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安全保障(その11)(圧倒的に議論が不足している経済安全保障問題、「経済安保法制」は看板に偽りあり?法案の欠陥を徹底検証、日本の安全保障政策 今こそ「英国」との連携強化を急ぐべき理由) [外交・防衛]

安全保障については、2月10日に取上げた。今日は、(その11)(圧倒的に議論が不足している経済安全保障問題、「経済安保法制」は看板に偽りあり?法案の欠陥を徹底検証、日本の安全保障政策 今こそ「英国」との連携強化を急ぐべき理由)である。

先ずは、2月16日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家に冷泉彰彦氏による「圧倒的に議論が不足している経済安全保障問題」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2022/02/post-1260_1.php
・『<日本経済の問題の本丸は、生産拠点だけでなく先端技術などの高付加価値部門まで国外に流出させて国内産業を空洞化させていること> 岸田政権は「経済安全保障」を重要政策と位置付けており、その法制化、つまり「経済安全保障法制」を制定しようとしています。重要なテーマだと思いますが、圧倒的に議論が不足しています。 非常に単純化していえば、まず一方には、日本の技術が外国に勝手に持ち出されて日本を敵視するような軍事転用がされては大変だとか、同盟国からも要請があるので規制すべきだという立場があります。これは、いわば積極推進派ということになるのでしょう。 反対に、現状としては日本の製造業の多くの企業は中国などを製造拠点にしており、技術の持ち出しはすっかり日常化しています。そんな中で、突然法律が適用されて、公安調査庁の係官が怖い顔をして監視に入ってくるようでは、日常業務が回らないという不安もあるようです。つまり経済界としては一般的にやや消極的というのが本音だと思います。罰則規定を緩和して欲しいというような意見として出ているのはこの立場です。 経済界の中でも、軍需という公共投資に期待する中で、経済安全保障政策の強化を歓迎する部分もあるようです。軍需は非公開ですからイノベーションに後ろ向きになるし、市場は同盟国に限定され、また自国の財政を毀損し、最終的には死の商人に堕落して国家同士の対立を歓迎するということから、過度に依存すると「安全の保障」にはなリません。ですが、産業によっては、過去の産業衰退をどうすることもできなかった経緯の延長で、一線を越えて積極的になる勢力はあるわけです』、確かに「経済安全保障」論議は、経産省あたりから唐突に出てきたようだ。
・『日本経済の「産業空洞化」  難しいのはコンピュータのソフトに関する安全保障です。特に最先端のプログラミング技術を駆使して、ターゲットのサーバなどに不正アクセスして社会に大きな損害を与える「サイバーテロ」の問題については、単に法律を作って取り締まるだけでは効果は限定的です。具体的には、個々の局面で「より高い技術力によって防御を行う」という「力と力」ならぬ「知恵と知恵の戦い」に勝利していかねばなりません。必要な人材を育成し、相互に信用して活躍させる仕組みが何としても必要です。 さらに言えば、巨額の資金と努力を注ぎ込んで開発した技術を、外国に売り渡すという行為への反省も必要と思います。半導体や液晶技術に関しては、基礎的な技術の多くが日本の発明であるにも関わらず、経営力と資金不足のために多くのノウハウが国外に流出しました。国策として進められた増殖炉技術についても、海外に安く叩き売りされてしまいました。このように、国家そのものを構成する技術を切り売りするというのは、仮に非軍事であっても経済安全保障に反するという考え方も必要と思います。) 以上は狭い意味の経済安全保障ですが、より広い意味の考え方に立てば、何よりも国際競争の中で勝っていかねばならないという問題は避けて通ることはできません。一番の問題は空洞化の進行です。日本は他の産業国と同様に、より人件費の安い国に生産拠点を移動したり、消費地へ生産を移動するという「クラシックな空洞化」を進めてきました。 その空洞化が過度になっているだけでなく、日本経済の場合は先端技術の研究開発やデザインなど高付加価値の部分も国外に流出させています。これは日本独特の問題であり、その結果として空洞化した後の国内を「知的産業による先進国経済」に転換させることに失敗し、大卒50%という社会で観光と福祉を基幹産業にせざるを得ないという苦しい国策に追い込まれています。 この問題こそが本丸です。今は機密を囲い込みながら監視を強めて、軍需に依存するというサイクルに入るべき時期ではないと思います。そう考えると、岸田政権が「狭い意味での経済安全保障政策」については、 ・「サプライチェーンの強化」 ・「基幹インフラにおける事前安全性審査制度」 ・「重要技術の研究開発推進」 ・「特許非公開制度」 といった4点に絞り込み、反対にそれ以外に関しての過剰な規制は避けているのは理解できます。経済安全保障の中で最も大切なのは、競争力の維持です。狭い意味での経済安全保障にこだわった結果、経済活動が萎縮するとか、複雑な申請手続きを嫌って、かえって空洞化が加速するというような制度設計は避けなければならないと思います』、「空洞化した後の国内を「知的産業による先進国経済」に転換させることに失敗し、大卒50%という社会で観光と福祉を基幹産業にせざるを得ないという苦しい国策に追い込まれています」、寂しい限りだが、日本で起業家精神の欠如からベンチャー企業の創業が伸び悩んでいる状況では、やむを得ない。

次に、3月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏による「「経済安保法制」は看板に偽りあり?法案の欠陥を徹底検証」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/300498
・『経済安保法案が衆院本会議で審議入りした。充実した審議が期待されるが、そもそも経済安保法案の論点や問題点はどこまで理解されているのだろうか?この法案の論点や問題点について、独自の視点から分析・検証してみたい』、興味深そうだ。
・『経済安保法案が国会審議入り その論点とは?  「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案」(以下、「経済安保法案」という)が審議入りした。今年3月18日に衆院内閣委員会において本法案担当の小林鷹之内閣府特命担当相による趣旨説明が行われ、23日から本格的な質疑が行われている。審議時間は40時間程度確保されているようであり、経済産業委員会との連合審査会も行われることとされている。 経済安保法案については、昨年の自民党総裁選のときから世の注目を集めるようになり、岸田政権の目玉政策の一つともなっている。その一方で、経済安保法案の事務方の責任者である内閣審議官の情報漏えい疑惑が「文春砲」によって明るみに出るなど、順調にここまでたどり着いたとはいえない状況である。 野党はそうした点も含めて追及する構えを見せているようであるが、経済安保に関する法案の企画・立案段階で情報が漏えいしていたのだとすれば、そもそも経済安保を語る以前の問題であるとしかいいようがなく、法施行後の体制のあり方も含めて厳しく追及するのは当然であるし、うやむやにしてはいけない問題ではある。 しかし、スキャンダル追及のような質疑に終始しては、肝心な法案の中身の細部にわたった審議がおろそかにされることになり、今後のわが国の安心安全に関わる重要法案が不十分な審議のまま成立することになりかねない。そのようなことのないように、バランスの取れた、充実した審議が期待されるが、そもそも経済安保法案の論点や問題点はどこまで理解されているのだろうか? そこで、本稿では、経済安保法案の論点や問題点について、独自の視点から分析・検証してみたいと思う』、「経済安保法案の事務方の責任者である内閣審議官の情報漏えい疑惑が「文春砲」によって明るみに出る」、「法案の企画・立案段階で情報が漏えいしていたのだとすれば、そもそも経済安保を語る以前の問題であるとしかいいようがなく、法施行後の体制のあり方も含めて厳しく追及するのは当然であるし、うやむやにしてはいけない問題ではある」、なんとも緊張感を欠いた話だ。
・『経済安保法案の趣旨とは「安全保障の確保」につながる?  経済安保法案は、「国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、安全保障を確保するためには、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大していることに鑑み」、以下を策定・創設するものだ。 1 安全保障の確保に関する経済施策を一体的に講ずるための政府としての基本方針を策定  2 特定重要物資の安定的な供給の確保に関する制度、特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関する制度及び特定重要技術の開発支援や特許出願の非公開に関する制度を創設  ここで、特定重要物資とは、国民生活に必要不可欠な物資や、国民生活や経済活動が依拠している重要な物資、さらにその生産に必要な原材料等について、外部に過度に依存していたり、そのおそれがあったりする場合に、安定供給の確保が特に必要なものとして政令で指定されるものである。現段階では具体的なものは示されていないが、例えば半導体や医療関係物資等が想定されている。 特定社会基盤役務とは、「国民生活及び経済活動の基盤となる役務であって、その安定的な提供に支障が生じた場合に国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれがあるもの」である。こちらは具体的な対象が法案50条第1項に列挙されており、それらをいくつか挙げれば、電気、水道、ガス、石油備蓄、鉄道、自動車貨物輸送、海上貨物輸送、航空運送、放送通信、金融などである。 これらの役務を提供する事業者のうち、その設備が停止したり、機能低下したりした場合に、特定社会基盤役務の提供に支障を来し、国家・国民の安全を損なうおそれが大きいものとして主務省令で定める基準に該当する者が、特定社会基盤事業者として、主務大臣が指定する(主務省令とは当該特定社会基盤役務を所管する府省の命令のことであり、主務大臣とはその大臣である。要するにどれを指定するかは各府省において決められるということである)。 そして本法案が創設する制度とは、前者については安定供給の確保を、後者については外部からの妨害などにより安定的な役務の提供に支障を来すことがないようにするものである。したがって、非常時も想定して、それが効果的に行うことができるような制度設計となっているか否かが重要なポイントとなる。 総論としては、政府が国会に提出したこの経済安保法案は、非常時ではなく平時を前提にしたような内容となっており、とても「安全保障の確保」につながるようなものとはいえないだろう(もちろん、非常時を念頭に置いて平時から準備をしておくという趣旨なのだろうし、だからこそ「経済施策を一体的に講ずることによる」安全保障の確保なのであり、「確保の推進」なのであろう)。 しかも、新型コロナに今度はウクライナ危機と、ことここに至ってやっと動きだしたわけであり、遅きに失したとしかいいようがない。無論、必要な法制であることに異論を挟む余地はない。したがって、審議を通じて必要な修正が施され、結果としてしっかりとした内容で整備されれば、その遅れも挽回されると考えたいところであるが、どうであろうか。以下、具体的な点を挙げながら見ていこう』、どうなのだろう。
・『非常時に対応できるのか?法案の条文から検証  まず、第1条などに「経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為」という規定があるが、これが具体的に何を指すのか、法案段階では不明である。この範囲を曖昧にしたり、経済界などに忖度して狭めたり、限定的にしたりすれば、実効性が著しく低下することになりかねない。要は「ザル法」になりかねないということである。その他にも基本方針などに記載すべき事項が具体的に示されていない。 もっとも、他の法律でもより具体的な事項は政令以下に落とすということは普通に行われているので、それ自体が直ちに問題というわけではない。問題は、こうした点を内閣委員会の質疑の中で明らかにし、国会の審議に係らしめられない政令以下の制定も律していくことができるかである。当然のことながら、野党の質問能力いかんが大きく関わってくるが、「国会での審議を踏まえて今後検討」といったような逃げの答弁を許すようなことがあってはいけない。せめて判断基準などに関する答弁は引き出してもらいたいところであるが。 次に、経済安保法案と国の役割についてである。先にこの法案は平時を前提としたような内容であると述べたが、まさにそれを如実に表しているのが、この法律の施行に係る国の財政措置についてである。法案第4条第3項には「国は、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進するために必要な資金の確保その他の措置を講ずるよう努めるものとする」と記載されている。何の変哲もない規定と思われるかもしれないが、「必要な資金」というのがまず引っかかる。しかもその「確保」である。もし国が積極的に財政支出をしようという考えを持ち、それが経済安保法案に反映されているというのであれば、例えば「◯◯に係る費用については、国において財政上必要な措置を講ずるものとする」といった書きぶりになるはずである。 そもそも、「努めるものとする」との努力規定になっている。これでは経済安全保障といいながら、最初から国の役割は最小限にとどめ、民間任せにしようとしているとしか思えない。新型コロナの感染拡大によって、世界各国が国の、政府の役割の重要性についてこれだけ強く認識し、財政支出をはじめとしてその役割を十二分に果たそうとし、それはこのパンデミックの後も当面続けていこうと昨年のコーンウォールサミットでも共同声明という形で合意されたというのに、である。 その他、これに似たものとして、例えば、法案第6条第2項第5号に規定する、安定供給確保基本指針に定める「特定重要物資の安定供給確保のための取組に必要な資金の調達の円滑化の基本的な方向に関する事項」のうち、「必要な資金の調達」についても同様の指摘が可能である。こうした国の財政上の役割の放棄とも取れるような規定については、与野党問わず追及していく必要があろう。もしその質疑において、政府が臆面もなく民間主体で考えているとの趣旨の答弁をするようなことがあれば、大問題である。 さらに、第3節に「株式会社日本政策金融公庫法の特例」が規定され、供給確保促進円滑化業務について規定されている。その仕組みは、法第16条に基づき主務大臣により指定された指定金融機関に公庫から資金を貸し付け、指定金融機関が、特定重要物資として指定された物資を供給する事業者として、所管大臣に認定された認定供給確保事業者に対して事業に必要な資金を貸し付けることとされている。 平時を想定した他の法令であればこうした仕組みでも一向に構わないだろう。しかし、経済安全保障に関する法案である。先にも述べたように、平時にこの体制で準備しておいて非常時に備える趣旨であるとも考えられるが、非常時はいつ来るか分からない。そうであれば、平時から非常時を想定して備える、少なくとも非常時を主眼とした制度設計にしておくべきではないのか。そうした趣旨はこうした規定からは全く読み取れない。 一応、安定供給確保支援法人(法案第31条に基づき主務大臣により指定された一般社団法人、一般財団法人など)に基金を設けさせ、国が資金を補助し、それを原資として認定供給確保事業者に対して助成を行うことができることとされている。しかし、国からはあくまでも補助金であって必要な資金を満額出すわけではないようであるし、事業者に対して助成を行うのはあくまでも安定供給確保支援法人である。なんとややこしい、まどろっこしい仕組みなのか。既存の官民ファンドを改組するなりして、その組織が一括して、国が直接的に財政支援するというのに近い形での助成ではなく支援なり、補助なり、投資を行う仕組みを考えるべきではないか。そもそもこんなややこしい仕組みでは非常時には対応できないだろう。) また、これに関して別の問題点として、先に触れた実際に貸し付けを行う指定金融機関となり得る者に、わが国の銀行法に基づく銀行業の免許を得ている外国銀行支店は含まれるのだろうか。含まれるのだとしたら、経済安全保障に穴を開けるようなものなのではないか。 安定供給確保支援法人についても、外国勢力と何らかの関係があるか否かをしっかりと確認するのだろうか。外国人役職員の有無、外国との交流等の関係性など、厳格・厳密に審査しなければ、経済安全保障との関係において「ザル規定」になるのではないか。 特定社会基盤役務に関しても、導入や維持管理の委託について事前の計画の届出・審査が規定されている。コンセッションはこの対象に入って当然だと考えられるが、まさか適用除外などとはいうまい。その場合であって、導入・維持管理の委託先に外資系企業(外国企業が資本関係において支配的である企業のみならず、外国企業の指示や指導を受けて事業を行う企業を含む)が入っている(実際に業務を行う場合のみならず、特定目的会社などに出資している場合も含む)場合は、どう取り扱うつもりなのだろうか。水道や空港では既に外資系企業も加わってコンセッションが導入されているが。 その他、法案第7条などに規定されている「~外部に過度に依存し、又は依存するおそれがある場合において、外部から行われる行為により国家及び国民の安全を損なう事態を未然に防止するため」に関し、「外部」とは単に国の外部ということなのか、外国を意味するのか、外国企業を意味するのか、全く不明である。のみならず、例えば、法案第52条第2項第2号ハに規定する特定妨害行為に関し、「我が国の外部から行われる特定社会基盤役務の安定的な提供を妨害する行為」とあるが、「我が国の外部から」だけでよく、国内にいる外国勢力などからそのような行為が行われた場合は含まれないのか不明である。含まれないのであれば、これまた「ザル規定」である。 そもそも、この法案には、多くの独自の用語が規定されているにもかかわらず、他の法律であれば当然に設けられている(多くの場合は第2条において)定義に関する条文がない。 また、それとは少々毛色の違う話ではあるが、第5条に「この法律の規定による規制措置の実施に当たっての留意事項」にとして、規制措置は「安全保障を確保するために合理的に必要と認められる限度において行わなければならない」としているが、経済安全保障という非常時対応のための法案にもかかわらず、規制を最小限にと規定するとは、やはり安全保障についての緊張感のかけらもない、万年平時の法案ということの証左のようである』、「定義に関する条文がない」のはやはり問題だ。ただし、「規制を最小限にと規定するとは、やはり安全保障についての緊張感のかけらもない」、のは、規制緩和の時代では当然なのではなかろうか。
・『経済安全保障を担保したいなら国が前面に出て役割を果たすべき  細かい問題点を指摘していけば、枚挙にいとまがないぐらいであるが、真にわが国の経済安全保障を担保する法制としたいのであれば、国内製造・国内調達やインフラ管理運営の自前主義を前提として、国が前面に出てそれに必要な財政支出と強い規制によってその役割を果たすことが必須である。 国際情勢の複雑化などを本法案の目的とするのであれば、いい加減、経済における平和ボケやグローバル化幻想からも目を覚ます必要があるのではないか』、しかし、自由主義経済での企業活動は極めて多面的で、「国が前面に出」る余地は余りないのではなかろうか。

