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積水ハウス事件(その5)(【衝撃の地面師事件の真相】積水ハウスは地主本人からの警告書を「怪文書」と見なしてスルーした 短期集中連載・第5回、仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回、社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回) [企業経営]

積水ハウス事件については、2020年5月12日に取上げた。今日は、(その5)(【衝撃の地面師事件の真相】積水ハウスは地主本人からの警告書を「怪文書」と見なしてスルーした 短期集中連載・第5回、仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回、社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回)である。

先ずは、10月7日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクション作家の森 功氏による「【衝撃の地面師事件の真相】積水ハウスは地主本人からの警告書を「怪文書」と見なしてスルーした 短期集中連載・第5回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/100703?imp=0
・『ハウスメーカー、デベロッパーとして国内最大手の積水ハウスが、50億円以上ものカネを騙し取られた2018年の「地面師詐欺」事件は、いまも多くの謎に包まれている。15人以上の逮捕者を出す大捕物になったものの、不起訴になった容疑者も多数いて、公判でもすべてが明らかになったとは言い難い。 この事件の取材の第一人者であるノンフィクション作家・森功氏がこのほど上梓した文庫『地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団』には、知られざる数々の事実が記されている。今回、同文庫の内容を7回連続で公開する。 第1回「あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 衝撃の『地面師詐欺』の語られなかった真相」 第2回「あの積水ハウスが50億円以上だまし取られた…! 暗躍した2人の『スター地面師』の正体」 第3回「不動産業者、銀行員、デベロッパー社員必読! 積水ハウスをだました地面師グループの詳細な手口」 第4回「積水ハウスはなぜ詐欺のターゲットにされたのか? 大物地面師2人の生々しい謀議を再現する」』、信じ難い事件で、興味深そうだ。
・『常務が「前倒し」した決済  4月20日、小山と生田が海喜館の売買条件について積水ハウス側の部長や部長代理と具体的な交渉に移る。そこで、60億円の売却金額で話が折り合い、契約の条件として、4日後の24日までに追加の手付金12億円を支払うことも決めた。残る48億円の支払いについては、7月末の決済とした。 なお、海喜館の購入代金はのちに70億円と公表されている。それは積水ハウス側がニセ海老澤佐妃子に対し、旅館売却後の住まい用などとして、自社のマンション購入を薦め、それらの取引額が含まれているからだ。さらに取引の過程で積水側は、70億円のうち63億円を先払いしたと発表したが、そこの疑問については後述する。 4月24日、西新宿のホウライビルにある積水ハウスの事業所で12億円の手付金が支払われた。紛れもない正式な取引だ。ビルの5階にある東京マンション事業部会議室に関係者全員が顔をそろえ、小山たちは海喜館の不動産権利証を用意した。海老澤佐妃子が半世紀も前に両親から譲り受けた書類だと前置きしたそれは、赤茶けていて、ところどころ破れかけていた。 「ほう、これはめずらしい。ずいぶん、古い権利証ですな」 積水ハウスの担当者は、前のめりになってそう漏らし、書類を本物だと思いこんだ。すぐに手付金として12億円の預金小切手を振り出し、ニセ佐妃子に手渡した。これにより売買予約の登記手続きができる。この時点で地面師グループの犯行は、50%以上進んだといえた。 だが、そこに思わぬ邪魔が入った』、「赤茶けていて、ところどころ破れかけていた」「不動産権利証」の真偽を、「前のめりになっ」た担当者が確認しなかったのは手落ちだ。
