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政府財政問題(その9)(ガソリン価格を抑える補助金が逆に物価を上げる 今や秋の風物詩「補正予算」は見せかけに堕した、2大悪弊が2025年「緊縮ナシで財政黒字化」を阻む 足元の経済対策が後を引く「基金」と「補正予算」、森永卓郎×土居丈朗「財政均衡主義」はカルトか 話題の書『ザイム真理教』めぐり論客が誌上討論) [経済政策]

政府財政問題については、昨年3月7日に取上げた。今日は、(その9)(ガソリン価格を抑える補助金が逆に物価を上げる 今や秋の風物詩「補正予算」は見せかけに堕した、2大悪弊が2025年「緊縮ナシで財政黒字化」を阻む 足元の経済対策が後を引く「基金」と「補正予算」、森永卓郎×土居丈朗「財政均衡主義」はカルトか 話題の書『ザイム真理教』めぐり論客が誌上討論)である。

先ずは、昨年9月11日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学 経済学部教授の土居 丈朗氏による「ガソリン価格を抑える補助金が逆に物価を上げる 今や秋の風物詩「補正予算」は見せかけに堕した」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/700611
・『秋になると、永田町では「補正予算」の話題が毎年のように沸き上がる。補正予算の編成が、当たり前のような年中行事になり、まるで補正予算を組まないと年が越せないかのようだ。 補正予算は、必ず組まなければならないというわけではない。否、補正予算はむしろ、満たさなければならない事情があるときに限り、組むことができるものである』、「補正予算はむしろ、満たさなければならない事情があるときに限り、組むことができるものである」、そんな原則があったとは初めて知った。
・『「特に緊要の経費」が毎年発生?  財政法第29条には、次のような規定がある。 内閣は、次に掲げる場合に限り、予算作成の手続に準じ、補正予算を作成し、これを国会に提出することができる。 一法律上又は契約上国の義務に属する経費の不足を補うほか、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となつた経費の支出(当該年度において国庫内の移換えにとどまるものを含む。 又は債務の負担を行なうため必要な予算の追加を行なう場合 二予算作成後に生じた事由に基づいて、予算に追加以外の変更を加える場合 「特に緊要となった経費」は、東日本大震災級の大きな災害や急激な経済変動でもなければ、普通は生じない。なのに、まるで毎年そうであるかのように、補正予算が組まれ、政治イベント化している。 そのうえ、コロナ禍での補正予算は規模が拡大して、直近では30兆円にものぼる。コロナ前の補正予算はせいぜい3兆円程度だった。コロナ禍で、補正予算の桁が狂ってしまったのだ。 では、2023年において、補正予算はどれほど必要なのか。 少なくとも、コロナ禍の経済的な打撃から回復しつつあり、人手不足が生じるほど供給制約に直面している現状において、財政支出で需要を喚起しなければならない強い理由はない。加えて、物価上昇が顕著である。) 例えば、すでに当初予算で予定されている公共事業があるうえに、補正予算を組んで追加で公共事業費を増額したらどうなるか。 建設資材は、ただでさえコロナ禍でサプライチェーンの混乱などもあり、高騰が続いている。そこに公共事業の追加増額が行われたら、建設資材を追加した公共事業に充てなければならないから、国内における建設資材の需給をよりひっ迫させて価格高騰を助長する。 公共事業の追加増額は、建設資材の価格上昇をもたらしこそすれ、価格下落を引き起こすことはあり得ない』、「公共事業の追加増額は、建設資材の価格上昇をもたらしこそすれ、価格下落を引き起こすことはあり得ない」、その通りだ。
・『ガソリン代が浮いた分、別の商品の需要が増す  ガソリン補助金(正式には燃料油価格激変緩和補助金)も、一見するとガソリンの小売価格を抑制しているように見えて、経済全体では物価高騰を助長している。 政府は、もともと9月末で終了予定だったガソリン補助金を、今年末まで延長するとともに9月7日から拡充することを決めた。これにより、ガソリンの小売価格は抑えられる。ガソリン補助金は、価格高騰を抑制する効果があるように見える。 しかし、家計は、ガソリンに費やす支出が減った分をどうするか。 貯金をする余裕がある家計は貯金に回すこともあろうが、貯金する余裕がない家計(や余裕がある家計でも)は、ガソリン価格が抑えられて浮いた分を、食費など別の支出に回すだろう。 すると、その支出で購入した商品の需要が、それだけ増えるわけだから、その商品の価格に上昇圧力がかかる。需要と供給の関係からみれば、需要が増えれば、その価格は上がりこそすれ、下がることはない。直接目には見えないとはいえ、実際はそうなのだ。 だから、ガソリン補助金は、ガソリンの小売価格を抑えてはいるが、ほかの商品の価格の上昇を助長し、経済全体でみると消費者物価全体を押し上げる方向に作用している。これは、ガソリン税の減税を行っても同様のことが起きる。 こうした情勢下で、巨額の補正予算を組んで需要を喚起すれば、物価高を助長する。) コロナ禍で、補正予算の規模が桁違いに大きくなっている。補正予算で追加した歳出は、2020年度には73兆0298億円、2021年度には35兆9895億円、2022年度には31兆6232億円にのぼっている。 これらが、効果的に支出されているならまだしも、結局は使わずじまいとなって、補正予算で積んだだけの「見せかけ」に堕したものも多い。年度末までに使わずじまいとなった歳出の不用額は、2020年度には3兆8880億円、2021年度には6兆3029億円、2022年度には11兆3084億円と、ついに10兆円を超えた』、「ガソリン補助金は、ガソリンの小売価格を抑えてはいるが、ほかの商品の価格の上昇を助長し、経済全体でみると消費者物価全体を押し上げる方向に作用している・・・補正予算で積んだだけの「見せかけ」に堕したものも多い。年度末までに使わずじまいとなった歳出の不用額は、2020年度には3兆8880億円、2021年度には6兆3029億円、2022年度には11兆3084億円と、ついに10兆円を超えた」、なるほど。
・『31兆円の補正予算、使い残しの21兆円  2022年度における歳出の不用額は、実態を象徴的に表すものとなった。 前述のように、2022年度には補正予算で31兆6232億円もの支出の追加を行った。そして、2022年度の決算段階で、入ってきた収入に比して支出し残した金額(差引剰余金)が、21兆3439億円となった。31兆円余の支出の追加を行いながら、21兆円余も年度末に支出し残してしまうというありさまである。 支出し残したうち、2023年度に繰り越すものもあるが、結局は使わずじまいとなり予算として効力を失うこととなった歳出の不用額が、前述のように11兆円余にのぼった。 加えて、支出の追加に伴いその原資として、国債の増発が2022年度決算までに必要と見込まれていたものの、使わずじまいとなった支出が出たために、12兆円の国債増発を取りやめた。 11兆円もの使わずじまいとなる支出がある一方で、12兆円もの国債増発を取りやめる結果となった。お金に色はついていないとはいえ、2022年度の決算はこうした状態だった。 まさに、補正予算等で支出するぞと勇ましく財政出動を演出しておきながら、結局使う当てがなく、予算として失効して使わずじまいとなったので、それに備えて予定していた国債増発も取りやめた。補正予算は、「見せかけ」だったのだ。 「見せかけ」に終わるような補正予算なら、経済効果もないし、金額を盛る必要はない。おまけに、物価高騰を助長するような情勢で、財政出動をするのは逆効果である。 秋になったからといって、補正予算を組まなければならないわけではない。今秋に補正予算を組むなら、当初予算で計上した巨額の予備費について、その使途を確定させて国会での審議を受けるために、予算を組み替える。そんな補正予算なら、財政民主主義の観点からも意味があるものだろう』、「「見せかけ」に終わるような補正予算なら、経済効果もないし、金額を盛る必要はない。おまけに、物価高騰を助長するような情勢で、財政出動をするのは逆効果である・・・今秋に補正予算を組むなら、当初予算で計上した巨額の予備費について、その使途を確定させて国会での審議を受けるために、予算を組み替える。そんな補正予算なら、財政民主主義の観点からも意味があるものだろう」、その通りだ。

次に、本年2月5日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学 経済学部教授 の土居 丈朗氏による「2大悪弊が2025年「緊縮ナシで財政黒字化」を阻む 足元の経済対策が後を引く「基金」と「補正予算」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/732116
・『1月22日に、内閣府は「中長期の経済財政に関する試算」  中長期試算)を公表した。この中長期試算の最も注目される点の1つは、「2025年度の国と地方の基礎的財政収支の黒字化は達成できるか」である。 2024年1月の中長期試算によると、2025年度の名目成長率を2.8%と見込む成長実現ケースでは、2025年度の国と地方の基礎的財政収支は、1.1兆円の赤字となるという。 このままでは、2025年度の基礎的財政収支は黒字化できないということになる。 ただ、これまで取り組んできた歳出の効率化努力を引き続き2025年度にも行えば、基礎的財政収支はごくわずかな黒字となり、ぎりぎり財政健全化目標は達成できることを、内閣府は合わせて示した』、「2025年度の名目成長率を2.8%と見込む成長実現ケースでは、2025年度の国と地方の基礎的財政収支は、1.1兆円の赤字となる・・・これまで取り組んできた歳出の効率化努力を引き続き2025年度にも行えば、基礎的財政収支はごくわずかな黒字となり、ぎりぎり財政健全化目標は達成できる」、なるほど。
・『インフレで名目GDP上振れの一方、歳出も増  そもそも、2025年度の国と地方の基礎的財政収支は、同じ中長期試算の前回の試算(2023年7月)では、1.3兆円の赤字だった。それと比べると、0.2兆円収支が改善している。 中長期試算には、その改善要因についても示されている。 まず、歳入面では、2023年7月試算よりも名目GDP成長率が上振れると見込まれるため、2025年度の収支が試算上0.7兆円改善するという。他方、歳出面では、2024年度予算(案)で取り組まれた歳出効率化努力により、0.7兆円の収支改善効果が2025年度にも作用すると見込んでいる。 2023年度7月試算では、2025年度の国と地方の基礎的財政収支は1.3兆円の赤字であったが、名目GDP成長率の上振れ分と2024年度予算での歳出効率化努力で合わせて1.4兆円の収支改善効果が期待できる。 となると、これだけで2025年度の国と地方の基礎的財政収支は「0.1兆円の黒字」という試算が、2024年1月試算として出てもおかしくなかった。 しかし、2025年度の財政収支に与える効果はこれだけではなかった。) 2024年1月試算では、2025年度の物価上昇率が2023年7月試算より高いと予測することから、それに伴い歳出規模が増えることを織り込むと収支を0.2兆円悪化させることになる。 加えて、2023年11月に策定された「デフレ完全脱却のための総合経済対策」等の支出が2025年度にも食い込むことなどの影響で、2023年7月試算で見込んでいたよりも歳出が1.0兆円増えることとなるという。これらは、収支の悪化要因となる。 これら2つの要因を合わせて1.2兆円の収支悪化を、2024年1月試算では反映している。 以上より、2024年1月試算では、前掲の通り、2025年度の国と地方の基礎的財政収支は1.1兆円の赤字となるという見通しを示した。ちなみに、この基礎的財政収支の赤字の額は、2025年度の名目成長率が1.7%とより低いベースラインケースでは2.6兆円となる。 確かに、成長率に関する見通しは、成長実現ケースのほうがベースラインケースよりも楽観的ではあるが、2025年度の財政健全化目標に影響を与える差異は、2025年度その年の成長率だけだから、両ケースの成長率の見通しの違いが目標達成の成否に大きく影響を与えるというわけではない。 このように、内閣府は、財政収支の試算の背景を分析している。これは、今後の政策的含意を考えるうえで極めて重要な情報となる』、「2024年1月試算では、前掲の通り、2025年度の国と地方の基礎的財政収支は1.1兆円の赤字となるという見通しを示した。ちなみに、この基礎的財政収支の赤字の額は、2025年度の名目成長率が1.7%とより低いベースラインケースでは2.6兆円となる」、なるほど。
・『後年度に財政支出が「漏れ出る」元凶  将来の財政収支に対して、足元の歳出効率化努力が、収支改善要因となる一方、節度なく経済対策を講じて歳出を膨らませれば収支悪化要因となる。特に、近年の経済対策は、悪化要因として後に尾を引くという質の悪いものとなっている。 2023年11月に策定された総合経済対策は、即効性を考えれば2023年度や2024年度に効果が出るように財政支出をすべきものだろう。しかし、内閣府の試算は、足元で講じたはずの経済対策に伴う財政支出が、後に尾を引く形で2025年度にも「漏れ出る」ような構造であることを浮き彫りにした。 なぜ即効性を期待したい経済対策なのに、策定されてから翌々年度になるようなほど財政支出が遅れて出てくるのか。 その元凶の一端は、「基金」にある。 「基金」は、2023年11月に行われた行政改革推進会議の秋のレビューでも取り上げられ、その実態に批判が集中し、議論の結果を受けて「基金の見直し・点検の横断的な方針」を定めることとした。目的があいまいなまま、補正予算を中心に元手となるお金だけを基金として先取りして貯め込み、それを後年度に都合よく支出しようとする様が問題となった。) 約150にものぼる基金の残高は総額で、2022年度末で約16.6兆円、2023年度末でも約12.7兆円に達する見込みである。これらの基金をいついくら執行するかは、基金設置法人およびその所管省庁の判断に委ねられており、財務省は拒否権を持つような形で直接コントロールできない。 この12.7兆円もの基金残高が、いついくら執行されるかによって、2025年度の財政健全化目標の達成に影響を与えうる。 確かに、基金を造成した際の支出は、当該年度の決算段階では支出済みとなっている。しかし、それは国の会計から基金設置法人へ繰り出されたまでであって、すぐさま執行しなければ、その基金設置法人に貯め込まれたままとなっている。 問題は、基礎的財政収支の計算上、その基金から支出されたときにどうなるかである』、「内閣府の試算は、足元で講じたはずの経済対策に伴う財政支出が、後に尾を引く形で2025年度にも「漏れ出る」ような構造であることを浮き彫りにした。 なぜ即効性を期待したい経済対策なのに、策定されてから翌々年度になるようなほど財政支出が遅れて出てくるのか。 その元凶の一端は、「基金」にある・・・約150にものぼる基金の残高は総額で、2022年度末で約16.6兆円、2023年度末でも約12.7兆円に達する見込みである。これらの基金をいついくら執行するかは、基金設置法人およびその所管省庁の判断に委ねられており、財務省は拒否権を持つような形で直接コントロールできない・・・問題は、基礎的財政収支の計算上、その基金から支出されたときにどうなるかである」、なるほど。
・『国や地方自治体の基金が支出すれば収支に計上  まず、基金設置法人が、一般財団法人など民間団体になっている場合は、本稿で焦点を当てている国と地方の基礎的財政収支の対象外となっている。だから、その場合は、基金に貯め込まれている資金を支出していなくても、すでに国の会計から民間団体である基金設置法人へ繰り出された段階で、国と地方の基礎的財政収支の悪化要因(財政支出として計上)となり、以後はそこから先へ、いつ、いくら支出されても無関係となる。 しかし、基金設置法人が独立行政法人など国や地方自治体の機関である場合、国と地方の基礎的財政収支の対象となり、基金設置法人から支出された段階での基礎的財政収支の悪化要因(財政支出として計上)となる。これが、本稿で問題視しているものである。 基金を造成した段階で資金を支出したかのように見えて、国と地方の基礎的財政収支の定義上(これは、GDPなどの統計の基となる国民経済計算体系の定義に即している)は、会計・勘定間の振替のようなものにすぎず財政支出とはみなされない。 そして、独立行政法人など国や地方自治体の機関が基金設置法人であると、その法人から資金が支出された年度に、その支出が基礎的財政収支を悪化させるのだ。 それがよりにもよって2025年度だったらどうなるか。) 元をたどれば、基金を造成したのが2023年度以前であるにもかかわらず、つまり、まさか2025年度の財政健全化目標の達成を阻むつもりで基金を造成したわけではなかったにもかかわらず、その基金にある資金を2025年度に支出してしまうと、前述した内閣府の分析にはまだ織り込まれていない形で、「国と地方の基礎的財政収支黒字化」という目標達成を妨げることになる。 もちろん、その基金からの支出が、わが国の経済成長を促すものならまだよい。しかし、成長力を強化することに大して役に立たず、既得権益を保護するだけのために基金から支出するということなら、わが国の経済成長にも財政収支にも、百害あって一利なしである。そんな基金からの支出は、せめて2025年度には禁止すべきである。 加えて問題視しなければならないのが、2024年度補正予算である。政府は、これから2024年度当初予算案を国会に諮ろうとしているから、もちろんまだ姿も形もない。さらに、2025年度に補正予算で財政支出を大幅に増やすとなると、2025年度の財政収支を悪化させるから、これも当然問題である。 では、なぜ2024年度補正予算も問題視するのか』、「成長力を強化することに大して役に立たず、既得権益を保護するだけのために基金から支出するということなら、わが国の経済成長にも財政収支にも、百害あって一利なしである。そんな基金からの支出は、せめて2025年度には禁止すべきである。 加えて問題視しなければならないのが、2024年度補正予算」、なるほど。
・『「繰り越し」前提の補正予算  それは、近年の補正予算は、大半を翌年度に繰り越すことを前提とする形で歳出が計上されているからである。 第2次安倍晋三内閣以降、「15カ月予算」が常態化している。つまり、当該年度が残り3カ月となった12月末に、新年度予算の12カ月だけでなく、当該年度の補正予算も、事実上セットで編成するという政策方針である。 しかし、残り3カ月で何兆円もの追加の支出を使い切れるはずはない。だから、残り3カ月ほどになった時点で編成する補正予算は、翌年度に繰り越して支出することをほぼ前提にしたものといってよい。 すると、2024年度補正予算で計上された支出を、翌年度、つまり2025年度に繰り越して支出するとどうなるか。 それは、文字通り、2025年度の財政支出を増やして、2025年度の基礎的財政収支を悪化させる。だから、2025年度の補正予算だけでなく、2024年度の補正予算までも、視野に入れて2025年度の基礎的財政収支がどうなるかを見極めなければならない。 結局は基金に貯め込むだけで、民間に対して支出するわけではないような歳出を、わざわざ2024年度に追加して出す必要はない。 消費税率が10%に引き上げられて以降、わが国の税収は、幸いにして好調である。2024年の所得税の定額減税は1年限りとし、無駄な財政支出を過剰に増やさなければ、そして引き続き歳出効率化努力を進めれば、2025年度の基礎的財政収支黒字化は達成可能である。それには、苛烈な緊縮財政など不要である。 わが国において基礎的財政収支の黒字化は、2011年度を目標としたがリーマンショックで頓挫し、改めて2020年度を目標としたが消費税収の使途変更で達成年次を延期して、今に至っている。延期される度に、政策路線の不毛な対立を助長してきた。 2025年度は努力すれば実現できるところまで来ている。過剰な財政支出で物価高をあおらないようにしつつ、基礎的財政収支黒字化目標を一度は達成することが肝要だ』、「2024年の所得税の定額減税は1年限りとし、無駄な財政支出を過剰に増やさなければ、そして引き続き歳出効率化努力を進めれば、2025年度の基礎的財政収支黒字化は達成可能である。それには、苛烈な緊縮財政など不要である。 わが国において基礎的財政収支の黒字化は、2011年度を目標としたがリーマンショックで頓挫し、改めて2020年度を目標としたが消費税収の使途変更で達成年次を延期して、今に至っている・・・2025年度は努力すれば実現できるところまで来ている。過剰な財政支出で物価高をあおらないようにしつつ、基礎的財政収支黒字化目標を一度は達成することが肝要だ」、その通りだ。

第三に、昨年12月18日付け東洋経済オンライン「森永卓郎×土居丈朗「財政均衡主義」はカルトか 話題の書『ザイム真理教』めぐり論客が誌上討論」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/721495?display=b
・『鳴動する政治。終息しない戦乱。乱高下する市況。その先にあるのは活況か、暗転か――。 『週刊東洋経済』12月23-30日 新春合併特大号の特集は「2024年大予測」。世界と日本の行方を総展望する。 森永『ザイム真理教』を私が執筆したのは、財務省の唱える財政均衡主義という「教義」が、国民生活の向上を阻害していること。にもかかわらず財務省は、政治家やマスコミを通じ、国債暴落や超インフレの恐怖をあおり、国民をその教義で「洗脳」していること。そんなカルトのような状況を明らかにするためだった。 光栄にも本書は今年のベストセラーとなった。 土居国民は、税収よりも歳出が多いという帳尻の合わない状態が続く気持ち悪さを、素直に受け止めている。国民は賢いから財務省の言いなりにはならない。 「財務省が国民を洗脳」というメッセージは、国民を愚弄している』、「森永『ザイム真理教』を私が執筆したのは、財務省の唱える財政均衡主義という「教義」が、国民生活の向上を阻害していること。にもかかわらず財務省は、政治家やマスコミを通じ、国債暴落や超インフレの恐怖をあおり、国民をその教義で「洗脳」していること。そんなカルトのような状況を明らかにするためだった」、興味深そうだ。
・『赤字を大きくしすぎるとインフレを招く  森永財政赤字の唯一の問題は、赤字を大きくしすぎるとインフレを招くことだ。一定額の財政赤字を出し続けても、高インフレにならない限り問題ない。 2020年度の基礎的財政収支の赤字は80兆円だったが、それでもインフレにはならなかった。私は、未来永劫年100兆円程度の赤字を出し続けても、日本の財政には何の問題もないと思う。 土居10年代は顕著にインフレにならなかったから、あれほど財政赤字を出しても、日銀が国債を買えたので国債暴落が起きなかっただけだ。しかし今後はインフレが起きうる状況となっており、これまでと同様にはいかない。) 日銀も国債をずっと持ち続けることはできなくなる。物価高対策で、いずれは市中に事実上売らざるをえない。民間が買った国債は、政府が税金で、利子を払ったり、満期が来たら返済したりしなければならない。「日銀が国債を買えば、返済の必要はない」という本書の主張も通用しなくなる。 森永現在は通貨供給が過大になったことでのインフレではない、コストプッシュ型のインフレだ。 確かに日銀が国債を持ちすぎればインフレになるが、その天井はそうとう高いだろう。民間が保有する国債の元本返済や利払いが負担になるようなら、その国債を日銀が買い取ればよいだけの話だ。 土居インフレ期に、日銀が国債を買って通貨供給を増やせば、インフレをあおることにならないか。 日銀が国債を持つ天井はそうとう高いという指摘だが、国債累増との見合いで日銀が買い入れているがゆえに、現在のマネタリーベースは対GDP比で120%、終戦直後の2倍超と歴史的に異常な規模だ。いずれマネタリーベースは対GDP比が安定する水準まで低下させざるをえない。それは通貨量の大幅減か、物価が上昇するかだ』、「日銀が国債を持ちすぎればインフレになるが、その天井はそうとう高いだろう」、との森永氏の指摘に対して、「日銀が国債を持つ天井はそうとう高いという指摘だが、国債累増との見合いで日銀が買い入れているがゆえに、現在のマネタリーベースは対GDP比で120%、終戦直後の2倍超と歴史的に異常な規模だ。いずれマネタリーベースは対GDP比が安定する水準まで低下させざるをえない。それは通貨量の大幅減か、物価が上昇するかだ」、私は土居氏の指摘に共感を覚える。
・『安定化の必要はない  森永安定化の必要はない。高インフレにならない範囲で、日銀の国債保有を拡大し続け、そこで生まれる通貨発行益を財源に国民生活を改善させるべきだ。 新たに通貨を発行したら、その額は国の利益となる。その利益を通貨発行益というが、アベノミクスの最大の成果は、年間80兆円程度の通貨発行益を出しても、まったくインフレにはならないと実証したことだ。 土居いや、通貨発行益とは経済学では、通貨量残高に利子率を乗じた額で、日銀も「有利子の資産(国債など)から発生する利息収入」と定義している。国債利子率がほぼゼロのときは、通貨発行益は10兆円単位とはならない。 森永通貨発行益を通貨量残高に利子率を乗じた額とするのは、一部の人が通貨発行益を矮小化するため行っている誤った定義だ。) 土居その定義こそ筋が通らない。仮にご指摘の定義を採用し、今年度末の通貨量残高と前年度末の通貨量残高の差を通貨発行益と認識した場合、22年度末は18兆円のマイナスだ。つまり統合政府の財政収支は、22年度は18兆円も赤字が増えることになる。 「政府債務は政府資産と相殺すれば大きくない」という本書の記述も奇妙だ。政府の主な金融資産は年金積立金。将来の年金給付に充てるそれを相殺し借金返済に充てる、という議論に意味はない。 森永政府が抱えている資産1100兆円のうち、年金積立金は200兆円程度で、しかも年金債務が負債にも計上されている。資産の大部分は、持つ必要のない資産だ』、これも土居氏の議論に歩がある。
・『増税ではなく経済対策が先  土居国の資産のほとんどは、売るのが非現実的な資産だ。政府が持つ米国債は売れば金融市場が混乱するし、外交上の難しさもある。政府系金融機関からの貸付金も、保有をやめることは法人・個人への貸し?がしを意味する。実物資産は道路などのインフラだ。 森永売ったほうがよい資産もある。外貨準備は必要額の何倍も保有している。高速道路もすでに民営化されているのだから、株式を公開すればいい。不動産も、国会議員が格安で入居する都心のタワーマンションも、都心の公務員住宅も、いろいろある。 政府はそれをせずに増税を進めようとする。増税ではなく経済対策が先だと言いたい。税収弾性値は最近では3を超えている。「消費税は全廃して今後も復活させない」と宣言すれば、確実に消費は増えて経済は拡大する。 土居税収弾性値は、増税せず経済成長すれば税収が多く入る話のときばかり持ち出されるが、反面、国民負担率が高まることを意味する。仮に税収弾性値が3なら日本の国民負担率はたちまち50%を超える。税収弾性値が高いと国民負担率はおのずと上がるという現象を隠してはいけない。もっとも現実には、税収弾性値はそれほど高くはない。 ・税収弾性値…経済を1%成長させたとき税収が何%増えるかの指標 ・国民負担率…税金や社会保障費が国民の所得に占める負担の割合) 森永すでに日本の社会保障や公的サービスは劣化している。公的年金の所得代替率(現役世代の手取り収入に対する年金給付の比率)は先進国中最低水準だし、公的教育費がGDPに占める比率はOECD諸国内で最低水準だ。これ以上緊縮になってはいけない。 土居日本の医療保険制度はWHO(世界保健機関)からも手厚いと評され、世界に冠たるものだ。 教育支出が低水準というのは、全人口に占める児童・生徒数の比率が他国より低いからだ。日本では、小中学校は大半が公立で、義務教育は無償。教育への財政支出を渋っているわけではない。 公的年金の所得代替率が低いのは、04年の年金改正でこれ以上社会保険料負担を増やしてほしくないと労使が求め、事実上の賦課方式化したからだ。緊縮財政のせいではない。 もし国民の総意で、所得代替率をもっと上げるべきだということになったら、年金保険料を上げれば実現できるだろう』、「売ったほうがよい資産もある。外貨準備は必要額の何倍も保有している。高速道路もすでに民営化されているのだから、株式を公開すればいい。不動産も、国会議員が格安で入居する都心のタワーマンションも、都心の公務員住宅も、いろいろある」、この森永氏の主張には賛成だ。
・『国債を日銀に買い取らせればいい  森永所得代替率の引き上げを増税に頼る必要はない。国債を日銀に買い取らせればいい。 欧州の多くの国で少なくとも公立大学は無償の国が多いのに対し、日本の国立大学の授業料は年間53万円を超えている。人口割合の話だけではない。 土居高等教育に関しては、20年度から消費税増税財源を用いて、低所得世帯の授業料・入学金の軽減と、給付型奨学金の大幅拡充を行っている。 財源を国債買い入れで賄うのも、結局は教育費負担の軽減をした学生に、将来その返済負担を強いるだけ。将来のある学生に投じる教育費は、低所得世帯に配慮しつつ、高所得の親により多く出してもらう形で、親世代が責任を持って負担するべきだ』、教育費の問題では、土居氏の見解を支持したい。総じて土居氏の見解に共感を覚える。
タグ:土居 丈朗氏による「ガソリン価格を抑える補助金が逆に物価を上げる 今や秋の風物詩「補正予算」は見せかけに堕した」 東洋経済オンライン 政府財政問題 (その9)(ガソリン価格を抑える補助金が逆に物価を上げる 今や秋の風物詩「補正予算」は見せかけに堕した、2大悪弊が2025年「緊縮ナシで財政黒字化」を阻む 足元の経済対策が後を引く「基金」と「補正予算」、森永卓郎×土居丈朗「財政均衡主義」はカルトか 話題の書『ザイム真理教』めぐり論客が誌上討論) 「補正予算はむしろ、満たさなければならない事情があるときに限り、組むことができるものである」、そんな原則があったとは初めて知った。 「公共事業の追加増額は、建設資材の価格上昇をもたらしこそすれ、価格下落を引き起こすことはあり得ない」、その通りだ。 「ガソリン補助金は、ガソリンの小売価格を抑えてはいるが、ほかの商品の価格の上昇を助長し、経済全体でみると消費者物価全体を押し上げる方向に作用している・・・補正予算で積んだだけの「見せかけ」に堕したものも多い。年度末までに使わずじまいとなった歳出の不用額は、2020年度には3兆8880億円、2021年度には6兆3029億円、2022年度には11兆3084億円と、ついに10兆円を超えた」、なるほど。 「「見せかけ」に終わるような補正予算なら、経済効果もないし、金額を盛る必要はない。おまけに、物価高騰を助長するような情勢で、財政出動をするのは逆効果である・・・今秋に補正予算を組むなら、当初予算で計上した巨額の予備費について、その使途を確定させて国会での審議を受けるために、予算を組み替える。そんな補正予算なら、財政民主主義の観点からも意味があるものだろう」、その通りだ。 土居 丈朗氏による「2大悪弊が2025年「緊縮ナシで財政黒字化」を阻む 足元の経済対策が後を引く「基金」と「補正予算」」 「2025年度の名目成長率を2.8%と見込む成長実現ケースでは、2025年度の国と地方の基礎的財政収支は、1.1兆円の赤字となる・・・これまで取り組んできた歳出の効率化努力を引き続き2025年度にも行えば、基礎的財政収支はごくわずかな黒字となり、ぎりぎり財政健全化目標は達成できる」、なるほど。 「2024年1月試算では、前掲の通り、2025年度の国と地方の基礎的財政収支は1.1兆円の赤字となるという見通しを示した。ちなみに、この基礎的財政収支の赤字の額は、2025年度の名目成長率が1.7%とより低いベースラインケースでは2.6兆円となる」、なるほど。 「内閣府の試算は、足元で講じたはずの経済対策に伴う財政支出が、後に尾を引く形で2025年度にも「漏れ出る」ような構造であることを浮き彫りにした。 なぜ即効性を期待したい経済対策なのに、策定されてから翌々年度になるようなほど財政支出が遅れて出てくるのか。 その元凶の一端は、「基金」にある・・・ 約150にものぼる基金の残高は総額で、2022年度末で約16.6兆円、2023年度末でも約12.7兆円に達する見込みである。これらの基金をいついくら執行するかは、基金設置法人およびその所管省庁の判断に委ねられており、財務省は拒否権を持つような形で直接コントロールできない・・・問題は、基礎的財政収支の計算上、その基金から支出されたときにどうなるかである」、なるほど。 「成長力を強化することに大して役に立たず、既得権益を保護するだけのために基金から支出するということなら、わが国の経済成長にも財政収支にも、百害あって一利なしである。そんな基金からの支出は、せめて2025年度には禁止すべきである。 加えて問題視しなければならないのが、2024年度補正予算」、なるほど。 「2024年の所得税の定額減税は1年限りとし、無駄な財政支出を過剰に増やさなければ、そして引き続き歳出効率化努力を進めれば、2025年度の基礎的財政収支黒字化は達成可能である。それには、苛烈な緊縮財政など不要である。 わが国において基礎的財政収支の黒字化は、2011年度を目標としたがリーマンショックで頓挫し、改めて2020年度を目標としたが消費税収の使途変更で達成年次を延期して、今に至っている・・・ 2025年度は努力すれば実現できるところまで来ている。過剰な財政支出で物価高をあおらないようにしつつ、基礎的財政収支黒字化目標を一度は達成することが肝要だ」、その通りだ。 東洋経済オンライン「森永卓郎×土居丈朗「財政均衡主義」はカルトか 話題の書『ザイム真理教』めぐり論客が誌上討論」 森永『ザイム真理教』 「森永『ザイム真理教』を私が執筆したのは、財務省の唱える財政均衡主義という「教義」が、国民生活の向上を阻害していること。にもかかわらず財務省は、政治家やマスコミを通じ、国債暴落や超インフレの恐怖をあおり、国民をその教義で「洗脳」していること。そんなカルトのような状況を明らかにするためだった」、興味深そうだ。 「日銀が国債を持ちすぎればインフレになるが、その天井はそうとう高いだろう」、との森永氏の指摘に対して、「日銀が国債を持つ天井はそうとう高いという指摘だが、国債累増との見合いで日銀が買い入れているがゆえに、現在のマネタリーベースは対GDP比で120%、終戦直後の2倍超と歴史的に異常な規模だ。いずれマネタリーベースは対GDP比が安定する水準まで低下させざるをえない。それは通貨量の大幅減か、物価が上昇するかだ」、私は土居氏の指摘に共感を覚える。 これも土居氏の議論に歩がある。 「売ったほうがよい資産もある。外貨準備は必要額の何倍も保有している。高速道路もすでに民営化されているのだから、株式を公開すればいい。不動産も、国会議員が格安で入居する都心のタワーマンションも、都心の公務員住宅も、いろいろある」、この森永氏の主張には賛成だ。 教育費の問題では、土居氏の見解を支持したい。総じて土居氏の見解に共感を覚える。
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マイナンバー制度(その7)(大阪万博とマイナカード 「迷走」する2つの事業の共通点...「時代遅れ」な発想と決別せよ、マイナンバーの矛盾を徹底批判「0.01%を切り捨てる“上からのデジタル化”は人権を蔑ろにする) [経済政策]

マイナンバー制度については、昨年8月28日に取上げた。今日は、(その7)(大阪万博とマイナカード 「迷走」する2つの事業の共通点...「時代遅れ」な発想と決別せよ、マイナンバーの矛盾を徹底批判「0.01%を切り捨てる“上からのデジタル化”は人権を蔑ろにする)である。

先ずは、昨年8月30日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「大阪万博とマイナカード、「迷走」する2つの事業の共通点...「時代遅れ」な発想と決別せよ」を紹介しよう。
・『<パビリオン建設が遅れる大阪・関西万博と、保険証との強引な統合に批判が集まるマイナカードには、共通する問題点が> パビリオン建設の大幅な遅れによって大阪万博の開催が危ぶまれている。一方、政府のマイナンバー制度は保険証との一体化をめぐって迷走を続けており着地点が見えない。一見すると無関係な大阪万博とマイナカードの問題に共通しているのは、ハコモノ行政という時代遅れの発想である。 大阪万博は2025年春の開催を目指して準備が進められているが、万博の華と呼ばれ、イベントの目玉となる海外パビリオンの建設が進んでいない。海外パビリオンのうち建設事業者が決定したのは6件しかなく、8月14日時点で建設申請が出されたのは2件のみである。 共同館方式など他のパビリオン建設は進んでいるものの、海外勢による独自パビリオンがなければ万博はもはや意味をなさず、一部からはスケジュールの延期を促す声すら上がっている状況だ。 これはプロジェクト管理という方法論の問題だが、大阪万博については当初から開催そのものの意義を問う声も上がっていた。近年、グローバルな企業社会の在り方が大きく変容しており、巨大な展示会を開催し、ハコモノを通じて人やお金を集める手法は完全に時代遅れとなっている。 以前は民間にもたくさんの大型国際展示会があったが、多くが廃止や規模の縮小を余儀なくされており、民間経済においてはもはやメジャーなスタイルではなくなった。今回の万博も、開催について日本と争ったのがロシアとアゼルバイジャンだったことを考えれば、万博の立ち位置がよく理解できるだろう』、「グローバルな企業社会の在り方が大きく変容しており、巨大な展示会を開催し、ハコモノを通じて人やお金を集める手法は完全に時代遅れとなっている。 以前は民間にもたくさんの大型国際展示会があったが、多くが廃止や規模の縮小を余儀なくされており、民間経済においてはもはやメジャーなスタイルではなくなった。今回の万博も、開催について日本と争ったのがロシアとアゼルバイジャンだったことを考えれば、万博の立ち位置がよく理解できるだろう」、なるほど。
・『昭和を彷彿とさせる「ハコモノ行政」の象徴  つまり万博は昭和を彷彿とさせる「ハコモノ行政」の象徴ということになるわけだが、この話は、政治的に大問題となっているマイナンバー制度にも当てはまる。 マイナンバー制度については、政府が保険証との統合を強引に進めたことから批判が殺到している。十分な準備を行わないままシステムの連携を実施したこともあり、あちこちで深刻なトラブルが発生している。 一部からはスケジュールの見直しや制度の抜本的な見直しを求める声が出ているが、政府や推進論者はマイナカードをやめてしまうと「日本のデジタル化が遅れる」として強く反発している』、「ハコモノ行政」については、「万博」は理解できるが、「マイナンバー制度」とは関係ないように思える。
・『実際には「カード」は必須ではない  しかしながら、カードがないと日本のデジタル化が遅れるというのは事実ではなく、むしろその逆である。全国民には既にマイナンバーが振られており、システム連携さえしっかりすれば制度はすぐにスタートできる。本人確認の方法はさまざまなので、カードがなくても何の問題もなくシステムの運用が可能だ。 実際、韓国は日本をはるかに上回るマイナンバー制度を整えているが、韓国人はカードというものは保有していない。自分の名前や住所など必要な情報を窓口で伝え、本人であると確認されれば病院でも区役所でも手続きが自動的に進む。 おそらくだが、制度を設計した日本政府内部の担当者やマイナカード導入を強く主張している論者は、カードという物理的なモノが存在しないと本人確認ができないと考えている可能性が高い。 ハード(ハコモノ)という物理的なものにとらわれ、その上位に来るソフトウエアに思考が及ばないという点では、万博とマイナカードには共通のパターンが見られる。こうしたハコモノ行政の発想から脱却できなければ日本経済の復活は難しいだろう』、「実際には「カード」は必須ではない」はその通りだ。「制度を設計した日本政府内部の担当者やマイナカード導入を強く主張している論者は、カードという物理的なモノが存在しないと本人確認ができないと考えている可能性が高い。 ハード(ハコモノ)という物理的なものにとらわれ、その上位に来るソフトウエアに思考が及ばないという点では、万博とマイナカードには共通のパターンが見られる」、これで、漸く理解できた。

