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生物(その1)(「あえて怠け者を許す」働きアリの不思議な生態 人間が軽視する「働かないアリ」の生存理由、人間と同じ?「働きアリは早死にする」衝撃事実 アリの社会でも経済学の理論が見出せる) [科学]

今日は、生物(その1)(「あえて怠け者を許す」働きアリの不思議な生態 人間が軽視する「働かないアリ」の生存理由、人間と同じ?「働きアリは早死にする」衝撃事実 アリの社会でも経済学の理論が見出せる)を取上げよう。

先ずは、昨年12月9日付け東洋経済オンラインが掲載した生物学者の五箇 公一氏による「「あえて怠け者を許す」働きアリの不思議な生態 人間が軽視する「働かないアリ」の生存理由」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/374615
・『働きアリの世界では、なぜか働かない「怠け者」のアリが存在する。なぜ彼らのような一見、無駄飯食いに見える存在を生かしているのか? 『NHKクローズアップ現代+』の解説を務める一方で、『全力!脱力タイムズ』などさまざまなメディアに出演する異色の生物学者・五箇公一氏による『これからの時代を生き抜くための生物学入門』より一部抜粋・再構成してお届けする。 生物の進化を語るうえで外せない巨人・ダーウィン。彼に触れずして、これから先も話ができないので、ここでダーウィンの進化論についてまとめて話しておきましょう。 ダーウィンの進化論はまさに現在の生物学の礎になっている重要な理論ですが、進化論という響きに難解さを感じる人は少なくないはずです。実際に、生物学や生態学の専門書、あるいはネットの解説なんかを読んでもやたらと硬く難しく語っているものが多くて、いっそう理解を遠ざけている節があります。だいたい学者や専門家という人種は、物事を難しく語ることはできても、簡単にわかりやすく伝えることが苦手な人は多いし、なかにはわざと難しく伝えたがる人も少なくありませんから(笑)』、「わざと難しく伝えたがる人」は、「わざと難しく伝え」ることで、権威付けになると勘違いしているが、かなり多数いることも事実だ。
・『「進化論」とはどんな理論か?  ダーウィンの進化論とは、ざっくりいえば、生物は「変化」を続けており、変化の結果、生き残ってたくさんの子どもを残す上で有利な形質を持つ個体が、不利な形質を持つ個体を押しのけて世の中のメジャーとなり、最終的に不利な形質を持つ個体が滅ぶ、という理論です。 つまり生物の世界は個体間で生存と繁殖(自分の遺伝子を残す)のための厳しい競争が繰り広げられており、ある環境下で「生存率」と「繁殖率」の高いほうの個体が生き残り、その個体の形質が集団中に広がって固定する。こうしてそれぞれの生息環境に特化した形質を持つ生物集団が作り出される。これこそがさまざまな形を持つ種が生み出される「原動力」であるとする理論です。 だからダーウィンの進化論を記述した本のタイトルは「種の起源」とされています(原題:自然選択、あるいは生存闘争における有利な種の保存による、種の起源論)。 ダーウィン自身はこの理論を、自らの探検旅行での観察データから思いついたとされます。彼は1800年代にビーグル号という軍艦に乗ってイギリスから世界中の海洋を5年かけて旅して、その間、大陸や島の多種の生物を観察し、あるいは化石を発掘し、集めてきました。そんな調査の結果から、彼は、なぜこの地球にはさまざまな種が存在し、種ごとに決まった地域に住んでいるのか、そして、なぜ化石でしか見られない生物種たちは滅んでしまったのか、といった生物の時間的・空間的な多様性を作り出しているメカニズムに関心を抱き、その原理として「生物はつねに変化を続ける」という理論を打ち出したのでした。 難しく感じる進化論の理論自体は、実にシンプルで、当たり前のことをいっているだけなのです。 進化論以前は、「生物種は神が創られた」とするキリスト教の創造論が主流とされていましたから、ダーウィンのこの新理論は当時の生物学の概念を根底から揺るがすものであり、生物学のその後の進歩を支える革命的なものでした』、「世界中の海洋を5年かけて旅して、その間、大陸や島の多種の生物を観察し、あるいは化石を発掘し、集めてきました。そんな調査の結果から、彼は、なぜこの地球にはさまざまな種が存在し、種ごとに決まった地域に住んでいるのか、そして、なぜ化石でしか見られない生物種たちは滅んでしまったのか、といった生物の時間的・空間的な多様性を作り出しているメカニズムに関心を抱き、その原理として「生物はつねに変化を続ける」という理論を打ち出した」、やはり超人的だ。
