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葬式・墓(その2)(築地本願寺、「30万円合同墓」に予約殺到の理由  「子どもに迷惑をかけたくない」中高年に大人気、「カプセルの中で自分の体を30日かけて腐らせ堆肥に」究極の自然葬に3カ月で550人も予約が殺到した 園芸用堆肥になるか森林に撒かれる、葬儀業者が“ケチった”せいでご遺体から出血が止まらない…火葬場職員が見た「ヤバい業者」の実態) [人生]

葬式・墓については、2019年8月11日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(築地本願寺、「30万円合同墓」に予約殺到の理由  「子どもに迷惑をかけたくない」中高年に大人気、「カプセルの中で自分の体を30日かけて腐らせ堆肥に」究極の自然葬に3カ月で550人も予約が殺到した 園芸用堆肥になるか森林に撒かれる、葬儀業者が“ケチった”せいでご遺体から出血が止まらない…火葬場職員が見た「ヤバい業者」の実態)である。

先ずは、やや古いが、2020年12月17日付け東洋経済オンラインが掲載した築地本願寺代表役員・宗務長 の安永 雄彦氏による「築地本願寺、「30万円合同墓」に予約殺到の理由  「子どもに迷惑をかけたくない」中高年に大人気」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/394752
・『400年の伝統がある築地本願寺が今、ビジネスモデルの大変革に取り組んでいる。「衰退産業」の中にあって、生き残りをかけてどのように変わりつつあるのか。 一例を挙げれば、新たなお墓のかたちとして、30万円からの「合同墓(ごうどうぼ)」を提案、「子どもに面倒をかけたくない」と考えるミドル、シニア層の予約が殺到している。元ビジネスマンから2015年に築地本願寺のトップに就任、数々の斬新な施策でテレビ番組「カンブリア宮殿」などでも注目され、このほど『築地本願寺の経営学』を上梓した安永雄彦氏が仏教界の常識を超えるマーケティングについて解説する』、「安永雄彦氏」は銀行出身、ケンブリッジ大学で経営学の博士号を取得した極めてイノベーティブな俊才で、私が注目している人材の1人だ。
・『子ども世代に面倒をかけたくない  築地本願寺の「顧客創造」のために取り組んだ改革案の1つに合同墓があります。価値観の多様化でとくに都市部の葬儀のあり方は変化しており、お墓もしかりです。先祖代々の寺があっても、遠方に住んでいてお参りに行きにくい人は大勢います。 私自身も東京出身ですが、わが安永家のお墓は福岡の博多にあります。「ちょっと死んだ親父に近況のご報告やお彼岸のご挨拶を」という具合にはなかなかいきません。 お墓はミドルやシニアの悩みごとの代表といっていい関心事でもあります。「次男だからお墓を買わなければいけないけれど、どうすればいいか」という人。「自分でお墓を用意しても、死後に誰がお墓の面倒を見てくれるのか」という人。また、お墓はいらないので「骨を海にまいてほしい」と海洋散骨を希望する人も珍しくなくなりました。今では、宇宙散骨も予約できるようになりました。 少子高齢化社会なのですから子どもが1人か2人の家庭は多く、仮にその子どもが独身で孫もいなければ、わずか数十年で誰もお参りをしてくれないお墓(無縁墓)になってしまいます。) どのお寺も永代供養(浄土真宗では先祖に対しては「供養」という言葉は使いませんが、ここでは一般的な用語として、お寺が永久にお墓を守り、お経をあげて個人を追悼することを意味しています)を引き受けていますが、それで人々の先行きの不安がすべて拭い去られるわけではありません。 さらに現代のミドルやシニアに共通するのは、「次の世代に迷惑をかけたくない」という気持ちです。自分できちんとお墓も用意して、準備万端で死を迎えたいと考えているから、余計に悩みが増えるのです。私自身、60代半ばでまさに「終活」を考える年代です。時代に寄り添う「これからのお墓」を提案しなければいけないと、ずっと考え続けていました』、自分自身にも切実な問題だったので、よく出来た案になったのだろう。
・『新たなお墓のかたち「築地本願寺合同墓」  家族葬など葬儀が簡素化されても、人の死には儀式が必要で、葬儀への参加の代わりにお墓参りに行く人もいます。そう考えると、お墓は儀式を兼ねるものであり、誰もが立ち寄れるようにするには、便利な場所にあってしかるべきです。 その点、築地本願寺は首都圏の方々にはアクセスが抜群によい場所にあります。地元である築地はもちろん、銀座からすぐ近く、買い物帰りに立ち寄ることもできます。多くの人が求めている、「これからのお墓」が提案できる──そう考えて私たちが立案したのが、「合同墓」でした。いわばお墓のマンションで、誰もが気軽に訪れることができる、シンプルなお墓です。 合同墓のプランを立てて実行する段階で、細かなマーケティング調査を一般の調査会社のインターネット・システムを使って行いました。いわゆる世論調査のようなものです。 一般的に寺院はその成り立ちからいって、「自分たちはありがたい教えを与える側」「仏様の教えをお取り次ぎさせていただく立場」という、いわば上から目線の意識が染みついていて、どうしても相手の立場に立って「何が求められているのか?」を慮る(おもんぱかる)ことが苦手です。 しかしそれでは、独りよがりな改革になり、人々の役に立つことも、喜んでもらうこともできません。ビジネスとして考えれば、プロダクトアウトの発想であり、大きな投資をして赤字がさらに膨らむという最悪の結果となるでしょう。 そこで私は「お寺もコーポレーション」という信念のもと、マーケティングをしっかりと取り入れました。合同墓についてのマーケティング調査はインターネットを使い、設問に答えてもらうかたちをとりました。 「有名なお寺が都心の好立地にお墓を建てるとして、あなたが入るなら普通の納骨堂、合同墓の納骨堂、どちらがいいですか?」 「合同墓に入るなら、いろいろな人のお骨と一緒になっても抵抗がありませんか?お骨は個別にしてほしいですか?」』、「一般的に寺院はその成り立ちからいって、「自分たちはありがたい教えを与える側」「仏様の教えをお取り次ぎさせていただく立場」という、いわば上から目線の意識が染みついていて、どうしても相手の立場に立って「何が求められているのか?」を慮る(おもんぱかる)ことが苦手です。 しかしそれでは、独りよがりな改革になり、人々の役に立つことも、喜んでもらうこともできません。ビジネスとして考えれば、プロダクトアウトの発想であり、大きな投資をして赤字がさらに膨らむという最悪の結果となるでしょう。 そこで私は「お寺もコーポレーション」という信念のもと、マーケティングをしっかりと取り入れました。合同墓についてのマーケティング調査はインターネットを使い、設問に答えてもらうかたちをとりました」、「マーケティングをしっかりと取り入れた」とはさすがだ。
・『西と東で違う!合同墓のマーケティング  調査の結果、見えてきたのは明らかな地域性でした。東京の人はお骨が混ざることに抵抗感があり、関西では「いろいろな人のお骨と一緒になってもいい」と感じる人が多いのです。 理由は明確で、浄土真宗本願寺派の関西のお寺には、お墓がないところが少なくありません。それらのお寺の門徒は、昔から宗祖親鸞聖人のお墓がある京都の大谷本廟(ほんびょう)に合葬されてきました。また、大阪天王寺の一心寺は、合葬の寺として多くの方のお骨で「骨仏」をつくることで有名で、非常に多くの方が納骨されていることからも合葬が受け入れられている地域性がわかります。 付け加えると、骨壺のサイズも東と西で異なります。西のほうが小さく、東のおよそ半分。東はすべてのお骨を壺に納め、いちばん上に頭蓋骨を載せたりしますが、西は壺に入らないお骨は火葬場で廃棄処分にします。 築地本願寺は東京のお寺であり、多くの人がほかの人とお骨が混じる合葬に抵抗感があることから最終的に「ご遺骨はすべてお預かりし、パウダーにして個別のお骨袋に入れた状態で納骨堂に収蔵する」というかたちに落ち着きました。 合同墓と聞くと奇異に感じる人がいるかもしれませんが、実はすでに全国にあります。なぜなら、先祖代々のお墓でも納めるスペースには限度がある。お骨が多くなりすぎたら古いお骨を出し、どこのお寺にも必ずある合葬墓に入れるというやり方は昔も今も変わりません。 こう考えると時間が経てば誰もが合同墓で弔われるわけですし、もっと長期的な視点に立てばすべては土に還ります。その意味で私は個人的に、「亡き人を思うことに意味があり、お骨そのものにはさほど意味がないのではないか」と考えることもあります。宗派を問わずに「生前の意思」で受け付ける都市部にあるマンションタイプの「これからのお墓」(いわば「未来墓」)。築地本願寺の境内に、2017年11月に礼拝堂を備えた「築地本願寺合同墓」が創建されました。) 前例のないコンセプトであるため、この合同墓をつくるにあたっては、寺院内で議論がありました。プロジェクトメンバーを中心に、マーケティング調査からデザイン、冥加金(みょうがきん=合同墓の契約金)に至るまで、多くの議論を重ねた結果として、スタートすることができました。 境内に建てられた納骨堂は、本堂やインフォメーションセンターとマッチする現代美術館のような趣ですが、内部には礼拝堂もあります。回廊に刻まれているのは、俗名にあたる「個人名」。合同墓への申し込み後、多くの方が、お参りして自分の名前を回廊で確認されています。 また、合同墓と一緒に、帰敬式(ききょうしき)を申し込まれて、仏様の弟子になった証しである「法名(ほうみょう)」を受けられる人もいます。ほかの宗派での戒名に当たる「法名」はその宗派の信者が授与されるものですから、生前に「法名がほしい」という場合、浄土真宗の門徒になる「帰敬式」を受けてもらい、この機会に築地本願寺の門信徒になっていただくのです。 築地本願寺の合同墓の大きな特徴は、「浄土真宗の教えや儀式を尊重いただければ、これまでの宗派を問わずに誰でも入れる」ということです。故人であっても申し込みは法名や戒名がわからなければ、俗名でもまったく問題はありません。これは「あらゆる人(衆生)を救う」という教義からくる浄土真宗のおおらかさ、非常に大きな特徴だと思います。 キリスト教やイスラム教は「異教徒お断り」が原則で、「自殺者は弔えない、同性愛を許さない」といった一神教特有の厳しさがありますが、それに比べると仏教はかなりゆるやかです。浄土真宗は仏教の中でもとくに間口が広い宗派といえます』、「東京の人はお骨が混ざることに抵抗感があり、関西では「いろいろな人のお骨と一緒になってもいい」と感じる人が多い」、「骨壺のサイズも東と西で異なります。西のほうが小さく、東のおよそ半分。東はすべてのお骨を壺に納め、いちばん上に頭蓋骨を載せたりしますが、西は壺に入らないお骨は火葬場で廃棄処分にします」、とは初めて知った。「合同墓の大きな特徴は、「浄土真宗の教えや儀式を尊重いただければ、これまでの宗派を問わずに誰でも入れる」ということです。故人であっても申し込みは法名や戒名がわからなければ、俗名でもまったく問題はありません。これは「あらゆる人(衆生)を救う」という教義からくる浄土真宗のおおらかさ、非常に大きな特徴だと思います。 キリスト教やイスラム教は「異教徒お断り」が原則で、「自殺者は弔えない、同性愛を許さない」といった一神教特有の厳しさがありますが、それに比べると仏教はかなりゆるやかです。浄土真宗は仏教の中でもとくに間口が広い宗派といえます」、なるほど。
・『現代人の意思を尊重できる親鸞聖人の教え  親鸞聖人の言葉を集めた『歎異抄』に、有名な一節があります。 「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」 たとえこの世で殺人を犯した者であっても、念仏を信じ称えていれば死後は浄土に導かれ、そこで阿弥陀如来が成仏させてくれるという教えとして理解されています(より正確には、ここで言う「悪人」とは、煩悩が多くて悟りが開けない人、「善人」とは自らの善で悟りを開こうとする人、という意味で、そのため阿弥陀仏の本願にまかせる思いに欠けてしまいます)。 誤解されやすいのですが、「殺人を許す」というニュアンスではありません。「殺人者は罪人である以前に、罪を犯さずにはいられないほどの煩悩を抱えた弱い人間。そんな人こそ救わなければいけない」という、阿弥陀如来の慈悲の深さを説いたものです。) 阿弥陀如来は、そうした煩悩にとらわれた私たちすべてを残さずに救うと誓いを立てられて、とてつもなく長い時間修行されてその誓願を達成されて仏様になっているのです。したがって、この世で大きな罪を犯した人、殺人者でさえも必ずすくいとってくれることになります。 つまり、殺人者すら拒まないのですから、仏教のほかの宗派だろうと、異教徒だろうと、すべて受け入れる。築地本願寺は宗派からいってもすべての方を受け入れることができるお寺なのです。この大前提があるので、「生前、自分の意思で自分のお墓を決めたい」という現代人の意思を尊重することができます。 合同墓は、築地本願寺がある限り永遠のいわゆる「永代供養墓」(浄土真宗では供養という言葉は、使いませんが、永代にわたる法要を僧侶が営むという一般の用語でここでは永代供養と表現します)で、冥加金は30万円以上。現在のご契約数は1万人を超えており、テレビ東京の「カンブリア宮殿」をはじめ、さまざまなメディアに取り上げられたことで予約が殺到しています』、「「永代供養墓」・・・で、冥加金は30万円以上。現在のご契約数は1万人を超えており、テレビ東京の「カンブリア宮殿」をはじめ、さまざまなメディアに取り上げられたことで予約が殺到しています」、「「永代供養墓」・・・で、冥加金は30万円以上」、とはお得感がある。
・『「環境変化に対応したものが生き残る」  私は当初「合同墓を始めたら、すぐ競合が出てくるだろう」と思っていました。東京だけでも“ブランド寺”はたくさんあります。有名な大企業とて倒産するのですから、そうした大きなお寺も、新たなニーズを創り出さなければいずれ危機を迎えるのは、築地本願寺と同じでしょう。しかし具体的な動きがないのは、やはりどこのお寺も「伝統に守られているから、自分たちは大丈夫だ」と信じ切っている、古い体質があるのかもしれません。 いっぽうでアクセスが便利な小さなお寺が同じことをすれば、そのお寺にとっても門徒にもプラスは大きいのではないでしょうか。従来型の墓所をつくるには土地の確保が大変ですし、管理にも手間がかかります。しかし限定されたスペースにまとまった合同墓であれば、人手が少ないお寺でも十分行き届いたかたちでお守りできます。 「環境変化に対応したものが生き残る」というダーウィンの適者生存の法則は、築地本願寺だけに当てはまるものではないと思うのです』、「競合」が出てこなかったのは、「どこのお寺も「伝統に守られているから、自分たちは大丈夫だ」と信じ切っている、古い体質があるのかもしれません」、「限定されたスペースにまとまった合同墓であれば、人手が少ないお寺でも十分行き届いたかたちでお守りできます」、同感である。

次に、2021年7月29日付けPRESIDENT Onlineが掲載した浄土宗僧侶/ジャーナリストの鵜飼 秀徳氏による「「カプセルの中で自分の体を30日かけて腐らせ堆肥に」究極の自然葬に3カ月で550人も予約が殺到した 園芸用堆肥になるか森林に撒かれる」を紹介しよう。
・『遺体を堆肥にする「コンポスト葬(堆肥葬)」のサービスが昨年末に米国で始まり、予約者が殺到しているという。遺体はマメ科植物のウッドチップが敷きつめられた容器内でバクテリアなどの微生物の力によって分子レベルに分解され、土へと還る。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳氏は「海洋散骨が広まっている中、法整備が整えば、日本にも将来的にコンポスト葬が入ってくる余地はある」という――』、「法整備が整えば、日本にも将来的にコンポスト葬が入ってくる余地はある」、なるほど。
・『コロナ禍で死への意識の高まり「遺体を堆肥にする」サービスが話題  ここ数年、「自然葬」なるカテゴリーの葬送が日本国内で人気を集めている。つまり、「自然に還る」イメージのある「海洋散骨」や「樹木葬」の類である。 だが、米国ではさらに先をいく究極の自然葬「コンポスト葬(堆肥葬)」のサービスが始まり、話題を呼んでいるのをご存じだろうか。新型コロナウイルスによる「死」への意識の高まりが、こうした葬送の多様化の後押しをしているとみられ、今後日本の葬送のあり方にも影響を与えそうだ。 コンポスト葬を開発したのは、米国ワシントン州シアトルのベンチャー企業「RECOMPOSE(リコンポーズ)」だ。コンポスト葬とは、遺体を堆肥にかえる葬送のこと。いや、葬送ともいえない代物だろう。全世界的に、人間社会が醸成してきた葬送文化に一石を投じる「新しい死後のあり方」といえるものになるかもしれない』、「コンポスト葬とは、遺体を堆肥にかえる葬送のこと」、「堆肥にかえる」段階で気持ち悪い現象が起こらないのだろうか。
・『火葬は二酸化炭素を大量に排出し、地球にやさしくない  同社の公式サイトによれば、創業者はカトリーナ・スペード氏という女性。建築を学んでいた大学院時代に、死後のあり方について強く関心を寄せるようになったという。そして、従来の環境負荷の大きい埋葬(土葬や火葬など)に疑問を抱き、2017年にリコンポーズ社を設立した。2020年11月から、コンポスト葬のサービスを本格的に開始した。 米国では1年間でおよそ270万人が死亡し、そのほとんどが火葬されたり、直接土葬されたりしている。火葬は二酸化炭素を大量に排出して、地球温暖化を加速させる元凶となる。土葬も土壌汚染につながる。米国における火葬率はおよそ56%。20年後には78%になると試算されている。 世界の人口は現在78億人。将来的には100億人以上になるともいわれており、火葬の増加、墓地不足など、死後処理を巡って様々な問題が浮上してくることは間違いない。 こうした、地球環境には決して優しくない埋葬の現状を彼女は憂いた。上院議員に働きかけ2019年、ワシントン州議会において人間の堆肥化を可能にする法案可決に導く。2021年に入ってカリフォルニア州、オレゴン州も合法化に至っている。 コンポスト葬の具体的な仕組みはこうだ』、3州で「合法化」されたようだ。
・『ウッドチップ敷いた容器内でバクテリアの力によって分子レベルに分解  葬儀を終えた遺体は、マメ科植物でできたオーガニックウッドチップが敷き詰められた容器に入れられる。さらに堆肥化を促進させるために、二酸化炭素や窒素、酸素、水分などを制御できるカプセルの中に入れられ、そこでバクテリアなどの微生物を増殖させて腐らせる。 遺体は、およそ30日をかけて分子レベルで分解され、土へと還っていく。その後は2~4週間かけて土を硬化させる。 リコンポーズ社のシアトルの施設には、すでに10基のカプセルが用意されている。そのエリアはグリーンハウスと呼ばれ、臭気を防ぐための高性能な空気清浄機などが備わっているという。 最終的には、遺体1体あたり85リットルほどの土壌ができる。この栄養豊富な土壌は、園芸用堆肥に使われたり、ベルズマウンテン保護林に撒かれて森林を構成する要素になったりして、新たな命を育む源泉に生まれ変わる。 同社によれば、火葬や土葬と比較して、コンポスト葬を選択した場合は1トン以上の二酸化炭素を節約できると試算している』、「遺体は、マメ科植物でできたオーガニックウッドチップが敷き詰められた容器に入れられる。さらに堆肥化を促進させるために、二酸化炭素や窒素、酸素、水分などを制御できるカプセルの中に入れられ、そこでバクテリアなどの微生物を増殖させて腐らせる。 遺体は、およそ30日をかけて分子レベルで分解され、土へと還っていく。その後は2~4週間かけて土を硬化させる」、「火葬や土葬と比較して、コンポスト葬を選択した場合は1トン以上の二酸化炭素を節約できると試算」、意外に時間がかかるようだ。
・『遺体1体あたり85リットルの土壌、費用は約60万円、予約殺到550人  気になる価格だが、同社のコンポスト葬は5500ドル(約60万円)。米国では、一般的には火葬費用が6万円程度、葬儀から遺体安置施設の利用料、納棺料、墓地代などを含めるとトータルで死後の費用は平均550万円ほどかかる。その点、コンポスト葬では火葬費や墓地、墓石代などが不要で、割安感はありそうだ。 米国の宗教専門メディア「Religion News Service」によれば、サービス開始から3カ月後の2021年2月には世界各国からの予約が550人に達したという。今後はさらに増えていきそうである。 なぜなら、欧米では徹底したエコロジストは一定数いるとみられるからだ。近年のSDGs(持続可能な開発目標)の広がりなどによって、葬送のあり方を再考する議論が深まりつつあった。 そこへ、新型コロナウイルスの爆発的蔓延が追い討ちをかけた。現在、米国での死者の合計はおよそ61万人。遺体安置施設はあふれかえり、葬儀や埋葬もままならない状況が続いた。 通常の弔いができなくなる中、哲学的に死をとらえる人が増えた。その中で、「死後の自然回帰」を強く支持する人が現れてきているのだろう』、「コンポスト葬は5500ドル(約60万円)」、「米国では、一般的には火葬費用が6万円程度、葬儀から遺体安置施設の利用料、納棺料、墓地代などを含めるとトータルで死後の費用は平均550万円ほどかかる。その点、コンポスト葬では火葬費や墓地、墓石代などが不要で、割安感はありそうだ」、「墓地、墓石代」は本人を偲ぶよすがとして必要なのではなかろうか。「サービス開始から3カ月後の2021年2月には世界各国からの予約が550人に達した」、かなりの人気のようだ。
・『日本でコンポスト(堆肥)葬はOKなのか、流行る可能性はあるのか?  では、日本でコンポスト葬が流行る可能性はあるのだろうか。私は時期尚早ではあるものの、仮に法整備が整えば、将来的にコンポスト葬が入ってくる余地はあると考える。 出典:堆肥葬を報じる「The Seatlle Times」(2021.1.22)のページより出典:堆肥葬を報じる「The Seatlle Times」(2021.1.22)のページより まず、法律の問題である。今のところ、コンポスト葬は日本では非合法に当たりそうだ。山野などに個人が勝手に遺体(遺骨、堆肥化した遺体を含む)を撒けば、刑法190条で定めている死体遺棄罪(3年以下の懲役)に觝触する。 一方で散骨は、日本各地で実施されている。「樹木葬」「自然葬」などの名称で呼ばれる地上型の散骨の場合、都道府県知事の許認可を得た霊園内に造られた特定の場所でのみ、散骨が許されている。 たとえば富士山麓などの風光明媚な土壌に眠りたい、自宅の庭に埋まりたい、あるいは田畠の肥料になりたい、と願っても実現することはできない。 日本における多くの樹木葬の場合、霊園内の敷地の隅に樹木や草木を植え、カロートと呼ばれる容器に遺骨を入れるスタイルが一般的だ。だがこれはあくまでも、「自然に還れるイメージ」を抱ける葬送にすぎない。その点、コンポスト葬は完全に自然回帰型の葬送法なので、斬新である。 海洋散骨の場合は、確かに「自然に還れる」埋葬法ではある。近年では1996(平成8)年に亡くなった漫才師の故横山やすしが、無類の競艇ファンだったことから死後、遺骨が広島県の宮島競艇場の海に撒かれた。 1998(平成10)年には自殺したロックバンド、X JAPANのギタリストhideの遺骨の一部がロサンゼルス近海に流されている。2011(平成23)年に亡くなった落語家の立川談志は、生前より散骨を希望していたことから、ハワイの海に撒かれた』、「海洋散骨」は確かにかなりの有名人が利用しているようだ。
・『現在、年間死者数の1%が海洋散骨、堆肥葬受け入れの「素地」はある  日本では芸能人が先行する形で海洋散骨が始まり、ここ10年ほどで一般化した。現在、年間死者数の1%程度が海洋散骨を選択しているといわれている。しかし、海洋散骨とコンポスト葬は、遺族感情としてはかなり異なる。海洋散骨を望むような人が、コンポスト葬を選択肢に入れるかどうか。 むしろコンポスト葬は土葬に近い。しかし土葬への敬遠意識は、日本人はとても強い。日本では火葬率が99.9%と世界一の水準にあり、相対的に土葬へのタブー意識が強まってきているのだ。 九州でムスリム用の土葬墓を造成する計画が、住民の反対運動によって頓挫しているケースがある(プレジデントオンライン2020年12月15日「住民反対運動も“世界一の火葬大国日本”で在日外国人が望む土葬を受け入れられるか」)。コンポスト葬は、土葬に近い“生々しい”葬送なのがネックだ。 国民の宗教感情の問題もある。海洋散骨が人気といっても、まだまだ多く日本人は遺骨や墓を大事にし、一周忌、三回忌といった追善法要を実施しているのが実情だ。 また、世間体もある。特にイエやムラ意識が強い地方在住の場合、コンポスト葬を選択した時の地域社会の目はかなり厳しそうだ。 だが、葬送儀礼が縮小傾向にあるのは紛れもない事実。日本でも樹木葬や海洋散骨を選択する人々が増えてきている実情を踏まえれば、コンポスト葬受け入れの「素地」は、着々と進んでいるようにも思える』、「コンポスト葬は土葬に近い。しかし土葬への敬遠意識は、日本人はとても強い。日本では火葬率が99.9%と世界一の水準にあり、相対的に土葬へのタブー意識が強まってきている」、ただし「日本でも樹木葬や海洋散骨を選択する人々が増えてきている実情を踏まえれば、コンポスト葬受け入れの「素地」は、着々と進んでいるようにも思える」、私個人は、「樹木葬や海洋散骨」には抵抗感はないが、「コンポスト葬」は気持ち悪く、嫌だ。日本では導入論はまだのようだが、どうなるのだろうか。

第三に、本年2月18日付け現代ビジネス「葬儀業者が“ケチった”せいでご遺体から出血が止まらない…火葬場職員が見た「ヤバい業者」の実態」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/103703?imp=0
・『これまでに1万人のご遺体を見送った下駄華緒さんが火葬場職員時代の体験を明かし、注目を集めているYouTubeチャンネル「火葬場奇談」。その壮絶な体験は「最期の火を灯す者 火葬場で働く僕の日常」(原案:下駄華緒/漫画:蓮古田二郎)として漫画化され、話題を集めている。 寄せられた反響について下駄華緒さんはこう話す。 「感想もそうなのですが、思っていた以上に感謝の声が多くてびっくりしました。1番数が多く頂いたのは、本を読んでから自分の親族のお骨あげに行かれた方が、その時の記憶が鮮明に残り良かったというお声です。今まで何も知らずに行った時は、なかなか記憶に残らなかったそうですが、本で知識を得てから行かれたお骨あげは『記憶に残る』ということです」 前編【ご遺体から出血が止まらず、枢の外まで流れ出て…火葬場職員が思わず仰天した壮絶な経験】では、出血が止まらなくなってしまったご遺体のエピソードを取り上げた。その根本原因は病院での不適切な処置にあったのだが、それだけではなかった――』、何なのだろう。 
・『ケチな葬儀業者のせいで…  心臓に疾患を抱えた人が胸に埋め込むペースメーカーだが、火葬すると轟音とともに爆発するため、亡くなった後にご遺体から取り除いてくれる病院もある。しかしその後の縫合が不十分だと、ご遺体から血が流れ出てしまうこともあるのだ。下駄華緒さんが勤める火葬場に運ばれてきてのも、そのようなご遺体だった。 しかし、血が流れ出てしまった原因はそれだけではない。なんと葬儀業者が、枢に入れるべきドライアイスを“ケチった”ことも理由の一つだという。 たいていの場合、枢には15kgほどのドライアイスを入れるという。もちろんご遺体を冷やして腐乱を防止するのが目的だが、同時にご遺体を凍結させて、死後に体内から体液が流れ出てしまうのを防ぐ意味もあるのだ。 なんとそのご遺体から出血が止まらなかったのは、担当した葬儀業者が枢に入れるドライアイスを“ケチった”ためだったという。経費削減が目的だというが、ドライアイスの量を減らしても利益には大して影響がない。 しかしこの業者の「手口」は、それだけではなかった』、「ご遺体から出血が止まらなかったのは、担当した葬儀業者が枢に入れるドライアイスを“ケチった”ためだった」、「この業者の「手口」は、それだけではなかった」、何だったのだろう。
・『大型バスにたったの2人  同じ葬儀業者がよく使うのが、「不必要な高額請求」という手口だ。 「火葬場職員は、ご遺族様が乗っていらした車のサイズを見て準備を変更することがよくあります。たとえば大型バスでいらした場合、ご遺族様が大人数だと推測して追加で焼番台を用意するんです」(下駄さん) その日も下駄さんは駐車場に入ってくる大型バスを目にして、あらかじめ準備を変更しようとした。しかしそんな下駄さんを先輩職員が止める。 よく見ると、数十人は乗れそうな大型バスから降りてきたのは、たった2人だけだったのだ。) 先輩職員によると、この手口は同じ葬儀業者の「常套手段」なのだという。参加者が数人の葬儀でも、不必要なほど大きなバスで火葬場まで送迎することで、わざと高額な車両代を遺族に請求しているのだ。 故人との別れの場であるはずの葬儀。ほとんどの葬儀業者は、我々が心残りなくお別れできるように心を砕いてくれる誠実な人ばかりである。しかし悲しいことに、大切な人を失って弱った心の隙間に付け込んで、1円でも多くの利益を得ようと企む業者も中には存在しているのだ。 人生の最後にまつわる火葬場でのエピソード。今一度「生きること」や「命の尊さ」について考えてみるきっかけになるかもしれない』、「悲しいことに、大切な人を失って弱った心の隙間に付け込んで、1円でも多くの利益を得ようと企む業者も中には存在しているのだ」、東京での「葬儀業者」はもっと大規模で、そんな悪事を働く余地もなさそうだが、地方の小規模業者のなかには悪徳業者がいるのかも知れない。
タグ:葬式・墓 (その2)(築地本願寺、「30万円合同墓」に予約殺到の理由  「子どもに迷惑をかけたくない」中高年に大人気、「カプセルの中で自分の体を30日かけて腐らせ堆肥に」究極の自然葬に3カ月で550人も予約が殺到した 園芸用堆肥になるか森林に撒かれる、葬儀業者が“ケチった”せいでご遺体から出血が止まらない…火葬場職員が見た「ヤバい業者」の実態) 東洋経済オンライン 安永 雄彦氏による「築地本願寺、「30万円合同墓」に予約殺到の理由  「子どもに迷惑をかけたくない」中高年に大人気」 「安永雄彦氏」は銀行出身、ケンブリッジ大学で経営学の博士号を取得した極めてイノベーティブな俊才で、私が注目している人材の1人だ。 自分自身にも切実な問題だったので、よく出来た案になったのだろう。 「一般的に寺院はその成り立ちからいって、「自分たちはありがたい教えを与える側」「仏様の教えをお取り次ぎさせていただく立場」という、いわば上から目線の意識が染みついていて、どうしても相手の立場に立って「何が求められているのか?」を慮る(おもんぱかる)ことが苦手です。 しかしそれでは、独りよがりな改革になり、人々の役に立つことも、喜んでもらうこともできません。ビジネスとして考えれば、プロダクトアウトの発想であり、大きな投資をして赤字がさらに膨らむという最悪の結果となるでしょう。 そこで私は「お寺もコーポレーション」という信念のもと、マーケティングをしっかりと取り入れました。合同墓についてのマーケティング調査はインターネットを使い、設問に答えてもらうかたちをとりました」、「マーケティングをしっかりと取り入れた」とはさすがだ。 「東京の人はお骨が混ざることに抵抗感があり、関西では「いろいろな人のお骨と一緒になってもいい」と感じる人が多い」、「骨壺のサイズも東と西で異なります。西のほうが小さく、東のおよそ半分。東はすべてのお骨を壺に納め、いちばん上に頭蓋骨を載せたりしますが、西は壺に入らないお骨は火葬場で廃棄処分にします」、とは初めて知った。 合同墓の大きな特徴は、「浄土真宗の教えや儀式を尊重いただければ、これまでの宗派を問わずに誰でも入れる」ということです。故人であっても申し込みは法名や戒名がわからなければ、俗名でもまったく問題はありません。これは「あらゆる人(衆生)を救う」という教義からくる浄土真宗のおおらかさ、非常に大きな特徴だと思います。 キリスト教やイスラム教は「異教徒お断り」が原則で、「自殺者は弔えない、同性愛を許さない」といった一神教特有の厳しさがありますが、それに比べると仏教はかなりゆるやかです。浄土真宗は仏教の中でもとくに間口が広い宗派といえます」、なるほど。 「「永代供養墓」・・・で、冥加金は30万円以上。現在のご契約数は1万人を超えており、テレビ東京の「カンブリア宮殿」をはじめ、さまざまなメディアに取り上げられたことで予約が殺到しています」、「「永代供養墓」・・・で、冥加金は30万円以上」、とはお得感がある。 「競合」が出てこなかったのは、「どこのお寺も「伝統に守られているから、自分たちは大丈夫だ」と信じ切っている、古い体質があるのかもしれません」、「限定されたスペースにまとまった合同墓であれば、人手が少ないお寺でも十分行き届いたかたちでお守りできます」、同感である。 PRESIDENT ONLINE 鵜飼 秀徳氏による「「カプセルの中で自分の体を30日かけて腐らせ堆肥に」究極の自然葬に3カ月で550人も予約が殺到した 園芸用堆肥になるか森林に撒かれる」 「法整備が整えば、日本にも将来的にコンポスト葬が入ってくる余地はある」、なるほど。 「コンポスト葬とは、遺体を堆肥にかえる葬送のこと」、「堆肥にかえる」段階で気持ち悪い現象が起こらないのだろうか。 3州で「合法化」されたようだ。 「遺体は、マメ科植物でできたオーガニックウッドチップが敷き詰められた容器に入れられる。さらに堆肥化を促進させるために、二酸化炭素や窒素、酸素、水分などを制御できるカプセルの中に入れられ、そこでバクテリアなどの微生物を増殖させて腐らせる。 遺体は、およそ30日をかけて分子レベルで分解され、土へと還っていく。その後は2~4週間かけて土を硬化させる」、 「火葬や土葬と比較して、コンポスト葬を選択した場合は1トン以上の二酸化炭素を節約できると試算」、意外に時間がかかるようだ。 「コンポスト葬は5500ドル(約60万円)」、「米国では、一般的には火葬費用が6万円程度、葬儀から遺体安置施設の利用料、納棺料、墓地代などを含めるとトータルで死後の費用は平均550万円ほどかかる。その点、コンポスト葬では火葬費や墓地、墓石代などが不要で、割安感はありそうだ」、 「墓地、墓石代」は本人を偲ぶよすがとして必要なのではなかろうか。「サービス開始から3カ月後の2021年2月には世界各国からの予約が550人に達した」、かなりの人気のようだ。 「海洋散骨」は確かにかなりの有名人が利用しているようだ。 「コンポスト葬は土葬に近い。しかし土葬への敬遠意識は、日本人はとても強い。日本では火葬率が99.9%と世界一の水準にあり、相対的に土葬へのタブー意識が強まってきている」、ただし「日本でも樹木葬や海洋散骨を選択する人々が増えてきている実情を踏まえれば、コンポスト葬受け入れの「素地」は、着々と進んでいるようにも思える」、私個人は、「樹木葬や海洋散骨」には抵抗感はないが、「コンポスト葬」は気持ち悪く、嫌だ。日本では導入論はまだのようだが、どうなるのだろうか。 現代ビジネス「葬儀業者が“ケチった”せいでご遺体から出血が止まらない…火葬場職員が見た「ヤバい業者」の実態」 何なのだろう。 「ご遺体から出血が止まらなかったのは、担当した葬儀業者が枢に入れるドライアイスを“ケチった”ためだった」、「この業者の「手口」は、それだけではなかった」、何だったのだろう。 「悲しいことに、大切な人を失って弱った心の隙間に付け込んで、1円でも多くの利益を得ようと企む業者も中には存在しているのだ」、東京での「葬儀業者」はもっと大規模で、そんな悪事を働く余地もなさそうだが、地方の小規模業者のなかには悪徳業者がいるのかも知れない。
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高齢化社会(その18)(和田秀樹:酒・タバコの我慢は健康寿命に悪影響? どんどん老いる人の特徴は「おむつや杖を嫌がる」、日本と大違い! イギリスで高齢ドライバー「免許返納しろ」の大合唱が起こらないワケ、「高齢者は集団自決すべき」成田悠輔氏の発言に養老孟司氏ら“平均84歳”知識人が喝!「問題にする気も起きない」)) [社会]

高齢化社会については、昨年5月12日に取上げた。今日は、(その18)(和田秀樹:酒・タバコの我慢は健康寿命に悪影響? どんどん老いる人の特徴は「おむつや杖を嫌がる」、日本と大違い! イギリスで高齢ドライバー「免許返納しろ」の大合唱が起こらないワケ、「高齢者は集団自決すべき」成田悠輔氏の発言に養老孟司氏ら“平均84歳”知識人が喝!「問題にする気も起きない」)である。

先ずは、昨年6月5日付けデイリー新潮が掲載した精神科医の和田秀樹氏による「酒・タバコの我慢は健康寿命に悪影響? どんどん老いる人の特徴は「おむつや杖を嫌がる」」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/06051058/?all=1
・『豊かな老後を過ごすためにすべきことを説き、ベストセラーとなっているのが『80歳の壁』(幻冬舎新書)である。その著者で老年医学の第一人者・和田秀樹氏は、「楽な生き方」の実践こそが「健康長寿」の秘訣と明かす。読めば目からうろこのエッセンスが満載の特別講義をお届けする。 たとえば、高齢になってもタバコをやめない人がいたとします。昨今の風潮から、周りの人たちは「もう年なんだから」と禁煙を勧めますが、それまでタバコを嗜(たしな)んでいた人からすれば、どうしても我慢が生じます。 40~50代くらいまでの人なら健康維持のために効果的かもしれません。しかし、70~80代が禁煙するメリットと、我慢で生じるストレスのデメリットをてんびんにかけて、どちらがより健康に良くないか尋ねられたら、私は医師として後者だと助言します。実際、私の勤務していた老人ホームでの調査結果によれば喫煙者の群と非喫煙者群で生存曲線に大差がありませんでした。おそらく、煙草で体を壊す人は早くに亡くなってしまいますから、喫煙者でも80代まで元気なら、無理してやめる必要はないでしょう。 やりたいことがあるのに見栄を張って我慢をする。当然ここにはストレスが発生し、免疫機能に悪影響を与えます。逆に幸せな気分でいる時は、がん細胞を殺してくれる免疫細胞であるNK細胞の活性が上がるということが指摘されています。 高齢者が健康のためにと我慢して、結局ストレスで体を壊しては意味がありません。それよりも、自分がやりたいことを優先して、ストレスなく「楽に」「楽しんで」生きた方が幸せな人生だったといえるでしょうし、「健康寿命」にもいいのではないか。それが今回、私がお話ししたいテーマです』、「40~50代くらいまでの人なら健康維持のために効果的かもしれません。しかし、70~80代が禁煙するメリットと、我慢で生じるストレスのデメリットをてんびんにかけて、どちらがより健康に良くないか尋ねられたら、私は医師として後者だと助言します」、私の場合は、軽い肺気腫になっていたので、やむなく禁煙した。
・『アリとキリギリス、どちらが幸せ?  日本人の平均寿命(2020年統計)は男性81.64歳、女性87.74歳で世界でもトップクラスを誇りますが、心身共に健康でいられる「健康寿命」(19年統計)は男性72.68歳で女性75.83歳と大きな隔たりがあります。平均寿命と健康寿命の差は男性で約9年、女性で約12年あるわけですが、それは病気や認知症などで誰かに介助されながら生きる平均期間を表します。充実した70代、80代になれるか否かは、この期間を元気で過ごせるかどうかにかかっている。それを私は拙著『80歳の壁』を通じて述べてきました。 それだけ聞くと、多くの人は“自分はまだ大丈夫”と老いた現実を認めようとせず、いかに健康を保つかを気にし始めます。食事制限で摂生に努めるなどしてストイックな毎日を過ごす方もいますが、日本人はアリとキリギリスの寓話でいえば、前者のような生き方こそ美徳と思いがちです。 目標に向かいコツコツと我慢強く頑張る姿は、傍目からは素晴らしいと映るかもしれません。けれど、見方を変えればアリは禁欲的に生活するあまり、楽しむことを知らずに死んでいく。片やキリギリスは人生の最期まで楽しんで死んでいったと解釈することもできます。共に最後は死にゆく運命なら、どちらが果たして幸せな人生といえるのか。現役世代ならコツコツとアリのように働くのが大事でも、退職後はキリギリスのように楽をしてもバチはあたらないと思います』、「共に最後は死にゆく運命なら、どちらが果たして幸せな人生といえるのか。現役世代ならコツコツとアリのように働くのが大事でも、退職後はキリギリスのように楽をしてもバチはあたらないと思います」、その通りだ。
・『「衰える」と「老いへの敗北」は違う  高齢者専門の精神科医として約35年間、6千人を超える患者を診てきた経験でいえば、身体に生じた衰えを受け入れたくない人たちは、本来必要であっても杖やおむつといった“老人の象徴”を拒絶して無理する傾向にあります。 しかし、「衰える」ことは決して「老いに敗北した」という意味と同義ではありません。筋力や認知機能の低下など、加齢による衰えはあらがってもやってくる。そうした現実を受け入れず、我慢を重ねて亡くなるより、足腰が弱くなったら杖をつき、耳が遠くなれば補聴器をつけ、使えるモノはうまく利用して楽をした方が、活動的で若々しく生きられるはずです。 大人用おむつを勧められると、自分が老人扱いされたと感じて露骨に嫌がる方も多いと思いますが、そうした人は失禁を恐れるあまり電車やバスにも乗りにくくなり、ちょっとした遠出は難しくなる。結果、出不精になって老いが一層進むリスクを考えれば、おむつをはいた方がぐっと行動範囲も広がります。「できないこと」は無理せず諦めて、もっと「楽に生きる」ことの方が、より有意義な人生を送れると思いませんか』、「大人用おむつを勧められると、自分が老人扱いされたと感じて露骨に嫌がる方も多いと思いますが、そうした人は失禁を恐れるあまり電車やバスにも乗りにくくなり、ちょっとした遠出は難しくなる。結果、出不精になって老いが一層進むリスクを考えれば、おむつをはいた方がぐっと行動範囲も広がります。「できないこと」は無理せず諦めて、もっと「楽に生きる」ことの方が、より有意義な人生を送れる」、その通りだ。
・『人生を楽しむ余地  さまざまな公的福祉のお世話になるのを恥ずかしいと思う高齢者もいますが、使えるものは利用するとの観点に立てば、そんなことはありません。これまで立派に保険料や税金を納め続けてきたわけですから、介護保険や生活保護だって利用するのは当然です。権利を行使する資格を持ちながら、お上の世話になるのはどうかと我慢するのはおかしな話です。 デイサービスやヘルパーも同様で、まだまだ自活できると努力するのは大切だし立派なことですが、若い頃のように何も不自由なく暮らせるのは、70代くらいまでなのが実状です。80代を迎えれば避けようのない衰えが待っています。 ならば、無用な意地を張らず他人の力を借りることができれば、その分人生を楽しむ余地が出てきます。デイサービスなどの施設に通って、入所者同士で語り合い合唱したりすれば脳が刺激される。面倒な家事からも解放されて、好きなことに使える時間も増えます。 さらには多くの高齢者が楽に生きられない要因のひとつとして、健康診断の影響は大きい。診断における正常値は、あくまで統計的なはずれ値を除いたものであって、明確な根拠のあるものではありません。当然ながら個人差があり、基準値を超えたから病気になる、基準値内だから自分は大丈夫とはならないのです。80代を超えて元気なら「自分がエビデンス」だと胸を張り、多少の数値の変動があったからといって過度におびえることはないと思います』、「80代を超えて元気なら「自分がエビデンス」だと胸を張り、多少の数値の変動があったからといって過度におびえることはないと思います」、確かにその通りだ。
・『年齢プラス90の血圧は問題ない  たしかに70代ともなれば、大抵の人は血管の壁が厚くなって動脈硬化の状態になります。そのため、ある程度の血圧や血糖値がないと脳などに酸素や栄養が届きにくくなる。それなのに、多少血圧が高いからといって降圧剤で無理に血圧を下げれば、体へ栄養が行き渡らず結果として頭がぼんやりしてだるくなります。 そうした薬を服用する毎日から解放されたら、もっと人生が楽になると思いませんか。もちろん極度の高血圧は問題ですが、今の130以上を高血圧とする基準はあまりに低く設定されていると思います。日本人の死因で一番多かったのは、1980年まで脳血管疾患でした。この原因として高血圧がやり玉に挙げられてきましたが、栄養状態のよくなった今では多少血圧が高くてもそう簡単に脳の血管は破れません。高齢者でも年齢プラス90くらいの血圧値であれば、まず問題ないと考えてください。 血圧と同じくコレステロール値も下げろと言われますよね。動脈硬化の原因ではありますが、他方でコレステロール値が高い人ほどがんになりにくいというデータも存在します。日本では動脈硬化が一因となる心筋梗塞で亡くなる人と比べたら、がんで命を失う人の数の方が12倍も多い。またコレステロールは細胞膜の材料としても用いられるため、コレステロール値の低い人ほど免疫機能が落ちるといわれます。 寝たきりのリスク(加えて男性ホルモンを形成する上で欠かせない物質でもあるので、コレステロールを下げる薬を飲むとEDになりやすく、意欲や活力低下を招く。値を下げようと無理して肉を抜くよりも、食べたいものを口に入れた方がよほど健康的な老後を送れると思います。 食生活では塩分や糖分の摂取も控えるよう言われることが多いですよね。でも、年を重ねると舌の味を感じる機能である「味蕾(みらい)」が減少するため、濃い味付けを好むようになります。 ですから過剰に制限をかけるのはご法度です。高齢になるほど体に塩分を保持する能力が落ちます。これからの季節は発汗でも失われるので、この状態が続くと低ナトリウム血症を引き起こしてけいれんや意識障害に陥る。糖分も血中のブドウ糖濃度が下がれば頭がぼんやりしてくる。降圧剤を服用しているなら尚更で、運転中にこうした事態が起きれば事故を起こしかねません。 無理してダイエットに励んでいる人は再考を勧めます。50~60代の方であれば食事制限で動脈硬化のリスクを下げておくことは、その後の人生に有用かもしれません。ただ70代を過ぎると消化機能が落ちて食べる量も減ってはいませんか。 実は「最も長寿の群」はBMIの値が20~30の人たち。BMI35以上の群でもやせ型より長寿とされています。つまりは小太りくらいの体型の方が長生きしやすいのに、食事量を減らせば、栄養不足となって免疫機能も落ちるでしょう。 特に肉の摂取量を落とせばタンパク質不足から筋量低下に陥り、転倒して寝たきりのリスクも高まります。高齢者は健康のために無理して野菜中心の食事に変えがちですが、本末転倒になる可能性もあります』、「50~60代の方であれば食事制限で動脈硬化のリスクを下げておくことは、その後の人生に有用かもしれません。ただ70代を過ぎると消化機能が落ちて食べる量も減ってはいませんか。 実は「最も長寿の群」はBMIの値が20~30の人たち。BMI35以上の群でもやせ型より長寿とされています。つまりは小太りくらいの体型の方が長生きしやすいのに、食事量を減らせば、栄養不足となって免疫機能も落ちるでしょう・・・高齢者は健康のために無理して野菜中心の食事に変えがちですが、本末転倒になる可能性もあります」、なるほど。
・『一人飲みに要注意  冒頭でタバコの話をしましたが、最後にお酒との付き合い方を考えてみましょう。ご高齢の方は若い人に比べてアルコールを分解する能力が下がるため酔いやすく、結果的に飲み過ぎにはなりにくいので禁酒にこだわる必要はありません。ただし、お酒はどうしても依存症のリスクが高いので程々が大切。一人飲みだと、飲み過ぎた時にとめてくれる人がいないので、お酒が好きな人は気を付けた方がいいでしょう。おすすめなのは気の合う人と飲むこと。飲食店の制限も緩和された今、友と語らいながら飲むことは刺激になりますし、外に出ることでリフレッシュにもなります。 これを機に人間関係を見直すのも大切です。現役時代なら嫌な人と付き合う意味もあったでしょうが、リタイアしたら無理して関係を続ける必要はありません。限られた余生を自分のために使って誰が文句を言いますか。高齢者にとっては、今こそ悠々自適に過ごすチャンスなのです。 (和田秀樹氏の略歴はリンク先参照)「現役時代なら嫌な人と付き合う意味もあったでしょうが、リタイアしたら無理して関係を続ける必要はありません。限られた余生を自分のために使って誰が文句を言いますか。高齢者にとっては、今こそ悠々自適に過ごすチャンスなのです」、その通りだ。

