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デジタルトランスフォーメーション(DX)(その1)(ワークマンは「みんなでエクセル」だから改革できた 入山章栄教授がポストコロナ経営を語る、期待先行の「DX」は、結局どんなことに役立つのか) [イノベーション]

今日は、デジタルトランスフォーメーション(DX)(その1)(ワークマンは「みんなでエクセル」だから改革できた 入山章栄教授がポストコロナ経営を語る、期待先行の「DX」は、結局どんなことに役立つのか)を取上げよう。

先ずは、本年4月12日付け日経ビジネスオンライン「ワークマンは「みんなでエクセル」だから改革できた 入山章栄教授がポストコロナ経営を語る」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00030/040800177/
・『企業を襲ったコロナ禍という未曽有のショック。ただ、この危機を将来に向けた改革のきっかけとできるか否かで、今後の成長力には大きな差がつく。 「コロナ禍は、企業にとって、ピンチでありチャンスでもある」と話す早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授は、「ダイバーシティーだけ」「DX(デジタルトランスフォーメーション)だけ」といった具合に、経営要素の一部を変えようとしても失敗することが多いと指摘する。 危機をきっかけに、評価制度から働き方、DXまで、相互に関連し合っている要素をまとめて見直す。その際は、会社の根本的な方向性や存在意義といったことを、みんなで腹を割って話し合ってみる――。こうした取り組みができる企業には、コロナ禍後に大きなチャンスが訪れると話す。(Qは聞き手の質問、聞き手は、日経ビジネス編集委員 谷口徹也) Q:コロナ禍により、変化のスピードが加速しています。ただ、今回の変化は、これまでの変化とは違う側面もあるように感じますが、いかがでしょうか。 早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授 入山章栄(以下、入山):例えば今、経済誌はこぞって「EV(電気自動車)」の特集を組んでいますよね。5年前であれば、「EVって何のことですか」と読者はまだピンとこなかったはずです。排ガス規制、CO2の削減という流れや、米テスラの台頭があり、自動車業界は今、ガラっと変わっているんですよね。このような大きな変化が、あらゆる業界で一気に押し寄せているのが、今の状態です』、「このような大きな変化が、あらゆる業界で一気に押し寄せているのが、今の状態です」、確かにそうなのかも知れない。
・『1つだけ変えようとするから失敗する  Q:その変化の中で、非常に苦労している会社もあれば、チャンスをつかんでいる会社もある。コロナ禍というのは、危機なのかチャンスなのか、入山先生はどのようにお考えでしょうか。 入山:まさに、コロナ禍はピンチでありチャンスです。残念な事態ではあるものの、チャンスも大きいと私は考えています。 コロナ禍になって、経営学や経済学で使われる「経路依存性」についてよく話しています。企業にはさまざまな要素が存在しており、それらが相互につながり、うまくかみ合っているから合理的に回っているわけです。ところが、裏を返すと、どれか一つを「時代に合わないから」と変えようとしても、かみ合ってしまっているから簡単には変えられない。これを「経路依存性」と言います。 例えば、私がコロナ禍の前から例に挙げて説明しているのが、「ダイバーシティー経営」です。コロナ以前から重要だといわれているわけですが、日本企業では全然進んでいない。その原因は、ダイバーシティーだけに取り組もうとするからなんです。ダイバーシティー以外のさまざまな仕組みが、真逆の方向でうまくかみ合ったままなので、それらを全部変えなければ、ダイバーシティーは実現できないんです。 多様な人材を増やしたいのであれば、新卒一括採用をしていては難しいでしょう。また、多様な社員を一律に評価できるはずはありませんので、評価制度も多様化する必要があります。さらにいうと、働き方にも多様性が求められます。これらが以前の仕組みのままなのに、ダイバーシティーだけを進めても、うまくいきません。 Q:コロナ禍でブームとなっている「DX(デジタルトランスフォーメーション)」も、似たような落とし穴にはまっている企業が多そうです。) 入山:まさに、その通りだと危惧しています。DXだけをやろうとしている会社は、おそらく大半がうまくいかないでしょう。DXだけでなく、会社や業務のやり方全体を変える必要があります。 ところが、今、コロナ禍で“奇跡”が起きています。必要に迫られ、全部を一気に変えられるチャンスが出てきているんですよ。働き方改革にしても、これまで進まなかったものが強制的にせざるを得ない状況になった。そうすると、評価制度も変えていかなければならない。 新型コロナは年内には収束するかもしれませんが、リモートワークはある程度、社会に実装されたので残っていくでしょう。リモートワーク下では、何時間働いたかは評価対象ではなくなります。これからは「何時間働いた」「会議室で座っていた」ではなく、きちんと成果を出すかどうかが重要になります。 つまり、企業の評価は成果主義へと変わっていくでしょう。成果主義では、「あなたの成果は何ですか」「あなたのジョブは何ですか」という問いの答えをハッキリさせなければなりません』、「どれか一つを「時代に合わないから」と変えようとしても、かみ合ってしまっているから簡単には変えられない。これを「経路依存性」と言います」、確かにそういう場合も多い。「DXだけをやろうとしている会社は、おそらく大半がうまくいかないでしょう。DXだけでなく、会社や業務のやり方全体を変える必要があります」、その通りだ。
・『こんな機会は平成で一度もなかった  Q:いわゆる「ジョブ型」のような評価制度に変化していく、ということですね。 入山:評価制度だけでなく、雇用も確実にジョブ型に変わっていくでしょう。こうしてDXだけでなく、働き方、評価制度、雇用形態もすべて変えられるのが今なんです。こんな機会は、平成の30年間、一度もなかった。 コロナ禍という大変な事態ではありますが、全体を見直し、変えられるビッグチャンスです。ここで変化できる会社は、イノベーションを起こし、成功していくでしょう。一方で、変化できない会社はそのまま衰退していくしかない。だからこの数年は非常に重要です。最高のチャンスでありながら、最後のチャンスでもある、と私は考えています。 Q:これから数年で、伸びる会社と落ちていく会社の差が開いていく。 入山:間違いないですね。すでにもう差がついてきていると私は理解しています。実際に今、日本の株価をけん引しているのは、ファーストリテイリング、ソフトバンク、信越化学、キーエンスといった時価総額上位の数社ですよね。全体の株価が上がっているように見えて、すべての会社の株価が上がっているわけではない。投資家期待という意味では、すでに優勝劣敗が明確になっていると言えるでしょう』、「DXだけでなく、働き方、評価制度、雇用形態もすべて変えられるのが今なんです。こんな機会は、平成の30年間、一度もなかった。 コロナ禍という大変な事態ではありますが、全体を見直し、変えられるビッグチャンスです」、なるほど。
・『DXは目的ではなく手段  Q:厳しい時代を勝ち抜くための一つのツールが「DX」だと思います。日本企業がDXを進めるにあたっての課題については、どのようにお考えでしょうか。 入山:私はセミナーで「DXにおいて、現場で何が起きているのか」という話をしたばかりです。個人的に最大のポイントだと考えているのが、「DXは手段」だということです。今の日本企業では「DX」という言葉だけが先行しているために、DXが目的になってしまっている。他の会社がやっているから、ブームだから、うちもDXやらなきゃ、と。これはアウトです。 DXは目的ではなく、あくまでも「手段」です。会社の目的は、社会に貢献して価値を出し、売り上げを上げて、そのお金で従業員や株主などのステークホルダーに還元することですよね。そうすると、重要なのは、「そもそもこの会社は何がしたいのか」という方向性であり、存在意義であり、戦略です。それに対して、今足りていない部分にデジタルを導入しよう、と進めていくのが正しい順番です。 そもそもの本質的な議論が弱いままデジタル化だけ進めようとしても、絶対にうまくいきません』、「DXは目的ではなく手段」、確かにその通りだ。
・『ワークマンは「しない経営」が戦略  Q:日本企業でDXがうまくいっている事例はありますか。 入山:例えば、今非常に注目されているワークマンは、デジタル経営で有名ですが、実は全社員に米マイクロソフトの表計算ソフト「エクセル」を使わせています。 これは別に、日本の全部の会社にマネをしろと言っているわけではありません。ワークマンが最も重要視しているのは、デジタル化ではなく企業文化です。そのため、「しない経営」という、「がんばらない」「残業しない」「経営者はいろいろ口出ししない」という経営戦略をとっています。 もともとワークマンは会社や店舗の標準化が進んでおり、どの店舗でも比較的同じ商品を販売し、管理方法も同じ。そこに小難しいコンピューターサイエンスを入れるよりも、現場の人でも扱いやすいエクセルを使えるようになって、そこからデータさえ出てくれば、現状がすべて把握できるわけです。 大事なことは現場で起きているから、現場にどんどん権限委譲して、現場の人がエクセル経営をして決めていくという企業文化をつくろうとしているんです。 このように、それぞれの会社に合ったデジタル化を進めることが重要です。目的もなく、ただブームに乗ってAI(人工知能)だDXだとやっていると、ただ高い費用だけ払って何も生まれない、ということになりかねません。) Q:一度、DXから離れて、自分の会社の存在意義を議論するようなところから始める必要があるということですね。 入山:日本の大企業や中堅・中小企業は、意外と会社の根本的な方向性や存在意義といったことを、みんなで腹を割って話す機会が少ないように感じます。グローバル企業やベンチャー企業は、みんなこの議論をやっています。役員や執行役員と一緒になって、合宿に行くのもいいでしょう。ぜひ議論していただきたいと思います』、「会社の根本的な方向性や存在意義」、は「合宿」向きのテーマだ。
・『ビジョンを腹落ちさせるのがリーダーの役目  Q:経営者次第で、ピンチにもチャンスにもなる時代。これからは、どのようなリーダーが求められるのでしょうか。その要件は今までとは違いますか。 入山:基本的には、望まれるリーダーの方向性は変わらないと考えています。ただ、コロナ前よりも重要性は増していますし、より先鋭化しています。 これからの時代は、さらに不確実性が高くなる。不確実性が高いときには、正解がないんです。これはとても重要なことです。正解はないけれども、意思決定はしなければならない。経営者は悩みますよね。悩んで悩んで最後に腹をくくったらこっちだ、と決める。決めたら社員にビジョンを伝えて腹落ちさせてやり抜く。リーダーの役目は、これに尽きると思います。 ところが、意外なほどこれができていない。日本の大手企業の最大の悩みが、経営者候補がいないことです。大手企業に所属していると、答えのある仕事をずっとやらされるので、何も分からない状態で決めるという経験を積んでいないんですね。それを40代、50代で役員になって、急に「腹をくくって意思決定してください」と言われても無理ですよね。 Q:企業は意思決定できる人材を育てなければならない。そのためには、やはり場数を踏むしかないのでしょうか。 入山:最も重要なのは場数だと思います。意思決定は積み重ねるしかないんですよね。それ以外の方法では、絶対にできるようにならない。 ある程度の情報のインプットがなければ意思決定はできないので、ビジネススクールなどでの学び経験することもいい。そして、意思決定を積み重ねてきた経営者に話を聞くことも有用です。その人たちの気迫や考え方、意思決定の際に何を大事にしているかを知る。あとは場数を踏んでいただきたいですね。 Q:入山先生は多くの経営者にお会いしています。最近注目されている経営者はどんな方でしょうか。 入山:私も講師として参加している「日経ビジネス経営塾」に登壇された経営者の中では、例えばDMG森精機の森雅彦社長はすごいと思います。日本のものづくりは今、勢いがないといわれていますが、これからのIoTの時代は、日本にとっては大きなチャンスです。 ものがインターネットとつながるということは、まず、「もの」自体が良くないとダメなんですよね。ものづくりはどこが強いかというと、いまだに日本とドイツです。とはいえ、日本でものとデジタルを融合させている企業はまだ少ない。そこを、森社長は率先して挑戦しています。 あとは、言うまでもなく、日本電産の永守重信さんですね。この状況で、非常に利益を出しています。この方は怪物だなと。 また、私と仕事の関係がある中では、コープさっぽろ(札幌市)の理事長、大見英明さんも素晴らしいです。北海道なので、なかなか東京では注目される機会がありませんが、大見さんは日本屈指の経営者だと思います』、「ビジョンを腹落ちさせるのがリーダーの役目」、その通りなのだろう。
・『少年のようであり、締めるところは締める  Q:コープさっぽろでは、入山先生が社外取締役を務めています。応援したくなる経営者の共通点は何でしょうか。 入山:早い話、人柄ですね。自分のやりたいことに対する夢を持っていて、好奇心が強い。そして、大変なときでも、それを怖がらずに面白がる力がある。好奇心旺盛な少年のようでありながらも、企業なので当然、締めるところはしっかり締める必要がある。その両面を持つ経営者は応援したくなります。 入山章栄教授も登壇「日経ビジネス経営塾」のPRは省略』、「少年のようであり、締めるところは締める」、そんな人物に私は出会ったことはないほど、稀有な存在のようだ。

次に、昨年12月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「期待先行の「DX」は、結局どんなことに役立つのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/257609
・『DX抵抗勢力のおじさんたちに白旗を上げさせたコロナの影響  コロナのせいで私の場合、2020年は一度も海外出張に出かけることなく終わりそうです。さて、国際線の航空機に乗ると目の前のシートの背面に液晶パネルが設置されていて、機内で最新の映画を見ながら時間をつぶす方が多いかもしれません。 この液晶パネルを「もう必要ない」と考えて最初に撤去を始めたのが、アメリカン航空でした。理由は、搭乗客のほとんどがスマホを見ているからです。だったら、映画もスマホで直接観てもらえば十分です。こうして機内から不要な部品が撤去され、そのぶんコストが下がる。けれども利便性は変わらないか、ないしはもっと便利になる。これは「デジタルトランスフォーメーション」(DX)の一例です。 上海に出張して街に出て飲食店に入ると、最近ではメニューを置いていないお店が増えました。テーブルの上にQRコードが貼ってあって、それを読み込むとスマホがメニューになります。それだけではありません。スマホがそのままタッチパネルになるので、注文もスマホ上で完了できます。 こうしてスマホでオーダーした注文は、そのまま情報が厨房に送られます。この飲食店がファストフードのお店であれば、料理ができ上がったら番号で呼ばれて、カウンターに料理を取りに行くだけ。精算もスマホで済ませることができます。 このやり方だと、メニューがないだけでなく、レジ係もフロア担当の従業員もいらなくなります。これまで当然必要だと考えられていた物や人が要らないことがわかる。それもDXの効果です。 新型コロナの影響で一気に変わったものの1つが、DXを取り巻く世の中の空気や企業の姿勢です。おそらくそのきっかけは、ビジネスパーソンの日常業務がリモートワークに強制的に切り替わったことでしょう。 必要に迫られて中高年もZOOM会議を利用せざるを得なくなり、やってみれば案外できることがわかる。これまでDX推進を押し止めていた中高年管理職という「抵抗勢力」が、あっさりと白旗を上げたわけです』、「上海」の「飲食店」のDXの例は分かり易い。
・『企業の中にはいたるところに「置き換え需要」が転がっている  若い従業員から見れば「当たり前じゃないか」と思えることですが、企業の中にはいたるところに、簡単なデジタルツールを使うことで置き換えができるものがあります。そして、それが置き換わるかどうかの最大の障壁が、人間の判断だったりするわけです。 クレジットカードを申し込む際に本人確認が必要ということで、これまでは運転免許証のコピーをとることが必要でした。複合機の普及で自宅で簡単にコピーをとることができる家庭も増えていますが、最近ではスマホのカメラで免許証を撮影したほうが楽だし、手続きも早くできるはずです。 にもかかわらず、会社によっては撮影した写真を受け付けてくれない場合があります。私も画素数が決められた範囲内より大きいとか小さいとか、技術的な理由で写真を却下されて四苦八苦したことがあります。結局、保存した写真の画素数をソフトで変えて申請したのですが、これではデジタル化をしてもやることが逆に増えてしまいます。 画素数の制約を設けるという判断をした企業の側としては、データ容量を節約したかったのかもしれませんが、年々画素数が高度化するスマホのカメラで普通に写した免許証を弾くようなプロセスが1つ存在しているだけで、DX推進にとってはボトルネックになってしまいます。 仕事の請求書も、最近ではほとんどの取引先がメール添付で受け付けてくれますが、メールで送った請求書を「確認しましたので郵送してください」と言ってくる取引先もまだ少なくありません。DXが進むかどうかは結局、人の判断が「鬼門」となるのです』、確かにそうなのかも知れない。
・『企業社会でDXが進むためには1つの大きな発想転換が必要  ではこの先、企業社会でどうDXが進むのでしょうか。すでにテクノロジーの準備はできていますし、コロナのお蔭で働く人も受け入れる気持ちをスタンバイできたのです。全体としてはDX推進の機運は高まっているのですが、本格的に企業社会でDXが進むためには、1つ大きな発想の転換が必要です。 それは、外部コストに目を向けるということです。 企業は利益を上げることが主眼なので、内部コストが下がるIT化についてはすぐに気づいて、すぐに導入していくものです。一方で外部コストについては、むしろ放っておく傾向があります。 消費者が行列に並んで時間を無駄にするのも、取引先が請求書を印刷して郵送するのも、申し込みをしようとした人が画像ファイルの大きさの変更に四苦八苦するのも、すべて相手にコストがかかっているだけで、自分のコストではない。外部コストがかかることは内部コストがかかっていないわけで、「むしろ利益につながる」くらいに考えている企業が、結構あるのです。 しかし実際は、外部コストがかかっている状態は企業全体で見れば業績の足を引っ張っています。逆にDX推進で業績を改善できる可能性は、外部コストに着眼する部分のほうが大きいものです。 ユニクロでは随分前から、商品在庫が従業員にも消費者にも見えるようDXが行われました。お店に行って欲しい商品のサイズがない場合、オンラインストアに在庫があればそれをすぐに購入できますし、それを店舗で受け取れば一点から送料無料です。 逆にオンラインで売り切れの商品でも、検索すれば近所の店舗の在庫状況がわかります。どちらかというと、消費者側の外部コスト削減としてはこの機能のほうが便利です。「新宿と銀座にはないが池袋には在庫がある」といったことがわかるので、どのお店に探しに出かけるのがいいのかがスマホで判断できる。無駄足をする必要がなくなるのです。 2020年の最大のヒット商品の1つであるウーバーイーツも、サービスのコアになっているのはDXであり、その着眼点は外部コストの肩代わりです。 ウーバーイーツの利用者の一番のボリュームゾーンは、20代、30代の独身男性です。日頃忙しく働いていて少しの自由時間も惜しい。そのようなときに、実質的に自分の代わりに飲食店に行ってテイクアウトの商品を持ってきてくれる人が、安価で簡単に見つかる。こうして消費者の外部コストを削減してくれたことが、ウーバーイーツの需要が爆発的に増えた理由です』、「ウーバーイーツも、サービスのコアになっているのはDX」、意外な気もするが、言われてみれば、その通りなのかも知れない。
・『DXの大きな事業機会はユーザーの外部コストを失くすこと  ウーバーイーツによるDXが興味深いのは、このイノベーションが飲食業界ではなくウーバーイーツという海外の部外者によって持ち込まれたことです。 これは厳しく言えば、「飲食業界は頭を使っていなかった」とも言えますが、現実にはDXすべてにかかわる真実かもしれません。これまで外部コストを消費者に押し付けてきた事業者は、ユーザーの外部コストをなくすというDXの事業機会に一番気づきにくい場所に立っているのです。 客観的にいえば、DXはすべての企業、すべての産業、すべてのお役所仕事で無限の適用範囲を抱えています。それなのに、「うちの会社ではDXなんていってもやれることは限られているよ」なんてぼやいている管理職の多い企業は、まず経営幹部を入れ替えることがDX推進の最初のステップなのかもしれません。外部コストにタダ乗りしている大人こそが、DX推進の障壁なのです』、「DXはすべての企業、すべての産業、すべてのお役所仕事で無限の適用範囲を抱えています」、「外部コストにタダ乗りしている大人こそが、DX推進の障壁なのです」、なるほど。
タグ:鈴木貴博 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン デジタルトランスフォーメーション (DX) (その1)(ワークマンは「みんなでエクセル」だから改革できた 入山章栄教授がポストコロナ経営を語る、期待先行の「DX」は、結局どんなことに役立つのか) 「ワークマンは「みんなでエクセル」だから改革できた 入山章栄教授がポストコロナ経営を語る」 す早稲田大学ビジネススクールの入山章栄教授 「このような大きな変化が、あらゆる業界で一気に押し寄せているのが、今の状態です」、確かにそうなのかも知れない。 「どれか一つを「時代に合わないから」と変えようとしても、かみ合ってしまっているから簡単には変えられない。これを「経路依存性」と言います」、確かにそういう場合も多い。 「DXだけをやろうとしている会社は、おそらく大半がうまくいかないでしょう。DXだけでなく、会社や業務のやり方全体を変える必要があります」、その通りだ。 「DXだけでなく、働き方、評価制度、雇用形態もすべて変えられるのが今なんです。こんな機会は、平成の30年間、一度もなかった。 コロナ禍という大変な事態ではありますが、全体を見直し、変えられるビッグチャンスです」、なるほど。 「DXは目的ではなく手段」、確かにその通りだ。 「会社の根本的な方向性や存在意義」、は「合宿」向きのテーマだ。 「ビジョンを腹落ちさせるのがリーダーの役目」、その通りなのだろう。 「少年のようであり、締めるところは締める」、そんな人物に私は出会ったことはないほど、稀有な存在のようだ 「期待先行の「DX」は、結局どんなことに役立つのか」 「上海」の「飲食店」のDXの例は分かり易い。 DXが進むかどうかは結局、人の判断が「鬼門」となるのです』、確かにそうなのかも知れない。 「ウーバーイーツも、サービスのコアになっているのはDX」、意外な気もするが、言われてみれば、その通りなのかも知れない。 「DXはすべての企業、すべての産業、すべてのお役所仕事で無限の適用範囲を抱えています」、「外部コストにタダ乗りしている大人こそが、DX推進の障壁なのです」、なるほど
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人工知能(AI)(その11)(IBMが「顔認識AI」撤退 アマゾン・マイクロソフトも悩むその危険性、【スタンフォードからの緊急報告】 AI時代にEIと心の健康を保つ方法、価値創造の経営~デジタル&イノベーション 日本の「AI自動翻訳」劇的進化の実態 特許や製薬・金融など専門分野に変革も) [イノベーション]

人工知能(AI)については、昨年11月24日に取上げた。今日は、(その11)(IBMが「顔認識AI」撤退 アマゾン・マイクロソフトも悩むその危険性、【スタンフォードからの緊急報告】 AI時代にEIと心の健康を保つ方法、価値創造の経営~デジタル&イノベーション 日本の「AI自動翻訳」劇的進化の実態 特許や製薬・金融など専門分野に変革も)である。

先ずは、昨年12月11日付けダイヤモンドが掲載したオウルズコンサルティンググループ代表取締役CEOの羽生田慶介氏による「IBMが「顔認識AI」撤退、アマゾン・マイクロソフトも悩むその危険性」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256747
・『コロナショックを経て、人々が企業を見る目や意識、姿勢が大きく変化し、これまでよりもさらに誠実であることを求めている。また企業が、悪意はなくても勉強不足や想像力の欠如によって人権を侵害し、大炎上するケースも増えている。何に気をつけるべきなのか。本連載では、注目を集める企業の人権違反とその対応策について紹介する。連載4回目で取り上げるのは、テクノロジー企業で開発が進むAIについて。AIの学習に偏ったデータを与えていれば、AIもその思考法を学んで差別的な判断を下しやすくなる。またUNESCO(国際連合教育科学文化機関)は多くのAIアシスタントで女性の声が初期設定とされていることに警鐘を鳴らした。AI開発に必要な企業倫理について探った』、興味深そうだ。
・『アマゾンの人事AIは“女性嫌い”? 「君は不採用だ」と人事AIが下すワケ  米アマゾン・ドット・コムのAI(人工知能)は“女性嫌い”――。そんな報道が、ロイターから発信されたのは2018年10月のことだった。 記事によると、アマゾンはAIを用いた人材採用ツールの開発を進めていたが、当該AIが“女性嫌い”であることが判明し、開発は中止されたという。AIによる履歴書の自動審査システムを構築すべく、アマゾンは過去10年間に同社が受け取った履歴書をAIにインプットして学習させたが、これが誤りだった。 ソフトウエア開発などの技術職では、過去の応募者および採用者の大部分が男性だったため、AIは「女性よりも男性の方が適している」と判断するようになったのだ。その結果、「女性」「女子大」などの言葉が履歴書に含まれていると、自動的に評価を下げるようになってしまったという。 このような「AIによる差別」は今後も容易に起こるだろう。 AIが知能を発揮するには、まず事前に学習用のデータを大量にインプットする必要がある。そのデータに偏りがあれば、当然ながらアウトプットにもバイアスがかかる。統計的に正しいデータさえ用いればいい、というわけではないのだ。 統計データには性差別・人種差別など、社会に現存する差別構造がそのまま反映されていることがほとんど。そのデータをベースに学習したAIも、差別的な判断を下すようになってしまう。 この観点でまさに今、国際的に問題視されているのが「顔認識AI」の技術だ』、「AIが知能を発揮するには、まず事前に学習用のデータを大量にインプットする必要がある。そのデータに偏りがあれば、当然ながらアウトプットにもバイアスがかかる」、その通りだ。
・『IBM、マイクロソフトも顔認識AIを危険視  18年、米マサチューセッツ工科大学(MIT)が米IBMや米マイクロソフトなどの顔認識ソフトウエアの精度を調査した。その結果、「明るい肌の男性」よりも、「暗い肌の女性」の方がはるかに誤認識されやすいことが発覚し、物議を醸した。 米国の警察は顔認識AIを捜査に活用してきたが、黒人女性のようなマイノリティーほど誤認逮捕などによって、不当な扱いを受けるリスクが高まることになる。 これまでも米国の公民権団体や活動家は、顔認識AIの危険性を訴えてきた。そして20年に入って白人警察官による黒人死亡事件に端を発した「Black Lives Matter(黒人の命は大切)運動」が加速すると、顔認識AIの差別的側面にも改めて注目が集まった。 米国内外での批判の高まりを受け、20年6月にはIBMが顔認識AI事業からの撤退を表明。同社のアービンド・クリシュナCEO(最高経営責任者)は、「IBMは他社の顔認識技術も含めたあらゆるテクノロジーが、大衆監視や人種によるプロファイリング、基本的人権や自由の侵害に使われることに強く反対し、容認しない」との声明を発表した。 これに追随するかのように、アマゾンも警察への顔認識AIの提供を1年間停止することを発表。マイクロソフトも「法整備が完了するまで、自社AIを警察には提供しない」と宣言した。AI市場をけん引してきた大手各社も、「差別するAI」への解決策は、いまだに見いだせていないのが現状だ。 多くの企業はAI活用に際して、人間では導き出せない合理的で効率的な「解」の導出を期待する。 しかし、AIが導き出す「現状における合理的な解」は、往々にして現状の格差やバイアスを丸のみにした差別的なものになりがちだ。倫理なき合理化は、残念ながら差別と極めて相性が良い。これからAIに取り組もうとする企業は、自社の用いるデータやアルゴリズムの公正性に、いくら注意を払っても払いすぎることはないだろう』、「IBMが顔認識AI事業からの撤退」、「アマゾン」、「マイクロソフト」も「警察への顔認識AIの提供」を「停止」、「差別するAI」への警戒姿勢を強めているようだ。「AIが導き出す「現状における合理的な解」は、往々にして現状の格差やバイアスを丸のみにした差別的なものになりがちだ。倫理なき合理化は、残念ながら差別と極めて相性が良い」、企業としては大いに注意が必要なようだ。
・『プライバシー侵害で大炎上した「リクナビ問題」  顔認識AIが危険視されているのは、差別の観点からだけではない。個人を特定して行動を追跡・監視できる点で、プライバシーの侵害につながることも、かねて懸念されている。 そもそもAI活用のためには、多くのケースで細かな個人データを大量に収集・分析する必要があり、プライバシーの侵害に容易につながりやすい構造がある。「AIとプライバシー」は、現代の人権を語る上で最重要トピックの一つだ。 そしてプライバシーに関して、近年、国内で最も話題を呼んだのは19年の「リクナビ問題」だろう。 リクルートキャリアが運営する就職情報サイト「リクナビ」が、AIを用いて就活生の「内定辞退率」を予測・算出し、企業向けに販売していたことが問題視された。学生の就職活動の成否を左右しかねないセンシティブなデータを勝手に販売していたことに対して、「学生は商売道具じゃない」と、SNSなどで激しく非難された。 政府の個人情報保護委員会は、学生の個人データを本人の十分な同意を得ることなく勝手に外部に提供していたとして、同社に是正勧告を出すとともに、データを購入していた企業各社に対しても指導を行った。厚生労働省も、同社の行為を職業安定法違反とみなして行政指導に踏み切った。 リクルートキャリアの社長は、謝罪会見において「研究開発的な位置付けのサービスとして、通常とは異なるプロセスで開発した」「複眼的なチェック体制が機能していなかった」と述べている。 AIサービスで人を扱うときには、ユーザーに十分な事前説明と情報公開がなければ、リクナビのような“大炎上”も免れない。革新的なAIサービスに取り組む野心あふれる企業ほど、その倫理観が問われる』、「IBM」、「アマゾン」などの慎重な姿勢に比べ、商売のことしか考えない「リクルートキャリア」の姿勢の違いが鮮明になった。
・『果たしてSiriに性別はいるのか  「ヘイ、Siri!」「OK、グーグル!」――。今では各世帯に少しずつ普及している音声AIアシスタント。この声のかけ方にも、一考の余地があるのかもしれない。 近年、AIアシスタントによるジェンダーバイアス(男女の役割や男らしさ・女らしさに関する固定的な観念)の強化を問題視する声も上がっている。 UNESCOが19年に発表した報告書では、多くのAIアシスタントで女性の声が初期設定とされていることが指摘された。 「女性は世話好きで従順で(中略)『ヘイ』や『OK』とぶっきらぼうに命令するだけで利用できる存在だ、というシグナルを送っている」との問題提起だ。 同報告書は加えて、Siriの例のように、女性の声を持つAIアシスタントがセクハラ発言に従順な反応を示すようにプログラムされがちなことにも言及。「『女性は従属的であり、粗末な扱いを受けることにも寛容である』という一般的なジェンダーバイアスを補強している」と、現状のAIアシスタントのあり方を強く批判している。 日本国内でも、20年3月に開業した高輪ゲートウェイ駅に設置された「AI駅員」について、同様の議論が巻き起こった。女性のAI駅員キャラクター「さくらさん」が、恋人の有無やスリーサイズといったセクハラ要素の強い質問にも拒否反応を示さず、優しく受け流すことが判明し、非難の声が集まった。 本来、性別を持たないはずのAIに性別を付与する行為には、どうしても開発側の無意識下のバイアスが反映されやすい。そのため、ユーザー側の受け止め方にも必然的にバイアスがかかってしまう。結果として、現実世界におけるジェンダーバイアスを温存、もしくは助長してしまう恐れがあるのだ。 今後、AIアシスタントやチャットボットの自社開発を検討している企業は、「性別の特定できないAI」を志向することも一案だろう。 UNESCOの報告書内では、中国アリババグループの音声アシスタントAliGenieが「男女どちらとも判断できない、漫画のような声で話す」好例として取り上げられている。また、米国に本部を置くクリエイティブエージェンシーのVirtueは、北欧最大規模のLGBTQ(性的少数者)の祭典であるデンマーク・コペンハーゲンのプライドと共同で、男声にも女声にもとれない中性的なデジタル音声「Q」を20年に開発したという』、「女性の声が初期設定」された「AIアシスタント」が「ジェンダーバイアスを補強」、というのは事実だが、「性別の特定できないAI」というのも味気ない。
・『テクノロジー企業に必要な「AI倫理」担当部署の新設  AIサービスの開発最前線のエンジニアに、人権の配慮を学んでもらうことも必要だ。だがテクノロジー競争の最前線でしのぎを削るイノベーターたちに、万全の社会的配慮の責任を押し付けるのは酷な話だろう。 そこで先進企業は相次いで、社内に「AI倫理」を担う部署を設置し始めた。ESG投資の「S(社会)」「G(ガバナンス)」双方の視点で極めて重要な取り組みだ。 米セールスフォース・ドットコムは19年から、「最高倫理・人道責任者(Chief Ethical and Humane Use Officer)」のポストを設けている。同社の技術やサービスが倫理的に許されるか、検討・確認する役割を担う。 富士通も社外専門家で構成された「AI倫理外部委員会」を19年に設置した。富士通は、AIによる保育園と待機児童のマッチングシステムを自治体向けに開発・提供しているが、倫理委員会ではその公正性が検証対象となった。「保護者からの提供データに誤りがあっても対応できるように」と倫理委員会から助言を受け、システムに改良を加えたとされる。 これからさらに加速するAIサービス競争。その勝敗を決めるのは旧来のモノづくりのようなQ(品質)、C(コスト)、D(納期)といった単純な基準ではない。たとえ少しくらい知能が劣ったとしても、人権リスクの低いAIの方が社会に実装される可能性が高い。 「性能」一辺倒のAI開発を進めるテクノロジー企業は、早晩、淘汰されてしまうかもしれない。 手塚治虫が自作で未来世界を描くときに何度も警鐘を鳴らしていたこのテーマ。いよいよ企業が自分事として考えるときがきた』、日本企業はコンプライアンスが苦手な企業が多いだけに、上手くいくか心配だ。

