SSブログ
外交・防衛 ブログトップ

安全保障(その14)(世界に学ぶ日本に必要な住民主体の自衛のすすめ 「非武装中立」神話を脱却した現実的方法(前編)、住民を危険にさらす国民保護制度を改善する方法 「非武装中立」神話を脱却した現実的方法(後編)、公安と検察の捏造に言及不足の大川原化工機判決 冤罪逮捕の社長らへの捜査の違法性は認める) [外交・防衛]

安全保障については、昨年8月4日に取上げた。今日は、(その14)(世界に学ぶ日本に必要な住民主体の自衛のすすめ 「非武装中立」神話を脱却した現実的方法(前編)、住民を危険にさらす国民保護制度を改善する方法 「非武装中立」神話を脱却した現実的方法(後編)、公安と検察の捏造に言及不足の大川原化工機判決 冤罪逮捕の社長らへの捜査の違法性は認める)である。

先ずは、昨年12月23日付け東洋経済オンラインが掲載した琉球大学人文社会学部国際法政学科准教授の山本 章子氏による「世界に学ぶ日本に必要な住民主体の自衛のすすめ 「非武装中立」神話を脱却した現実的方法(前編)」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/723328
・『有事を想定した国民保護体制には数多くの問題がある中、求められる解決策は何か。琉球大学の山本章子准教授が「非武装中立」神話から脱却した方策を提言する(前編) もはやどれほどの人がピンとくるのか分からないが、戦後日本には「非武装中立」という思想が存在した。2度の分裂を経た社会党が、1960年の日米安保条約改定以降に安全保障・外交政策として打ち出した。日本の再軍備と日米安保条約への反対を表すこの思想は、1994年に社会党が自民党および新党さきがけとの連立政権に参加するにあたって放棄された。 「非武装」と「中立」が合わさった言葉が人口に膾炙したことは、一定の日本人にこの2つが不可分の関係にあるという誤解を与えたのではないだろうか』、「非武装中立」を信じていられた間はある意味で幸せな時期だった。
・『「『非武装』で『中立』は守れない」が世界の常識  歴史を見るかぎり、「中立」が「非武装」によって実現したことはない。スウェーデンは1834年以来、200年近く「中立」「非同盟」を掲げてきた国だが、徴兵制があり(2010?16年の廃止をへて復活)、冷戦期には対GDP比3?4%の軍事費をおおむね保ってきた。ロシアのウクライナ侵攻を機に2022年、同じく中立主義をとってきたフィンランドとともに北大西洋条約機構(NATO)加盟を申請して注目されたが、実際にはNATO発足直後から、スウェーデン軍とNATOの秘密裏の協力態勢が構築されてきた。 自衛をのぞいて他国と戦争しない、同盟も結ばない「永世中立」を掲げるスイスやオーストリアも徴兵制をとっており、1815年以来この政策を保持してきたスイスは、有事に動員できる「民兵」として人口の約1.7%にあたる約14万4000人を保持する。日本の自衛隊の定員は約24万人だが、人口の約0.2%にすぎない。 「非武装」にこだわるがゆえに、自国が侵略の意図を持たなければ他国から侵略されない、もし占領されても抵抗しなければ殺されない、と主張する人々がいるが、歴史に対する無知だといわざるをえない。こうした主張は、日本が一方的に侵略された経験のほぼない国だということも関係している。 ロシアや中国が膨張主義的な行動をとるのは、大国から何度も一方的に侵略され、占領下で国民を虐殺された歴史が、過度に防衛的な安全保障認識につながっているからだと専門家は指摘してきた。アメリカは第2次世界大戦後、世界中に軍隊を駐留させるようになったが、それも太平洋戦争で日本からハワイを奇襲され、グアムを占領されたことへの教訓から防衛ラインを拡大したためだ。) 元寇までさかのぼらないと一方的な侵略を受けた歴史がなく、豊臣秀吉の朝鮮出兵から日中戦争・太平洋戦争まで他国への一方的な侵略を繰り返してきた日本は、世界の中でもまれな国なのである。ウクライナに対してロシアの占領に抵抗せず停戦せよと言う者は、日本が一方的に侵略した中国で三光作戦とまで呼ばれた残虐な作戦行動を展開し、グアムでは強制収容した住民の一部を虐殺、シンガポールやフィリピンなど東南アジア各国でも大規模な住民虐殺を行った事実を学んでほしい』、「元寇までさかのぼらないと一方的な侵略を受けた歴史がなく、豊臣秀吉の朝鮮出兵から日中戦争・太平洋戦争まで他国への一方的な侵略を繰り返してきた日本は、世界の中でもまれな国なのである・・・ウクライナに対してロシアの占領に抵抗せず停戦せよと言う者は、日本が一方的に侵略した中国で三光作戦とまで呼ばれた残虐な作戦行動を展開し、グアムでは強制収容した住民の一部を虐殺、シンガポールやフィリピンなど東南アジア各国でも大規模な住民虐殺を行った事実を学んでほしい」、その通りだ。
・『エストニアのサイバーセキュリティから学ぶ  侵略を経験した小国の自国防衛に対する考え方には、多くの学ぶべきものがある。その一例として、まずエストニアを取り上げたい。 エストニアは1918年に独立を宣言したが、第2次世界大戦開戦からまもない1940年、ソビエト連邦に侵略され、エストニア・ソビエト社会主義共和国としてソ連に編入された。これは独ソ不可侵条約の「秘密議定書」で、第2次世界大戦勃発の端緒となった両国のポーランド分割や、バルト三国をソ連が併合することが取り決められたことによる。 ソ連のゴルバチョフ書記長がペレストロイカ(改革)を進める中で、ソ連が独ソ戦でエストニアに対して犯した戦争犯罪が明らかになったのをきっかけに、エストニアは1990年に独立の回復を宣言、翌91年に実現させた。しかし、ロシアと国境を接するエストニアは長年、ロシアとの領土問題を抱え、現在まで解決に至っていない。 独立当初から行政手続きの電子化を進め、通話アプリSkypeを開発した国でもあるエストニアは、NATO加盟から3年後の2007年、首都タリン中心部の旧ソ連兵士銅像(独ソ戦戦勝記念碑)を撤去・移転したことで、ロシアから大規模なサイバー攻撃を受ける。これを機に、NATOとエストニア、エストニア政府と同国民間企業との連携を図りながらサイバー攻撃に対する耐性を強化してきた。 注目すべきは、国民ひとりひとりにサイバー攻撃やフェイクニュース、Bot(ボット)アカウントによる投稿などへの耐性をつけることを重視したサイバー教育の徹底だ。エストニアの子どもは就学前の年齢からサイバー空間の危険性を教わり、中学生からは教師の監督下でハッキングなどサイバー攻撃のノウハウも学ぶ。 2019年にはエストニア議会選挙に介入しようとしたロシアが、世論操作を狙いSNS上でフェイクニュースを流布したほか、サイバー攻撃により政府の機密情報を窃取しようとしたが、逆効果をもたらした。ロシア移民のエストニア移住に反対し、ロシア系住民へのエストニア語教育を主張するエストニア保守人民党が第3位に躍進、連立政権に参加する結果となったのだ。) こうした経緯をへて、ロシアはエストニアに対して大規模なサイバー攻撃をしなくなった。現代の戦争は「ハイブリッド戦争」と呼ばれ、軍隊による侵略の前後にサイバー攻撃や情報工作が行われるのが一般的である。サイバー防衛こそが自国防衛につながるのだ』、「通話アプリSkypeを開発した国でもあるエストニアは、NATO加盟から3年後の2007年、首都タリン中心部の旧ソ連兵士銅像(独ソ戦戦勝記念碑)を撤去・移転したことで、ロシアから大規模なサイバー攻撃を受ける・・・ロシア移民のエストニア移住に反対し、ロシア系住民へのエストニア語教育を主張するエストニア保守人民党が第3位に躍進、連立政権に参加する結果となった・・・ロシアはエストニアに対して大規模なサイバー攻撃をしなくなった・・・サイバー防衛こそが自国防衛につながるのだ」、その通りだ。
・『キューバの「市民防衛」制度に学べ  キューバは憲法で「市民防衛(Civil Defense)」制度を設け、中央政府の指示で州ごと、自治体ごとに地域住民の手で防衛・防災計画を策定。平時から市民防衛委員がハザードマップの定期更新などの活動をしている。 同国は1959年、腐敗したアメリカの傀儡政権を倒したカストロらのもとで社会主義革命を実現したが、61年にはアメリカ政府に支援された亡命キューバ人部隊の侵略を受けた。ソ連とキューバ政府は事前に情報を把握し、侵略を撃退した。キューバはその後、アメリカの軍事侵略に備えて市民防衛制度をつくった。それがほぼ毎年襲来するハリケーンなどの大型自然災害への対策にそのまま使われている。 日本の世論は日米安保条約・自衛隊からなる安全保障への支持率が約9割で「非武装中立」への支持はほぼ0(2023年3月の内閣府世論調査)だが、憲法9条改正への賛成/反対もそれぞれ約3割(2023年5月のNHK世論調査)という曖昧な状況だ。地域住民が主体となって、軍事的脅威と自然災害どちらにも対処できる体制を築くという発想は、今の日本にとって受け入れやすいのではないか。 このように提言するのは、2004年の国民保護法制定から国が進めてきた国民保護体制に問題が多いからだ。 日本の法律では、自然災害対策が自治体の判断で行う自治事務になっているのに対して、テロや戦争の際に国民を守る国民保護は、国の指示・財源にもとづき都道府県を通じて市区町村が動く法定受託事務となっている。ところが、実際の運用では、基礎自治体が国民保護計画や避難実施要領パターンの策定、啓蒙活動や避難訓練、有事の避難誘導を行わなければいけない。 また、国民保護法上は一般市民にも協力を求められた場合に応じる努力義務がある。具体的には避難訓練への参加、避難誘導や負傷者などの救援の援助、武力攻撃によって起こる火事などの災害への対処の援助、そして住民の健康・衛生環境の確保の援助など(被災地ボランティアの活動を想像いただきたい)だ。 しかし、一般市民にとって国民保護は国や自治体、運輸業者などの関係業者が実施主体であって、避難訓練以外で自分たちが主体的に参加するというイメージは持てないだろう。 特に沖縄のように革新政党が強く、「有事を想定した訓練は認められない」という主張が影響力を持つ地域では、避難実施要領パターンの策定もかなり遅れ、避難訓練の実施もなかなか実現していない。2020年3月時点で全国1741市町村のうち約62%が1パターン以上の実施要領パターンを作成したのに対して、沖縄41市町村で作成したのは2023年末現在でも4市1町にとどまり、そのうちパターンにもとづいて避難訓練を実施したのは那覇市と与那国町にとどまる』、「自然災害対策が自治体の判断で行う自治事務になっているのに対して、テロや戦争の際に国民を守る国民保護は、国の指示・財源にもとづき都道府県を通じて市区町村が動く法定受託事務となっている。ところが、実際の運用では、基礎自治体が国民保護計画や避難実施要領パターンの策定、啓蒙活動や避難訓練、有事の避難誘導を行わなければいけない・・・一般市民にとって国民保護は国や自治体、運輸業者などの関係業者が実施主体であって、避難訓練以外で自分たちが主体的に参加するというイメージは持てないだろう。 特に沖縄のように革新政党が強く、「有事を想定した訓練は認められない」という主張が影響力を持つ地域では、避難実施要領パターンの策定もかなり遅れ、避難訓練の実施もなかなか実現していない。2020年3月時点で全国1741市町村のうち約62%が1パターン以上の実施要領パターンを作成したのに対して、沖縄41市町村で作成したのは2023年末現在でも4市1町にとどまり、そのうちパターンにもとづいて避難訓練を実施したのは那覇市と与那国町にとどまる」、「沖縄41市町村で作成したのは2023年末現在でも4市1町」とは驚くほど低い」、何が問題なのかを徹底的に見直すなどして、作成自治体の数を引き上げてゆくべきだ。

次に、昨年12月24日付け東洋経済オンラインが掲載した琉球大学人文社会学部国際法政学科准教授の山本 章子氏による 「住民を危険にさらす国民保護制度を改善する方法 「非武装中立」神話を脱却した現実的方法(後編)」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/723647
・『有事を想定した国民保護体制には数多くの問題がある中、求められる解決策は何か。琉球大学の山本章子准教授が「非武装中立」神話から脱却した方策を提言する(本記事は後編、前編はこちら)。 2004年の国民保護法制定から国が進めてきた国民保護体制は問題が多い。テロや戦争の際に国民を守る国民保護は、国の指示・財源にもとづき都道府県を通じて市区町村が動く法定受託事務となっている。ところが、実際の運用では、基礎自治体が国民保護計画や避難実施要領パターンの策定、啓蒙活動や避難訓練、有事の避難誘導を行わなければいけない。 また、国民保護法上は一般市民にも協力を求められた場合に応じる努力義務がある。そこで前編では世界の事例を見ながら、地域住民が主体となって、軍事的脅威と自然災害どちらにも対処できる体制を築くという発想ならば今の日本にとって受け入れやすいだろうと提言した』、「前編では世界の事例を見ながら、地域住民が主体となって、軍事的脅威と自然災害どちらにも対処できる体制を築くという発想ならば今の日本にとって受け入れやすいだろうと提言した」、なるほど。
・『住民の危険が高まる避難実施要領パターン  これまで各市町村が策定した避難実施要領パターンには、大きな問題がある。総務省消防庁が公表しているパターンモデルが、汎用的な災害対策をベースにしており、有事にそぐわない内容が多分に含まれているのだ。 そもそも国民保護法からして発見者の通報義務(98条1項)を規定している。しかし、一般市民が放射性物質の拡散などを把握できるのか、あるいは爆発が武力攻撃によるものだとどう判断するのか。 また、国は自治体に避難所を多数指定させている(148条)が、沖縄県那覇市を例にとると、避難所に公園・緑地が42カ所も含まれている。弾道ミサイル攻撃を受けた場合には、衝撃波や爆風を避けるために地下に避難するのがセオリーであり、施設へのテロリストの侵入に対しては閉鎖した部屋への立てこもり、有害物質の大気中への拡散には屋外から屋内への避難が常識で、公園への避難などありえない。 その屋内だが、那覇市が避難所に指定する鉄筋コンクリート製施設75カ所のうち73カ所は、小中学・高校と公民館である。シャッターの設置がない大きなガラス窓がある建物は、爆発などから身を守るのに適さないが、上記75カ所のうち地下があるのはたった2カ所だ。 さらに、行政職員の人員が厳しく制限されている昨今、小さい市町村では防災と国民保護のどちらも、2~3人の職員しかいない危機管理系部署が担当しており、自然災害対策で手いっぱいなのが現実。国民保護までは手が回っていない。 そこで国は2024年度から、国民保護分野に精通した自治体職員の全国派遣や、避難訓練の優良事例集の作成を行う予定である。だが、地域の個別の事情を無視したマニュアルの押しつけになりはしないか。 たとえば、沖縄県宜野湾市は市役所と消防署がアメリカ海兵隊普天間飛行場に隣接しており、これらの職員の駐車場は普天間飛行場の中にある。したがって、もし同飛行場が攻撃を受けた場合には、ともに被害を受けた宜野湾市役所と消防署の行政機能が停止し、市民の避難誘導や消火・救援活動を行えなくなる可能性が高い。) また、普天間飛行場は国道58号線と国道330号線に挟まれており、同飛行場が攻撃されれば2つの国道も破損、寸断される可能性が非常に高い。これらの国道が使用できなくなれば、宜野湾市民の移動は事実上不可能になる。しかし、現状の宜野湾市の避難実施要領パターンは国のモデルにしたがっているため、こうした想定がなされていない。 このように地域の特性をふまえない国民保護計画のマニュアル化は、住民をかえって危険にさらすことになりかねない』、「地域の特性をふまえない国民保護計画のマニュアル化は、住民をかえって危険にさらすことになりかねない」、その通りだ。
・『島外避難が不可能な沖縄  最大の問題は、国が自治体に住民の避難指示を出すのは、日本の国土が攻撃を受ける可能性が差し迫った武力攻撃予測事態からだが、これは自衛隊の防衛出動が可能になるタイミングと同時だということだ。つまり、沖縄県の場合には住民の島外避難は事実上不可能となる。どういうことか説明しよう。 現在、沖縄に配備された自衛隊は1個連隊規模にすぎず(2個連隊規模に拡大して、師団クラス〔本来は3個連隊規模〕に格上げする構想があるが、実現時期は未定)、南西地域で有事が起きた場合、本土から応援部隊が沖縄に増派されることが作戦上不可欠となる。そのため、2022年末に岸田文雄政権が閣議決定した安全保障関連3文書は、自衛隊が平時の訓練から民間空港・港を利用できるよう、法整備や施設改修を目指している。現状の沖縄の自衛隊施設だけでは、増派部隊の移動拠点が全然足りないのだ。 しかし、国際法上は軍民分離の原則があり、自衛隊が人員や装備の輸送で使用する民間空港・港は軍事拠点とみなされ、敵の攻撃対象となる。自衛隊と使用する滑走路・船着場や時間帯を分ければ、民間航空機・船舶が一緒に利用することは不可能ではないが、短期間の大規模な住民の移動は難しくなる。自衛隊にとっても同様だ。 また、一部の自治体や経済団体が要請しているように、増派部隊を沖縄まで移送するのに用いた自衛隊機・艦船や海上保安庁の船舶を、今度は沖縄から九州まで住民を移送するのに使うという方法もあるが、これも実現可能性は低い。自衛隊機・艦船が敵の攻撃を受けずに民間人を移送するためには、国際法で定められた特殊標章(オレンジ色地に青の正三角形)を掲げることになっているが、これを掲げた機体・艦船は戦闘に使えなくなる。ただでさえ輸送手段が不足している自衛隊にとって痛い損失だ。) したがって、自衛隊の防衛出動よりも前に住民の島外避難が完了しないかぎり、沖縄の住民は県外に逃げられないということになる。では、日本周辺で地域紛争が勃発した重要影響事態や、その地域紛争にアメリカ軍が介入した存立危機事態が認定された時点で、国が自治体に住民の避難開始を指示すればよいのかというと、事はそう単純ではない。敵からの攻撃が発生していない段階で、日本が攻撃される恐れがあるという政府声明を出すことは挑発になりかねず、相手が過剰に反応する可能性を考慮しなければいけないからだ』、「敵からの攻撃が発生していない段階で、日本が攻撃される恐れがあるという政府声明を出すことは挑発になりかねず、相手が過剰に反応する可能性を考慮しなければいけないからだ」、なるほど。
・『自治会単位の国民保護体制  一般市民には国民保護体制への主体的参加の意識が希薄であり、全国の自治体の体制づくりも遅れており、かつ現状の体制は有事に対応していない。さらに、国が現在進めている自衛隊の民間空港・港活用は、離島住民の島外避難を不可能とする。このような状況で、いったい何ができるのか。 ここでもう一度、前編で紹介したキューバの防衛・防災一体型の「市民防衛」制度を取り上げたい。これが絶大な効果を発揮しているのが、ハリケーン対策だ。キューバのあるカリブ海周辺地域は、1996年から2005年の10年間で8回もハリケーンに直撃された(うち4 回は大型ハリケーン)。しかし、2000年以降ほぼ毎年ハリケーンに襲われているにもかかわらず、キューバではハリケーンによる死傷者が非常に少ない。2004年のハリケーン・チャーリーでは、アメリカのフロリダ州で30人が死亡したが、キューバでの死者数は4人にとどまった。2008年のハリケーン・グスタフでも、アメリカやハイチでは多くの死者が出たがキューバはゼロだ。 日本にも毎年数個の台風が上陸しており、最大風速が毎秒33メートルを超える「強い」台風の直撃もある。2022年には、1993年以来30年ぶりに上陸した「スーパー台風」である台風14号に襲われた。台風や大雨は、事前予知・事後予測が可能、長くても数日間で終息、などの点で武力攻撃とは異なる。だが、電気・ガス・水道・電波などの公共インフラの機能停止、家屋・自家用車の損傷や農作物の損害などの大規模な被害、広域にわたる影響、移動に危険を伴うので安全な屋内への立てこもりが基本、などの点は共通する。他方、地震・津波にはテロとの共通点が多い。 現在の汎用的な災害対策を焼き直した国民保護計画ではなく、災害と有事の部分的な共通点を検討して拾い集め、改めて防衛と防災を区別しない、地域の特性に合わせた体制づくりを住民主体で進めていくのはどうか。 そのためには、自治会の活用が有効となるだろう。私が住む宜野湾市には近年、新興住宅が次々と建設されているが、市の住宅地図更新が追いついておらず、台風による停電時に電力の復旧が遅れる要因となっている。他方、市内の各自治会は住民の加入を促す活動の一環として、新築の集合住宅や一戸建てを把握するよう努めている。こうした自治会の活動は、ハザードマップの更新などにも役立つのではないか。 国主体のトップダウンの国民保護体制が機能する見通しが立たない中で、自治会単位のボトムアップの体制をつくることは、「有事を想定」した「国の軍事強化」への協力ではなく、地域社会を強靭化し外部から攻撃されるすきを与えないということに他ならない。 ただし、ここにも自治会の加入率の低下をどう改善するかという大きな課題がある。2016年時点で自治会加入率は全国平均11.6%、沖縄県平均6.9%となっている。個別にみると那覇市では17.3%だが、2022年には15.2%まで低下しており、今後はもっと低下するだろう。 低下理由を探るために、2022年の那覇市の自治体加入率を管内別にみると本庁12.7%、真和志11.0%、首里27.4%、小禄17.1%となっている。人口の最も多い真和志が最低だ。小禄が管内で2番目に高い理由は、自衛隊官舎があり、自衛隊員が自治会加入率を底上げしているようだ。そして首里が圧倒的に高い理由としては、一戸建ての世帯が多いことが挙げられる。 沖縄市の2020年の調査でも、自治体加入世帯の87%を一戸建て世帯が占めており、市内の一戸建て世帯の45%が自治会に加入しているという結果が出ている。特に、子どもがいる一戸建て世帯の加入率が高いという。 少子高齢化、未婚化で子どものいない核家族世帯や一人世帯が増え続ける中、自治会の加入率を上げることは非常に難しい。いずれにせよ国民保護体制の構築のハードルは高いのだ』、「国主体のトップダウンの国民保護体制が機能する見通しが立たない中で、自治会単位のボトムアップの体制をつくることは、「有事を想定」した「国の軍事強化」への協力ではなく、地域社会を強靭化し外部から攻撃されるすきを与えないということに他ならない。 ただし、ここにも自治会の加入率の低下をどう改善するかという大きな課題がある。2016年時点で自治会加入率は全国平均11.6%、沖縄県平均6.9%となっている・・・いずれにせよ国民保護体制の構築のハードルは高いのだ」、残念ながらその通りのようだ。

第三に、昨年12月30日付け東洋経済オンライン「公安と検察の捏造に言及不足の大川原化工機判決 冤罪逮捕の社長らへの捜査の違法性は認める」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/724935
・『起訴が違法――。そんな異例といえる司法判断が下された。 軍事転用が可能な装置を不正に輸出したとして、横浜市にある「大川原化工機」の大川原正明社長ら幹部3人が逮捕・起訴され、初公判直前に起訴が取り消された冤罪(えんざい)事件。東京地裁(桃崎剛裁判長)は12月27日、警視庁公安部と東京地検の捜査の違法性を認め、国と東京都に約1億6000万円の賠償を命じた。 大川原社長ら原告が求めていた賠償額は5億6000万円。日本の裁判では慰謝料が低く抑えられがちなことを勘案すれば、1億6000万円の賠償命令は「原告の全面勝訴」といっていい金額だ。 ところが原告代理人の高田剛弁護士(和田倉門法律事務所)は、判決に不満そうな表情をのぞかせ、判決後の記者会見で次のように述べた』、「1億6000万円の賠償命令は「原告の全面勝訴」といっていい金額だ。 ところが原告代理人の高田剛弁護士・・・は、判決に不満そうな表情」、興味深そうだ。
・『「手堅いが薄味」の判決  「警視庁公安部は経済産業省を説得するため、安積伸介警部補(肩書きは当時。以下同じ)らが防衛医科大学校の微生物学者・四ノ宮成〓教授ら4名の有識者から聴取した報告書を、公安部独自の法解釈の根拠として提出している。 だが、その報告書には有識者の供述と異なる内容が書かれていた。このことは、証拠として提出されている四ノ宮教授の陳述書から明らかであるし、私自身、四ノ宮教授を含む3名の有識者から確認をしている。つまり、経産省は嘘の有識者見解に基づき公安部の法解釈を受け入れたということだ。 しかし判決文では、公安部が経産省を説得する過程の事実についていっさい触れられなかった。公安部が経産省を説得する過程で何があったのかは、事件の深層にかかわる重要な事実であるが、事実認定してもらえなかった。判決は(公安部や東京地検の)捜査の明らかな違法を認定している点で手堅いものの、われわれからすると薄味な印象がある」 四ノ宮教授は2023年3月に東京地裁へ提出した陳述書に、「メモや報告書には私の考えと異なる点、私の意図から外れて曲解されている点、私が話していない点が散見され、驚いています」と書いている。) 大川原化工機を立件したのは警視庁の公安部外事1課。捜査を指揮したのは宮園勇人警部だ。 「海外の“あるべきではないところ”で噴霧乾燥器が見つかった」。宮園警部による触れ込みの下、2017年に捜査チームが結成された。“あるべきではないところ”というのは、後からわかったことだが宮園警部の作り話である』、「「海外の“あるべきではないところ”で噴霧乾燥器が見つかった」。宮園警部による触れ込みの下、2017年に捜査チームが結成された・・・後からわかったことだが宮園警部の作り話である」、悪質な誘導だ。
・『警視庁、経産省、検察は何を行ったのか  宮園警部の忠実な部下の1人だった安積警部補は、四ノ宮教授ら有識者の研究室に何度も通い、「捜査メモ」や「聴取結果報告書」を作成した。 そうした書類は、「大川原化工機の噴霧乾燥器は生物兵器の作成装置に転用できない」「したがって輸出規制製品に非該当」とする経産省の安全保障貿易管理課のT検査官を説得するために必要だった。輸出規制品の審査を担当するT検査官は、当初、公安部が問題視する噴霧乾燥器は規制対象ではないとの立場を取っていた。 そこで、宮園警部は警視庁公安部長から経産省に圧力をかけるよう画策する』、「宮園警部は警視庁公安部長から経産省に圧力をかけるよう画策」、悪どいやり方だ。
・『「公安部長が動いた」  そう上司に聞かされた経産省のK課長補佐は、仕方なく「ガサ(家宅捜索)はいいと思う」と公安部に譲歩した。K課長補佐はT検査官の上司である。 一方で、K課長補佐は「立件は別の件を探してもらいたい」「輸出許可申請の実績は1件しかないことを検察に言ってほしい(大川原化工機の噴霧器は許可申請が必要な機械装置ではそもそもない、の意味)」と宮園警部に伝えた。このように経産省は再三クギを刺していた。また、任意の取り調べで大川原化工機の複数の従業員は、「装置内部を殺菌・滅菌するために加熱しても、温度が上がらない箇所があるから生物兵器に転用できない」と話していた。それにもかかわらず、公安部は大川原正明社長ら3人の幹部を逮捕した。2020年3月のことだ。 装置内部を殺菌・滅菌できるかは、炭疽菌など生物兵器の製造装置に転用するうえで重要なポイントである。装置内部を殺菌・滅菌できなければ、生物兵器の製造者が自ら感染してしまうからだ。 宮園警部は東京地検に逮捕の1年半前から相談。塚部貴子検事は同じく9カ月前から継続的に宮園警部から相談を受けていた。 「塚部検事は深く長く、事件の真相を知りうる立場にいた」(高田弁護士)。大川原社長らが逮捕されたのち、「5人の従業員が『装置に残った菌は殺すことができません』と言っている」と別の検事から聞いても、塚部検事は「従業員の供述は変遷している」とし、意に介さなかった。実際の装置を見ることもなく、3人を起訴した。 ところが東京地検は初公判の4日前に「大川原化工機の噴霧乾燥器が規制対象であることの立証が困難」として起訴(公訴)を取り消した。取り消した当日は、公安部と経産省とのやり取りを記した大量の捜査メモを東京地裁に提出する期限日だった』、「東京地検は初公判の4日前に「大川原化工機の噴霧乾燥器が規制対象であることの立証が困難」として起訴(公訴)を取り消した」、なるほど。
・『大川原化工機事件の構図  こうした経緯が法廷での証言で明らかになったのにもかかわらず、12月27日の判決文には「捏造(ねつぞう)」という言葉は一切出てこない。 判決では、複数の従業員が「測定口は温度が上がらない」と具体的に示しており、実験で確かめれば従業員の主張が正しいことを容易に確認できたのに、それをしなかったのは明らかな落ち度であると指摘。「必要な捜査を尽くしたとは到底言えない」として、公安部の逮捕や東京地検の起訴が国家賠償法違反だと結論づけた。 捜査にあたった時友仁警部補は、「従業員が『温度が低くなる』と言っている。もう一度測ったほうがいいのでは」と宮園警部に進言したが、宮園警部が「事件を潰す気か」と聞き入れなかったことを法廷で証言している』、「時友仁警部補は、「従業員が『温度が低くなる』と言っている。もう一度測ったほうがいいのでは」と宮園警部に進言したが、宮園警部が「事件を潰す気か」と聞き入れなかった」、「宮園警部」は思い込みが激しいようだ。
・『「捜査を尽くさなかった」ことだけが問題?  捜査機関にとって都合の悪い証拠をあえて無視し、無辜(むこ)の人を逮捕・起訴することは重大な人権侵害である。 ただ判決は、「公訴提起が私人の心身、名誉財産等に多大な不利益を与え得ることを考慮すると、安易な公訴提起は許されないというべき」と指摘しつつも、あくまでも「捜査を尽くさなかった」ことをもって国賠法に違反するとした。次のように記されている。 「捜査段階で得られた証拠のうちに、有罪立証に合理的な疑いを生じさせる事情が認められた場合にはそれを否定するだけの十分な根拠を捜査において獲得すべきであるし、それができないのであれば公訴提起は行うべきではない」) 今回の賠償訴訟では、公安部の取り調べのあり方も問題になった。判決では、取調官が違法な手法を用いて、供述を得ようとしたことを事実として認定した。 安積警部補が大川原化工機の島田順司取締役(当時)に、殺菌の解釈を誤解させたうえで供述調書に署名捺印するように仕向けたことについて、判決は「偽計を用いた取り調べといえるから国賠法上違法」とした。 島田氏の逮捕直後に弁解録取書を作成する際、島田氏の指摘に沿った修正をしたように装い、実際には島田氏が発言していない内容の同書を作成し署名捺印させたのも、「島田氏を欺罔(ぎもう)して島田氏の自由な意思決定を阻害した弁解録取書の作成であり国賠法上違法」と踏み込んだ判断を示した。この点は高田弁護士も評価している。 こうした偽計や欺罔は、事件を捏造するためのものに違いない。しかも、時友氏と同様に捜査にあたった濱崎賢太警部補が法廷で「(事件は)まあ、捏造。逮捕・勾留の必要はなく、起訴する理由もとくになかった」とまで証言している。 それでも、東京地裁の桃崎裁判長は捏造の構図にまでは踏み込まなかった。判決文には事件を指揮した張本人・宮園警部の名前すら出てこない』、「捜査機関にとって都合の悪い証拠をあえて無視し、無辜(むこ)の人を逮捕・起訴することは重大な人権侵害である。 ただ判決は、「公訴提起が私人の心身、名誉財産等に多大な不利益を与え得ることを考慮すると、安易な公訴提起は許されないというべき」と指摘しつつも、あくまでも「捜査を尽くさなかった」ことをもって国賠法に違反するとした」、「宮園警部」が公安部で大物だったのだろうか。
・『謝罪と検証は急務  「警視庁と検察庁には、できれば謝罪と検証をお願いしたい」(大川原社長)。「2度と起こさせないために再発防止の検証をしていただきたい。それで今回の訴訟の目的が達成される」(島田取締役)。原告の大川原社長や島田取締役は、謝罪と再発防止のための検証を求めている』、「原告の大川原社長や島田取締役は、謝罪と再発防止のための検証を求めている」、当然だ。
・『大川原化工機事件半血を受けての記者会見  判決後に開かれた記者会見の席には、大川原化工機元顧問の相嶋静夫氏の遺影が置かれた。相嶋元顧問は大川原社長や島田取締役(当時)らとともに逮捕。勾留中に胃がんが発覚、起訴取り消し前の2021年7月に他界した(記者撮影) 今回の判決が「必要な捜査を尽くしていないこと」を骨子とし、捏造の構図まで踏み込んでいない以上、「今後はいっそう捜査を尽くす」の警視庁や検察庁の幹部の一言で片付けられるおそれがある。だが、警視庁公安部や東京地検は大川原社長らに謝罪し、自ら検証をすべきではないか。自浄能力を発揮しなければ、公安部や地検の捜査に今後、国民が協力しなくなるかもしれない。そのことこそが捜査当局にとって避けるべき最悪の事態に違いないからだ』、「警視庁公安部や東京地検は大川原社長らに謝罪し、自ら検証をすべきではないか。自浄能力を発揮しなければ、公安部や地検の捜査に今後、国民が協力しなくなるかもしれない。そのことこそが捜査当局にとって避けるべき最悪の事態に違いないからだ」、その通りだ。 
タグ:「宮園警部は警視庁公安部長から経産省に圧力をかけるよう画策」、悪どいやり方だ。 東洋経済オンライン (その14)(世界に学ぶ日本に必要な住民主体の自衛のすすめ 「非武装中立」神話を脱却した現実的方法(前編)、住民を危険にさらす国民保護制度を改善する方法 「非武装中立」神話を脱却した現実的方法(後編)、公安と検察の捏造に言及不足の大川原化工機判決 冤罪逮捕の社長らへの捜査の違法性は認める) 「非武装中立」を信じていられた間はある意味で幸せな時期だった。 山本 章子氏による「世界に学ぶ日本に必要な住民主体の自衛のすすめ 「非武装中立」神話を脱却した現実的方法(前編)」 「前編では世界の事例を見ながら、地域住民が主体となって、軍事的脅威と自然災害どちらにも対処できる体制を築くという発想ならば今の日本にとって受け入れやすいだろうと提言した」、なるほど。 山本 章子氏による 「住民を危険にさらす国民保護制度を改善する方法 「非武装中立」神話を脱却した現実的方法(後編)」 「「海外の“あるべきではないところ”で噴霧乾燥器が見つかった」。宮園警部による触れ込みの下、2017年に捜査チームが結成された・・・後からわかったことだが宮園警部の作り話である」、悪質な誘導だ。 「1億6000万円の賠償命令は「原告の全面勝訴」といっていい金額だ。 ところが原告代理人の高田剛弁護士・・・は、判決に不満そうな表情」、興味深そうだ。 、そのうちパターンにもとづいて避難訓練を実施したのは那覇市と与那国町にとどまる」、「沖縄41市町村で作成したのは2023年末現在でも4市1町」とは驚くほど低い」、何が問題なのかを徹底的に見直すなどして、作成自治体の数を引き上げてゆくべきだ。 一般市民にとって国民保護は国や自治体、運輸業者などの関係業者が実施主体であって、避難訓練以外で自分たちが主体的に参加するというイメージは持てないだろう。 特に沖縄のように革新政党が強く、「有事を想定した訓練は認められない」という主張が影響力を持つ地域では、避難実施要領パターンの策定もかなり遅れ、避難訓練の実施もなかなか実現していない。2020年3月時点で全国1741市町村のうち約62%が1パターン以上の実施要領パターンを作成したのに対して、沖縄41市町村で作成したのは2023年末現在でも4市1町にとどまり 東洋経済オンライン「公安と検察の捏造に言及不足の大川原化工機判決 冤罪逮捕の社長らへの捜査の違法性は認める」 「警視庁公安部や東京地検は大川原社長らに謝罪し、自ら検証をすべきではないか。自浄能力を発揮しなければ、公安部や地検の捜査に今後、国民が協力しなくなるかもしれない。そのことこそが捜査当局にとって避けるべき最悪の事態に違いないからだ」、その通りだ。 「捜査機関にとって都合の悪い証拠をあえて無視し、無辜(むこ)の人を逮捕・起訴することは重大な人権侵害である。 ただ判決は、「公訴提起が私人の心身、名誉財産等に多大な不利益を与え得ることを考慮すると、安易な公訴提起は許されないというべき」と指摘しつつも、あくまでも「捜査を尽くさなかった」ことをもって国賠法に違反するとした」、「宮園警部」が公安部で大物だったのだろうか。 「自然災害対策が自治体の判断で行う自治事務になっているのに対して、テロや戦争の際に国民を守る国民保護は、国の指示・財源にもとづき都道府県を通じて市区町村が動く法定受託事務となっている。ところが、実際の運用では、基礎自治体が国民保護計画や避難実施要領パターンの策定、啓蒙活動や避難訓練、有事の避難誘導を行わなければいけない・・・ いずれにせよ国民保護体制の構築のハードルは高いのだ」、残念ながらその通りのようだ。 「時友仁警部補は、「従業員が『温度が低くなる』と言っている。もう一度測ったほうがいいのでは」と宮園警部に進言したが、宮園警部が「事件を潰す気か」と聞き入れなかった」、「宮園警部」は思い込みが激しいようだ。 安全保障 「元寇までさかのぼらないと一方的な侵略を受けた歴史がなく、豊臣秀吉の朝鮮出兵から日中戦争・太平洋戦争まで他国への一方的な侵略を繰り返してきた日本は、世界の中でもまれな国なのである・・・ウクライナに対してロシアの占領に抵抗せず停戦せよと言う者は、日本が一方的に侵略した中国で三光作戦とまで呼ばれた残虐な作戦行動を展開し、グアムでは強制収容した住民の一部を虐殺、シンガポールやフィリピンなど東南アジア各国でも大規模な住民虐殺を行った事実を学んでほしい」、その通りだ。 「国主体のトップダウンの国民保護体制が機能する見通しが立たない中で、自治会単位のボトムアップの体制をつくることは、「有事を想定」した「国の軍事強化」への協力ではなく、地域社会を強靭化し外部から攻撃されるすきを与えないということに他ならない。 ただし、ここにも自治会の加入率の低下をどう改善するかという大きな課題がある。2016年時点で自治会加入率は全国平均11.6%、沖縄県平均6.9%となっている ロシアはエストニアに対して大規模なサイバー攻撃をしなくなった・・・サイバー防衛こそが自国防衛につながるのだ」、その通りだ。 「敵からの攻撃が発生していない段階で、日本が攻撃される恐れがあるという政府声明を出すことは挑発になりかねず、相手が過剰に反応する可能性を考慮しなければいけないからだ」、なるほど。 「通話アプリSkypeを開発した国でもあるエストニアは、NATO加盟から3年後の2007年、首都タリン中心部の旧ソ連兵士銅像(独ソ戦戦勝記念碑)を撤去・移転したことで、ロシアから大規模なサイバー攻撃を受ける・・・ロシア移民のエストニア移住に反対し、ロシア系住民へのエストニア語教育を主張するエストニア保守人民党が第3位に躍進、連立政権に参加する結果となった・・・ 「東京地検は初公判の4日前に「大川原化工機の噴霧乾燥器が規制対象であることの立証が困難」として起訴(公訴)を取り消した」、なるほど。 「地域の特性をふまえない国民保護計画のマニュアル化は、住民をかえって危険にさらすことになりかねない」、その通りだ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

安全保障(その13)(中国人研究員「先端技術情報」漏えい事件で露呈 “スパイ天国”日本のあきれた実態【元公安捜査官が解説】、「取材NG 撮影するな」…知らぬうちに日本で大躍進した「上海電力」の恐るべき実力 外資でも排除できない理由とは) [外交・防衛]

安全保障については、本年6月10日に取上げた。今日は、(その13)(中国人研究員「先端技術情報」漏えい事件で露呈 “スパイ天国”日本のあきれた実態【元公安捜査官が解説】、「取材NG 撮影するな」…知らぬうちに日本で大躍進した「上海電力」の恐るべき実力 外資でも排除できない理由とは)である。

先ずは、本年6月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村 悠氏による「中国人研究員「先端技術情報」漏えい事件で露呈、“スパイ天国”日本のあきれた実態【元公安捜査官が解説】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324668
・『国防七校の教職者が日本で産業スパイ  (国立研究開発法人「産業技術総合研究所」の上級主任研究員、権恒道容疑者(59)が、2018年4月、自身が研究している「フッ素化合物」に関する情報を中国の民間企業にメールで送り、営業秘密を漏えいしたとして、警視庁公安部は15日、不正競争防止法違反(営業秘密の開示)で同容疑者を逮捕した。 読売新聞の報道によれば、漏えいされた研究情報は「フッ素化合物の合成に関わる先端技術」であり、地球温暖化対策などに役立つ可能性があるとされている。 権容疑者は2002年4月から産総研に勤務していたが、そもそも中国人民解放軍と関連がある「国防七校」の一つである南京理工大学の出身。そして、一部の期間では「国防七校」の一つである北京理工大学の教職を兼任していたと報じられているほか、フッ素化学製品製造会社「陝西神光化学工業有限公司」の会長も務めていたという。 時事通信の報道では、権容疑者は2018年1月の全国科学技術大会で、地球温暖化を防ぐフッ素化合物の研究実績が評価され、「国家科学技術発明2等賞」を授与され、会場を訪れた習近平国家主席とも面会したという。 権容疑者の出身である南京理工大学や教職を兼任した北京理工大学をはじめとする国防七校は、中国の最高国家権力機関の執行機関である国務院に属する国防科技工業局によって直接管理されている大学であり、中国人民解放軍と軍事技術開発に関する契約を締結し、先端兵器などの開発や製造を一部行っており、その危険性は周知の事実だ。経済産業省のキャッチオール規制に関係する「外国ユーザーリスト」にも北京理工大学は掲載されている。) この国防七校に関しては、海外でも検挙事例がある。 例えば、米国では2018年6月、中国の国防七校の一つである西北工業大学が、対潜水艦戦闘に使用可能なハイドロフォン(水中聴音機)を入手するための共謀を行ったとして、米国輸出法違反で起訴されている。 また、国防七校に限らず、中国の技術窃取の手法は巧妙であり、豪州のシンクタンクが指摘しているように、中国人民解放軍関係者が秘密裏に留学生や研究者の身分で日本の大学や研究所に入り込んでいる可能性があり、善意の人物(ビジネスパーソンなど)が後に中国人民解放軍関係者に接触され、支配下に入って行動する事例も相当数確認されており、そのスキームは複雑化している』、日本の研究機関の守秘のお粗末さには空いた口が塞がらない。
・『問われる企業・研究機関の技術情報管理  今回適用された不正競争防止法は、「営業秘密」の侵害として(1)秘密管理性、(2)有用性、(3)非公知性を満たす必要がある。だが、企業や研究機関の事情により満たされていない場合があり、同法の適用が断念されることも少なくないのが実情だ。 特に(1)の秘密管理性は、主に「秘密保持のために必要な管理が実施されていること」と「アクセス者にとって、それが秘密であると認識できること」が必要とされるが、企業側で適切に管理されていない場合も散見される。 ただし、本件はさすがに研究機関ということもあり、(1)の秘密管理性をクリアできていた。 しかし、現実問題として、経済安全保障が声高に叫ばれる中、諸外国による日本への技術窃取などを試みる危険性およびリスクはなかなか顕在化しないため、危険な機関や組織や具体的な手口まで広く認識されていないのが現状だ。 実際、一部の日本を代表するグローバル企業でさえ、中国リスクについていまだ感度が低い状態だ。 今後は、これまでの情報セキュリティの概念から一歩踏み込み、経済安全保障の観点での情報セキュリティ・技術情報管理のあり方を再考しなければならない。 そこには、これまで絵空事のように思われていた「中国によるスパイ」や「国家による合法的手段による技術窃取の手法」もリスクシナリオとして捉えられなければならない。 本件で言えば、国防七校という“外事性”を有する機関の出身者であり、かつ教職者であったとの情報があれば、まず入り口の段階で制限すべきで、制限に掛からずにかつ産総研に入所した後も、当然セキュリティー・クリアランスの概念と同様に、アクセス権をコントロールすべきである。 だが、本件では、この2段階のコントロールが機能していなかった。 また、権容疑者が会長を務める中国企業の信用情報は、民間でも中国で取得でき、その内容を精査することも可能であっただろう(役員の情報など)。 ちなみに宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、先端技術の保護や重要物資の供給網確保といった政府の経済安全保障強化を踏まえ、軍事転用可能な技術情報などの流出を防止するため、「宇宙科学研究所」の外国人研究者や学生の受け入れ方針において、中国は一部の特例を除いて排除するほか、ロシアや北朝鮮については例外なく不可と位置づけ、既に運用を始めている。 では、研究所があずかり知らぬところで、在職中に、国防七校や中国人民解放軍系の組織と関係を有するに至った場合、検知できるのであろうか。) 難しいが、できる限りの対応を取るべきだ。 例えば、端緒の早期検知である。 ある人物が現在関与していないプロジェクト情報に過度にアクセスしている状況、勤務時間外のアクセスの増加、アクセス後の早期のファイル削除など、相当数の端緒が得られる。 それらを全てモニタリングすることは現実的ではないが、機微な技術情報の管理においては、人の属性や関与する研究内容によってそのモニタリング対象を増やすなどの施策が検討されるべきであろう。 また、内部通報はもちろんのこと、所内の風評は軽く見られがちだが、そこに端緒情報が見つかる場合もある。現に、風評から警察への相談に結び付く場合も多く、民間における情報漏えい事案においても風評が端緒となるケースは多く、軽視してはならない。 最後に、営業機密の持ち出しなど、産業スパイの兆候を感じた時点で速やかに捜査機関へ相談すべきである』、そもそも「権容疑者」を採用する段階では、研究所として、特段の情報流出対策は採られなかったのだろうか。
・『経済安保の観点における象徴的な事件  本件のように、「国防七校」という強烈なキーワードがあったにもかかわらず、技術が窃取された意味は非常に重い。 ましてや、国の研究機関において、その危険性が指摘されている国防七校出身者を受け入れ、アクセス権を制御せずに先端技術の研究に従事させていた。 この事実は、日本における経済安全保障の観点から見たリスクマネジメントにおいても非常に懸念されるべき状況だ。 今回の事件は単なる不正競争防止法違反事件ではなく、「国防七校」に関与した人物が日本の国立研究所で先端技術を窃取するという、経済安全保障の観点でも象徴的な事件となってしまった。 言うまでもないが、流出した日本の先端技術は既に中国の手に渡っており、二度と返ってはこない』、「経済安全保障」を持ち出すまでもなく、秘密情報の秘匿が破られるという単純なケースだ。
・『スパイ活動を取り締まる法・制度整備の必要性  捜査機関としては、このような状況下で、スパイ防止法のようなスパイ活動を取り締まる法的根拠がないため、法定刑がさほど重くない窃盗や不正競争防止法などの適用を駆使しながら、何とか対応している状況である。 今回も捜査機関の血のにじむような努力のもと、何とか検挙に至ったのだろう。 スパイ事件の特性上、任意捜査をしていれば察知されて帰国されてしまう可能性が高くなるため、よりハードルの高い強制捜査を目指さなければならない。 一方で、今回の事件が起訴されるかどうかは未知数だ。最悪、不起訴で処罰のないまま帰国される可能性も多いにある。 これが、「スパイ天国」といわれる日本の現状である。捜査機関から見ても、あまりにも酷ではないだろうか。機密情報を扱う人を国が認定する「セキュリティ・クリアランス」の必要性は言うまでもない。ぜひとも推進してほしい。 今回の事件を受け、まず国自身が内部の現況を把握すべきである。そうでなければ、企業に示しがつかないだろう。本事件が日本のカウンターインテリジェンスと社会の認識を大きく変える契機となることを強く望む』、「まず国自身が内部の現況を把握すべきである」、というのは当然だ。中国で「スパイ罪」の対象が拡大され、嫌疑をかけられる日本人駐在員も増えている状況を踏まえると、日本の捜査当局もより本格的に「中国人」への監視を強めるべきだろう。

