鉄道(その12)(イギリス高速鉄道「未着工区間は中止」の衝撃 コスト増など理由 沿線からは失望と怒りの声、日本人が知らないサンマリノ 「神社」と電車の謎 短命の山岳鉄道が動態復元 ブドウ畑に鳥居が、LRTか それともバスか?中国製「ART」とは何者か レールなし 路面の白線マーカーに沿い走行) [産業動向]
鉄道については、昨年12月30日に取上げた。今日は、(その12)(イギリス高速鉄道「未着工区間は中止」の衝撃 コスト増など理由 沿線からは失望と怒りの声、日本人が知らないサンマリノ 「神社」と電車の謎 短命の山岳鉄道が動態復元 ブドウ畑に鳥居が、LRTか それともバスか?中国製「ART」とは何者か レールなし 路面の白線マーカーに沿い走行)である。
先ずは、昨年10月11日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリスト のさかい もとみ氏による「イギリス高速鉄道「未着工区間は中止」の衝撃 コスト増など理由、沿線からは失望と怒りの声」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/707413
・『イギリスのリシ・スナク首相は10月4日、ロンドンとイングランド北部を結ぶ高速鉄道「HS2(ハイスピード2)」の第2期区間の建設計画を取りやめると発表した。 HS2をめぐってはこの発表前の数週間、計画の縮小に関するうわさでざわついていたが、スナク首相はこれを追認する格好となった。首相は第2期区間計画の中止について、大幅なコストの増加、建設計画の遅延が主な理由と説明している。長期にわたって練られてきた大規模交通インフラ計画を断念するに至った流れを追ってみることにしたい』、興味深そうだ。
・『建設中の区間だけで終了へ HS2は2020年、当時のボリス・ジョンソン首相が建設計画にGOサインを出した。移動時間の短縮のほか、輸送力の増加、雇用創出、ロンドンを中心とするイングランド南部に偏っている英国経済の均衡化などが開業効果として見込まれるとしている。 当初の計画では、HS2は南端のロンドンを起点にイングランド中部のバーミンガムを経て2方向に分岐し、北西側(左側)はマンチェスター、北東側(右側)はリーズに至るY字型の路線となっていた。分岐地点のやや南側にあるバーミンガムまでが第1期区間で、2029年の開業を目指して工事が進んでいる。その北側、左右に分かれる部分が第2期区間だ。このうち、リーズへの延伸は2021年に途中のイースト・ミッドランズ・パークウェイまでで打ち切ることが決まっていた。 今回、スナク首相が中止を決めたのは、第2期区間のバーミンガムから北側の部分すべてだ。したがって、HS2は現在建設が進んでいる区間だけで計画終了となる。) もっとも、第1期区間についても建設は大幅に遅れている。2029年予定の開業時には、ロンドン市内中心部にあるターミナル、ユーストン駅までの乗り入れが期待されている。しかし、10月に入って「十分な民間投資が確保されない限り、HS2は同駅まで乗り入れない」という報道が流れた。これを受け、ロンドンのサディク・カーン市長は改めて市内中心部へのHS2乗り入れを実現すべく、スナク首相に書簡を送ったという。 ユーストン駅まで乗り入れない場合、ロンドン北西部で建設が進むオールド・オーク・コモンという新駅が当初のターミナルとなる。建設にかかるコスト増もあり、「最終的にHS2はロンドンの街中まで乗り入れないかも」という臆測が依然飛び交っている。 第2期計画の中止が決まったとはいえ、何らかの代替案なしに頓挫したのでは開通を期待していた沿線住民に示しがつかない。スナク首相は英国の国政与党・保守党の党大会で第2期計画の中止を表明した際、次のような代替案を明らかにした。 【スナク首相が発表したHS2第2期建設中止に伴う代替案】 ・360億ポンドを投じ、陸上交通網のテコ入れを行う ・「ミッドランズ鉄道ハブ」の建設。ここから周辺駅50カ所とつなぐ ・幹線国道A1、A2、A5および高速道路M6をアップグレードする ・リーズにトラム(路面電車)を敷設する ・イングランド北部の道路70本の改良に資金を投入 ・ウェールズ北部の鉄道路線の電化 ・国内の主要道路の再舗装に着手 ・現在行われている「バス運賃の減免措置」(多くの地方路線が2ポンド=約360円で乗れる)を2024年12月末まで延長』、「スナク首相が中止を決めたのは、第2期区間のバーミンガムから北側の部分すべてだ。したがって、HS2は現在建設が進んでいる区間だけで計画終了となる・・・「ユーストン駅まで乗り入れない場合、ロンドン北西部で建設が進むオールド・オーク・コモンという新駅が当初のターミナルとなる」、こんなに短くなっては、高速鉄道の意味もかなり薄らぎざるを得ないだろう。
・『沿線自治体「不満と怒り」 長年にわたって「高速鉄道の恩恵」を期待していた沿線住民からは、当然のことながら失望や怒りの声が聞こえてくる。 イングランド北部、とくに高速鉄道でロンドンとの直結が約束されていたマンチェスターとその周辺の自治体首長からは怨嗟の声がやまない。例えば、グレーター・マンチェスター(広域市)のバーナム市長は、今回の決定を受け、イギリスの公共放送BBCに対し「不満と怒り」があると語っている。またデイビッド・キャメロン元首相は、「一世一代の機会が失われた」とX(旧ツイッター)に投稿している。) そして、実際に悲惨な目に遭っている人々もいる。イングランド北部でHS2の敷設計画による土地の強制収用に応じ、それまで保有していた住宅や農場を手放した人々だ。とくに畜産業を営んでいた人々は代替地の選定や移転に相当な労力を費やしており、「苦労の結果が敷設中止では困る」とし、補償の上乗せを求める声も聞こえてきている。今後、政府はこうした「計画の影響」を受けた人々にも丁寧に向き合うことが必要だろう。 一方、2大政党制の英国議会における野党・労働党は、もともとHS2への経済効果を疑問視していたこともあり、同党としては「計画の復活」を約束しない、仮に今後の選挙で政権を奪回しても、まずはコスト等の数字の精査が必要との見方を示している』、「HS2の敷設計画による土地の強制収用に応じ、それまで保有していた住宅や農場を手放した人々だ。とくに畜産業を営んでいた人々は代替地の選定や移転に相当な労力を費やしており、「苦労の結果が敷設中止では困る」とし、補償の上乗せを求める声も聞こえてきている・・・野党・労働党は、もともとHS2への経済効果を疑問視していたこともあり、同党としては「計画の復活」を約束しない、仮に今後の選挙で政権を奪回しても、まずはコスト等の数字の精査が必要との見方を示している」、なるほど。
・『日立製車両への影響は? HS2に導入される車両をめぐっては2021年12月、日立製作所と仏アルストムが折半出資する共同事業体が同線向け車両の製造・保守事業の受注を決めている。受注したのは欧州最速となる最高時速360kmの高速列車54編成の設計・製造と、12年間に及ぶ保守業務で、契約金額は総額19億7000万ポンド(約3578億円)に及ぶ。 この契約ではあくまで第1期区間の運行用として結ばれたものであるため、今回の第2期延伸の中止決定が影響を及ぼすものではない。とはいえ、当然ながらメーカーとしては第2期分の納入にも期待を寄せていただけに、今回の決定は歓迎されざるものであろう。 衝撃的とも言えるイギリス政府の「高速鉄道建設打ち切り」の決定は、コロナ禍後の経済情勢の変化が遠因でもある。資材の高騰や賃金の上昇などに加え、オンライン会議の増加など、人々の「移動需要」が計画段階と比べて大きく変わっている。この決定が吉と出るか凶と出るか、結果を見るにも5年、10年といった長期戦になる。イギリス経済の行く末も含め、今後のHS2の展開はどうなるのだろうか』、「日立製作所と仏アルストムが折半出資する共同事業体が同線向け車両の製造・保守事業の受注を決めている。受注したのは欧州最速となる最高時速360kmの高速列車54編成の設計・製造と、12年間に及ぶ保守業務で、契約金額は総額19億7000万ポンド(約3578億円)に及ぶ。 この契約ではあくまで第1期区間の運行用として結ばれたものであるため、今回の第2期延伸の中止決定が影響を及ぼすものではない。とはいえ、当然ながらメーカーとしては第2期分の納入にも期待を寄せていただけに、今回の決定は歓迎されざるものであろう」、「この契約ではあくまで第1期区間の運行用として結ばれたものである」とはいえ、「第1期分」だけで終わるのであれば、採算は悪くならざるを得ない。これでは、「共同事業体」としては、馬鹿らしくてやっていられないだろう。
次に、本年1月5日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリストのさかい もとみ氏による「日本人が知らないサンマリノ、「神社」と電車の謎 短命の山岳鉄道が動態復元、ブドウ畑に鳥居が」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/725027
・『イタリアに周囲を囲まれた小国・サンマリノ共和国。アドリア海近くにそそり立つ岩山が国土のこの国は人口3万5000人弱、面積は"山手線の内側”ほどの60平方kmしかなく、ロープウェーこそあるものの鉄道はない。だが、「国の中枢」にあたる山頂付近のトンネルには電車が停まっており、ときおり動く姿が見られるという。 さらに、同国には欧州で初の、日本の神社本庁に認められた「神社」もある。欧州でもバチカン市国、モナコ公国に次いで面積で3番目に小さい国に、なぜ神社があるのだろう。 さまざまな疑問を解きに、現地を訪れた』、興味深そうだ。
・『「世界最古の共和国」にあった鉄道 駐日サンマリノ共和国大使館の説明によると、同国は「世界で最も古い共和国であり、唯一生き残っている都市国家」「憲法は1600年に制定され、現在も使用されているものでは世界最古」だという。 市街地に行くとまるで中世から時が止まっているかのような印象を覚える。国の創設は4世紀とされるが、これは“マリノ”という石工が石灰岩の岩山であるティターノ山の頂上に登り、そこに小さな共同体を創設したことが起源だという。 サンマリノは中世を通じて自己統治を維持、13世紀には議会に当たる最高評議会が設立され、現在もなお執政機関として存在している。近代には、ナポレオンの侵攻やイタリアとの統一運動もあったが、独立を維持。1862年に当時のイタリア王国と友好・中立条約を締結したことで都市国家として現代まで残る形となった。) 国民は、今でこそ国土のあちこちに住居を構えて住んでいるが、政治・商業の中心地はティターノ山の山頂付近に張り付く石造りの建物群が並ぶ一帯に集中している。 この中心地区の町名こそが「サンマリノ」と称されるが、海抜ほぼゼロの平地にある下界から、標高600m以上ある岩山の上まで登るための交通確保が古くからの課題であった。そこで検討されたのが、イタリア領の最も近い都市で、アドリア海に面したリミニ(Rimini)とサンマリノとを結ぶ山岳鉄道「リミニ・サンマリノ鉄道」の敷設だった。 現在も乗客を乗せて動き出しそうな車両が残っているこの鉄道だが、実際には1932年から1944年までわずか12年あまりの短命で終わっている。 こうした山岳鉄道の敷設は概して、山の上で暮らしている住民が下界との行き来を楽にするために敷設運動を起こす傾向がありそうだが、リミニ・サンマリノ鉄道ではイタリア側の出資で計画が着手された。1901年ごろには鉄道敷設計画があったとされるが、第1次世界大戦の終了から約10年を経たころ、時の宰相で独裁政権を率いたムッソリーニがサンマリノを訪問したことで、敷設計画が一気に前進、国費を投入し建設を決定した』、「山岳鉄道「リミニ・サンマリノ鉄道」」は「時の宰相で独裁政権を率いたムッソリーニがサンマリノを訪問したことで、敷設計画が一気に前進、国費を投入し建設を決定した」、なるほど。
・『戦時中の誤爆で損傷、そのまま運行停止 着工は1928年で、その後約3年をかけて約32kmの路線が完成した。当時の記録によると、約19.8kmがサンマリノ領内、残りの12.2kmがイタリア領内に敷かれていた。イタリア各地で見られる軌間950mmのナローゲージで、直流3000Vで電化されていた。路線には2カ所のループを含むトンネル17カ所があり、リミニからサンマリノまで53分で走破していた。 サンマリノは第2次世界大戦の開戦に際して中立を宣言していたものの、1944年6月に連合国軍の誤爆で鉄道は損傷。修復されることなく、翌月の7月4日に定期運行がいきなり終了してしまった。記録によると、1944年7月11日から12日にかけて、電気機関車が客車2両を牽引する運行終了の記念列車が走ったという。) 第2次世界大戦終了後、リミニ・サンマリノ鉄道の復活を期待する声はあちこちから幾度となく上がったという。しかしサンマリノの人々の願いは届かず、イタリア領内にあった同鉄道の線路は1958年から1960年にかけて完全に外されてしまった。 一方で、サンマリノ側では鉄道があった痕跡を残そうとする活動が脈々と行われている。1kmに満たない長さとはいえ、保存状態のよかった旧サンマリノ駅近くのモンターレ(Montale)トンネル前後の区間が修復され、鉄道車両の動態保存区間としてよみがえった。復活したのは2012年7月21日で、1等と3等の客室を備えた合造車の電車「AB03」と、有蓋貨車1両が不定期にトンネル内を行き来している。バッテリー動力などへの改造ではなく、実際に架線に480Vの電力を通し、架線集電の「電車」として動かせるようにしているのが心憎い。 普段「AB03」は昼夜を問わずトンネル内に停めてある。出入りも自由とあって、観光客などが写真を撮る姿も見られる』、「戦時中の誤爆で損傷、そのまま運行停止」したが、「サンマリノ側・・・1kmに満たない長さとはいえ、保存状態のよかった旧サンマリノ駅近くのモンターレ(Montale)トンネル前後の区間が修復され、鉄道車両の動態保存区間としてよみがえった」、動態保存とは大したものだ。
・『動態保存区間を延長する構想も ちなみに現在、下界とティターノ山の山頂付近にあるサンマリノの街とを結ぶ公共交通機関はロープウェーがあるほか、イタリア鉄道(トレニタリア)のリミニ駅前からはサンマリノの街への定期路線バスが運行されており、1時間ほどで中心街まで行ける。 また、リミニの南東には空の玄関、リミニ・サンマリノ空港がある。空港敷地はイタリア領に位置しながらも、サンマリノ共和国に籍を置くプライベート機がここを拠点に登録されている。 リミニ・サンマリノ鉄道の動態保存については、モンターレトンネルのふもと側(リミニ方)の先、ループ状になっているピアッジェ(Piagge)トンネルを通った先に位置するロープウェー駅(下界側)近くまで、約3km強の区間を復元し、列車を走れるようにする構想もあるというが、果たして計画はどう進むのだろうか。) 一方、もう1つの「不思議」である神社の歴史は鉄道に比べてはるかに新しい。その創建はリミニ・サンマリノ鉄道の動態保存区間復活よりも後だ。 お正月といえば「初詣は欠かせない」という人も少なくないだろう。しかし日本から遠く離れた欧州に住む邦人にとって、神社での参拝はなかなか叶わない。そんな中、サンマリノには神社本庁に認められた欧州初の神社が建てられている。 その名も「サンマリノ神社」と称し、2011年の東日本大震災の犠牲者を追悼し、日本とサンマリノの友好関係を深めるため、2014年に創建された。鎮座式には、神社本庁総長をはじめ、故安倍晋三元首相の実母・洋子さんも参列したという。 ところで「神社がなぜサンマリノにあるのか?」という疑問を持つ人もいることだろう。由来によると、2011年の東日本大震災の犠牲者を追悼するため、マンリオ・カデロ駐日サンマリノ大使が神社本庁にこの神社の建立を相談したことがきっかけなのだという。カデロ大使は2002年から駐日大使の職にある。全ての大使の中でも在職期間が最も長いことから外交序列筆頭の駐日外交団長でもある。ちなみに、神職は現地に住むサンマリノ人で、日本で修行したフランチェスコ・ブリガンテさんという方が宮司を務める』、「リミニ・サンマリノ鉄道の動態保存については、モンターレトンネルのふもと側(リミニ方)の先、ループ状になっているピアッジェ(Piagge)トンネルを通った先に位置するロープウェー駅(下界側)近くまで、約3km強の区間を復元し、列車を走れるようにする構想もあるというが、果たして計画はどう進むのだろうか・・・2011年の東日本大震災の犠牲者を追悼するため、マンリオ・カデロ駐日サンマリノ大使が神社本庁にこの神社の建立を相談したことがきっかけなのだという。カデロ大使は2002年から駐日大使の職にある・・・神職は現地に住むサンマリノ人で、日本で修行したフランチェスコ・ブリガンテさんという方が宮司を務めるサンマリノに神社本庁のお墨付きを得た「神社」があるとは心底驚いた。
・『ブドウ畑の一角に神社 小さいながらも本殿があり、伊勢神宮と同じ「神明造」の様式を持ち、その一部は伊勢神宮が遷宮の際に用いた木材を使用。日本で組まれたのち、サンマリノに輸送されこの地で再構築されたものだ。 神社はワイン用のブドウ畑の一角に設けられており、鳥居をくぐる際には遠くにサンマリノの象徴である3つの砦を擁したティターノ山の威容を眺めることができる。ただ、この神社の立地はサンマリノ旧市街地から遠く、険しい山道をくねくねと登りながら目指すことになる。クルマがないと行きにくいのが残念だ。とはいえ、欧州の小国にある神社という貴重さは何事にも代えがたい。 欧州大陸にある小国のうち、モナコ公国とリヒテンシュタイン公国は周辺国の鉄道幹線が国の一角を通り抜ける形で敷かれている。一方でサンマリノは岩山が国土という悪条件の下、100年近く前に鉄道で下界と中心地をつなぐ「国際列車」を通すという先見性があったことは忘れてはならない。 正直なところ、日本との縁はあまりなさそうな欧州の小国・サンマリノだが、今世紀に入って、“神社がある国”にもなった。「観光鉄道の延伸」が実現すれば、”世界最古の共和国”へ電車で登るという楽しみが増える。神社と共に、日本人観光客への関心がより高まる日が来ることを期待したい』、「「観光鉄道の延伸」が実現すれば、”世界最古の共和国”へ電車で登るという楽しみが増える。神社と共に、日本人観光客への関心がより高まる日が来ることを期待したい」、同感である。
第三に、2月24日付け東洋経済オンラインが掲載したアジアン鉄道ライターの高木 聡氏による「LRTか、それともバスか?中国製「ART」とは何者か レールなし、路面の白線マーカーに沿い走行」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/736326
・『2月1日から4日にかけて、マレーシアの首都クアラルンプール近郊、プトラジャヤ地区にて中国中車(CRRC)株洲が開発を進めている「ART(Autonomous Rapid Transit)」の、東南アジアで初となる一般向け試乗会が開かれた。 日本ではまだほとんど知られていないART。見た目はLRTだが車輪はゴムタイヤで、さらに運転台には丸いハンドルまで付いている。車体も3連接で、最大5連接にまで伸ばせるというから驚きだ』、「中国中車(CRRC)株洲が開発を進めているART。見た目はLRTだが車輪はゴムタイヤで、さらに運転台には丸いハンドルまで付いている。車体も3連接で、最大5連接にまで伸ばせる」、中国製のようだが、興味深そうだ。
・『LRT並みの輸送力で低コスト 進路の制御は、ART専用に設置した道路上の白線マーカーを光学式センサーが読み取り、これに沿って走行する。丸いハンドル(ステアリングホイール)も設置しているが、これは搬入時や非常時、また車庫等での入れ換えなどの際に機動性を確保するためである。今回の試乗会も、ハンドルを使用したマニュアル運転となった。 動力はバッテリー駆動だ。ただ、各国のバッテリー式LRTで見られる充電用のパンタグラフはなく、車体側面に急速充電用のソケットがある。そういった点ではLRTではなくEVバスに分類されそうだ。実際に、車体前面にはナンバープレート設置用の枠がある。 CRRCはART開発の理由について、LRT並みの輸送力を保ちつつ、整備費用を大幅に削減できることを掲げている。ゴムタイヤ式のため加減速に優れ勾配にも強い。その反面、鉄車輪方式に比べてエネルギー効率は悪い。定員は一般的な連接バスの約2倍となる239名(3連接車体の場合)で、設計最高速度は時速70kmだ。 現在は、数十年来の懸案であったシンガポール―ジョホール間の越境都市鉄道(RTS)の開業に合わせる形での運行開始を目指しているが、実際の開業時期は不明である。 BRTはRTSのジョホール(マレーシア)側の起点から3方向に約50kmがフェーズ1整備区間として示されているが、先の関係者は、2023年末頃にプロジェクトの呼称がBRTからLRTに突如変わったという。RTSはもともとシンガポールのMRT(地下鉄)規格で建設予定だったが、2019年にマレーシア側の政治的理由で急遽LRT規格に変更された。そして、規定路線のごとく車両はCRRC株洲が受注した。 もし、ジョホール側の市内交通にARTが採用された場合、シンガポール―マレーシア間のわずかな区間に、MRT、LRT、ARTと3つのシステムが混在することになる。RTSにCRRC株洲製のLRT車両が導入されるとすれば、これに規格を合わせるという理由でジョホール側にもARTでなくLRTを導入できる。そのため、不要になったART車両が今回プトラジャヤに移動してきたようだ』、「道路上の白線マーカーを光学式センサーが読み取り、これに沿って走行する・・・ジョホール側の市内交通にARTが採用された場合、シンガポール―マレーシア間のわずかな区間に、MRT、LRT、ARTと3つのシステムが混在することになる。RTSにCRRC株洲製のLRT車両が導入されるとすれば、これに規格を合わせるという理由でジョホール側にもARTでなくLRTを導入できる。そのため、不要になったART車両が今回プトラジャヤに移動してきたようだ」、なるほど。
・『予算のない都市にARTは「朗報」となるか プトラジャヤでは既存鉄道駅からのフィーダー交通(注)としてモノレール計画が存在していたが、コスト面から頓挫しており、ARTはそれに代わるシステムとして導入調査が進む模様である。それにしても、ARTがいかに「規格」を売り込むビジネスであるかがわかる。 おりしも2024年1月から5年間の任期で、ジョホール州のイブラヒム・イスカンダル氏が第17代マレーシア国王として即位した。同氏は高速鉄道推進派としても知られ、シンガポールの対岸にありながら公共交通整備に後れをとってきたジョホールはRTS開業とともに大変貌を遂げる可能性がある。LRTとは別にARTが導入される可能性もあり、目が離せない。 LRTを導入したくとも予算のない地域、バス輸送に任せるには心もとない、抵抗があるといった地域にとっては、朗報とも言える存在になるかもしれない。まずは、マレーシアでどのようなオペレーションが始まるか、続報を待ちたい。) 路線バスと普通鉄道の間に位置づけられる輸送システムは、主にBRT、またLRTとして世界の国々で確立している。世界のBRTは、日本のそれと異なり、一般車線から完全に分離されていることがほとんどだ。バス停は道路中央に「駅」として存在し、車内での料金支払いがないため、連接バスで一度に多くの乗客を運べて時間のロスがない。 ただ、あくまで一般車線とセパレーターで区切られた専用レーンを走るだけで、運行システム上は限りなく一般のバスに近い。よって整備費用が安価なため、先進国、途上国問わず多くの都市で導入、また導入計画がある。しかし、これより鉄道システムに近いガイドウェイ方式(走行路の側面にあるガイドに沿って走行する)は、専用軌道を最高時速100kmで走るOバーン(オーストラリア・アデレード)が知られているものの、採用例はあまり多くない。日本でも、名古屋のゆとりーとラインで採用されただけである』、「シンガポールの対岸にありながら公共交通整備に後れをとってきたジョホールはRTS開業とともに大変貌を遂げる可能性がある。LRTとは別にARTが導入される可能性もあり、目が離せない」、なるほど。
(注)フィーダー交通:交通網において幹線と接続し、支線の役割をもって運行される路線(Wikipedia)。
・『ゴムタイヤ式LRT、試行錯誤の歴史 ARTはLRTをバスに近づけた存在と呼べそうだが、ゴムタイヤで走るLRT自体は以前から存在し、1990年代から2000年代初めにかけてボンバルディアが「GLT(Guided Light Transit)」、フランスのロールが「トランスロール」として開発、実用化している。前者は運転台にハンドルを設置しているが、どちらのシステムも走行路の中央に設置した1本のガイドレールに従って走る仕組みである。 低コストで整備できるLRTを目指したこれらのシステムだが、採用例は少なく、特殊仕様の域を出ることはないままで、スペアパーツの供給などメンテナンスコストが高騰した。また、ゴムタイヤ走行による轍が道路上に発生するなどして、乗り心地が悪化した。 結局目立ったコスト削減効果は表れず、ほとんどが通常の鉄車輪式のLRTやトロリーバスなどに置き換えられ、GLTはすでに全廃された。両システムを開発したボンバルディア、ロールはともにアルストムに買収され、トランスロールの技術は同社に引き継がれている。 ARTを開発した中国でも、2007年に天津、2010年に上海でトランスロールのゴムタイヤ式LRTを導入したが、いずれも上記の理由で2023年に廃止された。) だが、中国におけるEVや自動運転技術の急速な発展により、トランスロールのようにガイドレールを使う高コストなシステムにこだわる必要はないと判断されたとしてもおかしくないだろう。CRRC株洲はシーメンスとのライセンス契約により鉄車輪式のLRTを製造しており、同社がゴムタイヤ式LRTのような交通機関であるARTを開発したのは自然な成り行きと言えるかもしれない。
ARTは2018年以降、中国国内では株洲市、西安市、上海市など6都市で運行中、または現在試験運行中である。海外展開も進めており、マレーシアのジョホールバル(2021年から)、クチン(2023年から)、プトラジャヤ(2024年から)、オーストラリアのパース(2023年から)で導入に向け、実車を用いた試運転を実施している。 また、アラブ首長国連邦のアブダビでは、3編成を用いた一般旅客も乗車可能な試験運行が2023年10月からスタートした。ただし、白線マーカー未設置のマニュアル運転で、自動車用ナンバープレートを付けての運転だ』、「ARTは2018年以降、中国国内では株洲市、西安市、上海市など6都市で運行中、または現在試験運行中である。海外展開も進めており、マレーシアのジョホールバル(2021年から)、クチン(2023年から)、プトラジャヤ(2024年から)、オーストラリアのパース(2023年から)で導入に向け、実車を用いた試運転を実施」、なるほど
・『導入は「温暖な人工的都市」 試運転はいずれも、人口集中が穏やか、かつ人工的で整然とした近代的都市計画に成功している地域が選定されていることがわかる。また、温暖な地域というのも1つのポイントだろう。降雪地区では白線の読み取りができず、スリップなどの恐れもあるため、ARTは導入できないためだ。 2018年にはインドネシア鉄道(KAI)とも導入に関わる協力覚書を結んだ。KAIの廃線跡も活かしつつ、バンドン、スラバヤ、マランなどの地方都市やバリ島に導入する計画が持ち上がったが、道路環境の悪さなどの理由で具体化には至っていない。 それでも引き続き導入に向けた調査検討が進められ、法的な部分もクリアし、最終報告書が運輸省に提出された。2020年に協力覚書は延長された。そして2024年、運輸省は現在建設中の新首都・ヌサンタラへの導入意向を示し、運輸大臣が中国で試乗もしている。道路環境がよく、人口が少ない新首都への導入は容易だろう。 現在、開業に向けて最も具体化が進んでいるのはマレーシア、サラワク州クチンの「クチン・アーバン・トランスポート・システム(KUTS)」プロジェクトだ。クチンは同州の州都であるが、人口は約33万人、人口密度は300人/平方キロメートルを超える程度で、一般的な路線バスで十分輸送を賄える都市規模である。軌道系交通の導入が計画されること自体に驚きを隠せないが、だからこそARTが採用されたとも言える。) 018年に同プロジェクトは中国によるLRT方式での整備を前提に構想されたが、高額なコストを理由に実現には至らず、翌2019年にART方式での建設が決定した。KUTSの運営主体となるサラワクメトロは、LRT方式に比べ、3分の1のコストで整備が可能であると発表している。 KUTSはスマートシティ構想の一環であるとしており、ART停留所からはフィーダー交通として自動運転バスも導入し、全ての人がARTにアクセスできるようにするという。しかも、このARTは、他都市で導入されているタイプとは異なり、水素を動力源とする全く新しい車両になっている。東南アジア初のサステナブルシティを目指す構えだが、都市開発全体を中国が売り込んでいるという背景もある。 サラワク州はKUTSプロジェクトを総額60億リンギット(約1884億円)と見積もり、ナジブ首相の提唱で設立されたサラワク開発銀行を経由し融資され、公共事業として実施される。計70kmにも及ぶフェーズ1区間のうち、クチン市中心部と隣接するサマラハン市を結ぶブルーライン(27.6km)と、クチン市中心部と空港方面を結ぶレッドライン(12.3km)の路線、車両基地建設や車両、信号システムなどの調達について、2023年末までに業者選定を済ませ着工している』、「試運転はいずれも、人口集中が穏やか、かつ人工的で整然とした近代的都市計画に成功している地域が選定されていることがわかる。また、温暖な地域というのも1つのポイントだろう。降雪地区では白線の読み取りができず、スリップなどの恐れもあるため、ARTは導入できないためだ・・・KUTSはスマートシティ構想の一環であるとしており、ART停留所からはフィーダー交通として自動運転バスも導入し、全ての人がARTにアクセスできるようにするという。しかも、このARTは、他都市で導入されているタイプとは異なり、水素を動力源とする全く新しい車両になっている。東南アジア初のサステナブルシティを目指す構えだが、都市開発全体を中国が売り込んでいるという背景もある」、中国が大手を振って受注しているのは要注意だ。
・『技術はユニークだが法的課題も いずれもマレーシア企業と中国企業のJVが落札しており、車両は当然、CRRC株洲が納入することになるが、書類上はマレーシアの民間投資会社ECCAZとCRRC子会社の合弁会社Mobilusが受注している。このパッケージには水素式ART車両38編成、信号システム一式、ホームドア、車両基地設計などが含まれており、契約額は14億2500万リンギット(約447億6200万円)だ。 ART自体がCRRCとMobilusの共同開発であるとも説明されており、公式ページにはMobilusは今後、マレーシアのみならず、近隣諸国への営業を強化すると記載されている。KUTSのARTは、高速道路や高規格道路の一部を専用レーンとして自律走行し、交通量の多い交差点は立体交差、一部区間には高架駅も設けられる。道路信号に従って進む区間では、ART優先信号が導入される。 車両は1編成がプロトタイプとして2023年8月に到着、試運転が続けられており、2025年末までに先行区間の開業を目指している。クチンが中国国外で初のART営業区間となる可能性が高い。政治的意図はあるとは言え、ART技術は注目に値するだろう。) 一方で、課題も多いとマレーシアの運輸関係者は指摘する。まずは法令上の問題で、鉄道車両なのかバスなのかをはっきりさせないと一般運行は難しいのではないかという点である。白線マーカーから逸脱して接触事故などが起きたときの責任範囲も現状では不明で、新たな法律を作るか、法規制の緩い国や地域での導入に限られるのではないかということだ。プトラジャヤではイベント期間中、交通を規制しての運行となった。 その点で、サラワク州のクチンで具体化が進んでいることは納得がいく。同州は歴史的経緯から、マレーシアでありながら独立した強い自治権を持っており、本土のマレー半島側との行き来にはパスポートが必要で、ほぼ外国という扱いのためだ。本土側の運輸行政とも全く別の管理下にあり、本土側ではどのようなプロセスで建設を進めているかわからないという。 そして、ARTというシステムを現状でCRRCしか持っていないことを懸念しているという。導入仕様書にARTと指定された場合、必然的にCRRC車両を導入することになってしまい、結果的にコスト高になる可能性があるためだ』、「ARTというシステムを現状でCRRCしか持っていないことを懸念しているという。導入仕様書にARTと指定された場合、必然的にCRRC車両を導入することになってしまい、結果的にコスト高になる可能性があるためだ」、中国に首根っこを押さえられてしまう。
・『中国の影響力に懸念 2009年のナジブ政権以降、マレーシア政府が突出して中国寄りの姿勢を見せていることに、先述の関係者は懸念を示している。事実上の国鉄であるマレー鉄道(KTM)は、今やCRRC株洲の独占的利権になっており、今後も同社以外からの車両調達はできないだろうと言う。 RRCはマレーシアに子会社を持ち、車両調達からその後のメンテナンスまでを一手に引き受けている。「一帯一路」の肝煎りの政策でもある東海岸鉄道(ECRL)も順調に工事が進んでおり、一度は白紙に戻ったマレーシア―シンガポール間の高速鉄道も、中国規格での着工が有力視されている。乗り入れのために中国と規格を合わせるという点ではECRLも高速鉄道も中国規格の採用は理にかなっているが、独立した存在である都市鉄道やLRTは、CRRCにとって参入障壁がある。 実際に都市鉄道の分野は、欧州メーカーが存在感を示しており、中国が十分に入り込めていない分野だった。ただ、2015年にクアラルンプールの高架式LRT、Rapid KLのアンパン線の旧型車置き換えをCRRC株洲が受注したのを皮切りに、徐々に攻勢を強めている。現在建設中のサーアラム線も同社が受注している。 今回のART試乗会に供された車両は、もともと2021年にジョホールバルで試運転を行っていた車両である。当時は自動車用ナンバーを取得し、白線マーカーによる自律走行を実施していた。2017年に当時のナジブ首相によって立ち上げられた「イスカンダル マレーシアBRT」プロジェクトとしてART導入に向けた調査が進んでおり、高速鉄道の開業及び接続を前提に2021年までの開業を目指していた。) 現在は、数十年来の懸案であったシンガポール―ジョホール間の越境都市鉄道(RTS)の開業に合わせる形での運行開始を目指しているが、実際の開業時期は不明である。 BRTはRTSのジョホール(マレーシア)側の起点から3方向に約50kmがフェーズ1整備区間として示されているが、先の関係者は、2023年末頃にプロジェクトの呼称がBRTからLRTに突如変わったという。RTSはもともとシンガポールのMRT(地下鉄)規格で建設予定だったが、2019年にマレーシア側の政治的理由で急遽LRT規格に変更された。そして、規定路線のごとく車両はCRRC株洲が受注した。 もし、ジョホール側の市内交通にARTが採用された場合、シンガポール―マレーシア間のわずかな区間に、MRT、LRT、ARTと3つのシステムが混在することになる。RTSにCRRC株洲製のLRT車両が導入されるとすれば、これに規格を合わせるという理由でジョホール側にもARTでなくLRTを導入できる。そのため、不要になったART車両が今回プトラジャヤに移動してきたようだ』、いずれにしても、中国系企業が受注するようだ。
・『予算のない都市にARTは「朗報」となるか プトラジャヤでは既存鉄道駅からのフィーダー交通としてモノレール計画が存在していたが、コスト面から頓挫しており、ARTはそれに代わるシステムとして導入調査が進む模様である。それにしても、ARTがいかに「規格」を売り込むビジネスであるかがわかる。 おりしも2024年1月から5年間の任期で、ジョホール州のイブラヒム・イスカンダル氏が第17代マレーシア国王として即位した。同氏は高速鉄道推進派としても知られ、シンガポールの対岸にありながら公共交通整備に後れをとってきたジョホールはRTS開業とともに大変貌を遂げる可能性がある。LRTとは別にARTが導入される可能性もあり、目が離せない。 LRTを導入したくとも予算のない地域、バス輸送に任せるには心もとない、抵抗があるといった地域にとっては、朗報とも言える存在になるかもしれない。まずは、マレーシアでどのようなオペレーションが始まるか、続報を待ちたい』、「LRT」、「ART」いずれにしても、中国系企業が受注、日本企業はカヤの外なのは腹が立つ。
先ずは、昨年10月11日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリスト のさかい もとみ氏による「イギリス高速鉄道「未着工区間は中止」の衝撃 コスト増など理由、沿線からは失望と怒りの声」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/707413
・『イギリスのリシ・スナク首相は10月4日、ロンドンとイングランド北部を結ぶ高速鉄道「HS2(ハイスピード2)」の第2期区間の建設計画を取りやめると発表した。 HS2をめぐってはこの発表前の数週間、計画の縮小に関するうわさでざわついていたが、スナク首相はこれを追認する格好となった。首相は第2期区間計画の中止について、大幅なコストの増加、建設計画の遅延が主な理由と説明している。長期にわたって練られてきた大規模交通インフラ計画を断念するに至った流れを追ってみることにしたい』、興味深そうだ。
・『建設中の区間だけで終了へ HS2は2020年、当時のボリス・ジョンソン首相が建設計画にGOサインを出した。移動時間の短縮のほか、輸送力の増加、雇用創出、ロンドンを中心とするイングランド南部に偏っている英国経済の均衡化などが開業効果として見込まれるとしている。 当初の計画では、HS2は南端のロンドンを起点にイングランド中部のバーミンガムを経て2方向に分岐し、北西側(左側)はマンチェスター、北東側(右側)はリーズに至るY字型の路線となっていた。分岐地点のやや南側にあるバーミンガムまでが第1期区間で、2029年の開業を目指して工事が進んでいる。その北側、左右に分かれる部分が第2期区間だ。このうち、リーズへの延伸は2021年に途中のイースト・ミッドランズ・パークウェイまでで打ち切ることが決まっていた。 今回、スナク首相が中止を決めたのは、第2期区間のバーミンガムから北側の部分すべてだ。したがって、HS2は現在建設が進んでいる区間だけで計画終了となる。) もっとも、第1期区間についても建設は大幅に遅れている。2029年予定の開業時には、ロンドン市内中心部にあるターミナル、ユーストン駅までの乗り入れが期待されている。しかし、10月に入って「十分な民間投資が確保されない限り、HS2は同駅まで乗り入れない」という報道が流れた。これを受け、ロンドンのサディク・カーン市長は改めて市内中心部へのHS2乗り入れを実現すべく、スナク首相に書簡を送ったという。 ユーストン駅まで乗り入れない場合、ロンドン北西部で建設が進むオールド・オーク・コモンという新駅が当初のターミナルとなる。建設にかかるコスト増もあり、「最終的にHS2はロンドンの街中まで乗り入れないかも」という臆測が依然飛び交っている。 第2期計画の中止が決まったとはいえ、何らかの代替案なしに頓挫したのでは開通を期待していた沿線住民に示しがつかない。スナク首相は英国の国政与党・保守党の党大会で第2期計画の中止を表明した際、次のような代替案を明らかにした。 【スナク首相が発表したHS2第2期建設中止に伴う代替案】 ・360億ポンドを投じ、陸上交通網のテコ入れを行う ・「ミッドランズ鉄道ハブ」の建設。ここから周辺駅50カ所とつなぐ ・幹線国道A1、A2、A5および高速道路M6をアップグレードする ・リーズにトラム(路面電車)を敷設する ・イングランド北部の道路70本の改良に資金を投入 ・ウェールズ北部の鉄道路線の電化 ・国内の主要道路の再舗装に着手 ・現在行われている「バス運賃の減免措置」(多くの地方路線が2ポンド=約360円で乗れる)を2024年12月末まで延長』、「スナク首相が中止を決めたのは、第2期区間のバーミンガムから北側の部分すべてだ。したがって、HS2は現在建設が進んでいる区間だけで計画終了となる・・・「ユーストン駅まで乗り入れない場合、ロンドン北西部で建設が進むオールド・オーク・コモンという新駅が当初のターミナルとなる」、こんなに短くなっては、高速鉄道の意味もかなり薄らぎざるを得ないだろう。
・『沿線自治体「不満と怒り」 長年にわたって「高速鉄道の恩恵」を期待していた沿線住民からは、当然のことながら失望や怒りの声が聞こえてくる。 イングランド北部、とくに高速鉄道でロンドンとの直結が約束されていたマンチェスターとその周辺の自治体首長からは怨嗟の声がやまない。例えば、グレーター・マンチェスター(広域市)のバーナム市長は、今回の決定を受け、イギリスの公共放送BBCに対し「不満と怒り」があると語っている。またデイビッド・キャメロン元首相は、「一世一代の機会が失われた」とX(旧ツイッター)に投稿している。) そして、実際に悲惨な目に遭っている人々もいる。イングランド北部でHS2の敷設計画による土地の強制収用に応じ、それまで保有していた住宅や農場を手放した人々だ。とくに畜産業を営んでいた人々は代替地の選定や移転に相当な労力を費やしており、「苦労の結果が敷設中止では困る」とし、補償の上乗せを求める声も聞こえてきている。今後、政府はこうした「計画の影響」を受けた人々にも丁寧に向き合うことが必要だろう。 一方、2大政党制の英国議会における野党・労働党は、もともとHS2への経済効果を疑問視していたこともあり、同党としては「計画の復活」を約束しない、仮に今後の選挙で政権を奪回しても、まずはコスト等の数字の精査が必要との見方を示している』、「HS2の敷設計画による土地の強制収用に応じ、それまで保有していた住宅や農場を手放した人々だ。とくに畜産業を営んでいた人々は代替地の選定や移転に相当な労力を費やしており、「苦労の結果が敷設中止では困る」とし、補償の上乗せを求める声も聞こえてきている・・・野党・労働党は、もともとHS2への経済効果を疑問視していたこともあり、同党としては「計画の復活」を約束しない、仮に今後の選挙で政権を奪回しても、まずはコスト等の数字の精査が必要との見方を示している」、なるほど。
・『日立製車両への影響は? HS2に導入される車両をめぐっては2021年12月、日立製作所と仏アルストムが折半出資する共同事業体が同線向け車両の製造・保守事業の受注を決めている。受注したのは欧州最速となる最高時速360kmの高速列車54編成の設計・製造と、12年間に及ぶ保守業務で、契約金額は総額19億7000万ポンド(約3578億円)に及ぶ。 この契約ではあくまで第1期区間の運行用として結ばれたものであるため、今回の第2期延伸の中止決定が影響を及ぼすものではない。とはいえ、当然ながらメーカーとしては第2期分の納入にも期待を寄せていただけに、今回の決定は歓迎されざるものであろう。 衝撃的とも言えるイギリス政府の「高速鉄道建設打ち切り」の決定は、コロナ禍後の経済情勢の変化が遠因でもある。資材の高騰や賃金の上昇などに加え、オンライン会議の増加など、人々の「移動需要」が計画段階と比べて大きく変わっている。この決定が吉と出るか凶と出るか、結果を見るにも5年、10年といった長期戦になる。イギリス経済の行く末も含め、今後のHS2の展開はどうなるのだろうか』、「日立製作所と仏アルストムが折半出資する共同事業体が同線向け車両の製造・保守事業の受注を決めている。受注したのは欧州最速となる最高時速360kmの高速列車54編成の設計・製造と、12年間に及ぶ保守業務で、契約金額は総額19億7000万ポンド(約3578億円)に及ぶ。 この契約ではあくまで第1期区間の運行用として結ばれたものであるため、今回の第2期延伸の中止決定が影響を及ぼすものではない。とはいえ、当然ながらメーカーとしては第2期分の納入にも期待を寄せていただけに、今回の決定は歓迎されざるものであろう」、「この契約ではあくまで第1期区間の運行用として結ばれたものである」とはいえ、「第1期分」だけで終わるのであれば、採算は悪くならざるを得ない。これでは、「共同事業体」としては、馬鹿らしくてやっていられないだろう。
次に、本年1月5日付け東洋経済オンラインが掲載した在英ジャーナリストのさかい もとみ氏による「日本人が知らないサンマリノ、「神社」と電車の謎 短命の山岳鉄道が動態復元、ブドウ畑に鳥居が」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/725027
・『イタリアに周囲を囲まれた小国・サンマリノ共和国。アドリア海近くにそそり立つ岩山が国土のこの国は人口3万5000人弱、面積は"山手線の内側”ほどの60平方kmしかなく、ロープウェーこそあるものの鉄道はない。だが、「国の中枢」にあたる山頂付近のトンネルには電車が停まっており、ときおり動く姿が見られるという。 さらに、同国には欧州で初の、日本の神社本庁に認められた「神社」もある。欧州でもバチカン市国、モナコ公国に次いで面積で3番目に小さい国に、なぜ神社があるのだろう。 さまざまな疑問を解きに、現地を訪れた』、興味深そうだ。
・『「世界最古の共和国」にあった鉄道 駐日サンマリノ共和国大使館の説明によると、同国は「世界で最も古い共和国であり、唯一生き残っている都市国家」「憲法は1600年に制定され、現在も使用されているものでは世界最古」だという。 市街地に行くとまるで中世から時が止まっているかのような印象を覚える。国の創設は4世紀とされるが、これは“マリノ”という石工が石灰岩の岩山であるティターノ山の頂上に登り、そこに小さな共同体を創設したことが起源だという。 サンマリノは中世を通じて自己統治を維持、13世紀には議会に当たる最高評議会が設立され、現在もなお執政機関として存在している。近代には、ナポレオンの侵攻やイタリアとの統一運動もあったが、独立を維持。1862年に当時のイタリア王国と友好・中立条約を締結したことで都市国家として現代まで残る形となった。) 国民は、今でこそ国土のあちこちに住居を構えて住んでいるが、政治・商業の中心地はティターノ山の山頂付近に張り付く石造りの建物群が並ぶ一帯に集中している。 この中心地区の町名こそが「サンマリノ」と称されるが、海抜ほぼゼロの平地にある下界から、標高600m以上ある岩山の上まで登るための交通確保が古くからの課題であった。そこで検討されたのが、イタリア領の最も近い都市で、アドリア海に面したリミニ(Rimini)とサンマリノとを結ぶ山岳鉄道「リミニ・サンマリノ鉄道」の敷設だった。 現在も乗客を乗せて動き出しそうな車両が残っているこの鉄道だが、実際には1932年から1944年までわずか12年あまりの短命で終わっている。 こうした山岳鉄道の敷設は概して、山の上で暮らしている住民が下界との行き来を楽にするために敷設運動を起こす傾向がありそうだが、リミニ・サンマリノ鉄道ではイタリア側の出資で計画が着手された。1901年ごろには鉄道敷設計画があったとされるが、第1次世界大戦の終了から約10年を経たころ、時の宰相で独裁政権を率いたムッソリーニがサンマリノを訪問したことで、敷設計画が一気に前進、国費を投入し建設を決定した』、「山岳鉄道「リミニ・サンマリノ鉄道」」は「時の宰相で独裁政権を率いたムッソリーニがサンマリノを訪問したことで、敷設計画が一気に前進、国費を投入し建設を決定した」、なるほど。
・『戦時中の誤爆で損傷、そのまま運行停止 着工は1928年で、その後約3年をかけて約32kmの路線が完成した。当時の記録によると、約19.8kmがサンマリノ領内、残りの12.2kmがイタリア領内に敷かれていた。イタリア各地で見られる軌間950mmのナローゲージで、直流3000Vで電化されていた。路線には2カ所のループを含むトンネル17カ所があり、リミニからサンマリノまで53分で走破していた。 サンマリノは第2次世界大戦の開戦に際して中立を宣言していたものの、1944年6月に連合国軍の誤爆で鉄道は損傷。修復されることなく、翌月の7月4日に定期運行がいきなり終了してしまった。記録によると、1944年7月11日から12日にかけて、電気機関車が客車2両を牽引する運行終了の記念列車が走ったという。) 第2次世界大戦終了後、リミニ・サンマリノ鉄道の復活を期待する声はあちこちから幾度となく上がったという。しかしサンマリノの人々の願いは届かず、イタリア領内にあった同鉄道の線路は1958年から1960年にかけて完全に外されてしまった。 一方で、サンマリノ側では鉄道があった痕跡を残そうとする活動が脈々と行われている。1kmに満たない長さとはいえ、保存状態のよかった旧サンマリノ駅近くのモンターレ(Montale)トンネル前後の区間が修復され、鉄道車両の動態保存区間としてよみがえった。復活したのは2012年7月21日で、1等と3等の客室を備えた合造車の電車「AB03」と、有蓋貨車1両が不定期にトンネル内を行き来している。バッテリー動力などへの改造ではなく、実際に架線に480Vの電力を通し、架線集電の「電車」として動かせるようにしているのが心憎い。 普段「AB03」は昼夜を問わずトンネル内に停めてある。出入りも自由とあって、観光客などが写真を撮る姿も見られる』、「戦時中の誤爆で損傷、そのまま運行停止」したが、「サンマリノ側・・・1kmに満たない長さとはいえ、保存状態のよかった旧サンマリノ駅近くのモンターレ(Montale)トンネル前後の区間が修復され、鉄道車両の動態保存区間としてよみがえった」、動態保存とは大したものだ。
