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”右傾化”(その10)(高齢者はなぜネトウヨにはまるのか、保守がネット右翼と合体し いなくなってしまった理由、ヨーロッパの極右や排外主義者はリベラルな社会が生み出した新たな「マイノリティ」だ) [国内政治]

”右傾化”については、6月4日に取上げた。今日は、(その10)(高齢者はなぜネトウヨにはまるのか、保守がネット右翼と合体し いなくなってしまった理由、ヨーロッパの極右や排外主義者はリベラルな社会が生み出した新たな「マイノリティ」だ)である。

先ずは、ルポライターの三宅雪子氏が6月7日付け日刊ゲンダイに掲載した「高齢者はなぜネトウヨにはまるのか」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/255528
・『ネトウヨブログを信じた読者は多額の賠償責任を負うはめに:ネトウヨブログ「余命三年時事日記」にあおられ大量懲戒請求を行った読者と不当な請求をされた弁護士の間で、法廷バトルが繰り広げられている。 懲戒請求された弁護士の数は160人前後だといわれているが、正確な数字は明らかでない。弁護士の多くが懲戒請求されること自体を不名誉だと考えるからだ。 そんな中、7人の弁護士がブログ読者(懲戒請求者)の提訴に立ち上がった。懲戒請求の理由が必ずしも一緒でないことから、提訴の内容もそれぞれ違う。だが、ブログ読者たちの懲戒請求が「不当」であるという主張では一致している。 佐々木亮弁護士は2017年6月に最初に懲戒請求された10人のうちの1人だ。SNSで自分にねぎらいの言葉をかけた嶋﨑量弁護士、北周士弁護士まで懲戒請求されたことで提訴に踏み切った。理由はこうだ』、「弁護士の多くが懲戒請求されること自体を不名誉だと考えるから」、「懲戒請求された弁護士の数は160人前後」にも拘らず、「懲戒請求者の提訴に立ち上がった」のは「7人」に留まったようだ。
・『「ネット上の少数者(この場合は弁護士)に対する大量の悪意に対して、しっかり対抗することが同様の行為の防止につながると考えました」 嶋﨑、北の両弁護士も提訴に加わった。 ブログ主が執拗に攻撃しているのが在日コリアン。在日コリアン弁護士協会の会員も複数が懲戒請求されているが、提訴したのは金竜介、金哲敏両弁護士の2人だった。金竜介弁護士は「『金』という名前だけで懲戒請求された。民族差別なのは明白です」と憤る。 神原元弁護士は日ごろからヘイトや差別と闘っている。ブログ主にとっては不倶戴天の敵といえる存在だ。 小倉秀夫弁護士は「ブログ主の見解に対して批判したら、あおられて懲戒請求された」という。小倉弁護士の裁判の過程ではブログ主の開示請求が認められた。ブログ主の正体が暴かれる日が近いかもしれない』、「神原元弁護士」については、ここまでの文章では取上げた意図が不明だが、次のパラグラフで出てくるようだ。
・『6月3日現在、複数の判決が出ているが、いずれも弁護士側が勝訴している。初の確定判決は4月19日、金弁護士らの裁判で被告に55万円の損害賠償を命じたものだ。期限までに被告は控訴しなかった。なぜ、控訴しなかったのかはわかっていない。彼らの中にも「ほころび」が出だしているのかもしれない。 ブログを信じて、正義のためだと思い込んだ結果、読者は多額の賠償責任を負うことになった。それでも、まだ目が覚めない人は大勢いる。 昨年10月には懲戒請求者712人が神原弁護士に対して約7億2000万円の支払いを求める訴訟を起こした。神原弁護士が請求者に送った慰謝料を求める通知書が“脅迫”にあたるという、荒唐無稽な理屈だった。 これに対して神原弁護士らは今年4月、約3億6700万円の支払いを求めて反訴している。 それだけではない。実は他の弁護士たちにも懲戒請求者らから“反撃”の訴状が届き始めている。ネトウヨブログをめぐる法廷バトルは複雑な様相を呈してきた』、「複数の判決が出ているが、いずれも弁護士側が勝訴」、というのは当然だろう。ネットの気軽さで「懲戒請求」という法律行為をした以上は当然の報いだ。「懲戒請求者らから“反撃”」、は敗訴した腹いせの嫌がらせだろう。