第二に、本年2月16日付けMerkmalが掲載した日英比較ライターの鳴海汐氏による「日本と大違い! イギリスで高齢ドライバー「免許返納しろ」の大合唱が起こらないワケ」を紹介しよう。
https://merkmal-biz.jp/post/33326
・『近年関心が高まっている問題のひとつに「高齢ドライバーによる交通事故」がある。 東京・池袋で2019年4月に起きた高齢ドライバーによる交通死亡事故などを受けて、2022年5月から、75歳以上で一定の違反歴のある高齢運転者に対する運転技能検査が導入された。「一時停止ができるか」「信号を守れるか」といった運転技能を採点。不合格の場合は何度でも再受験できるものの、第1種運転免許では70点以上でないと合格とならないということで、ある程度の事故抑止効果が見込まれている。 高齢化が進むなかで、高齢者の運転能力の衰えへの対応や、免許返納などの対策が重要になってきているが、これらは非常にデリケートなテーマでもある。海外ではどのように受け止められているか見てみよう』、興味深そうだ。 
・『驚くべきイギリスの高齢者の運転免許保有率  海外で高齢の運転者といえば、前イギリス女王夫妻(ともに故人)が思い出される。エリザベス女王は92歳、フィリップ殿下は97歳まで運転していたことに驚く人は少なくないだろう。 イギリスには90 歳以上の運転免許保有者が13万4000人以上いるのだという。持っている人数であって実際に運転していることを示すわけではないが、85歳以上では、2025 年までに100 万人を超えると予測されている(2022年10月24日付、『Express』)。イギリスの約2倍の人口を持つ日本において、2021年の時点で85歳以上の運転免許保有者が71万人であることと比べれば、その多さが分かる。 超高齢のドライバーの人数だけでなく、興味深い数字がもうひとつある。イギリスでは2020年の時点で、70歳以上の運転免許保有者は560万人(この10年で2倍に増えた)なのだが、これはこの年代の 62% が免許証を持ち続けているという計算になる。日本では、2021年の70歳以上の運転免許保有者は1285万人で、この年代の45%に過ぎない。)』、「85歳以上の運転免許保有者が71万人」、日本と比べたら極めて多い。
・『イギリスの高齢者の免許更新制度  イギリスの高齢者の免許保有率の高さは、免許更新が簡単であることも影響していそうだ。日本のように運転免許センターや警察署に出向いて検査や講習を受ける必要はない。 運転免許はいったん70歳の区切りがあるのだが、それ以降も運転する意思がある場合は、DVLA(運転免許庁)にオンラインか郵送で申請する。料金は無料。3年ごとに更新していく。 手続きは非常に簡単であるが、免許更新について事故防止への対策はいくつか講じられている。 高齢者に限ったことではないが、必要に応じてメガネやコンタクト・レンズを着用した状態で、晴れた日に20m離れた車のナンバー・プレートを読み取る視力基準を満たしている必要がある。 運転に影響を与えるような持病があれば、申告する必要がある。これを怠った場合は最大1000ポンドの罰金が科される可能性がある。事故が発生すれば起訴される場合もある。 本人が運転能力に不安を感じた場合はどうしたらいいのか。まずは主治医に相談することが推奨されている。また秘密保持が徹底されているいくつかの団体に、客観的に運転を判断してもらう方法もある。 このようにイギリスでは、高齢者の運転免許について国が取り締まるというよりも、自己の判断に委ねられている、個人の運転する自由が尊重されているといった印象が強い。また日本ほど、「免許を返納しなければいけない」という同調圧力もないようだ。 高齢化が進むなかで、高齢者の運転能力の衰えへの対応や、免許返納などの対策が重要になってきているが、これらは非常にデリケートなテーマでもある。海外ではどのように受け止められているのだろうか』、「イギリスでは、高齢者の運転免許について国が取り締まるというよりも、自己の判断に委ねられている、個人の運転する自由が尊重されているといった印象が強い。また日本ほど、「免許を返納しなければいけない」という同調圧力もないようだ」、自己責任原則が徹底されており、「自己の判断に委ねられている」、その通りだ。
・『イギリスでの高齢者に関する受け止め方  2021年のイギリスにおける車の衝突事故数は、70歳以上が起こしたものは8232件で全体の6%にすぎなかった。最多である30代の2万6195件と比べ、ずっと少ない。  走行距離や運転する機会が少ないことも考えられるので、「高齢者の運転が安全だ」とは言い切れないが、件数が少ないのは確かである。 英国王立事故防止協会(The Royal Society for the Prevention of Accidents) の高齢運転者向けホームページでは、「年を取るほど、ドライバーとしての経験が増えます。これは、年配のドライバーが、より安全で思いやりのあるドライバーになる傾向がある理由のひとつです」といった表現が見られる。 ここでは、免許返納の検討をすぐに勧めるのではなく、運転に関連する能力の衰えについては、再訓練であったり、全周視野を補助する補助ミラーや駐車センサーを付けたりといったことで改善できないかと提案している。夜道やラッシュアワー時など、ストレスがかかる運転を避けるなどして、より長く運転していけるよう提案している。 「運転に安全な年齢に上限はないと考えています」といった表記からは、高齢者を十把ひとからげにしない意識が感じられる。 イギリスでも、「運転について年齢制限を導入すべきではないか」という論争があるのは確かである。しかしタブロイド紙のデーリー・エクスプレスのウェブ版が2023年2月に行った「85歳で免許返納すべきか」というアンケートでは、回答者3462人中91%が「あからさまな差別」として反対した。日本とは世論が大きく違っている。 そして免許返納の問題は、社会的タブーであるとされている。とくに男性については運転が自己と深く結びついているという見方がある(2022年10月26日付、『BBC』)。 日本では2022年5月から、自動ブレーキなどを備えた「安全運転サポート車」だけを運転できる免許制度が始まるなど、技術の進歩によって運転能力の衰えを補う取り組みも始まった。 現在は、世界全体で自動運転が浸透するまでの過渡期にある。免許返納の前にできること、今すぐ手に入れられる技術や環境の改善に目を向けていくことが、今求められているのではないだろうか』、日本でも「事故率」など事実に基づいた議論よりも、池袋の事故の影響で冷静な議論がないままに、免許更新時の認知症試験など規制強化に進んだのは残念だ。

第三に、2月21日付けFlash「「高齢者は集団自決すべき」成田悠輔氏の発言に養老孟司氏ら“平均84歳”知識人が喝!「問題にする気も起きない」」を紹介しよう。
・『「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」 こんな過激な主張の発言者は、経済学者で米イェール大学助教授の成田悠輔氏(38)。 東大時代、きわめて優秀な卒業論文に与えられる大内兵衛賞を受賞し、最近は個性的なメガネをトレードマークにバラエティ番組にも引っ張りだこ。マスコミがもてはやすスター学者が、冒頭のような主張をABEMAの番組やYouTubeで繰り返し述べ、大騒動になっているのだ。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」(2月12日付)が一連の発言を「このうえないほど過激」と報じると、イェール大学は公式HPの成田氏のプロフ欄に「大学の見解を代表するものではない」と、わざわざ注釈を入れた。 では、自決や切腹を求められた側はどう受け止めたのか。まずは東京大学名誉教授で『バカの壁』(新潮新書)著者の養老孟司氏(85)に聞いたーー。 「彼の発言にはいろんな背景があると思いますが、ひとつは、社会は“順送り”だから仕方がないという感覚が消えてしまっているんですね。 今の若い人は、自分たちの世代ばかりが損をしているという感覚になっているんじゃないか。ウザくて邪魔な年寄りが大勢いるせいで、若い人が割を食っていると思っている。でも実際は、世代間で順送りになっているんです。 僕は、定年前にさっさと大学を辞めてしまいました。大学ってのは、若い人が下に溜まっている場所なんです。「終活」をしている人も、子供に迷惑をかけたくないという思いがあるのでしょう。これも順送りの考え方です。 しかし、今は長い目で世の中を見ることができない人が増えた。今だけ、カネだけ、自分だけしか見えない。 そりゃ、“今”という断面で切ったら、不公平はいっぱいありますよ。しかし、長い目で見ると、結局は順送りになっているんだということが、彼にはなかなか想像がつかないのだろうけど。 彼の発言については、問題にする気も起きません。放っておけばいいと思います。でも、世の中は順送りなんだという、このことだけは強調したいですね」 早稲田大学名誉教授で、社会心理学者として『テレフォン人生相談』(ニッポン放送)のパーソナリティを40年以上務める加藤諦三氏(85)は、成田発言をこう分析する。 「こういう発言をするのは、心理的な成長に失敗した人です。現実の社会には、複雑な要素が絡んでいますが、彼のように、過激で極端な見方をする人は、その“現実”と接していないんですよ。 彼の主張はあまりに極論ですが、もしかすると経済学的には正しいのかもしれない。しかし、そこには『人類が幸せになっていく』という視点が抜け落ちています。経済的な成功が、必ずしも人に幸せをもたらすものではないことは、1960年代にデイヴィッド・リースマンが論じています。 人間は本来、成長するに従って、徐々に視点が増えていくわけです。しかし、彼の視点はひとつしかないのです」 推理小説『たかが殺人じゃないか』(東京創元社)が、2020年の「このミステリーがすごい!」など3つの主要ランキングで1位を獲得した作家の辻真先氏(90)は、成田発言に怒り心頭だ。 「彼はまだ若いから、自分は死ぬはずがないと思っているのでしょうが、心配いりません。誰でも年を取るんですから。どうぞ、ごゆっくり年寄りになってください。それでも主張が変わらなかったら、そのときは自ら、高齢者問題を解決してください。 私は、テレビ草創期のプロデューサーでした。今はYouTubeも観ますが、皆さん気楽にお話しされているようですね。それはいいことだと思うのですが、今回に関しては『自分が高齢者になってから言え!』と思いました」 エッセイスト、農園主、画家として活躍する玉村豊男氏(77)は、成田氏の主張に一定の理解を示す。 「彼が『高齢者はリタイアすべきだ』と言いたいのなら、その意見には大賛成です。『日本は、既得権益に結びついた年寄りばかりいるから変化が進まない』というのは、その通りですよ。年を取ったら次の若い世代に交代しなきゃいけないと、僕も思っています。 ただ、『切腹』なんて言えば、外国人は驚くでしょうね。そのくらい強い言葉を使わないと世間に伝わらないと思ったのかもしれないし、物議を醸すのも彼なりの計算だったのかもしれません。 でも『一斉退場』くらいにしておけばよかった。『80歳を過ぎた政治家は退場』と言えば、もっと賛同する人がいたと思いますね。 元日本赤軍メンバーで、安倍元首相を銃撃した山上徹也被告をモデルにした映画『REVOLUTION+1』を監督して物議を醸した足立正生氏(83)も取材に応じた。 「耳目を集めたくて言ってるだけなんだろうけど、それなら、なぜ若い世代に向けて発言しないのか。年寄りに何かを求めるんじゃなくて、若者に「集団蜂起せよ」って呼びかければいいんだ。 俺の世代が「集団自決」と聞いて思い起こすのは、沖縄戦であり、バンザイクリフだよ。この言葉にはそういう意味がある。この男は日本の歴史を知らないのか。あるいは想像力が欠如しているのか」 本誌は、哲学者で文学者の柄谷行人氏(81)の自宅にも訪れた。成田氏は中高生時代、柄谷氏が主宰する社会運動グループに参加していたことがあるためだ。 「発言は知っていますが、事情がよくわからないんです。正直、興味もない。だから無責任なコメントはしません」 以上の6人に比べれば“ヒヨッコ”同然の成田氏だが、老害化する前に表舞台から消えたりして』、「6人」のうち、私が面白いと思ったのは、以下の2名だ。「養老孟司氏」が 「社会は“順送り”だから仕方がないという感覚が消えてしまっているんですね。 今の若い人は、自分たちの世代ばかりが損をしているという感覚になっているんじゃないか。ウザくて邪魔な年寄りが大勢いるせいで、若い人が割を食っていると思っている。でも実際は、世代間で順送りになっているんです」、「辻真先氏」は、成田発言に怒り心頭だ。 「彼はまだ若いから、自分は死ぬはずがないと思っているのでしょうが、心配いりません。誰でも年を取るんですから。どうぞ、ごゆっくり年寄りになってください。それでも主張が変わらなかったら、そのときは自ら、高齢者問題を解決してください」、「成田」氏がそのうちの反論してくるとすれば楽しみだ。
タグ:高齢化社会 (その18)(和田秀樹:酒・タバコの我慢は健康寿命に悪影響? どんどん老いる人の特徴は「おむつや杖を嫌がる」、日本と大違い! イギリスで高齢ドライバー「免許返納しろ」の大合唱が起こらないワケ、「高齢者は集団自決すべき」成田悠輔氏の発言に養老孟司氏ら“平均84歳”知識人が喝!「問題にする気も起きない」) デイリー新潮 和田秀樹氏による「酒・タバコの我慢は健康寿命に悪影響? どんどん老いる人の特徴は「おむつや杖を嫌がる」」 『80歳の壁』(幻冬舎新書) 「40~50代くらいまでの人なら健康維持のために効果的かもしれません。しかし、70~80代が禁煙するメリットと、我慢で生じるストレスのデメリットをてんびんにかけて、どちらがより健康に良くないか尋ねられたら、私は医師として後者だと助言します」 私の場合は、軽い肺気腫になっていたので、やむなく禁煙した。 「共に最後は死にゆく運命なら、どちらが果たして幸せな人生といえるのか。現役世代ならコツコツとアリのように働くのが大事でも、退職後はキリギリスのように楽をしてもバチはあたらないと思います」、その通りだ。 「大人用おむつを勧められると、自分が老人扱いされたと感じて露骨に嫌がる方も多いと思いますが、そうした人は失禁を恐れるあまり電車やバスにも乗りにくくなり、ちょっとした遠出は難しくなる。結果、出不精になって老いが一層進むリスクを考えれば、おむつをはいた方がぐっと行動範囲も広がります。「できないこと」は無理せず諦めて、もっと「楽に生きる」ことの方が、より有意義な人生を送れる」、その通りだ。 「80代を超えて元気なら「自分がエビデンス」だと胸を張り、多少の数値の変動があったからといって過度におびえることはないと思います」、確かにその通りだ。 「50~60代の方であれば食事制限で動脈硬化のリスクを下げておくことは、その後の人生に有用かもしれません。ただ70代を過ぎると消化機能が落ちて食べる量も減ってはいませんか。 実は「最も長寿の群」はBMIの値が20~30の人たち。BMI35以上の群でもやせ型より長寿とされています。つまりは小太りくらいの体型の方が長生きしやすいのに、食事量を減らせば、栄養不足となって免疫機能も落ちるでしょう・・・高齢者は健康のために無理して野菜中心の食事に変えがちですが、本末転倒になる可能性もあります」、なるほど。 「現役時代なら嫌な人と付き合う意味もあったでしょうが、リタイアしたら無理して関係を続ける必要はありません。限られた余生を自分のために使って誰が文句を言いますか。高齢者にとっては、今こそ悠々自適に過ごすチャンスなのです」、その通りだ。 Merkmal 鳴海汐氏による「日本と大違い! イギリスで高齢ドライバー「免許返納しろ」の大合唱が起こらないワケ」 高齢ドライバーによる交通事故 イギリスには90 歳以上の運転免許保有者が13万4000人以上いる 85歳以上では、2025 年までに100 万人を超えると予測されている 70歳以上の運転免許保有者は560万人(この10年で2倍に増えた)なのだが、これはこの年代の 62% が免許証を持ち続けているという計算になる。日本では、2021年の70歳以上の運転免許保有者は1285万人で、この年代の45%に過ぎない 「85歳以上の運転免許保有者が71万人」、日本と比べたら極めて多い。 免許更新が簡単 「イギリスでは、高齢者の運転免許について国が取り締まるというよりも、自己の判断に委ねられている、個人の運転する自由が尊重されているといった印象が強い。また日本ほど、「免許を返納しなければいけない」という同調圧力もないようだ」、自己責任原則が徹底されており、「自己の判断に委ねられている」、その通りだ。 「85歳で免許返納すべきか」というアンケートでは、回答者3462人中91%が「あからさまな差別」として反対 日本でも「事故率」など事実に基づいた議論よりも、池袋の事故の影響で冷静な議論がないままに、免許更新時の認知症試験など規制強化に進んだのは残念だ。 Flash「「高齢者は集団自決すべき」成田悠輔氏の発言に養老孟司氏ら“平均84歳”知識人が喝!「問題にする気も起きない」」 「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」 「6人」のうち、私が面白いと思ったのは、以下の2名だ。「養老孟司氏」が 「社会は“順送り”だから仕方がないという感覚が消えてしまっているんですね。 今の若い人は、自分たちの世代ばかりが損をしているという感覚になっているんじゃないか。ウザくて邪魔な年寄りが大勢いるせいで、若い人が割を食っていると思っている。でも実際は、世代間で順送りになっているんです」、 「辻真先氏」は、成田発言に怒り心頭だ。 「彼はまだ若いから、自分は死ぬはずがないと思っているのでしょうが、心配いりません。誰でも年を取るんですから。どうぞ、ごゆっくり年寄りになってください。それでも主張が変わらなかったら、そのときは自ら、高齢者問題を解決してください」、 「成田」氏がそのうちの反論してくるとすれば楽しみだ。
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日本の政治情勢(その62)(杉並区長選で野党共闘まさか勝利 岸田自民が恐れる“ノブテルの呪い”と参院選敗北の予兆、河野太郎デジタル相が予算委で「所管外」12連発の異常 その後ツイッターで言い訳の姑息、岸田首相の長男は「コネ採用」 安倍元首相の甥は「家系図自慢」…日本の政治家が残念な存在になった根本原因 普通の人の感覚がわからない「世襲政治家」の限界) [国内政治]

日本の政治情勢については、昨年6月5日に取上げた。今日は、(その62)(杉並区長選で野党共闘まさか勝利 岸田自民が恐れる“ノブテルの呪い”と参院選敗北の予兆、河野太郎デジタル相が予算委で「所管外」12連発の異常 その後ツイッターで言い訳の姑息、岸田首相の長男は「コネ採用」 安倍元首相の甥は「家系図自慢」…日本の政治家が残念な存在になった根本原因 普通の人の感覚がわからない「世襲政治家」の限界)である。

先ずは、昨年6月21日付け日刊ゲンダイ「杉並区長選で野党共闘まさか勝利 岸田自民が恐れる“ノブテルの呪い”と参院選敗北の予兆」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/307069
・『まさかの結果だ。20日開票された東京都杉並区の区長選挙。自公がバックアップした現職の田中良氏(61=当選3回)が、野党統一候補の岸本聡子氏(47)に約190票差で敗れたのだ。 杉並区といえば、有権者に嫌われ、昨年の衆院選で落選した石原伸晃・自民党元幹事長の地盤。田中区長と伸晃氏は蜜月関係だけに、「敗因はノブテルの呪いか」なんて声も上がっている。想定外の結果に、岸田首相の周辺は、国民の怒りのマグマがたまっているのではないか、と疑念を強めている。 今回、立憲民主党、共産党、れいわ新選組、社民党が推薦し、初当選した岸本氏は、オランダの政策研究NGOの研究員。田中区政が進めた駅前再開発などについて「いったん立ち止まって、住民とともに考える」と訴えてきた。 フリーランスライターの畠山理仁氏は、「岸本氏は有権者の声に耳を傾け、選挙中に政策をバージョンアップさせるなど、従来の野党の戦い方とは全く別物だった」とみる。 「昨年、衆院選で伸晃氏を破った立憲の吉田晴美衆院議員が連日、応援に入ると、徐々に追い上げムードが高まっていった。最終的に蓮舫参院議員や枝野前代表ら大物が応援に入るなど、国政選挙並みの力の入れようでした。れいわ新選組の山本太郎代表も駆けつけ、勢いは十分だった」(野党関係者) 一方、田中陣営は、自民党の国会議員が応援に入ったが、杉並区議会の自民会派が「親田中派」と「反田中派」に分裂し、足並みが揃わなかったという。 自民党は、現職区長が無名の野党候補に負けただけでなく、区長選と一緒に行われた区議補選で票を減らしたことも不安材料とみているという。自民新人が当選したものの、前回2018年の区議補選の時に獲得した4万3000票から、1万6000票も減らしている』、「現職の田中良氏・・・が、野党統一候補の岸本聡子氏(47)に約190票差で敗れた」、杉並区はもともと革新系が強いが、自民党の現職を破るとは大したものだ。ただ、「一緒に行われた区議補選で票を減らした」とはいえ、「自民新人が当選した」のは残念だ。
・『国民の怒りは“沸点”間近  実際、区長選と補選は、物価高や生活苦を一向に解消できない政権与党に対する世論が反映された可能性がある。 立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言う。 「物価高で国民の生活は苦しくなっているのに、『検討する』としか言わない岸田首相への怒りが募るのは当然です。世論調査でも内閣支持率は下がり、政府の物価高対策を『評価しない』という声が大きくなっています。今回の区長選の結果は、これまで声を上げなかった国民の怒りがジワジワと高まっていることを示している可能性があります。参院選に向けて、自民党はこの流れが続くのを恐れているに違いありません」 昨年の衆院選では、自民党の“象徴”的存在だった伸晃氏がまさかの落選を喫し、自民党に衝撃が走った。この参院選では予想外の事態が起きるかもしれない』、「物価高で国民の生活は苦しくなっているのに、『検討する』としか言わない岸田首相への怒りが」「参院選」で示されてほしいものだ。

次に、本年2/15日刊ゲンダイ「河野太郎デジタル相が予算委で「所管外」12連発の異常 その後ツイッターで言い訳の姑息」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/318758
・『「所管外」──。壊れたレコードのように繰り返すこと12回。13日の衆院予算委員会で河野デジタル担当相が見せた態度は、「ブロック太郎」の異名に恥じない不誠実ぶりだった。 河野氏は予算委で、安倍内閣で務めた外相時代の日ロ交渉や原発政策の立場などについて問われたが、ことごとく「所管外だ」としてスルー。安倍元首相が回顧録で明かしている「河野談話」の取り扱いに関するエピソードについて、事実関係を確認されても「所管外」で押し通した。 外相時代、記者の質問に対して「次の質問どうぞ」と連発して炎上してもなお、反省している気配はない。 さすがに自民党内からも批判が噴出。梶山幹事長代行は14日の会見で「あくまで一般論だが、国会の審議で、閣僚は野党からの質問に丁寧に真摯に答弁すべきだ」と苦言を呈した』、「自民党内からも批判が噴出。梶山幹事長代行は」「苦言を呈した」、全く誠実さを欠き、思い上がった態度だ。
・『ツイッターでも言い訳  閣僚の立場を盾にダンマリを決め込む河野氏だが、野党時代を忘れたのか。民主党政権を相手に、厳しい質問を投げかけたものである。) 例えば、2011年11月の衆院決算行政監視委員会。河野氏は独立行政法人「原子力安全基盤機構」(当時)の人事について、経産省政務官を追及。「政治家としてどうお考えかと聞いております」などと、再三にわたり「政治家として」の答弁を求めた。 12年8月の同委員会では、原発関連事業の天下り問題を取り上げ、「こういう指摘をされたときに『所管外だ』ということを答える原子力委員会及び事務局のいいかげんさというのが事故の引き金を引いた遠因の一つになっているんだと思います」と厳しく批判。「所管外」を連発する今の河野氏からは想像もできない口ぶりだ。 河野氏は自身のツイッターに〈閣僚は所管外のことに答弁できない〉などと言い訳したが、別にそんな決まりはない。 実際、高市経済安保相は9日の衆院予算委で、同性婚の法制化について認識を問われた際、「私個人の考え方をここで述べるのは不適切かもしれない」と前置きしつつ、自説を開陳。何かしら答えようとする高市氏が若干マシに見えるほど、国会を小バカにしたような河野氏の態度が異常なのだ』、本来は野党が事前に備えて勉強しておいて、「委員会」で追及すべきだ。言われ離しとは情けない限りだ。
・『「ポスト岸田」に色気も、評判イマイチ  「ポスト岸田」を意識してなのか、河野氏は最近、若手を引き連れて飲み会を繰り返しているという。しかし、「自分から呼びかけておいて、1次会でサッと帰ってしまう」(自民党関係者)というから、評判はイマイチ。 国会答弁も酒席も「所管外」なのか』、「自分から呼びかけておいて、1次会でサッと帰ってしまう」、ドライ過ぎる対応で、これでは「若手」の「評判はイマイチ」なのは当然だ。

第三に、2月23日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの鮫島 浩氏による「岸田首相の長男は「コネ採用」、安倍元首相の甥は「家系図自慢」…日本の政治家が残念な存在になった根本原因 普通の人の感覚がわからない「世襲政治家」の限界」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/66751
・『なぜ日本の政治家は魅力がないのか。政治ジャーナリストの鮫島浩さんは「親の選挙区を子が引き継ぐ『世襲政治家』が増え、庶民感覚からズレた政治家が増えている。そうした政治家の身勝手な振る舞いに、有権者はあきれている」という――』、その通りで、興味深そうだ。
・『大炎上した「華麗なる政治家一族」の家系図  岸信介元首相は曽祖父、佐藤栄作元首相は曽祖叔父、安倍晋太郎元外相は祖父、安倍晋三元首相は伯父――。 父親の岸信夫・前防衛相を受け継いで4月の衆院山口2区補選への出馬を表明した岸信千世氏(31)。華麗なる政治家一族の御曹司は初っ端から、ご自慢の「家系」でつまずいた。公式サイトに岸家・安倍家の「家系図」を掲載したところ世襲への批判がネット上で噴出し、「家系図削除」に追い込まれたのだ。 公式サイトのドメインも父親のサイトを引き継いでいたことまで発覚して「地盤(選挙区)、看板(名前)、鞄(資金)ばかりか掲示板(サイト)まで受け継ぐ丸抱え世襲政治家」のイメージを自ら撒き散らしてしまったのである。 家系図とともに掲載したプロフィールも不評だった。慶應義塾大学商学部→フジテレビ→防衛大臣秘書官。フジテレビ入社は安倍政権下の2014年。安倍首相(当時)とフジテレビの日枝久会長は親密な関係だったため、当時も「コネ入社では?」と臆測を呼んだ。テレビ業界で政治家の子女を探すのはさほど難しくはない。 テレビ局から政界入りする世襲議員も少なくない。小渕恵三元首相の娘である小渕優子元経産相はTBS出身、石原慎太郎元東京都知事の息子である石原伸晃元環境相は日本テレビ出身、鈴木宗男元北海道開発庁長官の娘である鈴木貴子衆院議員(自民)、片山虎之助元総務相の息子である片山大介参院議員(維新)、山岡賢次元国家公安委員長の息子である山岡達丸衆院議員(立憲民主)はいずれもNHK出身だ。フジテレビから政界入りをめざす岸信千世氏は世襲政治家の「王道」といえるだろう』、普通の日本人の感覚であれば、妬みを買うような「家系図」はこっそりと隠すべきものだ。それを堂々と、「公式サイトに岸家・安倍家の「家系図」を掲載」したので、「世襲への批判がネット上で噴出し、「家系図削除」に追い込まれた」、「慶應義塾大学商学部→フジテレビ→防衛大臣秘書官」の「プロフィールも不評だった」、のはいずれも当然だ。
・『2人は自民党の愚かな世襲政治のシンボルになった  家系図を掲載したタイミングも悪かった。折しも政界では岸田文雄首相が長男翔太郎氏を31歳で首相秘書官(政務)に抜擢し、「縁故人事」「公私混同」と批判を浴びていた。 その後、翔太郎氏がフジテレビの女性記者に官邸の内部情報をリークしたという疑惑報道が続き、年明けには翔太郎氏が父親の欧米5カ国訪問に同行してパリやロンドンで公用車に乗って観光地や高級デパートを巡っていたことが週刊誌報道で発覚。世襲政治に対する世論の怒りが過熱したところで、岸信千世氏の家系図問題が後を追うように勃発したのである。 「翔太郎氏の脇が甘いのは、縁故人事への批判が高まっている最中にパリやロンドンで観光地巡りをしてしまったこと。ふつうなら『今は狙われているから揚げ足をとられないよう十分に気を付けよう』と考えるでしょう。同世代の信千世氏も同じ。世襲批判が高まっている最中に家系図を得意げに掲げてしまう。世間の目に対する感覚があまりに鈍い」(自民党議員秘書) ふたりは1991年生まれ、慶大卒の政治名門4世。ともに31歳で「政界デビュー」を飾り、いきなりずっこけた。自民党の愚かな世襲政治のシンボルになってしまったのである』、「「翔太郎氏の脇が甘いのは、縁故人事への批判が高まっている最中にパリやロンドンで観光地巡りをしてしまったこと。ふつうなら『今は狙われているから揚げ足をとられないよう十分に気を付けよう』と考えるでしょう』、本当に脇が甘いが、それを許している岸田首相には失望した。「ふたりは1991年生まれ、慶大卒の政治名門4世。ともに31歳で「政界デビュー」を飾り、いきなりずっこけた。自民党の愚かな世襲政治のシンボルになってしまった」、その通りだ。
・『歴代首相は、菅氏をのぞいて世襲ばかり…  小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎、岸田文雄。今世紀に入って首相に就任した自民党の6人のうち、菅義偉氏をのぞく5氏はいずれも世襲議員だ。 その菅氏も総務相時代、バンドマンで無職の長男を大臣秘書官に起用して総務官僚に近づかせた。長男はその後、総務省が所管する衛星放送業界に転じて総務官僚を高額接待していたことが発覚している。 自民党を巣食う縁故体質は今に始まったことではない。岸田内閣の重要閣僚である林芳正外相も、鈴木俊一財務相も、加藤勝信厚生労働相も、松本剛明総務相も、浜田靖一防衛相も、世襲である。自民党はまさに「世襲大国」といってよい。 ポスト岸田候補で一番人気の河野太郎デジタル担当相も世襲である。祖父・河野一郎氏はタカ派で知られ、1955年の自民党結党に参画。大派閥・河野派を率いて首相を目指したが67歳で急死した。 父・河野洋平氏は逆にハト派で、若くして自民党を離党して新自由クラブを結成。自民党復帰後は宏池会(現岸田派)に加わり、宮沢内閣の官房長官として慰安婦の強制性を認めて謝罪する「河野談話」を発表した。野党・自民党の総裁に就任したものの、首相になることはできなかった』、「今世紀に入って首相に就任した自民党の6人のうち、菅義偉氏をのぞく5氏はいずれも世襲議員だ」、改めて「世襲」問題の深刻さを痛感させられた。
・『なぜ庶民感覚の分からない政治家が増え続けるのか  父よりも祖父に近いタカ派と言われる河野太郎氏が自民党総裁選に出馬した2021年、84歳の洋平氏は父親として居ても立ってもおられず、参院のドンと言われた青木幹雄元官房長官の事務所を訪れ息子の支持拡大に協力を求めた。 政治信条よりも河野家3代の悲願である「首相の座」への執着をのぞかせたのである。政治家一族にとって「政治は家業」であることを印象づけたのだ。 世襲でも実力があれば問題はない、むしろ世襲のほうが選挙に追われることなく政策に集中できる、強引な資金集めの必要もなくクリーンだ……そのような世襲擁護論は政界に根強い。業界団体や支持者にとっても、地盤、看板、鞄を生まれながらに備え、選挙に強い世襲政治家の存在は利益になる。政権与党であり続ける自民党議員であればなおさらだ。こうした硬直的な関係性が、世襲政治家が増え続ける根本的な原因だろう。 もちろん世襲を全否定する必要はないかもしれない。しかし3世4世となると庶民感覚からかけ離れた所作が目立ってくる。これは民主政治のシステムを蝕む大問題だ。 岸田首相がパリ・ロンドンで公用車に乗って観光地巡りした息子を「首相秘書官としての公務」としてかばう一方、官邸記者団へのオフレコ取材で差別発言をした経産省出身の首相秘書官を即刻更迭した「ダブルスタンダード」に衝撃を受けた人は少なくないだろう。 露骨な「身内びいき」を目の当たりにして首相を支える官邸チームの士気は大きく低下したに違いない。世襲によるモラルハザードは岸田政権下でも着実に進んでいる』、「露骨な「身内びいき」を目の当たりにして首相を支える官邸チームの士気は大きく低下したに違いない。世襲によるモラルハザードは岸田政権下でも着実に進んでいる」、その通りだ。
・『岸田首相にマイノリティーの苦しみは分からない  岸田首相は「(同性婚を認めると)社会が変わってしまう」と発言して批判を浴びると、今度は衆院予算委員会で「私自身、ニューヨークでの小学校時代にマイノリティーとして過ごした経験がある」と発言し、少数者に理解のある首相を演出してみせた。 岸田首相は小学1~3年生時代、エリート通産官僚の父親(のちに衆院議員)の海外赴任に帯同してニューヨーク市のパブリックスクールに通学している。この際に日本人というマイノリティーとして差別を体験したことをアピールしたかったようだ。 しかしこの国会答弁を伝えるテレビ報道には、蝶ネクタイをして白人の子どもたちと一緒に集合写真に収まるニューヨーク時代の岸田少年が映し出されていた。この写真には「岸田文雄事務所提供」のクレジットがある。 首相のアピールを下支えする効果を期待して提供したのかもしれないが、海外赴任が極めて珍しい時代の政治名門一家の御曹司にしかみえない。マイノリティーの苦しみに共感できる政治家なのかという疑問さえ浮かんでしまう。はっきりいって逆効果だった。少年時代のニューヨーク暮らしが大衆にどう受け止められるかという感性が欠如しているとしか思えない』、「首相のアピールを下支えする効果を期待して提供したのかもしれないが、海外赴任が極めて珍しい時代の政治名門一家の御曹司にしかみえない。マイノリティーの苦しみに共感できる政治家なのかという疑問さえ浮かんでしまう。はっきりいって逆効果だった。少年時代のニューヨーク暮らしが大衆にどう受け止められるかという感性が欠如しているとしか思えない」、その通りだ。
・『「世襲政治」に野党の追及が甘いワケ  岸田首相は就任当初、アベノミクスで拡大した貧富の格差を是正する分配政策を進める「新しい資本主義」を打ち出したが、いつのまにか「分配」よりも「投資」の重要性を説くようになった。 昨年暮れからは米国から敵基地攻撃能力を持つトマホークを大量購入して防衛力を抜本強化することに「歴史的役割」を見いだし、その財源を確保するための増税を掲げている。当初の「新しい資本主義」は口先だけだったのか。岸田父子の言動は「世襲政治家に庶民の気持ちは理解できない」という主張に説得力を与えているように見える。 世襲政治家は代々続く強力な選挙地盤だけでなく、政治団体を受け継ぐことで相続税を逃れて政治資金を引き継ぐこともできると指摘される。「親の七光」で政界入りが相次ぐ世襲政治で活力を失った自民党を激しく攻め立てて取って代わるのが野党第一党の役割なのだが、どうも立憲民主党の腰が定まらない。 1996年に誕生した民主党は当初、小選挙区・二大政党制の下で政権交代を目指し、自民党の世襲政治を厳しく攻撃した。この背景には、エリート官僚や弁護士、松下政経塾出身の政治家志望者たちが衆院小選挙区から出馬するため、世襲を中心に選挙区が埋まっている自民党ではなく、候補者が足りない民主党を選択したという事情がある』、「「親の七光」で政界入りが相次ぐ世襲政治で活力を失った自民党を激しく攻め立てて取って代わるのが野党第一党の役割なのだが、どうも立憲民主党の腰が定まらない」、「エリート官僚や弁護士、松下政経塾出身の政治家志望者たちが衆院小選挙区から出馬するため、世襲を中心に選挙区が埋まっている自民党ではなく、候補者が足りない民主党を選択した」、なるほど。
・『決別を公約にして政権交代を果たしたが…  前原誠司、枝野幸男、野田佳彦、細野豪志の各氏ら民主党ホープをはじめ非世襲の若手議員たちは自らの庶民性をアピールし、自民党の世襲政治と対比させた。菅直人氏の長男源太郎氏が2003年と05年の衆院選で父親の選挙区のある東京ではなく岡山1区から出馬したのは、世襲に厳しい党内世論を踏まえたものだった。 民主党は親と同じ選挙区から出馬することを禁じて世襲政治と決別する姿勢を鮮明にし、2009年に政権を奪取したのである。 この原則が崩れたのは、立憲民主党が旗揚げした2017年以降である。同党の羽田雄一郎参院議員の死去に伴う21年4月の参院長野補選に、立憲は弟の羽田次郎氏を公認して当選させた。枝野代表は「世襲だからと機械的に否定するのは硬直的だ」と明言。衆院北海道3区の荒井聡元国家戦略相の後継に長男を擁立する際には「荒井氏のご子息であることとは別に個人としてさまざまな実績がある」と強調した』、「民主党は親と同じ選挙区から出馬することを禁じて世襲政治と決別する姿勢を鮮明にした」、「この原則が崩れたのは、立憲民主党が旗揚げした2017年以降である」、もう自民党と同じ土俵になってしまったとは残念だ。
・『既得権益を擁護する守旧派になった証し  野党から世襲批判が聞こえなくなったのは、かつて民主党の若手論客として頭角を現した議員の多くが50~60代のベテランとなり、自分の子息らへの世襲を内心で考え始めたことが要因ではないかと私はみている。) 立憲民主党が世襲批判から容認へ転じたことは、党を率いる幹部たちが与党経験を経て、政治キャリアを蓄積するなかで、「政権打倒をめざす挑戦者」から「既得権益を擁護する守旧派」へ変節したことを象徴する事象ではなかろうか。「身を切る改革」を掲げる新興勢力の維新に野党第一党の座を脅かされているのも、新陳代謝の進まない立憲民主党の実情を有権者に見透かされているからだろう。 立憲民主党はなぜ、岸田首相の衆院広島1区を受け継ぐことが確実視されている翔太郎氏や、山口2区補選に出馬する岸信千世氏に対して痛烈な「世襲批判」を浴びせないのだろうか。これほど世論に響く自民党批判の材料はない。 自分たちがいずれ実行するかもしれない「世襲」へのブーメランを恐れて批判を手控えているとしたら、有権者への背信行為にほかならない。立憲民主党の政権批判が迫力を欠くのは当然だ』、「自分たちがいずれ実行するかもしれない「世襲」へのブーメランを恐れて批判を手控えているとしたら、有権者への背信行為にほかならない。立憲民主党の政権批判が迫力を欠くのは当然だ」、情けないが、その通りだ。
・『世襲論争が「ポスト岸田」を左右する  自民党を長年支配してきた最大派閥・平成研究会(旧経世会)支配を壊した小泉政権時代(2001~06年)にポスト小泉レースを競った「麻垣康三」(麻生太郎、谷垣禎一、福田康夫、安倍晋三の4氏)はいずれも世襲議員だった。 約20年の時が流れ、政治家3世の岸田首相の後継には、同じく3世の河野氏のほか、茂木敏充幹事長や萩生田光一政調会長、首相再登板をめざす菅氏ら非世襲議員の名も上がっている。 岸信千世氏が衆院山口2区補選に出馬する一方、安倍元首相の死去に伴う山口4区補選への出馬を妻昭恵氏が固辞して安倍家の地盤継承が途切れたことも、相反する政治事象として興味深い。 岸田翔太郎氏や岸信千世氏への風当たりの強さは、日本政界の世襲全盛期の終焉しゅうえんを意味しているのか、それとも一過性の現象なのか。世襲論争の行方はポスト岸田レースの行方にも影響を与えることだろう』、「岸田翔太郎氏や岸信千世氏への風当たりの強さは、日本政界の世襲全盛期の終焉しゅうえんを意味している」とは思えない。やはり「一過性の現象」なのではなかろうか。
タグ:日本の政治情勢 (その62)(杉並区長選で野党共闘まさか勝利 岸田自民が恐れる“ノブテルの呪い”と参院選敗北の予兆、河野太郎デジタル相が予算委で「所管外」12連発の異常 その後ツイッターで言い訳の姑息、岸田首相の長男は「コネ採用」 安倍元首相の甥は「家系図自慢」…日本の政治家が残念な存在になった根本原因 普通の人の感覚がわからない「世襲政治家」の限界) 現職の田中良氏(61=当選3回)が、野党統一候補の岸本聡子氏(47)に約190票差で敗れた 「現職の田中良氏・・・が、野党統一候補の岸本聡子氏(47)に約190票差で敗れた」、杉並区はもともと革新系が強いが、自民党の現職を破るとは大したものだ。ただ、「一緒に行われた区議補選で票を減らした」とはいえ、「自民新人が当選した」のは残念だ。 「物価高で国民の生活は苦しくなっているのに、『検討する』としか言わない岸田首相への怒りが」「参院選」で示されてほしいものだ。 日刊ゲンダイ「河野太郎デジタル相が予算委で「所管外」12連発の異常 その後ツイッターで言い訳の姑息」 「自民党内からも批判が噴出。梶山幹事長代行は」「苦言を呈した」、全く誠実さを欠き、思い上がった態度だ。 本来は野党が事前に備えて勉強しておいて、「委員会」で追及すべきだ。言われ離しとは情けない限りだ。 「自分から呼びかけておいて、1次会でサッと帰ってしまう」、ドライ過ぎる対応で、これでは「若手」の「評判はイマイチ」なのは当然だ。 PRESIDENT ONLINE 鮫島 浩氏による「岸田首相の長男は「コネ採用」、安倍元首相の甥は「家系図自慢」…日本の政治家が残念な存在になった根本原因 普通の人の感覚がわからない「世襲政治家」の限界」 普通の日本人の感覚であれば、妬みを買うような「家系図」はこっそりと隠すべきものだ。それを堂々と、「公式サイトに岸家・安倍家の「家系図」を掲載」したので、「世襲への批判がネット上で噴出し、「家系図削除」に追い込まれた」、「慶應義塾大学商学部→フジテレビ→防衛大臣秘書官」の「プロフィールも不評だった」、のはいずれも当然だ。 「ふたりは1991年生まれ、慶大卒の政治名門4世。ともに31歳で「政界デビュー」を飾り、いきなりずっこけた。自民党の愚かな世襲政治のシンボルになってしまった」、その通りだ。 「今世紀に入って首相に就任した自民党の6人のうち、菅義偉氏をのぞく5氏はいずれも世襲議員だ」、改めて「世襲」問題の深刻さを痛感させられた。 「露骨な「身内びいき」を目の当たりにして首相を支える官邸チームの士気は大きく低下したに違いない。世襲によるモラルハザードは岸田政権下でも着実に進んでいる」、その通りだ。 「首相のアピールを下支えする効果を期待して提供したのかもしれないが、海外赴任が極めて珍しい時代の政治名門一家の御曹司にしかみえない。マイノリティーの苦しみに共感できる政治家なのかという疑問さえ浮かんでしまう。はっきりいって逆効果だった。少年時代のニューヨーク暮らしが大衆にどう受け止められるかという感性が欠如しているとしか思えない」、その通りだ。 「「親の七光」で政界入りが相次ぐ世襲政治で活力を失った自民党を激しく攻め立てて取って代わるのが野党第一党の役割なのだが、どうも立憲民主党の腰が定まらない」、「エリート官僚や弁護士、松下政経塾出身の政治家志望者たちが衆院小選挙区から出馬するため、世襲を中心に選挙区が埋まっている自民党ではなく、候補者が足りない民主党を選択した」、なるほど。 「民主党は親と同じ選挙区から出馬することを禁じて世襲政治と決別する姿勢を鮮明にした」、「この原則が崩れたのは、立憲民主党が旗揚げした2017年以降である」、もう自民党と同じ土俵になってしまったとは残念だ。 「自分たちがいずれ実行するかもしれない「世襲」へのブーメランを恐れて批判を手控えているとしたら、有権者への背信行為にほかならない。立憲民主党の政権批判が迫力を欠くのは当然だ」、情けないが、その通りだ。 「岸田翔太郎氏や岸信千世氏への風当たりの強さは、日本政界の世襲全盛期の終焉しゅうえんを意味している」とは思えない。やはり「一過性の現象」なのではなかろうか。
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パンデミック(経済社会的視点)(その24)(「緊急事態宣言は必要なかった」ウイルス学者が語る日本に最適な感染症対策ができなかった本当の理由 「欧米でやっていること以外はダメだ」日本よりも欧米のデータを重視する病、コロナ5類「マスク要否」論争で知っておきたい事 専門家は有効性を主張するが否定的な研究もある、コロナワクチンは「すでに“大薬害”」京大名誉教授が指摘 米一流紙も「ワクチンを繰り返し接種した人は感染率が上がる」) [パンデミック]