・『動態保存区間を延長する構想も ちなみに現在、下界とティターノ山の山頂付近にあるサンマリノの街とを結ぶ公共交通機関はロープウェーがあるほか、イタリア鉄道(トレニタリア)のリミニ駅前からはサンマリノの街への定期路線バスが運行されており、1時間ほどで中心街まで行ける。 また、リミニの南東には空の玄関、リミニ・サンマリノ空港がある。空港敷地はイタリア領に位置しながらも、サンマリノ共和国に籍を置くプライベート機がここを拠点に登録されている。 リミニ・サンマリノ鉄道の動態保存については、モンターレトンネルのふもと側(リミニ方)の先、ループ状になっているピアッジェ(Piagge)トンネルを通った先に位置するロープウェー駅(下界側)近くまで、約3km強の区間を復元し、列車を走れるようにする構想もあるというが、果たして計画はどう進むのだろうか。) 一方、もう1つの「不思議」である神社の歴史は鉄道に比べてはるかに新しい。その創建はリミニ・サンマリノ鉄道の動態保存区間復活よりも後だ。 お正月といえば「初詣は欠かせない」という人も少なくないだろう。しかし日本から遠く離れた欧州に住む邦人にとって、神社での参拝はなかなか叶わない。そんな中、サンマリノには神社本庁に認められた欧州初の神社が建てられている。 その名も「サンマリノ神社」と称し、2011年の東日本大震災の犠牲者を追悼し、日本とサンマリノの友好関係を深めるため、2014年に創建された。鎮座式には、神社本庁総長をはじめ、故安倍晋三元首相の実母・洋子さんも参列したという。 ところで「神社がなぜサンマリノにあるのか?」という疑問を持つ人もいることだろう。由来によると、2011年の東日本大震災の犠牲者を追悼するため、マンリオ・カデロ駐日サンマリノ大使が神社本庁にこの神社の建立を相談したことがきっかけなのだという。カデロ大使は2002年から駐日大使の職にある。全ての大使の中でも在職期間が最も長いことから外交序列筆頭の駐日外交団長でもある。ちなみに、神職は現地に住むサンマリノ人で、日本で修行したフランチェスコ・ブリガンテさんという方が宮司を務める』、「リミニ・サンマリノ鉄道の動態保存については、モンターレトンネルのふもと側(リミニ方)の先、ループ状になっているピアッジェ(Piagge)トンネルを通った先に位置するロープウェー駅(下界側)近くまで、約3km強の区間を復元し、列車を走れるようにする構想もあるというが、果たして計画はどう進むのだろうか・・・2011年の東日本大震災の犠牲者を追悼するため、マンリオ・カデロ駐日サンマリノ大使が神社本庁にこの神社の建立を相談したことがきっかけなのだという。カデロ大使は2002年から駐日大使の職にある・・・神職は現地に住むサンマリノ人で、日本で修行したフランチェスコ・ブリガンテさんという方が宮司を務めるサンマリノに神社本庁のお墨付きを得た「神社」があるとは心底驚いた。
・『ブドウ畑の一角に神社 小さいながらも本殿があり、伊勢神宮と同じ「神明造」の様式を持ち、その一部は伊勢神宮が遷宮の際に用いた木材を使用。日本で組まれたのち、サンマリノに輸送されこの地で再構築されたものだ。 神社はワイン用のブドウ畑の一角に設けられており、鳥居をくぐる際には遠くにサンマリノの象徴である3つの砦を擁したティターノ山の威容を眺めることができる。ただ、この神社の立地はサンマリノ旧市街地から遠く、険しい山道をくねくねと登りながら目指すことになる。クルマがないと行きにくいのが残念だ。とはいえ、欧州の小国にある神社という貴重さは何事にも代えがたい。 欧州大陸にある小国のうち、モナコ公国とリヒテンシュタイン公国は周辺国の鉄道幹線が国の一角を通り抜ける形で敷かれている。一方でサンマリノは岩山が国土という悪条件の下、100年近く前に鉄道で下界と中心地をつなぐ「国際列車」を通すという先見性があったことは忘れてはならない。 正直なところ、日本との縁はあまりなさそうな欧州の小国・サンマリノだが、今世紀に入って、“神社がある国”にもなった。「観光鉄道の延伸」が実現すれば、”世界最古の共和国”へ電車で登るという楽しみが増える。神社と共に、日本人観光客への関心がより高まる日が来ることを期待したい』、「「観光鉄道の延伸」が実現すれば、”世界最古の共和国”へ電車で登るという楽しみが増える。神社と共に、日本人観光客への関心がより高まる日が来ることを期待したい」、同感である。
第三に、2月24日付け東洋経済オンラインが掲載したアジアン鉄道ライターの高木 聡氏による「LRTか、それともバスか?中国製「ART」とは何者か レールなし、路面の白線マーカーに沿い走行」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/736326
・『2月1日から4日にかけて、マレーシアの首都クアラルンプール近郊、プトラジャヤ地区にて中国中車(CRRC)株洲が開発を進めている「ART(Autonomous Rapid Transit)」の、東南アジアで初となる一般向け試乗会が開かれた。 日本ではまだほとんど知られていないART。見た目はLRTだが車輪はゴムタイヤで、さらに運転台には丸いハンドルまで付いている。車体も3連接で、最大5連接にまで伸ばせるというから驚きだ』、「中国中車(CRRC)株洲が開発を進めているART。見た目はLRTだが車輪はゴムタイヤで、さらに運転台には丸いハンドルまで付いている。車体も3連接で、最大5連接にまで伸ばせる」、中国製のようだが、興味深そうだ。
・『LRT並みの輸送力で低コスト 進路の制御は、ART専用に設置した道路上の白線マーカーを光学式センサーが読み取り、これに沿って走行する。丸いハンドル(ステアリングホイール)も設置しているが、これは搬入時や非常時、また車庫等での入れ換えなどの際に機動性を確保するためである。今回の試乗会も、ハンドルを使用したマニュアル運転となった。 動力はバッテリー駆動だ。ただ、各国のバッテリー式LRTで見られる充電用のパンタグラフはなく、車体側面に急速充電用のソケットがある。そういった点ではLRTではなくEVバスに分類されそうだ。実際に、車体前面にはナンバープレート設置用の枠がある。 CRRCはART開発の理由について、LRT並みの輸送力を保ちつつ、整備費用を大幅に削減できることを掲げている。ゴムタイヤ式のため加減速に優れ勾配にも強い。その反面、鉄車輪方式に比べてエネルギー効率は悪い。定員は一般的な連接バスの約2倍となる239名(3連接車体の場合)で、設計最高速度は時速70kmだ。 現在は、数十年来の懸案であったシンガポール―ジョホール間の越境都市鉄道(RTS)の開業に合わせる形での運行開始を目指しているが、実際の開業時期は不明である。 BRTはRTSのジョホール(マレーシア)側の起点から3方向に約50kmがフェーズ1整備区間として示されているが、先の関係者は、2023年末頃にプロジェクトの呼称がBRTからLRTに突如変わったという。RTSはもともとシンガポールのMRT(地下鉄)規格で建設予定だったが、2019年にマレーシア側の政治的理由で急遽LRT規格に変更された。そして、規定路線のごとく車両はCRRC株洲が受注した。 もし、ジョホール側の市内交通にARTが採用された場合、シンガポール―マレーシア間のわずかな区間に、MRT、LRT、ARTと3つのシステムが混在することになる。RTSにCRRC株洲製のLRT車両が導入されるとすれば、これに規格を合わせるという理由でジョホール側にもARTでなくLRTを導入できる。そのため、不要になったART車両が今回プトラジャヤに移動してきたようだ』、「道路上の白線マーカーを光学式センサーが読み取り、これに沿って走行する・・・ジョホール側の市内交通にARTが採用された場合、シンガポール―マレーシア間のわずかな区間に、MRT、LRT、ARTと3つのシステムが混在することになる。RTSにCRRC株洲製のLRT車両が導入されるとすれば、これに規格を合わせるという理由でジョホール側にもARTでなくLRTを導入できる。そのため、不要になったART車両が今回プトラジャヤに移動してきたようだ」、なるほど。
・『予算のない都市にARTは「朗報」となるか プトラジャヤでは既存鉄道駅からのフィーダー交通(注)としてモノレール計画が存在していたが、コスト面から頓挫しており、ARTはそれに代わるシステムとして導入調査が進む模様である。それにしても、ARTがいかに「規格」を売り込むビジネスであるかがわかる。 おりしも2024年1月から5年間の任期で、ジョホール州のイブラヒム・イスカンダル氏が第17代マレーシア国王として即位した。同氏は高速鉄道推進派としても知られ、シンガポールの対岸にありながら公共交通整備に後れをとってきたジョホールはRTS開業とともに大変貌を遂げる可能性がある。LRTとは別にARTが導入される可能性もあり、目が離せない。 LRTを導入したくとも予算のない地域、バス輸送に任せるには心もとない、抵抗があるといった地域にとっては、朗報とも言える存在になるかもしれない。まずは、マレーシアでどのようなオペレーションが始まるか、続報を待ちたい。) 路線バスと普通鉄道の間に位置づけられる輸送システムは、主にBRT、またLRTとして世界の国々で確立している。世界のBRTは、日本のそれと異なり、一般車線から完全に分離されていることがほとんどだ。バス停は道路中央に「駅」として存在し、車内での料金支払いがないため、連接バスで一度に多くの乗客を運べて時間のロスがない。 ただ、あくまで一般車線とセパレーターで区切られた専用レーンを走るだけで、運行システム上は限りなく一般のバスに近い。よって整備費用が安価なため、先進国、途上国問わず多くの都市で導入、また導入計画がある。しかし、これより鉄道システムに近いガイドウェイ方式(走行路の側面にあるガイドに沿って走行する)は、専用軌道を最高時速100kmで走るOバーン(オーストラリア・アデレード)が知られているものの、採用例はあまり多くない。日本でも、名古屋のゆとりーとラインで採用されただけである』、「シンガポールの対岸にありながら公共交通整備に後れをとってきたジョホールはRTS開業とともに大変貌を遂げる可能性がある。LRTとは別にARTが導入される可能性もあり、目が離せない」、なるほど。
(注)フィーダー交通:交通網において幹線と接続し、支線の役割をもって運行される路線(Wikipedia)。
・『ゴムタイヤ式LRT、試行錯誤の歴史 ARTはLRTをバスに近づけた存在と呼べそうだが、ゴムタイヤで走るLRT自体は以前から存在し、1990年代から2000年代初めにかけてボンバルディアが「GLT(Guided Light Transit)」、フランスのロールが「トランスロール」として開発、実用化している。前者は運転台にハンドルを設置しているが、どちらのシステムも走行路の中央に設置した1本のガイドレールに従って走る仕組みである。 低コストで整備できるLRTを目指したこれらのシステムだが、採用例は少なく、特殊仕様の域を出ることはないままで、スペアパーツの供給などメンテナンスコストが高騰した。また、ゴムタイヤ走行による轍が道路上に発生するなどして、乗り心地が悪化した。 結局目立ったコスト削減効果は表れず、ほとんどが通常の鉄車輪式のLRTやトロリーバスなどに置き換えられ、GLTはすでに全廃された。両システムを開発したボンバルディア、ロールはともにアルストムに買収され、トランスロールの技術は同社に引き継がれている。 ARTを開発した中国でも、2007年に天津、2010年に上海でトランスロールのゴムタイヤ式LRTを導入したが、いずれも上記の理由で2023年に廃止された。) だが、中国におけるEVや自動運転技術の急速な発展により、トランスロールのようにガイドレールを使う高コストなシステムにこだわる必要はないと判断されたとしてもおかしくないだろう。CRRC株洲はシーメンスとのライセンス契約により鉄車輪式のLRTを製造しており、同社がゴムタイヤ式LRTのような交通機関であるARTを開発したのは自然な成り行きと言えるかもしれない。
ARTは2018年以降、中国国内では株洲市、西安市、上海市など6都市で運行中、または現在試験運行中である。海外展開も進めており、マレーシアのジョホールバル(2021年から)、クチン(2023年から)、プトラジャヤ(2024年から)、オーストラリアのパース(2023年から)で導入に向け、実車を用いた試運転を実施している。 また、アラブ首長国連邦のアブダビでは、3編成を用いた一般旅客も乗車可能な試験運行が2023年10月からスタートした。ただし、白線マーカー未設置のマニュアル運転で、自動車用ナンバープレートを付けての運転だ』、「ARTは2018年以降、中国国内では株洲市、西安市、上海市など6都市で運行中、または現在試験運行中である。海外展開も進めており、マレーシアのジョホールバル(2021年から)、クチン(2023年から)、プトラジャヤ(2024年から)、オーストラリアのパース(2023年から)で導入に向け、実車を用いた試運転を実施」、なるほど
・『導入は「温暖な人工的都市」 試運転はいずれも、人口集中が穏やか、かつ人工的で整然とした近代的都市計画に成功している地域が選定されていることがわかる。また、温暖な地域というのも1つのポイントだろう。降雪地区では白線の読み取りができず、スリップなどの恐れもあるため、ARTは導入できないためだ。 2018年にはインドネシア鉄道(KAI)とも導入に関わる協力覚書を結んだ。KAIの廃線跡も活かしつつ、バンドン、スラバヤ、マランなどの地方都市やバリ島に導入する計画が持ち上がったが、道路環境の悪さなどの理由で具体化には至っていない。 それでも引き続き導入に向けた調査検討が進められ、法的な部分もクリアし、最終報告書が運輸省に提出された。2020年に協力覚書は延長された。そして2024年、運輸省は現在建設中の新首都・ヌサンタラへの導入意向を示し、運輸大臣が中国で試乗もしている。道路環境がよく、人口が少ない新首都への導入は容易だろう。 現在、開業に向けて最も具体化が進んでいるのはマレーシア、サラワク州クチンの「クチン・アーバン・トランスポート・システム(KUTS)」プロジェクトだ。クチンは同州の州都であるが、人口は約33万人、人口密度は300人/平方キロメートルを超える程度で、一般的な路線バスで十分輸送を賄える都市規模である。軌道系交通の導入が計画されること自体に驚きを隠せないが、だからこそARTが採用されたとも言える。) 018年に同プロジェクトは中国によるLRT方式での整備を前提に構想されたが、高額なコストを理由に実現には至らず、翌2019年にART方式での建設が決定した。KUTSの運営主体となるサラワクメトロは、LRT方式に比べ、3分の1のコストで整備が可能であると発表している。 KUTSはスマートシティ構想の一環であるとしており、ART停留所からはフィーダー交通として自動運転バスも導入し、全ての人がARTにアクセスできるようにするという。しかも、このARTは、他都市で導入されているタイプとは異なり、水素を動力源とする全く新しい車両になっている。東南アジア初のサステナブルシティを目指す構えだが、都市開発全体を中国が売り込んでいるという背景もある。 サラワク州はKUTSプロジェクトを総額60億リンギット(約1884億円)と見積もり、ナジブ首相の提唱で設立されたサラワク開発銀行を経由し融資され、公共事業として実施される。計70kmにも及ぶフェーズ1区間のうち、クチン市中心部と隣接するサマラハン市を結ぶブルーライン(27.6km)と、クチン市中心部と空港方面を結ぶレッドライン(12.3km)の路線、車両基地建設や車両、信号システムなどの調達について、2023年末までに業者選定を済ませ着工している』、「試運転はいずれも、人口集中が穏やか、かつ人工的で整然とした近代的都市計画に成功している地域が選定されていることがわかる。また、温暖な地域というのも1つのポイントだろう。降雪地区では白線の読み取りができず、スリップなどの恐れもあるため、ARTは導入できないためだ・・・KUTSはスマートシティ構想の一環であるとしており、ART停留所からはフィーダー交通として自動運転バスも導入し、全ての人がARTにアクセスできるようにするという。しかも、このARTは、他都市で導入されているタイプとは異なり、水素を動力源とする全く新しい車両になっている。東南アジア初のサステナブルシティを目指す構えだが、都市開発全体を中国が売り込んでいるという背景もある」、中国が大手を振って受注しているのは要注意だ。
・『技術はユニークだが法的課題も いずれもマレーシア企業と中国企業のJVが落札しており、車両は当然、CRRC株洲が納入することになるが、書類上はマレーシアの民間投資会社ECCAZとCRRC子会社の合弁会社Mobilusが受注している。このパッケージには水素式ART車両38編成、信号システム一式、ホームドア、車両基地設計などが含まれており、契約額は14億2500万リンギット(約447億6200万円)だ。 ART自体がCRRCとMobilusの共同開発であるとも説明されており、公式ページにはMobilusは今後、マレーシアのみならず、近隣諸国への営業を強化すると記載されている。KUTSのARTは、高速道路や高規格道路の一部を専用レーンとして自律走行し、交通量の多い交差点は立体交差、一部区間には高架駅も設けられる。道路信号に従って進む区間では、ART優先信号が導入される。 車両は1編成がプロトタイプとして2023年8月に到着、試運転が続けられており、2025年末までに先行区間の開業を目指している。クチンが中国国外で初のART営業区間となる可能性が高い。政治的意図はあるとは言え、ART技術は注目に値するだろう。) 一方で、課題も多いとマレーシアの運輸関係者は指摘する。まずは法令上の問題で、鉄道車両なのかバスなのかをはっきりさせないと一般運行は難しいのではないかという点である。白線マーカーから逸脱して接触事故などが起きたときの責任範囲も現状では不明で、新たな法律を作るか、法規制の緩い国や地域での導入に限られるのではないかということだ。プトラジャヤではイベント期間中、交通を規制しての運行となった。 その点で、サラワク州のクチンで具体化が進んでいることは納得がいく。同州は歴史的経緯から、マレーシアでありながら独立した強い自治権を持っており、本土のマレー半島側との行き来にはパスポートが必要で、ほぼ外国という扱いのためだ。本土側の運輸行政とも全く別の管理下にあり、本土側ではどのようなプロセスで建設を進めているかわからないという。 そして、ARTというシステムを現状でCRRCしか持っていないことを懸念しているという。導入仕様書にARTと指定された場合、必然的にCRRC車両を導入することになってしまい、結果的にコスト高になる可能性があるためだ』、「ARTというシステムを現状でCRRCしか持っていないことを懸念しているという。導入仕様書にARTと指定された場合、必然的にCRRC車両を導入することになってしまい、結果的にコスト高になる可能性があるためだ」、中国に首根っこを押さえられてしまう。
・『中国の影響力に懸念 2009年のナジブ政権以降、マレーシア政府が突出して中国寄りの姿勢を見せていることに、先述の関係者は懸念を示している。事実上の国鉄であるマレー鉄道(KTM)は、今やCRRC株洲の独占的利権になっており、今後も同社以外からの車両調達はできないだろうと言う。 RRCはマレーシアに子会社を持ち、車両調達からその後のメンテナンスまでを一手に引き受けている。「一帯一路」の肝煎りの政策でもある東海岸鉄道(ECRL)も順調に工事が進んでおり、一度は白紙に戻ったマレーシア―シンガポール間の高速鉄道も、中国規格での着工が有力視されている。乗り入れのために中国と規格を合わせるという点ではECRLも高速鉄道も中国規格の採用は理にかなっているが、独立した存在である都市鉄道やLRTは、CRRCにとって参入障壁がある。 実際に都市鉄道の分野は、欧州メーカーが存在感を示しており、中国が十分に入り込めていない分野だった。ただ、2015年にクアラルンプールの高架式LRT、Rapid KLのアンパン線の旧型車置き換えをCRRC株洲が受注したのを皮切りに、徐々に攻勢を強めている。現在建設中のサーアラム線も同社が受注している。 今回のART試乗会に供された車両は、もともと2021年にジョホールバルで試運転を行っていた車両である。当時は自動車用ナンバーを取得し、白線マーカーによる自律走行を実施していた。2017年に当時のナジブ首相によって立ち上げられた「イスカンダル マレーシアBRT」プロジェクトとしてART導入に向けた調査が進んでおり、高速鉄道の開業及び接続を前提に2021年までの開業を目指していた。) 現在は、数十年来の懸案であったシンガポール―ジョホール間の越境都市鉄道(RTS)の開業に合わせる形での運行開始を目指しているが、実際の開業時期は不明である。 BRTはRTSのジョホール(マレーシア)側の起点から3方向に約50kmがフェーズ1整備区間として示されているが、先の関係者は、2023年末頃にプロジェクトの呼称がBRTからLRTに突如変わったという。RTSはもともとシンガポールのMRT(地下鉄)規格で建設予定だったが、2019年にマレーシア側の政治的理由で急遽LRT規格に変更された。そして、規定路線のごとく車両はCRRC株洲が受注した。 もし、ジョホール側の市内交通にARTが採用された場合、シンガポール―マレーシア間のわずかな区間に、MRT、LRT、ARTと3つのシステムが混在することになる。RTSにCRRC株洲製のLRT車両が導入されるとすれば、これに規格を合わせるという理由でジョホール側にもARTでなくLRTを導入できる。そのため、不要になったART車両が今回プトラジャヤに移動してきたようだ』、いずれにしても、中国系企業が受注するようだ。
・『予算のない都市にARTは「朗報」となるか プトラジャヤでは既存鉄道駅からのフィーダー交通としてモノレール計画が存在していたが、コスト面から頓挫しており、ARTはそれに代わるシステムとして導入調査が進む模様である。それにしても、ARTがいかに「規格」を売り込むビジネスであるかがわかる。 おりしも2024年1月から5年間の任期で、ジョホール州のイブラヒム・イスカンダル氏が第17代マレーシア国王として即位した。同氏は高速鉄道推進派としても知られ、シンガポールの対岸にありながら公共交通整備に後れをとってきたジョホールはRTS開業とともに大変貌を遂げる可能性がある。LRTとは別にARTが導入される可能性もあり、目が離せない。 LRTを導入したくとも予算のない地域、バス輸送に任せるには心もとない、抵抗があるといった地域にとっては、朗報とも言える存在になるかもしれない。まずは、マレーシアでどのようなオペレーションが始まるか、続報を待ちたい』、「LRT」、「ART」いずれにしても、中国系企業が受注、日本企業はカヤの外なのは腹が立つ。
タグ:鉄道 (その12)(イギリス高速鉄道「未着工区間は中止」の衝撃 コスト増など理由 沿線からは失望と怒りの声、日本人が知らないサンマリノ 「神社」と電車の謎 短命の山岳鉄道が動態復元 ブドウ畑に鳥居が、LRTか それともバスか?中国製「ART」とは何者か レールなし 路面の白線マーカーに沿い走行) 東洋経済オンライン さかい もとみ氏による「イギリス高速鉄道「未着工区間は中止」の衝撃 コスト増など理由、沿線からは失望と怒りの声」 「スナク首相が中止を決めたのは、第2期区間のバーミンガムから北側の部分すべてだ。したがって、HS2は現在建設が進んでいる区間だけで計画終了となる・・・「ユーストン駅まで乗り入れない場合、ロンドン北西部で建設が進むオールド・オーク・コモンという新駅が当初のターミナルとなる」、こんなに短くなっては、高速鉄道の意味もかなり薄らぎざるを得ないだろう。 「HS2の敷設計画による土地の強制収用に応じ、それまで保有していた住宅や農場を手放した人々だ。とくに畜産業を営んでいた人々は代替地の選定や移転に相当な労力を費やしており、「苦労の結果が敷設中止では困る」とし、補償の上乗せを求める声も聞こえてきている・・・野党・労働党は、もともとHS2への経済効果を疑問視していたこともあり、同党としては「計画の復活」を約束しない、仮に今後の選挙で政権を奪回しても、まずはコスト等の数字の精査が必要との見方を示している」、なるほど。 「日立製作所と仏アルストムが折半出資する共同事業体が同線向け車両の製造・保守事業の受注を決めている。受注したのは欧州最速となる最高時速360kmの高速列車54編成の設計・製造と、12年間に及ぶ保守業務で、契約金額は総額19億7000万ポンド(約3578億円)に及ぶ。 この契約ではあくまで第1期区間の運行用として結ばれたものであるため、今回の第2期延伸の中止決定が影響を及ぼすものではない。とはいえ、当然ながらメーカーとしては第2期分の納入にも期待を寄せていただけに、今回の決定は歓迎されざるものであろう」、 「この契約ではあくまで第1期区間の運行用として結ばれたものである」とはいえ、「第1期分」だけで終わるのであれば、採算は悪くならざるを得ない。これでは、「共同事業体」としては、馬鹿らしくてやっていられないだろう。 さかい もとみ氏による「日本人が知らないサンマリノ、「神社」と電車の謎 短命の山岳鉄道が動態復元、ブドウ畑に鳥居が」 「山岳鉄道「リミニ・サンマリノ鉄道」」は「時の宰相で独裁政権を率いたムッソリーニがサンマリノを訪問したことで、敷設計画が一気に前進、国費を投入し建設を決定した」、なるほど。 「戦時中の誤爆で損傷、そのまま運行停止」したが、「サンマリノ側・・・1kmに満たない長さとはいえ、保存状態のよかった旧サンマリノ駅近くのモンターレ(Montale)トンネル前後の区間が修復され、鉄道車両の動態保存区間としてよみがえった」、動態保存とは大したものだ。 「リミニ・サンマリノ鉄道の動態保存については、モンターレトンネルのふもと側(リミニ方)の先、ループ状になっているピアッジェ(Piagge)トンネルを通った先に位置するロープウェー駅(下界側)近くまで、約3km強の区間を復元し、列車を走れるようにする構想もあるというが、果たして計画はどう進むのだろうか・・・2011年の東日本大震災の犠牲者を追悼するため、マンリオ・カデロ駐日サンマリノ大使が神社本庁にこの神社の建立を相談したことがきっかけなのだという。カデロ大使は2002年から駐日大使の職にある・・・ 神職は現地に住むサンマリノ人で、日本で修行したフランチェスコ・ブリガンテさんという方が宮司を務めるサンマリノに神社本庁のお墨付きを得た「神社」があるとは心底驚いた。 「「観光鉄道の延伸」が実現すれば、”世界最古の共和国”へ電車で登るという楽しみが増える。神社と共に、日本人観光客への関心がより高まる日が来ることを期待したい」、同感である。 高木 聡氏による「LRTか、それともバスか?中国製「ART」とは何者か レールなし、路面の白線マーカーに沿い走行」 「中国中車(CRRC)株洲が開発を進めているART。見た目はLRTだが車輪はゴムタイヤで、さらに運転台には丸いハンドルまで付いている。車体も3連接で、最大5連接にまで伸ばせる」、中国製のようだが、興味深そうだ。 「道路上の白線マーカーを光学式センサーが読み取り、これに沿って走行する・・・ジョホール側の市内交通にARTが採用された場合、シンガポール―マレーシア間のわずかな区間に、MRT、LRT、ARTと3つのシステムが混在することになる。RTSにCRRC株洲製のLRT車両が導入されるとすれば、これに規格を合わせるという理由でジョホール側にもARTでなくLRTを導入できる。そのため、不要になったART車両が今回プトラジャヤに移動してきたようだ」、なるほど。 「シンガポールの対岸にありながら公共交通整備に後れをとってきたジョホールはRTS開業とともに大変貌を遂げる可能性がある。LRTとは別にARTが導入される可能性もあり、目が離せない」、なるほど。 (注)フィーダー交通:交通網において幹線と接続し、支線の役割をもって運行される路線(Wikipedia)。 「ARTは2018年以降、中国国内では株洲市、西安市、上海市など6都市で運行中、または現在試験運行中である。海外展開も進めており、マレーシアのジョホールバル(2021年から)、クチン(2023年から)、プトラジャヤ(2024年から)、オーストラリアのパース(2023年から)で導入に向け、実車を用いた試運転を実施」、なるほど 「試運転はいずれも、人口集中が穏やか、かつ人工的で整然とした近代的都市計画に成功している地域が選定されていることがわかる。また、温暖な地域というのも1つのポイントだろう。降雪地区では白線の読み取りができず、スリップなどの恐れもあるため、ARTは導入できないためだ・・・KUTSはスマートシティ構想の一環であるとしており、ART停留所からはフィーダー交通として自動運転バスも導入し、全ての人がARTにアクセスできるようにするという。 KUTSはスマートシティ構想の一環であるとしており、ART停留所からはフィーダー交通として自動運転バスも導入し、全ての人がARTにアクセスできるようにするという。しかも、このARTは、他都市で導入されているタイプとは異なり、水素を動力源とする全く新しい車両になっている。東南アジア初のサステナブルシティを目指す構えだが、都市開発全体を中国が売り込んでいるという背景もある」、中国が大手を振って受注しているのは要注意だ。 「ARTというシステムを現状でCRRCしか持っていないことを懸念しているという。導入仕様書にARTと指定された場合、必然的にCRRC車両を導入することになってしまい、結果的にコスト高になる可能性があるためだ」、中国に首根っこを押さえられてしまう。 いずれにしても、中国系企業が受注するようだ。 「LRT」、「ART」いずれにしても、中国系企業が受注、日本企業はカヤの外なのは腹が立つ。
企業金融・企業財務(その1)(じつはいま「地銀と中小企業の関係」が激変中…そのウラに隠された「意外な落とし穴」、ソフトバンクの新金融商品「社債型種類株式」のうま味とリスク、金融庁がリスク警戒!地銀・信金で広がる「仕組み貸出」の深すぎる闇) [企業経営]
今日は、企業金融・企業財務(その1)(じつはいま「地銀と中小企業の関係」が激変中…そのウラに隠された「意外な落とし穴」、ソフトバンクの新金融商品「社債型種類株式」のうま味とリスク、金融庁がリスク警戒!地銀・信金で広がる「仕組み貸出」の深すぎる闇)を取上げよう。
先ずは、昨年5月17日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの加谷 珪一氏による「じつはいま「地銀と中小企業の関係」が激変中…そのウラに隠された「意外な落とし穴」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/110338?imp=0
・『地方銀行を中心に、融資先企業の経営者に個人保証を求めない流れが拡大している。日本の場合、中小零細企業の経営者が融資に際して個人保証を入れることが当然視されており、こうした商慣行が起業の阻害要因になっていると指摘されてきた。 融資慣行の見直しによってスタートアップ育成につながると期待されているが、起業が不活発な原因は必ずしも個人保証だけではない。総合的な環境整備を実施しないまま銀行に個人保証の撤廃だけを求めれば、銀行が中小企業への融資を引き揚げてしまう可能性もあるので注意が必要だ』、「総合的な環境整備を実施しないまま銀行に個人保証の撤廃だけを求めれば、銀行が中小企業への融資を引き揚げてしまう可能性もある」、その通りだ。
・『中小企業の経営者はがんじがらめ 日本では、中小零細企業の経営者はあらゆる場面において個人保証を求められ、無限責任を負う必要がある。銀行からの融資はもちろんのこと、オフィスを借りる際や、コピー機をリースする時ですら個人保証を入れなければならない。 筆者自身、会社をゼロから立ち上げ、経営してきた経験があるのでよく分かるのだが、中小企業の場合、何から何まで個人保証を要求され、がんじがらめにされてしまう。近年はだいぶ環境が良くなってきたが、サラリーマンを辞めてしまうと賃貸住宅を借りられなくなったり、カードを作れなくなるケースも珍しくなかった。 起業したのは20年以上前のことだが、当時もちょっとした起業ブームとなっており、会社を立ち上げたことを聞きつけた知人(多くがいわゆるエリートサラリーマン)が多数、起業について話を聞きにきた。 すべてにおいて個人保証が必要であり、失敗すれば無一文どころか自己破産まで強いられること、家を借りられないケースがあること、カードを作れないケースがあることなどを説明すると、皆、顔面蒼白になり帰っていった。筆者の知る限り、アドバイスを求めにきた知人の中で実際に会社を立ち上げた人は皆無だったと記憶している。) 中小企業経営者の中には、「個人保証を入れることなど大したことではない、というくらいの気概がなければ、企業の経営など無理」と述べ、銀行や取引先が個人保証を求めることはむしろ人材の選別機能になっていると主張する人もいる。確かにそうした面があるのは事実であり、個人保証の話を聞いて青ざめるような人物では、到底、中小企業の経営などおぼつかないだろう。 しかしながら、あまりにも高いハードルが起業の入り口を狭めているのは事実であり、こうした商慣行の見直しが必要なのはその通りである』、「会社を立ち上げたことを聞きつけた知人(多くがいわゆるエリートサラリーマン)が多数、起業について話を聞きにきた。 すべてにおいて個人保証が必要であり、失敗すれば無一文どころか自己破産まで強いられること、家を借りられないケースがあること、カードを作れないケースがあることなどを説明すると、皆、顔面蒼白になり帰っていった。筆者の知る限り、アドバイスを求めにきた知人の中で実際に会社を立ち上げた人は皆無だったと記憶している」、自らの腕だけで勝負するとなれば、相当の覚悟が必要だ。
・『銀行は「リスクを取ってはいけない」 今回、銀行が融資先企業の経営者に個人保証を求めない流れが出てきたのには、政府からの要請という部分も大きい。金融機関は以前から自主的なガイドラインを作成しており、可能な限り個人保証を求めないよう取り組みを進めてきた。だが現時点では、約7割が保証付き融資となっており、効果を発揮しているとは言い難い。 こうした事態を受けて岸田政権は昨年、スタートアップ企業を支援するため、経営者の個人保証を免除する施策について検討を開始した。今年に入って金融庁が、融資先に個人保証を求める場合、その必要性について説明することを金融機関に義務付けるなど、具体的な政策として動き始めている。 個人保証を外すこと自体は正しい方向性であり、筆者も高く評価している。 だが、中小企業の資金調達環境について政府や金融機関には誤った認識があり、単純に個人保証を外しただけでは、日本の起業が活発になるわけではない。それどころか、このまま何も考えずに政策を進めてしまうと、かえって中小零細企業の資金調達が阻害される可能性すらある。その理由は、日本において新規ビジネスが不活発なのは、経営者への個人保証だけが原因ではないからである。) 日本では中小企業の資金調達環境やその認識に大きな歪みがある。 中小企業やベンチャー企業は他の企業と比較してリスクが高い。先進諸外国の場合、こうしたリスクが高いビジネスの資金調達は銀行からの融資ではなく、投資家による直接出資(返済の義務はなく、失敗した場合には投資家が損失を引き受ける)によって賄われるのが通常である。 なぜそうなっているのかというと、銀行というのは預金者の大切な資金を預かり、それが失われることがないよう慎重に運用することが義務付けられた存在だからである。多くの国民にとって銀行預金は命の次に大事なものであり、そうした大事な資金を、いつ倒産するのかも分からない企業に融資してよいわけがないことは、直感的にお分かりいただけるだろう。 このため諸外国では、銀行はほぼ確実に資金が回収できる融資先にのみ融資を行い、リスクが高い事業は投資によって資金を確保するという役割分担が確立した』、日本でも経営者などの出資が資金調達の核になる点は同じだ。
・『創業間もない企業の資金調達は株式で実施すべき ところが日本の場合、直接的な投資によって資金を集めるという環境が整備されず、事業を立ち上げる人にとって銀行融資しか資金を集める手段ないという状況が長く続いた。 銀行はリスクが高いビジネスには融資できないのに、そうしたハイリスクの融資先を開拓しなければならないというジレンマに陥っている。銀行にしてみれば、預金者から預かった大切なお金であり、簡単になくしてしまうことはできず、安易に融資を行えば、預金者に対する背信行為になる危険性もある。その解決策として使われてきたのが、経営者やその家族に個人保証を求めるという、悪しき融資慣行であった。 つまり、創業間もない企業に対して普通に銀行融資が行われている状況にこそ問題があり、融資に頼らない資金調達環境を整備しなければ、本当の意味での起業活性化は難しいのだ。 それどころか、個人保証を外すことだけに邁進した場合、逆効果になる可能性すらある。 先ほど説明したように、銀行は本来、リスクの高い事業には融資できない存在である。政府が過度に個人保証の見直しを要請すると、銀行はリスクの高い企業にまで保証なしで融資を行い、後に大量の不良債権を生み出す可能性がある。逆に銀行として慎重に行動した場合には、融資が極度に減少し、ほとんどの零細企業が資金調達できないという事態に陥る可能性もある。 ではどうすればよいのか。 日本において起業が不活発である理由をしっかりと分析し、全体的な環境整備を同時並行で進めることが重要である。具体的に言えば、大企業と中小企業の取引慣行の見直しや、中小企業のM&A(合併・買収)活性化である』、「創業間もない企業に対して普通に銀行融資が行われている状況にこそ問題があり、融資に頼らない資金調達環境を整備しなければ、本当の意味での起業活性化は難しいのだ」、「創業間もない企業に対して」は融資ではなく、経営者の手金がベースになっている筈だ。
・『大企業の商慣行見直しを進めるべき 諸外国の場合、起業家が事業を始める際には、ゼロから会社を立ち上げるというケースもあるが、そうではないケースもかなり多い。典型的なのは、すでに事業を行っている人が引退する際、若い起業家に事業を売却するなど、既存ビジネスの継承である。 こうした手法であれば、特別な技能や経験がなくても事業をスタートできるし、すでにビジネスとして立ち上がっているので、投資家も安心して資金を提供できる。また当該事業が十分なキャッシュフローを得ている場合には、銀行の融資で資金をカバーすることも可能だろう。こうした形で中小企業のM&Aや、事業継承がもっと活発になれば、資金調達の環境も大きく変わるはずだ。) 加えて言うと、創業間もない企業や、前例がない企業とは取引をしないといった、日本の大企業独特の商習慣も改める必要がある。 中小企業を立ち上げた経営者にとって、もっとも大きな壁として立ちはだかるのは、資金よりも、むしろ取引先の開拓である。日本では、前例がないという理由だけで取引について門前払いを受けることが多く、会社を立ち上げても事業が続かないケースが多い。また、発注元の大企業が、支払い条件に対してムチャな要求を取引先に突きつけることも少なくない。 起業を促進するためには、単純に個人保証をなくすといった解決策だけでなく、事業の売買や商習慣なども含めた総合的な環境整備が必要である』、「創業間もない企業や、前例がない企業とは取引をしないといった、日本の大企業独特の商習慣も改める必要がある」、大企業としても信用リスクが高い企業との取引には慎重というのは、やむを得ないと思う。「発注元の大企業が、支払い条件に対してムチャな要求を取引先に突きつけることも少なくない」、これは独禁法違反になりかねない行為で、当局からの警告が必要だ。
次に、昨年11月26日付け日刊ゲンダイ「ソフトバンクの新金融商品「社債型種類株式」のうま味とリスク」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/332526
・『9月に本欄で紹介した「アクティブETF」に続いて、また日本初の金融商品がデビューした。社債の特性を持った上場株式、その名も「社債型種類株式」である。発行したのはソフトバンクグループの国内通信子会社ソフトバンクで、11月2日に東証プライムに上場し、話題になっている。 聞き慣れないだろうが、「種類株式」とは、普通株式と権利の内容が異なる株式のことである。 発行価格は1株4000円。売買単位は普通株と同じ100株(最少投資単位40万円)。発行株数と発行総額はそれぞれ3000万株、1200億円である。 ソフトバンクにとってのメリットは以下の通り。株式の一種であるため、発行で得た資金は会計上、100%資本となるから、社債や借り入れなど負債調達に比べ財務を悪化させず資金を集められる。また社債型株式には議決権がなく、普通株への転換権もないことから株式の希薄化が起こらない。 では、投資家にはどんなうまみがあるのか。 普通株に先立って優先的に配当が行われることと、社債のように安定した利回り(配当)が期待できることだろう。) 配当率は発行後約5年間は固定で年2.5%。ソフトバンク普通株の配当利回りは足元で4.9%程度で、一方、23年3月に同社が発行した個人投資家向け社債の利率は0.98%なので、社債型株式の利回りは株と社債の中間と考えていい。 上場初日の終値は4025円だった。上場後(11月20日まで)の株価は4000~4040円で値動きは小さい。 投資家が気になるリスクだが、それは「コール(事前償還)条項」だ。発行から5年経てばソフトバンクが発行価格に未払いの配当金などを上乗せした金額で買い戻すことができる。ただしコールは市場慣例で、発行体には買い戻す権利があるだけで、財務悪化などで買い戻しを見送ることもできる。万が一、見送りとなれば、投資の前提が崩れ、売り材料となりかねないが、ソフトバンクの体面があるし、NISAの対象でもあるだけに、それは考えにくい。だから個人投資家の人気が高く、10月末時点の個人の申込比率は92%に上る。 株はリスクがあって怖いが、金利が0.1%程度の定期預金にも満足していないという人は検討してみる価値は十分あるだろう。(丸)』、「ソフトバンクにとってのメリットは以下の通り。株式の一種であるため、発行で得た資金は会計上、100%資本となるから、社債や借り入れなど負債調達に比べ財務を悪化させず資金を集められる。また社債型株式には議決権がなく、普通株への転換権もないことから株式の希薄化が起こらない」、なるほど。 「投資家にはどんなうまみがあるのか。 普通株に先立って優先的に配当が行われることと、社債のように安定した利回り(配当)が期待できることだろう・・・配当率は発行後約5年間は固定で年2.5%。ソフトバンク普通株の配当利回りは足元で4.9%程度で、一方、23年3月に同社が発行した個人投資家向け社債の利率は0.98%なので、社債型株式の利回りは株と社債の中間と考えていい」、これはよく出来た仕組みだ。
第三に、本年2月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した共同通信編集委員の橋本卓典氏による「金融庁がリスク警戒!地銀・信金で広がる「仕組み貸出」の深すぎる闇」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338854
・『一部の地域金融機関の間で、「仕組み貸出」と言われるスキームがはやっている。既に金融庁はリスク管理強化を要請しているというそのスキームとは、一体どのようなものなのか。背景を探ると、業界内ではやるだけの「うまみ」と「闇」があることが分かってきた』、興味深そうだ。
・『金融庁がリスク管理強化を要請 地域金融業界で「仕組み債」ならぬ、「仕組み貸出」が注目を集めている。 金融庁が1月、地方銀行・第二地方銀行との意見交換会で、仕組み貸出に関して、リスク管理を強化するよう求めたのがきっかけだ。 もっとも仕組み貸出自体は昔からあり、目新しい取引ではないが、このところ増加傾向にあるという。なぜ金融庁が今、問題視するのか。次ページでその論点と、業界の構造的課題に迫る』、「仕組み貸出自体は昔からあり、目新しい取引ではないが、このところ増加傾向にある」、「金融庁が今、問題視」した「論点」と「業界の構造的課題」をみてみよう。
・『複雑な仕組み貸出スキーム まず以下のスキーム図を見てほしい。 証券会社などがつくった特別目的会社(SPC)に地銀が貸し出しを行う仕組み。SPCは融資契約に基づいて国債などの債券を取得する。 融資実行の際、債券の利回りの一部に相当するアップフロントフィーが地銀サイドに支払われるところに特徴がある。10年国債の場合、10年分の手数料を一括で地銀が手にする。 SPCから先は、スワップ取引が行われているとされるが、地銀側にはその詳細は明かされず、通常「ブラックボックス」となっている。金融庁によれば「複雑な商品性が多い」という。 (図_「仕組み貸出」のスキーム図 はリンク先参照)』、「SPCから先は、スワップ取引が行われているとされるが、地銀側にはその詳細は明かされず、通常「ブラックボックス」となっている」、というのは問題だ。
・『ブラックボックス では、そのブラックボックスでは一体何が行われているのか。 まず、SB(普通社債)リパッケージ債が類似したスキームだという。 たとえば同一企業が発行する国内債と外債の間に市場関係者の見通しの違いから価格差が生じたとする。仮に外債が国内債より割安の場合、スワップ取引によって、国内債より高い外債のクーポンを活用したリパッケージ債を組成することができる。 また、繰り上げ償還条項(コール条項)付きCB(転換社債)リパッケージ債というスキームも存在する。 発行者(SPC)がいつでもCBを償還(コール)する権利を持ち、権利行使の場合、対象償還額面金額と利子が支払われる。投資家(地銀)は償還までのクーポン・償還金を受け取るだけだ。CB、転換株式の価格上昇の値上がり益は享受できない』、「CB、転換株式の価格上昇の値上がり益」はスキームの管理コストのような形で消えているのだろうか。
・『SPCを仲介させる理由とは ブラックボックスの中身は複雑だが、銀行とSPCの関係だけを見ると単純だ。だが奇妙なスキームではある。 そもそも、SPCの運用先が国債であるならば、SPCなど介さずに、銀行が直接国債を満期保有した方が高い利回りを確保できるはずだ。なぜSPCが必要なのか。 このスキームは債券運用ではなく、「貸し出し」であるところがポイントなのだ。 まず、貸し出しには、貸借対照上の時価評価の必要がないという点がある。 有価証券を運用する場合、時価が簿価より50%以上下落した場合、回復可能性がなければ時価評価をして、減損処理を行わなければならない。しかし、貸し出しの場合、この必要がなくなるのである。 仕組み貸出にはさまざまなスキームがあり、SPCは国債以外の外債、社債などを取得する場合もある。銀行が直接、外債や社債を取得した場合、時価評価による減損リスクと向き合わなければならない。 かつては、外債運用で大規模な損失を計上することになった地銀もあり、その反動からこうしたスキームが使われるようになったという』、「銀行が直接、外債や社債を取得した場合、時価評価による減損リスクと向き合わなければならない」、これを回避するために「SPC」を活用したとは上手いやり方だ。
・『貸出残高をかさ増し また、有価証券運用ではないため、地銀は貸出残高を「かさ増し」することができる。 地銀関係者によれば、「SPCを中小企業と見なせば『中小企業向け貸出残高』と外部に見せることもできなくもない」と打ち明ける。 いくつかの地域のトップ地銀関係者に取材したところ、いわゆる“お堅い運用”をしている印象であった。 具体的には、SPCが取得する債券を国債に限定したり、銀行側のリスク統括、審査担当のチェックを受けなければ、仕組み貸出を認めなかったりという管理をしていた。 国債などの安全性の高い債券をSPCが取得する場合、地銀が受け取るリターンは極めて薄利となる。よって、貸出金のボリュームを増やさなければ十分な利ざやは確保できない。中には、100億円を超える「大型融資」もあるという。地域金融機関にとっては、巨額融資だ』、「地銀は貸出残高を「かさ増し」することができる・・・「SPCを中小企業と見なせば『中小企業向け貸出残高』と外部に見せることもできなくもない」、なるほど上手い手だ。
・『リスクは「早期償還事由」か リスクは、やはりSPCから先の「ブラックボックス」にあるとみて間違いない。 証券会社の資料でも「早期償還事由」について以下のような説明がある。 SPCの倒産、支払い不履行などによる期限の利益喪失は当然として、「元本・利子の削減」でも早期償還される。外債の場合、各国の法令、関係当局の権限によって元本が削減されることもある。 また、非常に流動性の低い通貨建て債券の場合、当初予定とは違う通貨で元利金支払いが行われる場合もある。スワップ取引の取引相手が倒産、支払い不履行になった場合も早期償還となる。こうしたリスクを地銀が管理するのは至難だろう。 早期償還の場合、担保証券を市場売却して、スワップ契約を解約し、担保証券の売却金額から弁護士費用など必要経費を差し引き、残余金を地銀に返済することになる。当然、貸出債権が焦げ付くこともあり得るのだ』、「当初予定とは違う通貨で元利金支払いが行われる場合もある。スワップ取引の取引相手が倒産、支払い不履行になった場合も早期償還となる。こうしたリスクを地銀が管理するのは至難だろう。 早期償還の場合、担保証券を市場売却して、スワップ契約を解約し、担保証券の売却金額から弁護士費用など必要経費を差し引き、残余金を地銀に返済することになる。当然、貸出債権が焦げ付くこともあり得るのだ」、地域金融機関には管理困難だろう。
・『神経とがらせる金融庁 金融庁は、地域金融機関が仕組み貸出について、現場部署だけでなく、審査やリスク統括などの関連部署が商品性や内包するリスクを正確に把握して、経営陣に報告して十分なリスク検証を行う態勢整備ができているかどうかに注目している。 「むしろ、地銀に比べて管理態勢が甘い可能性のある信用金庫などの協同組織金融が心配だ」と、金融庁幹部は不安を隠さない。 アップフロントフィーという目先の収益が目的になってしまえば、経営戦略を度外視して仕組み貸出にのめり込んでしまう恐れもあるからだ。経営体力に見合うリスク量となっているのかどうかもポイントとなる。 ちなみに「国債を裏付け担保とするアップフロントフィーは米国では認められていないので、監査法人が嫌がる」(地銀幹部)との声もある。 仕組み貸出の限度額管理だけでは不十分だ。類似商品のコスト、オプション条件を十分に比較できているか。金利リスク・業種集中リスク・カントリーリスクなどのリスク特性への目配りも重要だ。 仕組み貸出を売り込もうとする証券会社・信託銀行の話だけではなく、自ら市場価格、外部格付けをモニタリングしなければならない。 仕組み貸出が金融機関としての経営戦略、重点的取り組み方針と合致しているのかどうかも疑わしい。 また、株主・投資家への説明が不十分だ。金融庁も仕組み貸出について、ステークホルダーへの説明を促している』、「仕組み貸出の限度額管理だけでは不十分だ。類似商品のコスト、オプション条件を十分に比較できているか。金利リスク・業種集中リスク・カントリーリスクなどのリスク特性への目配りも重要だ。 仕組み貸出を売り込もうとする証券会社・信託銀行の話だけではなく、自ら市場価格、外部格付けをモニタリングしなければならない。 仕組み貸出が金融機関としての経営戦略、重点的取り組み方針と合致しているのかどうかも疑わしい。 また、株主・投資家への説明が不十分だ。金融庁も仕組み貸出について、ステークホルダーへの説明を促している」、これは地域金融機関にとっては大変難しい問題だ
