イーロン・マスク(その3)(イーロン・マスクがOpenAIを「キレて去った」内幕 シリコンバレーの苛烈な「AI開発競争」舞台裏、「自分には能力がなかった」どれだけ助言をしてもイーロン・マスクは聞く耳持たず…元Twitterジャパン社長が語った「退職の真相」 『イーロン・ショック』より #5、「なんで日本人はこんなに安く働かされているんですかね?」外資系ヘッドハンターが返した驚きの回答「日本人は年収が100万上がるだけで…」 『イーロン・ショック』より #8、、「イーロン・マスクはヤバい人」東大教授たちが語 [イノベーション]
イーロン・マスクについては、本年6月28日に取上げた。今日は、(その3)(イーロン・マスクがOpenAIを「キレて去った」内幕 シリコンバレーの苛烈な「AI開発競争」舞台裏、「自分には能力がなかった」どれだけ助言をしてもイーロン・マスクは聞く耳持たず…元Twitterジャパン社長が語った「退職の真相」 『イーロン・ショック』より #5、「なんで日本人はこんなに安く働かされているんですかね?」外資系ヘッドハンターが返した驚きの回答「日本人は年収が100万上がるだけで…」 『イーロン・ショック』より #8、、「イーロン・マスクはヤバい人」東大教授たちが語る天才実業家の正体、「8000人の社員がたったの5週間で…」楽天・三木谷浩史 元Twitterジャパン・笹本裕が見た“イーロン・ショック”の衝撃、三木谷浩史×笹本裕×大西康之「日本の経営者はなぜイーロン・マスクに勝てないのか」(後編))である。
先ずは、本年8月7日付け東洋経済オンラインが掲載したKDDI総合研究所リサーチフェロー・情報セキュリティ大学院大学客員准教授の小林 雅一氏による「イーロン・マスクがOpenAIを「キレて去った」内幕 シリコンバレーの苛烈な「AI開発競争」舞台裏」を紹介しよう。
・『ChatGPTを開発したOpenAIは2015年にイーロン・マスクとサム・アルトマンをはじめ6名の起業家、技術者らによって設立された。OpenAIと命名したのはマスクである。 ところが2018年、マスクは突然OpenAIを去っている。一体、何があったのか。 マスク、アルトマン、そしてグーグルを巻き込んだシリコンバレーの覇権争いの内幕に迫る。(小林雅一『イーロン・マスクを超える男サム・アルトマン』から一部を抜粋して再構成しています)』、興味深そうだ。
・『イーロン・マスクに憧れていたサム・アルトマン 2015年、アルトマンは30歳を目前にして何か新しいことに挑戦したくなった。 カリフォルニア州の知事選に立候補することも頭をよぎったが、自身のキャリアを振り返ると、むしろ子供の頃からの夢である「人間のように考えるマシン」、この分野の専門用語で「AGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)」を今こそ自分の手で実現すべきだ、という結論に至った。 AGIとは要するに、人類と同等か、あるいはそれを凌ぐほどの汎用的な知能を備えたスーパーAIだ。 そのための新たなプロジェクトを立ち上げるに際し、アルトマンはまず最初にイーロン・マスクを誘うことにした。 アルトマンがマスクと最初に会ったのは、その数年前のことだ。そのとき彼はマスクの案内で宇宙開発企業スペースXの工場を見学しながら3時間ほど話し込んだ。 当時のアルトマンは人生で初めて起業したループトを売却して間もない駆け出しの起業家だったが、彼より一回り以上年上のマスクは既にテスラとスペースXのビジネスを軌道に乗せた規格外の経営者だった。人類を火星に移住させる夢を滔々と語るマスクはアルトマンにとって憧れの的だった。 このマスクにアルトマンはメールを出し、その中で「AGIを実現するためのマンハッタン計画を始めようとしているけど興味ある?」と尋ねた。マスクは「イエス」と答えた。 マスクとアルトマンは「人類に貢献する安全なAGI」を実現するため、何らかのプロジェクトを立ち上げることで合意に達した』、「人類を火星に移住させる夢を滔々と語るマスクはアルトマンにとって憧れの的だった。 このマスクにアルトマンはメールを出し、その中で「AGIを実現するためのマンハッタン計画を始めようとしているけど興味ある?」と尋ねた。マスクは「イエス」と答えた。 マスクとアルトマンは「人類に貢献する安全なAGI」を実現するため、何らかのプロジェクトを立ち上げることで合意に達した」、なるほど。
・『AI開発で先頭を走っていたグーグル 2014年に英国の気鋭スタートアップ「ディープマインド」を買収するなど、当時AI開発で先頭を走っていたのはグーグルだった。 ディープマインドは優れたAI研究者で神経科学者、またチェスの名手でもあるデミス・ハサビスらによって、2010年にロンドンに共同設立された。2014年、グーグルに推定4億ポンド(約700億円)で買収された後も組織としての独立性は維持され、事実上はハサビスらの指揮の下で「ビデオゲームで遊ぶAI」などの研究開発に取り組んできた。 ハサビスらの開発チームは、ゲームAIの研究で培った「ディープラーニング」や「強化学習」などの先端技術を囲碁に応用して「アルファ碁(AlphaGo)」と呼ばれるAIを開発した。 アルファ碁は2016年3月、それまで世界タイトルを通算18回も獲得したトップ棋士、韓国のイ・セドルを4勝1敗で下した。当時、囲碁の世界チャンピオンを(アルファ碁のような)AIが打破するのは少なくともあと10年はかかると見られていたのに、あっさり勝ってしまったのである。) 中国を起源に2500年以上もの歴史を有し、伝統的ボードゲームの王者と見られた囲碁がAIによって制覇されたことは、大きな衝撃をもって受け止められた。人間の様々な知的活動がいずれコンピュータのようなマシンによって代替される予兆とも見られた。このニュースはメディアで大々的に報じられ、世界的なセンセーションを巻き起こした』、「グーグルに推定4億ポンド(約700億円)で買収された後も組織としての独立性は維持され、事実上はハサビスらの指揮の下で「ビデオゲームで遊ぶAI」などの研究開発に取り組んできた。 ハサビスらの開発チームは、ゲームAIの研究で培った「ディープラーニング」や「強化学習」などの先端技術を囲碁に応用して「アルファ碁(AlphaGo)」と呼ばれるAIを開発した。 アルファ碁は2016年3月、それまで世界タイトルを通算18回も獲得したトップ棋士、韓国のイ・セドルを4勝1敗で下した。当時、囲碁の世界チャンピオンを(アルファ碁のような)AIが打破するのは少なくともあと10年はかかると見られていたのに、あっさり勝ってしまったのである」、なるほど。
・『AI脅威論者となったイーロン・マスクとグーグルの因縁 時間は前後するがディープマインドの設立から2年後となる2012年、ハサビスはシリコンバレーのつてを頼って大富豪マスクと面会するチャンスを得た。スペースXの工場を訪れたハサビスは、組み立てラインが見渡せるカフェテリアでマスクと昼食を共にしながら、自分たちの会社を売り込んだ。つまりディープマインドへの投資を求めたのである。 このワーキング・ランチで、マスクは「(スペースXが)火星に打ち上げるロケットを開発するのは、地球の人口増加や世界戦争、小惑星との衝突などの危機に備えるためだ。いざとなれば人類を火星に移住させるのさ」と壮大な計画を語った。 これに対しハサビスは「それもいいでしょう。でも、(AGIのような)スーパー・インテリジェンスが人類を滅ぼす危険性も忘れてはいけませんよ」と述べた。 これを聞いたマスクは一瞬息を?んだ。そんな可能性もあるのか、と驚いたのであろう。ハサビスの警告に衝撃を受けたマスクはディープマインドへの投資を約束すると共に、これ以降「AI脅威論」の提唱者として知られるようになる。 このワーキング・ランチから数週間後、グーグル共同創業者・CEOのラリー・ペイジと会ったマスクはディープマインドについて彼に紹介した後で、(恐らくハサビスの受け売りで)いつの日か登場するであろう超越的な人工知能、つまりAGIが人類を滅ぼす可能性に言及するが、ペイジはその話に乗ってこなかった。 ペイジは「超越的なAIやそれを搭載したロボットがいつの日か人類にとって代わる存在になったとしても、それは(人間のような生物からAIロボットなど人工物へと)進化が次の段階に移行するに過ぎない」と考えていたのだ。 一方ハサビスらディープマインドの研究チームは、マスクや著名投資家ピーター・ティールらから調達した資金を使って、1970年代に世界的に流行した「スペースインベーダー」「ポン」「ブレイクアウト」など古典的なビデオゲームで遊ぶAIを開発した。 このゲームAIが人間のプレイヤーを凌ぐ腕前を見せるようになると、ラリー・ペイジの強い関心を惹いた。彼の肝入りでグーグルが2014年1月にディープマインドを買収すると、当然ながらマスクは機嫌を損ねた。 彼がディープマインドに投資していた金額は500万ドル(約4億円)だが、この会社がグーグルに買収されたことで、マスクは自分が投資した以上の金額をリターンとして受け取った。 つまり金銭的には得をしたわけだが、世界的な大富豪マスクの目から見れば大した額ではなかっただろう。 そんなことよりも自分の方が先に注目し、目をかけてきたディープマインドという有望企業をペイジ、つまりグーグルに奪われたような気になったとしても無理はない。後にマスクがグーグルやその傘下に入ったディープマインドを殊更意識するようになる背景にはこの一件があったのだ』、「自分の方が先に注目し、目をかけてきたディープマインドという有望企業をペイジ、つまりグーグルに奪われたような気になったとしても無理はない。後にマスクがグーグルやその傘下に入ったディープマインドを殊更意識するようになる背景にはこの一件があったのだ」、なるほど。
・『人類全体に奉仕する非営利の研究団体としてOpenAIを設立する グーグルのような営利企業が人類の将来を左右するかもしれない重大なAI技術を、所詮は自らの利益のために開発・利用するのは危険ではないか。むしろ非営利の研究団体を立ち上げて、そこで単なる一企業ではなく人類全体に奉仕するAI、ひいてはAGIを開発していくべきではないか、とマスクやアルトマンらOpenAI創業時のメンバーは考えた。 たとえばAIの実力に関する現状認識、その進化のペース、さらに将来的な可能性や危険性について彼らは率直に議論した。そして、人間と同等かそれ以上の知能を持つAGIがそう遠くない将来に実現すること、それは人類に途方もない富や便益をもたらす一方で、誤った方向に進化すれば人類に深刻な災禍をもたらし、悪くすれば人類存亡の危機を引き起こす恐れもあること、これらの点で彼らの見解はほぼ一致した。) グーグルへの対抗勢力として、(マシンよりも人類を優先する)新たなAI研究機関がどうしても必要だとマスクは力説したが、「今から始めても果たしてグーグルに追いつくことができるだろうか」という疑問の声も上がった。 しかし最終的には「やってやれないことはないだろう」という結論に彼らは至った。 こうしてグーグルに対抗するという含みを持たせつつ「人類全体に寄与する安全なAGIを実現する」という基本構想で彼らは合意に達した。 マスクとアルトマンのプロジェクトは「非営利の研究団体」となる事が決まり、マスクがこれを「OpenAI」と命名した。この研究所で開発したAI技術やソースコード(コンピュータ・プログラム)を特許で囲い込むことをせず、むしろ論文発表などを通じて技術をオープン化して人類全体に貢献するという趣旨だった。 世界有数の大富豪マスクは、OpenAIプロジェクトに気前よく1億ドル(当時の為替レートで120億円)を出すと約束した』、「人間と同等かそれ以上の知能を持つAGIがそう遠くない将来に実現すること、それは人類に途方もない富や便益をもたらす一方で、誤った方向に進化すれば人類に深刻な災禍をもたらし、悪くすれば人類存亡の危機を引き起こす恐れもあること、これらの点で彼らの見解はほぼ一致した・・・マスクとアルトマンのプロジェクトは「非営利の研究団体」となる事が決まり、マスクがこれを「OpenAI」と命名した。この研究所で開発したAI技術やソースコード(コンピュータ・プログラム)を特許で囲い込むことをせず、むしろ論文発表などを通じて技術をオープン化して人類全体に貢献するという趣旨だった。 世界有数の大富豪マスクは、OpenAIプロジェクトに気前よく1億ドル(当時の為替レートで120億円)を出すと約束した」、なるほど。
・『開発の遅れに苛立つマスク OpenAIは2015年末の設立からしばらくは研究活動が迷走し、実質的な成果が出せなかった。それは事実だが、客観的に見れば設立から僅か1、2年程度で目立った成果を出せというのは無理がある。しかしマスクはそうは思わなかった。 彼は技術開発陣に面と向かって「もっと早く、もっと成果を出せ」と迫った。 「もうそろそろ大きなブレークスルーを達成しないと、シリコンバレーの笑い草になるぞ」と急き立てた。そして2017年には、(必ずしもマスクが決めたとは限らないが)元々数十人程度と少ないOpenAIの研究者の一部が早くも解雇されている。 OpenAIの開発陣に辛く当たるマスクの脳裏には、ペイジつまりグーグルに奪われた英国のスタートアップ企業「ディープマインド」の存在があった。「片や(グーグルの)ディープマインドはあれほど華々しい成果を出して世界的な脚光を浴びているのに、お前たちは一体何をやっているんだ?」とばかりにOpenAIの開発陣を責め立てたのだ。) OpenAIの大きな問題は資金不足だった。マスクはOpenAIの設立に先立って1億ドル(120億円)の資金提供を確約したが、実際にはまとめてその額を拠出したわけではない。むしろ年に2000万ドル(20億円以上)程度のペースで段階的に提供していったと見られる。 もちろんピーター・ティールをはじめ他の投資家からも、同程度の資金が提供されたようだ。 それらを全部足すと恐らく年間数千万ドル(数十億円)と見られるが、この程度の予算ではOpenAIが掲げる「AGI」という壮大な目標を達成するには全然足りなかった。 OpenAIの公式ブログによれば、2017年初旬の段階で彼らは「AGIを実現するには莫大な計算機資源が必要とされ、それを確保するためには年間数十億ドル(数千億円)の資金が必要だ」と認識した。これほど巨額の資金を、OpenAIのような非営利団体として調達するのは極めて難しい、という結論に達したという』、「OpenAIの開発陣に辛く当たるマスクの脳裏には、ペイジつまりグーグルに奪われた英国のスタートアップ企業「ディープマインド」の存在があった。「片や(グーグルの)ディープマインドはあれほど華々しい成果を出して世界的な脚光を浴びているのに、お前たちは一体何をやっているんだ?」とばかりにOpenAIの開発陣を責め立てたのだ・・・2017年初旬の段階で彼らは「AGIを実現するには莫大な計算機資源が必要とされ、それを確保するためには年間数十億ドル(数千億円)の資金が必要だ」と認識した。これほど巨額の資金を、OpenAIのような非営利団体として調達するのは極めて難しい、という結論に達したという」、なるほど。
・『マスクがOpenAIとテスラの合併を提案 2017年の末頃、マスクやアルトマンら首脳陣はOpenAIを事実上、営利企業化することで合意に近づいた。この際、マスクは自身が(営利企業化した)OpenAI株式の過半数と取締役会の指揮権を握って、そのCEO(最高経営責任者)になることを要求した。有り体に言えば、「OpenAIを自分の会社にしたい」ということだ。 しかしアルトマンやブロックマンがこれに難色を示すと、マスクはOpenAIへの資金供給をストップしてしまった。 最大のスポンサーであるマスクに資金供給を止められて、OpenAIはその研究者をはじめ従業員に毎月の給料を払うこともできなくなった。困ったアルトマンがリード・ホフマンに相談すると、彼は当面のつなぎ資金を提供してくれた(ホフマンはLinkedInを創業したことなどで有名な起業家・投資家で、OpenAIの初期の取締役の一人でもある)。 ただしマスクと(残された)OpenAI首脳陣との交渉はその後も続いた。) 「OpenAIを自分の会社にする」という最初の提案を却下されたマスクは、次に元々自分の会社であるテスラとOpenAIを合併させることを提案してきた。 OpenAI首脳陣がこの合併案を拒絶すると、マスクはOpenAIを離脱することを決意した』、「OpenAIを自分の会社にする」という最初の提案を却下されたマスクは、次に元々自分の会社であるテスラとOpenAIを合併させることを提案してきた。 OpenAI首脳陣がこの合併案を拒絶すると、マスクはOpenAIを離脱することを決意した」、なるほど。
・『「のろま!」と言い捨てて退場 2018年2月のある日、マスクはアルトマンに付き添われてサンフランシスコにあるOpenAI本社の最上階を訪れ、その従業員らにお別れの挨拶をした。 イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマンなぜ、わずか7年で奇跡の対話型AIを開発できたのか(それは儀礼的で穏やかな式典になるはずだった――マスクは自分がOpenAIを去ることを告げた上で、従業員達のこれまでの努力を讃える。一方、アルトマンもマスクがこれまでしてくれたことに謝意を示し「イーロンがOpenAIを離れるのは、テスラの仕事に集中するためだ」と述べる――そういう手はず、あるいは暗黙の了解だった。 しかし、実際にはそうスムーズに事は運ばなかった。その場にいた人達の証言によれば、マスクは別れの挨拶の途中で「自分はここ(OpenAI)を去るが、ここでやっていたようなAIの開発はテスラで続けて行う。君たちはもっと速く動く(もっと早く成果を出す)必要がある」と述べたとされる。 これにOpenAIの従業員らはムカッときた。そのうちの一人であるインターン研究員がマスクに向かって「急げ、急げと言うけど、あなたの計画は無謀ですよ」と反論した。この研究員に対し、マスクは「のろまackass)!」と言い捨てて、その場を立ち去った。 後日、OpenAI経営陣の一人が「のろまトロフィー」なるものをわざわざ業者に発注して作らせ、このインターン研究員に贈ったという。「あまり気にするな」という慰めと同時に「よくぞ言ってくれた」という感謝も込められているのかもしれない。 マスクと袂を分かったアルトマンは、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOに近づき、マイクロソフトの巨額融資を引き出して、ChatGPTの開発に邁進していくことになる』、「マスクは別れの挨拶の途中で「自分はここ(OpenAI)を去るが、ここでやっていたようなAIの開発はテスラで続けて行う。君たちはもっと速く動く(もっと早く成果を出す)必要がある」と述べたとされる。 これにOpenAIの従業員らはムカッときた。そのうちの一人であるインターン研究員がマスクに向かって「急げ、急げと言うけど、あなたの計画は無謀ですよ」と反論した。この研究員に対し、マスクは「のろまackass)!」と言い捨てて、その場を立ち去った・・・マスクと袂を分かったアルトマンは、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOに近づき、マイクロソフトの巨額融資を引き出して、ChatGPTの開発に邁進していくことになる」、「マスク」氏は気が短すぎて、摩擦を起こしているようだ。
次に、8月14日付け文春オンラインが掲載した元Twitterジャパン社長の笹本 氏による「「自分には能力がなかった」どれだけ助言をしてもイーロン・マスクは聞く耳持たず…元Twitterジャパン社長が語った「退職の真相」 『イーロン・ショック』より #5」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/72500
・『「要するに、彼(イーロン・マスク氏)に聞き入れてもらえるような能力が自分にはなかったということなのだと思います」。2014年からTwitterジャパンの代表取締役を務める笹本裕氏が同社を退職した理由には、世界的経営者イーロン・マスク氏との不協和があった。退職の真相を、笹本氏の新刊『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)』、興味深そうだ。
・『私が退職を決めた理由 私の興味関心は、とにかく日本とアジアの事業でした。 だから、少なくともアジア圏の事業について聞く耳を持ってもらえないのであれば、自分の存在は不要だなと思いました。 これは批判ではなく、イーロンは「アメリカをなんとかしないといけない」ということに99パーセント頭が行ってしまっていました。だから、もう少しイーロンが日本やアジアの事業に気を配ってくれていれば、という気持ちはあります。 エンジニアの配置についても疑問がありました。 スーパーアプリを開発するならやはり、すでにLINEやWeChatといったスーパーアプリが存在するアジアで開発するべきだと私は思っていました。アメリカにスーパーアプリはありません。ないところでそれを開発しようとしても、それに共感できるエンジニアは少ない。 だから新たなTwitterを創造していくなら、たとえば、東京にプロダクトデザインをする人たちを置いて、シンガポールにソフトウェアのデザインをする人を置く。そしてインドに開発体制を置く。私はこの3拠点制を提案していたのですが、少し時期尚早だったのかもしれません。 イーロンは「まずアメリカを回さないといけない」ということで頭がいっぱいだった。それがちょっと残念でした。「破壊と創造を一緒に動かしていくなら、私の提言が受け入れられてもよかったのにな」と。 私が辞めるに至ったのは、そういう戦略の違いがあったからです。私の力不足でもあるのですが。要するに、彼に聞き入れてもらえるような能力が自分にはなかったということなのだと思います』、「スーパーアプリを開発するならやはり、すでにLINEやWeChatといったスーパーアプリが存在するアジアで開発するべきだと私は思っていました。アメリカにスーパーアプリはありません。ないところでそれを開発しようとしても、それに共感できるエンジニアは少ない。 だから新たなTwitterを創造していくなら、たとえば、東京にプロダクトデザインをする人たちを置いて、シンガポールにソフトウェアのデザインをする人を置く。そしてインドに開発体制を置く。私はこの3拠点制を提案していたのですが、少し時期尚早だったのかもしれません・・・イーロンは「まずアメリカを回さないといけない」ということで頭がいっぱいだった。それがちょっと残念でした。「破壊と創造を一緒に動かしていくなら、私の提言が受け入れられてもよかったのにな」と。 私が辞めるに至ったのは、そういう戦略の違いがあったからです」、なるほど。
・『爪痕は残せた、はず あえて自分を擁護するなら、努力はしたつもりです。少しは爪痕を残せたはずです。 ひとつは先に触れた検索連動型の広告商品。もうひとつは私が辞めてからですが、イーロンは「日本にエンジニアを1人置くことにしたよ」と言ってくれました。ちなみに私は8人置いてくれと言っていました。だから8分の1は達成したということになるでしょうか。) 他に、「日本の売上倍増計画」を彼に提案したこともあります。これもほとんど箇条書きのようなものですが、それを書いて送って、すぐに私は辞めてしまった。だから今になってもイーロンは、「日本は倍にできるよ」と言っているようです。社員が「どうやってやるんですか?」と聞いても、イーロンは「それはお前らが考えろ」としか言いません。戦略の詳しい中身がわからないからです。 負け犬の遠吠えでしょうか』、「「日本の売上倍増計画」を彼に提案したこともあります。これもほとんど箇条書きのようなものですが、それを書いて送って、すぐに私は辞めてしまった。だから今になってもイーロンは、「日本は倍にできるよ」と言っているようです。社員が「どうやってやるんですか?」と聞いても、イーロンは「それはお前らが考えろ」としか言いません』、「イーロンは「それはお前らが考えろ」としか言いません」、というのはやむを得ないだろう。
・『意に反するリストラ。せめてもの抵抗 私が退職を決めたのは、2023年2月の末と3月の頭に、私の意思と反する2度目か3度目のリストラが遂行されたのがトリガーと言えます。 私はなにより、イーロンにはTwitterの事業を成功させてほしいと思っていました。そう考えたときに、日本でのリストラは大きな間違いだと思ったのです。だから無駄な抵抗だとはわかっていましたが、自分が意思表示をすべきだと思いました。 いわば最後のあがきです。 日本でリストラをしてはいけないことは、すべて指標で説明できます。 一人頭の売上規模や収益率などをすべてきちんと説明すると、日本の事業には触ってはいけないとわかるはずです。 でも、グローバルのことを考えている彼にとっては、それはあまり関係ない。「日本の収益率はいいから」とか、そういう話を彼はあまり聞きたくない。だから「全体でとにかくあと500人減らしたい」というときに、日本はまだ人が残っているから「じゃあ日本だね」という話になってしまった。他の国はもう人が減ってしまっているから、これ以上削れないのです。 でも経営判断としては、絶対にそれは間違いなのです。そこに対する違和感は、あまりにも大きいものがありました。 このままやっていったら、日本もどこかのタイミングでガタガタッと崩れていく。まだその段階に来ていないだけです。いまは崖っ縁にいるような状態で、このままだと崖から落ちるのは見えていました。 私にできることには限界がある。だから、自分から辞めようと思っていた矢先に、イーロンからレイオフの通知が届きました』、「日本でリストラをしてはいけないことは、すべて指標で説明できます。 一人頭の売上規模や収益率などをすべてきちんと説明すると、日本の事業には触ってはいけないとわかるはずです。 でも、グローバルのことを考えている彼にとっては、それはあまり関係ない。「日本の収益率はいいから」とか、そういう話を彼はあまり聞きたくない。だから「全体でとにかくあと500人減らしたい」というときに、日本はまだ人が残っているから「じゃあ日本だね」という話になってしまった。他の国はもう人が減ってしまっているから、これ以上削れないのです」、なるほど。
第三に、8月16日付け文春オンラインが掲載した元Twitterジャパンの笹本 裕氏による「「なんで日本人はこんなに安く働かされているんですかね?」外資系ヘッドハンターが返した驚きの回答「日本人は年収が100万上がるだけで…」 『イーロン・ショック』より #8」を紹介しよう。
・『「なんで日本人はこんなに安く働かされているんですかね?」――元Twitterジャパンの笹本氏が、外資系ヘッドハンターに尋ねると驚きの回答が…。笹本裕氏の新刊『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)』、興味深そうだ。
・『なぜ、日本人の給料はこんなにも低いのか? そもそも、なぜ日本人の給料は低いのでしょうか? Twitterを辞めようかどうしようか考えているとき、外資系のヘッドハンターと話をしました。そこで驚いたのが、どこか別の企業に行くとなると、以前日本で働いていた頃より給料が低くなってしまうということでした。 私はヘッドハンターに「これってちょっとおかしくないですか? 私の能力を買ってくれるなら、私の能力に値札を付けてほしいんです」と言いました。 実際、外国人経営者に何十億円と払いながら、日本人経営者にはその何十分の一しか払わない日本企業もあります。 私は「なんで日本人はこんなに安く働かされているんですかね?」と聞きました。すると、そのヘッドハンターはこう言いました。「日本人は外資がオファーを出したときに、100万くらい年収が上がるとわかるだけで喜んでサインしてしまう。だから給与水準が低いんだよ」 先日も、ある日本の上場企業の経営者と話しているときに、その話になりました。そのときは「日本の給料が低いのは、報酬委員会が問題だよね」という話になりました。上場企業には役員報酬の開示義務があります。1億円以上の報酬を渡すと、そのことを社外に開示しなくてはいけない。このため、多くの日本企業の報酬委員会は「9999万円にしておきましょう」となりがちなのです。 今後の日本は、外貨を稼がないといけません。それなのに、外国人に高い報酬を与えて日本人は安く働く、この構造を変えていかないと、日本はマズイことになると思うのです。 日本人はこれから、世界の中で戦い、生き抜いていかないといけません。それなのに、あまりにものんびりしているなと思わざるをえません。 幸いなことに、日本は経済的にもまだまだ豊かで、自然も豊かです。こういう国は珍しい。こういう国で暮らしていると、「釜ゆでになっている可能性がある」ことに気づかない。これは怖いことです。 世界を見ると、ぜんぜん違うものが見えてきます。 たとえばオーストラリアの学生は、大学を卒業すると1年間休むといいます。就職はせずに、世界を旅行するのです。すると、視点が変わって帰ってきます。 でも日本では、学生生活は就活に追われ忙しく、卒業したら4月から就職するのが普通です。それだとどうしても視野は狭くなる。もしかしたら、そういう慣習から破壊しないといけないのかもしれません』、「「日本人は外資がオファーを出したときに、100万くらい年収が上がるとわかるだけで喜んでサインしてしまう。だから給与水準が低いんだよ」 先日も、ある日本の上場企業の経営者と話しているときに、その話になりました。そのときは「日本の給料が低いのは、報酬委員会が問題だよね」という話になりました。上場企業には役員報酬の開示義務があります。1億円以上の報酬を渡すと、そのことを社外に開示しなくてはいけない。このため、多くの日本企業の報酬委員会は「9999万円にしておきましょう」となりがちなのです・・・オーストラリアの学生は、大学を卒業すると1年間休むといいます。就職はせずに、世界を旅行するのです。すると、視点が変わって帰ってきます。 でも日本では、学生生活は就活に追われ忙しく、卒業したら4月から就職するのが普通です。それだとどうしても視野は狭くなる。もしかしたら、そういう慣習から破壊しないといけないのかもしれません」、その通りだ。
第四に、10月2日付け文春オンライン「「8000人の社員がたったの5週間で…」楽天・三木谷浩史、元Twitterジャパン・笹本裕が見た“イーロン・ショック”の衝撃」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/73848
・『直接知る二人だから分かる「衝撃」:楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史氏、元Twitterジャパン社長で、DAZNジャパン・アジアCEOの笹本裕氏、ジャーナリストの大西康之氏が、「文藝春秋 電子版」のオンライン番組に9月21、22日、出演した。 9年間にわたってTwitterジャパンの社長を務めた笹本氏は8月、『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』(文藝春秋)を出版。間近で見た「経営者」イーロンの姿や、2022年10月にTwitterCEOにイーロンが就任した際の「衝撃」が赤裸々に綴られている。 三木谷氏はイーロン・マスクと旧知の仲。番組では、二人がじかに目撃したその経営手腕について迫っている』、興味深そうだ。
・『三木谷氏とイーロン氏「ぶっ飛んだところが似ている」 イーロンはTwitterのCEOに就任するや、早々に大規模人員削減に取り掛かった。 「イーロンは“破壊”することに躊躇いがありません。8000人近くの社員がいた会社が(イーロンが社長になってから)5週間ほどで2000人台まで減ってしまう。社員の数が1000人まで減ったときには“恐怖”すら感じました。とにかく、破壊をして創造していく期間が圧倒的に短い」(笹本氏)) 大西氏はイーロンの“リスク感覚”がふつうの経営者とは異なっていると指摘。「経営者として(三木谷氏とイーロンは)ぶっ飛んだところが似ている」とした』、「イーロンは“破壊”することに躊躇いがありません。8000人近くの社員がいた会社が(イーロンが社長になってから)5週間ほどで2000人台まで減ってしまう。社員の数が1000人まで減ったときには“恐怖”すら感じました。とにかく、破壊をして創造していく期間が圧倒的に短い」・・・大西氏はイーロンの“リスク感覚”がふつうの経営者とは異なっていると指摘。「経営者として(三木谷氏とイーロンは)ぶっ飛んだところが似ている」とした」、なるほど。
・『「イーロンと六本木で会うときは…」 「私とイーロンは二人とも“KPIオリエンテッド”。ビジネスはスプレッドシート、表計算にできた瞬間に勝てるという感覚がある」(三木谷氏) また、「六本木で会うときは飲んでカラオケをしているだけ(笑)」と語る三木谷氏だが、テスラやTwitterの経営について直接、イーロンから相談を受けたこともあると明かしている。 番組内ではその他にも、イーロン・マスクやジェフ・ベゾスなど「ビッグテック」のトップがメディアを買収する理由、日本経済を活性化させる起爆剤などについても意見が交わされている。 「文藝春秋 電子版」では、全編60分におよぶ番組「ビジネスが表計算にできた瞬間に勝てる理由」「日本の経営者はなぜイーロン・マスクに勝てないのか」のフル動画をそれぞれ配信している』、「「六本木で会うときは飲んでカラオケをしているだけ(笑)」と語る三木谷氏だが、テスラやTwitterの経営について直接、イーロンから相談を受けたこともあると明かしている」、なるほど。
第五に、10月2日付け文春オンライン「【9月22日(日)21時~】三木谷浩史×笹本裕×大西康之「日本の経営者はなぜイーロン・マスクに勝てないのか」(後編)」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/73605
『イーロン・ショック』特別鼎談:「文藝春秋 電子版」は9月22日(日)21時より、楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史さん、元Twitterジャパン社長、DAZNジャパン/アジアCEOの笹本裕さん、ジャーナリストの大西康之さんを招いた「日本の経営者はなぜイーロン・マスクに勝てないのか」 (後編)を配信します』、興味深そうだ。
・『ビジョンは壮大、マネジメントはミクロ…… 今年8月8日、文藝春秋より『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』が刊行されました。 9年間にわたってTwitter Japanの社長を務めた笹本さんが著者となり、間近で見た「経営者」イーロンの姿や、2023年5月、TwitterのCEOにイーロンが就任した際の「衝撃」について赤裸々に綴っています。 本番組では笹本さんと旧知の仲であり、日本を代表するIT企業となった楽天グループ会長兼社長の三木谷さん、聞き手に大西康之さんを迎えた『イーロン・ショック』特別鼎談をお送りします。 〈ビジョンは壮大、マネジメントはミクロ〉――イーロン・マスクと三木谷浩史の共通点とは何か。元興銀の三木谷さんと元リクルートの笹本さんが25年前にみた「ITバブル」の衝撃とは。そして、長らく停滞する日本経済が覚醒するために必要なこととは? 「イーロン・マスク」を皮切りに、この国の未来を問う鼎談となりました。ぜひご覧ください。(後編:26分) 番組概要 番組名:日本の経営者はなぜイーロン・マスクに勝てないのか 出演 :三木谷浩史×笹本裕×大西康之 日時 :9月22日(日)21時00分〜21時26分 完全オンライン番組です ※視聴するには「文藝春秋 電子版」の有料会員(初月300円から)になる必要があります。入会はこちらをご覧ください・・・』、残念ながら無料版では、意味のある情報は公開されないようだ。
先ずは、本年8月7日付け東洋経済オンラインが掲載したKDDI総合研究所リサーチフェロー・情報セキュリティ大学院大学客員准教授の小林 雅一氏による「イーロン・マスクがOpenAIを「キレて去った」内幕 シリコンバレーの苛烈な「AI開発競争」舞台裏」を紹介しよう。
・『ChatGPTを開発したOpenAIは2015年にイーロン・マスクとサム・アルトマンをはじめ6名の起業家、技術者らによって設立された。OpenAIと命名したのはマスクである。 ところが2018年、マスクは突然OpenAIを去っている。一体、何があったのか。 マスク、アルトマン、そしてグーグルを巻き込んだシリコンバレーの覇権争いの内幕に迫る。(小林雅一『イーロン・マスクを超える男サム・アルトマン』から一部を抜粋して再構成しています)』、興味深そうだ。
・『イーロン・マスクに憧れていたサム・アルトマン 2015年、アルトマンは30歳を目前にして何か新しいことに挑戦したくなった。 カリフォルニア州の知事選に立候補することも頭をよぎったが、自身のキャリアを振り返ると、むしろ子供の頃からの夢である「人間のように考えるマシン」、この分野の専門用語で「AGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)」を今こそ自分の手で実現すべきだ、という結論に至った。 AGIとは要するに、人類と同等か、あるいはそれを凌ぐほどの汎用的な知能を備えたスーパーAIだ。 そのための新たなプロジェクトを立ち上げるに際し、アルトマンはまず最初にイーロン・マスクを誘うことにした。 アルトマンがマスクと最初に会ったのは、その数年前のことだ。そのとき彼はマスクの案内で宇宙開発企業スペースXの工場を見学しながら3時間ほど話し込んだ。 当時のアルトマンは人生で初めて起業したループトを売却して間もない駆け出しの起業家だったが、彼より一回り以上年上のマスクは既にテスラとスペースXのビジネスを軌道に乗せた規格外の経営者だった。人類を火星に移住させる夢を滔々と語るマスクはアルトマンにとって憧れの的だった。 このマスクにアルトマンはメールを出し、その中で「AGIを実現するためのマンハッタン計画を始めようとしているけど興味ある?」と尋ねた。マスクは「イエス」と答えた。 マスクとアルトマンは「人類に貢献する安全なAGI」を実現するため、何らかのプロジェクトを立ち上げることで合意に達した』、「人類を火星に移住させる夢を滔々と語るマスクはアルトマンにとって憧れの的だった。 このマスクにアルトマンはメールを出し、その中で「AGIを実現するためのマンハッタン計画を始めようとしているけど興味ある?」と尋ねた。マスクは「イエス」と答えた。 マスクとアルトマンは「人類に貢献する安全なAGI」を実現するため、何らかのプロジェクトを立ち上げることで合意に達した」、なるほど。
・『AI開発で先頭を走っていたグーグル 2014年に英国の気鋭スタートアップ「ディープマインド」を買収するなど、当時AI開発で先頭を走っていたのはグーグルだった。 ディープマインドは優れたAI研究者で神経科学者、またチェスの名手でもあるデミス・ハサビスらによって、2010年にロンドンに共同設立された。2014年、グーグルに推定4億ポンド(約700億円)で買収された後も組織としての独立性は維持され、事実上はハサビスらの指揮の下で「ビデオゲームで遊ぶAI」などの研究開発に取り組んできた。 ハサビスらの開発チームは、ゲームAIの研究で培った「ディープラーニング」や「強化学習」などの先端技術を囲碁に応用して「アルファ碁(AlphaGo)」と呼ばれるAIを開発した。 アルファ碁は2016年3月、それまで世界タイトルを通算18回も獲得したトップ棋士、韓国のイ・セドルを4勝1敗で下した。当時、囲碁の世界チャンピオンを(アルファ碁のような)AIが打破するのは少なくともあと10年はかかると見られていたのに、あっさり勝ってしまったのである。) 中国を起源に2500年以上もの歴史を有し、伝統的ボードゲームの王者と見られた囲碁がAIによって制覇されたことは、大きな衝撃をもって受け止められた。人間の様々な知的活動がいずれコンピュータのようなマシンによって代替される予兆とも見られた。このニュースはメディアで大々的に報じられ、世界的なセンセーションを巻き起こした』、「グーグルに推定4億ポンド(約700億円)で買収された後も組織としての独立性は維持され、事実上はハサビスらの指揮の下で「ビデオゲームで遊ぶAI」などの研究開発に取り組んできた。 ハサビスらの開発チームは、ゲームAIの研究で培った「ディープラーニング」や「強化学習」などの先端技術を囲碁に応用して「アルファ碁(AlphaGo)」と呼ばれるAIを開発した。 アルファ碁は2016年3月、それまで世界タイトルを通算18回も獲得したトップ棋士、韓国のイ・セドルを4勝1敗で下した。当時、囲碁の世界チャンピオンを(アルファ碁のような)AIが打破するのは少なくともあと10年はかかると見られていたのに、あっさり勝ってしまったのである」、なるほど。
・『AI脅威論者となったイーロン・マスクとグーグルの因縁 時間は前後するがディープマインドの設立から2年後となる2012年、ハサビスはシリコンバレーのつてを頼って大富豪マスクと面会するチャンスを得た。スペースXの工場を訪れたハサビスは、組み立てラインが見渡せるカフェテリアでマスクと昼食を共にしながら、自分たちの会社を売り込んだ。つまりディープマインドへの投資を求めたのである。 このワーキング・ランチで、マスクは「(スペースXが)火星に打ち上げるロケットを開発するのは、地球の人口増加や世界戦争、小惑星との衝突などの危機に備えるためだ。いざとなれば人類を火星に移住させるのさ」と壮大な計画を語った。 これに対しハサビスは「それもいいでしょう。でも、(AGIのような)スーパー・インテリジェンスが人類を滅ぼす危険性も忘れてはいけませんよ」と述べた。 これを聞いたマスクは一瞬息を?んだ。そんな可能性もあるのか、と驚いたのであろう。ハサビスの警告に衝撃を受けたマスクはディープマインドへの投資を約束すると共に、これ以降「AI脅威論」の提唱者として知られるようになる。 このワーキング・ランチから数週間後、グーグル共同創業者・CEOのラリー・ペイジと会ったマスクはディープマインドについて彼に紹介した後で、(恐らくハサビスの受け売りで)いつの日か登場するであろう超越的な人工知能、つまりAGIが人類を滅ぼす可能性に言及するが、ペイジはその話に乗ってこなかった。 ペイジは「超越的なAIやそれを搭載したロボットがいつの日か人類にとって代わる存在になったとしても、それは(人間のような生物からAIロボットなど人工物へと)進化が次の段階に移行するに過ぎない」と考えていたのだ。 一方ハサビスらディープマインドの研究チームは、マスクや著名投資家ピーター・ティールらから調達した資金を使って、1970年代に世界的に流行した「スペースインベーダー」「ポン」「ブレイクアウト」など古典的なビデオゲームで遊ぶAIを開発した。 このゲームAIが人間のプレイヤーを凌ぐ腕前を見せるようになると、ラリー・ペイジの強い関心を惹いた。彼の肝入りでグーグルが2014年1月にディープマインドを買収すると、当然ながらマスクは機嫌を損ねた。 彼がディープマインドに投資していた金額は500万ドル(約4億円)だが、この会社がグーグルに買収されたことで、マスクは自分が投資した以上の金額をリターンとして受け取った。 つまり金銭的には得をしたわけだが、世界的な大富豪マスクの目から見れば大した額ではなかっただろう。 そんなことよりも自分の方が先に注目し、目をかけてきたディープマインドという有望企業をペイジ、つまりグーグルに奪われたような気になったとしても無理はない。後にマスクがグーグルやその傘下に入ったディープマインドを殊更意識するようになる背景にはこの一件があったのだ』、「自分の方が先に注目し、目をかけてきたディープマインドという有望企業をペイジ、つまりグーグルに奪われたような気になったとしても無理はない。後にマスクがグーグルやその傘下に入ったディープマインドを殊更意識するようになる背景にはこの一件があったのだ」、なるほど。
・『人類全体に奉仕する非営利の研究団体としてOpenAIを設立する グーグルのような営利企業が人類の将来を左右するかもしれない重大なAI技術を、所詮は自らの利益のために開発・利用するのは危険ではないか。むしろ非営利の研究団体を立ち上げて、そこで単なる一企業ではなく人類全体に奉仕するAI、ひいてはAGIを開発していくべきではないか、とマスクやアルトマンらOpenAI創業時のメンバーは考えた。 たとえばAIの実力に関する現状認識、その進化のペース、さらに将来的な可能性や危険性について彼らは率直に議論した。そして、人間と同等かそれ以上の知能を持つAGIがそう遠くない将来に実現すること、それは人類に途方もない富や便益をもたらす一方で、誤った方向に進化すれば人類に深刻な災禍をもたらし、悪くすれば人類存亡の危機を引き起こす恐れもあること、これらの点で彼らの見解はほぼ一致した。) グーグルへの対抗勢力として、(マシンよりも人類を優先する)新たなAI研究機関がどうしても必要だとマスクは力説したが、「今から始めても果たしてグーグルに追いつくことができるだろうか」という疑問の声も上がった。 しかし最終的には「やってやれないことはないだろう」という結論に彼らは至った。 こうしてグーグルに対抗するという含みを持たせつつ「人類全体に寄与する安全なAGIを実現する」という基本構想で彼らは合意に達した。 マスクとアルトマンのプロジェクトは「非営利の研究団体」となる事が決まり、マスクがこれを「OpenAI」と命名した。この研究所で開発したAI技術やソースコード(コンピュータ・プログラム)を特許で囲い込むことをせず、むしろ論文発表などを通じて技術をオープン化して人類全体に貢献するという趣旨だった。 世界有数の大富豪マスクは、OpenAIプロジェクトに気前よく1億ドル(当時の為替レートで120億円)を出すと約束した』、「人間と同等かそれ以上の知能を持つAGIがそう遠くない将来に実現すること、それは人類に途方もない富や便益をもたらす一方で、誤った方向に進化すれば人類に深刻な災禍をもたらし、悪くすれば人類存亡の危機を引き起こす恐れもあること、これらの点で彼らの見解はほぼ一致した・・・マスクとアルトマンのプロジェクトは「非営利の研究団体」となる事が決まり、マスクがこれを「OpenAI」と命名した。この研究所で開発したAI技術やソースコード(コンピュータ・プログラム)を特許で囲い込むことをせず、むしろ論文発表などを通じて技術をオープン化して人類全体に貢献するという趣旨だった。 世界有数の大富豪マスクは、OpenAIプロジェクトに気前よく1億ドル(当時の為替レートで120億円)を出すと約束した」、なるほど。
・『開発の遅れに苛立つマスク OpenAIは2015年末の設立からしばらくは研究活動が迷走し、実質的な成果が出せなかった。それは事実だが、客観的に見れば設立から僅か1、2年程度で目立った成果を出せというのは無理がある。しかしマスクはそうは思わなかった。 彼は技術開発陣に面と向かって「もっと早く、もっと成果を出せ」と迫った。 「もうそろそろ大きなブレークスルーを達成しないと、シリコンバレーの笑い草になるぞ」と急き立てた。そして2017年には、(必ずしもマスクが決めたとは限らないが)元々数十人程度と少ないOpenAIの研究者の一部が早くも解雇されている。 OpenAIの開発陣に辛く当たるマスクの脳裏には、ペイジつまりグーグルに奪われた英国のスタートアップ企業「ディープマインド」の存在があった。「片や(グーグルの)ディープマインドはあれほど華々しい成果を出して世界的な脚光を浴びているのに、お前たちは一体何をやっているんだ?」とばかりにOpenAIの開発陣を責め立てたのだ。) OpenAIの大きな問題は資金不足だった。マスクはOpenAIの設立に先立って1億ドル(120億円)の資金提供を確約したが、実際にはまとめてその額を拠出したわけではない。むしろ年に2000万ドル(20億円以上)程度のペースで段階的に提供していったと見られる。 もちろんピーター・ティールをはじめ他の投資家からも、同程度の資金が提供されたようだ。 それらを全部足すと恐らく年間数千万ドル(数十億円)と見られるが、この程度の予算ではOpenAIが掲げる「AGI」という壮大な目標を達成するには全然足りなかった。 OpenAIの公式ブログによれば、2017年初旬の段階で彼らは「AGIを実現するには莫大な計算機資源が必要とされ、それを確保するためには年間数十億ドル(数千億円)の資金が必要だ」と認識した。これほど巨額の資金を、OpenAIのような非営利団体として調達するのは極めて難しい、という結論に達したという』、「OpenAIの開発陣に辛く当たるマスクの脳裏には、ペイジつまりグーグルに奪われた英国のスタートアップ企業「ディープマインド」の存在があった。「片や(グーグルの)ディープマインドはあれほど華々しい成果を出して世界的な脚光を浴びているのに、お前たちは一体何をやっているんだ?」とばかりにOpenAIの開発陣を責め立てたのだ・・・2017年初旬の段階で彼らは「AGIを実現するには莫大な計算機資源が必要とされ、それを確保するためには年間数十億ドル(数千億円)の資金が必要だ」と認識した。これほど巨額の資金を、OpenAIのような非営利団体として調達するのは極めて難しい、という結論に達したという」、なるほど。
・『マスクがOpenAIとテスラの合併を提案 2017年の末頃、マスクやアルトマンら首脳陣はOpenAIを事実上、営利企業化することで合意に近づいた。この際、マスクは自身が(営利企業化した)OpenAI株式の過半数と取締役会の指揮権を握って、そのCEO(最高経営責任者)になることを要求した。有り体に言えば、「OpenAIを自分の会社にしたい」ということだ。 しかしアルトマンやブロックマンがこれに難色を示すと、マスクはOpenAIへの資金供給をストップしてしまった。 最大のスポンサーであるマスクに資金供給を止められて、OpenAIはその研究者をはじめ従業員に毎月の給料を払うこともできなくなった。困ったアルトマンがリード・ホフマンに相談すると、彼は当面のつなぎ資金を提供してくれた(ホフマンはLinkedInを創業したことなどで有名な起業家・投資家で、OpenAIの初期の取締役の一人でもある)。 ただしマスクと(残された)OpenAI首脳陣との交渉はその後も続いた。) 「OpenAIを自分の会社にする」という最初の提案を却下されたマスクは、次に元々自分の会社であるテスラとOpenAIを合併させることを提案してきた。 OpenAI首脳陣がこの合併案を拒絶すると、マスクはOpenAIを離脱することを決意した』、「OpenAIを自分の会社にする」という最初の提案を却下されたマスクは、次に元々自分の会社であるテスラとOpenAIを合併させることを提案してきた。 OpenAI首脳陣がこの合併案を拒絶すると、マスクはOpenAIを離脱することを決意した」、なるほど。
・『「のろま!」と言い捨てて退場 2018年2月のある日、マスクはアルトマンに付き添われてサンフランシスコにあるOpenAI本社の最上階を訪れ、その従業員らにお別れの挨拶をした。 イーロン・マスクを超える男 サム・アルトマンなぜ、わずか7年で奇跡の対話型AIを開発できたのか(それは儀礼的で穏やかな式典になるはずだった――マスクは自分がOpenAIを去ることを告げた上で、従業員達のこれまでの努力を讃える。一方、アルトマンもマスクがこれまでしてくれたことに謝意を示し「イーロンがOpenAIを離れるのは、テスラの仕事に集中するためだ」と述べる――そういう手はず、あるいは暗黙の了解だった。 しかし、実際にはそうスムーズに事は運ばなかった。その場にいた人達の証言によれば、マスクは別れの挨拶の途中で「自分はここ(OpenAI)を去るが、ここでやっていたようなAIの開発はテスラで続けて行う。君たちはもっと速く動く(もっと早く成果を出す)必要がある」と述べたとされる。 これにOpenAIの従業員らはムカッときた。そのうちの一人であるインターン研究員がマスクに向かって「急げ、急げと言うけど、あなたの計画は無謀ですよ」と反論した。この研究員に対し、マスクは「のろまackass)!」と言い捨てて、その場を立ち去った。 後日、OpenAI経営陣の一人が「のろまトロフィー」なるものをわざわざ業者に発注して作らせ、このインターン研究員に贈ったという。「あまり気にするな」という慰めと同時に「よくぞ言ってくれた」という感謝も込められているのかもしれない。 マスクと袂を分かったアルトマンは、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOに近づき、マイクロソフトの巨額融資を引き出して、ChatGPTの開発に邁進していくことになる』、「マスクは別れの挨拶の途中で「自分はここ(OpenAI)を去るが、ここでやっていたようなAIの開発はテスラで続けて行う。君たちはもっと速く動く(もっと早く成果を出す)必要がある」と述べたとされる。 これにOpenAIの従業員らはムカッときた。そのうちの一人であるインターン研究員がマスクに向かって「急げ、急げと言うけど、あなたの計画は無謀ですよ」と反論した。この研究員に対し、マスクは「のろまackass)!」と言い捨てて、その場を立ち去った・・・マスクと袂を分かったアルトマンは、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOに近づき、マイクロソフトの巨額融資を引き出して、ChatGPTの開発に邁進していくことになる」、「マスク」氏は気が短すぎて、摩擦を起こしているようだ。
次に、8月14日付け文春オンラインが掲載した元Twitterジャパン社長の笹本 氏による「「自分には能力がなかった」どれだけ助言をしてもイーロン・マスクは聞く耳持たず…元Twitterジャパン社長が語った「退職の真相」 『イーロン・ショック』より #5」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/72500
・『「要するに、彼(イーロン・マスク氏)に聞き入れてもらえるような能力が自分にはなかったということなのだと思います」。2014年からTwitterジャパンの代表取締役を務める笹本裕氏が同社を退職した理由には、世界的経営者イーロン・マスク氏との不協和があった。退職の真相を、笹本氏の新刊『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)』、興味深そうだ。
・『私が退職を決めた理由 私の興味関心は、とにかく日本とアジアの事業でした。 だから、少なくともアジア圏の事業について聞く耳を持ってもらえないのであれば、自分の存在は不要だなと思いました。 これは批判ではなく、イーロンは「アメリカをなんとかしないといけない」ということに99パーセント頭が行ってしまっていました。だから、もう少しイーロンが日本やアジアの事業に気を配ってくれていれば、という気持ちはあります。 エンジニアの配置についても疑問がありました。 スーパーアプリを開発するならやはり、すでにLINEやWeChatといったスーパーアプリが存在するアジアで開発するべきだと私は思っていました。アメリカにスーパーアプリはありません。ないところでそれを開発しようとしても、それに共感できるエンジニアは少ない。 だから新たなTwitterを創造していくなら、たとえば、東京にプロダクトデザインをする人たちを置いて、シンガポールにソフトウェアのデザインをする人を置く。そしてインドに開発体制を置く。私はこの3拠点制を提案していたのですが、少し時期尚早だったのかもしれません。 イーロンは「まずアメリカを回さないといけない」ということで頭がいっぱいだった。それがちょっと残念でした。「破壊と創造を一緒に動かしていくなら、私の提言が受け入れられてもよかったのにな」と。 私が辞めるに至ったのは、そういう戦略の違いがあったからです。私の力不足でもあるのですが。要するに、彼に聞き入れてもらえるような能力が自分にはなかったということなのだと思います』、「スーパーアプリを開発するならやはり、すでにLINEやWeChatといったスーパーアプリが存在するアジアで開発するべきだと私は思っていました。アメリカにスーパーアプリはありません。ないところでそれを開発しようとしても、それに共感できるエンジニアは少ない。 だから新たなTwitterを創造していくなら、たとえば、東京にプロダクトデザインをする人たちを置いて、シンガポールにソフトウェアのデザインをする人を置く。そしてインドに開発体制を置く。私はこの3拠点制を提案していたのですが、少し時期尚早だったのかもしれません・・・イーロンは「まずアメリカを回さないといけない」ということで頭がいっぱいだった。それがちょっと残念でした。「破壊と創造を一緒に動かしていくなら、私の提言が受け入れられてもよかったのにな」と。 私が辞めるに至ったのは、そういう戦略の違いがあったからです」、なるほど。
・『爪痕は残せた、はず あえて自分を擁護するなら、努力はしたつもりです。少しは爪痕を残せたはずです。 ひとつは先に触れた検索連動型の広告商品。もうひとつは私が辞めてからですが、イーロンは「日本にエンジニアを1人置くことにしたよ」と言ってくれました。ちなみに私は8人置いてくれと言っていました。だから8分の1は達成したということになるでしょうか。) 他に、「日本の売上倍増計画」を彼に提案したこともあります。これもほとんど箇条書きのようなものですが、それを書いて送って、すぐに私は辞めてしまった。だから今になってもイーロンは、「日本は倍にできるよ」と言っているようです。社員が「どうやってやるんですか?」と聞いても、イーロンは「それはお前らが考えろ」としか言いません。戦略の詳しい中身がわからないからです。 負け犬の遠吠えでしょうか』、「「日本の売上倍増計画」を彼に提案したこともあります。これもほとんど箇条書きのようなものですが、それを書いて送って、すぐに私は辞めてしまった。だから今になってもイーロンは、「日本は倍にできるよ」と言っているようです。社員が「どうやってやるんですか?」と聞いても、イーロンは「それはお前らが考えろ」としか言いません』、「イーロンは「それはお前らが考えろ」としか言いません」、というのはやむを得ないだろう。
・『意に反するリストラ。せめてもの抵抗 私が退職を決めたのは、2023年2月の末と3月の頭に、私の意思と反する2度目か3度目のリストラが遂行されたのがトリガーと言えます。 私はなにより、イーロンにはTwitterの事業を成功させてほしいと思っていました。そう考えたときに、日本でのリストラは大きな間違いだと思ったのです。だから無駄な抵抗だとはわかっていましたが、自分が意思表示をすべきだと思いました。 いわば最後のあがきです。 日本でリストラをしてはいけないことは、すべて指標で説明できます。 一人頭の売上規模や収益率などをすべてきちんと説明すると、日本の事業には触ってはいけないとわかるはずです。 でも、グローバルのことを考えている彼にとっては、それはあまり関係ない。「日本の収益率はいいから」とか、そういう話を彼はあまり聞きたくない。だから「全体でとにかくあと500人減らしたい」というときに、日本はまだ人が残っているから「じゃあ日本だね」という話になってしまった。他の国はもう人が減ってしまっているから、これ以上削れないのです。 でも経営判断としては、絶対にそれは間違いなのです。そこに対する違和感は、あまりにも大きいものがありました。 このままやっていったら、日本もどこかのタイミングでガタガタッと崩れていく。まだその段階に来ていないだけです。いまは崖っ縁にいるような状態で、このままだと崖から落ちるのは見えていました。 私にできることには限界がある。だから、自分から辞めようと思っていた矢先に、イーロンからレイオフの通知が届きました』、「日本でリストラをしてはいけないことは、すべて指標で説明できます。 一人頭の売上規模や収益率などをすべてきちんと説明すると、日本の事業には触ってはいけないとわかるはずです。 でも、グローバルのことを考えている彼にとっては、それはあまり関係ない。「日本の収益率はいいから」とか、そういう話を彼はあまり聞きたくない。だから「全体でとにかくあと500人減らしたい」というときに、日本はまだ人が残っているから「じゃあ日本だね」という話になってしまった。他の国はもう人が減ってしまっているから、これ以上削れないのです」、なるほど。
第三に、8月16日付け文春オンラインが掲載した元Twitterジャパンの笹本 裕氏による「「なんで日本人はこんなに安く働かされているんですかね?」外資系ヘッドハンターが返した驚きの回答「日本人は年収が100万上がるだけで…」 『イーロン・ショック』より #8」を紹介しよう。
・『「なんで日本人はこんなに安く働かされているんですかね?」――元Twitterジャパンの笹本氏が、外資系ヘッドハンターに尋ねると驚きの回答が…。笹本裕氏の新刊『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』(文藝春秋)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)』、興味深そうだ。
・『なぜ、日本人の給料はこんなにも低いのか? そもそも、なぜ日本人の給料は低いのでしょうか? Twitterを辞めようかどうしようか考えているとき、外資系のヘッドハンターと話をしました。そこで驚いたのが、どこか別の企業に行くとなると、以前日本で働いていた頃より給料が低くなってしまうということでした。 私はヘッドハンターに「これってちょっとおかしくないですか? 私の能力を買ってくれるなら、私の能力に値札を付けてほしいんです」と言いました。 実際、外国人経営者に何十億円と払いながら、日本人経営者にはその何十分の一しか払わない日本企業もあります。 私は「なんで日本人はこんなに安く働かされているんですかね?」と聞きました。すると、そのヘッドハンターはこう言いました。「日本人は外資がオファーを出したときに、100万くらい年収が上がるとわかるだけで喜んでサインしてしまう。だから給与水準が低いんだよ」 先日も、ある日本の上場企業の経営者と話しているときに、その話になりました。そのときは「日本の給料が低いのは、報酬委員会が問題だよね」という話になりました。上場企業には役員報酬の開示義務があります。1億円以上の報酬を渡すと、そのことを社外に開示しなくてはいけない。このため、多くの日本企業の報酬委員会は「9999万円にしておきましょう」となりがちなのです。 今後の日本は、外貨を稼がないといけません。それなのに、外国人に高い報酬を与えて日本人は安く働く、この構造を変えていかないと、日本はマズイことになると思うのです。 日本人はこれから、世界の中で戦い、生き抜いていかないといけません。それなのに、あまりにものんびりしているなと思わざるをえません。 幸いなことに、日本は経済的にもまだまだ豊かで、自然も豊かです。こういう国は珍しい。こういう国で暮らしていると、「釜ゆでになっている可能性がある」ことに気づかない。これは怖いことです。 世界を見ると、ぜんぜん違うものが見えてきます。 たとえばオーストラリアの学生は、大学を卒業すると1年間休むといいます。就職はせずに、世界を旅行するのです。すると、視点が変わって帰ってきます。 でも日本では、学生生活は就活に追われ忙しく、卒業したら4月から就職するのが普通です。それだとどうしても視野は狭くなる。もしかしたら、そういう慣習から破壊しないといけないのかもしれません』、「「日本人は外資がオファーを出したときに、100万くらい年収が上がるとわかるだけで喜んでサインしてしまう。だから給与水準が低いんだよ」 先日も、ある日本の上場企業の経営者と話しているときに、その話になりました。そのときは「日本の給料が低いのは、報酬委員会が問題だよね」という話になりました。上場企業には役員報酬の開示義務があります。1億円以上の報酬を渡すと、そのことを社外に開示しなくてはいけない。このため、多くの日本企業の報酬委員会は「9999万円にしておきましょう」となりがちなのです・・・オーストラリアの学生は、大学を卒業すると1年間休むといいます。就職はせずに、世界を旅行するのです。すると、視点が変わって帰ってきます。 でも日本では、学生生活は就活に追われ忙しく、卒業したら4月から就職するのが普通です。それだとどうしても視野は狭くなる。もしかしたら、そういう慣習から破壊しないといけないのかもしれません」、その通りだ。
第四に、10月2日付け文春オンライン「「8000人の社員がたったの5週間で…」楽天・三木谷浩史、元Twitterジャパン・笹本裕が見た“イーロン・ショック”の衝撃」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/73848
・『直接知る二人だから分かる「衝撃」:楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史氏、元Twitterジャパン社長で、DAZNジャパン・アジアCEOの笹本裕氏、ジャーナリストの大西康之氏が、「文藝春秋 電子版」のオンライン番組に9月21、22日、出演した。 9年間にわたってTwitterジャパンの社長を務めた笹本氏は8月、『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』(文藝春秋)を出版。間近で見た「経営者」イーロンの姿や、2022年10月にTwitterCEOにイーロンが就任した際の「衝撃」が赤裸々に綴られている。 三木谷氏はイーロン・マスクと旧知の仲。番組では、二人がじかに目撃したその経営手腕について迫っている』、興味深そうだ。
・『三木谷氏とイーロン氏「ぶっ飛んだところが似ている」 イーロンはTwitterのCEOに就任するや、早々に大規模人員削減に取り掛かった。 「イーロンは“破壊”することに躊躇いがありません。8000人近くの社員がいた会社が(イーロンが社長になってから)5週間ほどで2000人台まで減ってしまう。社員の数が1000人まで減ったときには“恐怖”すら感じました。とにかく、破壊をして創造していく期間が圧倒的に短い」(笹本氏)) 大西氏はイーロンの“リスク感覚”がふつうの経営者とは異なっていると指摘。「経営者として(三木谷氏とイーロンは)ぶっ飛んだところが似ている」とした』、「イーロンは“破壊”することに躊躇いがありません。8000人近くの社員がいた会社が(イーロンが社長になってから)5週間ほどで2000人台まで減ってしまう。社員の数が1000人まで減ったときには“恐怖”すら感じました。とにかく、破壊をして創造していく期間が圧倒的に短い」・・・大西氏はイーロンの“リスク感覚”がふつうの経営者とは異なっていると指摘。「経営者として(三木谷氏とイーロンは)ぶっ飛んだところが似ている」とした」、なるほど。
・『「イーロンと六本木で会うときは…」 「私とイーロンは二人とも“KPIオリエンテッド”。ビジネスはスプレッドシート、表計算にできた瞬間に勝てるという感覚がある」(三木谷氏) また、「六本木で会うときは飲んでカラオケをしているだけ(笑)」と語る三木谷氏だが、テスラやTwitterの経営について直接、イーロンから相談を受けたこともあると明かしている。 番組内ではその他にも、イーロン・マスクやジェフ・ベゾスなど「ビッグテック」のトップがメディアを買収する理由、日本経済を活性化させる起爆剤などについても意見が交わされている。 「文藝春秋 電子版」では、全編60分におよぶ番組「ビジネスが表計算にできた瞬間に勝てる理由」「日本の経営者はなぜイーロン・マスクに勝てないのか」のフル動画をそれぞれ配信している』、「「六本木で会うときは飲んでカラオケをしているだけ(笑)」と語る三木谷氏だが、テスラやTwitterの経営について直接、イーロンから相談を受けたこともあると明かしている」、なるほど。
第五に、10月2日付け文春オンライン「【9月22日(日)21時~】三木谷浩史×笹本裕×大西康之「日本の経営者はなぜイーロン・マスクに勝てないのか」(後編)」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/73605
『イーロン・ショック』特別鼎談:「文藝春秋 電子版」は9月22日(日)21時より、楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史さん、元Twitterジャパン社長、DAZNジャパン/アジアCEOの笹本裕さん、ジャーナリストの大西康之さんを招いた「日本の経営者はなぜイーロン・マスクに勝てないのか」 (後編)を配信します』、興味深そうだ。