次に、8月3日付け集英社オンラインが掲載した元農水省中部森林管理局長、姫路大学特任教授の平野秀樹氏による「「取材NG、撮影するな」…知らぬうちに日本で大躍進した「上海電力」の恐るべき実力。外資でも排除できない理由とは」を紹介しよう。
https://shueisha.online/culture/151020
・『“脱炭素”の名のもとに、現在の日本は外資による土地買収が行われており、国土が失われ続けている。再エネを利用した外資参入の危険性など現場取材のリアルを『サイレント国土買収 再エネ礼賛の罠』(角川新書)より、一部抜粋・再構成してお届けする』、「サイレント国土買収」とは興味深そうだ。 
・『黒いワンボックスカー  私は以前からグリーン化にまつわる外資として上海電力に注目してきた。 複数の子会社をもち、合弁や提携の形でイラクやトルコなど、多くの国で発電所を経営している中国の巨大国営企業であるからだ。 福島県西郷村(にしごうむら)大字小田倉字馬場坂(図1-1)。 図1-1 上海電力のメガソーラー(福島県西郷村)【図版作成 小林美和子】。『サイレント国土買収 再エネ礼賛の罠』より 2021年11月29日。ようやく上海電力に視察させてもらえることになり、この日を迎えた。 迷いながらも何とかたどり着いた現場事務所は、高い鉄板の塀に囲まれていて、ひっきりなしに工事車両のトラックやバンが土ぼこりを上げながら出入りしていた。塀に貼られた赤いシールの文字「防犯カメラ作動中」がやけに目立つ。ゲートをくぐろうとすると、ビデオカメラらしきものがこちらを睨んでいた。 物々しい警戒ぶりが不自然に思えて緊張感を覚えたが、当日は地元西郷村でメガソーラーの問題を追い続けている大竹憂子議員も一緒だった。ヘアスタイリストの彼女は、一期目の新人だ。取材を通して知り合い、情報交換するようになった。地元住民を代表して純粋に意見しているから臆するところがない。 駐車場には50台以上の車が並んでいた。かなり市街地から遠いが、多くの人がいて活気を感じさせる。車を止めてドアを開けるや、やにわに真新しい長靴が2足、目の前に差し出された。 上海電力「現地で撮影してはならない」「サイズは何センチですか?」 待ち受けていた男性は、私たちをそう迎え入れた。 同時に白いヘルメットも手渡された。こちらも新品のようだ。側頭部に印字されている文字は「国家電投SPIC 上海電力日本」。赤と緑が向き合う「国家電投」のロゴが添えられていておしゃれだ。顎ひもを締めるとなんだか身が引き締まって、背筋がピンと伸びた。 現地での撮影はしてはならない。 前もって上海電力側からはそんな訪問条件が示されていた。写真は事務室でも事業地でも撮ってはならないという。その流儀はちょっと厳しいのではないか。写すといっても、伐採跡地と山を削った開発地があるだけなのだが。 案内者は3名の男性で、いずれも若い。30代だろうか。上海電力日本株式会社(以下、「上海電力日本」という)の東京本社幹部と、現地の事業会社の幹部2名だった。 黒いワンボックスカーは、私たち5人を乗せて出発し、場ちがいのように広い片側二車線の公道をゆっくりと走った。 山肌は抉られ、剝き出しになっていて、道路の両サイドには信じられないほど広大な平地が次々と造成されている』、「山肌は抉られ、剝き出しになっていて、道路の両サイドには信じられないほど広大な平地が次々と造成されている」、かなり大規模な開発のようだ。 
・『生態系へのインパクトが大きいのは間違いない  全体の広さは620ヘクタール(東京ドーム約132個分)、改変面積は240ヘクタールだ。1ヘクタールは100×100mのことで、ざっくりいうと、幅2㎞×長さ3㎞の巨大な一団の土地にソーラーパネルを並べられるだけ並べようという計画である。ゴルフ場だと六つ分(108ホール)、サッカー場なら87面がとれる。完成後は約161メガワットの巨大発電所になるという。 ソーラー用地は、平面を効率的に造り出していかなければならない。ゴルフ場のようにアンジュレーション(地形の起伏)は生かされず、山を大胆に削っていく。周縁にある雑木林の高木はソーラーの表面に日陰をつくってしまうからすべて伐り倒す。 とにかく規模が大きく、壮観である(写真1-1)。 長年、私は林野庁で働き、こうした林地開発現場を歩いてきたが、人里近くでこれほど大面積の皆伐と土地造成を見るのははじめてだった。かつてのゴルフ場開発よりも伐り方が激しく、生態系へのインパクトが大きいのは間違いない。 ガイド役のK氏は、上海電力日本のほか、現地の事業会社「株式会社そら’p」(以下、「株式会社P社」という)と「NOBSP合同会社」(以下、「N合同会社」という)に兼務する饒舌(じょうぜつ)な方で、よく対応してくれた。地元議員が村議会で見境なく暴れることなどないよう、現地の説明責任者として最大限の配慮をしているように私には思えた。 (懸念があるというならすべて払拭する)(しかし一言も聞き漏らさず、必要以上には決して話すまい……) 内心はうかがい知れなかったが、きっと上海電力側の3人は、皆がそのような気構えを徹底していたのだろう。 それゆえ、理由はよくわからないが、上海電力側の説明が一段落するたび、私たち5人が乗る車内には何とも言えない、いやーな沈黙が数十秒続き、それが何度も繰り返された。苦行のように思えた。 ガイド役のK氏は話をつなごうといろいろ気を遣ってくれたが、狭い車内のその重苦しい、微妙な空気が変わることはなかった』、「上海電力側の説明」は「懸念があるというならすべて払拭する)(しかし・・・必要以上には決して話すまい……皆がそのような気構えを徹底していたのだろう」、なるほど。
・『世界最大の発電企業  上海電力日本は、国内ではあまり報道機関の取材を受けない。2022年秋以降、同社のHPもメンテナンス中ということで、半年間も閉ざされたままだった。 そうした傾向は、13年9月の創業当時からのようで、東京・丸ビルにある本社は取材に応じなかったらしい。朝日新聞アエラの山田厚史氏(元編集委員)も断られた一人だ。 日本法人の責任者への接触を何度か試みたが、「忙しい」「外国出張中」という返事ばかりで、会えなかった。上海の本社に電話してみたが、「日本のことは日本の会社に聞いてくれ」とにべもない。 (「Asahi Shimbun Weekly AERA」14年1月27日) それから10年、上海電力日本は躍進した。 経団連の会員には15年になっている。中国企業ではファーウェイに次いで二番目で、両社は今も会員である。上海電力日本はこの間、若くて優秀な転職組を採用し、再エネ政策のメリットと地元対策を徹底して研究してきたものと推測する。なぜなら、13年当時と比べると、企業としての存在感と日本経済界への浸透具合には隔世の感があるからだ。 上海電力日本はこれまで、資源エネルギー庁から全国で90か所以上の認定(事業計画認定)を受け、事業を全国展開させている。昨今はソーラーのみならず、風力、バイオマス(間伐材)の分野にも進出しており、国内有数の発電事業体になっている。 歴史を遡さかのぼると、上海電力(上海電力股份有限公司)の伝統のすごさがわかる。 華東地区最大の電力会社(本社 上海市)で、1882年、世界で三番目、アジアで初めて電灯を灯ともしたという。1930年代には米国資本に買収されていたが、清国の共同租界の中で配電独占権をもっていた。当時、覇権争いをしていた日本は、この上海電力がほしかった』、「上海電力日本は、国内ではあまり報道機関の取材を受けない。2022年秋以降、同社のHPもメンテナンス中ということで、半年間も閉ざされたままだった。 そうした傾向は、13年9月の創業当時からのようで、東京・丸ビルにある本社は取材に応じなかったらしい」、「経団連の会員には15年になっている。中国企業ではファーウェイに次いで二番目」、「資源エネルギー庁から全国で90か所以上の認定(事業計画認定)を受け、事業を全国展開させている。昨今はソーラーのみならず、風力、バイオマス(間伐材)の分野にも進出しており、国内有数の発電事業体になっている」、なるほど。
・『いつの間にか逆転された日中関係  大阪毎日新聞は次のように報じている。 上海電力の日本電力への合流を政治的に解決するかせねばならない。…上海電力の買収は当然来たるべき問題である。(1938年2月4日) 列強諸国を前に日本が思うような買収はできなかったが、時代は下って、2012年。 八十余年の時を経て、基幹電力インフラへの進出という意味において、日中両国の立場は逆転した。 上海電力の売上高は12年に約2500億円までになり、翌13年、日本で全額出資の子会社をつくった。上海電力日本(本社東京、設立時資本金89億円)である。グリーンエネルギー発電事業への本格参入を見込んでの設立だという。 現在の上海電力日本の総元締めは、「国家電投SPIC」(国家電力投資集団有限公司 State Power Investment Corporation)だ。筆頭株主(46.3%)で、私が福島県西郷村で被ったヘルメットにも印字されていた企業である。 この「国家電投SPIC」は国有独資会社(国家が100%出資の国有企業)で、従業員総数はおよそ13万人。企業の規模として東京電力の約3倍だ。その発電規模は1億5000万キロワット(21年)。うちクリーン発電設備(原子力含む)が過半数(50.5%)を占める。太陽光発電に限れば、世界最大の事業者である』、「「国家電投SPIC」は国有独資会社・・・で、従業員総数はおよそ13万人。企業の規模として東京電力の約3倍だ・・・太陽光発電に限れば、世界最大の事業者」、なるほど。
・『外国資本でも日本で法人格を取得していれば排除することはできない  伸びゆく国家電投SPICの鼻息は荒く、25年の総発電設備は2億2000万キロワット、35年には2億7000万キロワットにまで増やす計画をもつ。 同社は、ブラジル、チリ、豪州でも、再エネ発電を積極的に展開しており、この先、原子力や太陽光などのクリーン発電設備のウェイトを今の50.5%から、25年には60%、35年には75%にまで引き上げるという。当然のことながら、これらクリーン発電設備の目標数値の中に、日本国内での太陽光等発電事業の飛躍的拡大もカウントされている。 新電力の参入が人気だった頃、環境省の中ではこんな評価が交わされていた。私が耳にした話である。 「同系グループをつくって、発電、送電、配電、さらに小売りまで一貫流通させることを視野に入れているでしょう。儲かるのは小売り(家庭向け)だからね……」(電力大手幹部) そんな思惑さえ想定される外資の巨大国有企業に対し、何の警戒感もなく、諸手を挙げて歓迎し続けてきたのがニッポンだ。 経産省新エネルギー対策課長は再エネ導入当時の14年、次のように発言していた。 「外国資本でも日本で法人格を取得していれば排除することはできない」 「登記が完了しているなら経産省は口出しできない」 (前掲「AERA」) #2『住民側は泣き寝入り…住民の要望・約束は置きざりに。上海電力が福島県でメガソーラーをやりたい放題、噛み合わない両者の話し合い』はこちら  脱炭素の美名のもと、不可解な用地買収が進み、国土が失われ続けている (本書で紹介する主な地域) ■メガソーラー福島県西郷村(上海電力のメガソーラー)、茨城県つくば市(日本最大の営農型ソーラー)、大阪湾咲洲、山口県柳井市・岩国市(岩国基地周辺メガソーラー)、熊本市、長崎県佐世保市 ・・・ (平野秀樹氏の略歴はリンク先参照)』、「外資の巨大国有企業に対し、何の警戒感もなく、諸手を挙げて歓迎し続けてきたのがニッポンだ。 経産省新エネルギー対策課長は再エネ導入当時の14年、次のように発言していた。 「外国資本でも日本で法人格を取得していれば排除することはできない」 「登記が完了しているなら経産省は口出しできない」 ・・・現在では経済安保を重視するようになったが、「上海電力」ははるかに強力な存在となった。しかし、「上海電力のメガソーラー」に対しては、環境保護の観点で問題がないことを確認すべきだろう。
タグ:「経済安全保障」を持ち出すまでもなく、秘密情報の秘匿が破られるという単純なケースだ。 そもそも「権容疑者」を採用する段階では、研究所として、特段の情報流出対策は採られなかったのだろうか。 日本の研究機関の守秘のお粗末さには空いた口が塞がらない。 稲村 悠氏による「中国人研究員「先端技術情報」漏えい事件で露呈、“スパイ天国”日本のあきれた実態【元公安捜査官が解説】」 安全保障 (その13)(中国人研究員「先端技術情報」漏えい事件で露呈 “スパイ天国”日本のあきれた実態【元公安捜査官が解説】、「取材NG 撮影するな」…知らぬうちに日本で大躍進した「上海電力」の恐るべき実力 外資でも排除できない理由とは) ダイヤモンド・オンライン 「まず国自身が内部の現況を把握すべきである」、というのは当然だ。中国で「スパイ罪」の対象が拡大され、嫌疑をかけられる日本人駐在員も増えている状況を踏まえると、日本の捜査当局もより本格的に「中国人」への監視を強めるべきだろう。 集英社オンライン 平野秀樹氏による「「取材NG、撮影するな」…知らぬうちに日本で大躍進した「上海電力」の恐るべき実力。外資でも排除できない理由とは」 『サイレント国土買収 再エネ礼賛の罠』(角川新書) 「サイレント国土買収」とは興味深そうだ。 「山肌は抉られ、剝き出しになっていて、道路の両サイドには信じられないほど広大な平地が次々と造成されている」、かなり大規模な開発のようだ。 「上海電力側の説明」は「懸念があるというならすべて払拭する)(しかし・・・必要以上には決して話すまい……皆がそのような気構えを徹底していたのだろう」、なるほど。 「上海電力日本は、国内ではあまり報道機関の取材を受けない。2022年秋以降、同社のHPもメンテナンス中ということで、半年間も閉ざされたままだった。 そうした傾向は、13年9月の創業当時からのようで、東京・丸ビルにある本社は取材に応じなかったらしい」、 「経団連の会員には15年になっている。中国企業ではファーウェイに次いで二番目」、「資源エネルギー庁から全国で90か所以上の認定(事業計画認定)を受け、事業を全国展開させている。昨今はソーラーのみならず、風力、バイオマス(間伐材)の分野にも進出しており、国内有数の発電事業体になっている」、なるほど。 「「国家電投SPIC」は国有独資会社・・・で、従業員総数はおよそ13万人。企業の規模として東京電力の約3倍だ・・・太陽光発電に限れば、世界最大の事業者」、なるほど。 「外資の巨大国有企業に対し、何の警戒感もなく、諸手を挙げて歓迎し続けてきたのがニッポンだ。 経産省新エネルギー対策課長は再エネ導入当時の14年、次のように発言していた。 「外国資本でも日本で法人格を取得していれば排除することはできない」 「登記が完了しているなら経産省は口出しできない」 ・・・現在では経済安保を重視するようになったが、「上海電力」ははるかに強力な存在となった。しかし、「上海電力のメガソーラー」に対しては、環境保護の観点で問題がないことを確認すべきだろう。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

安全保障(その12)(いま「経済安全保障」が 驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑、上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば、中国軍へ技術流出の恐れ 東工大らが留学生受け入れる中国「国防七校」の危険性、中国人による「無人島購入」は沖縄だけじゃなかった!無防備ニッポンは大丈夫?) [外交・防衛]

安全保障については、昨年4月20日に取上げた。今日は、(その12)(いま「経済安全保障」が 驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑、上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば、中国軍へ技術流出の恐れ 東工大らが留学生受け入れる中国「国防七校」の危険性、中国人による「無人島購入」は沖縄だけじゃなかった!無防備ニッポンは大丈夫?)である。氏

先ずは、昨年5月4日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの川邊 克朗氏による「いま「経済安全保障」が、驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/95001?imp=0
・『経済安保バブル  岸田内閣のもとで、経済安保政策が「バブル化」している。 岸田内閣が今国会で重要法案に掲げていた経済安全保障推進法案が4月7日、呆気なく衆院を通過してしまった。当初は「対決法案」と豪語し、立法に反対していた立憲民主党をはじめとする野党の議員が、こぞって、ロシアのウクライナ侵攻であらわになった「戦争リアリティ」に及び腰になり、法案反対どころか賛成に回ったからである。 もとはと言えば、この経済安全保障政策、安倍晋三政権時代に、今井尚哉首相秘書官ら経済産業官僚が主導したものだった。今井秘書官ら経産官僚は、外交・安全保障政策の司令塔である国家安全保障局(NSS)のトップに警察庁出身の北村滋内閣情報官が就いたことを利用し、米国の「中国脅威論」を引き合いに、経済安保政策を持ち出したのだった。 そして「首相官邸支配」の雰囲気のなか、「力の省庁」である防衛省、警察庁までもが、「バスに乗り遅れるな」と、「経済安保」担当セクション創設モードに前のめりとなった。その省益、利権確保の主戦場となったのが、今年度予算である。そこでは、経済安保推進法成立より一足早く、900億円超の経済安保関連予算が積み上げられ、「バブル化」が明らかになった。 この間、安倍後継の菅義偉内閣から岸田内閣へ政権が移行した。それにともなって、安全保障政策の「メインストリーム」を自負する外務省が、秋葉剛男事務次官によるNSS局長ポストを奪還し、首相官邸から経産官僚の影響力が排除されると、「オルタナティブ」である「経済安保」熱も冷めるかに見えた。 ところが、「商工族のドン」として経産官僚の後ろ盾となってきた甘利明元TPP担当相が、岸田内閣誕生の論功行賞人事で、二階俊博幹事長に取って代わると、経済安全保障政策の法案化は一気に加速した。同時にそれは、「本当にこれが国家安全保障政策の一環である経済安保政策なのか」と疑いたくなるようなものへと変質していったのである。) 法案は、具体的には、(1)重要物資のサプライチェーン(供給網)強化、(2)基幹インフラの安全性確保、(3)先端技術の育成・支援、(4)特許非公開の仕組み、を目指すというものだが、法律の運用は、国会審議も経ずに、政府が後日「政令」「省令」などで決めるというもので、その数は138項目に及んでいる。 要は、「『安全保障政治』と呼ばれる、私人、私企業、特定の圧力団体の利益の、『国家安全保障』の衣をまとったカモフラージュ現象」(船橋洋一『経済安全保障論 地球経済時代のパワー・エコノミックス』東経選書)という代物である』、「岸田内閣のもとで、経済安保政策が「バブル化」している」、「「首相官邸支配」の雰囲気のなか、「力の省庁」である防衛省、警察庁までもが、「バスに乗り遅れるな」と、「経済安保」担当セクション創設モードに前のめりとなった。その省益、利権確保の主戦場となったのが、今年度予算である。そこでは、経済安保推進法成立より一足早く、900億円超の経済安保関連予算が積み上げられ、「バブル化」が明らかになった」、「経済安全保障政策の法案化は一気に加速・・・法案は、具体的には、(1)重要物資のサプライチェーン(供給網)強化、(2)基幹インフラの安全性確保、(3)先端技術の育成・支援、(4)特許非公開の仕組み、を目指すというものだが、法律の運用は、国会審議も経ずに、政府が後日「政令」「省令」などで決めるというもので、その数は138項目に及んでいる。 要は、「『安全保障政治』と呼ばれる、私人、私企業、特定の圧力団体の利益の、『国家安全保障』の衣をまとったカモフラージュ現象」・・・という代物である」、まさに「バブル」だ。
・『甘利氏の存在感  経済安保法制のウラには、甘利氏の影響力が見え隠れする。 じつは岸田政権の経済安保戦略は、自民党内で甘利氏が座長として主導した「新国際秩序創造戦略本部」がすでに準備してきたものである。法案自体も、同本部が2020年12月に行った「提言」を上書きしたものに他ならない。 そして今年1月の施政方針演説で、経済安保は「外交・安保」の枠組みではなく、「成長と分配の好循環」を謳った「新しい資本主義」構想の文脈の中で語られるだけであった。とりわけ、コロナ危機のなかで露呈した、あまりにも海外に依存した情報技術(IT)のサプライチェーン・リスクの大きさに、今や「産業のコメ」となった半導体問題が、国産半導体計画へのテコ入れや工場建設等として、経済安保を絡めた政策へ拡大解釈されていった。 振り返れば甘利氏は、昨年10月の衆院選小選挙区で落選(比例区復活)し、幹事長職は退いたものの、その影響力はつづいている。選挙後の同年11月の改造内閣には、先述の自民党「新国際秩序想像戦略本部」でそれぞれ幹事長、事務局長として甘利座長を支えた山際大志郎氏が経済再生担当相(再任)、小林鷹之氏が新設の経済安全保障相、兼科学技術政策・宇宙政策担当相を配置し、経済安保シフトが敷かれた。しかも甘利氏と岸田首相の蜜月はその後も続いており、甘利氏が依然経済安保の「陰の主役」であるという』、なるほど。
・『経産官僚の動き  経産官僚の動きも注目に値する。 岸田首相官邸では、藤井敏彦内閣官房経済安保法制準備室室長が経済安保を差配するはずだった。しかし藤井氏は、国会への法案提出直前に、無届兼業と朝日新聞の女性記者との不倫問題などのスキャンダルで失脚した。藤井氏は、安倍首相秘書官だった今井氏らが、国家安全保障局に新たに立ち上げた経済班のリーダーとして、古巣の経産省の藤井氏を据え、官邸に経産省の新たな「拠点」とする野心があったようだ。 本来なら首相外交から安全保障政策まで取り仕切りたい外務官僚にとって、「経済安保バブル」は迷惑な話だったはずだが、こうした「失脚」騒動もあり、岸田首相が政務秘書官に抜擢した嶋田隆経産事務次官の前に目下のところ出番はなく、また安倍政権時代の「政高党低」から「政と党のバランス」へと是正され、さしあたっては事なきを得ているようだ。 しかし、今後そうしたバランスが崩れないとも限らない』、「岸田首相官邸では、藤井敏彦内閣官房経済安保法制準備室室長が経済安保を差配するはずだった。しかし藤井氏は、国会への法案提出直前に、無届兼業と朝日新聞の女性記者との不倫問題などのスキャンダルで失脚」、「安倍政権時代の「政高党低」から「政と党のバランス」へと是正され、さしあたっては事なきを得ているようだ」、推進派はミソを付けたようだ。
・『保守政治の伝統  そもそも経済安保と経産官僚・商工族議員の関係はどのようなものなのだろうか。 かつて戦後日本の経済的繁栄を支えてきた貿易・投資のルール(自由貿易)とパワーポリティクスが形成する国際秩序が崩壊過程に入り、日本が経済において最も深く相互依存している米国、中国の両国の構造的対立は、すでに一部では「冷戦(a cold war)」の局面に入ったとも言われる。 自国ファーストを打ち出し、「力による平和」を強行しようとしたトランプ前米大統領時代以降、日本もTPPを離脱した米国に歩み寄り、インド太平洋地域での中国進出を食い止めるために、日米の協力関係は、「経済」においても一歩踏み出していたのである。) 先の自民党「提言」を待つまでもなく、平和的方法としての「国際協調」を後景に追いやり、国民への説明を後回しにして、米国に追随して「同盟国」「同志国」との連携に舵を切ったということのようだ。 そしてそれが、この国の保守政治が脈々と受け継いできた、政治の統治技術であり、その担い手が今回、「通商国家」再生に生き残りに賭ける経産官僚、新商工族議員の面々だったようだ』、「平和的方法としての「国際協調」を後景に追いやり・・・米国に追随して「同盟国」「同志国」との連携に舵を切った」、なるほど。
・『経産省の来歴  こうした経産官僚や新商工族議員の存在の背景には、長い歴史がある。 1960年代、経産省の前身である通商産業省は、敗戦国・日本を奇跡的な高度経済成長で復活させたとの世界的な評価を得た。1970年代には、二度にわたる石油危機で、霞が関における通産省の地盤地下が始まったが、原子力エネルギー、通信・放送、IT等の科学技術の分野に活路を見出してきた。 しかし、「失われた30年」による国内産業の空洞化と福島原発事故による「原発ムラ」崩壊などを受けて、「経産省解体論」が再燃していた。最近では「霞が関のすき間産業」とも揶揄される、教育、医療、交通・観光等のデジタル分野にも触手を伸ばす。 経産官僚、商工族議員たちの人脈も興味深い。 先述の藤井氏が無届で兼業をしていた「バイト先」である「不識塾」という勉強会は、経営幹部向けのリベラルアーツ研修が売りだった。主宰の中谷巌代表は、1990年代、大阪大や一橋大といった国立大学を拠点に、グローバル資本主義を唱え、時の政権の経済ブレーンとして構造改革路線を主導した。しかし2008年に新自由主義からの転向を表明、以後ビジネスとしての経済への志向を強め、私立の多摩大学では学長までも務めるという異色の経歴を持つ。 その多摩大学に2016年に設置された「ルール形成戦略研究所」という研究開発機構に、顧問やシニアフェロー、客員教授といった肩書きで招聘されていたのが、甘利氏であり、藤井氏であった。逆に、多摩大の同研究所からは、政府や自民党の会合にスタッフが動員され、一連の経済安保戦略つくりに参画しており、「政・官」と「学」の、人脈はお互い共鳴し合ってきた。 またやや余談めくが、同研究所は米国系コンサルタント企業のような色彩が強いと言われてきただけに、中国企業の排除を念頭に、日米間のこれまでの貿易摩擦や防衛装備調達をめぐる衝突などと同様、経済安保も、米国に日本市場を開放していくことに収斂するのではとの懸念が政府内から早くも出ている。ちなみに国家安全保障局で経済安保を先取りした北村氏も、局長辞職後はコンサルト業を起業している。 これらが、経済安保がバブル化している背景と言えるが、では、経済安保にはどのような危うさがあるのだろうか。【後編】「岸田政権が進める「経済安全保障」、その「危うさ」を考える」で詳しく見ていこう』、「多摩大学に2016年に設置された「ルール形成戦略研究所」という研究開発機構に、顧問やシニアフェロー、客員教授といった肩書きで招聘されていたのが、甘利氏であり、藤井氏であった。逆に、多摩大の同研究所からは、政府や自民党の会合にスタッフが動員され、一連の経済安保戦略つくりに参画しており、「政・官」と「学」の、人脈はお互い共鳴し合ってきた」、「多摩大学学長」の「中谷巌」氏もキーマンのようだ。なお、【後編】の紹介は省略する。

次に、本年2月21日付け東洋経済オンラインが掲載した政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師の清水 克彦氏による「上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/653558
・『2月15日、自民党が開いた国防部会などの合同部会。席上、自民党の安全保障調査会長を務める小野寺五典元防衛相は、このところ安全保障上の大きな問題となっている気球への対応について政府に矛先を向けた。 「中国のものと把握できていなかったなら大問題。把握していたのに抗議していなかったのなら、さらに大きな問題だ」 これまで何度か取材してきたが、小野寺元防衛相は温厚な政治家だ。その彼が語気を強めた背景には、2020年6月、仙台市などで目撃された気球について、当時の河野太郎防衛相(現・デジタル相)が、報道陣の問いに「気球に聞いてください」「どの気球? 安全保障に影響はございません」などと答えたことがある。政府の認識がどれだけ無防備だったかを指摘したのだ。 無防備といえば、34歳の中国人女性が沖縄県伊是名村(いぜなそん)の所管する無人島、屋那覇島の約半分を購入したことも、安全保障上の大きな懸念といえるだろう』、「河野太郎防衛相・・・が、報道陣の問いに「気球に聞いてください」「どの気球? 安全保障に影響はございません」などと答えた」、実に思い上がった不誠実な答弁だ。「政府の認識がどれだけ無防備だったかを指摘」、「小野寺元防衛相」の指摘は正鵠をついている。
・『無人島「屋那覇島」はどんな島か  屋那覇島は沖縄本島の北、約20キロのところにある県内最大の無人島だ。伊是名村(人口約1300人)が所管する島の1つで、広さは東京ドーム16個分。島の約3分の1は国と伊是名村(国8%、伊是名村26%)が所有している。 土地所有権は900以上に分かれていて、民間企業などが所有する土地が競売にかけられた結果、2021年2月、女性の親族が営む会社が購入したというのが主な経緯である。 同社に電話を入れると留守電が流れるだけ。ホームページ経由で問い合わせをして数日経つが、まだ返事は得られていない。そのホームページには、「創業以来行ってきた不動産売買・賃貸業を礎に、優良物件への積極的な投資を行っております。またリゾート開発事業へも進出し、直近では沖縄県の屋那覇島取得して現在リゾート開発計画を進めております」(原文ママ)とあり、屋那覇島については「島の周りはラグーンで囲まれていて、波が穏やか」とも記されている。 伊是名村役場に聞けば、屋那覇島は、沖縄本島からのキャンプ客や釣り客、潮干狩り客が多い島だという。SNSに投稿された女性の動画でも、「ビジネス目的で購入した」とあるため、購入の目的は本当にリゾート開発なのかもしれない。 とはいえ、沖縄の嘉手納基地や普天間基地などと60~70キロ程度しか離れていない島を、外国人が購入できてしまうのは、安全保障上、「大きな穴」というほかない。「へえ、買われちゃったの?」で済まされる話ではない。) 今回の問題について、伊是名村の奥間守村長は「戸惑っている」と述べる。 2月17日、伊是名村では別の案件を審議するため臨時の村議会が開かれたが、取材をすると担当者からは次のような声が聞かれた。 「ネットニュースで報道されてから、役場には問い合わせや苦情が殺到しています。前にも外資系企業が他の無人島、具志川島を視察したことがあったのですが、今回の件は驚きです」 「村が島を売ったわけではなく、あくまで民間の取引ですから、私どもとしましては、事実関係の把握に努め、誤解のないように説明していくとしか答えようがないです」(以上、伊是名村総務課・諸見直也さん)』、「沖縄の嘉手納基地や普天間基地などと60~70キロ程度しか離れていない島」、そんなに距離があるのであれば、大丈夫な気もする。
・『「法律で規制できない」と政府も困惑  今回の屋那覇島購入問題に関し、2月13日、松野博一官房長官は定例の記者会見で、「国境離島または有人国境離島、地域離島に該当するものではない」と述べて、土地取引が、国境離島やアメリカ軍、自衛隊基地周辺などの土地取引を規制する「重要土地等調査法」の対象にはならないと明言した。翌14日、高市早苗経済安保担当相も同様の見解を示している。 「重要土地等調査法」は、2022年9月に施行された法律で、自衛隊の基地や原子力発電所といった重要インフラ施設から1キロの範囲や、国境に近い離島などを「注視区域」や「特別注視区域」に指定し、国が土地などの所有者の氏名や国籍などを調査したり、一定の面積の土地を売買する場合、事前の届け出を必要としたりするためのものだ。 その区域で問題行為が確認されれば、国は土地や建物の利用を中止させることができるが、屋那覇島の場合、これに該当しないという。 日本では、「注視区域」や「特別注視区域」を除けば、日本人でなくても自由に土地を購入し所有できる。アメリカでは、フロリダ州やテキサス州で一部の外国人の土地購入を規制する法整備が検討されているが、日本ではそんな動きはない。 しかし、中国には「国家情報法」が存在する。この中の第7条がなかなか厄介なのだ。 いかなる組織及び個人も、法律に従って国家の情報活動に協力し、国の情報活動の秘密を守らなければならない。国は、そのような国民、組織を保護する。(第7条) つまり、土地の購入者が民間企業や個人であっても、中国政府が情報提供を求めた場合、応じる義務があるということだ。 いずれにせよ、外国人の土地購入に関し、規制する法律がない以上、政府は黙認するしかない。ただ、手をこまねいている間に、「注視区域」などを除く拠点の近くに、日本人以外が土地を購入するケースが増えたらどうするのか、検討はしておかなければならない。) もちろん、冒頭で述べた気球問題も、安全保障上、「大きな穴」になり得る。前述した自民党の合同部会は、2月16日、領空に許可なく侵入した気球や無人機を自衛隊が撃墜できるようにするため、武器の使用基準の見直しを了承した。 現在の自衛隊法84条では、このように定められている。 防衛大臣は、外国の航空機が国際法規又は航空法 、その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる  この条文は、あくまで戦闘機のような有人機を想定したもので、撃墜は正当防衛と緊急避難の場合に限られている。 その範囲を拡大すれば、アメリカが領空を侵犯した気球などを相次いで撃墜したように、自衛隊も、仙台市などで目撃された中国のものと思われる気球を撃ち落とすことが可能にはなる。その反面、政府・防衛省には3つの課題がのしかかってくる』、「防衛大臣は、外国の航空機が国際法規又は航空法 、その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる・・・その範囲を拡大すれば・・・自衛隊も、仙台市などで目撃された中国のものと思われる気球を撃ち落とすことが可能にはなる」、なるほど。
・『日本が抱える3つの大きな問題  (1)中国の猛反発をどうするか(中国は日本の姿勢を、「アメリカの大げさな騒ぎに追随するな」「根拠もなく誹謗中傷するな」と非難している。実際に撃墜すれば、政治だけでなく、経済面での関係が急速に冷え込む。特に人的交流や貿易面で影響が出る可能性がある。 (2)自衛隊の戦闘機で撃ち落とせるのか(アメリカは2月12日、ミシガン州のヒューロン湖上空で、F22戦闘機が「AIM-9Xサイドワインダー」ミサイルを発射して物体を撃ち落としたが、最初の1発は失敗した。気球は旅客機などよりも高い1万8000キロ程度まで上昇するため、レーダーで捕捉しにくい。エンジンを2つ搭載し出力が高いF22戦闘機でも目標を外すくらい、気球を撃ち落とすのは難しい。そもそも、日本はF15やF35戦闘機を保有しているもののF22戦闘機は持っていない。 (3)たくさん飛んでいる気球を見分られるのか(2月13~14日、在京メディアの報道部長クラスを招いて行われた那覇および与那国駐屯地視察研修で、航空幕僚監部の担当者(一等空佐)は、このように説明した。「観測用や調査用の気球がたくさん飛んでいる。我々も飛行の際、気を付けながら飛んでいるほどで、怪しいものかどうかの見極めが難しい。高度1万5000メートル以上を飛んでいる気球だと、撃墜するには相当なテクニックが必要」 これらのうち、(2)と(3)について、筆者が渡部悦和元陸将に聞いたところ、「命令があれば十分に撃墜できます」という答えが返ってきた。ただ、航空自衛隊トップの井筒俊司航空幕僚長が2月16日の定例記者会見で、「高い高度で飛行体が小さい場合、撃墜の難易度は高くなる」と語った点も無視できない。 こうして見ると、これまでの安全保障と防衛費を大きく見直すために防衛3文書を改定し、防衛費増額に踏み込んだだけでは、日本の安全保障は万全とは言えない。防衛の拠点に近い土地が外国人に買われてしまう可能性、あるいは、飛来する気球や無人機を撃墜できないというリスクも想定しながら、「大きな穴」を埋める対策が急務となりそうだ』、「防衛の拠点に近い土地が外国人に買われてしまう可能性、あるいは、飛来する気球や無人機を撃墜できないというリスクも想定しながら、「大きな穴」を埋める対策が急務」、同感である。

第三に、6月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村 悠氏による「中国軍へ技術流出の恐れ、東工大らが留学生受け入れる中国「国防七校」の危険性」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324055
・『6月2日、政府が閣議決定した答弁書により、2020年度の時点で、中国人民解放軍の兵器開発などと関係が深いとされる中国の「国防七校」のうち、6校から計39人が日本の大学に留学していたことがわかった。 答弁書によると、文部科学省の調査で「徳島大、東北大、千葉大、高知大、新潟大、名古屋大、会津大、東京工業大、京都情報大学院大、福岡工業大」の計10大学が留学生を受け入れていたという。受け入れ状況は表の通りだ。 (図表:留学生受け入れ状況はリンク先参照) そもそも国防七校とはどのような大学なのか。 国防七校とは、中国の最高国家権力機関の執行機関である国務院に属する国防科技工業局によって直接管理されている大学であり、中国人民解放軍と軍事技術開発に関する契約を締結し、先端兵器などの開発などを一部行っている。 前衆議院議員の長尾敬氏によれば、ハルビン工業大学の国防関連の研究費は年間約390億円で、これはオーストラリアの国防省の科学技術予算に匹敵する額だという。 さらに、国防七校の卒業生の30%弱である1万人以上が、中国の防衛研究部門に就職し、それ以外でも軍艦、軍備、軍用電子機器を専門とする複合企業、つまり華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)といった企業に就職していると指摘する。 上記を確認するだけでも、中国人民解放軍と強いつながりが見て取れる上に、中国には国家情報法という国家への情報提供義務を定めた非常に危険な法がある。 日本においても、経済産業省は、大量破壊兵器や通常兵器の開発に利用される恐れのある技術が外国に輸出されるのを規制するために「キャッチオール規制」を導入。その実効性を高めるため、外国ユーザーリストに掲載し、輸出者に対して、大量破壊兵器の開発などの懸念が払拭されない外国・地域所在団体の情報を提供している。 その外国ユーザーリストに国防七校の一部が含まれており、経済産業省としてもその危険性は認識している。また、同盟国である米国も、国防七校の一部を禁輸リストに加えるなど、その危険性に異論はないだろう。) 実際、国防七校が関与する過去の技術流出事例は多くある。 一般財団法人安全保障貿易情報センター(CISTEC)輸出管理アドバイザー(当時)森本正崇氏の「対中技術流出事案の分析」によると、HEU(後のハルビン工程大学)の研究室長であったA氏は、2002年から2014年にかけて、ハルビン工程大学の教授などの指示に基づき、無人潜水艇や、遠隔操作無人探査機、自律型無人潜水艇といった潜水艇のシステムや構成品を、HEUや他の政府機関のために、米国企業などから購入し、中国に送付していた。 A氏は、HEUの教授X氏や准教授らからの発注に基づき、米国、カナダ、欧州の企業から物品を購入し、HEUや人民解放軍海軍などの潜水艇開発のために、X氏らに輸出した。その際、A氏は経営するIFour International, Inc.をフロント企業とし、同社名義で調達活動をしていたという。 その他、2018年6月、米国検察当局は、対潜水艦戦闘に使用可能なハイドロフォン(水中聴音機)を入手するために共謀したとして、中国の西北工業大学を米国輸出法違反で起訴している。 また、同大と共謀し、マサチューセッツ州在住の中国人および同人が率いる海洋関連機器の輸入会社(中国・青島市)が、2015年~16年にハイドロフォン78個を商務省の許可を得ずに同大に輸出したという。 このように、単に留学生や研究室の人間が関与するだけではなく、国防七校の大学自体が主体となって、関与し、さらにフロント企業やビジネスマンを駆使して巧みに技術窃取を行っている』、「単に留学生や研究室の人間が関与するだけではなく、国防七校の大学自体が主体となって、関与し、さらにフロント企業やビジネスマンを駆使して巧みに技術窃取を行っている」、気を付けたいものだ。
・『国防七校とさまざまな提携をする日本の大学  2021年8月時点で読売新聞が確認したところ、国防七校には日本人研究者が8人所属しており、そのうち、ミサイル開発などを行う北京航空航天大に4人の日本人が所属していたという。 そして、国防七校との関連は確認されていないが、日本の大学・研究機関を通じた技術流出事案として、朝日新聞が2021年12月12日に以下の事例を報じている。 「朝日新聞が入手した同資料によれば、日本の国立大学や国立研究開発法人に助教授や研究員などの肩書で所属していた中国人研究者9人は、ジェットエンジンや機体の設計、耐熱材料、実験装置などを研究。(中略)このうち流体力学実験分野の中国人研究者は、1990年代に5年間、日本の国立大学に在籍。帰国後、軍需関連企業傘下の研究機関で、2017年に極超音速環境を再現できる風洞実験装置を開発。2010年代に日本の国立大学にいた他の研究者も帰国後に国防関連の技術研究で知られる大学に在籍するなど、9人は帰国後、研究機関などに所属したという」 先に述べたように、実際、日本の大学で優秀な研究・成績を収め、その知見・ノウハウを持ってファーウェイなどの人民解放軍に強いつながりを持つ企業に就職する例も非常に多い。 また、オーストラリアのシンクタンクが指摘しているように、中国人民解放軍関係者がその目的を秘して留学生の身分で日本の大学や研究所に入り込んでいる可能性は、海外での実例を見ても排除できない。さらに、善意の人間(留学生)が後に人民解放軍などの関係者に接触されて支配下に入るような事例が相当数確認されているなど、そのスキームは複雑となっている。 中国の「千人計画」もその手法として知られるところだ。 千人計画とは、1990年代に始まった海外の中国人留学生を呼び戻して先端技術を中国国内に取り込む「海亀政策」に倣い、優秀な外国人研究者を巨額の研究費や報酬、地位を与えて中国に誘致し、そのノウハウ・研究成果を「メード・イン・チャイナ」としてしまうもので、同計画には複数の日本人の参加も確認されている。) また、中国プロバガンダ・スパイ工作の一助となっていると指摘されている孔子学院を学内に設置する日本の大学(早稲田大、立命館大、桜美林大、武蔵野大、愛知大、関西外国語大、大阪産業大、岡山商科大、北陸大、福山大、山梨学院大、立命館アジア太平洋大、札幌大)があることにも留意しなければならない。 そのような状況下で、国防七校は以下の大学とさまざまな提携を行っている。(図表:国防七校とさまざまな提携をする日本の大学はリンク先参照)』、「「朝日新聞が入手した同資料によれば、日本の国立大学や国立研究開発法人に助教授や研究員などの肩書で所属していた中国人研究者9人は、ジェットエンジンや機体の設計、耐熱材料、実験装置などを研究。(中略)このうち流体力学実験分野の中国人研究者は、1990年代に5年間、日本の国立大学に在籍。帰国後、軍需関連企業傘下の研究機関で、2017年に極超音速環境を再現できる風洞実験装置を開発。2010年代に日本の国立大学にいた他の研究者も帰国後に国防関連の技術研究で知られる大学に在籍するなど、9人は帰国後、研究機関などに所属したという」、「日本の大学で優秀な研究・成績を収め、その知見・ノウハウを持ってファーウェイなどの人民解放軍に強いつながりを持つ企業に就職する例も非常に多い。 また、オーストラリアのシンクタンクが指摘しているように、中国人民解放軍関係者がその目的を秘して留学生の身分で日本の大学や研究所に入り込んでいる可能性は、海外での実例を見ても排除できない」、「千人計画とは、1990年代に始まった海外の中国人留学生を呼び戻して先端技術を中国国内に取り込む「海亀政策」に倣い、優秀な外国人研究者を巨額の研究費や報酬、地位を与えて中国に誘致し、そのノウハウ・研究成果を「メード・イン・チャイナ」としてしまうもので、同計画には複数の日本人の参加も確認」、「中国」にとっては「日本」はガードが甘いお得意様のようだ。
・『留学生の研究内容を把握していない日本政府の危機感の薄さ  日本では、外為法が改正され、大量破壊兵器開発につながる技術を日本国内の外国人に渡す行為を「みなし輸出」として規制して経済産業省の許可制としている。だが、その対象は、外国政府や機関との雇用関係にある者や、外国政府から奨学金を受け取るなど「実質的な支配下にある」と認められる者などに限定されている状況だ。 例えば、中国からの国費留学生は上記に当てはまる場合もあるが、私費で入学し、後に人民解放軍などが学生組織を通じて接触し、技術窃取の指示を出した場合、対応できるだろうか。 これまで解説したように、中国による大学・研究機関に対する技術窃取の手法は、そのスキームが複雑かつ見えづらいものが多く、大学や研究機関側で実効性のある対応を行うには限界があるだろう。 にもかかわらず、冒頭で触れた政府答弁書では、留学生の研究内容を把握していないと回答しており、政府の危機感のなさは明白だ。 国防七校に限らず、日本の大学・研究機関が危険な状況にさらされる中、国がより明確な指針と基準を示し、大学や研究機関と文部科学省、そして経済産業省や警察庁、防衛省、各公安部門などとより強力に連携していくことが重要であり、必要に応じて摘発できる体制・法整備が必要である。 孔子学院の問題と同様、社会において日本の大学・研究領域に浸潤する中国の危険性が認識され、日本の対策がより強固となることを期待したい』、「留学生の研究内容を把握していないと回答しており、政府の危機感のなさは明白だ」、「国がより明確な指針と基準を示し、大学や研究機関と文部科学省、そして経済産業省や警察庁、防衛省、各公安部門などとより強力に連携していくことが重要であり、必要に応じて摘発できる体制・法整備が必要である」、「孔子学院の問題と同様、社会において日本の大学・研究領域に浸潤する中国の危険性が認識され、日本の対策がより強固となることを期待したい」、同感である。