・『地域金融の役割とは何か 仕組み貸出は、産業振興や信用創造につながる事業性の融資でもなく、預貸業務以外の真っ当な資金運用でもない。 仮に地銀側が「デフォルトではない」と判断しても、スワップ上のデフォルト定義が異なる場合がある。そのリスク分が金利に上乗せされるわけだが、担当者が十分に理解しているかどうかは怪しい。 そもそも「見せかけの貸出残高維持」や、「国債の利回りの一部をアップフロントフィーで先食い」する効果がある仕組み貸出に、地域金融機関が手を出さなければならないところに、業界が抱える闇がある。 仕組み貸出の増加は、日銀のマイナス金利政策でだぶつき、行き場を失ったマネーが生み出したものだという見方もできる。抜け目ない証券会社が提案する、何の付加価値も生まない仕組み貸出のスキームに地銀がこぞって飛び付いたのも、預貸率改善の必要に迫られて、やむを得ない側面があったのではないだろうか。 本当の問題は、日銀が利上げに踏み切れば、過去30年間近く続いた「金利なき世界」に慣れ切った地域金融機関が、「金利ある世界」に戻っていく危うさにあるのかもしれない。 「金利ある世界」だからこそ、地域金融の役割とは何かを問い直す必要がある。 たとえば、非営利団体として法人税が減免される信金には営業エリアがある。だが、信金の中には少しでも多く利益を獲得すべくメガが組成するシンジケートローンに参加し、実質的に営業エリア外へ貸し出しているところもある。 「金利ある世界」は総じて金融機関にとって追い風となるため、今後、同様の動きが増えるかもしれない。地元経済の金融仲介機能の担い手であるという、地域金融の本質に立ち戻って考える必要もあるのではないか』、「そもそも「見せかけの貸出残高維持」や、「国債の利回りの一部をアップフロントフィーで先食い」する効果がある仕組み貸出に、地域金融機関が手を出さなければならないところに、業界が抱える闇がある・・・抜け目ない証券会社が提案する、何の付加価値も生まない仕組み貸出のスキームに地銀がこぞって飛び付いたのも、預貸率改善の必要に迫られて、やむを得ない側面があったのではないだろうか。 本当の問題は、日銀が利上げに踏み切れば、過去30年間近く続いた「金利なき世界」に慣れ切った地域金融機関が、「金利ある世界」に戻っていく危うさにあるのかもしれない」、「地域金融機関が手を出す」のはやはり極めて問題が大きそうだ。検査などを通じて手を引かせるべきだろう。
先ずは、昨年5月17日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの加谷 珪一氏による「じつはいま「地銀と中小企業の関係」が激変中…そのウラに隠された「意外な落とし穴」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/110338?imp=0
・『地方銀行を中心に、融資先企業の経営者に個人保証を求めない流れが拡大している。日本の場合、中小零細企業の経営者が融資に際して個人保証を入れることが当然視されており、こうした商慣行が起業の阻害要因になっていると指摘されてきた。 融資慣行の見直しによってスタートアップ育成につながると期待されているが、起業が不活発な原因は必ずしも個人保証だけではない。総合的な環境整備を実施しないまま銀行に個人保証の撤廃だけを求めれば、銀行が中小企業への融資を引き揚げてしまう可能性もあるので注意が必要だ』、「総合的な環境整備を実施しないまま銀行に個人保証の撤廃だけを求めれば、銀行が中小企業への融資を引き揚げてしまう可能性もある」、その通りだ。
・『中小企業の経営者はがんじがらめ 日本では、中小零細企業の経営者はあらゆる場面において個人保証を求められ、無限責任を負う必要がある。銀行からの融資はもちろんのこと、オフィスを借りる際や、コピー機をリースする時ですら個人保証を入れなければならない。 筆者自身、会社をゼロから立ち上げ、経営してきた経験があるのでよく分かるのだが、中小企業の場合、何から何まで個人保証を要求され、がんじがらめにされてしまう。近年はだいぶ環境が良くなってきたが、サラリーマンを辞めてしまうと賃貸住宅を借りられなくなったり、カードを作れなくなるケースも珍しくなかった。 起業したのは20年以上前のことだが、当時もちょっとした起業ブームとなっており、会社を立ち上げたことを聞きつけた知人(多くがいわゆるエリートサラリーマン)が多数、起業について話を聞きにきた。 すべてにおいて個人保証が必要であり、失敗すれば無一文どころか自己破産まで強いられること、家を借りられないケースがあること、カードを作れないケースがあることなどを説明すると、皆、顔面蒼白になり帰っていった。筆者の知る限り、アドバイスを求めにきた知人の中で実際に会社を立ち上げた人は皆無だったと記憶している。) 中小企業経営者の中には、「個人保証を入れることなど大したことではない、というくらいの気概がなければ、企業の経営など無理」と述べ、銀行や取引先が個人保証を求めることはむしろ人材の選別機能になっていると主張する人もいる。確かにそうした面があるのは事実であり、個人保証の話を聞いて青ざめるような人物では、到底、中小企業の経営などおぼつかないだろう。 しかしながら、あまりにも高いハードルが起業の入り口を狭めているのは事実であり、こうした商慣行の見直しが必要なのはその通りである』、「会社を立ち上げたことを聞きつけた知人(多くがいわゆるエリートサラリーマン)が多数、起業について話を聞きにきた。 すべてにおいて個人保証が必要であり、失敗すれば無一文どころか自己破産まで強いられること、家を借りられないケースがあること、カードを作れないケースがあることなどを説明すると、皆、顔面蒼白になり帰っていった。筆者の知る限り、アドバイスを求めにきた知人の中で実際に会社を立ち上げた人は皆無だったと記憶している」、自らの腕だけで勝負するとなれば、相当の覚悟が必要だ。
・『銀行は「リスクを取ってはいけない」 今回、銀行が融資先企業の経営者に個人保証を求めない流れが出てきたのには、政府からの要請という部分も大きい。金融機関は以前から自主的なガイドラインを作成しており、可能な限り個人保証を求めないよう取り組みを進めてきた。だが現時点では、約7割が保証付き融資となっており、効果を発揮しているとは言い難い。 こうした事態を受けて岸田政権は昨年、スタートアップ企業を支援するため、経営者の個人保証を免除する施策について検討を開始した。今年に入って金融庁が、融資先に個人保証を求める場合、その必要性について説明することを金融機関に義務付けるなど、具体的な政策として動き始めている。 個人保証を外すこと自体は正しい方向性であり、筆者も高く評価している。 だが、中小企業の資金調達環境について政府や金融機関には誤った認識があり、単純に個人保証を外しただけでは、日本の起業が活発になるわけではない。それどころか、このまま何も考えずに政策を進めてしまうと、かえって中小零細企業の資金調達が阻害される可能性すらある。その理由は、日本において新規ビジネスが不活発なのは、経営者への個人保証だけが原因ではないからである。) 日本では中小企業の資金調達環境やその認識に大きな歪みがある。 中小企業やベンチャー企業は他の企業と比較してリスクが高い。先進諸外国の場合、こうしたリスクが高いビジネスの資金調達は銀行からの融資ではなく、投資家による直接出資(返済の義務はなく、失敗した場合には投資家が損失を引き受ける)によって賄われるのが通常である。 なぜそうなっているのかというと、銀行というのは預金者の大切な資金を預かり、それが失われることがないよう慎重に運用することが義務付けられた存在だからである。多くの国民にとって銀行預金は命の次に大事なものであり、そうした大事な資金を、いつ倒産するのかも分からない企業に融資してよいわけがないことは、直感的にお分かりいただけるだろう。 このため諸外国では、銀行はほぼ確実に資金が回収できる融資先にのみ融資を行い、リスクが高い事業は投資によって資金を確保するという役割分担が確立した』、日本でも経営者などの出資が資金調達の核になる点は同じだ。
・『創業間もない企業の資金調達は株式で実施すべき ところが日本の場合、直接的な投資によって資金を集めるという環境が整備されず、事業を立ち上げる人にとって銀行融資しか資金を集める手段ないという状況が長く続いた。 銀行はリスクが高いビジネスには融資できないのに、そうしたハイリスクの融資先を開拓しなければならないというジレンマに陥っている。銀行にしてみれば、預金者から預かった大切なお金であり、簡単になくしてしまうことはできず、安易に融資を行えば、預金者に対する背信行為になる危険性もある。その解決策として使われてきたのが、経営者やその家族に個人保証を求めるという、悪しき融資慣行であった。 つまり、創業間もない企業に対して普通に銀行融資が行われている状況にこそ問題があり、融資に頼らない資金調達環境を整備しなければ、本当の意味での起業活性化は難しいのだ。 それどころか、個人保証を外すことだけに邁進した場合、逆効果になる可能性すらある。 先ほど説明したように、銀行は本来、リスクの高い事業には融資できない存在である。政府が過度に個人保証の見直しを要請すると、銀行はリスクの高い企業にまで保証なしで融資を行い、後に大量の不良債権を生み出す可能性がある。逆に銀行として慎重に行動した場合には、融資が極度に減少し、ほとんどの零細企業が資金調達できないという事態に陥る可能性もある。 ではどうすればよいのか。 日本において起業が不活発である理由をしっかりと分析し、全体的な環境整備を同時並行で進めることが重要である。具体的に言えば、大企業と中小企業の取引慣行の見直しや、中小企業のM&A(合併・買収)活性化である』、「創業間もない企業に対して普通に銀行融資が行われている状況にこそ問題があり、融資に頼らない資金調達環境を整備しなければ、本当の意味での起業活性化は難しいのだ」、「創業間もない企業に対して」は融資ではなく、経営者の手金がベースになっている筈だ。
・『大企業の商慣行見直しを進めるべき 諸外国の場合、起業家が事業を始める際には、ゼロから会社を立ち上げるというケースもあるが、そうではないケースもかなり多い。典型的なのは、すでに事業を行っている人が引退する際、若い起業家に事業を売却するなど、既存ビジネスの継承である。 こうした手法であれば、特別な技能や経験がなくても事業をスタートできるし、すでにビジネスとして立ち上がっているので、投資家も安心して資金を提供できる。また当該事業が十分なキャッシュフローを得ている場合には、銀行の融資で資金をカバーすることも可能だろう。こうした形で中小企業のM&Aや、事業継承がもっと活発になれば、資金調達の環境も大きく変わるはずだ。) 加えて言うと、創業間もない企業や、前例がない企業とは取引をしないといった、日本の大企業独特の商習慣も改める必要がある。 中小企業を立ち上げた経営者にとって、もっとも大きな壁として立ちはだかるのは、資金よりも、むしろ取引先の開拓である。日本では、前例がないという理由だけで取引について門前払いを受けることが多く、会社を立ち上げても事業が続かないケースが多い。また、発注元の大企業が、支払い条件に対してムチャな要求を取引先に突きつけることも少なくない。 起業を促進するためには、単純に個人保証をなくすといった解決策だけでなく、事業の売買や商習慣なども含めた総合的な環境整備が必要である』、「創業間もない企業や、前例がない企業とは取引をしないといった、日本の大企業独特の商習慣も改める必要がある」、大企業としても信用リスクが高い企業との取引には慎重というのは、やむを得ないと思う。「発注元の大企業が、支払い条件に対してムチャな要求を取引先に突きつけることも少なくない」、これは独禁法違反になりかねない行為で、当局からの警告が必要だ。
次に、昨年11月26日付け日刊ゲンダイ「ソフトバンクの新金融商品「社債型種類株式」のうま味とリスク」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/332526
・『9月に本欄で紹介した「アクティブETF」に続いて、また日本初の金融商品がデビューした。社債の特性を持った上場株式、その名も「社債型種類株式」である。発行したのはソフトバンクグループの国内通信子会社ソフトバンクで、11月2日に東証プライムに上場し、話題になっている。 聞き慣れないだろうが、「種類株式」とは、普通株式と権利の内容が異なる株式のことである。 発行価格は1株4000円。売買単位は普通株と同じ100株(最少投資単位40万円)。発行株数と発行総額はそれぞれ3000万株、1200億円である。 ソフトバンクにとってのメリットは以下の通り。株式の一種であるため、発行で得た資金は会計上、100%資本となるから、社債や借り入れなど負債調達に比べ財務を悪化させず資金を集められる。また社債型株式には議決権がなく、普通株への転換権もないことから株式の希薄化が起こらない。 では、投資家にはどんなうまみがあるのか。 普通株に先立って優先的に配当が行われることと、社債のように安定した利回り(配当)が期待できることだろう。) 配当率は発行後約5年間は固定で年2.5%。ソフトバンク普通株の配当利回りは足元で4.9%程度で、一方、23年3月に同社が発行した個人投資家向け社債の利率は0.98%なので、社債型株式の利回りは株と社債の中間と考えていい。 上場初日の終値は4025円だった。上場後(11月20日まで)の株価は4000~4040円で値動きは小さい。 投資家が気になるリスクだが、それは「コール(事前償還)条項」だ。発行から5年経てばソフトバンクが発行価格に未払いの配当金などを上乗せした金額で買い戻すことができる。ただしコールは市場慣例で、発行体には買い戻す権利があるだけで、財務悪化などで買い戻しを見送ることもできる。万が一、見送りとなれば、投資の前提が崩れ、売り材料となりかねないが、ソフトバンクの体面があるし、NISAの対象でもあるだけに、それは考えにくい。だから個人投資家の人気が高く、10月末時点の個人の申込比率は92%に上る。 株はリスクがあって怖いが、金利が0.1%程度の定期預金にも満足していないという人は検討してみる価値は十分あるだろう。(丸)』、「ソフトバンクにとってのメリットは以下の通り。株式の一種であるため、発行で得た資金は会計上、100%資本となるから、社債や借り入れなど負債調達に比べ財務を悪化させず資金を集められる。また社債型株式には議決権がなく、普通株への転換権もないことから株式の希薄化が起こらない」、なるほど。 「投資家にはどんなうまみがあるのか。 普通株に先立って優先的に配当が行われることと、社債のように安定した利回り(配当)が期待できることだろう・・・配当率は発行後約5年間は固定で年2.5%。ソフトバンク普通株の配当利回りは足元で4.9%程度で、一方、23年3月に同社が発行した個人投資家向け社債の利率は0.98%なので、社債型株式の利回りは株と社債の中間と考えていい」、これはよく出来た仕組みだ。
第三に、本年2月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した共同通信編集委員の橋本卓典氏による「金融庁がリスク警戒!地銀・信金で広がる「仕組み貸出」の深すぎる闇」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338854
・『一部の地域金融機関の間で、「仕組み貸出」と言われるスキームがはやっている。既に金融庁はリスク管理強化を要請しているというそのスキームとは、一体どのようなものなのか。背景を探ると、業界内ではやるだけの「うまみ」と「闇」があることが分かってきた』、興味深そうだ。
・『金融庁がリスク管理強化を要請 地域金融業界で「仕組み債」ならぬ、「仕組み貸出」が注目を集めている。 金融庁が1月、地方銀行・第二地方銀行との意見交換会で、仕組み貸出に関して、リスク管理を強化するよう求めたのがきっかけだ。 もっとも仕組み貸出自体は昔からあり、目新しい取引ではないが、このところ増加傾向にあるという。なぜ金融庁が今、問題視するのか。次ページでその論点と、業界の構造的課題に迫る』、「仕組み貸出自体は昔からあり、目新しい取引ではないが、このところ増加傾向にある」、「金融庁が今、問題視」した「論点」と「業界の構造的課題」をみてみよう。
・『複雑な仕組み貸出スキーム まず以下のスキーム図を見てほしい。 証券会社などがつくった特別目的会社(SPC)に地銀が貸し出しを行う仕組み。SPCは融資契約に基づいて国債などの債券を取得する。 融資実行の際、債券の利回りの一部に相当するアップフロントフィーが地銀サイドに支払われるところに特徴がある。10年国債の場合、10年分の手数料を一括で地銀が手にする。 SPCから先は、スワップ取引が行われているとされるが、地銀側にはその詳細は明かされず、通常「ブラックボックス」となっている。金融庁によれば「複雑な商品性が多い」という。 (図_「仕組み貸出」のスキーム図 はリンク先参照)』、「SPCから先は、スワップ取引が行われているとされるが、地銀側にはその詳細は明かされず、通常「ブラックボックス」となっている」、というのは問題だ。
・『ブラックボックス では、そのブラックボックスでは一体何が行われているのか。 まず、SB(普通社債)リパッケージ債が類似したスキームだという。 たとえば同一企業が発行する国内債と外債の間に市場関係者の見通しの違いから価格差が生じたとする。仮に外債が国内債より割安の場合、スワップ取引によって、国内債より高い外債のクーポンを活用したリパッケージ債を組成することができる。 また、繰り上げ償還条項(コール条項)付きCB(転換社債)リパッケージ債というスキームも存在する。 発行者(SPC)がいつでもCBを償還(コール)する権利を持ち、権利行使の場合、対象償還額面金額と利子が支払われる。投資家(地銀)は償還までのクーポン・償還金を受け取るだけだ。CB、転換株式の価格上昇の値上がり益は享受できない』、「CB、転換株式の価格上昇の値上がり益」はスキームの管理コストのような形で消えているのだろうか。
・『SPCを仲介させる理由とは ブラックボックスの中身は複雑だが、銀行とSPCの関係だけを見ると単純だ。だが奇妙なスキームではある。 そもそも、SPCの運用先が国債であるならば、SPCなど介さずに、銀行が直接国債を満期保有した方が高い利回りを確保できるはずだ。なぜSPCが必要なのか。 このスキームは債券運用ではなく、「貸し出し」であるところがポイントなのだ。 まず、貸し出しには、貸借対照上の時価評価の必要がないという点がある。 有価証券を運用する場合、時価が簿価より50%以上下落した場合、回復可能性がなければ時価評価をして、減損処理を行わなければならない。しかし、貸し出しの場合、この必要がなくなるのである。 仕組み貸出にはさまざまなスキームがあり、SPCは国債以外の外債、社債などを取得する場合もある。銀行が直接、外債や社債を取得した場合、時価評価による減損リスクと向き合わなければならない。 かつては、外債運用で大規模な損失を計上することになった地銀もあり、その反動からこうしたスキームが使われるようになったという』、「銀行が直接、外債や社債を取得した場合、時価評価による減損リスクと向き合わなければならない」、これを回避するために「SPC」を活用したとは上手いやり方だ。
・『貸出残高をかさ増し また、有価証券運用ではないため、地銀は貸出残高を「かさ増し」することができる。 地銀関係者によれば、「SPCを中小企業と見なせば『中小企業向け貸出残高』と外部に見せることもできなくもない」と打ち明ける。 いくつかの地域のトップ地銀関係者に取材したところ、いわゆる“お堅い運用”をしている印象であった。 具体的には、SPCが取得する債券を国債に限定したり、銀行側のリスク統括、審査担当のチェックを受けなければ、仕組み貸出を認めなかったりという管理をしていた。 国債などの安全性の高い債券をSPCが取得する場合、地銀が受け取るリターンは極めて薄利となる。よって、貸出金のボリュームを増やさなければ十分な利ざやは確保できない。中には、100億円を超える「大型融資」もあるという。地域金融機関にとっては、巨額融資だ』、「地銀は貸出残高を「かさ増し」することができる・・・「SPCを中小企業と見なせば『中小企業向け貸出残高』と外部に見せることもできなくもない」、なるほど上手い手だ。
・『リスクは「早期償還事由」か リスクは、やはりSPCから先の「ブラックボックス」にあるとみて間違いない。 証券会社の資料でも「早期償還事由」について以下のような説明がある。 SPCの倒産、支払い不履行などによる期限の利益喪失は当然として、「元本・利子の削減」でも早期償還される。外債の場合、各国の法令、関係当局の権限によって元本が削減されることもある。 また、非常に流動性の低い通貨建て債券の場合、当初予定とは違う通貨で元利金支払いが行われる場合もある。スワップ取引の取引相手が倒産、支払い不履行になった場合も早期償還となる。こうしたリスクを地銀が管理するのは至難だろう。 早期償還の場合、担保証券を市場売却して、スワップ契約を解約し、担保証券の売却金額から弁護士費用など必要経費を差し引き、残余金を地銀に返済することになる。当然、貸出債権が焦げ付くこともあり得るのだ』、「当初予定とは違う通貨で元利金支払いが行われる場合もある。スワップ取引の取引相手が倒産、支払い不履行になった場合も早期償還となる。こうしたリスクを地銀が管理するのは至難だろう。 早期償還の場合、担保証券を市場売却して、スワップ契約を解約し、担保証券の売却金額から弁護士費用など必要経費を差し引き、残余金を地銀に返済することになる。当然、貸出債権が焦げ付くこともあり得るのだ」、地域金融機関には管理困難だろう。
・『神経とがらせる金融庁 金融庁は、地域金融機関が仕組み貸出について、現場部署だけでなく、審査やリスク統括などの関連部署が商品性や内包するリスクを正確に把握して、経営陣に報告して十分なリスク検証を行う態勢整備ができているかどうかに注目している。 「むしろ、地銀に比べて管理態勢が甘い可能性のある信用金庫などの協同組織金融が心配だ」と、金融庁幹部は不安を隠さない。 アップフロントフィーという目先の収益が目的になってしまえば、経営戦略を度外視して仕組み貸出にのめり込んでしまう恐れもあるからだ。経営体力に見合うリスク量となっているのかどうかもポイントとなる。 ちなみに「国債を裏付け担保とするアップフロントフィーは米国では認められていないので、監査法人が嫌がる」(地銀幹部)との声もある。 仕組み貸出の限度額管理だけでは不十分だ。類似商品のコスト、オプション条件を十分に比較できているか。金利リスク・業種集中リスク・カントリーリスクなどのリスク特性への目配りも重要だ。 仕組み貸出を売り込もうとする証券会社・信託銀行の話だけではなく、自ら市場価格、外部格付けをモニタリングしなければならない。 仕組み貸出が金融機関としての経営戦略、重点的取り組み方針と合致しているのかどうかも疑わしい。 また、株主・投資家への説明が不十分だ。金融庁も仕組み貸出について、ステークホルダーへの説明を促している』、「仕組み貸出の限度額管理だけでは不十分だ。類似商品のコスト、オプション条件を十分に比較できているか。金利リスク・業種集中リスク・カントリーリスクなどのリスク特性への目配りも重要だ。 仕組み貸出を売り込もうとする証券会社・信託銀行の話だけではなく、自ら市場価格、外部格付けをモニタリングしなければならない。 仕組み貸出が金融機関としての経営戦略、重点的取り組み方針と合致しているのかどうかも疑わしい。 また、株主・投資家への説明が不十分だ。金融庁も仕組み貸出について、ステークホルダーへの説明を促している」、これは地域金融機関にとっては大変難しい問題だ
・『地域金融の役割とは何か 仕組み貸出は、産業振興や信用創造につながる事業性の融資でもなく、預貸業務以外の真っ当な資金運用でもない。 仮に地銀側が「デフォルトではない」と判断しても、スワップ上のデフォルト定義が異なる場合がある。そのリスク分が金利に上乗せされるわけだが、担当者が十分に理解しているかどうかは怪しい。 そもそも「見せかけの貸出残高維持」や、「国債の利回りの一部をアップフロントフィーで先食い」する効果がある仕組み貸出に、地域金融機関が手を出さなければならないところに、業界が抱える闇がある。 仕組み貸出の増加は、日銀のマイナス金利政策でだぶつき、行き場を失ったマネーが生み出したものだという見方もできる。抜け目ない証券会社が提案する、何の付加価値も生まない仕組み貸出のスキームに地銀がこぞって飛び付いたのも、預貸率改善の必要に迫られて、やむを得ない側面があったのではないだろうか。 本当の問題は、日銀が利上げに踏み切れば、過去30年間近く続いた「金利なき世界」に慣れ切った地域金融機関が、「金利ある世界」に戻っていく危うさにあるのかもしれない。 「金利ある世界」だからこそ、地域金融の役割とは何かを問い直す必要がある。 たとえば、非営利団体として法人税が減免される信金には営業エリアがある。だが、信金の中には少しでも多く利益を獲得すべくメガが組成するシンジケートローンに参加し、実質的に営業エリア外へ貸し出しているところもある。 「金利ある世界」は総じて金融機関にとって追い風となるため、今後、同様の動きが増えるかもしれない。地元経済の金融仲介機能の担い手であるという、地域金融の本質に立ち戻って考える必要もあるのではないか』、「そもそも「見せかけの貸出残高維持」や、「国債の利回りの一部をアップフロントフィーで先食い」する効果がある仕組み貸出に、地域金融機関が手を出さなければならないところに、業界が抱える闇がある・・・抜け目ない証券会社が提案する、何の付加価値も生まない仕組み貸出のスキームに地銀がこぞって飛び付いたのも、預貸率改善の必要に迫られて、やむを得ない側面があったのではないだろうか。 本当の問題は、日銀が利上げに踏み切れば、過去30年間近く続いた「金利なき世界」に慣れ切った地域金融機関が、「金利ある世界」に戻っていく危うさにあるのかもしれない」、「地域金融機関が手を出す」のはやはり極めて問題が大きそうだ。検査などを通じて手を引かせるべきだろう。
タグ:「創業間もない企業に対して普通に銀行融資が行われている状況にこそ問題があり、融資に頼らない資金調達環境を整備しなければ、本当の意味での起業活性化は難しいのだ」、「創業間もない企業に対して」は融資ではなく、経営者の手金がベースになっている筈だ。 日本でも経営者などの出資が資金調達の核になる点は同じだ。 「会社を立ち上げたことを聞きつけた知人(多くがいわゆるエリートサラリーマン)が多数、起業について話を聞きにきた。 すべてにおいて個人保証が必要であり、失敗すれば無一文どころか自己破産まで強いられること、家を借りられないケースがあること、カードを作れないケースがあることなどを説明すると、皆、顔面蒼白になり帰っていった。筆者の知る限り、アドバイスを求めにきた知人の中で実際に会社を立ち上げた人は皆無だったと記憶している」、自らの腕だけで勝負するとなれば、相当の覚悟が必要だ。 「総合的な環境整備を実施しないまま銀行に個人保証の撤廃だけを求めれば、銀行が中小企業への融資を引き揚げてしまう可能性もある」、その通りだ。 加谷 珪一氏による「じつはいま「地銀と中小企業の関係」が激変中…そのウラに隠された「意外な落とし穴」」 現代ビジネス (その1)(じつはいま「地銀と中小企業の関係」が激変中…そのウラに隠された「意外な落とし穴」、ソフトバンクの新金融商品「社債型種類株式」のうま味とリスク、金融庁がリスク警戒!地銀・信金で広がる「仕組み貸出」の深すぎる闇) 企業金融・企業財務 「創業間もない企業や、前例がない企業とは取引をしないといった、日本の大企業独特の商習慣も改める必要がある」、大企業としても信用リスクが高い企業との取引には慎重というのは、やむを得ないと思う。「発注元の大企業が、支払い条件に対してムチャな要求を取引先に突きつけることも少なくない」、これは独禁法違反になりかねない行為で、当局からの警告が必要だ。 日刊ゲンダイ「ソフトバンクの新金融商品「社債型種類株式」のうま味とリスク」 「ソフトバンクにとってのメリットは以下の通り。株式の一種であるため、発行で得た資金は会計上、100%資本となるから、社債や借り入れなど負債調達に比べ財務を悪化させず資金を集められる。また社債型株式には議決権がなく、普通株への転換権もないことから株式の希薄化が起こらない」、なるほど。 「投資家にはどんなうまみがあるのか。 普通株に先立って優先的に配当が行われることと、社債のように安定した利回り(配当)が期待できることだろう・・・配当率は発行後約5年間は固定で年2.5%。ソフトバンク普通株の配当利回りは足元で4.9%程度で、一方、23年3月に同社が発行した個人投資家向け社債の利率は0.98%なので、社債型株式の利回りは株と社債の中間と考えていい」、これはよく出来た仕組みだ。 ダイヤモンド・オンライン 橋本卓典氏による「金融庁がリスク警戒!地銀・信金で広がる「仕組み貸出」の深すぎる闇」 「仕組み貸出自体は昔からあり、目新しい取引ではないが、このところ増加傾向にある」、「金融庁が今、問題視」した「論点」と「業界の構造的課題」をみてみよう。 「SPCから先は、スワップ取引が行われているとされるが、地銀側にはその詳細は明かされず、通常「ブラックボックス」となっている」、というのは問題だ。 「CB、転換株式の価格上昇の値上がり益」はスキームの管理コストのような形で消えているのだろうか。 「銀行が直接、外債や社債を取得した場合、時価評価による減損リスクと向き合わなければならない」、これを回避するために「SPC」を活用したとは上手いやり方だ。 「地銀は貸出残高を「かさ増し」することができる・・・「SPCを中小企業と見なせば『中小企業向け貸出残高』と外部に見せることもできなくもない」、なるほど上手い手だ。 「当初予定とは違う通貨で元利金支払いが行われる場合もある。スワップ取引の取引相手が倒産、支払い不履行になった場合も早期償還となる。こうしたリスクを地銀が管理するのは至難だろう。 早期償還の場合、担保証券を市場売却して、スワップ契約を解約し、担保証券の売却金額から弁護士費用など必要経費を差し引き、残余金を地銀に返済することになる。当然、貸出債権が焦げ付くこともあり得るのだ」、地域金融機関には管理困難だろう。 「そもそも「見せかけの貸出残高維持」や、「国債の利回りの一部をアップフロントフィーで先食い」する効果がある仕組み貸出に、地域金融機関が手を出さなければならないところに、業界が抱える闇がある・・・抜け目ない証券会社が提案する、何の付加価値も生まない仕組み貸出のスキームに地銀がこぞって飛び付いたのも、預貸率改善の必要に迫られて、やむを得ない側面があったのではないだろうか。 本当の問題は、日銀が利上げに踏み切れば、過去30年間近く続いた「金利なき世界」に慣れ切った地域金融機関が、「金利ある世界」に戻っていく危うさにあるのかもしれない」、「地域金融機関が手を出す」のはやはり極めて問題が大きそうだ。検査などを通じて手を引かせるべきだろう。
原発問題(その22)(中国の露骨な反発だけではない 世界の専門家が表明した「処理水への懸念」再検証、【志賀原発】「あわや電源消失 福島原発の二の舞の大惨事に..」能登半島地震で「志賀原発で起きたこと」への恐怖と地元で見つかった「新たなる切り札」、次の「M7クラス」大地震の前兆が現れている…!日本地震予知学会がいま もっとも心配している「港町の名前」、日本地震予知学会が警鐘…!次に巨大地震が起きる「地域の名前」《地図で一目瞭然》) [国内政治]
原発問題については、昨年6月1日に取上げた。今日は、(その22)(中国の露骨な反発だけではない 世界の専門家が表明した「処理水への懸念」再検証、【志賀原発】「あわや電源消失 福島原発の二の舞の大惨事に..」能登半島地震で「志賀原発で起きたこと」への恐怖と地元で見つかった「新たなる切り札」、次の「M7クラス」大地震の前兆が現れている…!日本地震予知学会がいま もっとも心配している「港町の名前」、日本地震予知学会が警鐘…!次に巨大地震が起きる「地域の名前」《地図で一目瞭然》)である。
先ずは、昨年9月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「中国の露骨な反発だけではない、世界の専門家が表明した「処理水への懸念」再検証」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328496
・『東京電力福島第一原発から出た汚染水を処理した水の海洋放出が始まった。中国では常軌を逸した騒ぎぶりだが、他の国はどう捉えているのだろうか。中国の目、世界の目、そして専門家の視点を追った』、興味深そうだ。
・『もう魚は食べられないのか 8月24日、福島第一原発から出た処理水の海洋放出が始まった。タンクにある100万トン以上の処理水は30年程度をかけて排出する計画だ。 その前夜、筆者のスマホに中国・上海の友人からしばらくぶりにメッセージが入った。普段は冷静で寡黙で、年金生活をしている張さんが切り出したのは次のような内容だ。 「明日から日本で汚染水の排出が始まりますが、私たち庶民はこれから海の魚は食べられなくなります。上海には日本料理店も多く、影響は避けられず、訪日客も減るのではないでしょうか。放射能汚染は怖いですが、私たちにはどうすることもできません」 海洋放出したその日、中国当局は日本産水産物の輸入を全面的に禁止した。この禁輸を「日本産の魚は危険だというサイン」と捉えた中国人も少なくなかった。筆者が接した日本在住の中国の友人たちも「今後、日本のおいしい魚は食べられなくなる」と話していた。 実は2011年にも中国の住民はまったく同じ反応を示していた。同年3月14日に福島第一原発の事故が報道されると、当時筆者が住んでいた上海でも市民がパニックに陥った。ネット上で「海水は汚染された、今後は食塩が危険、食用できなくなる」というデマが広がり、流言に弱い中国の庶民は塩の買い占めに奔走した。そして今、再び「塩の買い占め」が繰り返されている。 中国では張さんのように海洋放出を「怖い」と捉える住民は少なくない。しかし、筆者は張さんを「流言に弱い人」だとは責められなかった。「汚染水が安全であれば海洋に放出する必要はなく、安全でなければ海洋に放出すべきではない」という主張は、他のアジア・太平洋諸国でも共通してあるためだ』、「汚染水が安全であれば海洋に放出する必要はなく、安全でなければ海洋に放出すべきではない」との「主張」は、不本意ながら確かに説得力がある。
・『海外研究者の視点、「今からでも遅くはない」の意見も 海洋放出に懸念を示しているのは“反日国”の住民だけではない。 米誌「ナショナルジオグラフィック」は8月24日、「福島原発から処理水を段階的に放出する計画は、各国と科学者の意見を分裂させている」とし、アメリカの科学者たちの懸念を伝えた。 ハワイ大学ケワロ海洋研究所所長のロバート・リッチモンド氏は「海に放出されたものは、1カ所にとどまることはできない」とし、文中では「放射性物質を運ぶ太平洋クロマグロが2011年の事故後6カ月以内にサンディエゴの海岸に到達した」とする研究事例があることが指摘されている。 米国内の100以上の研究所が加盟する全米海洋研究所協会は、「安全性の主張を裏付ける、適切かつ正確な科学的データが欠如している」とし、放出計画に反対する声明を昨年12月に発表した。 海洋放出について、太平洋の島国は理解を示していると認識されているが、かつて米国の水爆実験で強いられた苦痛もあり、水面下では意見が割れている。ロイターは8月23日、「太平洋の首脳全員が同じ立場を取っているわけではない」とする記事を掲載した。24日、ニュージーランドのメディアRNZは「データには『危険信号』があり、中にはIAEAを批判する者もいた」とし、16カ国と2地域が加盟する太平洋諸島フォーラム(PIF)の一部の原子力専門家らの懸念を伝えた。 PIF事務総長ヘンリー・プナ氏による「すべての関係者が科学的手段を通じて安全であることを確認するまで、放出はあってはならない」とするコメントは米誌「サイエンス」にも掲載された。 8月24日、「NIKKEI Asia」は米ミドルベリー国際研究所のフェレンク・ダルノキ=ベレス氏の「今からでも遅くはない」とする寄稿を公開した。同氏は「東京電力と政府にその気があれば対処できる」とし、環境中に放出せず、コンクリートで固化させる代替案を提案している。 ちなみに代替案については日本の複数の市民団体が政府に対し再検討を迫った経緯がある。しかしながら都内のある団体代表は、「当時、経済産業省には『何を言われても路線は見直せない』という雰囲気が強かった」と振り返っている』、「米ミドルベリー国際研究所のフェレンク・ダルノキ=ベレス氏・・・は「東京電力と政府にその気があれば対処できる」とし、環境中に放出せず、コンクリートで固化させる代替案を提案」、「コンクリートで固化させ」た場合、体積はどの程度小さくなるのだろうか。余り小さくならないのであれば、現在の方式で流す方がラクだ。
・『合理的に考えて影響が出ることは考えられない 2021年の放出決定から2年あまり、トリチウムの安全性が問題になってきた。福島第一原発から出た“汚れた水”は、多核種除去設備(通称ALPS)を使って浄化するが、トリチウムはそれでも除去できない放射能物質の一つである。 日本政府や東京電力はトリチウムを「自然界にも存在する水素の仲間」として説明し、今回の海洋放出に当たっては、トリチウムの濃度を国内規制基準の40分の1に薄めるので安全だとしている。 もっとも、トリチウムの海洋放出は今に始まったことではない。過去、日本の原発でも、世界の原発でも冷却水とともに海に流してきた。日本には「世界の原発からも日本を上回る量の排水を行っている。今さら騒ぐのはおかしい」という意見もある。 そこで改めて茨城大学理工学研究科の田内広教授に人体への影響を尋ねると、「高濃度については過去から調べられており影響が生じるのが明らかな一方、今回のような低濃度のトリチウム水については報告されている実験データを見ても影響が見えません。科学的に100%証明するのは無理ですが、合理的に考えて影響が出ることは考えられません」という回答だった。 一方で見逃せないのは、トリチウムも含め、研究は“予算”に左右されるという一面が潜在するということだ』、「茨城大学理工学研究科の田内広教授に人体への影響を尋ねると、「高濃度については過去から調べられており影響が生じるのが明らかな一方、今回のような低濃度のトリチウム水については報告されている実験データを見ても影響が見えません。科学的に100%証明するのは無理ですが、合理的に考えて影響が出ることは考えられません」という回答・・・研究は“予算”に左右されるという一面が潜在する」、なるほど。
・タンクの中の処理水研究は手つかずのまま 京都大学・放射線生物研究センター特任教授の小松賢志氏はトリチウムを研究した日本の古参の学者だ。福島第一原発の事故が起きる前の1997年、「事故対策としていまだ不明な点が残される放射線障害やトリチウム固有の生物的効果に関する正確な知識の確立は急務である」と論文で指摘している。 このように、小松氏は「拡散漏えいしやすいトリチウムは取り扱いが難しい核種の一つ」と指摘してきたのだが、やがてトリチウムの研究を打ち切ってしまう。背景にあったのは「予算削減という厳しい台所事情だった」と回想している。 原発問題の政策提言を行う原子力資料情報室の共同代表である伴英幸氏も「トリチウム問題がクローズアップされるまで、少なくともこの20年ほど日本のトリチウムの研究データはほとんどありません。理由は日本に研究者が少ないためです」と話している。 また福島第一原発から出た水は、炉心に触れた処理水である点が、通常の原子力発電所から海洋放出されているトリチウムを含む水とは条件が異なる。「炉心に触れた水」の研究はどうなっているのだろうか。 「タンクの中で有機結合型のトリチウムが生成されているとの指摘もあり、分析でこれをチェックする必要があると考えています。しかし、タンクの中の処理水については基本的に持ち出せないことになっているので、在野の研究者は誰も分析していないはずです」(伴氏) 海洋放出を巡っては、日本弁護士連合会が昨年1月20日付で、他の方法の検討を促す意見書を岸田文雄首相に提出していた。その理由の一つをこう掲げている。 「通常の原子力発電所から海洋放出されているトリチウムを含む水は、福島第一原発とは異なり、炉心に触れた水ではなく、トリチウム以外の放射性物質は含まれていない。規制基準以下とはいえ、トリチウム以外の放射性物質が完全には除去されていない福島第一原発における処理水は、通常の原子力発電所の場合とは根本的に異なるものである」』、「福島第一原発から出た水は、炉心に触れた処理水である点が、通常の原子力発電所から海洋放出されているトリチウムを含む水とは条件が異なる。「炉心に触れた水」の研究はどうなっているのだろうか。 「タンクの中で有機結合型のトリチウムが生成されているとの指摘もあり、分析でこれをチェックする必要があると考えています。しかし、タンクの中の処理水については基本的に持ち出せないことになっているので、在野の研究者は誰も分析していないはずです」(伴氏)』、「タンクの中の処理水」についても、研究用に持ち出し可能な量を持ち出し、それで研究することは可能な筈だ。
・『処理水放出は次世代革新炉への布石か 汚染水から水とトリチウムを分離することは困難だと言われてきたが、今後、新たな日本の技術が注目を集めそうだ。 東京電力は処理水からトリチウムを分離する実用技術を公募しているが、東洋アルミニウム(本社・大阪市)がこれに応募したのだ。 同社の技術は処理水を加温して蒸気化してフィルターを通過させ、トリチウムを除去するというもので、現在、実現可能性を確認している段階にある。東京電力の担当者によれば、「もし実現可能となった場合は、濃いトリチウム水と薄いトリチウム水に分けることができ、薄いトリチウム水から流していくとともに、濃いトリチウム水は構内で保管し続けることで、約12年という半減期を活用し、トリチウムの量を保管の中で減らすことができる」という。 分離して水を取り出した後にはトリチウムが残留したフィルターが残るため、今後の取り組み課題はフィルターの体積をいかに減らしていくかが焦点となる。 一方、政府は福島第一原発の廃炉を進行させた先に、次世代革新炉の計画を描いている。 30年後にも運転が迫るといわれる核融合炉でも、薄めたトリチウム水を海洋放出する計画で、学会誌には、「この核融合の成功のためには福島第一原発のトリチウム処理水問題の速やかな解決が不可欠」だとする文言(『Journal of Plasma and Fusion Research Vol.99』)がある。24日から始まったトリチウム水の海洋放出は、そのための布石でもあるといわれている。 国際環境NGOのFoE Japanの満田夏花事務局長は次のように語る。 「ほとんど動かなかった高速増殖炉『もんじゅ』で税金が1兆円以上も使われたように、次世代革新炉でも国民の金が投入されようとしています。省エネ、再エネのための電力需給のしくみを構築しようというなら将来性ある話ですが、潤うのは一部の原子力産業だけであり、結果として、何万年も管理が必要な放射性廃棄物を生み出してしまいます」』、「処理水からトリチウムを分離する実用技術を公募しているが、東洋アルミニウム・・・がこれに応募したのだ。 同社の技術は処理水を加温して蒸気化してフィルターを通過させ、トリチウムを除去するというもので、現在、実現可能性を確認している段階にある。東京電力の担当者によれば、「もし実現可能となった場合は、濃いトリチウム水と薄いトリチウム水に分けることができ、薄いトリチウム水から流していくとともに、濃いトリチウム水は構内で保管し続けることで、約12年という半減期を活用し、トリチウムの量を保管の中で減らすことができる」という」、この方法が実用化されれば、問題は見事に解消する。「核融合炉でも、薄めたトリチウム水を海洋放出する計画で、学会誌には、「この核融合の成功のためには福島第一原発のトリチウム処理水問題の速やかな解決が不可欠」だとする文言」、「核融合」でも「トリチウム処理水問題」があるとは初めて知った。
・『「日本はパンドラの箱を開けた」 海洋放出後、中国の人民日報WEB版は「日本はパンドラの箱を開けた」と世界に向けて報じた。一方、日本には中国から“抗議の電話”がかかるようになり、関係のない個人や民間事業者までが巻き添えになっている。 今回の事態は、2010年の尖閣諸島での中国漁船衝突事件とその後の事態を想起させる。そして、2011年に起きた原発事故と“塩パニック”、尖閣諸島国有化を発端にした翌年2012年の反日デモは直接の関連性はないものの、その後「日本製品の全面ボイコット」に突入するきっかけとなった。反日デモは“官製デモ”とされ、中国政府が国民を動員したといわれている。この時悪化した両国関係が“雪解け”するまでに6年かかった。 今回の海洋放出に対して、「やめろと言ったのにやっただろう」と激高した中国は、海洋放出を外交カード化し、今後、国民を動員しながら日本を追い詰めてくるかもしれない。 ただ今回の中国や韓国の露骨な反発が、かえって日本人の私たちの気持ちを逆なですることにもなっていて、冷静な議論から目をそらせることにもなっている。 原発問題のもっとも本質なる部分は、人間の力で制御できるというおごりが悲劇を生むところにある。その人間の愚かさは、神にしか操れない「日輪の馬車」に無理やり乗り込み暴走し、ついには地上を焼き払ったというギリシャ神話「パエトーン」に重なる。 原子力に頼らず、再生可能エネルギーへのシフトを進める――これが日本の歩むべき道であり、福島の原発事故で多大な被害を受けた人々に報いることができる唯一の道ではないだろうか』、「原子力に頼らず、再生可能エネルギーへのシフトを進める――これが日本の歩むべき道であり、福島の原発事故で多大な被害を受けた人々に報いることができる唯一の道ではないだろうか」、そのためには、熱水発電などのようにベースとなる安定的な電力を生み出す仕組みが実用化することが、前提になる。
次に、本年2月11日付け現代ビジネス「【志賀原発】「あわや電源消失、福島原発の二の舞の大惨事に...」能登半島地震で「志賀原発で起きたこと」への恐怖と地元で見つかった「新たなる切り札」」を」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/124022?imp=0
・『あわや電源消失の事態に 電力がほぼ復旧した能登半島だが、北陸電力志賀原子力発電所に不信感を抱いた住民は少なくない。なぜなら水位の上昇、油漏れなど発表する情報が二転三転。なにより怖がらせたのは、他地区より揺れの少ない震度5強ながら変圧器が2台損傷し、復旧に半年以上かかること。電源は他ルートで確保できたものの、電源消失なら福島原発並みの大惨事につながっていたかもしれない。 志賀原発は1,2号機とも'11年から運転停止中。再稼働を目指して準備を重ねていたが、推進派だった稲岡健太郎町長は、地震を経て「以前のように安全性をアピールするのは難しい」と立場を変えた』、「志賀原子力発電所」では「震度5強ながら変圧器が2台損傷し、復旧に半年以上かかること。電源は他ルートで確保できたものの、電源消失なら福島原発並みの大惨事につながっていたかもしれない」、頼りない限りだ。
・『原発の隣に蓄電所を 志賀町で次世代蓄電池の製造とそれを組み込んだ蓄電所の設置に取り組む日高機械エンジニアリングの日高明広代表は、災害に備えて「原発の新たな外部電源に蓄電所を加えてマイクログリッド(小規模送電網)化して欲しい」という。蓄電所とは文字通り電気を溜める施設だが、'22年の電気事業法改正で発電所と同じ位置付けで系統電力に接続できるようになった。原発の電力消失時に、別系統の電源として接続し機能する。 能登半島地震で原発の耐震性が改めて見直されているなか、日高氏は被災地発で「原発立地地区の優先的な蓄電所設置」を訴える方針だ』、「蓄電所」については、関西電力が子会社E-Flowを設立、その説明によれば、『電力が安い時間帯に市場で電気を買って蓄電池に充電、高い時間帯などに放電し活用する事業モデルです。再エネは今後さらに導入が進み、主力電源としての役割を果たすことになると考えています。一方で、天候次第で発電量の増減が激しく、変動を吸収する設備が必要です。電力需給の変動に合わせた発電量のコントロールは、従来、主に火力発電などが担ってきました。しかし退出する電源も増えており、今後蓄電池は再エネの発電量が多い時間帯に充電することで、余剰電力を吸収する役割も担うことができます』、「発電量」の「変動」を石炭火力で調整するよりは、「蓄電所」で調整する方が望ましい。https://www.kepco.co.jp/corporate/report/yous/7/kanden-update/article2.html。
つまり、原発の電力消失時に、別系統の電源として接続し機能するという一時的なバックアップ電源のようだ。ただ、恒常的な電源として使うのであれば、比較的短時間だろう。
第三に、2月14日付け現代ビジネス「次の「M7クラス」大地震の前兆が現れている…!日本地震予知学会がいま、もっとも心配している「港町の名前」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/122726?imp=0
・『新春を寿ぐはずの元日に突如襲った大地震では、死者・安否不明者が200人を超えている(1月10日時点)。同じ規模の巨大地震はどこで起きるか。地下の異常を冷静に、常時見守る研究で予測する』、興味深そうだ。
・『新潟を襲う大津波 「内陸で起きた地震としては、遡ること実に約130年前、1891年の濃尾地震(M8・0)以来の大地震となりました。マグニチュードで言えば、熊本地震('16年)の3~4倍の規模です。 振り返ってみると、'20年の暮れから、能登半島の珠洲市の近辺では群発地震が起きていました。昨年5月にはM6・5、震度6強という地震も発生していますが、この3年の間にM1以上の地震が約1万4000回も起きていたんです。 その群発地震で、割れ残り(破壊されずにまだ残っている岩盤)の存在が確認され、そこが動く可能性がありました。ですから私は、1年ほど前から能登半島内陸でM7クラスの地震を警戒していたんです」 地震予知学を専門とする東海大学および静岡県立大学客員教授の長尾年恭氏は、独自の解析に基づき、能登半島で近く大地震が起きるとメディアで発信していた。日本地震予知学会会長も務める長尾氏に、次に大地震が起きる地域を訊いた。 「今回の地震では、想定していた以上に広範囲で活断層が破壊されてしまった。マグマのような何らかの流体が能登半島の地下10km~20kmに入り込んで断層同士の摩擦力が小さくなり、大きく動いたためです。 震源地を示すのに使われる×マークは単に破壊が開始された点を示すもので、M7・6ほどの規模になると百何十kmという長さの断層が破壊されます。今回は、能登半島の西端から佐渡島近くまで一挙に動きました」』、想像以上に大規模だったようだ。
