英国(その1)(「エリザベス女王はジャマイカではなく英国の女王だ」 英連邦加盟国で国家元首解任プロセスは既に始まっている、英国で平均寿命が伸びない理由...「集団自決」などなくても長生きできない厳しい現実とは?、富士通の会計システムが引き起こした英史上最大の冤罪事件 英政府が負担する1570億円の肩代わり求める声も) [世界情勢]
今日は、英国(その1)(「エリザベス女王はジャマイカではなく英国の女王だ」 英連邦加盟国で国家元首解任プロセスは既に始まっている、英国で平均寿命が伸びない理由...「集団自決」などなくても長生きできない厳しい現実とは?、富士通の会計システムが引き起こした英史上最大の冤罪事件 英政府が負担する1570億円の肩代わり求める声も)を取上げよう。第三の記事は、驚くべき内容である。
先ずは、昨年4月8日付けNewsweek日本版が掲載した環境活動家の田中ゆう氏による「「エリザベス女王はジャマイカではなく英国の女王だ」 英連邦加盟国で国家元首解任プロセスは既に始まっている」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/woman/2022/04/post-666_1.php
・『<祖先に対して行われた残虐行為、そしてこの歴史から始まり、今日我々に対して続いている暴虐に対する正義のために働きかけなければならない。「話し合い」の時は終わり、「行動」が必要だ> ジャマイカは、エリザベス女王を国家元首から解任するプロセスにすでに着手しようとしている。英ウィリアム王子夫妻が一週間の日程でカリブ海周辺諸国を歴訪するタイミングこのニュースが報じられた。ジャマイカは2016年4月15日にエリザベス女王を国家元首から解任する憲法の改正案を提出している。 解任プロセスは変わらず進める予定だと政府関係者は強調し、イギリス連邦を脱却する意思は固いことが伺える。首都キングストンでは、共和制移行を主な任務とする幹部が任命された。 そんな中でウィリアム王子夫妻は3月22日にジャマイカ入りしたが、夫妻を迎えたのは暖かい地元民衆ではなく、過去の罪を償うよう求めるデモ隊だった。夫妻の今回の歴訪は、エリザベス女王在位70年をたたえる記念行事だったが、英国君主初の「プラチナ・ジュビリー(70周年の記念式典)」を英連邦諸国と共に祝賀するという思惑は外れた。 ジャマイカは手を緩めない。アンドリュー・ホルネス首相はテレビで、同国は独立国として「前進」しているとウィリアム王子に語った。昨年のバルバドスに続き、立憲君主制を廃止し、共和制に移行する可能性を示唆したのだ。 民衆からもジャマイカの立憲君主制に反対する声は多い。キングストンの小売店経営者は「エリザベス女王は、ジャマイカではなく英国の女王だ。英国にとどまるべきだ」と物怖じせずに主張した』、「ウィリアム王子夫妻は3月22日にジャマイカ入りしたが、夫妻を迎えたのは暖かい地元民衆ではなく、過去の罪を償うよう求めるデモ隊だった」、「夫妻の今回の歴訪は、エリザベス女王在位70年をたたえる記念行事だったが、英国君主初の「プラチナ・ジュビリー(70周年の記念式典)」を英連邦諸国と共に祝賀するという思惑は外れた」、「英王室」のお粗末な手違いだ。
・『カリブ海周辺諸国の反応は 続く3月24日〜25日にウィリアム王子夫妻はバハマを訪問。バハマ国家賠償委員会は、英王室は奴隷の「血と汗と涙」から利益を得てきたとして賠償を要求。英国に植民地化された地域は何世紀にもわたり「略奪・搾取された」結果、今なお開発途上にあると訴えるなど、ここでも辛辣な言葉を受け取った。 バハマでの最後の訪問地では、キャサリン妃が家族でバハマのビーチに旅行することを宣言。バハマは故ダイアナ妃のお気に入りで、特にチャールズ皇太子との離婚後にしばしば訪れていたとされている思い出の場所ではあるが、奴隷の「血と汗と涙」から利益を得たとして賠償を求められる当事者の立場でバカンスに行けるものだろうか』、「バハマ」にしても、「故ダイアナ妃のお気に入り」であったとしても、「バハマ国家賠償委員会は、英王室は奴隷の「血と汗と涙」から利益を得てきたとして賠償を要求」、なんとも間の悪い訪問だ。「英王室」のスタッフは何をやっているのだろう。
・『独立60年の気迫 ジャマイカの歴史を辿ると1655年、クロムウェルの時代にイギリスに征服され、以後1958年までその植民地とされ、特に砂糖は西インド最大の産地となり、アフリカとの三角貿易で運ばれた黒人奴隷が砂糖プランテーションの労働力とされた。その後1962年8月6日、300年に渡るイギリスの統治のイギリス連邦の中で完全な主権を持つ独立国になったとはいえ、同時に英連邦王国のため、ジャマイカ国王の地位は名目的にイギリス国王と同一人物が兼任してきた。) 今年8月にジャマイカは独立60周年を迎えるが、政治家、財界人、医師、ミュージシャンを含む著名人たちが、奴隷制度に対する王室の賠償と謝罪を要求する運動活動はいまだに続いている。 アフリカ系住民の地位向上やアフリカ回帰を唱えるジャマイカの思想運動「ラスタファリ運動」を主宰するレゲエ詩人(ダブ・ポエット)のムタバルーカさんは現地紙ジャマイカ・オブザーバーに、「共和制に移行しても食べ物の値段は変わらない。でも、人々の考え方や意識に心理的に影響する」「私たちが自らをどう見るかという内面的な意義がある」と指摘した。 ある政府関係者によると、共和制移行問題について近頃、政府トップ機関で議論されているという。「共和制導入への道のりは簡単ではないが、政府は長期間大きな圧力にさらされてきた」と別の政府関係者は語る』、「ジャマイカ」でも「奴隷制度に対する王室の賠償と謝罪を要求する運動活動はいまだに続いている。 アフリカ系住民の地位向上やアフリカ回帰を唱えるジャマイカの思想運動「ラスタファリ運動」」が展開されているようだ。
・『女王国家元首解任に反対する声も その一方で、ジャマイカ政府内にはエリザベス女王国家元首解任計画への抵抗派もいるようだ。 ホルネス首相は、選挙で共和制導入を公約していたにもかかわらず、7月に女王の枢密院に任命された。 これにより、運動家は彼の共和制問題に対する意図を疑問視するようになった。ジャマイカ国民の中には、共和制への速やかな移行に懐疑的な人もいるようだ。「首相が枢密院での地位を受け入れてすぐに、政府が動くとは思えない。共和国化の重要性は個人的なことではなく、ジャマイカ植民地時代の過去の呪縛を取り去ることに意義がある」と、ある運動家は語る。 3月中旬、ジャマイカのオリビア・グランジ文化大臣は、王室の訪問に先立ち、政府が英国に奴隷制の賠償を求める政策を推進していることを認めていた。政府の諮問機関である賠償評議会メンバーに向けて、グランジ大臣は「賠償へのロードマップ」政策策定のペースを上げる時期が来たと述べた。 評議会は「祖先に対して行われた残虐行為、そしてこの歴史から始まり、今日我々に対して続いている暴虐に対する正義のために働きかけなければならない」と述べ、「話し合い」の時は終わり、「行動」が必要であると付け加えた。「金銭的補償を含む法的・外交的行動のための手順が必要だ」とグランジ大臣は続けた。 野党も概ね合意している。人民国家党のマーク・ゴールディング党首は「建設的な対話は、このプロセスを進める最善の方法であり、イベントへの参加はその機会のためである。目下の課題は、現在の人格の問題ではなく、むしろ過去の原則的な清算の必要性についてである。これらの問題に対する我々の立場を直接伝えるつもりだ」と、ウィリアム王子夫妻の訪問を控えたタイミングで彼は語っていた』、「ジャマイカ」でも「ホルネス首相は、選挙で共和制導入を公約していたにもかかわらず、7月に女王の枢密院に任命された。 これにより、運動家は彼の共和制問題に対する意図を疑問視するようになった。ジャマイカ国民の中には、共和制への速やかな移行に懐疑的な人もいるようだ」、3月25日付けVogue Japanによれば、「ウィリアム王子はジャマイカで「奴隷制度は忌まわしいものでした。そして、決してあってはならないことです」と遺憾の意を表明した」ようだ。やはり旧植民地諸国では、日本とは比較できないほど深刻な問題を抱えているようだ。それを承知の上で、公式訪問をするとは大したものだ。
次に、昨年4月21日付けNewsweek日本版が掲載した在英ジャーナリストの木村正人氏による「英国で平均寿命が伸びない理由...「集団自決」などなくても長生きできない厳しい現実とは?」を紹介しよう。
・『<ロンドンの高級住宅街ケンジントンからニュークロスゲートまで、わずか10キロ離れただけで男性の平均寿命は92歳から74歳へと18年も短くなる> [ロンドン発]昨年4月~今年3月までの1年間で、英国の食品とノンアルコール飲料の価格が45年超ぶりに最速のスピードで上昇していることが19日、英国家統計局(ONS)の発表で分かった。食品とノンアルコール飲料の年間インフレ率は19.2%で、前月の18.2%からさらに上昇した。これより高かったのは直近では1977年8月の21.9%という。 食品インフレ率の上昇に最も貢献したのはパンとシリアルで、平均19.4%も上昇。最新の世論・社会動向調査によると、成人の半数以上(51%)が食品の買い物をする時、購入量を減らしている。成人の約4人に1人(26%)が過去2週間に食料必需品の不足を経験、ちょうど1年前の16%を大きく上回った。 食費節約のために53%の成人が「より安い食品を買う」、26%が「缶詰や賞味期限の長い食品を多く買う」、21%が「賞味期限の過ぎた食品を食べる」と回答。16%が食事の量を減らしたり、食事を抜いたりしており、中等度から重度の抑うつ症状を持つ人で42%、リタイア前の非就業・非求職者で35%、イングランドで最貧困地域に住む人で31%に達していた。 英紙ガーディアンによると、英国の定番食品チェダーチーズ、白パン、ポークソーセージの価格はこの1年で80%も高騰。著しく値上がりしたのは(1)砂糖 42.1%(2)ソース、調味料、塩、スパイス、料理用ハーブ33.7%(3)牛乳、チーズ、卵 29.7%。エネルギーや肥料の高騰とインフレによるコスト増、悪天候による不作が原因だ。トマトも不足している』、食品「インフレ」の影響は、深刻なようだ。
・『がん患者の最高待ち時間は671日 60歳を超え、年金生活に備える英国暮らしの筆者はスーパーで買い物をするたび、レシートを見て「本当に高くなった」とため息をつく。早く買い物に行かないと卵も品切れで、翌日買い足しに行く羽目になる。欧州単一通貨ユーロ圏では年間インフレ率は8.5%に下がっている。今更ながらモノの流れを停滞させた英国の欧州連合(EU)離脱が恨めしい。 円安にインフレのダブルパンチは円建ての収入が多い筆者には応える。それだけではない。英国の公共医療サービス(NHS)は原則無償がセールスポイントなのだが、かかりつけ医(GP)の緊急紹介から2カ月以内に治療を受けられるはずのがん患者の最高待ち時間は671日(英大衆紙デーリー・ミラー)。住む地域によって医療サービスには大きな格差がある。) 筆者の友人、知人には心疾患で手術を受けた50代、60代、70代の男性が多い。民間健康保険によるプライベート医療を受けた男性はカテーテル治療の費用が3万5000ポンド(584万円)と算定され、毎月の保険料が600ポンド(10万円)に値上げされたとぼやく。別の男性はNHSの順番待ちに音を上げて自費で治療を受け、2万ポンド(334万円)を支払った。 米イェール大学・成田悠輔助教は、日本の65歳以上が全人口の3割に達したことに関連して、ネットTVで「僕はもう唯一の解決策ははっきりしていると思っていて結局、高齢者の集団自決、集団切腹みたいなのしかないんじゃないかなと。人間って引き際が重要」と持論を展開したことが米紙ニューヨーク・タイムズなど海外メディアで問題視された』、「公共医療サービス(NHS)は原則無償がセールスポイントなのだが、かかりつけ医(GP)の緊急紹介から2カ月以内に治療を受けられるはずのがん患者の最高待ち時間は671日」、「671日」とは余りに待たされ過ぎる。これでは、順番が回ってきた頃にはもう死んでいる懸念もある。
・『英国の平均寿命はこの10年で横ばい しかし、おカネのない人は長生きできないのが英国の現実だ。大学医学部(循環器系)で「生産性が低くなった老人を長生きさせる治療法を研究する必要はない」という暴論が交わされたと耳にしたことがある。コロナによる死者は22万3700人超。うち86%が65歳以上だ。英国の脱マスクなどコロナ正常化が早かったのは高齢者の犠牲の上に成り立っている。 「英国は10年もの間、平均余命より早い死に苦しんできた。なぜか? 早死25万人の謎」という衝撃的な記事が英誌エコノミスト(3月9日)に掲載された。英国の平均寿命は2世紀近くにわたって伸び続けてきた。しかし2010年代前半、他の先進国フランスやデンマークに比べ、高齢者だけでなくすべての年齢層で伸び悩み始めた。 現在、英国の平均寿命(出生時の平均余命)は81歳で、11年に比べ8週間長くなっただけだ。1980~2011年に平均寿命が伸びたペースが維持されていれば、英国の平均寿命は83.2歳に伸びていたはずだと同誌は推定する。12~22年に70万人の英国人が想定されていたより早く死んだ。コロナや景気後退の影響を除いた原因不明の早死は25万人にのぼる。 この変化は貧困層で大きい。「ロンドンの高級住宅街ケンジントンからニュークロスゲートまで、わずか10キロメートル離れただけで、男性の平均寿命は92歳から74歳へと実に18年も短くなる」と同誌は指摘する。問題は高齢者だけではない。若年層と中年層の死亡率も上昇しており、30~49歳の死亡率は12年ごろから着実に上がっている』、「現在、英国の平均寿命(出生時の平均余命)は81歳で、11年に比べ8週間長くなっただけだ。1980~2011年に平均寿命が伸びたペースが維持されていれば、英国の平均寿命は83.2歳に伸びていたはずだと同誌は推定する。12~22年に70万人の英国人が想定されていたより早く死んだ」、なるほど。
・『最富裕層で伸びる平均余命 英国の平均余命は最貧困層で短くなったのに対して、最富裕層では伸びた。貧しい少女と豊かな少女の平均余命の差は11年には6.8歳だったのに17年には7.7歳まで開いた。少年の場合はその差は9.1歳から9.5歳に拡大した。「すべての人の医療とケアを改善する」ことを使命にする英シンクタンク「国王基金」のヴィーナ・ローリー上級研究員はこう解説する。 「1841年に生まれた男性の平均寿命は40.2歳、女性は42.3歳。これは主に乳児期と小児期の死亡率が高かったためだ。栄養、住居、感染症対策など公衆衛生の改善で死亡率は低下し、1920年に平均寿命は男性56歳、女性59歳まで延びた。20世紀には小児予防接種、国民皆保険、心臓病やがんなど成人病治療の進歩、喫煙の減少で平均寿命は飛躍的に向上した」 2019年、イングランドの平均寿命は男性79.9歳、女性83.6歳だったが、コロナ危機の20年には男性で1.3歳減の78.6歳、女性で1歳減の82.6歳と10年前の水準になった。男性の健康寿命は63.1歳、女性は63.9歳。最も恵まれない10%の地域の男性は最も恵まれない10%の地域よりほぼ10年長く生きられると予想され、女性の場合はその差は8年だった。 平均寿命の格差の約3分の1は恵まれない地域で心臓病や呼吸器疾患、肺がんによる死亡率が高いことに起因している。主な危険因子の喫煙と肥満は恵まれないグループほど高くなっていた。一方、平均寿命が急激に短くなった米国では薬物、アルコール、自殺による「絶望の死」が最も大きな被害をもたらしている。 世界金融危機とその後の緊縮財政で貧富、健康、教育すべての格差が拡大した。貧しい家庭は生鮮食品を買って栄養のバランスの取れた食事を用意したり、運動したりする余裕もない。糖分や炭水化物が多く含まれた低価格の食品やスナックは肥満の最大の原因だ。筆者は健康寿命を1日でも長く延ばすため軽いジョギングと散歩、筋トレに精を出し始めた』、「男性の健康寿命は63.1歳、女性は63.9歳。最も恵まれない10%の地域の男性は最も恵まれない10%の地域よりほぼ10年長く生きられると予想され、女性の場合はその差は8年だった。 平均寿命の格差の約3分の1は恵まれない地域で心臓病や呼吸器疾患、肺がんによる死亡率が高いことに起因している。主な危険因子の喫煙と肥満は恵まれないグループほど高くなっていた。一方、平均寿命が急激に短くなった米国では薬物、アルコール、自殺による「絶望の死」が最も大きな被害をもたらしている」、「平均寿命が急激に短くなった米国では薬物、アルコール、自殺による「絶望の死」が最も大きな被害をもたらしている」、さもありなんだ。
第三に、昨年2月17日付けNewsweek日本版が掲載した在英ジャーナリストの木村正人氏による「富士通の会計システムが引き起こした英史上最大の冤罪事件 英政府が負担する1570億円の肩代わり求める声も」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kimura/2022/02/1570_1.php
・『<富士通製品の欠陥が原因の冤罪事件で、700人近いイギリスの準郵便局長が借金を背負い、投獄され、ホームレスに転落したり自殺するなどの苦しみを味わってきた> [ロンドン発]富士通の会計システム「ホライゾン」の欠陥で700人近い準郵便局長が身に覚えのない罪に問われた英史上最大の冤罪事件の公聴会が始まった。英大衆紙デーリー・メールによると、20年超の歳月が過ぎ、自殺者を含め33人が正義の実現を待たずに他界したという。 ホライゾンによる支店口座の不足額を埋めるため借金したり、失職してホームレスに転落したりした元局長がいる。妊娠中に投獄されたり、結婚生活が破綻したり、子供が学校でいじめられ自傷行為に走ったりした例もある。全く心当たりのない罪に陥れられた元準郵便局長の声に耳を傾けると、みな涙なしでは冤罪の苦しみを語れなかった。 準郵便局長は、民営化された郵便事業会社ポストオフィスのフランチャイズとして地域の郵便局の窓口業務を担っている。1999年10月、富士通の会計システム「ホライゾン」が順次、地域の準郵便局に導入された。2000年から15年にかけ、ホライゾンの証拠に基づき窃盗や不正会計の嫌疑をかけられた準郵便局長は3500人にのぼると一部で報じられている。 09年に英専門誌コンピューター・ウィークリーが初めてホライゾンの欠陥で濡れ衣を着せられた7人の元準郵便局長を取り上げた。この事件を追いかけているジャーナリスト、ニック・ウォーリス氏が英BBC放送の番組で疑惑を報じた時、その数は55人に増えた。 18年に集団訴訟が始まった時、被害を訴える元局長は555人に達した。再審で700人近くの有罪判決が取り消される可能性があり、2400人から補償の申し立てが行われている。 2月14日からロンドンの国際紛争解決センターで始まった「ポストオフィス・ホライゾンIT公聴会」は元準郵便局長やポストオフィス、富士通、英政府関係者から証言や証拠を集め、20年以上にわたるホライゾンの導入と欠陥について明確にし、教訓が生かされているかどうか確かめるのが狙いだ。20年2月にボリス・ジョンソン英首相が公開調査を約束していた』、信じられないような事件だ。「1999年10月、富士通の会計システム「ホライゾン」が順次、地域の準郵便局に導入」、「「ホライゾン」の欠陥で700人近い準郵便局長が身に覚えのない罪に問われた英史上最大の冤罪事件の公聴会が始まった。英大衆紙デーリー・メールによると、20年超の歳月が過ぎ、自殺者を含め33人が正義の実現を待たずに他界した」、「ホライゾンの証拠に基づき窃盗や不正会計の嫌疑をかけられた準郵便局長は3500人にのぼると一部で報じられている」、「18年に集団訴訟が始まった時、被害を訴える元局長は555人に達した。再審で700人近くの有罪判決が取り消される可能性があり、2400人から補償の申し立てが行われている。 2月14日からロンドンの国際紛争解決センターで始まった「ポストオフィス・ホライゾンIT公聴会」は元準郵便局長やポストオフィス、富士通、英政府関係者から証言や証拠を集め、20年以上にわたるホライゾンの導入と欠陥について明確にし、教訓が生かされているかどうか確かめるのが狙い」、この記事では、「不正会計の嫌疑」が何故、かけられたのか、システム上の欠陥についての説明がないので、理解し難い。
・『17歳から午前4時に起きて郵便配達 英ウェールズ北西部アングルシー島(人口約7万人)で生まれ育ったヒューイー・ノエル・トーマスさん(74)の第一言語はウェールズ語だ。義務教育を終えたトーマスさんは17歳の時、地元の郵便局で郵便配達を始めた。午前4時に起き、27キロメートル以上の距離を配達して回った。多くの住民と知り合い、18歳の時、妻エイラさんと結婚した。 両親の食料品店を受け継ぎ、店で郵便事業も手掛けるようになる。1980年に食料品店を売り、翌81年に準郵便局経営の権利を購入。91年にもう一軒、準郵便局の権利を手に入れてから仕事が忙しくなり、一度もホリデーを取っていない。問題のホライゾンは99年度に導入され、1日半トレーニングを受けたトーマスさんはマニュアルを見ながら操作するようになる。) それから手元の現金と支店口座の数字が合わないことが頻繁に起きるようになり、指示通りポストオフィスのヘルプラインに連絡した。13回ぐらい連絡したが、いつもそのまま業務を続けるよう言われるだけだった。「会計システムの導入を急ぎ過ぎた。ヘルプラインのアドバイスにも一貫性がなかった」とトーマスさんは振り返る。 2003年、支店口座の不足額が6千ポンド(約94万円)になり、トーマスさんとポストオフィスは半分ずつ穴埋めすることで合意した。ホライゾンは突然、電源が落ちたり、画面がフリーズしたり、送金が中断したりしたため、ハードウェアは2度も3度も変更された。 トーマスさんはトラブルを記録したが、ポストオフィスに提出を求められたあと、二度と手元には戻ってこなかった』、「ポストオフィスのヘルプラインに連絡した。13回ぐらい連絡したが、いつもそのまま業務を続けるよう言われるだけだった」、「ヘルプライン」が全く機能してなかったようだ。
・『警察署での取り調べは午前1時に及んだ 05年10月の監査は午前7時半に始まった。不足額は約5万ポンド(約784万円)に達していた。郵政監察官2人に同行を求められた。拒否すると、警察官を連れて戻ってきた女性郵政監察官は「この男は窃盗犯よ。手錠をかけて警察署に連行して」と命じた。 事務弁護士がついたものの、取り調べは計6時間に及び、警察署を出たのは午前1時。被疑者として指紋も採取された。 その11日後、準郵便局の契約は一方的に打ち切られた。トーマスさんは1年に及んだ捜査の末、窃盗と不正会計の罪で起訴された。事件は治安判事裁判所から刑事法院に移された。罪を認めれば罪状の重い窃盗罪での訴追を取り下げるとポストオフィスの法廷弁護士から司法取引が持ちかけられた。 あまりにも不公正と思ったが、法廷弁護士を頼む法律扶助がそれ以上あてにできないためトーマスさんには司法取引をのむ以外に選択肢はなかった。支店口座の不足額はトーマスさんが支払い、ホライゾンについては一切口外しないことが司法取引の条件だった。トーマスさんは不正会計の罪を法廷で認めた。 地元の地方議員も務めるトーマスさんの無実を訴える約100通の手紙が裁判所に寄せられたが、06年11月、禁錮9月の有罪判決が言い渡され、刑務所に投獄された。人生最悪の瞬間だった。60歳の誕生日は塀の中で迎えた。トーマスさんの後に指名された準郵便局長もすぐに支店口座の不足をホライゾンに指摘された。トーマスさんは07年1月に釈放された』、「法廷弁護士を頼む法律扶助がそれ以上あてにできないためトーマスさんには司法取引をのむ以外に選択肢はなかった」、「支店口座の不足額はトーマスさんが支払い、ホライゾンについては一切口外しないことが司法取引の条件」、「ホライゾンについては一切口外しないことが司法取引の条件」、こんな闇に葬るようなことをしては、かえって真相解明の邪魔になる。
・『マニュアル化された訴追と司法取引 トーマスさんと同じアングルシー島で暮らすマージョリー ・ロレーヌ・ウィリアムズさん(55)も09年4月、2~3日のトレーニングを受けて準郵便局長になった。しかし10年7月にホライゾンを使い始めてから悲劇が始まる。支店口座の不足が頻繁に起きるようになったのだ。ヘルプラインは全く役に立たなかった。 11年2月には、不足額は2千~3千ポンド(31万~47万円)に達した。いったい何が原因で口座より現金が少なくなるのか見当もつかなかった。翌3月、不足額は倍に膨れ上がっていた。その年の6月、監査が入り、1万4633ポンド(約230万円)の不足が指摘され、支払いを求められた。 ウィリアムズさんが支払いを拒否すると準郵便局長の契約は打ち切られ、窃盗と不正会計の罪で起訴された。トーマスさんと同じように司法取引を持ちかけられ、ウィリアムズさんは刑務所に入るのを避けるため、12年2月に不正会計の罪を認めた。 判決の当日、投獄されることを心配して夫と娘に手紙を書いた。禁錮52週間(執行猶予18月)の有罪判決が言い渡された。12カ月間、保護観察がつき、200時間のボランティアと起訴費用600ポンド(約9万4千円)の支払いを命じられた。娘は学校でいじめられ、殴られた。友人を失った娘は自傷行為を行った。 マレーシア出身のバルジット・セティさん(69)は7回の郵便局強盗を撃退したことを振り返りながら「ホライゾンが導入されるまで20年近く自分で帳簿をつけていたが、帳簿が合わないということはなかった。ホライゾンで生じた不足分は自分で支払い、余剰分は懐に入れていいと言われたが、そんなデタラメは私には受け入れられなかった」と涙をこぼした。 ジョセフィン・ハミルトンさん(64)は司法取引で14回も罪を認めなければならなかった。ポストオフィスの監査ではみな一様に「ホライゾンで問題が生じているのはあなただけだ」と説明され、司法取引の条件として「ホライゾンのことは一切口外しない」ことを誓約させられていた』、「ポストオフィスの監査ではみな一様に「ホライゾンで問題が生じているのはあなただけだ」と説明され、司法取引の条件として「ホライゾンのことは一切口外しない」ことを誓約させられていた」、「ポストオフィス」の完全な隠蔽体質も問題を大きくした要因だ。
・『転機となった集団訴訟の和解 英史上最大の冤罪事件が大きな転機を迎えたのは19年12月。集団訴訟が争われていたロンドン高等裁判所で、ポストオフィスは元準郵便局長555人に対して5800万ポンド(約91億円)を支払うことで和解が成立した。和解金の多くは訴訟費用にあてられ、元準郵便局長が手にしたのは1200万ポンド(約19億円)だった。 裁判官は「ホライゾンは最初の10年間は完璧には程遠く、バグ、エラー、欠陥が含まれており、その後も問題を抱えていた。富士通の従業員が裁判所に提出したホライゾンのバグやエラー、欠陥に関する証拠の信憑性に重大な懸念がある」として裁判資料を検察当局に送付した。 「富士通はこれら無数の問題を適切かつ完全に調査したようには見えない。富士通はそのような事故を正しく分類していなかった。そのため、ソフトウェアに問題があったとの結論から遠のいたようにうかがえる」と裁判官は富士通の責任を厳しく指弾した。) 集団訴訟の和解を受けて刑事事件審査委員会が事件の見直しを始め、これまでに72人の有罪判決が取り消されている。ポストオフィスは1人につき10万ポンド(約1570万円)を上限に補償に応じる方針を明らかにしている。 公共調達の透明化に取り組む英トッセルによると、富士通は13年以降、イギリスでポストオフィスの4億4千万ポンド(約690億円)を含め総額31億ポンド(約4860億円)の公共調達を獲得。今回の冤罪事件で英政府が10億ポンド(約1570億円)を負担したため、英議会で富士通の肩代わりを求める声が上がっている。 これまで富士通は一貫して「裁判におけるすべての決定はポストオフィスによって行われた。証人の選択、証拠の性質、関連文書など、事件のあらゆる側面を決定したのはポストオフィスだった」と主張してきた。公聴会に合わせた筆者の取材に次のように回答した。 「富士通は公聴会が始まったときから協力しており、今後も公聴会を担当するチームを支援することに注力する。公聴会では20年以上も前の複雑な出来事が調査される。富士通は将来に向け重要な教訓を得るため、最大限の透明性のある情報を提供することを約束する」 筆者の取材に応じた元準郵便局長のトーマスさんとウィリアムズさんはいずれも昨年4月に有罪判決を取り消された。 トーマスさんは筆者に「富士通の技術者はシステムの欠陥を知っているべきだった。ポストオフィスはホライゾンを世間の目に触れさせないようにしていた。富士通はもちろん技術者にも大きな問題がある。当時、私は携帯電話も満足に使えなかった。元準郵便局長も知識が足りなかった。技術者はもっと優秀であるべきだった」と語る。 「まだ1ペニーも補償されていない人が500人もいる。私たちは2つの裁判を起こし、いずれも勝訴した。すべての情報が明らかになったのに、政府は公聴会を開くことを決めた。あと1年か2年は続くだろう」と元準郵便局長の救済を急ぐよう求めた。 ウィリアムズさんは富士通の責任について「もし彼らに責任があり、何が起きているかを知りながら何も言わなかったとしたら、私たちが味わった思いを彼らも感じなければならない。刑務所は非常に辛い場所だ。しかし私は刑務所に入るかもしれない立場に置かれていた。刑務所に入るにしても経済的な損失にしても、彼らはこの件について責任を負わなければならない」と語気を強めた』、「冤罪事件が大きな転機を迎えたのは19年12月。集団訴訟が争われていたロンドン高等裁判所で、ポストオフィスは元準郵便局長555人に対して5800万ポンド(約91億円)を支払うことで和解が成立した。和解金の多くは訴訟費用にあてられ、元準郵便局長が手にしたのは1200万ポンド(約19億円)だった。 裁判官は「ホライゾンは最初の10年間は完璧には程遠く、バグ、エラー、欠陥が含まれており、その後も問題を抱えていた。富士通の従業員が裁判所に提出したホライゾンのバグやエラー、欠陥に関する証拠の信憑性に重大な懸念がある」として裁判資料を検察当局に送付した。 「富士通はこれら無数の問題を適切かつ完全に調査したようには見えない。富士通はそのような事故を正しく分類していなかった。そのため、ソフトウェアに問題があったとの結論から遠のいたようにうかがえる」と裁判官は富士通の責任を厳しく指弾した」、「富士通」、「ポストオフィス」の責任は極めて重大だ。今後も展開から目が離せない。
先ずは、昨年4月8日付けNewsweek日本版が掲載した環境活動家の田中ゆう氏による「「エリザベス女王はジャマイカではなく英国の女王だ」 英連邦加盟国で国家元首解任プロセスは既に始まっている」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/woman/2022/04/post-666_1.php
・『<祖先に対して行われた残虐行為、そしてこの歴史から始まり、今日我々に対して続いている暴虐に対する正義のために働きかけなければならない。「話し合い」の時は終わり、「行動」が必要だ> ジャマイカは、エリザベス女王を国家元首から解任するプロセスにすでに着手しようとしている。英ウィリアム王子夫妻が一週間の日程でカリブ海周辺諸国を歴訪するタイミングこのニュースが報じられた。ジャマイカは2016年4月15日にエリザベス女王を国家元首から解任する憲法の改正案を提出している。 解任プロセスは変わらず進める予定だと政府関係者は強調し、イギリス連邦を脱却する意思は固いことが伺える。首都キングストンでは、共和制移行を主な任務とする幹部が任命された。 そんな中でウィリアム王子夫妻は3月22日にジャマイカ入りしたが、夫妻を迎えたのは暖かい地元民衆ではなく、過去の罪を償うよう求めるデモ隊だった。夫妻の今回の歴訪は、エリザベス女王在位70年をたたえる記念行事だったが、英国君主初の「プラチナ・ジュビリー(70周年の記念式典)」を英連邦諸国と共に祝賀するという思惑は外れた。 ジャマイカは手を緩めない。アンドリュー・ホルネス首相はテレビで、同国は独立国として「前進」しているとウィリアム王子に語った。昨年のバルバドスに続き、立憲君主制を廃止し、共和制に移行する可能性を示唆したのだ。 民衆からもジャマイカの立憲君主制に反対する声は多い。キングストンの小売店経営者は「エリザベス女王は、ジャマイカではなく英国の女王だ。英国にとどまるべきだ」と物怖じせずに主張した』、「ウィリアム王子夫妻は3月22日にジャマイカ入りしたが、夫妻を迎えたのは暖かい地元民衆ではなく、過去の罪を償うよう求めるデモ隊だった」、「夫妻の今回の歴訪は、エリザベス女王在位70年をたたえる記念行事だったが、英国君主初の「プラチナ・ジュビリー(70周年の記念式典)」を英連邦諸国と共に祝賀するという思惑は外れた」、「英王室」のお粗末な手違いだ。
・『カリブ海周辺諸国の反応は 続く3月24日〜25日にウィリアム王子夫妻はバハマを訪問。バハマ国家賠償委員会は、英王室は奴隷の「血と汗と涙」から利益を得てきたとして賠償を要求。英国に植民地化された地域は何世紀にもわたり「略奪・搾取された」結果、今なお開発途上にあると訴えるなど、ここでも辛辣な言葉を受け取った。 バハマでの最後の訪問地では、キャサリン妃が家族でバハマのビーチに旅行することを宣言。バハマは故ダイアナ妃のお気に入りで、特にチャールズ皇太子との離婚後にしばしば訪れていたとされている思い出の場所ではあるが、奴隷の「血と汗と涙」から利益を得たとして賠償を求められる当事者の立場でバカンスに行けるものだろうか』、「バハマ」にしても、「故ダイアナ妃のお気に入り」であったとしても、「バハマ国家賠償委員会は、英王室は奴隷の「血と汗と涙」から利益を得てきたとして賠償を要求」、なんとも間の悪い訪問だ。「英王室」のスタッフは何をやっているのだろう。
・『独立60年の気迫 ジャマイカの歴史を辿ると1655年、クロムウェルの時代にイギリスに征服され、以後1958年までその植民地とされ、特に砂糖は西インド最大の産地となり、アフリカとの三角貿易で運ばれた黒人奴隷が砂糖プランテーションの労働力とされた。その後1962年8月6日、300年に渡るイギリスの統治のイギリス連邦の中で完全な主権を持つ独立国になったとはいえ、同時に英連邦王国のため、ジャマイカ国王の地位は名目的にイギリス国王と同一人物が兼任してきた。) 今年8月にジャマイカは独立60周年を迎えるが、政治家、財界人、医師、ミュージシャンを含む著名人たちが、奴隷制度に対する王室の賠償と謝罪を要求する運動活動はいまだに続いている。 アフリカ系住民の地位向上やアフリカ回帰を唱えるジャマイカの思想運動「ラスタファリ運動」を主宰するレゲエ詩人(ダブ・ポエット)のムタバルーカさんは現地紙ジャマイカ・オブザーバーに、「共和制に移行しても食べ物の値段は変わらない。でも、人々の考え方や意識に心理的に影響する」「私たちが自らをどう見るかという内面的な意義がある」と指摘した。 ある政府関係者によると、共和制移行問題について近頃、政府トップ機関で議論されているという。「共和制導入への道のりは簡単ではないが、政府は長期間大きな圧力にさらされてきた」と別の政府関係者は語る』、「ジャマイカ」でも「奴隷制度に対する王室の賠償と謝罪を要求する運動活動はいまだに続いている。 アフリカ系住民の地位向上やアフリカ回帰を唱えるジャマイカの思想運動「ラスタファリ運動」」が展開されているようだ。
・『女王国家元首解任に反対する声も その一方で、ジャマイカ政府内にはエリザベス女王国家元首解任計画への抵抗派もいるようだ。 ホルネス首相は、選挙で共和制導入を公約していたにもかかわらず、7月に女王の枢密院に任命された。 これにより、運動家は彼の共和制問題に対する意図を疑問視するようになった。ジャマイカ国民の中には、共和制への速やかな移行に懐疑的な人もいるようだ。「首相が枢密院での地位を受け入れてすぐに、政府が動くとは思えない。共和国化の重要性は個人的なことではなく、ジャマイカ植民地時代の過去の呪縛を取り去ることに意義がある」と、ある運動家は語る。 3月中旬、ジャマイカのオリビア・グランジ文化大臣は、王室の訪問に先立ち、政府が英国に奴隷制の賠償を求める政策を推進していることを認めていた。政府の諮問機関である賠償評議会メンバーに向けて、グランジ大臣は「賠償へのロードマップ」政策策定のペースを上げる時期が来たと述べた。 評議会は「祖先に対して行われた残虐行為、そしてこの歴史から始まり、今日我々に対して続いている暴虐に対する正義のために働きかけなければならない」と述べ、「話し合い」の時は終わり、「行動」が必要であると付け加えた。「金銭的補償を含む法的・外交的行動のための手順が必要だ」とグランジ大臣は続けた。 野党も概ね合意している。人民国家党のマーク・ゴールディング党首は「建設的な対話は、このプロセスを進める最善の方法であり、イベントへの参加はその機会のためである。目下の課題は、現在の人格の問題ではなく、むしろ過去の原則的な清算の必要性についてである。これらの問題に対する我々の立場を直接伝えるつもりだ」と、ウィリアム王子夫妻の訪問を控えたタイミングで彼は語っていた』、「ジャマイカ」でも「ホルネス首相は、選挙で共和制導入を公約していたにもかかわらず、7月に女王の枢密院に任命された。 これにより、運動家は彼の共和制問題に対する意図を疑問視するようになった。ジャマイカ国民の中には、共和制への速やかな移行に懐疑的な人もいるようだ」、3月25日付けVogue Japanによれば、「ウィリアム王子はジャマイカで「奴隷制度は忌まわしいものでした。そして、決してあってはならないことです」と遺憾の意を表明した」ようだ。やはり旧植民地諸国では、日本とは比較できないほど深刻な問題を抱えているようだ。それを承知の上で、公式訪問をするとは大したものだ。
次に、昨年4月21日付けNewsweek日本版が掲載した在英ジャーナリストの木村正人氏による「英国で平均寿命が伸びない理由...「集団自決」などなくても長生きできない厳しい現実とは?」を紹介しよう。
・『<ロンドンの高級住宅街ケンジントンからニュークロスゲートまで、わずか10キロ離れただけで男性の平均寿命は92歳から74歳へと18年も短くなる> [ロンドン発]昨年4月~今年3月までの1年間で、英国の食品とノンアルコール飲料の価格が45年超ぶりに最速のスピードで上昇していることが19日、英国家統計局(ONS)の発表で分かった。食品とノンアルコール飲料の年間インフレ率は19.2%で、前月の18.2%からさらに上昇した。これより高かったのは直近では1977年8月の21.9%という。 食品インフレ率の上昇に最も貢献したのはパンとシリアルで、平均19.4%も上昇。最新の世論・社会動向調査によると、成人の半数以上(51%)が食品の買い物をする時、購入量を減らしている。成人の約4人に1人(26%)が過去2週間に食料必需品の不足を経験、ちょうど1年前の16%を大きく上回った。 食費節約のために53%の成人が「より安い食品を買う」、26%が「缶詰や賞味期限の長い食品を多く買う」、21%が「賞味期限の過ぎた食品を食べる」と回答。16%が食事の量を減らしたり、食事を抜いたりしており、中等度から重度の抑うつ症状を持つ人で42%、リタイア前の非就業・非求職者で35%、イングランドで最貧困地域に住む人で31%に達していた。 英紙ガーディアンによると、英国の定番食品チェダーチーズ、白パン、ポークソーセージの価格はこの1年で80%も高騰。著しく値上がりしたのは(1)砂糖 42.1%(2)ソース、調味料、塩、スパイス、料理用ハーブ33.7%(3)牛乳、チーズ、卵 29.7%。エネルギーや肥料の高騰とインフレによるコスト増、悪天候による不作が原因だ。トマトも不足している』、食品「インフレ」の影響は、深刻なようだ。
・『がん患者の最高待ち時間は671日 60歳を超え、年金生活に備える英国暮らしの筆者はスーパーで買い物をするたび、レシートを見て「本当に高くなった」とため息をつく。早く買い物に行かないと卵も品切れで、翌日買い足しに行く羽目になる。欧州単一通貨ユーロ圏では年間インフレ率は8.5%に下がっている。今更ながらモノの流れを停滞させた英国の欧州連合(EU)離脱が恨めしい。 円安にインフレのダブルパンチは円建ての収入が多い筆者には応える。それだけではない。英国の公共医療サービス(NHS)は原則無償がセールスポイントなのだが、かかりつけ医(GP)の緊急紹介から2カ月以内に治療を受けられるはずのがん患者の最高待ち時間は671日(英大衆紙デーリー・ミラー)。住む地域によって医療サービスには大きな格差がある。) 筆者の友人、知人には心疾患で手術を受けた50代、60代、70代の男性が多い。民間健康保険によるプライベート医療を受けた男性はカテーテル治療の費用が3万5000ポンド(584万円)と算定され、毎月の保険料が600ポンド(10万円)に値上げされたとぼやく。別の男性はNHSの順番待ちに音を上げて自費で治療を受け、2万ポンド(334万円)を支払った。 米イェール大学・成田悠輔助教は、日本の65歳以上が全人口の3割に達したことに関連して、ネットTVで「僕はもう唯一の解決策ははっきりしていると思っていて結局、高齢者の集団自決、集団切腹みたいなのしかないんじゃないかなと。人間って引き際が重要」と持論を展開したことが米紙ニューヨーク・タイムズなど海外メディアで問題視された』、「公共医療サービス(NHS)は原則無償がセールスポイントなのだが、かかりつけ医(GP)の緊急紹介から2カ月以内に治療を受けられるはずのがん患者の最高待ち時間は671日」、「671日」とは余りに待たされ過ぎる。これでは、順番が回ってきた頃にはもう死んでいる懸念もある。
・『英国の平均寿命はこの10年で横ばい しかし、おカネのない人は長生きできないのが英国の現実だ。大学医学部(循環器系)で「生産性が低くなった老人を長生きさせる治療法を研究する必要はない」という暴論が交わされたと耳にしたことがある。コロナによる死者は22万3700人超。うち86%が65歳以上だ。英国の脱マスクなどコロナ正常化が早かったのは高齢者の犠牲の上に成り立っている。 「英国は10年もの間、平均余命より早い死に苦しんできた。なぜか? 早死25万人の謎」という衝撃的な記事が英誌エコノミスト(3月9日)に掲載された。英国の平均寿命は2世紀近くにわたって伸び続けてきた。しかし2010年代前半、他の先進国フランスやデンマークに比べ、高齢者だけでなくすべての年齢層で伸び悩み始めた。 現在、英国の平均寿命(出生時の平均余命)は81歳で、11年に比べ8週間長くなっただけだ。1980~2011年に平均寿命が伸びたペースが維持されていれば、英国の平均寿命は83.2歳に伸びていたはずだと同誌は推定する。12~22年に70万人の英国人が想定されていたより早く死んだ。コロナや景気後退の影響を除いた原因不明の早死は25万人にのぼる。 この変化は貧困層で大きい。「ロンドンの高級住宅街ケンジントンからニュークロスゲートまで、わずか10キロメートル離れただけで、男性の平均寿命は92歳から74歳へと実に18年も短くなる」と同誌は指摘する。問題は高齢者だけではない。若年層と中年層の死亡率も上昇しており、30~49歳の死亡率は12年ごろから着実に上がっている』、「現在、英国の平均寿命(出生時の平均余命)は81歳で、11年に比べ8週間長くなっただけだ。1980~2011年に平均寿命が伸びたペースが維持されていれば、英国の平均寿命は83.2歳に伸びていたはずだと同誌は推定する。12~22年に70万人の英国人が想定されていたより早く死んだ」、なるほど。
・『最富裕層で伸びる平均余命 英国の平均余命は最貧困層で短くなったのに対して、最富裕層では伸びた。貧しい少女と豊かな少女の平均余命の差は11年には6.8歳だったのに17年には7.7歳まで開いた。少年の場合はその差は9.1歳から9.5歳に拡大した。「すべての人の医療とケアを改善する」ことを使命にする英シンクタンク「国王基金」のヴィーナ・ローリー上級研究員はこう解説する。 「1841年に生まれた男性の平均寿命は40.2歳、女性は42.3歳。これは主に乳児期と小児期の死亡率が高かったためだ。栄養、住居、感染症対策など公衆衛生の改善で死亡率は低下し、1920年に平均寿命は男性56歳、女性59歳まで延びた。20世紀には小児予防接種、国民皆保険、心臓病やがんなど成人病治療の進歩、喫煙の減少で平均寿命は飛躍的に向上した」 2019年、イングランドの平均寿命は男性79.9歳、女性83.6歳だったが、コロナ危機の20年には男性で1.3歳減の78.6歳、女性で1歳減の82.6歳と10年前の水準になった。男性の健康寿命は63.1歳、女性は63.9歳。最も恵まれない10%の地域の男性は最も恵まれない10%の地域よりほぼ10年長く生きられると予想され、女性の場合はその差は8年だった。 平均寿命の格差の約3分の1は恵まれない地域で心臓病や呼吸器疾患、肺がんによる死亡率が高いことに起因している。主な危険因子の喫煙と肥満は恵まれないグループほど高くなっていた。一方、平均寿命が急激に短くなった米国では薬物、アルコール、自殺による「絶望の死」が最も大きな被害をもたらしている。 世界金融危機とその後の緊縮財政で貧富、健康、教育すべての格差が拡大した。貧しい家庭は生鮮食品を買って栄養のバランスの取れた食事を用意したり、運動したりする余裕もない。糖分や炭水化物が多く含まれた低価格の食品やスナックは肥満の最大の原因だ。筆者は健康寿命を1日でも長く延ばすため軽いジョギングと散歩、筋トレに精を出し始めた』、「男性の健康寿命は63.1歳、女性は63.9歳。最も恵まれない10%の地域の男性は最も恵まれない10%の地域よりほぼ10年長く生きられると予想され、女性の場合はその差は8年だった。 平均寿命の格差の約3分の1は恵まれない地域で心臓病や呼吸器疾患、肺がんによる死亡率が高いことに起因している。主な危険因子の喫煙と肥満は恵まれないグループほど高くなっていた。一方、平均寿命が急激に短くなった米国では薬物、アルコール、自殺による「絶望の死」が最も大きな被害をもたらしている」、「平均寿命が急激に短くなった米国では薬物、アルコール、自殺による「絶望の死」が最も大きな被害をもたらしている」、さもありなんだ。
第三に、昨年2月17日付けNewsweek日本版が掲載した在英ジャーナリストの木村正人氏による「富士通の会計システムが引き起こした英史上最大の冤罪事件 英政府が負担する1570億円の肩代わり求める声も」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kimura/2022/02/1570_1.php
・『<富士通製品の欠陥が原因の冤罪事件で、700人近いイギリスの準郵便局長が借金を背負い、投獄され、ホームレスに転落したり自殺するなどの苦しみを味わってきた> [ロンドン発]富士通の会計システム「ホライゾン」の欠陥で700人近い準郵便局長が身に覚えのない罪に問われた英史上最大の冤罪事件の公聴会が始まった。英大衆紙デーリー・メールによると、20年超の歳月が過ぎ、自殺者を含め33人が正義の実現を待たずに他界したという。 ホライゾンによる支店口座の不足額を埋めるため借金したり、失職してホームレスに転落したりした元局長がいる。妊娠中に投獄されたり、結婚生活が破綻したり、子供が学校でいじめられ自傷行為に走ったりした例もある。全く心当たりのない罪に陥れられた元準郵便局長の声に耳を傾けると、みな涙なしでは冤罪の苦しみを語れなかった。 準郵便局長は、民営化された郵便事業会社ポストオフィスのフランチャイズとして地域の郵便局の窓口業務を担っている。1999年10月、富士通の会計システム「ホライゾン」が順次、地域の準郵便局に導入された。2000年から15年にかけ、ホライゾンの証拠に基づき窃盗や不正会計の嫌疑をかけられた準郵便局長は3500人にのぼると一部で報じられている。 09年に英専門誌コンピューター・ウィークリーが初めてホライゾンの欠陥で濡れ衣を着せられた7人の元準郵便局長を取り上げた。この事件を追いかけているジャーナリスト、ニック・ウォーリス氏が英BBC放送の番組で疑惑を報じた時、その数は55人に増えた。 18年に集団訴訟が始まった時、被害を訴える元局長は555人に達した。再審で700人近くの有罪判決が取り消される可能性があり、2400人から補償の申し立てが行われている。 2月14日からロンドンの国際紛争解決センターで始まった「ポストオフィス・ホライゾンIT公聴会」は元準郵便局長やポストオフィス、富士通、英政府関係者から証言や証拠を集め、20年以上にわたるホライゾンの導入と欠陥について明確にし、教訓が生かされているかどうか確かめるのが狙いだ。20年2月にボリス・ジョンソン英首相が公開調査を約束していた』、信じられないような事件だ。「1999年10月、富士通の会計システム「ホライゾン」が順次、地域の準郵便局に導入」、「「ホライゾン」の欠陥で700人近い準郵便局長が身に覚えのない罪に問われた英史上最大の冤罪事件の公聴会が始まった。英大衆紙デーリー・メールによると、20年超の歳月が過ぎ、自殺者を含め33人が正義の実現を待たずに他界した」、「ホライゾンの証拠に基づき窃盗や不正会計の嫌疑をかけられた準郵便局長は3500人にのぼると一部で報じられている」、「18年に集団訴訟が始まった時、被害を訴える元局長は555人に達した。再審で700人近くの有罪判決が取り消される可能性があり、2400人から補償の申し立てが行われている。 2月14日からロンドンの国際紛争解決センターで始まった「ポストオフィス・ホライゾンIT公聴会」は元準郵便局長やポストオフィス、富士通、英政府関係者から証言や証拠を集め、20年以上にわたるホライゾンの導入と欠陥について明確にし、教訓が生かされているかどうか確かめるのが狙い」、この記事では、「不正会計の嫌疑」が何故、かけられたのか、システム上の欠陥についての説明がないので、理解し難い。
・『17歳から午前4時に起きて郵便配達 英ウェールズ北西部アングルシー島(人口約7万人)で生まれ育ったヒューイー・ノエル・トーマスさん(74)の第一言語はウェールズ語だ。義務教育を終えたトーマスさんは17歳の時、地元の郵便局で郵便配達を始めた。午前4時に起き、27キロメートル以上の距離を配達して回った。多くの住民と知り合い、18歳の時、妻エイラさんと結婚した。 両親の食料品店を受け継ぎ、店で郵便事業も手掛けるようになる。1980年に食料品店を売り、翌81年に準郵便局経営の権利を購入。91年にもう一軒、準郵便局の権利を手に入れてから仕事が忙しくなり、一度もホリデーを取っていない。問題のホライゾンは99年度に導入され、1日半トレーニングを受けたトーマスさんはマニュアルを見ながら操作するようになる。) それから手元の現金と支店口座の数字が合わないことが頻繁に起きるようになり、指示通りポストオフィスのヘルプラインに連絡した。13回ぐらい連絡したが、いつもそのまま業務を続けるよう言われるだけだった。「会計システムの導入を急ぎ過ぎた。ヘルプラインのアドバイスにも一貫性がなかった」とトーマスさんは振り返る。 2003年、支店口座の不足額が6千ポンド(約94万円)になり、トーマスさんとポストオフィスは半分ずつ穴埋めすることで合意した。ホライゾンは突然、電源が落ちたり、画面がフリーズしたり、送金が中断したりしたため、ハードウェアは2度も3度も変更された。 トーマスさんはトラブルを記録したが、ポストオフィスに提出を求められたあと、二度と手元には戻ってこなかった』、「ポストオフィスのヘルプラインに連絡した。13回ぐらい連絡したが、いつもそのまま業務を続けるよう言われるだけだった」、「ヘルプライン」が全く機能してなかったようだ。
・『警察署での取り調べは午前1時に及んだ 05年10月の監査は午前7時半に始まった。不足額は約5万ポンド(約784万円)に達していた。郵政監察官2人に同行を求められた。拒否すると、警察官を連れて戻ってきた女性郵政監察官は「この男は窃盗犯よ。手錠をかけて警察署に連行して」と命じた。 事務弁護士がついたものの、取り調べは計6時間に及び、警察署を出たのは午前1時。被疑者として指紋も採取された。 その11日後、準郵便局の契約は一方的に打ち切られた。トーマスさんは1年に及んだ捜査の末、窃盗と不正会計の罪で起訴された。事件は治安判事裁判所から刑事法院に移された。罪を認めれば罪状の重い窃盗罪での訴追を取り下げるとポストオフィスの法廷弁護士から司法取引が持ちかけられた。 あまりにも不公正と思ったが、法廷弁護士を頼む法律扶助がそれ以上あてにできないためトーマスさんには司法取引をのむ以外に選択肢はなかった。支店口座の不足額はトーマスさんが支払い、ホライゾンについては一切口外しないことが司法取引の条件だった。トーマスさんは不正会計の罪を法廷で認めた。 地元の地方議員も務めるトーマスさんの無実を訴える約100通の手紙が裁判所に寄せられたが、06年11月、禁錮9月の有罪判決が言い渡され、刑務所に投獄された。人生最悪の瞬間だった。60歳の誕生日は塀の中で迎えた。トーマスさんの後に指名された準郵便局長もすぐに支店口座の不足をホライゾンに指摘された。トーマスさんは07年1月に釈放された』、「法廷弁護士を頼む法律扶助がそれ以上あてにできないためトーマスさんには司法取引をのむ以外に選択肢はなかった」、「支店口座の不足額はトーマスさんが支払い、ホライゾンについては一切口外しないことが司法取引の条件」、「ホライゾンについては一切口外しないことが司法取引の条件」、こんな闇に葬るようなことをしては、かえって真相解明の邪魔になる。
・『マニュアル化された訴追と司法取引 トーマスさんと同じアングルシー島で暮らすマージョリー ・ロレーヌ・ウィリアムズさん(55)も09年4月、2~3日のトレーニングを受けて準郵便局長になった。しかし10年7月にホライゾンを使い始めてから悲劇が始まる。支店口座の不足が頻繁に起きるようになったのだ。ヘルプラインは全く役に立たなかった。 11年2月には、不足額は2千~3千ポンド(31万~47万円)に達した。いったい何が原因で口座より現金が少なくなるのか見当もつかなかった。翌3月、不足額は倍に膨れ上がっていた。その年の6月、監査が入り、1万4633ポンド(約230万円)の不足が指摘され、支払いを求められた。 ウィリアムズさんが支払いを拒否すると準郵便局長の契約は打ち切られ、窃盗と不正会計の罪で起訴された。トーマスさんと同じように司法取引を持ちかけられ、ウィリアムズさんは刑務所に入るのを避けるため、12年2月に不正会計の罪を認めた。 判決の当日、投獄されることを心配して夫と娘に手紙を書いた。禁錮52週間(執行猶予18月)の有罪判決が言い渡された。12カ月間、保護観察がつき、200時間のボランティアと起訴費用600ポンド(約9万4千円)の支払いを命じられた。娘は学校でいじめられ、殴られた。友人を失った娘は自傷行為を行った。 マレーシア出身のバルジット・セティさん(69)は7回の郵便局強盗を撃退したことを振り返りながら「ホライゾンが導入されるまで20年近く自分で帳簿をつけていたが、帳簿が合わないということはなかった。ホライゾンで生じた不足分は自分で支払い、余剰分は懐に入れていいと言われたが、そんなデタラメは私には受け入れられなかった」と涙をこぼした。 ジョセフィン・ハミルトンさん(64)は司法取引で14回も罪を認めなければならなかった。ポストオフィスの監査ではみな一様に「ホライゾンで問題が生じているのはあなただけだ」と説明され、司法取引の条件として「ホライゾンのことは一切口外しない」ことを誓約させられていた』、「ポストオフィスの監査ではみな一様に「ホライゾンで問題が生じているのはあなただけだ」と説明され、司法取引の条件として「ホライゾンのことは一切口外しない」ことを誓約させられていた」、「ポストオフィス」の完全な隠蔽体質も問題を大きくした要因だ。
・『転機となった集団訴訟の和解 英史上最大の冤罪事件が大きな転機を迎えたのは19年12月。集団訴訟が争われていたロンドン高等裁判所で、ポストオフィスは元準郵便局長555人に対して5800万ポンド(約91億円)を支払うことで和解が成立した。和解金の多くは訴訟費用にあてられ、元準郵便局長が手にしたのは1200万ポンド(約19億円)だった。 裁判官は「ホライゾンは最初の10年間は完璧には程遠く、バグ、エラー、欠陥が含まれており、その後も問題を抱えていた。富士通の従業員が裁判所に提出したホライゾンのバグやエラー、欠陥に関する証拠の信憑性に重大な懸念がある」として裁判資料を検察当局に送付した。 「富士通はこれら無数の問題を適切かつ完全に調査したようには見えない。富士通はそのような事故を正しく分類していなかった。そのため、ソフトウェアに問題があったとの結論から遠のいたようにうかがえる」と裁判官は富士通の責任を厳しく指弾した。) 集団訴訟の和解を受けて刑事事件審査委員会が事件の見直しを始め、これまでに72人の有罪判決が取り消されている。ポストオフィスは1人につき10万ポンド(約1570万円)を上限に補償に応じる方針を明らかにしている。 公共調達の透明化に取り組む英トッセルによると、富士通は13年以降、イギリスでポストオフィスの4億4千万ポンド(約690億円)を含め総額31億ポンド(約4860億円)の公共調達を獲得。今回の冤罪事件で英政府が10億ポンド(約1570億円)を負担したため、英議会で富士通の肩代わりを求める声が上がっている。 これまで富士通は一貫して「裁判におけるすべての決定はポストオフィスによって行われた。証人の選択、証拠の性質、関連文書など、事件のあらゆる側面を決定したのはポストオフィスだった」と主張してきた。公聴会に合わせた筆者の取材に次のように回答した。 「富士通は公聴会が始まったときから協力しており、今後も公聴会を担当するチームを支援することに注力する。公聴会では20年以上も前の複雑な出来事が調査される。富士通は将来に向け重要な教訓を得るため、最大限の透明性のある情報を提供することを約束する」 筆者の取材に応じた元準郵便局長のトーマスさんとウィリアムズさんはいずれも昨年4月に有罪判決を取り消された。 トーマスさんは筆者に「富士通の技術者はシステムの欠陥を知っているべきだった。ポストオフィスはホライゾンを世間の目に触れさせないようにしていた。富士通はもちろん技術者にも大きな問題がある。当時、私は携帯電話も満足に使えなかった。元準郵便局長も知識が足りなかった。技術者はもっと優秀であるべきだった」と語る。 「まだ1ペニーも補償されていない人が500人もいる。私たちは2つの裁判を起こし、いずれも勝訴した。すべての情報が明らかになったのに、政府は公聴会を開くことを決めた。あと1年か2年は続くだろう」と元準郵便局長の救済を急ぐよう求めた。 ウィリアムズさんは富士通の責任について「もし彼らに責任があり、何が起きているかを知りながら何も言わなかったとしたら、私たちが味わった思いを彼らも感じなければならない。刑務所は非常に辛い場所だ。しかし私は刑務所に入るかもしれない立場に置かれていた。刑務所に入るにしても経済的な損失にしても、彼らはこの件について責任を負わなければならない」と語気を強めた』、「冤罪事件が大きな転機を迎えたのは19年12月。集団訴訟が争われていたロンドン高等裁判所で、ポストオフィスは元準郵便局長555人に対して5800万ポンド(約91億円)を支払うことで和解が成立した。和解金の多くは訴訟費用にあてられ、元準郵便局長が手にしたのは1200万ポンド(約19億円)だった。 裁判官は「ホライゾンは最初の10年間は完璧には程遠く、バグ、エラー、欠陥が含まれており、その後も問題を抱えていた。富士通の従業員が裁判所に提出したホライゾンのバグやエラー、欠陥に関する証拠の信憑性に重大な懸念がある」として裁判資料を検察当局に送付した。 「富士通はこれら無数の問題を適切かつ完全に調査したようには見えない。富士通はそのような事故を正しく分類していなかった。そのため、ソフトウェアに問題があったとの結論から遠のいたようにうかがえる」と裁判官は富士通の責任を厳しく指弾した」、「富士通」、「ポストオフィス」の責任は極めて重大だ。今後も展開から目が離せない。
タグ:英国 (その1)(「エリザベス女王はジャマイカではなく英国の女王だ」 英連邦加盟国で国家元首解任プロセスは既に始まっている、英国で平均寿命が伸びない理由...「集団自決」などなくても長生きできない厳しい現実とは?、富士通の会計システムが引き起こした英史上最大の冤罪事件 英政府が負担する1570億円の肩代わり求める声も) Newsweek日本版 田中ゆう氏による「「エリザベス女王はジャマイカではなく英国の女王だ」 英連邦加盟国で国家元首解任プロセスは既に始まっている」 「ウィリアム王子夫妻は3月22日にジャマイカ入りしたが、夫妻を迎えたのは暖かい地元民衆ではなく、過去の罪を償うよう求めるデモ隊だった」、「夫妻の今回の歴訪は、エリザベス女王在位70年をたたえる記念行事だったが、英国君主初の「プラチナ・ジュビリー(70周年の記念式典)」を英連邦諸国と共に祝賀するという思惑は外れた」、「英王室」のお粗末な手違いだ。 「バハマ」にしても、「故ダイアナ妃のお気に入り」であったとしても、「バハマ国家賠償委員会は、英王室は奴隷の「血と汗と涙」から利益を得てきたとして賠償を要求」、なんとも間の悪い訪問だ。「英王室」のスタッフは何をやっているのだろう。 「ジャマイカ」でも「奴隷制度に対する王室の賠償と謝罪を要求する運動活動はいまだに続いている。 アフリカ系住民の地位向上やアフリカ回帰を唱えるジャマイカの思想運動「ラスタファリ運動」」が展開されているようだ。 「ジャマイカ」でも「ホルネス首相は、選挙で共和制導入を公約していたにもかかわらず、7月に女王の枢密院に任命された。 これにより、運動家は彼の共和制問題に対する意図を疑問視するようになった。ジャマイカ国民の中には、共和制への速やかな移行に懐疑的な人もいるようだ」、3月25日付けVogue Japanによれば、「ウィリアム王子はジャマイカで「奴隷制度は忌まわしいものでした。そして、決してあってはならないことです」と遺憾の意を表明した」ようだ。 やはり旧植民地諸国では、日本とは比較できないほど深刻な問題を抱えているようだ。それを承知の上で、公式訪問をするとは大したものだ。 木村正人氏による「英国で平均寿命が伸びない理由...「集団自決」などなくても長生きできない厳しい現実とは?」 食品「インフレ」の影響は、深刻なようだ。 「公共医療サービス(NHS)は原則無償がセールスポイントなのだが、かかりつけ医(GP)の緊急紹介から2カ月以内に治療を受けられるはずのがん患者の最高待ち時間は671日」、「671日」とは余りに待たされ過ぎる。これでは、順番が回ってきた頃にはもう死んでいる懸念もある。 「現在、英国の平均寿命(出生時の平均余命)は81歳で、11年に比べ8週間長くなっただけだ。1980~2011年に平均寿命が伸びたペースが維持されていれば、英国の平均寿命は83.2歳に伸びていたはずだと同誌は推定する。12~22年に70万人の英国人が想定されていたより早く死んだ」、なるほど。 「男性の健康寿命は63.1歳、女性は63.9歳。最も恵まれない10%の地域の男性は最も恵まれない10%の地域よりほぼ10年長く生きられると予想され、女性の場合はその差は8年だった。 平均寿命の格差の約3分の1は恵まれない地域で心臓病や呼吸器疾患、肺がんによる死亡率が高いことに起因している。主な危険因子の喫煙と肥満は恵まれないグループほど高くなっていた。一方、平均寿命が急激に短くなった米国では薬物、アルコール、自殺による「絶望の死」が最も大きな被害をもたらしている」、 「平均寿命が急激に短くなった米国では薬物、アルコール、自殺による「絶望の死」が最も大きな被害をもたらしている」、さもありなんだ。 木村正人氏による「富士通の会計システムが引き起こした英史上最大の冤罪事件 英政府が負担する1570億円の肩代わり求める声も」 信じられないような事件だ。「1999年10月、富士通の会計システム「ホライゾン」が順次、地域の準郵便局に導入」、「「ホライゾン」の欠陥で700人近い準郵便局長が身に覚えのない罪に問われた英史上最大の冤罪事件の公聴会が始まった。英大衆紙デーリー・メールによると、20年超の歳月が過ぎ、自殺者を含め33人が正義の実現を待たずに他界した」、 「ホライゾンの証拠に基づき窃盗や不正会計の嫌疑をかけられた準郵便局長は3500人にのぼると一部で報じられている」、「18年に集団訴訟が始まった時、被害を訴える元局長は555人に達した。再審で700人近くの有罪判決が取り消される可能性があり、2400人から補償の申し立てが行われている。 「18年に集団訴訟が始まった時、被害を訴える元局長は555人に達した。再審で700人近くの有罪判決が取り消される可能性があり、2400人から補償の申し立てが行われている。 2月14日からロンドンの国際紛争解決センターで始まった「ポストオフィス・ホライゾンIT公聴会」は元準郵便局長やポストオフィス、富士通、英政府関係者から証言や証拠を集め、20年以上にわたるホライゾンの導入と欠陥について明確にし、教訓が生かされているかどうか確かめるのが狙い」、 この記事では、「不正会計の嫌疑」が何故、かけられたのか、システム上の欠陥についての説明がないので、理解し難い。 「ポストオフィスのヘルプラインに連絡した。13回ぐらい連絡したが、いつもそのまま業務を続けるよう言われるだけだった」、「ヘルプライン」が全く機能してなかったようだ。 「法廷弁護士を頼む法律扶助がそれ以上あてにできないためトーマスさんには司法取引をのむ以外に選択肢はなかった」、「支店口座の不足額はトーマスさんが支払い、ホライゾンについては一切口外しないことが司法取引の条件」、「ホライゾンについては一切口外しないことが司法取引の条件」、こんな闇に葬るようなことをしては、かえって真相解明の邪魔になる。 「ポストオフィスの監査ではみな一様に「ホライゾンで問題が生じているのはあなただけだ」と説明され、司法取引の条件として「ホライゾンのことは一切口外しない」ことを誓約させられていた」、「ポストオフィス」の完全な隠蔽体質も問題を大きくした要因だ。 「冤罪事件が大きな転機を迎えたのは19年12月。集団訴訟が争われていたロンドン高等裁判所で、ポストオフィスは元準郵便局長555人に対して5800万ポンド(約91億円)を支払うことで和解が成立した。和解金の多くは訴訟費用にあてられ、元準郵便局長が手にしたのは1200万ポンド(約19億円)だった。 裁判官は「ホライゾンは最初の10年間は完璧には程遠く、バグ、エラー、欠陥が含まれており、その後も問題を抱えていた。富士通の従業員が裁判所に提出したホライゾンのバグやエラー、欠陥に関する証拠の信憑性に重大な懸念がある」として裁判資料を検察当局に送付した。 「富士通はこれら無数の問題を適切かつ完全に調査したようには見えない。富士通はそのような事故を正しく分類していなかった。 そのため、ソフトウェアに問題があったとの結論から遠のいたようにうかがえる」と裁判官は富士通の責任を厳しく指弾した」、「富士通」、「ポストオフィス」の責任は極めて重大だ。今後も展開から目が離せない。
リニア新幹線(その7)(「JR東海のフィクサー」が安倍晋三と密談して「3兆円」を引っ張るまで すべてはリニアのために、安倍晋三が余命5年だった「JR東海のフィクサー」の“最後の野望”に3兆円を注ぎ込む…政権内部で暗躍した政治家の名前、リニアを「絶対必要」と信じるJR東海のヤバさ 人口減少下で東海道新幹線と併存させる不思議) [産業動向]
リニア新幹線については、昨年4月25日に取上げた。今日は、(その7)(「JR東海のフィクサー」が安倍晋三と密談して「3兆円」を引っ張るまで すべてはリニアのために、安倍晋三が余命5年だった「JR東海のフィクサー」の“最後の野望”に3兆円を注ぎ込む…政権内部で暗躍した政治家の名前、リニアを「絶対必要」と信じるJR東海のヤバさ 人口減少下で東海道新幹線と併存させる不思議)である。
先ずは、本年3月1日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「「JR東海のフィクサー」が安倍晋三と密談して「3兆円」を引っ張るまで すべてはリニアのために」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/106289
・『安倍・菅政権の「フィクサー」として政界を牛耳っていたJR東海名誉会長の葛西敬之。ついにはリニア中央新幹線のために、財政投融資3兆円が注ぎ込まれることになる。融資なので返済するとはいえ、市場金利より安く抑えられていることを思えば、金利分の国家のカネがJR東海につぎ込まれた、と見ることもできる。 『国商 最後のフィクサー葛西敬之』では、安倍と葛西によって「3兆円財投」が決まるまでの政権内部の動きが、生々しく明かされている。硬派のジャーナリスト森功氏が、葛西の知られざる素顔に迫った連載をリバイバルでお届けする』、「安倍と葛西によって「3兆円財投」が決まるまでの政権内部の動き」、とは興味深そうだ。
・『ブレーンは財務省の事務次官ライン 葛西は数多くの政府審議会の委員となり、霞が関の高級官僚たちと政策勉強会を兼ねた懇親会を開いてきた。なかでも葛西の大事にしてきた省庁が財務省であり、財務官僚には葛西を取り巻くブレーンが少なくない。ざっとあげれば、元国税庁長官の牧野治郎にはじまり、勝(かつ)栄二郎や香川俊介、岡本薫明(しげあき)といった事務次官ラインが葛西と懇親を深めてきた。 1980(昭和55)年6月から82年6月まで2年間、防衛庁に出向して経理局会計課に勤めた牧野は思想的に葛西と近く、主計局総務課時代に公共事業担当として旧国鉄の窓口となる。その後、牧野は97年7月に主計局総務課長に就任し、24兆円にのぼる旧国鉄の債務処理を担った。 JR東日本社長の松田昌士やJR西日本社長の井手正敬は、政府の主張したJRの債務負担法案に反対した。彼らは、株式を上場している民間企業が旧国鉄時代の債務を背負うのは株主に対して理屈が立たない、と主張した』、「霞が関の高級官僚たちと政策勉強会を兼ねた懇親会を開いてきた。なかでも葛西の大事にしてきた省庁が財務省であり、財務官僚には葛西を取り巻くブレーンが少なくない」、さすがだ。
・『葛西の歯に衣着せぬ過激な発言 ちなみにJR本州3社の株式上場は、JR東日本が93年10月、JR西日本が96年10月、JR東海が97年10月という順番だ。その3社のなかで最後に上場したJR東海の葛西だけが、政府案に賛成した。JRによる債務負担は、国の財政をあずかる財務省にとっても好都合だ。結果、JR側の負担は政府案の半額にあたる1800億円で決着した。 また75年大蔵省入省の勝は小泉純一郎政権時代、2年先輩の牧野に葛西を紹介され、国鉄改革を進めた自民党代議士の野呂田芳成(ほうせい)とも知り合いだったことから葛西と親しくなっていく。 勝は民主党の菅直人内閣や野田佳彦内閣で財務事務次官となり、後輩次官となる香川を葛西に引き合わせ、さらに岡本へと省内の葛西人脈が引き継がれていった。 勝は民主党政権で活動を止めていた「財政制度等審議会」(財政審)復活の声が高まったことを受け、事務次官退官の置き土産として復活後の財政審入りを葛西に働きかけた。 財政審は政府予算や決算をはじめとする国の財政全般の審議をする財務大臣の諮問機関だ。勝から香川、岡本と葛西人脈が引き継がれていった財務省では、岡本が第二次安倍政権で財政審担当の主計局次長となる。 葛西はその財政審で歯に衣着せぬ過激な発言をして政府に対する影響力を増していった。岡本は葛西が催した朝食会や夜の会合に呼ばれ、付き合いを深めていった。) リニア新幹線に対する財投投入は、その岡本が官房長のときに決まる。むろんそれは関西出身の国会議員に迫られたからではない。第二次安倍政権時代のある官邸関係者が打ち明けてくれた。 「早くから関西の自民党議員たちが、『リニアは大阪まで一気通貫で早く造るべきだ』と言い出してきたのはたしかです。しかしそれは前々からあった話でした。JR東海の副社長だった金子慎(しん)さんが自民党の集まりに呼ばれ、『財投は受け入れられません』と弁明していた記憶があります。大阪の早期開業についてJR東海は自民党議員に押し切られたわけではなく、むしろその逆。のらりくらりとかわしていました」』、「リニア新幹線に対する財投投入は、その岡本が官房長のときに決まる」、長年の財務省官僚との付き合いが結実したようだ。
次に、3月1日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「安倍晋三が余命5年だった「JR東海のフィクサー」の“最後の野望”に3兆円を注ぎ込む…政権内部で暗躍した政治家の名前」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/106293?imp=0
・『安倍・菅政権の「フィクサー」として政界を牛耳っていたJR東海名誉会長の葛西敬之。ついにはリニア中央新幹線のために、財政投融資3兆円が注ぎ込まれることになる。融資なので返済するとはいえ、市場金利より安く抑えられていることを思えば、金利分の国家のカネがJR東海につぎ込まれた、と見ることもできる。 『国商 最後のフィクサー葛西敬之』では、安倍と葛西によって「3兆円財投」が決まるまでの政権内部の動きが、生々しく明かされている。硬派のジャーナリスト森功氏が、葛西の知られざる素顔に迫った連載をリバイバルでお届けする 前編記事【「JR東海のフィクサー」が安倍晋三と密談して「3兆円」を引っ張るまで】 前編に引き続き、第二次安倍政権時代のある官邸関係者の証言をみていく』、興味深そうだ。
・『官邸の介入 情勢が変わったのは、やはり官邸が介入してからだ、とこう続けた。 ある日、安倍首相自身が、『経済政策の大きな目玉としてリニアの大阪延伸を早めてほしい』と自民党の稲田(朋美)政調会長を訪ね、依頼したのです。安倍首相が葛西さんに直接伝えればいいようにも感じましたが、その前の根回しのつもりなのかもしれないし、あるいはまず葛西さんの意向を確かめたかったのかもしれません。それで、稲田さんが早期大阪延伸案を葛西さんに投げた。といっても稲田さんには葛西さんとのパイプがなく、経産官僚があいだをつないだと聞いています。葛西さんは宇宙開発に関心があり、宇宙政策委員会という内閣府の審議会にも参加していて、窓口になってきた片瀬(裕文元経産審議官)という親しい経産官僚がいるんです」』、「稲田さん(政調会長)には葛西さんとのパイプがなく、経産官僚があいだをつないだと聞いています」、直接の「パイプ」がない場合には、「経産官僚があいだをつないだ」、ということもあるようだ。
・『3兆円を捻り出す「3つのやり方」 ここから官邸や自民党は、大阪までの工事を一挙に進めるために3兆円が必要になる、と試算した。むろん財務省としては想定外の“予算”であり、決して乗り気ではなかった。実のところ、当初財務省で3兆円を捻り出す方法は、財投の活用だけではなく、3通り検討されたという。 一つは「整備新幹線並みの公共事業予算に組み入れる方法」、もう一つが「税制上の特別な措置」、そして「財投」だ。本来、鉄道の建設事業認可は国交省所管のはずだが、3兆円の捻出方法を説明するため、財務省の官房長だった岡本が葛西のいる品川のJR東海東京本社を何度も訪ねた。 「リニア計画を予算化するには、国会で審議しなければなりません」 「税制の優遇措置をするにも、税法の改正案を国会へ提出しなければなりません」 岡本は葛西にそう説明した。財投以外の2案はどちらも国会審議を経なければならないため、注目を浴びて批判の矛先がJR東海に向かいかねない。残るは財投しかない。官邸関係者は財投決定までの内幕を明かした。 「そこにも課題はあります。かつての財投は使い道がないので無理やり貸し付けてきましたが、今はなぜ必要かという説明責任が政府にあります。本来は、現状のまま名古屋までの開通を先行させてJR東海にやってもらったほうがいい。でも、この問題については官邸がらみで稲田政調会長まで介入してきている。国交省は何も口を出さない。それで、気心の知れている財務省の岡本さんが葛西さんのところへ説明に通ったのです。葛西さんに選択肢を与え、向こうに決めてもらうという形になった。その答えは財務省経由ではなく、稲田政調会長を通して安倍総理に直接返ってきたと聞いています」』、「3兆円の捻出方法を説明するため、財務省の官房長だった岡本が葛西のいる品川のJR東海東京本社を何度も訪ねた」、信じられないような徹底サービスだ。「「税制の優遇措置をするにも、税法の改正案を国会へ提出しなければなりません」 岡本は葛西にそう説明した。財投以外の2案はどちらも国会審議を経なければならないため、注目を浴びて批判の矛先がJR東海に向かいかねない。残るは財投しかない。官邸関係者は財投決定までの内幕を明かした」、なるほど。
・『「稲田政調会長が一所懸命やってくださった」 そうして葛西は財投しか方法がないと決めたのだという。その真意は、安倍政権の経済政策をバックアップするためだったのだろうか。あるいは首相のメンツを重んじた結果だろうか。 財投の投入に関しては、国鉄改革の取材の流れで、初代JR東海社長の須田寛にも尋ねたことがある。須田は苦笑いしながら、現在の3兆円の財投投入について評価した。 「無利子ではありませんが、昔の8%と比べたら平均0・8%なんてないようなものです。JRはコロナで大減収になっていますけど、財投を活用した借入金を使用して工事を進めることができるので、工事を止めずに済んだ。そういう意味でも非常に意味があったのです。稲田政調会長が一所懸命やってくださったというのは聞きました」 もっとも、葛西が財投を受け入れた背景は資金繰りの事情だけではない。財投を使った3兆円の融資を申請した16年の春、葛西は病魔に襲われた。命を奪った間質性肺炎である。あまり知られていないが、難病指定されているこの病気は、実は国鉄の動労委員長だった仇敵の松崎明からも命を奪っている。) そんな恐ろしい病気にかかって余命5年を宣告された時期が、まさに財投申請の半年ほど前の出来事なのである。自らの余命を知らされた葛西は、焦り始めていたのではないだろうか。 一方、リニア中央新幹線の終点となる大阪では、日本維新の会が2025年の大阪・関西万博とカジノIRの同時オープンをぶち上げてきた。結果的にカジノ計画はうしろにずれ込んだが、安倍は政権発足以来ずっと維新の会の政策を後押ししてきた。リニア計画の前倒しとともに大阪の政策は、行き詰まりを見せ始めたアベノミクスの起爆剤とも位置付けられた。 財投受け入れは、支援してきた首相を助ける有効な一手――。限られた命を告げられた葛西敬之には、そう映ったのではないだろうか』、「初代JR東海社長の須田寛にも尋ねたことがある。須田は苦笑いしながら、現在の3兆円の財投投入について評価した。 「無利子ではありませんが、昔の8%と比べたら平均0・8%なんてないようなものです。JRはコロナで大減収になっていますけど、財投を活用した借入金を使用して工事を進めることができるので、工事を止めずに済んだ。そういう意味でも非常に意味があったのです」、「そんな恐ろしい病気(間質性肺炎)にかかって余命5年を宣告された時期が、まさに財投申請の半年ほど前の出来事なのである。自らの余命を知らされた葛西は、焦り始めていたのではないだろうか」、「リニア計画の前倒しとともに大阪の政策は、行き詰まりを見せ始めたアベノミクスの起爆剤とも位置付けられた。 財投受け入れは、支援してきた首相を助ける有効な一手――。限られた命を告げられた葛西敬之には、そう映ったのではないだろうか」、大いにありそうな話だ。
第三に、4月22日付け東洋経済オンラインが掲載した作家・ジャーナリストの金田 信一郎氏による「リニアを「絶対必要」と信じるJR東海のヤバさ 人口減少下で東海道新幹線と併存させる不思議」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/666250
・『リニア新幹線計画に疑念を持っている。 時速500キロメートルで東京─大阪間を1時間で結ぶと言われても、「それが、どうしたの?」という感じである。そもそも、大阪まで開通するのは早くても14年後だ。そんなことに、10兆円もかけるのはいかがなものだろうか。 どうやら私だけではなく、鉄ちゃん(鉄道マニア)もリニアにはあまり興味がないと聞く。9割近くはトンネル内を走るため、撮影することも難しい。乗ったところで旅情はまったくない。 数年前、山梨の実験線に試乗した。半世紀以上もかけて開発してきただけに、走行は安定している。騒音も思ったよりは少ない。だが、車内は狭いし、窓の景色は暗闇ばかり。言ってみれば、高速の地下鉄といったところか。 やっぱ、いらないんじゃね。 ところがJR東海の経営陣や社員は、口をそろえて「絶対に必要だ」と言い張る。いわく、「東海道新幹線だけでは心もとない」「地震などの災害時に、リニアがあれば輸送に使えるので安心である」と。 本当だろうか?』、「JR東海」の必要論には無理がありそうだ。