第四に、6月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「中国人による「無人島購入」は沖縄だけじゃなかった!無防備ニッポンは大丈夫?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324174
・『中国人女性が沖縄県にある無人島・屋那覇島を購入したというニュースは、日本で大きな話題になった。私たち日本人も連日の報道に「一体どういう意図で購入したのか」と身構えた。今も水面下では中国資本による“離島買い”は続いている。背景には日本で復活するインバウンドがあるようだが、そこに潜在する死角はないのか』、興味深そうだ。
・『中国人投資家が視線を送る沖縄県  今年1月末、34歳の中国人女性が沖縄県の「屋那覇島(やなはじま)」について、「日本の無人島を買った」と島を撮影した動画をSNSに投稿した。2020年に島の約半分を取引し、2021年には彼女の親族の法人である中国系不動産会社に所有権の移転登記を行った――などのことが日本でも報道された。 無人島とはいえ、いとも簡単に外国人が土地を所有できる実態に、日本では「中国に乗っ取られるのではないか」という危機感が高まった。中国語のSNSでも「沖縄侵入の第一歩か」などと意味深長なコメントが飛び交った。不透明な部分もあり、中国人女性の動機についてはさまざまな臆測を呼んだ。 もっとも今は沖縄県全体が不動産バブルに沸いている。沖縄に移住した日本人のAさんは「屋那覇島に限らず、沖縄県は中国人の格好の不動産投資市場です。那覇市内のマンションの上層階は中国人の所有になっているケースが少なくありません」と話す。 実際Aさんが2010年代に購入した那覇市内のマンション価格は上昇し、多額の差益を生んでいるという。また同県宮古島市の不動産市場も、島外から入って来る資本でバブル状態になっている』、「沖縄県は中国人の格好の不動産投資市場です。那覇市内のマンションの上層階は中国人の所有になっているケースが少なくありません」、なるほど。
・『宮古島の地価が急上昇、外資も高い取引  宮古島市では新型コロナウイルスが流行する以前から地価上昇の傾向にあったが、今年3月に発表された地価公示では、同市の住宅地は7.7%の高い上昇率となった。 「投資物件は、海の見えるビーチサイドではもはや億単位で、伊良部島もすごい人気。背景には中国人の購入があるようだ」とする都内在住の不動産投資家の話からは、高騰の背景にインバウンドなどの観光需要があることがうかがえる。 一方で、宮古島市でも上野野原(うえののばる)の公示価格は前年比19.6%と、沖縄県内で最大の上昇率を記録した。ここはビーチ沿いの観光地ではなく、航空自衛隊の宮古島分屯基地の目と鼻の先だ。近傍の県道190号沿いには陸上自衛隊の駐屯地もある。 上野野原地域における地価の急上昇の原因について、国土交通省は「このエリアは農家集落地域ですが、陸上自衛隊の配備(注:開設年は2019年)などもあり、将来的予測から強い上昇率を示しています。外資を含む島外からの資本が入り、高い値段の取引が行われているもようです」と回答している。 宮古島市に入り込む“外資”の中には中国資本が含まれている可能性は十分にある』、「「投資物件は、海の見えるビーチサイドではもはや億単位で、伊良部島もすごい人気。背景には中国人の購入があるようだ」とする都内在住の不動産投資家の話からは、高騰の背景にインバウンドなどの観光需要があることがうかがえる」、「宮古島市でも上野野原(うえののばる)の公示価格は前年比19.6%と、沖縄県内で最大の上昇率を記録した。ここはビーチ沿いの観光地ではなく、航空自衛隊の宮古島分屯基地の目と鼻の先」、「中国人の購入」意欲は旺盛なようだ。
・『今度は瀬戸内海の無人島か  中国人投資家が熱視線を注ぐのは沖縄県だけではなかった。瀬戸内海は700余の島(環境省)があるというが、先日、筆者は日本に在住する中国出身のBさんが瀬戸内海の無人島を購入したという情報を知り得た。 購入目的は「リゾート開発」なのだというが、Bさんが発音する島の名前を地図でたどると、米軍と海上自衛隊が共同使用する航空基地からほど近い沖合の無人島に行き着く。 その無人島は、昭和初期に軍事関連施設が置かれ、戦後は米軍が利用した形跡も残す。筆者は、自分がBさんの「発音」を聞き違えたのかもしれないと疑ったが、もし本当にBさんがこの島を購入していたとしたらどうだろう、とも思った。日本の現行の土地取引制度では、複雑な歴史と地理関係を持つ島でありながらも、外国人や外国資本が簡単に所有権を設定できてしまうのである。 ちなみに日本では2022年に、国の安全保障などに関係する重要な土地や国境離島に対し、利用規制を課す「重要土地等調査法」が施行されたが、対象地は非常に限定的だ。 同時にBさんには「リゾート開発」以外に「隠れた目的」があるのではないかとも思ってしまった。 筆者は都内の大手不動産企業の社員からこんな話を聞いたことがある。それは「再開発計画が決まったエリアで、立ち退き対象となる中古物件を意図的に購入する中国人が増えている」というものだった。購入後にデベロッパーの足元を見て、多額の立ち退き費用を要求してくるケースが後を絶たないのだという。 Bさんにとってはとんだ濡れ衣だろうが、中には、あえて複雑な因果関係を持つ土地に手を出し、立ち退きを要請されたら多額の保証金や立ち退き費用を積ませるといった算段を持つ購入者もいるのかもしれない』、「筆者は日本に在住する中国出身のBさんが瀬戸内海の無人島を購入したという情報を知り得た。 購入目的は「リゾート開発」なのだというが、Bさんが発音する島の名前を地図でたどると、米軍と海上自衛隊が共同使用する航空基地からほど近い沖合の無人島に行き着く」、「「再開発計画が決まったエリアで、立ち退き対象となる中古物件を意図的に購入する中国人が増えている」というものだった。購入後にデベロッパーの足元を見て、多額の立ち退き費用を要求してくるケースが後を絶たない」、後者は日本人にもいる悪質な投資家だ。
・『クルーズ船の販売好調が裏付ける“観光目的”  売れているのは日本の不動産だけではない。今、インバウンドが回復しつつある日本で、“あるもの”がよく売れているという。 日本在住でインバウンド事業に従事する中国出身のCさんは「今、中国人の間で関心が高まっているのは小型のクルーズ船です」と語る。 船艇の販売を取り扱う事業者にも問い合わせてみると「確かに外国の方からの問い合わせはポツポツ出てきています」という。この事業者によれば、購入した船の利用目的はクルーズ船を使った観光だという。無人島を購入し、クルーズ船を使って中国人客を島に遊びに連れていく――それが中国人にとっての新たな訪日旅行の楽しみ方になりつつあるようだ。 またCさんは「特に中国の内陸部で生まれ育った人は海への憧れが強く、訪日旅行でも海沿いのエリアを見せると非常に喜びます」と話し、こう続けた。 「日本の離島に目を向けているのは、屋那覇島を買った中国人女性だけではありません。ただ、中国人による島の購入は単純に観光目的だといえます」 確かに中国人による日本の不動産投資は、インバウンドを追い風にしたリゾート開発を狙うものが多い。中国人の間では、北海道のニセコで成功している外国資本をビジネスモデルに、日本の観光産業への投資意欲を強めている一面が見られる』、「確かに中国人による日本の不動産投資は、インバウンドを追い風にしたリゾート開発を狙うものが多い。中国人の間では、北海道のニセコで成功している外国資本をビジネスモデルに、日本の観光産業への投資意欲を強めている一面が見られる」、なるほど。
・『「いずれ所有に耐え切れなくなる」という見方も  1月末に冒頭の“屋那覇島購入劇”が中国で報じられたとき、中国人の読者コメントの中には「うらやましい」というものもあった。「憧れの海」と「無人島という不動産」、この二つを同時に満たす“買い物”だったからなのだろう。 それに反して「たとえ手に入れたとしても、いずれ所有に耐えられなくなるのでは」という冷ややかな視線もあった。 実は中国にも1万1000を超える離島がある。 2003年、中国政府は個人や団体が最長50年間という期間の中で無人島の開発・利用ができることを認め、また2010年には無人島の使用権登録を適正化するための条例を制定し、土地使用権の公開入札制度を導入した。 2011年、浙江省寧波市の民営企業が市内の無人島の使用権を2000万元(当時のレートで約2.4億円)で落札するなど、沿海部ではいくつかの進出事例が見られた。しかし、リゾート開発には電力供給や上下水道をはじめとする生活インフラの整備とそのための多額の追加投資が必要とされ、乗り出した企業の中には、資金ショートにより中断を余儀なくされたところもあったのだ。 生活インフラの整備以外にも、桟橋や防波堤の建設費用や自然災害による施設の維持費・修繕費もかかる。それなのに、離島リゾートの観光シーズンは限定的で、安定的な収益は生みにくい。こうした事例を知る中国人の間では、「日本で離島を購入してもいずれ所有に耐え切れなくなる」という見方が強い。 中国ビジネスに詳しいある日本人経営者は「中国人がやりたいのは瞬間的な金もうけです」とその特徴を捉えるが、その移り気な性格と撤退後に残された離島は、新たな問題をもたらすことになるかもしれない』、「中国ビジネスに詳しいある日本人経営者は「中国人がやりたいのは瞬間的な金もうけです」とその特徴を捉えるが、その移り気な性格と撤退後に残された離島は、新たな問題をもたらすことになるかもしれない」、そうしたことを前提に日本側も備えておく必要がありそうだ。
・『外資の土地所有を禁じる国も  日本では外資や外国人がいとも簡単に離島(あるいは島の一部の土地)を所有できてしまうが、アジアには直接的な所有を禁止している国がある。その一つがフィリピンだ。 フィリピンには7641の島がある(2023年、外務省HP)が、土地は国家の資産とみなされ、フィリピン国民のみが所有できることになっている。フィリピンの法律に詳しい弁護士法人OneAsiaの難波泰明弁護士は、「外国人は土地や島全体を直接購入し所有することはできません」と語る。 また、島嶼国モルディブの島の数は1192(2023年、外務省HP)に上るが、外国人の土地所有を認めた2015年の法律を、「主権喪失の可能性がある」との懸念から2019年に撤回した。インド洋の重要なシーレーン(経済や貿易、有事の際に重要な位置付けになる海上交通路)上にある同国は、当時、中国資本の開発進出が相次いでいたという。 1万3500の島々(2020年、外務省HP)を擁する世界最大の島嶼国インドネシアも法律により外国人は島や土地を所有することはできないが、一方、スリランカではそれができる。スリランカのある村で観光業を営むハニファ・ファイスさんが「中国人の資金力は地元民とは桁が違いすぎる、このままでは再びコロニー(植民地)になりかねない」と、その危機感を過去の歴史に重ねていた。 アジアの島嶼国には、植民地時代の苦しみから生まれた法制度や離島の保全・管理制度がある。フィリピンやモルディブなどで外資が離島のリゾート開発を行う場合、期間限定のリース形式を要求されるのは、外資や外国人による“完全な支配”を排除するためなのだろう。 こうした経験のない日本は今まで無防備でいられたが、アジアの海が大きく変化する今、離島の保全・管理について一歩突っ込んだ早急な議論が求められている』、「こうした経験のない日本は今まで無防備でいられたが、アジアの海が大きく変化する今、離島の保全・管理について一歩突っ込んだ早急な議論が求められている」、同感である。
タグ:安全保障 (その12)(いま「経済安全保障」が 驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑、上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば、中国軍へ技術流出の恐れ 東工大らが留学生受け入れる中国「国防七校」の危険性、中国人による「無人島購入」は沖縄だけじゃなかった!無防備ニッポンは大丈夫?) 現代ビジネス 川邊 克朗氏による「いま「経済安全保障」が、驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑」 「岸田内閣のもとで、経済安保政策が「バブル化」している」、「「首相官邸支配」の雰囲気のなか、「力の省庁」である防衛省、警察庁までもが、「バスに乗り遅れるな」と、「経済安保」担当セクション創設モードに前のめりとなった。その省益、利権確保の主戦場となったのが、今年度予算である。そこでは、経済安保推進法成立より一足早く、900億円超の経済安保関連予算が積み上げられ、「バブル化」が明らかになった」、 「経済安全保障政策の法案化は一気に加速・・・法案は、具体的には、(1)重要物資のサプライチェーン(供給網)強化、(2)基幹インフラの安全性確保、(3)先端技術の育成・支援、(4)特許非公開の仕組み、を目指すというものだが、法律の運用は、国会審議も経ずに、政府が後日「政令」「省令」などで決めるというもので、その数は138項目に及んでいる。 要は、「『安全保障政治』と呼ばれる、私人、私企業、特定の圧力団体の利益の、『国家安全保障』の衣をまとったカモフラージュ現象」・・・という代物である」、まさに「バブル」だ。 「岸田首相官邸では、藤井敏彦内閣官房経済安保法制準備室室長が経済安保を差配するはずだった。しかし藤井氏は、国会への法案提出直前に、無届兼業と朝日新聞の女性記者との不倫問題などのスキャンダルで失脚」、「安倍政権時代の「政高党低」から「政と党のバランス」へと是正され、さしあたっては事なきを得ているようだ」、推進派はミソを付けたようだ。 「平和的方法としての「国際協調」を後景に追いやり・・・米国に追随して「同盟国」「同志国」との連携に舵を切った」、なるほど。 「多摩大学に2016年に設置された「ルール形成戦略研究所」という研究開発機構に、顧問やシニアフェロー、客員教授といった肩書きで招聘されていたのが、甘利氏であり、藤井氏であった。逆に、多摩大の同研究所からは、政府や自民党の会合にスタッフが動員され、一連の経済安保戦略つくりに参画しており、「政・官」と「学」の、人脈はお互い共鳴し合ってきた」、「多摩大学学長」の「中谷巌」氏もキーマンのようだ。なお、【後編】の紹介は省略する。 東洋経済オンライン 清水 克彦氏による「上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば」 「河野太郎防衛相・・・が、報道陣の問いに「気球に聞いてください」「どの気球? 安全保障に影響はございません」などと答えた」、実に思い上がった不誠実な答弁だ。「政府の認識がどれだけ無防備だったかを指摘」、「小野寺元防衛相」の指摘は正鵠をついている。 「沖縄の嘉手納基地や普天間基地などと60~70キロ程度しか離れていない島」、そんなに距離があるのであれば、大丈夫な気もする。 「防衛大臣は、外国の航空機が国際法規又は航空法 、その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる・・・その範囲を拡大すれば・・・自衛隊も、仙台市などで目撃された中国のものと思われる気球を撃ち落とすことが可能にはなる」、なるほど。 「防衛の拠点に近い土地が外国人に買われてしまう可能性、あるいは、飛来する気球や無人機を撃墜できないというリスクも想定しながら、「大きな穴」を埋める対策が急務」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 稲村 悠氏による「中国軍へ技術流出の恐れ、東工大らが留学生受け入れる中国「国防七校」の危険性」 「単に留学生や研究室の人間が関与するだけではなく、国防七校の大学自体が主体となって、関与し、さらにフロント企業やビジネスマンを駆使して巧みに技術窃取を行っている」、気を付けたいものだ。 「「朝日新聞が入手した同資料によれば、日本の国立大学や国立研究開発法人に助教授や研究員などの肩書で所属していた中国人研究者9人は、ジェットエンジンや機体の設計、耐熱材料、実験装置などを研究。(中略)このうち流体力学実験分野の中国人研究者は、1990年代に5年間、日本の国立大学に在籍。帰国後、軍需関連企業傘下の研究機関で、2017年に極超音速環境を再現できる風洞実験装置を開発。2010年代に日本の国立大学にいた他の研究者も帰国後に国防関連の技術研究で知られる大学に在籍するなど、9人は帰国後、研究機関などに所 属したという」、「日本の大学で優秀な研究・成績を収め、その知見・ノウハウを持ってファーウェイなどの人民解放軍に強いつながりを持つ企業に就職する例も非常に多い。 また、オーストラリアのシンクタンクが指摘しているように、中国人民解放軍関係者がその目的を秘して留学生の身分で日本の大学や研究所に入り込んでいる可能性は、海外での実例を見ても排除できない」、 「千人計画とは、1990年代に始まった海外の中国人留学生を呼び戻して先端技術を中国国内に取り込む「海亀政策」に倣い、優秀な外国人研究者を巨額の研究費や報酬、地位を与えて中国に誘致し、そのノウハウ・研究成果を「メード・イン・チャイナ」としてしまうもので、同計画には複数の日本人の参加も確認」、「中国」にとっては「日本」はガードが甘いお得意様のようだ。 「留学生の研究内容を把握していないと回答しており、政府の危機感のなさは明白だ」、「国がより明確な指針と基準を示し、大学や研究機関と文部科学省、そして経済産業省や警察庁、防衛省、各公安部門などとより強力に連携していくことが重要であり、必要に応じて摘発できる体制・法整備が必要である」、「孔子学院の問題と同様、社会において日本の大学・研究領域に浸潤する中国の危険性が認識され、日本の対策がより強固となることを期待したい」、同感である。 姫田小夏氏による「中国人による「無人島購入」は沖縄だけじゃなかった!無防備ニッポンは大丈夫?」 「沖縄県は中国人の格好の不動産投資市場です。那覇市内のマンションの上層階は中国人の所有になっているケースが少なくありません」、なるほど。 「「投資物件は、海の見えるビーチサイドではもはや億単位で、伊良部島もすごい人気。背景には中国人の購入があるようだ」とする都内在住の不動産投資家の話からは、高騰の背景にインバウンドなどの観光需要があることがうかがえる」、「宮古島市でも上野野原(うえののばる)の公示価格は前年比19.6%と、沖縄県内で最大の上昇率を記録した。ここはビーチ沿いの観光地ではなく、航空自衛隊の宮古島分屯基地の目と鼻の先」、「中国人の購入」意欲は旺盛なようだ。 「筆者は日本に在住する中国出身のBさんが瀬戸内海の無人島を購入したという情報を知り得た。 購入目的は「リゾート開発」なのだというが、Bさんが発音する島の名前を地図でたどると、米軍と海上自衛隊が共同使用する航空基地からほど近い沖合の無人島に行き着く」、 「「再開発計画が決まったエリアで、立ち退き対象となる中古物件を意図的に購入する中国人が増えている」というものだった。購入後にデベロッパーの足元を見て、多額の立ち退き費用を要求してくるケースが後を絶たない」、後者は日本人にもいる悪質な投資家だ。 「確かに中国人による日本の不動産投資は、インバウンドを追い風にしたリゾート開発を狙うものが多い。中国人の間では、北海道のニセコで成功している外国資本をビジネスモデルに、日本の観光産業への投資意欲を強めている一面が見られる」、なるほど。 「中国ビジネスに詳しいある日本人経営者は「中国人がやりたいのは瞬間的な金もうけです」とその特徴を捉えるが、その移り気な性格と撤退後に残された離島は、新たな問題をもたらすことになるかもしれない」、そうしたことを前提に日本側も備えておく必要がありそうだ。 「こうした経験のない日本は今まで無防備でいられたが、アジアの海が大きく変化する今、離島の保全・管理について一歩突っ込んだ早急な議論が求められている」、同感である。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

中国での日本人拘束問題 スパイ(?)(その4)(習近平が「拘束した日本人」と引き換えに突きつけてくる「ヤバい解放条件」 その裏側にある思惑、中国がアステラス製薬社員を拘束した「本当の狙い」 元公安捜査官が解説、「中国の産業スパイ」なぜ日本は拘束できない?スマート農業の情報流出で露呈、外国人を簡単に拘束する中国 中国公安の取り調べを受けて感じたその傲慢さ) [外交・防衛]

中国での日本人拘束問題 スパイ(?)については、2019年10月28日に取上げた。久しぶりの今日は、(その4)(習近平が「拘束した日本人」と引き換えに突きつけてくる「ヤバい解放条件」 その裏側にある思惑、中国がアステラス製薬社員を拘束した「本当の狙い」 元公安捜査官が解説、「中国の産業スパイ」なぜ日本は拘束できない?スマート農業の情報流出で露呈、外国人を簡単に拘束する中国 中国公安の取り調べを受けて感じたその傲慢さ)である。

先ずは、本年3月31日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの長谷川 幸洋氏による「習近平が「拘束した日本人」と引き換えに突きつけてくる「ヤバい解放条件」 その裏側にある思惑」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108348
・『林外相、念願の訪中(林芳正外相が4月1日にも中国を訪問し、秦剛外相と会談する見通しだ。このタイミングで中国が訪中を受け入れたのは、なぜか。拘束した日本人の釈放問題をテコに、日本と米国の分断を図るためだろう。そもそも、拘束自体が「最初から仕組まれたワナ」だった可能性もある。 林氏の訪中が実現すれば、2019年12月の茂木敏充外相(当時)の訪中以来、3年3カ月ぶりだ。林氏にとっては、外相就任以来の念願が叶ったかたちである。日中友好議員連盟会長を務めるなど、自民党きっての「親中派」である林氏は小躍りして喜んだに違いない。 同氏がどれほど訪中を心待ちにしていたかは、外相就任直後のエピソードが物語っている。2021年11月、林氏は中国の王毅外相(当時)と電話で会談した。その際、王氏から中国に招待されたことを、中国側が公表していないのに、テレビ番組で一方的に発表してしまった。 本来なら、招待した側が相手の意向を確認したうえで、公表するのが外交儀礼だ。相手が承諾していないのに、公表すれば、無礼極まりない。逆に、招かれた側が相手の了解を得ずに公表しても、失礼な話になる。相手にも事情や都合があるからだ。 それを一方的にテレビで喋ってしまうなど、ありえない話だった。それだけではない。林氏は番組で「米国と中国の双方に話ができるところが日本の強み」などと語り、米中の橋渡しをする意欲も得意げに語っていた。米国が「日本は同盟国ではないのか」と不快感を抱いたとしても、当然だ。そのせいか結局、訪中は実現しなかった。) 2022年8月にカンボジアで東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議が開かれたときにも、日中外相会談が予定されたが、ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問に対する中国の対応について、日本を含む先進7カ国外相が批判したことに中国が逆上して、一方的にキャンセルされてしまった。 同年12月にも日中外相会談がセットされたが、中国で新型コロナの感染が拡大し、死者が激増するなど混乱したため、このときも先送りされた。つまり、今回の会談は「4度目の正直」なのだ。 以上を見れば、会談を強く望んできたのは、親中派が外相を務める日本側である。では、なぜ今回、中国は外相訪中を受け入れたのか。謎を解く鍵は「日本人拘束」問題にある』、「林氏は・・・王氏から中国に招待されたことを、中国側が公表していないのに、テレビ番組で一方的に発表してしまった」、外交のプロの割にはお粗末だ。「今回の会談は「4度目の正直」」とは初めて知った。
・『親中派を応援したい中国  中国外務省の報道官が記者会見で、日本人の拘束を正式に認めたのは3月27日だった。林外相の訪中が報じられたのは、その翌日28日だ。政府関係者は訪中理由の一つに「拘束された日本人の早期釈放を働きかける」という事情を挙げた。これだけみると、一見、もっともらしい。 私は、この素早さにこそ「不自然さ」を感じる。いかにも「外相はよくやっている、という印象をえたい」という意図を感じるからだ。だれの意図か。中国側だ。中国は親中派の林氏を応援したいのだ。 もう一度、確認しておこう。 訪中を受け入れるかどうかを決めるのは中国側であって、いくら日本側が「行きたい」と言っても、相手が「No」と言えば、実現できない。日本人を拘束したのも、それを認めたのも、そのうえで「早く釈放してくれ」と頼み込んでくるに違いない林外相の話を聞いてやることにしたのも、すべて中国の決定である。一連の経過は、完全に中国が主導権を握っている』、「一連の経過は、完全に中国が主導権を握っている」、その通りなのだろう。
・『中国側の思惑  その中国がいま、日本に対して圧力を強めている「最大の戦略的課題」は何か。 それは「日米分断」だ。米国が展開している「対中包囲網」から、日本を引き剥がしたがっている。日本は米国とともに、たとえば日米豪印4カ国の戦略的枠組み、クアッド(QUAD)を形成した。フィリピンとも連携を強化しつつある。 日本は北大西洋条約機構(NATO)と連携を強め、中国は「いずれ、日米はアジア版NATOを作るつもりではないか」と疑っている。とりわけ、米中対立の鍵を握る半導体問題で、米国は日本とオランダに対中輸出規制の連携を求めている。中国は、そんな日本と米国の仲を割きたいのだ。 そのために、中国が仕掛けた工作が日本人拘束だった可能性がある。 日本人を拘束した後で、日中外相会談に応じれば、日本側は必ず「早期釈放してくれ」と要求してくるはずだ。それに対して、中国側は「日本は米国の対中半導体輸出規制に、どう対応するつもりか」と問い質す。 そういう展開になれば、互いの要求を相打ちにして、輸出規制を完全に断念させるのは難しくても「風穴を開ける」くらいはできるかもしれない。そう読んで、日本人拘束という荒業に打って出たのではないか。「釈放してほしいなら、輸出規制に同調するな」という構図に持ち込みたいのだ』、「「釈放してほしいなら、輸出規制に同調するな」という構図に持ち込みたいのだ」、汚いやり方だ。
・『絶好のタイミングだった  そもそも、中国のような独裁国が外国人を拘束するのに「政治的思惑がない」と考える方がおかしい。 中国は2018年12月、通信機器最大手、ファーウエイの最高財務責任者(CFO)がカナダで逮捕された後、カナダの企業家と元外交官の2人を拘束した。2人が釈放されたのは、CFOが釈放された後の21年9月だった。 半導体問題では、オランダが3月8日、米国に同調して、中国向け半導体の輸出規制計画を発表した。日本はどうかといえば、この時点で西村康稔経済産業相は「何も方針を決めていない」と、ロイター通信が報じている。 つまり、日本に輸出規制の回避を迫るなら、いまが中国にとって絶好のタイミングだったのだ。取引の結果がどうなるかは分からないが、少なくとも、日本人釈放問題と半導体輸出規制問題が議題に上るのは間違いない。双方の最重要関心事項であるからだ』、「日本に輸出規制の回避を迫るなら、いまが中国にとって絶好のタイミングだったのだ。取引の結果がどうなるかは分からないが、少なくとも、日本人釈放問題と半導体輸出規制問題が議題に上るのは間違いない」、「中国にとって絶好のタイミング」、小憎らしいほど悪どいやり方だ。
・『躍起になっている中国  中国はこのところ、立て続けに外交攻勢に出ている。宿敵同士だったサウジアラビアとイランの国交正常化を仲介したかと思えば、ロシアと首脳会談を開き、ウラジーミル・プーチン体制のロシアを事実上、中国に従属させることに成功した。 ホンジュラスと国交を開く一方、台湾との国交は断絶させた。台湾の馬英九前総統(国民党)を訪中させる一方、蔡英文現総統(民進党)の米国訪問をけん制している。対日外交でも、大きな成果を見込めないまま、外相訪中を受け入れるわけがない。それが半導体問題だった。 ただ、林外相はいくら中国の圧力を受けても、一存で判断できない。半導体問題を所管するメインの官庁は経済産業省であり、外務省は日中、日米関係を所管する立場で横から口を出す程度だ。最終的には、岸田文雄首相の判断になる。首相の腹が固まるまで、事態は大きく動かないだろう。 それでも、日中両国が会談終了後に出す発表などを見ていれば、感触は分かる。日本人拘束問題で中国が態度を軟化する兆しがあれば、林氏が妥協策を示した可能性がある。林氏と外務省の動きに注目したい。 3月29、30日に配信した「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」は、いずれも私の1人語りで「日本人拘束と林外相訪中問題」について解説しました。 28日に放送したニコ生番組の「長谷川幸洋Tonight」は、講談社特別編集委員の近藤大介さんをゲストにお招きして「中ロ関係の真実」をめぐって議論しました。いずれも、ぜひご覧ください』、「中国」が「スパイ容疑」で「拘束した」「日本人」の釈放を「日本の外相」が交渉しようとするのは、私の記憶が正しければ、初めてだ。4月2日の日中外相会談は、4時間も協議、懸案巡り応酬したようだ。今後の交渉の行方を注目したい。

次に、4月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元警視庁公安部外事課警部補で日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村 悠氏による「中国がアステラス製薬社員を拘束した「本当の狙い」、元公安捜査官が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/320540
・『スパイ容疑により多くの日本人を摘発  大手製薬メーカー、アステラス製薬の社員である50代日本人男性が「反スパイ法」に違反した疑いがあるとして、中国国家安全局によって、日本への帰国直前に拘束され、中国外務省がその事実を認めた。 この男性は、中国に進出する日系企業の団体「中国日本商会」の幹部を務めたこともあるベテラン駐在員であるという。 この件に関し、中国の外務省報道官は、「本人はどのような違法行為をしたのかよく知っているはず。日本国民の類似事件がしばしば発生しており、日本は自国民に対する教育や注意を強化すべきだ」とコメントしている。日本政府としては、林芳正外相が4月1~2日に急きょ訪中することを予定しており、日中での解決に向けた動きが速やかに進展することが望まれる。 中国は2014年に「反スパイ法」を制定。これまでに17人の日本人がスパイ活動への関与を疑われ拘束された。そのうち1人が病死し、11人は刑期を終えるなどして帰国しているが、今回拘束された日本人男性を含め5人がいまだに拘束されている。 いずれも、具体的な容疑は謎のままである。というのも、スパイ事案において、中国は「国家機密」を理由に容疑内容や裁判などの司法手続きを非公開にする場合が多い。 今回もその容疑内容は不明であり、スパイ容疑という性質上、中国は非常に抽象的な発表に終始しており、中国政府による“恣意的”な法運用であったと推認される』、「中国は非常に抽象的な発表に終始しており、中国政府による“恣意的”な法運用であったと推認される」、これでは日本人駐在員は仕事にならなくなる。中国はそれでもいいのだろうか。
・『スパイ行為の摘発に関する中国側の三つの思惑  中国の思惑として、三つ考えられる。 一つ目は、中国による正当なスパイ行為の摘発だ。 これは国家安全保障上も非常に重要な活動(=カウンターインテリジェンス)であり、国家として当然の思考・行動である(日本においても捜査機関が懸命に既存法を駆使して対応しているが、しっかり定義付けされた、拡大解釈のできないスパイ防止法の制定が望まれる)』、「中国による正当なスパイ行為の摘発」説は、帰国前日の逮捕から見て不自然な気がする。
・『二つ目は、見せしめである。 ただし、この見せしめにも二つの側面がある。 一つ目は外交カードとしての側面だ。 本件拘束の報道があった前日に、日本政府が2月末に帰国した中国の孔鉉佑前駐日大使からの岸田文雄首相に対する離任あいさつの申請を断っていたことが判明している。これは、日本政府の対応としては異例であり、世論を考慮し、慎重な対中姿勢が示された結果である。 これに対し、中国は、日本への報復措置として、日頃から本件アステラス製薬の社員の動向は把握しつつも、いつでも反スパイ法が適用できるように泳がせ続け、日本政府への見せしめとして検挙・拘束した可能性もある。 実は、このような手法はウラジオストクの日本総領事館領事が安倍元首相の国葬の前日にロシア連邦保安局(FSB)によって身柄を拘束された件と類似している。その拘束のタイミングと拘束された際の行為自体を見ても、ウクライナ侵攻を巡る日本への報復措置・見せしめと同様の趣旨が垣間見える。 ただし、これまで中国によってスパイ容疑で日本人が摘発されたタイミングを見ると、必ずしもそのタイミングが報復や外交的見せしめとなっておらず、線としては薄いだろう。 また、広島県におけるG7が控えている中でのけん制としている可能性はある。 いずれにせよ、外交カードの一つとして、反スパイ法が有効に活用される手段であることは認識しておかなければならない。) もう一つの側面は、中国による姿勢の誇示である。 中国は、元来メンツを気にする国であり、さらに政権として国内秩序の安定を強く望み、秩序の不安定化につながる要因を非常に嫌う。それが、国内要因だろうが国外要因だろうが関係ない。 そのような中で、通常の国家であればスパイ容疑に当たらないような行為も、中国から見て秩序を乱す要因であると判断されてしまえば摘発され、その強硬な姿勢を内外に示すことで、中国におけるスパイ活動のリスクを知らしめるのだ(裏を返せば、国内秩序の不安定化を極度に恐れる中国の思考の表れでもある)。 中国の強い姿勢を示し、日本政府を含む日本のインテリジェンスコミュニティーへ圧力をかけた可能性が高い。 そして中国の思惑の三つ目が、中国が欲しい情報を収集するために反スパイ法で摘発した可能性である。 現在、中国が自国で強化したい分野として医療領域がよく挙げられている。それは、中国政府が発表している外商投資奨励産業目録(外国投資家による投資の奨励および誘致に関連する特定の分野、地区などが明記されたリスト)や在中国欧州商工会議所が公表した報告書からも読み取れるが、そのような環境の中でアステラス製薬の男性社員が狙われた可能性もある。 そして、帰国直前というタイミングを図った理由もそこにある。 筆者のスパイ捜査の経験から話をすれば、まず証拠を固めて構成要件を満たした段階で共犯者の有無等の捜査とともに検挙に着手する。だが、例えばスパイが本国に帰国してしまえば、スパイの所属国家・組織に自国の情報が持ち出されてしまうため、帰国を検知した段階で検挙することも考えうる。 しかし、中国による日本企業の情報収集が目的だった場合を想定すると、例えば中国に定期的に訪問する立場の日本人が帰国する際には、ビジネスでの機密情報などが入ったパソコンや資料を日本に持ち帰り、日本の本社に共有しようと思うだろう。そのため、帰国時には重要な情報を欠かさず持った状態となる(もちろん、データで本社へ送付している可能性もあるが、中国データ3法の恣意的運用を恐れて送付していない可能性もあるし、拘束後に使用端末を解析すれば、中国による情報収集は可能だろう。 中国当局として、日本人が働く企業(今回はアステラス製薬)の情報が欲しかった場合、あえて帰国時に拘束することで、重要な情報を持った状態で日本人の身体を拘束し、所有物を差し押さえできるため、非常に“良い情報”が“効率的”に収集できる。 一方、帰国直前ではなく中国国内の自宅や企業にいた場合では、ガサなどの強制捜査を行ったところで、口を割らなければ、機密情報のありかを探すのに苦労してしまうのだ。 ただし、この医療分野に関する情報収集の筋は、中国の外資企業に対する厚待遇政策(後に技術やノウハウを吸収し、中国市場から締め出す)や複合機問題(中国現地での設計・生産を外資企業に要求)を始めとした、これまでの中国による半強制的な技術移転の手法などを見ても、やや疑問が残るだろう。 むしろ、日本人男性が所属した経済団体や在中日本人コミュニティーの情報が欲しかった線が想定される。 以上、中国の思惑について論じたが、今回の反スパイ法による摘発は、これらのどれか一つというより、複合的に判断されていると考えられる』、「通常の国家であればスパイ容疑に当たらないような行為も、中国から見て秩序を乱す要因であると判断されてしまえば摘発され、その強硬な姿勢を内外に示すことで、中国におけるスパイ活動のリスクを知らしめるのだ・・・中国の強い姿勢を示し、日本政府を含む日本のインテリジェンスコミュニティーへ圧力をかけた可能性が高い」、「中国による日本企業の情報収集が目的だった場合を想定すると、例えば中国に定期的に訪問する立場の日本人が帰国する際には、ビジネスでの機密情報などが入ったパソコンや資料を日本に持ち帰り、日本の本社に共有しようと思うだろう。そのため、帰国時には重要な情報を欠かさず持った状態となる(もちろん、データで本社へ送付している可能性もあるが、中国データ3法の恣意的運用を恐れて送付していない可能性もあるし、拘束後に使用端末を解析すれば、中国による情報収集は可能だろう」、「日本人男性が所属した経済団体や在中日本人コミュニティーの情報が欲しかった線が想定される」、どの説も大いにありそうだ。
・『反スパイ法改正によりスパイ行為の対象拡大の可能性  そもそも、この反スパイ法は14年11月1日の第12回全国人民代表大会常務委員会第11回会議で可決され、施行された。 同法のスパイ行為の定義は、すべての機構、組織、個人によるスパイ行為はもとより、その任務受託、ほう助、情報収集、金銭授受などは、すべてスパイ罪とみなされ、その定義は非常に広範で曖昧だ。 さらに懸念すべきは同法改正の動きだ。 2022年末には改正案が公表され、40条の現行法から71条編成へと大幅に内容が加えられた。 この改正案は、現行法にある“国家機密の提供“に加え、「そのほかの国家安全と利益に関係する文書、データ、資料、物品」を対象に含むと定義し、さらに「重要な情報インフラの脆弱(ぜいじゃく)性に関する情報」もスパイ行為の対象であると規定している。 また、改正案では、スパイ行為が疑われる人物・組織が所有・使用する電子機器やプログラム、設備などの調査権限も規定している。 これらを見てもわかるように、スパイ行為の定義自体が非常に幅広く、例えば中国国営に近しい中国企業との取引で発生したデータさえ抵触する恐れがあるし、疑いがあれば企業施設内に当局が入り込み、調査と称してあらゆる機器を差し押さえ、当該機器内の機密情報は筒抜けとなるだろう。 これまで、日本企業として相手先企業のデューデリジェンスは当然のごとく行われてきているが、中国の恣意的な法運用や昨今の国際情勢を鑑みて、よりハイレベルで中国の恣意的法運用リスクを含む地政学的要素を盛り込んだ対応が実施されなければならず、今回のように日本大手企業の中国法人幹部が不透明な容疑により反スパイ法で摘発されたとなれば、よりその必要性を感じさせることとなる』、「改正案では」、「スパイ行為の定義自体が非常に幅広く、例えば中国国営に近しい中国企業との取引で発生したデータさえ抵触する恐れがあるし、疑いがあれば企業施設内に当局が入り込み、調査と称してあらゆる機器を差し押さえ、当該機器内の機密情報は筒抜けとなるだろう」、大変なことだ。
・『会食中の政治的な会話が国家機密の収集とされる例も  中国におけるリスクの最大の要因は、法の曖昧さと恣意的運用である。 中国では、施設の写真を撮れば、軍事関連や国家として重要な施設の写真を撮っただろうと言いがかりをつけられ、検挙されることがある。 また、会食の場で政治的な話をすれば、中国の国家機密を探っているとして検挙されてしまう。 北京外国語大学で教員を務め、「日中青年交流協会」を設立するなど、日本と中国の友好事案を進めていたほか、衆議院の客員調査員を務めていた鈴木英司氏は、16年7月に国家安全局に突如スパイ容疑で拘束され、懲役6年の実刑判決を受け、22年10月に刑期を終え釈放された。 この鈴木氏に関するスパイ容疑は、同氏が13年12月4日に中国高官との会食中、その前日に北朝鮮の金正恩の伯父(張成沢氏)が失脚したことをうけ、どうなのかという会話をしたことだという。会話内容は、既に公開されている情報であったにもかかわらず、これが国家機密の収集に当たるとされ検挙されたとのことである。 今回のアステラス製薬の男性も、「中国日本商会」の幹部を務めたこともあることから、中国での人脈は相当広いだろう。その中で、会食中に政治的な話をしてしまったのかもしれない。 仮にそうであったとしても、反スパイ法によってスパイ容疑でその身体を拘束されるような理由にはならず、反スパイ法の定義の曖昧さと恣意的運用が中国におけるリスクを顕著に示している』、「北京外国語大学で教員を務め、「日中青年交流協会」を設立するなど、日本と中国の友好事案を進めていたほか、衆議院の客員調査員を務めていた鈴木英司氏は、16年7月に国家安全局に突如スパイ容疑で拘束され、懲役6年の実刑判決を受け、22年10月に刑期を終え釈放」、「スパイ容疑は、同氏が13年12月4日に中国高官との会食中、その前日に北朝鮮の金正恩の伯父(張成沢氏)が失脚したことをうけ、どうなのかという会話をしたことだという。会話内容は、既に公開されている情報であったにもかかわらず、これが国家機密の収集に当たるとされ検挙されたとのことである」、そんなことで「懲役6年の実刑判決」とは酷い話だ。
・『反スパイ法だけではない中国の法運用リスク  中国という国を考えれば、幾多ものリスクが存在する。 例えば、国家安全法や国家情報法、国防動員法だ。 特に、国防動員法は中国政府が有事と判断すれば、中国に進出している日本企業も含めて、中国のあらゆる組織の人的資本や金、アセットの徴用が合法化され、戦時統制下におかれることが可能となってしまう。この有事の定義はやはり曖昧であり、台湾有事に限らず、南シナ海で偶発的な衝突が起きた際に、中国が“有事”と判断すれば、国防動員法が適用される。 また、先述の複合機問題や合弁会社による技術流出リスクなどの中国による半強制的な技術移転、さらに視座を高くすれば、反外国制裁法などがあり、いずれも中国政府による恣意的な運用が懸念されるものばかりである。 先述したように、中国で活動をするならば、 “中国の実態”を深く理解した上で、中国のリスクを深く・正しく捉えた対応が強く求められる。少なくとも、これらリスクを許容した上で中国と付き合うべきである。 最後に、拘束された男性の適切な処遇と身の安全を心から祈る』、「反スパイ法」以外にも、「国家安全法や国家情報法、国防動員法」、「反外国制裁法」などがあり、「いずれも中国政府による恣意的な運用が懸念されるものばかり」、「中国で活動をするならば、 “中国の実態”を深く理解した上で、中国のリスクを深く・正しく捉えた対応が強く求められる。少なくとも、これらリスクを許容した上で中国と付き合うべきである」、その通りだ。

第三に、この続きを、4月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村 悠氏による「「中国の産業スパイ」なぜ日本は拘束できない?スマート農業の情報流出で露呈」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/320753
・『中国人技術者が日本からスマート農業情報を流出  先日、中国国内で日本の大手企業アステラス製薬の社員である50代日本人男性がスパイ活動を行った疑いがあるとして、中国国家安全局によって、反スパイ法違反容疑で帰国直前に拘束された。 そして、すぐに林芳正外相が訪中し、本件を含む中国国内での日本人の拘束に抗議して早期解放を強く申し入れたが、中国からは「法律に基づき処理する」との回答を得たのみであり、早期釈放に暗雲が立ち込めている。 このように、中国によって不透明かつ曖昧もしくは恣意(しい)的に法が運用され、多くの日本人が拘束されている。彼らは極めて厳しい環境下に置かれていると想像されるが、ご本人とそのご家族・関係者を思うと憤りが隠せない。また、既に釈放され帰国された方々も同様に非常に苦しく厳しい時間であっただろう。 このような状況下で、今度は国内電子機器メーカーに勤務していた中国人男性技術者が昨年、スマート農業の情報を日本から不正に持ち出したとして、警察当局が不正競争防止法違反容疑で捜査していたことが報じられた。 報道によれば、同中国人男性は、中国共産党員かつ中国人民解放軍と接点があり、SNSを通じて、中国にある企業の知人2人に情報を送信していたという。 この男性は別の事件で浮上し、捜査側から国内電子機器メーカーに連絡が入り発覚。その中で事情聴取などするなどの捜査を進めていたということである。 この中国人男性は既に出国済みであり、今後の捜査は極めて難しく、中国に渡った技術はもう日本に戻ってこない。捜査機関も当然尽力したと思われ、極めて無念の思いであろう』、「中国人技術者が日本からスマート農業情報を流出」、これは明白な国内法違反だが、「この中国人男性は既に出国済み。今後の捜査は極めて難しく、中国に渡った技術はもう日本に戻ってこない」、とはお粗末だ。
・『正当に入社した社員が情報流出に関与するリスク  今回の国内電子機器メーカーの事件では、どのように情報が持ち出しされたのか。 本件の中国人技術者は、クラウド上で管理された「スマート農業」の情報について、社内でも正当にアクセスする権利を持っており、平素から問題なく勤務していたと思われる。 実は、スパイ事件というと、ロシアによるスパイ事件を例に、人的ルートを通じて日本人エージェントを使い、不正に情報を窃取するという方法がよく思い浮かべられる。例えば、ロシア対外情報庁(SVR)の「ラインX」によるソフトバンク事件だ。同事件では、ラインXの一員であるロシア通商代表部の外交官がソフトバンク元社員に接触し、同社の営業秘密である機密情報を不正に取得した。 だが、実態はそればかりではない。 本件の中国人技術者は、国内電子機器メーカーに技術者として正当に入社し、正当な業務の中で、正当なアクセス権を持って日頃から勤勉に働いていた。ところが、実は国家の指揮命令下にあり、アンダーでは技術情報を持ち出し、国外に送信していた。 入社当初から中国共産党の影響下にあるケースだけではなく、入社後に影響下に入るパターンもある。 過去の事件では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの約200の団体・組織が2016年6月から大規模なサイバー攻撃を受け、その一連のサイバー攻撃に使用された日本国内のレンタルサーバーを偽名で契約・使用していたとして、2021年12月、捜査機関が2人の中国人を私電磁的記録不正作出・同供用容疑で書類送検した。 この書類送検された中国人の一人は中国人の元留学生「王建彬」容疑者であり、彼はレンタルサーバーの契約を人民解放軍のサイバー攻撃部隊「61419部隊(第3部技術偵察第4局)」所属の軍人の女から頼まれたという。 なんと、王容疑者が以前勤めていた中国国営企業の元上司が王容疑者とその女をつないだという。 この事件の恐ろしいところは、善意の中国人男性が、中国共産党に利用されたということである』、「本件の中国人技術者は、国内電子機器メーカーに技術者として正当に入社し、正当な業務の中で、正当なアクセス権を持って日頃から勤勉に働いていた。ところが、実は国家の指揮命令下にあり、アンダーでは技術情報を持ち出し、国外に送信していた」、なるほど。
・『合併会社を設立して合法的に情報を流出  もちろん、中国共産党の指揮命令下にある中国人技術者が当初からその身分を隠して企業に入社する場合もある。 さらに、公安調査庁のHPにも掲載されているが、合法的な経済活動による技術流出も当然存在する。 例えば、合弁会社の設立である。 中国企業との合弁では、日本企業が最新の技術は合弁先に共有しないという立場を取る場合が多い。 しかし、日本企業のガバナンスが弱いため、現地への技術指導を目的に日本人社員が機微情報(図面等)を持ち出してしまい、その結果、現地に技術情報が共有されてしまい、合弁解消後も技術情報は現地に残ったままという事例もある。 米国が世界に警鐘を鳴らしているように、中国による諜報活動・技術流出は違法な手法のみではない。 中国の千粒の砂戦略(※1)を例に、悪意・善意問わずビジネスパーソンや留学生が日本で知見を蓄えて帰国する手法(こうした人々は「海亀族」といわれる)や、調達などの合法的な経済活動によって、日本の知的財産が侵食されている点には極めて留意しなければならない。 また、中国に進出する企業では、中国国産化政策(現地設計・現地生産が求められ、拒否すれば市場から締め出されるような政策)や在中国欧州商工会議所が2021年1月に公表した報告書が示している半強制的な技術移転に留意しなければならない。 ※1 千粒の砂戦略:ロシアのようにスパイによる典型的な諜報活動ではなく、人海戦術のごとく、ビジネスパーソン・留学生・研究者など多種多様なチャネルを使用し、情報を砂浜の砂をかき集めるように、情報が断片的であろうとも広大に収集する戦略』、「中国企業との合弁では、日本企業が最新の技術は合弁先に共有しないという立場を取る場合が多い。 しかし、日本企業のガバナンスが弱いため、現地への技術指導を目的に日本人社員が機微情報(図面等)を持ち出してしまい、その結果、現地に技術情報が共有されてしまい、合弁解消後も技術情報は現地に残ったままという事例もある」、「ガバナンスが弱い」「日本企業」の責任だが、困ったことだ。
・『スマート農業の情報がなぜ中国に狙われたのか  今回の国内電子機器メーカーの事件では、ビニールハウスの室温や土壌の水分量等を最適に保つ機器のプログラムに関する情報が不正に持ち出されたという。 中国では、かねて自国の農業近代化を掲げているが、中国政府が発表している外商投資奨励産業目録(外国投資家による投資の奨励および誘致に関連する特定の分野、地区等が明記されたリスト)の最初には農業関連が掲げられており、その中には、以下のように今回の事件にひも付く内容もある。 一.農業、林業、牧畜業および漁業 20.スマート農業(ソフトウェア技術および設備の統合活用、農業生産・経営管理のデジタル改造) (中華人民共和国商務部「外商投資奨励産業目録2022」より一部抜粋、翻訳JETRO) 企業関係者などは、ぜひ参考として当目録に目を通していただき、自社に関連する技術・情報・ノウハウがないか確認していただきたい』、「日本企業」は秘密の防衛に無頓着なところが多いので、この際に、「外商投資奨励産業目録2022」をチェックしてみるべきだろう。
・『経済安全保障におけるスパイ防止法の必要性  経済安全保障という言葉がトレンドになって以降、中国による技術窃取の問題がクローズアップされてきた。日本においても、これまでも存在していたリスクが正しく捉えられ始め、社会の認知は広まってきたといえる。 一方で、前述のように事件化や表面化した諜報事件・技術流出事件は、ほんの氷山の一角であると断言できる。 このような極めて厳しい状況下にもかかわらず、我が国にはスパイ防止法がなく、スパイ活動を取り締まる法的根拠がないため、捜査機関としては、法定刑がさほど重くない窃盗として、もしくは不正競争防止法等の適用を駆使しながら何とか対応している。 そこで、検討されるべきが、スパイ防止法である。 スパイ防止法は、中国の反スパイ法を反面教師に、その定義が決して曖昧であってはならず、恣意的な運用の余地を一切なくさなければならない。 また、日本弁護士連合会による1985年の「『国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案』に反対する決議」(LINK)にもあるように、スパイ行為自体が、日々の生活に非常に密接であり、スパイ行為の処罰が基本的人権を侵害する恐れもあるため、法案内容の検討には十分かつ慎重な議論がなされる必要がある。 しかし、現在、世界は変動期にある。今一度、日本のカウンターインテリジェンス(防諜活動)を考え、スパイ防止法の本格的な検討をするときが来たのではないだろか』、「今一度、日本のカウンターインテリジェンス(防諜活動)を考え、スパイ防止法の本格的な検討をするときが来た」、同感である。