次に、本年1月3日付け日刊ゲンダイが掲載した自治体情報政策研究所代表の黒田充氏による「マイナンバーの矛盾を徹底批判「0.01%を切り捨てる“上からのデジタル化”は人権を蔑ろにする」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/334100
・「国民の不安払拭のための措置を踏まえ、予定通り、現行の健康保険証の発行を来年秋に終了する」──。12月12日のマイナンバー情報総点検本部の会合で岸田首相はそう語った。しかし、総点検後の共同通信の世論調査では、来年秋の健康保険証廃止について、撤回と延期を求める回答が7割を超える。マイナンバーの問題を指摘してきたこの人が、上からの「デジタル化」を徹底的に批判する(Qは聞き手の質問、Aは回答)。 Q:総点検によって、国民の不安は払拭できましたか。 A:政府が措置をしたというだけです。世論調査が示す通り、不安解消にはほど遠い。12月上旬に取りまとめとしていたのに、報告は12月12日にズレ込みました。国会閉幕の前日で、総点検については国会審議にも付されず、問題です。 Q:そもそも不安を払拭できるような点検だったのでしょうか。 A:政府の総点検は情報が間違っていなければ問題ないという立場で行われています。データの間違いを正せばうまくいくと。しかも、誤りが見つかった部分を修正しているだけで、見つかっていない部分はそのままです。政府が不安払拭のための措置をしたと言い張るためのアリバイづくりでしかありません。 Q:トラブルは収まりませんか。 A:保団連(全国保険医団体連合会)はマイナ保険証の医療現場のトラブルについて、顔認証のエラー、負担割合の間違い、資格情報の無効表示などいくつも指摘しています。しかし、そうした指摘に対して、総点検では事実かどうかの調査もしていません。河野デジタル相はうまくいっている現場を視察するだけで、トラブルが多発している多くの現場には足を運ばない。これではトラブルの芽を摘んだことにはなりません。 Q:河野大臣は「世の中ゼロリスクはない」と発言しました。 A:とりあえず走り出し、不具合があれば修正すればよいとするアジャイルガバナンスという考え方でデジタル化を進めています。間違いやトラブルは織り込み済みなのです』、「総点検後の共同通信の世論調査では、来年秋の健康保険証廃止について、撤回と延期を求める回答が7割を超える。マイナンバーの問題を指摘してきたこの人が、上からの「デジタル化」を徹底的に批判する」、その通りなのに、政府が当初の方針通りに強行するのには違和感がある。「とりあえず走り出し、不具合があれば修正すればよいとするアジャイルガバナンスという考え方でデジタル化を進めています。間違いやトラブルは織り込み済みなのです」、なるほど。
・『まるで太平洋戦争のような光景  Q:総点検の対象8208万件のうち、ひも付け誤りが計8351件だったとして、河野大臣は「わずか0.01%」と胸を張りました。 A:政府は「デジタル化で誰一人取り残されない」と散々、強調してきました。デジタル庁のミッションにもそう書いてある。それなのに、0.01%だったら、大したことないと、平気で切り捨てる。大きな矛盾です。政府の存立意義は人権保障ですが、医療を受ける権利など人権はかなぐり捨てられています。 Q:「イデオロギー(政治思想や理念)的に反対する方は、いつまで経っても『不安だ』『不安だ』とおっしゃる」とも言いました。 A:デジタル化を進めないと日本は沈没する。だから、俺たちが国を守っているんだ。デジタル化という大義のもと、外野がうるさく言っても進めるんだという姿勢ですね。多くの人が亡くなろうと、太平洋戦争を続けたのと同じです。 Q:デジタル化と言えば、何でも通ってしまう。 A:デジタル化すれば、経費が削減され、不正がなくなると信じ込み、現場を見ることなく上から進める手法です。パソコンが世に出はじめた頃、社長がよくわからないまま買ってきたパソコンを従業員の机に置き、「明日からこれで仕事をせい」と言うようなものです。 Q:総点検を受け、官邸は廃止判断を先送りしようとしたが、河野大臣らが反発し、来秋廃止の方針が堅持されたようです。 A:岸田首相はマイナンバーの政策そのものやトラブルの実態について、よくわかっていない感じです。来秋の保険証廃止を強行することは内閣支持率低下にもつながっている。それでも、延期を決断できず、河野大臣に押し切られている。河野大臣の暴走は岸田首相の責任です』、「岸田首相はマイナンバーの政策そのものやトラブルの実態について、よくわかっていない感じです・・・延期を決断できず、河野大臣に押し切られている。河野大臣の暴走は岸田首相の責任です」、その通りだ。それにしても、「河野大臣」の厚かましい顔を見ると、腹が立つ。
・『「バラマキ=普及」の勘違い  Q:厚労省の中には、河野大臣のやり方に不満もあると聞きます。 A:厚労省はマイナ保険証への一本化は容易でないと考えていたふしがあります。だから、オンラインシステムも健康保険証(被保険者番号)でも資格確認できるようにしていたし、一本化は何年も先の話だと思っていたはずです。ところが、昨年10月に突然、24年秋の保険証廃止方針が示され、うまく乗せられてしまった。 Q:デジタル庁が主導しています。 A:首相直属のデジタル庁が推進することで、現場の声が届かず、暴走につながっている面があります。厚労省主導なら、保団連の指摘も真摯に受け止め、丁寧に進めていたかもしれません。長年、医療行政の実務を担い、現場を知っているからです。 Q:今年度補正予算には「マイナ保険証の利用促進・環境整備」に887億円、マイナカードの取得環境整備等に899億円が盛り込まれています。マイナ保険証の利用率が上がった医療機関に対する支援金や広報に力を入れるようです。 A:お金をバラまけば、利用すると勘違いしている。国民はバカにされています。CMなども大量に流すのでしょうが、そんなことで不安が解消し、利用が進むはずがない。 Q:黒田さんは、構想当初から、マイナンバー制度はうまくいかないと一貫して主張しています。 A:マイナンバー制度の出発点は、行政機関が持っているさまざまな個人情報を名寄せする際、名前や住所だと間違いが起きるからマイナンバーという番号で、という話だったのです。ところが、個人情報とマイナンバーがうまくひも付けられなかった。“はじめの一歩”でつまずいているのです。 Q:なぜ、失敗したのですか。 A:日本は漢字があり、読みがいろいろある。ひらがなもカタカナもある。アルファベットしか使っていない国とは全く違う。それに、行政、健康保険、年金などの管理もさまざまなのに、そういう調査もしっかり行わないままに、住民票に番号を振ってしまえば、何とかなると、スタートしてしまったのです。 Q:国民と番号のひも付けにしくじりながら政府はマイナンバーの利用拡大に躍起です。 A:利用拡大すればするほど新たなひも付け誤りが続出するのは避けられません。 Q:具体的には? A:これから約80の免許や国家資格へのひも付けが始まります。しかし、住所が取得時のままのものや、そもそも住所登録が不要な免許や資格も多々あります。ひも付け誤りが多発するのは目に見えています』、「デジタル庁が主導しています。 A:首相直属のデジタル庁が推進することで、現場の声が届かず、暴走につながっている面があります。厚労省主導なら、保団連の指摘も真摯に受け止め、丁寧に進めていたかもしれません。長年、医療行政の実務を担い、現場を知っているからです」、「デジタル庁が」暴走したようだ。「厚労省主導なら、保団連の指摘も真摯に受け止め、丁寧に進めていたかもしれません。長年、医療行政の実務を担い、現場を知っているからです」、その通りだ
・『■「保険証廃止」あきらめはダメ  Q:他にはありますか。 A:固定資産の所有者把握にもマイナンバーを使う計画だが、間違いは必ず起きる。例えば、大阪市内の建物所有者は大阪市民とは限らない。本人からマイナンバーの届け出がなければ、大阪市の職員は氏名・住所をもとに、住基ネットで1億2000万人の中から探し出し、ひも付けなければならない。もちろん死者名義のままのものもある。簡単な作業ではありません。 Q:政府は健康保険証を来年12月2日に廃止し、新規発行を停止することを決めました。最長1年の猶予期間があるとはいえ、どんな事態になりますか。 A:現在はマイナ保険証の利用率は4.3%にとどまっています。使う機会が少なく、トラブルにも出くわさない。保険証が廃止されれば、多くの患者はトラブルを経験することになる。それがいやでマイナ保険証の登録を解除し、資格確認書の発行を求めれば、健保組合や会社の総務などにしわ寄せがいくでしょう。保険証存続を求める声が高まっていくはずです。 Q:保険証廃止は全国民に関係のある身近な問題です。 A:岸田政権の「上からのデジタル化」がうまくいかないのは明らかです。これは世論の力で止めるしかない。そういう流れになっていくと思います。あきらめてはならないのです』、「岸田政権の「上からのデジタル化」がうまくいかないのは明らかです。これは世論の力で止めるしかない」、完全に同意したい。
タグ:マイナンバー制度 (その7)(大阪万博とマイナカード 「迷走」する2つの事業の共通点...「時代遅れ」な発想と決別せよ、マイナンバーの矛盾を徹底批判「0.01%を切り捨てる“上からのデジタル化”は人権を蔑ろにする) Newsweek日本版 加谷珪一氏による「大阪万博とマイナカード、「迷走」する2つの事業の共通点...「時代遅れ」な発想と決別せよ」 「グローバルな企業社会の在り方が大きく変容しており、巨大な展示会を開催し、ハコモノを通じて人やお金を集める手法は完全に時代遅れとなっている。 以前は民間にもたくさんの大型国際展示会があったが、多くが廃止や規模の縮小を余儀なくされており、民間経済においてはもはやメジャーなスタイルではなくなった。今回の万博も、開催について日本と争ったのがロシアとアゼルバイジャンだったことを考えれば、万博の立ち位置がよく理解できるだろう」、なるほど。 「ハコモノ行政」については、「万博」は理解できるが、「マイナンバー制度」とは関係ないように思える。 「実際には「カード」は必須ではない」はその通りだ。「制度を設計した日本政府内部の担当者やマイナカード導入を強く主張している論者は、カードという物理的なモノが存在しないと本人確認ができないと考えている可能性が高い。 ハード(ハコモノ)という物理的なものにとらわれ、その上位に来るソフトウエアに思考が及ばないという点では、万博とマイナカードには共通のパターンが見られる」、これで、漸く理解できた。 日刊ゲンダイ 黒田充氏による「マイナンバーの矛盾を徹底批判「0.01%を切り捨てる“上からのデジタル化”は人権を蔑ろにする」 「総点検後の共同通信の世論調査では、来年秋の健康保険証廃止について、撤回と延期を求める回答が7割を超える。マイナンバーの問題を指摘してきたこの人が、上からの「デジタル化」を徹底的に批判する」、その通りなのに、政府が当初の方針通りに強行するのには違和感がある。「とりあえず走り出し、不具合があれば修正すればよいとするアジャイルガバナンスという考え方でデジタル化を進めています。間違いやトラブルは織り込み済みなのです」、なるほど。 「岸田首相はマイナンバーの政策そのものやトラブルの実態について、よくわかっていない感じです・・・延期を決断できず、河野大臣に押し切られている。河野大臣の暴走は岸田首相の責任です」、その通りだ。それにしても、「河野大臣」の厚かましい顔を見ると、腹が立つ。 「デジタル庁が主導しています。 A:首相直属のデジタル庁が推進することで、現場の声が届かず、暴走につながっている面があります。厚労省主導なら、保団連の指摘も真摯に受け止め、丁寧に進めていたかもしれません。長年、医療行政の実務を担い、現場を知っているからです」、「デジタル庁が」暴走したようだ。「厚労省主導なら、保団連の指摘も真摯に受け止め、丁寧に進めていたかもしれません。長年、医療行政の実務を担い、現場を知っているからです」、その通りだ 「岸田政権の「上からのデジタル化」がうまくいかないのは明らかです。これは世論の力で止めるしかない」、完全に同意したい。
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インバウンド動向(その15)(「新大久保はゲロの街になりましたよ」日本人による観光公害に苦しむ新大久保住民たち、中国人の爆買いは「もう死んだ」…日本への団体旅行解禁でも期待外れに終わる理由、中国人客が大型連休にこっそり日本観光 「二枚舌生活」「見えない旅」の理由とは?) [経済政策]

インバウンド動向については、本年7月28日に取上げた。今日は、(その15)(「新大久保はゲロの街になりましたよ」日本人による観光公害に苦しむ新大久保住民たち、中国人の爆買いは「もう死んだ」…日本への団体旅行解禁でも期待外れに終わる理由、中国人客が大型連休にこっそり日本観光 「二枚舌生活」「見えない旅」の理由とは?)である。なお、タイトルの「戦略」は「動向」に変更した。

先ずは、8月3日付け日刊SPA!「「新大久保はゲロの街になりましたよ」日本人による観光公害に苦しむ新大久保住民たち」を紹介しよう。
https://nikkan-spa.jp/1924103
・『日本人による観光公害に苦しむ新大久保住民たち  商業的なコリアンタウンだが、「住民の生活があることを韓流好き女性たちにも知ってほしい」とBさんは語る 「新大久保はゲロの街になりましたよ」 そう嘆くのはこの街に住んで6年になるというBさん。 「週末の夜になると、女性がそこら中で酔いつぶれている姿を見ます。路上でも民家の軒先でもゲロを吐き散らす姿は珍しくもなくなりました」』、「女性がそこら中で酔いつぶれている姿を見ます。路上でも民家の軒先でもゲロを吐き散らす姿は珍しくもなくなりました」、世も末だ。
・『狭い歩道が満員電車状態、食べ歩きによるゴミ捨ても  韓国料理店や韓流アイドルショップが密集し、大人気の観光地となった新大久保だが、このところ目立つのはハメを外しすぎる日本人女性たち。 「24時間営業の韓国居酒屋やクラブの周辺で大騒ぎする若いコが増えた。すると彼女たち目当てなのか、ガラの悪い日本人の男たちもやってくるようになりました」 さらに土日や連休になると、上京者が大挙して押しかける。 「狭い歩道が満員電車状態になることも。食べ歩きによるゴミ捨てもひどいです」 そのため住民はやむなく車道を歩き、老人や車椅子の人は、出歩くこと自体をためらうようになってしまったという。自戒を促される事例だ。) 観光客の迷惑行為は全国で報告されているが、受け入れる日本側にも問題がないとは言えない。インバウンド評論家の中村正人氏は次のように指摘する。 「日本社会自体が疲弊しているなかで政府のインバウンド政策が誘致一辺倒な上、観光客が大都市に集中しているのが現状です。インバウンドはむしろ地域活性化のためにあるという原点に立ち返るべきです。また、コロナで観光産業から離職した人員が復帰していないことによる現場の混乱も要因でしょう」 実際に帝国データバンクによると、業種別正社員の人手不足割合において「旅館・ホテル」が6か月連続でトップとなっている。 その上で中村氏は、罰則の強化を対策に挙げる。 「例えば迷惑行為のあったツアーの主催社は数か月営業停止にするなどのペナルティを与えることも抑止力になる」 日本の観光文化に精通するアレックス・カー氏は、世界の観光業界が「量より質」に移行しつつあるとし、次のように提案する。 「観光地に細かい注意書きをするのも一つの対策ですが、乱立して景観を損ねているケースが多く、日本文化のレベル低下に繋がります。それよりも急務はシステム構築。観光名所や施設を予約制にしたり、入場料を高めに設定することで観光地全体のクオリティが上がる。各地がコロナ禍の間に仕組みづくりをしておかなかったのは残念ですね」 航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏も“ローカルレート”の導入を提唱する。ローカルレートとは、ホテルやレジャー施設の価格を現状より高く設定し、地元住民には割り引く、という考え方だ。質の低い観光客を退けるきっかけにもなる。 「米ハワイ州でも“カマアイナレート”と呼ばれるローカルレートが導入され、有名観光スポットでハワイ州在住者は入場料や手続きが優遇されます。オーバーツーリズム対策としても効果的でしょう」 日本も手遅れにならないようにしたいところだ』、「土日や連休になると、上京者が大挙して押しかける。 「狭い歩道が満員電車状態になることも。食べ歩きによるゴミ捨てもひどいです」 そのため住民はやむなく車道を歩き、老人や車椅子の人は、出歩くこと自体をためらうようになってしまったという・・・日本の観光文化に精通するアレックス・カー氏は、世界の観光業界が「量より質」に移行しつつあるとし、次のように提案する。 「観光地に細かい注意書きをするのも一つの対策ですが、乱立して景観を損ねているケースが多く、日本文化のレベル低下に繋がります。それよりも急務はシステム構築。観光名所や施設を予約制にしたり、入場料を高めに設定することで観光地全体のクオリティが上がる。各地がコロナ禍の間に仕組みづくりをしておかなかったのは残念ですね・・・航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏も“ローカルレート”の導入を提唱する。ローカルレートとは、ホテルやレジャー施設の価格を現状より高く設定し、地元住民には割り引く、という考え方だ。質の低い観光客を退けるきっかけにもなる。 「米ハワイ州でも“カマアイナレート”と呼ばれるローカルレートが導入され、有名観光スポットでハワイ州在住者は入場料や手続きが優遇されます。オーバーツーリズム対策としても効果的でしょう 日本も手遅れにならないようにしたいところだ」、なるほど。 

次に、9月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日中福祉プランニング代表の王 青氏による「中国人の爆買いは「もう死んだ」…日本への団体旅行解禁でも期待外れに終わる理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328448
・『8月10日、中国政府は日本を含む海外への団体旅行をついに解禁した。コロナ前のように中国人観光客が大勢やってきて、“爆買い”が復活するのではないかとインバウンド効果に期待する声は大きい。しかし、中国からの来客や視察ツアーをよくアテンドし、買い物の同行もしている筆者は「団体旅行客が急増することはないし、爆買いも復活しないだろう」と予想する。その理由とは?』、興味深そうだ。
・『銀座のデパートからニトリへ 日本を訪れる中国人富裕層の財布のひもが固くなっている  今年の夏は暑い。できることならどこにも出かけたくない、クーラーが効いている室内でずっと過ごしたい思いだが、今年の7月から8月にかけて、夏休みを利用して、たくさんの中国の友人たちが家族連れで来日した。彼らに会うため頻繁に外に出かけなければならなかったが、顔を見ると約4年ぶりの再会の喜びは大きく、延々と話が尽きることがなかった。 上海の友人Aさん(女性、40代後半)は、子ども2人を連れて、この夏2週間以上東京に滞在した。上の娘さんが今秋から日本の大学に留学するので、彼女のためにマンションを借り、家財道具一式をそろえるための滞在だった。 もう一組の友人夫婦は、既に日本で留学している娘さんと、今後の留学生活について親子で話し合うための来日だった。そのほかにも、北京や上海などからやってきた、日本の介護ビジネス視察の団体をアテンドした。 このように中国から来た友人知人たちと一緒に過ごした今年の夏、筆者にはある印象が強く残った。それは「皆が買い物をしなくなって、財布のひもを固くしている」ということだ。 上述のAさんが、娘を日本に留学させるというのは筆者にとっては意外だった。彼女は一家で既にアメリカの国籍を取得しており、子どもたち2人は上海で生まれたものの、幼稚園からインターナショナルスクールに通っている。学校では英語しか使っていないので、中国にいながら、中国語の家庭教師を付けていた。大学はアメリカへ行かせるとずっと言っていたので、「なぜ日本を選んだの?」と聞くと、彼女は「もうお金がないの。日本の大学の学費はアメリカの5分の1。物価も安いから」と返ってきた。) 「もうお金がない」――Aさんの口から発せられた言葉とは思えず、耳を疑った。これまでの彼女の経済状況を知っていたからだ。 Aさん夫婦は、上海の一等地で何店舗もの上海料理の高級レストランや、食品開発の会社を経営していた。レストランは、レトロな上海の雰囲気の内装で、上海の家庭料理を高級にした料理を出す店で、有名人もよく訪れる人気の店だった。しかし、コロナ禍でお客さんの姿が消え、加えて上海のロックダウンで大きなダメージを受けた。中国には、日本が行ったような飲食店に対する休業補償金がなかったので、レストランは一軒、また一軒と潰れていった。さらに昨年末、食品開発の会社も倒産。「今は、もう事業が何も残っていない。生活費は、貯蓄の資産運用で得た利息を充てている。その利回りもこれまで10%以上あったが、今はその半分もない」とため息をつく。「だからもう、以前のような暮らしはできない」と、Aさんは曇った表情で話していた。 Aさんはこれまでも度々日本を訪れている。日本で買い物をする場所は決まって伊勢丹や高島屋などのデパート、銀座のデパートや高級ブランドショップだった。買い方も豪快というか、値段をまったく気にする様子もなく好きなだけショッピングを楽しむので、買い物に付き合った筆者までその後しばらくは金銭感覚が狂っていたほどだ。ところが、今回彼女が足を運んだのは、新宿高島屋の隣にあるニトリ、そして中古品店だった』、「中国から来た友人知人たちと一緒に過ごした今年の夏、筆者にはある印象が強く残った。それは「皆が買い物をしなくなって、財布のひもを固くしている」ということだ・・・上述のAさんが、娘を日本に留学させるというのは筆者にとっては意外だった。彼女は一家で既にアメリカの国籍を取得しており、子どもたち2人は上海で生まれたものの、幼稚園からインターナショナルスクールに通っている。学校では英語しか使っていないので、中国にいながら、中国語の家庭教師を付けていた。大学はアメリカへ行かせるとずっと言っていたので、「なぜ日本を選んだの?」と聞くと、彼女は「もうお金がないの。日本の大学の学費はアメリカの5分の1。物価も安いから」と返ってきた」、なるほど。
・『高級マンション暮らし+仕送り40万円 都内の有名私立大学で留学していたが……  もう一組の夫婦は、現在東京の有名私立大学で留学中の娘に会いに来た。今まで、娘さんは家賃20数万円の都内高層マンションで一人暮らし、さらに、親から毎月約40万円の仕送りをもらっていた。彼女はその豊富な資金で日本での留学生活をエンジョイしていた。移動はタクシーを利用することが多かったし、好きなアイドルを追いかけて、日本国内だけでなく海外にも度々行っている。 何も不自由のない、リッチな生活をしていた彼女だが、今秋からは一変する。安いアパートに引っ越し、生活費を大幅に削られることになった。なぜなら、父親が20年以上経営していたリフォーム会社が、中国の不動産産業の低迷を受けて倒産の手続きに入ったからだ。「お父さんのせいで、これからの生活水準が下がることになる、ごめんね」という親子の会話を横で聞いて、寂しい気持ちになった。 友人らは中国の高度経済成長の波に乗って富を築いてきた、いわゆる富裕層である。しかし、この数年で事業も金も失った。彼らの凋落ぶりを通して、中国経済の実態が垣間見える。富裕層の彼らでさえ、懐具合が寂しくなり、財布のひもが固くなっているのだ。中間層やそれ以下の国民の消費意識も同様に変わり、出費を抑えるだろうことは容易に想像がつく』、「娘さんは家賃20数万円の都内高層マンションで一人暮らし、さらに、親から毎月約40万円の仕送りをもらっていた・・・何も不自由のない、リッチな生活をしていた彼女だが、今秋からは一変する。安いアパートに引っ越し、生活費を大幅に削られることになった。なぜなら、父親が20年以上経営していたリフォーム会社が、中国の不動産産業の低迷を受けて倒産の手続きに入ったからだ。「お父さんのせいで、これからの生活水準が下がることになる、ごめんね」という親子の会話を横で聞いて、寂しい気持ちになった」、なるほど。
・『「仕事以外の時間は買い物」だったはずが…… 団体で日本に来た中国人の行動が変わった  折しも、中国政府は、8月10日に日本や韓国など78カ国への団体旅行を解禁した。日本のメディアの報道を見ると、百貨店やホテル業界など、インバウンドが増え、また“爆買い”が復活するのではないかと期待が高まっている様子がうかがえる。しかし、本当に中国から団体旅行者が大勢やってくるのか、コロナ前のように爆買いが復活するのか? 筆者は、その期待は裏切られる可能性がきわめて高いと考えている。 最近、何回か、中国の各地からの参加者で構成された来日ビジネス視察団体と一緒に仕事をした。参加者は、デベロッパーやIT関連、医療介護などの企業幹部や社員たちで、20~40代までと比較的若い人がほとんどだった。こうした団体の参加者たちは、コロナ前には皆、仕事以外の時間を目いっぱい買い物に使い、お土産リストを手に、買い物に没頭していた。「日本は閉店時間が早すぎる。中国なら夜の11時とか0時まで開いているのが普通なのに」と文句を言われたことも度々あった。しかし、今回は明らかに様子が違う。みな夕食が終わるとさっさとホテルに戻り、部屋やロビーでスマホをいじって過ごしている。 「買い物はしないのですか?」と尋ねると、「普段から中国でよくECを利用しているから。もう何でもECで手に入るよ」と答え、苦笑しながら「今は懐が寒い」と付け加えた。 その後、この団体を引率した人とお茶をする機会があったのでこの話をしてみると、「今は若者の行動が非常に慎重になっている。今回のメンバーは優秀な人ばかりだが、それでも、いつクビになるのかと将来に対して不安を抱えている。大学を出ても仕事が見つけられないし、すでに働いている人達も就職や再就職の競争が熾烈(https://diamond.jp/articles/-/325165)。こんな状況だから、みんなお金を使うことを躊躇(ちゅうちょ)しているんだ」と声を潜めて話していた』、「「今は若者の行動が非常に慎重になっている。今回のメンバーは優秀な人ばかりだが、それでも、いつクビになるのかと将来に対して不安を抱えている。大学を出ても仕事が見つけられないし、すでに働いている人達も就職や再就職の競争が熾烈・・・こんな状況だから、みんなお金を使うことを躊躇・・・しているんだ」、なるほど。
・『コロナ禍を経て、中国人の旅行スタイルが変化している 日本もタイと似たような状況になるのでは  北京で旅行会社を営む知人に聞くと、「日本への団体旅行が解禁された後、一時は問い合わせが多かったが、実際に成約に至ったのはそれほど多くない。なぜなら、富裕層は団体旅行をしない。中間層以下は収入が減り、海外旅行なんかする余裕がないからね。コロナの3年間で行動制限された反動で、今、国内の観光地はどこも大盛況だ。しかしフタを開けてみると、一人当たりの平均消費額が非常に少ない」と教えてくれた。 さらに「今年1月、ゼロコロナ政策が解除され、中国の観光客がタイへ殺到した。タイの副首相や観光局長が自ら空港で出迎えて、『熱烈歓迎』と書いてある横断幕を掲げて、中国のインバウンドに期待していた。これは今の日本とよく似た状況ではないか?」と話す。結果はどうだったか。タイ観光庁の統計を見ると、今年6月までの半年間で、中国の観光客はわずか140万人だった。予想していた700万~1000万人のたった20%しかいなかったのだ。 このように、中国の国内の政治・経済事情は、コロナ前と今とで大きく変わった。一つだけ日本への旅行者が増え、“爆買い”が期待できる要因があるとすれば、為替レートが円安・元高なことだろう。中国人から見れば、円安な日本でお金を使えば、何を買っても食べても割安でお得感があるからだ。中国を含め世界中でインフレが起こり、物価が大きく上昇している中で、日本の物価はまだまだ安い。収入が減り、節約志向を強めている中で、“安いもの”を狙っての買い物はあるかもしれない。しかしこれは、コロナ前の買い物、いわゆる爆買いとは、本質も目的もまるで違う。 このように、筆者は「団体旅行が解禁されても、中国人旅行客はそうそう増えない。“爆買い”も復活しない」と予想している。さらには、8月24日に始まった福島第一原発の処理水の海洋放出で、中国では今日本に対する批判が高まっている(参考記事)。日本への団体旅行者は急増どころか、激減する可能性さえあるのだ』、「筆者は「団体旅行が解禁されても、中国人旅行客はそうそう増えない。“爆買い”も復活しない」と予想している・・・福島第一原発の処理水の海洋放出で、中国では今日本に対する批判が高まっている・・・日本への団体旅行者は急増どころか、激減する可能性さえある」、インバウンドでは「中国」には、残念ながら殆ど期待できないようだ。