次に、本年1月2日付けダイヤモンドが掲載したスタンフォード大学・オンラインハイスクール校長の星 友啓氏による「【スタンフォードからの緊急報告】 AI時代にEIと心の健康を保つ方法」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256815
・『スタンフォード大学・オンラインハイスクールはオンラインにもかかわらず、全米トップ10の常連で、2020年は全米の大学進学校1位となった。世界最高峰の中1から高3の天才児、計900人(30ヵ国)がリアルタイムのオンラインセミナーで学んでいる。 そのトップが日本人だということをご存じだろうか。オンライン教育の世界的リーダーでもある星友啓校長だ。全米トップ校の白熱授業を再現。予測不可能な時代に、シリコンバレーの中心でエリートたちが密かに学ぶ最高の生存戦略を初公開した、星校長の処女作『スタンフォード式生き抜く力』が発売たちまち2万部重版と話題になっている。 ベストセラー作家で“日本一のマーケッター”と評された神田昌典氏も「現代版『武士道』というべき本。新しい時代に必要な教育が日本人によって示されたと記憶される本になる」と書評した。 このたび、同じスタンフォード大学で教鞭を執るスティーヴン・マーフィ重松教授と星校長が対談。星校長の視点から対談の学びを共有する』、興味深そうだ。
・『つらい、不安な時ほど「自分のこと」を考えてはいけない?  日本で生まれ、アメリカで育つ。ハーバード大学で臨床心理学の博士号取得。東京大学留学生センター・大学院教育学研究科助教授。現在、スタンフォード大学医学部ウエルネスとリーダーシップ教育の心理学者。マインドフルネスの概念をベースに、生きる力やグローバルスキルを高める専門家として、教育・医療などの分野で国際的に活動中。主著に『スタンフォード大学 マインドフルネス教室』(講談社、2016年)、『From Mindfulness to Heartfulness 』(Berrett-Koehler Publishers、2018年)、『スタンフォード式 最高のリーダーシップ』(サンマーク出版、2019年)、『スタンフォードの心理学授業 ハートフルネス』(大和書房、2020年)など。 新しいことを始めようとして怖くなる時、 嫌なことから逃げ出したい時、 困難に打ち当たり、進めなくなった時、 そんな時は、つい「自分のこと」で頭がいっぱいになってしまいませんか? 実は、つらい時、不安になった時、逃げ出したくなるような時ほど、考えるべきは「自分以外のこと」なのです。 こう話すのは、スタンフォードでハートフルネス・ラボを創始した心理学者、スティーヴン・マーフィ重松先生。 「ハートフルネス」という言葉は初めて聞いた方がほとんどかと思いますが、先の見えない不安社会を生き抜くための大きなヒント「ハートフルネス」について、スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長として、重松先生と対談しました。 今回は +伝統と、科学、アートを統合した最先端の考え方「ハートフルネス」とは? +マインドフルネスとハートフルネスの違い +逆境に屈せず行動できるようになる方法 +天才児の教育現場で行われる「ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)」で求められる5つの力 +滅私奉公ではなく、お互いを個性、力を伸ばして活かす社会のつくり方 についてお話ししましょう』、なるほど。
・『変化の激しいAI時代に、しなやかな強さを生むEIと心の健康  科学、テクノロジーが発達し、便利なサービスが次々現れ、かつてより飛躍的に暮らしやすくなった現代。 しかし、それに伴って私たちは幸せになったのかと考えると、そうとは限りません。 たとえば、SNSの発達で人と比べて劣等感を感じたり、コミュニケーション齟齬が起きたり、いつでも誰とでもつながれるからこそ逆に孤独を感じるなど、ストレスが増えた方もいるのではないでしょうか? 今年の春、年に一度の中等教育カンファレンス「全米独立型私立校のカンファレンス」にて、ニューヨーク大学ビジネススクールの心理学者ジョナサン・ハイド教授は、「GenZ」と呼ばれるティーネイジャー層が危険にさらされていると話しました。 精神疾患、身体障害、学習障害やADHDの数、うつ病、自傷、自殺の件数などは、明らかに増加しています。 AIやロボットが今後さらに生活を変えることが予想されますが、テクノロジーの発達の速さや生活変容は、先行きの見えない混乱を人々の心に生みます。 そんな時代だからこそ、重要なのは、いかに「感情的知性(EI)」を高め、「心」の健康をいかに保つかです』、「ティーネイジャー層が危険にさらされている」、日本でも同じだろう。
・『ハートフルネスは、思いやりと感謝で心を育てる、マインドフルネスの進化形  重松先生は、アメリカの心理学専門誌『サイコロジー・トゥデイ』で、「Finding Meaning in Life’s Struggles(人生の困難に、意味を見出す方法)」という人気ブログを連載しています。 「臨床心理学で、私はたくさんの苦しんでいる人と対話してきました。 人が幸せになるのは、決して簡単ではありません。 誰もがヴァルナビリティ(開かれた弱さ)を持ち、悩みながら生きているのです」 人生を充実させ、生きづらさから解放されるためのヒントとして、思考、脳の研究から生み出されたのが、今、起こっていることに集中する「マインドフルネス」です。 その手法の一つ「瞑想」は、Googleなどの世界的大企業で取り入れられていることで有名になりました。 重松先生は、著書で「マインドフルネスをもっともよく表す漢字は「念」であり、これは「今」と「心」のふたつの部分からできている。 しかし、日本語で「心」が気持ち、強い感情、意識や思考、魂など、その人全体を指すのに対し、西洋でマインドフルネスといえば、ハートから切り離された知性や思考といったイメージを持つ人がいる。 それを考えると、ハートフルネスという表現のほうが、「念」の意味に近いだろう」と述べます。 「ハートフルネスの考え方は、自分だけで完結するものではありません。 能力があるということは責任があるということ。社会に対してできることをやる、行動を起こし社会に貢献、奉仕する。この過程すべてがハートフルネスです。ハートフルネスは、不安な時に一歩を踏み出す原動力、そして、生きる目的になります」 重松先生はこう語ります』、「能力があるということは責任があるということ。社会に対してできることをやる、行動を起こし社会に貢献、奉仕する。この過程すべてがハートフルネスです。ハートフルネスは、不安な時に一歩を踏み出す原動力、そして、生きる目的になります」、なるほど。
・『不安、逃げ出したい時の勇気ある行動が、あなたに幸福感をもたらす  私は拙著『スタンフォード式生き抜く力』で、ダライ・ラマの「人間は根本的に社会的な生き物で、それがゆえに、私たち人を思いやる力の『種』を持って生まれてくる。その力を発揮することが私たちの幸福や社会の繁栄に必要不可欠だ」という言葉を引用しましたが、ダライ・ラマは次のような言葉も残しています。 「人間として、私は自分の幸福が人次第だということを知っています。そして人の幸福に関心を持つことは、道徳的な責任だと真剣に思っています。人類の未来が祈りや良心だけで実現するというのは、現実的な考えではありません。行動が必要です。ですから私の一番の責務は、力の限り人類の幸福に貢献することなのです」 「責任」という言葉に抵抗を持つ方もいるかもしれませんが、重松先生は次のように語ります。 「日本では、義理という言葉を、心がこもっていない、仕方なくやるものとネガティブに捉える方もいるかもしれません。 しかし、義理は「美徳」です。私の母は、ゼネラル・エレクトリック(略称GE。トーマス・エジソンが創業した世界的企業)で、初のアジア人女性として成功した、自由でキャリアもある女性でした。 そんな彼女の言葉が『義理と人情を忘れてはいけない』です。Responsibility(責任)とは、Response(応答)、Ability(能力)。つまり、社会から求められているものに、自分の能力を持って応えることといつも話してくれました」 「自分にできることはやる」という行動は、拙著『スタンフォード式生き抜く力』で取り上げた、「五常」の「仁」「義」と同じ。 やるべきことをやる正義感「義」と、思いやりの心がまえ「仁」を持って行動することが重要なのです。 心理学の研究で、健康向上の最良の方法の一つは、積極的に周囲に貢献することとされます。感謝の念を持とうなど心の意識も大事ですが、日常のささやかな親切などの行動こそが、幸福感につながるのです。 また、作家のオードリー・ロードは、恐れを乗り越えるために、ヴィジョン、ミッションが必要と説きますが、重松先生も、真の思いやりは、責任と共にあるとします。教育、指導、子育てなど責任を負うと感じる場面で、相手に全力を傾け、自分の能力を尽くす。この「ハートフルネス」こそが、あなたに大きな勇気と幸福感をもたらすのです』、「真の思いやりは、責任と共にあるとします。教育、指導、子育てなど責任を負うと感じる場面で、相手に全力を傾け、自分の能力を尽くす。この「ハートフルネス」こそが、あなたに大きな勇気と幸福感をもたらすのです」、なるほど。
・『天才児教育のトレンド「ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)」5つの力とハートフルネス  「他人への共感、自らの恐れをコントロールし行動する力を持つ」ことは、健全な精神、体の健康のサポートで効果的な学びを実現する、スタンフォードの教育現場で行われているソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)で目指す姿でもあります。 以下は、アメリカのSELを90年代から牽引してきたCollaborative for Academic, Social and Emotional Learning(CASEL)が挙げる社会性・感情の5つの能力です。 1.自分を理解する力(self-awareness):自信をもって成長マインドセットで、自分の強みや弱みを理解することができる。 2.自分で自分を統制する力(self-management):ストレスとうまくつき合って、自分の衝動を適切にコントロールし、自分で目標を設定して到達していくために自分を動機づけることができる。 3.他者を理解する力(social awareness):多様な背景や文化を有する人たちの視点を理解して、共感したり思いやったりすることができる。 4.他者とうまくやっていく力(relationship skills):他の人とうまくコミュニケーションができ、協力できる。不健全な場の空気に流されない。対立を建設的に解決する。他人に助けを求めたり、自分から他人を助けることができる。 5.適切な意思決定をする力(responsible decision-making):自分の行動や、他人とのやり取りの中で、倫理的基準や安全性、社会的規範に基づいて、建設的な選択をすることができる。 このように、SELで学習する内容は、ハートフルネスの学びを通して目指す姿でもあるのです』、「SEL」はなかなかよく出来た仕組みのようだ。
・『あなたのハートフルネスが、世界をやさしく変えていく  「アメリカ人は個人主義で、自己中心的、恐れが強く、憎しみを感じる人が多いです。日本は世界から、エンパシー(注)社会だと思われています。小さい頃から、他者とのつながりの大切さを教える教育がなされ、共感、思いやりを自然と身につけている人が多い。しかし、弊害として、他人に共感する=自分をなくすと思っているなど、思いやりが我慢と同義になっている人もいます。 思いやり、人とつながることは、人が生きるにあたり実は一番大事。でも、その方法を正しく教えられる人が、教育現場含めほとんどいないのが現状です」 人に思いやりを持って接すれば、その人は応えてくれる。もし目の前の人が直接応えてくれなかったとしても、めぐりめぐって、またいつかあなたのもとに返ってくる。この考えを示すのが、日本古来のことわざ「情けは人のためならず」です。 ハートフルネスで恐れを乗り越える。思いやりを持って、相手の人生を自分事として共感し、自分だけのためでなく、もっと大きな社会のために行動することで、私たちは幸福を感じられます。 一人一人の意識が変われば、世界は温かく、あなたにとっても心地よいものになるに少しずつ変わっていくでしょう。 もしこの記事が少しでも役に立ったら、ぜひ、あと一歩を乗り越えよう努力している友人、より良い人生を歩もうと頑張る大切な方、お仕事の仲間などにも教えてあげてください。 一人の小さな勇気が、みんなのためになっていると伝えるのもハートフルネス、思いやりに満ちた行動になります。 ここでの気づきが、互いの心を大切にし、無理せず自分のできる範囲で相手に応える、やさしい社会づくりのきっかけに少しでもなれば幸いです。(スティーヴン・マーフィ重松氏、星 友啓氏の略歴はリンク先参照)』、「互いの心を大切にし、無理せず自分のできる範囲で相手に応える、やさしい社会」、は理想形で、それに少しでも近づいてほしいものだ。
(注)エンパシー:共感力)

第三に、4月2日付けダイヤモンドが掲載したライターの奥田由意氏による「価値創造の経営~デジタル&イノベーション 日本の「AI自動翻訳」劇的進化の実態、特許や製薬・金融など専門分野に変革も」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/266872
・『自動翻訳というと、グーグル翻訳やDeepLを思い浮かべる人が多いかもしれないが、実は国産のAI翻訳が、特許、製薬、金融などの専門分野での高精度化をはじめ、すさまじい進歩を遂げている。なぜ精度が急速に上がったのか。どのような産業でどのように役立てられているのか。そして、今後ビジネスではどのように応用される可能性があるのか。一般社団法人アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT) 会長で国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)フェロー隅田英一郎氏に聞いた』、興味深そうだ。
・『特許、製薬、金融など専門分野や音声翻訳でも高精度を実現  AIを活用した国産の自動翻訳(機械翻訳)が世界的にも高いレベルにあることは、あまり知られていないかもしれない。 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の研究成果による自動翻訳は、英、中、韓など10言語に関して、旅行、医療、防災等の分野に対応し、日本語と外国語、双方向の翻訳精度は80%以上で、実用レベルである。2019年にはTOEICスコアでも960点以上の実績を上げている。また、音声認識の精度も今や人間を超えている(時間をかけて何回か録音を聞き直すことを許容すれば、文脈を理解する能力がある分だけ人間のほうが正確ではある)。 これらの最先端技術は、現在累計80万台を売り上げている82言語対応の双方向翻訳機ポケトーク、自治体での業務やインバウンド対応のための翻訳機eTalk5みらいPFモデルなどをはじめ、約30の製品がビジネスの現場で使われている(製品・サービス事例)。 こうした製品以外にも、企業他との共同研究で、専門分野の自動翻訳の精度が飛躍的に上がっている。NICTでは、特許庁、製薬会社などとしっかりタッグを組んで、研究開発を進め、それぞれの専門分野に適応した高精度翻訳を実現し、外国出願を効率化したり、新薬の販売承認にかかわる翻訳日数を短縮したりしている。 NICTフェロー隅田英一郎氏は「グーグル翻訳においては精度を上げることが必ずしも最優先事項ではない。グーグル翻訳は広告ビジネスへの貢献がその存在理由であって、汎用の単品として設計されている。汎用品とは包丁で例えれば万能包丁のようなもの。何でも切れるといっても、生魚の身やパンはうまく切れず、結局、刺身包丁やパン切りナイフが必要になる。包丁と同じで、翻訳も専門に特化した自動翻訳でなければ用をなさない」と語る。 NICTでは、研究室に研究を閉じ込めず、専門分野の官・民と協力して、重点分野について、実際にその分野で使われている高品質で大量のデータを機械学習(深層学習)させ、それを協力相手の現場に戻して厳しくチェックしてもらい、調整を重ねることによって高精度を実現している。 「専門の組織や企業と一緒に作ることで、リアルな必要性に基づいたフィードバックが確実に得られ、短期間にシステムに反映して実用に供することができている」(隅田氏) 例えば、外国での特許訴訟における費用の多くを翻訳が占めるので翻訳の低コスト化が必要であり、一定期間に大量に翻訳するので高速化も必要だった。また、特許査定までにやり取りされる「拒絶理由書」は、特許明細書の独特の文章と、普通のスタイルの文章が混在した、とりわけ翻訳困難な文書だ。NICTは2014年から特許庁と協力して自動翻訳の開発を続け、異なる2つの評価尺度であるRIBESとBLEUの組み合わせで世界一の翻訳精度を達成した。) さらに、特許は常に新しい用語やコンセプトが出てくるので、特許庁から提供される対訳データに基づいて翻訳システムを更新し、加えて特許庁からフィードバックを得て改良しており、性能改善は停滞することがない。翻訳システムはいつもup-to-dateだ。 製薬分野でも、英国のアストラゼネカと協力し、「治験実施計画書」の自動翻訳に取り組み、国内で新薬を申請するためにかかる翻訳の期間を4週間から2週間に半減させた。日本国内で発売する新薬の申請は日本語の文書でなければ承認されないため、やはり翻訳の精度と速度が決定的に重要だ。これにより、新薬はより早く患者に届き、新薬の収益化も前倒しできる。 ほかにも、トヨタと中国語の自動車法規の翻訳を手がけたり、SMBC日興証券とアナリストレポートの翻訳を高精度化したり、半導体や契約書などの分野もカバーする。 VoiceBiz等多数あるスマホ・アプリの形態の製品も、観光関係者(例えば、舞妓、芸妓)、美容院、飲食店、小売店、さらには、病院関係者(医師、看護師、窓口)、救急車の救急救命士、自治体窓口などで広く使われている。2020年6月には警察庁が全国47都道府県に配備したスマホに音声翻訳のアプリを搭載した。 「交番、自治体窓口、救急車、診療所などは、日本にいる外国人が困りごとがあったり病気になったりしたときにまず頼る先である。そこで言葉が通じることが日本という国の安心感、信頼感にもつながる」(隅田氏) ちなみに、有名なグーグル翻訳では「トイレが流れません」を“The toilet doesn't flow.”(トイレが(そのものが)流れない)と誤訳するが、NICTの翻訳は、“The toilet doesn't flush.”(トイレの水が流れない)と「正しい」翻訳となる』、この「翻訳」例の比較では、「グーグル翻訳」はやはり「万能包丁」的で、「NICTの翻訳」の方が自然だ。
・『自動翻訳はなぜ飛躍的に向上したか 「AIによる機械学習」で世界は一変  自動翻訳の性能は、数年前から飛躍的な向上を続けている。ここで、簡単に自動翻訳発展の歴史を振り返ってみよう。 1980年代までは、規則翻訳(RBMT、Rule-Based Machine Translation)だった。原文を解析して、単語や語順を変換し、訳文を生成する。解析のための文法規則と、単語や語順の変換規則と、語形変化等の文生成のための規則をつくり、それを利用して翻訳するのだ。しかし、各言語に内在する複雑な特性の変換を説明しきる単純な規則は存在せず、改良のために次々と例外処理を積み重ねていって、制御が困難な水準まで規則(Rule)の数が膨れ上がりRBMTは行き詰まった。 そこで、RBMTで中心に据えられた抽象的な規則を追求するという考えは捨て去る必要があった。1984年に、抽象規則の対極にある具体的なデータを中心に据える用例翻訳(EBMT、Example-based Machine Translation)という手法が提案された。 EBMTは、長年の翻訳活動で蓄えられた質の高い対訳データ(同じ意味の原文と訳文を文レベルで集めたもの)を大規模に集めたものから、入力側が類似した対訳データを検索し、この対訳データの訳文側を自動的に修正して翻訳するという方法である。EBMTは人間が英作文する過程をヒントにしたもので、現在の対訳データから機械学習するAI翻訳につながる基盤を作った。) EBMTは類似対訳がある場合に高精度を達成できる一方、対訳データの質に過敏であるという欠点があった。EBMT と並行して研究されていた統計的機械翻訳(SMT、Statistical Machine Translation)のアルゴリズムを変えたフレーズベースのSMTが2003年に提案され、対訳データの質に対して頑健で精度も向上したことから、一定の普及を実現した。フレーズすなわち単語列に基づいて翻訳するというものだ。日本語から英語の場合、日本語文をフレーズで区切ったあとフレーズ毎に英語に翻訳し、SOV(主語、目的語、動詞)からSVO(主語、動詞、目的語)に語順を並べ変える。SMTの名の通り「確率」が主役である。 次の5つの日本語文と英訳文を見てほしい。
1. 京都駅はどこですか    → Could you direct me to Kyoto station?
2. 駅はどこですか      → Where is the station?
3. トイレはどこですか    → Where is the restroom?
4. タクシー乗場はどこですか → Where is the taxi stand?
5. ここはどこですか     → Where am I?
フレーズ「どこですか」に注目すると、5例のうち3例、つまり60%が「Where is」と翻訳できることがわかる(※)。このように、対訳データから、(1)各フレーズの訳語としてありうる訳とその確率が自動的に得られる。 (※)「どこですか」の場合は「Where is」 60%、「Could you direct me to」 20%、「Where am」 20%といった具合に  同様に、(2)語順変更の確率、(3)英文のフレーズの並びの確率も獲得できる。沢山の訳文の候補を生成して、(1)(2)(3)から得られる全体の確率が最大になる訳文を選択するのだ。SMTは大きく性能を伸ばし、特に、SOVやSVO等の同グループ内の言語間でかなりの高精度となったが、フレーズという単位で部分を組み合わせるという手法の限界から、特に、グループを跨ぐ言語の間(例、SOVである日本語とSVOである英語の間)の翻訳では実用化しうる精度が出せなかった。 しかし、その後、2014年、AIのコア技術である深層学習(ディープラーニング)を使った入力文全体を読み込んでから翻訳する技術(NMT、Neural Machine Translation)に関する技術が登場し、自動翻訳の精度は劇変した。NMTは「対訳データに基盤を置く点はEBMT・SMTと同じだが、そこからの翻訳知識の取り込み方式、翻訳の計算方式が違う」と隅田氏は語る。カギになるのは、ある単語と一緒に使う「共起する単語」である。 「電車」という単語は、たとえば、「電車に乗る」「電車を運転する」というように、「乗る」「運転する」という単語と一緒に使われている。しかし、特殊な比喩でもない限り、「電車が鳴く」とは言わないし「電車」が「食べる」とは一緒に使われることはない。 「自動車」は「乗る」「運転する」など、一緒に使われる単語が「電車」と似ている。一方、「犬」は「鳴く」と一緒に使われるが、「乗る」「運転する」と一緒に使われることはほぼない。 このように、文章中の単語の出現を分析することで、「電車」と「自動車」とは互いに似ており、「電車」と「自動車」は「犬」とは似ていないことを、機械に区別させることができる。) 「ある単語が、他のどの単語と何回一緒に使われているかに注目して、単語を膨大な数値の塊として表現することによって、コンピューターに実装されるニューラルネットで翻訳ができるようになった」(隅田氏) しかし、派生語や固有名詞を含めると単語の数は相当である。ある言語の単語数が仮に100万語あるとしよう。見出し数100万語の辞書に、他のどの単語と何回一緒に使われているかという数値を記載しなければならない(これをコンピューターでは100万次元のデータを持つという)。言い換えると、メガ*メガでテラ(106*106 = 1012 =1,000,000,000,000〈一兆〉)バイトのメモリに数値を入れることになり、あまりに膨大なので、実際には、数学的なテクニックで処理可能な次元を圧縮して計算する。 NMTの翻訳精度が圧倒的に高かったことから、自動翻訳はNMTが主流になった。機械学習が分野横断できる技術であることから、自動翻訳分野以外の研究者の参入もあり、自動翻訳の進化のスピードは桁違いに上がった。革新のスピードは、RBMTからEBMT/SMTまでに約40年、SMTの第2世代までに約20年、NMTまでに約10年、その後現在の第3世代NMTまでが約5年と、どんどん短縮されている。 そして2020年、前述したEBMTの手法が復活してNMTの上に追加された。言い換えると、入力した文と類似した文が対訳データにあるかどうかを検索し、類似対訳があれば、それを参考にして自動翻訳し、類似対訳がなければNMTで翻訳する。多くの専門的な分野で、さらに高精度の翻訳ができる技術が確立できた。 世界にはおよそ7000の言語があると言われ、グーグル翻訳はおよそ100の言語に対応しているが、NICTでは、英、中、韓、仏、西、タイ語、インドネシア語など10言語を重点的に研究している。日本語と英語は構造面で非常に遠く、日英双方向の翻訳に取り組んだ知見は、他の言語ペアの研究にも役立つのだ。敷衍すると、世界の言語の5割を占める、日本語と同じSOV(主語、目的語、動詞の語順の)言語と、4割を占める英語のようなSVO(主語、動詞、目的語の語順の)言語の対応はもちろん、SOV同士の日韓双方向翻訳や、SVO同士の英仏双方向翻訳では、より誤りの少ない翻訳を実現できる。 「日本での需要がある言語に絞り、より高性能、高精度の品質を確保し、他を圧倒することができ、また運用のコストパフォーマンスもよくなる。研究基盤があるので、カバーしていない言語は、必要に応じていつでも追加して開発できる」(隅田氏)』、「自動翻訳はNMTが主流になった。機械学習が分野横断できる技術であることから、自動翻訳分野以外の研究者の参入もあり、自動翻訳の進化のスピードは桁違いに上がった」、便利な時代になったものだ。
・『自動翻訳が小規模企業や英語嫌いの人々を救う!  日本人は英語の修得が苦手だと言われるが、隅田氏は「米国の報告によれば、米国人が日本語を習得するのに必要な学習時間は2200時間以上と全言語の中で一番長時間のトレーニングが必要だ。逆もしかり。つまり、日本人が英語を修得するのには2200時間以上かかる。日本人の英語の中高での学習時間は900時間ほどしかない。圧倒的に学習時間が足りない。だから、できないのは当たり前。英語力がないと劣等感を抱く必要はない」と断言する。 自動翻訳が高精度になったので、サッカー好きはサッカーに、プログラム好きはプログラムに打ち込めばよいのだ。特に語学に向いているわけでもない場合に、無理に英語の修得に時間を使うのは限られた人生を非効率に浪費することだ。 語学が好きな人はどんどん学べばいい。自動翻訳は、文脈や背景まで含んだ翻訳には対応できず、文学やジョークの翻訳や高度な同時通訳などは苦手。なので、翻訳や同時通訳の専門家はもちろん必要だ。また、翻訳や同時通訳の専門家も機械翻訳をうまく活用することによって、効率を上げることが可能であり、大いに「働き方改革」ができるはずだ。 より根本的な話として、英語に限らず語学を学ぶことには、自国の言語や文化を相対化し、俯瞰的な視座に立脚できることも含め重要な意義があることは言うまでもない。  機械翻訳を使えば、一定量生じる誤訳の対策に利用者が適切な努力をすれば、丸投げで翻訳するより費用を抑えられるため、中小企業などがニッチな技術の販路を世界に広げるのに役立つだろう。国内市場が縮小するなか、語学の壁のせいで世界に発信できていないコンテンツや技術やサービスを海外に広げるチャンスが生まれる。会議や商談やメールのやりとりにも有効だ。海外とのビジネスのスピードも向上する。ビジネス、アカデミック両方の分野で、語学が苦手なために埋もれていた優秀な人材も日の目を見る。個人でも組織でも、海外との交流が活発になる。 現在、隅田氏のチームは、総務省のプロジェクト「グローバルコミュニケーション計画2025」で同時通訳の開発も手がけている。 「一定時間話した内容をまとめて通訳する逐次通訳と違い、ほとんど遅延なく行う同時通訳は、話されている文章を適切な箇所で分割し、適宜情報を取捨選択し、翻訳するという、専門分野の機械翻訳と違った技術も求められる。2025年の大阪万博での実用化を目指しているところだ」(隅田氏) 誰もが高精度の翻訳、遅延の少ない同時通訳を安価に使える「翻訳の民主化」で、自らの意思とは関係なく英語力向上を強制される「英語奴隷」たちが解放され、救われる日は近い。そして、北風と太陽ではないが、強制されなければ、逆に、ポップ・ミュージックや韓流ドラマのファンの行動で証明されているように語学を学びたくなったり他国の言語や文化に自然に興味を抱いたり、外国文学を読みたくなったりする人も増えるかもしれない』、「自らの意思とは関係なく英語力向上を強制される「英語奴隷」たちが解放され、救われる日は近い」、早く「解放され、救われる日」が来てほしいものだ。
タグ:ダイヤモンド 人工知能 (AI) 奥田由意 羽生田慶介 星 友啓 (その11)(IBMが「顔認識AI」撤退 アマゾン・マイクロソフトも悩むその危険性、【スタンフォードからの緊急報告】 AI時代にEIと心の健康を保つ方法、価値創造の経営~デジタル&イノベーション 日本の「AI自動翻訳」劇的進化の実態 特許や製薬・金融など専門分野に変革も) 「IBMが「顔認識AI」撤退、アマゾン・マイクロソフトも悩むその危険性」 アマゾンの人事AIは“女性嫌い”? 「君は不採用だ」と人事AIが下すワケ 「AIが知能を発揮するには、まず事前に学習用のデータを大量にインプットする必要がある。そのデータに偏りがあれば、当然ながらアウトプットにもバイアスがかかる」、その通りだ 「IBMが顔認識AI事業からの撤退」、「アマゾン」、「マイクロソフト」も「警察への顔認識AIの提供」を「停止」、「差別するAI」への警戒姿勢を強めているようだ。 「AIが導き出す「現状における合理的な解」は、往々にして現状の格差やバイアスを丸のみにした差別的なものになりがちだ。倫理なき合理化は、残念ながら差別と極めて相性が良い」、企業としては大いに注意が必要なようだ 「IBM」、「アマゾン」などの慎重な姿勢に比べ、商売のことしか考えない「リクルートキャリア」の姿勢の違いが鮮明になった。 「女性の声が初期設定」された「AIアシスタント」が「ジェンダーバイアスを補強」、というのは事実だが、「性別の特定できないAI」というのも味気ない 日本企業はコンプライアンスが苦手な企業が多いだけに、上手くいくか心配だ。 「【スタンフォードからの緊急報告】 AI時代にEIと心の健康を保つ方法」 つらい、不安な時ほど「自分のこと」を考えてはいけない? 変化の激しいAI時代に、しなやかな強さを生むEIと心の健康 「ティーネイジャー層が危険にさらされている」、日本でも同じだろう。 「能力があるということは責任があるということ。社会に対してできることをやる、行動を起こし社会に貢献、奉仕する。この過程すべてがハートフルネスです。ハートフルネスは、不安な時に一歩を踏み出す原動力、そして、生きる目的になります」、なるほど 「真の思いやりは、責任と共にあるとします。教育、指導、子育てなど責任を負うと感じる場面で、相手に全力を傾け、自分の能力を尽くす。この「ハートフルネス」こそが、あなたに大きな勇気と幸福感をもたらすのです」、なるほど 「SEL」はなかなかよく出来た仕組みのようだ 「互いの心を大切にし、無理せず自分のできる範囲で相手に応える、やさしい社会」、は理想形で、それに少しでも近づいてほしいものだ。 「価値創造の経営~デジタル&イノベーション 日本の「AI自動翻訳」劇的進化の実態、特許や製薬・金融など専門分野に変革も」 この「翻訳」例の比較では、「グーグル翻訳」はやはり「万能包丁」的で、「NICTの翻訳」の方が自然だ 「自動翻訳はNMTが主流になった。機械学習が分野横断できる技術であることから、自動翻訳分野以外の研究者の参入もあり、自動翻訳の進化のスピードは桁違いに上がった」、便利な時代になったものだ 「自らの意思とは関係なく英語力向上を強制される「英語奴隷」たちが解放され、救われる日は近い」、早く「解放され、救われる日」が来てほしいものだ。
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ロボット(その3)(パナソニック「配送ロボット」は実用化できるか 神奈川県藤沢市で実験 21年度の収益化目指す、実質創業者の稲葉清右衛門が築いた利益の源泉 ファナックが50年守る「黄色い経営哲学」のすごみ、利益率の底打ちに向け「白いロボット」も登場? ファナック「26年ぶり低成績」から期す逆襲のカギ) [イノベーション]

ロボットについては、昨年4月16日に取上げた。今日は、(その3)(パナソニック「配送ロボット」は実用化できるか 神奈川県藤沢市で実験 21年度の収益化目指す、実質創業者の稲葉清右衛門が築いた利益の源泉 ファナックが50年守る「黄色い経営哲学」のすごみ、利益率の底打ちに向け「白いロボット」も登場? ファナック「26年ぶり低成績」から期す逆襲のカギ)である。

先ずは、本年1月10日付け東洋経済オンライン「パナソニック「配送ロボット」は実用化できるか 神奈川県藤沢市で実験、21年度の収益化目指す」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/401617
・『「お先にどうぞ」「左に曲がります」「走ります」 かわいらしい顔をもつ箱型のロボットが路上を走行し、周囲の人に語りかける。 パナソニックが2020年11月から、自動配送ロボットの公道での実証実験を続けている。場所は、約2000人の住民が居住する、神奈川県藤沢市の同社工場跡地にあるスマートシティー「フジサワサスティナブルスマートタウン」(藤沢SST)。コロナ禍でネット通販や料理の宅配ニーズが増加し、配達員の不足が生じているが、その解消に役立てることが狙いだ』、「スマートシティー」とはいえ、一般の公道での実験だ。
・『最大速度は歩く速さと同じ  今回の実証実験はフェーズ1とフェーズ2の2段階に分けられている。2020年11月~12月に行われたフェーズ1では、配送ロボットが公道をきちんと自動走行できるか確認する。2021年2月~3月に予定されるフェーズ2では自動走行だけでなく、ロボットを使って利用者のもとへ商品を届ける実験を行う。 自動配送ロボットは同社が手掛ける電動の車椅子をベースに作られた、高さと長さがそれぞれ約1.1メートルの箱形ロボットで、側面に2つの扉が付いた荷物を入れるボックスが搭載されている。最大速度は人が歩く速さとほぼ同じ時速4㎞で走行する。 基本的に自動運転であるが、道路を横断する際や路上駐車中の自動車などをよける際は、監視センターにいる担当者が遠隔操作することになっている。 パナソニック・マニファクチャリングイノベーション本部ロボティクス推進室総括の安藤健氏は「道が混雑しているときには住民に気を遣ってもらわないといけないので、(ロボットの外観は)愛着をもてるつくりにしている」と話す。同社では「(フェーズ1実験における)住民の受容性、期待は想像していた以上に高く、ロボットと親しんでくれそう」と手応えを感じているようだ。 フェーズ2では、ロボットが複数店舗で商品を受け取り、利用者の自宅に届ける作業を実験する。利用者の指示通りに店舗をまわり、店舗の従業員がロボットの荷物ボックスに商品を入れ、利用者の自宅に届ける。 パナソニックは自動運転技術を着々と開発してきた。2019年からは、大阪府門真市にある本社敷地内で社員が移動する際に、自動運転ライドシェアサービスを実施していた。 同社のモビリティソリューションズ担当参与の村瀬恭通氏は「本社でのライドシェアサービスでどれだけの人が移動し、荷物を運び、時間帯によってどのルートが活用されたか、たくさんのデータが集まった」と振り返る。どのように自動運転のサービスが運用されるか蓄積を続けている』、「基本的に自動運転であるが、道路を横断する際や路上駐車中の自動車などをよける際は、監視センターにいる担当者が遠隔操作」、「どのように自動運転のサービスが運用されるか蓄積を続けている」、まだ「データ」「蓄積」の段階のようだ。
・『継続課金のビジネスモデルを目指す  今回の実証実験の目的について、村瀬氏は「藤沢SSTは子どもや高齢者も住む場所。本社エリアとは違う場所で運行することで新たなデータが集まり、さらなるアップデートにつながる」と話す。今後は人や車の往来が激しい街中で自動運転が可能なのか。また、年齢ごとの使われ方の違いや配送しやすい商品のタイプなどを探っていく考えだ。 パナソニックは創業100周年を迎えた2018年に新たな経営方針として「くらしアップデート」を掲げた。家電や住宅設備をはじめ、同社が展開する幅広い製品群とソフトウェアを組み合わせてサービスを提案。製品を単に売って終わりでなく、継続的に課金できるビジネスモデルの構築を目指している。 同社は移動に関わるモビリティ分野も人の生活圏を構成する重点ターゲットと位置づけており、自動運転は柱の1つだ。 ビジネスとしては、「2021年度中に有償でサービスを提供できるようにしたい」(安藤氏)とし、その時期を逆算すると、2020年度内には公道で走る技術を獲得する必要がある。さらに、「(単に技術的に)公道を走れるかだけでなく、(住民に)価値を感じてもらえるか」(安藤氏)も重要になる。 ビジネスとして実用化するには障壁もある。現在、自動配送ロボットの走行やサービスについて明確に規定した法制度があるわけではない。今回の実証実験も公道での走行にあたり、国土交通省による道路運送車両の保安基準の緩和措置を受けて、藤沢警察署から道路使用許可を取得している。また自動配送ロボット自体も法律的には原動機付自転車の扱いとなっている。 政府の成長戦略会議は2020年12月に新しい成長戦略案を示し、「2021年度のできるだけ早期に、(自動配送ロボットを用いたサービスが可能となるよう)関連法案の提出を行う」と明記した。法改正に向け、同社も積極的に関係省庁との意見交換を行っているが、「制度の整備時期や作られる制度の内容が現場の実態に即したものになるかは不安」(パナソニック幹部)との声もある』、「法改正に向け、同社も積極的に関係省庁との意見交換を行っている」、「同社」の思うような方向になるかは不明のようだ。
・『配送データを都市開発に活用  自動配送ロボット分野では2020年10月に日本郵便が公道上での荷物運搬実験を実施したほか、ソフトバンクグループが佐川急便やコンビニ大手のセブンーイレブン・ジャパンと組んで屋内外での配送実験を行った。 有償サービスも、自動配送サービスの利用者と店舗のどちらが利用料を支払うのか。契約形態などのビジネスモデルも定まっていない。村瀬氏は「ものを運ぶだけでビジネスが成立するとは想定しにくく、蓄積したデータの活用などいろいろなケースを考えていく」と話す。 具体的には、自動配送ロボットをデータマイニングツールとして利用し、集めたデータを活用してマネタイズすることや、自動配送ロボットで集まるデータを都市開発などに生かしていくことなどを想定している。 自動運転技術は配送サービスだけでなく、街中でのライドシェアサービスにも活用されうる。村瀬氏は「住宅街、観光地、遊園地などエリアによってマネタイズ方法も変わってくる」としている。 各社が参入して競争が激化するなか自動走行技術や収益化の方法などで他社よりも優位に立てるか、パナソニックの強さが問われている』、今後の「自動運転技術は配送サービスだけでなく、街中でのライドシェアサービスにも活用されうる」、展開を注目したい。