第四に、4月3日付けJBPressが掲載した作家・ジャーナリストの青沼 陽一郎氏による「外国人を簡単に拘束する中国、中国公安の取り調べを受けて感じたその傲慢さ」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74633
・『中国の首都・北京で先月、アステラス製薬の50代の日本人男性が拘束された。 中国外務省は3月27日の記者会見で「この日本人はスパイ活動に関わり、中国の刑法と反スパイ法に違反した疑いがある」として、司法当局が拘束して取り調べていることを認めている。 中国では2014年に反スパイ法が施行された。その後、少なくとも17人の日本人が拘束され、11人が刑期を終えるなどして帰国。1人は服役中に病死。2人が服役中、1人が公判中、1人は逮捕されたまま。そして、先月にもう1人だ。 ところが、具体的にどういう行為が法律に違反するのか、反スパイ法の規定が曖昧で、今回も中国政府は詳しい内容を明らかにしていない。 それどころか、27日の会見で中国外務省の報道官は、「ここ数年、日本人が同様の事件をたびたび起こしており、日本側は、国民への教育と注意喚起を強化すべきだ」とまで吐き捨てている。 ならば、いい機会なので私が中国国内で受けた“仕打ち”について、いま一度披露しよう』、「私が中国国内で受けた“仕打ち”」を「披露」するとは興味深そうだ。
・『カドミウムで汚染されたコメ  私は中国で田んぼの写真を撮っていただけで、公安(警察)に同行を求められ、執拗な取り調べを受けたことがある。湖南省でのことだ。 湖南省といえば、省都の長沙で2019年7月に50代の日本人男性が拘束され、今年2月8日にスパイ活動に関わったとして、懲役12年の判決が言い渡されている。また、先月27日から中国を訪れている、台湾の馬英九前総統が先祖の墓参りに訪れたばかりだ。そして、毛沢東の出生地として知られる。 長沙から車で約2時間。衡陽市衡東県大浦鎮を訪れたのは、2015年7月のことだった。 その当時、ここから隣の広東省広州市圏に出荷された米から、許容量を超えるカドミウムが検出されて問題となっていた。その前年には子どもたちの血中鉛濃度が国の基準値を最大で3倍以上にもなっていたことを、国営の新華社通信やAFP通信が伝えている。地元の化学工場から排出された汚染物質が原因とみられ、この工場は捜査のため一時閉鎖されたとされる』、「カドミウムで汚染されたコメ」、「中国」ではあり得る話だ。
・『田んぼの風景を撮影しただけで警官が  その大浦で高速道路を降りたあたりから、車窓に黒いフィルムを貼ったセダンが私の車のあとをずっとつけてきていた。最初は白で、しばらくすると黒い車体に代わった。 監視されていることはわかった。目立つことはしないほうがいい。だから、工場跡地や田園をまわりながらも、写真は車の中から撮った。その度に車を停めると、セダンも一定の距離を保って停まった。 そして、そのまま帰路に着こうと高速道路の入口に近づいたところで、「ここなら、大丈夫でしょう」と通訳の青年が言った(あとから振り返ると、彼も中国当局と結託していたのかも知れない)。 揚子江より南の地域では二期作が主流で、当時も田植えの済んだ隣の田圃で収穫作業が行われていた。そんな珍しい風景を、はじめて車から降りて写真に撮っていると、背後から声がした。「中国公安」と文字の入ったパトカーが止まっていて、2人の制服の警官が立っていた。 「外国人が写真を撮っているという通報がありました。通報を受けた以上、住民に説明をしなければならない。手続きのため、ご同行いただけませんか」 初老の警官に言われて、断る術もなく、連れていかれたのは町の中心を少し外れた場所にある古びた地元警察の建物だった』、「初老の警官」から丁寧に言われたら、従うしかなさそうだ。
・『まるでチンピラのような共産党書記  そこの会議室のような場所で、入口から一番遠い壁際の机の向こうに座らされると、初老の警官に続いて、スマートフォンだけを持ってビーチサンダルを履いた男が入ってきた。痩身に張り付くような派手なシャツやパンツからして、チンピラのようにしか見えないこの男が、地区の共産党書記だった。さらにパソコンやビデオカメラを持った私服の男たちが入って来る。 まずパスポートの提示を求められた。それから、「録音機器や、他に小型のカメラがないか、確認させてください」と言って、手荷物のすべてを隣の部屋に持っていってしまった。 扉の隙間から、所持品を写真に撮るシャッター音がする。私の目に見えないところで、全てがいじくられる。あとで返された時には、財布のクレジットカードまで抜き取られて、配置が変わっていた。 「ここへ来た目的はなんだ?」 ビデオを回しながらの尋問がはじまった。口調がきつくなっている。 「観光」と答える。観光ビザで入国していたからだ。 「観光なら、その旅費はどうした? 渡航費用は? 滞在費は? 誰が出している?」 費用は自分で用意している、と答える。そもそも、そんなことまで答える必要がどこにあるのか  すると警官はすぐに、「あなたは、長沙市内の○○というホテルに宿泊している」と言い当て、さらにこう続けた。 「あなたの年収では、あのホテルに泊まるのは無理だ」 そして彼の次の言葉に驚かされた。 「東京にある出版社から、中国の旅行代理店に送金があったことを我々は知っている」 「代理店の担当者は、その資金で旅程を組んでいることを認めている!」 東京からの送金実績まで事前に把握しているとは思いもよらなかった。当局によって自分が裸にされている不気味さと恐怖を実感する』、「あなたの年収では、あのホテルに泊まるのは無理だ」、「東京からの送金実績まで事前に把握」、田舎の「警官」が「共産党書記」の指示があるにしても、ここまで調べていたとは私も驚かされた。
・『堂々巡りの押し問答  「そこから依頼を受けて、調査活動が目的でここへやって来たのだろう!?」 反スパイ法のことは知っていた。調査活動、すなわちスパイの容疑をかけているのだとすれば、認めるわけにはいかない。調査ではない、取材だ。 「取材なら、なぜ取材申請をしなかった」 「なぜ、観光と嘘をついて入国したのか」 ここへ来るまでに、私は吉林省の長春で、入場料を払って満洲国の皇帝だった溥儀の皇宮と資料館を見てきた。陝西省の「梁家河」という寒村も訪ねた。習近平が若い頃、下放されて暮らしていた“聖地”と呼ばれる場所だ。そこはすでに観光地化して入場料をとっている。習近平の生い立ち調査が目的とはいえ、これを観光ではないと言い張る中国人がいるだろうか。 その旨を伝えると警官は黙った。ところが、それまで黙っていた共産党書記が蒸し返す。 「だけど、わからないな。出版社からの送金でここまで来ているのなら、それは調査だろう!」 「そうだ。どうなんだ」 そこから堂々巡りと押し問答が続く。 中国側は執拗に同じ質問を繰り返す。繰り返しの説明は、疲労を伴う。なるほど、こうしてイライラと疲れの蓄積で、罪を認めさせようという魂胆か。 取り調べ中も開け放たれたままの扉から、入れ替わり立ち替わり室内を覗きにきた地元の住人がスマートフォンでこちらの写真を撮る。まるで動物園のサルを見るような目つきだった。不愉快だった。これが正当な司法手続きと言えるのか』、「正当な司法手続き」など中国には存在しないのだろう。
・『「帰れないのは誰のせいなのか」  やがて何時間も経過し、とっくに日が暮れて食事も与えられないでいると、肥った私服の中年男性が部屋に入ってきた。この警察の署長だった。私の正面に机を挟んで座ると言った。 「私が制服から私服に着替えて、まだ帰れないのは誰のせいだと思いますか」 主張を曲げない私を責めた。そうやって威圧する。 「先生、まだこんなことを続けますか」 では、どうしたらいいのか、こちらから訊ねた。 すると、真っ白なA4サイズの紙とボールペンを出してきて、これから言うことを日本語で書くように指示された。とにかく「事情説明」と題された、いわば中国共産党が好む「自己批判」を書かせようとする。 彼らとしても面子を保たなければ、私を解放できなかったのだろう。とはいえ、相手の都合のいいことばかりでは、どんな罪に問われるか、わかったものではない。そこで相手の意向と妥協点を探りながら文章を構成する。異様な労力に屈辱感が胸元から湧き上がる。この屈辱に先行きの見えない恐怖が私のトラウマに変わる。 この直筆の書面と尋問形式の調書に指印させられて、ようやく解放された。カメラにあった写真データは全て消去された。外には街灯らしいものもなく、あたり一面が真っ暗だった』、「警察署長」に「どうしたらいいのか、こちらから訊ねた」、「「事情説明」と題された、いわば中国共産党が好む「自己批判」」直筆の書面と尋問形式の調書に指印させられて、ようやく解放された」、「警察署長」と渡り合っただけでも大したものだ。
・『中国は信用できるか  写真を撮る自由さえない中国。執拗に罪を認めさせようとする地元警察。土壌汚染の事実など、都合の悪いことは黙らせたい。中国共産党の言論封殺の本性がそこにある。 解放されたとはいえ、一時的に拘束された立場からすれば、法律に違反した取り調べというより、嫌がらせだった。地方の小さな村にまで浸透した権威主義のゴリ押しと、外国人の粛清。 日本のパスポートを開けば、最初に外務大臣の名前でこういう記載がある。 【日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう、関係の諸官に要請する。】 中国の外務省が表明したように「日本側は、国民への教育と注意喚起を強化すべきだ」とするのなら、それはたった一言で済む。「中国は、およそ信用に値する国ではない」 それだけのことだ』、「中国は、およそ信用に値する国ではない」言い得て妙だ。
タグ:ダイヤモンド・オンライン 「反スパイ法」以外にも、「国家安全法や国家情報法、国防動員法」、「反外国制裁法」などがあり、「いずれも中国政府による恣意的な運用が懸念されるものばかり」、「中国で活動をするならば、 “中国の実態”を深く理解した上で、中国のリスクを深く・正しく捉えた対応が強く求められる。少なくとも、これらリスクを許容した上で中国と付き合うべきである」、その通りだ。 「日本企業」は秘密の防衛に無頓着なところが多いので、この際に、「外商投資奨励産業目録2022」をチェックしてみるべきだろう。 JBPRESS 青沼 陽一郎氏による「外国人を簡単に拘束する中国、中国公安の取り調べを受けて感じたその傲慢さ」 「「釈放してほしいなら、輸出規制に同調するな」という構図に持ち込みたいのだ」、汚いやり方だ。 「初老の警官」から丁寧に言われたら、従うしかなさそうだ。 れ検挙されたとのことである」、そんなことで「懲役6年の実刑判決」とは酷い話だ。 「私が中国国内で受けた“仕打ち”」を「披露」するとは興味深そうだ。 イヤモンド・オンライン 「中国による日本企業の情報収集が目的だった場合を想定すると、例えば中国に定期的に訪問する立場の日本人が帰国する際には、ビジネスでの機密情報などが入ったパソコンや資料を日本に持ち帰り、日本の本社に共有しようと思うだろう。そのため、帰国時には重要な情報を欠かさず持った状態となる(もちろん、データで本社へ送付している可能性もあるが、中国データ3法の恣意的運用を恐れて送付していない可能性もあるし、拘束後に使用端末を解析すれば、中国による情報収集は可能だろう」、「日本人男性が所属した経済団体や在中日本人コミュニティ 「警察署長」に「どうしたらいいのか、こちらから訊ねた」、「「事情説明」と題された、いわば中国共産党が好む「自己批判」」直筆の書面と尋問形式の調書に指印させられて、ようやく解放された」、「警察署長」と渡り合っただけでも大したものだ。 現代ビジネス 「本件の中国人技術者は、国内電子機器メーカーに技術者として正当に入社し、正当な業務の中で、正当なアクセス権を持って日頃から勤勉に働いていた。ところが、実は国家の指揮命令下にあり、アンダーでは技術情報を持ち出し、国外に送信していた」、なるほど。 「正当な司法手続き」など中国には存在しないのだろう。 「今一度、日本のカウンターインテリジェンス(防諜活動)を考え、スパイ防止法の本格的な検討をするときが来た」、同感である。 「中国は非常に抽象的な発表に終始しており、中国政府による“恣意的”な法運用であったと推認される」、これでは日本人駐在員は仕事にならなくなる。中国はそれでもいいのだろうか。 (その4)(習近平が「拘束した日本人」と引き換えに突きつけてくる「ヤバい解放条件」 その裏側にある思惑、中国がアステラス製薬社員を拘束した「本当の狙い」 元公安捜査官が解説、「中国の産業スパイ」なぜ日本は拘束できない?スマート農業の情報流出で露呈、外国人を簡単に拘束する中国 中国公安の取り調べを受けて感じたその傲慢さ) 「中国人技術者が日本からスマート農業情報を流出」、これは明白な国内法違反だが、「この中国人男性は既に出国済み。今後の捜査は極めて難しく、中国に渡った技術はもう日本に戻ってこない」、とはお粗末だ。 稲村 悠氏による「中国がアステラス製薬社員を拘束した「本当の狙い」、元公安捜査官が解説」 「中国は、およそ信用に値する国ではない」言い得て妙だ。 「カドミウムで汚染されたコメ」、「中国」ではあり得る話だ。 長谷川 幸洋氏による「習近平が「拘束した日本人」と引き換えに突きつけてくる「ヤバい解放条件」 その裏側にある思惑」 「中国による正当なスパイ行為の摘発」説は、帰国前日の逮捕から見て不自然な気がする。 稲村 悠氏による「「中国の産業スパイ」なぜ日本は拘束できない?スマート農業の情報流出で露呈」 「日本に輸出規制の回避を迫るなら、いまが中国にとって絶好のタイミングだったのだ。取引の結果がどうなるかは分からないが、少なくとも、日本人釈放問題と半導体輸出規制問題が議題に上るのは間違いない」、「中国にとって絶好のタイミング」、小憎らしいほど悪どいやり方だ。 「北京外国語大学で教員を務め、「日中青年交流協会」を設立するなど、日本と中国の友好事案を進めていたほか、衆議院の客員調査員を務めていた鈴木英司氏は、16年7月に国家安全局に突如スパイ容疑で拘束され、懲役6年の実刑判決を受け、22年10月に刑期を終え釈放」、「スパイ容疑は、同氏が13年12月4日に中国高官との会食中、その前日に北朝鮮の金正恩の伯父(張成沢氏)が失脚したことをうけ、どうなのかという会話をしたことだという。会話内容は、既に公開されている情報であったにもかかわらず、これが国家機密の収集に当たるとさ 中国での日本人拘束問題 スパイ(?) 「中国」が「スパイ容疑」で「拘束した」「日本人」の釈放を「日本の外相」が交渉しようとするのは、私の記憶が正しければ、初めてだ。4月2日の日中外相会談は、4時間も協議、懸案巡り応酬したようだ。今後の交渉の行方を注目したい。 「あなたの年収では、あのホテルに泊まるのは無理だ」、「東京からの送金実績まで事前に把握」、田舎の「警官」が「共産党書記」の指示があるにしても、ここまで調べていたとは私も驚かされた。 「中国企業との合弁では、日本企業が最新の技術は合弁先に共有しないという立場を取る場合が多い。 しかし、日本企業のガバナンスが弱いため、現地への技術指導を目的に日本人社員が機微情報(図面等)を持ち出してしまい、その結果、現地に技術情報が共有されてしまい、合弁解消後も技術情報は現地に残ったままという事例もある」、「ガバナンスが弱い」「日本企業」の責任だが、困ったことだ。 「改正案では」、「スパイ行為の定義自体が非常に幅広く、例えば中国国営に近しい中国企業との取引で発生したデータさえ抵触する恐れがあるし、疑いがあれば企業施設内に当局が入り込み、調査と称してあらゆる機器を差し押さえ、当該機器内の機密情報は筒抜けとなるだろう」、大変なことだ。 「一連の経過は、完全に中国が主導権を握っている」、その通りなのだろう。 「林氏は・・・王氏から中国に招待されたことを、中国側が公表していないのに、テレビ番組で一方的に発表してしまった」、外交のプロの割にはお粗末だ。「今回の会談は「4度目の正直」」とは初めて知った。 「通常の国家であればスパイ容疑に当たらないような行為も、中国から見て秩序を乱す要因であると判断されてしまえば摘発され、その強硬な姿勢を内外に示すことで、中国におけるスパイ活動のリスクを知らしめるのだ・・・中国の強い姿勢を示し、日本政府を含む日本のインテリジェンスコミュニティーへ圧力をかけた可能性が高い」、
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

安全保障(その12)(いま「経済安全保障」が 驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑、岸田政権が進める「経済安全保障」 その「危うさ」を考える 監視社会に繋がらないか、なぜ「防衛庁のミサイル研究データ」は北朝鮮側に渡ったのか…元国家安全保障局長が解説する"流出経路" 委託先 再委託先の把握が不足していた) [外交・防衛]

安全保障については、4月20日に取上げた。今日は、(その12)(いま「経済安全保障」が 驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑、岸田政権が進める「経済安全保障」 その「危うさ」を考える 監視社会に繋がらないか、なぜ「防衛庁のミサイル研究データ」は北朝鮮側に渡ったのか…元国家安全保障局長が解説する"流出経路" 委託先 再委託先の把握が不足していた)である。

先ずは、5月4日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの川邊 克朗氏による「いま「経済安全保障」が、驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/95001?imp=0
・『経済安保バブル  岸田内閣のもとで、経済安保政策が「バブル化」している。 岸田内閣が今国会で重要法案に掲げていた経済安全保障推進法案が4月7日、呆気なく衆院を通過してしまった。当初は「対決法案」と豪語し、立法に反対していた立憲民主党をはじめとする野党の議員が、こぞって、ロシアのウクライナ侵攻であらわになった「戦争リアリティ」に及び腰になり、法案反対どころか賛成に回ったからである。 もとはと言えば、この経済安全保障政策、安倍晋三政権時代に、今井尚哉首相秘書官ら経済産業官僚が主導したものだった。今井秘書官ら経産官僚は、外交・安全保障政策の司令塔である国家安全保障局(NSS)のトップに警察庁出身の北村滋内閣情報官が就いたことを利用し、米国の「中国脅威論」を引き合いに、経済安保政策を持ち出したのだった。 そして「首相官邸支配」の雰囲気のなか、「力の省庁」である防衛省、警察庁までもが、「バスに乗り遅れるな」と、「経済安保」担当セクション創設モードに前のめりとなった。その省益、利権確保の主戦場となったのが、今年度予算である。そこでは、経済安保推進法成立より一足早く、900億円超の経済安保関連予算が積み上げられ、「バブル化」が明らかになった。 この間、安倍後継の菅義偉内閣から岸田内閣へ政権が移行した。それにともなって、安全保障政策の「メインストリーム」を自負する外務省が、秋葉剛男事務次官によるNSS局長ポストを奪還し、首相官邸から経産官僚の影響力が排除されると、「オルタナティブ」である「経済安保」熱も冷めるかに見えた。 ところが、「商工族のドン」として経産官僚の後ろ盾となってきた甘利明元TPP担当相が、岸田内閣誕生の論功行賞人事で、二階俊博幹事長に取って代わると、経済安全保障政策の法案化は一気に加速した。同時にそれは、「本当にこれが国家安全保障政策の一環である経済安保政策なのか」と疑いたくなるようなものへと変質していったのである。) 法案は、具体的には、(1)重要物資のサプライチェーン(供給網)強化、(2)基幹インフラの安全性確保、(3)先端技術の育成・支援、(4)特許非公開の仕組み、を目指すというものだが、法律の運用は、国会審議も経ずに、政府が後日「政令」「省令」などで決めるというもので、その数は138項目に及んでいる。 要は、「『安全保障政治』と呼ばれる、私人、私企業、特定の圧力団体の利益の、『国家安全保障』の衣をまとったカモフラージュ現象」(船橋洋一『経済安全保障論 地球経済時代のパワー・エコノミックス』東経選書)という代物である』、「経済安保バブル」とは興味深そうだ。「当初は「対決法案」と豪語し、立法に反対していた立憲民主党をはじめとする野党の議員が、こぞって、ロシアのウクライナ侵攻であらわになった「戦争リアリティ」に及び腰になり、法案反対どころか賛成に回った」、野党も情けない。「甘利明元TPP担当相が、岸田内閣誕生の論功行賞人事で、二階俊博幹事長に取って代わると、経済安全保障政策の法案化は一気に加速」、「甘利」氏にそんな政治力があったとは意外だ。
・『甘利氏の存在感  経済安保法制のウラには、甘利氏の影響力が見え隠れする。 じつは岸田政権の経済安保戦略は、自民党内で甘利氏が座長として主導した「新国際秩序創造戦略本部」がすでに準備してきたものである。法案自体も、同本部が2020年12月に行った「提言」を上書きしたものに他ならない。 そして今年1月の施政方針演説で、経済安保は「外交・安保」の枠組みではなく、「成長と分配の好循環」を謳った「新しい資本主義」構想の文脈の中で語られるだけであった。とりわけ、コロナ危機のなかで露呈した、あまりにも海外に依存した情報技術(IT)のサプライチェーン・リスクの大きさに、今や「産業のコメ」となった半導体問題が、国産半導体計画へのテコ入れや工場建設等として、経済安保を絡めた政策へ拡大解釈されていった。 振り返れば甘利氏は、昨年10月の衆院選小選挙区で落選(比例区復活)し、幹事長職は退いたものの、その影響力はつづいている。選挙後の同年11月の改造内閣には、先述の自民党「新国際秩序想像戦略本部」でそれぞれ幹事長、事務局長として甘利座長を支えた山際大志郎氏が経済再生担当相(再任)、小林鷹之氏が新設の経済安全保障相、兼科学技術政策・宇宙政策担当相を配置し、経済安保シフトが敷かれた。しかも甘利氏と岸田首相の蜜月はその後も続いており、甘利氏が依然経済安保の「陰の主役」であるという』、「岸田政権の経済安保戦略は、自民党内で甘利氏が座長として主導した「新国際秩序創造戦略本部」がすでに準備してきたものである。法案自体も、同本部が2020年12月に行った「提言」を上書きしたものに他ならない」、「甘利」氏に政治力があったというより、ヒマな時に準備してきたものが、実ったという面もあったようだ。ただ、「甘利氏と岸田首相の蜜月はその後も続いており、甘利氏が依然経済安保の「陰の主役」であるという」、なるほど。
・『経産官僚の動き  経産官僚の動きも注目に値する。 岸田首相官邸では、藤井敏彦内閣官房経済安保法制準備室室長が経済安保を差配するはずだった。しかし藤井氏は、国会への法案提出直前に、無届兼業と朝日新聞の女性記者との不倫問題などのスキャンダルで失脚した。藤井氏は、安倍首相秘書官だった今井氏らが、国家安全保障局に新たに立ち上げた経済班のリーダーとして、古巣の経産省の藤井氏を据え、官邸に経産省の新たな「拠点」とする野心があったようだ。 本来なら首相外交から安全保障政策まで取り仕切りたい外務官僚にとって、「経済安保バブル」は迷惑な話だったはずだが、こうした「失脚」騒動もあり、岸田首相が政務秘書官に抜擢した嶋田隆経産事務次官の前に目下のところ出番はなく、また安倍政権時代の「政高党低」から「政と党のバランス」へと是正され、さしあたっては事なきを得ているようだ。 しかし、今後そうしたバランスが崩れないとも限らない』、「本来なら首相外交から安全保障政策まで取り仕切りたい外務官僚にとって、「経済安保バブル」は迷惑な話だったはず」、さもありなんだ。
・『保守政治の伝統  そもそも経済安保と経産官僚・商工族議員の関係はどのようなものなのだろうか。 かつて戦後日本の経済的繁栄を支えてきた貿易・投資のルール(自由貿易)とパワーポリティクスが形成する国際秩序が崩壊過程に入り、日本が経済において最も深く相互依存している米国、中国の両国の構造的対立は、すでに一部では「冷戦(a cold war)」の局面に入ったとも言われる。 自国ファーストを打ち出し、「力による平和」を強行しようとしたトランプ前米大統領時代以降、日本もTPPを離脱した米国に歩み寄り、インド太平洋地域での中国進出を食い止めるために、日米の協力関係は、「経済」においても一歩踏み出していたのである。 先の自民党「提言」を待つまでもなく、平和的方法としての「国際協調」を後景に追いやり、国民への説明を後回しにして、米国に追随して「同盟国」「同志国」との連携に舵を切ったということのようだ。 そしてそれが、この国の保守政治が脈々と受け継いできた、政治の統治技術であり、その担い手が今回、「通商国家」再生に生き残りに賭ける経産官僚、新商工族議員の面々だったようだ』、「平和的方法としての「国際協調」を後景に追いやり、国民への説明を後回しにして、米国に追随して「同盟国」「同志国」との連携に舵を切ったということのようだ。 そしてそれが、この国の保守政治が脈々と受け継いできた、政治の統治技術であり、その担い手が今回、「通商国家」再生に生き残りに賭ける経産官僚、新商工族議員の面々だったようだ」、なるほど。
・『経産省の来歴  こうした経産官僚や新商工族議員の存在の背景には、長い歴史がある。 1960年代、経産省の前身である通商産業省は、敗戦国・日本を奇跡的な高度経済成長で復活させたとの世界的な評価を得た。1970年代には、二度にわたる石油危機で、霞が関における通産省の地盤地下が始まったが、原子力エネルギー、通信・放送、IT等の科学技術の分野に活路を見出してきた。 しかし、「失われた30年」による国内産業の空洞化と福島原発事故による「原発ムラ」崩壊などを受けて、「経産省解体論」が再燃していた。最近では「霞が関のすき間産業」とも揶揄される、教育、医療、交通・観光等のデジタル分野にも触手を伸ばす。 経産官僚、商工族議員たちの人脈も興味深い。 先述の藤井氏が無届で兼業をしていた「バイト先」である「不識塾」という勉強会は、経営幹部向けのリベラルアーツ研修が売りだった。主宰の中谷巌代表は、1990年代、大阪大や一橋大といった国立大学を拠点に、グローバル資本主義を唱え、時の政権の経済ブレーンとして構造改革路線を主導した。しかし2008年に新自由主義からの転向を表明、以後ビジネスとしての経済への志向を強め、私立の多摩大学では学長までも務めるという異色の経歴を持つ。) その多摩大学に2016年に設置された「ルール形成戦略研究所」という研究開発機構に、顧問やシニアフェロー、客員教授といった肩書きで招聘されていたのが、甘利氏であり、藤井氏であった。逆に、多摩大の同研究所からは、政府や自民党の会合にスタッフが動員され、一連の経済安保戦略つくりに参画しており、「政・官」と「学」の、人脈はお互い共鳴し合ってきた。 またやや余談めくが、同研究所は米国系コンサルタント企業のような色彩が強いと言われてきただけに、中国企業の排除を念頭に、日米間のこれまでの貿易摩擦や防衛装備調達をめぐる衝突などと同様、経済安保も、米国に日本市場を開放していくことに収斂するのではとの懸念が政府内から早くも出ている。ちなみに国家安全保障局で経済安保を先取りした北村氏も、局長辞職後はコンサルト業を起業している。 これらが、経済安保がバブル化している背景と言えるが、では、経済安保にはどのような危うさがあるのだろうか。【後編】「岸田政権が進める「経済安全保障」、その「危うさ」を考える」で詳しく見ていこう』、「中谷巌」氏が「学長」を務める「多摩大学」の「「ルール形成戦略研究所」という研究開発機構に、顧問やシニアフェロー、客員教授といった肩書きで招聘されていたのが、甘利氏であり、藤井氏であった」、【後編】を見てみよう。

次に、この続きを、5月4日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの川邊 克朗氏による「岸田政権が進める「経済安全保障」、その「危うさ」を考える 監視社会に繋がらないか」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/95003?imp=0
・『私が、「経済安全保障」に関心を持ったのは、TBSに入社して間もない1978年に、当時朝日新聞記者だった船橋洋一氏が米国ハーバード大学に提出した論文を基にした著作を読んでからのことであった。 1970年代に国際社会の経済相互依存が強まり、冷戦イデオロギーに代わるヘゲモニー論として注目を浴びた。2010年代になって、米中テクノ覇権戦争にともう知的財産の流出や、国家に退場を迫るグローバル資本主義の巨大IT企業によるデータ独占、さらにサイバー戦争時代の到来等々が話題となり、国家の安全保障も、外交・軍事から経済インテリジェンスへの路線転換が避けて通れなくなった。 日本も、安倍長期政権の下、「選択と集中」で経済成長路線の演出を担ってきた経産官僚が、経済安保戦略に新たな省益を夢想したのも「故なし」というわけではなかったのかもしれない』、「経済安全保障」には長年関心を持っていた「筆者」の見方を詳しく知りたいものだ。
・『保守政治の二つの潮流  戦後の保守政治には、経済成長を巡って、二つの流れがあったという。 「自由な市場経済の下での自助努力」を重んじ、「積極的成長」つまり「消費」の拡大を目指す系譜と、「計画性のある自立経済」を確立し、「安定成長」つまり「生産」を重んじるという系譜である。前者が、吉田茂-池田勇人のハト派の「宏池会」であり、後者が岸信介-福田赳夫のタカ派の「清和会」の流れであった(『評伝 福田赳夫 戦後日本の繁栄と安定を求めて』五百旗頭真編、岩波書店)。 しかし戦後80年にならんとする今、曖昧模糊とした「新しい資本主義」と言い出した宏池会の岸田と、アベノミクスという放漫な自由経済を信奉した清和会の安倍、両氏の立ち位置は完全に入れ替わってしまった。 これは、冷戦崩壊から「ポスト冷戦」後に至る過程で、「ハト派」と「タカ派」がボーダーレス化し、同時に経済面で中ソ等の共産主義国も資本主義体制に移行したため、国家運営の座標軸を見失ってしまったからだろう。この経済成長を巡る保守政治内での倒錯が、安全保障政治に「経済安保」が徘徊する余地を与えることになった』、「曖昧模糊とした「新しい資本主義」と言い出した宏池会の岸田と、アベノミクスという放漫な自由経済を信奉した清和会の安倍、両氏の立ち位置は完全に入れ替わってしまった。 これは、冷戦崩壊から「ポスト冷戦」後に至る過程で、「ハト派」と「タカ派」がボーダーレス化し、同時に経済面で中ソ等の共産主義国も資本主義体制に移行したため、国家運営の座標軸を見失ってしまったからだろう。この経済成長を巡る保守政治内での倒錯が、安全保障政治に「経済安保」が徘徊する余地を与えることになった」、「宏池会の岸田と、アベノミクスという放漫な自由経済を信奉した清和会の安倍、両氏の立ち位置は完全に入れ替わってしまった」、「この経済成長を巡る保守政治内での倒錯が、安全保障政治に「経済安保」が徘徊する余地を与えることになった」、大変、興味深い見解だ。
・『経済安保の危うさ  では、経済安保には、どのような危うさがあるのだろうか。 経産官僚による、一連の経済安保戦略の手段として、国際的なサプライチェーンに関する二つの概念が注目を浴びた。 その一つは、「戦略的不可欠性」である。 先端科学・技術を振興し、他国の追随を許さない産業分野を開拓し、政治的にも国際社会での優位性を打ち立てるというものだ。アカデミズムから民間企業まで、研究機関などを動員した国家システムの構築に主眼を置く。 しかしそれは、「軍産」とか「産学」とか、とかく批判を浴びてきたスキームに直結するものではなく、2004年の国立大学の独立法人化に続き、甘利氏が展開してきた大学資源や知的インフラの活用、大学ファンドなどによる付加価値を創造する「知識産業体」へのイノベーション構想をイメージしているようだ。 戦前、商工省の岸信介、椎名悦三郎ら「革新官僚」は、軍部と一線を画し、官民一体となって、中央集権的な指令型の経済計画を市場型に転換し、計画的な自由経済の創出という「満州国」モデルを打ち立てた。戦略的不可欠性には、そうしたモデルを彷彿とさせるものがあるが、岸氏らの成功体験も、本土帰国後は、図らずも軍部や翼賛政治家らによって軍国主義が貫徹した「国家総動員」体制へ組み込まれていった。 それだけに、政・官の、民への関与・統制は、研究を単なる軍事研究に転用するために動員システムに変質するおそれがある。現在の経済界の「寡黙な抵抗」も当然の成り行きと言えるだろう。 戦略のもう一つの柱が、「戦略的自律性」である。 日本の経済社会活動の維持に不可欠な基幹インフラの強靭化と、そのデータの保全によって、他国、とりわけ「安全保障上の懸念がある国」への過度の依存を排除するというものである。外には基礎科学研究・技術開発の情報漏洩を徹底して阻止し、内には研究者のみならず、研究環境にまで政府の徹底した監視システムを発動するというものだ』、「政・官の、民への関与・統制は、研究を単なる軍事研究に転用するために動員システムに変質するおそれがある。現在の経済界の「寡黙な抵抗」も当然の成り行きと言えるだろう」、確かに「経済界」は沈黙を守っているようだ。「内には研究者のみならず、研究環境にまで政府の徹底した監視システムを発動する」、恐ろしいことだ。
・『警察の権力拡大  こうした米国追随の流れのなか、「経済安保バブル」に素早い反応を見せたのが日本警察、とりわけその中核を担う外事警察である。大都市圏を抱える各警察本部は、専従班を発足させ、「オレオレ詐欺」防止キャンペーンや交通安全運動紛いに、民間企業や大学を対象に、先端技術の海外流出防止策や海外研究者らとの交際術などに関するコンサルティングを買って出ているのである。 1981年の商法改正のときのことが蘇る。この改正は、一部の暴力団が転身した総会屋への利益供与を禁止するというものだったが、汚職や企業犯罪の摘発だけでなく、予防という名目で企業個々への監視とその過程で、企業情報の組織的収集が可能となった。しかも今回の場合は、公安警察機能の拡大に道を開くことが可能になる。 「学問の自由」や「大学の自治」の名の下に、戦後一貫して聖域化されてきた「アカデミア」に警察が公然と足を踏み入れることも容易になりそうだ。その意味では、政府方針に異を唱える人文・社会科学系学者6人の会員任命が拒否された、安倍・菅内閣以来漂流を続けている「日本学術会議問題」は、その助走に過ぎなかったのかもしれない』、「公安警察機能の拡大に道を開くことが可能になる。 「学問の自由」や「大学の自治」の名の下に、戦後一貫して聖域化されてきた「アカデミア」に警察が公然と足を踏み入れることも容易になりそうだ」、「警察権力」にとっては、地位向上の好機のようだ。
・『「ココム」の再現?  冷戦構造の崩壊後の外事警察は、民族・宗教という新たなキー・プレイヤーの出現で、アルカイーダなどのイスラム過激派組織や北朝鮮に翻弄されるが、その後の米中の「経済スパイ戦争」時代を迎え、冷戦型の諜報手法に回帰しそうだ。 かつて外事警察は、共産圏への戦略物資・技術移転を禁止する、対共産圏輸出委員会(ココム)違反事件として、さまざまな主体を摘発してきた。今回は、当時の「共産圏」を「安全保障上懸念がある国」に言い換える、ということだろう。 またココムが毎年改定していた、規制対象となる「ココムリスト」も、所管が経産省から防衛省に移管されたとしても、その運用は外事警察の裁量に委ねられ、さらに特定秘密保護や共謀罪法といった新たな治安立法も駆使するとなると、政・官の民への強権化は必然である。 むしろ、時代が要請している「経済安全保障」は、サイバー・セキュリティが本筋である。技術革新により、サイバー・宇宙・電磁波等々、安全保障の戦域は拡大し、サイバー空間一つとってみても、国際犯罪組織や国家ぐるみのサイバー部隊によって、日本企業は狙い撃ちにされているのが実態である。しかもITインフラの破壊やデータ流出などの被害実態は不明と言うから、何をか況や。 折しもこの4月、警察庁はサイバー局を新設し、独自に広域捜査を行うFBI(連邦捜査局)方式の「サイバー隊」を発足させたが、能力不足は歪めない。 「経済安保バブル」は、中国による南シナ海や東シナ海での領土的膨張や、ロシアによるクリミア併合に始まる現在進行形のウクライナ侵略を受けて、「地政学」ブーム再来と軌を一にしている。第二次世界大戦後も、さまざまな国家間の戦闘は、朝鮮半島、東南アジア、中近東、アフリカ、中南米、中央アジアと、「戦場」を次々に移して、今振り出しのヨーロッパに戻ってきた。) そしてそこで可視化されたのは、「軍事力」「情報力」「外交力」の、安全保障の三つの要諦の現実である。日本はと言えば、うわべだけの「平和主義」といっときだけの「人道主義」に酔いしれている。かと思えば、トップリーダーたちは、無邪気に「核シェア」論や「敵基地先制攻撃」を振りかざし、“国防キッズ”は防衛費増額論を唱導する。 こうした「自衛隊活用論」という「軍事力」の前では、「経済安全保障」は陳腐であり、もはや経済安保バブルは弾けてしまっているのではと錯覚してしまう程である。そして次なる「戦場」が、北東アジアになるとすれば、“ハト派”の岸田首相の謳う「新時代リアリズム外交」は、「平和」にどこまで有効なのだろうか。 国家安全保障政策は、国民の安全と平和を守るために、戦争回避、そのための事前の策が全てである。何よりもまず「外交力」、自立した外交戦略の構想と、冷徹で強かな外交戦術の発想が緊喫の課題である。「平和のハト」は自分でつかむものである。それが、「ウクライナ」の歴史的教訓でもある』、「またココムが毎年改定していた、規制対象となる「ココムリスト」も、所管が経産省から防衛省に移管されたとしても、その運用は外事警察の裁量に委ねられ、さらに特定秘密保護や共謀罪法といった新たな治安立法も駆使するとなると、政・官の民への強権化は必然である」、「むしろ、時代が要請している「経済安全保障」は、サイバー・セキュリティが本筋である」、「この4月、警察庁はサイバー局を新設し、独自に広域捜査を行うFBI(連邦捜査局)方式の「サイバー隊」を発足させたが、能力不足は歪めない」、「トップリーダーたちは、無邪気に「核シェア」論や「敵基地先制攻撃」を振りかざし、“国防キッズ”は防衛費増額論を唱導する。 こうした「自衛隊活用論」という「軍事力」の前では、「経済安全保障」は陳腐であり、もはや経済安保バブルは弾けてしまっているのではと錯覚してしまう程である」、「国家安全保障政策は、国民の安全と平和を守るために、戦争回避、そのための事前の策が全てである。何よりもまず「外交力」、自立した外交戦略の構想と、冷徹で強かな外交戦術の発想が緊喫の課題である。「平和のハト」は自分でつかむものである。それが、「ウクライナ」の歴史的教訓でもある」、その通りだ。