・『本社に届いた警告を「怪文書」扱い  〈積水は騙されている〉 そう記された内容証明郵便が5月10日、積水ハウス本社に届いた。差出人は海老澤佐妃子となっており、海喜館を連絡先としている。相手は佐妃子のなりすましなので取引を中止せよ、という内容だ。いわゆる警告文のような体裁である。さらに翌11日、似たような内容証明郵便が送り付けられ、文書は合計4通におよんだ。 ところが積水ハウスでは、これを怪文書扱いし、スルーした。先のニセ佐妃子、羽毛田の代理人弁護士が作成した〈事実経過報告〉には、関係者が集まり、文書に関する対処を検討している様が記されている。積水ハウス側の取引責任者は常務執行役の三谷和司だ。三谷たち積水ハウス側はとうぜんのごとく小山や羽毛田たちを呼び出した。羽毛田の弁護士による〈事実経過報告〉は、〈平成29年5月23日(火)午後3時 事務所会議室〉の出来事として、次のように書く。 〈三谷常務から海老澤と名乗る人物に対し、「積水ハウスに宛て去る4月24日の売買契約を締結したこともないし、それに基づく所有権移転請求権仮登記を承諾したこともないという海老澤佐妃子の、記名かつ佐妃子という印鑑を押印した怪文書的な通知書が4通ほど来ているが」と言ってその4通の通知書の写を机に提示し、「これはあなたが出したものではないのですね」と問い質すと、海老澤を名乗る人物は「私はこのようなものを出したことはありません」と答えた〉』、「本社に届いた警告」「4通」を「怪文書扱い」した「三谷常務」の取り扱いは問題だ。
・『現金はどこに流れたか?  そうして6月1日の決済日に備えて、手続きを進めていった。先の5月23日付のニセ海老澤側弁護士の〈報告〉にはこうもある。 〈海老澤を名乗る人物は、自分は5月21日日曜日に海喜館に入って残置物を点検したが、欲しいものはないので全て処分してもらっても構わないような話をした。この三谷常務執行役員とのセッティングは前日の昼過ぎ頃までに小山氏から、海老澤佐妃子と、積水ハウス株式会社との間で打ち合せをしたいので、会議室を貸してほしいし、T(原文では当該の弁護士の実名)も同席して欲しいという申し入れに基づいてなされたものであった〉 売買代金60億円のうち、手付金を差し引いた残金の48億円の処理については、次のように記している。 〈この確約書の差し入れを受け、積水ハウス側は4月24日の売買契約書に基づく決済時期が7月末日になっていたのを第3者による契約履行の妨害が考えられ、それを回避するためにできる限り早めたいということになり、変更契約を締結し直して、6月1日には本登記と引換えに売買残代金約48億円を一部留保して決済するという方針が決まった〉 一方、民事訴訟における生田側の準備書面によれば、残金である48億円の支払いの大半が預金小切手でなされていた、と詳細に記されている。小切手はぜんぶで5枚あったという。 一、海老澤佐妃子手元分 三六億七九二四万四〇〇〇円 二、弁護士費用 一〇〇〇万円 三、土地調査費用 七五万六〇〇〇円 四、解体工事代着手金 一〇〇〇万円 五、別途契約金 七億四九七〇万八〇〇〇円  最も大きな海老澤佐妃子への支払いについては、およそ37億円の支払いのうち、28億3884万4000円が銀行口座に入金されている。むろん入金先は地面師たちが偽造書類を使って新たに作成したニセ佐妃子の口座だ。その他、残りはさらに5000万円から3億3000万円までの範囲で6つに細かく分散されて入金されている。そこから、いったん地面師グループにおける「銀行屋」、つまり金融ブローカーが、積水ハウスの振り出した小切手を現金化する役割を担った。最終的にそれらの現金がどこに流れたか。それが捜査の焦点になる。 第6回につづく』、「決済時期が7月末日になっていたのを第3者による契約履行の妨害が考えられ、それを回避するためにできる限り早めたいということになり、変更契約を締結し直して、6月1日には本登記と引換えに売買残代金約48億円を一部留保して決済するという方針が決まった」、「決済時期」を早めるというのも、相手を混乱させる詐欺の手口なのかも知れない。

次に、10月8日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクション作家の森 功氏による「仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/100779?imp=0