・『歪みが解消されなかった場所 「地震学の常識として、破壊された断層部分ではそれまでの歪みが解消されますが、その両端にはなお歪みが残ります。 西端の歪みは'07年の能登半島地震ですでに解消されましたが、断層の東端では大きな地震はまだ発生していません。 ですので、私たちがいま最も心配しているのは、断層の東端、つまり佐渡島付近で同じようなM7クラスの大地震が起きることです。 今回の地震で津波が比較的小さかったのは、断層の多くが内陸にあったからですが、佐渡島付近の海で地震が起きると大津波が発生します。日本海側最大級の港町、人口約80万人の新潟市は大きな津波の被害に襲われるでしょう」 「活断層が破壊されていない割れ残りが存在しているために、私が注目している地域は実は他にもあります。 人口約160万人を擁する福岡市です。'05年にM7・0の福岡県西方沖地震を引き起こした警固断層に、割れ残りが存在するからです。次にそこが破壊されることは多くの地震学者の共通認識になっています。 割れ残りは福岡市中心部である博多区の真下にあり、残っている断層の長さを勘案すれば、最大震度7クラスの地震が懸念されます。 ですから私は、出張などで福岡に行く人には、『格式の高い古いホテルよりも、格安なビジネスホテルでもいいから、築年数が浅いホテルに泊まるように』と忠告しているんです」』、「私たちがいま最も心配しているのは、断層の東端、つまり佐渡島付近で同じようなM7クラスの大地震が起きることです。 今回の地震で津波が比較的小さかったのは、断層の多くが内陸にあったからですが、佐渡島付近の海で地震が起きると大津波が発生します。日本海側最大級の港町、人口約80万人の新潟市は大きな津波の被害に襲われるでしょう・・・「活断層が破壊されていない割れ残りが存在しているために、私が注目している地域は実は他にもあります。 人口約160万人を擁する福岡市です。'05年にM7・0の福岡県西方沖地震を引き起こした警固断層に、割れ残りが存在するからです。次にそこが破壊されることは多くの地震学者の共通認識になっています。 割れ残りは福岡市中心部である博多区の真下にあり、残っている断層の長さを勘案すれば、最大震度7クラスの地震が懸念されます」、恐ろしいことだ。
・『北九州市に見られる異常 「ところでいま、地震学でよく知られている前兆現象の一つが、地震活動の静穏化、要するに”嵐の前の静けさ”です。 地震活動が活発化している地域だけでなく、相対的にそれが低下している静穏な地域も、過去の経験則から大地震が発生する可能性が高いと考えられるのです。 静穏な状態から、地下で断層が徐々に割れてきて活発化し、大地震が起こる。つまり、活発化と静穏化どちらも、地震の前兆を示す異常な状態ということです。 私は気象庁が毎日発表している地震のデータをもとに、過去10年間の平均と比べて、最近1年間はどれほど地震活動が活発なのか、静穏なのかを解析し、それを『地下天気図』と名付けて公表しています。当然ながら、ここ最近は能登半島が非常に活発化していました」 「逆に静穏化が進んでいる地域で注目されるのは北九州市や宗像市付近です。この地域の地震活動データを追跡するなかで複数の異常が確認されており、福岡県は総じて心配です。 他に地震活動が静穏化している地域としては、山梨県・長野県付近と、鹿児島県の屋久島付近が挙げられます。 大地震は静穏化という異常現象が終わってから半年ほどの間に起こります。活発化している地域では『いつ起きるのか』は非常に判断しにくいのですが、静穏化している場合の多くはそれが解消してから起こるので、予測はしやすいと言えますね」』、「最近1年間はどれほど地震活動が活発なのか、静穏なのかを解析し、それを『地下天気図』と名付けて公表しています。当然ながら、ここ最近は能登半島が非常に活発化していました」 「逆に静穏化が進んでいる地域で注目されるのは北九州市や宗像市付近です。この地域の地震活動データを追跡するなかで複数の異常が確認されており、福岡県は総じて心配です。 他に地震活動が静穏化している地域としては、山梨県・長野県付近と、鹿児島県の屋久島付近が挙げられます」、お手柔らかに願いたいものだ。
第四に、2月14日付け現代ビジネス「日本地震予知学会が警鐘…!次に巨大地震が起きる「地域の名前」《地図で一目瞭然》」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/122728
・『新春を寿ぐはずの元日に突如襲った大地震では、死者・安否不明者が200人を超えている(1月10日時点)。同じ規模の巨大地震はどこで起きるか。 前編記事『次の「M7クラス」大地震の前兆が現れている…!日本地震予知学会がいま、もっとも心配している「港町の名前」』に続き、地震予知学を専門とする東海大学および静岡県立大学客員教授の長尾年恭氏が、地下の異常を冷静に、常時見守る研究で予測する』、興味深そうだ。
・『今後1000年大地震が起きない地域 「いつ、どこで地震が来るのかという情報も大事な地震予測ですが、反対に『起きる可能性は極めて低い』というのもまた、大事な情報です。 これから大きな地震が起こる可能性が低い地域は断層の歪みが解消されているところ。たとえば、今月地震が起きた能登半島です。 その意味では、阪神・淡路大震災が起きた神戸市なども可能性が低い。つまり、20世紀に入ってから大地震が起きたところは大丈夫です。いまマンションを買うなら、今後1000年間、大地震は起きないと見込まれる、神戸がおすすめです」』、「これから大きな地震が起こる可能性が低い地域は断層の歪みが解消されているところ。たとえば、今月地震が起きた能登半島です。 その意味では、阪神・淡路大震災が起きた神戸市なども可能性が低い。つまり、20世紀に入ってから大地震が起きたところは大丈夫です。いまマンションを買うなら、今後1000年間、大地震は起きないと見込まれる、神戸がおすすめです」、しかし「能登半島」は余震がまだかなり残っているようだ。
・『東北もまだ危ない 「ただし注意しなくてはならないのが、東日本大震災が起きた東北地方。その最大余震は、まだ来ていないと考えられるからです。 通常では、本震よりM1ほど小さい地震が最大余震として起こります。東日本大震災はM9.0でしたので、M8クラスの最大余震が想定されます。これまでの最大余震は3月11日当日に茨城県沖で起きたM7.6です。それはM8の4分の1の大きさにすぎません。 振り返れば、1933年の昭和三陸地震(M8.1)は1896年に発生した明治三陸地震(M8.2~8.5)の余震でした。明治の地震の余震が、40年近く経った昭和に起きた。今回の東日本大震災の最大余震もこれから起きることは十分に考えられるのです」』、「東日本大震災が起きた東北地方。その最大余震は、まだ来ていないと考えられる・・・通常では、本震よりM1ほど小さい地震が最大余震として起こります。東日本大震災はM9.0でしたので、M8クラスの最大余震が想定されます。これまでの最大余震は3月11日当日に茨城県沖で起きたM7.6です・・・これまでの最大余震は3月11日当日に茨城県沖で起きたM7.6です。それはM8の4分の1の大きさにすぎません・・・明治の地震の余震が、40年近く経った昭和に起きた。1933年の昭和三陸地震(M8.1)は1896年に発生した明治三陸地震(M8.2~8.5)の余震でした。明治の地震の余震が、40年近く経った昭和に起きた。今回の東日本大震災の最大余震もこれから起きることは十分に考えられるのです」、「40年近く経っ」てから「余震」が襲うようなことがあり得るとは初めて知った。
・『数年のうちに噴火する火山 「東京都について言えば、首都圏はいまのところ異常がないので、比較的安心です。ただ懸念されるのは、小笠原諸島で火山活動が活発化していることでしょう。 陸上の火山で次に噴火すると言われているのは、伊豆大島の三原山です。まだ切迫した状況ではありませんが、数年のうちに噴火するのではないかと思います。 この火山活動の活発化が、南海トラフ(駿河湾から紀伊半島の南側の海域を経て日向灘沖まで続く溝状の地形)で巨大地震が起きる時期を早めてしまうかもしれません」 「'95年の阪神・淡路大震災以来、鳥取県西部地震(M7.3、'00年)、新潟県中越地震(M6.8、'04年)などと大地震が続き、このたびは能登半島で起きました。 2030年代に起こると予測されている南海トラフ巨大地震に向けて、内陸で地震が増えている時期だと思います」 「駿河湾から静岡県の内陸部を震源域とするM8クラスの巨大地震も想定されていますが、いつ発生してもおかしくはありません。静岡県では約10万5000人が犠牲になり、最悪の場合、全国で6000万人が被災してしまうという予測もあります。太平洋から離れた大阪府も他人事ではありません。1854年の安政南海地震では、大阪の道頓堀にまで津波が到達しているのです」) 「南海トラフの巨大地震が起きた後、'40年代の研究者はおそらく、『'23年の能登半島地震は、南海トラフ巨大地震の中・長期の前兆だった』と言うはずです。 能登半島地震を教訓にし、来るべき巨大地震から身を守るためにいまから備えておかなければならないのです」 「週刊現代」2024年1月13・20日合併号より ) 世界で最も災害の多い国、日本。かつて我々の先祖たちは、災害の恐ろしさを地名に託し、後世に伝えようとしていた。関連記事『災害の記憶をいまに伝える日本全国「あぶない地名」』では、そんな災害と深く関係する地名の数々を、「現場検証」しています』、「「駿河湾から静岡県の内陸部を震源域とするM8クラスの巨大地震も想定されていますが、いつ発生してもおかしくはありません。静岡県では約10万5000人が犠牲になり、最悪の場合、全国で6000万人が被災してしまうという予測もあります。太平洋から離れた大阪府も他人事ではありません。1854年の安政南海地震では、大阪の道頓堀にまで津波が到達しているのです」、「大阪の道頓堀にまで津波が到達」とは大変な災害だったようだ。
先ずは、昨年9月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「中国の露骨な反発だけではない、世界の専門家が表明した「処理水への懸念」再検証」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328496
・『東京電力福島第一原発から出た汚染水を処理した水の海洋放出が始まった。中国では常軌を逸した騒ぎぶりだが、他の国はどう捉えているのだろうか。中国の目、世界の目、そして専門家の視点を追った』、興味深そうだ。
・『もう魚は食べられないのか 8月24日、福島第一原発から出た処理水の海洋放出が始まった。タンクにある100万トン以上の処理水は30年程度をかけて排出する計画だ。 その前夜、筆者のスマホに中国・上海の友人からしばらくぶりにメッセージが入った。普段は冷静で寡黙で、年金生活をしている張さんが切り出したのは次のような内容だ。 「明日から日本で汚染水の排出が始まりますが、私たち庶民はこれから海の魚は食べられなくなります。上海には日本料理店も多く、影響は避けられず、訪日客も減るのではないでしょうか。放射能汚染は怖いですが、私たちにはどうすることもできません」 海洋放出したその日、中国当局は日本産水産物の輸入を全面的に禁止した。この禁輸を「日本産の魚は危険だというサイン」と捉えた中国人も少なくなかった。筆者が接した日本在住の中国の友人たちも「今後、日本のおいしい魚は食べられなくなる」と話していた。 実は2011年にも中国の住民はまったく同じ反応を示していた。同年3月14日に福島第一原発の事故が報道されると、当時筆者が住んでいた上海でも市民がパニックに陥った。ネット上で「海水は汚染された、今後は食塩が危険、食用できなくなる」というデマが広がり、流言に弱い中国の庶民は塩の買い占めに奔走した。そして今、再び「塩の買い占め」が繰り返されている。 中国では張さんのように海洋放出を「怖い」と捉える住民は少なくない。しかし、筆者は張さんを「流言に弱い人」だとは責められなかった。「汚染水が安全であれば海洋に放出する必要はなく、安全でなければ海洋に放出すべきではない」という主張は、他のアジア・太平洋諸国でも共通してあるためだ』、「汚染水が安全であれば海洋に放出する必要はなく、安全でなければ海洋に放出すべきではない」との「主張」は、不本意ながら確かに説得力がある。
・『海外研究者の視点、「今からでも遅くはない」の意見も 海洋放出に懸念を示しているのは“反日国”の住民だけではない。 米誌「ナショナルジオグラフィック」は8月24日、「福島原発から処理水を段階的に放出する計画は、各国と科学者の意見を分裂させている」とし、アメリカの科学者たちの懸念を伝えた。 ハワイ大学ケワロ海洋研究所所長のロバート・リッチモンド氏は「海に放出されたものは、1カ所にとどまることはできない」とし、文中では「放射性物質を運ぶ太平洋クロマグロが2011年の事故後6カ月以内にサンディエゴの海岸に到達した」とする研究事例があることが指摘されている。 米国内の100以上の研究所が加盟する全米海洋研究所協会は、「安全性の主張を裏付ける、適切かつ正確な科学的データが欠如している」とし、放出計画に反対する声明を昨年12月に発表した。 海洋放出について、太平洋の島国は理解を示していると認識されているが、かつて米国の水爆実験で強いられた苦痛もあり、水面下では意見が割れている。ロイターは8月23日、「太平洋の首脳全員が同じ立場を取っているわけではない」とする記事を掲載した。24日、ニュージーランドのメディアRNZは「データには『危険信号』があり、中にはIAEAを批判する者もいた」とし、16カ国と2地域が加盟する太平洋諸島フォーラム(PIF)の一部の原子力専門家らの懸念を伝えた。 PIF事務総長ヘンリー・プナ氏による「すべての関係者が科学的手段を通じて安全であることを確認するまで、放出はあってはならない」とするコメントは米誌「サイエンス」にも掲載された。 8月24日、「NIKKEI Asia」は米ミドルベリー国際研究所のフェレンク・ダルノキ=ベレス氏の「今からでも遅くはない」とする寄稿を公開した。同氏は「東京電力と政府にその気があれば対処できる」とし、環境中に放出せず、コンクリートで固化させる代替案を提案している。 ちなみに代替案については日本の複数の市民団体が政府に対し再検討を迫った経緯がある。しかしながら都内のある団体代表は、「当時、経済産業省には『何を言われても路線は見直せない』という雰囲気が強かった」と振り返っている』、「米ミドルベリー国際研究所のフェレンク・ダルノキ=ベレス氏・・・は「東京電力と政府にその気があれば対処できる」とし、環境中に放出せず、コンクリートで固化させる代替案を提案」、「コンクリートで固化させ」た場合、体積はどの程度小さくなるのだろうか。余り小さくならないのであれば、現在の方式で流す方がラクだ。
・『合理的に考えて影響が出ることは考えられない 2021年の放出決定から2年あまり、トリチウムの安全性が問題になってきた。福島第一原発から出た“汚れた水”は、多核種除去設備(通称ALPS)を使って浄化するが、トリチウムはそれでも除去できない放射能物質の一つである。 日本政府や東京電力はトリチウムを「自然界にも存在する水素の仲間」として説明し、今回の海洋放出に当たっては、トリチウムの濃度を国内規制基準の40分の1に薄めるので安全だとしている。 もっとも、トリチウムの海洋放出は今に始まったことではない。過去、日本の原発でも、世界の原発でも冷却水とともに海に流してきた。日本には「世界の原発からも日本を上回る量の排水を行っている。今さら騒ぐのはおかしい」という意見もある。 そこで改めて茨城大学理工学研究科の田内広教授に人体への影響を尋ねると、「高濃度については過去から調べられており影響が生じるのが明らかな一方、今回のような低濃度のトリチウム水については報告されている実験データを見ても影響が見えません。科学的に100%証明するのは無理ですが、合理的に考えて影響が出ることは考えられません」という回答だった。 一方で見逃せないのは、トリチウムも含め、研究は“予算”に左右されるという一面が潜在するということだ』、「茨城大学理工学研究科の田内広教授に人体への影響を尋ねると、「高濃度については過去から調べられており影響が生じるのが明らかな一方、今回のような低濃度のトリチウム水については報告されている実験データを見ても影響が見えません。科学的に100%証明するのは無理ですが、合理的に考えて影響が出ることは考えられません」という回答・・・研究は“予算”に左右されるという一面が潜在する」、なるほど。
・タンクの中の処理水研究は手つかずのまま 京都大学・放射線生物研究センター特任教授の小松賢志氏はトリチウムを研究した日本の古参の学者だ。福島第一原発の事故が起きる前の1997年、「事故対策としていまだ不明な点が残される放射線障害やトリチウム固有の生物的効果に関する正確な知識の確立は急務である」と論文で指摘している。 このように、小松氏は「拡散漏えいしやすいトリチウムは取り扱いが難しい核種の一つ」と指摘してきたのだが、やがてトリチウムの研究を打ち切ってしまう。背景にあったのは「予算削減という厳しい台所事情だった」と回想している。 原発問題の政策提言を行う原子力資料情報室の共同代表である伴英幸氏も「トリチウム問題がクローズアップされるまで、少なくともこの20年ほど日本のトリチウムの研究データはほとんどありません。理由は日本に研究者が少ないためです」と話している。 また福島第一原発から出た水は、炉心に触れた処理水である点が、通常の原子力発電所から海洋放出されているトリチウムを含む水とは条件が異なる。「炉心に触れた水」の研究はどうなっているのだろうか。 「タンクの中で有機結合型のトリチウムが生成されているとの指摘もあり、分析でこれをチェックする必要があると考えています。しかし、タンクの中の処理水については基本的に持ち出せないことになっているので、在野の研究者は誰も分析していないはずです」(伴氏) 海洋放出を巡っては、日本弁護士連合会が昨年1月20日付で、他の方法の検討を促す意見書を岸田文雄首相に提出していた。その理由の一つをこう掲げている。 「通常の原子力発電所から海洋放出されているトリチウムを含む水は、福島第一原発とは異なり、炉心に触れた水ではなく、トリチウム以外の放射性物質は含まれていない。規制基準以下とはいえ、トリチウム以外の放射性物質が完全には除去されていない福島第一原発における処理水は、通常の原子力発電所の場合とは根本的に異なるものである」』、「福島第一原発から出た水は、炉心に触れた処理水である点が、通常の原子力発電所から海洋放出されているトリチウムを含む水とは条件が異なる。「炉心に触れた水」の研究はどうなっているのだろうか。 「タンクの中で有機結合型のトリチウムが生成されているとの指摘もあり、分析でこれをチェックする必要があると考えています。しかし、タンクの中の処理水については基本的に持ち出せないことになっているので、在野の研究者は誰も分析していないはずです」(伴氏)』、「タンクの中の処理水」についても、研究用に持ち出し可能な量を持ち出し、それで研究することは可能な筈だ。
・『処理水放出は次世代革新炉への布石か 汚染水から水とトリチウムを分離することは困難だと言われてきたが、今後、新たな日本の技術が注目を集めそうだ。 東京電力は処理水からトリチウムを分離する実用技術を公募しているが、東洋アルミニウム(本社・大阪市)がこれに応募したのだ。 同社の技術は処理水を加温して蒸気化してフィルターを通過させ、トリチウムを除去するというもので、現在、実現可能性を確認している段階にある。東京電力の担当者によれば、「もし実現可能となった場合は、濃いトリチウム水と薄いトリチウム水に分けることができ、薄いトリチウム水から流していくとともに、濃いトリチウム水は構内で保管し続けることで、約12年という半減期を活用し、トリチウムの量を保管の中で減らすことができる」という。 分離して水を取り出した後にはトリチウムが残留したフィルターが残るため、今後の取り組み課題はフィルターの体積をいかに減らしていくかが焦点となる。 一方、政府は福島第一原発の廃炉を進行させた先に、次世代革新炉の計画を描いている。 30年後にも運転が迫るといわれる核融合炉でも、薄めたトリチウム水を海洋放出する計画で、学会誌には、「この核融合の成功のためには福島第一原発のトリチウム処理水問題の速やかな解決が不可欠」だとする文言(『Journal of Plasma and Fusion Research Vol.99』)がある。24日から始まったトリチウム水の海洋放出は、そのための布石でもあるといわれている。 国際環境NGOのFoE Japanの満田夏花事務局長は次のように語る。 「ほとんど動かなかった高速増殖炉『もんじゅ』で税金が1兆円以上も使われたように、次世代革新炉でも国民の金が投入されようとしています。省エネ、再エネのための電力需給のしくみを構築しようというなら将来性ある話ですが、潤うのは一部の原子力産業だけであり、結果として、何万年も管理が必要な放射性廃棄物を生み出してしまいます」』、「処理水からトリチウムを分離する実用技術を公募しているが、東洋アルミニウム・・・がこれに応募したのだ。 同社の技術は処理水を加温して蒸気化してフィルターを通過させ、トリチウムを除去するというもので、現在、実現可能性を確認している段階にある。東京電力の担当者によれば、「もし実現可能となった場合は、濃いトリチウム水と薄いトリチウム水に分けることができ、薄いトリチウム水から流していくとともに、濃いトリチウム水は構内で保管し続けることで、約12年という半減期を活用し、トリチウムの量を保管の中で減らすことができる」という」、この方法が実用化されれば、問題は見事に解消する。「核融合炉でも、薄めたトリチウム水を海洋放出する計画で、学会誌には、「この核融合の成功のためには福島第一原発のトリチウム処理水問題の速やかな解決が不可欠」だとする文言」、「核融合」でも「トリチウム処理水問題」があるとは初めて知った。
・『「日本はパンドラの箱を開けた」 海洋放出後、中国の人民日報WEB版は「日本はパンドラの箱を開けた」と世界に向けて報じた。一方、日本には中国から“抗議の電話”がかかるようになり、関係のない個人や民間事業者までが巻き添えになっている。 今回の事態は、2010年の尖閣諸島での中国漁船衝突事件とその後の事態を想起させる。そして、2011年に起きた原発事故と“塩パニック”、尖閣諸島国有化を発端にした翌年2012年の反日デモは直接の関連性はないものの、その後「日本製品の全面ボイコット」に突入するきっかけとなった。反日デモは“官製デモ”とされ、中国政府が国民を動員したといわれている。この時悪化した両国関係が“雪解け”するまでに6年かかった。 今回の海洋放出に対して、「やめろと言ったのにやっただろう」と激高した中国は、海洋放出を外交カード化し、今後、国民を動員しながら日本を追い詰めてくるかもしれない。 ただ今回の中国や韓国の露骨な反発が、かえって日本人の私たちの気持ちを逆なですることにもなっていて、冷静な議論から目をそらせることにもなっている。 原発問題のもっとも本質なる部分は、人間の力で制御できるというおごりが悲劇を生むところにある。その人間の愚かさは、神にしか操れない「日輪の馬車」に無理やり乗り込み暴走し、ついには地上を焼き払ったというギリシャ神話「パエトーン」に重なる。 原子力に頼らず、再生可能エネルギーへのシフトを進める――これが日本の歩むべき道であり、福島の原発事故で多大な被害を受けた人々に報いることができる唯一の道ではないだろうか』、「原子力に頼らず、再生可能エネルギーへのシフトを進める――これが日本の歩むべき道であり、福島の原発事故で多大な被害を受けた人々に報いることができる唯一の道ではないだろうか」、そのためには、熱水発電などのようにベースとなる安定的な電力を生み出す仕組みが実用化することが、前提になる。
次に、本年2月11日付け現代ビジネス「【志賀原発】「あわや電源消失、福島原発の二の舞の大惨事に...」能登半島地震で「志賀原発で起きたこと」への恐怖と地元で見つかった「新たなる切り札」」を」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/124022?imp=0
・『あわや電源消失の事態に 電力がほぼ復旧した能登半島だが、北陸電力志賀原子力発電所に不信感を抱いた住民は少なくない。なぜなら水位の上昇、油漏れなど発表する情報が二転三転。なにより怖がらせたのは、他地区より揺れの少ない震度5強ながら変圧器が2台損傷し、復旧に半年以上かかること。電源は他ルートで確保できたものの、電源消失なら福島原発並みの大惨事につながっていたかもしれない。 志賀原発は1,2号機とも'11年から運転停止中。再稼働を目指して準備を重ねていたが、推進派だった稲岡健太郎町長は、地震を経て「以前のように安全性をアピールするのは難しい」と立場を変えた』、「志賀原子力発電所」では「震度5強ながら変圧器が2台損傷し、復旧に半年以上かかること。電源は他ルートで確保できたものの、電源消失なら福島原発並みの大惨事につながっていたかもしれない」、頼りない限りだ。
・『原発の隣に蓄電所を 志賀町で次世代蓄電池の製造とそれを組み込んだ蓄電所の設置に取り組む日高機械エンジニアリングの日高明広代表は、災害に備えて「原発の新たな外部電源に蓄電所を加えてマイクログリッド(小規模送電網)化して欲しい」という。蓄電所とは文字通り電気を溜める施設だが、'22年の電気事業法改正で発電所と同じ位置付けで系統電力に接続できるようになった。原発の電力消失時に、別系統の電源として接続し機能する。 能登半島地震で原発の耐震性が改めて見直されているなか、日高氏は被災地発で「原発立地地区の優先的な蓄電所設置」を訴える方針だ』、「蓄電所」については、関西電力が子会社E-Flowを設立、その説明によれば、『電力が安い時間帯に市場で電気を買って蓄電池に充電、高い時間帯などに放電し活用する事業モデルです。再エネは今後さらに導入が進み、主力電源としての役割を果たすことになると考えています。一方で、天候次第で発電量の増減が激しく、変動を吸収する設備が必要です。電力需給の変動に合わせた発電量のコントロールは、従来、主に火力発電などが担ってきました。しかし退出する電源も増えており、今後蓄電池は再エネの発電量が多い時間帯に充電することで、余剰電力を吸収する役割も担うことができます』、「発電量」の「変動」を石炭火力で調整するよりは、「蓄電所」で調整する方が望ましい。https://www.kepco.co.jp/corporate/report/yous/7/kanden-update/article2.html。
つまり、原発の電力消失時に、別系統の電源として接続し機能するという一時的なバックアップ電源のようだ。ただ、恒常的な電源として使うのであれば、比較的短時間だろう。
第三に、2月14日付け現代ビジネス「次の「M7クラス」大地震の前兆が現れている…!日本地震予知学会がいま、もっとも心配している「港町の名前」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/122726?imp=0
・『新春を寿ぐはずの元日に突如襲った大地震では、死者・安否不明者が200人を超えている(1月10日時点)。同じ規模の巨大地震はどこで起きるか。地下の異常を冷静に、常時見守る研究で予測する』、興味深そうだ。
・『新潟を襲う大津波 「内陸で起きた地震としては、遡ること実に約130年前、1891年の濃尾地震(M8・0)以来の大地震となりました。マグニチュードで言えば、熊本地震('16年)の3~4倍の規模です。 振り返ってみると、'20年の暮れから、能登半島の珠洲市の近辺では群発地震が起きていました。昨年5月にはM6・5、震度6強という地震も発生していますが、この3年の間にM1以上の地震が約1万4000回も起きていたんです。 その群発地震で、割れ残り(破壊されずにまだ残っている岩盤)の存在が確認され、そこが動く可能性がありました。ですから私は、1年ほど前から能登半島内陸でM7クラスの地震を警戒していたんです」 地震予知学を専門とする東海大学および静岡県立大学客員教授の長尾年恭氏は、独自の解析に基づき、能登半島で近く大地震が起きるとメディアで発信していた。日本地震予知学会会長も務める長尾氏に、次に大地震が起きる地域を訊いた。 「今回の地震では、想定していた以上に広範囲で活断層が破壊されてしまった。マグマのような何らかの流体が能登半島の地下10km~20kmに入り込んで断層同士の摩擦力が小さくなり、大きく動いたためです。 震源地を示すのに使われる×マークは単に破壊が開始された点を示すもので、M7・6ほどの規模になると百何十kmという長さの断層が破壊されます。今回は、能登半島の西端から佐渡島近くまで一挙に動きました」』、想像以上に大規模だったようだ。
・『歪みが解消されなかった場所 「地震学の常識として、破壊された断層部分ではそれまでの歪みが解消されますが、その両端にはなお歪みが残ります。 西端の歪みは'07年の能登半島地震ですでに解消されましたが、断層の東端では大きな地震はまだ発生していません。 ですので、私たちがいま最も心配しているのは、断層の東端、つまり佐渡島付近で同じようなM7クラスの大地震が起きることです。 今回の地震で津波が比較的小さかったのは、断層の多くが内陸にあったからですが、佐渡島付近の海で地震が起きると大津波が発生します。日本海側最大級の港町、人口約80万人の新潟市は大きな津波の被害に襲われるでしょう」 「活断層が破壊されていない割れ残りが存在しているために、私が注目している地域は実は他にもあります。 人口約160万人を擁する福岡市です。'05年にM7・0の福岡県西方沖地震を引き起こした警固断層に、割れ残りが存在するからです。次にそこが破壊されることは多くの地震学者の共通認識になっています。 割れ残りは福岡市中心部である博多区の真下にあり、残っている断層の長さを勘案すれば、最大震度7クラスの地震が懸念されます。 ですから私は、出張などで福岡に行く人には、『格式の高い古いホテルよりも、格安なビジネスホテルでもいいから、築年数が浅いホテルに泊まるように』と忠告しているんです」』、「私たちがいま最も心配しているのは、断層の東端、つまり佐渡島付近で同じようなM7クラスの大地震が起きることです。 今回の地震で津波が比較的小さかったのは、断層の多くが内陸にあったからですが、佐渡島付近の海で地震が起きると大津波が発生します。日本海側最大級の港町、人口約80万人の新潟市は大きな津波の被害に襲われるでしょう・・・「活断層が破壊されていない割れ残りが存在しているために、私が注目している地域は実は他にもあります。 人口約160万人を擁する福岡市です。'05年にM7・0の福岡県西方沖地震を引き起こした警固断層に、割れ残りが存在するからです。次にそこが破壊されることは多くの地震学者の共通認識になっています。 割れ残りは福岡市中心部である博多区の真下にあり、残っている断層の長さを勘案すれば、最大震度7クラスの地震が懸念されます」、恐ろしいことだ。
・『北九州市に見られる異常 「ところでいま、地震学でよく知られている前兆現象の一つが、地震活動の静穏化、要するに”嵐の前の静けさ”です。 地震活動が活発化している地域だけでなく、相対的にそれが低下している静穏な地域も、過去の経験則から大地震が発生する可能性が高いと考えられるのです。 静穏な状態から、地下で断層が徐々に割れてきて活発化し、大地震が起こる。つまり、活発化と静穏化どちらも、地震の前兆を示す異常な状態ということです。 私は気象庁が毎日発表している地震のデータをもとに、過去10年間の平均と比べて、最近1年間はどれほど地震活動が活発なのか、静穏なのかを解析し、それを『地下天気図』と名付けて公表しています。当然ながら、ここ最近は能登半島が非常に活発化していました」 「逆に静穏化が進んでいる地域で注目されるのは北九州市や宗像市付近です。この地域の地震活動データを追跡するなかで複数の異常が確認されており、福岡県は総じて心配です。 他に地震活動が静穏化している地域としては、山梨県・長野県付近と、鹿児島県の屋久島付近が挙げられます。 大地震は静穏化という異常現象が終わってから半年ほどの間に起こります。活発化している地域では『いつ起きるのか』は非常に判断しにくいのですが、静穏化している場合の多くはそれが解消してから起こるので、予測はしやすいと言えますね」』、「最近1年間はどれほど地震活動が活発なのか、静穏なのかを解析し、それを『地下天気図』と名付けて公表しています。当然ながら、ここ最近は能登半島が非常に活発化していました」 「逆に静穏化が進んでいる地域で注目されるのは北九州市や宗像市付近です。この地域の地震活動データを追跡するなかで複数の異常が確認されており、福岡県は総じて心配です。 他に地震活動が静穏化している地域としては、山梨県・長野県付近と、鹿児島県の屋久島付近が挙げられます」、お手柔らかに願いたいものだ。
第四に、2月14日付け現代ビジネス「日本地震予知学会が警鐘…!次に巨大地震が起きる「地域の名前」《地図で一目瞭然》」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/122728
・『新春を寿ぐはずの元日に突如襲った大地震では、死者・安否不明者が200人を超えている(1月10日時点)。同じ規模の巨大地震はどこで起きるか。 前編記事『次の「M7クラス」大地震の前兆が現れている…!日本地震予知学会がいま、もっとも心配している「港町の名前」』に続き、地震予知学を専門とする東海大学および静岡県立大学客員教授の長尾年恭氏が、地下の異常を冷静に、常時見守る研究で予測する』、興味深そうだ。
・『今後1000年大地震が起きない地域 「いつ、どこで地震が来るのかという情報も大事な地震予測ですが、反対に『起きる可能性は極めて低い』というのもまた、大事な情報です。 これから大きな地震が起こる可能性が低い地域は断層の歪みが解消されているところ。たとえば、今月地震が起きた能登半島です。 その意味では、阪神・淡路大震災が起きた神戸市なども可能性が低い。つまり、20世紀に入ってから大地震が起きたところは大丈夫です。いまマンションを買うなら、今後1000年間、大地震は起きないと見込まれる、神戸がおすすめです」』、「これから大きな地震が起こる可能性が低い地域は断層の歪みが解消されているところ。たとえば、今月地震が起きた能登半島です。 その意味では、阪神・淡路大震災が起きた神戸市なども可能性が低い。つまり、20世紀に入ってから大地震が起きたところは大丈夫です。いまマンションを買うなら、今後1000年間、大地震は起きないと見込まれる、神戸がおすすめです」、しかし「能登半島」は余震がまだかなり残っているようだ。
・『東北もまだ危ない 「ただし注意しなくてはならないのが、東日本大震災が起きた東北地方。その最大余震は、まだ来ていないと考えられるからです。 通常では、本震よりM1ほど小さい地震が最大余震として起こります。東日本大震災はM9.0でしたので、M8クラスの最大余震が想定されます。これまでの最大余震は3月11日当日に茨城県沖で起きたM7.6です。それはM8の4分の1の大きさにすぎません。 振り返れば、1933年の昭和三陸地震(M8.1)は1896年に発生した明治三陸地震(M8.2~8.5)の余震でした。明治の地震の余震が、40年近く経った昭和に起きた。今回の東日本大震災の最大余震もこれから起きることは十分に考えられるのです」』、「東日本大震災が起きた東北地方。その最大余震は、まだ来ていないと考えられる・・・通常では、本震よりM1ほど小さい地震が最大余震として起こります。東日本大震災はM9.0でしたので、M8クラスの最大余震が想定されます。これまでの最大余震は3月11日当日に茨城県沖で起きたM7.6です・・・これまでの最大余震は3月11日当日に茨城県沖で起きたM7.6です。それはM8の4分の1の大きさにすぎません・・・明治の地震の余震が、40年近く経った昭和に起きた。1933年の昭和三陸地震(M8.1)は1896年に発生した明治三陸地震(M8.2~8.5)の余震でした。明治の地震の余震が、40年近く経った昭和に起きた。今回の東日本大震災の最大余震もこれから起きることは十分に考えられるのです」、「40年近く経っ」てから「余震」が襲うようなことがあり得るとは初めて知った。
・『数年のうちに噴火する火山 「東京都について言えば、首都圏はいまのところ異常がないので、比較的安心です。ただ懸念されるのは、小笠原諸島で火山活動が活発化していることでしょう。 陸上の火山で次に噴火すると言われているのは、伊豆大島の三原山です。まだ切迫した状況ではありませんが、数年のうちに噴火するのではないかと思います。 この火山活動の活発化が、南海トラフ(駿河湾から紀伊半島の南側の海域を経て日向灘沖まで続く溝状の地形)で巨大地震が起きる時期を早めてしまうかもしれません」 「'95年の阪神・淡路大震災以来、鳥取県西部地震(M7.3、'00年)、新潟県中越地震(M6.8、'04年)などと大地震が続き、このたびは能登半島で起きました。 2030年代に起こると予測されている南海トラフ巨大地震に向けて、内陸で地震が増えている時期だと思います」 「駿河湾から静岡県の内陸部を震源域とするM8クラスの巨大地震も想定されていますが、いつ発生してもおかしくはありません。静岡県では約10万5000人が犠牲になり、最悪の場合、全国で6000万人が被災してしまうという予測もあります。太平洋から離れた大阪府も他人事ではありません。1854年の安政南海地震では、大阪の道頓堀にまで津波が到達しているのです」) 「南海トラフの巨大地震が起きた後、'40年代の研究者はおそらく、『'23年の能登半島地震は、南海トラフ巨大地震の中・長期の前兆だった』と言うはずです。 能登半島地震を教訓にし、来るべき巨大地震から身を守るためにいまから備えておかなければならないのです」 「週刊現代」2024年1月13・20日合併号より ) 世界で最も災害の多い国、日本。かつて我々の先祖たちは、災害の恐ろしさを地名に託し、後世に伝えようとしていた。関連記事『災害の記憶をいまに伝える日本全国「あぶない地名」』では、そんな災害と深く関係する地名の数々を、「現場検証」しています』、「「駿河湾から静岡県の内陸部を震源域とするM8クラスの巨大地震も想定されていますが、いつ発生してもおかしくはありません。静岡県では約10万5000人が犠牲になり、最悪の場合、全国で6000万人が被災してしまうという予測もあります。太平洋から離れた大阪府も他人事ではありません。1854年の安政南海地震では、大阪の道頓堀にまで津波が到達しているのです」、「大阪の道頓堀にまで津波が到達」とは大変な災害だったようだ。
タグ:原発問題 (その22)(中国の露骨な反発だけではない 世界の専門家が表明した「処理水への懸念」再検証、【志賀原発】「あわや電源消失 福島原発の二の舞の大惨事に..」能登半島地震で「志賀原発で起きたこと」への恐怖と地元で見つかった「新たなる切り札」、次の「M7クラス」大地震の前兆が現れている…!日本地震予知学会がいま もっとも心配している「港町の名前」、日本地震予知学会が警鐘…!次に巨大地震が起きる「地域の名前」《地図で一目瞭然》) ダイヤモンド・オンライン 姫田小夏氏による「中国の露骨な反発だけではない、世界の専門家が表明した「処理水への懸念」再検証」 「汚染水が安全であれば海洋に放出する必要はなく、安全でなければ海洋に放出すべきではない」との「主張」は、不本意ながら確かに説得力がある。 「米ミドルベリー国際研究所のフェレンク・ダルノキ=ベレス氏・・・は「東京電力と政府にその気があれば対処できる」とし、環境中に放出せず、コンクリートで固化させる代替案を提案」、「コンクリートで固化させ」た場合、体積はどの程度小さくなるのだろうか。余り小さくならないのであれば、現在の方式で流す方がラクだ。 「茨城大学理工学研究科の田内広教授に人体への影響を尋ねると、「高濃度については過去から調べられており影響が生じるのが明らかな一方、今回のような低濃度のトリチウム水については報告されている実験データを見ても影響が見えません。科学的に100%証明するのは無理ですが、合理的に考えて影響が出ることは考えられません」という回答・・・研究は“予算”に左右されるという一面が潜在する」、なるほど。 「福島第一原発から出た水は、炉心に触れた処理水である点が、通常の原子力発電所から海洋放出されているトリチウムを含む水とは条件が異なる。「炉心に触れた水」の研究はどうなっているのだろうか。 「タンクの中で有機結合型のトリチウムが生成されているとの指摘もあり、分析でこれをチェックする必要があると考えています。しかし、タンクの中の処理水については基本的に持ち出せないことになっているので、在野の研究者は誰も分析していないはずです」(伴氏)』、 「タンクの中の処理水」についても、研究用に持ち出し可能な量を持ち出し、それで研究することは可能な筈だ。 「処理水からトリチウムを分離する実用技術を公募しているが、東洋アルミニウム・・・がこれに応募したのだ。 同社の技術は処理水を加温して蒸気化してフィルターを通過させ、トリチウムを除去するというもので、現在、実現可能性を確認している段階にある。東京電力の担当者によれば、「もし実現可能となった場合は、濃いトリチウム水と薄いトリチウム水に分けることができ、薄いトリチウム水から流していくとともに、濃いトリチウム水は構内で保管し続けることで、約12年という半減期を活用し、トリチウムの量を保管の中で減らすことができる」 「核融合炉でも、薄めたトリチウム水を海洋放出する計画で、学会誌には、「この核融合の成功のためには福島第一原発のトリチウム処理水問題の速やかな解決が不可欠」だとする文言」、「核融合」でも「トリチウム処理水問題」があるとは初めて知った。 「原子力に頼らず、再生可能エネルギーへのシフトを進める――これが日本の歩むべき道であり、福島の原発事故で多大な被害を受けた人々に報いることができる唯一の道ではないだろうか」、そのためには、熱水発電などのようにベースとなる安定的な電力を生み出す仕組みが実用化することが、前提になる。 現代ビジネス「【志賀原発】「あわや電源消失、福島原発の二の舞の大惨事に...」能登半島地震で「志賀原発で起きたこと」への恐怖と地元で見つかった「新たなる切り札」」を」 「志賀原子力発電所」では「震度5強ながら変圧器が2台損傷し、復旧に半年以上かかること。電源は他ルートで確保できたものの、電源消失なら福島原発並みの大惨事につながっていたかもしれない」、頼りない限りだ。 「蓄電所」については、関西電力が子会社E-Flowを設立、その説明によれば、『電力が安い時間帯に市場で電気を買って蓄電池に充電、高い時間帯などに放電し活用する事業モデルです。再エネは今後さらに導入が進み、主力電源としての役割を果たすことになると考えています。一方で、天候次第で発電量の増減が激しく、変動を吸収する設備が必要です。電力需給の変動に合わせた発電量のコントロールは、従来、主に火力発電などが担ってきました。 しかし退出する電源も増えており、今後蓄電池は再エネの発電量が多い時間帯に充電することで、余剰電力を吸収する役割も担うことができます』、「発電量」の「変動」を石炭火力で調整するよりは、「蓄電所」で調整する方が望ましい。https://www.kepco.co.jp/corporate/report/yous/7/kanden-update/article2.html。 つまり、原発の電力消失時に、別系統の電源として接続し機能するという一時的なバックアップ電源のようだ。ただ、恒常的な電源として使うのであれば、比較的短時間だろう。 現代ビジネス「次の「M7クラス」大地震の前兆が現れている…!日本地震予知学会がいま、もっとも心配している「港町の名前」」 想像以上に大規模だったようだ。 「私たちがいま最も心配しているのは、断層の東端、つまり佐渡島付近で同じようなM7クラスの大地震が起きることです。 今回の地震で津波が比較的小さかったのは、断層の多くが内陸にあったからですが、佐渡島付近の海で地震が起きると大津波が発生します。日本海側最大級の港町、人口約80万人の新潟市は大きな津波の被害に襲われるでしょう・・・ 「活断層が破壊されていない割れ残りが存在しているために、私が注目している地域は実は他にもあります。 人口約160万人を擁する福岡市です。'05年にM7・0の福岡県西方沖地震を引き起こした警固断層に、割れ残りが存在するからです。次にそこが破壊されることは多くの地震学者の共通認識になっています。 割れ残りは福岡市中心部である博多区の真下にあり、残っている断層の長さを勘案すれば、最大震度7クラスの地震が懸念されます」、恐ろしいことだ。 「最近1年間はどれほど地震活動が活発なのか、静穏なのかを解析し、それを『地下天気図』と名付けて公表しています。当然ながら、ここ最近は能登半島が非常に活発化していました」 「逆に静穏化が進んでいる地域で注目されるのは北九州市や宗像市付近です。この地域の地震活動データを追跡するなかで複数の異常が確認されており、福岡県は総じて心配です。 他に地震活動が静穏化している地域としては、山梨県・長野県付近と、鹿児島県の屋久島付近が挙げられます」、お手柔らかに願いたいものだ。 現代ビジネス「日本地震予知学会が警鐘…!次に巨大地震が起きる「地域の名前」《地図で一目瞭然》」 「これから大きな地震が起こる可能性が低い地域は断層の歪みが解消されているところ。たとえば、今月地震が起きた能登半島です。 その意味では、阪神・淡路大震災が起きた神戸市なども可能性が低い。つまり、20世紀に入ってから大地震が起きたところは大丈夫です。いまマンションを買うなら、今後1000年間、大地震は起きないと見込まれる、神戸がおすすめです」、しかし「能登半島」は余震がまだかなり残っているようだ。 「東日本大震災が起きた東北地方。その最大余震は、まだ来ていないと考えられる・・・通常では、本震よりM1ほど小さい地震が最大余震として起こります。東日本大震災はM9.0でしたので、M8クラスの最大余震が想定されます。これまでの最大余震は3月11日当日に茨城県沖で起きたM7.6です・・・ これまでの最大余震は3月11日当日に茨城県沖で起きたM7.6です。それはM8の4分の1の大きさにすぎません・・・明治の地震の余震が、40年近く経った昭和に起きた。1933年の昭和三陸地震(M8.1)は1896年に発生した明治三陸地震(M8.2~8.5)の余震でした。明治の地震の余震が、40年近く経った昭和に起きた。今回の東日本大震災の最大余震もこれから起きることは十分に考えられるのです」、「40年近く経っ」てから「余震」が襲うようなことがあり得るとは初めて知った。 「「駿河湾から静岡県の内陸部を震源域とするM8クラスの巨大地震も想定されていますが、いつ発生してもおかしくはありません。静岡県では約10万5000人が犠牲になり、最悪の場合、全国で6000万人が被災してしまうという予測もあります。太平洋から離れた大阪府も他人事ではありません。1854年の安政南海地震では、大阪の道頓堀にまで津波が到達しているのです」、「大阪の道頓堀にまで津波が到達」とは大変な災害だったようだ。
小売業(一般)(その8)(「イトーヨーカ堂」3題:「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに、イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" 消費者理解の欠如に、ちぐはぐな改善策も…、ヨーカドー、大量撤退で「無責任」批判なぜ起きた 「地元の商店街をぶち壊したのに…」の声の"誤解") [産業動向]
小売業(一般)については、昨年5月2日に取上げた。今日は、(その8)(「イトーヨーカ堂」3題:「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに、イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" 消費者理解の欠如に、ちぐはぐな改善策も…、ヨーカドー、大量撤退で「無責任」批判なぜ起きた 「地元の商店街をぶち壊したのに…」の声の"誤解")である。
先ずは、昨年12月7日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの重道武司氏による「「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/333023
・『50年以上も連れ添った古女房を叩き出し、新しいカミさんを迎え入れる。しかも新旧両妻は、かねて因縁の間柄──とあっては格好の世間話ネタと言えなくもない。 流通大手、イトーヨーカ堂が「都内屈指」(業界関係者)ともいわれる好立地店から立ち退きを迫られる。後継テナントと目されているのは、最大のライバル、イオンだ。 焦点となっているのは「イトーヨーカドー上板橋店」。東武東上線上板橋駅から徒歩2分という超駅近物件だ』、こんな「好立地店から立ち退きを迫られる」には特別の事情があるのだろう。