第三に、5月31日付けPRESIDENT Onlineが掲載した前国家安全保障局長の北村 滋氏による「なぜ「防衛庁のミサイル研究データ」は北朝鮮側に渡ったのか…元国家安全保障局長が解説する"流出経路" 委託先、再委託先の把握が不足していた」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/57672
・『2005年、防衛庁(当時)から、ミサイルの研究データが北朝鮮側に流出していたことが判明した。なぜ流出してしまったのか。元国家安全保障局長の北村滋さんは「業務の委託先、再委託先をしっかり把握することが、経済安全保障上は極めて重要だ」と指摘する――。 ※本稿は、北村滋、大藪剛史(聞き手・構成)『経済安全保障 異形の大国、中国を直視せよ』(中央公論新社)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。なお、質疑応答形式でQは質問、Aは回答。
・『ミサイルの研究データが北朝鮮側に流出していた  Q:北朝鮮に絡む情報流出はあったのか。 A:2005年、防衛庁(現・防衛省)から、ミサイルの研究データが北朝鮮側に流出していたことが判明した。 防衛庁は当時、配備を予定していた「03式中距離地対空誘導弾システム」(中SAM)の研究をしていたが、このデータの一部が流出した。 Q:中SAMとは。 A:「地対空」は地上から発射し、対空、つまり空から近づいてくる相手戦闘機などを狙うミサイルのことだ。地対空を意味する英語Surface-to-Air Missileを略したのがSAM。「中」は中距離の略だ。中SAMは「ちゅうさむ」と読む。陸上自衛隊が保有するミサイルだ。 Q:どのような情報が流出したのか。 A:さきほど、「空から近づいてくる相手戦闘機などを狙う」と説明したが、敵が撃ち込んできた他の飛翔体を迎撃することも視野にあったのかもしれない。それに関する説明資料が流出していた。資料の表紙には「平成七年(1995年)四月二十日」と作成日が書かれていた。資料には、中SAMが対象を迎え撃つべき高度や距離、範囲などに関するデータが記載されていた。他国から攻撃された時に自衛隊がどう対処するかという手の内を北朝鮮にさらしてしまったことになる』、「中SAMが対象を迎え撃つべき高度や距離、範囲などに関するデータが記載」、「他国から攻撃された時に自衛隊がどう対処するかという手の内を北朝鮮にさらしてしまったことになる」、情けない限りだ。
・『委託先、再委託先の把握は経済安全保障において極めて重要  Q:どういう経路で流出したのか。 防衛庁は1993~95年、研究開発を三菱電機に委託した。三菱電機は研究に関する社内報告書の作成を三菱総合研究所に委託していた。三菱総研はさらに、「在日本朝鮮人総聯合会」(朝鮮総聯。「主体チュチェ思想」を指導的指針とする在日朝鮮人が組織する民族団体)の傘下団体「在日本朝鮮人科学技術協会」(科協)の幹部だった男性が社長を務める東京・豊島区のソフトウエア会社に、報告書作成関連業務の一部を委託していた。 別の事件が端緒だった。警視庁が2005年10月、薬事法違反容疑で男性の関係先としてこのソフトウエア会社を捜索したところ、資料が見つかった。防衛庁が三菱電機に委託していた中SAMの研究試作に関する報告書にある図表数点と同一だった。図表には、三菱総研のロゴが入っていた。自衛隊法上、機密レベルとしてはかなり高いものだった。 防衛庁は06年1月、情報流出の事実を発表した。男性の会社に業務の一部が委託されていたことは知らなかったという。委託先、再委託先をしっかり把握することが経済安全保障上は極めて重要だ』、「三菱総研」が北朝鮮系の朝鮮人が経営する「豊島区のソフトウエア会社に、報告書作成関連業務の一部を委託」、したことで漏洩したようだ。わざわざ北朝鮮系の朝鮮人が経営する会社に委託するとは信じ難い話だ。
・『設計図流出自体は立件できなかった  Q:設計図流出自体は立件できなかったのか。 A:できなかった。設計図そのものに機密度の高い事項が記載されていなかったからだ。今回の件に限らず、機密度が高い情報は書類に書かず、空白にしておくことが多い。情報保全のためだ。捜査上は、「機微な性能データまでは流出しなかった」という判断になってしまった。 このころは朝鮮総聯と、北朝鮮の金正日一族との関係が現在よりも緊密だった。北朝鮮の貨客船・万景峰マンギョンボン号がまだ定期的に新潟西港(新潟市)に入っていた時期だったから。私は警察庁外事課長の時、万景峰号が入ってくるのを新潟までよく見に行っていた。 その後、北朝鮮への制裁に基づいて、万景峰号は入港できなくなった。これで北朝鮮と朝鮮総聯との人、物資の行き来の大きなパイプが切断されたことになる。それに伴い、朝鮮総聯の北朝鮮本国における発言力も低下しているようだ。 私は内閣情報官だった16年から17年にかけて、北朝鮮が頻繁に弾道ミサイルを発射するという危機を経験した。深夜や未明に官邸に駆けつけるたびに、「流出した中SAMの情報が、日本に飛んでいるミサイルに役立ったのかも知れない」などと思ったものだ』、責任感溢れた感想だ。
・『核開発に使用できる測定機を輸出したミツトヨ事件  Q:2006年には、大手精密測定機器メーカー「ミツトヨ」(川崎市高津区)が、核兵器製造にも使用できる「三次元測定機」を海外に輸出していた事件もあった。 A:三次元測定機とは、文字通り、立体の物を三次元で測るものだ。測る物を測定機の台に置くと、高さ、幅などだけでなく、曲面や輪郭といった形状を測れる。 核開発のためにウランを濃縮するには遠心分離器という機械が必要になるが、これが高速回転できるかどうかを調べるため、円筒のゆがみなどを測定するのに三次元測定機は使われる。遠心分離器の保守管理には不可欠だ。計測誤差が小さいことが求められており、一定水準を上回る高性能の機種は輸出が規制されている。 警視庁は、2006年2月、外為法違反(無許可輸出)の疑いで、ミツトヨの本社や宇都宮市の工場などを捜索した。01年に三次元測定機と、測定機を作動させるソフトウエアを1セットずつ、経産大臣の許可を受けないで中国とタイにある日本企業の現地法人に輸出した疑いだった。現地にそれぞれ、測定機の操作方法を指導する技術者を派遣してもいた。外為法は、軍事転用可能な精密機器の無許可輸出だけでなく、技術指導も禁じている』、「日本企業の現地法人」からさらに輸出されたのだろうか。
・『「核の闇市場」を通じてリビアに運び込まれたようだ  警視庁は、06年8月、ミツトヨの社長、副会長、常務ら5人を外為法違反(無許可輸出)容疑で逮捕した。01年10月と11月、経産大臣の許可を受けないまま、測定機を1台ずつ、約470万円で、東京港からシンガポール経由でマレーシアのミツトヨ現地法人に輸出した疑いだった。うち1台は、国際原子力機関(IAEA)が03年12月~04年1月にリビアに核査察に入った際、核関連研究施設で発見されている。「核の闇市場」を通じて運び込まれたのだろう。 Q:測定機はどういう経緯でリビアに運び込まれたのか。 A:日本のミツトヨ↓シンガポールにあるミツトヨの現地法人↓マレーシアにあるミツトヨの現地法人↓マレーシアの精密機器メーカー「スコミ・プレシジョン・エンジニアリング」↓ドバイ↓リビア というルートだったようだ。 Q:スコミ社とは。 A:パキスタンの「核開発の父」と呼ばれたパキスタン人の核開発研究者アブドル・カディル・カーン博士が、側近に指示して設立した企業といわれる。カーン博士は、インド中部で生まれ、その後、パキスタンに移住した。欧州の核関連施設で働き、ウラン濃縮用の遠心分離器技術を盗み出したとされる人物だ。帰国後はパキスタンの核開発を中心的に担い、核実験を成功させた。「核の闇市場」と呼ばれる世界的なネットワークを作り、北朝鮮とイラン、リビアに核関連技術を提供した。イランと北朝鮮は獲得した技術を生かし、現在も核開発を進めている』、「うち1台は、国際原子力機関(IAEA)が03年12月~04年1月にリビアに核査察に入った際、核関連研究施設で発見されている」、他にもリビア以外で使われているのだろう。
・『ミツトヨの業績は90年代初めから悪化していた  ミツトヨの測定機がスコミ社に納品されたのは02年1月だった。スコミ社は当時、「リビアから発注を受けた」と説明していた。「測定機の操作方法はミツトヨの技術者に教わった」「その様子を撮影したビデオをスコミ社がリビアに持ち込み、リビア側に操作方法を教えた」とも認めていた。ミツトヨの測定機がリビアの核開発に役立っていたことを証明している。 スコミ社からドバイ、ドバイからリビアへの海上輸送に使われた貨物船は、イラン船籍だった。一連の動きに関わっている勢力が、イランにもいたのだろう。 Q:ミツトヨはイランと関係があるのか。 A:ミツトヨは、1989年から5年間にわたり、毎年1台ずつ、測定機などをイランに輸出していた。イランの軍事機関である革命防衛隊や国防軍需省、核開発関連企業が輸出の相手先だった。 Q:イランに輸出するきっかけは。 A:イラン出身で日本に帰化した男性が経営する東京都渋谷区の商社が輸出をミツトヨに提案していた。この商社は、対戦車ロケット砲の照準器に使われる目盛り板を埼玉県の光学機器メーカーがイランに無許可輸出した外為法違反事件で、00年1月に警視庁に捜索されている。イランが日本企業から軍事物資や精密機器類を調達する際の窓口だったのだろう。 そもそも、ミツトヨは、バブル崩壊のあおりを受けて90年代初めから、業績が急速に悪化していた。有望な輸出先を探していたのだろう』、「業績が急速に悪化」、していたのであれば、何とかしたくなるのだろう。
・『「このままでは何も輸出できなくなる。何とかしろ」  そうしたさ中、イランに輸出を続けていたミツトヨに転機が訪れる。 92年7月、ミツトヨは、イラン企業に三次元測定機を輸出しようと、当時の通商産業省(現・経済産業省)に届け出た。ところが、通産省は93年6月、測定機は核兵器製造にも使えるとの理由で、外為法に基づき、輸出を許可しなかった。92年末の外為法関連政令改正で、輸出規制対象製品が18種類から、精密測定機器を含む51種類に拡大されていた。93年以降、大量破壊兵器の開発疑惑の強いイラン、イラク、リビア、北朝鮮の「懸念国」4カ国への輸出で5万円以上の取引となるケースは、すべて通産大臣の許可が必要となった。 ミツトヨの経営幹部が93年ごろ、「このままでは何も輸出できなくなる。何とかしろ」と輸出管理の担当者に指示していたことが判明している。この輸出不許可が、無許可輸出を行うようになったきっかけかもしれない。 輸出先としてシンガポールの現地法人を選んだのは、規制を逃れる迂回うかい戦術だったのだろう。ミツトヨがシンガポールの現地法人への輸出を急増させたのは、イランへの輸出規制が強まった後の95年以降だ。それまで年間20台程度だった精密機器類の輸出は、年間約200台のペースになっていった。海外の現地法人などを経由することで、懸念国への直接輸出を避ける狙いがあったのだろう』、「ミツトヨの経営幹部が93年ごろ、「このままでは何も輸出できなくなる。何とかしろ」と輸出管理の担当者に指示していたことが判明している。この輸出不許可が、無許可輸出を行うようになったきっかけかもしれない」、「何とかしろ」、とは強烈な命令だ。
・『性能を低く見せかけて輸出していた  Q:どうやって、輸出規制をかいくぐっていたのか。 A:三次元測定機の性能を低く見せかけて輸出していた。性能を示す数値を低く見せかける数値改竄ソフトを自社開発していた。実に悪質だ。逮捕された副会長や常務らが中心になって開発したようだ。改竄ソフトは、測定機が物体をどのくらい正確に計測できるかといった性能データを実際より低い数値で表示する仕組みだった。 イランなどへの輸出規制が厳しくなった後の、遅くとも94年ごろに開発されたようだ。ソフトは「COCOM」と名付けられていた。 Q:COCOMとはどういう意味か。 A:対共産圏輸出統制委員会の英語名、Coordinating Committee for Multilateral Strategic Export Controlsの略だ。ココムと読む。冷戦当時、共産圏の国々への軍事技術、戦略物資の輸出を規制していた組織だ。日本も加わっていた。ミツトヨとしては、「自由な輸出を阻んできたCOCOMのようなものを打ち破りたい」という思いがあったのかもしれない。 このソフトを使った不正輸出が始まったのは95年ごろからのようだ。測定機を輸出する時にこのソフトを使い、数値を実際よりも低く見せかける偽装(スペックダウン)が恒常的に行われていた。輸出後にソフトをもう一度入れると、数値が元に戻る仕掛けだった。 当時の捜査で、ソフトの入ったCD-ROMが約1000枚押収されたのは忘れられない。測定機を約1000台、不正輸出していたということを意味するからだ』、「性能を示す数値を低く見せかける数値改竄ソフトを自社開発していた。実に悪質だ。逮捕された副会長や常務らが中心になって開発したようだ」、ここまでやるとは極めて悪質だ。
・『効率的に審査をする制度が「抜け道」として悪用された  逮捕容疑となった2001年10月と11月の不正輸出でも、輸出直前の書類には、計測誤差が実際より大きいように書き換えられていた。製造直後の完成検査では、輸出規制に触れる数値になっていたにもかかわらず、だ。 Q:ミツトヨ社内の輸出管理体制はどうだったのか。 A:逮捕された社長は、社内のチェック機関である「輸出管理審査委員会」の最高責任者を務めていたが、他の容疑者らによる不正輸出を黙認していたようだ。ミツトヨの関係者は「社内に輸出管理規定はあるが、管理体制は甘い。ほとんどチェックできていない」と話していた。 しかも、ミツトヨは1996年2月、通産大臣から、輸出にあたって輸出審査を個別に受けなくても済む「包括許可」を受けていた。包括許可は、 ・輸出する製品の性能が比較的低い ・輸出先が、大量破壊兵器を開発する「懸念国」ではない ことなどを条件に、個別の輸出許可審査を省く制度だ。許可を更新するまでの3年間は事実上、無審査となる。 外為法違反(無許可輸出)の疑いで警視庁の捜索を受けたことで、2006年6月には許可を取り消されたが、効率的に審査を進める国の制度が、抜け道として悪用されていたわけだ。 IAEAがリビアでの査察で、三次元測定機を見つけなかったら、無許可輸出が明らかにならなかった可能性もある』、「1996年2月、通産大臣から、輸出にあたって輸出審査を個別に受けなくても済む「包括許可」を受けていた」、「外為法違反(無許可輸出)の疑いで警視庁の捜索を受けたことで、2006年6月には許可を取り消されたが、効率的に審査を進める国の制度が、抜け道として悪用されていたわけだ」、「IAEAがリビアでの査察で、三次元測定機を見つけなかったら、無許可輸出が明らかにならなかった可能性もある」、「ミツトヨ」にとっては、ついてなかったことになるが、違法輸出が続いていたとすれば、それは由々しい大問題だったことになる。やはり見つけてくれた「IAEA」に感謝すべきだろう。
タグ:「性能を示す数値を低く見せかける数値改竄ソフトを自社開発していた。実に悪質だ。逮捕された副会長や常務らが中心になって開発したようだ」、ここまでやるとは極めて悪質だ。 (その12)(いま「経済安全保障」が 驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑、岸田政権が進める「経済安全保障」 その「危うさ」を考える 監視社会に繋がらないか、なぜ「防衛庁のミサイル研究データ」は北朝鮮側に渡ったのか…元国家安全保障局長が解説する"流出経路" 委託先 再委託先の把握が不足していた) 現代ビジネス 安全保障 「ミツトヨの経営幹部が93年ごろ、「このままでは何も輸出できなくなる。何とかしろ」と輸出管理の担当者に指示していたことが判明している。この輸出不許可が、無許可輸出を行うようになったきっかけかもしれない」、「何とかしろ」、とは強烈な命令だ。 「日本企業の現地法人」からさらに輸出されたのだろうか。 「曖昧模糊とした「新しい資本主義」と言い出した宏池会の岸田と、アベノミクスという放漫な自由経済を信奉した清和会の安倍、両氏の立ち位置は完全に入れ替わってしまった。 これは、冷戦崩壊から「ポスト冷戦」後に至る過程で、「ハト派」と「タカ派」がボーダーレス化し、同時に経済面で中ソ等の共産主義国も資本主義体制に移行したため、国家運営の座標軸を見失ってしまったからだろう。この経済成長を巡る保守政治内での倒錯が、安全保障政治に「経済安保」が徘徊する余地を与えることになった」、「宏池会の岸田と、アベノミクスという放漫な 「経済安全保障」には長年関心を持っていた「筆者」の見方を詳しく知りたいものだ。 「1996年2月、通産大臣から、輸出にあたって輸出審査を個別に受けなくても済む「包括許可」を受けていた」、「外為法違反(無許可輸出)の疑いで警視庁の捜索を受けたことで、2006年6月には許可を取り消されたが、効率的に審査を進める国の制度が、抜け道として悪用されていたわけだ」、「IAEAがリビアでの査察で、三次元測定機を見つけなかったら、無許可輸出が明らかにならなかった可能性もある」、「ミツトヨ」にとっては、ついてなかったことになるが、違法輸出が続いていたとすれば、それは由々しい大問題だったことになる。やは 「国家安全保障政策は、国民の安全と平和を守るために、戦争回避、そのための事前の策が全てである。何よりもまず「外交力」、自立した外交戦略の構想と、冷徹で強かな外交戦術の発想が緊喫の課題である。「平和のハト」は自分でつかむものである。それが、「ウクライナ」の歴史的教訓でもある」、その通りだ。 「業績が急速に悪化」、していたのであれば、何とかしたくなるのだろう。 「うち1台は、国際原子力機関(IAEA)が03年12月~04年1月にリビアに核査察に入った際、核関連研究施設で発見されている」、他にもリビア以外で使われているのだろう。 責任感溢れた感想だ。 『経済安全保障 異形の大国、中国を直視せよ』(中央公論新社) PRESIDENT ONLINE 「またココムが毎年改定していた、規制対象となる「ココムリスト」も、所管が経産省から防衛省に移管されたとしても、その運用は外事警察の裁量に委ねられ、さらに特定秘密保護や共謀罪法といった新たな治安立法も駆使するとなると、政・官の民への強権化は必然である」、「むしろ、時代が要請している「経済安全保障」は、サイバー・セキュリティが本筋である」、「この4月、警察庁はサイバー局を新設し、独自に広域捜査を行うFBI(連邦捜査局)方式の「サイバー隊」を発足させたが、能力不足は歪めない」、「トップリーダーたちは、無邪気に「 「公安警察機能の拡大に道を開くことが可能になる。 「学問の自由」や「大学の自治」の名の下に、戦後一貫して聖域化されてきた「アカデミア」に警察が公然と足を踏み入れることも容易になりそうだ」、「警察権力」にとっては、地位向上の好機のようだ。 「政・官の、民への関与・統制は、研究を単なる軍事研究に転用するために動員システムに変質するおそれがある。現在の経済界の「寡黙な抵抗」も当然の成り行きと言えるだろう」、確かに「経済界」は沈黙を守っているようだ。「内には研究者のみならず、研究環境にまで政府の徹底した監視システムを発動する」、恐ろしいことだ。 川邊 克朗氏による「岸田政権が進める「経済安全保障」、その「危うさ」を考える 監視社会に繋がらないか」 「中谷巌」氏が「学長」を務める「多摩大学」の「「ルール形成戦略研究所」という研究開発機構に、顧問やシニアフェロー、客員教授といった肩書きで招聘されていたのが、甘利氏であり、藤井氏であった」、【後編】を見てみよう。 「平和的方法としての「国際協調」を後景に追いやり、国民への説明を後回しにして、米国に追随して「同盟国」「同志国」との連携に舵を切ったということのようだ。 そしてそれが、この国の保守政治が脈々と受け継いできた、政治の統治技術であり、その担い手が今回、「通商国家」再生に生き残りに賭ける経産官僚、新商工族議員の面々だったようだ」、なるほど。 「本来なら首相外交から安全保障政策まで取り仕切りたい外務官僚にとって、「経済安保バブル」は迷惑な話だったはず」、さもありなんだ。 「岸田政権の経済安保戦略は、自民党内で甘利氏が座長として主導した「新国際秩序創造戦略本部」がすでに準備してきたものである。法案自体も、同本部が2020年12月に行った「提言」を上書きしたものに他ならない」、「甘利」氏に政治力があったというより、ヒマな時に準備してきたものが、実ったという面もあったようだ。ただ、「甘利氏と岸田首相の蜜月はその後も続いており、甘利氏が依然経済安保の「陰の主役」であるという」、なるほど。 「経済安保バブル」とは興味深そうだ。「当初は「対決法案」と豪語し、立法に反対していた立憲民主党をはじめとする野党の議員が、こぞって、ロシアのウクライナ侵攻であらわになった「戦争リアリティ」に及び腰になり、法案反対どころか賛成に回った」、野党も情けない。「甘利明元TPP担当相が、岸田内閣誕生の論功行賞人事で、二階俊博幹事長に取って代わると、経済安全保障政策の法案化は一気に加速」、「甘利」氏にそんな政治力があったとは意外だ。 川邊 克朗氏による「いま「経済安全保障」が、驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑」 「三菱総研」が北朝鮮系の朝鮮人が経営する「豊島区のソフトウエア会社に、報告書作成関連業務の一部を委託」、したことで漏洩したようだ。わざわざ北朝鮮系の朝鮮人が経営する会社に委託するとは信じ難い話だ。 北村 滋氏による「なぜ「防衛庁のミサイル研究データ」は北朝鮮側に渡ったのか…元国家安全保障局長が解説する"流出経路" 委託先、再委託先の把握が不足していた」 「中SAMが対象を迎え撃つべき高度や距離、範囲などに関するデータが記載」、「他国から攻撃された時に自衛隊がどう対処するかという手の内を北朝鮮にさらしてしまったことになる」、情けない限りだ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

安全保障(その11)(圧倒的に議論が不足している経済安全保障問題、「経済安保法制」は看板に偽りあり?法案の欠陥を徹底検証、日本の安全保障政策 今こそ「英国」との連携強化を急ぐべき理由) [外交・防衛]

安全保障については、2月10日に取上げた。今日は、(その11)(圧倒的に議論が不足している経済安全保障問題、「経済安保法制」は看板に偽りあり?法案の欠陥を徹底検証、日本の安全保障政策 今こそ「英国」との連携強化を急ぐべき理由)である。

先ずは、2月16日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家に冷泉彰彦氏による「圧倒的に議論が不足している経済安全保障問題」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2022/02/post-1260_1.php
・『<日本経済の問題の本丸は、生産拠点だけでなく先端技術などの高付加価値部門まで国外に流出させて国内産業を空洞化させていること> 岸田政権は「経済安全保障」を重要政策と位置付けており、その法制化、つまり「経済安全保障法制」を制定しようとしています。重要なテーマだと思いますが、圧倒的に議論が不足しています。 非常に単純化していえば、まず一方には、日本の技術が外国に勝手に持ち出されて日本を敵視するような軍事転用がされては大変だとか、同盟国からも要請があるので規制すべきだという立場があります。これは、いわば積極推進派ということになるのでしょう。 反対に、現状としては日本の製造業の多くの企業は中国などを製造拠点にしており、技術の持ち出しはすっかり日常化しています。そんな中で、突然法律が適用されて、公安調査庁の係官が怖い顔をして監視に入ってくるようでは、日常業務が回らないという不安もあるようです。つまり経済界としては一般的にやや消極的というのが本音だと思います。罰則規定を緩和して欲しいというような意見として出ているのはこの立場です。 経済界の中でも、軍需という公共投資に期待する中で、経済安全保障政策の強化を歓迎する部分もあるようです。軍需は非公開ですからイノベーションに後ろ向きになるし、市場は同盟国に限定され、また自国の財政を毀損し、最終的には死の商人に堕落して国家同士の対立を歓迎するということから、過度に依存すると「安全の保障」にはなリません。ですが、産業によっては、過去の産業衰退をどうすることもできなかった経緯の延長で、一線を越えて積極的になる勢力はあるわけです』、確かに「経済安全保障」論議は、経産省あたりから唐突に出てきたようだ。
・『日本経済の「産業空洞化」  難しいのはコンピュータのソフトに関する安全保障です。特に最先端のプログラミング技術を駆使して、ターゲットのサーバなどに不正アクセスして社会に大きな損害を与える「サイバーテロ」の問題については、単に法律を作って取り締まるだけでは効果は限定的です。具体的には、個々の局面で「より高い技術力によって防御を行う」という「力と力」ならぬ「知恵と知恵の戦い」に勝利していかねばなりません。必要な人材を育成し、相互に信用して活躍させる仕組みが何としても必要です。 さらに言えば、巨額の資金と努力を注ぎ込んで開発した技術を、外国に売り渡すという行為への反省も必要と思います。半導体や液晶技術に関しては、基礎的な技術の多くが日本の発明であるにも関わらず、経営力と資金不足のために多くのノウハウが国外に流出しました。国策として進められた増殖炉技術についても、海外に安く叩き売りされてしまいました。このように、国家そのものを構成する技術を切り売りするというのは、仮に非軍事であっても経済安全保障に反するという考え方も必要と思います。) 以上は狭い意味の経済安全保障ですが、より広い意味の考え方に立てば、何よりも国際競争の中で勝っていかねばならないという問題は避けて通ることはできません。一番の問題は空洞化の進行です。日本は他の産業国と同様に、より人件費の安い国に生産拠点を移動したり、消費地へ生産を移動するという「クラシックな空洞化」を進めてきました。 その空洞化が過度になっているだけでなく、日本経済の場合は先端技術の研究開発やデザインなど高付加価値の部分も国外に流出させています。これは日本独特の問題であり、その結果として空洞化した後の国内を「知的産業による先進国経済」に転換させることに失敗し、大卒50%という社会で観光と福祉を基幹産業にせざるを得ないという苦しい国策に追い込まれています。 この問題こそが本丸です。今は機密を囲い込みながら監視を強めて、軍需に依存するというサイクルに入るべき時期ではないと思います。そう考えると、岸田政権が「狭い意味での経済安全保障政策」については、 ・「サプライチェーンの強化」 ・「基幹インフラにおける事前安全性審査制度」 ・「重要技術の研究開発推進」 ・「特許非公開制度」 といった4点に絞り込み、反対にそれ以外に関しての過剰な規制は避けているのは理解できます。経済安全保障の中で最も大切なのは、競争力の維持です。狭い意味での経済安全保障にこだわった結果、経済活動が萎縮するとか、複雑な申請手続きを嫌って、かえって空洞化が加速するというような制度設計は避けなければならないと思います』、「空洞化した後の国内を「知的産業による先進国経済」に転換させることに失敗し、大卒50%という社会で観光と福祉を基幹産業にせざるを得ないという苦しい国策に追い込まれています」、寂しい限りだが、日本で起業家精神の欠如からベンチャー企業の創業が伸び悩んでいる状況では、やむを得ない。

次に、3月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏による「「経済安保法制」は看板に偽りあり?法案の欠陥を徹底検証」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/300498
・『経済安保法案が衆院本会議で審議入りした。充実した審議が期待されるが、そもそも経済安保法案の論点や問題点はどこまで理解されているのだろうか?この法案の論点や問題点について、独自の視点から分析・検証してみたい』、興味深そうだ。
・『経済安保法案が国会審議入り その論点とは?  「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案」(以下、「経済安保法案」という)が審議入りした。今年3月18日に衆院内閣委員会において本法案担当の小林鷹之内閣府特命担当相による趣旨説明が行われ、23日から本格的な質疑が行われている。審議時間は40時間程度確保されているようであり、経済産業委員会との連合審査会も行われることとされている。 経済安保法案については、昨年の自民党総裁選のときから世の注目を集めるようになり、岸田政権の目玉政策の一つともなっている。その一方で、経済安保法案の事務方の責任者である内閣審議官の情報漏えい疑惑が「文春砲」によって明るみに出るなど、順調にここまでたどり着いたとはいえない状況である。 野党はそうした点も含めて追及する構えを見せているようであるが、経済安保に関する法案の企画・立案段階で情報が漏えいしていたのだとすれば、そもそも経済安保を語る以前の問題であるとしかいいようがなく、法施行後の体制のあり方も含めて厳しく追及するのは当然であるし、うやむやにしてはいけない問題ではある。 しかし、スキャンダル追及のような質疑に終始しては、肝心な法案の中身の細部にわたった審議がおろそかにされることになり、今後のわが国の安心安全に関わる重要法案が不十分な審議のまま成立することになりかねない。そのようなことのないように、バランスの取れた、充実した審議が期待されるが、そもそも経済安保法案の論点や問題点はどこまで理解されているのだろうか? そこで、本稿では、経済安保法案の論点や問題点について、独自の視点から分析・検証してみたいと思う』、「経済安保法案の事務方の責任者である内閣審議官の情報漏えい疑惑が「文春砲」によって明るみに出る」、「法案の企画・立案段階で情報が漏えいしていたのだとすれば、そもそも経済安保を語る以前の問題であるとしかいいようがなく、法施行後の体制のあり方も含めて厳しく追及するのは当然であるし、うやむやにしてはいけない問題ではある」、なんとも緊張感を欠いた話だ。
・『経済安保法案の趣旨とは「安全保障の確保」につながる?  経済安保法案は、「国際情勢の複雑化、社会経済構造の変化等に伴い、安全保障を確保するためには、経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為を未然に防止する重要性が増大していることに鑑み」、以下を策定・創設するものだ。 1 安全保障の確保に関する経済施策を一体的に講ずるための政府としての基本方針を策定  2 特定重要物資の安定的な供給の確保に関する制度、特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関する制度及び特定重要技術の開発支援や特許出願の非公開に関する制度を創設  ここで、特定重要物資とは、国民生活に必要不可欠な物資や、国民生活や経済活動が依拠している重要な物資、さらにその生産に必要な原材料等について、外部に過度に依存していたり、そのおそれがあったりする場合に、安定供給の確保が特に必要なものとして政令で指定されるものである。現段階では具体的なものは示されていないが、例えば半導体や医療関係物資等が想定されている。 特定社会基盤役務とは、「国民生活及び経済活動の基盤となる役務であって、その安定的な提供に支障が生じた場合に国家及び国民の安全を損なう事態を生ずるおそれがあるもの」である。こちらは具体的な対象が法案50条第1項に列挙されており、それらをいくつか挙げれば、電気、水道、ガス、石油備蓄、鉄道、自動車貨物輸送、海上貨物輸送、航空運送、放送通信、金融などである。 これらの役務を提供する事業者のうち、その設備が停止したり、機能低下したりした場合に、特定社会基盤役務の提供に支障を来し、国家・国民の安全を損なうおそれが大きいものとして主務省令で定める基準に該当する者が、特定社会基盤事業者として、主務大臣が指定する(主務省令とは当該特定社会基盤役務を所管する府省の命令のことであり、主務大臣とはその大臣である。要するにどれを指定するかは各府省において決められるということである)。 そして本法案が創設する制度とは、前者については安定供給の確保を、後者については外部からの妨害などにより安定的な役務の提供に支障を来すことがないようにするものである。したがって、非常時も想定して、それが効果的に行うことができるような制度設計となっているか否かが重要なポイントとなる。 総論としては、政府が国会に提出したこの経済安保法案は、非常時ではなく平時を前提にしたような内容となっており、とても「安全保障の確保」につながるようなものとはいえないだろう(もちろん、非常時を念頭に置いて平時から準備をしておくという趣旨なのだろうし、だからこそ「経済施策を一体的に講ずることによる」安全保障の確保なのであり、「確保の推進」なのであろう)。 しかも、新型コロナに今度はウクライナ危機と、ことここに至ってやっと動きだしたわけであり、遅きに失したとしかいいようがない。無論、必要な法制であることに異論を挟む余地はない。したがって、審議を通じて必要な修正が施され、結果としてしっかりとした内容で整備されれば、その遅れも挽回されると考えたいところであるが、どうであろうか。以下、具体的な点を挙げながら見ていこう』、どうなのだろう。
・『非常時に対応できるのか?法案の条文から検証  まず、第1条などに「経済活動に関して行われる国家及び国民の安全を害する行為」という規定があるが、これが具体的に何を指すのか、法案段階では不明である。この範囲を曖昧にしたり、経済界などに忖度して狭めたり、限定的にしたりすれば、実効性が著しく低下することになりかねない。要は「ザル法」になりかねないということである。その他にも基本方針などに記載すべき事項が具体的に示されていない。 もっとも、他の法律でもより具体的な事項は政令以下に落とすということは普通に行われているので、それ自体が直ちに問題というわけではない。問題は、こうした点を内閣委員会の質疑の中で明らかにし、国会の審議に係らしめられない政令以下の制定も律していくことができるかである。当然のことながら、野党の質問能力いかんが大きく関わってくるが、「国会での審議を踏まえて今後検討」といったような逃げの答弁を許すようなことがあってはいけない。せめて判断基準などに関する答弁は引き出してもらいたいところであるが。 次に、経済安保法案と国の役割についてである。先にこの法案は平時を前提としたような内容であると述べたが、まさにそれを如実に表しているのが、この法律の施行に係る国の財政措置についてである。法案第4条第3項には「国は、安全保障の確保に関する経済施策を総合的かつ効果的に推進するために必要な資金の確保その他の措置を講ずるよう努めるものとする」と記載されている。何の変哲もない規定と思われるかもしれないが、「必要な資金」というのがまず引っかかる。しかもその「確保」である。もし国が積極的に財政支出をしようという考えを持ち、それが経済安保法案に反映されているというのであれば、例えば「◯◯に係る費用については、国において財政上必要な措置を講ずるものとする」といった書きぶりになるはずである。 そもそも、「努めるものとする」との努力規定になっている。これでは経済安全保障といいながら、最初から国の役割は最小限にとどめ、民間任せにしようとしているとしか思えない。新型コロナの感染拡大によって、世界各国が国の、政府の役割の重要性についてこれだけ強く認識し、財政支出をはじめとしてその役割を十二分に果たそうとし、それはこのパンデミックの後も当面続けていこうと昨年のコーンウォールサミットでも共同声明という形で合意されたというのに、である。 その他、これに似たものとして、例えば、法案第6条第2項第5号に規定する、安定供給確保基本指針に定める「特定重要物資の安定供給確保のための取組に必要な資金の調達の円滑化の基本的な方向に関する事項」のうち、「必要な資金の調達」についても同様の指摘が可能である。こうした国の財政上の役割の放棄とも取れるような規定については、与野党問わず追及していく必要があろう。もしその質疑において、政府が臆面もなく民間主体で考えているとの趣旨の答弁をするようなことがあれば、大問題である。 さらに、第3節に「株式会社日本政策金融公庫法の特例」が規定され、供給確保促進円滑化業務について規定されている。その仕組みは、法第16条に基づき主務大臣により指定された指定金融機関に公庫から資金を貸し付け、指定金融機関が、特定重要物資として指定された物資を供給する事業者として、所管大臣に認定された認定供給確保事業者に対して事業に必要な資金を貸し付けることとされている。 平時を想定した他の法令であればこうした仕組みでも一向に構わないだろう。しかし、経済安全保障に関する法案である。先にも述べたように、平時にこの体制で準備しておいて非常時に備える趣旨であるとも考えられるが、非常時はいつ来るか分からない。そうであれば、平時から非常時を想定して備える、少なくとも非常時を主眼とした制度設計にしておくべきではないのか。そうした趣旨はこうした規定からは全く読み取れない。 一応、安定供給確保支援法人(法案第31条に基づき主務大臣により指定された一般社団法人、一般財団法人など)に基金を設けさせ、国が資金を補助し、それを原資として認定供給確保事業者に対して助成を行うことができることとされている。しかし、国からはあくまでも補助金であって必要な資金を満額出すわけではないようであるし、事業者に対して助成を行うのはあくまでも安定供給確保支援法人である。なんとややこしい、まどろっこしい仕組みなのか。既存の官民ファンドを改組するなりして、その組織が一括して、国が直接的に財政支援するというのに近い形での助成ではなく支援なり、補助なり、投資を行う仕組みを考えるべきではないか。そもそもこんなややこしい仕組みでは非常時には対応できないだろう。) また、これに関して別の問題点として、先に触れた実際に貸し付けを行う指定金融機関となり得る者に、わが国の銀行法に基づく銀行業の免許を得ている外国銀行支店は含まれるのだろうか。含まれるのだとしたら、経済安全保障に穴を開けるようなものなのではないか。 安定供給確保支援法人についても、外国勢力と何らかの関係があるか否かをしっかりと確認するのだろうか。外国人役職員の有無、外国との交流等の関係性など、厳格・厳密に審査しなければ、経済安全保障との関係において「ザル規定」になるのではないか。 特定社会基盤役務に関しても、導入や維持管理の委託について事前の計画の届出・審査が規定されている。コンセッションはこの対象に入って当然だと考えられるが、まさか適用除外などとはいうまい。その場合であって、導入・維持管理の委託先に外資系企業(外国企業が資本関係において支配的である企業のみならず、外国企業の指示や指導を受けて事業を行う企業を含む)が入っている(実際に業務を行う場合のみならず、特定目的会社などに出資している場合も含む)場合は、どう取り扱うつもりなのだろうか。水道や空港では既に外資系企業も加わってコンセッションが導入されているが。 その他、法案第7条などに規定されている「~外部に過度に依存し、又は依存するおそれがある場合において、外部から行われる行為により国家及び国民の安全を損なう事態を未然に防止するため」に関し、「外部」とは単に国の外部ということなのか、外国を意味するのか、外国企業を意味するのか、全く不明である。のみならず、例えば、法案第52条第2項第2号ハに規定する特定妨害行為に関し、「我が国の外部から行われる特定社会基盤役務の安定的な提供を妨害する行為」とあるが、「我が国の外部から」だけでよく、国内にいる外国勢力などからそのような行為が行われた場合は含まれないのか不明である。含まれないのであれば、これまた「ザル規定」である。 そもそも、この法案には、多くの独自の用語が規定されているにもかかわらず、他の法律であれば当然に設けられている(多くの場合は第2条において)定義に関する条文がない。 また、それとは少々毛色の違う話ではあるが、第5条に「この法律の規定による規制措置の実施に当たっての留意事項」にとして、規制措置は「安全保障を確保するために合理的に必要と認められる限度において行わなければならない」としているが、経済安全保障という非常時対応のための法案にもかかわらず、規制を最小限にと規定するとは、やはり安全保障についての緊張感のかけらもない、万年平時の法案ということの証左のようである』、「定義に関する条文がない」のはやはり問題だ。ただし、「規制を最小限にと規定するとは、やはり安全保障についての緊張感のかけらもない」、のは、規制緩和の時代では当然なのではなかろうか。
・『経済安全保障を担保したいなら国が前面に出て役割を果たすべき  細かい問題点を指摘していけば、枚挙にいとまがないぐらいであるが、真にわが国の経済安全保障を担保する法制としたいのであれば、国内製造・国内調達やインフラ管理運営の自前主義を前提として、国が前面に出てそれに必要な財政支出と強い規制によってその役割を果たすことが必須である。 国際情勢の複雑化などを本法案の目的とするのであれば、いい加減、経済における平和ボケやグローバル化幻想からも目を覚ます必要があるのではないか』、しかし、自由主義経済での企業活動は極めて多面的で、「国が前面に出」る余地は余りないのではなかろうか。

第三に、4月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「日本の安全保障政策、今こそ「英国」との連携強化を急ぐべき理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/301800
・『ウクライナの想像を超える奮戦で、ウクライナ紛争が長期化・泥沼化している。そのウクライナの背後には、「味方した方が戦争に勝つ」という「不敗神話」を持つ英国の存在がある。日本の安全保障問題も議論に上がる中で、今一度、英国との協力関係を見直したい』、興味深そうだ。
・『「戦争は英国が付いた方が勝つ」、ウクライナでも当てはまるか  ウクライナは、ロシアのミサイル攻撃に屈せず、その後の地上戦で頑強な抵抗を見せてきた。威力を発揮している武器は、対戦車ミサイル「ジャベリン」、トルコ製のドローン「バイラクタルTB2」、歩兵が肩に担いで撃てる地対空ミサイル「スティンガー」といったものだ。NATOから提供されたこれらの兵器は、開戦前からウクライナが保有していて、ロシア軍を待ち構えていたと、一部メディアでは報じられている。 実は、米英側は、ロシア軍の動きを掌握していた。昨年11月には、バイデン米大統領やジョンソン英首相が、ロシアのウクライナ大規模侵攻の懸念を訴えていた。実際、その頃、ロシア軍約9万人がウクライナとの国境沿いに集結していた。 だが、ウクライナのレズニコフ国防相が「侵攻が迫っている兆候はない」と発言するなど、まだ誰も本当にロシア軍がウクライナに侵攻するとは考えていなかった。 そんな中、昨年12月、ワシントン・ポストが、情報機関の文書の内容として、「ロシアがウクライナ侵攻を計画中」と報じ、ウクライナ国境に終結したロシア軍の規模や侵攻ルートを指摘した。驚くべきは、実際に侵攻が始まったときの規模・侵攻ルートを正確に的中させたことだ。(Washington Post“Russia planning massive military offensive against Ukraine involving 175,000 troops, U.S. intelligence warns”)。 今年2月24日、戦闘が始まると、ウクライナ軍が、ロシア軍の経路、車列の規模、先端の位置などを把握して市街地で待ち伏せし、対戦車ミサイルやドローンでロシア軍を攻撃した。ロシア軍は、多数の死者を出した。 これが可能だったのも、米英の情報機関の支援があるからだ。米英側は、ロシア政府・軍の意思決定をリアルタイムに近い形で把握している。 過去の日本の歴史を振り返ると、戦争は英国が付いた方が勝つという「不敗神話」がある。なぜ英国が鍵なのか、そして日本にとって英国との関係がいかに大事だったのか解説しよう』、「ワシントン・ポスト」が「昨年12月」に「「ロシアがウクライナ侵攻を計画中」と報じ、ウクライナ国境に終結したロシア軍の規模や侵攻ルートを指摘した。驚くべきは、実際に侵攻が始まったときの規模・侵攻ルートを正確に的中させた」、さすがに驚くべき情報収集力だ
・『日露戦争で日本が勝ったのは英国の力のおかげ?  ウクライナ紛争そのものから少し離れて、日本の安全保障政策を考えてみたい。注目のひとつが、英国との協力関係の構築である。 日本は、英国の「不敗神話」と浅からぬ因縁がある。例えば、「大英帝国」が歴史上初めて同盟を結んだのが日本であるが、その日本がロシアと戦った「日露戦争」だ。 日本を目指したロシアの「バルチック艦隊」が、大西洋から喜望峰を通過し、インド洋を進み休息を取ろうとした港はことごとく大英帝国の支配下にあった。嫌がらせを受け続けたバルチック艦隊は、日本に着いたときには疲労困憊となり、万全の態勢で待ち構えていた日本の連合艦隊の猛攻撃を受け、ほぼ全滅という大敗を喫した。 また、大英帝国は日本に対して、日露戦争遂行のための膨大な物資調達に必要な多額の資金援助を行った。 日本は1000万ポンドの外国公債の募集をしたが、まずロンドン市場が500万ポンドを引き受けた。残りの500万ポンドについては、ロンドン滞在中だったユダヤ系銀行家ジェイコブ・シフが支援して、ニューヨークの金融街が引き受けた。 大英帝国は日本に情報戦での協力も行った。大英帝国の諜報機関が、ロシア軍司令部に入り込み、ロシア軍の動向に関する情報や、旅順要塞の図面などを入手し、日本に提供した。 日本は、ロシア国内の社会主義指導者、民族独立運動指導者などさまざまな反政府勢力と接触し、ロシアを内側から揺さぶろうとした。ロシア国内では、デモ・ストライキが先鋭化し、それが後に「ロシア革命」につながっていったとする説もある。この日本の工作活動の背後に、大英帝国の諜報機関がいたことは、容易に想像できる。 「大国ロシアと戦う日本を支援する大英帝国」という構図は、ウクライナ紛争と重なる部分がある。その後、第1次・第2次世界大戦などでも、英国が味方した陣営がことごとく勝利した。日英同盟が解消された後に起きた第2次世界大戦では、日本は英国に敗れたのだ』、「ロシアの「バルチック艦隊」が、大西洋から喜望峰を通過し、インド洋を進み休息を取ろうとした港はことごとく大英帝国の支配下にあった。嫌がらせを受け続けたバルチック艦隊は、日本に着いたときには疲労困憊となり、万全の態勢で待ち構えていた日本の連合艦隊の猛攻撃を受け、ほぼ全滅という大敗を喫した」、「日本は、ロシア国内の社会主義指導者、民族独立運動指導者などさまざまな反政府勢力と接触し、ロシアを内側から揺さぶろうとした」、「この日本の工作活動の背後に、大英帝国の諜報機関がいたことは、容易に想像できる」、確かに日露戦争の勝利には「英国」がひとかたならぬ貢献をしたようだ。
・『英国は今後の国際社会で鍵になる?今大切にすべき日英関係  現在、日本の安全保障政策の基軸は「日米同盟」だ。しかし、中国の経済的・軍事的急拡大に対応するために、自由民主主義という「価値観」を共有する国による「自由で開かれたインド太平洋戦略」が構想された(第46回)。そして、日米にオーストラリア、インドの4カ国によるQUAD(日米豪印戦略対話)が成立した。 今後の注目は英国の「インド太平洋」への参加だ。 英国は、EU離脱後に「グローバル・ブリテン」という新たな国家戦略を掲げている。EUに代わる地域との関係を強化することで、英国の国際社会におけるプレゼンスを再強化しようというものだ(第228回)。 経済的なプレゼンス強化とは、「TPP(環太平洋パートナーシップ協定)」に英国が加盟することだ(第192回)。TPP加盟11カ国中6カ国(オーストラリア、カナダ、ブルネイ、マレーシア、シンガポール、ニュージーランド)が「英連邦」加盟国である。 また、軍事的には、英国は米英豪による新たな安全保障協力枠組み「AUKUS(オーカス)」の立ち上げに主導的な役割を果たしている。AUKUSとは、潜水艦、自律型無人潜水機、長距離攻撃能力、敵基地攻撃能力などの軍事分野、サイバーセキュリティー、人工知能、量子コンピューターを用いた暗号化技術といった最先端テクノロジーの共同開発を主な目的とした協定だ。 4月12日、産経新聞が、「AUKUSが非公式に日本の参加を打診している」と報じた。極超音速兵器開発や電子戦能力の強化などで日本の技術力を取り込む狙いがあるという。しかし、日本政府は、その事実はないと即座に否定した。 日本政府内には、AUKUS入りに積極的な意見がある一方で、日米同盟がすでに存在している中でAUKUSに参加する効果があるのか懐疑的な意見もあるという。政府内で明確に方針が決まっていないということだ。 しかし、日米同盟が存在すれば、日英の協力は必要ないとはいえない。米国と英国は得意分野が異なり、安全保障分野において、相互に補完し合う関係にあるからだ。 つまり、日本は英国との協力から、米国とは違うメリットを得られる。そのひとつは、例えば外国のスパイ活動の防止やテロ対策のための「インテリジェンス活動」だろう』、確かに英国の「インテリジェンス活動」から得られる情報は大いに役立つ筈だ。
・『007を地で行く?英国の「人的ネットワーク」を駆使したテロ対策  米国は、高度な技術力を駆使して、「イミント(画像情報)」と呼ばれる、偵察衛星が撮影した画像や、航空機による偵察写真など画像や映像の情報を得る活動や、「シギント(信号情報)」と呼ばれる相手国の通信を傍受することやインターネット上での通信の傍受、相手国のレーダーの波長を調べるなどで情報を得る活動を得意としている。 一方、英国は映画「007シリーズ」で有名なように、「ヒューミント(人的情報)」と呼ばれる、スパイを相手国に潜入させたり、相手国のスパイを懐柔したりして情報を得る活動を、伝統的に得意としてきた。 英国は、旧植民地だった国などで構成される「英連邦」を中心として、世界中に広く深い人的ネットワークを築き、情報網を持っている。オックスフォード、ケンブリッジ、ロンドンなどの大学を卒業した留学生のネットワークがある。 また、BP、シェルなどオイルメジャーやHSBC(香港上海銀行)グループなど多国籍企業による資源・金融ビジネスのネットワークなどもある。これらの多様で複雑な人的ネットワークを、インテリジェンス活動に生かしているのだ(第134回)。 英国のインテリジェンス活動の一端を、私の経験も交えて紹介してみたい。例えば英国の「テロ対策」である(第157回)。 当時、英ヒースロー空港で駐車場に車を停めてターミナルに入るとき、パスポート提示を求められたことは一度もなかった。ロンドン市内も一見、警戒態勢は緩く、いつでも簡単にテロを起こせそうな感じだった。 これは、フランスのパリ市内やシャルル・ド・ゴール空港には多数の警官や武装兵が立ち、警戒していることとは大きな違いだった。だが、テロが頻発するフランス、ベルギーなど欧州大陸に比べれば、発生件数は格段に少なかった。 その理由は、英国の警察・情報機関が、国内外に細かい網の目のような情報網を張り巡らせ、少しでも不穏な動きをする人物を発見すれば、即座に監視し、逮捕できる体制が確立されていたからだ。私を含む世界中から集まる留学生の個人データも完全に掌握していた。 当時、当局の要注意リストには約3000人が掲載され、別の300人を監視下に置いているとされていた。毎月、テロリストの疑いありとして逮捕される人は大変な数に及んだ。 要するに、英国のテロ対策とは、警察と情報機関が長年にわたって作り上げてきた情報網・監視体制をフルに使って、テロを水際で防ぐということだ。 日本には「スパイ防止法」がない。テロ対策が脆弱であり、国内に外国のスパイが好きなように出入りし自由に行動できる「スパイ天国」だともいわれてきた。さらにいえば、日本は英国MI6(秘密情報部)や米国CIA(中央情報局)のような「対外情報機関」が存在しない。英国との協力は、明らかに日本の安全保障上の弱点を補完するものとなり得るのである』、英国では「ヒューミント」の強さに加え、「シギント」でもGCHQ(政府通信本部、通信傍受機関)を抱え、第二次大戦でもドイツの秘密通信の傍受で大きな成果を上げた伝統を持つ。
・『緊急医療体制も日本の一歩先を行く英国  もうひとつ、英国との協力で日本が得られるものを提案したい。それは、新しい感染症のパンデミック発生時などの緊急医療体制の確立である。 コロナ禍で、日本は世界最大の病床数を持ちながら、何度も医療崩壊の危機に陥った。政府は、医療体制の確保や法的措置も検討を進めたが、現在の医療体制が前提であるならば、医療崩壊に備えた抜本的な解決にはならない。 感染症のパンデミック対策とは、限られた医療リソースを、感染対策と、高度医療と、日常的な医療の間でどうバランスさせるかが重要だ。だが、さまざまな既得権や医学界・行政の「縦割り」、高度に専門分化した医療現場を調整するのは極めて困難だ。もし、今後より強毒な感染症のパンデミックに襲われたら、現在の日本の医療体制ではひとたまりもないのは明らかだ(第289回)。 そこで、私は現在の医療体制の外側に存在する自衛隊の医療人材・機材を緊急時に活用する「自衛隊大規模野戦病院」の設置を提案してきた(第283回)。この提案の際、参考としたのが、英国で新型コロナ対策として、英国軍が支援して設置された野戦病院「ナイチンゲール病院」だった(第282回)。 実戦経験豊富な英国軍は、「野戦病院」についても豊富な経験を持っている。また、英国は、大英帝国だった時代から、感染症と闘ってきた豊富な経験を持っているのである(第49回)。 このように、「味方に付いた方が戦争に勝つ」という「不敗神話」を持つ英国との安全保障協力は、日米同盟とは違うメリットを日本にもたらすのは間違いない。 日本を巡る安全保障環境の悪化への対応は、待ったなしである。英国との多角的な協力関係の構築を、今すぐに進めていくべきである』、幸い、英国はEU離脱でアジアに目を向けているので、「英国との多角的な協力関係の構築」する好機を活かしてもらいたい。
タグ:室伏謙一氏による「「経済安保法制」は看板に偽りあり?法案の欠陥を徹底検証」 ダイヤモンド・オンライン 「空洞化した後の国内を「知的産業による先進国経済」に転換させることに失敗し、大卒50%という社会で観光と福祉を基幹産業にせざるを得ないという苦しい国策に追い込まれています」、寂しい限りだが、日本で起業家精神の欠如からベンチャー企業の創業が伸び悩んでいる状況では、やむを得ない。 確かに「経済安全保障」論議は、経産省あたりから唐突に出てきたようだ。 冷泉彰彦氏による「圧倒的に議論が不足している経済安全保障問題」 Newsweek日本版 安全保障 (その11)(圧倒的に議論が不足している経済安全保障問題、「経済安保法制」は看板に偽りあり?法案の欠陥を徹底検証、日本の安全保障政策 今こそ「英国」との連携強化を急ぐべき理由) 「経済安保法案の事務方の責任者である内閣審議官の情報漏えい疑惑が「文春砲」によって明るみに出る」、「法案の企画・立案段階で情報が漏えいしていたのだとすれば、そもそも経済安保を語る以前の問題であるとしかいいようがなく、法施行後の体制のあり方も含めて厳しく追及するのは当然であるし、うやむやにしてはいけない問題ではある」、なんとも緊張感を欠いた話だ。 どうなのだろう。 「定義に関する条文がない」のはやはり問題だ。ただし、「規制を最小限にと規定するとは、やはり安全保障についての緊張感のかけらもない」、のは、規制緩和の時代では当然なのではなかろうか。 しかし、自由主義経済での企業活動は極めて多面的で、「国が前面に出」る余地は余りないのではなかろうか。 上久保誠人氏による「日本の安全保障政策、今こそ「英国」との連携強化を急ぐべき理由」 「ワシントン・ポスト」が「昨年12月」に「「ロシアがウクライナ侵攻を計画中」と報じ、ウクライナ国境に終結したロシア軍の規模や侵攻ルートを指摘した。驚くべきは、実際に侵攻が始まったときの規模・侵攻ルートを正確に的中させた」、さすがに驚くべき情報収集力だ 「ロシアの「バルチック艦隊」が、大西洋から喜望峰を通過し、インド洋を進み休息を取ろうとした港はことごとく大英帝国の支配下にあった。嫌がらせを受け続けたバルチック艦隊は、日本に着いたときには疲労困憊となり、万全の態勢で待ち構えていた日本の連合艦隊の猛攻撃を受け、ほぼ全滅という大敗を喫した」、「日本は、ロシア国内の社会主義指導者、民族独立運動指導者などさまざまな反政府勢力と接触し、ロシアを内側から揺さぶろうとした」、「この日本の工作活動の背後に、大英帝国の諜報機関がいたことは、容易に想像できる」、確かに日露戦 確かに英国の「インテリジェンス活動」から得られる情報は大いに役立つ筈だ。 英国では「ヒューミント」の強さに加え、「シギント」でもGCHQ(政府通信本部、通信傍受機関)を抱え、第二次大戦でもドイツの秘密通信の傍受で大きな成果を上げた伝統を持つ。 幸い、英国はEU離脱でアジアに目を向けているので、「英国との多角的な協力関係の構築」する好機を活かしてもらいたい。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

安全保障(その10)(岸田首相が入れ込む「経済安保政策」 日本が生き残るため「決定的に重要なこと」 意外と見落とされているが…、経済安全保障の最強の武器は「技術力」-補助金・自国生産ではない レアアース戦争の勝因を肝に銘じよ、経済安保で経産省vs財務省?上級国民の椅子取りゲームは「百害あって一利なし」) [外交・防衛]

安全保障については、昨年9月20日に取上げた。今日は、(その10)(岸田首相が入れ込む「経済安保政策」 日本が生き残るため「決定的に重要なこと」 意外と見落とされているが…、経済安全保障の最強の武器は「技術力」-補助金・自国生産ではない レアアース戦争の勝因を肝に銘じよ、経済安保で経産省vs財務省?上級国民の椅子取りゲームは「百害あって一利なし」)である。