・『ビジョンは壮大、マネジメントはミクロ…… 今年8月8日、文藝春秋より『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』が刊行されました。 9年間にわたってTwitter Japanの社長を務めた笹本さんが著者となり、間近で見た「経営者」イーロンの姿や、2023年5月、TwitterのCEOにイーロンが就任した際の「衝撃」について赤裸々に綴っています。 本番組では笹本さんと旧知の仲であり、日本を代表するIT企業となった楽天グループ会長兼社長の三木谷さん、聞き手に大西康之さんを迎えた『イーロン・ショック』特別鼎談をお送りします。 〈ビジョンは壮大、マネジメントはミクロ〉――イーロン・マスクと三木谷浩史の共通点とは何か。元興銀の三木谷さんと元リクルートの笹本さんが25年前にみた「ITバブル」の衝撃とは。そして、長らく停滞する日本経済が覚醒するために必要なこととは? 「イーロン・マスク」を皮切りに、この国の未来を問う鼎談となりました。ぜひご覧ください。(後編:26分) 番組概要 番組名:日本の経営者はなぜイーロン・マスクに勝てないのか 出演 :三木谷浩史×笹本裕×大西康之 日時 :9月22日(日)21時00分〜21時26分 完全オンライン番組です ※視聴するには「文藝春秋 電子版」の有料会員(初月300円から)になる必要があります。入会はこちらをご覧ください・・・』、残念ながら無料版では、意味のある情報は公開されないようだ。
タグ:イーロン・マスク (その3)(イーロン・マスクがOpenAIを「キレて去った」内幕 シリコンバレーの苛烈な「AI開発競争」舞台裏、「自分には能力がなかった」どれだけ助言をしてもイーロン・マスクは聞く耳持たず…元Twitterジャパン社長が語った「退職の真相」 『イーロン・ショック』より #5、「なんで日本人はこんなに安く働かされているんですかね?」外資系ヘッドハンターが返した驚きの回答「日本人は年収が100万上がるだけで…」 『イーロン・ショック』より #8、、「イーロン・マスクはヤバい人」東大教授たちが語 東洋経済オンライン 小林 雅一氏による「イーロン・マスクがOpenAIを「キレて去った」内幕 シリコンバレーの苛烈な「AI開発競争」舞台裏」 小林雅一『イーロン・マスクを超える男サム・アルトマン』 「人類を火星に移住させる夢を滔々と語るマスクはアルトマンにとって憧れの的だった。 このマスクにアルトマンはメールを出し、その中で「AGIを実現するためのマンハッタン計画を始めようとしているけど興味ある?」と尋ねた。マスクは「イエス」と答えた。 マスクとアルトマンは「人類に貢献する安全なAGI」を実現するため、何らかのプロジェクトを立ち上げることで合意に達した」、なるほど。 「グーグルに推定4億ポンド(約700億円)で買収された後も組織としての独立性は維持され、事実上はハサビスらの指揮の下で「ビデオゲームで遊ぶAI」などの研究開発に取り組んできた。 ハサビスらの開発チームは、ゲームAIの研究で培った「ディープラーニング」や「強化学習」などの先端技術を囲碁に応用して「アルファ碁(AlphaGo)」と呼ばれるAIを開発した。 アルファ碁は2016年3月、それまで世界タイトルを通算18回も獲得したトップ棋士、韓国のイ・セドルを4勝1敗で下した。当時、囲碁の世界チャンピオンを(アルフ ァ碁のような)AIが打破するのは少なくともあと10年はかかると見られていたのに、あっさり勝ってしまったのである」、なるほど。 「自分の方が先に注目し、目をかけてきたディープマインドという有望企業をペイジ、つまりグーグルに奪われたような気になったとしても無理はない。後にマスクがグーグルやその傘下に入ったディープマインドを殊更意識するようになる背景にはこの一件があったのだ」、なるほど。 「人間と同等かそれ以上の知能を持つAGIがそう遠くない将来に実現すること、それは人類に途方もない富や便益をもたらす一方で、誤った方向に進化すれば人類に深刻な災禍をもたらし、悪くすれば人類存亡の危機を引き起こす恐れもあること、これらの点で彼らの見解はほぼ一致した・・・ マスクとアルトマンのプロジェクトは「非営利の研究団体」となる事が決まり、マスクがこれを「OpenAI」と命名した。この研究所で開発したAI技術やソースコード(コンピュータ・プログラム)を特許で囲い込むことをせず、むしろ論文発表などを通じて技術をオープン化して人類全体に貢献するという趣旨だった。 世界有数の大富豪マスクは、OpenAIプロジェクトに気前よく1億ドル(当時の為替レートで120億円)を出すと約束した」、なるほど。 「OpenAIの開発陣に辛く当たるマスクの脳裏には、ペイジつまりグーグルに奪われた英国のスタートアップ企業「ディープマインド」の存在があった。「片や(グーグルの)ディープマインドはあれほど華々しい成果を出して世界的な脚光を浴びているのに、お前たちは一体何をやっているんだ?」とばかりにOpenAIの開発陣を責め立てたのだ・・・2017年初旬の段階で彼らは「AGIを実現するには莫大な計算機資源が必要とされ、それを確保するためには年間数十億ドル(数千億円)の資金が必要だ」と認識した。これほど巨額の資金を、Ope nAIのような非営利団体として調達するのは極めて難しい、という結論に達したという」、なるほど。 「OpenAIを自分の会社にする」という最初の提案を却下されたマスクは、次に元々自分の会社であるテスラとOpenAIを合併させることを提案してきた。 OpenAI首脳陣がこの合併案を拒絶すると、マスクはOpenAIを離脱することを決意した」、なるほど。 「マスクは別れの挨拶の途中で「自分はここ(OpenAI)を去るが、ここでやっていたようなAIの開発はテスラで続けて行う。君たちはもっと速く動く(もっと早く成果を出す)必要がある」と述べたとされる。 これにOpenAIの従業員らはムカッときた。そのうちの一人であるインターン研究員がマスクに向かって「急げ、急げと言うけど、あなたの計画は無謀ですよ」と反論した。この研究員に対し、マスクは「のろまackass)!」と言い捨てて、その場を立ち去った・・・ マスクと袂を分かったアルトマンは、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOに近づき、マイクロソフトの巨額融資を引き出して、ChatGPTの開発に邁進していくことになる」、「マスク」氏は気が短すぎて、摩擦を起こしているようだ。 文春オンライン 笹本 氏による「「自分には能力がなかった」どれだけ助言をしてもイーロン・マスクは聞く耳持たず…元Twitterジャパン社長が語った「退職の真相」 『イーロン・ショック』より #5」 笹本氏の新刊『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』(文藝春秋) 「スーパーアプリを開発するならやはり、すでにLINEやWeChatといったスーパーアプリが存在するアジアで開発するべきだと私は思っていました。アメリカにスーパーアプリはありません。ないところでそれを開発しようとしても、それに共感できるエンジニアは少ない。 だから新たなTwitterを創造していくなら、たとえば、東京にプロダクトデザインをする人たちを置いて、シンガポールにソフトウェアのデザインをする人を置く。そしてインドに開発体制を置く。私はこの3拠点制を提案していたのですが、少し時期尚早だったのかもしれま せん・・・イーロンは「まずアメリカを回さないといけない」ということで頭がいっぱいだった。それがちょっと残念でした。「破壊と創造を一緒に動かしていくなら、私の提言が受け入れられてもよかったのにな」と。 私が辞めるに至ったのは、そういう戦略の違いがあったからです」、なるほど。 「イーロンは「それはお前らが考えろ」としか言いません」、というのはやむを得ないだろう。 「日本でリストラをしてはいけないことは、すべて指標で説明できます。 一人頭の売上規模や収益率などをすべてきちんと説明すると、日本の事業には触ってはいけないとわかるはずです。 でも、グローバルのことを考えている彼にとっては、それはあまり関係ない。「日本の収益率はいいから」とか、そういう話を彼はあまり聞きたくない。だから「全体でとにかくあと500人減らしたい」というときに、日本はまだ人が残っているから「じゃあ日本だね」という話になってしまった。他の国はもう人が減ってしまっているから、これ以上削れないのです」、 なるほど。 笹本 裕氏による「「なんで日本人はこんなに安く働かされているんですかね?」外資系ヘッドハンターが返した驚きの回答「日本人は年収が100万上がるだけで…」 『イーロン・ショック』より #8」 笹本裕氏の新刊『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』(文藝春秋) 「「日本人は外資がオファーを出したときに、100万くらい年収が上がるとわかるだけで喜んでサインしてしまう。だから給与水準が低いんだよ」 先日も、ある日本の上場企業の経営者と話しているときに、その話になりました。そのときは「日本の給料が低いのは、報酬委員会が問題だよね」という話になりました。上場企業には役員報酬の開示義務があります。1億円以上の報酬を渡すと、そのことを社外に開示しなくてはいけない。このため、多くの日本企業の報酬委員会は「9999万円にしておきましょう」となりがちなのです・・・ オーストラリアの学生は、大学を卒業すると1年間休むといいます。就職はせずに、世界を旅行するのです。すると、視点が変わって帰ってきます。 でも日本では、学生生活は就活に追われ忙しく、卒業したら4月から就職するのが普通です。それだとどうしても視野は狭くなる。もしかしたら、そういう慣習から破壊しないといけないのかもしれません」、その通りだ。 文春オンライン「「8000人の社員がたったの5週間で…」楽天・三木谷浩史、元Twitterジャパン・笹本裕が見た“イーロン・ショック”の衝撃」 『イーロン・ショック 元Twitterジャパン社長が見た「破壊と創造」の215日』(文藝春秋) 「イーロンは“破壊”することに躊躇いがありません。8000人近くの社員がいた会社が(イーロンが社長になってから)5週間ほどで2000人台まで減ってしまう。社員の数が1000人まで減ったときには“恐怖”すら感じました。とにかく、破壊をして創造していく期間が圧倒的に短い」・・・大西氏はイーロンの“リスク感覚”がふつうの経営者とは異なっていると指摘。「経営者として(三木谷氏とイーロンは)ぶっ飛んだところが似ている」とした」、なるほど。 「「六本木で会うときは飲んでカラオケをしているだけ(笑)」と語る三木谷氏だが、テスラやTwitterの経営について直接、イーロンから相談を受けたこともあると明かしている」、なるほど。 文春オンライン「【9月22日(日)21時~】三木谷浩史×笹本裕×大西康之「日本の経営者はなぜイーロン・マスクに勝てないのか」(後編)」 〈ビジョンは壮大、マネジメントはミクロ〉 残念ながら無料版では、意味のある情報は公開されないようだ。
GAFA(その7)(GAFAの株価が低調 「成長の限界を迎えた」といえるこれだけの理由、フェイスブックの次はVR離れ…1兆円超えの大赤字を垂れ流す「メタ社」の悲惨な末路 ザッカーバーグ氏は従業員から見放された) [イノベーション]
GAFAについては、2022年2月11日に取上げた。久しぶりの今日は、(その7)(GAFAの株価が低調 「成長の限界を迎えた」といえるこれだけの理由、フェイスブックの次はVR離れ…1兆円超えの大赤字を垂れ流す「メタ社」の悲惨な末路 ザッカーバーグ氏は従業員から見放された)である。
先ずは、2022年5月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「GAFAの株価が低調、「成長の限界を迎えた」といえるこれだけの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302879
・『「GAFA」の株価が下落基調にある。これまで注目されてきたビジネスモデルに、行き詰まりの兆しが見え始めているからだ。その軌跡を基本から振り返ると共に、現在のリスク要因を分析し、今後の展開を予測する』、興味深そうだ。
・『GAFAの成長期待が鈍化 ビジネスモデルに行き詰まりの兆し このところ、「GAFA」(グーグル、アップル、旧フェイスブック・現メタ、アマゾン)の株価が下落基調にある。2022年1~3月期決算が出そろった後も、各社の株価は上昇していない。 最大のポイントは、各社の成長期待が鈍化していることだ。これまで注目されてきたITプラットフォーマーとしてのビジネスモデルに、行き詰まりの兆しが見え始めている。加えて、米国内の人手不足や、「ディ・グローバリズム」(グローバル化に逆行する動き)に伴うコストアップ要因がGAFA各社を直撃している。 今後の展開として、GAFAの成長期待は一段と低下することも想定される。それが現実味を帯びると、各社の株価は下落する可能性が高い。ウクライナ危機や中国のゼロコロナ政策をきっかけに、グローバル化の加速を前提としたアップルの事業運営の効率性は、低下する恐れが強くなっている。主要先進国における個人データ保護規制の強化なども、メタやグーグル、アマゾンの成長期待を低下させるだろう。 米国の連邦準備制度理事会(FRB)は、“インフレ退治”のため周囲の予想を上回るペースで金融引き締めを進めている。それはGAFAの事業運営には逆風となり、株価の下落懸念を高める要因だ』、「「GAFA」(グーグル、アップル、旧フェイスブック・現メタ、アマゾン)の株価が下落基調にある。2022年1~3月期決算が出そろった後も、各社の株価は上昇していない。 最大のポイントは、各社の成長期待が鈍化していることだ。これまで注目されてきたITプラットフォーマーとしてのビジネスモデルに、行き詰まりの兆しが見え始めている。加えて、米国内の人手不足や、「ディ・グローバリズム」(グローバル化に逆行する動き)に伴うコストアップ要因がGAFA各社を直撃している」、なるほど。
・『これまでのビジネスモデルが神通力を失うGAFA 過去1年間のGAFAの株価の推移を確認すると、大まかな傾向として21年12月前半まで各社の株価は高値圏で推移した。しかし、その後は株価が上昇していない。それが意味することは、各社が高い成長を維持するのが難しくなっているということだ。 まず、アップルの成長期待の鈍化を考えてみよう。1990年代以降の米国経済において、アップルはグローバル化を追い風に高成長を実現した企業の象徴である。97年、同社は経営破綻寸前にまで追い込まれていたが、その状況を救ったのが創業者の一人だった故スティーブ・ジョブズだ。ジョブズは高付加価値なソフトウエアの創出に集中し、iPodやiPhoneなどのデバイスや、iTunesなどのサービスの設計と開発に注力した。 それと同時にアップルは世界各国から優れた部材や部品を集め、完成品のユニット組み立て型生産を、台湾の鴻海精密工業の中国子会社であるフォックスコンに委託した。こうした国際分業によって、製造ラインを自社保有する負担から解放され、高付加価値なソフトウエア創出に集中し、高い収益性を実現したのだ。同社がリーマンショック後の世界経済のデジタル化を加速し、米国および世界経済の成長に与えた影響は計り知れない。 しかし、近年、こうしたビジネスモデルに行き詰まりが見えている。まず、中国の生産年齢人口が減少し、労働コストが上昇したことは大きい。加えて、米中対立によって世界のサプライチェーンが混乱。さらに、新型コロナウイルスの感染再拡大やウクライナ危機など複合的な要因が重なり、供給制約は深刻化し続けている。 そうした環境の変化によって、国際分業体制の強化で高成長を実現してきたアップルが、需要を取りこぼし始めているのだ』、「97年、同社は経営破綻寸前にまで追い込まれていたが、その状況を救ったのが創業者の一人だった故スティーブ・ジョブズだ。ジョブズは高付加価値なソフトウエアの創出に集中し、iPodやiPhoneなどのデバイスや、iTunesなどのサービスの設計と開発に注力した。 それと同時にアップルは世界各国から優れた部材や部品を集め、完成品のユニット組み立て型生産を、台湾の鴻海精密工業の中国子会社であるフォックスコンに委託した。こうした国際分業によって、製造ラインを自社保有する負担から解放され、高付加価値なソフトウエア創出に集中し、高い収益性を実現したのだ。同社がリーマンショック後の世界経済のデジタル化を加速し、米国および世界経済の成長に与えた影響は計り知れない。 しかし、近年、こうしたビジネスモデルに行き詰まりが見えている。まず、中国の生産年齢人口が減少し、労働コストが上昇したことは大きい。加えて、米中対立によって世界のサプライチェーンが混乱。さらに、新型コロナウイルスの感染再拡大やウクライナ危機など複合的な要因が重なり、供給制約は深刻化し続けている」、なるほど。
・『SNSへの規制強化、労働組合の結成 逆風強まるITプラットフォーマー 動画や検索、SNSサービスの提供で広告収入を得てきたグーグルやメタ、ネット通販やクラウドコンピューティングなどのサービスを提供してきたアマゾンの成長期待も鈍化している。 グーグルとメタは、ユーザーである個人の検索や動画視聴、知人関係(ネットワーク)、モノやサービスの購入履歴といった膨大なデータ(ビッグデータ)を優先的に手に入れて、それを販売したり、新しいビジネスに用いたりすることによって急速に収益を増やした。 しかし、ロシアがフェイスブックを用いて2016年の米大統領選挙に介入した疑惑が浮上したことなどにより、SNSへの規制が強化されている。メタは人海戦術でフェイクニュースの摘発を強化しなければならなくなり、コストが増加した。また、公正さへの懸念から一時、フェイスブックのユーザーが減少した。 メタの22年1~3月期決算は、売上高の伸び率が上場来で最低となり、同社への懸念は高まっている。同様のことが、検索サービスの強化によって広告収入を増やしてきたグーグルにも当てはまる部分が多い。 アマゾンは世界に「物流革命」を起こした。同社は、積極的な設備投資によって世界各国で効率的な配送網を整備し、自力でラストワンマイルを構築した。さらに消費者一人ひとりの好みを突くアルゴリズムを開発して消費意欲をかき立て、クラウドサービスも提供することによって有力ITプラットフォーマーとしての地位を確立した。 しかし、物流施設での過酷な労働環境への反発から労働組合が結成されるなど、成長力には翳りが出始めている。加えて、米国をはじめ世界的な人手不足を背景に、物流センターでの人員やドライバーの確保が難しくなっているようだ。 倉庫の建設やEV新興メーカーへの投資も業績の重荷になっている。原油などエネルギー資源価格の高騰は燃料費の増加につながり、収益を圧迫している。このようにGAFA各社はこれまでの高い成長スピードを維持することが難しくなっている』、「ロシアがフェイスブックを用いて2016年の米大統領選挙に介入した疑惑が浮上したことなどにより、SNSへの規制が強化されている。メタは人海戦術でフェイクニュースの摘発を強化しなければならなくなり、コストが増加した。また、公正さへの懸念から一時、フェイスブックのユーザーが減少した。 メタの22年1~3月期決算は、売上高の伸び率が上場来で最低となり、同社への懸念は高まっている。同様のことが、検索サービスの強化によって広告収入を増やしてきたグーグルにも当てはまる部分が多い・・・アマゾンは・・・物流施設での過酷な労働環境への反発から労働組合が結成されるなど、成長力には翳りが出始めている。加えて、米国をはじめ世界的な人手不足を背景に、物流センターでの人員やドライバーの確保が難しくなっているようだ。 倉庫の建設やEV新興メーカーへの投資も業績の重荷になっている」、なるほど。
・中長期的なGAFA株の下落懸念 業績拡大ペースは鈍化 GAFA各社は正念場を迎えている。今後の展開として、GAFAの業績拡大ペースは鈍化し、株価が下落する可能性は高まっている。各社ともグローバル化の加速を前提にビジネスモデルを構築してきたからだ。 しかし、ウクライナ危機によって世界経済はグローバル化からブロック化に向かい始めた。世界経済の先行き見通しは悪化したため、広告主の企業はコスト削減を優先しなければならず、SNSや動画サイトでの広告出稿は減少するだろう。また、データ保護やフェイクニュースなどの取り締まりのためのコストも増える。 世界的な供給制約の長期化によって半導体の不足が長引き、スマホなどITデバイスの生産が計画を下回る可能性も高まっている。中国では経済成長の低下傾向が鮮明だ。IT機器やサービスの需要の低下に加えて、生産年齢人口の減少によって労働コストも上昇するだろう。いずれもGAFAの事業運営の効率性向上を阻害する要因だ。 加えて、米国をはじめ世界的に物価が急騰している。FRBは金融政策の正常化を急がなければならない。世界的に金利は上昇するだろう。金利上昇によって、企業が永続的に生み出すと考えられるフリー・キャッシュ・フローの「割引現在価値」(将来得られる価値を現在受け取るとしたらどの程度の価値になるかを計算したもの)は小さくなる。GAFAのように成長期待が高い企業ほど、そのインパクトは大きくなり株価の下落懸念は高まりやすい。 FRBが追加利上げやバランスシート縮小を急ぐ姿勢を一段と強める場合、米国の金利は急速に上昇し、GAFAなどIT先端企業の株価の低下傾向が一段と鮮明化する恐れがある。また、米金利の上昇によって新興国からは資金が流出し、世界経済全体で成長率は低下する展開も想定される。それはGAFAの収益減少要因になるだろう。 言い換えれば、GAFA各社がこれまでの発想にとらわれることなく新しいモノやサービスを生み出し、需要を創出することが出来るか否か、その実力が問われている』、「GAFA各社がこれまでの発想にとらわれることなく新しいモノやサービスを生み出し、需要を創出することが出来るか否か、その実力が問われている」、事業基盤はそれほど脆弱ではない。まだしぶとく生き残りを図るだろう。
次に、2022年5月20日付けPRESIDENT Onlineが掲載したフリーライター・翻訳者の青葉 やまと氏による「フェイスブックの次はVR離れ…1兆円超えの大赤字を垂れ流す「メタ社」の悲惨な末路 ザッカーバーグ氏は従業員から見放された」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/69634
・『メタバースで大失敗…ザッカーバーグに向けられた従業員の不信感 マーク・ザッカーバーグ率いる米Meta社(旧Facebook社)が、従業員の深刻な士気の低下にあえいでいる。 Facebook、Instagram、WhatsAppなどを運営する同社は昨年、業績が急激に低下。ニューヨーク・タイムズ紙は、ザッカーバーグ氏が2023年を「効率化の年」にすると宣言したと報じている。過去半年で2回のレイオフに踏み切ったほか、今後もさらに2回の実施を予定している。合計で2万1000人規模の削減となる見込みだ。 米デジタルメディアのVoxは、「Metaはまず間違いなく、過去最も厳しい部類に入る年を過ごした」と指摘。18年間ノンストップで成長を遂げたが、株価は昨年、前年比で65%急落したと指摘する。 米IT大手は一様に厳しい時代を迎えているが、MetaはGAFAMと呼ばれる大手5社のなかでも一段と厳しい状況に立たされている。Facebookで一時代を築いた同社が凋落した原因はいくつも指摘されているが、なかでもトップのビジョンの迷走が大きく災いしたようだ。 IT他社が人工知能(AI)の開発に資金を投じるなか、同社はここ数年、「メタバース」と呼ばれるオンライン空間の提供に全力を傾けている。ユーザーが仮想の人物「アバター」の姿を借り、交流を図る仮想の世界だ。だが、現実には過疎化が過疎化を呼ぶ悪循環に陥っている』、「2023年のレイオフは、「合計で2万1000人規模の削減となる見込みだ・・・18年間ノンストップで成長を遂げたが、株価は昨年、前年比で65%急落したと指摘する。 米IT大手は一様に厳しい時代を迎えているが、MetaはGAFAMと呼ばれる大手5社のなかでも一段と厳しい状況に立たされている。Facebookで一時代を築いた同社が凋落した原因はいくつも指摘されているが、なかでもトップのビジョンの迷走が大きく災いしたようだ。 IT他社が人工知能(AI)の開発に資金を投じるなか、同社はここ数年、「メタバース」と呼ばれるオンライン空間の提供に全力を傾けている。ユーザーが仮想の人物「アバター」の姿を借り、交流を図る仮想の世界だ。だが、現実には過疎化が過疎化を呼ぶ悪循環に陥っている」、なるほど。
・『社内チャットでは不満が渦を巻いている 芽生える気配のないメタバースの開発に大金を注ぎながら、カリフォルニア州メンローパークのMeta本社内では解雇の嵐が吹き荒れる。Metaの従業員たちは、ザッカーバーグ氏らトップへの不信を深めて▽いる。 米ワシントン・ポスト紙は、「マーク・ザッカーバーグはいかにしてMetaの労働力を破壊したか」との記事を掲載。従業員たちは、いつ自身を襲うとも知れないレイオフの波に翻弄ほんろうされており、ザッカーバーグ氏はビジョンと従業員からの信頼を失ったとの見方を取り上げた。) 同紙はまた、「MetaはVR開発者に最高100万ドル(約1億3000万円)の年俸を支払っていた」が、同社が「今となっては財政難に陥っている」と指摘する。VRヘッドセットのQuestなどを手がける同社のVR/AR部門「Reality Labs」は、昨年137億ドル(約1兆8000万円)以上の損失を出し、赤字額は年を追うごとに増加傾向にあるという。 ニューヨーク・タイムズ紙は、「少し前までシリコンバレーで最も魅力的な職場のひとつだったMeta社だが、社員はいま、時がたつほどに不安定になる未来に直面している」と述べ、「士気の危機」が訪れていると報じている。 社内チャットでは、殺伐とした空気が流れているようだ。チャットの履歴を入手した同紙によると、ある従業員は「大惨事だと思う人は、炎の絵文字を」と呼びかけた。同僚たちからは数十個もの炎の絵文字が寄せられたという。 従業員たちはボーナスの減少に不満を抱き、持ち株の時価減損に胃を痛め、目に見えて悪化する社内の福利厚生に士気を削がれているようだ。同紙は、誰が生き残るとも知れない疑心暗鬼に陥り、オフィスは殺伐とした雰囲気に包まれていると報じている』、「Meta社」では、「誰が生き残るとも知れない疑心暗鬼に陥り、オフィスは殺伐とした雰囲気に包まれている」、深刻だ。
・『仮想空間の「出会いの場」には誰もいなかった コミュニケーションがすっかり希薄になったのに加え、これまで従業員たちに無料で提供されていたランドリーサービスや夕食などの複利厚生は縮小した。自身にレイオフが迫るとの噂を聞いた従業員は、親しい従業員との個人や職場のチャットでドクロと骨の絵文字を使った暗喩で連絡を取り合い、情報交換に奔走しているという。 Metaの人事部はレイオフに怯える従業員たちに配慮を寄せるばかりか、こうした会話の規制に乗り出した。Voxは、会社側が「コミュニティ・エンゲージメントへの期待」と題するガイドラインを打ち出したと報じている。ネガティブな会話を禁止し、チームや個人に対して「適切なフィードバックをする」よう求める内容だ。 だが、口を封じたところで従業員の不満が消えるわけではない。同記事によるとある従業員は、「この会社は総じて、社員を失望させるようなことをせずに1週間たりとも過ごすことはできないようです」と不満を露わにしている。 同社肝煎りで普及に努めるメタバースだが、その集客数はほぼゼロと言っていいほどだ。 米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、41歳男性ユーザーの体験を取り上げている。彼は「パンデミック期間中、社会との交流を求めて」VRヘッドセットを購入し、買ったその日に意気揚々と仮想空間に飛び込んだ。だが、メインとなる出会いのスペースに行くと、「そこには誰もいなかった」との悲しい体験が待っていたという。 同紙によると、Facebook、Instagram、WhatsAppなどMeta社のソーシャルメディアには、合計で月間35億人以上のユーザーがいる。これに対し、同社のVRオンラインゲーム・プラットフォーム「Horizon Worlds」は、月間20万人以下であるという。比率にしてわずか0.0057%という惨状だ』、「同社肝煎りで普及に努めるメタバースだが、その集客数はほぼゼロと言っていいほどだ・・・Facebook、Instagram、WhatsAppなどMeta社のソーシャルメディアには、合計で月間35億人以上のユーザーがいる。これに対し、同社のVRオンラインゲーム・プラットフォーム「Horizon Worlds」は、月間20万人以下であるという。比率にしてわずか0.0057%という惨状だ」、なるほど。
・『VRヘッドセットは半年以内でガラクタに… Horizon Worldsは、VRヘッドセットの「Quest」を装着して利用する。エントリーモデルでも約400ドル(国内価格はQuest 2の場合5万9400円から)と高価な機器だが、同紙が参照した調査によると、飽きは早いようだ。購入後半年以内に、半数以上の個体が使用されなくなるという。 同社の社内文書が「空っぽの世界は悲しい世界である」と内省するように、原因は過疎化にある。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「(Horizon内のコンテンツである)『ホットガール・サマー・ルーフトップ・パーティー』には女の子がほとんどいないし、『マーダー・ビレッジ』には殺すべき人がいないことが多い」と指摘する。ユーザーの性別についても男性2:女性1と、大きな偏りがある模様だ。 課題は多い。Meta社が実施した調査によると、ユーザーからは、「気に入ったメタバース・ワールドがない」「一緒に遊べる仲間が見つからない」「人がリアルでない」などの不満が聞かれたという。 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の記者は、VR空間で開催された「ハウスパーティー」の会場へ赴いた際の悲しい記憶を記事にしている。ユーザーとの交流を期待したが、さびしい現実が待っていたようだ。出席者は記者を含め、2人しかいなかったという。 同記者はボクシングなどをして時間を潰したというが、パーティーの盛り上がりとはほど遠かったようだ。「もう一人のアバターは一言もしゃべらず、10分ほどで試合は終了した。その後、記者自身のアバターはプールに落ち、出る方法がわからなくなった。助けてくれる人は辺りに誰もいなかった」』、「出席者は記者を含め、2人しかいなかったという。 同記者はボクシングなどをして時間を潰したというが、パーティーの盛り上がりとはほど遠かったようだ。「もう一人のアバターは一言もしゃべらず、10分ほどで試合は終了した。その後、記者自身のアバターはプールに落ち、出る方法がわからなくなった。助けてくれる人は辺りに誰もいなかった」、なるほど。
・『Meta社だけがメタバースの普及に社運を賭けている ユーザーの興味が薄れているにもかかわらず、Metaは普及に躍起だ。ニューヨーク・タイムズ紙は、これこそが同社従業員がトップに不信感を抱く原因になっていると指摘する。テック企業の多くがAI開発に乗り出すなか、Meta社だけがメタバースの普及に社運を賭けている状況だ。 ザッカーバーグ氏は2021年10月、VRの重視を鮮明に打ち出し、社名をMetaに変更した。ワシントン・ポスト紙は、「このとき、従業員はこの動きを不安な気持ちで受け止めた」と振り返る。2014年にVR企業のOculusを買収後、ハードウエアの研究開発費は「爆発的に増加」したと同紙は指摘する。) 2018年からはビデオ通話デバイス「Portal」を売り出したが、同紙は「ユーザーにとって魅力的でないことが明らかになった後も、長い間この製品にこだわってきた」と厳しい評価を下している。サンフランシスコのニュースサイトであるSFゲートは、Portalがすでに2022年に製造中止になったと指摘している』、「テック企業の多くがAI開発に乗り出すなか、Meta社だけがメタバースの普及に社運を賭けている状況だ。 ザッカーバーグ氏は2021年10月、VRの重視を鮮明に打ち出し、社名をMetaに変更した。ワシントン・ポスト紙は、「このとき、従業員はこの動きを不安な気持ちで受け止めた」と振り返る」、早い見切りも必要なようだ。
・『社内で囁かれる「マーク・ザッカーバーグのご機嫌取り」の隠語 過疎化の悪循環に加え、製品の扱いにくさもユーザー離れの原因となっているようだ。皮肉にも、ザッカーバーグ氏主催の社内ミーティングがそれを証明する形となった。ニューヨーク・タイムズ紙によると氏は昨年、バーチャルの会議室を提供する「Horizon Workrooms」内での社内ミーティングを呼びかけた。 だが、多くの従業員はVRヘッドセットを持っておらず、設定にも手こずったと同紙は伝えている。従業員らは上司に知られる前にヘッドセットを入手し、ユーザー登録を済ませるなど、あたかも以前からのユーザーであるように振る舞うのに苦心したという。 ある従業員は同紙に対し、「Horizon Workrooms」上での別のミーティングもうまくいかなかったと明かしている。記事によると「技術的な不具合で会議は中断され、結局のところこのチームはZoomを使うことになった」という。 メタバースの有用性について、社内からも疑問が噴出している。情報筋は同紙に対し、メタバースのプロジェクトが社内の一部では「MMK」と呼ばれていると明かした。「Make Mark Happy(マーク・ザッカーバーグのご機嫌取り)」を意味する隠語なのだという』、「Make Mark Happy」とは言い得て妙だ。
・『TikTokへの流出が止まらない 過去であればMeta(当時のFacebook社)は、時代の波を見据えた舵取りを行ってきた。デスクトップ版が主流だった主力サービス・Facebookは、2000年代前半にモバイル対応に成功。Facebook一本槍からの脱却を企図し、2012年にInstagramの買収を通じて若年層を取り込んだところまでは先見の明があった。 しかし近年、VR事業を別にしても、同社を取り巻くビジネス環境は一段と過酷になっている。ネット上にコンテンツが溢あふれるようになった現在、ユーザーはより短時間で消費できる短編動画を求めており、TikTokへの流出は深刻な課題だ。 TikTokにも弱みはあり、中国企業のByteDanceによる運営という立場上、プライバシー問題には懸念が世界から寄せられている。だが、この点でMeta社は決してリードを保っているとは言い難がたい。 もともとFacebookユーザーのプライバシーを収益源としていた同社には、ユーザー保護の視点が欠如しているとの批判が絶えなかった。AppleがiOS上での個人情報の追跡を困難にしてからは、広告収入の明らかな減少に見舞われている』、「Facebookユーザーのプライバシーを収益源としていた同社には、ユーザー保護の視点が欠如しているとの批判が絶えなかった。AppleがiOS上での個人情報の追跡を困難にしてからは、広告収入の明らかな減少に見舞われている」、当然の報いだ。
・『仮想空間は一過性のブームだった こうしたなかザッカーバーグ氏が希望の光とみるのがメタバースだが、ユーザーの心とは大きな乖離かいりがみられるのが現状だ。VRについては確かに一部ゲームなどで、他社製デバイスも含め、一定のユーザーを獲得している。 だが、Meta社はVRコンテンツのなかでも、ユーザー同士の交流空間であるメタバースの普及に骨を折っている。現在のところ十分な興味を引いているとはいえず、ブームの到来が予言されつつも本格的な普及に至ることなく消えた「セカンドライフ」の後追いだとする否定的な意見さえ聞かれる。 セカンドライフはその名の通り、コンピューター内で「第2の人生」を生きる理想空間を追求したサービスだ。一時は高額で仮想の土地を購入するユーザーが相次ぐなどブームを生んだが、一過性の現象に終わった。 Meta社のHorizon Worldsについては、そもそも一時的なブームにすら至っていない。肝心のユーザーが集まらず、VRヘッドセットを購入した希少なユーザーでさえ、半年とたたずに離脱する悪循環が生じている』、「Meta社のHorizon Worldsについては、そもそも一時的なブームにすら至っていない。肝心のユーザーが集まらず、VRヘッドセットを購入した希少なユーザーでさえ、半年とたたずに離脱する悪循環が生じている」、やれやれだ。
・『いつまでもメタバースに固執するべきではない セカンドライフの衰退をみるに、人々がバーチャル空間での交流を求めているという考えは、サービスを提供する側の幻想にすぎないのだろう。MetaのVR事業についても、例えばゲーム用ヘッドセットのハードウエア販売に特化し、仮想ワールドのサービスからは撤退するなど、思い切った事業の整理が求められているように思われる。 FacebookやInstagramで「いいね」を送るだけで温かい気持ちが伝わるいま、ゴーグルを装着しアバターを操作して他人と触れ合うというアイデアは、必ずしも多くのユーザーの賛同を得るに至っていないようだ』、FacebookやInstagramで「いいね」を送るだけで温かい気持ちが伝わるいま、ゴーグルを装着しアバターを操作して他人と触れ合うというアイデアは、必ずしも多くのユーザーの賛同を得るに至っていないようだ」、その通りだ。「マーク・ザッカーバーグ」氏はいつ気づくのだろうか。
先ずは、2022年5月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「GAFAの株価が低調、「成長の限界を迎えた」といえるこれだけの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302879
・『「GAFA」の株価が下落基調にある。これまで注目されてきたビジネスモデルに、行き詰まりの兆しが見え始めているからだ。その軌跡を基本から振り返ると共に、現在のリスク要因を分析し、今後の展開を予測する』、興味深そうだ。
・『GAFAの成長期待が鈍化 ビジネスモデルに行き詰まりの兆し このところ、「GAFA」(グーグル、アップル、旧フェイスブック・現メタ、アマゾン)の株価が下落基調にある。2022年1~3月期決算が出そろった後も、各社の株価は上昇していない。 最大のポイントは、各社の成長期待が鈍化していることだ。これまで注目されてきたITプラットフォーマーとしてのビジネスモデルに、行き詰まりの兆しが見え始めている。加えて、米国内の人手不足や、「ディ・グローバリズム」(グローバル化に逆行する動き)に伴うコストアップ要因がGAFA各社を直撃している。 今後の展開として、GAFAの成長期待は一段と低下することも想定される。それが現実味を帯びると、各社の株価は下落する可能性が高い。ウクライナ危機や中国のゼロコロナ政策をきっかけに、グローバル化の加速を前提としたアップルの事業運営の効率性は、低下する恐れが強くなっている。主要先進国における個人データ保護規制の強化なども、メタやグーグル、アマゾンの成長期待を低下させるだろう。 米国の連邦準備制度理事会(FRB)は、“インフレ退治”のため周囲の予想を上回るペースで金融引き締めを進めている。それはGAFAの事業運営には逆風となり、株価の下落懸念を高める要因だ』、「「GAFA」(グーグル、アップル、旧フェイスブック・現メタ、アマゾン)の株価が下落基調にある。2022年1~3月期決算が出そろった後も、各社の株価は上昇していない。 最大のポイントは、各社の成長期待が鈍化していることだ。これまで注目されてきたITプラットフォーマーとしてのビジネスモデルに、行き詰まりの兆しが見え始めている。加えて、米国内の人手不足や、「ディ・グローバリズム」(グローバル化に逆行する動き)に伴うコストアップ要因がGAFA各社を直撃している」、なるほど。
・『これまでのビジネスモデルが神通力を失うGAFA 過去1年間のGAFAの株価の推移を確認すると、大まかな傾向として21年12月前半まで各社の株価は高値圏で推移した。しかし、その後は株価が上昇していない。それが意味することは、各社が高い成長を維持するのが難しくなっているということだ。 まず、アップルの成長期待の鈍化を考えてみよう。1990年代以降の米国経済において、アップルはグローバル化を追い風に高成長を実現した企業の象徴である。97年、同社は経営破綻寸前にまで追い込まれていたが、その状況を救ったのが創業者の一人だった故スティーブ・ジョブズだ。ジョブズは高付加価値なソフトウエアの創出に集中し、iPodやiPhoneなどのデバイスや、iTunesなどのサービスの設計と開発に注力した。 それと同時にアップルは世界各国から優れた部材や部品を集め、完成品のユニット組み立て型生産を、台湾の鴻海精密工業の中国子会社であるフォックスコンに委託した。こうした国際分業によって、製造ラインを自社保有する負担から解放され、高付加価値なソフトウエア創出に集中し、高い収益性を実現したのだ。同社がリーマンショック後の世界経済のデジタル化を加速し、米国および世界経済の成長に与えた影響は計り知れない。 しかし、近年、こうしたビジネスモデルに行き詰まりが見えている。まず、中国の生産年齢人口が減少し、労働コストが上昇したことは大きい。加えて、米中対立によって世界のサプライチェーンが混乱。さらに、新型コロナウイルスの感染再拡大やウクライナ危機など複合的な要因が重なり、供給制約は深刻化し続けている。 そうした環境の変化によって、国際分業体制の強化で高成長を実現してきたアップルが、需要を取りこぼし始めているのだ』、「97年、同社は経営破綻寸前にまで追い込まれていたが、その状況を救ったのが創業者の一人だった故スティーブ・ジョブズだ。ジョブズは高付加価値なソフトウエアの創出に集中し、iPodやiPhoneなどのデバイスや、iTunesなどのサービスの設計と開発に注力した。 それと同時にアップルは世界各国から優れた部材や部品を集め、完成品のユニット組み立て型生産を、台湾の鴻海精密工業の中国子会社であるフォックスコンに委託した。こうした国際分業によって、製造ラインを自社保有する負担から解放され、高付加価値なソフトウエア創出に集中し、高い収益性を実現したのだ。同社がリーマンショック後の世界経済のデジタル化を加速し、米国および世界経済の成長に与えた影響は計り知れない。 しかし、近年、こうしたビジネスモデルに行き詰まりが見えている。まず、中国の生産年齢人口が減少し、労働コストが上昇したことは大きい。加えて、米中対立によって世界のサプライチェーンが混乱。さらに、新型コロナウイルスの感染再拡大やウクライナ危機など複合的な要因が重なり、供給制約は深刻化し続けている」、なるほど。
・『SNSへの規制強化、労働組合の結成 逆風強まるITプラットフォーマー 動画や検索、SNSサービスの提供で広告収入を得てきたグーグルやメタ、ネット通販やクラウドコンピューティングなどのサービスを提供してきたアマゾンの成長期待も鈍化している。 グーグルとメタは、ユーザーである個人の検索や動画視聴、知人関係(ネットワーク)、モノやサービスの購入履歴といった膨大なデータ(ビッグデータ)を優先的に手に入れて、それを販売したり、新しいビジネスに用いたりすることによって急速に収益を増やした。 しかし、ロシアがフェイスブックを用いて2016年の米大統領選挙に介入した疑惑が浮上したことなどにより、SNSへの規制が強化されている。メタは人海戦術でフェイクニュースの摘発を強化しなければならなくなり、コストが増加した。また、公正さへの懸念から一時、フェイスブックのユーザーが減少した。 メタの22年1~3月期決算は、売上高の伸び率が上場来で最低となり、同社への懸念は高まっている。同様のことが、検索サービスの強化によって広告収入を増やしてきたグーグルにも当てはまる部分が多い。 アマゾンは世界に「物流革命」を起こした。同社は、積極的な設備投資によって世界各国で効率的な配送網を整備し、自力でラストワンマイルを構築した。さらに消費者一人ひとりの好みを突くアルゴリズムを開発して消費意欲をかき立て、クラウドサービスも提供することによって有力ITプラットフォーマーとしての地位を確立した。 しかし、物流施設での過酷な労働環境への反発から労働組合が結成されるなど、成長力には翳りが出始めている。加えて、米国をはじめ世界的な人手不足を背景に、物流センターでの人員やドライバーの確保が難しくなっているようだ。 倉庫の建設やEV新興メーカーへの投資も業績の重荷になっている。原油などエネルギー資源価格の高騰は燃料費の増加につながり、収益を圧迫している。このようにGAFA各社はこれまでの高い成長スピードを維持することが難しくなっている』、「ロシアがフェイスブックを用いて2016年の米大統領選挙に介入した疑惑が浮上したことなどにより、SNSへの規制が強化されている。メタは人海戦術でフェイクニュースの摘発を強化しなければならなくなり、コストが増加した。また、公正さへの懸念から一時、フェイスブックのユーザーが減少した。 メタの22年1~3月期決算は、売上高の伸び率が上場来で最低となり、同社への懸念は高まっている。同様のことが、検索サービスの強化によって広告収入を増やしてきたグーグルにも当てはまる部分が多い・・・アマゾンは・・・物流施設での過酷な労働環境への反発から労働組合が結成されるなど、成長力には翳りが出始めている。加えて、米国をはじめ世界的な人手不足を背景に、物流センターでの人員やドライバーの確保が難しくなっているようだ。 倉庫の建設やEV新興メーカーへの投資も業績の重荷になっている」、なるほど。
・中長期的なGAFA株の下落懸念 業績拡大ペースは鈍化 GAFA各社は正念場を迎えている。今後の展開として、GAFAの業績拡大ペースは鈍化し、株価が下落する可能性は高まっている。各社ともグローバル化の加速を前提にビジネスモデルを構築してきたからだ。 しかし、ウクライナ危機によって世界経済はグローバル化からブロック化に向かい始めた。世界経済の先行き見通しは悪化したため、広告主の企業はコスト削減を優先しなければならず、SNSや動画サイトでの広告出稿は減少するだろう。また、データ保護やフェイクニュースなどの取り締まりのためのコストも増える。 世界的な供給制約の長期化によって半導体の不足が長引き、スマホなどITデバイスの生産が計画を下回る可能性も高まっている。中国では経済成長の低下傾向が鮮明だ。IT機器やサービスの需要の低下に加えて、生産年齢人口の減少によって労働コストも上昇するだろう。いずれもGAFAの事業運営の効率性向上を阻害する要因だ。 加えて、米国をはじめ世界的に物価が急騰している。FRBは金融政策の正常化を急がなければならない。世界的に金利は上昇するだろう。金利上昇によって、企業が永続的に生み出すと考えられるフリー・キャッシュ・フローの「割引現在価値」(将来得られる価値を現在受け取るとしたらどの程度の価値になるかを計算したもの)は小さくなる。GAFAのように成長期待が高い企業ほど、そのインパクトは大きくなり株価の下落懸念は高まりやすい。 FRBが追加利上げやバランスシート縮小を急ぐ姿勢を一段と強める場合、米国の金利は急速に上昇し、GAFAなどIT先端企業の株価の低下傾向が一段と鮮明化する恐れがある。また、米金利の上昇によって新興国からは資金が流出し、世界経済全体で成長率は低下する展開も想定される。それはGAFAの収益減少要因になるだろう。 言い換えれば、GAFA各社がこれまでの発想にとらわれることなく新しいモノやサービスを生み出し、需要を創出することが出来るか否か、その実力が問われている』、「GAFA各社がこれまでの発想にとらわれることなく新しいモノやサービスを生み出し、需要を創出することが出来るか否か、その実力が問われている」、事業基盤はそれほど脆弱ではない。まだしぶとく生き残りを図るだろう。
次に、2022年5月20日付けPRESIDENT Onlineが掲載したフリーライター・翻訳者の青葉 やまと氏による「フェイスブックの次はVR離れ…1兆円超えの大赤字を垂れ流す「メタ社」の悲惨な末路 ザッカーバーグ氏は従業員から見放された」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/69634
・『メタバースで大失敗…ザッカーバーグに向けられた従業員の不信感 マーク・ザッカーバーグ率いる米Meta社(旧Facebook社)が、従業員の深刻な士気の低下にあえいでいる。 Facebook、Instagram、WhatsAppなどを運営する同社は昨年、業績が急激に低下。ニューヨーク・タイムズ紙は、ザッカーバーグ氏が2023年を「効率化の年」にすると宣言したと報じている。過去半年で2回のレイオフに踏み切ったほか、今後もさらに2回の実施を予定している。合計で2万1000人規模の削減となる見込みだ。 米デジタルメディアのVoxは、「Metaはまず間違いなく、過去最も厳しい部類に入る年を過ごした」と指摘。18年間ノンストップで成長を遂げたが、株価は昨年、前年比で65%急落したと指摘する。 米IT大手は一様に厳しい時代を迎えているが、MetaはGAFAMと呼ばれる大手5社のなかでも一段と厳しい状況に立たされている。Facebookで一時代を築いた同社が凋落した原因はいくつも指摘されているが、なかでもトップのビジョンの迷走が大きく災いしたようだ。 IT他社が人工知能(AI)の開発に資金を投じるなか、同社はここ数年、「メタバース」と呼ばれるオンライン空間の提供に全力を傾けている。ユーザーが仮想の人物「アバター」の姿を借り、交流を図る仮想の世界だ。だが、現実には過疎化が過疎化を呼ぶ悪循環に陥っている』、「2023年のレイオフは、「合計で2万1000人規模の削減となる見込みだ・・・18年間ノンストップで成長を遂げたが、株価は昨年、前年比で65%急落したと指摘する。 米IT大手は一様に厳しい時代を迎えているが、MetaはGAFAMと呼ばれる大手5社のなかでも一段と厳しい状況に立たされている。Facebookで一時代を築いた同社が凋落した原因はいくつも指摘されているが、なかでもトップのビジョンの迷走が大きく災いしたようだ。 IT他社が人工知能(AI)の開発に資金を投じるなか、同社はここ数年、「メタバース」と呼ばれるオンライン空間の提供に全力を傾けている。ユーザーが仮想の人物「アバター」の姿を借り、交流を図る仮想の世界だ。だが、現実には過疎化が過疎化を呼ぶ悪循環に陥っている」、なるほど。
・『社内チャットでは不満が渦を巻いている 芽生える気配のないメタバースの開発に大金を注ぎながら、カリフォルニア州メンローパークのMeta本社内では解雇の嵐が吹き荒れる。Metaの従業員たちは、ザッカーバーグ氏らトップへの不信を深めて▽いる。 米ワシントン・ポスト紙は、「マーク・ザッカーバーグはいかにしてMetaの労働力を破壊したか」との記事を掲載。従業員たちは、いつ自身を襲うとも知れないレイオフの波に翻弄ほんろうされており、ザッカーバーグ氏はビジョンと従業員からの信頼を失ったとの見方を取り上げた。) 同紙はまた、「MetaはVR開発者に最高100万ドル(約1億3000万円)の年俸を支払っていた」が、同社が「今となっては財政難に陥っている」と指摘する。VRヘッドセットのQuestなどを手がける同社のVR/AR部門「Reality Labs」は、昨年137億ドル(約1兆8000万円)以上の損失を出し、赤字額は年を追うごとに増加傾向にあるという。 ニューヨーク・タイムズ紙は、「少し前までシリコンバレーで最も魅力的な職場のひとつだったMeta社だが、社員はいま、時がたつほどに不安定になる未来に直面している」と述べ、「士気の危機」が訪れていると報じている。 社内チャットでは、殺伐とした空気が流れているようだ。チャットの履歴を入手した同紙によると、ある従業員は「大惨事だと思う人は、炎の絵文字を」と呼びかけた。同僚たちからは数十個もの炎の絵文字が寄せられたという。 従業員たちはボーナスの減少に不満を抱き、持ち株の時価減損に胃を痛め、目に見えて悪化する社内の福利厚生に士気を削がれているようだ。同紙は、誰が生き残るとも知れない疑心暗鬼に陥り、オフィスは殺伐とした雰囲気に包まれていると報じている』、「Meta社」では、「誰が生き残るとも知れない疑心暗鬼に陥り、オフィスは殺伐とした雰囲気に包まれている」、深刻だ。
・『仮想空間の「出会いの場」には誰もいなかった コミュニケーションがすっかり希薄になったのに加え、これまで従業員たちに無料で提供されていたランドリーサービスや夕食などの複利厚生は縮小した。自身にレイオフが迫るとの噂を聞いた従業員は、親しい従業員との個人や職場のチャットでドクロと骨の絵文字を使った暗喩で連絡を取り合い、情報交換に奔走しているという。 Metaの人事部はレイオフに怯える従業員たちに配慮を寄せるばかりか、こうした会話の規制に乗り出した。Voxは、会社側が「コミュニティ・エンゲージメントへの期待」と題するガイドラインを打ち出したと報じている。ネガティブな会話を禁止し、チームや個人に対して「適切なフィードバックをする」よう求める内容だ。 だが、口を封じたところで従業員の不満が消えるわけではない。同記事によるとある従業員は、「この会社は総じて、社員を失望させるようなことをせずに1週間たりとも過ごすことはできないようです」と不満を露わにしている。 同社肝煎りで普及に努めるメタバースだが、その集客数はほぼゼロと言っていいほどだ。 米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、41歳男性ユーザーの体験を取り上げている。彼は「パンデミック期間中、社会との交流を求めて」VRヘッドセットを購入し、買ったその日に意気揚々と仮想空間に飛び込んだ。だが、メインとなる出会いのスペースに行くと、「そこには誰もいなかった」との悲しい体験が待っていたという。 同紙によると、Facebook、Instagram、WhatsAppなどMeta社のソーシャルメディアには、合計で月間35億人以上のユーザーがいる。これに対し、同社のVRオンラインゲーム・プラットフォーム「Horizon Worlds」は、月間20万人以下であるという。比率にしてわずか0.0057%という惨状だ』、「同社肝煎りで普及に努めるメタバースだが、その集客数はほぼゼロと言っていいほどだ・・・Facebook、Instagram、WhatsAppなどMeta社のソーシャルメディアには、合計で月間35億人以上のユーザーがいる。これに対し、同社のVRオンラインゲーム・プラットフォーム「Horizon Worlds」は、月間20万人以下であるという。比率にしてわずか0.0057%という惨状だ」、なるほど。
・『VRヘッドセットは半年以内でガラクタに… Horizon Worldsは、VRヘッドセットの「Quest」を装着して利用する。エントリーモデルでも約400ドル(国内価格はQuest 2の場合5万9400円から)と高価な機器だが、同紙が参照した調査によると、飽きは早いようだ。購入後半年以内に、半数以上の個体が使用されなくなるという。 同社の社内文書が「空っぽの世界は悲しい世界である」と内省するように、原因は過疎化にある。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「(Horizon内のコンテンツである)『ホットガール・サマー・ルーフトップ・パーティー』には女の子がほとんどいないし、『マーダー・ビレッジ』には殺すべき人がいないことが多い」と指摘する。ユーザーの性別についても男性2:女性1と、大きな偏りがある模様だ。 課題は多い。Meta社が実施した調査によると、ユーザーからは、「気に入ったメタバース・ワールドがない」「一緒に遊べる仲間が見つからない」「人がリアルでない」などの不満が聞かれたという。 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の記者は、VR空間で開催された「ハウスパーティー」の会場へ赴いた際の悲しい記憶を記事にしている。ユーザーとの交流を期待したが、さびしい現実が待っていたようだ。出席者は記者を含め、2人しかいなかったという。 同記者はボクシングなどをして時間を潰したというが、パーティーの盛り上がりとはほど遠かったようだ。「もう一人のアバターは一言もしゃべらず、10分ほどで試合は終了した。その後、記者自身のアバターはプールに落ち、出る方法がわからなくなった。助けてくれる人は辺りに誰もいなかった」』、「出席者は記者を含め、2人しかいなかったという。 同記者はボクシングなどをして時間を潰したというが、パーティーの盛り上がりとはほど遠かったようだ。「もう一人のアバターは一言もしゃべらず、10分ほどで試合は終了した。その後、記者自身のアバターはプールに落ち、出る方法がわからなくなった。助けてくれる人は辺りに誰もいなかった」、なるほど。
・『Meta社だけがメタバースの普及に社運を賭けている ユーザーの興味が薄れているにもかかわらず、Metaは普及に躍起だ。ニューヨーク・タイムズ紙は、これこそが同社従業員がトップに不信感を抱く原因になっていると指摘する。テック企業の多くがAI開発に乗り出すなか、Meta社だけがメタバースの普及に社運を賭けている状況だ。 ザッカーバーグ氏は2021年10月、VRの重視を鮮明に打ち出し、社名をMetaに変更した。ワシントン・ポスト紙は、「このとき、従業員はこの動きを不安な気持ちで受け止めた」と振り返る。2014年にVR企業のOculusを買収後、ハードウエアの研究開発費は「爆発的に増加」したと同紙は指摘する。) 2018年からはビデオ通話デバイス「Portal」を売り出したが、同紙は「ユーザーにとって魅力的でないことが明らかになった後も、長い間この製品にこだわってきた」と厳しい評価を下している。サンフランシスコのニュースサイトであるSFゲートは、Portalがすでに2022年に製造中止になったと指摘している』、「テック企業の多くがAI開発に乗り出すなか、Meta社だけがメタバースの普及に社運を賭けている状況だ。 ザッカーバーグ氏は2021年10月、VRの重視を鮮明に打ち出し、社名をMetaに変更した。ワシントン・ポスト紙は、「このとき、従業員はこの動きを不安な気持ちで受け止めた」と振り返る」、早い見切りも必要なようだ。
・『社内で囁かれる「マーク・ザッカーバーグのご機嫌取り」の隠語 過疎化の悪循環に加え、製品の扱いにくさもユーザー離れの原因となっているようだ。皮肉にも、ザッカーバーグ氏主催の社内ミーティングがそれを証明する形となった。ニューヨーク・タイムズ紙によると氏は昨年、バーチャルの会議室を提供する「Horizon Workrooms」内での社内ミーティングを呼びかけた。 だが、多くの従業員はVRヘッドセットを持っておらず、設定にも手こずったと同紙は伝えている。従業員らは上司に知られる前にヘッドセットを入手し、ユーザー登録を済ませるなど、あたかも以前からのユーザーであるように振る舞うのに苦心したという。 ある従業員は同紙に対し、「Horizon Workrooms」上での別のミーティングもうまくいかなかったと明かしている。記事によると「技術的な不具合で会議は中断され、結局のところこのチームはZoomを使うことになった」という。 メタバースの有用性について、社内からも疑問が噴出している。情報筋は同紙に対し、メタバースのプロジェクトが社内の一部では「MMK」と呼ばれていると明かした。「Make Mark Happy(マーク・ザッカーバーグのご機嫌取り)」を意味する隠語なのだという』、「Make Mark Happy」とは言い得て妙だ。
・『TikTokへの流出が止まらない 過去であればMeta(当時のFacebook社)は、時代の波を見据えた舵取りを行ってきた。デスクトップ版が主流だった主力サービス・Facebookは、2000年代前半にモバイル対応に成功。Facebook一本槍からの脱却を企図し、2012年にInstagramの買収を通じて若年層を取り込んだところまでは先見の明があった。 しかし近年、VR事業を別にしても、同社を取り巻くビジネス環境は一段と過酷になっている。ネット上にコンテンツが溢あふれるようになった現在、ユーザーはより短時間で消費できる短編動画を求めており、TikTokへの流出は深刻な課題だ。 TikTokにも弱みはあり、中国企業のByteDanceによる運営という立場上、プライバシー問題には懸念が世界から寄せられている。だが、この点でMeta社は決してリードを保っているとは言い難がたい。 もともとFacebookユーザーのプライバシーを収益源としていた同社には、ユーザー保護の視点が欠如しているとの批判が絶えなかった。AppleがiOS上での個人情報の追跡を困難にしてからは、広告収入の明らかな減少に見舞われている』、「Facebookユーザーのプライバシーを収益源としていた同社には、ユーザー保護の視点が欠如しているとの批判が絶えなかった。AppleがiOS上での個人情報の追跡を困難にしてからは、広告収入の明らかな減少に見舞われている」、当然の報いだ。
・『仮想空間は一過性のブームだった こうしたなかザッカーバーグ氏が希望の光とみるのがメタバースだが、ユーザーの心とは大きな乖離かいりがみられるのが現状だ。VRについては確かに一部ゲームなどで、他社製デバイスも含め、一定のユーザーを獲得している。 だが、Meta社はVRコンテンツのなかでも、ユーザー同士の交流空間であるメタバースの普及に骨を折っている。現在のところ十分な興味を引いているとはいえず、ブームの到来が予言されつつも本格的な普及に至ることなく消えた「セカンドライフ」の後追いだとする否定的な意見さえ聞かれる。 セカンドライフはその名の通り、コンピューター内で「第2の人生」を生きる理想空間を追求したサービスだ。一時は高額で仮想の土地を購入するユーザーが相次ぐなどブームを生んだが、一過性の現象に終わった。 Meta社のHorizon Worldsについては、そもそも一時的なブームにすら至っていない。肝心のユーザーが集まらず、VRヘッドセットを購入した希少なユーザーでさえ、半年とたたずに離脱する悪循環が生じている』、「Meta社のHorizon Worldsについては、そもそも一時的なブームにすら至っていない。肝心のユーザーが集まらず、VRヘッドセットを購入した希少なユーザーでさえ、半年とたたずに離脱する悪循環が生じている」、やれやれだ。
・『いつまでもメタバースに固執するべきではない セカンドライフの衰退をみるに、人々がバーチャル空間での交流を求めているという考えは、サービスを提供する側の幻想にすぎないのだろう。MetaのVR事業についても、例えばゲーム用ヘッドセットのハードウエア販売に特化し、仮想ワールドのサービスからは撤退するなど、思い切った事業の整理が求められているように思われる。 FacebookやInstagramで「いいね」を送るだけで温かい気持ちが伝わるいま、ゴーグルを装着しアバターを操作して他人と触れ合うというアイデアは、必ずしも多くのユーザーの賛同を得るに至っていないようだ』、FacebookやInstagramで「いいね」を送るだけで温かい気持ちが伝わるいま、ゴーグルを装着しアバターを操作して他人と触れ合うというアイデアは、必ずしも多くのユーザーの賛同を得るに至っていないようだ」、その通りだ。「マーク・ザッカーバーグ」氏はいつ気づくのだろうか。
タグ:GAFA (その7)(GAFAの株価が低調 「成長の限界を迎えた」といえるこれだけの理由、フェイスブックの次はVR離れ…1兆円超えの大赤字を垂れ流す「メタ社」の悲惨な末路 ザッカーバーグ氏は従業員から見放された) ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫氏による「GAFAの株価が低調、「成長の限界を迎えた」といえるこれだけの理由」 「「GAFA」(グーグル、アップル、旧フェイスブック・現メタ、アマゾン)の株価が下落基調にある。2022年1~3月期決算が出そろった後も、各社の株価は上昇していない。 最大のポイントは、各社の成長期待が鈍化していることだ。これまで注目されてきたITプラットフォーマーとしてのビジネスモデルに、行き詰まりの兆しが見え始めている。加えて、米国内の人手不足や、「ディ・グローバリズム」(グローバル化に逆行する動き)に伴うコストアップ要因がGAFA各社を直撃している」、なるほど。 「97年、同社は経営破綻寸前にまで追い込まれていたが、その状況を救ったのが創業者の一人だった故スティーブ・ジョブズだ。ジョブズは高付加価値なソフトウエアの創出に集中し、iPodやiPhoneなどのデバイスや、iTunesなどのサービスの設計と開発に注力した。 それと同時にアップルは世界各国から優れた部材や部品を集め、完成品のユニット組み立て型生産を、台湾の鴻海精密工業の中国子会社であるフォックスコンに委託した。 こうした国際分業によって、製造ラインを自社保有する負担から解放され、高付加価値なソフトウエア創出に集中し、高い収益性を実現したのだ。同社がリーマンショック後の世界経済のデジタル化を加速し、米国および世界経済の成長に与えた影響は計り知れない。 しかし、近年、こうしたビジネスモデルに行き詰まりが見えている。まず、中国の生産年齢人口が減少し、労働コストが上昇したことは大きい。加えて、米中対立によって世界のサプライチェーンが混乱。さらに、新型コロナウイルスの感染再拡大やウクライナ危機など複合的な要因が重なり、供給 制約は深刻化し続けている」、なるほど。 「ロシアがフェイスブックを用いて2016年の米大統領選挙に介入した疑惑が浮上したことなどにより、SNSへの規制が強化されている。メタは人海戦術でフェイクニュースの摘発を強化しなければならなくなり、コストが増加した。また、公正さへの懸念から一時、フェイスブックのユーザーが減少した。 メタの22年1~3月期決算は、売上高の伸び率が上場来で最低となり、同社への懸念は高まっている。同様のことが、検索サービスの強化によって広告収入を増やしてきたグーグルにも当てはまる部分が多い・・・ アマゾンは・・・物流施設での過酷な労働環境への反発から労働組合が結成されるなど、成長力には翳りが出始めている。加えて、米国をはじめ世界的な人手不足を背景に、物流センターでの人員やドライバーの確保が難しくなっているようだ。 倉庫の建設やEV新興メーカーへの投資も業績の重荷になっている」、なるほど。 「GAFA各社がこれまでの発想にとらわれることなく新しいモノやサービスを生み出し、需要を創出することが出来るか否か、その実力が問われている」、事業基盤はそれほど脆弱ではない。まだしぶとく生き残りを図るだろう。 PRESIDENT ONLINE 青葉 やまと氏による「フェイスブックの次はVR離れ…1兆円超えの大赤字を垂れ流す「メタ社」の悲惨な末路 ザッカーバーグ氏は従業員から見放された」 「2023年のレイオフは、「合計で2万1000人規模の削減となる見込みだ・・・18年間ノンストップで成長を遂げたが、株価は昨年、前年比で65%急落したと指摘する。 米IT大手は一様に厳しい時代を迎えているが、MetaはGAFAMと呼ばれる大手5社のなかでも一段と厳しい状況に立たされている。Facebookで一時代を築いた同社が凋落した原因はいくつも指摘されているが、なかでもトップのビジョンの迷走が大きく災いしたようだ。 IT他社が人工知能(AI)の開発に資金を投じるなか、同社はここ数年、「メタバース」と呼ばれるオンライン空間の提供に全力を傾けている。ユーザーが仮想の人物「アバター」の姿を借り、交流を図る仮想の世界だ。だが、現実には過疎化が過疎化を呼ぶ悪循環に陥っている」、なるほど。 「Meta社」では、「誰が生き残るとも知れない疑心暗鬼に陥り、オフィスは殺伐とした雰囲気に包まれている」、深刻だ。 「同社肝煎りで普及に努めるメタバースだが、その集客数はほぼゼロと言っていいほどだ・・・Facebook、Instagram、WhatsAppなどMeta社のソーシャルメディアには、合計で月間35億人以上のユーザーがいる。これに対し、同社のVRオンラインゲーム・プラットフォーム「Horizon Worlds」は、月間20万人以下であるという。比率にしてわずか0.0057%という惨状だ」、なるほど。 「出席者は記者を含め、2人しかいなかったという。 同記者はボクシングなどをして時間を潰したというが、パーティーの盛り上がりとはほど遠かったようだ。「もう一人のアバターは一言もしゃべらず、10分ほどで試合は終了した。その後、記者自身のアバターはプールに落ち、出る方法がわからなくなった。助けてくれる人は辺りに誰もいなかった」、なるほど。 「テック企業の多くがAI開発に乗り出すなか、Meta社だけがメタバースの普及に社運を賭けている状況だ。 ザッカーバーグ氏は2021年10月、VRの重視を鮮明に打ち出し、社名をMetaに変更した。ワシントン・ポスト紙は、「このとき、従業員はこの動きを不安な気持ちで受け止めた」と振り返る」、早い見切りも必要なようだ。 「Make Mark Happy」とは言い得て妙だ。 「Facebookユーザーのプライバシーを収益源としていた同社には、ユーザー保護の視点が欠如しているとの批判が絶えなかった。AppleがiOS上での個人情報の追跡を困難にしてからは、広告収入の明らかな減少に見舞われている」、当然の報いだ。 「Meta社のHorizon Worldsについては、そもそも一時的なブームにすら至っていない。肝心のユーザーが集まらず、VRヘッドセットを購入した希少なユーザーでさえ、半年とたたずに離脱する悪循環が生じている」、やれやれだ。 FacebookやInstagramで「いいね」を送るだけで温かい気持ちが伝わるいま、ゴーグルを装着しアバターを操作して他人と触れ合うというアイデアは、必ずしも多くのユーザーの賛同を得るに至っていないようだ」、その通りだ。「マーク・ザッカーバーグ」氏はいつ気づくのだろうか。