次に、3月16日付け東洋経済Plus「実質創業者の稲葉清右衛門が築いた利益の源泉 ファナックが50年守る「黄色い経営哲学」のすごみ」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26457
・『ファナックの実質創業者であり名誉会長だった稲葉清右衛門氏が2020年10月2日に死去した。稲葉氏は、富士通信機製造(現富士通)で後にファナックの看板商品となる「NC装置」の開発を先導。1972年にNC装置事業が「富士通ファナック」として分離独立すると、NC装置、産業用ロボットの世界的企業へと同社を育て上げた。 2002年に出版された著書『黄色いロボット』に書かれた稲葉氏の言葉から、異色の超高収益企業を生み出した経営哲学を探る』、興味深そうだ。
・『「黄色」に込められた意志  ファナックが本社を構える山梨県忍野村に足を運ぶと、工場群の外壁、従業員の制服、社用車、ロボット、すべてが黄色に染められている。これは稲葉氏が黄色を「戦いの色」としたことに由来する』、「黄色を「戦いの色」」、としたとは初めて知った。
・『原価への強いこだわり  稲葉氏は、競争力をもつ商品になるかどうかは開発段階(≒生まれ)で決まると考えた。つまり、商品を生み出す開発段階で製造コストを抑えられる設計をしなければ、その後の製造段階(≒育ち)で工夫したとしたとしても他社を圧倒する低価格を実現できない。 ファナックで商品を開発する際には、まず「最低5年間は絶対負けない不敗の価格」を設定。そこから決められた利益を引き、残りを原価とする。研究員は、この目標原価内で商品を製造できるように、製造システムまで考えて設計をしなければならない。 この原価へのこだわりが、ファナックの高収益体質の根源だ』、「研究員は、この目標原価内で商品を製造できるように、製造システムまで考えて設計をしなければならない」、「原価」の縛りはかなり強いようだ。
・『黒字化へ選択と集中  稲葉氏は1956年から富士通の社内組織でNC装置の開発を始め、やがて販売も行うようになった。しかし、当初は赤字が続き、当時の富士通の社長から毎月のように強い叱責を受けた。 そこで、並行して開発を手がけていたプロセス制御から撤退し、NC装置に集中。さらに、受注の内容を見直し、すべて赤字となっていた特注品の受注は中止。商品を絞り、狭い領域を掘り下げていく方針に転換した。 1965年に黒字を達成すると、NC装置が搭載された工作機械の普及も進み、NC装置部門は富士通の中でも高収益部門に成長。機械技術者としてNC装置の開発に邁進してきた稲葉氏は、この赤字対策の経験で、企業経営における管理部門の重要性を認識した。稲葉氏は「この経験がファナックの経営にどれほど役立っていることか」と振り返っている』、「機械技術者としてNC装置の開発に邁進してきた稲葉氏は、この赤字対策の経験で、企業経営における管理部門の重要性を認識した」、「赤字対策の経験」を「企業経営」に活かしたのは大したものだ。
・『財務指標に透ける信念  NC装置の納入先である工作機械業界は、景気の変動に大きく左右される。だが、つねに新しい技術を生み出し競争力を高めていくためには、安定的に利益を確保する必要がある。1972年のファナック発足にあたり稲葉氏が企業像として打ち出したのは、規模は小さくても他人資本に依存せず、確実に利益を生む「小さな巨人」だ。 「小さな巨人」の条件の1つは、「売り上げが3分の1に減っても利益がでる企業体質」だ。稲葉氏は、研究開発、製造、事務管理を徹底的に合理化。製造については、単純作業をロボットに置き換え、加工対象物や部品を無人搬送車で搬送するなど、工場の自動化を進めた。 もう1つの条件は、財務の健全性だ。稲葉氏は借金を嫌い、必要な資金をすべて自己資金で賄うことを目指した。資金だけでなく、世界各地の現地法人、合弁会社の土地や建物もすべて買い取る「絶対に借りない主義」を貫いた。 財務へのこだわりは今でも続き、有利子負債は0円、自己資本比率9割近くを誇る。仮に売上高が0円になったとしても通常の運転資金を維持できる期間を示す手元流動性比率は12.5カ月にもなる』、「絶対に借りない主義」については、異論もあるが、「売り上げが3分の1に減っても利益がでる企業体質」づくりに努めたとはさすがだ。

第三に、3月18日付け東洋経済Plus「利益率の底打ちに向け「白いロボット」も登場? ファナック「26年ぶり低成績」から期す逆襲のカギ」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/26477
・『かつての超優良企業が復活の兆しを見せている。 NC(数値制御)装置で世界最大手のファナックが1月27日に発表した2021年3月期の通期業績予想は、売上高5323億円(前年同期比4.7%増)、営業利益1058億円(同19.8%増)だった。 2020年4~6月期の業績が新型コロナの影響で急落したのにも関わらず、通期の業績は前期比20%近い増益となる見通しだ』、なるほど。
・『海外で需要が回復局面に  好調の要因は中国向け受注の回復だ。中国では、NC装置などのFA(工場自動化)、ロボット、ロボマシン(加工機)の各部門がIT、建機、自動車など幅広い業種向けで好調。2020年10~12月期の中国向け受注高は前年同期比167%増の598億円と大幅に増加した。 また、アメリカではロボットの受注がEVを含む自動車関連、一般産業で順調に回復している。この影響から、2020年10~12月期のロボット受注高が661億円(前年同期比42%増)と急増し、過去最高を更新した。 ファナックの山口賢治社長は、IT関連のロボドリル(小型切削加工機)の需要増加が一時的とみられることなどを懸念点に挙げる一方で、「(設備投資需要が)​回復局面にあることは間違いない」と断言した』、なるほど。
・『消え去ったスマホ特需  ファナックにとっては、待ちに待った回復局面だ。2010年以降、iPhoneの新製品が投入されるたびに、ロボマシン部門で金属製筐体を加工するロボドリルが、EMS(電子機器の受託製造)向けに大量に生産された。当時のファナックは、この「スマホ特需」によって何度も40%もの営業利益率を叩き出していた。 ただ、米中貿易摩擦を受けて2018年秋ごろから製造業の間で設備投資を様子見する動きが広がった。自動車や半導体業界の設備投資が一巡し、工作機械、ロボットなどのFA市場が急速にしぼむことで、ファナックの受注は2017年10~12月をピークに、減少傾向が続いた。 とくに工作機械メーカーに納入するNC装置は、工作機械市場の停滞の影響を大きく受け失速。加えて、スマホ向けの小型加工機が市場に浸透したため、2018年3月期以降はスマホ特需もなかった。 2019年末から2020年頭にかけて、設備投資がようやく動き出したところに、今度は新型コロナが直撃。2020年4~6月期の受注はさらに落ち込んだ』、「スマホ向けの小型加工機が市場に浸透したため」「スマホ特需」も「消え去った」のは構造的変化のようだ。
・『積極投資で膨らんだ償却費  近年は、かさむ費用も利益を下押ししてきた。ファナックは、ロボットやNC装置の将来的な需要増を見込み、山梨県忍野村の本社地区に加え、栃木県壬生工場、茨城県筑波工場で生産能力を増強。2015年以降は毎年1000億円規模の設備投資を行い、減価償却費が年々重くなっていた。 また、IoT基盤「フィールドシステム」などソフト開発を強化したことで研究開発費も増加。ソフトウェア分野のエンジニアの中途採用を増やすなど人件費も膨らんだ。 その結果、2020年3月期の営業利益率は26年ぶりに20%を切り、17.3%まで落ちた。山口社長からも「以前ほどの利益率はもう出ない」との発言が飛び出し、業界では「ファナックが普通の会社になってしまった」(市場関係者)とまで言われた』、「ソフト開発を強化」は時代の流れなのだろう。
・『中国ではロボットを作れば「すぐ売れる」  ファナックは足元の受注回復で、かつてのような高収益企業に戻れるのか。今後の成長における牽引役として最も期待されるのはロボットだ。 まず、中国の旺盛な設備投資需要が追い風となっている。あるロボットメーカーの関係者は、「中国の内需の設備投資が非常に活況で、製品を作ればすぐに売れるような状況だ」と漏らす。 自動車業界のEVシフトによって新たな需要の波が生まれている。2020年以降、EV関連への設備投資が急速に進められている。山口社長は、「EV化が進むと、バッテリーやインバーター、モーター周辺の工程でロボットを使う要素が増える可能性がある」と期待する。実際、バッテリーの組み立てに使うロボットのニーズが拡大している。 自動車業界のサプライチェーンの変化も新たな需要を生み出す可能性がある。中国では、EVの生産を受託する動きが出てきそうだ。UBS証券の水野晃アナリストは、「中国でEVの受託製造のプレーヤーが加わることで、新たな設備投資の機会が生まれる」と予測する』、「EV化」などでの「設備投資」の変化は「ロボットを使う要素が増える可能性がある」、「ロボット」メーカーの強味のようだ。
・『カギ握る「白いロボット」と効率化  さらに、従来は最大顧客として需要を下支えしてきた自動車業界ではなく、IT関連などの一般産業向けを中心に幅広い業種の自動化、省人化に向けたロボットの需要が拡大している。ただ、新たな市場が拡大するにつれ、ロボットの競争軸は高速、高精度などの性能からソフトの面も含めた使いやすさに移りつつある。 そこでファナックが投入した切り札が、「白い」ロボット・CRXシリーズだ。トレードマークだった黄色く、頑強な見た目のデザインを一新し、2020年6月に発売した。 CRXは、きゃしゃなボディが特徴で、安全柵を必要とせず、人間と同じ空間で作業ができる「協働」ロボット。産業用ロボットの導入が難しかった中小企業や食品市場の開拓を目指している。専門的なプログラミングの知識がなくてもロボットの動きを指示できるように、操作ソフトも新しく開発し、使いやすさを追求した。 CRXは、一時は生産が追いつかないほど売れ行きが好調で、生産能力を2021年1月からは当初の1.5倍に引き上げ、2022年1月には同3倍へ増強する計画だ。山口社長はCRXを「ロボットの売り上げを現状から一段上げるための1つのカギ」と位置づける。 課題は高止まりが見込まれる費用のこなし方だ。山口社長は、「次の増産を考えなければならない時期に来ている」と、需要拡大を見込んだ生産増強も見据えている。ソフトウェア開発の重要性も増す中、高収益を実現するのは容易ではない。 ファナックがかつて誇った収益力を取り戻すためには、需要を捉えて売り上げを伸ばすだけでなく、持ち前の原価低減や製造の合理化などよる費用の効率化が一層重要になる』、「CRXは、きゃしゃなボディが特徴で、安全柵を必要とせず、人間と同じ空間で作業ができる「協働」ロボット。産業用ロボットの導入が難しかった中小企業や食品市場の開拓を目指している」、なかなか興味深い進化で、今後の発展が楽しみだ。
タグ:ロボット 東洋経済オンライン 稲葉清右衛門 東洋経済Plus (その3)(パナソニック「配送ロボット」は実用化できるか 神奈川県藤沢市で実験 21年度の収益化目指す、実質創業者の稲葉清右衛門が築いた利益の源泉 ファナックが50年守る「黄色い経営哲学」のすごみ、利益率の底打ちに向け「白いロボット」も登場? ファナック「26年ぶり低成績」から期す逆襲のカギ) 「パナソニック「配送ロボット」は実用化できるか 神奈川県藤沢市で実験、21年度の収益化目指す」 スマートシティー「フジサワサスティナブルスマートタウン」(藤沢SST) 最大速度は歩く速さと同じ 「基本的に自動運転であるが、道路を横断する際や路上駐車中の自動車などをよける際は、監視センターにいる担当者が遠隔操作」、「どのように自動運転のサービスが運用されるか蓄積を続けている」、まだ「データ」「蓄積」の段階のようだ。 継続課金のビジネスモデルを目指す 「法改正に向け、同社も積極的に関係省庁との意見交換を行っている」、「同社」の思うような方向になるかは不明のようだ 今後の「自動運転技術は配送サービスだけでなく、街中でのライドシェアサービスにも活用されうる」、展開を注目したい 「実質創業者の稲葉清右衛門が築いた利益の源泉 ファナックが50年守る「黄色い経営哲学」のすごみ」 著書『黄色いロボット』 「黄色を「戦いの色」」、としたとは初めて知った 原価への強いこだわり 「研究員は、この目標原価内で商品を製造できるように、製造システムまで考えて設計をしなければならない」、「原価」の縛りはかなり強いようだ 「機械技術者としてNC装置の開発に邁進してきた稲葉氏は、この赤字対策の経験で、企業経営における管理部門の重要性を認識した」、「赤字対策の経験」を「企業経営」に活かしたのは大したものだ 「絶対に借りない主義」については、異論もあるが、「売り上げが3分の1に減っても利益がでる企業体質」づくりに努めたとはさすがだ。 「利益率の底打ちに向け「白いロボット」も登場? ファナック「26年ぶり低成績」から期す逆襲のカギ」 かつての超優良企業が復活の兆しを見せている 海外で需要が回復局面に 消え去ったスマホ特需 「スマホ向けの小型加工機が市場に浸透したため」「スマホ特需」も「消え去った」のは構造的変化のようだ 積極投資で膨らんだ償却費 「ソフト開発を強化」は時代の流れなのだろう 「EV化」などでの「設備投資」の変化は「ロボットを使う要素が増える可能性がある」、「ロボット」メーカーの強味のようだ カギ握る「白いロボット」と効率化 「CRXは、きゃしゃなボディが特徴で、安全柵を必要とせず、人間と同じ空間で作業ができる「協働」ロボット。産業用ロボットの導入が難しかった中小企業や食品市場の開拓を目指している」、なかなか興味深い進化で、今後の発展が楽しみだ
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電気自動車(EV)(その8)(「電動化≠EV化」豊田社長が隠さなかった憤り 国内の新車販売に占める電動車割合は3割超、「脱ガソリン車」でトヨタショックを招かないための現実的な議論とは、「EV化に懸念」トヨタ自動車の「水素・FCVへのこだわり」が「戦略的間違い」と考えるこれだけの理由) [イノベーション]

電気自動車(EV)については、昨年5月8日に取上げた。今日は、(その8)(「電動化≠EV化」豊田社長が隠さなかった憤り 国内の新車販売に占める電動車割合は3割超、「脱ガソリン車」でトヨタショックを招かないための現実的な議論とは、「EV化に懸念」トヨタ自動車の「水素・FCVへのこだわり」が「戦略的間違い」と考えるこれだけの理由)である。

先ずは、昨年12月25日付け東洋経済オンライン「電動化≠EV化」豊田社長が隠さなかった憤り 国内の新車販売に占める電動車割合は3割超」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/399328
・『「ガソリン車さえなくせばいいんだ、と言った(短絡的な)報道がなされている」「自動車業界では一貫して『電動化』という用語を用いてきたが、メディア報道では『EV化』になる」「日本は電動化に遅れているとか異様な書かれ方をされているが、実際は違う」 国内自動車産業の業界団体である日本自動車工業会(自工会)が12月17日にオンライン方式で開催した記者懇談会。会長を務めるトヨタ自動車の豊田章男社長は、一連の報道に関して、参加した記者たちに苦言を呈した。 10月に菅義偉首相が所信表明の中で、「2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする“カーボン・ニュートラル“を実現する」と言及。12月に入ると、そのための手段として、政府が2030年半ばまでに国内新車販売の全てを電動車にする方向で検討を進めていることが明らかになった。 そうしたタイミングでの開催となった懇談会で豊田社長は、日本のエネルギー政策を含めた冷静な議論を呼びかけると同時に、「ガソリン車廃止」を書き立てるメディアに強い苛立ちを隠さなかった』、「HV]で一大地歩を築いた「トヨタ「にとっては、「「ガソリン車廃止」を書き立てるメディアに強い苛立ちを隠さなかった」、というのは理解できる。
・『電動化は「HV」が当面の現実解  豊田社長が指摘するように、「電動化= EV(電気自動車)化」とは限らない。エンジンと電気モーターを組み合わせたハイブリッド車(HV)も電動化に含まれ、CO2削減に向けた有効な手段だ。 すでに日本ではHVが広く浸透し、2019年国内で売れた乗用車の新車(全体で430万台)のうち、147万台がHVだった。これにまだ少ないながらEVやFCV(燃料電池車)を足すと、新車販売に占める電動化率は35%に上り、世界を見渡してもノルウェーに次いで高い。 アメリカのカリフォルニア州が2020年9月、ガソリン車の新車販売を2035年までに禁止し、走行中にCO2を排出しないゼロエミッション車(ZEV)への切り替えを求める知事令を出すなど、「ガソリン車禁止」の動きが世界的に加速している。が、ZEVがすぐに普及するほど、話は単純ではない。 足元を見る限り、EVはまだ世界の新車販売のわずか2%に過ぎない。株式市場で一躍脚光を浴びた新興EVメーカーのテスラにしても、その販売台数はまだ年間50万台に届くかどうかだ。充電インフラの整備や航続距離、車両価格の高さがネックとなり、EVの普及にはまだ時間がかかる。 その点、エンジンのパワーを発電にも活用するHVは充電インフラを必要とせず、EVより車両価格が安価で経済合理性も高い。こうした点から、本格的なEV時代到来までの電動車のメインストリームを担う技術と見なされている。米系コンサルティング会社のアーサー・ディ・リトル・ジャパンの予測によれば、世界新車市場に占めるHVの構成比は現在の5%から2030年には36%にまで高まる見通しだ』、「カリフォルニア州」も「ZEV」に「HV」は含まれていない。この記事が「トヨタ」に忖度し過ぎているようだ。

次に、12月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「「脱ガソリン車」でトヨタショックを招かないための現実的な議論とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/258118
・『風雲急を告げる自動車業界 軽自動車まで「脱ガソリン」の対象に  2020年は新型コロナに終始した1年でした。私たちは第三波が拡大する中での年末年始を迎えることになりますが、残念ながらコロナの早期収束は難しそうです。その理由は自然の摂理として、冬の間はウイルスの実効再生産数が「1」を超えるからです。 今年7月に発刊した『日本経済予言の書』で、私は新型コロナの影響を予測しましたが、書籍の中で述べているとおり、経済についてのコロナショックが本格的に到来するのは2021年、つまり来年です。この冬から、日本経済は再び我慢の半年間を迎えることになるのです。 ただ、コロナはいずれワクチンと治療薬ができれば収束します。その観点で2021年以降の日本経済に本当の意味で大きな影響を与えるのは、菅政権が打ち出した「自動車業界の脱炭素化」です。2050年までに温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする目標を掲げ、2030年代半ばまでに国内の新車販売をすべてガソリンから電気に切り替えるというのです。 経済産業省の発表をそのまま報道するメディアに対して、トヨタ自動車の豊田章男社長は強烈なアピールを行いました。「国家のエネルギー政策の大変革なしに達成は難しい」と国に覚悟を求める一方で、「電動化=EV(電気自動車)ではない。電動化にはハイブリッド車も含まれることを正しく報道してほしい」とメディアにも苦言を呈しています。 実は『日本経済予言の書』で取り上げている2020年代を通じた日本経済最大のショックが、「トヨタショック」です。自動車業界の中でトヨタが凋落し、それに伴って日本の自動車産業そのものが衰退する可能性が高い、というものです。本書ではそうならないシナリオも提示しましたが、脱炭素と自動化について業界内で調整と先送りを繰り返せば、トヨタショックは確実に起きるはずです。 象徴的な小競り合いとして、先進国の中で日本は唯一、電気とガソリンを併用するハイブリッド車を廃止しない方針を表明しています。一方で、これも象徴的なことですが、日本が誇るガラパゴス商品である軽自動車については、電動化を推進する方針だと報道されました。実はこのハイブリッド車と軽自動車という2つの論点は、日本の産業や雇用を守る際の重要な防衛線なのですが、現時点でその1つが守られ、もう1つが変革されつつあるという状況なのです。 このように急展開を見せる脱炭素の流れは、2021年にどう動いていくのでしょうか。根本的なグローバルなトレンドから、行く末を確認してみたいと思います。) まず、この問題の根幹にあるのは、「このまま地球温暖化が進むと地球に人が住めなくなる」という危機感です。20年くらい前までは、こうしたメッセージは警告程度に受け取られていましたが、温室効果ガスの排出状況はその後、当時の予測通りに悪化していきます。そして地球温暖化により、近年では毎年のように過去に例のない巨大台風や豪雨がやってくるようになりました。温室効果ガスは、庶民の生活にも実害を与え始めています。 そして、実はこのままのペースで進むと、2100年には地球は今のように人類が住める場所ではなくなることがわかっています。それを食い止めるための指針が「2度目標」というもので、地球の平均気温を産業革命以前と比較して2度以内の上昇に抑えなければいけません。この2度は、「これを超えたらもう元には戻れない科学的な相転移点」だと認識されている、ぎりぎりの基準です。 ところが、その目標を定めたパリ協定からアメリカが離脱してしまいます。トランプ政権が誕生して、エネルギー業界からの献金が多い共和党が権力を握った直後から、この動きが表面化しました。こうして、脱炭素の流れは混沌としていきます。その間も、大気に占める二酸化炭素の量は年々増加を辿り、現状、このままでいくと2030年に地球の平均気温は1.5度上昇することが確実だと言われています』、「地球の平均気温を産業革命以前と比較して2度以内の上昇に抑えなければいけません。この2度は、「これを超えたらもう元には戻れない科学的な相転移点」だと認識されている、ぎりぎりの基準」、とはなおざりに出来ない数字だ。
・『バイデン政権誕生で状況が一変 「脱炭素」へ舵をきった菅政権  こうした流れが急に変わったのが、民主党のバイデン新大統領の誕生です。もともと政策としては脱炭素を強調していたこともあり、来年の正式就任後にはアメリカのパリ協定復帰は確実だと思われます。 脱炭素というと、産油国の影響力が重要です。世界の原油の3分の1はサウジアラビアやイラク、リビアなどの中東から北アフリカにかけてのイスラム諸国が、鍵を握っています。歴史的には、これら中東の産油国がオイルパワーを握っていました。 しかし21世紀に入り、同じ世界の3分の1の原油生産を3つの大国が握るようになります。アメリカ、ロシア、中国です。中でもアメリカは世界の6分の1の原油を生産しているので、炭素に関する影響力は世界で一番大きい。 これまでの脱炭素の動きは、こうした「炭素利権」から距離がある欧州がけん引するイメージが強かったものです。欧州といっても、イギリスとオランダは中東に利権を持っているわけですが、それでもドイツ、フランスなどの多数派は「石油利権よりも地球の方が大切だ」という立場です。そこに深刻な大気汚染に悩む中国が賛成する一方で、アメリカとロシアは脱炭素にはそれほど力を入れていない――。これが2020年までの世界の勢力図でした。 豊田章男社長が指摘するとおり、本当の意味で脱炭素というならば、日本の電力や製鉄などの業界も脱炭素をしなければいけません。欧州諸国と違い、日本とアメリカはこの点でも世界から後れていました。 それが一転して、2021年からアメリカも脱炭素陣営に本格的に加わることになる。その動きを察知した日本政府も、菅政権誕生と共に一気に脱炭素へ舵を切ることになった。これが今月、突如として起きた「脱炭素騒動」の背景です。 つまり政治としては、世界と足並みを揃えて2050年までのカーボンニュートラル実現に向けた動きを見せる必要があります。その象徴的な政策として、こちらも足並みを揃えて、2035年を目標に、ガソリン車の販売を中止しなければいけないというわけです。こうした世界の動きは以前からわかっていたことですが、ようやく日本政府がそれを公認したということです』、「欧州諸国と違い、日本とアメリカはこの点でも世界から後れていました。 それが一転して、2021年からアメリカも脱炭素陣営に本格的に加わることになる。その動きを察知した日本政府も、菅政権誕生と共に一気に脱炭素へ舵を切ることになった。これが今月、突如として起きた「脱炭素騒動」の背景」、「こうした世界の動きは以前からわかっていたことですが、ようやく日本政府がそれを公認したということです」、トランプが勝利していたら、「日本政府」も「アメリカ」の影に隠れているつもりだったのだろう。
・『日本の自動車業界にとって非常に不都合な問題とは  しかし、この世界の動きは日本にとって非常に不都合な問題を1つ含んでいます。それが雇用です。 ガソリン車は、非常に多くの部品によって組み立てられる機械製品です。ですから完成品メーカーの下に一次、二次、三次のサプライヤーがピラミッドのように存在しており、それぞれが担当する自動車部品を製造しています。合計すれば、自動車産業は日本全体の4%にあたる242万人もの雇用を支えています。 ところが、世の中が電気自動車に代わってしまえば、必要となる部品の点数は激減します。そうなると多くの部品メーカーが立ち行かなくなり、雇用も失われます。 この不安に関して、そうならないために役立つのが「ガラパゴス技術」です。その1つがハイブリッド車であり、もう1つが軽自動車。この2つが生き残れば、自動車産業の雇用も維持できます。 先に世界の潮流を言えば、欧州諸国が定義するゼロエミッション車には、ハイブリッド車もプラグインハイブリッド車も含まれません。今年9月、アメリカのカルフォルニア州でも、「2035年までに州内で販売するすべての車両をゼロエミッション車にする」と発表しましたが、現時点での定義では日本と同様に、ハイブリッド車は除外されています。 ここで、豊田章男社長の猛烈なアピールの意味がわかってきます。日本でこれまで共通認識とされてきた「ハイブリッド車はガソリン車ではない」という決定を、世界基準に合わせずにこのまま変えないでほしい、という意味なのです。 一方で、トランプ大統領の選挙敗退で世界の潮目が変わったことを、一番理解しているのが官邸です。これまで傘になってくれていたアメリカが脱炭素に動けば、日本も追随せざるを得ない。そのため、「軽自動車も電動化目標に含まれる」という方針を、自動車工業会に対する返答の中で、急遽はっきりと打ち出しました。 つまり、後先を考えるのはこれからで、自動車メーカーにはまずは技術革新に伴う再編が起きる未来を覚悟してほしい、と言っているわけです。いずれ世界全体は電気自動車が主流になる。そうなれば、自然と電池の価格も下がるし性能も上がる。2035年までには実は電気自動車の方が高性能で安くなる可能性が高くなるだろう、という読みがあります』、「「軽自動車も電動化目標に含まれる」という方針を、自動車工業会に対する返答の中で、急遽はっきりと打ち出しました」、「自動車メーカーにはまずは技術革新に伴う再編が起きる未来を覚悟してほしい、と言っているわけです」、日本の「自動車メーカー」も太平の眠りを呼び覚まされたようだ。
・『自動車の勢力図が塗り替わる? 国家が真に踏み込むべきこと  とはいえ、エンジン性能で差が出せなくなると、メーカー間の競争障壁が消滅します。テレビメーカーの序列がブラウン管時代と液晶時代でがらりと変わったように、自動車メーカーの顔触れが世界的に変わる競争が起きる可能性があります。 今、テレビの世界市場シェアはサムスン、LG電子(以上韓国)、TCL、ハイセンス(以上中国)、ソニーがトップ5となっています。自動車業界も、世界レベルでこれと同じ再編が起きることが懸念されています。 雇用と産業に責任を持つトヨタが、ハイブリッド車をテコにして世界の流れに竿を指す意図はわからないでもないですが、一方で世界の流れは、人類存続の願いに基づいた巨大な流れでもあります。むしろ豊田章男社長が指摘したもう1つの主張、つまり国家がエネルギー政策の大変革に踏み込んで対応すべき問題だ、という点の方が重要です。 企業のトップは生き残りを、国のトップは脱炭素化の道筋をそれぞれ追いかけることに専念できる、2021年がそのような転換点の年になってくれたらいいと私は思います』、「自動車は電気製品と違って「擦り合わせ」技術が求められると別格扱いだったが、ガソリン・エンジンがモーターに代わってしまうと、「擦り合わせ」技術など不要になってしまうのかも知れない。

第三に、本年1月6日付けエコノミストOnlie「「EV化に懸念」トヨタ自動車の「水素・FCVへのこだわり」が「戦略的間違い」と考えるこれだけの理由」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210105/se1/00m/020/088000d
・『2020年12月3日、自動車業界に大きなニュースが流れた。 日本でも2035年までにガソリン車の新車販売を禁止するというのだ。 政府は先に、「2050年までにCO2などの温室効果ガスの排出を実質ゼロとする」という目標を発表していたが、その実現に向けた具体策の一つを示した格好だ。 とはいえ、「周回遅れ」の感が強い日本。 筆者ら、長年「EV革命」を注視してきた専門家にとっては「今ごろ?」という感じは否めないが、世紀の自動車大革命にようやく日本も参加することになったことは歓迎したい』、「周回遅れ」で「遅きに失した」感はあるが、まずまずだ。
・『HVとFCVに頼るトヨタは「まだ外野席」  トヨタは政府の動きに呼応するように、新しい電動車戦略を発表している。 2030年に販売する新車の50%以上を電動車とし、そのうち10%以上をEVやFCVにするという。 しかし、政府・トヨタとも考え方が非常に甘いのではないか。 第1の問題は、「電動車」にHV、PHV、FCVを含んでいることだ。 世界が純粋電気自動車(EV)の普及を目指す中で、戦略の後進性は否めない。 まず、HVはすでにエコカーとしては通用しなくなりつつある。 HVはエンジンとモーターを併用するが、肝心のエネルギー源は100%ガソリンだ。 つまり、「(多少)燃費の良いガソリン車」でしかない。 そのため、世界では、HVも禁止するところが多く、また、短期的には許可しても中長期的にはダメになることは間違いない。 PHVはHVより少しは長く使われるだろうが、ガソリンを使うのだから最終的には不可だ。 次に、トヨタ特有の問題として水素燃料電池車(FCV)がある。 筆者は水素技術を「亡国の技術」と呼び、テスラのイーロン・マスクCEOは「燃料電池はバカ電池」と切り捨てる。 つまり、開発に金がかかるわりに、本格的に普及する可能性は非常に低いということだ。 日本では、いまだに、「水素は無尽蔵にあるエネルギー資源」などという勘違いが横行している。 しかし、無尽蔵にあるのは水(H2O)であり、水素(H2)を得るためには電気分解によって酸素(O2)を分離しなければならず、この時に膨大なエネルギーを消費する。 さらに、得られた水素はそのままでは密度が薄すぎて使えない。 トヨタの場合は700気圧に圧縮してタンクに入れるのだが、ここでも100キロ走れる程度の大きなエネルギーを消費する。 最後に、取得した水素を空気中の酸素と再結合させて電気を得て走るわけだが、ここでも40%程度のエネルギーを失う。 つまり、FCVでは元の電気エネルギーの半分以上を捨てることになる。 対するバッテリー車の場合は、充放電合わせても損失は10%程度でしかないのだから、勝敗は明らかだ。 マスク氏の言葉に付言するなら「燃料電池はバカ電池、使えば使うほど損をする」ということになる。 トヨタはFCVのメリットとして航続距離の長さとエネルギー補充の時間の短さを挙げているが、これも時代遅れの発想だ。 航続距離でもバッテリー車には、テスラ「モデルS」など、実測で500キロを超える車はざらにあり、小型車でも300キロ超が常識になっている。 FCVのエネルギー補充時間も実のところ短くはない。 確かに、水素充填時間は5分程度だ。 しかし、水素ステーションが日本中に百数十カ所しかないので、多くの場所で、「最寄り」のステーションまで往復で数時間かかるのが現状である。 しかも、往復して自宅に戻ってきたら、燃料の半分を消費しているという具合だから話にならない。 この水素ステーションを2025年までに320カ所に増やすという計画があるようだが、1カ所の建設に5億円もかかるのでは、はかどるはずはない。 しかも、仮に320カ所が実現したとしても、この程度では「焼け石に霧吹き」ぐらいの効果しかない。 電動車への移行に関して「全方位戦略」を採るトヨタは、単に先を読めていないということでしかないように見える。 トヨタは、全個体電池で世界トップを目指している。 これが完成したら、EVの優位はゆるぎないものになり、FCVのメリットが消滅することは分かっているはず。 そろそろ、EVに集中しないと、「新ゴールドラッシュ」に乗り遅れてしまう』、「FCVでは元の電気エネルギーの半分以上を捨てることになる。 対するバッテリー車の場合は、充放電合わせても損失は10%程度でしかないのだから、勝敗は明らかだ。 マスク氏の言葉に付言するなら「燃料電池はバカ電池、使えば使うほど損をする」ということになる」、FCVの効率がここまで悪いとは初めて知った。「燃料電池はバカ電池」との「マスク氏の言葉」は言い得て妙だ。
タグ:東洋経済オンライン 電気自動車 鈴木貴博 ダイヤモンド・オンライン (EV) (その8)(「電動化≠EV化」豊田社長が隠さなかった憤り 国内の新車販売に占める電動車割合は3割超、「脱ガソリン車」でトヨタショックを招かないための現実的な議論とは、「EV化に懸念」トヨタ自動車の「水素・FCVへのこだわり」が「戦略的間違い」と考えるこれだけの理由) 「電動化≠EV化」豊田社長が隠さなかった憤り 国内の新車販売に占める電動車割合は3割超」 「HV]で一大地歩を築いた「トヨタ「にとっては、「「ガソリン車廃止」を書き立てるメディアに強い苛立ちを隠さなかった」、というのは理解できる 電動化は「HV」が当面の現実解 「カリフォルニア州」も「ZEV」に「HV」は含まれていない。この記事が「トヨタ」に忖度し過ぎているようだ。 「「脱ガソリン車」でトヨタショックを招かないための現実的な議論とは」 風雲急を告げる自動車業界 軽自動車まで「脱ガソリン」の対象に 「地球の平均気温を産業革命以前と比較して2度以内の上昇に抑えなければいけません。この2度は、「これを超えたらもう元には戻れない科学的な相転移点」だと認識されている、ぎりぎりの基準」、とはなおざりに出来ない数字だ バイデン政権誕生で状況が一変 「脱炭素」へ舵をきった菅政権 欧州諸国と違い、日本とアメリカはこの点でも世界から後れていました。 それが一転して、2021年からアメリカも脱炭素陣営に本格的に加わることになる。その動きを察知した日本政府も、菅政権誕生と共に一気に脱炭素へ舵を切ることになった。これが今月、突如として起きた「脱炭素騒動」の背景」、「こうした世界の動きは以前からわかっていたことですが、ようやく日本政府がそれを公認したということです トランプが勝利していたら、「日本政府」も「アメリカ」の影に隠れているつもりだったのだろう 日本の自動車業界にとって非常に不都合な問題とは 「「軽自動車も電動化目標に含まれる」という方針を、自動車工業会に対する返答の中で、急遽はっきりと打ち出しました」 「自動車メーカーにはまずは技術革新に伴う再編が起きる未来を覚悟してほしい、と言っているわけです」 自動車の勢力図が塗り替わる? 国家が真に踏み込むべきこと 自動車は電気製品と違って「擦り合わせ」技術が求められると別格扱いだったが、ガソリン・エンジンがモーターに代わってしまうと、「擦り合わせ」技術など不要になってしまうのかも知れない エコノミストOnlie 「「EV化に懸念」トヨタ自動車の「水素・FCVへのこだわり」が「戦略的間違い」と考えるこれだけの理由」 HVとFCVに頼るトヨタは「まだ外野席」 FCVでは元の電気エネルギーの半分以上を捨てることになる。 対するバッテリー車の場合は、充放電合わせても損失は10%程度でしかないのだから、勝敗は明らかだ。 マスク氏の言葉に付言するなら「燃料電池はバカ電池、使えば使うほど損をする」ということになる FCVの効率がここまで悪いとは初めて知った。「燃料電池はバカ電池」との「マスク氏の言葉」は言い得て妙だ
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人工知能(AI)(その10)(AIに読解力があると思う人に知ってほしい現実 学生の新常識は「シンギュラリティ=黒歴史」だ、茂木健一郎の「人工知能は人間の仕事を奪うのか」に対する答え 脳科学者・茂木健一郎氏インタビュー、次なるAIのブレークスルーは言語分野で起きる 「GPT-3」が示すイノベーションの新潮流) [イノベーション]