パンデミック(経済社会的視点)については、昨年5月28日に取上げた。今日は、(その24)(「緊急事態宣言は必要なかった」ウイルス学者が語る日本に最適な感染症対策ができなかった本当の理由 「欧米でやっていること以外はダメだ」日本よりも欧米のデータを重視する病、コロナ5類「マスク要否」論争で知っておきたい事 専門家は有効性を主張するが否定的な研究もある、コロナワクチンは「すでに“大薬害”」京大名誉教授が指摘 米一流紙も「ワクチンを繰り返し接種した人は感染率が上がる」)である。

先ずは、昨年5月14日付けPRESIDENT Onlineが掲載した京都大学医生物学研究所准教授の宮沢 孝幸氏による「「緊急事態宣言は必要なかった」ウイルス学者が語る日本に最適な感染症対策ができなかった本当の理由 「欧米でやっていること以外はダメだ」日本よりも欧米のデータを重視する病」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/57359
・『政府や自治体はなぜ、全員一律の強い自粛要請を繰り返したのか。ウイルス学者の宮沢孝幸さんは「日本は、欧米の対策をそのまま取り入れようとしました。背景にあるのは欧米追従主義です」という――。 ※本稿は、宮沢孝幸『ウイルス学者の責任』(PHP新書)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『ウイルス学者が提唱する「目玉焼きモデル」  私は、ウイルス学の知見に基づいて正しい政策決定をしてもらうために、「目玉焼きモデル」というものをつくりました。 【図表1】目玉焼きモデル(同心円モデル)出所=宮沢孝幸氏が作成 今回のウイルスの感染状況を見ていますと、感染しやすい場所で感染し、感染しにくい場所ではあまり感染しないことがわかってきました。感染する行為で感染しますが、感染する行為をしなければ、ほとんど感染は起こっていません。当たり前といえば、当たり前です。感染しやすい場所というのは、ライブハウスやカラオケ、一部の飲食店、職場の休憩室などです。 特に、密接な接客を伴うような店、大声を出すような店で感染が広がっていました。1人が何人にうつすかという実効再生産数は、日本全体を平均すると1.7くらいでしたが、繁華街ではもっと高いと見られていました。2~3、あるいはそれ以上になっていたかもしれません。1人の感染者が平均2~3人に感染させるということです。実際にクラスターを出したホストクラブでは、感染率は60%にも上っていました。一時点でのPCRの結果ですから、店舗内のほとんどの人が感染していたのかもしれません。そうなると、実効再生産数は恐ろしく高いことになります。 それに対して、一般の生活を送っている人たちは、感染しても多くの人にうつすことはありませんでした。ホストクラブなどの特殊な飲食店での接客のように、多数の人と密接に、同時に大声で話をするわけではないのです。何も感染対策をしていない場合では同居している家族や職場や大声を出す部活動の仲間や友人にうつしてしまうことはあるかもしれませんが、その他の多くの人にうつすことはほとんどないはずです。平均すれば、一般生活をしている人は、実効再生産数は、1以下だったのだと思います』、「目玉焼きモデルは合理的なように思えるが、一般にまで普及しなかったのは何故なのだろうか。
・『政府の採用モデルと「目玉焼きモデル」の決定的な違い  政府が採用したモデルは、実効再生産数を一律に考えるものでした。国全体を平均した実効再生産数が1を大きく超えていたとすると、それが1未満に下がるまでは、国民全員に一律に自粛を求める対策です。 これに対して「目玉焼きモデル」は、実効再生産数を一律に考えないことが最大の特徴です。繁華街など実効再生産数が高い場所、実効再生産数が1くらいまでの場所、巣ごもりなど実効再生産数がゼロに近い場所などに分けて、ターゲットに合った対策をとっていくものです。 「目玉焼きモデル」の真ん中の黄身の部分は、繁華街など実効再生産数が高く、その周囲の白身の部分は実効再生産数が低いところです。真ん中へ行くほど実効再生産数が高くなり、外側へ行くほど実効再生産数が低くなり、一番外側ではほぼゼロになります。実効再生産数が高い繁華街の一部の店や高齢者施設などでは、重点的な対策が必要ですが、実効再生産数がそれほど高くない一般生活圏に入っている人には、できるだけ通常の生活を続けてもらえるようにしたいと思いました。 ただし、一般の人も一定程度は警戒しなければいけませんので、目玉焼きの少し外側に行ってもらう。それが「100分の1作戦」の実践です。 政府・自治体の緊急事態宣言による対策は、全国民を目玉焼きの一番外側の「巣ごもり」にさせるような対策でした。これでは、社会経済生活が破綻してしまいます。ターゲットを絞った対策をするためのイメージが「目玉焼きモデル」です。 全国どの地域でも、繁華街などの感染拡大箇所で重点的に対処し、一般の人にはある程度の自粛をお願いすれば、感染を抑えられることが示唆されていました。緊急事態宣言によって、全員一律の強い自粛要請を行なう必要はなかったのです。 感染症モデルによる「人と人の接触機会」の削減は、数字に基づく計算であって、ウイルス学を無視したものでした。「人と人の接触機会」を減らすことは、あらゆる手を尽くした後の最後の最後の手段です。何をやってもうまくいかないから、最終的に「人と人の接触機会」を減らすというのであれば理解できますが、最初から「人と人の接触機会」を減らすのは、間違っています』、「感染症モデルによる「人と人の接触機会」の削減は、数字に基づく計算であって、ウイルス学を無視したものでした。「人と人の接触機会」を減らすことは、あらゆる手を尽くした後の最後の最後の手段です。何をやってもうまくいかないから、最終的に「人と人の接触機会」を減らすというのであれば理解できますが、最初から「人と人の接触機会」を減らすのは、間違っています」、その通りだ。
・『誤った政策をもたらす「欧米追従主義」  感染症には、地域的な特性を持つものがあります。例えば、ヘルペスのEBウイルスは、日本人にはあまりひどい症状を起こしませんが、アフリカの人たちが感染するとバーキットリンパ腫になる可能性があります。新型コロナウイルスの場合も、欧米では猛威を振るいましたが、アジア諸国では欧米ほどの状況にはなりませんでした。 ところが、日本は、欧米の対策をそのまま取り入れようとしました。背景にあるのは欧米追従主義です。日本の研究者や医師には、「欧米と同じようにやればいい」という考え方が根付いてしまっています。政策決定に関わる人たちも事なかれ主義で、責任をとりたがりません。日本独自の対策をして失敗すれば責任をとらされますので、「アメリカはこうやっている」「イギリスはこうやっている」ということを根拠にして、同じ対策をとろうとします。 その姿勢が色濃く出たのが初期の緊急事態宣言だったと思います。感染率はイギリスの26分の1、死亡率はイギリスの131分の1でしたが、イギリスと同じような対策をとろうとしました。イギリスの場合は、ロックダウンをしなければ感染者数は急激に下がらなかったのですが、イギリスでロックダウンをして下がってきたくらいの自然減(自然に感染が収まる)状態であった日本が、緊急事態宣言を出しました。前述したように、日本は、ある程度の自粛を求めるだけで、減少トレンドに入っていましたが、その点は考慮されませんでした』、「日本の研究者や医師には、「欧米と同じようにやればいい」という考え方が根付いてしまっています。政策決定に関わる人たちも事なかれ主義で、責任をとりたがりません。日本独自の対策をして失敗すれば責任をとらされますので、「アメリカはこうやっている」「イギリスはこうやっている」ということを根拠にして、同じ対策をとろうとします」、海外留学した「研究者や医師」が主導的立場にあるからだろう。「その姿勢が色濃く出たのが初期の緊急事態宣言だったと思います。感染率はイギリスの26分の1、死亡率はイギリスの131分の1でしたが、イギリスと同じような対策をとろうとしました。イギリスの場合は、ロックダウンをしなければ感染者数は急激に下がらなかったのですが、イギリスでロックダウンをして下がってきたくらいの自然減(自然に感染が収まる)状態であった日本が、緊急事態宣言を出しました」、確かに今から振り返ってみると、滑稽なぐらいのカラ騒ぎだった。
・『独自の研究は評価されない日本  そして、学問自体が欧米追従主義に陥っていることが日本の問題点だといえます。明治以降のキャッチアップ政策によって欧米に追いつくことはできましたが、その後は日本が欧米を引っ張って、新しいものをつくっていかなければなりませんでした。それをせずにずっと欧米のまねに留まっています。 特に、医学やウイルス学に関しては、ずっとその状態が続いています。日本独自の研究は、国内で高く評価されません。評価基準はすべて欧米基準で、論文が『ネイチャー』、『サイエンス』に出ることが素晴らしいという感覚が染みついています。確かに欧米基準にはよい点もありますが、欧米基準はあくまでも欧米の価値観が反映されたものです。 私の友人で、ウナギの新しいウイルスを発見した研究者がいます。ウナギが病気になって困っている人たちがいたため、ウナギを捕まえて調べたところ、未知のウイルスを発見したのです。ウイルスのデータベース上にもない、近縁種もいない、まったく新しいウイルスでした。 日本人の私から見れば、『ネイチャー』クラスの発見です。ところが、欧米ではウナギという生物にピンとこないようです。「ウナギのウイルス? なんだそれ?」という感じで、高く評価されなかったと聞きました。最終的にこの論文はウイルス学の専門誌に出ました。日本人にとっては、ウナギは重要な水産資源であり、高級品ですから、ウナギの病気を研究することは価値のあることです。しかし、欧米の人には、価値が低いと見られて、『ネイチャー』、『サイエンス』に載ることはありませんでした。 日本とは価値観が違うのに、日本の研究者たちは欧米の価値観で編集されている『ネイチャー』や『サイエンス』に論文が載ることが素晴らしいことだと信じ込んでいます』、問題は「日本とは価値観が違うのに、日本の研究者たちは欧米の価値観で編集されている『ネイチャー』や『サイエンス』に論文が載ることが素晴らしいことだと信じ込んでい」ることにある。
・『今のままでは、日本に最適の感染症対策はできない理由  世の中に新しい流れをつくっていくには、欧米の価値観に縛られるよりも、むしろ、欧米人が考えないことを研究したほうがいいと私は思っています。昔のガラパゴス携帯電話のようなものですが、研究というのは、そういうものです。 けれども、学術界においては、「欧米でやっていること以外はダメだ」という風潮が染みついてしまっています。日本の特徴といえるのかもしれませんが、欧米で出ている論文のデータを素直に信じる傾向があります。新型コロナウイルスに関しても、「欧米では、多くの若者が感染して、若者に後遺症が出ている」という情報を持ってきて、日本での若者の感染率や後遺症のデータについてはほとんど考慮しない状態でした。 日本の若者が感染して重症化した例は少なく、結果的に、後遺症になった人の割合も欧米ほど多くありません。それにもかかわらず、「若い人も後遺症が出る。若い人もワクチンを打たなければいけない」と言ってワクチン接種を若者にも促進しました。 論文には嘘は普通にころがっています。『ネイチャー』や『サイエンス』クラスのトップジャーナルであればあるほど、誇張や嘘が多い印象です。それらの論文ばかりを根拠にしているのは、間違いです。医学界がその姿勢を改めない限り、日本に最適の感染症対策はできないと思います』、感染症は「日本人」の特性に応じて欧米とは違う症状を示す以上、「日本人」の特性に応じた「感染」対策を真剣に検討すべきだろう。

次に、本年2月22日付け東洋経済オンラインが掲載した医療ガバナンス研究所理事長の上 昌広氏による「コロナ5類「マスク要否」論争で知っておきたい事 専門家は有効性を主張するが否定的な研究もある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/654221
・『5月8日、コロナの感染症法上の位置付けが現在の「2類相当」から「5類」に変更される。入院などを強制できる危険性の高い感染症に当てはまらなくなることに伴い、政府は室内でのマスクの着用の推奨を取りやめる。これまでマスク着用をめぐっては各方面でさまざまな騒動があったが、今回の政府方針変更についても議論が巻き起こっている』、歯に衣着せぬ「上」氏の見解とは興味深そうだ。
・『専門家は慎重  マスク着用について、専門家は慎重だ。1月24日に、厚生労働省の感染症部会の議論を紹介した朝日新聞の記事は、以下のように記している。 <マスク着用の緩和については8人が言及し、慎重な意見が目立った。政府は屋内でも原則着用を求めない方向で検討中だが、「着用にはエビデンス(科学的根拠)があるが、外すことに関する情報は乏しい。着けたい人への配慮も必要」「感染対策として必要で、類型移行とは別に検討すべきだ」「緩和は時期尚早」などの声があった。> 朝日新聞は2月12日の社説で「マスク見直し拙速な転換は混乱招く」と論じており、早期の規制緩和に反対している。朝日新聞ほどでないにせよ、マスク外しには慎重に対処すべきだというのは、マスコミのコンセンサスのように見える。彼らが、このように主張する背景にあるのは、前述したように、専門家の「着用にはエビデンス(科学的根拠)がある」という話からだ。 では、そのエビデンスとはなんだろう。2月8日、西浦博・京都大学教授や尾身茂・コロナ対策分科会会長ら25人の専門家が「マスク着用の有効性に関する科学的知見」という文章を発表した。 この内容には疑問がある。それは、「マスクをつけるべきだ」という自らの主張に適合する研究を取り上げていても、この議論で外すことのできない重要な研究が引用されていないからだ。 このレポートで、専門家たちは2つのメタ解析の結果を紹介している。メタ解析とは、それまでに発表されている医学論文をまとめて分析したもので、医学的エビデンスレベルが最も高いとされている。) 1つ目は、今年2月に北京大学の研究者たちが『トランスレーショナル精神医学誌』に発表したものだ。この研究では、マスク着用により、感染リスクは16%低下し、その差は統計的に有意だった。臨床医学では、統計的に有意であることは、有効性が証明されたと同義である。 もう1つは、昨年8月に世界保健機関(WHO)などの研究者が『E臨床医学誌』で発表したものだ。「すべての研究で、マスク着用政策に関連した発生率の急速かつ大幅な減少が報告されている」と記している』、岸田首相としては、5月にG7サミットを議長国として開催することから、それまでに「日本」でも「マスク」を外せる状態にしたいのだろう。「北京大学の研究者たちが『トランスレーショナル精神医学誌』に発表したものだ。この研究では、マスク着用により、感染リスクは16%低下し、その差は統計的に有意だ」。「世界保健機関(WHO)などの研究者が『E臨床医学誌』で発表したものだ。「すべての研究で、マスク着用政策に関連した発生率の急速かつ大幅な減少が報告されている」と記している」、「有効性」を実証した例だ。
・『マスクの効用に否定的な研究も複数存在  このような研究結果を知ると、マスクの有効性は明らかで、医学的に公知であると考える読者が多いだろうが、必ずしもそうとは言い切れない。マスクの効用について、否定的な研究も存在するからだ。 昨年2月、韓国のサムスンメディカルセンターの医師たちが、マスクの効果を検証したメタ解析を『医療ウイルス学』誌に発表したが、この研究では、一般人がマスクを着用した場合、予防効果は約20%で、その差は統計的に有意ではなかった。つまり、効果は証明されていないことになる。 さらに、今年1月30日に公開されたマスクに関するコクランレビューの結果は、もっと否定的だった。マスクの感染予防効果はまったくなかった。11の大規模臨床試験をまとめたメタ解析では、マスク着用群で感染が5%減っていたが、これは統計的に有意ではなかった。 コクランレビューは、国際団体コクランが作成する医学論文の総括で、信頼度は極めて高い。 では、どうして「マスク着用の有効性に関する科学的知見」で引用されている研究と、コクランレビューの分析結果が、こんなに違うのだろうか。それは選択する論文の基準が違うからだ。「マスク着用の有効性に関する科学的知見」に引用された北京大学の研究は76の論文、WHOの研究は21の論文を分析している。前者はコロナ以外の呼吸器感染、後者はコロナ感染に限定している。) 一方、コクラン研究は、コロナ以外の呼吸器ウイルスも含め、11の臨床研究を解析している。すべて、ランダム化比較試験だ。ランダム化比較試験では、臨床試験参加者のマスクの装着を、個人ごとや地域ごとにくじ引きで決めるため、バイアスが関与する可能性は低い。 一方、北京大学やWHOの研究には、多くの観察研究が含まれている。コロナ感染の減少が、マスクの効果なのか、あるいはワクチン接種や換気対策、さらに季節性要因などの他の要因によるものか区別できない。 メタ解析では、分析の対象とする研究の数を増やすことが、必ずしも研究の質を上げることにならない』、「「マスク着用の有効性に関する科学的知見」に引用された北京大学の研究は76の論文、WHOの研究は21の論文を分析している。前者はコロナ以外の呼吸器感染、後者はコロナ感染に限定」、「マスクに関するコクランレビューの結果は、もっと否定的だった。マスクの感染予防効果はまったくなかった。11の大規模臨床試験をまとめたメタ解析では、マスク着用群で感染が5%減っていたが、これは統計的に有意ではなかった。 コクランレビューは、国際団体コクランが作成する医学論文の総括で、信頼度は極めて高い」、「「マスク着用の有効性に関する科学的知見」で引用されている研究と、コクランレビューの分析結果が、こんなに違うのだろうか。それは選択する論文の基準が違うからだ。「マスク着用の有効性に関する科学的知見」に引用された北京大学の研究は76の論文、WHOの研究は21の論文を分析している。前者はコロナ以外の呼吸器感染、後者はコロナ感染に限定している。) 一方、コクラン研究は、コロナ以外の呼吸器ウイルスも含め、11の臨床研究を解析している。すべて、ランダム化比較試験だ。ランダム化比較試験では、臨床試験参加者のマスクの装着を、個人ごとや地域ごとにくじ引きで決めるため、バイアスが関与する可能性は低い」、なるほど。
・『どこまでマスクの効用に期待するかは個人次第  なぜ、専門家25人は、「マスク着用の有効性に関する科学的知見」に、最も権威があるコクランレビューを引用しなかったのだろうか。もし、コクランレビューをフォローしていなければ、研究者としての情報収集能力に問題があるし、知っていて引用していないならば不思議な話だ。 コロナが流行する以前の2010年にフランス、2011年にタイの研究者が、それぞれ家庭内でのインフルエンザの感染を減らすため、マスク着用を推奨したが、効果はなかったと報告している。 だからこそ、海外では流行期の公共施設などを除き、マスクの装着を個人の判断に任せている。どこまで感染リスクを負い、どこまでマスクの効用に期待するかは個人次第だ。マスクの装着は、個人の価値観に基づくものであり、中央政府が一律に決定できるものではない。厚労省や専門家は、自らの価値観を国民に無理強いするのではなく、国民が自ら判断できるように、正確な情報を伝えねばならない』、「コロナが流行する以前の2010年にフランス、2011年にタイの研究者が、それぞれ家庭内でのインフルエンザの感染を減らすため、マスク着用を推奨したが、効果はなかったと報告している。 だからこそ、海外では流行期の公共施設などを除き、マスクの装着を個人の判断に任せている。どこまで感染リスクを負い、どこまでマスクの効用に期待するかは個人次第だ。マスクの装着は、個人の価値観に基づくものであり、中央政府が一律に決定できるものではない。厚労省や専門家は、自らの価値観を国民に無理強いするのではなく、国民が自ら判断できるように、正確な情報を伝えねばならない」、「海外では流行期の公共施設などを除き、マスクの装着を個人の判断に任せている。どこまで感染リスクを負い、どこまでマスクの効用に期待するかは個人次第だ。マスクの装着は、個人の価値観に基づくものであり、中央政府が一律に決定できるものではない」現在の枠組みが確立したようだ。

第三に、2月23日付けYahooニュースがデイリー新潮を転載した「コロナワクチンは「すでに“大薬害”」京大名誉教授が指摘 米一流紙も「ワクチンを繰り返し接種した人は感染率が上がる」」の無料部分を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d2d505db87f5f11b1716604bef90c4a3e7e032a3
・『新型コロナワクチンは、高齢者の死亡率を低下させるなどの福音をもたらした半面、ここにきて決して看過できない“不都合なデータ”が次々と明らかになっている。ワクチン接種後に死亡するケースが国内で2千件近く報告されており、ついに、ワクチンを緊急承認したアメリカの食品医薬品局(FDA)も「負の側面」に言及。ファイザー社製のワクチンを接種する前と後で、肺塞栓症という病気になる頻度が統計的にみて有意に高くなっていたと報告したのだ。 ここ日本でも“潮目”は変わり始めているのかもしれない。何しろ、コロナワクチン接種推進の責任者だった河野太郎デジタル大臣が責任逃れの弁明を行って炎上したのだ。そんな中、米「ウォール・ストリート・ジャーナル」が報じた「ワクチンの暗部」とは――。)(これ以降は有料)』、残念ながら無料部分だけでは、殆ど実態が分からないが、やはり「ワクチン」の副反応は事実のようだ。今後、注視したい。
タグ:PRESIDENT ONLINE (その24)(「緊急事態宣言は必要なかった」ウイルス学者が語る日本に最適な感染症対策ができなかった本当の理由 「欧米でやっていること以外はダメだ」日本よりも欧米のデータを重視する病、コロナ5類「マスク要否」論争で知っておきたい事 専門家は有効性を主張するが否定的な研究もある、コロナワクチンは「すでに“大薬害”」京大名誉教授が指摘 米一流紙も「ワクチンを繰り返し接種した人は感染率が上がる」) パンデミック(経済社会的視点) コクランレビューは、国際団体コクランが作成する医学論文の総括で、信頼度は極めて高い」、「「マスク着用の有効性に関する科学的知見」で引用されている研究と、コクランレビューの分析結果が、こんなに違うのだろうか。それは選択する論文の基準が違うからだ。「マスク着用の有効性に関する科学的知見」に引用された北京大学の研究は76の論文、WHOの研究は21の論文を分析している。前者はコロナ以外の呼吸器感染、後者はコロナ感染に限定している。) 一方、コクラン研究は、コロナ以外の呼吸器ウイルスも含め、11の臨床研究を解析して 「「マスク着用の有効性に関する科学的知見」に引用された北京大学の研究は76の論文、WHOの研究は21の論文を分析している。前者はコロナ以外の呼吸器感染、後者はコロナ感染に限定」、「マスクに関するコクランレビューの結果は、もっと否定的だった。マスクの感染予防効果はまったくなかった。11の大規模臨床試験をまとめたメタ解析では、マスク着用群で感染が5%減っていたが、これは統計的に有意ではなかった。 「世界保健機関(WHO)などの研究者が『E臨床医学誌』で発表したものだ。「すべての研究で、マスク着用政策に関連した発生率の急速かつ大幅な減少が報告されている」と記している」、「有効性」を実証した例だ。 岸田首相としては、5月にG7サミットを議長国として開催することから、それまでに「日本」でも「マスク」を外せる状態にしたいのだろう。「北京大学の研究者たちが『トランスレーショナル精神医学誌』に発表したものだ。この研究では、マスク着用により、感染リスクは16%低下し、その差は統計的に有意だ」。 歯に衣着せぬ「上」氏の見解とは興味深そうだ。 上 昌広氏による「コロナ5類「マスク要否」論争で知っておきたい事 専門家は有効性を主張するが否定的な研究もある」 東洋経済オンライン 感染症は「日本人」の特性に応じて欧米とは違う症状を示す以上、「日本人」の特性に応じた「感染」対策を真剣に検討すべきだろう。 問題は「日本とは価値観が違うのに、日本の研究者たちは欧米の価値観で編集されている『ネイチャー』や『サイエンス』に論文が載ることが素晴らしいことだと信じ込んでい」ることにある。 海外留学した「研究者や医師」が主導的立場にあるからだろう。「その姿勢が色濃く出たのが初期の緊急事態宣言だったと思います。感染率はイギリスの26分の1、死亡率はイギリスの131分の1でしたが、イギリスと同じような対策をとろうとしました。イギリスの場合は、ロックダウンをしなければ感染者数は急激に下がらなかったのですが、イギリスでロックダウンをして下がってきたくらいの自然減(自然に感染が収まる)状態であった日本が、緊急事態宣言を出しました」、確かに今から振り返ってみると、滑稽なぐらいのカラ騒ぎだった。 「日本の研究者や医師には、「欧米と同じようにやればいい」という考え方が根付いてしまっています。政策決定に関わる人たちも事なかれ主義で、責任をとりたがりません。日本独自の対策をして失敗すれば責任をとらされますので、「アメリカはこうやっている」「イギリスはこうやっている」ということを根拠にして、同じ対策をとろうとします」、 「感染症モデルによる「人と人の接触機会」の削減は、数字に基づく計算であって、ウイルス学を無視したものでした。「人と人の接触機会」を減らすことは、あらゆる手を尽くした後の最後の最後の手段です。何をやってもうまくいかないから、最終的に「人と人の接触機会」を減らすというのであれば理解できますが、最初から「人と人の接触機会」を減らすのは、間違っています」、その通りだ。 「目玉焼きモデルは合理的なように思えるが、一般にまで普及しなかったのは何故なのだろうか。 宮沢孝幸『ウイルス学者の責任』(PHP新書) 宮沢 孝幸氏による「「緊急事態宣言は必要なかった」ウイルス学者が語る日本に最適な感染症対策ができなかった本当の理由 「欧米でやっていること以外はダメだ」日本よりも欧米のデータを重視する病」 「コロナが流行する以前の2010年にフランス、2011年にタイの研究者が、それぞれ家庭内でのインフルエンザの感染を減らすため、マスク着用を推奨したが、効果はなかったと報告している。 だからこそ、海外では流行期の公共施設などを除き、マスクの装着を個人の判断に任せている。どこまで感染リスクを負い、どこまでマスクの効用に期待するかは個人次第だ。マスクの装着は、個人の価値観に基づくものであり、中央政府が一律に決定できるものではない。厚労省や専門家は、自らの価値観を国民に無理強いするのではなく、国民が自ら判断できる できるように、正確な情報を伝えねばならない」、「海外では流行期の公共施設などを除き、マスクの装着を個人の判断に任せている。どこまで感染リスクを負い、どこまでマスクの効用に期待するかは個人次第だ。マスクの装着は、個人の価値観に基づくものであり、中央政府が一律に決定できるものではない」現在の枠組みが確立したようだ。 yahooニュース デイリー新潮を転載した「コロナワクチンは「すでに“大薬害”」京大名誉教授が指摘 米一流紙も「ワクチンを繰り返し接種した人は感染率が上がる」」の無料部分 残念ながら無料部分だけでは、殆ど実態が分からないが、やはり「ワクチン」の副反応は事実のようだ。今後、注視したい。
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随筆(その4)(中野信子 ヤマザキ マリ:生贄探し (第1回 日本人は世界でもいじわる行動が突出している 「私が損をしているのだからお前も損をすべき!」 足を引っぱりあう日本人脳)、第2回 「徳していそうな人」が生贄になる 「有名人は“得している”から生贄にピッタリ!」は脳の指令だった)、第3回 ”世間体”という日本の戒律 恐るべし! 日本人は「世間の目」を、なぜこんな強烈に怖がるのか?イタリア人から見た日本)、 第4回 自分自身が生贄にされないために 失敗やみっともなさを許す力をつける) [人生]

随筆については、2020年2月20日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その4)(中野信子 ヤマザキ マリ:生贄探し (第1回 日本人は世界でもいじわる行動が突出している 「私が損をしているのだからお前も損をすべき!」 足を引っぱりあう日本人脳)、第2回 「徳していそうな人」が生贄になる 「有名人は“得している”から生贄にピッタリ!」は脳の指令だった)、第3回 ”世間体”という日本の戒律 恐るべし! 日本人は「世間の目」を、なぜこんな強烈に怖がるのか?イタリア人から見た日本)、 第4回 自分自身が生贄にされないために 失敗やみっともなさを許す力をつける))である。

先ずは、2020年4月19日付け現代ビジネス「中野信子:生贄探し 第1回 日本人は世界でもいじわる行動が突出している 「私が損をしているのだからお前も損をすべき!」 足を引っぱりあう日本人脳 」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/82246?imp=0
・『「なぜ、あの人だけいい思いをするの!」幸せそうな人を見るとモヤッとする誰にもある負の感情。ヒトは誰もが生贄を求め、自分も生贄になる運命にあります。 脳科学者・中野信子さん、中東からヨーロッパ、アメリカとさまざまな異文化で学び暮らしてきた漫画家・ヤマザキマリさんの共著『生贄探し 暴走する脳』で、その、不条理さを歯に衣着せず分析。 そして、生きにくさから自由になる方法を提案します』、興味深そうだ。
・『自分が損してでも他人をおとしめたい  「日本人は親切だ」「日本人は礼儀正しい」「日本人は真面目だ」「日本人は協調性がある」というお決まりの褒め言葉があります。 確かにそのとおりでしょう。でも、日本人として日本に長く暮らしていると、手放しで喜んでよいものなのかどうか、一抹の不安もよぎります。これは一面的な見方であるかもしれない。本当に美しい心からそういう振る舞いがなされているのだろうか。そんなきれいごとで説明できるような国民性であったら、あっという間に悪意を持った他者/他国の餌食にされてしまうのでは? コーネル大学のベス・A・リビングストン、ノートルダム大学のティモシー・A・ジャッジ、ウェスタンオンタリオ大学のチャーリス・ハーストが行った研究によれば、協調性の高さと収入のレベルは反比例するといいます。誤解を恐れずに言えば、いい人は搾取されてしまうということです。 冷静に考えれば、親切で礼儀正しいのは、相手に対して無礼に振る舞ったことが広まって誹謗されることによる不利益を被るリスクを抑えるためであったり、真面目なのは誰かから後ろ指をさされて村八分にならないための自衛行為であったりもします。協調性があるというのも、そうしなければ本当に困ったときに誰も助けてくれないかもしれないからという理由が隠れていたりもします。 表向き、整った姿が見えているだけで、その裏には見なかったことにしなければならない闇の部分が口を開けている……。そんな闇があるからこそ、地理条件が偶然に助けているばかりではなく、日本人は自身の力で独立性を保っていられるのだとも言えます。きれいに整った穏やかな笑顔の下に、適切な量だけ毒々しさを隠し持っている日本の共同体の姿を、多くの人は、私などよりもずっと、経験的に知っているはずだと思います。 そんな日本社会の中で、生きづらさや息苦しさを感じたり、なぜ合理的な仕組みを築くことができないのかと憤慨したりする人も多いでしょうが、根本的には日本人のこうした逆説的な良い意味での「悪い」性格が原因となっているとも言えます。 残念ながら(?)、日本人は他国よりも顕著に「スパイト行動」をしてしまうという結果が報告されたわけですが、このスパイト行動とは、相手の得を許さない、という振る舞いのことです。もっと言えば、「自分が損してでも他人をおとしめたいという嫌がらせ行動」とでも言えばよいでしょうか』、「協調性の高さと収入のレベルは反比例」、「いい人は搾取されてしまう」、「日本人は他国よりも顕著に「スパイト行動」をしてしまうという結果が報告」、「このスパイト行動とは、相手の得を許さない、という振る舞いのこと」、「「自分が損してでも他人をおとしめたいという嫌がらせ行動」とでも言えばよいでしょうか」、なるほど。
・『世界でもいじわる行動が突出している日本人  大阪大学社会経済研究所の実験をご紹介します。 実験としては、おたがいにお金を出資して公共財(道路)を造ろうというゲームをしてもらいます。プレイヤー同士がおたがいにどんな行動をとるかによって自分の損得が決まるというルールで、心理的な駆け引きが見えてくるようになっています。 この実験によれば日本人は「スパイト行動」、つまり「自分が損してでも他人をおとしめたいという嫌がらせ行動」が顕著であったというのです。日本人は他人が利益を得ようとして自分を出し抜くことを嫌います。いわゆる「フリーライダー」を許さないのです。 タダ乗りする奴を許してはならない、なぜなら許せば社会の損失となるからだ――そうした内的な動機づけが行われて、自分が損をしてでも他人の足を引っ張ろうとするのです。そして、この傾向は世界のほかの国の人々には見られなかったというのです。 なぜ、日本でだけこの現象が見られるのでしょうか。日本人が、人の足を引っ張る行動をとる背景には、何があるのでしょうか。 「出る杭は打たれる」という諺(ことわざ)がありますが、これは非常に日本的な発想であると言えます。海外ではそれに該当する諺がないか、日本ほどは強く言われないようです。 一方で、日本人の社会的振る舞いは、たいへん節度のあるものであり、控えめで美しいと、海外から称賛されることもしばしばです。親切さ、礼儀正しさ、真面目さ、協調性など、われわれ自身も誇らしく思えるものでもあります。しかし、これらは一見、美しく見えますが、本質的なところはどうでしょうか。 もし、これらの性質が、実際はスパイト行動で自分が怖い目に遭わないための同調圧力に起因するものだとしたら。 『空気を読む脳』(講談社+α新書)で詳述しましたが、日本特有のこういった風潮の成り立ちについては、遺伝的な要素も絡む、一定の生理的な理由が考えられます。セロトニンの動態によってその人の、他者の得に対する態度が左右されるのです。 面白いことに、この実験では、ゲームが進むにつれて、プレイヤーは協力的になっていきました。これは、協力せずに自分が出し抜こうとしたら仕返しされるリスクが高いため、その恐怖が大きくなっていくからであると考えられます。 この結果についても、他国ではこのような傾向が見られませんでした。要するに、日本人は他人が得するのを許せない、そして、意地でも他人の足を引っ張りたいと考えている、ということが図らずも証明されてしまったわけです。協力的な姿勢になるのは自分も同じ目に遭うのが怖いからなのだ、ということになるでしょうか。 ただ、私はこのことをもって、単純に日本人が性悪だとは思いません。美しい国を守るためには、ときにはこういった毒をうまく使いこなすことも必要でしょう。 いずれにしても、とても興味深い結果です』、「日本人は「スパイト行動」、つまり「自分が損してでも他人をおとしめたいという嫌がらせ行動」が顕著」、「日本人は他人が利益を得ようとして自分を出し抜くことを嫌います。いわゆる「フリーライダー」を許さないのです」、「協力的な姿勢になるのは自分も同じ目に遭うのが怖いからなのだ、ということになる」、なるほど。
・『協調性という名の蟻地獄  前項で日本人はスパイト行動をする傾向にあるという実験をご紹介しましたが、このスパイト行動は、言い換えれば、協調性という名の蟻地獄、とでも言えるものです。 他人が得するのを許せない、という精神が、どちらも得をするというwin-winな考え方の邪魔をしているのです。また興味深いのは、「私が損をしているのだからお前も損をすべきだ」という考え方が生じることです。いわば、win-winよりもlose-loseを指向する構造を持っているということになります。足を引っ張りあい、誰の得も許さない。ひとりだけ抜け駆けしようとするやつは寄ってたかって袋叩きにしてやれということにもなります。つまり、この蟻地獄から抜け出そうとするのには、かなりの困難が伴うということです。 さすがに文章で読んでいるだけであれば、自分はそんなことはしないし、思いもしない、という人がそれなりにいると思うのですが、実際には、すでにおたがいを潰しあう結果をもたらす選択を何度もしている人が相当数いるのではないかと推察されます。そうでなければ、もっと合理的な選択を選好する社会がとっくに構築されていて然るべきで、「空気を読め」だとか、「出る杭は打たれてしまう」だとか、「お前だけを特別扱いするわけにはいかない」だとか、そんな非合理的な慣習はすでに消滅し去っているはずだからです。 日本ではイノベーションがなぜ起きないのか、といった議論がひところ、盛り上がったことがありました。ここまで説明してきたような土壌のある土地では、相当工夫しなければ、目立って旗を振る人は全員がこの空気の犠牲になってしまうでしょう。足を引っ張られてしまうことから彼らを守らなければ、イノベーションなど起こりようがないのです。 ドローンやブロックチェーン、自動運転といった新たな技術が出てきても、普及させるうえで些細な問題が起きるたびに、足を引っ張るいい口実ができたとばかりに、責任追及ばかりに終始する。ネガティブな側面ばかりがクローズアップされて、規制のオンパレード。これでは、新しいことにチャレンジするインセンティブ(動機)がなくなってしまいます。新しいことには経験知も伴わないことが多く、失敗があって当然のはずですから、新しいことにチャレンジする、イコール、足を引っ張られる沼へ踏み込むこと、になってしまうのです。 ただ、これは、攻撃する人を責めても状況が改善されるものではないのです。誰が悪いかを特定してその人を排除する、ではまた同じことのくり返しであり、まったく解決になりません。そうではなくて、これからどう改善するかにフォーカスする必要があります。 この実験はもうひとつの興味深い性質を浮き彫りにしてもいます。自分が得する側になったら、今度は自分が足を引っ張られて潰されるのが怖いので、できるだけ相手を刺激しないよう、無難に仲良くlose-loseしよう、という性質です。空気を読んで、目立たないように行動しよう。誰かの反感を買いかねないような派手な格好や威圧的なファッションは避けておこう。そんなふうに日本の女性が振る舞うのも、このためでしょう』、「ドローンやブロックチェーン、自動運転といった新たな技術が出てきても、普及させるうえで些細な問題が起きるたびに、足を引っ張るいい口実ができたとばかりに、責任追及ばかりに終始する。ネガティブな側面ばかりがクローズアップされて、規制のオンパレード。これでは、新しいことにチャレンジするインセンティブ(動機)がなくなってしまいます」、「自分が得する側になったら、今度は自分が足を引っ張られて潰されるのが怖いので、できるだけ相手を刺激しないよう、無難に仲良くlose-loseしよう、という性質です。空気を読んで、目立たないように行動しよう。誰かの反感を買いかねないような派手な格好や威圧的なファッションは避けておこう」、困った性癖だ。
・『日本ではたったの一度の不倫騒動も命とり  身近にもスパイト行動はたくさん見受けられます。 誰かがいい思いをしているとそれに嫉妬して、「あいつはダメだ」と周りに吹聴したり嫌味を言う。人を祝福したり称賛することができない。こうした人々の中では、誰かが得するだけで揉めごとの原因になりかねません。 この環境下では、宝くじが当たろうがビットコイン長者になろうが、余計なことは話さず、素の感情は見せないのが得策なのかもしれません。カラハリ砂漠のサン人は自慢すると後ろから味方に討たれかねないので、どんなにいい獲物を仕留めても、自らの猟果をみんなの前で自慢することはないといいます。日本社会にも似たところがありそうです。 政治家や芸能人のゴシップ記事で、炎上しやすいのが日本特有である理由の一端も、これで説明することができるかもしれません。芸能人も一度不倫騒動があれば人生が終わるようなレベルの転落をしてしまいます。やはり日本人には有名人を叩くのが好きなスパイト精神があるのでしょう。有名税という言葉は日本特有かもしれません。自分よりもおいしい思いをしている有名人は「けしからん!」と考えるのです。 論理的に考えれば、仕事ができることと人間的に高潔であることは別物です。「英雄色を好む」と言われるように、偉大な仕事を成し遂げる人はテストステロン値の高い人が多く、色恋沙汰も必然的に多くなってしまう傾向も否めないでしょう。仕事で結果を出しているのであればその人のプライベートはほとんど関係ないはずで、政治家が不倫をしようが日本をよくしてくれるのなら、特に糾弾する必要はないのではとも個人的には思います。 誰に対しても高潔さを求められる社会は息苦しいものです。 日本にいまだによくある根性論や美徳を振りかざして他者を追い詰める行為も、スパイト行動の一種と言えます。モラハラ、パワハラとも言われますね。成長にまったく寄与しないにもかかわらず、お前のためだ、などと言って理不尽な倫理観でねじ伏せようとする行動です。児童虐待の中にもこうした側面を持つものがあり、痛ましい報道に触れるたびに、胸が苦しくなるように感じます。「自分たちはこんな苦労をしてきたのだからお前も苦労すべきだ」論を押しつける振る舞いもよく見られるように思います。今の若い人がおいしい思いをしているのを見るだけで、許せなくて足を引っ張ろうとする。これも、スパイト行動の典型的な例です。 あなたの人生には、有限の時間しかありません。足を引っ張るような人の多い環境で、息を詰めるように暮らしていくのは大変なことです。できればもっと誰かを祝福したり素直に称賛できたりするような、器の大きさを持った人と楽しくすごしていきたいものです』、「誰に対しても高潔さを求められる社会は息苦しいものです。 日本にいまだによくある根性論や美徳を振りかざして他者を追い詰める行為も、スパイト行動の一種と言えます。モラハラ、パワハラとも言われますね。成長にまったく寄与しないにもかかわらず、お前のためだ、などと言って理不尽な倫理観でねじ伏せようとする行動です」、「あなたの人生には、有限の時間しかありません。足を引っ張るような人の多い環境で、息を詰めるように暮らしていくのは大変なことです。できればもっと誰かを祝福したり素直に称賛できたりするような、器の大きさを持った人と楽しくすごしていきたいものです」、その通りだ。
・『どうすれば周りに足を引っ張られないか  足を引っ張られず、悠々と実力をつけたいと願うのであれば、まずはスパイト行動をとる人が多い環境をなるべく避けることです。 実力をつけてきそうな後輩を叩いて道連れにしたり、村八分を恐れるあまり同調せざるを得なくなるような人も残念ながら多いものです。そうした環境にいては、あなたの人生は搾取される一方になってしまう。もしもそんな環境にあなたがいたとしたらすぐに抜け出すことをすすめます。長いことそんな環境に身を置いていれば、自分も無意識に誰かにスパイト行動をするように変貌してしまうかもしれません。 そしてもし、抜け出せない環境にそんな相手がいたとしたら、その人には、自分のことを、こう思ってもらう必要があります。「この人は私とは違う。もはやこの人は私の手の届くようなところにはない特別な能力を持った人だ」と。出過ぎた杭は打たれない、というのは確かに心理学的にみてもそのとおりです。相手の妬みを憧れに変え、自分を生贄にするよりも、生かして仲良くしたほうが得だと思わせられるようになるまで、自分を磨きぬかねばなりません。 そうして自身を作り上げていった人たちが多数派になったとき、この国の様相も、変わっていくかもしれないと思います。そんな静かな革命の一歩が、もしかしたらあなたの振る舞いから始まるかもしれません。明日の見えない、不安な時代に、「空気」という群衆のあいまいな意見に振り回されず、自分自身の選んだ道を正解にできる力強さを、多くの人が持つことができるよう願っています。 続きは、中野信子さんとヤマザキマリさんの対談『「有名人は“得している”から生贄にピッタリ!」は脳の指令だった』です』、「「この人は私とは違う。もはやこの人は私の手の届くようなところにはない特別な能力を持った人だ」と。出過ぎた杭は打たれない、というのは確かに心理学的にみてもそのとおりです。相手の妬みを憧れに変え、自分を生贄にするよりも、生かして仲良くしたほうが得だと思わせられるようになるまで、自分を磨きぬかねばなりません。 そうして自身を作り上げていった人たちが多数派になったとき、この国の様相も、変わっていくかもしれないと思います。そんな静かな革命の一歩が、もしかしたらあなたの振る舞いから始まるかもしれません。明日の見えない、不安な時代に、「空気」という群衆のあいまいな意見に振り回されず、自分自身の選んだ道を正解にできる力強さを、多くの人が持つことができるよう願っています」、同感である。