コンピュータ(その1)(めんどうな作業はExcelマクロにやらせよう 一瞬でダブりチェックが終わるマクロの作り方とは?) [イノベーション]
本日は、コンピュータ(その1)「めんどうな作業はExcelマクロにやらせよう 一瞬でダブりチェックが終わるマクロの作り方とは?」を紹介しよう。
やや古いが、2021年6月20日付けダイヤモンド・オンライン「めんどうな作業はExcelマクロにやらせよう 一瞬でダブりチェックが終わるマクロの作り方とは?」を紹介しよう。
・『エクセルマクロの挫折しない勉強法や仕事で使いこなすコツを徹底解説! 講師の寺澤さんはこれまでの20年間マクロを使って様々な業務を効率化させるなど、数多くの社内表彰を受けてきました。例えば、数十万行の元データから分析用データを毎週作成する作業。人の手だと1週間かけても終わらない作業ですが、マクロを使うと30分程で完成してしまいます。さらに自ら社内講座も主催、全くマクロを触ったことがない数百人を指導し、満足度98%と人気を博しています。近著『4時間のエクセル仕事は20秒で終わる』では、そのエッセンスを余すところなく紹介しています。 本連載では、エクセルマクロを仕事で使うための本当に必要な知識だけを、できるだけわかりやすく説明していきます』、「本連載では、エクセルマクロを仕事で使うための本当に必要な知識だけを、できるだけわかりやすく説明していきます」、有難い。
・圧倒的速さでダブりデータを削除する 「あちゃ~。データのダブりを見逃してた(泣)。資料を作り直さなきゃ……」 誰でも一度はこんな経験をしたことがあるのではないでしょうか。いちいち手と目を使ってチェックするのは、時間も気力も使いますよね。そこで、データのダブりを消すマクロを学んでいきます。 まず「練習」シートのデータへオートフィルタをかけ、A列のダブりを消します。その後、右図のように「ダブりなし」シートにデータをコピー&ペーストします。 ダブりを消すには「AdvancedFilter」という特殊なオートフィルタを使います。フィルタの詳細設定の項目を使うマクロです。どの操作なのか一度エクセルで見てみましょう。 「データ」タブにあるフィルターの項目に詳細設定があります。 ここにある「重複するレコードは無視する」をマクロで操作します。 このオートフィルタをかけるには「AdvancedFilter」を書き、後ろにダブり消し用の条件を加えます。 Range("A:A").AdvancedFilter Action:=2, CopytoRange:=貼付先, Unique:=True Action:=2 は「データ上でフィルタをかけた後、別シートにコピー」 CopytoRange は「ここにコピーを貼り付けます」 Unique:=True は「重複を無視します」という意味です。 今回、貼り付け先は「ダブりなし」シートのセルA1なので、マクロは次のようになります。 Sheets("練習").Select Range("A:A").AdvancedFilter Action:=2, CopytoRange:=Sheets("ダブりなし").Range("A1"), Unique:=True』、「オートフィルタをかけるには「AdvancedFilter」を書き、後ろにダブり消し用の条件を加えます」、なるほど。
・『完成させて動かしてみよう 「ダブり消し」という名前を付け、マクロを書きましょう。 ボタンにマクロを登録し、保存した後に押してみてください。「練習」シートのデータからダブりが消えたものが「ダブりなし」シートに貼り付いていれば成功です!』、「「練習」シートのデータからダブりが消えたものが「ダブりなし」シートに貼り付いていれば成功です!」、なるほど。
・『エラーが出たらチェック! よくある間違い 1 AdvancedFilter やCopytoRange、Unique、True などの綴りが間違っている 2 A:AやA1が" "(ダブルクォーテーション)で囲まれていない 3 :(コロン)が;(セミコロン)になっている 4 「:=」ではなく「= :」になっている 5 AdvancedFilter とAction の間のスペースが抜けている (本稿は、寺澤伸洋著『4時間のエクセル仕事は20秒で終わる』を抜粋、再構成したものです)(寺澤伸洋氏の略歴はリンク先参照) これまでエクセルマクロを用いた業務改善などで数多くの社内表彰を受けている。手作業では不可能なほど大量のデータを、短時間で分析しやすく加工したことが評価され、社内エクセルマクロ講習会の講師として延べ200人以上に講座を実施。エクセルマクロについて1から10まで教える詰め込み型の学習ではなく、仕事に必要な部分だけを効率的に学べる講座として満足度98%の高い評価を受けている』、「社内エクセルマクロ講習会の講師として延べ200人以上に講座を実施。エクセルマクロについて1から10まで教える詰め込み型の学習ではなく、仕事に必要な部分だけを効率的に学べる講座として満足度98%の高い評価を受けている」、なるほど。
・『4時間のエクセル仕事は20秒で終わる 「マクロで働き方を変えましょう!」――著者からのメッセージ 『4時間のエクセル仕事は20秒で終わる』の著者、寺澤伸洋です。「ここに2500行の売上データがある。見にくいので1行おきに空白行を挿入してほしい」 このような作業を命じられたとしたら、あなたならどうしますか? 気合を入れて、とにかく目の前の仕事をこなすだけになってしまっていませんか? 本書はこのように目の前にどんどん降ってくるエクセル作業を一刻も早く効率化し、仕事のやり方を変えたい方にぜひ読んでいただきたいです。 先ほどの作業、マクロを使えばワンクリック、たった20秒で終わります! しかも、準備はたった11行のマクロを入力するだけ! 初心者の方、過去に学ぼうとして挫折した経験のある方へ向けて、わかりやすい説明を心がけました。難しい内容を極力省き、必要最低限の内容を学べるように構成しています。 ぜひ本書でマクロを身に付け、ご自身の仕事を大きく変えていってください。 さて、この書籍を通して皆さんに伝えたかった思いはただ1つ。 「マクロで働き方を変えましょう!」ということ。 マクロを学ぶと、仕事への向き合い方が変わります。「目の前のことをこなすだけ」だったのが、「『これってマクロでできないか?』と一段高いところから業務を見る思考」ができるようになるはずです。普段の業務を「どうしたらマクロに処理をさせられるか」という視点で考え直してみてください。 僕自身も仕事の全体像を見て改善策を考え、実現できてようやく目の前の仕事に追われなくなりました。自分の仕事にあったマクロを作りあげ、エクセル仕事が一気に楽になる感覚を味わってください。 人生の大切な時間がエクセル仕事にどんどん奪われ、残業だらけで「もう嫌だ!」と嘆いている人もいるかもしれません。マクロを知るだけでそんな人生を大きく変えられます。ぜひマクロにチャレンジしてみてください。 エクセルはマクロにやらせて、空いた時間を自分のために使おう。 僕は、そう強く思っています。 マクロの知識がどんどん広がって、世の中の皆さんの仕事がもっともっと楽になることを心から願っています。 本書の主な内容 はじめに GAFAの現役部長が教えるマクロの真髄 本書の理念 ─マクロを効率的に学ぶための4ヵ条─ Chapter1:マクロを作る・動かす環境を準備する Chapter2:シート・セル・行・列の操作は3ステップで Chapter3:変数をマスターすれば作業が圧倒的に減る Chapter4:対応力アップ! 条件ごとに作業を分岐させる Chapter5:マクロが劇的にわかりやすくなるメッセージボックス Chapter6:繰り返し作業はすべてマクロにやらせよう Chapter7:「シートごとコピー」でコピペが超効率化する Chapter8:書き方に悩んだら? マクロの記録 Chapter9:シーン別! 実際の仕事でのマクロ活用法 COLUMN マクロか?手作業か? 最大限時短するための使いわけ Chapter10:超簡単なマクロでもっと効率化するテクニック)』、「自分の仕事にあったマクロを作りあげ、エクセル仕事が一気に楽になる感覚を味わってください。 人生の大切な時間がエクセル仕事にどんどん奪われ、残業だらけで「もう嫌だ!」と嘆いている人もいるかもしれません。マクロを知るだけでそんな人生を大きく変えられます。ぜひマクロにチャレンジしてみてください・・・エクセルはマクロにやらせて、空いた時間を自分のために使おう。 僕は、そう強く思っています。 マクロの知識がどんどん広がって、世の中の皆さんの仕事がもっともっと楽になることを心から願っています」、その通りだ。
やや古いが、2021年6月20日付けダイヤモンド・オンライン「めんどうな作業はExcelマクロにやらせよう 一瞬でダブりチェックが終わるマクロの作り方とは?」を紹介しよう。
・『エクセルマクロの挫折しない勉強法や仕事で使いこなすコツを徹底解説! 講師の寺澤さんはこれまでの20年間マクロを使って様々な業務を効率化させるなど、数多くの社内表彰を受けてきました。例えば、数十万行の元データから分析用データを毎週作成する作業。人の手だと1週間かけても終わらない作業ですが、マクロを使うと30分程で完成してしまいます。さらに自ら社内講座も主催、全くマクロを触ったことがない数百人を指導し、満足度98%と人気を博しています。近著『4時間のエクセル仕事は20秒で終わる』では、そのエッセンスを余すところなく紹介しています。 本連載では、エクセルマクロを仕事で使うための本当に必要な知識だけを、できるだけわかりやすく説明していきます』、「本連載では、エクセルマクロを仕事で使うための本当に必要な知識だけを、できるだけわかりやすく説明していきます」、有難い。
・圧倒的速さでダブりデータを削除する 「あちゃ~。データのダブりを見逃してた(泣)。資料を作り直さなきゃ……」 誰でも一度はこんな経験をしたことがあるのではないでしょうか。いちいち手と目を使ってチェックするのは、時間も気力も使いますよね。そこで、データのダブりを消すマクロを学んでいきます。 まず「練習」シートのデータへオートフィルタをかけ、A列のダブりを消します。その後、右図のように「ダブりなし」シートにデータをコピー&ペーストします。 ダブりを消すには「AdvancedFilter」という特殊なオートフィルタを使います。フィルタの詳細設定の項目を使うマクロです。どの操作なのか一度エクセルで見てみましょう。 「データ」タブにあるフィルターの項目に詳細設定があります。 ここにある「重複するレコードは無視する」をマクロで操作します。 このオートフィルタをかけるには「AdvancedFilter」を書き、後ろにダブり消し用の条件を加えます。 Range("A:A").AdvancedFilter Action:=2, CopytoRange:=貼付先, Unique:=True Action:=2 は「データ上でフィルタをかけた後、別シートにコピー」 CopytoRange は「ここにコピーを貼り付けます」 Unique:=True は「重複を無視します」という意味です。 今回、貼り付け先は「ダブりなし」シートのセルA1なので、マクロは次のようになります。 Sheets("練習").Select Range("A:A").AdvancedFilter Action:=2, CopytoRange:=Sheets("ダブりなし").Range("A1"), Unique:=True』、「オートフィルタをかけるには「AdvancedFilter」を書き、後ろにダブり消し用の条件を加えます」、なるほど。
・『完成させて動かしてみよう 「ダブり消し」という名前を付け、マクロを書きましょう。 ボタンにマクロを登録し、保存した後に押してみてください。「練習」シートのデータからダブりが消えたものが「ダブりなし」シートに貼り付いていれば成功です!』、「「練習」シートのデータからダブりが消えたものが「ダブりなし」シートに貼り付いていれば成功です!」、なるほど。
・『エラーが出たらチェック! よくある間違い 1 AdvancedFilter やCopytoRange、Unique、True などの綴りが間違っている 2 A:AやA1が" "(ダブルクォーテーション)で囲まれていない 3 :(コロン)が;(セミコロン)になっている 4 「:=」ではなく「= :」になっている 5 AdvancedFilter とAction の間のスペースが抜けている (本稿は、寺澤伸洋著『4時間のエクセル仕事は20秒で終わる』を抜粋、再構成したものです)(寺澤伸洋氏の略歴はリンク先参照) これまでエクセルマクロを用いた業務改善などで数多くの社内表彰を受けている。手作業では不可能なほど大量のデータを、短時間で分析しやすく加工したことが評価され、社内エクセルマクロ講習会の講師として延べ200人以上に講座を実施。エクセルマクロについて1から10まで教える詰め込み型の学習ではなく、仕事に必要な部分だけを効率的に学べる講座として満足度98%の高い評価を受けている』、「社内エクセルマクロ講習会の講師として延べ200人以上に講座を実施。エクセルマクロについて1から10まで教える詰め込み型の学習ではなく、仕事に必要な部分だけを効率的に学べる講座として満足度98%の高い評価を受けている」、なるほど。
・『4時間のエクセル仕事は20秒で終わる 「マクロで働き方を変えましょう!」――著者からのメッセージ 『4時間のエクセル仕事は20秒で終わる』の著者、寺澤伸洋です。「ここに2500行の売上データがある。見にくいので1行おきに空白行を挿入してほしい」 このような作業を命じられたとしたら、あなたならどうしますか? 気合を入れて、とにかく目の前の仕事をこなすだけになってしまっていませんか? 本書はこのように目の前にどんどん降ってくるエクセル作業を一刻も早く効率化し、仕事のやり方を変えたい方にぜひ読んでいただきたいです。 先ほどの作業、マクロを使えばワンクリック、たった20秒で終わります! しかも、準備はたった11行のマクロを入力するだけ! 初心者の方、過去に学ぼうとして挫折した経験のある方へ向けて、わかりやすい説明を心がけました。難しい内容を極力省き、必要最低限の内容を学べるように構成しています。 ぜひ本書でマクロを身に付け、ご自身の仕事を大きく変えていってください。 さて、この書籍を通して皆さんに伝えたかった思いはただ1つ。 「マクロで働き方を変えましょう!」ということ。 マクロを学ぶと、仕事への向き合い方が変わります。「目の前のことをこなすだけ」だったのが、「『これってマクロでできないか?』と一段高いところから業務を見る思考」ができるようになるはずです。普段の業務を「どうしたらマクロに処理をさせられるか」という視点で考え直してみてください。 僕自身も仕事の全体像を見て改善策を考え、実現できてようやく目の前の仕事に追われなくなりました。自分の仕事にあったマクロを作りあげ、エクセル仕事が一気に楽になる感覚を味わってください。 人生の大切な時間がエクセル仕事にどんどん奪われ、残業だらけで「もう嫌だ!」と嘆いている人もいるかもしれません。マクロを知るだけでそんな人生を大きく変えられます。ぜひマクロにチャレンジしてみてください。 エクセルはマクロにやらせて、空いた時間を自分のために使おう。 僕は、そう強く思っています。 マクロの知識がどんどん広がって、世の中の皆さんの仕事がもっともっと楽になることを心から願っています。 本書の主な内容 はじめに GAFAの現役部長が教えるマクロの真髄 本書の理念 ─マクロを効率的に学ぶための4ヵ条─ Chapter1:マクロを作る・動かす環境を準備する Chapter2:シート・セル・行・列の操作は3ステップで Chapter3:変数をマスターすれば作業が圧倒的に減る Chapter4:対応力アップ! 条件ごとに作業を分岐させる Chapter5:マクロが劇的にわかりやすくなるメッセージボックス Chapter6:繰り返し作業はすべてマクロにやらせよう Chapter7:「シートごとコピー」でコピペが超効率化する Chapter8:書き方に悩んだら? マクロの記録 Chapter9:シーン別! 実際の仕事でのマクロ活用法 COLUMN マクロか?手作業か? 最大限時短するための使いわけ Chapter10:超簡単なマクロでもっと効率化するテクニック)』、「自分の仕事にあったマクロを作りあげ、エクセル仕事が一気に楽になる感覚を味わってください。 人生の大切な時間がエクセル仕事にどんどん奪われ、残業だらけで「もう嫌だ!」と嘆いている人もいるかもしれません。マクロを知るだけでそんな人生を大きく変えられます。ぜひマクロにチャレンジしてみてください・・・エクセルはマクロにやらせて、空いた時間を自分のために使おう。 僕は、そう強く思っています。 マクロの知識がどんどん広がって、世の中の皆さんの仕事がもっともっと楽になることを心から願っています」、その通りだ。
タグ:「本連載では、エクセルマクロを仕事で使うための本当に必要な知識だけを、できるだけわかりやすく説明していきます」、有難い。 コンピュータ (その1)(めんどうな作業はExcelマクロにやらせよう 一瞬でダブりチェックが終わるマクロの作り方とは?) ダイヤモンド・オンライン「めんどうな作業はExcelマクロにやらせよう 一瞬でダブりチェックが終わるマクロの作り方とは?」 「「練習」シートのデータからダブりが消えたものが「ダブりなし」シートに貼り付いていれば成功です!」、なるほど。 「社内エクセルマクロ講習会の講師として延べ200人以上に講座を実施。エクセルマクロについて1から10まで教える詰め込み型の学習ではなく、仕事に必要な部分だけを効率的に学べる講座として満足度98%の高い評価を受けている」、なるほど。 「自分の仕事にあったマクロを作りあげ、エクセル仕事が一気に楽になる感覚を味わってください。 人生の大切な時間がエクセル仕事にどんどん奪われ、残業だらけで「もう嫌だ!」と嘆いている人もいるかもしれません。マクロを知るだけでそんな人生を大きく変えられます。ぜひマクロにチャレンジしてみてください・・・エクセルはマクロにやらせて、空いた時間を自分のために使おう。 僕は、そう強く思っています。 マクロの知識がどんどん広がって、世の中の皆さんの仕事がもっともっと楽になることを心から願っています」、その通りだ。
半導体産業(その14)(爆速成長NVIDIAに3つの死角 「AIスマホ」「中国市場」「ポストGPU」、「世界一から転落」日の丸半導体を殺したのは誰か 業界のキーマンが語る「日米半導体摩擦」の顛末) [イノベーション]
半導体産業については、本年6月3日に取上げた。今日は、(その14)(爆速成長NVIDIAに3つの死角 「AIスマホ」「中国市場」「ポストGPU」、「世界一から転落」日の丸半導体を殺したのは誰か 業界のキーマンが語る「日米半導体摩擦」の顛末)である。
先ずは、本年6月27日付け日経ビジネスオンライン「爆速成長NVIDIAに3つの死角 「AIスマホ」「中国市場」「ポストGPU」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00511/062500034/
・『この記事の3つのポイント NVIDIAの死角1=スマホでAIが動けばGPUの強みが薄れる 死角2=中国製GPU台頭、重要市場の先行きに不透明感 死角3=「ポストGPU」の開発が進み、半導体は多様化の時代へ 時価総額が一時、世界首位となった米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)。生成AI(人工知能)向け計算資源の膨大な需要に支えられて快進撃が続く。その死角はどこにあるのか。長らくエヌビディアの専売特許だったGPU(画像処理半導体)の今後を占う』、興味深そうだ。
・『死角(1)AIの「動く場所」が変わる 死角の1つ目は、「AIが動く場所」にある。エヌビディアのGPUが圧倒的な強さを誇るのはデータセンター向けだ。米マイクロソフトや米アマゾン・ドット・コムなどのクラウド大手が展開する巨大なデータセンターなどのサーバーに搭載されている。英調査会社のオムディアによれば、エヌビディア製GPUのデータセンター向け世界シェアは約8割を占める。 Chat(チャット)GPTの登場以来、米グーグルや米オープンAIなどは最高性能のAIの開発競争を繰り広げてきた。これらのAIはデータセンターで動いている。PCのブラウザーでAIに指示をすると、データセンターでAIが動き、その結果をユーザーに返す。 ところが、この数カ月で新たなトレンドが生まれている。それが、スマートフォンやPCなどの端末上でAIが動く「オンデバイス生成AI」と呼ばれるものだ。比較的サイズの小さい生成AIを、スマホなどに搭載した半導体で稼働させる。 その筆頭が米アップルだ。6月10日に開いた開発者向けイベント「WWDC」で、オンデバイス生成AIを採用した「アップルインテリジェンス」を発表。音声アシスタントの「Siri」に生成AIを利用し、比較的簡易な指示であればオンデバイス処理だけでユーザーに回答する。複雑な場合はデータセンターに処理を引き渡す方法を採用した。 マイクロソフトもオンデバイス生成AIを重視しており、6月18日に端末で生成AIが動くWindowsノートパソコン「Copilot+PC」を発売。米グーグルも自社製スマホ「Pixel」でオンデバイス生成AIを採用済みだ。オンデバイス生成AIは処理の速さなどが特徴で、今後もこのトレンドが加速すると見られる。 これら3社の端末にエヌビディア製の半導体は採用されていない。アップルとグーグルは自社開発のチップを採用しており、マイクロソフトは米クアルコムのプロセッサーを利用している。オンデバイス生成AIの採用は、エヌビディア製GPUにとって逆風となりそうだ』、「これら3社の端末にエヌビディア製の半導体は採用されていない。アップルとグーグルは自社開発のチップを採用しており、マイクロソフトは米クアルコムのプロセッサーを利用している。オンデバイス生成AIの採用は、エヌビディア製GPUにとって逆風となりそうだ」、なるほど。
・『死角(2)現れた「中国版エヌビディア」の実力 2つ目の死角は中国市場の不透明さにある。米中対立を背景に、米国は2022年からエヌビディア製GPUの中国への輸出を制限。同社は性能を落とした中国向け専用品を開発したが、23年10月の規制強化で、そうした専用品の輸出も禁じられた。 米国政府が23年10月に追加の輸出規制に踏み切る以前、エヌビディアのデータセンター向け売上高の20〜25%が中国向けであり、その巨大なマーケットは同社の生命線でもあった。一方、追加規制後の23年11月〜24年1月期は5%程度に急落している。 代替品の輸出も禁止されたエヌビディアは、中国向け新製品の開発を急いでいると見られる。24年3月の自社イベントで記者会見を開いた同社のジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は「中国に最適化するためにベストを尽くしている」と話したものの、具体的なスペックへの言及を避けた。 一方で中国では、AI半導体を自前で開発する動きが相次いでいる。 15年に発表した「中国製造2025」で、半導体の自国生産率を35年に75%とする目標を打ち出した中国。国家予算を投入して自国産業を育成するほか、台湾積体電路製造(TSMC)などの外資企業を誘致しているが、米調査会社ICインサイツによれば21年の自給率は16.7%にとどまる。しかも、その内訳は外資企業が10.1%で、中国企業はわずか6.6%に過ぎない。 中国企業のテクノロジー情勢に詳しい野村総合研究所の李智慧氏は、今後の中国企業の先端半導体戦略を次のように見通す。「計算リソースは半導体の『質×量』で決まる。選択肢は2つで、1つは質では劣る半導体を量でカバーすること。最先端でなくても資本を投下すれば量は集められる。もう1つは質を高めるための代替品の開発だ。華為技術(ファーウェイ)などのプレーヤーが中心になるだろう」。 代替品の開発については、「中国版GPU」が注目を集める。GPUスタートアップの筆頭が摩爾線程智能科技(ムーア・スレッズ)だ。エヌビディアでグローバル担当副社長などを務めた張建中氏が20年10月に創業したGPUメーカーで、23年12月にはAI向けGPU「MTT S4000」やAIの学習などを担うプラットフォームなどを発表した。 ムーア・スレッズのプラットフォームはエヌビディアの開発環境と互換性があるため、これまでエヌビディア製GPUでAI学習のために書いたプログラムコードを、ほぼそのまま同社製GPU用のコードとして容易に移行できるという。米国の半導体専門メディアはムーア・スレッズの技術力を「2020年当時のエヌビディアのアーキテクチャーには及ばないが、ある程度の大規模言語モデル(LLM)のトレーニングでは利用できる」と評価している。 「中国版エヌビディア」との異名を持つ中科寒武紀科技(カンブリコン)もAI半導体を開発する。21年に発表した「思元370」は7ナノメートルプロセスを採用し、同社によれば最大演算能力は256TOPS(毎秒256兆回)でエヌビディアのA800を上回ったという。壁仞智能科技(バイレン)もAIチップメーカーとして注目を集め、既に1000億円以上を調達している』、「「中国版エヌビディア」との異名を持つ中科寒武紀科技(カンブリコン)もAI半導体を開発する。21年に発表した「思元370」は7ナノメートルプロセスを採用し、同社によれば最大演算能力は256TOPS(毎秒256兆回)でエヌビディアのA800を上回ったという。壁仞智能科技(バイレン)もAIチップメーカーとして注目を集め、既に1000億円以上を調達」、なるほど。
・『死角(3)「ポストGPU」の台頭でAI半導体は乱世へ 最後の死角は、GPUの後継を狙う「ポストGPU」の台頭だ。この領域はスタートアップを中心に様々な技術が登場している。 特徴は、今後のニーズを見据えてAIの学習ではなく推論向けのチップを開発するスタートアップが多いことが挙げられる。推論とは、人間の指示などに基づいて学習済みのAIが回答するプロセスを指す。生成AIの実用化が進むに従って学習から推論への移行は進むと見られる。 例えば米dマトリックスは異なるチップを組み合わせる「チップレット」技術を採用し、最先端GPUの40倍のメモリー帯域幅を実現した。 米ハーバード大学を中退した21歳のコンビが起業した米エッチドAIや、グーグルで機械学習向けチップ「TPU」を担当していたエンジニアが創業した米グロック、人間の脳の特徴を再現するチップ開発を目指し、サム・アルトマン氏が投資したことでも知られる米レインAI、ドローンやロボット、自動運転向けのチップを開発する米シマAIなどが注目と投資を集めている。 「推論の時代にAI半導体は多様化する」。27年に先端半導体の量産を目指す半導体メーカー、ラピダスの小池淳義社長はこう読む。1つめの死角で挙げたように、AIが動く場所はデータセンターのサーバーだけでなく、スマホやPCなどに広がっている。 今後、自動運転用のAIやロボット用のAIなど、その用途が広がれば広がるほど、AIを動かす半導体も種類が増えて多様化するという見立てだ。GPUが全てを担う時代から、多種多様な専用半導体がAIを動かす時代に変わる可能性がある。 AI需要に支えられて急成長を続けるエヌビディア。今後を占うためには、生成AIのトレンドの変化に目を凝らす必要がありそうだ』、「AIが動く場所はデータセンターのサーバーだけでなく、スマホやPCなどに広がっている。 今後、自動運転用のAIやロボット用のAIなど、その用途が広がれば広がるほど、AIを動かす半導体も種類が増えて多様化するという見立てだ。GPUが全てを担う時代から、多種多様な専用半導体がAIを動かす時代に変わる可能性がある。AI需要に支えられて急成長を続けるエヌビディア。今後を占うためには、生成AIのトレンドの変化に目を凝らす必要がありそうだ」、その通りだ。
次に、7月14日付け東洋経済オンラインが掲載したJSR前会長・経済同友会経済安全保障委員会委員長の小柴 満信氏による「「世界一から転落」日の丸半導体を殺したのは誰か 業界のキーマンが語る「日米半導体摩擦」の顛末」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/775898?display=b
・『世界ではいま、半導体が「熱い」。台湾積体電路製造(TSMC)の時価総額は一時1兆ドルに達し、イーロン・マスク氏はAI開発のためエヌビディア製半導体を大量購入。トランジスタの誕生から70年あまりの半導体の歴史の中で、かつてないほどの注目を浴びている。 「半導体の復活なくして、日本の未来はない」と語るのは、2023年まで経済同友会の副代表幹事をつとめ「業界のキーマン」として知られる小柴満信氏だ。 かつては世界シェア50%だった日本の半導体産業は、日米半導体摩擦によって力を削がれ現在は10%を割り込む。日本の躍進はどのようにして阻まれたのか。 小柴氏の著書『2040年 半導体の未来』より抜粋・編集してお届けする』、興味深そうだ。
・『半導体の誕生 半導体が発明される前――レーダーや初期のコンピュータには、電流を制御する部品として、ガラス製の「真空管」が使われていた。ただ、部品としてはかさばりすぎるうえ、信頼性がない、消費電力が大きいといった問題があった。そんな中、1948年、アメリカのベル研究所が接触型トランジスタを発明する。 トランジスタは、電気を通す導体と通さない絶縁体の中間の物質である「半導体」でつくられており、その性質から電流をスイッチング(オン/オフ)したり増幅したりできる。消費電力は真空管の50分の1と小さく、あっという間に真空管を駆逐した。 それでもコンピュータに必要な数千個のトランジスタをプリント基板に並べ、1つひとつはんだで配線するのは複雑すぎたし、電子機器を小型化するうえでも支障がある。 そこで、配線を簡略化しようと開発されたのが、1つの基板の上に複数のトランジスタや配線をまとめてしまう方法だった。1958年に集積回路(IC)の概念が発表され、これ以降、集積回路のことを半導体あるいはチップと呼ぶようになった。 当時の技術者の1人が、フェアチャイルドセミコンダクター社のゴードン・ムーアだ。) ムーアは1965年、集積回路の未来について『エレクトロニクス』誌から論文を依頼され、そこに次のような予測をしたためた。 「少なくとも今後10年間、ICの集積度は、1.5年で2倍、3年で4倍になっていくだろう」 集積度とは、1枚のシリコンチップ上に搭載できる部品の数を表す。つまり集積度が高くなるほど性能は上がる。1975年には「2年に2倍ずつ性能が上がる」と修正され、これらの言葉は、のちに「ムーアの法則」として知られていく。 1968年、ムーアらはフェアチャイルドセミコンダクターを離れ、インテルを創業する。 2年後に最初の製品として発売したのが、世界初の「ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)」だ。 それまでコンピュータは「磁気コア」と呼ばれる、金属のリングをワイヤーでつないだものでデータを記憶していた。ただ、磁気コアの容量アップには限界があった。 そこで、例の集積回路を使って開発された記憶装置がDRAMだ。電荷をためる機能を持つコンデンサという部品とトランジスタをつないで記憶素子(メモリセル)を構成している。記憶素子に電荷が蓄えられた状態を「1」、蓄えられていない状態を「0」としてデータを記憶する。DRAMは、現在でもコンピュータのデータ保存を担う重要な半導体(メモリ)である』、「数千個のトランジスタをプリント基板に並べ、1つひとつはんだで配線するのは複雑すぎたし、電子機器を小型化するうえでも支障がある。 そこで、配線を簡略化しようと開発されたのが、1つの基板の上に複数のトランジスタや配線をまとめてしまう方法だった。1958年に集積回路(IC)の概念が発表され、これ以降、集積回路のことを半導体あるいはチップと呼ぶようになった。 当時の技術者の1人が、フェアチャイルドセミコンダクター社のゴードン・ムーアだ・・・集積回路を使って開発された記憶装置がDRAMだ。電荷をためる機能を持つコンデンサという部品とトランジスタをつないで記憶素子(メモリセル)を構成している。記憶素子に電荷が蓄えられた状態を「1」、蓄えられていない状態を「0」としてデータを記憶する。DRAMは、現在でもコンピュータのデータ保存を担う重要な半導体(メモリ)である」、なるほど。
・『DRAMで躍進した日本 トランジスタが発明された1948年といえば、日本はまだ、敗戦からの復興にもがいていたころだ。そんな中、アメリカ政府は、日本にトランジスタを使った製品を開発させようと支援した。 その一例がソニー(当時は東京通信工業)である。WE(Western Electric)社からトランジスタの製造特許を取得して製造した「ソニーラジオ」は、安さと性能からまたたく間に世界を席巻した。自社でトランジスタを製造し、ラジオをつくったのはソニーが世界最初だった。シャープ(当時は早川電機)が1964年にいち早く電卓に搭載したトランジスタもアメリカ製だ。 アメリカは、自国の半導体を利用させることで日本企業を早期に復活させ、それによって、ソ連や中国など共産主義勢力との結びつきを持たせないようにしたのだ。 しかし、日本はアメリカの思惑をはるかに超えるスピードで成長した。そのことが、両国に摩擦を引き起こす。 1970年代から1980年代初頭にかけて、日立製作所、東芝、富士通、NECなどは、DRAMの製造で世界を席巻し始めていた。煮え湯を飲まされていたアメリカの半導体企業は、「日本企業は日本だけでなくアメリカでも保護されており、不当な恩恵を受けている」と不平を隠さなかった。 テキサス・インスツルメンツ(TI)やナショナルセミコンダクターも、DRAM部門のレイオフに追い込まれた。危機感を覚えたアメリカ企業は政府に猛烈なロビー活動を行い、1984年に「半導体チップ保護法」が成立する。半導体関連の知的財産の保護を強化する法律だ。 その陰で、インテルは1985年にDRAM事業からひっそりと撤退する』、「アメリカ政府は、日本にトランジスタを使った製品を開発させようと支援した。 その一例がソニー(当時は東京通信工業)である。WE(Western Electric)社からトランジスタの製造特許を取得して製造した「ソニーラジオ」は、安さと性能からまたたく間に世界を席巻した。自社でトランジスタを製造し、ラジオをつくったのはソニーが世界最初だった。シャープ(当時は早川電機)が1964年にいち早く電卓に搭載したトランジスタもアメリカ製だ。 アメリカは、自国の半導体を利用させることで日本企業を早期に復活させ、それによって、ソ連や中国など共産主義勢力との結びつきを持たせないようにしたのだ・・・日本はアメリカの思惑をはるかに超えるスピードで成長した。そのことが、両国に摩擦を引き起こす。 1970年代から1980年代初頭にかけて、日立製作所、東芝、富士通、NECなどは、DRAMの製造で世界を席巻し始めていた。煮え湯を飲まされていたアメリカの半導体企業は、「日本企業は日本だけでなくアメリカでも保護されており、不当な恩恵を受けている」と不平を隠さなかった。 テキサス・インスツルメンツ(TI)やナショナルセミコンダクターも、DRAM部門のレイオフに追い込まれた。危機感を覚えたアメリカ企業は政府に猛烈なロビー活動を行い、1984年に「半導体チップ保護法」が成立する。半導体関連の知的財産の保護を強化する法律だ。 その陰で、インテルは1985年にDRAM事業からひっそりと撤退」、当初は「アメリカは、自国の半導体を利用させることで日本企業を早期に復活させ」ようとしたとは、初めて知った。
・『「日米半導体協定」が締結 1986年に日本が半導体生産量でアメリカを抜き、DRAMで8割の世界シェアを獲得する。ことここに至り、アメリカはついに最後の一手を打った。1987年に「日米半導体協定」の締結を日本に迫ったのだ。 この協定は、日本製DRAMの対米輸出量を制限するものだった。だが、これによって半導体の数量は減ったものの価格はむしろ高騰したため、日本企業は経営的にほとんどダメージを受けなかった。 1988年には、日本が世界の半導体生産額の50%を超えるまでに成長する。そのため、1991年の新協定で、「日本国内の外国製半導体のシェアを従来の10%から20%まで引き上げる」という厳しい条項が盛り込まれた。 半導体を制した日本の原動力になったのは、民生用電気機器、いわゆる家電製品だ。ソニーラジオから始まり、電卓、テレビ、ビデオデッキ、ポータブルオーディオプレーヤーなど、高品質・低価格の「メイド・イン・ジャパン」は世界中に輸出され、それに搭載される半導体もがんがん増産された。アメリカの家電は世界から駆逐され、それにともなってアメリカ製の半導体も日本企業にその地位を奪われる、という構図だったのである。) 途中からは、メインフレームと呼ばれる大型汎用コンピュータに、品質が高くこわれにくい日本製DRAMがつぎつぎと搭載され、日本の半導体シェア拡大を後押しした。 その一方で、1981年にはIBMのパソコンが世界的にヒットし、コンピュータに革命が起こり始めていた。アップルは1984年に初代マッキントッシュを発売。翌1985年にはマイクロソフトがパソコン用のオペレーティングシステム(OS)を開発する。 そこで息を吹き返したのがインテルだ。DRAMから撤退して以降、パソコン向けのマイクロプロセッサーに専念していたことが功を奏した。それまでの円安ドル高が一転、円高ドル安となり、輸出価格が相対的に安くなったことも追い風になった。 1992年には米コンパック・コンピュータが、インテル製チップとマイクロソフトOSを乗せたパソコンを、IBMのパソコンよりはるかに安価で売り出す。これをきっかけに世界のパソコン出荷台数は激増し、インテルもさらに勢いづく。 1995年にはマイクロソフトがOS「ウィンドウズ95」を発売し、パソコンが一般家庭にも浸透し始め、インテルは、半導体メーカーとしての地位を完全に取り戻した』、「1987年に「日米半導体協定」の締結を日本に迫ったのだ。 この協定は、日本製DRAMの対米輸出量を制限するものだった。だが、これによって半導体の数量は減ったものの価格はむしろ高騰したため、日本企業は経営的にほとんどダメージを受けなかった。 1988年には、日本が世界の半導体生産額の50%を超えるまでに成長する。そのため、1991年の新協定で、「日本国内の外国製半導体のシェアを従来の10%から20%まで引き上げる」という厳しい条項が盛り込まれた・・・アメリカの家電は世界から駆逐され、それにともなってアメリカ製の半導体も日本企業にその地位を奪われる、という構図だったのである・・・米コンパック・コンピュータが、インテル製チップとマイクロソフトOSを乗せたパソコンを、IBMのパソコンよりはるかに安価で売り出す。これをきっかけに世界のパソコン出荷台数は激増し、インテルもさらに勢いづく。 1995年にはマイクロソフトがOS「ウィンドウズ95」を発売し、パソコンが一般家庭にも浸透し始め、インテルは、半導体メーカーとしての地位を完全に取り戻した」、なるほど。
・『インテル、サムスンによる“日本潰し” このころから、韓国のサムスン電子が台頭していく。1980年代に半導体製造に乗り出したサムスンに、インテルは技術やライセンスを惜しげもなく供与した。当時、韓国のコストや賃金は日本より大幅に低かったため、韓国製DRAMが日本製DRAMを駆逐できるのではないかと考えたのだ。 この“日本潰し”は見事に当たった。 DRAMの大口顧客であったメインフレームは1990年代になるとすっかり影を潜め、主役はパソコンに完全に替わっていた。その心臓部に、インテル・ブランドを冠したサムスン製DRAMがつぎつぎと採用され、日本の半導体各社を直撃したのである。 日本の世界シェアはずるずると後退し、逆に、日本国内での外国製半導体のシェアは1996年になって20%――つまり例の新協定で設定された水準に達した。これによって日米半導体協定は失効した』、「サムスンに、インテルは技術やライセンスを惜しげもなく供与した。当時、韓国のコストや賃金は日本より大幅に低かったため、韓国製DRAMが日本製DRAMを駆逐できるのではないかと考えたのだ。 この“日本潰し”は見事に当たった。 DRAMの大口顧客であったメインフレームは1990年代になるとすっかり影を潜め、主役はパソコンに完全に替わっていた。その心臓部に、インテル・ブランドを冠したサムスン製DRAMがつぎつぎと採用され、日本の半導体各社を直撃したのである。 日本の世界シェアはずるずると後退し、逆に、日本国内での外国製半導体のシェアは1996年になって20%――つまり例の新協定で設定された水準に達した。これによって日米半導体協定は失効した」、「サムスンに、インテルは技術やライセンスを惜しげもなく供与」、「サムスン」躍進の背景には「インテル」の後押しがあったことを思い出した。
先ずは、本年6月27日付け日経ビジネスオンライン「爆速成長NVIDIAに3つの死角 「AIスマホ」「中国市場」「ポストGPU」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00511/062500034/
・『この記事の3つのポイント NVIDIAの死角1=スマホでAIが動けばGPUの強みが薄れる 死角2=中国製GPU台頭、重要市場の先行きに不透明感 死角3=「ポストGPU」の開発が進み、半導体は多様化の時代へ 時価総額が一時、世界首位となった米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)。生成AI(人工知能)向け計算資源の膨大な需要に支えられて快進撃が続く。その死角はどこにあるのか。長らくエヌビディアの専売特許だったGPU(画像処理半導体)の今後を占う』、興味深そうだ。
・『死角(1)AIの「動く場所」が変わる 死角の1つ目は、「AIが動く場所」にある。エヌビディアのGPUが圧倒的な強さを誇るのはデータセンター向けだ。米マイクロソフトや米アマゾン・ドット・コムなどのクラウド大手が展開する巨大なデータセンターなどのサーバーに搭載されている。英調査会社のオムディアによれば、エヌビディア製GPUのデータセンター向け世界シェアは約8割を占める。 Chat(チャット)GPTの登場以来、米グーグルや米オープンAIなどは最高性能のAIの開発競争を繰り広げてきた。これらのAIはデータセンターで動いている。PCのブラウザーでAIに指示をすると、データセンターでAIが動き、その結果をユーザーに返す。 ところが、この数カ月で新たなトレンドが生まれている。それが、スマートフォンやPCなどの端末上でAIが動く「オンデバイス生成AI」と呼ばれるものだ。比較的サイズの小さい生成AIを、スマホなどに搭載した半導体で稼働させる。 その筆頭が米アップルだ。6月10日に開いた開発者向けイベント「WWDC」で、オンデバイス生成AIを採用した「アップルインテリジェンス」を発表。音声アシスタントの「Siri」に生成AIを利用し、比較的簡易な指示であればオンデバイス処理だけでユーザーに回答する。複雑な場合はデータセンターに処理を引き渡す方法を採用した。 マイクロソフトもオンデバイス生成AIを重視しており、6月18日に端末で生成AIが動くWindowsノートパソコン「Copilot+PC」を発売。米グーグルも自社製スマホ「Pixel」でオンデバイス生成AIを採用済みだ。オンデバイス生成AIは処理の速さなどが特徴で、今後もこのトレンドが加速すると見られる。 これら3社の端末にエヌビディア製の半導体は採用されていない。アップルとグーグルは自社開発のチップを採用しており、マイクロソフトは米クアルコムのプロセッサーを利用している。オンデバイス生成AIの採用は、エヌビディア製GPUにとって逆風となりそうだ』、「これら3社の端末にエヌビディア製の半導体は採用されていない。アップルとグーグルは自社開発のチップを採用しており、マイクロソフトは米クアルコムのプロセッサーを利用している。オンデバイス生成AIの採用は、エヌビディア製GPUにとって逆風となりそうだ」、なるほど。
・『死角(2)現れた「中国版エヌビディア」の実力 2つ目の死角は中国市場の不透明さにある。米中対立を背景に、米国は2022年からエヌビディア製GPUの中国への輸出を制限。同社は性能を落とした中国向け専用品を開発したが、23年10月の規制強化で、そうした専用品の輸出も禁じられた。 米国政府が23年10月に追加の輸出規制に踏み切る以前、エヌビディアのデータセンター向け売上高の20〜25%が中国向けであり、その巨大なマーケットは同社の生命線でもあった。一方、追加規制後の23年11月〜24年1月期は5%程度に急落している。 代替品の輸出も禁止されたエヌビディアは、中国向け新製品の開発を急いでいると見られる。24年3月の自社イベントで記者会見を開いた同社のジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は「中国に最適化するためにベストを尽くしている」と話したものの、具体的なスペックへの言及を避けた。 一方で中国では、AI半導体を自前で開発する動きが相次いでいる。 15年に発表した「中国製造2025」で、半導体の自国生産率を35年に75%とする目標を打ち出した中国。国家予算を投入して自国産業を育成するほか、台湾積体電路製造(TSMC)などの外資企業を誘致しているが、米調査会社ICインサイツによれば21年の自給率は16.7%にとどまる。しかも、その内訳は外資企業が10.1%で、中国企業はわずか6.6%に過ぎない。 中国企業のテクノロジー情勢に詳しい野村総合研究所の李智慧氏は、今後の中国企業の先端半導体戦略を次のように見通す。「計算リソースは半導体の『質×量』で決まる。選択肢は2つで、1つは質では劣る半導体を量でカバーすること。最先端でなくても資本を投下すれば量は集められる。もう1つは質を高めるための代替品の開発だ。華為技術(ファーウェイ)などのプレーヤーが中心になるだろう」。 代替品の開発については、「中国版GPU」が注目を集める。GPUスタートアップの筆頭が摩爾線程智能科技(ムーア・スレッズ)だ。エヌビディアでグローバル担当副社長などを務めた張建中氏が20年10月に創業したGPUメーカーで、23年12月にはAI向けGPU「MTT S4000」やAIの学習などを担うプラットフォームなどを発表した。 ムーア・スレッズのプラットフォームはエヌビディアの開発環境と互換性があるため、これまでエヌビディア製GPUでAI学習のために書いたプログラムコードを、ほぼそのまま同社製GPU用のコードとして容易に移行できるという。米国の半導体専門メディアはムーア・スレッズの技術力を「2020年当時のエヌビディアのアーキテクチャーには及ばないが、ある程度の大規模言語モデル(LLM)のトレーニングでは利用できる」と評価している。 「中国版エヌビディア」との異名を持つ中科寒武紀科技(カンブリコン)もAI半導体を開発する。21年に発表した「思元370」は7ナノメートルプロセスを採用し、同社によれば最大演算能力は256TOPS(毎秒256兆回)でエヌビディアのA800を上回ったという。壁仞智能科技(バイレン)もAIチップメーカーとして注目を集め、既に1000億円以上を調達している』、「「中国版エヌビディア」との異名を持つ中科寒武紀科技(カンブリコン)もAI半導体を開発する。21年に発表した「思元370」は7ナノメートルプロセスを採用し、同社によれば最大演算能力は256TOPS(毎秒256兆回)でエヌビディアのA800を上回ったという。壁仞智能科技(バイレン)もAIチップメーカーとして注目を集め、既に1000億円以上を調達」、なるほど。
・『死角(3)「ポストGPU」の台頭でAI半導体は乱世へ 最後の死角は、GPUの後継を狙う「ポストGPU」の台頭だ。この領域はスタートアップを中心に様々な技術が登場している。 特徴は、今後のニーズを見据えてAIの学習ではなく推論向けのチップを開発するスタートアップが多いことが挙げられる。推論とは、人間の指示などに基づいて学習済みのAIが回答するプロセスを指す。生成AIの実用化が進むに従って学習から推論への移行は進むと見られる。 例えば米dマトリックスは異なるチップを組み合わせる「チップレット」技術を採用し、最先端GPUの40倍のメモリー帯域幅を実現した。 米ハーバード大学を中退した21歳のコンビが起業した米エッチドAIや、グーグルで機械学習向けチップ「TPU」を担当していたエンジニアが創業した米グロック、人間の脳の特徴を再現するチップ開発を目指し、サム・アルトマン氏が投資したことでも知られる米レインAI、ドローンやロボット、自動運転向けのチップを開発する米シマAIなどが注目と投資を集めている。 「推論の時代にAI半導体は多様化する」。27年に先端半導体の量産を目指す半導体メーカー、ラピダスの小池淳義社長はこう読む。1つめの死角で挙げたように、AIが動く場所はデータセンターのサーバーだけでなく、スマホやPCなどに広がっている。 今後、自動運転用のAIやロボット用のAIなど、その用途が広がれば広がるほど、AIを動かす半導体も種類が増えて多様化するという見立てだ。GPUが全てを担う時代から、多種多様な専用半導体がAIを動かす時代に変わる可能性がある。 AI需要に支えられて急成長を続けるエヌビディア。今後を占うためには、生成AIのトレンドの変化に目を凝らす必要がありそうだ』、「AIが動く場所はデータセンターのサーバーだけでなく、スマホやPCなどに広がっている。 今後、自動運転用のAIやロボット用のAIなど、その用途が広がれば広がるほど、AIを動かす半導体も種類が増えて多様化するという見立てだ。GPUが全てを担う時代から、多種多様な専用半導体がAIを動かす時代に変わる可能性がある。AI需要に支えられて急成長を続けるエヌビディア。今後を占うためには、生成AIのトレンドの変化に目を凝らす必要がありそうだ」、その通りだ。
次に、7月14日付け東洋経済オンラインが掲載したJSR前会長・経済同友会経済安全保障委員会委員長の小柴 満信氏による「「世界一から転落」日の丸半導体を殺したのは誰か 業界のキーマンが語る「日米半導体摩擦」の顛末」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/775898?display=b
・『世界ではいま、半導体が「熱い」。台湾積体電路製造(TSMC)の時価総額は一時1兆ドルに達し、イーロン・マスク氏はAI開発のためエヌビディア製半導体を大量購入。トランジスタの誕生から70年あまりの半導体の歴史の中で、かつてないほどの注目を浴びている。 「半導体の復活なくして、日本の未来はない」と語るのは、2023年まで経済同友会の副代表幹事をつとめ「業界のキーマン」として知られる小柴満信氏だ。 かつては世界シェア50%だった日本の半導体産業は、日米半導体摩擦によって力を削がれ現在は10%を割り込む。日本の躍進はどのようにして阻まれたのか。 小柴氏の著書『2040年 半導体の未来』より抜粋・編集してお届けする』、興味深そうだ。
・『半導体の誕生 半導体が発明される前――レーダーや初期のコンピュータには、電流を制御する部品として、ガラス製の「真空管」が使われていた。ただ、部品としてはかさばりすぎるうえ、信頼性がない、消費電力が大きいといった問題があった。そんな中、1948年、アメリカのベル研究所が接触型トランジスタを発明する。 トランジスタは、電気を通す導体と通さない絶縁体の中間の物質である「半導体」でつくられており、その性質から電流をスイッチング(オン/オフ)したり増幅したりできる。消費電力は真空管の50分の1と小さく、あっという間に真空管を駆逐した。 それでもコンピュータに必要な数千個のトランジスタをプリント基板に並べ、1つひとつはんだで配線するのは複雑すぎたし、電子機器を小型化するうえでも支障がある。 そこで、配線を簡略化しようと開発されたのが、1つの基板の上に複数のトランジスタや配線をまとめてしまう方法だった。1958年に集積回路(IC)の概念が発表され、これ以降、集積回路のことを半導体あるいはチップと呼ぶようになった。 当時の技術者の1人が、フェアチャイルドセミコンダクター社のゴードン・ムーアだ。) ムーアは1965年、集積回路の未来について『エレクトロニクス』誌から論文を依頼され、そこに次のような予測をしたためた。 「少なくとも今後10年間、ICの集積度は、1.5年で2倍、3年で4倍になっていくだろう」 集積度とは、1枚のシリコンチップ上に搭載できる部品の数を表す。つまり集積度が高くなるほど性能は上がる。1975年には「2年に2倍ずつ性能が上がる」と修正され、これらの言葉は、のちに「ムーアの法則」として知られていく。 1968年、ムーアらはフェアチャイルドセミコンダクターを離れ、インテルを創業する。 2年後に最初の製品として発売したのが、世界初の「ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)」だ。 それまでコンピュータは「磁気コア」と呼ばれる、金属のリングをワイヤーでつないだものでデータを記憶していた。ただ、磁気コアの容量アップには限界があった。 そこで、例の集積回路を使って開発された記憶装置がDRAMだ。電荷をためる機能を持つコンデンサという部品とトランジスタをつないで記憶素子(メモリセル)を構成している。記憶素子に電荷が蓄えられた状態を「1」、蓄えられていない状態を「0」としてデータを記憶する。DRAMは、現在でもコンピュータのデータ保存を担う重要な半導体(メモリ)である』、「数千個のトランジスタをプリント基板に並べ、1つひとつはんだで配線するのは複雑すぎたし、電子機器を小型化するうえでも支障がある。 そこで、配線を簡略化しようと開発されたのが、1つの基板の上に複数のトランジスタや配線をまとめてしまう方法だった。1958年に集積回路(IC)の概念が発表され、これ以降、集積回路のことを半導体あるいはチップと呼ぶようになった。 当時の技術者の1人が、フェアチャイルドセミコンダクター社のゴードン・ムーアだ・・・集積回路を使って開発された記憶装置がDRAMだ。電荷をためる機能を持つコンデンサという部品とトランジスタをつないで記憶素子(メモリセル)を構成している。記憶素子に電荷が蓄えられた状態を「1」、蓄えられていない状態を「0」としてデータを記憶する。DRAMは、現在でもコンピュータのデータ保存を担う重要な半導体(メモリ)である」、なるほど。
・『DRAMで躍進した日本 トランジスタが発明された1948年といえば、日本はまだ、敗戦からの復興にもがいていたころだ。そんな中、アメリカ政府は、日本にトランジスタを使った製品を開発させようと支援した。 その一例がソニー(当時は東京通信工業)である。WE(Western Electric)社からトランジスタの製造特許を取得して製造した「ソニーラジオ」は、安さと性能からまたたく間に世界を席巻した。自社でトランジスタを製造し、ラジオをつくったのはソニーが世界最初だった。シャープ(当時は早川電機)が1964年にいち早く電卓に搭載したトランジスタもアメリカ製だ。 アメリカは、自国の半導体を利用させることで日本企業を早期に復活させ、それによって、ソ連や中国など共産主義勢力との結びつきを持たせないようにしたのだ。 しかし、日本はアメリカの思惑をはるかに超えるスピードで成長した。そのことが、両国に摩擦を引き起こす。 1970年代から1980年代初頭にかけて、日立製作所、東芝、富士通、NECなどは、DRAMの製造で世界を席巻し始めていた。煮え湯を飲まされていたアメリカの半導体企業は、「日本企業は日本だけでなくアメリカでも保護されており、不当な恩恵を受けている」と不平を隠さなかった。 テキサス・インスツルメンツ(TI)やナショナルセミコンダクターも、DRAM部門のレイオフに追い込まれた。危機感を覚えたアメリカ企業は政府に猛烈なロビー活動を行い、1984年に「半導体チップ保護法」が成立する。半導体関連の知的財産の保護を強化する法律だ。 その陰で、インテルは1985年にDRAM事業からひっそりと撤退する』、「アメリカ政府は、日本にトランジスタを使った製品を開発させようと支援した。 その一例がソニー(当時は東京通信工業)である。WE(Western Electric)社からトランジスタの製造特許を取得して製造した「ソニーラジオ」は、安さと性能からまたたく間に世界を席巻した。自社でトランジスタを製造し、ラジオをつくったのはソニーが世界最初だった。シャープ(当時は早川電機)が1964年にいち早く電卓に搭載したトランジスタもアメリカ製だ。 アメリカは、自国の半導体を利用させることで日本企業を早期に復活させ、それによって、ソ連や中国など共産主義勢力との結びつきを持たせないようにしたのだ・・・日本はアメリカの思惑をはるかに超えるスピードで成長した。そのことが、両国に摩擦を引き起こす。 1970年代から1980年代初頭にかけて、日立製作所、東芝、富士通、NECなどは、DRAMの製造で世界を席巻し始めていた。煮え湯を飲まされていたアメリカの半導体企業は、「日本企業は日本だけでなくアメリカでも保護されており、不当な恩恵を受けている」と不平を隠さなかった。 テキサス・インスツルメンツ(TI)やナショナルセミコンダクターも、DRAM部門のレイオフに追い込まれた。危機感を覚えたアメリカ企業は政府に猛烈なロビー活動を行い、1984年に「半導体チップ保護法」が成立する。半導体関連の知的財産の保護を強化する法律だ。 その陰で、インテルは1985年にDRAM事業からひっそりと撤退」、当初は「アメリカは、自国の半導体を利用させることで日本企業を早期に復活させ」ようとしたとは、初めて知った。
・『「日米半導体協定」が締結 1986年に日本が半導体生産量でアメリカを抜き、DRAMで8割の世界シェアを獲得する。ことここに至り、アメリカはついに最後の一手を打った。1987年に「日米半導体協定」の締結を日本に迫ったのだ。 この協定は、日本製DRAMの対米輸出量を制限するものだった。だが、これによって半導体の数量は減ったものの価格はむしろ高騰したため、日本企業は経営的にほとんどダメージを受けなかった。 1988年には、日本が世界の半導体生産額の50%を超えるまでに成長する。そのため、1991年の新協定で、「日本国内の外国製半導体のシェアを従来の10%から20%まで引き上げる」という厳しい条項が盛り込まれた。 半導体を制した日本の原動力になったのは、民生用電気機器、いわゆる家電製品だ。ソニーラジオから始まり、電卓、テレビ、ビデオデッキ、ポータブルオーディオプレーヤーなど、高品質・低価格の「メイド・イン・ジャパン」は世界中に輸出され、それに搭載される半導体もがんがん増産された。アメリカの家電は世界から駆逐され、それにともなってアメリカ製の半導体も日本企業にその地位を奪われる、という構図だったのである。) 途中からは、メインフレームと呼ばれる大型汎用コンピュータに、品質が高くこわれにくい日本製DRAMがつぎつぎと搭載され、日本の半導体シェア拡大を後押しした。 その一方で、1981年にはIBMのパソコンが世界的にヒットし、コンピュータに革命が起こり始めていた。アップルは1984年に初代マッキントッシュを発売。翌1985年にはマイクロソフトがパソコン用のオペレーティングシステム(OS)を開発する。 そこで息を吹き返したのがインテルだ。DRAMから撤退して以降、パソコン向けのマイクロプロセッサーに専念していたことが功を奏した。それまでの円安ドル高が一転、円高ドル安となり、輸出価格が相対的に安くなったことも追い風になった。 1992年には米コンパック・コンピュータが、インテル製チップとマイクロソフトOSを乗せたパソコンを、IBMのパソコンよりはるかに安価で売り出す。これをきっかけに世界のパソコン出荷台数は激増し、インテルもさらに勢いづく。 1995年にはマイクロソフトがOS「ウィンドウズ95」を発売し、パソコンが一般家庭にも浸透し始め、インテルは、半導体メーカーとしての地位を完全に取り戻した』、「1987年に「日米半導体協定」の締結を日本に迫ったのだ。 この協定は、日本製DRAMの対米輸出量を制限するものだった。だが、これによって半導体の数量は減ったものの価格はむしろ高騰したため、日本企業は経営的にほとんどダメージを受けなかった。 1988年には、日本が世界の半導体生産額の50%を超えるまでに成長する。そのため、1991年の新協定で、「日本国内の外国製半導体のシェアを従来の10%から20%まで引き上げる」という厳しい条項が盛り込まれた・・・アメリカの家電は世界から駆逐され、それにともなってアメリカ製の半導体も日本企業にその地位を奪われる、という構図だったのである・・・米コンパック・コンピュータが、インテル製チップとマイクロソフトOSを乗せたパソコンを、IBMのパソコンよりはるかに安価で売り出す。これをきっかけに世界のパソコン出荷台数は激増し、インテルもさらに勢いづく。 1995年にはマイクロソフトがOS「ウィンドウズ95」を発売し、パソコンが一般家庭にも浸透し始め、インテルは、半導体メーカーとしての地位を完全に取り戻した」、なるほど。
・『インテル、サムスンによる“日本潰し” このころから、韓国のサムスン電子が台頭していく。1980年代に半導体製造に乗り出したサムスンに、インテルは技術やライセンスを惜しげもなく供与した。当時、韓国のコストや賃金は日本より大幅に低かったため、韓国製DRAMが日本製DRAMを駆逐できるのではないかと考えたのだ。 この“日本潰し”は見事に当たった。 DRAMの大口顧客であったメインフレームは1990年代になるとすっかり影を潜め、主役はパソコンに完全に替わっていた。その心臓部に、インテル・ブランドを冠したサムスン製DRAMがつぎつぎと採用され、日本の半導体各社を直撃したのである。 日本の世界シェアはずるずると後退し、逆に、日本国内での外国製半導体のシェアは1996年になって20%――つまり例の新協定で設定された水準に達した。これによって日米半導体協定は失効した』、「サムスンに、インテルは技術やライセンスを惜しげもなく供与した。当時、韓国のコストや賃金は日本より大幅に低かったため、韓国製DRAMが日本製DRAMを駆逐できるのではないかと考えたのだ。 この“日本潰し”は見事に当たった。 DRAMの大口顧客であったメインフレームは1990年代になるとすっかり影を潜め、主役はパソコンに完全に替わっていた。その心臓部に、インテル・ブランドを冠したサムスン製DRAMがつぎつぎと採用され、日本の半導体各社を直撃したのである。 日本の世界シェアはずるずると後退し、逆に、日本国内での外国製半導体のシェアは1996年になって20%――つまり例の新協定で設定された水準に達した。これによって日米半導体協定は失効した」、「サムスンに、インテルは技術やライセンスを惜しげもなく供与」、「サムスン」躍進の背景には「インテル」の後押しがあったことを思い出した。
タグ:「サムスンに、インテルは技術やライセンスを惜しげもなく供与した。当時、韓国のコストや賃金は日本より大幅に低かったため、韓国製DRAMが日本製DRAMを駆逐できるのではないかと考えたのだ。 この“日本潰し”は見事に当たった。 DRAMの大口顧客であったメインフレームは1990年代になるとすっかり影を潜め、主役はパソコンに完全に替わっていた。その心臓部に、インテル・ブランドを冠したサムスン製DRAMがつぎつぎと採用され、日本の半導体各社を直撃したのである。 日本の世界シェアはずるずると後退し、逆に、日本国内で インテル、サムスンによる“日本潰し” 「アメリカ政府は、日本にトランジスタを使った製品を開発させようと支援した。 その一例がソニー(当時は東京通信工業)である。WE(Western Electric)社からトランジスタの製造特許を取得して製造した「ソニーラジオ」は、安さと性能からまたたく間に世界を席巻した。自社でトランジスタを製造し、ラジオをつくったのはソニーが世界最初だった。シャープ(当時は早川電機)が1964年にいち早く電卓に搭載したトランジスタもアメリカ製だ。 アメリカの家電は世界から駆逐され、それにともなってアメリカ製の半導体も日本企業にその地位を奪われる、という構図だったのである・・・米コンパック・コンピュータが、インテル製チップとマイクロソフトOSを乗せたパソコンを、IBMのパソコンよりはるかに安価で売り出す。これをきっかけに世界のパソコン出荷台数は激増し、インテルもさらに勢いづく。 1995年にはマイクロソフトがOS「ウィンドウズ95」を発売し、パソコンが一般家庭にも浸透し始め、インテルは、半導体メーカーとしての地位を完全に取り戻した」、なるほど。 死角(3)「ポストGPU」の台頭でAI半導体は乱世へ 「日米半導体協定」が締結 「数千個のトランジスタをプリント基板に並べ、1つひとつはんだで配線するのは複雑すぎたし、電子機器を小型化するうえでも支障がある。 そこで、配線を簡略化しようと開発されたのが、1つの基板の上に複数のトランジスタや配線をまとめてしまう方法だった。1958年に集積回路(IC)の概念が発表され、これ以降、集積回路のことを半導体あるいはチップと呼ぶようになった。 小柴氏の著書『2040年 半導体の未来』 東洋経済オンライン 「AIが動く場所はデータセンターのサーバーだけでなく、スマホやPCなどに広がっている。 今後、自動運転用のAIやロボット用のAIなど、その用途が広がれば広がるほど、AIを動かす半導体も種類が増えて多様化するという見立てだ。GPUが全てを担う時代から、多種多様な専用半導体がAIを動かす時代に変わる可能性がある。AI需要に支えられて急成長を続けるエヌビディア。今後を占うためには、生成AIのトレンドの変化に目を凝らす必要がありそうだ」、その通りだ。 「これら3社の端末にエヌビディア製の半導体は採用されていない。アップルとグーグルは自社開発のチップを採用しており、マイクロソフトは米クアルコムのプロセッサーを利用している。オンデバイス生成AIの採用は、エヌビディア製GPUにとって逆風となりそうだ」、なるほど。 当時の技術者の1人が、フェアチャイルドセミコンダクター社のゴードン・ムーアだ・・・集積回路を使って開発された記憶装置がDRAMだ。電荷をためる機能を持つコンデンサという部品とトランジスタをつないで記憶素子(メモリセル)を構成している。記憶素子に電荷が蓄えられた状態を「1」、蓄えられていない状態を「0」としてデータを記憶する。DRAMは、現在でもコンピュータのデータ保存を担う重要な半導体(メモリ)である」、なるほど。 DRAMで躍進した日本 死角(1)AIの「動く場所」が変わる 「1987年に「日米半導体協定」の締結を日本に迫ったのだ。 この協定は、日本製DRAMの対米輸出量を制限するものだった。だが、これによって半導体の数量は減ったものの価格はむしろ高騰したため、日本企業は経営的にほとんどダメージを受けなかった。 1988年には、日本が世界の半導体生産額の50%を超えるまでに成長する。そのため、1991年の新協定で、「日本国内の外国製半導体のシェアを従来の10%から20%まで引き上げる」という厳しい条項が盛り込まれた・・・ 日経ビジネスオンライン「爆速成長NVIDIAに3つの死角 「AIスマホ」「中国市場」「ポストGPU」」 死角(2)現れた「中国版エヌビディア」の実力 小柴 満信氏による「「世界一から転落」日の丸半導体を殺したのは誰か 業界のキーマンが語る「日米半導体摩擦」の顛末」 半導体産業(その14)(爆速成長NVIDIAに3つの死角 「AIスマホ」「中国市場」「ポストGPU」、「世界一から転落」日の丸半導体を殺したのは誰か 業界のキーマンが語る「日米半導体摩擦」の顛末) テキサス・インスツルメンツ(TI)やナショナルセミコンダクターも、DRAM部門のレイオフに追い込まれた。危機感を覚えたアメリカ企業は政府に猛烈なロビー活動を行い、1984年に「半導体チップ保護法」が成立する。半導体関連の知的財産の保護を強化する法律だ。 その陰で、インテルは1985年にDRAM事業からひっそりと撤退」、当初は「アメリカは、自国の半導体を利用させることで日本企業を早期に復活させ」ようとしたとは、初めて知った。 アメリカは、自国の半導体を利用させることで日本企業を早期に復活させ、それによって、ソ連や中国など共産主義勢力との結びつきを持たせないようにしたのだ・・・日本はアメリカの思惑をはるかに超えるスピードで成長した。そのことが、両国に摩擦を引き起こす。 1970年代から1980年代初頭にかけて、日立製作所、東芝、富士通、NECなどは、DRAMの製造で世界を席巻し始めていた。煮え湯を飲まされていたアメリカの半導体企業は、「日本企業は日本だけでなくアメリカでも保護されており、不当な恩恵を受けている」と不平を隠さなかっ の外国製半導体のシェアは1996年になって20%――つまり例の新協定で設定された水準に達した。これによって日米半導体協定は失効した」、「サムスンに、インテルは技術やライセンスを惜しげもなく供与」、「サムスン」躍進の背景には「インテル」の後押しがあったことを思い出した。 「「中国版エヌビディア」との異名を持つ中科寒武紀科技(カンブリコン)もAI半導体を開発する。21年に発表した「思元370」は7ナノメートルプロセスを採用し、同社によれば最大演算能力は256TOPS(毎秒256兆回)でエヌビディアのA800を上回ったという。壁仞智能科技(バイレン)もAIチップメーカーとして注目を集め、既に1000億円以上を調達」、なるほど。