次に、文筆家の古谷経衡氏が10月11日付けNewsweek日本版に掲載した「保守がネット右翼と合体し、いなくなってしまった理由」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/10/post-13168_1.php
・『<当初ネット右翼とは分離していた旧来の保守が、いかにして「嫌韓」に堕していったかを全て記す。本誌「嫌韓の心理学」特集より> 今では信じられないことだが、冷戦時代の日本の保守は韓国に対して極めて好意的であった。朝鮮半島は38度線で南北に分断され(むろん、これは現在でも変わらない)、共産主義の脅威がソウルからわずか数十キロ地点まで押し寄せていた時代、保守は「反共」というただ一点のみにおいて韓国を同志として見なした。 この時期に大手を振っていたのが「釜山赤旗論」。韓国南端の釜山市が共産主義者の手に落ちると日本本土もいよいよ危ないという認識のことで、韓国はそれを防ぐ「反共の同志」として認識されていた。 いわゆる70年安保華やかなりし頃、「反・反安保運動」に傾倒した者、つまり保守系の学生らは韓国の同世代とさまざまな国際交流を行っている。現在、自称保守系論壇誌で「韓国人は嘘つき」だの、「韓国人は恩を忘れている」だのと口をヘイトの形にして叫んでいる自称保守系言論人の古老は、その昔この系統に属していた。 韓国人と酒を酌み交わし、歌い、時には恋仲になった。このような反共時代の韓国人との交流を、彼らは口が裂けても口外しない。もはやネット右翼と一体となった自称保守のより若い世代から「裏切り者」の烙印を押されるのが怖いからである。 かつて韓国人と大いに交歓した日本の保守系学生らが、現在、少なくない数でヘイトの前衛に立っていることを私は知っているし、その人間を名指しすることもできる。しかし冷戦時代の記憶や知識などみじんもない現在の自称保守やネット右翼には、韓国人が反共の同志だった事実をいくら指摘したところで通用しないから、古老らは沈黙を貫いている。まるでかつての韓国人との交歓の事実を知られまいとして、やましさを隠そうとするようにわれ先にと「嫌韓」を叫んでいる』、「かつて韓国人と大いに交歓した日本の保守系学生らが、現在、少なくない数でヘイトの前衛に立っている」、人間の考え方は変わりうるとはいっても、なんとも節操のない話だ。
・『動画が両者をブリッジした  「嫌韓はネット右翼の専売特許」とはよく言ったものだが、もはやこの定義は正しくないかもしれない。一部自称保守系雑誌や中小零細出版社の中に自閉していた嫌韓は、今や最大のマスメディア=地上波テレビの中で堂々と展開されているからだ。 しかし、これはテレビの中枢が韓国を憎んでいるからではなく、単に高齢化した視聴者に対し視聴率として訴求できると踏んでのことであって、地上波テレビが思想的に転換したからではない。地上波テレビにおける嫌韓は一過性のものであり、時期が来れば収束すると私はみる』、そうであってほしいところだ。
・『少なくとも2000年代後半~10年代初頭まで、この国では保守とネット右翼は分離していた。前者のよりどころは「改憲・自主憲法制定」「靖国神社公式参拝推進」「東京裁判史観の是正」であり、嫌韓は大きなウエートを占めてこなかった。理由は、冒頭に挙げたとおり保守の中の少なくない部分が、かつて反共保守として韓国人と交歓を持つ者であったからである。 一方、後者のネット右翼は、2002年のサッカーワールドカップ日韓共催大会からネット上に繁茂してきた連中で、冷戦時代における日韓の蜜月などという事実を知らず、ひたすらに韓国(この場合は韓国チームやサポーターら)と(彼らからすると)その専横を擁護するように思える日本国内のマスメディアへの攻撃に終始した。そうした中から在特会(在日特権を許さない市民の会)が生まれ、2ちゃんねる(現5ちゃんねる)は嫌韓と「親韓」マスメディアへの呪詛としか言いようのない批判的姿勢がスタンダードとなった。 