次に、この続きを、4月20日付け現代ビジネス「中野 信子, ヤマザキ マリ:生贄探し 第2回 「徳していそうな人」が生贄になる 「有名人は“得している”から生贄にピッタリ!」は脳の指令だった」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/82248?imp=0
・『「なぜ、あの人だけいい思いをするの!」幸せそうな人を見るとモヤッとする誰にもある負の感情。ヒトは誰もが生贄を求め、自分も生贄になる運命にあります。 脳科学者・中野信子さん、中東からヨーロッパ、アメリカとさまざまな異文化で学び暮らしてきた漫画家・ヤマザキマリさんの共著『生贄探し 暴走する脳』で、その、不条理さを歯に衣着せず分析。 そして、生きにくさから自由になる方法を提案します』、「生きにくさから自由になる方法を提案」とは興味深そうだ。
・『フェラーリで上がる男性ホルモンの値  中野 誰にとっても自分が大事というのは生物の基本原理ですし、そうでなければ現在、生き残っていない可能性大です。でも、誰にとっても自分が大事だから、他者を傷つけないでおこう、そこの思考のジャンプができる人とできない人がいるのですよね。 ヤマザキ 車の運転で人格が変わる人がいますけど、ツイッターにも似ている要素がありますね。 中野 似てますね。たとえば、あおり運転などの報道を見ていると、免許を持っていても運転するのが怖くなります。アバターを使った実験があるのですが、自分のアバターを変えるだけで、自尊感情が向上するというのがわかっているんです。また、高級車のほうが違反が多いというデータもありますね。フェラーリとカローラとを比べると、フェラーリに乗るほうがテストステロン値は上がるとわかったのです。 ヤマザキ 自尊心が誇大化するんですね、車もSNSでの発言も実態を覆う甲冑ですから。 中野 男性ホルモンの値が上がって、攻撃性が増してしまうんですね。たぶん昔の武将などは、名の知れた甲冑を身に着けるだけで人格変容する、ということもあったのではないでしょうか。 ヤマザキ フェラーリだとまたみんな振り返りますしね。承認欲求の顕在化。 中野 今だと高級時計とか、トロフィーワイフなどですかね。 ヤマザキ トロフィーワイフもあればトロフィーハズバンド、今まさにまったく同じこと考えていました。 中野 (笑)。月並みですが、やはり人間は物質的に満たされるとどこか病んでしまうのですかね……。コロナ禍が起こって、実は、こういうことを客観的に眺めることができる時間が増えたことは、現代人にとってまさに立ちどまって考える時間を与えられたという意味では、よかったと思うんですが。 ヤマザキ ひとつの共通した問題を、世界のすべての国々や人々が同時に抱える機会など滅多にありません。安泰な時間が多すぎても問題ですが、足りない分にはいろいろなことに気がつくチャンスがもたらされる。 中野 足りないとより知的になる人と、足りないとパニックになり、より鈍ってしまう人の両方がいますね。ただこれも、文化と教育のリソースが豊かであれば、前者の人をより増やせると思うのです。必ずしも物質的に豊かなことが幸福にはつながらない具体例として、古代ローマは大きな実験データになっているんですね』、「フェラーリで上がる男性ホルモンの値」、「トロフィーワイフもあればトロフィーハズバンド」、「やはり人間は物質的に満たされるとどこか病んでしまうのですかね……」、その通りだ。
・『息苦しさが表の顔と裏の顔を作る  ヤマザキ 古代ローマの時代性は食文化にも現れています。たとえば、帝政期のパクス・ロマーナの期間などは飽食の時代でもあり、お金持ちはフラミンゴの舌や雌豚の乳房とかを高級珍味として食していたりするわけです。 中野 古代ローマにおける食のバブルですね! ヤマザキ 食のファンタジーが通常の概念を逸脱していました。でもそういった豪勢な宴を開きながら、食べたものは吐き出すわけです。なぜかと言うと、食欲のために食べているわけではなく、味覚を満たすのが目的だからです。 中野 栄養をとるためじゃなく、エンタメや癒やしのために食べるんですね。 ヤマザキ そういうことです。盛りつけも視覚を刺激するものでなければならないから、突飛もないような有様だったらしい。鴨の腹を裂くとウナギが出てくる、みたいな……。 中野 摂食障害や過食嘔吐の人が多く出たでしょう。 ヤマザキ 古代ローマの社会や経済を考えると、多かったと思いますよ。 中野 この時代は痩せているほうが美ですか? ヤマザキ いえ、痩せているのが美しいとは思われていません。女性で言えば、痩せていると貧相、つまり出自や生き方が貧しいということになります。現代でも発展途上国の中にはグラマラスさが求められる傾向が強いところもありますけど、同じですね。肥満については、太って貫禄を見せたい元老院とかのおっさんたちには許されても、若いうちはやはりメンタルバランスの失調を表すことになってしまうので、運動もしているという証拠としてそこそこ筋肉がついた均整のとれた体が求められた。 古代の彫刻を思い出してみてください。女性は痩せすぎず、太すぎず。男性もいいあんばいの筋肉がついています。古代ローマで大事なのは、「バランス」です。何ごとも均等の調整がとれない人は自己管理が下手と見做されます。 中野 ローマの理想の型を追ってみる試みは面白いですね。その理想が独り歩きして、人々を苦しめたりもしていそう。現代と同じように。人間にはダメな部分や裏の部分もあるのに、その部分を認めない理想によって、表の顔と裏の顔が乖離(かいり)します。表は輝かしい皇帝、裏はいつも不安で自己の欠落におびえる。 マリさんが『プリニウス』(新潮社)で描いている暴君と呼ばれた皇帝ネロが、心理的にグレートマザーに依存し、闇を抱えてしまう理由のひとつがここにもあったのですね。 ヤマザキ 人文、運動、芸術すべてバランスを整えられない人はエリートとして認められません。ネロもこの圧力の犠牲になっていたと言えますね。 中野 興味深いですけど、なんと息苦しい社会でしょう。 ヤマザキ 息苦しいですよ、だから奴隷であるほうがいっそ気楽だったと思います。 中野 エリート層から脱落する恐怖というのはやはりあったのでしょうか。 ヤマザキ ありましたね。皇位継承は世襲だったりそうでなかったりと時期によって変わりますが、階級社会ではありますから、貴族はしょっちゅう権力者に媚び続けていなければなりませんでした。脱落すれば、普通の市民か、それ以下の生活が待っている。経済も馬力があった反面、競争も激しく、行き詰まってしまう商人や実業家もいました。 中野 格差が大きかったんですね。 ヤマザキ 今の資本主義社会とかなり近い社会だったと思いますよ。当時はまだ命の尊さや慈愛を訴えるキリスト教の教えが広まっていませんから、自殺は悪いことではありません。死の選択は自由でした。だから行き詰まったり、名誉を失った人は苦悩からの解決策として自殺を選ぶことも当たり前でした。 中野 あ、ちょっと日本ぽいです。 ヤマザキ 似ているんですよ』、「人文、運動、芸術すべてバランスを整えられない人はエリートとして認められません。ネロもこの圧力の犠牲になっていたと言えますね。 中野 興味深いですけど、なんと息苦しい社会でしょう」、「キリスト教の教えが広まっていませんから、自殺は悪いことではありません。死の選択は自由でした。だから行き詰まったり、名誉を失った人は苦悩からの解決策として自殺を選ぶことも当たり前でした」、なるほど。
・『「目立つ人」「得をしていそうに見える人」から標的になる  中野 有名な人を何かにつけて攻撃するのは、生贄の構造と同じと言えます。祝祭の生贄は共同体を保つために必要ということになりますが……。誰かをやり玉にあげることによって、その他の人が団結したり、ルールを守らせるための見せしめとなったりする。昔はそういう役割の人をわざわざ用意したところもあったのではないかと思います。その祝祭の構造が地域共同体の崩壊により機能しなくなると、誰も彼もが標的になるんですね。 ヤマザキ たとえばいじめも、リーダー格の人が誰かをスケープゴートと決めて、そして周りにもその人をスケープゴートとして扱うことを強いる、というあの構図でしょうか。 中野 そうですね。『魏志倭人伝』にも、持衰(じさい)という役割を持つ人が出てきます。船に乗り込ませ、時化(しけ)のときに生贄にされるための存在です。残酷ですが……。持衰は髪もとかず服も洗わず虱(しらみ)まみれで、肉も食べず女とも交わってはならないと記述があります。 本当は専門家に詳しく聞きたいところですが、このような仕組みがないと、危機のときにもっと困ったことになったのかもしれません。つまり、あらかじめ失われる人を設定しておかないと、誰から標的になるのかと言うと、「目立つ人」「得をしていそうに見える人」から選ばれてしまう。その人は、実際には力があって、共同体のために必要な人かもしれないのに。これが、現代でいう、有名税の構図ですよね。 また、外見の異なる人も標的になりやすくなります。異質者を排除する集団バイアスがかかるためです。さらに危機が迫ると、内集団バイアスという「自分たちは無条件にすごい!」、外集団バイアスは「よそ者は無条件にダメ!」と、こういった偏りが強くなります。 ヤマザキ でもそれが社会のバランスをとるうえで必要不可欠なことなのだとすると、格差のない人類皆平等の世界などというのは完全にフィクションということになりますよね。歴史を辿っても見えてくることですが、そもそも人類から差別や格差が消えるなどと思ったことは実はありません』、「祝祭の生贄は共同体を保つために必要ということになりますが……。誰かをやり玉にあげることによって、その他の人が団結したり、ルールを守らせるための見せしめとなったりする。昔はそういう役割の人をわざわざ用意したところもあった」、「『魏志倭人伝』にも、持衰(じさい)という役割を持つ人が出てきます。船に乗り込ませ、時化(しけ)のときに生贄にされるための存在です」、「このような仕組みがないと、危機のときにもっと困ったことになったのかもしれません。つまり、あらかじめ失われる人を設定しておかないと、誰から標的になるのかと言うと、「目立つ人」「得をしていそうに見える人」から選ばれてしまう」、やはり「あらかじめ失われる人を設定して」おく方が安定には望ましいようだ。
・『不安や経済的な不安定さが生贄欲を高める  中野 災害が起きるたびにこの傾向は高まるようなのです。災害が起きるごとに社会的な排除というかたちで生贄がささげられる、ということの説明にはなるでしょう。しかし、現代の世界にはそぐわないですよね、この生贄をささげるという仕組みは。 ヤマザキ 不安が溜まったり経済的に不安定になればなるほど、生贄を欲するようになるということでしょうか。生贄という概念自体は本能ではないけれど、人間の文明は生贄とともにありき、というのはありますよね。 中野 そうですね、もう生物としての仕組みに近いところにありますね。完全に消すことは無理なのかもしれません。しかし、何か工夫ができないものかといつも思います。差別や格差というかたちでなく、人心を安定させるための仕掛けが必要だと思います。逸脱者を自分勝手な正義に基づいて攻撃することは、恥ずかしいことだ、と自覚させる仕掛けがあるといいのですよね。抑止力としては今のところこれができればいちばんスマートです。 ただ、これを外的なルールとして定着させると、またそこから逸脱した人は排除していい、というリバウンドが起こります。「攻撃している奴は攻撃していい! いじめている奴こそいじめられてしかるべき!」というのがその典型ですが、これが無限に続いてしまうでしょう。「冷静になろうよ」という人がもう少しいてもいいと思うのですが、あまり広がらない感じがあるのは残念です。 ヤマザキ とにかく、俯瞰的にものごとを捉えて、人間をヒトという生き物として分析したり、冷静な発言をできる人間が少ないですね。人間が地球の生物で一番優れているという確信から捉えた考え方が多い。 中野 本当に。大衆を動かすとき、古代ローマでもそういった、やはり民をあおるような言説は広がっていったんですか。冷静な発言をする人は、常に標的になりかねないものだ、という認識があります。 ヤマザキ ネットでも「自分は大変冷静に今の状況を捉えています」みたいな雰囲気を漂わせている人にも、警戒したほうがいいな、というのが自分にはあります。 中野 自分こそ正義、自分こそ知性、と思っている人ほど、ブレーキがオフになりやすく、正義の快さにあっという間に人格を乗っ取られてしまう。本当の知性は、自分の正義や知性が独り善がりのものになっていないかどうかを、まず疑うところにこそ、あると思うのですが。 続きは、ヤマザキマリさんの『日本人は「世間の目」を、なぜこんな強烈に怖がるのか? ~イタリア人から見た日本』をお届けします』、「自分こそ正義、自分こそ知性、と思っている人ほど、ブレーキがオフになりやすく、正義の快さにあっという間に人格を乗っ取られてしまう。本当の知性は、自分の正義や知性が独り善がりのものになっていないかどうかを、まず疑うところにこそ、あると思う」、その通りだ。

第三に、この続きを、4月21日付け現代ビジネス「ヤマザキマリ:生贄探し 第3回 ”世間体”という日本の戒律 恐るべし! 日本人は「世間の目」を、なぜこんな強烈に怖がるのか?イタリア人から見た日本 ヤマザキマリ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/82249?imp=0
・『・・・“出る杭を打つ”日本を恋しがるイタリア人の夫  イタリアで学校の教諭をしている夫はこれまで年に2度、休暇のたびに日本を訪れるのが常でしたが、コロナ禍になってからはそれも叶わず、おたがいに会えていない状態が2019年の暮れから続いています。日本より厳しい措置がとられているイタリアで、50キロ離れた場所に暮らす両親の家へ行くことも控え、日々引きこもりを強いられている生活にやり場のない鬱憤を溜め込んでいる様子の夫ですが、先日交わした電話での会話でも「日本へ行きたい」とくり返していました。 ヨーロッパや中東の歴史の研究を生業としてきた夫は、日本人である私と結婚をしていながら、日本という国そのものに対しては、それほど強い好奇心を持っているわけではありません。昨今日本を訪れていた多くの外国人観光客に見られるような日本のサブカルへのシンパシーもなく、むしろ私の漫画家という休日返上で向き合わねばならない仕事を快く思っていない人です。なので「日本に来たくなるのはどうして?」と問いただしてみました。すると夫はしばらく黙ってからこう答えました。 「イタリアでは誰もがコロナに平常心を乱され、家族や知人の、見るからに鬱憤を溜め込んでいる表情を見ていると滅入ってしまう。こんな毎日をすごしていると、日本の、周りの人に迷惑をかけないように気を使って生きている、お行儀のよい人たちが懐かしくなる」 夫曰く、テレビをつけても、教員同士でリモート会議をしても、誰も彼も自制の利かない強烈な自己主張をぶつけてくるばかりで疲れてしまい、そんなとき、ふと日本の“世間体”を意識しながら主張を抑えて生きる人たちを思い出してしまうというのです』、「夫」曰く、テレビをつけても、教員同士でリモート会議をしても、誰も彼も自制の利かない強烈な自己主張をぶつけてくるばかりで疲れてしまい、そんなとき、ふと日本の“世間体”を意識しながら主張を抑えて生きる人たちを思い出してしまう」、「イタリア人」の「夫」でも、そのように感じているとは意外だ。
・『“世間体”という圧力で調和をとる日本人  「たとえばテレビのニュース番組ひとつとってみても、イタリアの女性キャスターは斜に構えたポーズに攻撃的な口調だし、知的だけどどこかセクシーな服装も含めどこか挑発的だけれど、日本のキャスターはみんな見た目も服装も謙虚で素朴だし、威圧感もない。ニュース番組の内容自体も世界で起こっているアグレッシブな報道は少なくて、田舎でこんな作物がとれたとか、こんなイベントがあったとか、全体的にほのぼのしたネタが多い。人間の狂気的側面を感じさせる報道を極力控えた、あの独特な雰囲気が懐かしくなることがある」 といった夫の発言は、まさに日本のニュース番組を毀誉褒貶するものでした。 “出る杭を打つ”という精神衝動は特に日本人に顕著に見られるものだそうですが、実は夫が指摘していた日本の女性キャスターの服装も、視聴者のリアクションを配慮した結論なのだという話を聞いたことがあります。もし、日本の朝のニュース番組に日焼けした肌にジル・サンダーやマックス・マーラをスマートに着こなす、スタイリッシュで大人の知的色気を纏った女性キャスターが現れでもしたら、全国の時間を持て余している視聴者からクレームが殺到する可能性があると言うのです。 毎日、特に朝のテレビに出るような立場の人は、視聴者に余計な刺激を与える存在であってはいけないし、どんなに知性があってもそこに成熟した色気を匂わせたり、視聴者に圧を与えるような雰囲気の女性がキャスターを務めるようなニュース番組は見たくない、と感じている人が少なくないということなのでしょう。 かくいう私も、かつて北海道のテレビ局の番組で料理を作ったりリポーターをしていた時期がありますが、11年に及ぶイタリアでの留学生活の直後だったこともあり、ヘアスタイルは学生時代と同じくジャニス・ジョプリンのようなもつれた無造作なソバージュで、しかも声は低いし態度も大雑把ですから、日本のテレビ向けとは言い難い私の有様を見て驚いた視聴者がいたのでしょう。間もなく番組のプロデューサーに呼び出されて、髪型を変えてほしいということ、そして黒や紺など暗い色の服装も控えてほしい、と指示されたことがありました。 結局私は髪型を変えることも、子どものころから着なれている暗い色の服を控えることもしませんでしたが、そのうち視聴者の人たちも私のそんな佇まいに慣れていったのか、または諦めたのかクレームが届くことはなくなりました。 たまたま私がイタリアという、家庭でも社会でも自己主張の弱い人間はたちどころに潰されていくような国で揉まれてきたのと、テレビの仕事も子育てのためと弁えて、自分の佇まいを矯正されてまで続けるつもりはなかったので、プロデューサーや視聴者の批判にさほど翻弄されることなく毅然としていられましたが、あのときもし、自分の居場所は日本にしかなく、日本の環境に何が何でも溶け込む必要がある、という意識がもっと強かったら、おそらくそうした“世間体”の圧力によって、自分という人間を視聴者が求めていたような仕様にかたどり直していたかもしれません。 もちろん、中には突出した才能を発揮させることで社会的な成功を収めている人たちだっています。しかし、人々は出る杭的な立場である彼らを、自分たちの抱くイメージや正しいと信じていることを裏切らないという条件つきで認めているところがありますから、少しでもそれに添わないことをしてしまうと、簡単に世間から抹殺されてしまうことになるのでしょう』、「かつて北海道のテレビ局の番組で料理を作ったりリポーターをしていた時期」、「あのときもし、自分の居場所は日本にしかなく、日本の環境に何が何でも溶け込む必要がある、という意識がもっと強かったら、おそらくそうした“世間体”の圧力によって、自分という人間を視聴者が求めていたような仕様にかたどり直していたかもしれません」、なるほど。
・『「世間の目が怖い」で統制されている日本社会  個性や独特な世界観が人としての評価を高めることのできる欧州と、世間が築いたテーゼからはみ出さないように生きてきた人が評価される日本。こうしたそれぞれの国民の個性や価値観の相違の背景には、そういった精神性が育まれるにいたった歴史や地理といった条件が織り込まれているので、どちらがよいとか悪いとかといったことを考えるのはナンセンスですし、怠惰な人間にとって比較は迷惑なものでしかありません。 たとえば、西洋や中東では、長い年月宗教が築いた倫理や理性が人々の中で確固たる軸をなしていますが、宗教の拘束がない日本の場合は“世間体”という戒律がわれわれの生き方を統制しています。先日、コロナの陽性反応が出たことで「周りに迷惑をかけてしまった」と危惧し、自ら命を絶ってしまった女性がいたことを報道番組で知りました。周囲から非難されることを恐れて、検査が陰性でも田舎の実家へ戻らないようにしている人たちも随分いると聞いています。 下手をするとこの“世間体”は、キリスト教やイスラム教やちょっとした社会主義体制よりも、よほど厳しい戒律だと解釈することもできます。無症状だけど陽性判定が出てしまい、周りへ迷惑をかけることを苦に自死した女性がいるとイタリアの家族に話をしたら「なんだって!? そんなことで自殺をするなんて信じられない!」と絶句していましたが、実は日本におけるこうした“世間体”の厳しさこそが、他国と比べてコロナの蔓延をいくらか抑制する理由になっている部分も少なからずあるのではないかと、私は見ています。 われわれは、自由と民主主義が許された社会の中で暮らしていると思い込んで日々をすごしています。でも実態は、“世間体”という、具体的なかたちになっていないだけの民衆による強烈な統制力と、その時々の流動的な倫理によって形成される正義感によって、思想や行動の自由が容赦なく規制された、窮屈な環境の中に置かれているとも言えるのです。 続きはヤマザキマリさんの『失敗やみっともなさを許す力をつける』をお届けします』、「われわれは、自由と民主主義が許された社会の中で暮らしていると思い込んで日々をすごしています。でも実態は、“世間体”という、具体的なかたちになっていないだけの民衆による強烈な統制力と、その時々の流動的な倫理によって形成される正義感によって、思想や行動の自由が容赦なく規制された、窮屈な環境の中に置かれているとも言えるのです」、確かに「われわれは」、「“世間体”」という「窮屈な環境の中に置かれている」、その通りだ。

第四に、この続きを、4月22日付け現代ビジネス「ヤマザキマリ:生贄探し 第4回 自分自身が生贄にされないために 失敗やみっともなさを許す力をつける」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/82250?imp=0
・『・・・自分の失敗の責任を自分で背負いたくない  以前、若い新聞記者の男性からインタビューを受けたとき、昨今の若者は海外への留学や旅行はおろか、そもそも国内旅行に行こうとすらしないという話になりました。そういう記者本人もなかなか国外へ出る勇気が出ないというので、どうしてなのかと尋ねてみたところ、融通のきかない土地へ行って自分のダメさや使えなさと向き合い、自分自身に失望するのが怖いと言うのです。つまり、自分が知りたくないみっともない自分とは遭遇したくない、自分の失敗の責任を自分で背負いたくない、ということなのでしょう。 そういえばバブルのころ、成田離婚という言葉が横行した時期がありました。要するに、日本では頼りがいのあるパートナーが海外に出た途端さっぱり役に立たず、そんな新郎の情けない有様に幻滅した妻から離婚を申し出られるというのが成田離婚の内実らしいのですが、最近の若者が旅に出て自分に幻滅するのが怖いというのも、同じ心理でしょう。冒険をしてみたところで自分のダメさに気がつき、嫌な思いをするくらいなら、行動範囲を狭めるに越したことはない、と考える人はすでに成田離婚が話題になっていたころから増えていたのかもしれません。 1990年代後半、子どもを連れて日本に戻ってきた私が気になったのは、私の幼少期と比べて子どもたちが全体的に大人しくなっていたことでした。オーケストラをリタイアした母が自宅で50人くらいの子どもたちにバイオリンを教えていたので、彼らの様子を見ればその傾向が一目瞭然でした。 それはちょうど学校での差別化を排除し、運動会の徒競走のゴールは全員一緒、学芸会ではみんなが主人公、教師が子どもたちにゲンコツのような体罰を与えようものなら大騒ぎ、という風潮が当たり前になりつつあったあの時期、子どもの授業にPTAが順番で立ち会う、というような態勢をとっていた学校の話も聞いたことがあります。とにかく教員たちがそれまでのように自分たちの解釈や判断で振る舞えなくなったというのが、日本における教育の大きな変化だったと言えるでしょう』、「昨今の若者は海外への留学や旅行」「に行こうとすらしない」、「どうしてなのかと尋ねてみたところ、融通のきかない土地へ行って自分のダメさや使えなさと向き合い、自分自身に失望するのが怖いと言うのです。つまり、自分が知りたくないみっともない自分とは遭遇したくない、自分の失敗の責任を自分で背負いたくない、ということなのでしょう」、情けない話だ。
・『教育環境は“メンタル無菌室”状態…!?  ちなみに私が小中学校に通っていた1970年代から80年代初頭は、学校にはまだ当たり前に、良い意味でも悪い意味でも個性豊かな教員たちが揃っていましたし、校則が守れない子どもには怒鳴ったり平気でゲンコツを振り下ろすような気の短い教師もいましたが、そういった粗暴な態度をとられたところで「教師としてありえない」「教師のくせに非道」などとは誰も思ってはいませんでした。 時に不条理な理由で怒られることがあったとしても、人間の社会なんていうのは所詮そんなものだということを、教員だってみんな普通にストレスを抱えながら働いている一介の人間なんだということを、子どもの立場でありながらも認識する機会を与えてもらえていたのが​、私たちにとっての学校という社会でした。そもそも理想的な人間像を、学問を教えるという役割の人間に求めるというのは、根本的におかしな話です。私の夫も研究者で教員ですが、日々、自分自身の学業や職業へのストレスと向き合いながら生きています。彼を含め生徒の心理や家庭環境の不条理についてを親身に理解し、健やかな未来を念頭に献身的に手を差し伸べてくれるほど精神が安定している人など、正直ほとんど見たことがありません。 生徒も教師も誰しも過酷な社会というジャングルに生息し、生き延びるために必死にならなければならないほど容赦のない状況に置かれた生き物なのだ、ということを知ることができるのも、学校という組織のあり方だと思うのです。 しかし現代では、こうした社会の不条理や歪んだ人間社会の実態を知らずにすませる教育が推奨されています。無茶な行動をとるような教員もいなければ、荒んだ家庭環境が顕在化したような、見るからに極悪風情な不良もいません。健やかに勉強ができるように、そしていじめが発生しないようにという考慮によって、教育環境は“メンタル無菌室”のような状態になっている印象があります。しかし、この“メンタル無菌室”で育てられた子どもたちは、果たして大人になったときに、生きていれば必ずどこかで遭遇する社会の荒波や不条理を乗り越えていくことができるのでしょうか。 どんな食べ物であろうと、しっかり栄養分を吸収して消化できるような頑丈な体のほうが、何が起こるかわからないこの世の中では有利だと思うように、メンタル面でも子どものころからさまざまな社会の歪みや悩みと接していったほうが、大人になってさまざまな問題と向き合うことになっても、その苦境を乗り越えていけるたくましさが養われると思うのです。自分自身がさまざまな痛みや苦しみを経験しなければ、他者を慮れる利他的な配慮もできなくなってしまうでしょうし、想像力が豊かになることもないでしょう。 講演会などでこういう話をすると、子どものいる親御さんたちは「そのとおり」としきりに頷かれるのですが、かといって実生活では世間での教育の全体的な風潮に逆らえる勇気まではなかなか出ない、“世間体”によるジャッジと孤立化が怖くて、全体傾向の同調圧力に背くことができない、というのが現実のようです。こんな教育への姿勢が変わらない限り、失敗や辛酸をなめてでも海外に行ってみようなどと思い立つ子どもも、そして親も現れないのは当たり前でしょう。 落語の噺の中には、とんでもない失敗をしでかし、人を騙し、騙され、調子に乗っていい気になったり失望したり、予定調和などない社会の中でもがきながらも面白おかしく生きている人物がたくさん登場します。 江戸時代や昭和の人々はこうした人間の、理不尽かつ不条理で、なかなか思いどおりにはならない人生の本質を知ることで、大笑いしながら自分を慰め、励まし、「まあ人間なんてぇのは所詮はこんなもんよ」と開き直ってすごしていたところがあると思うのです。 人間を必要以上に理想化せず、高望みもせず、どんな生き方をしようと、誰がどこでどんな目に遭おうと必要以上に頓着せず、他者を思いやれる人情という寛容性が当たり前に身についていたあの時代の社会には、現代にはない成熟があったように思うのです。 悪徳代官だろうと、狡猾な商人であろうと、貧乏長屋の住民であろうと、置屋の芸者であろうと、懸命になって生きる人々の日常とその滑稽さを、笑いながら知ることのできた落語は、聴衆にとって自分たちの生き様を俯瞰で捉えるツールのひとつだったのかもしれません。 しかし、負の感情を極力回避させられながら生きる現代の子どもたちに、こうした古典落語を聞かせてみたところで、いったいどんな反応ができるでしょうか。人間たちが失敗や恥をかきながらもくり広げる世界を、異次元での出来事のように感じてしまう子どももいるのではないでしょうか。 そう考えると、明治維新に始まった日本社会の早急な西洋化が、人々のかっこ悪さやみっともなさを人情という美徳と捉えていた心のゆとりを払拭してしまった、ひとつのきっかけだったような気もします』、「教育環境は“メンタル無菌室”状態…!?」、「明治維新に始まった日本社会の早急な西洋化が、人々のかっこ悪さやみっともなさを人情という美徳と捉えていた心のゆとりを払拭してしまった、ひとつのきっかけだったような気もします」、困ったことだ。
・『コロナ禍で打ちのめされた私を救った友人  いつのことだったか思い出せませんが、夫がぼそりとこんなことを言ったことがありました。 「困ったり苦しんでいる人を、純粋な慈愛をもって助けてあげることができるかどうか、利他性を発揮できる人間がどれだけいるかどうかが、人類の文明の尺度になるのではないか」 何に対してそんな言葉を吐露したのか覚えてはいませんが、その解釈には納得させられました。 コロナの影響で私はこの1年、自分にとって三度の食事よりも大切な栄養素となっていたイタリアと日本の往復を含む世界中の都市への旅も制限され、日本という国に留め置かれてしまったことに自分でも想像していなかったほどの精神的苦しみと葛藤を強いられました。 自分にとって、各国を旅することで得られる価値観の差異は、多様な考え方や既成概念を逸脱した発想をもたらしてくれる大きなきっかけとなっていたのに、それが断たれてしまったことで、いつもなら旺盛な創作への意欲も萎えてしまい、仕事になかなか着手できない日も増えました。こんな具合に表現への意欲が消沈するのは、物心がついてからは初めてのことだったかもしれません。 そんな私の様子を危惧したとある親しい友人が、「大丈夫。これからはインナートリップで価値観の違いや多様性を知って、豊かな気持ちになればいい」と、さまざまなジャンルの映画や書籍や音楽を紹介してくれました。今まで場所を移り変わることで意識を逸らしていた仕事などにかかわる周辺整理も、立ちどまったことで対処する気持ちになれたのも、その友人が励ましてくれたおかげだったと思っていますが、その人にとっては自分の周りに困った人がいれば助け舟を出すのがあたり前の行為であり、手助けをしたことで感謝されたい、などという見返り欲求は一抹もありません。正義というのは、他者の苦しみに対し、無意識に手を差し伸べてあげられてこそ、本当の意味を成すものなのではないかということを感じたのでした。 自分が信じている信念に従わない他者を戒めることは、それがたとえ自分にとって、どんなに理想的な宗教的理念や政治思想が根拠になっていようと、所詮は同調への強引な圧力というものでしかなく、正義とは言えません』、「正義というのは、他者の苦しみに対し、無意識に手を差し伸べてあげられてこそ、本当の意味を成すものなのではないかということを感じたのでした。 自分が信じている信念に従わない他者を戒めることは、それがたとえ自分にとって、どんなに理想的な宗教的理念や政治思想が根拠になっていようと、所詮は同調への強引な圧力というものでしかなく、正義とは言えません」、その通りだ。
・『今、立ちどまって考えること  2020年、アメリカの大統領選挙の結果に満足がいかなかったトランプ支持者たちにとっては、議事堂で大暴れするのも自分たちの信念を守るための、真っ当な正当行為だったはずです。しかし、あの騒動から垣間見えてくるのは、思想に縛られた想像力の麻痺と、孤独、そして思考力の怠惰です。 自分とは意見の分かち合えない人がいたり、自分が正しいと思う行為に背く人がいたら、それを頭ごなしに否定するのではなく、その理由やそういった齟齬を生んだ背景をわかろうとする試みと努力は必要不可欠だと思うのですが、考えることに怠惰な人々は情動に身を委ね、群衆という一体感に安堵し、陶酔してしまう。人類の歴史とともにあり、途絶える気配もない戦争は、まさにそうした人間の想像力の欠落と思考力の怠惰のあらわれなのではないかと思うのです。 自分と分かち合えない意見や思想とぶつかったら、まずはそれを興味深い、考えてみるに値する現象として受け入れてみればいいのです。 私が昆虫好きな理由は、意思の疎通もできなければ大気圏内の生き物という以外に何も共有するものがない、こうした多様な生物を生み出した地球そのものへの好奇心を楽しめるからです。 アメリカ・インディアンのズニ族にとって虹は5色、アフリカのジンバブエやザンビアに暮らすショナ人は3色と解釈しています。そんな彼らに対し虹は7色なのだ、なぜそれがわからないのだと強制するのではなく、世界には5色や3色、または12色に見える人たちもいるのだということを、地球上における興味深い実態として受け入れればいいのです。 現在のようなコロナ禍の危機的状況を乗り越えるのに必要なのは、外部からの情報に翻弄されず、冷静に自分の頭でものごとを考えることと、自分と同じ考えを持たない人との相互理解への積極性でしょう。知性を怠惰なまま放置しないでください。どうしても周りに自分の考えを納得させないと気がすまないというのであれば、そこで怨嗟やストレスを増長させるかわりに、何かそれとはまったく関係のない別のことを考えたり意識を向けるようにしてみるべきだと思います。 私がおすすめするのは、どこか広く視野が開けた、なるべくなら人間の巣である都市部よりも自然の多い場所まで出向いて、地球とそこに生きる自分のつながりをシンプルに感じることです。空に向かって思い切り深呼吸をするなど、大気圏内で生きる生物である自分を感じてみると、かなり気楽になるかと思うのです。​地球という惑星が自分の究極の住処であるという感覚をものにすれば、限定的な範囲の中で発生している些末な揉めごとや悩みも、なかなか自分の思いどおりにならない人生や他者の生き方についても、それほど大騒ぎをしたりするほどのことでもない、と感じることができるはずです。 自分が病気にならないために、病気を持っていそうな人を排除しながら生きていくのか、それともどんな劣悪な環境にも対応できる強い覚悟を身につけるべきなのか。今はまさにそういうことを考えられる絶好のタイミングなのではないでしょうか』、「私が昆虫好きな理由は、意思の疎通もできなければ大気圏内の生き物という以外に何も共有するものがない、こうした多様な生物を生み出した地球そのものへの好奇心を楽しめるからです」、養老孟司先生に似ている。「私がおすすめするのは、どこか広く視野が開けた、なるべくなら人間の巣である都市部よりも自然の多い場所まで出向いて、地球とそこに生きる自分のつながりをシンプルに感じることです。空に向かって思い切り深呼吸をするなど、大気圏内で生きる生物である自分を感じてみると、かなり気楽になるかと思うのです。​地球という惑星が自分の究極の住処であるという感覚をものにすれば、限定的な範囲の中で発生している些末な揉めごとや悩みも、なかなか自分の思いどおりにならない人生や他者の生き方についても、それほど大騒ぎをしたりするほどのことでもない、と感じることができるはずです」、気分転換にはいい方法のようだ。
タグ:ヤマザキマリさんの共著『生贄探し 暴走する脳』 現代ビジネス「中野信子:生贄探し 第1回 日本人は世界でもいじわる行動が突出している 「私が損をしているのだからお前も損をすべき!」 足を引っぱりあう日本人脳 」 随筆 (その4)(中野信子 ヤマザキ マリ:生贄探し (第1回 日本人は世界でもいじわる行動が突出している 「私が損をしているのだからお前も損をすべき!」 足を引っぱりあう日本人脳)、第2回 「徳していそうな人」が生贄になる 「有名人は“得している”から生贄にピッタリ!」は脳の指令だった)、第3回 ”世間体”という日本の戒律 恐るべし! 日本人は「世間の目」を、なぜこんな強烈に怖がるのか?イタリア人から見た日本)、 第4回 自分自身が生贄にされないために 失敗やみっともなさを許す力をつける) 「協調性の高さと収入のレベルは反比例」、「いい人は搾取されてしまう」、「日本人は他国よりも顕著に「スパイト行動」をしてしまうという結果が報告」、「このスパイト行動とは、相手の得を許さない、という振る舞いのこと」、「「自分が損してでも他人をおとしめたいという嫌がらせ行動」とでも言えばよいでしょうか」、なるほど。 「日本人は「スパイト行動」、つまり「自分が損してでも他人をおとしめたいという嫌がらせ行動」が顕著」、「日本人は他人が利益を得ようとして自分を出し抜くことを嫌います。いわゆる「フリーライダー」を許さないのです」、「協力的な姿勢になるのは自分も同じ目に遭うのが怖いからなのだ、ということになる」、なるほど。 「ドローンやブロックチェーン、自動運転といった新たな技術が出てきても、普及させるうえで些細な問題が起きるたびに、足を引っ張るいい口実ができたとばかりに、責任追及ばかりに終始する。ネガティブな側面ばかりがクローズアップされて、規制のオンパレード。これでは、新しいことにチャレンジするインセンティブ(動機)がなくなってしまいます」、「自分が得する側になったら、今度は自分が足を引っ張られて潰されるのが怖いので、できるだけ相手を刺激しないよう、無難に仲良くlose-loseしよう、という性質です。空気を読んで、目立 たないように行動しよう。誰かの反感を買いかねないような派手な格好や威圧的なファッションは避けておこう」、困った性癖だ。 「誰に対しても高潔さを求められる社会は息苦しいものです。 日本にいまだによくある根性論や美徳を振りかざして他者を追い詰める行為も、スパイト行動の一種と言えます。モラハラ、パワハラとも言われますね。成長にまったく寄与しないにもかかわらず、お前のためだ、などと言って理不尽な倫理観でねじ伏せようとする行動です」、 「あなたの人生には、有限の時間しかありません。足を引っ張るような人の多い環境で、息を詰めるように暮らしていくのは大変なことです。できればもっと誰かを祝福したり素直に称賛できたりするような、器の大きさを持った人と楽しくすごしていきたいものです」、その通りだ。 「「この人は私とは違う。もはやこの人は私の手の届くようなところにはない特別な能力を持った人だ」と。出過ぎた杭は打たれない、というのは確かに心理学的にみてもそのとおりです。相手の妬みを憧れに変え、自分を生贄にするよりも、生かして仲良くしたほうが得だと思わせられるようになるまで、自分を磨きぬかねばなりません。 そうして自身を作り上げていった人たちが多数派になったとき、この国の様相も、変わっていくかもしれないと思います。 そんな静かな革命の一歩が、もしかしたらあなたの振る舞いから始まるかもしれません。明日の見えない、不安な時代に、「空気」という群衆のあいまいな意見に振り回されず、自分自身の選んだ道を正解にできる力強さを、多くの人が持つことができるよう願っています」、同感である。 現代ビジネス「中野 信子, ヤマザキ マリ:生贄探し 第2回 「徳していそうな人」が生贄になる 「有名人は“得している”から生贄にピッタリ!」は脳の指令だった」 「生きにくさから自由になる方法を提案」とは興味深そうだ。 「フェラーリで上がる男性ホルモンの値」、「トロフィーワイフもあればトロフィーハズバンド」、「やはり人間は物質的に満たされるとどこか病んでしまうのですかね……」、その通りだ。 「人文、運動、芸術すべてバランスを整えられない人はエリートとして認められません。ネロもこの圧力の犠牲になっていたと言えますね。 中野 興味深いですけど、なんと息苦しい社会でしょう」、「キリスト教の教えが広まっていませんから、自殺は悪いことではありません。死の選択は自由でした。だから行き詰まったり、名誉を失った人は苦悩からの解決策として自殺を選ぶことも当たり前でした」、なるほど。 「祝祭の生贄は共同体を保つために必要ということになりますが……。誰かをやり玉にあげることによって、その他の人が団結したり、ルールを守らせるための見せしめとなったりする。昔はそういう役割の人をわざわざ用意したところもあった」、「『魏志倭人伝』にも、持衰(じさい)という役割を持つ人が出てきます。船に乗り込ませ、時化(しけ)のときに生贄にされるための存在です」、 「このような仕組みがないと、危機のときにもっと困ったことになったのかもしれません。つまり、あらかじめ失われる人を設定しておかないと、誰から標的になるのかと言うと、「目立つ人」「得をしていそうに見える人」から選ばれてしまう」、やはり「あらかじめ失われる人を設定して」おく方が安定には望ましいようだ。 「自分こそ正義、自分こそ知性、と思っている人ほど、ブレーキがオフになりやすく、正義の快さにあっという間に人格を乗っ取られてしまう。本当の知性は、自分の正義や知性が独り善がりのものになっていないかどうかを、まず疑うところにこそ、あると思う」、その通りだ。 現代ビジネス「ヤマザキマリ:生贄探し 第3回 ”世間体”という日本の戒律 恐るべし! 日本人は「世間の目」を、なぜこんな強烈に怖がるのか?イタリア人から見た日本 ヤマザキマリ」 「夫」曰く、テレビをつけても、教員同士でリモート会議をしても、誰も彼も自制の利かない強烈な自己主張をぶつけてくるばかりで疲れてしまい、そんなとき、ふと日本の“世間体”を意識しながら主張を抑えて生きる人たちを思い出してしまう」、「イタリア人」の「夫」でも、そのように感じているとは意外だ。 「かつて北海道のテレビ局の番組で料理を作ったりリポーターをしていた時期」、「あのときもし、自分の居場所は日本にしかなく、日本の環境に何が何でも溶け込む必要がある、という意識がもっと強かったら、おそらくそうした“世間体”の圧力によって、自分という人間を視聴者が求めていたような仕様にかたどり直していたかもしれません」、なるほど。 「われわれは、自由と民主主義が許された社会の中で暮らしていると思い込んで日々をすごしています。でも実態は、“世間体”という、具体的なかたちになっていないだけの民衆による強烈な統制力と、その時々の流動的な倫理によって形成される正義感によって、思想や行動の自由が容赦なく規制された、窮屈な環境の中に置かれているとも言えるのです」、確かに「われわれは」、「“世間体”」という「窮屈な環境の中に置かれている」、その通りだ。 現代ビジネス「ヤマザキマリ:生贄探し 第4回 自分自身が生贄にされないために 失敗やみっともなさを許す力をつける」 「昨今の若者は海外への留学や旅行」「に行こうとすらしない」、「どうしてなのかと尋ねてみたところ、融通のきかない土地へ行って自分のダメさや使えなさと向き合い、自分自身に失望するのが怖いと言うのです。つまり、自分が知りたくないみっともない自分とは遭遇したくない、自分の失敗の責任を自分で背負いたくない、ということなのでしょう」、情けない話だ。 「教育環境は“メンタル無菌室”状態…!?」、「明治維新に始まった日本社会の早急な西洋化が、人々のかっこ悪さやみっともなさを人情という美徳と捉えていた心のゆとりを払拭してしまった、ひとつのきっかけだったような気もします」、困ったことだ。 「正義というのは、他者の苦しみに対し、無意識に手を差し伸べてあげられてこそ、本当の意味を成すものなのではないかということを感じたのでした。 自分が信じている信念に従わない他者を戒めることは、それがたとえ自分にとって、どんなに理想的な宗教的理念や政治思想が根拠になっていようと、所詮は同調への強引な圧力というものでしかなく、正義とは言えません」、その通りだ。 「私が昆虫好きな理由は、意思の疎通もできなければ大気圏内の生き物という以外に何も共有するものがない、こうした多様な生物を生み出した地球そのものへの好奇心を楽しめるからです」、養老孟司先生に似ている。 「私がおすすめするのは、どこか広く視野が開けた、なるべくなら人間の巣である都市部よりも自然の多い場所まで出向いて、地球とそこに生きる自分のつながりをシンプルに感じることです。空に向かって思い切り深呼吸をするなど、大気圏内で生きる生物である自分を感じてみると、かなり気楽になるかと思うのです。​地球という惑星が自分の究極の住処であるという感覚をものにすれば、限定的な範囲の中で発生している些末な揉めごとや悩みも、なかなか自分の思いどおりにならない人生や他者の生き方についても、 それほど大騒ぎをしたりするほどのことでもない、と感じることができるはずです」、気分転換にはいい方法のようだ。
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防衛問題(その20)(「なぜ国産の戦闘機を作れないんですか」技術者の涙が語る 日本の国防の大問題、「自衛隊かわいそう論」の大嘘 トイレットペーパーも足りない を信じてはいけない、防衛費増額の理由のひとつ 失敗確実な「国産戦闘機」開発をやめれば4兆円も浮く、絶対にあってはならない…「海上自衛隊」であまりに「非常識な事件」が起こってしまったワケ) [国内政治]

防衛問題については、昨年4月29日に取上げた。今日は、(その20)(「なぜ国産の戦闘機を作れないんですか」技術者の涙が語る 日本の国防の大問題、「自衛隊かわいそう論」の大嘘 トイレットペーパーも足りない を信じてはいけない、防衛費増額の理由のひとつ 失敗確実な「国産戦闘機」開発をやめれば4兆円も浮く、絶対にあってはならない…「海上自衛隊」であまりに「非常識な事件」が起こってしまったワケ)である。