第三に、4月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「日本の安全保障政策、今こそ「英国」との連携強化を急ぐべき理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/301800
・『ウクライナの想像を超える奮戦で、ウクライナ紛争が長期化・泥沼化している。そのウクライナの背後には、「味方した方が戦争に勝つ」という「不敗神話」を持つ英国の存在がある。日本の安全保障問題も議論に上がる中で、今一度、英国との協力関係を見直したい』、興味深そうだ。
・『「戦争は英国が付いた方が勝つ」、ウクライナでも当てはまるか  ウクライナは、ロシアのミサイル攻撃に屈せず、その後の地上戦で頑強な抵抗を見せてきた。威力を発揮している武器は、対戦車ミサイル「ジャベリン」、トルコ製のドローン「バイラクタルTB2」、歩兵が肩に担いで撃てる地対空ミサイル「スティンガー」といったものだ。NATOから提供されたこれらの兵器は、開戦前からウクライナが保有していて、ロシア軍を待ち構えていたと、一部メディアでは報じられている。 実は、米英側は、ロシア軍の動きを掌握していた。昨年11月には、バイデン米大統領やジョンソン英首相が、ロシアのウクライナ大規模侵攻の懸念を訴えていた。実際、その頃、ロシア軍約9万人がウクライナとの国境沿いに集結していた。 だが、ウクライナのレズニコフ国防相が「侵攻が迫っている兆候はない」と発言するなど、まだ誰も本当にロシア軍がウクライナに侵攻するとは考えていなかった。 そんな中、昨年12月、ワシントン・ポストが、情報機関の文書の内容として、「ロシアがウクライナ侵攻を計画中」と報じ、ウクライナ国境に終結したロシア軍の規模や侵攻ルートを指摘した。驚くべきは、実際に侵攻が始まったときの規模・侵攻ルートを正確に的中させたことだ。(Washington Post“Russia planning massive military offensive against Ukraine involving 175,000 troops, U.S. intelligence warns”)。 今年2月24日、戦闘が始まると、ウクライナ軍が、ロシア軍の経路、車列の規模、先端の位置などを把握して市街地で待ち伏せし、対戦車ミサイルやドローンでロシア軍を攻撃した。ロシア軍は、多数の死者を出した。 これが可能だったのも、米英の情報機関の支援があるからだ。米英側は、ロシア政府・軍の意思決定をリアルタイムに近い形で把握している。 過去の日本の歴史を振り返ると、戦争は英国が付いた方が勝つという「不敗神話」がある。なぜ英国が鍵なのか、そして日本にとって英国との関係がいかに大事だったのか解説しよう』、「ワシントン・ポスト」が「昨年12月」に「「ロシアがウクライナ侵攻を計画中」と報じ、ウクライナ国境に終結したロシア軍の規模や侵攻ルートを指摘した。驚くべきは、実際に侵攻が始まったときの規模・侵攻ルートを正確に的中させた」、さすがに驚くべき情報収集力だ
・『日露戦争で日本が勝ったのは英国の力のおかげ?  ウクライナ紛争そのものから少し離れて、日本の安全保障政策を考えてみたい。注目のひとつが、英国との協力関係の構築である。 日本は、英国の「不敗神話」と浅からぬ因縁がある。例えば、「大英帝国」が歴史上初めて同盟を結んだのが日本であるが、その日本がロシアと戦った「日露戦争」だ。 日本を目指したロシアの「バルチック艦隊」が、大西洋から喜望峰を通過し、インド洋を進み休息を取ろうとした港はことごとく大英帝国の支配下にあった。嫌がらせを受け続けたバルチック艦隊は、日本に着いたときには疲労困憊となり、万全の態勢で待ち構えていた日本の連合艦隊の猛攻撃を受け、ほぼ全滅という大敗を喫した。 また、大英帝国は日本に対して、日露戦争遂行のための膨大な物資調達に必要な多額の資金援助を行った。 日本は1000万ポンドの外国公債の募集をしたが、まずロンドン市場が500万ポンドを引き受けた。残りの500万ポンドについては、ロンドン滞在中だったユダヤ系銀行家ジェイコブ・シフが支援して、ニューヨークの金融街が引き受けた。 大英帝国は日本に情報戦での協力も行った。大英帝国の諜報機関が、ロシア軍司令部に入り込み、ロシア軍の動向に関する情報や、旅順要塞の図面などを入手し、日本に提供した。 日本は、ロシア国内の社会主義指導者、民族独立運動指導者などさまざまな反政府勢力と接触し、ロシアを内側から揺さぶろうとした。ロシア国内では、デモ・ストライキが先鋭化し、それが後に「ロシア革命」につながっていったとする説もある。この日本の工作活動の背後に、大英帝国の諜報機関がいたことは、容易に想像できる。 「大国ロシアと戦う日本を支援する大英帝国」という構図は、ウクライナ紛争と重なる部分がある。その後、第1次・第2次世界大戦などでも、英国が味方した陣営がことごとく勝利した。日英同盟が解消された後に起きた第2次世界大戦では、日本は英国に敗れたのだ』、「ロシアの「バルチック艦隊」が、大西洋から喜望峰を通過し、インド洋を進み休息を取ろうとした港はことごとく大英帝国の支配下にあった。嫌がらせを受け続けたバルチック艦隊は、日本に着いたときには疲労困憊となり、万全の態勢で待ち構えていた日本の連合艦隊の猛攻撃を受け、ほぼ全滅という大敗を喫した」、「日本は、ロシア国内の社会主義指導者、民族独立運動指導者などさまざまな反政府勢力と接触し、ロシアを内側から揺さぶろうとした」、「この日本の工作活動の背後に、大英帝国の諜報機関がいたことは、容易に想像できる」、確かに日露戦争の勝利には「英国」がひとかたならぬ貢献をしたようだ。
・『英国は今後の国際社会で鍵になる?今大切にすべき日英関係  現在、日本の安全保障政策の基軸は「日米同盟」だ。しかし、中国の経済的・軍事的急拡大に対応するために、自由民主主義という「価値観」を共有する国による「自由で開かれたインド太平洋戦略」が構想された(第46回)。そして、日米にオーストラリア、インドの4カ国によるQUAD(日米豪印戦略対話)が成立した。 今後の注目は英国の「インド太平洋」への参加だ。 英国は、EU離脱後に「グローバル・ブリテン」という新たな国家戦略を掲げている。EUに代わる地域との関係を強化することで、英国の国際社会におけるプレゼンスを再強化しようというものだ(第228回)。 経済的なプレゼンス強化とは、「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)」に英国が加盟することだ(第192回)。TPP加盟11カ国中6カ国(オーストラリア、カナダ、ブルネイ、マレーシア、シンガポール、ニュージーランド)が「英連邦」加盟国である。 また、軍事的には、英国は米英豪による新たな安全保障協力枠組み「AUKUS(オーカス)」の立ち上げに主導的な役割を果たしている。AUKUSとは、潜水艦、自律型無人潜水機、長距離攻撃能力、敵基地攻撃能力などの軍事分野、サイバーセキュリティー、人工知能、量子コンピューターを用いた暗号化技術といった最先端テクノロジーの共同開発を主な目的とした協定だ。 4月12日、産経新聞が、「AUKUSが非公式に日本の参加を打診している」と報じた。極超音速兵器開発や電子戦能力の強化などで日本の技術力を取り込む狙いがあるという。しかし、日本政府は、その事実はないと即座に否定した。 日本政府内には、AUKUS入りに積極的な意見がある一方で、日米同盟がすでに存在している中でAUKUSに参加する効果があるのか懐疑的な意見もあるという。政府内で明確に方針が決まっていないということだ。 しかし、日米同盟が存在すれば、日英の協力は必要ないとはいえない。米国と英国は得意分野が異なり、安全保障分野において、相互に補完し合う関係にあるからだ。 つまり、日本は英国との協力から、米国とは違うメリットを得られる。そのひとつは、例えば外国のスパイ活動の防止やテロ対策のための「インテリジェンス活動」だろう』、確かに英国の「インテリジェンス活動」から得られる情報は大いに役立つ筈だ。
・『007を地で行く?英国の「人的ネットワーク」を駆使したテロ対策  米国は、高度な技術力を駆使して、「イミント(画像情報)」と呼ばれる、偵察衛星が撮影した画像や、航空機による偵察写真など画像や映像の情報を得る活動や、「シギント(信号情報)」と呼ばれる相手国の通信を傍受することやインターネット上での通信の傍受、相手国のレーダーの波長を調べるなどで情報を得る活動を得意としている。 一方、英国は映画「007シリーズ」で有名なように、「ヒューミント(人的情報)」と呼ばれる、スパイを相手国に潜入させたり、相手国のスパイを懐柔したりして情報を得る活動を、伝統的に得意としてきた。 英国は、旧植民地だった国などで構成される「英連邦」を中心として、世界中に広く深い人的ネットワークを築き、情報網を持っている。オックスフォード、ケンブリッジ、ロンドンなどの大学を卒業した留学生のネットワークがある。 また、BP、シェルなどオイルメジャーやHSBC(香港上海銀行)グループなど多国籍企業による資源・金融ビジネスのネットワークなどもある。これらの多様で複雑な人的ネットワークを、インテリジェンス活動に生かしているのだ(第134回)。 英国のインテリジェンス活動の一端を、私の経験も交えて紹介してみたい。例えば英国の「テロ対策」である(第157回)。 当時、英ヒースロー空港で駐車場に車を停めてターミナルに入るとき、パスポート提示を求められたことは一度もなかった。ロンドン市内も一見、警戒態勢は緩く、いつでも簡単にテロを起こせそうな感じだった。 これは、フランスのパリ市内やシャルル・ド・ゴール空港には多数の警官や武装兵が立ち、警戒していることとは大きな違いだった。だが、テロが頻発するフランス、ベルギーなど欧州大陸に比べれば、発生件数は格段に少なかった。 その理由は、英国の警察・情報機関が、国内外に細かい網の目のような情報網を張り巡らせ、少しでも不穏な動きをする人物を発見すれば、即座に監視し、逮捕できる体制が確立されていたからだ。私を含む世界中から集まる留学生の個人データも完全に掌握していた。 当時、当局の要注意リストには約3000人が掲載され、別の300人を監視下に置いているとされていた。毎月、テロリストの疑いありとして逮捕される人は大変な数に及んだ。 要するに、英国のテロ対策とは、警察と情報機関が長年にわたって作り上げてきた情報網・監視体制をフルに使って、テロを水際で防ぐということだ。 日本には「スパイ防止法」がない。テロ対策が脆弱であり、国内に外国のスパイが好きなように出入りし自由に行動できる「スパイ天国」だともいわれてきた。さらにいえば、日本は英国MI6(秘密情報部)や米国CIA(中央情報局)のような「対外情報機関」が存在しない。英国との協力は、明らかに日本の安全保障上の弱点を補完するものとなり得るのである』、英国では「ヒューミント」の強さに加え、「シギント」でもGCHQ(政府通信本部、通信傍受機関)を抱え、第二次大戦でもドイツの秘密通信の傍受で大きな成果を上げた伝統を持つ。
・『緊急医療体制も日本の一歩先を行く英国  もうひとつ、英国との協力で日本が得られるものを提案したい。それは、新しい感染症のパンデミック発生時などの緊急医療体制の確立である。 コロナ禍で、日本は世界最大の病床数を持ちながら、何度も医療崩壊の危機に陥った。政府は、医療体制の確保や法的措置も検討を進めたが、現在の医療体制が前提であるならば、医療崩壊に備えた抜本的な解決にはならない。 感染症のパンデミック対策とは、限られた医療リソースを、感染対策と、高度医療と、日常的な医療の間でどうバランスさせるかが重要だ。だが、さまざまな既得権や医学界・行政の「縦割り」、高度に専門分化した医療現場を調整するのは極めて困難だ。もし、今後より強毒な感染症のパンデミックに襲われたら、現在の日本の医療体制ではひとたまりもないのは明らかだ(第289回)。 そこで、私は現在の医療体制の外側に存在する自衛隊の医療人材・機材を緊急時に活用する「自衛隊大規模野戦病院」の設置を提案してきた(第283回)。この提案の際、参考としたのが、英国で新型コロナ対策として、英国軍が支援して設置された野戦病院「ナイチンゲール病院」だった(第282回)。 実戦経験豊富な英国軍は、「野戦病院」についても豊富な経験を持っている。また、英国は、大英帝国だった時代から、感染症と闘ってきた豊富な経験を持っているのである(第49回)。 このように、「味方に付いた方が戦争に勝つ」という「不敗神話」を持つ英国との安全保障協力は、日米同盟とは違うメリットを日本にもたらすのは間違いない。 日本を巡る安全保障環境の悪化への対応は、待ったなしである。英国との多角的な協力関係の構築を、今すぐに進めていくべきである』、幸い、英国はEU離脱でアジアに目を向けているので、「英国との多角的な協力関係の構築」する好機を活かしてもらいたい。
タグ:室伏謙一氏による「「経済安保法制」は看板に偽りあり?法案の欠陥を徹底検証」 ダイヤモンド・オンライン 「空洞化した後の国内を「知的産業による先進国経済」に転換させることに失敗し、大卒50%という社会で観光と福祉を基幹産業にせざるを得ないという苦しい国策に追い込まれています」、寂しい限りだが、日本で起業家精神の欠如からベンチャー企業の創業が伸び悩んでいる状況では、やむを得ない。 確かに「経済安全保障」論議は、経産省あたりから唐突に出てきたようだ。 冷泉彰彦氏による「圧倒的に議論が不足している経済安全保障問題」 Newsweek日本版 安全保障 (その11)(圧倒的に議論が不足している経済安全保障問題、「経済安保法制」は看板に偽りあり?法案の欠陥を徹底検証、日本の安全保障政策 今こそ「英国」との連携強化を急ぐべき理由) 「経済安保法案の事務方の責任者である内閣審議官の情報漏えい疑惑が「文春砲」によって明るみに出る」、「法案の企画・立案段階で情報が漏えいしていたのだとすれば、そもそも経済安保を語る以前の問題であるとしかいいようがなく、法施行後の体制のあり方も含めて厳しく追及するのは当然であるし、うやむやにしてはいけない問題ではある」、なんとも緊張感を欠いた話だ。 どうなのだろう。 「定義に関する条文がない」のはやはり問題だ。ただし、「規制を最小限にと規定するとは、やはり安全保障についての緊張感のかけらもない」、のは、規制緩和の時代では当然なのではなかろうか。 しかし、自由主義経済での企業活動は極めて多面的で、「国が前面に出」る余地は余りないのではなかろうか。 上久保誠人氏による「日本の安全保障政策、今こそ「英国」との連携強化を急ぐべき理由」 「ワシントン・ポスト」が「昨年12月」に「「ロシアがウクライナ侵攻を計画中」と報じ、ウクライナ国境に終結したロシア軍の規模や侵攻ルートを指摘した。驚くべきは、実際に侵攻が始まったときの規模・侵攻ルートを正確に的中させた」、さすがに驚くべき情報収集力だ 「ロシアの「バルチック艦隊」が、大西洋から喜望峰を通過し、インド洋を進み休息を取ろうとした港はことごとく大英帝国の支配下にあった。嫌がらせを受け続けたバルチック艦隊は、日本に着いたときには疲労困憊となり、万全の態勢で待ち構えていた日本の連合艦隊の猛攻撃を受け、ほぼ全滅という大敗を喫した」、「日本は、ロシア国内の社会主義指導者、民族独立運動指導者などさまざまな反政府勢力と接触し、ロシアを内側から揺さぶろうとした」、「この日本の工作活動の背後に、大英帝国の諜報機関がいたことは、容易に想像できる」、確かに日露戦 確かに英国の「インテリジェンス活動」から得られる情報は大いに役立つ筈だ。 英国では「ヒューミント」の強さに加え、「シギント」でもGCHQ(政府通信本部、通信傍受機関)を抱え、第二次大戦でもドイツの秘密通信の傍受で大きな成果を上げた伝統を持つ。 幸い、英国はEU離脱でアジアに目を向けているので、「英国との多角的な協力関係の構築」する好機を活かしてもらいたい。
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安全保障(その10)(岸田首相が入れ込む「経済安保政策」 日本が生き残るため「決定的に重要なこと」 意外と見落とされているが…、経済安全保障の最強の武器は「技術力」-補助金・自国生産ではない レアアース戦争の勝因を肝に銘じよ、経済安保で経産省vs財務省?上級国民の椅子取りゲームは「百害あって一利なし」) [外交・防衛]

安全保障については、昨年9月20日に取上げた。今日は、(その10)(岸田首相が入れ込む「経済安保政策」 日本が生き残るため「決定的に重要なこと」 意外と見落とされているが…、経済安全保障の最強の武器は「技術力」-補助金・自国生産ではない レアアース戦争の勝因を肝に銘じよ、経済安保で経産省vs財務省?上級国民の椅子取りゲームは「百害あって一利なし」)である。

先ずは、昨年11月24日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「岸田首相が入れ込む「経済安保政策」、日本が生き残るため「決定的に重要なこと」 意外と見落とされているが…」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/89587?imp=0
・『岸田政権が提唱する経済安全保障政策が動き始めた。専門家による有識者会議を設置し、経済安全保障推進法案(仮称)の制定を目指す。具体的な内容はこれから議論することになるが、半導体を中心としたサプライチェーンの強化、基幹インフラの機能維持、人工知能(AI)など技術基盤の強化が想定されている。 米中の政治的な対立が激化しており、各国は戦略物資の確保にしのぎを削っている。日本は地政学上、中国の脅威に直接さらされる立場であることを考えると、一連の法整備が必須なのは言うまでもない。だが、防衛力の整備が中心だった従来の安全保障とは異なり、経済安全保障の難易度は高い。経済政策や産業政策とセットにして相乗効果を発揮できなければ、絵に描いた餅に終わってしまう』、興味深そうだ。
・『排除すれば問題が解決するわけではない  日本政府は多くの無人機(ドローン)を保有しているが、その実態を調査したところほとんどが中国製だったという、少々笑えない話があった。ドローンに限らず、通信機器や監視カメラなど多くの分野において中国製品を抜きにシステムを構築するのが難しいのが現状である。 安全保障上の懸念がある製品は排除すべきというのはその通りなのだが、なぜ、そうした製品が使われてきたのかという経緯を考え、それに対応できる十分なソリューションを用意しなければ代替はうまく進まない。 ドローンを購入した各省の部局も好んで中国製のドローンを購入したわけではないだろう。現時点において中国製のドローンは圧倒的な品質と性能、価格であり、日本メーカーの製品では歯が立たない。現実的な選択肢として中国製になってしまったというのが偽らざる現実である。 仮に法案が成立し、懸念のある製品や部品の使用を制限しても、それに代わる十分な製品が日本国内に存在しない場合、性能面で妥協せざるを得なくなる。インテリジェンス(諜報)の世界では、各国がそれぞれの重要分野においてどれほどのケイパビリティ(能力)を持っているのかが極めて重要な意味を持つ。性能面で妥協した可能性があるという事実は、それだけでも諜報活動においてマイナス要因となってしまう。 ドローンの問題について言えば、国内で優秀なドローン製品を開発できる環境作りこそが、もっとも重要な経済安全保障政策であり、この部分を怠った結果として、使用制限などの措置が必要になったと考えるべきだ。通信機器や監視カメラの分野も同じであり、各分野で日本メーカーが競争に敗れたことが中国メーカーの台頭を招いており、従来の競争力を維持できていれば、そもそも中国製を採用する必然性はなかった。今回の主要テーマのひとつである半導体についても同じことが言える』、「ドローンの問題について言えば、国内で優秀なドローン製品を開発できる環境作りこそが、もっとも重要な経済安全保障政策であり、この部分を怠った結果として、使用制限などの措置が必要になったと考えるべきだ。通信機器や監視カメラの分野も同じであり、各分野で日本メーカーが競争に敗れたことが中国メーカーの台頭を招いており、従来の競争力を維持できていれば、そもそも中国製を採用する必然性はなかった・・・半導体についても同じことが言える」、その通りだ。
・『日本の半導体産業は壊滅状態  現在、全世界的な半導体不足が深刻な状況となっているが、半導体チップの多くは台湾メーカーが生産している。半導体業界は熾烈な競争の結果、各社は得意分野に集中せざるを得なくなり、徹底的な分業体制にシフトした。半導体の設計は欧米メーカー、製造は台湾メーカー(および一部の米国メーカー)が圧倒的であり、日本メーカーは製造装置や検査装置、部材の分野でしか存在感がない。 特に台湾メーカーの製造能力は突出しており、台湾メーカーが存在しなければiPhoneの製造もAI(人工知能)システムの構築もままならないというのが現実である。 こうしたところに急浮上してきたのが台湾海峡問題である。万が一、中国が台湾に侵攻した場合、台湾からの半導体供給がストップし、米国の産業が大打撃を受ける可能性がある。バイデン政権は、米国内での製造体制強化を打ち出しており、最大手のインテルは国内工場の大増設を決断した。) ところが日本の場合、半導体の設計や製造という基幹部分においてほぼ壊滅状態となっており、国内で大量の半導体を製造する能力を失っている。政府は台湾の半導体製造大手TSMCに対して日本進出を要請し、8000億円といわれる建設資金の約半額を支援することで熊本県での工場建設が決まったが、自前での半導体確保とはほど遠い状況にある。 米国企業はあくまでコスト対策とスピード感を重視する必要性から台湾に製造を委託しているのであって、高い半導体製造能力は維持している。実際、最大手のインテルは開発から製造までを一貫して行うメーカーであり、いつでも自前調達に切り換えられるポテンシャルがあった。最悪の事態が発生した場合でも、米国は半導体を確保できるが、日本はそうはいかないだろう』、「米国企業はあくまでコスト対策とスピード感を重視する必要性から台湾に製造を委託しているのであって、高い半導体製造能力は維持している・・・最悪の事態が発生した場合でも、米国は半導体を確保できるが、日本はそうはいかないだろう」、確かに「日米企業」の対応は対照的だ。
・『需要がないところには、十分な供給は行われない  結局のところ、自国に高い競争力を持つ企業が存在し、基幹製品を国内調達できる環境がなければ、完全な経済安全保障体制を確立することはできない。もし日本の半導体産業が凋落していなければ、ここまで深刻な状況には陥っていなかった可能性が高い。 つまり経済安全保障を実現するためには、懸念のある製品の排除といった短期的な措置に加え、先端産業の育成という長期的施策が必要であり、そのためには、なぜ過去に失敗したのかという検証が欠かせない。 では日本の半導体産業はなぜここまで凋落してしまったのだろうか。最大の理由は90年代に起きたIT革命の潮流を見誤り、パソコンの台頭を前提にした経営戦略に舵を切ることができなかったからである。 半導体というのは、それを使う最終製品がなければ意味をなさない。80年代は汎用機と呼ばれる大型コンピュータが主流であり、日本メーカーはこの分野で相応の存在感があった。汎用機には大量のメモリが必要となるので、半導体メーカーは汎用機向けのメモリ製造で大きな収益を上げることができた。そして汎用機を製造したコンピュータ・メーカーは、銀行などIT投資を強化している国内企業に製品を販売することができた(第1~3次オンラインシステム)。 80年代の日本においては、汎用機を利用するユーザー企業、そこに汎用機を収めるコンピュータ・メーカー、そしてコンピュータ・メーカーに半導体を収める半導体メーカー(日本は総合メーカーが多く、コンピュータ・メーカーが半導体メーカーを兼ねていた)という、需要と供給のすべてが揃っていた。 現在の米国も同じである。米国には世界最大の消費市場があり、GAFAをはじめ多くの企業が最先端の半導体を搭載したコンピュータを大量購入している。アップルやエヌビディアといった企業は米国の消費者に高性能な半導体を搭載した製品を販売し、半導体メーカーはこうした米国企業に製品を納めているという図式だ。 ところが日本企業は90年代以降のIT革命の流れを見誤り、IT利用という点で、先進国の地位から脱落してしまった。ユーザーが存在しないということは国内には大きな半導体需要が存在しないということであり、当然の結果として半導体産業も衰退してしまう。 台湾や韓国は国内に大きなIT市場が存在しないため、半導体製造に特化し成功したが、これはいわば小国だからこそ実現できる戦略である。日本のように国内に大きな消費市場が存在する大国はそうはいかない。結局のところ、現時点において半導体の確保に苦心しているのは、日本がIT後進国となり、IT需要が消滅したことが大きく影響しているのだ』、「日本企業は90年代以降のIT革命の流れを見誤り、IT利用という点で、先進国の地位から脱落してしまった」、ここはもう少し説明が必要だ。「ユーザーが存在しないということは国内には大きな半導体需要が存在しないということであり、当然の結果として半導体産業も衰退」、その通りだ。
・『「産業競争力の強化」が大前提  以上の話をまとめると、強力な国内消費市場を構築することこそが、経済安全保障の根幹であることが分かる。技術は時代によって変化するので、常に最先端産業の育成を続けなければ、同じことの繰り返しになってしまう。日本がなぜ過去に失敗したのか徹底的に検証し、今後に生かすことが重要だ。 仮に今回の法案によって、半導体の供給や懸念のある製品の排除に成功したとしても、10年後はまったく新しい技術が登場しているだろう。その時点において日本がトッププレイヤーでなければ、やはり製品の確保に事欠くという事態に陥る可能性は高い。 今回、議論の対象となっている経済安全保障政策が目の前に存在するリスクへの対処だとすると、新しい産業の育成は、より本質的・長期的な安全保障政策といってよい。 今後、数十年の経済をリードする基幹技術がAI(人工知能)と再生可能エネルギーであることは、誰の目にも明らかである。この2つの分野において日本がリードできなければ、近い将来、半導体とまったく同じ問題が発生すると予想される。すでに再生可能エネの分野は欧米および中国企業の独壇場となっており、日本メーカーの存在感は皆無に等しい(現時点において風力発電システムの多くは輸入に頼らざるを得ない)。 このままではエネルギーという安全保障上もっとも重要な分野を海外企業に握られるという事態にもなりかねない。新しい産業を育成するという視点を抜きに経済安全保障は成立しないという現実について、全国民で共有していく必要があるだろう』、その通りだが、「経済安全保障」を名目に補助金をバラ蒔くような無駄は避けるべきだ。