・『リニアにまつわる不安 今現在、東海道新幹線を利用していて、「遅くて使いものにならない」とか、「もっと速いダイヤが組めないのか」と思っている人はどれほどいるのだろうか。 リニアが完成したら東海道新幹線を廃止するならば、まだ少しは理解できる。だが、併存するというのだから意味がわからない。人口が減っていく中で、東京─大阪間の需要が2倍になるとでも思っているのだろうか。 地震が起きた際に、緊急輸送に使えるという理屈は、まったくもってナンセンスだ。そもそも、リニアに貨物車両は存在しない。また、南アルプスの地下を走ることになるが、そこには活断層がいくつも走っている。大震災が起きれば、断層のズレでトンネルが損傷するリスクも想定される。輸送どころか、復旧自体に相当の時間を要する可能性すらある。 JR東日本の元社長、松田昌士氏は「俺はリニアには乗らない」と断言していた。「だって、地下の深いところで事故に遭ってみなよ。死骸も出てこないわな」。 こうした不安の声に、JR東海側が真摯に向き合ってきたとは言いがたい。住民説明会に出たことがあるが、質問は1人3つまで。そこでマイクが取り上げられて、あとは壇上の社員が「慎重に進めてまいります」などと具体性を欠く回答をするばかりだった。会場からヤジと怒号が飛ぶ中、司会役の社員が途中で会を打ち切った。 工事への不安は、年々高まっている。3年ほど前、東京・調布の住宅街で道路が陥没したのは、外環道のトンネル工事の影響だったとわかった。同じシールド工法を採用しているリニアは大丈夫なのか──。そんな不安が、計画地の住民の間に広がっている。ちなみに、リニアは東京や神奈川、愛知の都心部や住宅街の地下を掘り進める計画で、田園調布といった高級住宅街の直下も通過する。 「どこまで工事が進んでいるのか、まったく見えてこない」。リニア新駅が設置される神奈川・相模原の住民は、不安を隠せない。 反対住民は、各地で土地を共同登記するなど、「立ち退き」を迫るJR東海と全面対立する構えだ。 リニアのパートナー企業も、腰が引けている』、「JR東日本の元社長、松田昌士氏は「俺はリニアには乗らない」と断言していた。「だって、地下の深いところで事故に遭ってみなよ。死骸も出てこないわな」。「松田昌士氏」が反対しているとは初めて知った。「同じシールド工法」を採用している」外環道のトンネル工事」で「道路が陥没し」、「リニアは大丈夫なのか──。そんな不安が、計画地の住民の間に広がっている」、「シールド工法」の安全性を立証しない限り、致命的なダメージだ。
・『後に引けないリニア計画 ゼネコン大手4社がリニア談合事件で起訴されたのは2018年のこと。入札額を調整するために、ゼネコン側が事前に打ち合わせをしていたとされる。この構図だけを見ると、JR東海は「被害者」ということになる。 だが、そうした伝統的な談合の構図は、このケースには当てはまらないだろう。なぜなら、リニアの地下深くに造る新駅やトンネルは、超難工事となるため、事前に特定のゼネコンと打ち合わせて、工法や機械の開発を進める。その費用はゼネコンが負担している。それなのに、いざ発注となった段階でほかのゼネコンにも入札をさせれば、準備コストをかけていない会社が安値を提示できる。 「リニア工事は割に合わない」 ゼネコンの経営陣からは、そんな声が聞こえる。 早々に撤退した会社もある。 三菱重工業はリニアの車体開発に航空機の技術を持ち込み、現在の実験線を実現させた立役者といえる。ところが、受注金額をめぐって大きなズレが生じ、すでに手を引いている。 そこまでしてパートナー企業を値切っても、予算額がジリジリと膨張してきている。2年前に1兆5000億円ほど膨らんで、ついに10兆円の大台に乗った。 リニア計画を推進してきたJR東海の元会長、葛西敬之氏が昨年、亡くなっている。これを機に、いったん計画を見直してもいいのではないか? だって、このまま進めて14年後に完成したとしても、リニアの負債がJR東海の経営を崖っぷちに追い込んでしまう危険があるのだから。 「すでに公的資金を3兆円も投入しているんだから、今さら止められない」 そんな声が聞こえてくる。 でも、27年の東京─名古屋間の開業予定も延期され、総工費はさらに膨らむだろう。こんなプロジェクトに、今後も巨額の公金を注ぎ続けるのだろうか。 「お前は暇だから、そんな戯言(ざれごと)が言えるんだ」 うむ、そうかもしれない。 だが、そんなに時間を節約したいのなら、ネット会議のほうが効率はいいのではないか。 私は鉄道の将来を考えるとき、頭に浮かぶ風景がある。千葉の市街地から、外房に向かって山間部まで39キロメートルを走る小湊鉄道。その石川晋平社長がこう話していた。 「新幹線はどんどん速度を上げていくけど、こっちはそうはいかない。悔しいから速度を落としてやろうと思っているんですよ」 そう笑っていた石川社長は、本当に実現してしまった。しかも、車両の壁を取り払ったトロッコ列車を造って、時速20キロメートル程度で走らせる。列車がやってくると、地元の人が手を振って応える。乗客と地域がぐっと近づいた。そして、閑古鳥が鳴いていた山間の駅は、乗降客が2倍に増えた。 「鉄道会社って、引っ越しができないんですよ。だから、地域とともにやっていくしかない」と、石川社長は言う。 それでいいのだと思う。未来の交通機関は、大型ドローンになるのかもしれないし、イーロン・マスク氏が提唱する真空チューブ交通システムになるのかもしれない。 いずれにしても、今の交通機関とはまったく違った発想から生まれてくるのだろう。少なくとも、半世紀以上前に開発された、新幹線のリニア(直線的)な延長線上の乗り物ではないはずだ』、「「すでに公的資金を3兆円も投入しているんだから、今さら止められない」 そんな声が聞こえてくる」、そんなへ理屈で強行していけば、損失はもっと飛躍的に拡大する恐れがある。「未来の交通機関は、大型ドローンになるのかもしれないし、イーロン・マスク氏が提唱する真空チューブ交通システムになるのかもしれない。 いずれにしても、今の交通機関とはまったく違った発想から生まれてくるのだろう。少なくとも、半世紀以上前に開発された、新幹線のリニア(直線的)な延長線上の乗り物ではないはずだ」、同感である。止めるにしても一刻も早く止めるべきだ。
先ずは、本年3月1日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「「JR東海のフィクサー」が安倍晋三と密談して「3兆円」を引っ張るまで すべてはリニアのために」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/106289
・『安倍・菅政権の「フィクサー」として政界を牛耳っていたJR東海名誉会長の葛西敬之。ついにはリニア中央新幹線のために、財政投融資3兆円が注ぎ込まれることになる。融資なので返済するとはいえ、市場金利より安く抑えられていることを思えば、金利分の国家のカネがJR東海につぎ込まれた、と見ることもできる。 『国商 最後のフィクサー葛西敬之』では、安倍と葛西によって「3兆円財投」が決まるまでの政権内部の動きが、生々しく明かされている。硬派のジャーナリスト森功氏が、葛西の知られざる素顔に迫った連載をリバイバルでお届けする』、「安倍と葛西によって「3兆円財投」が決まるまでの政権内部の動き」、とは興味深そうだ。
・『ブレーンは財務省の事務次官ライン 葛西は数多くの政府審議会の委員となり、霞が関の高級官僚たちと政策勉強会を兼ねた懇親会を開いてきた。なかでも葛西の大事にしてきた省庁が財務省であり、財務官僚には葛西を取り巻くブレーンが少なくない。ざっとあげれば、元国税庁長官の牧野治郎にはじまり、勝(かつ)栄二郎や香川俊介、岡本薫明(しげあき)といった事務次官ラインが葛西と懇親を深めてきた。 1980(昭和55)年6月から82年6月まで2年間、防衛庁に出向して経理局会計課に勤めた牧野は思想的に葛西と近く、主計局総務課時代に公共事業担当として旧国鉄の窓口となる。その後、牧野は97年7月に主計局総務課長に就任し、24兆円にのぼる旧国鉄の債務処理を担った。 JR東日本社長の松田昌士やJR西日本社長の井手正敬は、政府の主張したJRの債務負担法案に反対した。彼らは、株式を上場している民間企業が旧国鉄時代の債務を背負うのは株主に対して理屈が立たない、と主張した』、「霞が関の高級官僚たちと政策勉強会を兼ねた懇親会を開いてきた。なかでも葛西の大事にしてきた省庁が財務省であり、財務官僚には葛西を取り巻くブレーンが少なくない」、さすがだ。
・『葛西の歯に衣着せぬ過激な発言 ちなみにJR本州3社の株式上場は、JR東日本が93年10月、JR西日本が96年10月、JR東海が97年10月という順番だ。その3社のなかで最後に上場したJR東海の葛西だけが、政府案に賛成した。JRによる債務負担は、国の財政をあずかる財務省にとっても好都合だ。結果、JR側の負担は政府案の半額にあたる1800億円で決着した。 また75年大蔵省入省の勝は小泉純一郎政権時代、2年先輩の牧野に葛西を紹介され、国鉄改革を進めた自民党代議士の野呂田芳成(ほうせい)とも知り合いだったことから葛西と親しくなっていく。 勝は民主党の菅直人内閣や野田佳彦内閣で財務事務次官となり、後輩次官となる香川を葛西に引き合わせ、さらに岡本へと省内の葛西人脈が引き継がれていった。 勝は民主党政権で活動を止めていた「財政制度等審議会」(財政審)復活の声が高まったことを受け、事務次官退官の置き土産として復活後の財政審入りを葛西に働きかけた。 財政審は政府予算や決算をはじめとする国の財政全般の審議をする財務大臣の諮問機関だ。勝から香川、岡本と葛西人脈が引き継がれていった財務省では、岡本が第二次安倍政権で財政審担当の主計局次長となる。 葛西はその財政審で歯に衣着せぬ過激な発言をして政府に対する影響力を増していった。岡本は葛西が催した朝食会や夜の会合に呼ばれ、付き合いを深めていった。) リニア新幹線に対する財投投入は、その岡本が官房長のときに決まる。むろんそれは関西出身の国会議員に迫られたからではない。第二次安倍政権時代のある官邸関係者が打ち明けてくれた。 「早くから関西の自民党議員たちが、『リニアは大阪まで一気通貫で早く造るべきだ』と言い出してきたのはたしかです。しかしそれは前々からあった話でした。JR東海の副社長だった金子慎(しん)さんが自民党の集まりに呼ばれ、『財投は受け入れられません』と弁明していた記憶があります。大阪の早期開業についてJR東海は自民党議員に押し切られたわけではなく、むしろその逆。のらりくらりとかわしていました」』、「リニア新幹線に対する財投投入は、その岡本が官房長のときに決まる」、長年の財務省官僚との付き合いが結実したようだ。
次に、3月1日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの森 功氏による「安倍晋三が余命5年だった「JR東海のフィクサー」の“最後の野望”に3兆円を注ぎ込む…政権内部で暗躍した政治家の名前」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/106293?imp=0
・『安倍・菅政権の「フィクサー」として政界を牛耳っていたJR東海名誉会長の葛西敬之。ついにはリニア中央新幹線のために、財政投融資3兆円が注ぎ込まれることになる。融資なので返済するとはいえ、市場金利より安く抑えられていることを思えば、金利分の国家のカネがJR東海につぎ込まれた、と見ることもできる。 『国商 最後のフィクサー葛西敬之』では、安倍と葛西によって「3兆円財投」が決まるまでの政権内部の動きが、生々しく明かされている。硬派のジャーナリスト森功氏が、葛西の知られざる素顔に迫った連載をリバイバルでお届けする 前編記事【「JR東海のフィクサー」が安倍晋三と密談して「3兆円」を引っ張るまで】 前編に引き続き、第二次安倍政権時代のある官邸関係者の証言をみていく』、興味深そうだ。
・『官邸の介入 情勢が変わったのは、やはり官邸が介入してからだ、とこう続けた。 ある日、安倍首相自身が、『経済政策の大きな目玉としてリニアの大阪延伸を早めてほしい』と自民党の稲田(朋美)政調会長を訪ね、依頼したのです。安倍首相が葛西さんに直接伝えればいいようにも感じましたが、その前の根回しのつもりなのかもしれないし、あるいはまず葛西さんの意向を確かめたかったのかもしれません。それで、稲田さんが早期大阪延伸案を葛西さんに投げた。といっても稲田さんには葛西さんとのパイプがなく、経産官僚があいだをつないだと聞いています。葛西さんは宇宙開発に関心があり、宇宙政策委員会という内閣府の審議会にも参加していて、窓口になってきた片瀬(裕文元経産審議官)という親しい経産官僚がいるんです」』、「稲田さん(政調会長)には葛西さんとのパイプがなく、経産官僚があいだをつないだと聞いています」、直接の「パイプ」がない場合には、「経産官僚があいだをつないだ」、ということもあるようだ。
・『3兆円を捻り出す「3つのやり方」 ここから官邸や自民党は、大阪までの工事を一挙に進めるために3兆円が必要になる、と試算した。むろん財務省としては想定外の“予算”であり、決して乗り気ではなかった。実のところ、当初財務省で3兆円を捻り出す方法は、財投の活用だけではなく、3通り検討されたという。 一つは「整備新幹線並みの公共事業予算に組み入れる方法」、もう一つが「税制上の特別な措置」、そして「財投」だ。本来、鉄道の建設事業認可は国交省所管のはずだが、3兆円の捻出方法を説明するため、財務省の官房長だった岡本が葛西のいる品川のJR東海東京本社を何度も訪ねた。 「リニア計画を予算化するには、国会で審議しなければなりません」 「税制の優遇措置をするにも、税法の改正案を国会へ提出しなければなりません」 岡本は葛西にそう説明した。財投以外の2案はどちらも国会審議を経なければならないため、注目を浴びて批判の矛先がJR東海に向かいかねない。残るは財投しかない。官邸関係者は財投決定までの内幕を明かした。 「そこにも課題はあります。かつての財投は使い道がないので無理やり貸し付けてきましたが、今はなぜ必要かという説明責任が政府にあります。本来は、現状のまま名古屋までの開通を先行させてJR東海にやってもらったほうがいい。でも、この問題については官邸がらみで稲田政調会長まで介入してきている。国交省は何も口を出さない。それで、気心の知れている財務省の岡本さんが葛西さんのところへ説明に通ったのです。葛西さんに選択肢を与え、向こうに決めてもらうという形になった。その答えは財務省経由ではなく、稲田政調会長を通して安倍総理に直接返ってきたと聞いています」』、「3兆円の捻出方法を説明するため、財務省の官房長だった岡本が葛西のいる品川のJR東海東京本社を何度も訪ねた」、信じられないような徹底サービスだ。「「税制の優遇措置をするにも、税法の改正案を国会へ提出しなければなりません」 岡本は葛西にそう説明した。財投以外の2案はどちらも国会審議を経なければならないため、注目を浴びて批判の矛先がJR東海に向かいかねない。残るは財投しかない。官邸関係者は財投決定までの内幕を明かした」、なるほど。
・『「稲田政調会長が一所懸命やってくださった」 そうして葛西は財投しか方法がないと決めたのだという。その真意は、安倍政権の経済政策をバックアップするためだったのだろうか。あるいは首相のメンツを重んじた結果だろうか。 財投の投入に関しては、国鉄改革の取材の流れで、初代JR東海社長の須田寛にも尋ねたことがある。須田は苦笑いしながら、現在の3兆円の財投投入について評価した。 「無利子ではありませんが、昔の8%と比べたら平均0・8%なんてないようなものです。JRはコロナで大減収になっていますけど、財投を活用した借入金を使用して工事を進めることができるので、工事を止めずに済んだ。そういう意味でも非常に意味があったのです。稲田政調会長が一所懸命やってくださったというのは聞きました」 もっとも、葛西が財投を受け入れた背景は資金繰りの事情だけではない。財投を使った3兆円の融資を申請した16年の春、葛西は病魔に襲われた。命を奪った間質性肺炎である。あまり知られていないが、難病指定されているこの病気は、実は国鉄の動労委員長だった仇敵の松崎明からも命を奪っている。) そんな恐ろしい病気にかかって余命5年を宣告された時期が、まさに財投申請の半年ほど前の出来事なのである。自らの余命を知らされた葛西は、焦り始めていたのではないだろうか。 一方、リニア中央新幹線の終点となる大阪では、日本維新の会が2025年の大阪・関西万博とカジノIRの同時オープンをぶち上げてきた。結果的にカジノ計画はうしろにずれ込んだが、安倍は政権発足以来ずっと維新の会の政策を後押ししてきた。リニア計画の前倒しとともに大阪の政策は、行き詰まりを見せ始めたアベノミクスの起爆剤とも位置付けられた。 財投受け入れは、支援してきた首相を助ける有効な一手――。限られた命を告げられた葛西敬之には、そう映ったのではないだろうか』、「初代JR東海社長の須田寛にも尋ねたことがある。須田は苦笑いしながら、現在の3兆円の財投投入について評価した。 「無利子ではありませんが、昔の8%と比べたら平均0・8%なんてないようなものです。JRはコロナで大減収になっていますけど、財投を活用した借入金を使用して工事を進めることができるので、工事を止めずに済んだ。そういう意味でも非常に意味があったのです」、「そんな恐ろしい病気(間質性肺炎)にかかって余命5年を宣告された時期が、まさに財投申請の半年ほど前の出来事なのである。自らの余命を知らされた葛西は、焦り始めていたのではないだろうか」、「リニア計画の前倒しとともに大阪の政策は、行き詰まりを見せ始めたアベノミクスの起爆剤とも位置付けられた。 財投受け入れは、支援してきた首相を助ける有効な一手――。限られた命を告げられた葛西敬之には、そう映ったのではないだろうか」、大いにありそうな話だ。
第三に、4月22日付け東洋経済オンラインが掲載した作家・ジャーナリストの金田 信一郎氏による「リニアを「絶対必要」と信じるJR東海のヤバさ 人口減少下で東海道新幹線と併存させる不思議」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/666250
・『リニア新幹線計画に疑念を持っている。 時速500キロメートルで東京─大阪間を1時間で結ぶと言われても、「それが、どうしたの?」という感じである。そもそも、大阪まで開通するのは早くても14年後だ。そんなことに、10兆円もかけるのはいかがなものだろうか。 どうやら私だけではなく、鉄ちゃん(鉄道マニア)もリニアにはあまり興味がないと聞く。9割近くはトンネル内を走るため、撮影することも難しい。乗ったところで旅情はまったくない。 数年前、山梨の実験線に試乗した。半世紀以上もかけて開発してきただけに、走行は安定している。騒音も思ったよりは少ない。だが、車内は狭いし、窓の景色は暗闇ばかり。言ってみれば、高速の地下鉄といったところか。 やっぱ、いらないんじゃね。 ところがJR東海の経営陣や社員は、口をそろえて「絶対に必要だ」と言い張る。いわく、「東海道新幹線だけでは心もとない」「地震などの災害時に、リニアがあれば輸送に使えるので安心である」と。 本当だろうか?』、「JR東海」の必要論には無理がありそうだ。
・『リニアにまつわる不安 今現在、東海道新幹線を利用していて、「遅くて使いものにならない」とか、「もっと速いダイヤが組めないのか」と思っている人はどれほどいるのだろうか。 リニアが完成したら東海道新幹線を廃止するならば、まだ少しは理解できる。だが、併存するというのだから意味がわからない。人口が減っていく中で、東京─大阪間の需要が2倍になるとでも思っているのだろうか。 地震が起きた際に、緊急輸送に使えるという理屈は、まったくもってナンセンスだ。そもそも、リニアに貨物車両は存在しない。また、南アルプスの地下を走ることになるが、そこには活断層がいくつも走っている。大震災が起きれば、断層のズレでトンネルが損傷するリスクも想定される。輸送どころか、復旧自体に相当の時間を要する可能性すらある。 JR東日本の元社長、松田昌士氏は「俺はリニアには乗らない」と断言していた。「だって、地下の深いところで事故に遭ってみなよ。死骸も出てこないわな」。 こうした不安の声に、JR東海側が真摯に向き合ってきたとは言いがたい。住民説明会に出たことがあるが、質問は1人3つまで。そこでマイクが取り上げられて、あとは壇上の社員が「慎重に進めてまいります」などと具体性を欠く回答をするばかりだった。会場からヤジと怒号が飛ぶ中、司会役の社員が途中で会を打ち切った。 工事への不安は、年々高まっている。3年ほど前、東京・調布の住宅街で道路が陥没したのは、外環道のトンネル工事の影響だったとわかった。同じシールド工法を採用しているリニアは大丈夫なのか──。そんな不安が、計画地の住民の間に広がっている。ちなみに、リニアは東京や神奈川、愛知の都心部や住宅街の地下を掘り進める計画で、田園調布といった高級住宅街の直下も通過する。 「どこまで工事が進んでいるのか、まったく見えてこない」。リニア新駅が設置される神奈川・相模原の住民は、不安を隠せない。 反対住民は、各地で土地を共同登記するなど、「立ち退き」を迫るJR東海と全面対立する構えだ。 リニアのパートナー企業も、腰が引けている』、「JR東日本の元社長、松田昌士氏は「俺はリニアには乗らない」と断言していた。「だって、地下の深いところで事故に遭ってみなよ。死骸も出てこないわな」。「松田昌士氏」が反対しているとは初めて知った。「同じシールド工法」を採用している」外環道のトンネル工事」で「道路が陥没し」、「リニアは大丈夫なのか──。そんな不安が、計画地の住民の間に広がっている」、「シールド工法」の安全性を立証しない限り、致命的なダメージだ。
・『後に引けないリニア計画 ゼネコン大手4社がリニア談合事件で起訴されたのは2018年のこと。入札額を調整するために、ゼネコン側が事前に打ち合わせをしていたとされる。この構図だけを見ると、JR東海は「被害者」ということになる。 だが、そうした伝統的な談合の構図は、このケースには当てはまらないだろう。なぜなら、リニアの地下深くに造る新駅やトンネルは、超難工事となるため、事前に特定のゼネコンと打ち合わせて、工法や機械の開発を進める。その費用はゼネコンが負担している。それなのに、いざ発注となった段階でほかのゼネコンにも入札をさせれば、準備コストをかけていない会社が安値を提示できる。 「リニア工事は割に合わない」 ゼネコンの経営陣からは、そんな声が聞こえる。 早々に撤退した会社もある。 三菱重工業はリニアの車体開発に航空機の技術を持ち込み、現在の実験線を実現させた立役者といえる。ところが、受注金額をめぐって大きなズレが生じ、すでに手を引いている。 そこまでしてパートナー企業を値切っても、予算額がジリジリと膨張してきている。2年前に1兆5000億円ほど膨らんで、ついに10兆円の大台に乗った。 リニア計画を推進してきたJR東海の元会長、葛西敬之氏が昨年、亡くなっている。これを機に、いったん計画を見直してもいいのではないか? だって、このまま進めて14年後に完成したとしても、リニアの負債がJR東海の経営を崖っぷちに追い込んでしまう危険があるのだから。 「すでに公的資金を3兆円も投入しているんだから、今さら止められない」 そんな声が聞こえてくる。 でも、27年の東京─名古屋間の開業予定も延期され、総工費はさらに膨らむだろう。こんなプロジェクトに、今後も巨額の公金を注ぎ続けるのだろうか。 「お前は暇だから、そんな戯言(ざれごと)が言えるんだ」 うむ、そうかもしれない。 だが、そんなに時間を節約したいのなら、ネット会議のほうが効率はいいのではないか。 私は鉄道の将来を考えるとき、頭に浮かぶ風景がある。千葉の市街地から、外房に向かって山間部まで39キロメートルを走る小湊鉄道。その石川晋平社長がこう話していた。 「新幹線はどんどん速度を上げていくけど、こっちはそうはいかない。悔しいから速度を落としてやろうと思っているんですよ」 そう笑っていた石川社長は、本当に実現してしまった。しかも、車両の壁を取り払ったトロッコ列車を造って、時速20キロメートル程度で走らせる。列車がやってくると、地元の人が手を振って応える。乗客と地域がぐっと近づいた。そして、閑古鳥が鳴いていた山間の駅は、乗降客が2倍に増えた。 「鉄道会社って、引っ越しができないんですよ。だから、地域とともにやっていくしかない」と、石川社長は言う。 それでいいのだと思う。未来の交通機関は、大型ドローンになるのかもしれないし、イーロン・マスク氏が提唱する真空チューブ交通システムになるのかもしれない。 いずれにしても、今の交通機関とはまったく違った発想から生まれてくるのだろう。少なくとも、半世紀以上前に開発された、新幹線のリニア(直線的)な延長線上の乗り物ではないはずだ』、「「すでに公的資金を3兆円も投入しているんだから、今さら止められない」 そんな声が聞こえてくる」、そんなへ理屈で強行していけば、損失はもっと飛躍的に拡大する恐れがある。「未来の交通機関は、大型ドローンになるのかもしれないし、イーロン・マスク氏が提唱する真空チューブ交通システムになるのかもしれない。 いずれにしても、今の交通機関とはまったく違った発想から生まれてくるのだろう。少なくとも、半世紀以上前に開発された、新幹線のリニア(直線的)な延長線上の乗り物ではないはずだ」、同感である。止めるにしても一刻も早く止めるべきだ。
タグ:「未来の交通機関は、大型ドローンになるのかもしれないし、イーロン・マスク氏が提唱する真空チューブ交通システムになるのかもしれない。 いずれにしても、今の交通機関とはまったく違った発想から生まれてくるのだろう。少なくとも、半世紀以上前に開発された、新幹線のリニア(直線的)な延長線上の乗り物ではないはずだ」、同感である。止めるにしても一刻も早く止めるべきだ。 「「すでに公的資金を3兆円も投入しているんだから、今さら止められない」 そんな声が聞こえてくる」、そんなへ理屈で強行していけば、損失はもっと飛躍的に拡大する恐れがある。 「JR東日本の元社長、松田昌士氏は「俺はリニアには乗らない」と断言していた。「だって、地下の深いところで事故に遭ってみなよ。死骸も出てこないわな」。「松田昌士氏」が反対しているとは初めて知った。「同じシールド工法」を採用している」外環道のトンネル工事」で「道路が陥没し」、「リニアは大丈夫なのか──。そんな不安が、計画地の住民の間に広がっている」、「シールド工法」の安全性を立証しない限り、致命的なダメージだ。 「JR東海」の必要論には無理がありそうだ。 金田 信一郎氏による「リニアを「絶対必要」と信じるJR東海のヤバさ 人口減少下で東海道新幹線と併存させる不思議」 東洋経済オンライン 「そんな恐ろしい病気(間質性肺炎)にかかって余命5年を宣告された時期が、まさに財投申請の半年ほど前の出来事なのである。自らの余命を知らされた葛西は、焦り始めていたのではないだろうか」、「リニア計画の前倒しとともに大阪の政策は、行き詰まりを見せ始めたアベノミクスの起爆剤とも位置付けられた。 財投受け入れは、支援してきた首相を助ける有効な一手――。限られた命を告げられた葛西敬之には、そう映ったのではないだろうか」、大いにありそうな話だ。 「初代JR東海社長の須田寛にも尋ねたことがある。須田は苦笑いしながら、現在の3兆円の財投投入について評価した。 「無利子ではありませんが、昔の8%と比べたら平均0・8%なんてないようなものです。JRはコロナで大減収になっていますけど、財投を活用した借入金を使用して工事を進めることができるので、工事を止めずに済んだ。そういう意味でも非常に意味があったのです」、 「3兆円の捻出方法を説明するため、財務省の官房長だった岡本が葛西のいる品川のJR東海東京本社を何度も訪ねた」、信じられないような徹底サービスだ。「「税制の優遇措置をするにも、税法の改正案を国会へ提出しなければなりません」 岡本は葛西にそう説明した。財投以外の2案はどちらも国会審議を経なければならないため、注目を浴びて批判の矛先がJR東海に向かいかねない。残るは財投しかない。官邸関係者は財投決定までの内幕を明かした」、なるほど。 「稲田さん(政調会長)には葛西さんとのパイプがなく、経産官僚があいだをつないだと聞いています」、直接の「パイプ」がない場合には、「経産官僚があいだをつないだ」、ということもあるようだ。 『国商 最後のフィクサー葛西敬之』 森 功氏による「安倍晋三が余命5年だった「JR東海のフィクサー」の“最後の野望”に3兆円を注ぎ込む…政権内部で暗躍した政治家の名前」 「リニア新幹線に対する財投投入は、その岡本が官房長のときに決まる」、長年の財務省官僚との付き合いが結実したようだ。 (その7)(「JR東海のフィクサー」が安倍晋三と密談して「3兆円」を引っ張るまで すべてはリニアのために、安倍晋三が余命5年だった「JR東海のフィクサー」の“最後の野望”に3兆円を注ぎ込む…政権内部で暗躍した政治家の名前、リニアを「絶対必要」と信じるJR東海のヤバさ 人口減少下で東海道新幹線と併存させる不思議) リニア新幹線 「霞が関の高級官僚たちと政策勉強会を兼ねた懇親会を開いてきた。なかでも葛西の大事にしてきた省庁が財務省であり、財務官僚には葛西を取り巻くブレーンが少なくない」、さすがだ。 「安倍と葛西によって「3兆円財投」が決まるまでの政権内部の動き」、とは興味深そうだ。 森 功氏による「「JR東海のフィクサー」が安倍晋三と密談して「3兆円」を引っ張るまで すべてはリニアのために」 現代ビジネス
原発問題(その20)(岸田政権「原発回帰」は事故教訓の破棄 専門家は「40年超え」長期間運転リスクを懸念、7年6ヶ月の懲役を終えた「原発賠償金詐欺」の“首謀者”が初告白「福島県内の会社が、違法申請に飛びついた本当の理由」、10兆円超の原発賠償金から約40億円をかすめ取った「首謀者」が初めて明かす「不正の手口」と「隠された真実」) [国内政治]
原発問題については、昨年6月19日に取上げた。今日は、(その20)(岸田政権「原発回帰」は事故教訓の破棄 専門家は「40年超え」長期間運転リスクを懸念、7年6ヶ月の懲役を終えた「原発賠償金詐欺」の“首謀者”が初告白「福島県内の会社が、違法申請に飛びついた本当の理由」、10兆円超の原発賠償金から約40億円をかすめ取った「首謀者」が初めて明かす「不正の手口」と「隠された真実」)である。
先ずは、本年2月6日付けAERAdot「岸田政権「原発回帰」は事故教訓の破棄 専門家は「40年超え」長期間運転リスクを懸念」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/aera/2023020300019.html?page=1
・『福島第一原発の事故から12年。廃炉作業は多くの課題を抱える中、岸田政権は「原発回帰」を打ち出した。長期間運転のリスクは何か。日本のエネルギーはどうあるべきか。AERA 2023年2月6日号の記事を紹介する。 福島の教訓を忘れたのか、岸田文雄政権は原発政策の「大転換」を正式に決めた。 昨年12月、国は脱炭素の方策を議論する「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」を開き、原発を「最大限活用する」として新たな基本方針案を示した。 方針案の大きな柱は(1)次世代革新炉の開発・建設、(2)原発の運転期間の延長──の二つ。福島第一原発事故以降、原発の新増設や建て替えを「想定していない」としてきた政府方針を大きく転換した。特に議論となっているのが、運転期間の延長だ。 原発の運転期間は、福島第一原発事故前は明確な規定はなかった。 しかし、原発事故の翌年に原子炉等規制法が改正され、運転期間は原則40年とし、1回に限り最長20年の延長を認めた。「40年ルール」と呼ばれ、原発事故の教訓をもとに決めた政策的な判断だった。今回示された新方針案は、「40年ルール」の骨格を維持した上で、「一定の停止期間に限り追加の延長を認める」と盛り込んだ。原子力規制委員会による安全審査を前提に、原発事故後の審査で停止していた期間などの分を延長する。例えば、10年間停止した場合、運転開始から最大70年運転できるようになる。 経済産業省の原子力小委員会で委員を務めた、NPO法人「原子力資料情報室」の松久保肇・事務局長は、政府の決定は福島第一原発事故の教訓を放棄するものだと厳しく批判する。 「わずか3カ月で原子力推進に舵を切りましたが、重大な政策転換にもかかわらずその間、国民の意見を聞くことはありませんでした。国が定めるエネルギー基本計画にも、エネルギー政策は『国民の理解を得ながら進めていく』などと書かれていますが、きれいごととしか思えない。進め方が強引です」』、「原子力規制委員会」には金属疲労の専門家はいるのだろうか。
・『決定は「出来レース」 当初、原発の政策転換に慎重だった岸田首相が「原発回帰」にアクセルを踏んだのは、脱炭素社会の実現に加え、昨年2月のロシアのウクライナ侵攻がきっかけだ。 ロシアが天然ガスの供給を絞ったことで、世界はエネルギー争奪戦に突入した。電力が逼迫し、政府は原発の活用が不可欠と判断。昨年8月下旬、岸田首相は原発の運転期間の延長などの検討を指示していた。だが、松久保さんは政策の「時間軸」が間違っていると語る。 「再稼働できる原発はすでに再稼働していて、電力需給の逼迫の解決策ではありません。新設に関しても、建設開始は早くて30年代。運転期間延長もいま決めなければならない話ではないはずです」 エネルギー問題に詳しい国際大学の橘川武郎・副学長は、政府の決定を「官邸と電力業界の出来レース」だと批判する。 「狙いは最初から運転期間の延長にあります。次世代革新炉の建設には5千億円から1兆円規模必要ですが、運転延長にかかるコストは数億円で済みます。また政府方針では、最長で70年の運転が可能になると言われていますが、停止期間は原発事故前も適用可能になると思います。そうすると、80年以上可能になる。古い炉を延長するのは、最悪のシナリオです」 原発の長期間運転には、どんなリスクが潜んでいるのか。 日本で初めて「原子の火」が灯ったのは1957年8月、茨城県東海村の実験用原子炉だった。 原子力開発はここから加速した。現在、国内に原発は、停止中も含め33基ある。そのうち17基は稼働開始から30年を超え、4基は40年を超える。2021年6月には、稼働開始から44年(当時)が経過した美浜原発3号機が再稼働し、40年超原発では初めて運転延長した。さらに今夏以降、7基が再稼働するが、うち高浜原発1、2号機など3基が40年を超えている』、「政府の決定を「官邸と電力業界の出来レース」だと批判する。 「狙いは最初から運転期間の延長にあります。次世代革新炉の建設には5千億円から1兆円規模必要ですが、運転延長にかかるコストは数億円で済みます。また政府方針では、最長で70年の運転が可能になると言われていますが、停止期間は原発事故前も適用可能になると思います。そうすると、80年以上可能になる。古い炉を延長するのは、最悪のシナリオです」、腹立たしい限りだ。
・『「心臓部」劣化の懸念 東京大学の井野博満・名誉教授(金属材料学)はこう話す。 「金属は古くなると腐食や疲労などによって劣化し、その分リスクも高まります」 井野さんによれば、原発の「寿命」は40年を想定して設計されているという。 特に井野さんが懸念を示すのが、原発の「心臓部」に当たる、核燃料が入った圧力容器の劣化だ。) 圧力容器は原発の中心部にあり、厚さ10センチ以上の鋼鉄でできている。それが、核分裂の過程で生じる高エネルギーの「中性子線」という放射線に晒されると、圧力容器自体がもろくなる。これを「中性子照射脆化(ぜいか)」と呼ぶ。脆化によって劣化した容器が破損すれば、メルトダウンが起き、放射性物質が外部に出る可能性がある。 中性子照射脆化は基本的に防ぐ手立てがない。しかも、圧力容器内には、建設時に脆化を監視する「監視試験片」と呼ぶ圧力容器と同じ金属片を入れ、定期的に取り出し脆化の具合を調べているが、評価の仕方が30年近く前にできたルールで現実に合っていないと語る。 「監視試験片は原発の寿命の40年を前提に入れているため、数も不足しつつあります。原発の運転は、設計目安の40年を守るべきです」(井野さん) 運転開始から40年未満でも事故は起きている。 昨年10月、運転開始から25年の柏崎刈羽原発7号機のタービン関連施設の配管に直径約6センチの穴が見つかり少量の海水が漏れ出ていたことがわかった。海水による腐食などが影響した可能性が高かったという』、「圧力容器は原発の中心部にあり、厚さ10センチ以上の鋼鉄でできている。それが、核分裂の過程で生じる高エネルギーの「中性子線」という放射線に晒されると、圧力容器自体がもろくなる。これを「中性子照射脆化(ぜいか)」と呼ぶ。脆化によって劣化した容器が破損すれば、メルトダウンが起き、放射性物質が外部に出る可能性がある」、「圧力容器内には、建設時に脆化を監視する「監視試験片」と呼ぶ圧力容器と同じ金属片を入れ、定期的に取り出し脆化の具合を調べているが、評価の仕方が30年近く前にできたルールで現実に合っていないと語る。 「監視試験片は原発の寿命の40年を前提に入れているため、数も不足しつつあります。原発の運転は、設計目安の40年を守るべきです」、「監視試験片」が足りなく恐れがあるとは初めて知った。やはり「設計目安の40年を守るべき」だ。
・『100%はない 04年には、美浜原発3号機でタービン建屋の配管が破裂した。高温の蒸気が噴出し、作業員11人が死傷した。配管の厚みが減っていたのが原因だった。井野さんは言う。 「科学や技術に100%はありません。しかも日本は、地震や津波、台風などのリスクがあります。点検のルールや評価式を見直すべきです」 もう一つの方針、「次世代革新炉の開発・建設」についてはどうか。 次世代革新炉は(1)革新軽水炉、(2)小型モジュール炉(SMR)、(3)高速炉、(4)高温ガス炉、(5)核融合炉──の五つが想定されている。このうち経産省が「本命」とするのは革新軽水炉だ。発電に必要な熱を取り出す冷却材に水を使う原発が軽水炉で、日本の商用原発はいずれもこのタイプになる。この軽水炉の安全性を向上させたものを「革新軽水炉」と呼ぶ。事故時に、溶けた核燃料を受け止めて格納容器の損傷を防ぐ「コアキャッチャー」などを備えている。 だが、原子力資料情報室の松久保さんは、革新軽水炉は「脱炭素」の観点から矛盾すると話す。 「革新軽水炉は建設から運転開始まで10年近く要します。その間、火力発電に依存することになり、二酸化炭素(CO2)の排出量が増えて脱炭素は進みません」 一方、太陽光の発電設備の建設は1年もかからず、風力発電は洋上であっても数年でできる。 「電力逼迫に関してまず行うべきは、再エネと省エネの普及です。その上で足りないところはどうするかという議論が必要だと考えます」(松久保さん)』、「「革新軽水炉は建設から運転開始まで10年近く要します。その間、火力発電に依存することになり、二酸化炭素(CO2)の排出量が増えて脱炭素は進みません」、「電力逼迫に関してまず行うべきは、再エネと省エネの普及です。その上で足りないところはどうするかという議論が必要だと考えます」、なるほど。
・『安易な「回帰」は誤り 日本のエネルギーのあり方について、国際大学の橘川さんも、再生可能エネルギーを主力電源に位置づけるべきだと語る。 「日本は、18年に閣議決定した第5次エネルギー基本計画で、再生可能エネルギーを主力電源にすると決めました。だとすれば、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー危機になったのであれば、議論しなければいけないのは原発の話ではなく、再エネをどうするかです」 再エネの主力となるのは太陽光と洋上風力だが、これらは天候による変動が大きいので、バックアップの仕組みが不可欠。そこで、原子力を選択肢の一つとして持つことが現実的だという。 ただし、あくまで「副次的」に使い0~10%程度持つのがいい。そして、より危険性が高い古い原子炉は積極的に廃炉にし、より危険性が低い新しい炉に建て替えるべきだと指摘する。 残りは、火力でカバーする。しかし、従来型の火力発電ではCO2を排出するため、燃料にアンモニアを用いCO2を排出しないカーボンフリー火力の活用がカギになる。 すでに、JERA(東京電力と中部電力が出資する電力会社)などが石炭とアンモニアの混焼に成功していて、アンモニアの安定調達などの問題をクリアすれば、40年代には実用化できると見る。 「カーボンフリー火力ができれば、原発依存度を低下させながら、かつ脱炭素の道が見えてきます」(橘川さん) 今回の方針転換の大義名分にされたロシアのウクライナ侵攻では、原発への武力攻撃の危うさが現実のものとなった。安易な「原発回帰」が誤りなのは明らかだ』、「再エネの主力となるのは太陽光と洋上風力だが、これらは天候による変動が大きいので、バックアップの仕組みが不可欠。そこで、原子力を選択肢の一つとして持つことが現実的だという。 ただし、あくまで「副次的」に使い0~10%程度持つのがいい。そして、より危険性が高い古い原子炉は積極的に廃炉にし、より危険性が低い新しい炉に建て替えるべきだと指摘する。 残りは、火力でカバーする。しかし、従来型の火力発電ではCO2を排出するため、燃料にアンモニアを用いCO2を排出しないカーボンフリー火力の活用がカギになる」、望ましいエネルギーMIXに向け、大々的に議論してゆくべきだ。
次に、3月31日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクションライターの高木 瑞穂氏による「7年6ヶ月の懲役を終えた「原発賠償金詐欺」の“首謀者”が初告白「福島県内の会社が、違法申請に飛びついた本当の理由」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108189?imp=0
・『東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故から、12年が経過した。帰還困難区域では一部の避難指示解除が実現、まだ時間はかかるものの、復興に向けて一歩ずつ進んでいる。 しかしこの12年の間には復興という「光」だけでなく、「闇」もあった。東京電力は総額10兆円を超える賠償金を払ってきたが、その一部、少なくとも数十億円が詐欺師によってかすめ取られていたのである。 僕は原発事故の賠償金をかすめ取る詐欺事件を追いかけ、’19年に『東日本大震災 東京電力「黒い賠償」の真実』(彩図社文庫)を発表した。この本では、「福島原子力補償相談室」で約3年間、賠償係として勤務していた岩崎拓真(仮名、当時42歳)という人物を取材し、賠償金詐欺の裏側に迫った。 だが、この本の執筆時に最後まで接触できなかった人物がいる──』、「東京電力は総額10兆円を超える賠償金を払ってきたが、その一部、少なくとも数十億円が詐欺師によってかすめ取られていた」、「数十億円」がかすめ取られていたとは腹立たしい限りだ。
・『「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」 本のあとがきで「積水ハウス地面師事件の首謀者・内田マイク似」と記したその男は昨年末、7年6ヶ月もの長きにわたる刑期を終えて僕に接触してきた。2014年8月、東京電力福島第一原子力発電所事故で風評被害を受けたと偽り、東電から多額の賠償金をだまし取ったとして逮捕された村田博志(64歳)である。 後の裁判で明らかになったことだが、村田は久間章生元防衛相が理事長(当時)を務めていた東京・中野のNPO法人「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」を舞台に、同じく逮捕された進藤一聡らと協力し、賠償請求の手続きを代行して東電から不正にカネを得ていた。このときに判明したのは、福島県いわき市の建築会社「誠武総業株式会社」及び下請け計8社の水増し請求だった。 さらに2019年2月にも、福島県郡山市にあった健康ランド「東洋健康センター」を舞台にした賠償詐欺に協力した容疑で村田は再逮捕されるなど、村田が関わった事件が次々に明るみに出ている。 ※「東洋健康センター」の事件については『原発賠償金で9億円を騙し取った「わるいやつら」の正体』』、「村田は久間章生元防衛相が理事長(当時)を務めていた東京・中野のNPO法人「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」を舞台に、同じく逮捕された進藤一聡らと協力し、賠償請求の手続きを代行して東電から不正にカネを得ていた。このときに判明したのは、福島県いわき市の建築会社「誠武総業株式会社」及び下請け計8社の水増し請求だった。 さらに2019年2月にも、福島県郡山市にあった健康ランド「東洋健康センター」を舞台にした賠償詐欺に協力した容疑で村田は再逮捕されるなど、村田が関わった事件が次々に明るみに出ている」、「村田」は相当のワルなようだ。
・『不起訴になった「東電賠償係」 東京電力福島第一原発事故の賠償金は、総額約10兆円を超えている。村田達は天文学的な賠償金の一部、少なく見積もっても数十億円を、巧妙な詐欺によってだまし取ったのである。 都内某所のうらぶれた喫茶店で対面した村田は、この一連の“東電賠償詐欺”を考案した首謀者だった。 まずは「原発事故により風評被害を受けた」と偽ることができる福島県内の会社を募る。次に決算書を改竄して、震災前の売り上げを水増しする。こうすることで、原発事故による減少分を増やすことができる。 そのうえで東電に賠償金を請求し、得たカネから約30%を手数料として受け取り仲間と山分けする――。これが村田の手口だった。コロナ禍でも給付金の不正受給が横行しているが、まったく同じカラクリである。 東電で賠償係や賠償詐欺捜査班の実質リーダーをしていた経験から、同書のなかで賠償業務の実態と詐欺の全貌を詳らかにした岩崎は、僕の取材に対し「カネなど1円も受け取っていない」と断言していた。 岩崎と村田は震災の1年ほど前から付き合いがあり、岩崎は村田の紹介で知り合った中国人女性と結婚している。岩崎が村田から受け取ったのは、結婚の祝い品であるウォシュレット等だけだと岩崎は話していた。 僕は岩崎の証言に嘘はないと判断し、彼の発言をそのまま記して単行本にまとめた。事実、岩崎は「詐欺の加担」と「金銭の授受」の疑いで東電の賠償詐欺捜査班に属していた2016年2月27日に逮捕・書類送検されたが、後に不起訴になっている。岩崎が東電に入社して23年目のことだ。 けれど、まさか岩崎が「黒い賠償」の指南役を担っていたばかりか、「カネも受け取っていた」だなんて。村田の証言は衝撃的だった』、「村田は、この一連の“東電賠償詐欺”を考案した首謀者だった。 まずは「原発事故により風評被害を受けた」と偽ることができる福島県内の会社を募る。次に決算書を改竄して、震災前の売り上げを水増しする。こうすることで、原発事故による減少分を増やすことができる。 そのうえで東電に賠償金を請求し、得たカネから約30%を手数料として受け取り仲間と山分けする――。これが村田の手口」、「岩崎が東電に入社して23年目のことだ。 けれど、まさか岩崎が「黒い賠償」の指南役を担っていたばかりか、「カネも受け取っていた」だなんて。村田の証言は衝撃的だった」、しかし、検察は「不起訴」とは節穴か。
・『岩崎の報酬は5%だった 損害賠償不正請求に関して、岩崎自身が村田に『東京電力損害賠償審査部署』に移動したことを伝え、『誠武総業』の請求に関して賠償金が受け取れるよう、請求方法を指南した。『誠武総業の下請け会社の請求』や『東洋健康センター』にしても同様だ。そして村田は計数十社が受け取った賠償金から、報酬として5%のカネを渡した──。 これが、事件の真相だというのだ。岩崎は村田からキャッシュカードを預かっており、賠償金の分け前が村田の銀行口座に振り込まれると、そのつど岩崎自身がATMからカネを引き出していたと話す。さらに村田は賠償業務の詳細は事実としても、「自分のことを棚にあげて、本にしてまで偽善者ぶるのは、どうか」と続けた。 同書を収監先の東京拘置所で目にしたとき、村田のなかにどんな感情がわいたのか。カネを騙し取った贖罪か、それとも自分だけ刑を逃れた岩崎への私怨か。 一方、村田の証言が真実だとするならば、僕からすれば自分が書いた原稿の一部を否定されることになる。村田が僕に語った“東電賠償詐欺”の全貌を詳しくみていこう。 2012年12月初旬、中野区内の中華料理店で開かれたNPO法人「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」の会合で、理事長の久間はこう檄を飛ばした。 「日本にとって、今は大変な時期だ。みんなで力を合わせ、被災地のために頑張っていこう。乾杯!」 他の理事や、福島県から参加した会員ら数十人が一斉に拍手で応えた。拍手の音はしばらく鳴り止まなかったという。久間の鼓舞は、出席者たちを奮い立たせたに違いない』、「NPO法人「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」の会合で、理事長の久間はこう檄を飛ばした」、「檄」自体は一般的なので、「理事長」を罪に問うことは出来なかったようだ。
・『賠償請求の代行業 ちなみに同NPOは震災後の2011年8月、仮設住宅の提供や原発事故の被災地域の復旧支援活動などを目的に設立された。村田は経緯をこう語る。 「中野のNPOが入る事務所の所有者Aが、久間を担ぎ設立されたものです。事務局にはNという人物がいて、そのNと後に職員になる進藤が旧知の仲でした。そして私と進藤とが古い付き合いだったことから、進藤も私も参加するようになりました」 賠償請求の代行業を目論み、村田と進藤がその旨を記したファックスを福島県内の事業者に向けて送ったのは、この会合が開かれた後のこと。果たして賠償金代行の依頼が来るのか、来ないのか。応募の有無すら半信半疑のまま、代行業の準備はすすめられたという。 だが、久間が知ってか知らずか、ファックスによる応募が来る前に同NPOは詐欺の舞台として静かに動き始めた。 村田が考えた詐欺のスキームを進藤が同業の前出『誠武総業』のS社長に口伝えすると、S社長はすぐに飛びついたのである。ちなみに進藤は建設会社の社長でもあり、『誠武総業』のS社長と以前から付き合いがあった』、「久間」も真っ白とは言い難いようだ。
・『NPOが悪事を働くはずがない… 同社が福島県内の娯楽施設『日本芸能文化村』から受注していた仕事は、『日本芸能文化村』側の資金難で震災前に頓挫しており、本来は賠償請求に該当しない。 それでも進藤が賠償金を不正に搾取する話をふると、『日本芸能文化村』から受注した仕事の一部を震災前から開始していていたという経緯を明かしたうえでS社長は、「原発で頓挫したことにできないか」と言い出した。渡りに船とはことのことだ。計画段階ではなく実際に工事を始めていたのなら、震災による原発事故を頓挫した理由にすることなど、わけはない。両者の利害は一致したのだ。 さて、こうして東電で賠償係をしていた岩崎を指南役とした決算書の改ざんによる「不正請求」は始まった。手口は「震災により工事がストップしたため、予定していた売り上げが見込めなかった」とするものだった。 村田は長年、銀行からの融資をメインとした企業コンサルティングを生業としてきた。賠償請求の申請方法を熟知していた東電賠償係の岩崎の協力があれば、決算書の水増しなどお手のものだったわけだ。 賠償請求手続きは、NPOを舞台とする詐欺のスキームが整った2回目の請求からは、「誠武総業」がNPO法人「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」に委任する形を取った。そこには「NPOが悪事を働くわけがなく、ひいては東電が疑うはずがない」という目算もあったという。 後編『10兆円超の原発賠償金から約40億円をかすめ取った「首謀者」が初めて明かす「不正の手口」と「隠された真実」』に続く…』、「賠償請求の申請方法を熟知していた東電賠償係の岩崎の協力があれば、決算書の水増しなどお手のものだったわけだ」、「2回目の請求からは、「誠武総業」がNPO法人「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」に委任する形を取った。そこには「NPOが悪事を働くわけがなく、ひいては東電が疑うはずがない」という目算もあった」、「NPOが悪事を働くわけがなく、ひいては東電が疑うはずがない」とタカを括っていたのであれば、誠に悪質だ。
第三に、3月31日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクションライターの高木 瑞穂氏による「10兆円超の原発賠償金から約40億円をかすめ取った「首謀者」が初めて明かす「不正の手口」と「隠された真実」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108190?imp=0
・『福島第一原子力発電所の事故から12年、東京電力は10兆円を超える賠償金を支払ってきた。しかし、それらがすべて被災者の元に届いたわけではない。賠償金を狙う詐欺師たちが暗躍し、少なく見積もっても数十億円が彼らにかすめ取られている。 ’19年、僕は東電賠償係だった岩崎拓真(仮名、当時42歳)を取材し、『東日本大震災 東京電力「黒い賠償」の真実』(彩図社文庫)を発表した。岩崎は詐欺への加担と金銭授受の疑いをかけられていたが、不起訴となっている。僕の取材に対しても「カネなど1円も受け取っていない」と断言していた。 僕は原発賠償金詐欺の裏側に迫った……はずだった。ところが、’22年の年末に、ある男から連絡が届いた。 村田博志(65歳)、“東電賠償詐欺”を考案した首謀者である。村田は「東電社員だった岩崎が賠償金詐欺の指南役であり、報酬も渡していた」と暴露した。 村田が語る賠償金詐欺の真実とは──。 前編『7年6ヶ月の懲役を終えた「原発賠償金詐欺」の“首謀者”が初告白「福島県内の会社が、違法申請に飛びついた本当の理由」』はこちら』、「東電賠償係だった岩崎拓真(仮名、当時42歳)を取材し、『東日本大震災 東京電力「黒い賠償」の真実』(彩図社文庫)を発表した。岩崎は詐欺への加担と金銭授受の疑いをかけられていたが、不起訴となっている」、しかし、「村田博志(65歳)、“東電賠償詐欺”を考案した首謀者である。村田は「東電社員だった岩崎が賠償金詐欺の指南役であり、報酬も渡していた」と暴露した」、「「東電社員だった岩崎が賠償金詐欺の指南役であり、報酬も渡していた」とは実に悪質だ。
・『東電「素人集団」の緩すぎる審査 売り上げを水増しするために、一部は確定申告書に押される税務署の印鑑を偽造するなどして、書類を揃えた。この工作を担ったのは、東京在住だが福島に事業所を置くコンパニオン派遣業の浅野博由だ。浅野も後に、村田を軸とした詐欺で逮捕されることになる。 こうした申請に対し、当然ながら東京電力は厳正な審査をする、はずだった。 ところが当時の東電の「賠償審査部門」は、電気料金の徴収係から昨日今日に異動になった素人の集まりで、不正を見抜ける状況にまったくない。 会社は「迅速なお支払い」を標榜している。それに請求者たちは、原発事故による「被害者」だ。多少怪しくとも審査を通してしまおう。しかも、賠償金の原資は国民が払ってきた税金だ──こうした心理が働いた結果、賠償金の審査は厳正とはほど遠いものになってしまったのだ』、「「賠償審査部門」は、電気料金の徴収係から昨日今日に異動になった素人の集まりで、不正を見抜ける状況にまったくない。 会社は「迅速なお支払い」を標榜している。それに請求者たちは、原発事故による「被害者」だ。多少怪しくとも審査を通してしまおう。しかも、賠償金の原資は国民が払ってきた税金だ──こうした心理が働いた結果、賠償金の審査は厳正とはほど遠いものになってしまった」、不正請求は起こるべくして起こったようだ。
・『「早く対応します」 杜撰と言わざるをえないが、確かに「誠武総業」は計4回請求し、約5000万円のカネを手にした。さらに賠償金を不正に搾取したという噂を聞きつけた、計7社が加わった。 違法な手段でカネを手にしたのは、むろん8社だけではない。受け取った賠償金から進藤20%、村田5〜15%、岩崎5%と手数料を取っていき、残り60〜65%が誠武総業以下の取り分となった。 誠武総業の不正請求については不明だが、後に不起訴になったT社の不正請求時には中野の事務所の所有者Aも一部を手にしたと村田は言う。こうして詐欺の歯車はうまく転がりはじめた。 その土壌になったのは「よもや元防衛相の久間章生が理事長を務めるNPOが詐欺を働くわけがない」という、信頼だった。村田はこう証言した。 「異例な対応だったと思います。なにせNPO専属の東電の担当者がつき、その担当者が中野の事務所にまで出向いて書類を確認するんですから。その際、『早く対応します』と、審査前から賠償金が支払われるお墨付きのような言葉をかけられたことをよく覚えています」 むろん、応募が来るのをただ待っていただけではない。進藤らの声かけにより、中華料理店で開かれたNPOの会合に「(正規の)代行申請をする」という謳い文句で集まった事業者に下心がなかったと言えば嘘になる。風評被害という曖昧な枠組みのなかで、結果からすれば「震災が原因」とまでは言えないのに、「あわよくば受給をしたい」とたくらむグレーな事業者も少なくなかったのである』、「異例な対応だったと思います。なにせNPO専属の東電の担当者がつき、その担当者が中野の事務所にまで出向いて書類を確認するんですから。その際、『早く対応します』と、審査前から賠償金が支払われるお墨付きのような言葉をかけられたことをよく覚えています」、なんで「東電」が「NPO」にここまで特別なサービスをするのだろう。「元防衛相の久間章生が理事長」への忖度なのだろうか。
・『「東電賠償係」には約2億円が渡った 乾杯の音頭が終わり、グラスに注がれたビールを飲み干したNPO職員の進藤は、福島県内でコンパニオンの派遣業を営んでいた根本重子(当時52歳)にこう耳打ちした。 「風評被害にかこつけて、賠償金を騙し取らないか」 根本は進藤と旧知の仲だったが、詐欺の誘いにはさすがに驚いたに違いない。しかし根本も根っからの悪だったのだろう。同席していた村田が、「原子力災害賠償金支払い推進委員会評議員」という架空の肩書が書かれた真新しい名刺を差し出して、「東電の賠償制度には抜け道があるんですよ」と二の矢三の矢を放つと、迷いはなかったようだ。 進藤と村田にすれば、福島県内でコンパニオンの派遣業を営んでいた根元は格好の的だったのだ。原発事故の影響でキャンセルが相次ぎ、経営が悪化したという筋書きなら、東電から簡単に賠償金をふんだくれる――。 こうして一連の詐欺事件は、村田を軸として連鎖したのである。 進藤は申請書を2012年4月に東電に提出した。すると、約1ヵ月後には約1200万円が振り込まれた。そのうち4割の約500万円が根本に渡り、残りの700万円は先に記した配分にそって進藤らで山分けされた。 前出の「東洋健康センター」を舞台にした詐欺などへと、事件は続いていく。 ※「東洋健康センター」の事件については『原発賠償金で9億円を騙し取った「わるいやつら」の正体』 ちなみに進藤が絡んだのはNPOが代行した分だけで、全ての詐欺に関わったのは村田と岩崎だった。村田と岩崎は「数十社」の申請を行い、東電賠償係だった岩崎には「2億円強」が渡ったと村田は証言する。 これが正しいなら、岩崎の取り分は5%だったので、40億円規模の賠償金を違法に引き出したことになる。ちなみに村田は、自分が首謀者であること、また仲間が有頂天になっていたことからして、「もうやめよう」とは言い出せなかったという。 こんな単純な詐欺をいつまでも続けられるはずがない――。そう危機感を覚えていたのは、おそらく村田だけだったのかもしれない』、「村田と岩崎は「数十社」の申請を行い、東電賠償係だった岩崎には「2億円強」が渡ったと村田は証言する。 これが正しいなら、岩崎の取り分は5%だったので、40億円規模の賠償金を違法に引き出したことになる」、「40億円規模の賠償金を違法に引き出した」とは敵ながらあっぱれだ。
・『村田と岩崎の「話し合い」 2014年8月、村田はついに逮捕される。そして2016年5月、東京地裁において村田と進藤の判決が言い渡された。いずれも懲役9年の実刑判決だった。 裁判官は量刑の理由について、こう述べた。 「書面審査にとどまることに乗じ、会社の代表者らと意を通じたり、その名義を借りたりするなどして、体裁のみを取り繕った内容虚偽の書類多数を提出して架空請求を行うもので、原発事故の被害と無関係な地域にある被告人や共犯者の関係する会社まで被災した工事の下請けの名目で請求名義人に取り込むなどしており、手の込んだ狡知に長けた手口と言える。(一部略)」 犯行全体に関わり、搾取金額も合計8555万円余りと非常に多く、詐欺事犯のなかでも特に重いと裁判官は判断した。村田にとっては、これから長いムショ暮らしが始まる瞬間であった。 出所してから、村田は進藤と連絡を取っていない。だが、僕が場を設ける形で2022年12月末、村田は岩崎は二人だけで、話し合いを持った。村田はその時のやり取りをこう振り返る。 「私は自分の主張を紙にしたため、岩崎にサインするように迫りました。いまさら事件を蒸し返すのではなく、一連の事件に加担していたことを、岩崎だけには認めてほしかったからです。 でも、結果は決裂でした。簡単にいえば保身に走ったんだと思います。運よく不起訴になった岩崎からすれば、“5%の報酬”を受け取っていたことだけはどうしても認めたくないでしょうからね」』、「運よく不起訴になった岩崎からすれば、“5%の報酬”を受け取っていたことだけはどうしても認めたくないでしょうからね」、検察は何をしているのだろう。まるで節穴だ。
・『賠償金=税金と電気料金 「原子力損害賠償支援機構法」が2011年8月に成立したことを受け、東電は同年9月から本格的な賠償を始めた。これまで支払われた賠償金は、総額10兆円を超える。賠償は、この原賠償機構からの支援金をあてている。 その支援金は、もとを辿れば公金や電気料金である。うち大半は電気料金に転換されており、間接的に我々一般国民が負担していることになる。 村田はこう持論を述べた。 「私が搾取したのは公金です。振り込め詐欺のように高齢者をだますものではないから、罪の意識は低かった。でも、多くの方に迷惑をかけたことに対して申し訳ない気持ちはあり、約8000万円の被害者弁済をしました」 詐欺にかかわったことを後悔していますか、と尋ねると……。 「後悔? 自分の性格からして、過ぎてしまったことは、もうしょうがないじゃないか、という心境です」と答えた。 そして──。改めて僕が村田の主張を岩崎に問うと、カネの授受については明言を避け、「間違っている部分があると言われれば、そうかもしれません」とだけ話したことを最後に記しておこう』、「これまで支払われた賠償金は、総額10兆円を超える。賠償は、この原賠償機構からの支援金をあてている。 その支援金は、もとを辿れば公金や電気料金である。うち大半は電気料金に転換されており、間接的に我々一般国民が負担していることになる」、「村田はこう持論を述べた。 「私が搾取したのは公金です。振り込め詐欺のように高齢者をだますものではないから、罪の意識は低かった。でも、多くの方に迷惑をかけたことに対して申し訳ない気持ちはあり、約8000万円の被害者弁済をしました」、それにしても、東京電力の支払い時の審査の甘さは腹立たしい。
先ずは、本年2月6日付けAERAdot「岸田政権「原発回帰」は事故教訓の破棄 専門家は「40年超え」長期間運転リスクを懸念」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/aera/2023020300019.html?page=1
・『福島第一原発の事故から12年。廃炉作業は多くの課題を抱える中、岸田政権は「原発回帰」を打ち出した。長期間運転のリスクは何か。日本のエネルギーはどうあるべきか。AERA 2023年2月6日号の記事を紹介する。 福島の教訓を忘れたのか、岸田文雄政権は原発政策の「大転換」を正式に決めた。 昨年12月、国は脱炭素の方策を議論する「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」を開き、原発を「最大限活用する」として新たな基本方針案を示した。 方針案の大きな柱は(1)次世代革新炉の開発・建設、(2)原発の運転期間の延長──の二つ。福島第一原発事故以降、原発の新増設や建て替えを「想定していない」としてきた政府方針を大きく転換した。特に議論となっているのが、運転期間の延長だ。 原発の運転期間は、福島第一原発事故前は明確な規定はなかった。 しかし、原発事故の翌年に原子炉等規制法が改正され、運転期間は原則40年とし、1回に限り最長20年の延長を認めた。「40年ルール」と呼ばれ、原発事故の教訓をもとに決めた政策的な判断だった。今回示された新方針案は、「40年ルール」の骨格を維持した上で、「一定の停止期間に限り追加の延長を認める」と盛り込んだ。原子力規制委員会による安全審査を前提に、原発事故後の審査で停止していた期間などの分を延長する。例えば、10年間停止した場合、運転開始から最大70年運転できるようになる。 経済産業省の原子力小委員会で委員を務めた、NPO法人「原子力資料情報室」の松久保肇・事務局長は、政府の決定は福島第一原発事故の教訓を放棄するものだと厳しく批判する。 「わずか3カ月で原子力推進に舵を切りましたが、重大な政策転換にもかかわらずその間、国民の意見を聞くことはありませんでした。国が定めるエネルギー基本計画にも、エネルギー政策は『国民の理解を得ながら進めていく』などと書かれていますが、きれいごととしか思えない。進め方が強引です」』、「原子力規制委員会」には金属疲労の専門家はいるのだろうか。
・『決定は「出来レース」 当初、原発の政策転換に慎重だった岸田首相が「原発回帰」にアクセルを踏んだのは、脱炭素社会の実現に加え、昨年2月のロシアのウクライナ侵攻がきっかけだ。 ロシアが天然ガスの供給を絞ったことで、世界はエネルギー争奪戦に突入した。電力が逼迫し、政府は原発の活用が不可欠と判断。昨年8月下旬、岸田首相は原発の運転期間の延長などの検討を指示していた。だが、松久保さんは政策の「時間軸」が間違っていると語る。 「再稼働できる原発はすでに再稼働していて、電力需給の逼迫の解決策ではありません。新設に関しても、建設開始は早くて30年代。運転期間延長もいま決めなければならない話ではないはずです」 エネルギー問題に詳しい国際大学の橘川武郎・副学長は、政府の決定を「官邸と電力業界の出来レース」だと批判する。 「狙いは最初から運転期間の延長にあります。次世代革新炉の建設には5千億円から1兆円規模必要ですが、運転延長にかかるコストは数億円で済みます。また政府方針では、最長で70年の運転が可能になると言われていますが、停止期間は原発事故前も適用可能になると思います。そうすると、80年以上可能になる。古い炉を延長するのは、最悪のシナリオです」 原発の長期間運転には、どんなリスクが潜んでいるのか。 日本で初めて「原子の火」が灯ったのは1957年8月、茨城県東海村の実験用原子炉だった。 原子力開発はここから加速した。現在、国内に原発は、停止中も含め33基ある。そのうち17基は稼働開始から30年を超え、4基は40年を超える。2021年6月には、稼働開始から44年(当時)が経過した美浜原発3号機が再稼働し、40年超原発では初めて運転延長した。さらに今夏以降、7基が再稼働するが、うち高浜原発1、2号機など3基が40年を超えている』、「政府の決定を「官邸と電力業界の出来レース」だと批判する。 「狙いは最初から運転期間の延長にあります。次世代革新炉の建設には5千億円から1兆円規模必要ですが、運転延長にかかるコストは数億円で済みます。また政府方針では、最長で70年の運転が可能になると言われていますが、停止期間は原発事故前も適用可能になると思います。そうすると、80年以上可能になる。古い炉を延長するのは、最悪のシナリオです」、腹立たしい限りだ。
・『「心臓部」劣化の懸念 東京大学の井野博満・名誉教授(金属材料学)はこう話す。 「金属は古くなると腐食や疲労などによって劣化し、その分リスクも高まります」 井野さんによれば、原発の「寿命」は40年を想定して設計されているという。 特に井野さんが懸念を示すのが、原発の「心臓部」に当たる、核燃料が入った圧力容器の劣化だ。) 圧力容器は原発の中心部にあり、厚さ10センチ以上の鋼鉄でできている。それが、核分裂の過程で生じる高エネルギーの「中性子線」という放射線に晒されると、圧力容器自体がもろくなる。これを「中性子照射脆化(ぜいか)」と呼ぶ。脆化によって劣化した容器が破損すれば、メルトダウンが起き、放射性物質が外部に出る可能性がある。 中性子照射脆化は基本的に防ぐ手立てがない。しかも、圧力容器内には、建設時に脆化を監視する「監視試験片」と呼ぶ圧力容器と同じ金属片を入れ、定期的に取り出し脆化の具合を調べているが、評価の仕方が30年近く前にできたルールで現実に合っていないと語る。 「監視試験片は原発の寿命の40年を前提に入れているため、数も不足しつつあります。原発の運転は、設計目安の40年を守るべきです」(井野さん) 運転開始から40年未満でも事故は起きている。 昨年10月、運転開始から25年の柏崎刈羽原発7号機のタービン関連施設の配管に直径約6センチの穴が見つかり少量の海水が漏れ出ていたことがわかった。海水による腐食などが影響した可能性が高かったという』、「圧力容器は原発の中心部にあり、厚さ10センチ以上の鋼鉄でできている。それが、核分裂の過程で生じる高エネルギーの「中性子線」という放射線に晒されると、圧力容器自体がもろくなる。これを「中性子照射脆化(ぜいか)」と呼ぶ。脆化によって劣化した容器が破損すれば、メルトダウンが起き、放射性物質が外部に出る可能性がある」、「圧力容器内には、建設時に脆化を監視する「監視試験片」と呼ぶ圧力容器と同じ金属片を入れ、定期的に取り出し脆化の具合を調べているが、評価の仕方が30年近く前にできたルールで現実に合っていないと語る。 「監視試験片は原発の寿命の40年を前提に入れているため、数も不足しつつあります。原発の運転は、設計目安の40年を守るべきです」、「監視試験片」が足りなく恐れがあるとは初めて知った。やはり「設計目安の40年を守るべき」だ。
・『100%はない 04年には、美浜原発3号機でタービン建屋の配管が破裂した。高温の蒸気が噴出し、作業員11人が死傷した。配管の厚みが減っていたのが原因だった。井野さんは言う。 「科学や技術に100%はありません。しかも日本は、地震や津波、台風などのリスクがあります。点検のルールや評価式を見直すべきです」 もう一つの方針、「次世代革新炉の開発・建設」についてはどうか。 次世代革新炉は(1)革新軽水炉、(2)小型モジュール炉(SMR)、(3)高速炉、(4)高温ガス炉、(5)核融合炉──の五つが想定されている。このうち経産省が「本命」とするのは革新軽水炉だ。発電に必要な熱を取り出す冷却材に水を使う原発が軽水炉で、日本の商用原発はいずれもこのタイプになる。この軽水炉の安全性を向上させたものを「革新軽水炉」と呼ぶ。事故時に、溶けた核燃料を受け止めて格納容器の損傷を防ぐ「コアキャッチャー」などを備えている。 だが、原子力資料情報室の松久保さんは、革新軽水炉は「脱炭素」の観点から矛盾すると話す。 「革新軽水炉は建設から運転開始まで10年近く要します。その間、火力発電に依存することになり、二酸化炭素(CO2)の排出量が増えて脱炭素は進みません」 一方、太陽光の発電設備の建設は1年もかからず、風力発電は洋上であっても数年でできる。 「電力逼迫に関してまず行うべきは、再エネと省エネの普及です。その上で足りないところはどうするかという議論が必要だと考えます」(松久保さん)』、「「革新軽水炉は建設から運転開始まで10年近く要します。その間、火力発電に依存することになり、二酸化炭素(CO2)の排出量が増えて脱炭素は進みません」、「電力逼迫に関してまず行うべきは、再エネと省エネの普及です。その上で足りないところはどうするかという議論が必要だと考えます」、なるほど。
・『安易な「回帰」は誤り 日本のエネルギーのあり方について、国際大学の橘川さんも、再生可能エネルギーを主力電源に位置づけるべきだと語る。 「日本は、18年に閣議決定した第5次エネルギー基本計画で、再生可能エネルギーを主力電源にすると決めました。だとすれば、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー危機になったのであれば、議論しなければいけないのは原発の話ではなく、再エネをどうするかです」 再エネの主力となるのは太陽光と洋上風力だが、これらは天候による変動が大きいので、バックアップの仕組みが不可欠。そこで、原子力を選択肢の一つとして持つことが現実的だという。 ただし、あくまで「副次的」に使い0~10%程度持つのがいい。そして、より危険性が高い古い原子炉は積極的に廃炉にし、より危険性が低い新しい炉に建て替えるべきだと指摘する。 残りは、火力でカバーする。しかし、従来型の火力発電ではCO2を排出するため、燃料にアンモニアを用いCO2を排出しないカーボンフリー火力の活用がカギになる。 すでに、JERA(東京電力と中部電力が出資する電力会社)などが石炭とアンモニアの混焼に成功していて、アンモニアの安定調達などの問題をクリアすれば、40年代には実用化できると見る。 「カーボンフリー火力ができれば、原発依存度を低下させながら、かつ脱炭素の道が見えてきます」(橘川さん) 今回の方針転換の大義名分にされたロシアのウクライナ侵攻では、原発への武力攻撃の危うさが現実のものとなった。安易な「原発回帰」が誤りなのは明らかだ』、「再エネの主力となるのは太陽光と洋上風力だが、これらは天候による変動が大きいので、バックアップの仕組みが不可欠。そこで、原子力を選択肢の一つとして持つことが現実的だという。 ただし、あくまで「副次的」に使い0~10%程度持つのがいい。そして、より危険性が高い古い原子炉は積極的に廃炉にし、より危険性が低い新しい炉に建て替えるべきだと指摘する。 残りは、火力でカバーする。しかし、従来型の火力発電ではCO2を排出するため、燃料にアンモニアを用いCO2を排出しないカーボンフリー火力の活用がカギになる」、望ましいエネルギーMIXに向け、大々的に議論してゆくべきだ。
次に、3月31日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクションライターの高木 瑞穂氏による「7年6ヶ月の懲役を終えた「原発賠償金詐欺」の“首謀者”が初告白「福島県内の会社が、違法申請に飛びついた本当の理由」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108189?imp=0
・『東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故から、12年が経過した。帰還困難区域では一部の避難指示解除が実現、まだ時間はかかるものの、復興に向けて一歩ずつ進んでいる。 しかしこの12年の間には復興という「光」だけでなく、「闇」もあった。東京電力は総額10兆円を超える賠償金を払ってきたが、その一部、少なくとも数十億円が詐欺師によってかすめ取られていたのである。 僕は原発事故の賠償金をかすめ取る詐欺事件を追いかけ、’19年に『東日本大震災 東京電力「黒い賠償」の真実』(彩図社文庫)を発表した。この本では、「福島原子力補償相談室」で約3年間、賠償係として勤務していた岩崎拓真(仮名、当時42歳)という人物を取材し、賠償金詐欺の裏側に迫った。 だが、この本の執筆時に最後まで接触できなかった人物がいる──』、「東京電力は総額10兆円を超える賠償金を払ってきたが、その一部、少なくとも数十億円が詐欺師によってかすめ取られていた」、「数十億円」がかすめ取られていたとは腹立たしい限りだ。
・『「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」 本のあとがきで「積水ハウス地面師事件の首謀者・内田マイク似」と記したその男は昨年末、7年6ヶ月もの長きにわたる刑期を終えて僕に接触してきた。2014年8月、東京電力福島第一原子力発電所事故で風評被害を受けたと偽り、東電から多額の賠償金をだまし取ったとして逮捕された村田博志(64歳)である。 後の裁判で明らかになったことだが、村田は久間章生元防衛相が理事長(当時)を務めていた東京・中野のNPO法人「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」を舞台に、同じく逮捕された進藤一聡らと協力し、賠償請求の手続きを代行して東電から不正にカネを得ていた。このときに判明したのは、福島県いわき市の建築会社「誠武総業株式会社」及び下請け計8社の水増し請求だった。 さらに2019年2月にも、福島県郡山市にあった健康ランド「東洋健康センター」を舞台にした賠償詐欺に協力した容疑で村田は再逮捕されるなど、村田が関わった事件が次々に明るみに出ている。 ※「東洋健康センター」の事件については『原発賠償金で9億円を騙し取った「わるいやつら」の正体』』、「村田は久間章生元防衛相が理事長(当時)を務めていた東京・中野のNPO法人「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」を舞台に、同じく逮捕された進藤一聡らと協力し、賠償請求の手続きを代行して東電から不正にカネを得ていた。このときに判明したのは、福島県いわき市の建築会社「誠武総業株式会社」及び下請け計8社の水増し請求だった。 さらに2019年2月にも、福島県郡山市にあった健康ランド「東洋健康センター」を舞台にした賠償詐欺に協力した容疑で村田は再逮捕されるなど、村田が関わった事件が次々に明るみに出ている」、「村田」は相当のワルなようだ。
・『不起訴になった「東電賠償係」 東京電力福島第一原発事故の賠償金は、総額約10兆円を超えている。村田達は天文学的な賠償金の一部、少なく見積もっても数十億円を、巧妙な詐欺によってだまし取ったのである。 都内某所のうらぶれた喫茶店で対面した村田は、この一連の“東電賠償詐欺”を考案した首謀者だった。 まずは「原発事故により風評被害を受けた」と偽ることができる福島県内の会社を募る。次に決算書を改竄して、震災前の売り上げを水増しする。こうすることで、原発事故による減少分を増やすことができる。 そのうえで東電に賠償金を請求し、得たカネから約30%を手数料として受け取り仲間と山分けする――。これが村田の手口だった。コロナ禍でも給付金の不正受給が横行しているが、まったく同じカラクリである。 東電で賠償係や賠償詐欺捜査班の実質リーダーをしていた経験から、同書のなかで賠償業務の実態と詐欺の全貌を詳らかにした岩崎は、僕の取材に対し「カネなど1円も受け取っていない」と断言していた。 岩崎と村田は震災の1年ほど前から付き合いがあり、岩崎は村田の紹介で知り合った中国人女性と結婚している。岩崎が村田から受け取ったのは、結婚の祝い品であるウォシュレット等だけだと岩崎は話していた。 僕は岩崎の証言に嘘はないと判断し、彼の発言をそのまま記して単行本にまとめた。事実、岩崎は「詐欺の加担」と「金銭の授受」の疑いで東電の賠償詐欺捜査班に属していた2016年2月27日に逮捕・書類送検されたが、後に不起訴になっている。岩崎が東電に入社して23年目のことだ。 けれど、まさか岩崎が「黒い賠償」の指南役を担っていたばかりか、「カネも受け取っていた」だなんて。村田の証言は衝撃的だった』、「村田は、この一連の“東電賠償詐欺”を考案した首謀者だった。 まずは「原発事故により風評被害を受けた」と偽ることができる福島県内の会社を募る。次に決算書を改竄して、震災前の売り上げを水増しする。こうすることで、原発事故による減少分を増やすことができる。 そのうえで東電に賠償金を請求し、得たカネから約30%を手数料として受け取り仲間と山分けする――。これが村田の手口」、「岩崎が東電に入社して23年目のことだ。 けれど、まさか岩崎が「黒い賠償」の指南役を担っていたばかりか、「カネも受け取っていた」だなんて。村田の証言は衝撃的だった」、しかし、検察は「不起訴」とは節穴か。
・『岩崎の報酬は5%だった 損害賠償不正請求に関して、岩崎自身が村田に『東京電力損害賠償審査部署』に移動したことを伝え、『誠武総業』の請求に関して賠償金が受け取れるよう、請求方法を指南した。『誠武総業の下請け会社の請求』や『東洋健康センター』にしても同様だ。そして村田は計数十社が受け取った賠償金から、報酬として5%のカネを渡した──。 これが、事件の真相だというのだ。岩崎は村田からキャッシュカードを預かっており、賠償金の分け前が村田の銀行口座に振り込まれると、そのつど岩崎自身がATMからカネを引き出していたと話す。さらに村田は賠償業務の詳細は事実としても、「自分のことを棚にあげて、本にしてまで偽善者ぶるのは、どうか」と続けた。 同書を収監先の東京拘置所で目にしたとき、村田のなかにどんな感情がわいたのか。カネを騙し取った贖罪か、それとも自分だけ刑を逃れた岩崎への私怨か。 一方、村田の証言が真実だとするならば、僕からすれば自分が書いた原稿の一部を否定されることになる。村田が僕に語った“東電賠償詐欺”の全貌を詳しくみていこう。 2012年12月初旬、中野区内の中華料理店で開かれたNPO法人「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」の会合で、理事長の久間はこう檄を飛ばした。 「日本にとって、今は大変な時期だ。みんなで力を合わせ、被災地のために頑張っていこう。乾杯!」 他の理事や、福島県から参加した会員ら数十人が一斉に拍手で応えた。拍手の音はしばらく鳴り止まなかったという。久間の鼓舞は、出席者たちを奮い立たせたに違いない』、「NPO法人「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」の会合で、理事長の久間はこう檄を飛ばした」、「檄」自体は一般的なので、「理事長」を罪に問うことは出来なかったようだ。
