていう気持ちをもちたいから。でも、自然に関してはほっとけばいいんです」、「有機農業」のメリットの一部を理解できた。 「日本の山林の割合は北欧に匹敵している。北欧は木を切れないんですよ。下が永久凍土で、森を切ると湖に変わっちゃうから。でも、日本の場合は切りまくっているのに残っているんだよね。  キクリン なぜでしょう? 養老 やっぱり東南アジアモンスーン地帯というのがあるでしょう。しかも温帯でしょ。熱帯はすぐに熱帯雨林になってしまうので、表土が薄いんです。でも日本は厚い・・・黒土がこれだけある国も少ないそうですね。  養老 一つは火山があるから。 長年の間に火山灰が積もる。もう一つは中国から黄砂が飛んでくる・・・ジャレド・ダイアモンド・・・が太平洋の島々を調べて、文明が続く島と続かない島があるという。島は資源が少ないから森を切り尽くしてしまって終わる。その中で島に森が残る条件をいろいろ挙げていますが、一つに火山が入っている。もう一つが黄砂です」、なるほど。 「虫がフェロモンを四方八方に立体的に拡散すると、ものすごく薄くなる。そんなものを感じるわけがないだろうと。感じるとしても匂いの元がどこかわからないから、反対の方に行ってしまうかもしれない。そうじゃなくて、たぶん筋状に流れていると思うんですよ。 キクリン 垂れ流しになっているような感じですね。 養老 そうです。その筋にぶつかると反応して、また次の筋に飛んでいく。筋状に出ていれば、ひっかかる頻度が上がるように飛んでいけるわけです。出すのに効果的な環境も知っている。そこ ら中に飛んでいってしまうところでは意味がないから。 キクリン それですね。 養老 そういう微小な環境は、枝を1本切っただけでも壊れるでしょ。風の流れが変わってくる。虫サイズで考えると、ものすごく環境って微妙なんですよ・・・光源に対して常に一定の角度で飛んでいると。右の目に光が入ったら左の筋肉が動くように。でもたぶん灯りがあると、当然暗いところもあるわけで、その境目に対して垂直に飛んでくるんだと思うんです。 キクリン 太古の夜は月の明かりしかなく、その光は地球に 対してほとんど垂直なんですよね。 養老 無限遠ですから。  キクリン だから、どう飛んでも同じ角度になる。 養老 月を頼りにしていたのが、現代ではやたら“月”だらけになっちゃった(笑)」、なるほど。 菊池愛騎 氏の熱血対談「「子どもの虫離れ」が進む一方、虫好きな女性は増えている? 日本人が“虫に親しみを感じる”理由とは」 「僕らは、この虫ならこの木にいるはずだって考えるんだけど、1種類の木に限っても、いない木にはいない。 キクリン まさにオオクワガタがそうです。複数の条件が全部重なった木には基本的には絶対いると思うんですけど、条件が少しでも外れると、もういない。 養老 必ずいるのは“御神木”です。 キクリン そうです。御神木は一つの山に1本ぐらいしかない。それを探すのはすごく大変なんですけど、その木さえ見つけてしまえば、行ったら絶対ついている感じです・・・ 乾季のタイで虫採りをしたときに、ここには虫がいるって感じたことはある。乾季に虫が採れるところといったら、枯れたバナナの葉っぱなんですよ。湿度を含んで中に菌が入ってる。キノコが生えて、大きな虫が入っていたり。なんでこんなにいるんだってくらいに、いろんな虫が入ってます」、なるほど。 「採ろうと思っても、全く採りきれないというのが実感ですね。通常では、採集圧で虫は減らないと自分は思っています」、なるほど。 「キクリン 男の方が虫が好きだって自己表現してるだけなのかもしれないですね。女性でも虫が好きな人はいっぱいいます。山に行っていると、自然が好きで登ってくる女性の方がたくさんいるんですよ。たぶん、そういう人は生き物が好きだから、虫好きな人も結構いると思います」、なるほど。 「養老 面白いからやってる。それが十分な見返りですよ。 キクリン 一緒です。あと自分は知りたいっていうことだけですね。どうなっているのかを知りたい、どこにいるのかを知りたい、この時間は何やってるんだろうとか。とにかく自分がフォーカスしている虫のことを知りたいっていう一心ですね。それを見つけたときはやっぱり嬉しい」、なるほど。 菊池愛騎氏による熱血対談「「人間って相当にアホだと思いません?」「地面をガチンガチンに固めてしまって…」解剖学者・養老孟司が“環境問題”に思うこと」 「なんで爆発的にマツクイムシが増えたのでしょうか? 養老 やはり根の手入れをしなくなったからでしょう。昔は草があって、落ち葉を拾って焚き火もしていた。それが戦争中くらいから人手が足りなくなって、放置状態になっため腐葉土化した。マツにしては豊かすぎる土壌になっちゃったんですよ。そうすると湿気が高くなり、カビが出てくる。要するに菌類のバランスが変わってしまう。 キクリン 崩れるわけですか? じゃあマツ並木というのは、古くから人間の手入れが入って保たれていたと?  養老 そうなんです。例えば今、桜島の一番低い一帯がマツクイムシにかかってます。あんなところ本来は栄養なんてありそうもないでしょ? 火山が作ったできたばっかりの土地だから。 キクリン 根元の栄養からマツクイムシの被害が来るというのは......」、なるほど。 「日本列島成立直後を地質学者が書いた地図がありましてね、これが参考になる。いわゆる虫の多いところというのは、基本的にその頃に陸地だったところです。関東なら日光や秩父で、虫で有名なところばっかりですよ・・・日本で氷河期終わったのが1万2000年前。  キクリン そこから2000年後ぐらいに、木ができ始めたんだと思うんですよね。ブナとかミズナラなどが。 養老 東北のブナ林なんて、氷河期以降の産物です・・・
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宇宙(その3)(インフレーション宇宙論:3題:「ビッグバン」の前に何が起きていたのか教えよう…「宇宙の起源」のナゾを解く新理論の「スゴすぎる中身」、おかしい 「ビッグバン」の大爆発から始まったにしてはあまりにも…素朴な問いから生まれた「宇宙最大の難問」、宇宙誕生直後に分かれた「4つの力」が統一できるとしたら…アインシュタインも夢見た「究極の理論」が実現する日) [科学技術]

宇宙については、本年9月11日に取上げた。今日は、(その3)(インフレーション宇宙論:3題:「ビッグバン」の前に何が起きていたのか教えよう…「宇宙の起源」のナゾを解く新理論の「スゴすぎる中身」、おかしい 「ビッグバン」の大爆発から始まったにしてはあまりにも…素朴な問いから生まれた「宇宙最大の難問」、宇宙誕生直後に分かれた「4つの力」が統一できるとしたら…アインシュタインも夢見た「究極の理論」が実現する日)である。

先ずは、本年11月12日付け現代ビジネスが掲載したインフレーション宇宙論の提唱者である東大名誉教授の佐藤勝彦氏による「「ビッグバン」の前に何が起きていたのか教えよう…「宇宙の起源」のナゾを解く新理論の「スゴすぎる中身」」を「紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/139997
・『宇宙はどのように始まったのか―― これまで多くの物理学者たちが挑んできた難問だ。火の玉から始まったとするビッグバン理論が有名だが、未だよくわかっていない点も多い。 そこで提唱されたのが「インフレーション理論」である。本連載では、インフレーション理論の世界的権威が、そのエッセンスをわかりやすく解説。宇宙創生の秘密に迫る、物理学の叡智をご紹介する。 *本記事は、佐藤勝彦著『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです』、興味深そうだ。
・『宇宙のはじまり  ――私たちの住んでいるこの宇宙には、「はじまり」があったのだろうか? もし「はじまり」があったのなら、それはどのようなものだったのか?―― これらは、人類の歴史が始まった頃から問われつづけている疑問です。かつては、これらの疑問に答えられるのは宗教や哲学しかないと考えられていました。あまりにも雲をつかむような話なので、科学では太刀打ちできないとされていたのです。 しかし、いま、「科学の言葉」でこれらの疑問に答えることができる時代になってきています。宇宙の誕生や進化・構造について研究する学問分野である「宇宙論」が、この100年ほどの間に驚くほどの進歩を遂げたからです。 たかだか百数十年前、人間にとって宇宙とは、私たちが住む天の川銀河がすべてでした。人間が観測できる宇宙が、そこまでだったのです。しかし今世紀のはじめ、観測技術の爆発的進歩により、宇宙は少なくとも400億光年の大きさまで広がっていて、そこには無数の銀河が存在し、天の川銀河はその一つにすぎないことを私たちは知っています。そして、この宇宙はビッグバンと呼ばれる「火の玉」から始まったことまで、私たちは知ることができました。 ただ、このような宇宙についての知の広がりに貢献したのは、観測だけではありません。むしろ観測より先に、「宇宙はこうなっているのではないか」と予想する理論があり、それが観測によって証明されることで、宇宙論は発展してきました。 20世紀初頭にアインシュタインによってつくられた、時間や空間を考える相対性理論、また、同じくこの時期にボーア、ハイゼンベルグ、シュレディンガーらによりつくられた、ミクロの世界を記述する量子論。これらは現代の物理学を支える2本の柱ですが、宇宙論もまた、この2つの理論が確立されたことで、飛躍的な進歩を遂げたのです。 とりつくしまもないような宇宙のさまざまなナゾが、物理学の理論によって解き明かせるようになったことを、私も物理学者の一人として大いに誇りに思っています。 いまや有名になったビッグバン理論も相対性理論と量子論をもとに築かれたものですが、137億年も前の宇宙誕生のシナリオが理論によって予言され、それがのちに観測事実によって証明されるというのは本当に驚くべきことで、すばらしいことだと思います。 しかし、やがて研究が進むにつれ、ビッグバン理論だけでは宇宙創生について十分に説明しきれないことがわかってきました。たとえばビッグバン理論では、宇宙がなぜ「火の玉」から始まったかについては、答えることができません。また、ビッグバン理論を推し進めていくと、宇宙の究極のはじまりは「特異点」という、物理学の法則がまったく破綻した点であったと考えざるをえなくなります。いわば宇宙には物理学が及ばない「神の領域」があることを認めざるをえないわけで、これは物理学に携わる者として容易にはうけいれがたいことです』、「むしろ観測より先に、「宇宙はこうなっているのではないか」と予想する理論があり、それが観測によって証明されることで、宇宙論は発展してきました。 20世紀初頭にアインシュタインによってつくられた、時間や空間を考える相対性理論、また、同じくこの時期にボーア、ハイゼンベルグ、シュレディンガーらによりつくられた、ミクロの世界を記述する量子論。これらは現代の物理学を支える2本の柱ですが、宇宙論もまた、この2つの理論が確立されたことで、飛躍的な進歩を遂げたのです・・・ビッグバン理論だけでは宇宙創生について十分に説明しきれないことがわかってきました。たとえばビッグバン理論では、宇宙がなぜ「火の玉」から始まったかについては、答えることができません。また、ビッグバン理論を推し進めていくと、宇宙の究極のはじまりは「特異点」という、物理学の法則がまったく破綻した点であったと考えざるをえなくなります。いわば宇宙には物理学が及ばない「神の領域」があることを認めざるをえないわけで、これは物理学に携わる者として容易にはうけいれがたいことです」、なるほど。
・『「インフレーション理論」の衝撃的な登場  私やグースらが提唱したインフレーション理論とは、ごく大づかみに言えば、物理学の言葉で宇宙創生を記述しようという理論です。最初は突拍子もない説という見方もありましたが、いまではインフレーション理論は宇宙創生の標準理論として認知されるまでになりました。 さらにインフレーション理論によって、宇宙創生のみならず、宇宙はこれからどうなるのか、そして宇宙とはどのような姿をしているのかについても予言できるようになりました。10の100乗年後という途方もない未来や、宇宙は私たちの宇宙のほかにも無数にあるというマルチバースの考え方など、想像を絶するような宇宙像が新たに提示されてきているのです。 『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』は、そうしたインフレーション理論とはどのようなものか、宇宙論の初心者である読者にも「およそこういうことなのだな」と輪郭をつかんでいただくことをめざして書かれたものです。 なにしろ物理学の最先端の話ですから、どうしても難しい言葉や概念は避けて通れません。しかし、可能なかぎり厳密さよりもわかりやすさを優先し、言及しなくとも大筋の理解には支障がなさそうな事柄は、思いきって説明を省きました。そのため、少し宇宙論にくわしい方には物足りない点もあるかもしれませんが、木にとらわれずに大きな森の姿を広く一般の方に知っていただきたいという思いからとご理解ください。 近年では宇宙は、ダークマターやダークエネルギーなどの新たな難問をわれわれ物理学者に投げかけてきています。これらは宇宙についての理論や観測が進歩したからこそ発見された問題です。新しいことを知れば、新たな問題に突き当たり、それを解決することでまた新たな発見がある。物理学はこうして進歩してきたのであり、これらの難問もいずれは解決され、その過程でまた新たな知の扉がひとつ開かれることでしょう。 大切なのは、なにごとにおいてもどうしたら科学の言葉で説明できるだろうかと考えぬく態度ではないかと思います。この本を通して読者のみなさんにも、そうした物理学者の精神を感じとっていただければ幸いです。 さらに「インフレーション宇宙論」シリーズの連載記事では、宇宙物理学の最前線を紹介していく。 【続き<おかしい、「ビッグバン」の大爆発から始まったにしてはあまりにも…素朴な問いから生まれた「宇宙最大の難問」>を読む】』、「インフレーション理論とは、ごく大づかみに言えば、物理学の言葉で宇宙創生を記述しようという理論です。最初は突拍子もない説という見方もありましたが、いまではインフレーション理論は宇宙創生の標準理論として認知されるまでになりました。 さらにインフレーション理論によって、宇宙創生のみならず、宇宙はこれからどうなるのか、そして宇宙とはどのような姿をしているのかについても予言できるようになりました。10の100乗年後という途方もない未来や、宇宙は私たちの宇宙のほかにも無数にあるというマルチバースの考え方など、想像を絶するような宇宙像が新たに提示されてきているのです・・・大切なのは、なにごとにおいてもどうしたら科学の言葉で説明できるだろうかと考えぬく態度ではないかと思います」、なるほど。
・『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか  本書の詳しい内容はこちら 多くの人に知ってほしい「宇宙のはじまり」の話 提唱者が思いきりやさしく書いた1番わかりやすいインフレーション理論入門 ――宇宙の誕生から終焉まで そしてマルチバースを予言―― 宇宙は火の玉から始まったとするビッグバン理論では、特異点すなわち「神の一撃」を認めざるをえない。物理学の言葉だけで宇宙創生を記述したい、という著者の願いがインフレーション理論を生み、現在では宇宙創生の標準理論として認知された。その内容を万人が理解できるよう書かれた、最も平明なインフレーション理論の入門書! 《目次》 第1章 インフレーション理論以前の宇宙像 第2章 インフレーション理論の誕生 第3章 観測が示したインフレーションの証拠と新たな謎 第4章 インフレーションが予測する宇宙の未来 第5章 インフレーションが予言するマルチバース 第6章 「人間原理」という考え方』、「インフレーション理論入門 ――宇宙の誕生から終焉まで そしてマルチバースを予言―― 宇宙は火の玉から始まったとするビッグバン理論では、特異点すなわち「神の一撃」を認めざるをえない。物理学の言葉だけで宇宙創生を記述したい、という著者の願いがインフレーション理論を生み、現在では宇宙創生の標準理論として認知された。その内容を万人が理解できるよう書かれた、最も平明なインフレーション理論の入門書! 、なるほど、

次に、11月12日付け現代ビジネスが掲載した佐藤勝彦氏による「おかしい、「ビッグバン」の大爆発から始まったにしてはあまりにも…素朴な問いから生まれた「宇宙最大の難問」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/139999
・『・・・『ビッグバン理論が解けない難問  ――なぜなのかはわからないけれども、宇宙は火の玉として生まれた。そして、膨張していくなかで次第に温度が下がり、ガスが固まって星が生まれ、銀河や銀河団が形成され、現在のような多様で美しい宇宙がつくられた―― これが、ビッグバン理論の概要です。ビッグバン理論は、現実の観測によって傍証が示されました。そのことは確かなのですが、実はこの理論には、原理的に困難な問題がいくつかあるのです。本記事ではまず、そのことを見ていきます。 まず一つには、宇宙が「特異点」から始まったと考えざるをえないことです。特異点とは、物理学の法則が破綻する「密度が無限大」「温度が無限大」の点のことです。宇宙が膨張しているということは、その時間を逆にたどっていくと、宇宙はどんどん小さくなって、エネルギー密度はどんどん高くなっていきます。そして宇宙のはじまりが点であったならば、ついにエネルギー密度は無限大になってしまうのです。 つまり、宇宙のはじまりは物理学が破綻した点だったと考えざるをえないのです。キリスト教世界では「神の一撃」といわれますが、そういう物理学を超越した概念を持ってこなければ、宇宙が始まらないということです。思い上がりだと言われるかもしれませんが、物理学者は神の力を借りずに物理法則だけで宇宙の創造を語りたいと考えるものです。しかし、ビッグバン理論だけでは、それはできないのです。 二つめは、ビッグバン理論は、宇宙はなぜ火の玉になったのかについては、何も答えていないことです。初期の宇宙が火の玉になる理由は何も説明していないのです。これでは、宇宙のはじまりについて説明していることにはならないともいえます。 また、ビッグバン理論では現在の宇宙構造の起源を説明できないという問題もあります。宇宙の大きさが非常に小さかったときに、その中に「密度ゆらぎ」といわれる小さな濃淡のムラがあったことで、のちに濃度の濃いところを中心にガスが固まり、星や銀河、銀河団といった構造ができたと考えられています。しかし、ビッグバン理論では非常に小さな「ゆらぎ」しかつくれず、宇宙の初期に、銀河や銀河団のタネになるような濃淡をつくることが理論的に難しいのです』、「ビッグバン理論は、現実の観測によって傍証が示されました。そのことは確かなのですが、実はこの理論には、原理的に困難な問題がいくつかあるのです。本記事ではまず、そのことを見ていきます。 まず一つには、宇宙が「特異点」から始まったと考えざるをえないことです。特異点とは、物理学の法則が破綻する「密度が無限大」「温度が無限大」の点のことです。宇宙が膨張しているということは、その時間を逆にたどっていくと、宇宙はどんどん小さくなって、エネルギー密度はどんどん高くなっていきます。そして宇宙のはじまりが点であったならば、ついにエネルギー密度は無限大になってしまうのです。 つまり、宇宙のはじまりは物理学が破綻した点だったと考えざるをえないのです。キリスト教世界では「神の一撃」といわれますが、そういう物理学を超越した概念を持ってこなければ、宇宙が始まらないということです・・・二つめは、ビッグバン理論は、宇宙はなぜ火の玉になったのかについては、何も答えていないことです。初期の宇宙が火の玉になる理由は何も説明していないのです。これでは、宇宙のはじまりについて説明していることにはならないともいえます。 また、ビッグバン理論では現在の宇宙構造の起源を説明できないという問題もあります。宇宙の大きさが非常に小さかったときに、その中に「密度ゆらぎ」といわれる小さな濃淡のムラがあったことで、のちに濃度の濃いところを中心にガスが固まり、星や銀河、銀河団といった構造ができたと考えられています。しかし、ビッグバン理論では非常に小さな「ゆらぎ」しかつくれず、宇宙の初期に、銀河や銀河団のタネになるような濃淡をつくることが理論的に難しいのです』、なるほど。
・『なぜ宇宙は「なめらか」に見えるのか  それから、「ゆらぎ」の問題と裏表の話になりますが、宇宙の構造は遠いところまですべて一様なのはなぜかという問題があります。たとえば私たちの住む銀河から100億光年離れたところにある銀河と、その銀河とは反対方向に100億光年離れたところにある銀河とは、宇宙のはじまりから現在まで一度も因果関係を持ったことはありません。因果関係を持たない領域どうしが、言い換えれば、これまでまったく関わりを持たず相談もできないような遠方の領域どうしが、同じような構造をしているのはなぜなのかという問題です。これを「一様性問題」といいますが、この問題に対して、ビッグバン理論は答えることができません。 さらに、宇宙は膨張を続けているわけですが、観測によるかぎり、われわれの宇宙はほとんど曲がっていません(曲率がゼロに近い)。ユークリッド幾何学が成り立つような平坦な宇宙です。しかし、平坦なまま大きく膨張させることは、数学的には非常に困難なのです。これはプリンストン大学のロバート・ディッケが指摘した問題で、「平坦性問題」といわれています。これにもビッグバン理論は答えることができません。 このことを簡単に説明しましょう。 最初に、神様が「宇宙」という名のロケットを打ち上げると考えてみます。このロケットは、曲率が正か負かによって飛翔(=膨張)のしかたが変わってきます。神様が宇宙を打ち上げる力が少しでも弱い(曲率が正)と、加速度が足りず、宇宙は十分に飛翔せずに重力で落下してつぶれてしまいます。宇宙は短命となるため、私たちのような生命は誕生できません。逆に神様の力が少しでも強すぎる(曲率が負)と、非常に速い飛翔をしてしまい、ガスは一様に希薄になってしまうので、ガスが固まって天体を構成することができません。もちろん、生命は存在できません(図2―1)。 (図2―1 平坦性問題 はリンク先参照) 私たちが宇宙に存在するためには、神様が打ち上げの速度をきわめて精密に調整して、打ち上げから140億年近くたった現在でも曲率がほぼゼロという平坦な宇宙になるように設定しなければなりません。ほんの少しでも力が強かったり、弱かったりすると、現在の私たちは存在できないのです。そのためには打ち上げの速度(=膨張速度)を、なんと100桁という精度で微調整しなければなりません。 しかも、物理学には量子的な「ゆらぎ」、いわゆる「量子ゆらぎ」というものがあってつねに微小な振動をしているため、このような精度を確保することはきわめて難しいのです。「神様の手」さえも量子的にゆらいでいるため、曲率がほぼゼロになるよう(宇宙が平坦になるよう)、膨張速度を微調整することは至難の業なのです。これが「平坦性問題」です。 これらが、ビッグバン理論の原理的な困難です(図2―2)。 (図2―2 ビッグバン理論の原理的困難 はリンク先参照) そして、こうした問題に物理学の言葉で答えるのが、1981年に私やアラン・グースらが提唱したインフレーション理論なのです。次回から、ご説明していきましょう。 さらに「インフレーション宇宙論」シリーズの連載記事では、宇宙物理学の最前線を紹介していく。 【続き<宇宙誕生直後に分かれた「4つの力」が統一できるとしたら…アインシュタインも夢見た「究極の理論」が実現する日>を読む】 〈インフレーション宇宙論〉各回記事はこちらから)』、「神様が「宇宙」という名のロケットを打ち上げると考えてみます。このロケットは、曲率が正か負かによって飛翔(=膨張)のしかたが変わってきます。神様が宇宙を打ち上げる力が少しでも弱い(曲率が正)と、加速度が足りず、宇宙は十分に飛翔せずに重力で落下してつぶれてしまいます。宇宙は短命となるため、私たちのような生命は誕生できません。逆に神様の力が少しでも強すぎる(曲率が負)と、非常に速い飛翔をしてしまい、ガスは一様に希薄になってしまうので、ガスが固まって天体を構成することができません。もちろん、生命は存在できません(図2―1)。 (図2―1 平坦性問題 はリンク先参照) 私たちが宇宙に存在するためには、神様が打ち上げの速度をきわめて精密に調整して、打ち上げから140億年近くたった現在でも曲率がほぼゼロという平坦な宇宙になるように設定しなければなりません。ほんの少しでも力が強かったり、弱かったりすると、現在の私たちは存在できないのです。そのためには打ち上げの速度(=膨張速度)を、なんと100桁という精度で微調整しなければなりません。 しかも、物理学には量子的な「ゆらぎ」、いわゆる「量子ゆらぎ」というものがあってつねに微小な振動をしているため、このような精度を確保することはきわめて難しいのです。「神様の手」さえも量子的にゆらいでいるため、曲率がほぼゼロになるよう(宇宙が平坦になるよう)、膨張速度を微調整することは至難の業なのです。これが「平坦性問題」です」、なるほど。

第三に、11月13日付け現代ビジネスが掲載した佐藤勝彦氏による「宇宙誕生直後に分かれた「4つの力」が統一できるとしたら…アインシュタインも夢見た「究極の理論」が実現する日」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/140000?imp=0
・・・・枝分かれした「四つの力」  ここからは、インフレーション理論がどのように生まれたのかを見ていきましょう。 私がこの理論を考えたきっかけには、素粒子についての理論である「力の統一理論」がありました。そこで、まずは力の統一理論について簡単に説明しましょう。ここからの話は少し難しくなります。これまでいろいろな宇宙論の本を読んできた読者のみなさんにも、この力の統一理論の話になると急に難しくなって挫折してしまったという方が多いかもしれません。この本ではそういうことがないよう、できるだけやさしくお話ししていくつもりです。 さて、私たちの世界に存在する物質が加速運動しているとき、そこにはつねに、力が働いています。すべての力は基本的に、四つに分類されると考えられています。これらの力のことを「四つの力」といいます。 その四つの力とは、万有引力として知られる「重力」、電気や磁石の力である「電磁気力」、原子核の中で働いている「弱い力」と、「強い力」です。弱い力、強い力とは、原子核の中で働いている二つの力のうち弱いほうの力、強いほうの力という意味で、現在では固有名詞になっています。このうち強い力は、湯川秀樹先生が見つけた、中性子と陽子を結びつける力で、原爆や水爆のエネルギーを出す力でもあります。弱い力というのは、中性子が電子(ベータ粒子)と反電子ニュートリノを放出して陽子になったりする、「ベータ崩壊」という変化を導く力です。 それぞれ別々のふるまいをするように見えるこれら四つの力を統一して、一つの力の法則にしようというのが、力の統一理論という考え方です。たとえば、ジェームズ・マクスウェルは1864年にマスウェル方程式を導き出し、それまでは別の力と考えられていた電気の力と磁気の力が同じ一つの力であることを示しました。同じ力であるということは、同じ理論で説明できるということです。このようにして、いずれは四つの力をすべて一つの理論で説明することができるのではないか、という考え方なのです。アインシュタインは晩年、プリンストン大学で、力の統一理論の走りというべき統一場(電磁気力と重力の統一理論)の研究に、一生懸命に取り組んでいました。彼が成功しなかったために、この理論は「アインシュタインの夢」ともいわれています』、「すべての力は基本的に、四つに分類されると考えられています。これらの力のことを「四つの力」といいます。 その四つの力とは、万有引力として知られる「重力」、電気や磁石の力である「電磁気力」、原子核の中で働いている「弱い力」と、「強い力」です。弱い力、強い力とは、原子核の中で働いている二つの力のうち弱いほうの力、強いほうの力という意味で、現在では固有名詞になっています。このうち強い力は、湯川秀樹先生が見つけた、中性子と陽子を結びつける力で、原爆や水爆のエネルギーを出す力でもあります。弱い力というのは、中性子が電子(ベータ粒子)と反電子ニュートリノを放出して陽子になったりする、「ベータ崩壊」という変化を導く力です。 それぞれ別々のふるまいをするように見えるこれら四つの力を統一して、一つの力の法則にしようというのが、力の統一理論という考え方です・・・いずれは四つの力をすべて一つの理論で説明することができるのではないか、という考え方なのです。アインシュタインは晩年、プリンストン大学で、力の統一理論の走りというべき統一場(電磁気力と重力の統一理論)の研究に、一生懸命に取り組んでいました。彼が成功しなかったために、この理論は「アインシュタインの夢」ともいわれています」、なるほど。
・『「アインシュタインの夢」がついに実現?  しかし、1967年に、アインシュタインの夢を実現する一つの理論が生まれてきました。それが、アメリカのスティーヴン・ワインバーグとパキスタンのアブドゥス・サラムによる、ワインバーグ=サラム理論です。この理論によって、電磁気力と弱い力が統一されました。そのため、この理論は電弱統一理論、あるいは単純に統一理論とも呼ばれます。 さらに、その後、完全に完成した理論ではありませんが、重力を除く三つの力を統一した、大統一理論も現れました。これらの理論によって、現在、四つに分かれて存在している力は、元は一つの力であり、「宇宙誕生直後に枝分かれした」と考えられるようになってきたのです。 たとえば、電磁気力と弱い力は、絶対温度で1000兆Kという高温(=高エネルギー)状態を設定すれば、同様のふるまいをします。この電磁気力と弱い力に強い力を加えた三つの力は、さらに高エネルギーの10の28乗Kという状態を作り出せば、同じふるまいをするのです。 とすれば、私たちの世界にある四つの力は、宇宙誕生直後の高温(=高エネルギー)状態では、実は一つのものだったのではないか、それが宇宙の温度低下とともに枝分かれをしていったのではないか、ということが、四つの力を理論的に統一する研究を通して考えられるようになりました。 宇宙が誕生すると、10のマイナス44乗秒後という、時計では計れないような非常に短い時間の頃に、まず重力が、他の三つの力と分かれました。10のマイナス36乗秒後には、湯川先生が発見された強い力が枝分かれしました。そして10のマイナス11乗秒後には、電磁気力と弱い力が分かれたのです。 このように、宇宙誕生直後に次々と力が分かれて、現在のような四つの力がそろったという描像が、力の統一理論から考えられるようになりました。 言ってみれば、類人猿が進化して人間が生まれてくる過程で、チンパンジーやオランウータンに枝分かれをしたように、重力、強い力、そして電磁気力と弱い力が分かれてきたということです。言い換えれば、人間が過去に逆戻りするとチンパンジーやオランウータンと一緒になるように、四つの力も最初は一つのものだったのではないか。そう予言したのがこの理論でした。 こうした進化がなぜ起こるのかを考えるとき、生命の場合では突然変異と自然選択という進化の理論によって説明がなされます。では、力の進化(=力の枝分かれ)は、なぜ起こるのでしょうか。 力の統一理論では、これは「真空の相転移」によって起こるとしています。相転移とは、水が氷になるように、物質の性質(相)が変わることです。あらかじめ簡単に言っておきますと、宇宙の初期に温度が急激に下がったことで「真空の相転移」が起こり、真空の空間自体の性質が変わりました。すると、真空での力の伝わり方も変わったのです。そのような相転移が次々に起こり、そのたびに、重力が枝分かれし、強い力が枝分かれし、電磁気力と弱い力が枝分かれをしていったというのです』、「人間が過去に逆戻りするとチンパンジーやオランウータンと一緒になるように、四つの力も最初は一つのものだったのではないか。そう予言したのがこの理論でした。 こうした進化がなぜ起こるのかを考えるとき、生命の場合では突然変異と自然選択という進化の理論によって説明がなされます。では、力の進化(=力の枝分かれ)は、なぜ起こるのでしょうか。 力の統一理論では、これは「真空の相転移」によって起こるとしています。相転移とは、水が氷になるように、物質の性質(相)が変わることです。あらかじめ簡単に言っておきますと、宇宙の初期に温度が急激に下がったことで「真空の相転移」が起こり、真空の空間自体の性質が変わりました。すると、真空での力の伝わり方も変わったのです。そのような相転移が次々に起こり、そのたびに、重力が枝分かれし、強い力が枝分かれし、電磁気力と弱い力が枝分かれをしていったというのです」、壮大な理論だ。
・『カギになるのは「真空の相転移」  普通、真空とは何もない空っぽの状態と考えられています。その「真空」が、水が氷になるような相転移を起こすとはどういうことだろう? と、みなさんは不思議に思われるでしょう。 目に見えない微小な現象を説明する量子論の考え方で言えば、実は真空というのは真の空っぽの状態ではありません。よくよく見てみると、その空間では粒子と反粒子がペアで生まれては合体して消滅する、対生成・対消滅というものを繰り返しているのです(図2―3)』、「量子論の考え方で言えば、実は真空というのは真の空っぽの状態ではありません。よくよく見てみると、その空間では粒子と反粒子がペアで生まれては合体して消滅する、対生成・対消滅というものを繰り返しているのです」、なるほど。
・『真空にも物理的な実体がある  たとえば電子という素粒子には、陽電子という反粒子があります。医学ではこの陽電子を使ったPET(陽電子放射断層撮影)という機器が作られています。この陽電子と電子も一つになると完全に消滅し、二つのガンマ線を放出します。 このように、粒子はペアで生まれたり消滅したりしているのです。真空の空間とは、本当に何もない空っぽの空間なのではなく、ただエネルギー的にいちばん低い基底状態を「真空」と呼んでいるだけなのです。つまり、真空にも物理的な実体があるということになります。 とすれば、真空が相転移を起こしても不思議なことではありません。 このことを最初に理論化したのが南部陽一郎先生で、2008年にノーベル賞を受賞しました。ノーベル物理学賞では、たとえば新しい粒子を発見したというような、何かを発見したという受賞理由は多くありますが、南部先生の受賞は具体的なものを発見したというのではなく、きわめて基礎的な、物理学全体に関わるような理論を構築したことによるのです。 先に述べた、力の統一理論の最初の理論であるワインバーグ=サラム理論は1979年にノーベル賞を受賞しましたが、これも南部先生の理論がもとになっています。真空の相転移という考え方が、電磁気力と弱い力を統一する電弱統一理論を生み出したわけです。 さらに「インフレーション宇宙論」シリーズの連載記事では、宇宙物理学の最前線を紹介していく。 【続き<インフレーション理論による「宇宙誕生のシナリオ」が革新的すぎる… 厳密な計算が示した「衝撃の結論」>を読む】 〈インフレーション宇宙論〉各回記事はこちらから)』、「真空の空間とは、本当に何もない空っぽの空間なのではなく、ただエネルギー的にいちばん低い基底状態を「真空」と呼んでいるだけなのです。つまり、真空にも物理的な実体があるということになります。 とすれば、真空が相転移を起こしても不思議なことではありません。 このことを最初に理論化したのが南部陽一郎先生で、2008年にノーベル賞を受賞しました。ノーベル物理学賞では、たとえば新しい粒子を発見したというような、何かを発見したという受賞理由は多くありますが、南部先生の受賞は具体的なものを発見したというのではなく、きわめて基礎的な、物理学全体に関わるような理論を構築したことによるのです」』、今後の「インフレーション宇宙論」の展開は適宜、フォローしていくつもりである。
タグ:宇宙 (その3)(インフレーション宇宙論:3題:「ビッグバン」の前に何が起きていたのか教えよう…「宇宙の起源」のナゾを解く新理論の「スゴすぎる中身」、おかしい 「ビッグバン」の大爆発から始まったにしてはあまりにも…素朴な問いから生まれた「宇宙最大の難問」、宇宙誕生直後に分かれた「4つの力」が統一できるとしたら…アインシュタインも夢見た「究極の理論」が実現する日) 現代ビジネス 佐藤勝彦氏による「「ビッグバン」の前に何が起きていたのか教えよう…「宇宙の起源」のナゾを解く新理論の「スゴすぎる中身」」 佐藤勝彦著『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』(ブルーバックス) 「むしろ観測より先に、「宇宙はこうなっているのではないか」と予想する理論があり、それが観測によって証明されることで、宇宙論は発展してきました。 20世紀初頭にアインシュタインによってつくられた、時間や空間を考える相対性理論、また、同じくこの時期にボーア、ハイゼンベルグ、シュレディンガーらによりつくられた、ミクロの世界を記述する量子論。これらは現代の物理学を支える2本の柱ですが、宇宙論もまた、この2つの理論が確立されたことで、飛躍的な進歩を遂げたのです・・・ ビッグバン理論だけでは宇宙創生について十分に説明しきれないことがわかってきました。たとえばビッグバン理論では、宇宙がなぜ「火の玉」から始まったかについては、答えることができません。また、ビッグバン理論を推し進めていくと、宇宙の究極のはじまりは「特異点」という、物理学の法則がまったく破綻した点であったと考えざるをえなくなります。いわば宇宙には物理学が及ばない「神の領域」があることを認めざるをえないわけで、これは物理学に携わる者として容易にはうけいれがたいことです」、なるほど。 「インフレーション理論とは、ごく大づかみに言えば、物理学の言葉で宇宙創生を記述しようという理論です。最初は突拍子もない説という見方もありましたが、いまではインフレーション理論は宇宙創生の標準理論として認知されるまでになりました。 さらにインフレーション理論によって、宇宙創生のみならず、宇宙はこれからどうなるのか、そして宇宙とはどのような姿をしているのかについても予言できるようになりました。10の100乗年後という途方もない未来や、宇宙は私たちの宇宙のほかにも無数にあるというマルチバースの考え方など、想像を 絶するような宇宙像が新たに提示されてきているのです・・・大切なのは、なにごとにおいてもどうしたら科学の言葉で説明できるだろうかと考えぬく態度ではないかと思います」、なるほど。 「インフレーション理論入門 ――宇宙の誕生から終焉まで そしてマルチバースを予言―― 宇宙は火の玉から始まったとするビッグバン理論では、特異点すなわち「神の一撃」を認めざるをえない。物理学の言葉だけで宇宙創生を記述したい、という著者の願いがインフレーション理論を生み、現在では宇宙創生の標準理論として認知された。その内容を万人が理解できるよう書かれた、最も平明なインフレーション理論の入門書! 、なるほど、 佐藤勝彦氏による「おかしい、「ビッグバン」の大爆発から始まったにしてはあまりにも…素朴な問いから生まれた「宇宙最大の難問」」 「ビッグバン理論は、現実の観測によって傍証が示されました。そのことは確かなのですが、実はこの理論には、原理的に困難な問題がいくつかあるのです。本記事ではまず、そのことを見ていきます。 まず一つには、宇宙が「特異点」から始まったと考えざるをえないことです。特異点とは、物理学の法則が破綻する「密度が無限大」「温度が無限大」の点のことです。宇宙が膨張しているということは、その時間を逆にたどっていくと、宇宙はどんどん小さくなって、エネルギー密度はどんどん高くなっていきます。 そして宇宙のはじまりが点であったならば、ついにエネルギー密度は無限大になってしまうのです。 つまり、宇宙のはじまりは物理学が破綻した点だったと考えざるをえないのです。キリスト教世界では「神の一撃」といわれますが、そういう物理学を超越した概念を持ってこなければ、宇宙が始まらないということです・・・二つめは、ビッグバン理論は、宇宙はなぜ火の玉になったのかについては、何も答えていないことです。 初期の宇宙が火の玉になる理由は何も説明していないのです。これでは、宇宙のはじまりについて説明していることにはならないともいえます。 また、ビッグバン理論では現在の宇宙構造の起源を説明できないという問題もあります。宇宙の大きさが非常に小さかったときに、その中に「密度ゆらぎ」といわれる小さな濃淡のムラがあったことで、のちに濃度の濃いところを中心にガスが固まり、星や銀河、銀河団といった構造ができたと考えられています。しかし、ビッグバン理論では非常に小さな「ゆらぎ」しかつくれず、宇宙の初期に、銀河や銀河団のタネに なるような濃淡をつくることが理論的に難しいのです』、なるほど。 「神様が「宇宙」という名のロケットを打ち上げると考えてみます。このロケットは、曲率が正か負かによって飛翔(=膨張)のしかたが変わってきます。神様が宇宙を打ち上げる力が少しでも弱い(曲率が正)と、加速度が足りず、宇宙は十分に飛翔せずに重力で落下してつぶれてしまいます。宇宙は短命となるため、私たちのような生命は誕生できません。逆に神様の力が少しでも強すぎる(曲率が負)と、非常に速い飛翔をしてしまい、ガスは一様に希薄になってしまうので、ガスが固まって天体を構成することができません。もちろん、生命は存在できません (図2―1)。 (図2―1 平坦性問題 はリンク先参照) 私たちが宇宙に存在するためには、神様が打ち上げの速度をきわめて精密に調整して、打ち上げから140億年近くたった現在でも曲率がほぼゼロという平坦な宇宙になるように設定しなければなりません。ほんの少しでも力が強かったり、弱かったりすると、現在の私たちは存在できないのです。そのためには打ち上げの速度(=膨張速度)を、なんと100桁という精度で微調整しなければなりません。 しかも、物理学には量子的な「ゆらぎ」、いわゆる「量子ゆらぎ」というものがあってつねに微小な振動をしているため、このような精度を確保することはきわめて難しいのです。「神様の手」さえも量子的にゆらいでいるため、曲率がほぼゼロになるよう(宇宙が平坦になるよう)、膨張速度を微調整することは至難の業なのです。これが「平坦性問題」です」、なるほど。 佐藤勝彦氏による「宇宙誕生直後に分かれた「4つの力」が統一できるとしたら…アインシュタインも夢見た「究極の理論」が実現する日」 「すべての力は基本的に、四つに分類されると考えられています。これらの力のことを「四つの力」といいます。 その四つの力とは、万有引力として知られる「重力」、電気や磁石の力である「電磁気力」、原子核の中で働いている「弱い力」と、「強い力」です。弱い力、強い力とは、原子核の中で働いている二つの力のうち弱いほうの力、強いほうの力という意味で、現在では固有名詞になっています。このうち強い力は、湯川秀樹先生が見つけた、中性子と陽子を結びつける力で、原爆や水爆のエネルギーを出す力でもあります。 弱い力というのは、中性子が電子(ベータ粒子)と反電子ニュートリノを放出して陽子になったりする、「ベータ崩壊」という変化を導く力です。 それぞれ別々のふるまいをするように見えるこれら四つの力を統一して、一つの力の法則にしようというのが、力の統一理論という考え方です・・・いずれは四つの力をすべて一つの理論で説明することができるのではないか、という考え方なのです。アインシュタインは晩年、プリンストン大学で、力の統一理論の走りというべき統一場(電磁気力と重力の統一理論)の研究に、一生懸命に取り組んでいました。彼が 成功しなかったために、この理論は「アインシュタインの夢」ともいわれています」、なるほど。 「人間が過去に逆戻りするとチンパンジーやオランウータンと一緒になるように、四つの力も最初は一つのものだったのではないか。そう予言したのがこの理論でした。 こうした進化がなぜ起こるのかを考えるとき、生命の場合では突然変異と自然選択という進化の理論によって説明がなされます。では、力の進化(=力の枝分かれ)は、なぜ起こるのでしょうか。 力の統一理論では、これは「真空の相転移」によって起こるとしています。 相転移とは、水が氷になるように、物質の性質(相)が変わることです。あらかじめ簡単に言っておきますと、宇宙の初期に温度が急激に下がったことで「真空の相転移」が起こり、真空の空間自体の性質が変わりました。すると、真空での力の伝わり方も変わったのです。そのような相転移が次々に起こり、そのたびに、重力が枝分かれし、強い力が枝分かれし、電磁気力と弱い力が枝分かれをしていったというのです」、壮大な理論だ。 「量子論の考え方で言えば、実は真空というのは真の空っぽの状態ではありません。よくよく見てみると、その空間では粒子と反粒子がペアで生まれては合体して消滅する、対生成・対消滅というものを繰り返しているのです」、なるほど。 「真空の空間とは、本当に何もない空っぽの空間なのではなく、ただエネルギー的にいちばん低い基底状態を「真空」と呼んでいるだけなのです。つまり、真空にも物理的な実体があるということになります。 とすれば、真空が相転移を起こしても不思議なことではありません。 このことを最初に理論化したのが南部陽一郎先生で、2008年にノーベル賞を受賞しました。 ノーベル物理学賞では、たとえば新しい粒子を発見したというような、何かを発見したという受賞理由は多くありますが、南部先生の受賞は具体的なものを発見したというのではなく、きわめて基礎的な、物理学全体に関わるような理論を構築したことによるのです」』、今後の「インフレーション宇宙論」の展開は適宜、フォローしていくつもりである。
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宇宙(その2)宇宙論基礎2題:このまま膨張し続けたら 宇宙はどうなってしまうのか…、「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?) [科学技術]