だから、2011年に不当に韓流ドラマを垂れ流しているとして起こったフジテレビ抗議デモ(参加者延べ1万人)は、東京・南麻布にある駐日韓国大使館ではなくお台場のテレビ局に向かったのである。つまりネット右翼は「嫌韓」と「嫌メディア」という2大特性を兼ね備えて出発した存在であった。 このとき、既存の保守は、実を言えばこのようなネット発の嫌韓の潮流を冷ややかに見つめていた。それは既に述べたとおり、保守の少なくない部分を構成する者が反共保守として韓国人と交歓の経験を持っていたから。さらに核心を言えば、ネット右翼はフジテレビという「保守の虎」の尾を踏み付けていたからである。 日本最大のメディア・コングロマリットの1つ、フジサンケイグループは、フジテレビを頂点として傘下に複数のメディアを持つ。全国紙「産経新聞」、そして現存する日本で最も歴史の古い保守系雑誌「正論」、日刊スポーツ紙「夕刊フジ」。出版事業として「産経新聞出版」「扶桑社」など。 産経新聞の常連寄稿者や正論の執筆者は、当然、これら保守業界の枢機に位置する。彼らがネット右翼のフジテレビ攻撃に同調しなかったのは、このような資本関係があるからである。当時、フジテレビ抗議デモに参加したある男は、産経新聞を片手に握りながらフジテレビと韓国に対する批判をまくしたて、「なぜ産経新聞ですらこのデモを報道しないのか」と嘆いていたのを私は今でも強烈に記憶している。報道しないのではなく、できないのである。そんなことも分からないで、ひたすらに妄想(「フジテレビ社主は在日朝鮮人」など)とヘイトを虚空にまき散らしていたのが、当時のネット右翼の標準的な知性レベルであった』、私もフジテレビが「韓流ドラマを垂れ流している」のには、いくら安いからとはいえ、大いに違和感を抱いた。
・『しかし、時がたつにつれてこの二者、つまり保守とネット右翼は銀河同士の衝突のようにゆっくりとだが着実に接近していく。その仲介役を担ったのが、2000年代後半から2010年代前半に権勢を振るったCS放送局である「日本文化チャンネル桜」であった。チャンネル桜は、いわゆる保守、つまり旧態依然とした反共保守を含む古典的な保守の言説を、ネット空間に「動画」として組織的・恒常的にばらまいた第一人者である。 それまで、せいぜい個人が細々と行っていたネット右翼動画の世界に、法人が(一応)体系的に、20分とか40分とかの尺で理屈をまくしたてる番組を「投入」したパイオニアこそチャンネル桜であった。これによって、保守とネット右翼は急速に合体の道をたどっていく。ネット右翼は、体系的に投入され続けるそれらの動画のとりこになり、チャンネル桜はこの時期黄金期を迎える。延べ月間再生回数で数百万を優に超え、保守とネット右翼をブリッジする「両界の巨人」として君臨するのだった。 2012年に私が1010人のネット右翼を対象にアンケート調査したところによると、平均年齢は38.15歳。男女比は76:24。4年制大学卒(中退含む)は全体の6割を超え、年収は中の上。最も多い職種が自営業、役員・管理職の順であった。このことからも分かるように、ネット右翼は社会的落伍者では決してなく、むしろ社会的には比較的上位に位置する階級であると言える。政治学者・丸山眞男の言う、「日本型ファシズムを支えた中間階級第一類」とうり二つである。つまり地主、教員、会社や工場の責任者、町内会や自治会の長、零細企業経営者のそれだ。 彼らは、在日コリアンと在日朝鮮人と在日韓国人の区別もつかず、ただ差別を区別だと言ってのける。こうした連中がなぜわが国において比較的上位の社会階級にあるのかと言えば、悲しいことにわが国では、近現代史の知識と学歴は比例しないからである。日韓条約や日本の朝鮮半島の植民地支配に全くの無知でも、大学受験や医師国家試験、司法試験には関係がない』、確かに「近現代史」は殆ど教えられないのは、問題だが、大学入試でこれを取り入れるのは、学問的解釈が固まっていないなかでは難しいだろう。我が家ではCS放送は契約してないので、「日本文化チャンネル桜」があったことすら知らなかった。