先ずは、昨年11月24日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「岸田首相が入れ込む「経済安保政策」、日本が生き残るため「決定的に重要なこと」 意外と見落とされているが…」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/89587?imp=0
・『岸田政権が提唱する経済安全保障政策が動き始めた。専門家による有識者会議を設置し、経済安全保障推進法案(仮称)の制定を目指す。具体的な内容はこれから議論することになるが、半導体を中心としたサプライチェーンの強化、基幹インフラの機能維持、人工知能(AI)など技術基盤の強化が想定されている。 米中の政治的な対立が激化しており、各国は戦略物資の確保にしのぎを削っている。日本は地政学上、中国の脅威に直接さらされる立場であることを考えると、一連の法整備が必須なのは言うまでもない。だが、防衛力の整備が中心だった従来の安全保障とは異なり、経済安全保障の難易度は高い。経済政策や産業政策とセットにして相乗効果を発揮できなければ、絵に描いた餅に終わってしまう』、興味深そうだ。
・『排除すれば問題が解決するわけではない  日本政府は多くの無人機(ドローン)を保有しているが、その実態を調査したところほとんどが中国製だったという、少々笑えない話があった。ドローンに限らず、通信機器や監視カメラなど多くの分野において中国製品を抜きにシステムを構築するのが難しいのが現状である。 安全保障上の懸念がある製品は排除すべきというのはその通りなのだが、なぜ、そうした製品が使われてきたのかという経緯を考え、それに対応できる十分なソリューションを用意しなければ代替はうまく進まない。 ドローンを購入した各省の部局も好んで中国製のドローンを購入したわけではないだろう。現時点において中国製のドローンは圧倒的な品質と性能、価格であり、日本メーカーの製品では歯が立たない。現実的な選択肢として中国製になってしまったというのが偽らざる現実である。 仮に法案が成立し、懸念のある製品や部品の使用を制限しても、それに代わる十分な製品が日本国内に存在しない場合、性能面で妥協せざるを得なくなる。インテリジェンス(諜報)の世界では、各国がそれぞれの重要分野においてどれほどのケイパビリティ(能力)を持っているのかが極めて重要な意味を持つ。性能面で妥協した可能性があるという事実は、それだけでも諜報活動においてマイナス要因となってしまう。 ドローンの問題について言えば、国内で優秀なドローン製品を開発できる環境作りこそが、もっとも重要な経済安全保障政策であり、この部分を怠った結果として、使用制限などの措置が必要になったと考えるべきだ。通信機器や監視カメラの分野も同じであり、各分野で日本メーカーが競争に敗れたことが中国メーカーの台頭を招いており、従来の競争力を維持できていれば、そもそも中国製を採用する必然性はなかった。今回の主要テーマのひとつである半導体についても同じことが言える』、「ドローンの問題について言えば、国内で優秀なドローン製品を開発できる環境作りこそが、もっとも重要な経済安全保障政策であり、この部分を怠った結果として、使用制限などの措置が必要になったと考えるべきだ。通信機器や監視カメラの分野も同じであり、各分野で日本メーカーが競争に敗れたことが中国メーカーの台頭を招いており、従来の競争力を維持できていれば、そもそも中国製を採用する必然性はなかった・・・半導体についても同じことが言える」、その通りだ。
・『日本の半導体産業は壊滅状態  現在、全世界的な半導体不足が深刻な状況となっているが、半導体チップの多くは台湾メーカーが生産している。半導体業界は熾烈な競争の結果、各社は得意分野に集中せざるを得なくなり、徹底的な分業体制にシフトした。半導体の設計は欧米メーカー、製造は台湾メーカー(および一部の米国メーカー)が圧倒的であり、日本メーカーは製造装置や検査装置、部材の分野でしか存在感がない。 特に台湾メーカーの製造能力は突出しており、台湾メーカーが存在しなければiPhoneの製造もAI(人工知能)システムの構築もままならないというのが現実である。 こうしたところに急浮上してきたのが台湾海峡問題である。万が一、中国が台湾に侵攻した場合、台湾からの半導体供給がストップし、米国の産業が大打撃を受ける可能性がある。バイデン政権は、米国内での製造体制強化を打ち出しており、最大手のインテルは国内工場の大増設を決断した。) ところが日本の場合、半導体の設計や製造という基幹部分においてほぼ壊滅状態となっており、国内で大量の半導体を製造する能力を失っている。政府は台湾の半導体製造大手TSMCに対して日本進出を要請し、8000億円といわれる建設資金の約半額を支援することで熊本県での工場建設が決まったが、自前での半導体確保とはほど遠い状況にある。 米国企業はあくまでコスト対策とスピード感を重視する必要性から台湾に製造を委託しているのであって、高い半導体製造能力は維持している。実際、最大手のインテルは開発から製造までを一貫して行うメーカーであり、いつでも自前調達に切り換えられるポテンシャルがあった。最悪の事態が発生した場合でも、米国は半導体を確保できるが、日本はそうはいかないだろう』、「米国企業はあくまでコスト対策とスピード感を重視する必要性から台湾に製造を委託しているのであって、高い半導体製造能力は維持している・・・最悪の事態が発生した場合でも、米国は半導体を確保できるが、日本はそうはいかないだろう」、確かに「日米企業」の対応は対照的だ。
・『需要がないところには、十分な供給は行われない  結局のところ、自国に高い競争力を持つ企業が存在し、基幹製品を国内調達できる環境がなければ、完全な経済安全保障体制を確立することはできない。もし日本の半導体産業が凋落していなければ、ここまで深刻な状況には陥っていなかった可能性が高い。 つまり経済安全保障を実現するためには、懸念のある製品の排除といった短期的な措置に加え、先端産業の育成という長期的施策が必要であり、そのためには、なぜ過去に失敗したのかという検証が欠かせない。 では日本の半導体産業はなぜここまで凋落してしまったのだろうか。最大の理由は90年代に起きたIT革命の潮流を見誤り、パソコンの台頭を前提にした経営戦略に舵を切ることができなかったからである。 半導体というのは、それを使う最終製品がなければ意味をなさない。80年代は汎用機と呼ばれる大型コンピュータが主流であり、日本メーカーはこの分野で相応の存在感があった。汎用機には大量のメモリが必要となるので、半導体メーカーは汎用機向けのメモリ製造で大きな収益を上げることができた。そして汎用機を製造したコンピュータ・メーカーは、銀行などIT投資を強化している国内企業に製品を販売することができた(第1~3次オンラインシステム)。 80年代の日本においては、汎用機を利用するユーザー企業、そこに汎用機を収めるコンピュータ・メーカー、そしてコンピュータ・メーカーに半導体を収める半導体メーカー(日本は総合メーカーが多く、コンピュータ・メーカーが半導体メーカーを兼ねていた)という、需要と供給のすべてが揃っていた。 現在の米国も同じである。米国には世界最大の消費市場があり、GAFAをはじめ多くの企業が最先端の半導体を搭載したコンピュータを大量購入している。アップルやエヌビディアといった企業は米国の消費者に高性能な半導体を搭載した製品を販売し、半導体メーカーはこうした米国企業に製品を納めているという図式だ。 ところが日本企業は90年代以降のIT革命の流れを見誤り、IT利用という点で、先進国の地位から脱落してしまった。ユーザーが存在しないということは国内には大きな半導体需要が存在しないということであり、当然の結果として半導体産業も衰退してしまう。 台湾や韓国は国内に大きなIT市場が存在しないため、半導体製造に特化し成功したが、これはいわば小国だからこそ実現できる戦略である。日本のように国内に大きな消費市場が存在する大国はそうはいかない。結局のところ、現時点において半導体の確保に苦心しているのは、日本がIT後進国となり、IT需要が消滅したことが大きく影響しているのだ』、「日本企業は90年代以降のIT革命の流れを見誤り、IT利用という点で、先進国の地位から脱落してしまった」、ここはもう少し説明が必要だ。「ユーザーが存在しないということは国内には大きな半導体需要が存在しないということであり、当然の結果として半導体産業も衰退」、その通りだ。
・『「産業競争力の強化」が大前提  以上の話をまとめると、強力な国内消費市場を構築することこそが、経済安全保障の根幹であることが分かる。技術は時代によって変化するので、常に最先端産業の育成を続けなければ、同じことの繰り返しになってしまう。日本がなぜ過去に失敗したのか徹底的に検証し、今後に生かすことが重要だ。 仮に今回の法案によって、半導体の供給や懸念のある製品の排除に成功したとしても、10年後はまったく新しい技術が登場しているだろう。その時点において日本がトッププレイヤーでなければ、やはり製品の確保に事欠くという事態に陥る可能性は高い。 今回、議論の対象となっている経済安全保障政策が目の前に存在するリスクへの対処だとすると、新しい産業の育成は、より本質的・長期的な安全保障政策といってよい。 今後、数十年の経済をリードする基幹技術がAI(人工知能)と再生可能エネルギーであることは、誰の目にも明らかである。この2つの分野において日本がリードできなければ、近い将来、半導体とまったく同じ問題が発生すると予想される。すでに再生可能エネの分野は欧米および中国企業の独壇場となっており、日本メーカーの存在感は皆無に等しい(現時点において風力発電システムの多くは輸入に頼らざるを得ない)。 このままではエネルギーという安全保障上もっとも重要な分野を海外企業に握られるという事態にもなりかねない。新しい産業を育成するという視点を抜きに経済安全保障は成立しないという現実について、全国民で共有していく必要があるだろう』、その通りだが、「経済安全保障」を名目に補助金をバラ蒔くような無駄は避けるべきだ。

次に、2月6日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「経済安全保障の最強の武器は「技術力」-補助金・自国生産ではない レアアース戦争の勝因を肝に銘じよ」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/92097?imp=0
・『経済安全保障が重要な課題であることは間違いない。しかし、これは弱体化した産業の自国生産を正当化するために用いられることが多い。農産物自給率引上げがその例だったが、今度は半導体の国内生産への補助を正当化するために用いられる可能性がある。しかし、安全保障のためにもっとも重要なのは技術力であり、それは補助で獲得できるものではない』、「安全保障のためにもっとも重要なのは技術力であり、それは補助で獲得できるものではない」、同感である。
・『経済安全保障には補助金ではなく供給源分散を  「経済安全保障」が、岸田内閣の主要な政策として前面に出てきた。 中国の脅威拡大に対抗してサブプライチェーンの強靭化をはかることが主たる目的とされている。中国は輸出制限などの措置によって、他国に経済的な強制力を行使する可能性がある。 新型コロナ発生源との関係で世界保健機関(WHO)に武漢の研究所を調査するよう求めたオーストラリアに対して、農産物や石炭、鉄鉱石の輸入を止めるなどの経済的圧力をかけた例がある。 こうした圧力に対して、いかに対応すべきかが問題とされている。 経済安全保障が重要な課題であることは間違いない。ただし、「安全保障」という言葉は、全てに優先するという響きを持っている。したがってこれを旗印に、様々なことが行われる可能性が強い。 しばらく前には、農産物自給率の確保がいわれた。「食の安全が脅かされるから自給が必要だ。ところが日本の自給率は非常に低い。だから大変だ」との議論だ。 しかし、本当は逆である。自給率を高めれば、食料安全保障の面で大きな問題が発生するのだ。国内生産だけに頼れば、天候不順などで凶作になったときに食料不足になるからだ。 供給先が世界中に分散していれば、そうした事態を避けられる。供給源をできるだけ分散することこそ、食料安全保障の基本だ。 「経済安全保障」という考えは、弱体化した産業の補助に結びつくことが多い。とりわけ、自国内生産への補助金だ。 食料自給率は、国内生産への補助や、輸入農蓄産物に対する高関税を正当化するために強調されたのだ。 サプライチェーンも同じである。解は供給源分散化であって、自国生産ではない。 脱中国化を図ることは、中国の賃金上昇への対処からも望まれる。そして、すでに、かなりの程度進行している』、「供給源をできるだけ分散することこそ、食料安全保障の基本だ」、「食料自給率は、国内生産への補助や、輸入農蓄産物に対する高関税を正当化するために強調された」、「サプライチェーンも同じである。解は供給源分散化であって、自国生産ではない」、その通りだ。
・『今、半導体に焦点が当たっているが  今回は、農産物の代わりに半導体が補助の対象になる可能性が強い。 半導体はあらゆる電化製品に使われる重要な部品だが、供給が停滞したために、世界的な不足が生じている。だから、対処が必要だという議論だ。 前回述べたように、TSMCの熊本工場誘致に多額の補助金を支出することが既に決定されている。今後は、国内の半導体生産に補助金を出すことにもなるかもしれない。これは、農産物の自給率確保と全く同じものである。 現在、半導体不足が世界的な問題になっていることは事実だ。 この大きな原因は、中国の半導体ファンドリーSMICから自動車用の半導体の供給を受けられなくなったことだ。 しかし、これは中国が望んで行なった輸出禁止ではない。そうではなく、アメリカ商務省がSMICをエンティティリストに載せて、取引を禁じたからだ。つまり、これはアメリカが対中制裁のために行った措置である』、「半導体不足」の「大きな原因は、中国の半導体ファンドリーSMICから自動車用の半導体の供給を受けられなくなったこと」、確かに「中国が望んで行なった輸出禁止ではない」。
・『半導体で困っているのは中国  現在、高性能半導体の供給が受けられずに困っているのは、中国だ。 中国の通信機メーカー、ファーウエイが米商務省リストに載せられたため、台湾のTSMCから高性能半導体の供給が受けられなくなったことによる。 では、中国はこの問題を解決するために台湾に侵攻して台湾を統合し、TSMCを自国企業にするだろうか? そうした危険があることが安全保障上問題だという意見がある。つまり高性能半導体の生産が台湾に集中しており、そこが中国の脅威にさらされているというのだ。 しかし、TSMCのために中国が台湾に侵攻することなど、ありえない。まず、あまりにリスクが大きすぎる。しかも、そのような状況が見えたら、TSMCの技術者は外国に逃げてしまうだろう。どんな国でも喜んで迎えるに違いない。 結局のところTSMCの工場を占領したものの、だれも操業することができないことになってしまう可能性が高い』、「TSMCのために中国が台湾に侵攻することなど、ありえない」、「そのような状況が見えたら、TSMCの技術者は外国に逃げてしまうだろう」、「結局のところTSMCの工場を占領したものの、だれも操業することができないことになってしまう可能性が高い」、同感である。。
・『技術こそが最強の取り引き材料  経済安全保障の基本は、(先に述べた供給先の分散化とともに)取引材料を持つことだ。他の国では絶対に提供できないものを作れることである。その国をつぶしたら世界経済が立ちゆかなくなってしまうような技術を持つ企業や産業を作ることだ TSMCはその好例だ。これをつぶせば、最先端の半導体が製造できなくなる。世界にとって、台湾の存在が不可欠なのだ。 では、日本は取引材料にできるような企業や産業を持っているだろうか? 自動車は日本の基幹産業だが、仮に日本の自動車会社がつぶされたとしても、自動車を生産できる会社は世界中に沢山ある。だから、自動車を安全保障のための取引材料に用いることはできない。 半導体について言えば、製造装置や材料では日本は強い。しかし、日本でしか作れないというものではない。 最先端の半導体製造装置は、極小回路をシリコンウエハーに印刷する極端紫外線リソグラフィ(EUV)と呼ばれるものだ。この製造は、オランダのASMLが独占していて、年間50台くらいしか生産されない。こうしたものこそ、取引材料となしうる。 現在、自動車の生産は半導体の生産で制約されている。様々な電子部品もそうだ。ただし、これはいずれは解消されるだろう。 しかし、先端半導体はこれとは別だ。最先端の技術を持つものが主導権を握る。そして世界の製造業を支配することになる。 こうした問題に対処することこそ必要だが、それは、補助金を出すことで実現できるものではない』、「経済安全保障の基本は、(先に述べた供給先の分散化とともに)取引材料を持つことだ。他の国では絶対に提供できないものを作れることである」、「自動車は日本の基幹産業だが、仮に日本の自動車会社がつぶされたとしても、自動車を生産できる会社は世界中に沢山ある。だから、自動車を安全保障のための取引材料に用いることはできない」、予想以上に取引材料となる産業は少ないようだ。
・『技術は補助金より強し  中国が日本に対して、輸出入制限や禁輸措置、あるいは関税引き上げなどの措置をとってくる可能性は、もちろんある。 中国は貿易管理法によって、輸出管理規制を強めるかもしれない。とりわけ問題なのは、レアアース(希土類)の輸出が制限されることだ。 「レアアース戦争」は、実際に起こった。2010年9月に尖閣諸島で中国人船長が日本海上警察に逮捕される事件があり、その後、中国からのレアアース輸出が規制されたのだ。 日本は、これをWTOに提訴した。そして、協定違反の判決を引き出した。 このときの日本の対応は、WTO提訴だけでなく、もっと積極的なものだった。日立製作所やパナソニック、ホンダなどは、都市鉱山(既存部品の廃品)からの回収やリサイクルを行なった。さらに、より少ないレアアースで性能の良い製品を開発した。 これによって、日本の中国レアアースへの依存度は、2009年の86%から2015年には55%まで低下した。レアアースの価格が急落したため、中国のレアアース生産企業は赤字に陥った。こうして、レアアース戦争は、日本の勝利に終わった。 「ペンは剣より強し」とは、19世紀イギリスの小説家・政治家のリットンの言葉だ。 「言論の力は、政治権力や軍隊などの武力よりも民衆に大きな影響を与える」という意味だが、これをつぎのように解釈し直すこともできるだろう。 それは、どんなに強力な武器を持つよりも、強い技術力を持つことのほうが重要ということだ。 レアアース戦争で日本が勝った原因は、日本の技術だ。このような技術を持つことこそが、経済安全保障でもっとも重要なのだ』、「レアアース戦争で日本が勝った原因は、日本の技術だ。このような技術を持つことこそが、経済安全保障でもっとも重要なのだ」、同感である。

第三に、2月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「経済安保で経産省vs財務省?上級国民の椅子取りゲームは「百害あって一利なし」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295813
・『岸田政権の目玉政策「経済安全保障」のキーマンに文春砲が炸裂  「週刊文春」が、政府が進めている経済安全保障推進法案の準備室長を務めていた、藤井敏彦・国家安全保障局担当内閣審議官に関するスクープを報じた。藤井氏が、兼業届を出さずに私企業で働き報酬を得ていた疑いがあることや、「朝日新聞」の記者と不倫関係にあることがわかったというのだ。2月8日に、国家安全保障局は藤井氏を更迭しているが、それはこの疑惑が原因だと「文春」は報じている。 政府要人が文春や新潮の週刊誌報道でクビを取られるというのは、もはや日本の日常風景となっているので、それほど驚く国民もいないだろう。しかし俗世間とかけ離れた「霞が関ムラ」には衝撃が走っていて、主に2つの「風説」で盛り上がっている。 まず1つ目が、「不倫相手に情報漏洩していたのではないか」というものだ。 2月2日、マスコミ各社は経済安全保障法制に関する有識者会議の提言を報じているのだが、その中でひときわ異彩を放っていたのが朝日新聞だった。各社が提言から抜粋する形で法案のポイントを整理している中で、朝日新聞の記事だけは、「法案には事業者への罰則規定も検討されており」と他紙が掲載していない「特ダネ」がすっぱ抜かれていたのだ。 新聞がこういう書き方をするということは、「ネタ元」(情報源)が立場のある人物であるということに他ならない。それはつまり、経済安保推進法案に関して決定権を持つ政府要人、もしくは法案の準備で中心的な役割を持っている官僚――そう、藤井氏はこの朝日スクープの「ネタ元」の条件にピッタリなのだ。 「文春」が報じたように「不倫」という親密な間柄が事実なら、手柄をあげさせるために特ダネのプレゼントをしたなんてストーリーもありえる。「法案の中身」について寝物語でポロッと漏らしてしまったということだって考えられる。 そんな“男と女のラブゲーム”的な話とうってかわって、もうひとつささやかれているのは霞が関定番のドロドロした“パワーゲーム”だ。それはズバリ、「経済安全保障利権を、財務省が本格的に奪いにきたのではないか」というものだ』、「不倫」による「スクープ」は珍しくもないが、「経済安全保障利権を、財務省が本格的に奪いにきたのではないか」、というのには驚かされた。
・『経産省と財務省の椅子取りゲーム 財務官僚が次々と藤井氏の椅子に座る  報道によれば、藤井氏の更迭を受けて政府は、後任に財務省出身の泉恒有内閣審議官をあてる方向だという。泉氏は昨年7月に財務省に出向するまで、内閣参事官として国家安全保障局にもいたのだから順当といえば順当な話なのだが、なぜこんな話になっているのかというと、経産省出身の藤井氏の後任人事に、財務官僚がとって変わるのは、これが二度目だからだ。 そもそも、藤井氏がなぜ経済安全保障推進法の準備室長になったのかというと、安倍政権時、国家安全保障局の中で経済安全保障を担う専門部署として新設された「経済班」の初代班長だったからだ。では、ここで藤井氏の後任の班長は誰になっているのかというと、財務省国際局出身の高村泰夫内閣審議官である。 つまり、あくまで人事的な見え方に過ぎないが、「経済安保のキーマン」と言われた藤井氏のイスに、財務官僚が次々と座っている構図なのだ。 もちろん、霞が関ではこのような流れになることはある程度予見されていた。岸田政権になってから「安全保障担当」の内閣総理大臣補佐官は、木原誠二官房副長官と寺田稔衆議院議員が担ってきたが、この2人は財務省(旧大蔵省)の出身だからだ。 一般国民の感覚からすれば、「重要なのは政策の中身なんだから、財務官僚が仕切ろうが、経産官僚が主導権を握ろうが、そんなのはどっちでもいい」と思うだろうが、これは経産省からするとなかなか受け入れ難い屈辱的な話である。 「経済安全保障」という国策の遂行、及びそれにまつわる口利きや斡旋、さらに天下りやらという利権は、「経産省と警察で山分けできる」と皮算用がなされていたからだ。 そのあたりをご理解していただくには、そもそもなぜ経済安全保障が目玉政策になったのかを振り返っていく必要がある。「岸田政権肝煎りの」という言葉がつくので、あたかも岸田首相が言い出したことのように誤解をされている方も多いだろうが、実はこの政策をここまでにこぎつけた最大の「功労者」は、甘利明氏だ』、「最大の「功労者」は、甘利明氏だ」、初めて知った。
・『甘利明氏の功績とは? 大企業に「天下り」が続々  安倍政権時代、甘利氏はアメリカのNEC(国家経済会議)にならって、経済安保政策を立案する組織を立ち上げるように首相に提言した。それを受けて、北村滋氏が2代目局長を務めていた国家安全保障局の中に、新たに「経済班」が設置され、藤井氏がその初代班長に就いたという流れだ。 甘利氏といえば、経産相、経済再生担当相を歴任した「商工族のドン」として知られており、経産省にとっては守り神的な存在である。かたや経済班設立に尽力した北村氏は、警察庁で外事畑を歩み、内閣情報調査室のトップを7年以上も務めたことから海外からは「日本のCIA長官」の異名をとるインテリジェンスのプロ。また、安倍元首相からの信頼も厚く、非常に近い間柄だったことでも知られている。 つまり、「経済安全保障」という国策は、安倍・甘利ラインという政治力学の中で産声をあげて、そこにひもづいている経産省と警察庁の官僚たちの手によって、徐々に形づくられていったというわけなのだ。 そんな「経産省+警察」構図を如実に示しているのが、「天下り」である。 昨今の経済安保の重要性が唱えられる世相を受けて、三菱電機、富士通、デンソー、NECなどの大企業に経済安全保障の専門部署が新設されているのだが、その担当役員として迎えられているのが、日下部聡・前資源エネルギー庁長官をはじめとした経産省OBなのだ。 「経済安保バブル」に躍るのは、警察も同じだ。 警察庁では昨年1月、「経済安全保障対策官」を新設。都道府県警と連携しながら、民間企業や大学向けの対策説明会や意見交換といった「経済安全保障コンサルティング」に取り組む方針だという。実際、警視庁では昨年3月、公安部に経済安全保障のプロジェクトチーム(PT)を発足。9月から半導体などの最先端技術を取り扱う製造系の大企業を訪問して、企業を狙ったスパイの具体的な手口などについての情報を提供している。 パッと見、「日本企業の技術を守るために、おまわりさんたちも頑張ってくれている」という美しい話なのだが、全国の警察官の再就職先確保のため、民間企業に「経済安保コンサルタント」を売り込んでいるようにも見える。) 事実、この分野のエキスパートである警察OBの北村氏は現在、「北村エコノミックセキュリティ」という会社を立ち上げて、「コンサルタント」として活躍している。警察庁はこの「北村モデル」を全国規模に拡大しようとしている可能性もゼロではない。日本中の企業に警察OBを「経済安保コンサルタント」として送り込むことができれば今、全国の警察が頭を痛めている「再就職先の確保」問題は一気に解決できる。 このようなオープンになっている情報だけを見ても、経産省と警察庁が「経済安保」というものを、自分たちの既得権益だと考えていることが容易に想像できる。 だからこそ、「経済安全保障利権を、財務省が本格的に奪いにきたのではないか」なんて憶測も飛び交ってしまうのだ』、「「経済安全保障」という国策は、安倍・甘利ラインという政治力学の中で産声をあげて、そこにひもづいている経産省と警察庁の官僚たちの手によって、徐々に形づくられていった」、「日本中の企業に警察OBを「経済安保コンサルタント」として送り込むことができれば今、全国の警察が頭を痛めている「再就職先の確保」問題は一気に解決できる。 このようなオープンになっている情報だけを見ても、経産省と警察庁が「経済安保」というものを、自分たちの既得権益だと考えていることが容易に想像できる」、なるほど。
・『本当の「経済安全保障」はどこへ パワーゲームは「百害あって一利なし」  ただ、一般庶民の立場から言わせていただくと、そのような政治家や官僚という「上級国民」の皆さんが主導権争いなどのパワーゲームにのめりこむ姿を見れば見るほど、「経済安全保障」というものに対しての不安が膨らんでいく。 国益という視点に立てば、経済安全保障というものが必要で「まったなしの課題」というのは同感だ。日本で言われる経済安全保障というのはぶっちゃけ「中国の脅威」にどう立ち向かうのか、という話なので、エネルギー、半導体、サプライチェーン、さらには海洋資源などで、米中対立の影響を受けないよう、日本独自の生産・輸入の体制などを整えるということに対して全く異論はない。 が、先ほどの「天下り」確保のための活発な動きや、霞が関の主導権争いを見ていると、そのせっかくの重要な国策が、特定の人々に利益を誘導するような「利権」となってしまったり、政治的ライバルを貶めるための「政争の具」になって終了、という最悪の結末しか浮かばない。つまり、「経済安保」の法案を通して、官民あげて推進したところで、一部の「上級国民」の皆さんだけが恩恵があって、我々のような市井の一般庶民には「百害あって一利なし」という悪政になってしまうのだ。 実際、これまでも「経済安全保障」や「中国の脅威」というものは、一部の上級国民を利するために、都合よく利用されてきたという動かし難い事実がある。 記憶に新しいのが、自民党総裁選の最中に突如として注目を集めた「日本端子」問題である』、「「経済安保」の法案を通して、官民あげて推進したところで、一部の「上級国民」の皆さんだけが恩恵があって、我々のような市井の一般庶民には「百害あって一利なし」という悪政になってしまうのだ」、要警戒だ。
・『総裁選でデマ浮上 権力闘争で恣意的に利用される「経済安保」  日本端子という会社は、河野太郎衆議院議員の家族が経営している自動車部品会社で、中国にいくつか中国企業との合弁会社がある。河野氏が総裁選に出馬した際、SNS上でこの日本端子について「流言」が飛んだ。曰く、中国の太陽光発電に部品を提供しており、河野家は中国で太陽光利権を一手に握っている。中国の合弁会社は資本の比率などを見ても中国政府から異例の厚遇を受けており、これこそが、河野ファミリーと中国共産党の蜜月の動かぬ証拠である、などさまざまな情報が飛び交った。 結論から言うと、この話は全くのデマだ。日本端子は1960年に設立してから、製品の8割は自動車用のコネクタや圧着端子で、顧客も日本の自動車メーカーが多い。「中国の手先」などの誹謗中傷が多く寄せられたことを受けて、自社HPで「お知らせ」として反論しているが、これまで中国市場で太陽光発電の部品など販売したこともない。また、「異例の厚遇」とやらの資本比率も、中国企業との合弁会社なら石を投げれば当たるほどよくあるものだ。 しかし、こんなデタラメ話が、総裁選の最中にも信憑性をもって語られ、マスコミの中には実際に河野氏に質問をした記者もいた。特定の政治家や、彼らと近しい著名ジャーナリスト、政治評論家がSNSなどで大騒ぎをしていたからだ。当時、これらの人々は「疑惑を徹底追及します」とか「日本の安全保障上大きな問題だ」などと叫んでいたが、今では「そんなことあったっけ?」と何事もなかったような顔をしている。 このように「中国の脅威」や「経済安全保障」というのは、為政者たちの権力闘争で恣意的に利用されることが多い。それは、トランプ前大統領を見てもよくわかるだろう。 自分の都合が悪い問題を追及されると、北朝鮮や中国を痛烈に批判する。今のバイデン大統領も立場が悪くなると、「ウクライナ問題」を持ち出した。それと同じで、日本でも政治や官僚が、自分たちの都合の悪い話が出た時、ここぞとばかりに「経済安全保障」を引っ張り出して、国民の目をそらす恐れがあるのだ。 「そんなのは貴様の妄想だ」という声が聞こえてきそうだが、「経済安保バブル」で天下り拡大にわく霞が関や、熾烈な足の引っ張り合いを見ていると、「妄想」とは言い切れないのではないか。 ただでさえ、経済安全保障というのは、日本の経済成長や景気拡大とは直接的に関係がない政策だ。対象となるのは日本企業の0.3%しかない大企業だけで、しかもナショナリズム丸出しの過度な規制によって、企業活動が足を引っ張られる恐れもある。今のところこの政策で恩恵を受けているのは、一部のコンサルタントと、天下りが拡大できた霞が関だけだ。 経済安全保障を推進するのは結構だが、「国破れて上級国民あり」なんてことだけにはならぬようお願いしたい』、「経済安全保障というのは、日本の経済成長や景気拡大とは直接的に関係がない政策だ。対象となるのは日本企業の0.3%しかない大企業だけで、しかもナショナリズム丸出しの過度な規制によって、企業活動が足を引っ張られる恐れもある。今のところこの政策で恩恵を受けているのは、一部のコンサルタントと、天下りが拡大できた霞が関だけだ」、「国破れて上級国民あり」、言い得て妙だ。
タグ:現代ビジネス 安全保障 (その10)(岸田首相が入れ込む「経済安保政策」 日本が生き残るため「決定的に重要なこと」 意外と見落とされているが…、経済安全保障の最強の武器は「技術力」-補助金・自国生産ではない レアアース戦争の勝因を肝に銘じよ、経済安保で経産省vs財務省?上級国民の椅子取りゲームは「百害あって一利なし」) 加谷 珪一氏による「岸田首相が入れ込む「経済安保政策」、日本が生き残るため「決定的に重要なこと」 意外と見落とされているが…」 「ドローンの問題について言えば、国内で優秀なドローン製品を開発できる環境作りこそが、もっとも重要な経済安全保障政策であり、この部分を怠った結果として、使用制限などの措置が必要になったと考えるべきだ。通信機器や監視カメラの分野も同じであり、各分野で日本メーカーが競争に敗れたことが中国メーカーの台頭を招いており、従来の競争力を維持できていれば、そもそも中国製を採用する必然性はなかった・・・半導体についても同じことが言える」、その通りだ。 「米国企業はあくまでコスト対策とスピード感を重視する必要性から台湾に製造を委託しているのであって、高い半導体製造能力は維持している・・・最悪の事態が発生した場合でも、米国は半導体を確保できるが、日本はそうはいかないだろう」、確かに「日米企業」の対応は対照的だ。 「日本企業は90年代以降のIT革命の流れを見誤り、IT利用という点で、先進国の地位から脱落してしまった」、ここはもう少し説明が必要だ。「ユーザーが存在しないということは国内には大きな半導体需要が存在しないということであり、当然の結果として半導体産業も衰退」、その通りだ。 その通りだが、「経済安全保障」を名目に補助金をバラ蒔くような無駄は避けるべきだ。 野口 悠紀雄氏による「経済安全保障の最強の武器は「技術力」-補助金・自国生産ではない レアアース戦争の勝因を肝に銘じよ」 「安全保障のためにもっとも重要なのは技術力であり、それは補助で獲得できるものではない」、同感である。 「供給源をできるだけ分散することこそ、食料安全保障の基本だ」、「食料自給率は、国内生産への補助や、輸入農蓄産物に対する高関税を正当化するために強調された」、「サプライチェーンも同じである。解は供給源分散化であって、自国生産ではない」、その通りだ。 「半導体不足」の「大きな原因は、中国の半導体ファンドリーSMICから自動車用の半導体の供給を受けられなくなったこと」、確かに「中国が望んで行なった輸出禁止ではない」。 「TSMCのために中国が台湾に侵攻することなど、ありえない」、「そのような状況が見えたら、TSMCの技術者は外国に逃げてしまうだろう」、「結局のところTSMCの工場を占領したものの、だれも操業することができないことになってしまう可能性が高い」、同感である。。 「経済安全保障の基本は、(先に述べた供給先の分散化とともに)取引材料を持つことだ。他の国では絶対に提供できないものを作れることである」、「自動車は日本の基幹産業だが、仮に日本の自動車会社がつぶされたとしても、自動車を生産できる会社は世界中に沢山ある。だから、自動車を安全保障のための取引材料に用いることはできない」、予想以上に取引材料となる産業は少ないようだ。 「レアアース戦争で日本が勝った原因は、日本の技術だ。このような技術を持つことこそが、経済安全保障でもっとも重要なのだ」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生氏による「経済安保で経産省vs財務省?上級国民の椅子取りゲームは「百害あって一利なし」 「不倫」による「スクープ」は珍しくもないが、「経済安全保障利権を、財務省が本格的に奪いにきたのではないか」、というのには驚かされた。 「最大の「功労者」は、甘利明氏だ」、初めて知った。 「「経済安全保障」という国策は、安倍・甘利ラインという政治力学の中で産声をあげて、そこにひもづいている経産省と警察庁の官僚たちの手によって、徐々に形づくられていった」、「日本中の企業に警察OBを「経済安保コンサルタント」として送り込むことができれば今、全国の警察が頭を痛めている「再就職先の確保」問題は一気に解決できる。 このようなオープンになっている情報だけを見ても、経産省と警察庁が「経済安保」というものを、自分たちの既得権益だと考えていることが容易に想像できる」、なるほど。 「「経済安保」の法案を通して、官民あげて推進したところで、一部の「上級国民」の皆さんだけが恩恵があって、我々のような市井の一般庶民には「百害あって一利なし」という悪政になってしまうのだ」、要警戒だ。 「経済安全保障というのは、日本の経済成長や景気拡大とは直接的に関係がない政策だ。対象となるのは日本企業の0.3%しかない大企業だけで、しかもナショナリズム丸出しの過度な規制によって、企業活動が足を引っ張られる恐れもある。今のところこの政策で恩恵を受けているのは、一部のコンサルタントと、天下りが拡大できた霞が関だけだ」、「国破れて上級国民あり」、言い得て妙だ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

安全保障(その9)(中国などの外国資本が「水源地の山林」を買っているという噂は本当か、寺島実郎「本質を見誤ると日本は米中関係に翻弄」 経済安保論を単純な「中国封じ込め」に歪めるな、日本の「産業スパイ対策」がどうにも甘すぎる事情 経済安保が重要な中 いいようにやられている) [外交・防衛]

安全保障については、2019年9月9日に取上げた。今日は、(その9)(中国などの外国資本が「水源地の山林」を買っているという噂は本当か、寺島実郎「本質を見誤ると日本は米中関係に翻弄」 経済安保論を単純な「中国封じ込め」に歪めるな、日本の「産業スパイ対策」がどうにも甘すぎる事情 経済安保が重要な中 いいようにやられている)である。

先ずは、本年3月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの福崎 剛氏による「中国などの外国資本が「水源地の山林」を買っているという噂は本当か」を紹介しよう。
・『近年のキャンプブームに加え、コロナ禍で密を避けようとキャンプ場に出かける人が増え、プライベートキャンプ用に山林を求めるニーズが高くなってきている。林業の衰退もあり、かつて資産家の象徴だった山はいまや数十万円から数百万円で簡単に購入できるほど不動産価値が下がっている。そんな日本の山を買いあさる外国人がいるという噂(うわさ)を耳にした人は少なくないだろう。しかも狙われているのは、良質な水源地の山林だという。こうした話は本当なのだろうか』、興味深そうだ。
・『なぜ、日本の山林が外国人に買われるのか(山林は、水源の涵養(かんよう)機能を持っている。わかりやすく説明すれば、山林の土壌が降水を一時的に貯留することにより、河川へ流れ込む水の量を平準化している。降水の河川への流量を自動調整するように働くため、洪水を緩和するのである。また、雨水が山林の土壌を通過することにより、濾(ろ)過する効果がもたらされて水質を浄化する機能を果たす。 つまり、きれいな水源を維持するためには、山林が必要というわけだ。この水源を狙って外国人が土地取引をしているのではないかというのが噂(うわさ)になっているのである。 この件について、全国の山林を手広く扱う「山林バンク」の辰己昌樹代表は次のように話してくれた。 「何年も前のことですが、某大手新聞社から中国人が水源林を買っているらしいが、売ったことはあるかと取材で聞かれたことがあります。売ったこともありませんし、私の知る限り外国人が水源を目的に山林を買ったという話も直接聞いたことはありません」 山林の不動産を扱うベテラン業者でさえ、直接外国人から取引を持ちかけられたことがないというのだ。 とはいえ、もしも日本の水源地を外国人に押さえられたら、海外へ水資源を持ち出されるという不安は拭いきれない。豊かな水資源に恵まれる日本だが、水資源の乏しい国にとっては大金を払ってでも良質な水源は欲しいものである。世界では約8.4億人が給水サービスを利用できず、またトイレ(衛生施設)を使えない人が約23億人もいるとして、SDGs(持続可能な開発目標)では「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保」(ゴール6)を定めているほどだ。 だからこそ、割安な日本の水源地を含む山林が狙われているのである』、なるほど。
・『21世紀の世界は「水戦争」の時代  「外国人が水源地の山を買っている」という噂話には、主に2つのエピソードが結びつけられて拡散したのではないかと思われる。 一つ目は、2008年に公開された映画『ブルー・ゴールド 狙われた水の真実』がきっかけだろう。このドキュメンタリー映画は、世界で起きているさまざまな水資源の争奪を描いたもので、例えば開発途上国に水道事業の民営化を迫る水メジャーと呼ばれるような企業が水資源を独占し、アフリカのある国では水道代が高騰し、貧しい国民の多くが安全で衛生的な飲料水を飲めない状況が起きていると問題提起したのである。 この映画公開後には、東京財団政策研究部から政策提言「日本の水源林の危機~グローバル資本の参入から『森と水の循環』を守るには~」(2009年1月)が発表された。 この提言の序章にある「日本の森と水が狙われている ~水源林を守り、『森と水の循環』を維持せよ」の中で、紀伊半島の奥地水源林(三重県大台町)に中国資本が触手を伸ばした、との記載がある。しかし、断念したということで、中国が水源林を買ったとは明言していない(ちなみに水源林とは、雨水を吸収し浄化しつつ水源の枯渇を防いだり、河川に流れ込む水を調整したりする機能を持つ森林にあたる)。 「世界の水戦争」がすでに、日本でも身近に迫っているという危機感があったのは確かだろう。 2012年には、「水源地買収 さらなる規制を」の小見出しで、産経新聞が水源地買収問題で意見書を国に提出した15の自治体を記事にした(3月26日付)。この中で、北海道ニセコ町の15の水源地のうち2つが外資所有になっており、「水道水源保護条例」を制定するきっかけになったと報じている。 二つ目は、中国が抱える水問題である。2012年頃の中国は、水資源量が世界の5パーセント程度しかなく、しかも河川の水量の7割近くが飲料に適さないほど汚染されていたのである。水資源が不足している中国の事情から、日本の水源林を狙って購入しているというイメージが一人歩きしてしまったのだろう。 さらに、2011年に東日本大震災が起きたことで、デマや流言飛語が広まりやすくなっていたこともある。「復興」という絆を共有し、頑張ろうと奮い立って日本中が敏感になっていたときに、北海道のニセコ町で水源地を含む山林が外国資本に買われていたことがわかったのだ』、「北海道ニセコ町の15の水源地のうち2つが外資所有になっており、「水道水源保護条例」を制定するきっかけになった」、「保護条例」は下記にみるようにかなり守られたと考えられるようだ。
・『外国資本はどのくらい日本の水源林を購入しているのか  外国人が日本の土地を簡単に取得できることを問題視する向きもあるが、今のところ水源林の売買に関しては取引を制限する国の法律はない。では、外国人または外国資本は日本の山林をどのくらい購入しているのだろうか? 農林水産省の令和元年(2019年)5月31日付のプレスリリース「外国資本による森林買収に関する調査の結果について」では、平成30(2018)年1月から12月までの期間における外国資本による森林買収について都道府県別に調査発表されている。 これを見ると1年間で30件の森林が買収されており、そのうち13件が中国人または中国系法人である。中でも北海道の倶知安町の17ヘクタールの森林が買収されており、利用目的が未定になっていることが気がかりだ。 だが、利用目的を見る限り「水源確保」を目的にしているわけではない。もちろん、地下水を含む水源の事業化を目論(もくろ)んでいないとは断定できないが、各自治体は防御策を講じている。 例えば、ニセコ町では2011年に「水道水源保護条例」と「地下水保全条例」が施行され、届け出や許可のない水源地の開発や地下水の揚水を規制しており、水資源の無秩序な採取を防いでいる。翌年の2012年には北海道で水資源の保全に関する条例が可決されて、全道で外資による水源地(山林)の買収に規制をかけた。また、他の多くの自治体でも同様の規制をかけて、水源地の山林を守っているのが現状である』、「届け出や許可のない水源地の開発や地下水の揚水を規制」、いいことだ。
・『日本の水源地は守られるのか?  海外では、外国資本による土地取引を制限している国も少なくない。しかし、日本には水源地や山林を守るような法律は今のところない。ただし、土地取引の規制に関する措置は設けられている。これは全国に一般的に適用される『事後届出制』と、地価の上昇の程度等によって区域や期間を限定して適用される『事前届出制』である『注視区域』制度と『監視区域』制度、そして『許可制』である『規制区域』制度から構成されている。要するに、土地を取得した場合に所有者の移転の届け出を義務づけているのだ。 山林を購入した場合は契約した後に届け出が必要になる。ほとんどの山林は都市計画区域外にあたるので、1万平方メートル(約3025坪)以上であれば、買い主が2週間以内に、市・区役所、町村役場の国土利用計画法担当窓口へ届け出なければならない。1万平方メートル未満なら「森林の土地の所有者となった届出」を出すことになる。実はこうした所有権の移転の届け出によって、外資による森林買収の取引監視の強化にもつながっているのである』、「所有権の移転の届け出」が「外資による森林買収の取引監視の強化にもつながっている」、とは思わぬ効用だ。
・『中国などの外国資本が「水源地の山林」を買っているという噂は本当か  ヤマケイ新書『山を買う』福崎剛/著、山と渓谷社/刊、224ページ。山林購入者のインタビューを交え、山を所有する魅力について紹介しているほか、本稿で触れた「外国人による日本の山林買収」についても取り上げている。 なお、日本の水源地を守ることに関しては、今のところ先に紹介した各自治体の「水道水源保護条例」や「地下水保全条例」によって、開発や事業化を防いでいる状況だ。国土交通省の水管理・国土保全局は、「地下水関係条例の調査結果」(平成30年10月)国土交通省調査結果.pdfを公表し、47都道府県で80条例、601地方公共団体で740条例を制定していることがわかった。 これらの条例の目的は主に4つで、(1)地盤沈下、(2)地下水量の保全または地下水涵養、(3)地下水質の保全、(4)水源地域の保全に分かれる。この中で最も多い条例数は、地下水質の保全で420、続いて地盤沈下が412、そして地下水量の保全または地下水涵養が363となっている。これだけ条例で規制をかけているため、素直に考えて水源地を買収されても地下水を採取することが難しい。水源地の開発行為の制限もあり、土地を買収されて勝手に活用される心配はしなくてよさそうだ。 また、こうした条例に罰則規定を設けている地方公共団体も多く、懲役や罰金の規定がある条例がほとんどだ。また、氏名の公表や過料を定めている条例もある。この罰則規定がどこまで外国資本から日本の水資源を守れるのか、その効果はわからない。しかし、こうした条例による規制がかけられることで、水源地のある山林は守られているというわけである』、「水源地の開発行為の制限もあり、土地を買収されて勝手に活用される心配はしなくてよさそうだ」、一安心である。