・『今も昔も誤解されやすい進化論  一方で、ダーウィンの進化論は誤った解釈をされやすい理論でもありました。 ダーウィンの進化論では、さまざまな形質を持つ個体間で生存競争が繰り広げられ、生息環境において相対的に有利な性質を持つ個体がより多く生き残り、より多くの子孫を残すことができるとされます。 つまり自然環境が適応力の強い生物だけをすくい取り、弱い生物を振り落とすふるいの役割を果たしており、この自然環境による生物の選別を「自然選択」といいます。 この自然選択はつねに動的であり、環境が変われば「ふるい」の形も変わり、すくわれる形質も変わってきます。生物の持つ形質の有利・不利はいってみれば時代とともに変遷し、逆転も起こりえます。つまり生物の形や性質には完成形というものはない、という点を見落としてしまう人が多いのです。 こうした見落としをしてしまう人は、自然界は弱肉強食・適者生存で成り立っており、弱い個体や、役に立たない形質は、すべて淘汰され、「洗練された」生物だけが生き残ると進化論を解釈してしまうことがあります。 そしてこうした解釈をする人たちにとって自然界や、あるいは人間社会において、一見無駄と思える形質を持つ個体や、ほかよりも弱そうな個体、あるいは「普通とは違う」と判断される人物は「不完全」「不適格」「できそこない」といった無用ともいえる存在に見えることも多々あるようです。 進化の本当の意味は、生物の「試行錯誤」の繰り返しであり、その試行=形や性質の変化が「正解」か「誤り」かを決めるのはそのときそのときの自然環境にすぎず、当然人間が決めることではありません。 そして生物は、たとえ今自分が持っている形質が「正解」だったとしても「いつまた環境が変化するかもしれない」という不確実性に備えて、つねに「新しい変化」=「遺伝子の変異」を生み出し続けます。そして、生物の世界では、人間から見て「無駄じゃね?」と思える形質が意外と生き残っていることがあり、そうした「一見無駄と思われる形質」にも実は存在意義がちゃんとあったりするのです』、「自然界は弱肉強食・適者生存で成り立っており、弱い個体や、役に立たない形質は、すべて淘汰され、「洗練された」生物だけが生き残ると進化論を解釈してしまうことがあります」、ナチスも誤った解釈で有名だ。「「一見無駄と思われる形質」にも実は存在意義がちゃんとあったりするのです」、なるほど。
・『とっても不思議な「働きアリ」の生態  この事例を実証されたのが日本で私が注目している昆虫学者のひとり、北海道大学の長谷川英祐先生です。生態学の分野では無双のベストセラー『働かないアリに意義がある』(メディアファクトリー新書)の著者です。この著書のタイトルのとおり、長谷川先生はアリの巣の中で働きもせずにゴロゴロしているだけの働きアリの存在意義を明らかにされました。 アリという昆虫は、その遺伝的構造が特殊で、基本はすべての個体がメスでオスは交尾の時期にだけ生産されます。そして女王とその娘たちである働きアリから成る「家族単位」で生活しています。働きアリは自分たちの巣を守るためだけに、エサの採集、女王が産む子どもたちの育児、そして敵の襲来に対する防御などを行います。自分に与えられた使命を、生涯をかけて果たすように遺伝子によってプログラミングされているのです。 働きアリにとってはそうした生き方こそが自分の遺伝子を共有する姉妹たちの生存率を上げることになり、ひいては働きアリの持つ遺伝子が次の世代に残る確率を最大化することにつながるようにできているのです。こうしたアリの徹底した社会システムを「真社会性」といいます。 ダーウィンの「自然選択説」に基づけば、真社会性昆虫の巣では、全員が否が応でも働き者になるはずです。もし、少しでも「怠け者」が出てくれば、ほかの巣とエサや住処をめぐる競争で負けてしまいます。だから「怠け者」の存在する余地なんて「理論上は」寸分もないことになります。 しかし、事実は理論より奇なり。実際にアリの巣を観察していると、ほかの働きアリがせっせと働いているのを尻目に、1日中、なにもしないで巣穴でゴロゴロして過ごす「怠け者」が存在することがわかったのです。怠け者といえどエサは必要ですから、彼らもちゃんとエサだけは食べます。まさに無駄飯食いです。こんな働きアリが巣に居候されたのでは、全個体が働き者という巣が別に存在したら、その巣に競争で負けてしまい、子孫を残すことが難しくなります。