イーロン・マスク(その2)(Twitter→Xの変更も失敗を想定?マスクが「9割失敗」と思いながらテスラを起業したワケ、Xを破滅に追いやるイーロン・マスクの「破壊衝動」、イーロン・マスクはなぜトランプを支持するのか? 問題児2人の不思議な「蜜月関係」) [イノベーション]
イーロン・マスクについては、昨年8月30日に取上げた。今日は、(その2)(Twitter→Xの変更も失敗を想定?マスクが「9割失敗」と思いながらテスラを起業したワケ、Xを破滅に追いやるイーロン・マスクの「破壊衝動」、イーロン・マスクはなぜトランプを支持するのか? 問題児2人の不思議な「蜜月関係」)である。
先ずは、昨年9月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家・ポッドキャスターのジュリア・ガレフ氏と英日翻訳者の児島 修氏による「Twitter→Xの変更も失敗を想定?マスクが「9割失敗」と思いながらテスラを起業したワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327732
・『Twitterを「X」に名称変更したイーロン・マスク。彼が成功に導いた電機自動車メーカーのテスラは、20年で時価総額世界第9位にまで成長した。しかし、彼は意外にも「自分の会社は失敗するのではないか」と考えていたという。成功の確率をわずか1割だと見積もったにもかかわらず、起業に踏み切った背景には、イーロン・マスク流の「価値ある賭け」への見極め方があった――。 ※本稿は、全世界17言語で翻訳されたジュリア・ガレフ著『マッピング思考 人には見えていないことが見えてくる「メタ論理トレーニング」』(東洋経済新報社)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『“突拍子もない夢”を追い求めるイーロン・マスク イーロン・マスクは、宇宙飛行会社を設立すると決意したとき、友人たちから頭がおかしくなったと思われた。 マスクは、自身が手がけた2番目の事業である「ペイパル」の売却によって手に入れたばかりの1億8000万ドルの多くを、後の「スペースX」となる会社に投じようとしていた。 「きっと失敗する。せっかくペイパルを売って稼いだ金が、ごっそり消えてしまうぞ」と周囲は忠告した。 ある友人は、ロケットが爆発する映像をつなぎあわせた動画を編集し、マスクに「頼むからこれを見てくれ。バカな真似はよせ」と伝えた。 ちまたによくある“突拍子もない夢”を追い求めた成功者の物語では、ここで「だが、彼は思いとどまったりはしなかった。心のなかで、自分を疑う人たちが間違っているのを知っているからだ――」という展開になるはずだ。 しかし、マスクの場合はそうはならなかった。友人たちから「きっと失敗する」と言われたときも、こう答えている。 「ああ、僕もそう思う。おそらく失敗するだろうね」 実際、マスクはスペースXの宇宙船が宇宙飛行を成功させる確率を、1割程度と見積もっていた。 2年後、マスクはペイパルを売却して得た残りの資金を、電動自動車の「テスラ」に投じると決めた。マスクはこのときも、成功の確率は1割程度と見積もっていた。 本人が自身のプロジェクトが成功する確率を低く見積もっていることに、周囲は首をかしげた。 2014年にテレビ番組の『60ミニッツ』に出演した際にも、そのロジックを理解しようとするインタビュアーのスコット・ペリーから、次のように尋ねられている。 マスク「テスラが成功するとは思っていませんでした。おそらく失敗するだろう、と」 ペリー「成功しないと見込んでいたのに、なぜ挑戦したんです?」 マスク「挑戦するだけの価値があるのなら、やってみるべきだと判断したからですよ」 マスクの成功に対する期待値の低さは、周りを困惑させた。 なぜなら、人は「誰かが何かに挑むのは、成功する可能性が高いから」と考えるからだ。 しかし、マスクのような人は、必ずしも「これは成功する」と思っているから行動するのではない。彼らは「賭ける価値がある」という考えによってモチベーションを高めるのだ。) 誰でもある程度は、目の前の行動を取るかどうかを「賭ける価値があるかどうか」という基準で判断しているものだ。 簡単な例として、一般的な6面体のサイコロを振る賭けをする場合のことを考えてみよう。この賭けでは、6が出れば200ドルの賞金がもらえるが、それ以外の目が出た場合は10ドルを失うことになっている。 賭ける価値があるだろうか。 (サイコロを振る賭けに価値はある? はリンク先参照) そう、これは賭ける価値があるといえる。 この賭けにどれくらいの価値があるのかは、「期待値」を計算することで具体的に知ることができる。 期待値とは、その賭けを際限なく行った場合に平均的に得られる値のことだ。賭けの期待値は、各結果の確率と価値を掛け、その結果を合計することで導ける。この賭けでは、次のようになる。 {(勝つ確率=1/6)×200ドル}+{(負ける確率=5/6)× -10ドル}=33.33ドル - 8.33ドル=25ドル つまり、この賭けを際限なくり返した場合、平均の獲得額は約25ドル。サイコロを振っただけで得られるのなら、悪くはない額だ。 負ける確率は6分の5と高いものの、十分に「賭ける価値がある」賭けだといえるだろう』、「マスクのような人は、必ずしも「これは成功する」と思っているから行動するのではない。彼らは「賭ける価値がある」という考えによってモチベーションを高めるのだ。) 誰でもある程度は、目の前の行動を取るかどうかを「賭ける価値があるかどうか」という基準で判断しているものだ・・・この賭けにどれくらいの価値があるのかは、「期待値」を計算することで具体的に知ることができる」、なるほど。
・『「たとえ『テスラ』が失敗しても…」 とはいえ、起業のような対象を賭けにして正確な確率を導こうとするのは、より複雑で主観的な試みになる。 その価値には、お金以外のさまざまな要素も含まれている。 たとえば、「会社を経営することで、どれだけの楽しみが得られるか?」「たとえ失敗したとしても、その後で役に立つ人脈やスキルを手に入れられるか?」「自分の時間がどれだけ奪われるか?」「社会的な信用度(または汚名)はどれくらい得られるか?」といったことだ。 とはいえ、たいていの場合、大まかな見積もりをすることならできる。 これまで見てきたように、イーロン・マスクはテスラが成功する確率を1割、失敗する確率を9割と見積もっていた。) それでも、成功して得られる価値はとてつもなく大きいと思えた。電気自動車という(当時は)夢物語のような概念を実現することは、現代社会が化石燃料依存から脱却するための大きな一歩になる。 (マスクのテスラとスペースXへの賭け はリンク先参照) マスクは、たとえ失敗したとしてもテスラは価値あることを少なくとも1つ成し遂げられる、と考えた。 「“電気自動車はゴルフカートのように格好悪くて、遅くて、退屈なものだ”という人々の誤った認識を変えられると思ったのです」と語っている。 マスクがスペースXを立ち上げた理由もこれに似ている。 マスクはテスラのときと同じようにスペースXが成功する確率を1割、失敗する確率を9割と見込んでいた。だが、成功したときに得られる価値は計りしれない。 安く宇宙飛行ができる手段を開発すれば将来的に人類が移り住めるようになるかもしれないし、地球上で起こり得る壊滅的なリスクから人類を守れるかもしれない。 また、仮にスペースXが失敗したとしても、宇宙飛行技術を少しでも進歩させられるのなら、それはまったくの無駄にはならないはずだ。 わずかであれボールを前に動かせるのなら、たとえ僕たちの会社が倒産したとしてもどこかの会社がバトンタッチしてそのボールをさらに前に運んでくれるかもしれない。だとすればなおさら挑戦する価値はある』、「「“電気自動車はゴルフカートのように格好悪くて、遅くて、退屈なものだ”という人々の誤った認識を変えられると思ったのです」と語っている・・・マスクはテスラのときと同じようにスペースXが成功する確率を1割、失敗する確率を9割と見込んでいた。だが、成功したときに得られる価値は計りしれない。 安く宇宙飛行ができる手段を開発すれば将来的に人類が移り住めるようになるかもしれないし、地球上で起こり得る壊滅的なリスクから人類を守れるかもしれない。 また、仮にスペースXが失敗したとしても、宇宙飛行技術を少しでも進歩させられるのなら、それはまったくの無駄にはならないはずだ。 わずかであれボールを前に動かせるのなら、たとえ僕たちの会社が倒産したとしてもどこかの会社がバトンタッチしてそのボールをさらに前に運んでくれるかもしれない。だとすればなおさら挑戦する価値はある」、その通りだ。
・『「就職、起業、投資、人間関係 あらゆることに応用可能」 全体としてみれば、テスラもスペースXも、失敗する可能性は高かったものの、マスクにとってはいい賭けだったようだ。 期待値は、その賭けを何度もくり返すことを想像することによってもとらえやすくなる。そのとき、成功によって得られる価値は、失敗によって失う価値を上回るだろうか? イーロン・マスクのようなスケールの大きな起業家なら、一生のうちにテスラやスペースXのような会社を10社はつくる時間と財力があるだろう。 もしその10社のうち9社が失敗するのだとすれば、最大の問題「1回の大きな成功と引き換えに、9回失敗する価値はあるか?」ということになる。) 現実的には、まったく同じ賭けを何度もくり返すことはめったにない。それでも、人生にさまざまな賭けをする機会があるのはたしかだ。 就職や企業、投資はもちろん、他人を信頼する、難しい頼みごとをする、安全地帯から抜け出してなにかに挑戦する、といったことまで含めれば、賭けの機会は無数にある。 そのなかで、期待値を正しく見極めて賭けをすればするほど、ここの賭けに失敗したとしても、全体としては利益が得られるという確信が持てるようになる』、「就職や企業、投資はもちろん、他人を信頼する、難しい頼みごとをする、安全地帯から抜け出してなにかに挑戦する、といったことまで含めれば、賭けの機会は無数にある。 そのなかで、期待値を正しく見極めて賭けをすればするほど、ここの賭けに失敗したとしても、全体としては利益が得られるという確信が持てるようになる」、なるほど。
・『覚悟のうえで、運命に任す 「自信があれば成功できる」という発想でモチベーションを高めようとする人たちは、失敗の可能性を認めれば、やる気が削がれ、リスクを取ろうとしなくなると見なす。 そして「絶対に失敗しない」と固く信じることが、最大限の努力をして成功を目指す秘訣だと考える。 だが現実には、それとは逆であることが多い。 つまり、事前に失敗の可能性を受け入れるからこそ、さまざまな縛りから解放されて、目標に向かって邁進できるようになるのだ。 「失敗する可能性だってある」とわかっているからこそ、臆病ではなく大胆になれる。必要なリスクを取る理由が得られる。 マスクは「他人がクレイジーだと思うような会社を恐れずに起業した」と称賛されると、「実は、強い恐怖を感じている」と答えている。 恐怖を感じていないのではなく、失敗の確率とうまく折り合いをつけることで、その恐怖を手なずける術を学んだだけだ、と。 「それが運命だと思えば、気が楽になります。」失敗の確率を納得して受け入れれば、恐怖心は薄れます。スペースXを立ち上げたときも、成功率は1割以下だと思っていました。当然、すべてを失うかもしれないと覚悟のうえで』、「マスクは「他人がクレイジーだと思うような会社を恐れずに起業した」と称賛されると、「実は、強い恐怖を感じている」と答えている。 恐怖を感じていないのではなく、失敗の確率とうまく折り合いをつけることで、その恐怖を手なずける術を学んだだけだ、と。 「それが運命だと思えば、気が楽になります。」失敗の確率を納得して受け入れれば、恐怖心は薄れます。スペースXを立ち上げたときも、成功率は1割以下だと思っていました。当然、すべてを失うかもしれないと覚悟のうえで」、なるほど。
次に、昨年12月8日付けForbes「Xを破滅に追いやるイーロン・マスクの「破壊衝動」」を紹介しよう。
https://forbesjapan.com/articles/detail/67803
・『:あまり大げさなことを言いたくはないが、イーロン・マスクが先日、Xから広告を引き揚げた企業を「くたばれ」と罵倒したことは、かつてツイッターと呼ばれたプラットフォームの棺桶に最後の釘を打ったようなものだと、筆者は思っている。 筆者がしばしば「お気に入りのソーシャルメディア・アプリ」と呼んできたものから、先週より大手の広告主が次々と逃げ出している。事の発端は、イーロン・マスクが反ユダヤ主義的なツイートに賛同したことだった。そのツイートを正当化し、その過程で明らかにツイッターを葬り去ろうとしたマスクの破壊衝動については、他のライターや本の著者がすでに書いているので、ここでは詳しく分析しようとは思わない。 とはいえ、私はこれが悪い方向に向かっているという事実を嘆いている。反ユダヤ主義的なツイートと広告主からの予想通りの反撃の後に、マスクは暴言を吐いた。一部の報道によれば、この暴言は取り返しのつかないダメージをXの事業に与えたという。 私たち全員がマスクに問うべきは、「なぜ自分の会社を潰そうとするのか?」という質問だが、私はその答えを知っているつもりだ。 多くのオピニオン記事や、マスクに関する最近の書籍(ウォルター・アイザックソンによるやや肯定的な伝記や、あからさまな暴露本でかなり面白い『Breaking Twitter』など)を読んだ筆者は、このソーシャルメディアで初期の頃から自身が経験したことを振り返った結果、マスクは自分を制御できないのだという結論に達した。彼はトラブルに首を突っ込むのが好きなのだ。首を突っ込んだために、彼はツイッターの買収で440億ドル(約6.5兆円)を失った。 『Breaking Twitter』の著者が書いたように、Xの収益の90%は広告主からのものだという主張が正しければ、すべてが塵と消えるのは時間の問題だ。Twitter Blueや他のサブスクリプションは、確かに何の助けにもならないだろう。マスクはつい最近、会社の倒産をほのめかした。アイザックソンが著書で詳しく説明しているように、マスクは破壊的な衝動を精神の中に抱えている。 また、『Breaking Twitter』を読めば、著者が(著作に書いている人物と同様に)どこまで本気なのかは定かではないものの、マスクが全人類を大規模なシミュレーションの一部に過ぎないと考えているフシがあることがわかる。マスクは、現実世界を『グランド・セフト・オート』のようなゲームだと考えているのかもしれない。ルールに従って、決められたコースを進むことができる一方で、完全にレールから外れて走り回り、物を破壊しまくることもできるのだ』、「イーロン・マスクが先日、Xから広告を引き揚げた企業を「くたばれ」と罵倒したことは、かつてツイッターと呼ばれたプラットフォームの棺桶に最後の釘を打ったようなものだと、筆者は思っている・・・マスクは自分を制御できないのだという結論に達した。彼はトラブルに首を突っ込むのが好きなのだ。首を突っ込んだために、彼はツイッターの買収で440億ドル(約6.5兆円)を失った・・・マスクはつい最近、会社の倒産をほのめかした。アイザックソンが著書で詳しく説明しているように、マスクは破壊的な衝動を精神の中に抱えている」、天才的な能力を持った半面で、「破壊的な衝動を精神の中に抱えている」とは困ったことだ。
・『すべてはゲームの中の出来事 マスクは、そのうちの後者をやっているようだ。すべてがシミュレーションに過ぎないのであれば、たとえ会社を破壊し、その過程で何十億ドルもの損失を被ったとしても、いずれにせよ何の問題もない。 「有名なブランドで本当に間違った決断を繰り返し、そのブランドが完全に崩壊してしまったらどうなるだろう? クールだろ?」マスクはそう語りかけているように見える。NPC(プレイヤーが操作しないキャラクター)はソーシャルメディアのフォロワーのようなもので、消耗品だ。マスクは彼らのことをそれほど気にかけていない。 しかし、問題は、それがクールなんかではないことだ。彼の発言によってXの社員は、次に何が起こるかわからないというギリギリの状態で毎日を過ごしている。広告主は何百万ドルも費やし、それがすべて無駄だったことに気づく。筆者にとっては、Xを使い続ける意味が徐々に失われていることを意味する。だからといって、良い代替品もあまり見当たらない。 Xはどのように最期を迎えるのだろうか? すぐにゲームオーバーの画面が見られるかどうかは分からないが、マスクの破壊計画が最終段階に入ったことは確かなようだ。それはとても残念なことだ。(forbes.com 原文)』、「Xはどのように最期を迎えるのだろうか? すぐにゲームオーバーの画面が見られるかどうかは分からないが、マスクの破壊計画が最終段階に入ったことは確かなようだ」、悲劇的なのはXの社員なのではないだろうか。
第三に、本年6月22日付けNewsweek日本版「イーロン・マスクはなぜトランプを支持するのか? 問題児2人の不思議な「蜜月関係」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/06/post-104889.php
・『<環境技術の旗手だったはずのイーロン・マスク。パリ協定からのアメリカの離脱を受け、一度はトランプと決別したはずだった。そんな二人が今、急速に距離を縮める> ウォール・ストリート・ジャーナル紙は5月末、テスラやスペースXのCEOを務めるイーロン・マスクと、ドナルド・トランプ前米大統領との関係が深まっていると報じた。 2人の親密さは「月に何度も電話で話をする」ほどで、大統領への返り咲きを狙うトランプの選挙運動や、「次期」トランプ政権の下でマスクが手にできるかもしれないビジネスチャンスについて語り合っているという。 再選された暁には政策顧問にならないかとトランプがマスクに打診したともウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている(マスクは否定)。確かに最近のマスクの振る舞いは、甘い汁を吸うためにトランプの歓心を買おうとしている一部の人々とまるで変わらない。 トランプが不倫の口止め料をめぐる裁判で有罪評決を受けた際の、マスクのX(旧ツイッター)への投稿がいい例だ。 セコイア・キャピタル(シリコンバレーの有力ベンチャーキャピタル)の幹部が、評決の直後に30万ドルをトランプ陣営に寄付したことをたたえたり、「(評決は)アメリカの司法システムへの社会の信頼を大きく傷つけた」と主張したり。 右派風刺メディア「バビロン・ビー」がこの評決をネタにした記事へのリンクを投稿すると、爆笑の絵文字と共にリツイートもした。 インターネットで目立つのが大好きで、おまけに世界は自分を中心に回っていると考えがちな2人が手を組んだのは、状況を考えれば当然の成り行きだったのかもしれない』、「インターネットで目立つのが大好きで、おまけに世界は自分を中心に回っていると考えがちな2人が手を組んだのは、状況を考えれば当然の成り行きだったのかもしれない」、なるほど。
・『トランプ不倫裁判の表決を受けてのマスクの投稿 個人としても選挙資金としても喉から手が出るほどカネを欲しているトランプ。あからさまな人種差別や極右的な陰謀論への肩入れがやめられないマスク。 両者の間では、個人的にもビジネス面でも人的ネットワークの重なる部分が広がっている。トランプは大口献金を狙って、有罪評決に反発する富豪たちに擦り寄っているからなおさらだ。 トランプとの関係強化により、マスクの実業家として、そして著名人としてのアイデンティティーの根っこにあったものは行き場を失った。マスクは今後の自分のブランディングや行動をどうしていくかという点で、明らかな転換点に立っている。 マスクが「政治家や企業経営者らに顔が利くテクノロジー業界の超大物」として世界に名をとどろかせるとともに、ベンチャー企業の創業で巨万の富を得た他の人々とは一線を画する存在になったのは、アメリカの産業を気候変動との戦いにおける武器にするという一見不可能な使命に向けて熱意を持って取り組んだ故だった』、「ウォール・ストリート・ジャーナル紙は5月末・・・イーロン・マスクと、ドナルド・トランプ前米大統領との関係が深まっていると報じた。 2人の親密さは「月に何度も電話で話をする」ほどで、大統領への返り咲きを狙うトランプの選挙運動や、「次期」トランプ政権の下でマスクが手にできるかもしれないビジネスチャンスについて語り合っているという。 再選された暁には政策顧問にならないかとトランプがマスクに打診したともウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている(マスクは否定)」、「トランプ」にとっては、政治資金の面でも心強いスポンサーなのだろう。ただ、Xなどメディアに近い会社を保有する者としては、もっと中立性を維持してほしいものだ。
先ずは、昨年9月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家・ポッドキャスターのジュリア・ガレフ氏と英日翻訳者の児島 修氏による「Twitter→Xの変更も失敗を想定?マスクが「9割失敗」と思いながらテスラを起業したワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327732
・『Twitterを「X」に名称変更したイーロン・マスク。彼が成功に導いた電機自動車メーカーのテスラは、20年で時価総額世界第9位にまで成長した。しかし、彼は意外にも「自分の会社は失敗するのではないか」と考えていたという。成功の確率をわずか1割だと見積もったにもかかわらず、起業に踏み切った背景には、イーロン・マスク流の「価値ある賭け」への見極め方があった――。 ※本稿は、全世界17言語で翻訳されたジュリア・ガレフ著『マッピング思考 人には見えていないことが見えてくる「メタ論理トレーニング」』(東洋経済新報社)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『“突拍子もない夢”を追い求めるイーロン・マスク イーロン・マスクは、宇宙飛行会社を設立すると決意したとき、友人たちから頭がおかしくなったと思われた。 マスクは、自身が手がけた2番目の事業である「ペイパル」の売却によって手に入れたばかりの1億8000万ドルの多くを、後の「スペースX」となる会社に投じようとしていた。 「きっと失敗する。せっかくペイパルを売って稼いだ金が、ごっそり消えてしまうぞ」と周囲は忠告した。 ある友人は、ロケットが爆発する映像をつなぎあわせた動画を編集し、マスクに「頼むからこれを見てくれ。バカな真似はよせ」と伝えた。 ちまたによくある“突拍子もない夢”を追い求めた成功者の物語では、ここで「だが、彼は思いとどまったりはしなかった。心のなかで、自分を疑う人たちが間違っているのを知っているからだ――」という展開になるはずだ。 しかし、マスクの場合はそうはならなかった。友人たちから「きっと失敗する」と言われたときも、こう答えている。 「ああ、僕もそう思う。おそらく失敗するだろうね」 実際、マスクはスペースXの宇宙船が宇宙飛行を成功させる確率を、1割程度と見積もっていた。 2年後、マスクはペイパルを売却して得た残りの資金を、電動自動車の「テスラ」に投じると決めた。マスクはこのときも、成功の確率は1割程度と見積もっていた。 本人が自身のプロジェクトが成功する確率を低く見積もっていることに、周囲は首をかしげた。 2014年にテレビ番組の『60ミニッツ』に出演した際にも、そのロジックを理解しようとするインタビュアーのスコット・ペリーから、次のように尋ねられている。 マスク「テスラが成功するとは思っていませんでした。おそらく失敗するだろう、と」 ペリー「成功しないと見込んでいたのに、なぜ挑戦したんです?」 マスク「挑戦するだけの価値があるのなら、やってみるべきだと判断したからですよ」 マスクの成功に対する期待値の低さは、周りを困惑させた。 なぜなら、人は「誰かが何かに挑むのは、成功する可能性が高いから」と考えるからだ。 しかし、マスクのような人は、必ずしも「これは成功する」と思っているから行動するのではない。彼らは「賭ける価値がある」という考えによってモチベーションを高めるのだ。) 誰でもある程度は、目の前の行動を取るかどうかを「賭ける価値があるかどうか」という基準で判断しているものだ。 簡単な例として、一般的な6面体のサイコロを振る賭けをする場合のことを考えてみよう。この賭けでは、6が出れば200ドルの賞金がもらえるが、それ以外の目が出た場合は10ドルを失うことになっている。 賭ける価値があるだろうか。 (サイコロを振る賭けに価値はある? はリンク先参照) そう、これは賭ける価値があるといえる。 この賭けにどれくらいの価値があるのかは、「期待値」を計算することで具体的に知ることができる。 期待値とは、その賭けを際限なく行った場合に平均的に得られる値のことだ。賭けの期待値は、各結果の確率と価値を掛け、その結果を合計することで導ける。この賭けでは、次のようになる。 {(勝つ確率=1/6)×200ドル}+{(負ける確率=5/6)× -10ドル}=33.33ドル - 8.33ドル=25ドル つまり、この賭けを際限なくり返した場合、平均の獲得額は約25ドル。サイコロを振っただけで得られるのなら、悪くはない額だ。 負ける確率は6分の5と高いものの、十分に「賭ける価値がある」賭けだといえるだろう』、「マスクのような人は、必ずしも「これは成功する」と思っているから行動するのではない。彼らは「賭ける価値がある」という考えによってモチベーションを高めるのだ。) 誰でもある程度は、目の前の行動を取るかどうかを「賭ける価値があるかどうか」という基準で判断しているものだ・・・この賭けにどれくらいの価値があるのかは、「期待値」を計算することで具体的に知ることができる」、なるほど。
・『「たとえ『テスラ』が失敗しても…」 とはいえ、起業のような対象を賭けにして正確な確率を導こうとするのは、より複雑で主観的な試みになる。 その価値には、お金以外のさまざまな要素も含まれている。 たとえば、「会社を経営することで、どれだけの楽しみが得られるか?」「たとえ失敗したとしても、その後で役に立つ人脈やスキルを手に入れられるか?」「自分の時間がどれだけ奪われるか?」「社会的な信用度(または汚名)はどれくらい得られるか?」といったことだ。 とはいえ、たいていの場合、大まかな見積もりをすることならできる。 これまで見てきたように、イーロン・マスクはテスラが成功する確率を1割、失敗する確率を9割と見積もっていた。) それでも、成功して得られる価値はとてつもなく大きいと思えた。電気自動車という(当時は)夢物語のような概念を実現することは、現代社会が化石燃料依存から脱却するための大きな一歩になる。 (マスクのテスラとスペースXへの賭け はリンク先参照) マスクは、たとえ失敗したとしてもテスラは価値あることを少なくとも1つ成し遂げられる、と考えた。 「“電気自動車はゴルフカートのように格好悪くて、遅くて、退屈なものだ”という人々の誤った認識を変えられると思ったのです」と語っている。 マスクがスペースXを立ち上げた理由もこれに似ている。 マスクはテスラのときと同じようにスペースXが成功する確率を1割、失敗する確率を9割と見込んでいた。だが、成功したときに得られる価値は計りしれない。 安く宇宙飛行ができる手段を開発すれば将来的に人類が移り住めるようになるかもしれないし、地球上で起こり得る壊滅的なリスクから人類を守れるかもしれない。 また、仮にスペースXが失敗したとしても、宇宙飛行技術を少しでも進歩させられるのなら、それはまったくの無駄にはならないはずだ。 わずかであれボールを前に動かせるのなら、たとえ僕たちの会社が倒産したとしてもどこかの会社がバトンタッチしてそのボールをさらに前に運んでくれるかもしれない。だとすればなおさら挑戦する価値はある』、「「“電気自動車はゴルフカートのように格好悪くて、遅くて、退屈なものだ”という人々の誤った認識を変えられると思ったのです」と語っている・・・マスクはテスラのときと同じようにスペースXが成功する確率を1割、失敗する確率を9割と見込んでいた。だが、成功したときに得られる価値は計りしれない。 安く宇宙飛行ができる手段を開発すれば将来的に人類が移り住めるようになるかもしれないし、地球上で起こり得る壊滅的なリスクから人類を守れるかもしれない。 また、仮にスペースXが失敗したとしても、宇宙飛行技術を少しでも進歩させられるのなら、それはまったくの無駄にはならないはずだ。 わずかであれボールを前に動かせるのなら、たとえ僕たちの会社が倒産したとしてもどこかの会社がバトンタッチしてそのボールをさらに前に運んでくれるかもしれない。だとすればなおさら挑戦する価値はある」、その通りだ。
・『「就職、起業、投資、人間関係 あらゆることに応用可能」 全体としてみれば、テスラもスペースXも、失敗する可能性は高かったものの、マスクにとってはいい賭けだったようだ。 期待値は、その賭けを何度もくり返すことを想像することによってもとらえやすくなる。そのとき、成功によって得られる価値は、失敗によって失う価値を上回るだろうか? イーロン・マスクのようなスケールの大きな起業家なら、一生のうちにテスラやスペースXのような会社を10社はつくる時間と財力があるだろう。 もしその10社のうち9社が失敗するのだとすれば、最大の問題「1回の大きな成功と引き換えに、9回失敗する価値はあるか?」ということになる。) 現実的には、まったく同じ賭けを何度もくり返すことはめったにない。それでも、人生にさまざまな賭けをする機会があるのはたしかだ。 就職や企業、投資はもちろん、他人を信頼する、難しい頼みごとをする、安全地帯から抜け出してなにかに挑戦する、といったことまで含めれば、賭けの機会は無数にある。 そのなかで、期待値を正しく見極めて賭けをすればするほど、ここの賭けに失敗したとしても、全体としては利益が得られるという確信が持てるようになる』、「就職や企業、投資はもちろん、他人を信頼する、難しい頼みごとをする、安全地帯から抜け出してなにかに挑戦する、といったことまで含めれば、賭けの機会は無数にある。 そのなかで、期待値を正しく見極めて賭けをすればするほど、ここの賭けに失敗したとしても、全体としては利益が得られるという確信が持てるようになる」、なるほど。
・『覚悟のうえで、運命に任す 「自信があれば成功できる」という発想でモチベーションを高めようとする人たちは、失敗の可能性を認めれば、やる気が削がれ、リスクを取ろうとしなくなると見なす。 そして「絶対に失敗しない」と固く信じることが、最大限の努力をして成功を目指す秘訣だと考える。 だが現実には、それとは逆であることが多い。 つまり、事前に失敗の可能性を受け入れるからこそ、さまざまな縛りから解放されて、目標に向かって邁進できるようになるのだ。 「失敗する可能性だってある」とわかっているからこそ、臆病ではなく大胆になれる。必要なリスクを取る理由が得られる。 マスクは「他人がクレイジーだと思うような会社を恐れずに起業した」と称賛されると、「実は、強い恐怖を感じている」と答えている。 恐怖を感じていないのではなく、失敗の確率とうまく折り合いをつけることで、その恐怖を手なずける術を学んだだけだ、と。 「それが運命だと思えば、気が楽になります。」失敗の確率を納得して受け入れれば、恐怖心は薄れます。スペースXを立ち上げたときも、成功率は1割以下だと思っていました。当然、すべてを失うかもしれないと覚悟のうえで』、「マスクは「他人がクレイジーだと思うような会社を恐れずに起業した」と称賛されると、「実は、強い恐怖を感じている」と答えている。 恐怖を感じていないのではなく、失敗の確率とうまく折り合いをつけることで、その恐怖を手なずける術を学んだだけだ、と。 「それが運命だと思えば、気が楽になります。」失敗の確率を納得して受け入れれば、恐怖心は薄れます。スペースXを立ち上げたときも、成功率は1割以下だと思っていました。当然、すべてを失うかもしれないと覚悟のうえで」、なるほど。
次に、昨年12月8日付けForbes「Xを破滅に追いやるイーロン・マスクの「破壊衝動」」を紹介しよう。
https://forbesjapan.com/articles/detail/67803
・『:あまり大げさなことを言いたくはないが、イーロン・マスクが先日、Xから広告を引き揚げた企業を「くたばれ」と罵倒したことは、かつてツイッターと呼ばれたプラットフォームの棺桶に最後の釘を打ったようなものだと、筆者は思っている。 筆者がしばしば「お気に入りのソーシャルメディア・アプリ」と呼んできたものから、先週より大手の広告主が次々と逃げ出している。事の発端は、イーロン・マスクが反ユダヤ主義的なツイートに賛同したことだった。そのツイートを正当化し、その過程で明らかにツイッターを葬り去ろうとしたマスクの破壊衝動については、他のライターや本の著者がすでに書いているので、ここでは詳しく分析しようとは思わない。 とはいえ、私はこれが悪い方向に向かっているという事実を嘆いている。反ユダヤ主義的なツイートと広告主からの予想通りの反撃の後に、マスクは暴言を吐いた。一部の報道によれば、この暴言は取り返しのつかないダメージをXの事業に与えたという。 私たち全員がマスクに問うべきは、「なぜ自分の会社を潰そうとするのか?」という質問だが、私はその答えを知っているつもりだ。 多くのオピニオン記事や、マスクに関する最近の書籍(ウォルター・アイザックソンによるやや肯定的な伝記や、あからさまな暴露本でかなり面白い『Breaking Twitter』など)を読んだ筆者は、このソーシャルメディアで初期の頃から自身が経験したことを振り返った結果、マスクは自分を制御できないのだという結論に達した。彼はトラブルに首を突っ込むのが好きなのだ。首を突っ込んだために、彼はツイッターの買収で440億ドル(約6.5兆円)を失った。 『Breaking Twitter』の著者が書いたように、Xの収益の90%は広告主からのものだという主張が正しければ、すべてが塵と消えるのは時間の問題だ。Twitter Blueや他のサブスクリプションは、確かに何の助けにもならないだろう。マスクはつい最近、会社の倒産をほのめかした。アイザックソンが著書で詳しく説明しているように、マスクは破壊的な衝動を精神の中に抱えている。 また、『Breaking Twitter』を読めば、著者が(著作に書いている人物と同様に)どこまで本気なのかは定かではないものの、マスクが全人類を大規模なシミュレーションの一部に過ぎないと考えているフシがあることがわかる。マスクは、現実世界を『グランド・セフト・オート』のようなゲームだと考えているのかもしれない。ルールに従って、決められたコースを進むことができる一方で、完全にレールから外れて走り回り、物を破壊しまくることもできるのだ』、「イーロン・マスクが先日、Xから広告を引き揚げた企業を「くたばれ」と罵倒したことは、かつてツイッターと呼ばれたプラットフォームの棺桶に最後の釘を打ったようなものだと、筆者は思っている・・・マスクは自分を制御できないのだという結論に達した。彼はトラブルに首を突っ込むのが好きなのだ。首を突っ込んだために、彼はツイッターの買収で440億ドル(約6.5兆円)を失った・・・マスクはつい最近、会社の倒産をほのめかした。アイザックソンが著書で詳しく説明しているように、マスクは破壊的な衝動を精神の中に抱えている」、天才的な能力を持った半面で、「破壊的な衝動を精神の中に抱えている」とは困ったことだ。
・『すべてはゲームの中の出来事 マスクは、そのうちの後者をやっているようだ。すべてがシミュレーションに過ぎないのであれば、たとえ会社を破壊し、その過程で何十億ドルもの損失を被ったとしても、いずれにせよ何の問題もない。 「有名なブランドで本当に間違った決断を繰り返し、そのブランドが完全に崩壊してしまったらどうなるだろう? クールだろ?」マスクはそう語りかけているように見える。NPC(プレイヤーが操作しないキャラクター)はソーシャルメディアのフォロワーのようなもので、消耗品だ。マスクは彼らのことをそれほど気にかけていない。 しかし、問題は、それがクールなんかではないことだ。彼の発言によってXの社員は、次に何が起こるかわからないというギリギリの状態で毎日を過ごしている。広告主は何百万ドルも費やし、それがすべて無駄だったことに気づく。筆者にとっては、Xを使い続ける意味が徐々に失われていることを意味する。だからといって、良い代替品もあまり見当たらない。 Xはどのように最期を迎えるのだろうか? すぐにゲームオーバーの画面が見られるかどうかは分からないが、マスクの破壊計画が最終段階に入ったことは確かなようだ。それはとても残念なことだ。(forbes.com 原文)』、「Xはどのように最期を迎えるのだろうか? すぐにゲームオーバーの画面が見られるかどうかは分からないが、マスクの破壊計画が最終段階に入ったことは確かなようだ」、悲劇的なのはXの社員なのではないだろうか。
第三に、本年6月22日付けNewsweek日本版「イーロン・マスクはなぜトランプを支持するのか? 問題児2人の不思議な「蜜月関係」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2024/06/post-104889.php
・『<環境技術の旗手だったはずのイーロン・マスク。パリ協定からのアメリカの離脱を受け、一度はトランプと決別したはずだった。そんな二人が今、急速に距離を縮める> ウォール・ストリート・ジャーナル紙は5月末、テスラやスペースXのCEOを務めるイーロン・マスクと、ドナルド・トランプ前米大統領との関係が深まっていると報じた。 2人の親密さは「月に何度も電話で話をする」ほどで、大統領への返り咲きを狙うトランプの選挙運動や、「次期」トランプ政権の下でマスクが手にできるかもしれないビジネスチャンスについて語り合っているという。 再選された暁には政策顧問にならないかとトランプがマスクに打診したともウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている(マスクは否定)。確かに最近のマスクの振る舞いは、甘い汁を吸うためにトランプの歓心を買おうとしている一部の人々とまるで変わらない。 トランプが不倫の口止め料をめぐる裁判で有罪評決を受けた際の、マスクのX(旧ツイッター)への投稿がいい例だ。 セコイア・キャピタル(シリコンバレーの有力ベンチャーキャピタル)の幹部が、評決の直後に30万ドルをトランプ陣営に寄付したことをたたえたり、「(評決は)アメリカの司法システムへの社会の信頼を大きく傷つけた」と主張したり。 右派風刺メディア「バビロン・ビー」がこの評決をネタにした記事へのリンクを投稿すると、爆笑の絵文字と共にリツイートもした。 インターネットで目立つのが大好きで、おまけに世界は自分を中心に回っていると考えがちな2人が手を組んだのは、状況を考えれば当然の成り行きだったのかもしれない』、「インターネットで目立つのが大好きで、おまけに世界は自分を中心に回っていると考えがちな2人が手を組んだのは、状況を考えれば当然の成り行きだったのかもしれない」、なるほど。
・『トランプ不倫裁判の表決を受けてのマスクの投稿 個人としても選挙資金としても喉から手が出るほどカネを欲しているトランプ。あからさまな人種差別や極右的な陰謀論への肩入れがやめられないマスク。 両者の間では、個人的にもビジネス面でも人的ネットワークの重なる部分が広がっている。トランプは大口献金を狙って、有罪評決に反発する富豪たちに擦り寄っているからなおさらだ。 トランプとの関係強化により、マスクの実業家として、そして著名人としてのアイデンティティーの根っこにあったものは行き場を失った。マスクは今後の自分のブランディングや行動をどうしていくかという点で、明らかな転換点に立っている。 マスクが「政治家や企業経営者らに顔が利くテクノロジー業界の超大物」として世界に名をとどろかせるとともに、ベンチャー企業の創業で巨万の富を得た他の人々とは一線を画する存在になったのは、アメリカの産業を気候変動との戦いにおける武器にするという一見不可能な使命に向けて熱意を持って取り組んだ故だった』、「ウォール・ストリート・ジャーナル紙は5月末・・・イーロン・マスクと、ドナルド・トランプ前米大統領との関係が深まっていると報じた。 2人の親密さは「月に何度も電話で話をする」ほどで、大統領への返り咲きを狙うトランプの選挙運動や、「次期」トランプ政権の下でマスクが手にできるかもしれないビジネスチャンスについて語り合っているという。 再選された暁には政策顧問にならないかとトランプがマスクに打診したともウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている(マスクは否定)」、「トランプ」にとっては、政治資金の面でも心強いスポンサーなのだろう。ただ、Xなどメディアに近い会社を保有する者としては、もっと中立性を維持してほしいものだ。
タグ:(その2)(Twitter→Xの変更も失敗を想定?マスクが「9割失敗」と思いながらテスラを起業したワケ、Xを破滅に追いやるイーロン・マスクの「破壊衝動」、イーロン・マスクはなぜトランプを支持するのか? 問題児2人の不思議な「蜜月関係」) イーロン・マスク ダイヤモンド・オンライン ジュリア・ガレフ氏 児島 修氏による「Twitter→Xの変更も失敗を想定?マスクが「9割失敗」と思いながらテスラを起業したワケ」 ジュリア・ガレフ著『マッピング思考 人には見えていないことが見えてくる「メタ論理トレーニング」』(東洋経済新報社) 「マスクのような人は、必ずしも「これは成功する」と思っているから行動するのではない。彼らは「賭ける価値がある」という考えによってモチベーションを高めるのだ。) 誰でもある程度は、目の前の行動を取るかどうかを「賭ける価値があるかどうか」という基準で判断しているものだ・・・この賭けにどれくらいの価値があるのかは、「期待値」を計算することで具体的に知ることができる」、なるほど。 「「“電気自動車はゴルフカートのように格好悪くて、遅くて、退屈なものだ”という人々の誤った認識を変えられると思ったのです」と語っている・・・マスクはテスラのときと同じようにスペースXが成功する確率を1割、失敗する確率を9割と見込んでいた。だが、成功したときに得られる価値は計りしれない。 安く宇宙飛行ができる手段を開発すれば将来的に人類が移り住めるようになるかもしれないし、地球上で起こり得る壊滅的なリスクから人類を守れるかもしれない。 また、仮にスペースXが失敗したとしても、宇宙飛行技術を少しでも進歩させられるのなら、それはまったくの無駄にはならないはずだ。 わずかであれボールを前に動かせるのなら、たとえ僕たちの会社が倒産したとしてもどこかの会社がバトンタッチしてそのボールをさらに前に運んでくれるかもしれない。だとすればなおさら挑戦する価値はある」、その通りだ。 「就職や企業、投資はもちろん、他人を信頼する、難しい頼みごとをする、安全地帯から抜け出してなにかに挑戦する、といったことまで含めれば、賭けの機会は無数にある。 そのなかで、期待値を正しく見極めて賭けをすればするほど、ここの賭けに失敗したとしても、全体としては利益が得られるという確信が持てるようになる」、なるほど。 「マスクは「他人がクレイジーだと思うような会社を恐れずに起業した」と称賛されると、「実は、強い恐怖を感じている」と答えている。 恐怖を感じていないのではなく、失敗の確率とうまく折り合いをつけることで、その恐怖を手なずける術を学んだだけだ、と。 「それが運命だと思えば、気が楽になります。」失敗の確率を納得して受け入れれば、恐怖心は薄れます。スペースXを立ち上げたときも、成功率は1割以下だと思っていました。当然、すべてを失うかもしれないと覚悟のうえで」、なるほど。 Forbes「Xを破滅に追いやるイーロン・マスクの「破壊衝動」」 「イーロン・マスクが先日、Xから広告を引き揚げた企業を「くたばれ」と罵倒したことは、かつてツイッターと呼ばれたプラットフォームの棺桶に最後の釘を打ったようなものだと、筆者は思っている・・・マスクは自分を制御できないのだという結論に達した。彼はトラブルに首を突っ込むのが好きなのだ。首を突っ込んだために、彼はツイッターの買収で440億ドル(約6.5兆円)を失った・・・ マスクはつい最近、会社の倒産をほのめかした。アイザックソンが著書で詳しく説明しているように、マスクは破壊的な衝動を精神の中に抱えている」、天才的な能力を持った半面で、「破壊的な衝動を精神の中に抱えている」とは困ったことだ。 「Xはどのように最期を迎えるのだろうか? すぐにゲームオーバーの画面が見られるかどうかは分からないが、マスクの破壊計画が最終段階に入ったことは確かなようだ」、悲劇的なのはXの社員なのではないだろうか。 Newsweek日本版「イーロン・マスクはなぜトランプを支持するのか? 問題児2人の不思議な「蜜月関係」」 「インターネットで目立つのが大好きで、おまけに世界は自分を中心に回っていると考えがちな2人が手を組んだのは、状況を考えれば当然の成り行きだったのかもしれない」、なるほど。 「ウォール・ストリート・ジャーナル紙は5月末・・・イーロン・マスクと、ドナルド・トランプ前米大統領との関係が深まっていると報じた。 2人の親密さは「月に何度も電話で話をする」ほどで、大統領への返り咲きを狙うトランプの選挙運動や、「次期」トランプ政権の下でマスクが手にできるかもしれないビジネスチャンスについて語り合っているという。 再選された暁には政策顧問にならないかとトランプがマスクに打診したともウォール・ストリート・ジャーナルは伝えている(マスクは否定)」、 「トランプ」にとっては、政治資金の面でも心強いスポンサーなのだろう。
イノベーション(その5)(米倉誠一郎、孫正義シリーズ3題:孫正義は本当に「偉大な経営者」なのか?ビル・ゲイツ 柳井正との決定的な違い イノベーション研究の権威・米倉誠一郎が分析「型破りすぎる破壊と創造」(前編)、孫正義は本当に「偉大な経営者」なのか?なぜ凡人ほど「孫正義」を叩くのか?時代の寵児に向けられたバッシングの正体 イノベーション研究の権威・米倉誠一郎が分析「型破りすぎる破壊と創造」(中編)、ジョブズにあって孫正義にないもの 「歴史に名を残す経営者」の条件とは?(後編)) [イノベーション]
イノベーションについては、昨年7月27日に取上げた。今日は、(その5)(米倉誠一郎、孫正義シリーズ3題:孫正義は本当に「偉大な経営者」なのか?ビル・ゲイツ 柳井正との決定的な違い イノベーション研究の権威・米倉誠一郎が分析「型破りすぎる破壊と創造」(前編)、孫正義は本当に「偉大な経営者」なのか?なぜ凡人ほど「孫正義」を叩くのか?時代の寵児に向けられたバッシングの正体 イノベーション研究の権威・米倉誠一郎が分析「型破りすぎる破壊と創造」(中編)、ジョブズにあって孫正義にないもの 「歴史に名を残す経営者」の条件とは?(後編))である。
先ずは、4月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授・デジタルハリウッド大学院特命教授の米倉誠一郎氏と作家の井上篤夫氏による「孫正義は本当に「偉大な経営者」なのか?ビル・ゲイツ、柳井正との決定的な違い イノベーション研究の権威・米倉誠一郎が分析「型破りすぎる破壊と創造」(前編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/342405
・『想像を絶するスピードとスケールで10兆円企業をつくりあげた経営者から学ぶべきことは多い。孫正義ソフトバンクグループ代表の評伝『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫)の著者井上篤夫氏が孫氏を深く知る人物と対談し、ビジネスパーソンに学びをお届けする連載「ビジネス教養としての孫正義」の第4回。対談相手はイノベーション研究の権威で一橋大学名誉教授の米倉誠一郎氏だ。経営者としての孫正義氏をどう評価するかと尋ねると意外な答えが返ってきた。同じ創業経営者でも、稲盛和夫やスティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツとはまったくタイプが異なるという。「なぜ孫正義は特別なのか」について、名だたる経営者と比較しながら語ってもらった』、興味深そうだ。
・『既存の経営学では評価ができない 井上 米倉教授に最初に伺いたいのが、「孫正義」という人物の評価についてです。孫社長は、自身が人類の歴史に名前を残すという熱い思いを持っています。経営学の観点では、どのように評価されているのでしょうか? 米倉 孫さんの評価は難しいですね。今も昔も、まるで海のものか山のものか、はっきりしない。もちろん、彼は起業家として、いくつもの事業で次々と成功を収めてきました。その点において、僕は彼を本当に魅力的な偉人だと思います。ただ問題は、一つの形容詞で表現しにくいことなのです。ホンダの本田宗一郎、ソニーの井深大、アップルのスティーブ・ジョブズやマイクロソフトのビル・ゲイツのように、「ソフトバンクの孫正義」さんでいいのかということなんです。ソフトバンクはものを創っていませんし。 特に最近では、孫さん自身が起業家や事業家ではなく、ベンチャー企業に資金を提供する「資本家(キャピタリスト)」として見られていることも実像を不明確にしています。日本ではそうでもありませんが、アメリカのビジネススクールなどでは、最も人気のある職業がベンチャーキャピタリストだと言われています。ビジネスを立ち上げることも素晴らしいことですが、資金調達を支援し、その成長を支える喜びもまた重要です。 1996年、僕も日本のスタートアップ企業を支援する活動を始めました。それ以前は、アメリカの東海岸にあるハーバード大学で日本企業の研究をしていたため、正直「西海岸って何?」という感じでした。 一般的に、アメリカの企業では、社長と新入社員の給与に1000倍近い差があり、経営と現場が離れすぎていると言われていました。一方、日本では最大12倍程度の給与差で、経営も現場も一致団結して働くことが重視されていました。だから、当時は「そんな経営と現場が乖離したアメリカ企業に日本企業が負ける訳がない」と信じていました。 しかし、当時の法政大学の清成忠男教授から、「東海岸にいるだけでは何も分からないよ」と指摘され、実際に西海岸のシリコンバレーに行ってみると、まるでバットで後頭部を殴られたような衝撃を受けました。そこでは全く別のゲームが進行していたからです。) この経験から、早く日本にこの変化を持ち込まなければ大変なことになるぞと直感しました。そこで僕は、「ベンチャーおじさん」と称して、ベンチャー企業を支援する活動を始めたという訳です。その当時、ひときわ輝いていたのが孫さんでした。当時、彼は驚くべき先見の明でソフトウエア・コンピューターの流通にいち早く取り組み、インターネットが到来するやその世界に飛び込んでいました。 その点は素晴らしいのですが、孫さんがかつて言っていたように、それは「タイムマシン経営」で、アメリカで起こったことをいち早く日本に持ち帰っただけで、「孫さんはいったい何を生み出したのか?」と考えてしまうのです。 イギリスのボーダフォンの日本法人やアメリカのスプリント・コーポレーション(2020年にTモバイルと合併)を買収した。アーム社の買収や上場なども確かにすごいのですが、それらは孫さんで独自に生み出したものではありません。最近のソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)という10兆円ファンドで明らかになったことは、やはり孫さんの真髄はキャピタリストにあったということではないでしょうか。 SVFにより、孫さんはキャピタリストとして“究極”の地点にたどり着いたと思います。アメリカにも多くの巨大ベンチャーキャピタルがあり、その手元には毎日何十件、何百件のビジネスプランやプロポーザルがあがってきます。そこには今後の技術やビジネスモデルの動向をはじめとして世界の大きな動向が見えてきます。その意味で、SVFのような巨大ファンドを治める孫さんの元にはものすごい情報が集まって来るでしょう。同じように、世界観を共有する人々も集まるようになるでしょう。 この情報と同志が集まれば、世界の大きな動向の中で孫さんは次に何をすべきかが決まって行くのでしょう。これが“究極”という意味です』、「SVFのような巨大ファンドを治める孫さんの元にはものすごい情報が集まって来るでしょう。同じように、世界観を共有する人々も集まるようになるでしょう。 この情報と同志が集まれば、世界の大きな動向の中で孫さんは次に何をすべきかが決まって行くのでしょう」、なるほど。
・『孫正義とバフェット 投資家としての決定的な違い 井上 米倉さんは経営学者ですが、孫さんは経営学の研究対象になり得ますか? 米倉 もちろんなり得ますが、問題はどの分野、どの専攻領域の対象かということです。孫さんは何か物を作ったわけではありません。M&Aを通じた企業成長の分野かもしれないし、ウォーレン・バフェット氏のような投資の分野かもしれません。 しかし、それも少し違うかなとも思います。バフェット氏は純粋な投資家ですので、「今は日本の商社が買いだ」と株価の上下だけで投資先を判断しますが、孫さんが商社に投資することはないでしょう。 孫さんは、技術の中に自らを置く発明家でもあり、パーソナル・エレクトロニクスやインターネットを基点とした情報産業を重視しています。そこにおけるVCの神様なのですかね。) 井上 確かに、孫さんは情報産業で資本家として企業をサポートする立場になると言っていますから、その点は一貫しています。 米倉 バフェット氏のような投資の巨匠は、後世に「投資の神様」として名を残すでしょう。ですから、歴史に名を刻むには、何か特別な要素が必要ですね。その点、孫さんにもビジネスやお金の流れは見えていますが、投資の神様という訳ではありません。実際には、海外での活動が多く、スプリント(2020年にTモバイルと合併)を再建したといっても企業名が残るだけでしょう。 例えば、アメリカのアンドリュー・カーネギー氏は、後年投資家ではありましたが、製鋼所を経営して「鉄鋼王」という異名を残しています。孫さんにも、そういう一つの業界でのキーワードみたいなものが必要でしょうね。その点では、前述したように日本なら本田技研工業の創業者・本田宗一郎さん、ソニーの創業者の一人である井深大さん、アメリカならスティーブ・ジョブズさんやイーロン・マスク氏のような具体的なプロダクトがあって、開発の歴史がある人は研究しやすいですし、孫さんのような無形の仕組みを作り上げた人は研究しづらいです。 ただし、孫さんはテクノロジーに基づいて行動し、先見の明があり、一人ですべて作り上げるのではなく企業買収で時間を短縮するという点では、次世代の経営学の対象としては興味深いと思います。 井上 同じ通信事業に携わった経営者という観点で、京セラ創業者の稲盛和夫さんはどうですか? 米倉 稲盛さんの精神性は、多くの人に好まれていますね。しかし、僕は孫さんや三木谷さんのようにギトギトしている感じの人が好きです(笑)。ユニクロの柳井正さんもすごいですよね。彼はヒートテックなどの新素材を武器にして、ファーストリテイリングを売上高3兆円(2024年8月期予想)まで成長させましたから。この3人に共通するのは、常に一番になるという「絶えざる目的意識」です』、「米倉 稲盛さんの精神性は、多くの人に好まれていますね。しかし、僕は孫さんや三木谷さんのようにギトギトしている感じの人が好きです(笑)。ユニクロの柳井正さんもすごいですよね。彼はヒートテックなどの新素材を武器にして、ファーストリテイリングを売上高3兆円(2024年8月期予想)まで成長させましたから。この3人に共通するのは、常に一番になるという「絶えざる目的意識」です」、なるほど。
次に、4月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授・デジタルハリウッド大学特命教授の米倉誠一郎氏と作家の井上篤夫氏による「孫正義は本当に「偉大な経営者」なのか?なぜ凡人ほど「孫正義」を叩くのか?時代の寵児に向けられたバッシングの正体 イノベーション研究の権威・米倉誠一郎が分析「型破りすぎる破壊と創造」(中編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/342405
・『一代で10兆円企業をつくりあげた経営者から私たちが学ぶべきことは何だろう。イノベーション研究の権威で一橋大学名誉教授の米倉誠一郎氏は、「時代」「努力」「報徳」の3つを挙げた。評伝『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫)の著者井上篤夫氏が孫氏を深く知る人物と対談する連載「ビジネス教養としての孫正義」。第5回では、イーロン・マスクと比較する形で、「孫正義はイノベーターなのか?」を米倉氏に問うた。イノベーション研究の権威は何と回答したのか? その前に本稿は、孫正義氏への度重なる“バッシング”について振り返るところから始まる。 一代で10兆円企業をつくりあげた経営者から私たちが学ぶべきことは何だろう。イノベーション研究の権威で一橋大学名誉教授の米倉誠一郎氏は、「時代」「努力」「報徳」の3つを挙げた。評伝『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫)の著者井上篤夫氏が孫氏を深く知る人物と対談する連載「ビジネス教養としての孫正義」。第5回では、イーロン・マスクと比較する形で、「孫正義はイノベーターなのか?」を米倉氏に問うた。イノベーション研究の権威は何と回答したのか? その前に本稿は、孫正義氏への度重なる“バッシング”について振り返るところから始まる。 一代で10兆円企業をつくりあげた経営者から私たちが学ぶべきことは何だろう。イノベーション研究の権威で一橋大学名誉教授の米倉誠一郎氏は、「時代」「努力」「報徳」の3つを挙げた。評伝『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫)の著者井上篤夫氏が孫氏を深く知る人物と対談する連載「ビジネス教養としての孫正義」。第5回では、イーロン・マスクと比較する形で、「孫正義はイノベーターなのか?」を米倉氏に問うた。イノベーション研究の権威は何と回答したのか? その前に本稿は、孫正義氏への度重なる“バッシング”について振り返るところから始まる』、興味深そうだ。
・『メディアによる孫正義バッシング 井上 孫さんは、若い頃は神童と称賛される一方で、行動する度にバッシングされていました。その様子を、米倉さんはどう見ていましたか? 米倉 新聞や週刊誌の記事には、孫さんに対する悪意が溢れていましたね(笑)。言っていることがあまりに大きいので“ホラ吹き”と揶揄されていました。インターネットの時代が来ると予測し、ヤフーなどに誰よりも早く出資しました。その先見性が認められ、時代の寵児として一躍メディアに持ち上げられると、マスコミの中に「あいつは怪しい」と批判する人がどうしても出てきます。 今でも、その風潮は少なからずあると思います。例えば、楽天モバイルに関しても同じで、実はかなり努力をしていますが、ダイヤモンド社をはじめとするメディアは「もう危ない」「これで命運尽きた」という記事を書きがちです。しかし、内情をよくよく聞いてみると、ちょっと借金額は大きいとはいえ想定内のようです。 ただ、そういうバッシングがあるからこそ、起業家が反骨精神で成功する側面もあるでしょう。その中でも、孫さんはベンチャー企業の代表的存在としてバッシングに立ち向かってきました。その姿に触発されて僕も同じように体を張って「ベンチャーという新しい潮流が大事だ!」と訴え続けようと決意したのです。 井上 あとは、未来を見通してきた孫さんに対して、マスコミや他の企業の人も含めて「この人は一体何なんだ?」という、一種の“恐れ”を抱いていたのではないかと思います』、「新聞や週刊誌の記事には、孫さんに対する悪意が溢れていましたね(笑)。言っていることがあまりに大きいので“ホラ吹き”と揶揄されていました。インターネットの時代が来ると予測し、ヤフーなどに誰よりも早く出資しました。その先見性が認められ、時代の寵児として一躍メディアに持ち上げられると、マスコミの中に「あいつは怪しい」と批判する人がどうしても出てきます・・・そういうバッシングがあるからこそ、起業家が反骨精神で成功する側面もあるでしょう。その中でも、孫さんはベンチャー企業の代表的存在としてバッシングに立ち向かってきました。その姿に触発されて僕も同じように体を張って「ベンチャーという新しい潮流が大事だ!」と訴え続けようと決意したのです』、なるほど。
・『メディアによる孫正義バッシング 井上 孫さんは、若い頃は神童と称賛される一方で、行動する度にバッシングされていました。その様子を、米倉さんはどう見ていましたか? 米倉 新聞や週刊誌の記事には、孫さんに対する悪意が溢れていましたね(笑)。言っていることがあまりに大きいので“ホラ吹き”と揶揄されていました。インターネットの時代が来ると予測し、ヤフーなどに誰よりも早く出資しました。その先見性が認められ、時代の寵児として一躍メディアに持ち上げられると、マスコミの中に「あいつは怪しい」と批判する人がどうしても出てきます。 今でも、その風潮は少なからずあると思います。例えば、楽天モバイルに関しても同じで、実はかなり努力をしていますが、ダイヤモンド社をはじめとするメディアは「もう危ない」「これで命運尽きた」という記事を書きがちです。しかし、内情をよくよく聞いてみると、ちょっと借金額は大きいとはいえ想定内のようです。 ただ、そういうバッシングがあるからこそ、起業家が反骨精神で成功する側面もあるでしょう。その中でも、孫さんはベンチャー企業の代表的存在としてバッシングに立ち向かってきました。その姿に触発されて僕も同じように体を張って「ベンチャーという新しい潮流が大事だ!」と訴え続けようと決意したのです。 井上 あとは、未来を見通してきた孫さんに対して、マスコミや他の企業の人も含めて「この人は一体何なんだ?」という、一種の“恐れ”を抱いていたのではないかと思います。 米倉 そうですね。ただ、やはり見たことのないものに対する恐怖心は、まだ世間に残っていると思います。 僕は『クール・ランニング』(1993年)という映画が好きです。ジャマイカの短距離選手たちが、夏季オリンピックの代表選考会で落選して出場機会を失い、ひょんなことからボブスレー選手となり、冬季オリンピックを席巻するというストーリーです。その映画でも、主人公たちが「夏のスポーツのやつらが何にも分かっていないのに」といったバッシングを受ける訳です。 そのとき、主人公チームの1人がバッシングに対して「人間は自分と違う人間を怖がっているからだ」といったセリフを言っていました。要するに、バッシングは違うものに対する恐怖心もあるし、それ以上に自分を守るための術なのかなと思っています』、「そういうバッシングがあるからこそ、起業家が反骨精神で成功する側面もあるでしょう。その中でも、孫さんはベンチャー企業の代表的存在としてバッシングに立ち向かってきました。その姿に触発されて僕も同じように体を張って「ベンチャーという新しい潮流が大事だ!」と訴え続けようと決意したのです」、なるほど。
・『孫正義から学ぶべき3つのキーワード 「時代」「努力」「報徳」 井上 たしかに、孫さんは他人とは違う人間であることを誇りに思っている部分もありますから。1兆円、2兆円を動かす真似をするのは難しいとしても、経営学という観点で孫さんから何か学ぶべきことはありますか?) 米倉 それは3つあります。1つ目は、時代の大きな動きを理解することです。例えば、私が学生によく話すのは、川を下るように進むのと、川を上るように進むのでは、同じ努力をしても結果が全然違うということです。 川を上る場合、他の人の3倍の努力しても、目的地まで半分の地点にもたどり着けない。一方、川を下るようにすれば、他の人の半分の努力で目的地に到達できる可能性があります。つまり、時代の流れを理解して、それに合わせて行動することが大切なのです。 2つ目は、その流れの中で短期的な目標を決めると、それに向けて徹底的な努力をするところです。孫さんを完璧に真似するのは難しいかもしれませんが、例えば「3年後に公認会計士になる!」などとしっかり目標を立てて行動すれば、実現する可能性は十分あります。目標達成に向けて自らの資源を管理して集中させることで、着実にステップアップしていくところは真似してほしいです。 3つ目は、やはり人の集め方・使い方、そして人の力を引き出すのが上手いのではないでしょうか。また、相当な人たらしでもあるのではないでしょうか(笑)。孫さんの周りには、井上さんのような人はもちろん、様々な人が彼を応援しようと集まっています。しかも、そうした恩人に深く感謝し報いようとしていると聞きます。 ただし、孫さんをあまり知らない人には、近寄りがたい印象があるかもしれません。彼の行動は突飛だし、他人のことを全く気にしないところがありますから。まあ変人、今の言葉で言えば相当なニューロダイバージェントな人ですよ』、「経営学という観点で孫さんから何か学ぶべきことはありますか?) 米倉 それは3つあります。1つ目は、時代の大きな動きを理解することです・・・2つ目は、その流れの中で短期的な目標を決めると、それに向けて徹底的な努力をするところです・・・3つ目は、やはり人の集め方・使い方、そして人の力を引き出すのが上手いのではないでしょうか。また、相当な人たらしでもあるのではないでしょうか」、「相当な人たらし」であることは確かだ。
・『孫正義はイノベーターなのか? 米倉 僕は以前、孫さんとゴルフをしたことがあります。ゴルフは一応紳士のスポーツだから、マナーには厳しいわけです。しかし、孫さんは自分のパターに集中すると、グリーン上で他人のラインを踏むわ、勝手に歩き回るわでマナー違反が目立つ。 「集中してしまうとそのことしか考えられない人なんだな」と思いました。要するに、すごい集中力の持ち主ということですが、万人とくにすべての普通の人に好かれるわけではないということです。 それを「型破り」だと捉えて「この人は面白い!」と感じる人もいるのでしょう。彼は、自分と志が同じで共感してくれる人を徹底的に信じ、そういう人たちが自分を助けてくれる関係をうまく築いているように思います。このような同志だけを集めてしまう強烈な「自己の確立」というアプローチは、事を成し遂げたいビジネスパーソンの参考になるでしょう。 井上 テスラのイーロン・マスク氏のように、何かモノを作って世界を変革する人を「イノベーター」だと定義した場合、孫さんはイノベーターと言えるのでしょうか) 米倉 もちろん、孫さんはイノベーターだと思います。僕は1997年、仲間と共に一橋大学に「イノベーション研究センター」を立ち上げ、99年からセンター長を務めましたが、その前身は「産業経営研究所」という名前でした。 当時はイノベーションという言葉があまり知られておらず、センター設立趣意書を出しに文部省を訪れたときも、当時の担当者から「カタカナは避けてください。技術革新研究所にしましょう」と言われました。当時もイノベーションとは技術革新と訳されていて、技術者やモノを作る人の代名詞みたいに思われていたのです。 イノベーションは単に技術革新に限りません。異なる要素を新しく組み合わせることでもあり、流通の仕組みを変えることもイノベーションです。毀誉褒貶はありますが、総合スーパーのダイエーを創業した中内㓛さんも、宅急便を日本に持ち込んだ小倉昌男さんもその意味では明らかにイノベーターと言えます。 孫さんはモノを作っておらず、ソフトウエアのプログラミングもしていないですが、ソフトバンク・グループというイノベーティブな企業集団を創り上げました。日本人の価値観や研究視点から考えると、典型的なイノベーターとしては描きにくいかもしれません。 しかし、日本にPC文化やインターネットを根付かせ、世界でもM&Aを通じて新たな価値を創造してきたという点で、確かにイノベーションを起こした人物だと思います』、「孫さんはモノを作っておらず、ソフトウエアのプログラミングもしていないですが、ソフトバンク・グループというイノベーティブな企業集団を創り上げました。日本人の価値観や研究視点から考えると、典型的なイノベーターとしては描きにくいかもしれません。 しかし、日本にPC文化やインターネットを根付かせ、世界でもM&Aを通じて新たな価値を創造してきたという点で、確かにイノベーションを起こした人物だと思います」、やはり「典型的なイノベーターとしては描きにくいかもしれません」、ようだ。