第三に、10月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーランスライターのふるまいよしこ氏による「中国人客が大型連休にこっそり日本観光 「二枚舌生活」「見えない旅」の理由とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/331400
・『日本には春にゴールデンウイークがあるが、中国には9月末から10月頭にかけて「黄金週」がある。行動制限が解けた大型連休となれば、旅行に行きたいと思うのは当然。しかし今年の黄金週は、コロナ前のそれとは大分様子が違ったという。なぜか日本メディアを非難し始めた「環球時報」や「北京日報」、そして日本にやってきた中国人観光客の「見えない旅」とは……』、興味深そうだ。
・『中国版“秋のゴールデンウイーク” 2023年は旅行した人が多かったが、コロナ前との違いが……   ちょっと前の話になるが、今年の中国国慶節(建国記念日、今年は10月1日)は土、日を挟んで中秋節(中秋の名月)と連なったため、多くの人が9月29日から10月6日までの8連休という豪華版となった。加えて自身が会社の経営者だったり、潤沢な有給休暇が取れたりする人の中には、10連休や15連休にしてしまった人もいたらしい。 最低でも8連休となると、連休の過ごし方が「旅行でしょ!」となるのは、どこの国でも同じである。特にコロナの行動制限から解放されて初めての秋の連休だし、8日間丸々の旅行は難しくても気候的にも爽やかなこの時期に、「ちょっと出かけてみようか」となるのは至極当然。おかげで中国政府の統計によると、この「黄金週」(ゴールデンウイーク)に国内旅行に出かけた人の数は延べ8.26億人と、コロナ前の2019年よりも4.1%増大した。 ただし、観光関連売り上げの伸びは2019年同期比でわずか1.5%増と、観光客の延べ人数が増えた割には大きな増収には至らなかった。 その原因の一つは、旅行といっても短距離や短期間だった人が多かったから。コロナ前までは「黄金週」といえば、大渋滞、大混雑で、「風景を見に出かけたのに目に入るのは人の波」とか、「ぼったくりなどに遭って、ヘトヘトになった」という話がよく流れていた。だが人々は3年間の「自宅待機」を経て、そんな旅を反省したらしい。今年は年初めから、「勢いに任せた、盛りだくさんの旅をしなくなった」とあちこちから報告されていた。 同時に、人々が旅の予算をきちんと組み始めたことも消費額に直接影響したようだ。今回の連休旅行の特徴として、これまでのように懐具合に任せて大盤振る舞いを楽しむ旅ではなく、コストを抑えてつつましく旅を味わう人が増えたことが挙げられる。 旅先では安価な民泊が人気となった。その一方で、高級ホテルも人気だったが、その宿泊スタイルは連泊して観光地を回るのではなく、ホテル内の施設やレストランを利用し、SNS映えする写真を撮って楽しむ、そんな「体験的宿泊」が目立ったという。 連休後半には旅行ムードが勢いを失い始めて、国内航空券の値下がりが始まり、ホテルや民泊は宿泊率を上げるために価格を引き下げるという手段を取ったところもあった。これまでのように、「連休だから当然高い」とか、「繁忙期は売り手優先」という感じではなくなってしまったのである』、「ゴールデンウイーク)に国内旅行に出かけた人の数は延べ8.26億人と、コロナ前の2019年よりも4.1%増大した。 ただし、観光関連売り上げの伸びは2019年同期比でわずか1.5%増と、観光客の延べ人数が増えた割には大きな増収には至らなかった。 その原因の一つは、旅行といっても短距離や短期間だった人が多かったから・・・これまでのように懐具合に任せて大盤振る舞いを楽しむ旅ではなく、コストを抑えてつつましく旅を味わう人が増えたことが挙げられる。 旅先では安価な民泊が人気となった。その一方で、高級ホテルも人気だったが、その宿泊スタイルは連泊して観光地を回るのではなく、ホテル内の施設やレストランを利用し、SNS映えする写真を撮って楽しむ、そんな「体験的宿泊」が目立ったという」、手堅くなったようだ。
・『日本への団体旅行も増えるかと思ったところで福島第一原発の処理水問題が起きた  とはいえ、10連休や15連休を取った人たちはプチ旅行で済むはずもなく、渡航先に海外を選んだ人も多かったようだ。「ようだ」というのは、政府統計局が海外に出かけた人たちの統計数を出していないから。メディアもあえて海外旅行についての話題を避けているようだった。「消費はまず国内から」、そんなムードが業界に流れていたのかもしれなかった。 それでも、さまざまな情報から海外旅行を心待ちにしていた人たちの存在が伝わってきた。タイはすでに今年9月に、来年2月までの中国人観光客のビザ免除措置を発表していた。また今年8月にはアメリカ、イギリス、日本、オーストラリア、韓国など、コロナ以降中止されていた団体旅行も解禁され、国慶節連休の海外旅行ムード復活に一役買っていた。 そのうち、特に日本行きは今春から個人旅行が好調で、「今年7~8月の夏休みだけで、個人旅行を含め4000万円相当を売り上げた」と日本の中国人相手のツアー業者が言うほどの人気となっていた。8月の団体旅行の解禁で、秋の黄金週における期待はさらに高まっていた。 しかし、8月末に福島第一原発の処理水の海洋放出が始まると、中国政府は国内向けに激しい反対キャンペーンを展開。日本の水産物輸入を全面的に禁じるなどして「危険性」を強調した結果、予定されていた日本向け団体旅行はキャンセルが相次いだ。これは参加者が自発的にキャンセルしたものもあれば、一方的に「見えない手」によって参加する予定だったツアーがキャンセルされたという例もあったようだ。 以前、2012年9月の尖閣諸島の国有化によって反日デモが巻き起こった際に、旅行を管轄する政府当局が日本渡航ビザ申請を代行する国内旅行会社に圧力をかけたが、今回も同様のことが起きたらしい。ただ、あれから10年以上がたち、中国人の中にはそんな旅行社を通じて観光ビザを申請しなくても、すでにビジネスビザや個人ビザを取得済みの人たちも多く、政府もそんな彼らを押しとどめることはできなかった。 実際、団体旅行の需要は減ったものの、日本行きの人気はそれほど下がらなかった。 ブルームバーグが日本語でまとめた「中国の大型連休、2100万人強が飛行機を利用か―人気旅行先には東京も」という記事によると、「黄金週」初日の9月29日から10月6日までに予約された海外旅行航空券数のランキングでは、トップこそ上海発韓国ソウル便だが、2位が東京発上海便、3位が北京発東京便、4位は杭州発大阪便、5位に再び北京発ソウル便となった後、6位が上海発東京便と、日本と韓国でトップ6位を占拠している。2位の東京発上海便の人気は、国慶節期間中に日本から里帰りした人も多かったということだろう。実際に日本の空港で待ち構えていた日本メディアの問いかけに、到着客が「機内はほぼ満席だった」と答えている姿をご覧になった方もおられるはずだ』、「日本行きは今春から個人旅行が好調で、「今年7~8月の夏休みだけで、個人旅行を含め4000万円相当を売り上げた」と日本の中国人相手のツアー業者が言うほどの人気となっていた。8月の団体旅行の解禁で、秋の黄金週における期待はさらに高まっていた。 しかし、8月末に福島第一原発の処理水の海洋放出が始まると、中国政府は国内向けに激しい反対キャンペーンを展開。日本の水産物輸入を全面的に禁じるなどして「危険性」を強調した結果、予定されていた日本向け団体旅行はキャンセルが相次いだ。これは参加者が自発的にキャンセルしたものもあれば、一方的に「見えない手」によって参加する予定だったツアーがキャンセルされたという例もあったようだ」、なるほど。
・『「日本旅行が人気だとあおっている」「誤解を誘導している」 環球時報や北京日報が日本メディアを名指しで批判  だが、この「事実」が、中国当局関係者の神経を刺激したようだ。 10月3日、中国共産党中央委員会機関紙「人民日報」傘下のタブロイド紙「環球時報」に、「連休における中国人観光客の人気旅行先が日本だと、日本メディアがあおり立てている」「核汚染水の排出に対する中国の態度を引き合いに、あえて中国人が『忘れっぽい』などと誤解を誘導している」と日本メディアを名指しで批判する、政府系シンクタンク関係者執筆の記事が掲載された。 これを受けた形で、やはり中国政府直轄のメディア「北京日報」でも、日本メディアの中国人観光客報道を批判する記事が流れた。国慶節の日本旅行人気に対抗して「プチ反日キャンペーン」ということだろうか。だが、そこに「日本メディアが2000万人の中国人が日本にやってくると伝えている」という記述があり、それを読んで筆者もさすがにびっくりした。 国慶節期間中に2000万人がやってくる?2000万人といえば、日本の総人口の約6分の1に当たる数だ。また、2019年に過去最高となった訪日観光客総数が3188万人であり、わずか1週間ちょっとの国慶節休み中にその3分の2が中国から押し寄せてくるなんて、ポストコロナのリベンジだとしてもさすがに多すぎる。もしそうなれば、日本の観光業はウハウハどころかパンクしてしまうはずである。 いったいどこの日本メディアがそんなむちゃくちゃな試算をしたのだ?と調べてみたのだが、「北京日報」は「日本メディア」と書いているだけで具体的なソースがない。ならばと、先の「環球時報」記事が名指ししたいくつかのメディアの過去報道を調べてもそんな数字は出てこない。 そうやってあれやこれやと「2000万人訪日」のソースを求めて調べているうちに、「2000万人なんてでっち上げもいいところだ。日本と中国の間の往復航空便はまだ完全に回復していないし、その状態でどうやったら2000万人も往来できるんだ?」と、やはり日本メディアを非難する中国語記事を発見した。確かにその通りで、1機約600席と仮定しても連休中に3万便以上が飛来する必要がある。たとえ連休を最大の15日間に延長して計算しても、さすがに無理な数字であろう』、「「連休における中国人観光客の人気旅行先が日本だと、日本メディアがあおり立てている」「核汚染水の排出に対する中国の態度を引き合いに、あえて中国人が『忘れっぽい』などと誤解を誘導している」と日本メディアを名指しで批判する、政府系シンクタンク関係者執筆の記事が掲載された・・・「2000万人訪日」のソースを求めて調べているうちに、「2000万人なんてでっち上げもいいところだ。日本と中国の間の往復航空便はまだ完全に回復していないし、その状態でどうやったら2000万人も往来できるんだ?」と、やはり日本メディアを非難する中国語記事を発見した。確かにその通りで、1機約600席と仮定しても連休中に3万便以上が飛来する必要がある。たとえ連休を最大の15日間に延長して計算しても、さすがに無理な数字であろう」、なるほど。
・『「2000万人の中国人が日本に」はもしかすると中国メディアの誤訳・読み違い?  ……と、その記事を読み続けていて、前掲のブルームバーグ日本語版記事のタイトル「中国の大型連休、2100万人強が飛行機を利用か――人気旅行先には東京も」(原文ママ)を中国語化するための機械翻訳にかけたらしい画面キャプチャが貼られているのを目にした。その翻訳の結果を日本語に直訳し直すと、「中国の大型連休、2100万人余りが飛行機を利用――人気旅行地東京」になっている。ブルームバーグ日本語版の「東京も」の「も」が抜けている……もしかして、根拠はこれだろうか? 確かにこの機械翻訳文なら、「2100万人余りが飛行機に乗って人気の東京へ」と読めないこともない(それでも間違っているが)。 だが、中国共産党北京市委員会の機関紙「北京日報」ともあろうメディアが、米国の通信社ブルームバーグの日本語タイトルを機械翻訳にかけた上で誤読して、「日本メディアがでっち上げ」と大騒ぎするとは……連休中で人手が限られていたのかもしれないが、中国の政府メディアの質もここまで落ちたのか、とさすがにあきれてしまった。 この反日キャンペーンはその後も、「環球時報」と「北京日報」の記事につられたようにぽろぽろとブログ記事が出ていたが、最終的には国慶節休暇終了とともに終息したらしかった』、「この反日キャンペーンはその後も、「環球時報」と「北京日報」の記事につられたようにぽろぽろとブログ記事が出ていたが、最終的には国慶節休暇終了とともに終息したらしかった」、なるほど。
・『SNSに書くと非難される! 訪日した中国人観光客たちの「見えない日本旅行」  こんなムードの最中に、実際に日本を旅していた中国人観光客たちはどんなふうに過ごしていたのだろう? それについて、山東省の中国共産党済南市委員会機関紙傘下の「経済観察報」が「見えない日本旅行」というタイトルで伝えていた。 記事によると、団体旅行キャンセル続出で日本行き航空券が安くなったことが、すでにビザを持っている個人旅行客の背中を押したらしい。9月に入ると、深センから日本行きの航空券は約2000元(約4万円)まで下落したというから、通常時のディスカウント航空券並みの価格である。 さらに京都などの人気観光地はさすがに人出が多かったものの、「以前はどこにいっても中国人観光客だらけだった」のが、今年は中国語よりも韓国語をよく耳にしたとも紹介されていた。また、日頃から訪日者の空港出迎えアルバイトをしている中国人留学生も、国慶節連休中は大忙しだったと証言している。 一方で、そんな観光客たちも国内のムードをおもんぱかり、「(広範な人の目に触れる)SNSのタイムラインには日本での見聞を流さないようにした」と述べている。実際に自分の旅ブログに東京の旅について書き込んだブロガーが、激しい非難コメントにさらされるケースも起きており、彼らはあえて「見えない旅」を楽しんだようである。 SNS全盛時代、自分の楽しい旅の様子をSNSにアップできないのはちょっと残念だが、コロナ以降、すでに多くの人たちが「流せない話題」にすっかり慣れきっている。あえて喧伝(けんでん)しないことで、静かで誰にも知られない旅をじっくり楽しむことができる。そんな「二重生活」あるいは「二枚舌生活」は、中国で生きるためのすべになってしまった。 反日キャンペーンの中で日本旅行を選んだ人たちの中には、リピーターも多くいたという。そんな彼らが次回は堂々とまた遊びに来られるよう、期待したいものである』、「実際に自分の旅ブログに東京の旅について書き込んだブロガーが、激しい非難コメントにさらされるケースも起きており、彼らはあえて「見えない旅」を楽しんだようである。 SNS全盛時代、自分の楽しい旅の様子をSNSにアップできないのはちょっと残念だが、コロナ以降、すでに多くの人たちが「流せない話題」にすっかり慣れきっている。あえて喧伝(けんでん)しないことで、静かで誰にも知られない旅をじっくり楽しむことができる。そんな「二重生活」あるいは「二枚舌生活」は、中国で生きるためのすべになってしまった。 反日キャンペーンの中で日本旅行を選んだ人たちの中には、リピーターも多くいたという。そんな彼らが次回は堂々とまた遊びに来られるよう、期待したいものである」、「流せない話題」があるとは「中国」とは全く変な国だ。付き合いも高度なテクニックが必要なようだ。 
タグ:学校では英語しか使っていないので、中国にいながら、中国語の家庭教師を付けていた。大学はアメリカへ行かせるとずっと言っていたので、「なぜ日本を選んだの?」と聞くと、彼女は「もうお金がないの。日本の大学の学費はアメリカの5分の1。物価も安いから」と返ってきた」、なるほど。 「中国から来た友人知人たちと一緒に過ごした今年の夏、筆者にはある印象が強く残った。それは「皆が買い物をしなくなって、財布のひもを固くしている」ということだ・・・上述のAさんが、娘を日本に留学させるというのは筆者にとっては意外だった。彼女は一家で既にアメリカの国籍を取得しており、子どもたち2人は上海で生まれたものの、幼稚園からインターナショナルスクールに通っている。 王 青氏による「中国人の爆買いは「もう死んだ」…日本への団体旅行解禁でも期待外れに終わる理由」 ダイヤモンド・オンライン 退けるきっかけにもなる。 「米ハワイ州でも“カマアイナレート”と呼ばれるローカルレートが導入され、有名観光スポットでハワイ州在住者は入場料や手続きが優遇されます。オーバーツーリズム対策としても効果的でしょう 日本も手遅れにならないようにしたいところだ」、なるほど。 「観光地に細かい注意書きをするのも一つの対策ですが、乱立して景観を損ねているケースが多く、日本文化のレベル低下に繋がります。それよりも急務はシステム構築。観光名所や施設を予約制にしたり、入場料を高めに設定することで観光地全体のクオリティが上がる。各地がコロナ禍の間に仕組みづくりをしておかなかったのは残念ですね・・・航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏も“ローカルレート”の導入を提唱する。ローカルレートとは、ホテルやレジャー施設の価格を現状より高く設定し、地元住民には割り引く、という考え方だ。質の低い観光客を 「土日や連休になると、上京者が大挙して押しかける。 「狭い歩道が満員電車状態になることも。食べ歩きによるゴミ捨てもひどいです」 そのため住民はやむなく車道を歩き、老人や車椅子の人は、出歩くこと自体をためらうようになってしまったという・・・日本の観光文化に精通するアレックス・カー氏は、世界の観光業界が「量より質」に移行しつつあるとし、次のように提案する。 「女性がそこら中で酔いつぶれている姿を見ます。路上でも民家の軒先でもゲロを吐き散らす姿は珍しくもなくなりました」、世も末だ。 日刊SPA!「「新大久保はゲロの街になりましたよ」日本人による観光公害に苦しむ新大久保住民たち」 (その15)(「新大久保はゲロの街になりましたよ」日本人による観光公害に苦しむ新大久保住民たち、中国人の爆買いは「もう死んだ」…日本への団体旅行解禁でも期待外れに終わる理由、中国人客が大型連休にこっそり日本観光 「二枚舌生活」「見えない旅」の理由とは?) インバウンド動向 「「連休における中国人観光客の人気旅行先が日本だと、日本メディアがあおり立てている」「核汚染水の排出に対する中国の態度を引き合いに、あえて中国人が『忘れっぽい』などと誤解を誘導している」と日本メディアを名指しで批判する、政府系シンクタンク関係者執筆の記事が掲載された・・・「2000万人訪日」のソースを求めて調べているうちに、「2000万人なんてでっち上げもいいところだ。日本と中国の間の往復航空便はまだ完全に回復していないし、その状態でどうやったら2000万人も往来できるんだ?」と、やはり日本メディアを非難 日本の水産物輸入を全面的に禁じるなどして「危険性」を強調した結果、予定されていた日本向け団体旅行はキャンセルが相次いだ。これは参加者が自発的にキャンセルしたものもあれば、一方的に「見えない手」によって参加する予定だったツアーがキャンセルされたという例もあったようだ」、なるほど。 「日本行きは今春から個人旅行が好調で、「今年7~8月の夏休みだけで、個人旅行を含め4000万円相当を売り上げた」と日本の中国人相手のツアー業者が言うほどの人気となっていた。8月の団体旅行の解禁で、秋の黄金週における期待はさらに高まっていた。 しかし、8月末に福島第一原発の処理水の海洋放出が始まると、中国政府は国内向けに激しい反対キャンペーンを展開。 旅先では安価な民泊が人気となった。その一方で、高級ホテルも人気だったが、その宿泊スタイルは連泊して観光地を回るのではなく、ホテル内の施設やレストランを利用し、SNS映えする写真を撮って楽しむ、そんな「体験的宿泊」が目立ったという」、手堅くなったようだ。 「ゴールデンウイーク)に国内旅行に出かけた人の数は延べ8.26億人と、コロナ前の2019年よりも4.1%増大した。 ただし、観光関連売り上げの伸びは2019年同期比でわずか1.5%増と、観光客の延べ人数が増えた割には大きな増収には至らなかった。 その原因の一つは、旅行といっても短距離や短期間だった人が多かったから・・・これまでのように懐具合に任せて大盤振る舞いを楽しむ旅ではなく、コストを抑えてつつましく旅を味わう人が増えたことが挙げられる。 ふるまいよしこ氏による「中国人客が大型連休にこっそり日本観光 「二枚舌生活」「見えない旅」の理由とは?」 「筆者は「団体旅行が解禁されても、中国人旅行客はそうそう増えない。“爆買い”も復活しない」と予想している・・・福島第一原発の処理水の海洋放出で、中国では今日本に対する批判が高まっている・・・日本への団体旅行者は急増どころか、激減する可能性さえある」、インバウンドでは「中国」には、残念ながら殆ど期待できないようだ。 「「今は若者の行動が非常に慎重になっている。今回のメンバーは優秀な人ばかりだが、それでも、いつクビになるのかと将来に対して不安を抱えている。大学を出ても仕事が見つけられないし、すでに働いている人達も就職や再就職の競争が熾烈・・・こんな状況だから、みんなお金を使うことを躊躇・・・しているんだ」、なるほど。 「娘さんは家賃20数万円の都内高層マンションで一人暮らし、さらに、親から毎月約40万円の仕送りをもらっていた・・・何も不自由のない、リッチな生活をしていた彼女だが、今秋からは一変する。安いアパートに引っ越し、生活費を大幅に削られることになった。なぜなら、父親が20年以上経営していたリフォーム会社が、中国の不動産産業の低迷を受けて倒産の手続きに入ったからだ。「お父さんのせいで、これからの生活水準が下がることになる、ごめんね」という親子の会話を横で聞いて、寂しい気持ちになった」、なるほど。 そんな「二重生活」あるいは「二枚舌生活」は、中国で生きるためのすべになってしまった。 反日キャンペーンの中で日本旅行を選んだ人たちの中には、リピーターも多くいたという。そんな彼らが次回は堂々とまた遊びに来られるよう、期待したいものである」、「流せない話題」があるとは「中国」とは全く変な国だ。付き合いも高度なテクニックが必要なようだ。 「実際に自分の旅ブログに東京の旅について書き込んだブロガーが、激しい非難コメントにさらされるケースも起きており、彼らはあえて「見えない旅」を楽しんだようである。 SNS全盛時代、自分の楽しい旅の様子をSNSにアップできないのはちょっと残念だが、コロナ以降、すでに多くの人たちが「流せない話題」にすっかり慣れきっている。あえて喧伝(けんでん)しないことで、静かで誰にも知られない旅をじっくり楽しむことができる。 「この反日キャンペーンはその後も、「環球時報」と「北京日報」の記事につられたようにぽろぽろとブログ記事が出ていたが、最終的には国慶節休暇終了とともに終息したらしかった」、なるほど。 する中国語記事を発見した。確かにその通りで、1機約600席と仮定しても連休中に3万便以上が飛来する必要がある。たとえ連休を最大の15日間に延長して計算しても、さすがに無理な数字であろう」、なるほど。
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マイナンバー制度(その7)(厚労省試算「保険証廃止で100億円浮く」は医療給付全体の0.023%…コスト削減効果ショボすぎ、大阪万博とマイナカード、「迷走」する2つの事業の共通点...「時代遅れ」な発想と決別せよ、マイナ保険証のすさまじい嫌われぶり…全国利用率が5%割れ目前 今後どこまで下がるのか、トラブル続出のマイナ保険証…「それでも」使ったほうが医療費はお得になる!) [経済政策]

マイナンバー制度については、本年8月28日に取上げた。今日は、(その7)(厚労省試算「保険証廃止で100億円浮く」は医療給付全体の0.023%…コスト削減効果ショボすぎ、大阪万博とマイナカード、「迷走」する2つの事業の共通点...「時代遅れ」な発想と決別せよ、マイナ保険証のすさまじい嫌われぶり…全国利用率が5%割れ目前 今後どこまで下がるのか、トラブル続出のマイナ保険証…「それでも」使ったほうが医療費はお得になる!)である。

先ずは、8月29日付け日刊ゲンダイ「厚労省試算「保険証廃止で100億円浮く」は医療給付全体の0.023%…コスト削減効果ショボすぎ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/328194
・『「メリットが乏しい」──。来秋に予定されている現行の保険証の廃止について、厚労省が出したコスト削減試算に医療関係者から「物言い」がついている。 厚労省は保険証廃止に伴うコスト削減について、①マイナ保険証の利用登録率が現状より進む場合と、②利用登録率が現状のままの場合の2パターンに分けて試算。利用登録率が65~70%に達するとした①では削減額が100億~108億円、利用登録率が現状の52%のままとした②では同76億~82億円──とはじき出した。24日の社会保障審議会医療保険部会で示した。 一見すると、保険証廃止によるコスト削減のメリットが大きいように見えるが、実はそうでもない。全国保険医団体連合会(保団連)は25日、厚労省の試算について検証。次のように指摘している。 〈2021年度概算医療費は44兆2000億円となる。資格確認書等を発行・交付した場合の厚労省試算に基づく削減額(約100億円)は、医療給付全体のわずか0.023%に過ぎない〉 岸田首相は今月4日の総理会見で、マイナ保険証を普及させるメリットについて「従来の健康保険証に比べ、発行コストあるいは保険者の事務負担は減少する。これは当然のことだと思っています」と胸を張っていたが、医療費全体からしてみればコスト減は極めて小さいのだ。さらに保団連は、厚労省が推計している現行の保険証発行にかかるコスト235億円を引き合いに出し、〈医療給付全体だとわずか0.053%に過ぎない〉と指摘。〈健康保険証の発行・交付は万一のケガや病気の際にもいつでもどこでも医療が受けられる大前提となる経費であり、保険証廃止で経費削減になったとしても医療給付が滞る事態を招くことは本末転倒である〉と喝破している』、「2021年度概算医療費は44兆2000億円となる。資格確認書等を発行・交付した場合の厚労省試算に基づく削減額(約100億円)は、医療給付全体のわずか0.023%に過ぎない」、「健康保険証の発行・交付は万一のケガや病気の際にもいつでもどこでも医療が受けられる大前提となる経費であり、保険証廃止で経費削減になったとしても医療給付が滞る事態を招くことは本末転倒である」、その通りだ。
・『国民皆保険制度が揺らぐ事態  保団連の竹田智雄副会長(竹田クリニック院長)がこう言う。 「極めて粗い試算とのことですが、それにしても、保険証廃止によるコスト減は微々たるものです。さらに言えば、マイナ保険証を持たない人に交付される資格確認書について、保険者側が被るシステム管理や人手などのコスト増は考慮されていません。そもそも、国民皆保険制度において、誰もが安心して保険証1枚で保険診療を受けられる環境を維持することは発行コストも含めて必要経費です。コストが減ればいいというものではないし、マイナ保険証への移行に伴う無保険者の続出やひも付けの誤りなどの懸念といったデメリットの方が大きい。国民皆保険制度が揺らぐ事態です。やはり、保険証廃止は撤回してほしい」) 「せめて紙の保険証と併用するべき」 政府は保険証廃止の唯一のメリットを「コスト減」とうたってきたが、どう考えても削減効果は極めて乏しい。皆保険制度を危機にさらしてまで推し進めるべきではないことは明らかだ。 「マイナ保険証に移行させたいのであれば、せめて紙の保険証と併用するべきです。併用を認めたうえで、マイナ保険証を使うメリットが浸透して利用者が増えてから紙の保険証廃止を検討するのが政策的な筋道でしょう。ひも付け誤りなどのミスを防ぐのは容易ではないからこそ、誤っても大丈夫なシステムを構築した後にマイナ保険証への移行を進めるべきです。マイナ保険証が国民にとって本当にいいものなら、紙の保険証を廃止せずとも、おのずから普及していくはずです」(竹田智雄氏) 使いたい人だけがマイナ保険証を使えるようにすればいいだけの話である。スケジュールありきの保険証廃止が生む混乱は、ムダ以外の何ものでもない』、「マイナ保険証を持たない人に交付される資格確認書について、保険者側が被るシステム管理や人手などのコスト増は考慮されていません。そもそも、国民皆保険制度において、誰もが安心して保険証1枚で保険診療を受けられる環境を維持することは発行コストも含めて必要経費です。コストが減ればいいというものではないし、マイナ保険証への移行に伴う無保険者の続出やひも付けの誤りなどの懸念といったデメリットの方が大きい。国民皆保険制度が揺らぐ事態です。やはり、保険証廃止は撤回してほしい」、「「マイナ保険証に移行させたいのであれば、せめて紙の保険証と併用するべきです。併用を認めたうえで、マイナ保険証を使うメリットが浸透して利用者が増えてから紙の保険証廃止を検討するのが政策的な筋道でしょう。ひも付け誤りなどのミスを防ぐのは容易ではないからこそ、誤っても大丈夫なシステムを構築した後にマイナ保険証への移行を進めるべきです。マイナ保険証が国民にとって本当にいいものなら、紙の保険証を廃止せずとも、おのずから普及していくはずです」。「国民皆保険制度において、誰もが安心して保険証1枚で保険診療を受けられる環境を維持することは発行コストも含めて必要経費です。コストが減ればいいというものではないし、マイナ保険証への移行に伴う無保険者の続出やひも付けの誤りなどの懸念といったデメリットの方が大きい。国民皆保険制度が揺らぐ事態です。やはり、保険証廃止は撤回してほしい」、その通りだ。

次に、8月30日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「大阪万博とマイナカード、「迷走」する2つの事業の共通点...「時代遅れ」な発想と決別せよ」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2023/08/post-248_1.php
・『<パビリオン建設が遅れる大阪・関西万博と、保険証との強引な統合に批判が集まるマイナカードには、共通する問題点が> パビリオン建設の大幅な遅れによって大阪万博の開催が危ぶまれている。一方、政府のマイナンバー制度は保険証との一体化をめぐって迷走を続けており着地点が見えない。一見すると無関係な大阪万博とマイナカードの問題に共通しているのは、ハコモノ行政という時代遅れの発想である。 大阪万博は2025年春の開催を目指して準備が進められているが、万博の華と呼ばれ、イベントの目玉となる海外パビリオンの建設が進んでいない。海外パビリオンのうち建設事業者が決定したのは6件しかなく、8月14日時点で建設申請が出されたのは2件のみである。 共同館方式など他のパビリオン建設は進んでいるものの、海外勢による独自パビリオンがなければ万博はもはや意味をなさず、一部からはスケジュールの延期を促す声すら上がっている状況だ。 これはプロジェクト管理という方法論の問題だが、大阪万博については当初から開催そのものの意義を問う声も上がっていた。近年、グローバルな企業社会の在り方が大きく変容しており、巨大な展示会を開催し、ハコモノを通じて人やお金を集める手法は完全に時代遅れとなっている。 以前は民間にもたくさんの大型国際展示会があったが、多くが廃止や規模の縮小を余儀なくされており、民間経済においてはもはやメジャーなスタイルではなくなった。今回の万博も、開催について日本と争ったのがロシアとアゼルバイジャンだったことを考えれば、万博の立ち位置がよく理解できるだろう』、「近年、グローバルな企業社会の在り方が大きく変容しており、巨大な展示会を開催し、ハコモノを通じて人やお金を集める手法は完全に時代遅れとなっている。 以前は民間にもたくさんの大型国際展示会があったが、多くが廃止や規模の縮小を余儀なくされており、民間経済においてはもはやメジャーなスタイルではなくなった。今回の万博も、開催について日本と争ったのがロシアとアゼルバイジャンだったことを考えれば、万博の立ち位置がよく理解できるだろう」、「開催について日本と争ったのがロシアとアゼルバイジャンだった」、というのは意味深だ。
・『昭和を彷彿とさせる「ハコモノ行政」の象徴  つまり万博は昭和を彷彿とさせる「ハコモノ行政」の象徴ということになるわけだが、この話は、政治的に大問題となっているマイナンバー制度にも当てはまる。 マイナンバー制度については、政府が保険証との統合を強引に進めたことから批判が殺到している。十分な準備を行わないままシステムの連携を実施したこともあり、あちこちで深刻なトラブルが発生している。 一部からはスケジュールの見直しや制度の抜本的な見直しを求める声が出ているが、政府や推進論者はマイナカードをやめてしまうと「日本のデジタル化が遅れる」として強く反発している』、「万博は昭和を彷彿とさせる「ハコモノ行政」の象徴」、はいいとしても、「マイナンバー制度」にも当てはまるとはどういうことだろう。
・『実際には「カード」は必須ではない  しかしながら、カードがないと日本のデジタル化が遅れるというのは事実ではなく、むしろその逆である。全国民には既にマイナンバーが振られており、システム連携さえしっかりすれば制度はすぐにスタートできる。本人確認の方法はさまざまなので、カードがなくても何の問題もなくシステムの運用が可能だ。 実際、韓国は日本をはるかに上回るマイナンバー制度を整えているが、韓国人はカードというものは保有していない。自分の名前や住所など必要な情報を窓口で伝え、本人であると確認されれば病院でも区役所でも手続きが自動的に進む。 おそらくだが、制度を設計した日本政府内部の担当者やマイナカード導入を強く主張している論者は、カードという物理的なモノが存在しないと本人確認ができないと考えている可能性が高い。 ハード(ハコモノ)という物理的なものにとらわれ、その上位に来るソフトウエアに思考が及ばないという点では、万博とマイナカードには共通のパターンが見られる。こうしたハコモノ行政の発想から脱却できなければ日本経済の復活は難しいだろう』、「おそらくだが、制度を設計した日本政府内部の担当者やマイナカード導入を強く主張している論者は、カードという物理的なモノが存在しないと本人確認ができないと考えている可能性が高い。ハード(ハコモノ)という物理的なものにとらわれ、その上位に来るソフトウエアに思考が及ばないという点では、万博とマイナカードには共通のパターンが見られる。こうしたハコモノ行政の発想から脱却できなければ日本経済の復活は難しいだろう」、「ハコモノ行政」と、「マイナンバー制度」のつながりがようやく理解できた。 

第三に、9月12日付け日刊ゲンダイ「マイナ保険証のすさまじい嫌われぶり…全国利用率が5%割れ目前、今後どこまで下がるのか」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/328924
・『これほど嫌われるカードはいまだかつてあったのだろうか──。相次ぐトラブルで不信や不安が広がるマイナ保険証。医療機関や薬局でほとんど利用されていない実態が判明した。 マイナカード保有者がマイナ保険証の利用登録を申し込めば、7500円分のマイナポイントがもらえる。その付与期限が今月末に迫り、利用登録件数は直近1カ月で約120万件増えた。 ところが、マイナ保険証の利用率はジリ貧だ。厚労省の発表データによると、全国の利用率はオンライン資格確認が義務化された4月に3月の2.3%から6.3%へと跳ね上がった後、5月6.0%、6月5.6%、7月5.0%と3カ月連続で下落している。 いったん、マイナ保険証での受け付けを始めてみたものの、あまりに使い勝手が悪く、利用を避ける医療機関が続出しているということだ』、「全国の利用率は・・・4月に3月の2.3%から6.3%へと跳ね上がった後、5月6.0%、6月5.6%、7月5.0%と3カ月連続で下落」、ここまで低迷が続いているとは問題だ。
・『オンライン資格確認「業務が増えた」92%  埼玉県保険医協会が8月1日から31日にかけて開業医会員に調査(回答292件)を行ったところ、マイナ保険証により受け付け業務が増えたのはナント92%に上った。 〈とにかく手間がかかる〉〈エラー時とてもたいへん。レセプト会社に電話がつながらない〉〈紙カルテに手書きで保険証情報をうつすようになり業務量が増えた〉など切実な声が寄せられた。 「健康保険証を存続すべき」と回答した開業医は、5月調査の85%から96%へと増え、100%に迫っている。埼玉県保険医協会の担当者が言う。 「6月以降、マイナ保険証を巡るトラブルが次々と発覚し、連日、報じられました。5月調査より、一気に医療機関のマイナ離れが進んだ印象です。利用率は支持率のようなもの。利用率5%割れが目前でも、来年秋の保険証廃止を見直さず、マイナ保険証を推進するつもりなのでしょうか」 この先、利用率はさらに下落する可能性もある。 「ポイント付与期間が終われば、マイナ保険証の利用登録は伸びなくなるでしょう。それどころか、今後、利用登録の解除が可能になるため、利用登録数はむしろ減るのではないか。利用率が4%、3%へと低下してもおかしくありません」(医療関係者)』、「埼玉県保険医協会が8月1日から31日にかけて開業医会員に調査(回答292件)を行ったところ、マイナ保険証により受け付け業務が増えたのはナント92%に上った」、「「ポイント付与期間が終われば、マイナ保険証の利用登録は伸びなくなるでしょう。それどころか、今後、利用登録の解除が可能になるため、利用登録数はむしろ減るのではないか。利用率が4%、3%へと低下してもおかしくありません」」、なるほど。
・『厚労省も危機感  7日の立憲民主党のヒアリングで厚労省の担当者は、利用率の低下に危機感を示しつつも、来年秋までの利用率の目標は「設定していない」と答えた。 内閣支持率が5%なら、首相は退陣を余儀なくされるはずだ。利用率5%割れでも、マイナ保険証は居座るつもりなのか』、「内閣支持率が5%なら、首相は退陣を余儀なくされるはずだ。利用率5%割れでも、マイナ保険証は居座るつもりなのか」、どうするのでろう。