人工知能(AI)については、8月1日に取上げた。今日は、(その10)(AIに読解力があると思う人に知ってほしい現実 学生の新常識は「シンギュラリティ=黒歴史」だ、茂木健一郎の「人工知能は人間の仕事を奪うのか」に対する答え 脳科学者・茂木健一郎氏インタビュー、次なるAIのブレークスルーは言語分野で起きる 「GPT-3」が示すイノベーションの新潮流)である。

先ずは、5月25日付け東洋経済オンラインが掲載した国立情報学研究所教授で 数学者の新井 紀子氏による「AIに読解力があると思う人に知ってほしい現実 学生の新常識は「シンギュラリティ=黒歴史」だ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/370228
・『「AI(人工知能)が進化して人類を支配する」「AIが人の知能を超える『シンギュラリティ』が2030年に到来する」といった誤解に対して、警鐘を鳴らしてきた新井紀子氏。 2018年に刊行した著書『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』でも、AIの可能性と限界を明らかにしてきた。ただ、2018年当時、大学院生に対しても「AIの限界」を理解させることは困難だったという。一方、最近になって大学院生たちは「AIの限界」をすんなりと理解し始めた。学生たちにどのような変化があったのだろうか』、興味深そうだ。
・『シンギュラリティ神話が信じられていた2018年  私が所属している国立情報学研究所は研究機関である。一方で、総合研究大学院大学という大学院に特化した教育機関の一翼も担っている。不肖この私も一大学教員として教壇に立つことがある。といっても、今年はコロナ禍のせいですべての講義はオンラインだが。 この春受け持ったのは「メディア概論」。画像処理、音声処理、音声合成といった人工知能技術について、10人を超える研究者が自らの属する専門領域の理論や技術動向を紹介するオムニバス講義だった。 この講義は毎年開講され、人工知能技術を本格的に学び始める大学院生へのイントロダクションとして位置付けられている。私は、自らが率いた「ロボットは東大に入れるか(東ロボ)」と呼ばれる人工知能プロジェクトを紹介しつつ、深層学習(ディープラーニング)が代表する第三次AIブームを牽引した大規模データを用いた統計的手法の可能性とその限界について、例を引きながら解説することにしている。 2018年まで、学生に統計的手法の限界を理解させることは極めて困難だった。メディアやSNSにはシンギュラリティの言葉が躍っており、彼らがフォローするような「エヴァンジェリスト」や「フューチャリスト」、あるいは大学教員でさえ真面目に2030年のシンギュラリティ到来を熱っぽく議論していた。政府の白書ですらシンギュラリティに言及した。 学生たちがその言葉を信じ込まないほうがおかしい。AIがなぜ間違えざるをえないかを、どんなに理論的かつ具体例を挙げて解説しても、学生は「もっとデータがリッチになり、深層学習技術が進化すれば乗り越えられる課題だ」とコメントシートに書いて寄こした。) そうした傾向は、学部からすぐに大学院に入学した日本人学生にとどまらなかった。総合研究大学院大学の学生には、留学生や社会人学生も多い。シンギュラリティを信じる学生はどの層にも同じように分布している印象だった。 ところが、だ。今年、講義をしてみて驚いた。どれほどデータを集めても、AIが「笑っちゃうような誤り」を犯し続けることを、学生たちは当然のこととして受けとめた。講義の中で「シンギュラリティ」に言及したところ、画面の向こうから笑いが漏れた。私が力説しなくても、AI技術を学ぶ平均的な学生にとって、シンギュラリティブームは「過去のあだ花」、悪くすれば「黒歴史」に変わっていたのである。 たった1、2年の間に生じたこの差は、いったい何なのだろう。 2つのことが考えられるだろう。1つは、「人工知能搭載」がうたわれた商品やサービスが溢れ、身近な存在になったことだ。私にとって、2016年は東ロボがMARCH・関関同立の一部の学部に合格可能性80%以上を達成し、東大模試の数学で偏差値76.2を叩き出した年だ。と同時に、Google翻訳にニューラルネットワークが導入され、品質が格段に向上した年でもある。 2016年に大学に入学した学生たちは当然Google翻訳の恩恵を被って学生生活を送ったことだろう。その過程で、信じがたい誤訳を多数目撃したに違いない。 Googleフォトも多くの若者にとって欠かせないツールとなった。日々ありとあらゆるものをスマートフォンで撮る彼らにとって、画像の検索や自動分類はマストアイテムだ。AIに懐疑的な私でさえ、人の顔をほぼミスなく自動分類する機能には驚嘆した。「パリの写真」といえば、パリで撮った写真だけを集めてアルバムを作ってくれる(位置情報も使うのかもしれない)。 だが、「ラーメン」で検索すると、なぜかゆで卵の写真が表示されるし、思い出の「カフェ」の写真を探したくても、ヒットしない。結局のところ、手で分類する以外ないんだな、と私たちは悟らざるをえなかった。期待に胸弾ませて購入したAIスピーカーの「がっかり感」を通じて、AIと「自然な会話」を期待するほうがおかしいという認識が共有された。 いまや、YouTubeではスマートフォンに搭載されている互いのSiriを使って無意味な会話をさせるお笑い芸が流行っている。スマート〇〇と呼ばれるAI搭載家電を使いこなす若者であればあるほど、「いつかAIがマンガや小説を書くのではないか」という期待や怯えを抱かなくなった。否、そもそも、そういう関心の持ち方自体が「古く」なった』、「シンギュラリティブームは「過去のあだ花」、悪くすれば「黒歴史」に変わっていた」、これほど短い命だったとは驚きだ。「AIスピーカー」も確かに「がっかり感」満載だった。
・『AI技術が学部生にも身近な技術になった  それはある意味当然だろう。「電子レンジが自分で調理してくれる日」の到来を期待する主婦/主夫はいない。電子レンジが普及し、一般人がそれを使いこなせば使いこなすほど、そうなる。今の技術限界を前提として「どう使いこなすか」をハックすることこそが関心の的になる。 もう1つは、AI技術がGAFAのような巨大テック企業に占有されている秘儀ではなく、学部生にも手が届く技術として普及したことによる影響だろう。 とくに、Googleが公開した自然言語処理技術であるBERTが果たした役割は大きい。学部の頃からネット上で公開されているビッグデータを使ってプログラミング言語Pythonの演習を経験した学生にとって、もはや深層学習は「深く」もないし、ニューラルネットワークは「脳を模した」ものでもない。データを10万以上そろえないことには、まともに動かないタイプの、1つのアルゴリズムにすぎなくなった。) 学生たちの目下の悩みは、AI技術なるものを追い求めた先に、何らかの答えなり達成感はあるのか、ということである。世界中の研究者が、公開されているベンチマーク(同一課題に対する複数のAIシステムの性能評価、比較を行うためのデータセット)を使って、0.1%単位で精度を競い合っている。 何千人もがターゲットにしている有名なベンチマークで「勝つ」ことは、普通の学生や研究者には難しい。マイナーで手ごろなベンチマークを見つけて、成果を国際会議に通すべく準備する。何週間もラボに泊まり込んでようやく他のAIの性能を上回ったと思って論文を書き始める。だが、書き終わる頃にはすでに誰かに抜かれている。 しかも、機械学習以前のアルゴリズムと違って、数十万単位のデータで学習する最近の統計的機械学習は、精度が出ても出なくても、その理由がわからない。「この教師データ(AIを訓練するための正解付きデータ)が悪さをしている」ことを突き止めようとする研究も進んではいるが、完全ではない』、確かに「数十万単位のデータで学習する最近の統計的機械学習は、精度が出ても出なくても、その理由がわからない」、のは致命的欠陥だ。
・『「東ロボ」、英語大躍進の理由  東ロボもまったく同じ経験をした。2019年、東ロボ英語チームは、同年1月に実施されたセンター入試英語(筆記)において、200点満点中185点を獲得したことを発表した。過去のセンター入試でも安定して90%の正答率を出している。前年まで100~120点しか取れていなかったことを思うと大躍進である。 185点という点数を目にしてふと思い出した。2013年にセンター模試に初めて挑戦したときに、代ゼミから講評を受けたときのことだ。「センター英語で9割取れなければ東大は合格しないと思ってください」。 つまり、東ロボは2019年、ようやく東大入試の前提に立てたということかもしれない。けれども、残念ながら、東ロボは人間ではないので、センター英語で9割取れるようになったのだから、やがて「東大に入れる」という推論は無効だ。 一方で、英語を重視する私大文系学部の存在と、東ロボの英語、数学、世界史の実力を考え合わせると、早慶のどこかの学部には入れてもおかしくない、とは思った。 英語チームの躍進の主因は、BERTを凌ぐと言われるXLNetという自然言語処理技術だと解釈されることが多い。だが、そうまとめてしまっては、この現象の本質を掴み損ねる。BERTやXLNetは先行する深層学習に比べてモデルが複雑だ。まともに動かすためには、膨大な教師データが必要になる。 日本の入試問題や模試の問題は、多くても毎年百単位でしか増えていかない。だからこそ、これ以上複雑な深層学習のモデルを使っても、センター入試英語は攻略できないだろうと、私たちは2016年の段階で考えたのである。 しかし、その時の私たちは見落としていたことがあった。それは英語を第二言語として学ぶのは日本人だけではない、ということだ。世界中の国々のうち、英語を母語として育つ人以外の多くが英語を第二言語として学ぶ。 その中には人口13億を超す中国が含まれる。彼らは日本人以上に英語テスト漬けだった。カーネギーメロン大学の研究チームが中国の中高生向けの英語テスト問題、約10万点を集め、RACEという名前のデータセットとして公開した。 XLNetで学習させたところ、たちどころに150点台に点数が上がった。この結果は何を意味しているのだろう。 統計的アルゴリズムの観点から考えると、答えはシンプルだ。日本のセンター入試英語と中国で実施されている中高校生向けの英語テストが、機械の視点から見ると「とてもよく似ていた」のである(やってみなければわからないが、The New York TimesとかThe Timesの過去50年分の記事に出現する英語は、センター入試英語とは、だいぶ特徴が異なるだろう)。 さらに、英語チームが独自の学習をさせたところ、あっさりと185点をたたき出してしまった。 私は、自分でも2019年のセンター入試を解き、東ロボがどの問題に正答したのか確認した。最もショックを受けたのは、「不要文除去」と呼ばれる次のタイプの問題だった』、「「東ロボ」、英語大躍進」、大したものだ。
・『「東ロボ」、英語大躍進の理由  (2019年解答番号27) 【筆者訳】 「アメリカ合衆国を飛行機で横断する際、コンクリートで作られた巨大な矢印が地上にあるのを目にすることがあるかもしれない。今日では、これらの矢印は単に好奇心をそそるにすぎないが、かつては、アメリカの片側からもう片側に飛ぶパイロットにとっては不可欠なものだった。①この矢印が大変役に立ったため、大西洋上にも浮く矢印を設置してはどうかと提案する人さえいたほどだ。②パイロットたちはニューヨーク - サンフランシスコ間のフライトで矢印を目印として使った。③16キロごとにパイロットたちは鮮やかな黄色に塗られた21メートル長の矢印を通過することになる。④中央の回転灯と両端のライトのおかげで、矢印は夜間でもよく見えた。1940年代に矢印に替わるナビゲーション方式が導入され、矢印は今日では基本的には使われていない。ただし、モンタナ州の山沿いの地方を飛行するパイロットは、いまだにそれらのいくつかに頼っている。」 ③と④は必要だ。取り除くとしたら①か②。私は迷った。①は文脈からすると唐突だ。普通に考えれば①を除去すべきだろう。だが、②も怪しい。なぜなら「アメリカの片側からもう片側に飛ぶパイロットにとっては不可欠」という前文と重複するからだ。 同じような二文を重ねるのは、やぼったい。母校のイリノイ大学で受けた英文添削指導コースならば、きっとそう指摘されただろう。前文を「かつては、ニューヨーク - サンフランシスコ間のように、アメリカの片側からもう片側に飛ぶパイロットにとっては不可欠なものだった」と書くように、と。あれこれ悩んだ挙句②を選んだ。 だが、正解は①だった。東ロボはこの問題に正解した。なぜだ、なぜ正解がわかったんだ。あたかも「(意味を理解して)読解した」ようではないか。東ロボは過去5年分のセンター入試の不要文除去問題を100%正答した。 こういう素敵な手品には必ずタネがある。 英語チームにタネを明かしてもらって感心した。方法はこうだ。RACEから提供されている複数段落で構成される問題文を選び、ある段落の任意の箇所に、次の段落から選んだ任意の文を挿入する。そして、挿入された文を「文脈から外れた不要文だ」と学習させたのである。 同じ著者の手による、同じ文章の次の段落から余計な文を選んでくるのがミソだ。そうすれば、異なる著者の文の癖を誤って学習することがない。同じテーマなのに、ちょっとずれていることを巧く学習させられる。しかも、前段落の任意の場所に、後段落の任意の文を挿入することにより、教師データを爆発的に増やすことができる。 つまり、「①は唐突だな」という第一印象を信じればよかったのだ。同じような文を続けて二回書くのはやぼったい、などと余計なことを考えたのがいけなかった。XLNetが示したセンター英語の不要文除去の攻略法はシンプルだ。英文の巧拙は考えるな。少しでも唐突感のある文を選べ。 とにかく「東ロボ」はセンター英語で9割以上の正答率を安定して出せるようになった。ただ、あまりに突然100%近く正答するようになったため、いったい何が奏功したのか、よくわからなかった。センター入試英語がどのように作られているかは部外者には知る由もないが、先ほどの問題の出典元がどこかにあるのなら、同じ出典元から作られた別の問題がRACEに混じっていた可能性すら残る』、「ある段落の任意の箇所に、次の段落から選んだ任意の文を挿入する。そして、挿入された文を「文脈から外れた不要文だ」と学習させた」、とは巧みに工夫したものだ。
・『AIは意味を理解できない  こうして私たちの目の前には事実だけが残った。RACEとXLNetを使ったところ、いわゆる「長文読解」と呼ばれる問題群の正答率が一気に向上した。次の段落から一文取り出して、前の段落に挿入した文を不要文だ、と学習させたら、センター入試の過去の不要文除去問題は100%解けた。にもかかわらず、人間にとってより易しく見える会話文完成の精度はさほど上がらなかった。以上だ。なぜなのか、正直、わからない。 唯一言えることは、現在の技術の延長線上では、国語で同程度の結果に達することは想像できないということだろう。国語にとってRACEに替わるものは存在しないし、今後も存在しえないからだ。「日本語を母語として学ぶ人口」は、英語を第二言語として学ぶ人口の十分の一どころか、二十分の一未満だろう。しかも、その数は年々減っている。センター国語を作問するのと同様の真剣さと専門性で、類題を10万問作れる研究チームは世界中を探してもどこにも存在しない。 それ以前に、そもそもそんなデータセットを作るモチベーションを誰も持ちようもない。(なにしろ、その「国語」のテストには、現代中国語とは似て非なる「漢文」がなぜか含まれていて、その配点が全体の1/4を占めているのである! 東ロボの英語大躍進のタネ明かしを聞いた読者の多くは、「そんなものは読解ではない。単に一番可能性が高い選択肢を選ぶAIを作ったにすぎない」と不満に思ったことだろう。同感だ。 私は『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』から一貫して、否、東ロボプロジェクトをスタートしたときから、AIには意味がわからない、ただ、一番正しそうな選択肢を統計的に選ぶだけだと伝えてきた。だが、BERTやXLNetなど新手法が出るたびに、「今度こそAIは読解力を身に付けた」と主張する人が後を絶たなかった。 けれども、その喧噪もそろそろ終わることだろう。なにしろ、うちの大学院生が「AIが意味を理解しないのは当然のことだ」と言うようになったのだから』、「東ロボの英語大躍進のタネ明かしを聞いた読者の多くは、「そんなものは読解ではない。単に一番可能性が高い選択肢を選ぶAIを作ったにすぎない」と不満に思ったことだろう。同感だ。「なにしろ、うちの大学院生が「AIが意味を理解しないのは当然のことだ」と言うようになったのだから」、新井氏の自説が通るようになってきたようだ。

次に、7月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャーの茂木健一郎氏による「茂木健一郎の「人工知能は人間の仕事を奪うのか」に対する答え 脳科学者・茂木健一郎氏インタビュー」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/244039
・『なぜ私たちには意識があるのか?この問いについて、「クオリア」というワードを鍵に挑んできた脳科学者・茂木健一郎氏が、16年ぶりに「意識」「クオリア」とがっぷり四つに組んだ新著『クオリアと人工意識』(講談社現代新書)を出版した。なぜ今、長年の沈黙を破ったのか?茂木氏の真意に迫った(Qは聞き手の質問、Aは茂木氏の回答)』、「茂木氏」の久しぶりの出版とは興味深そうだ。
・『藤井聡太棋聖はAIと人間の共存のモデルケース  Q:新著、興味深く読みました。「意識」や「クオリア」そのものに真っ向から取り組んだ著作はここ16年間、ありませんでした。なぜ、いま筆を執ったのでしょうか。 A:一番大きな要因は、ここ数年の人工知能(AI)ブームです。僕自身かつて、数理物理学者ロジャー・ペンローズの本を読んで人工知能に興味を持ち、そこから脳科学の研究に入っていったんです。人工知能がきっかけだったんですね。 ここ十数年の間でも人工知能は相当、進展していて、「私たちの生活を根底から覆すかもしれない」「人間の仕事を人工知能が奪っていく」と言われている。僕は、人間と人工知能はうまく共存すべきだと思っていて、その道筋に、ある意味で“補助線”を引くつもりでこの本を書きました。 Q:その文脈でいうと、日本のビジネスシーンでもレイ・カーツワイルによって知られるようになった「シンギュラリティ(技術的特異点)」が話題になっています。「人工知能が人類の知能を超える」としばしば言われます。 ある部分で、それはそうだと思います。でも、人工知能に置き換えることのできる仕事とできない仕事が実際にはあるというか、現在の人工知能にも得意不得意があるんです。 人間の「知能」といっても、それが何なのか中立で正確な定義があるわけではない。「人工知能に」ではなく「人間に」こそ任せるべき仕事がある。その意味で大事なのが、人工知能との「共存」です。 僕は、史上最年少で将棋タイトルを獲得した藤井聡太棋聖は、共存のモデルケースだと思っています。彼は、人工知能を搭載した将棋ソフトで指し手の研究をしていますが、AIが導き出す“定跡”をも、ある意味で覆すのが藤井さんなんですね。 Q:藤井さんの師匠・杉本昌隆八段は、当初、AIの使用に待ったをかけたそうです。将棋ソフトに手軽に「答え」を求めるのではなく、思考力を研ぎ澄ませてほしかったと。藤井さんが小学生のときです。 A:彼は現在の人工知能のネイティブです。将棋の定跡の研究ももちろんするけれど、ゼロから考えて最善の手を導き出す鍛錬も徹底的にしている。 例えば、人工知能はコンセプトワークが不得意なんです。全体を統合するような発想が苦手で、それはAIの翻訳ソフトなんかを使っていても感じます。「GPT-3」という文章を自動生成するシステムがあって、それを動かしていると文章が何かおかしくなっていくんです。意味も通っていて、文法的にも正しい。でも、意図というか意味の焦点がぼやけてきて、「どこにもたどり着かない」という印象になっていく。 Q:それは、一つの人格的なものに言葉が統合されないからでしょうか。 A:人間って話したり物を書いたりするときに、方向性の設定や微妙な調整を行ったり、一言の「含意」の深さを捉えたりしているんです。そういったコンセプトに沿う・沿わせる思考は、人工知能が普通という時代になっても人間の付加価値であり続けると思います』、「人工知能はコンセプトワークが不得意なんです。全体を統合するような発想が苦手」、なるほど。
・『意識やクオリア、直感についていま語るべき理由  Q:あらゆる要素をパッケージにして、このコンセプトで「行く」ということが、まだ人工知能にはできないのですね。 そこに関わっているのが「意識」なんです。ペンローズがいうように、全体を統合して見るものが意識です。ですが、今の人工知能に意識があると考える人はまずいないでしょう。 もしも人間が、自分たちの似姿として人工知能をつくろうとするのなら、意識の問題は避けて通れません。現在の研究はその「意識」には手が出せないでいるんですね。ですので、新刊のタイトルは「人工知能」ではなく「人工意識」にしました。人工知能の可能性をきちんと引き受けつつ、ある意味で人工知能の限界を示すためにそうしました。 Q:茂木さんがライフワークのキーワードにしている「クオリア」もそこに関係してきますね。意識はクオリアに支えられています。 A:わたしたちが赤い色を見るときのあの「赤らしさ」、水にふれたときに腕を伝う流れの感触、冷たさ、バイオリンの音色、バラの香りなどの“質感”がクオリアです。 そのクオリアがどう生成されているのかがまだよく分かっていない。私が持つこの「私」という感じも、どうやって生じているのかが分からない。しかし人工知能の研究はこの問題に向き合う必要があります。 人工知能を人類にとってよりメリットのあるものにする上で、この問いに答えることは必須ですし、そもそも人工知能について考えることは、「知性とは何か」「意識とは何か」「私とは何か」「人間とは何か」といった問いを深めることにもつながります。人工知能がわれわれを映す“鏡”になるんです。 Q:ですが、人工知能がそこまで発展したときに、やはり私たちの生活や労働環境が変わって、仕事がなくなるのでは?と不安を抱く人もいます。 A:計算プロセスに落とせるものは人工知能にとって代替可能だと思います。ですが、計算プロセスに落とせないものもたくさんあります。それこそ仕事の現場から企業合併の判断まで、総合的な判断をしなければならない局面というものは多々あります。定型業務は人工知能が担えても、総合的で高度な判断は人間が担い続けるでしょう。人間の役目がなくなることはない。 先の藤井聡太さんの話でいえば、注目の指し手(棋聖戦第2局、後手3一銀)は、最強将棋ソフトが4億手を読んでも出なかったアウトプットです。6億手に拡大して、やっと候補の1つとして出た。藤井さんは当然、6億手を見渡した上で結論としてその手を指したわけではありません。そこには直感が働いています。その直感は、ある種「総合的」なものなんです』、「藤井聡太さん」の「注目の指し手」は、「最強将棋ソフトが4億手を読んでも出なかったアウトプットです。6億手に拡大して、やっと候補の1つとして出た」、それを「直観」でやる能力はさすがだ。
・『人工知能時代の学びの「あるべき形」とは  Q:人工知能がより浸透していくことで、仕事以外のさまざまな生活面にも影響が出そうです。 A:特に教育は、変わらないといけないと思います。教育改革は待ったなしです。かつて、産業革命によって機械が普及したときに、失業を恐れた人たちが機械や工場を破壊するラッダイト運動というものがありました。そのとき、一方で教育も大きく変わったんです。 Q:いわゆる「マニュアルを理解して働ける人を育てる」教育への変化ですね。 A:クイズ番組などに見られる「いかに早く正解を言うか」みたいな、正解を出すことを重視するやり方を変える必要がある。 2009~12年に、僕は「全国高等学校クイズ選手権」のメインパーソナリティーを務めました。出場者の中には、早押しクイズの練習をして当日に臨む人もいます。優勝候補になるチームは大抵、練習している。 その練習で大事なのが、実は「問いを作る能力」なんです。早押しクイズの練習って、そもそも大量の問題を用意しないとできないじゃないですか。だから自分たちで問題をつくる。しかもその問題は、マニアックすぎてもいけないし簡単すぎてもいけない。面白いと思われる問題をつくらなければならない。現在の人工知能は、そうした面白い問題はつくれないと思います。 Q:総合的な「面白さ」は人工知能に判断できないと。 A:人工知能時代に大事なのは、問いを設定する能力。正解を出すことよりも、です。これは聞いた話ですが、例えばアメリカの話でいうと、ある学校では「ヒップホップ調でラブレターを書きなさい」といった宿題が出たりするそうです。で、翌週には「そのラブレターへの返事をシェイクスピア風の格調高い文で書きなさい」と続く。そんな課題が中学生レベルで出されるんですね。 Q:中学生でシェイクスピアですか。日本の中学生だったら、まず読んでいないかもしれません。 A:これは僕の主観ですが、アメリカと日本のビジネスパーソンを比較して思いますけど、教養の差が圧倒的です。「シェイクスピア風で」というお題が中学で成立するくらい、向こうの人たちはさまざまなことを学んでいます。しかも「ヒップホップ調でラブレター」という課題に正解はない。宿題をやる子どもたちは、こうかな?こうかな?と仮説を立て、問いを立て、いろいろ試すんです。その過程で問いの設定力が増す。 社会が複雑化していけばいくほど正解が見当たらないことって増えていきますから、一朝一夕でできないことは承知の上で、教育を変えるべきだと折々に言っています。ビジネスの研修だって同じです。 Q:人の育み方から変えていく必要性、ですね。 A:いまアートがビジネスでも注目されていますが、アートはクオリアや意識への問いに近接していて影響がある。グローバルエリートはそういったものへの知見、人間というものへの洞察の大切さを知っているので美術館に行くんです。 しかも現代アートはコンセプト重視です。コンセプトを編み上げたものとして作品が生まれる。コンセプトワークでもある。そういったものに触れるという視点は、人工知能時代の人間の強みを生かす上で大事だと思いますね』、「人工知能時代に大事なのは、問いを設定する能力。正解を出すことよりも、です」、その通りだろう。「「シェイクスピア風で」というお題が中学で成立するくらい、向こうの人たちはさまざまなことを学んでいます」、日本の程度の低さにを改めて痛感させられる。「現代アートはコンセプト重視です・・・コンセプトワークでもある。そういったものに触れるという視点は、人工知能時代の人間の強みを生かす上で大事だと思いますね」、同感である。