・『■1971年に開業 地上4階建て、食料品のほか衣料品なども扱う総合スーパー(GMS)で、平日昼間でも多くの買い物客で賑わう。ヨーカ堂は土地・建物を所有する地元の不動産会社、小宮恒産と賃貸借契約を結び、1971年に開業した。 しかし、本体の業績悪化を受けて2000年以降、小宮恒産側に複数回にわたって賃料の減額を要請。小宮恒産もやむなくこれに応じてきたが、この間、ヨーカ堂側からは「建て替えを含む収益力向上に向けた抜本的な提案が何らなされなかった」(事情通)という。) このため、小宮恒産は21年末での賃貸借契約の終了を通告。ヨーカ堂側がこれを無視して居座り続けたことから明け渡しを求めて東京地裁に提訴、係争事件に発展していた。その結果、1審、2審ともヨーカ堂の敗訴で終わったことから、ヨーカ堂としては「上告審まで争っても勝ち目はない」(関係者)と判断、11月下旬になって退去を決めた。 店舗閉鎖の時期などは今後、両者で協議するが、小宮恒産側は「立ち退き料を支払う意向を示している」(事情通)という。そのうえで小宮では現有物件を解体。建て替えを行ってイオンに賃貸する方向のようだ。イオンでは新たな都市型ショッピングセンターブランド「そよら」での展開も含めて出店形態を検討しているとされる。 ヨーカ堂は3期連続最終赤字に陥っている。このため、親会社のセブン&アイ・ホールディングスは都内を中心に店舗網を集約。足元124店舗を26年2月末までに93店舗に絞り込む計画を進めている。ただ、上板橋店の“喪失”は「想定外」(幹部)とみられ、グループ内からは「痛い」の声も漏れる』、「本体の業績悪化を受けて2000年以降、小宮恒産側に複数回にわたって賃料の減額を要請。小宮恒産もやむなくこれに応じてきたが、この間、ヨーカ堂側からは「建て替えを含む収益力向上に向けた抜本的な提案が何らなされなかった」(事情通)という」、「本体の業績悪化」を理由として「値下げ」を迫ったようだが、本来はあくまで「上板橋店」が生み出すキャッシュフローが基礎となるべきで、そうすれば値下げの理由はなかっらのかも知れない。「小宮恒産は21年末での賃貸借契約の終了を通告。ヨーカ堂側がこれを無視して居座り続けたことから明け渡しを求めて東京地裁に提訴、係争事件に発展していた。その結果、1審、2審ともヨーカ堂の敗訴で終わったことから、ヨーカ堂としては「上告審まで争っても勝ち目はない」(関係者)と判断、11月下旬になって退去を決めた」、「ヨーカ堂側」はよにかく安くすることを優先し、よもやライバルが狙っているとは知らなかったのだろう。交渉担当チームはあとで、こっぴどく叱られた筈だ。
次に、本年2月16日付け東洋経済オンラインが掲載したチェーンストア研究家・ライターの谷頭 和希氏による「イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" 消費者理解の欠如に、ちぐはぐな改善策も…」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/735015
・『イトーヨーカドーが北海道・東北・信越の全17店舗をこの春から順次撤退していくというニュースが報道された。多くの論者が指摘する通り、都心周辺の店舗を残し、都心に特化する戦略だ。 前回(大量閉店「イトーヨーカドー」どこで間違えたのか)はこうした経緯に至る過程を、立地戦略というマクロな視点から概観した。 今回は、よりミクロな視点でヨーカドーについて考えてみよう。都心でヨーカドーは勝ち抜くことができるのか? それを考えるべく、筆者は週末から平日にわたって、東京都23区にあるイトーヨーカドー全15店舗を実際に巡り、現場を徹底的に分析してきた。 この後繰り広げる論考は、あくまで、イチ消費者かつイチ・イトーヨーカドーファンである筆者の個人的な感想に過ぎない。しかし、数日でギュッと見てきたからこその濃さはあるはずだ』、興味深そうだ。
・『見えてきたヨーカドーの“リアルな姿” というわけで、筆者は数日間で23区の15店舗を巡った(疲れた)。連続でイトーヨーカドーに行き続けることはなかなかないが、それゆえに現場レベルで多くの発見を得ることができた。まずは、回ってみての率直な感想を箇条書きで説明していこう。 ①どの店舗も、食料品売り場と、テナントとして入居しているチェーンストアには人がいる(逆にほとんどの客がそこにしかいない)) このことは、すでに情報として知ってはいたが、実際に行くと、すごい。本当に衣料品コーナーや雑貨コーナーには人がいないのだ。 ヨーカドーの店舗通路は広く、それは歩きやすいということでもあるのだが、人がいないと逆に不思議な風通しが生まれて、余計寂しく思えてしまう』、「衣料品コーナーや雑貨コーナーには人がいないのだ。 ヨーカドーの店舗通路は広く、それは歩きやすいということでもあるのだが、人がいないと逆に不思議な風通しが生まれて、余計寂しく思えてしまう」、なるほど。
・『一方、盛況だった食料品売り場 逆に食料品売り場はどの店もかなり混んでいて、活気がある。特に大森店などは非常に賑わいがあり、試食品販売の声なども相まって、楽しい。 食料品売り場は、さまざまな装飾もなされていて、わくわくする空間もある。 また、最近改装した店舗の食料品売り場ではディスプレイなどにも工夫が凝らされている。 たとえば、イトーヨーカドーアリオ西新井店では、商品棚の上にディスプレイを置いており、イトーヨーカドーアリオ北砂店でも、「ご当地レトルトカレーライブラリー」として、カレーが陳列されていた。食料品売り場にはこうした工夫もあった』、「食料品売り場」はどこも「盛況」のようだ。「食品スーパー」に堅調なところが多い訳だ。
・『チェーン系のテナントも混んでいた また、もう一つ混んでいるのが、入居するチェーン系のテナントだ。 代表的なものに、マクドナルド、100円ショップ、ミスタードーナツ、カルディ、GUなどがある。GMS部分がガラガラでも、こうした店には人が集まっている。つまり、人がいないわけではないのだ。 2024年秋頃の閉店が決定している上板橋店で一番混んでいたのは、マクドナルドだった』、「チェーン系のテナント」は激烈の競争に勝ち残った勝者だ。
・『②改装に伴い、売り場の至る所に空きがある。バックヤードをあけすけに見せてしまっている ヨーカドーは衣料品部門の不採算化を受けて、大規模な店舗改革に乗り出している。後述するが、不採算部門をテナントに変える方向だ。 現在、どの店でもそのためなのか、改装に伴って、売り場に空きが見られた。本来は店舗を盛り上げるための改装なのだが、逆に売り場が空きだらけで、イメージとして寂しさが増幅している。 もちろん、これは一過性のものなのだろうが、この問題が本質的なのは、例えばポップアップストアの展開前の機材がそのまま置かれていたり、客から見えるところにダンボールが積んであったり、「バックヤード」があからさまに見えてしまっていることだ。 というより、「バックヤード」を隠す意識があまりないようにさえ思える。 たとえば、イトーヨーカドー綾瀬店では、紅白幕で隠しているが、商品やダンボールの類が見えてしまっていた。また、イトーヨーカドー赤羽店では、無造作に置かれたマネキンたちが確認できた。 もちろん店舗運営において、こうしたバックヤードを完全に隠すことはとても難しいだろう。しかし、消費者の立場からすれば、ダンボールが乱雑に置かれていたり、売り場がスカスカなのは、良い印象を抱かないはずだ。 実際、百貨店などでフロアの改装が行われる場合は、目隠しのための壁が用意されていることが多い。今回のイトーヨーカドー行脚を通じて、「あの壁には意味があったんだな」と感じさせられた』、「百貨店などでフロアの改装が行われる場合は、目隠しのための壁が用意されていることが多い。今回のイトーヨーカドー行脚を通じて、「あの壁には意味があったんだな」と感じさせられた」、なるほど。
・『せっかくの改革案も、消費者目線ではない感が… ③改装した店舗では、商品構成を大きく変えているが、それが逆にわかりづらい 近年、ヨーカドーは業績悪化を受けて、さまざまな売り場改革をしている。 例えば、「イトーヨーカドー高砂店」では、これまで衣料品や雑貨として売られていたフロアが再編され「新しい生活様式のフロア」となっている。高砂店以外のいくつかのヨーカドーでもこうした売り場は見られた。) この編成によって、商品はその種類ではなく、「家事をする」「毎日をサポートする」「身なりを整える」というように機能で分類されている。 これ自体はより生活に密着した売り場にしようという意図が見えるのだが、問題はその分類のわかりづらさだ』、「機能で分類されている。 これ自体はより生活に密着した売り場にしようという意図が見えるのだが、問題はその分類のわかりづらさだ」、一時的にはやむを得ないだろう。
・『DX面でも本末転倒な施策が見られた 例えば、高砂店の「家事をする」というコーナーには時計やライト、マウスなどが分類されて置かれていた。正直いえば「家事をする」というイメージで、これらの商品を探し出すのは難しいのではないかと思う。 こうした点で、逆に売り場のわかりにくさが増幅しているところも散見された』、「高砂店の「家事をする」というコーナーには時計やライト、マウスなどが分類されて置かれていた。正直いえば「家事をする」というイメージで、これらの商品を探し出すのは難しいのではないかと思う。 こうした点で、逆に売り場のわかりにくさが増幅しているところも散見された」、これも一時的にはやむを得ないだろう。
・『④セルフレジが機能していない また、近年ではどこのスーパーでも採用されているが、改装した店舗では、セルフレジの台数も多い。 しかし、特にヨーカドーの場合、客層はシニア層が多く、店舗によってはほとんどセルフレジが使われていないところもあった。セルフレジが多い分、有人レジの台数は少なく、レジの行列が長くなっているところがあるのだ。 DXに伴う改革は、小売店であればもちろん対応する必要があるだろう。しかしなぜDXをするのかといえば、それは顧客の利益になるからだ。しかし、現在のヨーカドー店舗の多くでは、本末転倒な事態が起こっている。 労働者不足の昨今では、セルフレジをある程度導入しないと現場が回らない現実もあるかもしれないが、だからといってシニア層の足が遠のく原因になってはいけないはずだ。 ここまで、店舗を巡って感じた率直な意見を書いてきた。正直なところ、都内の店舗でも、駅前の便利なところにあるから行く、ぐらいに思えてしまうのがつらい』、「特にヨーカドーの場合、客層はシニア層が多く、店舗によってはほとんどセルフレジが使われていないところもあった。セルフレジが多い分、有人レジの台数は少なく、レジの行列が長くなっているところがあるのだ」、店の特性に合わせた「有人レジの台数」に「すべきだろう。
・『15店舗めぐった筆者なりの改善策を考えてみた では、イトーヨーカドーに勝ち筋はあるのだろうか。 以下、ここまでのフィールドワークを通して、僭越ではあるが、イトーヨーカドーがどうなれば、より楽しい買い物体験ができるのかを考えてみた。 これは、コンサルとか偉そうなものではなく、私がイトーヨーカドーにこうなってほしい、というような、それなりのファン精神を含んだイチ顧客としての願望混じりのものであることをあらかじめ断っておきたい。 ①ショッピングモール化を推し進める(食料品売り場の他に客数が多いのは、入居しているチェーンである。特にミスタードーナツやカルディ、100円ショップ(ダイソー、キャンドゥ、Seria等)に多くの人が集まっている。 これらが人気の理由については、それぞれいくつかの記事も発表されているだろうからここでは詳しく書かないが、とにかく売るものの「コンテンツ」でいえば、ヨーカドーはこれらの店に敵わない。 であれば、GMSという「コンテンツ」は捨て、むしろ、そうしたコンテンツをさまざまに集め配置する「プラットフォーム」に変化することが一つの可能性としてあるだろう。つまり、ショッピングモール化である。) 実は、ヨーカドーはこうしたショッピングモール化に舵を切ろうとしている。 近年の改革では、GMSとして扱う商品のうち、不採算部門である肌着以外の衣料品売り場をなくし、それらを専門店へと変化させようとしている。いわば、GMSという存在自体を否定する改革だ。 では、これで一安心かといえばそうではないと思う。というのも、「ショッピングモール化」は確かに必要なプロセスにしても、最終的な目的ではないからだ。そこで次の②だ』、「「ショッピングモール化」は確かに必要なプロセスにしても、最終的な目的ではない」、「最終的な目的」とは何なのだろう。
・『②顧客ニーズをもっと汲み取り、消費者理解を進める なぜ、テナントに人が集まるのか。それは入居するチェーンストアが、顧客に選ばれているからだ。なぜ、顧客に選ばれているのかといえば、それは顧客ニーズを満たしているから。 100均は安く、さまざまな商品が手に入るし、意外な商品があったりもして楽しい買い物体験を提供してくれる。ミスタードーナツは、美味しいドーナツを低価格で食べられ、居心地も良く、最近では多くのファンも生み出している。こうした人気の店舗は、常に消費者が何を求めているのかを敏感にキャッチし、それを経営戦略に活かしている。 あまりにも当然だが、消費者理解がすべてにおいて重要なのだ。消費者の動向を考えれば、GMSという業態が古く、ショッピングモールのようなもののほうがニーズを満たしていることは明白で、だからこそショッピングモール化を進めるべきなのだ』、「GMSという業態が古く、ショッピングモールのようなもののほうがニーズを満たしていることは明白で、だからこそショッピングモール化を進めるべきなのだ」、その通りだ。
・『そこに消費者理解の姿勢はあるのか? では、こうした消費者理解の姿勢が、イトーヨーカドーにあるかといえば、やはり疑問符が付いてしまう。それは、先ほども述べてきたところだ。 実は、ヨーカドーはもともと、消費者理解、消費者に寄り添う経営を大事にしてきた企業であった。その創業者である伊藤雅俊は、ヨーカドーの事業を多角化せず、GMS業態だけを守り続けた。それは、事業を多角化して、本業のGMSの売り場が荒れると顧客からの信用がなくなってしまうという伊藤の危機感にあったといわれている。 また、POSシステムによる単品管理を行ったのも早かったが、これも伊藤が、かつての個人商店のように「顔の見えるお客さん」がそれぞれどのようなニーズで商品を購入しているのかを的確に把握できるようにするためのものであった(三品和広+三品ゼミ『総合スーパーの興亡』)。) そもそも、ヨーカドーの始まりは、浅草にあった洋品店で、そこでは顔の見える関係性の中で商いが行われていたはずだ。そのような消費者理解の原点に立ち返るべきなのではないか』、「顔の見える関係性の中で商いが行われていたはずだ。そのような消費者理解の原点に立ち返るべきなのではないか」、今さら原点に立ち返」ろうとしても困難なのではなあろうか。
・『③立地を活かす 創業者の伊藤は、その立地について非常に慎重だったという。出店地域の交通量や家族構成などを綿密に調べあげたうえで最終的に出店にGOサインを出した。そのため、特に都内23区のヨーカドーの立地は非常に優れている。 また、ヨーカドーが多く出店をする、江戸川区、江東区などの東東京エリアは、東京スカイツリーの開業以後、不動産価値も上がり続けている地域だ。 近年では、かつしかけいたのマンガ『東東京区区』でその地域の多様性が描かれるなど、文化的に再注目を集めている。筆者の知り合いも、ヨーカドーがある木場に引っ越すなど、エリアとしての価値は高い。 その点で、こうしたエリアに店舗を持っていることの意義は深いはずだ。ヨーカドーが店舗改革の成功例としている大森店は、大森という下町の代表的な場所に位置していて、食料品売り場の活気も非常にある。試食品販売なども盛んで、かつての商店街を見ているかのような賑わいであった。 試食品の実演コーナーを設けるなどの工夫が、最近の店舗改革では見られるが、そうした改革で、いかに下町の活気をうまく取り込めるかが重要だ』、「大森店」のような「成功例」を如何に増やしていくかが重要だ。
・『買い物の楽しさをヨーカドーは取り戻せるか というわけで、ずいぶんと好き勝手に書いてしまった。これらは15店舗を全部巡ったからこそ見えてきた視点だったと思う。) 基本的に筆者は、楽しく買い物をしたいし、楽しんで買い物をできる場所が増えてくれればいいな、と感じている。 伊藤雅俊が築いたヨーカドーは、立地の面、そして知名度の面でも、たぶん、うまくやれば楽しい買い物体験を提供できる場所になるポテンシャルはあると思う。 ヨーカドーが今後どうなっていくのかは誰にもわからない。 しかし、筆者はまた数年後、23区内のヨーカドーを全部巡ってみようと思う。そのとき、ヨーカドーで楽しい買い物経験ができることを願いながら……。 =敬称略= 筆者が巡った23区内・全店舗はこちら)』、「うまくやれば楽しい買い物体験を提供できる場所になるポテンシャルはある」、そのポテンシャルを引き出して、「買い物の楽しさを」「取り戻せるか」がポイントだ。
第三に、2月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したチェーンストア研究家・ライターの谷頭 和希氏による「ヨーカドー、大量撤退で「無責任」批判なぜ起きた 「地元の商店街をぶち壊したのに…」の声の"誤解"」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/735986
・『セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下のイトーヨーカ堂が、北海道・東北・信越地方の17店を閉店すると報じられた。同エリアからの撤退により、ヨーカドー空白地帯が拡大することになる。中四国、九州、沖縄にはすでにヨーカドーはない。 筆者はこれまで2回、このニュースを受けて、ヨーカドーの歴史や、実際の現地のフィールドワークを通して見えてきたそのリアルな姿について書いてきた。今回は、そのシリーズのラストとして、今回のヨーカドー撤退に伴って巻き起こった「ヨーカドーは無責任」という言説について、検討してみたい』、興味深そうだ。
・『商店街を潰したヨーカドーが撤退するのは無責任? ヨーカドーが撤退するというニュースを受けて、各所から聞こえた声の一つが「無責任」という声だった。いろいろな人の投稿の要点をまとめると、こんな感じだ。 「ヨーカドーは出店する際にさんざん地元商店をぶち壊した。にもかかわらず、利益が上がらなければ撤退するとは無責任だ、けしからん」 このとき言われる「地元商店」とは往々にして「商店街」のことが念頭に置かれている場合が多く、こうした言説は、たしかに私たちの頭にすんなりと入ってくるものである。「スーパーvs商店街」とでもいおうか。) こうした構図は、なぜか私たちの頭の中に小売りをめぐる「型」としてインストールされている。「ありきたりな決まり文句」を「クリシェ」というが、まさにこうした言説は小売りをめぐるクリシェである。 今回、ヨーカドーが撤退するというニュースを受けて、私たちの中にあるそのクリシェが顔を出した、というわけだ。 しかし、この「スーパーが商店街を潰した」という構図、実はかなりイメージ先行のものであることを指摘しなければならない。 まず、最初に断っておかなければならないのは、もちろん、日本全国でみれば、ヨーカドー等のGMSが出店したことによって存続が厳しくなった中小小売店が存在することも確かだ、ということ。それはもちろん認識したうえで、このクリシェに隠された「ウソ」を見ていきたい。 『日本流通史: 小売業の近現代』などの著作を持つ満薗勇によれば、そもそも「商店街」という小売りの形態が本格的に成立したのは1920〜1930年代で、全盛期を迎えたのは1950年〜1970年代。そして、衰退期を迎えるのは1970年代以降。「商店街実態調査報告書」によれば、自身の商店街を「繁栄している」と回答したのは、1970年の39.5%から1990年には8.5%になる。 満薗が指摘するのは、この商店街が最も栄えた1950〜1970年代は同時に、総合スーパーが隆盛を極めた時期でもあったということだ。ダイエーが大きく店舗を伸ばしたのは1960年代だし、ヨーカドーがGMSとして「ヨーカ堂」となったのも1958年のことだ。 私たちのイメージの時系列でいえば、「商店街」→「スーパー」という流れで捉えられることが多いのだが、実はこの2つはかなりの時期、共存してきたのである』、「私たちのイメージの時系列でいえば、「商店街」→「スーパー」という流れで捉えられることが多いのだが、実はこの2つはかなりの時期、共存してきた」、なるほど。
・『「大店法廃止」への批判も、実は的外れ 実は、こうした併存の形は、現在でも都内を中心とするヨーカドーではかなり見ることができる姿でもある。 一つ前の記事で、筆者は23区のヨーカドーすべてを実際に見て回ったのだが、例えばヨーカドー大森店の近くには、大森の商店街があって、基本的にはどちらも賑わいがあった。私たちが「スーパーvs商店街」と思うほどには、その両者は鋭くは対立しないのである。 関連記事:イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" また、こうした議論のときによく言われる「大店法廃止」の影響も、実は時期からいうと検討はずれの批判だ。) 「大店法」は1974年から始まった法律で、大規模な小売店舗の出店を規制するものであった。それがスタートした1974年は、すでに商店街の衰退は始まっていて、むしろ衰退していくものを守ろうという応急処置にしかならなかった。 大店法が廃止されたのは2000年で、さきほどの「商店街実態調査報告書」では、すでに、自身の商店街が繁栄している、と思っていたのは2%前後の人しかいなかった。大店法があろうがなかろうが、商店街の衰退は行くところまで行っていたのだ。 以上のようなデータも踏まえると、今回のヨーカドー撤退における批判が、イメージ先行であることがよくわかるだろう』、「大店法があろうがなかろうが、商店街の衰退は行くところまで行っていたのだ」、なるほど。
・『「スーパーマーケット=悪」論とファスト風土批判論は似ている しかし、なぜ、こうした「スーパーvs商店街」という構図がここまで根強いイメージを持ち続けているのだろうか。 この点について、筆者は以前東洋経済オンラインで「地方都市の『ファスト風景化』勝手に憂う人の病理」という記事を書いていて、そこで取り上げた議論が参考にできる。 この記事では、「今の地方はチェーンストアやショッピングモールばかりになってつまらない」という、いわゆる「ファスト風土」を批判する人が多いことに対して、それがいかに「幻想の中の郊外像」にすぎないのかを提示し、なおかつ、そのような人が理想の街の姿として「商店街」を一つの典型パターンとして「人と人との触れ合い」を求める傾向にあると書いた。 今回ヨーカドーの撤退騒動で出てきたクリシェは、まさにこうした感覚と通じるものがあるのではないだろうか。つまり、「スーパー=悪」、「商店街=善」として、単純な善悪の問題でこうした出来事を片付けようという考え方である。 もちろん、これはヨーカドーに限った話ではない。例えばイオンモールなども、「地方の商店街を破壊した存在」として、これまで散々語られてきている。) では、こうした認識はどこから生まれるのか。重要なのは「交通」である。 この記事では、「商店街」を理想の街とする人々の考え方に、「自動車」という交通手段が登場しないことにも触れ、そうした人々の「街」観が「歩行ベース」のものなのではないか、とも書いた。 しかし、現実には、日本国民全体の車の保有台数は歴史上、現在がもっとも高く、多くの商業施設が国道沿いに誕生している。街の形が、線上になっているのだ。 その一方で駅前を中心とする歩行ベースの都市は(シャッター商店街が顕著に表しているように)、衰退している。 実は今回のヨーカドー問題についても、こうした「自動車」と「歩行」の問題は顔をのぞかせている。ヨーカドーが撤退する地域について、「別にヨーカドーがなくても車で少しいけばいくらでも商業施設はある」という意見が見られたからだ。 もちろん、高齢化社会が進み、免許を返納する高齢者が多くなってくることも踏まえる必要はあるし、それはそれで解決しなければいけない問題だが、たしかに』、「駅前からヨーカドーがなくなったとしても、ロードサイド沿いの店舗で買い物をする、という選択肢もある。 実際、駅前から少し離れれば、今回ヨーカドーが撤退した北海道、東北、信越でも、ショッピングモールをはじめとする多くの商業施設が立ち並んでいる。 その意味でも、イメージする「街」観のズレがこうした批判を生ませるのだ」、なるほど。
・『結局、すべてを決めるのは「顧客」 最後に、補足的に重要なことを述べておこう。 近年、商店街が衰退してきたことに対しては、さまざまな理由が指摘されている。その中でも多く語られるのは、結局、商店街自体が顧客にとって魅力あるものでなくなってきた、ということだ。 中小企業診断士の鈴木隆男はこの点について、商店街の「外の敵」、ではなくて「内の敵」がその衰退の要因の一つになっていたという(東京都中小企業診断士協会のサイトより)。 また、中沢孝夫は『変わる商店街』の中で、商店街にある店が「地域独占」で、ある種の「殿様商売」的になっていた可能性を指摘する。 共存していた商店街とGMSは、結果的にGMSだけが生き残っていく状態になったが、それは、顧客の好みを敏感に反映していたのが、GMSだったからではないか。イトーヨーカドーは、かつて「顧客理解」に大きな力を注ぎ、顧客の満足度を高めようとしていた(三品和広+三品ゼミ『総合スーパーの興亡』)。GMSに結果的に客が流れたのは、顧客ニーズを的確にくみ取ったゆえだろう。) こうして考えると、一つの「悪」の組織があって、それが何かを駆逐していくという単純な図式で消費の動向を見ることはできなくて、結局は顧客の満足度に寄与した店が生き残るという当然の結果が見えてくる。 その流れの中で、郊外の商業施設が盛り上がりを見せ、かつて商店街から流れた顧客を満足させてきたイトーヨーカドーが、今度は顧客を満足させられなくなり、苦戦を強いられている』、「結局は顧客の満足度に寄与した店が生き残るという当然の結果が見えてくる。 その流れの中で、郊外の商業施設が盛り上がりを見せ、かつて商店街から流れた顧客を満足させてきたイトーヨーカドーが、今度は顧客を満足させられなくなり、苦戦を強いられている」、なるほど。
・『23区15店舗を歩いてわかったヨーカドーの問題点 前回の記事では、筆者は現在のイトーヨーカドーについて、主に以下の4つを問題にあげている。 ①どの店舗も、食料品売り場と、テナントとして入居しているチェーンストアには人がいる(逆にほとんどの客がそこにしかいない) ②改装に伴い、売り場の至る所に空きがある。バックヤードをあけすけに見せてしまっている ③改装した店舗では、商品構成を大きく変えているが、それが逆にわかりづらい ④セルフレジが機能していない この記事には少なくない反応が寄せられているが、生の声は筆者が思う以上にリアルだった。例えば、以下のような声が一例だ。 「普通のレジ余ってるのに、ガラガラのセルフレジに3人も4人も従業員かけてて普通のレジに長蛇の列ができてるのを延々続けてたりしてるし、よくある自分たちで潰そうとしてるのかと思うパターン」 「それでどうして衣料品売り場も雑貨売り場も重宝される地方から潰していくのか理解できない」 「ヨーカドーのGMSという形態そのものが業績改善の進まない最大の要因なんだよなぁ」 拡大時は「街の商店街を破壊する」と批判され、撤退時にも「さんざん地元の商店街をぶち壊したのに、利益が上がらなければ撤退するとは無責任だ」と言われたヨーカドー。 本稿ではその見方そのものの誤解を説明してきたわけだが、重要なのは、その時代に適したものが生き残るということだ。 消費文化を取り巻く人々のイメージにかかわらず、結局重要なのは、「顧客」を向いているかどうか、なのかもしれない』、「「普通のレジ余ってるのに、ガラガラのセルフレジに3人も4人も従業員かけてて普通のレジに長蛇の列ができてるのを延々続けてたりしてるし、よくある自分たちで潰そうとしてるのかと思うパターン」 「それでどうして衣料品売り場も雑貨売り場も重宝される地方から潰していくのか理解できない」 「ヨーカドーのGMSという形態そのものが業績改善の進まない最大の要因なんだよなぁ」、「重要なのは、その時代に適したものが生き残るということだ。 消費文化を取り巻く人々のイメージにかかわらず、結局重要なのは、「顧客」を向いているかどうか、なのかもしれない」、その通りだ。
先ずは、昨年12月7日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの重道武司氏による「「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/333023
・『50年以上も連れ添った古女房を叩き出し、新しいカミさんを迎え入れる。しかも新旧両妻は、かねて因縁の間柄──とあっては格好の世間話ネタと言えなくもない。 流通大手、イトーヨーカ堂が「都内屈指」(業界関係者)ともいわれる好立地店から立ち退きを迫られる。後継テナントと目されているのは、最大のライバル、イオンだ。 焦点となっているのは「イトーヨーカドー上板橋店」。東武東上線上板橋駅から徒歩2分という超駅近物件だ』、こんな「好立地店から立ち退きを迫られる」には特別の事情があるのだろう。
・『■1971年に開業 地上4階建て、食料品のほか衣料品なども扱う総合スーパー(GMS)で、平日昼間でも多くの買い物客で賑わう。ヨーカ堂は土地・建物を所有する地元の不動産会社、小宮恒産と賃貸借契約を結び、1971年に開業した。 しかし、本体の業績悪化を受けて2000年以降、小宮恒産側に複数回にわたって賃料の減額を要請。小宮恒産もやむなくこれに応じてきたが、この間、ヨーカ堂側からは「建て替えを含む収益力向上に向けた抜本的な提案が何らなされなかった」(事情通)という。) このため、小宮恒産は21年末での賃貸借契約の終了を通告。ヨーカ堂側がこれを無視して居座り続けたことから明け渡しを求めて東京地裁に提訴、係争事件に発展していた。その結果、1審、2審ともヨーカ堂の敗訴で終わったことから、ヨーカ堂としては「上告審まで争っても勝ち目はない」(関係者)と判断、11月下旬になって退去を決めた。 店舗閉鎖の時期などは今後、両者で協議するが、小宮恒産側は「立ち退き料を支払う意向を示している」(事情通)という。そのうえで小宮では現有物件を解体。建て替えを行ってイオンに賃貸する方向のようだ。イオンでは新たな都市型ショッピングセンターブランド「そよら」での展開も含めて出店形態を検討しているとされる。 ヨーカ堂は3期連続最終赤字に陥っている。このため、親会社のセブン&アイ・ホールディングスは都内を中心に店舗網を集約。足元124店舗を26年2月末までに93店舗に絞り込む計画を進めている。ただ、上板橋店の“喪失”は「想定外」(幹部)とみられ、グループ内からは「痛い」の声も漏れる』、「本体の業績悪化を受けて2000年以降、小宮恒産側に複数回にわたって賃料の減額を要請。小宮恒産もやむなくこれに応じてきたが、この間、ヨーカ堂側からは「建て替えを含む収益力向上に向けた抜本的な提案が何らなされなかった」(事情通)という」、「本体の業績悪化」を理由として「値下げ」を迫ったようだが、本来はあくまで「上板橋店」が生み出すキャッシュフローが基礎となるべきで、そうすれば値下げの理由はなかっらのかも知れない。「小宮恒産は21年末での賃貸借契約の終了を通告。ヨーカ堂側がこれを無視して居座り続けたことから明け渡しを求めて東京地裁に提訴、係争事件に発展していた。その結果、1審、2審ともヨーカ堂の敗訴で終わったことから、ヨーカ堂としては「上告審まで争っても勝ち目はない」(関係者)と判断、11月下旬になって退去を決めた」、「ヨーカ堂側」はよにかく安くすることを優先し、よもやライバルが狙っているとは知らなかったのだろう。交渉担当チームはあとで、こっぴどく叱られた筈だ。
次に、本年2月16日付け東洋経済オンラインが掲載したチェーンストア研究家・ライターの谷頭 和希氏による「イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" 消費者理解の欠如に、ちぐはぐな改善策も…」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/735015
・『イトーヨーカドーが北海道・東北・信越の全17店舗をこの春から順次撤退していくというニュースが報道された。多くの論者が指摘する通り、都心周辺の店舗を残し、都心に特化する戦略だ。 前回(大量閉店「イトーヨーカドー」どこで間違えたのか)はこうした経緯に至る過程を、立地戦略というマクロな視点から概観した。 今回は、よりミクロな視点でヨーカドーについて考えてみよう。都心でヨーカドーは勝ち抜くことができるのか? それを考えるべく、筆者は週末から平日にわたって、東京都23区にあるイトーヨーカドー全15店舗を実際に巡り、現場を徹底的に分析してきた。 この後繰り広げる論考は、あくまで、イチ消費者かつイチ・イトーヨーカドーファンである筆者の個人的な感想に過ぎない。しかし、数日でギュッと見てきたからこその濃さはあるはずだ』、興味深そうだ。
・『見えてきたヨーカドーの“リアルな姿” というわけで、筆者は数日間で23区の15店舗を巡った(疲れた)。連続でイトーヨーカドーに行き続けることはなかなかないが、それゆえに現場レベルで多くの発見を得ることができた。まずは、回ってみての率直な感想を箇条書きで説明していこう。 ①どの店舗も、食料品売り場と、テナントとして入居しているチェーンストアには人がいる(逆にほとんどの客がそこにしかいない)) このことは、すでに情報として知ってはいたが、実際に行くと、すごい。本当に衣料品コーナーや雑貨コーナーには人がいないのだ。 ヨーカドーの店舗通路は広く、それは歩きやすいということでもあるのだが、人がいないと逆に不思議な風通しが生まれて、余計寂しく思えてしまう』、「衣料品コーナーや雑貨コーナーには人がいないのだ。 ヨーカドーの店舗通路は広く、それは歩きやすいということでもあるのだが、人がいないと逆に不思議な風通しが生まれて、余計寂しく思えてしまう」、なるほど。
・『一方、盛況だった食料品売り場 逆に食料品売り場はどの店もかなり混んでいて、活気がある。特に大森店などは非常に賑わいがあり、試食品販売の声なども相まって、楽しい。 食料品売り場は、さまざまな装飾もなされていて、わくわくする空間もある。 また、最近改装した店舗の食料品売り場ではディスプレイなどにも工夫が凝らされている。 たとえば、イトーヨーカドーアリオ西新井店では、商品棚の上にディスプレイを置いており、イトーヨーカドーアリオ北砂店でも、「ご当地レトルトカレーライブラリー」として、カレーが陳列されていた。食料品売り場にはこうした工夫もあった』、「食料品売り場」はどこも「盛況」のようだ。「食品スーパー」に堅調なところが多い訳だ。
・『チェーン系のテナントも混んでいた また、もう一つ混んでいるのが、入居するチェーン系のテナントだ。 代表的なものに、マクドナルド、100円ショップ、ミスタードーナツ、カルディ、GUなどがある。GMS部分がガラガラでも、こうした店には人が集まっている。つまり、人がいないわけではないのだ。 2024年秋頃の閉店が決定している上板橋店で一番混んでいたのは、マクドナルドだった』、「チェーン系のテナント」は激烈の競争に勝ち残った勝者だ。
・『②改装に伴い、売り場の至る所に空きがある。バックヤードをあけすけに見せてしまっている ヨーカドーは衣料品部門の不採算化を受けて、大規模な店舗改革に乗り出している。後述するが、不採算部門をテナントに変える方向だ。 現在、どの店でもそのためなのか、改装に伴って、売り場に空きが見られた。本来は店舗を盛り上げるための改装なのだが、逆に売り場が空きだらけで、イメージとして寂しさが増幅している。 もちろん、これは一過性のものなのだろうが、この問題が本質的なのは、例えばポップアップストアの展開前の機材がそのまま置かれていたり、客から見えるところにダンボールが積んであったり、「バックヤード」があからさまに見えてしまっていることだ。 というより、「バックヤード」を隠す意識があまりないようにさえ思える。 たとえば、イトーヨーカドー綾瀬店では、紅白幕で隠しているが、商品やダンボールの類が見えてしまっていた。また、イトーヨーカドー赤羽店では、無造作に置かれたマネキンたちが確認できた。 もちろん店舗運営において、こうしたバックヤードを完全に隠すことはとても難しいだろう。しかし、消費者の立場からすれば、ダンボールが乱雑に置かれていたり、売り場がスカスカなのは、良い印象を抱かないはずだ。 実際、百貨店などでフロアの改装が行われる場合は、目隠しのための壁が用意されていることが多い。今回のイトーヨーカドー行脚を通じて、「あの壁には意味があったんだな」と感じさせられた』、「百貨店などでフロアの改装が行われる場合は、目隠しのための壁が用意されていることが多い。今回のイトーヨーカドー行脚を通じて、「あの壁には意味があったんだな」と感じさせられた」、なるほど。
・『せっかくの改革案も、消費者目線ではない感が… ③改装した店舗では、商品構成を大きく変えているが、それが逆にわかりづらい 近年、ヨーカドーは業績悪化を受けて、さまざまな売り場改革をしている。 例えば、「イトーヨーカドー高砂店」では、これまで衣料品や雑貨として売られていたフロアが再編され「新しい生活様式のフロア」となっている。高砂店以外のいくつかのヨーカドーでもこうした売り場は見られた。) この編成によって、商品はその種類ではなく、「家事をする」「毎日をサポートする」「身なりを整える」というように機能で分類されている。 これ自体はより生活に密着した売り場にしようという意図が見えるのだが、問題はその分類のわかりづらさだ』、「機能で分類されている。 これ自体はより生活に密着した売り場にしようという意図が見えるのだが、問題はその分類のわかりづらさだ」、一時的にはやむを得ないだろう。
・『DX面でも本末転倒な施策が見られた 例えば、高砂店の「家事をする」というコーナーには時計やライト、マウスなどが分類されて置かれていた。正直いえば「家事をする」というイメージで、これらの商品を探し出すのは難しいのではないかと思う。 こうした点で、逆に売り場のわかりにくさが増幅しているところも散見された』、「高砂店の「家事をする」というコーナーには時計やライト、マウスなどが分類されて置かれていた。正直いえば「家事をする」というイメージで、これらの商品を探し出すのは難しいのではないかと思う。 こうした点で、逆に売り場のわかりにくさが増幅しているところも散見された」、これも一時的にはやむを得ないだろう。
・『④セルフレジが機能していない また、近年ではどこのスーパーでも採用されているが、改装した店舗では、セルフレジの台数も多い。 しかし、特にヨーカドーの場合、客層はシニア層が多く、店舗によってはほとんどセルフレジが使われていないところもあった。セルフレジが多い分、有人レジの台数は少なく、レジの行列が長くなっているところがあるのだ。 DXに伴う改革は、小売店であればもちろん対応する必要があるだろう。しかしなぜDXをするのかといえば、それは顧客の利益になるからだ。しかし、現在のヨーカドー店舗の多くでは、本末転倒な事態が起こっている。 労働者不足の昨今では、セルフレジをある程度導入しないと現場が回らない現実もあるかもしれないが、だからといってシニア層の足が遠のく原因になってはいけないはずだ。 ここまで、店舗を巡って感じた率直な意見を書いてきた。正直なところ、都内の店舗でも、駅前の便利なところにあるから行く、ぐらいに思えてしまうのがつらい』、「特にヨーカドーの場合、客層はシニア層が多く、店舗によってはほとんどセルフレジが使われていないところもあった。セルフレジが多い分、有人レジの台数は少なく、レジの行列が長くなっているところがあるのだ」、店の特性に合わせた「有人レジの台数」に「すべきだろう。
・『15店舗めぐった筆者なりの改善策を考えてみた では、イトーヨーカドーに勝ち筋はあるのだろうか。 以下、ここまでのフィールドワークを通して、僭越ではあるが、イトーヨーカドーがどうなれば、より楽しい買い物体験ができるのかを考えてみた。 これは、コンサルとか偉そうなものではなく、私がイトーヨーカドーにこうなってほしい、というような、それなりのファン精神を含んだイチ顧客としての願望混じりのものであることをあらかじめ断っておきたい。 ①ショッピングモール化を推し進める(食料品売り場の他に客数が多いのは、入居しているチェーンである。特にミスタードーナツやカルディ、100円ショップ(ダイソー、キャンドゥ、Seria等)に多くの人が集まっている。 これらが人気の理由については、それぞれいくつかの記事も発表されているだろうからここでは詳しく書かないが、とにかく売るものの「コンテンツ」でいえば、ヨーカドーはこれらの店に敵わない。 であれば、GMSという「コンテンツ」は捨て、むしろ、そうしたコンテンツをさまざまに集め配置する「プラットフォーム」に変化することが一つの可能性としてあるだろう。つまり、ショッピングモール化である。) 実は、ヨーカドーはこうしたショッピングモール化に舵を切ろうとしている。 近年の改革では、GMSとして扱う商品のうち、不採算部門である肌着以外の衣料品売り場をなくし、それらを専門店へと変化させようとしている。いわば、GMSという存在自体を否定する改革だ。 では、これで一安心かといえばそうではないと思う。というのも、「ショッピングモール化」は確かに必要なプロセスにしても、最終的な目的ではないからだ。そこで次の②だ』、「「ショッピングモール化」は確かに必要なプロセスにしても、最終的な目的ではない」、「最終的な目的」とは何なのだろう。
・『②顧客ニーズをもっと汲み取り、消費者理解を進める なぜ、テナントに人が集まるのか。それは入居するチェーンストアが、顧客に選ばれているからだ。なぜ、顧客に選ばれているのかといえば、それは顧客ニーズを満たしているから。 100均は安く、さまざまな商品が手に入るし、意外な商品があったりもして楽しい買い物体験を提供してくれる。ミスタードーナツは、美味しいドーナツを低価格で食べられ、居心地も良く、最近では多くのファンも生み出している。こうした人気の店舗は、常に消費者が何を求めているのかを敏感にキャッチし、それを経営戦略に活かしている。 あまりにも当然だが、消費者理解がすべてにおいて重要なのだ。消費者の動向を考えれば、GMSという業態が古く、ショッピングモールのようなもののほうがニーズを満たしていることは明白で、だからこそショッピングモール化を進めるべきなのだ』、「GMSという業態が古く、ショッピングモールのようなもののほうがニーズを満たしていることは明白で、だからこそショッピングモール化を進めるべきなのだ」、その通りだ。
・『そこに消費者理解の姿勢はあるのか? では、こうした消費者理解の姿勢が、イトーヨーカドーにあるかといえば、やはり疑問符が付いてしまう。それは、先ほども述べてきたところだ。 実は、ヨーカドーはもともと、消費者理解、消費者に寄り添う経営を大事にしてきた企業であった。その創業者である伊藤雅俊は、ヨーカドーの事業を多角化せず、GMS業態だけを守り続けた。それは、事業を多角化して、本業のGMSの売り場が荒れると顧客からの信用がなくなってしまうという伊藤の危機感にあったといわれている。 また、POSシステムによる単品管理を行ったのも早かったが、これも伊藤が、かつての個人商店のように「顔の見えるお客さん」がそれぞれどのようなニーズで商品を購入しているのかを的確に把握できるようにするためのものであった(三品和広+三品ゼミ『総合スーパーの興亡』)。) そもそも、ヨーカドーの始まりは、浅草にあった洋品店で、そこでは顔の見える関係性の中で商いが行われていたはずだ。そのような消費者理解の原点に立ち返るべきなのではないか』、「顔の見える関係性の中で商いが行われていたはずだ。そのような消費者理解の原点に立ち返るべきなのではないか」、今さら原点に立ち返」ろうとしても困難なのではなあろうか。
・『③立地を活かす 創業者の伊藤は、その立地について非常に慎重だったという。出店地域の交通量や家族構成などを綿密に調べあげたうえで最終的に出店にGOサインを出した。そのため、特に都内23区のヨーカドーの立地は非常に優れている。 また、ヨーカドーが多く出店をする、江戸川区、江東区などの東東京エリアは、東京スカイツリーの開業以後、不動産価値も上がり続けている地域だ。 近年では、かつしかけいたのマンガ『東東京区区』でその地域の多様性が描かれるなど、文化的に再注目を集めている。筆者の知り合いも、ヨーカドーがある木場に引っ越すなど、エリアとしての価値は高い。 その点で、こうしたエリアに店舗を持っていることの意義は深いはずだ。ヨーカドーが店舗改革の成功例としている大森店は、大森という下町の代表的な場所に位置していて、食料品売り場の活気も非常にある。試食品販売なども盛んで、かつての商店街を見ているかのような賑わいであった。 試食品の実演コーナーを設けるなどの工夫が、最近の店舗改革では見られるが、そうした改革で、いかに下町の活気をうまく取り込めるかが重要だ』、「大森店」のような「成功例」を如何に増やしていくかが重要だ。
・『買い物の楽しさをヨーカドーは取り戻せるか というわけで、ずいぶんと好き勝手に書いてしまった。これらは15店舗を全部巡ったからこそ見えてきた視点だったと思う。) 基本的に筆者は、楽しく買い物をしたいし、楽しんで買い物をできる場所が増えてくれればいいな、と感じている。 伊藤雅俊が築いたヨーカドーは、立地の面、そして知名度の面でも、たぶん、うまくやれば楽しい買い物体験を提供できる場所になるポテンシャルはあると思う。 ヨーカドーが今後どうなっていくのかは誰にもわからない。 しかし、筆者はまた数年後、23区内のヨーカドーを全部巡ってみようと思う。そのとき、ヨーカドーで楽しい買い物経験ができることを願いながら……。 =敬称略= 筆者が巡った23区内・全店舗はこちら)』、「うまくやれば楽しい買い物体験を提供できる場所になるポテンシャルはある」、そのポテンシャルを引き出して、「買い物の楽しさを」「取り戻せるか」がポイントだ。
第三に、2月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したチェーンストア研究家・ライターの谷頭 和希氏による「ヨーカドー、大量撤退で「無責任」批判なぜ起きた 「地元の商店街をぶち壊したのに…」の声の"誤解"」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/735986
・『セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下のイトーヨーカ堂が、北海道・東北・信越地方の17店を閉店すると報じられた。同エリアからの撤退により、ヨーカドー空白地帯が拡大することになる。中四国、九州、沖縄にはすでにヨーカドーはない。 筆者はこれまで2回、このニュースを受けて、ヨーカドーの歴史や、実際の現地のフィールドワークを通して見えてきたそのリアルな姿について書いてきた。今回は、そのシリーズのラストとして、今回のヨーカドー撤退に伴って巻き起こった「ヨーカドーは無責任」という言説について、検討してみたい』、興味深そうだ。
・『商店街を潰したヨーカドーが撤退するのは無責任? ヨーカドーが撤退するというニュースを受けて、各所から聞こえた声の一つが「無責任」という声だった。いろいろな人の投稿の要点をまとめると、こんな感じだ。 「ヨーカドーは出店する際にさんざん地元商店をぶち壊した。にもかかわらず、利益が上がらなければ撤退するとは無責任だ、けしからん」 このとき言われる「地元商店」とは往々にして「商店街」のことが念頭に置かれている場合が多く、こうした言説は、たしかに私たちの頭にすんなりと入ってくるものである。「スーパーvs商店街」とでもいおうか。) こうした構図は、なぜか私たちの頭の中に小売りをめぐる「型」としてインストールされている。「ありきたりな決まり文句」を「クリシェ」というが、まさにこうした言説は小売りをめぐるクリシェである。 今回、ヨーカドーが撤退するというニュースを受けて、私たちの中にあるそのクリシェが顔を出した、というわけだ。 しかし、この「スーパーが商店街を潰した」という構図、実はかなりイメージ先行のものであることを指摘しなければならない。 まず、最初に断っておかなければならないのは、もちろん、日本全国でみれば、ヨーカドー等のGMSが出店したことによって存続が厳しくなった中小小売店が存在することも確かだ、ということ。それはもちろん認識したうえで、このクリシェに隠された「ウソ」を見ていきたい。 『日本流通史: 小売業の近現代』などの著作を持つ満薗勇によれば、そもそも「商店街」という小売りの形態が本格的に成立したのは1920〜1930年代で、全盛期を迎えたのは1950年〜1970年代。そして、衰退期を迎えるのは1970年代以降。「商店街実態調査報告書」によれば、自身の商店街を「繁栄している」と回答したのは、1970年の39.5%から1990年には8.5%になる。 満薗が指摘するのは、この商店街が最も栄えた1950〜1970年代は同時に、総合スーパーが隆盛を極めた時期でもあったということだ。ダイエーが大きく店舗を伸ばしたのは1960年代だし、ヨーカドーがGMSとして「ヨーカ堂」となったのも1958年のことだ。 私たちのイメージの時系列でいえば、「商店街」→「スーパー」という流れで捉えられることが多いのだが、実はこの2つはかなりの時期、共存してきたのである』、「私たちのイメージの時系列でいえば、「商店街」→「スーパー」という流れで捉えられることが多いのだが、実はこの2つはかなりの時期、共存してきた」、なるほど。
・『「大店法廃止」への批判も、実は的外れ 実は、こうした併存の形は、現在でも都内を中心とするヨーカドーではかなり見ることができる姿でもある。 一つ前の記事で、筆者は23区のヨーカドーすべてを実際に見て回ったのだが、例えばヨーカドー大森店の近くには、大森の商店街があって、基本的にはどちらも賑わいがあった。私たちが「スーパーvs商店街」と思うほどには、その両者は鋭くは対立しないのである。 関連記事:イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" また、こうした議論のときによく言われる「大店法廃止」の影響も、実は時期からいうと検討はずれの批判だ。) 「大店法」は1974年から始まった法律で、大規模な小売店舗の出店を規制するものであった。それがスタートした1974年は、すでに商店街の衰退は始まっていて、むしろ衰退していくものを守ろうという応急処置にしかならなかった。 大店法が廃止されたのは2000年で、さきほどの「商店街実態調査報告書」では、すでに、自身の商店街が繁栄している、と思っていたのは2%前後の人しかいなかった。大店法があろうがなかろうが、商店街の衰退は行くところまで行っていたのだ。 以上のようなデータも踏まえると、今回のヨーカドー撤退における批判が、イメージ先行であることがよくわかるだろう』、「大店法があろうがなかろうが、商店街の衰退は行くところまで行っていたのだ」、なるほど。