第三に、4月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授・デジタルハリウッド大学院特命教授の米倉誠一郎氏と作家の井上篤夫氏による「ジョブズにあって孫正義にないもの、「歴史に名を残す経営者」の条件とは?(後編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/342781
・『想像を絶するスピードとスケールで10兆円企業をつくりあげた経営者から学ぶべきことは多い。孫正義ソフトバンクグループ代表の評伝『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫)の著者井上篤夫氏が孫氏を深く知る人物と対談し、ビジネスパーソンに学びをお届けする連載「ビジネス教養としての孫正義」の第6回。前回に引き続き、対談相手はイノベーション研究の権威で一橋大学名誉教授の米倉誠一郎氏。日本史におけるイノベーターを研究してきた米倉氏が「孫さんに近いと思う歴史上の偉人」として“幕末の志士”と“三井の大番頭”の2人を挙げてくれた。さらに、語り継がれる経営者としてスティーブ・ジョブズを引き合いに出し、孫正義氏に“足りないもの”を指摘した』、興味深そうだ。
・『“幕末の孫正義” 三野村利左衛門とは? 井上 米倉先生の著書『イノベーターたちの日本史』(東洋経済新報社)をとても興味深く拝読しました。その中で、岩崎弥太郎や渋沢栄一など、日本の経営者がイノベーターとして紹介されていましたが、孫さんは誰に一番近いと思いますか? 米倉 明治という時代を演出し、薩長を融合したという点で考えると、この本には出てきませんがやはり坂本龍馬が思い浮かびますね。 龍馬はもともと、単なる土佐藩の下級武士でしたが、そのような人物が幕末の歴史を大きく転換させた。彼はその間一貫して政治よりも貿易というビジネスに興味があった。まさに、「世界を見ちょった」。その生き様が、日本に戻って創業したソフトバンクの小さな事務所で、しかもアルバイト2人の前に立って「1兆円企業になる」と高らかに宣言し、やがて日本のインターネットや携帯市場のゲームチェンジャーとして業界地図を塗り替えた孫さんと重なります。 次に、幕末維新期に「三井の大番頭」として活躍した三野村利左衛門を思い浮かべます。維新後の三井財閥の基礎を作った人です。 1673(延宝元)年に三井高利が創業した越後屋から始まり、呉服屋として大成功を収めた三井家ですが、200年もたって家督を維持する「守りの経営」になっていた。ところが、幕末の大変革に直面した際、保守的になってしまった三井家だけではこの難局は乗り切れないと判断し、新興商人の三野村に全権を委任して「攻めの経営」に転じました。 幕末・維新という動乱の中で、三野村は祖業越後屋を守りつつ、三井物産や三井銀行など新しい事業を始め、三井家をさらに発展させた。彼は素晴らしい起業家であり、イノベーターであると言えます。しかし、彼は仕組みとそれを遂行できる若い人材(渋沢栄一、井上馨、益田孝、中上川彦次郎など)を登用した。孫さんも、そういう人物に匹敵する存在だと思います。 井上 孫さんが歴史に名を残すような人物になるためには、どんな要素が必要でしょうか?) 米倉 坂本龍馬が「幕末の志士」と称されるように、その人物を簡潔に表すワンフレーズが必要ですね。“孫正義”の三文字でも世界に通じますが、教科書にも載るような経営者となるためには「情報革命の志士」のような彼を象徴するフレーズが必要でしょう。 井上 確かに、孫さんは情報革命で人々の幸せを追求すると公言していますので、情報革命というのは重要なキーワードです。彼の取り組み方は志士であり、イノベーターだと思います』、「孫さんは情報革命で人々の幸せを追求すると公言していますので、情報革命というのは重要なキーワードです。彼の取り組み方は志士であり、イノベーターだと思います」、なるほど。
・『「ローリスク・ハイリターン」がイノベーションの土台となる 米倉 ただし、同世代の中で考えると、スティーブ・ジョブズ氏にはアップルのiPhoneやMac、ビル・ゲイツ氏ならマイクロソフトのWindowsなど、革新的なモノがあって分かりやすい。一方で孫さんも、彼らと同じぐらいの影響力はあるかもしれませんが、彼自身が生み出した具体的な製品があるともっといいなと思います。 井上 その観点から見ると、孫さんはモノが何もない無形の分野で新しい何かを生み出してきたと言えるのではないでしょうか? 米倉 シリコンバレーの範疇にないものを生み出してきたという点では、孫さんの取り組みは一種の「Disruption(ディスラプション)」、つまり既存のものを破壊してきたと言えるかもしれません。 井上 破壊とは、新しいものを再構築するという意味もありますよね。実は、私の著書『志高く 孫正義正伝』の英語版のタイトルが『Aiming High: Masayoshi Son, SoftBank, and Disrupting Silicon Valley』(Hodder& Stoughton,Ltd)で「シリコンバレーの破壊者」というサブタイトルなんですよ。これはイギリスの出版社が付けたものですが、そもそも米倉さんは、シリコンバレーに対してどんな評価をされていますか? 米倉 僕が理解したのは、シリコンバレーは単なる地理的な場所ではなく、21世紀のビジネスのあり方やエコシステムの総称だということでした。) 米倉 次はどんなビジネスがヒットするか分からないから、とにかく若い人たちに(心持ちを含めて)数を打ってもらって確率を上げるしかないという前提のエコシステムだということです。 まず、数を打つ起業家には低いマーケット・エントリー・リスク、つまり参入障壁を下げる豊富なベンチャーキャピタル資金(返済義務のある銀行融資はリスクが高い)を用意し、成功した起業家と投資家にはその努力と投資に対する大きなリターンを実現する上場市場(ナスダック)やさまざまなイグジットが整備されています。 例えば、宝くじを買う人も多いでしょうが、大当たりする確率はかなり低い。しかし、みんなが買う理由は、1本300円という少額の出費(ローエントリー・リスク)で、当たれば1億円というハイ・リターンが得られるからです。もし宝くじが1本30万円と高額なら、誰も買わないでしょう。 シリコンバレーの素晴らしい点は、ベンチャーキャピタリストがこのような才能を見出す場が豊富にあるところです。銀行の融資と異なり、ベンチャーキャピタルは起業家と共にリスクを共有し、もし事業が失敗しても担保を取ることはありません。一緒に責任を負い、失敗してもすぐに次の挑戦を共にする関係です。 日本では、倒産した後の再起は難しいですが、シリコンバレーでは失敗は学びの機会であり、財産になるという発想で、仮に倒産してもどんどんチャンスが与えられます。 この考え方に基づいて、シリコンバレーではハイリターンが実現できる透明性と流通量の多い「ナスダック」という上場市場が整備され、ハイテク株やIT関連企業向けの上場が促進されました。これがとんでもない価値を付けました。上場しやすいマーケットの誕生により、積極的にチャレンジする優秀な人々がシリコンバレーに集結し、勝率がどんどん上がっていったのです。 シリコンバレーの本質は、いわゆる金融的なリスクを取らずに高いリターンを得られる環境で、優秀な人材が集まることです。日本でも新興市場は作られましたが、ナスダックほどの規模やリターン、流通規模は見られませんでした。こういうシステムがアメリカで先に確立されてしまったため、日本は太刀打ちできないなと感じました』、「シリコンバレーではハイリターンが実現できる透明性と流通量の多い「ナスダック」という上場市場が整備され、ハイテク株やIT関連企業向けの上場が促進されました。これがとんでもない価値を付けました。上場しやすいマーケットの誕生により、積極的にチャレンジする優秀な人々がシリコンバレーに集結し、勝率がどんどん上がっていったのです。 シリコンバレーの本質は、いわゆる金融的なリスクを取らずに高いリターンを得られる環境で、優秀な人材が集まることです。日本でも新興市場は作られましたが、ナスダックほどの規模やリターン、流通規模は見られませんでした。こういうシステムがアメリカで先に確立されてしまったため、日本は太刀打ちできないなと感じました」、なるほど。
・『ジョブズにあって孫正義にないもの 井上 最後になりますが、孫さんはいつも「自分はこのままでいいのか?」と自問自答しています。もし米倉さんから孫さんに何か言葉をかけるとしたら、どんな言葉をかけますか?) 米倉 孫さんは、時代の流れを読み、努力をする能力が本当にすごい。これからも色々な人を巻き込みながら、同志的結合を広げていくでしょう。ただ、私が古い考え方からなのかもしれませんが、何か有形の成果が欲しいと感じます。 スティーブ・ジョブズ氏は永遠に名を残すでしょう。iPhoneやMacを生み出し、その上にiTunesのようなプラットフォームまで構築したのですから。彼はエンジニアというよりも、ある種の“アーキテクト(設計者)”として優れていると思います。 一方、孫さんは様々な改革を進めていますが、ある意味でパイオニアの部分が足りないのかもしれません。彼が先駆的に切り拓いた新たな分野はあるのかと考えても、ぱっと思い浮かばないですから。 もしかしたら、「ペッパーくん」がその最初の成果物だったのかもしれません。単なるコミュニケーションツールではなく、ルンバのような自動掃除機能などを搭載し、世界中の家庭でペッパーくんが置かれるようになる。そうして日本発のサービスロボットという概念を世界に広められれば、孫さんは「サービスロボットの生みの親」として歴史に名を残していたかもしれません。 井上 孫さんは、人類の未来をデザインするアーキテクトになりたいと考えていて、無形のサービスを通じて、新たな価値を設計しようとしています。 米倉 なるほど、「無形のアーキテクト」として歴史に残せたらすごいですね。まあ、有形であれ、無形であれ、孫正義という名前の前に具体的かつ代表的なワンフレーズが欲しいですね』、「孫さんは様々な改革を進めていますが、ある意味でパイオニアの部分が足りないのかもしれません。彼が先駆的に切り拓いた新たな分野はあるのかと考えても、ぱっと思い浮かばないですから。 もしかしたら、「ペッパーくん」がその最初の成果物だったのかもしれません。単なるコミュニケーションツールではなく、ルンバのような自動掃除機能などを搭載し、世界中の家庭でペッパーくんが置かれるようになる。そうして日本発のサービスロボットという概念を世界に広められれば、孫さんは「サービスロボットの生みの親」として歴史に名を残していたかもしれません」、それにしてもせいぜい「ペッパーくん」では、寂しい印象だ。今後、の展開を期待するしかないのかも知れない。
先ずは、4月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授・デジタルハリウッド大学院特命教授の米倉誠一郎氏と作家の井上篤夫氏による「孫正義は本当に「偉大な経営者」なのか?ビル・ゲイツ、柳井正との決定的な違い イノベーション研究の権威・米倉誠一郎が分析「型破りすぎる破壊と創造」(前編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/342405
・『想像を絶するスピードとスケールで10兆円企業をつくりあげた経営者から学ぶべきことは多い。孫正義ソフトバンクグループ代表の評伝『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫)の著者井上篤夫氏が孫氏を深く知る人物と対談し、ビジネスパーソンに学びをお届けする連載「ビジネス教養としての孫正義」の第4回。対談相手はイノベーション研究の権威で一橋大学名誉教授の米倉誠一郎氏だ。経営者としての孫正義氏をどう評価するかと尋ねると意外な答えが返ってきた。同じ創業経営者でも、稲盛和夫やスティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツとはまったくタイプが異なるという。「なぜ孫正義は特別なのか」について、名だたる経営者と比較しながら語ってもらった』、興味深そうだ。
・『既存の経営学では評価ができない 井上 米倉教授に最初に伺いたいのが、「孫正義」という人物の評価についてです。孫社長は、自身が人類の歴史に名前を残すという熱い思いを持っています。経営学の観点では、どのように評価されているのでしょうか? 米倉 孫さんの評価は難しいですね。今も昔も、まるで海のものか山のものか、はっきりしない。もちろん、彼は起業家として、いくつもの事業で次々と成功を収めてきました。その点において、僕は彼を本当に魅力的な偉人だと思います。ただ問題は、一つの形容詞で表現しにくいことなのです。ホンダの本田宗一郎、ソニーの井深大、アップルのスティーブ・ジョブズやマイクロソフトのビル・ゲイツのように、「ソフトバンクの孫正義」さんでいいのかということなんです。ソフトバンクはものを創っていませんし。 特に最近では、孫さん自身が起業家や事業家ではなく、ベンチャー企業に資金を提供する「資本家(キャピタリスト)」として見られていることも実像を不明確にしています。日本ではそうでもありませんが、アメリカのビジネススクールなどでは、最も人気のある職業がベンチャーキャピタリストだと言われています。ビジネスを立ち上げることも素晴らしいことですが、資金調達を支援し、その成長を支える喜びもまた重要です。 1996年、僕も日本のスタートアップ企業を支援する活動を始めました。それ以前は、アメリカの東海岸にあるハーバード大学で日本企業の研究をしていたため、正直「西海岸って何?」という感じでした。 一般的に、アメリカの企業では、社長と新入社員の給与に1000倍近い差があり、経営と現場が離れすぎていると言われていました。一方、日本では最大12倍程度の給与差で、経営も現場も一致団結して働くことが重視されていました。だから、当時は「そんな経営と現場が乖離したアメリカ企業に日本企業が負ける訳がない」と信じていました。 しかし、当時の法政大学の清成忠男教授から、「東海岸にいるだけでは何も分からないよ」と指摘され、実際に西海岸のシリコンバレーに行ってみると、まるでバットで後頭部を殴られたような衝撃を受けました。そこでは全く別のゲームが進行していたからです。) この経験から、早く日本にこの変化を持ち込まなければ大変なことになるぞと直感しました。そこで僕は、「ベンチャーおじさん」と称して、ベンチャー企業を支援する活動を始めたという訳です。その当時、ひときわ輝いていたのが孫さんでした。当時、彼は驚くべき先見の明でソフトウエア・コンピューターの流通にいち早く取り組み、インターネットが到来するやその世界に飛び込んでいました。 その点は素晴らしいのですが、孫さんがかつて言っていたように、それは「タイムマシン経営」で、アメリカで起こったことをいち早く日本に持ち帰っただけで、「孫さんはいったい何を生み出したのか?」と考えてしまうのです。 イギリスのボーダフォンの日本法人やアメリカのスプリント・コーポレーション(2020年にTモバイルと合併)を買収した。アーム社の買収や上場なども確かにすごいのですが、それらは孫さんで独自に生み出したものではありません。最近のソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)という10兆円ファンドで明らかになったことは、やはり孫さんの真髄はキャピタリストにあったということではないでしょうか。 SVFにより、孫さんはキャピタリストとして“究極”の地点にたどり着いたと思います。アメリカにも多くの巨大ベンチャーキャピタルがあり、その手元には毎日何十件、何百件のビジネスプランやプロポーザルがあがってきます。そこには今後の技術やビジネスモデルの動向をはじめとして世界の大きな動向が見えてきます。その意味で、SVFのような巨大ファンドを治める孫さんの元にはものすごい情報が集まって来るでしょう。同じように、世界観を共有する人々も集まるようになるでしょう。 この情報と同志が集まれば、世界の大きな動向の中で孫さんは次に何をすべきかが決まって行くのでしょう。これが“究極”という意味です』、「SVFのような巨大ファンドを治める孫さんの元にはものすごい情報が集まって来るでしょう。同じように、世界観を共有する人々も集まるようになるでしょう。 この情報と同志が集まれば、世界の大きな動向の中で孫さんは次に何をすべきかが決まって行くのでしょう」、なるほど。
・『孫正義とバフェット 投資家としての決定的な違い 井上 米倉さんは経営学者ですが、孫さんは経営学の研究対象になり得ますか? 米倉 もちろんなり得ますが、問題はどの分野、どの専攻領域の対象かということです。孫さんは何か物を作ったわけではありません。M&Aを通じた企業成長の分野かもしれないし、ウォーレン・バフェット氏のような投資の分野かもしれません。 しかし、それも少し違うかなとも思います。バフェット氏は純粋な投資家ですので、「今は日本の商社が買いだ」と株価の上下だけで投資先を判断しますが、孫さんが商社に投資することはないでしょう。 孫さんは、技術の中に自らを置く発明家でもあり、パーソナル・エレクトロニクスやインターネットを基点とした情報産業を重視しています。そこにおけるVCの神様なのですかね。) 井上 確かに、孫さんは情報産業で資本家として企業をサポートする立場になると言っていますから、その点は一貫しています。 米倉 バフェット氏のような投資の巨匠は、後世に「投資の神様」として名を残すでしょう。ですから、歴史に名を刻むには、何か特別な要素が必要ですね。その点、孫さんにもビジネスやお金の流れは見えていますが、投資の神様という訳ではありません。実際には、海外での活動が多く、スプリント(2020年にTモバイルと合併)を再建したといっても企業名が残るだけでしょう。 例えば、アメリカのアンドリュー・カーネギー氏は、後年投資家ではありましたが、製鋼所を経営して「鉄鋼王」という異名を残しています。孫さんにも、そういう一つの業界でのキーワードみたいなものが必要でしょうね。その点では、前述したように日本なら本田技研工業の創業者・本田宗一郎さん、ソニーの創業者の一人である井深大さん、アメリカならスティーブ・ジョブズさんやイーロン・マスク氏のような具体的なプロダクトがあって、開発の歴史がある人は研究しやすいですし、孫さんのような無形の仕組みを作り上げた人は研究しづらいです。 ただし、孫さんはテクノロジーに基づいて行動し、先見の明があり、一人ですべて作り上げるのではなく企業買収で時間を短縮するという点では、次世代の経営学の対象としては興味深いと思います。 井上 同じ通信事業に携わった経営者という観点で、京セラ創業者の稲盛和夫さんはどうですか? 米倉 稲盛さんの精神性は、多くの人に好まれていますね。しかし、僕は孫さんや三木谷さんのようにギトギトしている感じの人が好きです(笑)。ユニクロの柳井正さんもすごいですよね。彼はヒートテックなどの新素材を武器にして、ファーストリテイリングを売上高3兆円(2024年8月期予想)まで成長させましたから。この3人に共通するのは、常に一番になるという「絶えざる目的意識」です』、「米倉 稲盛さんの精神性は、多くの人に好まれていますね。しかし、僕は孫さんや三木谷さんのようにギトギトしている感じの人が好きです(笑)。ユニクロの柳井正さんもすごいですよね。彼はヒートテックなどの新素材を武器にして、ファーストリテイリングを売上高3兆円(2024年8月期予想)まで成長させましたから。この3人に共通するのは、常に一番になるという「絶えざる目的意識」です」、なるほど。
次に、4月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授・デジタルハリウッド大学特命教授の米倉誠一郎氏と作家の井上篤夫氏による「孫正義は本当に「偉大な経営者」なのか?なぜ凡人ほど「孫正義」を叩くのか?時代の寵児に向けられたバッシングの正体 イノベーション研究の権威・米倉誠一郎が分析「型破りすぎる破壊と創造」(中編)」を紹介しよう。
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・『一代で10兆円企業をつくりあげた経営者から私たちが学ぶべきことは何だろう。イノベーション研究の権威で一橋大学名誉教授の米倉誠一郎氏は、「時代」「努力」「報徳」の3つを挙げた。評伝『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫)の著者井上篤夫氏が孫氏を深く知る人物と対談する連載「ビジネス教養としての孫正義」。第5回では、イーロン・マスクと比較する形で、「孫正義はイノベーターなのか?」を米倉氏に問うた。イノベーション研究の権威は何と回答したのか? その前に本稿は、孫正義氏への度重なる“バッシング”について振り返るところから始まる。 一代で10兆円企業をつくりあげた経営者から私たちが学ぶべきことは何だろう。イノベーション研究の権威で一橋大学名誉教授の米倉誠一郎氏は、「時代」「努力」「報徳」の3つを挙げた。評伝『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫)の著者井上篤夫氏が孫氏を深く知る人物と対談する連載「ビジネス教養としての孫正義」。第5回では、イーロン・マスクと比較する形で、「孫正義はイノベーターなのか?」を米倉氏に問うた。イノベーション研究の権威は何と回答したのか? その前に本稿は、孫正義氏への度重なる“バッシング”について振り返るところから始まる。 一代で10兆円企業をつくりあげた経営者から私たちが学ぶべきことは何だろう。イノベーション研究の権威で一橋大学名誉教授の米倉誠一郎氏は、「時代」「努力」「報徳」の3つを挙げた。評伝『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫)の著者井上篤夫氏が孫氏を深く知る人物と対談する連載「ビジネス教養としての孫正義」。第5回では、イーロン・マスクと比較する形で、「孫正義はイノベーターなのか?」を米倉氏に問うた。イノベーション研究の権威は何と回答したのか? その前に本稿は、孫正義氏への度重なる“バッシング”について振り返るところから始まる』、興味深そうだ。
・『メディアによる孫正義バッシング 井上 孫さんは、若い頃は神童と称賛される一方で、行動する度にバッシングされていました。その様子を、米倉さんはどう見ていましたか? 米倉 新聞や週刊誌の記事には、孫さんに対する悪意が溢れていましたね(笑)。言っていることがあまりに大きいので“ホラ吹き”と揶揄されていました。インターネットの時代が来ると予測し、ヤフーなどに誰よりも早く出資しました。その先見性が認められ、時代の寵児として一躍メディアに持ち上げられると、マスコミの中に「あいつは怪しい」と批判する人がどうしても出てきます。 今でも、その風潮は少なからずあると思います。例えば、楽天モバイルに関しても同じで、実はかなり努力をしていますが、ダイヤモンド社をはじめとするメディアは「もう危ない」「これで命運尽きた」という記事を書きがちです。しかし、内情をよくよく聞いてみると、ちょっと借金額は大きいとはいえ想定内のようです。 ただ、そういうバッシングがあるからこそ、起業家が反骨精神で成功する側面もあるでしょう。その中でも、孫さんはベンチャー企業の代表的存在としてバッシングに立ち向かってきました。その姿に触発されて僕も同じように体を張って「ベンチャーという新しい潮流が大事だ!」と訴え続けようと決意したのです。 井上 あとは、未来を見通してきた孫さんに対して、マスコミや他の企業の人も含めて「この人は一体何なんだ?」という、一種の“恐れ”を抱いていたのではないかと思います』、「新聞や週刊誌の記事には、孫さんに対する悪意が溢れていましたね(笑)。言っていることがあまりに大きいので“ホラ吹き”と揶揄されていました。インターネットの時代が来ると予測し、ヤフーなどに誰よりも早く出資しました。その先見性が認められ、時代の寵児として一躍メディアに持ち上げられると、マスコミの中に「あいつは怪しい」と批判する人がどうしても出てきます・・・そういうバッシングがあるからこそ、起業家が反骨精神で成功する側面もあるでしょう。その中でも、孫さんはベンチャー企業の代表的存在としてバッシングに立ち向かってきました。その姿に触発されて僕も同じように体を張って「ベンチャーという新しい潮流が大事だ!」と訴え続けようと決意したのです』、なるほど。
・『メディアによる孫正義バッシング 井上 孫さんは、若い頃は神童と称賛される一方で、行動する度にバッシングされていました。その様子を、米倉さんはどう見ていましたか? 米倉 新聞や週刊誌の記事には、孫さんに対する悪意が溢れていましたね(笑)。言っていることがあまりに大きいので“ホラ吹き”と揶揄されていました。インターネットの時代が来ると予測し、ヤフーなどに誰よりも早く出資しました。その先見性が認められ、時代の寵児として一躍メディアに持ち上げられると、マスコミの中に「あいつは怪しい」と批判する人がどうしても出てきます。 今でも、その風潮は少なからずあると思います。例えば、楽天モバイルに関しても同じで、実はかなり努力をしていますが、ダイヤモンド社をはじめとするメディアは「もう危ない」「これで命運尽きた」という記事を書きがちです。しかし、内情をよくよく聞いてみると、ちょっと借金額は大きいとはいえ想定内のようです。 ただ、そういうバッシングがあるからこそ、起業家が反骨精神で成功する側面もあるでしょう。その中でも、孫さんはベンチャー企業の代表的存在としてバッシングに立ち向かってきました。その姿に触発されて僕も同じように体を張って「ベンチャーという新しい潮流が大事だ!」と訴え続けようと決意したのです。 井上 あとは、未来を見通してきた孫さんに対して、マスコミや他の企業の人も含めて「この人は一体何なんだ?」という、一種の“恐れ”を抱いていたのではないかと思います。 米倉 そうですね。ただ、やはり見たことのないものに対する恐怖心は、まだ世間に残っていると思います。 僕は『クール・ランニング』(1993年)という映画が好きです。ジャマイカの短距離選手たちが、夏季オリンピックの代表選考会で落選して出場機会を失い、ひょんなことからボブスレー選手となり、冬季オリンピックを席巻するというストーリーです。その映画でも、主人公たちが「夏のスポーツのやつらが何にも分かっていないのに」といったバッシングを受ける訳です。 そのとき、主人公チームの1人がバッシングに対して「人間は自分と違う人間を怖がっているからだ」といったセリフを言っていました。要するに、バッシングは違うものに対する恐怖心もあるし、それ以上に自分を守るための術なのかなと思っています』、「そういうバッシングがあるからこそ、起業家が反骨精神で成功する側面もあるでしょう。その中でも、孫さんはベンチャー企業の代表的存在としてバッシングに立ち向かってきました。その姿に触発されて僕も同じように体を張って「ベンチャーという新しい潮流が大事だ!」と訴え続けようと決意したのです」、なるほど。
・『孫正義から学ぶべき3つのキーワード 「時代」「努力」「報徳」 井上 たしかに、孫さんは他人とは違う人間であることを誇りに思っている部分もありますから。1兆円、2兆円を動かす真似をするのは難しいとしても、経営学という観点で孫さんから何か学ぶべきことはありますか?) 米倉 それは3つあります。1つ目は、時代の大きな動きを理解することです。例えば、私が学生によく話すのは、川を下るように進むのと、川を上るように進むのでは、同じ努力をしても結果が全然違うということです。 川を上る場合、他の人の3倍の努力しても、目的地まで半分の地点にもたどり着けない。一方、川を下るようにすれば、他の人の半分の努力で目的地に到達できる可能性があります。つまり、時代の流れを理解して、それに合わせて行動することが大切なのです。 2つ目は、その流れの中で短期的な目標を決めると、それに向けて徹底的な努力をするところです。孫さんを完璧に真似するのは難しいかもしれませんが、例えば「3年後に公認会計士になる!」などとしっかり目標を立てて行動すれば、実現する可能性は十分あります。目標達成に向けて自らの資源を管理して集中させることで、着実にステップアップしていくところは真似してほしいです。 3つ目は、やはり人の集め方・使い方、そして人の力を引き出すのが上手いのではないでしょうか。また、相当な人たらしでもあるのではないでしょうか(笑)。孫さんの周りには、井上さんのような人はもちろん、様々な人が彼を応援しようと集まっています。しかも、そうした恩人に深く感謝し報いようとしていると聞きます。 ただし、孫さんをあまり知らない人には、近寄りがたい印象があるかもしれません。彼の行動は突飛だし、他人のことを全く気にしないところがありますから。まあ変人、今の言葉で言えば相当なニューロダイバージェントな人ですよ』、「経営学という観点で孫さんから何か学ぶべきことはありますか?) 米倉 それは3つあります。1つ目は、時代の大きな動きを理解することです・・・2つ目は、その流れの中で短期的な目標を決めると、それに向けて徹底的な努力をするところです・・・3つ目は、やはり人の集め方・使い方、そして人の力を引き出すのが上手いのではないでしょうか。また、相当な人たらしでもあるのではないでしょうか」、「相当な人たらし」であることは確かだ。
・『孫正義はイノベーターなのか? 米倉 僕は以前、孫さんとゴルフをしたことがあります。ゴルフは一応紳士のスポーツだから、マナーには厳しいわけです。しかし、孫さんは自分のパターに集中すると、グリーン上で他人のラインを踏むわ、勝手に歩き回るわでマナー違反が目立つ。 「集中してしまうとそのことしか考えられない人なんだな」と思いました。要するに、すごい集中力の持ち主ということですが、万人とくにすべての普通の人に好かれるわけではないということです。 それを「型破り」だと捉えて「この人は面白い!」と感じる人もいるのでしょう。彼は、自分と志が同じで共感してくれる人を徹底的に信じ、そういう人たちが自分を助けてくれる関係をうまく築いているように思います。このような同志だけを集めてしまう強烈な「自己の確立」というアプローチは、事を成し遂げたいビジネスパーソンの参考になるでしょう。 井上 テスラのイーロン・マスク氏のように、何かモノを作って世界を変革する人を「イノベーター」だと定義した場合、孫さんはイノベーターと言えるのでしょうか) 米倉 もちろん、孫さんはイノベーターだと思います。僕は1997年、仲間と共に一橋大学に「イノベーション研究センター」を立ち上げ、99年からセンター長を務めましたが、その前身は「産業経営研究所」という名前でした。 当時はイノベーションという言葉があまり知られておらず、センター設立趣意書を出しに文部省を訪れたときも、当時の担当者から「カタカナは避けてください。技術革新研究所にしましょう」と言われました。当時もイノベーションとは技術革新と訳されていて、技術者やモノを作る人の代名詞みたいに思われていたのです。 イノベーションは単に技術革新に限りません。異なる要素を新しく組み合わせることでもあり、流通の仕組みを変えることもイノベーションです。毀誉褒貶はありますが、総合スーパーのダイエーを創業した中内㓛さんも、宅急便を日本に持ち込んだ小倉昌男さんもその意味では明らかにイノベーターと言えます。 孫さんはモノを作っておらず、ソフトウエアのプログラミングもしていないですが、ソフトバンク・グループというイノベーティブな企業集団を創り上げました。日本人の価値観や研究視点から考えると、典型的なイノベーターとしては描きにくいかもしれません。 しかし、日本にPC文化やインターネットを根付かせ、世界でもM&Aを通じて新たな価値を創造してきたという点で、確かにイノベーションを起こした人物だと思います』、「孫さんはモノを作っておらず、ソフトウエアのプログラミングもしていないですが、ソフトバンク・グループというイノベーティブな企業集団を創り上げました。日本人の価値観や研究視点から考えると、典型的なイノベーターとしては描きにくいかもしれません。 しかし、日本にPC文化やインターネットを根付かせ、世界でもM&Aを通じて新たな価値を創造してきたという点で、確かにイノベーションを起こした人物だと思います」、やはり「典型的なイノベーターとしては描きにくいかもしれません」、ようだ。
第三に、4月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授・デジタルハリウッド大学院特命教授の米倉誠一郎氏と作家の井上篤夫氏による「ジョブズにあって孫正義にないもの、「歴史に名を残す経営者」の条件とは?(後編)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/342781
・『想像を絶するスピードとスケールで10兆円企業をつくりあげた経営者から学ぶべきことは多い。孫正義ソフトバンクグループ代表の評伝『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫)の著者井上篤夫氏が孫氏を深く知る人物と対談し、ビジネスパーソンに学びをお届けする連載「ビジネス教養としての孫正義」の第6回。前回に引き続き、対談相手はイノベーション研究の権威で一橋大学名誉教授の米倉誠一郎氏。日本史におけるイノベーターを研究してきた米倉氏が「孫さんに近いと思う歴史上の偉人」として“幕末の志士”と“三井の大番頭”の2人を挙げてくれた。さらに、語り継がれる経営者としてスティーブ・ジョブズを引き合いに出し、孫正義氏に“足りないもの”を指摘した』、興味深そうだ。
・『“幕末の孫正義” 三野村利左衛門とは? 井上 米倉先生の著書『イノベーターたちの日本史』(東洋経済新報社)をとても興味深く拝読しました。その中で、岩崎弥太郎や渋沢栄一など、日本の経営者がイノベーターとして紹介されていましたが、孫さんは誰に一番近いと思いますか? 米倉 明治という時代を演出し、薩長を融合したという点で考えると、この本には出てきませんがやはり坂本龍馬が思い浮かびますね。 龍馬はもともと、単なる土佐藩の下級武士でしたが、そのような人物が幕末の歴史を大きく転換させた。彼はその間一貫して政治よりも貿易というビジネスに興味があった。まさに、「世界を見ちょった」。その生き様が、日本に戻って創業したソフトバンクの小さな事務所で、しかもアルバイト2人の前に立って「1兆円企業になる」と高らかに宣言し、やがて日本のインターネットや携帯市場のゲームチェンジャーとして業界地図を塗り替えた孫さんと重なります。 次に、幕末維新期に「三井の大番頭」として活躍した三野村利左衛門を思い浮かべます。維新後の三井財閥の基礎を作った人です。 1673(延宝元)年に三井高利が創業した越後屋から始まり、呉服屋として大成功を収めた三井家ですが、200年もたって家督を維持する「守りの経営」になっていた。ところが、幕末の大変革に直面した際、保守的になってしまった三井家だけではこの難局は乗り切れないと判断し、新興商人の三野村に全権を委任して「攻めの経営」に転じました。 幕末・維新という動乱の中で、三野村は祖業越後屋を守りつつ、三井物産や三井銀行など新しい事業を始め、三井家をさらに発展させた。彼は素晴らしい起業家であり、イノベーターであると言えます。しかし、彼は仕組みとそれを遂行できる若い人材(渋沢栄一、井上馨、益田孝、中上川彦次郎など)を登用した。孫さんも、そういう人物に匹敵する存在だと思います。 井上 孫さんが歴史に名を残すような人物になるためには、どんな要素が必要でしょうか?) 米倉 坂本龍馬が「幕末の志士」と称されるように、その人物を簡潔に表すワンフレーズが必要ですね。“孫正義”の三文字でも世界に通じますが、教科書にも載るような経営者となるためには「情報革命の志士」のような彼を象徴するフレーズが必要でしょう。 井上 確かに、孫さんは情報革命で人々の幸せを追求すると公言していますので、情報革命というのは重要なキーワードです。彼の取り組み方は志士であり、イノベーターだと思います』、「孫さんは情報革命で人々の幸せを追求すると公言していますので、情報革命というのは重要なキーワードです。彼の取り組み方は志士であり、イノベーターだと思います」、なるほど。
・『「ローリスク・ハイリターン」がイノベーションの土台となる 米倉 ただし、同世代の中で考えると、スティーブ・ジョブズ氏にはアップルのiPhoneやMac、ビル・ゲイツ氏ならマイクロソフトのWindowsなど、革新的なモノがあって分かりやすい。一方で孫さんも、彼らと同じぐらいの影響力はあるかもしれませんが、彼自身が生み出した具体的な製品があるともっといいなと思います。 井上 その観点から見ると、孫さんはモノが何もない無形の分野で新しい何かを生み出してきたと言えるのではないでしょうか? 米倉 シリコンバレーの範疇にないものを生み出してきたという点では、孫さんの取り組みは一種の「Disruption(ディスラプション)」、つまり既存のものを破壊してきたと言えるかもしれません。 井上 破壊とは、新しいものを再構築するという意味もありますよね。実は、私の著書『志高く 孫正義正伝』の英語版のタイトルが『Aiming High: Masayoshi Son, SoftBank, and Disrupting Silicon Valley』(Hodder& Stoughton,Ltd)で「シリコンバレーの破壊者」というサブタイトルなんですよ。これはイギリスの出版社が付けたものですが、そもそも米倉さんは、シリコンバレーに対してどんな評価をされていますか? 米倉 僕が理解したのは、シリコンバレーは単なる地理的な場所ではなく、21世紀のビジネスのあり方やエコシステムの総称だということでした。) 米倉 次はどんなビジネスがヒットするか分からないから、とにかく若い人たちに(心持ちを含めて)数を打ってもらって確率を上げるしかないという前提のエコシステムだということです。 まず、数を打つ起業家には低いマーケット・エントリー・リスク、つまり参入障壁を下げる豊富なベンチャーキャピタル資金(返済義務のある銀行融資はリスクが高い)を用意し、成功した起業家と投資家にはその努力と投資に対する大きなリターンを実現する上場市場(ナスダック)やさまざまなイグジットが整備されています。 例えば、宝くじを買う人も多いでしょうが、大当たりする確率はかなり低い。しかし、みんなが買う理由は、1本300円という少額の出費(ローエントリー・リスク)で、当たれば1億円というハイ・リターンが得られるからです。もし宝くじが1本30万円と高額なら、誰も買わないでしょう。 シリコンバレーの素晴らしい点は、ベンチャーキャピタリストがこのような才能を見出す場が豊富にあるところです。銀行の融資と異なり、ベンチャーキャピタルは起業家と共にリスクを共有し、もし事業が失敗しても担保を取ることはありません。一緒に責任を負い、失敗してもすぐに次の挑戦を共にする関係です。 日本では、倒産した後の再起は難しいですが、シリコンバレーでは失敗は学びの機会であり、財産になるという発想で、仮に倒産してもどんどんチャンスが与えられます。 この考え方に基づいて、シリコンバレーではハイリターンが実現できる透明性と流通量の多い「ナスダック」という上場市場が整備され、ハイテク株やIT関連企業向けの上場が促進されました。これがとんでもない価値を付けました。上場しやすいマーケットの誕生により、積極的にチャレンジする優秀な人々がシリコンバレーに集結し、勝率がどんどん上がっていったのです。 シリコンバレーの本質は、いわゆる金融的なリスクを取らずに高いリターンを得られる環境で、優秀な人材が集まることです。日本でも新興市場は作られましたが、ナスダックほどの規模やリターン、流通規模は見られませんでした。こういうシステムがアメリカで先に確立されてしまったため、日本は太刀打ちできないなと感じました』、「シリコンバレーではハイリターンが実現できる透明性と流通量の多い「ナスダック」という上場市場が整備され、ハイテク株やIT関連企業向けの上場が促進されました。これがとんでもない価値を付けました。上場しやすいマーケットの誕生により、積極的にチャレンジする優秀な人々がシリコンバレーに集結し、勝率がどんどん上がっていったのです。 シリコンバレーの本質は、いわゆる金融的なリスクを取らずに高いリターンを得られる環境で、優秀な人材が集まることです。日本でも新興市場は作られましたが、ナスダックほどの規模やリターン、流通規模は見られませんでした。こういうシステムがアメリカで先に確立されてしまったため、日本は太刀打ちできないなと感じました」、なるほど。
・『ジョブズにあって孫正義にないもの 井上 最後になりますが、孫さんはいつも「自分はこのままでいいのか?」と自問自答しています。もし米倉さんから孫さんに何か言葉をかけるとしたら、どんな言葉をかけますか?) 米倉 孫さんは、時代の流れを読み、努力をする能力が本当にすごい。これからも色々な人を巻き込みながら、同志的結合を広げていくでしょう。ただ、私が古い考え方からなのかもしれませんが、何か有形の成果が欲しいと感じます。 スティーブ・ジョブズ氏は永遠に名を残すでしょう。iPhoneやMacを生み出し、その上にiTunesのようなプラットフォームまで構築したのですから。彼はエンジニアというよりも、ある種の“アーキテクト(設計者)”として優れていると思います。 一方、孫さんは様々な改革を進めていますが、ある意味でパイオニアの部分が足りないのかもしれません。彼が先駆的に切り拓いた新たな分野はあるのかと考えても、ぱっと思い浮かばないですから。 もしかしたら、「ペッパーくん」がその最初の成果物だったのかもしれません。単なるコミュニケーションツールではなく、ルンバのような自動掃除機能などを搭載し、世界中の家庭でペッパーくんが置かれるようになる。そうして日本発のサービスロボットという概念を世界に広められれば、孫さんは「サービスロボットの生みの親」として歴史に名を残していたかもしれません。 井上 孫さんは、人類の未来をデザインするアーキテクトになりたいと考えていて、無形のサービスを通じて、新たな価値を設計しようとしています。 米倉 なるほど、「無形のアーキテクト」として歴史に残せたらすごいですね。まあ、有形であれ、無形であれ、孫正義という名前の前に具体的かつ代表的なワンフレーズが欲しいですね』、「孫さんは様々な改革を進めていますが、ある意味でパイオニアの部分が足りないのかもしれません。彼が先駆的に切り拓いた新たな分野はあるのかと考えても、ぱっと思い浮かばないですから。 もしかしたら、「ペッパーくん」がその最初の成果物だったのかもしれません。単なるコミュニケーションツールではなく、ルンバのような自動掃除機能などを搭載し、世界中の家庭でペッパーくんが置かれるようになる。そうして日本発のサービスロボットという概念を世界に広められれば、孫さんは「サービスロボットの生みの親」として歴史に名を残していたかもしれません」、それにしてもせいぜい「ペッパーくん」では、寂しい印象だ。今後、の展開を期待するしかないのかも知れない。
タグ:米倉誠一郎氏 ダイヤモンド・オンライン イノベーション (その5)(米倉誠一郎、孫正義シリーズ3題:孫正義は本当に「偉大な経営者」なのか?ビル・ゲイツ 柳井正との決定的な違い イノベーション研究の権威・米倉誠一郎が分析「型破りすぎる破壊と創造」(前編)、孫正義は本当に「偉大な経営者」なのか?なぜ凡人ほど「孫正義」を叩くのか?時代の寵児に向けられたバッシングの正体 イノベーション研究の権威・米倉誠一郎が分析「型破りすぎる破壊と創造」(中編)、ジョブズにあって孫正義にないもの 「歴史に名を残す経営者」の条件とは?(後編)) 井上篤夫氏 「孫正義は本当に「偉大な経営者」なのか?ビル・ゲイツ、柳井正との決定的な違い イノベーション研究の権威・米倉誠一郎が分析「型破りすぎる破壊と創造」(前編)」 『志高く 孫正義正伝 決定版』(実業之日本社文庫) 「SVFのような巨大ファンドを治める孫さんの元にはものすごい情報が集まって来るでしょう。同じように、世界観を共有する人々も集まるようになるでしょう。 この情報と同志が集まれば、世界の大きな動向の中で孫さんは次に何をすべきかが決まって行くのでしょう」、なるほど。 「米倉 稲盛さんの精神性は、多くの人に好まれていますね。しかし、僕は孫さんや三木谷さんのようにギトギトしている感じの人が好きです(笑)。ユニクロの柳井正さんもすごいですよね。彼はヒートテックなどの新素材を武器にして、ファーストリテイリングを売上高3兆円(2024年8月期予想)まで成長させましたから。この3人に共通するのは、常に一番になるという「絶えざる目的意識」です」、なるほど。 「孫正義は本当に「偉大な経営者」なのか?なぜ凡人ほど「孫正義」を叩くのか?時代の寵児に向けられたバッシングの正体 イノベーション研究の権威・米倉誠一郎が分析「型破りすぎる破壊と創造」(中編)」 「新聞や週刊誌の記事には、孫さんに対する悪意が溢れていましたね(笑)。言っていることがあまりに大きいので“ホラ吹き”と揶揄されていました。インターネットの時代が来ると予測し、ヤフーなどに誰よりも早く出資しました。その先見性が認められ、時代の寵児として一躍メディアに持ち上げられると、マスコミの中に「あいつは怪しい」と批判する人がどうしても出てきます・・・そういうバッシングがあるからこそ、起業家が反骨精神で成功する側面もあるでしょう。 その中でも、孫さんはベンチャー企業の代表的存在としてバッシングに立ち向かってきました。その姿に触発されて僕も同じように体を張って「ベンチャーという新しい潮流が大事だ!」と訴え続けようと決意したのです』、なるほど。 「そういうバッシングがあるからこそ、起業家が反骨精神で成功する側面もあるでしょう。その中でも、孫さんはベンチャー企業の代表的存在としてバッシングに立ち向かってきました。その姿に触発されて僕も同じように体を張って「ベンチャーという新しい潮流が大事だ!」と訴え続けようと決意したのです」、なるほど。 「経営学という観点で孫さんから何か学ぶべきことはありますか?) 米倉 それは3つあります。1つ目は、時代の大きな動きを理解することです・・・2つ目は、その流れの中で短期的な目標を決めると、それに向けて徹底的な努力をするところです・・・3つ目は、やはり人の集め方・使い方、そして人の力を引き出すのが上手いのではないでしょうか。また、相当な人たらしでもあるのではないでしょうか」、「相当な人たらし」であることは確かだ。 「孫さんはモノを作っておらず、ソフトウエアのプログラミングもしていないですが、ソフトバンク・グループというイノベーティブな企業集団を創り上げました。日本人の価値観や研究視点から考えると、典型的なイノベーターとしては描きにくいかもしれません。 しかし、日本にPC文化やインターネットを根付かせ、世界でもM&Aを通じて新たな価値を創造してきたという点で、確かにイノベーションを起こした人物だと思います」、やはり「典型的なイノベーターとしては描きにくいかもしれません」、ようだ。 「ジョブズにあって孫正義にないもの、「歴史に名を残す経営者」の条件とは?(後編)」 「孫さんは情報革命で人々の幸せを追求すると公言していますので、情報革命というのは重要なキーワードです。彼の取り組み方は志士であり、イノベーターだと思います」、なるほど。 「シリコンバレーではハイリターンが実現できる透明性と流通量の多い「ナスダック」という上場市場が整備され、ハイテク株やIT関連企業向けの上場が促進されました。これがとんでもない価値を付けました。上場しやすいマーケットの誕生により、積極的にチャレンジする優秀な人々がシリコンバレーに集結し、勝率がどんどん上がっていったのです。 シリコンバレーの本質は、いわゆる金融的なリスクを取らずに高いリターンを得られる環境で、優秀な人材が集まることです。 日本でも新興市場は作られましたが、ナスダックほどの規模やリターン、流通規模は見られませんでした。こういうシステムがアメリカで先に確立されてしまったため、日本は太刀打ちできないなと感じました」、なるほど。 「孫さんは様々な改革を進めていますが、ある意味でパイオニアの部分が足りないのかもしれません。彼が先駆的に切り拓いた新たな分野はあるのかと考えても、ぱっと思い浮かばないですから。 もしかしたら、「ペッパーくん」がその最初の成果物だったのかもしれません。単なるコミュニケーションツールではなく、ルンバのような自動掃除機能などを搭載し、世界中の家庭でペッパーくんが置かれるようになる。 そうして日本発のサービスロボットという概念を世界に広められれば、孫さんは「サービスロボットの生みの親」として歴史に名を残していたかもしれません」、それにしてもせいぜい「ペッパーくん」では、寂しい印象だ。今後、の展開を期待するしかないのかも知れない。
ネットビジネス(その13)(UUUMが「過去最大の赤字」 創業10年で迎えた危機 ショート動画拡大が逆風に 決死の人員削減へ、UUUMが「YouTuberビジネス」でつまずいた真相 潮流の変化追いつけず 「UUUM離れ」じわり加速、「ケンタとローチケ」炎上したアプリ改悪の共通点 企業と消費者のコミュニケーションが遮断された) [イノベーション]
ネットビジネスについては、2022年3月6日に取上げた。今日は、(その13)(UUUMが「過去最大の赤字」 創業10年で迎えた危機 ショート動画拡大が逆風に 決死の人員削減へ、UUUMが「YouTuberビジネス」でつまずいた真相 潮流の変化追いつけず 「UUUM離れ」じわり加速、「ケンタとローチケ」炎上したアプリ改悪の共通点 企業と消費者のコミュニケーションが遮断された)である。
先ずは、昨年7月20日付け東洋経済オンライン「UUUMが「過去最大の赤字」、創業10年で迎えた危機 ショート動画拡大が逆風に、決死の人員削減へ」を紹介いよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/688000
・『創業から10年、国内最大のYouTuber事務所が危機にさらされている。 ヒカキンなどの人気YouTuberが所属するUUUMは7月14日、2023年5月期決算を発表した。売上高は230億円(前期比2.1%減)、営業損益は1.9億円の赤字(前期は9.7億円の黒字)と、2017年の上場以来初の営業赤字に転落した。最終損益も、投資有価証券の評価損を計上したことで10.5億円の大赤字に沈んだ。 所属YouTuberのショート動画以外の通常の動画で再生数が伸び悩み、アドセンス(YouTube広告)収入が落ち込んだほか、急拡大するインフルエンサーマーケティングへの乗り遅れやスマホゲームの開発期間が延びたことが減収減益の要因となった。 さらに売上原価にP2Cブランド(YouTuberらを起点としたブランド商品)の棚卸資産評価損を7億円弱計上しており、これも営業損益に響いた。コロナ禍で見通しが不透明な中、欠品を防ぐために強気の仕入れを行った影響という』、減益要因には、「急拡大するインフルエンサーマーケティングへの乗り遅れやスマホゲームの開発期間が延びたこと」など一時的要因もあるようだ。
・『UUUMを襲った「ショートショック」 「YouTubeショートショック」――。今回の赤字決算をめぐり、ネット上などではそんな言葉が飛び交った。 UUUMは2023年に入って以降、4月と7月の2回にわたって業績予想を下方修正していた。その際、いずれも「YouTubeショートの再生回数増加に伴い、通常の動画の再生回数が想定を下回った」ことを要因の1つに上げた。) YouTubeショートとは、最大60秒の縦型動画のことで、日本では2021年からYouTube上でサービスが開始されている。Google合同会社でYouTubeクリエイターエコシステムパートナーシップ統括部長を務めるイネス・チャ氏によれば、「(ショートは)Z世代の若者を中心に多く利用され、通常の動画への誘導に使われている」という。 ショート動画人気の火付け役となったのは、中国のバイトダンスが運営するTikTok(ティックトック)だ。今ではYouTubeにおいても人気コンテンツとなり、再生数の多くをショートが占めるようになってきている。実際、UUUMでも直近の3月から5月にかけては、ショートの再生数が通常の動画の再生数を上回る水準にまで増加した。 ショートの急速な拡大を受けて、YouTubeは2023年2月からショートへの収益分配も開始した。これまで広告収益の対象となっていた通常の動画だけでなく、ショートからも収益を得られるようにしたのだ。 (UUUMの業績推移はリンク先参照) しかしUUUMにとって、ショートからの収益が入ったところで通常の動画の急速な落ち込みをカバーするには至らなかった。 とある業界関係者によれば「ショートから得られる広告収益は通常の動画と比べると微々たるもの。1億回の再生数に対して100万円程度(1再生あたり0.01円)なので、採算はとりづらい」と明かす。「通常の動画の1再生当たりの単価は0.3~2円程度」(同関係者)であることから、ショートはかなり多くの人に見られない限りお金にならないようだ。 「ショートではアルゴリズムの関係で、チャンネル登録者数に関係なく動画が再生されるため、新規のYouTuberは認知されやすくても、人気YouTuberほど恩恵が小さい」。UUUM関係者はそう漏らす。人気YouTuberを数多く抱えるUUUMにとっては、不利な状況ともいえる』、「ショートから得られる広告収益」は、「1再生あたり0.01円」と、「通常の動画の1再生当たりの単価は0.3~2円程度」に比べ少ないので、「採算はとりづらい」ようだ。
・『広告収入依存からの脱却を目指したが… UUUMを襲った「ショートショック」の大きさは、同社がいまだアドセンス依存のビジネスモデルから抜け出せていない現実を如実に示している。 UUUMは2021年末ころからアドセンス収入の伸び悩みに直面し、一部のトップクリエイター頼みの構造になっていたことから、アドセンス依存の脱却を掲げて専属クリエイターの数を大幅に減らしてきた。2021年5月末時点で313組だった専属クリエイターは、2023年5月末時点では181組にまで減少している。 その代わりに、新たな収益柱として育成を目指したのがP2Cブランドやグッズ販売だ。契約解消となった専属クリエイターについても、ブランド商品の展開がうまくいくか否かを基準に選別したとみる関係者が多い。) 例えば、同社専属のYouTuberである竹脇まりな氏と共同で展開するブランド「MARINESS」では、プロテインが大ヒットとなり、業績にも寄与している。4月にはヒカキンによる初のブランド「HIKAKIN PREMIUM(ヒカキン プレミアム)」を始動させ、カップラーメンの「みそきん」は発売後すぐに売り切れとなるなど、大きな話題を呼んだ。 (UUUMの売上高内訳はリンク先参照) こうしたP2Cブランドなどの積極展開を進めるものの、2023年5月期の売上高ではアドセンスが約4割と、依然として大きな割合を占めている。拡大するインフルエンサーマーケティングへの対応の遅れや、P2Cでも前述の通り在庫コントロールの難しさから評価損を出すなど、思うように事業を伸ばせていないのが現状だ』、「売上高ではアドセンスが約4割と、依然として大きな割合を占めている。拡大するインフルエンサーマーケティングへの対応の遅れや、P2Cでも前述の通り在庫コントロールの難しさから評価損を出すなど、思うように事業を伸ばせていないのが現状だ」、なるほど。
・『構造改革で15~20%の人員を削減 UUUMは過去最大の赤字を計上したことを踏まえて、大規模な構造改革を実施すると発表した。 柱の1つが人員削減だ。今2024年5月期中に、契約社員も含めて全体の15~20%程度の人員を削減するという。 UUUMの従業員数は、2023年5月末時点で677人(臨時雇用を含む)。専属クリエイターを大幅に減らした一方、業界内では「本部社員が多すぎる」との声も上がっていただけに、業績低迷が続く中ではやむを得ない決断だろう。 会社側は人員削減の対象者数や詳細なスキームを明らかにしていないが、取材に対し「生産性の高い事業への人員配置を行うことで、人的資源の最適化を進める」と回答している。 不採算事業の整理にも着手する。収益改善の難しい自社運営チャンネルや一部のP2Cブランド、さらにはライブ配信事業からも撤退する。ライブ配信事業は2022年に「LIVE Network by UUUM」というライブ配信者向けの事務所を設立するなど、事業を本格化させたばかり。「事業の撤退に合わせ、今後の運営については社内で検討する」(UUUM IR担当者)という。異例の早期撤退には同社の焦りもうかがえる。 今回の決算について、「過去最大の赤字は、過去最高益のために」と弁明したUUUM。数々のリストラ策によって一時的な収益改善効果は期待できるものの、過去最高益に向けた突破口はいまだ見えないままだ』、「UUUM。数々のリストラ策によって一時的な収益改善効果は期待できるものの、過去最高益に向けた突破口はいまだ見えないままだ」、その通りだ。
次に、昨年7月26日付け東洋経済オンライン「UUUMが「YouTuberビジネス」でつまずいた真相 潮流の変化追いつけず、「UUUM離れ」じわり加速」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/689475
・『YouTuberビジネスのパイオニアは、かつての勢いを取り戻せるのか。 国内最大のYouTuber事務所であるUUUMは、7月14日に発表した2023年5月期決算において上場以来初の営業赤字へと転落した(詳細はこちら)。 同社はYouTuberへの注目度が急上昇していた2017年に上場。2019年には株価が一時6870円にまで達し、時価総額も1000億円を超えた。しかしここ1~2年は業績が低迷し、足元の株価はピーク時のおよそ10分の1の600円台半ばにしぼんでいる』、「同社はYouTuberへの注目度が急上昇していた2017年に上場。2019年には株価が一時6870円にまで達し、時価総額も1000億円を超えた。しかしここ1~2年は業績が低迷し、足元の株価はピーク時のおよそ10分の1の600円台半ばにしぼんでいる」、「株価はピーク時のおよそ10分の1」とはずいぶん落ち込んだものだ。
・『ショート動画の拡大が逆風? UUUMは売上高が苦戦した要因の1つとして、「YouTubeショート」の再生回数増加に伴い、通常の動画の再生回数が想定を下回り、アドセンス(YouTube広告)収入が減少したことを挙げる。そのためネット上では、「ショートショック」という言葉も数多くささやかれた。 YouTubeショートとは、最大60秒の縦型動画のことで、日本では2021年からサービスが開始されている。一気に人気コンテンツとなり、UUUMでも直近の3月から5月にかけては、ショートの再生数が通常の動画を上回る水準にまで増加した。 一方、ショートは通常の動画よりも1再生当たりのアドセンスの単価が低い。またUUUM関係者は「(ショートが)チャンネル登録者数に関係なく動画が表示されるアルゴリズムとなっており、人気YouTuberほど恩恵が少ない」と漏らす。結果的に、通常の動画の落ち込みをカバーするには至らなかった。 しかし、このように外部要因の影響を強調するUUUM側の説明には疑問も残る。) Google合同会社でYouTubeクリエイターエコシステムパートナーシップ統括部長を務めるイネス・チャ氏は「YouTube全体としては、ショートの登場により、それ以外の動画の再生回数が減ったという事実はない」と断言する。 また、YouTube側はショートのアルゴリズムについて、チャンネル登録者数に関係なく動画が再生されるのは事実と認める一方、「(嗜好などに応じて)ユーザーが見たい動画が優先的に表示される仕組み」(イネス氏)と説明する。UUUMが多数抱えるような人気YouTuberほど不利な状況にある、との見方については否定した。 YouTuberの中には、ショートによって若者や海外視聴者をうまく取り込んで成功している例もある。例えば直近では、TikTok出身のクリエイターを中心に、ショートを数多く活用したYouTuberがチャンネル登録者数を急速に伸ばし始めている。UUUMで最多の登録者数(1140万人)を誇るヒカキンの2倍近いチャンネル登録者数を集めるクリエイターもいる。 その意味では、UUUMが苦境に陥った根因は、ショート人気という潮流の変化を機微にとらえたクリエイターの育成・サポートができなかった点にあるとも言えるだろう』、「UUUMが苦境に陥った根因は、ショート人気という潮流の変化を機微にとらえたクリエイターの育成・サポートができなかった点にあるとも言える」、なるほど。
・『人気YouTuberを囲い込めなくなった理由 そもそもUUUMの苦境は、ショートショック以前から始まっていた。 ヒカキンやはじめしゃちょーなど、かつてはトップYouTuberが次から次へとUUUMに集う状況だったが、近年は同社に所属していないYouTuberの活躍が目立つ。「近年勢いのある”新世代YouTuber”たちの中で、UUUM所属はエスポワール・トライブくらい」。業界関係者はそう分析する。 (UUUMの業績推移については、リンク先参照) UUUMが人気YouTuberの囲い込みに苦戦している要因について、元UUUM専属のYouTuberのおのだまーしー氏は「(UUUMが)報酬に見合ったサポートを提供できていないことが大きいのではないか」と話す。 UUUMはYouTuberとの通常の専属契約において、企業とのタイアップ案件の提案やイベントへの招待、担当社員との定例ミーティングなどのサポートを行っている。これらの対価として、UUUM側は多くの場合、アドセンス収入の20%(YouTube外のタレント活動については25%)を徴収しているとされる。) 動画の再生数が増えるほどUUUM側が受け取る対価も増える仕組みだが、一般的に、YouTuberは企画から撮影、投稿まで動画制作のほぼすべての工程を自分で行うことが多い。そのため、「クリエイターが人気になるほど、UUUM側のサポートが20%の対価に見合わなくなってしまう構造にある」(おのだまーしー氏)という。 チャンネル登録者数が増えて一定の収入を稼げるレベルに達すると、対価を支払いながらUUUMのサポートを受けるよりも、独立してマネジャーなどを自ら雇ったほうが安くつくケースもあるようだ。 とくにコロナ期間中はイベントが開催できず、企業の広告出稿意欲も落ち込み、タイアップなどの案件が減少した一方、巣ごもり特需で動画再生数は増えた。そのため「イベント開催や案件紹介などUUUMからのサポートが減少する一方で、UUUM側に支払う対価は増えていた」(業界関係者)。そうした事情もあってか、複数の業界関係者によれば、コロナ禍以降にUUUMからYouTuberが独立する動きが目立ったという』、「YouTuberは企画から撮影、投稿まで動画制作のほぼすべての工程を自分で行うことが多い。そのため、「クリエイターが人気になるほど、UUUM側のサポートが20%の対価に見合わなくなってしまう構造にある」・・・という。 チャンネル登録者数が増えて一定の収入を稼げるレベルに達すると、対価を支払いながらUUUMのサポートを受けるよりも、独立してマネジャーなどを自ら雇ったほうが安くつくケースもあるようだ」、なるほど。
・『YouTuberのビジネスモデルに変化も アドセンスを柱に成長してきたUUUMにとっては、昨今のYouTuberビジネスの変容も逆風となった。 「『YouTubeでどう稼ぐか』から、『YouTubeを使ってどう稼ぐか』に変わった」。YouTuberを軸にしたビジネスを数多く展開するサムライパートナーズの入江巨之代表取締役は、そう話す。 入江氏は2019年に、人気YouTuberのヒカルらとともにアパレルブランド「ReZARD」を立ち上げた。立ち上げから3年で累計売り上げが70億円を突破し、YouTuberによる新たなビジネスモデルの先駆けとして知られる。 YouTuberの間では目下、こうしたYouTube以外の場での収益拡大を模索する動きが広がっている。チャンネル間での競争激化やYouTubeの広告費の伸び鈍化などにより、広告収入のみでの収益化の難易度が増したことが背景にある。UUUMにおいても、最大の収益柱であるアドセンス収入は2021年頃から伸び悩みに直面していた。 UUUMも手をこまぬいているわけではない。例えば、ヒカキンによる新ブランド「HIKAKIN PREMIUM(ヒカキン プレミアム)」から2023年5月に発売されたカップラーメン「みそきん」は、各地で品切れが相次ぐなど話題を呼んだ。 しかし、同社から展開されるP2Cブランド(YouTuberらを起点としたブランド商品)はプロテインやグミ、カップラーメンなど単価の低いものが目立つ。ある業界関係者は「ヒカキンなどのUUUM所属YouTuberは子どものファンが多い。そのため単価の高い商品を販売しづらいのではないか」と話す。) 現状、UUUMの主な収益源は3つ。アドセンスとP2Cブランド(グッズ)、そしてマーケティングだ。 アドセンス依存脱却に向けて強化に乗り出したP2Cブランドは、前2023年5月期に多額の在庫評価損を計上するなど、本格的な収益貢献までには課題も多い。そこで改めて今、同社が強化する姿勢を明確にしているのがマーケティング領域だ』、「アドセンス依存脱却に向けて強化に乗り出したP2Cブランドは、前2023年5月期に多額の在庫評価損を計上するなど、本格的な収益貢献までには課題も多い。そこで改めて今、同社が強化する姿勢を明確にしているのがマーケティング領域だ」、なるほど。
・『国内インフルエンサーマーケティング市場の規模 インフルエンサーを活用したマーケティングの需要は年々拡大傾向にあり、今後も大きな成長が予測されている。YouTuberを数多く抱えるUUUMにとっては好機だが、前期はそのマーケティング領域でも減収となり、旺盛な需要をうまく取り込めていない状況にある。 同社のIR担当者は「(マーケティング領域は)市場の拡大による案件の分散化や、クライアントのニーズの多様化への対応が遅れてしまった」と認めたうえで、「現在は、タイアップなどの既存の広告メニューとは違った新たな広告メニューへの対応を推進している」と説明する』、「マーケティングの需要は年々拡大傾向にあり、今後も大きな成長が予測されている。YouTuberを数多く抱えるUUUMにとっては好機だが、前期はそのマーケティング領域でも減収となり、旺盛な需要をうまく取り込めていない状況にある・・・市場の拡大による案件の分散化や、クライアントのニーズの多様化への対応が遅れてしまった」と認めたうえで、「現在は、タイアップなどの既存の広告メニューとは違った新たな広告メニューへの対応を推進している」、なるほど。
・『マーケ強化へ役員を社外から2人登用 UUUMは今期、人員削減などの構造改革に乗り出す一方、テクノロジー投資は8400万円の増加を見込む。テクノロジーの活用によって多様な広告メニューを開発することで、マイクロインフルエンサーとよばれる小規模のクリエイターにまで低コストでマーケティングを展開できるようにするという。 クリエイティブやPR領域に強い役員を社外から2人登用し、PR・コンサル領域で勢いのあるマテリアル社との業務提携も発表した。UUUMはこうした新規領域がアドセンスに次ぐ収益柱となることで、今後の再成長につなげられると想定する。 創業10年目にして厳しい状況に陥ったUUUMだが、今も業界最大手のポジションにあることには変わりない。過去最大の赤字という逆境を乗り越えられるか。今が正念場だ』、「創業10年目にして厳しい状況に陥ったUUUMだが、今も業界最大手のポジションにあることには変わりない。過去最大の赤字という逆境を乗り越えられるか。今が正念場だ」、その通りだろう。
第三に、本年4月18日付け東洋経済オンラインが掲載したネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャーの城戸 譲氏による「「ケンタとローチケ」炎上したアプリ改悪の共通点 企業と消費者のコミュニケーションが遮断された」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/748953