第四に、9月16ダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの早川幸子氏による「トラブル続出のマイナ保険証…「それでも」使ったほうが医療費はお得になる!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/329181
・『度重なるトラブルが報道されているマイナンバーカードと、それを保険証として使う「マイナ保険証」。既存の保険証が来年廃止となることもあり、政治的な混乱も含み反発を招いているが、実は「それでも」マイナ保険証を使うべき理由がある。連載『医療費の裏ワザと落とし穴』の第266回では、非難ごうごうのマイナ保険証を使うメリットと、万一トラブルになったときにも慌てない対処法を取り上げる』、興味深そうだ。
・『医療費を考えるとやはりマイナ保険証を使うほうがおトクになる理由  マイナ保険証に関する数々のトラブルが報告されている。 これまでに報告されているトラブル内容は、カードや読み取り機械の不具合で資格確認ができなかったり、自己負担割合が間違っていたりしたというものだ。また、別の人の情報がひも付けされていたというケースもあった。 トラブルに見舞われた人のなかには、その場では公的な医療保険(健康保険)が適用してもらえず、いったん医療費の全額(10割)を請求されたという人もいるようだ。 こうした話を見聞きすると、「使っても大丈夫なのだろうか?」とマイナ保険証に不信感を抱く人が出てくるのも当然だろう。とりあえず登録はしたものの、利用するのをちゅうちょしている人もいるのではないだろうか。 だが、少しでも節約したいなら、健康保険証ではなくマイナ保険証を使ったほうが医療費はお得になる。また、トラブルが明らかになったことで、マイナ保険証で資格確認ができなかった場合でも、健康保険の適用が受けられるようにする対応策も講じられてきている。 そこで、今回はトラブルにあったときの注意点とともに、マイナ保険証をお得に使うための方法を考えてみたい。 +基準を満たした病院では、健康保険証を利用するよりも、初診時は40円、再診時は20円安くなる +マイナ保険証カードリーダーの画面で「薬剤情報・特定健診情報」についての質問に、「同意する」と答える必要がある +不具合で資格確認ができなかった場合は、「被保険者資格申立書」に記入して、医療機関の窓口に提出すればOK。スマホのマイナポータルサイトの資格情報画面や健康保険証での確認も可能)』、「少しでも節約したいなら、健康保険証ではなくマイナ保険証を使ったほうが医療費はお得になる。また、トラブルが明らかになったことで、マイナ保険証で資格確認ができなかった場合でも、健康保険の適用が受けられるようにする対応策も講じられてきている」、 「そこで、今回はトラブルにあったときの注意点とともに、マイナ保険証をお得に使うための方法を考えてみたい」、なるほど。
・『マイナ保険証の利用登録増加ともに明らかになったトラブルの数々  マイナ保険証は、マイナンバーカードの個人認証機能を使って、加入先の健康保険組合や自己負担割合などの資格情報を確認するというものだ。 コロナ禍では、病院や診療所などの医療機関と保健所をつなぐネットワークの混乱ぶりが露呈したが、その原因のひとつが医療分野のICT化の立ち遅れだ。そのため、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)によって業務効率を引き上げ、安心・安全で質の高い医療を提供していくために、2021年10月から本格的にマイナ保険証が導入されることになった。 ただし、当時はまだ、マイナンバーカードを持っている人は人口の半分以下で、マイナ保険証の登録率も低迷していた。 デジタル庁の「マイナンバーカードの普及に関するダッシュボード」のデータテーブル(2023年9月8日更新)によると、2022年4月3日時点でのマイナンバーカードの累計交付枚数は約5489万枚で、人口に対する交付率は約43.3%。このうち、マイナ保険証の利用登録を行った人は約811万人で、カード取得者の14.8%しか登録を行っていなかった。 そのため、2022年4月にマイナ保険証で行われた健康保険の資格確認件数は、約19万件しかなかった(厚生労働省保険局「マイナンバーカードと健康保険証の一体化について」)。 だが、その後、マイナポイントの付与など、カード普及のための国を挙げたキャンペーンによって、マイナンバーカードの取得や健康保険証としての利用登録をする人が急増。2023年7月2日時点の累計交付枚数は約9309万枚(人口の約73.9%)で、6470万人(カード取得者の69.5%)がマイナ保険証を登録するに至っている。 カードの普及に伴い、マイナ保険証による健康保険の資格確認件数も781万件(2023年7月)まで増加したが、同時に報告されるようになったのが冒頭のようなトラブルだ。 マイナンバーカードを健康保険証として利用するための登録をしたときに、誤って他人の情報がひも付けされ、医療機関でマイナ保険証を使おうと思っても、資格情報の確認ができない事例が報告されるようになる。国の「マイナンバー情報総点検本部」の会議資料によると、マイナ保険証が本格導入された2021年10月から、2023年7月末までに判明した誤登録件数は8441件で、そのうち15件は他人に情報を閲覧された跡が残っていたという。 このほかに、全国保険医団体連合会(保団連)の「マイナ保険証による医療現場のトラブル調査・最終集計(6月16日集計)」によると、調査に回答した65%の医療機関が何らかのトラブルを経験している。 たとえば、カードを差し込んでも「無効・該当資格なし」とカードリーダーに表示されたり、マイナンバーカードやカードリーダーの不具合など、何らかの理由で情報を読み取ることができなかったりして、マイナ保険証で資格情報の確認ができないというトラブルだ。 資格確認ができないため、無保険扱いとなり、いったん医療費の全額(10割)を請求された人もいるようだ。70歳以上の人は、間違った自己負担割合が登録されていたケースもあったという。) 機械の操作方法が分からなかったり、本人確認のための顔認証ができなかったりする患者への対応で、事務の負担が増えている病院や診療所もある。国は、2024年秋をめどに、従来型の健康保険証を廃止することを予定しているが、医療現場からは存続を求める声も上がっている。 こうしたトラブルが起こることを想定せず、事前策を考えていなかった政府には猛省が求められる。だが、マイナ保険証を利用した人すべてがトラブルになっているわけではない。問題なく資格確認ができて、通常通りの自己負担で、必要な医療を受けられている人も多い。 なにより、健康保険証で受診するより、マイナ保険証を利用したほうが、医療費は安くなるのだから、使える人が使わないのはもったいない』、「トラブルが起こることを想定せず、事前策を考えていなかった政府には猛省が求められる」、「健康保険証で受診するより、マイナ保険証を利用したほうが、医療費は安くなるのだから、使える人が使わないのはもったいない」、なるほど。
・『マイナ保険証のほうが健康保険証より 初診時は40円、再診時は20円安くなる  医療分野のデジタル化を推進するために、現在、オンラインで資格情報の確認や医療費の請求ができる体制を整えた医療機関に対しては、通常よりも高い診療報酬が支払われる措置が取られている。 その報酬が、「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」と呼ばれるもので、2023年4月~12月までは、患者が支払う医療費にも次のような影響が出る。 その病気で初めて医療機関を受診したときの初診料は、マイナ保険証の場合は20円(3割負担で6円)、健康保険証の場合は60円(3割負担で18円)。再診時は、マイナ保険証を利用すると上乗せの加算はないが、健康保険証で受診した場合は20円(3割負担で6円)がプラスされる(加算されるのは、いずれも月1回)。 つまり、マイナ保険証を利用したほうが、健康保険証を利用するよりも、初診時は40円(3割負担で12円)、再診時は20円(3割負担で6円)安くなるというわけだ。 この加算が付くのは、次の3つの施設基準を満たしている医療機関だ。 (1)オンライン請求を行っている、または2023年12月31日までに、オンライン請求を開始することを国に届け出ている (2)マイナ保険証のカードリーダー設置などオンライン資格確認を行う体制を整えている (3)オンライン資格確認ができることを、院内の見やすい場所(受付など)やホームページ等に掲示している この施設基準を満たしておらず、マイナ保険証による資格確認をできる体制が整っていない医療機関は、そもそも加算が付かない。実のところ、そうした医療機関を利用するのが、医療費は一番安い。だが、厚生労働省の「オンライン資格確認の都道府県別導入状況について」によると、2023年9月3日現在、病院の93.6%、診療所の81.5%が運用を開始している。 ほとんどの医療機関が3つの施設基準を満たしているため、従来の健康保険証を使うと医療費は高くなるケースのほうが多くなる。少しでも医療費を節約したいなら、マイナ保険証を利用したほうがお得になるのだ。 ただし、注意しなければならないのは、単にマイナ保険証で資格確認をしただけでは医療費は安くならないという点だ』、「ほとんどの医療機関が3つの施設基準を満たしているため、従来の健康保険証を使うと医療費は高くなるケースのほうが多くなる。少しでも医療費を節約したいなら、マイナ保険証を利用したほうがお得になるのだ。、なるほど。
・『マイナ保険証で資格確認ができないときは「被保険者資格申立書」で対応できる  医療費が安くなるのは、マイナ保険証で資格確認した上で、他の医療機関の紹介状を持参するか、診療情報提供に同意した場合だ。 診療情報提供への同意は、マイナ保険証で資格確認をするときに、カードリーダーの画面に出てくる「薬剤情報・特定健診情報」についての質問に、「同意する」と答えることで完了する。医療費を安くしたい人は覚えておこう。 マイナンバーカードの保有や、マイナ保険証の登録は強制ではない。持つかどうかは、それぞれの人が自由に決めればいいことだ。 政府は、2024年秋をめどに、従来型の健康保険証を廃止する方針は変更しておらず、カードを保有していない人や、マイナ保険証の利用登録をしていない人に対しては、健康保険証に代わるものとして「資格確認書」が交付されることになっている。 当初、資格確認書は、本人の申請によって交付することになっていた。だが、マイナンバーカードの問題点を総点検するなかで、本人からの申請がなくても、マイナ保険証の未登録者には自動交付することになった。有効期間は5年以内で、それぞれの健康保険組合が発行する。 マイナ保険証の利用登録をしていなくても、健康保険の適用は受けられるし、医療機関の窓口では年齢や所得に応じて1~3割を負担すればよいというのは変わらない。 だが、前述のように、医療費の面ではマイナ保険証を使ったほうがお得になるのは間違いない。また、トラブルに遭った場合も、通常通りの自己負担額(年齢や所得に応じて1~3割)で、医療を受けられるようにする対応策も取られるようになってきている。 きちんと健康保険に加入し、マイナ保険証の利用登録をしているにもかかわらず、何らかの不具合で資格確認ができなかった場合は、「被保険者資格申立書」に、健康保険組合の名称、自己負担割合などを記入して、医療機関の窓口に提出すれば、通常通りに保険診療を受けることができる。 とはいえ、マイナ保険証のトラブルに遭ったときに、いちいち申立書を記入するのは少々面倒だ。申立書のほかに、(1)スマートフォンで、マイナポータルサイトの資格情報画面を確認する、(2)健康保険証で確認する、という2つの方法でも、資格確認はできる。 医療費を節約したいなら、原則的にはマイナ保険証で受診し、万一のトラブルに備えて、当面の間は健康保険証も持参するというのがよさそうだ』、「医療費を節約したいなら、原則的にはマイナ保険証で受診し、万一のトラブルに備えて、当面の間は健康保険証も持参するというのがよさそうだ」、なるほど。
・『健康保険も施行当初はトラブルだらけ 廃止を求めるストライキも勃発した  新しいシステムが始まるときは、思いもかけないトラブルが起こるものだ。今でこそ、日本の医療制度の根幹となっている健康保険も、順風満帆の船出だったわけではない。 1927(昭和2)年1月1日に、健康保険法が施行された約2カ月後。健康保険料の納付を巡り、想定外の出来事が起こっていた。健康保険料を納めるために、1000人近い健康保険の経理担当者が日本銀行に押し寄せ、銀行業務に支障をきたしたことを、『東京朝日新聞』(1927年3月5日付)が報じている。その様子は、「日銀前の広庭はまるで浅草仲見世の様な騒ぎ」だったそうだ。 健康保険法施行後の各界の評判は、不平不満だらけで、全国各地の労働組合は「健康保険法反対ストライキ」を起こした。保険料負担の方法を巡り、労使はかみ合わない主張を繰り返し、制度の廃止論まで出る始末だった。 だが、健康保険は小幅な改革を繰り返しながら、100年たった今では、この国で暮らす人々にとって、なくてはならない制度に成長している。もしも、施行当初に「トラブルがあるから、やめてしまえ」と健康保険を廃止していたら、だれもが少ない負担で必要な医療を受けられる今の日本は存在せず、さらに大きな格差社会となっていたはずだ。 マイナ保険証による資格確認は、始まったばかりのシステムだ。医療分野でのデジタル化が進んで、診療情報を一元的に管理できるようになれば、服用する医薬品の重複や、無駄な検査をなくすことができて、患者の負担は、身体的にも、経済的にも抑えられるようになるだろう。 マイナ保険証は、膨張し続ける国民医療費を抑え、質の高い医療を提供するためのシステムに成長する可能性を秘めている。せっかく、莫大な予算を投入して始めた制度だ。一部の人から、マイナ保険証の廃止論も出ているが、慌てて答えを出さず、もう少し、制度の行方を見守ってもいいのではないだろうか』、「健康保険法施行後の各界の評判は、不平不満だらけで、全国各地の労働組合は「健康保険法反対ストライキ」を起こした。保険料負担の方法を巡り、労使はかみ合わない主張を繰り返し、制度の廃止論まで出る始末だった。 だが、健康保険は小幅な改革を繰り返しながら、100年たった今では、この国で暮らす人々にとって、なくてはならない制度に成長している。もしも、施行当初に「トラブルがあるから、やめてしまえ」と健康保険を廃止していたら、だれもが少ない負担で必要な医療を受けられる今の日本は存在せず、さらに大きな格差社会となっていたはずだ」、現在の「健康保険法施行後」も「制度の廃止論まで出る始末だった」、というのは初めて知った。「せっかく、莫大な予算を投入して始めた制度だ。一部の人から、マイナ保険証の廃止論も出ているが、慌てて答えを出さず、もう少し、制度の行方を見守ってもいいのではないだろうか」、同感である。
タグ:マイナンバー制度 (その7)(厚労省試算「保険証廃止で100億円浮く」は医療給付全体の0.023%…コスト削減効果ショボすぎ、大阪万博とマイナカード、「迷走」する2つの事業の共通点...「時代遅れ」な発想と決別せよ、マイナ保険証のすさまじい嫌われぶり…全国利用率が5%割れ目前 今後どこまで下がるのか、トラブル続出のマイナ保険証…「それでも」使ったほうが医療費はお得になる!) 日刊ゲンダイ「厚労省試算「保険証廃止で100億円浮く」は医療給付全体の0.023%…コスト削減効果ショボすぎ」 「2021年度概算医療費は44兆2000億円となる。資格確認書等を発行・交付した場合の厚労省試算に基づく削減額(約100億円)は、医療給付全体のわずか0.023%に過ぎない」、「健康保険証の発行・交付は万一のケガや病気の際にもいつでもどこでも医療が受けられる大前提となる経費であり、保険証廃止で経費削減になったとしても医療給付が滞る事態を招くことは本末転倒である」、その通りだ。 「マイナ保険証を持たない人に交付される資格確認書について、保険者側が被るシステム管理や人手などのコスト増は考慮されていません。そもそも、国民皆保険制度において、誰もが安心して保険証1枚で保険診療を受けられる環境を維持することは発行コストも含めて必要経費です。コストが減ればいいというものではないし、マイナ保険証への移行に伴う無保険者の続出やひも付けの誤りなどの懸念といったデメリットの方が大きい。国民皆保険制度が揺らぐ事態です。 やはり、保険証廃止は撤回してほしい」、「「マイナ保険証に移行させたいのであれば、せめて紙の保険証と併用するべきです。併用を認めたうえで、マイナ保険証を使うメリットが浸透して利用者が増えてから紙の保険証廃止を検討するのが政策的な筋道でしょう。ひも付け誤りなどのミスを防ぐのは容易ではないからこそ、誤っても大丈夫なシステムを構築した後にマイナ保険証への移行を進めるべきです。マイナ保険証が国民にとって本当にいいものなら、紙の保険証を廃止せずとも、おのずから普及していくはずです」 「国民皆保険制度において、誰もが安心して保険証1枚で保険診療を受けられる環境を維持することは発行コストも含めて必要経費です。コストが減ればいいというものではないし、マイナ保険証への移行に伴う無保険者の続出やひも付けの誤りなどの懸念といったデメリットの方が大きい。国民皆保険制度が揺らぐ事態です。やはり、保険証廃止は撤回してほしい」、その通りだ。 Newsweek日本版 加谷珪一氏による「大阪万博とマイナカード、「迷走」する2つの事業の共通点...「時代遅れ」な発想と決別せよ」 「近年、グローバルな企業社会の在り方が大きく変容しており、巨大な展示会を開催し、ハコモノを通じて人やお金を集める手法は完全に時代遅れとなっている。 以前は民間にもたくさんの大型国際展示会があったが、多くが廃止や規模の縮小を余儀なくされており、民間経済においてはもはやメジャーなスタイルではなくなった。今回の万博も、開催について日本と争ったのがロシアとアゼルバイジャンだったことを考えれば、万博の立ち位置がよく理解できるだろう」、 「開催について日本と争ったのがロシアとアゼルバイジャンだった」、というのは意味深だ。 「万博は昭和を彷彿とさせる「ハコモノ行政」の象徴」、はいいとしても、「マイナンバー制度」にも当てはまるとはどういうことだろう。 「おそらくだが、制度を設計した日本政府内部の担当者やマイナカード導入を強く主張している論者は、カードという物理的なモノが存在しないと本人確認ができないと考えている可能性が高い。ハード(ハコモノ)という物理的なものにとらわれ、その上位に来るソフトウエアに思考が及ばないという点では、万博とマイナカードには共通のパターンが見られる。こうしたハコモノ行政の発想から脱却できなければ日本経済の復活は難しいだろう」、 「ハコモノ行政」と、「マイナンバー制度」のつながりがようやく理解できた。 日刊ゲンダイ「マイナ保険証のすさまじい嫌われぶり…全国利用率が5%割れ目前、今後どこまで下がるのか」 「全国の利用率は・・・4月に3月の2.3%から6.3%へと跳ね上がった後、5月6.0%、6月5.6%、7月5.0%と3カ月連続で下落」、ここまで低迷が続いているとは問題だ。 「埼玉県保険医協会が8月1日から31日にかけて開業医会員に調査(回答292件)を行ったところ、マイナ保険証により受け付け業務が増えたのはナント92%に上った」、「「ポイント付与期間が終われば、マイナ保険証の利用登録は伸びなくなるでしょう。それどころか、今後、利用登録の解除が可能になるため、利用登録数はむしろ減るのではないか。利用率が4%、3%へと低下してもおかしくありません」」、なるほど。 「内閣支持率が5%なら、首相は退陣を余儀なくされるはずだ。利用率5%割れでも、マイナ保険証は居座るつもりなのか」、どうするのでろう。 ダイヤモンド・オンライン 早川幸子氏による「トラブル続出のマイナ保険証…「それでも」使ったほうが医療費はお得になる!」 「少しでも節約したいなら、健康保険証ではなくマイナ保険証を使ったほうが医療費はお得になる。また、トラブルが明らかになったことで、マイナ保険証で資格確認ができなかった場合でも、健康保険の適用が受けられるようにする対応策も講じられてきている」、 「そこで、今回はトラブルにあったときの注意点とともに、マイナ保険証をお得に使うための方法を考えてみたい」、なるほど。 「トラブルが起こることを想定せず、事前策を考えていなかった政府には猛省が求められる」、「健康保険証で受診するより、マイナ保険証を利用したほうが、医療費は安くなるのだから、使える人が使わないのはもったいない」、なるほど。 「ほとんどの医療機関が3つの施設基準を満たしているため、従来の健康保険証を使うと医療費は高くなるケースのほうが多くなる。少しでも医療費を節約したいなら、マイナ保険証を利用したほうがお得になるのだ。、なるほど。 「医療費を節約したいなら、原則的にはマイナ保険証で受診し、万一のトラブルに備えて、当面の間は健康保険証も持参するというのがよさそうだ」、なるほど。 「健康保険法施行後の各界の評判は、不平不満だらけで、全国各地の労働組合は「健康保険法反対ストライキ」を起こした。保険料負担の方法を巡り、労使はかみ合わない主張を繰り返し、制度の廃止論まで出る始末だった。 だが、健康保険は小幅な改革を繰り返しながら、100年たった今では、この国で暮らす人々にとって、なくてはならない制度に成長している。 もしも、施行当初に「トラブルがあるから、やめてしまえ」と健康保険を廃止していたら、だれもが少ない負担で必要な医療を受けられる今の日本は存在せず、さらに大きな格差社会となっていたはずだ」、現在の「健康保険法施行後」も「制度の廃止論まで出る始末だった」、というのは初めて知った。「せっかく、莫大な予算を投入して始めた制度だ。一部の人から、マイナ保険証の廃止論も出ているが、慌てて答えを出さず、もう少し、制度の行方を見守ってもいいのではないだろうか」、同感である。
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統計問題(その3)(建設受注統計で国交省が不正 その実態と問題点 統計のプロ・肥後雅博東大教授に改善策を聞く、政府統計 電子集計進まず 基幹7割で50%未満 不正の温床 データ活用にも壁) [経済政策]

統計問題については、2019年3月3日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)(建設受注統計で国交省が不正 その実態と問題点 統計のプロ・肥後雅博東大教授に改善策を聞く、政府統計 電子集計進まず 基幹7割で50%未満 不正の温床 データ活用にも壁)である。なお、タイトルから「不正」は削除した。

先ずは、2021年12月29日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの黒崎 亜弓氏による「建設受注統計で国交省が不正、その実態と問題点 統計のプロ・肥後雅博東大教授に改善策を聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/479789
・『建設業の月々の受注状況を推計し、GDP(国内総生産)算出にも使われる「建設工事受注動態統計」で、国土交通省があきれるばかりの不正を行っていた。遅れて届いた調査票の数字を書き換えて合算し、2013年4月分?2021年3月分は未回答分を平均値で補完したものとの二重計上となっていたのだ。 まず気になるのはGDPへの影響だが、これはあまり大きくはなさそうだ。 建設受注統計の内訳は土木と建築がほぼ半々だが、土木の部分だけが、月々の出来高を推計する建設総合統計に使われ、それがGDPに反映される。土木のうち公共事業の部分は後から財政データで上書きされる。二重計上の影響が残っている民間土木は建設投資の1割程度で年間6兆~7兆円、GDP全体の1%程度だ』、「遅れて届いた調査票の数字を書き換えて合算し、2013年4月分?2021年3月分は未回答分を平均値で補完したものとの二重計上となっていたのだ」、「重計上の影響が残っている民間土木は建設投資の1割程度で年間6兆~7兆円、GDP全体の1%程度だ」、なるほど。
・『ユーザー軽視、何のための統計なのか  建設受注統計そのものの金額は二重計上でどのくらい増えていたのだろうか。 これはわからない。2019年分までは国交省は、都道府県に調査票の数字を消しゴムで消して書き換えさせていたといい、月ごとの数字が失われてしまっているからだ。調査票の元データが失われて復元推計ができない点は、3年前の「毎月勤労統計」(所管は厚生労働省)の問題よりも深刻といえる。 ただ、国交省が会計検査院の指摘を受けた後、自ら合算を行っていた2020年1月分?2021年3月分については、当月に入力した調査票データと、書き換え合算を行ったデータの2つがあり、他の条件をそろえて受注高を算出比較すれば、二重計上のインパクトがわかるはずだ。 2020年1月分?2021年3月分については、参考値との差額として「平均して1月あたり1.2兆円」という数字が国会答弁で出ているが、これは二重計上によって生じた数字ではない。二重計上のとりやめで生じたマイナスと同時に行われた推計方法の変更によるプラスとを合わせた数字だ。) 建設受注統計で国交省は、2021年4月分から二重計上をやめると同時に、調査先を選ぶ母集団となる「建設施工統計調査」で捕捉漏れをカバーする変更を行っている。2020年1月分?2021年3月分の参考値とは、この2つの変更を反映したものだ。金額は捕捉漏れカバーで増え、二重計上をやめたことで減る。これを差し引きすると1.2兆円のプラスというわけだ。 この母集団の捕捉漏れカバーは、カバレッジ(推計が網羅する範囲)を拡大して統計精度を上げるため、つまり、より実態を表す統計にするために行われたものと思われるが、国交省のホームページではきちんと説明がなされておらず、誤解を招いている。 「ユーザーには何が変わったのかわからない。統計は調査方法や推計方法を公開し、推計方法を変えたら『数字の見方に気をつけてください』とアナウンスするのが基本だ。国交省はユーザーを軽視している」。こう指摘するのは、日本銀行で統計畑を歩んだ肥後雅博・東京大学大学院教授だ。総務省の統計委員会担当室に出向していた3年前には、厚労省の毎月勤労統計における不正を明らかにした。 国交省はどう改善すべきなのか、不正続きの公的統計を立て直すにはどうすればいいか、肥後教授に聞いた(Qは聞き手の質問)』、「2019年分までは国交省は、都道府県に調査票の数字を消しゴムで消して書き換えさせていたといい、月ごとの数字が失われてしまっているからだ。調査票の元データが失われて復元推計ができない点は、3年前の「毎月勤労統計」・・・の問題よりも深刻といえる」、確かに信じ難いような酷い話だ。「統計は調査方法や推計方法を公開し、推計方法を変えたら『数字の見方に気をつけてください』とアナウンスするのが基本だ。国交省はユーザーを軽視している」、その通りだ。
・『回答してくれた大事なデータを生かせ  Q:国交省は、遅れて届く調査票をどう扱うべきだったのでしょうか。 肥後月次の作業に遅れて届いた前月分の数字は前月分として入力し、前月分の受注高を推計し直して改訂すべきだ。多くの統計は、締め切り時点で推計して速報を出し、1カ月ほど遅れて届いた分については確報段階で反映している。 Q:国交省は2021年4月分からは遅れて届いた調査票を合算せず、「年度報」のタイミングで反映させるとのことですが、それでは不十分なのですか。 肥後遅れて回答する人が多ければ、それでは統計精度が確保できない。建設受注統計はもともと回収率が60%台と低いのだから、遅れた数字を反映できるような公表体制を作るしかない。速報、確報、それに確々報と3段階で反映させ、あとは年度報で改訂するのが望ましいだろう。そのためにシステム改修を行い、作成・公表に必要な人員を確保する必要がある。 遅れても数字が届いたら、きちんと使うべきだ。遅れて出すのが悪いとよく言われるが、出さないよりは出してくれるほうがいい。未回答の欠測値をどれほど精緻なやり方で補完しても、回答者が提出する数字が一番正しい。出したのに数字を書き換えられたり、捨てられたりするのなら、誰も回答しなくなる。) Q:公的統計は回答が義務であることから、未回答者に罰金を科すべきという声もあります。 肥後法的には正しいかもしれないが、現実的ではない。 Q:日銀が作成する統計は回答義務がないのに回収率が高い。日銀短観も企業物価指数(確報)も回収率は90%台です。 肥後それは企業に回答してもらえるまで電話をかけ続けるからだ。短観の締め切り直前は、未回答企業に毎朝かけてお願いする。それが日銀では当たり前で、それを部下に徹底させるのが上司としての私の仕事だった。 金融政策を適切に判断するには、経済情勢を見極めなければならず、そのためには統計がきちんと作成されていなければならない。その認識が総裁から全員に共有されている』、「未回答の欠測値をどれほど精緻なやり方で補完しても、回答者が提出する数字が一番正しい。出したのに数字を書き換えられたり、捨てられたりするのなら、誰も回答しなくなる」、「未回答者に罰金を科すべきという声も」あるが、「法的には正しいかもしれないが、現実的ではない」、なるほど。
・『外部の有識者からの厳しい批判に応えた  Q:日銀の統計には定評がありますね。 肥後日銀が作成する企業物価指数や企業向けサービス価格指数だって、四半世紀前は問題が多かった。物価下落局面に差し掛かった1990年代、製品の品質向上による実質価格の低下や特売、リベートといった実勢を反映できていなかった。また、価格の捕捉が難しくカバーしていない品目もかなりの数に上っていた。 学者の先生方からは厳しい批判を受けた。物価指数の作成方法について説明したら、「こんな調査をやっているからダメなんだ」と言われ、私は恥ずかしかった。そこから必死に長い時間をかけて直してきた。 Q:日銀内部からも「政策判断が狂う」と非難されたのではないですか。 肥後問題があることを逆手にとって「改善が必要だ」と主張し、統計部署の人員と予算をなんとか確保した。それで今がある。 Q:いっそのこと、日銀が政府の統計作成を請け負えばいいのではと思ったりします。 肥後日銀に限らず、統計調査を担うリサーチ会社はいくつもあるが、統計作成をフルに民間委託にすれば、いま公的統計に費やしている費用よりもはるかに高くつくだろう。) Q:会計検査院の報告書によると、現在は都道府県の経費をのぞいて年間600億円程度です。 肥後その値段では民間ではとても作れない。きちんとした統計を作るにはお金がかかることを理解してほしい。今は安上がりである分、問題が多い。統計部署に限らないが、行政では人事ローテーションが短いうえに任期制職員も多く、専門的知識を組織のなかで継承することが難しくなっている。民間のほうが人材は充実しているから品質が上がる。 Q:民間委託とすることにも問題点はありますか。 肥後公的統計を民間にどこまで任せていいのかという問題はある。個別の契約で守秘義務を遵守するように民間業者を縛っているとはいえ、調査対象者は、企業や個人の情報が漏れるのではないかと心配になるだろう。 それに、統計作成を民間任せにすると、役所の中でどんな統計を、どのように作成するかという企画立案ができなくなる。調査対象者が回答できないような調査項目を作ったりする。役所が統計の作成にしっかり関与して、外注するのは末端の業務だけにしなければ、統計部署が空洞化してしまう』、「統計作成をフルに民間委託にすれば、いま公的統計に費やしている費用よりもはるかに高くつくだろう」、「統計作成を民間任せにすると、役所の中でどんな統計を、どのように作成するかという企画立案ができなくなる。調査対象者が回答できないような調査項目を作ったりする。役所が統計の作成にしっかり関与して、外注するのは末端の業務だけにしなければ、統計部署が空洞化してしまう」、その通りだ。
・『「不正」よりも「欠陥統計」が問題  Q:統計をめぐる体制の問題としては、3年前の毎月勤労統計問題を受けて、統計委員会が基幹統計を一斉点検していたのに、建設受注統計の不正は見過ごされていました。 肥後統計委員会にマンパワーが足りない。常勤の委員はおらず、事務局は委員会の運営で手一杯だ。点検対象とする統計を絞り、徹底的に調べるべきだと意見したのは私だけではなかったが、基幹統計を網羅することが優先された。56もの基幹統計を限られた期間で見るには、各省庁に統計ごとに調査票を記入させ、問題が見つかったと自己申告してきたものを取り上げるしかなかった。自己点検だった。 Q:どうすれば不正を見つけられるのでしょうか。 肥後チェック体制には3段階ある。現在の自己点検、相手の同意をもとにした点検、それに強制力を持った検査だ。自己点検では実効性がないことが今回わかった。 Q:今回、調査票の書き換えを発見したのは、検査権限を持つ会計検査院でした。 肥後強制力を持つ統計監督機関を設けるには、法体系を変えなければならない。不正があまりに多く、摘発が最優先であれば検討されるべきだろうが、強制力のある組織では統計精度の改善はできない。不正がそこまで多くなく、省庁と協力して統計精度を改善する必要があるのなら、統計委員会のようにフレンドリーな組織のほうがいい。) 私は、摘発を優先しなければならないほど不正が多いとは思っていない。むしろ、公的統計が抱える最大の問題は、各省庁の専門人材の不足による「欠陥統計」の作成だ。 検査は、現行の統計委員会に、一定の統計の知見を持つ実務部隊が10人いれば機能するはずだ。強制力がなくても、公表資料を丹念に読み込み、疑問点を担当部署に質問していけば、問題はあぶり出せる。毎月勤労統計でも、公表データで整合性のつかない点について厚労省に質問したら、全数調査のところ3分の1に抽出していたと告白した』、「公的統計が抱える最大の問題は、各省庁の専門人材の不足による「欠陥統計」の作成だ。 検査は、現行の統計委員会に、一定の統計の知見を持つ実務部隊が10人いれば機能するはずだ。強制力がなくても、公表資料を丹念に読み込み、疑問点を担当部署に質問していけば、問題はあぶり出せる。毎月勤労統計でも、公表データで整合性のつかない点について厚労省に質問したら、全数調査のところ3分の1に抽出していたと告白した」、なるほど。
・『3省合体「統計庁」で統計の専門人材育成を  Q:各省庁の専門人材不足に対しては、統計部署の一元化が必要と言われます。 肥後私が考えているのは、部分的な一元化だ。総務省統計局と統計行政部署、内閣府のGDPを作る部署、それに経済産業省の統計部署の3つが合体する。名付けるなら「統計庁」だろうか。統計委員会もそこに入る。統計庁は、GDP、産業連関表に加え、国勢調査、経済センサス、消費者物価指数、鉱工業指数など主要統計を作成する。 最大の目的は、統計人材を集め、育てることだ。3?4の局がある800~900人規模の組織であれば、統計を志す人を採用できる。内部で人事ローテーションができ、さまざまな統計を作るのでノウハウが蓄積する。 他の省庁から統計を集めるわけではない。各省庁の所管業務に密着した統計は、その省庁でなければ作れない。たとえば医療施設についての統計であれば、厚労省しか分類方法などわからない。雇用統計は労働行政と結びついているし、建設関連の統計は、国交省の許認可権や公共工事の発注と関わっている。 ただし、所管官庁では統計の専門人材が不足する。それを統計庁がサポート・監督することで補い、統計全体の質を確保する。統計庁にノウハウが蓄積されれば、他省庁の統計がどのように作られているのかもわかる。 Q:現実味はあるのでしょうか。 肥後省庁再編が相当困難な作業であることは承知している。統計庁が誕生したとしても、元の省庁から人員を交互に派遣するのでは形だけになる。 統計人材を育成するシステムを作らなければ、日本の公的統計はどんどん劣化して使い物にならなくなってしまう。今回の問題を機に、立て直しについて議論が行われることを期待している。これから10年間が正念場だ』、「総務省統計局と統計行政部署、内閣府のGDPを作る部署、それに経済産業省の統計部署の3つが合体する。名付けるなら「統計庁」だろうか。統計委員会もそこに入る。統計庁は、GDP、産業連関表に加え、国勢調査、経済センサス、消費者物価指数、鉱工業指数など主要統計を作成する。 最大の目的は、統計人材を集め、育てることだ。3?4の局がある800~900人規模の組織であれば、統計を志す人を採用できる。内部で人事ローテーションができ、さまざまな統計を作るのでノウハウが蓄積する」、「統計庁が誕生したとしても、元の省庁から人員を交互に派遣するのでは形だけになる。 統計人材を育成するシステムを作らなければ、日本の公的統計はどんどん劣化して使い物にならなくなってしまう。今回の問題を機に、立て直しについて議論が行われることを期待している。これから10年間が正念場だ」、その通りなのだろう。

次に、2021年12月29日付け日経新聞「政府統計、電子集計進まず 基幹7割で50%未満 不正の温床、データ活用にも壁」を紹介しよう。
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78873410Z21C21A2MM8000/
・『政府の基幹統計の7割にあたる34調査でオンライン集計が進んでいないことが分かった。アナログな紙の調査は非効率なだけでなく、書き換えなど統計不正・・・の温床にもなる。経済政策の基盤となるデータの収集・公開が不透明なままではデジタル社会の成長競争に取り残されかねない。 各省庁が2020年末時点で総務省に報告した内容を日本経済新聞が洗い出した。53の基幹統計のもとになる50調査を対象に調べた。 オンライン回答の比率が50%にも届かないのは34調査と、全体の7割を占めた。うち8調査は10%未満だった。1.3%の農業経営統計など農林水産省所管分が目立った。「高齢化が進んでパソコン操作に不慣れな人が多い」という。 今回、データの書き換えや二重計上が発覚した国土交通省の建設工事受注動態統計はオンライン比率が11%だった。導入から10年以上たっても事業者に浸透していない。担当者は「電子申請を強制すると調査票を出さない事業者が増える懸念があり、苦慮していた」と明かす。 役所ごとにシステムがバラバラで、入力の手順が煩雑なことも普及が進まない要因とみられる。中堅建設会社は「自社の受注管理システムのデータを国交省の様式にあわせて打ち替えるのは手間がかかる」と活用しない理由を説明する。 大和証券の岩下真理氏は「海外は企業側もデジタル化が進み、オンライン回答にも対応できる」と日本のデジタル化の遅れを指摘する。 公的統計をオープンデータとして国民が使いやすくする仕組みも整っていない。会計検査院は9月、政府のポータルサイトで検索やデータ抽出機能が使えない統計が8割に上ると指摘した。政府や企業がデータを知の源泉として駆使するデジタル社会の競争の土俵に日本は上がれていない。 米国や英国などの統計データは、第三者がコンピュータープログラムなどで自動収集しやすい様式で公開されているものが多い。日本の統計はファイル形式が不ぞろいだったり、人手の作業が必要だったり、使い勝手が悪い問題が残る。 一連の統計不正の背景として人的資源の不足も指摘される。基幹統計の3割にあたる16調査は集計・分析作業を担う職員が3人以下だった。建設受注統計は3人で、実質的には1人に都道府県経由の調査票回収から確認まで任せていた。省内では「慢性的な人手不足に陥っていた」との証言もある。 内閣官房によると国の本省の統計職員数は減少傾向が続いている。18年度は1470人で08年度比で1割弱減った。本来は様々な政策立案にかかわる重要な部門にもかかわらず適切な人員が確保されずに不正の温床になっていた可能性がある。 法政大の平田英明教授は「予算が減らされ、人手も足りずデジタル化は後回しになっているのが実情だ」と指摘する。各省の縦割りの弊害も踏まえ「デジタル庁が一元的に統計システムを整備すべきだ」と訴える。 デジタル化の遅れは統計に限らない。内閣府によると、行政機関が新たに作成・取得した行政文書のうち電子媒体で保有している割合は19年度で15%にすぎない。 国交省は今回、18年度以前の調査票を破棄しており、データの完全復元は難しい。国内総生産(GDP)への影響などの検証に支障をきたす。電子媒体で保管していればこうした事態を避けることができたはずだった』、「基幹統計の7割にあたる34調査でオンライン集計が進んでいない」、「オンライン回答の比率が50%にも届かないのは34調査と、全体の7割を占めた。うち8調査は10%未満だった」、「今回、データの書き換えや二重計上が発覚した国土交通省の建設工事受注動態統計はオンライン比率が11%だった。導入から10年以上たっても事業者に浸透していない。担当者は「電子申請を強制すると調査票を出さない事業者が増える懸念があり、苦慮していた」と明かす」、主管官庁がこれでは。「設工事受注動態統計」に問題があるのも当然だ。「行政機関が新たに作成・取得した行政文書のうち電子媒体で保有している割合は19年度で15%にすぎない。 国交省は今回、18年度以前の調査票を破棄しており、データの完全復元は難しい。国内総生産(GDP)への影響などの検証に支障をきたす。電子媒体で保管していればこうした事態を避けることができたはずだった」、保存体制もお粗末そのものだ。政府統計作成・活用について、抜本的な見直しが急務だ。
タグ:(その3)(建設受注統計で国交省が不正 その実態と問題点 統計のプロ・肥後雅博東大教授に改善策を聞く、政府統計 電子集計進まず 基幹7割で50%未満 不正の温床 データ活用にも壁) 統計問題 東洋経済オンライン 黒崎 亜弓氏による「建設受注統計で国交省が不正、その実態と問題点 統計のプロ・肥後雅博東大教授に改善策を聞く」 「遅れて届いた調査票の数字を書き換えて合算し、2013年4月分?2021年3月分は未回答分を平均値で補完したものとの二重計上となっていたのだ」、「重計上の影響が残っている民間土木は建設投資の1割程度で年間6兆~7兆円、GDP全体の1%程度だ」、なるほど。 「2019年分までは国交省は、都道府県に調査票の数字を消しゴムで消して書き換えさせていたといい、月ごとの数字が失われてしまっているからだ。調査票の元データが失われて復元推計ができない点は、3年前の「毎月勤労統計」・・・の問題よりも深刻といえる」、確かに信じ難いような酷い話だ。 「統計は調査方法や推計方法を公開し、推計方法を変えたら『数字の見方に気をつけてください』とアナウンスするのが基本だ。国交省はユーザーを軽視している」、その通りだ。 「未回答の欠測値をどれほど精緻なやり方で補完しても、回答者が提出する数字が一番正しい。出したのに数字を書き換えられたり、捨てられたりするのなら、誰も回答しなくなる」、「未回答者に罰金を科すべきという声も」あるが、「法的には正しいかもしれないが、現実的ではない」、なるほど。 「統計作成をフルに民間委託にすれば、いま公的統計に費やしている費用よりもはるかに高くつくだろう」、「統計作成を民間任せにすると、役所の中でどんな統計を、どのように作成するかという企画立案ができなくなる。調査対象者が回答できないような調査項目を作ったりする。役所が統計の作成にしっかり関与して、外注するのは末端の業務だけにしなければ、統計部署が空洞化してしまう」、その通りだ。 「公的統計が抱える最大の問題は、各省庁の専門人材の不足による「欠陥統計」の作成だ。 検査は、現行の統計委員会に、一定の統計の知見を持つ実務部隊が10人いれば機能するはずだ。強制力がなくても、公表資料を丹念に読み込み、疑問点を担当部署に質問していけば、問題はあぶり出せる。毎月勤労統計でも、公表データで整合性のつかない点について厚労省に質問したら、全数調査のところ3分の1に抽出していたと告白した」、なるほど。 「総務省統計局と統計行政部署、内閣府のGDPを作る部署、それに経済産業省の統計部署の3つが合体する。名付けるなら「統計庁」だろうか。統計委員会もそこに入る。統計庁は、GDP、産業連関表に加え、国勢調査、経済センサス、消費者物価指数、鉱工業指数など主要統計を作成する。 最大の目的は、統計人材を集め、育てることだ。3?4の局がある800~900人規模の組織であれば、統計を志す人を採用できる。内部で人事ローテーションができ、さまざまな統計を作るのでノウハウが蓄積する」、 「統計庁が誕生したとしても、元の省庁から人員を交互に派遣するのでは形だけになる。 統計人材を育成するシステムを作らなければ、日本の公的統計はどんどん劣化して使い物にならなくなってしまう。今回の問題を機に、立て直しについて議論が行われることを期待している。これから10年間が正念場だ」、その通りなのだろう。 日経新聞「政府統計、電子集計進まず 基幹7割で50%未満 不正の温床、データ活用にも壁」 「基幹統計の7割にあたる34調査でオンライン集計が進んでいない」、「オンライン回答の比率が50%にも届かないのは34調査と、全体の7割を占めた。うち8調査は10%未満だった」、「今回、データの書き換えや二重計上が発覚した国土交通省の建設工事受注動態統計はオンライン比率が11%だった。導入から10年以上たっても事業者に浸透していない。担当者は「電子申請を強制すると調査票を出さない事業者が増える懸念があり、苦慮していた」と明かす」、 主管官庁がこれでは。「設工事受注動態統計」に問題があるのも当然だ。「行政機関が新たに作成・取得した行政文書のうち電子媒体で保有している割合は19年度で15%にすぎない。 国交省は今回、18年度以前の調査票を破棄しており、データの完全復元は難しい。国内総生産(GDP)への影響などの検証に支障をきたす。電子媒体で保管していればこうした事態を避けることができたはずだった」、保存体制もお粗末そのものだ。政府統計作成・活用について、抜本的な見直しが急務だ。
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働き方改革(その40)(たった1カ月で「新入社員」半分退職まさかの原因 「採用コスト」は例年の5倍かけたのになぜ?、「派遣の拡大は、厚労省がやったこと」竹中平蔵が悩まされた「真実をもてあそぶ一部メディア」の不誠実 『なんで会社辞めたんですか?』) [経済政策]

働き方改革については、本年4月5日に取上げた。今日は、(その40)(たった1カ月で「新入社員」半分退職まさかの原因 「採用コスト」は例年の5倍かけたのになぜ?、「派遣の拡大は、厚労省がやったこと」竹中平蔵が悩まされた「真実をもてあそぶ一部メディア」の不誠実 『なんで会社辞めたんですか?』)である。