なので「怠け者」を作り出す遺伝子は自然界からは淘汰されて消滅してしまうはずです。 ところが怠け者にもちゃんと存在意義があったのです。この怠け者がいる巣から、働き者のアリを除去してみると、今まで怠けていたアリたちが働き者に変化して、せっせと働き出すことがわかったのです。 どうやらこの「怠け者」たちは、労働量が不足する事態が発生したときに巣全体の労働量を補填するための予備軍らしいということがわかりました。もし、予備軍がなく、巣全体で100%の労働パフォーマンスを発揮し続けていたら、不測の事態が生じたときにパンクしてしまうことになるでしょう。 アリの巣は最初からこの不測の事態を織り込み済みで、つねに怠け者が生じるように遺伝的にプログラミングされているのです。 怠け者を「予備軍」と読み替えるだけで、皆さんの中でも、その存在に対する印象がガラリと変わると思います。結局「怠け者」というレッテルは人間の先入観がもたらしたものにすぎず、実際には彼らは働かずにじっと力を蓄えて待機する、という「仕事」をしているのです』、「この「怠け者」たちは、労働量が不足する事態が発生したときに巣全体の労働量を補填するための予備軍らしいということがわかりました」、「結局「怠け者」というレッテルは人間の先入観がもたらしたものにすぎず、実際には彼らは働かずにじっと力を蓄えて待機する、という「仕事」をしているのです」、なるほど。
・『すべてをアリ任せにするアリノスササラダニ  このほかにも自然界では一見、無駄と思える形質が観察されます。例えば、自分の専門のダニの世界にも変なのがいます。アリノスササラダニというダニは、カドフシアリというアリの巣の中に居候していて、移動するのも、脱皮をするのも、エサを食べるのも、産卵するのも、すべてアリ任せで、まるで介護老人のような生活をしています。 アリのほうはとにかくせっせとダニの世話をして、巣を引っ越すときも大事にダニを抱えて持っていきます。 これもダーウィン流自然選択説から見たら、ありえない生き方になります。このダニは明らかにアリにとっては遺伝的なつながりが皆無の別種であり、そんなものの世話をする暇があるなら、自分たちの巣の幼虫の世話に集中すべきです。 ところがこのアリの巣を観察していると、アリたちはエサ不足になると、このダニを食べてしまうことがわかったのです。つまりこの居候のダニは、いざというときのための「非常食」だったわけです。 一方のダニのほうはなぜ食べられるかもしれないリスクを無視してアリの世話になる生き方をしているのか?おそらく、ダニがアリの巣の外で単独で生きていくとなれば、天敵に襲われる可能性が高いからです。 そうであれば、たまに食べられるかもしれないとしてもアリの巣の中で世話してもらう生活のほうが、自分の子孫を残せる確率が「相対的に」高いと考えられます。こうしてアリとダニ双方がいつ訪れるかわからない食料不足という不確実性によって共生関係を進化させてきたと考えられるのです』、「アリとダニ双方がいつ訪れるかわからない食料不足という不確実性によって共生関係を進化させてきたと考えられる」、こんな「共生関係」があるとは驚かされた。
・『生物の多様性とは「希望」である  「働かないアリにも意味がある」ことを発見された長谷川先生は、以下のようにも指摘しています。「生物の進化の背景には、短期的・瞬間的な適応力の最大化という自然選択だけでなく、持続性という長期的な適応力も重要な要素として存在する」。 自然選択説を単純な「不要物排除論」として捉えるのは人間の主観にすぎず、自然界で繰り広げられる進化のメカニズムとプロセスは、人間の想像をはるかに超える複雑さと奇想天外さに満ちているのです。 生物は変化を続けます。それは遺伝子が変異をし続けるからです。適応力が極端に弱い変異はすぐに淘汰されて自然界から消滅することでしょう。適応力は弱いけど、自然界の中で微妙なバランスでマイノリティーとして残る変異もあります。あるいは箸にも棒にもかからないどうでもいい変異が自然界でぶらぶらとほっつき歩くこともあります。 自然界にはさまざまな遺伝子の変異が蓄積され、いろいろな遺伝子からいろいろな種が生み出され、とてつもなく多くの種が豊かな生態系を作り、この地球には生物が織りなす多様な世界が展開されるようになりました。これが皆さんもたまに耳にする「生物多様性」の正体です。 遺伝子、種、そして生態系というそれぞれのレベルでの多様性は過去から現在までの進化のたまものであるとともに、生物たちの未来に対する「備え」=「希望」でもあるのです』、「生物多様性」の理解がより深まったようだ。

