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沖縄問題(その3)「休戦」後 [外交]

沖縄問題については、前回は8月22日に取上げた。普天間「休戦」も決裂、 政府は辺野古埋め立てを再開したようなので、今日は(その3)休戦後である。

沖縄県知事公室を2014年末に退職、現在ライシャワーセンター研究員の吉川由紀枝氏が、9月17日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「翁長知事を攻めるほど沖縄県民は実力行使に向かう 辺野古に代わる代替案を真剣に探せ」のポイントを紹介しよう(▽は小見出し)。
▽オール・オア・ナッシングの交渉しかできない
・翁長知事は2014年11月の県知事選で圧勝したが、その基盤は盤石というわけではない。「オール沖縄」を標榜して当選しただけに、知事自身の可動範囲は、全基地閉鎖から基地容認まで様々ある沖縄の意見の最小公約数に狭められている。即ち、「辺野古反対」「オスプレイ反対」くらいしか、発言できる範囲がないのだ
・特に現実的な妥協ラインはどこか?という話になると、「オール沖縄」では一切の合意はない。この可動範囲をちょっとでも越えれば、知事の支持基盤は分裂する
・とどのつまり、「沖縄県のいうことをすべて呑むか」「それとも、呑まないか」という、オール・オア・ナッシング以外の交渉ができないということだ。これでは、日米政府とのまともな交渉相手たりえない
・さて、こうした背景を持つ翁長県政が始まり、日本政府高官が翁長知事と面会しないという「異常」事態(通常、県知事は首相などには会えないものだが)が2015年3月まで続いた
・「オール沖縄」現象は日本に復帰して以降、見られなかった状況。保革相乗りという知事の支持基盤がどれだけ安定したものなのか(自然崩壊しないか?)、政府が不安視したことが理由の一つだとみられる。 だが4月から、不定期ながら面談が報じられるようになった。8月には沖縄県の基地負担軽減と振興策に関する集中協議を開始。これは9月7日に決裂するまで続いた
・翁長知事は、安倍政権が集中協議の場でどのような説得をしようとも、「辺野古反対」のラインから一歩も出なかった。これは、先に説明した内情から考えて当然すぎる結末だった。4年も任期がある知事に対し、就任半年で自らの支持基盤を崩壊させ、自らの政治生命にピリオドを打つことに合意することを期待するのは無理筋だ
▽翁長知事になすすべはない
・だが、翁長知事に辺野古埋め立てを阻止するための手立てがあるのか? 第三委員会が2015年7月、辺野古埋め立て承認に「瑕疵あり」という最終報告を出した。防衛省はその後、8~9月の集中協議中はボーリング調査を中断していたが、協議の決裂を受けて、9月12日にボーリング調査を再開。これに即応して、翁長知事は9月14日、辺野古埋め立ての承認を取り消す手続きを開始した。この手続きは約1カ月かかるという
・だが、安倍政権がこれを無視してボーリング調査を続行してしまえば、それまでである。たとえ、沖縄県が国を相手取り、裁判に持ち込んでも、法廷に中断させる権限はない。辺野古埋め立てが終わるころに沖縄県が勝訴しても、一度埋め立てたものは元には戻せない。よって、埋め立て承認取り消しは「辺野古反対」のパフォーマンスにはなっても、実質を伴うものではない
・残されているのは、ボーリング調査後、政府が本格的に埋め立て工事を進めるにあたって、仲井真知事が承認した埋め立て申請書に書かれた計画以外の工事関連業務を、一切不承認にすることくらいである。この埋め立て申請書は、2013年3月に沖縄県庁に提出されたものであり、記載されている工事計画は、政府と県庁が協力できない状況を隅々まで想定して作ったわけではない。このため、この手の嫌がらせがどこまで有効かは、やってみなければ分からない
▽翁長知事を攻めすぎれば県民は実力行使に向かう
・このように考えていくと、翁長知事は、非常に無力である。そんな知事に「理解を求め」(圧力をかけ)、「辺野古反対」を容認に転じさせる努力をすることに意味があるのか? 確かに、上記に述べた嫌がらせを止める程度の役にはたつだろうが
・むしろ、翁長知事が安倍政権に屈したとなれば、2014年の県知事選で県民が見せた怒りのパワーの行き場が、ほぼ一か所に集中することになる。そう、他でもない辺野古岬へ
・投票という形で沖縄県民が何度も意思表示をしているのに、自民党政権がその都度、選ばれた者たちを「変節」させている。県民の意思を無視していると解釈されても仕方がない。民主的な手段が封じられたら、工事現場付近で「実力行使」をする以外にないではないか
・東京にいると、よく辺野古岬周辺の水域やキャンプ・シュワブのゲート付近で抗議している人々は、沖縄県民ではなくて、三里塚、成田闘争以来の抗議者がほとんどではないのか?とよく聞かれる。抗議に参加する人々の出身地に関する正確かつ公式なデータはないし、そもそもこの質問自体に意味があるのか疑問だ
・なぜなら、米国統治時代に沖縄の人々は、伊江島をはじめとする基地建設や増強などに対し抗議活動を展開し、かつ成功している実績を持つ。他の都道府県民の助けがなくても、沖縄県民は自力で抗議活動を行い、成果を上げることができる
・また、これから埋め立て工事が始まり、抗議する人々がブルドーザーの前に身を横たえたり、水上で抗議活動を行ったりして、県警や海上保安庁ともみ合っているうちに(現在でも軽傷者は数人でている)、死傷者が出た場合、その死傷者が沖縄県民か否かで沖縄県民の態度が大きく異なるとは考えにくい。死傷者がどこの出身であろうと、そのような不幸が起きた場合、沖縄全島でコントロール不能なまでの反基地感情が高まり、全基地閉鎖を求める声があがるだろう
・そうなった場合、安倍政権に対処する能力があるだろうか? また、米政府、特に在沖米軍は、沖縄県民の反基地感情をそこまで高めたいと考えているのだろうか? 米政府が日本政府に求めているのは、在沖米軍を安全に配備できるよう、沖縄を穏当にマネージメントすることである
・普天間飛行場という「木」ばかり気にして、移設問題をごり押しし、在沖米軍全体という「森」を危機的状況に陥れることではない
・逆説的ではあるが、安倍政権が翁長知事を追い詰めるほど、沖縄県民を「実力行使」の方向に駆り立て、自らの首を絞めることになる。こうした、沖縄の弱者の論理を理解したうえで、辺野古案以外の代替案を本腰で模索し、沖縄の基地負担軽減に取り組む以外に、最悪の状況を避ける方法はない
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/281136/091400012/?P=1

筆者の吉川由紀枝氏は任期満了で退職とのことだが、仲井真弘多前知事の側近だった上司も3か月後に退職。筆者と翁長知事にはつながりはなく、客観的にみられる立場のようだ。
沖縄問題の流れを知らない私には、翁長知事がなかなか埋め立て承認取り消しをしない理由が分からなかったが、そのカードも上記のように「オールマイティ」ではなく、極めて弱いカードに過ぎないので、カードを出すのを遅らせているらしい事情が理解できた。
「「木」ばかり気にして、移設問題をごり押しし、在沖米軍全体という「森」を危機的状況に陥れることではない」は言い得て妙である。
願わくば、「沖縄県民を「実力行使」の方向に駆り立て」る「最悪の状況」は回避してほしいものだ。
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