・『「スーパーマーケット=悪」論とファスト風土批判論は似ている しかし、なぜ、こうした「スーパーvs商店街」という構図がここまで根強いイメージを持ち続けているのだろうか。 この点について、筆者は以前東洋経済オンラインで「地方都市の『ファスト風景化』勝手に憂う人の病理」という記事を書いていて、そこで取り上げた議論が参考にできる。 この記事では、「今の地方はチェーンストアやショッピングモールばかりになってつまらない」という、いわゆる「ファスト風土」を批判する人が多いことに対して、それがいかに「幻想の中の郊外像」にすぎないのかを提示し、なおかつ、そのような人が理想の街の姿として「商店街」を一つの典型パターンとして「人と人との触れ合い」を求める傾向にあると書いた。 今回ヨーカドーの撤退騒動で出てきたクリシェは、まさにこうした感覚と通じるものがあるのではないだろうか。つまり、「スーパー=悪」、「商店街=善」として、単純な善悪の問題でこうした出来事を片付けようという考え方である。 もちろん、これはヨーカドーに限った話ではない。例えばイオンモールなども、「地方の商店街を破壊した存在」として、これまで散々語られてきている。) では、こうした認識はどこから生まれるのか。重要なのは「交通」である。 この記事では、「商店街」を理想の街とする人々の考え方に、「自動車」という交通手段が登場しないことにも触れ、そうした人々の「街」観が「歩行ベース」のものなのではないか、とも書いた。 しかし、現実には、日本国民全体の車の保有台数は歴史上、現在がもっとも高く、多くの商業施設が国道沿いに誕生している。街の形が、線上になっているのだ。 その一方で駅前を中心とする歩行ベースの都市は(シャッター商店街が顕著に表しているように)、衰退している。 実は今回のヨーカドー問題についても、こうした「自動車」と「歩行」の問題は顔をのぞかせている。ヨーカドーが撤退する地域について、「別にヨーカドーがなくても車で少しいけばいくらでも商業施設はある」という意見が見られたからだ。 もちろん、高齢化社会が進み、免許を返納する高齢者が多くなってくることも踏まえる必要はあるし、それはそれで解決しなければいけない問題だが、たしかに』、「駅前からヨーカドーがなくなったとしても、ロードサイド沿いの店舗で買い物をする、という選択肢もある。 実際、駅前から少し離れれば、今回ヨーカドーが撤退した北海道、東北、信越でも、ショッピングモールをはじめとする多くの商業施設が立ち並んでいる。 その意味でも、イメージする「街」観のズレがこうした批判を生ませるのだ」、なるほど。
・『結局、すべてを決めるのは「顧客」 最後に、補足的に重要なことを述べておこう。 近年、商店街が衰退してきたことに対しては、さまざまな理由が指摘されている。その中でも多く語られるのは、結局、商店街自体が顧客にとって魅力あるものでなくなってきた、ということだ。 中小企業診断士の鈴木隆男はこの点について、商店街の「外の敵」、ではなくて「内の敵」がその衰退の要因の一つになっていたという(東京都中小企業診断士協会のサイトより)。 また、中沢孝夫は『変わる商店街』の中で、商店街にある店が「地域独占」で、ある種の「殿様商売」的になっていた可能性を指摘する。 共存していた商店街とGMSは、結果的にGMSだけが生き残っていく状態になったが、それは、顧客の好みを敏感に反映していたのが、GMSだったからではないか。イトーヨーカドーは、かつて「顧客理解」に大きな力を注ぎ、顧客の満足度を高めようとしていた(三品和広+三品ゼミ『総合スーパーの興亡』)。GMSに結果的に客が流れたのは、顧客ニーズを的確にくみ取ったゆえだろう。) こうして考えると、一つの「悪」の組織があって、それが何かを駆逐していくという単純な図式で消費の動向を見ることはできなくて、結局は顧客の満足度に寄与した店が生き残るという当然の結果が見えてくる。 その流れの中で、郊外の商業施設が盛り上がりを見せ、かつて商店街から流れた顧客を満足させてきたイトーヨーカドーが、今度は顧客を満足させられなくなり、苦戦を強いられている』、「結局は顧客の満足度に寄与した店が生き残るという当然の結果が見えてくる。 その流れの中で、郊外の商業施設が盛り上がりを見せ、かつて商店街から流れた顧客を満足させてきたイトーヨーカドーが、今度は顧客を満足させられなくなり、苦戦を強いられている」、なるほど。
・『23区15店舗を歩いてわかったヨーカドーの問題点 前回の記事では、筆者は現在のイトーヨーカドーについて、主に以下の4つを問題にあげている。 ①どの店舗も、食料品売り場と、テナントとして入居しているチェーンストアには人がいる(逆にほとんどの客がそこにしかいない) ②改装に伴い、売り場の至る所に空きがある。バックヤードをあけすけに見せてしまっている ③改装した店舗では、商品構成を大きく変えているが、それが逆にわかりづらい ④セルフレジが機能していない この記事には少なくない反応が寄せられているが、生の声は筆者が思う以上にリアルだった。例えば、以下のような声が一例だ。 「普通のレジ余ってるのに、ガラガラのセルフレジに3人も4人も従業員かけてて普通のレジに長蛇の列ができてるのを延々続けてたりしてるし、よくある自分たちで潰そうとしてるのかと思うパターン」 「それでどうして衣料品売り場も雑貨売り場も重宝される地方から潰していくのか理解できない」 「ヨーカドーのGMSという形態そのものが業績改善の進まない最大の要因なんだよなぁ」 拡大時は「街の商店街を破壊する」と批判され、撤退時にも「さんざん地元の商店街をぶち壊したのに、利益が上がらなければ撤退するとは無責任だ」と言われたヨーカドー。 本稿ではその見方そのものの誤解を説明してきたわけだが、重要なのは、その時代に適したものが生き残るということだ。 消費文化を取り巻く人々のイメージにかかわらず、結局重要なのは、「顧客」を向いているかどうか、なのかもしれない』、「「普通のレジ余ってるのに、ガラガラのセルフレジに3人も4人も従業員かけてて普通のレジに長蛇の列ができてるのを延々続けてたりしてるし、よくある自分たちで潰そうとしてるのかと思うパターン」 「それでどうして衣料品売り場も雑貨売り場も重宝される地方から潰していくのか理解できない」 「ヨーカドーのGMSという形態そのものが業績改善の進まない最大の要因なんだよなぁ」、「重要なのは、その時代に適したものが生き残るということだ。 消費文化を取り巻く人々のイメージにかかわらず、結局重要なのは、「顧客」を向いているかどうか、なのかもしれない」、その通りだ。
タグ:小売業(一般) (その8)(「イトーヨーカ堂」3題:「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに、イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" 消費者理解の欠如に、ちぐはぐな改善策も…、ヨーカドー、大量撤退で「無責任」批判なぜ起きた 「地元の商店街をぶち壊したのに…」の声の"誤解") 日刊ゲンダイ 重道武司氏による「「イトーヨーカ堂」が都内屈指の好立地店から立ち退きのナゼ…ライバル「イオン」が後継テナントに」 こんな「好立地店から立ち退きを迫られる」には特別の事情があるのだろう。 「本体の業績悪化を受けて2000年以降、小宮恒産側に複数回にわたって賃料の減額を要請。小宮恒産もやむなくこれに応じてきたが、この間、ヨーカ堂側からは「建て替えを含む収益力向上に向けた抜本的な提案が何らなされなかった」(事情通)という」、「本体の業績悪化」を理由として「値下げ」を迫ったようだが、本来はあくまで「上板橋店」が生み出すキャッシュフローが基礎となるべきで、そうすれば値下げの理由はなかっらのかも知れない。 「小宮恒産は21年末での賃貸借契約の終了を通告。ヨーカ堂側がこれを無視して居座り続けたことから明け渡しを求めて東京地裁に提訴、係争事件に発展していた。その結果、1審、2審ともヨーカ堂の敗訴で終わったことから、ヨーカ堂としては「上告審まで争っても勝ち目はない」(関係者)と判断、11月下旬になって退去を決めた」、「ヨーカ堂側」はよにかく安くすることを優先し、よもやライバルが狙っているとは知らなかったのだろう。交渉担当チームはあとで、こっぴどく叱られた筈だ。 東洋経済オンライン 谷頭 和希氏による「イトーヨーカドー、23区全店訪れて見えた"厳しさ" 消費者理解の欠如に、ちぐはぐな改善策も…」 興味深そうだ。 「衣料品コーナーや雑貨コーナーには人がいないのだ。 ヨーカドーの店舗通路は広く、それは歩きやすいということでもあるのだが、人がいないと逆に不思議な風通しが生まれて、余計寂しく思えてしまう」、なるほど。 「食料品売り場」はどこも「盛況」のようだ。「食品スーパー」に堅調なところが多い訳だ。 「チェーン系のテナント」は激烈の競争に勝ち残った勝者だ。 「百貨店などでフロアの改装が行われる場合は、目隠しのための壁が用意されていることが多い。今回のイトーヨーカドー行脚を通じて、「あの壁には意味があったんだな」と感じさせられた」、なるほど。 「機能で分類されている。 これ自体はより生活に密着した売り場にしようという意図が見えるのだが、問題はその分類のわかりづらさだ」、一時的にはやむを得ないだろう。 「高砂店の「家事をする」というコーナーには時計やライト、マウスなどが分類されて置かれていた。正直いえば「家事をする」というイメージで、これらの商品を探し出すのは難しいのではないかと思う。 こうした点で、逆に売り場のわかりにくさが増幅しているところも散見された」、これも一時的にはやむを得ないだろう。 「特にヨーカドーの場合、客層はシニア層が多く、店舗によってはほとんどセルフレジが使われていないところもあった。セルフレジが多い分、有人レジの台数は少なく、レジの行列が長くなっているところがあるのだ」、店の特性に合わせた「有人レジの台数」に「すべきだろう。 「「ショッピングモール化」は確かに必要なプロセスにしても、最終的な目的ではない」、「最終的な目的」とは何なのだろう。 「GMSという業態が古く、ショッピングモールのようなもののほうがニーズを満たしていることは明白で、だからこそショッピングモール化を進めるべきなのだ」、その通りだ。 「顔の見える関係性の中で商いが行われていたはずだ。そのような消費者理解の原点に立ち返るべきなのではないか」、今さら原点に立ち返」ろうとしても困難なのではなあろうか。 「大森店」のような「成功例」を如何に増やしていくかが重要だ。 「うまくやれば楽しい買い物体験を提供できる場所になるポテンシャルはある」、そのポテンシャルを引き出して、「買い物の楽しさを」「取り戻せるか」がポイントだ。 ダイヤモンド・オンライン 谷頭 和希氏による「ヨーカドー、大量撤退で「無責任」批判なぜ起きた 「地元の商店街をぶち壊したのに…」の声の"誤解"」 「私たちのイメージの時系列でいえば、「商店街」→「スーパー」という流れで捉えられることが多いのだが、実はこの2つはかなりの時期、共存してきた」、なるほど。 「大店法があろうがなかろうが、商店街の衰退は行くところまで行っていたのだ」、なるほど。 「駅前からヨーカドーがなくなったとしても、ロードサイド沿いの店舗で買い物をする、という選択肢もある。 実際、駅前から少し離れれば、今回ヨーカドーが撤退した北海道、東北、信越でも、ショッピングモールをはじめとする多くの商業施設が立ち並んでいる。 その意味でも、イメージする「街」観のズレがこうした批判を生ませるのだ」、なるほど。 「結局は顧客の満足度に寄与した店が生き残るという当然の結果が見えてくる。 その流れの中で、郊外の商業施設が盛り上がりを見せ、かつて商店街から流れた顧客を満足させてきたイトーヨーカドーが、今度は顧客を満足させられなくなり、苦戦を強いられている」、なるほど。 「「普通のレジ余ってるのに、ガラガラのセルフレジに3人も4人も従業員かけてて普通のレジに長蛇の列ができてるのを延々続けてたりしてるし、よくある自分たちで潰そうとしてるのかと思うパターン」 「それでどうして衣料品売り場も雑貨売り場も重宝される地方から潰していくのか理解できない」 「ヨーカドーのGMSという形態そのものが業績改善の進まない最大の要因なんだよなぁ」、「重要なのは、その時代に適したものが生き残るということだ。 消費文化を取り巻く人々のイメージにかかわらず、結局重要なのは、「顧客」を向いているかどう
半導体産業(その11)(NTT「光半導体」が世界の電力不足を救う?iモード失敗の教訓を生かせるか、半導体ルネサス 「異質の巨額買収」の裏に危機感 9000億円弱で電子回路設計ツール企業を買収) [産業動向]
半導体産業については、昨年8月6日に取上げた。今日は、(その11)(NTT「光半導体」が世界の電力不足を救う?iモード失敗の教訓を生かせるか、半導体ルネサス 「異質の巨額買収」の裏に危機感 9000億円弱で電子回路設計ツール企業を買収)である。
先ずは、本年2月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「NTT「光半導体」が世界の電力不足を救う?iモード失敗の教訓を生かせるか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338708
・『NTTの「光半導体」事業が注目されている。生成AI強化のため世界中でデータセンター需要が急増する中、光半導体がデジタル化と省エネの切り札になるからだ。NTTは国内外の有力企業と連携を強化し、技術開発を急いでいる。その背景には、iモードの世界的な普及を実現できなかった大いなる反省があるだろう』、「光半導体」とは興味深そうだ。
・『NTT「光半導体」の驚くべき潜在能力 最近、相次ぐ半導体工場の建設や水素製鉄、全固体電池の開発など、わが国経済にとって明るいニュースも舞い込むようになった。中でも1月30日、経済産業省が「NTTが進める光半導体事業に最大で452億円を補助する」と発表したのは注目に値する。 振り返れば2019年、NTTは「IOWN」(アイオン、Innovative Optical and Wireless Network)という光を用いた通信技術の研究開発を強化した。光半導体の潜在能力は非常に高い。特に重要なのは、今後、需要が高まるデータセンターの電力消費量を大幅に軽減する可能性があることだ。 近年、生成AIの性能を引き上げるため、世界中でデータセンター需要が急増している。それに伴い消費電力が大きく増加する。国際エネルギー機関(IEA)は、データセンターでのAI学習強化により、26年の電力消費量が22年の2.3倍程度に増えると予想した。 一方、主要国の電力供給能力の余裕は少ない。異常気象で冷暖房需要は増えた。電気自動車(EV)シフトも電力需要を押し上げる。供給面で、脱炭素に対応した発送電インフラの整備は一朝一夕には進まない。地政学リスクの上昇で、エネルギー資源調達コストの上昇も懸念される。光半導体は世界経済の成長率向上と省エネの両立の切り札になりうる。 NTTは光半導体を実用化し付加価値を高めるため、国内外の企業と協力体制を強化している。「iモード」失敗の教訓を生かし、国際的なコンソーシアムの強化を急いでいるようだ。NTT主導で、国際的な企業連合の体制が整備される期待も高い』、「2019年、NTTは「IOWN」(アイオン・・・という光を用いた通信技術の研究開発を強化「(IEA)は、データセンターでのAI学習強化により、26年の電力消費量が22年の2.3倍程度に増えると予想・・・一方、主要国の電力供給能力の余裕は少ない。異常気象で冷暖房需要は増えた。電気自動車(EV)シフトも電力需要を押し上げる。光半導体は世界経済の成長率向上と省エネの両立の切り札になりうる」、なるほど。
・『「光半導体」がデジタル化と省エネの切り札 生成AIの登場に伴い、世界全体でデジタル化が一段と加速している。今後、あらゆる分野でAIが用いられるようになる。主要国や企業は、データセンターを増やしてAIの深層学習を促進する体制づくりが求められている。 現在、データセンターで用いられるGPUやメモリーチップなどは、電子(電気)を用いてデータの演算や転送を行う。回路の線幅や半導体の精度向上などで、より多くの電力が必要になった。また、ロジック半導体の回路線幅の微細化は限界に近いとの指摘も多い。 NTTはそうした課題を克服するため、光半導体の研究開発を強化した。光の速度は、電子を上回る。NTTはその特性を活用し、消費電力性能の向上など、より効率的なデータセンターの構築を目指している。 2030年、世界全体で、データセンターの電力消費量は2600テラワット/時に達するとの見方もある。実に2018年の14倍だ。米オープンAIのサム・アルトマンCEOも、電力問題の克服に強い関心を持っている。同氏は、核融合発電関連の新興企業に投資したことを明らかにした。 一方、短期間で主要国が電力の供給体制を拡大することは難しい。再生可能エネルギーの活用、サーバーの冷却など課題も多い。欧州では、アイルランドでデータセンターが急増し、政府は電力ひっ迫を避けるため、建設を規制せざるを得なくなった。 データセンターの消費電力性能の向上は、生成AIの性能向上に大きく影響する。電力問題の解消は、AI性能向上、それによる中長期的な経済成長、さらに社会の安定にも影響する。その切り札の一つとなるのが、NTTが推進する光半導体である』、「電力問題の解消は、AI性能向上、それによる中長期的な経済成長、さらに社会の安定にも影響する。その切り札の一つとなるのが、NTTが推進する光半導体である」、なるほど。
・『“iモード失敗”の教訓を生かすNTT 光半導体の実用化を目指すNTTは、早い段階から他社との連携を意識してきた。複数社で研究開発を進めることは、リスク分散に有効だ。手始めに、日本電気(NEC)、富士通と連携を強化した(なお、これらの企業は「電電ファミリー」と呼ばれた)。 成果を実用化するため、製造技術の強化も必要だ。光半導体の開発には、キオクシア(旧東芝メモリ)、基盤に形成したチップの切り出しや配線を行う新光電気工業、光ケーブル大手の古河電気工業も参画する。 海外企業との連携も強化している。19年に米インテルやソニーグループとIOWN関連の研究開発を強化すると発表。22年には韓国のSKテレコム(SKグループの移動通信事業会社)とも業務提携を交わした。 国内外の企業との連携を強化し、自社の技術に賛同者を増やす。こうした発想でNTTが事業運営体制を強化するのは珍しい。この背景には、iモードの世界的な普及を実現できなかった大いなる反省があるだろう。 1999年2月に始まったNTTのiモードは、世界初のモバイル・インターネットサービスだった。iモードによってNTTグループが世界トップクラスのIT先端企業になる――。こう予想する経済の専門家も一部にいた。 しかし、現実の展開は大きく異なるものだった。当時のNTTグループにとって、1億人超の人口規模を持つ国内市場で、シェアを維持する考えが強かっただろう。旧ドコモの海外買収戦略の失敗、リーマンショックの発生、デジタル化の遅れによるGAFAMとの格差が拡大し、iモードは“日本のガラパゴス化”の典型例と化した。こうした教訓があるからこそ、光半導体プロジェクトの初期段階からNTTは内外企業との連携を模索している』、「iモードは“日本のガラパゴス化”の典型例と化した。こうした教訓があるからこそ、光半導体プロジェクトの初期段階からNTTは内外企業との連携を模索している」、失敗を教訓にするとは賢明なことだ。
・『国際規格実現に主体的な役割を果たせるか 今般発表された政府からの補助をきっかけに、NTTが国際的なコンソーシアム(企業連合)の形成を目指す可能性は高い。期待したいのは、光半導体の国際規格実現に主体的な役割を果たすことだ。 戦略物資としての半導体の重要性が高まる中、次世代の超高速通信を決定づける光半導体は、世界の経済・安全保障体制により大きな影響を与えるはずだ。主要先進国を中心に、通信規格の統一や、製造技術の第三国への流出阻止など、厳格なルールを策定することがいっそう重要となっている。 そのため、光半導体を実用化し量産技術を確立できる企業が本拠点を置く国は、国際世論・世界経済の運営に主導的な影響を与えるだろう。産業、経済、安全保障などあらゆる分野で光半導体は大きな可能性を秘める。 NTTは法律の制約があることから、世界規模で研究開発を進めることが難しかったとの指摘は多い。しかし、状況は変わりつつある。NTTに期待したいのは、スピードと規模感でIOWNプロジェクトを進めることだ。 研究開発の成果を守りつつ、よりオープンな姿勢で海外企業の参画を呼び込む。それにより賛同企業を増やす。それは、わが国の関連産業の需要獲得につながり、先端分野にかかわる企業を活性化させるはずだ。 ただし、ライバルも多い。米国ではGAFAMなどのIT先端企業と、光通信技術などの開発を行うスタートアップ企業の連携強化が起きている。中国は、武漢光電国家研究センターなど政府主導で光電融合に関する研究開発、先端技術の実用化を目指している。 光半導体に関する製造技術の実装は、NTTが世界規模で新しい市場をつくり、優位に付加価値を獲得する重要な機会になる可能性が高い。NTT、関連企業および政府が一貫した姿勢で先端分野の研究開発を進め、主要国に先駆けて実用化することができるか。それは、中長期的なわが国経済の回復にも大きく影響するはずだ』、「光半導体に関する製造技術の実装は、NTTが世界規模で新しい市場をつくり、優位に付加価値を獲得する重要な機会になる可能性が高い。NTT、関連企業および政府が一貫した姿勢で先端分野の研究開発を進め、主要国に先駆けて実用化することができるか。それは、中長期的なわが国経済の回復にも大きく影響するはずだ」、その通りだ。
次に、2月20日付け東洋経済オンライン「半導体ルネサス、「異質の巨額買収」の裏に危機感 9000億円弱で電子回路設計ツール企業を買収」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/735700
・『大手半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスが、同社史上最大となる巨額買収に踏み切る。買収するのは、アメリカに本社を置き、オーストラリア証券取引所に上場するアルティウム。約8879億円を投じ、今年中に全株を取得する予定だ。 「今回の買収は異質。将来への重要な一歩になる」。柴田英利社長は2月15日の会見でそう意気込んだ。 この数年のルネサスは、海外半導体メーカーの買収を積極的に仕掛け、7000億円前後の買収も2件行った。その同社が「異質」と表現するには理由がある。目的が「伝統的な半導体メーカー」からの脱皮にあるからだ』、興味深そうだ。
・『巨額を投じる企業は年商400億円規模 アルティウムは、電機製品の電子回路を設計する際に使われるPCB(プリント基板)設計ツールを手がける。半導体など電子部品の組み合わせをアルティウムのソフトウェア上で仮想的にシミュレーションすることで、物理的に電子部品を組み立てることなくその性能や安全性を検証できる。 サービスは月額数万円から提供。ユーザー数は3万社を超え、日立製作所、アメリカのテスラやロッキード・マーチンなどさまざまな産業の顧客が使用する。年間売上高は足元で400億円前後だが、直近5年で2倍に拡大した成長企業だ。 ルネサス製品を用いた電子回路の検証は現状でも可能であり、その意味でルネサスはアルティウムの提供するプラットフォームの参加者だ。だが巨額を投じて完全子会社化するのは、「参加者としてでは少し踏み込み不足」(柴田社長)だと感じていたからだという。 ルネサスは現在の柴田社長体制下になった2019年以降、同社が「ウィニング・コンビネーション」と呼ぶ戦略を進めてきた。「ルネサスの半導体を組み合わせることでこんな機能が実現できる」と提案し売り込んでいくことで、半導体単品とは異なった付加価値を生み出していく戦略だ。 必要な製品ラインナップを増やすため、この数年間は数百億〜数千億円規模で半導体メーカーの買収を相次いで行ってきた。そうして手に入れた製品群をテコに、収益性は大幅に改善。赤字体質にもがいていたかつての姿からは一変、業績と株式市場からの評価ともに完全復活を果たしている。 こうした経緯を踏まえれば、ソフトウェア企業であるアルティウムの買収は畑違いともいえる。「ルネサスはいったいどこへ向かおうとしているのか」――。買収会見に参加した記者や証券アナリストの関心は、その一点にあった』、「必要な製品ラインナップを増やすため、この数年間は数百億〜数千億円規模で半導体メーカーの買収を相次いで行ってきた。そうして手に入れた製品群をテコに、収益性は大幅に改善。赤字体質にもがいていたかつての姿からは一変、業績と株式市場からの評価ともに完全復活を果たしている」、大したものだ。
・『ものづくりの工程が変化 「従来であればメカだけで事足りた製品の機能も、エレクトロニクスで決まるようになってきている。一方で、購入品が主流のメカ設計と違ってエレクトロニクスの設計では部品を組み合わせる専門知識が不可欠。だからこそ幅広い産業のプレーヤーが使いやすいツールを、プラットフォームとして提供していきたい」 柴田社長が会見で語ったのは、半導体・電子部品と、ルネサスが主顧客とする自動車や産業機械メーカーとを取り巻く環境の変化だ。製造業に強いコンサルティング会社、アーサー・ディ・リトルの赤山真一パートナーも次のように解説する。 「AI(人工知能)やソフトウェアを扱う企業が最終製品を企画し、それからハードウェアを手がける企業にものづくりを任せる、というケースが増えている。その場合、企画段階からシミュレーションで検証できることが重要。自動車や産業機械が“AIの塊”に進化していく中、ルネサスはこの動きについていくと決めたのではないか」) 半導体産業を30年以上見てきた技術ジャーナリストの津田建二氏は、ルネサスの目指すものが「今までになかったビジネスモデルだ」と次のように評価する。 「これまでは半導体メーカーのような〝電気屋〟と、それを組み合わせて電機製品を造る〝機械屋〟の役割は分かれていた。この垣根を徐々にとはいえ取り払おうとしているように見える」 一方で、ある国内半導体メーカーの関係者は懸念も示す。 「アルティウムのようなプラットフォーム企業は、どのメーカーともフラットな関係だからこそ支持される。ルネサスが取り込むことで、参加者に敬遠されることにはならないのか」 前述のように、アルティウムの顧客は電機や自動車メーカー。ルネサスと直接の競合にはならない。とはいえ、アルティウムに「ルネサス色」がつきすぎてしまうことへの懸念があるのも確かだろう』、「「AI(人工知能)やソフトウェアを扱う企業が最終製品を企画し、それからハードウェアを手がける企業にものづくりを任せる、というケースが増えている。その場合、企画段階からシミュレーションで検証できることが重要。自動車や産業機械が“AIの塊”に進化していく中、ルネサスはこの動きについていくと決めたのではないか」・・・「アルティウムのようなプラットフォーム企業は、どのメーカーともフラットな関係だからこそ支持される。ルネサスが取り込むことで、参加者に敬遠されることにはならないのか」、前述のように、アルティウムの顧客は電機や自動車メーカー。ルネサスと直接の競合にはならない。とはいえ、アルティウムに「ルネサス色」がつきすぎてしまうことへの懸念があるのも確かだろう」、こうした利益相反は確かに懸念材料だ。
・「ルネサスは現在の柴田社長体制下になった2019年以降、同社が「ウィニング・コンビネーション」と呼ぶ戦略を進めてきた。「ルネサスの半導体を組み合わせることでこんな機能が実現できる」と提案し売り込んでいくことで、半導体単品とは異なった付加価値を生み出していく戦略だ。 必要な製品ラインナップを増やすため、この数年間は数百億〜数千億円規模で半導体メーカーの買収を相次いで行ってきた。そうして手に入れた製品群をテコに、収益性は大幅に改善。赤字体質にもがいていたかつての姿からは一変、業績と株式市場からの評価ともに完全復活を果たしている」、そんなに業績が改善したとは初めて知った。
・『「伝統的メーカー」のままではいられない もちろんこうした見方は柴田社長も承知のうえだ。「(成功するためには)オープンなプラットフォームを維持していくことが肝になる。われわれ自身が、一緒に仕事をしていくパートナーと競合にならないことが大事」と強調する。 むしろ強く抱くのは、「デジタル化の流れは不可避。『伝統的な半導体メーカー』でい続ける限り、いずれマージナライズされてしまう(潮流から外れる)だろう」という危機感だ。 昨年には、2013年の経営危機時に出資したINCJ(旧産業革新機構)がすべてのルネサス株を売却。母体となった日立やNECも全株売却の方針だ。真の意味で「新生ルネサス」に生まれ変わることができるのか。それは「異質」な買収の成否が左右する』、「(成功するためには)オープンなプラットフォームを維持していくことが肝になる・・・昨年には、2013年の経営危機時に出資したINCJ(旧産業革新機構)がすべてのルネサス株を売却。母体となった日立やNECも全株売却の方針だ。真の意味で「新生ルネサス」に生まれ変わることができるのか。それは「異質」な買収の成否が左右する」、「真の意味で「新生ルネサス」に生まれ変わることができるのか」、今後の動向を注視したい。
先ずは、本年2月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「NTT「光半導体」が世界の電力不足を救う?iモード失敗の教訓を生かせるか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/338708
・『NTTの「光半導体」事業が注目されている。生成AI強化のため世界中でデータセンター需要が急増する中、光半導体がデジタル化と省エネの切り札になるからだ。NTTは国内外の有力企業と連携を強化し、技術開発を急いでいる。その背景には、iモードの世界的な普及を実現できなかった大いなる反省があるだろう』、「光半導体」とは興味深そうだ。
・『NTT「光半導体」の驚くべき潜在能力 最近、相次ぐ半導体工場の建設や水素製鉄、全固体電池の開発など、わが国経済にとって明るいニュースも舞い込むようになった。中でも1月30日、経済産業省が「NTTが進める光半導体事業に最大で452億円を補助する」と発表したのは注目に値する。 振り返れば2019年、NTTは「IOWN」(アイオン、Innovative Optical and Wireless Network)という光を用いた通信技術の研究開発を強化した。光半導体の潜在能力は非常に高い。特に重要なのは、今後、需要が高まるデータセンターの電力消費量を大幅に軽減する可能性があることだ。 近年、生成AIの性能を引き上げるため、世界中でデータセンター需要が急増している。それに伴い消費電力が大きく増加する。国際エネルギー機関(IEA)は、データセンターでのAI学習強化により、26年の電力消費量が22年の2.3倍程度に増えると予想した。 一方、主要国の電力供給能力の余裕は少ない。異常気象で冷暖房需要は増えた。電気自動車(EV)シフトも電力需要を押し上げる。供給面で、脱炭素に対応した発送電インフラの整備は一朝一夕には進まない。地政学リスクの上昇で、エネルギー資源調達コストの上昇も懸念される。光半導体は世界経済の成長率向上と省エネの両立の切り札になりうる。 NTTは光半導体を実用化し付加価値を高めるため、国内外の企業と協力体制を強化している。「iモード」失敗の教訓を生かし、国際的なコンソーシアムの強化を急いでいるようだ。NTT主導で、国際的な企業連合の体制が整備される期待も高い』、「2019年、NTTは「IOWN」(アイオン・・・という光を用いた通信技術の研究開発を強化「(IEA)は、データセンターでのAI学習強化により、26年の電力消費量が22年の2.3倍程度に増えると予想・・・一方、主要国の電力供給能力の余裕は少ない。異常気象で冷暖房需要は増えた。電気自動車(EV)シフトも電力需要を押し上げる。光半導体は世界経済の成長率向上と省エネの両立の切り札になりうる」、なるほど。
・『「光半導体」がデジタル化と省エネの切り札 生成AIの登場に伴い、世界全体でデジタル化が一段と加速している。今後、あらゆる分野でAIが用いられるようになる。主要国や企業は、データセンターを増やしてAIの深層学習を促進する体制づくりが求められている。 現在、データセンターで用いられるGPUやメモリーチップなどは、電子(電気)を用いてデータの演算や転送を行う。回路の線幅や半導体の精度向上などで、より多くの電力が必要になった。また、ロジック半導体の回路線幅の微細化は限界に近いとの指摘も多い。 NTTはそうした課題を克服するため、光半導体の研究開発を強化した。光の速度は、電子を上回る。NTTはその特性を活用し、消費電力性能の向上など、より効率的なデータセンターの構築を目指している。 2030年、世界全体で、データセンターの電力消費量は2600テラワット/時に達するとの見方もある。実に2018年の14倍だ。米オープンAIのサム・アルトマンCEOも、電力問題の克服に強い関心を持っている。同氏は、核融合発電関連の新興企業に投資したことを明らかにした。 一方、短期間で主要国が電力の供給体制を拡大することは難しい。再生可能エネルギーの活用、サーバーの冷却など課題も多い。欧州では、アイルランドでデータセンターが急増し、政府は電力ひっ迫を避けるため、建設を規制せざるを得なくなった。 データセンターの消費電力性能の向上は、生成AIの性能向上に大きく影響する。電力問題の解消は、AI性能向上、それによる中長期的な経済成長、さらに社会の安定にも影響する。その切り札の一つとなるのが、NTTが推進する光半導体である』、「電力問題の解消は、AI性能向上、それによる中長期的な経済成長、さらに社会の安定にも影響する。その切り札の一つとなるのが、NTTが推進する光半導体である」、なるほど。
・『“iモード失敗”の教訓を生かすNTT 光半導体の実用化を目指すNTTは、早い段階から他社との連携を意識してきた。複数社で研究開発を進めることは、リスク分散に有効だ。手始めに、日本電気(NEC)、富士通と連携を強化した(なお、これらの企業は「電電ファミリー」と呼ばれた)。 成果を実用化するため、製造技術の強化も必要だ。光半導体の開発には、キオクシア(旧東芝メモリ)、基盤に形成したチップの切り出しや配線を行う新光電気工業、光ケーブル大手の古河電気工業も参画する。 海外企業との連携も強化している。19年に米インテルやソニーグループとIOWN関連の研究開発を強化すると発表。22年には韓国のSKテレコム(SKグループの移動通信事業会社)とも業務提携を交わした。 国内外の企業との連携を強化し、自社の技術に賛同者を増やす。こうした発想でNTTが事業運営体制を強化するのは珍しい。この背景には、iモードの世界的な普及を実現できなかった大いなる反省があるだろう。 1999年2月に始まったNTTのiモードは、世界初のモバイル・インターネットサービスだった。iモードによってNTTグループが世界トップクラスのIT先端企業になる――。こう予想する経済の専門家も一部にいた。 しかし、現実の展開は大きく異なるものだった。当時のNTTグループにとって、1億人超の人口規模を持つ国内市場で、シェアを維持する考えが強かっただろう。旧ドコモの海外買収戦略の失敗、リーマンショックの発生、デジタル化の遅れによるGAFAMとの格差が拡大し、iモードは“日本のガラパゴス化”の典型例と化した。こうした教訓があるからこそ、光半導体プロジェクトの初期段階からNTTは内外企業との連携を模索している』、「iモードは“日本のガラパゴス化”の典型例と化した。こうした教訓があるからこそ、光半導体プロジェクトの初期段階からNTTは内外企業との連携を模索している」、失敗を教訓にするとは賢明なことだ。
・『国際規格実現に主体的な役割を果たせるか 今般発表された政府からの補助をきっかけに、NTTが国際的なコンソーシアム(企業連合)の形成を目指す可能性は高い。期待したいのは、光半導体の国際規格実現に主体的な役割を果たすことだ。 戦略物資としての半導体の重要性が高まる中、次世代の超高速通信を決定づける光半導体は、世界の経済・安全保障体制により大きな影響を与えるはずだ。主要先進国を中心に、通信規格の統一や、製造技術の第三国への流出阻止など、厳格なルールを策定することがいっそう重要となっている。 そのため、光半導体を実用化し量産技術を確立できる企業が本拠点を置く国は、国際世論・世界経済の運営に主導的な影響を与えるだろう。産業、経済、安全保障などあらゆる分野で光半導体は大きな可能性を秘める。 NTTは法律の制約があることから、世界規模で研究開発を進めることが難しかったとの指摘は多い。しかし、状況は変わりつつある。NTTに期待したいのは、スピードと規模感でIOWNプロジェクトを進めることだ。 研究開発の成果を守りつつ、よりオープンな姿勢で海外企業の参画を呼び込む。それにより賛同企業を増やす。それは、わが国の関連産業の需要獲得につながり、先端分野にかかわる企業を活性化させるはずだ。 ただし、ライバルも多い。米国ではGAFAMなどのIT先端企業と、光通信技術などの開発を行うスタートアップ企業の連携強化が起きている。中国は、武漢光電国家研究センターなど政府主導で光電融合に関する研究開発、先端技術の実用化を目指している。 光半導体に関する製造技術の実装は、NTTが世界規模で新しい市場をつくり、優位に付加価値を獲得する重要な機会になる可能性が高い。NTT、関連企業および政府が一貫した姿勢で先端分野の研究開発を進め、主要国に先駆けて実用化することができるか。それは、中長期的なわが国経済の回復にも大きく影響するはずだ』、「光半導体に関する製造技術の実装は、NTTが世界規模で新しい市場をつくり、優位に付加価値を獲得する重要な機会になる可能性が高い。NTT、関連企業および政府が一貫した姿勢で先端分野の研究開発を進め、主要国に先駆けて実用化することができるか。それは、中長期的なわが国経済の回復にも大きく影響するはずだ」、その通りだ。
次に、2月20日付け東洋経済オンライン「半導体ルネサス、「異質の巨額買収」の裏に危機感 9000億円弱で電子回路設計ツール企業を買収」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/735700
・『大手半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスが、同社史上最大となる巨額買収に踏み切る。買収するのは、アメリカに本社を置き、オーストラリア証券取引所に上場するアルティウム。約8879億円を投じ、今年中に全株を取得する予定だ。 「今回の買収は異質。将来への重要な一歩になる」。柴田英利社長は2月15日の会見でそう意気込んだ。 この数年のルネサスは、海外半導体メーカーの買収を積極的に仕掛け、7000億円前後の買収も2件行った。その同社が「異質」と表現するには理由がある。目的が「伝統的な半導体メーカー」からの脱皮にあるからだ』、興味深そうだ。
・『巨額を投じる企業は年商400億円規模 アルティウムは、電機製品の電子回路を設計する際に使われるPCB(プリント基板)設計ツールを手がける。半導体など電子部品の組み合わせをアルティウムのソフトウェア上で仮想的にシミュレーションすることで、物理的に電子部品を組み立てることなくその性能や安全性を検証できる。 サービスは月額数万円から提供。ユーザー数は3万社を超え、日立製作所、アメリカのテスラやロッキード・マーチンなどさまざまな産業の顧客が使用する。年間売上高は足元で400億円前後だが、直近5年で2倍に拡大した成長企業だ。 ルネサス製品を用いた電子回路の検証は現状でも可能であり、その意味でルネサスはアルティウムの提供するプラットフォームの参加者だ。だが巨額を投じて完全子会社化するのは、「参加者としてでは少し踏み込み不足」(柴田社長)だと感じていたからだという。 ルネサスは現在の柴田社長体制下になった2019年以降、同社が「ウィニング・コンビネーション」と呼ぶ戦略を進めてきた。「ルネサスの半導体を組み合わせることでこんな機能が実現できる」と提案し売り込んでいくことで、半導体単品とは異なった付加価値を生み出していく戦略だ。 必要な製品ラインナップを増やすため、この数年間は数百億〜数千億円規模で半導体メーカーの買収を相次いで行ってきた。そうして手に入れた製品群をテコに、収益性は大幅に改善。赤字体質にもがいていたかつての姿からは一変、業績と株式市場からの評価ともに完全復活を果たしている。 こうした経緯を踏まえれば、ソフトウェア企業であるアルティウムの買収は畑違いともいえる。「ルネサスはいったいどこへ向かおうとしているのか」――。買収会見に参加した記者や証券アナリストの関心は、その一点にあった』、「必要な製品ラインナップを増やすため、この数年間は数百億〜数千億円規模で半導体メーカーの買収を相次いで行ってきた。そうして手に入れた製品群をテコに、収益性は大幅に改善。赤字体質にもがいていたかつての姿からは一変、業績と株式市場からの評価ともに完全復活を果たしている」、大したものだ。
・『ものづくりの工程が変化 「従来であればメカだけで事足りた製品の機能も、エレクトロニクスで決まるようになってきている。一方で、購入品が主流のメカ設計と違ってエレクトロニクスの設計では部品を組み合わせる専門知識が不可欠。だからこそ幅広い産業のプレーヤーが使いやすいツールを、プラットフォームとして提供していきたい」 柴田社長が会見で語ったのは、半導体・電子部品と、ルネサスが主顧客とする自動車や産業機械メーカーとを取り巻く環境の変化だ。製造業に強いコンサルティング会社、アーサー・ディ・リトルの赤山真一パートナーも次のように解説する。 「AI(人工知能)やソフトウェアを扱う企業が最終製品を企画し、それからハードウェアを手がける企業にものづくりを任せる、というケースが増えている。その場合、企画段階からシミュレーションで検証できることが重要。自動車や産業機械が“AIの塊”に進化していく中、ルネサスはこの動きについていくと決めたのではないか」) 半導体産業を30年以上見てきた技術ジャーナリストの津田建二氏は、ルネサスの目指すものが「今までになかったビジネスモデルだ」と次のように評価する。 「これまでは半導体メーカーのような〝電気屋〟と、それを組み合わせて電機製品を造る〝機械屋〟の役割は分かれていた。この垣根を徐々にとはいえ取り払おうとしているように見える」 一方で、ある国内半導体メーカーの関係者は懸念も示す。 「アルティウムのようなプラットフォーム企業は、どのメーカーともフラットな関係だからこそ支持される。ルネサスが取り込むことで、参加者に敬遠されることにはならないのか」 前述のように、アルティウムの顧客は電機や自動車メーカー。ルネサスと直接の競合にはならない。とはいえ、アルティウムに「ルネサス色」がつきすぎてしまうことへの懸念があるのも確かだろう』、「「AI(人工知能)やソフトウェアを扱う企業が最終製品を企画し、それからハードウェアを手がける企業にものづくりを任せる、というケースが増えている。その場合、企画段階からシミュレーションで検証できることが重要。自動車や産業機械が“AIの塊”に進化していく中、ルネサスはこの動きについていくと決めたのではないか」・・・「アルティウムのようなプラットフォーム企業は、どのメーカーともフラットな関係だからこそ支持される。ルネサスが取り込むことで、参加者に敬遠されることにはならないのか」、前述のように、アルティウムの顧客は電機や自動車メーカー。ルネサスと直接の競合にはならない。とはいえ、アルティウムに「ルネサス色」がつきすぎてしまうことへの懸念があるのも確かだろう」、こうした利益相反は確かに懸念材料だ。
・「ルネサスは現在の柴田社長体制下になった2019年以降、同社が「ウィニング・コンビネーション」と呼ぶ戦略を進めてきた。「ルネサスの半導体を組み合わせることでこんな機能が実現できる」と提案し売り込んでいくことで、半導体単品とは異なった付加価値を生み出していく戦略だ。 必要な製品ラインナップを増やすため、この数年間は数百億〜数千億円規模で半導体メーカーの買収を相次いで行ってきた。そうして手に入れた製品群をテコに、収益性は大幅に改善。赤字体質にもがいていたかつての姿からは一変、業績と株式市場からの評価ともに完全復活を果たしている」、そんなに業績が改善したとは初めて知った。
・『「伝統的メーカー」のままではいられない もちろんこうした見方は柴田社長も承知のうえだ。「(成功するためには)オープンなプラットフォームを維持していくことが肝になる。われわれ自身が、一緒に仕事をしていくパートナーと競合にならないことが大事」と強調する。 むしろ強く抱くのは、「デジタル化の流れは不可避。『伝統的な半導体メーカー』でい続ける限り、いずれマージナライズされてしまう(潮流から外れる)だろう」という危機感だ。 昨年には、2013年の経営危機時に出資したINCJ(旧産業革新機構)がすべてのルネサス株を売却。母体となった日立やNECも全株売却の方針だ。真の意味で「新生ルネサス」に生まれ変わることができるのか。それは「異質」な買収の成否が左右する』、「(成功するためには)オープンなプラットフォームを維持していくことが肝になる・・・昨年には、2013年の経営危機時に出資したINCJ(旧産業革新機構)がすべてのルネサス株を売却。母体となった日立やNECも全株売却の方針だ。真の意味で「新生ルネサス」に生まれ変わることができるのか。それは「異質」な買収の成否が左右する」、「真の意味で「新生ルネサス」に生まれ変わることができるのか」、今後の動向を注視したい。
タグ:半導体産業 (その11)(NTT「光半導体」が世界の電力不足を救う?iモード失敗の教訓を生かせるか、半導体ルネサス 「異質の巨額買収」の裏に危機感 9000億円弱で電子回路設計ツール企業を買収) 「光半導体」とは興味深そうだ。 「2019年、NTTは「IOWN」(アイオン・・・という光を用いた通信技術の研究開発を強化「(IEA)は、データセンターでのAI学習強化により、26年の電力消費量が22年の2.3倍程度に増えると予想・・・一方、主要国の電力供給能力の余裕は少ない。異常気象で冷暖房需要は増えた。電気自動車(EV)シフトも電力需要を押し上げる。光半導体は世界経済の成長率向上と省エネの両立の切り札になりうる」、なるほど。 「電力問題の解消は、AI性能向上、それによる中長期的な経済成長、さらに社会の安定にも影響する。その切り札の一つとなるのが、NTTが推進する光半導体である」、なるほど。 「iモードは“日本のガラパゴス化”の典型例と化した。こうした教訓があるからこそ、光半導体プロジェクトの初期段階からNTTは内外企業との連携を模索している」、失敗を教訓にするとは賢明なことだ。 「光半導体に関する製造技術の実装は、NTTが世界規模で新しい市場をつくり、優位に付加価値を獲得する重要な機会になる可能性が高い。NTT、関連企業および政府が一貫した姿勢で先端分野の研究開発を進め、主要国に先駆けて実用化することができるか。それは、中長期的なわが国経済の回復にも大きく影響するはずだ」、その通りだ。 東洋経済オンライン「半導体ルネサス、「異質の巨額買収」の裏に危機感 9000億円弱で電子回路設計ツール企業を買収」 「必要な製品ラインナップを増やすため、この数年間は数百億〜数千億円規模で半導体メーカーの買収を相次いで行ってきた。そうして手に入れた製品群をテコに、収益性は大幅に改善。赤字体質にもがいていたかつての姿からは一変、業績と株式市場からの評価ともに完全復活を果たしている」、大したものだ。 「「AI(人工知能)やソフトウェアを扱う企業が最終製品を企画し、それからハードウェアを手がける企業にものづくりを任せる、というケースが増えている。その場合、企画段階からシミュレーションで検証できることが重要。自動車や産業機械が“AIの塊”に進化していく中、ルネサスはこの動きについていくと決めたのではないか」・・・ 「アルティウムのようなプラットフォーム企業は、どのメーカーともフラットな関係だからこそ支持される。ルネサスが取り込むことで、参加者に敬遠されることにはならないのか」、前述のように、アルティウムの顧客は電機や自動車メーカー。ルネサスと直接の競合にはならない。とはいえ、アルティウムに「ルネサス色」がつきすぎてしまうことへの懸念があるのも確かだろう」、こうした利益相反は確かに懸念材料だ。 そんなに業績が改善したとは初めて知った。 「(成功するためには)オープンなプラットフォームを維持していくことが肝になる・・・昨年には、2013年の経営危機時に出資したINCJ(旧産業革新機構)がすべてのルネサス株を売却。母体となった日立やNECも全株売却の方針だ。真の意味で「新生ルネサス」に生まれ変わることができるのか。それは「異質」な買収の成否が左右する」、「真の意味で「新生ルネサス」に生まれ変わることができるのか」、今後の動向を注視したい。
恋愛・結婚(その7)(未婚化は1975年から始まった 家族社会学者が指摘していた研究者やマスコミの“過ち”) [人生]
恋愛・結婚については、昨年3月30日に取上げた。今日は、(その7)(未婚化は1975年から始まった 家族社会学者が指摘していた研究者やマスコミの“過ち”)である。
先ずは、昨年9月10日付けダイヤモンド・オンラインがAERAdotを転載した「未婚化は1975年から始まった、家族社会学者が指摘していた研究者やマスコミの“過ち”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328902
・『少子化の大きな要因となっている「未婚化」。中央大学教授で家族社会学者の山田昌弘氏は、1975年にはその傾向はあったと指摘する。山田氏の著書『結婚不要社会』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集し紹介する。 1989年の人口動態統計で、女性一人が生涯に産む子どもの平均人数を示す合計特殊出生率が過去最低の1.57になりました。厚生省人口問題研究所(現・国立社会保障・人口問題研究所)は翌1990年、この現象を「1.57ショック」と名付けて初めて警鐘を鳴らしましたが、その時点では少子化という言葉はまだありません。 少子化という言葉の誕生は、それから2年後、1992年に「少子社会の到来」というタイトルの『国民生活白書』が経済企画庁(当時)より発表されたことで、徐々に社会問題化していきます。ちなみに欧米には、少子化に相当する単語はありません。 拙著『結婚の社会学』には、1995年実施の国勢調査のデータは反映されていません。同書は1990年の国勢調査や、1992年の出生動向調査などさまざまな90年代前半のデータを基に記述しています。 90年代前半までのデータによれば、「晩婚化」の傾向は1975年以降著しく、1990年頃になると、それがはっきりと目に見えるかたちになってきたことがわかります。 拙著『結婚の社会学』では男女の世代別未婚率の推移を示したグラフを掲載しましたが、1975年には、30代前半では男性の未婚率は14.3%で、女性は7.7%です。それが1990年には、30代前半の男性の未婚率は32.6%、女性は13.9%まで上昇しています。 平均初婚年齢も、1975年は男性27歳、女性24.7歳。40年ほど前までの日本は、女性の半数が24歳までに結婚している社会だったのです。それが1990年には男性28.4歳、女性25.9歳と1歳以上も上昇しています。 このような状況の中で合計特殊出生率が過去最低の1.57になったことが発表されたのが、1990年という年でした。それ以降、研究者や政策担当者、マスコミの中で少子化が問題視されるようになったのです』、興味深そうだ。