次に、2月6日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「経済安全保障の最強の武器は「技術力」-補助金・自国生産ではない レアアース戦争の勝因を肝に銘じよ」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/92097?imp=0
・『経済安全保障が重要な課題であることは間違いない。しかし、これは弱体化した産業の自国生産を正当化するために用いられることが多い。農産物自給率引上げがその例だったが、今度は半導体の国内生産への補助を正当化するために用いられる可能性がある。しかし、安全保障のためにもっとも重要なのは技術力であり、それは補助で獲得できるものではない』、「安全保障のためにもっとも重要なのは技術力であり、それは補助で獲得できるものではない」、同感である。
・『経済安全保障には補助金ではなく供給源分散を  「経済安全保障」が、岸田内閣の主要な政策として前面に出てきた。 中国の脅威拡大に対抗してサブプライチェーンの強靭化をはかることが主たる目的とされている。中国は輸出制限などの措置によって、他国に経済的な強制力を行使する可能性がある。 新型コロナ発生源との関係で世界保健機関(WHO)に武漢の研究所を調査するよう求めたオーストラリアに対して、農産物や石炭、鉄鉱石の輸入を止めるなどの経済的圧力をかけた例がある。 こうした圧力に対して、いかに対応すべきかが問題とされている。 経済安全保障が重要な課題であることは間違いない。ただし、「安全保障」という言葉は、全てに優先するという響きを持っている。したがってこれを旗印に、様々なことが行われる可能性が強い。 しばらく前には、農産物自給率の確保がいわれた。「食の安全が脅かされるから自給が必要だ。ところが日本の自給率は非常に低い。だから大変だ」との議論だ。 しかし、本当は逆である。自給率を高めれば、食料安全保障の面で大きな問題が発生するのだ。国内生産だけに頼れば、天候不順などで凶作になったときに食料不足になるからだ。 供給先が世界中に分散していれば、そうした事態を避けられる。供給源をできるだけ分散することこそ、食料安全保障の基本だ。 「経済安全保障」という考えは、弱体化した産業の補助に結びつくことが多い。とりわけ、自国内生産への補助金だ。 食料自給率は、国内生産への補助や、輸入農蓄産物に対する高関税を正当化するために強調されたのだ。 サプライチェーンも同じである。解は供給源分散化であって、自国生産ではない。 脱中国化を図ることは、中国の賃金上昇への対処からも望まれる。そして、すでに、かなりの程度進行している』、「供給源をできるだけ分散することこそ、食料安全保障の基本だ」、「食料自給率は、国内生産への補助や、輸入農蓄産物に対する高関税を正当化するために強調された」、「サプライチェーンも同じである。解は供給源分散化であって、自国生産ではない」、その通りだ。
・『今、半導体に焦点が当たっているが  今回は、農産物の代わりに半導体が補助の対象になる可能性が強い。 半導体はあらゆる電化製品に使われる重要な部品だが、供給が停滞したために、世界的な不足が生じている。だから、対処が必要だという議論だ。 前回述べたように、TSMCの熊本工場誘致に多額の補助金を支出することが既に決定されている。今後は、国内の半導体生産に補助金を出すことにもなるかもしれない。これは、農産物の自給率確保と全く同じものである。 現在、半導体不足が世界的な問題になっていることは事実だ。 この大きな原因は、中国の半導体ファンドリーSMICから自動車用の半導体の供給を受けられなくなったことだ。 しかし、これは中国が望んで行なった輸出禁止ではない。そうではなく、アメリカ商務省がSMICをエンティティリストに載せて、取引を禁じたからだ。つまり、これはアメリカが対中制裁のために行った措置である』、「半導体不足」の「大きな原因は、中国の半導体ファンドリーSMICから自動車用の半導体の供給を受けられなくなったこと」、確かに「中国が望んで行なった輸出禁止ではない」。
・『半導体で困っているのは中国  現在、高性能半導体の供給が受けられずに困っているのは、中国だ。 中国の通信機メーカー、ファーウエイが米商務省リストに載せられたため、台湾のTSMCから高性能半導体の供給が受けられなくなったことによる。 では、中国はこの問題を解決するために台湾に侵攻して台湾を統合し、TSMCを自国企業にするだろうか? そうした危険があることが安全保障上問題だという意見がある。つまり高性能半導体の生産が台湾に集中しており、そこが中国の脅威にさらされているというのだ。 しかし、TSMCのために中国が台湾に侵攻することなど、ありえない。まず、あまりにリスクが大きすぎる。しかも、そのような状況が見えたら、TSMCの技術者は外国に逃げてしまうだろう。どんな国でも喜んで迎えるに違いない。 結局のところTSMCの工場を占領したものの、だれも操業することができないことになってしまう可能性が高い』、「TSMCのために中国が台湾に侵攻することなど、ありえない」、「そのような状況が見えたら、TSMCの技術者は外国に逃げてしまうだろう」、「結局のところTSMCの工場を占領したものの、だれも操業することができないことになってしまう可能性が高い」、同感である。。
・『技術こそが最強の取り引き材料  経済安全保障の基本は、(先に述べた供給先の分散化とともに)取引材料を持つことだ。他の国では絶対に提供できないものを作れることである。その国をつぶしたら世界経済が立ちゆかなくなってしまうような技術を持つ企業や産業を作ることだ TSMCはその好例だ。これをつぶせば、最先端の半導体が製造できなくなる。世界にとって、台湾の存在が不可欠なのだ。 では、日本は取引材料にできるような企業や産業を持っているだろうか? 自動車は日本の基幹産業だが、仮に日本の自動車会社がつぶされたとしても、自動車を生産できる会社は世界中に沢山ある。だから、自動車を安全保障のための取引材料に用いることはできない。 半導体について言えば、製造装置や材料では日本は強い。しかし、日本でしか作れないというものではない。 最先端の半導体製造装置は、極小回路をシリコンウエハーに印刷する極端紫外線リソグラフィ(EUV)と呼ばれるものだ。この製造は、オランダのASMLが独占していて、年間50台くらいしか生産されない。こうしたものこそ、取引材料となしうる。 現在、自動車の生産は半導体の生産で制約されている。様々な電子部品もそうだ。ただし、これはいずれは解消されるだろう。 しかし、先端半導体はこれとは別だ。最先端の技術を持つものが主導権を握る。そして世界の製造業を支配することになる。 こうした問題に対処することこそ必要だが、それは、補助金を出すことで実現できるものではない』、「経済安全保障の基本は、(先に述べた供給先の分散化とともに)取引材料を持つことだ。他の国では絶対に提供できないものを作れることである」、「自動車は日本の基幹産業だが、仮に日本の自動車会社がつぶされたとしても、自動車を生産できる会社は世界中に沢山ある。だから、自動車を安全保障のための取引材料に用いることはできない」、予想以上に取引材料となる産業は少ないようだ。
・『技術は補助金より強し  中国が日本に対して、輸出入制限や禁輸措置、あるいは関税引き上げなどの措置をとってくる可能性は、もちろんある。 中国は貿易管理法によって、輸出管理規制を強めるかもしれない。とりわけ問題なのは、レアアース(希土類)の輸出が制限されることだ。 「レアアース戦争」は、実際に起こった。2010年9月に尖閣諸島で中国人船長が日本海上警察に逮捕される事件があり、その後、中国からのレアアース輸出が規制されたのだ。 日本は、これをWTOに提訴した。そして、協定違反の判決を引き出した。 このときの日本の対応は、WTO提訴だけでなく、もっと積極的なものだった。日立製作所やパナソニック、ホンダなどは、都市鉱山(既存部品の廃品)からの回収やリサイクルを行なった。さらに、より少ないレアアースで性能の良い製品を開発した。 これによって、日本の中国レアアースへの依存度は、2009年の86%から2015年には55%まで低下した。レアアースの価格が急落したため、中国のレアアース生産企業は赤字に陥った。こうして、レアアース戦争は、日本の勝利に終わった。 「ペンは剣より強し」とは、19世紀イギリスの小説家・政治家のリットンの言葉だ。 「言論の力は、政治権力や軍隊などの武力よりも民衆に大きな影響を与える」という意味だが、これをつぎのように解釈し直すこともできるだろう。 それは、どんなに強力な武器を持つよりも、強い技術力を持つことのほうが重要ということだ。 レアアース戦争で日本が勝った原因は、日本の技術だ。このような技術を持つことこそが、経済安全保障でもっとも重要なのだ』、「レアアース戦争で日本が勝った原因は、日本の技術だ。このような技術を持つことこそが、経済安全保障でもっとも重要なのだ」、同感である。

第三に、2月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「経済安保で経産省vs財務省?上級国民の椅子取りゲームは「百害あって一利なし」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295813
・『岸田政権の目玉政策「経済安全保障」のキーマンに文春砲が炸裂  「週刊文春」が、政府が進めている経済安全保障推進法案の準備室長を務めていた、藤井敏彦・国家安全保障局担当内閣審議官に関するスクープを報じた。藤井氏が、兼業届を出さずに私企業で働き報酬を得ていた疑いがあることや、「朝日新聞」の記者と不倫関係にあることがわかったというのだ。2月8日に、国家安全保障局は藤井氏を更迭しているが、それはこの疑惑が原因だと「文春」は報じている。 政府要人が文春や新潮の週刊誌報道でクビを取られるというのは、もはや日本の日常風景となっているので、それほど驚く国民もいないだろう。しかし俗世間とかけ離れた「霞が関ムラ」には衝撃が走っていて、主に2つの「風説」で盛り上がっている。 まず1つ目が、「不倫相手に情報漏洩していたのではないか」というものだ。 2月2日、マスコミ各社は経済安全保障法制に関する有識者会議の提言を報じているのだが、その中でひときわ異彩を放っていたのが朝日新聞だった。各社が提言から抜粋する形で法案のポイントを整理している中で、朝日新聞の記事だけは、「法案には事業者への罰則規定も検討されており」と他紙が掲載していない「特ダネ」がすっぱ抜かれていたのだ。 新聞がこういう書き方をするということは、「ネタ元」(情報源)が立場のある人物であるということに他ならない。それはつまり、経済安保推進法案に関して決定権を持つ政府要人、もしくは法案の準備で中心的な役割を持っている官僚――そう、藤井氏はこの朝日スクープの「ネタ元」の条件にピッタリなのだ。 「文春」が報じたように「不倫」という親密な間柄が事実なら、手柄をあげさせるために特ダネのプレゼントをしたなんてストーリーもありえる。「法案の中身」について寝物語でポロッと漏らしてしまったということだって考えられる。 そんな“男と女のラブゲーム”的な話とうってかわって、もうひとつささやかれているのは霞が関定番のドロドロした“パワーゲーム”だ。それはズバリ、「経済安全保障利権を、財務省が本格的に奪いにきたのではないか」というものだ』、「不倫」による「スクープ」は珍しくもないが、「経済安全保障利権を、財務省が本格的に奪いにきたのではないか」、というのには驚かされた。
・『経産省と財務省の椅子取りゲーム 財務官僚が次々と藤井氏の椅子に座る  報道によれば、藤井氏の更迭を受けて政府は、後任に財務省出身の泉恒有内閣審議官をあてる方向だという。泉氏は昨年7月に財務省に出向するまで、内閣参事官として国家安全保障局にもいたのだから順当といえば順当な話なのだが、なぜこんな話になっているのかというと、経産省出身の藤井氏の後任人事に、財務官僚がとって変わるのは、これが二度目だからだ。 そもそも、藤井氏がなぜ経済安全保障推進法の準備室長になったのかというと、安倍政権時、国家安全保障局の中で経済安全保障を担う専門部署として新設された「経済班」の初代班長だったからだ。では、ここで藤井氏の後任の班長は誰になっているのかというと、財務省国際局出身の高村泰夫内閣審議官である。 つまり、あくまで人事的な見え方に過ぎないが、「経済安保のキーマン」と言われた藤井氏のイスに、財務官僚が次々と座っている構図なのだ。 もちろん、霞が関ではこのような流れになることはある程度予見されていた。岸田政権になってから「安全保障担当」の内閣総理大臣補佐官は、木原誠二官房副長官と寺田稔衆議院議員が担ってきたが、この2人は財務省(旧大蔵省)の出身だからだ。 一般国民の感覚からすれば、「重要なのは政策の中身なんだから、財務官僚が仕切ろうが、経産官僚が主導権を握ろうが、そんなのはどっちでもいい」と思うだろうが、これは経産省からするとなかなか受け入れ難い屈辱的な話である。 「経済安全保障」という国策の遂行、及びそれにまつわる口利きや斡旋、さらに天下りやらという利権は、「経産省と警察で山分けできる」と皮算用がなされていたからだ。 そのあたりをご理解していただくには、そもそもなぜ経済安全保障が目玉政策になったのかを振り返っていく必要がある。「岸田政権肝煎りの」という言葉がつくので、あたかも岸田首相が言い出したことのように誤解をされている方も多いだろうが、実はこの政策をここまでにこぎつけた最大の「功労者」は、甘利明氏だ』、「最大の「功労者」は、甘利明氏だ」、初めて知った。
・『甘利明氏の功績とは? 大企業に「天下り」が続々  安倍政権時代、甘利氏はアメリカのNEC(国家経済会議)にならって、経済安保政策を立案する組織を立ち上げるように首相に提言した。それを受けて、北村滋氏が2代目局長を務めていた国家安全保障局の中に、新たに「経済班」が設置され、藤井氏がその初代班長に就いたという流れだ。 甘利氏といえば、経産相、経済再生担当相を歴任した「商工族のドン」として知られており、経産省にとっては守り神的な存在である。かたや経済班設立に尽力した北村氏は、警察庁で外事畑を歩み、内閣情報調査室のトップを7年以上も務めたことから海外からは「日本のCIA長官」の異名をとるインテリジェンスのプロ。また、安倍元首相からの信頼も厚く、非常に近い間柄だったことでも知られている。 つまり、「経済安全保障」という国策は、安倍・甘利ラインという政治力学の中で産声をあげて、そこにひもづいている経産省と警察庁の官僚たちの手によって、徐々に形づくられていったというわけなのだ。 そんな「経産省+警察」構図を如実に示しているのが、「天下り」である。 昨今の経済安保の重要性が唱えられる世相を受けて、三菱電機、富士通、デンソー、NECなどの大企業に経済安全保障の専門部署が新設されているのだが、その担当役員として迎えられているのが、日下部聡・前資源エネルギー庁長官をはじめとした経産省OBなのだ。 「経済安保バブル」に躍るのは、警察も同じだ。 警察庁では昨年1月、「経済安全保障対策官」を新設。都道府県警と連携しながら、民間企業や大学向けの対策説明会や意見交換といった「経済安全保障コンサルティング」に取り組む方針だという。実際、警視庁では昨年3月、公安部に経済安全保障のプロジェクトチーム(PT)を発足。9月から半導体などの最先端技術を取り扱う製造系の大企業を訪問して、企業を狙ったスパイの具体的な手口などについての情報を提供している。 パッと見、「日本企業の技術を守るために、おまわりさんたちも頑張ってくれている」という美しい話なのだが、全国の警察官の再就職先確保のため、民間企業に「経済安保コンサルタント」を売り込んでいるようにも見える。) 事実、この分野のエキスパートである警察OBの北村氏は現在、「北村エコノミックセキュリティ」という会社を立ち上げて、「コンサルタント」として活躍している。警察庁はこの「北村モデル」を全国規模に拡大しようとしている可能性もゼロではない。日本中の企業に警察OBを「経済安保コンサルタント」として送り込むことができれば今、全国の警察が頭を痛めている「再就職先の確保」問題は一気に解決できる。 このようなオープンになっている情報だけを見ても、経産省と警察庁が「経済安保」というものを、自分たちの既得権益だと考えていることが容易に想像できる。 だからこそ、「経済安全保障利権を、財務省が本格的に奪いにきたのではないか」なんて憶測も飛び交ってしまうのだ』、「「経済安全保障」という国策は、安倍・甘利ラインという政治力学の中で産声をあげて、そこにひもづいている経産省と警察庁の官僚たちの手によって、徐々に形づくられていった」、「日本中の企業に警察OBを「経済安保コンサルタント」として送り込むことができれば今、全国の警察が頭を痛めている「再就職先の確保」問題は一気に解決できる。 このようなオープンになっている情報だけを見ても、経産省と警察庁が「経済安保」というものを、自分たちの既得権益だと考えていることが容易に想像できる」、なるほど。
・『本当の「経済安全保障」はどこへ パワーゲームは「百害あって一利なし」  ただ、一般庶民の立場から言わせていただくと、そのような政治家や官僚という「上級国民」の皆さんが主導権争いなどのパワーゲームにのめりこむ姿を見れば見るほど、「経済安全保障」というものに対しての不安が膨らんでいく。 国益という視点に立てば、経済安全保障というものが必要で「まったなしの課題」というのは同感だ。日本で言われる経済安全保障というのはぶっちゃけ「中国の脅威」にどう立ち向かうのか、という話なので、エネルギー、半導体、サプライチェーン、さらには海洋資源などで、米中対立の影響を受けないよう、日本独自の生産・輸入の体制などを整えるということに対して全く異論はない。 が、先ほどの「天下り」確保のための活発な動きや、霞が関の主導権争いを見ていると、そのせっかくの重要な国策が、特定の人々に利益を誘導するような「利権」となってしまったり、政治的ライバルを貶めるための「政争の具」になって終了、という最悪の結末しか浮かばない。つまり、「経済安保」の法案を通して、官民あげて推進したところで、一部の「上級国民」の皆さんだけが恩恵があって、我々のような市井の一般庶民には「百害あって一利なし」という悪政になってしまうのだ。 実際、これまでも「経済安全保障」や「中国の脅威」というものは、一部の上級国民を利するために、都合よく利用されてきたという動かし難い事実がある。 記憶に新しいのが、自民党総裁選の最中に突如として注目を集めた「日本端子」問題である』、「「経済安保」の法案を通して、官民あげて推進したところで、一部の「上級国民」の皆さんだけが恩恵があって、我々のような市井の一般庶民には「百害あって一利なし」という悪政になってしまうのだ」、要警戒だ。
・『総裁選でデマ浮上 権力闘争で恣意的に利用される「経済安保」  日本端子という会社は、河野太郎衆議院議員の家族が経営している自動車部品会社で、中国にいくつか中国企業との合弁会社がある。河野氏が総裁選に出馬した際、SNS上でこの日本端子について「流言」が飛んだ。曰く、中国の太陽光発電に部品を提供しており、河野家は中国で太陽光利権を一手に握っている。中国の合弁会社は資本の比率などを見ても中国政府から異例の厚遇を受けており、これこそが、河野ファミリーと中国共産党の蜜月の動かぬ証拠である、などさまざまな情報が飛び交った。 結論から言うと、この話は全くのデマだ。日本端子は1960年に設立してから、製品の8割は自動車用のコネクタや圧着端子で、顧客も日本の自動車メーカーが多い。「中国の手先」などの誹謗中傷が多く寄せられたことを受けて、自社HPで「お知らせ」として反論しているが、これまで中国市場で太陽光発電の部品など販売したこともない。また、「異例の厚遇」とやらの資本比率も、中国企業との合弁会社なら石を投げれば当たるほどよくあるものだ。 しかし、こんなデタラメ話が、総裁選の最中にも信憑性をもって語られ、マスコミの中には実際に河野氏に質問をした記者もいた。特定の政治家や、彼らと近しい著名ジャーナリスト、政治評論家がSNSなどで大騒ぎをしていたからだ。当時、これらの人々は「疑惑を徹底追及します」とか「日本の安全保障上大きな問題だ」などと叫んでいたが、今では「そんなことあったっけ?」と何事もなかったような顔をしている。 このように「中国の脅威」や「経済安全保障」というのは、為政者たちの権力闘争で恣意的に利用されることが多い。それは、トランプ前大統領を見てもよくわかるだろう。 自分の都合が悪い問題を追及されると、北朝鮮や中国を痛烈に批判する。今のバイデン大統領も立場が悪くなると、「ウクライナ問題」を持ち出した。それと同じで、日本でも政治や官僚が、自分たちの都合の悪い話が出た時、ここぞとばかりに「経済安全保障」を引っ張り出して、国民の目をそらす恐れがあるのだ。 「そんなのは貴様の妄想だ」という声が聞こえてきそうだが、「経済安保バブル」で天下り拡大にわく霞が関や、熾烈な足の引っ張り合いを見ていると、「妄想」とは言い切れないのではないか。 ただでさえ、経済安全保障というのは、日本の経済成長や景気拡大とは直接的に関係がない政策だ。対象となるのは日本企業の0.3%しかない大企業だけで、しかもナショナリズム丸出しの過度な規制によって、企業活動が足を引っ張られる恐れもある。今のところこの政策で恩恵を受けているのは、一部のコンサルタントと、天下りが拡大できた霞が関だけだ。 経済安全保障を推進するのは結構だが、「国破れて上級国民あり」なんてことだけにはならぬようお願いしたい』、「経済安全保障というのは、日本の経済成長や景気拡大とは直接的に関係がない政策だ。対象となるのは日本企業の0.3%しかない大企業だけで、しかもナショナリズム丸出しの過度な規制によって、企業活動が足を引っ張られる恐れもある。今のところこの政策で恩恵を受けているのは、一部のコンサルタントと、天下りが拡大できた霞が関だけだ」、「国破れて上級国民あり」、言い得て妙だ。
タグ:現代ビジネス 安全保障 (その10)(岸田首相が入れ込む「経済安保政策」 日本が生き残るため「決定的に重要なこと」 意外と見落とされているが…、経済安全保障の最強の武器は「技術力」-補助金・自国生産ではない レアアース戦争の勝因を肝に銘じよ、経済安保で経産省vs財務省?上級国民の椅子取りゲームは「百害あって一利なし」) 加谷 珪一氏による「岸田首相が入れ込む「経済安保政策」、日本が生き残るため「決定的に重要なこと」 意外と見落とされているが…」 「ドローンの問題について言えば、国内で優秀なドローン製品を開発できる環境作りこそが、もっとも重要な経済安全保障政策であり、この部分を怠った結果として、使用制限などの措置が必要になったと考えるべきだ。通信機器や監視カメラの分野も同じであり、各分野で日本メーカーが競争に敗れたことが中国メーカーの台頭を招いており、従来の競争力を維持できていれば、そもそも中国製を採用する必然性はなかった・・・半導体についても同じことが言える」、その通りだ。 「米国企業はあくまでコスト対策とスピード感を重視する必要性から台湾に製造を委託しているのであって、高い半導体製造能力は維持している・・・最悪の事態が発生した場合でも、米国は半導体を確保できるが、日本はそうはいかないだろう」、確かに「日米企業」の対応は対照的だ。 「日本企業は90年代以降のIT革命の流れを見誤り、IT利用という点で、先進国の地位から脱落してしまった」、ここはもう少し説明が必要だ。「ユーザーが存在しないということは国内には大きな半導体需要が存在しないということであり、当然の結果として半導体産業も衰退」、その通りだ。 その通りだが、「経済安全保障」を名目に補助金をバラ蒔くような無駄は避けるべきだ。 野口 悠紀雄氏による「経済安全保障の最強の武器は「技術力」-補助金・自国生産ではない レアアース戦争の勝因を肝に銘じよ」 「安全保障のためにもっとも重要なのは技術力であり、それは補助で獲得できるものではない」、同感である。 「供給源をできるだけ分散することこそ、食料安全保障の基本だ」、「食料自給率は、国内生産への補助や、輸入農蓄産物に対する高関税を正当化するために強調された」、「サプライチェーンも同じである。解は供給源分散化であって、自国生産ではない」、その通りだ。 「半導体不足」の「大きな原因は、中国の半導体ファンドリーSMICから自動車用の半導体の供給を受けられなくなったこと」、確かに「中国が望んで行なった輸出禁止ではない」。 「TSMCのために中国が台湾に侵攻することなど、ありえない」、「そのような状況が見えたら、TSMCの技術者は外国に逃げてしまうだろう」、「結局のところTSMCの工場を占領したものの、だれも操業することができないことになってしまう可能性が高い」、同感である。。 「経済安全保障の基本は、(先に述べた供給先の分散化とともに)取引材料を持つことだ。他の国では絶対に提供できないものを作れることである」、「自動車は日本の基幹産業だが、仮に日本の自動車会社がつぶされたとしても、自動車を生産できる会社は世界中に沢山ある。だから、自動車を安全保障のための取引材料に用いることはできない」、予想以上に取引材料となる産業は少ないようだ。 「レアアース戦争で日本が勝った原因は、日本の技術だ。このような技術を持つことこそが、経済安全保障でもっとも重要なのだ」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生氏による「経済安保で経産省vs財務省?上級国民の椅子取りゲームは「百害あって一利なし」 「不倫」による「スクープ」は珍しくもないが、「経済安全保障利権を、財務省が本格的に奪いにきたのではないか」、というのには驚かされた。 「最大の「功労者」は、甘利明氏だ」、初めて知った。 「「経済安全保障」という国策は、安倍・甘利ラインという政治力学の中で産声をあげて、そこにひもづいている経産省と警察庁の官僚たちの手によって、徐々に形づくられていった」、「日本中の企業に警察OBを「経済安保コンサルタント」として送り込むことができれば今、全国の警察が頭を痛めている「再就職先の確保」問題は一気に解決できる。 このようなオープンになっている情報だけを見ても、経産省と警察庁が「経済安保」というものを、自分たちの既得権益だと考えていることが容易に想像できる」、なるほど。 「「経済安保」の法案を通して、官民あげて推進したところで、一部の「上級国民」の皆さんだけが恩恵があって、我々のような市井の一般庶民には「百害あって一利なし」という悪政になってしまうのだ」、要警戒だ。 「経済安全保障というのは、日本の経済成長や景気拡大とは直接的に関係がない政策だ。対象となるのは日本企業の0.3%しかない大企業だけで、しかもナショナリズム丸出しの過度な規制によって、企業活動が足を引っ張られる恐れもある。今のところこの政策で恩恵を受けているのは、一部のコンサルタントと、天下りが拡大できた霞が関だけだ」、「国破れて上級国民あり」、言い得て妙だ。
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安全保障(その9)(中国などの外国資本が「水源地の山林」を買っているという噂は本当か、寺島実郎「本質を見誤ると日本は米中関係に翻弄」 経済安保論を単純な「中国封じ込め」に歪めるな、日本の「産業スパイ対策」がどうにも甘すぎる事情 経済安保が重要な中 いいようにやられている) [外交・防衛]