・『賠償請求の代行業 ちなみに同NPOは震災後の2011年8月、仮設住宅の提供や原発事故の被災地域の復旧支援活動などを目的に設立された。村田は経緯をこう語る。 「中野のNPOが入る事務所の所有者Aが、久間を担ぎ設立されたものです。事務局にはNという人物がいて、そのNと後に職員になる進藤が旧知の仲でした。そして私と進藤とが古い付き合いだったことから、進藤も私も参加するようになりました」 賠償請求の代行業を目論み、村田と進藤がその旨を記したファックスを福島県内の事業者に向けて送ったのは、この会合が開かれた後のこと。果たして賠償金代行の依頼が来るのか、来ないのか。応募の有無すら半信半疑のまま、代行業の準備はすすめられたという。 だが、久間が知ってか知らずか、ファックスによる応募が来る前に同NPOは詐欺の舞台として静かに動き始めた。 村田が考えた詐欺のスキームを進藤が同業の前出『誠武総業』のS社長に口伝えすると、S社長はすぐに飛びついたのである。ちなみに進藤は建設会社の社長でもあり、『誠武総業』のS社長と以前から付き合いがあった』、「久間」も真っ白とは言い難いようだ。
・『NPOが悪事を働くはずがない… 同社が福島県内の娯楽施設『日本芸能文化村』から受注していた仕事は、『日本芸能文化村』側の資金難で震災前に頓挫しており、本来は賠償請求に該当しない。 それでも進藤が賠償金を不正に搾取する話をふると、『日本芸能文化村』から受注した仕事の一部を震災前から開始していていたという経緯を明かしたうえでS社長は、「原発で頓挫したことにできないか」と言い出した。渡りに船とはことのことだ。計画段階ではなく実際に工事を始めていたのなら、震災による原発事故を頓挫した理由にすることなど、わけはない。両者の利害は一致したのだ。 さて、こうして東電で賠償係をしていた岩崎を指南役とした決算書の改ざんによる「不正請求」は始まった。手口は「震災により工事がストップしたため、予定していた売り上げが見込めなかった」とするものだった。 村田は長年、銀行からの融資をメインとした企業コンサルティングを生業としてきた。賠償請求の申請方法を熟知していた東電賠償係の岩崎の協力があれば、決算書の水増しなどお手のものだったわけだ。 賠償請求手続きは、NPOを舞台とする詐欺のスキームが整った2回目の請求からは、「誠武総業」がNPO法人「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」に委任する形を取った。そこには「NPOが悪事を働くわけがなく、ひいては東電が疑うはずがない」という目算もあったという。 後編『10兆円超の原発賠償金から約40億円をかすめ取った「首謀者」が初めて明かす「不正の手口」と「隠された真実」』に続く…』、「賠償請求の申請方法を熟知していた東電賠償係の岩崎の協力があれば、決算書の水増しなどお手のものだったわけだ」、「2回目の請求からは、「誠武総業」がNPO法人「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」に委任する形を取った。そこには「NPOが悪事を働くわけがなく、ひいては東電が疑うはずがない」という目算もあった」、「NPOが悪事を働くわけがなく、ひいては東電が疑うはずがない」とタカを括っていたのであれば、誠に悪質だ。
第三に、3月31日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクションライターの高木 瑞穂氏による「10兆円超の原発賠償金から約40億円をかすめ取った「首謀者」が初めて明かす「不正の手口」と「隠された真実」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108190?imp=0
・『福島第一原子力発電所の事故から12年、東京電力は10兆円を超える賠償金を支払ってきた。しかし、それらがすべて被災者の元に届いたわけではない。賠償金を狙う詐欺師たちが暗躍し、少なく見積もっても数十億円が彼らにかすめ取られている。 ’19年、僕は東電賠償係だった岩崎拓真(仮名、当時42歳)を取材し、『東日本大震災 東京電力「黒い賠償」の真実』(彩図社文庫)を発表した。岩崎は詐欺への加担と金銭授受の疑いをかけられていたが、不起訴となっている。僕の取材に対しても「カネなど1円も受け取っていない」と断言していた。 僕は原発賠償金詐欺の裏側に迫った……はずだった。ところが、’22年の年末に、ある男から連絡が届いた。 村田博志(65歳)、“東電賠償詐欺”を考案した首謀者である。村田は「東電社員だった岩崎が賠償金詐欺の指南役であり、報酬も渡していた」と暴露した。 村田が語る賠償金詐欺の真実とは──。 前編『7年6ヶ月の懲役を終えた「原発賠償金詐欺」の“首謀者”が初告白「福島県内の会社が、違法申請に飛びついた本当の理由」』はこちら』、「東電賠償係だった岩崎拓真(仮名、当時42歳)を取材し、『東日本大震災 東京電力「黒い賠償」の真実』(彩図社文庫)を発表した。岩崎は詐欺への加担と金銭授受の疑いをかけられていたが、不起訴となっている」、しかし、「村田博志(65歳)、“東電賠償詐欺”を考案した首謀者である。村田は「東電社員だった岩崎が賠償金詐欺の指南役であり、報酬も渡していた」と暴露した」、「「東電社員だった岩崎が賠償金詐欺の指南役であり、報酬も渡していた」とは実に悪質だ。
・『東電「素人集団」の緩すぎる審査 売り上げを水増しするために、一部は確定申告書に押される税務署の印鑑を偽造するなどして、書類を揃えた。この工作を担ったのは、東京在住だが福島に事業所を置くコンパニオン派遣業の浅野博由だ。浅野も後に、村田を軸とした詐欺で逮捕されることになる。 こうした申請に対し、当然ながら東京電力は厳正な審査をする、はずだった。 ところが当時の東電の「賠償審査部門」は、電気料金の徴収係から昨日今日に異動になった素人の集まりで、不正を見抜ける状況にまったくない。 会社は「迅速なお支払い」を標榜している。それに請求者たちは、原発事故による「被害者」だ。多少怪しくとも審査を通してしまおう。しかも、賠償金の原資は国民が払ってきた税金だ──こうした心理が働いた結果、賠償金の審査は厳正とはほど遠いものになってしまったのだ』、「「賠償審査部門」は、電気料金の徴収係から昨日今日に異動になった素人の集まりで、不正を見抜ける状況にまったくない。 会社は「迅速なお支払い」を標榜している。それに請求者たちは、原発事故による「被害者」だ。多少怪しくとも審査を通してしまおう。しかも、賠償金の原資は国民が払ってきた税金だ──こうした心理が働いた結果、賠償金の審査は厳正とはほど遠いものになってしまった」、不正請求は起こるべくして起こったようだ。
・『「早く対応します」 杜撰と言わざるをえないが、確かに「誠武総業」は計4回請求し、約5000万円のカネを手にした。さらに賠償金を不正に搾取したという噂を聞きつけた、計7社が加わった。 違法な手段でカネを手にしたのは、むろん8社だけではない。受け取った賠償金から進藤20%、村田5〜15%、岩崎5%と手数料を取っていき、残り60〜65%が誠武総業以下の取り分となった。 誠武総業の不正請求については不明だが、後に不起訴になったT社の不正請求時には中野の事務所の所有者Aも一部を手にしたと村田は言う。こうして詐欺の歯車はうまく転がりはじめた。 その土壌になったのは「よもや元防衛相の久間章生が理事長を務めるNPOが詐欺を働くわけがない」という、信頼だった。村田はこう証言した。 「異例な対応だったと思います。なにせNPO専属の東電の担当者がつき、その担当者が中野の事務所にまで出向いて書類を確認するんですから。その際、『早く対応します』と、審査前から賠償金が支払われるお墨付きのような言葉をかけられたことをよく覚えています」 むろん、応募が来るのをただ待っていただけではない。進藤らの声かけにより、中華料理店で開かれたNPOの会合に「(正規の)代行申請をする」という謳い文句で集まった事業者に下心がなかったと言えば嘘になる。風評被害という曖昧な枠組みのなかで、結果からすれば「震災が原因」とまでは言えないのに、「あわよくば受給をしたい」とたくらむグレーな事業者も少なくなかったのである』、「異例な対応だったと思います。なにせNPO専属の東電の担当者がつき、その担当者が中野の事務所にまで出向いて書類を確認するんですから。その際、『早く対応します』と、審査前から賠償金が支払われるお墨付きのような言葉をかけられたことをよく覚えています」、なんで「東電」が「NPO」にここまで特別なサービスをするのだろう。「元防衛相の久間章生が理事長」への忖度なのだろうか。
・『「東電賠償係」には約2億円が渡った 乾杯の音頭が終わり、グラスに注がれたビールを飲み干したNPO職員の進藤は、福島県内でコンパニオンの派遣業を営んでいた根本重子(当時52歳)にこう耳打ちした。 「風評被害にかこつけて、賠償金を騙し取らないか」 根本は進藤と旧知の仲だったが、詐欺の誘いにはさすがに驚いたに違いない。しかし根本も根っからの悪だったのだろう。同席していた村田が、「原子力災害賠償金支払い推進委員会評議員」という架空の肩書が書かれた真新しい名刺を差し出して、「東電の賠償制度には抜け道があるんですよ」と二の矢三の矢を放つと、迷いはなかったようだ。 進藤と村田にすれば、福島県内でコンパニオンの派遣業を営んでいた根元は格好の的だったのだ。原発事故の影響でキャンセルが相次ぎ、経営が悪化したという筋書きなら、東電から簡単に賠償金をふんだくれる――。 こうして一連の詐欺事件は、村田を軸として連鎖したのである。 進藤は申請書を2012年4月に東電に提出した。すると、約1ヵ月後には約1200万円が振り込まれた。そのうち4割の約500万円が根本に渡り、残りの700万円は先に記した配分にそって進藤らで山分けされた。 前出の「東洋健康センター」を舞台にした詐欺などへと、事件は続いていく。 ※「東洋健康センター」の事件については『原発賠償金で9億円を騙し取った「わるいやつら」の正体』 ちなみに進藤が絡んだのはNPOが代行した分だけで、全ての詐欺に関わったのは村田と岩崎だった。村田と岩崎は「数十社」の申請を行い、東電賠償係だった岩崎には「2億円強」が渡ったと村田は証言する。 これが正しいなら、岩崎の取り分は5%だったので、40億円規模の賠償金を違法に引き出したことになる。ちなみに村田は、自分が首謀者であること、また仲間が有頂天になっていたことからして、「もうやめよう」とは言い出せなかったという。 こんな単純な詐欺をいつまでも続けられるはずがない――。そう危機感を覚えていたのは、おそらく村田だけだったのかもしれない』、「村田と岩崎は「数十社」の申請を行い、東電賠償係だった岩崎には「2億円強」が渡ったと村田は証言する。 これが正しいなら、岩崎の取り分は5%だったので、40億円規模の賠償金を違法に引き出したことになる」、「40億円規模の賠償金を違法に引き出した」とは敵ながらあっぱれだ。
・『村田と岩崎の「話し合い」 2014年8月、村田はついに逮捕される。そして2016年5月、東京地裁において村田と進藤の判決が言い渡された。いずれも懲役9年の実刑判決だった。 裁判官は量刑の理由について、こう述べた。 「書面審査にとどまることに乗じ、会社の代表者らと意を通じたり、その名義を借りたりするなどして、体裁のみを取り繕った内容虚偽の書類多数を提出して架空請求を行うもので、原発事故の被害と無関係な地域にある被告人や共犯者の関係する会社まで被災した工事の下請けの名目で請求名義人に取り込むなどしており、手の込んだ狡知に長けた手口と言える。(一部略)」 犯行全体に関わり、搾取金額も合計8555万円余りと非常に多く、詐欺事犯のなかでも特に重いと裁判官は判断した。村田にとっては、これから長いムショ暮らしが始まる瞬間であった。 出所してから、村田は進藤と連絡を取っていない。だが、僕が場を設ける形で2022年12月末、村田は岩崎は二人だけで、話し合いを持った。村田はその時のやり取りをこう振り返る。 「私は自分の主張を紙にしたため、岩崎にサインするように迫りました。いまさら事件を蒸し返すのではなく、一連の事件に加担していたことを、岩崎だけには認めてほしかったからです。 でも、結果は決裂でした。簡単にいえば保身に走ったんだと思います。運よく不起訴になった岩崎からすれば、“5%の報酬”を受け取っていたことだけはどうしても認めたくないでしょうからね」』、「運よく不起訴になった岩崎からすれば、“5%の報酬”を受け取っていたことだけはどうしても認めたくないでしょうからね」、検察は何をしているのだろう。まるで節穴だ。
・『賠償金=税金と電気料金 「原子力損害賠償支援機構法」が2011年8月に成立したことを受け、東電は同年9月から本格的な賠償を始めた。これまで支払われた賠償金は、総額10兆円を超える。賠償は、この原賠償機構からの支援金をあてている。 その支援金は、もとを辿れば公金や電気料金である。うち大半は電気料金に転換されており、間接的に我々一般国民が負担していることになる。 村田はこう持論を述べた。 「私が搾取したのは公金です。振り込め詐欺のように高齢者をだますものではないから、罪の意識は低かった。でも、多くの方に迷惑をかけたことに対して申し訳ない気持ちはあり、約8000万円の被害者弁済をしました」 詐欺にかかわったことを後悔していますか、と尋ねると……。 「後悔? 自分の性格からして、過ぎてしまったことは、もうしょうがないじゃないか、という心境です」と答えた。 そして──。改めて僕が村田の主張を岩崎に問うと、カネの授受については明言を避け、「間違っている部分があると言われれば、そうかもしれません」とだけ話したことを最後に記しておこう』、「これまで支払われた賠償金は、総額10兆円を超える。賠償は、この原賠償機構からの支援金をあてている。 その支援金は、もとを辿れば公金や電気料金である。うち大半は電気料金に転換されており、間接的に我々一般国民が負担していることになる」、「村田はこう持論を述べた。 「私が搾取したのは公金です。振り込め詐欺のように高齢者をだますものではないから、罪の意識は低かった。でも、多くの方に迷惑をかけたことに対して申し訳ない気持ちはあり、約8000万円の被害者弁済をしました」、それにしても、東京電力の支払い時の審査の甘さは腹立たしい。
タグ:原発問題 (その20)(岸田政権「原発回帰」は事故教訓の破棄 専門家は「40年超え」長期間運転リスクを懸念、7年6ヶ月の懲役を終えた「原発賠償金詐欺」の“首謀者”が初告白「福島県内の会社が、違法申請に飛びついた本当の理由」、10兆円超の原発賠償金から約40億円をかすめ取った「首謀者」が初めて明かす「不正の手口」と「隠された真実」) AERAdot「岸田政権「原発回帰」は事故教訓の破棄 専門家は「40年超え」長期間運転リスクを懸念」 「原子力規制委員会」には金属疲労の専門家はいるのだろうか。 「政府の決定を「官邸と電力業界の出来レース」だと批判する。 「狙いは最初から運転期間の延長にあります。次世代革新炉の建設には5千億円から1兆円規模必要ですが、運転延長にかかるコストは数億円で済みます。また政府方針では、最長で70年の運転が可能になると言われていますが、停止期間は原発事故前も適用可能になると思います。そうすると、80年以上可能になる。古い炉を延長するのは、最悪のシナリオです」、腹立たしい限りだ。 「圧力容器は原発の中心部にあり、厚さ10センチ以上の鋼鉄でできている。それが、核分裂の過程で生じる高エネルギーの「中性子線」という放射線に晒されると、圧力容器自体がもろくなる。これを「中性子照射脆化(ぜいか)」と呼ぶ。脆化によって劣化した容器が破損すれば、メルトダウンが起き、放射性物質が外部に出る可能性がある」、 「圧力容器内には、建設時に脆化を監視する「監視試験片」と呼ぶ圧力容器と同じ金属片を入れ、定期的に取り出し脆化の具合を調べているが、評価の仕方が30年近く前にできたルールで現実に合っていないと語る。 「監視試験片は原発の寿命の40年を前提に入れているため、数も不足しつつあります。原発の運転は、設計目安の40年を守るべきです」、「監視試験片」が足りなく恐れがあるとは初めて知った。やはり「設計目安の40年を守るべき」だ。 「「革新軽水炉は建設から運転開始まで10年近く要します。その間、火力発電に依存することになり、二酸化炭素(CO2)の排出量が増えて脱炭素は進みません」、「電力逼迫に関してまず行うべきは、再エネと省エネの普及です。その上で足りないところはどうするかという議論が必要だと考えます」、なるほど。 「再エネの主力となるのは太陽光と洋上風力だが、これらは天候による変動が大きいので、バックアップの仕組みが不可欠。そこで、原子力を選択肢の一つとして持つことが現実的だという。 ただし、あくまで「副次的」に使い0~10%程度持つのがいい。そして、より危険性が高い古い原子炉は積極的に廃炉にし、より危険性が低い新しい炉に建て替えるべきだと指摘する。 残りは、火力でカバーする。しかし、従来型の火力発電ではCO2を排出するため、燃料にアンモニアを用いCO2を排出しないカーボンフリー火力の活用がカギになる」、望ましいエネルギーMIXに向け、大々的に議論してゆくべきだ。 現代ビジネス 高木 瑞穂氏による「7年6ヶ月の懲役を終えた「原発賠償金詐欺」の“首謀者”が初告白「福島県内の会社が、違法申請に飛びついた本当の理由」」 「東京電力は総額10兆円を超える賠償金を払ってきたが、その一部、少なくとも数十億円が詐欺師によってかすめ取られていた」、「数十億円」がかすめ取られていたとは腹立たしい限りだ。 「村田は久間章生元防衛相が理事長(当時)を務めていた東京・中野のNPO法人「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」を舞台に、同じく逮捕された進藤一聡らと協力し、賠償請求の手続きを代行して東電から不正にカネを得ていた。このときに判明したのは、福島県いわき市の建築会社「誠武総業株式会社」及び下請け計8社の水増し請求だった。 さらに2019年2月にも、福島県郡山市にあった健康ランド「東洋健康センター」を舞台にした賠償詐欺に協力した容疑で村田は再逮捕されるなど、村田が関わった事件が次々に明るみに出ている」、「村 「村田は、この一連の“東電賠償詐欺”を考案した首謀者だった。 まずは「原発事故により風評被害を受けた」と偽ることができる福島県内の会社を募る。次に決算書を改竄して、震災前の売り上げを水増しする。こうすることで、原発事故による減少分を増やすことができる。 そのうえで東電に賠償金を請求し、得たカネから約30%を手数料として受け取り仲間と山分けする――。これが村田の手口」、 「岩崎が東電に入社して23年目のことだ。 けれど、まさか岩崎が「黒い賠償」の指南役を担っていたばかりか、「カネも受け取っていた」だなんて。村田の証言は衝撃的だった」、しかし、検察は「不起訴」とは節穴か。 「NPO法人「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」の会合で、理事長の久間はこう檄を飛ばした」、「檄」自体は一般的なので、「理事長」を罪に問うことは出来なかったようだ。 「久間」も真っ白とは言い難いようだ。 「賠償請求の申請方法を熟知していた東電賠償係の岩崎の協力があれば、決算書の水増しなどお手のものだったわけだ」、「2回目の請求からは、「誠武総業」がNPO法人「東日本大震災原子力災害等被災者支援協会」に委任する形を取った。そこには「NPOが悪事を働くわけがなく、ひいては東電が疑うはずがない」という目算もあった」、「NPOが悪事を働くわけがなく、ひいては東電が疑うはずがない」とタカを括っていたのであれば、誠に悪質だ。 高木 瑞穂氏による「10兆円超の原発賠償金から約40億円をかすめ取った「首謀者」が初めて明かす「不正の手口」と「隠された真実」」 「東電賠償係だった岩崎拓真(仮名、当時42歳)を取材し、『東日本大震災 東京電力「黒い賠償」の真実』(彩図社文庫)を発表した。岩崎は詐欺への加担と金銭授受の疑いをかけられていたが、不起訴となっている」、しかし、「村田博志(65歳)、“東電賠償詐欺”を考案した首謀者である。 村田は「東電社員だった岩崎が賠償金詐欺の指南役であり、報酬も渡していた」と暴露した」、「「東電社員だった岩崎が賠償金詐欺の指南役であり、報酬も渡していた」とは実に悪質だ。 「「賠償審査部門」は、電気料金の徴収係から昨日今日に異動になった素人の集まりで、不正を見抜ける状況にまったくない。 会社は「迅速なお支払い」を標榜している。それに請求者たちは、原発事故による「被害者」だ。多少怪しくとも審査を通してしまおう。しかも、賠償金の原資は国民が払ってきた税金だ──こうした心理が働いた結果、賠償金の審査は厳正とはほど遠いものになってしまった」、不正請求は起こるべくして起こったようだ。 「異例な対応だったと思います。なにせNPO専属の東電の担当者がつき、その担当者が中野の事務所にまで出向いて書類を確認するんですから。その際、『早く対応します』と、審査前から賠償金が支払われるお墨付きのような言葉をかけられたことをよく覚えています」、なんで「東電」が「NPO」にここまで特別なサービスをするのだろう。「元防衛相の久間章生が理事長」への忖度なのだろうか。 「村田と岩崎は「数十社」の申請を行い、東電賠償係だった岩崎には「2億円強」が渡ったと村田は証言する。 これが正しいなら、岩崎の取り分は5%だったので、40億円規模の賠償金を違法に引き出したことになる」、「40億円規模の賠償金を違法に引き出した」とは敵ながらあっぱれだ。 「運よく不起訴になった岩崎からすれば、“5%の報酬”を受け取っていたことだけはどうしても認めたくないでしょうからね」、検察は何をしているのだろう。まるで節穴だ。 「これまで支払われた賠償金は、総額10兆円を超える。賠償は、この原賠償機構からの支援金をあてている。 その支援金は、もとを辿れば公金や電気料金である。うち大半は電気料金に転換されており、間接的に我々一般国民が負担していることになる」、「村田はこう持論を述べた。 「私が搾取したのは公金です。振り込め詐欺のように高齢者をだますものではないから、罪の意識は低かった。 でも、多くの方に迷惑をかけたことに対して申し訳ない気持ちはあり、約8000万円の被害者弁済をしました」、それにしても、東京電力の支払い時の審査の甘さは腹立たしい。
携帯・スマホ(その9)(楽天問題5話(巨額赤字の楽天、これから迫る「借金返済」の大波 社債償還が「3年で計9000億円」という難路、楽天モバイル元部長ら 水増し請求による詐欺の疑いで逮捕、《楽天の赤字幅は過去最大に》「タケノコ生活」のカギを握る携帯電話事業のゆくえ、楽天銀行「安値上場」で売却額が3割減に 運にも見放された三木谷氏の受難、楽天銀行 親会社に翻弄され続けた上場の顛末 巨大な楽天経済圏を誇るも 市場の逆風に屈す)) [産業動向]
携帯・スマホについては、昨年6月8日に取上げた。今日は、(その9)(楽天問題5話(巨額赤字の楽天、これから迫る「借金返済」の大波 社債償還が「3年で計9000億円」という難路、楽天モバイル元部長ら 水増し請求による詐欺の疑いで逮捕、《楽天の赤字幅は過去最大に》「タケノコ生活」のカギを握る携帯電話事業のゆくえ、楽天銀行「安値上場」で売却額が3割減に 運にも見放された三木谷氏の受難、楽天銀行 親会社に翻弄され続けた上場の顛末 巨大な楽天経済圏を誇るも 市場の逆風に屈す))である。
先ずは、本年2月20日付け東洋経済オンライン「巨額赤字の楽天、これから迫る「借金返済」の大波 社債償還が「3年で計9000億円」という難路」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/653347
・『モバイルへの巨額投資で財務状況が大きく悪化する楽天グループ。資金調達の選択肢が狭まる中、押し寄せる社債償還の波をどう乗り越えるのか。 「健全なバランスシートを保ちながら成長していきたい」。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は記者会見の席上、そう言い切ってみせた。 2月14日に発表した2022年12月期決算は、最終赤字が3728億円と過去最大となった。携帯基地局などの設備投資がかさんだモバイル事業で、4928億円もの営業赤字を計上したことが最大の要因だ。銀行や証券などを除く非金融事業の社債や借入金も、1.7兆円を超えた。 悪化の一途をたどる財務状況に対して、楽天が持ち出したのは、社債をはじめとした有利子負債残高の削減だ。負債膨張の原因だったモバイル事業の設備投資が「一巡した」(三木谷氏)ことを理由に、有利子負債を圧縮すると宣言した。 さらに三木谷氏は、投資家の懸念を払拭するためか、楽天銀行や楽天証券ホールディングス(HD)の上場、外部との資本提携も通じた資金調達まで匂わせる発言もしている。だが、モバイル事業の設備投資にカネをつぎ込んできた「ツケ」は、想像以上に重い』、「銀行や証券などを除く非金融事業の社債や借入金も、1.7兆円を超えた。 悪化の一途をたどる財務状況に対して、楽天が持ち出したのは、社債をはじめとした有利子負債残高の削減だ」、「楽天銀行や楽天証券ホールディングス(HD)の上場、外部との資本提携も通じた資金調達まで匂わせる発言も」、財務健全化は喫緊の課題だ。
・『機関投資家の間で広がる「楽天離れ」 9000億円――。これは今後3年間で償還を迎える社債の合計額だ。 モバイル事業の設備投資に当たって、楽天は資金調達のほとんどを銀行からの借り入れではなく、社債に頼ってきた。2018年12月に発行した劣後債計1820億円を皮切りに、これまで20本以上を発行。調達した資金を子会社の楽天モバイルに出資しては、基地局建設などにつぎ込んでいる。 下図は、2025年までに償還日を迎える社債の一覧だ。劣後債の繰り上げ償還も含めれば、2024年に最大3000億円、2025年に最大5000億円と、巨額の償還が待ち受けている。 2022年末時点における、楽天の連結ベースでの現預金は約4.7兆円。一見潤沢に見えるが、大半は楽天銀行が集めた預金で、楽天単体に限れば現預金はわずか926億円だ。 非金融事業の営業キャッシュフローもいまだ3000億円超のマイナスという状態であり、基地局建設が峠を越えたとしても、資金流出は簡単には止まりそうにない。 この先で手元資金が不足する場合、別の社債を発行して借り換えることも選択肢だ。だが、楽天の場合は事情が異なる。実は今、機関投資家の間で「楽天離れ」が起きているのだ。) 「財務が悪すぎて、楽天グループの社債はもう買えない」。ある大手機関投資家の債券運用担当者は声を潜める。「国内の格付け会社が投資適格(BBB以上)のお墨付きを与えているが、あんなものは誰も信じていない。われわれの内部格付けでは、楽天はもはや投機的水準だ」。 楽天は2021年12月以降、機関投資家向けの円建て社債を発行していない。複数の債券運用担当者は「楽天のクレジット(信用リスク)が悪化し、国内では引き受ける機関投資家がいなくなった」と口を揃える。 代わりにすがったのが海外だ。楽天は2022年11月と2023年1月に、計9.5億ドルの社債を発行した。利率は10.25%(割引分を加味すると12%)で、いわゆる「ジャンク債」扱いだ。前出とは別の運用会社の代表は「スタートアップ企業並みの信用だ」と評する。 国内の機関投資家向けが厳しいと見るや、楽天は個人投資家にも目を付けた。発行体のクレジットよりも目先の利回りを重視するため、社債を引き受けてもらいやすいためだ。2022年6月に1500億円、2023年2月には2500億円のリテール債を発行にこぎ着けたが、利率は前者が0.72%に対して、後者は3.3%。対個人であっても、楽天のクレジットは急速に悪化している』、「劣後債の繰り上げ償還も含めれば、2024年に最大3000億円、2025年に最大5000億円と、巨額の償還が待ち受けている」、「非金融事業の営業キャッシュフローもいまだ3000億円超のマイナスという状態であり、基地局建設が峠を越えたとしても、資金流出は簡単には止まりそうにない」、「国内の格付け会社が投資適格(BBB以上)のお墨付きを与えているが、あんなものは誰も信じていない。われわれの内部格付けでは、楽天はもはや投機的水準だ」、「代わりにすがったのが海外だ。楽天は2022年11月と2023年1月に、計9.5億ドルの社債を発行した。利率は10.25%(割引分を加味すると12%)で、いわゆる「ジャンク債」扱いだ。前出とは別の運用会社の代表は「スタートアップ企業並みの信用だ」と評す」、海外でも「「ジャンク債」扱い」とはギリギリの状況だ。
・『モバイルへの投資は当初計画の倍以上に 果たして楽天は償還の波を乗り越えられるのか。最初の焦点は、2023年12月に控える劣後債680億円のファーストコール(発行時に決められる、最初の繰り上げ償還日)だ。償還は義務ではないが、発行体はこれを行うのが慣例だ。 モバイル事業に対しては2023年も3000億円もの設備投資を見込んでおり、累計の投資額は、当初計画していた6000億円から2倍以上に膨らんでいる。1月のドル建て債や2月のリテール債で調達した資金もここにつぎ込む予定で、償還の原資は別途工面する必要がある。) 2024年と2025年にはさらなる償還の大波が押し寄せる。金額が大きいうえ、過去に低利で発行した社債が多数償還を迎える。海外では格付け機関のS&Pグローバル・レーティングが2022年末、楽天の長期発行体格付けをBB+からBBへと格下げした。国内でも2月15日に格付投資情報センターが、楽天の発行体格付けをA-から格下げする見通しを示した。借り換えとなれば、利率がハネ上がるのは必至だ。 資金繰りの打開策として楽天がもくろむのは、楽天銀行と楽天証券HDのIPO(新規株式公開)だ。三木谷氏は「楽天銀行のIPOはオンプロセスで進めたい。楽天証券HDの上場も今年度(2023年度)中に行う予定」と話す。 ただ、軟調な株式市場のあおりを受けて、ネット専業の金融機関の評価額は落ち込んでいる。楽天銀行も当初予定していた2022年内の上場を延期した。IPOが成就したとしても、グループ内のサービスを回遊させる「楽天経済圏」を貫徹するためには、子会社の支配権を手放せない。そのため上場時に多くの株式は売り出せず、十分な資金を調達できる保証はない』、「モバイルへの投資は当初計画の倍以上に」、「資金繰りの打開策として楽天がもくろむのは、楽天銀行と楽天証券HDのIPO」、しかし、「IPOが成就したとしても、グループ内のサービスを回遊させる「楽天経済圏」を貫徹するためには、子会社の支配権を手放せない。そのため上場時に多くの株式は売り出せず、十分な資金を調達できる保証はない」、本当に厳しそうだ。
・『さらなる子会社「切り売り」も この点、三木谷氏は2月14日の決算説明会において「親会社および子会社での戦略的業務提携・外部資本の活用」も検討すると言及している。 同社は2022年10月、みずほ証券に楽天証券株の約20%を800億円で売却した。そのためカードや保険会社など、安定して稼いでいる子会社の株式を切り売りする可能性は否定できない。 外部企業からの増資も選択肢だが、クレジットが悪化する楽天グループへの出資要請は、これまでよりも難航が予想される。足元の株価は600円台後半と、2021年に日本郵政などに割り当てた額の6割の水準にとどまる。希薄化を懸念する株主からの反発もあるだろう。) 資金繰りに奔走する楽天とは対象的に、静観を崩さないのが銀行団だ。 関係者によれば、メインバンクのみずほ銀行の楽天本体に対する融資残高は、2022年末時点で約1100億円。前年末から300億円程度しか増えていない。 三井住友や三井住友信託、三菱UFJといった準メイン行の残高もあまり増えていないもようで、モバイル事業の設備投資額からすれば、焼け石に水だ。楽天は2022年夏頃、銀行団に対して2000億円規模のつなぎ融資を要請したが、実行には至らなかったようだ。 ある大手銀行幹部は「モバイル事業が本当に黒字化するか、見極めている」と話す。三木谷氏は2023年中の単月黒字化を掲げるが、楽天の中堅社員は「まず無理だ」と悲観的だ。競合キャリアからも「契約回線数が伸び悩んでおり、黒字化は難しいだろう」という声が漏れる。 かねて約束してきた黒字化が見通せなくなれば、銀行団が態度を急に硬化させかねない』、「楽天は2022年夏頃、銀行団に対して2000億円規模のつなぎ融資を要請したが、実行には至らなかったようだ」、「ある大手銀行幹部は「モバイル事業が本当に黒字化するか、見極めている」と話す」、「かねて約束してきた黒字化が見通せなくなれば、銀行団が態度を急に硬化させかねない」、そうなれば大変だ。
・『伝家の宝刀「コミットメントライン」 楽天にとって最後の手段は、総額1500億円のコミットメントライン(融資枠)の使用だ。銀行団から無条件で融資を引き出せる権利であり、2022年1月に1200億円から増額された。 しかしながら、1500億円は流動性を担保するための見せ金であり、実際に手を付けてしまっては「本当に資金繰りに窮していることの証拠」(銀行幹部)となる。コミットメントラインが使用されたときこそ、楽天が崖っぷちに立たされたことを意味する。 三木谷氏は2023年を「勝負の年」と位置づけるが、こと資金繰りの観点でいえば、勝負はとても年内では決着しそうにない』、「総額1500億円のコミットメントライン(融資枠)」は、「流動性を担保するための見せ金であり、実際に手を付けてしまっては「本当に資金繰りに窮していることの証拠」(銀行幹部)となる」ので使えないようだ。「崖っぷちに立たされた」状況がまだ続きそうだ。
次に、3月9日付け企業法務ナビ「楽天モバイル元部長ら、水増し請求による詐欺の疑いで逮捕」を紹介しよう。
https://www.corporate-legal.jp/news/5189
・『はじめに 携帯電話大手の楽天モバイルからおよそ25億円をだまし取ったとして、警視庁は3月3日、楽天モバイルの元部長と業務委託先の元幹部ら3人を詐欺の疑いで逮捕しました。携帯事業に新規参入した楽天モバイルが携帯電話基地局を整備するために交わした設備運搬の業務委託に絡み、業務委託費を水増しし同社より金を騙し取ったということです』、「楽天モバイルの元部長と業務委託先の元幹部ら3人を詐欺の疑いで逮捕」、グルになっていたのでは始末が悪い。
・『事件の経緯 楽天モバイルの発表や報道などによりますと、当時、物流管理部長だった元従業員が業務委託先の会社関係者と共謀し、資材の保管や運送に係わる業務において携帯電話基地局の整備に関する費用をおよそ9億2000万円水増しするなど、およそ25億円を楽天モバイルに不正に請求していたとされています。 具体的には、資材を運ぶ車両の発注台数を多く装う、資材を保管する倉庫の面積を実際よりも広く偽るなどして輸送費や保管料を水増ししていたとみられていて、これらの業務全般について、元部長が統括的に管理し、決裁権限も有していたということです。 また、架空のコンサルティング料などの名目で水増し請求していたケースもあったとされています。 水増し請求で不正に得た利益は、再委託先の会社から元部長らに流れていたということです』、「およそ25億円を楽天モバイルに不正に請求」とは「楽天」もだらしない。
・『水増し請求の法的取り扱い (省略)
・『決裁権とは (省略)
・『水増し請求を予防するために 水増し請求は、加害者全員がメリットを享受し合うことが多く、また、クローズドな関係性の中で展開されることも少なくないため、加害者からの自発的な申告や関係者からの内部通報が機能しづらい不正類型といえます。そのため、水増し請求の発覚は、税務調査における取引先への立ち入り調査を端緒とすることが多いとされています。 そんな、水増し請求を予防するうえでは、社員と取引先の関係性のチェック・牽制を強化する手法が有効です。具体的には、上位の役職者が、ときに抜き打ちで取引先を訪問して委託した業務の実際の様子を見学させてもらう、委託業務のアウトプットを見せてもらうなどの方法が考えられます。また、取引先の社長に定期的に挨拶に行くだけでも牽制効果があります。 さらに、初回の取引のみならず、継続中の取引に関しても定期的に相見積もりを行い、取引先選定の適切性を担保することも有効です。また、取引先との数字の中身を知るものが必ず2名以上いる体制を敷く等の工夫も重要になります』、「社員と取引先の関係性のチェック・牽制を強化する手法が有効です。具体的には、上位の役職者が、ときに抜き打ちで取引先を訪問して委託した業務の実際の様子を見学させてもらう、委託業務のアウトプットを見せてもらうなどの方法が考えられます」、その通りだ。
・『コメント 今回の事件を受け、楽天モバイルは元部長を懲戒解雇し、事件に関わった取引先2社との取引を停止した上で、預金口座の仮差押さえを申請したとされています。 水増し請求事案では、会社の口座に入金されたお金を自由に引き出して還元できる人間ということで、取引先の社長や役員と協力して不正が行われるケースが少なくありません。その意味で、社員が取引先の役員と密接な関係性を築いている場合、不正の発生リスクが相対的に高い取引としてアラートを働かせる必要があります。 検知が難しい水増し請求。法務としても、社内規程の周知やコンプライアンス教育の徹底などで、予防に貢献したいところです』、楽天は基地局建設を急いでいた事情があるにせよ、他の報道によれば、「楽天モバイル」の部長は高級車を乗り回し、高額なタワーマンションに住んでいたとの報道もあり、社員の日頃の行動管理という基本的なことがなおざりにされていたようだ。「三木谷」の責任は重大だ。
第三に、3月17日付け文春オンライン「丸の内コンフィデンシャル:《楽天の赤字幅は過去最大に》「タケノコ生活」のカギを握る携帯電話事業のゆくえ」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/61359
・『日本経済の中心地、東京・丸の内から“マル秘”財界情報をお届けする人気コラム「丸の内コンフィデンシャル」。月刊「文藝春秋」2023年4月号より一部を公開します。 「ゼロ円プラン」を廃止し、平均収入は大手3社の半分に 楽天(三木谷浩史会長兼社長)の経営に黄信号が灯った。2022年12月期の最終損益は3728億円の赤字。赤字は4期連続で、赤字幅は過去最大となった。 22年12月期の売上収益は21年12月期に比べて15%増の1兆9278億円だった。楽天市場などのインターネットサービス事業、クレジットカード・銀行などの金融事業が伸びを牽引したが、19年10月にサービスを開始した携帯電話事業で進めている基地局の設備投資が利益を吹き飛ばした。 同社のカギを握るのは携帯電話事業の成長だ。同事業の収益は契約者数と契約あたりの月間収入の掛け算で決まるが、昨年、「ゼロ円プラン」を廃止したことで契約数は伸び悩み、同12月末時点で449万件にとどまった。目標とする1200万件は遠い。平均収入は上昇傾向にあるが携帯大手3社の半分程度にとどまる。 22年12月時点で基地局設置数は目標の8割強だ。これまで年間3000億円規模の投資をしてきたが、24年12月期には約半分の1500億円規模に減る見通しという。だが、これから投資のために発行した社債の償還が負担として重くのしかかる。今後3年間で償還を迎える社債の合計は約9000億円。市場はリスクがあると判断し、今年1月に発行した4.5億ドル(約590億円)の優先債の最終利回りは12%となった。同月に別途、起債した個人向け社債2500億円の利回りは3%と高い。 楽天は21年3月に日本郵政から約1500億円の出資を受け、昨年11月には傘下の楽天証券ホールディングスが保有する楽天証券株の約2割をみずほ証券に売却して775億円を確保した。 手元の資産を切り売りする「タケノコ生活」は引き受ける相手がいてこそ成立する話だ。「楽天に興味を示すのはNTTぐらい」というのが通信業界の見立てだが、「いわゆる『楽天経済圏』でNTTが事業展開できない限り、首は縦に振らない」とNTT幹部は言う。「経済圏」という天領を開放するか否か。 三木谷氏は大きな決断を迫られている』、「昨年、「ゼロ円プラン」を廃止したことで契約数は伸び悩み、同12月末時点で449万件にとどまった。目標とする1200万件は遠い。平均収入は上昇傾向にあるが携帯大手3社の半分程度にとどまる」、「22年12月時点で基地局設置数は目標の8割強だ。これまで年間3000億円規模の投資をしてきたが、24年12月期には約半分の1500億円規模に減る見通し」、「これから投資のために発行した社債の償還が負担として重くのしかかる。今後3年間で償還を迎える社債の合計は約9000億円。市場はリスクがあると判断し、今年1月に発行した4.5億ドル(約590億円)の優先債の最終利回りは12%となった。同月に別途、起債した個人向け社債2500億円の利回りは3%と高い」、「「楽天に興味を示すのはNTTぐらい」というのが通信業界の見立てだが、「いわゆる『楽天経済圏』でNTTが事業展開できない限り、首は縦に振らない」とNTT幹部は言う。「経済圏」という天領を開放するか否か。 三木谷氏は大きな決断を迫られている」、瀬戸際だ。
・『岸田首相や麻生氏との関係も深く——経団連新副会長の素顔は?(省略)
第四に、4月24日付け日経ビジネスオンライン「銀行上場も遠い夜明け、楽天Gが背負うモバイルの「重い十字架」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00128/042100048/
・『楽天グループ子会社でネット銀行の楽天銀行が4月21日、東証プライムに上場した。初値は公開価格を3割上回ったものの、調達額は当初想定より約300億円下がった。株式市場の厳しい目は、楽天銀行よりもむしろ親会社である楽天Gに向けられている。赤字が続くモバイル事業の立て直しが急務だ。・・・同日に都内で開いた会見で永井啓之社長は「1億人超の会員基盤を生かして成長を加速させる」と語った。 初値は公開価格の1400円を33%上回る1856円。その後も1965円の高値を付け、2000円の大台に近づく場面もあった。上場前に市場関係者からは「公開価格割れもありうる」との声も上がっていたが、そんな逆風をはねのけた格好だ。 だが、手放しでは喜べない。3月に東京証券取引所から上場承認を受けた際、楽天銀行の公募・売り出し価格の想定仮条件は1630~1960円だった。ところが4月に入ってから1300~1400円に引き下げられた経緯がある。最終的な公開価格は上場1週間前に上限の1400円と決まった。 一般的に、上場承認を受けた際の想定仮条件は主幹事証券会社が提示する参考価格を基に決まる。上場承認後に機関投資家向けに説明会を開き、そのフィードバックを受けて最終的な公開価格が決まる仕組みだ。機関投資家が「高すぎる」と判断すれば、価格を下げざるを得なくなる。 楽天銀行の場合、3月時点の想定売却額は最大で1057億円とされていたが、最終的には717億円と約300億円減った。米シリコンバレーバンクの破綻などによる市場環境の悪化が主因だが、機関投資家が楽天Gの財務状況を悪材料視した面も否定できない』、「楽天銀行の場合、3月時点の想定売却額は最大で1057億円とされていたが、最終的には717億円と約300億円減った。米シリコンバレーバンクの破綻などによる市場環境の悪化が主因だが、機関投資家が楽天Gの財務状況を悪材料視した面も否定できない」、なるほど。
・『「虎の子」の銀行株放出で赤字埋める 楽天Gの赤字が続いて「楽天経済圏」の成長に陰りが出れば、楽天銀行への悪影響も避けられないとみるためだ。収益力の高い楽天銀行は経営不振の楽天Gにとっていわば「虎の子」。その株式の一部を手放して得た資金は、赤字の続くモバイル事業に投じられる。同事業は楽天G全体の足を引っ張る「重い十字架」だ。 モバイル事業は多額の資金をネットワークに先行投資し、契約数と、ARPUと呼ばれる1契約あたりの月間平均収入をともに増やすことで回収していくビジネスモデルだ。モバイル事業の収益は、契約数とARPUのかけ算によって決まる。 楽天Gのモバイル事業は現状、契約数とARPUの両面で稼ぐ力が弱い状態にある。契約数は月1ギガバイト(ギガは10億。GB)まで無料で利用できる「0円プラン」の廃止以降、減少傾向が続く。一時は500万契約に近づいた契約数は、2022年12月末時点で449万契約にまで落ち込んだ。 「0円プラン」廃止でARPUは上昇基調にあるが、22年10~12月期は1805円と、ライバルであるNTTドコモやKDDI、ソフトバンクの半分以下の水準だ。 22年12月期の自社回線によるモバイル事業の売上高は約750億円にとどまった。一方でモバイル事業への設備投資は、22年12月期に約3000億円だった。さらに23年12月期にも約3000億円を計画し、重い負担が続く。 楽天Gは、法人市場の開拓や紹介キャンペーン、ポイントプログラムの還元率向上など、楽天経済圏のリソースも使って、あの手この手で契約数の積み増しに動く。だが、いずれも決定打に欠ける。 数少ない希望の一つが、楽天モバイルが熱望してきた、つながりやすい電波帯「プラチナバンド」の割り当てが早ければ今秋に予定される点だ。ただ楽天モバイルがプラチナバンドを獲得したとしても、それでようやく大手3社と同じスタートラインに立てるだけ。プラチナバンドは他社から契約者を奪うだけの切り札にはなり得ない。 楽天Gの三木谷浩史会長兼社長は23年2月の決算説明会で「23年は勝負の年」と語った。生き残りに向けて、楽天Gの綱渡り状態は続く。モバイル事業を稼げる体質へと早期に転換させなければ、この苦境からは抜け出せない』、「契約数は月1ギガバイト(ギガは10億。GB)まで無料で利用できる「0円プラン」の廃止以降、減少傾向が続く。一時は500万契約に近づいた契約数は、2022年12月末時点で449万契約にまで落ち込んだ。 「0円プラン」廃止でARPUは上昇基調にあるが、22年10~12月期は1805円と、ライバルであるNTTドコモやKDDI、ソフトバンクの半分以下の水準だ。 22年12月期の自社回線によるモバイル事業の売上高は約750億円にとどまった」、「数少ない希望の一つが、楽天モバイルが熱望してきた、つながりやすい電波帯「プラチナバンド」の割り当てが早ければ今秋に予定される点だ。ただ楽天モバイルがプラチナバンドを獲得したとしても、それでようやく大手3社と同じスタートラインに立てるだけ。プラチナバンドは他社から契約者を奪うだけの切り札にはなり得ない」、さて今後の展開はどうなるのだろう。
第五に、4月26日付け東洋経済オンライン「楽天銀行、親会社に翻弄され続けた上場の顛末 巨大な楽天経済圏を誇るも、市場の逆風に屈す」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/668228
・『楽天銀行は4月21日、東証プライム市場に上場を果たした。公開価格ベースでの時価総額は約2380億円と屈指の大型IPOとなったが、耳目を集めたのは楽天銀行自身よりもむしろ、親会社である楽天グループだった。 2021年9月に楽天銀行が上場準備に着手してから1年半。国内最大手級のネット銀行による上場劇は、最後まで親会社に翻弄された』、どういうことなのだろう。
・『親会社による「金策」 「成長資金を獲得するため、上場を検討している」。2021年11月、楽天Gの三木谷浩史会長兼社長は決算説明会において、初めて楽天銀行の上場に言及した。 上場の意義について、楽天銀行は「より自律的な経営視点と成長戦略を遂行できるとともに、独自の資金調達を含めた様々な成長及び財務戦略を検討することが可能になる」と説明する。ただ、親会社の苦しい懐事情が上場を後押しした面もある。 楽天Gは2018年に携帯事業者として認可を受けて以来、子会社である楽天モバイルを通じて多額の資金を投じている。 当初の計画では基地局建設などの設備投資費用を総額6000億円で十分としていたが、2020年末時点ですでに5000億円弱に膨張。計画以上に投資額が膨らむのは明白で、資金を確保する必要があった。楽天銀行の上場には、株式売り出しによる楽天Gの金策の色合いがにじんだ。 「PBR(株価純資産倍率)6~10倍」。上場発表時の資料で楽天Gは先駆的な銀行のPBR水準を示していた。楽天銀行自身もネット専業かつ楽天経済圏を生かした集客を行うビジネスモデルが先駆的だとして、株式市場からの評価に相当な自信を持っていた。 引き合いに出したのは、2021年8月に韓国取引所へ上場したネット専業銀行「カカオバンク」。初日の時価総額は3兆円規模に達した。さらにブラジルのネット専業金融グループ「ヌー・ホールディングス」も比較対象に挙げた。2021年末のニューヨーク証券取引所に上場した際、時価総額は一時6兆円以上に膨らんだ。) ところが、2022年に入ると欧米の金利上昇や景気後退懸念を受けて、ハイテク株が相次いで下落した。カカオバンクやヌー・ホールディングスの足元の株価は、上場当初からおよそ3分の1に縮小している。 向かい風が吹く中でも、楽天Gの資金繰りを考えれば楽天銀行の上場をいたずらに延期することはできない。こうして2022年7月、楽天銀行は東京証券取引所に上場申請を行った。 ネット銀行の評価が後退する中、楽天銀行は当初の目標だった2022年中の上場を断念。少しでも高値で上場できるタイミングを探った結果、「東証からOKをもらいマーケット状況もまずまずと判断した」(楽天銀行の永井啓之社長)として、2023年4月の上場を目論んだ。 3月22日の承認時に楽天銀行が提出した有価証券届出書では、想定仮条件として1株当たり1630~1960円としていた。ところが、4月5日に決まった仮条件は1300~1400円と、想定を割り込む異例の事態となった。 理由は3月に米シリコンバレー銀行の破綻をきっかけに欧米金融機関で台頭した信用不安だけではない。楽天の悪化する財務が楽天銀行に飛び火しないか、機関投資家から疑義が出たためだ』、「楽天銀行自身もネット専業かつ楽天経済圏を生かした集客を行うビジネスモデルが先駆的だとして、株式市場からの評価に相当な自信を持っていた」、「3月22日の承認時に楽天銀行が提出した有価証券届出書では、想定仮条件として1株当たり1630~1960円としていた。ところが、4月5日に決まった仮条件は1300~1400円と、想定を割り込む異例の事態となった。 理由は3月に米シリコンバレー銀行の破綻をきっかけに欧米金融機関で台頭した信用不安だけではない。楽天の悪化する財務が楽天銀行に飛び火しないか、機関投資家から疑義が出たためだ」、これだけ悪条件が揃えば、やむを得ないだろう。
・『調達・運用ともに「楽天経済圏」 楽天銀行は楽天経済圏を2つの面で活用している。1つは預金の獲得だ。1億超を誇る楽天ID保有者に対して、ネット通販や証券、カードなどほかのサービス利用時のメイン口座としての利用を推進。2023年3月末時点の預金残高は9.1兆円と、上位地銀とも肩を並べる水準だ。 調達のみならず、運用サイドにおいてもグループとの関係を活用している。2022年末時点における楽天銀行の運用資産は約7兆円。そのおよそ3分の1を「買入金銭債権」が占める。これは主に楽天カードのクレジットカード債権や楽天モバイルの通信料債権だ。子会社の楽天信託が証券化し、楽天銀行が取得している。相対的に高い利回りが期待できる一方、楽天との関係は一層不可分になっていく』、「2023年3月末時点の預金残高は9.1兆円と、上位地銀とも肩を並べる水準」、大したものだ。「運用資産は約7兆円。そのおよそ3分の1を「買入金銭債権」が占める。これは主に楽天カードのクレジットカード債権や楽天モバイルの通信料債権だ。子会社の楽天信託が証券化し、楽天銀行が取得している。相対的に高い利回りが期待できる一方、楽天との関係は一層不可分になっていく」、なるほど。
・『楽天銀行の運用ポートフォリオ 調達・運用両面で楽天と絡み合う構図に投資家が懸念を示したためか、楽天銀行は4日、英文の目論見書に楽天カードや楽天モバイルの債権を裏付け資産とする信託受益権(収益を受け取る権利)の残高をリスク要因として追記した。) 最終的に公開価格は1400円となった。親会社から飛び火した信用リスクに加えて、「資金繰りを考えれば、これ以上上場は先延ばしできない」(金融筋)と、足元を見られた面もあったようだ。 21日の初値は1856円と公開価格から3割も上昇し、楽天にとっては「底値」で楽天銀行を売却させられた形となった。初値から逆算したPBRは約1.5倍と、6〜10倍どころか、2021年11月に「従来型『銀行』」と揶揄した水準と同程度に着地した。 株価について永井社長は「マーケットや投資家のセンチメントはコントロールできない。証券会社の意見を伺いながらそれぞれのタイミングで価格を決めた」と述べるにとどめた』、「英文の目論見書に楽天カードや楽天モバイルの債権を裏付け資産とする信託受益権(収益を受け取る権利)の残高をリスク要因として追記」、むしろ書かない方が問題だ。
・『上場後に問われる成長戦略 すったもんだの末の上場となった楽天銀行。楽天本体は引き続き約63%を保有する筆頭株主として君臨するが、外部資本を調達した以上、親会社におもねる経営を続けることは許されない。「楽天(本体)が銀行の経営に指示をしてはならないシステムを構築している。少数株主の利益を害さない意思決定をできる」(永井社長)。 楽天銀行は2027年3月期に経常利益700億円、預金量20兆円といった経営目標を設定している。実現すれば国内の地銀を軒並み追い抜き、経常利益833億円、預金量33兆円のりそな銀行の背中も見えてくる。上場に伴う公募増資などで調達した約140億円も活用しつつ、当面は株主還元よりも成長投資を重視する方針だ。 (楽天銀行の経営指標 ハリンク先参照) 今後の焦点は、法人向け事業の伸長やグループ外の企業との連携だ。帝国データバンクによれば、2022年10月末時点で楽天銀行をメインバンクとする企業数が1000社を突破した。法人顧客には専門の営業担当者を配置し、「ITを活用して、他の銀行ではできないソリューションを提案したい」(永井社長)。 2023年1月には、JR東日本と共同でネット銀行を開業すると発表した。楽天銀行が事業会社に銀行機能を提供する形で、これまでも第一生命や地銀と協業している。楽天経済圏を基盤としつつも、グループ外の企業との提携を通じた果実を取り込むバランス感覚も問われる』、「2027年3月期に経常利益700億円、預金量20兆円といった経営目標を設定している。実現すれば国内の地銀を軒並み追い抜き、経常利益833億円、預金量33兆円のりそな銀行の背中も見えてくる」、「楽天銀行をメインバンクとする企業数が1000社を突破」、大したものだ。「楽天」そのものについては問題も多いが、「楽天銀行」は成長のポテンシャルが高いようだ。
先ずは、本年2月20日付け東洋経済オンライン「巨額赤字の楽天、これから迫る「借金返済」の大波 社債償還が「3年で計9000億円」という難路」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/653347
・『モバイルへの巨額投資で財務状況が大きく悪化する楽天グループ。資金調達の選択肢が狭まる中、押し寄せる社債償還の波をどう乗り越えるのか。 「健全なバランスシートを保ちながら成長していきたい」。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は記者会見の席上、そう言い切ってみせた。 2月14日に発表した2022年12月期決算は、最終赤字が3728億円と過去最大となった。携帯基地局などの設備投資がかさんだモバイル事業で、4928億円もの営業赤字を計上したことが最大の要因だ。銀行や証券などを除く非金融事業の社債や借入金も、1.7兆円を超えた。 悪化の一途をたどる財務状況に対して、楽天が持ち出したのは、社債をはじめとした有利子負債残高の削減だ。負債膨張の原因だったモバイル事業の設備投資が「一巡した」(三木谷氏)ことを理由に、有利子負債を圧縮すると宣言した。 さらに三木谷氏は、投資家の懸念を払拭するためか、楽天銀行や楽天証券ホールディングス(HD)の上場、外部との資本提携も通じた資金調達まで匂わせる発言もしている。だが、モバイル事業の設備投資にカネをつぎ込んできた「ツケ」は、想像以上に重い』、「銀行や証券などを除く非金融事業の社債や借入金も、1.7兆円を超えた。 悪化の一途をたどる財務状況に対して、楽天が持ち出したのは、社債をはじめとした有利子負債残高の削減だ」、「楽天銀行や楽天証券ホールディングス(HD)の上場、外部との資本提携も通じた資金調達まで匂わせる発言も」、財務健全化は喫緊の課題だ。
・『機関投資家の間で広がる「楽天離れ」 9000億円――。これは今後3年間で償還を迎える社債の合計額だ。 モバイル事業の設備投資に当たって、楽天は資金調達のほとんどを銀行からの借り入れではなく、社債に頼ってきた。2018年12月に発行した劣後債計1820億円を皮切りに、これまで20本以上を発行。調達した資金を子会社の楽天モバイルに出資しては、基地局建設などにつぎ込んでいる。 下図は、2025年までに償還日を迎える社債の一覧だ。劣後債の繰り上げ償還も含めれば、2024年に最大3000億円、2025年に最大5000億円と、巨額の償還が待ち受けている。 2022年末時点における、楽天の連結ベースでの現預金は約4.7兆円。一見潤沢に見えるが、大半は楽天銀行が集めた預金で、楽天単体に限れば現預金はわずか926億円だ。 非金融事業の営業キャッシュフローもいまだ3000億円超のマイナスという状態であり、基地局建設が峠を越えたとしても、資金流出は簡単には止まりそうにない。 この先で手元資金が不足する場合、別の社債を発行して借り換えることも選択肢だ。だが、楽天の場合は事情が異なる。実は今、機関投資家の間で「楽天離れ」が起きているのだ。) 「財務が悪すぎて、楽天グループの社債はもう買えない」。ある大手機関投資家の債券運用担当者は声を潜める。「国内の格付け会社が投資適格(BBB以上)のお墨付きを与えているが、あんなものは誰も信じていない。われわれの内部格付けでは、楽天はもはや投機的水準だ」。 楽天は2021年12月以降、機関投資家向けの円建て社債を発行していない。複数の債券運用担当者は「楽天のクレジット(信用リスク)が悪化し、国内では引き受ける機関投資家がいなくなった」と口を揃える。 代わりにすがったのが海外だ。楽天は2022年11月と2023年1月に、計9.5億ドルの社債を発行した。利率は10.25%(割引分を加味すると12%)で、いわゆる「ジャンク債」扱いだ。前出とは別の運用会社の代表は「スタートアップ企業並みの信用だ」と評する。 国内の機関投資家向けが厳しいと見るや、楽天は個人投資家にも目を付けた。発行体のクレジットよりも目先の利回りを重視するため、社債を引き受けてもらいやすいためだ。2022年6月に1500億円、2023年2月には2500億円のリテール債を発行にこぎ着けたが、利率は前者が0.72%に対して、後者は3.3%。対個人であっても、楽天のクレジットは急速に悪化している』、「劣後債の繰り上げ償還も含めれば、2024年に最大3000億円、2025年に最大5000億円と、巨額の償還が待ち受けている」、「非金融事業の営業キャッシュフローもいまだ3000億円超のマイナスという状態であり、基地局建設が峠を越えたとしても、資金流出は簡単には止まりそうにない」、「国内の格付け会社が投資適格(BBB以上)のお墨付きを与えているが、あんなものは誰も信じていない。われわれの内部格付けでは、楽天はもはや投機的水準だ」、「代わりにすがったのが海外だ。楽天は2022年11月と2023年1月に、計9.5億ドルの社債を発行した。利率は10.25%(割引分を加味すると12%)で、いわゆる「ジャンク債」扱いだ。前出とは別の運用会社の代表は「スタートアップ企業並みの信用だ」と評す」、海外でも「「ジャンク債」扱い」とはギリギリの状況だ。
・『モバイルへの投資は当初計画の倍以上に 果たして楽天は償還の波を乗り越えられるのか。最初の焦点は、2023年12月に控える劣後債680億円のファーストコール(発行時に決められる、最初の繰り上げ償還日)だ。償還は義務ではないが、発行体はこれを行うのが慣例だ。 モバイル事業に対しては2023年も3000億円もの設備投資を見込んでおり、累計の投資額は、当初計画していた6000億円から2倍以上に膨らんでいる。1月のドル建て債や2月のリテール債で調達した資金もここにつぎ込む予定で、償還の原資は別途工面する必要がある。) 2024年と2025年にはさらなる償還の大波が押し寄せる。金額が大きいうえ、過去に低利で発行した社債が多数償還を迎える。海外では格付け機関のS&Pグローバル・レーティングが2022年末、楽天の長期発行体格付けをBB+からBBへと格下げした。国内でも2月15日に格付投資情報センターが、楽天の発行体格付けをA-から格下げする見通しを示した。借り換えとなれば、利率がハネ上がるのは必至だ。 資金繰りの打開策として楽天がもくろむのは、楽天銀行と楽天証券HDのIPO(新規株式公開)だ。三木谷氏は「楽天銀行のIPOはオンプロセスで進めたい。楽天証券HDの上場も今年度(2023年度)中に行う予定」と話す。 ただ、軟調な株式市場のあおりを受けて、ネット専業の金融機関の評価額は落ち込んでいる。楽天銀行も当初予定していた2022年内の上場を延期した。IPOが成就したとしても、グループ内のサービスを回遊させる「楽天経済圏」を貫徹するためには、子会社の支配権を手放せない。そのため上場時に多くの株式は売り出せず、十分な資金を調達できる保証はない』、「モバイルへの投資は当初計画の倍以上に」、「資金繰りの打開策として楽天がもくろむのは、楽天銀行と楽天証券HDのIPO」、しかし、「IPOが成就したとしても、グループ内のサービスを回遊させる「楽天経済圏」を貫徹するためには、子会社の支配権を手放せない。そのため上場時に多くの株式は売り出せず、十分な資金を調達できる保証はない」、本当に厳しそうだ。
・『さらなる子会社「切り売り」も この点、三木谷氏は2月14日の決算説明会において「親会社および子会社での戦略的業務提携・外部資本の活用」も検討すると言及している。 同社は2022年10月、みずほ証券に楽天証券株の約20%を800億円で売却した。そのためカードや保険会社など、安定して稼いでいる子会社の株式を切り売りする可能性は否定できない。 外部企業からの増資も選択肢だが、クレジットが悪化する楽天グループへの出資要請は、これまでよりも難航が予想される。足元の株価は600円台後半と、2021年に日本郵政などに割り当てた額の6割の水準にとどまる。希薄化を懸念する株主からの反発もあるだろう。) 資金繰りに奔走する楽天とは対象的に、静観を崩さないのが銀行団だ。 関係者によれば、メインバンクのみずほ銀行の楽天本体に対する融資残高は、2022年末時点で約1100億円。前年末から300億円程度しか増えていない。 三井住友や三井住友信託、三菱UFJといった準メイン行の残高もあまり増えていないもようで、モバイル事業の設備投資額からすれば、焼け石に水だ。楽天は2022年夏頃、銀行団に対して2000億円規模のつなぎ融資を要請したが、実行には至らなかったようだ。 ある大手銀行幹部は「モバイル事業が本当に黒字化するか、見極めている」と話す。三木谷氏は2023年中の単月黒字化を掲げるが、楽天の中堅社員は「まず無理だ」と悲観的だ。競合キャリアからも「契約回線数が伸び悩んでおり、黒字化は難しいだろう」という声が漏れる。 かねて約束してきた黒字化が見通せなくなれば、銀行団が態度を急に硬化させかねない』、「楽天は2022年夏頃、銀行団に対して2000億円規模のつなぎ融資を要請したが、実行には至らなかったようだ」、「ある大手銀行幹部は「モバイル事業が本当に黒字化するか、見極めている」と話す」、「かねて約束してきた黒字化が見通せなくなれば、銀行団が態度を急に硬化させかねない」、そうなれば大変だ。
・『伝家の宝刀「コミットメントライン」 楽天にとって最後の手段は、総額1500億円のコミットメントライン(融資枠)の使用だ。銀行団から無条件で融資を引き出せる権利であり、2022年1月に1200億円から増額された。 しかしながら、1500億円は流動性を担保するための見せ金であり、実際に手を付けてしまっては「本当に資金繰りに窮していることの証拠」(銀行幹部)となる。コミットメントラインが使用されたときこそ、楽天が崖っぷちに立たされたことを意味する。 三木谷氏は2023年を「勝負の年」と位置づけるが、こと資金繰りの観点でいえば、勝負はとても年内では決着しそうにない』、「総額1500億円のコミットメントライン(融資枠)」は、「流動性を担保するための見せ金であり、実際に手を付けてしまっては「本当に資金繰りに窮していることの証拠」(銀行幹部)となる」ので使えないようだ。「崖っぷちに立たされた」状況がまだ続きそうだ。
次に、3月9日付け企業法務ナビ「楽天モバイル元部長ら、水増し請求による詐欺の疑いで逮捕」を紹介しよう。
https://www.corporate-legal.jp/news/5189
・『はじめに 携帯電話大手の楽天モバイルからおよそ25億円をだまし取ったとして、警視庁は3月3日、楽天モバイルの元部長と業務委託先の元幹部ら3人を詐欺の疑いで逮捕しました。携帯事業に新規参入した楽天モバイルが携帯電話基地局を整備するために交わした設備運搬の業務委託に絡み、業務委託費を水増しし同社より金を騙し取ったということです』、「楽天モバイルの元部長と業務委託先の元幹部ら3人を詐欺の疑いで逮捕」、グルになっていたのでは始末が悪い。
・『事件の経緯 楽天モバイルの発表や報道などによりますと、当時、物流管理部長だった元従業員が業務委託先の会社関係者と共謀し、資材の保管や運送に係わる業務において携帯電話基地局の整備に関する費用をおよそ9億2000万円水増しするなど、およそ25億円を楽天モバイルに不正に請求していたとされています。 具体的には、資材を運ぶ車両の発注台数を多く装う、資材を保管する倉庫の面積を実際よりも広く偽るなどして輸送費や保管料を水増ししていたとみられていて、これらの業務全般について、元部長が統括的に管理し、決裁権限も有していたということです。 また、架空のコンサルティング料などの名目で水増し請求していたケースもあったとされています。 水増し請求で不正に得た利益は、再委託先の会社から元部長らに流れていたということです』、「およそ25億円を楽天モバイルに不正に請求」とは「楽天」もだらしない。
・『水増し請求の法的取り扱い (省略)
・『決裁権とは (省略)
・『水増し請求を予防するために 水増し請求は、加害者全員がメリットを享受し合うことが多く、また、クローズドな関係性の中で展開されることも少なくないため、加害者からの自発的な申告や関係者からの内部通報が機能しづらい不正類型といえます。そのため、水増し請求の発覚は、税務調査における取引先への立ち入り調査を端緒とすることが多いとされています。 そんな、水増し請求を予防するうえでは、社員と取引先の関係性のチェック・牽制を強化する手法が有効です。具体的には、上位の役職者が、ときに抜き打ちで取引先を訪問して委託した業務の実際の様子を見学させてもらう、委託業務のアウトプットを見せてもらうなどの方法が考えられます。また、取引先の社長に定期的に挨拶に行くだけでも牽制効果があります。 さらに、初回の取引のみならず、継続中の取引に関しても定期的に相見積もりを行い、取引先選定の適切性を担保することも有効です。また、取引先との数字の中身を知るものが必ず2名以上いる体制を敷く等の工夫も重要になります』、「社員と取引先の関係性のチェック・牽制を強化する手法が有効です。具体的には、上位の役職者が、ときに抜き打ちで取引先を訪問して委託した業務の実際の様子を見学させてもらう、委託業務のアウトプットを見せてもらうなどの方法が考えられます」、その通りだ。
・『コメント 今回の事件を受け、楽天モバイルは元部長を懲戒解雇し、事件に関わった取引先2社との取引を停止した上で、預金口座の仮差押さえを申請したとされています。 水増し請求事案では、会社の口座に入金されたお金を自由に引き出して還元できる人間ということで、取引先の社長や役員と協力して不正が行われるケースが少なくありません。その意味で、社員が取引先の役員と密接な関係性を築いている場合、不正の発生リスクが相対的に高い取引としてアラートを働かせる必要があります。 検知が難しい水増し請求。法務としても、社内規程の周知やコンプライアンス教育の徹底などで、予防に貢献したいところです』、楽天は基地局建設を急いでいた事情があるにせよ、他の報道によれば、「楽天モバイル」の部長は高級車を乗り回し、高額なタワーマンションに住んでいたとの報道もあり、社員の日頃の行動管理という基本的なことがなおざりにされていたようだ。「三木谷」の責任は重大だ。
第三に、3月17日付け文春オンライン「丸の内コンフィデンシャル:《楽天の赤字幅は過去最大に》「タケノコ生活」のカギを握る携帯電話事業のゆくえ」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/61359
・『日本経済の中心地、東京・丸の内から“マル秘”財界情報をお届けする人気コラム「丸の内コンフィデンシャル」。月刊「文藝春秋」2023年4月号より一部を公開します。 「ゼロ円プラン」を廃止し、平均収入は大手3社の半分に 楽天(三木谷浩史会長兼社長)の経営に黄信号が灯った。2022年12月期の最終損益は3728億円の赤字。赤字は4期連続で、赤字幅は過去最大となった。 22年12月期の売上収益は21年12月期に比べて15%増の1兆9278億円だった。楽天市場などのインターネットサービス事業、クレジットカード・銀行などの金融事業が伸びを牽引したが、19年10月にサービスを開始した携帯電話事業で進めている基地局の設備投資が利益を吹き飛ばした。 同社のカギを握るのは携帯電話事業の成長だ。同事業の収益は契約者数と契約あたりの月間収入の掛け算で決まるが、昨年、「ゼロ円プラン」を廃止したことで契約数は伸び悩み、同12月末時点で449万件にとどまった。目標とする1200万件は遠い。平均収入は上昇傾向にあるが携帯大手3社の半分程度にとどまる。 22年12月時点で基地局設置数は目標の8割強だ。これまで年間3000億円規模の投資をしてきたが、24年12月期には約半分の1500億円規模に減る見通しという。だが、これから投資のために発行した社債の償還が負担として重くのしかかる。今後3年間で償還を迎える社債の合計は約9000億円。市場はリスクがあると判断し、今年1月に発行した4.5億ドル(約590億円)の優先債の最終利回りは12%となった。同月に別途、起債した個人向け社債2500億円の利回りは3%と高い。 楽天は21年3月に日本郵政から約1500億円の出資を受け、昨年11月には傘下の楽天証券ホールディングスが保有する楽天証券株の約2割をみずほ証券に売却して775億円を確保した。 手元の資産を切り売りする「タケノコ生活」は引き受ける相手がいてこそ成立する話だ。「楽天に興味を示すのはNTTぐらい」というのが通信業界の見立てだが、「いわゆる『楽天経済圏』でNTTが事業展開できない限り、首は縦に振らない」とNTT幹部は言う。「経済圏」という天領を開放するか否か。 三木谷氏は大きな決断を迫られている』、「昨年、「ゼロ円プラン」を廃止したことで契約数は伸び悩み、同12月末時点で449万件にとどまった。目標とする1200万件は遠い。平均収入は上昇傾向にあるが携帯大手3社の半分程度にとどまる」、「22年12月時点で基地局設置数は目標の8割強だ。これまで年間3000億円規模の投資をしてきたが、24年12月期には約半分の1500億円規模に減る見通し」、「これから投資のために発行した社債の償還が負担として重くのしかかる。今後3年間で償還を迎える社債の合計は約9000億円。市場はリスクがあると判断し、今年1月に発行した4.5億ドル(約590億円)の優先債の最終利回りは12%となった。同月に別途、起債した個人向け社債2500億円の利回りは3%と高い」、「「楽天に興味を示すのはNTTぐらい」というのが通信業界の見立てだが、「いわゆる『楽天経済圏』でNTTが事業展開できない限り、首は縦に振らない」とNTT幹部は言う。「経済圏」という天領を開放するか否か。 三木谷氏は大きな決断を迫られている」、瀬戸際だ。
・『岸田首相や麻生氏との関係も深く——経団連新副会長の素顔は?(省略)
第四に、4月24日付け日経ビジネスオンライン「銀行上場も遠い夜明け、楽天Gが背負うモバイルの「重い十字架」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00128/042100048/
・『楽天グループ子会社でネット銀行の楽天銀行が4月21日、東証プライムに上場した。初値は公開価格を3割上回ったものの、調達額は当初想定より約300億円下がった。株式市場の厳しい目は、楽天銀行よりもむしろ親会社である楽天Gに向けられている。赤字が続くモバイル事業の立て直しが急務だ。・・・同日に都内で開いた会見で永井啓之社長は「1億人超の会員基盤を生かして成長を加速させる」と語った。 初値は公開価格の1400円を33%上回る1856円。その後も1965円の高値を付け、2000円の大台に近づく場面もあった。上場前に市場関係者からは「公開価格割れもありうる」との声も上がっていたが、そんな逆風をはねのけた格好だ。 だが、手放しでは喜べない。3月に東京証券取引所から上場承認を受けた際、楽天銀行の公募・売り出し価格の想定仮条件は1630~1960円だった。ところが4月に入ってから1300~1400円に引き下げられた経緯がある。最終的な公開価格は上場1週間前に上限の1400円と決まった。 一般的に、上場承認を受けた際の想定仮条件は主幹事証券会社が提示する参考価格を基に決まる。上場承認後に機関投資家向けに説明会を開き、そのフィードバックを受けて最終的な公開価格が決まる仕組みだ。機関投資家が「高すぎる」と判断すれば、価格を下げざるを得なくなる。 楽天銀行の場合、3月時点の想定売却額は最大で1057億円とされていたが、最終的には717億円と約300億円減った。米シリコンバレーバンクの破綻などによる市場環境の悪化が主因だが、機関投資家が楽天Gの財務状況を悪材料視した面も否定できない』、「楽天銀行の場合、3月時点の想定売却額は最大で1057億円とされていたが、最終的には717億円と約300億円減った。米シリコンバレーバンクの破綻などによる市場環境の悪化が主因だが、機関投資家が楽天Gの財務状況を悪材料視した面も否定できない」、なるほど。
・『「虎の子」の銀行株放出で赤字埋める 楽天Gの赤字が続いて「楽天経済圏」の成長に陰りが出れば、楽天銀行への悪影響も避けられないとみるためだ。収益力の高い楽天銀行は経営不振の楽天Gにとっていわば「虎の子」。その株式の一部を手放して得た資金は、赤字の続くモバイル事業に投じられる。同事業は楽天G全体の足を引っ張る「重い十字架」だ。 モバイル事業は多額の資金をネットワークに先行投資し、契約数と、ARPUと呼ばれる1契約あたりの月間平均収入をともに増やすことで回収していくビジネスモデルだ。モバイル事業の収益は、契約数とARPUのかけ算によって決まる。 楽天Gのモバイル事業は現状、契約数とARPUの両面で稼ぐ力が弱い状態にある。契約数は月1ギガバイト(ギガは10億。GB)まで無料で利用できる「0円プラン」の廃止以降、減少傾向が続く。一時は500万契約に近づいた契約数は、2022年12月末時点で449万契約にまで落ち込んだ。 「0円プラン」廃止でARPUは上昇基調にあるが、22年10~12月期は1805円と、ライバルであるNTTドコモやKDDI、ソフトバンクの半分以下の水準だ。 22年12月期の自社回線によるモバイル事業の売上高は約750億円にとどまった。一方でモバイル事業への設備投資は、22年12月期に約3000億円だった。さらに23年12月期にも約3000億円を計画し、重い負担が続く。 楽天Gは、法人市場の開拓や紹介キャンペーン、ポイントプログラムの還元率向上など、楽天経済圏のリソースも使って、あの手この手で契約数の積み増しに動く。だが、いずれも決定打に欠ける。 数少ない希望の一つが、楽天モバイルが熱望してきた、つながりやすい電波帯「プラチナバンド」の割り当てが早ければ今秋に予定される点だ。ただ楽天モバイルがプラチナバンドを獲得したとしても、それでようやく大手3社と同じスタートラインに立てるだけ。プラチナバンドは他社から契約者を奪うだけの切り札にはなり得ない。 楽天Gの三木谷浩史会長兼社長は23年2月の決算説明会で「23年は勝負の年」と語った。生き残りに向けて、楽天Gの綱渡り状態は続く。モバイル事業を稼げる体質へと早期に転換させなければ、この苦境からは抜け出せない』、「契約数は月1ギガバイト(ギガは10億。GB)まで無料で利用できる「0円プラン」の廃止以降、減少傾向が続く。一時は500万契約に近づいた契約数は、2022年12月末時点で449万契約にまで落ち込んだ。 「0円プラン」廃止でARPUは上昇基調にあるが、22年10~12月期は1805円と、ライバルであるNTTドコモやKDDI、ソフトバンクの半分以下の水準だ。 22年12月期の自社回線によるモバイル事業の売上高は約750億円にとどまった」、「数少ない希望の一つが、楽天モバイルが熱望してきた、つながりやすい電波帯「プラチナバンド」の割り当てが早ければ今秋に予定される点だ。ただ楽天モバイルがプラチナバンドを獲得したとしても、それでようやく大手3社と同じスタートラインに立てるだけ。プラチナバンドは他社から契約者を奪うだけの切り札にはなり得ない」、さて今後の展開はどうなるのだろう。
第五に、4月26日付け東洋経済オンライン「楽天銀行、親会社に翻弄され続けた上場の顛末 巨大な楽天経済圏を誇るも、市場の逆風に屈す」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/668228
・『楽天銀行は4月21日、東証プライム市場に上場を果たした。公開価格ベースでの時価総額は約2380億円と屈指の大型IPOとなったが、耳目を集めたのは楽天銀行自身よりもむしろ、親会社である楽天グループだった。 2021年9月に楽天銀行が上場準備に着手してから1年半。国内最大手級のネット銀行による上場劇は、最後まで親会社に翻弄された』、どういうことなのだろう。
・『親会社による「金策」 「成長資金を獲得するため、上場を検討している」。2021年11月、楽天Gの三木谷浩史会長兼社長は決算説明会において、初めて楽天銀行の上場に言及した。 上場の意義について、楽天銀行は「より自律的な経営視点と成長戦略を遂行できるとともに、独自の資金調達を含めた様々な成長及び財務戦略を検討することが可能になる」と説明する。ただ、親会社の苦しい懐事情が上場を後押しした面もある。 楽天Gは2018年に携帯事業者として認可を受けて以来、子会社である楽天モバイルを通じて多額の資金を投じている。 当初の計画では基地局建設などの設備投資費用を総額6000億円で十分としていたが、2020年末時点ですでに5000億円弱に膨張。計画以上に投資額が膨らむのは明白で、資金を確保する必要があった。楽天銀行の上場には、株式売り出しによる楽天Gの金策の色合いがにじんだ。 「PBR(株価純資産倍率)6~10倍」。上場発表時の資料で楽天Gは先駆的な銀行のPBR水準を示していた。楽天銀行自身もネット専業かつ楽天経済圏を生かした集客を行うビジネスモデルが先駆的だとして、株式市場からの評価に相当な自信を持っていた。 引き合いに出したのは、2021年8月に韓国取引所へ上場したネット専業銀行「カカオバンク」。初日の時価総額は3兆円規模に達した。さらにブラジルのネット専業金融グループ「ヌー・ホールディングス」も比較対象に挙げた。2021年末のニューヨーク証券取引所に上場した際、時価総額は一時6兆円以上に膨らんだ。) ところが、2022年に入ると欧米の金利上昇や景気後退懸念を受けて、ハイテク株が相次いで下落した。カカオバンクやヌー・ホールディングスの足元の株価は、上場当初からおよそ3分の1に縮小している。 向かい風が吹く中でも、楽天Gの資金繰りを考えれば楽天銀行の上場をいたずらに延期することはできない。こうして2022年7月、楽天銀行は東京証券取引所に上場申請を行った。 ネット銀行の評価が後退する中、楽天銀行は当初の目標だった2022年中の上場を断念。少しでも高値で上場できるタイミングを探った結果、「東証からOKをもらいマーケット状況もまずまずと判断した」(楽天銀行の永井啓之社長)として、2023年4月の上場を目論んだ。 3月22日の承認時に楽天銀行が提出した有価証券届出書では、想定仮条件として1株当たり1630~1960円としていた。ところが、4月5日に決まった仮条件は1300~1400円と、想定を割り込む異例の事態となった。 理由は3月に米シリコンバレー銀行の破綻をきっかけに欧米金融機関で台頭した信用不安だけではない。楽天の悪化する財務が楽天銀行に飛び火しないか、機関投資家から疑義が出たためだ』、「楽天銀行自身もネット専業かつ楽天経済圏を生かした集客を行うビジネスモデルが先駆的だとして、株式市場からの評価に相当な自信を持っていた」、「3月22日の承認時に楽天銀行が提出した有価証券届出書では、想定仮条件として1株当たり1630~1960円としていた。ところが、4月5日に決まった仮条件は1300~1400円と、想定を割り込む異例の事態となった。 理由は3月に米シリコンバレー銀行の破綻をきっかけに欧米金融機関で台頭した信用不安だけではない。楽天の悪化する財務が楽天銀行に飛び火しないか、機関投資家から疑義が出たためだ」、これだけ悪条件が揃えば、やむを得ないだろう。