次に、12月19日付け東洋経済オンラインが掲載した取材記者グループのFrontline Pressによる「人間と同じ?「働きアリは早死にする」衝撃事実 アリの社会でも経済学の理論が見出せる」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/394734
・『虫眼鏡で小さなアリを覗いてみると、そこでは人間社会と同じことが繰り広げられていた――。30年以上、アリの生態や行動を研究してきた琉球大学農学部の辻和希(つじ・かずき)教授の研究はそんな意外なことを教えてくれる。辻氏は「最も基礎的な研究が最も応用に役立つ」を信念として、アリを観察し続けてきた。その目に、私たちが織りなす人間社会はどう映っているのか。 夢の実現や社会の改革に向けて地道な努力を重ねる研究者たちを紹介する「ニッポンのすごい研究者」。第3回のテーマは「アリと人間」について聞く(Qは聞き手の質問、Aは辻氏の回答)』、興味深そうだ。
・『アリも協力したり、反発したりする  Q:研究のきっかけは何だったのでしょうか。 A:子どものころから昆虫が好きでした。春休み、夏休み、冬休み。そういう中で「スキーができるから私は冬休みが好き」という子どももたくさんいたと思うんですけど、私は断然、昆虫でした。昆虫がたくさんいる夏休みが好きでしてね。夏休みに家族で旅行に行くと、私だけ放っておかれて、ずっと昆虫採集している。そういう生活を送っていました。 普通の虫好きの子どもと同じようにチョウチョやトンボ、カブトムシを追いかけ回していたんですが、母が言うには、物心つくかつかないかの1歳ぐらいのときに、よく軒先でアリの行列をじっと眺めていたらしい。 本格的にアリを研究対象にするのは修士課程に入ってからなんです。でも、本当は1歳のときからすでに魅せられていたのかもしれません。アリを研究対象に選んだのは、実はそこまで深い熱意があったからではないんです。指導教官の勧めでした。「女王アリがいないアリがいるらしい。面白いから、その生態を研究してみたら」と。 それで、アミメアリ(東南アジアから東アジアに広く生息する小型のアリ)を研究対象に選びました。いざ研究を始めてみると、その面白さにのめり込んでしまって……。 アリと人間は当然違いますけど、社会を構成するという点は共通しています。人と人の間で集団の力学が働くのと同じように、アリも協力したり、反発し合ったりと集団の力学が働いている。それが研究でわかるんです。 生物が集団でいるとどういうことが起こるのか。それを知ることができる点に引き込まれました。 Q:アリの集団の中で起きている興味深い事例があるそうですね。 A:2013年に「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」(オンライン版)に掲載された論文にまとめました。その内容は「働かないアリは働きアリよりも長生き」というものです。 (つじ・かずき氏の略歴はリンク先参照) アミメアリを使って実験したところ、働きアリの労働に「ただ乗り」して、労働せずに産卵ばかりするアリが交じっていることを発見しました。 観察していると、働きアリは働かないアリの分まで労働するため早死にする。働かないアリは多くの子を産みますが、産まれてきたアリも遺伝的に働かないので、働かないアリのコロニーは次世代の個体を残せなくなるんです。 行動経済学で言われてきた「力を合わせれば大きな成果が得られるが、他者の働きに期待して怠ける者がいれば協力が成り立たなくなる」という「公共財ゲーム」のジレンマを、アリ社会の中にも見出せました』、「働きアリは働かないアリの分まで労働するため早死にする。働かないアリは多くの子を産みますが、産まれてきたアリも遺伝的に働かないので、働かないアリのコロニーは次世代の個体を残せなくなる」、「働かないアリ」が少数派の間は大丈夫だが、多数派になると「次世代の個体を残せなくなる」、なるほど。