・『保守の古老は有頂天になった  だから彼らネット右翼は、特に歴史に対して虫食い状の基礎知識しか用いておらず、そこにチャンネル桜の流すトンデモ・右傾化した動画が放り込まれることによって、無批判にその内容を信じ、「ネットde真実」(ネット上の情報が全て真実と思い込むこと)が形成されていく。前掲した在特会の元会長桜井誠も、実はチャンネル桜の出身者で、2000年代中盤の一時期常連出演者として名をはせていた。 チャンネル桜が保守とネット右翼をブリッジさせたことにより、保守側にも変化が訪れた。それまで封書、機関紙、ファクスがコミュニティー間の通信ツールだったものが、一挙に電子化・近代化されたのである。産経新聞や正論に寄稿しても、熱心なファンから激励の封書やハガキが1週間に数通来るのが関の山だった保守業界に、動画へのコメントという形で大量の肯定的反応が「瞬時に」「即座に」あふれ返る。 保守の古老たちは有頂天になる。それまでフジサンケイグループの資本関係におもんぱかってネット右翼と距離を置いていた論客たちが、ネットからの反応に狂喜乱舞し、フジテレビ以外の地上波局、産経新聞以外の大新聞への批判、そして嫌韓の大合唱に手を染めていくようになる。それが「NHK攻撃」(この流れから2013年にNHKから国民を守る党が生まれた)、「朝日新聞、毎日新聞攻撃」である。 こうして初手で、ネット右翼の動きを冷ややかに、冷笑的に見つめていた保守は、あっという間にネット右翼と融合し、差別を区別と言い直して、根拠のあるなしにかかわらず、嫌韓の渦の中に合流していったのである。 爾来、10年がたち、「保守」と「ネット右翼」は完全に一体となり、もはやその両者に特段の差違を見つけ出すことは難しい。唯一業界内で変化があったとすれば、かつて黄金時代を築いたチャンネル桜が事実上の内紛を起こしてCS放送から撤退し、代わってチャンネル桜の何百倍、何千倍という資本力を持った化粧品大手のDHCがCS放送局「DHCテレビ」を保有し、そこに視聴者層のほとんどが移行したことである。 現在、嫌韓を叫ぶ人々は2012年の私の調査時点からほとんどそのままスライドしている。つまり平均年齢は38.15+7で45.15歳。アラフィフが主力である。日本全体がそうであるように、嫌韓層もまた高齢化しているのだ。「あいちトリエンナーレ」で慰安婦像のアート展示に激高し、「ガソリンを持っていく」などと書き込みをして、威力業務妨害で警察に逮捕された2人の年齢はそれぞれ59歳と64歳。まさにネット右翼の中核層である。 本来の「保守」は絶滅危惧種(注:「。」が落ちている?)もともと高齢者のサロン的要素があった保守と、それよりもやや若い(とは言ってもアラフォー)層を主体としたネット右翼が合体したことにより、嫌韓の主軸は高齢者となり、中高年で嫌韓が好発している。朝日新聞の調査でも、世代別に韓国への感情を聞いたところ、加齢すればするほど「嫌い」のパーセンテージが増える。「嫌韓はネット右翼の専売特許」どころか、「嫌韓は中高年男性の専売特許」と言える。日韓両国の若い層(30代以下)はお互いに双方の文化に好意的であり、嫌韓どこ吹く風である』、「嫌韓の大合唱」が、「NHK攻撃」・・・「朝日新聞、毎日新聞攻撃」につながったとは、なるほどと納得できた。
・『最後に、私は、物書きとして2000年代後半から10年代初頭までの7年ほど、この保守業界に身を置いていた。保守と言うのなら、エドマンド・バークや福田恆存や小林秀雄の思想を読み込んでいる人ばかりだと思ったが、当時から全く違った。医師や公認会計士、税理士、企業経営者といった(特に医師が多かったが)社会的に地位のある人が根拠なしに隣国と隣国人を差別する。「正論を言い続ければ、いずれヘイトはなくなる」と思っていたが甘かった。彼らは基本的に学習しないし、虫食い状の歴史知識を正統的な学問や先行研究から穴埋めしようという努力も一切しない。韓国が韓国が、というわりに韓国に行ったことが一度もない。 いまだ日韓併合は合法で日本は朝鮮を植民地支配していない、というオカルト雑誌でも取り上げないトンデモ説をかたくなに信じて疑わない。自称保守系論壇誌は完全に韓国差別雑誌に成り下がり、平気で「韓国が消えても誰も困らない」などの特集を組み、零細出版社はカネのために『韓国人に生まれなくてよかった』というタイトルからしてモロに差別の出版行為を平然と続けている。 