・『調達・運用ともに「楽天経済圏」 楽天銀行は楽天経済圏を2つの面で活用している。1つは預金の獲得だ。1億超を誇る楽天ID保有者に対して、ネット通販や証券、カードなどほかのサービス利用時のメイン口座としての利用を推進。2023年3月末時点の預金残高は9.1兆円と、上位地銀とも肩を並べる水準だ。 調達のみならず、運用サイドにおいてもグループとの関係を活用している。2022年末時点における楽天銀行の運用資産は約7兆円。そのおよそ3分の1を「買入金銭債権」が占める。これは主に楽天カードのクレジットカード債権や楽天モバイルの通信料債権だ。子会社の楽天信託が証券化し、楽天銀行が取得している。相対的に高い利回りが期待できる一方、楽天との関係は一層不可分になっていく』、「2023年3月末時点の預金残高は9.1兆円と、上位地銀とも肩を並べる水準」、大したものだ。「運用資産は約7兆円。そのおよそ3分の1を「買入金銭債権」が占める。これは主に楽天カードのクレジットカード債権や楽天モバイルの通信料債権だ。子会社の楽天信託が証券化し、楽天銀行が取得している。相対的に高い利回りが期待できる一方、楽天との関係は一層不可分になっていく」、なるほど。
・『楽天銀行の運用ポートフォリオ 調達・運用両面で楽天と絡み合う構図に投資家が懸念を示したためか、楽天銀行は4日、英文の目論見書に楽天カードや楽天モバイルの債権を裏付け資産とする信託受益権(収益を受け取る権利)の残高をリスク要因として追記した。) 最終的に公開価格は1400円となった。親会社から飛び火した信用リスクに加えて、「資金繰りを考えれば、これ以上上場は先延ばしできない」(金融筋)と、足元を見られた面もあったようだ。 21日の初値は1856円と公開価格から3割も上昇し、楽天にとっては「底値」で楽天銀行を売却させられた形となった。初値から逆算したPBRは約1.5倍と、6〜10倍どころか、2021年11月に「従来型『銀行』」と揶揄した水準と同程度に着地した。 株価について永井社長は「マーケットや投資家のセンチメントはコントロールできない。証券会社の意見を伺いながらそれぞれのタイミングで価格を決めた」と述べるにとどめた』、「英文の目論見書に楽天カードや楽天モバイルの債権を裏付け資産とする信託受益権(収益を受け取る権利)の残高をリスク要因として追記」、むしろ書かない方が問題だ。
・『上場後に問われる成長戦略 すったもんだの末の上場となった楽天銀行。楽天本体は引き続き約63%を保有する筆頭株主として君臨するが、外部資本を調達した以上、親会社におもねる経営を続けることは許されない。「楽天(本体)が銀行の経営に指示をしてはならないシステムを構築している。少数株主の利益を害さない意思決定をできる」(永井社長)。 楽天銀行は2027年3月期に経常利益700億円、預金量20兆円といった経営目標を設定している。実現すれば国内の地銀を軒並み追い抜き、経常利益833億円、預金量33兆円のりそな銀行の背中も見えてくる。上場に伴う公募増資などで調達した約140億円も活用しつつ、当面は株主還元よりも成長投資を重視する方針だ。 (楽天銀行の経営指標 ハリンク先参照) 今後の焦点は、法人向け事業の伸長やグループ外の企業との連携だ。帝国データバンクによれば、2022年10月末時点で楽天銀行をメインバンクとする企業数が1000社を突破した。法人顧客には専門の営業担当者を配置し、「ITを活用して、他の銀行ではできないソリューションを提案したい」(永井社長)。 2023年1月には、JR東日本と共同でネット銀行を開業すると発表した。楽天銀行が事業会社に銀行機能を提供する形で、これまでも第一生命や地銀と協業している。楽天経済圏を基盤としつつも、グループ外の企業との提携を通じた果実を取り込むバランス感覚も問われる』、「2027年3月期に経常利益700億円、預金量20兆円といった経営目標を設定している。実現すれば国内の地銀を軒並み追い抜き、経常利益833億円、預金量33兆円のりそな銀行の背中も見えてくる」、「楽天銀行をメインバンクとする企業数が1000社を突破」、大したものだ。「楽天」そのものについては問題も多いが、「楽天銀行」は成長のポテンシャルが高いようだ。
タグ:携帯・スマホ (その9)(楽天問題5話(巨額赤字の楽天、これから迫る「借金返済」の大波 社債償還が「3年で計9000億円」という難路、楽天モバイル元部長ら 水増し請求による詐欺の疑いで逮捕、《楽天の赤字幅は過去最大に》「タケノコ生活」のカギを握る携帯電話事業のゆくえ、楽天銀行「安値上場」で売却額が3割減に 運にも見放された三木谷氏の受難、楽天銀行 親会社に翻弄され続けた上場の顛末 巨大な楽天経済圏を誇るも 市場の逆風に屈す)) 東洋経済オンライン「巨額赤字の楽天、これから迫る「借金返済」の大波 社債償還が「3年で計9000億円」という難路」 「銀行や証券などを除く非金融事業の社債や借入金も、1.7兆円を超えた。 悪化の一途をたどる財務状況に対して、楽天が持ち出したのは、社債をはじめとした有利子負債残高の削減だ」、「楽天銀行や楽天証券ホールディングス(HD)の上場、外部との資本提携も通じた資金調達まで匂わせる発言も」、財務健全化は喫緊の課題だ。 「劣後債の繰り上げ償還も含めれば、2024年に最大3000億円、2025年に最大5000億円と、巨額の償還が待ち受けている」、「非金融事業の営業キャッシュフローもいまだ3000億円超のマイナスという状態であり、基地局建設が峠を越えたとしても、資金流出は簡単には止まりそうにない」、「国内の格付け会社が投資適格(BBB以上)のお墨付きを与えているが、あんなものは誰も信じていない。われわれの内部格付けでは、楽天はもはや投機的水準だ」、 「代わりにすがったのが海外だ。楽天は2022年11月と2023年1月に、計9.5億ドルの社債を発行した。利率は10.25%(割引分を加味すると12%)で、いわゆる「ジャンク債」扱いだ。前出とは別の運用会社の代表は「スタートアップ企業並みの信用だ」と評す」、海外でも「「ジャンク債」扱い」とはギリギリの状況だ。 「モバイルへの投資は当初計画の倍以上に」、「資金繰りの打開策として楽天がもくろむのは、楽天銀行と楽天証券HDのIPO」、しかし、「IPOが成就したとしても、グループ内のサービスを回遊させる「楽天経済圏」を貫徹するためには、子会社の支配権を手放せない。そのため上場時に多くの株式は売り出せず、十分な資金を調達できる保証はない」、本当に厳しそうだ。 「楽天は2022年夏頃、銀行団に対して2000億円規模のつなぎ融資を要請したが、実行には至らなかったようだ」、「ある大手銀行幹部は「モバイル事業が本当に黒字化するか、見極めている」と話す」、「かねて約束してきた黒字化が見通せなくなれば、銀行団が態度を急に硬化させかねない」、そうなれば大変だ。 「総額1500億円のコミットメントライン(融資枠)」は、「流動性を担保するための見せ金であり、実際に手を付けてしまっては「本当に資金繰りに窮していることの証拠」(銀行幹部)となる」ので使えないようだ。「崖っぷちに立たされた」状況がまだ続きそうだ。 企業法務ナビ「楽天モバイル元部長ら、水増し請求による詐欺の疑いで逮捕」 「楽天モバイルの元部長と業務委託先の元幹部ら3人を詐欺の疑いで逮捕」、グルになっていたのでは始末が悪い。 「およそ25億円を楽天モバイルに不正に請求」とは「楽天」もだらしない。 「社員と取引先の関係性のチェック・牽制を強化する手法が有効です。具体的には、上位の役職者が、ときに抜き打ちで取引先を訪問して委託した業務の実際の様子を見学させてもらう、委託業務のアウトプットを見せてもらうなどの方法が考えられます」、その通りだ。 楽天は基地局建設を急いでいた事情があるにせよ、他の報道によれば、「楽天モバイル」の部長は高級車を乗り回し、高額なタワーマンションに住んでいたとの報道もあり、社員の日頃の行動管理という基本的なことがなおざりにされていたようだ。「三木谷」の責任は重大だ。 文春オンライン「丸の内コンフィデンシャル:《楽天の赤字幅は過去最大に》「タケノコ生活」のカギを握る携帯電話事業のゆくえ」 「昨年、「ゼロ円プラン」を廃止したことで契約数は伸び悩み、同12月末時点で449万件にとどまった。目標とする1200万件は遠い。平均収入は上昇傾向にあるが携帯大手3社の半分程度にとどまる」、「22年12月時点で基地局設置数は目標の8割強だ。これまで年間3000億円規模の投資をしてきたが、24年12月期には約半分の1500億円規模に減る見通し」、 「これから投資のために発行した社債の償還が負担として重くのしかかる。今後3年間で償還を迎える社債の合計は約9000億円。市場はリスクがあると判断し、今年1月に発行した4.5億ドル(約590億円)の優先債の最終利回りは12%となった。同月に別途、起債した個人向け社債2500億円の利回りは3%と高い」、「「楽天に興味を示すのはNTTぐらい」というのが通信業界の見立てだが、「いわゆる『楽天経済圏』でNTTが事業展開できない限り、首は縦に振らない」とNTT幹部は言う。「経済圏」という天領を開放するか否か。 三木谷 は大きな決断を迫られている」、瀬戸際だ。 日経ビジネスオンライン「銀行上場も遠い夜明け、楽天Gが背負うモバイルの「重い十字架」」 「楽天銀行の場合、3月時点の想定売却額は最大で1057億円とされていたが、最終的には717億円と約300億円減った。米シリコンバレーバンクの破綻などによる市場環境の悪化が主因だが、機関投資家が楽天Gの財務状況を悪材料視した面も否定できない」、なるほど。 「契約数は月1ギガバイト(ギガは10億。GB)まで無料で利用できる「0円プラン」の廃止以降、減少傾向が続く。一時は500万契約に近づいた契約数は、2022年12月末時点で449万契約にまで落ち込んだ。 「0円プラン」廃止でARPUは上昇基調にあるが、22年10~12月期は1805円と、ライバルであるNTTドコモやKDDI、ソフトバンクの半分以下の水準だ。 22年12月期の自社回線によるモバイル事業の売上高は約750億円にとどまった」、「数少ない希望の一つが、楽天モバイルが熱望してきた、つながりやすい電波帯「プラチナバンド」の割り当てが早ければ今秋に予定される点だ。ただ楽天モバイルがプラチナバンドを獲得したとしても、それでようやく大手3社と同じスタートラインに立てるだけ。プラチナバンドは他社から契約者を奪うだけの切り札にはなり得ない」、さて今後の展開はどうなるのだろう。 東洋経済オンライン「楽天銀行、親会社に翻弄され続けた上場の顛末 巨大な楽天経済圏を誇るも、市場の逆風に屈す」 どういうことなのだろう。 「楽天銀行自身もネット専業かつ楽天経済圏を生かした集客を行うビジネスモデルが先駆的だとして、株式市場からの評価に相当な自信を持っていた」、「3月22日の承認時に楽天銀行が提出した有価証券届出書では、想定仮条件として1株当たり1630~1960円としていた。ところが、4月5日に決まった仮条件は1300~1400円と、想定を割り込む異例の事態となった。 理由は3月に米シリコンバレー銀行の破綻をきっかけに欧米金融機関で台頭した信用不安だけではない。楽天の悪化する財務が楽天銀行に飛び火しないか、機関投資家から疑義が出たためだ」、これだけ悪条件が揃えば、やむを得ないだろう。 「2023年3月末時点の預金残高は9.1兆円と、上位地銀とも肩を並べる水準」、大したものだ。「運用資産は約7兆円。そのおよそ3分の1を「買入金銭債権」が占める。これは主に楽天カードのクレジットカード債権や楽天モバイルの通信料債権だ。子会社の楽天信託が証券化し、楽天銀行が取得している。相対的に高い利回りが期待できる一方、楽天との関係は一層不可分になっていく」、なるほど。 「英文の目論見書に楽天カードや楽天モバイルの債権を裏付け資産とする信託受益権(収益を受け取る権利)の残高をリスク要因として追記」、むしろ書かない方が問題だ。 「2027年3月期に経常利益700億円、預金量20兆円といった経営目標を設定している。実現すれば国内の地銀を軒並み追い抜き、経常利益833億円、預金量33兆円のりそな銀行の背中も見えてくる」、「楽天銀行をメインバンクとする企業数が1000社を突破」、大したものだ。「楽天」そのものについては問題も多いが、「楽天銀行」は成長のポテンシャルが高いようだ。
小池都知事問題(その7)(虎の子の900億円がほぼゼロに・・・コロナと五輪で全て“ボロボロ”小池都政が迎える「氷点下の時代」、伐採女帝・小池都知事が“騙し討ち”! 神宮外苑樹木「743本→3000本」切り倒しのトンデモ、「木の伐採が多すぎる」 超党派の議員連盟も求める「神宮外苑再開発計画」の見直し、坂本龍一氏の死で小池知事が大炎上 再開発計画見直し「神宮に言え」の冷酷ぶり蒸し返される) [国内政治]
小池都知事問題については、2021年7月2日に取上げた。久しぶりの今日は、(その7)(虎の子の900億円がほぼゼロに・・・コロナと五輪で全て“ボロボロ”小池都政が迎える「氷点下の時代」、伐採女帝・小池都知事が“騙し討ち”! 神宮外苑樹木「743本→3000本」切り倒しのトンデモ、「木の伐採が多すぎる」 超党派の議員連盟も求める「神宮外苑再開発計画」の見直し、坂本龍一氏の死で小池知事が大炎上 再開発計画見直し「神宮に言え」の冷酷ぶり蒸し返される)である。
先ずは、昨年1月12日付け文春オンラインが掲載した元東京都知事本局計画調整部長の澤 章氏による「虎の子の900億円がほぼゼロに・・・コロナと五輪で全て“ボロボロ”小池都政が迎える「氷点下の時代」」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/50929
・『バブル崩壊後の1995年4月、鈴木俊一都政が4期16年の歴史に幕を降ろした。それ以降、四半世紀にわたって5人の人物が入れ替わり立ち替わり都知事の座に就いた。青島幸男、石原慎太郎、猪瀬直樹、舛添要一、そして小池百合子。彼らは奇しくも国会議員経験者か作家という肩書きを持つ。地方行政のプロではない。単なる目立ちたがりの有名人だ。 都知事選が全国的な知名度を競い合う「人気投票」と化して久しいが、青島知事による世界都市博覧会の中止を唯一の例外として、選挙戦で声高に訴えられる目玉の公約の多くが実現されないままだ。極めつけは小池知事である。初当選の際に約束した「7つのゼロ」のうち、達成とされているのは犬猫殺処分ゼロだけだ。満員電車ゼロに至っては、新型コロナ感染拡大によってテレワークが普及したが、一向に実現される気配はない。 しかも、有権者である都民自身が、公約のことなど選挙が終わった途端にころっと忘れてしまう。かくして、人気投票の勝者は、都民から白紙委任状をもらったと勘違いする。マスコミ受けを狙った、思いつきベースの政策を打ち出し、あるいはカネを巡るスキャンダルでワイドショーにネタを提供し続けることになる』、「小池知事」は「初当選の際に約束した「7つのゼロ」のうち、達成とされているのは犬猫殺処分ゼロだけだ。満員電車ゼロに至っては、新型コロナ感染拡大によってテレワークが普及したが、一向に実現される気配はない。 しかも、有権者である都民自身が、公約のことなど選挙が終わった途端にころっと忘れてしまう」、本来はマスコミが指摘すべきだが、小池知事に遠慮して控えているようだ。
・『なぜ「人気投票」都政がまかり通ってきたのか こんないい加減な都政運営が長く許されてきたのも、他の自治体がうらやむ潤沢な都税収入とバランスの取れた都財政という基盤があったからである。 しかし、20年前はそうではなかった。石原知事が「とんでもないところに嫁に来てしまった」と嘆いたとおり、鈴木都政末期から悪化した都財政は、2000年前後に危機的な状態に陥っていた。 石原知事と言えば、ディーゼル車の排ガス規制や新銀行東京の設立など派手な政策が目立つが、その裏では地道な財政再建への努力が続けられた。実際、都職員の給与カットや新規採用の大幅抑制なども断行された』、「鈴木都政末期から悪化した都財政は、2000年前後に危機的な状態に陥っていた」、「都職員の給与カットや新規採用の大幅抑制なども断行された」、そんな時代があったことを思い出した。
・『コロナの感染拡大が小池都政を襲う そうした取組の結果、都財政は健全性を回復し、猪瀬・舛添・小池の時代には、4~5兆円の安定した都税収入に支えられて自由に使える予算が毎年用意された。これを奇貨として無駄遣いに明け暮れたのが小池都政1期目である。その頃、一般会計の予算規模は中期的に6兆円台で推移していたが、小池知事になると7兆円台の高い水準に乗せた。それもコロナ感染が発生する前のことである。 まさに、予算面で我が世の春を満喫していたのが小池知事だったのだ。都民ファーストの会を最大会派とする大政翼賛的な都議会が、無批判で予算を通した側面も指摘しておかなければならない。 こうした野放図な都政運営に明け暮れる小池都政を、突如、コロナの感染拡大が襲った。営業自粛の協力金を中心に補正予算を繰り返し編成し積み上げた結果、2021年度の一般会計は当初の7兆円台から10兆円を優に超える規模にまで急激に膨張した。10兆円とはあくまで目の前のコロナ対策に必要な予算を含んでのこととは言え、都税収入5兆円との乖離の大きさは前代未聞である。 しかも、都税収入の2~3割は法人二税であり、景気の動向に大きく左右される1、2年のタイムラグで影響が顕在化する。コロナによる景気低迷で税収が落ち込むのは正にこれからなのだ』、「そうした取組の結果、都財政は健全性を回復し、猪瀬・舛添・小池の時代には、4~5兆円の安定した都税収入に支えられて自由に使える予算が毎年用意された。これを奇貨として無駄遣いに明け暮れたのが小池都政1期目である。その頃、一般会計の予算規模は中期的に6兆円台で推移していたが、小池知事になると7兆円台の高い水準に乗せた」、「コロナの感染拡大が襲った。営業自粛の協力金を中心に補正予算を繰り返し編成し積み上げた結果、2021年度の一般会計は当初の7兆円台から10兆円を優に超える規模にまで急激に膨張した」、「コロナによる景気低迷で税収が落ち込むのは正にこれからなのだ」、さてどの程度、悪化するのだろう。
・『虎の子の900億円がほぼゼロに コロナ対策という想定外の出費以外にも、大きな落とし穴がある。東京2020オリンピック・パラリンピックの負の遺産である。無観客開催により、組織委員会にとって虎の子の収入源だったチケット収入900億円はほぼゼロになった。時限的に設置された組織委に代わり、いったい誰が赤字を補するのか。 また、東京2020大会全体の収支次第では巨額の損失が発生するが、国との間で負債の押し付け合いが行われるのは必至だ。 東京都が開催都市として無傷でいられるはずはない。) さらには、東京アクアティクスセンターなど、東京都が建設した新規恒久施設は、都政にとって厄介なお荷物になる可能性が高い。今後、各施設の限定的な収入と膨大な維持管理費とのアンバランスに東京都は長期間、苦しめられることになるだろう。 鈴木知事が有楽町から西新宿に都庁本庁舎を移転させた見返りに東京の東側の地域に建設した、江戸東京博物館などの公共施設が、そのランニングコストによって都政を苦しめた過去とみごとにオーバーラップする。歴史は繰り返す。ビッグイベントの後始末が今後、都政に重くのしかかってくるのだ。 コロナと五輪が都財政に残した傷は深い。順風満帆だった都財政は一気に谷底に落とされる。数年で回復することなど望むべくもない』、「東京アクアティクスセンターなど、東京都が建設した新規恒久施設は、都政にとって厄介なお荷物になる可能性が高い。今後、各施設の限定的な収入と膨大な維持管理費とのアンバランスに東京都は長期間、苦しめられることになるだろう」、「コロナと五輪が都財政に残した傷は深い。順風満帆だった都財政は一気に谷底に落とされる。数年で回復することなど望むべくもない」、その通りだ。
・『さらに根深い問題も… 問題はそれだけではない。小池都政の5年間で都庁の官僚組織が疲弊したのだ。自分ファーストのトップは自らの権力基盤を固めるため、極端な情実人事と報復人事を繰り返した。局長級であっても知事にもの申せば、容赦なく降格させられた。都庁官僚は極度に萎縮し、イエスマンだけが生き残る悪しき風習が蔓延した。 加えて、東京都は人余りの時代を迎える。財政が順調だった直近の約10年間、毎年、千数百人規模で新規職員を採用した。五輪需要への対応という側面もあった。事実、組織委へは東京都から千数百人の現役職員が出向していたが、彼らは役割が終わったからといってクビを切られる訳ではない。短期的にはコロナ対応で人手不足の状態であっても、中長期的には大量採用のツケで余剰人員を抱え込むことになる。すでに新規採用枠の大幅な縮小が始まっている。 都政はこの先、財政も組織も人員も「氷点下の時代」に突入せざるを得ない。今後、東京都に必要なのはパフォーマンスに明け暮れる都知事ではない。批判を恐れず都民のために地道に汗をかくトップでなければ、都民・事業者の生命・財産を守り抜くことはできない』、「自分ファーストのトップは自らの権力基盤を固めるため、極端な情実人事と報復人事を繰り返した。局長級であっても知事にもの申せば、容赦なく降格させられた。都庁官僚は極度に萎縮し、イエスマンだけが生き残る悪しき風習が蔓延した。 加えて、東京都は人余りの時代を迎える。財政が順調だった直近の約10年間、毎年、千数百人規模で新規職員を採用」、「短期的にはコロナ対応で人手不足の状態であっても、中長期的には大量採用のツケで余剰人員を抱え込むことになる。すでに新規採用枠の大幅な縮小が始まっている」、「今後、東京都に必要なのはパフォーマンスに明け暮れる都知事ではない。批判を恐れず都民のために地道に汗をかくトップでなければ、都民・事業者の生命・財産を守り抜くことはできない」、さすが東京都の中枢にいただけあって、説得力がある。
次に、本年2月23日付け日刊ゲンダイ「伐採女帝・小池都知事が“騙し討ち”! 神宮外苑樹木「743本→3000本」切り倒しのトンデモ」を紹介しよう。
・『何本切る気なのか。東京都による都立葛西臨海公園(江戸川区)の樹木1400本伐採計画に批判が集まる中、小池都知事はまだまだ大量の樹木を切り倒すつもりだ。 東京・新宿区などにまたがる明治神宮外苑の再開発に伴い、三井不動産などで構成する事業者はエリア全域で743本の樹木を伐採する計画を示していた。ところが、実際に切り倒す本数はその程度では済まない。再開発エリアの一部である「神宮第2球場」の解体工事だけで約3000本もの「低木」が伐採されることが発覚したのだ。 そのきっかけは、事業者が17日、新宿区に第2球場周辺の工事に伴う樹木の伐採許可申請を提出したこと。区の都市計画部・建築指導課の担当者はこう言う』、「都立葛西臨海公園(江戸川区)の樹木1400本伐採計画」の他に、「明治神宮外苑の再開発」では、「743本の樹木を伐採する計画」、さらに「再開発エリアの一部である「神宮第2球場」の解体工事だけで約3000本もの「低木」が伐採されることが発覚」、なんと安易に「伐採」を許可するのに驚かされた。
・『3メートル未満はカウントせず 「高さ3メートル未満の低木は環境アセスメントの対象外なので、工事に伴い何本伐採されるのか、これまで示されてこなかった。そのため、以前から事業者に本数を調査するよう依頼していた。17日の許可申請で、3000本弱が伐採対象だと事業者から伝えられたのです」) 外苑再開発は、都が認可済み。解体工事は来月下旬に始まる予定だが、こうなると、今後、他エリアの工事でも、大量の低木が伐採される恐れがある。伐採本数を「743本」と公表しながら、フタを開けたら「3000本」なんてフザケた話だ。本数を低く見せる「過少申告」を疑う向きも多いはずだ。 実際、都の事業認可の基となった環境アセス評価書にも“虚偽申請”が含まれている可能性がある。それを指摘するのは、ユネスコの諮問機関「日本イコモス国内委員会」だ。20日の会見で、委員の石川幹子・中央大研究開発機構教授は「評価書で(外苑の)建国記念文庫の森は『一部改変』とあるが、実際は61%の樹木が伐採・移植される。明らかな虚偽だ」とし、工事着工の中止を求めた。 61%を「一部」と表現するなんて騙し討ちだろう。小池知事は事業認可について「法令にのっとって適切に行った」と言っていたが、この調子では、後から続々と伐採本数が増えていってもおかしくない。 「工事の主体は事業者とはいえ、認可する立場の都が『知らなかった』では済まされません。もっと早いタイミングで樹木が何本伐採されるのか精査し、積極的に公表すべきでした。これでは、大量伐採せざるを得ない事実を知りながら、批判を避ける狙いで“見て見ぬフリ”をしたと受け止められても仕方ありません」(建築エコノミストの森山高至氏) このまま「伐採女帝」はバッサバッサと樹木を切りまくるのか』、「「高さ3メートル未満の低木は環境アセスメントの対象外」だとしても、それを含めて公表すべきだ。「もっと早いタイミングで樹木が何本伐採されるのか精査し、積極的に公表すべきでした。これでは、大量伐採せざるを得ない事実を知りながら、批判を避ける狙いで“見て見ぬフリ”をしたと受け止められても仕方ありません」、同感である。
第三に、3月30日付けAERAdot「「木の伐採が多すぎる」 超党派の議員連盟も求める「神宮外苑再開発計画」の見直し」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/aera/2023032800057.html?page=1
・『市民らが反対する明治神宮外苑の再開発を巡り、超党派の議員連盟も見直しを求めている。何が問題なのか。議連の発起人代表で自民党の船田元衆院議員に聞いた。AERA 2023年4月3日号より紹介する(Qは聞き手の質問)。 Q:─船田元議員は発起人代表として昨年11月に超党派の「神宮外苑の自然と歴史・文化を守る国会議員連盟」を立ち上げました。6党の28人が加わっています。再開発見直しを求めていますが、具体的な最終目標は。 船田元(以下、船田):所有者である明治神宮やいくつかの人たちが所有する私有地ですので、法律や条例にのっとって再開発をすること自体を止めるつもりはございません。ただ、やはり木の伐採が多すぎる(低木も含め新宿区内だけで約3千本)。また、あの場所で高層ビルを三つも建てるのはいかがなものでしょうか。歴史や自然や文化を守れるように計画を大幅に修正していただきたい』、「明治神宮外苑の再開発を巡り、超党派の議員連盟も見直しを求めている」、「発起人代表で自民党の船田元衆院議員」、有力議員が「発起人代表」とは心強い。
・『小池都知事には会えず Q:これまでの議連の活動は。 船田:1月に計画を抜本的に見直すことを求める決議文をまとめ、永岡桂子文部科学大臣と環境省の政務官、それから東京都は小池百合子知事が会ってくれないので担当部局の技監に直接お会いして手渡しました。港区長、新宿区長、明治神宮の宮司様には郵送しました。郵送への返事はありません。実は小池知事には先日お会いしようともう一回アプローチをしたんですけれども、全くだめでした。私が信書を書いてお届けしましたが、それにも回答はありません。 Q:2月、都が再開発の認可をしました。3月下旬から工事が始まります。 船田:都の環境影響評価審議会で、座長さんが「これで全て終了」という宣言はしていません。再開発を推進するディベロッパーの方々の環境を保全するための新たな提案が出されない状況のまま工事認可が下りたことは、明らかに見切り発車だと解釈せざるを得ないと思います』、「小池知事には先日お会いしようともう一回アプローチをしたんですけれども、全くだめでした。私が信書を書いてお届けしましたが、それにも回答はありません」、冷たい対応だ。「都の環境影響評価審議会で、座長さんが「これで全て終了」という宣言はしていません。再開発を推進するディベロッパーの方々の環境を保全するための新たな提案が出されない状況のまま工事認可が下りたことは、明らかに見切り発車だと解釈せざるを得ない」、「見切り発車」とは不当だ。
・『圧力や不利益は覚悟 Q:船田議員の地元は宇都宮市(栃木1区)ですが。 船田:私は宇都宮とともに東京にも自宅があり、東京の自宅は南青山です。神宮外苑のイチョウ並木まで徒歩10分以内の場所です。犬の散歩で並木を通ることもあります。憩いの場所なんです。 もう一つ。大正時代、全国の青年団が寄付を持ち寄り、土木工事をして神宮外苑を造園しました。たまたま私の大学時代の卒業論文が「戦前の日本の青年団の研究」でしたから、当時の青年団や奉仕団の皆さんの思いを考えると、神宮外苑をどんどん改変してしまっていいのかという問題意識がありました。) Q:神宮外苑の再開発に自民党の議員が関わったと言われています。森喜朗元首相や菅義偉前首相らの名前も報じられました。 船田:私は自民党議員ではありますが、自民党の政策の決定過程でよくないなと思うことについては、これは違うよとかなりはっきり言ってきた人間なんですね。森先生らの名前が出ましたが、どう関与したかは全く私にはわかりません。ですが、噂(うわさ)があるからこの運動をするのをやめようとか考えたことは一度もない。 Q:森元首相らとこの件について話したことはないですか。 船田:一度もないです。菅さんとは国会で席が隣ですが、この件の話をしたことは一度もありません。話して再開発が止まるんであれば、話しますけどね。行政の方にきちんと話をするほうが実効性があると私は思っています。 Q:ご自身が動くことで、政治家としてのデメリットは。 船田:安倍(晋三)政権のときに憲法の改正問題や集団的自衛権の行使の問題について「早すぎる」「憲法改正をしないといけませんよ」と言ったもんですからね。安倍さんからにらまれたところが相当ありました。でも、憎まれ口をたたくのが私の仕事だと思いましたので。圧力や不利益は覚悟の上でしていることです』、「菅さんとは国会で席が隣ですが、この件の話をしたことは一度もありません。話して再開発が止まるんであれば、話しますけどね。行政の方にきちんと話をするほうが実効性があると私は思っています」、確かに「行政の方にきちんと話をするほうが実効性がある」、その通りだろう。
第四に、4月4日付け日刊ゲンダイ「坂本龍一氏の死で小池知事が大炎上 再開発計画見直し「神宮に言え」の冷酷ぶり蒸し返される」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/321006
・『このところ国民的な話題性に欠いてきた東京都の小池知事が大炎上している。 明治神宮外苑再開発をめぐり、見直しを訴えた音楽家の故・坂本龍一氏に対するナメた態度を蒸し返され、猛反発を買っているのだ。注目が活力源の女帝も珍しく貝になっている。 コトの発端は2036年完成を目指し、強行された再開発事業だ。事業者は明治神宮、日本スポーツ振興センターなど。樹木の大量伐採が懸念される中、都が施工を認可し、先月22日に本格的工事が始まった。 反対する超党派議連の発起人代表、自民党の船田元・衆院議員は小池知事に面会を2回申し入れたが、「多忙」を理由に断られたという。ちなみに、2人は旧新進党で同じ釜の飯を食った仲間だ。 オンライン署名「神宮外苑1000本の樹木を切らないで」への賛同も広がる中、坂本氏はがん闘病中の2月に「再開発計画を中断し、計画を見直すべきです」などとした手紙を小池知事などに送付。先月17日の会見で受け止めを聞かれた小池知事の反応はこうだった。 「都や新宿区、文科省、国などに宛てられたと思います。ぜひ事業者でもある明治神宮にも手紙を送られた方がいいんじゃないでしょうか」』、「小池知事が大炎上している。 明治神宮外苑再開発をめぐり、見直しを訴えた音楽家の故・坂本龍一氏に対するナメた態度を蒸し返され、猛反発を買っているのだ」、「反対する超党派議連の発起人代表、自民党の船田元・衆院議員は小池知事に面会を2回申し入れたが、「多忙」を理由に断られたという。ちなみに、2人は旧新進党で同じ釜の飯を食った仲間だ」、「小池知事」の対応の冷淡さはおどろくほどだ。
・『安倍元首相は小池知事「ジョーカー」にたとえる 冷酷そのものだ。衆院議員から転身を図った16年の都知事選では「築地は守る」をスローガンに、市場移転のちゃぶ台返しで票を集めたくせに、利用価値がなければケンモホロロ。もっとも、こうした小池知事の癖はいまに始まったことではない。そのあたり、安倍元首相が「安倍晋三回顧録」でエピソード交じりに語った「小池評」が妙に刺さる。 〈12年の総裁選の前に、小池さんから「政治資金パーティーに来て、講演してほしい」と言われて、彼女のために講演したのです。野党時代は、パーティー券を売るのも大変でした。その代わり、小池さんは総裁選で支持してくれる、という話があったのですが、実際は石破さんを応援したのですね〉 小池知事を「トランプのジョーカー」と見立てる安倍元首相はこうも言っていた。 〈小池さんはいい人ですよ。いい人だし、人たらしでもある。相手に勢いがある時は、近づいてくるのです。2016年に知事に就任した当初は、私の背中をさすりながら話しかけてきて、次の衆院選では自民党の応援に行きますからね、とまで言っていたのです。しかし、相手を倒せると思った時は、バッとやってきて、横っ腹を刺すんです〉 小池知事の任期は来年まで。逃げ得を許したらダメだ』、「小池知事を「トランプのジョーカー」と見立てる安倍元首相はこうも言っていた。〈小池さんはいい人ですよ。いい人だし、人たらしでもある。相手に勢いがある時は、近づいてくるのです。2016年に知事に就任した当初は、私の背中をさすりながら話しかけてきて、次の衆院選では自民党の応援に行きますからね、とまで言っていたのです。しかし、相手を倒せると思った時は、バッとやってきて、横っ腹を刺すんです〉、「人たらしでもある。相手に勢いがある時は、近づいてくるのです。2016年に知事に就任した当初は、私の背中をさすりながら話しかけてきて、次の衆院選では自民党の応援に行きますからね、とまで言っていたのです。しかし、相手を倒せると思った時は、バッとやってきて、横っ腹を刺すんです〉、「知事に就任した当初は、私の背中をさすりながら話しかけてきて、次の衆院選では自民党の応援に行きますからね、とまで言っていた」、「人たらし」の面目躍如だ。「相手を倒せると思った時は、バッとやってきて、横っ腹を刺す」、こんなに冷血無比なのに、都民ファーストの会などの取り巻きがいまだに存在するとは、不思議だ。
先ずは、昨年1月12日付け文春オンラインが掲載した元東京都知事本局計画調整部長の澤 章氏による「虎の子の900億円がほぼゼロに・・・コロナと五輪で全て“ボロボロ”小池都政が迎える「氷点下の時代」」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/50929
・『バブル崩壊後の1995年4月、鈴木俊一都政が4期16年の歴史に幕を降ろした。それ以降、四半世紀にわたって5人の人物が入れ替わり立ち替わり都知事の座に就いた。青島幸男、石原慎太郎、猪瀬直樹、舛添要一、そして小池百合子。彼らは奇しくも国会議員経験者か作家という肩書きを持つ。地方行政のプロではない。単なる目立ちたがりの有名人だ。 都知事選が全国的な知名度を競い合う「人気投票」と化して久しいが、青島知事による世界都市博覧会の中止を唯一の例外として、選挙戦で声高に訴えられる目玉の公約の多くが実現されないままだ。極めつけは小池知事である。初当選の際に約束した「7つのゼロ」のうち、達成とされているのは犬猫殺処分ゼロだけだ。満員電車ゼロに至っては、新型コロナ感染拡大によってテレワークが普及したが、一向に実現される気配はない。 しかも、有権者である都民自身が、公約のことなど選挙が終わった途端にころっと忘れてしまう。かくして、人気投票の勝者は、都民から白紙委任状をもらったと勘違いする。マスコミ受けを狙った、思いつきベースの政策を打ち出し、あるいはカネを巡るスキャンダルでワイドショーにネタを提供し続けることになる』、「小池知事」は「初当選の際に約束した「7つのゼロ」のうち、達成とされているのは犬猫殺処分ゼロだけだ。満員電車ゼロに至っては、新型コロナ感染拡大によってテレワークが普及したが、一向に実現される気配はない。 しかも、有権者である都民自身が、公約のことなど選挙が終わった途端にころっと忘れてしまう」、本来はマスコミが指摘すべきだが、小池知事に遠慮して控えているようだ。
・『なぜ「人気投票」都政がまかり通ってきたのか こんないい加減な都政運営が長く許されてきたのも、他の自治体がうらやむ潤沢な都税収入とバランスの取れた都財政という基盤があったからである。 しかし、20年前はそうではなかった。石原知事が「とんでもないところに嫁に来てしまった」と嘆いたとおり、鈴木都政末期から悪化した都財政は、2000年前後に危機的な状態に陥っていた。 石原知事と言えば、ディーゼル車の排ガス規制や新銀行東京の設立など派手な政策が目立つが、その裏では地道な財政再建への努力が続けられた。実際、都職員の給与カットや新規採用の大幅抑制なども断行された』、「鈴木都政末期から悪化した都財政は、2000年前後に危機的な状態に陥っていた」、「都職員の給与カットや新規採用の大幅抑制なども断行された」、そんな時代があったことを思い出した。
・『コロナの感染拡大が小池都政を襲う そうした取組の結果、都財政は健全性を回復し、猪瀬・舛添・小池の時代には、4~5兆円の安定した都税収入に支えられて自由に使える予算が毎年用意された。これを奇貨として無駄遣いに明け暮れたのが小池都政1期目である。その頃、一般会計の予算規模は中期的に6兆円台で推移していたが、小池知事になると7兆円台の高い水準に乗せた。それもコロナ感染が発生する前のことである。 まさに、予算面で我が世の春を満喫していたのが小池知事だったのだ。都民ファーストの会を最大会派とする大政翼賛的な都議会が、無批判で予算を通した側面も指摘しておかなければならない。 こうした野放図な都政運営に明け暮れる小池都政を、突如、コロナの感染拡大が襲った。営業自粛の協力金を中心に補正予算を繰り返し編成し積み上げた結果、2021年度の一般会計は当初の7兆円台から10兆円を優に超える規模にまで急激に膨張した。10兆円とはあくまで目の前のコロナ対策に必要な予算を含んでのこととは言え、都税収入5兆円との乖離の大きさは前代未聞である。 しかも、都税収入の2~3割は法人二税であり、景気の動向に大きく左右される1、2年のタイムラグで影響が顕在化する。コロナによる景気低迷で税収が落ち込むのは正にこれからなのだ』、「そうした取組の結果、都財政は健全性を回復し、猪瀬・舛添・小池の時代には、4~5兆円の安定した都税収入に支えられて自由に使える予算が毎年用意された。これを奇貨として無駄遣いに明け暮れたのが小池都政1期目である。その頃、一般会計の予算規模は中期的に6兆円台で推移していたが、小池知事になると7兆円台の高い水準に乗せた」、「コロナの感染拡大が襲った。営業自粛の協力金を中心に補正予算を繰り返し編成し積み上げた結果、2021年度の一般会計は当初の7兆円台から10兆円を優に超える規模にまで急激に膨張した」、「コロナによる景気低迷で税収が落ち込むのは正にこれからなのだ」、さてどの程度、悪化するのだろう。
・『虎の子の900億円がほぼゼロに コロナ対策という想定外の出費以外にも、大きな落とし穴がある。東京2020オリンピック・パラリンピックの負の遺産である。無観客開催により、組織委員会にとって虎の子の収入源だったチケット収入900億円はほぼゼロになった。時限的に設置された組織委に代わり、いったい誰が赤字を補するのか。 また、東京2020大会全体の収支次第では巨額の損失が発生するが、国との間で負債の押し付け合いが行われるのは必至だ。 東京都が開催都市として無傷でいられるはずはない。) さらには、東京アクアティクスセンターなど、東京都が建設した新規恒久施設は、都政にとって厄介なお荷物になる可能性が高い。今後、各施設の限定的な収入と膨大な維持管理費とのアンバランスに東京都は長期間、苦しめられることになるだろう。 鈴木知事が有楽町から西新宿に都庁本庁舎を移転させた見返りに東京の東側の地域に建設した、江戸東京博物館などの公共施設が、そのランニングコストによって都政を苦しめた過去とみごとにオーバーラップする。歴史は繰り返す。ビッグイベントの後始末が今後、都政に重くのしかかってくるのだ。 コロナと五輪が都財政に残した傷は深い。順風満帆だった都財政は一気に谷底に落とされる。数年で回復することなど望むべくもない』、「東京アクアティクスセンターなど、東京都が建設した新規恒久施設は、都政にとって厄介なお荷物になる可能性が高い。今後、各施設の限定的な収入と膨大な維持管理費とのアンバランスに東京都は長期間、苦しめられることになるだろう」、「コロナと五輪が都財政に残した傷は深い。順風満帆だった都財政は一気に谷底に落とされる。数年で回復することなど望むべくもない」、その通りだ。
・『さらに根深い問題も… 問題はそれだけではない。小池都政の5年間で都庁の官僚組織が疲弊したのだ。自分ファーストのトップは自らの権力基盤を固めるため、極端な情実人事と報復人事を繰り返した。局長級であっても知事にもの申せば、容赦なく降格させられた。都庁官僚は極度に萎縮し、イエスマンだけが生き残る悪しき風習が蔓延した。 加えて、東京都は人余りの時代を迎える。財政が順調だった直近の約10年間、毎年、千数百人規模で新規職員を採用した。五輪需要への対応という側面もあった。事実、組織委へは東京都から千数百人の現役職員が出向していたが、彼らは役割が終わったからといってクビを切られる訳ではない。短期的にはコロナ対応で人手不足の状態であっても、中長期的には大量採用のツケで余剰人員を抱え込むことになる。すでに新規採用枠の大幅な縮小が始まっている。 都政はこの先、財政も組織も人員も「氷点下の時代」に突入せざるを得ない。今後、東京都に必要なのはパフォーマンスに明け暮れる都知事ではない。批判を恐れず都民のために地道に汗をかくトップでなければ、都民・事業者の生命・財産を守り抜くことはできない』、「自分ファーストのトップは自らの権力基盤を固めるため、極端な情実人事と報復人事を繰り返した。局長級であっても知事にもの申せば、容赦なく降格させられた。都庁官僚は極度に萎縮し、イエスマンだけが生き残る悪しき風習が蔓延した。 加えて、東京都は人余りの時代を迎える。財政が順調だった直近の約10年間、毎年、千数百人規模で新規職員を採用」、「短期的にはコロナ対応で人手不足の状態であっても、中長期的には大量採用のツケで余剰人員を抱え込むことになる。すでに新規採用枠の大幅な縮小が始まっている」、「今後、東京都に必要なのはパフォーマンスに明け暮れる都知事ではない。批判を恐れず都民のために地道に汗をかくトップでなければ、都民・事業者の生命・財産を守り抜くことはできない」、さすが東京都の中枢にいただけあって、説得力がある。
次に、本年2月23日付け日刊ゲンダイ「伐採女帝・小池都知事が“騙し討ち”! 神宮外苑樹木「743本→3000本」切り倒しのトンデモ」を紹介しよう。
・『何本切る気なのか。東京都による都立葛西臨海公園(江戸川区)の樹木1400本伐採計画に批判が集まる中、小池都知事はまだまだ大量の樹木を切り倒すつもりだ。 東京・新宿区などにまたがる明治神宮外苑の再開発に伴い、三井不動産などで構成する事業者はエリア全域で743本の樹木を伐採する計画を示していた。ところが、実際に切り倒す本数はその程度では済まない。再開発エリアの一部である「神宮第2球場」の解体工事だけで約3000本もの「低木」が伐採されることが発覚したのだ。 そのきっかけは、事業者が17日、新宿区に第2球場周辺の工事に伴う樹木の伐採許可申請を提出したこと。区の都市計画部・建築指導課の担当者はこう言う』、「都立葛西臨海公園(江戸川区)の樹木1400本伐採計画」の他に、「明治神宮外苑の再開発」では、「743本の樹木を伐採する計画」、さらに「再開発エリアの一部である「神宮第2球場」の解体工事だけで約3000本もの「低木」が伐採されることが発覚」、なんと安易に「伐採」を許可するのに驚かされた。
・『3メートル未満はカウントせず 「高さ3メートル未満の低木は環境アセスメントの対象外なので、工事に伴い何本伐採されるのか、これまで示されてこなかった。そのため、以前から事業者に本数を調査するよう依頼していた。17日の許可申請で、3000本弱が伐採対象だと事業者から伝えられたのです」) 外苑再開発は、都が認可済み。解体工事は来月下旬に始まる予定だが、こうなると、今後、他エリアの工事でも、大量の低木が伐採される恐れがある。伐採本数を「743本」と公表しながら、フタを開けたら「3000本」なんてフザケた話だ。本数を低く見せる「過少申告」を疑う向きも多いはずだ。 実際、都の事業認可の基となった環境アセス評価書にも“虚偽申請”が含まれている可能性がある。それを指摘するのは、ユネスコの諮問機関「日本イコモス国内委員会」だ。20日の会見で、委員の石川幹子・中央大研究開発機構教授は「評価書で(外苑の)建国記念文庫の森は『一部改変』とあるが、実際は61%の樹木が伐採・移植される。明らかな虚偽だ」とし、工事着工の中止を求めた。 61%を「一部」と表現するなんて騙し討ちだろう。小池知事は事業認可について「法令にのっとって適切に行った」と言っていたが、この調子では、後から続々と伐採本数が増えていってもおかしくない。 「工事の主体は事業者とはいえ、認可する立場の都が『知らなかった』では済まされません。もっと早いタイミングで樹木が何本伐採されるのか精査し、積極的に公表すべきでした。これでは、大量伐採せざるを得ない事実を知りながら、批判を避ける狙いで“見て見ぬフリ”をしたと受け止められても仕方ありません」(建築エコノミストの森山高至氏) このまま「伐採女帝」はバッサバッサと樹木を切りまくるのか』、「「高さ3メートル未満の低木は環境アセスメントの対象外」だとしても、それを含めて公表すべきだ。「もっと早いタイミングで樹木が何本伐採されるのか精査し、積極的に公表すべきでした。これでは、大量伐採せざるを得ない事実を知りながら、批判を避ける狙いで“見て見ぬフリ”をしたと受け止められても仕方ありません」、同感である。
第三に、3月30日付けAERAdot「「木の伐採が多すぎる」 超党派の議員連盟も求める「神宮外苑再開発計画」の見直し」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/aera/2023032800057.html?page=1
・『市民らが反対する明治神宮外苑の再開発を巡り、超党派の議員連盟も見直しを求めている。何が問題なのか。議連の発起人代表で自民党の船田元衆院議員に聞いた。AERA 2023年4月3日号より紹介する(Qは聞き手の質問)。 Q:─船田元議員は発起人代表として昨年11月に超党派の「神宮外苑の自然と歴史・文化を守る国会議員連盟」を立ち上げました。6党の28人が加わっています。再開発見直しを求めていますが、具体的な最終目標は。 船田元(以下、船田):所有者である明治神宮やいくつかの人たちが所有する私有地ですので、法律や条例にのっとって再開発をすること自体を止めるつもりはございません。ただ、やはり木の伐採が多すぎる(低木も含め新宿区内だけで約3千本)。また、あの場所で高層ビルを三つも建てるのはいかがなものでしょうか。歴史や自然や文化を守れるように計画を大幅に修正していただきたい』、「明治神宮外苑の再開発を巡り、超党派の議員連盟も見直しを求めている」、「発起人代表で自民党の船田元衆院議員」、有力議員が「発起人代表」とは心強い。
・『小池都知事には会えず Q:これまでの議連の活動は。 船田:1月に計画を抜本的に見直すことを求める決議文をまとめ、永岡桂子文部科学大臣と環境省の政務官、それから東京都は小池百合子知事が会ってくれないので担当部局の技監に直接お会いして手渡しました。港区長、新宿区長、明治神宮の宮司様には郵送しました。郵送への返事はありません。実は小池知事には先日お会いしようともう一回アプローチをしたんですけれども、全くだめでした。私が信書を書いてお届けしましたが、それにも回答はありません。 Q:2月、都が再開発の認可をしました。3月下旬から工事が始まります。 船田:都の環境影響評価審議会で、座長さんが「これで全て終了」という宣言はしていません。再開発を推進するディベロッパーの方々の環境を保全するための新たな提案が出されない状況のまま工事認可が下りたことは、明らかに見切り発車だと解釈せざるを得ないと思います』、「小池知事には先日お会いしようともう一回アプローチをしたんですけれども、全くだめでした。私が信書を書いてお届けしましたが、それにも回答はありません」、冷たい対応だ。「都の環境影響評価審議会で、座長さんが「これで全て終了」という宣言はしていません。再開発を推進するディベロッパーの方々の環境を保全するための新たな提案が出されない状況のまま工事認可が下りたことは、明らかに見切り発車だと解釈せざるを得ない」、「見切り発車」とは不当だ。
・『圧力や不利益は覚悟 Q:船田議員の地元は宇都宮市(栃木1区)ですが。 船田:私は宇都宮とともに東京にも自宅があり、東京の自宅は南青山です。神宮外苑のイチョウ並木まで徒歩10分以内の場所です。犬の散歩で並木を通ることもあります。憩いの場所なんです。 もう一つ。大正時代、全国の青年団が寄付を持ち寄り、土木工事をして神宮外苑を造園しました。たまたま私の大学時代の卒業論文が「戦前の日本の青年団の研究」でしたから、当時の青年団や奉仕団の皆さんの思いを考えると、神宮外苑をどんどん改変してしまっていいのかという問題意識がありました。) Q:神宮外苑の再開発に自民党の議員が関わったと言われています。森喜朗元首相や菅義偉前首相らの名前も報じられました。 船田:私は自民党議員ではありますが、自民党の政策の決定過程でよくないなと思うことについては、これは違うよとかなりはっきり言ってきた人間なんですね。森先生らの名前が出ましたが、どう関与したかは全く私にはわかりません。ですが、噂(うわさ)があるからこの運動をするのをやめようとか考えたことは一度もない。 Q:森元首相らとこの件について話したことはないですか。 船田:一度もないです。菅さんとは国会で席が隣ですが、この件の話をしたことは一度もありません。話して再開発が止まるんであれば、話しますけどね。行政の方にきちんと話をするほうが実効性があると私は思っています。 Q:ご自身が動くことで、政治家としてのデメリットは。 船田:安倍(晋三)政権のときに憲法の改正問題や集団的自衛権の行使の問題について「早すぎる」「憲法改正をしないといけませんよ」と言ったもんですからね。安倍さんからにらまれたところが相当ありました。でも、憎まれ口をたたくのが私の仕事だと思いましたので。圧力や不利益は覚悟の上でしていることです』、「菅さんとは国会で席が隣ですが、この件の話をしたことは一度もありません。話して再開発が止まるんであれば、話しますけどね。行政の方にきちんと話をするほうが実効性があると私は思っています」、確かに「行政の方にきちんと話をするほうが実効性がある」、その通りだろう。
第四に、4月4日付け日刊ゲンダイ「坂本龍一氏の死で小池知事が大炎上 再開発計画見直し「神宮に言え」の冷酷ぶり蒸し返される」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/321006
・『このところ国民的な話題性に欠いてきた東京都の小池知事が大炎上している。 明治神宮外苑再開発をめぐり、見直しを訴えた音楽家の故・坂本龍一氏に対するナメた態度を蒸し返され、猛反発を買っているのだ。注目が活力源の女帝も珍しく貝になっている。 コトの発端は2036年完成を目指し、強行された再開発事業だ。事業者は明治神宮、日本スポーツ振興センターなど。樹木の大量伐採が懸念される中、都が施工を認可し、先月22日に本格的工事が始まった。 反対する超党派議連の発起人代表、自民党の船田元・衆院議員は小池知事に面会を2回申し入れたが、「多忙」を理由に断られたという。ちなみに、2人は旧新進党で同じ釜の飯を食った仲間だ。 オンライン署名「神宮外苑1000本の樹木を切らないで」への賛同も広がる中、坂本氏はがん闘病中の2月に「再開発計画を中断し、計画を見直すべきです」などとした手紙を小池知事などに送付。先月17日の会見で受け止めを聞かれた小池知事の反応はこうだった。 「都や新宿区、文科省、国などに宛てられたと思います。ぜひ事業者でもある明治神宮にも手紙を送られた方がいいんじゃないでしょうか」』、「小池知事が大炎上している。 明治神宮外苑再開発をめぐり、見直しを訴えた音楽家の故・坂本龍一氏に対するナメた態度を蒸し返され、猛反発を買っているのだ」、「反対する超党派議連の発起人代表、自民党の船田元・衆院議員は小池知事に面会を2回申し入れたが、「多忙」を理由に断られたという。ちなみに、2人は旧新進党で同じ釜の飯を食った仲間だ」、「小池知事」の対応の冷淡さはおどろくほどだ。
・『安倍元首相は小池知事「ジョーカー」にたとえる 冷酷そのものだ。衆院議員から転身を図った16年の都知事選では「築地は守る」をスローガンに、市場移転のちゃぶ台返しで票を集めたくせに、利用価値がなければケンモホロロ。もっとも、こうした小池知事の癖はいまに始まったことではない。そのあたり、安倍元首相が「安倍晋三回顧録」でエピソード交じりに語った「小池評」が妙に刺さる。 〈12年の総裁選の前に、小池さんから「政治資金パーティーに来て、講演してほしい」と言われて、彼女のために講演したのです。野党時代は、パーティー券を売るのも大変でした。その代わり、小池さんは総裁選で支持してくれる、という話があったのですが、実際は石破さんを応援したのですね〉 小池知事を「トランプのジョーカー」と見立てる安倍元首相はこうも言っていた。 〈小池さんはいい人ですよ。いい人だし、人たらしでもある。相手に勢いがある時は、近づいてくるのです。2016年に知事に就任した当初は、私の背中をさすりながら話しかけてきて、次の衆院選では自民党の応援に行きますからね、とまで言っていたのです。しかし、相手を倒せると思った時は、バッとやってきて、横っ腹を刺すんです〉 小池知事の任期は来年まで。逃げ得を許したらダメだ』、「小池知事を「トランプのジョーカー」と見立てる安倍元首相はこうも言っていた。〈小池さんはいい人ですよ。いい人だし、人たらしでもある。相手に勢いがある時は、近づいてくるのです。2016年に知事に就任した当初は、私の背中をさすりながら話しかけてきて、次の衆院選では自民党の応援に行きますからね、とまで言っていたのです。しかし、相手を倒せると思った時は、バッとやってきて、横っ腹を刺すんです〉、「人たらしでもある。相手に勢いがある時は、近づいてくるのです。2016年に知事に就任した当初は、私の背中をさすりながら話しかけてきて、次の衆院選では自民党の応援に行きますからね、とまで言っていたのです。しかし、相手を倒せると思った時は、バッとやってきて、横っ腹を刺すんです〉、「知事に就任した当初は、私の背中をさすりながら話しかけてきて、次の衆院選では自民党の応援に行きますからね、とまで言っていた」、「人たらし」の面目躍如だ。「相手を倒せると思った時は、バッとやってきて、横っ腹を刺す」、こんなに冷血無比なのに、都民ファーストの会などの取り巻きがいまだに存在するとは、不思議だ。
タグ:文春オンライン 小池都知事問題 (その7)(虎の子の900億円がほぼゼロに・・・コロナと五輪で全て“ボロボロ”小池都政が迎える「氷点下の時代」、伐採女帝・小池都知事が“騙し討ち”! 神宮外苑樹木「743本→3000本」切り倒しのトンデモ、「木の伐採が多すぎる」 超党派の議員連盟も求める「神宮外苑再開発計画」の見直し、坂本龍一氏の死で小池知事が大炎上 再開発計画見直し「神宮に言え」の冷酷ぶり蒸し返される) 澤 章氏による「虎の子の900億円がほぼゼロに・・・コロナと五輪で全て“ボロボロ”小池都政が迎える「氷点下の時代」」 「小池知事」は「初当選の際に約束した「7つのゼロ」のうち、達成とされているのは犬猫殺処分ゼロだけだ。満員電車ゼロに至っては、新型コロナ感染拡大によってテレワークが普及したが、一向に実現される気配はない。 しかも、有権者である都民自身が、公約のことなど選挙が終わった途端にころっと忘れてしまう」、本来はマスコミが指摘すべきだが、小池知事に遠慮して控えているようだ。 「鈴木都政末期から悪化した都財政は、2000年前後に危機的な状態に陥っていた」、「都職員の給与カットや新規採用の大幅抑制なども断行された」、そんな時代があったことを思い出した。 「そうした取組の結果、都財政は健全性を回復し、猪瀬・舛添・小池の時代には、4~5兆円の安定した都税収入に支えられて自由に使える予算が毎年用意された。これを奇貨として無駄遣いに明け暮れたのが小池都政1期目である。その頃、一般会計の予算規模は中期的に6兆円台で推移していたが、小池知事になると7兆円台の高い水準に乗せた」、 「コロナの感染拡大が襲った。営業自粛の協力金を中心に補正予算を繰り返し編成し積み上げた結果、2021年度の一般会計は当初の7兆円台から10兆円を優に超える規模にまで急激に膨張した」、「コロナによる景気低迷で税収が落ち込むのは正にこれからなのだ」、さてどの程度、悪化するのだろう。 「東京アクアティクスセンターなど、東京都が建設した新規恒久施設は、都政にとって厄介なお荷物になる可能性が高い。今後、各施設の限定的な収入と膨大な維持管理費とのアンバランスに東京都は長期間、苦しめられることになるだろう」、「コロナと五輪が都財政に残した傷は深い。順風満帆だった都財政は一気に谷底に落とされる。数年で回復することなど望むべくもない」、その通りだ。 「自分ファーストのトップは自らの権力基盤を固めるため、極端な情実人事と報復人事を繰り返した。局長級であっても知事にもの申せば、容赦なく降格させられた。都庁官僚は極度に萎縮し、イエスマンだけが生き残る悪しき風習が蔓延した。 加えて、東京都は人余りの時代を迎える。財政が順調だった直近の約10年間、毎年、千数百人規模で新規職員を採用」、「短期的にはコロナ対応で人手不足の状態であっても、中長期的には大量採用のツケで余剰人員を抱え込むことになる。すでに新規採用枠の大幅な縮小が始まっている」、 「今後、東京都に必要なのはパフォーマンスに明け暮れる都知事ではない。批判を恐れず都民のために地道に汗をかくトップでなければ、都民・事業者の生命・財産を守り抜くことはできない」、さすが東京都の中枢にいただけあって、説得力がある。 日刊ゲンダイ「伐採女帝・小池都知事が“騙し討ち”! 神宮外苑樹木「743本→3000本」切り倒しのトンデモ」 「都立葛西臨海公園(江戸川区)の樹木1400本伐採計画」の他に、「明治神宮外苑の再開発」では、「743本の樹木を伐採する計画」、さらに「再開発エリアの一部である「神宮第2球場」の解体工事だけで約3000本もの「低木」が伐採されることが発覚」、なんと安易に「伐採」を許可するのに驚かされた。 「「高さ3メートル未満の低木は環境アセスメントの対象外」だとしても、それを含めて公表すべきだ。「もっと早いタイミングで樹木が何本伐採されるのか精査し、積極的に公表すべきでした。これでは、大量伐採せざるを得ない事実を知りながら、批判を避ける狙いで“見て見ぬフリ”をしたと受け止められても仕方ありません」、同感である。 AERAdot「「木の伐採が多すぎる」 超党派の議員連盟も求める「神宮外苑再開発計画」の見直し」 「明治神宮外苑の再開発を巡り、超党派の議員連盟も見直しを求めている」、「発起人代表で自民党の船田元衆院議員」、有力議員が「発起人代表」とは心強い。 「小池知事には先日お会いしようともう一回アプローチをしたんですけれども、全くだめでした。私が信書を書いてお届けしましたが、それにも回答はありません」、 「都の環境影響評価審議会で、座長さんが「これで全て終了」という宣言はしていません。再開発を推進するディベロッパーの方々の環境を保全するための新たな提案が出されない状況のまま工事認可が下りたことは、明らかに見切り発車だと解釈せざるを得ない」、「見切り発車」とは不当だ。 「菅さんとは国会で席が隣ですが、この件の話をしたことは一度もありません。話して再開発が止まるんであれば、話しますけどね。行政の方にきちんと話をするほうが実効性があると私は思っています」、確かに「行政の方にきちんと話をするほうが実効性がある」、その通りだろう。 日刊ゲンダイ「坂本龍一氏の死で小池知事が大炎上 再開発計画見直し「神宮に言え」の冷酷ぶり蒸し返される」 「小池知事が大炎上している。 明治神宮外苑再開発をめぐり、見直しを訴えた音楽家の故・坂本龍一氏に対するナメた態度を蒸し返され、猛反発を買っているのだ」、「反対する超党派議連の発起人代表、自民党の船田元・衆院議員は小池知事に面会を2回申し入れたが、「多忙」を理由に断られたという。ちなみに、2人は旧新進党で同じ釜の飯を食った仲間だ」、「小池知事」の対応の冷淡さはおどろくほどだ。 「小池知事を「トランプのジョーカー」と見立てる安倍元首相はこうも言っていた。〈小池さんはいい人ですよ。いい人だし、人たらしでもある。相手に勢いがある時は、近づいてくるのです。2016年に知事に就任した当初は、私の背中をさすりながら話しかけてきて、次の衆院選では自民党の応援に行きますからね、とまで言っていたのです。しかし、相手を倒せると思った時は、バッとやってきて、横っ腹を刺すんです〉、 「人たらしでもある。相手に勢いがある時は、近づいてくるのです。2016年に知事に就任した当初は、私の背中をさすりながら話しかけてきて、次の衆院選では自民党の応援に行きますからね、とまで言っていたのです。しかし、相手を倒せると思った時は、バッとやってきて、横っ腹を刺すんです〉、「知事に就任した当初は、私の背中をさすりながら話しかけてきて、次の衆院選では自民党の応援に行きますからね、とまで言っていた」、「人たらし」の面目躍如だ。 「相手を倒せると思った時は、バッとやってきて、横っ腹を刺す」、こんなに冷血無比なのに、都民ファーストの会などの取り巻きがいまだに存在するとは、不思議だ。
幼児虐待(その8)(わいせつ事件があった「キッズライン」でまた不祥事 経沢香保子社長の「涙の謝罪」は何だったのか〈dot.〉、大和市7歳児殺害事件で母逮捕…家裁が児相の入所要求を却下したプロセスは?、大和市7歳児殺害事件で母逮捕…家裁が児相の入所要求を却下したプロセスは?、5歳児虐待死で再逮捕…同居男女3人「異様な関係と凄惨な暴行」、子ども時代の「虐待経験」が 糖尿病や高コレステロール血症に影響か) [社会]
幼児虐待については、2020年10月7日に取上げた。久しぶりの今日は、(その8)(わいせつ事件があった「キッズライン」でまた不祥事 経沢香保子社長の「涙の謝罪」は何だったのか〈dot.〉、大和市7歳児殺害事件で母逮捕…家裁が児相の入所要求を却下したプロセスは?、大和市7歳児殺害事件で母逮捕…家裁が児相の入所要求を却下したプロセスは?、5歳児虐待死で再逮捕…同居男女3人「異様な関係と凄惨な暴行」、子ども時代の「虐待経験」が 糖尿病や高コレステロール血症に影響か)である。
先ずは、2021年1月30日付けAERAdot「わいせつ事件があった「キッズライン」でまた不祥事 経沢香保子社長の「涙の謝罪」は何だったのか〈dot.〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2021012900095.html?page=1
・『昨春、登録していたベビーシッターが相次いでわいせつ事件を起こした「キッズライン」でまたも不祥事が発覚した。今度は、法律で義務付けられている自治体への届け出をしていないシッターを多数登録していたことが発覚。政府は補助金の返還を求める方針だとしている。シッターによるわいせつ事件は社会問題となり、法改正の動きにまで発展した。昨秋には同社の経沢香保子社長も複数のメディアの取材に涙を浮かべながら反省と謝罪を述べていた。それからわずか4カ月――不祥事が繰り返される背景には何があるのか。 28日の昼、FNNプライムオンラインで<【独自】キッズライン 補助金返還要求へ 無届けシッター75人>と題する記事が配信された。 1月25日時点で、キッズラインには法律で義務付けられた届けが確認できないシッターが75人おり、半数とは連絡が取れない状態であること、これを受けて内閣府は同社に補助金の返還を求める方針であることが報じられた。返還額は1000万円規模になりそうだという具体的な記述もあり、「その辺を歩いている見知らぬ人に子どもを預けるのと一緒だ」という内閣府関係者の批判も紹介された。 なぜこのような事態になったのか。キッズラインによると、シッターの届け出は、登録時にシッター自身が自治体に提出する記入済みの認可外保育施設設置届の写しをデータでアップロードする決まりになっており、同社はそれで確認をしていたという。しかし、その後に届け出書が自治体に受理されたかどうかを確認するフローがなく、無届けのシッターが登録されてしまったという。 「最後まで確認を行っていなかったことは、当社の法令理解の不十分さによるものだと考えています」(キッズライン広報) 現在はフローを改善して、複数の方法で自治体への提出を確認できるように改めたという。 内閣府は、無届けのシッターにかかわる補助金を3月12日までに返還するように求めている。金額はフジテレビの報道では「1000万円規模」となっているが、キッズラインは「正確な金額については現在調査中です」(広報)と回答した。) 昨年の4月と6月に起きたシッターによるわいせつ事件は、本サイトも含めた一部メディアが報じた後に、ようやくキッズラインも事実を公表したという経緯がある。今回の無届け問題も昨年8月に自治体からの指摘で発覚していたが、同社がこの件をホームページに掲載したのは昨年12月28日だった』、「キッズライン」については、前回2020年10月7日にも取上げた。一向に改善してないようだ。
・『昨年からキッズラインの問題を追求してきたジャーナリストの中野円佳氏は、同社で不祥事が続く背景をこう指摘する。 「組織のガバナンス不足が大きな要因だと思います。経沢香保子社長はゼロから事業を立ち上げて規模を拡大していくことは上手ですが、ビジョン先行型で、質への配慮は苦手な印象を受けます。しかし保育事業という子どもの命を預かる仕事は、リスクを限りなくゼロに近づける努力が必要な領域です。その観点で仕組みを構築する参謀、片腕のような人がキッズラインにはいないのでしょう。経沢さんに意見を上げにくい雰囲気、異論を出しにくい社風も根底にあったと聞いています」 中野氏は、わいせつ事件が起こった後の昨年9月、経沢氏にオンラインでインタビューをしている。その際、経沢氏は組織の抜本的改革と自身の意識改善などを涙ながらに訴えていた。また、シッター無届け問題でも今年1月に中野氏は直接話を聞いており、経沢氏は「コンプライアンス第一という認識の甘さ」を反省していた。だが、社長がいくら反省と謝罪を繰り返しても、不祥事が止まらない。経沢氏が語っていた言葉は一体なんだったのか。 SNSの発信なども見ていて、経沢さんは『コトの重大性が本当にわかっているのだろうか』と感じることはありました。取材時の印象としても、言葉が軽く、会社全体としても切迫感が感じられない。事業に対する熱い思いはわかるのですが、わいせつ事件や世の中からの批判に対しては、自分たちも“被害者”と感じているのかもしれません。だから、不祥事も報道や外部からの指摘があってから、後手後手で対応することになる。自分たちの組織を自分たちの手でよくしていこうという自浄作用が働いていないことは、大きな問題だと思います」(同)) 今回は、閣僚からも苦言が呈された。共同通信によると、29日、坂本哲志少子化対策担当相は記者会見で「大変遺憾だ」と述べたうえで、キッズラインについて「(過去に)わいせつ事案もあった」と指摘。「子どもや親のためしっかり厳しく取り組まなければならない」と強調したという。 地域政党「自由を守る会」代表の上田令子都議は、昨年からキッズラインの企業姿勢に疑問を持ち、東京都にベビーシッター利用支援事業の認定基準の見直しなどを求めてきた。上田氏は「補助金返還は当然だ」としたうえで、次のように語る。 「補助金を返したら終わり、では済まされない行為です。75人も無届けのシッターがいたこともさることながら、連絡がつかない人が半数以上いたことはもっと問題です。会社でシッターの管理がまったくできていなかったわけであり、子どもの命を預かる事業者として不適格です。内閣府は割引券等取扱事業者としての認定を取り消すべきだと思います。内閣府が取り消せば、東京都も追随せざる得ません。行政が厳しい措置を取らなければ、昨年と同じような事件が、いつまた起こるかわかりません」 キッズラインは補助金返還の負担についてこう回答した。 「補助金の返還要請につきましては、(シッター個人ではなく)当社が全額負担いたします」 繰り返されるキッズラインの不祥事。たとえお金を返したとしても、利用者や世間からの「信用」を取り戻すことは容易ではない』、「ジャーナリストの中野円佳氏は」、「経沢香保子社長はゼロから事業を立ち上げて規模を拡大していくことは上手ですが、ビジョン先行型で、質への配慮は苦手な印象を受けます。しかし保育事業という子どもの命を預かる仕事は、リスクを限りなくゼロに近づける努力が必要な領域です。その観点で仕組みを構築する参謀、片腕のような人がキッズラインにはいないのでしょう。経沢さんに意見を上げにくい雰囲気、異論を出しにくい社風も根底にあったと聞いています」、この体質が続いているようだ。「経沢(社長)さんは『コトの重大性が本当にわかっているのだろうか』と感じることはありました。取材時の印象としても、言葉が軽く、会社全体としても切迫感が感じられない。事業に対する熱い思いはわかるのですが、わいせつ事件や世の中からの批判に対しては、自分たちも“被害者”と感じているのかもしれません。だから、不祥事も報道や外部からの指摘があってから、後手後手で対応することになる。自分たちの組織を自分たちの手でよくしていこうという自浄作用が働いていないことは、大きな問題だと思います」、「自分たちも“被害者”と感じているのかもしれません」、とはフザケタ話だ。
次に、本年3月8日付け弁護士ドットコム「大和市7歳児殺害事件で母逮捕…家裁が児相の入所要求を却下したプロセスは?」を紹介しよう。
https://www.bengo4.com/c_1009/n_14194/
・『2019年8月に当時小学1年生の次男(7歳)を自宅で殺害したとして、次男の母親が2月20日、神奈川県警に殺人容疑で逮捕された事件が波紋を呼んでいる。 報道などによると、次男は生後5カ月で心肺停止となった際に神奈川県大和綾瀬地域児童相談所に保護された。約2年半後に帰宅したものの、その後三男が死亡するという出来事があったことから、同児相は2017年4月に2度目の一時保護を実施した。 一時保護中の次男が「お母さんに投げ飛ばされて口から血が出た」などと話したこともあったことから、同児相は「施設入所措置が適当」との方針を決定。しかし、同施設への入所の同意が母親から得られなかった。 そのため、同児相は2018年2月、次男の入所を求めて横浜家裁に審判の申立てをおこなったが、同家裁は「保護者が故意に何かをしたという根拠はない」などとして、同年10月に申立てを却下。自宅に戻った次男は約9カ月後に死亡した。 女性には次男の他に3人の子どもがいたが、長男と長女は乳児期に死亡。三男も1歳5カ月で急死していた。もっとも、この点について、同家裁では保護者の責任で死亡した根拠がないと判断されたようだ。 事件の詳細はまだ明らかになっていないが、2度保護した児相の申立てを家裁が却下したことで自宅に戻った次男が結果として死亡したことから、家裁の判断も議論を呼びそうだ。一般的に、児相の申立てに対して、家裁はどのようなプロセスで判断するのだろうか。高橋麻理弁護士に聞いた』、「横浜家裁」は証拠にこだわって常識的な判断を避けているようだ。
・『申立ては「施設入所に親権者が反対した場合」におこなわれる(Qは聞き手の質問、Aは回答) Q:児童相談所が家庭裁判所に対して施設入所を求める申立てとはどのようなものでしょうか。 A:児相は、親権者が反対しているときでも、家裁の承認を得ることによって、子どもについて施設入所等の措置をとることができるということが児童福祉法で定められています。 家裁の承認を得るためには、(1)保護者が、子どもを虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく子どもの福祉を害する場合、(2)施設入所等の措置をとることが子どもの親権者等の意に反する場合、という2つの要件を満たす必要があります。 Q:具体的にどのようなときに申し立てをおこなうのでしょうか。 A:一時保護している子どもについて、「子どもを保護者のもとに戻すことが子どものためによくない。施設入所が望ましい」と思われる場合です。 一時保護とは、子どもの安全確保をするとともに、今後の子どもや家族に対し、どのようなかかわり方をしたほうがよいかという方針を決めるための手続きです。一時保護は無制限にはおこなえず、原則として2カ月を超えてはならないことになっています。 児相は、その一時保護の期間に、その後、子どもを家庭で引き取るのがよいのか、児童養護施設等に入所させたほうがよいのかなどという方針を決めます。 もっとも、児童養護施設等に入所させたほうがよいと判断しても、法律上、子どもの親権者が反対したら、その意思に反して施設入所等させることができません。 子どもの親権者に反対されたら、施設入所等させることができなくなってしまうと、救わなければならない子どもを救えない事態も発生してしまうでしょう。そのような場合におこなわれるのが今回のような家裁への申立てです』、「施設入所等」への「親権者に反対」された場合の判断なので、「家裁」が判断する他ない。
・『申立てを受けた家庭裁判所の判断プロセス Q:申立てを受けた家庭裁判所はどのように対応するのでしょうか。 A:申立てを受けた家裁は、申立てが不適法なとき、申立てに理由がないことが明らかなときを除いて、子どもを現に監護する者、子どもに対して親権を行う者、子どもの未成年後見人、子ども自身(15歳以上の場合のみ)の陳述を聴かなければならないことになっています。 Q:家裁は、子どもの親権者などからどのような話を聞くのでしょうか。 A:まず、児相による申立てが認められるための要件の1つでもある、「児相が主張する『子どもについて施設入所等の措置をとるべき』ということについて反対の意向を持っているのか」という点について確認します。 裁判官の示唆を踏まえて、親権者らが同意するということもあり得るからです。 親権者らが、子どもを施設入所等させることについて同意するということになれば、家裁が承認するための要件を欠くことになるため、申立ての却下または児相に申立ての取り下げを示唆するという流れになるでしょう。 親権者らが、子どもの施設入所等に反対する意向が明確になった場合は、家裁は、申立ての実情に関する事実関係について、親権者らに確認します。 児相は、申立てにあたり、「なぜ、子どもを保護者のもとに戻すことが子どもの福祉のためにならないと考えるか」、「なぜ、施設入所等の措置が必要であると考えるか」ということを裏付ける事実を主張します。 保護者が子どもを虐待していること、子どもが生きていくために必要な保護等を著しく怠っていること、これからも保護者が虐待等に及ぶ可能性が高いことなどを具体的に主張します。 家裁は、その児相の主張する事実関係について、争いないのか、それとも、前提となる事実が間違っているのか、親権者らの認識を明らかにするため、親権者らの言い分を確認するのです。 Q:当事者の言い分や主張以外にも家裁の判断材料となるものはありますか。 A:家裁は通常、当事者の言い分などを踏まえた上で、子どもの状況や家庭環境等について、家庭裁判所調査官に調査命令を下します。 家庭裁判所調査官は、家裁で取り扱っている家事事件や少年事件について調査を行うことを主な仕事としており、子どもに面接をして、問題の原因や背景を調査したり、必要に応じて社会福祉や医療などの関係機関との連絡等を行い、子どもにとってどのような対応が望ましいかという意見を裁判官に報告します。 裁判官は、家庭裁判所調査官の報告を踏まえ、主張する事実に食い違いがある場合には調査結果や、児相が主張を裏付けるために提出する資料、審問期日での親権者らの陳述等をもとに、何が事実なのか判断したうえで、子どもについて施設入所等の措置をとるべきなのかについて検討して結論を出します。 Q:判断結果について不服のある当事者がさらに争う手立てはあるのでしょうか。 A:不服申立ての手続きとして、「即時抗告」があります。 児相の申立てに対し、家裁が承認するという結果が出た場合には親権者らが、申立てを却下するという結果が出た場合には申立人である児相が即時抗告することができます。即時抗告は、審判の告知がされた日から2週間以内にする必要があります』、「家裁は通常、当事者の言い分などを踏まえた上で、子どもの状況や家庭環境等について、家庭裁判所調査官に調査命令を下します。 家庭裁判所調査官は、家裁で取り扱っている家事事件や少年事件について調査を行うことを主な仕事としており、子どもに面接をして、問題の原因や背景を調査したり、必要に応じて社会福祉や医療などの関係機関との連絡等を行い、子どもにとってどのような対応が望ましいかという意見を裁判官に報告します」、下調べをするようだ。
・『「必ずしも多くの判断材料がそろうケースばかりではない」 Q:児童相談所の対応や家庭裁判所の判断に関する是非が今後問われそうです。 A:事実関係がまだよくわからない状態で、具体的なコメントは難しいところです。 ただ、全国的に見ても、児相による施設入所を求める申立てについては認容率が8割程度と高く、却下件数は少ないです。 そのような中で、本件がなぜ却下となったのか、という点を疑問に思う声はあると思います。 一般論で考えたとき、家裁の判断の前提となる材料は十分にそろっていたのかは気になるところです。もっとも、家庭内で起きた出来事について、必ずしも多くの判断材料がそろうケースばかりではないでしょう。 刑事裁判の場合は、「疑わしきは罰せず」という大原則があります。 もし、このような考え方が、子の福祉にかかわる審判の判断過程に持ち込まれると、特に、判断材料が集まりにくいケースでは、救えたはずの子どもを救えなくなる事態も生じかねません。家裁における事実認定のありかたについても考えるべき点があるのではないかと思えます』、「判断材料が集まりにくいケースでは、救えたはずの子どもを救えなくなる事態も生じかねません。家裁における事実認定のありかたについても考えるべき点があるのではないか」、その通りだ。
第三に、3月31日付けFRIDAY「5歳児虐待死で再逮捕…同居男女3人「異様な関係と凄惨な暴行」」を紹介しよう。
https://friday.kodansha.co.jp/article/236722
・『「床に投げ飛ばした。しつけのためだった」 母親ら3人の容疑者の供述から、幼い子どもの遺体が地中から発見された痛ましい事件の全容が、ようやく明らかになりつつある。 埼玉県本庄市に住む柿本歩夢(あゆむ)君(当時5)の遺体が、自宅の庭から見つかったのは今年3月5日。埼玉県警は3月26日、歩夢君を自宅の床に何度も投げ飛ばすなどして死亡させたとし、母親の柿本知香(30)、丹羽洋樹(34)、石井陽子(54)の3容疑者を傷害致死容疑で再逮捕した。警察は、日常的に虐待が行われていたとみて捜査を進めている。 「異変が発覚したのは1月12日です。この日を最後に歩夢君は、通っていた保育園へ姿を見せなくなりました。8日後の20日に、柿本容疑者は退園届けを提出します。園には『実家のある大阪府和泉市で元気に暮らしている』と説明したとか。 しかし本庄市が和泉市に照会したところ、転居の事実がないことがわかったんです。本庄市は『子どもの安否が確認できない』と警察に相談。同居する丹羽容疑者ら3人から事情を聞くと、1月中旬に遺体を自宅の庭に埋めたことを認めました」(全国紙社会部記者) 当初、3人の逮捕容疑は死体遺棄。歩夢君が亡くなった原因は不明だったが、容疑者たちの供述などから激しい暴行を受けていたことが判明したのだーー』、普通は親の申告をそのまま受け入れるが、「本庄市が和泉市に照会」とはさすがだ。
・『2時間正座させて説教 夫と別れる前の柿本容疑者。当時の画像からは幸せそうな様子が伝わってくる(本人のフェイスブックより) 3容疑者は、本庄市内の築約50年の木造一軒家で同居していた。血縁関係はない。奇妙な共同生活が始まったのは、昨年1月のことだ。 「旦那さんと別れた柿本容疑者は、1人で歩夢君を育てていたそうです。丹羽容疑者と知り合ったのは、昨年の秋頃。しばらくしてから柿本容疑者は歩夢君と一緒に、丹羽容疑者と石井容疑者の暮らす一軒家で同居するようになりました」(同前) 共同生活が始まってから、歩夢君の異様な様子がたびたび目撃されるようになる。 「よく歩夢君を含め4人で、自宅近くの飲食店を訪れていたそうです。ただ歩夢君はずっと丹羽容疑者に叱られ、料理もろくに食べさせてもらえなかったとか。長い時は2時間ほど、正座をさせられたまま……。柿本容疑者が、歩夢君が叱られる様子をスマートフォンで撮影しようとしたこともあったと聞いています。 スーパーの駐車場で、石井容疑者が歩夢君に向かって『このガキ!』と怒鳴っているのを目撃した住民もいました。柿本容疑者は、常に疲れた様子だったとか。歩夢君も保育園でボンヤリしていることが多く、精神的な虐待があるのではと周囲は心配していました」(別の全国紙記者) 事件は1月18日に起きる。自宅1階で、3容疑者は歩夢君を繰り返し床に投げ飛ばし死亡させたようだ。 歩夢君の後頭部には大きなキズがあり、それが直接の死因になりました。もともと歩夢君は、明るく快活な子どもだったとか。3容疑者の共同生活が始まってから、どんどん元気をなくしていったそうです」(同前) 激しい虐待を受け地中に埋められた歩夢君。「しつけのためだった」という3容疑者の言い分が、通用するハズがない』、「明るく快活な」「5歳児」を「繰り返し床に投げ飛ばし死亡させた」とは余りに惨い。保育園や近所の知人から児童相談所への通報はなかったのだろうか。