先ずは、5月16日付け東洋経済オンラインが掲載した経営コラムニストの横山 信弘氏による「たった1カ月で「新入社員」半分退職まさかの原因 「採用コスト」は例年の5倍かけたのになぜ?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/671389
・『たった1カ月で新入社員の半分が辞めてしまうとは……。 今回は、ある会社が「働きがい」のある職場を目指した結果、新入社員の半分が辞めてしまった事例を紹介する。 昨今、突如として「働きがい」という言葉を使って採用活動に励む会社が増えている。会社に興味を持ち応募する人が多くなるからだろう。しかし、気をつけたほうがいい。言葉を正しく理解していないと、採用の努力が無駄になることがある。 AI時代になり、ますます「働きがい」を誤解して使ってはならないと強く感じるようになった。特に採用活動の責任者、新入社員を引き受ける職場の責任者は、まだ働いていない若者を勘違いさせないためにも、この会社の失敗から学んでもらいたいと思う』、興味深そうだ。
・『新入社員の半分が1カ月で退職!大失敗の原因  新入社員8人のうち4人が、たった1カ月で辞めた会社がある。 なぜ、そんなことが起こったのか? 背後には、将来の幹部候補を求める社長の強い要望があった。 通常は年間2~3人の採用をしていた。だが、社長の命令で例年の5倍の採用コストと1年間の入念な準備を経て、例年より多くの新卒を採用しようとした。 結果、8人の優秀な新入社員が入社した。当初、社長は手放しで喜んだ。入社したあと、採用した新入社員8人と食事をしたとき、「8人みんな優秀だ。1年間がんばったかいがあった」と誇らしげに語っていた。 しかし、そのうちの4人が1カ月も経たずに退職してしまったのだ。残った新入社員のうち、2人も辞めたいと考えているという。社長は激怒した。例年の5倍もの採用コストをかけてなぜ辞めてしまったのか。いったい何が原因でここまでの大失敗となったのだろうか? 採用責任者は、新入社員が辞めた理由を調査するために、配属された職場の上長やベテラン社員にヒアリングを行った。 すると、どの職場でも見解は同じだった。 「今年の新入社員は、ストレス耐性が低い」 「やるべきことをやる前から、働きがいとか、心理的安全性とか、イチイチ言ってくる」) どうやら現場で新入社員たちは、「弁が立つが、やることをやらない」とレッテルを貼られたようだった。 とりわけ採用責任者が着目したのは「働きがい」である。 辞めた4人のうち、ほとんど全員が「働きがいを感じられない」を口にしていた。 合同説明会から複数回の面接を経て入社するまで、「当社は働きがいのある会社」とアピールし続けた。社長も「働きがいのある会社に生まれ変わった」と事あるごとに繰り返していた。だからこそ、新入社員は裏切られたと感じたのかもしれない。 美味しいイチゴが使われたショートケーキだと言われたから買ったのに、肝心のイチゴがあまり美味しくなかった、ということなのだろう』、「通常は年間2~3人の採用をしていた。だが、社長の命令で例年の5倍の採用コストと1年間の入念な準備を経て、例年より多くの新卒を採用しようとした。 結果、8人の優秀な新入社員が入社した。当初、社長は手放しで喜んだ・・・そのうちの4人が1カ月も経たずに退職してしまったのだ。残った新入社員のうち、2人も辞めたいと考えているという。社長は激怒した」、「辞めた4人のうち、ほとんど全員が「働きがいを感じられない」を口にしていた。 合同説明会から複数回の面接を経て入社するまで、「当社は働きがいのある会社」とアピールし続けた。社長も「働きがいのある会社に生まれ変わった」と事あるごとに繰り返していた。だからこそ、新入社員は裏切られたと感じたのかもしれない」、なるほど。
・『「働きがい」の誤解が新入社員の退職を招く  例年になく優秀だと謳われた新入社員たちは、なぜ1カ月もせずに半分も辞めてしまったのか。その原因は「働きがい」にあると考えた。 実は「働きがい」という言葉は、リスクが高い。 なぜなら言葉の意味を、多くの人が誤解しているからだ。これは昨今、同じように使われるようになった「心理的安全性」にも言えることだ。 本来の意味をわからずに使用すると、大きな認識のズレとなり、トラブルを招くことになる。 実際に、社長や採用責任者、新入社員の先輩や上司も含め、ヒアリングしてみたところ、「働きがい」の真の意味を理解しているとは言いがたい状況だった。 「働きがい」と似た言葉に「やりがい」という言葉がある。 「やりがい」とは、困難を乗り越えて成果を出し、同僚やお客様から感謝されてはじめて「やったかいがあった」と思えるものだ。 「今回のイベントの集客、大変だったけど、会場が満員になって大盛況だったな」「はい。最初はすごく苦労しましたが、やったかいがありました」 このように使うものだ。 一方、「働きがい」は「やりがい」よりも抽象度が高い。 先ほどの例文の受け答えで、「はい。最初はすごく苦労しましたが、働いたかいがありました」とは、通常使わない。「やる」と「働く」とでは、対象範囲が違いすぎるからだ。例文として書くとするなら、次のようになる。 「入社して5年経ったけど、どう?働きがいのある職場かな?」 「そうですね。入社して2年間は苦労の連続でしたが、どんなに大変なときも助けてくれる先輩がいますし、課長は厳しいですけど、おかげで随分と成長できましたし、働きがいのある職場だと思っています」 「働きがい」は、数年働いてからでないと味わえないものだと筆者は考えている。) 今後、働きがいを感じることがますます難しくなる時代が到来する。その要因の一つとしてAIの進化が挙げられる。 まず、近年のデジタルシフトにより、単純な知的労働は徐々に人から仕事を奪っている。筆者のクライアント企業にもRPAで人材不足の問題を解消した例はたくさんある。 イベント後のアンケート集計や、顧客の属性に合わせたフォローメール作成など、かつて新入社員に任せられていたような仕事は、このように高性能なシステムやロボットが担当するようになった。 ▽任せられる仕事は、お客様対応しか残っていない(AIは、さらに難易度の高い仕事もこなす。 例えば顧客データベースからお客様の行動分析をし、今後の売り上げ予測まで瞬時に立てられるようになる。 「とりあえず、分析しておいて」と、上司から頼まれる仕事まで減っていくのだ。 分析結果の検証には経験が必要であるし、その結果から判断するには実績とセンスが求められる。新入社員どころか、経験の浅い社員に頼む仕事も奪われていく。 この会社でも、新入社員に任せられる仕事といったら、お客様対応しか残っていなかった。 「とりあえず、200社の担当者に電話して、このリサーチをお願い」 「とりあえず、先日のイベントの来場者に連絡してアポイントをとって」 マーケティングオートメーションでお客様の動きをトレースして、当社商品に興味がありそうな動きをするお客様には、タイミングよく電話をかける。 お客様とのやり取りは音声認識機能で瞬時にテキスト化され、上長に報告される。自分で報告書を書く必要もないため、ひたすらお客様とのコミュニケーションに時間を費やす。 お客様の価値観は多様化しており、何が正解かはわからない時代だ。だからベテラン社員でさえつねに手探り。勝利の方程式などないものだから、試行錯誤の連続だ。 「新入社員は、何をやったらいいですか?と聞いてくるが、事務作業などないし、お客様対応といってもマニュアルなんかない」 これは、新入社員を受け入れた職場責任者の言葉だ。 「マニュアルを見せてくださいと言われたけど、マニュアルに書けるような作業は、だいたいRPAに任せている」 現場の責任者やベテラン社員は、口をそろえてこう言った。 「将来の幹部候補を雇うんだったら、もっとベテランを採用してほしい。私たちだって必死に勉強している。教えることなんてない」) 問題は、・社長をはじめとする採用責任者 ・新入社員をあずかる現場 ・新入社員 それぞれに「認識のズレ」があったことだ。 社長や採用の責任者は、本来の目的を見失い、「働きがい」という表現を優秀な新入社員を集めるためのエサのように使っていた。 いっぽう、現場で働く人たちは「働きがい」についてあまり関心がない。それよりもまず、やるべきことをやることが重要で、期待された成果を出すことに重きを置いている。 これは前述した通り、イチゴの美味しいショートケーキの例えに通じる。広告でイチゴの美味しいショートケーキをアピールしておきながら、現場で働く人たちはそのイチゴがそれほど美味しいという認識を持っていないのだ。この場合、お客様の期待とズレが生じる。 近年、働きがいや心理的安全性、エンゲージメント、ワークライフバランス、クオリティーオブライフといった新語がよく報道で使われる。 しかしこれらのワードに関心が高いのは、就職や転職活動を行っている人たち、そして経営者や役員に限られる。いっぽう現場の人たちは、意識している余裕がない。 劇的な環境変化に伴い、成果の出し方が変わっている。デジタル対応やリスキリングなど、身につけるべき知識やスキルが多すぎて、部下育成している場合ではない。 そんな状況で、 「入社したら、まるで働きがいを感じられないんですが」 と新入社員に指摘されても、どうしたらいいかわからない。これが新入社員を受け入れる先輩たちの本音だろう』、「社長や採用の責任者は、本来の目的を見失い、「働きがい」という表現を優秀な新入社員を集めるためのエサのように使っていた。 いっぽう、現場で働く人たちは「働きがい」についてあまり関心がない。それよりもまず、やるべきことをやることが重要で、期待された成果を出すことに重きを置いている」、「そんな状況で、「入社したら、まるで働きがいを感じられないんですが」 と新入社員に指摘されても、どうしたらいいかわからない。これが新入社員を受け入れる先輩たちの本音だろう」、なるほど。
・『ポイントは「Must」「Can」「Will」  それでは、どうしたらいいのか。 私は15年以上も前から、新入社員研修で一貫して言い続けているフレーズがある。それが、1.「Must」やるべきこと 2.「Can」 やれること 3.「Will」 やりたいこと である。この順番が大事だ。 やるべきこと(マスト)をやり続けることで、やれること(キャン)が増え、やりたいこと(ウィル)が見つかる可能性がある、という話だ。 自分の先輩や上司でさえ先が読めない時代が到来している。だからこそ、新入社員はまずは厳しい現実を受け入れる必要がある。 給料をもらうということはプロフェッショナルになるということだ。ストレスがかかっても、やるべきことをやっていれば、やれることが増えてくるものだ。 そうすることで成果が出て、多くの人から感謝され、働きがいを感じるもの。現場に行ったら、やりたくないこと、苦手なことも任されるかもしれない。だが、それは誰でも一緒である。 サポートしていくから、しっかりとやっていこうと、採用活動の最中から丁寧に伝えるべきだ。きれいごとばかり言っていると、こんなはずじゃなかったと言い、辞めてしまう新入社員が続出してしまう。 繰り返すが、ポイントは「マスト(Must)」「キャン(Can)」「ウィル(Will)」。この順番である。 期待された成果を出さない限り、本当の意味の「働きがい」は感じられないのだから』、「ポイントは「マスト(Must)」「キャン(Can)」「ウィル(Will)」。この順番である。 期待された成果を出さない限り、本当の意味の「働きがい」は感じられないのだから」、確かにその通りだ。

次に、8月14日付けPRESIDENT Online「「派遣の拡大は、厚労省がやったこと」竹中平蔵が悩まされた「真実をもてあそぶ一部メディア」の不誠実 『なんで会社辞めたんですか?』」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/72519
・『「派遣の拡大は、厚労省がやったこと」竹中平蔵が悩まされた「真実をもてあそぶ一部メディア」の不誠実(高橋 弘樹,日経テレ東大学/Webオリジナル(外部転載)) 『なんで会社辞めたんですか?』 #3 「2年間で800万円貯まった」「新人記者は黒塗りのハイヤーでサツ回り」…それでも朝日新聞記者をやめて探検家に転職した角幡唯介(47)の超痛快人生〉から続く 「これもう100回ぐらい、そうじゃないって説明したんですけど、みんなもう面白おかしく言ってるだけです」 元パソナ会長の竹中平蔵氏が辟易する「ワイドショー的な議論」とはいったい? 100万人超え登録YouTubeチャンネル「日経テレ東大学」(※2023年5月末で動画視聴終了)の人気トーク番組を書籍化した『なんで会社辞めたんですか?』(編著:高橋弘樹、日経テレ東大学/発行:東京ニュース通信社/発売:講談社)より一部抜粋してお届けする』、興味深そうだ。
・『竹中平蔵はなぜパソナ会長を退いたのか  高橋弘樹(以下、高橋) 竹中さんはパソナグループの会長を2022年8月にお辞めになられたということで、ささやかですが、ご卒業おめでとうございますの花束をどうぞ! 竹中平蔵(以下、竹中) ありがとうございます。 高橋 何年間勤められたんですか? 竹中 13年間ですね。 高橋 会長職としては、結構長いですね。今回、「なんで会社辞めたんですか?」というテーマでいろいろお聞きしていきたいんですけど、その前にまずはパソナでどういうことをなさっていたのかを教えてください。 竹中 最初、南部靖之代表から「パソナで会長をやっていただけませんか」と言われた時、「私は公共事業を減らしたり、郵政を民営化したり、一部の既得権益者にすごく恨まれています。そんな私が会長をやると、謂れのない批判が会社にいって、パソナにご迷惑がかかりますよ」と申し上げたんです。 南部さんは非常に立派な経営者ですから、「そんなの構わないから、一緒に労働市場を良くしていきましょう」とおっしゃいました。その言葉に感銘を受けてお受けしました。私はこれまでに政府や大学関係の仕事も経験しましたから、取締役会に出席して、経済や社会の動向について提案を行いました。 高橋 会社の具体的な事業というよりは、もう少しマクロな政府の方向性とかについて議論していったという感じですか? 竹中 いえ、会社自体の方向性もそうですし、今、社会はこんな方向に動いてるから、その方向に合わせて事業もこうしていったらどうかとか、そういうことですね。 高橋 具体的にはどんなことされていらしたんですか?) 竹中 私は、ビジネスの現場に詳しいわけではないですけれど、これからはより一層、デジタル化を進めなければいけません。今までは人と人とが対面してやっていたことをいかにデジタル化していくか。それが一番大きかったかもしれませんね。 それと、今後、労働市場はどんな風に変わっていくだろうかということで、労働市場の変化に合わせていろんなことをやらなければいけないと。基本的には「同一労働同一賃金」――これを実現できるかどうかですよね。日本の労働市場というのは明らかに二重構造になっているわけです。 はっきり言いますと、正社員は特権を持っていて、その特権は1979年の東洋酸素(現・日本酸素)事件における東京高等裁判所の判例によって守られていて、正社員というのは首をほとんど切れないことになっています。 そうすると企業にとってみると、これは固定費になります。固定費が大きくなるのは耐えられないので、その高裁の判例が適用されないような部分について非正規社員を増やしてきたという意味で、二重構造になってるわけです。でも、やはり二重構造はおかしいんです。一緒に働いているのだから同一条件にしないといけません。同一労働条件を目指す法律もできてきたわけで、そこが大きな変化の方向です』、「正社員というのは首をほとんど切れないことになっています。 そうすると企業にとってみると、これは固定費になります。固定費が大きくなるのは耐えられないので、その高裁の判例が適用されないような部分について非正規社員を増やしてきたという意味で、二重構造になってるわけです。でも、やはり二重構造はおかしいんです。一緒に働いているのだから同一条件にしないといけません」、なるほど。
・『「派遣の拡大は、厚労省がやったこと」  高橋 竹中さんがされてきた派遣の拡大とかですね。 竹中 いえ、そこが間違ってるんですよ。厚生労働省がやったんです。私は1990年くらいからずっとやってるし、小泉(純一郎)内閣の10年以上前からやっているし、現実にそういう働き方をしたいという人が多い。ついでに言うと、派遣は全労働者のわずか2%です。 ワイドショー的な議論だと、「派遣は悪いことである、それをやったのが竹中である」みたいなことを平気で言いますけども。これもう100回ぐらい、そうじゃないって説明したんですけど、みんなもう面白おかしく言ってるだけです。 もう一つ、やはり地方創生はすごく重要なテーマになってきています。ご存じのように、パソナは2020年9月から本社機能の一部を淡路島に置いていますけれど、そうした地方創生の基本的な方向について意見を言っていました』、「派遣の拡大」は「厚生労働省がやったんです」、と否定する割に、根拠を示してない。やはり「厚生労働省がやったんです」いうのは、あり得ない話で、罪を「厚生労働省」になすりつけているようだ。
・『会長を辞めたのは企業の新陳代謝を促すため  高橋 そこで番組のテーマですけれど、どうしてパソナを辞められたんですか? 竹中 タイミング的に最初は5年だけと言ってたんです。でも、5年やったときに、もうちょっと頑張って10年やろうかと。それで10年やって68歳でしたから、じゃあキリのいいところで70歳まであと2年ということで12年になり、それが13年になって、ようやく区切りがつけられたということです。 理由としては、企業も新陳代謝が大事ですから、次の若い人が育ってきてほしいというのが一つあります。私のように外から入る人間は、やはり新陳代謝しなければいけないと思っています。たとえば社外取締役の場合、一定期間長くいると独立した社外取締役と認められなくなってきます。だから、新陳代謝することに意味があって、他の取締役と入れ替わって初めてその企業の活力が出てくると思うんです。 今回、コロナ禍の中でようやく業績も回復してきて、それなりに足腰も強くなった。だから若い人たちに引き継げると思って踏み切りました。 高橋 普通の人は、一度会長をやると辞めたくなくなるじゃないですか? なのにサクッと辞められたから、すごいなと思いました。 竹中 私はね、若い頃からたくさんの老害を見てきたんですよ。老害って本人は分かってないと思うんですけれどね。人間は年齢とともにいろいろと経験値が上がって、どんどん能力が備わってきます。でも、その一方で硬直性も出てきて、別の意味で能力が下がってくるところがありますよね。自分ではそれは気づきにくいんですよ』、「老害」を避けるため、会長職を辞めたというが、13年は十分に長く、「老害」そのものだ。
・『“老害”になりたくないから議員も早期辞職した  竹中 自分1人でできる仕事はいくつになっても続ければいいと思うんです。たとえば芸術家とか、音楽家とか、作家とか、そういう1人でやる仕事はいいんですけれど、組織をまとめてたくさんの人を巻き込むような仕事は、一定の年齢になったら退くべきだと思います。自分はまだやれると思っていても、周囲から見ると老害だということになる。それをね、やはり自分で早めに判断しなきゃいけないと考えていたんです。 もう70歳を超えましたから、早めに判断しようと。それが今回の機会になったわけです。ただし、その一方で成田悠輔(経済学者、イェール大学助教授)さんみたいに、「一定の年代になったらみんな老害だから辞めろ」というのは暴論ですよ。これは年齢による差別ですから、“女性だからダメだ”というのと同じ論理です。人によってすごく差が出ますからね。) 高橋 元気か、元気じゃないかとか。 竹中 能力が落ちた分、よく勉強しているか、していないかでその差が出る。そこは組織のトップになった人ならば自分で判断しなきゃダメです。政治家も同じで、「出処進退は自分で決める」って小泉さんが言ってたでしょ。私も同感で、これまでたくさんの老害を見てきたから、早めに判断したいとずっと考えていました』、「成田悠輔・・・さんみたいに、「一定の年代になったらみんな老害だから辞めろ」というのは暴論ですよ。これは年齢による差別」、その通りだ。唯一の同意点だ。
・『「政治の世界は老害が多い」  高橋 参議院議員も任期の途中でお辞めになりましたよね。あのときはどうして2年で辞められたんですか? 竹中 政治の世界というのはやはり怖いと思うんです、権力があるから。それともう一つはたくさん貸し借りがある。政治の世界に長くいると、貸し借りに縛られてしまうと思ったんです。 もともと私は、職業政治家になりたいと思ってなったわけではありません。小泉さんという非常に異色の総理に「一緒に手伝ってくれ」と言われたので、サッカーのレンタル選手みたいな立場で政治の世界に行きました。だから、一つの目的が終わったら元の学者に戻るというだけのことです。 高橋 でもその決断はなかなか難しいですよね? まだやれると思ってしまうから。 竹中 だから老害が多いんだと思います。私は、若い人も育ってきているし、自分で老害は避けたいと思ってましたから、ハッピーなタイミングだったと思いますよ』、「参議院議員も任期の途中で2年で辞められた」のは、「政治の世界に長くいると、貸し借りに縛られてしまうと思った」、これはいさぎ良いが、政治家でいることのリスクを避けるためだった のかも知れない。
タグ:東洋経済オンライン (その40)(たった1カ月で「新入社員」半分退職まさかの原因 「採用コスト」は例年の5倍かけたのになぜ?、「派遣の拡大は、厚労省がやったこと」竹中平蔵が悩まされた「真実をもてあそぶ一部メディア」の不誠実 『なんで会社辞めたんですか?』) 働き方改革 横山 信弘氏による「たった1カ月で「新入社員」半分退職まさかの原因 「採用コスト」は例年の5倍かけたのになぜ?」 興味深そうだ。 「通常は年間2~3人の採用をしていた。だが、社長の命令で例年の5倍の採用コストと1年間の入念な準備を経て、例年より多くの新卒を採用しようとした。 結果、8人の優秀な新入社員が入社した。当初、社長は手放しで喜んだ・・・そのうちの4人が1カ月も経たずに退職してしまったのだ。残った新入社員のうち、2人も辞めたいと考えているという。社長は激怒した」、「辞めた4人のうち、ほとんど全員が「働きがいを感じられない」を口にしていた。 合同説明会から複数回の面接を経て入社するまで、「当社は働きがいのある会社」とアピールし続けた。社長も「働きがいのある会社に生まれ変わった」と事あるごとに繰り返していた。だからこそ、新入社員は裏切られたと感じたのかもしれない」、なるほど。 「社長や採用の責任者は、本来の目的を見失い、「働きがい」という表現を優秀な新入社員を集めるためのエサのように使っていた。 いっぽう、現場で働く人たちは「働きがい」についてあまり関心がない。それよりもまず、やるべきことをやることが重要で、期待された成果を出すことに重きを置いている」、 「そんな状況で、「入社したら、まるで働きがいを感じられないんですが」 と新入社員に指摘されても、どうしたらいいかわからない。これが新入社員を受け入れる先輩たちの本音だろう」、なるほど。 「ポイントは「マスト(Must)」「キャン(Can)」「ウィル(Will)」。この順番である。 期待された成果を出さない限り、本当の意味の「働きがい」は感じられないのだから」、確かにその通りだ。 PRESIDENT ONLINE 「「派遣の拡大は、厚労省がやったこと」竹中平蔵が悩まされた「真実をもてあそぶ一部メディア」の不誠実 『なんで会社辞めたんですか?』」 興味深そうだ 「正社員というのは首をほとんど切れないことになっています。 そうすると企業にとってみると、これは固定費になります。固定費が大きくなるのは耐えられないので、その高裁の判例が適用されないような部分について非正規社員を増やしてきたという意味で、二重構造になってるわけです。でも、やはり二重構造はおかしいんです。一緒に働いているのだから同一条件にしないといけません」、なるほど。 「派遣の拡大」は「厚生労働省がやったんです」、と否定する割に、根拠を示してない。やはり「厚生労働省がやったんです」いうのは、あり得ない話で、罪を「厚生労働省」になすりつけているようだ。 「老害」を避けるため、会長職を辞めたというが、13年は十分に長く、「老害」そのものだ。 「成田悠輔・・・さんみたいに、「一定の年代になったらみんな老害だから辞めろ」というのは暴論ですよ。これは年齢による差別」、その通りだ。唯一の同意点だ。 「参議院議員も任期の途中で2年で辞められた」のは、「政治の世界に長くいると、貸し借りに縛られてしまうと思った」、これはいさぎ良いが、政治家でいることのリスクを避けるためだった のかも知れない。
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マイナンバー制度(その6)(注目の人 直撃インタビュー 保団連会長が警鐘「保険証廃止を強行すれば閉院ラッシュ 地域医療は崩壊します」、だから躍起になってマイナンバーカードを作らせようとする…日本を"デジタル後進国"にした本当の原因 民間ではプラスチックのカードは姿を消しつつあるのに、厚労省が満を持して出した「保険証廃止で最大108億円コスト減」の“怪しい試算) [経済政策]

昨日に続いて、マイナンバー制度(その6)(注目の人 直撃インタビュー 保団連会長が警鐘「保険証廃止を強行すれば閉院ラッシュ 地域医療は崩壊します」、だから躍起になってマイナンバーカードを作らせようとする…日本を"デジタル後進国"にした本当の原因 民間ではプラスチックのカードは姿を消しつつあるのに、厚労省が満を持して出した「保険証廃止で最大108億円コスト減」の“怪しい試算”)を取上げよう。

先ずは、8月7日付け日刊ゲンダイ「注目の人 直撃インタビュー 保団連会長が警鐘「保険証廃止を強行すれば閉院ラッシュ、地域医療は崩壊します」」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/327001
・『住江憲勇(全国保険医団体連合会会長)  マイナンバーカードを巡って次から次へと起こるトラブルに岸田政権は右往左往。国民の不信は募る一方だ。とりわけ、健康保険証廃止への反発は強く、世論調査では来年秋の廃止について「反対」が7割を超える。にもかかわらず、政府はマイナ保険証への一本化方針にいまだに固執。このため全国の医療機関では大混乱が生じている。この間、医療現場の実態を調査し、問題点を明らかにしてきた保団連会長に思う存分、語ってもらった(Qは聞き手の質問、Aは保団連会長の回答)』、興味深そうだ。
・『マイナ保険証「必発3トラブル」は解決しない  Q:医療現場で何が起きていますか。 A:マイナ保険証を使うとまず、受け付け時点で混乱が生じる。オンライン資格確認がうまくいかず、患者が列をつくり、時間も手間もかかる。スタッフに対しクレームも出る。医療情報は古い上に、他人の情報かもしれないと考えると診療では怖くて使えない。マイナ保険証はほとんど活用されていないのが実態です。 Q:マイナ保険証の根本的な問題は何ですか。 A:避けられない、必発のトラブルが3つあります。公金口座や年金などでも発覚しているが、1つはマイナ保険証へのひも付けの誤りによる危険です。重大な医療事故につながりかねません。2つ目は、資格者全員に交付する保険証と違い、マイナ保険証や資格確認書は申請主義なので、どうしても申請漏れや遅れが生じ、保険資格情報の誤りが避けられないことです。3つ目は、オンラインにつきもののシステム障害の発生リスクは当然あります。 Q:実際に3つとも多発しています。 A:これだけの不具合が起きれば運用を全面停止し、万全の改善策を講じるのが常識です。富士通子会社の証明書交付サービスのトラブルの際はシステムを停止しました。ところが政府は、立ち止まることなく、走りながらの対応を続けている。次々生じるトラブルに対し、ほころびを縫うがごとく対策に追われるから、シッチャカメッチャカの状態に陥っている。 Q:受け付けで無保険扱いが続出し、10割請求が問題になった時、加藤厚労相は窓口負担を「3割」とするよう医療機関に求めました。 窓口でいったん3割とするが、後で正しい資格情報を確認する必要がある。それを担うのは社会保険診療報酬支払基金です。無資格扱いとなるトラブルは70万件以上起こるとの推計を発表しましたが、それくらいの規模で資格を確認する作業が毎月、発生するのです。当然、積み残しが起き、支払いの遅延や不能が起きるでしょう』、「オンライン資格確認がうまくいかず、患者が列をつくり、時間も手間もかかる。スタッフに対しクレームも出る。医療情報は古い上に、他人の情報かもしれないと考えると診療では怖くて使えない。マイナ保険証はほとんど活用されていないのが実態です」、「必発のトラブルが3つあります・・・1つはマイナ保険証へのひも付けの誤りによる危険です。重大な医療事故につながりかねません。2つ目は、資格者全員に交付する保険証と違い、マイナ保険証や資格確認書は申請主義なので、どうしても申請漏れや遅れが生じ、保険資格情報の誤りが避けられないことです。3つ目は、オンラインにつきもののシステム障害の発生リスクは当然あります」、なるほど。
・『終戦直後の支払い遅延時代に逆戻り  Q:医療機関の経営に影響も出る。 A:終戦直後、支払い遅延が常態化し、適切な医療提供が難しい事態に直面しました。そこで、1948年に支払基金が設立された経緯があります。このままでは終戦直後の支払い遅延の時代に戻りかねません。これまでは患者から保険証の提示がない場合、窓口では10割の負担を求め、後で資格が確認できれば、差額を返金し、そうでなければそのまま、という運用をしてきた。病院と患者の間でコンセンサスがあったのです。医療従事者と患者の信頼関係まで壊れかねない事態です。 Q:マイナ保険証の登録は6500万人で足踏み状態です。 A:マイナ保険証の普及を前提に、資格確認書の交付はごくわずかと想定し、申請に基づいて毎年交付としていました。ところが、人口の半分近くに送付となると、そうはいかない。毎年でなく、保険証に準じた期間にするとか、職権で全件交付という案も浮上しています。これでは、ほとんど保険証と変わりません。保険証を廃止する意味は薄らいでいる』、「これまでは患者から保険証の提示がない場合、窓口では10割の負担を求め、後で資格が確認できれば、差額を返金し、そうでなければそのまま、という運用をしてきた。病院と患者の間でコンセンサスがあったのです。医従事者と患者の信頼関係まで壊れかねない事態です」、「マイナ保険証の普及を前提に、資格確認書の交付はごくわずかと想定し、申請に基づいて毎年交付としていました。ところが、人口の半分近くに送付となると、そうはいかない。毎年でなく、保険証に準じた期間にするとか、職権で全件交付という案も浮上しています。これでは、ほとんど保険証と変わりません。保険証を廃止する意味は薄らいでいる」、その通りだ。
・『「問題の先送りではなく撤回に追い込むことが重要」  Q:保険証廃止についてはメディアの批判的報道も盛んですが、保団連は以前から警鐘を鳴らしていました。 A:今年4月からのオンライン資格確認義務化の進め方は極めて強引でした。昨年6月に義務化方針を閣議決定し、ろくな審議もせずに3カ月後には省令を発令した。昨年8月の厚労省の説明会で、保険局の水谷忠由医療介護連携政策課長は、義務化に応じない医療機関について「保険医療機関・薬局の指定の取り消し事由となり得る」と恫喝までした。こうして環境を整え、同10月に河野デジタル担当相が保険証の廃止を表明したのです。 Q:オンライン資格確認の義務化について、医療機関はどう受け止めましたか。 A:昨年10月のアンケートによると、セキュリティーへの懸念や経済的負担などの理由で15%が「対応できない」と答え、10%が閉院を検討すると回答しました。資格確認システムの導入という、医療とは無関係な理由から病院を閉じるのは、医療従事者にとって忸怩たる思いだと思います。 Q:4月からの義務化による閉院は起きたのですか。 A:全国の地方厚生局に提出された保険医療機関の廃止数を見ると、今年4月は約1100件に上っています。少なくとも昨年5月以降で最多となっています。4月からのオンライン義務化の影響も考えられます。 Q:閉院が相次ぐのは地域医療の維持を揺るがします。 A:全国には中山間地域があります。限界集落とならず、持ちこたえているケースはかろうじて医療機関が存在しています。例えば、高齢の先生が診療を続けてくれている。そうした地域で唯一の医療機関が閉院してしまったら、住民の医療はどうなるのか。地域医療への影響は今のところ、顕在化していません。しかし、政府が保険証の廃止方針を貫けば、判断を迷っている医療機関が閉院を決めかねない。閉院予定の医療機関はオンライン資格確認を導入せず、来年9月までは続けられるが、その後はない。来年秋に向けてさらなる閉院ラッシュが起きてもおかしくありません。 Q:自民党幹部から来秋の廃止について「延期論」が出ています。 A:与党からそういう声が出るほど事態は深刻だということでしょう。ただ、延期でガス抜きされないように注意が必要です。当面は延期でいいとしても、撤回に追い込むことが重要です。延期したところで問題が先送りされるだけです。この先、マイナ保険証の登録が飛躍的に伸びるとも思えず、数千万人がマイナ保険証を持たない状況は続きます。また、廃止時期を後ろ倒しにしても、先に挙げた3つの必発トラブルがなくなるわけではない。これまで同様、マイナ保険証に一本化するスキームの中で解決しようとすれば、延期した期間にトラブルが続くだけなのです。保険証を存続させれば、一気に解決する話です。 Q:マイナ保険証と健康保険証の併用については? A:かつては併用を主張していました。というのも、ITに強い医師もおり、進めることのメリットも一定分あるからです。だから、マイナ保険証に絶対反対とは言いません。ただ、トラブルがここまで起きている以上、あまりにも危険すぎて、マイナ保険証を使いたい人に「どうぞ使ってください」とも言えなくなった。それほど深刻な事態だと認識しています。 Q:来秋の保険証廃止について反対の世論は7割を超えていますが、政府は鈍感です。 A:例えば、河野デジタル担当相は自主返納について「微々たる数」だと切り捨てました。信頼されていない事態に向き合おうとしていない。保険証廃止を政府は譲らない構えですが、国民の運動に加え、メディアの報道もあり、廃止についての危機意識は共有できていると思います。 Q:「医療のデジタル化」と言えば聞こえはいい。 A:「医療のデジタル化のためには、多少のリスクやデメリットがあっても立ち止まらずに推し進めるべきだ」と言う人がいますが、軽い発言です。マイナ保険証では、機微に富む情報がずさんに扱われ、地域医療の崩壊にもつながりかねない。保険証廃止の撤回に向けて引き続き奮闘します』、「昨年10月のアンケートによると、セキュリティーへの懸念や経済的負担などの理由で15%が「対応できない」と答え、10%が閉院を検討すると回答しました。資格確認システムの導入という、医療とは無関係な理由から病院を閉じるのは、医療従事者にとって忸怩たる思いだと思います。 Q:4月からの義務化による閉院は起きたのですか。 A:全国の地方厚生局に提出された保険医療機関の廃止数を見ると、今年4月は約1100件に上っています。少なくとも昨年5月以降で最多となっています。4月からのオンライン義務化の影響も考えられます。予想以上に大きな影響だ。「マイナ保険証では、機微に富む情報がずさんに扱われ、地域医療の崩壊にもつながりかねない。保険証廃止の撤回に向けて引き続き奮闘します」、その通りだ。

次に、8月21日付け日刊ゲンダイが掲載した南山大大学院法務研究科教授の實原隆志氏による「マイナひも付けミス「初歩的トラブル続出に驚いた」…情報法の専門家が突きつける数々の課題」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/327680
・『マイナンバーカードのひも付けトラブルをめぐる“狂騒”に終わりが見えない。政府は8日、マイナンバー情報総点検本部を開催。ひも付けミスに関してまとめた中間報告では、新たなミスが発覚した。岸田首相は11月末までに個別データの点検を進めるよう指示し、年内に沈静化を図ろうとしているが、「国民の不安」は一向に解消されない。マイナ制度に詳しい憲法・情報法の専門家は、相次ぐトラブルや政府の対応をどう見ているのか(Qは聞き手の質問、Aは専門家の回答)。 Q:中間報告では、マイナ保険証に誤って他人の情報が登録されていたケースが新たに1069件、公務員などの年金を運営する「共済組合」でもマイナンバーと年金情報のひも付けミスが118件確認されました。政府は今後、ひも付けに関するガイドライン作成や人手を介さないひも付け作業のデジタル化など、再発防止策に着手する予定です。 A:遅きに失したとはいえ、ガイドラインを作成しないよりはましですし、ひも付け作業のデジタル化に取り組む姿勢を示したことは評価できます。ただ、気になるのは、中間報告の中に〈国民の信頼回復に向けた対応〉として、〈カード取得の円滑化〉〈マイナ保険証の利用の促進〉が盛り込まれたことです。ひも付けトラブルが続出した原因の分析と再発防止が総点検に期待される役割のはずですが、マイナカードによる行政側のメリットを広報することが信頼回復につながるとは考えにくい。あくまでも中間報告なので、最終報告ではトラブル原因の分析・総括を期待したいですね。 Q:ひも付けトラブルが後を絶ちません。 A:そもそも、1つの番号や1枚のカードに個人情報をひも付けることによって、個人が想定していなかった機関に情報が共有されたり、情報を提供した意図とは違う文脈で使われたりする恐れがないように、いかに制度や運用をコントロールするかが、憲法や情報法の分野における問題意識でした。足元で起きているトラブルは他人の情報がひも付いてしまうという、従来から懸念されてきた問題とは別次元かつ想定外の問題です。少なくとも技術的には、間違いなくひも付けできるシステムが構築されている認識だったので、どのように個人情報のひも付けを規律するかという、法的な課題以前の初歩的なトラブルが相次いだことには正直、驚きを禁じ得ませんでした』、「法的な課題以前の初歩的なトラブルが相次いだことには正直、驚きを禁じ得ませんでした」、なるほど。
・『ドイツでは違憲主張のコミッショナーが監督しています  Q:先の国会では改正マイナンバー法などの関連法が成立し、利用拡大が進んでいます。 A:法改正をして活用分野を広げていくのは手続き上、問題ありません。もちろん、議論が十分かどうか、マイナ制度を監督する個人情報保護委員会(個情委)がまったく意見を出さないなど、法改正に至るプロセスの問題はあります。今回の改正で〈法律でマイナンバーの利用が認められている事務について、主務省令に規定することで情報連携を可能とする〉と定められたので、省令で情報連携が進んでしまう運用は今後も争点でしょう。 Q:そもそも個人情報の扱いが厳格ではない? (今年3月に最高裁はマイナ制度が合憲だとの判決を出しました。マイナ制度の運用は厳格であるとの判断ですが、個人的には決して厳格とは思いません。例えば、ヨーロッパに目を向けると、ドイツでは納税者番号が15~16年前から使われており、今後、日本の住基ネットのような仕組みが導入される予定です。異なる分野を管轄する行政機関の間で納税者番号を使って情報連携する仕組みが導入されているので、日本のマイナ制度のように、1つの番号にあらゆる情報がひも付く「フラット型」に近づいているとも言えます。ただ、ドイツの場合、納税者番号とどの個人情報がひも付くか、しっかり法律の中で定義されています。一方、日本はマイナンバーとどの個人情報をひも付けるかの定義がなく、ドイツに比べて規律の緩さが目立ちます。ドイツの運用方法が柔軟性に欠くとの批判はあり得ますが、番号制度に対する懸念を払拭する点では参考に値すると思います。) Q:ドイツでは番号に基づく個人情報のネットワーク化は受け入れられている?(ドイツには「連邦データ保護コミッショナー」とも呼ばれる独任制の組織があり、制度を監督しています。日本の個情委に似ていますが、制度への姿勢は異なります。コミッショナーは番号の活用を違憲だと主張しており、学術レベルでも意見が割れています。今後、違憲訴訟になると思います。ドイツでは「これは違憲だ」と主張している機関が制度を監督するので、制度運用に対する厳格さは担保されています。コミッショナーは批判するのが仕事という側面もあり、「違憲だ」との主張はある種、お決まりの反応ともドイツでは捉えられているほどです』、「ドイツの場合、納税者番号とどの個人情報がひも付くか、しっかり法律の中で定義されています。一方、日本はマイナンバーとどの個人情報をひも付けるかの定義がなく、ドイツに比べて規律の緩さが目立ちます。ドイツの運用方法が柔軟性に欠くとの批判はあり得ますが、番号制度に対する懸念を払拭する点では参考に値すると思います」、「ドイツでは「これは違憲だ」と主張している機関が制度を監督するので、制度運用に対する厳格さは担保されています」、なるほど。
・『制度支える個情委は欧州並みの働きを  Q:公金受取口座が別人のマイナンバーとひも付けられた問題を巡り、個情委は7月にデジタル庁に立ち入り検査しました。 立ち入り検査にまで踏み込んだのは評価できますが、問題の位置付けが個情委らしい。個情委は今回の問題について、マイナンバーやマイナカードを活用したサービスを利用する国民が不安を抱くキッカケになり得る事案の一部として位置付け、立ち入り検査をしている。つまり、立ち入り検査は、我々の個人情報を守るためではなく、マイナ制度やマイナカードの利用拡大を円滑に行うための調査として位置付けられているように見えます。そもそも個情委は、マイナ制度を運用するために立ち上げられた組織。立ち入り検査にしても、マイナ制度を浸透させるための環境整備との印象は拭えません。マイナ制度を支える前提でつくられた組織である以上、個情委としてマイナ制度を批判することは、自らの存在意義を侵食するという意識があるのではないか。その心理は、理解できなくもありませんが、ヨーロッパ並みの第三者機関として期待される役割を果たして欲しい。 Q:個情委の担当大臣は河野デジタル相です。どこまで踏み込んで検査できるでしょうか。 A:保険金の不正請求問題が明るみに出たビッグモーターと対比して考えると、組織の長から情報収集しないという選択肢は考えられません。マイナンバーのひも付けミスとは問題の質は異なりますが、社長以下、役員や現場スタッフ全体を調査するのが普通でしょう。そう考えると、たとえ形式上であっても、所管大臣が調査の対象になるのが当然ではないか。 Q:マイナ制度の運用に関して、個情委も厳しい姿勢を見せ始めた? A:個情委は従来、マイナンバーやマイナカードの利用範囲の拡大などについて、円滑な制度運用のための監督はしても、意見表明は行っていません。個情委には個人情報保護法上は行政機関に命令する権限がないとはいえ、そうした権限がないからこそ、政府に対してざっくばらんに意見を言えばいい。マイナカード利用拡大の懸念に対応して円滑な運用を目指すのは、個情委ではなくデジタル庁や総務省の仕事のはずです。 Q:政府は「国民の不安払拭」と繰り返しています。 A:政府が推し進めているのは、マイナカードの利便性を高める施策ではなく、カード取得は任意にもかかわらず持たない人が不利益を被るような施策です。政府が想定している「不安」は総点検の目的に照らせば、マイナンバーに他人の情報がひも付いている想定外の事態に対するもの。一方、多くの人が感じている不安は来秋に予定されている健康保険証廃止だと思います。ひも付けミスは原因分析や作業環境の改善を図ることによって解消されることを期待しますが、マイナカードを持たない人が不便な思いをする施策の軌道修正が図られない限り、「国民の不安」は払拭できないでしょう。今後、保険証廃止の時期について柔軟性が示されれば、不安払拭につながると思います』、「個情委は従来、マイナンバーやマイナカードの利用範囲の拡大などについて、円滑な制度運用のための監督はしても、意見表明は行っていません。個情委には個人情報保護法上は行政機関に命令する権限がないとはいえ、そうした権限がないからこそ、政府に対してざっくばらんに意見を言えばいい。マイナカード利用拡大の懸念に対応して円滑な運用を目指すのは、個情委ではなくデジタル庁や総務省の仕事のはずです」、「マイナカードを持たない人が不便な思いをする施策の軌道修正が図られない限り、「国民の不安」は払拭できないでしょう。今後、保険証廃止の時期について柔軟性が示されれば、不安払拭につながると思います」、なるほど。