先ずは、昨年6月6日付けデイリー新潮「「なぜ国産の戦闘機を作れないんですか」技術者の涙が語る、日本の国防の大問題」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/06060610/?all=1
・『日米首脳会談における岸田首相の発言を受けて、政府・与党は防衛費の増額に向けた調整に着手した。与野党からは「増額ありきではなく、必要額を積み上げた結果としての増額に」との声も出ている。では、日本にとって本当に必要な防衛費とは具体的にどのようなものなのか。それに対して現状はどうなっているのか。日米関係の最深部まで知る外交官、岡本行夫氏が書き遺した渾身の手記『危機の外交 岡本行夫自伝』から知られざるエピソードを紹介する。 日本にとって必要な防衛力の規模はいったいどのくらいなのか? 本来防衛力というのは周囲の脅威のレベルに対応して決まるものである。これが「所要防衛力」の考え方だ。しかし、1970年代、増勢を続けるソ連の軍事力に対応して日本が自分の防衛力を増やすことはとても無理だった。その結果、日本は76年に「基盤的防衛力」という考えに転換した。「わが国自らが、力の空白となって侵略を招来することのないように、必要最小限の防衛力を保持する」というコンセプトである。 要するに、日本は周辺の状況がどうなろうと、一定額以上の防衛費は出さないという財政の論理だ。今日の「多次元統合防衛力」も、いろいろと修飾句はついているが、この「基盤的防衛力」をどのように運用するかというだけのことである。この予算で可能になる範囲の防衛力で対応できるレベルに周辺の脅威を定義するという「馬の前に馬車をつなぐ」ような防衛体制である。 例えば潜水艦の数は基盤防衛力の下で16隻と定められた。宗谷、津軽、対馬の3海峡をチョークポイントとし、ここの通航をコントロールするためには1海峡あたり4隻のチームを三つ、さらに予備の1チーム、計16隻の潜水艦が必要という考え方だ。今や外からの脅威はロシアではなく、中国から来る。正面はオホーツクではなく東シナ海だ。この海に面する沖縄列島には四つの国際パッセージがある。所要防衛力の考えからいけばこのため新たに4チーム、16隻の潜水艦隊が必要になる。しかし、基盤的防衛力の考えでは周囲の状況判断を考えに入れないから16隻のまま。これで遥かに広がった防衛海域を薄い戦力でカバーしなければならないことになる。 日本は原子力潜水艦こそ持てないが、世界最高水準のディーゼル潜水艦を建造する能力がある。写真は関門海峡を通過する潜水艦(他の写真を見る) 潜水艦の耐用年数を延長することによって16隻を22隻体制にするという苦肉の策が採られているが予算は削られたままである。日本は原子力潜水艦こそ持てないが、世界最高水準のディーゼル潜水艦を建造する能力がある。この隻数を増やし世界一の潜水艦大国になることこそが、国家としての防衛戦略であるべきなのだが』、「本来防衛力というのは周囲の脅威のレベルに対応して決まるものである。これが「所要防衛力」の考え方だ」、「「基盤的防衛力」という考えに転換した。「わが国自らが、力の空白となって侵略を招来することのないように、必要最小限の防衛力を保持する」というコンセプト」、「今日の「多次元統合防衛力」も、いろいろと修飾句はついているが、この「基盤的防衛力」をどのように運用するかというだけのこと」、「予算で可能になる範囲の防衛力で対応できるレベルに周辺の脅威を定義するという「馬の前に馬車をつなぐ」ような防衛体制、何か逆立ちした論理構成のような気がするが・・・。「潜水艦の数は基盤防衛力の下で16隻と定められた。宗谷、津軽、対馬の3海峡をチョークポイントとし、ここの通航をコントロールするためには1海峡あたり4隻のチームを三つ、さらに予備の1チーム、計16隻の潜水艦が必要という考え方だ。今や外からの脅威はロシアではなく、中国から来る。正面はオホーツクではなく東シナ海だ。この海に面する沖縄列島には四つの国際パッセージがある。所要防衛力の考えからいけばこのため新たに4チーム、16隻の潜水艦隊が必要になる。しかし、基盤的防衛力の考えでは周囲の状況判断を考えに入れないから16隻のまま」、「潜水艦の耐用年数を延長することによって16隻を22隻体制にするという苦肉の策が採られているが予算は削られたまま」、なるほど。
・『GNP1%  1976年に三木内閣は「日本の防衛費はGNPの1%をめどとする」と制限した。防衛費の増加を止めようとする財政当局の立場が通ったのだ。この制限はようやく10年後の87年にはずされた。この年の防衛費がどうやってもGNP1%を超えてしまうからだった。 元々「GNP1%」は、馬鹿げた制限であった。この制限を決めた76年の日本の経済成長率(名目)は12.4%だった。石油ショックが起こらずそのまま日本経済が成長していれば、10年後の日本のGNPは76年より65%も大きかった計算になるから、防衛費も65%増えてよかったという理屈になる。 つまり、経済成長率が低ければ、少ない防衛予算でもGNP1%を超えてしまうから日本は周辺諸国に危険を与える軍事国家、経済成長率が高ければ防衛予算が大増加しても平和国家、ということになる。防衛予算の上限が景気によって決まる。おかしな話である。この1%枠撤廃は防衛庁と外務省の悲願だった。 日本の防衛政策について最も聡明な意見を持っていたのは故椎名素夫衆議院議員であった。アメリカの安保関係者が最も尊敬していた日本の政治家であった。椎名さんはGNP1%枠に代えて「総額明示方式」という方式を考えた。まず5年間の防衛計画を決め、それを実現するために必要な予算を毎年決めていくというやり方で、中曽根総理と後藤田官房長官の了承をとって閣議決定された。これで、とにかく形式的にはGNPとのリンケージははずれることになった。僕は毎日のように椎名議員の自宅に通い、彼の指示を受けて、関係各省との調整に走り回った。案の定、ソ連と中国はこの決定に対し、日本が「軍事大国化への大きな一歩を踏み出した」と非難した。 「なぜ技術力のある日本が国産の戦闘機を作ってはいけないんですか」 純軍事的な面でのアメリカの日本への態度は立派である。制服の人たちの、日本防衛へのコミットメントの揺るぎを感じたことはない。ところがワシントンの背広組が同盟関係にアメリカ産業界の利益をからませてくると問題は別の様相を帯びる。FSXつまり次期支援戦闘機選定が典型だ。 湾岸戦争を除けば、同盟の運営を巡る二国間の最も先鋭な対立であった。 航空自衛隊と三菱重工の技術者たちは、当然の気持として、どうしても自前の戦闘機を作りたかった。零戦の技術を継承した技術者たちの遺産を次の時代に引き継ぐ最後の機会でもあった。 こうした気持ちは痛いほど分かったが、僕たち外務省は共同開発の考えであった。 日本は武器が輸出できないから自衛隊用にせいぜい100~150機くらいを生産するのが精一杯である。コスト的にはバカ高いモノになる。1機数百億円と試算されていた。もちろんアメリカの戦闘機を丸々買ってくれば、うんと安上がりだ。ベストセラー戦闘機のゼネラルダイナミックス(GD)社製F-16は世界中に3千機以上売れているので、1機あたり50億円程度であった。日米間の相互運用性も確保される。ただ、F-16をそのまま買ったのでは日本に技術は残らない。なんとか日本を主体とする共同開発で折り合えないか。 三菱重工名古屋製作所の増田逸郎技師長が大切に風呂敷に包んだFSXの模型を持ってきて、国産化を訴えた。僕もこれには心を動かされた。「ブラジルやイスラエルだって国産の戦闘機を作っている。なぜ技術力のある日本が国産の戦闘機を作ってはいけないんですか」。僕は陳情に来たエンジニアたちに日米安保体制とか相互運用性とかいろいろ説得してみたが、涙を流して懇願する技師長たちの言い分には大いに同情した。アメリカはF-16かF-18をそのまま買えと強引であった。 結局「共同開発」ということになり、アメリカ6、日本4の比率で仕事を分け合う形でようやく合意が成立した。 アメリカの既存機をベースに日本の技術を導入し、87年6月28日の栗原祐幸(ゆうこう)防衛庁長官とキャスパー・ワインバーガー国防長官との会談で日本主導で開発を行うことに合意されたのである。この時、僕は栗原さんという人の気合いに感心した。通常、日本人が通訳を使って会談する場合、相手方は日本語を聞いても分からないから、通訳が英語に直す部分になると真面目に聞く。最初の栗原さんとの出会いで、ワインバーガー長官はうっかりと、栗原さんが日本語でしゃべっている時に、隣の部下と話を始めてしまったのである。栗原さんは発言を止め、ワインバーガー長官を見据えた。慌てて視線を栗原さんに戻した長官に、栗原さんはかんで含めるように自分の日本語の発言を聞かせたのである。発言者は自分、通訳は補助、ということを理解させた後の栗原・ワインバーガーの関係は極めて親密なものになり、88年5月には栗原さんの地元を訪ねてワインバーガー長官は伊豆にまで訪問した。おかげで僕も同行し、露天風呂で二人の長官と一緒に温泉につからせてもらって、いい気分であった』、「航空自衛隊と三菱重工の技術者たちは、当然の気持として、どうしても自前の戦闘機を作りたかった」、「日本は武器が輸出できないから自衛隊用にせいぜい100~150機くらいを生産するのが精一杯である。コスト的にはバカ高いモノになる。1機数百億円と試算されていた・・・アメリカの戦闘機を丸々買ってくれば、うんと安上がりだ・・・F-16は世界中に3千機以上売れているので、1機あたり50億円程度」、「F-16をそのまま買ったのでは日本に技術は残らない。なんとか日本を主体とする共同開発で折り合えないか」「結局「共同開発」ということになり、アメリカ6、日本4の比率で仕事を分け合う形でようやく合意が成立した」、なるほど。
・『今、再び日米の対立案件に  日本は、開発経費1650億円全額を負担し、日本が独自に開発できるところを譲って、F-16をベースとする「共同開発」まで歩み寄ったが、アメリカ議会はこの経緯を無視して、日本がアメリカの戦闘機製造技術を盗もうとしていると日本を強く批判した。「自動車に続いて虎の子の航空機産業まで日本に盗まれるのか!」。アメリカは開発段階だけでなく、生産段階でまで40%のワークシェアを強硬に主張し、日本がそれを呑んだ後は、フライトコントロールのためのソースコードは供与しないと言い出した。一方、日本側の技術はアメリカの要求があれば無条件で引き渡せ、という話であった。アメリカ議会で、「日本に技術を渡すな」の大合唱が、バード、ダンフォース、ヘルムズ上院議員などを筆頭に起こり、日本はずるくアンフェアだとの議論がまたもや起こった。 こうした強硬な要求は当時の議会の日米経済摩擦に対する感情的な攻撃の空気を抜きにしては理解できない。逆に防衛庁には、アメリカが日本の優秀な技術を共同開発の網をかぶせて封じ込めようとしているのではないか、との猜疑心も生まれた。 結局日本側は押し切られた。情けないが、日本は自前でジェットエンジンを製造することができなかったのである。アメリカと袂を分かって完全に国産開発しようとしても、結局アメリカがエンジンを供給しないと断ってくればお手上げなのだ。アメリカ以外のロールスロイス社製のエンジンを買うということにすればそれはそれで大騒ぎになる。 機種については、F-16をベースとするかマクダネルダグラス社製のF-18にするかで、防衛庁と民間企業側に論争があったようだが、87年12月18日の安全保障会議でF-16の改造開発が決まった。開発の主担当は三菱重工、協力は川崎重工、富士重工、そしてGDであった。 その後、開発と生産の条件を米側にさらに有利にしたうえで89年4月に最終的に日米の決着がついた。この問題は日本側に苦々しい思いを残すことになり、2000年にF-2が就役して20年経ち、その後継機を決めなければならなくなった今、再び日米の対立案件になりつつある。 *** ※『危機の外交 岡本行夫自伝』より一部を抜粋して構成。 (岡本行夫氏の略歴はリンク先参照)』、「アメリカ議会で、「日本に技術を渡すな」の大合唱が・・・起こり、日本はずるくアンフェアだとの議論がまたもや起こった。 こうした強硬な要求は当時の議会の日米経済摩擦に対する感情的な攻撃の空気を抜きにしては理解できない・・・結局日本側は押し切られた。情けないが、日本は自前でジェットエンジンを製造することができなかったのである。アメリカと袂を分かって完全に国産開発しようとしても、結局アメリカがエンジンを供給しないと断ってくればお手上げなのだ。アメリカ以外のロールスロイス社製のエンジンを買うということにすればそれはそれで大騒ぎになる。機種については・・・F-16の改造開発が決まった」、ずいぶん米国議会も勝手な言い分で攻めてくるものだ。

次に、本年2月10日付け日刊ゲンダイが掲載した元3等海佐・軍事研究家の文谷数重氏による「「自衛隊かわいそう論」の大嘘 トイレットペーパーも足りない、を信じてはいけない」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/318494
・『自衛隊員の待遇は、本当に悪いのだろうか。 「自衛隊かわいそう論」がある。官舎はボロく、職場には冷暖房もない。コピー機やトイレットペーパーも足りない。その改善のためにも、防衛費増額が必要だ、とする内容である。 はたして、この主張は正しいのだろうか。 結論からいえば信じてはいけない。いずれも防衛側の怠慢か嘘である。 まず、官舎は他の国家公務員と同じレベルだ。宿舎法の規定から横並びである。 古い官舎だとしても、海自と空自の官舎は、それほど悪くはない。サッシを交換する、フローリングに張り替える、風呂釜を交換するとマメに手を入れているからだ。 ところが、陸自はマメな手入れをしない。たまに官舎まるごとの大規模改修をするだけだ。そこから漏れる官舎はボロいままだが、それは自業自得である。 亀裂だらけの官舎という風説もあるようだが、それもありえない。 産経系メディアでは「外壁にひび割れがある官舎」の写真が出てくる。そして危険であると主張している。 フェイクである。 外壁補修中の写真を出しているだけだからだ。幅1ミリもない亀裂について、雨水の通り道とならないように黒色のゴムで止水した状態だ。安全性には全く問題はない。また仕上げに外壁塗装をするので亀裂跡も残らない。 他例も同様である。冷暖房、コピー、トイレットペーパーが不足するのは陸自だけ。海、空では使い放題である。 理由も、やはり陸自の自業自得だ。 まずは予算配分の問題がある。これらは庁費や雑運営費ほかの予算で賄うが、陸自は中央が吸い上げる。地方部隊に十分な額を渡していない。 その使い方も悪い。 トイレットペーパーでは、関東や北海道の地方単位で高値で一括調達する無駄があった。その上、輸送費を使い倉庫から各地の部隊に渡していた。 しかも、現地部隊にはカツカツな量しか渡さない。だから品切れが起きるのである。 当然だが、一度でもなくなると隊員はため込む。用心して自分用に1巻2巻を失敬する。そうなると、部隊中から紙がなくなる悪循環に陥るのだ。 自衛隊かわいそう論は嘘でしかない。人情を利用して防衛費増額を迫る悪質詐欺であり、だまされてはいけない。=つづく』、「産経系メディアでは「外壁にひび割れがある官舎」の写真が出てくる。そして危険であると主張している。フェイクである」、「産経系メディア」ならあり得そうだ。「自衛隊かわいそう論は嘘でしかない。人情を利用して防衛費増額を迫る悪質詐欺であり、だまされてはいけない」、気をつけよう。

第三に、2月11日付け日刊ゲンダイが掲載した元3等海佐・軍事研究家の文谷数重氏による「防衛費増額の理由のひとつ 失敗確実な「国産戦闘機」開発をやめれば4兆円も浮く」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/318561
・『はたして、岸田政権が進めている「新戦闘機開発」はうまくいくのだろうか。防衛省は英、伊との3カ国共同で次期戦闘機であるFXの開発を進めている。この事業は成功するのだろうか。 その実現は防衛費増額の理由のひとつである。100機の製造配備を含めると20年で5兆円程度となり、従来の予算規模では賄いきれない計画である。しかし、このプロジェクトは、炎上必至かつ失敗確実の案件である。 第1に性能は不満足となる。まず日本には最新戦闘機を造る能力はない。かつて期待を集めた国産戦闘機F2は、米F16のコピーで終わってしまった。性能はほとんど変わらないにもかかわらず、値段は3倍の失敗作であった。 同様に英伊にも一流戦闘機を造る能力はない。もちろん日本よりはマシではある。ただ両国が開発した最新作のタイフーンも二流機で終わった。FXは二流機にとどまるに違いない。現用のF35戦闘機を超える見込みはない。 加えてエンジンの不利もある。日本向けFXには、国内開発エンジンを搭載する予定だ。ただ同様に国内開発型を積んだ国産の哨戒機P1、練習機T4、国産ヘリOH1は、すべて深刻なエンジン不良の問題を抱えている。) 第2には納期が読めない問題である。航空機開発は計画遅延が常態化している。戦闘機製造で二流の英伊、三流の日本では、その弊害も大きくなる。いつ完成するかはわからない。しかも、その間に米国は次世代戦闘機NGADを完成させるだろう。FXよりも1世代分は新しい戦闘機だが、開発順調である。FXは旧式機となる運命にある。 第3が予算超過である。現時点での事業総額はざっと3.5兆円といわれている。実際には5兆円は必要となるだろう。航空機の開発費や生産単価も超過が常態化している。 これも国産のF2戦闘機やP1哨戒機、C2輸送機がたどった道である。ちなみにC2は、搭載重量3倍の米輸送機C17と同じ値段となった。このFXをやめれば防衛費増額の必要性は減る。その代わりに1機100億円で買えるF35を100機買い増しすれば、合計1兆円で済む。5兆円から差し引き4兆円を節約できるのである』、「国産戦闘機F2は、米F16のコピーで終わってしまった。性能はほとんど変わらないにもかかわらず、値段は3倍の失敗作」、F2がそんなにバカ高いものになったとは初めて知った。「C2は、搭載重量3倍の米輸送機C17と同じ値段となった。このFXをやめれば防衛費増額の必要性は減る。その代わりに1機100億円で買えるF35を100機買い増しすれば、合計1兆円で済む。5兆円から差し引き4兆円を節約できる」、独自開発がコスト高になるのであれば、その夢は捨てるべきだ。

第四に、2月18日付け現代ビジネス「絶対にあってはならない…「海上自衛隊」であまりに「非常識な事件」が起こってしまったワケ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105886?imp=0
・『「元海将・OB」の責任  昨年の特定秘密漏洩発覚は、同法の施行後初めてということ、そして1佐という階級高位の幹部自衛官による行為であることもあってか、事件が公になって以降、大いに世間からの耳目を引くことになる。<【前編】情報漏洩で懲戒免職になった海上自衛官の「さびしすぎる最後」>に引き続き、井上高志元1等海佐の特定秘密漏洩事件について語る。 事件発覚後、SNSをはじめ、ネットでは、井上元1佐を強く非難する声が頻々に書き込まれた。そこには真偽不明の井上元1佐への単なる誹謗中傷も多々書き込まれたものだ。 だが時間を経るに連れてその風向きは変わっていく。 その声は、なぜ特定秘密を聞き出した「元海将・OB」の実名が出ないのか。そしてこのOBは責任は問われないのか、このふたつに集約されよう。 たしかに自衛隊と何ら関わりのない一民間人ならともかく、OB、それも海将まで昇ったOBとなれば、特定秘密の漏洩、その罪がいかに深いか承知のはずである。 ましてやこのOBは新聞をはじめとする各種報道によると、「自身の講演活動のため」に事件当時、情報業務群司令という海自の情報を取り扱うセクションの責任者を勤めていた井上元1佐から特定秘密を聞き出したというから、なおさらだ。 片や懲戒免職、片やOB、いくら海将という自衛官として最高位の階級まで昇ったとはいえ、すでに自衛隊とは何ら関係のない一民間人という理由で何らお咎めなし――。ごく一般の市民感覚では、どこか釈然としないものがあるのも頷けよう。 そこには、この元海将・OBは、みずからの私利私欲のために国益を左右する極秘情報を得てカネにしようとした、それによって巻き添えにした後輩を懲戒免職という勤め人にとっては死刑ともいえる形でひとりの人物の将来を奪ったのだから、それは何らかの責任を問われるべきである――という通奏低音が流れている』、「昨年の特定秘密漏洩発覚」については、初めて知った。「元海将・OBは、みずからの私利私欲のために国益を左右する極秘情報を得てカネにしようとした、それによって巻き添えにした後輩を懲戒免職という勤め人にとっては死刑ともいえる形でひとりの人物の将来を奪ったのだから、それは何らかの責任を問われるべきである」、同感である。
・『元1佐が置かれていた状況  実名が出ない、加えて何の責任も問われない。これはひとえに、この元海将・OBが、何ら職務権限のない「一般人」だからということ、そこに尽きよう。 この手の事件が起きた際、かならず話題となるケースに、マスコミ記者などが取材対象者に取材と称して秘密を聞き出す、すなわち漏洩するように、教唆、そそのかしておいて、何ら罪に問われないとは何事か……というものがある。これと同じ構図だ。 しかし今回の事件は、かつて海自のトップ、海上幕僚長間違いなしといわれ、その地位にこそ就かなかったものの自衛艦隊司令官という海自の全護衛艦、潜水艦、航空機を束ねる総大将だった人物である。 そんな人物が、現職自衛官、ましてや直属上司にあたる者を連れて職場にやって来て、「いろいろ聞きたいことがある」と言われるとそれはなかなか断りにくいというのが、軍事組織である自衛隊か否かを問わず人情ではなかろうか。 ましてやこの元海将・OBは、情報提供を受けた際、「自分は将来、海自に助言する立場の人間になる」とまで言っていたという。 しかもその場所は自衛艦隊司令部(神奈川県横須賀市)という庁舎内だ。また直属上司も絡んでいる。これでは井上元1佐ならずとも、この情報提供は自衛艦隊司令部、ひいては海上自衛隊という組織によってオーソライズされたものと思うのも無理はないだろう』、「自衛艦隊司令官という海自の全護衛艦、潜水艦、航空機を束ねる総大将だった人物である。 そんな人物が、現職自衛官、ましてや直属上司にあたる者を連れて職場にやって来て、「いろいろ聞きたいことがある」と言われるとそれはなかなか断りにくいというのが、軍事組織である自衛隊か否かを問わず人情ではなかろうか。 ましてやこの元海将・OBは、情報提供を受けた際、「自分は将来、海自に助言する立場の人間になる」とまで言っていたという。 しかもその場所は自衛艦隊司令部(神奈川県横須賀市)という庁舎内だ。また直属上司も絡んでいる。これでは井上元1佐ならずとも、この情報提供は自衛艦隊司令部、ひいては海上自衛隊という組織によってオーソライズされたものと思うのも無理はないだろう」、その通りだ。
・『内部に渦巻く元海将・OBへの非難  「後輩に迷惑をかけてどうするんですか――内部では件の元海将・OBへの非難の声で溢れてますよ」 主に後方支援畑を歩んできたある海の1佐は、語気を荒げてこう話す。 実際、今回事件の舞台となった海、そして陸、空の自衛隊関係者に話を聞くと、そもそもが体育会系の組織風土である自衛隊では、「後輩に迷惑をかけること」を嫌う気風もまた併せ持つ。 「僕は定年退職しても、いわゆる軍需産業への天下りというか紹介というか……、そういうのは絶対に行きません。後輩に迷惑をかける場面が多々想定されるのでね」 こう語る1佐は、過去、現在と、今は企業経営者となった自衛隊での先輩が頻繁に訪ねてきて、自分と会食している風景をSNS上にアップし、さも元自衛官の先輩が経営する企業が、あたかも海上自衛隊と取引があるかのように装ったり、契約に絡む責任者を紹介しろと言われて大変迷惑したという話を淡々と語った。 「僕の場合は、逆だったけれど、やっぱりね、商売というかそういうのは、かつての人の縁とか自衛隊という組織、これを利用してはいけないと思うんだよ。今回の元海将・OBのケースはまさにそうではないか」 こうした元海将・OBへの批判の声は内部から多々漏れ聞こえてくる。 「そもそも元海将・OBは情報部門の責任者に会わせろということ、それこそが元海将・OBが弁えていないということではないですか――」 こう語った前出の1佐は、次の言葉を継いだ。 「元海将でSF(自衛艦隊)司令官まで勤めたOBなら、何も後輩に迷惑をかけなくてもオープンソース(表に出ている情報)だけで講演くらいできただろうに……」』、「元海将でSF(自衛艦隊)司令官まで勤めたOBなら、何も後輩に迷惑をかけなくてもオープンソース(表に出ている情報)だけで講演くらいできただろうに……」、との批判はその通りだ。
・『起こってしまった「非常識」  ここで記者は、「井上(元1佐)さん、お気の毒ですよね」と問うてみた。すると1佐はすこし考え込んでから、こう語った。 「問題はね、こういうことが起こらないようにするための仕組みづくりだと思うんだ――」 記者の“気の毒”という言葉に、あえて反応を避け、具体論へと話の舵を切ろうとした。 実際、こうした事件は現在の自衛隊では極めてレアケースだという声もある。たしかに自衛隊の根幹を支える曹士自衛官たち複数に、今回の事件について問うと意外にも多かったのが次の声だ。 「俺たちは階級絶対ということと同時に秘密を守ることは徹底して叩き込まれている。いくら元海将だからといっても、その横に現職自衛官である上司がいるといっても、元職のOB、単なる一民間人に過ぎない。そんな人物に秘密など語ることなどまずない」 実際、海自の艦艇では秘密を扱う箇所、たとえば電信室や暗号室といったところが多々あるが、ここにいくら元職の階級が高かった者が、「かつてここに勤めていたから……」といって訪ねてきても、まず招き入れることはない。 「この前、定年退職して出て行った元電信長クラスを経験した曹長とかが、後輩の激励に艦に訪ねてきても会うのは艦内の食堂や居住区であったりですよ。いくら現役時代から実力のある人でもまず中に入れません。入れろというほうが非常識です。入れるのもまた同じ」 もっとも一護衛艦や潜水艦といった各職場のパート長クラスのOBと、海自での階級最高位、役職にしてナンバー2とも3ともいわれる件の件の元海将・OBと同じ文脈で話すことは不適切かもしれない。 それにしても階級が下の曹士自衛官の世界では、このように秘に関するモラルが徹底していて、曹士自衛官を指導する立場であるはずの幹部が、どうして今回のような事件に繋がったのだろうか』、「階級が下の曹士自衛官の世界では、このように秘に関するモラルが徹底していて、曹士自衛官を指導する立場であるはずの幹部が、どうして今回のような事件に繋がったのだろうか」、確かに不思議だ。
・『「A幹部」のしがらみ  「階級なんて服につけるアクセサリー。そんなの関係ねえ――というタイプの人なら、今度のような事件は起こりえない」 今、自衛隊の教育制度は幹部自衛官は、例外なく、皆、陸海空の自衛隊幹部候補生学校の卒業生だ。このうち海自に限っては、旧海軍兵学校卒の将校に相当するのが、防衛大学校卒業者と一般大学卒業程度の学力を有する者のうち採用試験に合格した者で占められているA幹部が主流である。 ほかにも高卒後、航空学生として入隊した者や、若手曹から選抜された部内選抜組のB幹部や、曹長、准尉といった階級を持つ者で占められているC幹部と三つの区分がある。 幹部、旧海軍でいう将校のなかでも王道を走るA幹部のうち、やはり18歳の頃から同じ学び舎で学び、校友会と呼ばれる部活動、先輩・後輩の関係が脈々と続く対番関係など、縦横無尽に張り巡らされた人脈を誇る防衛大出身者は、どうしても若き頃からの人と人の繋がり、しがらみもあってか、ときに無理難題を同窓から吹っ掛けられた際、断り切れないことも多々あるという。A幹部だったという海の元2尉はその様子をこう語った。 「10代からの人脈、そこに“転校生”というイメージで大学卒後入ってきたのが一般大卒のA幹部です。一般大卒の幹部でも幹部候補生同期で親しい者の防大先輩からのお声がけで……、と、話を聞かされたりとか、いろいろあるものです」 これも階級など気にしない、人と人とのしがらみなど興味を持たない者であれば、何ら問題はないだろう。だが、やはり人、人間の世界、そこに何らかの情実は絡むことはなくはないだろう。 対して、曹士自衛官の場合、いわゆる学閥は現在のところ存在しない。かつては高卒後2年で海曹となる曹候補学生や、中卒後4年でそれになる生徒といった制度が存在、海曹の世界で閥化したグループとして知られていたが、いずれも廃止に至っている。 「A幹部は『一般大卒程度』で受験可能なので、曹候補学生や生徒から受験して合格した者もいます。彼らの同窓が訪ねてきていろいろ無理を言うということも、かつてはあったようですが……」 廃止により、年々、それらのグループは勢いがなくなり、今では、これらグループによる弊害は自衛隊内部でもあまり耳にしなくなったといわれている。 これら例外を除いて曹士自衛官の世界での主流は、高卒で入隊する自衛官候補生や、かつての曹候補学生の後を継いだといわれる曹候補生である。どちらも閥を持たない、大勢の隊員たちである。一般企業でいうところの事務職といった趣きである。 「職場では先輩ができても教育期間中、そういったものはありません。だから閥化などあり得ない」(前出・元2尉)』、「A幹部」では、「幹部候補生同期で親しい者の防大先輩からのお声がけで……、と、話を聞かされたりとか、いろいろあるものです」、「だが、やはり人、人間の世界、そこに何らかの情実は絡むことはなくはないだろう。 対して、曹士自衛官の場合、いわゆる学閥は現在のところ存在しない」、やはり「「A幹部」のしがらみ」が存在しそうだ。
・『問題を起こさない仕組みづくり  こうしてみると、案外、曹士自衛官や幹部でもB、C幹部といった下の階級から叩き上げた者であれば、たとえ階級が高位なOBであっても、そのしがらみのなさから適切な対応――元海将・OBが「情報セクションの長に、自分のために会わせろ」といっても会わせなかった、または会わなかった、そして話すこともなかっただろう。 自衛隊に限らず、今、公務員は退職後2年間は、在職中に関連した企業への再就職を禁じられている。 これと同じく秘密保持の観点から、OB、とくに今回事件となった階級高位の元職は、現職自衛官と在職時期が近く影響を及ぼしやすい5年程度の期間、市ヶ谷の防衛省・本省をはじめ、陸海空の各幕僚監部、全国の各部隊への立ち入りさせないよう制度化しては、という声も出てきた。 しかしそうした制度をこしらえたところで、何らかの抜け道があるものだ。問題は元職、OBが自衛隊という組織を利用しないこと、そうした最低限のモラルを持つことである。 だがその最低限のモラルが守られていない今すべきは、自衛隊側によるOBの私的組織利用の排除であることはいうまでもない。階級を問わず最低、後輩隊員たちが畏怖しない10年を目途に、OBの自衛隊庁舎への立ち入り禁止はもちろん、庁舎外における現職隊員への接見禁止、そして私信――電話、メール、手紙といった類――の一切を禁じる。これを守らなかったOBと現役隊員には厳しい刑事罰を科す。それくらいのことをしなければこの問題は根絶しないだろう。 なお、余談だがこんな話がある。かつて大手マスコミ社がとある1佐に取材、1佐は、その結果、情報漏洩に問われ懲戒免職となる。大手マスコミ社は責任を取って、現役時代と同じ水準以上の給与、退職金を支払うとの条件で自社に雇い入れたというものだ。 今回、懲戒免職となった井上元1佐に、元海将・OBは、きちんと責任を取れるのだろうか。 ちなみに元海将・OBについて、実名こそ出ていないが『週刊新潮』がその顔写真入りで誠実な報道を行っている。この元海将・OBの人物像の詳報についてはこちらに譲るが、それにしてもこの元海将・OBの定年退職時の風景写真――夫人同伴で将官艇に乗り組み、笑顔で帽触れ――をみるにつけなんとも言えない怒りがこみ上げてくる。 遠い世界の話として傍観することなく、市井に暮らすわたしたちにも起こり得る話として、今こそ自分たちの問題として考えなければならない問題だ』、「階級を問わず最低、後輩隊員たちが畏怖しない10年を目途に、OBの自衛隊庁舎への立ち入り禁止はもちろん、庁舎外における現職隊員への接見禁止、そして私信――電話、メール、手紙といった類――の一切を禁じる。これを守らなかったOBと現役隊員には厳しい刑事罰を科す。それくらいのことをしなければこの問題は根絶しないだろう」、こんな厳格なルールを強いたら、自衛官になる人間はいなくなってしまうかも知れない。従って、ルール化される可能性は低いだろう。
タグ:デイリー新潮「「なぜ国産の戦闘機を作れないんですか」技術者の涙が語る、日本の国防の大問題」 防衛問題 (その20)(「なぜ国産の戦闘機を作れないんですか」技術者の涙が語る 日本の国防の大問題、「自衛隊かわいそう論」の大嘘 トイレットペーパーも足りない を信じてはいけない、防衛費増額の理由のひとつ 失敗確実な「国産戦闘機」開発をやめれば4兆円も浮く、絶対にあってはならない…「海上自衛隊」であまりに「非常識な事件」が起こってしまったワケ) 『危機の外交 岡本行夫自伝』 「本来防衛力というのは周囲の脅威のレベルに対応して決まるものである。これが「所要防衛力」の考え方だ」、「「基盤的防衛力」という考えに転換した。「わが国自らが、力の空白となって侵略を招来することのないように、必要最小限の防衛力を保持する」というコンセプト」、「今日の「多次元統合防衛力」も、いろいろと修飾句はついているが、この「基盤的防衛力」をどのように運用するかというだけのこと」、 「予算で可能になる範囲の防衛力で対応できるレベルに周辺の脅威を定義するという「馬の前に馬車をつなぐ」ような防衛体制、何か逆立ちした論理構成のような気がするが・・・。「潜水艦の数は基盤防衛力の下で16隻と定められた。宗谷、津軽、対馬の3海峡をチョークポイントとし、ここの通航をコントロールするためには1海峡あたり4隻のチームを三つ、さらに予備の1チーム、計16隻の潜水艦が必要という考え方だ。今や外からの脅威はロシアではなく、中国から来る。正面はオホーツクではなく東シナ海だ。この海に面する沖縄列島には四つの国際 パッセージがある。所要防衛力の考えからいけばこのため新たに4チーム、16隻の潜水艦隊が必要になる。しかし、基盤的防衛力の考えでは周囲の状況判断を考えに入れないから16隻のまま」、「潜水艦の耐用年数を延長することによって16隻を22隻体制にするという苦肉の策が採られているが予算は削られたまま」、なるほど。 「航空自衛隊と三菱重工の技術者たちは、当然の気持として、どうしても自前の戦闘機を作りたかった」、「日本は武器が輸出できないから自衛隊用にせいぜい100~150機くらいを生産するのが精一杯である。コスト的にはバカ高いモノになる。1機数百億円と試算されていた・・・アメリカの戦闘機を丸々買ってくれば、うんと安上がりだ・・・F-16は世界中に3千機以上売れているので、1機あたり50億円程度」、 「F-16をそのまま買ったのでは日本に技術は残らない。なんとか日本を主体とする共同開発で折り合えないか」「結局「共同開発」ということになり、アメリカ6、日本4の比率で仕事を分け合う形でようやく合意が成立した」、なるほど。 「アメリカ議会で、「日本に技術を渡すな」の大合唱が・・・起こり、日本はずるくアンフェアだとの議論がまたもや起こった。 こうした強硬な要求は当時の議会の日米経済摩擦に対する感情的な攻撃の空気を抜きにしては理解できない・・・結局日本側は押し切られた。情けないが、日本は自前でジェットエンジンを製造することができなかったのである。アメリカと袂を分かって完全に国産開発しようとしても、結局アメリカがエンジンを供給しないと断ってくればお手上げなのだ。アメリカ以外のロールスロイス社製のエンジンを買うということにすればそれ で大騒ぎになる。機種については・・・F-16の改造開発が決まった」、ずいぶん米国議会も勝手な言い分で攻めてくるものだ。 日刊ゲンダイ 文谷数重氏による「「自衛隊かわいそう論」の大嘘 トイレットペーパーも足りない、を信じてはいけない」 「産経系メディアでは「外壁にひび割れがある官舎」の写真が出てくる。そして危険であると主張している。フェイクである」、「産経系メディア」ならあり得そうだ。「自衛隊かわいそう論は嘘でしかない。人情を利用して防衛費増額を迫る悪質詐欺であり、だまされてはいけない」、気をつけよう。 文谷数重氏による「防衛費増額の理由のひとつ 失敗確実な「国産戦闘機」開発をやめれば4兆円も浮く」 「国産戦闘機F2は、米F16のコピーで終わってしまった。性能はほとんど変わらないにもかかわらず、値段は3倍の失敗作」、F2がそんなにバカ高いものになったとは初めて知った。「C2は、搭載重量3倍の米輸送機C17と同じ値段となった。このFXをやめれば防衛費増額の必要性は減る。その代わりに1機100億円で買えるF35を100機買い増しすれば、合計1兆円で済む。5兆円から差し引き4兆円を節約できる」、独自開発がコスト高になるのであれば、その夢は捨てるべきだ。 現代ビジネス「絶対にあってはならない…「海上自衛隊」であまりに「非常識な事件」が起こってしまったワケ」 「昨年の特定秘密漏洩発覚」については、初めて知った。「元海将・OBは、みずからの私利私欲のために国益を左右する極秘情報を得てカネにしようとした、それによって巻き添えにした後輩を懲戒免職という勤め人にとっては死刑ともいえる形でひとりの人物の将来を奪ったのだから、それは何らかの責任を問われるべきである」、同感である。 「自衛艦隊司令官という海自の全護衛艦、潜水艦、航空機を束ねる総大将だった人物である。 そんな人物が、現職自衛官、ましてや直属上司にあたる者を連れて職場にやって来て、「いろいろ聞きたいことがある」と言われるとそれはなかなか断りにくいというのが、軍事組織である自衛隊か否かを問わず人情ではなかろうか。 ましてやこの元海将・OBは、情報提供を受けた際、「自分は将来、海自に助言する立場の人間になる」とまで言っていたという。 しかもその場所は自衛艦隊司令部(神奈川県横須賀市)という庁舎内だ。また直属上司も絡んでいる。これでは井上元1佐ならずとも、この情報提供は自衛艦隊司令部、ひいては海上自衛隊という組織によってオーソライズされたものと思うのも無理はないだろう」、その通りだ。 「元海将でSF(自衛艦隊)司令官まで勤めたOBなら、何も後輩に迷惑をかけなくてもオープンソース(表に出ている情報)だけで講演くらいできただろうに……」、との批判はその通りだ。 「階級が下の曹士自衛官の世界では、このように秘に関するモラルが徹底していて、曹士自衛官を指導する立場であるはずの幹部が、どうして今回のような事件に繋がったのだろうか」、確かに不思議だ。 「A幹部」では、「幹部候補生同期で親しい者の防大先輩からのお声がけで……、と、話を聞かされたりとか、いろいろあるものです」、「だが、やはり人、人間の世界、そこに何らかの情実は絡むことはなくはないだろう。 対して、曹士自衛官の場合、いわゆる学閥は現在のところ存在しない」、やはり「「A幹部」のしがらみ」が存在しそうだ。
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異次元緩和政策(その42)(《挑発的発言で140円までドーンと下落》日銀OBが「言わんこっちゃない」と苦笑する黒田総裁のマーケット評、三菱UFJ銀行・平野氏 日本総研・翁氏「政府・日銀はアベノミクス時代の指針を見直せ」、日銀・植田新総裁による金融政策「修正プロセス」を大予想&カンタン解説、「数式を普通の文章のように読む」 日銀新総裁・植田和男氏の天才エピソード、教え子が“酒豪ぶり”も証言) [経済政策]

異次元緩和政策については、昨年4月26日に取上げた。今日は、(その42)(《挑発的発言で140円までドーンと下落》日銀OBが「言わんこっちゃない」と苦笑する黒田総裁のマーケット評、三菱UFJ銀行・平野氏 日本総研・翁氏「政府・日銀はアベノミクス時代の指針を見直せ」、日銀・植田新総裁による金融政策「修正プロセス」を大予想&カンタン解説、「数式を普通の文章のように読む」 日銀新総裁・植田和男氏の天才エピソード、教え子が“酒豪ぶり”も証言)である。

先ずは、昨年12月29日付け文春オンラインが掲載した「《挑発的発言で140円までドーンと下落》日銀OBが「言わんこっちゃない」と苦笑する黒田総裁のマーケット評」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/59541
・『大企業と労組が結託し、若い世代が犠牲になった――。東京財団政策研究所主席研究員・早川英男氏による「賃上げを阻む『97年労使密約』」(2023年1月号)を一部転載します。 今、日本人が何よりも懸念しているのは、目の前の物価高なのではないでしょうか。2022年10月の消費者物価指数は前年同月比でプラス3.6%、40年8カ月ぶりの上昇率を記録しました。 物価高の発端は、2022年に始まったグローバルインフレです。新型コロナで傷んだ経済を回復させるため、各国は経済対策にじゃぶじゃぶとお金を流してきましたが、その結果として物価が急激に上昇。さらに同年2月にはウクライナ戦争が勃発し、資源・食料価格が高騰し、その波が日本にも直撃しました。 追い打ちをかけたのが、同時期に進行した円安です。年明けから1ドル115円前後で動いていた為替相場は、春以降に円安方向へと動きます。10月には1ドル150円を突破し、32年ぶりの安値を更新しました。輸入物価が押し上げられ、国内の食料・エネルギー価格に上乗せされています。 日本の物価高は「グローバルインフレ」と「円安」の二重苦と言われてきましたが、現在は主に円安が物価高に大きく影響しています。円安対策については日銀の金融政策が注目を集めました。ところが肝心の黒田東彦総裁は金融緩和を続ける方針を示し、金利を上げようとはしません。その頑なな態度が国民やメディアの反発を招き、日銀は無策だと批判を浴びることになりました。 私は1977年に日本銀行に入行し、在職中は調査統計局長(2001〜07年)、理事(2009〜13年)などを務めました。今回はOBの立場から、日銀が金融緩和を続ける理由、この10年の金融政策の問題点などを分析し、今後の日本経済への処方箋についても考えてみたいと思います』、早川氏は日銀きってのエコノミストとして鳴らした人物だ。
・『円高になりにくい構造  まずは、現在の状況を整理しましょう。 進行中の円安について、私は2つの要因があると考えています。 1つ目は先ほども触れたように、内外金利差の拡大です。アメリカがあれだけ金融引き締めをしているのに、日本はいまだに大規模緩和に集中している。日米の金利差は4.5%まで広がりましたから、円安圧力が高まるのは当然です。) 2つ目には、日本の対外収支構造の変化が挙げられます。 かつての日本は工業製品を大量に輸出して、巨額の貿易黒字を抱えていました。最近の日本の貿易収支はトントン、今のようにエネルギー価格が上がると赤字の状態です。ところが経常収支で見ると、相変わらずかなりの黒字を維持している。実は日本は、海外投資からの利益・配当である投資収益収支で稼ぐようになり、貿易大国から投資大国へと変貌しているのです。 最近の投資収益は、金融機関ではなく製造業の海外現地法人の儲けが大半を占めています。問題は、帳簿上では収益を親会社に移転して連結決算にも反映するのですが、資金の大部分は現地に置きっぱなしで円転しないのです。一方で貿易の支払いはあるから、どうしても日本全体としてはドル不足に陥ってしまう。需給の関係でドルは上がり、円は下がることになるのです。 このような対外収支構造が根底にあることを考えると、現在の日本は円高になりにくく円安が進みやすい状態であると言えます。2011年には、1ドル70円台の超円高時代がありましたが、あの水準まで戻ることはもはや考えられません。 とはいえ、現在の円安は明らかに行き過ぎの感がある。ビッグマックひとつ買うのに米国では5.15ドルも払わなければいけないのに対して、日本では2.83ドルで買える。購買力平価(全く同一の商品を買うことができる購買力)で比較すると、1ドル=100円くらいが適正だろうとみられます。 ですから、過剰な円安はいずれ調整されて戻っていく。ここまで異常な状態が、この先何年も続くとは思いません。 円相場を占ううえで注目すべきは、やはりアメリカの今後の動向です。FRB(米連邦準備制度理事会)は「ある程度は景気を犠牲にしてでも、絶対にインフレを抑え込む」との強い意志のもと、0.75%もの大幅な利上げを4回連続でおこなう、異例の対応をとりました。インフレはしぶとく続いており、利上げの効果が表れるまではある程度時間がかかりますが、あと半年もすれば経済指標に反映されてくるでしょう。少なくとも来年中には、利上げのピークが見えてくるはずです。 それに伴い多少は円高が進み、1ドル100円まではいかないにしても、最終的には120円程度に落ち着くのではないかと思います』、「帳簿上では収益を親会社に移転して連結決算にも反映するのですが、資金の大部分は現地に置きっぱなしで円転しないのです。一方で貿易の支払いはあるから、どうしても日本全体としてはドル不足に陥ってしまう。需給の関係でドルは上がり、円は下がることになるのです」、「このような対外収支構造が根底にあることを考えると、現在の日本は円高になりにくく円安が進みやすい状態」、「購買力平価・・・で比較すると、1ドル=100円くらいが適正だろうとみられます。 ですから、過剰な円安はいずれ調整されて戻っていく。ここまで異常な状態が、この先何年も続くとは思いません」、なるほど。
・『日銀が唯一とれる手は?  インフレに対応すべく各国の中央銀行が金融引き締めに走るなか、日銀だけが利上げをせずに金融緩和を続け、孤立を深めました。 なぜ日銀は大規模な金融緩和を続けているのか、黒田総裁にはどのような思惑があるのかを、ここからは考えていきたいと思います。) 最初に申し上げておくと、私自身は日銀の対応には概ね賛成です。各国の中央銀行が金利を上げているからといって、現在の金融緩和を根本的に変えて引き締め政策に移るのは、時期尚早だと考えます。欧米と日本ではインフレの種類が異なるので、何でも同じにすればいいわけではありません。 日本では物価上昇率が3%台まで上がり、2022年度は、日銀が物価安定の目標として掲げてきた前年比2%を達成するかもしれません。ただし、このところの物価上昇は、世界的な資源高が引き起こした一時的な現象です。特に日本は欧米と違って、賃金が上昇する気配がまだありません。実質賃金が下がれば個人消費も伸び悩むため、常識的に考えれば、23年の物価上昇率は徐々に下がっていくことが予想される。そこで金融引き締めをおこなえば、もともと危うかった景気が一気に悪化してしまいます。 金融政策の大枠は変えられませんが、円安対策で何一つ手がないわけではない。日銀がとりうる最も自然な手段として、私も含め多くの関係者が予想していたのが、長期金利の運用の弾力化でした。 現在の日銀は長期金利の変動許容幅をプラスマイナス0.25%程度に設定し、国債買入れによって金利の上昇を力ずくで抑え込んでいます。これが必要以上に円安を促しており、「日銀が金利操作にこだわっているぶん10円くらい余計に円安になっているのでは」と話すマーケット関係者もいるほどです。 例えばですが、この長期金利の変動許容幅をプラスマイナス0.5%程度にまで拡大し、ある程度の弾力性を持たせる。そうすれば、円安の進行を止めるまではいかないにしても、多少は勢いを和らげることが出来たはずなのです。 しかしながら、皆さんもよくご存知のとおり、肝心の黒田総裁が全く動こうとしませんでした(苦笑)。 長期金利を見直すことはおろか、定例会見では「当面金利を引き上げることはない」「(緩和継続は)数カ月ではなく2、3年の話」と、頑なな態度をとり続けています。 マーケットを挑発しているように見られてしまうきらいもあり、一時期は黒田さんが何か喋るたびに円安が進んでいました。ある時、会見を見ていたら「えっ、こんな挑戦的な物言いをするの?」と驚く場面があった。直後に140円までドーンと下落したので言わんこっちゃないと。どうしてあそこまで頑固な態度をとるのか不思議でたまりません』、現実には、「日銀」は12月19-20日の金融政策決定会合で、10年物国債金利の許容変動幅について、プラスマイナス0.5%に拡大することを決めた。しかし、「黒田総裁」の「頑なな態度」は問題だ。
・『黒田さんのラストチャンス  「なぜ黒田さんはここまで頑なになっているのか」 「金利を上げられない理由があるのではないか」 国民やメディアは疑心暗鬼に陥り、市場関係者の間でも様々な説が流れました。私もいろいろと考えてみたのですが、一番納得がいくのは、黒田さんが土壇場で“ラストチャンス”を狙っているという説です』、「土壇場で“ラストチャンス”を狙っている」とはどういう意味なのだろうか。「許容変動幅」「拡大」をした以上はどうでもいいのだろうか。