昨日に続いて、宇宙を(その2)宇宙論の基礎から捉えた(その2)宇宙論の基礎2題:このまま膨張し続けたら 宇宙はどうなってしまうのか…、「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?)を取上げよう。

先ずは、本年9月8日付け現代ビジネスが掲載した高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所による「このまま膨張し続けたら、宇宙はどうなってしまうのか…「最悪のシナリオ」と「人類に残された希望」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/136796
・『138億年前、点にも満たない極小のエネルギーの塊からこの宇宙は誕生した。そこから物質、地球、生命が生まれ、私たちの存在に至る。しかし、ふと冷静になって考えると、誰も見たことがない「宇宙の起源」をどのように解明するというのか、という疑問がわかないだろうか? 本連載では、第一線の研究者たちが基礎から最先端までを徹底的に解説した『宇宙と物質の起源』より、宇宙の大いなる謎解きにご案内しよう。 *本記事は、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所・編『宇宙と物質の起源 「見えない世界」を理解する』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです』、興味深そうだ。
・『宇宙全体の70%を占めるダークエネルギー  前の記事で述べたように、ダークエネルギーもしくは宇宙定数が現在の宇宙に占める割合は、観測から約70%です。このダークエネルギーの多さが、インフレーションと同様に、現在の宇宙で、宇宙の加速膨張を引き起こしています。 Ia型と呼ばれる超新星爆発からの光を観測すると、宇宙の大きさが1/3から1/2の昔と比べて、現在の宇宙年齢に近づけば近づくほど、加速膨張がどんどん激しくなってきていることがわかってきました。Ia型とは、恒星の終末期の1つの姿である白色矮星にガスが降り積もって臨界質量を超えることで爆発するタイプの超新星爆発です。1998年に同時に発表された宇宙の加速膨張を示す観測データの業績により、アメリカのソール・パールムッター博士たちと、オーストラリアのブライアン・シュミット博士とアメリカのアダム・リース博士たちの2つのグループに2011年、ノーベル物理学賞が与えられました。 ダークエネルギーは、現在では宇宙全体のエネルギーの70%と、大きな量となっています。しかし、本当に定数であることを仮定するならば、宇宙が生まれた宇宙初期では、ものすごく小さな量だったことを意味します。宇宙が始まったときに、なんらかの物理過程により、この小さな種が仕込まれたのではないかと考えられています。また、近い将来、ダークエネルギーが宇宙のエネルギーの100%を占めるようになり、完全に支配的になると予想されています。しかし、その小ささの起源は、現代物理学では説明できません。未解決であり、新しい物理学の理論の発見が必要だと考えられています。この章の最後に、唯一あり得る科学的ではない解決方法である、人間原理での解決方法を解説します。人間原理は、人間の存在がこの宇宙の性質を決めているかもしれないという不思議な概念です』、「ダークエネルギーが宇宙のエネルギーの「70%を占めているのが」、「近い将来」、「100%を占めるようになり、完全に支配的になると予想されています。しかし、その小ささの起源は、現代物理学では説明できません。未解決であり、新しい物理学の理論の発見が必要だと考えられています。この章の最後に、唯一あり得る科学的ではない解決方法である、人間原理での解決方法を解説します。人間原理は、人間の存在がこの宇宙の性質を決めているかもしれないという不思議な概念です」、なるほど。
・『宇宙は再び加速膨張期を迎えた  宇宙が誕生したエネルギーとされるプランク(質量)スケール(約1000京GeV)から、宇宙はさまざまな相転移を経験して、その相を変えてきました。それを水の3相に例えるならば、水蒸気、水、氷というように、温度が低くなるにつれて、エネルギーのより低い、まったく異なる相に変わってきたというものです。それらの相とは、大統一理論の相転移(1京GeV)、電弱相転移(100GeV)、量子色力学の相転移(100MeV)などです。その一方、ダークエネルギーのエネルギースケールは、0.002eVで、最も低いエネルギー状態の真空だと理解されています。この、ダークエネルギーのスケール(0.002eV)だけは、現在の物理学では説明できません。以下に説明するように、その数字をもつ物理量が存在しないのです。 大統一理論が正しいかどうかは、まだ実験では検証されていませんが、理論の整合性だけから、その存在の確からしさが予言されています。大統一理論の相転移後、1京GeVのエネルギースケールの真空のエネルギーが残っている可能性があります。また、電弱相転移を引き起こすヒッグス粒子は、2012年にCERNのLHC実験により発見されました。2013年にヒッグス粒子の存在を予言した2人の理論家、ヒッグス博士とアングレール博士にノーベル物理学賞が贈られています。電弱相転移により、100GeV程度の真空のエネルギーが残っている可能性があります。加えて、温度1兆度(100MeV)の火の玉宇宙の中で、大量のクォーク・反クォークが一斉に対消滅するうちに、約10億分の1個だけが陽子や中性子などの核子として残ります。この量子色力学の相転移の真空のエネルギーは、約100MeVのエネルギースケールだと考えられています。 つまり、現在の物理学における素粒子の標準理論では、ダークエネルギーのエネルギースケールの約0.002eVで起こる相転移は知られていません。約0.002eVのスケールの真空のエネルギーは、現在の物理学では理論的に説明不可能なのです。これは、重力を修正するようなエキゾチックなモデルを考えたとしても、加えてそのエネルギースケールをさらに仮定しなければならないことに変わりはありません。このことは、未発見の新しい物理法則の存在を予感させます。 その真空のエネルギーが支配的になりエネルギー密度が近似的に一定になると、アインシュタイン博士が唱えた宇宙項、つまり宇宙定数とまったく同じ働きをします。宇宙定数を含む、もっと広い概念としてダークエネルギーという、完全に定数でなくても緩やかな変化であればよいという考え方も、観測からは否定されていません。第7章で説明した通り、宇宙定数つまりダークエネルギーが支配的になると、宇宙の大きさは倍々ゲームのように再び加速膨張により時間発展していきます』、「現在の物理学における素粒子の標準理論では、ダークエネルギーのエネルギースケールの約0.002eVで起こる相転移は知られていません。約0.002eVのスケールの真空のエネルギーは、現在の物理学では理論的に説明不可能なのです。これは、重力を修正するようなエキゾチックなモデルを考えたとしても、加えてそのエネルギースケールをさらに仮定しなければならないことに変わりはありません。このことは、未発見の新しい物理法則の存在を予感させます。 その真空のエネルギーが支配的になりエネルギー密度が近似的に一定になると、アインシュタイン博士が唱えた宇宙項、つまり宇宙定数とまったく同じ働きをします。宇宙定数を含む、もっと広い概念としてダークエネルギーという、完全に定数でなくても緩やかな変化であればよいという考え方も、観測からは否定されていません」、なるほど。
・『ダークエネルギーとは何か?  宇宙定数を素粒子論の言葉で表現するなら、未知のスカラー場が、そのポテンシャルエネルギーの底に落ち着いている状況だと考えられています。ポテンシャルエネルギーとは、スカラー場が固有にもつ位置エネルギーのようなエネルギーのことで、低いエネルギー状態に行けば行くほど安定であることを意味します。ダークエネルギーとなる未知のスカラー場の正体は、実験的にも、観測的にも、まったく明らかになっていません。そのため理論上は、その存在を仮定して宇宙モデルをつくることになります。 ここでは、ダークエネルギーとなるスカラー場を「φ」と呼びましょう。このφのポテンシャルエネルギーの底のエネルギー密度の大きさが、重要なのです。エネルギースケールでは、約0.002eVです。ポテンシャルエネルギーもしくは、エネルギー密度で表すならば、約0.002eVの4乗、つまり約16eV⁴の1兆分の1となります。もっと想像をたくましくした場合、必ずしも、現在ポテンシャルエネルギーの底に落ち着いていなくてもよいという考え方も可能となります。つまり、ポテンシャルエネルギーの底では、特別なエネルギースケールなどはなくて、エネルギー密度は確かにゼロとするのです。 しかし、将来そこに落ち着けばよいと考えて、今はポテンシャルの途中をゆっくり転がり落ちていると解釈するのです。つまり、宇宙定数ではなく、動いているダークエネルギーというより広い概念を導入することになります。そして0.002eVの4乗は、ゼロに向かう過渡期のポテンシャルエネルギーの値と解釈します。そうすれば、現在の宇宙が偶然、このエネルギースケールをとっているだけで、新しいエネルギースケールを説明しなくてもよいという解釈となります。このスカラー場は、光子、ニュートリノ、バリオン物質、ダークマターとも違う、第5の成分という意味で「クインテッセンスモデル」とも呼ばれます。 そして、そのゆっくり動く度合いは、理論と観測から厳しい制限を受けます。ポテンシャルの式中にφの逆べき、1/φの項が現れる理論モデルの場合、宇宙膨張からくる摩擦力とポテンシャルを落ちていく力が釣り合ってゆっくり転がるモデルとなります。そのため、最も無理のない自然なモデルだと考えられました。これを「トラッカー場モデル」と呼びます。 しかし、最新の観測より、トラッカー場モデルは、ファイが速く動きすぎるとして棄却されました。現在では、その真空に落ち着く直前(フリージング)か、別の真空から動き始める瞬間(ソーイング)かの、2つのモデルが観測から許されています。 これまで、スカラー場のモデルと書いてきましたが、理論的には何一つ確定していません。強いて候補を挙げるなら、前述の軽いALP(正確な分類では、スピンの場ですが、鏡に映す変換により場の値の符号がマイナスになる擬スカラー場です)のような量子場かもしれません。しかし、その約0.002eVというエネルギースケールをもつポテンシャルについては、第一原理から導かれるわけではなく、仮定するしか、現在は方法がありません。前述のALPでも、理論的にはそのエネルギースケールが必然ではありません。また、繰り返しますが、重力を修正したとしても、このエネルギースケールのエネルギー密度を第一原理から自然に導出するわけではないので、さらにエネルギースケール自体について仮定を追加する必要があるというのが現状です。つまり、重力を修正しても解決されていないのです』、「最新の観測より、トラッカー場モデルは、ファイが速く動きすぎるとして棄却されました。現在では、その真空に落ち着く直前(フリージング)か、別の真空から動き始める瞬間(ソーイング)かの、2つのモデルが観測から許されています。 これまで、スカラー場のモデルと書いてきましたが、理論的には何一つ確定していません。強いて候補を挙げるなら、前述の軽いALP(正確な分類では、スピンの場ですが、鏡に映す変換により場の値の符号がマイナスになる擬スカラー場です)のような量子場かもしれません。しかし、その約0.002eVというエネルギースケールをもつポテンシャルについては、第一原理から導かれるわけではなく、仮定するしか、現在は方法がありません。前述のALPでも、理論的にはそのエネルギースケールが必然ではありません」、難し過ぎて到底理解できない。
・『宇宙の未来  次に、最低限の仮定の下、このままダークエネルギーのエネルギー密度がほぼ定数だとして、この宇宙の未来がどうなっていくのかを見ていきます。現代物理学の知識で予想する、標準的な宇宙の運命は以下のようです。 まず、このまま加速膨張が続けば、基本的に銀河団に属していない銀河と銀河の間の距離は遠ざかり、宇宙は、どんどん空っぽになってしまいます。約40億年後、われわれの銀河とアンドロメダ銀河が合体します。形成される超巨大銀河には「ミルコメダ」という名前がすでに付けられています。約50億年後、太陽が死を迎えます。そのとき、地球は肥大した太陽に飲み込まれるという説と、地球の公転軌道が広がって飲み込まれないという2つの説が唱えられています。いずれにしても人類は、そのままでは生き延びることは不可能でしょう。 約1400億年後、ミルコメダは、激しい加速膨張で独りぼっちの銀河となります。約1兆年後、われわれの銀河にある一番の長寿命の恒星である赤色矮星まで、すべての恒星が燃え尽きます。約1000京年後、すべての銀河はブラックホールだらけになります。 約10³⁴年後、つまり、約1000京年の1000兆倍後、大統一理論の予言により、宇宙のすべての陽子が陽電子などに崩壊します。原子や分子などの普通の物質はなくなることになります。そして、約10⁸³年後、つまり約1000京年の1000京倍の1000京倍の1000京倍の1000万倍後、それぞれの銀河の中心にある超巨大ブラックホールが蒸発します。それ以後、天体と呼ぶことのできる物体は、宇宙から消え去るでしょう。 さらに仮定することを増やすと、ダークエネルギーが時間とともにより多くなるエキゾチックなモデルで、ビッグリップと呼ばれるより激しい加速膨張によって未来にすべての天体が引き裂かれることを提案した研究者もいます。このシナリオはとても刺激的ですが、その理論を示唆する観測・実験結果は今のところ得られていません』、「このまま加速膨張が続けば、基本的に銀河団に属していない銀河と銀河の間の距離は遠ざかり、宇宙は、どんどん空っぽになってしまいます。約40億年後、われわれの銀河とアンドロメダ銀河が合体します。形成される超巨大銀河には「ミルコメダ」という名前がすでに付けられています。約50億年後、太陽が死を迎えます。そのとき、地球は肥大した太陽に飲み込まれるという説と、地球の公転軌道が広がって飲み込まれないという2つの説が唱えられています。いずれにしても人類は、そのままでは生き延びることは不可能でしょう・・・約1400億年後、ミルコメダは、激しい加速膨張で独りぼっちの銀河となります。約1兆年後、われわれの銀河にある一番の長寿命の恒星である赤色矮星まで、すべての恒星が燃え尽きます。約1000京年後、すべての銀河はブラックホールだらけになります。 約10³⁴年後、つまり、約1000京年の1000兆倍後、大統一理論の予言により、宇宙のすべての陽子が陽電子などに崩壊します。原子や分子などの普通の物質はなくなることになります。そして、約10⁸³年後、つまり約1000京年の1000京倍の1000京倍の1000京倍の1000万倍後、それぞれの銀河の中心にある超巨大ブラックホールが蒸発します。それ以後、天体と呼ぶことのできる物体は、宇宙から消え去るでしょう。 さらに仮定することを増やすと、ダークエネルギーが時間とともにより多くなるエキゾチックなモデルで、ビッグリップと呼ばれるより激しい加速膨張によって未来にすべての天体が引き裂かれることを提案した研究者もいます」、なるほど。
・『残された大問題  これまで、真空のエネルギースケール約0.002eVを説明する物理法則を探ることが、ダークエネルギー問題の科学的な解決であることを説明してきました。つまり、現在の宇宙は、なぜ放射(約0.01%)、見える物質(約5%)、ダークマター(約25%)、ダークエネルギー(約70%)と、すべての成分が数桁の範囲でだいたい同じ程度のエネルギー密度なのか? そして、ダークエネルギーの量は、定数だというのに、なぜ、理論物理の知られているあらゆるスケールと比べてこんなに小さいのか? という問題でした。その小ささには、大変なチューニングが必要で、その値がもし約1000倍でも大きい宇宙だったら、宇宙はもっと早くに速く膨張してしまい、銀河はできないし地球は生まれないことからも、極めて深刻であることがわかります。 実は、物理学ではなく、哲学的にこの問題を解く試みがあります。それが、フランスの哲学者ルネ・デカルト博士が提唱した「我思う、故に我あり」という考え方を人間原理に適用したものです。それを、宇宙論の文脈で言い換えると、「宇宙の法則がこうなっているからこそ、この問いを発する人間が(必然として)生まれてきたという原理」などとなります。「必然として」を入れると、強い人間原理と呼ばれます。われわれは、ダークエネルギー(宇宙定数)が小さい宇宙に住んでいます。実際、観測される約1meVのスケールから、自然なスケールである1TeVまでが約15桁、その4乗の約60桁も小さいのです。この60桁というずれの程度は、理論的に説明するためには、ゼロ点からのずれ具合がすさまじく小さい数を仮定してチューニングしなければならないことを意味します。 その異常さを、標準理論を例にとって見てみます。標準理論にも、さまざまな質量が現れます。しかし、例えば、ヒッグス粒子の質量のスケール(約100GeV)から、一番軽い素粒子である電子の質量のスケール(約500KeV)までの、そのずれ方は大きく見積もっても6桁くらいに収まっているのです。多くの素粒子物理学者は、この6桁くらいのずれ方はなんらかの理由により説明できると考えています。そのため、この6桁のずれ程度ならば、普段、標準理論のほころびだとはそれほど思っていないように思います。筆者が発表した理論モデルの1つに、ニュートリノ質量(単位meV)の4乗がダークエネルギーのエネルギー密度になるかもしれない、というものがあります。しかし正直に申し上げて、この場合でもスケールを手で置いているという範疇を出ないものです。将来の観測で筆者のモデルが正しいと証明されるか、それとも棄却されるか、個人的には楽しみにしています。ぜひ、若い方々も、この問題に科学で真っ向からトライしてみてください。 宇宙は唯一ではないとするマルチバースの考え方を採用するならば、われわれの宇宙は、唯一の宇宙ではなく、それこそ天文学的な大きな数字の数だけ生まれた宇宙の中のただの1つにすぎないのかもしれません。そして、それぞれの宇宙は、物理法則が違っている可能性すらあります。宇宙定数が約60桁小さい宇宙も、確率的には有り得ないほど低くても、天文学的数字のマルチバースの中では、偶然に、たった1つでも誕生する可能性があるかもしれません。そして、その宇宙は人間が生まれる条件が整っているのです。その場合、人間が生まれる条件に合った宇宙だけに、人間が生まれただけにすぎないのかもしれないのです。そして、その人間が、自分たちの宇宙は「なぜ、こんなにも自分たちに都合がよくできているのか?(宇宙定数が小さくなっているのか?)」という疑問を発しているという解決方法なのです。
このように、「宇宙定数問題」または「ダークエネルギー問題」を人間原理で解決する場合、驚くことに人間の存在が、その宇宙全体の性質を決めてしまっていることになってしまいます。つまり、人間が住む宇宙のみ人間に観測され得ると言っているのです。 人類は、古来より信じられてきた天動説を捨て、精密な観測データの蓄積により得られたコペルニクス原理を採用し、地動説を信じるようになってきました。さらに、宇宙は一様で等方だとする宇宙原理を信じて、われわれの銀河や太陽系が特別な場所ではないと受け入れてきたのです。現代の人類が、より観測技術が進んだことにより、われわれの住んでいる宇宙は例外的な宇宙だったと受け入れなければならない状況になってきているのは、大変皮肉なことです。  説明なしの原理の導入は、その背後に隠れているかもしれない未発見の物理法則の探究を止めてしまう可能性があるのですが、現在、エキゾチックな宇宙モデルを仮定する以外には、人間原理による解決方法しかあり得ないようにも思えます。しかし、科学的な問題に人間原理を適用することは、最終手段として取っておくべきものだと思われます。 つまり、これまで解決不可能とされてきた問題に対して、新しい物理学の法則を見つけることこそ、科学による勝利なのです。繰り返しますが、ダークエネルギー問題は、今のところ人間原理の適用以外に解く方法がないように見え、人間原理を適用する最初の例になるかもしれないという大変に面白い問題と言えるでしょう。人類は、宇宙誕生の秘密に迫る、最も根本的な科学の問題に直面しているのかもしれませんね。 さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする』、「ダークエネルギー問題は、今のところ人間原理の適用以外に解く方法がないように見え、人間原理を適用する最初の例になるかもしれないという大変に面白い問題と言えるでしょう。人類は、宇宙誕生の秘密に迫る、最も根本的な科学の問題に直面しているのかもしれませんね。 さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする」、確かに「スリリング」ではあるが、理解の限度を超えつつあるようだ。

次に、9月8日付け現代ビジネスが掲載した高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所による「「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?「最有力候補」を科学的検証とともに一挙解説!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/136795
・『・・・どうやってダークマターを見つけるのか  先の記事で、理論的に予言されるダークマターの有力候補について、ちょっとだけご紹介しました。本記事では、それぞれについて詳しく説明してみたいと思います。 最も有力な候補と目されているのは、WIMPと呼ばれる未発見の素粒子です。「弱い相互作用をする重い粒子」という意味の英語の頭文字を取って、そうした性質をもつ粒子の総称として名付けられました。重さは、陽子の100倍(約100GeV)程度以上です。他の粒子との相互作用が弱すぎて散乱の頻度が低くて見つけられない粒子なのです。英語の単語wimp自体が弱虫という意味なので、名は体を表していますね。具体的な粒子としては、まだ仮説である超対称性理論に現れる光子、もしくは、Z粒子かヒッグス粒子の相棒の総称であるニュートラリーノが、WIMPの候補として注目されています。 ニュートラリーノの見つけ方は単純です。キセノン原子などの重い原子核を数トンも用意して、ニュートラリーノがぶつかってくるのを待つ方法が、最も有力とされています。キセノン原子の中の陽子や中性子との相互作用は弱いのですが、大量にキセノンを用意すれば、確率が上がって、直接検出できるという考え方です。しかし、これまでにニュートラリーノが確実に発見された、とする報告はありません。また、高エネルギー加速器研究機構(KEK)も参加するスイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での加速器実験でニュートラリーノがつくられると期待されていたのですが、見つかりませんでした。 その一方、宇宙観測を用いるアイデアもあります。銀河の中心など、ダークマターの密度が濃いところで、ダークマター同士がお互いに衝突して対消滅することが期待されています。対消滅した後、ニュートラリーノならば、光や電子、クォークなど見える粒子を対生成によりつくることが理論的に予想されています。そうした2次的につくられた見える粒子を検出し、間接的にWIMPを検出するのです。現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています。) 138億年前、点にも満たない極小のエネルギーの塊からこの宇宙は誕生した。そこから物質、地球、生命が生まれ、私たちの存在に至る。しかし、ふと冷静になって考えると、誰も見たことがない「宇宙の起源」をどのように解明するというのか、という疑問がわかないだろうか? 本連載では、第一線の研究者たちが基礎から最先端までを徹底的に解説した『宇宙と物質の起源』より、宇宙の大いなる謎解きにご案内しよう。 *本記事は、高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所・編『宇宙と物質の起源 「見えない世界」を理解する』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです』、「これまでにニュートラリーノが確実に発見された、とする報告はありません。また、高エネルギー加速器研究機構(KEK)も参加するスイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での加速器実験でニュートラリーノがつくられると期待されていたのですが、見つかりませんでした・・・宇宙観測を用いるアイデアもあります。銀河の中心など、ダークマターの密度が濃いところで、ダークマター同士がお互いに衝突して対消滅することが期待されています。対消滅した後、ニュートラリーノならば、光や電子、クォークなど見える粒子を対生成によりつくることが理論的に予想されています。そうした2次的につくられた見える粒子を検出し、間接的にWIMPを検出するのです。現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています」、なるほど。
・『どうやってダークマターを見つけるのか  先の記事で、理論的に予言されるダークマターの有力候補について、ちょっとだけご紹介しました。本記事では、それぞれについて詳しく説明してみたいと思います。 最も有力な候補と目されているのは、WIMPと呼ばれる未発見の素粒子です。「弱い相互作用をする重い粒子」という意味の英語の頭文字を取って、そうした性質をもつ粒子の総称として名付けられました。重さは、陽子の100倍(約100GeV)程度以上です。他の粒子との相互作用が弱すぎて散乱の頻度が低くて見つけられない粒子なのです。英語の単語wimp自体が弱虫という意味なので、名は体を表していますね。具体的な粒子としては、まだ仮説である超対称性理論に現れる光子、もしくは、Z粒子かヒッグス粒子の相棒の総称であるニュートラリーノが、WIMPの候補として注目されています。 ニュートラリーノの見つけ方は単純です。キセノン原子などの重い原子核を数トンも用意して、ニュートラリーノがぶつかってくるのを待つ方法が、最も有力とされています。キセノン原子の中の陽子や中性子との相互作用は弱いのですが、大量にキセノンを用意すれば、確率が上がって、直接検出できるという考え方です。しかし、これまでにニュートラリーノが確実に発見された、とする報告はありません。また、高エネルギー加速器研究機構(KEK)も参加するスイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での加速器実験でニュートラリーノがつくられると期待されていたのですが、見つかりませんでした。 その一方、宇宙観測を用いるアイデアもあります。銀河の中心など、ダークマターの密度が濃いところで、ダークマター同士がお互いに衝突して対消滅することが期待されています。対消滅した後、ニュートラリーノならば、光や電子、クォークなど見える粒子を対生成によりつくることが理論的に予想されています。そうした2次的につくられた見える粒子を検出し、間接的にWIMPを検出するのです。現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています』、「現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています」、なるほど。
・『原始ブラックホール  3つ目の候補は、筆者の推しダークマターである原始ブラックホールです。通常のブラックホールが重い恒星の最期につぶれてつくられる天体であるのと異なり、原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トンの間と予想されています。つまり、太陽質量より桁違いに軽いのです。 これは筆者の研究で示したことなのですが、もし原始ブラックホールが約1000億トンより軽い場合、ホーキング輻射として知られているように、ガンマ線の熱輻射を出して蒸発してしまい、現在のガンマ線の観測で蒸発する様子が見えるはずです。しかし、これまでの観測からそうした現象は見られないので、原始ブラックホールがダークマターになっているなら、もっと重くないといけないということになります。 その一方、重さが約10京トンより重い場合というのは、すばる望遠鏡の観測により否定されてしまいます。すばる望遠鏡でアンドロメダ銀河の恒星をずっと観測していると、その恒星の前を原始ブラックホールが通り過ぎる場合があります。そのとき、原始ブラックホールによる重力レンズ効果で、恒星の明るさが増光することが期待されていました。しかし、実際は観測されなかったことから、重さ約10京トン以上の原始ブラックホールを完全に否定してしまいました。 将来、ガンマ線観測の感度が上がれば、残っている質量領域である、約1000億トンより重く、約10京トンより軽い原始ブラックホールが、ゆっくりと蒸発する様子が観測されるかもしれません。また、原始ブラックホールをつくる密度ゆらぎは、同時に非線形重力波をつくることが知られています。将来の感度の高い、レーザー干渉計宇宙アンテナLISAや0.1ヘルツ帯干渉計型重力波天文台DECIGOなど人工衛星での重力波観測で、その非線形重力波を観測できれば、原始ブラックホールのダークマター説が検証される可能性があります』、「原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トン「原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トンのの間と予想されています。つまり、太陽質量より桁違いに軽いのです・・・もし原始ブラックホールが約1000億トンより軽い場合、ホーキング輻射として知られているように、ガンマ線の熱輻射を出して蒸発してしまい、現在のガンマ線の観測で蒸発する様子が見えるはずです。しかし、これまでの観測からそうした現象は見られないので、原始ブラックホールがダークマターになっているなら、もっと重くないといけないということになります」、なるほど。
・『右巻きニュートリノ  4つ目の候補は、未発見の右巻きニュートリノです。 その質量についての条件として、すでに検出されている左巻きニュートリノの質量の30倍程度あれば、質量だけなら、ダークマターに十分足りるのです。しかし、その程度だと軽すぎて光のように飛び回るせいで、銀河をダークマターとしてつなぎ止められません。つまり、「冷たいダークマター」とはなりません。 要求される条件は、左巻きニュートリノの数万倍以上の重さ、つまり、数千eVの質量をもつ必要があります。重い右巻きニュートリノは、X線光子を出して崩壊することが理論的に予言されています。その光子を検出できれば、右巻きニュートリノがダークマターであると確定する可能性があります。また、大強度陽子加速器施設J‐PARCでのニュートリノ振動実験T2Kなどでは、ニュートリノが右巻きニュートリノに崩壊もしくは振動する痕跡も探っています。 KEKが参加するLiteBIRD衛星実験では、将来得られる詳細な宇宙マイクロ波背景放射の偏光のデータから、右巻きニュートリノダークマターを検出する可能性があります。 さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする』、「要求される条件は、左巻きニュートリノの数万倍以上の重さ、つまり、数千eVの質量をもつ必要があります。重い右巻きニュートリノは、X線光子を出して崩壊することが理論的に予言されています。その光子を検出できれば、右巻きニュートリノがダークマターであると確定する可能性があります」、まだまだ発展途上の学問のようだ。
タグ:宇宙 (その2)宇宙論基礎2題:このまま膨張し続けたら 宇宙はどうなってしまうのか…、「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?) 現代ビジネス 高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 「このまま膨張し続けたら、宇宙はどうなってしまうのか…「最悪のシナリオ」と「人類に残された希望」」 高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所・編『宇宙と物質の起源 「見えない世界」を理解する』(ブルーバックス) 「ダークエネルギーが宇宙のエネルギーの「70%を占めているのが」、「近い将来」、「100%を占めるようになり、完全に支配的になると予想されています。しかし、その小ささの起源は、現代物理学では説明できません。未解決であり、新しい物理学の理論の発見が必要だと考えられています。この章の最後に、唯一あり得る科学的ではない解決方法である、人間原理での解決方法を解説します。人間原理は、人間の存在がこの宇宙の性質を決めているかもしれないという不思議な概念です」、なるほど。 「現在の物理学における素粒子の標準理論では、ダークエネルギーのエネルギースケールの約0.002eVで起こる相転移は知られていません。約0.002eVのスケールの真空のエネルギーは、現在の物理学では理論的に説明不可能なのです。これは、重力を修正するようなエキゾチックなモデルを考えたとしても、加えてそのエネルギースケールをさらに仮定しなければならないことに変わりはありません。 このことは、未発見の新しい物理法則の存在を予感させます。 その真空のエネルギーが支配的になりエネルギー密度が近似的に一定になると、アインシュタイン博士が唱えた宇宙項、つまり宇宙定数とまったく同じ働きをします。宇宙定数を含む、もっと広い概念としてダークエネルギーという、完全に定数でなくても緩やかな変化であればよいという考え方も、観測からは否定されていません」、なるほど。 「最新の観測より、トラッカー場モデルは、ファイが速く動きすぎるとして棄却されました。現在では、その真空に落ち着く直前(フリージング)か、別の真空から動き始める瞬間(ソーイング)かの、2つのモデルが観測から許されています。 これまで、スカラー場のモデルと書いてきましたが、理論的には何一つ確定していません。強いて候補を挙げるなら、前述の軽いALP(正確な分類では、スピンの場ですが、鏡に映す変換により場の値の符号がマイナスになる擬スカラー場です)のような量子場かもしれません。 しかし、その約0.002eVというエネルギースケールをもつポテンシャルについては、第一原理から導かれるわけではなく、仮定するしか、現在は方法がありません。前述のALPでも、理論的にはそのエネルギースケールが必然ではありません」、難し過ぎて到底理解できない。 「このまま加速膨張が続けば、基本的に銀河団に属していない銀河と銀河の間の距離は遠ざかり、宇宙は、どんどん空っぽになってしまいます。約40億年後、われわれの銀河とアンドロメダ銀河が合体します。形成される超巨大銀河には「ミルコメダ」という名前がすでに付けられています。約50億年後、太陽が死を迎えます。そのとき、地球は肥大した太陽に飲み込まれるという説と、地球の公転軌道が広がって飲み込まれないという2つの説が唱えられています。いずれにしても人類は、そのままでは生き延びることは不可能でしょう・・・ 約1400億年後、ミルコメダは、激しい加速膨張で独りぼっちの銀河となります。約1兆年後、われわれの銀河にある一番の長寿命の恒星である赤色矮星まで、すべての恒星が燃え尽きます。約1000京年後、すべての銀河はブラックホールだらけになります。 約10³⁴年後、つまり、約1000京年の1000兆倍後、大統一理論の予言により、宇宙のすべての陽子が陽電子などに崩壊します。原子や分子などの普通の物質はなくなることになります。そして、約10⁸³年後、つまり約1000京年の1000京倍の1000京倍の1000京倍の1000万倍後、それぞれの銀河の中心にある超巨大ブラックホールが蒸発します。それ以後、天体と呼ぶことのできる物体は、宇宙から消え去るでしょう。 さらに仮定することを増やすと、ダークエネルギーが時間とともにより多くなるエキゾチックなモデルで、ビッグリップと呼ばれるより激しい加速膨張によって未来にすべての天体が引き裂かれることを提案した研究者もいます」、なるほど。 「ダークエネルギー問題は、今のところ人間原理の適用以外に解く方法がないように見え、人間原理を適用する最初の例になるかもしれないという大変に面白い問題と言えるでしょう。人類は、宇宙誕生の秘密に迫る、最も根本的な科学の問題に直面しているのかもしれませんね。 さらに「宇宙と物質の起源」シリーズの連載記事では、最新研究にもとづくスリリングな宇宙論をお届けする」、確かに「スリリング」ではあるが、理解の限度を超えつつあるようだ。 「「ナゾの物質」ダークマターの正体がついに明らかに…?「最有力候補」を科学的検証とともに一挙解説!」 「これまでにニュートラリーノが確実に発見された、とする報告はありません。また、高エネルギー加速器研究機構(KEK)も参加するスイス・ジュネーブにある欧州合同原子核研究機構(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での加速器実験でニュートラリーノがつくられると期待されていたのですが、見つかりませんでした・・・宇宙観測を用いるアイデアもあります。銀河の中心など、ダークマターの密度が濃いところで、ダークマター同士がお互いに衝突して対消滅することが期待されています。 対消滅した後、ニュートラリーノならば、光や電子、クォークなど見える粒子を対生成によりつくることが理論的に予想されています。そうした2次的につくられた見える粒子を検出し、間接的にWIMPを検出するのです。現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています」、なるほど。 「現在の理解では、質量が約100GeVよりずっと重いせいで、数も少なく衝突頻度が低いのではないかという解釈がなされています。今後、ターゲットの原子の量を多くする、もしくは、検出器の感度を高めるなど装置の改良を重ねて、将来的に検出されることが期待されています」、なるほど。 「原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トン「原始ブラックホールは宇宙初期に密度ゆらぎが極めて大きな部分がつぶれることで生成されます。 見える物質からつくられたのではなく、火の玉の放射がつぶれてつくられたブラックホールなのです。通常のブラックホールの重さは、およそ太陽質量以上、つまり約100京トンの10億倍以上です。それに対し、原始ブラックホールがダークマターになる場合の重さは、約1000億トンから約10京トンのの間と予想されています。つまり、太陽質量より桁違いに軽いのです・・・もし原始ブラックホールが約1000億トンより軽い場合、ホーキング輻射として知られているように、ガンマ線の熱輻射を出して蒸発してしまい、現在のガンマ線の観測で蒸発す る様子が見えるはずです。しかし、これまでの観測からそうした現象は見られないので、原始ブラックホールがダークマターになっているなら、もっと重くないといけないということになります」、なるほど。 「要求される条件は、左巻きニュートリノの数万倍以上の重さ、つまり、数千eVの質量をもつ必要があります。重い右巻きニュートリノは、X線光子を出して崩壊することが理論的に予言されています。その光子を検出できれば、右巻きニュートリノがダークマターであると確定する可能性があります」、まだまだ発展途上の学問のようだ。
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宇宙(その1)(人間の身体は「星の爆発」から生まれた? 宇宙望遠鏡が教えてくれた「私たちはどこから来たのか」、直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?、宇宙ビジネスが活発なアメリカと日本の決定的差 「リスクを避ける組織文化」を乗り越えるには) [科学技術]