私はこんな業界がほとほと嫌になったし、一時でもこの業界にいた自分を恥じている。本当にばからしく、彼らに更生の余地はない。 「保守」とは本来、人間の理性に懐疑的で、社会の急激な改変や改良を嫌い、歴史や経験、常識(コモンセンス)に価値判断の基準を定めるという生活姿勢そのものを指す。もうそんな本来の意味での「保守」は、絶滅危惧種である。私はたとえ絶滅しようとも保守の本懐を曲げないで死にたい。(筆者の著書に『ネット右翼の終わり』『左翼も右翼もウソばかり』など。11月に小説『愛国商売』を刊行予定)』、「いまだ日韓併合は合法で日本は朝鮮を植民地支配していない、というオカルト雑誌でも取り上げないトンデモ説をかたくなに信じて疑わない」、との嫌韓派の姿勢には、改めて驚かされた。「私はこんな業界がほとほと嫌になったし、一時でもこの業界にいた自分を恥じている」、古谷氏と私とでは政治的立場は真逆だが、良心的右派の嘆きは理解できる。

第三に、作家の橘玲氏が10月12日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「ヨーロッパの極右や排外主義者はリベラルな社会が生み出した新たな「マイノリティ」だ【橘玲の世界投資見聞録】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/217199
・『世界金融危機の直後に刊行した『チャヴ 弱者を敵視する社会』(海と月社)で、オックスフォード大学卒の20代のライター、オーウェン・ジョーンズは「21世紀の左翼の騎手」として世界的に有名になった。チャヴ(Chavs)とは、知識社会=グローバル世界から脱落した貧しい白人労働者への蔑称で、イギリスではミドルクラス(エリート階級)とワーキングクラス(チャヴ)の分断が進んでいる。 [参考記事] ●イギリスの地方都市にふきだまる「下級国民」、チャヴは蔑まれ、嘲笑される白人の最貧困層 『チャヴ』のなかでジョーンズは、2010年の総選挙で左派議員のために戸別訪問したときの体験を書いている。 (数カ月ぶりによく晴れた日曜日で、ほとんどの家は外出していたため)数軒訪問して空振りしたあと、エプロンをつけた中年女性がついに出てきた。彼女は明らかに、気持ちを打ち明けたがっていた。「うちの息子は、仕事を見つけられないの」と彼女は怒った。「でも、移民はこんなにたくさん入ってきて、みんな就職している。移民が多すぎるのよ!」 こうしてジョーンズは、貧困や格差、差別とたたかう左翼運動の中心となるべき貧困層が“排外主義者”になっているという不都合な事実に向き合わざるを得なくなった。それは、移民排斥を掲げるイギリス国民党(BNP/British National Party)の躍進に象徴されていた』、トランプ大統領が炭鉱労働者などの「忘れられた白人」層の支持を集めたのと似た構図だ。
・『BNPの台頭を許したのは人種差別というより、労働者階級を軽視した既成政治への反発  BNPは1882年に創設された白人至上主義の極右政党で、2010年当時はニック・グリフィンをリーダーに、イギリスで5番目に大きな政党になっていた。――その後、EUからの離脱を掲げるイギリス独立党(UKIP/UK Independence Party)に押されて党勢は凋落する。 ジョーンズは、BNPの台頭はイギリス社会が人種差別的になったことの表われではないとして、「イギリスは欧州でもっとも異人種間の婚姻率が高く、みずから「強い人種差別的偏見を持っている」と認める人はたったの3パーセントで、5人中4人はまったく偏見を持っていないと主張する」とのデータを紹介している。問題は、「イギリスが人種差別的でなくなっているのと同時に、史上もっとも人種差別的な政党が選挙で成功している」ことなのだ。 投票所の出口調査ではBNPへの投票者の多くが労働者階級で、世論調査ではBNP支持者の61%が社会階級の下から3つの階級に属していた。かつては労働党を支持した「リベラル」な白人労働者階級が、大挙して人種差別主義者に変貌してしまったかのようだ。 