第三に、11月19日付けダイヤモンド・ハーヴァード・ビジネス・レビュー「次なるAIのブレークスルーは言語分野で起きる 「GPT-3」が示すイノベーションの新潮流」を紹介しよう。
https://www.dhbr.net/articles/-/7225
・『デジタル技術導入がまずます加速する中、早期に対応した企業とそうでない企業の成長スピードには大きな違いが生じている。クラウドシステムを前提にした画期的なテクノロジーを取り入れ、現場で活用することができなければ、今後のイノベーションは望めない。なかでも注目すべきは、自然言語処理の領域における飛躍的な進歩だ。本稿では、オープンAIが開発した文章生成AI「GPT-3」を取り上げながら、これらの新技術がテクノロジー企業に限らず、人間の生産性と独創性を補強し、全社的なイノベーションをもたらす可能性について論じる。 ほとんどの企業が気づいているように、ライバルに対して競争力を持つためには、デジタル技術を果敢に導入することがますます不可欠になってきている。 我々の調査によると、デジタル技術を最も早い時期に導入した10%のアーリーアダプター企業は、最も遅く導入した25%の企業と比べた場合、2倍のペースで成長を遂げている。 また、それらの企業はデジタル技術の導入を推進するに当たり、レガシーシステムではなく、クラウドシステムを用いている場合が多いことも明らかになった。 それぞれの業界の先駆的な企業においては、向こう5年間でこの傾向がいっそう加速すると、我々は予測している。それとは対照的に、凡庸な企業や動きの遅い企業の多くは、今後どのくらいクラウドシステムのリソースが必要になるかをまったくと言ってよいほど理解していない。 最先端の自然言語処理(NLP)ツール「GPT-3」のような画期的なテクノロジーが生み出す次世代のインテリジェントアプリケーションの活用、推進、学習を行うためには、大々的にクラウドシステムに投資することが不可欠だ』、「デジタル技術を最も早い時期に導入した10%のアーリーアダプター企業は、最も遅く導入した25%の企業と比べた場合、2倍のペースで成長を遂げている」、日本には残念ながら「アーリーアダプター企業」はなさそうだ。
・『次なるAIの飛躍的前進は言語領域で  2010年代には、ウェブ上での高精度の画像検索や、医療関連の画像分析や製造・組み立て現場での欠陥品検出のためのコンピュータビジョンなど、視覚関連のテクノロジーが目覚ましい進歩を見せた。この点は、我々の著書で詳しく論じてきた通りだ。 そして、オープンAIが開発したGPT-3を見る限り、2020年代には言語関連の課題処理で飛躍的な進歩が起きそうに見える。 過去の言語処理モデルは、構文解析ルールの手動入力によるコーディングと、統計の手法を土台にしている。この10年ほどは次第に、人工ニューラルネットワークの活用も進んでいた。人工ニューラルネットワークは生データから学習することができ、日常的なデータラベリングと特徴量エンジニアリングの作業負担が既存の手法よりはるかに少なくて済む。 GPT(事前学習済み生成システム)は、このさらに上を行く。これはトランスフォーマー、すなわちテキスト内の言葉と言葉の文脈上の関係を学習するアテンション機構を用いるものだ。 GPT-3の非公開ベータ版へのアクセスを認められた研究者たちは、ショートストーリー、楽曲、プレスリリース、技術マニュアル、特定の作家の文体に準拠した文章、ギターの譜面、さらにはコンピュータのコードまで生み出すことができた。 GPT-3は、完璧なテクノロジーとはとうてい言えない。欠点はきわめて多い。たとえば、意味不明な反応やバイアスに毒された反応を生み出したり、些細な質問に不正確な回答をしたり、もっともらしいけれど誤ったコンテンツを生み出したりする。 オープンAIの上層部も、GPT-3への過剰な期待に釘を刺している。要するに、不十分な点がまだ非常に多い。それでも、大きな流れはもう変わらない。AIの新しいステージは、すぐそこまで来ているのだ。 GPT-3は、いま登場しつつある高度なトランスフォーマーの中の一つにすぎない。マイクロソフト、グーグル、アリババ、フェイスブックといった企業はすべて、独自のトランスフォーマーの開発に取り組んでいる。 これらのツールはクラウド上で学習を行い、クラウド上のアプリケーション・プログラミング・インターフェイス(API)を介してしか利用できない。次世代AIの能力を活用したい企業は、レガシーシステムではなく、GPT-3のようなクラウドのAIサービスにリソースを投入するように転換していくだろう』、「GPT(事前学習済み生成システム)は、このさらに上を行く。これはトランスフォーマー、すなわちテキスト内の言葉と言葉の文脈上の関係を学習するアテンション機構を用いるもの」、GPT(事前学習済み生成システム)は、このさらに上を行く。これはトランスフォーマー、すなわちテキスト内の言葉と言葉の文脈上の関係を学習するアテンション機構を用いるもの。
・『次世代アプリにより全社でのイノベーションが可能に  このようなクラウド上のAIサービスは、新しいタイプのエンタープライズアプリの開発に道を開くだろう。 それは、既存のアプリよりも「生成的」、つまり創造性が高いものだ。そのようなアプリにより、これまでより安価に、言葉や意図、情報をつくり出せるようになる。その結果、多くの企業活動の効率性が高まり、アーリーアダプター企業に匹敵するイノベーションと成長が加速する。 私たちが50以上のビジネス関連のGPT-3の概念実証(デモンストレーション)を分析したところ、未来の最先端のビジネスアプリは、少なくとも3つの創造的活動のカテゴリーに分類でき、すべてが言語理解に関係する。文章作成、コーディング、そして個々の分野固有の推論である。 いくつかの簡単な手掛かりに基づいて、場合によってはたった1つのセンテンスに基づいて、意味を成す文章を生成するGPT-3の能力は、時に薄気味悪く感じられることすらある。 たとえば、GPT-3の非公開ベータ版を試用した人物の一人は、それを使って、ビットコインに関する説得力あるブログを執筆した。我々が分析したデモンストレーションの中には、新しいポッドキャストをつくったり、メールや広告キャンペーンを作成したり、取締役会の運営方法を提案したり、既存の言語システムではうまく対応できないような問いに対して知的な返答をできたりするアプリも含まれていた。 GPT-3は、人間から与えられた手掛かりに基づいて、コーディングも行える。コンピュータやシステムへの指示を記述できるのだ。 それだけにとどまらず、自然言語をプログラミング言語に転換することもできる。具体的には、コンピュータに実行させたいこと(たとえば、社内向けのウェブサイトや顧客向けのウェブサイトを作成する)を、英語やスペイン語、ドイツ語といった自然言語で描写すると、AIがそのためのプログラムを書いてくれるのだ。 また、GPT-3は、特定の科学や技術の分野におけるコンテンツ、手順、知識について考えることができるので、ほかにも極めて有益な用途がありそうだ。たとえば、化学に関する問いにも答えられる。あるデモンストレーションでは、6つの燃焼反応のうちの5つを正確に言い当てた。 別のデモンストレーションでは、言葉による描写に基づいてグラフを自動生成することに成功している。これが実用化されれば、プレゼンの準備をする際などに、面倒な作業をかなり減らすことができる。ベータ版を使って、会計の専門知識を持たない人が財務諸表を作成するのを助けるボットをつくった人物もいる。 別の人物がつくったアプリは、意図的に難易度を高くした医学上の問いに正しく回答し、根底にある生物学的メカニズムを論じることができる。 具体的には、そのアプリに10歳の男の子の呼吸器に関する症状を示し、その子どもが閉塞性呼吸器疾患と診断されて、投薬治療を受けたという情報を与えた。そのうえで、「治療に使われた薬品はどの受容体に作用する可能性が高いと思うか」という問いに答えさせた。 すると、プログラムはこの問いに対して正しい回答を導き出し、その子どもが喘息を患っていて、一般的にはその受容体に作用する気管支拡張薬で治療されることを指摘できた。 このように、文章作成、コーディング、サイエンスの領域にまたがって一般的推論を行う能力があることを考えると、このテクノロジーはジャンルを超えて、マネジメント、データサイエンス、物理学、生命科学など幅広い領域で活用できる可能性がある。 加えて、GPT-3とクラウドを組み合わせることにより、デジタルイノベーションを非技術系の業務に広げていくうえでの障害を縮小できるだろう。このテクノロジーのおかげで、非技術系の人たちもプログラミング言語ではなく自然言語を使って、顧客向けのアプリとソリューションを構築することが可能になるのだ』、「GPT-3は、人間から与えられた手掛かりに基づいて、コーディングも行える。コンピュータやシステムへの指示を記述できるのだ。 それだけにとどまらず、自然言語をプログラミング言語に転換することもできる。具体的には、コンピュータに実行させたいこと(たとえば、社内向けのウェブサイトや顧客向けのウェブサイトを作成する)を、英語やスペイン語、ドイツ語といった自然言語で描写すると、AIがそのためのプログラムを書いてくれるのだ」、「GPT-3は、特定の科学や技術の分野におけるコンテンツ、手順、知識について考えることができるので、ほかにも極めて有益な用途がありそう」、これではプログラマーは不要になりそうだが、日本語がネックだろう。
・『仕事のあり方が変わり、生産性が高まる  このような変化が訪れることを前提にすれば、企業は自社のIT関連の資源を見直すだけでなく、人的資源についても再検討する必要がある。 その出発点として、自社の社員が処理している業務を洗い出し、その中でAIによる増強が可能なものを明らかにして、技術系と非技術系の社員の両方がこれまでより迅速にイノベーションを実行できるようにすればよいだろう。 筆者らは、職業情報ネットワーク(O*NET)を用い、米国政府による職種分類に従って、16分野にわたる73の職種について分析した。すると、すべての分野がGPT-3による影響を受けることがわかった。 さらに掘り下げて検討すると、その職種を構成する業務のうち、少なくとも1つがGPT-3により増強もしくは補完される職は51に上った。複数の業務がGPT-3により補完される職種も30あった。 このテクノロジーが実用化されれば、自動化できる業務も出てくるだろう。しかし、筆者らの分析によれば、人間の生産性と独創性を増強することにこそ、より大きな可能性がある。 たとえば、企業のコミュニケーション担当者の場合であれば、これまで日常的に行ってきた文章作成業務の半分以上が自動化されるだろう。その一方で、広告コピーやソーシャルメディアへの投稿など、より重要性の高いコミュニケーションについては、GPT-3の力を借りることで、担当者の創造性をより高めることができる。 また、企業のサイエンティストは、開発途中の新製品に関して、GPT-3を利用してグラフを自動生成することで、社内での説明の手間が省けるだろう。一方、GPT-3を利用して、科学論文から必要な内容を抽出させることにより、基礎研究と実験を支援することも可能になるかもしれない。 このように、専門分野や業種の壁を越えてこのテクノロジーを応用する道は、社員の想像力次第でどこまでも広がっていくのだ』、「仕事のあり方が変わり、生産性が高まる」ので、欧米企業と日本企業の生産性格差は致命的に拡大する恐れがある。
・『乗り遅れないために  いますぐ、準備を始めなくてはならない。次世代のエンタープライズアプリは、もはやレガシーシステムでは動かない。企業はこれまでよりも積極的に、クラウドへの移行を推し進めなくてはならなくなる。しばらく様子を見ようという姿勢では、好ましい結果を得られない。 2020年10月1日、オープンAIは「サービスとしてのGPT」を開始し、ベータ版ユーザーにAPIを提供し始めた。先駆的な企業は数カ月以内にGPT-3を採用し、修正を加えて、それがどのような用途で最もうまく機能し、どのような用途ではまったく役に立たないかを学んでいくだろう。 そのような企業は、社内の業務のあり方を見直し、AIを取り巻くプライバシー、セキュリティ、社会的責任の問題に対処するうえで、ほかに企業に先んじて一歩を踏み出せる。 これらの企業は向こう2年間に、ありとあらゆる種類のアプリを制作し、イノベーションのチャンスをつかむだろう。その時、後れを取った企業はますます取り残されることになる。 謝辞:本稿の執筆に当たっては、アクセンチュア・リサーチのリサーチチーム、特にティイス・デブラエレ、スルヤ・ムカジー、プラシャント・シュークラの力を借りた。HBR.org原文:The Next Big Breakthrough in AI Will Be Around Language, September 23, 2020.』、こんな画期的な「オープンAI」が出来つつあるとすれば、日本企業には脅威だ。この点を指摘する日本人はまだいないようだが、懸念材料として注目してみていきたい。
タグ:茂木健一郎 人工知能 東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン 新井 紀子 (AI) (その10)(AIに読解力があると思う人に知ってほしい現実 学生の新常識は「シンギュラリティ=黒歴史」だ、茂木健一郎の「人工知能は人間の仕事を奪うのか」に対する答え 脳科学者・茂木健一郎氏インタビュー、次なるAIのブレークスルーは言語分野で起きる 「GPT-3」が示すイノベーションの新潮流) 「AIに読解力があると思う人に知ってほしい現実 学生の新常識は「シンギュラリティ=黒歴史」だ」 AI(人工知能)が進化して人類を支配する 「AIが人の知能を超える『シンギュラリティ』が2030年に到来する」といった誤解 シンギュラリティ神話が信じられていた2018年 シンギュラリティブームは「過去のあだ花」、悪くすれば「黒歴史」に変わっていた AI技術が学部生にも身近な技術になった 数十万単位のデータで学習する最近の統計的機械学習は、精度が出ても出なくても、その理由がわからない」、のは致命的欠陥 「東ロボ」、英語大躍進の理由 ある段落の任意の箇所に、次の段落から選んだ任意の文を挿入する。そして、挿入された文を「文脈から外れた不要文だ」と学習させた」、とは巧みに工夫したものだ AIは意味を理解できない 東ロボの英語大躍進のタネ明かしを聞いた読者の多くは、「そんなものは読解ではない。単に一番可能性が高い選択肢を選ぶAIを作ったにすぎない」と不満に思ったことだろう。同感だ。「なにしろ、うちの大学院生が「AIが意味を理解しないのは当然のことだ」と言うようになったのだから 茂木健一郎の「人工知能は人間の仕事を奪うのか」に対する答え 脳科学者・茂木健一郎氏インタビュー 『クオリアと人工意識』(講談社現代新書) 藤井聡太棋聖はAIと人間の共存のモデルケース 人工知能はコンセプトワークが不得意なんです。全体を統合するような発想が苦手 意識やクオリア、直感についていま語るべき理由 藤井聡太さん」の「注目の指し手」は、「最強将棋ソフトが4億手を読んでも出なかったアウトプットです。6億手に拡大して、やっと候補の1つとして出た それを「直観」でやる能力はさすがだ 人工知能時代の学びの「あるべき形」とは 「シェイクスピア風で」というお題が中学で成立するくらい、向こうの人たちはさまざまなことを学んでいます 現代アートはコンセプト重視です ンセプトワークでもある。そういったものに触れるという視点は、人工知能時代の人間の強みを生かす上で大事だと思いますね ダイヤモンド・ハーヴァード・ビジネス・レビュー 「次なるAIのブレークスルーは言語分野で起きる 「GPT-3」が示すイノベーションの新潮流」 次なるAIの飛躍的前進は言語領域で GPT(事前学習済み生成システム)は、このさらに上を行く。これはトランスフォーマー、すなわちテキスト内の言葉と言葉の文脈上の関係を学習するアテンション機構を用いるもの 次世代アプリにより全社でのイノベーションが可能に GPT-3は、人間から与えられた手掛かりに基づいて、コーディングも行える。コンピュータやシステムへの指示を記述できるのだ。 それだけにとどまらず、自然言語をプログラミング言語に転換することもできる。具体的には、コンピュータに実行させたいこと(たとえば、社内向けのウェブサイトや顧客向けのウェブサイトを作成する)を、英語やスペイン語、ドイツ語といった自然言語で描写すると、AIがそのためのプログラムを書いてくれるのだ GPT-3は、特定の科学や技術の分野におけるコンテンツ、手順、知識について考えることができるので、ほかにも極めて有益な用途がありそう 仕事のあり方が変わり、生産性が高まる 仕事のあり方が変わり、生産性が高まる」ので、欧米企業と日本企業の生産性格差は致命的に拡大する恐れがある 乗り遅れないために こんな画期的な「オープンAI」が出来つつあるとすれば、日本企業には脅威だ。この点を指摘する日本人はまだいないようだが、懸念材料として注目してみていきたい
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人工知能(AI)(その9)(「何でもできる」と妄想 性能や費用の壁に直面 先行企業が残した教訓(途中まで)、日本の社長にお手あげ 第一人者 松尾豊氏の警告、「AI医師」に命を委ねられますか 医師にしてAIスタートアップ代表 アイリス・沖山氏に聞く) [イノベーション]

人工知能(AI)については、昨年5月16日に取上げた。久しぶりの今日は、(その9)(「何でもできる」と妄想 性能や費用の壁に直面 先行企業が残した教訓(途中まで)、日本の社長にお手あげ 第一人者 松尾豊氏の警告、「AI医師」に命を委ねられますか 医師にしてAIスタートアップ代表 アイリス・沖山氏に聞く)である。

先ずは、5月17日付け日経ビジネスオンライン「AIバブル 失敗の法則:「何でもできる」と妄想 性能や費用の壁に直面 先行企業が残した教訓」のうち、無料部分を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00108/
・『法則1:万能目指して無能に(ソフトバンク)  「〇〇社、××事業にAI導入」。多くの企業が次々に発表し、連日ニュースの見出しを飾る。問題はその先。実証実験で止まったまま、ビジネス活用に至らないケースは多い。先行企業の実例から、AIの導入で陥りがちな「失敗の法則」を紹介する。 ソフトバンクが社内に千数百人いる営業員をAIで支援するシステム「ソフトバンクブレーン」を導入してから3年。AI・ロボティクス事業推進部の柴谷幸伸課長は「開発当初、AIは何でもできるという妄想に取りつかれていた」と振り返る。「経営層から現場までAIで盛り上がっていた」(柴谷氏)という熱気の中で完成したシステムは、理想とかけ離れたものだった。 「AIは万能」という勘違いはソフトバンクに限らず産業界に蔓延している。実際には音声や画像認識など限られた分野で実用に耐えるAIが視野に入ってきたという段階。有効な学習データがそろわなければ十分な性能は出ない。 IT業界からは「メガバンクが多額を投じてコールセンターに導入した対話型AIが使い物にならなかった」「医療機関が試験導入したAIが間違った治療法の提案を繰り返した」といった失敗談が聞こえてくる。 グループの投資ファンドを通じて世界中の先端企業に投資し、AI分野では優等生ともされるソフトバンクはなぜ失敗したのか』、「「AIは万能」という勘違いはソフトバンクに限らず産業界に蔓延している。実際には音声や画像認識など限られた分野で実用に耐えるAIが視野に入ってきたという段階。有効な学習データがそろわなければ十分な性能は出ない」、実用化の壁は予想以上に高そうだ。「万能目指して無能に」とは「ソフトバンク」には耳が痛いタイトルを付けられたものだ。
・『営業成績底上げを期待したが  ソフトバンクが想定していたのは、エース級の営業員のように振る舞う、自然言語処理による対話型AIだ。一般の営業員が専用のアプリを搭載したスマートフォンに向かって自由に質問すれば幅広い問題について深い洞察に基づきアドバイスを返すAIを目指した。 営業員が「銀行にIT機器の導入を提案したのだけど、『予算が削られて無理』と言われた」などと語りかければ、客先の業種や予算、過去の実績などから「予算の削減に取り組む金融機関は人手不足の解消につながる提案が効果的です。人型ロボット『ペッパー』を受付に導入するよう勧めてはどうでしょう」などと臨機応変に助言する。 「ペッパーをお客様に気に入ってもらう秘訣は?」と追加で質問すると、「実際に動いているところをデモンストレーションで見せると契約につながりやすい」などと回答し、客先の担当者へのアプローチ法をより詳しく教えてくれる。営業成績の底上げに期待した。 しかし現実は違った。AIは「ペッパーの導入を提案してみましょう」など、誰でも思い付くような回答を繰り返すばかり。どうすればペッパーを効果的に売り込めるかといった、状況に応じた具体的なアドバイスまでは踏み込めなかった。柴谷氏は「回答が浅いため、ソフトバンクブレーンは社内でほとんど利用されなかった」と話す。 ソフトバンクの営業部門で扱う製品やサービスはペッパーのほかにも、法人向けスマホやクラウドなど、2500件に及ぶ。AIの開発段階ではこれらすべての商材について、どんな質問にも回答できる万能型を目指した。 AIに尋ねたいことを営業員から事前に聞き取り、エース級の営業員から集めた回答例をAIに学習させればシステムは完成すると考えていた。 柴谷氏は「学習に対する認識がかなり甘かった」と反省する。実際には天文学的な数の回答を学習させなければ、2500件に上る商材の一つひとつについて、どんな質問にでも答えられるようにはならない。エース級の営業員にそのような数の回答を用意させるのは非現実的だ。 またソフトバンクブレーンが採用したAIの技術は、自ら新しい回答を見つけ出すような水準に達していない。そのためアドバイスできる内容は限られ、誰も使わないAIが出来上がった。 開発陣は、「何でもできる」というAIに対するイメージが過大評価であることを身をもって学んだ。その反省を踏まえたうえで、新たな機能の開発に乗り出す』、「回答が浅いため、ソフトバンクブレーンは社内でほとんど利用されなかった」、「ソフトバンクブレーンが採用したAIの技術は、自ら新しい回答を見つけ出すような水準に達していない。そのためアドバイスできる内容は限られ、誰も使わないAIが出来上がった。 開発陣は、「何でもできる」というAIに対するイメージが過大評価であることを身をもって学んだ」、「その反省を踏まえたうえで、新たな機能の開発に乗り出す」、勝算はあるのだろうか。
・『機能絞り込んで再出発  「機能は大幅に絞り込むことにした」(柴谷氏)という第2弾では、扱う商材を法人向けのスマホに限った。何でも自由に質問できる形式の対話も諦めた。営業員が口頭でAIに伝えられるのは、スマホの機種、新規や継続などの契約形態、レンタルや売り切りといった提供方法などだけにした。それを基に自動で見積額をはじき出す。 金額の算出にAIは使っていない。機種や契約形態などによって金額は一意に決まるため、単純な計算式で済む。AIを使っているのは、スマホに向かって口頭や文字でやり取りするための自然言語処理の部分だけである。(無料はここまで)』、失敗も蓄積になるので、全く無駄という訳ではないだろう。「再出発」が上手くいくことを期待したい。

次に、5月25日付け日経ビジネスオンライン「AIバブル 失敗の法則:日本の社長にお手あげ 第一人者 松尾豊氏の警告」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00107/
・『バブルははじける──。AI研究の第一人者、松尾豊・東京大学大学院教授はこう警鐘を鳴らす。多くの企業はマーケティングを目的に、単にITの活用をAIと言い換えているだけだと指摘する。経営者が技術を理解し、ビジネスとつなげなくてはAIでイノベーションは起こせないと説く。 日本企業の間でAI(人工知能)の理解が一向に進んでいない。中身はいわゆるIT(情報技術)化のような話が半分以上ではないか。今までもやっていたことをAIという言葉に換えて、マーケティングに利用しているだけ。意味がまったくないわけではないが、それでは世界で勝てるビジネスは生まれない。だから私は「日本でのAIの盛り上がりは中身のないバブル、いつはじけてもおかしくない」と警鐘を鳴らしている。 AIの現状を、エレベーターがもたらしたイノベーションと重ねて考えてみたい。2階に上がるために使っても意味はなく、階段で十分だ。10階や20階建ての高層ビルが建てられるようになったことこそがエレベーターの革新性だ。 今、AIで最も大きなイノベーションが起きているのが深層学習(ディープラーニング)だ。自律的に画像や映像を(人間以上に)認識できるため、新しいビジネスが生まれている。高層ビルが建ち始めているわけだ』、「今までもやっていたことをAIという言葉に換えて、マーケティングに利用しているだけ」、「私は「日本でのAIの盛り上がりは中身のないバブル、いつはじけてもおかしくない」と警鐘を鳴らしている」、本格活用には、「深層学習」にまで進む必要がありそうだ。
・『インターネット登場時と同じ  ITやビッグデータは20年以上前からやっているので、新しい価値がそれほど残っていない。一方、ディープラーニングを使えばさまざまなプロセスの自動化が可能になる。 エンジンやトランジスタが発明された時も、インターネットが登場した時も同じ。その時代のテクノロジーをちゃんと身に付けて経営的な意思決定を行い、どういうビジネスが生み出せるか一生懸命に考え、やり遂げた人がビジネスで成功を勝ち取った。 新たな価値を見つけるには、当然技術(ディープラーニング)のことが分からなければならない。経営者が分かっていなければ技術の活用に踏み切れない。それにもかかわらず、残念ながら日本には技術とビジネスの両方を分かっている経営者が少ない。 3カ月や半年でもきちんと勉強すれば、ディープラーニングを経営にも活用できるようになる。だから技術を研究している我々からすると、「早く勉強してほしい」という話に尽きる。これまでこうしたことを日本企業の経営者に何年も言い続けてきたが、何も起こらない。 社長は業界やビジネスの構造が頭に入っている。それと照らし合わせることで「ここにAIを使うとこうなるのでは」というシミュレーションができるようになるはず。社長としてAIのことが腹落ちしていなくて、自分の言葉で語れないような会社は本物ではない。 もちろん手足を動かすのは現場だが、プロジェクトに関わっているうちに、社長に知識が付いてくる。嗅覚の鋭い社長は自分なりに理解して、自分の言葉でAIを語れるようになる。下に任せて「何かやれ」と言ったってできるわけがない』、「社長としてAIのことが腹落ちしていなくて、自分の言葉で語れないような会社は本物ではない」、「嗅覚の鋭い社長は自分なりに理解して、自分の言葉でAIを語れるようになる。下に任せて「何かやれ」と言ったってできるわけがない」、同感だ。
・『入り口で迷っている経営者  世界では技術とビジネスを組み合わせて伸ばしていく筋道を競って見つけようとしている。しかし日本では経営者がディープラーニングを活用するかどうかという入り口で迷っている。 大企業のなかにもセンスがいい経営者がいたり、底力があったりする企業もあるにはある。そうした企業では経営者がいい判断をし、ちゃんとディープラーニングの活用に取り組んでいる。 ただ全体でみればごく一部で、むしろ日本ではスタートアップ企業のほうが有望だ。 先日、高専(高等専門学校)のチームを対象とした、ディープラーニングとハードウエアを組み合わせたプロジェクトを競う大会があった。優勝チームには約4億円の評価が付き、すぐに4000万円投資しようという話になった。 もはや、勉強もせず自ら動こうとしない企業の経営者に何を言ってもしょうがない。それよりも、やる気のある若い世代にチャンスを与えて、新しいことをやってちゃんともうけて会社を大きくしていけばいいのではないかと思う。やる気のある若い人にチャンスを与えたほうがましだ。(談)』、「大企業のなかにもセンスがいい経営者がいたり、底力があったりする企業もあるにはある・・・全体でみればごく一部で、むしろ日本ではスタートアップ企業のほうが有望だ」、その通りなのだろう。
・『「幻滅期」に突入へ 活用本番はこれから  「お祭りの時期が終わる。本気ではなかった人が離れる今からが、地に足をつけて進む本番だ」。米調査会社ガートナー日本法人の亦賀忠明ディスティングイッシュトバイスプレジデントはこう指摘する。同社は2018年秋に「日本では19年以降、AIが幻滅期に入る」との予測を示した。 ガートナーは「ハイプ・サイクル」と呼ぶ曲線で各種の先進技術の普及状況を表現する。認知が広がって徐々に期待度が上がり、過度な期待のピークを迎える。その後、期待度が急激に下がる幻滅期を経て、徐々に普及していくというパターンを模したものだ。 ●ガートナーが分析した日本でのAIの期待度(図はリンク先参照) 幻滅期は「本当のことが分かっていなかった人が幻滅する時期のこと」(亦賀氏)。調査会社IDCジャパンはAIシステムへの世界の支出額が19年に358億ドル(約3兆9380億円)で、22年には792億ドル(約8兆7120億円)まで増えると予測する。AIに過度な期待をしていた時期は終わるが、投資は着実に増えていく。AIの現実と可能性を見極めた企業が本格的な活用で先行することになる』、「「幻滅期」に突入へ 活用本番はこれから」、「AIの現実と可能性を見極めた企業が本格的な活用で先行することになる」、「本格的な活用で先行する企業」に期待したい。

第三に、5月28日付け日経ビジネスオンライン「「AI医師」に命を委ねられますか 医師にしてAIスタートアップ代表、アイリス・沖山氏に聞く」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00043/052300005/?P=1
・『画像診断や手術支援、医薬品の開発など、医療の分野でもAI(人工知能)の導入が進みつつある。将来的にAIが医療過誤や事故を起こした場合、責任はだれが取るのか。生死を左右する医療分野にAIを取り入れることに倫理的な問題はないのか。離島でへき地医療に従事した経験がある医師にして、現在はAIスタートアップ「アイリス」を率いる沖山翔氏に話を聞いた(Qは聞き手の質問)。 Q:AI人工知能が誤診をしたら責任はだれが取るんでしょうか。 アイリスの沖山翔代表(以下、沖山氏):今のAIは医師が使うただのツールにすぎないので、やっぱり使った医師が責任を取ることになります。さらにその先、ドラえもんは行き過ぎにしても、AIが本当に自律的に診断をするようになった場合の責任の所在も答えが出ていて、自動運転がレベル5になった時と同様にメーカーです。製造者責任でメーカーが責任を負うことになります。 医療が特殊なのは、命にかかわるところです。不可逆で定量的に議論ができない。例えば自動運転中の事故については、割に合うように計算して保険制度を用意すればいい。でも命には値付けができない。時間をかけて社会的合意を得る必要があります。 Q:医療分野にAIを導入することにはやはり抵抗のある人もいると思います。 沖山氏:責任の所在をちゃんと明らかにしておくことが納得感につながると思っています。AIはただのツールだから医療事故はツールを使った医師の責任、仮にAIドクターができてしまった場合にはメーカーの責任だということが広く共有されれば、抵抗感もなくなるのではないでしょうか。 AIがレントゲンの見逃しをしたらどうするんだというのはよく話題になりますが、人間だって見逃します。当直明けの人間の脳はビール2杯飲んだ時と同じ状態だといわれているんですよね。ただ、AIという言葉はインパクトが強いため、患者さんの間には「どうしても生身の先生に見てほしい」といった意識が残り続けることも想像されます。いかに摩擦なくAIを取り入れていくかというところで、大事になるのが“倫理”なんです。 そもそもAIが現れる以前から医療と倫理は切り離せません。外科医は合法的に人にメスを入れることを認められていますが、普通の人がやったら傷害罪です。これは議論の上で医師法で制度化し、さらに時間をかけて医者が外科手術をすることについて社会的合意を得たわけです。AIも同じプロセスを通っていくのでしょう。  Q:AIと倫理の問題は世界中で話題になっています。 沖山氏:米国でいま、スタンフォード大やマサチューセッツ工科大で博士号(PhD)を取ったAI技術者たちは、いわゆるミレニアル世代で、AIと倫理の課題をすごく重視しています。米グーグルで2018年に、社員による「AIの軍事利用」に反対する運動が起きて一部で辞職者も出た事件は象徴的でしょう。AI技術者に定着してもらうためにも倫理の問題は避けて通れません。 AI倫理の話でやっぱり避けられないのが、「アシロマAI 23原則」です。非営利団体「Future of Life Institute」が世界の名だたる倫理学者や宗教家、数学者や起業家をカリフォルニアの小さな街アシロマに集めてまとめたものです。 このうちで私が好きなのが17番目の“非破壊”の原則です。「高度な人工知能システムがもたらす制御の力は、既存のプロセスを覆すものであってはならない」といったものです。若い起業家はよく「破壊的イノベーション」などと言いますが、破壊していい領域とそうじゃない領域がある。医療で破壊と言ったら人が死んでしまいますから。医学の祖ともされる古代ギリシアのヒポクラテスは第一に、「Do no harm(傷つけてはいけない)」と言っているんですが、これが医師の間で今でも守られ続けている倫理観だと思います』、「人間だって見逃します。当直明けの人間の脳はビール2杯飲んだ時と同じ状態だといわれているんです」、「当直明けの医者」には出来れば診てもらいたくないものだ。「アシロマAI 23原則」は下記の通りだが、なかなかよく練られているようだ。
https://www.tmresearch.co.jp/sensor/wp-content/uploads/sites/2/2017/03/SENSOR35.pdf
・『Q:実際にAIはどの程度、医療現場に浸透しているのでしょうか 沖山氏:現場レベルで言うと、特に日本ではAIがすみずみまで浸透しているわけではありません。極めてまれなケースでしか、AIと一般患者の接点はないです。どちらかと言うと、医師とAIの接点が増えて、医師が有用性を実感している段階です。AIと一般患者の接点はもうちょっと先、1~2年後ぐらいじゃないでしょうか。 ではその時に、AIが何か問題を起こす可能性があるのか―。それはまずありえません。なぜなら、医療機器は厚生労働省が承認するまでは使えないからです。医師がなにか悪用できるAIというのは、そもそも世の中に出られないような制度がすでに出来上がっています。 Q:医療AIが学習をして成長していく中で、医療機関ごとにAIの能力に格差が生まれることはないですか 沖山氏:現段階では持続的に成長するAIというのは、承認できないことになっているんですね。つまり成長後のAIをフリーズ(凍結)した状態で世の中に出す仕組みになっているんです。なので格差は生まれない。 でもそれだけではやはり救えない病気もあるので、どうやって学習させるのかという点も検討しながら、持続的に成長するAIを承認していくのがこれからのパラダイムです。米国では動き始めているので、日本でも5年以内にはそうなるのではないかと思っています。具体的にはまずクラウド経由で成長するので結局、どのAIも同じ性能になるというやり方が1つあると思います。 もう1つはカスタマイズ。病院によって性能が変わるというのはありだと思います。医療の世界に完全上位互換はないので、東大病院のAIがほかの病院より完全に優れているということにはならない。ただの風邪で大学病院にかかることはないので、受診する層が偏っている。東大病院のAIだといってありがたがっても、一般の病院で使おうとするとめちゃめちゃ性能が悪くなるわけです。そこはすみ分けになるんだと思います』、「AIと一般患者の接点はもうちょっと先、1~2年後ぐらいじゃないでしょうか」、画像診断のようにAIに適した分野ではそろそろ使ってほしいものだ。
タグ:人工知能 AI 日経ビジネスオンライン (その9)(「何でもできる」と妄想 性能や費用の壁に直面 先行企業が残した教訓(途中まで)、日本の社長にお手あげ 第一人者 松尾豊氏の警告、「AI医師」に命を委ねられますか 医師にしてAIスタートアップ代表 アイリス・沖山氏に聞く) 「AIバブル 失敗の法則:「何でもできる」と妄想 性能や費用の壁に直面 先行企業が残した教訓」 法則1:万能目指して無能に(ソフトバンク) 「AIは万能」という勘違いはソフトバンクに限らず産業界に蔓延している。実際には音声や画像認識など限られた分野で実用に耐えるAIが視野に入ってきたという段階。有効な学習データがそろわなければ十分な性能は出ない 営業成績底上げを期待したが 回答が浅いため、ソフトバンクブレーンは社内でほとんど利用されなかった ソフトバンクブレーンが採用したAIの技術は、自ら新しい回答を見つけ出すような水準に達していない。そのためアドバイスできる内容は限られ、誰も使わないAIが出来上がった。 開発陣は、「何でもできる」というAIに対するイメージが過大評価であることを身をもって学んだ 機能絞り込んで再出発 「AIバブル 失敗の法則:日本の社長にお手あげ 第一人者 松尾豊氏の警告」 今までもやっていたことをAIという言葉に換えて、マーケティングに利用しているだけ 私は「日本でのAIの盛り上がりは中身のないバブル、いつはじけてもおかしくない」と警鐘を鳴らしている 「深層学習」 インターネット登場時と同じ 社長としてAIのことが腹落ちしていなくて、自分の言葉で語れないような会社は本物ではない 嗅覚の鋭い社長は自分なりに理解して、自分の言葉でAIを語れるようになる。下に任せて「何かやれ」と言ったってできるわけがない 入り口で迷っている経営者 大企業のなかにもセンスがいい経営者がいたり、底力があったりする企業もあるにはある 全体でみればごく一部で、むしろ日本ではスタートアップ企業のほうが有望だ 「幻滅期」に突入へ 活用本番はこれから AIの現実と可能性を見極めた企業が本格的な活用で先行することになる 「「AI医師」に命を委ねられますか 医師にしてAIスタートアップ代表、アイリス・沖山氏に聞く」 今のAIは医師が使うただのツールにすぎないので、やっぱり使った医師が責任を取ることになります 命には値付けができない。時間をかけて社会的合意を得る必要 アシロマAI 23原則 人間だって見逃します。当直明けの人間の脳はビール2杯飲んだ時と同じ状態だといわれているんです AIと一般患者の接点はもうちょっと先、1~2年後ぐらいじゃないでしょうか
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電気自動車(EV)(その7)(中国が描く日米欧を超える「自動車強国」の本質 日本の産業構造が変化していく可能性も、業界騒然“ソニーのクルマ” 発表のウラに秘められた「勝算の理由」 けっして「売る」ためではない、中国・新興EV テスラの技術窃盗疑惑で猛反発 テスラは新興EVにソースコードの開示要求) [イノベーション]

電気自動車(EV)については、昨年10月29日に取上げた。今日は、(その7)(中国が描く日米欧を超える「自動車強国」の本質 日本の産業構造が変化していく可能性も、業界騒然“ソニーのクルマ” 発表のウラに秘められた「勝算の理由」 けっして「売る」ためではない、中国・新興EV テスラの技術窃盗疑惑で猛反発 テスラは新興EVにソースコードの開示要求)である。

先ずは、昨年12月22日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行法人推進部 主任研究員の湯 進氏による「中国が描く日米欧を超える「自動車強国」の本質 日本の産業構造が変化していく可能性も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/320163
・『中国は生産・販売の両面で「自動車大国」の地位を固めているものの、内燃機関車技術で中国メーカーが日米欧メーカーにキャッチアップするのは簡単ではない。 なぜならば、「世界の工場」といわれる中国であっても、組み立て型産業で「自己完結型ものづくり」を実現するには高品質なものを作り上げる技術や「各種加工プロセスの技術」が求められ、この分野におけるイノベーション能力の形成は中国メーカーには難しいからだ。 しかし、「中国が描く日米欧を超える「自動車強国」の本質 日本の産業構造が変化していく可能性も」。EVシフトに伴い高度な製造技術を求める部品が大幅に減少するだけではなく、中国は日米欧企業に劣後する機械工学技術を一足飛ばし、電動化とIT技術を融合する「カエル跳び型(Leapfrogging)」発展戦略で競争優位の構築を図ろうとしている』、確かに後発国にとっては、「「カエル跳び型」発展戦略」は合理的だ。
・『官民挙げての研究開発強化がカギ  中国が次世代自動車技術での優位性や業界スタンダードを確立できれば、部品産業の技術進歩も期待でき、中国の自動車産業全体の競争力を向上させることができる。 そうなれば、EV電池やモーターなどの基幹部品を国産化しやすくなることに加え、国内消費市場、貴金属資源の保有、部品・部材産業集積の存在などの面で日米欧を圧倒する条件が整う。こうした勝算を前提に中国政府は3つのステップを踏んで「自動車強国」となる構想を描いている。 第1ステップは、NEV(注)市場を育成することだ。第2ステップは、中国発の世界ブランドを育成することだ。第3ステップは、自動車強国の実現を象徴する地場メーカーの海外進出だ。地場メーカーが、2025年に世界市場における中国ブランドの地位を向上させるとの目標を掲げている。 ただ、それを実現するためには裾野・部品分野を含む産業チェーンの発展、省エネ技術やコア部品の生産技術を獲得する必要がある。それと同時に最も肝心なのは、NEV、自動運転技術、コネクテッドカー(つながる車)などスマートカー分野に重点を置き、官民挙げて研究開発を強化することだ。 中国のEV補助金政策の波に乗り、BYD汽車等の民族系自動車メーカーはいち早くNEV市場に参入し、CATLなど多くの地場電池メーカーがEV電池の生産を開始した。 また、NIO、小鵬汽車などIT企業や異業種から参入した新興EVメーカーが増加した。電動化で自動車業界の勢力図を変えようとするBYD、巨大電池メーカーのCATLは中国EV革命を推進する代表的な破壊者として挙げられる。 従業員23万人を率いるBYDの王伝福会長はつねに「人材第一」を意識し、松下幸之助の名言「物を作る前に人を作る」によく言及した。中間管理職を定着させるために、王氏は2015年に個人保有していた17.5億元(約280億円)に相当する株式を、社内のコア人材97人に分け与えた。 2019 年1月に開催された中国電気自動車百人会フォーラムで、「ガソリン車禁止のタイムテーブルを明確にすれば、2030年に中国における全面的な電動化を実現できる」と王氏が呼びかけた』、「中国」は体制的にもEV化を進め易いだろう。
(注)NEV:New Energy Vehicle、新エネルギー車。EV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)、PHV(プラグインハイブリッド車)。日本で人気のあるハイブリッド車は含まれません(GB NAVI)。
・『CATLのすさまじさと今後の潜在力  2019年7月、トヨタがBYDの「33111プラットフォーム」を活用し、中国でトヨタブランドEVを生産すると発表した。 「33111」と呼ばれる5ケタの数字は、駆動モーター、コントローラー、減速機を一体化する駆動系ユニット(3部品)、直流電源モジュール、充電器、配電盤を一体化する高圧電源ユニット(3部品)、インパネやエアコンを制御するプリント基板(1枚)、車内コネクテッドシステム「DiLink」を搭載する回転可能なスクリーン(1枚)、自社製リチウムイオン電池(1個)を指し、開発の効率化を図ろうとして標準化されるユニットだ。 創業わずか7年でパナソニックを抜いて電池市場世界首位の座に着いたCATLには、国内外から一流の教育を受けた修士約1000人、博士130人が必死に日々働いている。「地場自動車メーカーで努力しても、その会社は世界一になりにくいが、CATLならできる」と筆者が取材した黄氏(28歳、ニューヨーク大学大学院修了)が熱く語った。若者の自信と熱気に圧倒されたことから、CATLのすさまじさと今後の潜在力を実感した。 CATLの曾毓群会長とは数回雑談する機会があったが、巨大電池メーカーの経営者という堅苦しさはなく、明るさと謙虚さを感じさせる人物だった。 最近、本人が「台風(EV補助金)で舞い上がる豚(技術力の低いメーカー)が本当に飛べるか」を題目とするメッセージを社員に投げかけた。中国政府の政策の恩沢に浴してきた当社のこれまでの成長を自慢することなく、これから差し迫る危機および技術力のさらなる向上を強調した。 2030年頃にはモビリティー(人々の移動)が大きく変わる可能性があり、自動車産業は大規模な変革期を迎える。クルマの消費は「MaaS」(Mobility as a Service の略称)へ進化し、「CASE」(コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化)は自動車メーカーの競争力を左右する。 中国政府の強力な政策の後押しによって、AI技術とEV革命を融合する次世代自動車産業の競争力は確実に向上していくだろう。今後中国企業は進化し、グローバル電池メーカー、ITプラットフォーマー、モビリティーサービス企業、メガEVメーカーが順次登場すると推測される。以上のことは中国が描く2030年の中国自動車市場のアウトライン、自動車強国へのメインシナリオである。 2030年の習近平は77歳、中国トップとして円熟期にあり、「自動車強国」「製造業強国」の実現に続き、アメリカと並ぶ「近代化強国」に向け邁進すると思われる。 そうなれば、中国は「世界のEV生産工場」としてスマートカーやスマートシティ関連サービスの海外輸出を一気に拡大するであろう。中国のEV革命は日本自動車メーカーの牙城である東南アジア市場をはじめ日本国内市場にも波及する。もしかすると日本自動車産業の優位性を根底から崩すかもしれない』、もはや「もしかすると」ではないようだ。
・『日中ビジネス「黄金の10年」へ  今後日本の製造業者はものづくりのメーカーからサービスを提供する事業者となり、自動車の「一本足打法」で成長を維持してきた日本の産業構造に変化がもたらされる可能性がある。 EV革命を起点とする中国の自動車強国戦略には、競争軸を日本企業に有利な分野からずらして新たな競争に持ち込むことで優位を勝ち取ろうという意図がある。 日系企業としてはいかに中国のEV革命の実態を正確に把握しつつ中国戦略を練るかが、各社の難題となっている。 世界経済の大きなリスクである米中対立の解消が見えにくくなっているものの、日中関係は引き続きよい方向へ向かっており、日中ビジネス「黄金の10年」の到来を予感している。 今後日系自動車メーカーおよびサプライヤーが取るべき製品戦略を検討する一方、中国市場の特性に合わせた地域戦略やロビー活動に取り組み、ITプラットフォーマーや地場の異業種企業との提携等を視野に入れるべきだ』、「日系自動車メーカーおよびサプライヤー」にとって余りに楽観的な書きぶりだが、これは取引先に厳しいことを書くのが憚られる銀行員の限界なのだろう。