今日は、宇宙(その1)(人間の身体は「星の爆発」から生まれた? 宇宙望遠鏡が教えてくれた「私たちはどこから来たのか」、直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?、宇宙ビジネスが活発なアメリカと日本の決定的差 「リスクを避ける組織文化」を乗り越えるには)を取上げよう。

先ずは、昨年5月14日付けAERAdot「人間の身体は「星の爆発」から生まれた? 宇宙望遠鏡が教えてくれた「私たちはどこから来たのか」」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/articles/-/194728?page=1
・『1960年代以降、人類は100機以上の宇宙望遠鏡を打ち上げてきた。そしていま現在も20機以上の観測機が軌道上にあり、宇宙の謎を解き明かすデータを日々大量に送り続けている。 そもそも、なぜ望遠鏡を宇宙に打ち上げなければならないのか? それによって私たちは何を知ろうとしているのか? 国立天文台の縣秀彦氏に監修をいただいた拙著『宇宙望遠鏡と驚異の大宇宙』から、そのヒントを紹介したい。 私たちが星を観ようとするとき、それは夜に限られる。夜であっても天候が悪く、雲があれば見ることができない。また、揺らぐ大気によって星は瞬くため、望遠鏡を使用しても星の姿を鮮明に観測することは難しい。こうした制約から逃れる唯一の方法が、宇宙に望遠鏡を設置することだ。宇宙空間であればつねに星が観測でき、同じ光度で輝き続けるため、精度の高い観測が可能になる。 宇宙から天体を観測するもうひとつの理由として挙げられるのは、「電磁波の性質」の活用だ。 電磁波とは、医療機器にも使用される「ガンマ線」や「X線」、私たちの肌を痛める「紫外線」、ヒトが目で見ることができる「可視光線」、テレビのリモコンにも使用される「赤外線」、テレビやラジオに使用される「電波」に大別される。そして星々は、私たちが目視できる可視光線だけでなく、じつにさまざまな「光」や「電波」を発していて、これらを幅広く観測することで、その星の実体をより正確に知ることができるのだ。) では、それぞれの電磁波は何が違うのか。「波長の長さ」だ。 上のイラストを見ると、波長の短いガンマ線がいちばん左に描かれ、右にいくほど波長が長くなる。そして、宇宙から降り注ぐこれらの電磁波のうち、地上に到達しているのは主に「可視光線」と「電波」だけだ(マイクロ波は電波の一種)。つまり、それ以外のガンマ線やX線、紫外線、赤外線の大部分は、大気に吸収されて地上に届かず、地上からは十分に観測できない。 地上にも大型望遠鏡は数多くあるが、それらは「可視光線」を観測するための望遠鏡、または「電波望遠鏡」がほとんどだ。例外は、「近赤外線」。可視光線に近接する波長を持つ「近赤外線」は、可視光線に対して開かれた「大気の窓」をギリギリにかすめて地上に届く。そのため近赤外線を観測する望遠鏡も地上に建設されている。 天文観測において、もうひとつ面白い法則がある。星が放つ光や電波などの電磁波を観測すれば、その星がどんな成分で出来ているのかがわかるのだ。 ヒトの目に見える可視光線は、プリズムを通すと7色に分解できる。これを「分光」という。また、分光された光が虹のようにズラリと並んだものを「スペクトル」という。スペクトルが並ぶ順番はつねに決まっていて、その色の違いは、すなわち波長の違いを意味する。 ここで重要なのは、可視光線が虹のように分光できるのと同じように、ガンマ線、X線、紫外線、赤外線、電波もスペクトルに分解できるという点だ。 宇宙望遠鏡に搭載された主鏡は、星が発する光(電磁波)をレンズで集める。その光を「分光器」(スペクトロメータ)で波長ごとに分解し、そのデータを地上局に送る。こうした一連の作業が、宇宙望遠鏡に課せられた主な役割だ。望遠鏡や分光器の仕組みは電磁波の種類によって異なるため、多くの機体においては「X線観測機」や「赤外線宇宙望遠鏡」など、特定の光を観測する専用機として開発されることが多い。) 天文観測においてこの分光が重要なのは、何万光年も離れた星が発した電磁波を分光することにより、その天体を形成する物質の種類、量、比率のほか、天体の表面温度などが把握できる点にある。また、地球から遠ざかる星は赤く、近づく星は青く見えるため、その光の波長を調べることで、星の運動さえ分析することができる。 前述の国立天文台・縣氏監修の『宇宙望遠鏡と驚異の大宇宙』では、これらを詳細に解説しているが、ここでは簡単に、星の成分について紹介したい。 上のイラストは、ハッブルがとらえた「イータカリーナ星雲」のスペクトルを表したものだ。タテに白く見える線は「輝線」(きせん)と呼ばれ、とくに強い波長を示している。この輝線は、特定の物質によって生まれる。つまり、何万光年も離れた星が放った光を、分光器を通してスペクトルに分解し、どの波長が強く、どんな組み合わせで表れるかを調べれば、その星の構成元素を知ることができるのだ。このイータカリーナ星雲のスペクトルからは、Fe(鉄)やNi(ニッケル)が検出されていることがわかる。 138億年前にビッグバンが発生したが、その際に生まれた元素は、水素(H)とヘリウム(He)と、ほんのわずかなリチウム(Li)とベリリウム(Be)などだけ。つまり、「水兵リーベ」の冒頭に並ぶ軽い元素だけだ。しかし、私たちの身体は、主に酸素(O)、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、カルシウム(Ca)などからなり、微量元素としては鉄(Fe)、フッ素(F)、ケイ素(Si)なども含まれる。こうした多様な元素は、どこで生まれたのか? ビッグバンで生まれた水素やヘリウムは、ガスやチリとなって宇宙を漂っていた。やがてそれらは重力によって集積し、その結果、星が生まれた。その内部では核融合反応がはじまり、水素からヘリウムが合成され、ヘリウムからは炭素が合成され、さらに炭素は酸素、そしてケイ素などへと変容し、最後は鉄(Fe)が生成されていった。) その星が寿命を迎えて爆発すると、それら元素は拡散して宇宙を漂い、やがてその元素を材料にして、また新たな星が生まれる。こうした宇宙の営みが繰り返される間に、やがて生命が誕生した。つまり、私たちの身体は、かつてどこかに存在した恒星の内部で生成された元素でできているといえる。 宇宙望遠鏡がはじめて打ち上げられた1960年代以降、新たな星や天文現象が、急速な勢いで次々と発見されてきた。しかし、それは単なる天体の発見に留まらない。歴代の宇宙望遠鏡の観測から得られたデータを詳細に分析することによって、私たちはいま、「地球はどのように生まれたのか」「宇宙はなぜ誕生したのか」「私たちはどこから来たのか」ということさえ、知ろうとしているのだ』、「138億年前にビッグバンが発生したが、その際に生まれた元素は、水素(H)とヘリウム(He)と、ほんのわずかなリチウム(Li)とベリリウム(Be)などだけ。つまり、「水兵リーベ」の冒頭に並ぶ軽い元素だけだ・・・ビッグバンで生まれた水素やヘリウムは、ガスやチリとなって宇宙を漂っていた。やがてそれらは重力によって集積し、その結果、星が生まれた。その内部では核融合反応がはじまり、水素からヘリウムが合成され、ヘリウムからは炭素が合成され、さらに炭素は酸素、そしてケイ素などへと変容し、最後は鉄(Fe)が生成されていった・・・その星が寿命を迎えて爆発すると、それら元素は拡散して宇宙を漂い、やがてその元素を材料にして、また新たな星が生まれる。こうした宇宙の営みが繰り返される間に、やがて生命が誕生した。つまり、私たちの身体は、かつてどこかに存在した恒星の内部で生成された元素でできているといえる・・・歴代の宇宙望遠鏡の観測から得られたデータを詳細に分析することによって、私たちはいま、「地球はどのように生まれたのか」「宇宙はなぜ誕生したのか」「私たちはどこから来たのか」ということさえ、知ろうとしているのだ」、なるほど。

次に、昨年5月16日付けAERAdot「直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/articles/-/194734?page=1
・『自然科学の分野では、偶然によって新たな事実が発見されることがある。太陽の8倍以上の質量をもつ恒星が爆発するとき、極度にエネルギーが高い「ガンマ線バースト」が発せられる場合があるが、この天文現象はアメリカが打ち上げた軍事衛星によって偶然発見された。宇宙望遠鏡による天文観測は1960年代にはじまったが、その契機ともなったこの軍事衛星について、拙著『宇宙望遠鏡と驚異の大宇宙』をもとに紹介したい。 アメリカ、イギリス、旧ソ連は、1963年に「部分的核実験禁止条約」を締結した。これにもとづいて米国防総省は、各国が同条約を順守し、核実験を実施していないかを監視するため、「ヴェラ」と呼ばれる軍事衛星を打ち上げた。 ヴェラは、地球上のどこかで核爆発が起こると、そこから放射されるX線やガンマ線、中性子線などを軌道上で感知する。米国は1963年から1970年にかけ、AとBの2機からなるヴェラをワンセットにして、計6回、12機のヴェラを打ち上げた。 1967年4月28日に打ち上げられた「ヴェラ4号」がある日、奇妙なデータを補足する。ロスアラモス国立研究所の研究員が調査した結果、それは大気圏内からではなく、宇宙から飛来したガンマ線であることが判明。続いて打ち上げられた5号(1969年5月)と6号(1970年4月)も、同様のガンマ線を複数捕捉し、その発生源の位置を割り出すことに成功した。結果、それは人類にとって未知の天文現象である「ガンマ線バースト」から発せられたものであることが突き止められた。 ガンマ線バーストとは、恒星が爆発(超新星爆発)した際に、閃光(せんこう)のように放出される電磁波のこと。エネルギー量が極度に高く、その出力は太陽が100億年間に放出するエネルギーに匹敵するともいわれる。もしそのビームのような電磁波の直撃を受ければ、地球サイズの天体は瞬時に蒸発してしまうだろう。爆発した恒星の質量が太陽の8倍以上であれば中性子星になり、25倍以上の場合には、そこにブラックホールが誕生すると考えられている。) 謎のガンマ線が宇宙から降り注いでいることがヴェラによって判明すると、各国は本格的に天文観測衛星を打ち上げはじめた。1970年にNASAが打ち上げた世界初のX線観測衛星「SAS-A ウフル」もその一機だ。ガンマ線バーストやブラックホールなど、高エネルギーな電磁波が放出される天文現象では、ガンマ線のほかにX線などが放出される。それを検知する天文観測衛星である。 ウフルは、「はくちょう座」にある超巨星を重点的に観測した。この星は、ペアとなるもうひとつの恒星との共通の重心を周る「連星(双子星)」である。太陽の30倍もの質量を持つこの超巨星が、他の何者かによって、操られるかのように奇妙な軌道を描くからには、その相手の天体はさらに大きな質量を持っていると予想された。しかし、その星が見つからない。つまり、この超巨星とペアを組む相手は、見えないブラックホールである可能性が高い。 ウフルは、見えない相手(主星)がいると予想される領域を重点的に観測した。その結果、強いX線の放射を発見した。これが史上はじめて特定されたブラックホールの有力候補である。後日この天体は「はくちょう座X-1」と命名された。 1960年代、ヴェラによってガンマ線バーストが偶然発見され、1970年代にはウフルがブラックホールの候補を特定した。人類にとって未知であったそれらの天体を発見してから半世紀が過ぎた2019年には、ブラックホールの間接的撮影にも成功し、2021年からはブラックホールのマップ作製も開始されている。 宇宙望遠鏡による天文観測が進化した結果、いまでは宇宙に存在する全エネルギー量を計算することにも成功している。その23%をダークマター、73%をダークエネルギーが占めることも判明しているが、その両者の正体はいまだ謎のままだ。しかし、この半世紀で人類が明らかにした真実と、天文観測技術の劇的な進化を思えば、こうした宇宙の謎が解き明かされる日は、さほど遠くないに違いない』、「太陽の8倍以上の質量をもつ恒星が爆発するとき、極度にエネルギーが高い「ガンマ線バースト」が発せられる場合があるが、この天文現象はアメリカが打ち上げた軍事衛星によって偶然発見された・・・「部分的核実験禁止条約」を締結した。これにもとづいて米国防総省は、各国が同条約を順守し、核実験を実施していないかを監視するため、「ヴェラ」と呼ばれる軍事衛星を打ち上げた。 ヴェラは、地球上のどこかで核爆発が起こると、そこから放射されるX線やガンマ線、中性子線などを軌道上で感知する。米国は1963年から1970年にかけ、AとBの2機からなるヴェラをワンセットにして、計6回、12機のヴェラを打ち上げた。 1967年4月28日に打ち上げられた「ヴェラ4号」がある日、奇妙なデータを補足する。ロスアラモス国立研究所の研究員が調査した結果、それは大気圏内からではなく、宇宙から飛来したガンマ線であることが判明。続いて打ち上げられた5号(1969年5月)と6号(1970年4月)も、同様のガンマ線を複数捕捉し、その発生源の位置を割り出すことに成功した。結果、それは人類にとって未知の天文現象である「ガンマ線バースト」から発せられたものであることが突き止められた。 ガンマ線バーストとは、恒星が爆発(超新星爆発)した際に、閃光(せんこう)のように放出される電磁波のこと。エネルギー量が極度に高く、その出力は太陽が100億年間に放出するエネルギーに匹敵するともいわれる。もしそのビームのような電磁波の直撃を受ければ、地球サイズの天体は瞬時に蒸発してしまうだろう。爆発した恒星の質量が太陽の8倍以上であれば中性子星になり、25倍以上の場合には、そこにブラックホールが誕生すると考えられている・・・いまでは宇宙に存在する全エネルギー量を計算することにも成功している。その23%をダークマター、73%をダークエネルギーが占めることも判明しているが、その両者の正体はいまだ謎のままだ。しかし、この半世紀で人類が明らかにした真実と、天文観測技術の劇的な進化を思えば、こうした宇宙の謎が解き明かされる日は、さほど遠くないに違いない」、早く解明されることを期待する。

第三に、本年7月31日付け東洋経済オンラインが掲載した DigitalBlast 代表取締役CEOの堀口 真吾氏による「宇宙ビジネスが活発なアメリカと日本の決定的差 「リスクを避ける組織文化」を乗り越えるには」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/784154?display=b
・『小型ライフサイエンス実験装置の研究開発を行う会社や、企業のDXや宇宙ビジネスコンサルティングを行う会社の代表も務め、宇宙利用の拡大を目指している堀口真吾さんは、次のように話します。 「今、世界中で勢いを増す宇宙ビジネスの状況は、世界を変えたIT革命前夜と同じであるように感じます。まさに宇宙が社会を変える、『スペース・トランスフォーメーション』が起きつつあり、宇宙という場を利用していかに価値を生み出していくかが問われています」 今後ISSが退役し「ポストISS」といわれる時代になるに際し、どのような設備・機能・サービスがあればいいのか。また、宇宙にはどのような特徴があり、環境としてどのように使うことができるのかをつづった『スペース・トランスフォーメーション』より、一部抜粋・再構成してお届けします』、興味深そうだ。
・『日本の宇宙産業に求められる「民間開放」  宇宙産業は、産業育成という側面があまり重視されない期間が長く続きました。そのため、実績ある企業のみが継続して宇宙事業に取り組むこととなり、その結果、経験やノウハウの蓄積に偏りが生じて新規参入のハードルも高くなったことで、産業としての広がりが見られなかったのです。 実績のないスタートアップに投資し、一から育てた米国政府と違い、日本政府は民間を活用する事業を実施しようという場合に、まず「過去の実績」や「会社の規模」を問います。おそらく、「国民の税金を使うため、可能な限り失敗を避ける」ことを優先するためでしょう。 確かに、公共事業において、可能な限り失敗を避け、無駄な税金を使わないという考え方は重要です。しかし、新分野の産業を振興する際、政府がある程度の失敗を許容し、前進していく意識を持たなければ、民間の活力を生かして産業を発展させることは不可能です。) 政府は2023年11月、宇宙ビジネスの競争力を高めるため、10年で1兆円の「宇宙戦略基金」を創設することを決めました。宇宙領域のスタートアップ企業の育成や他分野からの参入の促進を狙いにしています。企業はこれを好機と捉え、「どうすれば官の資金を有効に使えるか」を考えていく必要があります』、「実績のないスタートアップに投資し、一から育てた米国政府と違い、日本政府は民間を活用する事業を実施しようという場合に、まず「過去の実績」や「会社の規模」を問います。おそらく、「国民の税金を使うため、可能な限り失敗を避ける」ことを優先するためでしょう・・・10年で1兆円の「宇宙戦略基金」を創設することを決めました。宇宙領域のスタートアップ企業の育成や他分野からの参入の促進を狙いにしています。企業はこれを好機と捉え、「どうすれば官の資金を有効に使えるか」を考えていく必要があります」、なるほど。
・『政府には「目利きの力」が必要  では、今後はどうすれば良いのか。政府はまず、新産業をもたらすチャレンジである宇宙産業については、一般の公共事業と一線を画し、日本にとって将来有益となる投資だという認識を持って、政策を立案、実行していく必要があります。 米国のように実績のない企業であっても入札などで選定できるようになるには、真の技術力や実行力を見抜く「目利きの力」が必要です。また、民間企業が投資できない、経済的効果に直接つながるわけではない宇宙基礎科学の分野に特化して資金を投入すべきです。持続的に科学振興を推進した結果、イノベーションが興り、経済活動の発展に結び付いた事例は多くあります。 米国はハッブル宇宙望遠鏡や火星探査機シリーズ、火星の表面を走破した無人探査機「スピリット」「オポチュニティ」など、宇宙科学分野で次々と成果を上げてきました。そうした積み重ねがあったからこそ、民間企業側から「宇宙旅行」「火星移住計画」といった目標が登場し、SpaceXをはじめとした企業が躍進して、経済活動と力強く結び付くに至ったのです。 民間企業はどうすれば良いのでしょうか。日本の宇宙産業はプレーヤーが限定された状態が長く続いてきました。まず、多くの企業が宇宙産業に自社が加わる可能性を検討し、宇宙産業の裾野を拡大して多様な挑戦を行う意欲を高めることが必要です。宇宙に関連した大規模な産業が創出されることを見据え、自社のサービス・製品を宇宙産業にどう生かすべきか、今こそ各企業が真剣に探索してほしいと願っています。) 現在、産業界の新潮流はIoT(Internet of Things)やAI(人工知能)、ビッグデータなどのデジタルビジネスです。日本はこの新潮流に乗り遅れています。デジタルビジネスは米国を中心に動いています。 なぜ、日本はデジタルビジネスに乗り遅れたのでしょうか。「もの売りビジネスからデジタルビジネス(サービス化)にシフトできなかった」「グローバル化の遅れ」など、さまざまな理由が挙げられますが、その根本にあるのは「リスクを避ける組織文化」にあると、私は考えます』、「米国はハッブル宇宙望遠鏡や火星探査機シリーズ、火星の表面を走破した無人探査機「スピリット」「オポチュニティ」など、宇宙科学分野で次々と成果を上げてきました。そうした積み重ねがあったからこそ、民間企業側から「宇宙旅行」「火星移住計画」といった目標が登場し、SpaceXをはじめとした企業が躍進して、経済活動と力強く結び付くに至ったのです・・・多くの企業が宇宙産業に自社が加わる可能性を検討し、宇宙産業の裾野を拡大して多様な挑戦を行う意欲を高めることが必要です。宇宙に関連した大規模な産業が創出されることを見据え、自社のサービス・製品を宇宙産業にどう生かすべきか、今こそ各企業が真剣に探索してほしいと願っています・・・デジタルビジネスは米国を中心に動いています。 なぜ、日本はデジタルビジネスに乗り遅れたのでしょうか。「もの売りビジネスからデジタルビジネス(サービス化)にシフトできなかった」「グローバル化の遅れ」など、さまざまな理由が挙げられますが、その根本にあるのは「リスクを避ける組織文化」にあると、私は考えます」、なるほど。
・『宇宙ビジネスというニューフロンティア  日本は国内市場がそれなりに大きいため、新たなビジネス展開や海外展開に打って出るよりも、既存ビジネスの延長線上でビジネスを広げることがリスクの最小化につながるという発想にとどまっています。 しかし現実には、日本はすでに人口減少が始まっていて、国内市場は中長期的な視点では決して安泰ではありません。それなのに、中長期的視点から新機軸のビジネス展開に取り組む動きは活発ではありません。 これは、かつてさまざまなイノベーションを起こしてきた日本企業の多くで創業者が引退し、成長に伴って組織が大きくなったことで意思決定のスピードが以前より遅くなったこと、過去の成功に基づいて収益を上げるための組織構造・組織文化が強固に出来上がっているからこそ、急激な社会・経済状況の変化に対応できてない面があるといえます。) こうした組織文化を変革するためにも、私は日本の大企業が宇宙ビジネスに目を向け、宇宙ビジネスをニューフロンティアと位置付けて真剣に取り組むことを期待しています』、「成長に伴って組織が大きくなったことで意思決定のスピードが以前より遅くなったこと、過去の成功に基づいて収益を上げるための組織構造・組織文化が強固に出来上がっているからこそ、急激な社会・経済状況の変化に対応できてない面があるといえます。) こうした組織文化を変革するためにも、私は日本の大企業が宇宙ビジネスに目を向け、宇宙ビジネスをニューフロンティアと位置付けて真剣に取り組むことを期待しています」、なるほど。
・『宇宙は本当にビジネスになるのか  株主などのステークホルダーからは「宇宙は本当にビジネスになるのか」といった疑問の声が出てくることでしょう。しかし、宇宙には「金のなる木」がいくらでも存在します。 例えば、太陽系には、地球上では希少で価値の高いレアアースを多く含むとみられる小惑星があります。月には常に太陽に面している場所があり、エネルギー創出の場として注目されています。 また、宇宙を舞台とした映画や広告の制作、宇宙旅行など、宇宙エンターテインメントも活発になるでしょう。つまり、発想次第で可能性は無限に広がるのです。 大企業が積極的に投資をすると、リスクは軽減されます。しかし、一度確立した組織文化を変えることは難しいため、少しずつ変革する必要があります。そのきっかけとして、既存事業とは別物で飛躍が必要な宇宙ビジネスを活用できるのではないでしょうか。 どんな企業でも、宇宙ビジネスは新規事業と位置付けることができます。それだけでなく、市場が国内に閉じていないため、最初からグローバルな視点で取り組むことになります。いきなりロケット開発や資源探査事業に参画するのは難しいかもしれませんが、まずは自社にとって身近な分野から段階的に始めるのが良いでしょう。GPSや衛星リモートセンシングなど、宇宙データの活用からスモールスタートを切る方法も一案だと思います』、「宇宙には「金のなる木」がいくらでも存在します。 例えば、太陽系には、地球上では希少で価値の高いレアアースを多く含むとみられる小惑星があります。月には常に太陽に面している場所があり、エネルギー創出の場として注目されています。 また、宇宙を舞台とした映画や広告の制作、宇宙旅行など、宇宙エンターテインメントも活発になるでしょう。つまり、発想次第で可能性は無限に広がるのです・・・既存事業とは別物で飛躍が必要な宇宙ビジネスを活用できるのではないでしょうか。 どんな企業でも、宇宙ビジネスは新規事業と位置付けることができます。それだけでなく、市場が国内に閉じていないため、最初からグローバルな視点で取り組むことになります。いきなりロケット開発や資源探査事業に参画するのは難しいかもしれませんが、まずは自社にとって身近な分野から段階的に始めるのが良いでしょう。GPSや衛星リモートセンシングなど、宇宙データの活用からスモールスタートを切る方法も一案だと思います」、その通りだ。
タグ:宇宙 (その1)(人間の身体は「星の爆発」から生まれた? 宇宙望遠鏡が教えてくれた「私たちはどこから来たのか」、直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?、宇宙ビジネスが活発なアメリカと日本の決定的差 「リスクを避ける組織文化」を乗り越えるには) AERAdot「人間の身体は「星の爆発」から生まれた? 宇宙望遠鏡が教えてくれた「私たちはどこから来たのか」」 「138億年前にビッグバンが発生したが、その際に生まれた元素は、水素(H)とヘリウム(He)と、ほんのわずかなリチウム(Li)とベリリウム(Be)などだけ。つまり、「水兵リーベ」の冒頭に並ぶ軽い元素だけだ・・・ビッグバンで生まれた水素やヘリウムは、ガスやチリとなって宇宙を漂っていた。やがてそれらは重力によって集積し、その結果、星が生まれた。その内部では核融合反応がはじまり、水素からヘリウムが合成され、ヘリウムからは炭素が合成され、さらに炭素は酸素、そしてケイ素などへと変容し、最後は鉄(Fe)が生成されてい った・・・その星が寿命を迎えて爆発すると、それら元素は拡散して宇宙を漂い、やがてその元素を材料にして、また新たな星が生まれる。こうした宇宙の営みが繰り返される間に、やがて生命が誕生した。つまり、私たちの身体は、かつてどこかに存在した恒星の内部で生成された元素でできているといえる・・・歴代の宇宙望遠鏡の観測から得られたデータを詳細に分析することによって、私たちはいま、「地球はどのように生まれたのか」「宇宙はなぜ誕生したのか」「私たちはどこから来たのか」ということさえ、知ろうとしているのだ」、なるほど。 AERAdot「直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?」 「太陽の8倍以上の質量をもつ恒星が爆発するとき、極度にエネルギーが高い「ガンマ線バースト」が発せられる場合があるが、この天文現象はアメリカが打ち上げた軍事衛星によって偶然発見された・・・「部分的核実験禁止条約」を締結した。これにもとづいて米国防総省は、各国が同条約を順守し、核実験を実施していないかを監視するため、「ヴェラ」と呼ばれる軍事衛星を打ち上げた。 ヴェラは、地球上のどこかで核爆発が起こると、そこから放射されるX線やガンマ線、中性子線などを軌道上で感知する。米国は1963年から1970年にかけ、AとBの2機からなるヴェラをワンセットにして、計6回、12機のヴェラを打ち上げた。 1967年4月28日に打ち上げられた「ヴェラ4号」がある日、奇妙なデータを補足する。ロスアラモス国立研究所の研究員が調査した結果、それは大気圏内からではなく、宇宙から飛来したガンマ線であることが判明。続いて打ち上げられた5号(1969年5月)と6号(1970年4月)も、同様のガ ンマ線を複数捕捉し、その発生源の位置を割り出すことに成功した。結果、それは人類にとって未知の天文現象である「ガンマ線バースト」から発せられたものであることが突き止められた。 ガンマ線バーストとは、恒星が爆発(超新星爆発)した際に、閃光(せんこう)のように放出される電磁波のこと。エネルギー量が極度に高く、その出力は太陽が100億年間に放出するエネルギーに匹敵するともいわれる。もしそのビームのような電磁波の直撃を受ければ、地球サイズの天体は瞬時に蒸発してしまうだろう。爆発した恒星の質量が太陽の8倍以上であれば 中性子星になり、25倍以上の場合には、そこにブラックホールが誕生すると考えられている・・・いまでは宇宙に存在する全エネルギー量を計算することにも成功している。その23%をダークマター、73%をダークエネルギーが占めることも判明しているが、その両者の正体はいまだ謎のままだ。しかし、この半世紀で人類が明らかにした真実と、天文観測技術の劇的な進化を思えば、こうした宇宙の謎が解き明かされる日は、さほど遠くないに違いない」、早く解明されることを期待する。 東洋経済オンライン 堀口 真吾氏による「宇宙ビジネスが活発なアメリカと日本の決定的差 「リスクを避ける組織文化」を乗り越えるには」 「実績のないスタートアップに投資し、一から育てた米国政府と違い、日本政府は民間を活用する事業を実施しようという場合に、まず「過去の実績」や「会社の規模」を問います。おそらく、「国民の税金を使うため、可能な限り失敗を避ける」ことを優先するためでしょう・・・10年で1兆円の「宇宙戦略基金」を創設することを決めました。 宇宙領域のスタートアップ企業の育成や他分野からの参入の促進を狙いにしています。企業はこれを好機と捉え、「どうすれば官の資金を有効に使えるか」を考えていく必要があります」、なるほど。 「米国はハッブル宇宙望遠鏡や火星探査機シリーズ、火星の表面を走破した無人探査機「スピリット」「オポチュニティ」など、宇宙科学分野で次々と成果を上げてきました。そうした積み重ねがあったからこそ、民間企業側から「宇宙旅行」「火星移住計画」といった目標が登場し、SpaceXをはじめとした企業が躍進して、経済活動と力強く結び付くに至ったのです・・・ 多くの企業が宇宙産業に自社が加わる可能性を検討し、宇宙産業の裾野を拡大して多様な挑戦を行う意欲を高めることが必要です。宇宙に関連した大規模な産業が創出されることを見据え、自社のサービス・製品を宇宙産業にどう生かすべきか、今こそ各企業が真剣に探索してほしいと願っています・・・デジタルビジネスは米国を中心に動いています。 なぜ、日本はデジタルビジネスに乗り遅れたのでしょうか。「もの売りビジネスからデジタルビジネス(サービス化)にシフトできなかった」「グローバル化の遅れ」など、さまざまな理由が挙げられますが、そ の根本にあるのは「リスクを避ける組織文化」にあると、私は考えます」、なるほど。 「成長に伴って組織が大きくなったことで意思決定のスピードが以前より遅くなったこと、過去の成功に基づいて収益を上げるための組織構造・組織文化が強固に出来上がっているからこそ、急激な社会・経済状況の変化に対応できてない面があるといえます。) こうした組織文化を変革するためにも、私は日本の大企業が宇宙ビジネスに目を向け、宇宙ビジネスをニューフロンティアと位置付けて真剣に取り組むことを期待しています」、なるほど。 「宇宙には「金のなる木」がいくらでも存在します。 例えば、太陽系には、地球上では希少で価値の高いレアアースを多く含むとみられる小惑星があります。月には常に太陽に面している場所があり、エネルギー創出の場として注目されています。 また、宇宙を舞台とした映画や広告の制作、宇宙旅行など、宇宙エンターテインメントも活発になるでしょう。つまり、発想次第で可能性は無限に広がるのです・・・ 既存事業とは別物で飛躍が必要な宇宙ビジネスを活用できるのではないでしょうか。 どんな企業でも、宇宙ビジネスは新規事業と位置付けることができます。それだけでなく、市場が国内に閉じていないため、最初からグローバルな視点で取り組むことになります。いきなりロケット開発や資源探査事業に参画するのは難しいかもしれませんが、まずは自社にとって身近な分野から段階的に始めるのが良いでしょう。GPSや衛星リモートセンシングなど、宇宙データの活用からスモールスタートを切る方法も一案だと思います」、その通りだ。
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生命科学(その3)(ヒトの「不死」細胞はすでに存在している驚愕事実 ただし、皆が思い描く不老不死の実現は難しい、「企業に特許を取られるとマズい…」京都大学が特許を取得せざるをえない衝撃のウラ事情…普通とは「180度違う発想」、「AIが人間を事前に逮捕」人間とAIの協力の先に起こりうる衝撃的な「近未来」をノーベル賞科学者・山中伸弥が徹底解説、宇宙のどこかに人間みたいな生命体がいる必然 宇宙物理学者・佐藤勝彦×生物学者・福岡伸一) [科学技術]