第四に、昨年5月28日付けダイヤモンド・オンラインのヘルスデーニュース「子ども時代の「虐待経験」が、糖尿病や高コレステロール血症に影響か」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/303868
・『子どものころの被虐体験と、成人後の高コレステロール血症や2型糖尿病の発症リスクとの関連を示した論文が4月27日、「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に掲載された。筆頭著者である米エモリー大学のLiliana Aguayo氏は、「われわれの研究結果は子ども時代の被虐体験が、成人後の疾患リスクに影響を及ぼす可能性を示しており、その影響は性別や人種により異なるようだ」と述べている。 Aguayo氏らは、冠動脈疾患リスク因子に関する長期コホート研究である「CARDIA研究」のデータをこの研究に用いた。CARDIA研究では、1985~1986年に米国内4都市で登録された5,115人(年齢18~30歳、平均25歳)を2015~2016年まで追跡。30年間にわたり数年おきに心血管疾患リスクを評価した。また、研究参加者が33~45歳の時点で、子どものころの被虐体験(身体的または精神的な虐待)の有無、および養育環境(周囲の大人から愛情を受けていたか、家庭内の秩序が保たれていたか)に関する質問を行った。 参加者の約30%が、子どものころにしばしば虐待を受けたことを報告した。約20%はまれに虐待を受けたと回答した。残りの約半数は被虐体験がなかった。そして、子どものころの被虐体験のある人には、2型糖尿病または高コレステロール血症が多いことが分かった。その影響は、性別や人種によって以下のような差異が認められた。なお、肥満や高血圧のリスクは、被虐体験の有無と関連がなかった。 被虐体験のある場合、白人女性は26%、白人男性は35%、高コレステロール血症のリスクが高く、また白人男性は2型糖尿病のリスクも81%高かった。被虐体験があり、かつ秩序のない家庭環境で育ったと回答した黒人男性と白人女性は、高コレステロール血症のリスクが3.5倍以上高かった。ただし、被虐体験があった人の中で、秩序のある家庭環境で育ったと回答した人は、高コレステロール血症のリスクが34%低かった。また、意外なことに、被虐体験があると回答した黒人女性では、心血管疾患リスクの上昇が認められなかった。 Aguayo氏は、「この研究結果は、心血管疾患の予防介入のための施策立案に役立つだろう。特に、子ども時代に虐待やトラウマとなるような体験をした人への対策の強化が重要と考えられる」とまとめている。また、「小児期の被虐体験や養育環境と、心血管疾患リスクの上昇を結び付ける潜在的なメカニズムを明らかにするための研究が求められる。さらに、人種や性別によってそれらの影響に相違があるという事実の背景に、構造的な人種差別や社会経済的な因子が関与しているのか否かという観点からも、理解を深めていかなければならない」と付け加えている』、「被虐体験のある場合、白人女性は26%、白人男性は35%、高コレステロール血症のリスクが高く、また白人男性は2型糖尿病のリスクも81%高かった。被虐体験があり、かつ秩序のない家庭環境で育ったと回答した黒人男性と白人女性は、高コレステロール血症のリスクが3.5倍以上高かった。ただし、被虐体験があった人の中で、秩序のある家庭環境で育ったと回答した人は、高コレステロール血症のリスクが34%低かった。また、意外なことに、被虐体験があると回答した黒人女性では、心血管疾患リスクの上昇が認められなかった」、「小児期の被虐体験や養育環境」が、「心血管疾患リスク」に影響していたとは驚くべき結果だ。それにしても「長期コホート研究である「CARDIA研究」のデータをこの研究に用いた。CARDIA研究では、1985~1986年に米国内4都市で登録された5,115人(年齢18~30歳、平均25歳)を2015~2016年まで追跡。30年間にわたり数年おきに心血管疾患リスクを評価した。また、研究参加者が33~45歳の時点で、子どものころの被虐体験(身体的または精神的な虐待)の有無、および養育環境(周囲の大人から愛情を受けていたか、家庭内の秩序が保たれていたか)に関する質問を行っ)、こんな「「長期コホート研究」の「データ」があるとは恵まれた研究環境だ。日本には恐らくないと思われるが、まずは汎用型で「データ」を整備していく必要があるだろう。
先ずは、2021年1月30日付けAERAdot「わいせつ事件があった「キッズライン」でまた不祥事 経沢香保子社長の「涙の謝罪」は何だったのか〈dot.〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2021012900095.html?page=1
・『昨春、登録していたベビーシッターが相次いでわいせつ事件を起こした「キッズライン」でまたも不祥事が発覚した。今度は、法律で義務付けられている自治体への届け出をしていないシッターを多数登録していたことが発覚。政府は補助金の返還を求める方針だとしている。シッターによるわいせつ事件は社会問題となり、法改正の動きにまで発展した。昨秋には同社の経沢香保子社長も複数のメディアの取材に涙を浮かべながら反省と謝罪を述べていた。それからわずか4カ月――不祥事が繰り返される背景には何があるのか。 28日の昼、FNNプライムオンラインで<【独自】キッズライン 補助金返還要求へ 無届けシッター75人>と題する記事が配信された。 1月25日時点で、キッズラインには法律で義務付けられた届けが確認できないシッターが75人おり、半数とは連絡が取れない状態であること、これを受けて内閣府は同社に補助金の返還を求める方針であることが報じられた。返還額は1000万円規模になりそうだという具体的な記述もあり、「その辺を歩いている見知らぬ人に子どもを預けるのと一緒だ」という内閣府関係者の批判も紹介された。 なぜこのような事態になったのか。キッズラインによると、シッターの届け出は、登録時にシッター自身が自治体に提出する記入済みの認可外保育施設設置届の写しをデータでアップロードする決まりになっており、同社はそれで確認をしていたという。しかし、その後に届け出書が自治体に受理されたかどうかを確認するフローがなく、無届けのシッターが登録されてしまったという。 「最後まで確認を行っていなかったことは、当社の法令理解の不十分さによるものだと考えています」(キッズライン広報) 現在はフローを改善して、複数の方法で自治体への提出を確認できるように改めたという。 内閣府は、無届けのシッターにかかわる補助金を3月12日までに返還するように求めている。金額はフジテレビの報道では「1000万円規模」となっているが、キッズラインは「正確な金額については現在調査中です」(広報)と回答した。) 昨年の4月と6月に起きたシッターによるわいせつ事件は、本サイトも含めた一部メディアが報じた後に、ようやくキッズラインも事実を公表したという経緯がある。今回の無届け問題も昨年8月に自治体からの指摘で発覚していたが、同社がこの件をホームページに掲載したのは昨年12月28日だった』、「キッズライン」については、前回2020年10月7日にも取上げた。一向に改善してないようだ。
・『昨年からキッズラインの問題を追求してきたジャーナリストの中野円佳氏は、同社で不祥事が続く背景をこう指摘する。 「組織のガバナンス不足が大きな要因だと思います。経沢香保子社長はゼロから事業を立ち上げて規模を拡大していくことは上手ですが、ビジョン先行型で、質への配慮は苦手な印象を受けます。しかし保育事業という子どもの命を預かる仕事は、リスクを限りなくゼロに近づける努力が必要な領域です。その観点で仕組みを構築する参謀、片腕のような人がキッズラインにはいないのでしょう。経沢さんに意見を上げにくい雰囲気、異論を出しにくい社風も根底にあったと聞いています」 中野氏は、わいせつ事件が起こった後の昨年9月、経沢氏にオンラインでインタビューをしている。その際、経沢氏は組織の抜本的改革と自身の意識改善などを涙ながらに訴えていた。また、シッター無届け問題でも今年1月に中野氏は直接話を聞いており、経沢氏は「コンプライアンス第一という認識の甘さ」を反省していた。だが、社長がいくら反省と謝罪を繰り返しても、不祥事が止まらない。経沢氏が語っていた言葉は一体なんだったのか。 SNSの発信なども見ていて、経沢さんは『コトの重大性が本当にわかっているのだろうか』と感じることはありました。取材時の印象としても、言葉が軽く、会社全体としても切迫感が感じられない。事業に対する熱い思いはわかるのですが、わいせつ事件や世の中からの批判に対しては、自分たちも“被害者”と感じているのかもしれません。だから、不祥事も報道や外部からの指摘があってから、後手後手で対応することになる。自分たちの組織を自分たちの手でよくしていこうという自浄作用が働いていないことは、大きな問題だと思います」(同)) 今回は、閣僚からも苦言が呈された。共同通信によると、29日、坂本哲志少子化対策担当相は記者会見で「大変遺憾だ」と述べたうえで、キッズラインについて「(過去に)わいせつ事案もあった」と指摘。「子どもや親のためしっかり厳しく取り組まなければならない」と強調したという。 地域政党「自由を守る会」代表の上田令子都議は、昨年からキッズラインの企業姿勢に疑問を持ち、東京都にベビーシッター利用支援事業の認定基準の見直しなどを求めてきた。上田氏は「補助金返還は当然だ」としたうえで、次のように語る。 「補助金を返したら終わり、では済まされない行為です。75人も無届けのシッターがいたこともさることながら、連絡がつかない人が半数以上いたことはもっと問題です。会社でシッターの管理がまったくできていなかったわけであり、子どもの命を預かる事業者として不適格です。内閣府は割引券等取扱事業者としての認定を取り消すべきだと思います。内閣府が取り消せば、東京都も追随せざる得ません。行政が厳しい措置を取らなければ、昨年と同じような事件が、いつまた起こるかわかりません」 キッズラインは補助金返還の負担についてこう回答した。 「補助金の返還要請につきましては、(シッター個人ではなく)当社が全額負担いたします」 繰り返されるキッズラインの不祥事。たとえお金を返したとしても、利用者や世間からの「信用」を取り戻すことは容易ではない』、「ジャーナリストの中野円佳氏は」、「経沢香保子社長はゼロから事業を立ち上げて規模を拡大していくことは上手ですが、ビジョン先行型で、質への配慮は苦手な印象を受けます。しかし保育事業という子どもの命を預かる仕事は、リスクを限りなくゼロに近づける努力が必要な領域です。その観点で仕組みを構築する参謀、片腕のような人がキッズラインにはいないのでしょう。経沢さんに意見を上げにくい雰囲気、異論を出しにくい社風も根底にあったと聞いています」、この体質が続いているようだ。「経沢(社長)さんは『コトの重大性が本当にわかっているのだろうか』と感じることはありました。取材時の印象としても、言葉が軽く、会社全体としても切迫感が感じられない。事業に対する熱い思いはわかるのですが、わいせつ事件や世の中からの批判に対しては、自分たちも“被害者”と感じているのかもしれません。だから、不祥事も報道や外部からの指摘があってから、後手後手で対応することになる。自分たちの組織を自分たちの手でよくしていこうという自浄作用が働いていないことは、大きな問題だと思います」、「自分たちも“被害者”と感じているのかもしれません」、とはフザケタ話だ。
次に、本年3月8日付け弁護士ドットコム「大和市7歳児殺害事件で母逮捕…家裁が児相の入所要求を却下したプロセスは?」を紹介しよう。
https://www.bengo4.com/c_1009/n_14194/
・『2019年8月に当時小学1年生の次男(7歳)を自宅で殺害したとして、次男の母親が2月20日、神奈川県警に殺人容疑で逮捕された事件が波紋を呼んでいる。 報道などによると、次男は生後5カ月で心肺停止となった際に神奈川県大和綾瀬地域児童相談所に保護された。約2年半後に帰宅したものの、その後三男が死亡するという出来事があったことから、同児相は2017年4月に2度目の一時保護を実施した。 一時保護中の次男が「お母さんに投げ飛ばされて口から血が出た」などと話したこともあったことから、同児相は「施設入所措置が適当」との方針を決定。しかし、同施設への入所の同意が母親から得られなかった。 そのため、同児相は2018年2月、次男の入所を求めて横浜家裁に審判の申立てをおこなったが、同家裁は「保護者が故意に何かをしたという根拠はない」などとして、同年10月に申立てを却下。自宅に戻った次男は約9カ月後に死亡した。 女性には次男の他に3人の子どもがいたが、長男と長女は乳児期に死亡。三男も1歳5カ月で急死していた。もっとも、この点について、同家裁では保護者の責任で死亡した根拠がないと判断されたようだ。 事件の詳細はまだ明らかになっていないが、2度保護した児相の申立てを家裁が却下したことで自宅に戻った次男が結果として死亡したことから、家裁の判断も議論を呼びそうだ。一般的に、児相の申立てに対して、家裁はどのようなプロセスで判断するのだろうか。高橋麻理弁護士に聞いた』、「横浜家裁」は証拠にこだわって常識的な判断を避けているようだ。
・『申立ては「施設入所に親権者が反対した場合」におこなわれる(Qは聞き手の質問、Aは回答) Q:児童相談所が家庭裁判所に対して施設入所を求める申立てとはどのようなものでしょうか。 A:児相は、親権者が反対しているときでも、家裁の承認を得ることによって、子どもについて施設入所等の措置をとることができるということが児童福祉法で定められています。 家裁の承認を得るためには、(1)保護者が、子どもを虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく子どもの福祉を害する場合、(2)施設入所等の措置をとることが子どもの親権者等の意に反する場合、という2つの要件を満たす必要があります。 Q:具体的にどのようなときに申し立てをおこなうのでしょうか。 A:一時保護している子どもについて、「子どもを保護者のもとに戻すことが子どものためによくない。施設入所が望ましい」と思われる場合です。 一時保護とは、子どもの安全確保をするとともに、今後の子どもや家族に対し、どのようなかかわり方をしたほうがよいかという方針を決めるための手続きです。一時保護は無制限にはおこなえず、原則として2カ月を超えてはならないことになっています。 児相は、その一時保護の期間に、その後、子どもを家庭で引き取るのがよいのか、児童養護施設等に入所させたほうがよいのかなどという方針を決めます。 もっとも、児童養護施設等に入所させたほうがよいと判断しても、法律上、子どもの親権者が反対したら、その意思に反して施設入所等させることができません。 子どもの親権者に反対されたら、施設入所等させることができなくなってしまうと、救わなければならない子どもを救えない事態も発生してしまうでしょう。そのような場合におこなわれるのが今回のような家裁への申立てです』、「施設入所等」への「親権者に反対」された場合の判断なので、「家裁」が判断する他ない。
・『申立てを受けた家庭裁判所の判断プロセス Q:申立てを受けた家庭裁判所はどのように対応するのでしょうか。 A:申立てを受けた家裁は、申立てが不適法なとき、申立てに理由がないことが明らかなときを除いて、子どもを現に監護する者、子どもに対して親権を行う者、子どもの未成年後見人、子ども自身(15歳以上の場合のみ)の陳述を聴かなければならないことになっています。 Q:家裁は、子どもの親権者などからどのような話を聞くのでしょうか。 A:まず、児相による申立てが認められるための要件の1つでもある、「児相が主張する『子どもについて施設入所等の措置をとるべき』ということについて反対の意向を持っているのか」という点について確認します。 裁判官の示唆を踏まえて、親権者らが同意するということもあり得るからです。 親権者らが、子どもを施設入所等させることについて同意するということになれば、家裁が承認するための要件を欠くことになるため、申立ての却下または児相に申立ての取り下げを示唆するという流れになるでしょう。 親権者らが、子どもの施設入所等に反対する意向が明確になった場合は、家裁は、申立ての実情に関する事実関係について、親権者らに確認します。 児相は、申立てにあたり、「なぜ、子どもを保護者のもとに戻すことが子どもの福祉のためにならないと考えるか」、「なぜ、施設入所等の措置が必要であると考えるか」ということを裏付ける事実を主張します。 保護者が子どもを虐待していること、子どもが生きていくために必要な保護等を著しく怠っていること、これからも保護者が虐待等に及ぶ可能性が高いことなどを具体的に主張します。 家裁は、その児相の主張する事実関係について、争いないのか、それとも、前提となる事実が間違っているのか、親権者らの認識を明らかにするため、親権者らの言い分を確認するのです。 Q:当事者の言い分や主張以外にも家裁の判断材料となるものはありますか。 A:家裁は通常、当事者の言い分などを踏まえた上で、子どもの状況や家庭環境等について、家庭裁判所調査官に調査命令を下します。 家庭裁判所調査官は、家裁で取り扱っている家事事件や少年事件について調査を行うことを主な仕事としており、子どもに面接をして、問題の原因や背景を調査したり、必要に応じて社会福祉や医療などの関係機関との連絡等を行い、子どもにとってどのような対応が望ましいかという意見を裁判官に報告します。 裁判官は、家庭裁判所調査官の報告を踏まえ、主張する事実に食い違いがある場合には調査結果や、児相が主張を裏付けるために提出する資料、審問期日での親権者らの陳述等をもとに、何が事実なのか判断したうえで、子どもについて施設入所等の措置をとるべきなのかについて検討して結論を出します。 Q:判断結果について不服のある当事者がさらに争う手立てはあるのでしょうか。 A:不服申立ての手続きとして、「即時抗告」があります。 児相の申立てに対し、家裁が承認するという結果が出た場合には親権者らが、申立てを却下するという結果が出た場合には申立人である児相が即時抗告することができます。即時抗告は、審判の告知がされた日から2週間以内にする必要があります』、「家裁は通常、当事者の言い分などを踏まえた上で、子どもの状況や家庭環境等について、家庭裁判所調査官に調査命令を下します。 家庭裁判所調査官は、家裁で取り扱っている家事事件や少年事件について調査を行うことを主な仕事としており、子どもに面接をして、問題の原因や背景を調査したり、必要に応じて社会福祉や医療などの関係機関との連絡等を行い、子どもにとってどのような対応が望ましいかという意見を裁判官に報告します」、下調べをするようだ。
・『「必ずしも多くの判断材料がそろうケースばかりではない」 Q:児童相談所の対応や家庭裁判所の判断に関する是非が今後問われそうです。 A:事実関係がまだよくわからない状態で、具体的なコメントは難しいところです。 ただ、全国的に見ても、児相による施設入所を求める申立てについては認容率が8割程度と高く、却下件数は少ないです。 そのような中で、本件がなぜ却下となったのか、という点を疑問に思う声はあると思います。 一般論で考えたとき、家裁の判断の前提となる材料は十分にそろっていたのかは気になるところです。もっとも、家庭内で起きた出来事について、必ずしも多くの判断材料がそろうケースばかりではないでしょう。 刑事裁判の場合は、「疑わしきは罰せず」という大原則があります。 もし、このような考え方が、子の福祉にかかわる審判の判断過程に持ち込まれると、特に、判断材料が集まりにくいケースでは、救えたはずの子どもを救えなくなる事態も生じかねません。家裁における事実認定のありかたについても考えるべき点があるのではないかと思えます』、「判断材料が集まりにくいケースでは、救えたはずの子どもを救えなくなる事態も生じかねません。家裁における事実認定のありかたについても考えるべき点があるのではないか」、その通りだ。
第三に、3月31日付けFRIDAY「5歳児虐待死で再逮捕…同居男女3人「異様な関係と凄惨な暴行」」を紹介しよう。
https://friday.kodansha.co.jp/article/236722
・『「床に投げ飛ばした。しつけのためだった」 母親ら3人の容疑者の供述から、幼い子どもの遺体が地中から発見された痛ましい事件の全容が、ようやく明らかになりつつある。 埼玉県本庄市に住む柿本歩夢(あゆむ)君(当時5)の遺体が、自宅の庭から見つかったのは今年3月5日。埼玉県警は3月26日、歩夢君を自宅の床に何度も投げ飛ばすなどして死亡させたとし、母親の柿本知香(30)、丹羽洋樹(34)、石井陽子(54)の3容疑者を傷害致死容疑で再逮捕した。警察は、日常的に虐待が行われていたとみて捜査を進めている。 「異変が発覚したのは1月12日です。この日を最後に歩夢君は、通っていた保育園へ姿を見せなくなりました。8日後の20日に、柿本容疑者は退園届けを提出します。園には『実家のある大阪府和泉市で元気に暮らしている』と説明したとか。 しかし本庄市が和泉市に照会したところ、転居の事実がないことがわかったんです。本庄市は『子どもの安否が確認できない』と警察に相談。同居する丹羽容疑者ら3人から事情を聞くと、1月中旬に遺体を自宅の庭に埋めたことを認めました」(全国紙社会部記者) 当初、3人の逮捕容疑は死体遺棄。歩夢君が亡くなった原因は不明だったが、容疑者たちの供述などから激しい暴行を受けていたことが判明したのだーー』、普通は親の申告をそのまま受け入れるが、「本庄市が和泉市に照会」とはさすがだ。
・『2時間正座させて説教 夫と別れる前の柿本容疑者。当時の画像からは幸せそうな様子が伝わってくる(本人のフェイスブックより) 3容疑者は、本庄市内の築約50年の木造一軒家で同居していた。血縁関係はない。奇妙な共同生活が始まったのは、昨年1月のことだ。 「旦那さんと別れた柿本容疑者は、1人で歩夢君を育てていたそうです。丹羽容疑者と知り合ったのは、昨年の秋頃。しばらくしてから柿本容疑者は歩夢君と一緒に、丹羽容疑者と石井容疑者の暮らす一軒家で同居するようになりました」(同前) 共同生活が始まってから、歩夢君の異様な様子がたびたび目撃されるようになる。 「よく歩夢君を含め4人で、自宅近くの飲食店を訪れていたそうです。ただ歩夢君はずっと丹羽容疑者に叱られ、料理もろくに食べさせてもらえなかったとか。長い時は2時間ほど、正座をさせられたまま……。柿本容疑者が、歩夢君が叱られる様子をスマートフォンで撮影しようとしたこともあったと聞いています。 スーパーの駐車場で、石井容疑者が歩夢君に向かって『このガキ!』と怒鳴っているのを目撃した住民もいました。柿本容疑者は、常に疲れた様子だったとか。歩夢君も保育園でボンヤリしていることが多く、精神的な虐待があるのではと周囲は心配していました」(別の全国紙記者) 事件は1月18日に起きる。自宅1階で、3容疑者は歩夢君を繰り返し床に投げ飛ばし死亡させたようだ。 歩夢君の後頭部には大きなキズがあり、それが直接の死因になりました。もともと歩夢君は、明るく快活な子どもだったとか。3容疑者の共同生活が始まってから、どんどん元気をなくしていったそうです」(同前) 激しい虐待を受け地中に埋められた歩夢君。「しつけのためだった」という3容疑者の言い分が、通用するハズがない』、「明るく快活な」「5歳児」を「繰り返し床に投げ飛ばし死亡させた」とは余りに惨い。保育園や近所の知人から児童相談所への通報はなかったのだろうか。
第四に、昨年5月28日付けダイヤモンド・オンラインのヘルスデーニュース「子ども時代の「虐待経験」が、糖尿病や高コレステロール血症に影響か」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/303868
・『子どものころの被虐体験と、成人後の高コレステロール血症や2型糖尿病の発症リスクとの関連を示した論文が4月27日、「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に掲載された。筆頭著者である米エモリー大学のLiliana Aguayo氏は、「われわれの研究結果は子ども時代の被虐体験が、成人後の疾患リスクに影響を及ぼす可能性を示しており、その影響は性別や人種により異なるようだ」と述べている。 Aguayo氏らは、冠動脈疾患リスク因子に関する長期コホート研究である「CARDIA研究」のデータをこの研究に用いた。CARDIA研究では、1985~1986年に米国内4都市で登録された5,115人(年齢18~30歳、平均25歳)を2015~2016年まで追跡。30年間にわたり数年おきに心血管疾患リスクを評価した。また、研究参加者が33~45歳の時点で、子どものころの被虐体験(身体的または精神的な虐待)の有無、および養育環境(周囲の大人から愛情を受けていたか、家庭内の秩序が保たれていたか)に関する質問を行った。 参加者の約30%が、子どものころにしばしば虐待を受けたことを報告した。約20%はまれに虐待を受けたと回答した。残りの約半数は被虐体験がなかった。そして、子どものころの被虐体験のある人には、2型糖尿病または高コレステロール血症が多いことが分かった。その影響は、性別や人種によって以下のような差異が認められた。なお、肥満や高血圧のリスクは、被虐体験の有無と関連がなかった。 被虐体験のある場合、白人女性は26%、白人男性は35%、高コレステロール血症のリスクが高く、また白人男性は2型糖尿病のリスクも81%高かった。被虐体験があり、かつ秩序のない家庭環境で育ったと回答した黒人男性と白人女性は、高コレステロール血症のリスクが3.5倍以上高かった。ただし、被虐体験があった人の中で、秩序のある家庭環境で育ったと回答した人は、高コレステロール血症のリスクが34%低かった。また、意外なことに、被虐体験があると回答した黒人女性では、心血管疾患リスクの上昇が認められなかった。 Aguayo氏は、「この研究結果は、心血管疾患の予防介入のための施策立案に役立つだろう。特に、子ども時代に虐待やトラウマとなるような体験をした人への対策の強化が重要と考えられる」とまとめている。また、「小児期の被虐体験や養育環境と、心血管疾患リスクの上昇を結び付ける潜在的なメカニズムを明らかにするための研究が求められる。さらに、人種や性別によってそれらの影響に相違があるという事実の背景に、構造的な人種差別や社会経済的な因子が関与しているのか否かという観点からも、理解を深めていかなければならない」と付け加えている』、「被虐体験のある場合、白人女性は26%、白人男性は35%、高コレステロール血症のリスクが高く、また白人男性は2型糖尿病のリスクも81%高かった。被虐体験があり、かつ秩序のない家庭環境で育ったと回答した黒人男性と白人女性は、高コレステロール血症のリスクが3.5倍以上高かった。ただし、被虐体験があった人の中で、秩序のある家庭環境で育ったと回答した人は、高コレステロール血症のリスクが34%低かった。また、意外なことに、被虐体験があると回答した黒人女性では、心血管疾患リスクの上昇が認められなかった」、「小児期の被虐体験や養育環境」が、「心血管疾患リスク」に影響していたとは驚くべき結果だ。それにしても「長期コホート研究である「CARDIA研究」のデータをこの研究に用いた。CARDIA研究では、1985~1986年に米国内4都市で登録された5,115人(年齢18~30歳、平均25歳)を2015~2016年まで追跡。30年間にわたり数年おきに心血管疾患リスクを評価した。また、研究参加者が33~45歳の時点で、子どものころの被虐体験(身体的または精神的な虐待)の有無、および養育環境(周囲の大人から愛情を受けていたか、家庭内の秩序が保たれていたか)に関する質問を行っ)、こんな「「長期コホート研究」の「データ」があるとは恵まれた研究環境だ。日本には恐らくないと思われるが、まずは汎用型で「データ」を整備していく必要があるだろう。
タグ:「施設入所等」への「親権者に反対」された場合の判断なので、「家裁」が判断する他ない。 「横浜家裁」は証拠にこだわって常識的な判断を避けているようだ。 弁護士ドットコム「大和市7歳児殺害事件で母逮捕…家裁が児相の入所要求を却下したプロセスは?」 いるのかもしれません。だから、不祥事も報道や外部からの指摘があってから、後手後手で対応することになる。自分たちの組織を自分たちの手でよくしていこうという自浄作用が働いていないことは、大きな問題だと思います」、「自分たちも“被害者”と感じているのかもしれません」、とはフザケタ話だ。 「経沢(社長)さんは『コトの重大性が本当にわかっているのだろうか』と感じることはありました。取材時の印象としても、言葉が軽く、会社全体としても切迫感が感じられない。事業に対する熱い思いはわかるのですが、わいせつ事件や世の中からの批判に対しては、自分たちも“被害者”と感じているのかもしれません。だから、不祥事も報道や外部からの指摘があってから、後手後手で対応することになる。自分たちの組織を自分たちの手でよくしていこうという自浄作用が働いていないことは、大きな問題だと思います」、「自分たちも“被害者”と感じて 「ジャーナリストの中野円佳氏は」、「経沢香保子社長はゼロから事業を立ち上げて規模を拡大していくことは上手ですが、ビジョン先行型で、質への配慮は苦手な印象を受けます。しかし保育事業という子どもの命を預かる仕事は、リスクを限りなくゼロに近づける努力が必要な領域です。その観点で仕組みを構築する参謀、片腕のような人がキッズラインにはいないのでしょう。経沢さんに意見を上げにくい雰囲気、異論を出しにくい社風も根底にあったと聞いています」、この体質が続いているようだ。 AERAdot「わいせつ事件があった「キッズライン」でまた不祥事 経沢香保子社長の「涙の謝罪」は何だったのか〈dot.〉」 「キッズライン」については、前回2020年10月7日にも取上げた。一向に改善してないようだ。 幼児虐待 (その8)(わいせつ事件があった「キッズライン」でまた不祥事 経沢香保子社長の「涙の謝罪」は何だったのか〈dot.〉、大和市7歳児殺害事件で母逮捕…家裁が児相の入所要求を却下したプロセスは?、大和市7歳児殺害事件で母逮捕…家裁が児相の入所要求を却下したプロセスは?、5歳児虐待死で再逮捕…同居男女3人「異様な関係と凄惨な暴行」、子ども時代の「虐待経験」が 糖尿病や高コレステロール血症に影響か) 「家裁は通常、当事者の言い分などを踏まえた上で、子どもの状況や家庭環境等について、家庭裁判所調査官に調査命令を下します。 家庭裁判所調査官は、家裁で取り扱っている家事事件や少年事件について調査を行うことを主な仕事としており、子どもに面接をして、問題の原因や背景を調査したり、必要に応じて社会福祉や医療などの関係機関との連絡等を行い、子どもにとってどのような対応が望ましいかという意見を裁判官に報告します」、下調べをするようだ。 「判断材料が集まりにくいケースでは、救えたはずの子どもを救えなくなる事態も生じかねません。家裁における事実認定のありかたについても考えるべき点があるのではないか」、その通りだ。 FRIDAY「5歳児虐待死で再逮捕…同居男女3人「異様な関係と凄惨な暴行」」 普通は親の申告をそのまま受け入れるが、「本庄市が和泉市に照会」とはさすがだ。 「明るく快活な」「5歳児」を「繰り返し床に投げ飛ばし死亡させた」とは余りに惨い。保育園や近所の知人から児童相談所への通報はなかったのだろうか。 ダイヤモンド・オンラインのヘルスデーニュース「子ども時代の「虐待経験」が、糖尿病や高コレステロール血症に影響か」 「被虐体験のある場合、白人女性は26%、白人男性は35%、高コレステロール血症のリスクが高く、また白人男性は2型糖尿病のリスクも81%高かった。被虐体験があり、かつ秩序のない家庭環境で育ったと回答した黒人男性と白人女性は、高コレステロール血症のリスクが3.5倍以上高かった。ただし、被虐体験があった人の中で、秩序のある家庭環境で育ったと回答した人は、高コレステロール血症のリスクが34%低かった。また、意外なことに、被虐体験があると回答した黒人女性では、心血管疾患リスクの上昇が認められなかった」、 「小児期の被虐体験や養育環境」が、「心血管疾患リスク」に影響していたとは驚くべき結果だ。それにしても「長期コホート研究である「CARDIA研究」のデータをこの研究に用いた。CARDIA研究では、1985~1986年に米国内4都市で登録された5,115人(年齢18~30歳、平均25歳)を2015~2016年まで追跡。30年間にわたり数年おきに心血管疾患リスクを評価した。 また、研究参加者が33~45歳の時点で、子どものころの被虐体験(身体的または精神的な虐待)の有無、および養育環境(周囲の大人から愛情を受けていたか、家庭内の秩序が保たれていたか)に関する質問を行っ)、こんな「「長期コホート研究」の「データ」があるとは恵まれた研究環境だ。日本には恐らくないと思われるが、まずは汎用型で「データ」を整備していく必要があるだろう。
マイナンバー制度(その3)(マイナカード「落としても悪用されない」はうそ? 「セキュリティーがあまりにも脆弱」、8割の日本人が気づいていない「マイナ保険証」の恐ろしすぎる「落とし穴」 健康保険証から乗り換えていいのか?、「マイナ保険証」のせいで健康保険が「崩壊」するかもしれない…その決定的な問題点 最悪の暴挙に出る可能性も…、マイナンバーカード推進の裏で進む法改正、個人情報利用や機能追加などに「野放図拡大」のリスク) [経済政策]
マイナンバー制度については、本年1月31日に取上げた。今日は、(その3)(マイナカード「落としても悪用されない」はうそ? 「セキュリティーがあまりにも脆弱」、8割の日本人が気づいていない「マイナ保険証」の恐ろしすぎる「落とし穴」 健康保険証から乗り換えていいのか?、「マイナ保険証」のせいで健康保険が「崩壊」するかもしれない…その決定的な問題点 最悪の暴挙に出る可能性も…、マイナンバーカード推進の裏で進む法改正、個人情報利用や機能追加などに「野放図拡大」のリスク)である。
先ずは、先ずは、3月4日付けデイリー新潮「マイナカード「落としても悪用されない」はうそ? 「セキュリティーがあまりにも脆弱」」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/03040557/?all=1
・『岸田政権がゴリ押しするマイナンバーカード。2月末には、最大2万円分のポイントをもらうための「駆け込み申請」で人々が役所に殺到する事態となった。しかし、専門家はそのセキュリティーの脆弱(ぜいじゃく)さを指摘するのだ。 岸田政権がデジタル社会実現のため、一丁目一番地の課題として挙げる「マイナンバーカード(マイナカード)」の取得促進。 2015年に日本国内の全ての住民に12桁の番号が指定されて運用が始まったマイナンバー制度だが、一向に上がらないマイナカードの取得率は歴代政権の悩みの種であった。業を煮やした岸田文雄総理が状況打開のために投入したのが「2万円分のポイント」と「河野太郎」という二つの奇策。すなわち昨年5月にアナウンスされた公金受取口座のひもづけなどにより最大2万円分のポイントが付与される「マイナポイント事業第2弾」と、8月にデジタル相に就任した河野太郎氏である。 ポイント事業にはすでに2兆円超の予算が注ぎ込まれ、昨年10月には河野氏がマイナカードと一体化した上で健康保険証の廃止を目指すと発表。奇策は功を奏し、今年1月の時点でカードの申請件数は運転免許証の保有者数を上回り、普及率は70%近くに達している。 もちろん行政が効率化されるのは結構な話である。マイナポータルを使ってオンラインで行政手続きが行なえる電子政府化の促進も喫緊の課題であろう。さらに、個人情報が従来通り分散管理され、芋づる式に情報が漏洩する恐れがないのも理解はできる。 だが、果たしてカード普及のために消費税1%分に相当する血税を投入する必要はあったのか。保険証を廃止し、「資格確認書」という新たなムダを生み出してまでカードの取得を事実上強制する必要はあったのか。 見えてきたのは「設計不良」ともいえるマイナカードの不都合な真実であった。 マイナカードと保険証の一体化により、今後多くの人がカードを常時携行することが考えられる。河野氏も自身のホームページ上で〈(便利な)サービスを利用するために、マイナンバーカードを持ち歩きましょう〉と肌身離さず携帯することを推奨しているくらいだ。だが、その歯切れの良さとは裏腹に“常時携行”に一定のリスクが伴うことはあまり理解されていない。 『超ID社会』などの著書がある、一般社団法人「情報システム学会」常務理事の八木晃二氏によれば、 「現行のマイナンバーカードには異なる目的を持つ機能が乱暴に放り込まれ、“持ち歩いてよい機能”と“大切に管理すべき機能”とがごちゃ混ぜになってしまっています」 そもそもマイナンバー制度は、12年に当時の民主党政権が「社会保障と税の公平化・効率化」を掲げて法案を提出したのが始まり。現在も、マイナンバー自体は「社会保障」「税」「災害」の分野でしか使うことができない。だが、番号が記載されたマイナカードにはすでに「電子政府にアクセスするための国民ID」や「全国民共通の身元証明書」といった機能が盛り込まれ、今後も拡大されていく見込みである。 『社会保障と税の改革』も『国民ID』も『身元証明』も、必要なのは“本人確認”ですから、これらを一つのカードに組み込むことは一見合理的に思えます。ただ、それぞれで求められる本人確認のレベルは、全く別物。マイナンバー制度の設計関係者たちが、それを理解せずに制度設計を進めてしまったと思われます」(同)』、「「マイナポイント事業第2弾」と、8月にデジタル相に就任した河野太郎氏である。 ポイント事業にはすでに2兆円超の予算が注ぎ込まれ、昨年10月には河野氏がマイナカードと一体化した上で健康保険証の廃止を目指すと発表」、「奇策は功を奏し、今年1月の時点でカードの申請件数は運転免許証の保有者数を上回り、普及率は70%近くに」、「果たしてカード普及のために消費税1%分に相当する血税を投入する必要はあったのか。保険証を廃止し、「資格確認書」という新たなムダを生み出してまでカードの取得を事実上強制する必要はあったのか。 見えてきたのは「設計不良」ともいえるマイナカードの不都合な真実」、「現行のマイナンバーカードには異なる目的を持つ機能が乱暴に放り込まれ、“持ち歩いてよい機能”と“大切に管理すべき機能”とがごちゃ混ぜになってしまっています」、「マイナンバー自体は「社会保障」「税」「災害」の分野でしか使うことができない。だが、番号が記載されたマイナカードにはすでに「電子政府にアクセスするための国民ID」や「全国民共通の身元証明書」といった機能が盛り込まれ、今後も拡大されていく見込み」、「必要なのは“本人確認”ですから、これらを一つのカードに組み込むことは一見合理的に思えます。ただ、それぞれで求められる本人確認のレベルは、全く別物。マイナンバー制度の設計関係者たちが、それを理解せずに制度設計を進めてしまったと思われます」、その通りだ。
・『四つの本人確認 八木氏によれば、デジタル社会には大きく分けて四つの本人確認が存在する。 一つ目は「身元確認」と呼ばれる本人確認である。信頼できる発行機関が発行した証明書上の顔写真などの形質情報と、目の前の人の形質を照合することにより、その人が証明書上の本人であると確認することを指す。警察官に「身分を確認できるものを」と言われ運転免許証やパスポートを提示する行為がまさにこれで、マイナカードの「身元証明書」としての機能もこの「身元確認」に含まれる。 二つ目は「当人確認」または「認証」と呼ばれ、ログインIDと暗証番号の組み合わせなど、当人しか知り得ない情報を照合することによって、ログインしているのがユーザー登録を行なった当人であることを確認することを指す。現行のマイナカードでは、オンラインで行政手続きができるマイナポータルにログインする際、カードをカードリーダーで読み取った上で4桁の暗証番号を入力することになっている。つまりマイナカード自体を当人確認のツールとして使用しているのである。 そして、三つ目と四つ目が「真正性の確認」と「属性情報確認」と呼ばれる本人確認だ。「真正性の確認」で、申請者が提示した番号が本当にその申請者に付番されたものかを確認し、「属性情報確認」で、その番号にひもづくさまざまな情報を取得・確認する。マイナンバー制度の当初からの目的である「行政の効率化」や「社会保障と税の一体改革」は、この「真正性の確認」と「属性情報確認」によって成し遂げられるものである。 マイナカードには、このようにレベルの異なる本人確認機能が一緒くたに盛り込まれている。だが、実はこれら四つの本人確認のうち、マイナンバーが使われるのは三つ目と四つ目だけなのだ』、「四つの本人確認」、①「身元確認」:証明書上の顔写真などの形質情報と、目の前の人の形質を照合することにより、その人が証明書上の本人であると確認、②「当人確認」または「認証」:ログインIDと暗証番号の組み合わせなど、当人しか知り得ない情報を照合することによって、ログインしているのがユーザー登録を行なった当人であることを確認、③「真正性の確認」:申請者が提示した番号が本当にその申請者に付番されたものかを確認,④「属性情報確認」:その番号にひもづくさまざまな情報を取得・確認、「マイナンバー制度の当初からの目的である「行政の効率化」や「社会保障と税の一体改革」は、この③と④によって成し遂げられるもの、マイナンバーが使われるのは③と④だけ、なるほど。
・『身元確認でマイナンバーを使用する必要がない? 「マイナンバーはヒトに付された番号で基本的には生涯不変。しかし、一つ目の身元確認の場合、必要なのはヒトに付された生涯不変の番号ではなく“券”すなわち証明書自体に付された“券面管理番号”です。カードを紛失して再発行した場合、この券面管理番号が更新されることで古いカードは失効される。事実、マイナンバーカードにも免許証やパスポートと同じく券面管理番号が振られており、身元証明書として使う限りマイナンバーが書かれている必要はありません」(同) では、二つ目の当人確認の場合はどうか。 「マイナンバーは“本人しか知らない秘密の番号”ではありませんから、当人確認のログインIDとして使用することは、あまり適切ではありません。そこで“カードを所持しているか”と“4桁の暗証番号を知っているか”で当人確認をすることにしたのです。マイナポータルにログインする際、カードをスマホやカードリーダーで読み取るのは、このためです」(同) つまり、身元確認も当人確認も、わざわざマイナンバーが記載されたカードを使用する必要はない。言い換えれば、マイナンバーとこの二つの本人確認に使用するカードとの間には何の関係もないのである。これは多くの国民にとって寝耳に水の話であろう』、「身元確認も当人確認も、わざわざマイナンバーが記載されたカードを使用する必要はない。言い換えれば、マイナンバーとこの二つの本人確認に使用するカードとの間には何の関係もない」、初めて知った。
・『カード盗難で簡単に突破 それでも“複数の本人確認が1枚のカードで済むのなら、やはり便利ではないか”と思う人がいるかもしれない。ところが、そこには明確なリスクも存在する。 「印鑑を例に考えてみましょう。私たちは宅配便の受け取り程度であれば認印と呼ばれる三文判、銀行口座を使う場合は銀行印、不動産などの取引では印鑑登録をした実印、と場面によって印鑑を使い分けます。マイナンバーカードは、これを全て実印に統一しようと言っているのと同じです。日常的に実印を常時携行して使用するのはあまりに不用意でしょう」(同) 河野氏は〈キャッシュカードと同様、暗証番号が必要〉〈紛失・盗難時には利用停止ができる〉〈暗証番号を一定回数以上間違えるとロックされる〉などの理由で“カードが悪用されることはない”と胸を張る。だが、 「マイナポータルへのログインにはマイナンバーカードと4桁の暗証番号しか求められません。暗証番号を書いたメモを一緒に持ち歩いていたり、誕生日など単純な暗証番号にしていたりすれば、カードを盗まれた場合に簡単に突破されてしまう」(同)』、「暗証番号を書いたメモを一緒に持ち歩いていたり、誕生日など単純な暗証番号にしていたりすれば、カードを盗まれた場合に簡単に突破されてしまう」、恐ろしいことだ。
・『セキュリティーは脆弱 近年はオンラインバンクなどの民間サービスでも、使い捨ての暗証番号であるワンタイムパスワードなどを使用した多段階認証が常識になっている。これを考えれば、マイナカードを使用した認証のセキュリティーレベルはあまりに脆弱というわけだ。 「それに、防犯カメラのついたATMでしか使えないキャッシュカードの持つリスクと、機器があれば誰のパソコンからでもログインできるマイナンバーカードの持つリスクは比べ物になりません。暗証番号ロックや利用停止なども盗難やなりすましの予防効果としては限定的です。むしろ、今後多くの民間サービスとひもづけられれば、ロックや利用停止で生活が立ち行かなくなってしまいます」(同) 民間サービスとの連携が進めば、それだけ悪用のリスクも増加する。今一度、熟慮と検証が必要である』、「今後多くの民間サービスとひもづけられれば、ロックや利用停止で生活が立ち行かなくなってしまいます」、「民間サービスとの連携が進めば、それだけ悪用のリスクも増加する。今一度、熟慮と検証が必要である」、その通りだ。
次に、4月20日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの荻原 博子氏による「8割の日本人が気づいていない「マイナ保険証」の恐ろしすぎる「落とし穴」 健康保険証から乗り換えていいのか?」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108889?imp=0
・『国による強引な「マイナンバーカード」普及の一環で、すべての国民が使っている健康保険証が2024年の秋に廃止されることになりました。 これは単に紙の保険証がマイナンバーカードに統合されるだけではありません。その先に待っているのは、日本が世界に誇る健康保険制度の崩壊の危機だと私は思っています。これから何回かに分けて、マイナ保険証の問題点を追求していきたいと思います』、興味深そうだ。
・『保険証を人質に、マイナンバーカード作成を強制 3月7日、岸田内閣は現在の健康保険証を廃止し、マイナ保険証を全国民に義務化するという法律の改正案を、閣議決定しました。 マイナンバーは、国から国民に「強制的」に割り振られた番号ですが、この番号を使った「マイナンバーカード」を作るかどうかは「強制」ではなく、あくまでも「任意」です。 なぜ、「強制」ではないのかといえば、数字だけのマイナンバーと異なり「マイナンバーカード」には、氏名・性別・住所・生年月日の「基本4情報」だけでなく顔写真、さらにはカードの裏側にICチップもついていて、オンラインで精度の高い本人証明が可能だからです。 ちなみに顔写真は、本人確認の精度が指紋の1000倍と言われていますから、これを行政が「強制的」に個人から収集・利用するには、相当な必要性がなければプライバシーの侵害となる可能性があります。ですから、これに反対する人も多く、そのために「マイナンバーカード」の作成は「強制」ではなく、作りたい人が申し出る「任意」の形をとっています。 マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)の第16条の2では「住民基本台帳に記録されている者の申請に基づき、その者に係る個人番号カードを発行するものとする」となっていて、マイナンバーカードについては、本人の申請でつくられることが明記されています。 個人情報保護委員会のパンフレットの「マイナンバーハンドブック」にも、「マイナンバーカードは、マイナンバーをお持ちの方 からの申請により、市区町村が交付します。これはICチップが搭載されたプラスチック製のカードですが、このICチップには、所得情報や健康情報などのプライバシー性の高い個人情報は入っていません」となっています。 ところが、「本人の申請」がなくては作れない「マイナンバーカード」に、「マイナ保険証」という必要不可欠な機能をつけ、しかも現在の健康保険証を来年の秋には廃止するというのです。 その結果、なにが起きるのかと言えば、「任意」であるはずの「マイナンバーカード」を作らなければ、保険証が持てなくなり、国民皆保険から弾き出され「膨大な医療費を支払うことになる」と脅しているようなものです』、「マイナンバー法」では、「マイナンバーカードについては、本人の申請でつくられることが明記」、と「プライバシー」保護に配慮した形になった。
・『普及のための「アメ」と「ムチ」 「マイナンバーカード」は、あくまで「任意」で作るという建前ですから、多くの人が申請するように、政府は最高2万円分のポイントをバラ撒き、加入を促進する「アメ」を配りまくりました。 この普及キャンペーンにつぎ込まれた予算は累計で約2兆円以上といいますから、国民1人当たり平均で約1万6000円の税金を負担した計算です。しかも、その前に過去9年間で8800億円の税金が使われています。これは、2021年3月の衆院内閣委員会、当時首相だった菅義偉氏が明らかにした数字で、この金額も含めると、約3兆の税金が使われたことになります。 その一方で、国から自治体へ交付金を配分する際にマイナンバーの交付率を基準にするなど、「ムチ」で締め上げることもありました。 財政状況が良くない地方自治体にとって、交付金を受け取れるかどうかは死活問題です。このため、独自に宣伝したりポイントをバラ撒いたり、中には「家族全員がマイナンバーカードを取得しない限り、これまで無償だった給食費を有料にする」と住民を“脅迫”する自治体なども出てきて大問題になりました』、「最高2万円分のポイントをバラ撒き」も含めた「普及キャンペーンにつぎ込まれた予算は累計で約2兆円以上」、「その前に過去9年間で8800億円の税金が使われています」、「この金額も含めると、約3兆の税金が使われたことに」、本当に巨額だ。
・『約4分の1の人は作っていない 国の目標は、マイナンバーカードを2022年度末までにほぼ全国民に交付すること。この「アメ」と「ムチ」の効果は絶大だったようで、デジタル庁の「政策データダッシュボード」を見ると、3月末の時点で、「マイナンバーカード」を作っている人は、国民の約76%となっています。 ただ、それでもまだ約4分の1の人は「マイナンバーカード」を作っておらず、そうした人たちを締め上げるために、保険証を無くして「マイナ保険証」を義務化するという政策を強力に打ち出したのでしょう。 ちなみに、同日時点で「マイナ保険証」を作っている人は、国民全体の約66%でした。マイナンバーカードは持っていても、マイナ保険証を取得していない人が少なからずいるのは、そのメリットを感じられないからではないでしょうか。 国もそれはわかっています。「マイナ保険証」を作れば、7500円分のポイントを付与するのも、今ある紙の健康保険証より大幅に便利とまでは考えていないからではないか、と疑ってしまいます。 そこで具体的に、現在の保険証を廃止してまで「マイナ保険証」に替えるメリットがあるのかということを、使う側の視点で見てみましょう』、「3月末の時点で、「マイナンバーカード」を作っている人は、国民の約76%となっています。 ただ、それでもまだ約4分の1の人は「マイナンバーカード」を作っておらず、そうした人たちを締め上げるために、保険証を無くして「マイナ保険証」を義務化するという政策を強力に打ち出したのでしょう」、なるほど。
・『「正確なデータに基づく診療」は本当か? 政府が打ち出す「マイナ保険証」のメリットの一つは、顔認証を利用することで医療機関の窓口での受付が自動化され、スムーズかつ時間短縮になるということです。 確かに、受付が自動化されれば、受付での待ち時間も短縮されるというのはその通りです。ただ、病院の待合室で患者が長時間待たされる原因は、受付に時間と手間がかかっているからではありません。 少ない医師が次々と来る多くの患者に対応しきれないのが理由であるため、前の患者の診察が終わるまで待合室で待っていなくてはならないというケースも多々あります。ですから、今まで3分かかっていた受付の事務作業が1分になったからといって、病院での待ち時間が劇的に短縮されるとは到底思えません。 もうひとつのメリットとして、厚生労働省は「正確なデータに基づく診療・薬の処方が受けられる」と言っています。これはどうでしょう。 結論から言えば、「マイナ保険証」を使えば、正確なデータに基づく診療・薬の処方を受けられるのかというと、必ずしもそうとは言い切れません。なぜなら、「マイナ保険証」に入っている主な診療情報とは、「レセプト(診療明細書)」の情報だからです。 医師は患者の状態を見て、得られた情報をカルテに書き込み、過去のカルテと照合しながら病状を判断して施術を行ったり、薬を出したりします。レセプトとは、その時に患者が支払ったお金の明細書でしかありません。 しかも、これはリアルタイムな情報ではなく、「1ヶ月前に、こんな病気で医者に行ってこんな治療を受けた」というようなもの。医師は、リアルタイムで診断してこそ正確な対処ができますから、レセプト情報があるというだけで、必ずしも「正確なデータに基づく診療・薬の処方が受けられる」とは言えないのです。もしもレセプトの情報だけで診断する医師がいたとしたら、医師免許を取り上げるべきでしょう。 ちなみに、道で倒れて救急車で運ばれる時に、「マイナ保険証」を見て、救急隊員が応急措置をしてくれるかといえば、それもできません。救急車は、「マイナ保険証」とは連動していないからです。 しかも国は、将来的には医療カルテ自体を「マイナ保険証」に搭載したい意向を持っていますが、多くの医師がこれに反対しています。 なぜなら、医師には患者の医療情報を漏らしてはならないという守秘義務があり、これを怠ると医師免許が取り上げられてしまうかもしれないので、情報漏洩を懸念しているからです。 後編記事『「マイナ保険証」のせいで健康保険が「崩壊」するかもしれない…その決定的な問題点』に続きます』、「「マイナ保険証」に入っている主な診療情報とは、「レセプト(診療明細書)」の情報」、「レセプトとは、その時に患者が支払ったお金の明細書でしかありません。 しかも、これはリアルタイムな情報ではなく、「1ヶ月前に、こんな病気で医者に行ってこんな治療を受けた」というようなもの。医師は、リアルタイムで診断してこそ正確な対処ができますから、レセプト情報があるというだけで、必ずしも「正確なデータに基づく診療・薬の処方が受けられる」とは言えない」、なるほど。
第三に、この続きを、4月20日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの荻原 博子氏による「「マイナ保険証」のせいで健康保険が「崩壊」するかもしれない…その決定的な問題点 最悪の暴挙に出る可能性も…」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108891?imp=0
・『国による強引な「マイナンバーカード」普及の一環で、すべての国民が使っている健康保険証が2024年の秋に廃止されることになりました。 これは単に紙の保険証がマイナンバーカードに統合されるだけではありません。その先に待っているのは、日本が世界に誇る健康保険制度の崩壊の危機だと私は思っています。 前編記事『8割の日本人が気づいていない「マイナ保険証」の恐ろしすぎる「落とし穴」』に引き続き、マイナ保険証の問題点を追求していきたいと思います』、「マイナ保険証の問題点」とは身近で重要だ。
・『約4割の医療機関でまだ使えない 実は、「マイナ保険証」の「強制」は、現在の厚生労働省の方針とも矛盾しています。 厚生労働省は、患者が大病院に集中するのを避けるために、「まず地域の医者に診てもらい、そこで不十分なら紹介状を書いてもらって大病院に行く」ことを奨励しています。いわゆるかかりつけ医を持ちましょう、というものです。 そのため、紹介状を持たずいきなり大病院に行った場合は、保険が効かない「特別料金」が7000円も上乗せされます。規定では特別料金は「7000円以上」となっているため、実際には1万円から1万5000円程度を上乗せしている大病院がほとんどです。 ですから、大病院を避けて地域の病院に行く人が増えましたが、中小の開業医は大病院に比べて「マイナ保険証」への対応が遅れています。現在、まだ4割ほどの医療機関で「マイナ保険証」が使えないのですが(2023年3月末時点)、その多くは厚生労働省が初めにかかることを推奨している地域の医者です。 しかも「マイナ保険証」が使えるところでも、機械で顔写真が読み込めず、本人確認ができないなどのトラブルが多発しています。 全国保険医団体連合会が2022年10〜11月に実施した調査では、回答した医療機関8700余のうち、システムの運用を開始しているのは24%で、そのうち41%がトラブル・不具合があったと答えています。その内訳(複数回答)は、「有効な保険証でも無効と表示された」が62%、「カードリーダーの不具合」が41%でした。) そもそも、2021年4月から医療機関で「マイナ保険証」が使えるようになると国は大々的に宣伝していましたが、あまりに不具合が多く同年10月に延期されたという経緯があります。 ですから健康保険組合などは、機械のシステムエラーに備え、必ず従来の健康保険証を一緒に持っていくことを奨励しています。新たなシステムの導入時に多少の不具合が出るのは仕方ないという意見もありますが、健康保険という命にかかわる仕組みでこれはあまりにも杜撰です。 こんな状況で健康保険証が廃止されてしまったら、どうなるのでしょうか』、「回答した医療機関8700余のうち、システムの運用を開始しているのは24%で、そのうち41%がトラブル・不具合があったと答えています。その内訳(複数回答)は、「有効な保険証でも無効と表示された」が62%、「カードリーダーの不具合」が41%」、こんなに「トラブル・不具合」が多いのは何故なのだろう。
・『「マイナ保険証」は毎回提示 国は当初、「マイナンバー」には極めて重要な情報が入っているから大切に保管するよう言っていたのを憶えているでしょうか。「企業が従業員のマイナンバーを預かる場合は、専用の金庫を用意するように」とまで言っていました。マイナンバーカードは、マイナンバーが書かれているカードです。 そのため、紛失などを心配して、マイナンバーカードを取得しても持ち歩かない人が多いのですが、「マイナ保険証」が搭載されるとそうはいきません。 今の保険証は、月初めに一度だけ窓口で見せればいいという病院が多いのですが、「マイナ保険証」になったら、毎回窓口で提示しなくてはならないからです。 本来なら、診療のたびに健康保険証を提示しなくてはならないものですが、それでは患者が煩わしいだろうという配慮で、月一回の提示にしてきた病院が多いのです。 けれども、「マイナ保険証」は、毎回提示を求められるので、通院回数が多い人は常に携帯することになりそうです。 これに対して全国保険医団体連合会が昨年12月に厚生労働省に質問したところ、「月初での実施など各病院・診療所で異なる運用を実施している場合は、そちらを優先することも可能」とのただし書きを示したのですが、その後運用マニュアルを改定して、この部分を削除しました。 また、介護の現場では、緊急時の受診などに備えて入居者から保険証を預かっているケースが珍しくありませんが、「マイナ保険証」になると、現場の運用で新たな問題が指摘されています。なぜなら、「マイナ保険証」を預かっていたとしても、4桁の暗証番号も教えてもらわなければ役に立たないからです。 ところがこのパスワードがわかると、マイナポータル(政府が運営するウェブサイト)にログインでき、納税情報や年金情報、医療情報などを見ることが可能なので、犯罪予防のために預からないという介護施設も出てきそうです。 こうした問題を国はどこまで把握しているのか。大きな疑問です』、「介護の現場では、緊急時の受診などに備えて入居者から保険証を預かっているケースが珍しくありませんが、「マイナ保険証」になると、現場の運用で新たな問題が指摘されています。なぜなら、「マイナ保険証」を預かっていたとしても、4桁の暗証番号も教えてもらわなければ役に立たないからです。 ところがこのパスワードがわかると、マイナポータル・・・にログインでき、納税情報や年金情報、医療情報などを見ることが可能なので、犯罪予防のために預からないという介護施設も出てきそうです」、確かに「介護の現場」ではどうするのだろう。
・『まるで、嫌がらせのような仕打ち 国が様々な「アメ」を用意して国民に「マイナ保険証」を取得させようとしても、国民全員が政府の思惑通りに「マイナンバーカード」を作り「マイナ保険証」を申請するとは限りません。 様々な理由で「マイナ保険証」を持たないという人がいます。そういう人のために「健康保険証」が廃止された後は、代わりに「資格確認書」というものを発行することになっていますが、ここにも問題があります。 「資格確認書」は、従来の「健康保険証」と同じ役割を果たすものですが、まるで「マイナ保険証」をつくらないことへの嫌がらせかと感じられるほど、使い勝手が悪いのです。 まず、有効期限は、「健康保険証」が廃止されてから「マイナ保険証」を作るまでの1年間。ただ、1年経っても全員が「マイナ保険証」を作る可能性は低いので、実際には1年ごとの更新になっていくのではないかと言われていますが、まだ結論は出ていません。 また従来の保険証のように、更新時に新しいものを自宅に送ってきてくれるのではありません。仮に有効期限が1年なら、1年ごとに自治体の窓口に行って更新手続きをしなくてはならないのです。 しかも、手続きしてもその場ですぐには発行されない可能性も指摘されています。そうなると、発行されるまでの間は無保険になります。保険料を払っていても、無保険になるというのはどういうことでしょうか。到底納得できません』、「資格確認書」は「まるで「マイナ保険証」をつくらないことへの嫌がらせかと感じられるほど、使い勝手が悪いのです」、「仮に有効期限が1年なら、1年ごとに自治体の窓口に行って更新手続きをしなくてはならないのです。 しかも、手続きしてもその場ですぐには発行されない可能性も指摘」、「発行されるまでの間は無保険になります。保険料を払っていても、無保険になるというのはどういうことでしょうか。到底納得できません」、確かに不当だ。
・『病院の料金が高額に ちなみに、「マイナンバーカード」を紛失した場合も、再発行には1〜2ヶ月くらいかかります。ただ、緊急の場には申請時に市町村の窓口で本人申請をすれば、5〜10日くらいで手元に届く制度をつくると政府は公表しています。「マイナ保険証」ですら、カードを紛失すると一定期間は使えませんから、「資格確認書」も同様かそれ以上に不便になると考えていいでしょう。 さらに言えば、「資格確認書」だと、病院の窓口で支払う料金が「マイナ保険証」より高くなる可能があります。 現在、「マイナ保険証」を使える病院の窓口で従来の健康保険証を出すと、下図のように「マイナ保険証」がある人に比べて初診料が高くなります。しかも、この4月から、12円が18円に値上がりしています。 ちなみに、医療機関が「マイナ保険証」を扱うように義務化された4月現在でも、先述の通り「マイナ保険証」が使えない病院が4割ほどありますが、そこではこうした料金の上乗せはありません。 2023年3月時点 実は、「資格確認書」については、発行する際に手数料を取るという案もあったようですが、さすがに自民党内部から「懲罰的に料金を取るのはおかしい」と反対の声が上がり、現時点では無料になっています』、「「資格確認書」だと、病院の窓口で支払う料金が「マイナ保険証」より高くなる可能があります。 現在、「マイナ保険証」を使える病院の窓口で従来の健康保険証を出すと、下図のように「マイナ保険証」がある人に比べて初診料が高くなります。しかも、この4月から、12円が18円に値上がりしています」、「マイナ保険証」へ誘導したいための仕組みなのだろうが、意図が見え見えでいやらしい。
・『国民皆保険を突き崩す脅威 いかがでしょうか。 現実と照らし合わせて見てみると、私たちにとって「マイナ保険証」は、現在の保険証を無くしてまで導入する価値があるもの、とはとても思えません。 むしろ、諸先輩が築きあげてきた「国民皆保険」という世界に誇れる制度を、内側から突き崩す脅威になりかねません。 事態はどんどん悪化していますが、最悪でも「現在の保険証を廃止する」という暴挙だけは、止めなくてはいけないと思います。 実は前編でも触れたように、「マイナ保険証」の導入については、患者の個人情報の漏洩を恐れる多数の医師たちからも、反対の声が上がっています。情報が漏洩すると、最悪の場合、彼らが医師免許を剥奪されるかもしれないからです。 次回は、こうした医師たちの声も交え、「マイナ保険証」の情報のあり方とセキュリティの問題に迫りたいと思います』、「諸先輩が築きあげてきた「国民皆保険」という世界に誇れる制度を、内側から突き崩す脅威になりかねません。 事態はどんどん悪化していますが、最悪でも「現在の保険証を廃止する」という暴挙だけは、止めなくてはいけないと思います」、同感である。
第四に、4月22日付けダイヤモンド・オンライン「マイナンバーカード推進の裏で進む法改正、個人情報利用や機能追加などに「野放図拡大」のリスク」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321276
・『政府がDXのキーとして進める「マイナンバーカードの普及とマイナンバーカの活用」。今国会で審議中のマイナンバー法の改正で、行政側による個人のマイナンバーの参照や利用内容が大きく緩和される。今後どんなことが起きるのか?特集『企業・銀行・官公庁・ITベンダー・コンサルが大騒ぎ! ヤバいDX 2023』(全13回)の#7では、マイナンバー制度の制定に関わった専門家らがマイナンバー制度の問題点を指摘する』、「マイナンバー制度の問題点」とは興味深そうだ。
・『「マイナンバーカード反対デモ」も登場 法改正を前に広がる大混乱 「保険証を人質に、窓口負担を増やしてまで、カードの取得・利用を強要することは許されない」 4月14日、マイナンバー法の改正法案が国会審議入りした。保険証を統合する、年金受け取り用の銀行口座を拒否申請がない限りは自動でマイナンバーにひも付ける、などの改正点が野党の反発を呼んだ。18日には保険証とマイナンバーカードとの統合に反対する国会前のデモまで行われた。 政府が「国民サービスのDXのキーになる」として、合計2兆円余りの予算を費やして普及を進めるマイナンバーカード。現在全国民の76.6%にまで普及したが、マイナンバーおよびマイナンバーカードを巡るさまざまな反対意見や怒りの声は今日もインターネットやSNSで渦巻き続け、一向に鎮火しそうにない。 そもそも、マイナンバーを巡る議論や懸念には誤解や混乱が多い。 まず第一に、「マイナンバー」と「マイナンバーカード」の議論は別だ。 マイナンバーは、2016年1月以降すでに全国民に振られている番号で、私たちは意識していないが、国や自治体の行政処理の現場では日常的に使用されている。マイナンバーカードを返納したところでマイナンバー制度から離脱することは、もちろんできない。 第二に、マイナンバーがあれば、自分の納税額から住所、社会保険料や戸籍情報まで、全ての個人情報が集まるスーパーデータベースから情報が芋づる式に引き出せるわけではない。国民の個人情報を管理するデータベースは従来通り各省庁や自治体が個別に管理しており、マイナンバーはそれらを「名寄せ」するためのタグなのだ。 例えば国税庁の納税者データベースに、マイナンバー123456789の鈴木洋子という神奈川県川崎市在住の人が登録されているとする。この人の納税データを、社会保険データベースを持つ厚生労働省が、保険料の支払いの事務作業で確認したいが、厚労省データベースでは同名で東京都在住の人が登録されており、同一人物かどうか分からない。だが、番号123456789が同じなので、同一人物だと突合できた――などのように使える。確実に本人だと確認するための振り番が、マイナンバーだ。 つまり誰かのマイナンバーが手に入ったところで、その納税データを悪意を持った外部の人が抜くためには、国税庁の納税データベースにハッキングをかけて成功する必要がある。 そしてマイナンバーカード。これも、単なるマイナンバーの情報のみならずさまざまな機能が複合的に搭載されたカードなのだ。 (図表:マイナンバーカードの内容と仕組み はリンク先参照) 券面とICチップ内の(1)マイナンバー情報に加えて、カードを持つ人が確かに利用者本人であると電子的に証明したり、送付する電子文書が本物である証拠の署名を行ったりする(2)電子証明書機能が付いている。さらに、自治体や国、民間企業が認可を受ければ自由に利用できる(3)空き領域もある。会員証や入館証、社員証やポイントカードなど、用途はかなり自由だ。 ちなみに(1)のマイナンバー自体は、この後説明するように利用用途と利用を許される人・機関が法律で定められている。一方、(2)および(3)に関しては、認可を受ければ国や自治体のみならず民間企業団体でも自由に使える、という設計だ。ざっくり言えば「マイナンバー」の利用には今のところ規制がかかっているが、「マイナンバーカード」の利用はかなり広く一般に公開されている。 マイナンバーカードという名称からはこの(2)(3)の存在も見えないし、これらの機能とマイナンバーの関係は非常に分かりにくい。 ただでさえ構造的に理解が難しいマイナンバーとマイナンバーカードだが、これらの「存在意義」を分かりやすい形で示すことなく、国はカードの普及とマイナンバー活用にひたすらアクセルを踏んでいる。 そこへきて現在国会で審議中の改正マイナンバー法だ。これが成立すると、具体的に何が変わるのか。そこには現在あまり注目されていない点もあまた隠れている。次ページから解説していこう。 今回の法改正では何が変わるのか。 下図を見てほしい。まず、(1)マイナンバーそのものの使い方を拡張することだ(下図参照)。これまでのマイナンバーの利用は、税・社会保障・災害対策の3用途のみで、その用途の中でも利用できる主体と内容が全てリスト化されていた。それが3分野以外にも広がる。今回は、このリストに3分野以外から新たに、美容師や建築士などの国家資格保持者が、これまでのように書類を事務所に提出せずとも、マイナンバーカードを利用して自宅から届け出ができる――などのような使い方が追加される。このように用途を追加するにはその都度法改正が必要になる。 (図表:マイナンバー法改正のポイント の図表はリンク先参照) 加えて、(2)「他の省庁などのデータベースが持つ国民の個人情報を、マイナンバーとひも付けて照会する」ということについてだ。これまでは(1)と同様にできることがリスト化され、何か追加するには法改正が必要だったが、これを政省令に落とし、法改正を不要とする。そして、実際に情報連携や照会が行われた場合は、個人が自分のマイナポータルから確認することができる。 専門家が事前に危惧していたのが、(1)の用途の追加が、法改正など表から見える動きなしになし崩しに行われることだった。与党一部にはより「積極的」な活用を推し進める動きもあったもようだが、今回は小幅な改変に終わった。 実は、マイナンバーには、新型コロナウイルス感染拡大時の定額給付金の支給の際には法律の壁があって使えなかったという「前科」がある。マイナンバーをより機動的に、必要なときに使えるようにする、という意図による改正であれば、一応はまっとうである。「「マイナンバー」の利用には今のところ規制がかかっているが、「マイナンバーカード」の利用はかなり広く一般に公開されている。 マイナンバーカードという名称からはこの(2)(3)の存在も見えないし、これらの機能とマイナンバーの関係は非常に分かりにくい。 ただでさえ構造的に理解が難しいマイナンバーとマイナンバーカードだが、これらの「存在意義」を分かりやすい形で示すことなく、国はカードの普及とマイナンバー活用にひたすらアクセルを踏んでいる」、「マイナンバー法改正のポイント」は分かり易い。しかし、「これらの「存在意義」を分かりやすい形で示すことなく、国はカードの普及とマイナンバー活用にひたすらアクセルを踏んでいる」、推進方法には問題が多い。
・『取得しなければ給食無償化にならない? 野放図に広がる「カードの活用拡大」 だが今回の法改正、そしてマイナンバーカードの運用にはまだまだ危ういところが残る。後者の典型が、今回浮上した保険証との統合だろう。つまり、「個人認証カード」としての用途の拡大である。 保険証は、保険組合加入資格を失った後でも続けて利用したり、他人の保険証を使い回したり、などの不正利用が問題になっていた。そのため、個人認証の機能が付いたマイナンバーカードならそうした不正利用を防げる、というのが統一の目的だ。だが「複数の機能がカード一枚に集中すれば、利便性は増すがセキュリティ上は危うくなる。その知識を得た上で、取得・非取得については自由に選択できるというのがマイナンバーカードの初期設計の趣旨であったはず」と鈴木正朝・新潟大学教授は指摘する。 実際に、こうした個人認証などのさまざまな機能が入ってしまっているマイナンバーカードでは、保険証として利用者から預かることができなくなるとして、老人ホームや入院患者を抱える病院などが反対の声を上げている。 また、国から地方自治体への交付金がマイナンバーカードの普及率とひも付けられるということもあり、岡山県備前市がマイナンバーカードの取得を、給食無償化や保育園無償化などの条件にしようとした(現在は撤回を表明)ことも批判を浴びた。住民利害を無視して首長の政治的思惑が先行するということが実際に起きた。 そしてこれは、マイナンバーとマイナンバーカード両方に共通することだが、「何のために普及させようとしているのか、利用することで国民にどんなメリットがあるのか」の全体的な青写真がまったく示されていないのだ。 マイナンバー法が最初に制定されたときの内閣官房メンバーの一人だった水町雅子弁護士は「これまで、税・社会保障・災害対策の分野で、マイナンバーがどのように使われてきて、効果を上げてきたのか。また、コロナ対策ではマイナンバーを利用できなかったが、もし利用できていたらどのようなことが可能だったのか、などの利用実態に対しての情報公開・検証と、それに基づいた用途拡大、というステップが踏まれていない」と指摘する。 さらに活用拡大のアクセルばかりが踏まれ、抑制やブレーキをかける方法も少ない。 デジタル庁のマイナンバー検討ワーキンググループのメンバーである、武蔵大学の庄司昌彦教授は「自分の情報を政府に預けてそれが利用されることに対しては、年金記録問題や職員個人の不正などもあり、国民は不安感がある。政府の行動を監視し、けん制するためにも、具体的にどのようにマイナンバーが使われたのかをチェックする仕組みが必要だ」と言う。 現在確認できるのは、データが元の機関から他機関に連携されたときのマイナポータルでの照会のみ。本来であれば、実際に自分の個人データにどの省庁の誰がいつアクセスしたのかが、全て分かるような形の方が納得感はある。 カードの機能追加に関しても、半ば強制的に全ての機能を一枚に集めることのメリットとリスクは一向に説明されておらず、「使わない」という選択肢がそもそも与えられないのもおかしな話だ。「マイナンバーカードの普及率が100%になれば便利なサービスが自動的に生まれるわけではない。普及率が上がってどんな社会を目指しているのかがまず示されなければ、国民の納得感は得られない」(水町弁護士)。 泥沼の政治問題と化してきたマイナンバーとマイナンバーカードを巡る騒動。これが国民生活のDXの切り札となれる日は果たして来るのだろうか』、「「これまで、税・社会保障・災害対策の分野で、マイナンバーがどのように使われてきて、効果を上げてきたのか。また、コロナ対策ではマイナンバーを利用できなかったが、もし利用できていたらどのようなことが可能だったのか、などの利用実態に対しての情報公開・検証と、それに基づいた用途拡大、というステップが踏まれていない」のは大いに問題だ。「カードの機能追加に関しても、半ば強制的に全ての機能を一枚に集めることのメリットとリスクは一向に説明されておらず、「使わない」という選択肢がそもそも与えられないのもおかしな話だ」、「「マイナンバーカードの普及率が100%になれば便利なサービスが自動的に生まれるわけではない。普及率が上がってどんな社会を目指しているのかがまず示されなければ、国民の納得感は得られない」」、同感である。
先ずは、先ずは、3月4日付けデイリー新潮「マイナカード「落としても悪用されない」はうそ? 「セキュリティーがあまりにも脆弱」」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/03040557/?all=1
・『岸田政権がゴリ押しするマイナンバーカード。2月末には、最大2万円分のポイントをもらうための「駆け込み申請」で人々が役所に殺到する事態となった。しかし、専門家はそのセキュリティーの脆弱(ぜいじゃく)さを指摘するのだ。 岸田政権がデジタル社会実現のため、一丁目一番地の課題として挙げる「マイナンバーカード(マイナカード)」の取得促進。 2015年に日本国内の全ての住民に12桁の番号が指定されて運用が始まったマイナンバー制度だが、一向に上がらないマイナカードの取得率は歴代政権の悩みの種であった。業を煮やした岸田文雄総理が状況打開のために投入したのが「2万円分のポイント」と「河野太郎」という二つの奇策。すなわち昨年5月にアナウンスされた公金受取口座のひもづけなどにより最大2万円分のポイントが付与される「マイナポイント事業第2弾」と、8月にデジタル相に就任した河野太郎氏である。 ポイント事業にはすでに2兆円超の予算が注ぎ込まれ、昨年10月には河野氏がマイナカードと一体化した上で健康保険証の廃止を目指すと発表。奇策は功を奏し、今年1月の時点でカードの申請件数は運転免許証の保有者数を上回り、普及率は70%近くに達している。 もちろん行政が効率化されるのは結構な話である。マイナポータルを使ってオンラインで行政手続きが行なえる電子政府化の促進も喫緊の課題であろう。さらに、個人情報が従来通り分散管理され、芋づる式に情報が漏洩する恐れがないのも理解はできる。 だが、果たしてカード普及のために消費税1%分に相当する血税を投入する必要はあったのか。保険証を廃止し、「資格確認書」という新たなムダを生み出してまでカードの取得を事実上強制する必要はあったのか。 見えてきたのは「設計不良」ともいえるマイナカードの不都合な真実であった。 マイナカードと保険証の一体化により、今後多くの人がカードを常時携行することが考えられる。河野氏も自身のホームページ上で〈(便利な)サービスを利用するために、マイナンバーカードを持ち歩きましょう〉と肌身離さず携帯することを推奨しているくらいだ。だが、その歯切れの良さとは裏腹に“常時携行”に一定のリスクが伴うことはあまり理解されていない。 『超ID社会』などの著書がある、一般社団法人「情報システム学会」常務理事の八木晃二氏によれば、 「現行のマイナンバーカードには異なる目的を持つ機能が乱暴に放り込まれ、“持ち歩いてよい機能”と“大切に管理すべき機能”とがごちゃ混ぜになってしまっています」 そもそもマイナンバー制度は、12年に当時の民主党政権が「社会保障と税の公平化・効率化」を掲げて法案を提出したのが始まり。現在も、マイナンバー自体は「社会保障」「税」「災害」の分野でしか使うことができない。だが、番号が記載されたマイナカードにはすでに「電子政府にアクセスするための国民ID」や「全国民共通の身元証明書」といった機能が盛り込まれ、今後も拡大されていく見込みである。 『社会保障と税の改革』も『国民ID』も『身元証明』も、必要なのは“本人確認”ですから、これらを一つのカードに組み込むことは一見合理的に思えます。ただ、それぞれで求められる本人確認のレベルは、全く別物。マイナンバー制度の設計関係者たちが、それを理解せずに制度設計を進めてしまったと思われます」(同)』、「「マイナポイント事業第2弾」と、8月にデジタル相に就任した河野太郎氏である。 ポイント事業にはすでに2兆円超の予算が注ぎ込まれ、昨年10月には河野氏がマイナカードと一体化した上で健康保険証の廃止を目指すと発表」、「奇策は功を奏し、今年1月の時点でカードの申請件数は運転免許証の保有者数を上回り、普及率は70%近くに」、「果たしてカード普及のために消費税1%分に相当する血税を投入する必要はあったのか。保険証を廃止し、「資格確認書」という新たなムダを生み出してまでカードの取得を事実上強制する必要はあったのか。 見えてきたのは「設計不良」ともいえるマイナカードの不都合な真実」、「現行のマイナンバーカードには異なる目的を持つ機能が乱暴に放り込まれ、“持ち歩いてよい機能”と“大切に管理すべき機能”とがごちゃ混ぜになってしまっています」、「マイナンバー自体は「社会保障」「税」「災害」の分野でしか使うことができない。だが、番号が記載されたマイナカードにはすでに「電子政府にアクセスするための国民ID」や「全国民共通の身元証明書」といった機能が盛り込まれ、今後も拡大されていく見込み」、「必要なのは“本人確認”ですから、これらを一つのカードに組み込むことは一見合理的に思えます。ただ、それぞれで求められる本人確認のレベルは、全く別物。マイナンバー制度の設計関係者たちが、それを理解せずに制度設計を進めてしまったと思われます」、その通りだ。