・『晩婚化ではなく未婚化 データをどう解釈するかに関して、当時の研究者の大勢は「これは、晩婚化である」という認識でした。政策担当者やマスコミも同様です。 しかし、それは違うんじゃないか……。私はそう考えました。 晩婚化というのは、「いずれみんな結婚するが、いまはそれを先延ばししている」という意味です。当時、多くの研究者や政策担当者、マスコミは「いまの若者は結婚にメリットを感じなくなって、独身生活を長く楽しみたいと思っている。だから結婚年齢が上昇している」というような論評をしていました。要するに、結婚を先延ばしにしているだけ=晩婚化という見立てです。) そして、晩婚化の主要な原因として、女性の社会進出を挙げていました。「仕事をしたい」という女性が増えてきたから、結婚して子どもを産むこと──女性にとっては仕事をあきらめるという選択──を先延ばしする女性が増えてきたというわけです。 そのため、日本と同じく少子化を克服しようとしているヨーロッパの国々(フランスや北欧諸国、オランダなど)を参考にして、それと同じように、子どもを育てながら働けるように状況を整えれば、早く結婚して子どもを産むはずだという前提で、保育所の増設などさまざまな政策がとられていったのです。 そんな中で私は、「これは晩婚化ではなく、未婚化である」と主張しました。具体的には、「未婚化を克服しないと、少子化も克服できない」という見解を唱えました。この主張に多少なりとも賛同してくれた人がいたから、当時からマスコミに出たり政府関係の委員にも登用されたりしたのですが、公の学説なり政策なりに「見当違いではないか」と異議を申し立てたのです。 なぜ、そのような確信がもてたのか。 1990年から1992年にかけて、私は宮本みち子さん(千葉大学教授・当時)らと共に、『パラサイト・シングルの時代』の執筆のもとになった、20代の親同居未婚者のインタビューおよびアンケート調査を行っていました。結婚をしていない20代の男女とその親世代の人々にインタビューをしたわけですが、話を聞けば聞くほど、当時語られていた「通説」が間違っているのではないかという結論に至りました。) そのときに出会った親同居未婚者たちの中には、確かに「いまの生活を楽しみたいから結婚を先延ばしにしている」という人はいましたが、重要なのは「結婚したくないから結婚していない」という人はほとんどいなかったという点なのです。 特に、女性の場合がそうでした。当時の女性の大学進学率(4年制)は2割です。8割は短大卒および高卒、中卒です。そんな8割に属する女性たちの話を聞くと、仕事をしたいから結婚しないという人はほとんどいなくて、むしろ「いい男がいないから結婚していない」と答える人が大半でした。 その後も、厚生省(当時)の研究会などで未婚者の実態調査を続けました。 そして私が得た結論は、通説とは異なり、「現在の社会現象は、晩婚化ではなく、未婚化である」というものだったのです。 つまり、「生涯一度も結婚しない人が増えるだろう」という主張です。それも、ヨーロッパのように「結婚したくないから結婚しない」のではなくて、「結婚したくても結婚できない人」が増えていく。結婚したいのに結婚できないまま生涯を終える男女の増加、すなわち「結婚困難社会」を予測したわけです』、通説とは違って「晩婚化ではなく未婚化」とは興味深い。「ヨーロッパのように「結婚したくないから結婚しない」のではなくて、「結婚したくても結婚できない人」が増えていく。結婚したいのに結婚できないまま生涯を終える男女の増加、すなわち「結婚困難社会」を予測したわけです』、この方が女性にとっては悲惨なイメージだ。
・『結婚できない人はなぜ増えたのか 「結婚していない」もしくは「結婚できない」人たちが増えた原因は何でしょう。 私は次のような説を展開しました。それは単に、男女の意識変化ではない。そうではなく、結婚をめぐる社会、とりわけ経済状況が変わったのだと。つまり、個人の意識はむしろ変わらないまま社会の変化が進み、結婚が減った。その結果として独身者が増え、独身でも生活できる仕組みが整ったということです。 たとえば、1994年に『諸君!』で発表した「結婚難と経済成長」の中では、「女性は自分や自分の父親よりも収入の高い男性と結婚するのが当然だと思っている。高度経済成長期はそういう男性が簡単に見つかったからみんな早く結婚した。けれども、経済成長が鈍り低成長期になって、自分や自分の父親よりも収入の高い男性の数が減り、結婚相手を見つけることが難しくなって、結婚は先延ばしになり、結果的にあぶれて結婚できない男女が増えている」と論じました。 経済が高度成長から低成長になった1975年以降に晩婚化、すなわち未婚化が始まります。 そのとき結婚をめぐって生まれた現象は、収入の高い男性と結婚できる確率が低下する、という経済条件の変化でした。それでも、収入の低い男性と結婚するのを女性が厭わなければ、未婚化は起こりません。けれどもそうはならず、女性は収入が低い男性とあえて結婚することはしない──。 つまり未婚化は、結婚をめぐる意識は変わらないけれども「経済・社会環境」が変わったがために生じた現象であり、経済の低成長という構造的要因なので将来的にも結婚できない人が増え続ける、というのが私の主張だったのです。 けれども、研究者やマスコミも含めて当時のほとんどの中高年の人たちは「結婚なんて簡単にできるもの」と思っていたようです。そして当事者である若者たちも、「結婚なんて、本人がしたければすぐにでも相手が見つかる」と誰もが感じていた。つまり、未婚化を単なる「結婚の先延ばし」だとほとんどの人が思っていたのです。だからこそ、結婚問題が国の少子化を生み出す社会問題にまで発展してしまったのではないでしょうか。 大きな声では言えませんが、今日の結婚難に悩む若い人たちから見たら、周りには「よくこんな人が結婚できたな」と思えるような60代、70代の人が多いはずです。これは、経済成長が続いた1975年頃までは、どんな人にとっても結婚は「本人がしたければ、簡単にできるもの」だったということの裏返しでしょう。 1975年以降の結婚をめぐる社会的な変化や実態をきちんと調査して把握していれば、結婚が簡単にできるものではなくなってきたことに気づいたはずです。 (山田昌弘氏の略歴はリンク先参照)』、「女性は自分や自分の父親よりも収入の高い男性と結婚するのが当然だと思っている。高度経済成長期はそういう男性が簡単に見つかったからみんな早く結婚した。けれども、経済成長が鈍り低成長期になって、自分や自分の父親よりも収入の高い男性の数が減り、結婚相手を見つけることが難しくなって、結婚は先延ばしになり、結果的にあぶれて結婚できない男女が増えている」、非常にクリアな分析だ。「未婚化」は「単なる「結婚の先延ばし」ではなく、低成長移行に伴う経済構造の変化が背景にあるとはさすがだ。こうなると、女性の男性選択行動が、厳しい現実を直視してより柔軟なものに変わっていくことを期待するほかなさそうだ。
先ずは、昨年9月10日付けダイヤモンド・オンラインがAERAdotを転載した「未婚化は1975年から始まった、家族社会学者が指摘していた研究者やマスコミの“過ち”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328902
・『少子化の大きな要因となっている「未婚化」。中央大学教授で家族社会学者の山田昌弘氏は、1975年にはその傾向はあったと指摘する。山田氏の著書『結婚不要社会』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集し紹介する。 1989年の人口動態統計で、女性一人が生涯に産む子どもの平均人数を示す合計特殊出生率が過去最低の1.57になりました。厚生省人口問題研究所(現・国立社会保障・人口問題研究所)は翌1990年、この現象を「1.57ショック」と名付けて初めて警鐘を鳴らしましたが、その時点では少子化という言葉はまだありません。 少子化という言葉の誕生は、それから2年後、1992年に「少子社会の到来」というタイトルの『国民生活白書』が経済企画庁(当時)より発表されたことで、徐々に社会問題化していきます。ちなみに欧米には、少子化に相当する単語はありません。 拙著『結婚の社会学』には、1995年実施の国勢調査のデータは反映されていません。同書は1990年の国勢調査や、1992年の出生動向調査などさまざまな90年代前半のデータを基に記述しています。 90年代前半までのデータによれば、「晩婚化」の傾向は1975年以降著しく、1990年頃になると、それがはっきりと目に見えるかたちになってきたことがわかります。 拙著『結婚の社会学』では男女の世代別未婚率の推移を示したグラフを掲載しましたが、1975年には、30代前半では男性の未婚率は14.3%で、女性は7.7%です。それが1990年には、30代前半の男性の未婚率は32.6%、女性は13.9%まで上昇しています。 平均初婚年齢も、1975年は男性27歳、女性24.7歳。40年ほど前までの日本は、女性の半数が24歳までに結婚している社会だったのです。それが1990年には男性28.4歳、女性25.9歳と1歳以上も上昇しています。 このような状況の中で合計特殊出生率が過去最低の1.57になったことが発表されたのが、1990年という年でした。それ以降、研究者や政策担当者、マスコミの中で少子化が問題視されるようになったのです』、興味深そうだ。
・『晩婚化ではなく未婚化 データをどう解釈するかに関して、当時の研究者の大勢は「これは、晩婚化である」という認識でした。政策担当者やマスコミも同様です。 しかし、それは違うんじゃないか……。私はそう考えました。 晩婚化というのは、「いずれみんな結婚するが、いまはそれを先延ばししている」という意味です。当時、多くの研究者や政策担当者、マスコミは「いまの若者は結婚にメリットを感じなくなって、独身生活を長く楽しみたいと思っている。だから結婚年齢が上昇している」というような論評をしていました。要するに、結婚を先延ばしにしているだけ=晩婚化という見立てです。) そして、晩婚化の主要な原因として、女性の社会進出を挙げていました。「仕事をしたい」という女性が増えてきたから、結婚して子どもを産むこと──女性にとっては仕事をあきらめるという選択──を先延ばしする女性が増えてきたというわけです。 そのため、日本と同じく少子化を克服しようとしているヨーロッパの国々(フランスや北欧諸国、オランダなど)を参考にして、それと同じように、子どもを育てながら働けるように状況を整えれば、早く結婚して子どもを産むはずだという前提で、保育所の増設などさまざまな政策がとられていったのです。 そんな中で私は、「これは晩婚化ではなく、未婚化である」と主張しました。具体的には、「未婚化を克服しないと、少子化も克服できない」という見解を唱えました。この主張に多少なりとも賛同してくれた人がいたから、当時からマスコミに出たり政府関係の委員にも登用されたりしたのですが、公の学説なり政策なりに「見当違いではないか」と異議を申し立てたのです。 なぜ、そのような確信がもてたのか。 1990年から1992年にかけて、私は宮本みち子さん(千葉大学教授・当時)らと共に、『パラサイト・シングルの時代』の執筆のもとになった、20代の親同居未婚者のインタビューおよびアンケート調査を行っていました。結婚をしていない20代の男女とその親世代の人々にインタビューをしたわけですが、話を聞けば聞くほど、当時語られていた「通説」が間違っているのではないかという結論に至りました。) そのときに出会った親同居未婚者たちの中には、確かに「いまの生活を楽しみたいから結婚を先延ばしにしている」という人はいましたが、重要なのは「結婚したくないから結婚していない」という人はほとんどいなかったという点なのです。 特に、女性の場合がそうでした。当時の女性の大学進学率(4年制)は2割です。8割は短大卒および高卒、中卒です。そんな8割に属する女性たちの話を聞くと、仕事をしたいから結婚しないという人はほとんどいなくて、むしろ「いい男がいないから結婚していない」と答える人が大半でした。 その後も、厚生省(当時)の研究会などで未婚者の実態調査を続けました。 そして私が得た結論は、通説とは異なり、「現在の社会現象は、晩婚化ではなく、未婚化である」というものだったのです。 つまり、「生涯一度も結婚しない人が増えるだろう」という主張です。それも、ヨーロッパのように「結婚したくないから結婚しない」のではなくて、「結婚したくても結婚できない人」が増えていく。結婚したいのに結婚できないまま生涯を終える男女の増加、すなわち「結婚困難社会」を予測したわけです』、通説とは違って「晩婚化ではなく未婚化」とは興味深い。「ヨーロッパのように「結婚したくないから結婚しない」のではなくて、「結婚したくても結婚できない人」が増えていく。結婚したいのに結婚できないまま生涯を終える男女の増加、すなわち「結婚困難社会」を予測したわけです』、この方が女性にとっては悲惨なイメージだ。
・『結婚できない人はなぜ増えたのか 「結婚していない」もしくは「結婚できない」人たちが増えた原因は何でしょう。 私は次のような説を展開しました。それは単に、男女の意識変化ではない。そうではなく、結婚をめぐる社会、とりわけ経済状況が変わったのだと。つまり、個人の意識はむしろ変わらないまま社会の変化が進み、結婚が減った。その結果として独身者が増え、独身でも生活できる仕組みが整ったということです。 たとえば、1994年に『諸君!』で発表した「結婚難と経済成長」の中では、「女性は自分や自分の父親よりも収入の高い男性と結婚するのが当然だと思っている。高度経済成長期はそういう男性が簡単に見つかったからみんな早く結婚した。けれども、経済成長が鈍り低成長期になって、自分や自分の父親よりも収入の高い男性の数が減り、結婚相手を見つけることが難しくなって、結婚は先延ばしになり、結果的にあぶれて結婚できない男女が増えている」と論じました。 経済が高度成長から低成長になった1975年以降に晩婚化、すなわち未婚化が始まります。 そのとき結婚をめぐって生まれた現象は、収入の高い男性と結婚できる確率が低下する、という経済条件の変化でした。それでも、収入の低い男性と結婚するのを女性が厭わなければ、未婚化は起こりません。けれどもそうはならず、女性は収入が低い男性とあえて結婚することはしない──。 つまり未婚化は、結婚をめぐる意識は変わらないけれども「経済・社会環境」が変わったがために生じた現象であり、経済の低成長という構造的要因なので将来的にも結婚できない人が増え続ける、というのが私の主張だったのです。 けれども、研究者やマスコミも含めて当時のほとんどの中高年の人たちは「結婚なんて簡単にできるもの」と思っていたようです。そして当事者である若者たちも、「結婚なんて、本人がしたければすぐにでも相手が見つかる」と誰もが感じていた。つまり、未婚化を単なる「結婚の先延ばし」だとほとんどの人が思っていたのです。だからこそ、結婚問題が国の少子化を生み出す社会問題にまで発展してしまったのではないでしょうか。 大きな声では言えませんが、今日の結婚難に悩む若い人たちから見たら、周りには「よくこんな人が結婚できたな」と思えるような60代、70代の人が多いはずです。これは、経済成長が続いた1975年頃までは、どんな人にとっても結婚は「本人がしたければ、簡単にできるもの」だったということの裏返しでしょう。 1975年以降の結婚をめぐる社会的な変化や実態をきちんと調査して把握していれば、結婚が簡単にできるものではなくなってきたことに気づいたはずです。 (山田昌弘氏の略歴はリンク先参照)』、「女性は自分や自分の父親よりも収入の高い男性と結婚するのが当然だと思っている。高度経済成長期はそういう男性が簡単に見つかったからみんな早く結婚した。けれども、経済成長が鈍り低成長期になって、自分や自分の父親よりも収入の高い男性の数が減り、結婚相手を見つけることが難しくなって、結婚は先延ばしになり、結果的にあぶれて結婚できない男女が増えている」、非常にクリアな分析だ。「未婚化」は「単なる「結婚の先延ばし」ではなく、低成長移行に伴う経済構造の変化が背景にあるとはさすがだ。こうなると、女性の男性選択行動が、厳しい現実を直視してより柔軟なものに変わっていくことを期待するほかなさそうだ。
タグ:(その7)(未婚化は1975年から始まった 家族社会学者が指摘していた研究者やマスコミの“過ち”) 拙著『結婚の社会学』 未婚化を単なる「結婚の先延ばし」だとほとんどの人が思っていたのです。だからこそ、結婚問題が国の少子化を生み出す社会問題にまで発展してしまったのではないでしょうか 『パラサイト・シングルの時代』 「女性は自分や自分の父親よりも収入の高い男性と結婚するのが当然だと思っている。高度経済成長期はそういう男性が簡単に見つかったからみんな早く結婚した。けれども、経済成長が鈍り低成長期になって、自分や自分の父親よりも収入の高い男性の数が減り、結婚相手を見つけることが難しくなって、結婚は先延ばしになり、結果的にあぶれて結婚できない男女が増えている」と論じました。 経済が高度成長から低成長になった1975年以降に晩婚化、すなわち未婚化が始まります ヨーロッパのように「結婚したくないから結婚しない」のではなくて、「結婚したくても結婚できない人」が増えていく。結婚したいのに結婚できないまま生涯を終える男女の増加、すなわち「結婚困難社会」を予測したわけです』 「結婚したくないから結婚していない」という人はほとんどいなかったという点なのです。 特に、女性の場合がそうでした。当時の女性の大学進学率(4年制)は2割です。8割は短大卒および高卒、中卒です。そんな8割に属する女性たちの話を聞くと、仕事をしたいから結婚しないという人はほとんどいなくて、むしろ「いい男がいないから結婚していない」と答える人が大半でした。 恋愛・結婚 「未婚化」は「単なる「結婚の先延ばし」ではなく、低成長移行に伴う経済構造の変化が背景にあるとはさすがだ。こうなると、女性の男性選択行動が、厳しい現実を直視してより柔軟なものに変わっていくことを期待するほかなさそうだ。 「女性は自分や自分の父親よりも収入の高い男性と結婚するのが当然だと思っている。高度経済成長期はそういう男性が簡単に見つかったからみんな早く結婚した。けれども、経済成長が鈍り低成長期になって、自分や自分の父親よりも収入の高い男性の数が減り、結婚相手を見つけることが難しくなって、結婚は先延ばしになり、結果的にあぶれて結婚できない男女が増えている」、非常にクリアな分析だ 平均初婚年齢も、1975年は男性27歳、女性24.7歳。40年ほど前までの日本は、女性の半数が24歳までに結婚している社会だったのです。それが1990年には男性28.4歳、女性25.9歳と1歳以上も上昇しています。 このような状況の中で合計特殊出生率が過去最低の1.57になったことが発表されたのが、1990年という年でした。それ以降、研究者や政策担当者、マスコミの中で少子化が問題視されるようになったのです 山田氏の著書『結婚不要社会』(朝日新書) AERAdotを転載した「未婚化は1975年から始まった、家族社会学者が指摘していた研究者やマスコミの“過ち”」 ダイヤモンド・オンライン 結婚をめぐって生まれた現象は、収入の高い男性と結婚できる確率が低下する、という経済条件の変化でした。それでも、収入の低い男性と結婚するのを女性が厭わなければ、未婚化は起こりません。けれどもそうはならず、女性は収入が低い男性とあえて結婚することはしない──。 つまり未婚化は、結婚をめぐる意識は変わらないけれども「経済・社会環境」が変わったがために生じた現象であり、経済の低成長という構造的要因なので将来的にも結婚できない人が増え続ける、というのが私の主張 通説とは違って「晩婚化ではなく未婚化」とは興味深い。「ヨーロッパのように「結婚したくないから結婚しない」のではなくて、「結婚したくても結婚できない人」が増えていく。結婚したいのに結婚できないまま生涯を終える男女の増加、すなわち「結婚困難社会」を予測したわけです』、この方が女性にとっては悲惨なイメージだ。 「現在の社会現象は、晩婚化ではなく、未婚化である」というものだったのです。 つまり、「生涯一度も結婚しない人が増えるだろう」という主張
日本の政治情勢(その70)(自民党パーティー券収入還流問題、我々は納得できない!(その1)~なぜ政治の世界だけがここまで税を払わなくてよいのか 理由がわからない、自民党パーティー券収入還流問題 我々は納得できない!(その2)~政治資金規正法違反? 違うでしょう これは脱税でしょう、国民民主・玉木氏「トリガー」協議離脱の"裏側" 狂った"計算" 「自民の使い捨て」で野党でも孤立化) [国内政治]
日本の政治情勢については、昨年12月12日に取上げた。今日は、(その70)(自民党パーティー券収入還流問題、我々は納得できない!(その1)~なぜ政治の世界だけがここまで税を払わなくてよいのか 理由がわからない、自民党パーティー券収入還流問題 我々は納得できない!(その2)~政治資金規正法違反? 違うでしょう これは脱税でしょう、国民民主・玉木氏「トリガー」協議離脱の"裏側" 狂った"計算" 「自民の使い捨て」で野党でも孤立化)である。
先ずは、本年1月19日付け現代ビジネスが掲載した一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏と元東京地検特捜部検事の 郷原 信郎氏の対談「自民党パーティー券収入還流問題、我々は納得できない!(その1)~なぜ政治の世界だけがここまで税を払わなくてよいのか、理由がわからない」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/123002
・『政治の聖域化が理解できない 郷原 今回の自民党の政治資金パーティー券収入の還流問題を、私はこれまで政治資金規正法の観点から、問題を指摘してきましたが、野口先生の一連の論考を拝読して、改めて税の観点という全然違う捉え方ができると気づかされました。政治資金規正法の観点と税の観点からと、一緒に議論してみると、今回の問題の本質が見えると思います。 野口 たしかに政治資金規正法の観点は非常に重要なことです。ですが、それ以前に、実は私はわからないことが多いのです。そもそも、なぜ政治資金自体が非課税なのかが納得できないのです。そのことからお聞きしたいです。 郷原 私は検事として、政治資金規正法の罰則を運用して犯罪捜査しているときなど、当然のことのように非課税と考えていました。要は政治資金として扱っている部分は税の問題から除外されるというような認識がありました。 改めてなぜそうなのだろうかと、歴史的な経緯も含めて考えてみました。税法には「公職選挙法の適用を受ける選挙における候補者が選挙運動に関し、贈与によって取得した金品およびその他の財産上の利益で同法189条の規定による報告が為されたものを贈与税の非課税とする」という規定があります。 郷原信郎氏 選挙に関する部分は非課税という明確な規定がありますが、それ以外の部分の政治献金の非課税についてはまったく規定がありません。つまり公職選挙法上の選挙運動に関するものに限って「非課税」としているのに過ぎないのです。政治資金一般を非課税にする根拠となる規定はありません。 個人が政治献金を受けている部分については、基本的には雑所得で、ただそれが政治資金として使われた部分は課税しないということになっている、ということでした。政治資金収支報告書などに寄附として記載して使い道を公開している部分については課税しないと言うことになっている、という風に考えられます。 そこを考えていくと、国税当局が、本来法律上、選挙に関する部分のみ非課税にするとしか規定にされていないのに、政治資金というのは実際には政治活動のために支出する部分が大部分だから、あまり課税と言うことは行ってこなかった、という運用上の問題に過ぎなかったのではないかと思われます。それが事実上、政治献金、政治活動費というのは、課税の対象外であるかのような認識に繋がってきただけなのではないかという気がします』、「税法には「公職選挙法の適用を受ける選挙における候補者が選挙運動に関し、贈与によって取得した金品およびその他の財産上の利益で同法189条の規定による報告が為されたものを贈与税の非課税とする」という規定があります。 郷原信郎氏 選挙に関する部分は非課税という明確な規定がありますが、それ以外の部分の政治献金の非課税についてはまったく規定がありません。つまり公職選挙法上の選挙運動に関するものに限って「非課税」としているのに過ぎないのです。政治資金一般を非課税にする根拠となる規定はありません・・・公職選挙法上の選挙運動に関するものに限って「非課税」としているのに過ぎないのです。政治資金一般を非課税にする根拠となる規定はありません。 個人が政治献金を受けている部分については、基本的には雑所得で、ただそれが政治資金として使われた部分は課税しないということになっている、ということでした・・・国税当局が、本来法律上、選挙に関する部分のみ非課税にするとしか規定にされていないのに、政治資金というのは実際には政治活動のために支出する部分が大部分だから、あまり課税と言うことは行ってこなかった、という運用上の問題に過ぎなかったのではないかと思われます。それが事実上、政治献金、政治活動費というのは、課税の対象外であるかのような認識に繋がってきただけなのではないかという気がします」、税法上の問題を深く考察するには、野口・郷原両氏は最適だ。
・『選挙はなぜ「非課税」なのか 野口 選挙に関するものであれば、贈与税は非課税だということですが、なぜ例外になるのでしょうか。理由がわからないのです。選挙というものは、特殊な、多分「高貴な」行為である、われわれのような一般人が行っている活動とは全く別のものである、という感覚があるのではないのですか。 郷原 選挙に関する部分が非課税になっている根拠というのは明確にこうだとは言いにくいのですが、ただ選挙というのが政治活動の中でも、最も公益目的が強いもので 選挙というものが民主主義の基盤になるわけだから、選挙の費用に充てるということであれば非課税というのはわからなくはないです。 野口 選挙は公益のために非常に重要な活動である、これは間違いないことです。では仮に私が「自分の書いている文章は公益に非常に寄与するものである」、もちろん実際はそうでなくとも、そう主張したとする。「だから私の原稿料は非課税であるはずだ」、といいだしたら、社会から「おまえは何と馬鹿なことを言うのだ」という扱いしか受けないですね。私の執筆活動と選挙活動は、なぜこのように差別されるのでしょうか。 郷原 確かに公益目的と言うことだけでは、説明はつかないです。選挙に関しては、公職選挙法の選挙運動費用収支報告書に記載された寄附だけが非課税とされているので、寄附に対応する支出が明確になっていることに意味があるのかもしれません。 野口 しかし、支出が明確になっていると言うことと、課税対象にならないということは、税の考え方からすると全く別な問題だと思います。普通の所得については、税務申告をして中身を明確にしたうえで、さらに税金を取られます。一方、今のご説明では、政治資金収支報告書で明確に説明できればそれでいいということですが、この二つには区別があります。なぜでしょうか。 それが私にとっての第一の問題です。この問題の根本がわからない。多くの日本人が、同じように、この素朴な疑問を心の中に抱えていると思います。私のような一般人がやっている活動は、税務署に散々調べ上げられて、しかも高い税金を課されます。でも政治活動は違うのですか、という質問は、政治家以外のほとんどの方が心の中に抱えている疑問ではないですか。 なんで選挙については非課税なのかが問題なのです。それがあるから事実上の解釈として、それ以外の政治活動についても非課税と言うことが取り扱い上、一般に認められているからというなら、一番最初に選挙に関する活動がなぜ非課税なのかを問題にしなければならないのです。 外国においても、同じような問題はあります。日本だけの特殊な問題ではないのです。もちろん、外国で、どうこうだからと言うのは日本の理由にはなりませんが。 例えばこういう説明があります。政治活動である選挙に税務当局が介入してきて、何らかの政治的意図を持って、ある政治勢力だけを厳しく調査する、とか、そういうことはあり得ます。そういう行為を排除するために選挙活動は別扱いにする、という説明もあります。 郷原 政治活動一般に対して同じようなことが言われます。 野口 そうなると、それは選挙活動に限らないわけです。いろいろな意見を述べるにしても、選挙活動とは影響力は比べものにはなりませんが、私が何かを執筆することも、ある種の政治活動だといえないことはない。ある種の意見を述べているのですから。言論活動というのは影響力の大小の違いはあれ、政治的なことから全く無関係ではないものが、非常にたくさんあります。だからなぜ選挙だけなのかが、疑問なのです。 郷原 いずれにせよ、なぜ税金を払わないで済ますところまで保護しなければならないのか、国からの政治家への介入がをなくしさえすればよいのではないか、という話ですね。 野口 そうですね。私には全く理解できないことです』、「なぜ税金を払わないで済ますところまで保護しなければならないのか、国からの政治家への介入がをなくしさえすればよいのではないか、という話ですね。 野口 そうですね。私には全く理解できないことです」、確かにこうした本質的問題には明解な解釈はなさそうだ。
・『そもそも政治資金パーティーとは何物か 郷原 今回の自民党の問題では、政治資金パーティーが焦点となっています。政治資金パーティーと言うものがどういうもので、なぜその政治資金パーティーの収入が非課税なのか、についても掘り下げる必要があります。 野口 それも先の問題の続きだと思います。なぜパーティーの収入は、一定の限度内とはいえ非課税なのでしょうか。 例えば、普通の人が考えているのは、先ほどの選挙と同じように、政治資金パーティーというのはいろいろな政治的な見解を述べて人々の理解を求める、という「崇高な行為」であると、特別な行為である、だから一定の限度で非課税にする、という理屈なのかと考えているようですが、それでは例えば講演会をやって、ある考えを述べて、「これは非常に崇高な行為であるから非課税である」とします。ですがそんなことに耳を貸している人はいないと思います。 なぜ政治家だけが別なのですか。はじめの疑問と同じことです。これも理解できません。 郷原 正に全く同じ問題ですね。それと同時に、政治資金パーティーの性格にも問題があります。単純に非課税となる寄附を集めるものというだけではなく、事業収入という性格も相当強いと思います。 野口 事業収入ならば当然、課税対象ですね。 郷原 そうです。政治資金パーティーは、パーティーに来て貰って政見を広めるという政治活動の性格がベースにあることと同時に、パーティーの対価が政治資金の寄附という性格を持っているか否かが、非課税だとする理由に関して問題になります。 政治資金規正法の問題と考えると、赤字会社、外国人、補助金を受けている会社などは政治家に寄附はできません。ところが実際には、赤字会社、外国人、補助金を受けている会社などもパーティー券の購入は可能です。となると、パーティー券収入は、政治資金と言うことだけで説明できるのか、やはり事業収入という性格もあるのではないか、それが政治的な性格もあるから事実上非課税にされているだけなのではないか。そこはすごく曖昧な性格なのではないかという気がします。 このことが根本にあり、それが、その政治資金パーティーの収入を分配した形のキックバックをどう考えるのか、という問題に関係してきます。政治資金パーティーの収益の一部を、議員がノルマ以上にパーティー券を売ったから、その部分を報奨として還元するというキックバックである以上、そのお金は、そもそも政治資金の寄附ではなくて、個人所得ではないかと思います。 「政治資金」という切り口だけでは、何が問題なのか納得のいく説明に辿り着かない自民党のパーティー券収入還流問題。「(その2)政治資金規正法違反? 違うでしょう、これは脱税でしょう」で、所得の未申告という本当の問題点に光を当てる』、「「政治資金」という切り口だけでは、何が問題なのか納得のいく説明に辿り着かない自民党のパーティー券収入還流問題」、これを「所得の未申告という本当の問題点に光を当てる」、とどうみえてくるのだろう。
次に、この続きを、1月19日付け現代ビジネスが掲載した一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏と元東京地検特捜部検事の 郷原 信郎氏の対談「自民党パーティー券収入還流問題、我々は納得できない!(その2)~政治資金規正法違反? 違うでしょう、これは脱税でしょう」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/123003
・『これは申告漏れ、所得隠しでは 野口「(その1)なぜ政治の世界だけがここまで税を払わなくてよいのか、理由がわからない」で提起した問題は政治資金規正法上の資金の処理の話ではなく、税の問題として考えれば明解です。議員の側からすると、要するにお金を貰ったわけで、その原資がどういう性格のものかという話は、何の関係もありません。 これは、あらゆる所得について同じことであって、例えば私に原稿料収入があったときに、「このお金の元手は何だったのですか」とは聞かれません。そのことは税法上、全く問題にされません。問題となるのは私が原稿料収入を得たという事実だけなのです。今回の政治資金パーティーのパーティー券収入のキックバックを議員が貰った問題は、そのお金の性格がなんであるかということではなく、「貰った」と事実だけが問題なのです。カネに色目はないわけです。 郷原 所得申告の論理で考えると、非課税となるのは政治資金規正法の対象として政治資金と認められたものに対してだけであり、収支報告書に記載しないという前提で渡されたお金は、政治資金として扱うものではないということですね。 野口 そうです。報道されているところによると、派閥から「これは政治資金報告書に記載しなくてもいい」といって渡された。貰ったほうは、政治資金でないと理解して貰ったもので政治資金収支報告書に記載しなかった。そして、普通の飲食などにも使われたといいます。ということは、課税されるべき所得と考えるのが自然です。だったらなぜ申告しなかったのでしょうか。これは申告漏れ、もしくは所得隠しではないですか。 郷原 収支報告書に書かない政治資金として渡したという説明が可能かどうか、という話ではないのでしょうか。 野口 政治資金であれば、政治資金報告書に記載しなければいけないのではないですか。記載しなくともよい政治資金など存在しません。派閥から「政治資金じゃないよ、自由に使っていいよ」といわれて貰い、受け取った方も、その理解で貰ったのではないですか? 郷原 そこは検察の捜査でどのように供述しているかはっきりしません。 野口 はっきりしなくとも、そういう報道が為されていますよね。少なくとも、そう言った議員がいるわけですよね。 郷原 「使途に制限の無いお金、ということで貰ったので記載しませんでした」ということのようです。派閥から政治家個人に寄附をすることは、政治資金規正法上は違法なのです。違法なのですが違法を承知であえて貰ったとすれば、そういうカネの流れはあり得ることはあり得る。今回のキックバックされた資金の問題では、少なくとも政治資金収支報告書に書かない前提で、違法に個人宛に行われたものだ、となると、個人所得ではないという理屈は成り立たないのではないかと思います。 野口 当然そうですよね。例えば、泥棒は違法ですが、それで得た金銭は、税務申告しなければなりません。違法だからと言って申告しなくても良いということにはなりません。 郷原 一般国民の認識はそうですよね。名目がどうであれ、誰から貰ったものであれ、その原資がなんであれ、収入であればそれはすべて税務申告の対象ですよ』、「今回のキックバックされた資金の問題では、少なくとも政治資金収支報告書に書かない前提で、違法に個人宛に行われたものだ、となると、個人所得ではないという理屈は成り立たないのではないかと思います。 野口 当然そうですよね。例えば、泥棒は違法ですが、それで得た金銭は、税務申告しなければなりません。違法だからと言って申告しなくても良いということにはなりません」、その通りだ。
・『税務署は、のろのろしていたらダメだ 野口 だから私は今回の件は、政治資金収支報告書に書かなかったことが問題なのではないと思っています。ただ、さらに問題なのは、政治家が「うっかりしていました」といって、修正申告する可能性があることです。 郷原 そのことは本当に問題ですよね。 野口 はっきり言えば「税務署は、のろのろしていたらダメだ」ということです。すぐさま税務調査に入るべきではないですか。 郷原 それが、すでに逮捕された池田佳隆衆議院議員については、資金管理団体で3200万円の収支報告書の訂正をして、全額翌年への繰越金にしているのです。具体的に使途を明らかにしたということではまったくなくて、そのまま貯めていましたよ、という扱いにしたという話なんです。収支報告書の訂正を行ったからと言って、事後的に政治資金として非課税の対象とするというのは、めちゃくちゃじゃないかと思います。 野口 めちゃくちゃだと思います。しかし、それがこれから起こるわけですよね。 郷原 しかも、旧安倍派は、キックバックを貰っていた全議員に収支報告書を訂正するように話をしているらしいのです。ちょっとめちゃくちゃじゃないかと思うのです。これがまかり通ってしまったら国民の側も納得できないのではないかと思います。 野口 ええ、納得できない。 郷原 なぜそんなことになってしまっているかというと、まさしく、政治資金規正法の視点からしか、ものをみていないからなのです。最初からこれは、政治資金パーティーも政治の領域だし、そのあとの政治家と派閥とのやりとりも、基本的に政治に関するものだから、それは全部、税金の問題ではなくて、政治資金規正法で規律するのだ、という前提で考えてしまっているわけです。 実は私も、かつてその趣旨の発言をしていて、「脱税の問題にならないのか」と聞かれたときに、「そういう政治資金を実際に個人の用途に使っていたら、その部分が脱税の問題になりますよ」という言い方をしていたんです。 大体、検察官とかも、議員の弁護人なども、おそらくそういう前提で考えていると思います。具体的に政治じゃない目的に使っているお金が明らかになったら、その部分が課税の対象になる。そうじゃないならば税の問題にならないと思ってやって来たのだと思います。これまで。 野口 私はその考えは違うと思います。 郷原 その考え方が違うのだと明確にいえれば、むしろ、すべて全額について税務上の手続きを先行させるべきだという話になると思います。 野口 そういうことですね。私もそうじゃないかと思います』、「野口 はっきり言えば「税務署は、のろのろしていたらダメだ」ということです。すぐさま税務調査に入るべきではないですか。 郷原 それが、すでに逮捕された池田佳隆衆議院議員については、資金管理団体で3200万円の収支報告書の訂正をして、全額翌年への繰越金にしているのです。具体的に使途を明らかにしたということではまったくなくて、そのまま貯めていましたよ、という扱いにしたという話なんです。収支報告書の訂正を行ったからと言って、事後的に政治資金として非課税の対象とするというのは、めちゃくちゃじゃないかと思います。 野口 めちゃくちゃだと思います。しかし、それがこれから起こるわけですよね」、全く酷い話だ。
・『税務署は、のろのろしていたらダメだ 野口 だから私は今回の件は、政治資金収支報告書に書かなかったことが問題なのではないと思っています。ただ、さらに問題なのは、政治家が「うっかりしていました」といって、修正申告する可能性があることです。 郷原 そのことは本当に問題ですよね。 野口 はっきり言えば「税務署は、のろのろしていたらダメだ」ということです。すぐさま税務調査に入るべきではないですか。 郷原 それが、すでに逮捕された池田佳隆衆議院議員については、資金管理団体で3200万円の収支報告書の訂正をして、全額翌年への繰越金にしているのです。具体的に使途を明らかにしたということではまったくなくて、そのまま貯めていましたよ、という扱いにしたという話なんです。収支報告書の訂正を行ったからと言って、事後的に政治資金として非課税の対象とするというのは、めちゃくちゃじゃないかと思います。 野口 めちゃくちゃだと思います。しかし、それがこれから起こるわけですよね。 郷原 しかも、旧安倍派は、キックバックを貰っていた全議員に収支報告書を訂正するように話をしているらしいのです。ちょっとめちゃくちゃじゃないかと思うのです。これがまかり通ってしまったら国民の側も納得できないのではないかと思います。 野口 ええ、納得できない。 郷原 なぜそんなことになってしまっているかというと、まさしく、政治資金規正法の視点からしか、ものをみていないからなのです。最初からこれは、政治資金パーティーも政治の領域だし、そのあとの政治家と派閥とのやりとりも、基本的に政治に関するものだから、それは全部、税金の問題ではなくて、政治資金規正法で規律するのだ、という前提で考えてしまっているわけです。 実は私も、かつてその趣旨の発言をしていて、「脱税の問題にならないのか」と聞かれたときに、「そういう政治資金を実際に個人の用途に使っていたら、その部分が脱税の問題になりますよ」という言い方をしていたんです。 大体、検察官とかも、議員の弁護人なども、おそらくそういう前提で考えていると思います。具体的に政治じゃない目的に使っているお金が明らかになったら、その部分が課税の対象になる。そうじゃないならば税の問題にならないと思ってやって来たのだと思います。これまで。 野口 私はその考えは違うと思います。 郷原 その考え方が違うのだと明確にいえれば、むしろ、すべて全額について税務上の手続きを先行させるべきだという話になると思います。 野口 そういうことですね。私もそうじゃないかと思います。 郷原 実際に今起きている世の中の反応を見ても、この裏金問題に対して多くの国民が非常に怒っているのは、裏でお金を貰って、申告もしないで、税金も払わないで、好き放題に使っていることに対してです。 野口 そうだと思います。 郷原 実際に今起きている世の中の反応を見ても、この裏金問題に対して多くの国民が非常に怒っているのは、裏でお金を貰って、申告もしないで、税金も払わないで、好き放題に使っていることに対してです。 野口 そうだと思います』、「野口 はっきり言えば「税務署は、のろのろしていたらダメだ」ということです。すぐさま税務調査に入るべきではないですか。 郷原 それが、すでに逮捕された池田佳隆衆議院議員については、資金管理団体で3200万円の収支報告書の訂正をして、全額翌年への繰越金にしているのです。具体的に使途を明らかにしたということではまったくなくて、そのまま貯めていましたよ、という扱いにしたという話なんです。収支報告書の訂正を行ったからと言って、事後的に政治資金として非課税の対象とするというのは、めちゃくちゃじゃないかと思います。 野口 めちゃくちゃだと思います。しかし、それがこれから起こるわけですよね」、全く酷い話だ。「すべて全額について税務上の手続きを先行させるべきだという話になると思います。 野口 そういうことですね。私もそうじゃないかと思います。 郷原 実際に今起きている世の中の反応を見ても、この裏金問題に対して多くの国民が非常に怒っているのは、裏でお金を貰って、申告もしないで、税金も払わないで、好き放題に使っていることに対してです。 野口 そうだと思います」、その通りだ。
・『国税当局は検察捜査に忖度しているのか 郷原 それを政治資金規正法で何とかならないかという話をして、違反だから収支報告書を訂正しろと言って、訂正させて、それで終わりにさせてしまったのでは、もう税という面ではめちゃくちゃな話になってしまいます。 野口 その通りです。 郷原 政治資金がどうのという以前に、未申告があれば税務当局が脱税の疑いで調査すべきことのはずです。ただ、おそらく国税と検察との関係がそうだからと思うのですが、それをやられると検察の政治資金規正法違反の捜査の支障になってしまう。 これまでも国税当局は基本的に政治家に対する課税に後ろ向きだったと思います。ともかく政治の領域に踏み込むと、いろいろなハレーションが起きるから、非課税は選挙に関する部分だけなのに、それを拡大解釈して政治全般を課税の対象外にしているかのようなやり方でした。 一回だけ例外があって、税の問題として大きく扱ったのが金丸脱税事件でした。あれは隠していた資金が見つかったので、さすがに税の問題だと言うことが明確にいえるということで脱税問題として扱いました。あのような形で政治家の脱税事件を大がかりに摘発したというのは、非常に少ないと思います。 ですから今回も検察が政治資金規正法を前提に捜査をやっているというときに、税の問題に持って行こうとするなら、国税、税務署のアクションに期待するのはちょっと難しいのではないかと思います。 ですから次善の措置になるのですが、政治家の側が収支報告書の訂正という、税申告をごまかすようなことをやるのではなく、やるべきことは、自らこれは全部税金を払うべきでしたと、修正申告をして追徴税も含めて払うことくらいですね。 野口 次善の策でいいのか、100%賛成はできませんが、現実問題としてはやむを得ないかも知れませんね。ただ何もやらないよりは、今、やった方がいいでしょう。 郷原 すくなくともこのまま収支報告書の訂正は認めて、ほかは何もやらないというわけにはいかないと思います』、「野口 次善の策でいいのか、100%賛成はできませんが、現実問題としてはやむを得ないかも知れませんね。ただ何もやらないよりは、今、やった方がいいでしょう。 郷原 すくなくともこのまま収支報告書の訂正は認めて、ほかは何もやらないというわけにはいかないと思います」、なるほど。
・『政治資金規正法の大穴 野口 今、確定申告の時期なのですよ。私も含めてですが、細かい領収書を集めて、なんでこんなことをやらされているのかと思っています。税を払うのはしょうがないけれども、税を払うためになんでこんなに苦労させられなければならないのか。確定申告の時期なのに、なんでこれが問題にならないのでしょうか。多くの人がなんでと思っています。一般の人には何も悪いことをしなくとも税務調査が入ることがあるわけです。 郷原 私はこれまで「政治資金規正法の大穴」ということを指摘してきました。政治資金を裏金として渡すと言うことは、資金管理団体にも、政党にも、どこの帳簿にもまったく書かないということで渡しているわけです。 そもそも政治資金規正法で収支報告書の虚偽記入とか、不記載罪というのは、どこかの政治団体とか、政党支部の収支報告書に寄附として書かれていることが虚偽であるとか、記載すべき事項が記載されていないということがあって初めて犯罪が成立するわけです。どの団体宛の資金かということが特定されていないといけないわけです。どこにも書かない罪というのがあるわけではなくて、どこかの収支報告書に書くべきものを書きませんでしたということが犯罪になるわけです。ですから裏金で政治家が受けとったときには、どこの収支報告書に書くべきかがわからないので不記載罪にならない。それを昔から「大穴」だと指摘してきました。 検察は、この大穴を無視して、自らの資金管理団体の報告書に記載しなかったとして政治資金規正法違反の疑いで池田佳隆衆議院議員を逮捕しましたが、これは、かなり無理なやり方だと思うのです。裏金として貰ったということは、どこの収支報告書にも記載されておらず、政治資金として報告すべきものとなっていないのですから、政治資金ではない。これは税金の問題にしかならないのじゃないか、と考えると、結局、政治資金規正法の方から考えても、税の方から考えても、政治資金収支報告書の記載に関する犯罪は成立しない、という同じ結論に辿り着いたのです。 こういう問題に対して、どうすべきか。税の問題であることをみんなが認識して、税務上の正しい措置をとるべきだということを声を大にして言いたいです。この問題に対して、政治資金の新しい規制とか、政治刷新だとか言う話が出ていますが、税の観点を抜きにしてそれはあり得ないと思います。政治家が、どうやって申告するのか、どうやって納税するのかと言うことも含めて考えていかないと、問題の解決にはなりません。 野口 そうですね。そういうことだと思います』、「政治資金規正法の方から考えても、税の方から考えても、政治資金収支報告書の記載に関する犯罪は成立しない、という同じ結論に辿り着いたのです。 こういう問題に対して、どうすべきか。税の問題であることをみんなが認識して、税務上の正しい措置をとるべきだということを声を大にして言いたいです」、その通りだ。
第三に、2月17日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「国民民主・玉木氏「トリガー」協議離脱の"裏側" 狂った"計算"、「自民の使い捨て」で野党でも孤立化」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/735227