生命科学については、2022年1月7日に取上げた。今日は、(その3)(ヒトの「不死」細胞はすでに存在している驚愕事実 ただし、皆が思い描く不老不死の実現は難しい、「企業に特許を取られるとマズい…」京都大学が特許を取得せざるをえない衝撃のウラ事情…普通とは「180度違う発想」、「AIが人間を事前に逮捕」人間とAIの協力の先に起こりうる衝撃的な「近未来」をノーベル賞科学者・山中伸弥が徹底解説、宇宙のどこかに人間みたいな生命体がいる必然)である。

先ずは、本年1月21日付け東洋経済オンラインが掲載した 慶應義塾大学 環境情報学部 教授の黒田 裕樹 氏による「ヒトの「不死」細胞はすでに存在している驚愕事実 ただし、皆が思い描く不老不死の実現は難しい」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/727921
・『「永遠の命を実現する技術など、この世にはない」というのが一般的な考え方でしょう。しかし、永遠の命をどのように定義するかによっては、すでに実現されている技術もあるのだとか。 それは一体どのような技術なのか。永遠の命、不老不死は実現可能なのか?分子生物学者の黒田裕樹さんが解説します。 ※本稿は『希望の分子生物学: 私たちの「生命観」を書き換える』から一部抜粋・再構成したものです』、興味深そうだ。
・『不老不死にあこがれてきた人類  不老不死の願いは、時代や文化、性別や年齢を問わず、多くの人々が抱くものです。この願いを叶えるヒントがバイオ技術には隠されているかもしれません。 最近日本で人気を博したアニメ『鬼滅の刃』では、鬼になることで不老不死になれるという設定になっていました。ただし、鬼になると、直射日光を避ける必要がある、一般的な食事を楽しめないなどの制約がつきます。とはいえ、満身創痍でまさに死の淵にある時であれば、それらの条件を受け入れる人も一定数いることでしょう。 また、『ハリー・ポッター』シリーズでは、主要な悪役ヴォルデモートが永遠の命を求め、「ホーキュクス」という古代の闇の魔法を使う決意をします。それは、すなわちハリー・ポッターに関する大きな秘密にもなります。つまり、不老不死への追求とその困難さが、シリーズの重要なテーマとして描かれているわけです。 バイオを志す大学の新入生と話をすることも多々ありますが、その中には「いつかバイオの力で不老不死を実現したい」と希望する学生もよく見かけます。はたして、ヴォルデモートが興味の矛先をホーキュクスから変えてくれそうなものがバイオによって実現するでしょうか。) もし、永遠の命の定義が「自分自身のゲノム配列を持つ細胞が永久に生き残れること」であったとすれば、それはすでに実現しています。例えば、HeLa細胞(※1)は、1951年に取り出されたヒトのがん細胞に由来しており、これまで何十年にもわたって世界中の研究室で繁殖し続けているからです。 しかし、不老不死への渇望は自分自身のゲノム配列を持つ細胞が永久に生き残るだけで満たされるものではありません。少なくとも自分自身が持つ精神世界が永遠に維持され、刺激を受け入れることができ(インプット)、それに対して適切な反応をすることができること(アウトプット)が含まれるでしょう。 つまり、脳を中心とした中枢神経系と、それに対するインプットとアウトプットが正常に機能している状況を永遠に維持する必要性があります。それを考えただけでも不老不死の実現は極めて困難であると言わざるをえません。 (※1)ヒーラ細胞と発音する。Henrietta Lacksという女性患者の子宮頸部腫瘍から採取された生検標本をもとに樹立された培養細胞株。ヒトにおいて初めて株化に成功した例となる。この細胞株を用いて、子宮頸がんの原因ウイルスが解明され、2008年のノーベル生理学・医学賞の対象となっている。翌2009年の同賞はテロメアに関する研究が対象になり、その研究の中でもHeLa細胞が活用されている。輝かしい功績を持つ細胞であるが、本人に知らされることなく採取・樹立された背景があり、個人情報の保護やインフォームド・コンセントの観点から、大きな問題に発展したこともある』、「HeLa細胞(※1)は、1951年に取り出されたヒトのがん細胞に由来しており、これまで何十年にもわたって世界中の研究室で繁殖し続けているからです。 しかし、不老不死への渇望は自分自身のゲノム配列を持つ細胞が永久に生き残るだけで満たされるものではありません。少なくとも自分自身が持つ精神世界が永遠に維持され、刺激を受け入れることができ(インプット)、それに対して適切な反応をすることができること(アウトプット)が含まれるでしょう・・・脳を中心とした中枢神経系と、それに対するインプットとアウトプットが正常に機能している状況を永遠に維持する必要性があります。それを考えただけでも不老不死の実現は極めて困難であると言わざるをえません」、そこまでの高度な定義では、確かに難しそうだ。
・『損傷が蓄積されていく神経細胞  時間とともに、私たちの細胞は適切に機能したり分裂したりする能力を失います。このプロセスは「セネセンス」(※2)と呼ばれます。それは脳細胞にも当てはまります。時間の経過とともに、紫外線、放射線、化学物質、通常の代謝プロセスで発生する活性酸素などから私たちのDNAは損傷を受けます。 (※2)細胞が一定の回数分裂すると、その細胞の分裂能力が失われ、増殖が停止する現象を指す。この状態の細胞は死んでいるわけではなく、一定の活動を続けている。セネセンスを経た細胞は、分泌物の変化や形態の変化など、様々な特徴を持つ。最終的には炎症反応の促進や組織の再生の妨げとなるなど、様々な負の影響を及ぼすようになる。) 修復メカニズムは存在しますが、すべての場合において治せるものではなく、時間の経過とともに損傷は蓄積されていきます。一度失われた神経細胞は再生することが難しく、特にヒトの大脳皮質などの領域では新しい神経細胞がほとんど生まれないため、損傷や老化による神経細胞の損失は永続的なものとなります。 何らかの幹細胞を入れたからといって、失われた神経ネットワークの一部を元通りにすることはほぼ不可能です。つまり、脳の機能の永遠の維持は極めて困難なものと言えるでしょう』、「時間の経過とともに、紫外線、放射線、化学物質、通常の代謝プロセスで発生する活性酸素などから私たちのDNAは損傷を受けます。 (※2)細胞が一定の回数分裂すると、その細胞の分裂能力が失われ、増殖が停止する現象を指す。この状態の細胞は死んでいるわけではなく、一定の活動を続けている。セネセンスを経た細胞は、分泌物の変化や形態の変化など、様々な特徴を持つ。最終的には炎症反応の促進や組織の再生の妨げとなるなど、様々な負の影響を及ぼすようになる・・・修復メカニズムは存在しますが、すべての場合において治せるものではなく、時間の経過とともに損傷は蓄積されていきます。一度失われた神経細胞は再生することが難しく、特にヒトの大脳皮質などの領域では新しい神経細胞がほとんど生まれないため、損傷や老化による神経細胞の損失は永続的なものとなります」、なるほど。
・『脳は不老不死の実現を難しくさせる最大の要因  脳は極めて複雑な神経細胞ネットワークの集合体であり、セネセンスを考慮すれば中枢神経系はいつしか衰退の一途をたどらざるをえません。それは体全体の制御、恒常性の調節にも支障をきたします。そういったところに問題が生じれば、脳も酸素や栄養素を十分に受け取れなくなります。 その負のスパイラルは生物個体としての死につながるでしょう。脳は不老不死の実現を難しくさせる最大の要因の一つと言えますが、それぞれの臓器・組織においても似たことが言えます。 30兆を超える細胞から成り立つ、様々な臓器や組織が協調しながら成り立っている人体において、何か一つの問題が生じると連鎖的に他の箇所にも影響が及ぶことは避けられません。以上は私たちの細胞における問題点ですが、ほかの問題点として免疫系の老化が挙げられます。) 特に免疫系の総司令官的な働きをするヘルパーT細胞の成熟には「胸腺」という臓器が欠かせません。しかし、胸腺は思春期頃をピークにして、徐々に脂肪組織に置き換えられて萎縮していきます。 そのため、成人を過ぎてからは年々、免疫応答の質と量は劣化の道をたどります。これも、何らかの臓器・組織の疾患につながる要素となり、死を近づけるものになるでしょう』、「特に免疫系の総司令官的な働きをするヘルパーT細胞の成熟には「胸腺」という臓器が欠かせません。しかし、胸腺は思春期頃をピークにして、徐々に脂肪組織に置き換えられて萎縮していきます。 そのため、成人を過ぎてからは年々、免疫応答の質と量は劣化の道をたどります。これも、何らかの臓器・組織の疾患につながる要素となり、死を近づけるものになるでしょう」、なるほど。
・『生物である限り、受け入れるしかない老化と死  そもそも、なぜ老化と死があるのでしょうか。その大きな理由の一つは老化と死があることが生物種としての利点となることです。ここで「始原生殖細胞」という特別な細胞を意識することが重要になります。 始原生殖細胞とは、精子や卵になるために特別枠のような形で体の中にキープされる細胞のことです。精子と卵が受精してできた受精卵が何度かの分裂を繰り返した発生のごく初期の時点で始原生殖細胞はつくられます。 その後の体は「始原生殖細胞」と「始原生殖細胞以外の領域」に識別されると言えるでしょう。 私たちが、若さを保ちたい、死にたくない、と考えている精神世界は、物理的には「始原生殖細胞以外の領域」にあたります。 特定の生物種が存続していくためには、始原生殖細胞を介した次世代への遺伝子の受け渡しが必要であり、受け渡しを完了した「始原生殖細胞以外の領域」は、始原生殖細胞の観点からはいつしか邪魔な存在になります。 進化の歴史の中では、特定の生物種において、寿命が延びる傾向のある変異が生じたこともきっとあることでしょう。) しかし、始原生殖細胞にとって利点のない「始原生殖細胞以外の領域」の寿命延長は、その生物種の生存競争においてマイナスに働き、絶滅につながってきたと思われます。 今のそれぞれの生物種の持つ平均的な寿命は、そうした進化の歴史の中で最もバランスのよい形として実現されてきたものと言えるでしょう。生物である限り、やはり死は受け入れるしかないものだと思います』、「精子と卵が受精してできた受精卵が何度かの分裂を繰り返した発生のごく初期の時点で始原生殖細胞はつくられます。 その後の体は「始原生殖細胞」と「始原生殖細胞以外の領域」に識別される・・・受け渡しを完了した「始原生殖細胞以外の領域」は、始原生殖細胞の観点からはいつしか邪魔な存在になります。 進化の歴史の中では、特定の生物種において、寿命が延びる傾向のある変異が生じたこともきっとあることでしょう。) しかし、始原生殖細胞にとって利点のない「始原生殖細胞以外の領域」の寿命延長は、その生物種の生存競争においてマイナスに働き、絶滅につながってきたと思われます・・・生物である限り、やはり死は受け入れるしかないものだと思います」、なるほど。
・『「食事」「睡眠」「ストレス」の管理が重要  近年、レスベラトロール、コエンザイムQ10、オメガ3脂肪酸、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)、さらにアストラガルス(オウギ)という植物に含まれる成分などに、老化を遅らせ、健康寿命を延ばす効果があるとして、サプリメントという形で売り出されています。 確かに、それらはこれまでに実験的に報告された寿命などに関わる分子機構に影響を与える要素はあると思います。 ただし、先に述べましたように、老化は様々な要素が複合的に作用しながら進むものです。 特定の分子レベルのシナリオを強制的に変更したからといって、生物個体全体の老化をストップ/スローダウンさせることまでが実現するとは思えません。 また、特定の化学物質を過剰に摂取した場合の安全性についても、不安視される要素はあります。 やはり、適度なカロリー量の栄養バランスのとれた食事、良質かつ十分な睡眠、そしてストレスを少なくすることなどが、普段の生活の中で、生物個体の本体のメンテナンスのために最も重視すべき選択肢ではないでしょうか』、「老化を遅らせ、健康寿命を延ばす効果があるとして、サプリメントという形で売り出されています。 確かに、それらはこれまでに実験的に報告された寿命などに関わる分子機構に影響を与える要素はあると思います。 ただし、先に述べましたように、老化は様々な要素が複合的に作用しながら進むものです。 特定の分子レベルのシナリオを強制的に変更したからといって、生物個体全体の老化をストップ/スローダウンさせることまでが実現するとは思えません。 また、特定の化学物質を過剰に摂取した場合の安全性についても、不安視される要素はあります。 やはり、適度なカロリー量の栄養バランスのとれた食事、良質かつ十分な睡眠、そしてストレスを少なくすることなどが、普段の生活の中で、生物個体の本体のメンテナンスのために最も重視すべき選択肢ではないでしょうか」、その通りだ。

次に、3月27日付け現代ビジネスが掲載したノーベル賞科学者の山中 伸弥氏と棋士の羽生善治氏による対談「「企業に特許を取られるとマズい…」京都大学が特許を取得せざるをえない衝撃のウラ事情…普通とは「180度違う発想」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/126031?imp=0
・『「iPS細胞技術の最前線で何が起こっているのか」、「将棋をはじめとするゲームの棋士たちはなぜ人工知能に負けたのか」…もはや止めることのできない科学の激動は、すでに私たちの暮らしと世界を変貌させつつある。 人間の「価値」が揺らぐこの時代の未来を見通すべく、“ノーベル賞科学者”山中伸弥と“史上最強棋士”羽生善治が語り合う『人間の未来AIの未来』(山中伸弥・羽生善治著)より抜粋してお届けする。 『人間の未来AIの未来』連載第4回 『なぜ研究者は「隠したがる」のか…天才科学者・山中伸弥が羽生善治に明かす、あまりに非効率すぎる生命科学界のヤバい「伝統」』より続く』、興味深そうだ。
・『生命科学での「特許の暴力」  羽生 その特許についてもお聞きしたいんです。アメリカでは「パテント・トロール」と言って、他人から特許を買い集めて、その特許を侵害していると目をつけた相手から巨額の賠償金やライセンス料を得ようとする人たちが問題になりましたね。それは生命科学の世界では起こっていないんでしょうか。 山中 いやいや、あります。そういうことを得意としている会社もありますよ。だから、僕たちは利益を得るためというよりも、どちらかと言うと防御のためにパテントを出願せざるを得ないんです。 羽生 そうなんですか。 山中 iPS細胞は基本的な技術です。それをプラットフォームにして、いろいろなアプリケーションを開発することが可能です。だからiPS細胞そのものを開発した僕たちからすると、できるだけ制約なく、できるだけ多くの人にその技術を使ってもらいたい。 でも羽生さんが言われたように、僕たちの特許とは別に、営利目的で特許出願をする会社もあります。そういうところで部分的にでも特許が成立してしまうと、iPS細胞の技術がすごく使いづらくなってしまいます。特許は本来、営利企業が開発した技術を独占して利益を確保するために取るものですけれど、僕たちからすると、まったく逆なんです』、「iPS細胞は基本的な技術です。それをプラットフォームにして、いろいろなアプリケーションを開発することが可能です。だからiPS細胞そのものを開発した僕たちからすると、できるだけ制約なく、できるだけ多くの人にその技術を使ってもらいたい。 でも羽生さんが言われたように、僕たちの特許とは別に、営利目的で特許出願をする会社もあります。そういうところで部分的にでも特許が成立してしまうと、iPS細胞の技術がすごく使いづらくなってしまいます」、なるほど。
・『私たちが「特許の値下げ」を主張した理由  山中 京都大学のような公的機関が特許を取得して、ライセンス料をリーズナブルに設定する。そうすることによって、一企業の特許取得による技術の独占を防いで、いろいろな研究機関がより広く、自由にiPS細胞を使える環境を確保する。 同じ特許ですけれども、意味が180度違うわけです。実際、私たちは2017年、富士フィルムに細胞の開発・製造の特許料を下げるよう要請しました。 羽生 特許は企業が持つよりも、大学が持ったほうが公益に資するんでしょうね。 山中 大学が特許を持つのは大切ですね。企業は収益を上げる目的が優先されますから。新たに開発された薬や医療は異常に高額で、中には患者さん1人に1億円かかるものもあります。これは世界的な脅威です。 羽生 企業は株主から利潤を求められるという事情も、もちろんあるでしょうね。 山中 そうですね。それぞれのアプリケーションは、絶対に収益を上げないと発展していかないので。けれども、根幹のところ、基盤部分は、できるだけ広く使ってもらいたい。OSと一緒です。 以前、マイクロソフトはどんどんOSを公開して、アップルは閉鎖的でしたね。結果として、どちらがよかったのかはわかりませんが、基本的に基盤部分はオープンにするのが世の流れになっています。生命科学の分野でも、根本的な技術はできるだけ囲い込まずにやることが、研究の進展にとっては非常に大切だと思います。 『「AIが人間を事前に逮捕」人間とAIの協力の先に起こりうる衝撃的な「近未来」をノーベル賞科学者・山中伸弥が徹底解説』に続く』、「生命科学の分野でも、根本的な技術はできるだけ囲い込まずにやることが、研究の進展にとっては非常に大切だと思います」、その通りだ。

第三に、3月27日付け現代ビジネスが掲載したノーベル賞科学者の山中 伸弥氏と棋士の羽生善治氏による対談「「AIが人間を事前に逮捕」人間とAIの協力の先に起こりうる衝撃的な「近未来」をノーベル賞科学者・山中伸弥が徹底解説」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/126034?imp=0
・『「iPS細胞技術の最前線で何が起こっているのか」、「将棋をはじめとするゲームの棋士たちはなぜ人工知能に負けたのか」…もはや止めることのできない科学の激動は、すでに私たちの暮らしと世界を変貌させつつある。 人間の「価値」が揺らぐこの時代の未来を見通すべく、“ノーベル賞科学者”山中伸弥と“史上最強棋士”羽生善治が語り合う『人間の未来AIの未来』(山中伸弥・羽生善治著)より抜粋してお届けする。 『人間の未来AIの未来』連載第5回 『「企業に特許を取られるとマズい…」京都大学が特許を取得せざるをえない衝撃のウラ事情…普通とは「180度違う発想」』より続く』、興味深そうだ。
・『誰もが「外付けの知能」を持っている  羽生 誰もがスマホを持っていて、それはある意味外付けの知能を持っているということでもある。そういう意味では、今後、私たち人間は「知能」とか「知性」をもう一度定義しなおさなければならなくなるかもしれません。人類の歴史は「高い知能を持っているのは人間だけ」という前提でここまで来ました。 でも将来、AIのIQが3千とか1万になると言われています。すると、その前提が崩れるかもしれません。「この分野でAIは人間以上のことができる」とか「これは人間にはできても、AIにはできないだろう」といった議論をしているときに、「では人間が持つ『高い知能』の知能とは、いったい何なんだろう?」とあらためて考えざるを得なくなると思います。 でも「知能とは何なのか」と問われると、結局わからない、という結論にたどりついてしまいます。人間には「実現はできるんだけれど説明できない」とか、「実際に思っていることや感じていることでも、すべてを言葉で表現することはできない」といった分野があまりにも多く残されているように思います。 山中 まさにブラックボックスですね』、「「知能とは何なのか」と問われると、結局わからない、という結論にたどりついてしまいます」、なるほど。
・『AIと人間の協力は果たしてユートピアか?  羽生 ただ、AIの進化によって人間の知能と対比するものが出てきたことになりますから、人間の知能の姿をあぶり出す可能性はある気がします。これまでは比較する対象がなかったので、「知能とは何か」については答えが保留されていましたが、AIという比較対象を得たことで、「知能とはこういうものだったのか」と人間の知能の本質にアプローチできる可能性が出てきました。 「人間の知能の正体を探究していけば、人間の知能と同じようなAIを作ることができるはずだ」と考えて研究している人たちも、かなりいます。 山中 AIと人間が協力し合う世界では、どういう可能性が生まれるんでしょうか。 羽生 そこに私は関心があります。たとえば、アメリカでAIを活用した防犯パトロールの事例があります。全米でも犯罪発生率が高い街のことです。人員も限られているため、犯罪の発生地域や頻度などさまざまなデータを基に、AIに「今日、どこにパトロールに行けばいいか」を決めてもらったそうです。 ベテラン警官が「なぜ犯罪なんか絶対に起こりそうにない閑静な住宅街に行かなきゃいけないんだ」と言いつつ、AIの指示通りにパトロールに行くと、なぜか怪しい人がいて、まさに犯行に及ぼうと……。結果的に犯罪発生率が劇的に低下したそうです。 SF映画の『マイノリティ・リポート』を思い出しました。AIが「殺人を犯す」と予知した人間を事前に逮捕するようになっているという、ある意味とんでもない近未来社会を描いています』、「アメリカでAIを活用した防犯パトロールの事例があります。全米でも犯罪発生率が高い街のことです。人員も限られているため、犯罪の発生地域や頻度などさまざまなデータを基に、AIに「今日、どこにパトロールに行けばいいか」を決めてもらったそうです。 ベテラン警官が「なぜ犯罪なんか絶対に起こりそうにない閑静な住宅街に行かなきゃいけないんだ」と言いつつ、AIの指示通りにパトロールに行くと、なぜか怪しい人がいて、まさに犯行に及ぼうと……。結果的に犯罪発生率が劇的に低下したそうです」、なるほど。
・『AIがもたらす「ブラックボックス問題」  山中 でも、それも荒唐無稽と笑っていられませんね。 羽生 そうなんです。現在のAIは民間企業が開発しているので、ある時期まで基本的に開発プランは公開されず、あるとき、「こんなものができました」と世の中に発表される形ですね。 そういう状況では、AIの開発について、社会が新しい規準や新しい倫理をつくるといっても、どうしても現実のほうに先を越されて後手に回ってしまいます。そして、その規準や倫理を誰が、どこで、どういう形で決めるのか、その枠組みすらできていない段階では、極めて漠然とした話になるのでは、とも思います。 データがある世界では、AIは人間の経験値を超える結果を生み出す可能性があります。ただ、それが絶対かと言われると、絶対ではないわけです。そのとき、先ほども言った「ブラックボックス問題」、結果はうまく行っているけれど、そのプロセスが誰にも見えない状況を人間の側が受け入れられるかどうかが問われます。 理屈としては理解できなくなって、AIが出した結果なり結論なりを信じるか信じないか、ただそれだけの話になってしまう可能性もあります。でも人間は人間なりに考えたり、発想したりすることを捨ててはいけない、やめてはいけないと思います』、「「ブラックボックス問題」、結果はうまく行っているけれど、そのプロセスが誰にも見えない状況を人間の側が受け入れられるかどうかが問われます。 理屈としては理解できなくなって、AIが出した結果なり結論なりを信じるか信じないか、ただそれだけの話になってしまう可能性もあります。でも人間は人間なりに考えたり、発想したりすることを捨ててはいけない、やめてはいけないと思います」、その通りだ。