第三に、8月18日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「だから躍起になってマイナンバーカードを作らせようとする…日本を"デジタル後進国"にした本当の原因 民間ではプラスチックのカードは姿を消しつつあるのに」を紹介しよう』、興味深そうだ。
https://president.jp/articles/-/72900?page=1
・『「我が国がデジタル後進国だったことにがく然」  健康保険証とマイナンバーカードを紐付けして「マイナ保険証」に一体化する政府の姿勢がぐらついている。来年秋に現行の健康保険証を廃止するという政府方針に、野党のみならず与党内からも批判の声が上がり、岸田文雄首相はいったん「廃止延期」に含みをもたせるような発言をした。ところが8月4日に開いた記者会見では、不安払拭に努力するとしたうえで、廃止の方針は当面維持する姿勢を示した。なぜ、そこまで健康保険証廃止にこだわるのか。政府のデジタル化が遅れているのは健康保険証のせいなのか。 「なぜデジタル化を急いで進めるのか」。会見で岸田首相自身がこう説明した。 「国民への給付金や各種の支援金における給付の遅れ、感染者情報をファクスで集計することなどによる保健所業務のひっ迫、感染者との接触確認アプリ導入やワクチン接種のシステムにおける混乱。欧米諸国や台湾、シンガポール、インドなどで円滑に進む行政サービスが、我が国では実現できないという現実に直面し、我が国がデジタル後進国だったことにがく然といたしました」』、「「なぜデジタル化を急いで進めるのか」。会見で岸田首相自身がこう説明・・・「国民への給付金や各種の支援金における給付の遅れ、感染者情報をファクスで集計することなどによる保健所業務のひっ迫、感染者との接触確認アプリ導入やワクチン接種のシステムにおける混乱。欧米諸国や台湾、シンガポール、インドなどで円滑に進む行政サービスが、我が国では実現できないという現実に直面し、我が国がデジタル後進国だったことにがく然といたしました」、気付くのが遅過ぎる。
・『なぜ保険証は廃止で免許証は継続なのか  コロナウイルス蔓延下で行政が後手後手に回ったのは間違いない。だが、保険証を廃止してマイナ保険証を普及させれば、こうした問題は解決するのだろうか。様々な個人情報をマイナンバーカードに紐付けて国が一元管理しなければ、そうした行政のデジタル化は進まないのか。 岸田首相はさらにこう語った。 「私たちのふだんの暮らしでは、免許証やパスポートが、身元確認の役目を果たします。では、顔が見えず、成りすましも簡単なオンラインの世界で、身元確認や本人確認をどうするのでしょうか。その役目を担うのが電子証明書を内蔵しているマイナンバーカードです。それゆえに、マイナンバーカードは『デジタル社会のパスポート』と呼ばれています」 ということは、成りすましを防ぐために保険証をマイナ保険証に切り替えようとしているということなのか。マイナンバーカードは「便利だ」から作った方がいい、というのがこれまでの説明ではなかったか。 本人確認というのなら、真っ先に運転免許証やパスポートと一体化すればいい。運転免許証は紐付ける方針だが、免許証は廃止されない方向だ。なぜ保険証は廃止で免許証は存続なのか、岸田首相の説明では分からない。国政選挙の投票所で本人確認に使えば、成りすましは防げる。その方が重要ではないか』、「なぜ保険証は廃止で免許証は存続なのか、岸田首相の説明では分からない」、なるほど。
・『いきなり紐付けようとしたから大混乱が起きている  そもそもマイナンバー、つまり個人番号は日本に在住している人はすでに全員に割り振られている。日本に在住する外国人も番号を持っている。デジタル化の前提である個人番号は全員に行き渡っているのだ。マイナンバーカードを作るかどうかは任意だが、番号は全員が持っているわけだ。 また、銀行口座を開設する際や既存の口座でもマイナンバーの届出が義務付けられている。つまり、マイナンバーと銀行口座は紐付けられている。税務申告でもマイナンバーを提出することになっていて、すでにかなりの個人情報はデジタルでつながっていると考えていい。ではなぜ、健康保険証の紐付けがうまくいかないのか。 問題は、いきなりマイナンバーカードと健康保険証を紐付けようとしたために、大混乱が生じていることだ。もともと健康保険の加入者からマイナンバーの提出を受けて、健康保険組合などがマイナンバーと保険証番号を並列して保有する作業を先行していれば、こんな混乱は起きなかったに違いない』、「もともと健康保険の加入者からマイナンバーの提出を受けて、健康保険組合などがマイナンバーと保険証番号を並列して保有する作業を先行していれば、こんな混乱は起きなかったに違いない」、なるほど。
・『霞が関は「普及率向上」に必死で、本来の目的を見失っている  では、なぜそんなに急いで保険証とカードを紐付ける必要があったのか。岸田首相は会見で「なぜ、マイナカードの早期普及が必要か」と自ら問いを掲げ、こう続けた。「それは、多様な公的サービスをデジタル処理するための公的基盤を欠いていたことが、コロナのときのデジタル敗戦の根本的な原因だったと、政府全体で認識したからです」としている。マイナンバーではなく、カードがないから行政サービスができない、というのだ。 今回の混乱について、岸田首相の側近のひとりは、「マイナンバーカードの普及が目的化してしまったことが、今の混乱につながってしまった」と唇をかむ。霞が関の官僚は「目標」が設定されるとその達成に邁進する傾向がある。美徳ではあるが、一方で本来の目的を履き違えることにつながりかねない。今、総務省やデジタル庁が必死になるのは、マイナンバーカードの「普及率」向上であって、本来の目的であるデジタル化による行政コストの削減ではない。 血税から個人に2万円分のポイントを配ってでもカードを作らせようとした愚策を見てもそれがわかる。クレジットカード会社が入会時にポイントを配るのはカードを作ってもらえばカード会社の利益になるからだ。政府はマイナカードを普及させることで、どうやって2万円を回収しようと考えているのか』、「政府はマイナカードを普及させることで、どうやって2万円を回収しようと考えているのか」、どう考えても合理的な説明は困難だ。
・『通院を「不便」にしてカード取得者を増やす狙い  マイナンバーカードの普及率が焦点であることは、官僚が原稿を用意したであろう岸田首相の会見発言にも表れている。「国民の皆様の御協力によって、8904万枚、普及率は70パーセントを超えています」と胸を張ったのだ。実際には死亡した人の取得枚数もカウントする一方で、人口は最新を使っていたという「粉飾まがい」も表面化した。何しろ普及率を高くすることが大事だからだ。 おそらく、保険証廃止は、マイナンバーカードを普及させるための「切り札」なのだろう。住民票がコンビニで取れるのは便利には違いないが、せいぜい年に何回かの話。市役所に行って取るのと大差ない。ところが病気になるたび、あるいは通院している人なら、月が変わるたびに提示しなければならない健康保険証が廃止されるとなれば、マイナンバーカードを作らざるを得なくなる。つまり、「便利だから」ではなく、「不便になるのは困るから」カードを作る人が出る。政府はそれを狙っているのだろう』、「健康保険証が廃止されるとなれば、マイナンバーカードを作らざるを得なくなる」、「「便利だから」ではなく、「不便になるのは困るから」カードを作る人が出る。政府はそれを狙っているのだろう」、なるほど。
・『2016年に登録した人のカードが有効期限を迎える  ではなぜ、2024年秋に廃止なのか。 実は、現在のマイナンバーカードには有効期限がある。カード発行から10回目の誕生日を過ぎると使えなくなる。カードが発行され始めたのは2016年1月なので、早ければ2025年1月以降、有効期限が来るカードが出始めるわけだ。更新手続きをしなければ無効になるので、当然、普及率に影響する。せっかく2万ポイントを配って普及率を上げたのに、期限が切れて失効する人が増えては、普及率は再び低下し、これまでの努力が水泡に帰す。だから、マイナンバーカードを「絶対に必要なもの」にしてしまおうということではないか。 そもそも、デジタル化の目的は何だったのだろうか。菅義偉氏が首相としてデジタル庁の設置を推し進めた時のキャッチフレーズは「縦割りを打破する」だった。 コロナ下の帰国に際してはワクチン接種証明などを事前に登録する「Visit Japan Web」が作られた。ひとつのアプリで全てが終わり、縦割り打破になるはずだった。ところが、羽田空港の「検疫」ではアプリに表示された「QRコード」を機械で読み取るのではなく、正常に登録されたことを示す「緑色」をずらっと並んだ係員が「目視」するというなかなかのデジタル後進国ぶりが繰り広げられていた。数が少ない機械を通すと長蛇の列になるのを避けるための「現場対応」だったのだろう。今は、接種証明が不要になって、「検疫」システムはアプリから削除された』、「せっかく2万ポイントを配って普及率を上げたのに、期限が切れて失効する人が増えては、普及率は再び低下し、これまでの努力が水泡に帰す。だから、マイナンバーカードを「絶対に必要なもの」にしてしまおうということではないか」、なるほど。
・『入国の手続きですら「ワンストップ」にはならなかった  「税関」では、デジタル申告よりも、機内で書いた手書きの申告書を渡す方が早く手続きを終えられる、という状態が今でも続いている。 帰国時の「入国審査」は独自のデジタル化が進み、パスポートを読み取り機に置いて顔認証するだけでゲートが開くようになった。便利になったが、結局、検疫(厚労省)、税関(国税庁)、入国審査(法務省)という縦割り対応は変わっていない。ひとつのQRコードで一度に全てが終わるというワンストップには結局ならなかったのだ。さらに最近は、農林水産省が所管する動物検疫や植物検疫も厳しくなった。もちろん空港自体は国土交通省だ。日本の役所の縦割りの縮図である国際空港の姿はデジタル化でも一向に変わっていない。 本来は行政の縦割りを打破し、手続きが効率化するはずだった国のデジタル化。それがいつの間にかカードを普及させないとデジタル化は進まないという不思議な話になっている。そうこうする間に、民間ではプラスチックのカードはどんどん姿を消しつつある』、「検疫(厚労省)、税関(国税庁)、入国審査(法務省)という縦割り対応は変わっていない。ひとつのQRコードで一度に全てが終わるというワンストップには結局ならなかったのだ」、「本来は行政の縦割りを打破し、手続きが効率化するはずだった国のデジタル化。それがいつの間にかカードを普及させないとデジタル化は進まないという不思議な話になっている。そうこうする間に、民間ではプラスチックのカードはどんどん姿を消しつつある」、同感である。

第四に、8月27日付け日刊ゲンダイ「厚労省が満を持して出した「保険証廃止で最大108億円コスト減」の“怪しい試算”」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/328149
・『集中企画・マイナ狂騒(42)  来秋に予定されている健康保険証の廃止をめぐり、厚労省は24日、廃止がコスト削減につながるとの試算を発表した。試算は社会保障審議会医療保険部会で示されたもので、保険証廃止によって「最大108億円のコスト減になる」との結果を示している。しかし、この試算は「こんなのアリ?」と首をかしげたくなるほど、酷いシロモノだ。 厚労省が出したのは〈保険証の廃止に伴う削減コスト(ごく粗い試算)〉。自営業者らが加入する国民健康保険、会社員とその家族などが加入する被用者保険、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度について、現行の保険証にかかるコストと、保険証廃止後のコストを比較した。 保険証廃止後は、マイナ保険証を持たない被保険者には「資格確認書」が、マイナ保険証の利用者にはマイナ非対応の医療機関で保険診療を受ける際に必要な「資格情報のお知らせ」が配られる。つまり、廃止後のコストとは、「資格確認書」の発行と、「お知らせ」の送付にかかる手間とカネだ。 試算によれば、マイナ保険証の利用登録率が現在の52%で推移した場合、保険証廃止に伴うコスト減は76億~82億円。利用登録が進んで65~70%に達した場合は、100億~108億円が削減される見込みだという。 しかし、25日の立憲民主党の国対ヒアリングでは、試算の“甘さ”を指摘する声が相次いだ。長妻昭政調会長は「(現行の保険証を)廃止すると、問い合わせや管理など、膨大なヒト・モノ・カネがかかるといわれているが、そのコストが(試算に)入っているのか」と疑問を呈した。 厚労省の担当者は「先生方からコスト試算を早く出すようにというご要請もあり、一定の仮定を置いた上で試算した」と説明。問題なのは、この「一定の仮定」だ。 厚労省は試算の前提として、「資格確認書」の印刷製本費を65円、マイナ保険証と一緒に携行して使う「資格情報のお知らせ」を10円と、異常に安く設定している』、「厚労省は試算の前提として、「資格確認書」の印刷製本費を65円、マイナ保険証と一緒に携行して使う「資格情報のお知らせ」を10円と、異常に安く設定している」、なるほど。
・『コスト削減額を大きく見せるためにムリな「仮定」を設定?  さすがに、長妻氏が「『お知らせ』が10円ということは単なる紙ペラ。本当に紙で配るのか」と問うと、厚労省は「資格確認書より簡易なものになる」と明言を避けた。一方、「『お知らせ』がカードになる可能性もある?」との問いには、「可能性はいろいろあると思います」と否定しなかった。 厚労省は、コスト削減額を大きく見せるために、ムリな「仮定」を設定している疑いが強い。 「お知らせ」はマイナ保険証と一緒に持ち歩くことが想定される。紙だと不便だから、カードのような形式がベターなのは言うまでもない。厚労省の試算が前提にしている「1枚10円」よりも割高になる可能性がある。 問題は単価だけじゃない。厚労省は「お知らせ」を被用者保険の加入者には配らないことを前提にしているのだ。 ヒアリングで山井和則衆院議員が「『お知らせ』が被用者保険の加入者には配られないのはなぜ」とただしたところ、厚労省は「送らない前提で試算したが、政策がそうなるわけではない」と釈明。被用者保険の加入者の大半がマイナ保険証に対応した医療機関に来院しているとして、「それを含めて考えなければいけない」と言い繕った。 「お知らせ」をもらえなければ、マイナ非対応の医療機関で保険医療が受けられない可能性がある。厚労省は「切り捨てるつもりはない」と強弁したが、試算の段階で被用者保険の加入者に「『お知らせ』を配らない」と仮定すること自体、おかしな話ではないか。 改めて山井衆院議員がこう言う。 「試算は他にも問題があります。現行の保険証の発行にかかるコストは235億円と推計されていますが、積算根拠は今のところ不明です。また、マイナ保険証と資格確認書の『ダブル持ち』が認められた要介護高齢者や障害者など『要配慮者』については、約200万人に役所窓口へ来てもらい、資格確認書を申請してもらう計算になります。そうした手間やコストを考えれば、現行の保険証を残しつつデジタル化を進めていく方がいい」 健康保険証を人質に取り、マイナ保険証を無理に普及させようとするから、いろんな綻びが出る。やはり、保険証廃止の撤回しかない』、「そうした手間やコストを考えれば、現行の保険証を残しつつデジタル化を進めていく方がいい」 健康保険証を人質に取り、マイナ保険証を無理に普及させようとするから、いろんな綻びが出る。やはり、保険証廃止の撤回しかない」、その通りだ。 
タグ:マイナンバー制度 (その6)(注目の人 直撃インタビュー 保団連会長が警鐘「保険証廃止を強行すれば閉院ラッシュ 地域医療は崩壊します」、だから躍起になってマイナンバーカードを作らせようとする…日本を"デジタル後進国"にした本当の原因 民間ではプラスチックのカードは姿を消しつつあるのに、厚労省が満を持して出した「保険証廃止で最大108億円コスト減」の“怪しい試算) 日刊ゲンダイ「注目の人 直撃インタビュー 保団連会長が警鐘「保険証廃止を強行すれば閉院ラッシュ、地域医療は崩壊します」」 「オンライン資格確認がうまくいかず、患者が列をつくり、時間も手間もかかる。スタッフに対しクレームも出る。医療情報は古い上に、他人の情報かもしれないと考えると診療では怖くて使えない。マイナ保険証はほとんど活用されていないのが実態です」、「必発のトラブルが3つあります・・・1つはマイナ保険証へのひも付けの誤りによる危険です。重大な医療事故につながりかねません。 2つ目は、資格者全員に交付する保険証と違い、マイナ保険証や資格確認書は申請主義なので、どうしても申請漏れや遅れが生じ、保険資格情報の誤りが避けられないことです。3つ目は、オンラインにつきもののシステム障害の発生リスクは当然あります」、なるほど。 「これまでは患者から保険証の提示がない場合、窓口では10割の負担を求め、後で資格が確認できれば、差額を返金し、そうでなければそのまま、という運用をしてきた。病院と患者の間でコンセンサスがあったのです。医従事者と患者の信頼関係まで壊れかねない事態です」、 「マイナ保険証の普及を前提に、資格確認書の交付はごくわずかと想定し、申請に基づいて毎年交付としていました。ところが、人口の半分近くに送付となると、そうはいかない。毎年でなく、保険証に準じた期間にするとか、職権で全件交付という案も浮上しています。これでは、ほとんど保険証と変わりません。保険証を廃止する意味は薄らいでいる」、その通りだ。 「昨年10月のアンケートによると、セキュリティーへの懸念や経済的負担などの理由で15%が「対応できない」と答え、10%が閉院を検討すると回答しました。資格確認システムの導入という、医療とは無関係な理由から病院を閉じるのは、医療従事者にとって忸怩たる思いだと思います。 Q:4月からの義務化による閉院は起きたのですか。 A:全国の地方厚生局に提出された保険医療機関の廃止数を見ると、今年4月は約1100件に上っています。少なくとも昨年5月以降で最多となっています。4月からのオンライン義務化の影響も考えられます。予想以上に大きな影響だ。「マイナ保険証では、機微に富む情報がずさんに扱われ、地域医療の崩壊にもつながりかねない。保険証廃止の撤回に向けて引き続き奮闘します」、その通りだ。 日刊ゲンダイ 實原隆志氏による「マイナひも付けミス「初歩的トラブル続出に驚いた」…情報法の専門家が突きつける数々の課題」 「法的な課題以前の初歩的なトラブルが相次いだことには正直、驚きを禁じ得ませんでした」、なるほど。 「ドイツの場合、納税者番号とどの個人情報がひも付くか、しっかり法律の中で定義されています。一方、日本はマイナンバーとどの個人情報をひも付けるかの定義がなく、ドイツに比べて規律の緩さが目立ちます。ドイツの運用方法が柔軟性に欠くとの批判はあり得ますが、番号制度に対する懸念を払拭する点では参考に値すると思います」、「ドイツでは「これは違憲だ」と主張している機関が制度を監督するので、制度運用に対する厳格さは担保されています」、なるほど。 「個情委は従来、マイナンバーやマイナカードの利用範囲の拡大などについて、円滑な制度運用のための監督はしても、意見表明は行っていません。個情委には個人情報保護法上は行政機関に命令する権限がないとはいえ、そうした権限がないからこそ、政府に対してざっくばらんに意見を言えばいい。マイナカード利用拡大の懸念に対応して円滑な運用を目指すのは、個情委ではなくデジタル庁や総務省の仕事のはずです」、 「マイナカードを持たない人が不便な思いをする施策の軌道修正が図られない限り、「国民の不安」は払拭できないでしょう。今後、保険証廃止の時期について柔軟性が示されれば、不安払拭につながると思います」、なるほど。 PRESIDENT ONLINE 磯山 友幸氏による「だから躍起になってマイナンバーカードを作らせようとする…日本を"デジタル後進国"にした本当の原因 民間ではプラスチックのカードは姿を消しつつあるのに」 「「なぜデジタル化を急いで進めるのか」。会見で岸田首相自身がこう説明・・・「国民への給付金や各種の支援金における給付の遅れ、感染者情報をファクスで集計することなどによる保健所業務のひっ迫、感染者との接触確認アプリ導入やワクチン接種のシステムにおける混乱。 欧米諸国や台湾、シンガポール、インドなどで円滑に進む行政サービスが、我が国では実現できないという現実に直面し、我が国がデジタル後進国だったことにがく然といたしました」、気付くのが遅過ぎる。 「なぜ保険証は廃止で免許証は存続なのか、岸田首相の説明では分からない」、なるほど。 「もともと健康保険の加入者からマイナンバーの提出を受けて、健康保険組合などがマイナンバーと保険証番号を並列して保有する作業を先行していれば、こんな混乱は起きなかったに違いない」、なるほど。 「政府はマイナカードを普及させることで、どうやって2万円を回収しようと考えているのか」、どう考えても合理的な説明は困難だ。 「健康保険証が廃止されるとなれば、マイナンバーカードを作らざるを得なくなる」、「「便利だから」ではなく、「不便になるのは困るから」カードを作る人が出る。政府はそれを狙っているのだろう」、なるほど。 「せっかく2万ポイントを配って普及率を上げたのに、期限が切れて失効する人が増えては、普及率は再び低下し、これまでの努力が水泡に帰す。だから、マイナンバーカードを「絶対に必要なもの」にしてしまおうということではないか」、なるほど。 「検疫(厚労省)、税関(国税庁)、入国審査(法務省)という縦割り対応は変わっていない。ひとつのQRコードで一度に全てが終わるというワンストップには結局ならなかったのだ」、 「本来は行政の縦割りを打破し、手続きが効率化するはずだった国のデジタル化。それがいつの間にかカードを普及させないとデジタル化は進まないという不思議な話になっている。そうこうする間に、民間ではプラスチックのカードはどんどん姿を消しつつある」、同感である。 日刊ゲンダイ「厚労省が満を持して出した「保険証廃止で最大108億円コスト減」の“怪しい試算”」 「厚労省は試算の前提として、「資格確認書」の印刷製本費を65円、マイナ保険証と一緒に携行して使う「資格情報のお知らせ」を10円と、異常に安く設定している」、なるほど。 「そうした手間やコストを考えれば、現行の保険証を残しつつデジタル化を進めていく方がいい」 健康保険証を人質に取り、マイナ保険証を無理に普及させようとするから、いろんな綻びが出る。やはり、保険証廃止の撤回しかない」、その通りだ。
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マイナンバー制度(その5)(中国にマイナンバーと年金情報が「大量流出」していた…厚労省が隠蔽し続ける「不祥事」の全容、「年金の申告書」をスキャンして中国に「丸投げ」…?日本年金機構がひた隠す「ヤバすぎる個人情報流出」の実態とトップが取材で語った「虚飾のストーリー」) [経済政策]

マイナンバー制度については、本年6月15日に取上げた。今日は、(その5)(中国にマイナンバーと年金情報が「大量流出」していた…厚労省が隠蔽し続ける「不祥事」の全容、「年金の申告書」をスキャンして中国に「丸投げ」…?日本年金機構がひた隠す「ヤバすぎる個人情報流出」の実態とトップが取材で語った「虚飾のストーリー」)である。第一、第二の記事は驚きのスクープである。なお、明日もマイナンバー制度を取上げる予定である。

先ずは、7月26日付け現代ビジネスが掲載した年金ジャーナリストの岩瀬達哉氏による「中国にマイナンバーと年金情報が「大量流出」していた…厚労省が隠蔽し続ける「不祥事」の全容」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/112337?imp=0
・『官僚が嘘をついても驚かない時代になってしまった。だが、膨大な数の個人情報が中国に流出した大事件を、彼らは巧妙に隠蔽している。審議会の中で、外で、取材を重ねた筆者がすべてを明かそう』、興味深そうだ。
・『隠蔽され続ける不祥事  「改正マイナンバー法」が成立した6月2日以降も、マイナンバーカードをめぐるトラブルが、立て続けに公表されている。 健康保険証と一体化した「マイナ保険証」に、他人のマイナンバーが登録されていたり、マイナンバーと紐づけた公金受取口座が、他人や家族名義だったケース。 さらには他人の年金の記録が紐づけられ、個人情報が漏洩していたほか、別人の顔写真がカードに貼られていたなど、惨憺たる状況だ。 しかし法案成立後に、それまで隠していたトラブルを一気に公表するのは、霞が関でよく使われる手法である。 法律が成立したあととなれば、うるさく騒がれても痛くもかゆくもない。じっと頭を下げていれば、やり過ごせるというわけだ。 だが、このマイナンバーについて、今回以上に深刻な不祥事が起きているにもかかわらず、事の真相を厚生労働省は隠蔽し続けている。 厚生年金の受給者のマイナンバーや個人情報―そこには年収情報さえ含まれる―が大量に、しかも中国のネット上に流出した事案である』、「厚生年金の受給者のマイナンバーや個人情報―そこには年収情報さえ含まれる―が大量に、しかも中国のネット上に流出した事案」、これは大変なことだ。
・『国会での虚偽答弁の連発  わたしは、旧社会保険庁の杜撰な業務運営によって、5095万件もの年金記録が持ち主不明となった「年金記録問題」が発覚した2007年、社会保険庁を監視する「年金業務・社会保険庁監視等委員会」の委員に任命された。 その後、社保庁を解体し、あらたに日本年金機構を設立するにあたり、同設立委員会の委員に就任。引き続き'21年12月まで日本年金機構を「調査審議」する「社会保障審議会年金事業管理部会」の委員をつとめてきた。 日本年金機構が業務委託した事業者(SAY企画)から、厚生年金受給者のマイナンバーのほか、住所、電話番号などの個人情報、さらには所得情報までが中国のネット上に流出したのは、わたしが年金事業管理部会の委員在任中のことだ。 この流出問題を調査する「検証作業班」が、同管理部会の中に設置された際、わたしも4人の検証委員のひとりとして調査にあたってきた。 「検証作業班」での調査は約1年半におよび、その過程で判明したことは、機構と厚労省年金局が国権の最高機関である国会で、虚偽答弁を繰り返していたという驚くべき事実だった。 日本年金機構と年金局は、「虚構のストーリー」と「欺瞞の論理」で国会を欺き、国民を騙し続けていたのである。その犯罪的行為を、事実をもって集中連載で明らかにしていくことにする。 ただし、委員時代に課せられていた国家公務員法の守秘義務規定は遵守していることをあらかじめお断りしておく。 すべてのはじまりは、'17年12月31日の大晦日だった。 この日、日本年金機構の「法令等違反通報窓口」に2通のメールが届いた』、「日本年金機構と年金局は、「虚構のストーリー」と「欺瞞の論理」で国会を欺き、国民を騙し続けていたのである。その犯罪的行為を、事実をもって集中連載で明らかにしていくことにする」、なるほど。
・『メールの中身は、まさかの…  「最近中国のデータ入力業界では大騒ぎになっております。 『平成30年分 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書』の大量の個人情報が中国のネットで入力されています。普通の人でも自由に見られています。一画面に受給者氏名、生年月日、電話番号、個人番号(マイナンバー)、配偶者氏名、生年月日、個人番号、配偶者の年間所得の見積額等の情報が自由に見られます。 誰が担当しているかはわかりませんが、国民の大事な個人情報を流出し、自由に見られても良いものでしょうか? ネットからハードコピーを取りましたが、アップできませんでした。残念です。 対策が必要と思います。 宜しくお願い致します」 この23分後、通報者は「念のため、(アップできなかった)ハードコピーの情報を送りいたします(原文ママ)」と前書きしたのち、年金受給者の氏名、マイナンバーなど15項目にわたる個人情報を書き写した2通目のメールを送信している。 ここで通報者が言っている「平成30年分 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」というのは、年金の受給者が日本年金機構に提出した確定申告書類の一種である。 '17年に大幅な税制改正があったため、日本年金機構では翌年の厚生年金から所得税などを源泉徴収する「税額計算プログラム」を作り直す必要があった。そこで、厚生年金の受給者約3506万人のうち、課税が免除されている障害年金や遺族年金などの受給者を除いた約770万人にプログラムの作成に欠かせない「扶養親族等申告書」を送付し、指定のとおり記入したうえ返送するよう求めていた。 返送された「申告書」は、機構が業務委託契約を結んだSAY企画がプログラムへの入力をおこなうはずだった。ところがその業務を、中国のデータ処理会社に再委託していたのである(再委託の件数は、約501万件とされる)。 SAY企画による中国への再委託が発覚後、一連の処理に従事していた機構の梅林芳生・給付業務調整室長は、わたしに言った。 「1月4日の仕事はじめの日に、このメールのことを知って、たいへんな事態だというのですぐに動き出した」 そう、「通報メール」に記載されていたのは、すべて実在する年金受給者の正しい個人情報であった』、「厚生年金から所得税などを源泉徴収する「税額計算プログラム」を作り直す必要があった。そこで、厚生年金の受給者約3506万人のうち、課税が免除されている障害年金や遺族年金などの受給者を除いた約770万人にプログラムの作成に欠かせない「扶養親族等申告書」を送付し、指定のとおり記入したうえ返送するよう求めていた。 返送された「申告書」は、機構が業務委託契約を結んだSAY企画がプログラムへの入力をおこなうはずだった。ところがその業務を、中国のデータ処理会社に再委託していたのである(再委託の件数は、約501万件とされる)、なるほど。
・『特別監査の実施と事件の露呈  それを確認するや、このメールを印刷したペーパーには「取扱厳重注意」と「配付者限り」のスタンプが押され、日本年金機構の水島藤一郎理事長に報告されている。 その後の水島理事長と年金局の動きは、メールの隠蔽と都合のよい説明を作りだすための工作に費やされている。順を追って見ていくことにしよう。 '18年1月5日に水島理事長は、年金局と今後の対応策を協議。翌6日の土曜日には、抜き打ちでSAY企画への特別監査を実施した。 この時、SAY企画の切田精一社長は、契約に違反して中国大連市のデータ処理会社(大連信興信息技術有限公司)に「申告書」の入力作業を再委託していたと、あっさり認めている。 「申告書」の入力業務は個人情報を取り扱うため、機構では再委託を禁止している。にもかかわらず無断で、しかもよりによって中国への再委託をおこなっていたことに、水島理事長と年金局の幹部たちは震え上がったはずである。 特別監査から4日後の1月10日には、「機構の情報セキュリティー対策」を担当している日本IBMに依頼し、SAY企画へのさらなる立ち入り調査を実施。作業室やサーバー室などのシステム面を調べあげたのち、駆け足ながら2泊3日で中国の再委託先をも訪問させていた。 大晦日の「通報メール」から約3ヵ月後の、'18年3月20日、機構は謝罪会見を開き、SAY企画が「申告書」を中国に再委託するという不正を働いていたと公表した。 この謝罪内容を、政党機関紙の「しんぶん赤旗」が前日の19日にスクープし、NHKと共同通信も示し合わせたかのように報じたため、20日の朝から国会は混乱した。 「申告書」が中国に再委託されていたことを知って、年金受給者の個人情報が流出したのではないかと心配する国会議員の質問があいついだからだ』、「SAY企画の切田精一社長は、契約に違反して中国大連市のデータ処理会社(大連信興信息技術有限公司)に「申告書」の入力作業を再委託していたと、あっさり認めている。 「申告書」の入力業務は個人情報を取り扱うため、機構では再委託を禁止している。にもかかわらず無断で、しかもよりによって中国への再委託をおこなっていたことに、水島理事長と年金局の幹部たちは震え上がったはずである。 特別監査から4日後の1月10日には・・・日本IBMに依頼し、SAY企画へのさらなる立ち入り調査を実施。作業室やサーバー室などのシステム面を調べあげたのち、駆け足ながら2泊3日で中国の再委託先をも訪問させていた」、「大晦日の「通報メール」から約3ヵ月後の、'18年3月20日、機構は謝罪会見を開き、SAY企画が「申告書」を中国に再委託するという不正を働いていたと公表した」、なるほど。
・『なぜ氏名だけを切り出したのか  約10日間にわたった衆参両院での集中審議で、水島理事長は終始落ち着いた調子で答えている。 「中国の業者の監査をIBMとともに行っております。その結果でございますが、委託をしておりました内容は、いわゆる切り出しました氏名の入力でございました。加えまして、調査をいたしました結果、個人情報等の流出のおそれはないというふうに判断しております」(参議院予算委員会・3月20日) 厚労大臣官房の高橋俊之年金管理審議官もこう断言した。 「SAY企画は、入力業務の再委託を行っておりました。しかし委託した業務の中には、マイナンバーでございますとか住所でございますとか、さまざまな所得額でございますとか、そういうものは一切含んでいないものでございます」(衆議院総務委員会・3月22日) 彼らがこの日までに練り上げていたシナリオは、SAY企画が中国に再委託していたのは「申告書」そのものではなく、そこから切り出した「氏名とフリガナ」だけであり、年金受給者の個人情報もマイナンバーも流出していないというものだった。 ではなぜ、氏名だけを切り出したのか。 この質問を待っていた水島理事長は、滔々と述べている。 「SAY企画に確認をいたしましたところ、氏名の入力については、OCR(光学式文字読み取り装置)の読み取り精度が低いことから、これを補完するため再委託を実施したということであります。 そのため、入力作業に必要となる申告書の漢字氏名及び仮名氏名部分を、トリミングと言っておりますが、切り取った画像を再委託事業者に提供していたということでございます」(衆議院厚生労働委員会・3月28日) 「申告書」は先にも触れたように、「税額計算プログラム」を作成するための基礎資料である。 契約では、SAY企画が雇用したオペレーターが、記載された個人情報やマイナンバーを手打ちで入力し、プログラム化することになっていた。 ところがSAY企画は、オペレーターではなく、OCRを使って記載内容を読み取らせ、プログラムに流し込んでいた。 ただ、「氏名とフリガナ」だけがOCRで正確に読み取れなかったので、この部分だけを切り取って、中国に送り、向こうで入力させていたというのが、水島理事長の説明だ。 これが事実なら、個人情報は流出していないことになる。 しかし水島理事長の、この国会答弁は完全な虚偽である。なぜ筆者は、この答弁が完全な虚偽だと断言できるのか。その真相を、『 「年金の申告書」をスキャンして中国に「丸投げ」…?日本年金機構がひた隠す「ヤバすぎる個人情報流出」の実態とトップが取材で語った「虚飾のストーリー」』で明かそう』、「「氏名とフリガナ」だけがOCRで正確に読み取れなかったので、この部分だけを切り取って、中国に送り、向こうで入力させていたというのが、水島理事長の説明だ。 これが事実なら、個人情報は流出していないことになる。 しかし水島理事長の、この国会答弁は完全な虚偽である」、次に「「虚飾のストーリー」を見てみよう。