次に、6月22日付け東洋経済オンラインが掲載した多摩大学学長の寺島実郎氏による「「本質を見誤ると日本は米中関係に翻弄」 経済安保論を単純な「中国封じ込め」に歪めるな」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/435658
・『経済安全保障論において、国際的ルール形成に関与していくことの重要性をいちはやく見抜き、学長を務める多摩大学に「ルール形成戦略研究所」を置いた寺島実郎氏。 寺島氏は現在の「中国封じ込め」のための経済安保論には「事の本質を見誤ってはいけない」「話を歪めてはいけない」と警告を発する。どういう意味か。 著名な外交評論家が述べた「日米関係は米中関係だ」という指摘を踏まえ、日本の外交姿勢はどうあるべきか、どうすれば強権化する中国と正対できるのか、思考を巡らせる(Qは聞き手の質問、Aは寺島氏の回答)』、興味深そうだ。
・『経済安保論の本質を冷静に見抜け  Q:アメリカと中国の対立が激しくなるに伴い、経済安全保障の論議が熱を帯びています。 A:日本がアメリカと一体化して中国の脅威を封じ込めるという文脈の中で登場しているのが今の「経済安全保障」論だが、事の本質を見誤ってはいけない。 国民の生活に欠かすことができない食料やエネルギーを途絶えさせないために国は何をすべきか、という本来の経済安保論はきわめて重要で、エネルギー問題については私自身が長い間、携わってきた。 だが、今の経済安保論はさまざまな意味で歪められている。米中対立の激化、日米同盟の強化を盛んに強調する人たちが、政治的な意図に満ちた経済安保論を繰り広げている。 私たちは今、いかに冷静で、かつ事の本質を見抜ける力を持っているかどうかが問われている。まずは以下の数字を確認したい。 2020年、アメリカと中国の貿易総額は5592億ドルで、前年と比べると3億ドル増えていた。一方、日本とアメリカのそれは1833億ドルで、前年比で350億ドルも減った。つまり、コロナ禍で日米間の取引が大きく後退していた時、米中間はしっかり手を握り合っていたということだ。 数字を見れば明らかなように、米中間の貿易総額は日米間のそれの3.1倍にも達している。米中デカップリングだ、新冷戦だと騒がれているが、当のアメリカと中国は、日本とアメリカ以上の取引をしっかりと続けている。 事の本質を見抜かないと、私たちは米中関係に翻弄されることになる。 Qどういう姿勢が必要でしょうか。 A:どんなに不条理なことがあってもアメリカについていくしかないというのが日本人の固定観念になってしまっている。 かつて外交評論家の松本重治が「日米関係は米中関係だ」と、本質を突く指摘をした。日米関係は中国というファクターに絶えず掻き回されてきたという意味だ。 第2次世界大戦において、日本はアメリカに敗北したと総括しがちだが、米中の連携に敗れたという側面も押さえておかなくてはならない。ここでヘンリー・ルース(1898?1967年)というアメリカの出版人、雑誌界の大物だった人物を紹介したい。 彼の父親はキリスト教の宣教師として中国で布教活動をしていたため、14歳まで中国で過ごした。ルースは1922年に『タイム社』を設立し、その後は「チャイナ・ロビー」として、日中戦争を率いた中国国民党の指導者・蒋介石や妻の宋美齢を支持するようなメディアキャンペーンを展開し、アメリカ世論を「中国支持」へと誘導した』、「コロナ禍で日米間の取引が大きく後退していた時、米中間はしっかり手を握り合っていたということだ。 数字を見れば明らかなように、米中間の貿易総額は日米間のそれの3.1倍にも達している」、冷徹な判断が必要なようだ。「日米関係は中国というファクターに絶えず掻き回されてきたという意味だ。 第2次世界大戦において、日本はアメリカに敗北したと総括しがちだが、米中の連携に敗れたという側面も押さえておかなくてはならない」、その通りだ。
・『もし蒋介石が毛沢東に敗れていなかったら?  ところが第2次世界大戦が終結すると、蒋介石は共産党の毛沢東に敗れてしまう。自分たちが支持していた蒋介石が台湾に追放されたことから、ルースは台湾を支持する形で大陸中国と対峙するポジションへと立ち位置を移す。そのうえで、かつて「敵」としていた日本を中国共産党の防波堤とするために、アメリカが援助していくことが必要だと説いた。 ルースが死去する1967年まで、アメリカの対東アジア政策は彼の影響を強く受けて展開された、といえる。 このような歴史的な背景をも踏まえたとき、もし蒋介石が毛沢東に敗れずに本土の中国を掌握していたら日本の戦後復興は20年も30年も遅れただろうということだ。中国本土との連携が途切れていなければ、アメリカが日本の戦後復興を援助する必要性などないからだ。 ヘンリー・ルースに象徴されるように、アメリカの政策というのは国益にかなうかどうかで右にも左にもいく。日本が脅威であるときには中国と手を結び、中国を抑えたいというときには日本をうまく利用する。 Qどういう姿勢が必要でしょうか。 A:どんなに不条理なことがあってもアメリカについていくしかないというのが日本人の固定観念になってしまっている。 かつて外交評論家の松本重治が「日米関係は米中関係だ」と、本質を突く指摘をした。日米関係は中国というファクターに絶えず掻き回されてきたという意味だ。 第2次世界大戦において、日本はアメリカに敗北したと総括しがちだが、米中の連携に敗れたという側面も押さえておかなくてはならない。ここでヘンリー・ルース(1898?1967年)というアメリカの出版人、雑誌界の大物だった人物を紹介したい。 彼の父親はキリスト教の宣教師として中国で布教活動をしていたため、14歳まで中国で過ごした。ルースは1922年に『タイム社』を設立し、その後は「チャイナ・ロビー」として、日中戦争を率いた中国国民党の指導者・蒋介石や妻の宋美齢を支持するようなメディアキャンペーンを展開し、アメリカ世論を「中国支持」へと誘導した』、なるほど。
・『もし蒋介石が毛沢東に敗れていなかったら?  ところが第2次世界大戦が終結すると、蒋介石は共産党の毛沢東に敗れてしまう。自分たちが支持していた蒋介石が台湾に追放されたことから、ルースは台湾を支持する形で大陸中国と対峙するポジションへと立ち位置を移す。そのうえで、かつて「敵」としていた日本を中国共産党の防波堤とするために、アメリカが援助していくことが必要だと説いた。 ルースが死去する1967年まで、アメリカの対東アジア政策は彼の影響を強く受けて展開された、といえる。 このような歴史的な背景をも踏まえたとき、もし蒋介石が毛沢東に敗れずに本土の中国を掌握していたら日本の戦後復興は20年も30年も遅れただろうということだ。中国本土との連携が途切れていなければ、アメリカが日本の戦後復興を援助する必要性などないからだ。 ヘンリー・ルースに象徴されるように、アメリカの政策というのは国益にかなうかどうかで右にも左にもいく。日本が脅威であるときには中国と手を結び、中国を抑えたいというときには日本をうまく利用する。 Q:ニクソン大統領による電撃訪中(1972年)も日本の頭越しでした。 A:ニクソン訪中は日本にとって戦後もっとも大きなトラウマになっている。頭越しにアメリカと中国が握手し合ったときの日本の当惑たるや、まるで世界史から取り残されたような焦燥感が支配していた。 ニクソン訪中以降、日本の意識の底には、米中対立の激化への期待が根強くある、といえる。「アメリカと中国が対立していてくれればアメリカは日本側に向いてくれる」という深層心理があるのだ。私は日米経済摩擦がもっとも激しかった1980年代にワシントンに駐在していたので、アメリカ人の日本人観は痛いほどわかる。アメリカに対する過剰依存と過剰期待の態度をとる日本と比べれば、中国との関係のほうがわかりやすい力学で動くと捉えられている』、「もし蒋介石が毛沢東に敗れずに本土の中国を掌握していたら日本の戦後復興は20年も30年も遅れただろうということだ」、「日本」は「毛沢東」に感謝すべきなのかも知れない。
・『真の経済安全保障の議論を  Q:デジタル化が社会インフラとして進んでいくと、あらゆる情報機器を通じて私たちの個人情報が中国に抜き取られていくという指摘があります。 A:中国がデータリズムの時代を掌握しようとしているのは事実だろう。だが、もし日本人が本当の情報感受性を持ち合わせているのであれば、中国に対する危機感と同じ問題意識において「アメリカから情報を抜き取られることはよいのか?」と、冷静に考えなくてはならない。 (寺島実郎(てらしま・じつろう)/1947年北海道生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了後、三井物産入社。アメリカ・三井物産ワシントン事務所所長、三井物産常務執行役員、三井物産戦略研究所会長等を経て、現在は(一財)日本総合研究所会長、多摩大学学長。国土交通省・国土審議会計画推進部会委員、経済産業省・資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会基本政策分科会委員等、国の審議会委員も多数を務める。) 例えば、一部の海外メディアが「対中国を念頭に日本が『ファイブ・アイズ』へ参加し、6番目の締結国となる可能性がある」と報じたように、日本国内には、アメリカを中心とした機密情報共有の枠組みへの参加が認められるよう積極的に動く人たちがいる。このような国家間の情報共有ネットワークに参画することの本質的な意味を理解する必要があると思う。 Q:アメリカの力を借りずに中国と真に向き合えるでしょうか。 A:アメリカへの過剰依存から脱却せよと私が言い続けるのは、それが中国と正対するための条件だからだ。日本にはアメリカと一体化することで中国にプレッシャーを与えられる、強いメッセージを送れるという思い込みがある。しかし私に言わせれば、まったく逆だ。 中国やロシアの有識者と議論をしていると、彼らは日本をアメリカのプロテクトレイト(保護領)としか見ていないことに気づく。実際、アメリカの文献にもそう記されることがある。自力で国を築いてきた中国やロシアが、アメリカの保護領とされる日本と1対1で正対し、真剣な議論をするだろうか。 Q:日本は中国と正対できるでしょうか。 A:世界GDPに占める日本の比重の低下は著しい。1994年、世界GDPの実に17.9%を日本が占めていたが、今どうなっているか。去年は6.0%にまで落ちた。異様な勢いで日本の埋没が進んでいる。 悲願だった小型ジェット旅客機(MRJ)の国産化プロジェクトは挫折し、コロナ禍において国産ワクチンの開発も大きく出遅れている。一方、中国はそのどちらも一歩進んでいる。 日本の埋没している現状に健全な危機感を抱きつつ、私は今チャンスだとも思っている。中国が強権化し、安全保障の議論をしなければならないこの状況は、日本がどういう国であろうとするのかを日本人自身が真剣に考えるには、またとない機会だからだ。 そのうえで、真の経済安全保障についても議論を深めたい。真っ先に議論しなければならないのは「食と農」だ。戦後日本は、「食と農」を犠牲にして、工業生産力モデルで経済復興を果たしたといえる。その結果、食料自給率はカロリーベースで37%という、欧米諸国に比べても驚くほど低い水準に陥っている。 さらにコロナによってマスクも医療用手袋も防護服も海外に依存している現実を目の当たりにした。国民の安全を担保するためには何が必要なのか、あらためて経済安全保障という観点から議論されるべきだ』、「日本にはアメリカと一体化することで中国にプレッシャーを与えられる、強いメッセージを送れるという思い込みがある。しかし私に言わせれば、まったく逆だ。 中国やロシアの有識者と議論をしていると、彼らは日本をアメリカのプロテクトレイト(保護領)としか見ていないことに気づく。実際、アメリカの文献にもそう記されることがある」、「日本の埋没している現状に健全な危機感を抱きつつ、私は今チャンスだとも思っている。中国が強権化し、安全保障の議論をしなければならないこの状況は、日本がどういう国であろうとするのかを日本人自身が真剣に考えるには、またとない機会だからだ」、その通りだ。
・『真の意味の経済安全保障を日本はリードせよ  経済安保に関わるルール形成についても、大いに議論してもらいたい。アメリカのGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)や中国のBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)といった巨大IT関連企業による情報独占の問題をどう制御していくか。肥大化するマネーゲームをコントロールするため金融取引税をはじめとした国際的な連携体制をどう構築していくか。資本主義の歪みを正し、健全に発展させていくための議論こそ真の意味での経済安全保障であり、ここでこそ日本はリーダーシップを発揮してほしい。 国民の安全・安心のための産業基盤づくりの第一歩として、私が率いる一般財団法人日本総合研究所は日本医師会等と連携する形で、「医療・防災産業創生協議会」を設立した。コロナのような感染症や自然災害に対応できる体制を国家として築いていくために医療と防災に関する産業を興していこうという構想だ。国会でもこの構想を支持する超党派議員連盟が結成され、7月にも発足する。経済安全保障とは異なる話題だと思うかもしれないが、食も含めた医療・防災こそ経済安全保障につながるものだと思う。 経済安全保障の論議は奥が深い。単純な「中国封じ込め」のための経済安保論へと、話を歪めてはいけない。国民の生活をいかに守っていくか、そんな真の経済安保論議が必要だ』、「肥大化するマネーゲームをコントロールするため金融取引税をはじめとした国際的な連携体制をどう構築していくか。資本主義の歪みを正し、健全に発展させていくための議論こそ真の意味での経済安全保障であり、ここでこそ日本はリーダーシップを発揮してほしい」、同感である。

第三に、6月23日付け東洋経済オンライン「日本の「産業スパイ対策」がどうにも甘すぎる事情 経済安保が重要な中、いいようにやられている」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/436008
・『「政治、安全保障と経済はもはや表裏一体であり、教科書的な純粋な経済というのは存在しない。今まで以上に経済安全保障や地政学の影響を受けながら、経済は動いていくと思う。その経済の中の生き物である企業は、当然のことながら経済安全保障を意識して経営をしなければならない」 6月15日の経済同友会記者会見で、代表幹事を務めるSOMPOホールディングスグループCEO社長の櫻田謙悟氏はこう語った。 しかし、日本企業から安全保障に関わる機密情報の流出が後を絶たない。経済安全保障の重要性が高まる一方で、日本企業は産業スパイにいいようにやられている。 積水化学工業では2020年10月、元社員がスマホのタッチパネルに使われる「導電性微粒子」技術を中国・潮州三環グループにメールで送信し、不正競争防止法違反罪に問われた。中国企業は、SNS「リンクトイン」を通じて元社員に接触し接待を重ねていた。元社員は解雇後、別の中国企業に転職したとされる。大阪地検が在宅起訴し、今年6月17日に初公判が開かれた。被告は起訴内容を認めている。 ほかにも2018年11月、電子通信器機製造販売の川島製作所で元役員の情報漏洩が発覚。翌2019年6月には、電子部品製造会社・NISSHAで営業秘密を抜き取り、中国企業に転職した元社員が逮捕され、その後、元社員には実刑判決が下っている。さらに2020年1月、ソフトバンク元社員が報酬の見返りにロシア元外交官に情報を渡したとして逮捕され、有罪判決を受けた。 先端技術の流出防止は警察外事課の仕事だが、ある県警の公安警察官は「企業は規模が大きくなるほど情報管理は自前でやると言い、協力が得にくい」とぼやく。情報処理推進機構が20年に行った調査によれば、中途退職者による漏洩は36.3%と、4年前に比べ増えている』、「企業は規模が大きくなるほど情報管理は自前でやると言い、協力が得にくい」、見栄だけで言っている面もあり、困ったことだ。「中途退職者による漏洩は36.3%と、4年前に比べ増えている」、退職金規定を見直す必要があるかも知れない。
・『日本にも必要な「セキュリティークリアランス」  ソフトバンクは事件以降の対応について、『週刊東洋経済』の取材に書面で回答した。退職予定者の端末から社内情報へのアクセスを制限し端末操作の監視を強化したほか、全役員・全社員にセキュリティー研修を毎年実施し、未受講者にはアカウントの停止や重要情報へのアクセスの遮断を行ったという。さらにAI(人工知能)で端末の操作履歴を監視し、疑わしい挙動を自動検知するシステムも導入したことを明らかにした。積水化学、NISSHAにも同じく取材を申し込んだが、回答はなかった。 産業スパイの被害に遭う日本企業が目立ち始めている状況について、日本大学危機管理学部の小谷賢教授は「民間でもセキュリティークリアランスを導入しなければ、内部不正は防げない。欧米企業との共同開発から日本企業が締め出されることになりかねない」と指摘する。 セキュリティークリアランスとは、日本でいえば一部の国家公務員に課される「秘密取扱者適格性確認」のことで、欧米では民間でも一般的だ。海外企業と共同開発を進める一部の日本企業は、民間にもこの制度を導入するよう政府に働きかけている。だが、借金の状況や親族の個人情報などを詳細に記入する「身上明細書」が日本弁護士連合会に問題視されるなど、導入は依然ハードルが高い。 政府の側でスパイ対策に力が入るのは公安調査庁だ。2020年4月に内閣官房の国家安全保障局に経済班が設置されたが、経済安保に特化して情報収集・分析している官庁はない。前出の小谷教授は「経産省はやや腰が重いように見えるので、人員の余力、分析能力から公安調査庁が適任ではないか」と話す』、「借金の状況や親族の個人情報などを詳細に記入する「身上明細書」が日本弁護士連合会に問題視されるなど、導入は依然ハードルが高い」、人権保護もないがしろにすべきでないのは当然だ。
・『専門チーム発足で腕をまくる公安調査庁  かつて公安調査庁は過激派の衰退やオウム真理教事件の終結とともに「法務省の盲腸」ともいわれたが、2021年2月に長官・次長直轄の「経済安全保障関連調査プロジェクトチーム」を発足。海外企業の土地買収や投資を調査する調査一部、国内外のスパイを監視する調査第二部の調査官を中心に20人を集結させ、活路を見いだす。2021年度予算では、経済安保に関連する情報収集・分析機能強化の一環で、70人以上の増員を行う見通しだ。 6月7日、全国局長・事務所長会議で和田雅樹長官は「懸念国はわが国が保有する機微な技術、データ、製品などの獲得に向けた動きを活発化させている。当庁には技術流出の実態解明や未然防止に資する情報の収集、分析が強く求められている」と語っている。プロジェクトチームでは東京大学先端科学技術研究センターと連携を深め、先端技術の情報収集や企業への啓発活動を進めている。「専用のホームページ経由、また企業訪問の際に、スパイ行為をうかがわせる情報の提供もある」(同庁幹部)という。 課題は専門知識を持った人材の確保だ。今年4月にマイナビで調査官を公募したところ、約1400人のプレエントリーがあったが、同幹部は「国家公務員の給与規定が壁となり、理想に近い人材ほど待遇面で採用が難しい」と漏らす。 人材のあり方、さらにはスパイ防止法の制定やファイブアイズ(米英など5カ国の諜報同盟)への参加などを含め、国民の支持を得つつ法の整備を進めていく必要がありそうだ。) Q:どういう意味でしょうか。 A:明治維新に始まる日本の近代化を支えたエネルギーは、やはり西洋との緊張関係の中で生まれたものだった。西洋列強がアジア各国を次々に植民地にしていったことへの苛立ちがあったろうし、このままでは日本ものみ込まれるという焦りもあっただろう。アジアから西洋列強を追い返し、アジアを独立させたいという義侠心もあったはずだ。そうした心情、すなわち「アジア主義」の考え方が、明治維新初期の日本には確実にあった。 ところが、結果的に日本も西洋列強のような帝国主義へと堕ちていった。初志とはかけはなれ、日本自身も覇権主義国家に成り果て、アジアと日本に破滅をもたらした。このことへの深い反省が戦後日本の起点になっているはずだ』、「公安調査庁」に情報漏洩、知的財産権などの経済犯罪に対応できるのか、私は難しいように思うやることが、左翼対策などやることがなくなったので、やらせるというのは無理が多いように思う。
・『覇権をもって秩序に挑戦すれば破滅する  私は、日本の失敗の歴史をこそ中国と共有したいと思っている。覇権をもって秩序に挑戦をすれば必ず破滅をもたらす。一時的には繁栄を手にできるかもしれないが、大日本帝国はそれで滅んだ。「覇道の道、覇権主義はあなたたちのためにはならない」という助言は、経験者である日本だからこそいえる話だ。 中国は当然「侵略してきた君たちに言われる筋合いはないよ」と反論するでしょう。それでもあえて言うのが隣国・日本としての責務だと思う。また、そう言い続けるためには日本も過去に対して反省している姿勢を示さなければならない。中国と真剣に向き合うためには、それくらいの覚悟が必要だ。 日本と中国には2000年におよぶ付き合いがある。関係がいいときも悪いときもあったが、日本は漢字から法制度まで実に多くのことを中国から学び、独自に発展させてきた。勝海舟は「日本の文物、シナから学ばなかったものは1つもない」と言ったが、その通りだと思う。 今日や明日の国益だけを見て判断するのではなく、米中どちらにもつかない道、自主独立の道を念頭におきながら100年後、200年後の東洋、アジアを構想する。そのくらいの心構えで現実に臨みたい。)』、「「覇道の道、覇権主義はあなたたちのためにはならない」という助言」、現在の思いあがった中国には通用しないと思うが、一応助言してみる価値はあるかも知れない。
タグ:「もし蒋介石が毛沢東に敗れずに本土の中国を掌握していたら日本の戦後復興は20年も30年も遅れただろうということだ」、「日本」は「毛沢東」に感謝すべきなのかも知れない。 「借金の状況や親族の個人情報などを詳細に記入する「身上明細書」が日本弁護士連合会に問題視されるなど、導入は依然ハードルが高い」、人権保護もないがしろにすべきでないのは当然だ。 「企業は規模が大きくなるほど情報管理は自前でやると言い、協力が得にくい」、見栄だけで言っている面もあり、困ったことだ。「中途退職者による漏洩は36.3%と、4年前に比べ増えている」、退職金規定を見直す必要があるかも知れない。 「日本の「産業スパイ対策」がどうにも甘すぎる事情 経済安保が重要な中、いいようにやられている」 「「本質を見誤ると日本は米中関係に翻弄」 経済安保論を単純な「中国封じ込め」に歪めるな」 「肥大化するマネーゲームをコントロールするため金融取引税をはじめとした国際的な連携体制をどう構築していくか。資本主義の歪みを正し、健全に発展させていくための議論こそ真の意味での経済安全保障であり、ここでこそ日本はリーダーシップを発揮してほしい」、同感である。 寺島実郎 「公安調査庁」に情報漏洩、知的財産権などの経済犯罪に対応できるのか、私は難しいように思うやることが、左翼対策などやることがなくなったので、やらせるというのは無理が多いように思う。 「日本にはアメリカと一体化することで中国にプレッシャーを与えられる、強いメッセージを送れるという思い込みがある。しかし私に言わせれば、まったく逆だ。 中国やロシアの有識者と議論をしていると、彼らは日本をアメリカのプロテクトレイト(保護領)としか見ていないことに気づく。実際、アメリカの文献にもそう記されることがある」、「日本の埋没している現状に健全な危機感を抱きつつ、私は今チャンスだとも思っている。中国が強権化し、安全保障の議論をしなければならないこの状況は、日本がどういう国であろうとするのかを日本人自身が 「コロナ禍で日米間の取引が大きく後退していた時、米中間はしっかり手を握り合っていたということだ。 数字を見れば明らかなように、米中間の貿易総額は日米間のそれの3.1倍にも達している」、冷徹な判断が必要なようだ。「日米関係は中国というファクターに絶えず掻き回されてきたという意味だ。 第2次世界大戦において、日本はアメリカに敗北したと総括しがちだが、米中の連携に敗れたという側面も押さえておかなくてはならない」、その通りだ。 「「覇道の道、覇権主義はあなたたちのためにはならない」という助言」、現在の思いあがった中国には通用しないと思うが、一応助言してみる価値はあるかも知れない。 安全保障 (その9)(中国などの外国資本が「水源地の山林」を買っているという噂は本当か、寺島実郎「本質を見誤ると日本は米中関係に翻弄」 経済安保論を単純な「中国封じ込め」に歪めるな、日本の「産業スパイ対策」がどうにも甘すぎる事情 経済安保が重要な中 いいようにやられている) 「中国などの外国資本が「水源地の山林」を買っているという噂は本当か」 ダイヤモンド・オンライン 福崎 剛 東洋経済オンライン 「水源地の開発行為の制限もあり、土地を買収されて勝手に活用される心配はしなくてよさそうだ」、一安心である。 「所有権の移転の届け出」が「外資による森林買収の取引監視の強化にもつながっている」、とは思わぬ効用だ。 「届け出や許可のない水源地の開発や地下水の揚水を規制」、いいことだ。 「北海道ニセコ町の15の水源地のうち2つが外資所有になっており、「水道水源保護条例」を制定するきっかけになった」、「保護条例」は下記にみるようにかなり守られたと考えられるようだ。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

安全保障(その8)(台湾有事 米国は在日米軍基地の確実な使用を求める、「日本を守っていない」在日米軍の駐留経費負担5倍増額は不可能だ、日本はまた「戦争」をする国になってしまうのか その不安と恐怖 そして今 経営者に求められる覚悟) [外交・防衛]

安全保障については、7月22日に取上げた。今日は、(その8)(台湾有事 米国は在日米軍基地の確実な使用を求める、「日本を守っていない」在日米軍の駐留経費負担5倍増額は不可能だ、日本はまた「戦争」をする国になってしまうのか その不安と恐怖 そして今 経営者に求められる覚悟)である。

先ずは、7月18日付け日経ビジネスオンライン「台湾有事、米国は在日米軍基地の確実な使用を求める」を紹介しよう(Qは聞き手の質問)。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/071600079/
・『大阪で6月に開催されたG20首脳会議後の記者会見で、トランプ米大統領が「日米同盟はアンフェア」だと発言した。同大統領は日米同盟の本質を理解しているのか。その不満を解消する手段はあるか。台湾や朝鮮半島有事に日米はいかなる連携をするのか。米ランド研究所のジェフリー・ホーナン研究員に聞いた。 (ホーナン氏のインタビューの前編「ホルムズ海峡で低強度紛争起これば、日本に後方支援求む」はこちら) Q:ドナルド・トランプ大統領の「日米同盟はアンフェア」発言について伺います。 同大統領は日米同盟のありようを理解しているでしょうか。日本は基地を提供。米国は日本とシーレーンの防衛を提供。提供するものは異なるけれども平等な条約というのが日米の共通理解だと思います。 ホーナン:残念ながら理解していないと思います。トランプ大統領の認識は、1980年代の日米関係のまま固定化されているのでしょう』、「トランプ大統領の認識は、1980年代の日米関係のまま固定化されている」というのはとんでもないことだ。米政府関係者は何をしているのだろう。
・『それでも、基地の提供はスタート地点  日本はその後、湾岸戦争に臨んで海部俊樹首相(当時)が自衛隊による貢献に一歩を踏み出したのを皮切りにさまざまな努力をしてきました。国連PKO(平和維持活動)への参加、後方支援に対する地理的限定の削除、イラク戦争やアフガニスタン戦争での貢献--。 これらは米国を直接防衛するものではありません。しかし、日本は確実に貢献してきました。それが、トランプ大統領の目には入っていません。 また、日本の基地がなければ、米国は西太平洋からインド洋にかけて前方展開することができません。日本はその基地の経費も多額を負担しています。トランプ大統領がこうした日本の貢献について語るのを聞いたことがありません。彼は米国と日本の関係は、米国とNATOの関係とは異なるのを理解していないのです。同盟国の役割を、互いを「守るか」「守らないか」という狭い範囲に限定してしか見ていない。 日本の一部には以下の意見があります。日本が提供する基地の価値は非常に大きい。米国が負担する防衛義務とバランスが取れている。これ以上、日本の負担を増やす必要はない。これをどう思いますか。 ホーナン:基地の提供と米軍駐留経費の負担は「ベース」になっています。日本は「平成」の時代に安全保障法制を成立させました。「令和」の時代は、同法の下で何を実行するかが問われると思います』、安倍首相は日本の役割をトランプ大統領に説明すべきだ。
・『米軍駐留経費の増大は日米に不満をもたらしかねない  Q:令和の時代に何をするか。次の4つの案があります*。評価を聞かせてください。第1は、米軍駐留経費の負担を拡大させる、です。 *:防衛大学校の武田康裕教授が、以下の案を実現するプランや装備を具体的に設定し、必要なコストを試算している。概要は「日米同盟へのトランプ氏の不満、解消にかかる金額は?」を参照。 ホーナン:その案は、日米双方が不満を残す結果になる恐れがあります。日本が100%負担すれば米国は満足でしょう。「家賃がただ」なわけですから。 Q:でも、その場合は、日本国内で日米地位協定の改定を求める世論が高まるでしょうね。 ホーナン:おっしゃる通りです。では、現行の水準と100%との間のどこを落としどころとするか。日本は、負担するパーセンテージを増やすたびに「この上昇がいつまで続くのか」という不信感を抱くことになります。一方、米国側も「もっと増やすことができるのでは」と考える』、。
・『ミサイル防衛システムの拡充は「ウィン・ウィン」  Q:第2の案は、ミサイル防衛システムの拡充です。新たにTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)を加える。迎撃ミサイルは現在、イージス艦に搭載するスタンダードミサイル(A)と、地上に配備するパトリオットミサイル(B)で構成しています。これにイージス・アショア(C)を追加することが決まっています。(C)は(A)を地上に配備する仕様のものです。THAADを加えることで、弾道ミサイルの軌道のミッドコース(弾道の頂点)とターミナル段階(大気圏に再突入し着弾に至る過程)のカバーを強化することができます。 ホーナン:これはよいですね。日本、在日米軍、そして米軍のみなに利益をもたらします。この分野はすでに日米の協力が進んでいますが、協力をさらに深められる分野です。 Q:第3の案は、シーレーン防衛のため、空母を導入する案です。F-35Bを48機搭載できるクイーン・エリザベス級の空母を3隻導入し、それぞれを中心に3つの空母打撃群を構成する。1つの打撃群は6隻の護衛艦(うち3隻は艦隊防空を担うイージス艦)、2隻の潜水艦、1隻の補給艦で構成する。 ホーナン:理論的には良い案だと思います。しかし、実現が難しいのではないでしょうか。3つの空母打撃群を運用するには、それ用の訓練を受けた多数の人材が必要です。今の海上自衛隊でそれを賄えるでしょうか。最も適切な質問は、日本に空母が必要かどうか。私はまだ100%確信してはいません』、「第3の案」の「空母を導入する案」は問題があり過ぎる。
・『島しょ防衛は、統合運用の強化を  Q:第4の案は、島しょ防衛の強化です。在沖縄米海兵隊が使用するキャンプバトラーと普天間基地の施設管理を自衛隊が引き継ぐ。加えて、強襲揚陸艦とドック型輸送艦、ドック型揚陸艦の3隻で構成する部隊を3組整える。 ホーナン:これは良い案ですね。この分野の力が十分ではなかったので、陸上自衛隊が水陸機動団を2018年に設置しました。 ただし、私が見るところ、島嶼防衛の問題は装備ではなく、統合運用の練度です。水陸機動団が力を発揮するには、航空自衛隊と海上自衛隊による上空と海上からの支援が欠かせません。仮に尖閣諸島をめぐって中国と争うことになった場合、陸上自衛隊だけで戦うなら日本は負けます。 陸上自衛隊と米陸軍、海上自衛隊と米海軍、航空自衛隊と米空軍のインターオペラビリティー(相互運用性)の向上や情報共有はかなり進みました。しかし、自衛隊の中の陸・海・空の統合運用が不十分だと思います。 例えば、航空自衛隊と海上自衛隊はLink-16と呼ぶ情報通信ネットワークを通じて情報を共有していますが、陸上自衛隊は今のところこのネットワークに入っていません。各自衛隊間の通信は一定程度確保できているものの、使用する機材、システム、周波数が異なるため、まだ改善の余地があると思っています。情報が共有できなければ、陸上自衛隊の水陸機動団の装備をいくら増やしても、それを生かすことはできません。陸上自衛隊が同ネットワークに加わるのはイージス・アショアの導入を待つ必要があります。 陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊が参加する統合訓練を強化する必要があると思います。仮に水陸機動団が尖閣諸島奪還のために上陸を試みる場合、これに対するミサイル攻撃を防ぐべく上空の安全を確保しなければなりません。これを提供するのは航空自衛隊や海上自衛隊です。例えば陸上自衛隊のオスプレイと航空自衛隊のF-16が連携する訓練などをもっと行うべきでしょう。 自衛隊は優秀な装備を所有しています。これの統合度が高まれば、米国にとっても利益になると思います。 Q:トランプ大統領は米国製装備を日本にもっと買ってほしいようですが。 ホーナン:日本が戦闘機をもっと買ったとしても、パイロットや整備士が足りなければ意味がありません。トランプ大統領の視点は近視眼的なのではないでしょうか』、「航空自衛隊や海上自衛隊」と「陸上自衛隊」の「統合度」向上は必須の課題だ。
・『台湾有事には、在日米軍基地の確実な使用を求める  Q:対中国の抑止力を高める施策で、米国が日本に求めるものはありますか。 ホーナン:日本はすでにいろいろ取り組んでいます。例えば、中国のA2AD戦略*に対峙すべく、南西諸島における体制を強化していますね。 *:Anti Access/ Area Denial(接近阻止・領域拒否)の略。中国にとって「聖域」である第2列島線内の海域に空母を中心とする米軍をアクセスさせないようにする戦略。これを実現すべく、弾道ミサイルや巡航ミサイル、潜水艦、爆撃機の能力を向上させている。第1列島線は東シナ海から台湾を経て南シナ海にかかるライン。第2列島線は、伊豆諸島からグアムを経てパプアニューギニアに至るラインを指す。 陸上自衛隊が今年春、宮古島に駐屯地を設置しました。来年以降、地対空ミサイルや地対艦ミサイルの部隊を配備する予定です。奄美大島の奄美駐屯地には03式中距離地対空誘導弾(中SAM)を、瀬戸内分屯地には12式地対艦誘導弾(SSM)を配備しました。石垣島でも駐屯地を置く計画が進んでいます。これらに先立つ2016年には、日本の最西端である与那国島に沿岸監視隊を配備しました。 ホーナン:この取り組みは米国にも利益をもたらします。在沖縄の米軍基地を守る能力が高まります。さらに、宮古海峡を封鎖し、中国海軍が第1列島線を出て西太平洋に展開するのを防ぐ力も充実します。 Q:日米の一部に、中国が台湾に軍事侵攻する可能性が高まっていると見る向きがあります。 ホーナン:仮にそうなったら米国は日本に、在日米軍基地の使用(アクセス)とその防衛を求めるでしょう。特に沖縄の基地は重要です。これは日米安全保障条約の第6条に基づく要請です。基地が使えないとしたら、米国から見て、同条約が存在する意味がありません。 加えて、日本は攻撃されていない限り、日本のEEZ(排他的経済水域)の中で情報 · 監視 · 偵察 (Intelligence, Surveillance and Reconnaissance)や米軍の艦船の護衛を求めることがあるかもしれません。 日本が攻撃されていない限り、それ以上のことはないと考えます。台湾防衛戦に日本が参加(engage)したら、それは中国と戦うことを意味します。さまざまな政治問題が生じます。日本にとって難しい選択でしょう。そうした議論は、米国の公文書を読んでも全く書かれていません。国防総省内でそのような議論があったかもしれませんが、それは分かりません。 Q:基地使用には、事前協議が必要になります。しかし、ベトナム戦争をはじめ、これまで事前協議が行われたことはありません。日本人はここに不安を感じています。 ホーナン:台湾が対象となる場合、米国は日本と必ず事前協議する必要があります。中国を空爆した米軍の爆撃機が沖縄の基地に直接帰還する可能性があります。台湾から最も近い基地ですから。その場合、日本が中国の攻撃対象になるかもしれません。漁業に携わる人や海上保安庁の要員に犠牲者が出かねません。 Q:朝鮮半島有事の場合は、事前協議はありますか。2017~18年にかけて、米国が北朝鮮を武力攻撃する可能性が高まったのは記憶に新しいところです。 ホーナン:朝鮮半島有事の場合は戦闘の規模によると思います。局地的なものであれば、在韓米軍だけで十分に対処できるでしょう』、台湾有事の場合の「事前協議」は明確化しておくべきだろう。
・『朝鮮半島有事には必ず事前協議する  Q:しかし、朝鮮戦争のような規模に拡大し、在日米軍を派遣する必要が生じた場合には、事前協議が必要と考えます。 米国が戦争するのに日本の基地を使用する場合、基本的には事前協議をするのだと思います。ベトナム戦争の時にしなかったのは、北ベトナムが日本を攻撃する可能性が全くなかったから。一方、相手が中国や北朝鮮である場合、日本に被害が及ぶ可能性がある。よって、これに関わるかどうか、日本は自分で判断したいでしょう。そのため事前協議が必要です。 米国が今後、在韓米軍を撤収させる可能性をどう見ますか。第3回目の米朝首脳会談が6月30日に行われ、トランプ大統領が北朝鮮に足を踏み入れました。これによって、朝鮮戦争の「終戦宣言」を出すハードルが低くなったという見方が浮上しています(関連記事「日韓会談を見送った日本、米朝韓協議を見守るだけ?」)。 ホーナン:現時点で撤収させる可能性は100%ないと考えます。米下院が5年、在韓米軍の規模を現行の2万8500人から減らしてはならないと定める法律を可決していますし。 終戦宣言が出れば、韓国の国民が米軍の撤収を求めることがあるかもしれません。しかし、米国は受け入れないでしょう。在韓米軍は米韓同盟に基づいて駐留しています。終戦宣言を出すことと、米韓同盟の破棄とは連動しません。ただし、韓国の政府が、その国民の声を無視できるかどうかは不透明です。 Q:トランプ大統領は今年2月、「現時点で撤収する計画はない」と明言しましたが、その一方で、「いつかするかもしれない」とも発言しています。 ホーナン:トランプ大統領は軍事的な視点ではなく、コストの視点から発言しています。米国が2017年12月に発表した国家安全保障戦略や2018年1月に発表した国家防衛戦略には在韓米軍が持つ軍事的な重要性が記されています。 Q:在韓米軍は、アジアにおける事実上唯一の米陸軍部隊です。在日米軍の陸軍は規模が非常に小さいので。これを維持する必要があるわけですね。対中国の抑止力として重要視されています。 ホーナン:そうした目的があると思います。米軍は認めないかもしれませんが。 ただし、在韓米軍の活動範囲は原則として朝鮮半島内に限定されます。在日米軍の活動範囲がアジア全体に及ぶのとは性格が異なります。 例えば、イラク戦争の時に、当時のドナルド・ラムズフェルド国防長官が在韓米軍の一部を割いて、イラクに派遣しました。この部隊は、その後、韓国に戻してはいません。戻すと、条約違反になる可能性があったからです。 朝鮮戦争の終戦宣言が出たら、在韓米軍の性格も変わるかもしれないですね。冷戦が終結したのを受けて、NATOはその役割を見直しました。同様のことが起こる可能性があります』、日本としても主体的に日米同盟のあり方を見直してゆくべきだろう。

次に、軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が8月22日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「「日本を守っていない」在日米軍の駐留経費負担5倍増額は不可能だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/212434
・『7月31日の朝日新聞夕刊は、同21日に来日した米大統領補佐官(安全保障担当)ジョン・ボルトン氏が米軍の駐留経費について「現在の5倍の支払いを求める可能性があると述べた」と報じた。 米政府の中にそのようなことを言った人がいたのだろうが、あまりに法外な話だ。 「3倍」「5倍」説を流して日本側を驚かせ、イラン包囲網の「有志連合」に参加させたり、2021年3月に期限切れとなる在日米軍経費負担に関する特別協定の再交渉が来年に始まる前にベラボウに高い「言い値」を出し、交渉で値引きすることで増額を狙うトランプ式の駆け引きか、とも思われる』、トランプ流の「ディール外交」には冷静に対応すべきだ。
・『協定改定や貿易交渉にらみ「安保終了」などで駆け引き  この報道について、菅義偉官房長官は31日の記者会見で「ボルトン氏がそのようなことを言った事実はない」と述べた。 だが、トランプ大統領は2016年の大統領選挙中から「日本に駐留する米軍経費は100%日本に支払わせる。条件によっては米軍を撤退させる」と叫んでいた。 最近でも、今年6月26日のFOXビジネスネットワークのインタビューで、「日本が攻撃されれば米国は我々の命と財産をかけて日本人を助けるために戦闘に参加する。だが、もし米国が攻撃されても日本は我々を助ける必要が全くない。米国への攻撃をソニーのテレビで見ておれる」などと日米安保体制の不公平を強調した。 トランプ政権では理性的な閣僚、大統領補佐官など高官が次々に更迭されるか辞任し、ボルトン氏やマイク・ポンぺオ国務長官ら極度の強硬派が牛耳る状態だ。 今後、日本との米軍経費の特別協定や貿易を巡る交渉では理不尽な要求を突き付け、「日米安保条約終了」を切り札に増額受け入れを迫る可能性は高い。 実際、“前例”はある。韓国では昨年の米軍駐留経費負担が9602億ウォンだったのを、今年は1兆389億ウォン(約910億円)と8%余、増額させられた。これは1年限りの仮協定で来年はさらなる増額交渉が行われる予定だ。 在韓米軍は17年7月、主力の第2歩兵師団をソウル北方約30キロの議政府(ウィジョンブ)から、ソウル南方約40キロの平沢(ピョンテク)に移した。さらに昨年6月には、在韓米軍司令部もソウルから平沢に移転した。 北朝鮮軍のロケット砲、長距離砲による損害を避けるとともに、平沢の港や近くの烏山(オサン)空軍基地から世界の他の地域への出動が容易だからだ。 米軍の韓国防衛への関与を減らしているにもかかわらず、駐留経費負担増額を要求するのは強欲だが、米国は「韓国からの全面撤退」をちらつかせ、増額をのませたのだ』、「米軍の韓国防衛への関与を減らしているにもかかわらず、駐留経費負担増額を」のませたというのは、韓国の弱みにつけこんだやり方だ。
・『日本は74.5%を負担 日本防衛には関与せずの米空軍  米国防総省の04年の報告書では、日本は米軍駐留経費の74.5%を負担している。韓国の40%、ドイツの32.6%をはるかに上回っている。 それを3倍、5倍にするのはほぼ不可能だ。実現するには米軍人の給与や、艦艇、航空機などの調達、維持、運用経費を出すしかない。「そうすれば米軍は日本の傭兵になりますな」と防衛省幹部たちも苦笑する。 日本では「駐留米軍が日本を守っている」との観念が刷り込まれているから、米国側の無理な要求に屈しやすい。だが、実は日本防衛に当たっている在日米軍部隊は無きに等しいのだ。 最も顕著なのは空軍(日本に1万2000人余り)だ。 1959年9月2日に航空総隊司令官松前未曾雄空将と、米第5空軍司令官アール・バーンズ中将が結んだ「松前・バーンズ協定」によって、航空自衛隊がレーダーサイトや防空指揮所など管制組織の移管を受け、日本の防空を行うことが決まった。 米空軍は航空自衛隊の指揮下に入らないから、日本の防空には一切関与しないのだ。 以来すでに60年、日本の防空には現在330機の日本の戦闘機と対空ミサイルが当たっている』、「日本では「駐留米軍が日本を守っている」との観念が刷り込まれているから、米国側の無理な要求に屈しやすい。だが、実は日本防衛に当たっている在日米軍部隊は無きに等しいのだ」、一般マスコミもこうした実態をもっとPRし、国民の誤解を解いておくべきだ。日本が「米軍駐留経費の74.5%を負担している。韓国の40%、ドイツの32.6%をはるかに上回っている」、という突出した日本の負担割合には改めて驚かされた。
・『中東などに出動「本国に置くより節約に」  米空軍は沖縄県の嘉手納基地にF15戦闘機27機、青森県の三沢基地にF16戦闘攻撃機22機を常駐させ、ステルス戦闘機F22なども訓練のため嘉手納に飛来している。 72年の沖縄返還後は、沖縄の防空も航空自衛隊(現在那覇にF15約40機)が担い、嘉手納の米軍戦闘機は約半数が交代で烏山に展開し、韓国の防空に当たっていた。 当時、第5空軍は日本と韓国を担当していたから、家族や後方支援部隊は安全な沖縄に置いたのだ。 だが86年に韓国を担当する第7空軍が編成されたため、嘉手納の戦闘機が韓国に行くことはなくなり、91年の湾岸戦争など、中東に出動することが多くなった。 三沢のF16は対空レーダー、対空ミサイルの破壊が専門で、これもしばしば中東で活動してきた。 日本の米空軍基地は米本国の母基地に近い性格となったから、米議会では「日本にいる空軍機は本国に戻し、そこから中東などに派遣する方が合理的ではないか」との質問が何度も出た。 そのたびに米国防当局者は「日本が基地の維持費を出しているから、本国に置くより経費の節約になる」と答弁している』、米軍にとって日本は本来、「ありがたい存在の筈だ。日本政府ももっとこうした実態をPRすべきだ。
・『在日陸軍や海兵隊は情報収集や後方支援が中心  在日米陸軍も、ほとんどが補給、情報部隊だ。 陸上自衛隊は13万8000人余り、戦車670両、ヘリコプター370機を持つのに対し、在日米陸軍の人員は約2600人で、地上戦闘部隊は沖縄のトリイ通信所にいる特殊部隊1個大隊(約400人)だけだ。 これはフィリピンのイスラム反徒の討伐支援などで海外に派遣されていることが多い。 在日米海兵隊約1万9300人の主力は沖縄に駐留する「第3海兵師団」だが、「師団」とは名ばかりで歩兵は第4海兵連隊だけ。それに属する3個大隊(各約900人)は常駐ではなく、6ヵ月交代で本国から派遣される。 実際には1個か2個大隊しか沖縄にいないことが多い。戦車はゼロだ。 沖縄の海兵隊も司令部や補給部隊、病院などの後方支援部隊が多い。地上戦闘部隊は歩兵1個大隊を中心に、オスプレイとヘリコプター計約25機、装甲車約30両などを付けた「第31海兵遠征隊」(約2200人)だ。 この部隊は佐世保を母港としている揚陸艦4隻(常時出動可能3隻)に乗り、第7艦隊の陸戦隊として西太平洋、インド洋を巡航する。 歩兵約900人では本格的戦争ができる規模ではない。海外で戦乱や暴動が起きた際、一時的に飛行場や港を確保し、在留米国人の避難を助けるのが精一杯だ。沖縄の防衛は陸上自衛隊第15旅団(約2600人)の任務だ』、米軍の規模が予想外に小さいのに驚かされた。
・『第7艦隊はインド・太平洋 「シーレーン確保」は海上自衛隊  米海軍は横須賀に第7艦隊旗艦である揚陸戦指揮艦「ブルーリッジ」、原子力空母「ロナルド・レーガン」、ミサイル巡航艦3隻、ミサイル駆逐艦7隻を配備している。 佐世保には空母型の強襲揚陸艦「ワスプ」とドック型揚陸艦3隻、掃海艦4隻を配備してきたが、「ワスプ」はすでに本国に戻り、より大型の「アメリカ」が交代に来る。ドック型揚陸艦も1隻増強の予定だ。 第7艦隊は東経160度以西の太平洋から、東経68度(インドとパキスタンの国境線)以東のインド洋まで、広大な海洋を担当している。横須賀、佐世保を母港とする米軍艦がもっぱら日本の防衛に当たっているわけではもちろんない。 食料の自給率が37%の日本(同じ島国の英国でも70%余り)にとっては、海上の通商路「シーレーン」の確保が海上防衛の最大の課題だ。 だが米国は食料も石油も自給自足が可能だから、商船の防護に対する関心は低い。 米海軍は巡洋艦、駆逐艦、フリゲートを計101隻(うち太平洋・インド洋に46隻)持っているが、これは米海軍の11隻の空母と海兵遠征隊を運ぶ揚陸艦7個群を護衛するのがやっとの数だ。 日本のシーレーンを守るのは、海上自衛隊の護衛艦47隻に頼るしかないのが現状だ』、「第7艦隊はインド・太平洋 「シーレーン確保」は海上自衛隊」、との役割分担は初めて知った。
・『日本への武力攻撃に対する「一義的責任」は日本に  2015年に合意された「日米防衛協力の指針」(ガイドラインズ )では、日本に対する武力攻撃が発生した場合の作戦構想として、防空、日本周辺での艦船の防護、陸上攻撃の阻止撃退などの作戦には自衛隊が「プライマリー・リスポンシビリティー(一義的責任)を負う」と定めている。 これでは「何のために米軍に基地を貸し、巨額の補助金を出しているのか」との疑問が出るから、邦文では自衛隊が「主体的に実施する」とごまかした訳にしている。 自衛隊が日本防衛に一義的責任を負うのは当然だが、当然のことを何度も繰り返して指針に書き込んだのは、いかにも訴訟社会の米国人らしい方策で、なにもしなくても責任を問われないようにしている。 この指針は、すでに自衛隊が日本防衛に主たる責任を負っている実態を追認した形だ。 米国防総省は、在日米海軍の人員を18年9月末で「2万268人」と発表している。2010年には3497人、それ以前も常に3000人台だったが、11年には6833人に急増し、今日では2万人を超えるにいたった。 これは日本を母港としている軍艦の乗員を計算に入れたためだ。第7艦隊は在日米軍司令部の指揮下にないから在日米軍ではない。かつては日本で陸上勤務をしている海軍将兵の人数だけを計算に入れていたが、日本と駐留米軍経費の交渉をする際には在日米軍人の数が多い方が好都合だから、船乗りも計算に入れ約1万7000人の水増しをしたのだろう。 他の諸国、例えばイタリアのナポリ湾には米第6艦隊がいるが、イタリアでは米海軍の人員は4000人と米国防総省は公表しており、艦隊の乗員は計算に入れていないようだ』、「第7艦隊は在日米軍司令部の指揮下にないから在日米軍ではない。かつては日本で陸上勤務をしている海軍将兵の人数だけを計算に入れていたが、日本と駐留米軍経費の交渉をする際には在日米軍人の数が多い方が好都合だから、船乗りも計算に入れ約1万7000人の水増しをしたのだろう」、というのも初耳だが、こんな数字の操作を認めた日本側も情けない。
・『「安保破棄」で困るのは米国 横須賀など使えず制海権困難に  もしトランプ大統領が安保条約を破棄すれば、米海軍は横須賀、佐世保を使えなくなる。軍艦は年に3ヵ月ほどドックに入り点検、修理をするが、グアムのアプラ港にはドックが無い。 ハワイのパールハーバーにはドックがあるが、背後に工業が無いから潜水艦などの簡単な整備程度しかできないようだ。 横須賀、佐世保には巨大なドックがあり、熟練した技師、工員がそろい、部品の調達も容易だから早く安く整備ができる。第7艦隊がそこを使えなくなれば米本土西岸サンディエゴまで後退せざるをえず、西太平洋、インド洋での米国の制海権保持は困難となるだろう。 米国防総省の発表では在日米軍の総人員は5万4200人余りで、最大の受け入れ国だ。第2位のドイツが3万7900人、3位の韓国が2万8500人、4位のイタリアが1万2700人だ。 米国の同盟国は50以上あるが、1万人以上がいるのは4ヵ国だけ。「駐留無き同盟」か、米軍がいてもごく少数、の同盟国が一般的だ。 歴史的には、平時に対等な同盟国に兵力を常駐させた例はまずない。「駐兵権」は清朝末期の中国など半植民地国に列強が認めさせたものだ。 冷戦時代には西ドイツの米軍はソ連軍の侵攻経路の1つとされたフルダ渓谷に展開し、フランクフルトを守っていた。韓国ではソウル北方の議政府付近に布陣し、北朝鮮軍の南侵を迎撃する構えだった。 ところが日本では米軍はソ連に近い北海道ではなく、日本列島の南端で最も安全な沖縄に米軍基地の70%が集中、人員の過半がそこで待機し海外への出動に備えてきた』、在日米軍は、「ソ連」に備えたものではなく、朝鮮やその他地域向けなのが、改めて明確になった。
・『「在日米軍削減」を提案し理不尽な要求に対抗する手も  日本は今年度予算で、「思いやり予算」といわれる米軍基地労働者2万3178人の給与1539億円や光熱水費219億円など駐留経費3888億円のほか、グアム島への海兵隊の一部の移転や辺野古の飛行場建設など米軍再編関係費に1679億円、民有地の地代や周辺対策に1914億円などを防衛省が出す。 このほか、米軍基地のある自治体に総務省が381億円を支払うなど、日本政府は計6204億円を支出する。 米軍に無償で貸している国有地の推定地代は、自治体に貸す場合の安い地代で計算しても1640億円に達し、これも米軍経費負担に入れれば7844億円になる。 日本を直接守っているわけではない米軍に対し、他国と比較にならないほど巨額の補助金を出していること自体が日本政府の弱腰の表れだ。 トランプ政権がさらに執拗に理不尽な増額を迫り、「米軍撤退」や「安保条約終了」で脅しにかかるなら、日本は、トランプ大統領が、「人種差別」を批判した自国の女性議員について言ったように「嫌なら国に帰れ」の姿勢で応じてはどうか。 「在日米軍を削減して貴国の財政赤字縮小の一助とされてはいかが」と、攻守を一転させる論を持ち出すのも対抗手段になるだろう』、「トランプ政権がさらに執拗に理不尽な増額を迫り、「米軍撤退」や「安保条約終了」で脅しにかかるなら、日本は・・・「嫌なら国に帰れ」の姿勢で応じてはどうか」、との主張には、諸手を上げて賛成したい。