第四に、4月29日付け東洋経済オンラインが掲載した生物学者・青山学院大学教授・ロックフェラー大学客員教授の福岡 伸一氏と宇宙物理学者・東京大学名誉教授の 佐藤 勝彦氏の対談「宇宙のどこかに人間みたいな生命体がいる必然 宇宙物理学者・佐藤勝彦×生物学者・福岡伸一」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/749629
・『「生命とは何か」という根源的な問いに向き合い、生命理論「動的平衡」を唱える生物学者・福岡伸一さんが文学、芸術、建築、芸能、宇宙物理学など、さまざまな分野の第一人者と対談した『新版 動的平衡ダイアローグ: 9人の先駆者と織りなす「知の対話集」』。 このうち、宇宙物理学者の佐藤勝彦さんと『「知的生命体」が宇宙にいるのは必然か』をテーマに対談した様子を同書から一部を抜粋、再編集し、お届けします』、興味深そうだ。
・『「それ」は地球の生命に似ているか  福岡佐藤さんはご著書のなかで、地球外生命は存在するのかという問題を取り上げられておられますよね。この分野にとくに関心がおありなんですか。 佐藤私自身がそうした研究を進めているわけではありませんが、「宇宙における生命」についての研究は、今後大きく発展していく新しい分野だと思っているんです。 天文学、生物学の境界領域であり、少数ではありますが、それぞれの分野の研究者がこの問題に取り組んでいます。幸い、私が機構長を務めている(対談当時)自然科学研究機構には、天文学と生物学、それぞれの研究所があります。 ですから、「宇宙における生命」の研究を応援し、強化していくことは、私たちの責務だとも思っているんです。 福岡2010年にNASAの宇宙生物学研究所の研究グループが、「カリフォルニア州のモノ湖で、リンの代わりにヒ素を使って生命活動を行う細菌を発見した」と発表して、大きな話題になりましたよね。 リンは地球の生命体を構成する主要元素の1つですが、それを使わずに生きられる細菌がいるなら、リンのない天体にも生命が存在できることになる。 これが事実なら、今後の地球外生命の探索にも影響を与えるのでは、といわれました。 その後、この発表には信憑性を疑う批判が相次いで出たわけですけど、宇宙における生命を考える場合、地球の生命体のようなものを想定するのか、あるいは、まったく異なる生命形態も含めて探るのか、2つの道があると思います。そのあたりはどうお考えですか。 佐藤そうですね。まず、いま自然科学研究機構の国立天文台が中心になって進めているのは、太陽系外の惑星、とくに水が液体で安定して存在できるハビタブルゾーン(生命居住可能領域)にある惑星を探す研究なんです。 さらにそこから、それらの惑星を詳しく観測して、生命の有無を探っていくことになるでしょう。その際、初めはいま知られている唯一の生命体である地球型の生命を探すことになるはずです。) 福岡まずは、宇宙における生命体を、地球型生命体のバリエーションとして考えるわけですね。 佐藤ええ。しかし、もちろん、それだけでは終わらない。私たちの知る地球の植物は太陽光を使って光合成を行っていますが、例えば、恒星にはいろんな種類の星があり、太陽より少し小さい星は太陽より温度が低く赤みを帯びています。 その周りを回る惑星には、地球の植物とは大きく異なるメカニズムで光合成を行う植物も存在するかもしれません。しだいにそういうところまで、探査の対象を広げていければと思っています』、いま自然科学研究機構の国立天文台が中心になって進めているのは、太陽系外の惑星、とくに水が液体で安定して存在できるハビタブルゾーン(生命居住可能領域)にある惑星を探す研究なんです。 さらにそこから、それらの惑星を詳しく観測して、生命の有無を探っていくことになるでしょう。その際、初めはいま知られている唯一の生命体である地球型の生命を探すことになるはずです」、なるほど。
・『宇宙はここ以外にも無限に存在する  佐藤私自身は宇宙論の研究者なので、本当はいろいろな生命体を考えたいんです。事実、宇宙科学者は、これまでにさまざまな地球外生命を発想してきました。 たとえば、私たちのように化学反応ではなく、原子核反応によって生命活動を行うもの。有機物の代わりに、プラズマ状態にある無機物で構成される生命体。 フレッド・ホイルというイギリスの天文学者が1957年に発表した『暗黒星雲』というSF小説では、暗黒星雲そのものが知的生命体として描かれています。 奇想天外にも思えますけど、ホイルは、恒星の内側で炭素や酸素などの元素が合成されることを明らかにするなど、数々の功績を遺した天才的天文学者で、この物語もある程度、科学的根拠のある話です。 あるいは、アメリカのダイソンという物理学者が……。 福岡ああ、フリーマン・ダイソンですね。 佐藤現在の物理学では、質量をもった物質はやがて崩壊し、電子やニュートリノや光になるといわれますが、ダイソンは、そのように物質が消え去った後でも、新たな生命が生まれてくる可能性はあると述べています。 そして、人類自体が宇宙生命体となり、太陽系を越え、はるか銀河系にまで広がっていくだろうと。 将来的には、そのあたりまで生命への洞察を拡大できれば素晴らしい。さらにその上には、「人間原理」という概念がありますけど。 福岡「この宇宙の物理定数が、ちょうど人間の生存に適した値になっているのはなぜか」という問題ですね。 佐藤ええ、宇宙はなぜこんなにうまく、人間が生まれるようにデザインされているのか。「デザイン」というと、ちょっと怖いですが(笑)。) 福岡佐藤さんはそれをどう説明されますか。 佐藤私たち物理学者は、それをマルチバース(多宇宙)という概念で説明できると考えています。これは、私たちがいる宇宙の他にも、宇宙が無限に存在するという考え方ですね。 私が1981年に「インフレーション理論」を発表したときも、1つの宇宙から多くの宇宙が次々に誕生するという論文を書きましたが、最近はその部分の理論が大きく進歩し、それらの宇宙では、物理法則までがそれぞれに異なると考えられています。 この考えのもとにあるのは、物質の基本要素を、粒ではなく、ひも状の存在とする「超ひも理論」です。 私たちがいる空間は、縦、横、高さのある3次元空間ですけれど、この理論に従えば、その周りには10次元の宇宙が広がり、そこには2次元や5次元の宇宙空間も存在していることになります。 さらに、「超ひも理論」をベースに発展した最新の仮説では、3次元空間に閉じ込められた私たちには単にそれらが見えないだけで、物理法則も次元も異なる宇宙は無限に存在するといわれています』、「「人間原理」という概念がありますけど。 福岡「この宇宙の物理定数が、ちょうど人間の生存に適した値になっているのはなぜか」という問題ですね。 佐藤ええ、宇宙はなぜこんなにうまく、人間が生まれるようにデザインされているのか。「デザイン」というと、ちょっと怖いですが(笑)。) 福岡佐藤さんはそれをどう説明されますか。 佐藤私たち物理学者は、それをマルチバース(多宇宙)という概念で説明できると考えています。これは、私たちがいる宇宙の他にも、宇宙が無限に存在するという考え方ですね・・・物質の基本要素を、粒ではなく、ひも状の存在とする「超ひも理論」です。 私たちがいる空間は、縦、横、高さのある3次元空間ですけれど、この理論に従えば、その周りには10次元の宇宙が広がり、そこには2次元や5次元の宇宙空間も存在していることになります。 さらに、「超ひも理論」をベースに発展した最新の仮説では、3次元空間に閉じ込められた私たちには単にそれらが見えないだけで、物理法則も次元も異なる宇宙は無限に存在するといわれています」、壮大な理論のようだ。
・『「宇宙は10の500乗存在する」  福岡「人間原理」では、この宇宙が人間に適して見えるのは、「まさに私たちがそこにいるからだ」といいますよね。 佐藤そうです。スタンフォード大学の物理学者で、この分野の権威であるレオナルド・サスキンドは「宇宙は10の500乗存在する」といっています。 仮にそれだけ多くの宇宙が多様な物理法則をもつとすれば、そのどこかで知的生命体が生まれているかもしれない。その生命体は、私たちと同じように、自分のいる世界はじつにうまくできていると感じているはずです。 つまり、認識主体がいるからその世界が存在するので、主体がいない宇宙はそもそも認識されない。誰も質問する人がいないので。 福岡質問する人がいない(笑)。質問が生まれるような宇宙なら、つじつまが合うのは当然だということですね。) 佐藤しかし一方、物理学者としては、「多様な物理法則」という考え方に対してフラストレーションもあります。物理学者は、この世界を総(す)べる物理法則は、必然的にたった1つに定まっていると信じたい。 その信念のもと、究極の法則を探り出すことに、最大の喜びがあるんです。 福岡そこにイデア(理念/観念)のようなものを見ているわけですね。 佐藤もちろん、すべての人がこうした考え方に同意してくれるわけではありません。 以前、ある生物学者の方からは、「物理法則なんてそれほど大仰なものじゃない。地球に人間が生まれたのはたまたま環境がそれに適していたからで、物理法則もそういう環境因子の1つに過ぎないよ」といわれました(笑)』、「物理学者は、この世界を総(す)べる物理法則は、必然的にたった1つに定まっていると信じたい。 その信念のもと、究極の法則を探り出すことに、最大の喜びがあるんです。 福岡そこにイデア(理念/観念)のようなものを見ているわけですね・・・ある生物学者の方からは、「物理法則なんてそれほど大仰なものじゃない。地球に人間が生まれたのはたまたま環境がそれに適していたからで、物理法則もそういう環境因子の1つに過ぎないよ」といわれました(笑)』、「物理法則もそういう環境因子の1つに過ぎない」、との考えには私には違和感を感じる。
・『恐竜が知的生物になった可能性もある  福岡じつは、こんな思考実験があるんです。 私たちのいるこの宇宙の歴史はおよそ138億年、そのうち地球の歴史は46億年、さらに、地球に生命が誕生してから38億年がたったといわれます。つまり、生命は、地球誕生の8億年後に生まれたことになる。 では、その8億年の歴史が、さまざまな環境条件を含めてまったく同じように再現され、繰り返されたとき、同じ進化のプロセスをたどって、いまと同じ人間が生まれてくるだろうか。 私は、生まれてこないと思うのですが。 佐藤私も、生まれないと思いますね。よく、いまから6550万年前に地球に巨大隕石が落ち、それによって恐竜が滅んだために、哺乳類が知的生物へと進化したといわれますよね。 しかし、あの時期にあの隕石が落ちたのは、極めて偶然です。隕石が落ちず、人間の代わりに恐竜が知的生物になった可能性すらあると思います。 福岡私は、同じ環境が再現されれば同じ結果がもたらされるというのは、イデアを求めすぎる考え方ではないかと思うんです。 同じ条件で隕石が落ちても、一部の恐竜は生き残ったかもしれないし、その後に残った哺乳類もいまのように栄えなかったかもしれない。 進化の過程にはさまざまな岐路が存在し、そのうちどれを選ぶかの選択には、偶然としか思えないことがたくさんあります。 たとえば、私たちの体をつくるアミノ酸にはL体とD体という2つの異性体があって、地球の生物はすべてL体を使っています。 そこに必然はなく、たまたま最初に誕生した生命がL体を選んだに過ぎない。同じ環境が繰り返されれば、次はD体が選ばれるかもしれません。 そう考えると、同一の進化のプロセスは二度と繰り返されないと思えます。 とくに西洋には、環境さえ再現されれば必ず人間が地球を支配するというある種のドグマ(独特の教義や教理)がありますけど、それはちょっと違うと思うんです。 佐藤そうですね。ただ、私自身は、知的生命体についてはもう少し別の見方ができると思っています。 確かに進化の過程でたくさんのサイコロが振られることを思えば、2、3回の実験でいまと同じ人間が生まれてくるとは考えにくい。しかし、地球のような星が他に無数にあるとするなら、どこかで人間のような知的生命体が生まれることは、統計的に必然です。 つまり、いま恐竜が知的生命体になったかもしれないと申し上げましたけど、ありとあらゆる場所にありとあらゆる生物が生まれ得るなら、そこには何らかの形で必ず知的生命体が含まれるはずです。 その場合、それがわれわれと同じように、DNAから生まれる生命体である可能性も決して低くないのではないでしょうか』、「いま恐竜が知的生命体になったかもしれないと申し上げましたけど、ありとあらゆる場所にありとあらゆる生物が生まれ得るなら、そこには何らかの形で必ず知的生命体が含まれるはずです。 その場合、それがわれわれと同じように、DNAから生まれる生命体である可能性も決して低くないのではないでしょうか」、なるほど。
・『宇宙が広すぎて出会えていないだけ?  福岡だとすると、私たちが地球外の知的生命体とまだ出会えていないのは、宇宙が広すぎるからでしょうか。 佐藤そう考えるのが、おそらく最も可能性が高いと思います。 銀河系における恒星間の平均距離は、およそ3光年(1光年はおよそ10兆キロメートル)。一方、いま人間がつくれる最速の宇宙船の速度は、光速の0.1パーセントにも満たない。これでは、隣の星へ行くだけで何万年もかかります。 おそらくこうした距離が、お互いの邂逅を妨げているのではないか。しかし、電波などの調査で今後も知的生命体の存在が確認できないとなれば、その理由をもっと深刻に考えないとなりません』、「銀河系における恒星間の平均距離は、およそ3光年(1光年はおよそ10兆キロメートル)。一方、いま人間がつくれる最速の宇宙船の速度は、光速の0.1パーセントにも満たない。これでは、隣の星へ行くだけで何万年もかかります。 おそらくこうした距離が、お互いの邂逅を妨げているのではないか。しかし、電波などの調査で今後も知的生命体の存在が確認できないとなれば、その理由をもっと深刻に考えないとなりません」、「その理由をもっと深刻に考えないとなりません」、どういう意味なのだろう。残念ながら私には理解不能だ。
タグ:生命科学 (その3)(ヒトの「不死」細胞はすでに存在している驚愕事実 ただし、皆が思い描く不老不死の実現は難しい、「企業に特許を取られるとマズい…」京都大学が特許を取得せざるをえない衝撃のウラ事情…普通とは「180度違う発想」、「AIが人間を事前に逮捕」人間とAIの協力の先に起こりうる衝撃的な「近未来」をノーベル賞科学者・山中伸弥が徹底解説、宇宙のどこかに人間みたいな生命体がいる必然 宇宙物理学者・佐藤勝彦×生物学者・福岡伸一) 東洋経済オンライン 黒田 裕樹 氏による「ヒトの「不死」細胞はすでに存在している驚愕事実 ただし、皆が思い描く不老不死の実現は難しい」 『希望の分子生物学: 私たちの「生命観」を書き換える』 「HeLa細胞(※1)は、1951年に取り出されたヒトのがん細胞に由来しており、これまで何十年にもわたって世界中の研究室で繁殖し続けているからです。 しかし、不老不死への渇望は自分自身のゲノム配列を持つ細胞が永久に生き残るだけで満たされるものではありません。少なくとも自分自身が持つ精神世界が永遠に維持され、刺激を受け入れることができ(インプット)、 それに対して適切な反応をすることができること(アウトプット)が含まれるでしょう・・・脳を中心とした中枢神経系と、それに対するインプットとアウトプットが正常に機能している状況を永遠に維持する必要性があります。それを考えただけでも不老不死の実現は極めて困難であると言わざるをえません」、そこまでの高度な定義では、確かに難しそうだ。 「時間の経過とともに、紫外線、放射線、化学物質、通常の代謝プロセスで発生する活性酸素などから私たちのDNAは損傷を受けます。 (※2)細胞が一定の回数分裂すると、その細胞の分裂能力が失われ、増殖が停止する現象を指す。この状態の細胞は死んでいるわけではなく、一定の活動を続けている。セネセンスを経た細胞は、分泌物の変化や形態の変化など、様々な特徴を持つ。最終的には炎症反応の促進や組織の再生の妨げとなるなど、様々な負の影響を及ぼすようになる・・・ 修復メカニズムは存在しますが、すべての場合において治せるものではなく、時間の経過とともに損傷は蓄積されていきます。一度失われた神経細胞は再生することが難しく、特にヒトの大脳皮質などの領域では新しい神経細胞がほとんど生まれないため、損傷や老化による神経細胞の損失は永続的なものとなります」、なるほど。 「特に免疫系の総司令官的な働きをするヘルパーT細胞の成熟には「胸腺」という臓器が欠かせません。しかし、胸腺は思春期頃をピークにして、徐々に脂肪組織に置き換えられて萎縮していきます。 そのため、成人を過ぎてからは年々、免疫応答の質と量は劣化の道をたどります。これも、何らかの臓器・組織の疾患につながる要素となり、死を近づけるものになるでしょう」、なるほど。 「精子と卵が受精してできた受精卵が何度かの分裂を繰り返した発生のごく初期の時点で始原生殖細胞はつくられます。 その後の体は「始原生殖細胞」と「始原生殖細胞以外の領域」に識別される・・・受け渡しを完了した「始原生殖細胞以外の領域」は、始原生殖細胞の観点からはいつしか邪魔な存在になります。 進化の歴史の中では、特定の生物種において、寿命が延びる傾向のある変異が生じたこともきっとあることでしょう。) しかし、始原生殖細胞にとって利点のない「始原生殖細胞以外の領域」の寿命延長は、その生物種の生存競争においてマイナ スに働き、絶滅につながってきたと思われます・・・生物である限り、やはり死は受け入れるしかないものだと思います」、なるほど。 「老化を遅らせ、健康寿命を延ばす効果があるとして、サプリメントという形で売り出されています。 確かに、それらはこれまでに実験的に報告された寿命などに関わる分子機構に影響を与える要素はあると思います。 ただし、先に述べましたように、老化は様々な要素が複合的に作用しながら進むものです。 特定の分子レベルのシナリオを強制的に変更したからといって、生物個体全体の老化をストップ/スローダウンさせることまでが実現するとは思えません。 また、特定の化学物質を過剰に摂取した場合の安全性についても、不安視される要素はありま す。 やはり、適度なカロリー量の栄養バランスのとれた食事、良質かつ十分な睡眠、そしてストレスを少なくすることなどが、普段の生活の中で、生物個体の本体のメンテナンスのために最も重視すべき選択肢ではないでしょうか」、その通りだ。 現代ビジネス 山中 伸弥氏と棋士の羽生善治氏 対談「「企業に特許を取られるとマズい…」京都大学が特許を取得せざるをえない衝撃のウラ事情…普通とは「180度違う発想」」 「iPS細胞は基本的な技術です。それをプラットフォームにして、いろいろなアプリケーションを開発することが可能です。だからiPS細胞そのものを開発した僕たちからすると、できるだけ制約なく、できるだけ多くの人にその技術を使ってもらいたい。 でも羽生さんが言われたように、僕たちの特許とは別に、営利目的で特許出願をする会社もあります。そういうところで部分的にでも特許が成立してしまうと、iPS細胞の技術がすごく使いづらくなってしまいます」、なるほど。 「生命科学の分野でも、根本的な技術はできるだけ囲い込まずにやることが、研究の進展にとっては非常に大切だと思います」、その通りだ。 山中 伸弥氏と棋士の羽生善治氏による対談「「AIが人間を事前に逮捕」人間とAIの協力の先に起こりうる衝撃的な「近未来」をノーベル賞科学者・山中伸弥が徹底解説」 「「知能とは何なのか」と問われると、結局わからない、という結論にたどりついてしまいます」、なるほど。 「アメリカでAIを活用した防犯パトロールの事例があります。全米でも犯罪発生率が高い街のことです。人員も限られているため、犯罪の発生地域や頻度などさまざまなデータを基に、AIに「今日、どこにパトロールに行けばいいか」を決めてもらったそうです。 ベテラン警官が「なぜ犯罪なんか絶対に起こりそうにない閑静な住宅街に行かなきゃいけないんだ」と言いつつ、AIの指示通りにパトロールに行くと、なぜか怪しい人がいて、まさに犯行に及ぼうと……。結果的に犯罪発生率が劇的に低下したそうです」、なるほど。 「「ブラックボックス問題」、結果はうまく行っているけれど、そのプロセスが誰にも見えない状況を人間の側が受け入れられるかどうかが問われます。 理屈としては理解できなくなって、AIが出した結果なり結論なりを信じるか信じないか、ただそれだけの話になってしまう可能性もあります。でも人間は人間なりに考えたり、発想したりすることを捨ててはいけない、やめてはいけないと思います」、その通りだ。 福岡 伸一氏 佐藤 勝彦氏の対談「宇宙のどこかに人間みたいな生命体がいる必然 宇宙物理学者・佐藤勝彦×生物学者・福岡伸一」 いま自然科学研究機構の国立天文台が中心になって進めているのは、太陽系外の惑星、とくに水が液体で安定して存在できるハビタブルゾーン(生命居住可能領域)にある惑星を探す研究なんです。 さらにそこから、それらの惑星を詳しく観測して、生命の有無を探っていくことになるでしょう。その際、初めはいま知られている唯一の生命体である地球型の生命を探すことになるはずです」、なるほど。 「「人間原理」という概念がありますけど。 福岡「この宇宙の物理定数が、ちょうど人間の生存に適した値になっているのはなぜか」という問題ですね。 佐藤ええ、宇宙はなぜこんなにうまく、人間が生まれるようにデザインされているのか。「デザイン」というと、ちょっと怖いですが(笑)。) 福岡佐藤さんはそれをどう説明されますか。 佐藤私たち物理学者は、それをマルチバース(多宇宙)という概念で説明できると考えています。これは、私たちがいる宇宙の他にも、宇宙が無限に存在するという考え方ですね・・・物質の基本要素を、粒ではなく、ひも状の存在とする「超ひも理論」です。 私たちがいる空間は、縦、横、高さのある3次元空間ですけれど、この理論に従えば、その周りには10次元の宇宙が広がり、そこには2次元や5次元の宇宙空間も存在していることになります。 さらに、「超ひも理論」をベースに発展した最新の仮説では、3次元空間に閉じ込められた私たちには単にそれらが見えないだけで、物理法則も次元も異なる宇宙は無限に存在するといわれています」、壮大な理論のようだ。 「物理学者は、この世界を総(す)べる物理法則は、必然的にたった1つに定まっていると信じたい。 その信念のもと、究極の法則を探り出すことに、最大の喜びがあるんです。 福岡そこにイデア(理念/観念)のようなものを見ているわけですね・・・ある生物学者の方からは、「物理法則なんてそれほど大仰なものじゃない。地球に人間が生まれたのはたまたま環境がそれに適していたからで、物理法則もそういう環境因子の1つに過ぎないよ」といわれました(笑)』、 「物理法則もそういう環境因子の1つに過ぎない」、との考えには私には違和感を感じる。 「いま恐竜が知的生命体になったかもしれないと申し上げましたけど、ありとあらゆる場所にありとあらゆる生物が生まれ得るなら、そこには何らかの形で必ず知的生命体が含まれるはずです。 その場合、それがわれわれと同じように、DNAから生まれる生命体である可能性も決して低くないのではないでしょうか」、なるほど。 「銀河系における恒星間の平均距離は、およそ3光年(1光年はおよそ10兆キロメートル)。一方、いま人間がつくれる最速の宇宙船の速度は、光速の0.1パーセントにも満たない。これでは、隣の星へ行くだけで何万年もかかります。 おそらくこうした距離が、お互いの邂逅を妨げているのではないか。しかし、電波などの調査で今後も知的生命体の存在が確認できないとなれば、その理由をもっと深刻に考えないとなりません」、 「その理由をもっと深刻に考えないとなりません」、どういう意味なのだろう。残念ながら私には理解不能だ。
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ノーベル賞受賞(その8)(「暗黒物質ダークマター」は《お母さん》?「だからぜひ会ってみたいですね」と言い切る理論物理学者・村山斉さんが語る「人類すべての母」、重力波 ヒッグス粒子 ニュートリノ質量 銀河中心の超巨大BHという超発見が続々…「素粒子物理の夢の時代」にトップランナーが語る「夢のその先」、闇市で得た1000ドルをテディベアに隠して出国…「ワクチンでノーベル賞」カリコ氏の壮絶人生) [科学技術]

ノーベル賞受賞については、2019年11月23日に取上げた。久しぶりの今日は、(その8)(「暗黒物質ダークマター」は《お母さん》?「だからぜひ会ってみたいですね」と言い切る理論物理学者・村山斉さんが語る「人類すべての母」、重力波 ヒッグス粒子 ニュートリノ質量 銀河中心の超巨大BHという超発見が続々…「素粒子物理の夢の時代」にトップランナーが語る「夢のその先」、闇市で得た1000ドルをテディベアに隠して出国…「ワクチンでノーベル賞」カリコ氏の壮絶人生)である。
ノーベル賞受賞については、2019年11月23日に取上げた。久しぶりの今日は、(その8)(「暗黒物質ダークマター」は《お母さん》?「だからぜひ会ってみたいですね」と言い切る理論物理学者・村山斉さんが語る「人類すべての母」、重力波 ヒッグス粒子 ニュートリノ質量 銀河中心の超巨大BHという

先ずは、昨年3月6日付け現代ビジネスが掲載した「サイエンスZERO」20周年スペシャル・取材班による「「暗黒物質ダークマター」は《お母さん》?「だからぜひ会ってみたいですね」と言い切る理論物理学者・村山斉さんが語る「人類すべての母」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107046?imp=0
・『この宇宙を形づくっているものの中で、「目に見える」物質は全体の5%にすぎないというのをご存じでしょうか。宇宙の物質の大部分は正体不明の物質「ダークマター(暗黒物質)」が占めていると考えないと、宇宙での私たちの存在に説明がつかないことが分かってきたのです。 「質量は持つ」けれど「観測できない」という物質、ということです。それは仮説上の物質で「ダークマター」と名付けられ、いまだに実在が確かめられていません。そこで今、世界中の科学者がこの謎の物質を捉えようと理論や実験を総動員して研究しています。中でも、天文学・物理学・数学といった異分野の専門家たちがこのダークマターに迫ろうとする世界トップレベルの研究所が「カブリ数物連携宇宙機構」です。 その初代機構長を務めた理論物理学者の村山斉さんは、ダークマターが実験で捉えられる可能性が見えてきて、今、研究はかつてないほど“面白い時期”を迎えていると言います。「私たちの“生みのお母さん”である『ダークマター』に会いたい」と語る村山さんに、ダークマター研究の20年、そして今後の展望について伺いました(Qは聞き手の質問、Aは村山氏の回答)』、興味深そうだ。
・ダークマターはたった20年前に存在が判明した  Q:そもそも、ダークマターとはどんなものか、教えてください。 A:ダークマターは、「暗黒物質」とも呼ばれるもので、素粒子という小さな「粒(つぶ)」みたいな物質、またそれが少し集まったものだと考えています。1930年代に、はるか遠くの銀河団を観測した天文学者がいて、その銀河が「激しいスピードでビュンビュン動いている」ということを発見しました。 その銀河が特異に見えたのは、「激しいスピードで動いている」にもかかわらず、そのまま飛び出していってバラバラになってしまわないことでした。そこでその天文学者は、「何か重力を持つ物質がないと、こんなに速く動いている銀河同士をつなぎ留めておくことはできないはず。こんなに速く動いているということは見えない『ダークマター』があるのではないか」と考えたのです。 ところが、当時は単に望遠鏡では見えない星や、ガスの塊があるからではないかというのが常識でした。20年ほど前になってようやく、今まで全く知られていない新しい物質だということが判明したのです』、「ダークマターは、「暗黒物質」とも呼ばれるもので、素粒子という小さな「粒(つぶ)」みたいな物質、またそれが少し集まったものだと考えています」、なるほど。
・『どうしてどの方向にもビッグバンが観測されないのか?  Q:20年前に何があったんでしょうか? A:20年前にビッグバンの名残(残照)を直接観測するための人工衛星WMAP(※1)が上がって、解像度の高い、宇宙誕生初期の写真が撮れるようになりました。その写真には情報がたくさん詰まっていて、宇宙全体の物質のうちダークマターが約8割を占めているというこの宇宙の詳細が明らかになったのです。 そこで初めて、ダークマターと普通の物質は明らかに違うものだということがはっきりしてきました。それまでは、ブラックホールやニュートリノなど、すでに知られているものがダークマターの正体ではないかと考えられていたので、本当に衝撃を受けました。 ※1 ビッグバンを直接観測する人工衛星…2001年にNASA(米航空宇宙局)が打ち上げた「Wilkinson Microwave Anisotropy Probe(通称WMAP)」と呼ばれる宇宙探査機。ビッグバンの名残である「宇宙マイクロ波背景放射」を精密に観測するために打ち上げられた。 Q:ダークマターの存在がはっきりわかったのは、ビッグバンの観測からなんですね? A:はい。宇宙が始まって138億年と言われていますから、138億光年向こうを頑張って観測すると、「あっ、ビッグバンだ」というふうに今でも見えるはずなんです。「あっちを向いてもビッグバンが見える」し、「こっちを向いてもビッグバンが見える」。そういう状況ですね。ですがビッグバンの写真を見るとほとんどのっぺらぼうで、温度の違いは10万分の1しかありません。 ダークマターが存在しない宇宙を考えたとすると、そんなのっぺらぼうみたいな状態だったら、今あるような銀河の塊はできないので、どうしてなのかという問題があったんです。宇宙に星や銀河、私たちが生まれたことは、ダークマターという未知の物質がないと説明がつかなくなったんです』、「138億光年向こうを頑張って観測すると、「あっ、ビッグバンだ」というふうに今でも見えるはずなんです。「あっちを向いてもビッグバンが見える」し、「こっちを向いてもビッグバンが見える」。そういう状況ですね。ですがビッグバンの写真を見るとほとんどのっぺらぼうで、温度の違いは10万分の1しかありません。 ダークマターが存在しない宇宙を考えたとすると、そんなのっぺらぼうみたいな状態だったら、今あるような銀河の塊はできないので、どうしてなのかという問題があったんです。宇宙に星や銀河、私たちが生まれたことは、ダークマターという未知の物質がないと説明がつかなくなったんです」、「ビッグバン」で「宇宙に星や銀河、私たちが生まれたことは、ダークマターという未知の物質がないと説明がつかなくなったんです」、なるほど。
・『ダークマターを探すのは、“私たちのお母さん”だから・・・!  Q:村山さんはなぜダークマターの正体を探し続けているんですか? A:ダークマターっていうのは未知の物質なのでちょっと気持ち悪い感じがするかもしれませんが、実は“私たちのお母さん”なんです。 簡単に例えると初期の宇宙では、大きな質量を持ったダークマターが少しずつ重力で引っ張り合いながら固まってきます。そしてダークマターの塊ができたところに、今度はその重力によって原子でできたガスを引きずり込んできます。さらに、そのガス同士が反応して、ぶつかって熱くなって光を出します。するとそれが冷えて固まり星ができ、銀河ができてきます。その中に私たちができてくるんです。 だから、ダークマターは本当に私たちの“生みのお母さん”なんです。 「私たちはどこから来たんだろう?」それが知りたいです。それに、ダークマターからお母さんが生まれた当時の環境が見えてきます。私は、ダークマターが生まれた時期は、宇宙が始まってから100億分の1秒ぐらいのビッグバンの直後だと思っています。始まったばかりの宇宙の姿も見えてくるという意味で、ダークマターはすごく私たちにたくさんのことを教えてくれると思っています。一度ぜひ会ってみたいですね。 後編『重力波、ヒッグス粒子、ニュートリノ質量、銀河中心の超巨大BHという発見が続々…「素粒子物理の夢」の時代にトップランナーが語る「夢のその先」』では、実際に村山さんがダークマターにどうアプローチを試みたのか? を中心に紹介します。「サイエンスZERO」20周年スペシャル 3月26日(日)夜11:30 NHK Eテレ 』、「ダークマターが生まれた時期は、宇宙が始まってから100億分の1秒ぐらいのビッグバンの直後だと思っています」、なるほど。

次に、3月6日付け現代ビジネスが掲載した「サイエンスZERO」20周年スペシャル・取材班による「重力波、ヒッグス粒子、ニュートリノ質量、銀河中心の超巨大BHという超発見が続々…「素粒子物理の夢の時代」にトップランナーが語る「夢のその先」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107049?imp=0
・『この宇宙の物質には「目に見える」ものが全体の5%しかないことをご存じでしょうか。「質量は持つ」けれど「観測できない」という宇宙の大部分を占める物質は、「ダークマター(暗黒物質)」と呼ばれています。今、世界中の科学者がこの謎の物質を捉えようと理論や実験を総動員して研究しています。 天文学・物理学・数学といった異分野の専門家たちが集まる世界トップレベルの研究所「カブリ数物連携宇宙機構」の初代機構長を務めた宇宙物理学者の村山斉さんは、ダークマターを「我々人類のお母さん」と呼びました。前編『「暗黒物質ダークマター」は《お母さん》?「だからぜひ会ってみたいですね」と言い切る理論物理学者・村山斉さんが語る「人類すべての母」』でその理由を伺いました。 後編では、今後の展望について伺います』、興味深そうだ。
・『「見えない物質をどう追いかける」か?  ―見えないダークマターをどうやって探すのでしょうか? 私の研究のスタイルは、探し方を考える前に、ダークマターは「どういう可能性がある物質なのか」についていろいろな仮説を立てることから始めます。その次に、どうやったら探せるのかを考えます。 例えば、今考えている仮説に「SIMP(シンプ)(※1)」というものがありますが、SIMPはこういう考え方だから多分物質にはこういう力が働くので、こうやったら捕まえられるだろうという提案をします。それを具体的にやってみるために、実験が専門の人と相談しながら、道具や装置、使う物質について詰めていきます。こうして実際に装置を作ってやってみようという段階になる。そして実験データをためて、検証していくことになります。 ※1 SIMP…Strongly Interacting Massive Particleの略で、強い相互作用をする素粒子。村山さんたちの研究グループが2015年に提唱したダークマターの候補物質。 Q:実際に「ダークマターの候補」SIMPを探す計画はあるのでしょうか? A:はい。つくば市の高エネルギー加速器研究機構にあるSuperKEKB(※2)という、全周3kmぐらいの大きさの、電子をぐるぐる回す加速器という装置があるんですが、この装置でSIMPが作れる可能性があるということが分かってきました。 この装置はもともと、ノーベル賞を受賞された小林先生、益川先生が作られた小林益川理論(※3)を超える理論を探したいという目的で作られた実験装置でしたが、それをうまく利用することでダークマターを探せる可能性もあるんです。全く新しい装置を作るのは時間もお金も人手も多くかかって大変なので、すでにある装置をうまく使う、そういうアイデアをたくさん考えるのも研究者の仕事のひとつです。 ※2 SuperKEKB加速器…エネルギーの高い電子と陽電子を衝突させて、衝突後に生成される素粒子を測定する「Belle II(ベル・ツー)実験」に使う実験装置。現在の素粒子物理学の基盤である「標準理論」を超える結果が得られると期待されている。 ※3 小林益川理論…当時京都大学に所属していた小林誠氏と益川敏英氏によって1973年に提唱された理論。宇宙の始まりであるビッグバンでは「物質」と「反物質」が同じ量だけ作られたと考えられているが、現在の宇宙には「物質」のほうがはるかに多く存在している。その理由は、クォークと呼ばれる素粒子が6つあれば説明できるというのが小林益川理論。当時はまだ3つしかクォークは見つかっておらず、6つのクォークを予言したこの理論は驚くべきものだった。その後、実験でこの理論が確かめられたことにより、小林、益川両氏には2008年にノーベル物理学賞が贈られた』、「もともと、ノーベル賞を受賞された小林先生、益川先生が作られた小林益川理論(※3)を超える理論を探したいという目的で作られた実験装置でしたが、それをうまく利用することでダークマターを探せる可能性もあるんです。全く新しい装置を作るのは時間もお金も人手も多くかかって大変なので、すでにある装置をうまく使う、そういうアイデアをたくさん考えるのも研究者の仕事のひとつです」、これが有効活用できれば、望ましい。
・『干し草の山から針一本をふるいにかけるソフトウェア  Q:SIMPを探す実験はいつから行うのでしょうか? A:実験自体は、今ある装置でもできるはずですが、解析をするためのソフトウエアがまだできていないんです。どんなにいい装置があっても、膨大なデータの山から欲しいものを引き出すのがすごく大変です。 例えて言えば、「干草の山の中から針1本を引っ張り出す」ようなもの。干し草と針を分けるためには、干草は通り抜けるけど針は引っかかる、というふるいを作らないといけないんです。そのふるいに当たるものが、コンピューターのソフトウエアなんですが、これを作るのはそう簡単なことではありません。 SIMPの実験に使うソフトウエアもそろそろできるとは思いますが、その後、実験装置に組み込んでいくので、実験開始にはもう少し時間がかかると思っています。具体的には、実験観測データが出始めるのは、来年の終わりか再来年くらいになるかと思います。 Q:SIMP以外にもダークマターの候補となる物質はあるんですか? A:10年くらい前まではWIMP(※4)という物質がダークマターの有力候補だったので、みんなそればかり一生懸命探していました。それが最近、ほかの候補も探してみようというアイデアがたくさん出てきたんです。実際に探してみたら、「あった!」ということになるかもしれないですから、今、本当に面白い時期になってきたと思っています。 日本ではSIMPのほかに、「アクシオン」という軽い粒子がダークマターの可能性があると考えて、重力波望遠鏡KAGRA(※5)を使って検出する研究も進めています。 ※4 WIMP…Weakly Interacting Massive Particleと呼ばれるダークマターの有力候補物質。重力相互作用と弱い相互作用のみ働くものと考えられている。 ※5 重力波望遠鏡KAGRA…岐阜県飛騨市神岡町にある重力波を検出するための望遠鏡。重力波の初検出は、アメリカのLIGOが2016年に初めて成功したが、そのLIGOとイタリアのVirgoとKAGRAの3つで国際重力波ネットワークをつくり、重力波がどの天体から来たのか、その源を探る研究が進んでいる』、「10年くらい前まではWIMP(※4)という物質がダークマターの有力候補だったので、みんなそればかり一生懸命探していました。それが最近、ほかの候補も探してみようというアイデアがたくさん出てきたんです。実際に探してみたら、「あった!」ということになるかもしれないですから、今、本当に面白い時期になってきたと思っています」、なるほど。
・『素粒子物理学にとって夢のような20年間の成果  Q:いろいろ手を尽くした結果、ダークマターの正体がわからないということもあるのでしょうか? A:理論的にはありえます。そうなると、とても悲しいですね。でも、科学者というのはなんとかして分かりたいと思って、あちこちに手を出す、そういう人たちなんです。もしかしたら永遠に分からないかもしれないと思っていても、手を出した瞬間に捕まえちゃう可能性もあるので、だったらやってみた方が得じゃないかと、そういう発想をするんです。そうやっていくうちに、科学が進歩していくのではないかとも思っています。 Q:この20年の科学の進歩はどう見ていますか? A:素粒子や宇宙の研究にとってはものすごく華々しい20年間でした。重力波(※6)も見つかりましたし、ヒッグス粒子(※7)も見つかりました。それからニュートリノに重さがあるという研究(※8)や、宇宙の歴史をちゃんと理解したという理論にノーベル賞(※9)が出たのもこの20年間でした。それから銀河系の中心に太陽の400万倍もあるブラックホールも発見されました(※10)。本当に今、技術の進歩やコンピューターの進歩のおかげで科学がググって伸びているのを感じられて、この時代に生きていてよかったなと思います。 ※6 重力波…アインシュタインが一般相対性理論で予言していた現象。2016年にアメリカのLIGOが初検出に成功。その功績により、レイナー・ワイス氏、バリー・バリッシュ氏、キップ・ソーン氏が2017年にノーベル物理学を受賞した。 ※7 ヒッグス粒子…宇宙が誕生して間もないころに、他の素粒子に質量を与えたとされる粒子。1964年にイギリスの物理学者ピーター・ヒッグス氏が提唱した理論に登場。CERN(欧州合同原子核研究機関)で行われた実験によって2012年に実際に確認され、2013年にはピーター・ヒッグス氏とフランソワ・アングレール氏が「素粒子の質量の起源に関する機構の理論的発見」をしたことにより、ノーベル賞を受賞した。 ※8 ニュートリノ研究にノーベル賞…2015年のノーベル物理学賞が「ニュートリノ振動の発見により、ニュートリノに質量があることを示したこと」で梶田隆章氏とアーサー・マクドナルド氏に贈られた。 ※9 宇宙の歴史を理解した理論にノーベル賞…2019年にノーベル賞を受賞したジェームズ・ピーブルズ氏は、宇宙の始まりである「ビッグバン」が起きた直後から現在までの宇宙の進化の様子を理論的に研究するうえで大きな貢献をしたことなどが評価された。 ※10 銀河中心に太陽の400万倍のブラックホール発見…2022年、国立天文台など80機関が参加する国際研究チーム「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)・コラボレーション」が、天の川銀河の中心にある巨大ブラックホールの撮影に初めて成功した』、「素粒子や宇宙の研究にとってはものすごく華々しい20年間でした。重力波(※6)も見つかりましたし、ヒッグス粒子(※7)も見つかりました。それからニュートリノに重さがあるという研究(※8)や、宇宙の歴史をちゃんと理解したという理論にノーベル賞(※9)が出たのもこの20年間でした。それから銀河系の中心に太陽の400万倍もあるブラックホールも発見されました(※10)。本当に今、技術の進歩やコンピューターの進歩のおかげで科学がググって伸びているのを感じられて、この時代に生きていてよかったなと思います」、進歩を実感できるのは幸せだ。
・『自分の最初は何か、どこから来たのかという疑問  Q:村山さんが科学に興味を持ったのはいつでしょうか。 A:私たちはどこから来て、なぜ存在しているのだろうということを、たぶんみんな小さい頃に考えると思うんですよ。特に田舎に旅行に行って、夏の夜空をボーっと見て星がいっぱいあるのを見たとき、自分って何だろうなと思ったりすると思うんですよね。 そういうことを考えていると、自分たちの体を作っている原子は、実は星の爆発で散りばめられた塵(ちり)なんだ、自分は星から来たんだなということが分かるんですね。じゃあ星はどこからできたんだろうかと考えると、ダークマターがないと星ができないことを知り、じゃあダークマターはどうやって星を作ったのだろう、そうやってどんどんさかのぼっていくと、宇宙の始まりに行き着いちゃうんですよね。だから本当に最初は自って何だろう。どこから来たんだろうなっていう素朴な疑問から始まったんだと思います。 Q:その疑問を持ち続けて、今があるんでしょうか。 A:高校時代は、中学時代にロックを聴くようになった影響でバンドをやったり、体を鍛えようとラグビー部に入ったりして、あまり勉強をしていませんでした。最初の模擬試験の成績は、物理の点数が40点でしたから、これではいけないと思って、高校3年になってから突貫工事で勉強をした感じです。 大学にはミクロな素粒子を勉強しようと思って入ったのですが、大学院が終わった頃に転機が来ました。小さい素粒子の世界と大きな宇宙が結びつく大発見があったんです。その発見をしたのは、アメリカのバークレーの同僚のジョージ・スムートさん(※11)たちで、はるか遠くの宇宙を見ることでビッグバン直後の小さかったときの宇宙が見えてきました。 大きいものと小さいものが結びついているということが、私の頭の中で初めてつながった瞬間でした。子どもの頃から漠然と思っていた疑問と、今までやってきた研究がひとつになり、「あっ、これは面白い!」とますます研究にのめり込んでいきました。 ※11 ジョージ・スムート氏…カリフォルニア大学バークレー校物理学教授。1989年にNASA(米航空宇宙局)が打ち上げた人工衛星COBEによる観測で主導的な役割を果たし、ビッグバンの名残の熱のゆらぎである宇宙マイクロ波背景放射を初めて観測。その功績により、2006年にジョン・マザー氏とともにノーベル物理学賞を受賞。 Q:今後、この分野の研究はどのように進んでいくのでしょうか? A:実験観測の技術とそれを解析するコンピューター、理論的な予言をするためのシミュレーションが、今、三つ巴でどんどん進歩していますから、やるべきことがはっきりして、あとはやるばかりになってきています。ただ、必要な実験装置の規模も大きくなってきているので1人ではできません。もしかしたら100人でもできないかもしれない。でも、世界中から研究者を集めて、1000人だったらできるかもしれない。そういうふうに、もっといい装置、いい観測、いい実験をしようという動きが大きくなってきているので、これからいろいろな進歩が出てくるのを期待しています。 「サイエンスZERO」20周年スペシャル 3月26日(日)夜11:30 NHK Eテレ 』、「もっといい装置、いい観測、いい実験をしようという動きが大きくなってきているので、これからいろいろな進歩が出てくるのを期待しています」、幸せな科学者人生だ。