・『60億円の行方  とどのつまり60億円あまりを手にしたのは誰か。 そこが事件解明の焦点になる。事件はこれで終わらない。「調査対策委員会」の事件の経緯概要はこう続く。 〈売買契約締結後、本件不動産の取引に関連した複数のリスク情報が、当社の複数の部署に、訪問、電話、文書通知等の形で届くようになりましたが、当社の関係部署は、これらのリスク情報を取引妨害の嫌がらせの類であると判断していました。そのため、本件不動産の所有権移転登記を完全に履行することによって、これらが鎮静化することもあるだろうと考え、6月1日に残代金支払いを実施し、所有権移転登記申請手続を進めましたが、6月9日に、登記申請却下の通知が届き、A氏の詐称が判明しました。当社は、直ちにA氏との間での留保金の相殺手続を実施し、実質的被害額は約55億5千万円となりました〉 そもそも積水ハウスが17年8月に公表した詐欺の被害額は63億円だった。総額70億円の取引総額からすると、7億円も少ない。さらに次の調査委員会で特定した〈実質的被害額〉となると、そこからさらに8億円近く減り、55億5000万円としている。その分、積水ハウスが被害を免れていることになるが、実質的な被害とは何を意味するのか。そこには妙なカラクリがある。 前述したように、積水ハウスと地面師グループとの取引は、五反田駅前の海喜館だけではなかった。海老澤佐妃子のなりすましは、なぜかこれとは別に積水ハウスのマンションを購入する契約を結んでいる。それが中野区にある「グランドメゾン江古田の杜」という名称の分譲マンションだ。積水側は地面師詐欺に遭っている取引の渦中、このマンションの一一戸の部屋を海老澤のなりすまし役に売るべく、交渉を重ねて契約までしているのである』、「海老澤佐妃子のなりすましは、なぜかこれとは別に積水ハウスのマンションを購入する契約を結んでいる。それが中野区にある「グランドメゾン江古田の杜」という名称の分譲マンション」、不思議だ。
・『金額の誤差が意味するもの  積水ハウスでは63億円を払い込み総額とし、手付金を14億円として残りの49億円を契約当日の2017年6月1日に払ったとする。その金額が先の民事訴訟や〈事実経過報告〉のそれと微妙にずれている。民事訴訟では売買代金を60億円、手付金を12億円としてきた。 一方、積水側は払い込んだ63億円からニセ佐妃子に売ったマンションの売買代金を差し引いた金額の55億5000万円について、実質的な詐欺の被害額として発表している。これらの誤差は何を意味するのか。先の不動産業者が指摘する。 「マンションの売買を担当したのは、東京マンション事業部であり、その際、ニセの海老澤佐妃子が担当者と直接契約しています。つまりニセモノが積水ハウスに何度も足を運んでいて、なりすましに気づいていないということになる。そんな話がありえるでしょうか。積水ハウスが発表した第三者委員会の調査報告書ではこの点がすっぽり隠されています。それは隠さなければならない事情があったからではないか」 積水側が海喜館の購入代金を支払うついでに、せっかくだから分譲マンション販売の営業をかけた。表面的に見れば、単なる営業努力の成果のように感じる。が、こと地面師案件だけにそう単純とは言い切れないかもしれない』、「積水側が海喜館の購入代金を支払うついでに、せっかくだから分譲マンション販売の営業をかけた。表面的に見れば、単なる営業努力の成果のように感じる。が、こと地面師案件だけにそう単純とは言い切れないかもしれない」、なるほど。
・『不自然な取引の理由とは...  ニセ地主を仕立て上げる地面師事件では、なりすまし役と買い手の接触をできるだけ減らすのが彼らの常道である。 理由はニセモノだとバレないようにするためだ。ニセ地主を取引現場に登場させるのは、たいてい一度きりで、取引の細かいやり取りについては、手馴れた地面師グループの交渉役がおこなう。 だが、積水ハウス事件では、肝心かなめの旅館の売買とは別に、なりすまし役がマンションの購入契約を結んでいる。それ自体が極めて奇異なのである。積水ハウスは取引総額70億円のうちマンションの内金6億7390万円を差し引いたおよそ63億円をまるまる騙しとられているのではないか。 そんな疑いも浮かぶ。発表した被害額との差を含め、不自然な取引や微妙な金額の誤差の裏には、表沙汰にできない何らかの理由があるのではないか。 事件は日本を代表する住宅建設会社の経営を揺らした。騙されたその責任をめぐり、会社のツートップが反目し、あげくにクーデター騒動に発展する。第7回につづく』、「地面師事件では、なりすまし役と買い手の接触をできるだけ減らすのが彼らの常道」、「ニセ地主を取引現場に登場させるのは、たいてい一度きりで、取引の細かいやり取りについては、手馴れた地面師グループの交渉役がおこなう。 だが、積水ハウス事件では、肝心かなめの旅館の売買とは別に、なりすまし役がマンションの購入契約を結んでいる。それ自体が極めて奇異なのである」、「不自然な取引や微妙な金額の誤差の裏には、表沙汰にできない何らかの理由があるのではないか」、どんな「理由」なのだろうか。