・『ケンタッキーフライドチキン(KFC)のスマートフォンアプリが、アップデートによって改悪したと「炎上」している。ユーザーインターフェースが大幅変更され、商品メニューを開くのですら一苦労。SNSでもアプリストアでも、不評が相次いで投稿されている。 新たな「顧客接点」として存在感を示すスマホアプリだが、仕様変更によって、マイナス印象を残すことも少なくない。先日はローソンチケットのアプリも、リニューアルによって、使い勝手が悪くなったと話題になった。 アップデートによって「燃えた」2つのアプリを見ながら、実店舗とスマホにおける「購買体験」の違いを考えてみよう』、「アップデートによって「燃えた」2つのアプリを見ながら、実店舗とスマホにおける「購買体験」の違いを考えてみよう」、「アップデートによって「燃えた」2つのアプリを見ながら、実店舗とスマホにおける「購買体験」の違いを考えてみよう」、「アップデート」によって使い勝手が悪くなり、「炎上」するのは、有り得る話だ。
・『「まれに見る大改悪」と評判に KFCのスマートフォン用アプリは、2024年4月初旬にリニューアルされた。旧アプリと別に用意されているわけではなく、アプリストアで更新をかければ、すぐ反映されるようになっている。つまり「半強制移行」と言えるだろう。 そんな新アプリが、これまで以上に使い勝手がいいのなら、何の問題もない。しかしリリース直後から、SNS上では「ログインできない」「なかなかメニュー画面にたどり着けない」「クーポンも見にくい」といった指摘が相次ぎ、「まれに見る大改悪」と評判になってしまっている。 AppleのAppStoreを見てみると、このアプリは4月18日正午時点で、星4.5とそれなりに評価が高い。しかし、そのほとんどは旧アプリに対する評価で、4月に入ってからは「星1」だらけに。コメントも「絶望感が漂う」「削除することにした」「カーネルおじさんも泣いている」などと辛辣な内容が書き込まれている。) 突然ネットサービスの仕様が変わり、ユーザーの困惑を招くケースは珍しくない。直近では「ローチケ」の愛称で知られるローソンチケットのアプリも、改悪だと話題になった。こちらも4月上旬に変更が行われたのだが、その内容が「チケットが消えるのでは」との心配を招いたこともあり、炎上状態となった。 新しいローチケアプリでは、不正・転売の防止を理由に、電子チケットの表示(ダウンロード)後に機種変更や、アプリの再インストールを行うと、チケットを再表示できなくなった。もし再表示できなくなっても、カスタマーセンターでの状況確認を経れば、再表示できるのだが、その説明が十分でなかったために、ユーザーを混乱させる事態となった。この点は、KFCアプリにも通ずるところだ』、「KFCのスマートフォン用アプリ」は「リリース直後から、SNS上では「ログインできない」「なかなかメニュー画面にたどり着けない」「クーポンも見にくい」といった指摘が相次ぎ、「まれに見る大改悪」と評判になってしまっている」、「新しいローチケアプリでは、不正・転売の防止を理由に、電子チケットの表示(ダウンロード)後に機種変更や、アプリの再インストールを行うと、チケットを再表示できなくなった。もし再表示できなくなっても、カスタマーセンターでの状況確認を経れば、再表示できるのだが、その説明が十分でなかったために、ユーザーを混乱させる事態となった」、ベンダー任せにせず、自社でテストしてみればこうした問題は起きない筈だ。自社でテストが不十分だったのだろう。
・『商品ページすら、なかなかたどり着かず… 話題のKFCアプリを実際に触ってみた。開くとまず、画面上部に「まずは受取方法と店舗を選択」の説明文とともに、「注文する」のボタンが表示される。それを押すと、「お持ち帰り」か「デリバリー」を選択する画面が現れ、いずれか選択すると、店舗選択画面が現れる……と、階層は何段階も深くなるものの、なかなか商品にはたどり着かない。 改めて、トップ画面に戻って、下部へスクロールすると「メニュー」のタイル画像があった。そうそう、これが知りたかったんだよ、とタップするも、また「お持ち帰り」「デリバリー」の壁が立ちはだかる。 軽減税率や商圏の関係で、価格が一律でないのは理解できるが、ただ単に「どんな商品が出ているか」が知りたいだけでも、これだけの手間を求められてしまう。 また、あらゆる画面で会員ログインを求められるが、これまでのデータは消えているため、手こずるユーザーも少なくないだろう。「パスワードは覚えておいてよ」とKFC側は思うかもしれないが、リアルなユーザーはこんなものではないだろうか。 ネットメディア編集者である筆者の感覚からすれば、「改悪」だの「劣化」だのといった表現は、冗談まじりのネットスラングとして、一般的なイメージよりフランクに使われている。とはいえ、実際にアプリを使ってみると、今回の「改悪」は誇張ではなく、まさに……という感想だ。) 筆者は数カ月前まで「KFC店舗から徒歩5分」に住んでいたので、旧アプリの使い勝手は、それなりに理解しているつもりだ。まだ新アプリを店頭で使ったことはないが、ちょっと触っただけでも、大きく利便性が損なわれていることはわかる』、「今回の「改悪」は誇張ではなく、まさに……という感想だ・・・まだ新アプリを店頭で使ったことはないが、ちょっと触っただけでも、大きく利便性が損なわれていることはわかる」かなり酷いようだ。
・『突然の仕様変更で、愛着すら消えてしまう危険性 そして、そのうえで感じるのは、これは「単なるアプリの改悪」にとどまらないのではないかという懸念だ。今まで築いてきた、企業と消費者のコミュニケーションや信頼関係が、今回の件をもって崩れ去ってしまったのではないかと感じるのだ。 実店舗やデリバリーでの商品提供のみならず、その注文過程も「購買体験」の一環となる。KFCアプリには、以前より購入頻度に応じたマイレージプログラムが用意されているが、これもまたユーザーの愛着を増す施策と言えるだろう。 ゆえに、突然の仕様変更によって、愛着すら消えてしまう危険性がある。これはKFCのみならず、実店舗とECなどを両面展開し、その結節点にスマートフォンを位置づけている企業であれば、さほど珍しい話ではない。 そして、ここが筆者の考える、KFCアプリとローチケアプリの相違点だ。やや辛辣な表現になってしまうかもしれないが、数あるチケットアプリのなかで、ローチケに思い入れを抱いている人は多くないだろう。アーティストや贔屓のスポーツチームのチケットがお目当てなわけで、アプリは目的ではないからだ。今回のような騒動があっても、「じゃあ他のアプリを使おう」と、サラッと鞍替えする可能性が高い。 しかし、KFCアプリは違う。ケンタのチキンやカーネルクリスピーをお得に食べたいから消費者は、KFCアプリをダウンロードしている。そのコミュニケーションが、改悪によって遮断されてしまったのだ。 ところで、筆者はドラッグストア「ココカラファイン」を愛用しているのだが、マツモトキヨシとの経営統合から数年たち、ついに先日、「マツキヨココカラ」の新アプリへと切り替えてくれとアナウンスされた。こちらはKFCと違って、旧アプリと新アプリが別に用意されているが、それはそれで別途インストール&アンインストールの手間がかかる。新居の最寄りは「サンドラッグ」だから、この機会に、そちらへ浮気しようかなと考え中だ。) KFCもローチケも、はたまたマツキヨココカラも、経営戦略の一環として、アプリを仕様変更しているはずだ。その過程には、社内のマニュアルづくりで変えられる接客と違って、アプリは小売業者が内製化しにくく、開発業者の能力に大きく左右されるところもあり、結果的に使用感をコントロールしづらい事情もあるだろう。 しかしながら、消費者に企業の事情は関係なく、「利便性が高いか、否か」が評価軸となる。店舗そのものでの顧客体験は変わらなくても、接点であるアプリの変化によって、消費者は評価するということを、企業側は忘れてはならない。——などといった話を書くと、「いずれ慣れるから気にするな」との意見が出がちだ。確かにごもっともだが、結果として慣れるのであれば、過渡期には消費者を振り回していいのかとなると、ちょっと疑問符が浮かぶ。 たとえばセルフレジは、ここ数年でかなり浸透した。キャッシュレス化の波に加えて、コロナ禍による衛生意識の高まりもあり、スムーズに操作できるようになった人も多いだろう。とはいえ、私ですら完全には慣れていない。 先日とあるスーパーで、完全ノンアルコールの「割り材」をセルフレジに通したら、店員確認が必要だと出てきた。駆け寄る店員さんに申し訳なさを覚えつつ、「次からは通常レジに持っていこうかな」と反省。これもまた、慣れるための通過儀礼なのだろう。 あくまでレアケースだ、と言われればそれまでだ。ただKFCの新アプリは、その前段階である通常使用の場面でも、大きな困惑を生んでいる。今回のみならず、「リリースする前に、なぜGOサインを出したのか」に疑問が投げかけられることは多々ある』、「ローチケに思い入れを抱いている人は多くないだろう。アーティストや贔屓のスポーツチームのチケットがお目当てなわけで、アプリは目的ではないからだ。今回のような騒動があっても、「じゃあ他のアプリを使おう」と、サラッと鞍替えする可能性が高い。 しかし、KFCアプリは違う。ケンタのチキンやカーネルクリスピーをお得に食べたいから消費者は、KFCアプリをダウンロードしている。そのコミュニケーションが、改悪によって遮断されてしまったのだ・・・KFCもローチケも、はたまたマツキヨココカラも、経営戦略の一環として、アプリを仕様変更しているはずだ。その過程には、社内のマニュアルづくりで変えられる接客と違って、アプリは小売業者が内製化しにくく、開発業者の能力に大きく左右されるところもあり、結果的に使用感をコントロールしづらい事情もあるだろう。 しかしながら、消費者に企業の事情は関係なく、「利便性が高いか、否か」が評価軸となる。店舗そのものでの顧客体験は変わらなくても、接点であるアプリの変化によって、消費者は評価するということを、企業側は忘れてはならない。——などといった話を書くと、「いずれ慣れるから気にするな」との意見が出がちだ。確かにごもっともだが、結果として慣れるのであれば、過渡期には消費者を振り回していいのかとなると、ちょっと疑問符が浮かぶ・・・KFCの新アプリは、その前段階である通常使用の場面でも、大きな困惑を生んでいる。今回のみならず、「リリースする前に、なぜGOサインを出したのか」に疑問が投げかけられることは多々ある」、なるほど。
・『「今日、ケンタッキーにしない?」といかなくなる? 先ほど「アプリの改悪にとどまらないのでは」と指摘したのは、まさにここから、ガバナンスやコンプライアンスといった、企業としての姿勢が透けてみえてしまうからだ。 KFCのテレビCMは「今日、ケンタッキーにしない?」のキャッチコピーで知られるが、それはあくまで「選択肢」として位置づけられている前提のもとで機能する。顧客第一でないと思われてしまえば、選択肢にすら上がらなくなってしまう。そういう意味でも、新アプリによる代償は大きいと感じるのだ』、「KFCのテレビCMは「今日、ケンタッキーにしない?」のキャッチコピーで知られるが、それはあくまで「選択肢」として位置づけられている前提のもとで機能する。顧客第一でないと思われてしまえば、選択肢にすら上がらなくなってしまう。そういう意味でも、新アプリによる代償は大きいと感じるのだ」、全く同感である。
先ずは、昨年7月20日付け東洋経済オンライン「UUUMが「過去最大の赤字」、創業10年で迎えた危機 ショート動画拡大が逆風に、決死の人員削減へ」を紹介いよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/688000
・『創業から10年、国内最大のYouTuber事務所が危機にさらされている。 ヒカキンなどの人気YouTuberが所属するUUUMは7月14日、2023年5月期決算を発表した。売上高は230億円(前期比2.1%減)、営業損益は1.9億円の赤字(前期は9.7億円の黒字)と、2017年の上場以来初の営業赤字に転落した。最終損益も、投資有価証券の評価損を計上したことで10.5億円の大赤字に沈んだ。 所属YouTuberのショート動画以外の通常の動画で再生数が伸び悩み、アドセンス(YouTube広告)収入が落ち込んだほか、急拡大するインフルエンサーマーケティングへの乗り遅れやスマホゲームの開発期間が延びたことが減収減益の要因となった。 さらに売上原価にP2Cブランド(YouTuberらを起点としたブランド商品)の棚卸資産評価損を7億円弱計上しており、これも営業損益に響いた。コロナ禍で見通しが不透明な中、欠品を防ぐために強気の仕入れを行った影響という』、減益要因には、「急拡大するインフルエンサーマーケティングへの乗り遅れやスマホゲームの開発期間が延びたこと」など一時的要因もあるようだ。
・『UUUMを襲った「ショートショック」 「YouTubeショートショック」――。今回の赤字決算をめぐり、ネット上などではそんな言葉が飛び交った。 UUUMは2023年に入って以降、4月と7月の2回にわたって業績予想を下方修正していた。その際、いずれも「YouTubeショートの再生回数増加に伴い、通常の動画の再生回数が想定を下回った」ことを要因の1つに上げた。) YouTubeショートとは、最大60秒の縦型動画のことで、日本では2021年からYouTube上でサービスが開始されている。Google合同会社でYouTubeクリエイターエコシステムパートナーシップ統括部長を務めるイネス・チャ氏によれば、「(ショートは)Z世代の若者を中心に多く利用され、通常の動画への誘導に使われている」という。 ショート動画人気の火付け役となったのは、中国のバイトダンスが運営するTikTok(ティックトック)だ。今ではYouTubeにおいても人気コンテンツとなり、再生数の多くをショートが占めるようになってきている。実際、UUUMでも直近の3月から5月にかけては、ショートの再生数が通常の動画の再生数を上回る水準にまで増加した。 ショートの急速な拡大を受けて、YouTubeは2023年2月からショートへの収益分配も開始した。これまで広告収益の対象となっていた通常の動画だけでなく、ショートからも収益を得られるようにしたのだ。 (UUUMの業績推移はリンク先参照) しかしUUUMにとって、ショートからの収益が入ったところで通常の動画の急速な落ち込みをカバーするには至らなかった。 とある業界関係者によれば「ショートから得られる広告収益は通常の動画と比べると微々たるもの。1億回の再生数に対して100万円程度(1再生あたり0.01円)なので、採算はとりづらい」と明かす。「通常の動画の1再生当たりの単価は0.3~2円程度」(同関係者)であることから、ショートはかなり多くの人に見られない限りお金にならないようだ。 「ショートではアルゴリズムの関係で、チャンネル登録者数に関係なく動画が再生されるため、新規のYouTuberは認知されやすくても、人気YouTuberほど恩恵が小さい」。UUUM関係者はそう漏らす。人気YouTuberを数多く抱えるUUUMにとっては、不利な状況ともいえる』、「ショートから得られる広告収益」は、「1再生あたり0.01円」と、「通常の動画の1再生当たりの単価は0.3~2円程度」に比べ少ないので、「採算はとりづらい」ようだ。
・『広告収入依存からの脱却を目指したが… UUUMを襲った「ショートショック」の大きさは、同社がいまだアドセンス依存のビジネスモデルから抜け出せていない現実を如実に示している。 UUUMは2021年末ころからアドセンス収入の伸び悩みに直面し、一部のトップクリエイター頼みの構造になっていたことから、アドセンス依存の脱却を掲げて専属クリエイターの数を大幅に減らしてきた。2021年5月末時点で313組だった専属クリエイターは、2023年5月末時点では181組にまで減少している。 その代わりに、新たな収益柱として育成を目指したのがP2Cブランドやグッズ販売だ。契約解消となった専属クリエイターについても、ブランド商品の展開がうまくいくか否かを基準に選別したとみる関係者が多い。) 例えば、同社専属のYouTuberである竹脇まりな氏と共同で展開するブランド「MARINESS」では、プロテインが大ヒットとなり、業績にも寄与している。4月にはヒカキンによる初のブランド「HIKAKIN PREMIUM(ヒカキン プレミアム)」を始動させ、カップラーメンの「みそきん」は発売後すぐに売り切れとなるなど、大きな話題を呼んだ。 (UUUMの売上高内訳はリンク先参照) こうしたP2Cブランドなどの積極展開を進めるものの、2023年5月期の売上高ではアドセンスが約4割と、依然として大きな割合を占めている。拡大するインフルエンサーマーケティングへの対応の遅れや、P2Cでも前述の通り在庫コントロールの難しさから評価損を出すなど、思うように事業を伸ばせていないのが現状だ』、「売上高ではアドセンスが約4割と、依然として大きな割合を占めている。拡大するインフルエンサーマーケティングへの対応の遅れや、P2Cでも前述の通り在庫コントロールの難しさから評価損を出すなど、思うように事業を伸ばせていないのが現状だ」、なるほど。
・『構造改革で15~20%の人員を削減 UUUMは過去最大の赤字を計上したことを踏まえて、大規模な構造改革を実施すると発表した。 柱の1つが人員削減だ。今2024年5月期中に、契約社員も含めて全体の15~20%程度の人員を削減するという。 UUUMの従業員数は、2023年5月末時点で677人(臨時雇用を含む)。専属クリエイターを大幅に減らした一方、業界内では「本部社員が多すぎる」との声も上がっていただけに、業績低迷が続く中ではやむを得ない決断だろう。 会社側は人員削減の対象者数や詳細なスキームを明らかにしていないが、取材に対し「生産性の高い事業への人員配置を行うことで、人的資源の最適化を進める」と回答している。 不採算事業の整理にも着手する。収益改善の難しい自社運営チャンネルや一部のP2Cブランド、さらにはライブ配信事業からも撤退する。ライブ配信事業は2022年に「LIVE Network by UUUM」というライブ配信者向けの事務所を設立するなど、事業を本格化させたばかり。「事業の撤退に合わせ、今後の運営については社内で検討する」(UUUM IR担当者)という。異例の早期撤退には同社の焦りもうかがえる。 今回の決算について、「過去最大の赤字は、過去最高益のために」と弁明したUUUM。数々のリストラ策によって一時的な収益改善効果は期待できるものの、過去最高益に向けた突破口はいまだ見えないままだ』、「UUUM。数々のリストラ策によって一時的な収益改善効果は期待できるものの、過去最高益に向けた突破口はいまだ見えないままだ」、その通りだ。
次に、昨年7月26日付け東洋経済オンライン「UUUMが「YouTuberビジネス」でつまずいた真相 潮流の変化追いつけず、「UUUM離れ」じわり加速」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/689475
・『YouTuberビジネスのパイオニアは、かつての勢いを取り戻せるのか。 国内最大のYouTuber事務所であるUUUMは、7月14日に発表した2023年5月期決算において上場以来初の営業赤字へと転落した(詳細はこちら)。 同社はYouTuberへの注目度が急上昇していた2017年に上場。2019年には株価が一時6870円にまで達し、時価総額も1000億円を超えた。しかしここ1~2年は業績が低迷し、足元の株価はピーク時のおよそ10分の1の600円台半ばにしぼんでいる』、「同社はYouTuberへの注目度が急上昇していた2017年に上場。2019年には株価が一時6870円にまで達し、時価総額も1000億円を超えた。しかしここ1~2年は業績が低迷し、足元の株価はピーク時のおよそ10分の1の600円台半ばにしぼんでいる」、「株価はピーク時のおよそ10分の1」とはずいぶん落ち込んだものだ。
・『ショート動画の拡大が逆風? UUUMは売上高が苦戦した要因の1つとして、「YouTubeショート」の再生回数増加に伴い、通常の動画の再生回数が想定を下回り、アドセンス(YouTube広告)収入が減少したことを挙げる。そのためネット上では、「ショートショック」という言葉も数多くささやかれた。 YouTubeショートとは、最大60秒の縦型動画のことで、日本では2021年からサービスが開始されている。一気に人気コンテンツとなり、UUUMでも直近の3月から5月にかけては、ショートの再生数が通常の動画を上回る水準にまで増加した。 一方、ショートは通常の動画よりも1再生当たりのアドセンスの単価が低い。またUUUM関係者は「(ショートが)チャンネル登録者数に関係なく動画が表示されるアルゴリズムとなっており、人気YouTuberほど恩恵が少ない」と漏らす。結果的に、通常の動画の落ち込みをカバーするには至らなかった。 しかし、このように外部要因の影響を強調するUUUM側の説明には疑問も残る。) Google合同会社でYouTubeクリエイターエコシステムパートナーシップ統括部長を務めるイネス・チャ氏は「YouTube全体としては、ショートの登場により、それ以外の動画の再生回数が減ったという事実はない」と断言する。 また、YouTube側はショートのアルゴリズムについて、チャンネル登録者数に関係なく動画が再生されるのは事実と認める一方、「(嗜好などに応じて)ユーザーが見たい動画が優先的に表示される仕組み」(イネス氏)と説明する。UUUMが多数抱えるような人気YouTuberほど不利な状況にある、との見方については否定した。 YouTuberの中には、ショートによって若者や海外視聴者をうまく取り込んで成功している例もある。例えば直近では、TikTok出身のクリエイターを中心に、ショートを数多く活用したYouTuberがチャンネル登録者数を急速に伸ばし始めている。UUUMで最多の登録者数(1140万人)を誇るヒカキンの2倍近いチャンネル登録者数を集めるクリエイターもいる。 その意味では、UUUMが苦境に陥った根因は、ショート人気という潮流の変化を機微にとらえたクリエイターの育成・サポートができなかった点にあるとも言えるだろう』、「UUUMが苦境に陥った根因は、ショート人気という潮流の変化を機微にとらえたクリエイターの育成・サポートができなかった点にあるとも言える」、なるほど。
・『人気YouTuberを囲い込めなくなった理由 そもそもUUUMの苦境は、ショートショック以前から始まっていた。 ヒカキンやはじめしゃちょーなど、かつてはトップYouTuberが次から次へとUUUMに集う状況だったが、近年は同社に所属していないYouTuberの活躍が目立つ。「近年勢いのある”新世代YouTuber”たちの中で、UUUM所属はエスポワール・トライブくらい」。業界関係者はそう分析する。 (UUUMの業績推移については、リンク先参照) UUUMが人気YouTuberの囲い込みに苦戦している要因について、元UUUM専属のYouTuberのおのだまーしー氏は「(UUUMが)報酬に見合ったサポートを提供できていないことが大きいのではないか」と話す。 UUUMはYouTuberとの通常の専属契約において、企業とのタイアップ案件の提案やイベントへの招待、担当社員との定例ミーティングなどのサポートを行っている。これらの対価として、UUUM側は多くの場合、アドセンス収入の20%(YouTube外のタレント活動については25%)を徴収しているとされる。) 動画の再生数が増えるほどUUUM側が受け取る対価も増える仕組みだが、一般的に、YouTuberは企画から撮影、投稿まで動画制作のほぼすべての工程を自分で行うことが多い。そのため、「クリエイターが人気になるほど、UUUM側のサポートが20%の対価に見合わなくなってしまう構造にある」(おのだまーしー氏)という。 チャンネル登録者数が増えて一定の収入を稼げるレベルに達すると、対価を支払いながらUUUMのサポートを受けるよりも、独立してマネジャーなどを自ら雇ったほうが安くつくケースもあるようだ。 とくにコロナ期間中はイベントが開催できず、企業の広告出稿意欲も落ち込み、タイアップなどの案件が減少した一方、巣ごもり特需で動画再生数は増えた。そのため「イベント開催や案件紹介などUUUMからのサポートが減少する一方で、UUUM側に支払う対価は増えていた」(業界関係者)。そうした事情もあってか、複数の業界関係者によれば、コロナ禍以降にUUUMからYouTuberが独立する動きが目立ったという』、「YouTuberは企画から撮影、投稿まで動画制作のほぼすべての工程を自分で行うことが多い。そのため、「クリエイターが人気になるほど、UUUM側のサポートが20%の対価に見合わなくなってしまう構造にある」・・・という。 チャンネル登録者数が増えて一定の収入を稼げるレベルに達すると、対価を支払いながらUUUMのサポートを受けるよりも、独立してマネジャーなどを自ら雇ったほうが安くつくケースもあるようだ」、なるほど。
・『YouTuberのビジネスモデルに変化も アドセンスを柱に成長してきたUUUMにとっては、昨今のYouTuberビジネスの変容も逆風となった。 「『YouTubeでどう稼ぐか』から、『YouTubeを使ってどう稼ぐか』に変わった」。YouTuberを軸にしたビジネスを数多く展開するサムライパートナーズの入江巨之代表取締役は、そう話す。 入江氏は2019年に、人気YouTuberのヒカルらとともにアパレルブランド「ReZARD」を立ち上げた。立ち上げから3年で累計売り上げが70億円を突破し、YouTuberによる新たなビジネスモデルの先駆けとして知られる。 YouTuberの間では目下、こうしたYouTube以外の場での収益拡大を模索する動きが広がっている。チャンネル間での競争激化やYouTubeの広告費の伸び鈍化などにより、広告収入のみでの収益化の難易度が増したことが背景にある。UUUMにおいても、最大の収益柱であるアドセンス収入は2021年頃から伸び悩みに直面していた。 UUUMも手をこまぬいているわけではない。例えば、ヒカキンによる新ブランド「HIKAKIN PREMIUM(ヒカキン プレミアム)」から2023年5月に発売されたカップラーメン「みそきん」は、各地で品切れが相次ぐなど話題を呼んだ。 しかし、同社から展開されるP2Cブランド(YouTuberらを起点としたブランド商品)はプロテインやグミ、カップラーメンなど単価の低いものが目立つ。ある業界関係者は「ヒカキンなどのUUUM所属YouTuberは子どものファンが多い。そのため単価の高い商品を販売しづらいのではないか」と話す。) 現状、UUUMの主な収益源は3つ。アドセンスとP2Cブランド(グッズ)、そしてマーケティングだ。 アドセンス依存脱却に向けて強化に乗り出したP2Cブランドは、前2023年5月期に多額の在庫評価損を計上するなど、本格的な収益貢献までには課題も多い。そこで改めて今、同社が強化する姿勢を明確にしているのがマーケティング領域だ』、「アドセンス依存脱却に向けて強化に乗り出したP2Cブランドは、前2023年5月期に多額の在庫評価損を計上するなど、本格的な収益貢献までには課題も多い。そこで改めて今、同社が強化する姿勢を明確にしているのがマーケティング領域だ」、なるほど。
・『国内インフルエンサーマーケティング市場の規模 インフルエンサーを活用したマーケティングの需要は年々拡大傾向にあり、今後も大きな成長が予測されている。YouTuberを数多く抱えるUUUMにとっては好機だが、前期はそのマーケティング領域でも減収となり、旺盛な需要をうまく取り込めていない状況にある。 同社のIR担当者は「(マーケティング領域は)市場の拡大による案件の分散化や、クライアントのニーズの多様化への対応が遅れてしまった」と認めたうえで、「現在は、タイアップなどの既存の広告メニューとは違った新たな広告メニューへの対応を推進している」と説明する』、「マーケティングの需要は年々拡大傾向にあり、今後も大きな成長が予測されている。YouTuberを数多く抱えるUUUMにとっては好機だが、前期はそのマーケティング領域でも減収となり、旺盛な需要をうまく取り込めていない状況にある・・・市場の拡大による案件の分散化や、クライアントのニーズの多様化への対応が遅れてしまった」と認めたうえで、「現在は、タイアップなどの既存の広告メニューとは違った新たな広告メニューへの対応を推進している」、なるほど。
・『マーケ強化へ役員を社外から2人登用 UUUMは今期、人員削減などの構造改革に乗り出す一方、テクノロジー投資は8400万円の増加を見込む。テクノロジーの活用によって多様な広告メニューを開発することで、マイクロインフルエンサーとよばれる小規模のクリエイターにまで低コストでマーケティングを展開できるようにするという。 クリエイティブやPR領域に強い役員を社外から2人登用し、PR・コンサル領域で勢いのあるマテリアル社との業務提携も発表した。UUUMはこうした新規領域がアドセンスに次ぐ収益柱となることで、今後の再成長につなげられると想定する。 創業10年目にして厳しい状況に陥ったUUUMだが、今も業界最大手のポジションにあることには変わりない。過去最大の赤字という逆境を乗り越えられるか。今が正念場だ』、「創業10年目にして厳しい状況に陥ったUUUMだが、今も業界最大手のポジションにあることには変わりない。過去最大の赤字という逆境を乗り越えられるか。今が正念場だ」、その通りだろう。
第三に、本年4月18日付け東洋経済オンラインが掲載したネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャーの城戸 譲氏による「「ケンタとローチケ」炎上したアプリ改悪の共通点 企業と消費者のコミュニケーションが遮断された」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/748953
・『ケンタッキーフライドチキン(KFC)のスマートフォンアプリが、アップデートによって改悪したと「炎上」している。ユーザーインターフェースが大幅変更され、商品メニューを開くのですら一苦労。SNSでもアプリストアでも、不評が相次いで投稿されている。 新たな「顧客接点」として存在感を示すスマホアプリだが、仕様変更によって、マイナス印象を残すことも少なくない。先日はローソンチケットのアプリも、リニューアルによって、使い勝手が悪くなったと話題になった。 アップデートによって「燃えた」2つのアプリを見ながら、実店舗とスマホにおける「購買体験」の違いを考えてみよう』、「アップデートによって「燃えた」2つのアプリを見ながら、実店舗とスマホにおける「購買体験」の違いを考えてみよう」、「アップデートによって「燃えた」2つのアプリを見ながら、実店舗とスマホにおける「購買体験」の違いを考えてみよう」、「アップデート」によって使い勝手が悪くなり、「炎上」するのは、有り得る話だ。
・『「まれに見る大改悪」と評判に KFCのスマートフォン用アプリは、2024年4月初旬にリニューアルされた。旧アプリと別に用意されているわけではなく、アプリストアで更新をかければ、すぐ反映されるようになっている。つまり「半強制移行」と言えるだろう。 そんな新アプリが、これまで以上に使い勝手がいいのなら、何の問題もない。しかしリリース直後から、SNS上では「ログインできない」「なかなかメニュー画面にたどり着けない」「クーポンも見にくい」といった指摘が相次ぎ、「まれに見る大改悪」と評判になってしまっている。 AppleのAppStoreを見てみると、このアプリは4月18日正午時点で、星4.5とそれなりに評価が高い。しかし、そのほとんどは旧アプリに対する評価で、4月に入ってからは「星1」だらけに。コメントも「絶望感が漂う」「削除することにした」「カーネルおじさんも泣いている」などと辛辣な内容が書き込まれている。) 突然ネットサービスの仕様が変わり、ユーザーの困惑を招くケースは珍しくない。直近では「ローチケ」の愛称で知られるローソンチケットのアプリも、改悪だと話題になった。こちらも4月上旬に変更が行われたのだが、その内容が「チケットが消えるのでは」との心配を招いたこともあり、炎上状態となった。 新しいローチケアプリでは、不正・転売の防止を理由に、電子チケットの表示(ダウンロード)後に機種変更や、アプリの再インストールを行うと、チケットを再表示できなくなった。もし再表示できなくなっても、カスタマーセンターでの状況確認を経れば、再表示できるのだが、その説明が十分でなかったために、ユーザーを混乱させる事態となった。この点は、KFCアプリにも通ずるところだ』、「KFCのスマートフォン用アプリ」は「リリース直後から、SNS上では「ログインできない」「なかなかメニュー画面にたどり着けない」「クーポンも見にくい」といった指摘が相次ぎ、「まれに見る大改悪」と評判になってしまっている」、「新しいローチケアプリでは、不正・転売の防止を理由に、電子チケットの表示(ダウンロード)後に機種変更や、アプリの再インストールを行うと、チケットを再表示できなくなった。もし再表示できなくなっても、カスタマーセンターでの状況確認を経れば、再表示できるのだが、その説明が十分でなかったために、ユーザーを混乱させる事態となった」、ベンダー任せにせず、自社でテストしてみればこうした問題は起きない筈だ。自社でテストが不十分だったのだろう。
・『商品ページすら、なかなかたどり着かず… 話題のKFCアプリを実際に触ってみた。開くとまず、画面上部に「まずは受取方法と店舗を選択」の説明文とともに、「注文する」のボタンが表示される。それを押すと、「お持ち帰り」か「デリバリー」を選択する画面が現れ、いずれか選択すると、店舗選択画面が現れる……と、階層は何段階も深くなるものの、なかなか商品にはたどり着かない。 改めて、トップ画面に戻って、下部へスクロールすると「メニュー」のタイル画像があった。そうそう、これが知りたかったんだよ、とタップするも、また「お持ち帰り」「デリバリー」の壁が立ちはだかる。 軽減税率や商圏の関係で、価格が一律でないのは理解できるが、ただ単に「どんな商品が出ているか」が知りたいだけでも、これだけの手間を求められてしまう。 また、あらゆる画面で会員ログインを求められるが、これまでのデータは消えているため、手こずるユーザーも少なくないだろう。「パスワードは覚えておいてよ」とKFC側は思うかもしれないが、リアルなユーザーはこんなものではないだろうか。 ネットメディア編集者である筆者の感覚からすれば、「改悪」だの「劣化」だのといった表現は、冗談まじりのネットスラングとして、一般的なイメージよりフランクに使われている。とはいえ、実際にアプリを使ってみると、今回の「改悪」は誇張ではなく、まさに……という感想だ。) 筆者は数カ月前まで「KFC店舗から徒歩5分」に住んでいたので、旧アプリの使い勝手は、それなりに理解しているつもりだ。まだ新アプリを店頭で使ったことはないが、ちょっと触っただけでも、大きく利便性が損なわれていることはわかる』、「今回の「改悪」は誇張ではなく、まさに……という感想だ・・・まだ新アプリを店頭で使ったことはないが、ちょっと触っただけでも、大きく利便性が損なわれていることはわかる」かなり酷いようだ。
・『突然の仕様変更で、愛着すら消えてしまう危険性 そして、そのうえで感じるのは、これは「単なるアプリの改悪」にとどまらないのではないかという懸念だ。今まで築いてきた、企業と消費者のコミュニケーションや信頼関係が、今回の件をもって崩れ去ってしまったのではないかと感じるのだ。 実店舗やデリバリーでの商品提供のみならず、その注文過程も「購買体験」の一環となる。KFCアプリには、以前より購入頻度に応じたマイレージプログラムが用意されているが、これもまたユーザーの愛着を増す施策と言えるだろう。 ゆえに、突然の仕様変更によって、愛着すら消えてしまう危険性がある。これはKFCのみならず、実店舗とECなどを両面展開し、その結節点にスマートフォンを位置づけている企業であれば、さほど珍しい話ではない。 そして、ここが筆者の考える、KFCアプリとローチケアプリの相違点だ。やや辛辣な表現になってしまうかもしれないが、数あるチケットアプリのなかで、ローチケに思い入れを抱いている人は多くないだろう。アーティストや贔屓のスポーツチームのチケットがお目当てなわけで、アプリは目的ではないからだ。今回のような騒動があっても、「じゃあ他のアプリを使おう」と、サラッと鞍替えする可能性が高い。 しかし、KFCアプリは違う。ケンタのチキンやカーネルクリスピーをお得に食べたいから消費者は、KFCアプリをダウンロードしている。そのコミュニケーションが、改悪によって遮断されてしまったのだ。 ところで、筆者はドラッグストア「ココカラファイン」を愛用しているのだが、マツモトキヨシとの経営統合から数年たち、ついに先日、「マツキヨココカラ」の新アプリへと切り替えてくれとアナウンスされた。こちらはKFCと違って、旧アプリと新アプリが別に用意されているが、それはそれで別途インストール&アンインストールの手間がかかる。新居の最寄りは「サンドラッグ」だから、この機会に、そちらへ浮気しようかなと考え中だ。) KFCもローチケも、はたまたマツキヨココカラも、経営戦略の一環として、アプリを仕様変更しているはずだ。その過程には、社内のマニュアルづくりで変えられる接客と違って、アプリは小売業者が内製化しにくく、開発業者の能力に大きく左右されるところもあり、結果的に使用感をコントロールしづらい事情もあるだろう。 しかしながら、消費者に企業の事情は関係なく、「利便性が高いか、否か」が評価軸となる。店舗そのものでの顧客体験は変わらなくても、接点であるアプリの変化によって、消費者は評価するということを、企業側は忘れてはならない。——などといった話を書くと、「いずれ慣れるから気にするな」との意見が出がちだ。確かにごもっともだが、結果として慣れるのであれば、過渡期には消費者を振り回していいのかとなると、ちょっと疑問符が浮かぶ。 たとえばセルフレジは、ここ数年でかなり浸透した。キャッシュレス化の波に加えて、コロナ禍による衛生意識の高まりもあり、スムーズに操作できるようになった人も多いだろう。とはいえ、私ですら完全には慣れていない。 先日とあるスーパーで、完全ノンアルコールの「割り材」をセルフレジに通したら、店員確認が必要だと出てきた。駆け寄る店員さんに申し訳なさを覚えつつ、「次からは通常レジに持っていこうかな」と反省。これもまた、慣れるための通過儀礼なのだろう。 あくまでレアケースだ、と言われればそれまでだ。ただKFCの新アプリは、その前段階である通常使用の場面でも、大きな困惑を生んでいる。今回のみならず、「リリースする前に、なぜGOサインを出したのか」に疑問が投げかけられることは多々ある』、「ローチケに思い入れを抱いている人は多くないだろう。アーティストや贔屓のスポーツチームのチケットがお目当てなわけで、アプリは目的ではないからだ。今回のような騒動があっても、「じゃあ他のアプリを使おう」と、サラッと鞍替えする可能性が高い。 しかし、KFCアプリは違う。ケンタのチキンやカーネルクリスピーをお得に食べたいから消費者は、KFCアプリをダウンロードしている。そのコミュニケーションが、改悪によって遮断されてしまったのだ・・・KFCもローチケも、はたまたマツキヨココカラも、経営戦略の一環として、アプリを仕様変更しているはずだ。その過程には、社内のマニュアルづくりで変えられる接客と違って、アプリは小売業者が内製化しにくく、開発業者の能力に大きく左右されるところもあり、結果的に使用感をコントロールしづらい事情もあるだろう。 しかしながら、消費者に企業の事情は関係なく、「利便性が高いか、否か」が評価軸となる。店舗そのものでの顧客体験は変わらなくても、接点であるアプリの変化によって、消費者は評価するということを、企業側は忘れてはならない。——などといった話を書くと、「いずれ慣れるから気にするな」との意見が出がちだ。確かにごもっともだが、結果として慣れるのであれば、過渡期には消費者を振り回していいのかとなると、ちょっと疑問符が浮かぶ・・・KFCの新アプリは、その前段階である通常使用の場面でも、大きな困惑を生んでいる。今回のみならず、「リリースする前に、なぜGOサインを出したのか」に疑問が投げかけられることは多々ある」、なるほど。
・『「今日、ケンタッキーにしない?」といかなくなる? 先ほど「アプリの改悪にとどまらないのでは」と指摘したのは、まさにここから、ガバナンスやコンプライアンスといった、企業としての姿勢が透けてみえてしまうからだ。 KFCのテレビCMは「今日、ケンタッキーにしない?」のキャッチコピーで知られるが、それはあくまで「選択肢」として位置づけられている前提のもとで機能する。顧客第一でないと思われてしまえば、選択肢にすら上がらなくなってしまう。そういう意味でも、新アプリによる代償は大きいと感じるのだ』、「KFCのテレビCMは「今日、ケンタッキーにしない?」のキャッチコピーで知られるが、それはあくまで「選択肢」として位置づけられている前提のもとで機能する。顧客第一でないと思われてしまえば、選択肢にすら上がらなくなってしまう。そういう意味でも、新アプリによる代償は大きいと感じるのだ」、全く同感である。
タグ:ネットビジネス (その13)(UUUMが「過去最大の赤字」 創業10年で迎えた危機 ショート動画拡大が逆風に 決死の人員削減へ、UUUMが「YouTuberビジネス」でつまずいた真相 潮流の変化追いつけず 「UUUM離れ」じわり加速、「ケンタとローチケ」炎上したアプリ改悪の共通点 企業と消費者のコミュニケーションが遮断された) 東洋経済オンライン「UUUMが「過去最大の赤字」、創業10年で迎えた危機 ショート動画拡大が逆風に、決死の人員削減へ」 減益要因には、「急拡大するインフルエンサーマーケティングへの乗り遅れやスマホゲームの開発期間が延びたこと」など一時的要因もあるようだ。 「ショートから得られる広告収益」は、「1再生あたり0.01円」と、「通常の動画の1再生当たりの単価は0.3~2円程度」に比べ少ないので、「採算はとりづらい」ようだ。 「売上高ではアドセンスが約4割と、依然として大きな割合を占めている。拡大するインフルエンサーマーケティングへの対応の遅れや、P2Cでも前述の通り在庫コントロールの難しさから評価損を出すなど、思うように事業を伸ばせていないのが現状だ」、なるほど。 「UUUM。数々のリストラ策によって一時的な収益改善効果は期待できるものの、過去最高益に向けた突破口はいまだ見えないままだ」、その通りだ。 東洋経済オンライン「UUUMが「YouTuberビジネス」でつまずいた真相 潮流の変化追いつけず、「UUUM離れ」じわり加速」 「同社はYouTuberへの注目度が急上昇していた2017年に上場。2019年には株価が一時6870円にまで達し、時価総額も1000億円を超えた。しかしここ1~2年は業績が低迷し、足元の株価はピーク時のおよそ10分の1の600円台半ばにしぼんでいる」、「株価はピーク時のおよそ10分の1」とはずいぶん落ち込んだものだ。 「UUUMが苦境に陥った根因は、ショート人気という潮流の変化を機微にとらえたクリエイターの育成・サポートができなかった点にあるとも言える」、なるほど。 「YouTuberは企画から撮影、投稿まで動画制作のほぼすべての工程を自分で行うことが多い。そのため、「クリエイターが人気になるほど、UUUM側のサポートが20%の対価に見合わなくなってしまう構造にある」・・・という。 チャンネル登録者数が増えて一定の収入を稼げるレベルに達すると、対価を支払いながらUUUMのサポートを受けるよりも、独立してマネジャーなどを自ら雇ったほうが安くつくケースもあるようだ」、なるほど。 「アドセンス依存脱却に向けて強化に乗り出したP2Cブランドは、前2023年5月期に多額の在庫評価損を計上するなど、本格的な収益貢献までには課題も多い。そこで改めて今、同社が強化する姿勢を明確にしているのがマーケティング領域だ」、なるほど。 「マーケティングの需要は年々拡大傾向にあり、今後も大きな成長が予測されている。YouTuberを数多く抱えるUUUMにとっては好機だが、前期はそのマーケティング領域でも減収となり、旺盛な需要をうまく取り込めていない状況にある・・・市場の拡大による案件の分散化や、クライアントのニーズの多様化への対応が遅れてしまった」と認めたうえで、「現在は、タイアップなどの既存の広告メニューとは違った新たな広告メニューへの対応を推進している」、なるほど。 「創業10年目にして厳しい状況に陥ったUUUMだが、今も業界最大手のポジションにあることには変わりない。過去最大の赤字という逆境を乗り越えられるか。今が正念場だ」、その通りだろう。 東洋経済オンライン 城戸 譲氏による「「ケンタとローチケ」炎上したアプリ改悪の共通点 企業と消費者のコミュニケーションが遮断された」 「アップデートによって「燃えた」2つのアプリを見ながら、実店舗とスマホにおける「購買体験」の違いを考えてみよう」、「アップデートによって「燃えた」2つのアプリを見ながら、実店舗とスマホにおける「購買体験」の違いを考えてみよう」、「アップデート」によって使い勝手が悪くなり、「炎上」するのは、有り得る話だ。 「KFCのスマートフォン用アプリ」は「リリース直後から、SNS上では「ログインできない」「なかなかメニュー画面にたどり着けない」「クーポンも見にくい」といった指摘が相次ぎ、「まれに見る大改悪」と評判になってしまっている」、「新しいローチケアプリでは、不正・転売の防止を理由に、電子チケットの表示(ダウンロード)後に機種変更や、アプリの再インストールを行うと、チケットを再表示できなくなった。 もし再表示できなくなっても、カスタマーセンターでの状況確認を経れば、再表示できるのだが、その説明が十分でなかったために、ユーザーを混乱させる事態となった」、ベンダー任せにせず、自社でテストしてみればこうした問題は起きない筈だ。自社でテストが不十分だったのだろう。 「今回の「改悪」は誇張ではなく、まさに……という感想だ・・・まだ新アプリを店頭で使ったことはないが、ちょっと触っただけでも、大きく利便性が損なわれていることはわかる」かなり酷いようだ。 「ローチケに思い入れを抱いている人は多くないだろう。アーティストや贔屓のスポーツチームのチケットがお目当てなわけで、アプリは目的ではないからだ。今回のような騒動があっても、「じゃあ他のアプリを使おう」と、サラッと鞍替えする可能性が高い。 しかし、KFCアプリは違う。ケンタのチキンやカーネルクリスピーをお得に食べたいから消費者は、KFCアプリをダウンロードしている。そのコミュニケーションが、改悪によって遮断されてしまったのだ・・・ KFCもローチケも、はたまたマツキヨココカラも、経営戦略の一環として、アプリを仕様変更しているはずだ。その過程には、社内のマニュアルづくりで変えられる接客と違って、アプリは小売業者が内製化しにくく、開発業者の能力に大きく左右されるところもあり、結果的に使用感をコントロールしづらい事情もあるだろう。 しかしながら、消費者に企業の事情は関係なく、「利便性が高いか、否か」が評価軸となる。 店舗そのものでの顧客体験は変わらなくても、接点であるアプリの変化によって、消費者は評価するということを、企業側は忘れてはならない。——などといった話を書くと、「いずれ慣れるから気にするな」との意見が出がちだ。確かにごもっともだが、結果として慣れるのであれば、過渡期には消費者を振り回していいのかとなると、ちょっと疑問符が浮かぶ・・・KFCの新アプリは、その前段階である通常使用の場面でも、大きな困惑を生んでいる。今回のみならず、「リリースする前に、なぜGOサインを出したのか」に疑問が投げかけられることは多々あ る」、なるほど。 「KFCのテレビCMは「今日、ケンタッキーにしない?」のキャッチコピーで知られるが、それはあくまで「選択肢」として位置づけられている前提のもとで機能する。顧客第一でないと思われてしまえば、選択肢にすら上がらなくなってしまう。そういう意味でも、新アプリによる代償は大きいと感じるのだ」、全く同感である。
電池(その2)(EV向け車載電池「気がつけば供給過剰」の衝撃 中国の電池メーカー 生産能力が構造的過剰に、中国CATL「超急速充電」に対応した新型電池発表 低コストのリン酸鉄系、充電10分で400キロ走行、中国・広汽集団、「全固体電池」を2026年に搭載へ ベンチャー投資やスピンオフなど幅広く布石) [イノベーション]
電池については、2021年11月15日に取上げた。今日は、(その2)(EV向け車載電池「気がつけば供給過剰」の衝撃 中国の電池メーカー 生産能力が構造的過剰に、中国CATL「超急速充電」に対応した新型電池発表 低コストのリン酸鉄系、充電10分で400キロ走行、中国・広汽集団、「全固体電池」を2026年に搭載へ ベンチャー投資やスピンオフなど幅広く布石)である。
先ずは、昨年3月3日付け東洋経済オンラインが転載した財新 Biz&Tech 「EV向け車載電池「気がつけば供給過剰」の衝撃 中国の電池メーカー、生産能力が構造的過剰に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/655551
・『EV(電気自動車)の動力源である車載電池の市場が、大きな転機を迎えている。過去2年間、中国の電池メーカー各社はEVの販売急増を追い風に、生産能力の拡大競争を繰り広げてきた。ところが、ここにきて電池の在庫がにわかに膨張。業界内に在庫処分を急ぐ動きが広がり始めた。 「車載電池の在庫は電池メーカーとEVメーカーの両方に積み上がっている。そのうち電池メーカーの在庫は(容量ベースで)約80GWh(ギガワット時)、EVメーカーは約103GWhに上る」ノルウェーの調査会社リスタッド・エナジーの副総裁(副社長に相当)を務める鄒鈺屏氏は、2月21日に開催されたフォーラムの席上でそんな試算を示した。 鄒氏の試算は、車載電池の業界団体である中国汽車動力電池産業創新連盟(電池連盟)と自動車メーカーの業界団体である中国汽車工業協会の統計データに基づいている。電池メーカーの在庫は車載電池の生産量と販売量の差異から、EVメーカーの在庫は車載電池の販売量、輸出量、EVへの組み付け量の差異から算出した』、「ここにきて電池の在庫がにわかに膨張。業界内に在庫処分を急ぐ動きが広がり始めた・・・電池メーカーの在庫は(容量ベースで)約80GWh(ギガワット時)、EVメーカーは約103GWhに上る」ノルウェーの調査会社リスタッド・エナジーの副総裁(副社長に相当)を務める鄒鈺屏氏は、2月21日に開催されたフォーラムの席上でそんな試算」、「電池の在庫がにわかに膨張」とは穏やかならざる事態だ。
・『大手以外は淘汰の危機 電池メーカーが生産能力を増強する過程で、車載電池の生産量とEVへの組み付け量のミスマッチは徐々に拡大していた。だが、在庫増への危機感が業界内で頭をもたげてきたのは、2022年の後半になってからだ。 電池連盟のデータによれば、車載電池の生産量とEVへの組み付け量の差異は、2020年は19.8GWhにすぎなかった。それが2021年は65.2GWhと前年の約3.3倍に、2022年は251GWhと同約3.8倍に膨れ上がった。そのうち2022年の数字から同年の輸出量の68GWhを引くと、中国国内の(電池メーカーとEVメーカーを合わせた)総在庫量は183GWhとなる。 「2022年までは需給がタイトだったのに、2023年に入るとたちまち供給不足が解消した」。財新記者の取材に応じた中堅電池メーカーの幹部は、市場の風向きの急変ぶりをそう話す。 別の大手電池メーカーの関係者は、2023年後半には業界全体の生産能力が(需要に対して)過剰になるとの見方を示し、こう警鐘を鳴らした。 「車載電池業界は構造的な生産能力過剰に陥り、熾烈な競争に突入する可能性がある。大手メーカーは(自社の生産能力に見合った)十分な受注を確保できるかもしれないが、中堅以下は淘汰のリスクにさらされるだろう」』、「別の大手電池メーカーの関係者は、2023年後半には業界全体の生産能力が(需要に対して)過剰になるとの見方を示し、こう警鐘を鳴らした。 「車載電池業界は構造的な生産能力過剰に陥り、熾烈な競争に突入する可能性がある。大手メーカーは(自社の生産能力に見合った)十分な受注を確保できるかもしれないが、中堅以下は淘汰のリスクにさらされるだろう」、「車載電池業界は構造的な生産能力過剰に陥り、熾烈な競争に突入する可能性」、とは深刻だ。
次に、昨年9月6日付け東洋経済オンラインが転載した財新 Biz&Tech「中国CATL「超急速充電」に対応した新型電池発表 低コストのリン酸鉄系、充電10分で400キロ走行」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/698326
・『中国の車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)は8月16日、超急速充電に対応した新型のリン酸鉄系リチウムイオン電池「神行超充電池」を発表した。同社によれば新型電池を搭載したEV(電気自動車)は、一定の条件が揃えばわずか10分間の充電で400キロメートルを走行できる。 現在主流の車載電池は、正極材料の違いにより三元系とリン酸鉄系の2種類に分かれる。三元系はエネルギー密度が高く、急速充電に適しているが、(希少金属のコバルトなどを使うため)コストが高い。これに対し、リン酸鉄系はコストが低いのが長所だが、エネルギー密度はやや劣る』、興味深そうだ。
・『技術の詳細は公表せず 超急速充電への対応をうたうEVは、現時点ではいずれも三元系電池を搭載している。そんななか、CATLは正極、負極、電解液、セパレーターの材料構成を最適化することで、リン酸鉄系ながら三元系に勝るとも劣らない充電速度を実現したとしている。ただし、CATLは神行超充電池の技術的な詳細は明らかにしていない。 同じく8月16日、中国の新興EVメーカーの阿維塔科技(アバター・テクノロジー)は、CATLの神行超充電池を完成車メーカーとして初採用すると発表した。アバターは国有自動車大手の長安汽車、CATL、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の3社が2020年11月に共同で立ち上げた新ブランドであり、CATLはアバターの事業会社の第2位株主だ。) 「現在のEV市場では、超急速充電に対応した車両はまだ少ない。800ボルトの高電圧システムを車両と充電装置に組み込む必要があり、高い追加コストがかかるからだ」 財新記者の取材に応じたある自動車メーカーの部品調達担当者は、超急速充電をめぐる現状をそう話し、次のように続けた。 「超急速充電に対応するには、車両側に炭化ケイ素(SiC)などの(高電圧に対応可能な)部品を採用する必要がある。SiCはコストが高いだけでなく、安定供給の問題も抱えている。製造時の歩留まりが低く、(EVメーカーの)需要に供給が追いついていない」』、「「超急速充電に対応するには、車両側に炭化ケイ素(SiC)などの(高電圧に対応可能な)部品を採用する必要がある。SiCはコストが高いだけでなく、安定供給の問題も抱えている。製造時の歩留まりが低く、(EVメーカーの)需要に供給が追いついていない」、なるほど。
・『気温マイナス10度でも急速充電可能 この担当者によれば、CATLの神行超充電池は(相対的にコストが安い)400ボルトの急速充電システムに対応しており、EVメーカーにとって魅力的な選択肢だという。 別の自動車メーカーのエンジニアは、一般的なリン酸鉄系電池が低温下での充電に時間がかかるのに対し、神行超充電池は気温がマイナス10度でも急速充電が可能だと明かした。「これは大きなブレークスルーだ」と、このエンジニアは高く評価する。 なお、上述の2人の自動車メーカー関係者は、神行超充電池の価格水準については明かさなかった。CATLによれば、新型電池は2023年中に量産を開始し、2024年1~3月期にはEVメーカーの車両に搭載されるという』、「CATLの神行超充電池は(相対的にコストが安い)400ボルトの急速充電システムに対応しており、EVメーカーにとって魅力的な選択肢・・・気温がマイナス10度でも急速充電が可能」、これは大きなメリットだ。
第三に、12月6日付け東洋経済オンラインが転載した財新 Biz&Tech 「中国・広汽集団、「全固体電池」を2026年に搭載へ ベンチャー投資やスピンオフなど幅広く布石」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/718109
・『中国の国有自動車大手の広州汽車集団(広汽集団)は11月17日、EV(電気自動車)の性能を大幅に高める全固体電池を2026年から車両に搭載すると発表した。同社の総経理(社長に相当)を務める馮興亜氏が、広州モーターショーでのプレゼンテーションで計画を明らかにした。 全固体電池は、リチウムイオン電池の電解質を液体から固体に置き換えたものだ。従来型の電池よりエネルギー密度を大幅に高められると同時に、(液体を使わないため)液漏れや発火、破裂などの心配がなく、EVの安全性を改善できる。 広汽集団の説明によれば、同社が開発中の全固体電池セルは(十分な)安全性と信頼性のマージンを確保したうえで、1キログラム当たり400Wh(ワット時)のエネルギー密度を達成したという。液体電解質を使う車載電池のエネルギー密度は、現在主流の製品で同200~300Whであり、その1.3~2倍に相当する性能だ』、「全固体電池は、リチウムイオン電池の電解質を液体から固体に置き換えたものだ。従来型の電池よりエネルギー密度を大幅に高められると同時に、(液体を使わないため)液漏れや発火、破裂などの心配がなく、EVの安全性を改善できる。 広汽集団の説明によれば、同社が開発中の全固体電池セルは(十分な)安全性と信頼性のマージンを確保したうえで、1キログラム当たり400Wh(ワット時)のエネルギー密度を達成したという。液体電解質を使う車載電池のエネルギー密度は、現在主流の製品で同200~300Whであり、その1.3~2倍に相当する性能だ」、注目の「全固体電池」が「安全性と信頼性のマージンを確保したうえで、1キログラム当たり400Wh(ワット時)のエネルギー密度を達成した」、とは喜ばしいニュースだ。
・『出資先が2025年の量産を計画 「全固体電池の市販車への搭載は、3つのステップを経て進められる。第1ステップは、技術開発と(電池の)生産体制の立ち上げ。第2ステップは、自動車メーカーとの協業を通じたチューニングと小ロットでの試験搭載。第3ステップは、量産技術の確立と市販車への搭載だ」 そう解説するのは、全固体電池の研究開発を手がけるスタートアップ企業「清陶能源(チンタオ・エナジー)」の総経理を務める李峥氏だ。広汽集団は戦略投資家の一社として、清陶能源に出資している。 広汽集団が発表した「車両への搭載」が、上述の3ステップのどれに当たるかについて、同社は明確にしていない。なお、清陶能源は全固体電池の量産を2025年に開始する計画だ。) 全固体電池は次世代の車載電池の本命であり、電池メーカーだけでなく自動車メーカーも研究開発や量産計画を競っている。 例えば、国有自動車最大手の上海汽車集団は前出の清陶能源と協業し、2025年上半期から全固体電池を搭載する複数車種のEVを投入、同年末までに合計10万台を販売する計画を打ち出した。 ただし世界に目を転じると、全固体電池の技術開発では日本メーカーが最も先行しているとの見方が主流だ。 「日本のトヨタ自動車は(全固体電池に関する)膨大なノウハウを蓄積している。全固体電池の量産は、トヨタが最初に実現する可能性が高いだろう」。電池技術の専門家である上海交通大学教授の薄首行氏は、財新記者の取材に対してそう述べた』、「全固体電池の量産は、トヨタが最初に実現する可能性が高いだろう」、なるほど。
・『超高速充電技術も開発 広汽集団は全固体電池のほかにも、EV関連のサプライチェーンに幅広い布石を打っている。 例えば、研究開発部門の広汽研究院で超高速充電技術を開発していたチームをスピンオフさせ、2020年9月に「巨湾技研(グレーター・ベイ・テクノロジー)」を設立。同社は超高速充電に対応した新型電池の量産を2023年10月に開始した。 また、広汽集団の子会社で独自ブランドのEVやPHV(プラグインハイブリッド車)を生産・販売する広汽埃安(アイオン)は、車載電池および蓄電システム用電池の新会社「因湃電池科技」を2022年10月に設立した。 因湃電池科技は広東省広州市内に大規模な工場を建設中で、2024年3月までに量産を開始。さらに、2025年末までに年間生産能力をEV60万台分に相当する36GWh(ギガワット時)に拡大する計画だ』、「広汽集団は全固体電池のほかにも、EV関連のサプライチェーンに幅広い布石を打っている。 例えば、研究開発部門の広汽研究院で超高速充電技術を開発していたチームをスピンオフさせ、2020年9月に「巨湾技研(グレーター・ベイ・テクノロジー)」を設立。同社は超高速充電に対応した新型電池の量産を2023年10月に開始した。 また、広汽集団の子会社で独自ブランドのEVやPHV(プラグインハイブリッド車)を生産・販売する広汽埃安(アイオン)は、車載電池および蓄電システム用電池の新会社「因湃電池科技」を2022年10月に設立した。因湃電池科技は広東省広州市内に大規模な工場を建設中で、2024年3月までに量産を開始。さらに、2025年末までに年間生産能力をEV60万台分に相当する36GWh(ギガワット時)に拡大する計画だ」』、「広汽集団は全固体電池のほかにも、EV関連のサプライチェーンに幅広い布石を打っている」、大いに注目される。
先ずは、昨年3月3日付け東洋経済オンラインが転載した財新 Biz&Tech 「EV向け車載電池「気がつけば供給過剰」の衝撃 中国の電池メーカー、生産能力が構造的過剰に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/655551
・『EV(電気自動車)の動力源である車載電池の市場が、大きな転機を迎えている。過去2年間、中国の電池メーカー各社はEVの販売急増を追い風に、生産能力の拡大競争を繰り広げてきた。ところが、ここにきて電池の在庫がにわかに膨張。業界内に在庫処分を急ぐ動きが広がり始めた。 「車載電池の在庫は電池メーカーとEVメーカーの両方に積み上がっている。そのうち電池メーカーの在庫は(容量ベースで)約80GWh(ギガワット時)、EVメーカーは約103GWhに上る」ノルウェーの調査会社リスタッド・エナジーの副総裁(副社長に相当)を務める鄒鈺屏氏は、2月21日に開催されたフォーラムの席上でそんな試算を示した。 鄒氏の試算は、車載電池の業界団体である中国汽車動力電池産業創新連盟(電池連盟)と自動車メーカーの業界団体である中国汽車工業協会の統計データに基づいている。電池メーカーの在庫は車載電池の生産量と販売量の差異から、EVメーカーの在庫は車載電池の販売量、輸出量、EVへの組み付け量の差異から算出した』、「ここにきて電池の在庫がにわかに膨張。業界内に在庫処分を急ぐ動きが広がり始めた・・・電池メーカーの在庫は(容量ベースで)約80GWh(ギガワット時)、EVメーカーは約103GWhに上る」ノルウェーの調査会社リスタッド・エナジーの副総裁(副社長に相当)を務める鄒鈺屏氏は、2月21日に開催されたフォーラムの席上でそんな試算」、「電池の在庫がにわかに膨張」とは穏やかならざる事態だ。
・『大手以外は淘汰の危機 電池メーカーが生産能力を増強する過程で、車載電池の生産量とEVへの組み付け量のミスマッチは徐々に拡大していた。だが、在庫増への危機感が業界内で頭をもたげてきたのは、2022年の後半になってからだ。 電池連盟のデータによれば、車載電池の生産量とEVへの組み付け量の差異は、2020年は19.8GWhにすぎなかった。それが2021年は65.2GWhと前年の約3.3倍に、2022年は251GWhと同約3.8倍に膨れ上がった。そのうち2022年の数字から同年の輸出量の68GWhを引くと、中国国内の(電池メーカーとEVメーカーを合わせた)総在庫量は183GWhとなる。 「2022年までは需給がタイトだったのに、2023年に入るとたちまち供給不足が解消した」。財新記者の取材に応じた中堅電池メーカーの幹部は、市場の風向きの急変ぶりをそう話す。 別の大手電池メーカーの関係者は、2023年後半には業界全体の生産能力が(需要に対して)過剰になるとの見方を示し、こう警鐘を鳴らした。 「車載電池業界は構造的な生産能力過剰に陥り、熾烈な競争に突入する可能性がある。大手メーカーは(自社の生産能力に見合った)十分な受注を確保できるかもしれないが、中堅以下は淘汰のリスクにさらされるだろう」』、「別の大手電池メーカーの関係者は、2023年後半には業界全体の生産能力が(需要に対して)過剰になるとの見方を示し、こう警鐘を鳴らした。 「車載電池業界は構造的な生産能力過剰に陥り、熾烈な競争に突入する可能性がある。大手メーカーは(自社の生産能力に見合った)十分な受注を確保できるかもしれないが、中堅以下は淘汰のリスクにさらされるだろう」、「車載電池業界は構造的な生産能力過剰に陥り、熾烈な競争に突入する可能性」、とは深刻だ。
次に、昨年9月6日付け東洋経済オンラインが転載した財新 Biz&Tech「中国CATL「超急速充電」に対応した新型電池発表 低コストのリン酸鉄系、充電10分で400キロ走行」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/698326
・『中国の車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)は8月16日、超急速充電に対応した新型のリン酸鉄系リチウムイオン電池「神行超充電池」を発表した。同社によれば新型電池を搭載したEV(電気自動車)は、一定の条件が揃えばわずか10分間の充電で400キロメートルを走行できる。 現在主流の車載電池は、正極材料の違いにより三元系とリン酸鉄系の2種類に分かれる。三元系はエネルギー密度が高く、急速充電に適しているが、(希少金属のコバルトなどを使うため)コストが高い。これに対し、リン酸鉄系はコストが低いのが長所だが、エネルギー密度はやや劣る』、興味深そうだ。
・『技術の詳細は公表せず 超急速充電への対応をうたうEVは、現時点ではいずれも三元系電池を搭載している。そんななか、CATLは正極、負極、電解液、セパレーターの材料構成を最適化することで、リン酸鉄系ながら三元系に勝るとも劣らない充電速度を実現したとしている。ただし、CATLは神行超充電池の技術的な詳細は明らかにしていない。 同じく8月16日、中国の新興EVメーカーの阿維塔科技(アバター・テクノロジー)は、CATLの神行超充電池を完成車メーカーとして初採用すると発表した。アバターは国有自動車大手の長安汽車、CATL、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の3社が2020年11月に共同で立ち上げた新ブランドであり、CATLはアバターの事業会社の第2位株主だ。) 「現在のEV市場では、超急速充電に対応した車両はまだ少ない。800ボルトの高電圧システムを車両と充電装置に組み込む必要があり、高い追加コストがかかるからだ」 財新記者の取材に応じたある自動車メーカーの部品調達担当者は、超急速充電をめぐる現状をそう話し、次のように続けた。 「超急速充電に対応するには、車両側に炭化ケイ素(SiC)などの(高電圧に対応可能な)部品を採用する必要がある。SiCはコストが高いだけでなく、安定供給の問題も抱えている。製造時の歩留まりが低く、(EVメーカーの)需要に供給が追いついていない」』、「「超急速充電に対応するには、車両側に炭化ケイ素(SiC)などの(高電圧に対応可能な)部品を採用する必要がある。SiCはコストが高いだけでなく、安定供給の問題も抱えている。製造時の歩留まりが低く、(EVメーカーの)需要に供給が追いついていない」、なるほど。
・『気温マイナス10度でも急速充電可能 この担当者によれば、CATLの神行超充電池は(相対的にコストが安い)400ボルトの急速充電システムに対応しており、EVメーカーにとって魅力的な選択肢だという。 別の自動車メーカーのエンジニアは、一般的なリン酸鉄系電池が低温下での充電に時間がかかるのに対し、神行超充電池は気温がマイナス10度でも急速充電が可能だと明かした。「これは大きなブレークスルーだ」と、このエンジニアは高く評価する。 なお、上述の2人の自動車メーカー関係者は、神行超充電池の価格水準については明かさなかった。CATLによれば、新型電池は2023年中に量産を開始し、2024年1~3月期にはEVメーカーの車両に搭載されるという』、「CATLの神行超充電池は(相対的にコストが安い)400ボルトの急速充電システムに対応しており、EVメーカーにとって魅力的な選択肢・・・気温がマイナス10度でも急速充電が可能」、これは大きなメリットだ。
第三に、12月6日付け東洋経済オンラインが転載した財新 Biz&Tech 「中国・広汽集団、「全固体電池」を2026年に搭載へ ベンチャー投資やスピンオフなど幅広く布石」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/718109