次に、本年1月12日付け現代ビジネスが掲載した自動車ライターの工藤 貴宏氏による「業界騒然“ソニーのクルマ”、発表のウラに秘められた「勝算の理由」 けっして「売る」ためではない」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69736
・『アメリカ・ラスベガスで1月7日から10日にかけて開催された「CES」。もともとは「コンシュマー・エレクトロニクス・ショー」という名称で電子機器の見本市として1967年にスタートしたイベントだ。 しかし昨今は電気関係のメーカーだけでなく、自動車メーカーもブースを構えて先進的な技術やコンセプトを発表する場として活用している。出展社は約4500社もあり、わずか4日間の開催ながら約17万5000人もの来場者を集めるといえばその注目度の高さが想像できるだろう(数字はいずれも2019年実績)。 そんなCESで今年、自動車業界の関係者を驚かせたのは、なんといってもソニーの出展内容だった。あのソニーが、自動車メーカーではないのに独自に開発した自動車をお披露目したのだ。果たしてソニーの狙いはどこにあるのだろうか?』、興味深そうだ。
・『テスラを彷彿とさせるデザイン  まずはソニーが開発した「VISION-S PROTOTYPE(ビジョン・エス・プロトタイプ)」と名付けられたこのコンセプトカーの特徴を見てみよう。 車体サイズは全長4895mm×全幅1900mm×全高1450mm。トヨタ「カムリ」とほぼ同じ長さと高さで、幅は少しだけ広い。ホイールベースは3000mmというから、全長の割には長い設計だ。 もちろん電気自動車で、エンジンのない電気自動車らしくボンネットは短く、居住スペースが広く確保されたプロポーションなのがわかる。天井も透明で解放感は抜群だ。 デザインはアメリカのEV専門新興メーカー「テスラ」のような未来を感じさせるもので、誰の目にもスタイリッシュと映るだろう。この意匠は外部の会社に委託したものではなく、ソニーによるデザインだ。 動力系は200kWモーターを前後に搭載し、4つのタイヤすべてを駆動する4WD。車両自体は完全に法規を満たしているわけではないので公道走行をするのは難しい。しかし、衝突安全性などもしっかりと考慮して作られており、将来的には同様の車両でテスト走行をおこなうことも視野に入っているそうだ。 設計はかなり本格的と言え、現地で実車を見た自動車関係者によると「細部までしっかり作られていて想像以上に完成度が高かった」という』、「ソニーによるデザイン」で「細部までしっかり作られていて想像以上に完成度が高かった」、とはさすがソニーだ。
・『ソニーのテクノロジーを惜しみなく投入  しかし、ソニーは自動車メーカーではない。だからクルマを作るノウハウの持ち合わせはなく、この車両もすべてをソニーが制作したわけでもないから「ソニーがすべて独自でクルマを開発した」というのは、少し誇大した解釈といえる。 プロジェクトはソニーが中心となって進めているが、開発にはクルマ作りのプロフェッショナルであるオーストラリアのマグナ・シュアタイヤー社(車両開発技術を持ちトヨタ「スープラ」の生産も請け負っている下請け会社)が大きく関わっている。そのほか、ドイツのメガサプライヤー(自動車メーカーに技術や部品を提供する会社)の「ボッシュ」や「コンチネンタル」も協力しているとのことだ。  一方で、このクルマの要となる先進システムはソニーの技術で独自開発。それは、「Safety Cocoon(セーフティコクーン)」と名付けられたイメージング・センシング技術(車両周囲の状況を認識するテクノロジー)だ。 「日常の様々なドライブシーンにおいて、自動車の周囲360度を検知し、早期に危険回避行動を支援することで車の安全性を高める安全領域のコンセプト」(プレス資料)とし、ソニーが持つ先進運転サポート技術をフル採用している。 具体的にはイメージセンサーや超音波センサー、そしてライダーなど合計33個の“目”を搭載。それらで車両周囲360度を監視することで、正確でハイレベルな運転支援を実現し、将来的にはレベル4(特定の場所においてすべての運転操作を完全に自動化)以上の高度な自動運転を目指しているという。 それ以外にも、カメラ技術を活用した高解像度の電子ミラーといった実用ツール、そして立体的な音響を実現するオーディオなどソニーの技術を搭載。安全から快適まで、ソニーのテクノロジーが惜しみなく投入されたクルマなのだ。 プロトタイプでサプライヤーの力を借りているとはいえ、ソニーがクルマを作り上げてきたという事実は多く自動車業界関係者を驚かせた。) ただし、勘違いすべきでないのは、このクルマの登場により、将来的にソニーがクルマを発売するという単純な話ではないということだ。 今回発表された車両の完成度は高い水準だが、とはいえクルマを市販車として量産するのは自動車メーカー以外にはハードルが高すぎる。数百億円以上の金額をかけて生産ラインを立ち上げる必要があるし、たとえそれを避けるために生産を外部委託したとしても、販売網や整備拠点を整える必要がある。 プロジェクトが失敗に終われば会社が立ち行かなくなってしまうほどの莫大な投資が必要なのだ。ソニーにとって自動車生産がそこまで冒険する必要のある分野かと言えば、否だろう』、「イメージセンサーや超音波センサー、そしてライダーなど合計33個の“目”を搭載。それらで車両周囲360度を監視することで、正確でハイレベルな運転支援を実現し、将来的にはレベル4・・・以上の高度な自動運転を目指している」、いかし、「市販車として量産する」、つもりはないというのは、賢明な戦略だ。
・『ここへきてクルマを作った本当の理由  では、ソニーがクルマを発表した理由はどこにあるのか? それは、その車両に使われている技術や部品を自動車メーカーやサプライヤーに売り込むためだ。 自動運転をゴールとする運転支援技術やセンサー/カメラなど、そこに使われる部品はこれからマーケットの大きな拡大が見込まれる。しかし、今のソニーはその分野で大きな存在感があるとはいえない。 そこで、コンセプトカーを制作してアドバルーンとして盛大に打ち上げて「あのソニーがクルマを」という世間の注目を集め、先進運転支援システムを自動車メーカーへ供給するビジネスを広げていこうというのだ。 キーワードは「カメラ(車載用CMOSイメージセンサー)」にある。 実は、ソニーはデジタルカメラの技術が高く、世界中のカメラ市場で圧倒的なシェアを持っている。 「プロ向け映像機材はそうかもしれないし、一眼レフでもシェアを高めている。けれど、カメラと言えばキャノンやニコンのほうがメジャーでは?」と思うかもしれないが、それは誤解だ。 いま、もっとも出荷台数の多いカメラはスマートフォンに内蔵されたカメラであり、アップル(iPhone)、サムソン、そしてハーウェイ社製など売れ筋機種の多くにソニーのイメージセンサーが使われている。ソニーは高い技術(美しく描写する性能)を持ち、それがスマートフォン用カメラでの圧倒的なシェアに繋がっているのだ。 その優れたカメラ技術を、クルマの運転支援装置にも生かそうというのである。 クルマに話を戻すと、製品に組み込まれているから一般ユーザーは認識してはいないが、トヨタや日産、ホンダ、といった日本のメーカーだけでなく、メルセデスベンツやBMW、アウディ、ポルシェ、それにGMやフォードなど世界中の完成車メーカーの製品にはサプライヤーの部品が多く組み込まれている。 ソニーもまた自動車分野における部品ビジネスの拡大を虎視眈々と狙っているのだ。イメージセンサーはソニーの得意分野であるうえに、それを必要とする運転支援技術はこれからますますマーケットが広がること間違いなしの成長分野。これまで同社が手薄だったそこに事業拡大のチャンスを感じているのだ。 今回、ソニーがオリジナルのクルマを発表して周囲を驚かせた裏には、そんな背景がある』、「イメージセンサーはソニーの得意分野であるうえに、それを必要とする運転支援技術はこれからますますマーケットが広がること間違いなしの成長分野。これまで同社が手薄だったそこに事業拡大のチャンスを感じているのだ」、自らの強味をビジネス・チャンス拡大につなげようとする誠に巧みな戦略のようだ。今後の展開が楽しみだ。

第三に、4月30日付け東洋経済オンラインが財新 Biz&Techを転載した「中国・新興EV、テスラの技術窃盗疑惑で猛反発 テスラは新興EVにソースコードの開示要求」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/347245
・『アメリカのEV(電気自動車)大手のテスラが、中国籍の元社員が技術を盗んだとしてカリフォルニア州の裁判所に提訴している問題で、この元社員が転職した中国の新興EVメーカー「小鵬汽車」に対して自動運転システムのソースコード(プログラムの設計図)の開示を求めていることが明らかになった。 小鵬汽車は4月25日に声明を発表。それによれば、同社は訴訟の当事者ではないにもかかわらずテスラの調査に協力してきた。ところがテスラ側がエスカレートし、ソースコードの開示を含む「理不尽」な要求を突きつけてきたため、3月31日にアメリカの裁判所に異議を申し立てた。 技術窃盗の疑いがかけられているのは、2019年1月にテスラを辞めて小鵬汽車に移籍した曹光植氏だ。2017年からテスラのニューラルネットワークの開発チームでコンピューター視覚科学の研究者として働いていた。小鵬汽車は自社の自動運転システムに不可欠な画像センシング技術の開発チームの責任者として、曹氏に白羽の矢を立てた』、中核技術者をソースコード付きで引き抜いたのであれば、極めて悪質だ。
・『「リモートワークのため」と元社員は全面否定  テスラは2019年3月に曹氏を提訴。同社の主張によれば、曹氏は在職中にテスラのEVのファームウェア、自動運転システム、ニューラル・ネットワークに関するソースコードを複製し、個人のクラウド・ストレージにアップロードした。さらに、小鵬汽車に転職した後もさまざまな手段でテスラのソースコード・ファイルにアクセスしていたという。 これに対して曹氏は、テスラのソースコードを個人のストレージにバックアップした事実は認めたが、リモートワークの利便性のために多くのテスラ社員が行っていた習慣だったと主張。テスラの企業秘密を小鵬汽車に引き渡したことはないと疑惑を全面否定している。 小鵬汽車が申し立てた異議の審理は、アメリカ西部時間の5月7日に行われる予定だ。カリフォルニアの裁判所が同社の異議を認めるか、それとも却下するかが注目される。なお4月25日の時点で、財新編集部はテスラから本件に関するコメントを得られなかった』、「小鵬汽車に転職した後もさまざまな手段でテスラのソースコード・ファイルにアクセスしていた」、同僚などのIDを使ったのかも知れないが、これも悪質極まる行為だ。本件は、中国企業による産業スパイ活動のうちの氷山の一角に過ぎないのだろう。
タグ:東洋経済オンライン case 電気自動車 EV 現代ビジネス MAAS 湯 進 (その7)(中国が描く日米欧を超える「自動車強国」の本質 日本の産業構造が変化していく可能性も、業界騒然“ソニーのクルマ” 発表のウラに秘められた「勝算の理由」 けっして「売る」ためではない、中国・新興EV テスラの技術窃盗疑惑で猛反発 テスラは新興EVにソースコードの開示要求) 「中国が描く日米欧を超える「自動車強国」の本質 日本の産業構造が変化していく可能性も」 「カエル跳び型」発展戦略 官民挙げての研究開発強化がカギ NEV 中国のEV補助金政策の波に乗り、BYD汽車等の民族系自動車メーカーはいち早くNEV市場に参入し、CATLなど多くの地場電池メーカーがEV電池の生産を開始 New Energy Vehicle CATLのすさまじさと今後の潜在力 トヨタがBYDの「33111プラットフォーム」を活用し、中国でトヨタブランドEVを生産 電池市場世界首位の座に着いたCATLには、国内外から一流の教育を受けた修士約1000人、博士130人が必死に日々働いている 中国は「世界のEV生産工場」としてスマートカーやスマートシティ関連サービスの海外輸出を一気に拡大するであろう 日本自動車産業の優位性を根底から崩すかもしれない 日中ビジネス「黄金の10年」へ 工藤 貴宏 「業界騒然“ソニーのクルマ”、発表のウラに秘められた「勝算の理由」 けっして「売る」ためではない」 コンシュマー・エレクトロニクス・ショー ソニーが、自動車メーカーではないのに独自に開発した自動車をお披露目した テスラを彷彿とさせるデザイン ソニーによるデザイン 衝突安全性などもしっかりと考慮して作られており、将来的には同様の車両でテスト走行をおこなうことも視野に 「細部までしっかり作られていて想像以上に完成度が高かった」 ソニーのテクノロジーを惜しみなく投入 イメージング・センシング技術 イメージセンサーや超音波センサー、そしてライダーなど合計33個の“目”を搭載。それらで車両周囲360度を監視することで、正確でハイレベルな運転支援を実現し、将来的にはレベル4(特定の場所においてすべての運転操作を完全に自動化)以上の高度な自動運転を目指している ここへきてクルマを作った本当の理由 その優れたカメラ技術を、クルマの運転支援装置にも生かそう ソニーもまた自動車分野における部品ビジネスの拡大を虎視眈々と狙っている イメージセンサーはソニーの得意分野であるうえに、それを必要とする運転支援技術はこれからますますマーケットが広がること間違いなしの成長分野 財新 Biz&Tech 「中国・新興EV、テスラの技術窃盗疑惑で猛反発 テスラは新興EVにソースコードの開示要求」 テスラが、中国籍の元社員が技術を盗んだとしてカリフォルニア州の裁判所に提訴している問題 元社員が転職した中国の新興EVメーカー「小鵬汽車」 テスラのニューラルネットワークの開発チームでコンピューター視覚科学の研究者として働いていた 小鵬汽車は自社の自動運転システムに不可欠な画像センシング技術の開発チームの責任者として、曹氏に白羽の矢 「リモートワークのため」と元社員は全面否定 小鵬汽車に転職した後もさまざまな手段でテスラのソースコード・ファイルにアクセスしていた
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ベンチャー(その6)(トヨタが米国で手がけるベンチャー投資の実像 米国の研究所「TRI」子会社が発揮するCVCの意義、グーグルに事業売った男が挑む「水道管」大問題 AIで劣化診断 シリコンバレー流が日本進出、コロナが直撃!「ベンチャー投資バブル」の行方 リーマンショック時の「投資家淘汰」が再燃) [イノベーション]

ベンチャーについては、昨年11月12日に取上げた。今日は、(その6)(トヨタが米国で手がけるベンチャー投資の実像 米国の研究所「TRI」子会社が発揮するCVCの意義、グーグルに事業売った男が挑む「水道管」大問題 AIで劣化診断 シリコンバレー流が日本進出、コロナが直撃!「ベンチャー投資バブル」の行方 リーマンショック時の「投資家淘汰」が再燃)である。

先ずは、本年2月28日付け東洋経済オンラインが掲載した三菱総合研究所研究員、カリフォルニア大学サンディエゴ校客員研究員の劉 瀟瀟氏による「トヨタが米国で手がけるベンチャー投資の実像 米国の研究所「TRI」子会社が発揮するCVCの意義」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/332737
・『劉瀟瀟氏は2019年7月より三菱総合研究所から派遣され、カリフォルニア大学サンディエゴ校に客員研究員として滞在している。今回は「トヨタのCVC」をテーマにアメリカ西海岸からの6度目のレポートをお届けしたい。 近年、世界の大手企業のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)がますます活躍するようになっている。グローバル化が進むビジネス環境で生き残り、企業の将来の成長を図るために欠かせない存在ともいえる。CB Insightsの報告によると、2018年のCVC投資額は約530億ドルに達し、2017年より47%も増加した。投資件数は2740件で前年度比32%増になった。 日本のCVCも成長している。2018年の投資額は2017年から倍増し、14億ドルになった。2018年においてグローバルで最も活躍したCVCのランキングTOP10で、日系のSBI InvestmentとMitsubishi UFJ Capitalが6位と9位にランクインした(他のアジア系は中国系3社、韓国系1社)。 国別にみると、日本だけでなく、世界的な企業が増加してきた中国や韓国のCVCが徐々に存在感を高めてきているが、やはりアメリカのCVCは規模(日本の13倍の265億ドル)も大きく、件数(日本の3倍の1046件)も多い。特にカリフォルニア州はアメリカの中でCVC投資を最も活発に行っているところで、投資金額も投資件数もアメリカ全体のほぼ半分を占めている。 その中で、着々とアメリカのスタートアップに投資しているトヨタ自動車(以下、トヨタ)のCVCがあるのをご存じだろうか。 シリコンバレーを拠点に展開するCVC、「Toyota AI Ventures」(以下、TAIV)だ。設立から3年弱ですでに27社に投資、投資先はすべてトラクションの増加(成長の兆しが見えている)や次ラウンドの資金調達を実現しており、すでにそのうちの1社がイグジット(EXIT、売却して利益を得ること)した。 「新しいCVCとしては『優秀な』滑り出しだ」(アメリカのベンチャー投資に詳しいTakashi Kiyoizumi(清泉貴志)氏)と評価されているのだ。 2020年1月、TAIVのシニアコーディネーターの伊藤輝之氏にインタビューした。伊藤氏は2007年UCLA卒業後トヨタに入社。2019年1月より「ToyotaResearchInstitute」(以下、TRI)に出向している。日本国内ではあまり知られていない同社を紹介するとともに、シリコンバレーで順調に事業を進めている理由を分析したい』、「トヨタが米国で手がけるベンチャー投資」、とは面白そうだ。
・『親会社からもトヨタからも「自由」  TAIVは、トヨタが出資している研究所であるTRIが2017年に設立した100%子会社だ。このCVCが順調な背景には、その親会社であるTRIの「自由」「ローカル」といった企業風土がある。 まず親会社TRIの紹介をすると、2016年1月に設立されたTRIでは人工知能(AI)・自動運転・ロボティクスなどの研究開発を行っている。「敢えて」自動車メーカーのトヨタを強調せず、比較的「自由(独立・自律の意味をする)」に研究開発を行う「ローカル」な研究所だ。その理由に、まず、一般の日本企業の現地法人と違い、CEOに自動運転業界で著名なギル・プラット博士(元国防高等研究計画局(DARPA))を起用し、14人の経営陣の中で日本本社からの常駐取締役は木田淳哉氏のみとなっている。 したがって、普段の業務において重要な意思決定はアメリカンスタイル・シリコンバレースピードで行われる。日本とのやり取りも、木田氏を中心とした日本人出向者のサポートにより、本社との意思疎通も忘れない。 また、TRIはスタンフォード大学に近いロスアルトス、ミシガン大学に近いアナーバー、そしてマサチューセッツ工科大学に近いケンブリッジの3拠点を持っている。大学発新技術との連携、また人材採用を非常に重視しているためだ。 TRIはトヨタの子会社というよりも、自動運転技術の開発競争が激化する中で、アメリカで研究を行い、世界中から人材を集めようとしている。これはTAIVにも影響を与えている。 特にシリコンバレー近辺では、超一流の学生は起業家、一流の学生はGAFAに就職、二流の学生は大企業に就職するともいわれている。 TRIは、インターン等を通して、優秀な人材のリクルートに非常に熱心だ。 したがって、TOYOTAの名前がついていることで日本企業だと思われ、日本(文化)に関心ある人しか集まらないということはなく、「たまたま日系の研究所」「研究内容が面白い」「将来自分の研究成果を実物(TOYOTAのクルマなど)を通して実現できることに大きなやりがいを感じる」と学生から評価されている。 こういった一定の自由度を持ち、かつ現地化した親会社の下にTAIVがある』、「TAIV」が「トヨタが出資している研究所で」「「自由」「ローカル」といった企業風土がある」「TRI」の子会社ということで、「親会社からもトヨタからも「自由」」、というのはこうした「CVC」には重要なことのようだ。
・『TAIVの4つの特徴  TAIVはどういう会社なのか。2017年7月に設立した同社は、「Discover what’s next for Toyota」を目的とするCVCである。規模は2億ドル(1号ファンド1億ドル+2号ファンド1億ドル)。主要な特徴について、伊藤氏へのインタビュー内容から、つぎの4点をまとめた。 ① スーパーアーリーステージへの投資(同社の主な投資対象は、エンジェル(投資家)ラウンドの次にあるシードラウンド(起業前・事業スタート直前)、シリーズA(事業開始後の初期段階)にある超アーリーステージのスタートアップ。 一般的な日系CVCは、シリーズB(ビジネスモデル確立後の成長期)ないしその以降のステージに投資することが多い。筆者が以前インタビューしたアメリカの投資家が言っていたように、「この日本の大企業が投資するならうちも投資する」という形で日本企業のCVCは後追いが多いとみられている。一方でTAIVは違う。同社はアメリカのVCらしく「種(技術シーズ)」をよく見極めて積極的に投資している。) ② 独立性が高い(他の日系CVCだと、自社のファンドを他のVCに預けて、そのVCに資金の運用、つまり投資を行ってもらう(LP、Limited Partner)ことが多いが、TAIVは2億ドルのファンドを、GP(General Partner)として自分で投資先を決める。 なお、投資決裁については本社の承諾が不要とのことだ。スカウトチームは5名で、内部のテックデューディリジェンス(技術評価)担当、トヨタ本社との調整担当、ファンドマネージャーなどで構成されるため、バランスよく投資先の評価ができる。このように独立性が高いため、2週間~3カ月で投資決定をするなど、シリコンバレースピードで進むことができるのだ。 TAIVは本社に稟議をはかったり、決裁を待ったり、細かいことまで調整するといった日本企業の現地法人にありがちなステップも不要だ。アメリカにあるCVCとして、有望なスタートアップを見つけ、効率よく投資案件を回すことができていると言える。 もちろん、トヨタ本社側にも、そこまでの覚悟があるともいえるであろう』、「一般的な日系CVCは、シリーズB(ビジネスモデル確立後の成長期)ないしその以降のステージに投資することが多い。筆者が以前インタビューしたアメリカの投資家が言っていたように、「この日本の大企業が投資するならうちも投資する」という形で日本企業のCVCは後追いが多いとみられている。一方でTAIVは違う。同社はアメリカのVCらしく「種(技術シーズ)」をよく見極めて積極的に投資している」、「投資決裁については本社の承諾が不要・・・2週間~3カ月で投資決定をするなど、シリコンバレースピードで進むことができる」、さすが大したものだ。
・『業界の変化の兆しもいち早く察知  ③ 投資目標に基づき投資先を厳選(将来トヨタのビジネスにつながることに重点を置いているため、業界に詳しい社員の推薦や同業他社評価を重視している。TAIVとTRIは、社員が多国籍で非常にアメリカ企業らしいが、その多国籍社員のネットワークでいろいろな国の注目企業の情報を入手している。デューディリジェンスの際も多様性が役に立つ。なお、CVCやAI関係の投資ファンドの世界は実は業界が狭く、同業者と親密であるため、比較的正確な情報を収集することができる。 ベンチャー企業を評価する際、破壊的テクノロジー、新ビジネスモデル、ROI(投資利益率)、スタートアップ自体の企業文化(以前のエンジェル投資家の記事『アメリカで活躍する「エンジェル投資家」の正体』にも書いているように、指導可能な会社かどうかは重要)などを重視するが、自力で経営させるため、マイノリティー投資を貫徹している。 ④ 長期シナジーを持ち、ハードウェアも育成(同社のポートフォリオは、10年スパンで他のVCとあまり変わらない期間だが、長期的に見てシナジーがある基盤を育成することも重視。道路、歩道、海上、航空などの交通・モビリティなど多岐にわたる分野で、AI、自動運転、ロボティクス、クラウド、データといった基盤技術を持つスタートアップ(例えば、シャトルバスの自動運転、スクーターのシェアサービス、船舶の自動運転、空飛ぶタクシー)への投資をしている。 数年で事業化を狙うというよりは、周辺領域への投資活動を通じて、将来、破壊的テクノロジーを持つ企業が出てきていないかなど、変化の兆しをいち早く察知しようとしているようだ。 ソフトウェアに比べ、ハードウェアの発展に時間もお金もかかるため、トヨタはそれを育てることに「責任」を感じている(伊藤氏)ようである。) こうした将来のトヨタを見据えたうえでの長期スパンの投資は、いずれ将来のトヨタに還元されるだろう。CVCの目的の1つである「企業の将来の成長のため」に合致しているといえる。 TRIやTAIVも、トヨタというブランドをもちながら、本社と「程よい距離感」を置くことにより、将来のトヨタないし社会の発展について、効果的に研究を進めていることがよくわかる。TRIが先端研究にフォーカスし、TAIVは最新技術を持つベンチャー企業への投資を通じて業界動向を見極め、そしてトヨタ本体は次世代の研究開発・量産開発をするというよい循環になっている』、「TRIやTAIVも、トヨタというブランドをもちながら、本社と「程よい距離感」を置くことにより、将来のトヨタないし社会の発展について、効果的に研究を進めている」、この「程よい距離感」がやはりカギで、下記の一般的な「日本のCVC」とは完全に異次元になっているようだ。
・『CVCは企業の長期戦略の中で重要項目  日本のCVCはさまざまな課題を抱えている。経産省の委託調査資料によると、「ファンドの形態を取っているが親会社がコントロール」する割合が高く、特に日本国内CVCの規模もパフォーマンスも高いとは言えない。 日本のCVCの多くがうまくいっていない原因は、投資目的が不明確、投資先の選定基準が難しいこと、本社決裁に時間がかかる(CVCと本社のコミュニケーションが円滑ではない)こと、ベンチャーキャピタリストのローテーション制度(CVCに出向する社員が2、3年で変わり、ノウハウ・コネなどの引継ぎが難しい)のため適材適所ができていないことと考えられている。国内でも海外でも積極的に投資してかつ成績がよい事例が少ない。 しかし、グローバルな競争環境のもとで自社ですべてのイノベーションを行うのが困難になってきた現在、CVCは企業にとって長期戦略を立てるうえで重要項目になってきている。TAIVはまだ新しいが、日本企業のCVCの好例として今後も注目していく価値を秘めているのではないだろうか』、「TRIやTAIV」といえども、本社から「ローテーション」で派遣されてくる人間もいると思われるが、その比重がプロパーの人間に比べ少ないのだろうか。

次に、3月29日付け東洋経済オンライン「グーグルに事業売った男が挑む「水道管」大問題 AIで劣化診断、シリコンバレー流が日本進出」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/340217
・『日本のベンチャーをグーグルが買収――。2013年の年末、一躍世界の脚光を浴びたヒト型ロボットのベンチャー企業「シャフト」。この売却を成功させたのが、当時最高財務責任者(CFO)を務めていた加藤崇氏だ。 東京大学大学院の博士課程でロボット研究をしていた中西雄飛CEOをはじめとするエンジニアたちは、ヒト型ロボット実用化の夢を描いていた。「彼らの情熱を支えたい」。銀行出身の加藤氏はシャフトに仲間入りした。 「世界を変えられる技術だとは思っていたが、おカネを出してくれる人がいなかった」。そう考えていた矢先に出会ったのが、スマホOS「アンドロイド」の生みの親として知られるグーグルのアンディ・ルービン氏だった。当時、グーグルでロボット開発のプロジェクトを率いていたルービン氏は、ロボット関連のスタートアップを矢継ぎ早に買収。シャフトもその1社だった』、加藤崇氏は、早稲田大学理工学部(応用物理学科)卒業。元スタンフォード大学客員研究員。東京三菱銀行等を経て・・・(Forbes JAPAN)、と理科系で米国留学経験もあったようで、納得した。
https://forbesjapan.com/author/detail/1451
・『シャフト売却後、「配管点検」に注目  シャフトの売却後、加藤氏は退社。新たな事業の立ち上げを模索するうちにたどりついたのが、「配管点検」だった。2015年にアメリカで会社を創業し、当初はロボットが配管の中を動き回って点検するビジネスの可能性を調査。いくつかの水道事業者が興味を持ったという。ただ中規模の都市でも水道管の長さは数千キロにも及ぶ。「ロボットでは限界がある」。そう考えた加藤氏は、ソフトウェアによる“寿命診断”に転換した。 こうして立ち上がったベンチャー企業「フラクタ」は、水道管の破損や漏水の可能性を、機械学習などの人工知能(AI)で解析するツールを提供する。世界初の試みだ。「水道管は土の中に埋まっているため、人間が掘り起こして状態を確認することができなかった」と、加藤氏は説明する。破損確率の高い水道管から更新することで、メンテナンスへの投資を効率化しつつ、配管の破損・漏水事故を最小限に抑えることができる。 鉄製の水道管の寿命は、実際は埋められている環境によって、60~180年の差があるという。従来は腐食の度合いにかかわらず設置年数に基づいて交換していたが、「掘り起こしてみるとまだピカピカだったということもよくある」(加藤氏)。 寿命を左右するのは、水道管と土との酸化反応で腐食によるさびがどれだけ起こるかということ。AI診断のアルゴリズムは、配管素材や使用年数、過去の漏水履歴といった水道管に関する情報と、水道管の周りの土壌や気候、人口など、独自に収集した1000以上の環境変数を含む膨大なデータベースによって構築されている。例えば配管の傾斜角度もその1つ。傾斜している水道管のいちばん下にある部分は、物理的に水圧がかかりやすい。 創業からわずか4年半で全米27州で60以上の水道事業者と契約にこぎつけた。日本でも川崎市上下水道局と2019年2月から実証実験を開始し、その後神戸市水道局、埼玉県越谷市・松伏町の水道企業団が続き、この3事業者では検証が完了。アメリカでの導入先と同様の有効性が確認された。この春から実際のツールの提供が始まる予定だ。このほか神奈川県企業庁や大阪市水道局などでの検証も進められている』、「「配管点検」に注目」、「「ロボットでは限界がある」。そう考えた加藤氏は、ソフトウェアによる“寿命診断”に転換した」、着目点と柔軟性は素晴らしい。
・『“シリコンバレー精神”で地元水道局が採用  最初にビジネスが始まったのは、フラクタが本社を置くシリコンバレーに近いサンフランシスコ市とオークランド市の水道会社だった。フラクタのツールは、水道会社が一般的に保有する5種類の水道管データ(位置情報、材質、口径、設置年月、破損履歴)をアルゴリズムに取り込めば、1つひとつの水道管の劣化状態を予測できる。導入を進めるためには、水道会社から自社のデータを提供してもらわなければならない。 「日本ではなかなかデータを出してくれない。だがシリコンバレーのカルチャーが根付いているこの2都市では、面白いから一緒にやってみようと言ってもらえた。そこから次から次へと導入が決まるドミノ現象が始まった」と加藤氏は振り返る。顧客のうち約20社はカリフォルニア州だ。「担当者がハイテク好きかどうかは重要。とくにカリフォルニアは進取の精神がある」(同)。 加藤氏が水道会社に売り込む際にアピールするのは、フラクタのソフトウェアの費用対効果だ。契約は年間の定額課金が基本。例えばフラクタの試算では、サンフランシスコ市は、従来の配管の平均寿命で考える方法とフラクタの方法を比較すると、水道管の更新費用を4割ほど減らせるとの結果が出たという。 アメリカには100万マイル(160万キロメートル)の水道管があり、フラクタはすでに全配管データの10%ほどを押さえたという。「3割くらいのデータを押さえれば、誰も追いつけなくなるのではないか」と加藤氏は考えている。 一方で加藤氏は、「僕らの半分のデータのサイズでより精緻な解析モデルを作ってくる人たちが出てくるかもしれない。それでもいい。僕らが暴れることで天才たちが競争相手として入ってくれば、技術が広まる契機となり、業界全体の配管更新が最適化される。水道料金は誰しもが払わなければならないもの。競争を促せば、今の半額になることだってありうる」と、興奮気味に語った』、「僕らが暴れることで天才たちが競争相手として入ってくれば、技術が広まる契機となり、業界全体の配管更新が最適化される」、との社会全体の視点からの割り切りは立派だ。
・『親会社の栗田工業と世界展開へ  アメリカで実績を残してきたフラクタは、世界進出ももくろむ。「自分たちだけでは限界がある」という加藤氏がタッグを組んだのは、国内水処理大手の栗田工業だ。 2018年に同社が40億円を出資し、フラクタの株式の過半数を取得。今後最大4年の間に完全子会社化される予定だ。「水道会社は地元に根付いた企業であることが多く、技術だけでは売れない。オフィスを構えて10年、20年が経つ栗田ブランドのほうが現地に入っていける」(加藤氏)。 シリコンバレーを生活の拠点とする加藤氏は、「イノベーションを起こすには、自分が世界を変えられると思っているかが大事。グーグルのアンディ・ルービンだってそうだった。シャフトはグーグルに売ったのではなく、アンディに売ったと思っている」と話す。 「ここの成功者たちは皆口をそろえて、小さく成功しても意味がない、本当に世の中がよくなるようなものを開発しなくちゃいけない、と言う。数%のテクノロジー業界のエリートたちに囲まれていると、いろいろなことを吸収できる。そういう系譜が脈々と続いている」(加藤氏) ここ日本でも事業が本格化し始めたフラクタは、2022年までに100以上の水道事業者にツールを導入する計画だ。シリコンバレー流のイノベーションは、日本の巨大インフラにも根付くか。まだ挑戦は始まったばかりだ』、「フラクタ」の今後が楽しみだ。