第三に、この続きを、10月9日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクション作家の森 功氏による「社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/100815?imp=0
・▽会長追い落としクーデターの「舞台裏」  それは、事件から半年あまり経った2018年1月24日の出来事だった。 「ではこれより取締役会を開催します」 午後2時ちょうど、大阪市北区の積水ハウス本社で、会長の和田勇が議長として、重役会の開催宣言をした。76歳(取締役会当時。以下同)の和田は細身の身体に似合わないハリのある声をしている。取締役会のメインテーマが、東京・五反田の海喜館をめぐる地面師詐欺なのは言うまでもない。和田はすぐにその議題に入った。 「本日、調査対策委員会が進めてきた調査報告書が提出されました。執行の責任者には極めて重い責任があります」 積水ハウスでは事件を公表したひと月後の9月、社外監査役と社外取締役らで調査対策委員会を立ち上げ、事件の経緯を調べてきた。その調査結果の報告がなされたのが、この日だったのである。和田を含めた9人の社内役員に加え、2人の社外取締役を加えた11人の内外の重役が会議に参加していた。 「したがって最初に、最も重い責任者である阿部俊則社長の退任を求めます」 和田はそう切り出した。社長解任の緊急動議である。戸建て住宅のハウスメーカーとしてスタートした積水ハウスは、近年のマンションやリゾート施設の開発、さらには海外事業も手掛け、業績を伸ばしてきた。 その立て役者が和田であり、実力会長として業界に名を馳せてきた。10歳違いの阿部を社長に引き立て、バックアップしてきたともいえる。いわば2人は師弟関係にあったのだが、その弟分の社長をばっさり切り捨てようとしたことになる。それほど事件の衝撃は大きかった』、「和田」「会長」は、「弟分の社長をばっさり切り捨てようとした」。
・『阿部社長の「反撃」  半面、実は社長の解任については、本番の前に開かれた社外取締役会でも諮られていたので、すでに情報が漏れ伝わっていた。そのため出席した重役たちのあいだにはさほどの驚きも、混乱もない。 まるで予定されていた行事であるかのように、採決へと進んだ。事前におこなわれた社外取締役2人の協議では、阿部の退任に異論はなく、和田の申し出が了承されていたからでもある。解任動議の当事者である阿部は、ひとり会議室をあとにし、10人の重役による社長退任の決議が粛々とおこなわれた。 しかしその緊急動議の採決は予想外の結果に終わった。賛成5に対して反対も5――。数だけでみると真っ二つに割れているように思えるが、阿部を外した10人の出席者の内実は、社外の2人と会長である和田以外に2人の賛成しか取り付けられなかったことになる。むろん過半数にも達していない。そのため、社長の解任動議は流れてしまう。 すると今度は、会議室に呼び戻された社長の阿部が反撃に出た。 「私は混乱を招いた(取締役会の)議長解任を提案します。新たな議長として、稲垣士郎副社長を提案します」 すでにこの時点で勝敗は、決していたともいえる。単純に計算すると、内外11人の全取締役のうち、和田派は5人、一方の阿部派は本人を入れると6人だ。その計算どおり、議長交代が6対5で可決された。そして返す刀で阿部が立ちあがって告げた。 「ここで、会長である和田氏の解任を提案します」 こうなると、退席した和田の一票が減る。そうして10人の重役の投票により、会長の解任動議が6対4で可決されたのである。 社長の阿部は、もとよりこの日のクーデターを想定して動いてきたに違いない。08年に社長の座に就いて以来10年ものあいだ、会長の和田の顔色をうかがいながら、経営にあたってきた。とりわけ東京の不動産ブームに乗り、マンション事業を推し進めてきたが、まさにそこで躓いたのである。 