・『四つの本人確認 八木氏によれば、デジタル社会には大きく分けて四つの本人確認が存在する。 一つ目は「身元確認」と呼ばれる本人確認である。信頼できる発行機関が発行した証明書上の顔写真などの形質情報と、目の前の人の形質を照合することにより、その人が証明書上の本人であると確認することを指す。警察官に「身分を確認できるものを」と言われ運転免許証やパスポートを提示する行為がまさにこれで、マイナカードの「身元証明書」としての機能もこの「身元確認」に含まれる。 二つ目は「当人確認」または「認証」と呼ばれ、ログインIDと暗証番号の組み合わせなど、当人しか知り得ない情報を照合することによって、ログインしているのがユーザー登録を行なった当人であることを確認することを指す。現行のマイナカードでは、オンラインで行政手続きができるマイナポータルにログインする際、カードをカードリーダーで読み取った上で4桁の暗証番号を入力することになっている。つまりマイナカード自体を当人確認のツールとして使用しているのである。 そして、三つ目と四つ目が「真正性の確認」と「属性情報確認」と呼ばれる本人確認だ。「真正性の確認」で、申請者が提示した番号が本当にその申請者に付番されたものかを確認し、「属性情報確認」で、その番号にひもづくさまざまな情報を取得・確認する。マイナンバー制度の当初からの目的である「行政の効率化」や「社会保障と税の一体改革」は、この「真正性の確認」と「属性情報確認」によって成し遂げられるものである。 マイナカードには、このようにレベルの異なる本人確認機能が一緒くたに盛り込まれている。だが、実はこれら四つの本人確認のうち、マイナンバーが使われるのは三つ目と四つ目だけなのだ』、「四つの本人確認」、①「身元確認」:証明書上の顔写真などの形質情報と、目の前の人の形質を照合することにより、その人が証明書上の本人であると確認、②「当人確認」または「認証」:ログインIDと暗証番号の組み合わせなど、当人しか知り得ない情報を照合することによって、ログインしているのがユーザー登録を行なった当人であることを確認、③「真正性の確認」:申請者が提示した番号が本当にその申請者に付番されたものかを確認,④「属性情報確認」:その番号にひもづくさまざまな情報を取得・確認、「マイナンバー制度の当初からの目的である「行政の効率化」や「社会保障と税の一体改革」は、この③と④によって成し遂げられるもの、マイナンバーが使われるのは③と④だけ、なるほど。
・『身元確認でマイナンバーを使用する必要がない? 「マイナンバーはヒトに付された番号で基本的には生涯不変。しかし、一つ目の身元確認の場合、必要なのはヒトに付された生涯不変の番号ではなく“券”すなわち証明書自体に付された“券面管理番号”です。カードを紛失して再発行した場合、この券面管理番号が更新されることで古いカードは失効される。事実、マイナンバーカードにも免許証やパスポートと同じく券面管理番号が振られており、身元証明書として使う限りマイナンバーが書かれている必要はありません」(同) では、二つ目の当人確認の場合はどうか。 「マイナンバーは“本人しか知らない秘密の番号”ではありませんから、当人確認のログインIDとして使用することは、あまり適切ではありません。そこで“カードを所持しているか”と“4桁の暗証番号を知っているか”で当人確認をすることにしたのです。マイナポータルにログインする際、カードをスマホやカードリーダーで読み取るのは、このためです」(同) つまり、身元確認も当人確認も、わざわざマイナンバーが記載されたカードを使用する必要はない。言い換えれば、マイナンバーとこの二つの本人確認に使用するカードとの間には何の関係もないのである。これは多くの国民にとって寝耳に水の話であろう』、「身元確認も当人確認も、わざわざマイナンバーが記載されたカードを使用する必要はない。言い換えれば、マイナンバーとこの二つの本人確認に使用するカードとの間には何の関係もない」、初めて知った。
・『カード盗難で簡単に突破 それでも“複数の本人確認が1枚のカードで済むのなら、やはり便利ではないか”と思う人がいるかもしれない。ところが、そこには明確なリスクも存在する。 「印鑑を例に考えてみましょう。私たちは宅配便の受け取り程度であれば認印と呼ばれる三文判、銀行口座を使う場合は銀行印、不動産などの取引では印鑑登録をした実印、と場面によって印鑑を使い分けます。マイナンバーカードは、これを全て実印に統一しようと言っているのと同じです。日常的に実印を常時携行して使用するのはあまりに不用意でしょう」(同) 河野氏は〈キャッシュカードと同様、暗証番号が必要〉〈紛失・盗難時には利用停止ができる〉〈暗証番号を一定回数以上間違えるとロックされる〉などの理由で“カードが悪用されることはない”と胸を張る。だが、 「マイナポータルへのログインにはマイナンバーカードと4桁の暗証番号しか求められません。暗証番号を書いたメモを一緒に持ち歩いていたり、誕生日など単純な暗証番号にしていたりすれば、カードを盗まれた場合に簡単に突破されてしまう」(同)』、「暗証番号を書いたメモを一緒に持ち歩いていたり、誕生日など単純な暗証番号にしていたりすれば、カードを盗まれた場合に簡単に突破されてしまう」、恐ろしいことだ。
・『セキュリティーは脆弱 近年はオンラインバンクなどの民間サービスでも、使い捨ての暗証番号であるワンタイムパスワードなどを使用した多段階認証が常識になっている。これを考えれば、マイナカードを使用した認証のセキュリティーレベルはあまりに脆弱というわけだ。 「それに、防犯カメラのついたATMでしか使えないキャッシュカードの持つリスクと、機器があれば誰のパソコンからでもログインできるマイナンバーカードの持つリスクは比べ物になりません。暗証番号ロックや利用停止なども盗難やなりすましの予防効果としては限定的です。むしろ、今後多くの民間サービスとひもづけられれば、ロックや利用停止で生活が立ち行かなくなってしまいます」(同) 民間サービスとの連携が進めば、それだけ悪用のリスクも増加する。今一度、熟慮と検証が必要である』、「今後多くの民間サービスとひもづけられれば、ロックや利用停止で生活が立ち行かなくなってしまいます」、「民間サービスとの連携が進めば、それだけ悪用のリスクも増加する。今一度、熟慮と検証が必要である」、その通りだ。
次に、4月20日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの荻原 博子氏による「8割の日本人が気づいていない「マイナ保険証」の恐ろしすぎる「落とし穴」 健康保険証から乗り換えていいのか?」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108889?imp=0
・『国による強引な「マイナンバーカード」普及の一環で、すべての国民が使っている健康保険証が2024年の秋に廃止されることになりました。 これは単に紙の保険証がマイナンバーカードに統合されるだけではありません。その先に待っているのは、日本が世界に誇る健康保険制度の崩壊の危機だと私は思っています。これから何回かに分けて、マイナ保険証の問題点を追求していきたいと思います』、興味深そうだ。
・『保険証を人質に、マイナンバーカード作成を強制 3月7日、岸田内閣は現在の健康保険証を廃止し、マイナ保険証を全国民に義務化するという法律の改正案を、閣議決定しました。 マイナンバーは、国から国民に「強制的」に割り振られた番号ですが、この番号を使った「マイナンバーカード」を作るかどうかは「強制」ではなく、あくまでも「任意」です。 なぜ、「強制」ではないのかといえば、数字だけのマイナンバーと異なり「マイナンバーカード」には、氏名・性別・住所・生年月日の「基本4情報」だけでなく顔写真、さらにはカードの裏側にICチップもついていて、オンラインで精度の高い本人証明が可能だからです。 ちなみに顔写真は、本人確認の精度が指紋の1000倍と言われていますから、これを行政が「強制的」に個人から収集・利用するには、相当な必要性がなければプライバシーの侵害となる可能性があります。ですから、これに反対する人も多く、そのために「マイナンバーカード」の作成は「強制」ではなく、作りたい人が申し出る「任意」の形をとっています。 マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)の第16条の2では「住民基本台帳に記録されている者の申請に基づき、その者に係る個人番号カードを発行するものとする」となっていて、マイナンバーカードについては、本人の申請でつくられることが明記されています。 個人情報保護委員会のパンフレットの「マイナンバーハンドブック」にも、「マイナンバーカードは、マイナンバーをお持ちの方 からの申請により、市区町村が交付します。これはICチップが搭載されたプラスチック製のカードですが、このICチップには、所得情報や健康情報などのプライバシー性の高い個人情報は入っていません」となっています。 ところが、「本人の申請」がなくては作れない「マイナンバーカード」に、「マイナ保険証」という必要不可欠な機能をつけ、しかも現在の健康保険証を来年の秋には廃止するというのです。 その結果、なにが起きるのかと言えば、「任意」であるはずの「マイナンバーカード」を作らなければ、保険証が持てなくなり、国民皆保険から弾き出され「膨大な医療費を支払うことになる」と脅しているようなものです』、「マイナンバー法」では、「マイナンバーカードについては、本人の申請でつくられることが明記」、と「プライバシー」保護に配慮した形になった。
・『普及のための「アメ」と「ムチ」 「マイナンバーカード」は、あくまで「任意」で作るという建前ですから、多くの人が申請するように、政府は最高2万円分のポイントをバラ撒き、加入を促進する「アメ」を配りまくりました。 この普及キャンペーンにつぎ込まれた予算は累計で約2兆円以上といいますから、国民1人当たり平均で約1万6000円の税金を負担した計算です。しかも、その前に過去9年間で8800億円の税金が使われています。これは、2021年3月の衆院内閣委員会、当時首相だった菅義偉氏が明らかにした数字で、この金額も含めると、約3兆の税金が使われたことになります。 その一方で、国から自治体へ交付金を配分する際にマイナンバーの交付率を基準にするなど、「ムチ」で締め上げることもありました。 財政状況が良くない地方自治体にとって、交付金を受け取れるかどうかは死活問題です。このため、独自に宣伝したりポイントをバラ撒いたり、中には「家族全員がマイナンバーカードを取得しない限り、これまで無償だった給食費を有料にする」と住民を“脅迫”する自治体なども出てきて大問題になりました』、「最高2万円分のポイントをバラ撒き」も含めた「普及キャンペーンにつぎ込まれた予算は累計で約2兆円以上」、「その前に過去9年間で8800億円の税金が使われています」、「この金額も含めると、約3兆の税金が使われたことに」、本当に巨額だ。
・『約4分の1の人は作っていない 国の目標は、マイナンバーカードを2022年度末までにほぼ全国民に交付すること。この「アメ」と「ムチ」の効果は絶大だったようで、デジタル庁の「政策データダッシュボード」を見ると、3月末の時点で、「マイナンバーカード」を作っている人は、国民の約76%となっています。 ただ、それでもまだ約4分の1の人は「マイナンバーカード」を作っておらず、そうした人たちを締め上げるために、保険証を無くして「マイナ保険証」を義務化するという政策を強力に打ち出したのでしょう。 ちなみに、同日時点で「マイナ保険証」を作っている人は、国民全体の約66%でした。マイナンバーカードは持っていても、マイナ保険証を取得していない人が少なからずいるのは、そのメリットを感じられないからではないでしょうか。 国もそれはわかっています。「マイナ保険証」を作れば、7500円分のポイントを付与するのも、今ある紙の健康保険証より大幅に便利とまでは考えていないからではないか、と疑ってしまいます。 そこで具体的に、現在の保険証を廃止してまで「マイナ保険証」に替えるメリットがあるのかということを、使う側の視点で見てみましょう』、「3月末の時点で、「マイナンバーカード」を作っている人は、国民の約76%となっています。 ただ、それでもまだ約4分の1の人は「マイナンバーカード」を作っておらず、そうした人たちを締め上げるために、保険証を無くして「マイナ保険証」を義務化するという政策を強力に打ち出したのでしょう」、なるほど。
・『「正確なデータに基づく診療」は本当か? 政府が打ち出す「マイナ保険証」のメリットの一つは、顔認証を利用することで医療機関の窓口での受付が自動化され、スムーズかつ時間短縮になるということです。 確かに、受付が自動化されれば、受付での待ち時間も短縮されるというのはその通りです。ただ、病院の待合室で患者が長時間待たされる原因は、受付に時間と手間がかかっているからではありません。 少ない医師が次々と来る多くの患者に対応しきれないのが理由であるため、前の患者の診察が終わるまで待合室で待っていなくてはならないというケースも多々あります。ですから、今まで3分かかっていた受付の事務作業が1分になったからといって、病院での待ち時間が劇的に短縮されるとは到底思えません。 もうひとつのメリットとして、厚生労働省は「正確なデータに基づく診療・薬の処方が受けられる」と言っています。これはどうでしょう。 結論から言えば、「マイナ保険証」を使えば、正確なデータに基づく診療・薬の処方を受けられるのかというと、必ずしもそうとは言い切れません。なぜなら、「マイナ保険証」に入っている主な診療情報とは、「レセプト(診療明細書)」の情報だからです。 医師は患者の状態を見て、得られた情報をカルテに書き込み、過去のカルテと照合しながら病状を判断して施術を行ったり、薬を出したりします。レセプトとは、その時に患者が支払ったお金の明細書でしかありません。 しかも、これはリアルタイムな情報ではなく、「1ヶ月前に、こんな病気で医者に行ってこんな治療を受けた」というようなもの。医師は、リアルタイムで診断してこそ正確な対処ができますから、レセプト情報があるというだけで、必ずしも「正確なデータに基づく診療・薬の処方が受けられる」とは言えないのです。もしもレセプトの情報だけで診断する医師がいたとしたら、医師免許を取り上げるべきでしょう。 ちなみに、道で倒れて救急車で運ばれる時に、「マイナ保険証」を見て、救急隊員が応急措置をしてくれるかといえば、それもできません。救急車は、「マイナ保険証」とは連動していないからです。 しかも国は、将来的には医療カルテ自体を「マイナ保険証」に搭載したい意向を持っていますが、多くの医師がこれに反対しています。 なぜなら、医師には患者の医療情報を漏らしてはならないという守秘義務があり、これを怠ると医師免許が取り上げられてしまうかもしれないので、情報漏洩を懸念しているからです。 後編記事『「マイナ保険証」のせいで健康保険が「崩壊」するかもしれない…その決定的な問題点』に続きます』、「「マイナ保険証」に入っている主な診療情報とは、「レセプト(診療明細書)」の情報」、「レセプトとは、その時に患者が支払ったお金の明細書でしかありません。 しかも、これはリアルタイムな情報ではなく、「1ヶ月前に、こんな病気で医者に行ってこんな治療を受けた」というようなもの。医師は、リアルタイムで診断してこそ正確な対処ができますから、レセプト情報があるというだけで、必ずしも「正確なデータに基づく診療・薬の処方が受けられる」とは言えない」、なるほど。
第三に、この続きを、4月20日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリストの荻原 博子氏による「「マイナ保険証」のせいで健康保険が「崩壊」するかもしれない…その決定的な問題点 最悪の暴挙に出る可能性も…」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108891?imp=0
・『国による強引な「マイナンバーカード」普及の一環で、すべての国民が使っている健康保険証が2024年の秋に廃止されることになりました。 これは単に紙の保険証がマイナンバーカードに統合されるだけではありません。その先に待っているのは、日本が世界に誇る健康保険制度の崩壊の危機だと私は思っています。 前編記事『8割の日本人が気づいていない「マイナ保険証」の恐ろしすぎる「落とし穴」』に引き続き、マイナ保険証の問題点を追求していきたいと思います』、「マイナ保険証の問題点」とは身近で重要だ。
・『約4割の医療機関でまだ使えない 実は、「マイナ保険証」の「強制」は、現在の厚生労働省の方針とも矛盾しています。 厚生労働省は、患者が大病院に集中するのを避けるために、「まず地域の医者に診てもらい、そこで不十分なら紹介状を書いてもらって大病院に行く」ことを奨励しています。いわゆるかかりつけ医を持ちましょう、というものです。 そのため、紹介状を持たずいきなり大病院に行った場合は、保険が効かない「特別料金」が7000円も上乗せされます。規定では特別料金は「7000円以上」となっているため、実際には1万円から1万5000円程度を上乗せしている大病院がほとんどです。 ですから、大病院を避けて地域の病院に行く人が増えましたが、中小の開業医は大病院に比べて「マイナ保険証」への対応が遅れています。現在、まだ4割ほどの医療機関で「マイナ保険証」が使えないのですが(2023年3月末時点)、その多くは厚生労働省が初めにかかることを推奨している地域の医者です。 しかも「マイナ保険証」が使えるところでも、機械で顔写真が読み込めず、本人確認ができないなどのトラブルが多発しています。 全国保険医団体連合会が2022年10〜11月に実施した調査では、回答した医療機関8700余のうち、システムの運用を開始しているのは24%で、そのうち41%がトラブル・不具合があったと答えています。その内訳(複数回答)は、「有効な保険証でも無効と表示された」が62%、「カードリーダーの不具合」が41%でした。) そもそも、2021年4月から医療機関で「マイナ保険証」が使えるようになると国は大々的に宣伝していましたが、あまりに不具合が多く同年10月に延期されたという経緯があります。 ですから健康保険組合などは、機械のシステムエラーに備え、必ず従来の健康保険証を一緒に持っていくことを奨励しています。新たなシステムの導入時に多少の不具合が出るのは仕方ないという意見もありますが、健康保険という命にかかわる仕組みでこれはあまりにも杜撰です。 こんな状況で健康保険証が廃止されてしまったら、どうなるのでしょうか』、「回答した医療機関8700余のうち、システムの運用を開始しているのは24%で、そのうち41%がトラブル・不具合があったと答えています。その内訳(複数回答)は、「有効な保険証でも無効と表示された」が62%、「カードリーダーの不具合」が41%」、こんなに「トラブル・不具合」が多いのは何故なのだろう。
・『「マイナ保険証」は毎回提示 国は当初、「マイナンバー」には極めて重要な情報が入っているから大切に保管するよう言っていたのを憶えているでしょうか。「企業が従業員のマイナンバーを預かる場合は、専用の金庫を用意するように」とまで言っていました。マイナンバーカードは、マイナンバーが書かれているカードです。 そのため、紛失などを心配して、マイナンバーカードを取得しても持ち歩かない人が多いのですが、「マイナ保険証」が搭載されるとそうはいきません。 今の保険証は、月初めに一度だけ窓口で見せればいいという病院が多いのですが、「マイナ保険証」になったら、毎回窓口で提示しなくてはならないからです。 本来なら、診療のたびに健康保険証を提示しなくてはならないものですが、それでは患者が煩わしいだろうという配慮で、月一回の提示にしてきた病院が多いのです。 けれども、「マイナ保険証」は、毎回提示を求められるので、通院回数が多い人は常に携帯することになりそうです。 これに対して全国保険医団体連合会が昨年12月に厚生労働省に質問したところ、「月初での実施など各病院・診療所で異なる運用を実施している場合は、そちらを優先することも可能」とのただし書きを示したのですが、その後運用マニュアルを改定して、この部分を削除しました。 また、介護の現場では、緊急時の受診などに備えて入居者から保険証を預かっているケースが珍しくありませんが、「マイナ保険証」になると、現場の運用で新たな問題が指摘されています。なぜなら、「マイナ保険証」を預かっていたとしても、4桁の暗証番号も教えてもらわなければ役に立たないからです。 ところがこのパスワードがわかると、マイナポータル(政府が運営するウェブサイト)にログインでき、納税情報や年金情報、医療情報などを見ることが可能なので、犯罪予防のために預からないという介護施設も出てきそうです。 こうした問題を国はどこまで把握しているのか。大きな疑問です』、「介護の現場では、緊急時の受診などに備えて入居者から保険証を預かっているケースが珍しくありませんが、「マイナ保険証」になると、現場の運用で新たな問題が指摘されています。なぜなら、「マイナ保険証」を預かっていたとしても、4桁の暗証番号も教えてもらわなければ役に立たないからです。 ところがこのパスワードがわかると、マイナポータル・・・にログインでき、納税情報や年金情報、医療情報などを見ることが可能なので、犯罪予防のために預からないという介護施設も出てきそうです」、確かに「介護の現場」ではどうするのだろう。
・『まるで、嫌がらせのような仕打ち 国が様々な「アメ」を用意して国民に「マイナ保険証」を取得させようとしても、国民全員が政府の思惑通りに「マイナンバーカード」を作り「マイナ保険証」を申請するとは限りません。 様々な理由で「マイナ保険証」を持たないという人がいます。そういう人のために「健康保険証」が廃止された後は、代わりに「資格確認書」というものを発行することになっていますが、ここにも問題があります。 「資格確認書」は、従来の「健康保険証」と同じ役割を果たすものですが、まるで「マイナ保険証」をつくらないことへの嫌がらせかと感じられるほど、使い勝手が悪いのです。 まず、有効期限は、「健康保険証」が廃止されてから「マイナ保険証」を作るまでの1年間。ただ、1年経っても全員が「マイナ保険証」を作る可能性は低いので、実際には1年ごとの更新になっていくのではないかと言われていますが、まだ結論は出ていません。 また従来の保険証のように、更新時に新しいものを自宅に送ってきてくれるのではありません。仮に有効期限が1年なら、1年ごとに自治体の窓口に行って更新手続きをしなくてはならないのです。 しかも、手続きしてもその場ですぐには発行されない可能性も指摘されています。そうなると、発行されるまでの間は無保険になります。保険料を払っていても、無保険になるというのはどういうことでしょうか。到底納得できません』、「資格確認書」は「まるで「マイナ保険証」をつくらないことへの嫌がらせかと感じられるほど、使い勝手が悪いのです」、「仮に有効期限が1年なら、1年ごとに自治体の窓口に行って更新手続きをしなくてはならないのです。 しかも、手続きしてもその場ですぐには発行されない可能性も指摘」、「発行されるまでの間は無保険になります。保険料を払っていても、無保険になるというのはどういうことでしょうか。到底納得できません」、確かに不当だ。
・『病院の料金が高額に ちなみに、「マイナンバーカード」を紛失した場合も、再発行には1〜2ヶ月くらいかかります。ただ、緊急の場には申請時に市町村の窓口で本人申請をすれば、5〜10日くらいで手元に届く制度をつくると政府は公表しています。「マイナ保険証」ですら、カードを紛失すると一定期間は使えませんから、「資格確認書」も同様かそれ以上に不便になると考えていいでしょう。 さらに言えば、「資格確認書」だと、病院の窓口で支払う料金が「マイナ保険証」より高くなる可能があります。 現在、「マイナ保険証」を使える病院の窓口で従来の健康保険証を出すと、下図のように「マイナ保険証」がある人に比べて初診料が高くなります。しかも、この4月から、12円が18円に値上がりしています。 ちなみに、医療機関が「マイナ保険証」を扱うように義務化された4月現在でも、先述の通り「マイナ保険証」が使えない病院が4割ほどありますが、そこではこうした料金の上乗せはありません。 2023年3月時点 実は、「資格確認書」については、発行する際に手数料を取るという案もあったようですが、さすがに自民党内部から「懲罰的に料金を取るのはおかしい」と反対の声が上がり、現時点では無料になっています』、「「資格確認書」だと、病院の窓口で支払う料金が「マイナ保険証」より高くなる可能があります。 現在、「マイナ保険証」を使える病院の窓口で従来の健康保険証を出すと、下図のように「マイナ保険証」がある人に比べて初診料が高くなります。しかも、この4月から、12円が18円に値上がりしています」、「マイナ保険証」へ誘導したいための仕組みなのだろうが、意図が見え見えでいやらしい。
・『国民皆保険を突き崩す脅威 いかがでしょうか。 現実と照らし合わせて見てみると、私たちにとって「マイナ保険証」は、現在の保険証を無くしてまで導入する価値があるもの、とはとても思えません。 むしろ、諸先輩が築きあげてきた「国民皆保険」という世界に誇れる制度を、内側から突き崩す脅威になりかねません。 事態はどんどん悪化していますが、最悪でも「現在の保険証を廃止する」という暴挙だけは、止めなくてはいけないと思います。 実は前編でも触れたように、「マイナ保険証」の導入については、患者の個人情報の漏洩を恐れる多数の医師たちからも、反対の声が上がっています。情報が漏洩すると、最悪の場合、彼らが医師免許を剥奪されるかもしれないからです。 次回は、こうした医師たちの声も交え、「マイナ保険証」の情報のあり方とセキュリティの問題に迫りたいと思います』、「諸先輩が築きあげてきた「国民皆保険」という世界に誇れる制度を、内側から突き崩す脅威になりかねません。 事態はどんどん悪化していますが、最悪でも「現在の保険証を廃止する」という暴挙だけは、止めなくてはいけないと思います」、同感である。
第四に、4月22日付けダイヤモンド・オンライン「マイナンバーカード推進の裏で進む法改正、個人情報利用や機能追加などに「野放図拡大」のリスク」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321276
・『政府がDXのキーとして進める「マイナンバーカードの普及とマイナンバーカの活用」。今国会で審議中のマイナンバー法の改正で、行政側による個人のマイナンバーの参照や利用内容が大きく緩和される。今後どんなことが起きるのか?特集『企業・銀行・官公庁・ITベンダー・コンサルが大騒ぎ! ヤバいDX 2023』(全13回)の#7では、マイナンバー制度の制定に関わった専門家らがマイナンバー制度の問題点を指摘する』、「マイナンバー制度の問題点」とは興味深そうだ。
・『「マイナンバーカード反対デモ」も登場 法改正を前に広がる大混乱 「保険証を人質に、窓口負担を増やしてまで、カードの取得・利用を強要することは許されない」 4月14日、マイナンバー法の改正法案が国会審議入りした。保険証を統合する、年金受け取り用の銀行口座を拒否申請がない限りは自動でマイナンバーにひも付ける、などの改正点が野党の反発を呼んだ。18日には保険証とマイナンバーカードとの統合に反対する国会前のデモまで行われた。 政府が「国民サービスのDXのキーになる」として、合計2兆円余りの予算を費やして普及を進めるマイナンバーカード。現在全国民の76.6%にまで普及したが、マイナンバーおよびマイナンバーカードを巡るさまざまな反対意見や怒りの声は今日もインターネットやSNSで渦巻き続け、一向に鎮火しそうにない。 そもそも、マイナンバーを巡る議論や懸念には誤解や混乱が多い。 まず第一に、「マイナンバー」と「マイナンバーカード」の議論は別だ。 マイナンバーは、2016年1月以降すでに全国民に振られている番号で、私たちは意識していないが、国や自治体の行政処理の現場では日常的に使用されている。マイナンバーカードを返納したところでマイナンバー制度から離脱することは、もちろんできない。 第二に、マイナンバーがあれば、自分の納税額から住所、社会保険料や戸籍情報まで、全ての個人情報が集まるスーパーデータベースから情報が芋づる式に引き出せるわけではない。国民の個人情報を管理するデータベースは従来通り各省庁や自治体が個別に管理しており、マイナンバーはそれらを「名寄せ」するためのタグなのだ。 例えば国税庁の納税者データベースに、マイナンバー123456789の鈴木洋子という神奈川県川崎市在住の人が登録されているとする。この人の納税データを、社会保険データベースを持つ厚生労働省が、保険料の支払いの事務作業で確認したいが、厚労省データベースでは同名で東京都在住の人が登録されており、同一人物かどうか分からない。だが、番号123456789が同じなので、同一人物だと突合できた――などのように使える。確実に本人だと確認するための振り番が、マイナンバーだ。 つまり誰かのマイナンバーが手に入ったところで、その納税データを悪意を持った外部の人が抜くためには、国税庁の納税データベースにハッキングをかけて成功する必要がある。 そしてマイナンバーカード。これも、単なるマイナンバーの情報のみならずさまざまな機能が複合的に搭載されたカードなのだ。 (図表:マイナンバーカードの内容と仕組み はリンク先参照) 券面とICチップ内の(1)マイナンバー情報に加えて、カードを持つ人が確かに利用者本人であると電子的に証明したり、送付する電子文書が本物である証拠の署名を行ったりする(2)電子証明書機能が付いている。さらに、自治体や国、民間企業が認可を受ければ自由に利用できる(3)空き領域もある。会員証や入館証、社員証やポイントカードなど、用途はかなり自由だ。 ちなみに(1)のマイナンバー自体は、この後説明するように利用用途と利用を許される人・機関が法律で定められている。一方、(2)および(3)に関しては、認可を受ければ国や自治体のみならず民間企業団体でも自由に使える、という設計だ。ざっくり言えば「マイナンバー」の利用には今のところ規制がかかっているが、「マイナンバーカード」の利用はかなり広く一般に公開されている。 マイナンバーカードという名称からはこの(2)(3)の存在も見えないし、これらの機能とマイナンバーの関係は非常に分かりにくい。 ただでさえ構造的に理解が難しいマイナンバーとマイナンバーカードだが、これらの「存在意義」を分かりやすい形で示すことなく、国はカードの普及とマイナンバー活用にひたすらアクセルを踏んでいる。 そこへきて現在国会で審議中の改正マイナンバー法だ。これが成立すると、具体的に何が変わるのか。そこには現在あまり注目されていない点もあまた隠れている。次ページから解説していこう。 今回の法改正では何が変わるのか。 下図を見てほしい。まず、(1)マイナンバーそのものの使い方を拡張することだ(下図参照)。これまでのマイナンバーの利用は、税・社会保障・災害対策の3用途のみで、その用途の中でも利用できる主体と内容が全てリスト化されていた。それが3分野以外にも広がる。今回は、このリストに3分野以外から新たに、美容師や建築士などの国家資格保持者が、これまでのように書類を事務所に提出せずとも、マイナンバーカードを利用して自宅から届け出ができる――などのような使い方が追加される。このように用途を追加するにはその都度法改正が必要になる。 (図表:マイナンバー法改正のポイント の図表はリンク先参照) 加えて、(2)「他の省庁などのデータベースが持つ国民の個人情報を、マイナンバーとひも付けて照会する」ということについてだ。これまでは(1)と同様にできることがリスト化され、何か追加するには法改正が必要だったが、これを政省令に落とし、法改正を不要とする。そして、実際に情報連携や照会が行われた場合は、個人が自分のマイナポータルから確認することができる。 専門家が事前に危惧していたのが、(1)の用途の追加が、法改正など表から見える動きなしになし崩しに行われることだった。与党一部にはより「積極的」な活用を推し進める動きもあったもようだが、今回は小幅な改変に終わった。 実は、マイナンバーには、新型コロナウイルス感染拡大時の定額給付金の支給の際には法律の壁があって使えなかったという「前科」がある。マイナンバーをより機動的に、必要なときに使えるようにする、という意図による改正であれば、一応はまっとうである。「「マイナンバー」の利用には今のところ規制がかかっているが、「マイナンバーカード」の利用はかなり広く一般に公開されている。 マイナンバーカードという名称からはこの(2)(3)の存在も見えないし、これらの機能とマイナンバーの関係は非常に分かりにくい。 ただでさえ構造的に理解が難しいマイナンバーとマイナンバーカードだが、これらの「存在意義」を分かりやすい形で示すことなく、国はカードの普及とマイナンバー活用にひたすらアクセルを踏んでいる」、「マイナンバー法改正のポイント」は分かり易い。しかし、「これらの「存在意義」を分かりやすい形で示すことなく、国はカードの普及とマイナンバー活用にひたすらアクセルを踏んでいる」、推進方法には問題が多い。
・『取得しなければ給食無償化にならない? 野放図に広がる「カードの活用拡大」 だが今回の法改正、そしてマイナンバーカードの運用にはまだまだ危ういところが残る。後者の典型が、今回浮上した保険証との統合だろう。つまり、「個人認証カード」としての用途の拡大である。 保険証は、保険組合加入資格を失った後でも続けて利用したり、他人の保険証を使い回したり、などの不正利用が問題になっていた。そのため、個人認証の機能が付いたマイナンバーカードならそうした不正利用を防げる、というのが統一の目的だ。だが「複数の機能がカード一枚に集中すれば、利便性は増すがセキュリティ上は危うくなる。その知識を得た上で、取得・非取得については自由に選択できるというのがマイナンバーカードの初期設計の趣旨であったはず」と鈴木正朝・新潟大学教授は指摘する。 実際に、こうした個人認証などのさまざまな機能が入ってしまっているマイナンバーカードでは、保険証として利用者から預かることができなくなるとして、老人ホームや入院患者を抱える病院などが反対の声を上げている。 また、国から地方自治体への交付金がマイナンバーカードの普及率とひも付けられるということもあり、岡山県備前市がマイナンバーカードの取得を、給食無償化や保育園無償化などの条件にしようとした(現在は撤回を表明)ことも批判を浴びた。住民利害を無視して首長の政治的思惑が先行するということが実際に起きた。 そしてこれは、マイナンバーとマイナンバーカード両方に共通することだが、「何のために普及させようとしているのか、利用することで国民にどんなメリットがあるのか」の全体的な青写真がまったく示されていないのだ。 マイナンバー法が最初に制定されたときの内閣官房メンバーの一人だった水町雅子弁護士は「これまで、税・社会保障・災害対策の分野で、マイナンバーがどのように使われてきて、効果を上げてきたのか。また、コロナ対策ではマイナンバーを利用できなかったが、もし利用できていたらどのようなことが可能だったのか、などの利用実態に対しての情報公開・検証と、それに基づいた用途拡大、というステップが踏まれていない」と指摘する。 さらに活用拡大のアクセルばかりが踏まれ、抑制やブレーキをかける方法も少ない。 デジタル庁のマイナンバー検討ワーキンググループのメンバーである、武蔵大学の庄司昌彦教授は「自分の情報を政府に預けてそれが利用されることに対しては、年金記録問題や職員個人の不正などもあり、国民は不安感がある。政府の行動を監視し、けん制するためにも、具体的にどのようにマイナンバーが使われたのかをチェックする仕組みが必要だ」と言う。 現在確認できるのは、データが元の機関から他機関に連携されたときのマイナポータルでの照会のみ。本来であれば、実際に自分の個人データにどの省庁の誰がいつアクセスしたのかが、全て分かるような形の方が納得感はある。 カードの機能追加に関しても、半ば強制的に全ての機能を一枚に集めることのメリットとリスクは一向に説明されておらず、「使わない」という選択肢がそもそも与えられないのもおかしな話だ。「マイナンバーカードの普及率が100%になれば便利なサービスが自動的に生まれるわけではない。普及率が上がってどんな社会を目指しているのかがまず示されなければ、国民の納得感は得られない」(水町弁護士)。 泥沼の政治問題と化してきたマイナンバーとマイナンバーカードを巡る騒動。これが国民生活のDXの切り札となれる日は果たして来るのだろうか』、「「これまで、税・社会保障・災害対策の分野で、マイナンバーがどのように使われてきて、効果を上げてきたのか。また、コロナ対策ではマイナンバーを利用できなかったが、もし利用できていたらどのようなことが可能だったのか、などの利用実態に対しての情報公開・検証と、それに基づいた用途拡大、というステップが踏まれていない」のは大いに問題だ。「カードの機能追加に関しても、半ば強制的に全ての機能を一枚に集めることのメリットとリスクは一向に説明されておらず、「使わない」という選択肢がそもそも与えられないのもおかしな話だ」、「「マイナンバーカードの普及率が100%になれば便利なサービスが自動的に生まれるわけではない。普及率が上がってどんな社会を目指しているのかがまず示されなければ、国民の納得感は得られない」」、同感である。
タグ:「暗証番号を書いたメモを一緒に持ち歩いていたり、誕生日など単純な暗証番号にしていたりすれば、カードを盗まれた場合に簡単に突破されてしまう」、恐ろしいことだ。 「身元確認も当人確認も、わざわざマイナンバーが記載されたカードを使用する必要はない。言い換えれば、マイナンバーとこの二つの本人確認に使用するカードとの間には何の関係もない」、初めて知った。 「マイナンバー制度の当初からの目的である「行政の効率化」や「社会保障と税の一体改革」は、この③と④によって成し遂げられるもの、マイナンバーが使われるのは③と④だけ、なるほど。 「四つの本人確認」、①「身元確認」:証明書上の顔写真などの形質情報と、目の前の人の形質を照合することにより、その人が証明書上の本人であると確認、②「当人確認」または「認証」:ログインIDと暗証番号の組み合わせなど、当人しか知り得ない情報を照合することによって、ログインしているのがユーザー登録を行なった当人であることを確認、③「真正性の確認」:申請者が提示した番号が本当にその申請者に付番されたものかを確認,④「属性情報確認」:その番号にひもづくさまざまな情報を取得・確認、 「必要なのは“本人確認”ですから、これらを一つのカードに組み込むことは一見合理的に思えます。ただ、それぞれで求められる本人確認のレベルは、全く別物。マイナンバー制度の設計関係者たちが、それを理解せずに制度設計を進めてしまったと思われます」、その通りだ。 見えてきたのは「設計不良」ともいえるマイナカードの不都合な真実」、「現行のマイナンバーカードには異なる目的を持つ機能が乱暴に放り込まれ、“持ち歩いてよい機能”と“大切に管理すべき機能”とがごちゃ混ぜになってしまっています」、「マイナンバー自体は「社会保障」「税」「災害」の分野でしか使うことができない。だが、番号が記載されたマイナカードにはすでに「電子政府にアクセスするための国民ID」や「全国民共通の身元証明書」といった機能が盛り込まれ、今後も拡大されていく見込み」、 「「マイナポイント事業第2弾」と、8月にデジタル相に就任した河野太郎氏である。 ポイント事業にはすでに2兆円超の予算が注ぎ込まれ、昨年10月には河野氏がマイナカードと一体化した上で健康保険証の廃止を目指すと発表」、「奇策は功を奏し、今年1月の時点でカードの申請件数は運転免許証の保有者数を上回り、普及率は70%近くに」、「果たしてカード普及のために消費税1%分に相当する血税を投入する必要はあったのか。保険証を廃止し、「資格確認書」という新たなムダを生み出してまでカードの取得を事実上強制する必要はあったのか。 マイナンバー制度 (その3)(マイナカード「落としても悪用されない」はうそ? 「セキュリティーがあまりにも脆弱」、8割の日本人が気づいていない「マイナ保険証」の恐ろしすぎる「落とし穴」 健康保険証から乗り換えていいのか?、「マイナ保険証」のせいで健康保険が「崩壊」するかもしれない…その決定的な問題点 最悪の暴挙に出る可能性も…、マイナンバーカード推進の裏で進む法改正、個人情報利用や機能追加などに「野放図拡大」のリスク) 「今後多くの民間サービスとひもづけられれば、ロックや利用停止で生活が立ち行かなくなってしまいます」、「民間サービスとの連携が進めば、それだけ悪用のリスクも増加する。今一度、熟慮と検証が必要である」、その通りだ。 現代ビジネス 荻原 博子氏による「8割の日本人が気づいていない「マイナ保険証」の恐ろしすぎる「落とし穴」 健康保険証から乗り換えていいのか?」 「マイナンバー法」では、「マイナンバーカードについては、本人の申請でつくられることが明記」、と「プライバシー」保護に配慮した形になった。 「最高2万円分のポイントをバラ撒き」も含めた「普及キャンペーンにつぎ込まれた予算は累計で約2兆円以上」、「その前に過去9年間で8800億円の税金が使われています」、「この金額も含めると、約3兆の税金が使われたことに」、本当に巨額だ。 「3月末の時点で、「マイナンバーカード」を作っている人は、国民の約76%となっています。 ただ、それでもまだ約4分の1の人は「マイナンバーカード」を作っておらず、そうした人たちを締め上げるために、保険証を無くして「マイナ保険証」を義務化するという政策を強力に打ち出したのでしょう」、なるほど。 「「マイナ保険証」に入っている主な診療情報とは、「レセプト(診療明細書)」の情報」、「レセプトとは、その時に患者が支払ったお金の明細書でしかありません。 しかも、これはリアルタイムな情報ではなく、「1ヶ月前に、こんな病気で医者に行ってこんな治療を受けた」というようなもの。医師は、リアルタイムで診断してこそ正確な対処ができますから、レセプト情報があるというだけで、必ずしも「正確なデータに基づく診療・薬の処方が受けられる」とは言えない」、なるほど。 荻原 博子氏による「「マイナ保険証」のせいで健康保険が「崩壊」するかもしれない…その決定的な問題点 最悪の暴挙に出る可能性も…」 「マイナ保険証の問題点」とは身近で重要だ。 「回答した医療機関8700余のうち、システムの運用を開始しているのは24%で、そのうち41%がトラブル・不具合があったと答えています。その内訳(複数回答)は、「有効な保険証でも無効と表示された」が62%、「カードリーダーの不具合」が41%」、こんなに「トラブル・不具合」が多いのは何故なのだろう。 「介護の現場では、緊急時の受診などに備えて入居者から保険証を預かっているケースが珍しくありませんが、「マイナ保険証」になると、現場の運用で新たな問題が指摘されています。なぜなら、「マイナ保険証」を預かっていたとしても、4桁の暗証番号も教えてもらわなければ役に立たないからです。 ところがこのパスワードがわかると、マイナポータル・・・にログインでき、納税情報や年金情報、医療情報などを見ることが可能なので、犯罪予防のために預からないという介護施設も出てきそうです」、確かに「介護の現場」ではどうするのだろう。 「資格確認書」は「まるで「マイナ保険証」をつくらないことへの嫌がらせかと感じられるほど、使い勝手が悪いのです」、「仮に有効期限が1年なら、1年ごとに自治体の窓口に行って更新手続きをしなくてはならないのです。 しかも、手続きしてもその場ですぐには発行されない可能性も指摘」、「発行されるまでの間は無保険になります。保険料を払っていても、無保険になるというのはどういうことでしょうか。到底納得できません」、確かに不当だ。 「「資格確認書」だと、病院の窓口で支払う料金が「マイナ保険証」より高くなる可能があります。 現在、「マイナ保険証」を使える病院の窓口で従来の健康保険証を出すと、下図のように「マイナ保険証」がある人に比べて初診料が高くなります。しかも、この4月から、12円が18円に値上がりしています」、「マイナ保険証」へ誘導したいための仕組みなのだろうが、意図が見え見えでいやらしい。 「諸先輩が築きあげてきた「国民皆保険」という世界に誇れる制度を、内側から突き崩す脅威になりかねません。 事態はどんどん悪化していますが、最悪でも「現在の保険証を廃止する」という暴挙だけは、止めなくてはいけないと思います」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン「マイナンバーカード推進の裏で進む法改正、個人情報利用や機能追加などに「野放図拡大」のリスク」 「マイナンバー制度の問題点」とは興味深そうだ。 「マイナンバー法改正のポイント」は分かり易い。「これらの「存在意義」を分かりやすい形で示すことなく、国はカードの普及とマイナンバー活用にひたすらアクセルを踏んでいる」、推進方法には問題が多い。 「「これまで、税・社会保障・災害対策の分野で、マイナンバーがどのように使われてきて、効果を上げてきたのか。また、コロナ対策ではマイナンバーを利用できなかったが、もし利用できていたらどのようなことが可能だったのか、などの利用実態に対しての情報公開・検証と、それに基づいた用途拡大、というステップが踏まれていない」のは大いに問題だ。「カードの機能追加に関しても、半ば強制的に全ての機能を一枚に集めることのメリットとリスクは一向に説明されておらず、「使わない」という選択肢がそもそも与えられないのもおかしな話だ」、 「「マイナンバーカードの普及率が100%になれば便利なサービスが自動的に生まれるわけではない。普及率が上がってどんな社会を目指しているのかがまず示されなければ、国民の納得感は得られない」」、同感である。
異次元緩和政策(その43)(植田日銀総裁誕生の裏に“権力の興亡” 本命・雨宮副総裁が漏らしていた“本音”とは、「マイナス金利解除は24年以降」元日銀審議委員・木内氏が語る植田日銀の正常化シナリオ) [経済政策]
異次元緩和政策については、本年2月23日に取上げた。今日は、(その43)(植田日銀総裁誕生の裏に“権力の興亡” 本命・雨宮副総裁が漏らしていた“本音”とは、「マイナス金利解除は24年以降」元日銀審議委員・木内氏が語る植田日銀の正常化シナリオ)である。
は、4月3日付けデイリー新潮が掲載したジャーナリスト・帝京大学教授の軽部謙介氏による「植田日銀総裁誕生の裏に“権力の興亡” 本命・雨宮副総裁が漏らしていた“本音”とは」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/04030558/?all=1
・『10年にも及んだ異次元緩和を主導した黒田東彦日銀総裁に代わり、新たに中央銀行を統べるは経済学者の植田和男氏(71)。難題山積の中、異例の学者総裁にかじ取りを任せるのはなぜか。日銀、財務省、そして官邸の間で繰り広げられた「権力の興亡」、その内幕に迫る。 10年ぶりに日本銀行の総裁が交代する。4月以降は、総裁・植田和男(東大名誉教授)、副総裁・氷見野良三(前金融庁長官)、同・内田眞一(日銀理事)という体制に金融政策のかじ取りが委ねられるが、人選の過程を検証していくと「日本の権力構造」に潜む問題点が浮き上がってくる。そしてそれは、日銀総裁とは、誰が、どのように、何を基準にして選ぶべきなのかという問いにつながっていく』、興味深そうだ。
・『雨宮の言い分 元首相の安倍晋三が撃たれた2022年の夏も終わろうとしていた。 財務省の有力OB二人と日銀副総裁の雨宮正佳が都内の鮨屋でネタをつまみながら杯を交わしていた。アルコールがダメな雨宮も旧知の顔ぶれを相手に、よもやま話に花を咲かせた。 佳境に入り黒田東彦(はるひこ)・日銀総裁の後任人事に話が及んだ。このとき、後継の最有力候補といわれていた雨宮は二人にこういう趣旨の話をした。 新総裁は、黒田体制の10年だけでなく1998年の新日銀法施行以降の「非伝統的」と呼ばれた金融政策全般を対象に点検・検証するべきだ。しかし、自分はそれを主宰する任にはふさわしくない。なぜならその大半に関与しているからだ――。 確かに、雨宮は2000年代以降の量的緩和開始、異次元緩和実施、長短金利を操作するイールドカーブ・コントロール(YCC)導入など非伝統的金融政策に深く関わった。その張本人が問題点を含めた検証を行ったら正当性が確保できないという言い分には一理あった』、「雨宮は2000年代以降の量的緩和開始、異次元緩和実施、長短金利を操作するイールドカーブ・コントロール(YCC)導入など非伝統的金融政策に深く関わった。その張本人が問題点を含めた検証を行ったら正当性が確保できないという言い分には一理あった」、実に巧みな拒否理由だ。
・『各国の中央銀行総裁の多くは学者 もう一つ、雨宮が強調したポイントがあった。それは「学者の起用に道を開く」ということだ。副総裁就任後、各国の中央銀行総裁が集まる会合に代理出席する機会も多くなった雨宮は、トップたちが部下の助けも借りずに難解なテーマを自分たちの言葉で議論している現場を目の当たりにしてきた。 彼らの多くは経済学の博士号を取得している。ノーベル経済学賞を受賞したベン・バーナンキ(元米連邦準備制度理事会=FRB=議長)、ジャネット・イエレン(前FRB議長)、スタンレー・フィッシャー(元イスラエル中銀総裁)、ラグラム・ラジャン(元インド中銀総裁)らは世界的に名の通った学者でもある。中国や韓国でも中銀のトップは学者が務めている。 しかも、中央銀行の国際的な連携は、リーマンショックを契機に、事務当局者同士が下で詰めて上に上げていくというやり方から、トップが電話で協議するというやり方に変わっている。問題は日本がそのコミュニティーに入っていけるかだ。経済・金融理論に対する深い知識や語学力など、日銀総裁には従来と異なる資質も求められる。 「優秀な学者が中央銀行トップになるという国際標準を、日本でも実現するべきではないか」 雨宮はこう言っていた』、「中央銀行の国際的な連携は、リーマンショックを契機に、事務当局者同士が下で詰めて上に上げていくというやり方から、トップが電話で協議するというやり方に変わっている」、「優秀な学者が中央銀行トップになるという国際標準を、日本でも実現するべきではないか」、さすが説得力に富んだ主張だ。ただ、欧州の中央銀行総裁は中央銀行実務家が多いようだ。
・『雨宮の真意 財務省は日銀の所管官庁として総裁選びにも深く関与する。実は先のOBだけでなく、このころ日銀人事を準備する過程で雨宮と接触した現役官僚も同じ趣旨の話を聞かされていた。 財務省の関係者たちには意外な感じがした。日銀総裁レースの大本命は雨宮だ。望んでもなれないそのポストは、1979年の入行以来日銀一筋で生きてきたこの男にとっても悲願のはず。「本当はやりたいと思っているが、最初は「自分には無理だ」などと言って一歩下がる常識的な対応」という見方も強かった。 雨宮の言っていることは本心なのだろうか。それとも一種の目くらまし戦術なのか――。 財務省は最後まで雨宮の真意を測りかねた。 そもそも彼らは今回の人事をこう位置付けていた。 「うちの番ではない」 この意味は歴代総裁の出自をたどればよくわかる。財務省が大蔵省だった時代から、日銀・財務の出身者が中央銀行トップの座をほぼ独占しており、両者が交代で就任するたすき掛け人事、いわゆる「交代ルール」が暗黙の了解だったのだ(掲載の表参照)。今回は財務省出身の黒田が2期10年務めた後で、「日銀の番」となるのが順当だった』、「雨宮氏は金融政策の裏も知り尽くしているだけに、黒田総裁の後任の職務の難しさを理解出来、自分がそんなババを引くのはご免被りたいと思っているのではあるまいか。
・『交代ルールを外れた人事 それでも、この役所は早くから正副総裁についていくつかの組み合わせを想定していた。最有力とみられたのは雨宮を頂点とし、副総裁の一人に財務省関係者、もう一人を学者にする案だ。 副総裁候補には財務官経験者ら何人かの名前が挙がった。しかし、ここで年次が問題になる。雨宮は79年の日銀入行。入省年次が同期もしくはそれよりも上の場合は対象から外された。そこで浮上してきたのが氷見野だった。金融庁長官を務めたが、もともとは83年の大蔵省入省だ。氷見野の副総裁就任は、財務省が「雨宮総裁」を予想していたことの裏返しだったわけだ。 そして、もう一人の学者としては、雨宮より年齢が上の植田ではなく、日銀出身の東大教授である渡辺努などの名前が挙がっていた。 しかし、結果的に総裁に選ばれたのは、交代ルールを外れるばかりか、21代宇佐美洵(まこと)以来、戦後2人目となる「民間」出身者の植田だった。 関係者によると、雨宮から固辞の理由を聞かされていた首相の岸田文雄は、深く共鳴するところがあったようで、総裁の条件を問われた国会質疑で「主要国中央銀行トップとの緊密な連携、質の高い発信力、受信力が格段に重要になっている」と説明している。雨宮の主張にそっくりだ。 そして、大本命の雨宮の辞意が固いとみた岸田官邸は、かねてから目をつけていた植田への傾斜を強めていく。最終的に正副総裁三人の人選が固まったのは年末から年始にかけてだったといわれる』、「雨宮から固辞の理由を聞かされていた首相の岸田文雄は、深く共鳴するところがあったようで、総裁の条件を問われた国会質疑で「主要国中央銀行トップとの緊密な連携、質の高い発信力、受信力が格段に重要になっている」と説明している。雨宮の主張にそっくりだ。 そして、大本命の雨宮の辞意が固いとみた岸田官邸は、かねてから目をつけていた植田への傾斜を強めていく」、なるほど。
・『知らされなかった財務省 しかし、財務省は最後までこの人選を知らされなかった。彼らが「植田総裁」という情報を得たのは、メディアで一斉に報じられた2月10日の数日前だったのだという。過去に日銀を従えて総裁の人選に深く関与してきた財務省は「死んだふり」をしているのか。それとも本当に死んでしまったのかは判然としない。 財務省・日銀出身者の交代ルールが崩れたことに加えて、今回の総裁人事にはもう一つ特徴があった。それは2代続けてのポリティカル・アポインティー(政治任用)化だ。 後述する98年の新日銀法施行以前も、以降も、総裁選びは所管官庁である財務省(以前は大蔵省)と日銀が官邸とあうんの呼吸で詰めていくのが流儀だった。この二つの組織が交代ルールを参考にしながら有力として推す候補者に決着できるよう根回しも万全だった』、「2代続けてのポリティカル・アポインティー(政治任用)化」、とすれば「財務省が知らされなかった」のはある意味当然かも知れない。
・『特定の金融政策を実施するために選ばれた総裁 しかし、10年前このプロセスは大きく変化した。12年12月の総選挙に勝利し政権に復帰した安倍は「大胆な金融政策」を柱とする経済政策、「アベノミクス」を掲げていた。そのため、13年4月に迫っていた日銀総裁人事は政権の行方を占う上でも間違いの許されない非常に重要な政治イベントになっていた。 前任の白川方明が日銀出身だったため、交代ルールに従えば自分たちの番だったこともあり、財務省は08年の総裁レースで国会承認の獲得に失敗した次官OBの武藤敏郎を強く推していた。しかし、安倍は彼らの意向を無視。財務省本流とは異なり「デフレは貨幣的現象なので金融政策だけで対処できる」とリフレ派的な主張を繰り返した黒田を最有力候補として位置付け、総裁就任を要請した。 この行為は政治家による内閣人事権を行使した「一本釣り」ともいえる。しかも、リフレであれ何であれ、特定の金融政策を実施するために総裁が決められるのは初めてだった。 安倍はさらに、日銀と財務省が予定調和的に決めていた副総裁や審議委員の人事も政治的に利用。黒田の補佐役として「リフレ派の教祖」と言われた学習院大学教授の岩田規久男を副総裁に抜てきしただけではなく、その後も若田部昌澄、原田泰、片岡剛士らリフレ派の面々を副総裁や審議委員に起用することで日銀をコントロールしようと試みた。 「内閣人事権の活用と政策を結び付けろ」と提唱していたのは21年11月に86歳で亡くなった中原伸之だ。東燃の社長を務め日銀の審議委員も経験した中原は財界応援団を組織し安倍をサポートしていたが、第2次政権以前から何度も「金融政策を変更したいなら、内閣や国会は審議委員の人選で考えればいい」という持論を安倍に伝えていたのだという』、「中原伸之」氏が「第2次政権以前から何度も「金融政策を変更したいなら、内閣や国会は審議委員の人選で考えればいい」という持論を安倍に伝えていた」とは、初めて知った。
・『政治任用の意図 日銀・財務から推薦を受けた候補を粛々と指名していくという過去のやり方ではないという意味で、今回の植田総裁誕生も岸田による政治任用といえる。ただ、安倍が「リフレ政策の実現」という特定の方向性を求めて黒田を指名したのとは異なり、岸田が何か政策的な意図を持っているのかははっきりとしない。 人事の決め方は98年施行の新日銀法で「総裁及び副総裁は、両議院の同意を得て、内閣が任命する」(23条)と規定されたが、政治任用の可能性を残すこの内閣人事権は当初甘く見られていた。 96年の夏。日銀の幹部たちは連日朝早く日本橋本石町の本店会議室に招集された。「夏合宿」と称されたこの会議は日銀法改正に向けて自らのポジションを固めるためのものだった。この時の日銀法(旧法)は、議院の同意を必要としない、文字通りの内閣人事権はもちろん、「総裁の解任権」や「一般的な業務指揮権」などが政府に認められており、日本の中央銀行は所在地をもじって「大蔵省本石町出張所」などと揶揄される組織だった。 「政府からの独立」はバブル崩壊後のさまざまな不祥事から始まった大蔵省改革の一環として議論されていた。ただ、実際に改正となれば、何を、どう法文化していくのか決めるのはそう簡単でない』、「日銀法」「実際に改正となれば、何を、どう法文化していくのか決めるのはそう簡単でない」、その通りだ。
・『「内閣には人事権があるのだから…」 合宿の場に企画局からこんなペーパーが提示された。 「政策の内容からいって独立性と中立性が要求され、他方で、任命権を通じた政策委員に対する内閣のコントロール手段が確保されていれば、準備率の設定・変更・廃止についての権限を政策委員会が有することとしても、直ちに違憲というわけではない」(情報公開法で入手した96年7月10日付「日銀法改正の論点検討」) 民間金融機関は、受け入れている預金等のうち一定比率以上を日銀の当座預金に預けておかねばならず、この比率を準備率という。政策委員とは正副総裁を含めた審議委員のことだ。 当時、準備率の変更には大蔵大臣の認可が必要だった。準備率の変更は金融政策としても活用されていただけに、日銀としてはこの問題で大蔵の認可は必要ないということを言っていたのだ。そして、その根拠として「任命権を通じた政策委員に対する内閣のコントロール」を挙げていた。つまり「内閣には人事権があるのだからほかのことは自由にやらせろ」というわけだ。 「中央銀行に完全な独立性などあり得ない」という主張も強い中、日銀は「人事権よりも金融政策を含む一般的な業務での独立性を獲得する方が大事」と考えていたので、こんな主張をしていたのだ。しかも陰りが見え始めたとはいえ、当時官僚の力はまだ強く、総裁人事にも大きな影響力を持っていた。まさか、財務・日銀の交代ルールまでほごにされ、挙句、政治任用で総裁が決まる日が来るなどとは思っていなかっただろう』、「準備率の変更は金融政策としても活用されていただけに、日銀としてはこの問題で大蔵の認可は必要ないということを言っていたのだ。そして、その根拠として「任命権を通じた政策委員に対する内閣のコントロール」を挙げていた。つまり「内閣には人事権があるのだからほかのことは自由にやらせろ」というわけだ」、なるほど。
・『総裁にふさわしいか それから四半世紀経った2022年。夏の終わりに財務省OBに披瀝した問題意識を、雨宮は各方面に広く伝えていた。そしてそれは、結果的に、これまで財務・日銀に支配されていた「総裁選び」の構造に真正面から挑むものになった。特に財務省だ。 政治任用だった黒田を除き、総裁を務めた大蔵省出身者は全員が事務次官経験者だ。このポストは昔、「大蔵次官にとっての天下り先ナンバーワン」と言われたように事務次官経験者の中でも最も格が高いという位置付けだった。 次官に上り詰める財務官僚は主計局長からの昇格が大半を占める。主計局長になるには、多くの場合、局内で課長や主計官のポストを歴任する。財政を担当するセクションは政治との折衝に忙殺される。 しかし、大物といわれる次官OBだとしても、そのような経歴が日銀総裁にふさわしいかは別問題というのが岸田や雨宮の考え方のようだ。特にグローバル化の進展に合わせ中銀トップの間での情報交換が密になればなるほど、そのコミュニティーに入っていく重要性は増す。雨宮は周辺にこう漏らしたことがある。 「事務次官をなさった方は皆それなりの人なんだけど、その方が総裁というのは少し違うんじゃないか」』、「グローバル化の進展に合わせ中銀トップの間での情報交換が密になればなるほど、そのコミュニティーに入っていく重要性は増す」ので、「事務次官をなさった方は皆それなりの人なんだけど、その方が総裁というのは少し違うんじゃないか」、その通りだ。
・『もし経済運営に失敗すれば… 日銀総裁人事をめぐるうごめきは収束した。これからはYCCをどのように「手じまい」するのか、異次元緩和の出口をどのように潜(くぐ)るのか、さまざまな副作用にどう対処するのかなど、当面の課題処理に焦点が移る。 岸田や雨宮の意図がどこにあれ、結果的に2代続けて日銀総裁が政治任用となったことは、戦後続いてきた旧態依然たる交代ルールに終止符が打たれたことを意味する。財務次官経験者だからといって安易に総裁になれる時代ではないことも明確になった。 しかし、もし今後5年間で日銀が経済運営に失敗したら、「旧来の秩序に戻すべきではないか」との声が強まる可能性は大きいだろう。マクロ政策の象徴的存在である日銀総裁の人事は、誰が、何を基準に決めるべきなのか――。 「統治の仕方」がどうなっていくのかという観点からも、植田体制の責任は重い』、「もし今後5年間で日銀が経済運営に失敗したら、「旧来の秩序に戻すべきではないか」との声が強まる可能性は大きいだろう」、「「統治の仕方」がどうなっていくのかという観点からも、植田体制の責任は重い」、その通りだ。
次に、4月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した「木内登英・野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト・元日銀審議委員インタビュー「「マイナス金利解除は24年以降」元日銀審議委員・木内氏が語る植田日銀の正常化シナリオ」を紹介しよう。これは有料記事だが、私の場合、今月は残り3本まで無料である。元日銀審議委員として、日銀内の議論に参加していただけあって、極めて有用な内容である。
https://diamond.jp/articles/-/320884
・『日銀自身が否定していた政策 追い詰められて導入の繰り返し Qは聞き手の質問、Aは木内氏の回答) Q:量的緩和策にしても物価目標にしても白川総裁時代には、日銀はその効果には否定的でした。黒田総裁時代になって、ご自身も含め考え方に変化はあったのですか。 A:民主党政権時代も含め、2000年ごろから円高やデフレへの対応で日銀と政府との間でずっと軋轢がありました。積極緩和を求める政府に対して、日銀が押し返す局面もあったものの、ゼロ金利解除や最初の量的緩和解除など、何かアクションをすると経済が悪化し、また批判を受けるという繰り返し。 追い詰められて結局、いまのイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)での長期金利のコントロールを含め、できないと否定していたことを全部やらされることになったのです。 最後の一押しが、第2次安倍晋三政権誕生につながった2012年12月の総選挙での自民党の圧勝でした。 安倍氏はその直前の自民党総裁選から、物価目標導入や大胆な金融緩和を唱えていました。その時は日銀の執行部も政策員会も意に介さずという空気でしたが、総選挙後に開かれた12月の決定会合では空気が一変しました。 総裁をはじめ執行部は、物価目標はやらざるを得ないという判断でした。安倍首相から強い働きかけがあったようですし、日銀内にも、物価目標の公約を掲げたから自民党が勝ったわけではないにしても、なにがしかの民意が反映されているのならば、対応する必要があるのではという意識はありました。自分たちは国民の選挙で選ばれたわけではないという引け目もあるわけです。 さらにそれ以上に大きなプレッシャーになったのは、自民党内の一部から出ていた総裁の解任権をちらつかせた日銀法改正の脅しでした。 金融政策で政府と日銀が決裂することになれば、総裁の解任権が法律に盛り込まれ、日銀の独立性が決定的に制限されかねません。ぎりぎりの判断で物価目標導入に一転、向かったということです。 私自身も納得はしていなかったけれど、執行部への同情もあったし逃れられないという判断でした』、「自分たちは国民の選挙で選ばれたわけではないという引け目もあるわけです」、「大きなプレッシャーになったのは、自民党内の一部から出ていた総裁の解任権をちらつかせた日銀法改正の脅しでした。 金融政策で政府と日銀が決裂することになれば、総裁の解任権が法律に盛り込まれ、日銀の独立性が決定的に制限されかねません。ぎりぎりの判断で物価目標導入に一転、向かったということです」、ここまで「日銀法改正の脅し」があったとは初めて知った。
・『実績とかけ離れた2%物価目標 国債買い続け、懸念通りの結果に Q:13年1月の政策決定会合では物価目標に反対し、その後も、黒田総裁のもとでの緩和策拡大に反対の姿勢を貫いたのはなぜですか。 A:物価目標を盛り込んだ政府と日銀の共同声明についての日銀側の解釈は、政府も成長戦略や財政改革をやり、企業も頑張ることで実体経済が活性化し、物価の期待水準がいずれは2%に上がっていくと、そういう状況になった際は日銀も全力で支援するというものでした。 私も執行部の解釈は理解できましたが、潜在成長力や賃金が上がって2%が当たり前の水準になっていけばいいので、あえて数値目標を掲げる必要はないと考えたからです。それに2%は、当時やそれまでの日本の消費者物価上昇の実績とはあまりにかけ離れた数値でした。 ただそれでも当時は、目標実現はいつまでにという時期は特定していませんでした。ところが黒田総裁が13年4月に就任し、最初の決定会合で、声明文に「2年程度で実現」という文言を入れるということになったわけです。 そうなると、2%が完全に金融政策だけの目標になってしまいます。そして金融政策を物価目標にひもづけたままでは、ずっと国債を買って緩和を続けることになり、永遠に金融政策は正常化できなくなります。 それで4月の決定会合からは、物価目標を中長期の目標としたうえで、「集中対応期間」と位置づけて2年たって成果が出ない場合は見直すという独自提案を続けました。 とにかく、政策を柔軟に見直せるようにすべきだと思ったからです。 異次元緩和は短期的な政策としては受け入れられますが、いたずらに長く続けるものではありません。国債市場の機能低下や財政規律の緩みなどの弊害も大きいからですが、懸念した通りになりました』、「物価目標・・・についての日銀側の解釈は、政府も成長戦略や財政改革をやり、企業も頑張ることで実体経済が活性化し、物価の期待水準がいずれは2%に上がっていくと、そういう状況になった際は日銀も全力で支援するというもの」だったのに、「黒田総裁が13年4月に就任し、最初の決定会合で、声明文に「2年程度で実現」という文言を入れるということになったわけです。 そうなると、2%が完全に金融政策だけの目標になってしまいます。そして金融政策を物価目標にひもづけたままでは、ずっと国債を買って緩和を続けることになり、永遠に金融政策は正常化できなくなります」、ずいぶん日銀だけに偏った政策になったようだ。
・『YCCは緩和策でなかった 政治に配慮、政策転換明示できず Q:16年9月の「総括的検証」後はYCCを導入し、量から金利に操作目標を戻しました。この頃からは「緩和強化」や「緩和維持」を言いながら、国債買い入れを減らすなど、「緩和縮小」とも取れる措置もやり始めて、方向感が定まりませんでした。 黒田総裁が主導した「攻め」の金融政策は、16年1月のマイナス金利政策導入までで、その後は、日銀の事務方が主導する大規模緩和の副作用対策に重点が置かれてきたというのが、私の解釈です。 異次元緩和を始めて1年ほどの間は物価も上がりましたが、円安で輸入物価が上がったからです。最初から効果が見えていた政策ではなかったので、14年後半には私以外の審議委員の中にも「もう引くべきだ」という空気が出てきていました。 しかし黒田総裁は、14年10月の決定会合での緩和拡大、さらにマイナス金利導入と、その後、2回、緩和強化のボタンを押してしまうわけです。14年10月の決定会合では9人の審議委員のうち4人が反対し、マイナス金利導入の時も同様でした。 銀行業界の反発に加え、10年国債の金利だけでなく超長期の国債金利もマイナスになって、生保や年金の運用にも支障が出てきました。 そういうわけで、YCCは金融緩和政策ではなく、日銀の国債保有が膨大になったり、長期金利までがマイナスになりイールドカーブが低位でフラットになってしまった問題をなんとかしなければということで始まったダメージコントロールだったのです。 結局、YCC移行の時点から金融政策の主導権は日銀の事務方に移ったと思います。雨宮正佳前副総裁も日銀の中では相対的には緩和積極派でしたが、途中からはついていけないということになったのだと思います。 YCC移行後も、YCCの厳格な運営を考える黒田総裁と、柔軟化が必要とする雨宮氏では温度差があり、21年3月の金融緩和の点検の際には二人の意見の違いが表面化しました。 最終的には長期金利の誘導目標の変動幅は決定会合で決めるということで厳格化は維持されましたが、代わりに変動幅を事実上拡大しプラスマイナス0,25%の変動幅を明確にすることを黒田総裁もしぶしぶ受け入れ、妥協が図られたようです。 その後、しばらく金利は上がらなかったのですが、昨年3月、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制でハイペースの利上げに転じて以降は、日本の市場でも上昇圧力が一気に強まり、YCCの限界と問題点が一気に露呈してしまいました。 結局、日銀の事務方主導の政策修正はありましたが、明示的な政策転換は行われませんでした。異次元緩和がアベノミクスの象徴のようになってきた中で、政治的な配慮もあったと思います。 すでに陣を引いているにもかかわらず、攻めているような姿勢をみせようとして市場の不信感を強め、市場とのコミュニケーションすら難しくなってしまっています』、「黒田総裁が主導した「攻め」の金融政策は、16年1月のマイナス金利政策導入までで、その後は、日銀の事務方が主導する大規模緩和の副作用対策に重点が置かれてきたというのが、私の解釈です」、「YCCは金融緩和政策ではなく、日銀の国債保有が膨大になったり、長期金利までがマイナスになりイールドカーブが低位でフラットになってしまった問題をなんとかしなければということで始まったダメージコントロールだったのです。 結局、YCC移行の時点から金融政策の主導権は日銀の事務方に移ったと思います。雨宮正佳前副総裁も日銀の中では相対的には緩和積極派でしたが、途中からはついていけないということになったのだと思います」、「YCCの厳格な運営を考える黒田総裁と、柔軟化が必要とする雨宮氏では温度差があり、21年3月の金融緩和の点検の際には二人の意見の違いが表面化しました。 最終的には長期金利の誘導目標の変動幅は決定会合で決めるということで厳格化は維持されましたが、代わりに変動幅を事実上拡大しプラスマイナス0,25%の変動幅を明確にすることを黒田総裁もしぶしぶ受け入れ、妥協が図られたようです」、なるほど。「YCCの厳格な運営を考える黒田総裁と、柔軟化が必要とする雨宮氏では温度差があり、21年3月の金融緩和の点検の際には二人の意見の違いが表面化」、初めて知った。
・『植田氏起用は黒田流へのアンチテーゼ 市場との対話、丁寧な説明を重視 Q:植田新総裁の下で、金融政策の運営や政治との関係での変化をどう予想していますか。 A:学者出身ということで論理性を重視するでしょうし、国会での所信聴取でご自身が話しているように、市場とコミュニケ―ションや国民への丁寧な説明を重視すると思います。この点では評価しています。 黒田総裁は、政策の効果や波及経路についてあまり精緻な説明はせず、サプライズ的な政策決定をしました。市場にせよ企業や家計も、政策がどういう経路を通じてどれくらいの時間軸で影響が及ぶかがわからないので、結局、日銀が狙ったインフレ期待を醸成する効果も起きませんでした。 黒田総裁の下でも金融政策の正常化に向けた修正は事実上は進められてきましたが、植田日銀でも異次元緩和策の問題点を是正し緩和策の枠組みの修正を進め、その際には丁寧な説明をするだろうと思います。 ただ黒田路線を一気に否定することはしないで、個別の政策について効果と副作用を分析し市場に混乱が起きないように時間をかけてやるでしょう。 もともと日銀の伝統的なアプローチは、政策変更の際には市場や金融機関への影響を配慮しながらするやり方でした。植田氏も同じアプローチで、金融政策は伝統的なやり方に戻るのだと思います。 岸田政権の植田氏の起用は、黒田総裁のやり方へのアンチテーゼがあったのではないでしょうか。人選のポイントも、ソフトランディングを前提に、黒田総裁よりは柔軟な人をというのが基準の一つだったと思います。 植田氏は審議委員をしていた2001年の量的緩和導入の際も、自身としては効果に疑問をもっていたが、決定会合では反対しませんでした。 いわば現実的、柔軟なところ、悪く言えば黒田総裁のような信念の人ではないということと、初めての学者出身で人選の斬新さをアピールできるということが選ばれた理由ではないでしょうか。 政治との関係を言えば、岸田政権とは良好な形でスタートすると思います。ただし旧安倍派など保守派には、アベノミクスの継承にこだわっている人もいますし、昨年末の防衛増税への反対を見ても、自民党内の派閥の対立の影響が政策運営に及ぶ構図は変わらないと思います』、「植田氏は審議委員をしていた2001年の量的緩和導入の際も、自身としては効果に疑問をもっていたが、決定会合では反対しませんでした。 いわば現実的、柔軟なところ、悪く言えば黒田総裁のような信念の人ではないということと、初めての学者出身で人選の斬新さをアピールできるということが選ばれた理由ではないでしょうか」、「現実的、柔軟」さが過ぎると、金融政策の軌道修正にブレーキがかかってしまうリスクもありそうだ。
・『YCCの修正はすぐに必要な課題 マイナス金利解除は24年半ば以降 Q:金融政策の正常化のスケジュール感や課題をどのように考えますか。 A:最終的には、マイナス金利政策とYCCはなくなり、国債やETFなどの資産買い入れ策もかなり変わると思います。ただ、経済や物価の情勢に応じて、少しずつ時間をかけてということになると思います。 当面の課題はYCCをどうするかです。国債の買い入れを減らすために導入したはずが、昨年後半以降は、YCCの長期金利を維持するために国債を猛烈に買うことになっています。 円安になり物価が上がってきて本来は金融を引き締めなければいけないのに、日銀がバランスシートを拡大することで緩和に向かわざるを得ないというのは矛盾です。YCCは大きな弱点を抱えています。 まずは変動幅の拡大や撤廃、長期金利の誘導水準の引き上げ、あるいは指し値オペの見直しという三つの選択肢の中で修正に動くのではないでしょうか。 指し値オペは、金利が多少上振れしても今までのように連日、実施はするというやり方ではなく、市場が予想できないタイミングで使うといった具合に柔軟で機動的なやり方に変えれば、国債の買い入れも少なくできます。 ただし正常化の最大の山場は、マイナス金利政策をやめる時です。 時期としては2024年半ば以降になると思いますが、その時に長期金利が跳ねる可能性があるので、そのリスクに備えるために、YCCは形骸化させるにしても、マイナス金利解除の際までは枠組みを残しておくのではないでしょうか。 スケジュール感を予想すれば、YCCの修正や物価目標の柔軟化といったソフトな修正、いわば政策運営方針の転換は今年中に行われると思います。 その後、経済の状況を見て、マイナス金利解除や緩和方針などハードの部分を転換し、さらにその後に日銀の保有国債の処理や買い入れたETFをオフバランス化していくという、大きく言えば3段階での手順になると思います。 保有国債やETFの処理は、市場へ影響を与えないように結局、国債は満期までは保有するだろうし、ETFについては、日銀が出資する受け皿機関を作って、そこに移して損が出ないように売却していく。株式市場次第ですが、処理には十数年はかかる長い道のりになるでしょう』、「YCCの修正や物価目標の柔軟化といったソフトな修正、いわば政策運営方針の転換は今年中に行われると思います。 その後、経済の状況を見て、マイナス金利解除や緩和方針などハードの部分を転換し、さらにその後に日銀の保有国債の処理や買い入れたETFをオフバランス化していくという、大きく言えば3段階での手順になると思います」、「保有国債やETFの処理は、市場へ影響を与えないように結局、国債は満期までは保有するだろうし、ETFについては、日銀が出資する受け皿機関を作って、そこに移して損が出ないように売却していく。株式市場次第ですが、処理には十数年はかかる長い道のりになるでしょう」、さすがにマーケットも熟知しているだけに、あり得そうなシナリオだ。
・『共同声明見直しはすぐにも着手? 金融不安、米経済次第で正常化後ずれ Q:米国では地方銀行の破綻や預金流出が続き欧米で金融不安がくすぶる状況です。FRBは、3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では0.25%の利上げを継続しましたが、正常化への影響をどう考えますか。 A:正常化が世界経済や米国の金融政策に左右される面は大きいと思います。 米国では大幅利上げが進んできましたが、金融不安から銀行が貸し出しに慎重になり、一方で利上げはまだやめないとなれば、クレジットクランチのようなことが重なるので、景気はかなり減速する懸念があります。 そうなると日本経済にはマイナスの影響が及ぶし、円高にもなりやすくなります。 FRBの利上げ打ち止め、さらには利下げということになるのかどうか、米経済の状況次第という面はありますが、利下げ観測が強まれば、植田日銀が思い浮かべている緩和の枠組みの修正は後にずれる可能性があります。 場合によっては、今年中はほぼ何もしないということになり、そうなれば、24年半ばからの金融政策の正常化スケジュールも遅れるでしょう。 ただし今までの金融政策の総括をするのと、政府との共同声明を見直して物価目標の位置づけを変えることは、政策修正とは別なので、新体制になって比較的、早いタイミングで着手できると思います。 安倍政権の共同声明は、日銀を積極緩和にコミットさせる狙いでしたが、結局、金融政策を縛ってしまいました。円安になっても日銀は動きが取れず、一方で政府は輸入価格高騰による物価対策をしなければならないという矛盾が起きてしまったわけです。 (木内登英氏の略歴はリンク先参照) 岸田政権としては、そこは政権の責任もあるということで、柔軟なものにして日銀を縛りから解こうということだと思います。日銀もいずれ政策転換をしようとする際には物価目標の見直しが必要です。 共同声明当時の日銀側の解釈であれば、2%は中長期の目標だと位置づけることはできます。本来なら日銀だけで物価目標の再定義をすればいい話ですが、政府が共同声明を見直すというのなら、そういう形で変えるということになるのではないでしょうか。 ただ見直しに着手はしても、自民党内との調整もあるので、まとまるタイミングは不明で、今年後半になるのかもしれません。 一方で、今までの政策の総括はやらない可能性があります。どうしても異次元緩和の問題点をあげつらうことになり、例えばマイナス金利政策なども問題点が大きいということになれば、早く撤廃をと、市場などに催促される形になって無用な混乱を生みかねないからです。 内外の経済情勢や市場の動きを見ながら、個別に政策を順次修正していくというアプローチをとると思います』、「FRBの利上げ打ち止め、さらには利下げということになるのかどうか、米経済の状況次第という面はありますが、利下げ観測が強まれば、植田日銀が思い浮かべている緩和の枠組みの修正は後にずれる可能性があります。 場合によっては、今年中はほぼ何もしないということになり、そうなれば、24年半ばからの金融政策の正常化スケジュールも遅れるでしょう」、「ただし今までの金融政策の総括をするのと、政府との共同声明を見直して物価目標の位置づけを変えることは、政策修正とは別なので、新体制になって比較的、早いタイミングで着手できると思います」、「安倍政権の共同声明は、日銀を積極緩和にコミットさせる狙いでしたが、結局、金融政策を縛ってしまいました。円安になっても日銀は動きが取れず、一方で政府は輸入価格高騰による物価対策をしなければならないという矛盾が起きてしまった」、「一方で、今までの政策の総括はやらない可能性があります。どうしても異次元緩和の問題点をあげつらうことになり、例えばマイナス金利政策なども問題点が大きいということになれば、早く撤廃をと、市場などに催促される形になって無用な混乱を生みかねないからです。 内外の経済情勢や市場の動きを見ながら、個別に政策を順次修正していくというアプローチをとると思います」、確かに「総括」にはそうしたリスクがあるので、「個別に政策を順次修正していくというアプローチをとると思います」、極めて現実的だ。さあ、新相殺のお手並み拝見!