次に、本年2月9日付け文春オンライン「三菱UFJ銀行・平野氏、日本総研・翁氏「政府・日銀はアベノミクス時代の指針を見直せ」」を紹介しよう。
・『2013年3月の就任以来、2年で物価上昇率2.0%実現の目標を掲げ、「異次元緩和」を続けてきた黒田東彦日銀総裁。その背景には、就任直前に第二次安倍政権と日銀との間で取り決められた「共同声明」の存在がある。 デフレからの早期脱却と物価安定下での持続的な経済成長を目指したアベノミクスを実現するため、政府と日銀が果たすべき役割が明記された共同声明だが、 来たる日銀総裁人事を前にその見直しをすべきか否か、議論が活発化している。 令和国民会議(通称:令和臨調)運営幹事を務める平野信行氏(三菱UFJ銀行特別顧問)と翁百合氏((株)日本総合研究所理事長)は、『文藝春秋』3月号に寄稿し、「新たな共同声明」作成の必要性を説きつつ、民間企業の責任を指摘した』、興味深そうだ。
・『日銀の「独り相撲」で2%は無理  積年の構造改革課題の解決に向け、経済界・労働界・学識者などの有志で発足した令和臨調の共同座長も務める二人は、共同声明の意図には賛同しつつ、異次元緩和についてはこう評価する。 〈この10年というスパンで振り返ってみると、2年という短期間で2.0%の物価上昇率を達成することはそもそも難しかったと思われます。政府は、経済の競争力と成長力の強化、持続的な財政構造の確立を掲げましたが、現在に至るまで実現できていません。安定的な物価上昇は、日銀が独り相撲で達成できるものではないのです〉 一方で、民間企業の問題を無視することはできないという。2012年から16年まで三菱東京UFJ銀行(現・三菱UFJ銀行)の頭取を務めた平野氏は「自戒しつつ」と述べながら、その問題点を指摘する。) 〈日本経済の低迷の責任を政府と日銀だけに押し付けるのは間違っています。根本的な原因は、民間企業が新しいビジネスモデルの構築やイノベーションへの挑戦、そして何よりも投資を怠ってきたことにある。長く銀行の経営に携わってきた平野も自戒しつつ、日本の経営者が過去30年に亘りとってきた事業経営戦略には大きな問題があったと考えています。端的に言えば、日本の経営者は守りに入ってしまったのです』、「日本経済の低迷の責任を政府と日銀だけに押し付けるのは間違っています。根本的な原因は、民間企業が新しいビジネスモデルの構築やイノベーションへの挑戦、そして何よりも投資を怠ってきたことにある。長く銀行の経営に携わってきた平野も自戒しつつ、日本の経営者が過去30年に亘りとってきた事業経営戦略には大きな問題があったと考えています。端的に言えば、日本の経営者は守りに入ってしまった」、その通りだ。
・『政府と日銀は「新たな共同声明」を打ち出すべき  民間企業の新たな投資先の多くが国内ではなく海外に向けられている点についても、率直にこう書いている。 〈平野も国内での事業成長に対して十分な展望を持つことができず、アメリカ、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシアの銀行への出資や買収など、グローバル化の流れの中で海外への投資を続けました。もちろんビジネスですから成果が見込める市場へ投資を行ったこと自体、判断は間違ってはいなかったと考えています。しかし、海外と比べると国内で新たなビジネスを創造するための投資は十分だったとはいえません。この傾向は三菱UFJフィナンシャル・グループだけではなく、メーカーも含めた日本の多くのグローバル企業に共通することです。ですから日本の経営者は国内経済の低迷を止める努力を怠ったと自戒を込めて指摘しておきたいと思います〉 その上で平野、翁の両氏は、 〈政策連携の開始から既に10年経ち、元々企図していた成果は必ずしも出ていないのですから、民間の提案も参考にして、政府と日銀は新総裁の下で集中的に議論を行い、「新たな共同声明」を打ち出すべき〉 と主張する。 「新たな共同声明」の内容を含む「脱アベノミクス宣言」の全文は、「文藝春秋」2023年3月号と「文藝春秋 電子版」に掲載されている』、「政府と日銀は新総裁の下で集中的に議論を行い、「新たな共同声明」を打ち出すべき〉 と主張」、同感である。

第三に、2月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「日銀・植田新総裁による金融政策「修正プロセス」を大予想&カンタン解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/318075
・『政府は2月14日、4月で任期満了となる日本銀行の黒田東彦総裁の後任に、経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏を充てる人事案を国会に提示した。そもそも、日本の金融政策はどうして行き詰まったのか。日銀の金融政策の「あるべき姿」とは?植田新総裁下で想定される金融政策の「修正プロセス」をひもといていく』、「金融政策の「修正プロセス」をひもといていく」とは興味深そうだ。
・『植田新総裁は緩和策の修正に積極的?  2月10日、政府は日銀の次期総裁に元審議委員の植田和男氏を起用する方針を固めたと報じられた。副総裁には氷見野良三前金融庁長官と内田真一日銀理事が起用されるようだ。 この報道直後、外国為替市場では一時、1ドル=131円50銭台から129円80銭台まで円は買い戻された。日経平均株価は一時400円安まで売り込まれた。この市場の反応を見ると、植田新総裁は、現在の緩和策の修正に積極的とみたようだ。 ただ、本当に植田新総裁が政策修正に積極的に行動できるかは、今後の経済や政府との関係を注視する必要がある。政策修正はそれほど単純なことではない。 わが国の金融政策は限界を迎えつつある。どこかで、これまでの金融政策を修正することは避けられない。1998年から7年間、植田氏は日銀の審議委員として、わが国の金融政策の策定に参画した。同氏は、金融政策の柔軟性、持続性を重視したといわれている。 現在、わが国の銀行などの金融システムは健全だが、日銀の多額購入で国債市場の流動性枯渇は深刻だ。また、いつまでもマイナス金利を続けるわけにはいかない。これから日銀は植田新総裁の下、時間をかけ金融政策の正常化のタイミングを計り、あるべき政策への回帰を目指すことになるはずだ』、「これから日銀は植田新総裁の下、時間をかけ金融政策の正常化のタイミングを計り、あるべき政策への回帰を目指すことになるはずだ」、その通りだ。
・『日本の金融政策はどうして行き詰まったのか  現在、わが国の金融政策に関する問題はかなり複雑化している。1990年代初めに資産バブルが崩壊して以降、わが国経済は長期停滞に陥った。わが国は構造改革の推進よりも、金融緩和を強化することによって景気の浮揚を目指した。 95年以降、無担保コール翌日物の金利は0.5%程度で推移した。すでに緩和的な金融環境下、97年には金融システム不安が起きた。日銀は徐々に鮮明となったデフレ経済からの脱却を目指して金融緩和をさらに強化した。 99年2月には「ゼロ金利政策」が開始され、2000年8月にいったん解除された。それでも景気は上向かず、01年3月には量的緩和策が開始された。その後、米国の住宅バブルの発生などによって世界経済は上向いた。06年には一時的に量的緩和策が解除された。 しかし、リーマンショック後、世界経済の低迷などによってわが国の景気停滞は深刻化した。13年1月に日銀は政府との“アコード”を結び、「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のために連携する」と宣言した。このとき、日銀の独立性は低下したといえる。同年4月に「量的・質的金融緩和」が開始された。 過去30年近くの金融政策に一貫するのは、日銀が長い時間軸をもって金融緩和を強化するスタンスをより鮮明にしたことだ。これにより主要投資家の金利上昇不安は和らぐ。加えて、日銀は、社債、株式ETFや不動産投資信託(J-REIT)などリスク資産も購入し、投資家のリスクテイクを上向かせようとした。 さらに、国債買い入れの増加によって、事実上、金融政策は財政ファイナンスに踏み込んだ。そうした状況下、一時、国内の景気が上向き、構造改革の推進機運が高まる場面はあった。 しかし、政府は構造改革の推進よりも日銀による一時的な需要喚起を優先し、金融政策の持続性は低下している。多くの投資家は金利の上昇に慣れていない』、「政府は構造改革の推進よりも日銀による一時的な需要喚起を優先し、金融政策の持続性は低下している」、残念ながらその通りだ。
・『日銀の金融政策「あるべき姿」とは  わが国の金融政策は、基本的な役割を見直し、原点回帰を目指すときに来ている。足元、国債流通市場の流動性は枯渇している。そして目先、物価はまだ上昇しそうだ。22年12月の金融政策決定会合では、そうした事情を背景に長期金利の変動幅が拡大された。さまざまな議論があるものの、政府も日銀も金融緩和の限界を認識しつつあるのだろう。 日銀の本来のマンデート(責任)は、経済と金融市場の環境に合わせて通貨および金融を調整し、金融システム安定と物価の安定を図ることにある。そのため、理論的に中央銀行は政府から独立している必要がある。多くの主要先進国の中央銀行も同じ理念に基づいて金融政策を運営している。 具体的には、中央銀行は翌日物などの短期金利を政策金利に設定する。短期金利の目標水準の変更に沿って、中央銀行は国債買い入れなどのオペレーションを実施し、実体経済と金融市場の環境に見合った金融環境を目指す。 一連の金融調節は家計、企業、金融機関などの資金繰り、投資計画、先行きの予想などに影響を与え、主として市場原理に基づいて中長期の金利は形成されやすい。また、理論上、金利はゼロ以下にはできない。マイナス金利は経済と金融市場にさまざまな弊害を与えるからだ。 しかし、わが国全体で金融緩和による景気浮揚を求める考えが強まり、日銀はマイナス金利政策に踏み込んだ。さらに、10年国債の流通利回り上限が0.50%など特定の水準に打ち付けられる(ペッグされる)状況が続き、金融市場における価格発見メカニズムは弱まっている。インフレ圧力が強い状況下で金融緩和が続くと、通貨の価値は下落する。 原油価格の動向などを踏まえると、米国の物価上昇ペースが追加的に低下するかは不確実だ。内外金利差が想定以上に拡大すれば、22年秋ほどではないにせよ、円はドルなどに対して減価し、物価上昇圧力は長引くかもしれない。 このように異次元緩和が経済にプラスよりも、マイナスのインパクトを与える恐れは増している』、「内外金利差が想定以上に拡大すれば・・・円はドルなどに対して減価し、物価上昇圧力は長引くかもしれない。 このように異次元緩和が経済にプラスよりも、マイナスのインパクトを与える恐れは増している」、「マイナスのインパクト」とは困ったことだ。
・『新総裁下で想定される金融政策の修正プロセス  植田・新日銀総裁の一報が出た2月10日の海外時間、国債先物の価格は下落した。続く13日の東京時間、国債先物は幾分か値を戻した。一方、国内株価は下落して引けた。報道直後の一時的な円の買い戻しも加味して考えると、今すぐではないにせよ、日銀は新総裁の下で金融政策の追加修正を進めると考える投資家は増えている。 3月19日、2人の副総裁は任期を迎える。追加的に日銀のリフレ色は薄まるだろう。日銀は独立性の回復を目指し、独自の立場から経済全体にとって長期的に有効な政策を立案、実行すべき局面を迎えている。日銀は徐々に金融政策の正常化を進めようとするだろう。 日銀によると20年4~6月期から22年7~9月期まで、わが国のGDPギャップはマイナスだった。ただ、ここにきてマイナス幅は縮小している。それは重要な変化だ。今後の賃上げなど国内経済の展開次第では、需要が供給を上回る可能性はある。 新総裁の指揮の下、日銀は金融システムの健全性の維持と物価の安定のために、慎重かつ段階的に金融政策の追加修正を進めるだろう。修正のプロセスとしては、以下のような流れが想定できる。 まず、日銀は異次元緩和の効果、副作用などを総括的に検証する。その上で、新しい金融政策の枠組みに移行し、金融政策の追加修正を進める。具体的な取り組みとして、最初に、長期金利の上限引き上げ、あるいは撤廃を目指すだろう。 その際、急激な長期・超長期金利のボラティリティー上昇を防ぐために、市場とのコミュニケーションも促進される公算は高い。その上で、中小企業や家計への打撃を緩和しつつ、マイナス金利からの脱却が目指されるだろう。 マイナス金利政策からの脱却は、コロナ禍で実質、無利子・無担保で融資(ゼロゼロ融資)を受けてきた中小企業の事業運営に負の影響を与えると懸念される。イールドカーブ・コントロール政策の(段階的)撤廃以上に、マイナス金利政策からの脱却には時間がかかりそうだ。 そうした金融政策の修正に伴い、中期的に国内の金利上昇圧力が増すことは間違いない。それが現実味を帯びてくると、わが国の低金利時代の終焉が近いことになる』、「マイナス金利政策からの脱却は、コロナ禍で実質、無利子・無担保で融資(ゼロゼロ融資)を受けてきた中小企業の事業運営に負の影響を与えると懸念される。イールドカーブ・コントロール政策の(段階的)撤廃以上に、マイナス金利政策からの脱却には時間がかかりそうだ」、その通りだ。

第四に、2月22日付けデイリー新潮「「数式を普通の文章のように読む」 日銀新総裁・植田和男氏の天才エピソード、教え子が“酒豪ぶり”も証言」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/02220557/?all=1
・『日本銀行の新総裁として白羽の矢が立った東京大学名誉教授の植田和男氏(71)。戦後初の学者出身の総裁であり、元教え子は「数式を普通の文章のように読む」と天才ぶりに舌を巻く。一方で相当な酒豪として知られ、六本木や銀座のクラブに頻繁に通っていたという意外な素顔も。 著名人が数多く住むことで知られる都内のさる高級住宅街。細い路地が交差する一角にひときわ瀟洒な2階建ての一軒家がある。 今月9日夜、その玄関近くに集っていた記者団の前で家主の男性は前日までのピリピリした雰囲気から一転、憑き物が落ちたかのように上機嫌だった。そして男性は記者団を気遣うようにこう語りかけた。 「明日は雪が降るらしい、みんな暖かくしてよ」 余裕を感じさせる口調は“前触れ”だったのか。かくして翌日、都内で大雪警報が発せられる中、日経新聞が打った一報に世界はくぎ付けになる。 〈日銀総裁に植田和男氏〉 この報道には国内の関係者も度肝を抜かれた。何しろ新総裁の本命とされ、大手メディアが遮二無二追いかけていた冒頭の男性、雨宮正佳・日銀副総裁がトップの座に就かないことが明確になったからだった。 「誰もが予想しえなかったサプライズ人事でした」 とは経済部デスク。 「約10年もの長期間、日銀のトップだった黒田東彦(はるひこ)総裁の後任が誰になるかは、世界的な関心事でした。その有力候補の一人が雨宮さんだった。黒田体制の下、2018年から現在まで副総裁を務め、その金融政策を熟知しているというのが主たる理由でした。そして、もう一人が中曽(なかそ)宏・大和総研理事長。同じく13年から18年まで副総裁だった方です。次期総裁は二人のいずれかだといわれていましたが、どちらも昨年から最近に至るまで、就任を固辞しているという情報が漏れ伝わってきていたのです」』、「異次元緩和」は取り組む時よりも、手仕舞いする出口の方が遥かに難しいので、貧乏クジを引きたくないのだろう。
・『雨宮氏が辞退した理由  次の総裁は黒田総裁が進めてきた異次元の金融緩和の出口戦略という、国民生活を左右する非常に困難なタスクの遂行を求められる。有力候補の二人も「やりたくない」というのが本音だったのだろう。しかし、6日には日経新聞が「政府が雨宮氏に就任を打診」と報じた。 自民党幹部が語る。 「雨宮さんは昨年秋の時点で“総裁はやらない”とはっきり断言していました。黒田さんの異次元緩和を推進してきた人ですから、これから金融政策が変わるときに、続けちゃいけないという気持ちがあり、さらに“世界の潮流として中央銀行総裁は学者なんです”とも言っていた。日本の場合、総裁は伝統的に日銀と財務省の出身者が交互に務める、たすきがけ人事になっています。雨宮さんはその伝統を廃し、次の総裁は学者に、という思いがあった。この話は昨秋の時点で私から総理に伝えています」 日銀総裁を打診されて断るケースは前代未聞。日銀が大量の国債を買い入れ、維持してきた緩和について、当事者らが「もうこれ以上は無理。責任を取りたくない」と本心を吐露したようなもので、財界には「あり得ない」と衝撃が走った』、「日銀が大量の国債を買い入れ、維持してきた緩和について、当事者らが「もうこれ以上は無理。責任を取りたくない」と本心を吐露したようなもので、財界には「あり得ない」と衝撃が走った」、確かに「あり得ない」ことではある。
・『英語の本を読みながら数キロ歩く勉強好き  結局、官邸の秋波に最後まで首を縦に振らなかった雨宮氏。代わって白羽の矢が立ったのが、全くノーマークだった東京大学名誉教授の植田和男氏(71)だった。 植田氏は静岡県牧之原市出身。東京教育大学附属駒場高校(現・筑波大学附属駒場高校)を卒業後、東京大学理学部を経て、同大経済学部に学士入学している。 植田氏の叔父で牧之原市に住む植田六郎氏によれば、 「和男の祖父は牧之原市で郵便局長をやっていました。昔は郵便局に電話の交換台があった関係で、和男の父は電電公社で働くことになったと聞いています。和男は子どもの頃から東京で暮らしていました」 中学生までは休みになると、静岡に帰省することもしばしばだった。 「和男は頭が良くてね、小学生の時はトランジスタラジオを持ってきて、それを聞きながら英語の勉強をしていました。また、親戚宅までの海岸沿いの道を英語の本を読みながら数キロも歩いていた。勉強が好きだったんでしょう」』、「トランジスタラジオを持ってきて、それを聞きながら英語の勉強をしていました。また、親戚宅までの海岸沿いの道を英語の本を読みながら数キロも歩いていた。勉強が好きだったんでしょう」、本当に「勉強が好き」なようだ。
・『「数学が異常にできていた」  生まれながらの秀才は高校進学後も力を発揮した。同級生が語る。 「理数系科目では圧倒的なトップでした。特に数学が異常にできていた印象があります。高校2年生の時だったかな、同じ模擬テストを2年生と3年生合同で行ったことがあったんですが、その時に全体で3本の指に入っていました。ガリ勉というか、地頭がいいタイプですね」 当時、陸上部に所属していたとは別の同級生の談。 「多摩川の河川敷を走る校内のマラソン大会で1位になっていました。1500メートル走も得意だったみたいです。私たちの代は例年と比べて頭の良い代で卒業生の8割は東大に進学、その他の2割も他大学の医学部に、というような感じでした」』、「「理数系科目では圧倒的なトップでした。特に数学が異常にできていた印象があります」、さすがだ。
・『「文章を読むように数式を…」  植田氏もほかの生徒と同様に東大に進学。理学部で数学を学び、経済学部へと転じた変わり種。アベノミクスの理論的支柱で、当時、東大に在籍していた浜田宏一氏(現・米イェール大学名誉教授)のゼミに参加していたという。 1980年に米マサチューセッツ工科大学で博士課程を修了した後、カナダの大学の助教授、大蔵省財政金融研究所の研究官などを経て、89年に東京大学の教壇に立つことになる。 当時「植田ゼミ」1期生として、植田氏の薫陶を受けたのが、関東学院大学教授の中泉拓也氏(ミクロ経済学)だ。 その中泉氏が言う。 「植田先生は数学ができる方で、その点では誰もかなわないのではないかと思います。例えば数式にしても、普通の文章を読むようにして読み解いてしまうんです。経済学の研究というのは、突き詰めていくと高度な数学が扱えないと難しい。ですから、数学を学んで経済学へ、というルートは自然ではあります。また、植田先生は英語も堪能。普段は寡黙なんですが、英語になるとはつらつとお話しになります」 卒論指導は厳しかった、と続ける。 「データやエビデンスを非常に大事にする方で、詰め切れていない論点や根拠があやふやな箇所は“ここはおかしいですよ”“これはどうしてこうなるのですか”と厳しく指導されました」』、「数式にしても、普通の文章を読むようにして読み解いてしまうんです」、「英語も堪能。普段は寡黙なんですが、英語になるとはつらつとお話しになります」、数学・英語に圧倒的強味があったようだ。
・『バブル崩壊を予言  印象に残っているのは、「バブル崩壊」にまつわるエピソードだという。 「私が卒論を見てもらっていた1990年はバブル崩壊直前です。日本全体がどこか浮かれている中、植田先生は“経済状況を分析するとこれはバブルだから長続きしません”と予言していました。後から“あれはバブルだった”と言うのは簡単でも、国がまるごと浮かれているときに“おかしい”と指摘するのは簡単なことではありません」 そうした分析によるものなのか、こんな一面も。 「90年代には日本株の空売りをやっていたと本人が言っていました。結構儲かったんじゃないですかね。自分の理論を試したくなるみたいで、控えめな性格なのに空売りなんて、と驚いた記憶があります」(先の同級生)』、「バブル崩壊を予言」、「90年代には日本株の空売りをやっていた」理論を株式投資で実証したようだ。
・『赤プリのスイートルーム  中泉氏は当時「こんなに酒が強い人がいるのか」と驚嘆したという。 「ゼミの飲み会になると酒に酔ったような素振りを見せるのに、その実、全く酔っていない。泥酔したのを見たことがありません。ビールにブランデー、日本酒まで何でも飲みます。当時、草津や千葉の白子などへゼミ旅行に行くと、先生が一番酒が強いので深夜まで飲んでいる。カラオケもお好きでした。よく高橋真梨子さんの『桃色吐息』を歌っていて、その後、ゼミ仲間との飲み会ではその曲が先生の十八番ということになりました。ただ、さすがにいまは激しい飲み会はやっていないでしょうね」 別のゼミ生によれば、 「当時あった赤坂プリンスホテルのスイートルームを取って、ゼミ生と植田先生、差し入れを持ってきてくれるOBと朝まで夜通し飲む会が年に1回ありました。支払いは基本割り勘で先生が多く出すという感じ。学生は就職を控えているので、特に怪しいこともなく健全な会でしたが」』、「ゼミ旅行に行くと、先生が一番酒が強いので深夜まで飲んでいる」、さすがだ。
・『「生きた金融政策を語っていた」  植田氏は98年から05年まで、日銀政策委員会の審議委員を務めている。バブル崩壊後、日本経済が低迷にあえぎ、当時の速水優総裁により、ゼロ金利政策が導入された時期だ。 00年8月の金融政策決定会合では「ゼロ金利政策解除」に植田氏は反対票を投じている。結果的に、ゼロ金利は解除されるも、直後から景気が悪化。日銀は猛烈な批判を浴びた。 「言うべきことは的確、かつ最低限の言葉でお話しになる方でした」 とは当時の日銀副総裁だった藤原作弥氏。 「政策委員会の会議は日銀内の俗称“丸テーブル”で行われます。総裁がいて、脇に副総裁、そのまわりを審議委員で囲む。植田先生はいつも私の隣でした。何かの拍子でお互いに酒好きということが分かりまして、何度かご一緒し、植田先生行きつけのバーに行った記憶もあります。酔っても決して饒舌になったりはしないんですよね」 別の委員とアカデミックな論争になることもあった。 「植田先生は世界中の中央銀行のこともご存じでしたので、生きた金融政策を語っていました。例えば、(ゼロ金利政策を長期間にわたって行うと予告する)時間軸政策という概念を最初に提唱したのは彼なんです」(同)』、「時間軸政策という概念を最初に提唱したのは彼」、さすがだ。
・『銀座や六本木のクラブに頻繁に繰り出し…  審議委員時代には、“醜聞”が書かれたことも。 00年に週刊ポストは、植田氏が日銀の公用車で六本木のクラブのホステスと同伴し、クラブをはしごして連夜、豪遊していたと報じている。 「夜のお店は昔から好きみたいで、銀座や六本木のクラブに頻繁に通っていたと聞きます。飲み仲間に野村総研のエコノミストだった政治経済学者の植草一秀さんもいたそうです。04年に女子高生のスカートの中を手鏡でのぞこうとして現行犯逮捕され、“ミラーマン”として騒動になった植草さんです。植田さんとは大蔵省の財政金融研究所で机を並べていた関係でした」(植田氏の知人) 当の植田氏に都内の自宅前で話を聞いた(qは聞き手の質問、Aは植田氏の回答)。 Q:よく銀座や六本木のクラブで飲まれていた。 A:「当時の知り合いの方に連れて行ってもらった感じだと思います。支払いは割り勘の時もありましたし、私が払った時もありました」 Q:植草さんとそういったお店に行かれていた。 A:「はいはい、植草くん。40年前とかですよ。クラブではなく、居酒屋に行っていましたね」 Q:かつて株の空売りをしていたこともあった。 A:「空売りはあまりしていませんが、株の売買をしたことはあります。学者だったので、単に空理空論ではなく実践した経験も必要かなと思って始めたんです」 と、朴訥(ぼくとつ)と語る。一方の植草氏は大要こう回答した。 「週刊ポストの記事の件については当方では事情を承知しておりません。植田先生とは食事をごちそうになり、その後に、お酒を飲める場で懇談させていただいたことが1度あります。そのお礼にお誘いし、やはりお酒を飲める場で懇談をさせていただき、これと別に、新宿のバーのようなところで、亡くなられた西部邁先生とご一緒に懇談させていただきました。プライベートな接触はこの3回だけだと思います」 ともあれ、この植田氏に日本経済の行く末が託されることになる』、「植田さんとは大蔵省の財政金融研究所で机を並べていた関係」、「クラブではなく、居酒屋に行っていましたね」、庶民的な「居酒屋」にも行くようだ。
・『先進国から脱落してしまう  安倍政権時代に内閣官房参与としてアベノミクスを推し進めた元大蔵官僚の本田悦朗氏が、 「植田さんの名前を聞いた時はビックリしましたけど、他の先進国では中央銀行のトップに高度な専門知識を持った人物が就くのは当たり前です」 と、植田氏の印象を語る。 「参与だった当時、消費税を8%に上げる前に、非公開で専門家による点検会合を行ったことがありました。植田さんにも来ていただき、アベノミクス推進側に好意的な発言をされ、“仲間がいた、うれしいなあ”と感じたのを覚えています」 一方で、今後の展開は注視しているという。 「経済の正常化、つまり物価上昇率が安定的に2%に近づいた時は、長期金利をぐっと抑え込んでいるYCC(イールドカーブコントロール)と呼ばれる黒田さんが進めていた政策を外すことになります。YCCを外して初めてアベノミクスは成功といえる。しかし、外すのが早すぎると経済の腰折れを招きますし、逆に外せないと日本はおしまいです。経済が衰退し、先進国から脱落してしまうでしょう」(同)』、「YCCを外して初めてアベノミクスは成功といえる。しかし、外すのが早すぎると経済の腰折れを招きますし、逆に外せないと日本はおしまいです」、その通りだ。
・『木原官房副長官は蚊帳の外  難しい舵取りを迫られる「植田日銀」。先述の通り、日銀審議委員時代はゼロ金利解除に反対するも、インフレターゲット政策には慎重な意見を表明するなど臨機応変な提言を行っていた。今後は金融緩和策を徐々に修正していくものとみられるが、共同歩調をとる岸田政権も大いなる不安を抱えている。 「自民党幹部によると、今回の植田さんの人選は、岸田総理が財務省の元事務次官・岡本薫明さん、神田真人財務官と相談して決めたようです」 とは政治ジャーナリストの青山和弘氏。 「最側近として知られ、財務省出身の木原誠二官房副長官は蚊帳の外で、この件に限らず総理との間に距離が生まれています。防衛増税についても事前に聞いておらず、木原さんは周囲に、“岸田さんから遠ざけられている”と嘆いている。総理は長男で秘書官の翔太郎さんにも政治的な相談はしないので、自民党幹部や官邸スタッフの中でも“総理が何を考えているのかわからない”という声が上がっています」 当の総理は今月11日に、全身麻酔をかけて慢性副鼻腔炎の手術を行った。だが、鼻詰まりが良くなっても、官邸内の目詰まりまでは解消できず。夜に強い新総裁が船出しようというのに、岸田政権は“桃色吐息”ならぬ“青息吐息”になるばかりである』、「岸田政権は」「“青息吐息”になるばかりである」、上手い比喩だ。さて、「植田新総裁」のお手並み拝見である。
タグ:異次元緩和政策 (その42)(《挑発的発言で140円までドーンと下落》日銀OBが「言わんこっちゃない」と苦笑する黒田総裁のマーケット評、三菱UFJ銀行・平野氏 日本総研・翁氏「政府・日銀はアベノミクス時代の指針を見直せ」、日銀・植田新総裁による金融政策「修正プロセス」を大予想&カンタン解説、「数式を普通の文章のように読む」 日銀新総裁・植田和男氏の天才エピソード、教え子が“酒豪ぶり”も証言) 文春オンラインが掲載した「《挑発的発言で140円までドーンと下落》日銀OBが「言わんこっちゃない」と苦笑する黒田総裁のマーケット評」 早川氏は日銀きってのエコノミストとして鳴らした人物だ。 「帳簿上では収益を親会社に移転して連結決算にも反映するのですが、資金の大部分は現地に置きっぱなしで円転しないのです。一方で貿易の支払いはあるから、どうしても日本全体としてはドル不足に陥ってしまう。需給の関係でドルは上がり、円は下がることになるのです」、「このような対外収支構造が根底にあることを考えると、現在の日本は円高になりにくく円安が進みやすい状態」、「購買力平価・・・で比較すると、1ドル=100円くらいが適正だろうとみられます。 ですから、過剰な円安はいずれ調整されて戻っていく。ここまで異常な状態が、この先何年も続くとは思いません」、なるほど。 現実には、「日銀」は12月19-20日の金融政策決定会合で、10年物国債金利の許容変動幅について、プラスマイナス0.5%に拡大することを決めた。しかし、「黒田総裁」の「頑なな態度」は問題だ。 「土壇場で“ラストチャンス”を狙っている」とはどういう意味なのだろうか。「許容変動幅」「拡大」をした以上はどうでもいいのだろうか。 文春オンライン「三菱UFJ銀行・平野氏、日本総研・翁氏「政府・日銀はアベノミクス時代の指針を見直せ」」 「日本経済の低迷の責任を政府と日銀だけに押し付けるのは間違っています。根本的な原因は、民間企業が新しいビジネスモデルの構築やイノベーションへの挑戦、そして何よりも投資を怠ってきたことにある。長く銀行の経営に携わってきた平野も自戒しつつ、日本の経営者が過去30年に亘りとってきた事業経営戦略には大きな問題があったと考えています。端的に言えば、日本の経営者は守りに入ってしまった」、その通りだ。 「政府と日銀は新総裁の下で集中的に議論を行い、「新たな共同声明」を打ち出すべき〉 と主張」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 真壁 昭夫氏による「日銀・植田新総裁による金融政策「修正プロセス」を大予想&カンタン解説」 「金融政策の「修正プロセス」をひもといていく」とは興味深そうだ。 「これから日銀は植田新総裁の下、時間をかけ金融政策の正常化のタイミングを計り、あるべき政策への回帰を目指すことになるはずだ」、その通りだ。 「政府は構造改革の推進よりも日銀による一時的な需要喚起を優先し、金融政策の持続性は低下している」、残念ながらその通りだ。 「内外金利差が想定以上に拡大すれば・・・円はドルなどに対して減価し、物価上昇圧力は長引くかもしれない。 このように異次元緩和が経済にプラスよりも、マイナスのインパクトを与える恐れは増している」、「マイナスのインパクト」とは困ったことだ。 「マイナス金利政策からの脱却は、コロナ禍で実質、無利子・無担保で融資(ゼロゼロ融資)を受けてきた中小企業の事業運営に負の影響を与えると懸念される。イールドカーブ・コントロール政策の(段階的)撤廃以上に、マイナス金利政策からの脱却には時間がかかりそうだ」、その通りだ。 デイリー新潮「「数式を普通の文章のように読む」 日銀新総裁・植田和男氏の天才エピソード、教え子が“酒豪ぶり”も証言」 「異次元緩和」は取り組む時よりも、手仕舞いする出口の方が遥かに難しいので、貧乏クジを引きたくないのだろう。 「日銀が大量の国債を買い入れ、維持してきた緩和について、当事者らが「もうこれ以上は無理。責任を取りたくない」と本心を吐露したようなもので、財界には「あり得ない」と衝撃が走った」、確かに「あり得ない」ことではある。 「トランジスタラジオを持ってきて、それを聞きながら英語の勉強をしていました。また、親戚宅までの海岸沿いの道を英語の本を読みながら数キロも歩いていた。勉強が好きだったんでしょう」、本当に「勉強が好き」なようだ。 「「理数系科目では圧倒的なトップでした。特に数学が異常にできていた印象があります」、さすがだ。 「数式にしても、普通の文章を読むようにして読み解いてしまうんです」、「英語も堪能。普段は寡黙なんですが、英語になるとはつらつとお話しになります」、数学・英語に圧倒的強味があったようだ。 「バブル崩壊を予言」、「90年代には日本株の空売りをやっていた」理論を株式投資で実証したようだ 「ゼミ旅行に行くと、先生が一番酒が強いので深夜まで飲んでいる」、さすがだ。 「時間軸政策という概念を最初に提唱したのは彼」、さすがだ。 「植田さんとは大蔵省の財政金融研究所で机を並べていた関係」、「クラブではなく、居酒屋に行っていましたね」、庶民的な「居酒屋」にも行くようだ。 「YCCを外して初めてアベノミクスは成功といえる。しかし、外すのが早すぎると経済の腰折れを招きますし、逆に外せないと日本はおしまいです」、その通りだ。 「岸田政権は」「“青息吐息”になるばかりである」、上手い比喩だ。さて、「植田新総裁」のお手並み拝見である。
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中国情勢(軍事・外交)(その14)(中国の偵察気球から得られる教訓 冷戦に向かう米中 敵対的な関係を管理する術を学べ、中国人女性が「買った」沖縄の無人島 中国のネットユーザーは「中国のもの」 一躍渦中の島となった「屋那覇島」 世界で警戒される地域のチャイナ化、上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、昨年6月6日に取上げた。今日は、(その14)(中国の偵察気球から得られる教訓 冷戦に向かう米中 敵対的な関係を管理する術を学べ、中国人女性が「買った」沖縄の無人島 中国のネットユーザーは「中国のもの」 一躍渦中の島となった「屋那覇島」 世界で警戒される地域のチャイナ化、上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば)である。

先ずは、本年2月15日付けJBPressが転載したThe Economist「中国の偵察気球から得られる教訓 冷戦に向かう米中、敵対的な関係を管理する術を学べ」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73963
・◆特別公開中◆(*)本記事は、プレミアム会員向けの特別記事ですが、期間限定で特別公開しています。(この機会に、JBpressのすべての記事をお読みいただける「JBpressプレミアム会員」のご登録をぜひお願いいたします。) 米中の相互不信が新冷戦に変容しつつある。 中国と米国が冷戦に向かっている。相互不信がはるかに破壊的なものへと変わりつつある。 互いに折り合うことができず、相手は自国の中核的な野心と利益を阻止する決意だと信じて疑わない2大国間の争いだ。 米サウスカロライナ州沖における中国の気球の撃墜は、対立が手に負えなくなるのを食い止める知恵と意思を米中両国が持ち合わせているか否かを占う試金石だ。 今のところ、その結果はまだら模様だ』、この記事は、「特別公開中」に読んで頂きたい。「中国の偵察気球」は日本への分も含め、打ち上げた主体、意図などが不明のままだ。
・『気球撃墜で傷ついたのは中国のプライド  楽観的な見方をするなら、今回の気球撃墜は予期せぬ幸運だった。 もっとひどい事態に発展しかねなかった危機でありながら、失うものが少なく教訓が得られるタイプだったからだ。 中国の戦闘機や軍艦はここ数年、恐ろしいリスクを冒し、米国やその同盟国に所属する航空機や船舶に嫌がらせをしてきた。 大抵は、西側の軍隊が中国の沿岸に近い国際空域や国際海域で旗幟(きし)を鮮明にしたり情報収集を行ったりするときに行っている。 また、中国の司令官たちは台湾の近くに派遣する飛行機の数を増やし、衝突の危険性を一段と高めている。 米国のミサイルが気球を破壊したことで中国が被った最大の被害は、そのプライドが傷ついたことだった。 両国軍の装備の衝突のうち、分かっている限りで最新のもの――米国の電子偵察機「EP3」と中国の戦闘機が空中で衝突し、中国機のパイロットが死亡した一方、米軍機は中国に緊急着陸し、乗員24人が拘束された2001年の事件――とはまさに好対照だ』、「中国の戦闘機や軍艦はここ数年、恐ろしいリスクを冒し、米国やその同盟国に所属する航空機や船舶に嫌がらせをしてきた」、実に横暴だ。「米国の電子偵察機「EP3」と中国の戦闘機が空中で衝突」した事件はうろ覚えな記憶がある程度だ。「米国のミサイルが気球を破壊したことで中国が被った最大の被害は、そのプライドが傷ついたこと」、その程度で済んだとは幸運なことだ。
・『中国側の落ち着いた反応に楽観論  事態を楽観する観測筋は、飛行船を破裂させたことについて中国の宣伝機関は中国国民の怒りをさほどあおらなかったと指摘するかもしれない。 なるほど、主要なニュースメディアはこの件を控えめにしか報じていない。 準国営メディアは笑いのネタにし、中国側が航路を外れた気象観測用の気球と呼ぶものに米国が過剰反応したと茶化している。 本稿を執筆していた時点で、中国側は補償を要求しておらず、少なくとも当初は遺憾の意を表明していた。 楽観論者なら、中国軍が米国の国民と政治家が怒る様子を見て、衝突すればただではすまないことを学ぶだろうと期待するかもしれない。 中国の政府当局者はもう何年間も、危うい事態が生じたときの取り決めについて外国政府と話し合うことを拒んでいる。 よそ者は近づくな、近づかなければ安全だと怒鳴るばかりだ』、「中国の政府当局者はもう何年間も、危うい事態が生じたときの取り決めについて外国政府と話し合うことを拒んでいる」、緊急時のホットラインがないのは極めて不安定だ。
・『2001年当時とは違う米国政治  しかし、今回の一件は悲観的に見ることもできる。 2001年の衝突で、当時のジョージ・W・ブッシュ大統領がEP3の乗組員を解放させるために中国軍パイロットの死去について遺憾の意を表明した際には、連邦議会は不満を漏らすだけだった。 今日のワシントンでは、党派的な怒りはそれほど抑制されないだろう。 共和党が気球をすぐに破壊するようジョー・バイデン大統領に求めるなか、中国政府は2月上旬に出した独善的な声明文で、大統領に加わる政治的な圧力を考慮していなかった。 それどころか、最終的に気球が撃墜されるとおおっぴらに抗議した。おまけに、米国は事件を「でっち上げた」と非難した。 あたかも、戸建て住宅ほどの大きさで地上からでも見ることのできる敵国の風船を自由社会が隠蔽できるだろうと言わんばかりだった』、「最終的に気球が撃墜されるとおおっぴらに抗議した。おまけに、米国は事件を「でっち上げた」と非難した」、恥も外聞もなく、大国にあるまじき行動だ。
・『鼻持ちならないメッセージの代償  中国のメッセージ発信の鈍感な不快さには代償が伴う。 気球が米国本土を横断している最中に、アントニー・ブリンケン米国務長官が2月5~6日に予定していた中国訪問を延期した。 バイデン氏とその側近が、ブリンケン氏が習近平国家主席やそのほかの政府幹部と行いたいと思っていた率直な話し合いに集中できる政治状況ではないと判断したと言われている。 対話の狙いは、二国間の緊張を緩和したいとしている中国の本気度を試すことと、米中関係にささった最も鋭いトゲに対するバイデン氏の見方を習氏の耳に直接入れることにあった。 ここで言うトゲとは、米国の台湾支援、軍事利用できる先端技術への中国のアクセスを制限しようとするバイデン政権の取り組み、ウクライナで戦うロシアへの中国からの支援などを指す』、「ブリンケン米国務長官」の「中国訪問を延期」は中国も織り込んでいた筈だ。
・『米国務長官の訪中の意図  かつてオバマ政権で国務次官補とアジア問題のアドバイザーを務め、現在はアジア協会政策研究所に籍を置くダニエル・ラッセル氏は、ブリンケン氏の訪中は両陣営が「行儀よくプレー」できる政策分野を提案する「ボーイスカウト」的な訪問を意図したわけではなかったと語る。 本当の目的は、緊張をじわじわと高めがちな中国の振る舞いが何であるかを詳細に説明し、緊張を逆に低下させるような行動を提案することだったという。 ラッセル氏によれば、米中は「海図のない」領域に入っており、かみ合わないことが多い両国の目標や世界観と深い経済統合とのバランスを取りつつ、新たな均衡を求めて手探りで進んでいる。 ブリンケン氏の訪中は「冗談なしに、習氏に米国の方針を丁寧に教えるためのものだった。自分の部下から歪んだ解釈が上がってきているかもしれないからだ」。 この訪中の日程が近いうちに再調整されることをラッセル氏は望んでいる』、「ブリンケン氏の訪中」は「冗談なしに、習氏に米国の方針を丁寧に教えるためのものだった」、のであれば、「日程が近いうちに再調整される」方が望ましい。
・『中国側の真意は?  米中対話の機会を再度設けてほしいという声は、中国の学者からも上がっている。 清華大学戦略安全研究センターの達巍主任は、中国は中米関係の安定化を望んでおり、紛争回避にとどまらず正常な通商関係と人材交流を求めている主張している。 そして、中国は以前の強硬姿勢を後悔しているからチャームオフェンシブ(魅力攻勢)を仕掛けていると考える西側のアナリストに異議を唱えている。 実態はそうではなく、バイデン政権が国内基盤を強化して同盟国への信頼感も高めたうえで中国に関与する準備を整えるのを中国側は待っているのだという。 達氏はさらに、米大統領選挙の前年に当たる今年が対話のチャンスだと見ており、今でも米中の協力を望んでいる両サイドの「分別のある」官僚や企業経営者、学者に慎重な期待をかけている。 だが、今回の気球危機を両国がうまく処理できる兆しはほとんど見られないと言う。 「中国にも米国にも安定した二国間関係のためにまだ骨を折っている人はいるが、少数派だ」と懸念している』、「今回の気球危機を両国がうまく処理できる兆しはほとんど見られない」、困ったことだ。
・『危機管理の必要性  新たな冷戦は最初のそれとは異なるものになるだろう。 米国と旧ソビエト連邦の間には、ビジネスの関係がほとんどなかった。対照的に、米中間では1日当たりで約20億ドルもの輸出入が行われている。 ところが今日では、たとえ商業関係を深めても、以前のように相互理解につながる道にならない。 一つには、ハイテク産業から農地に至る中国の米国投資に対して、米国の政治家たちが慎重な見方をますます強めていることがある。 2020年には、中国人所有の企業が米国で雇用する従業員の数がわずか12万人に急減した。 また中国共産党の幹部たちは、米国人が抱いている不信感を「反中ヒステリー」と呼んでいる。 もし習氏が危険な衝突を回避したいのであれば、ガードレールを備えた関係を築こうというバイデン氏の呼びかけに答えるべきだ』、「もし習氏が危険な衝突を回避したいのであれば、ガードレールを備えた関係を築こうというバイデン氏の呼びかけに答えるべき」、同感である。