第三に、4月28日付け東洋経済オンライン「コロナが直撃!「ベンチャー投資バブル」の行方 リーマンショック時の「投資家淘汰」が再燃」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/347197
・『過去5年間で資金調達額が3倍近くに膨らんだ国内ベンチャー市場にも、コロナ不況の波が押し寄せようとしている。 調査会社INITIALによると、2019年の国内ベンチャー企業の資金調達額は4462億円と過去最高額を更新した。若い起業家が増えたことに加え、リスクマネーを供給するベンチャーキャピタル(VC)のファンドが大型化したことも大きい。ジャフコやグロービス・キャピタル・パートナーズなど、2019年は数百億円単位の大型ファンドの組成が相次いだ。 ところが新型コロナウイルスの感染拡大によって資本市場が混乱。日本やアメリカ、中国で3000億円以上のファンドを運営するVC大手「DCMベンチャーズ」の本多央輔日本代表は、「リーマンショックの時と同じく、ベンチャー企業に対する投資マネーは減っていくだろう」と指摘する。 これまでのベンチャー投資はVCに加え、事業会社やその傘下にあるコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)も有力な資金源だった。だが、「不景気になれば事業会社が最初に(ベンチャーとVC)投資から引いてくる」。国内独立系VCであるCoral Capital(コーラル・キャピタル)のジェームズ・ライニーCEOはそう話す』、確かに「事業会社」は景気悪化への備えとして手元流動性の維持を図る筈だ。
・『投資ファンドへの逆風が吹き始めた  ここ数年、VCが大型化した背景には、年金基金や生命保険などの機関投資家が、VCを有望な投資先と考え始めたことがある。上場株式や債券よりもハイリスクだがハイリターンを見込めるオルタナティブ(代替)投資の一環だ。2018年6月に東証マザーズに上場したフリマアプリのメルカリや、同年5月に同じくマザーズに上場したネット印刷のラクスルなど、大型上場が相次ぎ、多くのVCが高倍率のリターンを出したことが大きい。 ただ現状を鑑みれば、「機関投資家はオルタナティブ投資を一定の割合に設定している。ほかの資産の価値が下落すれば、相対的にオルタナティブの比率が上がってしまい、VCなどへの新規投資を絞ろうとする」(本多氏)という可能性はある。 実際、資金調達に向けてVCなどの投資家と交渉を進めていたあるベンチャー企業の社長は、「(当社への)投資を検討していたベンチャーキャピタルから、直前になって新たなファンドが組成できなくなったので見送りたいとの連絡が入った。1社抜けると、ほかの投資家が難色を示し始める」と頭を抱える。 2019年に7号ファンド(金額未公表、数百億円規模)の資金調達を終えた国内VC大手、グローバルブレインの百合本安彦社長は、「確かに様子見のVCは多いが、まだ投資が実行されていない分の資金は潤沢にあり、そこまで悲観することもない。われわれも投資委員会を継続的に開催しているし、企業価値が妥当な会社には粛々と投資していく」と話す。) 一方で強気なVCも少なくない。GMOインターネット傘下のVC、GMOベンチャーパートナーズは4月6日、約70億の既存ファンドの半分に当たる約35億円を「新型コロナ・リセッション投資枠」とすることを決めた。同社の宮坂友大パートナーは、「コロナの影響で不況になっても投資のペースを緩めないという姿勢を表明するため、社内で予算を確保した」と背景を説明する。 「不況下でこそイノベーティブで価値のある会社に投資する。10年ほどの長期で考えると、安値圏で株式を買っていることになる」(宮坂氏)。同社はリーマンショック後の不況の中で企業情報サービス「SPEEDA」を手掛けるユーザベースや、クラウド名刺管理のSansanに投資。当時は数億円の評価額だったが、上場後の今は両社とも時価総額が1000億円を優に超える。不況下で割安に投資すると、それだけリターンが大きいことも知っているわけだ』、「逆張り」で「不況下で割安に投資」しようとするところもあるのは当然だ。
・『成熟段階のベンチャー投資の動きも  GMOベンチャーパートナーズが投資対象としているのは、創業初期で事業の基盤を組み立てようとしている段階のベンチャー企業だ。「この段階で経営判断を一歩間違うと会社が潰れてしまうリスクがある。(だからこそ)このタイミングでの支援が必要になる」(宮坂氏)。発表後、数十社のベンチャー企業から問い合わせが来ているという。 事業基盤が確立してきて収益化が見えてきた「レイターステージ」のベンチャーへの支援の動きも出ている。グロービス・キャピタル・パートナーズは4月6日、既存投資先への追加投資という目的に絞った約40億円のファンド設立を発表。コーラル・キャピタルも4月13日、同様の目的で約27億円のファンドを立ち上げた。 「成長可能性のある会社に大型調達をしてもらって、事業を伸ばすことに集中してほしい。多額の調達をしようとすると、いろいろなファンドや事業会社から小口に集める必要があり、手間がかかる。さらにコロナの影響で調達の選択肢が減っているため、今回のような箱が重要になる。」(コーラル・キャピタルのライニーCEO)。 コロナ影響が顕在化する中で新ファンドを組成することになったが、「(機関投資家からは)われわれのファンドの実績を評価してもらっていたので、投資を渋る声はなかった」とライニー氏は言う。 コーラル・キャピタルが創業初期に投資した人事労務のクラウドサービスを手掛けるSmartHR(スマートHR)は、2019年夏に60億円超の大型調達を実施し、評価額が300億円を超えるなど大きく成長した。VCの間でも実績の差がますます顕著になりそうだ。) 「ベンチャー企業はふるいにかけられる時期になった。経営者の資質が問われるようになる」 グローバルブレインの百合本社長はそう指摘する。百合本氏は2019年から不景気になることを見越し、投資先に対して不況に備えるよう警鐘を鳴らしてきたという。「リーマンショックは金融危機だったが、今回は全産業に影響が及んでいる。一層谷が深くなる可能性がある」(同)。 GMOベンチャーパートナーズと組んで、ベンチャー企業に経営面の助言を提供するマネーフォワード・シンカの金坂直哉社長は、「決まっていた資金調達がなくなり、VCだけでなく、事業会社の投資がなくなったという話も聞く。平時とは違って“Cash is king(現金こそ王様)“だ。会社を筋肉質にするいいタイミングだと思う」と話す』、「リーマンショックは金融危機だったが、今回は全産業に影響が及んでいる。一層谷が深くなる可能性がある」、「“Cash is king“」、その通りだろう。
・『できれば18カ月分の資金確保を  ベンチャー企業の資金繰りに関してDCMベンチャーズの本多氏は、「とにかくランウェイを確保することが重要だ」と指摘する。ランウェイとは、売り上げが立たなくとも、手持ちの現預金で事業を回せる期間のことだ。「ランウェイは最低12カ月分、理想は18カ月分確保する必要がある。資金調達は準備から着金まで最低半年かかる。18カ月分の資金があれば、1年はお金を気にせずに事業に専念できる」(本多氏)。 GMOの宮坂氏は今回、投資の基準を見直し、不況でも生き残れる経営者かどうか、コストを厳格に管理できるかなど、10項目を新たに設定。投資する事業内容としては、「(IT系の中でも)生産性やデジタル化率が低い領域に目を付けているかどうかが大きなテーマだ。皆の生活になくてはならないものであるべき。“なくてもいいよね”では意味がない」(宮坂氏)。 景気が安定し、多くの大企業でカネ余りが顕著となっていたこの数年、ベンチャー企業に投資マネーが流れ込んだ。その裏では「バブルになっている」との声も少なくなかった。コロナショックという大逆風の中で、ベンチャー企業も投資家も、その実力が厳しく問われることになりそうだ』、「ベンチャー」「バブル」崩壊で、「実力」による整理淘汰が進むことは長期的には必要なことのようだ。
タグ:ベンチャー 東洋経済オンライン TRI (その6)(トヨタが米国で手がけるベンチャー投資の実像 米国の研究所「TRI」子会社が発揮するCVCの意義、グーグルに事業売った男が挑む「水道管」大問題 AIで劣化診断 シリコンバレー流が日本進出、コロナが直撃!「ベンチャー投資バブル」の行方 リーマンショック時の「投資家淘汰」が再燃) 劉 瀟瀟 「トヨタが米国で手がけるベンチャー投資の実像 米国の研究所「TRI」子会社が発揮するCVCの意義」 アメリカのCVCは規模(日本の13倍の265億ドル)も大きく、件数(日本の3倍の1046件)も多い 特にカリフォルニア州はアメリカの中でCVC投資を最も活発に行っているところで、投資金額も投資件数もアメリカ全体のほぼ半分を占めている TAIV Toyota AI Ventures 設立から3年弱ですでに27社に投資 ToyotaResearchInstitute 親会社からもトヨタからも「自由」 TAIVは、トヨタが出資している研究所であるTRIが2017年に設立した100%子会社 「敢えて」自動車メーカーのトヨタを強調せず、比較的「自由(独立・自律の意味をする)」に研究開発を行う「ローカル」な研究所だ 14人の経営陣の中で日本本社からの常駐取締役は木田淳哉氏のみ TRIはトヨタの子会社というよりも、自動運転技術の開発競争が激化する中で、アメリカで研究を行い、世界中から人材を集めようとしている TAIVの4つの特徴 ① スーパーアーリーステージへの投資 ② 独立性が高い 投資決裁については本社の承諾が不要 2週間~3カ月で投資決定 業界の変化の兆しもいち早く察知 ③ 投資目標に基づき投資先を厳選 ④ 長期シナジーを持ち、ハードウェアも育成 「程よい距離感」 CVCは企業の長期戦略の中で重要項目 「グーグルに事業売った男が挑む「水道管」大問題 AIで劣化診断、シリコンバレー流が日本進出」 日本のベンチャーをグーグルが買収 「シャフト」 当時最高財務責任者(CFO)を務めていた加藤崇氏 シャフト売却後、「配管点検」に注目 「フラクタ」 「ロボットでは限界がある」。そう考えた加藤氏は、ソフトウェアによる“寿命診断”に転換した “シリコンバレー精神”で地元水道局が採用 親会社の栗田工業と世界展開へ 「コロナが直撃!「ベンチャー投資バブル」の行方 リーマンショック時の「投資家淘汰」が再燃」 リーマンショックの時と同じく、ベンチャー企業に対する投資マネーは減っていくだろう 投資ファンドへの逆風が吹き始めた 不況下で割安に投資 成熟段階のベンチャー投資の動きも リーマンショックは金融危機だったが、今回は全産業に影響が及んでいる。一層谷が深くなる可能性がある “Cash is king“
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ロボット(その2)(「aibo」復活は正解だった 生みの親ソニー川西氏が語る、ファナック「黄色の最強軍団」が迫られる転換 かつて40%を誇った営業利益率は右肩下がり、販売1万台突破の「マッスルスーツ」 コロナの影響で新たなニーズも) [イノベーション]

ロボットについては、2018年11月27日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(「aibo」復活は正解だった 生みの親ソニー川西氏が語る、ファナック「黄色の最強軍団」が迫られる転換 かつて40%を誇った営業利益率は右肩下がり、販売1万台突破の「マッスルスーツ」 コロナの影響で新たなニーズも)である。

先ずは、昨年4月30日付け日経ビジネスオンライン「「aibo」復活は正解だった、生みの親ソニー川西氏が語る」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00005/042300021/?P=1
・『2018年1月、12年ぶりに復活したソニーのイヌ型ロボット「aibo(アイボ)」。19年3月には、新たに見守りサービスを始め、幅広い世代への普及に向けて動き始めた。新aiboはこの1年をどう歩み、今後どう進化していくのか。開発責任者であるソニーの川西泉執行役員に聞いた(Qは聞き手の質問)。 Q:「aibo」の発売から1年あまり。今年3月には見守りサービス「aiboのおまわりさん」が始まりました。川西さん自身、どのような手応えを感じていますか。 ソニー執行役員の川西泉氏:2017年11月1日の発表から翌年1月11日の発売を経て、ここまでは順調に来たなと。お客様からの反応も良く、いろんな熱い言葉もいただきます。そういう面では励みになっています。発売から1年以上がたちましたが、「aibo」という形でロボティクスの商品を出したのは間違っていなかったと感じています。 台数としては昨年7月時点で2万台に到達しており、その後も順調です。エンターテインメント向けのロボットとして、ある程度の認知度を得ているのかなと感じています。ロボットは一時的に話題になってもなかなか続かないことが多い。aiboは過去の経緯もあり、受け入れられたのかなと思います』、「旧「AIBO」」は1999年から2006年まで全世界で15万台を売上げるヒットとなったが、2004に井出会長から撤退命令が出て、ストリンガーCEOがエレクトロニクス部門リストラの一環として生産終了。ほぼ10年ぶりにより犬らしくなって復活したようだ。
・『女性からの支持が多い  Q:新aiboはどういった方に支持されていますか。旧「AIBO」時代からのファンも多いのでしょうか。 川西氏:確かに旧AIBO時代からのファンもいらっしゃいますが、大半は新規購入の方です。年代別に見ると比較的ばらけていますね。10~20代は少ないのですが、30代から70代まで比較的バランスよく購入していただいています。 かわいがっている主たる方は女性が多い気もします。発売後に何度かファンミーティングを開催していますが、参加されるのは半数以上が女性ですしね。(ロボットという商品が)女性に受け入れられているのはとてもありがたいですね。 Q:女性ファンが多いのは、旧AIBOからデザインが一新されているのが奏功したのでしょうか。 川西氏:過去の男女比率はデータとして残っていませんが、旧AIBOは技術を前面に押し出したメカメカしいデザインでした。今回のaiboは、より少し親しみやすいデザインにしたので、女性に受け入れられやすいのかなと。これは狙い通りですね。 Q:発売後に想定外だったことはありますか。 川西氏:想定外というか、こちらが考えている以上にユーザーのaiboへの思いの強さを感じます。ソニーの従来のAV商品への接し方と、aiboへの接し方は違う。分かりやすく言えば「ウチの子」になっています。AV商品にはなかなかウチの子とは言いませんからね。aiboは単純なハードウエアの商品ではないんですよね。) Q:ソニーのAV商品はウォークマンを筆頭に、ユーザーが「らしさ」や「思い入れ」を持っていると思います。それでもaiboは他の商品とは違いますか? 川西氏:確かに思い入れは、これまでのソニー商品にも抱いていただきましたが少し違うのかなと。aiboの場合、モノに対する思いではなく、生き物への感情に近い。単純にモノ作りと言い切れない部分もある。それは、消費者の期待値でもあるので、裏切ってはいけない部分ですね。 メカニカルな技術に加えて、AI(人工知能)のような最先端技術を組み合わせているので、エンジニアとしても興味深い商品です。これまでだとロボット単体で出していましたが、そこにサービスを組み合わせる。クラウドを含めて最初から用意したのも今までとは違います。 ただ、こうした要素はあくまでも技術的、ビジネス的な観点での違いです。ユーー目線ではやはり、ある意味で生き物として接していただいたのが大きいと思います』、「女性からの支持が多い」、「接し方は・・・「ウチの子」になっています」、まるで本物の犬のようだ。
・『過去の経験から「できる」と思った  Q:aiboの開発責任者として苦労したことはありますか。 川西氏:開発期間も短かったので、サクッと進めた感じですね。ですので個人的には大変だとは思わなかった。技術的なチャレンジを含めて面白そうだとは思いましたしね。チャレンジングでしたが、過去の経験からこうすればできるだろうという思いもありました。 Q:開発時に旧AIBOとの比較はあったのですか。 川西氏:過去と比較することはあまりなかったですね。(製造中止は)10年以上前なので技術も進化していますしね。 ただ旧AIBOのDNAが何なのかは意識しました。以前に購入していただいた方も多いですし、期待値が高いことは理解していましたから。期待を裏切らないようにはしたいと思いましたね。 Q:旧AIBOのDNAは何だったのでしょうか。 川西氏:やはり四足歩行のペットなんですよね。その中でのふるまいとして、リアルな動きを求めていたと思います。 さらに旧AIBOは、ピンクのボールに反応するなどいくつかの「お約束」がありました。こういった部分は意識的に踏襲しようとは決めました。 Q:方向性が固まると後は悩むことはなかったと? 川西氏:そうですね。当然、細かい部分はいろいろありましたが、割とセオリー通りに開発は進みましたね。そう言うと簡単に聞こえますが、現場はもちろん大変だったと思います。例えば「目」の表現一つでもエンジニアは最新技術の導入を最後まであきらめませんでしたしね。 Q:新aiboは売り切るのではなくサービスでも儲(もう)ける「リカーリングビジネス」を志向しています。ソニー全体が志向するビジネスですが、意識はあったのでしょうか。 川西氏:意識して「やるぞ」というよりも、そうするのが自然でしたね。 ハードを売るという考えは開発当初からそもそもなかったですから。体験をいかに売るかを考えていました。楽しんでいただくためには、売り切りの値付けではなく、サービスで対価をいただくという流れでしたね。) 川西氏:ビジネスモデル的には「リカーリング」という表現は否定しませんが、実際にペットを飼えばエサ代もトリミング代もかかります。そういった生活に入っていくことを考えると(リカーリングの導入は)自然なんですよ。 つまり、aiboと共にする時間を買っていただく。そのための費用を受け入れてもらうかどうかです。新しいビジネスモデルを作るというよりは体験を重視した結果です』、「売り切るのではなくサービスでも儲(もう)ける「リカーリングビジネス」を志向しています」、「対価」を取れるほどの「サービス」があるのだろうか。
・『最後まで現場は粘った  Q:川西さん自身、aibo開発中に一番印象に残っていることは。 川西氏:何ですかね……。完成度を高めようとチームで頑張ったのは間違いない。ただ時間が迫ってくると現場は焦りますよね。自分の中ではギリギリまで頑張れるチームを作ったので焦りはありませんでしたが。普通だったらどこかで妥協しますが、本当に発売直前のギリギリまで現場は粘りました。 現場のメンバーからすると「まだやるの?」と思ったかもしれません。ですが完成度が高くないと、「思い」は伝わりませんから。出し切っている踏ん張りの境界線をどこで区切るのか。開発責任者としては線引きをどこにするかが重要でした。僕自身、これまでソニーでエンジニアとして同じような経験をしているので、責任者として意図的にギリギリを狙いました。もちろんギリギリに耐えられるメンバーを集めていたからできたことですが。 Q:メンバーが応えてくれることで違う世界が見えてくると? 川西氏:そうですね。出し切れる、想像以上に持っていくという感覚は体験しないと分からない。そこはかなり意識していましたね。現場のエンジニアとの議論で「こうあるべきだ」という部分がずれることはなかった。妥協するか、最後までやりきるかで、送り出される商品の姿は変わります。 しかも一度こうした経験をすれば、次もまた挑戦できるようになります。経験を積み重ねることがDNAになっていくと思うので、意識して指示していたと思います。 Q:こだわり抜いて誕生したaiboはやはり100点でしょうか。 川西氏:サービスを前提にしているので100点ではないですね。完成した時点では100点だったと思いますが、日々進化していきますので。数年先を見据えて開発は進めていますからね。 Q:進化と言う点では3月に見守りサービスが始まりました。 川西氏:見守りや教育の分野で生かすアイデアは当初からありました。拡張性を見越したハードのスペックにしていますね』、「進化と言う点では3月に見守りサービスが始まりました・・・拡張性を見越したハードのスペックにしています」、「教育」にも拡張するのだろうか。
・『3月には見守りサービスを開始した  Q:始まったばかりですが見守りサービスの反響はどうですか? 川西氏:見守りもそうですが、ファンミーティングの声などを聞くと、新しいサービスを使ってみたいというお客様は多い。見守りサービスの場合、遠隔地などに住んでいる方からの需要はあると思いますが、まずはaiboが新しい動きをするので試してみたいのだと思います。 Q:こういったサービスはこれからも導入していくのでしょうか。 川西氏:大なり小なり入れていかないとダメでしょうね。aiboは生活の中で一緒にいるので、継続的な進化は必要です。いくつかネタは仕込んでいて、年間で何をやるかは決めています。新しい機能も当然考えていますよ』、「ファンミーティング」はユーザーの生の声を聞ける貴重な機会のようだ。
・『重要なのは頭脳  Q:今回のaiboはサービスを含めてどれくらいの期間の展開を考えていますか。 川西氏:aiboという商品・サービスは長いスパンで見ています。ですが構成する部品やサービスが同じレンジで用意できるかは考える必要がある。クルマの部品のように10年間担保されるわけではないので、どう対応していけるかがポイントになってきます。すべての部品をソニーが手掛けているわけじゃないですからね。  どうしても作れなくなった際には、新たなモデルを考えないといけない。ハードとしてスペックを上げたほうが新たなサービスを提供できるのであればモデルチェンジもありえます。 ただ「生き続けるもの」としてとらえられているので、重要なのは頭脳になってくるでしょう。今の構成だとすべてクラウドにあるのでその中で継承できるかなとは思います』、「重要なのは頭脳」だが、「すべてクラウドにある」、この面では拡張性に富んでいるようだ。

次に、本年3月21日付け東洋経済オンライン「ファナック「黄色の最強軍団」が迫られる転換 かつて40%を誇った営業利益率は右肩下がり」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/337718
・『富士山のふもと、山梨県忍野村。目の前に広がる工場群の外壁からロボット、社用車、従業員の制服などすべてが黄色に染まっている。これを戦いの色としている「黄色の最強軍団」がファナックだ。 目立つのはコーポレートカラーだけではない。工作機械の「頭脳」である数値制御(NC)装置の世界最大手であり、産業用ロボットでも世界4強の一角を占める。まさに自動車などあらゆる製造業を支える大黒柱だ。さらに一時は営業利益率が4割を超え、自己資本比率は約9割と超高収益・好財務の優等生企業と持ち上げられてきた。 しかし、業界では最近、「ファナックが普通の会社になってきている」と話題だ。それが象徴的に表れたのが昨年12月に開かれたロボットの展示会だった。ファナックが展示ブースの端で、黄色ではなく「白いロボット」を展示したのだ』、「超高収益・好財務の優等生企業」が「普通の会社になってきている」、とはどういうことだろう。
・『かつての利益率には戻らない  このロボットは安全柵を必要とせず人間と同じ空間で作業できる協働ロボット。食品業界などロボットの導入事例が少ない市場に向け、より高い扱いやすさを訴求しているのが特徴だ。 ファナックはこれまで自動車のプレスや溶接などに使われる大型で頑強なロボットでシェアを獲得して稼いできた。 だが、今回は食品製造など向けに清潔感のある白色に変え、今後は積極的にアプローチしてこなかった小粒な案件も取りに行くつもりだ。あるロボットメーカーの開発者は「ファナックがついに協働ロボットに本気を出してきた」と驚く。 ファナックが色を変えてまで協働ロボットに向かうのは業績の落ち込みへの危機感があるからだ。かつてはキーエンスに次ぐ驚異的な利益率だったが、2019年度の予想は15.9%と業界平均程度まで落ち込む見通しだ。 米中貿易摩擦や自動車市場の低迷の影響を受けたとはいえ、ファナックの山口賢治社長は、10月のアナリスト向け決算説明会で「以前ほどの利益率はもう出ない」と発言。社員からも「ファナックが高収益の会社なんて過去の神話」という声が出る。 背景には「スマホ特需」の剥落がある。iPhone新製品が投入されるたびに金属製筐体を加工する小型切削加工機がEMS(電子機器の受託製造)向けにバカ売れした。だが「加工機はだいぶ行き渡っているので今後は爆発的な需要は見込めない」(山口社長)。 要因はそれだけではない。収益柱だったNC装置を含むFA(ファクトリーオートメーション)部門の売り上げが伸びていないのだ。 ファナックはNC装置を日本の民間企業で初めて開発し、工作機械に組み込む「デファクトスタンダード(事実上の標準仕様)」を作り上げた。その標準品を大量生産し、国内やアジアでは圧倒的なシェアと利益率を達成したのだ。 しかし近年、三菱電機や独シーメンスが手がけるNC装置の競争力が高まっているほか、中国企業も参入するなど他社の追い上げが厳しい。さらに、欧州でもシーメンスの牙城を切り崩せずにいる。ある業界関係者は「ファナックの黄金期は過ぎた」と切り捨てる。 だが、ファナックも手をこまぬいているわけではない。次なる成長柱として注力するのがロボットだ。 2016年3月期にはロボット部門がFA部門の売上高を逆転。ファナックのロボットは自動車分野ではかなりのシェアを持つとみられる』、「次なる成長柱として注力するのがロボットだ」、といっても「自動車分野」では成長の余地があるのだろうか。
・『小型ロボットの差別化は難しい  さらに2019年末に発表した前述の白いロボットは「ロボットの売り上げを現状から一段上げるための1つのカギ」(山口社長)と位置づける。 こうした協働ロボットではデンマーク・ユニバーサルロボットが市場の半分超を握り、参入企業も相次ぐが、ファナックの山口社長は今年春以降に量産化し、「製品の信頼性や保守サービスなどの強みを生かしてシェアを獲得する」と鼻息は荒い。 ただ、自動車向けの大型ロボットよりも今後需要の増加が見込まれる小型ロボットの単価は低く、デファクトを築いたNC装置と比べて差別化が難しい。 さらに、あるロボットメーカーの首脳は「われわれは顧客ごとにニーズを細かく先読みしてきたが、ファナックはこれまで標準品でシェアを取ってきた」と指摘。ファナックの今までの方法では新規分野で簡単にシェアを取ることは難しいとみる。 売り先が変わるだけではない。売り方も変える必要がある。「ロボットの競争領域は精度やスピードなど技術的な性能向上から、いかに簡単に使えるかということへ移ってきている」(業界関係者)からだ。そこではオープン化や脱自前主義がカギを握っており、秘密主義で顧客を囲い込んできたファナックも転換を迫られている』、「これまで標準品でシェアを取ってきた」「ファナック」が、他社のように「顧客ごとにニーズを細かく先読みして」いくというのは並大抵の努力では済まないだろう。
・『カギを握る「フィールドシステム」  2015年にはAI(人工知能)で有名なプリファードネットワークスと協業し、AIによる製品の故障予測などのソフト開発を進めている。ファナックの稲葉善治会長は「今までは工作機械やロボット単体で何ができるかという話だったが、そう単純ではなくなってきている」と指摘する。製品を組み合わせたシステム全体で、顧客の生産性向上などの課題解決にどれだけ貢献できるかが重視されるからだ。 その中核となるのが、ファナックが2016年から展開する製造業向けIoT(モノのインターネット)基盤の「フィールドシステム」だ。機械から稼働データなどを収集してエッジ(機器側)で即時処理し、生産効率の改善などに役立てる。 だが、「顧客に価値が浸透しておらず、フィールドシステムがあるからファナック製品を買うとはなっていない」(ファナック社員)。山口社長も「今は産みの苦しみ」と指摘し、収益化には時間がかかるとみられる。 王者ファナックの模索はしばらく続きそうだ』、「フィールドシステム」が「顧客」に評価され、差別化できるか否かが注目点のようだ。

第三に、編集・ライターの野口直希氏が4月13日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「販売1万台突破の「マッスルスーツ」、コロナの影響で新たなニーズも」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/234262
・『服の上から装着することで、生身では出せない力を発揮できる「パワードスーツ」。SFや近未来の夢の中のものと思われてきた装置だが、近年は介護や工場、農作業といった身近な現場でも使われるようになっている。3月、ゴムチューブ製の人工筋肉を使用したパワードスーツを開発・販売するイノフィスは、同社の製品「マッスルスーツ」の合計出荷台数が1万台を突破したことを発表した。「現場で使われるパワードスーツ」を開発し、普及させた同社の戦略とは』、「パワードスーツ」の利用分野は大きそうだ。
・『シートベルトのように身に着けるだけで、重労働をラクに  イノフィスが2019年11月に発売した量産型パワードスーツ「マッスルスーツEvery(以下、Every)」は、作業時の身体への負担を軽減する装着式のアシストスーツだ。ゴムチューブでできた人工筋肉の働きで、重いものを持つ際の腰の負担を軽減してくれる。 Everyは人工筋肉を搭載した背面の「背中フレーム」と太ももを支える「ももフレーム」、2つのフレームをつなぎ、腰椎の部分に位置する「回転軸」で構成される。背中のフレームと回転軸に固定された人工筋肉にポンプで空気を送り込むことでチューブが引っ張られ、背中部分に「元に戻ろうとする力」が発生。最大約25.5kgの力で背中を引っ張るので、重いものを持ったときはもちろん、中腰を維持する際にも上半身を支える役割を果たす。 駆動源はポンプで送り込む圧縮空気だけで、電源などは不要だ。スーツ自体の重さは3.8kgなので、未使用時にもそこまで重さを感じない。リュックサックのように背負ってベルトを締めるだけと着用も簡単で、所用時間は10秒程度だ。 日本製の競合商品には、パナソニックの「パワーアシストスーツ」や、サイバーダインの「HAL」など電動のものが中心。ポンプで空気を入れれば使用できるEveryは、仕組みも単純で、高齢者でも迷わず操作しやすい。 Everyには、ももとパッドの間にゆとりがあって動きやすいソフトフィットモデルとホールド力が高く少し屈んだ状態でも補助力がかかるタイトフィットモデルがあり、いずれも価格は14万9600円(税込)。発売から約4カ月の3月2日時点で、Everyは6000台以上を出荷し、イノフィスのマッスルスーツ全体では出荷台数が1万台を突破したという』、「ポンプで空気を入れれば使用できる」、同社のHPによれば、小さな「ポンプ」で30~40回空気を入れれば済むので、簡便なようだ(下記)。
https://musclesuit.co.jp/howto/
・『「夢のようなロボット」ではなく、現場の問題を解決する「人のためのロボット」  イノフィスは2013年に設立された、東京理科大学発のスタートアップだ。2019年12月にはハイレックスコーポレーション、Fidelity International、ブラザー工業、フューチャーベンチャーキャピタル(ロボットものづくりスタートアップ支援ファンドによる引受)、ナック、TIS、東和薬品、トーカイ、ビックカメラなどから総額35億3000万円の調達を実施しており、これまでの累計調達額は49億4100万円にのぼる。出資企業のひとつであるナックが運営するウォーターサーバーサービス「クリクラ」でも、ボトルの運搬などの作業時にイノフィスのマッスルスーツが使用されているという。 2000年から東京理科大学で人工筋肉を使用したウェアラブルロボットを研究している小林宏氏(現取締役)がイノフィスを創業したのは、民間の訪問介護業者からの依頼がきっかけだった。 訪問介護では、移動式の浴槽に入れるなど、寝たきりの患者を抱え上げるような場面が多々ある。肉体的な辛さから、多くのスタッフは50歳を迎える前に辞職してしまうのだという。「こうした課題を解決するために、立ち上げられたのがイノフィスです」と代表取締役社長 執行役員CEOの古川尚史氏は説明する。 「イノフィスが目指すのは、『人のためのロボット』を生み出すこと。一般的に大学発スタートアップというと技術ありきの企業だと想像されがちですが、イノフィスは現場の声を聞いて訪問介護従事者の課題を解決するために技術を結集させました。現在、弊社ではいくつかの製品を開発していますが、いずれも現場で作業に従事するエンドユーザーとともに開発しています」(古川氏) イノフィスでは、依頼主に対してコンサル料や製品の開発費用を一切請求せず、完成品の購入時に初めて料金をもらうようにしている。もちろん1社だけで開発コストを回収することはできないが、古川氏はそれでもこのやり方に自信を持っている。 「現場のニーズに即した製品はきっと市場で広く評価される。実際、当初は介護現場向けに開発したマッスルスーツが、いまでは建設現場や工場、農場など、重労働で若者人口が不足しているあらゆる業界で活用いただいている。『現場を支援したい』という小林先生の思いと、ビジネスを成立させるための方法論が両立した結果が実を結んだのだと思っています」(古川氏)』、「弊社ではいくつかの製品を開発していますが、いずれも現場で作業に従事するエンドユーザーとともに開発しています」、地に足が着いた着実な「開発」姿勢は評価できる。
・『“浜ちゃん”起用CMでブランドイメージの転換図る  2017年から年に一度のペースで新型マッスルスーツを発売していたイノフィスだが、2019年に発売したEveryは1カ月あたり約2000台のペースで出荷されている。1カ月20台程度の出荷ペースだった初期モデルと比べると、大幅な拡大だ。 最大の理由は、低価格化だ。Everyの基本構造は既存モデルと同じだが、これまでアルミだったボディ部分を樹脂による一体整(注:正しくは「成」)形にすることで部品点数を減らし、生産コストを大幅に削減したという。前述の通りEveryの価格は15万円以下で、前年発売のモデルと比べると約7割も安くなっている。 Everyの販売開始に合わせて、芸人のダウンタウン・浜田雅功さんを起用したテレビコマーシャルでのプロモーションも行い、マスへのリーチを狙った施策を展開しているイノフィス。古川氏は、「これまでのヒアリングに基づき、標準的なPCくらいの値段になれば一気に普及すると見込んだ戦略だ」と説明する。 マスへのプロモーションの際に意識したのは認知度向上ではなく、マッスルスーツを着用する人のイメージ向上だという。テレビコマーシャルでは機能の説明などは一切なく、マッスルスーツを着て“いい人”になった浜田氏が次々と人助けをするストーリーが展開される。 「営業で現場の方にお話を伺っていると、『マッスルスーツを着けると馬鹿にされる』という声がよく出ました。腕っぷしが強い人たちが集まる環境で、『マッスルスーツ=弱い人が着るもの』というイメージが形成されていたんです。そうではなく、マッスルスーツは人を助ける“いい人”が着るものだと思ってほしい。低価格化とコマーシャルで、マッスルスーツが人手不足で困っているあらゆる現場で選択肢になれば」(古川氏)』、「Everyの価格は15万円以下」と手頃なので、認知度向上につれ販売は大きく伸びる可能性が強いだろう。
・『潜在需要は全世界の腰痛に悩む人々、コロナ禍も好機に  新型コロナウィルスが猛威を振るう中でも、「マッスルスーツ市場に大きな影響はない」と古川氏。むしろ、海外からの実習生が入国できなくなったことで、既存のメンバーで重作業をしなければならず、ニーズが高まっている場所もあるくらいだという。 今後は国内だけでなく、海外展開も見据えた生産体制を整備していく。また、まだ詳細は明かせないが医療分野での新製品も開発中だという。 「全世界の腰痛に悩む人々が、マッスルスーツの潜在顧客です。腰に何らかの痛みを抱えている人は、日本では全人口の4分の1にあたる約2800万人。こうした人々の日常生活を少しでも楽にすることが、私たちの願いです」(古川氏)』、「海外」に競合メーカーがあるのかも知りたいところだが、いずれにしろ「腰痛に悩む人々」にとっては朗報のようだ。
タグ:ロボット 東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 見守りサービス (その2)(「aibo」復活は正解だった 生みの親ソニー川西氏が語る、ファナック「黄色の最強軍団」が迫られる転換 かつて40%を誇った営業利益率は右肩下がり、販売1万台突破の「マッスルスーツ」 コロナの影響で新たなニーズも) 「「aibo」復活は正解だった、生みの親ソニー川西氏が語る」 イヌ型ロボット「aibo 開発責任者であるソニーの川西泉執行役員 昨年7月時点で2万台に到達 エンターテインメント向けのロボット 旧「AIBO」 全世界で15万台を売上げる エレクトロニクス部門リストラの一環として生産終了 女性からの支持が多い 「ウチの子」になっています 過去の経験から「できる」と思った 最後まで現場は粘った 拡張性を見越したハードのスペックにしています 3月には見守りサービスを開始した 重要なのは頭脳 すべてクラウドにある 「ファナック「黄色の最強軍団」が迫られる転換 かつて40%を誇った営業利益率は右肩下がり」 数値制御(NC)装置の世界最大手 産業用ロボットでも世界4強の一角 時は営業利益率が4割を超え、自己資本比率は約9割と超高収益・好財務の優等生企業 「ファナックが普通の会社になってきている」 かつての利益率には戻らない 背景には「スマホ特需」の剥落 iPhone新製品が投入されるたびに金属製筐体を加工する小型切削加工機がEMS(電子機器の受託製造)向けにバカ売れした。だが「加工機はだいぶ行き渡っているので今後は爆発的な需要は見込めない 次なる成長柱として注力するのがロボット 小型ロボットの差別化は難しい われわれは顧客ごとにニーズを細かく先読みしてきたが、ファナックはこれまで標準品でシェアを取ってきた カギを握る「フィールドシステム」 野口直希 「販売1万台突破の「マッスルスーツ」、コロナの影響で新たなニーズも」 「パワードスーツ」 シートベルトのように身に着けるだけで、重労働をラクに 日本製の競合商品には、パナソニックの「パワーアシストスーツ」や、サイバーダインの「HAL」など電動のものが中心 ポンプで空気を入れれば使用できるEveryは、仕組みも単純で、高齢者でも迷わず操作しやすい 「夢のようなロボット」ではなく、現場の問題を解決する「人のためのロボット」 弊社ではいくつかの製品を開発していますが、いずれも現場で作業に従事するエンドユーザーとともに開発しています “浜ちゃん”起用CMでブランドイメージの転換図る Everyの価格は15万円以下 潜在需要は全世界の腰痛に悩む人々、コロナ禍も好機に 「腰痛に悩む人々」
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自動運転(その4)([議論]トヨタは10年後も世界のリーダーでいられるか  File 3 「自動運転業界」(第4回)、自動運転車は誰を犠牲にすべき?究極の思考実験「トロッコ問題」とは、なぜトヨタは富士にイチから「自動運転実験都市」を作らなければならないのか) [イノベーション]