は、4月3日付けデイリー新潮が掲載したジャーナリスト・帝京大学教授の軽部謙介氏による「植田日銀総裁誕生の裏に“権力の興亡” 本命・雨宮副総裁が漏らしていた“本音”とは」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/04030558/?all=1
・『10年にも及んだ異次元緩和を主導した黒田東彦日銀総裁に代わり、新たに中央銀行を統べるは経済学者の植田和男氏(71)。難題山積の中、異例の学者総裁にかじ取りを任せるのはなぜか。日銀、財務省、そして官邸の間で繰り広げられた「権力の興亡」、その内幕に迫る。 10年ぶりに日本銀行の総裁が交代する。4月以降は、総裁・植田和男(東大名誉教授)、副総裁・氷見野良三(前金融庁長官)、同・内田眞一(日銀理事)という体制に金融政策のかじ取りが委ねられるが、人選の過程を検証していくと「日本の権力構造」に潜む問題点が浮き上がってくる。そしてそれは、日銀総裁とは、誰が、どのように、何を基準にして選ぶべきなのかという問いにつながっていく』、興味深そうだ。
・『雨宮の言い分 元首相の安倍晋三が撃たれた2022年の夏も終わろうとしていた。 財務省の有力OB二人と日銀副総裁の雨宮正佳が都内の鮨屋でネタをつまみながら杯を交わしていた。アルコールがダメな雨宮も旧知の顔ぶれを相手に、よもやま話に花を咲かせた。 佳境に入り黒田東彦(はるひこ)・日銀総裁の後任人事に話が及んだ。このとき、後継の最有力候補といわれていた雨宮は二人にこういう趣旨の話をした。 新総裁は、黒田体制の10年だけでなく1998年の新日銀法施行以降の「非伝統的」と呼ばれた金融政策全般を対象に点検・検証するべきだ。しかし、自分はそれを主宰する任にはふさわしくない。なぜならその大半に関与しているからだ――。 確かに、雨宮は2000年代以降の量的緩和開始、異次元緩和実施、長短金利を操作するイールドカーブ・コントロール(YCC)導入など非伝統的金融政策に深く関わった。その張本人が問題点を含めた検証を行ったら正当性が確保できないという言い分には一理あった』、「雨宮は2000年代以降の量的緩和開始、異次元緩和実施、長短金利を操作するイールドカーブ・コントロール(YCC)導入など非伝統的金融政策に深く関わった。その張本人が問題点を含めた検証を行ったら正当性が確保できないという言い分には一理あった」、実に巧みな拒否理由だ。
・『各国の中央銀行総裁の多くは学者 もう一つ、雨宮が強調したポイントがあった。それは「学者の起用に道を開く」ということだ。副総裁就任後、各国の中央銀行総裁が集まる会合に代理出席する機会も多くなった雨宮は、トップたちが部下の助けも借りずに難解なテーマを自分たちの言葉で議論している現場を目の当たりにしてきた。 彼らの多くは経済学の博士号を取得している。ノーベル経済学賞を受賞したベン・バーナンキ(元米連邦準備制度理事会=FRB=議長)、ジャネット・イエレン(前FRB議長)、スタンレー・フィッシャー(元イスラエル中銀総裁)、ラグラム・ラジャン(元インド中銀総裁)らは世界的に名の通った学者でもある。中国や韓国でも中銀のトップは学者が務めている。 しかも、中央銀行の国際的な連携は、リーマンショックを契機に、事務当局者同士が下で詰めて上に上げていくというやり方から、トップが電話で協議するというやり方に変わっている。問題は日本がそのコミュニティーに入っていけるかだ。経済・金融理論に対する深い知識や語学力など、日銀総裁には従来と異なる資質も求められる。 「優秀な学者が中央銀行トップになるという国際標準を、日本でも実現するべきではないか」 雨宮はこう言っていた』、「中央銀行の国際的な連携は、リーマンショックを契機に、事務当局者同士が下で詰めて上に上げていくというやり方から、トップが電話で協議するというやり方に変わっている」、「優秀な学者が中央銀行トップになるという国際標準を、日本でも実現するべきではないか」、さすが説得力に富んだ主張だ。ただ、欧州の中央銀行総裁は中央銀行実務家が多いようだ。
・『雨宮の真意 財務省は日銀の所管官庁として総裁選びにも深く関与する。実は先のOBだけでなく、このころ日銀人事を準備する過程で雨宮と接触した現役官僚も同じ趣旨の話を聞かされていた。 財務省の関係者たちには意外な感じがした。日銀総裁レースの大本命は雨宮だ。望んでもなれないそのポストは、1979年の入行以来日銀一筋で生きてきたこの男にとっても悲願のはず。「本当はやりたいと思っているが、最初は「自分には無理だ」などと言って一歩下がる常識的な対応」という見方も強かった。 雨宮の言っていることは本心なのだろうか。それとも一種の目くらまし戦術なのか――。 財務省は最後まで雨宮の真意を測りかねた。 そもそも彼らは今回の人事をこう位置付けていた。 「うちの番ではない」 この意味は歴代総裁の出自をたどればよくわかる。財務省が大蔵省だった時代から、日銀・財務の出身者が中央銀行トップの座をほぼ独占しており、両者が交代で就任するたすき掛け人事、いわゆる「交代ルール」が暗黙の了解だったのだ(掲載の表参照)。今回は財務省出身の黒田が2期10年務めた後で、「日銀の番」となるのが順当だった』、「雨宮氏は金融政策の裏も知り尽くしているだけに、黒田総裁の後任の職務の難しさを理解出来、自分がそんなババを引くのはご免被りたいと思っているのではあるまいか。
・『交代ルールを外れた人事 それでも、この役所は早くから正副総裁についていくつかの組み合わせを想定していた。最有力とみられたのは雨宮を頂点とし、副総裁の一人に財務省関係者、もう一人を学者にする案だ。 副総裁候補には財務官経験者ら何人かの名前が挙がった。しかし、ここで年次が問題になる。雨宮は79年の日銀入行。入省年次が同期もしくはそれよりも上の場合は対象から外された。そこで浮上してきたのが氷見野だった。金融庁長官を務めたが、もともとは83年の大蔵省入省だ。氷見野の副総裁就任は、財務省が「雨宮総裁」を予想していたことの裏返しだったわけだ。 そして、もう一人の学者としては、雨宮より年齢が上の植田ではなく、日銀出身の東大教授である渡辺努などの名前が挙がっていた。 しかし、結果的に総裁に選ばれたのは、交代ルールを外れるばかりか、21代宇佐美洵(まこと)以来、戦後2人目となる「民間」出身者の植田だった。 関係者によると、雨宮から固辞の理由を聞かされていた首相の岸田文雄は、深く共鳴するところがあったようで、総裁の条件を問われた国会質疑で「主要国中央銀行トップとの緊密な連携、質の高い発信力、受信力が格段に重要になっている」と説明している。雨宮の主張にそっくりだ。 そして、大本命の雨宮の辞意が固いとみた岸田官邸は、かねてから目をつけていた植田への傾斜を強めていく。最終的に正副総裁三人の人選が固まったのは年末から年始にかけてだったといわれる』、「雨宮から固辞の理由を聞かされていた首相の岸田文雄は、深く共鳴するところがあったようで、総裁の条件を問われた国会質疑で「主要国中央銀行トップとの緊密な連携、質の高い発信力、受信力が格段に重要になっている」と説明している。雨宮の主張にそっくりだ。 そして、大本命の雨宮の辞意が固いとみた岸田官邸は、かねてから目をつけていた植田への傾斜を強めていく」、なるほど。
・『知らされなかった財務省 しかし、財務省は最後までこの人選を知らされなかった。彼らが「植田総裁」という情報を得たのは、メディアで一斉に報じられた2月10日の数日前だったのだという。過去に日銀を従えて総裁の人選に深く関与してきた財務省は「死んだふり」をしているのか。それとも本当に死んでしまったのかは判然としない。 財務省・日銀出身者の交代ルールが崩れたことに加えて、今回の総裁人事にはもう一つ特徴があった。それは2代続けてのポリティカル・アポインティー(政治任用)化だ。 後述する98年の新日銀法施行以前も、以降も、総裁選びは所管官庁である財務省(以前は大蔵省)と日銀が官邸とあうんの呼吸で詰めていくのが流儀だった。この二つの組織が交代ルールを参考にしながら有力として推す候補者に決着できるよう根回しも万全だった』、「2代続けてのポリティカル・アポインティー(政治任用)化」、とすれば「財務省が知らされなかった」のはある意味当然かも知れない。
・『特定の金融政策を実施するために選ばれた総裁 しかし、10年前このプロセスは大きく変化した。12年12月の総選挙に勝利し政権に復帰した安倍は「大胆な金融政策」を柱とする経済政策、「アベノミクス」を掲げていた。そのため、13年4月に迫っていた日銀総裁人事は政権の行方を占う上でも間違いの許されない非常に重要な政治イベントになっていた。 前任の白川方明が日銀出身だったため、交代ルールに従えば自分たちの番だったこともあり、財務省は08年の総裁レースで国会承認の獲得に失敗した次官OBの武藤敏郎を強く推していた。しかし、安倍は彼らの意向を無視。財務省本流とは異なり「デフレは貨幣的現象なので金融政策だけで対処できる」とリフレ派的な主張を繰り返した黒田を最有力候補として位置付け、総裁就任を要請した。 この行為は政治家による内閣人事権を行使した「一本釣り」ともいえる。しかも、リフレであれ何であれ、特定の金融政策を実施するために総裁が決められるのは初めてだった。 安倍はさらに、日銀と財務省が予定調和的に決めていた副総裁や審議委員の人事も政治的に利用。黒田の補佐役として「リフレ派の教祖」と言われた学習院大学教授の岩田規久男を副総裁に抜てきしただけではなく、その後も若田部昌澄、原田泰、片岡剛士らリフレ派の面々を副総裁や審議委員に起用することで日銀をコントロールしようと試みた。 「内閣人事権の活用と政策を結び付けろ」と提唱していたのは21年11月に86歳で亡くなった中原伸之だ。東燃の社長を務め日銀の審議委員も経験した中原は財界応援団を組織し安倍をサポートしていたが、第2次政権以前から何度も「金融政策を変更したいなら、内閣や国会は審議委員の人選で考えればいい」という持論を安倍に伝えていたのだという』、「中原伸之」氏が「第2次政権以前から何度も「金融政策を変更したいなら、内閣や国会は審議委員の人選で考えればいい」という持論を安倍に伝えていた」とは、初めて知った。
・『政治任用の意図 日銀・財務から推薦を受けた候補を粛々と指名していくという過去のやり方ではないという意味で、今回の植田総裁誕生も岸田による政治任用といえる。ただ、安倍が「リフレ政策の実現」という特定の方向性を求めて黒田を指名したのとは異なり、岸田が何か政策的な意図を持っているのかははっきりとしない。 人事の決め方は98年施行の新日銀法で「総裁及び副総裁は、両議院の同意を得て、内閣が任命する」(23条)と規定されたが、政治任用の可能性を残すこの内閣人事権は当初甘く見られていた。 96年の夏。日銀の幹部たちは連日朝早く日本橋本石町の本店会議室に招集された。「夏合宿」と称されたこの会議は日銀法改正に向けて自らのポジションを固めるためのものだった。この時の日銀法(旧法)は、議院の同意を必要としない、文字通りの内閣人事権はもちろん、「総裁の解任権」や「一般的な業務指揮権」などが政府に認められており、日本の中央銀行は所在地をもじって「大蔵省本石町出張所」などと揶揄される組織だった。 「政府からの独立」はバブル崩壊後のさまざまな不祥事から始まった大蔵省改革の一環として議論されていた。ただ、実際に改正となれば、何を、どう法文化していくのか決めるのはそう簡単でない』、「日銀法」「実際に改正となれば、何を、どう法文化していくのか決めるのはそう簡単でない」、その通りだ。
・『「内閣には人事権があるのだから…」 合宿の場に企画局からこんなペーパーが提示された。 「政策の内容からいって独立性と中立性が要求され、他方で、任命権を通じた政策委員に対する内閣のコントロール手段が確保されていれば、準備率の設定・変更・廃止についての権限を政策委員会が有することとしても、直ちに違憲というわけではない」(情報公開法で入手した96年7月10日付「日銀法改正の論点検討」) 民間金融機関は、受け入れている預金等のうち一定比率以上を日銀の当座預金に預けておかねばならず、この比率を準備率という。政策委員とは正副総裁を含めた審議委員のことだ。 当時、準備率の変更には大蔵大臣の認可が必要だった。準備率の変更は金融政策としても活用されていただけに、日銀としてはこの問題で大蔵の認可は必要ないということを言っていたのだ。そして、その根拠として「任命権を通じた政策委員に対する内閣のコントロール」を挙げていた。つまり「内閣には人事権があるのだからほかのことは自由にやらせろ」というわけだ。 「中央銀行に完全な独立性などあり得ない」という主張も強い中、日銀は「人事権よりも金融政策を含む一般的な業務での独立性を獲得する方が大事」と考えていたので、こんな主張をしていたのだ。しかも陰りが見え始めたとはいえ、当時官僚の力はまだ強く、総裁人事にも大きな影響力を持っていた。まさか、財務・日銀の交代ルールまでほごにされ、挙句、政治任用で総裁が決まる日が来るなどとは思っていなかっただろう』、「準備率の変更は金融政策としても活用されていただけに、日銀としてはこの問題で大蔵の認可は必要ないということを言っていたのだ。そして、その根拠として「任命権を通じた政策委員に対する内閣のコントロール」を挙げていた。つまり「内閣には人事権があるのだからほかのことは自由にやらせろ」というわけだ」、なるほど。
・『総裁にふさわしいか それから四半世紀経った2022年。夏の終わりに財務省OBに披瀝した問題意識を、雨宮は各方面に広く伝えていた。そしてそれは、結果的に、これまで財務・日銀に支配されていた「総裁選び」の構造に真正面から挑むものになった。特に財務省だ。 政治任用だった黒田を除き、総裁を務めた大蔵省出身者は全員が事務次官経験者だ。このポストは昔、「大蔵次官にとっての天下り先ナンバーワン」と言われたように事務次官経験者の中でも最も格が高いという位置付けだった。 次官に上り詰める財務官僚は主計局長からの昇格が大半を占める。主計局長になるには、多くの場合、局内で課長や主計官のポストを歴任する。財政を担当するセクションは政治との折衝に忙殺される。 しかし、大物といわれる次官OBだとしても、そのような経歴が日銀総裁にふさわしいかは別問題というのが岸田や雨宮の考え方のようだ。特にグローバル化の進展に合わせ中銀トップの間での情報交換が密になればなるほど、そのコミュニティーに入っていく重要性は増す。雨宮は周辺にこう漏らしたことがある。 「事務次官をなさった方は皆それなりの人なんだけど、その方が総裁というのは少し違うんじゃないか」』、「グローバル化の進展に合わせ中銀トップの間での情報交換が密になればなるほど、そのコミュニティーに入っていく重要性は増す」ので、「事務次官をなさった方は皆それなりの人なんだけど、その方が総裁というのは少し違うんじゃないか」、その通りだ。
・『もし経済運営に失敗すれば… 日銀総裁人事をめぐるうごめきは収束した。これからはYCCをどのように「手じまい」するのか、異次元緩和の出口をどのように潜(くぐ)るのか、さまざまな副作用にどう対処するのかなど、当面の課題処理に焦点が移る。 岸田や雨宮の意図がどこにあれ、結果的に2代続けて日銀総裁が政治任用となったことは、戦後続いてきた旧態依然たる交代ルールに終止符が打たれたことを意味する。財務次官経験者だからといって安易に総裁になれる時代ではないことも明確になった。 しかし、もし今後5年間で日銀が経済運営に失敗したら、「旧来の秩序に戻すべきではないか」との声が強まる可能性は大きいだろう。マクロ政策の象徴的存在である日銀総裁の人事は、誰が、何を基準に決めるべきなのか――。 「統治の仕方」がどうなっていくのかという観点からも、植田体制の責任は重い』、「もし今後5年間で日銀が経済運営に失敗したら、「旧来の秩序に戻すべきではないか」との声が強まる可能性は大きいだろう」、「「統治の仕方」がどうなっていくのかという観点からも、植田体制の責任は重い」、その通りだ。
次に、4月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した「木内登英・野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミスト・元日銀審議委員インタビュー「「マイナス金利解除は24年以降」元日銀審議委員・木内氏が語る植田日銀の正常化シナリオ」を紹介しよう。これは有料記事だが、私の場合、今月は残り3本まで無料である。元日銀審議委員として、日銀内の議論に参加していただけあって、極めて有用な内容である。
https://diamond.jp/articles/-/320884
・『日銀自身が否定していた政策 追い詰められて導入の繰り返し Qは聞き手の質問、Aは木内氏の回答) Q:量的緩和策にしても物価目標にしても白川総裁時代には、日銀はその効果には否定的でした。黒田総裁時代になって、ご自身も含め考え方に変化はあったのですか。 A:民主党政権時代も含め、2000年ごろから円高やデフレへの対応で日銀と政府との間でずっと軋轢がありました。積極緩和を求める政府に対して、日銀が押し返す局面もあったものの、ゼロ金利解除や最初の量的緩和解除など、何かアクションをすると経済が悪化し、また批判を受けるという繰り返し。 追い詰められて結局、いまのイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)での長期金利のコントロールを含め、できないと否定していたことを全部やらされることになったのです。 最後の一押しが、第2次安倍晋三政権誕生につながった2012年12月の総選挙での自民党の圧勝でした。 安倍氏はその直前の自民党総裁選から、物価目標導入や大胆な金融緩和を唱えていました。その時は日銀の執行部も政策員会も意に介さずという空気でしたが、総選挙後に開かれた12月の決定会合では空気が一変しました。 総裁をはじめ執行部は、物価目標はやらざるを得ないという判断でした。安倍首相から強い働きかけがあったようですし、日銀内にも、物価目標の公約を掲げたから自民党が勝ったわけではないにしても、なにがしかの民意が反映されているのならば、対応する必要があるのではという意識はありました。自分たちは国民の選挙で選ばれたわけではないという引け目もあるわけです。 さらにそれ以上に大きなプレッシャーになったのは、自民党内の一部から出ていた総裁の解任権をちらつかせた日銀法改正の脅しでした。 金融政策で政府と日銀が決裂することになれば、総裁の解任権が法律に盛り込まれ、日銀の独立性が決定的に制限されかねません。ぎりぎりの判断で物価目標導入に一転、向かったということです。 私自身も納得はしていなかったけれど、執行部への同情もあったし逃れられないという判断でした』、「自分たちは国民の選挙で選ばれたわけではないという引け目もあるわけです」、「大きなプレッシャーになったのは、自民党内の一部から出ていた総裁の解任権をちらつかせた日銀法改正の脅しでした。 金融政策で政府と日銀が決裂することになれば、総裁の解任権が法律に盛り込まれ、日銀の独立性が決定的に制限されかねません。ぎりぎりの判断で物価目標導入に一転、向かったということです」、ここまで「日銀法改正の脅し」があったとは初めて知った。
・『実績とかけ離れた2%物価目標 国債買い続け、懸念通りの結果に Q:13年1月の政策決定会合では物価目標に反対し、その後も、黒田総裁のもとでの緩和策拡大に反対の姿勢を貫いたのはなぜですか。 A:物価目標を盛り込んだ政府と日銀の共同声明についての日銀側の解釈は、政府も成長戦略や財政改革をやり、企業も頑張ることで実体経済が活性化し、物価の期待水準がいずれは2%に上がっていくと、そういう状況になった際は日銀も全力で支援するというものでした。 私も執行部の解釈は理解できましたが、潜在成長力や賃金が上がって2%が当たり前の水準になっていけばいいので、あえて数値目標を掲げる必要はないと考えたからです。それに2%は、当時やそれまでの日本の消費者物価上昇の実績とはあまりにかけ離れた数値でした。 ただそれでも当時は、目標実現はいつまでにという時期は特定していませんでした。ところが黒田総裁が13年4月に就任し、最初の決定会合で、声明文に「2年程度で実現」という文言を入れるということになったわけです。 そうなると、2%が完全に金融政策だけの目標になってしまいます。そして金融政策を物価目標にひもづけたままでは、ずっと国債を買って緩和を続けることになり、永遠に金融政策は正常化できなくなります。 それで4月の決定会合からは、物価目標を中長期の目標としたうえで、「集中対応期間」と位置づけて2年たって成果が出ない場合は見直すという独自提案を続けました。 とにかく、政策を柔軟に見直せるようにすべきだと思ったからです。 異次元緩和は短期的な政策としては受け入れられますが、いたずらに長く続けるものではありません。国債市場の機能低下や財政規律の緩みなどの弊害も大きいからですが、懸念した通りになりました』、「物価目標・・・についての日銀側の解釈は、政府も成長戦略や財政改革をやり、企業も頑張ることで実体経済が活性化し、物価の期待水準がいずれは2%に上がっていくと、そういう状況になった際は日銀も全力で支援するというもの」だったのに、「黒田総裁が13年4月に就任し、最初の決定会合で、声明文に「2年程度で実現」という文言を入れるということになったわけです。 そうなると、2%が完全に金融政策だけの目標になってしまいます。そして金融政策を物価目標にひもづけたままでは、ずっと国債を買って緩和を続けることになり、永遠に金融政策は正常化できなくなります」、ずいぶん日銀だけに偏った政策になったようだ。
・『YCCは緩和策でなかった 政治に配慮、政策転換明示できず Q:16年9月の「総括的検証」後はYCCを導入し、量から金利に操作目標を戻しました。この頃からは「緩和強化」や「緩和維持」を言いながら、国債買い入れを減らすなど、「緩和縮小」とも取れる措置もやり始めて、方向感が定まりませんでした。 黒田総裁が主導した「攻め」の金融政策は、16年1月のマイナス金利政策導入までで、その後は、日銀の事務方が主導する大規模緩和の副作用対策に重点が置かれてきたというのが、私の解釈です。 異次元緩和を始めて1年ほどの間は物価も上がりましたが、円安で輸入物価が上がったからです。最初から効果が見えていた政策ではなかったので、14年後半には私以外の審議委員の中にも「もう引くべきだ」という空気が出てきていました。 しかし黒田総裁は、14年10月の決定会合での緩和拡大、さらにマイナス金利導入と、その後、2回、緩和強化のボタンを押してしまうわけです。14年10月の決定会合では9人の審議委員のうち4人が反対し、マイナス金利導入の時も同様でした。 銀行業界の反発に加え、10年国債の金利だけでなく超長期の国債金利もマイナスになって、生保や年金の運用にも支障が出てきました。 そういうわけで、YCCは金融緩和政策ではなく、日銀の国債保有が膨大になったり、長期金利までがマイナスになりイールドカーブが低位でフラットになってしまった問題をなんとかしなければということで始まったダメージコントロールだったのです。 結局、YCC移行の時点から金融政策の主導権は日銀の事務方に移ったと思います。雨宮正佳前副総裁も日銀の中では相対的には緩和積極派でしたが、途中からはついていけないということになったのだと思います。 YCC移行後も、YCCの厳格な運営を考える黒田総裁と、柔軟化が必要とする雨宮氏では温度差があり、21年3月の金融緩和の点検の際には二人の意見の違いが表面化しました。 最終的には長期金利の誘導目標の変動幅は決定会合で決めるということで厳格化は維持されましたが、代わりに変動幅を事実上拡大しプラスマイナス0,25%の変動幅を明確にすることを黒田総裁もしぶしぶ受け入れ、妥協が図られたようです。 その後、しばらく金利は上がらなかったのですが、昨年3月、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制でハイペースの利上げに転じて以降は、日本の市場でも上昇圧力が一気に強まり、YCCの限界と問題点が一気に露呈してしまいました。 結局、日銀の事務方主導の政策修正はありましたが、明示的な政策転換は行われませんでした。異次元緩和がアベノミクスの象徴のようになってきた中で、政治的な配慮もあったと思います。 すでに陣を引いているにもかかわらず、攻めているような姿勢をみせようとして市場の不信感を強め、市場とのコミュニケーションすら難しくなってしまっています』、「黒田総裁が主導した「攻め」の金融政策は、16年1月のマイナス金利政策導入までで、その後は、日銀の事務方が主導する大規模緩和の副作用対策に重点が置かれてきたというのが、私の解釈です」、「YCCは金融緩和政策ではなく、日銀の国債保有が膨大になったり、長期金利までがマイナスになりイールドカーブが低位でフラットになってしまった問題をなんとかしなければということで始まったダメージコントロールだったのです。 結局、YCC移行の時点から金融政策の主導権は日銀の事務方に移ったと思います。雨宮正佳前副総裁も日銀の中では相対的には緩和積極派でしたが、途中からはついていけないということになったのだと思います」、「YCCの厳格な運営を考える黒田総裁と、柔軟化が必要とする雨宮氏では温度差があり、21年3月の金融緩和の点検の際には二人の意見の違いが表面化しました。 最終的には長期金利の誘導目標の変動幅は決定会合で決めるということで厳格化は維持されましたが、代わりに変動幅を事実上拡大しプラスマイナス0,25%の変動幅を明確にすることを黒田総裁もしぶしぶ受け入れ、妥協が図られたようです」、なるほど。「YCCの厳格な運営を考える黒田総裁と、柔軟化が必要とする雨宮氏では温度差があり、21年3月の金融緩和の点検の際には二人の意見の違いが表面化」、初めて知った。
・『植田氏起用は黒田流へのアンチテーゼ 市場との対話、丁寧な説明を重視 Q:植田新総裁の下で、金融政策の運営や政治との関係での変化をどう予想していますか。 A:学者出身ということで論理性を重視するでしょうし、国会での所信聴取でご自身が話しているように、市場とコミュニケ―ションや国民への丁寧な説明を重視すると思います。この点では評価しています。 黒田総裁は、政策の効果や波及経路についてあまり精緻な説明はせず、サプライズ的な政策決定をしました。市場にせよ企業や家計も、政策がどういう経路を通じてどれくらいの時間軸で影響が及ぶかがわからないので、結局、日銀が狙ったインフレ期待を醸成する効果も起きませんでした。 黒田総裁の下でも金融政策の正常化に向けた修正は事実上は進められてきましたが、植田日銀でも異次元緩和策の問題点を是正し緩和策の枠組みの修正を進め、その際には丁寧な説明をするだろうと思います。 ただ黒田路線を一気に否定することはしないで、個別の政策について効果と副作用を分析し市場に混乱が起きないように時間をかけてやるでしょう。 もともと日銀の伝統的なアプローチは、政策変更の際には市場や金融機関への影響を配慮しながらするやり方でした。植田氏も同じアプローチで、金融政策は伝統的なやり方に戻るのだと思います。 岸田政権の植田氏の起用は、黒田総裁のやり方へのアンチテーゼがあったのではないでしょうか。人選のポイントも、ソフトランディングを前提に、黒田総裁よりは柔軟な人をというのが基準の一つだったと思います。 植田氏は審議委員をしていた2001年の量的緩和導入の際も、自身としては効果に疑問をもっていたが、決定会合では反対しませんでした。 いわば現実的、柔軟なところ、悪く言えば黒田総裁のような信念の人ではないということと、初めての学者出身で人選の斬新さをアピールできるということが選ばれた理由ではないでしょうか。 政治との関係を言えば、岸田政権とは良好な形でスタートすると思います。ただし旧安倍派など保守派には、アベノミクスの継承にこだわっている人もいますし、昨年末の防衛増税への反対を見ても、自民党内の派閥の対立の影響が政策運営に及ぶ構図は変わらないと思います』、「植田氏は審議委員をしていた2001年の量的緩和導入の際も、自身としては効果に疑問をもっていたが、決定会合では反対しませんでした。 いわば現実的、柔軟なところ、悪く言えば黒田総裁のような信念の人ではないということと、初めての学者出身で人選の斬新さをアピールできるということが選ばれた理由ではないでしょうか」、「現実的、柔軟」さが過ぎると、金融政策の軌道修正にブレーキがかかってしまうリスクもありそうだ。
・『YCCの修正はすぐに必要な課題 マイナス金利解除は24年半ば以降 Q:金融政策の正常化のスケジュール感や課題をどのように考えますか。 A:最終的には、マイナス金利政策とYCCはなくなり、国債やETFなどの資産買い入れ策もかなり変わると思います。ただ、経済や物価の情勢に応じて、少しずつ時間をかけてということになると思います。 当面の課題はYCCをどうするかです。国債の買い入れを減らすために導入したはずが、昨年後半以降は、YCCの長期金利を維持するために国債を猛烈に買うことになっています。 円安になり物価が上がってきて本来は金融を引き締めなければいけないのに、日銀がバランスシートを拡大することで緩和に向かわざるを得ないというのは矛盾です。YCCは大きな弱点を抱えています。 まずは変動幅の拡大や撤廃、長期金利の誘導水準の引き上げ、あるいは指し値オペの見直しという三つの選択肢の中で修正に動くのではないでしょうか。 指し値オペは、金利が多少上振れしても今までのように連日、実施はするというやり方ではなく、市場が予想できないタイミングで使うといった具合に柔軟で機動的なやり方に変えれば、国債の買い入れも少なくできます。 ただし正常化の最大の山場は、マイナス金利政策をやめる時です。 時期としては2024年半ば以降になると思いますが、その時に長期金利が跳ねる可能性があるので、そのリスクに備えるために、YCCは形骸化させるにしても、マイナス金利解除の際までは枠組みを残しておくのではないでしょうか。 スケジュール感を予想すれば、YCCの修正や物価目標の柔軟化といったソフトな修正、いわば政策運営方針の転換は今年中に行われると思います。 その後、経済の状況を見て、マイナス金利解除や緩和方針などハードの部分を転換し、さらにその後に日銀の保有国債の処理や買い入れたETFをオフバランス化していくという、大きく言えば3段階での手順になると思います。 保有国債やETFの処理は、市場へ影響を与えないように結局、国債は満期までは保有するだろうし、ETFについては、日銀が出資する受け皿機関を作って、そこに移して損が出ないように売却していく。株式市場次第ですが、処理には十数年はかかる長い道のりになるでしょう』、「YCCの修正や物価目標の柔軟化といったソフトな修正、いわば政策運営方針の転換は今年中に行われると思います。 その後、経済の状況を見て、マイナス金利解除や緩和方針などハードの部分を転換し、さらにその後に日銀の保有国債の処理や買い入れたETFをオフバランス化していくという、大きく言えば3段階での手順になると思います」、「保有国債やETFの処理は、市場へ影響を与えないように結局、国債は満期までは保有するだろうし、ETFについては、日銀が出資する受け皿機関を作って、そこに移して損が出ないように売却していく。株式市場次第ですが、処理には十数年はかかる長い道のりになるでしょう」、さすがにマーケットも熟知しているだけに、あり得そうなシナリオだ。
・『共同声明見直しはすぐにも着手? 金融不安、米経済次第で正常化後ずれ Q:米国では地方銀行の破綻や預金流出が続き欧米で金融不安がくすぶる状況です。FRBは、3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では0.25%の利上げを継続しましたが、正常化への影響をどう考えますか。 A:正常化が世界経済や米国の金融政策に左右される面は大きいと思います。 米国では大幅利上げが進んできましたが、金融不安から銀行が貸し出しに慎重になり、一方で利上げはまだやめないとなれば、クレジットクランチのようなことが重なるので、景気はかなり減速する懸念があります。 そうなると日本経済にはマイナスの影響が及ぶし、円高にもなりやすくなります。 FRBの利上げ打ち止め、さらには利下げということになるのかどうか、米経済の状況次第という面はありますが、利下げ観測が強まれば、植田日銀が思い浮かべている緩和の枠組みの修正は後にずれる可能性があります。 場合によっては、今年中はほぼ何もしないということになり、そうなれば、24年半ばからの金融政策の正常化スケジュールも遅れるでしょう。 ただし今までの金融政策の総括をするのと、政府との共同声明を見直して物価目標の位置づけを変えることは、政策修正とは別なので、新体制になって比較的、早いタイミングで着手できると思います。 安倍政権の共同声明は、日銀を積極緩和にコミットさせる狙いでしたが、結局、金融政策を縛ってしまいました。円安になっても日銀は動きが取れず、一方で政府は輸入価格高騰による物価対策をしなければならないという矛盾が起きてしまったわけです。 (木内登英氏の略歴はリンク先参照) 岸田政権としては、そこは政権の責任もあるということで、柔軟なものにして日銀を縛りから解こうということだと思います。日銀もいずれ政策転換をしようとする際には物価目標の見直しが必要です。 共同声明当時の日銀側の解釈であれば、2%は中長期の目標だと位置づけることはできます。本来なら日銀だけで物価目標の再定義をすればいい話ですが、政府が共同声明を見直すというのなら、そういう形で変えるということになるのではないでしょうか。 ただ見直しに着手はしても、自民党内との調整もあるので、まとまるタイミングは不明で、今年後半になるのかもしれません。 一方で、今までの政策の総括はやらない可能性があります。どうしても異次元緩和の問題点をあげつらうことになり、例えばマイナス金利政策なども問題点が大きいということになれば、早く撤廃をと、市場などに催促される形になって無用な混乱を生みかねないからです。 内外の経済情勢や市場の動きを見ながら、個別に政策を順次修正していくというアプローチをとると思います』、「FRBの利上げ打ち止め、さらには利下げということになるのかどうか、米経済の状況次第という面はありますが、利下げ観測が強まれば、植田日銀が思い浮かべている緩和の枠組みの修正は後にずれる可能性があります。 場合によっては、今年中はほぼ何もしないということになり、そうなれば、24年半ばからの金融政策の正常化スケジュールも遅れるでしょう」、「ただし今までの金融政策の総括をするのと、政府との共同声明を見直して物価目標の位置づけを変えることは、政策修正とは別なので、新体制になって比較的、早いタイミングで着手できると思います」、「安倍政権の共同声明は、日銀を積極緩和にコミットさせる狙いでしたが、結局、金融政策を縛ってしまいました。円安になっても日銀は動きが取れず、一方で政府は輸入価格高騰による物価対策をしなければならないという矛盾が起きてしまった」、「一方で、今までの政策の総括はやらない可能性があります。どうしても異次元緩和の問題点をあげつらうことになり、例えばマイナス金利政策なども問題点が大きいということになれば、早く撤廃をと、市場などに催促される形になって無用な混乱を生みかねないからです。 内外の経済情勢や市場の動きを見ながら、個別に政策を順次修正していくというアプローチをとると思います」、確かに「総括」にはそうしたリスクがあるので、「個別に政策を順次修正していくというアプローチをとると思います」、極めて現実的だ。さあ、新相殺のお手並み拝見!
タグ:異次元緩和政策 (その43)(植田日銀総裁誕生の裏に“権力の興亡” 本命・雨宮副総裁が漏らしていた“本音”とは、「マイナス金利解除は24年以降」元日銀審議委員・木内氏が語る植田日銀の正常化シナリオ) デイリー新潮 軽部謙介氏による「植田日銀総裁誕生の裏に“権力の興亡” 本命・雨宮副総裁が漏らしていた“本音”とは」 「雨宮は2000年代以降の量的緩和開始、異次元緩和実施、長短金利を操作するイールドカーブ・コントロール(YCC)導入など非伝統的金融政策に深く関わった。その張本人が問題点を含めた検証を行ったら正当性が確保できないという言い分には一理あった」、実に巧みな拒否理由だ。 「中央銀行の国際的な連携は、リーマンショックを契機に、事務当局者同士が下で詰めて上に上げていくというやり方から、トップが電話で協議するというやり方に変わっている」、「優秀な学者が中央銀行トップになるという国際標準を、日本でも実現するべきではないか」、さすが説得力に富んだ主張だ。ただ、欧州の中央銀行総裁は中央銀行実務家が多いようだ。 「雨宮氏は金融政策の裏も知り尽くしているだけに、黒田総裁の後任の職務の難しさを理解出来、自分がそんなババを引くのはご免被りたいと思っているのではあるまいか。 「雨宮から固辞の理由を聞かされていた首相の岸田文雄は、深く共鳴するところがあったようで、総裁の条件を問われた国会質疑で「主要国中央銀行トップとの緊密な連携、質の高い発信力、受信力が格段に重要になっている」と説明している。雨宮の主張にそっくりだ。 そして、大本命の雨宮の辞意が固いとみた岸田官邸は、かねてから目をつけていた植田への傾斜を強めていく」、なるほど。 「2代続けてのポリティカル・アポインティー(政治任用)化」、とすれば「財務省が知らされなかった」のはある意味当然かも知れない。 「中原伸之」氏が「第2次政権以前から何度も「金融政策を変更したいなら、内閣や国会は審議委員の人選で考えればいい」という持論を安倍に伝えていた」とは、初めて知った。 「日銀法」「実際に改正となれば、何を、どう法文化していくのか決めるのはそう簡単でない」、その通りだ。 「準備率の変更は金融政策としても活用されていただけに、日銀としてはこの問題で大蔵の認可は必要ないということを言っていたのだ。そして、その根拠として「任命権を通じた政策委員に対する内閣のコントロール」を挙げていた。つまり「内閣には人事権があるのだからほかのことは自由にやらせろ」というわけだ」、なるほど。 「グローバル化の進展に合わせ中銀トップの間での情報交換が密になればなるほど、そのコミュニティーに入っていく重要性は増す」ので、「事務次官をなさった方は皆それなりの人なんだけど、その方が総裁というのは少し違うんじゃないか」、その通りだ。 「もし今後5年間で日銀が経済運営に失敗したら、「旧来の秩序に戻すべきではないか」との声が強まる可能性は大きいだろう」、「「統治の仕方」がどうなっていくのかという観点からも、植田体制の責任は重い」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 木内登英 「「マイナス金利解除は24年以降」元日銀審議委員・木内氏が語る植田日銀の正常化シナリオ」 「自分たちは国民の選挙で選ばれたわけではないという引け目もあるわけです」、「大きなプレッシャーになったのは、自民党内の一部から出ていた総裁の解任権をちらつかせた日銀法改正の脅しでした。 金融政策で政府と日銀が決裂することになれば、総裁の解任権が法律に盛り込まれ、日銀の独立性が決定的に制限されかねません。ぎりぎりの判断で物価目標導入に一転、向かったということです」、ここまで「日銀法改正の脅し」があったとは初めて知った。 「物価目標・・・についての日銀側の解釈は、政府も成長戦略や財政改革をやり、企業も頑張ることで実体経済が活性化し、物価の期待水準がいずれは2%に上がっていくと、そういう状況になった際は日銀も全力で支援するというもの」だったのに、「黒田総裁が13年4月に就任し、最初の決定会合で、声明文に「2年程度で実現」という文言を入れるということになったわけです。 そうなると、2%が完全に金融政策だけの目標になってしまいます。そして金融政策を物価目標にひもづけたままでは、ずっと国債を買って緩和を続けることになり、永遠に金融政策は正常化できなくなります」、ずいぶん日銀だけに偏った政策になったようだ。 「黒田総裁が主導した「攻め」の金融政策は、16年1月のマイナス金利政策導入までで、その後は、日銀の事務方が主導する大規模緩和の副作用対策に重点が置かれてきたというのが、私の解釈です」、「YCCは金融緩和政策ではなく、日銀の国債保有が膨大になったり、長期金利までがマイナスになりイールドカーブが低位でフラットになってしまった問題をなんとかしなければということで始まったダメージコントロールだったのです。 結局、YCC移行の時点から金融政策の主導権は日銀の事務方に移ったと思います。雨宮正佳前副総裁も日銀の中では相対的には緩和積極派でしたが、途中からはついていけないということになったのだと思います」、「YCCの厳格な運営を考える黒田総裁と、柔軟化が必要とする雨宮氏では温度差があり、21年3月の金融緩和の点検の際には二人の意見の違いが表面化しました。 最終的には長期金利の誘導目標の変動幅は決定会合で決めるということで厳格化は維持されましたが、代わりに変動幅を事実上拡大しプラスマイナス0,25%の変動幅を明確にすることを黒田総裁もしぶしぶ受け入れ、妥協が図られたようです」、なるほど。「YCCの厳格な運営を考える黒田総裁と、柔軟化が必要とする雨宮氏では温度差があり、21年3月の金融緩和の点検の際には二人の意見の違いが表面化」、初めて知った。 「植田氏は審議委員をしていた2001年の量的緩和導入の際も、自身としては効果に疑問をもっていたが、決定会合では反対しませんでした。 いわば現実的、柔軟なところ、悪く言えば黒田総裁のような信念の人ではないということと、初めての学者出身で人選の斬新さをアピールできるということが選ばれた理由ではないでしょうか」、「現実的、柔軟」さが過ぎると、金融政策の軌道修正にブレーキがかかってしまうリスクもありそうだ。 「YCCの修正や物価目標の柔軟化といったソフトな修正、いわば政策運営方針の転換は今年中に行われると思います。 その後、経済の状況を見て、マイナス金利解除や緩和方針などハードの部分を転換し、さらにその後に日銀の保有国債の処理や買い入れたETFをオフバランス化していくという、大きく言えば3段階での手順になると思います」、「保有国債やETFの処理は、市場へ影響を与えないように結局、国債は満期までは保有するだろうし、ETFについては、日銀が出資する受け皿機関を作って、そこに移して損が出ないように売却していく。株式 市場次第ですが、処理には十数年はかかる長い道のりになるでしょう」、さすがにマーケットも熟知しているだけに、あり得そうなシナリオだ。 「FRBの利上げ打ち止め、さらには利下げということになるのかどうか、米経済の状況次第という面はありますが、利下げ観測が強まれば、植田日銀が思い浮かべている緩和の枠組みの修正は後にずれる可能性があります。 場合によっては、今年中はほぼ何もしないということになり、そうなれば、24年半ばからの金融政策の正常化スケジュールも遅れるでしょう」、 「ただし今までの金融政策の総括をするのと、政府との共同声明を見直して物価目標の位置づけを変えることは、政策修正とは別なので、新体制になって比較的、早いタイミングで着手できると思います」、「安倍政権の共同声明は、日銀を積極緩和にコミットさせる狙いでしたが、結局、金融政策を縛ってしまいました。円安になっても日銀は動きが取れず、一方で政府は輸入価格高騰による物価対策をしなければならないという矛盾が起きてしまった」、 「一方で、今までの政策の総括はやらない可能性があります。どうしても異次元緩和の問題点をあげつらうことになり、例えばマイナス金利政策なども問題点が大きいということになれば、早く撤廃をと、市場などに催促される形になって無用な混乱を生みかねないからです。 内外の経済情勢や市場の動きを見ながら、個別に政策を順次修正していくというアプローチをとると思います」、確かに「総括」にはそうしたリスクがあるので、「個別に政策を順次修正していくというアプローチをとると思います」、極めて現実的だ。さあ、新相殺のお手並み拝見!
金融業界(その17)(幻に消えたLINE銀行 「金融リストラ」の序章か 証券に決済… 苦戦続くLINEのアキレス腱、SVB クレディと続いた金融不安が「ひと段落」とならない訳...日本はむしろこれから、これだけで済まない欧米金融不安「次の危機の芽」 不動産ファンドの資金流出が投げ売りを招く) [金融]
金融業界については、本年4月1日に取上げた。今日は、(その17)(幻に消えたLINE銀行 「金融リストラ」の序章か 証券に決済… 苦戦続くLINEのアキレス腱、SVB クレディと続いた金融不安が「ひと段落」とならない訳...日本はむしろこれから、これだけで済まない欧米金融不安「次の危機の芽」 不動産ファンドの資金流出が投げ売りを招く)である。
先ずは、本年4月4日付け東洋経済オンライン「幻に消えたLINE銀行、「金融リストラ」の序章か 証券に決済…、苦戦続くLINEのアキレス腱」を紹介しよう。
・『終わったのか――。「新銀行」の開発を受託していた企業の担当者は、流れてきたニュースを見て驚いた。事前の連絡はなく、プロジェクトは唐突に終焉を迎えた。「それなりに開発が進んでいただけに、残念だ」。 3月30日、LINEはみずほフィナンシャルグループ(FG)と共同で進めてきた「LINE Bank」(以下、LINEバンク)の開業を中止すると発表した。 「(サービス開発に)さらなる時間と追加投資が必要であり、スムーズな提供が現時点で見通せない」ためという。新銀行の母体となるはずだった設立準備会社は解散・清算される』、興味深そうだ。
・『開業の意義は失われた 空転の4年半だった。LINEが銀行業への参入を表明したのは2018年11月。若年層を中心に月間7800万人(当時)を誇る顧客基盤を生かし、スマートフォンを起点とする新たな銀行を掲げた。 華々しい構想とは裏腹に、LINEバンクはつまずきの連続だった。 関係者によれば、銀行の心臓部である勘定系システムの開発は富士通が担当していたが、開発費用が想定以上に膨らみ、2021年に韓国のベンダーに乗り換えた。同年に台湾法人がLINEバンクを開業させており、その勘定系システムを開発した実績を評価したようだ。 だが、乗り換え先のベンダーは日本での稼働実績がない。「金融業への規制が違えば、勘定系システムに求められる要件も異なる。海外で実績があるからといって、日本でもスムーズに稼働するとは限らない」。別のITベンダーはそう評する。2021年にパートナーのみずほでシステム障害が断続的に発生したことも、新銀行プロジェクトの進捗に水を差した』、「勘定系システムの開発は富士通が担当していたが、開発費用が想定以上に膨らみ、2021年に韓国のベンダーに乗り換えた」、「2021年にパートナーのみずほでシステム障害が断続的に発生したことも、新銀行プロジェクトの進捗に水を差した」、ずいぶんあれこれと無節操に手を出したものだ。
・『LINEバンクをめぐる年表 もたつくLINEバンクを尻目に、同業のネット銀行は口座数や預金量を着々と伸ばしていった。旧来型の金融機関においても、2021年にふくおかFGが「みんなの銀行」を、2022年には東京きらぼしFGが「UI銀行」を開業するなど、ネット専業銀行の設立が相次いだ。 銀行機能の一部を切り出して提供するBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)の台頭も逆風となった。預金や貸し出し、決済といった銀行機能を事業会社が容易に搭載できるようになり、銀行業への参入障壁は著しく下がった。群雄割拠のネット銀行業界にあって、費用と時間をかけてまでLINEバンクを開業する意義は失われていった。) 見果てぬ夢となったLINEバンク。だが、LINEにとって今回の撤退劇は前哨戦にすぎない。 「重複事業や重複機能に手を入れてコストを最適化する」 2月2日に開催されたZホールディングス(HD)の決算説明会上、坂上亮介専務執行役員最高財務責任者はそう説明した。 同日、ZHDは2023年度中にも傘下のLINE、ヤフーと合併する方針を発表していた。LINEがZHDと経営統合したのは2021年3月。ポータル機能の強化を目指すヤフーとは、もともと重複するサービス・機能が多かったが、組織体制上の問題などから事業再編は進んでこなかった。 目下ZHDでは、収益柱である広告事業が低迷している。合併により事業の整理・統合を加速させて、コスト削減や意思決定の迅速化を図る狙いだ。LINEバンクの開業中止と3社合併についてZHDは「直接の関係はない」とするものの、あるZHD社員は「統合に沿った動きとして、まったく違和感はない」と語る』、タイミングを逃した開発ほど気が抜けたものはない。
・『金融事業にさらなるメスか これから本格化する事業整理において焦点となるのは、同じくLINEが展開する金融事業だ。不採算が続くうえ、グループ内に「PayPayブランド」の類似サービスが存在するためだ。あるZHD関係者も「グループ全体でPayPay経済圏を強化している中、その牽引役となる金融事業を軸に統廃合が進むのでは」とみる。 赤字額が最も大きいLINE証券は、株式投資の手軽さを訴求すべく1株単位の売買を可能にした結果、小口取引が中心となり、委託手数料が稼ぎにくい構図に陥った。一方のPayPay証券も黒字化には至っていないが、3月31日にはソフトバンク、みずほ証券の3社に対して100億円規模の第三者割当増資を行うなど、着々と事業拡大を進めている。 無担保ローンや信用スコアリングを展開するLINE Creditも、2018年5月の設立以来、純損失が膨張の一途をたどる。2022年12月には、同じく無担保ローンを提供していたみずほ銀行とソフトバンクの合弁会社「Jスコア」と事業統合を行うと発表したものの、抜本的な収益改善は見込みづらい。 LINEにとって金融事業はアキレス腱だ。2021年に「LINE家計簿」、2022年にテーマ型株式投資の「LINEスマート投資」から撤退した。2023年4月末には損害保険サービス「LINEほけん」が終了する一方、一部商品は「PayPayほけん」で引き続き販売される。メッセージアプリを通じた潤沢な顧客基盤を抱えていながら、金融事業では収益に結び付けられていない。 2月にZHDが公表した決算説明資料には、「今後、10程度のサービスクローズ・縮小を検討」と明記されている。LINEバンクの「次」が発表される日は、そう遠くないかもしれない』、「LINEにとって金融事業はアキレス腱だ」、「決算説明資料には、「今後、10程度のサービスクローズ・縮小を検討」と明記」、「LINEバンクの「次」が発表される日は、そう遠くないかもしれない」、その通りだろう。
次に、4月5日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「SVB、クレディと続いた金融不安が「ひと段落」とならない訳...日本はむしろこれから」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2023/04/post-229_1.php
・『<一連の問題は個別の要因で起こったものではあるが、背景には世界の金融システムに共通する「バブルのツケ」という深刻な事情が> 米シリコンバレー銀行の破綻やクレディ・スイスの経営不振など、金融システムに対する不安が広がっている。一連の問題は個別の要因で起こったものであり、金融システム全体に欠陥があるわけではない。 だが、同じタイミングで金融機関の経営問題が複数発生した背景には、アメリカの中央銀行に相当するFRB(連邦準備理事会)の急激な利上げがある。 FRBが急ピッチで利上げを行っているのは、これまで行ってきた大規模緩和策の弊害が大きくなってきたからであり、一連の金融不安は緩和策バブルのツケと考えてよいだろう。 FRBは2023年3月22日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)で0.25%の利上げを決めた。銀行の相次ぐ破綻を受けて、政策金利の引き上げを据え置くとの見方もあったが、FRBはインフレ抑制を最優先し、金利引き上げを継続した。 金利が上昇すると債券価格が下落するため、金融機関によっては損失が発生する可能性がある。金融機関の多くは調達金利と貸出金利の差額(利ざや)を収益源としているので、利上げは本来、追い風となる政策だが、金利上昇ペースが速すぎた場合、資産価格の変動で損失を被るケースが出てくる』、「一連の金融不安は緩和策バブルのツケと考えてよいだろう」、「利上げは本来、追い風となる政策だが、金利上昇ペースが速すぎた場合、資産価格の変動で損失を被るケースが出てくる」、その通りだ。
・『不安の払拭に必要な手が打てない 一連の経営不安を払拭するには、利上げを停止する、あるいは利下げに踏み切るといった措置が必要だが、今の中央銀行にはそれができない深刻な事情がある。過去10年にわたる大規模緩和策によって全世界に大量のマネーがばらまかれており、これを回収しなければ、インフレが手が付けられなくなるリスクを負っているからである。 リーマン・ショックをきっかけにアメリカをはじめとする各国の中央銀行は、市場に大量のマネーを供給する大規模緩和策の実施に踏み切った。07年の段階で1兆ドル以下であったFRBのベースマネー(中央銀行が直接、供給する貨幣の量)は、ピーク時には6兆ドルを超える水準まで膨らみ、実体経済の規模を大きく上回った。 経済成長を超えたマネーの供給は潜在的なインフレ要因であり、この状態を放置した場合、インフレが制御不能になるリスクを抱え込んでしまう。 FRBやECB(欧州中央銀行)は金利の引き上げなど、マネーの回収に乗り出しており、膨らみすぎた緩和策バブルの手仕舞いを開始している』、「経済成長を超えたマネーの供給は潜在的なインフレ要因であり、この状態を放置した場合、インフレが制御不能になるリスクを抱え込んでしまう。 FRBやECB(欧州中央銀行)は金利の引き上げなど、マネーの回収に乗り出しており、膨らみすぎた緩和策バブルの手仕舞いを開始している」、その通りだ。
・『利上げなら日本にも混乱が生じる可能性 しかしながら、ここまで肥大化したマネーを回収するのは容易ではなく、その過程においてはさまざまな混乱が発生する。今回の経営不安もまさにその1つであり、こうした問題は正常化が終了するまで続くことになるだろう。 不安の連鎖を恐れる市場からは利下げを求める声が上がっている。中央銀行がこの要求を受け入れた場合、インフレリスクが台頭する可能性があり、逆に利上げを継続した場合には、再び金融システム不安が起こる可能性がある。いずれにしても金融当局にとってはいばらの道にならざるを得ない。 主要国の中央銀行で日銀だけが唯一、大規模な緩和策を継続中でありマネーの大量供給が続く。日本経済は低金利にどっぷりとつかった状態にあり、日本でも本格的な利上げがスタートした場合、今回と同様の混乱が発生する可能性がある。日銀はいよいよ金融政策における正念場を迎えたと言ってよい』、「日本経済は低金利にどっぷりとつかった状態にあり、日本でも本格的な利上げがスタートした場合、今回と同様の混乱が発生する可能性がある。日銀はいよいよ金融政策における正念場を迎えたと言ってよい」、植田新総裁は、慎重に金融政策見直しに取り組むようだが、マーケットがしびれを切らす前に、果断な措置に踏み切れるか、大いに注目される。
第三に、4月7日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「これだけで済まない欧米金融不安「次の危機の芽」 不動産ファンドの資金流出が投げ売りを招く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/664761
・『アメリカのシリコンバレーバンク(SVB)破綻から1カ月が経過しようとしている。第2次リーマンショックをはやし立てるムードが強かった当初と比較すれば、金融市場は平静を取り戻しつつあるように見えるが、依然として「次の危機の芽はどこにあるのか」といった警戒心は漂っている。 この点、アメリカではオフィスやホテルなど商業用不動産(CRE:commercial real estate)に内包されたリスクは常々指摘されている。 特にCREへのローンを束ねて証券化した商品である商業用不動産担保証券(CMBS)の価格急落を指摘する向きは多く、これを抱える機関投資家の損失拡大から危機が伝播するのではないかとの懸念が根強い。 SVB破綻以降、アメリカの中堅・中小銀行の経営不安が高まっているが、商業用不動産の多くがこうした銀行群からの融資に依存しており、懸念は簡単に消えそうにない』、「特にCREへのローンを束ねて証券化した商品である商業用不動産担保証券(CMBS)の価格急落を指摘する向きは多く、これを抱える機関投資家の損失拡大から危機が伝播するのではないかとの懸念が根強い。 SVB破綻以降、アメリカの中堅・中小銀行の経営不安が高まっているが、商業用不動産の多くがこうした銀行群からの融資に依存しており、懸念は簡単に消えそうにない」、その通りだ。
・『欧州ではECBが異例の警鐘 実はこうした問題はアメリカだけではなく欧州も同様に抱えており、最近では中央銀行自らがその危うさに警鐘を鳴らしている。 ECB(欧州中央銀行)は4月3日、「ユーロ圏不動産市場における投資ファンドの強まる役割」と題し、過去10年で急拡大したファンドによる商業用不動産投資が金融安定のリスクになるとの論説を発表した。 現状、複数のユーロ加盟国で不動産投資ファンド(REIF:real estate investment funds)が強い影響力を有しており、当該国の不動産市況悪化に伴ってREIFも不安定化する展開が懸念される。 ECBは急成長したREIFが「流動性のミスマッチ(the liquidity mismatch)」に直面し、これが金融不安定の種になる可能性を指摘している。不動産ファンドの多くが投資家の払い戻し請求を認めるオープンエンド型ファンドとして資金調達しているため、不動産市況への懸念が高まれば、非常に早く・大きな規模の資金引き出しに直面することが懸念される。) バランスシートの観点から言えば、顧客からの預り金である負債の流動性は非常に高い。 同時に、不動産ファンドは大量の解約に応じるため保有資産の売却に踏み切る必要があるが、資産の性質上、商業用不動産は容易に売却できない。つまり、バランスシートにおける資産の流動性は低い。 流動性が低い資産を急いで売ろうとすれば当然、投げ売り(fire sales)となり損失は広がりやすくなる。しかし、流動性の途絶はファンドとしての「死」を意味する。これを回避するために損失を被っても売りをやめるわけにはいかない。 こうして流動性のミスマッチがファンドの経営難や破綻を引き起こし、金融安定に影響が及ぶというのが目下、ECBの懸念する展開である。SVB破綻以降、「次の危機の芽」として商業不動産を指す論調は増えていたが、中銀自ら明確に指摘するのは珍しい』、「不動産ファンドは・・・バランスシートにおける資産の流動性は低い。 流動性が低い資産を急いで売ろうとすれば当然、投げ売り(fire sales)となり損失は広がりやすくなる。しかし、流動性の途絶はファンドとしての「死」を意味する。これを回避するために損失を被っても売りをやめるわけにはいかない。 こうして流動性のミスマッチがファンドの経営難や破綻を引き起こし、金融安定に影響が及ぶというのが目下、ECBの懸念する展開である。SVB破綻以降、「次の危機の芽」として商業不動産を指す論調は増えていたが、中銀自ら明確に指摘するのは珍しい」、「流動性のミスマッチがファンドの経営難や破綻を引き起こし、金融安定に影響が及ぶというのが目下、ECBの懸念する展開」、その通りだ。
・『不安定化の相互作用でシステミックリスクに ECBによれば、ユーロ圏の商業用不動産市場に占める不動産ファンドの割合は2012年の20%から2022年には40%にまで倍増し、無視できない存在感を放つようになっている。 (ユーロ圏の商業用不動産市場におけるファンド保有の不動産価値のシェア(%)のグラフはリンク先参照) こうした不動産ファンドの存在感を踏まえれば、商業用不動産(CRE)市場の不安定は不動産ファンドの不安定化に直結し、不動産ファンドの不安定化もまた、CRE市場の不安定化に直結するという相互依存の関係が見出せる。当然、CRE市場にエクスポージャーを持つ銀行や証券などの金融機関も存在し、それらの経営不安にもつながってくるだろう。 こうしてCRE危機がシステミックリスクをもたらす「次の危機の芽」という理解になる。 金融機関経営の不安定化は、貸出厳格化などの信用収縮を通じて実体経済を下押しするため、始点と終点を見れば「商業用不動産市場の崩壊→ユーロ圏景気の減速」といった展開を懸念するに至る。ECBはSVB破綻やクレディ・スイス再編などの域外イベントを背景に、こうした展開が現実化する可能性を見据え始めているようだ。) ちなみに、ECBはアメリカの大手資産運用会社ブラックストーンの不動産投資信託(REIT)である「ブラックストーン・リアル・エステート・インカム・トラスト(BREIT)」が最近、急増する解約請求を制限しなければならなかった例を挙げ、類似の事案が今後も増えてくる可能性を指摘している(英国でもそのような光景が出始めていることを指摘している)。 当然、こうして窮地に陥ったファンドは流動性確保のため保有不動産の売却はもちろん、資金調達にも勤しむため、市場全体の資金調達コストは押し上げられる。後述するように、それは将来的な利下げ可能性を高める話になる』、「商業用不動産(CRE)市場の不安定は不動産ファンドの不安定化に直結し、不動産ファンドの不安定化もまた、CRE市場の不安定化に直結するという相互依存の関係が見出せる。当然、CRE市場にエクスポージャーを持つ銀行や証券などの金融機関も存在し、それらの経営不安にもつながってくるだろう。 こうしてCRE危機がシステミックリスクをもたらす「次の危機の芽」という理解になる。 金融機関経営の不安定化は、貸出厳格化などの信用収縮を通じて実体経済を下押しするため、始点と終点を見れば「商業用不動産市場の崩壊→ユーロ圏景気の減速」といった展開を懸念するに至る」、「CRE危機がシステミックリスクをもたらす「次の危機の芽」」というのは確かだ。
・『部分的に現実化しつつある危機 ユーロ圏において商業用不動産(CRE)と不動産ファンドは過去10年で猛烈な伸びを示してきた。すでにCRE市場のシェアが10年で倍増したことは言及したが、絶対額で見た場合、不動産ファンドの純資産総額は2012年から2022年の10年間で、3230億ユーロから1兆40億ユーロへ3倍以上に膨らみ、うち80%がオープンエンド型(つまり常時解約可能)という。 この所在地を国別に見た場合、不動産ファンドは5つの加盟国(ドイツ、ルクセンブルク、フランス、オランダ、イタリア)に集中している模様だが、直接的に不動産投資をする形態以外に債券など金融商品の形態で保有している場合もあるため(ECBによれば30%程度)、商業用不動産や不動産ファンドの不安定化がこれらの国々だけで限定されるとは限らない。 商業用不動産市場の不調はパンデミックによるリモートワークやeコマースの隆盛、その他行動様式の変化が真っ先に指摘されるものの、その終息と入れ替わるように主要国で利上げが行われ、資金調達コストが上昇し始めたことも無視できない。) 上述したように、パンデミックに至る直前までは極めて速いペースで価格が上がっていたこともあり、「調整余地も大きい」と捉える雰囲気は強い。 過去1年で投資家における高値警戒感は一方的に強まっており、資金調達環境のタイト化もかなり進んでいる。市況の悪化を感じ取る投資家が多数となる中、直近では域外での金融不安も重なり、商業用不動産(CRE)を取り巻く環境はかなり悪化している。 2022年10~12月期、商業用不動産にまつわる取引がにわかに細っているというデータもあり、これに伴って価格も下がっている事実をECBは指摘する。 ここまで考えるとCRE危機は深刻化の余地をはらみながら、部分的にはすでに現実化しているとも言える』、「CRE危機は深刻化の余地をはらみながら、部分的にはすでに現実化しているとも言える」、恐ろしいことだ。
・『カギはやはり「流動性のミスマッチ」 冒頭に述べた通り、危機が起きると想定した場合、やはり「カギとなる脆弱性(A key vulnerability)」は不動産ファンドに対する解約請求が押し寄せた際に直面する「流動性のミスマッチ」問題である。 「解約請求に対応するまでの期間」と「保有資産を現金化するまでの期間」を比較し、前者が後者より顕著に短い場合、ファンドは資金繰りに行き詰まる(流動性のミスマッチに直面する)ことになる。 現状、その危機にさらされやすい加盟国を特定するのは難しいものの、域内の金融安定を監視する欧州システミックリスク理事会(ESRB)の調査によれば、2021年7~9月期時点、オープンエンド型不動産ファンドの31%が流動性のミスマッチを抱えている。) 特に、商業用不動産市場における不動産ファンドの存在感が大きいフランス、オランダ、アイルランドでは「オープンエンド型投信を抱えつつ現金バッファが小さい国」であるとしてその脆弱性が指摘されている(反対にイタリアやポルトガルが現金バッファの大きい国として紹介されている)。 実際、商業用不動産市場の雰囲気が悪くなるのに従って不動産ファンドへの資金流入は細っており、すでにオランダなど一部の国では大幅な純流出に直面している。不動産ファンドを取り巻く環境が一変しているのは間違いなく、ショックに対して脆弱性が増している状況が読み取れる。 一連の金融引き締めや3月以降続いている国際金融不安は、商業用不動産市場やそれを主戦場とする不動産ファンドにとって「泣きっ面に蜂」ともいえる動きであり、依然として利上げや量的引き締めを政策オプションから外せないECBは大きな葛藤を覚えていることだろう』、「オープンエンド型不動産ファンドの31%が流動性のミスマッチを抱えている。) 特に、商業用不動産市場における不動産ファンドの存在感が大きいフランス、オランダ、アイルランドでは「オープンエンド型投信を抱えつつ現金バッファが小さい国」であるとしてその脆弱性が指摘されている・・・実際、商業用不動産市場の雰囲気が悪くなるのに従って不動産ファンドへの資金流入は細っており、すでにオランダなど一部の国では大幅な純流出に直面している。不動産ファンドを取り巻く環境が一変しているのは間違いなく、ショックに対して脆弱性が増している状況が読み取れる」、なるほど。
・『解約ストップは逆効果 多くの不動産ファンドが流動性のミスマッチに備え始めれば、資産売却と資金調達が盛り上がることになる。それは資産価格の下落と資金調達コストの上昇につながる。 ECBは今回の論説の結びとして考えられる政策対応を示している。現状、オープンエンド型ファンドには解約請求の停止という手段が与えられているものの、これはファンド経営の不安定化を宣言するようなものであり、いわゆるスティグマ(汚名)リスクを伴う。 よって、ファンド出資者に対しては解約コストや最低保有期間の導入、解約通知期間の長期化など、多様な流動性管理手段(LMT:Liquidity Management Tool)の導入をECBは提唱している。また、不動産ファンドに関してはそもそも解約が容易なオープンエンド型ではなくクローズド型しか認めないといった規制面からのアプローチもECBは言及している。) 実際、構造的に流動性の低い資産(不動産)を抱える不動産ファンドの性質を踏まえれば、「解約のハードルを上げる」というのは本質的な一手ではあり、すでにいくつかの国では導入されているという。こうした規制傾向は今後、強まるものだろう。 しかし、目下、金融市場が注目するのは、”商業用不動産(CRE)危機”が注目される中、政策金利がどのような影響を被るのかだ。流動性危機におびえるファンドの挙動によって資金調達コストが押し上げられ、それがシステミックリスクに直結する可能性が見えている以上、中央銀行が何もしないことは考えにくい。 上述したような不動産ファンドの運営にまつわる制度的な修正は中長期的に進めていくのだろうが、それと同時に短期的には無リスク金利である政策金利を下げることも催促されやすくなっていくのではないか』、「”商業用不動産(CRE)危機”が注目される中、政策金利がどのような影響を被るのかだ。流動性危機におびえるファンドの挙動によって資金調達コストが押し上げられ、それがシステミックリスクに直結する可能性が見えている以上、中央銀行が何もしないことは考えにくい。 上述したような不動産ファンドの運営にまつわる制度的な修正は中長期的に進めていくのだろうが、それと同時に短期的には無リスク金利である政策金利を下げることも催促されやすくなっていくのではないか」、「短期的には無リスク金利である政策金利を下げることも催促されやすくなっていくのではないか」というのは不動産業界の希望的観測の影響を強く受け過ぎたのではあるまいか。
・『問題提起は利上げ幅縮小の布石? 現状ではCRE危機というフレーズが市民権を得るほどの事態にはなっていない。しかし、仮にそうなってしまえば、眼前のインフレを犠牲にしてでも利上げ路線の急旋回(例えば0.5%利上げから0.25%の利下げへ、など)を強いられるリスクはある。政策金利の急変動は市場にボラティリティをもたらし、要らぬ混乱を招く。 ECBが今回、このタイミングでCRE危機にまつわる問題提起を行ったということは、極めてわずかではあるが、引き締め路線のブレーキを踏む意図を持ちつつあるということなのかもしれない。 5月4日の政策理事会では0.5%から0.25%への利上げ幅縮小に注目したいところである』、「ECBが今回、このタイミングでCRE危機にまつわる問題提起を行ったということは、極めてわずかではあるが、引き締め路線のブレーキを踏む意図を持ちつつあるということなのかもしれない」、これも希望的観測に近いのではあるまいか。
先ずは、本年4月4日付け東洋経済オンライン「幻に消えたLINE銀行、「金融リストラ」の序章か 証券に決済…、苦戦続くLINEのアキレス腱」を紹介しよう。
・『終わったのか――。「新銀行」の開発を受託していた企業の担当者は、流れてきたニュースを見て驚いた。事前の連絡はなく、プロジェクトは唐突に終焉を迎えた。「それなりに開発が進んでいただけに、残念だ」。 3月30日、LINEはみずほフィナンシャルグループ(FG)と共同で進めてきた「LINE Bank」(以下、LINEバンク)の開業を中止すると発表した。 「(サービス開発に)さらなる時間と追加投資が必要であり、スムーズな提供が現時点で見通せない」ためという。新銀行の母体となるはずだった設立準備会社は解散・清算される』、興味深そうだ。
・『開業の意義は失われた 空転の4年半だった。LINEが銀行業への参入を表明したのは2018年11月。若年層を中心に月間7800万人(当時)を誇る顧客基盤を生かし、スマートフォンを起点とする新たな銀行を掲げた。 華々しい構想とは裏腹に、LINEバンクはつまずきの連続だった。 関係者によれば、銀行の心臓部である勘定系システムの開発は富士通が担当していたが、開発費用が想定以上に膨らみ、2021年に韓国のベンダーに乗り換えた。同年に台湾法人がLINEバンクを開業させており、その勘定系システムを開発した実績を評価したようだ。 だが、乗り換え先のベンダーは日本での稼働実績がない。「金融業への規制が違えば、勘定系システムに求められる要件も異なる。海外で実績があるからといって、日本でもスムーズに稼働するとは限らない」。別のITベンダーはそう評する。2021年にパートナーのみずほでシステム障害が断続的に発生したことも、新銀行プロジェクトの進捗に水を差した』、「勘定系システムの開発は富士通が担当していたが、開発費用が想定以上に膨らみ、2021年に韓国のベンダーに乗り換えた」、「2021年にパートナーのみずほでシステム障害が断続的に発生したことも、新銀行プロジェクトの進捗に水を差した」、ずいぶんあれこれと無節操に手を出したものだ。
・『LINEバンクをめぐる年表 もたつくLINEバンクを尻目に、同業のネット銀行は口座数や預金量を着々と伸ばしていった。旧来型の金融機関においても、2021年にふくおかFGが「みんなの銀行」を、2022年には東京きらぼしFGが「UI銀行」を開業するなど、ネット専業銀行の設立が相次いだ。 銀行機能の一部を切り出して提供するBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)の台頭も逆風となった。預金や貸し出し、決済といった銀行機能を事業会社が容易に搭載できるようになり、銀行業への参入障壁は著しく下がった。群雄割拠のネット銀行業界にあって、費用と時間をかけてまでLINEバンクを開業する意義は失われていった。) 見果てぬ夢となったLINEバンク。だが、LINEにとって今回の撤退劇は前哨戦にすぎない。 「重複事業や重複機能に手を入れてコストを最適化する」 2月2日に開催されたZホールディングス(HD)の決算説明会上、坂上亮介専務執行役員最高財務責任者はそう説明した。 同日、ZHDは2023年度中にも傘下のLINE、ヤフーと合併する方針を発表していた。LINEがZHDと経営統合したのは2021年3月。ポータル機能の強化を目指すヤフーとは、もともと重複するサービス・機能が多かったが、組織体制上の問題などから事業再編は進んでこなかった。 目下ZHDでは、収益柱である広告事業が低迷している。合併により事業の整理・統合を加速させて、コスト削減や意思決定の迅速化を図る狙いだ。LINEバンクの開業中止と3社合併についてZHDは「直接の関係はない」とするものの、あるZHD社員は「統合に沿った動きとして、まったく違和感はない」と語る』、タイミングを逃した開発ほど気が抜けたものはない。
・『金融事業にさらなるメスか これから本格化する事業整理において焦点となるのは、同じくLINEが展開する金融事業だ。不採算が続くうえ、グループ内に「PayPayブランド」の類似サービスが存在するためだ。あるZHD関係者も「グループ全体でPayPay経済圏を強化している中、その牽引役となる金融事業を軸に統廃合が進むのでは」とみる。 赤字額が最も大きいLINE証券は、株式投資の手軽さを訴求すべく1株単位の売買を可能にした結果、小口取引が中心となり、委託手数料が稼ぎにくい構図に陥った。一方のPayPay証券も黒字化には至っていないが、3月31日にはソフトバンク、みずほ証券の3社に対して100億円規模の第三者割当増資を行うなど、着々と事業拡大を進めている。 無担保ローンや信用スコアリングを展開するLINE Creditも、2018年5月の設立以来、純損失が膨張の一途をたどる。2022年12月には、同じく無担保ローンを提供していたみずほ銀行とソフトバンクの合弁会社「Jスコア」と事業統合を行うと発表したものの、抜本的な収益改善は見込みづらい。 LINEにとって金融事業はアキレス腱だ。2021年に「LINE家計簿」、2022年にテーマ型株式投資の「LINEスマート投資」から撤退した。2023年4月末には損害保険サービス「LINEほけん」が終了する一方、一部商品は「PayPayほけん」で引き続き販売される。メッセージアプリを通じた潤沢な顧客基盤を抱えていながら、金融事業では収益に結び付けられていない。 2月にZHDが公表した決算説明資料には、「今後、10程度のサービスクローズ・縮小を検討」と明記されている。LINEバンクの「次」が発表される日は、そう遠くないかもしれない』、「LINEにとって金融事業はアキレス腱だ」、「決算説明資料には、「今後、10程度のサービスクローズ・縮小を検討」と明記」、「LINEバンクの「次」が発表される日は、そう遠くないかもしれない」、その通りだろう。
次に、4月5日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「SVB、クレディと続いた金融不安が「ひと段落」とならない訳...日本はむしろこれから」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2023/04/post-229_1.php
・『<一連の問題は個別の要因で起こったものではあるが、背景には世界の金融システムに共通する「バブルのツケ」という深刻な事情が> 米シリコンバレー銀行の破綻やクレディ・スイスの経営不振など、金融システムに対する不安が広がっている。一連の問題は個別の要因で起こったものであり、金融システム全体に欠陥があるわけではない。 だが、同じタイミングで金融機関の経営問題が複数発生した背景には、アメリカの中央銀行に相当するFRB(連邦準備理事会)の急激な利上げがある。 FRBが急ピッチで利上げを行っているのは、これまで行ってきた大規模緩和策の弊害が大きくなってきたからであり、一連の金融不安は緩和策バブルのツケと考えてよいだろう。 FRBは2023年3月22日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)で0.25%の利上げを決めた。銀行の相次ぐ破綻を受けて、政策金利の引き上げを据え置くとの見方もあったが、FRBはインフレ抑制を最優先し、金利引き上げを継続した。 金利が上昇すると債券価格が下落するため、金融機関によっては損失が発生する可能性がある。金融機関の多くは調達金利と貸出金利の差額(利ざや)を収益源としているので、利上げは本来、追い風となる政策だが、金利上昇ペースが速すぎた場合、資産価格の変動で損失を被るケースが出てくる』、「一連の金融不安は緩和策バブルのツケと考えてよいだろう」、「利上げは本来、追い風となる政策だが、金利上昇ペースが速すぎた場合、資産価格の変動で損失を被るケースが出てくる」、その通りだ。
・『不安の払拭に必要な手が打てない 一連の経営不安を払拭するには、利上げを停止する、あるいは利下げに踏み切るといった措置が必要だが、今の中央銀行にはそれができない深刻な事情がある。過去10年にわたる大規模緩和策によって全世界に大量のマネーがばらまかれており、これを回収しなければ、インフレが手が付けられなくなるリスクを負っているからである。 リーマン・ショックをきっかけにアメリカをはじめとする各国の中央銀行は、市場に大量のマネーを供給する大規模緩和策の実施に踏み切った。07年の段階で1兆ドル以下であったFRBのベースマネー(中央銀行が直接、供給する貨幣の量)は、ピーク時には6兆ドルを超える水準まで膨らみ、実体経済の規模を大きく上回った。 経済成長を超えたマネーの供給は潜在的なインフレ要因であり、この状態を放置した場合、インフレが制御不能になるリスクを抱え込んでしまう。 FRBやECB(欧州中央銀行)は金利の引き上げなど、マネーの回収に乗り出しており、膨らみすぎた緩和策バブルの手仕舞いを開始している』、「経済成長を超えたマネーの供給は潜在的なインフレ要因であり、この状態を放置した場合、インフレが制御不能になるリスクを抱え込んでしまう。 FRBやECB(欧州中央銀行)は金利の引き上げなど、マネーの回収に乗り出しており、膨らみすぎた緩和策バブルの手仕舞いを開始している」、その通りだ。