危機感を抱いた阿部は取締役会に先立つ17年12月には、マンション事業部本部長を務めてきた常務執行役の三谷和司に詰め腹を切らせた。東京シャーメゾン事業本部長で同じ常務の堀内容介にマンション事業を兼務させ、法務部長や不動産部長の部長職を解くといった更迭人事に手を付けていった。 そうしておいて自らは、和田に代わって会長に就任すべく、事件直後から動いた。 「今度の件で、君に社長を任せたい、と思っているのだけど、どうかな」 そう囁かれたのが、常務執行役の仲井嘉浩だった。仲井は阿部にとってひと回り以上年齢が下の52歳で、和田からするとふた回り違う。大幅な若返り人事でもある。なにより社長の椅子を約束する打診を断るはずもなかった』、「社長の解任動議は流れてしまう」、「すると今度は、会議室に呼び戻された社長の阿部が反撃に出た」、「「今度の件で、君に社長を任せたい、と思っているのだけど、どうかな」 そう囁かれたのが、常務執行役の仲井嘉浩だった。仲井は阿部にとってひと回り以上年齢が下の52歳で、和田からするとふた回り違う。大幅な若返り人事でもある。なにより社長の椅子を約束する打診を断るはずもなかった』、凄いドロドロした「クーデター」騒ぎだ。
・『主犯格を取り逃がす  こうして和田退任のレールを敷いた上で臨んだのが、先の取締役会だったのである。阿部会長、仲井社長という新たな布陣を決めた重役会のあと、阿部が会見に臨んだ。 「五反田の件の責任はどうなるのですか。今度の社長人事はその結果でしょうか」 そう尋ねる質問が相次いだ。それは無理もない。五反田の海喜館取引に積極的に乗り出したのが、当の阿部だった。自ら現地の視察にも訪れ、社内では社長案件と呼ばれてきた。が、阿部は自らの取り組みはむろん、取締役会でのクーデターのことなどおくびにも出さず、こう言い張った。 「それは関係ありません。(若返りのための)人事刷新です」 3月5日には、個人株主が阿部を善管注意義務違反などで訴え、損害賠償と遅延損害金の支払いを求める請求をおこなった。そのあたりから、警視庁による本格的な捜査が始まる。「2017年度内の3月中には、地面師グループをいっせい摘発できるのではないか」 取材してきた記者のあいだではそう事件の早期解明が囁かれた。17年8月以来、ずっと燻ってきた事件摘発の期待が高まったが、警視庁の捜査はそこからずれ込んでいく。 「8月末の新捜査二課長への交代を待って、9月はじめの捜査着手ではないか」 「すでに事件は警視総監マターなので、三浦正充さんが総監に着任する九月半ばかな」 そんなさまざまな検挙情報が駆け巡ってきた末、ついに警視庁は10月16日、海喜館を舞台に暗躍した地面師グループ8人の逮捕にこぎ着けたのである。 これだけの一斉検挙となると、一つの警察署には収容できない。身柄の拘束先は、当人の住居や留置所の空き状況によって異なった。逮捕第一陣となった8人の氏名と逮捕時の年齢、留置した警察署を改めて挙げると、生田剛(46)が渋谷署、近藤久美(35)が原宿署、佐藤隆(67)が赤坂署、永田浩資(54)が目白署、小林護(54)が代々木署、秋葉紘子(74)が原宿署、羽毛田正美(63)が東京湾岸署、常世田吉弘(67)が戸塚署だ。 事件におけるそれぞれの役割を記すと、IKUTAホールディングスの生田と近藤が積水ハウスとの取引窓口で、佐藤は小山とともに行動してきた首謀者の手下、小林は運転手役だ。指定暴力団住吉会の重鎮だった小林楠扶の息子であり、そのことも一部で話題になった。また秋葉は犯行における重要な役回りをした。持ち主のなりすまし役を引き込む手配師である。その秋葉から旅館の持ち主、海老澤佐妃子のなりすまし役に任命されたのが羽毛田で、彼女の内縁の夫役が常世田だ。 警視庁は逮捕予定者を15人前後と定め、捜査に着手した。この第一陣の8人が逮捕された4日後の20日、逃げていた佐々木利勝(59)を逮捕し、三田署に留置した。佐々木は地主のニセ振込口座づくりを担い、9人目の逮捕者となる。27日には連絡係の岡本吉弘(42)が出頭し、29日、11人目の逮捕者となったのがあの北田文明だった。その後の三木勝博(63)、武井美幸(57)と合わせると、警視庁はここまでで13人に縄を打ったことになる。 だがその実、あろうことか、警視庁は肝心の主犯格の一人であるカミンスカスこと旧姓小山操(58)を取り逃がしている』、「記者会見」での「質問」に対し、「五反田の海喜館取引に積極的に乗り出したのが、当の阿部だった。自ら現地の視察にも訪れ、社内では社長案件と呼ばれてきた。が、阿部は自らの取り組みはむろん、取締役会でのクーデターのことなどおくびにも出さず、こう言い張った。「それは関係ありません。(若返りのための)人事刷新です」、よくぞこんな答弁で乗り切ったものだ。「警視庁は肝心の主犯格の一人であるカミンスカスこと旧姓小山操(58)を取り逃がしている」、情けない限りだ。