第三に、昨年12月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの池上 彰氏と増田ユリヤ氏による「闇市で得た1000ドルをテディベアに隠して出国…「ワクチンでノーベル賞」カリコ氏の壮絶人生」を紹介しよう。
・『12月10日にノーベル賞授賞式が開催される。ジャーナリストの池上彰氏は「今年の注目はなんといっても、生理学・医学賞を受賞した研究者、カタリン・カリコさん」という。以前からカリコ氏を取材してきた増田ユリヤ氏がカリコ氏の素顔を明かした』、興味深そうだ。
・『10年かかるワクチン開発を半年で実用化  池上 今年も12月10日にノーベル賞授賞式が開催されます。今年の注目はなんといっても、生理学・医学賞を受賞した研究者、カタリン・カリコさんです。メッセンジャーRNA(mRNA)を使った新しい手法で、新型コロナワクチンの開発に貢献しました。 増田 通常であればワクチンの開発には10年かかるところを、半年で実用化にこぎ着けられたのは、カリコさんの40年にもわたるmRNAの研究成果あってこそ、とその功績が評価されました。 mRNAは、体の設計図であるDNAの情報をコピーして細胞内に届ける役割を担っていて、こうして届けられた設計図のコピーを基にタンパク質が作られます。コロナウイルスの表面の突起もタンパク質でできているため、その情報を人工的にコピーして作ったのがmRNAワクチンです。 アイデア自体は以前からあったのですが、mRNAが体内に入る場合に起きる炎症反応を抑えることができず、専門家の間では「実用化は無理だろう」とみられていました。 池上 挫折し、諦めた研究者も少なくなかったとか』、「通常であればワクチンの開発には10年かかるところを、半年で実用化にこぎ着けられたのは、カリコさんの40年にもわたるmRNAの研究成果あってこそ」、「mRNA」の効用は素晴らしい。
・『降格処分や研究資金の打ち切り  増田 カリコさんは「mRNAが多くの命を救う医学に貢献できるはずだ」と信じて諦めず、研究資金を打ち切られたり、大学で降格処分を受けたりする困難に立ち向かいながら粘り強く研究を続けてきました。実用化につながる論文を共同研究者のドリュー・ワイスマン教授と発表したのが、2005年。 その後、カリコさんは独ビオンテックに移籍し、ジカ熱ワクチンやインフルエンザワクチンの開発に携わっていたので、コロナワクチンも半年で実用化できた。大学で研究した蓄積と、製薬会社での実用化の経験が奏功したのです。 池上 ビオンテックはドイツのトルコ系移民が設立した会社で、カリコさんのようにハンガリーから米国に渡って研究を続けてきたような優秀な人たちを受け入れています。 増田 カリコさんはビオンテックに移籍して、ハンガリー時代に一緒に研究していた人たちと再会しています。信念を持った優秀な人たちを集め、研究部門以外のスタッフも研究者でそろえています。 池上 増田さんはカリコさんに以前から取材されていますね。) ▽米ソ冷戦期にソ連圏からの渡米(増田 コロナ禍当初に出演したあるテレビ番組でカリコさんを2~3分で紹介するコーナーがあったのですが、そのときに「どうしてもカリコさんにお話を聞きたい!」と思い立ち、取材しました。そして21年10月に『世界を救うmRNAワクチンの開発者 カタリン・カリコ』を上梓しました。 カリコさんの研究に対する信念は本当に強いのですが、偉ぶることもなく、堂々と自分の考えていることを言葉にされる方です。ロックミュージックが大好きで、「研究はロックと一緒」とも言っていました。 カリコさんは1955年、ハンガリーで生まれ、子供の頃から自然や科学に興味を持ち、23歳のときに大学院へ進み、RNAの研究を始めます。30歳のときに所属していた研究機関で研究資金を打ち切られたことで米国へ渡ることを決意しますが、85年当時のハンガリーはソ連の支配下にあり、米国への移住はそう簡単にはいきませんでした。 池上 まだ米ソ冷戦期ですから、ソ連圏からの渡米となれば、亡命する人も多かった時代です』、「カリコさんは「mRNAが多くの命を救う医学に貢献できるはずだ」と信じて諦めず、研究資金を打ち切られたり、大学で降格処分を受けたりする困難に立ち向かいながら粘り強く研究を続けてきました」、そこまでの困難を乗り越えたとは初めて知った。
・『一家の生活を繋いだテディベア  増田 研究仲間の中にも亡命という手段を取った人がいましたが、カリコさんは家族と会うためにハンガリーとの間を行き来できる状態にしたいと考え、八方手を尽くし、米テンプル大学のポストドクターの座を得て、正規に出国許可を得ることができたそうです。 しかし当時のハンガリーでは、100ドルを超える外貨の持ち出しが禁止されていました。当時の日本円でわずか2万円程度。これだけ持って米国に渡っても、最初の給料が出るまでは住む所もありません。そこでカリコさんは闇市で自家用車を売って外貨に換え、娘が大事に持っていたテディベアに現金1000ドルを忍ばせて出国したんです。そのテディベアも取材時に見せてもらいましたが、まだ大事に娘さんの部屋に飾ってありました。 池上 一家の生活をつないだ縫いぐるみですから、家宝ものですね』、「米テンプル大学のポストドクターの座を得て、正規に出国許可を得ることができたそうです。 しかし当時のハンガリーでは、100ドルを超える外貨の持ち出しが禁止されていました。当時の日本円でわずか2万円程度。これだけ持って米国に渡っても、最初の給料が出るまでは住む所もありません。そこでカリコさんは闇市で自家用車を売って外貨に換え、娘が大事に持っていたテディベアに現金1000ドルを忍ばせて出国したんです」、「テディベアに現金1000ドルを忍ばせて出国」とは当時は必死だったのだろう。
・『受賞した賞金は大学や研究機関に寄付  増田 その後も研究が評価されず、研究資金の打ち切りや降格など、さまざまな苦労をされるのですが、ワクチン開発で一躍脚光を浴び、ノーベル賞受賞前にも各国のさまざまな賞を受賞しています。しかしぜいたくには全く関心がなく、こうした賞を受賞した際に得た賞金は、母国ハンガリーの大学をはじめ、研究機関に寄付したそうです。 カリコさんは85年に米国へ移住した際に住み始めた家に、今も住んでいます。家具は夫のベーラ・フランシアさんの手作り。古い物を大事にする、質素な暮らしぶりがうかがえますよね。ノーベル賞受賞が決まって、ようやく新車を買ったとか。その話をした際に、カリコさんが「夫も新しくしていないでしょう?」と冗談を言ったのが印象的でした。 池上 エンジニアだったフランシアさんはほとんど表に出てきませんが、カリコさんの研究を熱心に支えたんですよね。ノーベル賞受賞時に取材を受けたカリコさんのコメントも象徴的でした』、夫である「エンジニアだったフランシアさんはほとんど表に出てきませんが、カリコさんの研究を熱心に支えたんですよね」、なるほど。
・『妻と娘の世界的活躍を支える「内助の功」も世界レベル  増田 「いい研究をするためには、研究に協力してくれるいい夫を見つけることが必要だ」と(笑)。フランシアさんは早朝5時にカリコさんを研究室へ送り、その後に娘を学校へ送る。夕方に娘さんとカリコさんをピックアップして、自分は夜中に働くという生活を続けてこられたそうです。 実は2歳のときにテディベアを抱えて国境を渡った長女のスーザンさんも、オリンピックの金メダリストなんですよ。米国代表のボート競技選手として、08年の北京、12年のロンドンと2大会連続で出場。両大会で金メダルを獲得しています。 池上 妻と娘の世界的活躍を支えるフランシアさんの「内助の功」も世界レベルですね。 さて、ノーベル賞受賞者と言えば「蛙跳び」です。受賞者は授賞式で講演を行った後、ストックホルムの大学生有志による懇親会に参加するのですが、そこで学生と一緒に受賞者が蛙跳びを披露するという伝統があるのです。19年にノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんは高齢を理由に深夜の懇親会を辞退されたそうですが。 増田 長く研究を続け、厳しい境遇に耐える精神力と体力を持っているカリコさんなら楽々こなせそうです』、「フランシアさんは早朝5時にカリコさんを研究室へ送り、その後に娘を学校へ送る。夕方に娘さんとカリコさんをピックアップして、自分は夜中に働くという生活を続けてこられたそうです・・・長女のスーザンさんも、オリンピックの金メダリスト・・・妻と娘の世界的活躍を支えるフランシアさんの「内助の功」も世界レベルですね」、「フランシアさんの「内助の功」もまさに世界レベル」、その通りだ。
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科学技術(その2)(中国が約1兆ドルかけて製造・運用する「人工太陽」 太陽の5倍高温なプラズマの維持に成功!、「日本って科学技術立国と言っているわりにはみんな科学にあまり興味がないんじゃないか」というこの国への本質的な疑問と竹内薫さんがこだわった「科学に興味がない人にも科学を伝え続ける意味」、「科学はたとえば日本の『失われた30年』の原因を特定し解決することにも役立つはず」…科学伝道の第一人者が「日本の政治はもっと科学に目を向けてほしい」と説く理由 サイエンスZERO NHK) [科学技術]

科学技術については、2020年11月13日に取上げた。今日は、(その2)(中国が約1兆ドルかけて製造・運用する「人工太陽」 太陽の5倍高温なプラズマの維持に成功!、「日本って科学技術立国と言っているわりにはみんな科学にあまり興味がないんじゃないか」というこの国への本質的な疑問と竹内薫さんがこだわった「科学に興味がない人にも科学を伝え続ける意味」、「科学はたとえば日本の『失われた30年』の原因を特定し解決することにも役立つはず」…科学伝道の第一人者が「日本の政治はもっと科学に目を向けてほしい」と説く理由 サイエンスZERO NHK)である。

先ずは、2022年2月7日付けSoraeが掲載した「中国が約1兆ドルかけて製造・運用する「人工太陽」 太陽の5倍高温なプラズマの維持に成功!」を紹介しよう。
https://sorae.info/space/20220206-artificial-sun.html
・『いわば「人工太陽」とも呼ぶべき核融合炉が完成すれば、人類は無限のクリーンエネルギーを手にすることができるかもしれません。 中国科学院等離子体物理研究所は、同研究所が開発・運用する全超伝導トカマク型核融合実験装置(EAST)が、摂氏約7千億度という高温のプラズマを1,056秒間持続することに成功したと発表しました。この持続時間は、トカマク型による高温プラズマの持続時間としては世界最長となります。EASTは2006年に運用が始まった実験装置で、2022年6月の運用終了までに1兆ドル以上の費用がかかると予想されています。 人工太陽とは、太陽など主系列星の内部で発生する核融合を人工的に再現する装置や施設のこと。核融合とは、水素など軽い原子の原子核同士が結合し、ヘリウムのような重い原子核を生成する反応を指します』、「トカマク型核融合実験装置(EAST)が、摂氏約7千億度という高温のプラズマを1,056秒間持続することに成功・・・この持続時間は、トカマク型による高温プラズマの持続時間としては世界最長」、なるほど。
・『【▲太陽の内部における水素の核融合反応を示した概念図(Credit: EUROfusion)】 核融合反応はエネルギーの発生を伴うので、このエネルギーを発電に利用するための研究が進められてきました。石炭や石油を燃やす火力発電とは異なり、核融合を利用する発電では温室効果ガスが放出されないため、クリーンなエネルギーだと考えられています。 ところが、地球の約33万倍もの質量を持つ太陽の内部のような核融合が起きる条件を地球上で人工的に模倣するのは難しく、約1,500万度ある太陽の中心部と比べて約6倍もの高温が必要だといいます。 原子核同士が核融合を起こす環境を人工的に再現したものとしては、ロシア(当時のソビエト連邦)の科学者Natan Yavlinsky氏が1958年に設計した「トカマク型」と呼ばれる型式の核融合炉「T-1」が知られています。トカマク型は強力な磁場をもつドーナツ状の核融合炉のなかで、プラズマを封じ込める仕組みになっているようです。 ロシアが開発した「T-1」以降も様々な核融合実験装置が作られましたが、装置を作動させるために費やされたエネルギーより多くのエネルギーを発生させることに成功したものは登場しませんでした。 【▲トカマク型核融合実験装置の概念図(Credit: EFDA-JET(現在のEUROfusion))】 中国が今回実施した実験は、南フランスで建設中の核融合実験炉ITER(International Thermonuclear Experimental Reactor)のための技術を検証するために実施された模様です。ITERはプラズマを閉じ込めるために地球磁場の約28万倍も強力な磁場を生成できるといいます。このプロジェクトには、EUやイギリス、中国、インド、米国など35ヵ国が共同で参加し、2025年に登場すると見込まれています。 一方、現在EASTで実験を実施した中国自身も、ITERとは別の核融合炉の開発を独自に行っているようです。磁場ではなく慣性によってプラズマを封じ込める「慣性核融合炉」の実験の実施計画や、別のトカマク型核融合炉の完成を2030年代初頭までに目指すなど、新たな核融合炉の開発を進めている模様です』、「地球の約33万倍もの質量を持つ太陽の内部のような核融合が起きる条件を地球上で人工的に模倣するのは難しく、約1,500万度ある太陽の中心部と比べて約6倍もの高温が必要・・・原子核同士が核融合を起こす環境を人工的に再現したものとしては、ロシア(当時のソビエト連邦)の科学者Natan Yavlinsky氏が1958年に設計した「トカマク型」と呼ばれる型式の核融合炉「T-1」が知られています。トカマク型は強力な磁場をもつドーナツ状の核融合炉のなかで、プラズマを封じ込める仕組みになっているようです。 ロシアが開発した「T-1」以降も様々な核融合実験装置が作られましたが、装置を作動させるために費やされたエネルギーより多くのエネルギーを発生させることに成功したものは登場しませんでした・・・現在EASTで実験を実施した中国自身も、ITERとは別の核融合炉の開発を独自に行っているようです。磁場ではなく慣性によってプラズマを封じ込める「慣性核融合炉」の実験の実施計画や、別のトカマク型核融合炉の完成を2030年代初頭までに目指すなど、新たな核融合炉の開発を進めている模様」、まだ「装置を作動させるために費やされたエネルギーより多くのエネルギーを発生させることに成功したものは登場しません」、これでは陽の目を見るのはかなり先になりそうだ、

次に、本年3月25日付け現代ビジネス「「日本って科学技術立国と言っているわりにはみんな科学にあまり興味がないんじゃないか」というこの国への本質的な疑問と竹内薫さんがこだわった「科学に興味がない人にも科学を伝え続ける意味」」を紹介しよう。
・『「『サイエンスZERO』20周年スペシャル」取材班  「ゼロから分かりやすく科学を伝えたい」と2003年に始まった「サイエンスZERO」がまもなく放送20年を迎えます。787回に上る放送回数とあらゆる分野の最新科学研究をディープに伝えてきた節目を記念し、日本のサイエンス各分野の著名な研究者や番組ナビゲーターにこの20年を振り返ってもらうインタビューを行いました。そこで飛び出してくる驚きの言葉や知見、未来への警鐘とは―。(放送は「サイエンスZERO」20周年特別番組:3月26日(日)夜11:30~ NHK Eテレ) 「『第四次産業革命』の真っただ中を生きてきたっていう印象がある。そこでいかに正しい情報発信ができるかを考えながら、常に最先端のことを勉強しながら20年を生きてきた」 そう語るのは、2012年から2018年まで「サイエンスZERO」のナビゲーターを務めたサイエンス作家の竹内薫さんです。 難解な科学について、比喩を交えながら分かりやすく解説する竹内さんは、これからの時代はますます科学が果たす役割が大きくなるだろうと言います。「科学者にとっても貴重な番組」と感じたサイエンスZEROの印象的な回を振り返るとともに、「この20年の科学」そして「これから20年の科学」を語り尽くします(Qは聞き手の質問、Aは竹内氏の回答)』、「サイエンスZERO」は私の好きな番組で視聴していた。
・『科学者にとっても「貴重な番組」  Q:サイエンスZEROが20周年なのですが、振り返るといかがでしょうか? A:もう卒業して5年も経っちゃったんですね。サイエンスZERO、20周年。率直にすごいな、と思います。日本って科学技術立国と言っているわりには、みんな科学にあまり興味がないんじゃないかと感じるんですよ。科学書がそれほど売れるわけじゃないし、科学雑誌もあまりないですよね。そんな中で20年間、放送媒体で地道にずっと伝え続けるのはすごく大変なことだなと思います。Q:印象に残っている回はなんでしたか? A:一番印象に残っているのは、「iPS細胞」の山中伸弥先生がノーベル賞を受賞した直後に、京都までインタビューに伺ったことです(※1)。急遽スタッフの人と相談をして、取材ができるかどうかも全然分からない状況から始めて、台本を作って、みんなで新幹線に乗って行ったのをよく覚えています。山中先生が「サイエンスZEROという番組は貴重な番組だ」ということをおっしゃってくださって、ノーベル賞を受賞される前からサイエンスZEROにご出演されていたこともあるからか、私たちのインタビューの時間を他の取材の人たちより長く取ってくださったのが印象的でしたね。 Q:あのインタビューの裏にはそういうことがあったんですね。 A:やっぱり、科学者の方が直接一般の方に語りかける場があんまりないんですよ。シンポジウムや本を書いて伝える方法も確かにあるんだけど、映像として凝縮された状態で非常に効率よく正しいことを教えられる。そういう番組って他にないと思うんですね。だから科学者にとってもすごく貴重なのではないでしょうか。 ※1 サイエンスZERO「速報ノーベル賞!iPS細胞 その舞台裏」(2012年10月14日放送)。ノーベル賞の発表が10月8日で、インタビューは11日。そして、14日に放送という強行スケジュールだった』、かなり綱渡り的ナスケジュールだ。
・『「科学を伝える」ために専門用語を使わず、比喩を使う  Q:番組ナビゲーターとして心がけていたことはありますか? A:ナビゲーターとして、というかサイエンス作家として心がけているのは、専門用語をなるべく使わないことです。専門用語を使わないと、専門家のサークルからはなんでちゃんと専門用語を使わないんだって叱られるんですけれども、そこはあえて普通の言葉に言い換える。あと、比喩も使います。専門家の方は、誤解されるおそれがあるので比喩はあまり使わない方がいいとおっしゃるんですが、僕は科学を伝える人間なので、その伝え方の一つの技術として使うと効果的だと思っています。 サイエンスZEROをやっているときも伝え方を考える機会が結構あって、収録の前の台本打ち合わせが大変だった回が印象に残っています。例えば、「ブラックホール」の回は打ち合わせが長時間かかりました。 そのときは今と状況が違って、まだブラックホールが可視化されていなくて、「ブラックホール候補」でした。だから、そういった言葉づかいを含めてちゃんと科学的に伝えないといけないという科学者のスタンスと、分かりやすく伝えようとする番組側のスタンスがぶつかり合って、丁々発止のやり取りがありました。でも、最終的に放送された番組を見ると、「あれ?結構きれいにまとまっているな、結果的にはいい番組になったな」と思いましたね』、「収録の前の台本打ち合わせが大変だった回が印象に残っています。例えば、「ブラックホール」の回は打ち合わせが長時間かかりました・・・例えば、「ブラックホール」の回は打ち合わせが長時間かかりました。 そのときは今と状況が違って、まだブラックホールが可視化されていなくて、「ブラックホール候補」でした。だから、そういった言葉づかいを含めてちゃんと科学的に伝えないといけないという科学者のスタンスと、分かりやすく伝えようとする番組側のスタンスがぶつかり合って、丁々発止のやり取りがありました。でも、最終的に放送された番組を見ると、「あれ?結構きれいにまとまっているな、結果的にはいい番組になったな」と思いましたね」、なるほど。
・『CGのセットで「目に見えない現象」を見せる工夫も  Q:他にも印象に残った番組はありますか? A:「ヒッグス粒子」が見つかったすぐあとに特集した回ですね(※2)。僕は大学院の時にヒッグス粒子の現象論というものを勉強していたんです。 現象論というのは、理論を使ってこういう実験をすればヒッグス粒子が検出できますよというシミュレーションをやるというもので、ある意味一番日が当たらない分野。つまり、派手な理論でもないし最終的にはノーベル賞がもらえるような実験とも違うわけです。こういう理論があるので、我々はそれを使ってシミュレーションをやりました。だからこういう実験をやってくれれば、恐らくそれはちゃんと検出できますよ、みたいなアドバイスを実験家の方にする研究なんですね。 なので、実際に発見されたということですごく印象に残っているし、CGのセットを使って、「ヒッグス粒子っていうけど、本当は『ヒッグス場』。電磁場と同じように場の概念が重要」という、科学者がイメージしているものをそのまま伝えられたことも印象に残っています。すごく工夫したな、と思いますね。 ※2 サイエンスZERO「ヒッグス粒子!素粒子の不思議ワールドへの招待」(2012年9月2日放送)。2012年7月4日、CERN(欧州原子核研究機構)の2つの実験グループが、素粒子物理学の標準理論で最後まで見つかっていなかった「ヒッグス粒子」を発見したと発表。ヒッグス粒子を提唱したピーター・ヒッグス氏には、2013年にノーベル物理学賞が贈られた』、「CGのセットを使って、「ヒッグス粒子っていうけど、本当は『ヒッグス場』。電磁場と同じように場の概念が重要」という、科学者がイメージしているものをそのまま伝えられたことも印象に残っています。すごく工夫したな、と思いますね」、なるほど。
・『科学にも光と影がある。それを教えてくれたのが「STAP細胞」  Q:伝えるのが難しかった回はありますか? STAP細胞の回は、難しかったですね(※3)。STAP細胞は論文が出た当初からマスコミがたくさん飛びついて、僕も、なんかすごいものが出たんだなと思いました。ところがSTAP細胞の回をサイエンスZEROでやることになって、収録の前の週あたりからいろんな情報を番組のディレクターが集めてきて、「異論が多数出ている」という情報が最初に入ってきた時に、「えっ?」と思ったんですよ。 その時点で僕はSTAP細胞が怪しいとは全く思っていなかったんです。通常であればサイエンスZEROは確立された成果を正確に楽しくお伝えするわけじゃないですか。ところが、STAP細胞の場合は確立されていないかもしれない。結構、異論が出てきているし、再現性がどうもない、という状況だけれどもそのことも含めて放送する。これはすごく難しい番組でしたね。 ただやっぱりあれは番組をやって良かったと思います。つまり、科学というのはいいことばかりじゃない。やはり常に光と影があるんだっていうところをお伝えできたと思うんですよ。そこに持っていくスタッフの取材力というか、研究の本質を見抜く力があるんだ、というのがすごく驚きでしたね。 ※3 サイエンスZERO「緊急SP!STAP細胞 徹底解説」(2014年3月16日放送)。科学誌Nature 2014年1月30日号に、マウスの成熟した細胞に簡単な操作を加えるだけであらゆる細胞に分化できるようになる、という論文が掲載され、マスコミが一斉に報道。しかしその後、実験の再現性がないことなどが研究者から指摘され、調査の結果、筆者の研究不正があったとの判断が下った』、「!STAP細胞 徹底解説」・・・科学誌Nature 2014年1月30日号に、マウスの成熟した細胞に簡単な操作を加えるだけであらゆる細胞に分化できるようになる、という論文が掲載され、マスコミが一斉に報道。しかしその後、実験の再現性がないことなどが研究者から指摘され、調査の結果、筆者の研究不正があったとの判断が下った」、この騒ぎはまだ覚えている。
・『科学の道も平坦ではなく研究者も善人ばかりではない  Q:科学技術には光と影がある、というのはどういう意味ですか? A:科学というと、全部がうまくいく、100%正しいとかそういった考えを持っている方もいるんですけど、そうじゃないですよ、と。実際に、科学の理論も実験も、現場では試行錯誤がたくさんあって、失敗もたくさんあるわけですね。そこの中で何かのきっかけで偶然うまくいくということもあるんですよ。 青色LEDでノーベル賞を受賞された天野浩先生(※4)も、装置が故障して初めてうまくいったって、すごい偶然じゃないですか。そういう意味で科学ってそんなに単純なものではないし、ちゃんと実験を続けていけば自然と結果が出るというものでもないということも伝えたい。 あと、不正論文って結構あるんですよね。科学にはちょっとダークサイドの話もあるんですよと。それはちゃんとお伝えできたかなと思うので、本当の現場の科学の姿とか実態とかが深掘りできたのかなと思うんです。 ジャーナリズムというと、規制の立場、権力に対するチェック機能があるとか、そういったことが特に先進自由国では大事じゃないですか。科学だってそうだと思うんですよ。科学者は全員が聖人というわけではないので、中には研究費を取るためにちょっと悪いことをしてしまう。軽い不正をやってしまうような方もいるわけですね。そこはやはりジャーナリスティックな視点でチェックをする人は必要なので、STAP細胞というのはそういう意味でも番組で取り上げる意味があったと思いますね。 ※4 2014年にノーベル物理学賞を受賞した名古屋大学の天野浩教授。サイエンスZERO「おめでとう!ノーベル物理学賞 青色LED徹底解説」(2014年12月7日放送)に出演。学生時代、青色LEDに必要な窒化ガリウムの結晶を作る実験を1500回以上繰り返していた天野さんは、通常1200℃で実験するところを装置の不具合のため700℃で行い、結晶を作ることに初めて成功したと語った。 この20年にとっての竹内さんにとっての科学とは何か、そして科学を伝えることの難しさや葛藤、「科学の光と影」など、科学と真摯に向き合うことによって生じてくる課題について奥深いお話を伺うことができました。 それでは、竹内さんは「これからの科学」についてどのように見ておられるのでしょうか。 後編『「科学はたとえば日本の『失われた30年』の原因を特定し解決することにも役立つはず」…科学伝道の第一人者が「社会の課題に対する科学の役割が大きくなる」と説く理由』に続きます』、「竹内さんは「これからの科学」についてどのように見ておられるのでしょうか・・・後編」を見ていこう。

第三に、3月25日付け現代ビジネス「「科学はたとえば日本の『失われた30年』の原因を特定し解決することにも役立つはず」…科学伝道の第一人者が「日本の政治はもっと科学に目を向けてほしい」と説く理由 サイエンスZERO NHK」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108088
・『「『サイエンスZERO』20周年スペシャル」取材班  「ゼロから分かりやすく科学を伝えたい」と2003年に始まった「サイエンスZERO」がまもなく放送20年を迎えます。787回に上る放送回数とあらゆる分野の最新科学研究をディープに伝えてきた節目を記念し、日本のサイエンス各分野の著名な研究者や番組ナビゲーターにこの20年を振り返ってもらうインタビューを行いました。そこで飛び出してくる驚きの言葉や知見、未来への警鐘とは―。(放送は「サイエンスZERO」20周年特別番組:3月26日(日)夜11:30~ NHK Eテレ) ここ20年の科学について「『第四次産業革命』の真っただ中を生きてきた―」と表現されたサイエンス作家の竹内薫さん。竹内さんは2012年から2018年まで「サイエンスZERO」のナビゲーターを務めてこられました。 竹内さんには前編『「日本って科学技術立国と言っているわりにはみんな科学にあまり興味がないんじゃないか」というこの国への本質的な疑問と竹内薫さんがこだわった「科学に興味がない人にも科学を伝え続ける意味」』に引き続き、この20年の科学について思うこととこれからの時代にとっての科学について伺います』、「この20年の科学について思うこととこれからの時代にとっての科学について伺います」、興味深そうだ。
・『一緒にナビゲーターを務めた南沢奈央さんにも支えられた  Q:一緒に番組ナビゲーターを務めた南沢奈央さんの印象はいかがでしたか? A:一言で言うと「勘が良い方だな」と思います。例えば、台本にはないけど、ここにこういうせりふがあるといいな、と思うとその通りのせりふが出てくるんですよ。台本をただ読んでいるんじゃなくて、臨機応変にいろんなことを言ってくれて、しかもかなり的を射ていたと思うんですね。あと、大学で心理学を専攻されていたということで、僕の得意な数学とか物理ではない分野について結構詳しかったので、すごく助かりましたね。凸凹コンビで、どちらかというと僕のほうが凹の方だったかな(笑)。 Q:南沢さんは番組で猫の特集をしたことをきっかけに、実家で猫を4匹飼い始めたそうです。竹内さんも猫好きでいらっしゃいますよね? A:猫、4匹ですか。うちは今、3匹飼っています。生まれたときから家に猫がいて、猫が好きなんですが、サイエンスZEROでも2回猫の特集をやって(※5)、スタジオに猫が来たり、うちの猫も登場させてもらったり、そんなことも懐かしく思い出しますね。 猫って実は物理学にもよく登場するんですよ。逆さまにして落下させるとちゃんと着地するという実験なんかは完全に力学の話ですよね。あと量子力学で「シュレーディンガーの猫」というのがありまして、頭で考える「思考実験」なんですけども、猫が登場する論文があるわけですよ。そういうのを考えると、猫は科学的だな、と思いますね。 ※5 サイエンスZERO「ニャンとも不思議!遺伝子が明かすネコの秘密」(2015年8月2日放送)、「ニャンとビックリ!科学で探る ネコとヒトとの優しい関係」(2016年6月5日放送)』、「南沢奈央さん」の公式ページはhttps://www.naosway.net/。「量子力学で「シュレーディンガーの猫」というのがありまして、頭で考える「思考実験」なんですけども、猫が登場する論文があるわけですよ。そういうのを考えると、猫は科学的だな、と思いますね」、なるほど。
・『「これまでの20年」と「これからの20年」の科学  Q:竹内さんは、この20年の科学の進歩についてどう思いますか? A:コンピューターやAIなんかはすごく進歩しましたよね。サイエンスZEROでも取り上げた将棋のAI(※6)は今、本当に強くなってきて、プロ棋士より強くなっているんじゃないの?という感じになっていますけど、その技術が完全に成熟する前の、成長段階にある現場の熱い感覚が伝えられたというのは非常に有意義だったし面白かったですね。 実は、AIは僕の仕事にもかなり影響を与えていて、去年あたりから翻訳をする時の下訳をAIにやってもらっているんですよ。これまでは人に頼んでいたものをAIにやってもらっている。だから、もうわれわれの仕事のすぐそこまで入ってきているわけです。10年後にはどうなるんだ、もう翻訳者はいらないかもしれないというところまで来ているのを感じます。 本当に今、「第四次産業革命」がどんどん進行していって、その真っただ中を生きてきたっていう印象があって、そこでいかに正しい情報発信ができるか、それを考えながら常に最先端のことを勉強しながら、この20年生きてきたのかなという印象ですね。 ※6 サイエンスZERO「プロ棋士大苦戦!進化する将棋コンピューター」(2014年7月6日放送)』、「去年あたりから翻訳をする時の下訳をAIにやってもらっているんですよ。これまでは人に頼んでいたものをAIにやってもらっている。だから、もうわれわれの仕事のすぐそこまで入ってきているわけです。10年後にはどうなるんだ、もう翻訳者はいらないかもしれないというところまで来ているのを感じます。 本当に今、「第四次産業革命」がどんどん進行していって、その真っただ中を生きてきたっていう印象があって、そこでいかに正しい情報発信ができるか、それを考えながら常に最先端のことを勉強しながら、この20年生きてきたのかなという印象ですね」、なるほど。
・『「科学予測の8割は外れる」  Q:これからの20年、科学の世界はどう変わると思いますか? A:僕、昔に本を書いたことがあって、それは「科学予測の8割は外れる」というものなんですよ。だから僕がここで予測しても多分外れると思うんです。 例えば、「空飛ぶクルマ」。100年ぐらい前に、もうすぐできると書いている雑誌の記事があるんです。でも、100年経ってようやく今できつつあると。どうしてすぐできなかったのかと考えると、テクノロジーが複数必要で、それを組み合わせないとできない。例えば、ドローン技術が必要だしAIも必要だし、そういった複雑なものがいくつかあって、全部がそろった時に初めて空飛ぶクルマが完成する。 普通、科学の未来予測をする時にテクノロジーのそういう細かいところ全部は考慮に入れないので、すぐにできると思っちゃうんですね。一方で、火星に人類が行くのに何年かかるのか、と言われたら、みんなが一斉にやろうと思ったとたんに意外と速く進むんですよ。世界中のいろんな人が参入してきて、民間でロケットを飛ばし始めるじゃないですか。そうすると加速度的に進むんですね。だから、やっぱり科学の動きっていうのは予測が難しいなと思います』、「科学予測の8割は外れる・・・「空飛ぶクルマ」。100年ぐらい前に、もうすぐできると書いている雑誌の記事があるんです。でも、100年経ってようやく今できつつあると。どうしてすぐできなかったのかと考えると、テクノロジーが複数必要で、それを組み合わせないとできない・・・火星に人類が行くのに何年かかるのか、と言われたら、みんなが一斉にやろうと思ったとたんに意外と速く進むんですよ。世界中のいろんな人が参入してきて、民間でロケットを飛ばし始めるじゃないですか。そうすると加速度的に進むんですね。だから、やっぱり科学の動きっていうのは予測が難しい」、なるほど。
・『社会の課題に対する科学の役割が大きくなるはず  Q:これからの科学にはどんなことが必要だと考えていますか? A:一つは、地球温暖化問題ですよね。20年前だと、人為的ではない、フェイクニュースだと言う人も結構いたと思うんですよ。最近は科学者の世界ではおそらくコンセンサスが取れていて、地球温暖化は人為的なものであるという認識が広まっています。 確かに、温暖な時期というのは過去の地球の歴史上でもあったわけですけど、今回はあまりにも急激にそれが来ているので、生態系がついていくことができない。農作物の出来にも関わってきて、栽培する物が急激に変わるとかも出てきちゃうので、経済もついていくことができない。そういった問題が出てきていると思うんですね。 同時に、台風が大型化したり干ばつが起きてしまったり、すごく極端な気象現象も起きる。だから、それを科学の力で何とかする必要があると思いますね。感染症もこれから増えると思うんです。地球温暖化が進んで気候が変わってくると、当然、熱帯の方のいろんな病気が入り込んでくることもあって、恐らく文明社会にこれまで存在しなかった感染症がどんどん広がっていくと思うんですよ。結局、環境破壊をしてしまっているから人間の世界に病気が入っているんですよね。 だから、環境をもうちょっと保護していく。野生動物をちゃんと保護していくことをすれば、リスクはかなり低減できると思うんですよ。ただ、世界中の国がそれをやってくれればいいんですけども、残念ながらそれをやらない国も出てくると思うので、ちょっとこれから20年、いろいろなことがまだ起きるんじゃないかと思いますね。 Q:これからの科学に期待することはありますか? A:例えば、経済の問題があって、今日本は失われた30年とか言われていますよね。これも科学的な最新の手法を使って分析していくと、いくつかの原因が特定できると思うんですよ。実際、それをおっしゃっている経済学者の方もいるんです。こうすれば経済は良くなるであろうという科学理論があると。それをある地域で、実証実験として実験的にやってみればいいと僕は思うんですよ。 科学というのは、われわれの生活を良くすることにもっともっと使えると思います。できれば政治家の方々ももう少し科学に目を向けてほしいなと思いますね。 「サイエンスZERO」20周年スペシャル  3月26日(日)夜11:30~午前0:30 NHK Eテレ《再放送:2023年4月1日(土)午後2:30~3:30 Eテレ》  関連記事『「なぜ宇宙には物質が存在しているのか?」実は現代の物理学でも説明できない究極の謎だった…素粒子実験の第一人者が語る「ニュートリノがなければ人類も誕生できなかった」という不思議』もぜひあわせてお読みください』、「こうすれば経済は良くなるであろうという科学理論があると。それをある地域で、実証実験として実験的にやってみればいいと僕は思うんですよ。 科学というのは、われわれの生活を良くすることにもっともっと使えると思います。できれば政治家の方々ももう少し科学に目を向けてほしいなと思いますね』、「こうすれば経済は良くなるであろうという科学理論があると」、残念ながらそんな理論はない、社会科学はそこまで進んでいないのが実情だ。 
タグ:(その2)(中国が約1兆ドルかけて製造・運用する「人工太陽」 太陽の5倍高温なプラズマの維持に成功!、「日本って科学技術立国と言っているわりにはみんな科学にあまり興味がないんじゃないか」というこの国への本質的な疑問と竹内薫さんがこだわった「科学に興味がない人にも科学を伝え続ける意味」、「科学はたとえば日本の『失われた30年』の原因を特定し解決することにも役立つはず」…科学伝道の第一人者が「日本の政治はもっと科学に目を向けてほしい」と説く理由 サイエンスZERO NHK) 科学技術 sorae 「中国が約1兆ドルかけて製造・運用する「人工太陽」 太陽の5倍高温なプラズマの維持に成功!」 「トカマク型核融合実験装置(EAST)が、摂氏約7千億度という高温のプラズマを1,056秒間持続することに成功・・・この持続時間は、トカマク型による高温プラズマの持続時間としては世界最長」、なるほど。 「地球の約33万倍もの質量を持つ太陽の内部のような核融合が起きる条件を地球上で人工的に模倣するのは難しく、約1,500万度ある太陽の中心部と比べて約6倍もの高温が必要・・・原子核同士が核融合を起こす環境を人工的に再現したものとしては、ロシア(当時のソビエト連邦)の科学者Natan Yavlinsky氏が1958年に設計した「トカマク型」と呼ばれる型式の核融合炉「T-1」が知られています。トカマク型は強力な磁場をもつドーナツ状の核融合炉のなかで、プラズマを封じ込める仕組みになっているようです。 ロシアが開発した「T-1」以降も様々な核融合実験装置が作られましたが、装置を作動させるために費やされたエネルギーより多くのエネルギーを発生させることに成功したものは登場しませんでした・・・現在EASTで実験を実施した中国自身も、ITERとは別の核融合炉の開発を独自に行っているようです。磁場ではなく慣性によってプラズマを封じ込める「慣性核融合炉」の実験の実施計画や、別のトカマク型核融合炉の完成を2030年代初頭までに目指すなど、新たな核融合炉の開発を進めている模様」、まだ「装置を作動させるために費やされたエ ネルギーより多くのエネルギーを発生させることに成功したものは登場しません」、これでは陽の目を見るのはかなり先になりそうだ、 現代ビジネス「「日本って科学技術立国と言っているわりにはみんな科学にあまり興味がないんじゃないか」というこの国への本質的な疑問と竹内薫さんがこだわった「科学に興味がない人にも科学を伝え続ける意味」」 「サイエンスZERO」は私の好きな番組で視聴していた。 かなり綱渡り的ナスケジュールだ。 「収録の前の台本打ち合わせが大変だった回が印象に残っています。例えば、「ブラックホール」の回は打ち合わせが長時間かかりました・・・例えば、「ブラックホール」の回は打ち合わせが長時間かかりました。 そのときは今と状況が違って、まだブラックホールが可視化されていなくて、「ブラックホール候補」でした。だから、そういった言葉づかいを含めてちゃんと科学的に伝えないといけないという科学者のスタンスと、分かりやすく伝えようとする番組側のスタンスがぶつかり合って、丁々発止のやり取りがありました。 でも、最終的に放送された番組を見ると、「あれ?結構きれいにまとまっているな、結果的にはいい番組になったな」と思いましたね」、なるほど。 「CGのセットを使って、「ヒッグス粒子っていうけど、本当は『ヒッグス場』。電磁場と同じように場の概念が重要」という、科学者がイメージしているものをそのまま伝えられたことも印象に残っています。すごく工夫したな、と思いますね」、なるほど。 「!STAP細胞 徹底解説」・・・科学誌Nature 2014年1月30日号に、マウスの成熟した細胞に簡単な操作を加えるだけであらゆる細胞に分化できるようになる、という論文が掲載され、マスコミが一斉に報道。しかしその後、実験の再現性がないことなどが研究者から指摘され、調査の結果、筆者の研究不正があったとの判断が下った」、この騒ぎはまだ覚えている。 「竹内さんは「これからの科学」についてどのように見ておられるのでしょうか・・・後編」を見ていこう。 現代ビジネス「「科学はたとえば日本の『失われた30年』の原因を特定し解決することにも役立つはず」…科学伝道の第一人者が「日本の政治はもっと科学に目を向けてほしい」と説く理由 サイエンスZERO NHK」 「この20年の科学について思うこととこれからの時代にとっての科学について伺います」、興味深そうだ。 「南沢奈央さん」の公式ページはhttps://www.naosway.net/。「量子力学で「シュレーディンガーの猫」というのがありまして、頭で考える「思考実験」なんですけども、猫が登場する論文があるわけですよ。そういうのを考えると、猫は科学的だな、と思いますね」、なるほど。 「去年あたりから翻訳をする時の下訳をAIにやってもらっているんですよ。これまでは人に頼んでいたものをAIにやってもらっている。だから、もうわれわれの仕事のすぐそこまで入ってきているわけです。10年後にはどうなるんだ、もう翻訳者はいらないかもしれないというところまで来ているのを感じます。 本当に今、「第四次産業革命」がどんどん進行していって、その真っただ中を生きてきたっていう印象があって、そこでいかに正しい情報発信ができるか、それを考えながら常に最先端のことを勉強しながら、この20年生きてきたのかなという印象ですね」、なるほど。 「科学予測の8割は外れる・・・「空飛ぶクルマ」。100年ぐらい前に、もうすぐできると書いている雑誌の記事があるんです。でも、100年経ってようやく今できつつあると。どうしてすぐできなかったのかと考えると、テクノロジーが複数必要で、それを組み合わせないとできない・・・ 火星に人類が行くのに何年かかるのか、と言われたら、みんなが一斉にやろうと思ったとたんに意外と速く進むんですよ。世界中のいろんな人が参入してきて、民間でロケットを飛ばし始めるじゃないですか。そうすると加速度的に進むんですね。だから、やっぱり科学の動きっていうのは予測が難しい」、なるほど。 「こうすれば経済は良くなるであろうという科学理論があると。それをある地域で、実証実験として実験的にやってみればいいと僕は思うんですよ。 科学というのは、われわれの生活を良くすることにもっともっと使えると思います。できれば政治家の方々ももう少し科学に目を向けてほしいなと思いますね』、「こうすれば経済は良くなるであろうという科学理論があると」、残念ながらそんな理論はない、社会科学はそこまで進んでいないのが実情だ。
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宇宙ビジネス(その3)(民間企業スペースXは61回成功 日本は成功ゼロ…日本のロケット開発が高価で失敗続きである根本原因 SNSでは成功したと勘違いする人が続出、H3打ち上げ失敗の影に隠れた、日本の宇宙開発体制の知られざる「重大欠陥」、直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?) [科学技術]