第三に、グーグル日本法人元代表でアレックス株式会社代表兼CEOの辻野 晃一郎氏が8月17日付け現代ビジネスに寄稿した「日本はまた「戦争」をする国になってしまうのか、その不安と恐怖 そして今、経営者に求められる覚悟」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/66572
・『戦争に近づいていく不安  この原稿を書いているのは2019年8月15日の終戦記念日。「8月ジャーナリズム」という表現もあるそうだが、毎年8月は戦争についての報道を目にする機会が多い。 しかし、毎年ただ儀式のように戦争を思い出し平和の尊さを語っているだけで平和を維持し続けることはできない。 特に最近は、戦争から遠ざかるにつれてまた戦争に近づいていくようなそこはかとない不安を感じることが多くなった。 今、世界に目を向けると、ドナルド・トランプ米大統領が仕掛けた米中の貿易戦争や技術覇権争いは激化の一途をたどる。また、同氏が一方的に核合意を破棄して悪化したイランとの関係はホルムズ海峡における緊張を高めている。冷戦終結の象徴となった米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約も失効した。 欧州では、英国のEU離脱を図るBrexitを扇動したボリス・ジョンソン氏が新首相となり、交渉期限の10月末までに合意無き離脱も辞さないと宣言している。 日韓関係も、文在寅大統領の政治スタンスに端を発して史上最悪といわれるほど悪化しつつあり、北朝鮮は再び中短距離ミサイルの発射を繰り返している。 米国内では銃の乱射事件が後を絶たず、香港では「逃亡犯条例」改正案への抗議デモや警察による弾圧が過激さを増す一方で、アジア有数のハブ空港が機能停止に追い込まれた。 国内に目を転じると、京アニ放火事件やあいちトリエンナーレの「表現の不自由展」騒動などが続き、ネットを覗けば、自分の意に沿わない出来事や他人の意見に対して、「ボケ」「クズ」「非国民」などと口汚く罵るような攻撃的なメッセージが溢れている。 今や国内外で、対立、分断、憎悪(ヘイト)、差別、恫喝、威嚇、脅し、暴力の連鎖が異様に目立つようになった。ここ数年の間に、かつてないほど不寛容でネガティブなエネルギーが一気に世間に充満した印象だ』、最後の部分はその通りだ。
・『戦争を知らない大人たち  人間の「怒り」や「憎しみ」といった感情は恐ろしい。一人の小さな怒りや憎しみが最後は殺人やテロ、戦争に繋がっていく。 1970年代初頭、『戦争を知らない子供たち』という歌が流行ったが、当時の戦争を知らない子供たちも、今では皆いい歳だ。 安倍晋三総理をはじめ現政権を担っている人たちや、中西宏明経団連会長など経済界の人たちも皆戦後生まれの「戦争を知らない大人たち」だ。 かつて、田中角栄元首相は「戦争を知らない世代が政治の中枢となった時は危ない」と言っていたそうだ。 北方領土視察で暴言の限りを尽くし、挙句の果てには戦争による領土奪還を口にして物議をかもした国会議員がいたが、戦争を放棄して平和国家になったはずのこの国で、いつの間にかまた戦争を肯定するような言動が目立つようになってきていることには激しい嫌悪感を禁じ得ない。 2015年、多くの憲法学者が違憲立法と指摘する安保法制が強行採決で成立し、武器輸出三原則が防衛装備移転三原則に置き換えられて、長く封じ込められてきた戦争ビジネスが実質解禁された。 防衛省主導のもと、経団連をはじめとした経済界もその動きを歓迎している。政権の暴走にあからさまに異を唱える経済人は一人もいない。 海外の武器展示会で、防衛副大臣が不慣れな手つきで武器を構える映像や、防衛省の課長クラスが「今後防衛産業を国家の成長産業にする」と公然と発言する映像がネットに流れたが、実におぞましい思いがした』、今どきの経営者には珍しくハト派のようだ。
・『安倍総理がやってきたこと  今年の広島、長崎の平和記念式典では、両市の市長が、国連の核兵器禁止条約に加わるよう、来賓の安倍総理にあらためて訴えかけた。だが、安倍総理は型通りのあいさつを繰り返しただけで核兵器禁止条約について触れることはなかった。 かつて、ICANのノーベル平和賞受賞に際しても冷たい対応に終始し、沖縄に対しても、何度も示された沖縄の民意に反して一貫して冷淡かつ強引な態度を取り続けていることは、現政権のスタンスを如実に示している。 本来、米軍基地負担を一身に担う沖縄へ寄り添い続けること、および唯一の被爆国として、核不拡散や核兵器の全面的な廃絶に向けて先頭に立って尽力し続けることは、日本国としての基本的立ち位置である。 それを自ら踏みにじるような数々の行為は、多くの国民にとって決して気持ちのよいものではない。 2年前、安倍総理が、長崎の被爆者代表に「あなたはどこの国の総理ですか?」と面と向かって問われていた光景はまさに鮮烈だった。 昨年2月、トランプ政権が米国の核戦略の指針「核態勢見直し(NPR)」を発表し、爆発力を小さくして機動性を高めた小型核兵器の導入に言及した際には、河野太郎外相が「高く評価する」という談話を発表したことにも驚いた。 米国は、世界で唯一、人類に対して実際に核攻撃を実施した国だ。その標的とされた我が国の責務は、今や同盟国である米国の暴走を煽ることではなく、抑えることであるのを間違えないでもらいたい。 憲法で明確に戦争を放棄した我が国を、強引な手法でなし崩し的にまた戦争が出来る国に仕立て直そうとするやり口は尋常ではない。 改憲はその総仕上げとしての目論見にしかみえない。参院選後も安倍総理は改憲に執心の様子だが、改憲を持ち出す前に、日本国憲法について「押し付けられたみっともない憲法」などと公言して現行憲法を軽視する態度こそをまずは改めていただきたい。 「歴史は繰り返す」というが、それは人間の寿命と関係している。悪しき歴史も悲惨な過去も、それを実際に体験した人たちがこの世からいなくなることによって、貴重な体験が忘れ去られたり薄まったりしてまた同じようなことを繰り返すからだ。 人間とは愚かな存在であることを自覚せねばならない。 戦後生まれの戦争を知らない世代がマジョリティとなって社会の要職を占めるようになると、「戦争は二度と起こしてはならない」という当たり前のことすらだんだんわからなくなっていく。田中角栄氏の予言がまさに現実となりつつあるのは実に恐ろしいことだ』、米国が「小型核兵器の導入に言及した際には、河野太郎外相が「高く評価する」という談話を発表」、には私も驚いた。「「歴史は繰り返す」というが、それは人間の寿命と関係している・・ 人間とは愚かな存在であることを自覚せねばならない」、同感である。
・『戦争と経営者と覚悟  ノンフィクション作家の立石泰則氏が『戦争体験と経営者』(岩波新書)という本を出している。 フィリピン戦線から奇跡的な生還を果たしたダイエーの中内功氏や、インパール作戦に従軍して九死に一生を得たワコールの塚本幸一氏など、生き地獄のような戦場を体験したからこそ、生き延びて復員してからは徹底して平和主義を貫いた戦後の経済人を数名取り上げ、彼らの平和へのこだわりと迫力ある生き様を簡潔に描いている。 この本の前書きに、立石氏が長年にわたってインタビューして来た多くの経済人を振り返ったとき、「経営理念も経営手法もまったく異なる、そして様々な個性で彩られた経営者たちであっても彼らの間には『明確な一線』を引ける何かがある」とあり、それは「戦争体験」の有無だ、としている。 私が世話になった企業であるソニーの起源は、終戦直後の今でいうベンチャー企業だった。 創業者の井深大氏も盛田昭夫氏も戦争体験者だ。一般的に、戦争は最先端の技術開発を促すと共に、市場拡大や需要喚起など、経済を拡大させる手段として位置付けられてきた。 しかし、井深大氏の主張は真逆だった。彼は、軍需をやりたがる経団連に異を唱え、「アメリカのエレクトロニクスは、軍需をやったためにスポイルした」と述べて憚らなかったそうだ』、井深大氏の識見と勇気は大したものだ。
・『また、「財界の鞍馬天狗」の異名を持つ戦後の経済人、中山素平氏は、1990年、湾岸戦争で自衛隊の派兵が論議されていたとき、派兵に反対して「派兵はもちろんのこと、派遣も反対です。憲法改正に至っては論外です。第二次世界大戦であれだけの犠牲を払ったのですから、平和憲法は絶対に厳守すべきだ。そう自らを規定すれば、おのずから日本の役割がはっきりしてくる」と語ったそうだ。 今、井深氏や中山氏のような発言を堂々とする経営者や経済人は見当たらない。 戦争体験者や被爆体験者が高齢化して次々とこの世を去っていく。 今や太平洋戦争のことを知らない若者が普通にいて、戦争を煽るようなことを軽々しく口にする政治家や経営者が少なからず出現し始めている。 冒頭述べた通り、世界的に対立、分断、格差が広がっていく中、日本においても子供や若者、高齢者の貧困が拡大している。 対立や分断、格差や貧困から生まれる怒りや憎しみは、好戦家たちのあおりによって容易に増幅していく。 政治家たちが暴走し、内閣に人事権を握られた官僚や検察や司法が機能不全に陥り、権力を監視する役割を担うはずのマスメディアもその役割を果たせずにいる。 そのような中で、この国が「戦争」との距離を再び縮めるようなことがないよう、問題解決の手段から徹底して「戦争」を排除するコンセンサスを再び創り上げる実行力を持つのはもはや経営者しかいない。 大小問わずビジネスをつかさどるリーダーたちには、その覚悟が求められているような気がする』、「今、井深氏や中山氏のような発言を堂々とする経営者や経済人は見当たらない」の残念なことだ。「辻野氏」にはハト派経営者の輪を広げてほしいものだ。
タグ:今、井深氏や中山氏のような発言を堂々とする経営者や経済人は見当たらない 軍需をやりたがる経団連に異を唱え、「アメリカのエレクトロニクスは、軍需をやったためにスポイルした」と述べて憚らなかったそうだ 井深大氏 生き延びて復員してからは徹底して平和主義を貫いた戦後の経済人 塚本幸一氏 中内功氏 『戦争体験と経営者』(岩波新書) 戦争と経営者と覚悟 悪しき歴史も悲惨な過去も、それを実際に体験した人たちがこの世からいなくなることによって、貴重な体験が忘れ去られたり薄まったりしてまた同じようなことを繰り返すからだ。 人間とは愚かな存在であることを自覚せねばならない 「歴史は繰り返す」というが、それは人間の寿命と関係している 安倍総理がやってきたこと 田中角栄元首相は「戦争を知らない世代が政治の中枢となった時は危ない」と言っていたそうだ 戦争を知らない大人たち 戦争に近づいていく不安 「日本はまた「戦争」をする国になってしまうのか、その不安と恐怖 そして今、経営者に求められる覚悟」 現代ビジネス 辻野 晃一郎 トランプ政権がさらに執拗に理不尽な増額を迫り、「米軍撤退」や「安保条約終了」で脅しにかかるなら、日本は、トランプ大統領が、「人種差別」を批判した自国の女性議員について言ったように「嫌なら国に帰れ」の姿勢で応じてはどうか 「在日米軍削減」を提案し理不尽な要求に対抗する手も 「安保破棄」で困るのは米国 横須賀など使えず制海権困難に 第7艦隊は在日米軍司令部の指揮下にないから在日米軍ではない。かつては日本で陸上勤務をしている海軍将兵の人数だけを計算に入れていたが、日本と駐留米軍経費の交渉をする際には在日米軍人の数が多い方が好都合だから、船乗りも計算に入れ約1万7000人の水増しをしたのだろう 防空、日本周辺での艦船の防護、陸上攻撃の阻止撃退などの作戦には自衛隊が「プライマリー・リスポンシビリティー(一義的責任)を負う」 「日米防衛協力の指針」(ガイドラインズ ) 日本への武力攻撃に対する「一義的責任」は日本に 第7艦隊はインド・太平洋 「シーレーン確保」は海上自衛隊 在日陸軍や海兵隊は情報収集や後方支援が中心 中東などに出動「本国に置くより節約に」 日本は74.5%を負担 日本防衛には関与せずの米空軍 協定改定や貿易交渉にらみ「安保終了」などで駆け引き ジョン・ボルトン氏が米軍の駐留経費について「現在の5倍の支払いを求める可能性があると述べた」 「「日本を守っていない」在日米軍の駐留経費負担5倍増額は不可能だ」 ダイヤモンド・オンライン 田岡俊次 朝鮮半島有事には必ず事前協議する 「事前協議」は明確化 台湾有事には、在日米軍基地の確実な使用を求める 島しょ防衛は、統合運用の強化を ミサイル防衛システムの拡充は「ウィン・ウィン」 米軍駐留経費の増大は日米に不満をもたらしかねない それでも、基地の提供はスタート地点 トランプ大統領の認識は、1980年代の日米関係のまま固定化されているのでしょう 米ランド研究所のジェフリー・ホーナン研究員 トランプ米大統領が「日米同盟はアンフェア」だと発言 「台湾有事、米国は在日米軍基地の確実な使用を求める」 日経ビジネスオンライン 安全保障(その8)(台湾有事 米国は在日米軍基地の確実な使用を求める、「日本を守っていない」在日米軍の駐留経費負担5倍増額は不可能だ、日本はまた「戦争」をする国になってしまうのか その不安と恐怖 そして今 経営者に求められる覚悟)
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

自衛隊が抱える問題(防衛問題)(その7)(陸自の攻撃ヘリ部隊はすでに瓦解している、「いずも」空母化が日本のためにならない4つの理由、自衛隊が尖閣防衛には不適任な水陸機動団や空母を持ちたがる理由) [外交・防衛]

自衛隊が抱える問題(防衛問題)については、昨年11月12日に取上げた。今日は、イラク日報問題は別途取上げるとして、(その7)(陸自の攻撃ヘリ部隊はすでに瓦解している、「いずも」空母化が日本のためにならない4つの理由、自衛隊が尖閣防衛には不適任な水陸機動団や空母を持ちたがる理由)である。

先ずは、軍事ジャーナリストの清谷 信一氏が2月10日付け東洋経済オンラインに寄稿した「陸自の攻撃ヘリ部隊は、すでに瓦解している 墜落事故を機に長年の課題に向き合うべきだ」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・2月5日、佐賀県神埼市の住宅街に陸上自衛隊目達原駐屯地(佐賀県吉野ケ里町)所属の「AH-64D(アパッチヘリコプター)」が墜落する事故が発生。乗組員2人が死亡し、激突して炎上した住宅の小学5年生の女児が軽傷を負った。
・この事故に関して筆者は複数の陸自航空隊OBに意見を求めた。そうしたところ、見解はほぼ同じ。整備後は地上で十分な試運転を行っており、その後飛行試験をするため、整備不良であれば地上試験で気がつくはずで、部品の不良を疑うべき、とのことだ。いまだ調査の結果が出ておらず、現段階で原因などを安易に推測するのは避けるべきだが、部品不良の可能性は高いといえるのだろう。
▽調達価格が予定外の高騰
・今回の事故を機に、陸自のヘリに対する関心が高まっている。この機会に、AH-64Dそのものの問題、さらにはヘリ部隊の運用全体の問題について論じたい。 陸上自衛隊は2002年からAH-64Dの導入を、富士重工(現SUBARU<スバル>)のライセンス生産により開始した。当初62機を調達する予定だったが、陸幕(陸上自衛隊幕僚監部)は調達開始からまもない2006年ぐらいから、急に調達をやめると言い出した。
・その理由について陸幕は、米国が64D型から64E型に移行して追加発注ができなくなる、部品がなくなる、調達価格が予定外に高騰した、などと説明してきた。 だが内部関係者によると、調達をやめた最大の理由は、ボーイング社がアパッチの生産を終了すると聞いて狼狽したからだ。ボーイング社は韓国が採用したF-15Kのオフセットとして2003年からアパッチの組み立てラインを韓国に移管したが、2006年から新規の胴体の製造が止まり、D型からE型へのアップグレードだけに対応することになった。
・だが、「実は生産ラインが止まるまで相当期間があり、それまでのペースで調達しても30機程度は調達できた。一部を安い輸入に切り替えれば予定数はほぼ調達できたはずだ」と当時の調達関係者は語る。 陸幕の担当者とスバルは、2006年に単年度で10機ほどをまとめて調達しようと画策したが、当時は装備の「まとめ買い」というシステムがなく(注:2007年からは可能になっている)、単年度の調達だと予算が膨大となり、また中期防衛力整備計画で定められた機数を超えるので実現できなかった。そこで陸幕と防衛省は、性急に調達中止を決定したというのが真相のようだ。
・実際に調達打ち切りが決定されたのは合計10機が調達された2007年だ。先述のように皮肉にも、この年から防衛省の装備のまとめ買いが始まっている。当時は当初かかった生産設備などの初期費用などを機体に按分していたために、わずか10機で調達を打ち切られると、スバルは初期投資費用を回収できなくなった。
・だが、陸自は62機調達する契約はしていないとして、2007年にその費用を払うことを拒否し、調達中止を宣言したのだ。恐ろしいことにライフ・サイクル・コストが2000億円を超えるプロジェクトで契約が結ばれずに、口約束で調達が開始されるのだ。このため2010年、スバルは初度費用などを求めて訴訟を起こすこととなった(過去記事「富士重勝訴でも晴れない防衛調達費の不透明」参照)。 この訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷は2015年12月16日に国側の上告を退ける決定を出した。これにより国に約351億円全額の支払いを命じた2審の東京高裁判決が確定した。
▽たった13機では部隊としての運用ができない
・訴訟と並行して防衛省は2011年度から2013年度までに毎年1機ずつ予算計上して3機の追加発注を行い、合計13機の調達を行ったところで、AH-64Dの調達は終了した。この一件によって防衛省は2008年から装備調達の初期に、「初度費」という費用を別途払う制度を導入している。だが、調達方式の抜本的な見直しを行ったわけではない。
・実は2010年から米軍のアフガンの戦闘などでの損耗機体の補充などの理由もあって、新規の胴体の製造が再開されたが、陸幕はすでにアパッチ調達は終わった計画だとして、決定した13機以降の調達の再開は行われなかった。
・だが、たった13機では訓練や整備、人事のローテーションを考慮すれば、実際に常に稼働できるのは5~6機程度しかない。これでは部隊としての運用は困難だ。しかも整備予算を十分に確保できず、飛行可能な機体であっても射撃ができない機体もあるという。こんな状態では、事実上、攻撃ヘリ部隊して戦力化されたとは言いがたい。 通常軍隊では部隊の3割が撃破されると組織的な活動が不可能となり「全滅」と判断される。この伝でいくと、射撃のできない機体もある陸自のAH-64D部隊は、戦う前からして「全滅」しているともいえるだろう。
・現在、陸自ヘリの稼働率は、公表はされていないが、関係者によると平均で6割程度という。これは整備予算が減らされていることが大きいという。飛行時間も10年ほど前は年220時間程度だったものが、現在では年120時間程度に減らされているという。飛行時間が減ることは搭乗員の技量が落ちるということだ。 のみならず整備の頻度も減るので整備員の練度も低下することを意味している。その分事故が発生する可能性は増大する。また複数の関係者によるとスバルのIRAN(Inspection and Repair As Necessary:機体定期修理)に出すと、悪くなって返ってくるという証言もある。
▽AH-64Dのメーカーサポートは2025年で終了
・しかもつねに災害派遣という「実戦」に投入される可能性がある汎用ヘリの稼働率維持が優先され、戦闘ヘリや偵察ヘリの稼働率は後回しにされる傾向がある。 その上、AH-64Dのメーカーサポートは2025年で終了する。さらに2019年頃から部品の枯渇が始まる。米軍や主要ユーザーはE型に移行しているので痛くもかゆくもないが、D型を使用している陸自の機体は、全機とも射撃が不可能になるなどの障害が出る可能性が高い。部隊としての戦闘力はさらに低下するどころか、2025年を待たずに、まったく稼働できない事態すら推測される。
・このような部隊を多額の税金を投じて維持を続ける合理的な意味はない。たとえばまったく使用されない空港や道路を巨額の費用をかけて建設し、これまた多額の費用と人員をかけて長年維持するようなものだ。単に税金の無駄遣いでしかない。 その揚げ句に民間を巻き込んで事故を起こしてしまった。命を落とすことになった現場の隊員にとっては、大きな悲劇だ。10機で調達を諦めた段階で、全部廃棄して部隊を解散し、他のリソースにつぎ込んだほうがよかったのではないだろうか。
・ヘリ部隊はほかにも問題を抱えている。本来AH-64Dで更新されるはずの旧式攻撃ヘリ「AH-1S」も問題だ。AH-1Sは90機調達されたが、現在残っているのは半分の45機程度で、しかもどうにか稼働している機体はそのうち3分の2程度であるという。
・稼働率が低いだけでなく旧式化したAH-1Sの対戦車ミサイルは命中するまで1分以上空中に停止してミサイルを誘導しなければならず、今日では生存性が極めて低い。だがAH-1Sは近代化も、延命措置や近代化は行われておらず、これまた多額の費用をかけて部隊を維持する必要性は極めて低い。赤字を垂れ流すだけのAH-1Sの部隊もすぐさま解散するべきだ。
・これらの事実をみれば、陸自のヘリの調達と運用がいかに大きな問題を抱えているかがわかるだろう。まず実質戦力とは言えない状態のままにするのであれば、攻撃ヘリは不要だ。AH-64DやAH-1Sは即座に廃棄して部隊を解散し、隊員をほかの任務に回したほうがいい。浮いた費用はネットワークの充実やサイバー戦機能の向上などに振り向ければ、よほど国防に資する。偵察ヘリも、調達・運用コストが安く信頼性の高い機体に更新すればいい。
・実際のところ、陸自の航空隊に予算の余裕はない。ティルトローター機であるMV-22オスプレイが陸自に17機配備されるが、その調達費用3600億円はおおむね陸自のヘリ調達予算の10~12年分である。オスプレイ1機の整備費は年間約10億円といわれており、17機ならば170億円だ。対して陸自のヘリの整備予算は年間220億円程度にすぎない。オスプレイがそろえばその3分の2を食うことになる。そうなればただでさえ不足している維持整備費は逼迫を免れない。 現状を放置するならば整備予算不足のために、墜落事故が多発する可能性が極めて高い。
▽では、どうすればいいか?
・筆者は、攻撃ヘリが必要なのであれば、現在のAH-64DをE型にアップグレードし、さらに1個飛行隊と予備機を合わせ、現存12機に新たに18機ほど加えて30機程度の体制とするのが現実的な選択だと考える。  こうすれば、既存のアパッチの機体とインフラを生かせる。追加の機体は国内メーカーによるライセンス生産でなく、コストが安く早期に調達が完了する輸入で調達するべきだ。輸入であれば調達単価は80億円程度で、スバルの生産ラインを復活させて国産化するよりも半額程度で済みそうだ。この2個飛行隊を陸自のネットワークの基幹とし、空海自、米軍との共同作戦能力を獲得するべきだろう。
・現在の陸自の予算では元の計画の62機の調達は不可能だ。数が足りないのであれば、武装型の軽汎用ヘリ、無人攻撃機、あるいはターボプロップエンジンのCOIN機(軽攻撃機の一種)など、より安価なシステムを組み合わせるという発想もある。COIN機であればAH-64E2機分の値段で1個飛行隊と予備機をそろえることができる。維持整備費も1ケタ安い。米空軍では、ゲリラ部隊と戦うような非対称戦においてはCOIN機を使用する「OA-X」という計画を進めている。
・そもそも攻撃ヘリにどのような任務を与えるのか、またその任務をほかのプラットフォームで代用できないか、という点も検討するべきだ。 陸自はメンツに固執することをやめて現実を直視すべきだ。その上でスクラップ&ビルドを行い、現実的かつリーズナブルな航空兵力を整えればいい。そうでなければ抑止力にも戦力にならない部隊に無駄な税金を使い続けることになる。さらに、整備費不足の無理がたたり、今回のような墜落事故が多発する事態にもなりかねないのである。
https://toyokeizai.net/articles/-/208101

次に、ガバナンスアーキテクト機構研究員の部谷 直亮氏が3月28付けJBPressに寄稿した「「いずも」空母化が日本のためにならない4つの理由 防衛予算の8%を費やして中国を喜ばせるだけ?」を紹介しよう(▽は小見出し、+は段落)。
・2017年末から、海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」級を、F-35B戦闘機を搭載可能な「空母」として改修する話が相次いで報道されている。2018年3月2日の参議院予算委員会では、小野寺五典防衛大臣が「いずも」でF-35Bの運用が可能かどうかを調査していることを明らかにした。
・しかし単刀直入に言って、いずもの空母化や空母建造は自衛隊を弱体化しかねない愚策である。以下ではその4つの理由について論じよう。
(1)高額な改修費がかかる
・第1の問題点は、高額な改修費である。この点に関して、「Defense News」誌で日本関連記事を数多く執筆していたカイル・ミゾカミ氏が、技術誌「Popular Mechanics」で具体的な論考を行っている。彼の主張は以下のとおりである。 いずも空母化を日本政府が決断した場合、(1)F-35Bの離着陸時の排気ガスの高熱に耐えうるための甲板の耐熱コーティング、(2)艦首の邪魔な近接防御火器システムの撤去、(3)F-35特有の部品管理システムALISの艦船版の組み込み、(4)1隻につき艦載機たるF-35B12機の導入などが必要になる。これらの改造費として、船舶の改修費が5億ドル、F-35Bが14億ドルかかる。
+要するに「いずも」「かが」を空母化すれば、約38億ドル(約4000億円)の予算がかかるのである。これは日本の年間防衛費の7.7%に匹敵するコストである。装備品の調達コストで見れば14.6%を占めることになる。しかも、補修パーツ対空ミサイル・誘導爆弾・航空燃料等の積載増加により、艦内のスペースが食われることになり格納能力も低下すると指摘している。
+いずもの空母化ですらこれなのだから、一説に言われている「おおすみ」級の後継艦でより本格的な「空母」(実態は強襲揚陸艦に過ぎないが)を建造すれば、コストは柔軟性と余裕に乏しい防衛費をさらに圧迫するだろう
(2)政治的効果が見込めない
・第2の問題点は、その改修費に見合う政治的効果が見込めないことである。 政治的効果を発揮できないことは、隣国の中国の「遼寧」を見れば分かる。「遼寧」は24機の戦闘機を中心に艦載しているが、これに政治的な影響力があるだろうか。先日も台湾海峡を航行したが、何か具体的な影響をもたらしたのだろうか。我々は「遼寧」を脅威に感じているだろうか? 決してそんなことはない。
+なぜか。それは第1に「遼寧」が米空母に比べるとあまりに小型であり、なおかつ中国の空母が「現在」は1隻しか存在しないからである。そして第2に、トータルの武力が劣るからだ。米空母が大きな政治的効果を発揮するのは、単体での巨大さや艦載機数や空母の数の多さもさりながら、その後の米軍の大規模な武力行使の先駆けとなる存在だからだ。だが、中国にはそのいずれもない。タイの空母「チャクリ・ナルエベト」、インドの空母「ヴィクラマーディティヤ」についても同様のことが言える。
+日本も同様だ。「いずも」を空母化したところで、F-35Bとはいえせいぜい10機前後と米軍の強襲揚陸艦(ワスプ級は6~20機搭載可能)以下の艦載機でしかない。しかも「いずも」「かが」のたった2隻である。「おおすみ」級の後継艦を入れても4隻では、常時1~2隻の展開がやっとだろう。強襲揚陸艦の1隻や2隻に何の政治的効果があるのか。なお、米軍の強襲揚陸艦は世界中を移動しているが、その1隻の動向が注目されることはない。しかも、「いずも」空母化で海自のその他の戦力は予算・人員を吸収され弱体化するので抑止・対処力も低下する。
+また、ネット上の一部では、日本の空母が東南アジア諸国との訓練や協力を図れば大きな政治的効果があるという声も聞かれるが、これについても、強襲揚陸艦でしかない“自称”空母である必然はない。政治的影響力を拡大させようとするならば、装備移転や能力構築の方がはるかに効果・効率的(経済成長も見込める)だろう。 
+その点で日本は中国、韓国の後塵を拝している。中国はタイ、ミャンマー、バングラデッシュなどに兵器を輸出している他、タイとの間では無人機を含む軍需製品の現地生産まで調整が進んでいる。韓国も、トラックや潜水艦をインドネシアに、インドにはK-9自走砲を、フィリピンにはFA-50戦闘機を輸出している。こうした武器輸出や能力構築は、維持整備や教育訓練もセットになっている。そのため、輸出先の軍事組織が輸出元のシステムで何十年も稼働し、教育担当の軍人を配置できるメリットがあるのである。
+中国や韓国は既にそうした状況を作り上げつつあるのに、我が国は無縁である。現在はパプアニューギニアの軍楽隊支援、法律等の勉強会の開催、TC-90供与など、きわめてシャビーな活動しか行っていない。しかも、外務省と海保が巡視船をマレー、ベトナム、フィリピン等にODA等により供与していることを考えれば防衛省自衛隊の装備移転の遅れは際立っている。
+こうした状況を考えれば、強襲揚陸艦が東南アジア諸国に短期間寄港するより、武器輸出や能力構築を進めた方が、はるかに持続的で高い影響を誇ることができるのは明白である。しかも、日本の経済的な利益にもつながる。つまり、「いずも」「かが」に約4200億円を充てるよりも、その予算を今後10年間の防衛装備品の移転や供与支援に充てる方がよほど効果的だろう。
(3)軍事的効果が乏しい
・第3の問題点は、軍事的効果が乏しいということだ。 まず、空母化した「いずも」は戦局が圧倒的に有利でなければ投入できない。例えばフォークランド紛争においてアルゼンチン軍は空母を前線に投入できなかった。あまりにも虎の子過ぎる戦力は活用できないのだ。もし日中紛争時にいずもが撃沈されれば国内外の世論がどうなるか想像してみほしい。もしくは温存しすぎた挙句、戦局が決定的に不利となり、その無策への批判を恐れて戦艦「大和」のように沖縄にでも特攻させるのがオチだろう。
+費用対効果の悪さも問題である。ここで比較対象となるのは中国のA2/AD戦力だ。中国は米軍の地域における戦力と来援戦力を叩き潰すための戦力を重点的に整備している。内容は、対艦弾道ミサイル、巡航ミサイル、サイバー攻撃、ゲリラコマンド攻撃、潜水艦戦力等の強化である。
+中国の対艦弾道ミサイルDF-21は、1ユニット6~12億円。それに対していずもは1隻1200億円であり、空母化すれば3300億円である。つまり中国にとっては、いずもにDF-21を225~550発撃ち込んでもお釣りがくる計算である。たしかにDF-21対艦弾道ミサイルの命中率には議論があるが、大量の発射でカバーできるし、母港に停泊中であれば命中率は問題ではなくなる。そもそも自衛隊はドローン攻撃に対して110番通報しかできない現状では、「いずも」もドローンで一部機能を無力化されかねない。甲板上のF-35Bを破壊されれば目も当てられないことになる。
+ 他方、南西諸島の島々は、下地島をはじめ滑走路(弾道ミサイルを吸引するおとりとしても)として活用できる余地がある。また、民間空港の有事転用の訓練や装備は空自にはほとんどなく、これも改善の余地がある。そして、米軍や自衛隊の保有する空中給油機を使えば、海上基地がなくとも展開可能である。KC-767空中給油機(1機223億円)を増勢する方が効果的であろう。
(4)海自をさらに疲弊させる
・第4の問題は海上自衛隊の疲弊を加速化させかねないことだ。 海自ではダメージコントロールを中心に省力化が進まないのに、艦艇を大型化し、艦艇を増勢し、様々な任務を増やした結果、充足率は危機的な状況である。しかも、予算要求上の都合から艦艇不適の人間も艦艇の充足率に含めてしまっており、見かけ上の充足率より実は低くなっている。そして、それはさらなるブラック化、充足率の悪化を招くという悪循環に陥っているのである。そのため近年の一部艦艇では、地方総監部が行うべき事務業務を艦艇でも行うという中世のような勤務が行われている。
+このような現状で空母化や空母の導入を行い、海外への展開を増加させるというのは、自衛隊を破滅に追い込むだけである。
▽「個別の装備品」議論から脱却せよ
・そもそも、個別の装備品の導入が最初に議論されるというところに、日本の安全保障論議の欠陥がある。例えば、治水行政を語る際に「このブルドーザーやダムを導入すれば良い」というような議論があるだろうか。医療行政を語る際に「このレントゲン機器を導入すべきだ」といような議論があるだろうか。企業の経営戦略を論じる際に「この工作機械を導入するべきだ」で始まる議論があるだろうか。どの分野の政策議論でも、個別の装備の導入が議論の入口になることはない。ところが防衛分野だけがその種のいきなり手段から議論に入って、目的や目標を後付けで語るか無視するような議論を繰り広げている。要するに空母導入の政治的・軍事的意味を単独で云々すること自体が児戯に等しいのだ。
・諸外国では、現在の戦略環境や作戦環境を議論した上で、戦略と作戦構想を設計し、その上でいかなるドクトリンを採用し、それに見合った装備は何かという議論をしている。だが、我が国だけはなぜか個別の議論が必要か否かが最初に出てきてしまう。だが、それは日本の戦略・作戦環境に最適な戦略と作戦構想とその延長のドクトリンを整理・議論した上で行われてしかるべきものである。
・不毛ないずも空母化論争は打ち止めにして、そろそろ、兵器評論や論争ではなく、戦争指導も含めた戦争全般に関する議論こそ始めるべきだろう。兵器評論はその後だ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52667

第三に、軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が4月12日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「自衛隊が尖閣防衛には不適任な水陸機動団や空母を持ちたがる理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・4月7日、島嶼防衛部隊「水陸機動団」(2100人、将来3000人)の発足を祝う「隊旗授与式」が佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地で行われ、式典後にはヘリコプター、水陸両用車を使って、敵が占拠したという想定で島への上陸作戦の展示訓練も行われた。
・その映像をテレビで見ていると、第2次世界大戦での硫黄島、沖縄、アッツ島やグアム、サイパンなど、10以上の島々での守備隊の悲惨な「玉砕」を思い起こし、暗い気持ちにならざるを得なかった。 島の争奪と防衛に決定的な要素は制空権と制海権(空と海での優勢)を確保することであり、それが失われると、孤立し、補給も来援も途絶した島嶼防衛部隊は全滅が必至だ。
▽「水陸機動団」が創設されたが重要なのは制空、制海権
・こちらが島の周辺海域で制海、制空権を握っていれば、相手が島に上陸作戦を行おうとしても、海上で敵の輸送艦は撃沈され、輸送機も撃墜されるから相手にとっては自殺行為だ。 仮にこちらの隙を突いて上陸に成功しても、補給さえ断てば敵は遅かれ早かれ降伏するか玉砕するしかない。 尖閣諸島など南西諸島の防衛を考える際の要点は一にも二にも制空権で、それに制海権も付随する。
・だが航空自衛隊が東シナ海で優勢を確保できる公算は低い。中国軍にとっては、北方でのソ連の脅威が去った今日、東シナ海は台湾との軍事衝突を想定した場合の最重要の「台湾正面」であり、その正面を担当する東部戦区には新鋭機が優先的に配備されている。
・東部戦区の中国空軍は10個戦闘機部隊(旅団あるいは連隊)で戦闘機約240機を持つと推定される。 うち旧式の戦闘機である「J7」と「J8」で構成されるのは3個隊だけで、他の7個隊(約170機)はロシア製の「Su30」や国産の「J10」など、米国のF15、F16に一応、匹敵する「第4世代戦闘機」を持つと考えられる。また海軍東海艦隊の航空隊は新鋭戦闘機2個連隊(40機余)を持つと見られる。
・これに対する台湾空軍は戦闘機400機余を持ち、うち「第4世代戦闘機」は190機だ。 当面の航空戦力はほぼ拮抗か、台湾優位と思えるが、中国は全土に戦闘機1300機余、うち第4世代戦闘機710機余を持つから、有事の際には他地域の部隊も台湾正面に移動展開が可能だ。
・一方で、航空自衛隊は那覇にF15戦闘機約40機を配備しているほか、福岡県築城にF2戦闘機約40機、宮崎県新田原にF15約20機がいる。このうち40機を防空に残せば、尖閣上空には20機を出動させることができる。 だが九州の基地から尖閣諸島へは約1000kmだから行動半径ぎりぎりで、上空で待機、哨戒するには空中給油が必要だ。中国沿岸からは約400kmだから、中国空軍にとってはるかに有利な場所だ。
・中国空軍のパイロットの年間飛行訓練は、かつては70~80時間程で、練度は低かった。だが一時は4500機もあった戦闘機は、単価の高騰のため1300機程に減り、財政全体にも余裕が生まれて、今日では訓練飛行は年間約150時間とされ、日本と同等だ。
・日本側が尖閣上空に出せる戦闘機は那覇の40機と九州から20機の計60機、中国は海軍航空隊を含め、200機程の第4世代戦闘機を出せるから、数的には日本は3対1の劣勢となる。 大型レーダーを積み、敵機を遠距離で発見する「空中早期警戒機」の性能の差や、電波妨害などの「電子戦」能力では日本が当面優位と思われるが、それで3対1の劣勢を補えるかどうかは大いに疑問だ。
▽どちらに転んでも「尖閣防衛」には役立たない
・もし制空権と、それに伴う制海権を十分に確保できないまま水陸機動団による島の奪回作戦が発動されれば、輸送艦は中国の空対艦ミサイルの標的となり、「オスプレイ」やヘリコプターは簡単に撃墜される危険が大きい。 仮に上陸、制圧に成功しても、補給が続かなければ、第2次世界大戦時と同様、兵は餓死の渕に立たされる。
・制空権、制海権が確保されるまで「水陸機動団」を出動させなければよいが、島を占拠されたとなれば、「水陸機動団は何をしているのか」との批判が出て、政治家やメディアもそれに乗る可能性がある。こうした声に押されて水陸機動団が危険を冒して出勤し、海上で全滅の事態も起こりかねない。
・真珠湾攻撃の前、陸軍は「海軍の方から対米戦争に勝ち目はない、と言ってもらえまいか」と内閣書記官長(今の官房長官)を通じて事前に働きかけた。だが、海軍は「長年、対米戦準備のためとして予算をいただいて来たのに、今さらそんなことは言えません」と断り、日本は勝算のない戦争に突入した。
・こうしたことは日本だけではない。どの国の軍も巨大な官僚機構で、組織の防衛と面目の維持を第一としがちだから、そのために部隊を犠牲にすることが起こる。 その最も顕著な例は、第1次世界大戦末期のドイツ海軍だ。 敗色濃い中、巨費を投じた「大海艦隊」は出動すれば英海軍に撃滅されるのは必定だったから、港内に引きこもっていた。 だが、海軍首脳部はあえて出動を命じ最期を飾ろうとした。無駄死にをさせる出動命令に水兵たちは反乱を起こし、これが全国に波及して革命となり、ドイツ皇帝はオランダに亡命した。  制空、制海権が十分に確保されない場合、「水陸機動団」が出動しなくても、メディアや政治家はそれを「臆病」と非難しないよう、気を付けねばならない。
・一方、制空、制海権が確立していれば、まず相手は攻めて来ないし、仮に上陸しても、補給が切れて立ち枯れになるのを待てばよい。この場合にも「水陸機動団」の出動を急がせるのは、無駄に死傷者を出すだけで愚策だ。 どちらに転んでも「水陸両用団」の創設は無駄と考える。
▽予算獲得の思惑 ヘリ空母改修も「便乗」
・そもそもどうして「水陸機動団」が作られることになったのか。 陸上自衛隊が「南西諸島防衛」を主張し始めたのは、ソ連の崩壊後だ。 それまではもっぱらソ連軍の北海道侵攻への対処を主眼としていたが、その可能性が消えたため、大幅削減の“危機”に直面した陸上自衛隊は次の存在目的を南西諸島に求めた。  当初、海上、航空自衛隊では「陸上自衛隊は苦しまぎれにそんなことを言い出した」と冷笑し、「対艦ミサイル・ハープーン搭載の潜水艦を1隻出しておけば十分ですよ」とか、「航空優勢さえ確保すれば相手は来られませんよ」との声を当時、よく聞いた。
・だが、「南西諸島防衛に必要」と言えば、海上、航空自衛隊も予算が取れる、と分かってそれに便乗し始めた。 ヘリコプター空母「いずも」(満載時2万6000トン)を、来年度に始まる次期中期防衛力整備計画で改修し、垂直離発着が可能なF35Bステルス戦闘機を搭載、対空、対艦船、対地攻撃能力を持つ空母にすることも真剣に検討されているが、これも便乗の一例だろう。
・海上自衛隊は私が防衛庁担当になった1960年代から、空母を持つことを悲願としてきた。 当初は「水上艦の速力を上回る30ノット以上の速力で潜航するソ連の原子力潜水艦を追うには、ヘリコプターが必要」との論で、それには合理性があると私も同意していた。 だがその後、大型護衛艦が各3機の対潜水艦用ヘリを搭載、中型護衛艦もヘリ1機(別に予備1機)を積むようになったから、潜水艦対策にヘリ空母を持つ必要はなくなった。
・だが海上自衛隊はヘリ空母をあきらめず、ソ連が1991年に崩壊し、その400隻近い巨大な潜水艦隊が今日の62隻(うち旧式30隻余)にまで減少する時期になって、ヘリ空母「ひゅうが」(満載時1万8000トン)と「いせ」(同型)を2009年と11年に就役させた。さらに「いずも」(同2万6000トン)と「かが」(同型)が2015年と17年に就役した。
・特に「いずも」「かが」は計画当初からヘリ空母ではなく、普通の空母への転用を目的として造られたことは、航空機を格納甲板から、飛行甲板に上げるエレベーターの配置などから明白だった。 飛行甲板の塗装をジェット噴気に耐える耐熱塗装とし、その先端を少し上に反らした「スキージャンプ」に改装し、垂直離着陸機が短距離を滑走して発艦できるようにし兵装の搭載力を増すようにすれば、対空、対艦、対地攻撃力を持つ小型空母になる。
・現状での搭載機数は、中型、大型のヘリ計14機だが、2万6000トンという大型艦だから、改装により搭載機をさらに増やすことも可能と考えられる。 仮に20機を搭載するとすれば、F35Bを14機、遠距離の敵機を探知するための早期警戒機を4機、発着艦の失敗で海に落ちた機のパイロットを救うための救難ヘリが2機、となるだろう。
・米空母は、早期警戒機として皿型のレーダーアンテナを付けた双発ターボプロップのE2Dを4機積むが、これはカタパルト(発進加速装置)がないと発艦できない。だから「いずも」級では、垂直離着陸ができるV22(オスプレイ)の胴体上部に「平均台」と呼ばれる細長いレーダーアンテナを付けることになるかもしれない。
・だが、F35Bが14機程度では戦闘能力は限られる。米空母は平時には約60機を搭載、うち44機が戦闘・攻撃機だ。尖閣諸島周辺では中国の第4世代戦闘機約200機が活動可能で、日本の空母から14機が戦列に加わっても大勢は変わらない。 同型の「かが」を改装して参加すれば計28機になるが、軍艦は1年のうち3ヵ月はドックに入って定期点検、修理をするし、それが終わって再訓練をした後に配備につくから、米海軍では空母1隻を運用するには3隻が必要とされている。
▽空母保有は「国家的虚栄心」 対中では潜水艦のほうが有効
・米国以外に空母を持つ国としては、中国が「遼寧」のほか1隻を建造中だ。インドも1隻と他に1隻建造中、イギリスは2隻建造中、フランス、ロシア、イタリア、タイが各1隻を保有する。 だが1隻ではそれがドック入り中に何か起きると空母は役立たない。不測の事態に備える防衛用ではなく、こちらの都合の良いときに弱い相手に対する攻撃や威嚇に使えるだけだ。
・米国のように10万トン級の原子力空母を11隻も持てば、常時3、4隻が出動可能で、搭載する戦闘・攻撃機は3隻で130機以上だから、有力な戦力となる。 だが1、2隻の空母を保有する国々は軍事力を誇示して威信を高めたい面があり、国家的虚栄心の表れでもある。
・F35Bステルス戦闘機を10機余積んだ「いずも」「かが」でも、「遼寧」が搭載する「J15」(燃料、兵装を満載すれば空母から発進できない)約20機に対抗できるかもしれない。 だが、実は中国海軍に対抗するには空母の必要はない。潜水艦で十分なのだ。
・中国海軍は敵の潜水艦を探知する対潜能力が極めて低く、一方で保有する原子力潜水艦の発する音は大きい。静粛性が高い日本の潜水艦で容易に処理できる。 海中では音波は必ずしも直進せず、水温、水深などにより上下に曲がるし、潮流や他の船舶の機関音などの雑音の多い中から、敵の潜水艦の出す音だけを拾うには高度の「水中音響学」の蓄積が重要だ。
・旧ソ連の潜水艦を主敵と見てきた米海軍と海上自衛隊はその探知の経験を積み、装備を開発してきたから、対潜水艦能力では中国と大差がある。 小型の空母よりはるかに建造費用は安く、人員も少ない潜水艦に力を入れる方が合理的だろう。
・日本が小型空母2隻「いずも」「かが」を持てば、イギリスが建造中の「クィーン・エリザベス」級(6万5000トン)2隻にははるかに及ばなくても、「海軍国」としての外見を備えることにはなるだろう。 だがそれが実際に活動するのは、おそらく米海軍の空母戦隊が中東などに出勤する際、その助手として付いて行く程度になるのではないか、と思われる。
http://diamond.jp/articles/-/166765

第一の記事で、 AH-64Dの調達を当初予定の64機から、僅か13機に減らされたのでは、生産していたSUBARUが、訴訟を起こしたのも当然だ。 『最高裁第2小法廷は2015年12月16日に国側の上告を退ける決定を出した。これにより国に約351億円全額の支払いを命じた2審の東京高裁判決が確定』、というのも当然だが、自衛隊の乱暴な調達方針変更は、余りに身勝手だ。SUBARUにとっては、訴訟が今後の受注に悪影響を与える可能性があるのは覚悟の上で、約351億円を獲得する方が得策と考えたのかも知れない。 『旧式化したAH-1Sの対戦車ミサイルは命中するまで1分以上空中に停止してミサイルを誘導しなければならず、今日では生存性が極めて低い』、こんな敵に恰好の標的となるようなAH-1Sは、筆者も主張するように、直ちに引退させるべきだろう。 『陸自はメンツに固執することをやめて現実を直視すべきだ。その上でスクラップ&ビルドを行い、現実的かつリーズナブルな航空兵力を整えればいい。そうでなければ抑止力にも戦力にならない部隊に無駄な税金を使い続けることになる。さらに、整備費不足の無理がたたり、今回のような墜落事故が多発する事態にもなりかねないのである』、というのは正論だ。
第二の記事で、 『いずもの空母化や空母建造は自衛隊を弱体化しかねない愚策』、 『「個別の装備品」議論から脱却せよ』、というのはその通りだと思うが、「個別の装備品」議論からスタートするお粗末な現在のやり方が何故、やられてきたのだろうか。それなりの理由がある筈だが、記事では触れてないのが残念だ。
第三の記事で、 『「水陸機動団」が創設されたが重要なのは制空、制海権』、というのはその通りだろう。 『ソ連の崩壊後・・・大幅削減の“危機”に直面した陸上自衛隊は次の存在目的を南西諸島に求めた』、というのは、よくよく考えるとおかしな話だ。 ソ連軍の地上侵攻に備えるには大規模な部隊が必要だろうが、島嶼防衛であれば、小規模で済む筈だ。やはり、陸上自衛隊の定員を大幅削減すべきだろう。 『第1次世界大戦末期のドイツ海軍・・・海軍首脳部はあえて出動を命じ最期を飾ろうとした。無駄死にをさせる出動命令に水兵たちは反乱を起こし、これが全国に波及して革命となり、ドイツ皇帝はオランダに亡命』、という史実は、どこの軍隊でも、いいかげんな意思決定をするものだと、改めて思わされた。 『空母保有は「国家的虚栄心」 対中では潜水艦のほうが有効』、との主張には説得力がある。 『日本が小型空母2隻「いずも」「かが」を持てば・・・だがそれが実際に活動するのは、おそらく米海軍の空母戦隊が中東などに出勤する際、その助手として付いて行く程度になるのではないか、と思われる』、というのでは、壮大な無駄以外の何物でもない。
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感
外交・防衛 ブログトップ