安全保障については、2019年9月9日に取上げた。今日は、(その9)(中国などの外国資本が「水源地の山林」を買っているという噂は本当か、寺島実郎「本質を見誤ると日本は米中関係に翻弄」 経済安保論を単純な「中国封じ込め」に歪めるな、日本の「産業スパイ対策」がどうにも甘すぎる事情 経済安保が重要な中 いいようにやられている)である。

先ずは、本年3月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの福崎 剛氏による「中国などの外国資本が「水源地の山林」を買っているという噂は本当か」を紹介しよう。
・『近年のキャンプブームに加え、コロナ禍で密を避けようとキャンプ場に出かける人が増え、プライベートキャンプ用に山林を求めるニーズが高くなってきている。林業の衰退もあり、かつて資産家の象徴だった山はいまや数十万円から数百万円で簡単に購入できるほど不動産価値が下がっている。そんな日本の山を買いあさる外国人がいるという噂(うわさ)を耳にした人は少なくないだろう。しかも狙われているのは、良質な水源地の山林だという。こうした話は本当なのだろうか』、興味深そうだ。
・『なぜ、日本の山林が外国人に買われるのか(山林は、水源の涵養(かんよう)機能を持っている。わかりやすく説明すれば、山林の土壌が降水を一時的に貯留することにより、河川へ流れ込む水の量を平準化している。降水の河川への流量を自動調整するように働くため、洪水を緩和するのである。また、雨水が山林の土壌を通過することにより、濾(ろ)過する効果がもたらされて水質を浄化する機能を果たす。 つまり、きれいな水源を維持するためには、山林が必要というわけだ。この水源を狙って外国人が土地取引をしているのではないかというのが噂(うわさ)になっているのである。 この件について、全国の山林を手広く扱う「山林バンク」の辰己昌樹代表は次のように話してくれた。 「何年も前のことですが、某大手新聞社から中国人が水源林を買っているらしいが、売ったことはあるかと取材で聞かれたことがあります。売ったこともありませんし、私の知る限り外国人が水源を目的に山林を買ったという話も直接聞いたことはありません」 山林の不動産を扱うベテラン業者でさえ、直接外国人から取引を持ちかけられたことがないというのだ。 とはいえ、もしも日本の水源地を外国人に押さえられたら、海外へ水資源を持ち出されるという不安は拭いきれない。豊かな水資源に恵まれる日本だが、水資源の乏しい国にとっては大金を払ってでも良質な水源は欲しいものである。世界では約8.4億人が給水サービスを利用できず、またトイレ(衛生施設)を使えない人が約23億人もいるとして、SDGs(持続可能な開発目標)では「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保」(ゴール6)を定めているほどだ。 だからこそ、割安な日本の水源地を含む山林が狙われているのである』、なるほど。
・『21世紀の世界は「水戦争」の時代  「外国人が水源地の山を買っている」という噂話には、主に2つのエピソードが結びつけられて拡散したのではないかと思われる。 一つ目は、2008年に公開された映画『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』がきっかけだろう。このドキュメンタリー映画は、世界で起きているさまざまな水資源の争奪を描いたもので、例えば開発途上国に水道事業の民営化を迫る水メジャーと呼ばれるような企業が水資源を独占し、アフリカのある国では水道代が高騰し、貧しい国民の多くが安全で衛生的な飲料水を飲めない状況が起きていると問題提起したのである。 この映画公開後には、東京財団政策研究部から政策提言「日本の水源林の危機~グローバル資本の参入から『森と水の循環』を守るには~」(2009年1月)が発表された。 この提言の序章にある「日本の森と水が狙われている ~水源林を守り、『森と水の循環』を維持せよ」の中で、紀伊半島の奥地水源林(三重県大台町)に中国資本が触手を伸ばした、との記載がある。しかし、断念したということで、中国が水源林を買ったとは明言していない(ちなみに水源林とは、雨水を吸収し浄化しつつ水源の枯渇を防いだり、河川に流れ込む水を調整したりする機能を持つ森林にあたる)。 「世界の水戦争」がすでに、日本でも身近に迫っているという危機感があったのは確かだろう。 2012年には、「水源地買収 さらなる規制を」の小見出しで、産経新聞が水源地買収問題で意見書を国に提出した15の自治体を記事にした(3月26日付)。この中で、北海道ニセコ町の15の水源地のうち2つが外資所有になっており、「水道水源保護条例」を制定するきっかけになったと報じている。 二つ目は、中国が抱える水問題である。2012年頃の中国は、水資源量が世界の5パーセント程度しかなく、しかも河川の水量の7割近くが飲料に適さないほど汚染されていたのである。水資源が不足している中国の事情から、日本の水源林を狙って購入しているというイメージが一人歩きしてしまったのだろう。 さらに、2011年に東日本大震災が起きたことで、デマや流言飛語が広まりやすくなっていたこともある。「復興」という絆を共有し、頑張ろうと奮い立って日本中が敏感になっていたときに、北海道のニセコ町で水源地を含む山林が外国資本に買われていたことがわかったのだ』、「北海道ニセコ町の15の水源地のうち2つが外資所有になっており、「水道水源保護条例」を制定するきっかけになった」、「保護条例」は下記にみるようにかなり守られたと考えられるようだ。
・『外国資本はどのくらい日本の水源林を購入しているのか  外国人が日本の土地を簡単に取得できることを問題視する向きもあるが、今のところ水源林の売買に関しては取引を制限する国の法律はない。では、外国人または外国資本は日本の山林をどのくらい購入しているのだろうか? 農林水産省の令和元年(2019年)5月31日付のプレスリリース「外国資本による森林買収に関する調査の結果について」では、平成30(2018)年1月から12月までの期間における外国資本による森林買収について都道府県別に調査発表されている。 これを見ると1年間で30件の森林が買収されており、そのうち13件が中国人または中国系法人である。中でも北海道の倶知安町の17ヘクタールの森林が買収されており、利用目的が未定になっていることが気がかりだ。 だが、利用目的を見る限り「水源確保」を目的にしているわけではない。もちろん、地下水を含む水源の事業化を目論(もくろ)んでいないとは断定できないが、各自治体は防御策を講じている。 例えば、ニセコ町では2011年に「水道水源保護条例」と「地下水保全条例」が施行され、届け出や許可のない水源地の開発や地下水の揚水を規制しており、水資源の無秩序な採取を防いでいる。翌年の2012年には北海道で水資源の保全に関する条例が可決されて、全道で外資による水源地(山林)の買収に規制をかけた。また、他の多くの自治体でも同様の規制をかけて、水源地の山林を守っているのが現状である』、「届け出や許可のない水源地の開発や地下水の揚水を規制」、いいことだ。
・『日本の水源地は守られるのか?  海外では、外国資本による土地取引を制限している国も少なくない。しかし、日本には水源地や山林を守るような法律は今のところない。ただし、土地取引の規制に関する措置は設けられている。これは全国に一般的に適用される『事後届出制』と、地価の上昇の程度等によって区域や期間を限定して適用される『事前届出制』である『注視区域』制度と『監視区域』制度、そして『許可制』である『規制区域』制度から構成されている。要するに、土地を取得した場合に所有者の移転の届け出を義務づけているのだ。 山林を購入した場合は契約した後に届け出が必要になる。ほとんどの山林は都市計画区域外にあたるので、1万平方メートル(約3025坪)以上であれば、買い主が2週間以内に、市・区役所、町村役場の国土利用計画法担当窓口へ届け出なければならない。1万平方メートル未満なら「森林の土地の所有者となった届出」を出すことになる。実はこうした所有権の移転の届け出によって、外資による森林買収の取引監視の強化にもつながっているのである』、「所有権の移転の届け出」が「外資による森林買収の取引監視の強化にもつながっている」、とは思わぬ効用だ。
・『中国などの外国資本が「水源地の山林」を買っているという噂は本当か  ヤマケイ新書『山を買う』福崎剛/著、山と渓谷社/刊、224ページ。山林購入者のインタビューを交え、山を所有する魅力について紹介しているほか、本稿で触れた「外国人による日本の山林買収」についても取り上げている。 なお、日本の水源地を守ることに関しては、今のところ先に紹介した各自治体の「水道水源保護条例」や「地下水保全条例」によって、開発や事業化を防いでいる状況だ。国土交通省の水管理・国土保全局は、「地下水関係条例の調査結果」(平成30年10月)国土交通省調査結果.pdfを公表し、47都道府県で80条例、601地方公共団体で740条例を制定していることがわかった。 これらの条例の目的は主に4つで、(1)地盤沈下、(2)地下水量の保全または地下水涵養、(3)地下水質の保全、(4)水源地域の保全に分かれる。この中で最も多い条例数は、地下水質の保全で420、続いて地盤沈下が412、そして地下水量の保全または地下水涵養が363となっている。これだけ条例で規制をかけているため、素直に考えて水源地を買収されても地下水を採取することが難しい。水源地の開発行為の制限もあり、土地を買収されて勝手に活用される心配はしなくてよさそうだ。 また、こうした条例に罰則規定を設けている地方公共団体も多く、懲役や罰金の規定がある条例がほとんどだ。また、氏名の公表や過料を定めている条例もある。この罰則規定がどこまで外国資本から日本の水資源を守れるのか、その効果はわからない。しかし、こうした条例による規制がかけられることで、水源地のある山林は守られているというわけである』、「水源地の開発行為の制限もあり、土地を買収されて勝手に活用される心配はしなくてよさそうだ」、一安心である。

次に、6月22日付け東洋経済オンラインが掲載した多摩大学学長の寺島実郎氏による「「本質を見誤ると日本は米中関係に翻弄」 経済安保論を単純な「中国封じ込め」に歪めるな」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/435658
・『経済安全保障論において、国際的ルール形成に関与していくことの重要性をいちはやく見抜き、学長を務める多摩大学に「ルール形成戦略研究所」を置いた寺島実郎氏。 寺島氏は現在の「中国封じ込め」のための経済安保論には「事の本質を見誤ってはいけない」「話を歪めてはいけない」と警告を発する。どういう意味か。 著名な外交評論家が述べた「日米関係は米中関係だ」という指摘を踏まえ、日本の外交姿勢はどうあるべきか、どうすれば強権化する中国と正対できるのか、思考を巡らせる(Qは聞き手の質問、Aは寺島氏の回答)』、興味深そうだ。
・『経済安保論の本質を冷静に見抜け  Q:アメリカと中国の対立が激しくなるに伴い、経済安全保障の論議が熱を帯びています。 A:日本がアメリカと一体化して中国の脅威を封じ込めるという文脈の中で登場しているのが今の「経済安全保障」論だが、事の本質を見誤ってはいけない。 国民の生活に欠かすことができない食料やエネルギーを途絶えさせないために国は何をすべきか、という本来の経済安保論はきわめて重要で、エネルギー問題については私自身が長い間、携わってきた。 だが、今の経済安保論はさまざまな意味で歪められている。米中対立の激化、日米同盟の強化を盛んに強調する人たちが、政治的な意図に満ちた経済安保論を繰り広げている。 私たちは今、いかに冷静で、かつ事の本質を見抜ける力を持っているかどうかが問われている。まずは以下の数字を確認したい。 2020年、アメリカと中国の貿易総額は5592億ドルで、前年と比べると3億ドル増えていた。一方、日本とアメリカのそれは1833億ドルで、前年比で350億ドルも減った。つまり、コロナ禍で日米間の取引が大きく後退していた時、米中間はしっかり手を握り合っていたということだ。 数字を見れば明らかなように、米中間の貿易総額は日米間のそれの3.1倍にも達している。米中デカップリングだ、新冷戦だと騒がれているが、当のアメリカと中国は、日本とアメリカ以上の取引をしっかりと続けている。 事の本質を見抜かないと、私たちは米中関係に翻弄されることになる。 Qどういう姿勢が必要でしょうか。 A:どんなに不条理なことがあってもアメリカについていくしかないというのが日本人の固定観念になってしまっている。 かつて外交評論家の松本重治が「日米関係は米中関係だ」と、本質を突く指摘をした。日米関係は中国というファクターに絶えず掻き回されてきたという意味だ。 第2次世界大戦において、日本はアメリカに敗北したと総括しがちだが、米中の連携に敗れたという側面も押さえておかなくてはならない。ここでヘンリー・ルース(1898?1967年)というアメリカの出版人、雑誌界の大物だった人物を紹介したい。 彼の父親はキリスト教の宣教師として中国で布教活動をしていたため、14歳まで中国で過ごした。ルースは1922年に『タイム社』を設立し、その後は「チャイナ・ロビー」として、日中戦争を率いた中国国民党の指導者・蒋介石や妻の宋美齢を支持するようなメディアキャンペーンを展開し、アメリカ世論を「中国支持」へと誘導した』、「コロナ禍で日米間の取引が大きく後退していた時、米中間はしっかり手を握り合っていたということだ。 数字を見れば明らかなように、米中間の貿易総額は日米間のそれの3.1倍にも達している」、冷徹な判断が必要なようだ。「日米関係は中国というファクターに絶えず掻き回されてきたという意味だ。 第2次世界大戦において、日本はアメリカに敗北したと総括しがちだが、米中の連携に敗れたという側面も押さえておかなくてはならない」、その通りだ。
・『もし蒋介石が毛沢東に敗れていなかったら?  ところが第2次世界大戦が終結すると、蒋介石は共産党の毛沢東に敗れてしまう。自分たちが支持していた蒋介石が台湾に追放されたことから、ルースは台湾を支持する形で大陸中国と対峙するポジションへと立ち位置を移す。そのうえで、かつて「敵」としていた日本を中国共産党の防波堤とするために、アメリカが援助していくことが必要だと説いた。 ルースが死去する1967年まで、アメリカの対東アジア政策は彼の影響を強く受けて展開された、といえる。 このような歴史的な背景をも踏まえたとき、もし蒋介石が毛沢東に敗れずに本土の中国を掌握していたら日本の戦後復興は20年も30年も遅れただろうということだ。中国本土との連携が途切れていなければ、アメリカが日本の戦後復興を援助する必要性などないからだ。 ヘンリー・ルースに象徴されるように、アメリカの政策というのは国益にかなうかどうかで右にも左にもいく。日本が脅威であるときには中国と手を結び、中国を抑えたいというときには日本をうまく利用する。 Qどういう姿勢が必要でしょうか。 A:どんなに不条理なことがあってもアメリカについていくしかないというのが日本人の固定観念になってしまっている。 かつて外交評論家の松本重治が「日米関係は米中関係だ」と、本質を突く指摘をした。日米関係は中国というファクターに絶えず掻き回されてきたという意味だ。 第2次世界大戦において、日本はアメリカに敗北したと総括しがちだが、米中の連携に敗れたという側面も押さえておかなくてはならない。ここでヘンリー・ルース(1898?1967年)というアメリカの出版人、雑誌界の大物だった人物を紹介したい。 彼の父親はキリスト教の宣教師として中国で布教活動をしていたため、14歳まで中国で過ごした。ルースは1922年に『タイム社』を設立し、その後は「チャイナ・ロビー」として、日中戦争を率いた中国国民党の指導者・蒋介石や妻の宋美齢を支持するようなメディアキャンペーンを展開し、アメリカ世論を「中国支持」へと誘導した』、なるほど。
・『もし蒋介石が毛沢東に敗れていなかったら?  ところが第2次世界大戦が終結すると、蒋介石は共産党の毛沢東に敗れてしまう。自分たちが支持していた蒋介石が台湾に追放されたことから、ルースは台湾を支持する形で大陸中国と対峙するポジションへと立ち位置を移す。そのうえで、かつて「敵」としていた日本を中国共産党の防波堤とするために、アメリカが援助していくことが必要だと説いた。 ルースが死去する1967年まで、アメリカの対東アジア政策は彼の影響を強く受けて展開された、といえる。 このような歴史的な背景をも踏まえたとき、もし蒋介石が毛沢東に敗れずに本土の中国を掌握していたら日本の戦後復興は20年も30年も遅れただろうということだ。中国本土との連携が途切れていなければ、アメリカが日本の戦後復興を援助する必要性などないからだ。 ヘンリー・ルースに象徴されるように、アメリカの政策というのは国益にかなうかどうかで右にも左にもいく。日本が脅威であるときには中国と手を結び、中国を抑えたいというときには日本をうまく利用する。 Q:ニクソン大統領による電撃訪中(1972年)も日本の頭越しでした。 A:ニクソン訪中は日本にとって戦後もっとも大きなトラウマになっている。頭越しにアメリカと中国が握手し合ったときの日本の当惑たるや、まるで世界史から取り残されたような焦燥感が支配していた。 ニクソン訪中以降、日本の意識の底には、米中対立の激化への期待が根強くある、といえる。「アメリカと中国が対立していてくれればアメリカは日本側に向いてくれる」という深層心理があるのだ。私は日米経済摩擦がもっとも激しかった1980年代にワシントンに駐在していたので、アメリカ人の日本人観は痛いほどわかる。アメリカに対する過剰依存と過剰期待の態度をとる日本と比べれば、中国との関係のほうがわかりやすい力学で動くと捉えられている』、「もし蒋介石が毛沢東に敗れずに本土の中国を掌握していたら日本の戦後復興は20年も30年も遅れただろうということだ」、「日本」は「毛沢東」に感謝すべきなのかも知れない。
・『真の経済安全保障の議論を  Q:デジタル化が社会インフラとして進んでいくと、あらゆる情報機器を通じて私たちの個人情報が中国に抜き取られていくという指摘があります。 A:中国がデータリズムの時代を掌握しようとしているのは事実だろう。だが、もし日本人が本当の情報感受性を持ち合わせているのであれば、中国に対する危機感と同じ問題意識において「アメリカから情報を抜き取られることはよいのか?」と、冷静に考えなくてはならない。 (寺島実郎(てらしま・じつろう)/1947年北海道生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了後、三井物産入社。アメリカ・三井物産ワシントン事務所所長、三井物産常務執行役員、三井物産戦略研究所会長等を経て、現在は(一財)日本総合研究所会長、多摩大学学長。国土交通省・国土審議会計画推進部会委員、経済産業省・資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会基本政策分科会委員等、国の審議会委員も多数を務める。) 例えば、一部の海外メディアが「対中国を念頭に日本が『ファイブ・アイズ』へ参加し、6番目の締結国となる可能性がある」と報じたように、日本国内には、アメリカを中心とした機密情報共有の枠組みへの参加が認められるよう積極的に動く人たちがいる。このような国家間の情報共有ネットワークに参画することの本質的な意味を理解する必要があると思う。 Q:アメリカの力を借りずに中国と真に向き合えるでしょうか。 A:アメリカへの過剰依存から脱却せよと私が言い続けるのは、それが中国と正対するための条件だからだ。日本にはアメリカと一体化することで中国にプレッシャーを与えられる、強いメッセージを送れるという思い込みがある。しかし私に言わせれば、まったく逆だ。 中国やロシアの有識者と議論をしていると、彼らは日本をアメリカのプロテクトレイト(保護領)としか見ていないことに気づく。実際、アメリカの文献にもそう記されることがある。自力で国を築いてきた中国やロシアが、アメリカの保護領とされる日本と1対1で正対し、真剣な議論をするだろうか。 Q:日本は中国と正対できるでしょうか。 A:世界GDPに占める日本の比重の低下は著しい。1994年、世界GDPの実に17.9%を日本が占めていたが、今どうなっているか。去年は6.0%にまで落ちた。異様な勢いで日本の埋没が進んでいる。 悲願だった小型ジェット旅客機(MRJ)の国産化プロジェクトは挫折し、コロナ禍において国産ワクチンの開発も大きく出遅れている。一方、中国はそのどちらも一歩進んでいる。 日本の埋没している現状に健全な危機感を抱きつつ、私は今チャンスだとも思っている。中国が強権化し、安全保障の議論をしなければならないこの状況は、日本がどういう国であろうとするのかを日本人自身が真剣に考えるには、またとない機会だからだ。 そのうえで、真の経済安全保障についても議論を深めたい。真っ先に議論しなければならないのは「食と農」だ。戦後日本は、「食と農」を犠牲にして、工業生産力モデルで経済復興を果たしたといえる。その結果、食料自給率はカロリーベースで37%という、欧米諸国に比べても驚くほど低い水準に陥っている。 さらにコロナによってマスクも医療用手袋も防護服も海外に依存している現実を目の当たりにした。国民の安全を担保するためには何が必要なのか、あらためて経済安全保障という観点から議論されるべきだ』、「日本にはアメリカと一体化することで中国にプレッシャーを与えられる、強いメッセージを送れるという思い込みがある。しかし私に言わせれば、まったく逆だ。 中国やロシアの有識者と議論をしていると、彼らは日本をアメリカのプロテクトレイト(保護領)としか見ていないことに気づく。実際、アメリカの文献にもそう記されることがある」、「日本の埋没している現状に健全な危機感を抱きつつ、私は今チャンスだとも思っている。中国が強権化し、安全保障の議論をしなければならないこの状況は、日本がどういう国であろうとするのかを日本人自身が真剣に考えるには、またとない機会だからだ」、その通りだ。
・『真の意味の経済安全保障を日本はリードせよ  経済安保に関わるルール形成についても、大いに議論してもらいたい。アメリカのGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)や中国のBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)といった巨大IT関連企業による情報独占の問題をどう制御していくか。肥大化するマネーゲームをコントロールするため金融取引税をはじめとした国際的な連携体制をどう構築していくか。資本主義の歪みを正し、健全に発展させていくための議論こそ真の意味での経済安全保障であり、ここでこそ日本はリーダーシップを発揮してほしい。 国民の安全・安心のための産業基盤づくりの第一歩として、私が率いる一般財団法人日本総合研究所は日本医師会等と連携する形で、「医療・防災産業創生協議会」を設立した。コロナのような感染症や自然災害に対応できる体制を国家として築いていくために医療と防災に関する産業を興していこうという構想だ。国会でもこの構想を支持する超党派議員連盟が結成され、7月にも発足する。経済安全保障とは異なる話題だと思うかもしれないが、食も含めた医療・防災こそ経済安全保障につながるものだと思う。 経済安全保障の論議は奥が深い。単純な「中国封じ込め」のための経済安保論へと、話を歪めてはいけない。国民の生活をいかに守っていくか、そんな真の経済安保論議が必要だ』、「肥大化するマネーゲームをコントロールするため金融取引税をはじめとした国際的な連携体制をどう構築していくか。資本主義の歪みを正し、健全に発展させていくための議論こそ真の意味での経済安全保障であり、ここでこそ日本はリーダーシップを発揮してほしい」、同感である。