次に、 2月16日付けJBPressが掲載したジャーナリストの福島 香織氏による「中国人女性が「買った」沖縄の無人島、中国のネットユーザーは「中国のもの」 一躍渦中の島となった「屋那覇島」、世界で警戒される地域のチャイナ化」、を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/73988
・『中国人女性企業家の張さん(34歳)が沖縄の無人島を買ったという。沖縄本島・那覇北部の無人島、屋那覇島(やなはじま)である。 その島に上陸した張さんの動画が、1月30~31日にTikTokにアップされた。 うしろにある70万平方メートルの小島、私が2020年に買った小島よ」 「徒歩4時間で一周できるの」 そう説明しながら波と戯れたり砂浜を走る様子に、中国のネットユーザーは
「うらやましい!」「仰天した!」「30代で島を買ったのか、私は30代でダブルワークだよ」「どこからそんな金を得たんだ」「あなたの島民になりたい」 とうらやましがったり、驚いたりするコメントが殺到した。 同時に、「国家に譲渡して軍事基地にすればいい」「五星紅旗(中国の国旗)を立てよう!」「(中国人が買った島なら)中国のものだな!」 といった物騒な「愛国コメント」も多くついた。 さらには、日本でもこのニュースはネット上で話題となり、国家安全上問題があるのではないか、中国人に無人島が乗っ取られるのではないか、という懸念で一部から注目を集めるニュースとなった。 2月13日、松野官房長官がこの話題の屋那覇島について、2021年6月に成立された「重要土地利用規制法」の対象外だとの認識を示した。重要土地利用規制法は、自衛隊の基地や原子力発電所といった重要インフラ施設から1キロの範囲や、国境に近い離島などを「注視区域」に指定し、国が土地などの所有者の氏名や国籍などを調査できるとする法律だ。特に基地周辺や国境に近い無人島などの「特別注視区域」で一定の面積の土地を売買する場合は、事前の届け出が必要で、その区域で電波妨害など問題行為が確認されれば、国が土地や建物の利用中止を命じることができる。) 屋那覇島は、国境の島でもないし、基地の周辺でもないので、「注視区域」に該当しない、ということだ。 だが、これで一件落着、一安心、ということにはならないようで、私も先日からこの問題についてコメントを求められることが多い。確かに世界各地で今、中国人・中国企業による土地購入に対する懸念が深まっており、日本としても今後どう向き合うかを考える必要があるだろう』、「重要土地利用規制法は、自衛隊の基地や原子力発電所といった重要インフラ施設から1キロの範囲や、国境に近い離島などを「注視区域」に指定し、国が土地などの所有者の氏名や国籍などを調査できるとする法律」、「重要インフラ施設から1キロの範囲」と狭いのに驚いた。私権制限になるので、緩めにしたのだろう。
・『購入は「リゾート開発のため」  この動画の女性が紅星新聞という中国のネットメディアのインタビューに答えたところによれば、彼女は中国・青島出身で、2014年に飲食業を創業。家族が不動産と金融の会社を営んでおり、その会社名義で、競売にかけられていた屋那覇島の土地を購入したという。 屋那覇島は917の土地所有権に分かれており、そのうち720の権利譲渡が2021年2月1日までに完了しているという。日本のネットメディア、SAKISIRUが売り手側の元の土地所有企業代表にインタビューしていたが、それによると譲渡額は3億5000万円で、登記簿上の面積は島のおよそ50%に当たるという。ちなみに島は沖縄県・伊是名村(いぜなそん)に所属するが、村議会はこの売買契約を事前に知らされていなかった模様。 この島の約半分の土地を実際に購入したのは、義昌商事という東京のコンサルティング会社である。それは公式サイトでも公表している。サイトによれば、リゾート開発目的で購入したそうだ。義昌商事は、これまでも地方創生事業や中国人観光客インバウンド事業に関するコンサルティングの実績があるという。 名前からすれば中国系企業のようだが、1968(昭和43)年に東京・南麻布で創業と歴史は古く、2005年に社長に就いた馬和克社長も、日本生まれで日本国籍、日本語ネイティブ、野村証券に在籍したこともあるとプロフィールに記されている。) 義昌商事は、馬社長が代表を務めるMAラボラトリーグループ傘下にあり、そのグループ企業には中国・青島の飲食チェーン企業も含まれているので、「張さん」はその関係の人かもしれない。 馬社長は野村証券時代にグローバルM&Aアドバイザリー業務や法人・国家機関向け債券発行業務等に従事していたといい、その頃の経験や人脈を使って家業を拡大したのかもしれない。義昌商事に取材申し込みのメールを送ったが、今のところコンタクトは取れていない。 この屋那覇島は沖縄県名護市の北にある離島で、伊是那島に属する。伊是名島は人口1200人、伊是名村の唯一の有人島で、その周辺の屋那覇島、具志川島、降神島の三島は無人島だ。 屋那覇島から50キロのところには伊江島があり、1945年に米軍に占領されたのち、米軍の補助飛行場がつくられ、軍事演習期間は米軍の空対地ミサイル演習の重要基地となっていた。ベトナム戦争中は、この基地がベトナム戦争に向かう兵士たちが最後の訓練を受ける場所の一つだった。そういう意味では地政学的にも要衝地と言えるかもしれない。 今回売買された土地は、20年前は水産関連企業組合のもので、養殖産業を興すつもりが伊是名村の村民の反対運動で挫折。その後、所有者が変わるもいろいろトラブルに見舞われ、競売にかけられたという。 張さんは、60万元(1200万円)からスタートした競売に参加したというが、譲渡額が3億5000万円に吊り上がった経緯などはもう少し調べてみないと分からない。リゾート開発といっても、電気水道その他インフラを何もない状態からつくる必要があるので、一企業グループの事業には収まり切れないかもしれない』、「譲渡額が3億5000万円に吊り上がった経緯などはもう少し調べてみないと分からない」、「リゾート開発といっても、電気水道その他インフラを何もない状態からつくる必要があるので、一企業グループの事業には収まり切れないかもしれない」、その通りだ。
・『世界で発生している「地域のチャイナ化」問題  おそらく、日本人の懸念は、中国の国有企業などがインフラ建設などで大量に中国人を送り込み、気が付けばチャイナタウンならぬチャイナアイランドと化してしまうことではないか。あるいはプライベートジェット用の飛行場や港が勝手につくられる懸念。あるいは建設に伴う深刻な環境破壊が起きるという懸念。) 実はこういう懸念は日本のものだけではない。習近平が2015年に一帯一路戦略を打ち出して以降、中国企業が関わる海外におけるインフラ建設、リゾート開発が様々な物議をかもしていることはすでに何度も報じられている。それはいわゆる「債務の罠」だけでなく、環境破壊、文化破壊、地域社会の分断が起こり、現地コミュニティが破壊された挙句にその土地が「チャイナ化」するという現象が起きているからだ。 例えば2019年にフィジーを訪問したとき、私は中国系企業によるリゾート開発によって、大量のマングローブ林が破壊された状況を目の当たりにした。開発契約上は問題がなく、政府がGOサインを出したのだが、その後、勝手に計画規模を拡大し、広範囲のマングローブ林を伐採したのだ。 結局、開発は中止となったが、失われたマングローブは還らず、生態および地元の漁民たちの暮しが破壊されることとなった。工事のために大量にやってきた中国人従業員らは暇になり、地元の習慣、文化を尊重せずに我が物顔で振る舞い、地元民との軋轢を生み、治安も悪化した。 またカンボジアのシアヌークビルは、今や中国人専用リゾートエリアといっても過言ではなく、中国人向けカジノが林立し、そこで働く人間も客も中国人、中国語が公用語化し人民元が普通に流通している。中国人エリアになったことで、地元の警察司法権力よりも中国人用心棒(マフィア)の力の方が強くなり、マネーロンダリング、人身売買、詐欺など犯罪拠点化する問題が起きている。 中国企業によるリゾート開発やインフラ建設は、必ずしも地元経済や地元の人々の暮らしを潤すものとはならない。むしろ地元民から自然資源を奪い、その土地に住む人々を排除することで反中感情を増幅させる。それが地元の政治家の汚職とつながっている場合は、政権不安、社会の分断などを引き起こす。 地域のチャイナ化が起きた場合、最大の懸念は現地警察による治安維持が及ばず、むしろ北京の権力やルールが適用される状況が常態化することだ。実際、東南アジアや南太平洋島嶼国では、地元警察よりも先に、中国から派遣された公安組織が現地の中国人犯罪を取り締まり、現地当局も知らない間に容疑者の身柄を移送したりしている。それが、政治犯である場合は、当然人道上の問題となる。さらに言えば、外国籍者の地方参政権が認められる場合は、地域のチャイナ化はすなわち地域政治のチャイナ化になる。 昨今は、米国やカナダ、オーストラリアなどの先進国でもこうした懸念は共有されており、中国企業による土地購入、開発に対する規制強化の動きが出ている。) たとえばテキサス州で中国富豪がラーフリン空軍基地から70マイル離れた土地を風力発電所建設のために購入したことが話題となった。土地購入自体は、対米外国投資委員会(CFIUS)から問題なしとされているが、州議会では大騒ぎとなり、中国、イラン、北朝鮮、ロシアの政府、企業、個人も含めてテキサス州の不動産を購入できないように求める議案が2022年11月に提出されている。 昨今は中国企業による農地所有そのものが食糧安全問題に関わるという見方もあり、米ワイオミング州議会農業公共土地水務委員会は1月26日に、中国とロシアによる土地購入を制限する議案を可決した。過去2年の間、米国の少なくとも18の州で外国(中国)が農地に投資したり、所有したりすることを制限する法律、あるいは法改正が提出されている。 カナダでも外国人による投機的不動産購入が問題になり、2023年より2年間、外国人による不動産購入は禁止されている』、「習近平が2015年に一帯一路戦略を打ち出して以降、中国企業が関わる海外におけるインフラ建設、リゾート開発が様々な物議をかもしていることはすでに何度も報じられている。それはいわゆる「債務の罠」だけでなく、環境破壊、文化破壊、地域社会の分断が起こり、現地コミュニティが破壊された挙句にその土地が「チャイナ化」するという現象が起きているからだ」、「昨今は中国企業による農地所有そのものが食糧安全問題に関わるという見方もあり、米ワイオミング州議会農業公共土地水務委員会は1月26日に、中国とロシアによる土地購入を制限する議案を可決した。過去2年の間、米国の少なくとも18の州で外国(中国)が農地に投資したり、所有したりすることを制限する法律、あるいは法改正が提出されている」、確かに「中国」による「土地」取得は多くの問題を孕んでいるようだ。
・『日本の不動産にも触手を伸ばす中国資本  さて、日本に目を向けると、この屋那覇村だけでなく、北海道ニセコ町や沖縄県宮古島などでのリゾート開発、京都の町屋など不動産の爆買い、あるいは太陽光発電などのインフラ投資の問題など、中国系資本による様々な懸念を呼ぶ事象が起きている。 こうした問題は重要土地利用規制法で解決するものではないし、たとえより厳格な法律をつくっても、私たちの懸念が晴れるものではない。 自由経済市場の原則と個人の財産権保護の観点でみれば、こうした経済活動を法律で阻むことは難しいし、そもそも、阻んでよいかどうかというのも、世論を二分も三分もする難しいテーマだろう。それに、安易に中国人・企業の経済活動や所有権を制限すれば、それは日本経済にとってマイナスになるかもしれないし、ヘイトクライム、差別の問題にもつながりかねない。 だから、なぜ今世界が、中国企業や中国人個人による土地購入やリゾート、インフラ開発に敏感にならざるを得ないのか、というところをまずしっかり洗い出すことだろう。 最終的に、地域の「チャイナ化」を防ぎつつ、中国企業も含めた外国資本が日本人と日本文化・社会をリスペクトした形で開発に参与するように仕向けるのには、やはり成熟した世論や民意が必要だと思うのだ』、「最終的に、地域の「チャイナ化」を防ぎつつ、中国企業も含めた外国資本が日本人と日本文化・社会をリスペクトした形で開発に参与するように仕向けるのには、やはり成熟した世論や民意が必要だと思う」、同感である。

第三に、2月21日付け東洋経済オンラインが掲載した 政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師の清水 克彦氏による「上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/653558
・『2月15日、自民党が開いた国防部会などの合同部会。席上、自民党の安全保障調査会長を務める小野寺五典元防衛相は、このところ安全保障上の大きな問題となっている気球への対応について政府に矛先を向けた。 「中国のものと把握できていなかったなら大問題。把握していたのに抗議していなかったのなら、さらに大きな問題だ」 これまで何度か取材してきたが、小野寺元防衛相は温厚な政治家だ。その彼が語気を強めた背景には、2020年6月、仙台市などで目撃された気球について、当時の河野太郎防衛相(現・デジタル相)が、報道陣の問いに「気球に聞いてください」「どの気球? 安全保障に影響はございません」などと答えたことがある。政府の認識がどれだけ無防備だったかを指摘したのだ。 無防備といえば、34歳の中国人女性が沖縄県伊是名村(いぜなそん)の所管する無人島、屋那覇島の約半分を購入したことも、安全保障上の大きな懸念といえるだろう』、「2020年6月」、「河野太郎防衛相・・・が、報道陣の問いに「気球に聞いてください」「どの気球? 安全保障に影響はございません」などと答えた」、全く誠意を欠いた答弁だ。厳しく追及すべきだ。
・『無人島「屋那覇島」はどんな島か  屋那覇島は沖縄本島の北、約20キロのところにある県内最大の無人島だ。伊是名村(人口約1300人)が所管する島の1つで、広さは東京ドーム16個分。島の約3分の1は国と伊是名村(国8%、伊是名村26%)が所有している。 土地所有権は900以上に分かれていて、民間企業などが所有する土地が競売にかけられた結果、2021年2月、女性の親族が営む会社が購入したというのが主な経緯である。 同社に電話を入れると留守電が流れるだけ。ホームページ経由で問い合わせをして数日経つが、まだ返事は得られていない。そのホームページには、「創業以来行ってきた不動産売買・賃貸業を礎に、優良物件への積極的な投資を行っております。またリゾート開発事業へも進出し、直近では沖縄県の屋那覇島取得して現在リゾート開発計画を進めております」(原文ママ)とあり、屋那覇島については「島の周りはラグーンで囲まれていて、波が穏やか」とも記されている。 伊是名村役場に聞けば、屋那覇島は、沖縄本島からのキャンプ客や釣り客、潮干狩り客が多い島だという。SNSに投稿された女性の動画でも、「ビジネス目的で購入した」とあるため、購入の目的は本当にリゾート開発なのかもしれない。 とはいえ、沖縄の嘉手納基地や普天間基地などと60~70キロ程度しか離れていない島を、外国人が購入できてしまうのは、安全保障上、「大きな穴」というほかない。「へえ、買われちゃったの?」で済まされる話ではない。) 今回の問題について、伊是名村の奥間守村長は「戸惑っている」と述べる。 2月17日、伊是名村では別の案件を審議するため臨時の村議会が開かれたが、取材をすると担当者からは次のような声が聞かれた。 「ネットニュースで報道されてから、役場には問い合わせや苦情が殺到しています。前にも外資系企業が他の無人島、具志川島を視察したことがあったのですが、今回の件は驚きです」 「村が島を売ったわけではなく、あくまで民間の取引ですから、私どもとしましては、事実関係の把握に努め、誤解のないように説明していくとしか答えようがないです」(以上、伊是名村総務課・諸見直也さん)』、「屋那覇島は沖縄本島の北、約20キロのところにある県内最大の無人島だ。伊是名村(人口約1300人)が所管する島の1つで、広さは東京ドーム16個分。島の約3分の1は国と伊是名村(国8%、伊是名村26%)が所有している。 土地所有権は900以上に分かれていて、民間企業などが所有する土地が競売にかけられた結果、2021年2月、女性の親族が営む会社が購入したというのが主な経緯」、「「村が島を売ったわけではなく、あくまで民間の取引ですから、私どもとしましては、事実関係の把握に努め、誤解のないように説明していくとしか答えようがないです」、なるほど。
・『「法律で規制できない」と政府も困惑   今回の屋那覇島購入問題に関し、2月13日、松野博一官房長官は定例の記者会見で、「国境離島または有人国境離島、地域離島に該当するものではない」と述べて、土地取引が、国境離島やアメリカ軍、自衛隊基地周辺などの土地取引を規制する「重要土地等調査法」の対象にはならないと明言した。翌14日、高市早苗経済安保担当相も同様の見解を示している。 「重要土地等調査法」は、2022年9月に施行された法律で、自衛隊の基地や原子力発電所といった重要インフラ施設から1キロの範囲や、国境に近い離島などを「注視区域」や「特別注視区域」に指定し、国が土地などの所有者の氏名や国籍などを調査したり、一定の面積の土地を売買する場合、事前の届け出を必要としたりするためのものだ。 その区域で問題行為が確認されれば、国は土地や建物の利用を中止させることができるが、屋那覇島の場合、これに該当しないという。 日本では、「注視区域」や「特別注視区域」を除けば、日本人でなくても自由に土地を購入し所有できる。アメリカでは、フロリダ州やテキサス州で一部の外国人の土地購入を規制する法整備が検討されているが、日本ではそんな動きはない。 しかし、中国には「国家情報法」が存在する。この中の第7条がなかなか厄介なのだ。 いかなる組織及び個人も、法律に従って国家の情報活動に協力し、国の情報活動の秘密を守らなければならない。国は、そのような国民、組織を保護する。(第7条)つまり、土地の購入者が民間企業や個人であっても、中国政府が情報提供を求めた場合、応じる義務があるということだ。 いずれにせよ、外国人の土地購入に関し、規制する法律がない以上、政府は黙認するしかない。ただ、手をこまねいている間に、「注視区域」などを除く拠点の近くに、日本人以外が土地を購入するケースが増えたらどうするのか、検討はしておかなければならない。 もちろん、冒頭で述べた気球問題も、安全保障上、「大きな穴」になり得る。前述した自民党の合同部会は、2月16日、領空に許可なく侵入した気球や無人機を自衛隊が撃墜できるようにするため、武器の使用基準の見直しを了承した。 現在の自衛隊法84条では、このように定められている。 防衛大臣は、外国の航空機が国際法規又は航空法 、その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる この条文は、あくまで戦闘機のような有人機を想定したもので、撃墜は正当防衛と緊急避難の場合に限られている。 その範囲を拡大すれば、アメリカが領空を侵犯した気球などを相次いで撃墜したように、自衛隊も、仙台市などで目撃された中国のものと思われる気球を撃ち落とすことが可能にはなる。その反面、政府・防衛省には3つの課題がのしかかってくる』、「中国には「国家情報法」が存在」、このため「中国人」による「土地購入」には注意を要する。
・『日本が抱える3つの大きな問題  (1)中国の猛反発をどうするか 中国は日本の姿勢を、「アメリカの大げさな騒ぎに追随するな」「根拠もなく誹謗中傷するな」と非難している。実際に撃墜すれば、政治だけでなく、経済面での関係が急速に冷え込む。特に人的交流や貿易面で影響が出る可能性がある。 (2)自衛隊の戦闘機で撃ち落とせるのか アメリカは2月12日、ミシガン州のヒューロン湖上空で、F22戦闘機が「AIM-9Xサイドワインダー」ミサイルを発射して物体を撃ち落としたが、最初の1発は失敗した。気球は旅客機などよりも高い1万8000キロ程度まで上昇するため、レーダーで捕捉しにくい。エンジンを2つ搭載し出力が高いF22戦闘機でも目標を外すくらい、気球を撃ち落とすのは難しい。そもそも、日本はF15やF35戦闘機を保有しているもののF22戦闘機は持っていない。 (3)たくさん飛んでいる気球を見分られるのか 2月13~14日、在京メディアの報道部長クラスを招いて行われた那覇および与那国駐屯地視察研修で、航空幕僚監部の担当者(一等空佐)は、このように説明した。 「観測用や調査用の気球がたくさん飛んでいる。我々も飛行の際、気を付けながら飛んでいるほどで、怪しいものかどうかの見極めが難しい。高度1万5000メートル以上を飛んでいる気球だと、撃墜するには相当なテクニックが必要」 これらのうち、(2)と(3)について、筆者が渡部悦和元陸将に聞いたところ、「命令があれば十分に撃墜できます」という答えが返ってきた。ただ、航空自衛隊トップの井筒俊司航空幕僚長が2月16日の定例記者会見で、「高い高度で飛行体が小さい場合、撃墜の難易度は高くなる」と語った点も無視できない。 こうして見ると、これまでの安全保障と防衛費を大きく見直すために防衛3文書を改定し、防衛費増額に踏み込んだだけでは、日本の安全保障は万全とは言えない。防衛の拠点に近い土地が外国人に買われてしまう可能性、あるいは、飛来する気球や無人機を撃墜できないというリスクも想定しながら、「大きな穴」を埋める対策が急務となりそうだ』、「観測用や調査用の気球がたくさん飛んでいる。我々も飛行の際、気を付けながら飛んでいるほどで、怪しいものかどうかの見極めが難しい。高度1万5000メートル以上を飛んでいる気球だと、撃墜するには相当なテクニックが必要」、「「大きな穴」を埋める対策」は不断の努力が必要なようだ。  
タグ:(その14)(中国の偵察気球から得られる教訓 冷戦に向かう米中 敵対的な関係を管理する術を学べ、中国人女性が「買った」沖縄の無人島 中国のネットユーザーは「中国のもの」 一躍渦中の島となった「屋那覇島」 世界で警戒される地域のチャイナ化、上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば) 中国情勢(軍事・外交) この記事は、「特別公開中」に読んで頂きたい。「中国の偵察気球」は日本への分も含め、打ち上げた主体、意図などが不明のままだ。 The Economist「中国の偵察気球から得られる教訓 冷戦に向かう米中、敵対的な関係を管理する術を学べ」 JBPRESS 「中国の戦闘機や軍艦はここ数年、恐ろしいリスクを冒し、米国やその同盟国に所属する航空機や船舶に嫌がらせをしてきた」、実に横暴だ。「米国の電子偵察機「EP3」と中国の戦闘機が空中で衝突」した事件はうろ覚えな記憶がある程度だ。 「米国のミサイルが気球を破壊したことで中国が被った最大の被害は、そのプライドが傷ついたこと」、その程度で済んだとは幸運なことだ。 「中国の政府当局者はもう何年間も、危うい事態が生じたときの取り決めについて外国政府と話し合うことを拒んでいる」、緊急時のホットラインがないのは極めて不安定だ。 「最終的に気球が撃墜されるとおおっぴらに抗議した。おまけに、米国は事件を「でっち上げた」と非難した」、恥も外聞もなく、大国にあるまじき行動だ。 「ブリンケン米国務長官」の「中国訪問を延期」は中国も織り込んでいた筈だ。 「ブリンケン氏の訪中」は「冗談なしに、習氏に米国の方針を丁寧に教えるためのものだった」、のであれば、「日程が近いうちに再調整される」方が望ましい。 「今回の気球危機を両国がうまく処理できる兆しはほとんど見られない」、困ったことだ。 「もし習氏が危険な衝突を回避したいのであれば、ガードレールを備えた関係を築こうというバイデン氏の呼びかけに答えるべき」、同感である。 福島 香織氏による「中国人女性が「買った」沖縄の無人島、中国のネットユーザーは「中国のもの」 一躍渦中の島となった「屋那覇島」、世界で警戒される地域のチャイナ化」 「重要土地利用規制法は、自衛隊の基地や原子力発電所といった重要インフラ施設から1キロの範囲や、国境に近い離島などを「注視区域」に指定し、国が土地などの所有者の氏名や国籍などを調査できるとする法律」、「重要インフラ施設から1キロの範囲」と狭いのに驚いた。私権制限になるので、緩めにしたのだろう。 「譲渡額が3億5000万円に吊り上がった経緯などはもう少し調べてみないと分からない」、「リゾート開発といっても、電気水道その他インフラを何もない状態からつくる必要があるので、一企業グループの事業には収まり切れないかもしれない」、その通りだ。 「習近平が2015年に一帯一路戦略を打ち出して以降、中国企業が関わる海外におけるインフラ建設、リゾート開発が様々な物議をかもしていることはすでに何度も報じられている。それはいわゆる「債務の罠」だけでなく、環境破壊、文化破壊、地域社会の分断が起こり、現地コミュニティが破壊された挙句にその土地が「チャイナ化」するという現象が起きているからだ」、 「昨今は中国企業による農地所有そのものが食糧安全問題に関わるという見方もあり、米ワイオミング州議会農業公共土地水務委員会は1月26日に、中国とロシアによる土地購入を制限する議案を可決した。過去2年の間、米国の少なくとも18の州で外国(中国)が農地に投資したり、所有したりすることを制限する法律、あるいは法改正が提出されている」、確かに「中国」による「土地」取得は多くの問題を孕んでいるようだ。 「最終的に、地域の「チャイナ化」を防ぎつつ、中国企業も含めた外国資本が日本人と日本文化・社会をリスペクトした形で開発に参与するように仕向けるのには、やはり成熟した世論や民意が必要だと思う」、同感である。 東洋経済オンライン 清水 克彦氏による「上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば」 「2020年6月」、「河野太郎防衛相・・・が、報道陣の問いに「気球に聞いてください」「どの気球? 安全保障に影響はございません」などと答えた」、全く誠意を欠いた答弁だ。厳しく追及すべきだ。 「屋那覇島は沖縄本島の北、約20キロのところにある県内最大の無人島だ。伊是名村(人口約1300人)が所管する島の1つで、広さは東京ドーム16個分。島の約3分の1は国と伊是名村(国8%、伊是名村26%)が所有している。 土地所有権は900以上に分かれていて、民間企業などが所有する土地が競売にかけられた結果、2021年2月、女性の親族が営む会社が購入したというのが主な経緯」、 「「村が島を売ったわけではなく、あくまで民間の取引ですから、私どもとしましては、事実関係の把握に努め、誤解のないように説明していくとしか答えようがないです」、なるほど。 「中国には「国家情報法」が存在」、このため「中国人」による「土地購入」には注意を要する。 「観測用や調査用の気球がたくさん飛んでいる。我々も飛行の際、気を付けながら飛んでいるほどで、怪しいものかどうかの見極めが難しい。高度1万5000メートル以上を飛んでいる気球だと、撃墜するには相当なテクニックが必要」、「「大きな穴」を埋める対策」は不断の努力が必要なようだ。
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健康(その21)(がんの進行を急速に早める…がん治療医がすぐさま摂取をやめさせる"ある食べもの" 体内環境を がん細胞が好む「酸性」に傾けないようにする、検診結果が返ってきたら「GFR59以下」になっていないか必ず確認を、「ストレスのない生活」はむしろ寿命を縮める!? 高熱で身体をいじめるサウナはなぜ「健康的」か) [生活]

健康については、昨年4月26日に取上げた。今日は、(その21)(がんの進行を急速に早める…がん治療医がすぐさま摂取をやめさせる"ある食べもの" 体内環境を がん細胞が好む「酸性」に傾けないようにする、検診結果が返ってきたら「GFR59以下」になっていないか必ず確認を、「ストレスのない生活」はむしろ寿命を縮める!? 高熱で身体をいじめるサウナはなぜ「健康的」か)である。

先ずは、昨年4月27日付けPRESIDENT Onlineが掲載した:からすま和田クリニック院長・京都大学名誉教授・一般社団法人日本がんと炎症・代謝研究会代表理事の和田 洋巳氏による「がんの進行を急速に早める…がん治療医がすぐさま摂取をやめさせる"ある食べもの" 体内環境を、がん細胞が好む「酸性」に傾けないようにする」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/56332
・『がんや生活習慣病を予防するにはどうすればいいのか。京都大学名誉教授の和田洋巳医師は「がん細胞は酸性の環境を好むため、体内環境を酸性に傾ける食品は控えたほうがよい。特に甘いチーズケーキなどの乳製品は最悪だ」という――。 ※本稿は、和田洋巳『がん劇的寛解』(角川新書)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『白米の代わりに玄米、パンは全粒粉パンを選ぶ  炭水化物は糖質と呼ばれるように、体内で糖(ブドウ糖)に変換された後、正常細胞のエネルギー源として使われます。ところが、がん細胞もまたブドウ糖をエネルギー源としており、正常細胞の約40倍にも上る数のブドウ糖輸送器を使って、とりわけ必要量を超えて変換されたブドウ糖を次々と取り込みます。 そこで、必要量を超える量の炭水化物を摂取しないこと、すなわち炭水化物の摂取量を控えめにすることが、まず重要になってきます。加えて、血糖値を急激に上昇させるような摂取の仕方をしない、という点にも留意が必要です。血糖値が急激に上昇している状態は、まさにブドウ糖が必要量を超えている状態そのものだからです。 したがって、炭水化物を摂取する場合は、体内で一気にブドウ糖に変化する白米、一般的な小麦粉を使用したパンや麺などをできるだけ避け、例えば白米の代わりに玄米、一般的な小麦粉を使用したパンの代わりに全粒粉パンを選ぶなど、グリセミックインデックス(食後血糖値の上昇度を示す指数)の低い食品を摂取するといいでしょう』、「炭水化物を摂取する場合は、体内で一気にブドウ糖に変化する白米、一般的な小麦粉を使用したパンや麺などをできるだけ避け、例えば白米の代わりに玄米、一般的な小麦粉を使用したパンの代わりに全粒粉パンを選ぶなど、グリセミックインデックス・・・の低い食品を摂取するといいでしょう」、なるほど。
・『適量は「1食につきご飯茶碗に軽く1杯程度」  玄米には、中心部にある胚乳(白米部分にあたるデンプン質)のほか、その胚乳を包み込んでいる糠層(糊粉層、種皮、果皮)や胚芽が含まれています。同様に、全粒粉(小麦を丸ごと粉にしたもの)を使用した全粒粉パンには、胚乳(一般的な白い小麦粉に精製される部分)のほか、胚芽や表皮が含まれています。 炭水化物を玄米や全粒粉パンで摂取した場合は、米や小麦の胚乳部分だけを摂取した場合に比べて、体内における炭水化物から糖への変化は緩やかとなり、その結果、食後の血糖値の上昇も緩やかになるのです。しかも、玄米の糠層や胚芽には、ビタミン、ミネラル、タンパク質、食物繊維などの健康成分も豊富に含まれているのです。 ただし、玄米の影響指数(食品や飲料を100グラム摂取した場合の体内環境に与える酸負荷の程度。指数がプラスに傾けば傾くほど体内環境は酸性に傾き、マイナスに傾けば傾くほど体内環境はアルカリ性に傾く)はプラス12.5とされているため、玄米を摂取する場合は量を控えめ(1食につきご飯茶碗に軽く1杯程度)にするとともに、野菜や果物をより多く摂取してアルカリ化を図ることが大切になってきます』、「炭水化物を玄米や全粒粉パンで摂取した場合は、米や小麦の胚乳部分だけを摂取した場合に比べて、体内における炭水化物から糖への変化は緩やかとなり、その結果、食後の血糖値の上昇も緩やかになるのです。しかも、玄米の糠層や胚芽には、ビタミン、ミネラル、タンパク質、食物繊維などの健康成分も豊富に含まれているのです」、「玄米の影響指数・・・はプラス12.5とされているため、玄米を摂取する場合は量を控えめ(1食につきご飯茶碗に軽く1杯程度)にするとともに、野菜や果物をより多く摂取してアルカリ化を図ることが大切に」、なるほど。
・『塩分摂取は無塩に近い量が望ましい  同様に、がん細胞はナトリウム・プロトン交換器を駆使して塩分(ナトリウム)を取り込み、プロトン(水素イオン)を排出することで細胞外の微細環境を酸性化します。したがって、塩分の摂取を控えてがん細胞にナトリウムを与えないことが肝要になりますが、塩分もまた水分と同じようにヒトが生きていくためには不可欠の存在です。 では、現実的にはどれくらい摂取を控えればいいのでしょうか。 健康な人について言えば、厚生労働省が推奨している1日あたりの塩分摂取量は、男性で7.5グラム未満、女性で6.5グラム未満となっています。また、WHO(世界保健機関)が推奨している1日あたりの塩分摂取量は男女とも5グラム未満となっています。 しかし、玄米の影響指数(食品や飲料を100グラム摂取した場合の体内環境に与える酸負荷の程度。指数がプラスに傾けば傾くほど体内環境は酸性に傾き、マイナスに傾けば傾くほど体内環境はアルカリ性に傾く)はプラス12.5とされているため、玄米を摂取する場合は量を控えめ(1食につきご飯茶碗に軽く1杯程度)にするとともに、野菜や果物をより多く摂取してアルカリ化を図ることが大切になってきます、と私は考えています』、「玄米の影響指数はプラス12.5とされているため、玄米を摂取する場合は量を控えめ(1食につきご飯茶碗に軽く1杯程度)にするとともに、野菜や果物をより多く摂取してアルカリ化を図ることが大切になってきます」、なるほど。
・『たんぱく質は肉よりも大豆や納豆、青魚から  タンパク質もまたヒトが生きていくためには必要不可欠の栄養素ですが、体のアルカリ化という観点から言えば、タンパク質を牛肉や豚肉などの動物性のタンパク源から摂取することはなるべく控えます。代わりに、大豆や豆腐や納豆などの植物性のタンパク源からなるべく摂取することを心がけることが基本になってきます。 また、タンパク質を動物性のタンパク源から摂取する場合は、イワシやサンマ、サバやサケなどの青魚から摂取するのが理想的です。青魚にはDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの、健康成分としての必須脂肪酸(ヒトの体内では合成できない脂肪酸)が豊富に含まれているほか、DHAやEPAそのものに体内の慢性炎症を鎮める作用があるからです』、「体のアルカリ化という観点から言えば、タンパク質を牛肉や豚肉などの動物性のタンパク源から摂取することはなるべく控えます。代わりに、大豆や豆腐や納豆などの植物性のタンパク源からなるべく摂取することを心がけることが基本」、「また、タンパク質を動物性のタンパク源から摂取する場合は、イワシやサンマ、サバやサケなどの青魚から摂取するのが理想的です。青魚にはDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの、健康成分としての必須脂肪酸(ヒトの体内では合成できない脂肪酸)が豊富に含まれているほか、DHAやEPAそのものに体内の慢性炎症を鎮める作用があるからです」、「DHAやEPAそのものに体内の慢性炎症を鎮める作用がある」、とは初めて知った。
・『「卵」はがん治療にも強力な味方だが…  ただし、タンパク質がどれくらい身になるかという点で比較すると、植物性のタンパク源は動物性のタンパク源に大きく劣ります。したがって、血清アルブミン値が安全基準値の4を下回らない状態を維持するためには、完全栄養食品と言われる鶏卵を摂取するのも1つの方法となります。 鶏卵にはタンパク質だけではなく、カルシウム、鉄分、リンなどのミネラル成分をはじめ、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンD、ビタミンEなどのビタミン成分、さらには脂質など、ビタミンCと食物繊維以外の栄養素がほぼ含まれています。 気をつけるべきは、鶏卵には1個につきおよそ200ミリグラムのコレステロールが含まれていることです。したがって、摂取量としては1日1個程度に留めておくことが妥当であると考えられます。 ちなみに、「生卵かけ玄米ご飯」はあまり推奨できません。玄米に含まれるビオチンという成分と卵白に含まれるアビジンという成分が消化管の中で化学反応を起こし、消化不良などを引き起こす懸念があるからです』、鶏卵にはタンパク質だけではなく、カルシウム、鉄分、リンなどのミネラル成分をはじめ、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンD、ビタミンEなどのビタミン成分、さらには脂質など、ビタミンCと食物繊維以外の栄養素がほぼ含まれています。 気をつけるべきは、鶏卵には1個につきおよそ200ミリグラムのコレステロールが含まれていることです。したがって、摂取量としては1日1個程度に留めておくことが妥当鶏卵にはタンパク質だけではなく、カルシウム、鉄分、リンなどのミネラル成分をはじめ、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンD、ビタミンEなどのビタミン成分、さらには脂質など、ビタミンCと食物繊維以外の栄養素がほぼ含まれています。 気をつけるべきは、鶏卵には1個につきおよそ200ミリグラムのコレステロールが含まれていることです。したがって、摂取量としては1日1個程度に留めておくことが妥当にはタンパク質だけではなく、カルシウム、鉄分、リンなどのミネラル成分をはじめ、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンD、ビタミンEなどのビタミン成分、さらには脂質など、ビタミンCと食物繊維以外の栄養素がほぼ含まれています。 気をつけるべきは、鶏卵には1個につきおよそ200ミリグラムのコレステロールが含まれていることです。したがって、摂取量としては1日1個程度に留めておくことが妥当」、「鶏卵」は「食物繊維以外の栄養素がほぼ含まれています」と理想的なようだ。
・『野菜や果物は「生のまま丸ごと」がいい  しかし、炭水化物や塩分やタンパク質の摂取を頑張って控えめにしたとしても体内環境はがん細胞が好む酸性に傾いていきます。酸性に傾いた体内環境を中性に戻し、さらにアルカリ性にまで戻すためには、唯一のアルカリ化食品とも言える野菜や果物を多く摂取するのが最も有効です。 私のクリニックでは、とくに野菜の推奨摂取量は1日あたり400グラム程度としています。また、野菜や果物は加熱すると有効成分の一部が分解されてしまうため、多くの野菜や果物を「生のまま丸ごと食べる」ことも推奨しています。 しかし、毎日400グラムの野菜を摂取するのは容易ではありません。そこで、野菜や果物をジューサーやミキサーにかけ、ジュースにして摂取することを奨励しています。とくにオススメなのがニンジンをベースとしたジュース(ニンジンに果物などを加えてジューサーで搾ったもの)ですが、ジュースについては、毎朝、1日に必要な量を作って冷蔵庫に保管しておくと便利です。 また、野菜や果物にはビタミン類のほか、フィトケミカルなどの抗酸化物質も豊富に含まれています。フィトケミカルは野菜や果物の色素に含まれている成分で、その代表格にあたるポリフェノールにはがん発生の原因になる活性酸素を体内から除去するほか、同じくがん発生の原因になる悪玉コレステロールを減らす働きもあります』、「毎日400グラムの野菜を摂取するのは容易ではありません。そこで、野菜や果物をジューサーやミキサーにかけ、ジュースにして摂取することを奨励しています。とくにオススメなのがニンジンをベースとしたジュース(ニンジンに果物などを加えてジューサーで搾ったもの)ですが、ジュースについては、毎朝、1日に必要な量を作って冷蔵庫に保管しておくと便利です」、「ポリフェノールにはがん発生の原因になる活性酸素を体内から除去するほか、同じくがん発生の原因になる悪玉コレステロールを減らす働きもあります」、なるほど。
・『代謝の速いビタミン類は3食毎に補給する  中でも、緑黄色野菜や果物はビタミンの宝庫と言われています。 例えば、脂溶性のビタミンについて言えば、ビタミンAはニンジンのほか、カボチャ、モロヘイヤ、小松菜、トマトなどに豊富に含まれており、ビタミンEはカボチャ、モロヘイヤ、アーモンド、落花生などに豊富に含まれています。ただし、落花生(ピーナッツ)は体内環境を酸性に傾けてしまうため、避けるのが無難です。 水溶性のビタミンであるビタミンCは、パプリカ、菜の花、ブロッコリー、キウイ、イチゴ、オレンジ、グレープフルーツなどに多く含まれています。 しかも、ビタミンAとビタミンCとビタミンEには相互作用があり、これらを併せて摂取することで効果はさらに増していきます。そのため、相互作用を有するこの3種類のビタミンは「ACE(エース)」とも総称されています。ただし、ビタミン類はすぐに代謝されてしまうため、朝、昼、晩の3食のたびに補給し続けることが肝要となります』、「ビタミンAとビタミンCとビタミンEには相互作用があり、これらを併せて摂取することで効果はさらに増していきます。そのため、相互作用を有するこの3種類のビタミンは「ACE(エース)」とも総称」、「ビタミン類はすぐに代謝されてしまうため、朝、昼、晩の3食のたびに補給し続けることが肝要」、「3食のたびに補給し続ける」とは大変そうだ。
・『がん細胞を攻撃するキノコ類をたくさん食べるには  さらに、ハナビラタケ、干しシイタケ、シメジ、キクラゲ、エノキなど、キノコ類にはがん細胞を攻撃、殺傷する2次免疫(獲得免疫)を高めるβグルカンが大量に含まれています。とくにハナビラタケはその含有量が多いことで知られています。 ただし、キノコ類を毎日、大量に摂取することもまた容易ではありません。また、キノコ類に含まれるβグルカンを取り出すためには加熱も必要になります。 そこで、私のクリニックでは、すり潰したキノコ類に加熱した出汁を加えて作る「キノコペースト」の摂取を推奨しています。ペースト状にすることで、保存が可能になるほか、使用の選択肢も広がるからです。一例としては、玄米にキノコペーストを加えて炊く、といった使い方もオススメです』、「ハナビラタケ、干しシイタケ、シメジ、キクラゲ、エノキなど、キノコ類にはがん細胞を攻撃、殺傷する2次免疫(獲得免疫)を高めるβグルカンが大量に含まれています」、「キノコ類を毎日、大量に摂取することもまた容易ではありません。また、キノコ類に含まれるβグルカンを取り出すためには加熱も必要になります。 そこで、私のクリニックでは、すり潰したキノコ類に加熱した出汁を加えて作る「キノコペースト」の摂取を推奨しています。ペースト状にすることで、保存が可能になるほか、使用の選択肢も広がるからです。一例としては、玄米にキノコペーストを加えて炊く、といった使い方もオススメです」、「キノコペースト」とはいいアイデアだ。
・『「甘いケーキ」はがん細胞にとってもおいしい  牛乳、バター、チーズなどの乳製品には、がん細胞の活動活性を上げるIGF-1(インスリン様成長因子)が多く含まれています。よく「体にいい」と言われているヨーグルトもその意味では例外ではなく酸性化食品なのです。チーズやバター、とりわけチーズの酸性化力は強烈です。 したがって、乳製品の生クリームがたっぷりと載った甘いチーズケーキなどは、がん細胞にIGF-1とブドウ糖を与え、かつ、がん細胞周辺の微細環境をがんが好む酸性に傾けるという点で、「最悪の食品」と言っていいでしょう。 私のこれまでの臨床経験から見ても、とくにがんにかかった女性の患者さんの場合は、「甘い洋菓子」などの甘味品を多食していたという傾向が顕著に見られます。 したがって、私のクリニックでは、このような食歴を持つ患者さんに対しては乳製品や甘味品の「即時摂取中止」を指導しています。実際、多くの患者さんが乳製品や甘味品の即時摂取中止をはじめとする食生活の見直しによって劇的寛解を得ているのです』、「乳製品の生クリームがたっぷりと載った甘いチーズケーキなどは、がん細胞にIGF-1とブドウ糖を与え、かつ、がん細胞周辺の微細環境をがんが好む酸性に傾けるという点で、「最悪の食品」と言っていいでしょう」、「私のクリニックでは、このような食歴を持つ患者さんに対しては乳製品や甘味品の「即時摂取中止」を指導・・・食生活の見直しによって劇的寛解を得ている」、そんなに効果があるとは意外だ。
・『健康面でメリットしかない食品や飲料などない  ただし、乳製品、とくにヨーグルトなどには、腸内細菌叢、いわゆる腸内フローラを整える効果があります。そして、腸内細菌叢が乱れるとがんにかかりやすくなることが知られているのです。 それらの点を考慮した上で、私のクリニックでは玄米を玄米麹で発酵させた特製の甘酒を甘味品や調味料として推奨することもあります。発酵食品には腸内細菌叢を整え、2次免疫力を上昇させて、がん細胞の活動活性を抑止する働きもあるからです。 突き詰めて言えば、がんや生活習慣病に対してメリットしかない食品や飲料などこの世に存在しません。食品や飲料の持つメリットとデメリットを天秤にかけ、治療効果の上がる最適な組み合わせを選択していくことが肝要となるのです』、「がんや生活習慣病に対してメリットしかない食品や飲料などこの世に存在しません。食品や飲料の持つメリットとデメリットを天秤にかけ、治療効果の上がる最適な組み合わせを選択していくことが肝要」、その通りだ。
・『牛肉豚肉、ソーセージなどがもつ2つの発がん性物質  動物性のタンパク源、中でも牛肉や豚肉、ソーセージなどの加工肉は尿ペーハー、すなわちがん細胞周辺の微細環境をはじめとする体内環境を著しく酸性に傾けます。しかし、牛肉や豚肉や加工肉の弊害は酸性化だけではありません。 実は、動物性のタンパク質を豊富に含んだ牛肉や豚肉や加工肉などを焼いて調理する過程で2つの発がん性物質が生成されることがわかってきています。 1つはHCA(ヘテロサイクリックアミン)、もう1つはPAH(多環芳香族炭化水素)と呼ばれる物質です。このうち、HCAは肉類を焼いた際にできる黒いコゲに含まれており、PAHは炭などに落ちた肉類の油から立ち上る煙に含まれていますが、いずれも発がん性物質として知られている有害物質なのです』、「動物性のタンパク質を豊富に含んだ牛肉や豚肉や加工肉などを焼いて調理する過程で2つの発がん性物質が生成」、いわゆる焼け焦げだろう。
・『「がんをおとなしくさせる食事」はたくさんある  したがって、少なくとも前がん状態にある人やすでにがんを発症してしまった人がタンパク質を摂取する場合は、牛肉や豚肉や加工肉などの動物性タンパク源ではなく、大豆をはじめとする植物性タンパク源から摂取することが推奨されるのです。また、タンパク質の摂取不足を動物性タンパク源で補う場合は、抗炎症作用も持つDHAやEPAを豊富に含む青魚などから摂取するのが上策となります。 以上が「がんをおとなしくさせるための食事術」になりますが、これらの食事術に則った具体的な献立例やレシピ(朝、昼、晩の3食)については、そのための下ごしらえ(出汁の取り方、サラダドレッシング・ディップの作り方、キノコペーストの作り方、野菜・果物ジュースの作り方など)も含めて、私の過去の著書『がんを生き抜く最強ごはん』(毎日新聞出版、2019年)や『がんに負けないからだをつくる 和田屋のごはん』(WIKOM研究所、2018年)の中で詳しく紹介しています。 また、ここで紹介した食事術の詳細とがんに対して有効なメカニズムは最新刊『がん劇的寛解』(角川新書、2022年)で解説していますので、ぜひとも参考にしてみてください』、「牛肉や豚肉や加工肉などの動物性タンパク源ではなく、大豆をはじめとする植物性タンパク源から摂取することが推奨」、「タンパク質の摂取不足を動物性タンパク源で補う場合は、抗炎症作用も持つDHAやEPAを豊富に含む青魚などから摂取するのが上策」、「がんをおとなしくさせるための食事術」は、確かに効き目がありそうだ。