これまではロケット・衛星打上げ(その2)として、2017年3月9日に取上げた。今日は、宇宙ビジネス(その3)(民間企業スペースXは61回成功 日本は成功ゼロ…日本のロケット開発が高価で失敗続きである根本原因 SNSでは成功したと勘違いする人が続出、H3打ち上げ失敗の影に隠れた、日本の宇宙開発体制の知られざる「重大欠陥」、直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?)である。

先ずは、昨年3月15日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの知野 恵子氏による「民間企業スペースXは61回成功、日本は成功ゼロ…日本のロケット開発が高価で失敗続きである根本原因 SNSでは成功したと勘違いする人が続出」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67441
・『「開発体制のどこかに問題があるのでは」  3月7日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が共同開発した日本の新しい大型ロケット「H3」初号機の打ち上げが失敗した。昨年10月の小型ロケット「イプシロン」失敗に続いて、半年もたたないうちに起きたロケットの連続失敗。「技術大国日本」の凋落が止まらない。起死回生策はあるのか。 昨年10月のイプシロン、今年3月のH3。どちらも地上から信号を送って機体を破壊した。 宇宙政策に詳しい鈴木一人・東大教授(国際政治経済学)は、「連続して失敗したことで、世界にマイナスの印象を与えた。ロケットの初号機打ち上げ失敗自体は珍しいことではないが、イプシロン失敗を含めて考えると、日本のロケットの開発体制のどこかに問題があるのではないか」と指摘する。 「H3」は、2014年から約2000億円の国費を投じて開発された。日本が新しいロケットを開発するのは30年ぶりで、今後20年にわたって主力ロケットとして使用する予定になっている。 まさに日本の宇宙政策・活動を支える「屋台骨」だ』、「昨年10月のイプシロン、今年3月のH3と、「連続して失敗した」とは深刻な事態だ。
・『安価で売れるロケットを造るのが狙いだが…  H3開発の最大の目的として政府が強調してきたのは、ロケット価格を半減させることだ。 現在の主力ロケット「H2A」は約100億円で、世界相場の倍程度と高い。H3はこれを、世界相場の約50億円に半減し、世界の衛星打ち上げ市場で「売れるロケット」を目指した。 そのために開発方法も変えた。 これまでのロケットは、JAXAが設計・開発し、企業に製造を発注。何機か打ち上げて技術的に安定すると、JAXAから企業に技術を移管し、企業が商用打ち上げサービスを行うというやり方だった。 現在の主力ロケット「H2A」でいえば、技術を移管された三菱重工が打ち上げサービスを行っている。 だが、最先端技術を志向するJAXAが開発するロケットは、高価格になりがちだ。衛星を打ち上げたい顧客にとって使いやすいものかどうかもわからない。 そこで、JAXAと三菱重工が最初から一緒に設計・開発を行い、打ち上げビジネスをしやすいロケットを造ることを目指した。 だが、その1回目からつまずいた』、「最先端技術を志向するJAXAが開発するロケットは、高価格になりがちだ」、「JAXAと三菱重工が最初から一緒に設計・開発を行い、打ち上げビジネスをしやすいロケットを造ることを目指した。 だが、その1回目からつまずいた」、お粗末だ。
・『スペースXは61回成功し、日本はゼロ  今回の失敗によって、日本の宇宙開発は苦境に立たされた。 打ち上げ市場への参入はもちろん、情報収集衛星など国の安全保障にかかわる衛星、米国主導の有人月探査「アルテミス計画」で使う物資輸送機、火星の衛星の探査機など、H3による打ち上げ予定は詰まっている。今後、その調整や見直しが必要になる。 JAXAや文部科学省は原因調査を開始したが、原因を突き止め、対策をほどこし、試験でそれを確かめる、など一連の作業にはかなり時間がかかる。 2003年に情報収集衛星2基を搭載した「H2A」6号機の打ち上げが失敗した時には、再開まで1年3カ月を要した。 時間がかかればかかるほど、H3の開発費は膨れ、世界相場並みの50億円達成はどんどん遠のいていく。 今、世界の宇宙開発は拡大期にある。2018年以降、世界のロケット打ち上げ成功数は大きく増加している。 内閣府の調べによると、2022年は過去最大の177回で、直近10年間で年率9.7%と大幅に伸びた。 打ち上げ成功数は米国が最も多く83回。うち75回が民間企業によるもので、その61回はスペースXのロケットだった。 成功数が次に多いのは中国で62回、次はロシアで21回だった。 一方、日本は成功ゼロだった。世界で存在感を発揮できない中で、さらに追い打ちをかけるH3失敗。日本は世界から取り残され、埋没していく恐れがある』、「打ち上げ成功数は米国が最も多く83回。うち75回が民間企業によるもので、その61回はスペースXのロケットだった。 成功数が次に多いのは中国で62回、次はロシアで21回だった。 一方、日本は成功ゼロだった」、「日本は世界から取り残され、埋没していく恐れがある」、まさに危機的状況だ。
・『成功にこだわっていると市場で勝負できない  今、ロケット打ち上げ市場をリードしているのは、米スペースXだ。 2000年代初頭に宇宙ベンチャー企業として頭角を現し、低価格の「価格破壊ロケット」で、商用打ち上げ市場を席巻するようになった。 スペースXは、ロケットが爆発炎上する派手な失敗もよく起こすが、淡々と対策をほどこし、すぐに次の打ち上げを再開する。 国の研究開発法人のJAXAは、先端技術と完璧さを目指し、それを成し遂げてから打ち上げ市場への売り込みを図ろうと考える。一方、スペースXは走りながら完成度を高めていく。 国費で開発する研究開発法人と、米ベンチャー企業との発想の違いだろうが、日本とは対極的だ。 鈴木教授は「日本には打ち上げを失敗してはいけないと考える文化がある。一度失敗すると二度と失敗しない仕組みを作ろうとする。だが、それによってコストが膨張し、納期が遅れ、打ち上げ市場で勝負できなくなる。一方、スペースXは『失敗なしに成功はない』と考え、失敗しても素早く機敏に開発をしていく。打ち上げ市場でこうした企業と戦おうというのなら、日本でも失敗を許す文化が必要だ」 これまで日本は「H2」「H2A」と大型ロケットを開発したが、市場参入に成功とはいいがたい状況だった。 H3でロケットの価格を半減させて打ち上げ市場参入を目指す、と掲げた以上、日本も今までのやり方を見直す必要があるだろう』、「H3でロケットの価格を半減させて打ち上げ市場参入を目指す、と掲げた以上、日本も今までのやり方を見直す必要がある」、その通りだ。
・『「何が何でも3月中に」JAXAの危機感  例えば、JAXAの開発には、役所の文化が根強く残っている。 役所の予算編成に合わせる「年度縛り」もそのひとつだ。 H3の初号機は、2020年度に打ち上げる予定だったが、2度にわたって延期した。 新規開発の高性能エンジン「LE9」の開発にてこずったためだ。 政治家や産業界からは不満や批判が続出していた。これ以上遅らせてはならないという危機感がJAXAや文科省の間で高まっていた。 このため2022年度中、つまり今年3月中に何が何でも打ち上げを成功させねばならない、それを超えると23年度になってしまう、という焦りがあったとみられる。しかも、地元の漁協などとの調整から、打ち上げは「3月10日まで」という締め切りもあった。 JAXAは2月17日にH3を打ち上げようとしたが、直前に技術トラブルが発生し、中止した。原因解明と対策に時間を要したが、「3月10日まで」を死守することを、記者会見で何度も強調した。2023年度になることを避けたいということだろう。 再度設定した打ち上げ日は、年度縛りに収まる3月7日だったものの、失敗に終わった。 このあたりの経緯や、組織の体質や対応、JAXAと三菱重工との協力関係や責任分担などを今後検証する必要があるのではないか。 失敗原因を解明、対策をほどこした後は、前回の「H2A」6号機失敗の時のように長期間止めることなく、なるべく早く、打ち上げを再開する必要もある』、「失敗原因を解明、対策をほどこした後は、前回の「H2A」6号機失敗の時のように長期間止めることなく、なるべく早く、打ち上げを再開する必要もある」、なるほど。
・『SNSでは成功したと勘違いする人が続出  巨費をかけてロケットを開発するのは、他国に依存することなく、自国の衛星を必要な時に打ち上げる手段を保有するためだ。 鈴木教授は「日本では夢とロマンが強調され、何のためにロケットを打ち上げるかについて、ふわっとした議論しかしてこなかった。H3をどういうロケットにすべきかという議論や説明も不足していた。本当の意味で使えるロケット、衛星を運ぶロケットとしての開発をしてこなかったのではないか」と苦言を呈する。 そうした影響か、ロケットに対する見方は揺れが大きい。 2月17日の打ち上げ直前中止をめぐって、JAXAは「止めることができたので失敗ではない」と説明をした。だが、会見に参加した記者が「それは一般に失敗という」と発言。これを引き金に、SNSで「失敗」「失敗ではない」をめぐって、喧々諤々の議論になった。 3月7日の打ち上げでは、晴れた空の下、H3は地上からきれいに打ち上がり、補助ロケットの切り離しも成功した。だが、すぐにロケットの速度はどんどん下がっていった。第2段エンジンが着火しなかったためだ。 JAXAの打ち上げ中継で「指令破壊信号を送信しました」というアナウンスが流れた直後に、SNSを見て驚いた。「H3成功」の話で盛り上がっていたからだ。 地上から機体が離陸したのを見て、成功したと思った人が多かったのだろう。「打ち上げ成功」「おめでとう!」などのツイートがさかんに流れていた』、「「日本では夢とロマンが強調され、何のためにロケットを打ち上げるかについて、ふわっとした議論しかしてこなかった。H3をどういうロケットにすべきかという議論や説明も不足していた。本当の意味で使えるロケット、衛星を運ぶロケットとしての開発をしてこなかったのではないか」、「2月17日の打ち上げ直前中止をめぐって、JAXAは「止めることができたので失敗ではない」と説明をした。だが、会見に参加した記者が「それは一般に失敗という」と発言。これを引き金に、SNSで「失敗」「失敗ではない」をめぐって、喧々諤々の議論になった」、「失敗」は正々堂々と認めるべきだ。そうないと改善点が明確にならない筈だ。
・『「国民の責任」を求めるわりに説明が足りていない  ロケットは地上から上がれば仕事が終わるわけではない。さらに30分ほど飛行して、衛星を予定の軌道に届けたことを確認できて初めて、技術者もようやく「成功」を宣言する。 ロケットがどの段階まで進めば、「成功」なのか、「失敗」とはどういうことを指すのか。こうした点についての知識や説明がもっと必要だと感じる。 2003年の「H2A」の失敗の後、文科省の有識者会議では、「国民にロケットの抱えるリスクを理解してもらわないといけない」という議論がさかんに行われた。「国民への責任」よりも、「国民の責任」を求める論理に違和感を覚えたが、有識者会議の報告書は「国民側も理解や関心を深めることが必要」と注文をつけた。 その具体策について、当時文科省は「今後、検討する」と述べるにとどめていた。 それから20年たった今もなお、そのための知識提供や広報活動が不足している。 ロケットの打ち上がる姿は勇壮で魅力的だが、そのためだけに巨費を投じて開発するわけではない。打ち上げ花火ではないのだ。ロケットや宇宙開発への夢を語るだけではなく、目的や成否の判断基準などももっと明確に示すべきだろう。 今回の失敗の教訓のひとつだと思う』、「ロケットや宇宙開発への夢を語るだけではなく、目的や成否の判断基準などももっと明確に示すべきだろう」、同感である。

次に、6月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの大貫剛氏による「H3打ち上げ失敗の影に隠れた、日本の宇宙開発体制の知られざる「重大欠陥」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324531
・『20年ぶりにしかも立て続けに2件のロケットの打ち上げに失敗してしまったJAXA(宇宙航空研究開発機構)。実は、その裏でJAXAの宇宙開発と宇宙事業に対する重大な欠陥が明らかになったことは、あまり知られていない。特集『来るぞ370兆円市場 ビッグバン!宇宙ビジネス』(全13回)の#4では、ベテラン宇宙ライターが打ち上げ失敗から見える「日本の宇宙開発体制」の大問題を指摘する』、興味深そうだ。
・『H3ロケットはなぜ失敗したか 「実績のある技術」が原因の可能性  「日本のロケットは定時運行」――。あたかも鉄道や旅客機のような高い信頼性を売り物にしてきたJAXA(宇宙航空研究開発機構)に異常事態が発生している。2023年3月7日、日本の次期大型ロケットとして開発されたH3ロケットが、初号機でいきなり打ち上げに失敗したのだ。 JAXAは03年のH-IIAロケット6号機の打ち上げ失敗の後、43機のH-IIAロケット、9機のH-IIBロケット、5機のイプシロンロケットの打ち上げを成功させており、成功率の高さだけでなく打ち上げ遅延が少ないことも誇ってきた。 ところが22年10月12日、約20年ぶりにイプシロンロケット6号機の打ち上げに失敗、それから半年もたたずに今度はH3ロケット初号機が失敗したのだ。一部の部品を共通使用しているH-IIAロケットも含めて、原因調査と対策のため打ち上げが一時凍結された。結果的に、H-IIAロケットを含むJAXAの全ロケットが飛行停止に追い込まれるという事態になっている。 (図_JAXAの過去のロケット開発史と打ち上げ失敗例 はリンク先参照) 6月末現在、H3ロケット初号機打ち上げ失敗の原因は確定されていない。一度発射したロケット機体は回収できず、完全な原因特定が可能とは限らないのだ。そこでJAXAはまず、失敗の原因になりえる9パターンのシナリオを検討し、全て対策を施すことにした。実はこの9パターンはどれも、H-IIAロケットからH3ロケットへ流用したLE-5Bというエンジンに関するものだ。H-IIAロケットはこれらの対策を施して、今年8月以降に打ち上げを再開することになった。 これまでLE-5BエンジンはH-IIAロケットなど50基以上に使われてきたが、同種のトラブルは一度もない。にもかかわらず、なぜかH3ロケットでは初号機でいきなり失敗した。 なぜH3ロケットは失敗したのか。さらに言えば、実は今回は打ち上げ失敗そのものよりも、より目を向けるべき危機的な状況がある。それは政府とJAXAの宇宙利用計画と人工衛星の打ち上げ計画についての根本的な問題点だ。所管する省庁の性質という背景も見え隠れする。次ページから解説していこう。 これ以降は有料だが、今月の閲覧本数、残り4本までは無料』、「今回は打ち上げ失敗そのものよりも、より目を向けるべき危機的な状況がある。それは政府とJAXAの宇宙利用計画と人工衛星の打ち上げ計画についての根本的な問題点だ」、どういうことだろう。
・『安全ゾーンの宇宙部品が原因で予想外の失敗が発生か  これまでLE-5BエンジンはH-IIAロケットなどで50基以上が使われてきたが、同種のトラブルは一度もない。にもかかわらず、なぜH3ロケットでは1号機でいきなり失敗したのか、現時点ではわかっていない。JAXAは、H3ロケット固有の部品が引き金となった可能性も検討しており、H3ロケットの打ち上げ再開にはさらに数カ月を要しそうだ。 一方、イプシロンロケット6号機については原因が特定された。飛行中の機体から送られてきたデータと製造時の検査データを照合した結果、推進剤(ロケットを推進させるのに用いる薬剤・燃料)タンクの製造上の欠陥が判明したのだ。この欠陥は過去にも存在したがトラブルには至っておらず、欠陥があること自体が見過ごされた。そして「実績のある信頼できる部品」としてそのままイプシロンロケットに採用されてしまっていた。 イプシロンロケット6号機とH3ロケット初号機の打ち上げ失敗に共通するのは、どちらも従来から使用実績のある部品が注目されていることだ。 日本では50年以上にわたって宇宙ロケットを打ち上げてきており、その中で繰り返し使われて信頼性を確認された技術の蓄積も多い。こういった技術で作られた部品は少数生産品で高価なので、イプシロンロケットやH3ロケットでは、自動車用部品など低価格の民生品を大胆に導入してロケット全体のコストを下げることに主眼が置かれたという経緯がある。その一方で、高価でも引き続き採用された宇宙部品は、信頼性が高く、開発の「安全ゾーン」として扱われてきた。 しかし実際には、十分に信頼性が確認されたはずの「安全ゾーンの宇宙部品」で、予想外の失敗が発生してしまった。新型ロケットでは従来のロケットとは使用環境が異なっている場合があるからだ。H3ロケットの失敗原因は未確定だが、新規採用された部品と既存宇宙部品の組み合わせで、予想外のトラブルが発生した可能性が疑われている。先人が蓄積した技術を利用する際には、これまで大丈夫だったから大丈夫だと考えるのではなく、改めて信頼性を確認しなければならないというのが、今回の2回の打ち上げ失敗の教訓といえるだろう。 宇宙ロケットの打ち上げ失敗は見た目にも分わかりやすいため、今回の打ち上げ失敗でもロケット自体に衆目が集まるのはやむを得ない。 だが、今回のH3ロケットに関しては、打ち上げ失敗そのものよりも、より目を向けるべき危機的な状況がある。それは政府とJAXAの宇宙利用計画と人工衛星の打ち上げ計画についての根本的な問題点だ』、「十分に信頼性が確認されたはずの「安全ゾーンの宇宙部品」で、予想外の失敗が発生してしまった。新型ロケットでは従来のロケットとは使用環境が異なっている場合があるからだ。H3ロケットの失敗原因は未確定だが、新規採用された部品と既存宇宙部品の組み合わせで、予想外のトラブルが発生した可能性が疑われている。先人が蓄積した技術を利用する際には、これまで大丈夫だったから大丈夫だと考えるのではなく、改めて信頼性を確認しなければならないというのが、今回の2回の打ち上げ失敗の教訓といえるだろう」、「改めて信頼性を確認しなければならない」というのは確かだ。
・『「打ち上げは失敗しない」と当然視しバックアップのない最重要衛星を失う失態  宇宙開発で実際に利益を生み出す活動をするのは人工衛星だ。ロケットは人工衛星を宇宙に設置するための、輸送機械にすぎない。 今回のH3ロケットは「打ち上げは失敗しない」ことが前提とされていた。そのため「だいち3号」(ALOS-3)という失われてはならない重要な衛星が搭載されていたのだ。これは光学センサーで地球の写真を撮影する衛星で、大地の写真を継続的に撮影して、地図情報を更新する。また、大規模災害発生時には被災地を撮影し、被害状況を俯瞰的・網羅的に把握することも期待されている。 「だいち」シリーズは、国が当初策定していたそもそもの計画から場当たり的で、問題だらけだった。 06年に打ち上げられた初代「だいち」は、光学的に写真を撮影するセンサーと、電波で地上を観測するレーダーを1機の衛星に搭載する大型衛星だった。設計上の寿命目標5年を越えても後継機の打ち上げが行われないままで、11年3月の東日本大震災の被災地観測をなんとかこなし、その1カ月後の4月22日に機能停止した。 その後後継の「だいち2号」が打ち上げられた14年までの3年間、JAXAにはこの種の地球観測衛星が存在しなかった。しかも「だいち2号」は「だいち」の観測機能のうち、レーダーしか搭載していない。これは光学センサーとレーダーを1機の大型衛星に載せるより、別の中型衛星とした方がリスクを分散できるという考えからのものだったが、肝心の光学センサー搭載衛星には予算が付かない、という結果に終わった。 今回H3ロケットは「だいち3号」の打ち上げで、12年間の光学地球観測衛星不在の状況を解消する重要なミッションを持っていたのだ。にもかかわらず、打ち上げ失敗で「だいち3号」は失われ、日本の光学地球観測衛星の空白期間はさらに続くことになってしまった』、「今回H3ロケットは「だいち3号」の打ち上げで、12年間の光学地球観測衛星不在の状況を解消する重要なミッションを持っていたのだ。にもかかわらず、打ち上げ失敗で「だいち3号」は失われ、日本の光学地球観測衛星の空白期間はさらに続くことになってしまった」、もったいない限りだ。
・『失われた民間企業からの信頼 JAXAの民間連携事業に黄信号  この衛星をビジネス活用しようとしていた企業も影響を受けることになった。 「だいち3号」の画像をさまざまな用途に活用するため、JAXAは地理情報システム(GIS)大手企業のパスコと契約を結んでいる。パスコは「だいち」「だいち2号」でも画像の利用・販売を担当しており、「だいち3号」でも引き続き担当するはずだった。 「だいち3号」は性能的にも大きく進歩している。パスコはその性能を前提とした新たなGISサービスを開発して、運用開始に備えていたはずだ。またパスコは「だいち3号」の地上管制そのものも委託されており、施設や人員を用意していた。これらの努力が、「だいち3号」の打ち上げ失敗によって日の目を見なくなったのは、同社にとっては大きな痛手に違いない。 失われた「だいち3号」を再打ち上げするのか、別の方法を模索するのかなどの今後の予定は未定だ。しかし、衛星の運用体制にここまで長い空白期間が生まれるのは、国の社会インフラ整備としてはあまりにもお粗末だといえるだろう』、「衛星の運用体制にここまで長い空白期間が生まれるのは、国の社会インフラ整備としてはあまりにもお粗末だ」、その通りだ。
・『バックアップ体制がない運用計画では民間企業の本腰参入は困難だ  JAXAは政府の宇宙計画を執行する機関であり、計画を決定して予算を確保するのは所管省庁の役割だ。「だいち」シリーズは文部科学省の事業なので、計画の方向性や予算額にはJAXAではなく文部科学省の意思が反映される。 ちなみに、他省庁が管理する衛星では、ちゃんと計画的な運用をされているものもある。 例えば気象庁の気象衛星「ひまわり」シリーズは現在、「ひまわり8号」「ひまわり9号」が同時に飛行している。「ひまわり」の設計寿命は15年だが、2機を交互に8年間使用して7年間は休ませるという運用で、使用中の衛星が故障した際はもう一方が復帰するというバックアップ体制を整えている。気象庁は天気予報という重要な情報サービスを提供する社会インフラを管掌する官庁で、その運用が途切れないような体制を敷いているのだ。 一方「だいち」シリーズを所管するのは文部科学省だ。研究開発を軸としているからか、サービスの継続性より、研究開発の新規性や独自性などを重視する傾向があるように見える。「だいち」シリーズは世界トップクラスの性能を誇っているが、バックアップがない。そのため今回のような打ち上げ失敗や寿命中の故障といったトラブルが発生すれば、直ちにサービスが途絶えてしまう。このような計画で整備されているものを社会インフラとして信頼することは無理がある。 近年は産官学が一体となって宇宙ビジネスを推し進める雰囲気になっているが、このような状態では企業として本腰を入れて事業参画することは難しいだろう。企業にビジネス利用してもらうことを前提に衛星を整備するのなら、政府は打ち上げ失敗を含むトラブルを想定して、バックアップ体制を組むなど、信頼性や事業継続性を重視した計画を立てる必要がある。 JAXAは民間企業との連携に努力しているが、「だいち」シリーズには継続的なサービスを保証するのに必要な予算措置が講じられていなかった。このようなあしき前例を作ってしまったとなると、たとえ今後JAXAが世界最高レベルの宇宙技術を開発しても、それを日本企業がビジネスに活用したいと思えないだろう。民間活用が間違いなくテーマになる今後の宇宙開発と宇宙ビジネスを考えると、政府の宇宙政策には重い課題が突き付けられているといえる』、「企業にビジネス利用してもらうことを前提に衛星を整備するのなら、政府は打ち上げ失敗を含むトラブルを想定して、バックアップ体制を組むなど、信頼性や事業継続性を重視した計画を立てる必要がある」、同感である。

第三に、5月16日付けAERAdot「直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023051100102.html?page=1
・『自然科学の分野では、偶然によって新たな事実が発見されることがある。太陽の8倍以上の質量をもつ恒星が爆発するとき、極度にエネルギーが高い「ガンマ線バースト」が発せられる場合があるが、この天文現象はアメリカが打ち上げた軍事衛星によって偶然発見された。宇宙望遠鏡による天文観測は1960年代にはじまったが、その契機ともなったこの軍事衛星について、拙著『宇宙望遠鏡と驚異の大宇宙』をもとに紹介したい。 【写真】史上初ブラックホールの候補を特定した、NASAのX線観測衛星「SAS-A ウフル」 アメリカ、イギリス、旧ソ連は、1963年に「部分的核実験禁止条約」を締結した。これにもとづいて米国防総省は、各国が同条約を順守し、核実験を実施していないかを監視するため、「ヴェラ」と呼ばれる軍事衛星を打ち上げた。 ヴェラは、地球上のどこかで核爆発が起こると、そこから放射されるX線やガンマ線、中性子線などを軌道上で感知する。米国は1963年から1970年にかけ、AとBの2機からなるヴェラをワンセットにして、計6回、12機のヴェラを打ち上げた。 1967年4月28日に打ち上げられた「ヴェラ4号」がある日、奇妙なデータを補足する。ロスアラモス国立研究所の研究員が調査した結果、それは大気圏内からではなく、宇宙から飛来したガンマ線であることが判明。続いて打ち上げられた5号(1969年5月)と6号(1970年4月)も、同様のガンマ線を複数捕捉し、その発生源の位置を割り出すことに成功した。結果、それは人類にとって未知の天文現象である「ガンマ線バースト」から発せられたものであることが突き止められた。 ガンマ線バーストのイメージ図 (C)NASA, ESA and M. Kornmesser  ガンマ線バーストとは、恒星が爆発(超新星爆発)した際に、閃光(せんこう)のように放出される電磁波のこと。エネルギー量が極度に高く、その出力は太陽が100億年間に放出するエネルギーに匹敵するともいわれる。もしそのビームのような電磁波の直撃を受ければ、地球サイズの天体は瞬時に蒸発してしまうだろう。爆発した恒星の質量が太陽の8倍以上であれば中性子星になり、25倍以上の場合には、そこにブラックホールが誕生すると考えられている。) 謎のガンマ線が宇宙から降り注いでいることがヴェラによって判明すると、各国は本格的に天文観測衛星を打ち上げはじめた。1970年にNASAが打ち上げた世界初のX線観測衛星「SAS-A ウフル」もその一機だ。ガンマ線バーストやブラックホールなど、高エネルギーな電磁波が放出される天文現象では、ガンマ線のほかにX線などが放出される。それを検知する天文観測衛星である。 ウフルは、「はくちょう座」にある超巨星を重点的に観測した。この星は、ペアとなるもうひとつの恒星との共通の重心を周る「連星(双子星)」である。太陽の30倍もの質量を持つこの超巨星が、他の何者かによって、操られるかのように奇妙な軌道を描くからには、その相手の天体はさらに大きな質量を持っていると予想された。しかし、その星が見つからない。つまり、この超巨星とペアを組む相手は、見えないブラックホールである可能性が高い。 ウフルは、見えない相手(主星)がいると予想される領域を重点的に観測した。その結果、強いX線の放射を発見した。これが史上はじめて特定されたブラックホールの有力候補である。後日この天体は「はくちょう座X-1」と命名された。 (「SAS-A ウフル」が捕捉したX線源による全天マップ はリンク先参照) 1960年代、ヴェラによってガンマ線バーストが偶然発見され、1970年代にはウフルがブラックホールの候補を特定した。人類にとって未知であったそれらの天体を発見してから半世紀が過ぎた2019年には、ブラックホールの間接的撮影にも成功し、2021年からはブラックホールのマップ作製も開始されている。 宇宙望遠鏡による天文観測が進化した結果、いまでは宇宙に存在する全エネルギー量を計算することにも成功している。その23%をダークマター、73%をダークエネルギーが占めることも判明しているが、その両者の正体はいまだ謎のままだ。しかし、この半世紀で人類が明らかにした真実と、天文観測技術の劇的な進化を思えば、こうした宇宙の謎が解き明かされる日は、さほど遠くないに違いない』、「「部分的核実験禁止条約」を締結した。これにもとづいて米国防総省は、各国が同条約を順守し、核実験を実施していないかを監視するため、「ヴェラ」と呼ばれる軍事衛星を打ち上げた。 ヴェラは、地球上のどこかで核爆発が起こると、そこから放射されるX線やガンマ線、中性子線などを軌道上で感知する」、そんな監視衛星があることは初めて知った。「ガンマ線バーストとは、恒星が爆発(超新星爆発)した際に、閃光(せんこう)のように放出される電磁波のこと。エネルギー量が極度に高く、その出力は太陽が100億年間に放出するエネルギーに匹敵するともいわれる。もしそのビームのような電磁波の直撃を受ければ、地球サイズの天体は瞬時に蒸発してしまうだろう。爆発した恒星の質量が太陽の8倍以上であれば中性子星になり、25倍以上の場合には、そこにブラックホールが誕生すると考えられている」、「宇宙望遠鏡による天文観測が進化した結果、いまでは宇宙に存在する全エネルギー量を計算することにも成功している。その23%をダークマター、73%をダークエネルギーが占めることも判明しているが、その両者の正体はいまだ謎のままだ」、「この半世紀で人類が明らかにした真実と、天文観測技術の劇的な進化を思えば、こうした宇宙の謎が解き明かされる日は、さほど遠くないに違いない」、「宇宙の謎が解き明かされる日」が早く来てほしいものだ。 
タグ:宇宙ビジネス (その3)(民間企業スペースXは61回成功 日本は成功ゼロ…日本のロケット開発が高価で失敗続きである根本原因 SNSでは成功したと勘違いする人が続出、H3打ち上げ失敗の影に隠れた、日本の宇宙開発体制の知られざる「重大欠陥」、直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?) PRESIDENT ONLINE 知野 恵子氏による「民間企業スペースXは61回成功、日本は成功ゼロ…日本のロケット開発が高価で失敗続きである根本原因 SNSでは成功したと勘違いする人が続出」 「昨年10月のイプシロン、今年3月のH3と、「連続して失敗した」とは深刻な事態だ。 「最先端技術を志向するJAXAが開発するロケットは、高価格になりがちだ」、「JAXAと三菱重工が最初から一緒に設計・開発を行い、打ち上げビジネスをしやすいロケットを造ることを目指した。 だが、その1回目からつまずいた」、お粗末だ。 「打ち上げ成功数は米国が最も多く83回。うち75回が民間企業によるもので、その61回はスペースXのロケットだった。 成功数が次に多いのは中国で62回、次はロシアで21回だった。 一方、日本は成功ゼロだった」、「日本は世界から取り残され、埋没していく恐れがある」、まさに危機的状況だ。 「H3でロケットの価格を半減させて打ち上げ市場参入を目指す、と掲げた以上、日本も今までのやり方を見直す必要がある」、その通りだ。 「失敗原因を解明、対策をほどこした後は、前回の「H2A」6号機失敗の時のように長期間止めることなく、なるべく早く、打ち上げを再開する必要もある」、なるほど。 「「日本では夢とロマンが強調され、何のためにロケットを打ち上げるかについて、ふわっとした議論しかしてこなかった。H3をどういうロケットにすべきかという議論や説明も不足していた。本当の意味で使えるロケット、衛星を運ぶロケットとしての開発をしてこなかったのではないか」、 「2月17日の打ち上げ直前中止をめぐって、JAXAは「止めることができたので失敗ではない」と説明をした。だが、会見に参加した記者が「それは一般に失敗という」と発言。これを引き金に、SNSで「失敗」「失敗ではない」をめぐって、喧々諤々の議論になった」、「失敗」は正々堂々と認めるべきだ。そうないと改善点が明確にならない筈だ。 「ロケットや宇宙開発への夢を語るだけではなく、目的や成否の判断基準などももっと明確に示すべきだろう」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 大貫剛氏による「H3打ち上げ失敗の影に隠れた、日本の宇宙開発体制の知られざる「重大欠陥」」 「今回は打ち上げ失敗そのものよりも、より目を向けるべき危機的な状況がある。それは政府とJAXAの宇宙利用計画と人工衛星の打ち上げ計画についての根本的な問題点だ」、どういうことだろう。 「十分に信頼性が確認されたはずの「安全ゾーンの宇宙部品」で、予想外の失敗が発生してしまった。新型ロケットでは従来のロケットとは使用環境が異なっている場合があるからだ。H3ロケットの失敗原因は未確定だが、新規採用された部品と既存宇宙部品の組み合わせで、予想外のトラブルが発生した可能性が疑われている。先人が蓄積した技術を利用する際には、これまで大丈夫だったから大丈夫だと考えるのではなく、改めて信頼性を確認しなければならないというのが、今回の2回の打ち上げ失敗の教訓といえるだろう」、「改めて信頼性を確認しなけれ ればならない」というのは確かだ。 「今回H3ロケットは「だいち3号」の打ち上げで、12年間の光学地球観測衛星不在の状況を解消する重要なミッションを持っていたのだ。にもかかわらず、打ち上げ失敗で「だいち3号」は失われ、日本の光学地球観測衛星の空白期間はさらに続くことになってしまった」、もったいない限りだ。 「衛星の運用体制にここまで長い空白期間が生まれるのは、国の社会インフラ整備としてはあまりにもお粗末だ」、その通りだ。 「企業にビジネス利用してもらうことを前提に衛星を整備するのなら、政府は打ち上げ失敗を含むトラブルを想定して、バックアップ体制を組むなど、信頼性や事業継続性を重視した計画を立てる必要がある」、同感である。 AERAdot「直撃を受けたら地球は消滅! アメリカの軍事衛星が発見した「宇宙イチ高エネルギー」な天文現象とは?」 「「部分的核実験禁止条約」を締結した。これにもとづいて米国防総省は、各国が同条約を順守し、核実験を実施していないかを監視するため、「ヴェラ」と呼ばれる軍事衛星を打ち上げた。 ヴェラは、地球上のどこかで核爆発が起こると、そこから放射されるX線やガンマ線、中性子線などを軌道上で感知する」、そんな監視衛星があることは初めて知った。 「ガンマ線バーストとは、恒星が爆発(超新星爆発)した際に、閃光(せんこう)のように放出される電磁波のこと。エネルギー量が極度に高く、その出力は太陽が100億年間に放出するエネルギーに匹敵するともいわれる。もしそのビームのような電磁波の直撃を受ければ、地球サイズの天体は瞬時に蒸発してしまうだろう。爆発した恒星の質量が太陽の8倍以上であれば中性子星になり、25倍以上の場合には、そこにブラックホールが誕生すると考えられている」、 「宇宙望遠鏡による天文観測が進化した結果、いまでは宇宙に存在する全エネルギー量を計算することにも成功している。その23%をダークマター、73%をダークエネルギーが占めることも判明しているが、その両者の正体はいまだ謎のままだ」、「この半世紀で人類が明らかにした真実と、天文観測技術の劇的な進化を思えば、こうした宇宙の謎が解き明かされる日は、さほど遠くないに違いない」、「宇宙の謎が解き明かされる日」が早く来てほしいものだ。
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医薬品(製薬業)(その5)(「緊急避妊薬の市販化」に日本が踏み込めない根深い理由、小林化工<上>水虫薬に睡眠導入剤が混入で業務停止116日間、小林化工<下>前途多難…オリックスが前面で経営再建か?、東大研究者が発見した「老化細胞」除去薬の衝撃 100歳まで健康に生きることが「自然」な時代へ) [科学技術]