第三に、6月23日付け東洋経済オンライン「日本の「産業スパイ対策」がどうにも甘すぎる事情 経済安保が重要な中、いいようにやられている」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/436008
・『「政治、安全保障と経済はもはや表裏一体であり、教科書的な純粋な経済というのは存在しない。今まで以上に経済安全保障や地政学の影響を受けながら、経済は動いていくと思う。その経済の中の生き物である企業は、当然のことながら経済安全保障を意識して経営をしなければならない」 6月15日の経済同友会記者会見で、代表幹事を務めるSOMPOホールディングスグループCEO社長の櫻田謙悟氏はこう語った。 しかし、日本企業から安全保障に関わる機密情報の流出が後を絶たない。経済安全保障の重要性が高まる一方で、日本企業は産業スパイにいいようにやられている。 積水化学工業では2020年10月、元社員がスマホのタッチパネルに使われる「導電性微粒子」技術を中国・潮州三環グループにメールで送信し、不正競争防止法違反罪に問われた。中国企業は、SNS「リンクトイン」を通じて元社員に接触し接待を重ねていた。元社員は解雇後、別の中国企業に転職したとされる。大阪地検が在宅起訴し、今年6月17日に初公判が開かれた。被告は起訴内容を認めている。 ほかにも2018年11月、電子通信器機製造販売の川島製作所で元役員の情報漏洩が発覚。翌2019年6月には、電子部品製造会社・NISSHAで営業秘密を抜き取り、中国企業に転職した元社員が逮捕され、その後、元社員には実刑判決が下っている。さらに2020年1月、ソフトバンク元社員が報酬の見返りにロシア元外交官に情報を渡したとして逮捕され、有罪判決を受けた。 先端技術の流出防止は警察外事課の仕事だが、ある県警の公安警察官は「企業は規模が大きくなるほど情報管理は自前でやると言い、協力が得にくい」とぼやく。情報処理推進機構が20年に行った調査によれば、中途退職者による漏洩は36.3%と、4年前に比べ増えている』、「企業は規模が大きくなるほど情報管理は自前でやると言い、協力が得にくい」、見栄だけで言っている面もあり、困ったことだ。「中途退職者による漏洩は36.3%と、4年前に比べ増えている」、退職金規定を見直す必要があるかも知れない。
・『日本にも必要な「セキュリティークリアランス」  ソフトバンクは事件以降の対応について、『週刊東洋経済』の取材に書面で回答した。退職予定者の端末から社内情報へのアクセスを制限し端末操作の監視を強化したほか、全役員・全社員にセキュリティー研修を毎年実施し、未受講者にはアカウントの停止や重要情報へのアクセスの遮断を行ったという。さらにAI(人工知能)で端末の操作履歴を監視し、疑わしい挙動を自動検知するシステムも導入したことを明らかにした。積水化学、NISSHAにも同じく取材を申し込んだが、回答はなかった。 産業スパイの被害に遭う日本企業が目立ち始めている状況について、日本大学危機管理学部の小谷賢教授は「民間でもセキュリティークリアランスを導入しなければ、内部不正は防げない。欧米企業との共同開発から日本企業が締め出されることになりかねない」と指摘する。 セキュリティークリアランスとは、日本でいえば一部の国家公務員に課される「秘密取扱者適格性確認」のことで、欧米では民間でも一般的だ。海外企業と共同開発を進める一部の日本企業は、民間にもこの制度を導入するよう政府に働きかけている。だが、借金の状況や親族の個人情報などを詳細に記入する「身上明細書」が日本弁護士連合会に問題視されるなど、導入は依然ハードルが高い。 政府の側でスパイ対策に力が入るのは公安調査庁だ。2020年4月に内閣官房の国家安全保障局に経済班が設置されたが、経済安保に特化して情報収集・分析している官庁はない。前出の小谷教授は「経産省はやや腰が重いように見えるので、人員の余力、分析能力から公安調査庁が適任ではないか」と話す』、「借金の状況や親族の個人情報などを詳細に記入する「身上明細書」が日本弁護士連合会に問題視されるなど、導入は依然ハードルが高い」、人権保護もないがしろにすべきでないのは当然だ。
・『専門チーム発足で腕をまくる公安調査庁  かつて公安調査庁は過激派の衰退やオウム真理教事件の終結とともに「法務省の盲腸」ともいわれたが、2021年2月に長官・次長直轄の「経済安全保障関連調査プロジェクトチーム」を発足。海外企業の土地買収や投資を調査する調査一部、国内外のスパイを監視する調査第二部の調査官を中心に20人を集結させ、活路を見いだす。2021年度予算では、経済安保に関連する情報収集・分析機能強化の一環で、70人以上の増員を行う見通しだ。 6月7日、全国局長・事務所長会議で和田雅樹長官は「懸念国はわが国が保有する機微な技術、データ、製品などの獲得に向けた動きを活発化させている。当庁には技術流出の実態解明や未然防止に資する情報の収集、分析が強く求められている」と語っている。プロジェクトチームでは東京大学先端科学技術研究センターと連携を深め、先端技術の情報収集や企業への啓発活動を進めている。「専用のホームページ経由、また企業訪問の際に、スパイ行為をうかがわせる情報の提供もある」(同庁幹部)という。 課題は専門知識を持った人材の確保だ。今年4月にマイナビで調査官を公募したところ、約1400人のプレエントリーがあったが、同幹部は「国家公務員の給与規定が壁となり、理想に近い人材ほど待遇面で採用が難しい」と漏らす。 人材のあり方、さらにはスパイ防止法の制定やファイブアイズ(米英など5カ国の諜報同盟)への参加などを含め、国民の支持を得つつ法の整備を進めていく必要がありそうだ。) Q:どういう意味でしょうか。 A:明治維新に始まる日本の近代化を支えたエネルギーは、やはり西洋との緊張関係の中で生まれたものだった。西洋列強がアジア各国を次々に植民地にしていったことへの苛立ちがあったろうし、このままでは日本ものみ込まれるという焦りもあっただろう。アジアから西洋列強を追い返し、アジアを独立させたいという義侠心もあったはずだ。そうした心情、すなわち「アジア主義」の考え方が、明治維新初期の日本には確実にあった。 ところが、結果的に日本も西洋列強のような帝国主義へと堕ちていった。初志とはかけはなれ、日本自身も覇権主義国家に成り果て、アジアと日本に破滅をもたらした。このことへの深い反省が戦後日本の起点になっているはずだ』、「公安調査庁」に情報漏洩、知的財産権などの経済犯罪に対応できるのか、私は難しいように思うやることが、左翼対策などやることがなくなったので、やらせるというのは無理が多いように思う。
・『覇権をもって秩序に挑戦すれば破滅する  私は、日本の失敗の歴史をこそ中国と共有したいと思っている。覇権をもって秩序に挑戦をすれば必ず破滅をもたらす。一時的には繁栄を手にできるかもしれないが、大日本帝国はそれで滅んだ。「覇道の道、覇権主義はあなたたちのためにはならない」という助言は、経験者である日本だからこそいえる話だ。 中国は当然「侵略してきた君たちに言われる筋合いはないよ」と反論するでしょう。それでもあえて言うのが隣国・日本としての責務だと思う。また、そう言い続けるためには日本も過去に対して反省している姿勢を示さなければならない。中国と真剣に向き合うためには、それくらいの覚悟が必要だ。 日本と中国には2000年におよぶ付き合いがある。関係がいいときも悪いときもあったが、日本は漢字から法制度まで実に多くのことを中国から学び、独自に発展させてきた。勝海舟は「日本の文物、シナから学ばなかったものは1つもない」と言ったが、その通りだと思う。 今日や明日の国益だけを見て判断するのではなく、米中どちらにもつかない道、自主独立の道を念頭におきながら100年後、200年後の東洋、アジアを構想する。そのくらいの心構えで現実に臨みたい。)』、「「覇道の道、覇権主義はあなたたちのためにはならない」という助言」、現在の思いあがった中国には通用しないと思うが、一応助言してみる価値はあるかも知れない。
タグ:「もし蒋介石が毛沢東に敗れずに本土の中国を掌握していたら日本の戦後復興は20年も30年も遅れただろうということだ」、「日本」は「毛沢東」に感謝すべきなのかも知れない。 「借金の状況や親族の個人情報などを詳細に記入する「身上明細書」が日本弁護士連合会に問題視されるなど、導入は依然ハードルが高い」、人権保護もないがしろにすべきでないのは当然だ。 「企業は規模が大きくなるほど情報管理は自前でやると言い、協力が得にくい」、見栄だけで言っている面もあり、困ったことだ。「中途退職者による漏洩は36.3%と、4年前に比べ増えている」、退職金規定を見直す必要があるかも知れない。 「日本の「産業スパイ対策」がどうにも甘すぎる事情 経済安保が重要な中、いいようにやられている」 「「本質を見誤ると日本は米中関係に翻弄」 経済安保論を単純な「中国封じ込め」に歪めるな」 「肥大化するマネーゲームをコントロールするため金融取引税をはじめとした国際的な連携体制をどう構築していくか。資本主義の歪みを正し、健全に発展させていくための議論こそ真の意味での経済安全保障であり、ここでこそ日本はリーダーシップを発揮してほしい」、同感である。 寺島実郎 「公安調査庁」に情報漏洩、知的財産権などの経済犯罪に対応できるのか、私は難しいように思うやることが、左翼対策などやることがなくなったので、やらせるというのは無理が多いように思う。 「日本にはアメリカと一体化することで中国にプレッシャーを与えられる、強いメッセージを送れるという思い込みがある。しかし私に言わせれば、まったく逆だ。 中国やロシアの有識者と議論をしていると、彼らは日本をアメリカのプロテクトレイト(保護領)としか見ていないことに気づく。実際、アメリカの文献にもそう記されることがある」、「日本の埋没している現状に健全な危機感を抱きつつ、私は今チャンスだとも思っている。中国が強権化し、安全保障の議論をしなければならないこの状況は、日本がどういう国であろうとするのかを日本人自身が 「コロナ禍で日米間の取引が大きく後退していた時、米中間はしっかり手を握り合っていたということだ。 数字を見れば明らかなように、米中間の貿易総額は日米間のそれの3.1倍にも達している」、冷徹な判断が必要なようだ。「日米関係は中国というファクターに絶えず掻き回されてきたという意味だ。 第2次世界大戦において、日本はアメリカに敗北したと総括しがちだが、米中の連携に敗れたという側面も押さえておかなくてはならない」、その通りだ。 「「覇道の道、覇権主義はあなたたちのためにはならない」という助言」、現在の思いあがった中国には通用しないと思うが、一応助言してみる価値はあるかも知れない。 安全保障 (その9)(中国などの外国資本が「水源地の山林」を買っているという噂は本当か、寺島実郎「本質を見誤ると日本は米中関係に翻弄」 経済安保論を単純な「中国封じ込め」に歪めるな、日本の「産業スパイ対策」がどうにも甘すぎる事情 経済安保が重要な中 いいようにやられている) 「中国などの外国資本が「水源地の山林」を買っているという噂は本当か」 ダイヤモンド・オンライン 福崎 剛 東洋経済オンライン 「水源地の開発行為の制限もあり、土地を買収されて勝手に活用される心配はしなくてよさそうだ」、一安心である。 「所有権の移転の届け出」が「外資による森林買収の取引監視の強化にもつながっている」、とは思わぬ効用だ。 「届け出や許可のない水源地の開発や地下水の揚水を規制」、いいことだ。 「北海道ニセコ町の15の水源地のうち2つが外資所有になっており、「水道水源保護条例」を制定するきっかけになった」、「保護条例」は下記にみるようにかなり守られたと考えられるようだ。
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安全保障(その8)(台湾有事 米国は在日米軍基地の確実な使用を求める、「日本を守っていない」在日米軍の駐留経費負担5倍増額は不可能だ、日本はまた「戦争」をする国になってしまうのか その不安と恐怖 そして今 経営者に求められる覚悟) [外交・防衛]

安全保障については、7月22日に取上げた。今日は、(その8)(台湾有事 米国は在日米軍基地の確実な使用を求める、「日本を守っていない」在日米軍の駐留経費負担5倍増額は不可能だ、日本はまた「戦争」をする国になってしまうのか その不安と恐怖 そして今 経営者に求められる覚悟)である。

先ずは、7月18日付け日経ビジネスオンライン「台湾有事、米国は在日米軍基地の確実な使用を求める」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/071600079/
・『大阪で6月に開催されたG20首脳会議後の記者会見で、トランプ米大統領が「日米同盟はアンフェア」だと発言した。同大統領は日米同盟の本質を理解しているのか。その不満を解消する手段はあるか。台湾や朝鮮半島有事に日米はいかなる連携をするのか。米ランド研究所のジェフリー・ホーナン研究員に聞いた。 (ホーナン氏のインタビューの前編「ホルムズ海峡で低強度紛争起これば、日本に後方支援求む」はこちら) Q:ドナルド・トランプ大統領の「日米同盟はアンフェア」発言について伺います。 同大統領は日米同盟のありようを理解しているでしょうか。日本は基地を提供。米国は日本とシーレーンの防衛を提供。提供するものは異なるけれども平等な条約というのが日米の共通理解だと思います。 ホーナン:残念ながら理解していないと思います。トランプ大統領の認識は、1980年代の日米関係のまま固定化されているのでしょう』、「トランプ大統領の認識は、1980年代の日米関係のまま固定化されている」というのはとんでもないことだ。米政府関係者は何をしているのだろう。
・『それでも、基地の提供はスタート地点  日本はその後、湾岸戦争に臨んで海部俊樹首相(当時)が自衛隊による貢献に一歩を踏み出したのを皮切りにさまざまな努力をしてきました。国連PKO(平和維持活動)への参加、後方支援に対する地理的限定の削除、イラク戦争やアフガニスタン戦争での貢献--。 これらは米国を直接防衛するものではありません。しかし、日本は確実に貢献してきました。それが、トランプ大統領の目には入っていません。 また、日本の基地がなければ、米国は西太平洋からインド洋にかけて前方展開することができません。日本はその基地の経費も多額を負担しています。トランプ大統領がこうした日本の貢献について語るのを聞いたことがありません。彼は米国と日本の関係は、米国とNATOの関係とは異なるのを理解していないのです。同盟国の役割を、互いを「守るか」「守らないか」という狭い範囲に限定してしか見ていない。 日本の一部には以下の意見があります。日本が提供する基地の価値は非常に大きい。米国が負担する防衛義務とバランスが取れている。これ以上、日本の負担を増やす必要はない。これをどう思いますか。 ホーナン:基地の提供と米軍駐留経費の負担は「ベース」になっています。日本は「平成」の時代に安全保障法制を成立させました。「令和」の時代は、同法の下で何を実行するかが問われると思います』、安倍首相は日本の役割をトランプ大統領に説明すべきだ。
・『米軍駐留経費の増大は日米に不満をもたらしかねない  Q:令和の時代に何をするか。次の4つの案があります*。評価を聞かせてください。第1は、米軍駐留経費の負担を拡大させる、です。 *:防衛大学校の武田康裕教授が、以下の案を実現するプランや装備を具体的に設定し、必要なコストを試算している。概要は「日米同盟へのトランプ氏の不満、解消にかかる金額は?」を参照。 ホーナン:その案は、日米双方が不満を残す結果になる恐れがあります。日本が100%負担すれば米国は満足でしょう。「家賃がただ」なわけですから。 Q:でも、その場合は、日本国内で日米地位協定の改定を求める世論が高まるでしょうね。 ホーナン:おっしゃる通りです。では、現行の水準と100%との間のどこを落としどころとするか。日本は、負担するパーセンテージを増やすたびに「この上昇がいつまで続くのか」という不信感を抱くことになります。一方、米国側も「もっと増やすことができるのでは」と考える』、。
・『ミサイル防衛システムの拡充は「ウィン・ウィン」  Q:第2の案は、ミサイル防衛システムの拡充です。新たにTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)を加える。迎撃ミサイルは現在、イージス艦に搭載するスタンダードミサイル(A)と、地上に配備するパトリオットミサイル(B)で構成しています。これにイージス・アショア(C)を追加することが決まっています。(C)は(A)を地上に配備する仕様のものです。THAADを加えることで、弾道ミサイルの軌道のミッドコース(弾道の頂点)とターミナル段階(大気圏に再突入し着弾に至る過程)のカバーを強化することができます。 ホーナン:これはよいですね。日本、在日米軍、そして米軍のみなに利益をもたらします。この分野はすでに日米の協力が進んでいますが、協力をさらに深められる分野です。 Q:第3の案は、シーレーン防衛のため、空母を導入する案です。F-35Bを48機搭載できるクイーン・エリザベス級の空母を3隻導入し、それぞれを中心に3つの空母打撃群を構成する。1つの打撃群は6隻の護衛艦(うち3隻は艦隊防空を担うイージス艦)、2隻の潜水艦、1隻の補給艦で構成する。 ホーナン:理論的には良い案だと思います。しかし、実現が難しいのではないでしょうか。3つの空母打撃群を運用するには、それ用の訓練を受けた多数の人材が必要です。今の海上自衛隊でそれを賄えるでしょうか。最も適切な質問は、日本に空母が必要かどうか。私はまだ100%確信してはいません』、「第3の案」の「空母を導入する案」は問題があり過ぎる。
・『島しょ防衛は、統合運用の強化を  Q:第4の案は、島しょ防衛の強化です。在沖縄米海兵隊が使用するキャンプバトラーと普天間基地の施設管理を自衛隊が引き継ぐ。加えて、強襲揚陸艦とドック型輸送艦、ドック型揚陸艦の3隻で構成する部隊を3組整える。 ホーナン:これは良い案ですね。この分野の力が十分ではなかったので、陸上自衛隊が水陸機動団を2018年に設置しました。 ただし、私が見るところ、島嶼防衛の問題は装備ではなく、統合運用の練度です。水陸機動団が力を発揮するには、航空自衛隊と海上自衛隊による上空と海上からの支援が欠かせません。仮に尖閣諸島をめぐって中国と争うことになった場合、陸上自衛隊だけで戦うなら日本は負けます。 陸上自衛隊と米陸軍、海上自衛隊と米海軍、航空自衛隊と米空軍のインターオペラビリティー(相互運用性)の向上や情報共有はかなり進みました。しかし、自衛隊の中の陸・海・空の統合運用が不十分だと思います。 例えば、航空自衛隊と海上自衛隊はLink-16と呼ぶ情報通信ネットワークを通じて情報を共有していますが、陸上自衛隊は今のところこのネットワークに入っていません。各自衛隊間の通信は一定程度確保できているものの、使用する機材、システム、周波数が異なるため、まだ改善の余地があると思っています。情報が共有できなければ、陸上自衛隊の水陸機動団の装備をいくら増やしても、それを生かすことはできません。陸上自衛隊が同ネットワークに加わるのはイージス・アショアの導入を待つ必要があります。 陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊が参加する統合訓練を強化する必要があると思います。仮に水陸機動団が尖閣諸島奪還のために上陸を試みる場合、これに対するミサイル攻撃を防ぐべく上空の安全を確保しなければなりません。これを提供するのは航空自衛隊や海上自衛隊です。例えば陸上自衛隊のオスプレイと航空自衛隊のF-16が連携する訓練などをもっと行うべきでしょう。 自衛隊は優秀な装備を所有しています。これの統合度が高まれば、米国にとっても利益になると思います。 Q:トランプ大統領は米国製装備を日本にもっと買ってほしいようですが。 ホーナン:日本が戦闘機をもっと買ったとしても、パイロットや整備士が足りなければ意味がありません。トランプ大統領の視点は近視眼的なのではないでしょうか』、「航空自衛隊や海上自衛隊」と「陸上自衛隊」の「統合度」向上は必須の課題だ。
・『台湾有事には、在日米軍基地の確実な使用を求める  Q:対中国の抑止力を高める施策で、米国が日本に求めるものはありますか。 ホーナン:日本はすでにいろいろ取り組んでいます。例えば、中国のA2AD戦略*に対峙すべく、南西諸島における体制を強化していますね。 *:Anti Access/ Area Denial(接近阻止・領域拒否)の略。中国にとって「聖域」である第2列島線内の海域に空母を中心とする米軍をアクセスさせないようにする戦略。これを実現すべく、弾道ミサイルや巡航ミサイル、潜水艦、爆撃機の能力を向上させている。第1列島線は東シナ海から台湾を経て南シナ海にかかるライン。第2列島線は、伊豆諸島からグアムを経てパプアニューギニアに至るラインを指す。 陸上自衛隊が今年春、宮古島に駐屯地を設置しました。来年以降、地対空ミサイルや地対艦ミサイルの部隊を配備する予定です。奄美大島の奄美駐屯地には03式中距離地対空誘導弾(中SAM)を、瀬戸内分屯地には12式地対艦誘導弾(SSM)を配備しました。石垣島でも駐屯地を置く計画が進んでいます。これらに先立つ2016年には、日本の最西端である与那国島に沿岸監視隊を配備しました。 ホーナン:この取り組みは米国にも利益をもたらします。在沖縄の米軍基地を守る能力が高まります。さらに、宮古海峡を封鎖し、中国海軍が第1列島線を出て西太平洋に展開するのを防ぐ力も充実します。 Q:日米の一部に、中国が台湾に軍事侵攻する可能性が高まっていると見る向きがあります。 ホーナン:仮にそうなったら米国は日本に、在日米軍基地の使用(アクセス)とその防衛を求めるでしょう。特に沖縄の基地は重要です。これは日米安全保障条約の第6条に基づく要請です。基地が使えないとしたら、米国から見て、同条約が存在する意味がありません。 加えて、日本は攻撃されていない限り、日本のEEZ(排他的経済水域)の中で情報 · 監視 · 偵察 (Intelligence, Surveillance and Reconnaissance)や米軍の艦船の護衛を求めることがあるかもしれません。 日本が攻撃されていない限り、それ以上のことはないと考えます。台湾防衛戦に日本が参加(engage)したら、それは中国と戦うことを意味します。さまざまな政治問題が生じます。日本にとって難しい選択でしょう。そうした議論は、米国の公文書を読んでも全く書かれていません。国防総省内でそのような議論があったかもしれませんが、それは分かりません。 Q:基地使用には、事前協議が必要になります。しかし、ベトナム戦争をはじめ、これまで事前協議が行われたことはありません。日本人はここに不安を感じています。 ホーナン:台湾が対象となる場合、米国は日本と必ず事前協議する必要があります。中国を空爆した米軍の爆撃機が沖縄の基地に直接帰還する可能性があります。台湾から最も近い基地ですから。その場合、日本が中国の攻撃対象になるかもしれません。漁業に携わる人や海上保安庁の要員に犠牲者が出かねません。 Q:朝鮮半島有事の場合は、事前協議はありますか。2017~18年にかけて、米国が北朝鮮を武力攻撃する可能性が高まったのは記憶に新しいところです。 ホーナン:朝鮮半島有事の場合は戦闘の規模によると思います。局地的なものであれば、在韓米軍だけで十分に対処できるでしょう』、台湾有事の場合の「事前協議」は明確化しておくべきだろう。
・『朝鮮半島有事には必ず事前協議する  Q:しかし、朝鮮戦争のような規模に拡大し、在日米軍を派遣する必要が生じた場合には、事前協議が必要と考えます。 米国が戦争するのに日本の基地を使用する場合、基本的には事前協議をするのだと思います。ベトナム戦争の時にしなかったのは、北ベトナムが日本を攻撃する可能性が全くなかったから。一方、相手が中国や北朝鮮である場合、日本に被害が及ぶ可能性がある。よって、これに関わるかどうか、日本は自分で判断したいでしょう。そのため事前協議が必要です。 米国が今後、在韓米軍を撤収させる可能性をどう見ますか。第3回目の米朝首脳会談が6月30日に行われ、トランプ大統領が北朝鮮に足を踏み入れました。これによって、朝鮮戦争の「終戦宣言」を出すハードルが低くなったという見方が浮上しています(関連記事「日韓会談を見送った日本、米朝韓協議を見守るだけ?」)。 ホーナン:現時点で撤収させる可能性は100%ないと考えます。米下院が5年、在韓米軍の規模を現行の2万8500人から減らしてはならないと定める法律を可決していますし。 終戦宣言が出れば、韓国の国民が米軍の撤収を求めることがあるかもしれません。しかし、米国は受け入れないでしょう。在韓米軍は米韓同盟に基づいて駐留しています。終戦宣言を出すことと、米韓同盟の破棄とは連動しません。ただし、韓国の政府が、その国民の声を無視できるかどうかは不透明です。 Q:トランプ大統領は今年2月、「現時点で撤収する計画はない」と明言しましたが、その一方で、「いつかするかもしれない」とも発言しています。 ホーナン:トランプ大統領は軍事的な視点ではなく、コストの視点から発言しています。米国が2017年12月に発表した国家安全保障戦略や2018年1月に発表した国家防衛戦略には在韓米軍が持つ軍事的な重要性が記されています。 Q:在韓米軍は、アジアにおける事実上唯一の米陸軍部隊です。在日米軍の陸軍は規模が非常に小さいので。これを維持する必要があるわけですね。対中国の抑止力として重要視されています。 ホーナン:そうした目的があると思います。米軍は認めないかもしれませんが。 ただし、在韓米軍の活動範囲は原則として朝鮮半島内に限定されます。在日米軍の活動範囲がアジア全体に及ぶのとは性格が異なります。 例えば、イラク戦争の時に、当時のドナルド・ラムズフェルド国防長官が在韓米軍の一部を割いて、イラクに派遣しました。この部隊は、その後、韓国に戻してはいません。戻すと、条約違反になる可能性があったからです。 朝鮮戦争の終戦宣言が出たら、在韓米軍の性格も変わるかもしれないですね。冷戦が終結したのを受けて、NATOはその役割を見直しました。同様のことが起こる可能性があります』、日本としても主体的に日米同盟のあり方を見直してゆくべきだろう。