次に、本年1月5日付け日刊ゲンダイ「検診結果が返ってきたら「GFR59以下」になっていないか必ず確認を」を紹介しよう。
https://hc.nikkan-gendai.com/articles/278560
・『女優の檀れいさんが、腎臓とGFRについて話すCMがあります。昨年の秋ごろから放送されるようになり、目にした方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。 あのCMはNPO法人日本腎臓病協会と製薬会社のアストラゼネカ社が、腎臓病の克服に向けた取り組みの一環として制作したもの。CMの中で檀さんが「GFR値59以下の方は、お医者さんにご相談を」と話している通り、健康診断などの検査結果を受け取ったらGFR値を必ずチェックするようにしてください。 GFRは、糸球体で1分間で処理される血液量のことで、腎臓のいまの働き具合を示す重要な数値です。60以上が正常となり、数字が低いほど腎臓の機能が悪いことになります。この連載でも何度か話していますが、腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど非常に我慢強い部位。GFR値が59以下で多少働きが悪くなっていたとしても、自覚症状に乏しいのが特徴です』、「腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど非常に我慢強い部位。GFR値が59以下で多少働きが悪くなっていたとしても、自覚症状に乏しいのが特徴。そのため、「どこもつらくないから」と再検査を後回しにしがちですが、失われた腎臓機能は元に戻らないので、いま現在より下がらないよう注意をしていかなければなりません。早めに再検査を行い、自分の腎臓の状態を詳しく知るようにしてほしいと思っています」、「「腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど非常に我慢強い部位。GFR値が59以下で多少働きが悪くなっていたとしても、自覚症状に乏しいのが特徴。そのため、「どこもつらくないから」と再検査を後回しにしがちですが、失われた腎臓機能は元に戻らないので、いま現在より下がらないよう注意をしていかなければなりません」、大いに気を付けるべきだ。
・『 再検査をした結果「慢性腎臓病」だと診断された。では「慢性腎臓病」とはなにか。われわれ医師はCKD(chronic kidney disease)と呼んだりもしますが、GFRや尿タンパクの異常、腎臓の形の異常などの何らかの腎臓の異常が3カ月以上持続している場合と定義されます。GFR値と、尿タンパクの値によって診断します。 けれども、「慢性腎臓病」と診断された人は軽症な方から重症の方など多岐にわたります。 GFRが45以上59以下で尿タンパクが出ていない軽症の方は6~7割程度を占めるといわれています。つまり、慢性腎臓病の中でも「軽度」「中等度」「高度」と重症度を示すステージ(フェーズ)があるということなんですね。) 「慢性腎臓病になったら、すぐに人工透析?」 患者さんから多く受ける質問のひとつです。先ほど話したように、慢性腎臓病にはステージがあるので、どこに位置しているかによって治療方法は異なる。 人工透析は、ステージ5の重度に分類される患者さんが受ける治療となります。 とはいえ、自分のステージは軽度だからといって油断は禁物ですよ。腎臓は全身の多くの部位が正常に動くために指令を出している臓です。そのため、軽度であっても、健康な人と比較すると脳や心臓の病気を引き起こしたり、筋力が衰えやすいといわれています。慢性腎臓病は全身疾患とみなして治療を考えていくべきだと私は考えています』、「慢性腎臓病は全身疾患とみなして治療を考えていくべき」、その通りだ。

第三に、2月6日付けNewsweek日本版がPRESIDENT Onlineを転載した分子生物学者のニクラス・ブレンボー氏による「「ストレスのない生活」はむしろ寿命を縮める!? 高熱で身体をいじめるサウナはなぜ「健康的」か」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/lifestyle/2023/02/post-100789_1.php
・『長生きをするにはどうすればいいのか。分子生物学者のニクラス・ブレンボー氏は「風が全く吹かない場所に生える樹木は自重でやがて倒れてしまう。人間も適度なストレス下で暮らしたほうがいい」という――。 ※本稿は、ニクラス・ブレンボー『寿命ハック』(新潮新書)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『放射能を浴びたマウスは、なぜ老化が早まるのか  わたしが暮らすコペンハーゲンで地下鉄に乗ると、抗酸化物質がたっぷり添加された新発売のスムージーの広告をよく見かける。「インフルエンサー」やネット上のマルチ商法が扱う怪しげなダイエット・サプリメントも同様だ。しかし、抗酸化物質とサプリメントのラブストーリーは想像以上に深刻な状況から始まった。 1950年代――最初の原子爆弾が日本に投下されて数年後――科学者たちは放射線が人体に及ぼす影響に関心を寄せていた。例のごとく、人間が苦しまずにすむようにマウスが苦しむことになった。実験を重ねた結果、致命的ではないが高レベルの放射線をマウスに浴びせると、老化が加速することがわかった。放射線を浴びたマウスは加齢性疾患を通常より早く発症し、死期も早まった。 放射線がマウスにとって害になるのは、一つにはそれが細胞の中でフリーラジカルと呼ばれるものを作り出すからだ。フリーラジカルは非常に反応しやすい分子で、他の分子に衝突すると、その分子を傷つける。言うなれば、陶器店にいる雄牛のようなものだ。どの動物も放射線にさらされると細胞内でこの雄牛が暴れまわる。科学者は雄牛がもたらす被害の総量を「酸化ストレス」と呼ぶ。つまり、放射線を浴びたマウスは「酸化ストレスが高い」のだ。 そこで登場するのが抗酸化物質(アンチオキシダント)である。抗(アンチ)はフリーラジカルに対抗するという意味で、抗酸化物質は陶器店の雄牛に打ち込む鎮静剤と見なすことができる。放射線の研究者たちは抗酸化物質を使えば、マウスを放射線の害から守ることができるのではないかと考えた。実験の結果、抗酸化物質は放射線を浴びた動物の寿命を延ばすという結論に至った』、「実験の結果、抗酸化物質は放射線を浴びた動物の寿命を延ばすという結論に至った」、なるほど。
・『抗酸化サプリは寿命を延ばすどころか縮める  もっとも、興味深いことに、フリーラジカルが生まれるのは放射線を浴びた細胞の中だけではない。実のところそれは正常な代謝の副産物であり、わたしたちの細胞は常に暴れまわる雄牛に翻弄されているのだ。それを知る科学者たちはこう考えた――フリーラジカルは放射線に誘発された老化の原因であるだけでなく、通常の老化の原因にもなっているのではないだろうか。 この説は「老化のフリーラジカル説」と呼ばれ、人間の代謝を一種のファウスト的契約と見なすものだ。つまり、人間は代謝によって生きているが、代謝はフリーラジカルを発生させるので、人間は確実に老化し、死んでいくのだ。 これは、「フリーラジカルは生体に損傷を与え、老人は若者よりも酸化ストレスのレベルが高く、過剰な酸化ストレスは加齢性疾患につながる」という事実と合致する。だが幸いなことに、この説は老化に対抗する簡単な方法も提供する。抗酸化物質を使って、暴れ牛をおとなしくさせればよいのだ。 このアイデアは、誕生して以来、臨床試験で徹底的に調べられてきた。 実際、数多くの研究が行われてきたので、今ではメタ分析を行うことができる。メタ分析とは、別々に行われたいくつもの研究のデータを統合して分析する大規模な研究のことだ。 研究者たちは68件の研究と23万人の被験者からなるメタ分析を行い、抗酸化物質のサプリメントが人間の寿命を延ばすかどうかを調べた。結論はこうだ。抗酸化作用のあるサプリメントを摂取する人は早く死ぬ。加齢性疾患を予防することもできない。抗酸化作用のあるサプリメントは、ある種のガンの発生を抑制するどころか、その増殖と転移を促進するらしい』、「抗酸化物質のサプリメントが人間の寿命を延ばすかどうかを調べた。結論はこうだ。抗酸化作用のあるサプリメントを摂取する人は早く死ぬ。加齢性疾患を予防することもできない。抗酸化作用のあるサプリメントは、ある種のガンの発生を抑制するどころか、その増殖と転移を促進するらしい」、なるほど。
・『温室で樹木を育てられるか  1991年秋、8人の科学者がアリゾナ州オラクルにある巨大で未来的な温室に閉じ籠もった。彼らは2年にわたってバイオスフィア2と呼ばれる温室をメインとする建物群の中で過ごすことになっていた。任務は食料、水、酸素、その他、生活に必要なものを自給自足することだ。 この壮大な実験の目的は、ゼロから完全な生態系を作り出せるかどうかを調べることだった。地球上では、幸運なことに人類はそのような生態系の一部になっていて、生きるために必要な物はすべて自然が提供してくれる。人類が自然を正しく扱えば、自然は今後も長く人類の面倒を見てくれるだろう。しかし、何人かが地球を離れて他の惑星に移住することになったら、その惑星でゼロから新しい生態系を築かなければならない。 ご存知の通り、地球の生態系において最も重要な要素の一つは樹木だ。酸素を供給してくれるだけでなく、無数の生物の棲みかであり、建築資材にもなる。そのため科学者たちは、木を新たな生態系の柱と見なし、バイオスフィア2の中に多くの木を植えた。木は長生きするので、数年くらいは何の問題もないだろう、と彼らは考えた』、「1991年秋、8人の科学者がアリゾナ州オラクルにある巨大で未来的な温室に閉じ籠もった。彼らは2年にわたってバイオスフィア2と呼ばれる温室をメインとする建物群の中で過ごすことになっていた」、面白い実験だ。
・『風のない場所で育った木は強くならずに枯れる  バイオスフィア2に植えられた木は良いスタートを切った。巨大な温室という恵まれた環境のおかげで急速に成長した。しかし、実験が終わらないうちに、その多くは枯れてしまった。何が足りなかったのだろう。世話や栄養が足りなかったわけではない。むしろ、その逆だった。欠けていたのは、ストレスだったのだ。具体的には風というストレスだ。 風は木にとって手ごわい敵の一つだが、実のところ、必要不可欠なものでもある。絶え間なく吹く風に耐えることで木はたくましく強く育っていく。風がない場所では木は弱くなり、やがて自らの重さを支えられなくなって倒れる。 フリーラジカルと抗酸化物質の話に戻ると、抗酸化作用のあるサプリメントを摂る人はなぜ早く死ぬのだろうか。その理由は、風が吹かないと木が枯れる理由と同じだ。つまり、ストレスが生物を強くしているのだ。 逆境が生物を強くするこの現象は「ホルミシス」と呼ばれる。人間の場合、最も身近な例は運動だ。走ることは健康に良いと誰もが思っているかもしれない。しかし、走っている間に何が起きているかを考えてみよう。心拍数や血圧が急上昇する。一歩走るごとに筋肉と骨は負荷を受けて緊張する。 また、運動にはエネルギーが必要なので、代謝が一気に上がり、フリーラジカルが多く生成される。そう、運動すると体は有害な分子を生成するのだ。しかし長い目で見れば、運動は人をより健康にする。なぜなら、それらの負荷があなたはもっと強くなる必要があるというメッセージとして働くからだ。 皮肉なことに、このプロセスを開始する「メッセンジャー」の一部はフリーラジカルだ。これが意味するのは、運動によって強く健康になるプロセスを抗酸化物質は妨げるということだ。フィットネス・インフルエンサーのセールストークとは裏腹に、抗酸化物質は運動の効果の一部を打ち消すのである』、「風は木にとって手ごわい敵の一つだが、実のところ、必要不可欠なものでもある。絶え間なく吹く風に耐えることで木はたくましく強く育っていく。風がない場所では木は弱くなり、やがて自らの重さを支えられなくなって倒れる」、「逆境が生物を強くするこの現象は「ホルミシス」と呼ばれる。人間の場合、最も身近な例は運動だ。走ることは健康に良いと誰もが思っているかもしれない。しかし、走っている間に何が起きているかを考えてみよう。心拍数や血圧が急上昇する。一歩走るごとに筋肉と骨は負荷を受けて緊張する。 また、運動にはエネルギーが必要なので、代謝が一気に上がり、フリーラジカルが多く生成される。そう、運動すると体は有害な分子を生成するのだ。しかし長い目で見れば、運動は人をより健康にする。なぜなら、それらの負荷があなたはもっと強くなる必要があるというメッセージとして働くからだ」、なるほど。
・『少量のヒ素を与えた線虫はむしろ長生きする  運動はホルミシスの最も知られる例だが、生物の世界にはホルミシスが溢れている。実際、ホルミシスは地球上の生物の物語の根幹をなしている。わたしたちの祖先の生活が苦難の連続だったのは確かだ。飢餓、苛酷な労働、毒物、素手での殴り合い、肉食動物からの命懸けの逃走など、生活には困難がつきものだった。だからこそ、人間にとって困難は必要不可欠なものになった。 自然界に溢れるホルミシスの最良の例の一つは、有毒な化学物質であるヒ素の研究からもたらされた。古来、ヒ素は「毒物の王」、あるいは「王の毒」と呼ばれてきた。なぜなら入手しやすく、無味無臭で、人を毒殺するのに使いやすいからだ。そのため世界各地で王の椅子を狙う王族やサイコパスがヒ素を利用してきた。 しかし近年、あろうことかヒ素は世界の多くの地域で飲料水を汚染するようになった。そのため研究者たちはヒ素が実験動物に及ぼす影響を調べ始めた。 線虫に大量に投与すると、ヒ素は評判通りの殺し屋になった。しかし少量の場合、線虫は通常より長生きした。それだけでなく、熱ストレスや他の毒物への耐性も強くなった。なぜだろう。もちろん、ホルミシスのおかげだ。ヒ素は毒だが、少量なら適度なストレス要因になって線虫の防衛能力を高めるのだ。 別の研究者たちは「酸化促進剤」を使って線虫の寿命を延ばすことに成功した。酸化促進剤は抗酸化物質とは逆に、酸化ストレスを強める。先程の比喩で言えば、陶器店に居座る雄牛に錠剤のカフェインを飲ませて臀部を激しく叩くようなものだ。この実験で酸化促進剤として使ったのは除草剤のパラコートだ。しかし、抗酸化物質も一緒に投与すると、ストレスは中和され、線虫の寿命は通常通りになった。 「毒物の王」であるヒ素や強力な除草剤が、どんな形であれ生物にとってプラスになるのは信じがたいかもしれないが、生物界ではそういうことがよく起きる』、「「毒物の王」であるヒ素や強力な除草剤が、どんな形であれ生物にとってプラスになるのは信じがたいかもしれないが、生物界ではそういうことがよく起きる」、なるほど。
・『放射性物質にさらされたマンション住人  人間にヒ素や除草剤やその他の有害物質を飲ませるというような臨床試験は、当然ながら行えない。しかし、人体でのホルミシス効果を示す実例がいくつかある。 その一つは1980年代に台湾で起きた。当時、台湾は好景気の只中にあり、首都の台北では前例のない規模で建設ラッシュが続いた。その熱気の中、一部のリサイクル鉄鋼に放射性物質のコバルト60が混入した。これらの鉄鋼は1700棟のマンション建設に使用されたが、それがわかったのは1990年代で、すでに手遅れの状況だった。 取り壊される前、これらの放射能マンションにはおよそ1万人が住んでおり、住民は毎日、通常のレベルをはるかに超える放射線にさらされていた。放射線はDNAを傷つけてガンを引き起こすため、ガンの増加が心配されが、住民の病歴を調べた医師たちは当惑した。マンションの住民は一般の台湾人に比べてほぼすべてのガンにおいて発症率が低かったのだ。 同じような現象は他の場所でも指摘されている。アメリカの造船所の労働者のうち、原子力潜水艦に携わる労働者は一般的な労働者より死亡率が低い。また、アメリカの一般市民のうち、自然発生する放射線量が通常より多い地域に住む人々は平均寿命より長く生きる。医師の中でも、電離放射線にさらされる放射線科の医師は他の科の医師より長生きし、ガンにかかるリスクも低い』、「台湾のマンション」で「リサイクル鉄鋼に放射性物質のコバルト60が混入・・・住民は毎日、通常のレベルをはるかに超える放射線にさらされていた。放射線はDNAを傷つけてガンを引き起こすため、ガンの増加が心配されが・・・マンションの住民は一般の台湾人に比べてほぼすべてのガンにおいて発症率が低かった」、「アメリカの造船所の労働者のうち、原子力潜水艦に携わる労働者は一般的な労働者より死亡率が低い。また、アメリカの一般市民のうち、自然発生する放射線量が通常より多い地域に住む人々は平均寿命より長く生きる。医師の中でも、電離放射線にさらされる放射線科の医師は他の科の医師より長生きし、ガンにかかるリスクも低い」、「ホルミシス」は確かに不思議な現象だ。
・『「ホルミシス」は内容と量が肝心  はっきり申し上げておくが、わたしは放射線を浴びたり毒を飲んだりすることを勧めているわけではない。そんなことをしたら、良い遺伝子を台無しにしてしまう。どのくらいのレベルならホルミシスになるかは不明だが、そのレベルを超えるとどうなるかはわかっている。苦痛と恐ろしい死である。ホルミシスは量が肝心なのだ。 ジョギングをして体に負荷をかけるのは、運動をまったくしないより健康的だ。だが、運動をしすぎることもあり、これは「オーバートレーニング」と呼ばれる。同様に、木は風に吹かれて強くなるが、風が強すぎると倒れたり、折れたりする。ストレス要因から恩恵を得られるのは、もたらすダメージが自己修復能力の限度を超えない場合に限られる。 また、有害なものやストレス要因のすべてにホルミシス効果があるわけではないことも忘れてはならない。頭を壁にぶつけても賢くはならないし、タバコを吸って肺機能を高めることもできない。人間にとってプラスになるストレス要因は、人間が耐えられるよう進化してきたものだけだ。 ▽高地に住む人々は長生きし病気にもかかりにくい(「寿命ハック」では、放射能汚染されたマンションに住むことの代案は何だろうか。一つは高い山に登ることだ。標高の高い場所は大気が薄く、強い紫外線や宇宙線にさらされる。わたしはきわめて平坦な国に暮らす色白の人間なので、標高5000メートルの高所で暮らせば、日焼けの効果を証明できるだろう。 驚くほどのことではないが、高地に住む人々は放射線や苛酷な環境にもかかわらず――あるいはそれらのせいで――海抜の低い地域に住む人々より長生きし、加齢に伴う病気にもかかりにくい。これはオーストラリア、スイス、ギリシア、それにカリフォルニアでも確認されている。 高地では酸素濃度が低く、それも健康を増進するストレス要因なのかもしれない。細胞は、放射線や低い酸素濃度といったストレスにさらされると、熱ショックタンパク質を合成する。その名の通り、このタンパク質は高熱との関連で発見されたが、後に、より一般的な細胞保護機能の一部であることが判明した。これは、先に見たようにホルミシスの効果が広範に及ぶことを示している。一つのストレス要因に対する反応は往々にして、他のストレス要因に対する耐久力(レジリエンス)も向上させるのだ。 熱ショックタンパク質は他のタンパク質を助ける"スーパーヒーロー・タンパク質"と見なすことができる。細胞が何らかのストレス要因によってダメージを受けると、タンパク質の多くは形が崩れる。すると熱ショックタンパク質が登場して、細胞のゴミにならないよう形状や機能の回復を助けるのだ』、「細胞は、放射線や低い酸素濃度といったストレスにさらされると、熱ショックタンパク質を合成する。その名の通り、このタンパク質は高熱との関連で発見されたが、後に、より一般的な細胞保護機能の一部であることが判明した。これは、先に見たようにホルミシスの効果が広範に及ぶことを示している。一つのストレス要因に対する反応は往々にして、他のストレス要因に対する耐久力(レジリエンス)も向上させるのだ」、よく出来た仕組みだ。分子生物学も謎の解明に役立ったようだ。
タグ:健康 (その21)(がんの進行を急速に早める…がん治療医がすぐさま摂取をやめさせる"ある食べもの" 体内環境を がん細胞が好む「酸性」に傾けないようにする、検診結果が返ってきたら「GFR59以下」になっていないか必ず確認を、「ストレスのない生活」はむしろ寿命を縮める!? 高熱で身体をいじめるサウナはなぜ「健康的」か) PRESIDENT ONLINE 和田 洋巳氏による「がんの進行を急速に早める…がん治療医がすぐさま摂取をやめさせる"ある食べもの" 体内環境を、がん細胞が好む「酸性」に傾けないようにする」 和田洋巳『がん劇的寛解』(角川新書) 「炭水化物を摂取する場合は、体内で一気にブドウ糖に変化する白米、一般的な小麦粉を使用したパンや麺などをできるだけ避け、例えば白米の代わりに玄米、一般的な小麦粉を使用したパンの代わりに全粒粉パンを選ぶなど、グリセミックインデックス・・・の低い食品を摂取するといいでしょう」、なるほど。 「炭水化物を玄米や全粒粉パンで摂取した場合は、米や小麦の胚乳部分だけを摂取した場合に比べて、体内における炭水化物から糖への変化は緩やかとなり、その結果、食後の血糖値の上昇も緩やかになるのです。しかも、玄米の糠層や胚芽には、ビタミン、ミネラル、タンパク質、食物繊維などの健康成分も豊富に含まれているのです」、 「玄米の影響指数・・・はプラス12.5とされているため、玄米を摂取する場合は量を控えめ(1食につきご飯茶碗に軽く1杯程度)にするとともに、野菜や果物をより多く摂取してアルカリ化を図ることが大切に」、なるほど。 「玄米の影響指数はプラス12.5とされているため、玄米を摂取する場合は量を控えめ(1食につきご飯茶碗に軽く1杯程度)にするとともに、野菜や果物をより多く摂取してアルカリ化を図ることが大切になってきます」、なるほど。 「体のアルカリ化という観点から言えば、タンパク質を牛肉や豚肉などの動物性のタンパク源から摂取することはなるべく控えます。代わりに、大豆や豆腐や納豆などの植物性のタンパク源からなるべく摂取することを心がけることが基本」、 「また、タンパク質を動物性のタンパク源から摂取する場合は、イワシやサンマ、サバやサケなどの青魚から摂取するのが理想的です。青魚にはDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの、健康成分としての必須脂肪酸(ヒトの体内では合成できない脂肪酸)が豊富に含まれているほか、DHAやEPAそのものに体内の慢性炎症を鎮める作用があるからです」、「DHAやEPAそのものに体内の慢性炎症を鎮める作用がある」、とは初めて知った。 「鶏卵」は「食物繊維以外の栄養素がほぼ含まれています」と理想的なようだ。 「毎日400グラムの野菜を摂取するのは容易ではありません。そこで、野菜や果物をジューサーやミキサーにかけ、ジュースにして摂取することを奨励しています。とくにオススメなのがニンジンをベースとしたジュース(ニンジンに果物などを加えてジューサーで搾ったもの)ですが、ジュースについては、毎朝、1日に必要な量を作って冷蔵庫に保管しておくと便利です」、「ポリフェノールにはがん発生の原因になる活性酸素を体内から除去するほか、同じくがん発生の原因になる悪玉コレステロールを減らす働きもあります」、なるほど。 「ビタミンAとビタミンCとビタミンEには相互作用があり、これらを併せて摂取することで効果はさらに増していきます。そのため、相互作用を有するこの3種類のビタミンは「ACE(エース)」とも総称」、「ビタミン類はすぐに代謝されてしまうため、朝、昼、晩の3食のたびに補給し続けることが肝要」、「3食のたびに補給し続ける」とは大変そうだ。 「ハナビラタケ、干しシイタケ、シメジ、キクラゲ、エノキなど、キノコ類にはがん細胞を攻撃、殺傷する2次免疫(獲得免疫)を高めるβグルカンが大量に含まれています」、「キノコ類を毎日、大量に摂取することもまた容易ではありません。また、キノコ類に含まれるβグルカンを取り出すためには加熱も必要になります。 そこで、私のクリニックでは、すり潰したキノコ類に加熱した出汁を加えて作る「キノコペースト」の摂取を推奨しています。ペースト状にすることで、保存が可能になるほか、使用の選択肢も広がるからです。一例としては、玄米にキノコペーストを加えて炊く、といった使い方もオススメです」、「キノコペースト」とはいいアイデアだ。 「乳製品の生クリームがたっぷりと載った甘いチーズケーキなどは、がん細胞にIGF-1とブドウ糖を与え、かつ、がん細胞周辺の微細環境をがんが好む酸性に傾けるという点で、「最悪の食品」と言っていいでしょう」、「私のクリニックでは、このような食歴を持つ患者さんに対しては乳製品や甘味品の「即時摂取中止」を指導・・・食生活の見直しによって劇的寛解を得ている」、そんなに効果があるとは意外だ。 「がんや生活習慣病に対してメリットしかない食品や飲料などこの世に存在しません。食品や飲料の持つメリットとデメリットを天秤にかけ、治療効果の上がる最適な組み合わせを選択していくことが肝要」、その通りだ。 「動物性のタンパク質を豊富に含んだ牛肉や豚肉や加工肉などを焼いて調理する過程で2つの発がん性物質が生成」、いわゆる焼け焦げだろう。 「牛肉や豚肉や加工肉などの動物性タンパク源ではなく、大豆をはじめとする植物性タンパク源から摂取することが推奨」、「タンパク質の摂取不足を動物性タンパク源で補う場合は、抗炎症作用も持つDHAやEPAを豊富に含む青魚などから摂取するのが上策」、「がんをおとなしくさせるための食事術」は、確かに効き目がありそうだ。 日刊ゲンダイ「検診結果が返ってきたら「GFR59以下」になっていないか必ず確認を」 「「腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど非常に我慢強い部位。GFR値が59以下で多少働きが悪くなっていたとしても、自覚症状に乏しいのが特徴。そのため、「どこもつらくないから」と再検査を後回しにしがちですが、失われた腎臓機能は元に戻らないので、いま現在より下がらないよう注意をしていかなければなりません」、大いに気を付けるべきだ。 「慢性腎臓病は全身疾患とみなして治療を考えていくべき」、その通りだ。 Newsweek日本版 ニクラス・ブレンボー氏による「「ストレスのない生活」はむしろ寿命を縮める!? 高熱で身体をいじめるサウナはなぜ「健康的」か」 ニクラス・ブレンボー『寿命ハック』(新潮新書) 「実験の結果、抗酸化物質は放射線を浴びた動物の寿命を延ばすという結論に至った」、なるほど。 「抗酸化物質のサプリメントが人間の寿命を延ばすかどうかを調べた。結論はこうだ。抗酸化作用のあるサプリメントを摂取する人は早く死ぬ。加齢性疾患を予防することもできない。抗酸化作用のあるサプリメントは、ある種のガンの発生を抑制するどころか、その増殖と転移を促進するらしい」、なるほど。 「1991年秋、8人の科学者がアリゾナ州オラクルにある巨大で未来的な温室に閉じ籠もった。彼らは2年にわたってバイオスフィア2と呼ばれる温室をメインとする建物群の中で過ごすことになっていた」、面白い実験だ。 「風は木にとって手ごわい敵の一つだが、実のところ、必要不可欠なものでもある。絶え間なく吹く風に耐えることで木はたくましく強く育っていく。風がない場所では木は弱くなり、やがて自らの重さを支えられなくなって倒れる」、「逆境が生物を強くするこの現象は「ホルミシス」と呼ばれる。人間の場合、最も身近な例は運動だ。走ることは健康に良いと誰もが思っているかもしれない。しかし、走っている間に何が起きているかを考えてみよう。心拍数や血圧が急上昇する。一歩走るごとに筋肉と骨は負荷を受けて緊張する。 また、運動にはエネルギーが必要なので、代謝が一気に上がり、フリーラジカルが多く生成される。そう、運動すると体は有害な分子を生成するのだ。しかし長い目で見れば、運動は人をより健康にする。なぜなら、それらの負荷があなたはもっと強くなる必要があるというメッセージとして働くからだ」、なるほど。 「「毒物の王」であるヒ素や強力な除草剤が、どんな形であれ生物にとってプラスになるのは信じがたいかもしれないが、生物界ではそういうことがよく起きる」、なるほど。 「台湾のマンション」で「リサイクル鉄鋼に放射性物質のコバルト60が混入・・・住民は毎日、通常のレベルをはるかに超える放射線にさらされていた。放射線はDNAを傷つけてガンを引き起こすため、ガンの増加が心配されが・・・マンションの住民は一般の台湾人に比べてほぼすべてのガンにおいて発症率が低かった」、 「アメリカの造船所の労働者のうち、原子力潜水艦に携わる労働者は一般的な労働者より死亡率が低い。また、アメリカの一般市民のうち、自然発生する放射線量が通常より多い地域に住む人々は平均寿命より長く生きる。医師の中でも、電離放射線にさらされる放射線科の医師は他の科の医師より長生きし、ガンにかかるリスクも低い」、「ホルミシス」は確かに不思議な現象だ。 「細胞は、放射線や低い酸素濃度といったストレスにさらされると、熱ショックタンパク質を合成する。その名の通り、このタンパク質は高熱との関連で発見されたが、後に、より一般的な細胞保護機能の一部であることが判明した。これは、先に見たようにホルミシスの効果が広範に及ぶことを示している。一つのストレス要因に対する反応は往々にして、他のストレス要因に対する耐久力(レジリエンス)も向上させるのだ」、よく出来た仕組みだ。分子生物学も謎の解明に役立ったようだ。
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事業再生(その3)(旧日産系マレリ再建に「自動車部品企業の悲哀」 親会社に翻弄された末路、HIS創業者が退任へ…カリスマ起業家と呼ばれた澤田秀雄氏の落日とつまずきの始まり) [企業経営]

事業再生については、昨年3月23日に取上げた。今日は、(その3)(旧日産系マレリ再建に「自動車部品企業の悲哀」 親会社に翻弄された末路、HIS創業者が退任へ…カリスマ起業家と呼ばれた澤田秀雄氏の落日とつまずきの始まり)である。

先ずは、昨年6月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した佃モビリティ総研代表の佃 義夫氏による「旧日産系マレリ再建に「自動車部品企業の悲哀」、親会社に翻弄された末路」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304792
・『マレリの再建計画が判明も 業績復活は前途多難  自動車部品メーカーの大手の「マレリホールディングス(マレリ)」が、業績悪化によって私的整理の一つである事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)制度を申請してから3カ月が経過した。親会社である米投資ファンドのKKRを支援企業として、6月中の再建計画同意を目指しているが、その道のりは遠い。 マレリは、日産自動車系列のサプライヤーである旧カルソニックカンセイが、2019年に欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の部品部門だったマニエッティ・マレリを買収統合して誕生した。 鳴り物入りのメガサプライヤーとしてスタートを切ったが、コロナ禍や半導体不足による完成車メーカー(OEM)の減産が続く中で、合併によるスケールメリットを生かせず、むしろ売上高1兆円を超える規模が重荷となってのしかかった。) 21年12月期まで4期連続の赤字となり、約1兆1000億円規模の債権額を抱えて3月1日に事業再生ADR制度の利用を申請した。それから3カ月をかけて支援企業の選定に向けた入札を実施。手を挙げた外資もあったが交渉が難航し、結果的に親会社のKKRを支援企業とする再建案が5月末の債権者会議で説明された。 それによると、KKRが6億5000万ドル(約870億円)の第三者割当増資を引き受ける方針を提示。さらに、債権額のカット率を約42%とし、金額にして約4500億円の債権放棄を求めることを金融機関に示したという。 KKRは、マレリのスポンサーになることについて「自動車産業を取り巻く環境は厳しいが、世界的なメガサプライヤーとして躍進できるよう取り組むマレリを引き続き支援する」とコメントしている。 だが、元々リスクを伴うマレリ買収を主導したのはKKR自身だ。それに対して金融機関から不満もくすぶっている。OEMの生産体制の完全復活も見通せない中、再建は一筋縄ではいかないだろう』、「元々リスクを伴うマレリ買収を主導したのはKKR自身」、「それに対して金融機関から不満もくすぶっている」、これはこじれそうな再生案だ。
・『コロナ禍や半導体不足での自動車減産が追い打ち  近年、曙ブレーキ工業やサンデンといった自動車サプライヤーで事業再生ADR申請の事例が相次いでいる。「100年に一度の自動車大変革」といわれる時代にあって、部品企業は非常に厳しい立場に立たされているのだ。) マレリの場合も同様だ。世界の自動車部品業界は、大きな構造改革により、生き残りへ向けた厳しい時代を迎えており、ティア2、ティア3だけでなくメガサプライヤーも含めて、試練の局面に立たされている。 元々、旧カルソニックカンセイは日産の“部品御三家”の一つに数えられた主力サプライヤーであったし、日産のカルロス・ゴーン元会長も一連の“系列切り”の一方で、逆に2005年に日産が出資を41.9%に引き上げて連結子会社としたほどの企業だった。 しかし、日産の業績が陰りを見せ始めていた17年に、同社は旧カルソニックカンセイの持ち分をKKRに売却してしまう。さらにKKR主導でFCAの部品部門を約7200億円で19年に買収・統合して「マレリ」に社名変更した経緯がある。 当時FCAは、仏のルノーのライバルである仏グループPSAとの統合を進める過程で、部品部門の売却意向があった。カルソニックカンセイとの統合は渡りに船だったのだろう。なお、FCAとPSAの方は、21年1月に統合を完了させ「ステランティス」が誕生している。 親会社のKKRは、旧マレリ統合によるスケールメリットを狙ったのだろうが、むしろ買収費用が巨額の債務となって負担になり、そこにコロナ禍や半導体不足などの世界的な自動車減産が追い打ちをかけた。主要取引先である日産が業績不振で、生産台数が減少したことも大きい。 また、旧マレリとの統合後も、ライティング、エレクトロニクス、パワートレインなどの製品群が加わったものの、同社の高コスト体質からの脱却や大規模リストラが遅れているといった問題点が指摘されている』、「買収費用が巨額の債務となって負担になり、そこにコロナ禍や半導体不足などの世界的な自動車減産が追い打ちをかけた」、「親会社のKKR」の甘い経営判断が一因となったようだ。
・『日産系列最大のサプライヤー かつての栄光むなしく  旧カルソニックカンセイの歴史をたどると、1938年創業の日本ラジエーター製造(日ラジ。その後、カルソニックに社名変更)と、56年創業の関東精器(その後カンセイに社名変更)が2000年に対等合併して誕生した。カルソニックはラジエーターから空調システムや熱交換器、コンプレッサーなどを、カンセイは計器メーターなどの部品を手掛ける企業であり、共に日産の有力部品サプライヤーとして成長してきた。 筆者は、かつて自動車部品を担当していた頃に日ラジを取材したことがある。当時の日産宝会(日産と取引の部品企業群)のリーダー役が、日産の専務から日ラジに転じた太田寿吉社長(当時)だった。太田氏は、石原俊日産元社長と日産の同期入社でもある。 宝会の加盟部品各社が日産の購買担当を「東銀座様(当時の日産の本社所在地)」とあがめる中で、日ラジは他社に先駆けて米国進出も果たし、米ゼネラル・モーターズとの取引を広げて同社と合弁工場を展開するほどだった。 その後、業績破綻により日産が仏ルノーの傘下に入る中、2000年にはカルソニックとカンセイの合併統合が行われた。日産がゴーン体制に移行し“系列解体”が進められたが、カルソニックカンセイは重要なサプライヤーとして解体の対象外となり、05年にはむしろ日産が出資比率を引き上げて連結子会社としたことは、先述した通りだ。 3月1日のADR申請から3カ月、元の親会社の日産からの支援を期待する声もあったが、日産自体が経営再建の過程にあってそれどころではない。KKRはインド財閥で傘下に自動車部品を抱えるサンバルダナ・マザーソン・グループと共同で支援企業とする意向が報じられていたが、マザーソンは条件が合わずに撤退してしまった。結果的に支援企業がKKRだけとなってしまったのだ。) 5月末の債権者会議でのKKR主導の再建案には、みずほ銀行などの金融機関から不満も漏れており、OEMの減産も続いているため先行きは不透明だ。 マレリのケースは、過去日産系で最有力だったサプライヤーが独立系サプライヤーの道を歩まざるを得なかった流れに翻弄(ほんろう)された悲哀を象徴しているが、一方でサプライヤーの生き残り方に一石を投じるものでもある。 世界を見ると、ボッシュやコンチネンタルなど独メガサプライヤーが強さを見せており、日本でもデンソーなどメガサプライヤーとして世界で勝負できる部品企業があるが、マレリは対照的な結果となってしまった。 さらに、ティア1に対し、ティア2~ティア3の部品企業群は日本国内でも9割、6000社を数える。「100年に一度の自動車大変革時代」におけるCASE新技術対応は、部品企業の生き残りへ大きなテーマを与えてきている。 昨今のコロナ禍、半導体不足、アジア部品供給不足による世界的な自動車減産が続き、サプライチェーンの重要性が増す。マレリを奇貨として部品企業の生きざまが問われている』、「5月末の債権者会議でのKKR主導の再建案には、みずほ銀行などの金融機関から不満も漏れており」、もう一度、冷静に「マレリ」、「金融機関」で話し合う必要がありそうだ。なお、11月4日付け日経新聞によれば、「マレリ」のデビッド・スランプ社長兼CEOは、インタビューで、「マレリ、成長投資2600億円 工場閉鎖で黒字化目指す」としている。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC274BH0X21C22A0000000/

次に、本年2月4日付け日刊ゲンダイが掲載した金融ジャーナリストの小林佳樹氏による「HIS創業者が退任へ…カリスマ起業家と呼ばれた澤田秀雄氏の落日とつまずきの始まり」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/318241
・『カリスマ起業家として一世を風靡したエイチ・アイ・エス創業者の澤田秀雄会長兼グループCEO(最高経営責任者)が、2月1日付で代表権のない取締役最高顧問に退いた。コロナ禍で打撃を受けた海外旅行事業が復調の兆しが見えたことを受け、退任を決意したとされるが、背後には資本性資金を供与した日本政策投資銀行など取引銀行団の圧力があったとされる。 澤田氏がエイチ・アイ・エスを立ち上げたのは1990年のことだ。当時、ソフトバンクの孫正義氏、パソナの南部靖之氏とともに「ベンチャー三銃士」ともてはやされた。 その原点は、大阪市立生野工業高校を卒業し、旧西ドイツのマインツ大学に留学していた時、アルバイトで稼いだ金で世界を回り、その経験を生かして80年に東京・新宿西口に旅行会社「インターナショナルツアーズ」を設立したことにある。格安航空券を販売し、ホテルとセットにした個人旅行は大当たりし、95年には株式上場にこぎつけた。 その後、ホテル事業にも進出し、新規参入航空会社「スカイマークエアラインズ」(現スカイマーク)の設立や、協立証券(現HSホールディングス)の買収を手掛けた。そして2010年に18年連続赤字だったテーマパーク「ハウステンボス」(長崎県佐世保市)の社長に就任、半年で黒字化させる離れ業を演じた。 しかし、すべてはコロナ禍で暗転した。コロナ禍で海外旅行客は途絶え、ハウステンボスの入場者数も激減、エイチ・アイ・エスは赤字に転落したのだ。資金繰りに窮した澤田氏は政府に泣きつき、日本政策投資銀行からファンドを活用した優先株を受ける。しかし、これがつまずきの始まりとなった。 「政投銀が優先株を供与したことで、エイチ・アイ・エスは国が潰さない銘柄となったことを受け、民間金融機関も協調融資を行った。しかし、これには2期連続赤字となれば融資を一括返済しなければならない財務制限条項が付いていました」(メガバンク幹部)というのだ』、「コロナ禍で海外旅行客は途絶え、ハウステンボスの入場者数も激減、エイチ・アイ・エスは赤字に転落したのだ。資金繰りに窮した澤田氏は政府に泣きつき、日本政策投資銀行からファンドを活用した優先株を受ける。しかし、これがつまずきの始まりとなった。 「政投銀が優先株を供与したことで、エイチ・アイ・エスは国が潰さない銘柄となったことを受け、民間金融機関も協調融資を行った。しかし、これには2期連続赤字となれば融資を一括返済しなければならない財務制限条項が付いていました」、「財務制限条項」に抵触はよくあることだ。
・『銀行団主導で“虎の子”ハウステンボスも売却  コロナ禍は想定を超えて長引き、行動制限は長期化し、赤字は続いた。さらに子会社によるGoToトラベルの給付金不正受給も重なる。財務制限条項に抵触しないためには22年10月期の黒字化が必達だった。 そのデッドラインを前に、エイチ・アイ・エスは虎の子のハウステンボスを香港ファンドに666億円で売却するとともに、247億円の資本を1億円に減資する道に踏み込んだ。ハウステンボス売却で得た特別利益と減資で累損を一掃する荒療治だ。陰で主導したのは政投銀をはじめとする銀行団だった。澤田氏は最後までハウステンボスの売却に反対したというが……。落日の感が強い』、「虎の子のハウステンボスを香港ファンドに666億円で売却するとともに、247億円の資本を1億円に減資する道に踏み込んだ。ハウステンボス売却で得た特別利益と減資で累損を一掃する荒療治だ。陰で主導したのは政投銀をはじめとする銀行団だった。澤田氏は最後までハウステンボスの売却に反対したというが……。落日の感が強い」、これから「澤田氏」の大きな顔をしばらく見られないと思うと、一抹の寂しさもあるが、冷徹な企業再生の論理の前にはやむを得ないようだ。 
タグ:(その3)(旧日産系マレリ再建に「自動車部品企業の悲哀」 親会社に翻弄された末路、HIS創業者が退任へ…カリスマ起業家と呼ばれた澤田秀雄氏の落日とつまずきの始まり) 事業再生 ダイヤモンド・オンライン 佃 義夫氏による「旧日産系マレリ再建に「自動車部品企業の悲哀」、親会社に翻弄された末路」 「元々リスクを伴うマレリ買収を主導したのはKKR自身」、「それに対して金融機関から不満もくすぶっている」、これはこじれそうな再生案だ。 「買収費用が巨額の債務となって負担になり、そこにコロナ禍や半導体不足などの世界的な自動車減産が追い打ちをかけた」、「親会社のKKR」の甘い経営判断が一因となったようだ。 「5月末の債権者会議でのKKR主導の再建案には、みずほ銀行などの金融機関から不満も漏れており」、もう一度、冷静に「マレリ」、「金融機関」で話し合う必要がありそうだ。なお、11月4日付け日経新聞によれば、「マレリ」のデビッド・スランプ社長兼CEOは、インタビューで、「マレリ、成長投資2600億円 工場閉鎖で黒字化目指す」としている。 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC274BH0X21C22A0000000/ 日刊ゲンダイ 小林佳樹氏による「HIS創業者が退任へ…カリスマ起業家と呼ばれた澤田秀雄氏の落日とつまずきの始まり」 「コロナ禍で海外旅行客は途絶え、ハウステンボスの入場者数も激減、エイチ・アイ・エスは赤字に転落したのだ。資金繰りに窮した澤田氏は政府に泣きつき、日本政策投資銀行からファンドを活用した優先株を受ける。しかし、これがつまずきの始まりとなった。 「政投銀が優先株を供与したことで、エイチ・アイ・エスは国が潰さない銘柄となったことを受け、民間金融機関も協調融資を行った。しかし、これには2期連続赤字となれば融資を一括返済しなければならない財務制限条項が付いていました」、「財務制限条項」に抵触はよくあることだ。 「虎の子のハウステンボスを香港ファンドに666億円で売却するとともに、247億円の資本を1億円に減資する道に踏み込んだ。ハウステンボス売却で得た特別利益と減資で累損を一掃する荒療治だ。陰で主導したのは政投銀をはじめとする銀行団だった。澤田氏は最後までハウステンボスの売却に反対したというが……。落日の感が強い」、これから「澤田氏」の大きな顔をしばらく見られないと思うと、一抹の寂しさもあるが、冷徹な企業再生の論理の前にはやむを得ないようだ。
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