・『なぜ取り逃がしたのか  第一陣検挙の3日前にあたる10月13日1時15分、NHKをはじめとしたマスコミ環視のなか、小山は羽田空港からフィリピン航空ファーストクラスに乗り、悠々と高飛びした。事情通によれば、その経緯は以下の通りだという。 「何度も取り調べを受け、捜査が迫っているのを知った小山は当初、仲間の三木と関釜フェリーに乗って下関から韓国の釜山に渡ろうとした。航空便より船便のほうが港の監視態勢が緩いと考えたからです。しかし三木に誘いを断られたあげく、早朝の船便に間に合わず、いったんは韓国行きを断念した。しかし、いよいよ捜査の手が近づくと、愛人のいるフィリピンに向かうことを思い立ったのです。はじめ成田空港からJAL便に乗ろうとしたところ、日本の航空会社は警察に通報する危険性が高いと思い直し、羽田から出ているフィリピン航空に切り替えたと聞いています」 関釜フェリーの件はマスコミにも漏れていなかったようだが、そのあとの足取りはしっかり新聞やテレビ、週刊誌の記者にとらえられ、報じられている。警視庁にとっては大失態であるが、新聞やテレビがさほど問題にしないのは、捜査当局から睨まれ、警察情報からシャットアウトされるのを恐れるからだろう。 記者がそこまでつかんでいるのに、なぜ警視庁は肝心の主犯を取り逃がしてしまったのか。 「そのせいで、犯行グループに内通している警視庁OBがいたのではないか、とも囁かれています」(事情通) むろん小山は国際指名手配され、その後逮捕された。 事件の奥行きはもっと深い。これまで書いてきたように、積水ハウス事件を企画・立案したのは、小山ではなく、内田マイクであり、北田文明である。たとえば第一陣の逮捕組である永田は内田の連絡役であり、55億5000万円を振り分けるための銀行口座を用意して9人目の逮捕者となった佐々木は、北田の指示を仰いできた。それぞれ、内田グループ、北田グループとして、他の地面師事件でも名前が挙がってきた。さらに積水ハウスの預金小切手を現金化する役割を担った土井淑雄(63)という存在も明らかになっている。私が北田と遭遇した時に取材をしていた、あの地面師である。土井は事件のなかで金融チームを結成し、現金を振り分ける役割を担ってきたとされる。 入院していた地主の海老澤佐妃子は、この決済直後の6月24日に病院で息を引き取った。地面師たちはそこを狙いすましたかのようでもある。 なかでも内田と北田という二人の大物地面師は積水ハウス事件を計画立案した。そして警視庁は11月20日、14人目の積水事件犯として内田を逮捕した。文字どおり神出鬼没の詐欺集団を率いてきた大物2人を手中に収めた。 だが、経営トップの“クーデター騒動”にまで発展した事件で騙しとられた55億5000万円は、闇の住人たちの手で分配され、すでに溶けてなくなったとみたほうがいい』、「小山は国際指名手配され、その後逮捕された。 事件の奥行きはもっと深い。これまで書いてきたように、積水ハウス事件を企画・立案したのは、小山ではなく、内田マイクであり、北田文明である。たとえば第一陣の逮捕組である永田は内田の連絡役であり、55億5000万円を振り分けるための銀行口座を用意して9人目の逮捕者となった佐々木は、北田の指示を仰いできた。それぞれ、内田グループ、北田グループとして、他の地面師事件でも名前が挙がってきた。さらに積水ハウスの預金小切手を現金化する役割を担った土井淑雄(63)という存在も明らかになっている」、これだと「積水ハウス」は被害者ということになるが、「阿部」会長は本当に潔白なのだろうか。表向き一件落着のように見えるが、今後も注目していきたい。