医薬品(製薬業)については、昨年3月3日に取上げた。1年ぶりの今日は、(その5)(「緊急避妊薬の市販化」に日本が踏み込めない根深い理由、小林化工<上>水虫薬に睡眠導入剤が混入で業務停止116日間、小林化工<下>前途多難…オリックスが前面で経営再建か?、東大研究者が発見した「老化細胞」除去薬の衝撃 100歳まで健康に生きることが「自然」な時代へ)である。

先ずは、本年1月1日付けダイヤモンド・オンライン「「緊急避妊薬の市販化」に日本が踏み込めない根深い理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/258013
・『性交渉後、72時間以内に服用することにより、高い確率で妊娠を防ぐことができる緊急避妊薬。日本では医師による診察を経た上でないと入手することはできないが、目下、薬局での販売を可能にする制度改正が進められている。薬へのアクセスが容易になることによって意図しない妊娠が減ると期待される一方、性の乱れや薬の悪用を心配する声も根強い。現役の産婦人科医であり性教育の事情にも詳しい重見大介氏に、緊急避妊薬市販化の問題を考える上で大事なポイントを聞いた』、興味深そうだ。
・『市販化の実現で低価格化の可能性も  少子化の進行に拍車がかかる中、人工妊娠中絶の件数はここ10年でほぼ横ばい状態を見せている。中でも未成年が占める割合は小さくなく、人工妊娠中絶を受ける未成年者の数は平均で1日約40人と看過できない数字だ。 意図しない妊娠と人工妊娠中絶の数は必ずしもイコールではないが、緊急避妊薬が市販化され、身近なものになれば「意図しない妊娠によって体への負担、心への深い傷、経済的負担を負う女性が少なくなる」と語るのは、産婦人科医の重見氏だ。 「緊急避妊薬は72時間以内に服用する必要がありますが、服用する時間が早ければ早いほど避妊の成功率は高くなります。したがって、薬へのアクセスが改善されることによって、実効性は確実に上がると考えられます」 緊急避妊薬が市販化されることによってもたらされるメリットは、それだけにとどまらない。 「緊急避妊薬が市販化されている諸外国では1000~2500円程度で買えるところが多く、中には未成年に無料で提供している国もあります。しかし日本では、緊急避妊薬の値段は各病院が任意で定めており、1回の服用で大体1万5千円から8000円と高価です。現在、緊急避妊薬は保険診療の対象外であり全額自己負担となっていますが、薬局での販売が実現すれば、価格が大幅に下がることも期待できるかもしれません」』、「緊急避妊薬が市販化されている諸外国では1000~2500円程度で買えるところが多く」、「無料」にまでする必要はなくても、この程度なら妥当だろう。
・『反対派が懸念する市販化による性の乱れ  緊急避妊薬は現在世界の90カ国以上で市販化されており、日本でもしばしば厚生労働省によって検討され、直近では2017年に議題に上るも否決された過去がある。一体どんな要因によって、日本における緊急避妊薬の市販化は妨げられてきたのだろうか。重見氏はこう語る。 「決定を下す役割を担う専門家の方々の判断を鈍らせている理由として、市販化されることによって薬が悪用されるリスクと、女性が性に対して奔放になってしまうといったことへの懸念が挙げられています。2017年の検討会では産婦人科の学会である『日本産婦人科医会』もそのような意見に賛同し、『別の避妊方法に頼るべきだ』という理由で市販化に賛成する意見を退けています」 「モラルの乱れを誘発するのではないか」という懸念によって実現が阻まれてきた、緊急避妊薬の市販化。しかし、その懸念は妥当なものなのだろうか。 2017年に複数回にわたって行われた検討会のメンバーは一部を除いてほとんどが男性であり、女性の意見がほとんど反映されていない。また年齢層も高く、40代~60代が大多数だ。上記の懸念は男性による“妄想”とまでは言わないが、仮に検討会のメンバーの男女比を逆転させた上で同じ議論を行ったとしたら、違う結論になっていた可能性は否定できないだろう。) 「緊急避妊薬の避妊成功率は100%ではありません。たとえわずかであっても妊娠してしまう可能性がある限り、緊急避妊薬を服用したとしても、多くの女性は妊娠のリスクを考えるはずです。『緊急避妊薬があるから何をしても平気』だと思う女性はほとんどいないのではないでしょうか。緊急避妊薬の市販化を巡る問題には、議論を進める男性側が懸念するイメージと、使用者である女性側の気持ちとの間に齟齬(そご)があるようでなりません」』、「検討会のメンバーは一部を除いてほとんどが男性」、「年齢層も高く、40代~60代が大多数だ」、これでは公正な判断は期待できない。『日本産婦人科医会』が「『別の避妊方法に頼るべきだ』という理由で市販化に賛成する意見を退けています」、というのも、解せない。
・『実現の鍵となる薬剤師の役割  薬の乱用や避妊しない性行為の増加といった“風紀の乱れ”が懸念され、かき消されてきた緊急避妊薬の市販化を求める声。これまでは局所的な議論にとどまってきたが、SNSの普及も手伝い、若い女性や、現場の医師の意見が可視化されることによって、これまでにない広がりを見せている。 緊急避妊薬の市販化が実現している海外諸国において、モラルの崩壊が起きたといった事例は報告されておらず、日本においても「市販化を妨げる科学的根拠はない」と語る重見氏に、今後の議論の進展を見守る上で注目すべきポイントを伺った。 「これまでの経緯を踏まえれば、市販化が実現した際には『第1類医薬品』に分類される可能性が高いと考えられます。そうなった場合、薬はカウンターの後ろの棚や鍵付きのショーケース内に置かれ、薬剤師の説明を聞いた上でないと購入することはできません。また悪用や他者への譲渡を防ぐため、薬剤師の立ち会いの下で服用することを購入の条件に加える、といった議論も出ており、緊急避妊薬の市販化と聞いて多くの人が思い浮かべる“開放的なイメージ”とはまた違った形に落ち着く可能性があります。いずれにせよ、現在は医師が果たしている役割を担うことになる薬剤師の存在と、研修や情報連携などの仕組み作りが、今後の議論において鍵になっていくはずです」 賛成派と反対派の意見が紛糾している緊急避妊薬の市販化を巡る議論。どのような形で決着がつくのか、今後も要注目だ』、「緊急避妊薬の市販化が実現している海外諸国において、モラルの崩壊が起きたといった事例は報告されておらず、日本においても「市販化を妨げる科学的根拠はない」」、「現在は医師が果たしている役割を」「薬剤師」に担わせる方向で、対応すべきだろう。

次に、2月10日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの有森隆氏による「小林化工<上>水虫薬に睡眠導入剤が混入で業務停止116日間」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/285022
・『爪水虫などの皮膚病用の飲み薬に睡眠導入剤の成分が混入した問題で、福井県が9日、薬を製造したジェネリック医薬品(後発薬)メーカーである小林化工(福井県あわら市、小林広幸社長、非上場)に対し116日間の業務停止処分を出した。116日間は医薬品メーカーへの行政処分で過去最長だ。 この問題の発端を、地元紙・福井新聞は「検証小林化工、異変伝える1本の電話」(2020年12月17日付オンライン)と報じた。 〈「そちらで処方された薬をのんでいた人が、意識消失で救急搬送されました」――。11月27日、岐阜県高山市の久保賢介医師(63)の元に、救急病院から連絡があった。59歳の男性が車を運転中に意識を失い、溝に脱輪したという。“異変”の始まりだった〉 〈久保医師は、内科とアトピーの治療を専門とする有床診療所の院長。59歳男性の救急搬送以後、入院患者4人についても普段と様子が違っていることに気が付いた。朝食を食べたら夜まで寝ていたり、起こすと記憶を一部失っていたりすることがあった。 他の外来患者に関しても、12月2日の朝には30代女性が意識もうろうとした状態になり寝てしまった。32歳の男性は配送の仕事中にトンネル内で意識がなくなり、センターラインのポールに衝突した。本人は当時の記憶がなく、事故後も、もうろうとしたまま仕事を続けたという。 意識障害があった患者7人には共通点があった。久保医師は「全てイトラコナゾールが原因だと確信した」と振り返る。 同診療所では、アトピー性皮膚炎に多いマラセチア毛包炎の治療に経口抗真菌剤イトラコナゾール錠を用いていた。製造したのは、ジェネリック医薬品の中堅メーカー、小林化工である。 久保医師の訴えが、多数の健康被害が発覚する端緒になった。 12月10日、小林化工が製造し、睡眠導入剤の成分が混入した皮膚病用の飲み薬を服用した70代の女性が、首都圏の病院に入院中に死亡したほか、80代の男性も亡くなっている』、「116日間の業務停止処分」、とはよほど酷かったのだろう。
・『小林化工は11日に死亡を発表。翌12日に小林広幸社長は報道陣の取材に応じ、「重大な過失を犯し、責任を痛感している。会社全体で償っていきたい」と謝罪した。 この問題では、福井県や厚生労働省が12月21日、22日の2日間にわたり、小林化工に立ち入り調査を実施し、省令や社内規定違反が相次いで明らかになった。 睡眠導入剤成分が混入したのは皮膚病用治療薬「イトラコナゾール錠50『MEEK』」。国が承認した手順書では、薬の主成分を全て1回で入れることになっているが、「裏手順書」が存在し、2度に分けて入れると記載されていた。錠剤を固まりやすくするための便法とみられており、製造現場では十数年前から「裏手順書」が採用されていた。 問題の薬では、従業員が主成分を2度目に入れようとして、睡眠導入剤と取り違えていた。主成分と睡眠導入剤は同じ棚の上下に並べて置かれていた。2人1組で相互にチェックしながら薬の調合にあたるとする社内規定に反し、1人が作業場から離れた時間帯があったことや、離れた1人が作業の確認済みのサインをしたこともわかった。 「イトラコナゾール錠50」は20年夏に製造され、約9万錠が出荷された。服用した患者は全国31都道府県に344人。6割超の214人が意識消失、記憶喪失、ふらつきなどの健康被害を訴えた。このうち2人が死亡し、運転中に意識を失うなどして22人が交通事故を起こしている。小林化工は1月27日、18年3月以降に出荷した22製品についても、新たに自主回収をすると発表した』、「製造現場では十数年前から「裏手順書」が採用」、「主成分と睡眠導入剤は同じ棚の上下に並べて置かれていた。2人1組で相互にチェックしながら薬の調合にあたるとする社内規定に反し、1人が作業場から離れた時間帯があったことや、離れた1人が作業の確認済みのサインをした」、安全性が最重視されるべき製薬企業にあるまじきズサンさだ。
・『実はオリックスの連結子会社  小林化工は1961年に設立された経口剤や注射剤などのジェネリック医薬品のメーカー。 誤飲を防ぐ視認性の高い製剤など付加価値の高い医薬品を扱っているほか、成長が見込める抗がん剤の開発もやっている。 20年3月期の売上高は370億円、従業員は796人。270品目を販売しており、後発医薬品業界では日医工(東証1部)、沢井製薬(同、4月からサワイグループホールディングス)、東和薬品(同)の“ご三家”に続く第2グループに位置する。 実は、小林化工は総合リース大手オリックスの連結子会社である。20年1月に子会社になったばかりだった。=つづく』、「オリックスの連結子会社」になってなければ、破綻していたところだが、「オリックス」もとんだババを掴んだものだ。

第三に、この続きを、2月11日付け日刊ゲンダイ「小林化工<下>前途多難…オリックスが前面で経営再建か?」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/285091
・『小林化工(福井県あわら市)の株式の過半数を保有し、資本・業務提携しているオリックスは1月20日、福井新聞の取材に「出資者として誠に遺憾。小林化工が社会的な責任を少しでも早く全うすることができるように、最大限のサポートを行っている」とコメントした。 オリックスは20年1月14日、小林化工を子会社にすると発表した。発行済み株式の過半数を取得するが、出資比率や株式取得に要した金額は非公開。現経営体制を維持し、代表取締役の変更はないが、社外取締役2人と監査役にオリックスの社員が就任した。 オリックスは経営戦略を立案し、財務基盤の強化を図る。 オリックスが医療用医薬品事業に手を染めるのは初めてだ。 「医療法人向けのリースやファイナンス、医療機器関連のレンタルサービスの提供だけでなく、これまで原薬商社、医療機器販売会社、動物薬メーカーに出資するなどヘルスケア業界に注目して幅広い事業を展開しています」) オリックスのプレスリリースにこう書いてある。 小林化工は「オリックスの国内外のネットワークの事業基盤と連携し、さらなる品質向上、安定向上を目指す」とした。海外進出を視野に入れていることはいうまでもない』、今回の不祥事が明らかになる前の「プレスリリース」、など殆ど意味がない。
・『出発は「富山の薬売り」  小林広幸代表取締役社長は創業家の3代目である。創業者は小林政国。配置薬を売る「富山の薬売り」で、戦後の1946年に配置薬を製造する小林製薬所を創業した。61年、小林化工を設立、医療用医薬品に進出した。 小林広幸は薬剤師だ。金沢大学の研究室を経て、住友製薬(現・大日本住友製薬)に就職。家業を継ぐべく94年、小林化工に入社。当時の年商は12億円程度と零細企業だった。2007年、父・小林喜一の後を継いで代表取締役社長の椅子に座った。) 後発医薬品業界に追い風が吹いた。医療費抑制の一環として政府は02年から後発薬の普及目標を段階的に引き上げていった。医療現場では先発薬から後発薬への置き換えが進んだ。02年から現在までに後発薬の販売数量は2倍に拡大した。 後発薬使用促進策の流れに乗り、小林化工は急成長を遂げる。02年当時の年商30億円が、20年3月期には370億円と12・3倍になった。利益は工場の増産投資に充当。それが、また増収につながる好循環に入った。 政府は後発薬の使用割合を20年までに数量ベースで80%に引き上げる目標を設定。20年9月時点で後発薬の数量シェアは79・3%とほぼ目標を達した。 後発薬市場は成熟期を迎え、成長に陰りが見え始めた。 国内が頭打ちになれば外に目が向く。日医工、沢井製薬、東和薬品の国内専業大手は欧米の後発薬企業を買収し、欧州や米国市場に進出した。準大手で非上場の小林化工が選択したのがオリックスを戦略パートナーにすることだった。オリックスの力を借りて海外に出ていく。) 小林広幸社長は、一般財団法人日本医薬情報センターの会員向け機関誌「JAPIC NEWS」(20年11月号)で、オリックスの傘下に入った理由を、こう語っている。 「一時は上場も検討しましたが、オリックスがパートナーであれば、強固な信頼関係のもとでサポートを受けつつ、さまざまな課題を解決していけると考え、資本・業務提携しました。(中略)同業他社から声がかかりましたが、今後の当社の発展には、オリックスの信用力やネットワークが必要だと判断しました」 「多すぎる」(厚生労働省幹部)と言われる後発医薬品会社の再編は必至である。小林化工は業種の枠を超えたM&Aの道を選んだ。 しかし、新・小林化工は船出した直後に、薬害事故で死者まで出し、突然、座礁した。過去最長となる116日間の業務停止処分を受けることになったわけで、小林社長以下経営陣の総退陣は免れないだろう。睡眠剤混入薬の被害者から集団訴訟を起こされることも想定される。 親会社、オリックスが前面に出てこざるを得まい。 “敗戦処理”の方法としてはオリックス主導による自主再建もあるが、「同業他社に小林化工を売却する」(株式を公開しているジェネリック大手の首脳)といったうがった見方も、一部で浮上している。=敬称略)』、「経営陣の総退陣」、今回の事件で明らかになったお粗末な内部管理体制、などを踏まえると、「オリックス主導による自主再建」は容易ではなく、「同業他社に小林化工を売却」のシナリオの方が可能性が高いのではなかろうか。それにしても、今回、傷がついた「ジェネリック医薬品」のイメージをどう回復していくかも大きな課題だ。

第四に、2月20日付け東洋経済オンライン掲載した東京大学医科学研究所癌防御シグナル分野教授の中西 真氏による「東大研究者が発見した「老化細胞」除去薬の衝撃 100歳まで健康に生きることが「自然」な時代へ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/411265
・『もしいくつになっても若い体や心のままで生きることが可能となったら、社会、ビジネス、あなたの人生はどう変わるのだろうか? ハーバード大学医学大学院の教授で、老化研究の第一人者であるデビッド・A・シンクレア氏の全米ベストセラー『LIFESPAN(ライフスパン):老いなき世界』では、人類が「老いない身体」を手に入れる未来がすぐそこに迫っていることが示され話題となっているが、日本でも、老化研究に関する大きなニュースが飛び込んできた。 2021年1月15日、東京大学医科学研究所の中西真教授らのグループが、老齢のマウスに「老化細胞」だけを死滅させる薬剤を投与し、加齢に伴う体の衰えや生活習慣病などを改善することに成功したと米科学誌『サイエンス』に発表したのだ。老化研究はどこまで進化しているのか。中西氏に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは中西氏の回答)』、興味深そうだ。
・『老化の原因「老化細胞」除去とは  Q:老齢のマウスの「老化細胞」を特異的に死滅させる薬剤を発見されましたが、この「老化細胞」の除去とはどういったことでしょうか。 A:「老化細胞」とは、ストレスによってダメージを受けるなどして、増殖できなくなってしまった細胞のことです。 60年ほど前、アメリカのヘイフリック博士が、正常なヒトの細胞を試験管の中で培養していくと、一定の分裂回数のうちに増殖を停止して、二度と増殖できなくなるステージに入ることを発見しました。この状態になってしまった細胞を「老化細胞」といいます。 細胞は、つねにさまざまなストレスにさらされており、ストレス過多になった場合、遺伝子に傷が入ったり、タンパク質がダメージを受けるなどします。軽微なダメージなら、細胞は修復して生き続けることができますが、修復不可能な損傷の場合、細胞そのものを殺すか、細胞の老化を誘導し、異常な細胞を蓄積させない仕組みが働きます。その結果、細胞は増殖することができない老化細胞となってしまいます。 そして、この老化細胞が、臓器組織の機能低下や老年病などの発症を誘発するというのが最も基本的な「老化のメカニズム」の1つです。) これまでの研究では、老化細胞を除去することでさまざまな老化現象が改善することはわかっていました。しかし、組織や臓器により老化細胞は性質が異なるため、それらどんなタイプの老化細胞にも効く薬剤の開発には至っていませんでした。 われわれ研究チームは、老化細胞の生存に必須な遺伝子を探し、それが「GLS1」という遺伝子であることを突き止めました。さらに、老化細胞は、リソソームと呼ばれる細胞内小器官の膜に傷ができ、細胞全体が酸性に傾くが、「GLS1」が過剰に働くことで中和され、死滅しないまま細胞を維持することも明らかにしました。 そこで、この遺伝子「GLS1」の働きを止める薬剤を投与したところ、老化細胞が除去され、老化に伴う体力の衰えや生活習慣病が改善することを証明しました』、「この遺伝子「GLS1」の働きを止める薬剤を投与したところ、老化細胞が除去され、老化に伴う体力の衰えや生活習慣病が改善」、そんな魔法のような「薬剤」があるとは医学も進歩したものだ。
・『老化は「常識」から「サイエンス」になった  老化研究が注目されるようになったのは、ごく最近のことです。僕は、いまから30年前、アメリカに留学していた頃に細胞老化という現象に興味を持ち、それ以来ずっと研究を続けていますが、当初はほとんど注目されておらず、現象論ばかりで分子機構も明らかにされていない時代でした。 当時盛んだったのは、細胞周期に関する研究です。2001年には細胞周期の制御因子を発見した研究者がノーベル賞をとり、僕もその波に乗って細胞周期の研究に取り組みつつ、ほそぼそと細胞老化の研究も並行してきました。 老化研究のいちばん難しいところは、とにかく時間がかかるということです。例えば、一口に「カメの寿命にともなう死亡率の研究」と言っても、カメは100年以上生きますからね。高齢マウスの研究でも、2~3年はかかります。たかだか20~30年の研究者人生の中でできることには限りがあるのです。 社会にとっては非常に必要な研究だけれど、何十年もなんの結果も出さずにいることは、許してもらえませんからね。 そんな老化研究全体の空気が変わったのは、この数年です。まず、2014年に科学誌『ネイチャー』で、老化の過程は生物種によってかなり異なるということが報告されました。ヒトは、老化による機能低下などで寿命を迎えますが、生物種のなかには、老化そのものが寿命を規定していないものがたくさんいるというのです。 また、2016年には、同誌に、ヒトの最大寿命は120歳であるという報告も掲載されました。それまでなんとなく「年とともに老いて、長くても120歳ぐらいで死ぬものなんだろう」と思われていたことが、サイエンスとして一流の科学誌に取り上げられたわけです。 老化現象というものが、一般常識の範疇から、サイエンティフィックに非常に面白い対象なのだと認識されることになり、多くの研究者が参入するきっかけになりました。 とくに、生物種によって老化の過程が異なるというのは、非常に面白い話です。 ヒトは、加齢に伴って死亡率が急激に増加する典型的な生物ですが、ある種のカメやワニなどには、そのような現象が起きません。もちろん、ある決まった寿命で死ぬのですが、年をとっても、人間でいう白髪が出たり老けたりという、老化の表現型が出ないのです。 つまり、20歳の死亡率と70歳の死亡率が変わらない。「ピンピンコロリ」の一生を送るすごい生物がたくさんいるということです。 興味深いのは、ゾウです。ゾウは、ストレスが加わったときに、自らの体内で老化細胞になる前に傷ついた細胞を死滅させてしまうと言われています。われわれが開発したような薬を飲まなくとも、もともとそういうシステムを体内に持っているわけですね。 ゾウにはがんがないというのも有名な話です。がん細胞のような悪い細胞をすぐに死滅させてしまうからです。がんのあるゾウを探すのは、非常に難しいと言われるほどです。 悪い細胞を体内に残しておくから病気になるわけですが、ただ、生態系全体として見ると、ヒトは、老化細胞を残しておくことに、個体としてなんらかのメリットがあり、それが進化の過程で有利に働いているという部分もあるのかもしれません。 老化によって臓器組織の機能が低下し、老年病を引き起こすなどして健康寿命を決めているメカニズムと、生物種の最大寿命そのものを決めているメカニズムはまったく次元が違うはずです。 老化研究は、まだまだわからないことが多く、あくまでもわれわれ自身である「ヒトの老化」という範疇から出ていません。今後ますます俯瞰的に理解していくことで、より研究が深まっていくでしょう』、「生物種のなかには、老化そのものが寿命を規定していないものがたくさんいるというのです」、「ヒトは、加齢に伴って死亡率が急激に増加する典型的な生物ですが、ある種のカメやワニなどには、そのような現象が起きません。もちろん、ある決まった寿命で死ぬのですが、年をとっても、人間でいう白髪が出たり老けたりという、老化の表現型が出ないのです」、「老化研究は、まだまだわからないことが多く、あくまでもわれわれ自身である「ヒトの老化」という範疇から出ていません」、殆ど研究され尽くしていると思っていたが、そうではないことを初めて知った。
・『ヒトへの実用化までのハードル  老化改善の薬は、これからヒトへの実用化に向かっていきますが、まだまだハードルがあります。 ひとつは、本当にその薬に副作用がないか、もっと効果的な薬はないかという短期的なハードル。そしてもうひとつは、まだ個体の老化はすべてが解明されていないという長期的なハードルです。 われわれの研究もそうですが、これまでは、培養された細胞を使った研究ばかりで、個体の中での研究はほとんど行われていません。老化細胞が、個体の中で加齢や老年病の発症に関わっているのは確かですが、現実には、個体の中はまだブラックボックスなのです。個体のいったいどこに老化細胞が蓄積しているのか。それがどのような機能や性質を持ち、どう作用しているのかはわかっていません。 これからは個体の中での老化細胞の働きを解明する必要がありますし、そのような研究が進めば、もっと優れた標的や、もっと優れた治療法が見つかるだろうと僕は信じています。) Q:日本人は世界的にも長寿ですが、ほかの国の人々に比べてどのような要因が考えられるのですか。 A:ひとつは、日本人の食生活が大きく影響していると考えられます。日本人は、アルコールの摂取量も世界的に見れば少ない人種です。 もうひとつは、日本人には、肥満など特殊な体質が非常に少ないことです。もちろん日本人にも肥満体質の方はいらっしゃいますが、欧米人に比べるとかなりその程度は軽いと思います。 アルコール摂取量が多かったり、生活習慣が原因で肥満が起きたりする環境では、それが細胞に対するストレスになり、老化細胞が増えやすいということは十分に予測できます。日本人の普通の食生活や生活習慣が、欧米人に比べればストレスを受けにくいということですね。 人種にかかわらずヒトの最大寿命は決まっています。世界一の長寿とされたジャンヌ・カルマンさんはフランス人女性ですから、日本人が最長というわけではありません。ですから、少なくとも欧米人が日本人のような生活習慣になれば、長寿に近づいていくと言えるでしょう』、「日本人は、アルコールの摂取量も世界的に見れば少ない人種です。 もうひとつは、日本人には、肥満など特殊な体質が非常に少ない」、「日本人の普通の食生活や生活習慣が、欧米人に比べればストレスを受けにくい」、私の常識的知識とも合致するようだ。
・『老化は「病気」として治療できる  Q:シンクレア氏の『ライフスパン』では、「老化は病気である」と定義されていますが、先生のお考えをお聞かせください。 A:僕も、少なくとも、加齢に伴って起きるような臓器組織の機能低下や老年病などは治せるものだと考えています。 ただ、最大寿命を延ばすのは非常に難しいことですし、倫理的にも問題があると思いますので、そこはもう少しよく考えなければなりません。まずは、健康に生きる時間を長くするということだと思います。 昨年12月、シンクレア先生が山中因子(iPS細胞)を使って、高齢マウスの視力を回復させたという論文を『ネイチャー』に発表されました。非常にインパクトがあり、本当に老化細胞が若い細胞に戻っているのなら、これはすごいことだと僕は思います。 ただ、山中因子によって実際にどんな細胞が生まれて、それがどういう形で老化した細胞を再生させているのかということについては、まだ証明されていません。まだまだこれからということになるでしょう。) Q:アメリカでは、グーグルなどが老化研究のベンチャーに投資していますが、日本ではそのような動きはありますか? A:日本では、残念ながらまだほとんどありません。そのようなベンチャーもありませんし、カルチャーもありません。 アメリカには、「失敗してもいいじゃないか、作ってダメならまたやり直せばいい」というカルチャーがありますが、日本は違います。「失敗したくない」「失敗するとダメージにつながる」という発想にとらわれていて、なかなかそのような会社はできないんですね。 ただ、20~30代の世代では、ベンチャーをやってみようというハードルが低く、そのような芽ははっきりとあります。今後、老化研究の分野に投資したいという動きは大きくなるかもしれませんね。 いま、がん研究については、かなり煮詰まったところまで来ています。もちろん、本庶佑先生のようなすごい発見も今後生まれると思いますし、すい臓がんなど治療困難なものもありますが、基本的に、がんは治る病気になりつつあるんですね。そうなると、人類の最後の未知なる領域は「老化」ということになり、そこへシフトしていく流れがはじまったのだろうと思います』、「人類の最後の未知なる領域は「老化」ということになり、そこへシフトしていく流れがはじまったのだろう」、今後が楽しみだ。
・『100歳まで健康に生きることが「自然」  「老化も死も自然のままがいい」という感覚の方も多いようですが、僕は、なにをもって「自然」と言うかは難しいと考えます。老化は、人によって程度がまったく違うもので、90歳でも100歳でも元気な人もいれば、50歳でもいろんな病気にかかってしまう人もいます。 病気にかかることが自然なのかというと、僕は、やはりそうではない、100歳まで健康に生きることが自然だと思うのです。僕の両親もそうですが、年老いた人は不自由を感じていますし、それを改善できるということは、すごく大きなことだと思います。 自然に生きることを助け、サポートしていくことが、老化研究です。実現すれば、短期的には医療費の問題が解決し、もっと別のことにお金が使えるようになりますし、個々の方の人生そのものも幸せになりますよね。やはり健康は、最もお金で買えない幸せだと僕は思っています』、「100歳まで健康に生きることが「自然」」、医学の進歩で、それに近づいてほしいものだ。
タグ:『日本産婦人科医会』が「『別の避妊方法に頼るべきだ』という理由で市販化に賛成する意見を退けています」、というのも、解せない 「緊急避妊薬が市販化されている諸外国では1000~2500円程度で買えるところが多く」、「無料」にまでする必要はなくても、この程度なら妥当だろう 医薬品 「人類の最後の未知なる領域は「老化」ということになり、そこへシフトしていく流れがはじまったのだろう」、今後が楽しみだ 「100歳まで健康に生きることが「自然」」、医学の進歩で、それに近づいてほしいものだ 反対派が懸念する市販化による性の乱れ 「検討会のメンバーは一部を除いてほとんどが男性」、「年齢層も高く、40代~60代が大多数だ」、これでは公正な判断は期待できない。 市販化の実現で低価格化の可能性も 人工妊娠中絶を受ける未成年者の数は平均で1日約40人と看過できない数字だ 有森隆 「経営陣の総退陣」、今回の事件で明らかになったお粗末な内部管理体制、などを踏まえると、「オリックス主導による自主再建」は容易ではなく、「同業他社に小林化工を売却」のシナリオの方が可能性が高いのではなかろうか。それにしても、今回、傷がついた「ジェネリック医薬品」のイメージをどう回復していくかも大きな課題だ。 「小林化工<上>水虫薬に睡眠導入剤が混入で業務停止116日間」 「製造現場では十数年前から「裏手順書」が採用」、「主成分と睡眠導入剤は同じ棚の上下に並べて置かれていた。2人1組で相互にチェックしながら薬の調合にあたるとする社内規定に反し、1人が作業場から離れた時間帯があったことや、離れた1人が作業の確認済みのサインをした」、安全性が最重視されるべき製薬企業にあるまじきズサンさだ 実はオリックスの連結子会社 「116日間の業務停止処分」、とはよほど酷かったのだろう。 日刊ゲンダイ 実現の鍵となる薬剤師の役割 「現在は医師が果たしている役割を」「薬剤師」に担わせる方向で、対応すべきだろう。 「緊急避妊薬の市販化が実現している海外諸国において、モラルの崩壊が起きたといった事例は報告されておらず、日本においても「市販化を妨げる科学的根拠はない」」 今回の不祥事が明らかになる前の「プレスリリース」、など殆ど意味がない。 出発は「富山の薬売り」 「オリックスの連結子会社」になってなければ、破綻していたところだが、「オリックス」もとんだババを掴んだものだ 「小林化工<下>前途多難…オリックスが前面で経営再建か?」 東洋経済オンライン 中西 真 「老化研究は、まだまだわからないことが多く、あくまでもわれわれ自身である「ヒトの老化」という範疇から出ていません」、殆ど研究され尽くしていると思っていたが、そうではないことを初めて知った 「ヒトは、加齢に伴って死亡率が急激に増加する典型的な生物ですが、ある種のカメやワニなどには、そのような現象が起きません。もちろん、ある決まった寿命で死ぬのですが、年をとっても、人間でいう白髪が出たり老けたりという、老化の表現型が出ないのです」、 老化は「病気」として治療できる 「生物種のなかには、老化そのものが寿命を規定していないものがたくさんいるというのです」、 「日本人は、アルコールの摂取量も世界的に見れば少ない人種です。 もうひとつは、日本人には、肥満など特殊な体質が非常に少ない」 ヒトへの実用化までのハードル 「この遺伝子「GLS1」の働きを止める薬剤を投与したところ、老化細胞が除去され、老化に伴う体力の衰えや生活習慣病が改善」、そんな魔法のような「薬剤」があるとは医学も進歩したものだ 「日本人の普通の食生活や生活習慣が、欧米人に比べればストレスを受けにくい」、私の常識的知識とも合致するようだ 老化は「常識」から「サイエンス」になった 老化の原因「老化細胞」除去とは 「東大研究者が発見した「老化細胞」除去薬の衝撃 100歳まで健康に生きることが「自然」な時代へ」 「「緊急避妊薬の市販化」に日本が踏み込めない根深い理由」 (製薬業) (その5)(「緊急避妊薬の市販化」に日本が踏み込めない根深い理由、小林化工<上>水虫薬に睡眠導入剤が混入で業務停止116日間、小林化工<下>前途多難…オリックスが前面で経営再建か?、東大研究者が発見した「老化細胞」除去薬の衝撃 100歳まで健康に生きることが「自然」な時代へ) ダイヤモンド・オンライン
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