・『中国の国有自動車大手の広州汽車集団(広汽集団)は11月17日、EV(電気自動車)の性能を大幅に高める全固体電池を2026年から車両に搭載すると発表した。同社の総経理(社長に相当)を務める馮興亜氏が、広州モーターショーでのプレゼンテーションで計画を明らかにした。 全固体電池は、リチウムイオン電池の電解質を液体から固体に置き換えたものだ。従来型の電池よりエネルギー密度を大幅に高められると同時に、(液体を使わないため)液漏れや発火、破裂などの心配がなく、EVの安全性を改善できる。 広汽集団の説明によれば、同社が開発中の全固体電池セルは(十分な)安全性と信頼性のマージンを確保したうえで、1キログラム当たり400Wh(ワット時)のエネルギー密度を達成したという。液体電解質を使う車載電池のエネルギー密度は、現在主流の製品で同200~300Whであり、その1.3~2倍に相当する性能だ』、「全固体電池は、リチウムイオン電池の電解質を液体から固体に置き換えたものだ。従来型の電池よりエネルギー密度を大幅に高められると同時に、(液体を使わないため)液漏れや発火、破裂などの心配がなく、EVの安全性を改善できる。 広汽集団の説明によれば、同社が開発中の全固体電池セルは(十分な)安全性と信頼性のマージンを確保したうえで、1キログラム当たり400Wh(ワット時)のエネルギー密度を達成したという。液体電解質を使う車載電池のエネルギー密度は、現在主流の製品で同200~300Whであり、その1.3~2倍に相当する性能だ」、注目の「全固体電池」が「安全性と信頼性のマージンを確保したうえで、1キログラム当たり400Wh(ワット時)のエネルギー密度を達成した」、とは喜ばしいニュースだ。
・『出資先が2025年の量産を計画 「全固体電池の市販車への搭載は、3つのステップを経て進められる。第1ステップは、技術開発と(電池の)生産体制の立ち上げ。第2ステップは、自動車メーカーとの協業を通じたチューニングと小ロットでの試験搭載。第3ステップは、量産技術の確立と市販車への搭載だ」 そう解説するのは、全固体電池の研究開発を手がけるスタートアップ企業「清陶能源(チンタオ・エナジー)」の総経理を務める李峥氏だ。広汽集団は戦略投資家の一社として、清陶能源に出資している。 広汽集団が発表した「車両への搭載」が、上述の3ステップのどれに当たるかについて、同社は明確にしていない。なお、清陶能源は全固体電池の量産を2025年に開始する計画だ。) 全固体電池は次世代の車載電池の本命であり、電池メーカーだけでなく自動車メーカーも研究開発や量産計画を競っている。 例えば、国有自動車最大手の上海汽車集団は前出の清陶能源と協業し、2025年上半期から全固体電池を搭載する複数車種のEVを投入、同年末までに合計10万台を販売する計画を打ち出した。 ただし世界に目を転じると、全固体電池の技術開発では日本メーカーが最も先行しているとの見方が主流だ。 「日本のトヨタ自動車は(全固体電池に関する)膨大なノウハウを蓄積している。全固体電池の量産は、トヨタが最初に実現する可能性が高いだろう」。電池技術の専門家である上海交通大学教授の薄首行氏は、財新記者の取材に対してそう述べた』、「全固体電池の量産は、トヨタが最初に実現する可能性が高いだろう」、なるほど。
・『超高速充電技術も開発 広汽集団は全固体電池のほかにも、EV関連のサプライチェーンに幅広い布石を打っている。 例えば、研究開発部門の広汽研究院で超高速充電技術を開発していたチームをスピンオフさせ、2020年9月に「巨湾技研(グレーター・ベイ・テクノロジー)」を設立。同社は超高速充電に対応した新型電池の量産を2023年10月に開始した。 また、広汽集団の子会社で独自ブランドのEVやPHV(プラグインハイブリッド車)を生産・販売する広汽埃安(アイオン)は、車載電池および蓄電システム用電池の新会社「因湃電池科技」を2022年10月に設立した。 因湃電池科技は広東省広州市内に大規模な工場を建設中で、2024年3月までに量産を開始。さらに、2025年末までに年間生産能力をEV60万台分に相当する36GWh(ギガワット時)に拡大する計画だ』、「広汽集団は全固体電池のほかにも、EV関連のサプライチェーンに幅広い布石を打っている。 例えば、研究開発部門の広汽研究院で超高速充電技術を開発していたチームをスピンオフさせ、2020年9月に「巨湾技研(グレーター・ベイ・テクノロジー)」を設立。同社は超高速充電に対応した新型電池の量産を2023年10月に開始した。 また、広汽集団の子会社で独自ブランドのEVやPHV(プラグインハイブリッド車)を生産・販売する広汽埃安(アイオン)は、車載電池および蓄電システム用電池の新会社「因湃電池科技」を2022年10月に設立した。因湃電池科技は広東省広州市内に大規模な工場を建設中で、2024年3月までに量産を開始。さらに、2025年末までに年間生産能力をEV60万台分に相当する36GWh(ギガワット時)に拡大する計画だ」』、「広汽集団は全固体電池のほかにも、EV関連のサプライチェーンに幅広い布石を打っている」、大いに注目される。
タグ:電池 (その2)(EV向け車載電池「気がつけば供給過剰」の衝撃 中国の電池メーカー 生産能力が構造的過剰に、中国CATL「超急速充電」に対応した新型電池発表 低コストのリン酸鉄系、充電10分で400キロ走行、中国・広汽集団、「全固体電池」を2026年に搭載へ ベンチャー投資やスピンオフなど幅広く布石) 東洋経済オンライン 財新 Biz&Tech 「EV向け車載電池「気がつけば供給過剰」の衝撃 中国の電池メーカー、生産能力が構造的過剰に」 「ここにきて電池の在庫がにわかに膨張。業界内に在庫処分を急ぐ動きが広がり始めた・・・電池メーカーの在庫は(容量ベースで)約80GWh(ギガワット時)、EVメーカーは約103GWhに上る」ノルウェーの調査会社リスタッド・エナジーの副総裁(副社長に相当)を務める鄒鈺屏氏は、2月21日に開催されたフォーラムの席上でそんな試算」、「電池の在庫がにわかに膨張」とは穏やかならざる事態だ。 「別の大手電池メーカーの関係者は、2023年後半には業界全体の生産能力が(需要に対して)過剰になるとの見方を示し、こう警鐘を鳴らした。 「車載電池業界は構造的な生産能力過剰に陥り、熾烈な競争に突入する可能性がある。大手メーカーは(自社の生産能力に見合った)十分な受注を確保できるかもしれないが、中堅以下は淘汰のリスクにさらされるだろう」、「車載電池業界は構造的な生産能力過剰に陥り、熾烈な競争に突入する可能性」、とは深刻だ。 財新 Biz&Tech「中国CATL「超急速充電」に対応した新型電池発表 低コストのリン酸鉄系、充電10分で400キロ走行」 「「超急速充電に対応するには、車両側に炭化ケイ素(SiC)などの(高電圧に対応可能な)部品を採用する必要がある。SiCはコストが高いだけでなく、安定供給の問題も抱えている。製造時の歩留まりが低く、(EVメーカーの)需要に供給が追いついていない」、なるほど。 「CATLの神行超充電池は(相対的にコストが安い)400ボルトの急速充電システムに対応しており、EVメーカーにとって魅力的な選択肢・・・気温がマイナス10度でも急速充電が可能」、これは大きなメリットだ。 財新 Biz&Tech 「中国・広汽集団、「全固体電池」を2026年に搭載へ ベンチャー投資やスピンオフなど幅広く布石」 「全固体電池は、リチウムイオン電池の電解質を液体から固体に置き換えたものだ。従来型の電池よりエネルギー密度を大幅に高められると同時に、(液体を使わないため)液漏れや発火、破裂などの心配がなく、EVの安全性を改善できる。 広汽集団の説明によれば、同社が開発中の全固体電池セルは(十分な)安全性と信頼性のマージンを確保したうえで、1キログラム当たり400Wh(ワット時)のエネルギー密度を達成したという。 液体電解質を使う車載電池のエネルギー密度は、現在主流の製品で同200~300Whであり、その1.3~2倍に相当する性能だ」、注目の「全固体電池」が「安全性と信頼性のマージンを確保したうえで、1キログラム当たり400Wh(ワット時)のエネルギー密度を達成した」、とは喜ばしいニュースだ。 「全固体電池の量産は、トヨタが最初に実現する可能性が高いだろう」、なるほど。 「広汽集団は全固体電池のほかにも、EV関連のサプライチェーンに幅広い布石を打っている。 例えば、研究開発部門の広汽研究院で超高速充電技術を開発していたチームをスピンオフさせ、2020年9月に「巨湾技研(グレーター・ベイ・テクノロジー)」を設立。同社は超高速充電に対応した新型電池の量産を2023年10月に開始した。 また、広汽集団の子会社で独自ブランドのEVやPHV(プラグインハイブリッド車)を生産・販売する広汽埃安(アイオン)は、車載電池および蓄電システム用電池の新会社「因湃電池科技」を2022年10月に設立した。因湃電池科技は広東省広州市内に大規模な工場を建設中で、2024年3月までに量産を開始。さらに、2025年末までに年間生産能力をEV60万台分に相当する36GWh(ギガワット時)に拡大する計画だ」』、「広汽集団は全固体電池のほかにも、EV関連のサプライチェーンに幅広い布石を打っている」、大いに注目される。
デジタルトランスフォーメーション(DX)(その3)(『DXレポート』に見る日本のDXの現在地 理想の組織と人材はどこにあるのか? 「DXレポート2」から2年〜目指すべき“デジタル産業への変革”とは(3)、なぜヤフーはLINEを作れなかったのか…元ヤフー社長が訴えたい「変わらないこと」の本当の恐ろしさ 日本が「デジタル後進国」と揶揄される根本原因) [イノベーション]
デジタルトランスフォーメーション(DX)については、昨年5月15日に取上げた。今日は、(その3)(『DXレポート』に見る日本のDXの現在地 理想の組織と人材はどこにあるのか? 「DXレポート2」から2年〜目指すべき“デジタル産業への変革”とは(3)、なぜヤフーはLINEを作れなかったのか…元ヤフー社長が訴えたい「変わらないこと」の本当の恐ろしさ 日本が「デジタル後進国」と揶揄される根本原因)である。
先ずは、本年6月15日付けダイヤモンド・オンライン「『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 「DXレポート2」から2年〜目指すべき“デジタル産業への変革”とは(3)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324499
・『経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」と、その続編である「DXレポート2」、追補版の「DXレポート2.1」「2.2」。各レポートが示す、DX人材や組織の目指すべきあり方を読み解く。また、アンケートやDX白書などのデータやAIなどの最新技術情報から、日本のDXの現在地を探る。 社会全体でデジタル化が進む中、企業もデータとデジタル技術を駆使したデジタルトランスフォーメーション(DX)によって、新たな価値を産み出すことが求められている。本シリーズの始めに「歴代『DXレポート』を改めて読み解く。なぜ緊急かつ重要なのか?なぜ誤解が生まれるのか?」では、経済産業省が公表した『DXレポート』(初代レポート)、『DXレポート2』を読み解きながら、デジタル変革による競争力強化の前に立ちはだかる課題を確認した。 また前稿「『DXレポート』が示したベンダーと企業との新しい関係性とは?」では、レポート2で触れられた従来の委託・受託による開発やユーザーとベンダーとの新しい関係、レポート2の追補版にあたる『DXレポート2.1』と『DXレポート2.2』で定義された、デジタル社会の実現に必要となる機能を社会にもたらす「デジタル産業」について、詳しく見ていった。 本稿ではまず、レポート2で触れられた、ジョブ型人事制度の拡大とDX人材の確保について、目指すべきあり方を考察。さらに読者アンケートや『DX白書2023』などのデータから日本のDXの現在地を探る』、「本稿ではまず、レポート2で触れられた、ジョブ型人事制度の拡大とDX人材の確保について、目指すべきあり方を考察。さらに読者アンケートや『DX白書2023』などのデータから日本のDXの現在地を探る」、なるほど。
・『DX人材採用では求める人物像を明確に設定して周知すべし DX推進のための組織のあり方やDX人材の確保について、各レポートはどう触れているのか。初代レポートは経営層のDXへのコミットが薄い点や、事業部門と情報システム部門との連携不足を課題として挙げていた。DX推進がベンダー頼りで、従来システムの運用・保守ができる人材が枯渇していることに関連して、一般企業がエンジニアの確保と教育が困難だという点も、初代レポートでは問題としている。 企業の経営陣はDX推進にあたり、どう動くべきか。レポート2.2では、デジタル産業への変革に向けたアクションを企業へ提示している。具体的には「デジタルを省力化・効率化ではなく、収益向上に活用する」「DX推進にあたって、経営者がビジョン・戦略だけでなく『行動指針』を示す」「個社単独ではなく、経営者自らの価値観を外部へ発信し、同じ価値観を持つ同志を集めて互いに変革を推進する、新たな関係を構築する」の3点である。) DX人材を確保する方法は、外部からの採用と内部での育成の2通りが考えられる。採用するなら、どんな人をどう採用すればよいのだろうか。大事なのは、自社のDX人材がどのような人物であるべきか、明確にしておくことだ。 レポート2にはDXを推進する理想の人材として、「構想力を持ち、明確なビジョンを描き、自ら組織をけん引し、実行することができるような人材が求められる」とある。またDX推進において、「企業が市場に対して提案する価値を現実のITシステムへと落とし込む技術者の役割が極めて重要である」としている。 求める人材を設定したら、これを周知することも大切だ。情報処理推進機構(IPA)が2023年3月に公開した『DX白書2023』によれば、DX人材像を周知していない企業が8割以上を占め、そもそも求める人材像を設定していない企業も4割に上る。同白書によれば、DX人材の不足は量的にも質的にも進む傾向にある。求人市場でのアピールだけでなく、社員などのコネクションを生かした「リファラル採用」などにより、獲得の手段を広げる必要もあるだろう』、「DX人材像を周知していない企業が8割以上を占め、そもそも求める人材像を設定していない企業も4割に上る」、少なくとも「求める人材像」は設定しておくべきだ。
・『内部人材の育成ではOJTも大切 アジャイル開発の実践も効果あり レポート2は「技術者のスキルの陳腐化は、DXの足かせとなることもある」とも指摘し、内部の人材の継続的な育成支援も重視する。「常に新しい技術に敏感になり、学び続けるマインドセットを持つことができるよう、専門性を評価する仕組みや、リカレント学習(生涯にわたる学習)の仕組みを導入すべき」と述べるほか、「副業・兼業を行いやすくし、人材流動や、社員が多様な価値観と触れる環境を整えることも重要」としている。 『いちばんやさしいDXの教本』著者の亀田重幸氏は、「研修も大事だが、実地で学ぶことが大切」と筆者の取材に対し、語っている(『DXはなぜやるべきか?どうして躓くのか?「基本のき」を専門家がやさしく解説』)。ヘッドハンティングなどで外部から専門性の高い人材を積極的に採用すると同時に、内部でも若手がさまざまな業務で経験を積んでスキルを広げていくことで、DXを進められる人材が育つという。 また初代レポートは「アジャイル開発の実践そのものが人材育成になる」と述べている。ユーザー企業の人材は開発手法を学ぶことができ、ベンダー企業の人材は開発を通じて業務への知見を得られるという点で、DX人材の育成に有効だという。) 求める人材の設定を明確にすること、これを周知することは、ジョブ型人事制度を活用して社外の優秀な人を取り入れることや、社内でリスキリングなどによりDXを実行できる人材を育てることにもつながる。レポート2では「ジョブ型雇用の考え方は、特に、DXを進めるに際して、社外を含めた多様な人材が参画してコラボレーションするようなビジネス環境として重要なものになる」「まずはジョブ(仕事の範囲、役割、責任)を明確にし、そのうえでさらに成果の評価基準を定めることから始めることが現実的である」と指摘する』、「「まずはジョブ(仕事の範囲、役割、責任)を明確にし、そのうえでさらに成果の評価基準を定めることから始めることが現実的である」、その通りだ。
・『DXで成果が出ている企業は約2割 中小企業や地方で取り組みに遅れ 2018年の初代レポート公開以降、日本企業のDXはどの程度進んでいるのか。ダイヤモンド・オンラインの会員を対象にした2022年10月のアンケートでは、「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」までは進んでいると回答した人が合計で62.06%と、全体の約3分の2近くに達している。しかしDX段階にあると答えた人の割合は16.08%にとどまる。 『DX白書2023』の結果でも、デジタイゼーションに相当する「アナログ・物理データのデジタル化」やデジタライゼーションに相当する「業務の効率化による生産性の向上」で成果が出ている企業の割合は、米国との差がなくなっている。しかしDXにあたる「新規製品・サービスの創出」「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」では、成果が出ている割合は20%台。米国の約70%とは大きく差が出ている。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? *集計対象は、DX取り組みの成果において「成果が出ている」と回答した企業 出典:IPA『DX白書2023』 国内のDX取り組み状況について、もう少し詳しく白書を見ていこう。総務省の調査では企業規模別のDX取り組み状況は、大企業の4割強に対して、中小企業では1割強と少なかった。IPAの調査でも、売り上げ規模が大きくなるほど取り組みの割合が高い傾向が現れている。従業員20人以下の中小企業では予算の確保が、21人以上の中小企業では、人材や企業文化・風土がDX取り組みの妨げとなっている。 また、東京23区では4割近くの企業でDXへの取り組みが進められているが、都市規模が小さくなるにつれてその割合が低くなる傾向もある。地方ではDXへの期待が業務効率化(80.4%)、生産性向上(69.6%)に向けられ、商圏拡大は5.4%にとどまる。 一方、東京都では商圏拡大に期待するという回答が21.3%にのぼり、大きな開きがある。「テクノロジーによって、資本や地域の別なく価値創造に参画できる」というデジタル産業の理想からは、かけ離れた実態がそこには見られる』、「DXにあたる「新規製品・サービスの創出」「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」では、成果が出ている割合は20%台。米国の約70%とは大きく差が出ている」、大差でやはり問題だ。
・『DXによる成果評価の頻度の低さが目立つ日本企業 白書を見ていくと「ITに見識のある役員の割合」「部門協調」「予算確保」「成果評価の頻度」などの面で、日本企業のDX取り組みには課題があると考えられる。特に、取り組みの成果を評価する頻度の低さは気になるところだ。これでは仮にDXに取り組み始めても、「やってみたけれども、うまくいっているかどうかは分からない」「どう改善すればいいか分からない」という企業も多いのではないだろうか。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 また、すでにレガシーシステムの置き換えが進む米国と比べて、日本では半分以上残っているという企業が41.2%にもなる。「2025年の崖」が叫ばれ、DX=レガシーシステムの刷新と誤解されたほどだったにもかかわらず、である。 とはいえ、DXに取り組んでいない企業では「レガシーシステムが自社にどの程度残っているのか」すら把握していない企業が40.8%も残っている。DXへ取り組むことが、レガシーシステムの把握・刷新へのきっかけとなっていることはうかがえる。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 システム開発の手法と技術については、SaaS、IaaS、PaaSなどのクラウドサービス活用は進みつつある。しかし新しい開発手法や技術の活用度合いは、米国と比べて低く、従来の手法から脱却できていない企業が多いようだ。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 データ利活用は進みつつあるが、全社で取り組む割合が日本では低く、取り組む予定がない企業の割合も約20%ある。また、利活用による効果を測定していない企業も5割前後と多い。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 日本ではデータの利活用がデータ整備やマスターデータ管理などの基礎段階にある企業が多い。データ整備・管理・流通においては人材、システム、文化といったさまざまな領域で課題があるため、効果が出るまでに至っていないのではないかと白書では分析している』、「システム開発の手法と技術については、SaaS、IaaS、PaaSなどのクラウドサービス活用は進みつつある。しかし新しい開発手法や技術の活用度合いは、米国と比べて低く、従来の手法から脱却できていない企業が多いようだ」、なるほど。
・『『DX白書2023』を確認 最新技術のDXへの活用は? 最新技術はどの程度、DXに活用されているのか。「第3次ブーム」が到来したと言われるAIと、IoT・デジタルツイン(現実の建造物などを仮想空間に再現する技術)について、DX白書2023に導入・活用状況のレポートがあるので確認してみよう。 まずAI導入の現状について。DX白書2023によれば日本のAI導入率は22.2%で、米国の40.4%との差はまだ大きい。さらに、AIの導入目的には大きな違いがある。米国では「集客効果の向上」「新製品の創出」「新サービスの創出」の割合が高いのに対し、日本では「生産性向上」「ヒューマンエラーの低減、撲滅」「品質向上」の割合が高い。顧客価値の向上など、DXを目的としたAI活用が進む米国に対し、日本では効率化を主眼としたデジタライゼーションの域にとどまっているのが現状だ。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 AI導入において、日本では導入・運用費用のほか、AIへの理解が自社で不足していることや、AI人材の不足、導入事例の不足、導入効果への不安が課題として大きいようだ。 IoT技術についても、導入が進む米国(48.4%)に比べて日本(23.3%)は取り組みに遅れが見られる。デジタルツインの構築・活用については、そもそも「構築・活用していない」という回答が日本では58.0%と高く、さまざまな領域で活用が進みつつある米国との差が大きい。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 IoT導入においても、予算不足、IoTに関する自社の理解不足、人材不足などが日本企業における課題として挙げられている』、「AIの導入目的には大きな違いがある。米国では「集客効果の向上」「新製品の創出」「新サービスの創出」の割合が高いのに対し、日本では「生産性向上」「ヒューマンエラーの低減、撲滅」「品質向上」の割合が高い。顧客価値の向上など、DXを目的としたAI活用が進む米国に対し、日本では効率化を主眼としたデジタライゼーションの域にとどまっているのが現状だ」、「AIの導入目的」の米国に比べた遅れは深刻で、まだまだのようだ。
・『効率化から価値創造へ踏み出し 成果測定による仮説検証を 最初のDXレポート公開から5年目の今も変わらない、効率化中心の投資については、レポート2.2も指摘するところである。DX推進に対して投入される経営資源がサービスの創造・革新といった価値向上に向かっていないことは、危惧すべき点である。 また白書が示すように、投資による成果がどの程度現れているのか、仮説検証に至るための効果測定が多くの企業で行われていないことも問題だ。「変わらなければ」というかけ声だけでは真のDX実践にはほど遠い。デジタライゼーションが徐々に進んでいることは評価に値するが、「企業がデジタルで変わること」は顧客に与える価値をさらに生み出したり増やしたりするための手段であって、目的ではないことには留意すべきだ。 DXの実践にあたっては、2020年11月に経済産業省が取りまとめ、2022年9月に改訂された「デジタルガバナンス・コード」も参照するといいだろう。デジタルガバナンス・コードは、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応をまとめたものだ。 デジタルガバナンス・コードを実践したい中堅・中小企業等に向けては「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」も用意されている。この手引きはDX実践のために必要な手法や技術に対する理解不足、人材不足、事例不足などの課題に対する回答の1つとして、中堅・中小企業においては特に有益ではないかと思う。 手引きにはDXの意義をはじめ、実現のための4つのプロセス、成功のポイントのほか、全国のDX実践企業の取り組み例・事例も11件掲載されている。末尾にある「DXセレクション2022」選定企業の経営者からのメッセージも力強い。規模の大小にかかわらず、DXに取り組んでいる、あるいはこれから取り組みたいという企業の経営者や推進担当者にとっては大きなヒントになるのではないだろうか』、「DX推進に対して投入される経営資源がサービスの創造・革新といった価値向上に向かっていないことは、危惧すべき点である。 また白書が示すように、投資による成果がどの程度現れているのか、仮説検証に至るための効果測定が多くの企業で行われていないことも問題だ・・・2020年11月に経済産業省が取りまとめ、2022年9月に改訂された「デジタルガバナンス・コード」も参照するといいだろう。デジタルガバナンス・コードは、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応をまとめたものだ。 デジタルガバナンス・コードを実践したい中堅・中小企業等に向けては「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」も用意されている」、興味がある方は参考にされたい。
次に、9月12日付けPRESIDENT Onlineが掲載したZホールディングス会長の川邊 健太郎氏による「なぜヤフーはLINEを作れなかったのか…元ヤフー社長が訴えたい「変わらないこと」の本当の恐ろしさ 日本が「デジタル後進国」と揶揄される根本原因」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/73565
・『【連載#私の失敗談 第8回】どんな人にも失敗はある。ヤフーやLINE、PayPayなどの企業を傘下に抱えるZホールディングス(ZHD)会長の川邊健太郎さんは「Yahoo!メッセンジャーがあったにもかかわらず、スマホ時代に対応できなかった。変わらないことがヤフーの致命的な失敗の一つになった。それは『デジタル後進国』と呼ばれる日本にも当てはまる」という――』、興味深そうだ。
・『必要な失敗を経験した人から成功に近づいていく 私自身の失敗は嫌というほどあります。そもそも、経営者が「失敗」から得ていく教訓には大きく2つあると思っています。 何か新たなチャレンジのために行動していくうえで、失敗というのは付きものでしょう。むしろ、失敗がなければ、うまくいくようにもならないのではないかと思っています。ですから、一つの結論として現在の私が思うのは、必要な失敗を経験した人から成功に近づいていくということです。「失敗」という名目の、いわば貯金が貯まっていって、とくに大きな成功の機会は訪れる。 もう一つ、必要な失敗をすることによって、リスクに対する捉え方が非常に敏感になったり、現実的になったりしていくことがその人をアグレッシブに鍛えるという結果になるのではないでしょうか。 事業家として当然、未知のチャレンジをしていくわけですが、それは、失敗を恐れてチャレンジすることに消極的になるのではなくて、むしろ、失敗のリスクの伴うチャレンジをどんどんしていくことで成功に近づいていくのだろうと、ふだんから考えています。 それは、さまざまな失敗を積み重ねることによって、致命傷には至らないようにリスクコントロールができるようになっていくととらえています』、「必要な失敗を経験した人から成功に近づいていくということです。「失敗」という名目の、いわば貯金が貯まっていって、とくに大きな成功の機会は訪れる。 もう一つ、必要な失敗をすることによって、リスクに対する捉え方が非常に敏感になったり、現実的になったりしていくことがその人をアグレッシブに鍛えるという結果になるのではないでしょうか」、「「失敗」という名目の、いわば貯金が貯まっていって、とくに大きな成功の機会は訪れる」、とは言い得て妙だ。
・『「電脳隊」時代の後悔 私自身の歩みは、学生のときからの起業家時代とYahoo! JAPANの経営者時代に大別できます。 まず、起業家時代については、先日、自分のツイッターで私が学生時代に設立したITベンチャーの「電脳隊」という会社の回顧録を書いたところです。そのまとめとして、パートナーシップを結ぶときは順番を間違えないことが大事になると強調しています。これは、逆にいうと、順番を間違えて失敗した私自身の実体験に基づいているからです。 最初はパソコンのインターネット事業を展開して、かなり早い時期からサービスのモバイル化にシフトしました。当時のモバイルインターネット事業で、われわれのように独自の開発ツールを作って売る会社にとっては、最大手の通信キャリアと組むことがすごく重要だったんです。 当時のわれわれは、その最大手と組もうとせず、ほかのところへ行ってしまった。その結果、競合キャリアの回し者と見なされ、最大手となかなか組むことができませんでした。最後の最後で、そのことが非常に大きな重い経営課題となって、会社を売却するところに至ったという痛烈で超大きな失敗体験です』、「当時のわれわれは、その最大手と組もうとせず、ほかのところへ行ってしまった。その結果、競合キャリアの回し者と見なされ、最大手となかなか組むことができませんでした。最後の最後で、そのことが非常に大きな重い経営課題となって、会社を売却するところに至ったという痛烈で超大きな失敗体験」、組む相手を間違うと簡単には是正できないようだ。
・『過信と知識不足で「組める相手と組めなかった」 いまから考えれば、われわれが開発したオリジナリティーの高い技術を持っている状況であるなら、最大手のキャリアとも全然組み得たと思います。 しかし、他のキャリアとも同時並行で組んでいけるだろうと見立てていた。敏感さが足りなかったのでしょう。むしろ、その通信キャリア同士で実は強烈な競争にしのぎを削っていて、われわれが同時並行でつきあえるような状況ではすでになかったんです。最大手と手を組めたはずなのに組まなかったという致命的な教訓になりました。 複数の通信キャリアと手を組めるだろうと思っていた過信、そしてキャリアの競争環境の激しさを理解していなかった知識不足です』、「複数の通信キャリアと手を組めるだろうと思っていた過信、そしてキャリアの競争環境の激しさを理解していなかった知識不足です」、「致命的な教訓」の原因は身近なようだ。
・『技術だけでは成功できない…手を組む相手を見極める重要性 それは、いまでもわれわれの経営方針に通じています。たとえば、たまたま声をかけてきてくれたところとパートナーシップを結ぶ交渉を始めたときでも、途中で立ち止まって、「いま話し合っているところが最大手といえるのか」と必ず確認するようになった。 あるいは、「最大手とも交渉しなくていいのか」というように、手痛い経験があるからこそ、ものすごく大きな教訓になっています。いわば、その瞬間でのスクリーンショットのシェアのことといいかえられますから、見極めるのはそう難しいことではありません。大事なのは、それを冷静に考慮に入れるかどうか、ということです。 必要な失敗をした事業こそ成功していくし、失敗が深ければ深いほど大成功につながっていくとも実感しています』、「たまたま声をかけてきてくれたところとパートナーシップを結ぶ交渉を始めたときでも、途中で立ち止まって、「いま話し合っているところが最大手といえるのか」と必ず確認するようになった。 あるいは、「最大手とも交渉しなくていいのか」というように、手痛い経験があるからこそ、ものすごく大きな教訓になっています・・・必要な失敗をした事業こそ成功していくし、失敗が深ければ深いほど大成功につながっていくとも実感しています」、なるほど。
・『「Yahoo! BB」の経験と「PayPay」の成功 冒頭に申し上げたとおり、必要な失敗をしたほうから成功していくし、失敗が深ければ深いほど大成功につながっていく。2000年代前半、ADSLサービス「Yahoo! BB」を普及させるために、駅前や家電量販店でモデム機器を大々的に無料で配ったとき様々な混乱が起きたことも、後になって振り返れば貴重な経験でした。 たくさんの体験を積み重ねてきたからこそ、たとえばスマートフォン決済サービス「PayPay」を急成長させることができたという感覚があります。Yahoo! BBの経験なくして、PayPay普及の一発勝負でうまくいったかどうかはわかりません。何か新しいものを普及させるときのやり方がもたらす成功と失敗の結果というのは、本当に表裏一体だと痛感します。 ahoo! BBのADSLにしても、すぐに光ファイバーによるインターネット通信に取って代わられていったりと、事業の将来と最終的な成否はわかりません。その瞬間でのスクリーンショットによる判断と申し上げたとおりです。ただし、いろいろな経験がPayPayには生きているのはたしかです。 さらに、QRコード決済という意味では、たしかにキャッシュレス化を一気に広めたと思います。すぐ隣を見れば、強敵もたくさんいますから、PayPayの成功に安住せず、日々精進というところです』、「QRコード決済という意味では、たしかにキャッシュレス化を一気に広めたと思います。すぐ隣を見れば、強敵もたくさんいますから、PayPayの成功に安住せず、日々精進というところです」、周囲を見渡して、自己満足せず、「日々精進」することが重要なようだ。
・『「Yahoo!メッセンジャー」が「LINE」に負けたワケ ヤフーを主語にして私が語るならば、PC全盛の時代から「Yahoo!メッセンジャー」というサービスがあったわけです。韓国で当時、はやり始めた「カカオトーク」のようなメッセンジングサービスとして「LINE」が登場し、あっという間に現在のように圧倒的なシェアを持つに至りました。 プロダクトとしては以前からあったのにもかかわらず、スマートフォン時代に、Yahoo!メッセンジャーをいまのLINEのような一強の存在に、ヤフーはしようと思えばできたはずなのに、見立ての甘さ、発想の誤りから、そのようにできず、2014年3月にサービスを終了しました。ヤフーの致命的な失敗の一つですね。 しかし、次の段階では、LINEと経営統合(2021年3月)するという、まったく違う方法で挽回することができました。 最大手とパートナーシップを結ぶ状況になった際、さらに、「その最良の相手が将来も最大手であるのかどうかはわからない」というテーマは別途ありまして、応用編の話です。相手とわれわれの将来は、現時点のスクリーンショットを見るのとは違って、見立てるのが不可能といっていいくらい、めちゃくちゃ難しいことです。手を結ぶと決めた相手を信じるしかない、という次元の世界になってくると思います。 Q:読書家として知られる川邊氏は、大きな影響を受けた一冊として、《偉大な企業は、すべてを正しく行うがゆえに失敗する――》という有名な一節で知られ、ハーバード・ビジネス・スクール教授などを歴任した著名な経営学者・故クレイトン・クリステンセンの世界的なベストセラー『イノベーションのジレンマ』を挙げる。話題は、昨今のマイナンバーカードをめぐるさまざまなトラブル、DXの遅れが指摘される日本社会の問題を、やさしく解きほぐすように広がった―― ▽なぜ日本は「デジタル後進国」と言われるようになったのか(ここまで申し上げてきたように、たとえばYahoo!メッセンジャーのケースがわかりやすいでしょう。PC上のメッセージングサービスとしてユーザーからの支持もシェアも非常に高かったのに、LINEのように、PCユーザーには振り向かず、スマホに特化したメッセージングサービスに一挙に覆されることになりました。 典型的なイノベーション・ジレンマに、われわれは陥っていたんです。「そうなるかもしれないことをわかっていたのに、なぜ、やらなかったのか」という自問自答を繰り返すことになりました。 DXが日本では後れているという一般論についても、問題をもう少しきちんと分解して考えたほうがいいと思います。日本の社会全体が、あるいは民間のサービス全体がDXで後れているということは、そんなに心配するレベルではありません。アメリカのGAFAMは世界で先端的なサービスを、みんなが活用していますし、われわれだって一所懸命にやっていますから。) 日本全体が遅れているのではなくて、行政や行政にまつわる分野。たとえば、医療や公共交通などの特定のジャンルで著しく遅れているという、自己認識が大事になると思います。なぜ遅れているのかというと、ひとえに、新しいものを容易に受け入れないような土壌があるのではないかと思います。 技術革新(イノベーション)ではなく、“勤勉革命”で何とかしようとしすぎているのではないでしょうか』、「(日本が)なぜ遅れているのかというと、ひとえに、新しいものを容易に受け入れないような土壌があるのではないかと思います。 技術革新(イノベーション)ではなく、“勤勉革命”で何とかしようとしすぎているのではないでしょうか」、「技術革新・・・ではなく、“勤勉革命”で何とかしようとしすぎている」というのは的確な診断だ。
・『「政府が悪い」と言うだけでは何も解決しない 技術でもっと生産性を上げることができるはずなのに、「技術革新は自分の仕事を奪うものだ」という思い込みにとらわれている人が少なからずいるからかもしれません。とくに、1台のタクシーを複数組の乗客が乗り合いで利用するライドシェアがいっこうに進んでいないことを目にするたび、働く人の根性でやろうとか、勤勉精神で何とかしようという風潮を感じます。怠けている人はいない、しかしがんばり方を間違っているのではないでしょうか。 あえて挙げるなら、競争環境がないのは一つの特徴といえるでしょうか。われわれがGAFAMと戦うとすれば、技術を用いて生産性を上げたり、付加価値を高めたりしなければ、顧客に選んでいただけません。しかし、行政にかかわる事業というのは独占状態ですね。1つの行政区には1つの区役所しかありませんし、公共交通も基本的には地域ごとに許認可事業で寡占状態のままです。医療・病院の業界にも競争原理が一応は導入されていますが、自由化というにはほど遠い。 競争がない、というのは、やはり大きな問題ではないでしょうか。単に行政が悪いというロジックで片づけるのではなく、競争原理がないという問題点こそ見ていく必要があるのではないか。競争原理が働かない結果、がんばり方を間違えるという悪循環に陥っているように思えます』、「競争原理が働かない結果、がんばり方を間違えるという悪循環に陥っているように思えます」、興味深い診断だ。
・『技術の力で日本を変えるしかない 物流業界が直面している「2024年問題」(※)は、わかりやすい変化のきっかけになると思います。 ※働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する問題の総称。 物流や移動にかかわる仕事に従事してきた人たちに依存してきた勤勉頼り一辺倒では、もはや駄目、ということになったわけですよね。「ちゃんと休みましょう」という世の中に変わり、働く人たちの勤勉だけでは人手は確保できず、社会生活が成り立たなくなる。それでようやく技術で解決するしかない、という流れになってきた。 もっと早く勤勉至上主義から技術革新へとシフトできていれば、トラックや公共交通の自動運転化は、より促進されたでしょう。それでも、2024年に問題が表出するまで追い込まれ、新しい方法でしか解決できないとなった結果、日本は技術革新を起こして前に進んでいくしかありません。) いままたインバウンドによる観光客であふれかえる日本でいっこうに進まないライドシェアについても、私はツイッターで発信しつづけてきました。 ただし、ライドシェアを推進したとしても、ドライバーの絶対数を必要とするのですから、それは過渡期的なことでしかありません。 公共交通は、とくに都市部より地方で、すでに深刻な問題になっている。それくらい切迫しています。よりAI化、自動化、無人化をどんどん進めていくしかないでしょう。このままわれわれ日本の最大の失敗に陥るのか、すんでのところで技術によって革新をもたらすのか、その瀬戸際に立っているのではないでしょうか』、「公共交通は、とくに都市部より地方で、すでに深刻な問題になっている。それくらい切迫しています。よりAI化、自動化、無人化をどんどん進めていくしかないでしょう。このままわれわれ日本の最大の失敗に陥るのか、すんでのところで技術によって革新をもたらすのか、その瀬戸際に立っているのではないでしょうか」、その通りだ。
・『規制は「悪」なのか Q:自身のツイッターなどをはじめ、メディアで機会あるごとに、ライドシェア促進について提言するほか、批判を受けるのを覚悟したうえでの発言とわかるように、日本のDXを急加速させるためには、永田町や霞が関がしきりに強調する「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」なるスローガンを取り下げるべきなのではないかと踏み込んできた。行政の規制にがんじがらめになっていると自他の声やまぬ日本の、横並びでゆでガエル状態になっている現在に、痛烈なる一石を投じた格好である。東京・渋谷の生まれ育ちながら、房総半島の南端である千葉・館山に移住したと公表し、都心でのハードワークとプライベートなスローライフを両立する日々を送りつつ、自らの被験者の視点も育んでいる―― 少子化、人口減に高齢化、さらに生産年齢人口も急激に減っていく中、定年退職をした高齢者に働いていただくなど社会の担い手を無理やり増やしてきたわけですけれども、それもいずれ限界が訪れる。たくさんの課題が生まれて、それを解決できない古い規制があるのでなくしましょう、という考え方もあります。 反対に、発展の著しい生成AI技術は可能性と同時に権利も保護しなければならない。ビッグデータの活用にはプライバシーや倫理上の問題も伴います。規制を強化する必要も考えられなくてはなりません。 いまの問題としては、新しい事象が起きているのに、昔の規制をそのままにしているために何かができなかったり、あるいは何かを試みるときにその規制が著しい障害になったりしているのであれば、状況に応じて変えなければならないでしょう、ということです。 都会から離れて住む者として実感する例でいえば、公共交通のドライバーが圧倒的に足りないのに、規制が変わらないのはおかしい、ということでしょうか。規制に限ったことではありませんが、変えるとは、取っ払うこともあれば、むしろ強化することも必要になるという認識を持っています。
・『日本を本当の「優しい国」にするために 変えるということに、反対はつきものでしょう。ただし、規制をそのまま維持するのが「優しい」ことに必ずなるとは、私は考えていません。新しい状況に対して困っている人がいるのなら、それを解決するのが本当の優しさだと思うからです。 規制を緩和することによって、一部の人が既得権から外れ、冷たくされたと恨みを抱くかもしれませんけれども、新しい状況に対して困っている多くの人を救うのなら、それが「優しい」と思います。 国内で約25万人といわれるタクシー運転手がさらに減っている。その何十倍、何百倍もの「移動難民」と呼ばれる人たちが救われ、助かるために、最大多数の最大幸福という観点で、どのようにするのがいいのか。議論の余地は、そう多くはないことでしょう。 日本のパスポート取得率は人口の2割を切っていますから、海外旅行の経験のない人がとても多い。インバウンドの盛んないまの日本では、海外の観光客が炎天下でタクシーが拾えずに汗だくで路上に立ち尽くしている光景が珍しくなくて、多くの日本人は海外旅行というのはそれが当たり前のものと思う人が少なくなくなっています。 しかし、世界ではシェアリング・エコノミーというイノベーションが起きて、タクシーなどに乗りたいときに乗れないということはなくなっている国が多くあります。規制を取っ払うと同時にイノベーションを起こして、困っている多くの人たちに優しくすべきなのではないでしょうか。 2023年10月に、ヤフーとLINEが一つの会社に統合して、「LINEヤフー」として新たなスタートを切ります。みなさんにとって、より便利なものをスピード感をもって、もっともっと出していきます』、「行政の規制にがんじがらめになっていると自他の声やまぬ日本の、横並びでゆでガエル状態になっている現在に、痛烈なる一石を投じた格好である・・・規制を緩和することによって、一部の人が既得権から外れ、冷たくされたと恨みを抱くかもしれませんけれども、新しい状況に対して困っている多くの人を救うのなら、それが「優しい」と思います・・・2023年10月に、ヤフーとLINEが一つの会社に統合して、「LINEヤフー」として新たなスタートを切ります。みなさんにとって、より便利なものをスピード感をもって、もっともっと出していきます」、「LINEヤフー」の新サービスが楽しみだ。
先ずは、本年6月15日付けダイヤモンド・オンライン「『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 「DXレポート2」から2年〜目指すべき“デジタル産業への変革”とは(3)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324499
・『経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」と、その続編である「DXレポート2」、追補版の「DXレポート2.1」「2.2」。各レポートが示す、DX人材や組織の目指すべきあり方を読み解く。また、アンケートやDX白書などのデータやAIなどの最新技術情報から、日本のDXの現在地を探る。 社会全体でデジタル化が進む中、企業もデータとデジタル技術を駆使したデジタルトランスフォーメーション(DX)によって、新たな価値を産み出すことが求められている。本シリーズの始めに「歴代『DXレポート』を改めて読み解く。なぜ緊急かつ重要なのか?なぜ誤解が生まれるのか?」では、経済産業省が公表した『DXレポート』(初代レポート)、『DXレポート2』を読み解きながら、デジタル変革による競争力強化の前に立ちはだかる課題を確認した。 また前稿「『DXレポート』が示したベンダーと企業との新しい関係性とは?」では、レポート2で触れられた従来の委託・受託による開発やユーザーとベンダーとの新しい関係、レポート2の追補版にあたる『DXレポート2.1』と『DXレポート2.2』で定義された、デジタル社会の実現に必要となる機能を社会にもたらす「デジタル産業」について、詳しく見ていった。 本稿ではまず、レポート2で触れられた、ジョブ型人事制度の拡大とDX人材の確保について、目指すべきあり方を考察。さらに読者アンケートや『DX白書2023』などのデータから日本のDXの現在地を探る』、「本稿ではまず、レポート2で触れられた、ジョブ型人事制度の拡大とDX人材の確保について、目指すべきあり方を考察。さらに読者アンケートや『DX白書2023』などのデータから日本のDXの現在地を探る」、なるほど。
・『DX人材採用では求める人物像を明確に設定して周知すべし DX推進のための組織のあり方やDX人材の確保について、各レポートはどう触れているのか。初代レポートは経営層のDXへのコミットが薄い点や、事業部門と情報システム部門との連携不足を課題として挙げていた。DX推進がベンダー頼りで、従来システムの運用・保守ができる人材が枯渇していることに関連して、一般企業がエンジニアの確保と教育が困難だという点も、初代レポートでは問題としている。 企業の経営陣はDX推進にあたり、どう動くべきか。レポート2.2では、デジタル産業への変革に向けたアクションを企業へ提示している。具体的には「デジタルを省力化・効率化ではなく、収益向上に活用する」「DX推進にあたって、経営者がビジョン・戦略だけでなく『行動指針』を示す」「個社単独ではなく、経営者自らの価値観を外部へ発信し、同じ価値観を持つ同志を集めて互いに変革を推進する、新たな関係を構築する」の3点である。) DX人材を確保する方法は、外部からの採用と内部での育成の2通りが考えられる。採用するなら、どんな人をどう採用すればよいのだろうか。大事なのは、自社のDX人材がどのような人物であるべきか、明確にしておくことだ。 レポート2にはDXを推進する理想の人材として、「構想力を持ち、明確なビジョンを描き、自ら組織をけん引し、実行することができるような人材が求められる」とある。またDX推進において、「企業が市場に対して提案する価値を現実のITシステムへと落とし込む技術者の役割が極めて重要である」としている。 求める人材を設定したら、これを周知することも大切だ。情報処理推進機構(IPA)が2023年3月に公開した『DX白書2023』によれば、DX人材像を周知していない企業が8割以上を占め、そもそも求める人材像を設定していない企業も4割に上る。同白書によれば、DX人材の不足は量的にも質的にも進む傾向にある。求人市場でのアピールだけでなく、社員などのコネクションを生かした「リファラル採用」などにより、獲得の手段を広げる必要もあるだろう』、「DX人材像を周知していない企業が8割以上を占め、そもそも求める人材像を設定していない企業も4割に上る」、少なくとも「求める人材像」は設定しておくべきだ。
・『内部人材の育成ではOJTも大切 アジャイル開発の実践も効果あり レポート2は「技術者のスキルの陳腐化は、DXの足かせとなることもある」とも指摘し、内部の人材の継続的な育成支援も重視する。「常に新しい技術に敏感になり、学び続けるマインドセットを持つことができるよう、専門性を評価する仕組みや、リカレント学習(生涯にわたる学習)の仕組みを導入すべき」と述べるほか、「副業・兼業を行いやすくし、人材流動や、社員が多様な価値観と触れる環境を整えることも重要」としている。 『いちばんやさしいDXの教本』著者の亀田重幸氏は、「研修も大事だが、実地で学ぶことが大切」と筆者の取材に対し、語っている(『DXはなぜやるべきか?どうして躓くのか?「基本のき」を専門家がやさしく解説』)。ヘッドハンティングなどで外部から専門性の高い人材を積極的に採用すると同時に、内部でも若手がさまざまな業務で経験を積んでスキルを広げていくことで、DXを進められる人材が育つという。 また初代レポートは「アジャイル開発の実践そのものが人材育成になる」と述べている。ユーザー企業の人材は開発手法を学ぶことができ、ベンダー企業の人材は開発を通じて業務への知見を得られるという点で、DX人材の育成に有効だという。) 求める人材の設定を明確にすること、これを周知することは、ジョブ型人事制度を活用して社外の優秀な人を取り入れることや、社内でリスキリングなどによりDXを実行できる人材を育てることにもつながる。レポート2では「ジョブ型雇用の考え方は、特に、DXを進めるに際して、社外を含めた多様な人材が参画してコラボレーションするようなビジネス環境として重要なものになる」「まずはジョブ(仕事の範囲、役割、責任)を明確にし、そのうえでさらに成果の評価基準を定めることから始めることが現実的である」と指摘する』、「「まずはジョブ(仕事の範囲、役割、責任)を明確にし、そのうえでさらに成果の評価基準を定めることから始めることが現実的である」、その通りだ。
・『DXで成果が出ている企業は約2割 中小企業や地方で取り組みに遅れ 2018年の初代レポート公開以降、日本企業のDXはどの程度進んでいるのか。ダイヤモンド・オンラインの会員を対象にした2022年10月のアンケートでは、「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」までは進んでいると回答した人が合計で62.06%と、全体の約3分の2近くに達している。しかしDX段階にあると答えた人の割合は16.08%にとどまる。 『DX白書2023』の結果でも、デジタイゼーションに相当する「アナログ・物理データのデジタル化」やデジタライゼーションに相当する「業務の効率化による生産性の向上」で成果が出ている企業の割合は、米国との差がなくなっている。しかしDXにあたる「新規製品・サービスの創出」「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」では、成果が出ている割合は20%台。米国の約70%とは大きく差が出ている。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? *集計対象は、DX取り組みの成果において「成果が出ている」と回答した企業 出典:IPA『DX白書2023』 国内のDX取り組み状況について、もう少し詳しく白書を見ていこう。総務省の調査では企業規模別のDX取り組み状況は、大企業の4割強に対して、中小企業では1割強と少なかった。IPAの調査でも、売り上げ規模が大きくなるほど取り組みの割合が高い傾向が現れている。従業員20人以下の中小企業では予算の確保が、21人以上の中小企業では、人材や企業文化・風土がDX取り組みの妨げとなっている。 また、東京23区では4割近くの企業でDXへの取り組みが進められているが、都市規模が小さくなるにつれてその割合が低くなる傾向もある。地方ではDXへの期待が業務効率化(80.4%)、生産性向上(69.6%)に向けられ、商圏拡大は5.4%にとどまる。 一方、東京都では商圏拡大に期待するという回答が21.3%にのぼり、大きな開きがある。「テクノロジーによって、資本や地域の別なく価値創造に参画できる」というデジタル産業の理想からは、かけ離れた実態がそこには見られる』、「DXにあたる「新規製品・サービスの創出」「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」では、成果が出ている割合は20%台。米国の約70%とは大きく差が出ている」、大差でやはり問題だ。
・『DXによる成果評価の頻度の低さが目立つ日本企業 白書を見ていくと「ITに見識のある役員の割合」「部門協調」「予算確保」「成果評価の頻度」などの面で、日本企業のDX取り組みには課題があると考えられる。特に、取り組みの成果を評価する頻度の低さは気になるところだ。これでは仮にDXに取り組み始めても、「やってみたけれども、うまくいっているかどうかは分からない」「どう改善すればいいか分からない」という企業も多いのではないだろうか。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 また、すでにレガシーシステムの置き換えが進む米国と比べて、日本では半分以上残っているという企業が41.2%にもなる。「2025年の崖」が叫ばれ、DX=レガシーシステムの刷新と誤解されたほどだったにもかかわらず、である。 とはいえ、DXに取り組んでいない企業では「レガシーシステムが自社にどの程度残っているのか」すら把握していない企業が40.8%も残っている。DXへ取り組むことが、レガシーシステムの把握・刷新へのきっかけとなっていることはうかがえる。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 システム開発の手法と技術については、SaaS、IaaS、PaaSなどのクラウドサービス活用は進みつつある。しかし新しい開発手法や技術の活用度合いは、米国と比べて低く、従来の手法から脱却できていない企業が多いようだ。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 データ利活用は進みつつあるが、全社で取り組む割合が日本では低く、取り組む予定がない企業の割合も約20%ある。また、利活用による効果を測定していない企業も5割前後と多い。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 日本ではデータの利活用がデータ整備やマスターデータ管理などの基礎段階にある企業が多い。データ整備・管理・流通においては人材、システム、文化といったさまざまな領域で課題があるため、効果が出るまでに至っていないのではないかと白書では分析している』、「システム開発の手法と技術については、SaaS、IaaS、PaaSなどのクラウドサービス活用は進みつつある。しかし新しい開発手法や技術の活用度合いは、米国と比べて低く、従来の手法から脱却できていない企業が多いようだ」、なるほど。
・『『DX白書2023』を確認 最新技術のDXへの活用は? 最新技術はどの程度、DXに活用されているのか。「第3次ブーム」が到来したと言われるAIと、IoT・デジタルツイン(現実の建造物などを仮想空間に再現する技術)について、DX白書2023に導入・活用状況のレポートがあるので確認してみよう。 まずAI導入の現状について。DX白書2023によれば日本のAI導入率は22.2%で、米国の40.4%との差はまだ大きい。さらに、AIの導入目的には大きな違いがある。米国では「集客効果の向上」「新製品の創出」「新サービスの創出」の割合が高いのに対し、日本では「生産性向上」「ヒューマンエラーの低減、撲滅」「品質向上」の割合が高い。顧客価値の向上など、DXを目的としたAI活用が進む米国に対し、日本では効率化を主眼としたデジタライゼーションの域にとどまっているのが現状だ。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 AI導入において、日本では導入・運用費用のほか、AIへの理解が自社で不足していることや、AI人材の不足、導入事例の不足、導入効果への不安が課題として大きいようだ。 IoT技術についても、導入が進む米国(48.4%)に比べて日本(23.3%)は取り組みに遅れが見られる。デジタルツインの構築・活用については、そもそも「構築・活用していない」という回答が日本では58.0%と高く、さまざまな領域で活用が進みつつある米国との差が大きい。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 IoT導入においても、予算不足、IoTに関する自社の理解不足、人材不足などが日本企業における課題として挙げられている』、「AIの導入目的には大きな違いがある。米国では「集客効果の向上」「新製品の創出」「新サービスの創出」の割合が高いのに対し、日本では「生産性向上」「ヒューマンエラーの低減、撲滅」「品質向上」の割合が高い。顧客価値の向上など、DXを目的としたAI活用が進む米国に対し、日本では効率化を主眼としたデジタライゼーションの域にとどまっているのが現状だ」、「AIの導入目的」の米国に比べた遅れは深刻で、まだまだのようだ。
・『効率化から価値創造へ踏み出し 成果測定による仮説検証を 最初のDXレポート公開から5年目の今も変わらない、効率化中心の投資については、レポート2.2も指摘するところである。DX推進に対して投入される経営資源がサービスの創造・革新といった価値向上に向かっていないことは、危惧すべき点である。 また白書が示すように、投資による成果がどの程度現れているのか、仮説検証に至るための効果測定が多くの企業で行われていないことも問題だ。「変わらなければ」というかけ声だけでは真のDX実践にはほど遠い。デジタライゼーションが徐々に進んでいることは評価に値するが、「企業がデジタルで変わること」は顧客に与える価値をさらに生み出したり増やしたりするための手段であって、目的ではないことには留意すべきだ。 DXの実践にあたっては、2020年11月に経済産業省が取りまとめ、2022年9月に改訂された「デジタルガバナンス・コード」も参照するといいだろう。デジタルガバナンス・コードは、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応をまとめたものだ。 デジタルガバナンス・コードを実践したい中堅・中小企業等に向けては「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」も用意されている。この手引きはDX実践のために必要な手法や技術に対する理解不足、人材不足、事例不足などの課題に対する回答の1つとして、中堅・中小企業においては特に有益ではないかと思う。 手引きにはDXの意義をはじめ、実現のための4つのプロセス、成功のポイントのほか、全国のDX実践企業の取り組み例・事例も11件掲載されている。末尾にある「DXセレクション2022」選定企業の経営者からのメッセージも力強い。規模の大小にかかわらず、DXに取り組んでいる、あるいはこれから取り組みたいという企業の経営者や推進担当者にとっては大きなヒントになるのではないだろうか』、「DX推進に対して投入される経営資源がサービスの創造・革新といった価値向上に向かっていないことは、危惧すべき点である。 また白書が示すように、投資による成果がどの程度現れているのか、仮説検証に至るための効果測定が多くの企業で行われていないことも問題だ・・・2020年11月に経済産業省が取りまとめ、2022年9月に改訂された「デジタルガバナンス・コード」も参照するといいだろう。デジタルガバナンス・コードは、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応をまとめたものだ。 デジタルガバナンス・コードを実践したい中堅・中小企業等に向けては「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」も用意されている」、興味がある方は参考にされたい。
次に、9月12日付けPRESIDENT Onlineが掲載したZホールディングス会長の川邊 健太郎氏による「なぜヤフーはLINEを作れなかったのか…元ヤフー社長が訴えたい「変わらないこと」の本当の恐ろしさ 日本が「デジタル後進国」と揶揄される根本原因」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/73565
・『【連載#私の失敗談 第8回】どんな人にも失敗はある。ヤフーやLINE、PayPayなどの企業を傘下に抱えるZホールディングス(ZHD)会長の川邊健太郎さんは「Yahoo!メッセンジャーがあったにもかかわらず、スマホ時代に対応できなかった。変わらないことがヤフーの致命的な失敗の一つになった。それは『デジタル後進国』と呼ばれる日本にも当てはまる」という――』、興味深そうだ。
・『必要な失敗を経験した人から成功に近づいていく 私自身の失敗は嫌というほどあります。そもそも、経営者が「失敗」から得ていく教訓には大きく2つあると思っています。 何か新たなチャレンジのために行動していくうえで、失敗というのは付きものでしょう。むしろ、失敗がなければ、うまくいくようにもならないのではないかと思っています。ですから、一つの結論として現在の私が思うのは、必要な失敗を経験した人から成功に近づいていくということです。「失敗」という名目の、いわば貯金が貯まっていって、とくに大きな成功の機会は訪れる。 もう一つ、必要な失敗をすることによって、リスクに対する捉え方が非常に敏感になったり、現実的になったりしていくことがその人をアグレッシブに鍛えるという結果になるのではないでしょうか。 事業家として当然、未知のチャレンジをしていくわけですが、それは、失敗を恐れてチャレンジすることに消極的になるのではなくて、むしろ、失敗のリスクの伴うチャレンジをどんどんしていくことで成功に近づいていくのだろうと、ふだんから考えています。 それは、さまざまな失敗を積み重ねることによって、致命傷には至らないようにリスクコントロールができるようになっていくととらえています』、「必要な失敗を経験した人から成功に近づいていくということです。「失敗」という名目の、いわば貯金が貯まっていって、とくに大きな成功の機会は訪れる。 もう一つ、必要な失敗をすることによって、リスクに対する捉え方が非常に敏感になったり、現実的になったりしていくことがその人をアグレッシブに鍛えるという結果になるのではないでしょうか」、「「失敗」という名目の、いわば貯金が貯まっていって、とくに大きな成功の機会は訪れる」、とは言い得て妙だ。
・『「電脳隊」時代の後悔 私自身の歩みは、学生のときからの起業家時代とYahoo! JAPANの経営者時代に大別できます。 まず、起業家時代については、先日、自分のツイッターで私が学生時代に設立したITベンチャーの「電脳隊」という会社の回顧録を書いたところです。そのまとめとして、パートナーシップを結ぶときは順番を間違えないことが大事になると強調しています。これは、逆にいうと、順番を間違えて失敗した私自身の実体験に基づいているからです。 最初はパソコンのインターネット事業を展開して、かなり早い時期からサービスのモバイル化にシフトしました。当時のモバイルインターネット事業で、われわれのように独自の開発ツールを作って売る会社にとっては、最大手の通信キャリアと組むことがすごく重要だったんです。 当時のわれわれは、その最大手と組もうとせず、ほかのところへ行ってしまった。その結果、競合キャリアの回し者と見なされ、最大手となかなか組むことができませんでした。最後の最後で、そのことが非常に大きな重い経営課題となって、会社を売却するところに至ったという痛烈で超大きな失敗体験です』、「当時のわれわれは、その最大手と組もうとせず、ほかのところへ行ってしまった。その結果、競合キャリアの回し者と見なされ、最大手となかなか組むことができませんでした。最後の最後で、そのことが非常に大きな重い経営課題となって、会社を売却するところに至ったという痛烈で超大きな失敗体験」、組む相手を間違うと簡単には是正できないようだ。
・『過信と知識不足で「組める相手と組めなかった」 いまから考えれば、われわれが開発したオリジナリティーの高い技術を持っている状況であるなら、最大手のキャリアとも全然組み得たと思います。 しかし、他のキャリアとも同時並行で組んでいけるだろうと見立てていた。敏感さが足りなかったのでしょう。むしろ、その通信キャリア同士で実は強烈な競争にしのぎを削っていて、われわれが同時並行でつきあえるような状況ではすでになかったんです。最大手と手を組めたはずなのに組まなかったという致命的な教訓になりました。 複数の通信キャリアと手を組めるだろうと思っていた過信、そしてキャリアの競争環境の激しさを理解していなかった知識不足です』、「複数の通信キャリアと手を組めるだろうと思っていた過信、そしてキャリアの競争環境の激しさを理解していなかった知識不足です」、「致命的な教訓」の原因は身近なようだ。
・『技術だけでは成功できない…手を組む相手を見極める重要性 それは、いまでもわれわれの経営方針に通じています。たとえば、たまたま声をかけてきてくれたところとパートナーシップを結ぶ交渉を始めたときでも、途中で立ち止まって、「いま話し合っているところが最大手といえるのか」と必ず確認するようになった。 あるいは、「最大手とも交渉しなくていいのか」というように、手痛い経験があるからこそ、ものすごく大きな教訓になっています。いわば、その瞬間でのスクリーンショットのシェアのことといいかえられますから、見極めるのはそう難しいことではありません。大事なのは、それを冷静に考慮に入れるかどうか、ということです。 必要な失敗をした事業こそ成功していくし、失敗が深ければ深いほど大成功につながっていくとも実感しています』、「たまたま声をかけてきてくれたところとパートナーシップを結ぶ交渉を始めたときでも、途中で立ち止まって、「いま話し合っているところが最大手といえるのか」と必ず確認するようになった。 あるいは、「最大手とも交渉しなくていいのか」というように、手痛い経験があるからこそ、ものすごく大きな教訓になっています・・・必要な失敗をした事業こそ成功していくし、失敗が深ければ深いほど大成功につながっていくとも実感しています」、なるほど。