・『国民民主党の玉木雄一郎代表が、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」凍結解除をめぐる自民、公明両党との協議離脱を決断したことが、与野党に複雑な波紋を広げている。 これまで、予算案賛成などで与党にすり寄り、次期衆院選後の「政権入り」も取り沙汰された玉木氏の、唐突に見えた“変身”。その裏舞台には、「岸田文雄首相をはじめ与野党最高幹部らの“権謀術数”が渦巻いている」(自民長老)との見方が少なくないからだ。 当の玉木氏は、協議離脱について「岸田首相に『トリガー解除』の余裕がなくなったことが原因。まさに『約束違反』で、離脱は当然」と岸田首相の“裏切り”をなじる。そのうえで、トリガー凍結解除という「政策目標」の実現に向け、一転して旧民主党時代の「仲間」の立憲民主党の協力が必要と秋波を送った。 これに対し、岡田克也・立憲民主幹事長は「考え方を改め、野党がまとまっていくべきだと考えるなら、懐深く対応していきたい」と国民との連携に意欲を示したうえで「国民民主の吸収合併」にも言及した。 これには国民民主幹部が「上から目線」などと猛反発、玉木氏も「ああいう発言ではますます(連携が)難しくなる」と不快感を隠さず、双方の感情のもつれが露呈した。このため、永田町では「自民に使い捨てにされ、立憲にも見放されたのが玉木氏。まさに一人芝居の果ての自滅」(自民長老)との厳しい指摘も広がる』、「まさに一人芝居の果ての自滅」とは言い得て妙だ。
・『「岸田首相の裏切り」と協議離脱決断 玉木氏は2月6日、衆議院予算委で岸田首相に対し、高騰する燃油価格抑制のための補助金の期限が4月末までとなっていることを踏まえ、「ただちにトリガー条項の凍結を解除してほしい」と迫った。しかし、岸田首相は「3党の検討チームにおいて、ぜひ検討させたい」などと言質を与えずにのらりくらりとかわし続けた。) これに憤慨した玉木氏は、質疑終了後、記者団に対し「5月以降、トリガーの発動のメドがなければ協議を継続する意味がない。協議の離脱を決断せざるを得ない」と自民、公明、国民民主の3党協議からの離脱を宣言。 これを受けて、国民民主は7日の党会合で協議離脱を正式決定。トリガー条項の凍結解除に「政治生命をかける」として自公との協議を進めてきた玉木氏に対する「責任論」も出なかった。それも踏まえて玉木氏は、記者団に「派閥の裏金問題が自民党の政策推進力や調整力を著しく低下させ、難しい減税政策を進められなくなった」と自民に“責任転嫁”した。 ただ、今回の玉木氏主導の協議離脱劇について、昨年末、玉木氏との路線対立から国民民主を離党し、「教育無償化を実現する会」という新党を結成した前原誠司前国民民主代表代行は、翌8日の記者会見で「玉木代表は何らかのけじめが必要だ」と皮肉るとともに、「自民党にすり寄っても相手にされなかった。(政治的に)非常識だったということ」と批判した』、
「玉木」氏はやはり未熟なようだ。「トリガー条項の凍結解除に「政治生命をかける」として自公との協議を進めてきた玉木氏に対する「責任論」も出なかった」、「国民民主」も情けない。
・『「考え方を改め」との岡田発言にも反発 こうした経過を受けて、国民民主は12日、東京都内に所属国会議員と支持者約350人を集めて開いた定期党大会で「政策本位で協力できる政党とは与野党を問わず連携するが、『正直な政治』が大前提」とする2024年度活動方針を決定。ただ、玉木氏はあいさつで「裏金問題は政治への信頼を根底から揺るがす大問題」と厳しく批判するなど、これまでの与党寄りの姿勢を事実上修正してみせた。 これに先立ち岡田・立憲民主幹事長は10日、国民民主の路線転換について「考え方を改め、野党がまとまっていくべきだと考えるなら、懐深く対応していきたい」と国民との連携に意欲を示した。ただ、玉木氏は12日の定期党大会後の記者会見で、岡田氏の「考えを改めるなら」との発言について「(岡田発言で)ますます(連携は)難しくなる。わが党の中にも思いがあるということに、もう少し理解と配慮をいただきたい」と不快感を示した。 そのうえで玉木氏は、立憲と国民の合流の可能性について「安全保障やエネルギー、憲法などの基本的政策について一致できる政党があれば、『連立』は可能だが、現在の立憲民主はそれを満たしていない」と指摘し、「今、ともに政権を担う政党とは考えていない。一致させるために議論する用意はあるが、そういう話は来ない」と突き放した。 そもそも、玉木氏は与党との協議離脱を決断した6日、立憲幹部に4月の衆参統一補選での連携を持ち掛け、両党は14日にも党首会談を行うべく調整に入ったが、10日の「岡田発言」への国民民主の反発で頓挫し、玉木氏は13日の泉健太・立憲代表との電話会談で協議見合わせの意向を伝えたとされる。その際玉木氏は、国民民主がトリガー発動に必要な法案を日本維新の会と共同提出した経緯を踏まえ、立憲との協議先行に否定的態度も示したという』、「玉木氏はあいさつで「裏金問題は政治への信頼を根底から揺るがす大問題」と厳しく批判するなど、これまでの与党寄りの姿勢を事実上修正してみせた」、自民党への批判にようやく踏み切ったようだ。「岡田・立憲民主幹事長」もまずい発言をしたものだ。
・『立憲・国民との3党連携は「ナンセンス」と維新 こうした経緯から玉木氏は14日、立憲、維新との連携について「3党で何らかの形で議論したり会ったりすることは否定しない」として、今後は3野党連携を模索する考えも示した。ただ、馬場伸幸・維新代表は15日、「トリガー条項」発動で泉氏から協議呼びかけがあったことを明らかにしたうえで、「今さら、(立憲、国民、維新の)3党で与党側に(トリガー条項発動要求を)突き付けていくのは、非常にナンセンス」と3党連携を全否定した。 こうして、「トリガー凍結解除で右顧左眄の果てに孤立化した玉木氏」(自民長老)について、有力な政治アナリストは「次期衆院選での党の生き残りに懸ける玉木氏が、『裏金事件で国民に見放された自民と組むより、野党と連携したほうが得だ』と考えた結果」と分析。 併せて、自民党のつれない対応についても「改憲や防衛政策で抵抗する公明を牽制するために国民民主の取り込みに動いたが、裏金事件への国民批判で次期衆院選に向けた公明との関係強化が不可欠となり、国民民主どころではなくなったのでは」と解説する。 そもそもここ数十年の政治史を振り返ると、「与(よ)党と野(や)党の間に位置する国民民主のような(ゆ)党は、いずれも一定期間存続後、賞味期限切れで消滅した」(自民長老)のが実態。玉木氏については「もともと自民党からの出馬がかなわず、当時の民主党から中央政界入りした」(同)との指摘もあり、旧民主党政権崩壊後の分裂騒ぎの中で「自民一強政権に潜り込むチャンスを狙ってきた」(閣僚経験者)との見方が少なくない。 だからこそ、「トリガー凍結解除という『国民的人気商品』を自らの自民への売り込み材料に使った」(同)わけだが、「その思惑は昨年末からの巨額裏金事件での元の木阿弥」になった」(同)格好だ。こうした玉木氏の対応に、最新の一部メディア世論調査では国民民主の政党支持率が半減しており、当面は「玉木氏が孤立脱出の妙手を打ち出せるかどうか」が注目されることになる』、「ここ数十年の政治史を振り返ると、「与(よ)党と野(や)党の間に位置する国民民主のような(ゆ)党は、いずれも一定期間存続後、賞味期限切れで消滅した」(自民長老)のが実態・・・玉木氏については「もともと自民党からの出馬がかなわず、当時の民主党から中央政界入りした」(同)との指摘もあり、旧民主党政権崩壊後の分裂騒ぎの中で「自民一強政権に潜り込むチャンスを狙ってきた」(閣僚経験者)との見方が少なくない」、「玉木氏」が「自民党からの出馬がかなわず」との事情があったというのは初めt知った。「最新の一部メディア世論調査では国民民主の政党支持率が半減しており、当面は「玉木氏が孤立脱出の妙手を打ち出せるかどうか」が注目されることになる」、やはり「国民民主のような(ゆ)党は、いずれも一定期間存続後、賞味期限切れで消滅した」という例が今回も当てはまるのだろうか。
先ずは、本年1月19日付け現代ビジネスが掲載した一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏と元東京地検特捜部検事の 郷原 信郎氏の対談「自民党パーティー券収入還流問題、我々は納得できない!(その1)~なぜ政治の世界だけがここまで税を払わなくてよいのか、理由がわからない」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/123002
・『政治の聖域化が理解できない 郷原 今回の自民党の政治資金パーティー券収入の還流問題を、私はこれまで政治資金規正法の観点から、問題を指摘してきましたが、野口先生の一連の論考を拝読して、改めて税の観点という全然違う捉え方ができると気づかされました。政治資金規正法の観点と税の観点からと、一緒に議論してみると、今回の問題の本質が見えると思います。 野口 たしかに政治資金規正法の観点は非常に重要なことです。ですが、それ以前に、実は私はわからないことが多いのです。そもそも、なぜ政治資金自体が非課税なのかが納得できないのです。そのことからお聞きしたいです。 郷原 私は検事として、政治資金規正法の罰則を運用して犯罪捜査しているときなど、当然のことのように非課税と考えていました。要は政治資金として扱っている部分は税の問題から除外されるというような認識がありました。 改めてなぜそうなのだろうかと、歴史的な経緯も含めて考えてみました。税法には「公職選挙法の適用を受ける選挙における候補者が選挙運動に関し、贈与によって取得した金品およびその他の財産上の利益で同法189条の規定による報告が為されたものを贈与税の非課税とする」という規定があります。 郷原信郎氏 選挙に関する部分は非課税という明確な規定がありますが、それ以外の部分の政治献金の非課税についてはまったく規定がありません。つまり公職選挙法上の選挙運動に関するものに限って「非課税」としているのに過ぎないのです。政治資金一般を非課税にする根拠となる規定はありません。 個人が政治献金を受けている部分については、基本的には雑所得で、ただそれが政治資金として使われた部分は課税しないということになっている、ということでした。政治資金収支報告書などに寄附として記載して使い道を公開している部分については課税しないと言うことになっている、という風に考えられます。 そこを考えていくと、国税当局が、本来法律上、選挙に関する部分のみ非課税にするとしか規定にされていないのに、政治資金というのは実際には政治活動のために支出する部分が大部分だから、あまり課税と言うことは行ってこなかった、という運用上の問題に過ぎなかったのではないかと思われます。それが事実上、政治献金、政治活動費というのは、課税の対象外であるかのような認識に繋がってきただけなのではないかという気がします』、「税法には「公職選挙法の適用を受ける選挙における候補者が選挙運動に関し、贈与によって取得した金品およびその他の財産上の利益で同法189条の規定による報告が為されたものを贈与税の非課税とする」という規定があります。 郷原信郎氏 選挙に関する部分は非課税という明確な規定がありますが、それ以外の部分の政治献金の非課税についてはまったく規定がありません。つまり公職選挙法上の選挙運動に関するものに限って「非課税」としているのに過ぎないのです。政治資金一般を非課税にする根拠となる規定はありません・・・公職選挙法上の選挙運動に関するものに限って「非課税」としているのに過ぎないのです。政治資金一般を非課税にする根拠となる規定はありません。 個人が政治献金を受けている部分については、基本的には雑所得で、ただそれが政治資金として使われた部分は課税しないということになっている、ということでした・・・国税当局が、本来法律上、選挙に関する部分のみ非課税にするとしか規定にされていないのに、政治資金というのは実際には政治活動のために支出する部分が大部分だから、あまり課税と言うことは行ってこなかった、という運用上の問題に過ぎなかったのではないかと思われます。それが事実上、政治献金、政治活動費というのは、課税の対象外であるかのような認識に繋がってきただけなのではないかという気がします」、税法上の問題を深く考察するには、野口・郷原両氏は最適だ。
・『選挙はなぜ「非課税」なのか 野口 選挙に関するものであれば、贈与税は非課税だということですが、なぜ例外になるのでしょうか。理由がわからないのです。選挙というものは、特殊な、多分「高貴な」行為である、われわれのような一般人が行っている活動とは全く別のものである、という感覚があるのではないのですか。 郷原 選挙に関する部分が非課税になっている根拠というのは明確にこうだとは言いにくいのですが、ただ選挙というのが政治活動の中でも、最も公益目的が強いもので 選挙というものが民主主義の基盤になるわけだから、選挙の費用に充てるということであれば非課税というのはわからなくはないです。 野口 選挙は公益のために非常に重要な活動である、これは間違いないことです。では仮に私が「自分の書いている文章は公益に非常に寄与するものである」、もちろん実際はそうでなくとも、そう主張したとする。「だから私の原稿料は非課税であるはずだ」、といいだしたら、社会から「おまえは何と馬鹿なことを言うのだ」という扱いしか受けないですね。私の執筆活動と選挙活動は、なぜこのように差別されるのでしょうか。 郷原 確かに公益目的と言うことだけでは、説明はつかないです。選挙に関しては、公職選挙法の選挙運動費用収支報告書に記載された寄附だけが非課税とされているので、寄附に対応する支出が明確になっていることに意味があるのかもしれません。 野口 しかし、支出が明確になっていると言うことと、課税対象にならないということは、税の考え方からすると全く別な問題だと思います。普通の所得については、税務申告をして中身を明確にしたうえで、さらに税金を取られます。一方、今のご説明では、政治資金収支報告書で明確に説明できればそれでいいということですが、この二つには区別があります。なぜでしょうか。 それが私にとっての第一の問題です。この問題の根本がわからない。多くの日本人が、同じように、この素朴な疑問を心の中に抱えていると思います。私のような一般人がやっている活動は、税務署に散々調べ上げられて、しかも高い税金を課されます。でも政治活動は違うのですか、という質問は、政治家以外のほとんどの方が心の中に抱えている疑問ではないですか。 なんで選挙については非課税なのかが問題なのです。それがあるから事実上の解釈として、それ以外の政治活動についても非課税と言うことが取り扱い上、一般に認められているからというなら、一番最初に選挙に関する活動がなぜ非課税なのかを問題にしなければならないのです。 外国においても、同じような問題はあります。日本だけの特殊な問題ではないのです。もちろん、外国で、どうこうだからと言うのは日本の理由にはなりませんが。 例えばこういう説明があります。政治活動である選挙に税務当局が介入してきて、何らかの政治的意図を持って、ある政治勢力だけを厳しく調査する、とか、そういうことはあり得ます。そういう行為を排除するために選挙活動は別扱いにする、という説明もあります。 郷原 政治活動一般に対して同じようなことが言われます。 野口 そうなると、それは選挙活動に限らないわけです。いろいろな意見を述べるにしても、選挙活動とは影響力は比べものにはなりませんが、私が何かを執筆することも、ある種の政治活動だといえないことはない。ある種の意見を述べているのですから。言論活動というのは影響力の大小の違いはあれ、政治的なことから全く無関係ではないものが、非常にたくさんあります。だからなぜ選挙だけなのかが、疑問なのです。 郷原 いずれにせよ、なぜ税金を払わないで済ますところまで保護しなければならないのか、国からの政治家への介入がをなくしさえすればよいのではないか、という話ですね。 野口 そうですね。私には全く理解できないことです』、「なぜ税金を払わないで済ますところまで保護しなければならないのか、国からの政治家への介入がをなくしさえすればよいのではないか、という話ですね。 野口 そうですね。私には全く理解できないことです」、確かにこうした本質的問題には明解な解釈はなさそうだ。
・『そもそも政治資金パーティーとは何物か 郷原 今回の自民党の問題では、政治資金パーティーが焦点となっています。政治資金パーティーと言うものがどういうもので、なぜその政治資金パーティーの収入が非課税なのか、についても掘り下げる必要があります。 野口 それも先の問題の続きだと思います。なぜパーティーの収入は、一定の限度内とはいえ非課税なのでしょうか。 例えば、普通の人が考えているのは、先ほどの選挙と同じように、政治資金パーティーというのはいろいろな政治的な見解を述べて人々の理解を求める、という「崇高な行為」であると、特別な行為である、だから一定の限度で非課税にする、という理屈なのかと考えているようですが、それでは例えば講演会をやって、ある考えを述べて、「これは非常に崇高な行為であるから非課税である」とします。ですがそんなことに耳を貸している人はいないと思います。 なぜ政治家だけが別なのですか。はじめの疑問と同じことです。これも理解できません。 郷原 正に全く同じ問題ですね。それと同時に、政治資金パーティーの性格にも問題があります。単純に非課税となる寄附を集めるものというだけではなく、事業収入という性格も相当強いと思います。 野口 事業収入ならば当然、課税対象ですね。 郷原 そうです。政治資金パーティーは、パーティーに来て貰って政見を広めるという政治活動の性格がベースにあることと同時に、パーティーの対価が政治資金の寄附という性格を持っているか否かが、非課税だとする理由に関して問題になります。 政治資金規正法の問題と考えると、赤字会社、外国人、補助金を受けている会社などは政治家に寄附はできません。ところが実際には、赤字会社、外国人、補助金を受けている会社などもパーティー券の購入は可能です。となると、パーティー券収入は、政治資金と言うことだけで説明できるのか、やはり事業収入という性格もあるのではないか、それが政治的な性格もあるから事実上非課税にされているだけなのではないか。そこはすごく曖昧な性格なのではないかという気がします。 このことが根本にあり、それが、その政治資金パーティーの収入を分配した形のキックバックをどう考えるのか、という問題に関係してきます。政治資金パーティーの収益の一部を、議員がノルマ以上にパーティー券を売ったから、その部分を報奨として還元するというキックバックである以上、そのお金は、そもそも政治資金の寄附ではなくて、個人所得ではないかと思います。 「政治資金」という切り口だけでは、何が問題なのか納得のいく説明に辿り着かない自民党のパーティー券収入還流問題。「(その2)政治資金規正法違反? 違うでしょう、これは脱税でしょう」で、所得の未申告という本当の問題点に光を当てる』、「「政治資金」という切り口だけでは、何が問題なのか納得のいく説明に辿り着かない自民党のパーティー券収入還流問題」、これを「所得の未申告という本当の問題点に光を当てる」、とどうみえてくるのだろう。
次に、この続きを、1月19日付け現代ビジネスが掲載した一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏と元東京地検特捜部検事の 郷原 信郎氏の対談「自民党パーティー券収入還流問題、我々は納得できない!(その2)~政治資金規正法違反? 違うでしょう、これは脱税でしょう」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/123003
・『これは申告漏れ、所得隠しでは 野口「(その1)なぜ政治の世界だけがここまで税を払わなくてよいのか、理由がわからない」で提起した問題は政治資金規正法上の資金の処理の話ではなく、税の問題として考えれば明解です。議員の側からすると、要するにお金を貰ったわけで、その原資がどういう性格のものかという話は、何の関係もありません。 これは、あらゆる所得について同じことであって、例えば私に原稿料収入があったときに、「このお金の元手は何だったのですか」とは聞かれません。そのことは税法上、全く問題にされません。問題となるのは私が原稿料収入を得たという事実だけなのです。今回の政治資金パーティーのパーティー券収入のキックバックを議員が貰った問題は、そのお金の性格がなんであるかということではなく、「貰った」と事実だけが問題なのです。カネに色目はないわけです。 郷原 所得申告の論理で考えると、非課税となるのは政治資金規正法の対象として政治資金と認められたものに対してだけであり、収支報告書に記載しないという前提で渡されたお金は、政治資金として扱うものではないということですね。 野口 そうです。報道されているところによると、派閥から「これは政治資金報告書に記載しなくてもいい」といって渡された。貰ったほうは、政治資金でないと理解して貰ったもので政治資金収支報告書に記載しなかった。そして、普通の飲食などにも使われたといいます。ということは、課税されるべき所得と考えるのが自然です。だったらなぜ申告しなかったのでしょうか。これは申告漏れ、もしくは所得隠しではないですか。 郷原 収支報告書に書かない政治資金として渡したという説明が可能かどうか、という話ではないのでしょうか。 野口 政治資金であれば、政治資金報告書に記載しなければいけないのではないですか。記載しなくともよい政治資金など存在しません。派閥から「政治資金じゃないよ、自由に使っていいよ」といわれて貰い、受け取った方も、その理解で貰ったのではないですか? 郷原 そこは検察の捜査でどのように供述しているかはっきりしません。 野口 はっきりしなくとも、そういう報道が為されていますよね。少なくとも、そう言った議員がいるわけですよね。 郷原 「使途に制限の無いお金、ということで貰ったので記載しませんでした」ということのようです。派閥から政治家個人に寄附をすることは、政治資金規正法上は違法なのです。違法なのですが違法を承知であえて貰ったとすれば、そういうカネの流れはあり得ることはあり得る。今回のキックバックされた資金の問題では、少なくとも政治資金収支報告書に書かない前提で、違法に個人宛に行われたものだ、となると、個人所得ではないという理屈は成り立たないのではないかと思います。 野口 当然そうですよね。例えば、泥棒は違法ですが、それで得た金銭は、税務申告しなければなりません。違法だからと言って申告しなくても良いということにはなりません。 郷原 一般国民の認識はそうですよね。名目がどうであれ、誰から貰ったものであれ、その原資がなんであれ、収入であればそれはすべて税務申告の対象ですよ』、「今回のキックバックされた資金の問題では、少なくとも政治資金収支報告書に書かない前提で、違法に個人宛に行われたものだ、となると、個人所得ではないという理屈は成り立たないのではないかと思います。 野口 当然そうですよね。例えば、泥棒は違法ですが、それで得た金銭は、税務申告しなければなりません。違法だからと言って申告しなくても良いということにはなりません」、その通りだ。
・『税務署は、のろのろしていたらダメだ 野口 だから私は今回の件は、政治資金収支報告書に書かなかったことが問題なのではないと思っています。ただ、さらに問題なのは、政治家が「うっかりしていました」といって、修正申告する可能性があることです。 郷原 そのことは本当に問題ですよね。 野口 はっきり言えば「税務署は、のろのろしていたらダメだ」ということです。すぐさま税務調査に入るべきではないですか。 郷原 それが、すでに逮捕された池田佳隆衆議院議員については、資金管理団体で3200万円の収支報告書の訂正をして、全額翌年への繰越金にしているのです。具体的に使途を明らかにしたということではまったくなくて、そのまま貯めていましたよ、という扱いにしたという話なんです。収支報告書の訂正を行ったからと言って、事後的に政治資金として非課税の対象とするというのは、めちゃくちゃじゃないかと思います。 野口 めちゃくちゃだと思います。しかし、それがこれから起こるわけですよね。 郷原 しかも、旧安倍派は、キックバックを貰っていた全議員に収支報告書を訂正するように話をしているらしいのです。ちょっとめちゃくちゃじゃないかと思うのです。これがまかり通ってしまったら国民の側も納得できないのではないかと思います。 野口 ええ、納得できない。 郷原 なぜそんなことになってしまっているかというと、まさしく、政治資金規正法の視点からしか、ものをみていないからなのです。最初からこれは、政治資金パーティーも政治の領域だし、そのあとの政治家と派閥とのやりとりも、基本的に政治に関するものだから、それは全部、税金の問題ではなくて、政治資金規正法で規律するのだ、という前提で考えてしまっているわけです。 実は私も、かつてその趣旨の発言をしていて、「脱税の問題にならないのか」と聞かれたときに、「そういう政治資金を実際に個人の用途に使っていたら、その部分が脱税の問題になりますよ」という言い方をしていたんです。 大体、検察官とかも、議員の弁護人なども、おそらくそういう前提で考えていると思います。具体的に政治じゃない目的に使っているお金が明らかになったら、その部分が課税の対象になる。そうじゃないならば税の問題にならないと思ってやって来たのだと思います。これまで。 野口 私はその考えは違うと思います。 郷原 その考え方が違うのだと明確にいえれば、むしろ、すべて全額について税務上の手続きを先行させるべきだという話になると思います。 野口 そういうことですね。私もそうじゃないかと思います』、「野口 はっきり言えば「税務署は、のろのろしていたらダメだ」ということです。すぐさま税務調査に入るべきではないですか。 郷原 それが、すでに逮捕された池田佳隆衆議院議員については、資金管理団体で3200万円の収支報告書の訂正をして、全額翌年への繰越金にしているのです。具体的に使途を明らかにしたということではまったくなくて、そのまま貯めていましたよ、という扱いにしたという話なんです。収支報告書の訂正を行ったからと言って、事後的に政治資金として非課税の対象とするというのは、めちゃくちゃじゃないかと思います。 野口 めちゃくちゃだと思います。しかし、それがこれから起こるわけですよね」、全く酷い話だ。
・『税務署は、のろのろしていたらダメだ 野口 だから私は今回の件は、政治資金収支報告書に書かなかったことが問題なのではないと思っています。ただ、さらに問題なのは、政治家が「うっかりしていました」といって、修正申告する可能性があることです。 郷原 そのことは本当に問題ですよね。 野口 はっきり言えば「税務署は、のろのろしていたらダメだ」ということです。すぐさま税務調査に入るべきではないですか。 郷原 それが、すでに逮捕された池田佳隆衆議院議員については、資金管理団体で3200万円の収支報告書の訂正をして、全額翌年への繰越金にしているのです。具体的に使途を明らかにしたということではまったくなくて、そのまま貯めていましたよ、という扱いにしたという話なんです。収支報告書の訂正を行ったからと言って、事後的に政治資金として非課税の対象とするというのは、めちゃくちゃじゃないかと思います。 野口 めちゃくちゃだと思います。しかし、それがこれから起こるわけですよね。 郷原 しかも、旧安倍派は、キックバックを貰っていた全議員に収支報告書を訂正するように話をしているらしいのです。ちょっとめちゃくちゃじゃないかと思うのです。これがまかり通ってしまったら国民の側も納得できないのではないかと思います。 野口 ええ、納得できない。 郷原 なぜそんなことになってしまっているかというと、まさしく、政治資金規正法の視点からしか、ものをみていないからなのです。最初からこれは、政治資金パーティーも政治の領域だし、そのあとの政治家と派閥とのやりとりも、基本的に政治に関するものだから、それは全部、税金の問題ではなくて、政治資金規正法で規律するのだ、という前提で考えてしまっているわけです。 実は私も、かつてその趣旨の発言をしていて、「脱税の問題にならないのか」と聞かれたときに、「そういう政治資金を実際に個人の用途に使っていたら、その部分が脱税の問題になりますよ」という言い方をしていたんです。 大体、検察官とかも、議員の弁護人なども、おそらくそういう前提で考えていると思います。具体的に政治じゃない目的に使っているお金が明らかになったら、その部分が課税の対象になる。そうじゃないならば税の問題にならないと思ってやって来たのだと思います。これまで。 野口 私はその考えは違うと思います。 郷原 その考え方が違うのだと明確にいえれば、むしろ、すべて全額について税務上の手続きを先行させるべきだという話になると思います。 野口 そういうことですね。私もそうじゃないかと思います。 郷原 実際に今起きている世の中の反応を見ても、この裏金問題に対して多くの国民が非常に怒っているのは、裏でお金を貰って、申告もしないで、税金も払わないで、好き放題に使っていることに対してです。 野口 そうだと思います。 郷原 実際に今起きている世の中の反応を見ても、この裏金問題に対して多くの国民が非常に怒っているのは、裏でお金を貰って、申告もしないで、税金も払わないで、好き放題に使っていることに対してです。 野口 そうだと思います』、「野口 はっきり言えば「税務署は、のろのろしていたらダメだ」ということです。すぐさま税務調査に入るべきではないですか。 郷原 それが、すでに逮捕された池田佳隆衆議院議員については、資金管理団体で3200万円の収支報告書の訂正をして、全額翌年への繰越金にしているのです。具体的に使途を明らかにしたということではまったくなくて、そのまま貯めていましたよ、という扱いにしたという話なんです。収支報告書の訂正を行ったからと言って、事後的に政治資金として非課税の対象とするというのは、めちゃくちゃじゃないかと思います。 野口 めちゃくちゃだと思います。しかし、それがこれから起こるわけですよね」、全く酷い話だ。「すべて全額について税務上の手続きを先行させるべきだという話になると思います。 野口 そういうことですね。私もそうじゃないかと思います。 郷原 実際に今起きている世の中の反応を見ても、この裏金問題に対して多くの国民が非常に怒っているのは、裏でお金を貰って、申告もしないで、税金も払わないで、好き放題に使っていることに対してです。 野口 そうだと思います」、その通りだ。
・『国税当局は検察捜査に忖度しているのか 郷原 それを政治資金規正法で何とかならないかという話をして、違反だから収支報告書を訂正しろと言って、訂正させて、それで終わりにさせてしまったのでは、もう税という面ではめちゃくちゃな話になってしまいます。 野口 その通りです。 郷原 政治資金がどうのという以前に、未申告があれば税務当局が脱税の疑いで調査すべきことのはずです。ただ、おそらく国税と検察との関係がそうだからと思うのですが、それをやられると検察の政治資金規正法違反の捜査の支障になってしまう。 これまでも国税当局は基本的に政治家に対する課税に後ろ向きだったと思います。ともかく政治の領域に踏み込むと、いろいろなハレーションが起きるから、非課税は選挙に関する部分だけなのに、それを拡大解釈して政治全般を課税の対象外にしているかのようなやり方でした。 一回だけ例外があって、税の問題として大きく扱ったのが金丸脱税事件でした。あれは隠していた資金が見つかったので、さすがに税の問題だと言うことが明確にいえるということで脱税問題として扱いました。あのような形で政治家の脱税事件を大がかりに摘発したというのは、非常に少ないと思います。 ですから今回も検察が政治資金規正法を前提に捜査をやっているというときに、税の問題に持って行こうとするなら、国税、税務署のアクションに期待するのはちょっと難しいのではないかと思います。 ですから次善の措置になるのですが、政治家の側が収支報告書の訂正という、税申告をごまかすようなことをやるのではなく、やるべきことは、自らこれは全部税金を払うべきでしたと、修正申告をして追徴税も含めて払うことくらいですね。 野口 次善の策でいいのか、100%賛成はできませんが、現実問題としてはやむを得ないかも知れませんね。ただ何もやらないよりは、今、やった方がいいでしょう。 郷原 すくなくともこのまま収支報告書の訂正は認めて、ほかは何もやらないというわけにはいかないと思います』、「野口 次善の策でいいのか、100%賛成はできませんが、現実問題としてはやむを得ないかも知れませんね。ただ何もやらないよりは、今、やった方がいいでしょう。 郷原 すくなくともこのまま収支報告書の訂正は認めて、ほかは何もやらないというわけにはいかないと思います」、なるほど。
・『政治資金規正法の大穴 野口 今、確定申告の時期なのですよ。私も含めてですが、細かい領収書を集めて、なんでこんなことをやらされているのかと思っています。税を払うのはしょうがないけれども、税を払うためになんでこんなに苦労させられなければならないのか。確定申告の時期なのに、なんでこれが問題にならないのでしょうか。多くの人がなんでと思っています。一般の人には何も悪いことをしなくとも税務調査が入ることがあるわけです。 郷原 私はこれまで「政治資金規正法の大穴」ということを指摘してきました。政治資金を裏金として渡すと言うことは、資金管理団体にも、政党にも、どこの帳簿にもまったく書かないということで渡しているわけです。 そもそも政治資金規正法で収支報告書の虚偽記入とか、不記載罪というのは、どこかの政治団体とか、政党支部の収支報告書に寄附として書かれていることが虚偽であるとか、記載すべき事項が記載されていないということがあって初めて犯罪が成立するわけです。どの団体宛の資金かということが特定されていないといけないわけです。どこにも書かない罪というのがあるわけではなくて、どこかの収支報告書に書くべきものを書きませんでしたということが犯罪になるわけです。ですから裏金で政治家が受けとったときには、どこの収支報告書に書くべきかがわからないので不記載罪にならない。それを昔から「大穴」だと指摘してきました。 検察は、この大穴を無視して、自らの資金管理団体の報告書に記載しなかったとして政治資金規正法違反の疑いで池田佳隆衆議院議員を逮捕しましたが、これは、かなり無理なやり方だと思うのです。裏金として貰ったということは、どこの収支報告書にも記載されておらず、政治資金として報告すべきものとなっていないのですから、政治資金ではない。これは税金の問題にしかならないのじゃないか、と考えると、結局、政治資金規正法の方から考えても、税の方から考えても、政治資金収支報告書の記載に関する犯罪は成立しない、という同じ結論に辿り着いたのです。 こういう問題に対して、どうすべきか。税の問題であることをみんなが認識して、税務上の正しい措置をとるべきだということを声を大にして言いたいです。この問題に対して、政治資金の新しい規制とか、政治刷新だとか言う話が出ていますが、税の観点を抜きにしてそれはあり得ないと思います。政治家が、どうやって申告するのか、どうやって納税するのかと言うことも含めて考えていかないと、問題の解決にはなりません。 野口 そうですね。そういうことだと思います』、「政治資金規正法の方から考えても、税の方から考えても、政治資金収支報告書の記載に関する犯罪は成立しない、という同じ結論に辿り着いたのです。 こういう問題に対して、どうすべきか。税の問題であることをみんなが認識して、税務上の正しい措置をとるべきだということを声を大にして言いたいです」、その通りだ。
第三に、2月17日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「国民民主・玉木氏「トリガー」協議離脱の"裏側" 狂った"計算"、「自民の使い捨て」で野党でも孤立化」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/735227
・『国民民主党の玉木雄一郎代表が、ガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」凍結解除をめぐる自民、公明両党との協議離脱を決断したことが、与野党に複雑な波紋を広げている。 これまで、予算案賛成などで与党にすり寄り、次期衆院選後の「政権入り」も取り沙汰された玉木氏の、唐突に見えた“変身”。その裏舞台には、「岸田文雄首相をはじめ与野党最高幹部らの“権謀術数”が渦巻いている」(自民長老)との見方が少なくないからだ。 当の玉木氏は、協議離脱について「岸田首相に『トリガー解除』の余裕がなくなったことが原因。まさに『約束違反』で、離脱は当然」と岸田首相の“裏切り”をなじる。そのうえで、トリガー凍結解除という「政策目標」の実現に向け、一転して旧民主党時代の「仲間」の立憲民主党の協力が必要と秋波を送った。 これに対し、岡田克也・立憲民主幹事長は「考え方を改め、野党がまとまっていくべきだと考えるなら、懐深く対応していきたい」と国民との連携に意欲を示したうえで「国民民主の吸収合併」にも言及した。 これには国民民主幹部が「上から目線」などと猛反発、玉木氏も「ああいう発言ではますます(連携が)難しくなる」と不快感を隠さず、双方の感情のもつれが露呈した。このため、永田町では「自民に使い捨てにされ、立憲にも見放されたのが玉木氏。まさに一人芝居の果ての自滅」(自民長老)との厳しい指摘も広がる』、「まさに一人芝居の果ての自滅」とは言い得て妙だ。
・『「岸田首相の裏切り」と協議離脱決断 玉木氏は2月6日、衆議院予算委で岸田首相に対し、高騰する燃油価格抑制のための補助金の期限が4月末までとなっていることを踏まえ、「ただちにトリガー条項の凍結を解除してほしい」と迫った。しかし、岸田首相は「3党の検討チームにおいて、ぜひ検討させたい」などと言質を与えずにのらりくらりとかわし続けた。) これに憤慨した玉木氏は、質疑終了後、記者団に対し「5月以降、トリガーの発動のメドがなければ協議を継続する意味がない。協議の離脱を決断せざるを得ない」と自民、公明、国民民主の3党協議からの離脱を宣言。 これを受けて、国民民主は7日の党会合で協議離脱を正式決定。トリガー条項の凍結解除に「政治生命をかける」として自公との協議を進めてきた玉木氏に対する「責任論」も出なかった。それも踏まえて玉木氏は、記者団に「派閥の裏金問題が自民党の政策推進力や調整力を著しく低下させ、難しい減税政策を進められなくなった」と自民に“責任転嫁”した。 ただ、今回の玉木氏主導の協議離脱劇について、昨年末、玉木氏との路線対立から国民民主を離党し、「教育無償化を実現する会」という新党を結成した前原誠司前国民民主代表代行は、翌8日の記者会見で「玉木代表は何らかのけじめが必要だ」と皮肉るとともに、「自民党にすり寄っても相手にされなかった。(政治的に)非常識だったということ」と批判した』、
「玉木」氏はやはり未熟なようだ。「トリガー条項の凍結解除に「政治生命をかける」として自公との協議を進めてきた玉木氏に対する「責任論」も出なかった」、「国民民主」も情けない。
・『「考え方を改め」との岡田発言にも反発 こうした経過を受けて、国民民主は12日、東京都内に所属国会議員と支持者約350人を集めて開いた定期党大会で「政策本位で協力できる政党とは与野党を問わず連携するが、『正直な政治』が大前提」とする2024年度活動方針を決定。ただ、玉木氏はあいさつで「裏金問題は政治への信頼を根底から揺るがす大問題」と厳しく批判するなど、これまでの与党寄りの姿勢を事実上修正してみせた。 これに先立ち岡田・立憲民主幹事長は10日、国民民主の路線転換について「考え方を改め、野党がまとまっていくべきだと考えるなら、懐深く対応していきたい」と国民との連携に意欲を示した。ただ、玉木氏は12日の定期党大会後の記者会見で、岡田氏の「考えを改めるなら」との発言について「(岡田発言で)ますます(連携は)難しくなる。わが党の中にも思いがあるということに、もう少し理解と配慮をいただきたい」と不快感を示した。 そのうえで玉木氏は、立憲と国民の合流の可能性について「安全保障やエネルギー、憲法などの基本的政策について一致できる政党があれば、『連立』は可能だが、現在の立憲民主はそれを満たしていない」と指摘し、「今、ともに政権を担う政党とは考えていない。一致させるために議論する用意はあるが、そういう話は来ない」と突き放した。 そもそも、玉木氏は与党との協議離脱を決断した6日、立憲幹部に4月の衆参統一補選での連携を持ち掛け、両党は14日にも党首会談を行うべく調整に入ったが、10日の「岡田発言」への国民民主の反発で頓挫し、玉木氏は13日の泉健太・立憲代表との電話会談で協議見合わせの意向を伝えたとされる。その際玉木氏は、国民民主がトリガー発動に必要な法案を日本維新の会と共同提出した経緯を踏まえ、立憲との協議先行に否定的態度も示したという』、「玉木氏はあいさつで「裏金問題は政治への信頼を根底から揺るがす大問題」と厳しく批判するなど、これまでの与党寄りの姿勢を事実上修正してみせた」、自民党への批判にようやく踏み切ったようだ。「岡田・立憲民主幹事長」もまずい発言をしたものだ。
・『立憲・国民との3党連携は「ナンセンス」と維新 こうした経緯から玉木氏は14日、立憲、維新との連携について「3党で何らかの形で議論したり会ったりすることは否定しない」として、今後は3野党連携を模索する考えも示した。ただ、馬場伸幸・維新代表は15日、「トリガー条項」発動で泉氏から協議呼びかけがあったことを明らかにしたうえで、「今さら、(立憲、国民、維新の)3党で与党側に(トリガー条項発動要求を)突き付けていくのは、非常にナンセンス」と3党連携を全否定した。 こうして、「トリガー凍結解除で右顧左眄の果てに孤立化した玉木氏」(自民長老)について、有力な政治アナリストは「次期衆院選での党の生き残りに懸ける玉木氏が、『裏金事件で国民に見放された自民と組むより、野党と連携したほうが得だ』と考えた結果」と分析。 併せて、自民党のつれない対応についても「改憲や防衛政策で抵抗する公明を牽制するために国民民主の取り込みに動いたが、裏金事件への国民批判で次期衆院選に向けた公明との関係強化が不可欠となり、国民民主どころではなくなったのでは」と解説する。 そもそもここ数十年の政治史を振り返ると、「与(よ)党と野(や)党の間に位置する国民民主のような(ゆ)党は、いずれも一定期間存続後、賞味期限切れで消滅した」(自民長老)のが実態。玉木氏については「もともと自民党からの出馬がかなわず、当時の民主党から中央政界入りした」(同)との指摘もあり、旧民主党政権崩壊後の分裂騒ぎの中で「自民一強政権に潜り込むチャンスを狙ってきた」(閣僚経験者)との見方が少なくない。 だからこそ、「トリガー凍結解除という『国民的人気商品』を自らの自民への売り込み材料に使った」(同)わけだが、「その思惑は昨年末からの巨額裏金事件での元の木阿弥」になった」(同)格好だ。こうした玉木氏の対応に、最新の一部メディア世論調査では国民民主の政党支持率が半減しており、当面は「玉木氏が孤立脱出の妙手を打ち出せるかどうか」が注目されることになる』、「ここ数十年の政治史を振り返ると、「与(よ)党と野(や)党の間に位置する国民民主のような(ゆ)党は、いずれも一定期間存続後、賞味期限切れで消滅した」(自民長老)のが実態・・・玉木氏については「もともと自民党からの出馬がかなわず、当時の民主党から中央政界入りした」(同)との指摘もあり、旧民主党政権崩壊後の分裂騒ぎの中で「自民一強政権に潜り込むチャンスを狙ってきた」(閣僚経験者)との見方が少なくない」、「玉木氏」が「自民党からの出馬がかなわず」との事情があったというのは初めt知った。「最新の一部メディア世論調査では国民民主の政党支持率が半減しており、当面は「玉木氏が孤立脱出の妙手を打ち出せるかどうか」が注目されることになる」、やはり「国民民主のような(ゆ)党は、いずれも一定期間存続後、賞味期限切れで消滅した」という例が今回も当てはまるのだろうか。
タグ:日本の政治情勢 (その70)(自民党パーティー券収入還流問題、我々は納得できない!(その1)~なぜ政治の世界だけがここまで税を払わなくてよいのか 理由がわからない、自民党パーティー券収入還流問題 我々は納得できない!(その2)~政治資金規正法違反? 違うでしょう これは脱税でしょう、国民民主・玉木氏「トリガー」協議離脱の"裏側" 狂った"計算" 「自民の使い捨て」で野党でも孤立化) 現代ビジネス 野口 悠紀雄氏 郷原 信郎氏 対談「自民党パーティー券収入還流問題、我々は納得できない!(その1)~なぜ政治の世界だけがここまで税を払わなくてよいのか、理由がわからない」 「税法には「公職選挙法の適用を受ける選挙における候補者が選挙運動に関し、贈与によって取得した金品およびその他の財産上の利益で同法189条の規定による報告が為されたものを贈与税の非課税とする」という規定があります。 郷原信郎氏 選挙に関する部分は非課税という明確な規定がありますが、それ以外の部分の政治献金の非課税についてはまったく規定がありません。つまり公職選挙法上の選挙運動に関するものに限って「非課税」としているのに過ぎないのです。政治資金一般を非課税にする根拠となる規定はありません・・・ 公職選挙法上の選挙運動に関するものに限って「非課税」としているのに過ぎないのです。政治資金一般を非課税にする根拠となる規定はありません。 個人が政治献金を受けている部分については、基本的には雑所得で、ただそれが政治資金として使われた部分は課税しないということになっている、ということでした・・・ 国税当局が、本来法律上、選挙に関する部分のみ非課税にするとしか規定にされていないのに、政治資金というのは実際には政治活動のために支出する部分が大部分だから、あまり課税と言うことは行ってこなかった、という運用上の問題に過ぎなかったのではないかと思われます。それが事実上、政治献金、政治活動費というのは、課税の対象外であるかのような認識に繋がってきただけなのではないかという気がします」、税法上の問題を深く考察するには、野口・郷原両氏は最適だ。 「なぜ税金を払わないで済ますところまで保護しなければならないのか、国からの政治家への介入がをなくしさえすればよいのではないか、という話ですね。 野口 そうですね。私には全く理解できないことです」、確かにこうした本質的問題には明解な解釈はなさそうだ。 「「政治資金」という切り口だけでは、何が問題なのか納得のいく説明に辿り着かない自民党のパーティー券収入還流問題」、これを「所得の未申告という本当の問題点に光を当てる」、とどうみえてくるのだろう。 対談「自民党パーティー券収入還流問題、我々は納得できない!(その2)~政治資金規正法違反? 違うでしょう、これは脱税でしょう」 「今回のキックバックされた資金の問題では、少なくとも政治資金収支報告書に書かない前提で、違法に個人宛に行われたものだ、となると、個人所得ではないという理屈は成り立たないのではないかと思います。 野口 当然そうですよね。例えば、泥棒は違法ですが、それで得た金銭は、税務申告しなければなりません。違法だからと言って申告しなくても良いということにはなりません」、その通りだ。 「野口 はっきり言えば「税務署は、のろのろしていたらダメだ」ということです。すぐさま税務調査に入るべきではないですか。 郷原 それが、すでに逮捕された池田佳隆衆議院議員については、資金管理団体で3200万円の収支報告書の訂正をして、全額翌年への繰越金にしているのです。具体的に使途を明らかにしたということではまったくなくて、そのまま貯めていましたよ、という扱いにしたという話なんです。収支報告書の訂正を行ったからと言って、事後的に政治資金として非課税の対象とするというのは、めちゃくちゃじゃないかと思います。 野口 めちゃくちゃだと思います。しかし、それがこれから起こるわけですよね」、全く酷い話だ。 「野口 はっきり言えば「税務署は、のろのろしていたらダメだ」ということです。すぐさま税務調査に入るべきではないですか。 郷原 それが、すでに逮捕された池田佳隆衆議院議員については、資金管理団体で3200万円の収支報告書の訂正をして、全額翌年への繰越金にしているのです。具体的に使途を明らかにしたということではまったくなくて、そのまま貯めていましたよ、という扱いにしたという話なんです。 収支報告書の訂正を行ったからと言って、事後的に政治資金として非課税の対象とするというのは、めちゃくちゃじゃないかと思います。 野口 めちゃくちゃだと思います。しかし、それがこれから起こるわけですよね」、全く酷い話だ。「すべて全額について税務上の手続きを先行させるべきだという話になると思います。 野口 そういうことですね。私もそうじゃないかと思います。 郷原 実際に今起きている世の中の反応を見ても、この裏金問題に対して多くの国民が非常に怒っているのは、裏でお金を貰って、申告もしないで、税金も払わないで、好き 放題に使っていることに対してです。 野口 そうだと思います」、その通りだ。 「野口 次善の策でいいのか、100%賛成はできませんが、現実問題としてはやむを得ないかも知れませんね。ただ何もやらないよりは、今、やった方がいいでしょう。 郷原 すくなくともこのまま収支報告書の訂正は認めて、ほかは何もやらないというわけにはいかないと思います」、なるほど。 「政治資金規正法の方から考えても、税の方から考えても、政治資金収支報告書の記載に関する犯罪は成立しない、という同じ結論に辿り着いたのです。 こういう問題に対して、どうすべきか。税の問題であることをみんなが認識して、税務上の正しい措置をとるべきだということを声を大にして言いたいです」、その通りだ。 東洋経済オンライン 泉 宏氏による「国民民主・玉木氏「トリガー」協議離脱の"裏側" 狂った"計算"、「自民の使い捨て」で野党でも孤立化」 「まさに一人芝居の果ての自滅」とは言い得て妙だ。 「玉木」氏はやはり未熟なようだ。「トリガー条項の凍結解除に「政治生命をかける」として自公との協議を進めてきた玉木氏に対する「責任論」も出なかった」、「国民民主」も情けない。 「玉木氏はあいさつで「裏金問題は政治への信頼を根底から揺るがす大問題」と厳しく批判するなど、これまでの与党寄りの姿勢を事実上修正してみせた」、自民党への批判にようやく踏み切ったようだ。「岡田・立憲民主幹事長」もまずい発言をしたものだ。 「ここ数十年の政治史を振り返ると、「与(よ)党と野(や)党の間に位置する国民民主のような(ゆ)党は、いずれも一定期間存続後、賞味期限切れで消滅した」(自民長老)のが実態・・・ 玉木氏については「もともと自民党からの出馬がかなわず、当時の民主党から中央政界入りした」(同)との指摘もあり、旧民主党政権崩壊後の分裂騒ぎの中で「自民一強政権に潜り込むチャンスを狙ってきた」(閣僚経験者)との見方が少なくない」、「玉木氏」が「自民党からの出馬がかなわず」との事情があったというのは初めt知った。 「最新の一部メディア世論調査では国民民主の政党支持率が半減しており、当面は「玉木氏が孤立脱出の妙手を打ち出せるかどうか」が注目されることになる」、やはり「国民民主のような(ゆ)党は、いずれも一定期間存続後、賞味期限切れで消滅した」という例が今回も当てはまるのだろうか。