・『裏切り者がいないかを監視し、厳しく罰する  ほかにも「裏切り者がいないか監視し、見つけたら厳しく罰する」という習性も見つかっています。一般に、幼虫を育てたり、エサを捕ったりするのが働きアリの仕事で、産卵を担当するのは女王アリです。こうした役割分担を守らずに、産卵する働きアリもいます。 アリ社会では「産卵=働かないこと」を意味するので、産卵する働きアリが出現すると、他の働きアリが産卵を妨害したり、卵を破壊したりします。どうです?人間社会を彷彿とさせるでしょう? しかも、その「取り締まり」の度合いが集団の成熟度によって異なるということも突き止めました。働きアリの数が100匹未満の若い集団の場合、ほとんどの卵が壊されます。 ところが200匹以上の成熟した集団になると、破壊された卵は20%程度でした。つまり集団がまだ非力な時には規律が優先され「強い取り締まり」が働きますが、集団が成長すると「取り締まり」が緩んで働きアリの利己的行動もそこそこ許容されるのです。 これは「集団vs.集団」と「個体vs.個体」という2つのレベルの競争が同時に働く中で、種全体とかもっと大きなメタ集団のなかでどんな遺伝子の戦略が生き残っていくかを研究した理論で予測したのですが、私たちの実験はその理論を裏付けて実証したわけです。 これらの研究成果は観察だけでは達成できません。「動的ゲーム理論」という複雑な数式を使う数理モデルで分析して、結論を導き出しています』、「働きアリの数が100匹未満の若い集団の場合、ほとんどの卵が壊されます。 ところが200匹以上の成熟した集団になると、破壊された卵は20%程度でした。つまり集団がまだ非力な時には規律が優先され「強い取り締まり」が働きますが、集団が成長すると「取り締まり」が緩んで働きアリの利己的行動もそこそこ許容されるのです」、「これらの研究成果は観察だけでは達成できません。「動的ゲーム理論」という複雑な数式を使う数理モデルで分析して、結論を導き出しています」、ずいぶん先進的なのに驚かされた。
・『アリの社会でも「国際分業論」が成り立つ?  Q:今はどんな研究をされているのですか。 A:現代の人間社会で一般的になった「グローバル経済」がアリの社会でも起きているのではないか。今はそれをテーマに研究しています。国際分業によって生産性を最大化させる、国際経済学の「国際分業論」。それが成り立つかどうか、アリの巣を使って検証しているんです。 経済学はマクロになればなるほど、そのモデルが正しいか否かについて、実際の社会で実験して確かめることができません。 国際分業する国と分業しない国を、条件や背景を一定にしながら、何年も両方の国の経済状況を観察することは難しいですよね? でも、アリならできるんです。経済学モデルの通りにアリに行動させたときに、効用が高まるか、つまりアリの個体数が増えるかということを観察していくことで、そのモデルが正しいかがわかります。 もしモデルと違う結果が出たら、モデルの仮定が間違っていたのではないかということも指摘できる。 実は、ヒアリやアルゼンチンアリの世界では、巣同士で分業が強く働いているであろうされています。彼らには侵略性もある。こうしたメカニズムを解き明かすことにつながるのではないかと考えています。) Q:近年はそのヒアリやアルゼンチンアリなどが人体に影響を与えたり、在来種を駆逐したりしています。外来アリにどう対応したらいいのでしょうか。アリの専門家としてできることは何ですか。 A:ヒアリやアルゼンチンアリのように、人の生命や生態系に影響を及ぼす恐れがある特定外来生物に指定されているアリに関しては、日本に定着した場合の影響力が大きいので、殺虫剤を使って防除するというのは一つの手だと思います。もちろん、それで十分なはずはありません。 先ほど説明した分業モデルの実証を通して「なぜ在来アリを駆逐するほど侵略性が高いのか」の基礎研究を深めていくつもりです。外来アリは日本でも社会問題になってきたので、頑張って社会貢献したいと思います。 でも同時に、「これまでないがしろにされてきた基礎的な研究を継続していたからこそ、こういった対策が取れるんですよ」という点も示せたら、と思っています。 社会に対する寄与をあえて意識せず、研究者それぞれがそれぞれのテーマを掘り下げていく。その掘り下げた研究成果が結果的に社会への寄与につながっていくんじゃないか。私はそう信じています』、「国際分業論」を検証するには、経済学モデルの通りにアリに行動させたときに、効用が高まるか、つまりアリの個体数が増えるかということを観察していくことで、そのモデルが正しいかがわかります。 もしモデルと違う結果が出たら、モデルの仮定が間違っていたのではないかということも指摘できる。ただ、比較優位などを、「アリ」の「行動」にどのように結びつけてゆくのだろう。