・『「Yahoo! BB」の経験と「PayPay」の成功 冒頭に申し上げたとおり、必要な失敗をしたほうから成功していくし、失敗が深ければ深いほど大成功につながっていく。2000年代前半、ADSLサービス「Yahoo! BB」を普及させるために、駅前や家電量販店でモデム機器を大々的に無料で配ったとき様々な混乱が起きたことも、後になって振り返れば貴重な経験でした。 たくさんの体験を積み重ねてきたからこそ、たとえばスマートフォン決済サービス「PayPay」を急成長させることができたという感覚があります。Yahoo! BBの経験なくして、PayPay普及の一発勝負でうまくいったかどうかはわかりません。何か新しいものを普及させるときのやり方がもたらす成功と失敗の結果というのは、本当に表裏一体だと痛感します。 ahoo! BBのADSLにしても、すぐに光ファイバーによるインターネット通信に取って代わられていったりと、事業の将来と最終的な成否はわかりません。その瞬間でのスクリーンショットによる判断と申し上げたとおりです。ただし、いろいろな経験がPayPayには生きているのはたしかです。 さらに、QRコード決済という意味では、たしかにキャッシュレス化を一気に広めたと思います。すぐ隣を見れば、強敵もたくさんいますから、PayPayの成功に安住せず、日々精進というところです』、「QRコード決済という意味では、たしかにキャッシュレス化を一気に広めたと思います。すぐ隣を見れば、強敵もたくさんいますから、PayPayの成功に安住せず、日々精進というところです」、周囲を見渡して、自己満足せず、「日々精進」することが重要なようだ。
・『「Yahoo!メッセンジャー」が「LINE」に負けたワケ ヤフーを主語にして私が語るならば、PC全盛の時代から「Yahoo!メッセンジャー」というサービスがあったわけです。韓国で当時、はやり始めた「カカオトーク」のようなメッセンジングサービスとして「LINE」が登場し、あっという間に現在のように圧倒的なシェアを持つに至りました。 プロダクトとしては以前からあったのにもかかわらず、スマートフォン時代に、Yahoo!メッセンジャーをいまのLINEのような一強の存在に、ヤフーはしようと思えばできたはずなのに、見立ての甘さ、発想の誤りから、そのようにできず、2014年3月にサービスを終了しました。ヤフーの致命的な失敗の一つですね。 しかし、次の段階では、LINEと経営統合(2021年3月)するという、まったく違う方法で挽回することができました。 最大手とパートナーシップを結ぶ状況になった際、さらに、「その最良の相手が将来も最大手であるのかどうかはわからない」というテーマは別途ありまして、応用編の話です。相手とわれわれの将来は、現時点のスクリーンショットを見るのとは違って、見立てるのが不可能といっていいくらい、めちゃくちゃ難しいことです。手を結ぶと決めた相手を信じるしかない、という次元の世界になってくると思います。 Q:読書家として知られる川邊氏は、大きな影響を受けた一冊として、《偉大な企業は、すべてを正しく行うがゆえに失敗する――》という有名な一節で知られ、ハーバード・ビジネス・スクール教授などを歴任した著名な経営学者・故クレイトン・クリステンセンの世界的なベストセラー『イノベーションのジレンマ』を挙げる。話題は、昨今のマイナンバーカードをめぐるさまざまなトラブル、DXの遅れが指摘される日本社会の問題を、やさしく解きほぐすように広がった―― ▽なぜ日本は「デジタル後進国」と言われるようになったのか(ここまで申し上げてきたように、たとえばYahoo!メッセンジャーのケースがわかりやすいでしょう。PC上のメッセージングサービスとしてユーザーからの支持もシェアも非常に高かったのに、LINEのように、PCユーザーには振り向かず、スマホに特化したメッセージングサービスに一挙に覆されることになりました。 典型的なイノベーション・ジレンマに、われわれは陥っていたんです。「そうなるかもしれないことをわかっていたのに、なぜ、やらなかったのか」という自問自答を繰り返すことになりました。 DXが日本では後れているという一般論についても、問題をもう少しきちんと分解して考えたほうがいいと思います。日本の社会全体が、あるいは民間のサービス全体がDXで後れているということは、そんなに心配するレベルではありません。アメリカのGAFAMは世界で先端的なサービスを、みんなが活用していますし、われわれだって一所懸命にやっていますから。) 日本全体が遅れているのではなくて、行政や行政にまつわる分野。たとえば、医療や公共交通などの特定のジャンルで著しく遅れているという、自己認識が大事になると思います。なぜ遅れているのかというと、ひとえに、新しいものを容易に受け入れないような土壌があるのではないかと思います。 技術革新(イノベーション)ではなく、“勤勉革命”で何とかしようとしすぎているのではないでしょうか』、「(日本が)なぜ遅れているのかというと、ひとえに、新しいものを容易に受け入れないような土壌があるのではないかと思います。 技術革新(イノベーション)ではなく、“勤勉革命”で何とかしようとしすぎているのではないでしょうか」、「技術革新・・・ではなく、“勤勉革命”で何とかしようとしすぎている」というのは的確な診断だ。
・『「政府が悪い」と言うだけでは何も解決しない 技術でもっと生産性を上げることができるはずなのに、「技術革新は自分の仕事を奪うものだ」という思い込みにとらわれている人が少なからずいるからかもしれません。とくに、1台のタクシーを複数組の乗客が乗り合いで利用するライドシェアがいっこうに進んでいないことを目にするたび、働く人の根性でやろうとか、勤勉精神で何とかしようという風潮を感じます。怠けている人はいない、しかしがんばり方を間違っているのではないでしょうか。 あえて挙げるなら、競争環境がないのは一つの特徴といえるでしょうか。われわれがGAFAMと戦うとすれば、技術を用いて生産性を上げたり、付加価値を高めたりしなければ、顧客に選んでいただけません。しかし、行政にかかわる事業というのは独占状態ですね。1つの行政区には1つの区役所しかありませんし、公共交通も基本的には地域ごとに許認可事業で寡占状態のままです。医療・病院の業界にも競争原理が一応は導入されていますが、自由化というにはほど遠い。 競争がない、というのは、やはり大きな問題ではないでしょうか。単に行政が悪いというロジックで片づけるのではなく、競争原理がないという問題点こそ見ていく必要があるのではないか。競争原理が働かない結果、がんばり方を間違えるという悪循環に陥っているように思えます』、「競争原理が働かない結果、がんばり方を間違えるという悪循環に陥っているように思えます」、興味深い診断だ。
・『技術の力で日本を変えるしかない 物流業界が直面している「2024年問題」(※)は、わかりやすい変化のきっかけになると思います。 ※働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する問題の総称。 物流や移動にかかわる仕事に従事してきた人たちに依存してきた勤勉頼り一辺倒では、もはや駄目、ということになったわけですよね。「ちゃんと休みましょう」という世の中に変わり、働く人たちの勤勉だけでは人手は確保できず、社会生活が成り立たなくなる。それでようやく技術で解決するしかない、という流れになってきた。 もっと早く勤勉至上主義から技術革新へとシフトできていれば、トラックや公共交通の自動運転化は、より促進されたでしょう。それでも、2024年に問題が表出するまで追い込まれ、新しい方法でしか解決できないとなった結果、日本は技術革新を起こして前に進んでいくしかありません。) いままたインバウンドによる観光客であふれかえる日本でいっこうに進まないライドシェアについても、私はツイッターで発信しつづけてきました。 ただし、ライドシェアを推進したとしても、ドライバーの絶対数を必要とするのですから、それは過渡期的なことでしかありません。 公共交通は、とくに都市部より地方で、すでに深刻な問題になっている。それくらい切迫しています。よりAI化、自動化、無人化をどんどん進めていくしかないでしょう。このままわれわれ日本の最大の失敗に陥るのか、すんでのところで技術によって革新をもたらすのか、その瀬戸際に立っているのではないでしょうか』、「公共交通は、とくに都市部より地方で、すでに深刻な問題になっている。それくらい切迫しています。よりAI化、自動化、無人化をどんどん進めていくしかないでしょう。このままわれわれ日本の最大の失敗に陥るのか、すんでのところで技術によって革新をもたらすのか、その瀬戸際に立っているのではないでしょうか」、その通りだ。
・『規制は「悪」なのか Q:自身のツイッターなどをはじめ、メディアで機会あるごとに、ライドシェア促進について提言するほか、批判を受けるのを覚悟したうえでの発言とわかるように、日本のDXを急加速させるためには、永田町や霞が関がしきりに強調する「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」なるスローガンを取り下げるべきなのではないかと踏み込んできた。行政の規制にがんじがらめになっていると自他の声やまぬ日本の、横並びでゆでガエル状態になっている現在に、痛烈なる一石を投じた格好である。東京・渋谷の生まれ育ちながら、房総半島の南端である千葉・館山に移住したと公表し、都心でのハードワークとプライベートなスローライフを両立する日々を送りつつ、自らの被験者の視点も育んでいる―― 少子化、人口減に高齢化、さらに生産年齢人口も急激に減っていく中、定年退職をした高齢者に働いていただくなど社会の担い手を無理やり増やしてきたわけですけれども、それもいずれ限界が訪れる。たくさんの課題が生まれて、それを解決できない古い規制があるのでなくしましょう、という考え方もあります。 反対に、発展の著しい生成AI技術は可能性と同時に権利も保護しなければならない。ビッグデータの活用にはプライバシーや倫理上の問題も伴います。規制を強化する必要も考えられなくてはなりません。 いまの問題としては、新しい事象が起きているのに、昔の規制をそのままにしているために何かができなかったり、あるいは何かを試みるときにその規制が著しい障害になったりしているのであれば、状況に応じて変えなければならないでしょう、ということです。 都会から離れて住む者として実感する例でいえば、公共交通のドライバーが圧倒的に足りないのに、規制が変わらないのはおかしい、ということでしょうか。規制に限ったことではありませんが、変えるとは、取っ払うこともあれば、むしろ強化することも必要になるという認識を持っています。
・『日本を本当の「優しい国」にするために 変えるということに、反対はつきものでしょう。ただし、規制をそのまま維持するのが「優しい」ことに必ずなるとは、私は考えていません。新しい状況に対して困っている人がいるのなら、それを解決するのが本当の優しさだと思うからです。 規制を緩和することによって、一部の人が既得権から外れ、冷たくされたと恨みを抱くかもしれませんけれども、新しい状況に対して困っている多くの人を救うのなら、それが「優しい」と思います。 国内で約25万人といわれるタクシー運転手がさらに減っている。その何十倍、何百倍もの「移動難民」と呼ばれる人たちが救われ、助かるために、最大多数の最大幸福という観点で、どのようにするのがいいのか。議論の余地は、そう多くはないことでしょう。 日本のパスポート取得率は人口の2割を切っていますから、海外旅行の経験のない人がとても多い。インバウンドの盛んないまの日本では、海外の観光客が炎天下でタクシーが拾えずに汗だくで路上に立ち尽くしている光景が珍しくなくて、多くの日本人は海外旅行というのはそれが当たり前のものと思う人が少なくなくなっています。 しかし、世界ではシェアリング・エコノミーというイノベーションが起きて、タクシーなどに乗りたいときに乗れないということはなくなっている国が多くあります。規制を取っ払うと同時にイノベーションを起こして、困っている多くの人たちに優しくすべきなのではないでしょうか。 2023年10月に、ヤフーとLINEが一つの会社に統合して、「LINEヤフー」として新たなスタートを切ります。みなさんにとって、より便利なものをスピード感をもって、もっともっと出していきます』、「行政の規制にがんじがらめになっていると自他の声やまぬ日本の、横並びでゆでガエル状態になっている現在に、痛烈なる一石を投じた格好である・・・規制を緩和することによって、一部の人が既得権から外れ、冷たくされたと恨みを抱くかもしれませんけれども、新しい状況に対して困っている多くの人を救うのなら、それが「優しい」と思います・・・2023年10月に、ヤフーとLINEが一つの会社に統合して、「LINEヤフー」として新たなスタートを切ります。みなさんにとって、より便利なものをスピード感をもって、もっともっと出していきます」、「LINEヤフー」の新サービスが楽しみだ。
タグ:(その3)(『DXレポート』に見る日本のDXの現在地 理想の組織と人材はどこにあるのか? 「DXレポート2」から2年〜目指すべき“デジタル産業への変革”とは(3)、なぜヤフーはLINEを作れなかったのか…元ヤフー社長が訴えたい「変わらないこと」の本当の恐ろしさ 日本が「デジタル後進国」と揶揄される根本原因) デジタルトランスフォーメーション(DX) イヤモンド・オンライン「『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 「DXレポート2」から2年〜目指すべき“デジタル産業への変革”とは(3)」 「本稿ではまず、レポート2で触れられた、ジョブ型人事制度の拡大とDX人材の確保について、目指すべきあり方を考察。さらに読者アンケートや『DX白書2023』などのデータから日本のDXの現在地を探る」、なるほど。 「DX人材像を周知していない企業が8割以上を占め、そもそも求める人材像を設定していない企業も4割に上る」、少なくとも「求める人材像」は設定しておくべきだ。 「「まずはジョブ(仕事の範囲、役割、責任)を明確にし、そのうえでさらに成果の評価基準を定めることから始めることが現実的である」、その通りだ。 「DXにあたる「新規製品・サービスの創出」「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」では、成果が出ている割合は20%台。米国の約70%とは大きく差が出ている」、大差でやはり問題だ。 「システム開発の手法と技術については、SaaS、IaaS、PaaSなどのクラウドサービス活用は進みつつある。しかし新しい開発手法や技術の活用度合いは、米国と比べて低く、従来の手法から脱却できていない企業が多いようだ」、なるほど。 「AIの導入目的には大きな違いがある。米国では「集客効果の向上」「新製品の創出」「新サービスの創出」の割合が高いのに対し、日本では「生産性向上」「ヒューマンエラーの低減、撲滅」「品質向上」の割合が高い。顧客価値の向上など、DXを目的としたAI活用が進む米国に対し、日本では効率化を主眼としたデジタライゼーションの域にとどまっているのが現状だ」、「AIの導入目的」の米国に比べた遅れは深刻で、まだまだのようだ。 「DX推進に対して投入される経営資源がサービスの創造・革新といった価値向上に向かっていないことは、危惧すべき点である。 また白書が示すように、投資による成果がどの程度現れているのか、仮説検証に至るための効果測定が多くの企業で行われていないことも問題だ・・・2020年11月に経済産業省が取りまとめ、2022年9月に改訂された「デジタルガバナンス・コード」も参照するといいだろう。 デジタルガバナンス・コードは、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応をまとめたものだ。 デジタルガバナンス・コードを実践したい中堅・中小企業等に向けては「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」も用意されている」、興味がある方は参考にされたい。 PRESIDENT ONLINE 川邊 健太郎氏による「なぜヤフーはLINEを作れなかったのか…元ヤフー社長が訴えたい「変わらないこと」の本当の恐ろしさ 日本が「デジタル後進国」と揶揄される根本原因」 「必要な失敗を経験した人から成功に近づいていくということです。「失敗」という名目の、いわば貯金が貯まっていって、とくに大きな成功の機会は訪れる。 もう一つ、必要な失敗をすることによって、リスクに対する捉え方が非常に敏感になったり、現実的になったりしていくことがその人をアグレッシブに鍛えるという結果になるのではないでしょうか」、「「失敗」という名目の、いわば貯金が貯まっていって、とくに大きな成功の機会は訪れる」、とは言い得て妙だ。 「当時のわれわれは、その最大手と組もうとせず、ほかのところへ行ってしまった。その結果、競合キャリアの回し者と見なされ、最大手となかなか組むことができませんでした。最後の最後で、そのことが非常に大きな重い経営課題となって、会社を売却するところに至ったという痛烈で超大きな失敗体験」、組む相手を間違うと簡単には是正できないようだ。 「複数の通信キャリアと手を組めるだろうと思っていた過信、そしてキャリアの競争環境の激しさを理解していなかった知識不足です」、「致命的な教訓」の原因は身近なようだ。 「たまたま声をかけてきてくれたところとパートナーシップを結ぶ交渉を始めたときでも、途中で立ち止まって、「いま話し合っているところが最大手といえるのか」と必ず確認するようになった。 あるいは、「最大手とも交渉しなくていいのか」というように、手痛い経験があるからこそ、ものすごく大きな教訓になっています・・・必要な失敗をした事業こそ成功していくし、失敗が深ければ深いほど大成功につながっていくとも実感しています」、なるほど。 「QRコード決済という意味では、たしかにキャッシュレス化を一気に広めたと思います。すぐ隣を見れば、強敵もたくさんいますから、PayPayの成功に安住せず、日々精進というところです」、周囲を見渡して、自己満足せず、「日々精進」することが重要なようだ。 「(日本が)なぜ遅れているのかというと、ひとえに、新しいものを容易に受け入れないような土壌があるのではないかと思います。 技術革新(イノベーション)ではなく、“勤勉革命”で何とかしようとしすぎているのではないでしょうか」、「技術革新・・・ではなく、“勤勉革命”で何とかしようとしすぎている」というのは的確な診断だ。 「競争原理が働かない結果、がんばり方を間違えるという悪循環に陥っているように思えます」、興味深い診断だ。 「公共交通は、とくに都市部より地方で、すでに深刻な問題になっている。それくらい切迫しています。よりAI化、自動化、無人化をどんどん進めていくしかないでしょう。このままわれわれ日本の最大の失敗に陥るのか、すんでのところで技術によって革新をもたらすのか、その瀬戸際に立っているのではないでしょうか」、その通りだ。 「行政の規制にがんじがらめになっていると自他の声やまぬ日本の、横並びでゆでガエル状態になっている現在に、痛烈なる一石を投じた格好である・・・規制を緩和することによって、一部の人が既得権から外れ、冷たくされたと恨みを抱くかもしれませんけれども、新しい状況に対して困っている多くの人を救うのなら、それが「優しい」と思います・・・2023年10月に、ヤフーとLINEが一つの会社に統合して、「LINEヤフー」として新たなスタートを切ります。みなさんにとって、より便利なものをスピード感をもって、もっともっと出していき
人工知能(AI)(その16)(医療に「進出」するChatGPT 医師の仕事をAIがすることになるのか、解任騒動が示した「オープンAIとMSの相互依存」 スピードを支えるのは人員と「サーバー」だが…、お家騒動であらわ「OpenAI」が抱える矛盾の正体 突然のトップ解任の裏に倫理と営利めぐる葛藤) [イノベーション]
人工知能(AI)については、本年8月10日に取上げた。今日は、(その16)(医療に「進出」するChatGPT 医師の仕事をAIがすることになるのか、解任騒動が示した「オープンAIとMSの相互依存」 スピードを支えるのは人員と「サーバー」だが…、お家騒動であらわ「OpenAI」が抱える矛盾の正体 突然のトップ解任の裏に倫理と営利めぐる葛藤)である。
先ずは、本年9月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「医療に「進出」するChatGPT、医師の仕事をAIがすることになるのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328424
・『「緊急度自己判定」でのChatGPTの能力は高い ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)が医療の分野で活用され、人間の医師が担ってきた仕事のかなりの部分をAIがとって代わるという見方がある。 医療での利用としてはまず、医療機関での書類整理などの事務効率化があるが、それだけでなく、医療行為そのものに対する利用が考えられている。その第1は、「セルフ・トリアージ」(一般市民が自分の健康の緊急度を自ら判断すること)だ。 現在では、これは主としてウェブの情報を頼りに行われている。しかし、正確度に疑問があるし、個人個人の事情に即した情報が得られるわけでもない。高齢化の進展に伴って、セルフ・トリアージの必要性は増える。事実、週刊誌には高齢者の健康に関する記事が満載だ。また書籍も多数刊行されている。 さらに、保険会社などが電話で健康相談サービスを提供している。セコムのサービスもあるし、ファストドクターというスタートアップも登場した。もし医学的な質問に対して、大規模言語モデルが専門医レベルの回答をできるなら、事態は大きく変わるだろう。 これについては、さまざまな調査が行なわれており、検証成果はかなり有望な結果を示している(注1)。) ChatGPTが米国の医師資格試験で合格ラインの結果を示したとの報告もあるし、医師による回答よりChatGPTの回答が好まれるとの調査もある』、「もし医学的な質問に対して、大規模言語モデルが専門医レベルの回答をできるなら、事態は大きく変わるだろう。 これについては、さまざまな調査が行なわれており、検証成果はかなり有望な結果を示している」、なるほど。
・『患者の状況に共感示す点などは人間より優れているとの評価も 医学界の有名専門誌「JAMA」に掲載された論文は、医師とChatGPTを比較すると、医学的アドバイスの品質と共感の両面で、ChatGPTが生成した回答が高く評価されていると指摘している。 とりわけ、次の諸点でChatGPTが優れているという。 +患者の状況に共感を示す +患者個人の背景に興味を持ち、個人的な関係を構築しようとする +歯科、医師、看護師、薬剤師などの資格試験の点数が高い 大規模言語モデルの臨床的有効性や診断支援の可能性を高く見積もる意見が多い。大規模言語モデルが臨床実装され、医療を強力に支援するようになる可能性は非常に高い。 特に、スクリーニングや初期診断、治療方針策定、フォローアップ、セカンドオピニオン、患者および医療者教育などは激変する可能性がある』、「大規模言語モデルの臨床的有効性や診断支援の可能性を高く見積もる意見が多い。大規模言語モデルが臨床実装され、医療を強力に支援するようになる可能性は非常に高い。 特に、スクリーニングや初期診断、治療方針策定、フォローアップ、セカンドオピニオン、患者および医療者教育などは激変する可能性がある」、なるほど。
・『医療に特化したLLMも開発 医師国家試験で高い“正答率” 以上で紹介したのは、ChatGPTそのものだが、これに改良を加え医療に特化した大規模言語モデルを開発する動きもある。 グーグル研究所は、医療領域特化の大規模言語モデルMed-PaLMを発表した。アメリカ医師国家試験で、平均点である60%を大きく上回る85%の正解率を示したという(注2)。 臨床家が時間をかけて示す答えと比べると、かなり近いところに来たようだ。ただ臨床家の方が勝っているとも言われる。 日本でも開発が進んでいる。ファストドクターとAI開発スタートアップのオルツが共同開発した大規模言語モデルだ。2022年度の医師国家試験の問題で合格基準を上回る82%の正答率を達成したという。) 中国の研究者らが開発した「ChatCAD」は、レントゲン画像を分かりやすく説明する。画像を見ながら詳しく聞くこともできる。人間より優れているとの評価もある。 日本では、これから人口高齢化がさらに進展し、医師不足は深刻な問題になるだろう。信頼性のある医療用大規模言語モデルの開発は、日本の場合にとくに必要度が高い課題だ』、「日本では、これから人口高齢化がさらに進展し、医師不足は深刻な問題になるだろう。信頼性のある医療用大規模言語モデルの開発は、日本の場合にとくに必要度が高い課題だ」、なるほど。
・『重要な判断を伴うケースやプライバシー保護などで慎重論も こうして医学関係者の多くが、大規模言語モデルに対して高い期待を寄せている。これは私には意外だった。慎重論が多いと思っていたからだ。 もちろん、医療関係者の全てが大規模言語モデルの利用に積極的であるわけではない。慎重論や消極的な意見が多いことも事実だ。ニューズウィーク・ジャパンの記事は、そうした意見を紹介している(注3) それによると、明らかな誤りやバイアスなど、精度の不安定性に懸念が表明されている。だから、現時点では重要な判断が伴うケースで、専門家のレビューなく出力結果を利用することは難しいとされる。 またプライバシー、倫理、法的制約と規制などについても、解決すべき課題が多くある。治療や研究に取り入れることには、守秘義務や患者の同意、治療の質、信頼性や格差に関する倫理的懸念が伴う。むやみな使用は予想外の結果につながりかねない。 また、ChatGPTに送られた身元特定可能な患者情報は、将来利用される情報の一部になる。だから機密性の高い情報が第三者に漏洩しやすくなる』、「明らかな誤りやバイアスなど、精度の不安定性に懸念が表明されている。だから、現時点では重要な判断が伴うケースで、専門家のレビューなく出力結果を利用することは難しいとされる。 またプライバシー、倫理、法的制約と規制などについても、解決すべき課題が多くある。治療や研究に取り入れることには、守秘義務や患者の同意、治療の質、信頼性や格差に関する倫理的懸念が伴う。むやみな使用は予想外の結果につながりかねない」、なるほど。
・『健康に関する利用はさまざまな微妙な問題含む 私自身はこれまで自分の健康問題に関してChatGPTに質問をしたことはない。ChatGPTが誤った答え(ハルシネーション)を出す危険があるからだ。仮にその問題が克服されたとしても、なおかつ問題は残る。これは上述した医学関係者らの懸念とは異なるものだ。) 第一に、自分の状況を正しくChatGPTに伝えられるかどうか、自信がない。 医師と面談する場合には、医師が様々な質問をし、それに答える。しかしChatGPTの場合には、そのような質問がない。質問自体を私が考えなければならない。電話の健康相談サービスでも、通常は先方が質問してくれる。ChatGPTとの会話は、人間との会話とは異なるものなのだ。 また、ChatGPTは、安全側に偏った回答をするはずだ。少しでも疑問があれば、「医師の診断を受けた方がよい」と答える可能性高い。自分では大丈夫だと思っているときにそうしたアドバイスを受けると、かえって不安になってしまう。 こうしたことがあり、上述した医師国家試験での正答率などの調査結果を知ったいまとなっても、なかなか健康問題の質問をする気にならない。 かと言って、週刊誌にある「多少血圧が高くても気にする必要はない」というような記事も乱暴すぎると思う。健康に関わる問題は、さまざまな微妙な要素を持っており判断が難しい。この問題に関する研究調査がさらに進められることが求められる。 注1 岡本将輝「医療における大規模言語モデルの価値」(時事メディカル、2023年6月8日) 注2 「完璧な医療・医学チャットボットを目指して」(オール・アバウト・サイエンス・ジャパン,2023年7月14日) 注3 ニューズウィーク・ジャパン(2023年4月9日)』、「また、ChatGPTは、安全側に偏った回答をするはずだ。少しでも疑問があれば、「医師の診断を受けた方がよい」と答える可能性高い。自分では大丈夫だと思っているときにそうしたアドバイスを受けると、かえって不安になってしまう・・・健康に関わる問題は、さまざまな微妙な要素を持っており判断が難しい。この問題に関する研究調査がさらに進められることが求められる」、同感である。
次に、11月26日付け東洋経済オンラインが掲載したフリージャーナリストの西田 宗千佳氏による「解任騒動が示した「オープンAIとMSの相互依存」 スピードを支えるのは人員と「サーバー」だが…」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/717269
・『これらの背景には2つの要素がある。 1つは優秀な人員を多数抱えており、研究と開発までの距離が近いこと。 OpenAIの社員数は約770名とされているが、世界的な注目を集める企業としては「まだ」コンパクトであり、ほとんどが研究開発に従事していると思われる。 今回の騒動では社員のほとんどにあたる700名以上が、アルトマン氏らの復帰を求める署名にサインしており、求心力の強さは明白だ。社員の一斉離反もしくは作業停滞が起きれば、OpenAIには大きな打撃になっただろう』、「社員のほとんどにあたる700名以上が、アルトマン氏らの復帰を求める署名にサインしており、求心力の強さは明白だ」、取締役会の「アルトマン氏」解任決議に対して、「700名以上が、アルトマン氏らの復帰を求める署名にサイン」、とは。「アルトマン氏」には心強い支援だ。
・『支えるのは「人員」と「サーバー」だが… もう1つは「サーバー」だ。 LLMの学習には高速なサーバーが必須だ。特にGPTシリーズのように規模の大きなLLMの場合には、現在ならばNVIDIA製の高速なGPUを数千台単位で用意する必要がある。 LLMの規模は「パラメータ数」で表されるが、一般論として、パラメータ数が大きい、規模の大きなLLMほど賢いものになりやすい。一方でパラメータ数が大きなLLMは、開発のための「学習」にも、日常的に使うために必要な「推論」にも、高速な演算が必要になり、GPUを使った大規模なサーバーが必須になっていく。 GPT-4は正確なパラメータ数が公開されていないので必要なサーバー量やその電力消費も不明だが、GPT-3については1750億パラメータとされており、1回の学習には1時間あたり約1300メガワットの電力を必要とする。これはほぼ、原発1基分(毎時約1000メガワット)に相当する。 GPUは取り合いの状況であり、サーバーを用意するだけでも大変な状況だ。それを運用できる電力と保守の能力を持った設備を持つ企業は限られている。 例えばソフトバンクは3500億パラメータ規模のLLMを作るためのデータセンター構築に約200億円を投じている。 一方でNTTはソフトバンクやOpenAIとは異なり、自社開発のLLM「tsuzumi」を用途限定・日本語特化でコンパクトなものにした。パラメータ数を70億規模に抑えることで、学習にかかる機材コストをGPT-3の25分の1に圧縮している。) いかに巨大な設備を持つか、もしくは戦略的に小さな設備向けのLLMで戦うかが重要になってきているわけだが、OpenAIは汎用人工知能(AGI)を目指してどんどんLLMの規模を拡大する方向性にある。だから、パートナーとともにサーバーを動かし続けなければならない。 逆に言えば、「人員がいて」「サーバー設備が用意できる」状態なら、OpenAIと戦うことは不可能ではない。グーグルやMetaはその条件を十分に満たしている。OpenAIが持っている優位性も、他社が持ち得ないものではない、ということだ。 活動が滞ると、その分すぐに他社が追いついてくる』、「「人員がいて」「サーバー設備が用意できる」状態なら、OpenAIと戦うことは不可能ではない。グーグルやMetaはその条件を十分に満たしている。OpenAIが持っている優位性も、他社が持ち得ないものではない、ということだ」、なるほど。
・『マイクロソフトは「共依存」をいつまで維持するのか OpenAIはサーバーをマイクロソフトに依存している。マイクロソフトはOpenAIに対する最大の出資者だが、逆に言えば、世界トップクラスのクラウドインフラ事業者であるマイクロソフトの力を借りなければ、ChatGPTを含むOpenAIの快進撃も実現できなかっただろう。 マイクロソフトはOpenAIに依存したサービス施策を矢継ぎ早に提供しているが、一方インフラ面でOpenAIはマイクロソフトに依存している。 海外の報道によれば、マイクロソフトがアルトマン氏らの離脱を知ったのは、11月17日の発表直前であるという。 両輪が揃っていないと今の快進撃は実現できないわけだが、その片方が止まりそうになったのを突然知ったマイクロソフトの驚きは想像以上であっただろう。 マイクロソフトのサティア・ナデラCEOはすぐに交渉し、「アルトマン氏らがマイクロソフトに入る」とコメントを発表したが、どのような体制で、どのような組織体を構成するのかといった詳細は公表されなかった。なによりもまず「両社のコンビネーションは安泰です」とアピールする必要があったからだろう。 今回の騒動では、OpenAIへの発言力をマイクロソフトが強化し、漁夫の利を得たようにも見える。だが、同社が取締役会に関係者を送り込めたわけでもなく、両社の関係や体制に変化はない。 今後も体制を維持するなら、OpenAIのガバナンス強化は必須だ。一方で、マイクロソフトとして「OpenAI以外の選択肢」、例えば自社でLLMを開発していく道もなくはない。すでに小規模なLLMは研究しているが、今後はどうなるのだろうか』、「今回の騒動では、OpenAIへの発言力をマイクロソフトが強化し、漁夫の利を得たようにも見える。だが、同社が取締役会に関係者を送り込めたわけでもなく、両社の関係や体制に変化はない。 今後も体制を維持するなら、OpenAIのガバナンス強化は必須だ。一方で、マイクロソフトとして「OpenAI以外の選択肢」、例えば自社でLLMを開発していく道もなくはない」、今後の展開が大いに注目される。
第三に、11月29日付け東洋経済オンライン「お家騒動であらわ「OpenAI」が抱える矛盾の正体 突然のトップ解任の裏に倫理と営利めぐる葛藤」を紹介しよう。
・『OpenAIは2015年12月、アルトマン氏らによって非営利団体として設立された。組織の目標として当時、「金銭的なリターンを得る必要性に制約されることなく、人類全体に最も利益をもたらす可能性の高い方法で、デジタルインテリジェンスを発展させること」と定めている。 AIは業務の効率化などに活用できる一方、フェイクニュースの蔓延や雇用への短期的影響などリスクを伴う。倫理と安全性が求められるAIの領域において、OpenAIは資本的な利益よりも人類の利益を優先する、非営利の研究開発機関として組織されていた。 設立時には、10億ドルの寄付を目標に設定。総額約1.3億ドルの寄付を受け、組織の運営や、ディープラーニング、AIアライメント(AIが人間の価値観、目標、意図に沿って行動するようにすること)の研究などに使用された』、「アルトマン氏らによって非営利団体として設立された。組織の目標として当時、「金銭的なリターンを得る必要性に制約されることなく、人類全体に最も利益をもたらす可能性の高い方法で、デジタルインテリジェンスを発展させること」と定めている。 AIは業務の効率化などに活用できる一方、フェイクニュースの蔓延や雇用への短期的影響などリスクを伴う。倫理と安全性が求められるAIの領域において、OpenAIは資本的な利益よりも人類の利益を優先する、非営利の研究開発機関として組織されていた」、なるほど。
・『数年で「ハイブリッド」組織へと転換 しかし2019年3月に、その組織形態を大きく変えることとなる。OpenAI本体の傘下に、一定条件がついた営利企業のOpenAI LPを設立したのだ。この形態では出資する投資家や従業員は上限付きのリターンを得ることができる一方、一定以上の利益に関しては、非営利組織であるOpenAIに還元される』、「OpenAI本体の傘下に、一定条件がついた営利企業のOpenAI LPを設立したのだ。この形態では出資する投資家や従業員は上限付きのリターンを得ることができる一方、一定以上の利益に関しては、非営利組織であるOpenAIに還元される」、なるほど。
・『OpenAIの組織構造 営利と非営利のハイブリッドな組織に見直した背景について、OpenAIは「アルゴリズムの革新に加え、多くの計算能力を使うことになったことで、OpenAIを始めるときに計画していたよりもはるかに速くスケールすることを決めた」ためと説明していた。 他のIT企業もAI事業に本腰を入れる中、業界をリードするポジションであり続けるには、大規模なクラウドやAIスーパーコンピューターの構築、さらには優秀な人材の確保が欠かせない。そのためには数年間で数十億ドルの投資が必要となり、企業からの出資などを受けられるよう組織形態を変えたわけだ。 実際、そのわずか数カ月後にはマイクロソフトとパートナーシップを締結し、同社が10億ドルの出資を行うと発表。 マイクロソフトは2023年1月にも、複数年にわたって OpenAI に数十億ドル規模の投資を行う方針を発表し、マイクロソフトのAzureは、OpenAI の独占的なクラウドプロバイダーとなった。) 一方、営利企業の設立後も、OpenAI全体の組織の“最上位”に位置づけられてきたのが、6人の役員で構成する理事会だ。2023年6月時点で、OpenAIはその組織構造について主に次のような特徴を挙げている。 「理事会は非営利団体に変わりなく、安全なAGI(汎用人工知能)の促進という義務を果たす必要があり、営利企業もこの使命に従う必要がある」「理事会の過半数は独立性を保っており、社外取締役はOpenAIの株式を保有していない。またCEOのサム・アルトマン氏も直接は株を保有していない」「AGIができたかどうかの決定権は理事会にある」 つまり、OpenAIはあくまで非営利団体として発足した当初の目的を堅持し、それを実現するために理事会の権限を強くしているということだ。 こうした構図から、今回のクーデターのような解任ができたことや、OpenAI Globalに巨額を出資するマイクロソフトですらアルトマン氏の解任を事前に知らなかったことが理解できるだろう』、「「理事会は非営利団体に変わりなく、安全なAGI(汎用人工知能)の促進という義務を果たす必要があり、営利企業もこの使命に従う必要がある」「理事会の過半数は独立性を保っており、社外取締役はOpenAIの株式を保有していない。またCEOのサム・アルトマン氏も直接は株を保有していない」「AGIができたかどうかの決定権は理事会にある」 つまり、OpenAIはあくまで非営利団体として発足した当初の目的を堅持し、それを実現するために理事会の権限を強くしているということだ。 こうした構図から、今回のクーデターのような解任ができたことや、OpenAI Globalに巨額を出資するマイクロソフトですらアルトマン氏の解任を事前に知らなかったことが理解できるだろう」、「社外取締役」が暴走し易い構造があったようだ。
・『理事会メンバー刷新後に残る懸念 解任を決めた当時の理事会は、創業メンバーであるアルトマン氏、ブロックマン氏、イリヤ・サツキバー氏のほか、社外理事3人で構成。2018年から参画しているQuora代表のアダム・ディアンジェロ氏、シンクタンクのランド研究所のターシャ・マッコーリー氏、そして2021年から参画しているジョージタウン大学安全保障・新技術センター戦略担当ディレクターのヘレン・トナー氏だ。 AI政策とグローバルAI戦略研究を専門とするトナー氏の参画時、OpenAIはリリースで「この就任は、テクノロジーの安全かつ責任ある展開に対する私たちの献身を前進させるもの」と記載しており、非営利組織らしくAIの安全性を重視した登用と受け取れる。 アルトマン氏の解任には、サツキバー氏と社外理事の計4人が賛成したとみられている。直近でもアルトマン氏は画像生成や音声合成などテキスト以外のAPIの公開や、開発者が独自のGPTを作成、販売できるマーケットプレースの開発を推し進めていた。ビジネス路線を突き進む同氏との間に生じた軋轢が、解任へとつながった可能性は高い。 一連の騒動を受け、理事会メンバーは抜本的に見直される予定で、元セールスフォース共同CEOのブレット・テイラー氏らの就任が決まっている。アルトマン氏の全面支援を行ったマイクロソフトの関与が強まることも想定される。 理事会の刷新で表向きは一件落着だが、営利色が強まれば、AIの安全性をいかに担保するかというジレンマはいっそう深まる。 世界を騒がせたお家騒動は、AIの開発とビジネス競争をどう両立させるかという根本的な問いを改めて投げかけている』、「アルトマン氏は画像生成や音声合成などテキスト以外のAPIの公開や、開発者が独自のGPTを作成、販売できるマーケットプレースの開発を推し進めていた。ビジネス路線を突き進む同氏との間に生じた軋轢が、解任へとつながった可能性は高い・・・アルトマン氏の全面支援を行ったマイクロソフトの関与が強まることも想定される。 理事会の刷新で表向きは一件落着だが、営利色が強まれば、AIの安全性をいかに担保するかというジレンマはいっそう深まる。 世界を騒がせたお家騒動は、AIの開発とビジネス競争をどう両立させるかという根本的な問いを改めて投げかけている」、「営利色が強まれば、AIの安全性をいかに担保するかというジレンマはいっそう深まる」、難しいものだ。
先ずは、本年9月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「医療に「進出」するChatGPT、医師の仕事をAIがすることになるのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328424
・『「緊急度自己判定」でのChatGPTの能力は高い ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)が医療の分野で活用され、人間の医師が担ってきた仕事のかなりの部分をAIがとって代わるという見方がある。 医療での利用としてはまず、医療機関での書類整理などの事務効率化があるが、それだけでなく、医療行為そのものに対する利用が考えられている。その第1は、「セルフ・トリアージ」(一般市民が自分の健康の緊急度を自ら判断すること)だ。 現在では、これは主としてウェブの情報を頼りに行われている。しかし、正確度に疑問があるし、個人個人の事情に即した情報が得られるわけでもない。高齢化の進展に伴って、セルフ・トリアージの必要性は増える。事実、週刊誌には高齢者の健康に関する記事が満載だ。また書籍も多数刊行されている。 さらに、保険会社などが電話で健康相談サービスを提供している。セコムのサービスもあるし、ファストドクターというスタートアップも登場した。もし医学的な質問に対して、大規模言語モデルが専門医レベルの回答をできるなら、事態は大きく変わるだろう。 これについては、さまざまな調査が行なわれており、検証成果はかなり有望な結果を示している(注1)。) ChatGPTが米国の医師資格試験で合格ラインの結果を示したとの報告もあるし、医師による回答よりChatGPTの回答が好まれるとの調査もある』、「もし医学的な質問に対して、大規模言語モデルが専門医レベルの回答をできるなら、事態は大きく変わるだろう。 これについては、さまざまな調査が行なわれており、検証成果はかなり有望な結果を示している」、なるほど。
・『患者の状況に共感示す点などは人間より優れているとの評価も 医学界の有名専門誌「JAMA」に掲載された論文は、医師とChatGPTを比較すると、医学的アドバイスの品質と共感の両面で、ChatGPTが生成した回答が高く評価されていると指摘している。 とりわけ、次の諸点でChatGPTが優れているという。 +患者の状況に共感を示す +患者個人の背景に興味を持ち、個人的な関係を構築しようとする +歯科、医師、看護師、薬剤師などの資格試験の点数が高い 大規模言語モデルの臨床的有効性や診断支援の可能性を高く見積もる意見が多い。大規模言語モデルが臨床実装され、医療を強力に支援するようになる可能性は非常に高い。 特に、スクリーニングや初期診断、治療方針策定、フォローアップ、セカンドオピニオン、患者および医療者教育などは激変する可能性がある』、「大規模言語モデルの臨床的有効性や診断支援の可能性を高く見積もる意見が多い。大規模言語モデルが臨床実装され、医療を強力に支援するようになる可能性は非常に高い。 特に、スクリーニングや初期診断、治療方針策定、フォローアップ、セカンドオピニオン、患者および医療者教育などは激変する可能性がある」、なるほど。
・『医療に特化したLLMも開発 医師国家試験で高い“正答率” 以上で紹介したのは、ChatGPTそのものだが、これに改良を加え医療に特化した大規模言語モデルを開発する動きもある。 グーグル研究所は、医療領域特化の大規模言語モデルMed-PaLMを発表した。アメリカ医師国家試験で、平均点である60%を大きく上回る85%の正解率を示したという(注2)。 臨床家が時間をかけて示す答えと比べると、かなり近いところに来たようだ。ただ臨床家の方が勝っているとも言われる。 日本でも開発が進んでいる。ファストドクターとAI開発スタートアップのオルツが共同開発した大規模言語モデルだ。2022年度の医師国家試験の問題で合格基準を上回る82%の正答率を達成したという。) 中国の研究者らが開発した「ChatCAD」は、レントゲン画像を分かりやすく説明する。画像を見ながら詳しく聞くこともできる。人間より優れているとの評価もある。 日本では、これから人口高齢化がさらに進展し、医師不足は深刻な問題になるだろう。信頼性のある医療用大規模言語モデルの開発は、日本の場合にとくに必要度が高い課題だ』、「日本では、これから人口高齢化がさらに進展し、医師不足は深刻な問題になるだろう。信頼性のある医療用大規模言語モデルの開発は、日本の場合にとくに必要度が高い課題だ」、なるほど。
・『重要な判断を伴うケースやプライバシー保護などで慎重論も こうして医学関係者の多くが、大規模言語モデルに対して高い期待を寄せている。これは私には意外だった。慎重論が多いと思っていたからだ。 もちろん、医療関係者の全てが大規模言語モデルの利用に積極的であるわけではない。慎重論や消極的な意見が多いことも事実だ。ニューズウィーク・ジャパンの記事は、そうした意見を紹介している(注3) それによると、明らかな誤りやバイアスなど、精度の不安定性に懸念が表明されている。だから、現時点では重要な判断が伴うケースで、専門家のレビューなく出力結果を利用することは難しいとされる。 またプライバシー、倫理、法的制約と規制などについても、解決すべき課題が多くある。治療や研究に取り入れることには、守秘義務や患者の同意、治療の質、信頼性や格差に関する倫理的懸念が伴う。むやみな使用は予想外の結果につながりかねない。 また、ChatGPTに送られた身元特定可能な患者情報は、将来利用される情報の一部になる。だから機密性の高い情報が第三者に漏洩しやすくなる』、「明らかな誤りやバイアスなど、精度の不安定性に懸念が表明されている。だから、現時点では重要な判断が伴うケースで、専門家のレビューなく出力結果を利用することは難しいとされる。 またプライバシー、倫理、法的制約と規制などについても、解決すべき課題が多くある。治療や研究に取り入れることには、守秘義務や患者の同意、治療の質、信頼性や格差に関する倫理的懸念が伴う。むやみな使用は予想外の結果につながりかねない」、なるほど。
・『健康に関する利用はさまざまな微妙な問題含む 私自身はこれまで自分の健康問題に関してChatGPTに質問をしたことはない。ChatGPTが誤った答え(ハルシネーション)を出す危険があるからだ。仮にその問題が克服されたとしても、なおかつ問題は残る。これは上述した医学関係者らの懸念とは異なるものだ。) 第一に、自分の状況を正しくChatGPTに伝えられるかどうか、自信がない。 医師と面談する場合には、医師が様々な質問をし、それに答える。しかしChatGPTの場合には、そのような質問がない。質問自体を私が考えなければならない。電話の健康相談サービスでも、通常は先方が質問してくれる。ChatGPTとの会話は、人間との会話とは異なるものなのだ。 また、ChatGPTは、安全側に偏った回答をするはずだ。少しでも疑問があれば、「医師の診断を受けた方がよい」と答える可能性高い。自分では大丈夫だと思っているときにそうしたアドバイスを受けると、かえって不安になってしまう。 こうしたことがあり、上述した医師国家試験での正答率などの調査結果を知ったいまとなっても、なかなか健康問題の質問をする気にならない。 かと言って、週刊誌にある「多少血圧が高くても気にする必要はない」というような記事も乱暴すぎると思う。健康に関わる問題は、さまざまな微妙な要素を持っており判断が難しい。この問題に関する研究調査がさらに進められることが求められる。 注1 岡本将輝「医療における大規模言語モデルの価値」(時事メディカル、2023年6月8日) 注2 「完璧な医療・医学チャットボットを目指して」(オール・アバウト・サイエンス・ジャパン,2023年7月14日) 注3 ニューズウィーク・ジャパン(2023年4月9日)』、「また、ChatGPTは、安全側に偏った回答をするはずだ。少しでも疑問があれば、「医師の診断を受けた方がよい」と答える可能性高い。自分では大丈夫だと思っているときにそうしたアドバイスを受けると、かえって不安になってしまう・・・健康に関わる問題は、さまざまな微妙な要素を持っており判断が難しい。この問題に関する研究調査がさらに進められることが求められる」、同感である。
次に、11月26日付け東洋経済オンラインが掲載したフリージャーナリストの西田 宗千佳氏による「解任騒動が示した「オープンAIとMSの相互依存」 スピードを支えるのは人員と「サーバー」だが…」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/717269
・『これらの背景には2つの要素がある。 1つは優秀な人員を多数抱えており、研究と開発までの距離が近いこと。 OpenAIの社員数は約770名とされているが、世界的な注目を集める企業としては「まだ」コンパクトであり、ほとんどが研究開発に従事していると思われる。 今回の騒動では社員のほとんどにあたる700名以上が、アルトマン氏らの復帰を求める署名にサインしており、求心力の強さは明白だ。社員の一斉離反もしくは作業停滞が起きれば、OpenAIには大きな打撃になっただろう』、「社員のほとんどにあたる700名以上が、アルトマン氏らの復帰を求める署名にサインしており、求心力の強さは明白だ」、取締役会の「アルトマン氏」解任決議に対して、「700名以上が、アルトマン氏らの復帰を求める署名にサイン」、とは。「アルトマン氏」には心強い支援だ。
・『支えるのは「人員」と「サーバー」だが… もう1つは「サーバー」だ。 LLMの学習には高速なサーバーが必須だ。特にGPTシリーズのように規模の大きなLLMの場合には、現在ならばNVIDIA製の高速なGPUを数千台単位で用意する必要がある。 LLMの規模は「パラメータ数」で表されるが、一般論として、パラメータ数が大きい、規模の大きなLLMほど賢いものになりやすい。一方でパラメータ数が大きなLLMは、開発のための「学習」にも、日常的に使うために必要な「推論」にも、高速な演算が必要になり、GPUを使った大規模なサーバーが必須になっていく。 GPT-4は正確なパラメータ数が公開されていないので必要なサーバー量やその電力消費も不明だが、GPT-3については1750億パラメータとされており、1回の学習には1時間あたり約1300メガワットの電力を必要とする。これはほぼ、原発1基分(毎時約1000メガワット)に相当する。 GPUは取り合いの状況であり、サーバーを用意するだけでも大変な状況だ。それを運用できる電力と保守の能力を持った設備を持つ企業は限られている。 例えばソフトバンクは3500億パラメータ規模のLLMを作るためのデータセンター構築に約200億円を投じている。 一方でNTTはソフトバンクやOpenAIとは異なり、自社開発のLLM「tsuzumi」を用途限定・日本語特化でコンパクトなものにした。パラメータ数を70億規模に抑えることで、学習にかかる機材コストをGPT-3の25分の1に圧縮している。) いかに巨大な設備を持つか、もしくは戦略的に小さな設備向けのLLMで戦うかが重要になってきているわけだが、OpenAIは汎用人工知能(AGI)を目指してどんどんLLMの規模を拡大する方向性にある。だから、パートナーとともにサーバーを動かし続けなければならない。 逆に言えば、「人員がいて」「サーバー設備が用意できる」状態なら、OpenAIと戦うことは不可能ではない。グーグルやMetaはその条件を十分に満たしている。OpenAIが持っている優位性も、他社が持ち得ないものではない、ということだ。 活動が滞ると、その分すぐに他社が追いついてくる』、「「人員がいて」「サーバー設備が用意できる」状態なら、OpenAIと戦うことは不可能ではない。グーグルやMetaはその条件を十分に満たしている。OpenAIが持っている優位性も、他社が持ち得ないものではない、ということだ」、なるほど。
・『マイクロソフトは「共依存」をいつまで維持するのか OpenAIはサーバーをマイクロソフトに依存している。マイクロソフトはOpenAIに対する最大の出資者だが、逆に言えば、世界トップクラスのクラウドインフラ事業者であるマイクロソフトの力を借りなければ、ChatGPTを含むOpenAIの快進撃も実現できなかっただろう。 マイクロソフトはOpenAIに依存したサービス施策を矢継ぎ早に提供しているが、一方インフラ面でOpenAIはマイクロソフトに依存している。 海外の報道によれば、マイクロソフトがアルトマン氏らの離脱を知ったのは、11月17日の発表直前であるという。 両輪が揃っていないと今の快進撃は実現できないわけだが、その片方が止まりそうになったのを突然知ったマイクロソフトの驚きは想像以上であっただろう。 マイクロソフトのサティア・ナデラCEOはすぐに交渉し、「アルトマン氏らがマイクロソフトに入る」とコメントを発表したが、どのような体制で、どのような組織体を構成するのかといった詳細は公表されなかった。なによりもまず「両社のコンビネーションは安泰です」とアピールする必要があったからだろう。 今回の騒動では、OpenAIへの発言力をマイクロソフトが強化し、漁夫の利を得たようにも見える。だが、同社が取締役会に関係者を送り込めたわけでもなく、両社の関係や体制に変化はない。 今後も体制を維持するなら、OpenAIのガバナンス強化は必須だ。一方で、マイクロソフトとして「OpenAI以外の選択肢」、例えば自社でLLMを開発していく道もなくはない。すでに小規模なLLMは研究しているが、今後はどうなるのだろうか』、「今回の騒動では、OpenAIへの発言力をマイクロソフトが強化し、漁夫の利を得たようにも見える。だが、同社が取締役会に関係者を送り込めたわけでもなく、両社の関係や体制に変化はない。 今後も体制を維持するなら、OpenAIのガバナンス強化は必須だ。一方で、マイクロソフトとして「OpenAI以外の選択肢」、例えば自社でLLMを開発していく道もなくはない」、今後の展開が大いに注目される。
第三に、11月29日付け東洋経済オンライン「お家騒動であらわ「OpenAI」が抱える矛盾の正体 突然のトップ解任の裏に倫理と営利めぐる葛藤」を紹介しよう。
・『OpenAIは2015年12月、アルトマン氏らによって非営利団体として設立された。組織の目標として当時、「金銭的なリターンを得る必要性に制約されることなく、人類全体に最も利益をもたらす可能性の高い方法で、デジタルインテリジェンスを発展させること」と定めている。 AIは業務の効率化などに活用できる一方、フェイクニュースの蔓延や雇用への短期的影響などリスクを伴う。倫理と安全性が求められるAIの領域において、OpenAIは資本的な利益よりも人類の利益を優先する、非営利の研究開発機関として組織されていた。 設立時には、10億ドルの寄付を目標に設定。総額約1.3億ドルの寄付を受け、組織の運営や、ディープラーニング、AIアライメント(AIが人間の価値観、目標、意図に沿って行動するようにすること)の研究などに使用された』、「アルトマン氏らによって非営利団体として設立された。組織の目標として当時、「金銭的なリターンを得る必要性に制約されることなく、人類全体に最も利益をもたらす可能性の高い方法で、デジタルインテリジェンスを発展させること」と定めている。 AIは業務の効率化などに活用できる一方、フェイクニュースの蔓延や雇用への短期的影響などリスクを伴う。倫理と安全性が求められるAIの領域において、OpenAIは資本的な利益よりも人類の利益を優先する、非営利の研究開発機関として組織されていた」、なるほど。
・『数年で「ハイブリッド」組織へと転換 しかし2019年3月に、その組織形態を大きく変えることとなる。OpenAI本体の傘下に、一定条件がついた営利企業のOpenAI LPを設立したのだ。この形態では出資する投資家や従業員は上限付きのリターンを得ることができる一方、一定以上の利益に関しては、非営利組織であるOpenAIに還元される』、「OpenAI本体の傘下に、一定条件がついた営利企業のOpenAI LPを設立したのだ。この形態では出資する投資家や従業員は上限付きのリターンを得ることができる一方、一定以上の利益に関しては、非営利組織であるOpenAIに還元される」、なるほど。
・『OpenAIの組織構造 営利と非営利のハイブリッドな組織に見直した背景について、OpenAIは「アルゴリズムの革新に加え、多くの計算能力を使うことになったことで、OpenAIを始めるときに計画していたよりもはるかに速くスケールすることを決めた」ためと説明していた。 他のIT企業もAI事業に本腰を入れる中、業界をリードするポジションであり続けるには、大規模なクラウドやAIスーパーコンピューターの構築、さらには優秀な人材の確保が欠かせない。そのためには数年間で数十億ドルの投資が必要となり、企業からの出資などを受けられるよう組織形態を変えたわけだ。 実際、そのわずか数カ月後にはマイクロソフトとパートナーシップを締結し、同社が10億ドルの出資を行うと発表。 マイクロソフトは2023年1月にも、複数年にわたって OpenAI に数十億ドル規模の投資を行う方針を発表し、マイクロソフトのAzureは、OpenAI の独占的なクラウドプロバイダーとなった。) 一方、営利企業の設立後も、OpenAI全体の組織の“最上位”に位置づけられてきたのが、6人の役員で構成する理事会だ。2023年6月時点で、OpenAIはその組織構造について主に次のような特徴を挙げている。 「理事会は非営利団体に変わりなく、安全なAGI(汎用人工知能)の促進という義務を果たす必要があり、営利企業もこの使命に従う必要がある」「理事会の過半数は独立性を保っており、社外取締役はOpenAIの株式を保有していない。またCEOのサム・アルトマン氏も直接は株を保有していない」「AGIができたかどうかの決定権は理事会にある」 つまり、OpenAIはあくまで非営利団体として発足した当初の目的を堅持し、それを実現するために理事会の権限を強くしているということだ。 こうした構図から、今回のクーデターのような解任ができたことや、OpenAI Globalに巨額を出資するマイクロソフトですらアルトマン氏の解任を事前に知らなかったことが理解できるだろう』、「「理事会は非営利団体に変わりなく、安全なAGI(汎用人工知能)の促進という義務を果たす必要があり、営利企業もこの使命に従う必要がある」「理事会の過半数は独立性を保っており、社外取締役はOpenAIの株式を保有していない。またCEOのサム・アルトマン氏も直接は株を保有していない」「AGIができたかどうかの決定権は理事会にある」 つまり、OpenAIはあくまで非営利団体として発足した当初の目的を堅持し、それを実現するために理事会の権限を強くしているということだ。 こうした構図から、今回のクーデターのような解任ができたことや、OpenAI Globalに巨額を出資するマイクロソフトですらアルトマン氏の解任を事前に知らなかったことが理解できるだろう」、「社外取締役」が暴走し易い構造があったようだ。
・『理事会メンバー刷新後に残る懸念 解任を決めた当時の理事会は、創業メンバーであるアルトマン氏、ブロックマン氏、イリヤ・サツキバー氏のほか、社外理事3人で構成。2018年から参画しているQuora代表のアダム・ディアンジェロ氏、シンクタンクのランド研究所のターシャ・マッコーリー氏、そして2021年から参画しているジョージタウン大学安全保障・新技術センター戦略担当ディレクターのヘレン・トナー氏だ。 AI政策とグローバルAI戦略研究を専門とするトナー氏の参画時、OpenAIはリリースで「この就任は、テクノロジーの安全かつ責任ある展開に対する私たちの献身を前進させるもの」と記載しており、非営利組織らしくAIの安全性を重視した登用と受け取れる。 アルトマン氏の解任には、サツキバー氏と社外理事の計4人が賛成したとみられている。直近でもアルトマン氏は画像生成や音声合成などテキスト以外のAPIの公開や、開発者が独自のGPTを作成、販売できるマーケットプレースの開発を推し進めていた。ビジネス路線を突き進む同氏との間に生じた軋轢が、解任へとつながった可能性は高い。 一連の騒動を受け、理事会メンバーは抜本的に見直される予定で、元セールスフォース共同CEOのブレット・テイラー氏らの就任が決まっている。アルトマン氏の全面支援を行ったマイクロソフトの関与が強まることも想定される。 理事会の刷新で表向きは一件落着だが、営利色が強まれば、AIの安全性をいかに担保するかというジレンマはいっそう深まる。 世界を騒がせたお家騒動は、AIの開発とビジネス競争をどう両立させるかという根本的な問いを改めて投げかけている』、「アルトマン氏は画像生成や音声合成などテキスト以外のAPIの公開や、開発者が独自のGPTを作成、販売できるマーケットプレースの開発を推し進めていた。ビジネス路線を突き進む同氏との間に生じた軋轢が、解任へとつながった可能性は高い・・・アルトマン氏の全面支援を行ったマイクロソフトの関与が強まることも想定される。 理事会の刷新で表向きは一件落着だが、営利色が強まれば、AIの安全性をいかに担保するかというジレンマはいっそう深まる。 世界を騒がせたお家騒動は、AIの開発とビジネス競争をどう両立させるかという根本的な問いを改めて投げかけている」、「営利色が強まれば、AIの安全性をいかに担保するかというジレンマはいっそう深まる」、難しいものだ。
タグ:人工知能(AI) (その16)(医療に「進出」するChatGPT 医師の仕事をAIがすることになるのか、解任騒動が示した「オープンAIとMSの相互依存」 スピードを支えるのは人員と「サーバー」だが…、お家騒動であらわ「OpenAI」が抱える矛盾の正体 突然のトップ解任の裏に倫理と営利めぐる葛藤) ダイヤモンド・オンライン 野口悠紀雄氏による「医療に「進出」するChatGPT、医師の仕事をAIがすることになるのか」 「もし医学的な質問に対して、大規模言語モデルが専門医レベルの回答をできるなら、事態は大きく変わるだろう。 これについては、さまざまな調査が行なわれており、検証成果はかなり有望な結果を示している」、なるほど。 「大規模言語モデルの臨床的有効性や診断支援の可能性を高く見積もる意見が多い。大規模言語モデルが臨床実装され、医療を強力に支援するようになる可能性は非常に高い。 特に、スクリーニングや初期診断、治療方針策定、フォローアップ、セカンドオピニオン、患者および医療者教育などは激変する可能性がある」、なるほど。 「日本では、これから人口高齢化がさらに進展し、医師不足は深刻な問題になるだろう。信頼性のある医療用大規模言語モデルの開発は、日本の場合にとくに必要度が高い課題だ」、なるほど。 「明らかな誤りやバイアスなど、精度の不安定性に懸念が表明されている。だから、現時点では重要な判断が伴うケースで、専門家のレビューなく出力結果を利用することは難しいとされる。 またプライバシー、倫理、法的制約と規制などについても、解決すべき課題が多くある。治療や研究に取り入れることには、守秘義務や患者の同意、治療の質、信頼性や格差に関する倫理的懸念が伴う。むやみな使用は予想外の結果につながりかねない」、なるほど。 「また、ChatGPTは、安全側に偏った回答をするはずだ。少しでも疑問があれば、「医師の診断を受けた方がよい」と答える可能性高い。自分では大丈夫だと思っているときにそうしたアドバイスを受けると、かえって不安になってしまう・・・健康に関わる問題は、さまざまな微妙な要素を持っており判断が難しい。この問題に関する研究調査がさらに進められることが求められる」、同感である。 東洋経済オンライン 西田 宗千佳氏による「解任騒動が示した「オープンAIとMSの相互依存」 スピードを支えるのは人員と「サーバー」だが…」 「社員のほとんどにあたる700名以上が、アルトマン氏らの復帰を求める署名にサインしており、求心力の強さは明白だ」、取締役会の「アルトマン氏」解任決議に対して、「700名以上が、アルトマン氏らの復帰を求める署名にサイン」、とは。「アルトマン氏」には心強い支援だ。 「「人員がいて」「サーバー設備が用意できる」状態なら、OpenAIと戦うことは不可能ではない。グーグルやMetaはその条件を十分に満たしている。OpenAIが持っている優位性も、他社が持ち得ないものではない、ということだ」、なるほど。 「今回の騒動では、OpenAIへの発言力をマイクロソフトが強化し、漁夫の利を得たようにも見える。だが、同社が取締役会に関係者を送り込めたわけでもなく、両社の関係や体制に変化はない。 今後も体制を維持するなら、OpenAIのガバナンス強化は必須だ。一方で、マイクロソフトとして「OpenAI以外の選択肢」、例えば自社でLLMを開発していく道もなくはない」、今後の展開が大いに注目される。 東洋経済オンライン「お家騒動であらわ「OpenAI」が抱える矛盾の正体 突然のトップ解任の裏に倫理と営利めぐる葛藤」 「アルトマン氏らによって非営利団体として設立された。組織の目標として当時、「金銭的なリターンを得る必要性に制約されることなく、人類全体に最も利益をもたらす可能性の高い方法で、デジタルインテリジェンスを発展させること」と定めている。 AIは業務の効率化などに活用できる一方、フェイクニュースの蔓延や雇用への短期的影響などリスクを伴う。倫理と安全性が求められるAIの領域において、OpenAIは資本的な利益よりも人類の利益を優先する、非営利の研究開発機関として組織されていた」、なるほど。 「OpenAI本体の傘下に、一定条件がついた営利企業のOpenAI LPを設立したのだ。この形態では出資する投資家や従業員は上限付きのリターンを得ることができる一方、一定以上の利益に関しては、非営利組織であるOpenAIに還元される」、なるほど。 「「理事会は非営利団体に変わりなく、安全なAGI(汎用人工知能)の促進という義務を果たす必要があり、営利企業もこの使命に従う必要がある」「理事会の過半数は独立性を保っており、社外取締役はOpenAIの株式を保有していない。またCEOのサム・アルトマン氏も直接は株を保有していない」「AGIができたかどうかの決定権は理事会にある」 つまり、OpenAIはあくまで非営利団体として発足した当初の目的を堅持し、それを実現するために理事会の権限を強くしているということだ。 こうした構図から、今回のクーデターのような解任ができたことや、OpenAI Globalに巨額を出資するマイクロソフトですらアルトマン氏の解任を事前に知らなかったことが理解できるだろう」、「社外取締役」が暴走し易い構造があったようだ。 「アルトマン氏は画像生成や音声合成などテキスト以外のAPIの公開や、開発者が独自のGPTを作成、販売できるマーケットプレースの開発を推し進めていた。ビジネス路線を突き進む同氏との間に生じた軋轢が、解任へとつながった可能性は高い・・・アルトマン氏の全面支援を行ったマイクロソフトの関与が強まることも想定される。 理事会の刷新で表向きは一件落着だが、営利色が強まれば、AIの安全性をいかに担保するかというジレンマはいっそう深まる。 世界を騒がせたお家騒動は、AIの開発とビジネス競争をどう両立させるかという根本的な問いを改めて投げかけている」、「営利色が強まれば、AIの安全性をいかに担保するかというジレンマはいっそう深まる」、難しいものだ。