次に、軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が8月22日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「日本を守っていない」在日米軍の駐留経費負担5倍増額は不可能だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/212434
・『7月31日の朝日新聞夕刊は、同21日に来日した米大統領補佐官(安全保障担当)ジョン・ボルトン氏が米軍の駐留経費について「現在の5倍の支払いを求める可能性があると述べた」と報じた。 米政府の中にそのようなことを言った人がいたのだろうが、あまりに法外な話だ。 「3倍」「5倍」説を流して日本側を驚かせ、イラン包囲網の「有志連合」に参加させたり、2021年3月に期限切れとなる在日米軍経費負担に関する特別協定の再交渉が来年に始まる前にベラボウに高い「言い値」を出し、交渉で値引きすることで増額を狙うトランプ式の駆け引きか、とも思われる』、トランプ流の「ディール外交」には冷静に対応すべきだ。
・『協定改定や貿易交渉にらみ「安保終了」などで駆け引き  この報道について、菅義偉官房長官は31日の記者会見で「ボルトン氏がそのようなことを言った事実はない」と述べた。 だが、トランプ大統領は2016年の大統領選挙中から「日本に駐留する米軍経費は100%日本に支払わせる。条件によっては米軍を撤退させる」と叫んでいた。 最近でも、今年6月26日のFOXビジネスネットワークのインタビューで、「日本が攻撃されれば米国は我々の命と財産をかけて日本人を助けるために戦闘に参加する。だが、もし米国が攻撃されても日本は我々を助ける必要が全くない。米国への攻撃をソニーのテレビで見ておれる」などと日米安保体制の不公平を強調した。 トランプ政権では理性的な閣僚、大統領補佐官など高官が次々に更迭されるか辞任し、ボルトン氏やマイク・ポンぺオ国務長官ら極度の強硬派が牛耳る状態だ。 今後、日本との米軍経費の特別協定や貿易を巡る交渉では理不尽な要求を突き付け、「日米安保条約終了」を切り札に増額受け入れを迫る可能性は高い。 実際、“前例”はある。韓国では昨年の米軍駐留経費負担が9602億ウォンだったのを、今年は1兆389億ウォン(約910億円)と8%余、増額させられた。これは1年限りの仮協定で来年はさらなる増額交渉が行われる予定だ。 在韓米軍は17年7月、主力の第2歩兵師団をソウル北方約30キロの議政府(ウィジョンブ)から、ソウル南方約40キロの平沢(ピョンテク)に移した。さらに昨年6月には、在韓米軍司令部もソウルから平沢に移転した。 北朝鮮軍のロケット砲、長距離砲による損害を避けるとともに、平沢の港や近くの烏山(オサン)空軍基地から世界の他の地域への出動が容易だからだ。 米軍の韓国防衛への関与を減らしているにもかかわらず、駐留経費負担増額を要求するのは強欲だが、米国は「韓国からの全面撤退」をちらつかせ、増額をのませたのだ』、「米軍の韓国防衛への関与を減らしているにもかかわらず、駐留経費負担増額を」のませたというのは、韓国の弱みにつけこんだやり方だ。
・『日本は74.5%を負担 日本防衛には関与せずの米空軍  米国防総省の04年の報告書では、日本は米軍駐留経費の74.5%を負担している。韓国の40%、ドイツの32.6%をはるかに上回っている。 それを3倍、5倍にするのはほぼ不可能だ。実現するには米軍人の給与や、艦艇、航空機などの調達、維持、運用経費を出すしかない。「そうすれば米軍は日本の傭兵になりますな」と防衛省幹部たちも苦笑する。 日本では「駐留米軍が日本を守っている」との観念が刷り込まれているから、米国側の無理な要求に屈しやすい。だが、実は日本防衛に当たっている在日米軍部隊は無きに等しいのだ。 最も顕著なのは空軍(日本に1万2000人余り)だ。 1959年9月2日に航空総隊司令官松前未曾雄空将と、米第5空軍司令官アール・バーンズ中将が結んだ「松前・バーンズ協定」によって、航空自衛隊がレーダーサイトや防空指揮所など管制組織の移管を受け、日本の防空を行うことが決まった。 米空軍は航空自衛隊の指揮下に入らないから、日本の防空には一切関与しないのだ。 以来すでに60年、日本の防空には現在330機の日本の戦闘機と対空ミサイルが当たっている』、「日本では「駐留米軍が日本を守っている」との観念が刷り込まれているから、米国側の無理な要求に屈しやすい。だが、実は日本防衛に当たっている在日米軍部隊は無きに等しいのだ」、一般マスコミもこうした実態をもっとPRし、国民の誤解を解いておくべきだ。日本が「米軍駐留経費の74.5%を負担している。韓国の40%、ドイツの32.6%をはるかに上回っている」、という突出した日本の負担割合には改めて驚かされた。
・『中東などに出動「本国に置くより節約に」  米空軍は沖縄県の嘉手納基地にF15戦闘機27機、青森県の三沢基地にF16戦闘攻撃機22機を常駐させ、ステルス戦闘機F22なども訓練のため嘉手納に飛来している。 72年の沖縄返還後は、沖縄の防空も航空自衛隊(現在那覇にF15約40機)が担い、嘉手納の米軍戦闘機は約半数が交代で烏山に展開し、韓国の防空に当たっていた。 当時、第5空軍は日本と韓国を担当していたから、家族や後方支援部隊は安全な沖縄に置いたのだ。 だが86年に韓国を担当する第7空軍が編成されたため、嘉手納の戦闘機が韓国に行くことはなくなり、91年の湾岸戦争など、中東に出動することが多くなった。 三沢のF16は対空レーダー、対空ミサイルの破壊が専門で、これもしばしば中東で活動してきた。 日本の米空軍基地は米本国の母基地に近い性格となったから、米議会では「日本にいる空軍機は本国に戻し、そこから中東などに派遣する方が合理的ではないか」との質問が何度も出た。 そのたびに米国防当局者は「日本が基地の維持費を出しているから、本国に置くより経費の節約になる」と答弁している』、米軍にとって日本は本来、「ありがたい存在の筈だ。日本政府ももっとこうした実態をPRすべきだ。
・『在日陸軍や海兵隊は情報収集や後方支援が中心  在日米陸軍も、ほとんどが補給、情報部隊だ。 陸上自衛隊は13万8000人余り、戦車670両、ヘリコプター370機を持つのに対し、在日米陸軍の人員は約2600人で、地上戦闘部隊は沖縄のトリイ通信所にいる特殊部隊1個大隊(約400人)だけだ。 これはフィリピンのイスラム反徒の討伐支援などで海外に派遣されていることが多い。 在日米海兵隊約1万9300人の主力は沖縄に駐留する「第3海兵師団」だが、「師団」とは名ばかりで歩兵は第4海兵連隊だけ。それに属する3個大隊(各約900人)は常駐ではなく、6ヵ月交代で本国から派遣される。 実際には1個か2個大隊しか沖縄にいないことが多い。戦車はゼロだ。 沖縄の海兵隊も司令部や補給部隊、病院などの後方支援部隊が多い。地上戦闘部隊は歩兵1個大隊を中心に、オスプレイとヘリコプター計約25機、装甲車約30両などを付けた「第31海兵遠征隊」(約2200人)だ。 この部隊は佐世保を母港としている揚陸艦4隻(常時出動可能3隻)に乗り、第7艦隊の陸戦隊として西太平洋、インド洋を巡航する。 歩兵約900人では本格的戦争ができる規模ではない。海外で戦乱や暴動が起きた際、一時的に飛行場や港を確保し、在留米国人の避難を助けるのが精一杯だ。沖縄の防衛は陸上自衛隊第15旅団(約2600人)の任務だ』、米軍の規模が予想外に小さいのに驚かされた。
・『第7艦隊はインド・太平洋 「シーレーン確保」は海上自衛隊  米海軍は横須賀に第7艦隊旗艦である揚陸戦指揮艦「ブルーリッジ」、原子力空母「ロナルド・レーガン」、ミサイル巡航艦3隻、ミサイル駆逐艦7隻を配備している。 佐世保には空母型の強襲揚陸艦「ワスプ」とドック型揚陸艦3隻、掃海艦4隻を配備してきたが、「ワスプ」はすでに本国に戻り、より大型の「アメリカ」が交代に来る。ドック型揚陸艦も1隻増強の予定だ。 第7艦隊は東経160度以西の太平洋から、東経68度(インドとパキスタンの国境線)以東のインド洋まで、広大な海洋を担当している。横須賀、佐世保を母港とする米軍艦がもっぱら日本の防衛に当たっているわけではもちろんない。 食料の自給率が37%の日本(同じ島国の英国でも70%余り)にとっては、海上の通商路「シーレーン」の確保が海上防衛の最大の課題だ。 だが米国は食料も石油も自給自足が可能だから、商船の防護に対する関心は低い。 米海軍は巡洋艦、駆逐艦、フリゲートを計101隻(うち太平洋・インド洋に46隻)持っているが、これは米海軍の11隻の空母と海兵遠征隊を運ぶ揚陸艦7個群を護衛するのがやっとの数だ。 日本のシーレーンを守るのは、海上自衛隊の護衛艦47隻に頼るしかないのが現状だ』、「第7艦隊はインド・太平洋 「シーレーン確保」は海上自衛隊」、との役割分担は初めて知った。
・『日本への武力攻撃に対する「一義的責任」は日本に  2015年に合意された「日米防衛協力の指針」(ガイドラインズ )では、日本に対する武力攻撃が発生した場合の作戦構想として、防空、日本周辺での艦船の防護、陸上攻撃の阻止撃退などの作戦には自衛隊が「プライマリー・リスポンシビリティー(一義的責任)を負う」と定めている。 これでは「何のために米軍に基地を貸し、巨額の補助金を出しているのか」との疑問が出るから、邦文では自衛隊が「主体的に実施する」とごまかした訳にしている。 自衛隊が日本防衛に一義的責任を負うのは当然だが、当然のことを何度も繰り返して指針に書き込んだのは、いかにも訴訟社会の米国人らしい方策で、なにもしなくても責任を問われないようにしている。 この指針は、すでに自衛隊が日本防衛に主たる責任を負っている実態を追認した形だ。 米国防総省は、在日米海軍の人員を18年9月末で「2万268人」と発表している。2010年には3497人、それ以前も常に3000人台だったが、11年には6833人に急増し、今日では2万人を超えるにいたった。 これは日本を母港としている軍艦の乗員を計算に入れたためだ。第7艦隊は在日米軍司令部の指揮下にないから在日米軍ではない。かつては日本で陸上勤務をしている海軍将兵の人数だけを計算に入れていたが、日本と駐留米軍経費の交渉をする際には在日米軍人の数が多い方が好都合だから、船乗りも計算に入れ約1万7000人の水増しをしたのだろう。 他の諸国、例えばイタリアのナポリ湾には米第6艦隊がいるが、イタリアでは米海軍の人員は4000人と米国防総省は公表しており、艦隊の乗員は計算に入れていないようだ』、「第7艦隊は在日米軍司令部の指揮下にないから在日米軍ではない。かつては日本で陸上勤務をしている海軍将兵の人数だけを計算に入れていたが、日本と駐留米軍経費の交渉をする際には在日米軍人の数が多い方が好都合だから、船乗りも計算に入れ約1万7000人の水増しをしたのだろう」、というのも初耳だが、こんな数字の操作を認めた日本側も情けない。
・『「安保破棄」で困るのは米国 横須賀など使えず制海権困難に  もしトランプ大統領が安保条約を破棄すれば、米海軍は横須賀、佐世保を使えなくなる。軍艦は年に3ヵ月ほどドックに入り点検、修理をするが、グアムのアプラ港にはドックが無い。 ハワイのパールハーバーにはドックがあるが、背後に工業が無いから潜水艦などの簡単な整備程度しかできないようだ。 横須賀、佐世保には巨大なドックがあり、熟練した技師、工員がそろい、部品の調達も容易だから早く安く整備ができる。第7艦隊がそこを使えなくなれば米本土西岸サンディエゴまで後退せざるをえず、西太平洋、インド洋での米国の制海権保持は困難となるだろう。 米国防総省の発表では在日米軍の総人員は5万4200人余りで、最大の受け入れ国だ。第2位のドイツが3万7900人、3位の韓国が2万8500人、4位のイタリアが1万2700人だ。 米国の同盟国は50以上あるが、1万人以上がいるのは4ヵ国だけ。「駐留無き同盟」か、米軍がいてもごく少数、の同盟国が一般的だ。 歴史的には、平時に対等な同盟国に兵力を常駐させた例はまずない。「駐兵権」は清朝末期の中国など半植民地国に列強が認めさせたものだ。 冷戦時代には西ドイツの米軍はソ連軍の侵攻経路の1つとされたフルダ渓谷に展開し、フランクフルトを守っていた。韓国ではソウル北方の議政府付近に布陣し、北朝鮮軍の南侵を迎撃する構えだった。 ところが日本では米軍はソ連に近い北海道ではなく、日本列島の南端で最も安全な沖縄に米軍基地の70%が集中、人員の過半がそこで待機し海外への出動に備えてきた』、在日米軍は、「ソ連」に備えたものではなく、朝鮮やその他地域向けなのが、改めて明確になった。
・『「在日米軍削減」を提案し理不尽な要求に対抗する手も  日本は今年度予算で、「思いやり予算」といわれる米軍基地労働者2万3178人の給与1539億円や光熱水費219億円など駐留経費3888億円のほか、グアム島への海兵隊の一部の移転や辺野古の飛行場建設など米軍再編関係費に1679億円、民有地の地代や周辺対策に1914億円などを防衛省が出す。 このほか、米軍基地のある自治体に総務省が381億円を支払うなど、日本政府は計6204億円を支出する。 米軍に無償で貸している国有地の推定地代は、自治体に貸す場合の安い地代で計算しても1640億円に達し、これも米軍経費負担に入れれば7844億円になる。 日本を直接守っているわけではない米軍に対し、他国と比較にならないほど巨額の補助金を出していること自体が日本政府の弱腰の表れだ。 トランプ政権がさらに執拗に理不尽な増額を迫り、「米軍撤退」や「安保条約終了」で脅しにかかるなら、日本は、トランプ大統領が、「人種差別」を批判した自国の女性議員について言ったように「嫌なら国に帰れ」の姿勢で応じてはどうか。 「在日米軍を削減して貴国の財政赤字縮小の一助とされてはいかが」と、攻守を一転させる論を持ち出すのも対抗手段になるだろう』、「トランプ政権がさらに執拗に理不尽な増額を迫り、「米軍撤退」や「安保条約終了」で脅しにかかるなら、日本は・・・「嫌なら国に帰れ」の姿勢で応じてはどうか」、との主張には、諸手を上げて賛成したい。