次に、7月26日付け現代ビジネスが掲載した年金ジャーナリストの岩瀬達哉氏による「「年金の申告書」をスキャンして中国に「丸投げ」…?日本年金機構がひた隠す「ヤバすぎる個人情報流出」の実態とトップが取材で語った「虚飾のストーリー」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/112340?imp=0
・『手続き上の問題が続出するマイナンバーだが、個人情報が漏れさえしなければ…という向きもあった。ところがそれは淡い願望に過ぎなかった。前編記事『中国にマイナンバーと年金情報が「大量流出」していた…厚労省が隠蔽し続ける「不祥事」の全容』では、日本年金機構の委託業者から中国のネット上に個人情報が流出した経緯、それを隠そうとする日本年金機構や厚生労働省の対応の顛末を報じた。彼らが隠していることを、本記事でさらに浮き彫りにしよう』、興味深そうだ。
・『理事長のウソ  まさか、国会で堂々と嘘を述べるなど、誰も想像すらできない。個人情報の流出をなかったことにしたかった、機構と年金局のひねり出した「虚構のストーリー」が、この説明だった。 では、なぜ、水島(藤一郎日本年金機構)理事長の説明が虚偽と断言できるのか。 「税額計算プログラム」の作成プロセスを検証すれば、機構と年金局の「虚構のストーリー」を簡単に見抜くことができる。 「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」の用紙。氏名やフリガナはもともと印字されている 上の写真の「申告書」には、あらかじめ機構が保有する前年の個人情報が一人ひとり印刷されている。当然、「氏名とフリガナ」も、大きなゴチック体で印刷されているのである。 受け取った年金受給者は、それら印刷内容に誤りや漏れがないかをチェックし、訂正や追加すべき事項があれば、指定の箇所に手書きで補正し、機構に送り返す。 たとえば生年月日が間違っていれば、二重線で消したのち、余白部分に正しい生年月日を記入するのだが、この余白の幅は、わずか5mm程度でしかない。 また、配偶者や扶養している親族に障害がある場合、「申告書」の裏面に設けられた「摘要欄」に必要事項を手書きで記入することになっている。 「記入の具体例」は、次のように記入するよう求めている。 「年金陽子は、身体障害者手帳(平成22年4月1日交付、2級)」 さらに別居している場合は、「年金陽子の住所は、東京都〇〇市△△ 〇丁目×番〇号」と記入するのである。 この「摘要欄」のスペースも「タテ2cm×ヨコ11cm」と限られていて、人によっては、びっしり手書き文字で埋まってしまう。 先の水島理事長の国会答弁は、ゴチック体の活字で大きくきれいに印刷された「氏名とフリガナ」のみが読み取れなかったとするものだ。ということは、わずか5mm程度の余白に訂正した数字や、「摘要欄」に「小さな手書き文字」で書き込まれたさまざまな個人情報は、OCRで正確に読み取れたことになる。 逆ならわかるが、ありえない話である。 百歩譲って、水島理事長が答弁したとおり、OCRでこれら手書きの文字が読み取れていたとしても、それだけではまだプログラムは作成できない。 プログラムの作成には、機構の「入力コード」を使い、厳格に定められた「入力位置」を守らなければならないからだ』、「個人情報の流出をなかったことにしたかった、機構と年金局のひねり出した「虚構のストーリー」が、この説明」、なるほど。
・『さらなる複雑な入力作業  上の図で示したように、平成30年の「申告書」の場合、プログラムの先頭には、まず「730」と入力することになっている。この数字は、「申告書」には記載されていないため、オペレーターによる手入力が必須となる。 ちなみに「7」は平成をあらわす入力コードで、「730」は平成30年の「申告書」であることを示している。 続けて「基礎年金番号」「年金コード」などの4項目の入力位置が設定されているが、この4項目は「入力不要項目」として、機構で処理することになっている。そのため、オペレーターは、空欄を意味するコンマを4つ打ち込むのである。 さらにこの4つの「入力不要項目」のあとに、「年金証書記号暗号番号」や「生年月日」などを入力するのだが、OCRで読み取っていたとしても、その数字をただ流し込めばいいというわけではない。 たとえば大正10年10月28日生まれの人は、機構の定めた「入力コード」に従い「3101028」と入力しなければならない。先頭の「3」は大正を示す「入力コード」で、昭和生まれは「5」、平成生まれは「7」を、それぞれの生年月日の先頭に配置するのが、プログラム作成のルールである。 このあとに続く、電話番号や申告書コードも「入力不要項目」として、コンマのみの入力となる。上の図で見ると、「申告書」の該当年である「730」(1)から10項目めに、はじめて配偶者のフリガナと漢字氏名を入力するのだが、前者は「半角文字」、後者は「全角文字」で打ち分けなければならない。 まして「摘要欄」に手書きで記入された住所と他の情報は、分離したうえ、住所は「住所欄」に、その他の情報は「扶養親族摘要欄」に別々に流し込まなければならない。 このような複雑な作業は、オペレーターが「申告書」の内容をひとつひとつ視認しながら入力しないことにはできないのである』、そんな高度な操作が「オペレーター」に出来るのだろうか。
・『「ソフトは廃棄された」  それでもなお、OCRでこの複雑な作業をこなしていたとするなら、少なくともOCRで読み込んだ数字を「入力コード」に転換するソフトや、入力不要項目をコンマに置き換えたり、その他の個人情報をプログラムの指定位置に正確に流し込める、複数のソフトが開発されていなければならない。 「税額計算プログラム」の担当部署である給付業務調整室の給付企画グループは、そんなソフトは確認していないと述べたあと、口を滑らしたことに気づいてか、慌ててこう弁解した。 「OCRで読み取らせていたとすれば、僕らが理解してないだけで、そういうプログラムを作ったんじゃないかと思います」 また、年金局の事業企画課の担当者は、SAY企画に特別監査で入った時には、すでにソフトは廃棄されていて、どのようなソフトだったかわからないと述べた。そして、下を向いたまま押し黙ってしまった。 存在しないソフトの確認などできない以上、苦し紛れに、こう語るしかなかったのだろう』、「年金局の事業企画課の担当者は、SAY企画に特別監査で入った時には、すでにソフトは廃棄されていて、どのようなソフトだったかわからないと述べた」、年金局も関与した証拠隠滅工作のようで、悪質極まる。
・『すべてのデータが流出  では、SAY企画は、何を中国に再委託していたのか。 「氏名とフリガナ」を切り出すソフトの存在すら示すことができないうえ、OCRで読み取ったとする多種多様な個人情報やマイナンバーを、プログラムの指定された位置に正確に流し込むことが不可能な以上、行きつく合理的結論はひとつしかない。 SAY企画は、「申告書」をスキャナーで画像データ化したのち、それをそっくりそのまま中国に丸投げしていたことになる。 この恐ろしい事実を隠蔽するため、「氏名とフリガナ」だけを切り出し、中国に送っていたという「虚構のストーリー」を捻り出していたわけだ。 国会での集中審議が一段落したあと、機構の理事長室を訪ねたわたしに、水島理事長はこう零していた。 「今回の件は、厚労省から機構に出向で来ているキャリアが悪い。彼らは、実務を知らないのでまともな判断ができない。機構のプロパー職員で、この業務の責任者であった福井隆昭(給付業務調整室長)の違反行為を、彼らは誰ひとりチェックできていない。 それをいいことに福井は、SAY企画の契約違反を承知で、業務開始のOKを出した。これは犯罪行為だ。福井には厳しく対応する。降格させる」 このあと、わたしは年金局の事業企画課に、福井室長へのヒアリングをセットするよう何度も要請したが実現しなかった。福井室長はまだ定年という年齢ではなかったが、'18年7月31日付で退職してしまったからだ』、「行きつく合理的結論はひとつしかない。 SAY企画は、「申告書」をスキャナーで画像データ化したのち、それをそっくりそのまま中国に丸投げしていたことになる。 この恐ろしい事実を隠蔽するため、「氏名とフリガナ」だけを切り出し、中国に送っていたという「虚構のストーリー」を捻り出していたわけだ」、「年金局の事業企画課に、福井室長へのヒアリングをセットするよう何度も要請したが実現しなかった。福井室長はまだ定年という年齢ではなかったが、'18年7月31日付で退職してしまったからだ」、ここまでやるかと驚くほど悪質な偽装工作だ。しかも、責任者を早期退職させるとは手は込んでいる。
・『果たすべき理事長の責務  先の理事長室での会話から約1週間後、水島理事長はわたしの携帯に電話をかけてきて、こう言った。 「昨日までは、まったく動けなかったが、今日は家で仮眠し、これから出かけるところだ。うしろから銃で撃たれてはたまらない。しかし冥土のみやげのつもりで頑張る」 いまにして思えば、国会で嘘をつき続けるという宣言であったのだろう。ある意味、気の毒な役回りを押し付けられていたわけだが、それを引き受けたということは、コンプライアンス意識を捨て去ったということでもある。 日本年金機構のトップの務めは、事案を正確に公表し、国民への注意喚起をはかり、制度への信頼性を高めるものでなければならない。 その義務を果たすことなく、年金官僚たちの保身と小心の手助けをしたことの罪は重い。まさに犯罪行為そのものだろう。 水島理事長は、このまま知らん顔を決め込み、頬かむりを続けるつもりなのか。 自宅を訪ね、何か言い分があれば伺うと伝えたものの、過去の虚偽答弁を繰り返すだけだった。(機構職員や年金局の官僚たちの役職は当時のままとした)』、「日本年金機構のトップの務めは、事案を正確に公表し、国民への注意喚起をはかり、制度への信頼性を高めるものでなければならない。 その義務を果たすことなく、年金官僚たちの保身と小心の手助けをしたことの罪は重い。まさに犯罪行為そのものだろう」、同感である。 
タグ:マイナンバー制度 (その5)(中国にマイナンバーと年金情報が「大量流出」していた…厚労省が隠蔽し続ける「不祥事」の全容、「年金の申告書」をスキャンして中国に「丸投げ」…?日本年金機構がひた隠す「ヤバすぎる個人情報流出」の実態とトップが取材で語った「虚飾のストーリー」) 現代ビジネス 岩瀬達哉氏による「中国にマイナンバーと年金情報が「大量流出」していた…厚労省が隠蔽し続ける「不祥事」の全容」 「厚生年金の受給者のマイナンバーや個人情報―そこには年収情報さえ含まれる―が大量に、しかも中国のネット上に流出した事案」、これは大変なことだ。 「日本年金機構と年金局は、「虚構のストーリー」と「欺瞞の論理」で国会を欺き、国民を騙し続けていたのである。その犯罪的行為を、事実をもって集中連載で明らかにしていくことにする」、なるほど。 「厚生年金から所得税などを源泉徴収する「税額計算プログラム」を作り直す必要があった。そこで、厚生年金の受給者約3506万人のうち、課税が免除されている障害年金や遺族年金などの受給者を除いた約770万人にプログラムの作成に欠かせない「扶養親族等申告書」を送付し、指定のとおり記入したうえ返送するよう求めていた。 返送された「申告書」は、機構が業務委託契約を結んだSAY企画がプログラムへの入力をおこなうはずだった。ところがその業務を、中国のデータ処理会社に再委託していたのである(再委託の件数は、約501万件とさ 「SAY企画の切田精一社長は、契約に違反して中国大連市のデータ処理会社(大連信興信息技術有限公司)に「申告書」の入力作業を再委託していたと、あっさり認めている。 「申告書」の入力業務は個人情報を取り扱うため、機構では再委託を禁止している。にもかかわらず無断で、しかもよりによって中国への再委託をおこなっていたことに、水島理事長と年金局の幹部たちは震え上がったはずである。 特別監査から4日後の1月10日には・・・日本IBMに依頼し、SAY企画へのさらなる立ち入り調査を実施。作業室やサーバー室などのシステム面を調べあげたのち、駆け足ながら2泊3日で中国の再委託先をも訪問させていた」、「大晦日の「通報メール」から約3ヵ月後の、'18年3月20日、機構は謝罪会見を開き、SAY企画が「申告書」を中国に再委託するという不正を働いていたと公表した」、なるほど。 「「氏名とフリガナ」だけがOCRで正確に読み取れなかったので、この部分だけを切り取って、中国に送り、向こうで入力させていたというのが、水島理事長の説明だ。 これが事実なら、個人情報は流出していないことになる。 しかし水島理事長の、この国会答弁は完全な虚偽である」、次に「「虚飾のストーリー」を見てみよう。 岩瀬達哉氏による「「年金の申告書」をスキャンして中国に「丸投げ」…?日本年金機構がひた隠す「ヤバすぎる個人情報流出」の実態とトップが取材で語った「虚飾のストーリー」」 「個人情報の流出をなかったことにしたかった、機構と年金局のひねり出した「虚構のストーリー」が、この説明」、なるほど。 そんな高度な操作が「オペレーター」に出来るのだろうか。 「年金局の事業企画課の担当者は、SAY企画に特別監査で入った時には、すでにソフトは廃棄されていて、どのようなソフトだったかわからないと述べた」、年金局も関与した証拠隠滅工作のようで、悪質極まる。 「行きつく合理的結論はひとつしかない。 SAY企画は、「申告書」をスキャナーで画像データ化したのち、それをそっくりそのまま中国に丸投げしていたことになる。 この恐ろしい事実を隠蔽するため、「氏名とフリガナ」だけを切り出し、中国に送っていたという「虚構のストーリー」を捻り出していたわけだ」、 「年金局の事業企画課に、福井室長へのヒアリングをセットするよう何度も要請したが実現しなかった。福井室長はまだ定年という年齢ではなかったが、'18年7月31日付で退職してしまったからだ」、ここまでやるかと驚くほど悪質な偽装工作だ。しかも、責任者を早期退職させるとは手は込んでいる。 「日本年金機構のトップの務めは、事案を正確に公表し、国民への注意喚起をはかり、制度への信頼性を高めるものでなければならない。 その義務を果たすことなく、年金官僚たちの保身と小心の手助けをしたことの罪は重い。まさに犯罪行為そのものだろう」、同感である。
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インバウンド動向(その14)(観光競争力で初首位も、海外客再開に欠ける視点 忌避に偏見、受け入れ再開に反対の声が充満、成田空港が大混雑…訪日外国人から河野大臣のツイッターにクレーム殺到、「密漁」ツアーに勤しむ中国人観光客たち。トランクいっぱいに海産物を持ち去り…、「訪日客を受け入れできない」地方空港を襲う危機 「やりがい搾取」で空港スタッフ不足の超深刻) [経済政策]

インバウンド動向については、2020年10月17日に取上げた。これまでは「戦略」としたが、今回からは「動向」に変更した。今日は(その14)(観光競争力で初首位も、海外客再開に欠ける視点 忌避に偏見、受け入れ再開に反対の声が充満、成田空港が大混雑…訪日外国人から河野大臣のツイッターにクレーム殺到、「密漁」ツアーに勤しむ中国人観光客たち。トランクいっぱいに海産物を持ち去り…、「訪日客を受け入れできない」地方空港を襲う危機 「やりがい搾取」で空港スタッフ不足の超深刻)である。

先ずは、昨年6月3日付け東洋経済オンラインが掲載した経営コンサルタントの日沖 健氏による「観光競争力で初首位も、海外客再開に欠ける視点 忌避に偏見、受け入れ再開に反対の声が充満」を紹介しよう。1年前のやや古い記事である。
https://toyokeizai.net/articles/-/592965
・『岸田首相は先週、新型コロナウイルスの水際対策について、6月1日から1日あたりの入国者総数の上限を2万人に引き上げるとともに、10日から訪日外国人観光客の受け入れを再開すると表明しました。外国人観光客の受け入れは、約2年2カ月ぶりになります。 全国の観光地・観光関連業者は、この2年間コロナ禍で壊滅的な打撃を受けました。そこにようやく復活の光が差してきたわけです。しかし、コロナ対策の観点から慎重な対応を求める声もあり、この政策転換を歓迎する意見ばかりではないようです。 今回は、訪日外国人観光客の受け入れ再開に関する意見を確認したうえで、今後考えたい2つの視点を紹介しましょう』、興味深そうだ。
・『外国人観光客がいなくなって「コロナ様様」  岸田首相が訪日外国人観光客の受け入れ再開をしたところ、各方面から色々な意見が上がりました。観光客の回復を期待する観光関連業者は今回の政策転換を歓迎する一方、SNSやネット掲示板では慎重な意見や反対意見が多く見受けられました(Yahoo!ニュースのアンケートでは、70%以上が水際対策の緩和に「反対」)。 筆者がまず一般市民に取材したところ耳にしたのが、コロナ対策の観点から慎重な対応を求める意見でした。 「まだ毎日2万~3万人の新規感染者が出ており、コロナが完全には終息していません。時期尚早だと思います」(50代男性・会社員) 「ここまで日本でコロナの被害が小さかったのは、水際対策がうまく行ったからでしょう。それを一気に緩めると、欧米のような感染爆発が起こるのではないかと心配です」(30代女性・会社員) 「感染症法上の分類を2類から5類にするなど、国内の対策が先。いずれ訪日外国人観光客を受け入れることには反対しませんが、国内の対策を完了した後じっくり時間を掛けて進めることでよいのでは」(40代男性・自営) そして、コロナとは関係なく、そもそも訪日外国人観光客それ自体を歓迎しないという意見がたくさん聞かれました。) 「コロナ前はどこの観光地も外国人観光客でごった返して、ゆっくりできませんでした。私は旅行が好きなので、今回の受け入れ再開でまた旅行を楽しめなくなるのは残念です」(60代女性・主婦) 「外国人観光客はうるさいし、マナーが悪い。とくにお隣りの2カ国は最悪。治安だって確実に悪くなりますよね。この2年間、外国人観光客がいなくて、実に快適でした。大きな声では言えませんが、この点に関してはコロナ様様です」(40代男性・団体職員)』、こういう反「外国人観光客」の声はいつもあるようだ。
・『再び奈落の底に突き落とす?  さて、ここからは、今回あまり議論されていない2つの視点を紹介しましょう。 1つ目は、観光関連業者の怒りです。観光関連業者に取材したところ、今回の受け入れ再開に反対する声は皆無で、国内で反対意見が出ていることに憤っていました。 「この2年間、外国人観光客がいなくなって、われわれは壊滅的な打撃を受けました。私の周りでも耐えきれなくなって廃業した同業者がわんさかいます。借金が残って廃業できず、夜逃げしたという同業者もいます。こういった実情を少しでも知ったら、外国人観光客の受け入れ再開に軽々しく反対できないのではないでしょうか」(北陸の旅館経営者) 「今回の受け入れ再開で、ようやくトンネルの出口が見えてきました。再開に反対する人は、地獄から這い上がろうとしているわれわれに手を差し伸べるどころか、再び奈落の底に突き落とそうとしているわけです。よく『コロナは生命の問題だ』と言われますが、外国人観光客の受け入れもわれわれにとって死ぬか生きるかの問題なのです」(関東の旅行代理店経営者) コロナに関する議論では、よく「生命と経済を同列で比較するな」「経済よりもまず生命を優先せよ」と言われます。しかし、こと観光関連業者にとっては、コロナとその対策は生命と経済が渾然一体となった複雑な問題のようです。) また、「訪日外国人観光客に対し、日本人はかなり偏ったイメージを持っている」という指摘もありました。 「コロナ前に日本人のお客様から『外国人観光客が多くて接客とか大変でしょ?』とよく言われましたが、そんなことはありません。中国からの団体客のマナーはかなり改善していて、日本人と同じくらい。日本人と違ってちゃんとたくさん買ってくれるので、われわれにとってありがたい存在です。大切な外国人観光客を、偏ったイメージで排除しないで欲しいものです」(九州の土産物店経営者)』、「観光関連業者」はようやく待ちに待った「受け入れ再開」といったところのようだ。
・『観光立国は実現するのか  もう1つ決定的に欠落しているのが、観光立国という視点です。今回、受け入れ再開をどのように進めていくのか、詳細は未定です。ただ、5月27日の衆議院予算委員会で「訪日外国人観光客に誰がマスクを配るのか?」が論戦になったように、コロナ対策という視点が中心で、日本を観光立国にしようという長期的な視点はありません。 観光庁の和田浩一長官は3月18日、1年間の空白期間が生じている観光立国推進基本計画について、インバウンドの動向を見通すのが難しいことを理由に「もう少し感染状況が落ち着き、議論できるような状況の下で具体的な検討を進めていきたい」と述べました。その後も政府から観光立国に関する目立った発信はなく、お手上げ状態が続いています。 2006年に観光立国推進基本法が成立し、政府は観光立国推進基本計画に沿って施策を展開してきました。円安・近隣諸国の所得上昇といった追い風もあって、日本の旅行市場の市場規模は、コロナ前の2019年に27.9兆円に達しました。 ただ、観光産業が十分に成長し、「日本は観光立国だ」と胸を張れる状態になっているかというと、2019年の段階でも「まったく物足りない」というのが、率直な評価になるのではないでしょうか。 2019年の訪日外国人旅行者数は、過去最高となる3188万人でした。東日本大震災があった2011年を底に着実に増えてきましたが、世界最多のフランス8932万人はもちろん、アジアでも中国6573万人やタイ3992万人の後塵を拝しています。また、旅行市場に占めるインバウンド需要の割合は2割弱に過ぎません(2019年時点)。 先週5月24日、ダボス会議で有名な「世界経済フォーラム」が、観光地としてどれだけ魅力的か、世界各国の競争力を比較した調査結果を発表しました。日本は交通インフラの利便性や自然や文化の豊かさなどが評価され、総合順位で調査の開始以来、初めて世界1位になりました。日本は世界一の旅行市場になる潜在力がありながら、生かせていないのです』、「日本の旅行市場の市場規模は、コロナ前の2019年に27.9兆円に達しました。 ただ、観光産業が十分に成長し、「日本は観光立国だ」と胸を張れる状態になっているかというと、2019年の段階でも「まったく物足りない」というのが、率直な評価に」、「世界経済フォーラム」の「総合順位で調査の開始以来、初めて世界1位に」、「潜在力がありながら、生かせていないのです」、なるほど。
・『地方経済は観光産業が頼みの側面も  もちろん、オーバーツーリズムの問題やSDGsの要請などがあり、単純に訪日外国人観光客を増やせばよいというわけではありません。観光産業や地域の持続性を確保しつつ、いかに観光を中心にした国づくりをしていくかが問われています。 著名な未来学者ジョン・ネイスビッツは、『Global Paradox』(1994、佐和隆光訳『大逆転潮流』)で、「21世紀に観光が最大の産業になる」と予測しました。 とりわけ日本では、戦後の経済成長を支えた基幹産業がすっかり衰退し、観光産業に対する期待が高まっています。金融産業のある東京と自動車産業のある愛知・静岡・埼玉などを除く多くの地域では、雇用吸収力の大きい観光産業に地域の命運がかかっていると言って過言ではありません。 政府も観光関連業者も、そしてわれわれ国民も、コロナ対策にとどまらず、国家百年の計で観光について考え、訪日外国人観光客の受け入れ再開に臨みたいものです』、「コロナ対策にとどまらず、国家百年の計で観光について考え、訪日外国人観光客の受け入れ再開に臨みたいものです」、同感である。

次に、本年4月15日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「成田空港が大混雑…訪日外国人から河野大臣のツイッターにクレーム殺到」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/321556
・『コロナの水際緩和で外国人観光客が大挙して訪日しているが、彼らを出迎えるのはストレスフルな“おもてなし”だ。 3月末に訪日した筆者の友人、バングラデシュ人のハミド氏(65)は、インド経由で午後4時ごろに成田空港に到着した。ところが空港での検疫や入国審査で待たされて、六本木のホテルに到着したころにはとっくに午後9時を過ぎていた。続いて翌日も、同じようなことが起こった。 ハミド氏は自国の旅行代理店で購入した新幹線のクーポンをチケットに交換するため新宿駅を訪れたが、JRの「トラベルサービスセンター」ではまたも外国人専用の長蛇の列に並ばせられた。 高齢者にとって立ちっぱなしはつらいが、周囲には椅子もない。ハミド氏はさすがに「これだけ人が並んでいるのに、4つあるカウンターはなぜ2つしか開いていないの?」と声を上げた。同センターの奥にはカウンターに立たない職員たちが複数いたが、ハミド氏の目には「自分の仕事と関係なければ『見て見ぬふり』なのか」と映った。 通訳の知人も、成田空港の大混雑について「これでは日本のイメージが悪くなる」と心配するひとりだ。) 「成田空港は外国人の入国審査に4~5時間もかかっていました。ものすごい人数がいるのに、稼働している窓口は全部ではないのです」』、「成田空港は外国人の入国審査に4~5時間もかかっていました」、いくらなんでも時間がかかり過ぎだ。
・『「ファストトラックは何の意味もない」  3月6日、河野太郎デジタル大臣が<日本の空港での入国手続きの感想を聞かせて>と英語でツイートしたところ、外国人利用者からのありとあらゆる不満が殺到した。「3月5日の成田空港には500人程度が集まっていたが、入国カウンターは半分しか開いていなかった。時間のロスだし、ストレスがたまる」と、前述の知人のコメントを裏付ける発言もあった。 「スタッフの態度が無礼」「海外から来た人をバイ菌扱いするな」といった意見以外にも「私の旅で成田空港は最悪の部分だ」とするクレームもあった。 空港検疫はあらかじめアプリで検疫手続きの一部を済ませ、スムーズな入国を促す「ファストトラック」が導入されているが、4月4日に河野大臣に宛てられたのは「3時間以上も待たせるファストトラックは何の意味もない」との厳しい意見だった。 成田空港の審査管理部門に問い合わせると、「コロナ期間中は2カ所ある入国審査場の1つを閉じていたが、4月6日以降、人が多くなる午後の時間帯に2つ開けるようにした」とのこと。「観光立国とは名ばかり」の汚名返上となればいいが』、「3時間以上も待たせるファストトラックは何の意味もない」、その通りだ。「観光立国」らしくなるのはいつのことなのだろう。

第三に、7月20日付け日刊SPA!「「密漁」ツアーに勤しむ中国人観光客たち。トランクいっぱいに海産物を持ち去り…」を紹介しよう。
https://nikkan-spa.jp/1923960
・『日本政府観光局によると‘23年5月の訪日外客数は189万8900人と’19年比68.5%の回復を見せた。そんななか、早くも観光客の迷惑行為が全国で報告されている』、「観光客の迷惑行為が全国で報告」、こまったことだ。
・『観光バスで現れ、トランクいっぱいに海産物を持ち去る  漁業権が設定されている区域で“密漁”を行う中国人観光客が増えているという。6月中旬にも、沖縄でヤドカリ682匹を捕獲した観光客の逮捕が報じられた。取材班が訪れた千葉県の某海浜公園の近隣住民は話す。 「5月に潮干狩りの有料期間が終わってから一気に中国人が増えました。この時期になると毎年、観光バスが何台も来てたくさん降りてくるんです。牡蠣やホンビノス貝をバケツや網にいっぱい入れて持ち帰る姿をよく見ます。公園内のトイレでは潮干狩りで着ていた服を脱ぎ捨てる人も多く、清掃の人も困っているようです。あと、海産物をトランクに入れて公共バスで帰る人も多く、バスが水浸しになったり床に砂がばらまかれて大変だそうです」』、「5月に潮干狩りの有料期間が終わってから一気に中国人が増えました。この時期になると毎年、観光バスが何台も来てたくさん降りてくるんです」、「観光バスが何台も」これは明らかに行き過ぎだ。
・『「日本人も獲ってるし、問題ない」  小紅書では日本での「潮干狩りツアー」を募集する個人業者が 記者は観光客とみられる潮干狩り中の中国人を直撃。すると…… 「日本に住む友達に誘われて来た。1時間くらいでバケツ3杯分の牡蠣が採れた。ここは小紅書(中国のSNS)でも良く紹介されていて、今の時期は無料で入場出来るからとても人気。牡蠣が採れるポイントも紹介されているので、初めて来ても大量に採れるよ。あなたも欲しかったら分けてあげる。獲っちゃいけないもの? わからない。日本人も自由に採ってるし、問題ない」 中国のSNSを見ると、日本に住む個人ガイドが同海浜公園での潮干狩りツアーを開催し、参加者を募っていた。また、牡蠣が多く採れる「牡蠣島」と呼ばれるスポットにも多くの中国人の姿が。浅瀬には殻が散乱している箇所もあり危険に感じた。 公園を管轄する自治体に問い合わせたところ、やはり牡蠣島での採捕は禁止されていた。担当者は次のように話す。 「監視カメラや警察の見回りなどを行なっているが、基本的には来場者の善意に委ねておりなかなか厳しい」 自治体も有効な手がなく、頭を悩ませているようだ』、「採捕は禁止されて」いる「牡蠣島」は時々、取り締まりをするべきだろう。

第四に、7月28日付け東洋経済オンライン「訪日客を受け入れできない」地方空港を襲う危機 「やりがい搾取」で空港スタッフ不足の超深刻」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/689561
・『大分空港では大分県が仲介してJALの委託先のグラハン(注)職員を投入して韓国からの便を受け入れた。だが、鹿児島県庁の関係者は「海外エアラインの中には行政に泣きついてくるところもあるが、基本的にグラハンをどうするかは民間同士の契約の問題だ」と話す。それでも県は、グラハン業務の資格取得費用の一部を助成する制度を導入した。 南国交通では上限3000円だった資格手当を1万円に増やしたり、職員が利用できる空港リムジンバスの回数券を支給したりするなど、待遇改善に邁進している。社員寮の部屋をリニューアルし、シャワーのヘッドを高級品に取り替えるなど涙ぐましい努力も積み重ねている。 こうして2023年度は約20人の新規採用に結びついた。ただ、即戦力となる航空専門学校の卒業生はゼロ。「福岡などの専門学校で学んだ鹿児島県出身者が、鹿児島に戻ってこない」(有村部長)のだという』、処遇などに問題がありそうだ。
(注)グラハン:グランドハンドリング (Ground handling) 、航空輸送における空港地上支援業務のことをいう(Wikipedia)。
・『グラハン従業員の平均年収は326万円  国土交通省も対応に本腰を入れる。2023年2月に有識者による「持続的な発展に向けた空港業務のあり方検討会」を立ち上げ、グラハンの人手不足への対応を検討してきた。同検討会の資料によれば、コロナ禍の中で地上職員の離職者が相次ぎ、コロナ前に比べてグラハン作業員数は1~2割減った。航空専門学校への入学者も4割減っている。 有識者会議は6月、「現場で働く人の使命感などに甘え、『やりがい』の搾取を続けているような現状は、一刻も早く改善していかなければならない」などとする中間とりまとめを発表した。 「グラハンのコストを抑えようと、エアラインは業務を外注化し、必然的に待遇は悪くなっていった。今後も航空業界の人気から労働力の供給は見込まれるが、熟練スタッフの離職を止めるには待遇改善が必要。外国人労働者の受け入れも積極的に進めていくべきだ」 こう指摘するのは、桜美林大学の戸崎肇教授(交通政策が専門)だ。国交省の資料によれば、グラハン従業員の平均年収は326万円と、建設業の451万円と比べても見劣りがする。休憩所のトイレはいまだに和式、そもそも休憩スペースもなく、ターミナルのロビーのベンチで仮眠をとっているケースもあるという。) さらに構造的な問題もある。 グラハンの作業は、客室のドアの開け方から貨物の積み込み方に至るまで、作業手順や方法が細かく定められており、機種ごとはもちろんJAL、ANAでそれぞれのやり方がある。作業車両のボタンやレバーの位置も、それぞれの系列で異なっている。このため、前出の南国交通のグラハン職員は「JAL運送課」「ANA運送課」に分かれ、それぞれの系列の社内資格を取る必要がある。 離島路線は天候によってダイヤが乱れがちだが、時間に比較的余裕があるANA便担当者がJAL便の応援に入ることはできない。 この問題は国の有識者会議でも問題視され、「系列ごとに異なる資格者車両仕様等の見直し・業界ルールの整備(特に地方)」といった提言も検討会の中間とりまとめに盛りこまれた』、「グラハン従業員の平均年収は326万円と、建設業の451万円と比べても見劣りがする。休憩所のトイレはいまだに和式、そもそも休憩スペースもなく、ターミナルのロビーのベンチで仮眠をとっているケースもあるという」、こんな低賃金・酷い就業環境では、話にならない。しかも「グラハンの作業は、客室のドアの開け方から貨物の積み込み方に至るまで、作業手順や方法が細かく定められており、機種ごとはもちろんJAL、ANAでそれぞれのやり方がある。作業車両のボタンやレバーの位置も、それぞれの系列で異なっている。このため、前出の南国交通のグラハン職員は「JAL運送課」「ANA運送課」に分かれ、それぞれの系列の社内資格を取る必要がある」、不必要なほど分断されて、非効率な制度であるようだ。
・『待遇改善に国が責任を持つべき  福岡空港では同じスポット(駐機場)でJAL機とANA機が到着するたびに、それぞれの系列の作業車が遠く離れた駐車場からやってきていた。2021年7月からJAL・ANAで車両を共有化して、スポット周辺で待機する実験を行ったところ、国内線で最大18%、国際線で70%の走行距離を削減できたという。 「JALとANAはライバルとしてサービス水準や安全性向上を競ってきたが、福岡空港で共用化をやってみたら効果も出た。資格の統一や車両の共用化は積極的に進めてほしい」と国交省の担当者は話す。 航空業界はグラハンに特化した業界団体を今年8月に立ち上げて、資格や車両の共通化を含め議論を深めていく方針だ。 さらに、前出の戸崎教授は「日本が観光立国をうたい続けるのであれば、委託料の流れを透明化したうえで、グラハンスタッフの待遇改善などに国が責任を持つべきだ」とも指摘する。) 6月に政府がまとめた「経済財政運営と改革の基本方針2023」、いわゆる「骨太の方針」には、訪日外国人拡大に向けた航空需要回復の推進とともに、「空港におけるグランドハンドリング・保安検査体制の強化等を含めた航空・空港関連企業の経営基盤強化」が盛りこまれた。 グラハンスタッフの待遇改善は、もはや国策になっている。グラハン事業は羽田でも6割、地方空港ではすべてをエアライン系以外の地元企業が請け負っているケースが多い。グラハンを含む空港関連企業の強化は、直接地元企業にメリットがあるだけでなく、地方のインバウンド拡大の基盤にもなる。そのためには、グラハン委託料の値上げも喫緊の課題となるだろう』、「グラハンスタッフの待遇改善は、もはや国策になっている」、「グラハン委託料の値上げも喫緊の課題となるだろう」、なるほど。
・『業界、行政の意識改革が求められる  「これまで地方の首長は、海外のエアラインに頭を下げ、就航をお願いし、グラハン会社が人的にも金銭的にも無理をして受け入れてくれていた。いまの人手不足はそれに目をつぶってきた結果だ。委託料を引き上げることで、職員の給料も上げて、設備投資もできるようになる。外航の就航には費用もかかるが、毅然とやっていくべきだ」(国交省関係者) 「2030年訪日外国人客6000万人」を目標に掲げるなど、「数」を求めてきたのは国自身にほかならない。真の観光立国に向け、航空業界、行政を含めたすべての関係者の意識改革が求められる』、「真の観光立国に向け、航空業界、行政を含めたすべての関係者の意識改革が求められる」、「グラハン会社が人的にも金銭的にも無理をして受け入れてくれていた。いまの人手不足はそれに目をつぶってきた結果だ。委託料を引き上げることで、職員の給料も上げて、設備投資もできるようになる。外航の就航には費用もかかるが、毅然とやっていくべきだ」、同感である。
タグ:インバウンド動向 (その14)(観光競争力で初首位も、海外客再開に欠ける視点 忌避に偏見、受け入れ再開に反対の声が充満、成田空港が大混雑…訪日外国人から河野大臣のツイッターにクレーム殺到、「密漁」ツアーに勤しむ中国人観光客たち。トランクいっぱいに海産物を持ち去り…、「訪日客を受け入れできない」地方空港を襲う危機 「やりがい搾取」で空港スタッフ不足の超深刻) 東洋経済オンライン 日沖 健氏による「観光競争力で初首位も、海外客再開に欠ける視点 忌避に偏見、受け入れ再開に反対の声が充満」 こういう反「外国人観光客」の声はいつもあるようだ。 「観光関連業者」はようやく待ちに待った「受け入れ再開」といったところのようだ。 「日本の旅行市場の市場規模は、コロナ前の2019年に27.9兆円に達しました。 ただ、観光産業が十分に成長し、「日本は観光立国だ」と胸を張れる状態になっているかというと、2019年の段階でも「まったく物足りない」というのが、率直な評価に」、「世界経済フォーラム」の「総合順位で調査の開始以来、初めて世界1位に」、「潜在力がありながら、生かせていないのです」、なるほど。 「コロナ対策にとどまらず、国家百年の計で観光について考え、訪日外国人観光客の受け入れ再開に臨みたいものです」、同感である。 日刊ゲンダイ 姫田小夏氏による「成田空港が大混雑…訪日外国人から河野大臣のツイッターにクレーム殺到」 「成田空港は外国人の入国審査に4~5時間もかかっていました」、いくらなんでも時間がかかり過ぎだ。 「3時間以上も待たせるファストトラックは何の意味もない」、その通りだ。「観光立国」らしくなるのはいつのことなのだろう。 日刊SPA!「「密漁」ツアーに勤しむ中国人観光客たち。トランクいっぱいに海産物を持ち去り…」 「観光客の迷惑行為が全国で報告」、こまったことだ。 「5月に潮干狩りの有料期間が終わってから一気に中国人が増えました。この時期になると毎年、観光バスが何台も来てたくさん降りてくるんです」、「観光バスが何台も」これは明らかに行き過ぎだ。 「採捕は禁止されて」いる「牡蠣島」は時々、取り締まりをするべきだろう。 東洋経済オンライン「訪日客を受け入れできない」地方空港を襲う危機 「やりがい搾取」で空港スタッフ不足の超深刻」 処遇などに問題がありそうだ。 (注)グラハン:グランドハンドリング (Ground handling) 、航空輸送における空港地上支援業務のことをいう(Wikipedia)。 「グラハン従業員の平均年収は326万円と、建設業の451万円と比べても見劣りがする。休憩所のトイレはいまだに和式、そもそも休憩スペースもなく、ターミナルのロビーのベンチで仮眠をとっているケースもあるという」、こんな低賃金・酷い就業環境では、話にならない。 しかも「グラハンの作業は、客室のドアの開け方から貨物の積み込み方に至るまで、作業手順や方法が細かく定められており、機種ごとはもちろんJAL、ANAでそれぞれのやり方がある。作業車両のボタンやレバーの位置も、それぞれの系列で異なっている。このため、前出の南国交通のグラハン職員は「JAL運送課」「ANA運送課」に分かれ、それぞれの系列の社内資格を取る必要がある」、不必要なほど分断されて、非効率な制度であるようだ。 「グラハンスタッフの待遇改善は、もはや国策になっている」、「グラハン委託料の値上げも喫緊の課題となるだろう」、なるほど。 「真の観光立国に向け、航空業界、行政を含めたすべての関係者の意識改革が求められる」、「グラハン会社が人的にも金銭的にも無理をして受け入れてくれていた。いまの人手不足はそれに目をつぶってきた結果だ。委託料を引き上げることで、職員の給料も上げて、設備投資もできるようになる。外航の就航には費用もかかるが、毅然とやっていくべきだ」、同感である。
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政府の賃上げ要請(その7)(23年春闘「未曾有の賃上げ」は錯覚 現実は「未曾有の実質賃金下落」、「15%賃上げ」板金加工機の世界大手アマダの危機感 賃上げなくして日本の成長なし、ジョブ型 労働移動の促進で賃下げが増加?岸田政権「三位一体の労働市場改革」が愚策なワケ) [経済政策]