・『利上げなら日本にも混乱が生じる可能性 しかしながら、ここまで肥大化したマネーを回収するのは容易ではなく、その過程においてはさまざまな混乱が発生する。今回の経営不安もまさにその1つであり、こうした問題は正常化が終了するまで続くことになるだろう。 不安の連鎖を恐れる市場からは利下げを求める声が上がっている。中央銀行がこの要求を受け入れた場合、インフレリスクが台頭する可能性があり、逆に利上げを継続した場合には、再び金融システム不安が起こる可能性がある。いずれにしても金融当局にとってはいばらの道にならざるを得ない。 主要国の中央銀行で日銀だけが唯一、大規模な緩和策を継続中でありマネーの大量供給が続く。日本経済は低金利にどっぷりとつかった状態にあり、日本でも本格的な利上げがスタートした場合、今回と同様の混乱が発生する可能性がある。日銀はいよいよ金融政策における正念場を迎えたと言ってよい』、「日本経済は低金利にどっぷりとつかった状態にあり、日本でも本格的な利上げがスタートした場合、今回と同様の混乱が発生する可能性がある。日銀はいよいよ金融政策における正念場を迎えたと言ってよい」、植田新総裁は、慎重に金融政策見直しに取り組むようだが、マーケットがしびれを切らす前に、果断な措置に踏み切れるか、大いに注目される。
第三に、4月7日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「これだけで済まない欧米金融不安「次の危機の芽」 不動産ファンドの資金流出が投げ売りを招く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/664761
・『アメリカのシリコンバレーバンク(SVB)破綻から1カ月が経過しようとしている。第2次リーマンショックをはやし立てるムードが強かった当初と比較すれば、金融市場は平静を取り戻しつつあるように見えるが、依然として「次の危機の芽はどこにあるのか」といった警戒心は漂っている。 この点、アメリカではオフィスやホテルなど商業用不動産(CRE:commercial real estate)に内包されたリスクは常々指摘されている。 特にCREへのローンを束ねて証券化した商品である商業用不動産担保証券(CMBS)の価格急落を指摘する向きは多く、これを抱える機関投資家の損失拡大から危機が伝播するのではないかとの懸念が根強い。 SVB破綻以降、アメリカの中堅・中小銀行の経営不安が高まっているが、商業用不動産の多くがこうした銀行群からの融資に依存しており、懸念は簡単に消えそうにない』、「特にCREへのローンを束ねて証券化した商品である商業用不動産担保証券(CMBS)の価格急落を指摘する向きは多く、これを抱える機関投資家の損失拡大から危機が伝播するのではないかとの懸念が根強い。 SVB破綻以降、アメリカの中堅・中小銀行の経営不安が高まっているが、商業用不動産の多くがこうした銀行群からの融資に依存しており、懸念は簡単に消えそうにない」、その通りだ。
・『欧州ではECBが異例の警鐘 実はこうした問題はアメリカだけではなく欧州も同様に抱えており、最近では中央銀行自らがその危うさに警鐘を鳴らしている。 ECB(欧州中央銀行)は4月3日、「ユーロ圏不動産市場における投資ファンドの強まる役割」と題し、過去10年で急拡大したファンドによる商業用不動産投資が金融安定のリスクになるとの論説を発表した。 現状、複数のユーロ加盟国で不動産投資ファンド(REIF:real estate investment funds)が強い影響力を有しており、当該国の不動産市況悪化に伴ってREIFも不安定化する展開が懸念される。 ECBは急成長したREIFが「流動性のミスマッチ(the liquidity mismatch)」に直面し、これが金融不安定の種になる可能性を指摘している。不動産ファンドの多くが投資家の払い戻し請求を認めるオープンエンド型ファンドとして資金調達しているため、不動産市況への懸念が高まれば、非常に早く・大きな規模の資金引き出しに直面することが懸念される。) バランスシートの観点から言えば、顧客からの預り金である負債の流動性は非常に高い。 同時に、不動産ファンドは大量の解約に応じるため保有資産の売却に踏み切る必要があるが、資産の性質上、商業用不動産は容易に売却できない。つまり、バランスシートにおける資産の流動性は低い。 流動性が低い資産を急いで売ろうとすれば当然、投げ売り(fire sales)となり損失は広がりやすくなる。しかし、流動性の途絶はファンドとしての「死」を意味する。これを回避するために損失を被っても売りをやめるわけにはいかない。 こうして流動性のミスマッチがファンドの経営難や破綻を引き起こし、金融安定に影響が及ぶというのが目下、ECBの懸念する展開である。SVB破綻以降、「次の危機の芽」として商業不動産を指す論調は増えていたが、中銀自ら明確に指摘するのは珍しい』、「不動産ファンドは・・・バランスシートにおける資産の流動性は低い。 流動性が低い資産を急いで売ろうとすれば当然、投げ売り(fire sales)となり損失は広がりやすくなる。しかし、流動性の途絶はファンドとしての「死」を意味する。これを回避するために損失を被っても売りをやめるわけにはいかない。 こうして流動性のミスマッチがファンドの経営難や破綻を引き起こし、金融安定に影響が及ぶというのが目下、ECBの懸念する展開である。SVB破綻以降、「次の危機の芽」として商業不動産を指す論調は増えていたが、中銀自ら明確に指摘するのは珍しい」、「流動性のミスマッチがファンドの経営難や破綻を引き起こし、金融安定に影響が及ぶというのが目下、ECBの懸念する展開」、その通りだ。
・『不安定化の相互作用でシステミックリスクに ECBによれば、ユーロ圏の商業用不動産市場に占める不動産ファンドの割合は2012年の20%から2022年には40%にまで倍増し、無視できない存在感を放つようになっている。 (ユーロ圏の商業用不動産市場におけるファンド保有の不動産価値のシェア(%)のグラフはリンク先参照) こうした不動産ファンドの存在感を踏まえれば、商業用不動産(CRE)市場の不安定は不動産ファンドの不安定化に直結し、不動産ファンドの不安定化もまた、CRE市場の不安定化に直結するという相互依存の関係が見出せる。当然、CRE市場にエクスポージャーを持つ銀行や証券などの金融機関も存在し、それらの経営不安にもつながってくるだろう。 こうしてCRE危機がシステミックリスクをもたらす「次の危機の芽」という理解になる。 金融機関経営の不安定化は、貸出厳格化などの信用収縮を通じて実体経済を下押しするため、始点と終点を見れば「商業用不動産市場の崩壊→ユーロ圏景気の減速」といった展開を懸念するに至る。ECBはSVB破綻やクレディ・スイス再編などの域外イベントを背景に、こうした展開が現実化する可能性を見据え始めているようだ。) ちなみに、ECBはアメリカの大手資産運用会社ブラックストーンの不動産投資信託(REIT)である「ブラックストーン・リアル・エステート・インカム・トラスト(BREIT)」が最近、急増する解約請求を制限しなければならなかった例を挙げ、類似の事案が今後も増えてくる可能性を指摘している(英国でもそのような光景が出始めていることを指摘している)。 当然、こうして窮地に陥ったファンドは流動性確保のため保有不動産の売却はもちろん、資金調達にも勤しむため、市場全体の資金調達コストは押し上げられる。後述するように、それは将来的な利下げ可能性を高める話になる』、「商業用不動産(CRE)市場の不安定は不動産ファンドの不安定化に直結し、不動産ファンドの不安定化もまた、CRE市場の不安定化に直結するという相互依存の関係が見出せる。当然、CRE市場にエクスポージャーを持つ銀行や証券などの金融機関も存在し、それらの経営不安にもつながってくるだろう。 こうしてCRE危機がシステミックリスクをもたらす「次の危機の芽」という理解になる。 金融機関経営の不安定化は、貸出厳格化などの信用収縮を通じて実体経済を下押しするため、始点と終点を見れば「商業用不動産市場の崩壊→ユーロ圏景気の減速」といった展開を懸念するに至る」、「CRE危機がシステミックリスクをもたらす「次の危機の芽」」というのは確かだ。
・『部分的に現実化しつつある危機 ユーロ圏において商業用不動産(CRE)と不動産ファンドは過去10年で猛烈な伸びを示してきた。すでにCRE市場のシェアが10年で倍増したことは言及したが、絶対額で見た場合、不動産ファンドの純資産総額は2012年から2022年の10年間で、3230億ユーロから1兆40億ユーロへ3倍以上に膨らみ、うち80%がオープンエンド型(つまり常時解約可能)という。 この所在地を国別に見た場合、不動産ファンドは5つの加盟国(ドイツ、ルクセンブルク、フランス、オランダ、イタリア)に集中している模様だが、直接的に不動産投資をする形態以外に債券など金融商品の形態で保有している場合もあるため(ECBによれば30%程度)、商業用不動産や不動産ファンドの不安定化がこれらの国々だけで限定されるとは限らない。 商業用不動産市場の不調はパンデミックによるリモートワークやeコマースの隆盛、その他行動様式の変化が真っ先に指摘されるものの、その終息と入れ替わるように主要国で利上げが行われ、資金調達コストが上昇し始めたことも無視できない。) 上述したように、パンデミックに至る直前までは極めて速いペースで価格が上がっていたこともあり、「調整余地も大きい」と捉える雰囲気は強い。 過去1年で投資家における高値警戒感は一方的に強まっており、資金調達環境のタイト化もかなり進んでいる。市況の悪化を感じ取る投資家が多数となる中、直近では域外での金融不安も重なり、商業用不動産(CRE)を取り巻く環境はかなり悪化している。 2022年10~12月期、商業用不動産にまつわる取引がにわかに細っているというデータもあり、これに伴って価格も下がっている事実をECBは指摘する。 ここまで考えるとCRE危機は深刻化の余地をはらみながら、部分的にはすでに現実化しているとも言える』、「CRE危機は深刻化の余地をはらみながら、部分的にはすでに現実化しているとも言える」、恐ろしいことだ。
・『カギはやはり「流動性のミスマッチ」 冒頭に述べた通り、危機が起きると想定した場合、やはり「カギとなる脆弱性(A key vulnerability)」は不動産ファンドに対する解約請求が押し寄せた際に直面する「流動性のミスマッチ」問題である。 「解約請求に対応するまでの期間」と「保有資産を現金化するまでの期間」を比較し、前者が後者より顕著に短い場合、ファンドは資金繰りに行き詰まる(流動性のミスマッチに直面する)ことになる。 現状、その危機にさらされやすい加盟国を特定するのは難しいものの、域内の金融安定を監視する欧州システミックリスク理事会(ESRB)の調査によれば、2021年7~9月期時点、オープンエンド型不動産ファンドの31%が流動性のミスマッチを抱えている。) 特に、商業用不動産市場における不動産ファンドの存在感が大きいフランス、オランダ、アイルランドでは「オープンエンド型投信を抱えつつ現金バッファが小さい国」であるとしてその脆弱性が指摘されている(反対にイタリアやポルトガルが現金バッファの大きい国として紹介されている)。 実際、商業用不動産市場の雰囲気が悪くなるのに従って不動産ファンドへの資金流入は細っており、すでにオランダなど一部の国では大幅な純流出に直面している。不動産ファンドを取り巻く環境が一変しているのは間違いなく、ショックに対して脆弱性が増している状況が読み取れる。 一連の金融引き締めや3月以降続いている国際金融不安は、商業用不動産市場やそれを主戦場とする不動産ファンドにとって「泣きっ面に蜂」ともいえる動きであり、依然として利上げや量的引き締めを政策オプションから外せないECBは大きな葛藤を覚えていることだろう』、「オープンエンド型不動産ファンドの31%が流動性のミスマッチを抱えている。) 特に、商業用不動産市場における不動産ファンドの存在感が大きいフランス、オランダ、アイルランドでは「オープンエンド型投信を抱えつつ現金バッファが小さい国」であるとしてその脆弱性が指摘されている・・・実際、商業用不動産市場の雰囲気が悪くなるのに従って不動産ファンドへの資金流入は細っており、すでにオランダなど一部の国では大幅な純流出に直面している。不動産ファンドを取り巻く環境が一変しているのは間違いなく、ショックに対して脆弱性が増している状況が読み取れる」、なるほど。
・『解約ストップは逆効果 多くの不動産ファンドが流動性のミスマッチに備え始めれば、資産売却と資金調達が盛り上がることになる。それは資産価格の下落と資金調達コストの上昇につながる。 ECBは今回の論説の結びとして考えられる政策対応を示している。現状、オープンエンド型ファンドには解約請求の停止という手段が与えられているものの、これはファンド経営の不安定化を宣言するようなものであり、いわゆるスティグマ(汚名)リスクを伴う。 よって、ファンド出資者に対しては解約コストや最低保有期間の導入、解約通知期間の長期化など、多様な流動性管理手段(LMT:Liquidity Management Tool)の導入をECBは提唱している。また、不動産ファンドに関してはそもそも解約が容易なオープンエンド型ではなくクローズド型しか認めないといった規制面からのアプローチもECBは言及している。) 実際、構造的に流動性の低い資産(不動産)を抱える不動産ファンドの性質を踏まえれば、「解約のハードルを上げる」というのは本質的な一手ではあり、すでにいくつかの国では導入されているという。こうした規制傾向は今後、強まるものだろう。 しかし、目下、金融市場が注目するのは、”商業用不動産(CRE)危機”が注目される中、政策金利がどのような影響を被るのかだ。流動性危機におびえるファンドの挙動によって資金調達コストが押し上げられ、それがシステミックリスクに直結する可能性が見えている以上、中央銀行が何もしないことは考えにくい。 上述したような不動産ファンドの運営にまつわる制度的な修正は中長期的に進めていくのだろうが、それと同時に短期的には無リスク金利である政策金利を下げることも催促されやすくなっていくのではないか』、「”商業用不動産(CRE)危機”が注目される中、政策金利がどのような影響を被るのかだ。流動性危機におびえるファンドの挙動によって資金調達コストが押し上げられ、それがシステミックリスクに直結する可能性が見えている以上、中央銀行が何もしないことは考えにくい。 上述したような不動産ファンドの運営にまつわる制度的な修正は中長期的に進めていくのだろうが、それと同時に短期的には無リスク金利である政策金利を下げることも催促されやすくなっていくのではないか」、「短期的には無リスク金利である政策金利を下げることも催促されやすくなっていくのではないか」というのは不動産業界の希望的観測の影響を強く受け過ぎたのではあるまいか。
・『問題提起は利上げ幅縮小の布石? 現状ではCRE危機というフレーズが市民権を得るほどの事態にはなっていない。しかし、仮にそうなってしまえば、眼前のインフレを犠牲にしてでも利上げ路線の急旋回(例えば0.5%利上げから0.25%の利下げへ、など)を強いられるリスクはある。政策金利の急変動は市場にボラティリティをもたらし、要らぬ混乱を招く。 ECBが今回、このタイミングでCRE危機にまつわる問題提起を行ったということは、極めてわずかではあるが、引き締め路線のブレーキを踏む意図を持ちつつあるということなのかもしれない。 5月4日の政策理事会では0.5%から0.25%への利上げ幅縮小に注目したいところである』、「ECBが今回、このタイミングでCRE危機にまつわる問題提起を行ったということは、極めてわずかではあるが、引き締め路線のブレーキを踏む意図を持ちつつあるということなのかもしれない」、これも希望的観測に近いのではあるまいか。
タグ:金融業界 (その17)(幻に消えたLINE銀行 「金融リストラ」の序章か 証券に決済… 苦戦続くLINEのアキレス腱、SVB クレディと続いた金融不安が「ひと段落」とならない訳...日本はむしろこれから、これだけで済まない欧米金融不安「次の危機の芽」 不動産ファンドの資金流出が投げ売りを招く) 東洋経済オンライン「幻に消えたLINE銀行、「金融リストラ」の序章か 証券に決済…、苦戦続くLINEのアキレス腱」 「勘定系システムの開発は富士通が担当していたが、開発費用が想定以上に膨らみ、2021年に韓国のベンダーに乗り換えた」、「2021年にパートナーのみずほでシステム障害が断続的に発生したことも、新銀行プロジェクトの進捗に水を差した」、ずいぶんあれこれと無節操に手を出したものだ。 タイミングを逃した開発ほど気が抜けたものはない。 「LINEにとって金融事業はアキレス腱だ」、「決算説明資料には、「今後、10程度のサービスクローズ・縮小を検討」と明記」、「LINEバンクの「次」が発表される日は、そう遠くないかもしれない」、その通りだろう。 Newsweek日本版 加谷珪一氏による「SVB、クレディと続いた金融不安が「ひと段落」とならない訳...日本はむしろこれから」 「一連の金融不安は緩和策バブルのツケと考えてよいだろう」、「利上げは本来、追い風となる政策だが、金利上昇ペースが速すぎた場合、資産価格の変動で損失を被るケースが出てくる」、その通りだ。 「経済成長を超えたマネーの供給は潜在的なインフレ要因であり、この状態を放置した場合、インフレが制御不能になるリスクを抱え込んでしまう。 FRBやECB(欧州中央銀行)は金利の引き上げなど、マネーの回収に乗り出しており、膨らみすぎた緩和策バブルの手仕舞いを開始している」、その通りだ。 「日本経済は低金利にどっぷりとつかった状態にあり、日本でも本格的な利上げがスタートした場合、今回と同様の混乱が発生する可能性がある。日銀はいよいよ金融政策における正念場を迎えたと言ってよい」、植田新総裁は、慎重に金融政策見直しに取り組むようだが、マーケットがしびれを切らす前に、果断な措置に踏み切れるか、大いに注目される。 東洋経済オンライン 唐鎌 大輔氏による「これだけで済まない欧米金融不安「次の危機の芽」 不動産ファンドの資金流出が投げ売りを招く」 「特にCREへのローンを束ねて証券化した商品である商業用不動産担保証券(CMBS)の価格急落を指摘する向きは多く、これを抱える機関投資家の損失拡大から危機が伝播するのではないかとの懸念が根強い。 SVB破綻以降、アメリカの中堅・中小銀行の経営不安が高まっているが、商業用不動産の多くがこうした銀行群からの融資に依存しており、懸念は簡単に消えそうにない」、その通りだ。 「不動産ファンドは・・・バランスシートにおける資産の流動性は低い。 流動性が低い資産を急いで売ろうとすれば当然、投げ売り(fire sales)となり損失は広がりやすくなる。しかし、流動性の途絶はファンドとしての「死」を意味する。これを回避するために損失を被っても売りをやめるわけにはいかない。 こうして流動性のミスマッチがファンドの経営難や破綻を引き起こし、金融安定に影響が及ぶというのが目下、ECBの懸念する展開である。SVB破綻以降、「次の危機の芽」として商業不動産を指す論調は増えていたが、中銀自ら明確に指摘するのは珍しい」、「流動性のミスマッチがファンドの経営難や破綻を引き起こし、金融安定に影響が及ぶというのが目下、ECBの懸念する展開」、その通りだ。 「商業用不動産(CRE)市場の不安定は不動産ファンドの不安定化に直結し、不動産ファンドの不安定化もまた、CRE市場の不安定化に直結するという相互依存の関係が見出せる。当然、CRE市場にエクスポージャーを持つ銀行や証券などの金融機関も存在し、それらの経営不安にもつながってくるだろう。 こうしてCRE危機がシステミックリスクをもたらす「次の危機の芽」という理解になる。 金融機関経営の不安定化は、貸出厳格化などの信用収縮を通じて実体経済を下押しするため、始点と終点を見れば「商業用不動産市場の崩壊→ユーロ圏景気の 減速」といった展開を懸念するに至る」、「CRE危機がシステミックリスクをもたらす「次の危機の芽」」というのは確かだ。 「CRE危機は深刻化の余地をはらみながら、部分的にはすでに現実化しているとも言える」、恐ろしいことだ。 「オープンエンド型不動産ファンドの31%が流動性のミスマッチを抱えている。) 特に、商業用不動産市場における不動産ファンドの存在感が大きいフランス、オランダ、アイルランドでは「オープンエンド型投信を抱えつつ現金バッファが小さい国」であるとしてその脆弱性が指摘されている・・・実際、商業用不動産市場の雰囲気が悪くなるのに従って不動産ファンドへの資金流入は細っており、すでにオランダなど一部の国では大幅な純流出に直面している。不動産ファンドを取り巻く環境が一変しているのは間違いなく、ショックに対して脆弱性が増して いる状況が読み取れる」、なるほど。 「”商業用不動産(CRE)危機”が注目される中、政策金利がどのような影響を被るのかだ。流動性危機におびえるファンドの挙動によって資金調達コストが押し上げられ、それがシステミックリスクに直結する可能性が見えている以上、中央銀行が何もしないことは考えにくい。 上述したような不動産ファンドの運営にまつわる制度的な修正は中長期的に進めていくのだろうが、それと同時に短期的には無リスク金利である政策金利を下げることも催促されやすくなっていくのではないか」、 「短期的には無リスク金利である政策金利を下げることも催促されやすくなっていくのではないか」というのは不動産業界の希望的観測の影響を強く受け過ぎたのではあるまいか。 「ECBが今回、このタイミングでCRE危機にまつわる問題提起を行ったということは、極めてわずかではあるが、引き締め路線のブレーキを踏む意図を持ちつつあるということなのかもしれない」、これも希望的観測に近いのではあるまいか。
高齢化社会(その21)(精神科医 和田 秀樹 3題:「65歳を過ぎたらラクなことだけやりなさい」和田秀樹が定年後は遊び半分で生きることを勧めるワケ 向いてなかったら「こつこつやる奴ぁ ご苦労さん」と放り出せばいい、70代の大半はピンピンしている…「本当の健康寿命」を知れば年をとるのは怖くない!、70代からは信頼できる医師選びも大切 見分け方は「薬の相談」に対して親身か否か) [社会]
高齢化社会については、本年4月2日に取上げたばかりだが、今日は、(その21)(精神科医 和田 秀樹 3題:「65歳を過ぎたらラクなことだけやりなさい」和田秀樹が定年後は遊び半分で生きることを勧めるワケ 向いてなかったら「こつこつやる奴ぁ ご苦労さん」と放り出せばいい、70代の大半はピンピンしている…「本当の健康寿命」を知れば年をとるのは怖くない!、70代からは信頼できる医師選びも大切 見分け方は「薬の相談」に対して親身か否か)を紹介しよう。
先ずは、3月31日付けPRESIDENT Onlineが掲載した精神科医の和田 秀樹氏による「「65歳を過ぎたらラクなことだけやりなさい」和田秀樹が定年後は遊び半分で生きることを勧めるワケ 向いてなかったら「こつこつやる奴ぁ、ご苦労さん」と放り出せばいい」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67944
・『定年後の人生を楽しむための秘訣は何か。医師の和田秀樹さんは「『定年を迎えた』ということは、仕事に対する最大最強の『かくあるべし思考』から完全に解放されることだ。何ごとも遊び半分と、胸を張って無責任のまま生きればいい」という――。 ※本稿は、和田秀樹『70代からの元気力』(三笠書房)の一部を再編集したものです』、「「『定年を迎えた』ということは、仕事に対する最大最強の『かくあるべし思考』から完全に解放されることだ。何ごとも遊び半分と、胸を張って無責任のまま生きればいい」、嬉しい限りだ。
・『70代になったら「かくあるべし思考」を捨てなさい 70歳を過ぎたら、「好きなことだけをする」という選択もあります。 「遊んで暮らす」のが、70代人生の理想だと私は思っています。 ですから、やりたくない仕事や役割はムリして続けるのは、時間がもったいないと思います。 そしてこれがいちばん大事なことですが、高齢になればなるほど、「いろいろなものから自由になる、解放される」といった気持ちを大切にしたほうがいいのです。 心を伸びやかにして、残された人生を楽しむためにも、どういうものであれ自分を縛るようなことはしないほうがいいのです。 まず捨てたいのは「かくあるべし思考」。 たとえば、会社勤めの間は、とにかく「定年までは働くべきだ」いう気持ちがあったはずです。この「かくあるべし思考」があったからこそ、仕事で嫌なことや、苦しいことがあっても、我慢して働いていたわけです。 また、仕事に対する責任感とか義務感といったものも、考えてみれば、「かくあるべし思考」が根本にあります。 「どんな仕事であれ、逃げ出したり、放り出したりせずに取り組むべきだ」と思うからこそ、責任感、義務感が生まれるわけです』、「「遊んで暮らす」のが、70代人生の理想だと私は思っています。 ですから、やりたくない仕事や役割はムリして続けるのは、時間がもったいないと思います。 そしてこれがいちばん大事なことですが、高齢になればなるほど、「いろいろなものから自由になる、解放される」といった気持ちを大切にしたほうがいいのです。 心を伸びやかにして、残された人生を楽しむためにも、どういうものであれ自分を縛るようなことはしないほうがいいのです」、「まず捨てたいのは「かくあるべし思考」」、確かに現役時代は、「かくあるべし思考」に強く縛られていた。
・『「70歳になる」とは「自由になる」ということ ただ、仕事がうまくいっているうちはいいのですが、うまくいかなくなると、その責任感や義務感に追いつめられることになります。それに耐えられる人もいるでしょうが、心が病んでしまう人もいます。 そんなときは「かくあるべし思考」を捨ててもらうと、ラクになることが少なくありません。実際、職場でうつに苦しむ人は、医者の診断書をもらって休職が認められただけで、ずいぶんラクになるものです。 実際の治療に入らなくても、医者の診断書をもらったことで、「かくあるべし思考」からいったん解放されるので、それまでの苦しさが消えてしまうことがあるのです。 「定年を迎えた」ということは、仕事に対する最大最強の「かくあるべし思考」から完全に解放されるということです。 人によっては「あと5年は働かないといけない」といった拘束があるかもしれませんが、定年前ほどの縛りは消えています。「かくあるべし思考」から解放されているので、「いざとなれば、我慢して働く必要もない」という意識が、どこかにあるからでしょう。 それでいいのです。 仕事だけではありません。 子どもの教育とかマイホームのローンなど、いままで自分を縛っていたものが1つずつ消えていくのが、60代。気がつけばどんどん身軽になっているのが、年齢を重ねるということなのかもしれません。 70代からは、その「身軽さ」を楽しみたいものです。 「70歳になるということは、自由になること」なのかもしれません。 そう考えれば、こんなに楽しく嬉しいこともないはずです』、「子どもの教育とかマイホームのローンなど、いままで自分を縛っていたものが1つずつ消えていくのが、60代。気がつけばどんどん身軽になっているのが、年齢を重ねるということなのかもしれません。 70代からは、その「身軽さ」を楽しみたいものです」、その通りだ。
・『「何ごとも遊び半分」が、脳を老化させないコツ 70代は「自由の時代」――と考えていいでしょう。 そう考えれば、何ごとも、いままでのような拘束力はありません。 地域の活動だって、ボランティアだって、自分がやりたいと思ったらやればいいし、時間がもったいない、ムダなことだと思ったらやめたほうがいいのです。 趣味も、つき合いも、すべて同じ。 「つまらないな」と思ったら、やめていいのです。 と言うより、「つまらないな」と思ったら、やめたほうがいいのです。 「何ごとも、中途半端に終わらせてはいけない」という考えは、会社員時代に長く染みついてきた「かくあるべし思考」に過ぎません。「別に仕事じゃないんだし」と思って、つまらないと感じたら、その場でおしまいにしてしまいましょう。 そうしないと、70代のせっかくの貴重な時間をムダにしてしまいます。 昔であれば、そのような態度は、「遊び半分」と思われて、否定的に考えられたものです。嫌悪感を抱く人さえいました。 とくに、団塊の世代は、真面目な努力家が多いので、その傾向があるように思います。 実際、会社員時代、仕事が中途半端に終わってしまったときなど、「まるで遊び半分じゃないか!」と、反省していた人もいるのではないでしょうか。 でもこれからは、すべて「遊び半分」にしたほうがいい年齢なのです』、「「何ごとも、中途半端に終わらせてはいけない」という考えは、会社員時代に長く染みついてきた「かくあるべし思考」に過ぎません。「別に仕事じゃないんだし」と思って、つまらないと感じたら、その場でおしまいにしてしまいましょう。 そうしないと、70代のせっかくの貴重な時間をムダにしてしまいます」、「これからは、すべて「遊び半分」にしたほうがいい年齢なのです」、なるほど。
・『責任感や義務感を押しつける人とは距離を置く それに地域の活動やボランティアをやめたところで、周りはそれほど気にしないもの。「つまらないな」と思っていたわけですから、周りもそれとなく気がついているものです。 「和田さん、最近姿が見えないね」と地域活動やボランティアの仲間が言ったとしても、「まあ、そんな予感はしてましたよ」「まあ、当てにしないで待ってましょう」くらいで終わってしまいます。 もちろん、どの世界にも、「かくあるべし思考」でしか考えられない人がいるものです。そして相も変わらず、昔ながらの責任感だの義務感だのを、人に押しつけてきたりします。 70代になったら、そういう人とは距離を置くことです。 放っておけばいいのです。 70代は、そういう気ままさが許される世代なのです。 それに「何ごとも遊び半分」とばかりに、最初から何ごとにも深入りしないと決めておけば、それが自然と自分のキャラクターになってきます。 周りの反応など、気にすることもなくなります』、「どの世界にも、「かくあるべし思考」でしか考えられない人がいるものです。そして相も変わらず、昔ながらの責任感だの義務感だのを、人に押しつけてきたりします。 70代になったら、そういう人とは距離を置くことです。 放っておけばいいのです。 70代は、そういう気ままさが許される世代なのです」、「気ままさが許される世代」とは有り難い。
・『「胸を張って、無責任に生きる」は、70代の特権 齢をとると、何を始めるにしても、おっくうに感じるもの。 それには理由があります。 65歳を過ぎても、60歳までの価値観、人生観を引きずっている人が多いので、何かを始めるとき、どうしても不安や懸念を感じてしまうのです。 「始めても、だんだん辛くなるかもしれない」「ひょっとしたら、自分に向いてないかもしれない」などなど、ついつい不安を感じてしまうわけです。 さらには「長続きしなかったら、みっともない」「やるからには、中途半端なことはできない」と、見栄から生まれる懸念もあります。 このような価値観、人生観は、長い会社勤めや、組織の人間関係の中で身についたもの。それをそのまま、65歳からの人生に当てはめても、意味がありません。 どんな世界でも、いざ飛び込んでみると「勝手が違う」「通用しない」「体がついていけない」といったことはいくらでも起こり得ます。 前項でお話ししたように、「何ごとも遊び半分」という気持ちで始めれば、気分もラクなもの。「勝手が違う」「通用しない」「体がついていけない」と思ったら、のんびりマイペースに持ち込んでしまえばいいだけの話。 65歳を過ぎたら、ラクなことだけやる。 誰からも文句は言われないはずです。 また、ラクだと思っていても、「やっぱり、自分に向いてない」ということもあるでしょう。それなら、「やーめた!」と放り出せばいいのです。 65歳からは、万事がこんな調子のほうが、うまくいくと考えてください。 団塊の世代なら、クレージーキャッツの植木等さん主演の映画『無責任』シリーズを覚えていると思います。その映画の中で「こつこつやる奴ぁ、ご苦労さん!」というとても痛快なセリフがありました。 70歳からは、まさに「無責任一代男」「無責任一代女」でいいのです。 「やっぱり、自分に向いてない」と思ったら、「こつこつやる奴ぁ、ご苦労さん!」とばかりに放り出す。70代になったらもう、胸を張って、無責任のまま生きていいと思います。 70代は、何十年もの間、ひたすら責任だけを果たしてきた世代なのですから』、「自分に向いてない」と思ったら、「こつこつやる奴ぁ、ご苦労さん!」とばかりに放り出す。70代になったらもう、胸を張って、無責任のまま生きていいと思います」、嬉しくなる。
・『「外に出て町を歩く」だけでも、必ず若返ります 外に出て町を歩くだけで、気分が華やいでくるときがあります。 70代になったら、このような気分から生まれてくる高揚感を大事にしたいものです。 と言うのも、このような高揚感は、老化の防止にとてもいいのです。 晴れの日はもちろんのこと、曇りの日でも雨の日でも、外を歩いて風を感じたり、人とすれ違ったり、店先を眺めたりする。また、気が向いたら、しばらくご無沙汰の飲食店や居酒屋に顔を出したりする。 それだけでも、「こういう気分もいいな」と思うときがきっとあります。 それが脳にとって、とてもいい刺激なのです。 また、町には同世代の男性や女性たちがいます。快活で楽しそうな同世代がいれば、いやがうえにも刺激になります。 ファッションにも目が行くでしょう。「ああいうチェックの柄のジャケットなら、私も欲しい」と思ったりします。「派手な色だけど、あの歳でも案外、様になるんだな」と気がついたりします。 あるいは逆の場合もあります。 「同じくらいの歳だと思うけど、地味な服のせいか、年寄りくさく見える」 「不機嫌そうな表情をしているな。あれじゃ家の雰囲気も悪いだろう」 といった具合です。 町を歩くと、つい同世代に目が行ってしまうのはいくつであっても同じだと思います。そのたびに、いろいろな刺激を受けるのです。 「あのようなジャケットが欲しい」「あのような表情はよくない」などと、勝手な刺激を受けているうちに、不思議な元気が出てきます。何をどうするというのでもなく、前向きな気分になってくるものです。 それだけでも出かけた甲斐があります。 目的などなくてもいいから、とにかく外に出てみる。 それだけでも若返りの刺激を受けるのです』、「目的などなくてもいいから、とにかく外に出てみる。 それだけでも若返りの刺激を受けるのです」、私は他人の「ファッション」には興味がないが、運動による「刺激」にはこだわっている。
次に、4月19日付け現代ビジネスが掲載した精神科医の和田 秀樹氏による「70代の大半はピンピンしている…「本当の健康寿命」を知れば年をとるのは怖くない!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108461?imp=0
・『年々、右肩上がりに延びている日本人の平均寿命。一方、健康で自立して暮らせる期間とされる「健康寿命」は、男性が72.68歳、女性が75.38歳だという。この数字を見て、不安を感じる人も多いだろう。しかし、著書『70代から「いいこと」ばかり起きる人』(朝日新書)を上梓した、精神科医で老年医学の専門家でもある和田秀樹氏によれば、この数字には大きな誤解があるという。そんな同氏に、健康寿命のトリックと「本当の健康寿命」について教えてもらった』、「健康寿命のトリックと「本当の健康寿命」」とは興味深そうだ。
・『「健康寿命」を真に受けてはいけない 厚生労働省が2019年に発表した、日本人の健康寿命は、男性が72.68歳、女性が75.38歳でした。 健康寿命の定義は、「健康上の問題で、日常生活が制限されることなく生活できる期間」とされています。そう聞くと、「じゃあ、72歳になったら介護が必要になるの?」と思う人もいるかもしれません。 まさか、そんなわけはありません。「未来ビジョン研究所」の調査によると、70代の約7割は「自分は健康だ」と思っています。私の臨床現場における実感でも、70代の人の多くはピンピンしています。 厚生労働省の調査でも、介護サービスを1年間継続して使った人は、70代前半では男女ともたった4%しかいません。72歳で健康寿命を迎えるという考えは、明らかに実態とかけ離れています。 いったいなぜ、こんな乖離が起きているのでしょうか。原因はずばり、健康寿命の算出方法にあります。 健康寿命がどう決められているのか、みなさんはご存じでしょうか? 平均寿命のように、客観的な数字をもとに決められていると思っている人も多いのではないかと思います。 じつは、健康寿命は厚生労働省によるアンケート調査で決められています。 全国から無作為に抽出された男女を対象に、「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか?」と尋ね、「ある」と回答した人は不健康、「ない」と回答した人は健康とみなして算出されたものなのです。 この聞き方では、病気ではないけれど、なんとなく体調がすぐれない人も「ある」と答えるでしょうし、たまたま風邪をひいていた人や、ケガをしていた人も「ある」と答えるでしょう。 逆に「ない」と言いきれる人がどれだけいるでしょうか? 誰だって不調のひとつやふたつ、あると思います。 このように健康寿命というのは、きわめて主観的であやふやなものなのです。そんなものを真に受けて、年をとることを恐れたり、健康寿命を伸ばそうとやっきになったりする必要はありません』、「健康寿命は厚生労働省によるアンケート調査で決められています」、「「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか?」と尋ね、「ある」と回答した人は不健康、「ない」と回答した人は健康とみなして算出されたものなのです。 この聞き方では、病気ではないけれど、なんとなく体調がすぐれない人も「ある」と答えるでしょうし、たまたま風邪をひいていた人や、ケガをしていた人も「ある」と答えるでしょう。 逆に「ない」と言いきれる人がどれだけいるでしょうか? 誰だって不調のひとつやふたつ、あると思います。 このように健康寿命というのは、きわめて「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか?」と尋ね、「ある」と回答した人は不健康、「ない」と回答した人は健康とみなして算出されたものなのです。 この聞き方では、病気ではないけれど、なんとなく体調がすぐれない人も「ある」と答えるでしょうし、たまたま風邪をひいていた人や、ケガをしていた人も「ある」と答えるでしょう。 逆に「ない」と言いきれる人がどれだけいるでしょうか? 誰だって不調のひとつやふたつ、あると思います。 このように健康寿命というのは、きわめて主観的であやふやなものなのですなのです」、なーんだ、こんなに「主観的であやふやなもの」、とは初めて知った。
・『「本当の健康寿命」は男女とも80歳以上 私たちが本当に知っておくべき数字は、健康寿命ではなくほかにあります。 2012年に発表された「健康寿命の算定方法の指針」という説明書では、65歳の人が亡くなるまでの間、要介護認定を受けずに自立して生活している期間と、要介護認定を受けて自立できなくなった期間、それぞれどれくらいあったのか、という調査をしています。 調査結果によると、65歳男性の平均余命は18.9年。そのうち、自立している期間が17.2年、自立できなくなった期間が1.6年でした。女性の場合は、平均余命が24.0年。自立している期間が20.5年、自立できなくなった期間が3.4年でした。 つまり、男性は82.2歳まで、女性は85.5歳までは、介護の必要もなく健康でいられるということです』、「「健康寿命の算定方法の指針」という説明書では、65歳の人が亡くなるまでの間、要介護認定を受けずに自立して生活している期間と、要介護認定を受けて自立できなくなった期間、それぞれどれくらいあったのか、という調査をしています。 調査結果によると、65歳男性の平均余命は18.9年。そのうち、自立している期間が17.2年、自立できなくなった期間が1.6年でした。女性の場合は、平均余命が24.0年。自立している期間が20.5年、自立できなくなった期間が3.4年でした」、これなら実態に近そうだ。
・『「男性82歳、女性85歳」 私はこの数字こそが、「本当の健康寿命」ではないかと思っています。 もうひとつ強調しておきたいのは、男性の「自立できなくなった期間」がたった1.6年であるという事実です。 72歳で健康寿命を迎えたあとは、81歳の平均寿命を迎えるまで、ベッドの上で寝たきりで過ごすことになる。そんなふうに想像していた人もいるかもしれません。それでは年をとりたくないと思うのも当然でしょう。 実際は、介護が必要になるのは、死ぬ前のわずか1年半ほどなのです。もちろん、これは平均値ですから、もっと少ない人もたくさんいます。 そう思えば、年をとることが怖くなくなるのではないでしょうか』、「「男性82歳、女性85歳」 私はこの数字こそが、「本当の健康寿命」ではないかと思っています」、「実際は、介護が必要になるのは、死ぬ前のわずか1年半ほどなのです」、安心した。
・『人間の肉体は思っているほど衰えない 人間の肉体というのは、私たちが思っているほど衰えません。 たしかに、30歳のときと70歳のときの筋肉量をくらべると、筋肉量は30%ほど減ります。ですが、30歳と70歳では生活の内容がまったく違います。 30歳のときは、ハードな仕事を要求されることもあったかもしれませんが、70歳の高齢者に重い荷物を持たせたり、全力疾走させたりする人はいないでしょう。 つまり、30%ほど筋肉量が減っても、70歳の日常生活に影響を与えるほどではないということです。70歳らしい生活を送ることのできる肉体は、たいていの人が維持できます。 それを裏づけるのが、東京都が行なった高齢者の生活実態に関する調査です。 1980年の時点では、杖などを使わずに歩くことができる65~69歳の割合は90%以下でした。しかし、2000年にはその割合が95%を超えています。75~79歳の場合でも、1980年では80%を切っていたのが、2000年には90%近い人が自分の力だけで歩くことができています。 さらに20年近くたった現在では、自力歩行の割合はおそらくもっと高くなっているでしょう。 高齢者というと、杖や車いすをイメージしがちです。しかし、高齢者の日常生活能力は、昔とくらべて断然高くなっています。 あれもできなくなった、これもできなくなったと、若いころの自分とくらべて嘆くよりも、あれもできる、これもできると、まだできることを数えたほうが、幸せな毎日を過ごせるのではないでしょうか』、「高齢者の日常生活能力は、昔とくらべて断然高くなっています。 あれもできなくなった、これもできなくなったと、若いころの自分とくらべて嘆くよりも、あれもできる、これもできると、まだできることを数えたほうが、幸せな毎日を過ごせるのではないでしょうか」、同感である。
第三に、4月20日付け日刊ゲンダイが掲載した精神科医の和田秀樹氏による「70代からは信頼できる医師選びも大切 見分け方は「薬の相談」に対して親身か否か」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/321820
・『私が高齢者専門の浴風会病院に勤務していたころ、亡くなられた方の病理解剖報告を毎週、チェックしていました。すると、85歳以上の方で、アルツハイマー型認知症の所見が脳に見られない人はいませんでした。つまり、認知症がそれほどひどくなくても、脳は確実に老いに向かっているということです。 その経験から強く実感したことがあります。老いを2つの時期に分けてとらえる考え方で、80代からは「老いを受け入れる時期」で、70代までは「老いと闘う時期」ということです。 「老いと闘う時期」の中でも70歳は分岐点で、その後の老いとの闘い方が変わり、ひいては80代からの老いの受け入れ方も変わってきます。70代をうまく乗り越える闘い方のひとつが、前回紹介した意欲のキープですが、一般の方にとっては信頼できる医師の存在も老後の道先案内人として重要でしょう。 では、老いと闘う70代にとって、どんな人が頼れる医師か。見分け方は簡単で、ズバリ、その医師が薬の相談に親身になってくれるか。これが大きいと思います。 高齢者に薬の副作用が表れやすいことは、この連載でも紹介しました。薬の代謝や排泄(はいせつ)に関わる肝臓や腎臓の機能が衰えるため、薬の成分が体に残りやすいためです。 たとえば、睡眠導入剤としても使われる精神安定剤は、20代だと20時間ほどで血中濃度が半分になりますが、70代は70時間くらいかかります。多くの薬でこういうことが生じるため、若い成人と同じような服用では、副作用が生じやすい。 その点を踏まえると、1日3回服用の薬で副作用があるなら、高齢者の場合、1日1回でいいでしょう。ですから、薬を飲んで感じた不調は、ためらうことなく医師に伝えること。医師に忖度(そんたく)してつらさを我慢する必要はありません。「この薬を飲むと体がだるい」「頭がボーッとする」といったことを素直に伝えましょう。 医師がその訴えに「数値は正常だから、このまま続けて」「いい薬だから、やめると悪化しますよ」などと取り合わなければ、信頼できません。70代の健康を守る上でよくない医師です。 高齢者医療に詳しい医師なら、「副作用がつらければ、別の薬を試しましょう」「数値は少し高めでコントロールしましょうか」などと薬の見直しを検討してくれます。 そんな医師を老後の道先案内人にすると、ヨボヨボせず、元気な80代を迎えられるでしょう』、「80代からは「老いを受け入れる時期」で、70代までは「老いと闘う時期」、「「老いと闘う時期」の中でも70歳は分岐点で、その後の老いとの闘い方が変わり、ひいては80代からの老いの受け入れ方も変わってきます。70代をうまく乗り越える闘い方のひとつが、前回紹介した意欲のキープですが、一般の方にとっては信頼できる医師の存在も老後の道先案内人として重要でしょう」、「「この薬を飲むと体がだるい」「頭がボーッとする」といったことを素直に伝えましょう。 医師がその訴えに「数値は正常だから、このまま続けて」「いい薬だから、やめると悪化しますよ」などと取り合わなければ、信頼できません。70代の健康を守る上でよくない医師です。 高齢者医療に詳しい医師なら、「副作用がつらければ、別の薬を試しましょう」「数値は少し高めでコントロールしましょうか」などと薬の見直しを検討してくれます。 そんな医師を老後の道先案内人にすると、ヨボヨボせず、元気な80代を迎えられるでしょう」、「高齢者医療に詳しい医師なら、「副作用がつらければ、別の薬を試しましょう」「数値は少し高めでコントロールしましょうか」などと薬の見直しを検討してくれます。 そんな医師を老後の道先案内人にすると、ヨボヨボせず、元気な80代を迎えられるでしょう」、こんないい「医師を老後の道先案内人に」したいものだが、実際には難しそうだ。
先ずは、3月31日付けPRESIDENT Onlineが掲載した精神科医の和田 秀樹氏による「「65歳を過ぎたらラクなことだけやりなさい」和田秀樹が定年後は遊び半分で生きることを勧めるワケ 向いてなかったら「こつこつやる奴ぁ、ご苦労さん」と放り出せばいい」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67944
・『定年後の人生を楽しむための秘訣は何か。医師の和田秀樹さんは「『定年を迎えた』ということは、仕事に対する最大最強の『かくあるべし思考』から完全に解放されることだ。何ごとも遊び半分と、胸を張って無責任のまま生きればいい」という――。 ※本稿は、和田秀樹『70代からの元気力』(三笠書房)の一部を再編集したものです』、「「『定年を迎えた』ということは、仕事に対する最大最強の『かくあるべし思考』から完全に解放されることだ。何ごとも遊び半分と、胸を張って無責任のまま生きればいい」、嬉しい限りだ。
・『70代になったら「かくあるべし思考」を捨てなさい 70歳を過ぎたら、「好きなことだけをする」という選択もあります。 「遊んで暮らす」のが、70代人生の理想だと私は思っています。 ですから、やりたくない仕事や役割はムリして続けるのは、時間がもったいないと思います。 そしてこれがいちばん大事なことですが、高齢になればなるほど、「いろいろなものから自由になる、解放される」といった気持ちを大切にしたほうがいいのです。 心を伸びやかにして、残された人生を楽しむためにも、どういうものであれ自分を縛るようなことはしないほうがいいのです。 まず捨てたいのは「かくあるべし思考」。 たとえば、会社勤めの間は、とにかく「定年までは働くべきだ」いう気持ちがあったはずです。この「かくあるべし思考」があったからこそ、仕事で嫌なことや、苦しいことがあっても、我慢して働いていたわけです。 また、仕事に対する責任感とか義務感といったものも、考えてみれば、「かくあるべし思考」が根本にあります。 「どんな仕事であれ、逃げ出したり、放り出したりせずに取り組むべきだ」と思うからこそ、責任感、義務感が生まれるわけです』、「「遊んで暮らす」のが、70代人生の理想だと私は思っています。 ですから、やりたくない仕事や役割はムリして続けるのは、時間がもったいないと思います。 そしてこれがいちばん大事なことですが、高齢になればなるほど、「いろいろなものから自由になる、解放される」といった気持ちを大切にしたほうがいいのです。 心を伸びやかにして、残された人生を楽しむためにも、どういうものであれ自分を縛るようなことはしないほうがいいのです」、「まず捨てたいのは「かくあるべし思考」」、確かに現役時代は、「かくあるべし思考」に強く縛られていた。
・『「70歳になる」とは「自由になる」ということ ただ、仕事がうまくいっているうちはいいのですが、うまくいかなくなると、その責任感や義務感に追いつめられることになります。それに耐えられる人もいるでしょうが、心が病んでしまう人もいます。 そんなときは「かくあるべし思考」を捨ててもらうと、ラクになることが少なくありません。実際、職場でうつに苦しむ人は、医者の診断書をもらって休職が認められただけで、ずいぶんラクになるものです。 実際の治療に入らなくても、医者の診断書をもらったことで、「かくあるべし思考」からいったん解放されるので、それまでの苦しさが消えてしまうことがあるのです。 「定年を迎えた」ということは、仕事に対する最大最強の「かくあるべし思考」から完全に解放されるということです。 人によっては「あと5年は働かないといけない」といった拘束があるかもしれませんが、定年前ほどの縛りは消えています。「かくあるべし思考」から解放されているので、「いざとなれば、我慢して働く必要もない」という意識が、どこかにあるからでしょう。 それでいいのです。 仕事だけではありません。 子どもの教育とかマイホームのローンなど、いままで自分を縛っていたものが1つずつ消えていくのが、60代。気がつけばどんどん身軽になっているのが、年齢を重ねるということなのかもしれません。 70代からは、その「身軽さ」を楽しみたいものです。 「70歳になるということは、自由になること」なのかもしれません。 そう考えれば、こんなに楽しく嬉しいこともないはずです』、「子どもの教育とかマイホームのローンなど、いままで自分を縛っていたものが1つずつ消えていくのが、60代。気がつけばどんどん身軽になっているのが、年齢を重ねるということなのかもしれません。 70代からは、その「身軽さ」を楽しみたいものです」、その通りだ。
・『「何ごとも遊び半分」が、脳を老化させないコツ 70代は「自由の時代」――と考えていいでしょう。 そう考えれば、何ごとも、いままでのような拘束力はありません。 地域の活動だって、ボランティアだって、自分がやりたいと思ったらやればいいし、時間がもったいない、ムダなことだと思ったらやめたほうがいいのです。 趣味も、つき合いも、すべて同じ。 「つまらないな」と思ったら、やめていいのです。 と言うより、「つまらないな」と思ったら、やめたほうがいいのです。 「何ごとも、中途半端に終わらせてはいけない」という考えは、会社員時代に長く染みついてきた「かくあるべし思考」に過ぎません。「別に仕事じゃないんだし」と思って、つまらないと感じたら、その場でおしまいにしてしまいましょう。 そうしないと、70代のせっかくの貴重な時間をムダにしてしまいます。 昔であれば、そのような態度は、「遊び半分」と思われて、否定的に考えられたものです。嫌悪感を抱く人さえいました。 とくに、団塊の世代は、真面目な努力家が多いので、その傾向があるように思います。 実際、会社員時代、仕事が中途半端に終わってしまったときなど、「まるで遊び半分じゃないか!」と、反省していた人もいるのではないでしょうか。 でもこれからは、すべて「遊び半分」にしたほうがいい年齢なのです』、「「何ごとも、中途半端に終わらせてはいけない」という考えは、会社員時代に長く染みついてきた「かくあるべし思考」に過ぎません。「別に仕事じゃないんだし」と思って、つまらないと感じたら、その場でおしまいにしてしまいましょう。 そうしないと、70代のせっかくの貴重な時間をムダにしてしまいます」、「これからは、すべて「遊び半分」にしたほうがいい年齢なのです」、なるほど。
・『責任感や義務感を押しつける人とは距離を置く それに地域の活動やボランティアをやめたところで、周りはそれほど気にしないもの。「つまらないな」と思っていたわけですから、周りもそれとなく気がついているものです。 「和田さん、最近姿が見えないね」と地域活動やボランティアの仲間が言ったとしても、「まあ、そんな予感はしてましたよ」「まあ、当てにしないで待ってましょう」くらいで終わってしまいます。 もちろん、どの世界にも、「かくあるべし思考」でしか考えられない人がいるものです。そして相も変わらず、昔ながらの責任感だの義務感だのを、人に押しつけてきたりします。 70代になったら、そういう人とは距離を置くことです。 放っておけばいいのです。 70代は、そういう気ままさが許される世代なのです。 それに「何ごとも遊び半分」とばかりに、最初から何ごとにも深入りしないと決めておけば、それが自然と自分のキャラクターになってきます。 周りの反応など、気にすることもなくなります』、「どの世界にも、「かくあるべし思考」でしか考えられない人がいるものです。そして相も変わらず、昔ながらの責任感だの義務感だのを、人に押しつけてきたりします。 70代になったら、そういう人とは距離を置くことです。 放っておけばいいのです。 70代は、そういう気ままさが許される世代なのです」、「気ままさが許される世代」とは有り難い。
・『「胸を張って、無責任に生きる」は、70代の特権 齢をとると、何を始めるにしても、おっくうに感じるもの。 それには理由があります。 65歳を過ぎても、60歳までの価値観、人生観を引きずっている人が多いので、何かを始めるとき、どうしても不安や懸念を感じてしまうのです。 「始めても、だんだん辛くなるかもしれない」「ひょっとしたら、自分に向いてないかもしれない」などなど、ついつい不安を感じてしまうわけです。 さらには「長続きしなかったら、みっともない」「やるからには、中途半端なことはできない」と、見栄から生まれる懸念もあります。 このような価値観、人生観は、長い会社勤めや、組織の人間関係の中で身についたもの。それをそのまま、65歳からの人生に当てはめても、意味がありません。 どんな世界でも、いざ飛び込んでみると「勝手が違う」「通用しない」「体がついていけない」といったことはいくらでも起こり得ます。 前項でお話ししたように、「何ごとも遊び半分」という気持ちで始めれば、気分もラクなもの。「勝手が違う」「通用しない」「体がついていけない」と思ったら、のんびりマイペースに持ち込んでしまえばいいだけの話。 65歳を過ぎたら、ラクなことだけやる。 誰からも文句は言われないはずです。 また、ラクだと思っていても、「やっぱり、自分に向いてない」ということもあるでしょう。それなら、「やーめた!」と放り出せばいいのです。 65歳からは、万事がこんな調子のほうが、うまくいくと考えてください。 団塊の世代なら、クレージーキャッツの植木等さん主演の映画『無責任』シリーズを覚えていると思います。その映画の中で「こつこつやる奴ぁ、ご苦労さん!」というとても痛快なセリフがありました。 70歳からは、まさに「無責任一代男」「無責任一代女」でいいのです。 「やっぱり、自分に向いてない」と思ったら、「こつこつやる奴ぁ、ご苦労さん!」とばかりに放り出す。70代になったらもう、胸を張って、無責任のまま生きていいと思います。 70代は、何十年もの間、ひたすら責任だけを果たしてきた世代なのですから』、「自分に向いてない」と思ったら、「こつこつやる奴ぁ、ご苦労さん!」とばかりに放り出す。70代になったらもう、胸を張って、無責任のまま生きていいと思います」、嬉しくなる。
・『「外に出て町を歩く」だけでも、必ず若返ります 外に出て町を歩くだけで、気分が華やいでくるときがあります。 70代になったら、このような気分から生まれてくる高揚感を大事にしたいものです。 と言うのも、このような高揚感は、老化の防止にとてもいいのです。 晴れの日はもちろんのこと、曇りの日でも雨の日でも、外を歩いて風を感じたり、人とすれ違ったり、店先を眺めたりする。また、気が向いたら、しばらくご無沙汰の飲食店や居酒屋に顔を出したりする。 それだけでも、「こういう気分もいいな」と思うときがきっとあります。 それが脳にとって、とてもいい刺激なのです。 また、町には同世代の男性や女性たちがいます。快活で楽しそうな同世代がいれば、いやがうえにも刺激になります。 ファッションにも目が行くでしょう。「ああいうチェックの柄のジャケットなら、私も欲しい」と思ったりします。「派手な色だけど、あの歳でも案外、様になるんだな」と気がついたりします。 あるいは逆の場合もあります。 「同じくらいの歳だと思うけど、地味な服のせいか、年寄りくさく見える」 「不機嫌そうな表情をしているな。あれじゃ家の雰囲気も悪いだろう」 といった具合です。 町を歩くと、つい同世代に目が行ってしまうのはいくつであっても同じだと思います。そのたびに、いろいろな刺激を受けるのです。 「あのようなジャケットが欲しい」「あのような表情はよくない」などと、勝手な刺激を受けているうちに、不思議な元気が出てきます。何をどうするというのでもなく、前向きな気分になってくるものです。 それだけでも出かけた甲斐があります。 目的などなくてもいいから、とにかく外に出てみる。 それだけでも若返りの刺激を受けるのです』、「目的などなくてもいいから、とにかく外に出てみる。 それだけでも若返りの刺激を受けるのです」、私は他人の「ファッション」には興味がないが、運動による「刺激」にはこだわっている。
次に、4月19日付け現代ビジネスが掲載した精神科医の和田 秀樹氏による「70代の大半はピンピンしている…「本当の健康寿命」を知れば年をとるのは怖くない!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108461?imp=0
・『年々、右肩上がりに延びている日本人の平均寿命。一方、健康で自立して暮らせる期間とされる「健康寿命」は、男性が72.68歳、女性が75.38歳だという。この数字を見て、不安を感じる人も多いだろう。しかし、著書『70代から「いいこと」ばかり起きる人』(朝日新書)を上梓した、精神科医で老年医学の専門家でもある和田秀樹氏によれば、この数字には大きな誤解があるという。そんな同氏に、健康寿命のトリックと「本当の健康寿命」について教えてもらった』、「健康寿命のトリックと「本当の健康寿命」」とは興味深そうだ。
・『「健康寿命」を真に受けてはいけない 厚生労働省が2019年に発表した、日本人の健康寿命は、男性が72.68歳、女性が75.38歳でした。 健康寿命の定義は、「健康上の問題で、日常生活が制限されることなく生活できる期間」とされています。そう聞くと、「じゃあ、72歳になったら介護が必要になるの?」と思う人もいるかもしれません。 まさか、そんなわけはありません。「未来ビジョン研究所」の調査によると、70代の約7割は「自分は健康だ」と思っています。私の臨床現場における実感でも、70代の人の多くはピンピンしています。 厚生労働省の調査でも、介護サービスを1年間継続して使った人は、70代前半では男女ともたった4%しかいません。72歳で健康寿命を迎えるという考えは、明らかに実態とかけ離れています。 いったいなぜ、こんな乖離が起きているのでしょうか。原因はずばり、健康寿命の算出方法にあります。 健康寿命がどう決められているのか、みなさんはご存じでしょうか? 平均寿命のように、客観的な数字をもとに決められていると思っている人も多いのではないかと思います。 じつは、健康寿命は厚生労働省によるアンケート調査で決められています。 全国から無作為に抽出された男女を対象に、「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか?」と尋ね、「ある」と回答した人は不健康、「ない」と回答した人は健康とみなして算出されたものなのです。 この聞き方では、病気ではないけれど、なんとなく体調がすぐれない人も「ある」と答えるでしょうし、たまたま風邪をひいていた人や、ケガをしていた人も「ある」と答えるでしょう。 逆に「ない」と言いきれる人がどれだけいるでしょうか? 誰だって不調のひとつやふたつ、あると思います。 このように健康寿命というのは、きわめて主観的であやふやなものなのです。そんなものを真に受けて、年をとることを恐れたり、健康寿命を伸ばそうとやっきになったりする必要はありません』、「健康寿命は厚生労働省によるアンケート調査で決められています」、「「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか?」と尋ね、「ある」と回答した人は不健康、「ない」と回答した人は健康とみなして算出されたものなのです。 この聞き方では、病気ではないけれど、なんとなく体調がすぐれない人も「ある」と答えるでしょうし、たまたま風邪をひいていた人や、ケガをしていた人も「ある」と答えるでしょう。 逆に「ない」と言いきれる人がどれだけいるでしょうか? 誰だって不調のひとつやふたつ、あると思います。 このように健康寿命というのは、きわめて「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか?」と尋ね、「ある」と回答した人は不健康、「ない」と回答した人は健康とみなして算出されたものなのです。 この聞き方では、病気ではないけれど、なんとなく体調がすぐれない人も「ある」と答えるでしょうし、たまたま風邪をひいていた人や、ケガをしていた人も「ある」と答えるでしょう。 逆に「ない」と言いきれる人がどれだけいるでしょうか? 誰だって不調のひとつやふたつ、あると思います。 このように健康寿命というのは、きわめて主観的であやふやなものなのですなのです」、なーんだ、こんなに「主観的であやふやなもの」、とは初めて知った。
・『「本当の健康寿命」は男女とも80歳以上 私たちが本当に知っておくべき数字は、健康寿命ではなくほかにあります。 2012年に発表された「健康寿命の算定方法の指針」という説明書では、65歳の人が亡くなるまでの間、要介護認定を受けずに自立して生活している期間と、要介護認定を受けて自立できなくなった期間、それぞれどれくらいあったのか、という調査をしています。 調査結果によると、65歳男性の平均余命は18.9年。そのうち、自立している期間が17.2年、自立できなくなった期間が1.6年でした。女性の場合は、平均余命が24.0年。自立している期間が20.5年、自立できなくなった期間が3.4年でした。 つまり、男性は82.2歳まで、女性は85.5歳までは、介護の必要もなく健康でいられるということです』、「「健康寿命の算定方法の指針」という説明書では、65歳の人が亡くなるまでの間、要介護認定を受けずに自立して生活している期間と、要介護認定を受けて自立できなくなった期間、それぞれどれくらいあったのか、という調査をしています。 調査結果によると、65歳男性の平均余命は18.9年。そのうち、自立している期間が17.2年、自立できなくなった期間が1.6年でした。女性の場合は、平均余命が24.0年。自立している期間が20.5年、自立できなくなった期間が3.4年でした」、これなら実態に近そうだ。
・『「男性82歳、女性85歳」 私はこの数字こそが、「本当の健康寿命」ではないかと思っています。 もうひとつ強調しておきたいのは、男性の「自立できなくなった期間」がたった1.6年であるという事実です。 72歳で健康寿命を迎えたあとは、81歳の平均寿命を迎えるまで、ベッドの上で寝たきりで過ごすことになる。そんなふうに想像していた人もいるかもしれません。それでは年をとりたくないと思うのも当然でしょう。 実際は、介護が必要になるのは、死ぬ前のわずか1年半ほどなのです。もちろん、これは平均値ですから、もっと少ない人もたくさんいます。 そう思えば、年をとることが怖くなくなるのではないでしょうか』、「「男性82歳、女性85歳」 私はこの数字こそが、「本当の健康寿命」ではないかと思っています」、「実際は、介護が必要になるのは、死ぬ前のわずか1年半ほどなのです」、安心した。
・『人間の肉体は思っているほど衰えない 人間の肉体というのは、私たちが思っているほど衰えません。 たしかに、30歳のときと70歳のときの筋肉量をくらべると、筋肉量は30%ほど減ります。ですが、30歳と70歳では生活の内容がまったく違います。 30歳のときは、ハードな仕事を要求されることもあったかもしれませんが、70歳の高齢者に重い荷物を持たせたり、全力疾走させたりする人はいないでしょう。 つまり、30%ほど筋肉量が減っても、70歳の日常生活に影響を与えるほどではないということです。70歳らしい生活を送ることのできる肉体は、たいていの人が維持できます。 それを裏づけるのが、東京都が行なった高齢者の生活実態に関する調査です。 1980年の時点では、杖などを使わずに歩くことができる65~69歳の割合は90%以下でした。しかし、2000年にはその割合が95%を超えています。75~79歳の場合でも、1980年では80%を切っていたのが、2000年には90%近い人が自分の力だけで歩くことができています。 さらに20年近くたった現在では、自力歩行の割合はおそらくもっと高くなっているでしょう。 高齢者というと、杖や車いすをイメージしがちです。しかし、高齢者の日常生活能力は、昔とくらべて断然高くなっています。 あれもできなくなった、これもできなくなったと、若いころの自分とくらべて嘆くよりも、あれもできる、これもできると、まだできることを数えたほうが、幸せな毎日を過ごせるのではないでしょうか』、「高齢者の日常生活能力は、昔とくらべて断然高くなっています。 あれもできなくなった、これもできなくなったと、若いころの自分とくらべて嘆くよりも、あれもできる、これもできると、まだできることを数えたほうが、幸せな毎日を過ごせるのではないでしょうか」、同感である。
第三に、4月20日付け日刊ゲンダイが掲載した精神科医の和田秀樹氏による「70代からは信頼できる医師選びも大切 見分け方は「薬の相談」に対して親身か否か」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/321820
・『私が高齢者専門の浴風会病院に勤務していたころ、亡くなられた方の病理解剖報告を毎週、チェックしていました。すると、85歳以上の方で、アルツハイマー型認知症の所見が脳に見られない人はいませんでした。つまり、認知症がそれほどひどくなくても、脳は確実に老いに向かっているということです。 その経験から強く実感したことがあります。老いを2つの時期に分けてとらえる考え方で、80代からは「老いを受け入れる時期」で、70代までは「老いと闘う時期」ということです。 「老いと闘う時期」の中でも70歳は分岐点で、その後の老いとの闘い方が変わり、ひいては80代からの老いの受け入れ方も変わってきます。70代をうまく乗り越える闘い方のひとつが、前回紹介した意欲のキープですが、一般の方にとっては信頼できる医師の存在も老後の道先案内人として重要でしょう。 では、老いと闘う70代にとって、どんな人が頼れる医師か。見分け方は簡単で、ズバリ、その医師が薬の相談に親身になってくれるか。これが大きいと思います。 高齢者に薬の副作用が表れやすいことは、この連載でも紹介しました。薬の代謝や排泄(はいせつ)に関わる肝臓や腎臓の機能が衰えるため、薬の成分が体に残りやすいためです。 たとえば、睡眠導入剤としても使われる精神安定剤は、20代だと20時間ほどで血中濃度が半分になりますが、70代は70時間くらいかかります。多くの薬でこういうことが生じるため、若い成人と同じような服用では、副作用が生じやすい。 その点を踏まえると、1日3回服用の薬で副作用があるなら、高齢者の場合、1日1回でいいでしょう。ですから、薬を飲んで感じた不調は、ためらうことなく医師に伝えること。医師に忖度(そんたく)してつらさを我慢する必要はありません。「この薬を飲むと体がだるい」「頭がボーッとする」といったことを素直に伝えましょう。 医師がその訴えに「数値は正常だから、このまま続けて」「いい薬だから、やめると悪化しますよ」などと取り合わなければ、信頼できません。70代の健康を守る上でよくない医師です。 高齢者医療に詳しい医師なら、「副作用がつらければ、別の薬を試しましょう」「数値は少し高めでコントロールしましょうか」などと薬の見直しを検討してくれます。 そんな医師を老後の道先案内人にすると、ヨボヨボせず、元気な80代を迎えられるでしょう』、「80代からは「老いを受け入れる時期」で、70代までは「老いと闘う時期」、「「老いと闘う時期」の中でも70歳は分岐点で、その後の老いとの闘い方が変わり、ひいては80代からの老いの受け入れ方も変わってきます。70代をうまく乗り越える闘い方のひとつが、前回紹介した意欲のキープですが、一般の方にとっては信頼できる医師の存在も老後の道先案内人として重要でしょう」、「「この薬を飲むと体がだるい」「頭がボーッとする」といったことを素直に伝えましょう。 医師がその訴えに「数値は正常だから、このまま続けて」「いい薬だから、やめると悪化しますよ」などと取り合わなければ、信頼できません。70代の健康を守る上でよくない医師です。 高齢者医療に詳しい医師なら、「副作用がつらければ、別の薬を試しましょう」「数値は少し高めでコントロールしましょうか」などと薬の見直しを検討してくれます。 そんな医師を老後の道先案内人にすると、ヨボヨボせず、元気な80代を迎えられるでしょう」、「高齢者医療に詳しい医師なら、「副作用がつらければ、別の薬を試しましょう」「数値は少し高めでコントロールしましょうか」などと薬の見直しを検討してくれます。 そんな医師を老後の道先案内人にすると、ヨボヨボせず、元気な80代を迎えられるでしょう」、こんないい「医師を老後の道先案内人に」したいものだが、実際には難しそうだ。
タグ:高齢化社会 (その21)(精神科医 和田 秀樹 3題:「65歳を過ぎたらラクなことだけやりなさい」和田秀樹が定年後は遊び半分で生きることを勧めるワケ 向いてなかったら「こつこつやる奴ぁ ご苦労さん」と放り出せばいい、70代の大半はピンピンしている…「本当の健康寿命」を知れば年をとるのは怖くない!、70代からは信頼できる医師選びも大切 見分け方は「薬の相談」に対して親身か否か) 和田秀樹『70代からの元気力』(三笠書房) 「「『定年を迎えた』ということは、仕事に対する最大最強の『かくあるべし思考』から完全に解放されることだ。何ごとも遊び半分と、胸を張って無責任のまま生きればいい」、嬉しい限りだ。 「「遊んで暮らす」のが、70代人生の理想だと私は思っています。 ですから、やりたくない仕事や役割はムリして続けるのは、時間がもったいないと思います。 そしてこれがいちばん大事なことですが、高齢になればなるほど、「いろいろなものから自由になる、解放される」といった気持ちを大切にしたほうがいいのです。 心を伸びやかにして、残された人生を楽しむためにも、どういうものであれ自分を縛るようなことはしないほうがいいのです」、「まず捨てたいのは「かくあるべし思考」」、確かに現役時代は、「かくあるべし思考」に強く縛られていた。 「子どもの教育とかマイホームのローンなど、いままで自分を縛っていたものが1つずつ消えていくのが、60代。気がつけばどんどん身軽になっているのが、年齢を重ねるということなのかもしれません。 70代からは、その「身軽さ」を楽しみたいものです」、その通りだ。 「「何ごとも、中途半端に終わらせてはいけない」という考えは、会社員時代に長く染みついてきた「かくあるべし思考」に過ぎません。「別に仕事じゃないんだし」と思って、つまらないと感じたら、その場でおしまいにしてしまいましょう。 そうしないと、70代のせっかくの貴重な時間をムダにしてしまいます」、「これからは、すべて「遊び半分」にしたほうがいい年齢なのです」、なるほど。 「どの世界にも、「かくあるべし思考」でしか考えられない人がいるものです。そして相も変わらず、昔ながらの責任感だの義務感だのを、人に押しつけてきたりします。 70代になったら、そういう人とは距離を置くことです。 放っておけばいいのです。 70代は、そういう気ままさが許される世代なのです」、「気ままさが許される世代」とは有り難い。 「自分に向いてない」と思ったら、「こつこつやる奴ぁ、ご苦労さん!」とばかりに放り出す。70代になったらもう、胸を張って、無責任のまま生きていいと思います」、嬉しくなる。 「目的などなくてもいいから、とにかく外に出てみる。 それだけでも若返りの刺激を受けるのです」、私は他人の「ファッション」には興味がないが、運動による「刺激」にはこだわっている。 現代ビジネス 和田 秀樹氏による「70代の大半はピンピンしている…「本当の健康寿命」を知れば年をとるのは怖くない!」 「健康寿命のトリックと「本当の健康寿命」」とは興味深そうだ。 「健康寿命は厚生労働省によるアンケート調査で決められています」、「「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか?」と尋ね、「ある」と回答した人は不健康、「ない」と回答した人は健康とみなして算出されたものなのです。 この聞き方では、病気ではないけれど、なんとなく体調がすぐれない人も「ある」と答えるでしょうし、たまたま風邪をひいていた人や、ケガをしていた人も「ある」と答えるでしょう。 逆に「ない」と言いきれる人がどれだけいるでしょうか? 誰だって不調のひとつやふたつ、あると思います。 このように健康寿命というのは、きわめて「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか?」と尋ね、「ある」と回答した人は不健康、「ない」と回答した人は健康とみなして算出されたものなのです。 この聞き方では、病気ではないけれど、なんとなく体調がすぐれない人も「ある」と答えるでしょうし、たまたま風邪をひいていた人や、ケガをしていた人も「ある」と答えるでしょう。 逆に「ない」と言いきれる人がどれだけいるでしょうか? 誰だって不調のひとつやふたつ、あると思います。 このように健康寿命というのは、きわめ て主観的であやふやなものなのですなのです」、なーんだ、こんなに「主観的であやふやなもの」、とは初めて知った。 「「健康寿命の算定方法の指針」という説明書では、65歳の人が亡くなるまでの間、要介護認定を受けずに自立して生活している期間と、要介護認定を受けて自立できなくなった期間、それぞれどれくらいあったのか、という調査をしています。 調査結果によると、65歳男性の平均余命は18.9年。そのうち、自立している期間が17.2年、自立できなくなった期間が1.6年でした。女性の場合は、平均余命が24.0年。自立している期間が20.5年、自立できなくなった期間が3.4年でした」、これなら実態に近そうだ。 「「男性82歳、女性85歳」 私はこの数字こそが、「本当の健康寿命」ではないかと思っています」、「実際は、介護が必要になるのは、死ぬ前のわずか1年半ほどなのです」、安心した。 「高齢者の日常生活能力は、昔とくらべて断然高くなっています。 あれもできなくなった、これもできなくなったと、若いころの自分とくらべて嘆くよりも、あれもできる、これもできると、まだできることを数えたほうが、幸せな毎日を過ごせるのではないでしょうか」、同感である。 日刊ゲンダイ 和田秀樹氏による「70代からは信頼できる医師選びも大切 見分け方は「薬の相談」に対して親身か否か」 「80代からは「老いを受け入れる時期」で、70代までは「老いと闘う時期」、「「老いと闘う時期」の中でも70歳は分岐点で、その後の老いとの闘い方が変わり、ひいては80代からの老いの受け入れ方も変わってきます。70代をうまく乗り越える闘い方のひとつが、前回紹介した意欲のキープですが、一般の方にとっては信頼できる医師の存在も老後の道先案内人として重要でしょう」、「「この薬を飲むと体がだるい」「頭がボーッとする」といったことを素直に伝えましょう。 医師がその訴えに「数値は正常だから、このまま続けて」「いい薬だから、やめると悪化しますよ」などと取り合わなければ、信頼できません。70代の健康を守る上でよくない医師です。 高齢者医療に詳しい医師なら、「副作用がつらければ、別の薬を試しましょう」「数値は少し高めでコントロールしましょうか」などと薬の見直しを検討してくれます。 そんな医師を老後の道先案内人にすると、ヨボヨボせず、元気な80代を迎えられるでしょう」、「高齢者医療に詳しい医師なら、「副作用がつらければ、別の薬を試しましょう」「数値は少し高めでコン トロールしましょうか」などと薬の見直しを検討してくれます。 そんな医師を老後の道先案内人にすると、ヨボヨボせず、元気な80代を迎えられるでしょう」、こんないい「医師を老後の道先案内人に」したいものだが、実際には難しそうだ。