第三に、グーグル日本法人元代表でアレックス株式会社代表兼CEOの辻野 晃一郎氏が8月17日付け現代ビジネスに寄稿した「日本はまた「戦争」をする国になってしまうのか、その不安と恐怖 そして今、経営者に求められる覚悟」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66572
・『戦争に近づいていく不安  この原稿を書いているのは2019年8月15日の終戦記念日。「8月ジャーナリズム」という表現もあるそうだが、毎年8月は戦争についての報道を目にする機会が多い。 しかし、毎年ただ儀式のように戦争を思い出し平和の尊さを語っているだけで平和を維持し続けることはできない。 特に最近は、戦争から遠ざかるにつれてまた戦争に近づいていくようなそこはかとない不安を感じることが多くなった。 今、世界に目を向けると、ドナルド・トランプ米大統領が仕掛けた米中の貿易戦争や技術覇権争いは激化の一途をたどる。また、同氏が一方的に核合意を破棄して悪化したイランとの関係はホルムズ海峡における緊張を高めている。冷戦終結の象徴となった米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約も失効した。 欧州では、英国のEU離脱を図るBrexitを扇動したボリス・ジョンソン氏が新首相となり、交渉期限の10月末までに合意無き離脱も辞さないと宣言している。 日韓関係も、文在寅大統領の政治スタンスに端を発して史上最悪といわれるほど悪化しつつあり、北朝鮮は再び中短距離ミサイルの発射を繰り返している。 米国内では銃の乱射事件が後を絶たず、香港では「逃亡犯条例」改正案への抗議デモや警察による弾圧が過激さを増す一方で、アジア有数のハブ空港が機能停止に追い込まれた。 国内に目を転じると、京アニ放火事件やあいちトリエンナーレの「表現の不自由展」騒動などが続き、ネットを覗けば、自分の意に沿わない出来事や他人の意見に対して、「ボケ」「クズ」「非国民」などと口汚く罵るような攻撃的なメッセージが溢れている。 今や国内外で、対立、分断、憎悪(ヘイト)、差別、恫喝、威嚇、脅し、暴力の連鎖が異様に目立つようになった。ここ数年の間に、かつてないほど不寛容でネガティブなエネルギーが一気に世間に充満した印象だ』、最後の部分はその通りだ。
・『戦争を知らない大人たち  人間の「怒り」や「憎しみ」といった感情は恐ろしい。一人の小さな怒りや憎しみが最後は殺人やテロ、戦争に繋がっていく。 1970年代初頭、『戦争を知らない子供たち』という歌が流行ったが、当時の戦争を知らない子供たちも、今では皆いい歳だ。 安倍晋三総理をはじめ現政権を担っている人たちや、中西宏明経団連会長など経済界の人たちも皆戦後生まれの「戦争を知らない大人たち」だ。 かつて、田中角栄元首相は「戦争を知らない世代が政治の中枢となった時は危ない」と言っていたそうだ。 北方領土視察で暴言の限りを尽くし、挙句の果てには戦争による領土奪還を口にして物議をかもした国会議員がいたが、戦争を放棄して平和国家になったはずのこの国で、いつの間にかまた戦争を肯定するような言動が目立つようになってきていることには激しい嫌悪感を禁じ得ない。 2015年、多くの憲法学者が違憲立法と指摘する安保法制が強行採決で成立し、武器輸出三原則が防衛装備移転三原則に置き換えられて、長く封じ込められてきた戦争ビジネスが実質解禁された。 防衛省主導のもと、経団連をはじめとした経済界もその動きを歓迎している。政権の暴走にあからさまに異を唱える経済人は一人もいない。 海外の武器展示会で、防衛副大臣が不慣れな手つきで武器を構える映像や、防衛省の課長クラスが「今後防衛産業を国家の成長産業にする」と公然と発言する映像がネットに流れたが、実におぞましい思いがした』、今どきの経営者には珍しくハト派のようだ。
・『安倍総理がやってきたこと  今年の広島、長崎の平和記念式典では、両市の市長が、国連の核兵器禁止条約に加わるよう、来賓の安倍総理にあらためて訴えかけた。だが、安倍総理は型通りのあいさつを繰り返しただけで核兵器禁止条約について触れることはなかった。 かつて、ICANのノーベル平和賞受賞に際しても冷たい対応に終始し、沖縄に対しても、何度も示された沖縄の民意に反して一貫して冷淡かつ強引な態度を取り続けていることは、現政権のスタンスを如実に示している。 本来、米軍基地負担を一身に担う沖縄へ寄り添い続けること、および唯一の被爆国として、核不拡散や核兵器の全面的な廃絶に向けて先頭に立って尽力し続けることは、日本国としての基本的立ち位置である。 それを自ら踏みにじるような数々の行為は、多くの国民にとって決して気持ちのよいものではない。 2年前、安倍総理が、長崎の被爆者代表に「あなたはどこの国の総理ですか?」と面と向かって問われていた光景はまさに鮮烈だった。 昨年2月、トランプ政権が米国の核戦略の指針「核態勢見直し(NPR)」を発表し、爆発力を小さくして機動性を高めた小型核兵器の導入に言及した際には、河野太郎外相が「高く評価する」という談話を発表したことにも驚いた。 米国は、世界で唯一、人類に対して実際に核攻撃を実施した国だ。その標的とされた我が国の責務は、今や同盟国である米国の暴走を煽ることではなく、抑えることであるのを間違えないでもらいたい。 憲法で明確に戦争を放棄した我が国を、強引な手法でなし崩し的にまた戦争が出来る国に仕立て直そうとするやり口は尋常ではない。 改憲はその総仕上げとしての目論見にしかみえない。参院選後も安倍総理は改憲に執心の様子だが、改憲を持ち出す前に、日本国憲法について「押し付けられたみっともない憲法」などと公言して現行憲法を軽視する態度こそをまずは改めていただきたい。 「歴史は繰り返す」というが、それは人間の寿命と関係している。悪しき歴史も悲惨な過去も、それを実際に体験した人たちがこの世からいなくなることによって、貴重な体験が忘れ去られたり薄まったりしてまた同じようなことを繰り返すからだ。 人間とは愚かな存在であることを自覚せねばならない。 戦後生まれの戦争を知らない世代がマジョリティとなって社会の要職を占めるようになると、「戦争は二度と起こしてはならない」という当たり前のことすらだんだんわからなくなっていく。田中角栄氏の予言がまさに現実となりつつあるのは実に恐ろしいことだ』、米国が「小型核兵器の導入に言及した際には、河野太郎外相が「高く評価する」という談話を発表」、には私も驚いた。「「歴史は繰り返す」というが、それは人間の寿命と関係している・・ 人間とは愚かな存在であることを自覚せねばならない」、同感である。
・『戦争と経営者と覚悟  ノンフィクション作家の立石泰則氏が『戦争体験と経営者』(岩波新書)という本を出している。 フィリピン戦線から奇跡的な生還を果たしたダイエーの中内功氏や、インパール作戦に従軍して九死に一生を得たワコールの塚本幸一氏など、生き地獄のような戦場を体験したからこそ、生き延びて復員してからは徹底して平和主義を貫いた戦後の経済人を数名取り上げ、彼らの平和へのこだわりと迫力ある生き様を簡潔に描いている。 この本の前書きに、立石氏が長年にわたってインタビューして来た多くの経済人を振り返ったとき、「経営理念も経営手法もまったく異なる、そして様々な個性で彩られた経営者たちであっても彼らの間には『明確な一線』を引ける何かがある」とあり、それは「戦争体験」の有無だ、としている。 私が世話になった企業であるソニーの起源は、終戦直後の今でいうベンチャー企業だった。 創業者の井深大氏も盛田昭夫氏も戦争体験者だ。一般的に、戦争は最先端の技術開発を促すと共に、市場拡大や需要喚起など、経済を拡大させる手段として位置付けられてきた。 しかし、井深大氏の主張は真逆だった。彼は、軍需をやりたがる経団連に異を唱え、「アメリカのエレクトロニクスは、軍需をやったためにスポイルした」と述べて憚らなかったそうだ』、井深大氏の識見と勇気は大したものだ。
・『また、「財界の鞍馬天狗」の異名を持つ戦後の経済人、中山素平氏は、1990年、湾岸戦争で自衛隊の派兵が論議されていたとき、派兵に反対して「派兵はもちろんのこと、派遣も反対です。憲法改正に至っては論外です。第二次世界大戦であれだけの犠牲を払ったのですから、平和憲法は絶対に厳守すべきだ。そう自らを規定すれば、おのずから日本の役割がはっきりしてくる」と語ったそうだ。 今、井深氏や中山氏のような発言を堂々とする経営者や経済人は見当たらない。 戦争体験者や被爆体験者が高齢化して次々とこの世を去っていく。 今や太平洋戦争のことを知らない若者が普通にいて、戦争を煽るようなことを軽々しく口にする政治家や経営者が少なからず出現し始めている。 冒頭述べた通り、世界的に対立、分断、格差が広がっていく中、日本においても子供や若者、高齢者の貧困が拡大している。 対立や分断、格差や貧困から生まれる怒りや憎しみは、好戦家たちのあおりによって容易に増幅していく。 政治家たちが暴走し、内閣に人事権を握られた官僚や検察や司法が機能不全に陥り、権力を監視する役割を担うはずのマスメディアもその役割を果たせずにいる。 そのような中で、この国が「戦争」との距離を再び縮めるようなことがないよう、問題解決の手段から徹底して「戦争」を排除するコンセンサスを再び創り上げる実行力を持つのはもはや経営者しかいない。 大小問わずビジネスをつかさどるリーダーたちには、その覚悟が求められているような気がする』、「今、井深氏や中山氏のような発言を堂々とする経営者や経済人は見当たらない」の残念なことだ。「辻野氏」にはハト派経営者の輪を広げてほしいものだ。
タグ:今、井深氏や中山氏のような発言を堂々とする経営者や経済人は見当たらない 軍需をやりたがる経団連に異を唱え、「アメリカのエレクトロニクスは、軍需をやったためにスポイルした」と述べて憚らなかったそうだ 井深大氏 生き延びて復員してからは徹底して平和主義を貫いた戦後の経済人 塚本幸一氏 中内功氏 『戦争体験と経営者』(岩波新書) 戦争と経営者と覚悟 悪しき歴史も悲惨な過去も、それを実際に体験した人たちがこの世からいなくなることによって、貴重な体験が忘れ去られたり薄まったりしてまた同じようなことを繰り返すからだ。 人間とは愚かな存在であることを自覚せねばならない 「歴史は繰り返す」というが、それは人間の寿命と関係している 安倍総理がやってきたこと 田中角栄元首相は「戦争を知らない世代が政治の中枢となった時は危ない」と言っていたそうだ 戦争を知らない大人たち 戦争に近づいていく不安 「日本はまた「戦争」をする国になってしまうのか、その不安と恐怖 そして今、経営者に求められる覚悟」 現代ビジネス 辻野 晃一郎 トランプ政権がさらに執拗に理不尽な増額を迫り、「米軍撤退」や「安保条約終了」で脅しにかかるなら、日本は、トランプ大統領が、「人種差別」を批判した自国の女性議員について言ったように「嫌なら国に帰れ」の姿勢で応じてはどうか 「在日米軍削減」を提案し理不尽な要求に対抗する手も 「安保破棄」で困るのは米国 横須賀など使えず制海権困難に 第7艦隊は在日米軍司令部の指揮下にないから在日米軍ではない。かつては日本で陸上勤務をしている海軍将兵の人数だけを計算に入れていたが、日本と駐留米軍経費の交渉をする際には在日米軍人の数が多い方が好都合だから、船乗りも計算に入れ約1万7000人の水増しをしたのだろう 防空、日本周辺での艦船の防護、陸上攻撃の阻止撃退などの作戦には自衛隊が「プライマリー・リスポンシビリティー(一義的責任)を負う」 「日米防衛協力の指針」(ガイドラインズ ) 日本への武力攻撃に対する「一義的責任」は日本に 第7艦隊はインド・太平洋 「シーレーン確保」は海上自衛隊 在日陸軍や海兵隊は情報収集や後方支援が中心 中東などに出動「本国に置くより節約に」 日本は74.5%を負担 日本防衛には関与せずの米空軍 協定改定や貿易交渉にらみ「安保終了」などで駆け引き ジョン・ボルトン氏が米軍の駐留経費について「現在の5倍の支払いを求める可能性があると述べた」 「「日本を守っていない」在日米軍の駐留経費負担5倍増額は不可能だ」 ダイヤモンド・オンライン 田岡俊次 朝鮮半島有事には必ず事前協議する 「事前協議」は明確化 台湾有事には、在日米軍基地の確実な使用を求める 島しょ防衛は、統合運用の強化を ミサイル防衛システムの拡充は「ウィン・ウィン」 米軍駐留経費の増大は日米に不満をもたらしかねない それでも、基地の提供はスタート地点 トランプ大統領の認識は、1980年代の日米関係のまま固定化されているのでしょう 米ランド研究所のジェフリー・ホーナン研究員 トランプ米大統領が「日米同盟はアンフェア」だと発言 「台湾有事、米国は在日米軍基地の確実な使用を求める」 日経ビジネスオンライン 安全保障(その8)(台湾有事 米国は在日米軍基地の確実な使用を求める、「日本を守っていない」在日米軍の駐留経費負担5倍増額は不可能だ、日本はまた「戦争」をする国になってしまうのか その不安と恐怖 そして今 経営者に求められる覚悟)
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自衛隊が抱える問題(防衛問題)(その7)(陸自の攻撃ヘリ部隊はすでに瓦解している、「いずも」空母化が日本のためにならない4つの理由、自衛隊が尖閣防衛には不適任な水陸機動団や空母を持ちたがる理由) [外交・防衛]

自衛隊が抱える問題(防衛問題)については、昨年11月12日に取上げた。今日は、イラク日報問題は別途取上げるとして、(その7)(陸自の攻撃ヘリ部隊はすでに瓦解している、「いずも」空母化が日本のためにならない4つの理由、自衛隊が尖閣防衛には不適任な水陸機動団や空母を持ちたがる理由)である。

先ずは、軍事ジャーナリストの清谷 信一氏が2月10日付け東洋経済オンラインに寄稿した「陸自の攻撃ヘリ部隊は、すでに瓦解している 墜落事故を機に長年の課題に向き合うべきだ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・2月5日、佐賀県神埼市の住宅街に陸上自衛隊目達原駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)所属の「AH-64D(アパッチヘリコプター)」が墜落する事故が発生。乗組員2人が死亡し、激突して炎上した住宅の小学5年生の女児が軽傷を負った。
・この事故に関して筆者は複数の陸自航空隊OBに意見を求めた。そうしたところ、見解はほぼ同じ。整備後は地上で十分な試運転を行っており、その後飛行試験をするため、整備不良であれば地上試験で気がつくはずで、部品の不良を疑うべき、とのことだ。いまだ調査の結果が出ておらず、現段階で原因などを安易に推測するのは避けるべきだが、部品不良の可能性は高いといえるのだろう。
▽調達価格が予定外の高騰
・今回の事故を機に、陸自のヘリに対する関心が高まっている。この機会に、AH-64Dそのものの問題、さらにはヘリ部隊の運用全体の問題について論じたい。 陸上自衛隊は2002年からAH-64Dの導入を、富士重工(現SUBARU<スバル>)のライセンス生産により開始した。当初62機を調達する予定だったが、陸幕(陸上自衛隊幕僚監部)は調達開始からまもない2006年ぐらいから、急に調達をやめると言い出した。
・その理由について陸幕は、米国が64D型から64E型に移行して追加発注ができなくなる、部品がなくなる、調達価格が予定外に高騰した、などと説明してきた。 だが内部関係者によると、調達をやめた最大の理由は、ボーイング社がアパッチの生産を終了すると聞いて狼狽したからだ。ボーイング社は韓国が採用したF-15Kのオフセットとして2003年からアパッチの組み立てラインを韓国に移管したが、2006年から新規の胴体の製造が止まり、D型からE型へのアップグレードだけに対応することになった。
・だが、「実は生産ラインが止まるまで相当期間があり、それまでのペースで調達しても30機程度は調達できた。一部を安い輸入に切り替えれば予定数はほぼ調達できたはずだ」と当時の調達関係者は語る。 陸幕の担当者とスバルは、2006年に単年度で10機ほどをまとめて調達しようと画策したが、当時は装備の「まとめ買い」というシステムがなく(注:2007年からは可能になっている)、単年度の調達だと予算が膨大となり、また中期防衛力整備計画で定められた機数を超えるので実現できなかった。そこで陸幕と防衛省は、性急に調達中止を決定したというのが真相のようだ。
・実際に調達打ち切りが決定されたのは合計10機が調達された2007年だ。先述のように皮肉にも、この年から防衛省の装備のまとめ買いが始まっている。当時は当初かかった生産設備などの初期費用などを機体に按分していたために、わずか10機で調達を打ち切られると、スバルは初期投資費用を回収できなくなった。
・だが、陸自は62機調達する契約はしていないとして、2007年にその費用を払うことを拒否し、調達中止を宣言したのだ。恐ろしいことにライフ・サイクル・コストが2000億円を超えるプロジェクトで契約が結ばれずに、口約束で調達が開始されるのだ。このため2010年、スバルは初度費用などを求めて訴訟を起こすこととなった(過去記事「富士重勝訴でも晴れない防衛調達費の不透明」参照)。 この訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷は2015年12月16日に国側の上告を退ける決定を出した。これにより国に約351億円全額の支払いを命じた2審の東京高裁判決が確定した。
▽たった13機では部隊としての運用ができない
・訴訟と並行して防衛省は2011年度から2013年度までに毎年1機ずつ予算計上して3機の追加発注を行い、合計13機の調達を行ったところで、AH-64Dの調達は終了した。この一件によって防衛省は2008年から装備調達の初期に、「初度費」という費用を別途払う制度を導入している。だが、調達方式の抜本的な見直しを行ったわけではない。
・実は2010年から米軍のアフガンの戦闘などでの損耗機体の補充などの理由もあって、新規の胴体の製造が再開されたが、陸幕はすでにアパッチ調達は終わった計画だとして、決定した13機以降の調達の再開は行われなかった。
・だが、たった13機では訓練や整備、人事のローテーションを考慮すれば、実際に常に稼働できるのは5~6機程度しかない。これでは部隊としての運用は困難だ。しかも整備予算を十分に確保できず、飛行可能な機体であっても射撃ができない機体もあるという。こんな状態では、事実上、攻撃ヘリ部隊して戦力化されたとは言いがたい。 通常軍隊では部隊の3割が撃破されると組織的な活動が不可能となり「全滅」と判断される。この伝でいくと、射撃のできない機体もある陸自のAH-64D部隊は、戦う前からして「全滅」しているともいえるだろう。
・現在、陸自ヘリの稼働率は、公表はされていないが、関係者によると平均で6割程度という。これは整備予算が減らされていることが大きいという。飛行時間も10年ほど前は年220時間程度だったものが、現在では年120時間程度に減らされているという。飛行時間が減ることは搭乗員の技量が落ちるということだ。 のみならず整備の頻度も減るので整備員の練度も低下することを意味している。その分事故が発生する可能性は増大する。また複数の関係者によるとスバルのIRAN(Inspection and Repair As Necessary:機体定期修理)に出すと、悪くなって返ってくるという証言もある。
▽AH-64Dのメーカーサポートは2025年で終了
・しかもつねに災害派遣という「実戦」に投入される可能性がある汎用ヘリの稼働率維持が優先され、戦闘ヘリや偵察ヘリの稼働率は後回しにされる傾向がある。 その上、AH-64Dのメーカーサポートは2025年で終了する。さらに2019年頃から部品の枯渇が始まる。米軍や主要ユーザーはE型に移行しているので痛くもかゆくもないが、D型を使用している陸自の機体は、全機とも射撃が不可能になるなどの障害が出る可能性が高い。部隊としての戦闘力はさらに低下するどころか、2025年を待たずに、まったく稼働できない事態すら推測される。
・このような部隊を多額の税金を投じて維持を続ける合理的な意味はない。たとえばまったく使用されない空港や道路を巨額の費用をかけて建設し、これまた多額の費用と人員をかけて長年維持するようなものだ。単に税金の無駄遣いでしかない。 その揚げ句に民間を巻き込んで事故を起こしてしまった。命を落とすことになった現場の隊員にとっては、大きな悲劇だ。10機で調達を諦めた段階で、全部廃棄して部隊を解散し、他のリソースにつぎ込んだほうがよかったのではないだろうか。
・ヘリ部隊はほかにも問題を抱えている。本来AH-64Dで更新されるはずの旧式攻撃ヘリ「AH-1S」も問題だ。AH-1Sは90機調達されたが、現在残っているのは半分の45機程度で、しかもどうにか稼働している機体はそのうち3分の2程度であるという。
・稼働率が低いだけでなく旧式化したAH-1Sの対戦車ミサイルは命中するまで1分以上空中に停止してミサイルを誘導しなければならず、今日では生存性が極めて低い。だがAH-1Sは近代化も、延命措置や近代化は行われておらず、これまた多額の費用をかけて部隊を維持する必要性は極めて低い。赤字を垂れ流すだけのAH-1Sの部隊もすぐさま解散するべきだ。
・これらの事実をみれば、陸自のヘリの調達と運用がいかに大きな問題を抱えているかがわかるだろう。まず実質戦力とは言えない状態のままにするのであれば、攻撃ヘリは不要だ。AH-64DやAH-1Sは即座に廃棄して部隊を解散し、隊員をほかの任務に回したほうがいい。浮いた費用はネットワークの充実やサイバー戦機能の向上などに振り向ければ、よほど国防に資する。偵察ヘリも、調達・運用コストが安く信頼性の高い機体に更新すればいい。
・実際のところ、陸自の航空隊に予算の余裕はない。ティルトローター機であるMV-22オスプレイが陸自に17機配備されるが、その調達費用3600億円はおおむね陸自のヘリ調達予算の10~12年分である。オスプレイ1機の整備費は年間約10億円といわれており、17機ならば170億円だ。対して陸自のヘリの整備予算は年間220億円程度にすぎない。オスプレイがそろえばその3分の2を食うことになる。そうなればただでさえ不足している維持整備費は逼迫を免れない。 現状を放置するならば整備予算不足のために、墜落事故が多発する可能性が極めて高い。
▽では、どうすればいいか?
・筆者は、攻撃ヘリが必要なのであれば、現在のAH-64DをE型にアップグレードし、さらに1個飛行隊と予備機を合わせ、現存12機に新たに18機ほど加えて30機程度の体制とするのが現実的な選択だと考える。  こうすれば、既存のアパッチの機体とインフラを生かせる。追加の機体は国内メーカーによるライセンス生産でなく、コストが安く早期に調達が完了する輸入で調達するべきだ。輸入であれば調達単価は80億円程度で、スバルの生産ラインを復活させて国産化するよりも半額程度で済みそうだ。この2個飛行隊を陸自のネットワークの基幹とし、空海自、米軍との共同作戦能力を獲得するべきだろう。
・現在の陸自の予算では元の計画の62機の調達は不可能だ。数が足りないのであれば、武装型の軽汎用ヘリ、無人攻撃機、あるいはターボプロップエンジンのCOIN機(軽攻撃機の一種)など、より安価なシステムを組み合わせるという発想もある。COIN機であればAH-64E2機分の値段で1個飛行隊と予備機をそろえることができる。維持整備費も1ケタ安い。米空軍では、ゲリラ部隊と戦うような非対称戦においてはCOIN機を使用する「OA-X」という計画を進めている。
・そもそも攻撃ヘリにどのような任務を与えるのか、またその任務をほかのプラットフォームで代用できないか、という点も検討するべきだ。 陸自はメンツに固執することをやめて現実を直視すべきだ。その上でスクラップ&ビルドを行い、現実的かつリーズナブルな航空兵力を整えればいい。そうでなければ抑止力にも戦力にならない部隊に無駄な税金を使い続けることになる。さらに、整備費不足の無理がたたり、今回のような墜落事故が多発する事態にもなりかねないのである。
https://toyokeizai.net/articles/-/208101