・『人間とアリと微生物の共通点  基礎的研究を通して、アリの集団には「働かないアリ」「裏切り者」がいることがわかりました。「裏切り者」が進化することで、社会の共同を破壊する現象が起こっていることも明らかにすることができました。 こういう「ペイオフ構造」を有するゲームが自然界で成り立っているのは、既知の生物では人間とアリと微生物だけなんです。 ただ、裏切り者が進化していく裏側では、共同するアリが集団の中にすごくたくさんいるのもまた事実です。局所的には裏切り者のアリが共同するアリの働きを食い物にしていますけど、おおむね集団の秩序は維持されているわけです。 人間の社会も同じだと思います。いつの時代も利己的な振る舞いをする人や団体がいて、利己的な行動は広がりやすいという特徴を持っている。それでも私たちの社会の共同性は維持されている。それがなぜかということを知りたくて、私はアリの研究を続けているわけなんです』、「アリの研究」を通じて「人間の社会」を研究するとは、なかなか面白そうだ。
タグ:生物 東洋経済オンライン Frontline Press (その1)(「あえて怠け者を許す」働きアリの不思議な生態 人間が軽視する「働かないアリ」の生存理由、人間と同じ?「働きアリは早死にする」衝撃事実 アリの社会でも経済学の理論が見出せる) 五箇 公一 「「あえて怠け者を許す」働きアリの不思議な生態 人間が軽視する「働かないアリ」の生存理由」 「わざと難しく伝えたがる人」は、「わざと難しく伝え」ることで、権威付けになると勘違いしているが、かなり多数いることも事実だ。 「世界中の海洋を5年かけて旅して、その間、大陸や島の多種の生物を観察し、あるいは化石を発掘し、集めてきました。そんな調査の結果から、彼は、なぜこの地球にはさまざまな種が存在し、種ごとに決まった地域に住んでいるのか、そして、なぜ化石でしか見られない生物種たちは滅んでしまったのか、といった生物の時間的・空間的な多様性を作り出しているメカニズムに関心を抱き、その原理として「生物はつねに変化を続ける」という理論を打ち出した」、やはり超人的だ 「自然界は弱肉強食・適者生存で成り立っており、弱い個体や、役に立たない形質は、すべて淘汰され、「洗練された」生物だけが生き残ると進化論を解釈してしまうことがあります」、ナチスも誤った解釈で有名だ。 「「一見無駄と思われる形質」にも実は存在意義がちゃんとあったりするのです」、なるほど。 「この「怠け者」たちは、労働量が不足する事態が発生したときに巣全体の労働量を補填するための予備軍らしいということがわかりました」、「結局「怠け者」というレッテルは人間の先入観がもたらしたものにすぎず、実際には彼らは働かずにじっと力を蓄えて待機する、という「仕事」をしているのです」、なるほど アリとダニ双方がいつ訪れるかわからない食料不足という不確実性によって共生関係を進化させてきたと考えられる」、こんな「共生関係」があるとは驚かされた。 「生物多様性」の理解がより深まったようだ。 「人間と同じ?「働きアリは早死にする」衝撃事実 アリの社会でも経済学の理論が見出せる」 「働きアリは働かないアリの分まで労働するため早死にする。働かないアリは多くの子を産みますが、産まれてきたアリも遺伝的に働かないので、働かないアリのコロニーは次世代の個体を残せなくなる」、「働かないアリ」が少数派の間は大丈夫だが、多数派になると「次世代の個体を残せなくなる」、なるほど。 「働きアリの数が100匹未満の若い集団の場合、ほとんどの卵が壊されます。 ところが200匹以上の成熟した集団になると、破壊された卵は20%程度でした。つまり集団がまだ非力な時には規律が優先され「強い取り締まり」が働きますが、集団が成長すると「取り締まり」が緩んで働きアリの利己的行動もそこそこ許容されるのです」、「これらの研究成果は観察だけでは達成できません。「動的ゲーム理論」という複雑な数式を使う数理モデルで分析して、結論を導き出しています」、ずいぶん先進的なのに驚かされた。 「国際分業論」を検証するには、経済学モデルの通りにアリに行動させたときに、効用が高まるか、つまりアリの個体数が増えるかということを観察していくことで、そのモデルが正しいかがわかります。 もしモデルと違う結果が出たら、モデルの仮定が間違っていたのではないかということも指摘できる。ただ、比較優位などを、「アリ」の「行動」にどのように結びつけてゆくのだろう。 「アリの研究」を通じて「人間の社会」を研究するとは、なかなか面白そうだ。
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