政府の賃上げ要請については、本年3月13日に取上げた。今日は、(その7)(23年春闘「未曾有の賃上げ」は錯覚 現実は「未曾有の実質賃金下落」、「15%賃上げ」板金加工機の世界大手アマダの危機感 賃上げなくして日本の成長なし、ジョブ型 労働移動の促進で賃下げが増加?岸田政権「三位一体の労働市場改革」が愚策なワケ)である。

先ずは、5月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「23年春闘「未曾有の賃上げ」は錯覚、現実は「未曾有の実質賃金下落」」を紹介しよう。これは、有料記事だが、この記事は今月、無料。
https://diamond.jp/articles/-/323029
・『今春闘賃上げ率、3.7% 「93年以来の伸び」喜んでいいのか  連合の春闘の第4回回答集計結果によると、2023年の春闘賃上げ率は3.69%となった。これまでの伸び率に比べると、格段と高い(図表1)。 「1993年以来の高い伸び率」などと、報道では好調が強調され「このように高率の賃上げが実現したのは、人手不足が深刻化しているからだ」といった解説も見受けられる。今年の春闘で「未曾有の賃上げ」が行なわれたかのような錯覚に陥る。 しかし、実際に起きているのは、正反対のことだ。 春闘賃上げ率が高くなったのは、輸入物価高騰などによる原材料コスト上昇の価格転嫁が行われ企業の粗利益(付加価値)が増えたからだ。 しかし物価上昇率ほど賃金は上がっていないので、実質賃金指数は未曾有の低水準に落ち込んだ。そして賃金分配率も低下している。働き手にとっては、事態はむしろ悪化している』、「物価上昇率ほど賃金は上がっていないので、実質賃金指数は未曾有の低水準に落ち込んだ。そして賃金分配率も低下している。働き手にとっては、事態はむしろ悪化」、なるほど。
・『「実質春闘賃上げ率」はこれまで並みか、それ以下  春闘賃上げ率から消費者物価指数を引いたものを「実質春闘賃上げ率」と呼ぶことにしよう これまでの実質春闘賃上げ率は、図表1に見るように、1%台の後半から2%台の前半の値だった。例外は、消費税増税のあった2014年で、この年には実質春闘賃上げ率はマイナスになった。22年もマイナスだ。 (図表1:春闘賃上げ率と一般労働者賃上げ率 はリンク先参照)  では、23年はどうか? 消費者物価指数(生鮮食料品を除く総合)の前年同月比は、22年4月から2%を超えている。8月以降は3%を超え、12月は4%だ。今後は低下していくことが期待されるが、3%台の値が続く可能性もある。 円ベースの輸入物価指数は、資源価格などの上昇や円安が一時より落ち着いたことから10月までは40%台の上昇だったのが、11月に急速に低下し20%台に、3月に9%台になった。 日本の消費者物価指数は、数カ月のラグで輸入物価の変動をフォローする。したがって、消費者物価は今後、上昇率が鈍化すると予測される。 なお、日本銀行は、4月28日の金融政策決定会合後に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、23年度の物価上昇率見通しを1.8%にした。すると、23年の実質春闘賃上げ率は、3.7-1.8=1.9%となる(ここでは、年と年度を厳密に区別していない)。この値は、21年までの値とあまり変わらない。むしろ、若干低めだ。 つまり、23年が異例なのは、春闘賃上げ率ではなく、物価上昇率なのだ。 仮に連合が主張していたように春闘で5%台の賃上げ率が実現していたとしたら、実質春闘賃上げ率は5-1.8=3.2%ということになり、16年の2.66%をも上回る値になっただろう。しかし、春闘賃上げ率が3.7%では、物価上昇率が1%程度にまで下がらないと、そうはならない』、「仮に連合が主張していたように春闘で5%台の賃上げ率が実現していたとしたら、実質春闘賃上げ率は5-1.8=3.2%ということになり、16年の2.66%をも上回る値になっただろう。しかし、春闘賃上げ率が3.7%では、物価上昇率が1%程度にまで下がらないと、そうはならない」、「連合」の「春闘賃上げ率」は腰砕けだ。
・『経済全体では実質賃金は未曾有の低水準  全体でみた賃上げ率はどうか。春闘の対象となっているのは主として大企業の従業員なので、経済全体の賃上げ率は、春闘賃上げ率より低くなる。これまでのデータを見ると、図表1に示す通りだ。 b欄で示される経済全体の賃上げ率は、a欄で示される春闘賃上げ率に比べると、かなり低い。2014年以降「官製春闘」と言われたように、政府が春闘に介入したのだが、経済全体の賃金にまで影響を与えることはできなかったのだ。 ただし、22年は例外で、b欄の数字のほうがa欄の数字より大きくなっている。これは、3月30日の本コラム「春闘の好調を生んだ『22年特有の現象』、全体の持続的賃上げは望み薄」で指摘したように、22年は、大企業より中企業の賃上げ率のほうが高かったためだ。 ただし経済全体の実質賃金は、物価高騰によって22年から下落が顕著になっている。 毎月勤労統計調査によると、実質賃金指数(現金給与総額、5人以上の事業所)の対前年同月比は、22年4月から連続してマイナスが続いており、23年1月には△4.1%、2月には△2.9%となった。 その結果、図表2に示すように、実質賃金指数は未曾有の低水準に落ちこんでいる(ここに示すのは、各年1月の値。20年を100とする指数で表しているが、例年1月の値は年平均値より低くなるので、図表2の20年の数字も100より低くなっている)』、「実質賃金指数」の落ち込みは顕著だ。
・『粗利益増えたが賃金分配率は低下 結局、「損をした」労働者  では23年春闘の賃上げ率がかつてなく高いのはなぜか。 それは、前記の本コラムでも書いたように22年は、価格転嫁によって企業の粗利益(付加価値)が大幅に増えたからだ。 輸入物価の高騰による原材料価格の高騰を多くの企業が販売価格に転嫁し、それによる売上額の増加は原価増より大きかったため、粗利益(売上げ-原価)が増えた。22年の粗利益は、前年より4.95%も増えたから、分配率を変えなければ、賃金を5%近く上昇させることが可能だったのだ。 ところが実際には、給与・賞与総額は3.13%しか増えなかった。賃金(従業員一人当たりの給与・賞与)の伸びは2.56%でしかなかった。例外が前述した中企業で、粗利益の増加分以上に賃金を増やしたのだ。 ただ全体でみれば、このデータで見る限り賃金分配率は下がったことになる。22年の分配率の正確なデータ(国民経済計算、制度部門別所得支出勘定)はまだ得られないのだが、賃金の分配率がかなり低下したことは間違いないと考えられる。 以上のように、22年の物価高騰によって、労働者は「損をした」ことになる。賃金上昇率が物価上昇率に追いつかなかったので、実質賃金が下落した。そして分配率も低下したのだ。「未曾有の春闘賃上げ率」といって喜んでいてよい状態ではない。労働者は経済政策の変更を求めなければならない』、「22年の粗利益は、前年より4.95%も増えたから、分配率を変えなければ、賃金を5%近く上昇させることが可能だったのだ。 ところが実際には、給与・賞与総額は3.13%しか増えなかった。賃金(従業員一人当たりの給与・賞与)の伸びは2.56%でしかなかった。例外が前述した中企業で、粗利益の増加分以上に賃金を増やしたのだ。 ただ全体でみれば、このデータで見る限り賃金分配率は下がったことになる」、「22年の物価高騰によって、労働者は「損をした」ことになる。賃金上昇率が物価上昇率に追いつかなかったので、実質賃金が下落した。そして分配率も低下したのだ。「未曾有の春闘賃上げ率」といって喜んでいてよい状態ではない」、その通りだ。

次に、5月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「「15%賃上げ」板金加工機の世界大手アマダの危機感、賃上げなくして日本の成長なし」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323629
・『「従来の労働慣行のまま、成長性を維持することは難しい」――。こう気づいた企業から動き始めている。一例として、板金加工機世界大手のアマダは、2025年の給与水準を現行から15%引き上げる。高い専門性を持つ優秀な人材を確保するために、競争力ある賃金を提示しなければならないとの危機感は強いといえる』、「板金加工機世界大手のアマダは、2025年の給与水準を現行から15%引き上げる」、とは思い切った措置だ。
・『「付加価値に占める人件費の割合」が低い日本  最近、賃金を大幅に引き上げるわが国の企業が相次いでいる。その主たる要因は、人手不足だ。帝国データバンクが公表した、「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」によると、正社員が不足していると回答した企業は51.4%に達した。 「賃金を引き上げ優秀な人材を確保しなければ、企業の成長性を維持することが難しい」といった経営者の危機感は強い。物価の上昇が続く中で、私たちの生活を守るためには賃上げは欠かせない。これまでの労働慣行に守られた、わが国の賃金体系は変化しつつあるともいえる。 国際比較を行うと、わが国の「労働分配率」(付加価値に占める人件費の割合)は依然として低い。国際労働機関(ILO)によると20年、わが国の労働分配率は56.9%、米国は60.4%、ドイツは63.4%、G7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国)平均は60.2%だった。 背景には多くの要因がある。特に、バブル崩壊後、急激な株価・地価下落に直面した企業の多くが過度にリスク回避の心理を強めた。その状況から脱却するため、賃上げを進め、優秀な人材確保を急ぐ企業が増えている。 今後の注目点は、賃上げを持続的に続けられるかだ。そのために企業は、収益基盤を拡充し経営体力をつける必要がある。企業が収益の向上を実現し、賃金を引き上げることによって、労働市場の改革を実践することが日本の成長に不可欠だ』、「わが国の労働分配率は56.9%、米国は60.4%、ドイツは63.4%、G7・・・平均は60.2%だった」、「背景には多くの要因がある。特に、バブル崩壊後、急激な株価・地価下落に直面した企業の多くが過度にリスク回避の心理を強めた」、「わが国の労働分配率」の低さは確かに異常だ。
・『非製造業で賃上げ率が高い、「人手不足」倒産も増加  5月19日、経団連は「2023年春季労使交渉・大手企業業種別回答状況」を公表した。加重平均ベースでみると、回答92社の定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は3.91%に上昇した。昨年の実績(2.35%)からの上昇幅は大きい。 業種別にみると、製造業(85社、3.88%)よりも非製造業(7社、4.02%)の賃上げ率が高い。ウィズコロナの経済と社会運営によって国内外で人の往来が活発化している。それに伴い、飲食、宿泊、交通などサービス業を中心に労働力の確保が喫緊の課題だ。 5月17日に帝国データバンクが公表した「企業における人材確保・人手不足の要因に関するアンケート」からも、賃金を積み増して優秀な人材の確保を急ぐ企業の増加が確認できる。その要旨によると、人手不足が発生していない要因として、回答企業の51.7%が「賃金や賞与の引き上げ」を挙げた。一方、「働きやすい職場環境づくり」「定年延長やシニア再雇用」の回答割合はいずれも30%台だった。 逆に賃上げを実施することが難しい場合、事業の継続に行き詰まる企業が増えている。東京商工リサーチによると、4月、人手不足に関連した企業の倒産が12件あった。要因として、人件費の高騰は大きい。 なお、日本商工会議所の早期景気観測の4月調査結果によると、「22年度、予定した採用人数を確保できなかった」と回答した企業が、全体の52.4%に達した。競合他社を上回る賃金を提示できない場合、目先の事業運営に必要な人員を確保できず淘汰される企業が増えそうだ。 人手不足に直面するのは民間企業だけではない。政府は国家公務員の給与を引き上げようとしている。わが国全体で、事業の継続、中長期的な収益の増大などを目指し、人材争奪戦は激化している』、「回答92社の定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は3.91%に上昇した。昨年の実績(2.35%)からの上昇幅は大きい。 業種別にみると、製造業(85社、3.88%)よりも非製造業(7社、4.02%)の賃上げ率が高い」、「昨年の実績・・・からの上昇幅は大きい」とするが、上昇幅の少なさにはガッカリさせられる。
・『板金加工機のアマダが給与15%引き上げの訳  わが国の雇用慣行にも、ようやく変化の兆しが出始めた。これまで多くの企業は、新卒一括採用、年功序列、終身雇用を続けてきた。毎年度、企業は新卒学生を一括で採用した。「和を以て貴しとなす」の考えに基づき、業務を通した教育(OJT)が行われゼネラリストが育成された。 一定の時間が経過すると、従業員は年功に基づいて昇進する。給料も上がる。成績が良い人などが管理職、さらには役員に抜てきされる。組織内、あるいはグループ企業内で労働力の過不足を調整する形で人事異動が行われ、定年退職まで勤め上げる――。ある意味、わが国では企業内に独自の労働分配メカニズムが整備され、労働市場の流動性の向上は遅れた。 しかし、バブル崩壊後、わが国の雇用環境は企業の成長促進よりも「足かせ」の側面が増えたと考えられる。国内では急速な資産価格下落により、企業経営者、家計、政府のリスク回避的心理は高まった。 一方、世界経済は急速にグローバル化し、デジタル家電などの国際分業が加速した。製品の設計開発から生産、販売などを自己完結したわが国企業のビジネスモデルは優位性を失った。2008年以降は人口減少も加速した。経済の縮小均衡を背景に、専守防衛型の経営を優先する企業は増えた。 「従来の労働慣行のまま、成長性を維持することは難しい」――。こう気づいた企業から動き始めている。一例として、板金加工機世界大手のアマダは、25年の給与水準を現行から15%引き上げる。高い専門性を持つ優秀な人材を確保するために、競争力ある賃金を提示しなければならないとの危機感は強いといえる。また、ビール業界では、マーケティングのプロを経営トップに登用して、新商品開発や販売戦略の強化を目指している』、「板金加工機世界大手のアマダは、25年の給与水準を現行から15%引き上げる。高い専門性を持つ優秀な人材を確保するために、競争力ある賃金を提示しなければならないとの危機感は強い」、「ビール業界では、マーケティングのプロを経営トップに登用して、新商品開発や販売戦略の強化を目指している」、こうした動きがもっと広がって欲しいものだ。
・『期待される“令和版ソニーやホンダ”の登場  過去30年以上、わが国では実質ベースで賃金が伸び悩んだ。わが国は持続的な賃上げを目指す極めて重要な局面を迎えている。企業に求められることは、収益分野を拡大して賃上げの原資を増やすことだ。 それが難しい場合、企業収益は伸び悩み、賃上げは一時的な現象にとどまる。その状況が続くと経済の縮小均衡は加速し、わが国が世界第3位の経済規模を維持することも難しくなる。その展開は何としても避けたい。 企業が収益分野を拡充する選択肢の一つは、新しい商品の創出に取り組むことだ。かつて、わが国にはそうした考えを積極的に実行する企業が多かった。代表例は、1946年に誕生したソニー(当時は東京通信工業)や、1948年創業のホンダだ。 ソニーが、トランジスタラジオで磨いた音響関連の技術を用いて、より良い音質で音楽を楽しみたいという願望を実現しようと生み出したのが、「ウォークマン」だった。また、ホンダは二輪車で磨いた内燃機関の製造技術を駆使し、CVCCエンジンを開発し高い走行性と燃費性能を確立した。 そこに共通するのは、最先端の理論や製造技術と「人々により良い生き方を」といった思いを結合し、商品化を実現したことだ。それによってソニーのウォークマンは「ポータブル音楽生成機器」、ホンダのCVCCエンジンは「低燃費車」という世界に新しい市場を創造した。 ソニーは音楽再生機器やCDなど、ホンダは四輪車や航空機へ事業領域を広げ、収益分野は増えた。それが一時期の両社の高成長と、給料の増加を支えた。 最近では、世界の半導体大手企業が対日直接投資を積み増すなど、わが国の製造技術の重要性は高まっている。そうした環境変化をうまく活用して本邦企業が収益分野を拡充し、高付加価値の新しい商品を提供できれば、賃金上昇の持続性は高まるだろう。わが国にはそれが必要だ』、「期待される“令和版ソニーやホンダ”の登場」はその通りだが、その萌芽すら見えないのは残念だ。

第三に、7月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏による「ジョブ型、労働移動の促進で賃下げが増加?岸田政権「三位一体の労働市場改革」が愚策なワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/325780
・『6月21日に通常国会は閉会、芸能人の不倫などの話題の陰に隠れて、政治・政策的な話への国民の関心は低下すると思いきや、そうはならなかった。マイナンバーカードを巡る不祥事が相次いで明らかになっていっているからだ。それにもかかわらず、「不安の解消」などと的外れなことを発言し、紙保険証の廃止や、さらには運転免許証との統合まで強行しようとしている岸田政権の支持率は大幅に下落。そもそも何が成果だったのか分からない広島サミットを受けて支持率が上昇したこと自体が理解不能であるが、そうした中で、多少は話題にはなったものの、シラッと決められ、静かに進められている政策がある。三位一体の労働市場改革である』、「三位一体の労働市場改革」は初めて知った。
・『「構造的賃上げ」という聞き慣れない言葉を使う理由  この三位一体の労働市場改革は、岸田政権の目指す賃上げのために進められることとされ、先日閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2023、いわゆる骨太の方針2023にも多く記載されている。 賃上げを政権の重要課題と考えていることの表れということなのだろうが、結論から言えば、この三位一体の労働市場改革は賃上げにはほとんどつながらず、かえって多くの労働者の賃金を引き下げることとなり、貧困化、デフレ、そしてごく一部の賃金が大幅に上昇する高所得者と、賃金が上がらないその他大勢との分断が進むことにつながりかねないだろう。 賃上げを進めたい岸田政権がそんな政策を進めるはずがないだろうと思われた方もおられるかもしれないが、なぜそんなことが言えるのか、以下解説していきたい。) 三位一体の労働市場改革の具体的な内容、進め方を規定しているのが、「三位一体の労働市場改革の指針」である。本年5月16日、第16回新しい資本主義実現会議において決定された。 この中で、三位一体の労働市場改革による賃上げのことを、「構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく」ものであるとして、「構造的賃上げ」と呼んでいる。聞き慣れないこの言葉、当然のことながら、骨太の方針2023にも何カ所か登場する。 その意味するところはといえば、(1)リ・スキリングによる能力向上の支援、(2)個々の企業の実態に応じた職務給の導入、そして(3)成長分野への労働移動の円滑化により、賃金が上昇する状況を創出するということ。三位一体とはこれらの3つを一体で進めるということのようである。 しかし、この中には国民経済のお金が増える、お金を増やす措置がないので、これらの措置を講じたところで必然的に賃金が上昇するわけではないであろうことは容易に推測できる。だからこその「構造的」であり、賃金を上げるとは書くことができず、賃金が上昇する仕組みという曖昧な表現となっているのであろう』、「「構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく」・・・その意味するところはといえば、(1)リ・スキリングによる能力向上の支援、(2)個々の企業の実態に応じた職務給の導入、そして(3)成長分野への労働移動の円滑化により、賃金が上昇する状況を創出するということ。三位一体とはこれらの3つを一体で進めるということのようである」、なるほど。
・『リ・スキリング普及の恩恵を受けるのは労働者よりも人材関係企業か  これらの措置を一つ一つ見ていこう。 まず、(1)のリ・スキリングによる能力向上の支援。リ・スキリングとは、定まった定義はないようであるが、一般的には学び直し、仕事で必要な新しい知識を学ぶことと考えられている。現在、このリ・スキリングを世界的に強力に提唱しているのは世界経済フォーラム(World Economic Forum)であり、日本で言われるリ・スキリングとは少々方向性を異にするようであるところ、その動きは注視する必要があると考えられるが、その実態については別稿に譲る。 さて、「仕事で必要な」といっても、今の仕事でというよりは新しい仕事で必要とされるであろう知識の習得が念頭に置かれているようである。「エンプロイアビリティ」なる聞き慣れない言葉まで同指針には登場するが、その意味するところは、雇われる能力、要するに「転職できる能力」であるので、リ・スキリングは転職を前提にしたものとしての意味合いが強いと考えていいだろう。 その一方で、優秀な人材を離職させず、引き付けておくためには、企業は「人への投資」として社員個人へのリ・スキリングの支援強化を行うべきであるとも述べられている。相矛盾するような内容が同じ文書の中に記載されているというのはなんともお粗末な話であるが、つまるところ、「リ・スキリングが広まり、行われるようになればいい」ということなのだろう。 リ・スキリングが広まれば転職が活発になり賃金が上がる、リ・スキリングでスキルアップを図れば賃金が上がる、そんなことは確約などできないのだが、リ・スキリングが活況を呈するようになれば、人材育成を行う人材関係企業にとっては新たなマーケットが生まれ、事業機会が拡大する(そうなれば人材関係企業の社員にとっては賃上げが期待できるかもしれないが)。 さらに、民間に在籍するキャリアコンサルタントの本分野における役割強化もうたわれていることも併せ考えると、そのあたりにリ・スキリングが強調される背景事情があるのではないだろうか』、「「エンプロイアビリティ」なる聞き慣れない言葉まで同指針には登場するが、その意味するところは、雇われる能力、要するに「転職できる能力」であるので、リ・スキリングは転職を前提にしたものとしての意味合いが強いと考えていいだろう。 その一方で、優秀な人材を離職させず、引き付けておくためには、企業は「人への投資」として社員個人へのリ・スキリングの支援強化を行うべきであるとも述べられている。相矛盾するような内容が同じ文書の中に記載されているというのはなんともお粗末な話であるが、つまるところ、「リ・スキリングが広まり、行われるようになればいい」ということなのだろう」、「リ・スキリングが活況を呈するようになれば、人材育成を行う人材関係企業にとっては新たなマーケットが生まれ、事業機会が拡大する(そうなれば人材関係企業の社員にとっては賃上げが期待できるかもしれないが)。 さらに、民間に在籍するキャリアコンサルタントの本分野における役割強化もうたわれていることも併せ考えると、そのあたりにリ・スキリングが強調される背景事情があるのではないだろうか」、「「リ・スキリングが活況を呈するようになれば、人材育成を行う人材関係企業にとっては新たなマーケットが生まれ、事業機会が拡大する・・・さらに、民間に在籍するキャリアコンサルタントの本分野における役割強化」、つまり「リ・スキリング」を受ける労働者ではなく、「人材関係企業」や「民間に在籍するキャリアコンサルタント」、などが重要な役割を果たすようだ。
・『ごく少数の賃上げしか期待できず賃下げの可能性もある職務給の導入  次に、(2)個々の企業の実態に応じた職務給の導入。「同じ職務であるにもかかわらず、日本企業と外国企業の間に存在する賃金格差を、国毎の経済事情の差を勘案しつつ、縮小することを目指す」ための措置のようであるが、同じ職務といっても、まさに「個々の企業の実態に応じ」て、その職務の実態は異なるのであるから、同列比較するということ自体おこがましい。 需要が旺盛で、成長している国であれば、賃金が上昇するのは当たり前であり、そのような状況を国が創出すればいいのであって、個別の企業で職務給を導入したところで、どうにかなる話ではない。そもそも、需要が伸びていないか、収縮している経済で、個別企業内で職務給を導入して特定の職務の賃金を増やしたとして、その原資は他の職務の社員の賃金を削ってくるか、何がしかのコスト削減を図るかしかない。 つまりどこかを削ってどこかに付けるということだが、これでは一部の人は賃金が増えるかもしれないが、他の人は賃金が上がらないということになる。これが岸田政権の目指す賃上げであるのであれば、まさに看板に偽りあり、である。 この職務給はジョブ型雇用(人事)とも呼ばれるが、これは職務に対して人を就けるというものであり、その職務の内容や必要とされる能力が明確に定義され、評価基準が設定される。その職務に対して採用なり任用なりされているので、その仕事の実施に徹することが前提である。 士業のような特殊な仕事であれば別だが、年俸制を採るコンサルティング会社のような場合でもチームや組織で仕事をするので、特定の仕事だけしていればいいという話にはならず、人事の評価基準にもチームワーク的なものが設定されることもある。 つまり、職務給の導入が可能な職務は相当程度限定されることが考えられ、その導入によって賃金が上がる人がいたとしてもごく少数になるのではないか。 もしそうではない、職務給になじまない職務に対しても無理やりこれを導入した場合、組織や業務が硬直的になることも想定され、導入したはいいが、返って生産性が低下し、企業の業績が悪化し、職務給の額を引き下げざるを得ない状況になるといったことも考えられるのではないか』、「年俸制を採るコンサルティング会社のような場合でもチームや組織で仕事をするので、特定の仕事だけしていればいいという話にはならず、人事の評価基準にもチームワーク的なものが設定されることもある。 つまり、職務給の導入が可能な職務は相当程度限定されることが考えられ、その導入によって賃金が上がる人がいたとしてもごく少数になるのではないか」、なるほど。
・『労働移動を円滑化することで成長産業が生まれるという詭弁  そして、(3)成長分野への労働移動の円滑化。失業給付制度の見直しや、退職所得課税制度等の見直し(と称した勤続20年以上の者に対する実質的な増税の検討)によってこれを進めようということのようであるが、要するに、転職すれば賃金が上がるはずだという根拠なき前提に立ってこれを進めようとしているということだろう。 そもそも成長分野と言うが、成長していて人手不足の分野であれば、労働移動を円滑化しなくとも転職は進んでいくだろう。かく言う筆者も、成長著しいコンサル会社からの人員増強・新部門設立のお話をいただいて転職した。 それをあえて「成長分野への」と記載するところに、何か本当の目的があるようだ。 「日本に成長産業が生まれないのは、成長分野への労働移動が円滑ではないからだ。円滑にするためには解雇規制を緩和すべきだ」という話を聞いたことがある方もいるのではないだろうか。 なんとなくもっともらしく聞こえてしまうのかもしれないが、筆者からすれば支離滅裂な話でしかない。成長産業が生まれるのは、長期・大規模・計画的な国の投資があっての話。このことについては、筆者が前書きおよび解説を執筆して翻訳版が復刻された、マリアナ・マッツカートの『企業家としての国家』に詳しいのでそちらを参照いただきたいが、少なくとも労働移動の円滑化うんぬんとは関係がない。 国が役割を果たして成長産業を創出し、その事業を安定化させるまで面倒を見ることで、その事業が拡大し、その周辺産業も含めて働き手が集まるようになる。つまり、順番が逆ということであるが、そんな詭弁(きべん)のような話まで作り上げて何をしたいのかと考えれば、本丸は「解雇規制の緩和」ということだろう。 同指針では一言も書かれていないが、これまでの「労働移動の円滑化」を巡る言説を思い返せば、そのことが分かるだろう。 容易に解雇ができるようになって、雇用が不安定化すれば、当然イノベーションは起こりにくくなるし、企業は成長しにくくなる。成長しにくくなるということは賃金が上がりにくくなるか、下がりやすくなるということである。つまり、賃上げは極めて期待薄になるだろうということである。 以上見てきたように、岸田政権の三位一体の労働市場改革を検証していけば、賃上げなど夢のまた夢どころか、多くの人にとってはかえって賃下げにつながることになりかねないことがお分かりいただけたのではないか。 そもそも、なぜ日本で賃金が下がってきたのかといえば、一つには株主資本主義、金融資本主義のまん延により、株主価値の最大化に重きが置かれるようになり、株主配当を増やすためのコスト削減の格好の対象に人件費がなったことである。 さらに加えて、超短期的な経営により中長期的な研究開発が困難になり、イノベーションが起こりにくくなり、マクロで見た場合に賃金が上昇しにくくなったこと、過剰なグローバル化による価格競争のために、製造業を中心にコスト削減の一環として人件費が削減されるか伸びにくくなったこと、人件費削減の手法として正規労働者の非正規労働者による置き換えが進んだこと、政府が緊縮財政を続けたため、国内の需要が収縮するデフレに陥り、そうした中で消費税の増税を強行したため、さらに需要は収縮し、価格を下げて需要を喚起するため人件費を削減せざるを得ない状況が続いてきたことなどである。 これらに加えて、技能実習生や特定技能と称する低賃金移民の受け入れ拡大を進めたことで、賃金を押し下げる圧力がさらに強まっていっていると言っていいだろう。この賃金が上がらない状況は、結婚ができない状況、結婚して子どもを産み育てることができない状況を併発し、少子化の深刻化の大きな原因ともなっている。 したがって、岸田政権が本気で賃上げを実現したいのであれば、最低でもデフレギャップを埋めるだけの国の財政支出を拡大することである。つまり、国全体としてのパイを増やす、お金を国が率先して増やすことである。そして、岸田文雄首相が総裁選の時に掲げた新自由主義からの転換を、株主資本主義の本格的な修正を中心に、本気で進めることである。しかし、そうした措置を講じる気配は、岸田政権には、今のところ見られない』、「岸田政権の三位一体の労働市場改革を検証していけば、賃上げなど夢のまた夢どころか、多くの人にとってはかえって賃下げにつながることになりかねないことがお分かりいただけたのではないか。 そもそも、なぜ日本で賃金が下がってきたのかといえば、一つには株主資本主義、金融資本主義のまん延により、株主価値の最大化に重きが置かれるようになり、株主配当を増やすためのコスト削減の格好の対象に人件費がなったことである。 さらに加えて、超短期的な経営により中長期的な研究開発が困難になり、イノベーションが起こりにくくなり、マクロで見た場合に賃金が上昇しにくくなったこと、過剰なグローバル化による価格競争のために、製造業を中心にコスト削減の一環として人件費が削減されるか伸びにくくなったこと、人件費削減の手法として正規労働者の非正規労働者による置き換えが進んだこと、政府が緊縮財政を続けたため、国内の需要が収縮するデフレに陥り、そうした中で消費税の増税を強行したため、さらに需要は収縮し、価格を下げて需要を喚起するため人件費を削減せざるを得ない状況が続いてきたことなどである。 これらに加えて、技能実習生や特定技能と称する低賃金移民の受け入れ拡大を進めたことで、賃金を押し下げる圧力がさらに強まっていっていると言っていいだろう。この賃金が上がらない状況は、結婚ができない状況、結婚して子どもを産み育てることができない状況を併発し、少子化の深刻化の大きな原因ともなっている。 したがって、岸田政権が本気で賃上げを実現したいのであれば、最低でもデフレギャップを埋めるだけの国の財政支出を拡大することである。つまり、国全体としてのパイを増やす、お金を国が率先して増やすことである。そして、岸田文雄首相が総裁選の時に掲げた新自由主義からの転換を、株主資本主義の本格的な修正を中心に、本気で進めることである」、同感である。「岸田政権の三位一体の労働市場改革」には呆れ果てた、絶対反対である。  
タグ:ダイヤモンド・オンライン 政府の賃上げ要請 (その7)(23年春闘「未曾有の賃上げ」は錯覚 現実は「未曾有の実質賃金下落」、「15%賃上げ」板金加工機の世界大手アマダの危機感 賃上げなくして日本の成長なし、ジョブ型 労働移動の促進で賃下げが増加?岸田政権「三位一体の労働市場改革」が愚策なワケ) 野口悠紀雄氏による「23年春闘「未曾有の賃上げ」は錯覚、現実は「未曾有の実質賃金下落」」 「物価上昇率ほど賃金は上がっていないので、実質賃金指数は未曾有の低水準に落ち込んだ。そして賃金分配率も低下している。働き手にとっては、事態はむしろ悪化」、なるほど。 「仮に連合が主張していたように春闘で5%台の賃上げ率が実現していたとしたら、実質春闘賃上げ率は5-1.8=3.2%ということになり、16年の2.66%をも上回る値になっただろう。しかし、春闘賃上げ率が3.7%では、物価上昇率が1%程度にまで下がらないと、そうはならない」、「連合」の「春闘賃上げ率」は腰砕けだ。 「実質賃金指数」の落ち込みは顕著だ。 「22年の粗利益は、前年より4.95%も増えたから、分配率を変えなければ、賃金を5%近く上昇させることが可能だったのだ。 ところが実際には、給与・賞与総額は3.13%しか増えなかった。賃金(従業員一人当たりの給与・賞与)の伸びは2.56%でしかなかった。例外が前述した中企業で、粗利益の増加分以上に賃金を増やしたのだ。 ただ全体でみれば、このデータで見る限り賃金分配率は下がったことになる」、 「22年の物価高騰によって、労働者は「損をした」ことになる。賃金上昇率が物価上昇率に追いつかなかったので、実質賃金が下落した。そして分配率も低下したのだ。「未曾有の春闘賃上げ率」といって喜んでいてよい状態ではない」、その通りだ。 真壁昭夫氏による「「15%賃上げ」板金加工機の世界大手アマダの危機感、賃上げなくして日本の成長なし」 「板金加工機世界大手のアマダは、2025年の給与水準を現行から15%引き上げる」、とは思い切った措置だ。 「わが国の労働分配率は56.9%、米国は60.4%、ドイツは63.4%、G7・・・平均は60.2%だった」、「背景には多くの要因がある。特に、バブル崩壊後、急激な株価・地価下落に直面した企業の多くが過度にリスク回避の心理を強めた」、「わが国の労働分配率」の低さは確かに異常だ。 「回答92社の定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は3.91%に上昇した。昨年の実績(2.35%)からの上昇幅は大きい。 業種別にみると、製造業(85社、3.88%)よりも非製造業(7社、4.02%)の賃上げ率が高い」、「昨年の実績・・・からの上昇幅は大きい」とするが、上昇幅の少なさにはガッカリさせられる。 「板金加工機世界大手のアマダは、25年の給与水準を現行から15%引き上げる。高い専門性を持つ優秀な人材を確保するために、競争力ある賃金を提示しなければならないとの危機感は強い」、「ビール業界では、マーケティングのプロを経営トップに登用して、新商品開発や販売戦略の強化を目指している」、こうした動きがもっと広がって欲しいものだ。 「期待される“令和版ソニーやホンダ”の登場」はその通りだが、その萌芽すら見えないのは残念だ。 室伏謙一氏による「ジョブ型、労働移動の促進で賃下げが増加?岸田政権「三位一体の労働市場改革」が愚策なワケ」 「三位一体の労働市場改革」は初めて知った。 「「構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく」・・・その意味するところはといえば、(1)リ・スキリングによる能力向上の支援、(2)個々の企業の実態に応じた職務給の導入、そして(3)成長分野への労働移動の円滑化により、賃金が上昇する状況を創出するということ。三位一体とはこれらの3つを一体で進めるということのようである」、なるほど。 「「エンプロイアビリティ」なる聞き慣れない言葉まで同指針には登場するが、その意味するところは、雇われる能力、要するに「転職できる能力」であるので、リ・スキリングは転職を前提にしたものとしての意味合いが強いと考えていいだろう。 その一方で、優秀な人材を離職させず、引き付けておくためには、企業は「人への投資」として社員個人へのリ・スキリングの支援強化を行うべきであるとも述べられている。相矛盾するような内容が同じ文書の中に記載されているというのはなんともお粗末な話であるが、つまるところ、「リ・スキリングが広まり 、行われるようになればいい」ということなのだろう」、「リ・スキリングが活況を呈するようになれば、人材育成を行う人材関係企業にとっては新たなマーケットが生まれ、事業機会が拡大する(そうなれば人材関係企業の社員にとっては賃上げが期待できるかもしれないが)。 さらに、民間に在籍するキャリアコンサルタントの本分野における役割強化もうたわれていることも併せ考えると、そのあたりにリ・スキリングが強調される背景事情があるのではないだろうか」、 「「リ・スキリングが活況を呈するようになれば、人材育成を行う人材関係企業にとっては新たなマーケットが生まれ、事業機会が拡大する・・・さらに、民間に在籍するキャリアコンサルタントの本分野における役割強化」、つまり「リ・スキリング」を受ける労働者ではなく、「人材関係企業」や「民間に在籍するキャリアコンサルタント」、などが重要な役割を果たすようだ。 「年俸制を採るコンサルティング会社のような場合でもチームや組織で仕事をするので、特定の仕事だけしていればいいという話にはならず、人事の評価基準にもチームワーク的なものが設定されることもある。 つまり、職務給の導入が可能な職務は相当程度限定されることが考えられ、その導入によって賃金が上がる人がいたとしてもごく少数になるのではないか」、なるほど。 「岸田政権の三位一体の労働市場改革を検証していけば、賃上げなど夢のまた夢どころか、多くの人にとってはかえって賃下げにつながることになりかねないことがお分かりいただけたのではないか。 そもそも、なぜ日本で賃金が下がってきたのかといえば、一つには株主資本主義、金融資本主義のまん延により、株主価値の最大化に重きが置かれるようになり、株主配当を増やすためのコスト削減の格好の対象に人件費がなったことである。 さらに加えて、超短期的な経営により中長期的な研究開発が困難になり、イノベーションが起こりにくくなり、マクロで見た場合に賃金が上昇しにくくなったこと、過剰なグローバル化による価格競争のために、製造業を中心にコスト削減の一環として人件費が削減されるか伸びにくくなったこと、人件費削減の手法として正規労働者の非正規労働者による置き換えが進んだこと、政府が緊縮財政を続けたため、国内の需要が収縮するデフレに陥り、そうした中で消費税の増税を強行したため、さらに需要は収縮し、価格を下げて需要を喚起するため人件費を削減せざ るを得ない状況が続いてきたことなどである。 これらに加えて、技能実習生や特定技能と称する低賃金移民の受け入れ拡大を進めたことで、賃金を押し下げる圧力がさらに強まっていっていると言っていいだろう。この賃金が上がらない状況は、結婚ができない状況、結婚して子どもを産み育てることができない状況を併発し、少子化の深刻化の大きな原因ともなっている。 したがって、岸田政権が本気で賃上げを実現したいのであれば、最低でもデフレギャップを埋めるだけの国の財政支出を拡大することである。つまり、国全体としてのパイを増やす、お金を国が率先して増やすことである。そして、岸田文雄首相が総裁選の時に掲げた新自由主義からの転換を、株主資本主義の本格的な修正を中心に、本気で進めることである」、同感である。「岸田政権の三位一体の労働市場改革」には呆れ果てた、絶対反対である。
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