次に、ガバナンスアーキテクト機構研究員の部谷 直亮氏が3月28付けJBPressに寄稿した「「いずも」空母化が日本のためにならない4つの理由 防衛予算の8%を費やして中国を喜ばせるだけ?」を紹介しよう(▽は小見出し、+は段落)。
・2017年末から、海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」級を、F-35B戦闘機を搭載可能な「空母」として改修する話が相次いで報道されている。2018年3月2日の参議院予算委員会では、小野寺五典防衛大臣が「いずも」でF-35Bの運用が可能かどうかを調査していることを明らかにした。
・しかし単刀直入に言って、いずもの空母化や空母建造は自衛隊を弱体化しかねない愚策である。以下ではその4つの理由について論じよう。
(1)高額な改修費がかかる
・第1の問題点は、高額な改修費である。この点に関して、「Defense News」誌で日本関連記事を数多く執筆していたカイル・ミゾカミ氏が、技術誌「Popular Mechanics」で具体的な論考を行っている。彼の主張は以下のとおりである。 いずも空母化を日本政府が決断した場合、(1)F-35Bの離着陸時の排気ガスの高熱に耐えうるための甲板の耐熱コーティング、(2)艦首の邪魔な近接防御火器システムの撤去、(3)F-35特有の部品管理システムALISの艦船版の組み込み、(4)1隻につき艦載機たるF-35B12機の導入などが必要になる。これらの改造費として、船舶の改修費が5億ドル、F-35Bが14億ドルかかる。
+要するに「いずも」「かが」を空母化すれば、約38億ドル(約4000億円)の予算がかかるのである。これは日本の年間防衛費の7.7%に匹敵するコストである。装備品の調達コストで見れば14.6%を占めることになる。しかも、補修パーツ対空ミサイル・誘導爆弾・航空燃料等の積載増加により、艦内のスペースが食われることになり格納能力も低下すると指摘している。
+いずもの空母化ですらこれなのだから、一説に言われている「おおすみ」級の後継艦でより本格的な「空母」(実態は強襲揚陸艦に過ぎないが)を建造すれば、コストは柔軟性と余裕に乏しい防衛費をさらに圧迫するだろう
(2)政治的効果が見込めない
・第2の問題点は、その改修費に見合う政治的効果が見込めないことである。 政治的効果を発揮できないことは、隣国の中国の「遼寧」を見れば分かる。「遼寧」は24機の戦闘機を中心に艦載しているが、これに政治的な影響力があるだろうか。先日も台湾海峡を航行したが、何か具体的な影響をもたらしたのだろうか。我々は「遼寧」を脅威に感じているだろうか? 決してそんなことはない。
+なぜか。それは第1に「遼寧」が米空母に比べるとあまりに小型であり、なおかつ中国の空母が「現在」は1隻しか存在しないからである。そして第2に、トータルの武力が劣るからだ。米空母が大きな政治的効果を発揮するのは、単体での巨大さや艦載機数や空母の数の多さもさりながら、その後の米軍の大規模な武力行使の先駆けとなる存在だからだ。だが、中国にはそのいずれもない。タイの空母「チャクリ・ナルエベト」、インドの空母「ヴィクラマーディティヤ」についても同様のことが言える。
+日本も同様だ。「いずも」を空母化したところで、F-35Bとはいえせいぜい10機前後と米軍の強襲揚陸艦(ワスプ級は6~20機搭載可能)以下の艦載機でしかない。しかも「いずも」「かが」のたった2隻である。「おおすみ」級の後継艦を入れても4隻では、常時1~2隻の展開がやっとだろう。強襲揚陸艦の1隻や2隻に何の政治的効果があるのか。なお、米軍の強襲揚陸艦は世界中を移動しているが、その1隻の動向が注目されることはない。しかも、「いずも」空母化で海自のその他の戦力は予算・人員を吸収され弱体化するので抑止・対処力も低下する。
+また、ネット上の一部では、日本の空母が東南アジア諸国との訓練や協力を図れば大きな政治的効果があるという声も聞かれるが、これについても、強襲揚陸艦でしかない“自称”空母である必然はない。政治的影響力を拡大させようとするならば、装備移転や能力構築の方がはるかに効果・効率的(経済成長も見込める)だろう。 
+その点で日本は中国、韓国の後塵を拝している。中国はタイ、ミャンマー、バングラデッシュなどに兵器を輸出している他、タイとの間では無人機を含む軍需製品の現地生産まで調整が進んでいる。韓国も、トラックや潜水艦をインドネシアに、インドにはK-9自走砲を、フィリピンにはFA-50戦闘機を輸出している。こうした武器輸出や能力構築は、維持整備や教育訓練もセットになっている。そのため、輸出先の軍事組織が輸出元のシステムで何十年も稼働し、教育担当の軍人を配置できるメリットがあるのである。
+中国や韓国は既にそうした状況を作り上げつつあるのに、我が国は無縁である。現在はパプアニューギニアの軍楽隊支援、法律等の勉強会の開催、TC-90供与など、きわめてシャビーな活動しか行っていない。しかも、外務省と海保が巡視船をマレー、ベトナム、フィリピン等にODA等により供与していることを考えれば防衛省自衛隊の装備移転の遅れは際立っている。
+こうした状況を考えれば、強襲揚陸艦が東南アジア諸国に短期間寄港するより、武器輸出や能力構築を進めた方が、はるかに持続的で高い影響を誇ることができるのは明白である。しかも、日本の経済的な利益にもつながる。つまり、「いずも」「かが」に約4200億円を充てるよりも、その予算を今後10年間の防衛装備品の移転や供与支援に充てる方がよほど効果的だろう。
(3)軍事的効果が乏しい
・第3の問題点は、軍事的効果が乏しいということだ。 まず、空母化した「いずも」は戦局が圧倒的に有利でなければ投入できない。例えばフォークランド紛争においてアルゼンチン軍は空母を前線に投入できなかった。あまりにも虎の子過ぎる戦力は活用できないのだ。もし日中紛争時にいずもが撃沈されれば国内外の世論がどうなるか想像してみほしい。もしくは温存しすぎた挙句、戦局が決定的に不利となり、その無策への批判を恐れて戦艦「大和」のように沖縄にでも特攻させるのがオチだろう。
+費用対効果の悪さも問題である。ここで比較対象となるのは中国のA2/AD戦力だ。中国は米軍の地域における戦力と来援戦力を叩き潰すための戦力を重点的に整備している。内容は、対艦弾道ミサイル、巡航ミサイル、サイバー攻撃、ゲリラコマンド攻撃、潜水艦戦力等の強化である。
+中国の対艦弾道ミサイルDF-21は、1ユニット6~12億円。それに対していずもは1隻1200億円であり、空母化すれば3300億円である。つまり中国にとっては、いずもにDF-21を225~550発撃ち込んでもお釣りがくる計算である。たしかにDF-21対艦弾道ミサイルの命中率には議論があるが、大量の発射でカバーできるし、母港に停泊中であれば命中率は問題ではなくなる。そもそも自衛隊はドローン攻撃に対して110番通報しかできない現状では、「いずも」もドローンで一部機能を無力化されかねない。甲板上のF-35Bを破壊されれば目も当てられないことになる。
+ 他方、南西諸島の島々は、下地島をはじめ滑走路(弾道ミサイルを吸引するおとりとしても)として活用できる余地がある。また、民間空港の有事転用の訓練や装備は空自にはほとんどなく、これも改善の余地がある。そして、米軍や自衛隊の保有する空中給油機を使えば、海上基地がなくとも展開可能である。KC-767空中給油機(1機223億円)を増勢する方が効果的であろう。
(4)海自をさらに疲弊させる
・第4の問題は海上自衛隊の疲弊を加速化させかねないことだ。 海自ではダメージコントロールを中心に省力化が進まないのに、艦艇を大型化し、艦艇を増勢し、様々な任務を増やした結果、充足率は危機的な状況である。しかも、予算要求上の都合から艦艇不適の人間も艦艇の充足率に含めてしまっており、見かけ上の充足率より実は低くなっている。そして、それはさらなるブラック化、充足率の悪化を招くという悪循環に陥っているのである。そのため近年の一部艦艇では、地方総監部が行うべき事務業務を艦艇でも行うという中世のような勤務が行われている。
+このような現状で空母化や空母の導入を行い、海外への展開を増加させるというのは、自衛隊を破滅に追い込むだけである。
▽「個別の装備品」議論から脱却せよ
・そもそも、個別の装備品の導入が最初に議論されるというところに、日本の安全保障論議の欠陥がある。例えば、治水行政を語る際に「このブルドーザーやダムを導入すれば良い」というような議論があるだろうか。医療行政を語る際に「このレントゲン機器を導入すべきだ」といような議論があるだろうか。企業の経営戦略を論じる際に「この工作機械を導入するべきだ」で始まる議論があるだろうか。どの分野の政策議論でも、個別の装備の導入が議論の入口になることはない。ところが防衛分野だけがその種のいきなり手段から議論に入って、目的や目標を後付けで語るか無視するような議論を繰り広げている。要するに空母導入の政治的・軍事的意味を単独で云々すること自体が児戯に等しいのだ。
・諸外国では、現在の戦略環境や作戦環境を議論した上で、戦略と作戦構想を設計し、その上でいかなるドクトリンを採用し、それに見合った装備は何かという議論をしている。だが、我が国だけはなぜか個別の議論が必要か否かが最初に出てきてしまう。だが、それは日本の戦略・作戦環境に最適な戦略と作戦構想とその延長のドクトリンを整理・議論した上で行われてしかるべきものである。
・不毛ないずも空母化論争は打ち止めにして、そろそろ、兵器評論や論争ではなく、戦争指導も含めた戦争全般に関する議論こそ始めるべきだろう。兵器評論はその後だ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52667

第三に、軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が4月12日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「自衛隊が尖閣防衛には不適任な水陸機動団や空母を持ちたがる理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・4月7日、島嶼防衛部隊「水陸機動団」(2100人、将来3000人)の発足を祝う「隊旗授与式」が佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地で行われ、式典後にはヘリコプター、水陸両用車を使って、敵が占拠したという想定で島への上陸作戦の展示訓練も行われた。
・その映像をテレビで見ていると、第2次世界大戦での硫黄島、沖縄、アッツ島やグアム、サイパンなど、10以上の島々での守備隊の悲惨な「玉砕」を思い起こし、暗い気持ちにならざるを得なかった。 島の争奪と防衛に決定的な要素は制空権と制海権(空と海での優勢)を確保することであり、それが失われると、孤立し、補給も来援も途絶した島嶼防衛部隊は全滅が必至だ。
▽「水陸機動団」が創設されたが重要なのは制空、制海権
・こちらが島の周辺海域で制海、制空権を握っていれば、相手が島に上陸作戦を行おうとしても、海上で敵の輸送艦は撃沈され、輸送機も撃墜されるから相手にとっては自殺行為だ。 仮にこちらの隙を突いて上陸に成功しても、補給さえ断てば敵は遅かれ早かれ降伏するか玉砕するしかない。 尖閣諸島など南西諸島の防衛を考える際の要点は一にも二にも制空権で、それに制海権も付随する。
・だが航空自衛隊が東シナ海で優勢を確保できる公算は低い。中国軍にとっては、北方でのソ連の脅威が去った今日、東シナ海は台湾との軍事衝突を想定した場合の最重要の「台湾正面」であり、その正面を担当する東部戦区には新鋭機が優先的に配備されている。
・東部戦区の中国空軍は10個戦闘機部隊(旅団あるいは連隊)で戦闘機約240機を持つと推定される。 うち旧式の戦闘機である「J7」と「J8」で構成されるのは3個隊だけで、他の7個隊(約170機)はロシア製の「Su30」や国産の「J10」など、米国のF15、F16に一応、匹敵する「第4世代戦闘機」を持つと考えられる。また海軍東海艦隊の航空隊は新鋭戦闘機2個連隊(40機余)を持つと見られる。
・これに対する台湾空軍は戦闘機400機余を持ち、うち「第4世代戦闘機」は190機だ。 当面の航空戦力はほぼ拮抗か、台湾優位と思えるが、中国は全土に戦闘機1300機余、うち第4世代戦闘機710機余を持つから、有事の際には他地域の部隊も台湾正面に移動展開が可能だ。
・一方で、航空自衛隊は那覇にF15戦闘機約40機を配備しているほか、福岡県築城にF2戦闘機約40機、宮崎県新田原にF15約20機がいる。このうち40機を防空に残せば、尖閣上空には20機を出動させることができる。 だが九州の基地から尖閣諸島へは約1000kmだから行動半径ぎりぎりで、上空で待機、哨戒するには空中給油が必要だ。中国沿岸からは約400kmだから、中国空軍にとってはるかに有利な場所だ。
・中国空軍のパイロットの年間飛行訓練は、かつては70~80時間程で、練度は低かった。だが一時は4500機もあった戦闘機は、単価の高騰のため1300機程に減り、財政全体にも余裕が生まれて、今日では訓練飛行は年間約150時間とされ、日本と同等だ。
・日本側が尖閣上空に出せる戦闘機は那覇の40機と九州から20機の計60機、中国は海軍航空隊を含め、200機程の第4世代戦闘機を出せるから、数的には日本は3対1の劣勢となる。 大型レーダーを積み、敵機を遠距離で発見する「空中早期警戒機」の性能の差や、電波妨害などの「電子戦」能力では日本が当面優位と思われるが、それで3対1の劣勢を補えるかどうかは大いに疑問だ。
▽どちらに転んでも「尖閣防衛」には役立たない
・もし制空権と、それに伴う制海権を十分に確保できないまま水陸機動団による島の奪回作戦が発動されれば、輸送艦は中国の空対艦ミサイルの標的となり、「オスプレイ」やヘリコプターは簡単に撃墜される危険が大きい。 仮に上陸、制圧に成功しても、補給が続かなければ、第2次世界大戦時と同様、兵は餓死の渕に立たされる。
・制空権、制海権が確保されるまで「水陸機動団」を出動させなければよいが、島を占拠されたとなれば、「水陸機動団は何をしているのか」との批判が出て、政治家やメディアもそれに乗る可能性がある。こうした声に押されて水陸機動団が危険を冒して出勤し、海上で全滅の事態も起こりかねない。
・真珠湾攻撃の前、陸軍は「海軍の方から対米戦争に勝ち目はない、と言ってもらえまいか」と内閣書記官長(今の官房長官)を通じて事前に働きかけた。だが、海軍は「長年、対米戦準備のためとして予算をいただいて来たのに、今さらそんなことは言えません」と断り、日本は勝算のない戦争に突入した。
・こうしたことは日本だけではない。どの国の軍も巨大な官僚機構で、組織の防衛と面目の維持を第一としがちだから、そのために部隊を犠牲にすることが起こる。 その最も顕著な例は、第1次世界大戦末期のドイツ海軍だ。 敗色濃い中、巨費を投じた「大海艦隊」は出動すれば英海軍に撃滅されるのは必定だったから、港内に引きこもっていた。 だが、海軍首脳部はあえて出動を命じ最期を飾ろうとした。無駄死にをさせる出動命令に水兵たちは反乱を起こし、これが全国に波及して革命となり、ドイツ皇帝はオランダに亡命した。  制空、制海権が十分に確保されない場合、「水陸機動団」が出動しなくても、メディアや政治家はそれを「臆病」と非難しないよう、気を付けねばならない。
・一方、制空、制海権が確立していれば、まず相手は攻めて来ないし、仮に上陸しても、補給が切れて立ち枯れになるのを待てばよい。この場合にも「水陸機動団」の出動を急がせるのは、無駄に死傷者を出すだけで愚策だ。 どちらに転んでも「水陸両用団」の創設は無駄と考える。
▽予算獲得の思惑 ヘリ空母改修も「便乗」
・そもそもどうして「水陸機動団」が作られることになったのか。 陸上自衛隊が「南西諸島防衛」を主張し始めたのは、ソ連の崩壊後だ。 それまではもっぱらソ連軍の北海道侵攻への対処を主眼としていたが、その可能性が消えたため、大幅削減の“危機”に直面した陸上自衛隊は次の存在目的を南西諸島に求めた。  当初、海上、航空自衛隊では「陸上自衛隊は苦しまぎれにそんなことを言い出した」と冷笑し、「対艦ミサイル・ハープーン搭載の潜水艦を1隻出しておけば十分ですよ」とか、「航空優勢さえ確保すれば相手は来られませんよ」との声を当時、よく聞いた。
・だが、「南西諸島防衛に必要」と言えば、海上、航空自衛隊も予算が取れる、と分かってそれに便乗し始めた。 ヘリコプター空母「いずも」(満載時2万6000トン)を、来年度に始まる次期中期防衛力整備計画で改修し、垂直離発着が可能なF35Bステルス戦闘機を搭載、対空、対艦船、対地攻撃能力を持つ空母にすることも真剣に検討されているが、これも便乗の一例だろう。
・海上自衛隊は私が防衛庁担当になった1960年代から、空母を持つことを悲願としてきた。 当初は「水上艦の速力を上回る30ノット以上の速力で潜航するソ連の原子力潜水艦を追うには、ヘリコプターが必要」との論で、それには合理性があると私も同意していた。 だがその後、大型護衛艦が各3機の対潜水艦用ヘリを搭載、中型護衛艦もヘリ1機(別に予備1機)を積むようになったから、潜水艦対策にヘリ空母を持つ必要はなくなった。
・だが海上自衛隊はヘリ空母をあきらめず、ソ連が1991年に崩壊し、その400隻近い巨大な潜水艦隊が今日の62隻(うち旧式30隻余)にまで減少する時期になって、ヘリ空母「ひゅうが」(満載時1万8000トン)と「いせ」(同型)を2009年と11年に就役させた。さらに「いずも」(同2万6000トン)と「かが」(同型)が2015年と17年に就役した。
・特に「いずも」「かが」は計画当初からヘリ空母ではなく、普通の空母への転用を目的として造られたことは、航空機を格納甲板から、飛行甲板に上げるエレベーターの配置などから明白だった。 飛行甲板の塗装をジェット噴気に耐える耐熱塗装とし、その先端を少し上に反らした「スキージャンプ」に改装し、垂直離着陸機が短距離を滑走して発艦できるようにし兵装の搭載力を増すようにすれば、対空、対艦、対地攻撃力を持つ小型空母になる。
・現状での搭載機数は、中型、大型のヘリ計14機だが、2万6000トンという大型艦だから、改装により搭載機をさらに増やすことも可能と考えられる。 仮に20機を搭載するとすれば、F35Bを14機、遠距離の敵機を探知するための早期警戒機を4機、発着艦の失敗で海に落ちた機のパイロットを救うための救難ヘリが2機、となるだろう。
・米空母は、早期警戒機として皿型のレーダーアンテナを付けた双発ターボプロップのE2Dを4機積むが、これはカタパルト(発進加速装置)がないと発艦できない。だから「いずも」級では、垂直離着陸ができるV22(オスプレイ)の胴体上部に「平均台」と呼ばれる細長いレーダーアンテナを付けることになるかもしれない。
・だが、F35Bが14機程度では戦闘能力は限られる。米空母は平時には約60機を搭載、うち44機が戦闘・攻撃機だ。尖閣諸島周辺では中国の第4世代戦闘機約200機が活動可能で、日本の空母から14機が戦列に加わっても大勢は変わらない。 同型の「かが」を改装して参加すれば計28機になるが、軍艦は1年のうち3ヵ月はドックに入って定期点検、修理をするし、それが終わって再訓練をした後に配備につくから、米海軍では空母1隻を運用するには3隻が必要とされている。
▽空母保有は「国家的虚栄心」 対中では潜水艦のほうが有効
・米国以外に空母を持つ国としては、中国が「遼寧」のほか1隻を建造中だ。インドも1隻と他に1隻建造中、イギリスは2隻建造中、フランス、ロシア、イタリア、タイが各1隻を保有する。 だが1隻ではそれがドック入り中に何か起きると空母は役立たない。不測の事態に備える防衛用ではなく、こちらの都合の良いときに弱い相手に対する攻撃や威嚇に使えるだけだ。
・米国のように10万トン級の原子力空母を11隻も持てば、常時3、4隻が出動可能で、搭載する戦闘・攻撃機は3隻で130機以上だから、有力な戦力となる。 だが1、2隻の空母を保有する国々は軍事力を誇示して威信を高めたい面があり、国家的虚栄心の表れでもある。
・F35Bステルス戦闘機を10機余積んだ「いずも」「かが」でも、「遼寧」が搭載する「J15」(燃料、兵装を満載すれば空母から発進できない)約20機に対抗できるかもしれない。 だが、実は中国海軍に対抗するには空母の必要はない。潜水艦で十分なのだ。
・中国海軍は敵の潜水艦を探知する対潜能力が極めて低く、一方で保有する原子力潜水艦の発する音は大きい。静粛性が高い日本の潜水艦で容易に処理できる。 海中では音波は必ずしも直進せず、水温、水深などにより上下に曲がるし、潮流や他の船舶の機関音などの雑音の多い中から、敵の潜水艦の出す音だけを拾うには高度の「水中音響学」の蓄積が重要だ。
・旧ソ連の潜水艦を主敵と見てきた米海軍と海上自衛隊はその探知の経験を積み、装備を開発してきたから、対潜水艦能力では中国と大差がある。 小型の空母よりはるかに建造費用は安く、人員も少ない潜水艦に力を入れる方が合理的だろう。
・日本が小型空母2隻「いずも」「かが」を持てば、イギリスが建造中の「クィーン・エリザベス」級(6万5000トン)2隻にははるかに及ばなくても、「海軍国」としての外見を備えることにはなるだろう。 だがそれが実際に活動するのは、おそらく米海軍の空母戦隊が中東などに出勤する際、その助手として付いて行く程度になるのではないか、と思われる。
http://diamond.jp/articles/-/166765

第一の記事で、 AH-64Dの調達を当初予定の64機から、僅か13機に減らされたのでは、生産していたSUBARUが、訴訟を起こしたのも当然だ。 『最高裁第2小法廷は2015年12月16日に国側の上告を退ける決定を出した。これにより国に約351億円全額の支払いを命じた2審の東京高裁判決が確定』、というのも当然だが、自衛隊の乱暴な調達方針変更は、余りに身勝手だ。SUBARUにとっては、訴訟が今後の受注に悪影響を与える可能性があるのは覚悟の上で、約351億円を獲得する方が得策と考えたのかも知れない。 『旧式化したAH-1Sの対戦車ミサイルは命中するまで1分以上空中に停止してミサイルを誘導しなければならず、今日では生存性が極めて低い』、こんな敵に恰好の標的となるようなAH-1Sは、筆者も主張するように、直ちに引退させるべきだろう。 『陸自はメンツに固執することをやめて現実を直視すべきだ。その上でスクラップ&ビルドを行い、現実的かつリーズナブルな航空兵力を整えればいい。そうでなければ抑止力にも戦力にならない部隊に無駄な税金を使い続けることになる。さらに、整備費不足の無理がたたり、今回のような墜落事故が多発する事態にもなりかねないのである』、というのは正論だ。
第二の記事で、 『いずもの空母化や空母建造は自衛隊を弱体化しかねない愚策』、 『「個別の装備品」議論から脱却せよ』、というのはその通りだと思うが、「個別の装備品」議論からスタートするお粗末な現在のやり方が何故、やられてきたのだろうか。それなりの理由がある筈だが、記事では触れてないのが残念だ。
第三の記事で、 『「水陸機動団」が創設されたが重要なのは制空、制海権』、というのはその通りだろう。 『ソ連の崩壊後・・・大幅削減の“危機”に直面した陸上自衛隊は次の存在目的を南西諸島に求めた』、というのは、よくよく考えるとおかしな話だ。 ソ連軍の地上侵攻に備えるには大規模な部隊が必要だろうが、島嶼防衛であれば、小規模で済む筈だ。やはり、陸上自衛隊の定員を大幅削減すべきだろう。 『第1次世界大戦末期のドイツ海軍・・・海軍首脳部はあえて出動を命じ最期を飾ろうとした。無駄死にをさせる出動命令に水兵たちは反乱を起こし、これが全国に波及して革命となり、ドイツ皇帝はオランダに亡命』、という史実は、どこの軍隊でも、いいかげんな意思決定をするものだと、改めて思わされた。 『空母保有は「国家的虚栄心」 対中では潜水艦のほうが有効』、との主張には説得力がある。 『日本が小型空母2隻「いずも」「かが」を持てば・・・だがそれが実際に活動するのは、おそらく米海軍の空母戦隊が中東などに出勤する際、その助手として付いて行く程度になるのではないか、と思われる』、というのでは、壮大な無駄以外の何物でもない。
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