自動運転については、昨年7月6日に取上げた。今日は、(その4)([議論]トヨタは10年後も世界のリーダーでいられるか  File 3 「自動運転業界」(第4回)、自動運転車は誰を犠牲にすべき?究極の思考実験「トロッコ問題」とは、なぜトヨタは富士にイチから「自動運転実験都市」を作らなければならないのか)である。

先ずは、昨年6月25日付け日経ビジネスオンライン「[議論]トヨタは10年後も世界のリーダーでいられるか  File 3 「自動運転業界」(第4回)」を紹介しよう。
・『現在の議論のテーマ  「自動運転業界」を深掘りする当連載もいよいよ最終回。今回は、自動車業界の未来予想図について議論します。出演者4人の議論を踏まえて、コメント欄に自由に書き込み、ぜひ皆さんで議論してください。 各業界をよく知る第一線のゲストに話を聞きながら、今後、その業界がどう変わっていくかを探る連載「入山章栄・安田洋祐の業界未来図鑑」。入山章栄氏は早稲田大学ビジネススクール教授。 安田洋祐氏は大阪大学経済学部准教授。 第3回シリーズ(File 3)では、モビリティーの新たなサービスやプロジェクトに積極的にかかわるDeNAの中島宏常務執行役員オートモーティブ事業本部長とアーサー・ディ・リトル・ジャパンのパートナーで自動車業界・自動運転業界に精通している鈴木裕人氏をゲストに招き、自動運転業界についての議論を展開中。 最終回の議題は「自動運転で自動車業界はどう変わるか」。自動車メーカーを中心に回ってきた自動車業界だが、自動運転化やMaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス)の進行によって、巨大IT企業や新興企業がキープレーヤーとして存在感を増しつつある。果たして日本の自動車メーカーや部品メーカーは10年後も生き残ることができるのか。大胆に将来像を語り合った。 安田:「入山章栄・安田洋祐の業界未来図鑑」、このシリーズでは自動運転を取り上げています。今回は自動運転によって自動車業界はどう変わっていくのかについて、お話をお聞きしたいと思います』、興味深そうだ。
・『入山:なんといっても自動車は日本のものづくりを支える一大産業。今後、どうなるのかに関心を持つ方は多いですよね。 安田:読者の方から質問もたくさんいただいています。ご紹介しましょう。人生のらりくらりさん。「自動運転車になったら車を所有する人は減るのかな?」という質問です。サービス化が進むと、個人は自動車を所有しなくなるのかということですが、いかがですか。 鈴木:私は「持ち家に住むか、賃貸に住むか」という選択に近いと思っていて。住宅を考えてみても、みんなが持ち家でもなければ、みんなが賃貸でもないですよね。 個人の嗜好にかかわるものなので、みんなが自家用車でもないし、みんながサービス利用でもない。持ち家比率に近いところに収まるんじゃないかと思います。一般論としては、地方の方が遅くまで自家用車が残っていくと思います。 入山:中島さん、いかがですか。 中島:諸説ありますけれども、世の中に存在する総車両数は減ってしまうと思います。特に自家用車。自家用車って稼働率3%といわれています。わずか3%しか乗らないものを、何百万円も出して所有欲を満たすためだけに買うという時代はもう終わっていくでしょう』、「個人の嗜好にかかわるものなので、みんなが自家用車でもないし、みんながサービス利用でもない。持ち家比率に近いところに収まるんじゃないか」、説得力のある見方だ。
・『使ってわかる、「やっぱり高級車っていい」  入山:所有か使用かという話でいうと、前にあるデザイン会社の社長さんから面白い話を聞いたことがあります。人間には所有欲と使用欲があって、使用すればするほど、所有欲が高まるっていうんです。例えば、漫画の世界では今、スマホに取って代わられて雑誌は全く売れない。『少年ジャンプ』も『少年マガジン』も部数はかつてに比べてずいぶん減っています。けれど、コミックはそんなに落ちていない。スマホで漫画を読んで所有欲をかき立てられた人たちが、例えば「『ワンピース』を全巻そろえておきたい」とコミックを買っているからです。 そこから考えると、「ポルシェ」みたいな豪華なクルマは所有するためのクルマとして残るんじゃないでしょうか。感性を満足させるものですから。 鈴木:高級車はたぶん残ると思います。大衆車はやはり機能性の面で使う方が多いので、中島さんがおっしゃるように、減っていく可能性はある。 中島:所有欲と使用欲の切り口で「まさに」と思う話があります。我々は「Anyca(エニカ)」という個人間カーシェアリングサービスを手掛けています。運営しているのは20~30代のメンバー。20代で都心に住んでいたら、ふつうクルマなんて持てないじゃないですか。ところが、ある日気付いたら、「Anyca」の運営メンバーがやたらと高級車を持っているんですよ。「なんでオレよりいい車を持っているんだ」と思うぐらいに(笑)。 よくよく聞いてみると、「カーシェアすることを前提に高級車を買っています」という話なんです。シェアリングすれば個人の負担は軽くなりますから。 入山:高いクルマをシェア前提で買っているんですね。 中島:そう。でもそれなら、自分で買ってオーナーにならなくても、ふつうに「Anyca」で利用すればいいじゃないですか。どうやら、最初はそうしていたらしいんです。ところがポルシェとかBMWとかに乗っているうちに、欲しくなってきちゃったと。「中島さん、知っていますか。やっぱり高級車っていいんですよ」って。 入山:へえ。それで持ちたくなったんだ。 中島:でもそんな高級車を買うほどの金銭的余裕はない。なのでシェアリングを前提に買おうとする。つまり金銭負担をなるべく抑えながら所有欲を満たそうとしているんです』、「人間には所有欲と使用欲があって、使用すればするほど、所有欲が高まる」、「「ポルシェ」みたいな豪華なクルマは所有するためのクルマとして残るんじゃないでしょうか」、なるほどと納得させられた。
・『ダイムラーは宣伝の一環でカーシェアを活用  安田:そういうことなら、高級自動車メーカーこそカーシェアリングを手掛けて、若い人たちにとりあえず乗ってもらうという戦略をとった方が、長期的には勝ち残れるかもしれないですね。そういう動きって出ていますか。 鈴木:完成車メーカーの中ではダイムラーが最も積極的にモビリティーサービスを手掛けていますね。彼らに聞くと、ある種の宣伝としてカーシェアリングをやっていると。そこから何かのきっかけでオーナーになってもらおうと考えています。まさに「Anyca」で起きたようなことを狙っている。 中島:高級車からエントリーしてもらって、慣れてきて「やっぱり持ちたい」となったら買ってもらうという戦略ですね。今、メーカーはエントリーカーとしてカーシェアリングを使うことに非常に積極的です。 入山:従来のエントリーカーは軽自動車とか「カローラ」のような大衆車だったけれど、今はいきなり「ベンツ」か。 安田:もともと自家用車は3%しか使われてないというのだから、残りの97%分は伸びしろだらけですね。カーシェアによって利用効率を上げていくと、少ない出費で、今まで「モノ」としては手が届かなかった高級車に、「コト」として触れる消費者が増えてくるわけですね。 入山:うん。面白いね。 安田:さて、冒頭で話をしたように、日本の産業界では自動車メーカーの影響力がものすごく大きいですね。そういう中で、「モノからコト」とか「MaaS」の流れが世界中で進んでいったとき、日本の自動車産業はどうなるのでしょうか。懸念する声も大きいと思います。皆さんにはぜひここで○×棒でお答えいただこうと。 入山:お、きましたね。 安田:この先10年ぐらいを考えたとき、日本の自動車メーカーが、世界の自動運転業界、自動車業界で依然として中心的なプレーヤーでいられるのか。世界市場を引っ張って活躍できるのか。できると思われる方は「○」、ちょっと厳しいと思う方は「×」を上げてください。 もちろんその後、理由もお聞きしますから。「バツなところだけ出されてちょっとバツが悪い」、なんてことはないです。はい。 入山:ちょいちょいおやじギャグが出るんだよね(笑)。 安田:はい(笑)。皆さん準備はよろしいですか。では出してください。せーの。はい』、「ダイムラーが最も積極的にモビリティーサービスを手掛けていますね。彼らに聞くと、ある種の宣伝としてカーシェアリングをやっていると。そこから何かのきっかけでオーナーになってもらおうと考えています」、上手い戦略だ。
・『EV普及まで日本メーカー優位は保たれる  入山:わ、全員「○」だ。 安田:じゃあ、入山さんから理由をどうぞ。 入山:自動運転とは離れますが、この後、自動車市場では電気自動車が出てきます。といっても、たぶん一気に普及することはない。充電のインフラを配備しなくてはいけないし、バッテリー技術をもっと成熟させないといけないですから。 この前、トヨタ自動車がハイブリッドの特許を開放しましたね。あれはおそらく、うまく誘導すれば、当面マーケットがハイブリッド中心でいけると判断し、仲間を増やそうと考えたからだと読んでいます。つまり電気自動車への移行をなるべく遅らせようという狙いなのではないかと。 ハイブリッドの設計思想ってガソリン車寄りです。部品点数がめちゃめちゃ多い。電気自動車は逆で部品点数が少ない。電気自動車はパソコンと同じで、部品やモジュールを組み合わせれば誰でもつくれます。それに比べるとハイブリッドは組み合わせて、すり合わせて、という技術が必要。これって日本の自動車メーカーがものすごく強いところです。 この先10年ぐらいなら、電気自動車はまだそれほど普及していないはずですから、日本の自動車メーカーの優位は保たれると僕は思っています。 安田:電気自動車が普及すれば自動車メーカーだけでなく、系列の部品メーカーなども厳しくなるといわれていますが、そういう変化は10年ぐらいならまだ大きくは進まない。トヨタなどはハイブリッドの仲間を増やして電気自動車への移行を遅らせつつ、一方で「MaaS」などへの対応も着々と進めているのではないかと。 入山:そうですね。電子機械産業には「スマイルカーブ」という現象が起きます。バリューチェーンの上流と下流はもうかるけれど、真ん中のアセンブリーメーカーはもうからないという状況です。典型はパソコン業界で、もうかるのは部品をつくっているインテル、OSをつくるマイクロソフト、エンドユーザー向けのサービスを手掛けるグーグルやフェイスブックで、組み立てるパソコンメーカーはもうからない。 電気自動車の時代になると自動車も同じで、組み立てをやっていた自動車メーカーがもうからなくなる可能性がある。だからトヨタは人工知能に投資したり、「イーパレット」の構想を打ち出したりして下流を取ろうとしている。さらに、上流を取るために、ハイブリッドの技術を開放して、システムサプライヤーみたいなことをやろうとしている。僕はそう理解しています』、「トヨタなどはハイブリッドの仲間を増やして電気自動車への移行を遅らせつつ、一方で「MaaS」などへの対応も着々と進めているのではないか」、「トヨタは人工知能に投資したり、「イーパレット」の構想を打ち出したりして下流を取ろうとしている。さらに、上流を取るために、ハイブリッドの技術を開放して、システムサプライヤーみたいなことをやろうとしている」、「トヨタ」は万全の構えのようだ。
・『10年後、VWは中国の会社になっている?  安田:日本の自動車メーカーはスマイルカーブの底に沈まないような施策をすでに先駆けて打ち始めているということですね。わかりました。 続いて僕もさらっと「○」の理由を言うと、今のお話にも出てきたように、自動車メーカーは一歩先、二歩先を意識しながら、ワーストケースを避ける積極投資をしているんじゃないかと見たからです。 もっとも、実を言うと、僕は今日お2人のお話を伺う前は、やっぱり厳しいんじゃないかと思っていたんですが……。 入山:うん。今日の話を聞くとかなり違うよね。 安田:自動運転でも、隠し持っている技術があるというお話ですし。そんなことから考えると、世界の自動車市場をけん引してきたメーカーとしての先行者利益はまだまだ効いてくるのかなと思いました。ただし、この先5年ぐらいの投資は非常に重要だという印象を持っています。 ではここからはプロのご意見をお聞きしましょう。鈴木さんからお願いします。 鈴木:入山さんが指摘した電気自動車というのは非常に重要なキーワードで。経営的に言うと、電気自動車はそのままだと絶対儲からない。 入山:うん。さっきのスマイルカーブですね。 鈴木:そうです。だからエンジン車をつくった方が絶対もうかります。電気自動車は環境規制が厳しいところから増えていくので、欧州と中国で普及が進むと考えられます。欧州と中国って、幸か不幸か、トヨタはじめ日本のメーカーはそんなに強いマーケットではないんですよ。強いのはフォルクスワーゲンなど。ということは、フォルクスワーゲンの方が先にもうからなくなる。だから私は、10年後にはフォルクスワーゲンはなくなっているか、中国の会社になっているか、どっちかだと思っているんですけれども。 入山:おっと。大胆発言が出ました。えーと、関係者の方、これはあくまで個人の予測ですので。 鈴木:はい。すみません。 安田:その頃には中国やヨーロッパでは電気自動車化が進行しきっていると。 鈴木:はい。なので、相対的に日本は結構いいポジションにいる。主戦場としているマーケットがそんなに電動化が進まないという意味で、すごくラッキーなんです。その間に、いかに先行投資を続けられるかが重要です。 それから、日本には自動車みたいなすり合わせの機械の産業があって、DeNAみたいなITの産業があって、エレクトロニクスの産業もある。そういう多様な産業が全部集まっているというのは大きなアドバンテージです。ドイツはITがそんなに強くないし、アメリカは機械やエレクトロニクスが今あまりない。日本の産業構造は、これから自動車のサービスをつくっていく上で、すごくいい状態にあると思います。) 安田:鈴木さんの見立てでは、日本には自動運転業界とか「MaaS」の世界でリーダーになるチャンスがあるということですね。逆に言うと、このチャンスを取りそびれると、日本の産業は厳しいっていうことになりますね。 鈴木:そうですね。この10年が勝負だと思いますね。 安田:なんとしてもここでチャンスをつかまないといけないですね。では満を持して中島さん。 中島:今、日本で自動車業界を引っ張っている企業が、引き続き世界のリーダーになれる可能性は十分にあると思います。 さっきのスマイルカーブの話ですが、お付き合いすればするほど、自動車という分野で、スマイルカーブの真ん中にいるOEMメーカーの努力やノウハウの質はすさまじい。この座布団は結構厚くて、まだ十分に世界をリードするだけのノウハウがあるという印象です。 それから、OEMメーカーは製造だけでなく販売会社も持っています。ここはサービスも請け負うので下流工程ですね。自動運転技術が進化して高度化すればするほど、メンテナンスやアフターサービスによってクルマの安全・安心を維持し続ける価値はぐっと高くなります。下流工程も持っている自動車メーカーは実は磐石だと思っています』、「電気自動車はそのままだと絶対儲からない・・・欧州と中国で普及が進むと考えられます・・・強いのはフォルクスワーゲンなど。ということは、フォルクスワーゲンの方が先にもうからなくなる。だから私は、10年後にはフォルクスワーゲンはなくなっているか、中国の会社になっているか、どっちかだと思っている』、日系が「中国」で弱かったのが幸いするとは皮肉だ。
・『日本の自動車業界はこの10年が勝負  安田:そうか。これから自動運転がサービスの分野で広がっていくとなると、その価値は非常に重要になりますね。 中島:そうです。ただ、クルマの販売台数はどうしたって減りますから、もうけ方を変えないといけない。今までみたいに何年かに1回だけメンテナンスに持ってきてもらったり、車検のときに補修したりということではなく、日々メンテナンスフィーを受け取るようなビジネススキームにしないと生き残れないと思います。ビジネスモデルのスムーズな転換ができるかどうかにかかっていると思います。 入山:それは大事なポイントですね。強みを生かしながら、きちんと変革できる会社ならば、おそらくこれからも世界をリードできるということですね。 いや、今日実は僕、始まる前まで、自動運転にも日本の自動車業界にも少し悲観的な見方をしていたんです。でもお話を伺えば伺うほど、結構、未来は明るくて、希望が持てるんだなと思いました。まさに自動運転業界、自動車業界の未来が見えたなと思います。 安田:改めまして、お2人に感謝をして。 入山:はい、本当にどうもありがとうございました。 中島・鈴木:ありがとうございました。(この後の出席者の略歴の紹介は省略)』、「クルマの販売台数はどうしたって減りますから、もうけ方を変えないといけない・・・日々メンテナンスフィーを受け取るようなビジネススキームにしないと生き残れない」、いくら努力しても、」「販売台数」減少のインパクトは大きそうだ。「日本の自動車業界はこの10年が勝負」、とすると、日産の大混乱は心配になる。

次に、11月13日付けダイヤモンド・オンライン「自動運転車は誰を犠牲にすべき?究極の思考実験「トロッコ問題」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/220343
・『本格的な自動運転時代が2020年にも始まるが、ルール作りや社会的コンセンサスが追い付いていない部分が少なくない。特集「トヨタ、ホンダ、日産 自動車の最終決断」(全9回)の番外編として自動運転時代の課題や考え方について、明治大学自動運転社会総合研究所やモビリティ企業への取材を基にレポートする』、「自動運転時代の課題や考え方」、大いに考えさせられるテーマだ。
・『緊急時のハンドル操作を予めプログラムできるのか  政府のロードマップ上では、2020年にも本格的な自動運転(レベル3〈条件付運転自動化〉以上)時代に突入することになっている。 交通業界にとって天変地異なのは、操縦の主体がドライバー(人)からシステムに置き換わることだ。人は運転から解放されて車内で自由な時間を持てる。安全性も人の運転より高まるとされている。一方で法律面、倫理面の課題も見えてきた。 学者らの間で話題沸騰中なのが、倫理上の思考実験「トロッコ(トロリー)問題」だ。究極的な人命選択の運転場面を想定し、「あらかじめシステムに対してどのような選択基準をプログラムすればよいのか」、という問題だ。 上の概念図で説明すると、ブレーキが壊れた(あるいはブレーキをかけても間に合わない)トロッコがある。そのままAの方向に進めば3人と衝突する。一方、分岐点でBの方向に進行を切り替えれば、衝突するのは1人。さあどちらの選択が正しいのか、という思考実験だ。概念図は線路なので走行ルートは限られているが、実際の道路上では例えば急ハンドルを切って壁に激突して自損事故(被害者は運転手、乗員のみ)という選択肢もある。 操縦主体がドライバーならば、どの判断をするにせよ、責任者は人間。一方、システムが操縦主体の自動運転下では、システムが責任者となる。システムの選択基準をあらかじめ設定することになるのは、自動車メーカーになろう。ケースごとに「社会的合意を得られる判断をあらかじめ考えておくことが必要になるのでは」、ということで自動車業界や保険業界などを中心に関心が高まっている。 米マサチューセッツ工科大学は、「モラル・マシーン」という名のウェブサービスで、世界規模の調査を実施している。トロッコ問題に関わるさまざまな運転場面を想定し、イラストを交えて質問。例えば「直進すれば壁に激突して複数の乗員に死傷者が出るが、ハンドルを切れば乳児を含む複数の男女をはねる(ただし男女が歩いている横断歩道の信号機は赤色)」といった具合だ。回答傾向を分析したところ、社会的合意を得られる判断が国によって大きく違うことが浮き彫りになった。日本は世界平均と比べ、歩行者、法令順守、不作為(ハンドルを切ることで被害者を選ばない)を優先する傾向が強い。中南米では、社会的地位の高さ、子ども、女性の優先度が高い。欧米は不作為の傾向が強かった。 学者らの間でトロッコ問題の議論が過熱する一方、「ただの思考実験なので勝手にやってくれ。自動運転社会ではそもそもトロッコ問題は起きない」と断言するモビリティ企業幹部もいる。高度に進化した自動運転車両では、センサーが肉眼以上に余裕を持ってブレーキの間に合う距離で対象物を把握するし、ブレーキの異常を感知した時点で補助ブレーキが作動してトロッコ問題が起きる前に停車する。つまり、「トロッコ問題は手動運転時代の遺産に過ぎない」というのだ。 最終的にはそうなるのかもしれないが、自動運転車両はまさに進化の過程にある。さまざまなリスクに対して議論をしておくことは大切だ。 以下ではトロッコ問題を含め自動運転を巡るさまざまな課題を、18年に設立された明治大学自動運転社会総合研究所の識者2人へのインタビューで掘り下げてみた(Qは聞き手の質問、Aは回答)』、「日本は世界平均と比べ、歩行者、法令順守、不作為・・・を優先する傾向が強い。中南米では、社会的地位の高さ、子ども、女性の優先度が高い。欧米は不作為の傾向が強かった』、確かに「社会的合意を得られる判断が国によって大きく違う」ようだ。
・『自分が死ぬ車を誰が買うのでしょうね【中山幸二部門長(法律分野)】  Q:政府の自動運転ロードマップでは「2020年までに移動サービスでレベル4(高度自動運転)」が始まることになっています。日本のレギュレーションが追い付いていない部分を整理して教えてください。 A:道路運送車両法はレベル4まで想定しています。でも、道路交通法はレベル3(条件付自動運転)までしか想定していない。道路交通法を所管する警察庁はドライバーがいなければいけないという考えが根強いからです。「いざとなれば、すぐにシステムからドライバーに切り替わる」までのレベルは認めるというのが今の彼らのスタンスです。 車両の認証(保安)基準もレベル3以上は世界で基準ができていません。独アウディの新車もレベル3の機能は備えていますが、封印していますよね。国際的な基準を今作ろうとしている。システムをどうやって測るか。今までは機械的に検査していました。これからは設計段階から設計思想を見ないといけません。 Q:自動運転を巡っては、トロッコ問題が話題です。 A:ドイツでは17年、国の倫理委員会がガイドラインを公表しています。要するに無作為が正解。プログラムは被害者を選択してはいけない、と。ドイツの自動車メーカーはそれに則ってプログラミングするのでしょうね。 一方、運転手、乗員が第一だという考え方を唱える人もいます。運転手・乗員優先の方がメーカーは安心して造れます。自分が死ぬかもしれない車を誰が買うのでしょうということになりますから。世界的には、運転手・乗員優先のクルマが売れていくのでしょう。 Q:日本の議論の状況をどう見ていますか。 A:日本の自動車メーカーはまだ態度を表明していません。 日本ではトロッコ問題になるといつも議論がストップする。外国の議論を紹介してそれで終わっちゃうのです。トロッコ問題は避けて通れないが、「そういう場面を作ってはいけないんだ」というのが今の状況だと思います』、「日本では・・・トロッコ問題は避けて通れないが、「そういう場面を作ってはいけないんだ」というのが今の状況」、いくら技術的に安全にしても、やはり想定外の事故は避けられないとして、正面から議論しておくべきだろう。
・『自動運転社会への過渡期で損保会社は倫理観を問われる【中林真理子所長(保険分野)】  Q:自動運転ではトロッコ問題が話題です。 A:私は日本経営倫理学会に入っているのですが、自動運転をめぐる問題として出て来ていますね。さまざまな場所でここ2、3年、特に話題に上ってきた印象です。トロッコ問題という哲学の命題自体は以前からありました。でもこれまでは現実味がありませんでした。AIの開発進化に伴い、自動運転という身近な話題が出てきました。米ウーバー・テクノロジーズが自動運転車両で死亡事故を起こしたりと。そこで改めてどう考えればいいのかという議論が起きています。 Q:結論は出るのでしょうか。 A:日本ではまだ、国もメーカーも誰も結論を出していません。たぶん結論は出ないです。哲学は「これが正解」という世界ではありません。「議論する」ということ自体が恐らく正解なのではないでしょうか。 超一流の学者たちの団体、日本学術会議でも取り上げられています。9月に傍聴しましたが、まだ、「新しいトロッコ問題が出てきた」「どう議論したらいいのか」という取っ掛かりの段階です。何かしらの方向性が出れば、国の決定にも影響する可能性があります。 Q:損保会社の自動車保険は自動運転時代の到来でどうなるのでしょうか。 A:自動運転社会では事故は減ると言われています。それでもたぶん事故自体はなくならない。リスクがある限りなんらかの保険は必要です。 損保各社は倫理観が問われています。誰も想定していないような事故が起きた時、「約款にないから」と断ち切っていいのか。例えば大地震の際には人道上、お見舞金などの形で例外的に支払う対応をしています。自動運転の過渡期はそんなことが多いのではないでしょうか。 損保会社の自動車メーカーなどへの求償権もクローズアップされそうです。これまでは製造物責任の立証困難などから損保会社がかぶるケースが多く、でも再保険が掛かっているので大きな問題にはなりませんでした。自動運転時代ではシステムの欠陥が明確な場合、損保会社が求償権行使する可能性があります。そうすると行使先は自動車メーカーなのかセンサーメーカーなのかと、わけが分からなくなります。この辺りはまだ議論が始まったばかりです。 一つの解決案として、明治大学自動運転社会総合研究所監修『自動運転と社会変革――法と保険』で紹介している模擬裁判では、利害関係者による仲裁コンソーシアムの設立を提案しています。まだ業界でその方向に進んでいるわけではありません。責任割合とか出資割合とか議論は大変だろうと思います』、「トロッコ問題・・・日本ではまだ、国もメーカーも誰も結論を出していません。たぶん結論は出ないです。哲学は「これが正解」という世界ではありません。「議論する」ということ自体が恐らく正解なのではないでしょうか」、やはり難しい問題のようだ。

第三に、フリージャーナリストの西田 宗千佳氏が本年1月8日付け文春オンラインに掲載した「なぜトヨタは富士にイチから「自動運転実験都市」を作らなければならないのか 豊田章男社長がラスベガスで語った真意」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/24521
・『米・ラスベガスでは、1月7日から10日の4日間、世界最大のテクノロジー関連展示会である「CES 2020」が開催される。開催前日の1月6日(現地時間)、トヨタは記者会見を開き、新しい施策を発表した。 ここ数年、CESでは自動運転などが大きなテーマになっている。だが、トヨタが発表したのは自動運転技術でも、自動運転車でもなく、「街」だった。自動車メーカーであるトヨタがなぜ街づくりを発表したのか? その理由には、自動運転などをめぐるひとつの本質が存在する』、「トヨタがなぜ街づくりを発表したのか?」、その答えが知りたいところだ。
・『富士の裾野に「自動運転のための街」を作る  「これは私の『フィールド・オブ・ドリームス』だ」 記者会見に登壇した、トヨタの豊田章男社長はそう記者に語りかけた。 トヨタが作る街の名前は「Woven City」。トヨタが織機製造からスタートしたことをうけて「織物(Woven)」の名を冠した。街の場所は東富士。2020年末に閉鎖予定のトヨタ自動車東日本・東富士工場(静岡県裾野市)の跡地を使い、最終的には約70.8万平方メートルの土地を使う。 Woven Cityの特徴は、電気で動く自動運転車の利用が前提となっていることだ。トヨタがソフトバンクなどと組んで開発中の自動運転車「e-Palette」を活用し、「速度の速い自動運転車が走る道」「電動キックボードや人が一緒に動くプロムナード」「歩行者専用の歩道」という3種類の道が入り交じるような構造になるという。基本的にはゼロエミッション・カーボンニュートラルな街をめざし、建物も木製が基本。屋根には太陽電池が設けられる。生活インフラとしての電線や燃料電池による発電施設などは地下に設置され、外からは見えない。 デザインを担当するのは、建築家ビャルケ・インゲルスが率いるBjarke Ingels Group(BIG)。イーロン・マスクとともに、火星移住計画用の都市設計やチューブ状の高速移動システム「ハイパーループ」を検討したことでも知られる。富士の裾野に未来的な都市を作るなら、うってつけのパートナーといえる』、「東富士工場の跡地」利用とは上手い手だ。
・『スマートシティを作る理由とは  トヨタは2021年からWoven Cityの建設に着工。当初はトヨタ社員や研究者を中心に、2000名が暮らす街の開発を目指す。 こうした都市づくりは俗に「スマートシティ」と呼ばれる。取り組みとしてはそこまで珍しいものではない。地方自治体などが取り組む例が多いのだが、日本でもパナソニックが神奈川県藤沢市・横浜市綱島、大阪府吹田市などと共同で進めている。 ただ、それらとトヨタのWoven Cityでは、性質が異なる部分がある。トヨタが自社の敷地内に、まず自社関係者を集めて作る「実験都市」でもある、ということだ。パートナーは「オープンに募る」(豊田社長)とはいうものの、トヨタの敷地でトヨタの技術とアイデアを使って作っていくため、スマートシティよりもトヨタ1社の考えが強く押し出されている。 また、既存の都市をスマート化するのではなく、1から作るため、より大胆に「自動運転車があることを前提とした街」を作り上げることができる。非常に夢のある壮大な計画だ。 しかし、夢がある壮大な計画であるがゆえに、具体性に欠ける部分がある。2021年着工とされているが、いつまでにどういう計画で作っていくのか、という情報は公開されていない。かかる予算も、技術的な課題に対する答えも示されていない。なにより、この街を作ったからといって、トヨタが直接的に儲かる仕組みにはなっていない』、「1から作るため、より大胆に「自動運転車があることを前提とした街」を作り上げることができる」、早く具体的な「計画」を知りたいものだ。
・『自動車の未来を「自ら作ってみせる」  それでは、なぜトヨタは、このような街を作るのだろうか? 答えは、豊田社長の、次の言葉にある。 「我々は誰も、自動車の未来を占う水晶玉はもっていない」 自動運転が自動車の未来であることは、関係者の多くが認めることだ。だが、「実際に自動運転車が多数、あたりまえのように走っている街」がどのようになるのか、ちゃんと予測できている人はいない。やってみなければわからない部分が多すぎる。 トヨタは、2018年のCESで「e-Palette」という構想を発表した。自動運転車を作り、それをカーシェアリングや物流などに「サービス」として提供することで、単に自動車を売るのではない、「モビリティ(移動)をサービスとして提供する企業」への脱皮を宣言した。その後、ソフトバンクと組んで「モネ・テクノロジーズ」を設立、今年2020年には、e-Paletteの実車を街中で走らせる計画を持っている。 しかし、現状では、e-Paletteを実験として走らせるのがせいぜい。自動運転車を理想的に運行するには、街中にセンサーを張り巡らせて、人と車の情報を常に収集・活用する仕組みの存在が望ましい。自動車を売るのではなくサービスを売る、という新しいビジネスモデルを実現するには、まだまだハードルが多い。 こんな状況では、トヨタのビジョンを理解してもらうのも難しいし、ビジネスを具体化するための研究開発や試験も難しい。 だからこそトヨタは、「サービスとしての自動運転車が存在しうる街」を作ってしまうことで、その姿や可能性を、誰の目にもはっきりと見せようとしているのだ。 重要なのは、ここまで大胆なビジョンを、トヨタのような大企業がトップダウンで打ち出せているということだ。イーロン・マスクが同じことを言い出しても驚かないが、豊田章男社長が打ち出している、というのが面白い。具体性や実現性には疑問点が多いが、トヨタには、そうした懸念を「実証」で払拭していって欲しい。』、「「サービスとしての自動運転車が存在しうる街」を作ってしまうことで、その姿や可能性を、誰の目にもはっきりと見せようとしている」、狙いは理解できたが、「そうした懸念を「実証」で払拭」できるのかを注目したい。
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