BNPの躍進の理由を、政治家やジャーナリストは「白人労働者階級が白人以外の人々の侵略からアイデンティを守ろうとしたことが原因だ」と分析した。労働党のある議員は、「BNPは、なんの断りもないまま自分たちの国が失われていく、という国民の感情に訴えている」と語った。 だがジョーンズは、BNPの台頭を許したのは人種差別というより、労働者階級を軽視した既成政治への反発だと述べる。じつは冒頭のエピソードにはつづきがあって、ジョーンズに向かって「移民排斥」を求めたのは、強いベンガル語訛りの女性だった。インド出身の彼女は、インドから来た移民女性が、息子のような「イギリス人労働者」から仕事を奪うと訴えた。移民に対する反感は、人種への偏見ではなく、経済的な不安(移民に仕事を奪われる)から生まれてくるのだ。 マルクス主義が一定の権威をもっていた時代には、資本主義の不公平なシステムが貧困のような社会問題の元凶だとされた。冷戦の終焉でマルクス主義が退潮すると、右派がその空隙を、「すべての社会問題はよそ者、すなわち「移民」によって引き起こされている」というわかりやすいイデオロギーで埋めたのだ』、「「強い人種差別的偏見を持っている」と認める人はたったの3パーセントで、5人中4人はまったく偏見を持っていないと主張する」とのデータを紹介」、これは建前論的な回答に過ぎないのではなかろうか。「冷戦の終焉でマルクス主義が退潮すると、右派がその空隙を、「すべての社会問題はよそ者、すなわち「移民」によって引き起こされている」というわかりやすいイデオロギーで埋めたのだ」、というのは労働者の不満をくみ上げられなかった労働党の怠慢だろう。
・『自らを「虐げられた白人マイノリティ」という“人種”に再定義した白人労働者階級  ジョーンズによれば、BNPの成功はイギリス社会のリベラル化によってもたらされた。 リベラルな社会では、「民族的マイノリティのアイデンティを尊重せよ」と教えられる。リベラルな多文化主義は、不平等を純粋に「人種」の視点からとらえ、「階級」を無視している。差別や貧困は「階級問題」ではなく「人種問題」なのだ。 「こうしたことを背景に、白人労働者階級の人々は、民族的な誇りに近いものを育て、多文化主義社会で受け入れられやすい、人種にもとづくアイデンティティを発達させた」とジョーンズはいう。 リベラルな多文化主義社会では、マイノリティの権利は最大限に尊重されなければならない。ところが移民に怯える白人労働者たちは、これを逆転して、自らを「虐げられた白人マイノリティ」という“人種”に再定義したのだ。 BNPのパンフレットには「白人マイノリティ」や「白人差別反対主義」といった用語が満載されている。「白人のみ」受け入れるという党則でBNPを裁判に訴えたときは、黒人警察官協会のようなほかの民族的マイノリティの組織となにがちがうのかと切り返された。 白人労働者階級を「迫害された民族的マイノリティ」と見なし、反人種差別的な外見を整えたことで、BNPは自分たちが「リベラル」で「政治的に正しい(PC)」と主張できるようになった。この「破滅的な再定義」に危機感を覚えたジョーンズは、こう警告している。 (BNPの台頭は警告射撃のようなもので)ふたたび労働者階級の適切な代弁者が現れて、彼らの関心事を真剣に扱わないかぎり、イギリスは新たな怒れる右派ポピュリズムに直面する可能性がある。 EU離脱の混乱に翻弄される現在のイギリスの状況は、10年前にすでに予見されていたのだ』、「リベラルな多文化主義社会では、マイノリティの権利は最大限に尊重されなければならない。ところが移民に怯える白人労働者たちは、これを逆転して、自らを「虐げられた白人マイノリティ」という“人種”に再定義・・・反人種差別的な外見を整えたことで、BNPは自分たちが「リベラル」で「政治的に正しい(PC)」と主張できるようになった」、これを仕組んだBNPは巧みだ。「EU離脱の混乱に翻弄される現在のイギリスの状況は、10年前にすでに予見されていたのだ」、離脱問題も根が深そうだ。
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