タグ:森 功氏による「【衝撃の地面師事件の真相】積水ハウスは地主本人からの警告書を「怪文書」と見なしてスルーした 短期集中連載・第5回」 現代ビジネス 積水ハウス事件 (その5)(【衝撃の地面師事件の真相】積水ハウスは地主本人からの警告書を「怪文書」と見なしてスルーした 短期集中連載・第5回、仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回、社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回) 信じ難い事件で、興味深そうだ。 「赤茶けていて、ところどころ破れかけていた」「不動産権利証」の真偽を、「前のめりになっ」た担当者が確認しなかったのは手落ちだ。 「本社に届いた警告」「4通」を「怪文書扱い」した「三谷常務」の取り扱いは問題だ。 「決済時期が7月末日になっていたのを第3者による契約履行の妨害が考えられ、それを回避するためにできる限り早めたいということになり、変更契約を締結し直して、6月1日には本登記と引換えに売買残代金約48億円を一部留保して決済するという方針が決まった」、「決済時期」を早めるというのも、相手を混乱させる詐欺の手口なのかも知れない。 森 功氏による「仲介業者の住所は「元衆議院議員」の事務所!? 謎が謎を呼ぶ積水ハウスの「巨額地面師詐欺事件」 短期集中連載・第6回」 「海老澤佐妃子のなりすましは、なぜかこれとは別に積水ハウスのマンションを購入する契約を結んでいる。それが中野区にある「グランドメゾン江古田の杜」という名称の分譲マンション」、不思議だ。 「積水側が海喜館の購入代金を支払うついでに、せっかくだから分譲マンション販売の営業をかけた。表面的に見れば、単なる営業努力の成果のように感じる。が、こと地面師案件だけにそう単純とは言い切れないかもしれない」、なるほど。 「地面師事件では、なりすまし役と買い手の接触をできるだけ減らすのが彼らの常道」、「ニセ地主を取引現場に登場させるのは、たいてい一度きりで、取引の細かいやり取りについては、手馴れた地面師グループの交渉役がおこなう。 だが、積水ハウス事件では、肝心かなめの旅館の売買とは別に、なりすまし役がマンションの購入契約を結んでいる。それ自体が極めて奇異なのである」、「不自然な取引や微妙な金額の誤差の裏には、表沙汰にできない何らかの理由があるのではないか」、どんな「理由」なのだろうか。 森 功氏による「社長が会長を追い落とすクーデターに発展!積水ハウス「巨額地面師詐欺事件」の醜悪な結末 短期集中連載・最終回」 「和田」「会長」は、「弟分の社長をばっさり切り捨てようとした」。 凄いドロドロした「クーデター」騒ぎだ。 「記者会見」での「質問」に対し、「五反田の海喜館取引に積極的に乗り出したのが、当の阿部だった。自ら現地の視察にも訪れ、社内では社長案件と呼ばれてきた。が、阿部は自らの取り組みはむろん、取締役会でのクーデターのことなどおくびにも出さず、こう言い張った 「それは関係ありません。(若返りのための)人事刷新です」、よくぞこんな答弁で乗り切ったものだ。「警視庁は肝心の主犯格の一人であるカミンスカスこと旧姓小山操(58)を取り逃がしている」、情けない限りだ。 「小山は国際指名手配され、その後逮捕された。 事件の奥行きはもっと深い。これまで書いてきたように、積水ハウス事件を企画・立案したのは、小山ではなく、内田マイクであり、北田文明である。たとえば第一陣の逮捕組である永田は内田の連絡役であり、55億5000万円を振り分けるための銀行口座を用意して9人目の逮捕者となった佐々木は、北田の指示を仰いできた。 それぞれ、内田グループ、北田グループとして、他の地面師事件でも名前が挙がってきた。さらに積水ハウスの預金小切手を現金化する役割を担った土井淑雄(63)という存在も明らかになっている」、これだと「積水ハウス」は被害者ということになるが、「阿部」会長は本当に潔白なのだろうか。表向き一件落着のように見えるが、今後も注目していきたい。
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介護については、昨年11月2日に取上げた。今日は、(その8)(介護人材は2025年に32万人不足!要介護者600万人時代に「介護難民」にならない備え、母さん ごめん2 二題:「家に帰る」という認知症の入居者 スタッフはどう導くのか、身の置き所がない 母 ホームのスタッフにケガをさせる)である。

先ずは、本年10月24日付けダイヤモンド・オンライン「介護人材は2025年に32万人不足!要介護者600万人時代に「介護難民」にならない備え」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/311682
・『『週刊ダイヤモンド』10月29日号の第一特集は「選ぶ介護」です。高齢の「おひとりさま」や「おふたりさま」(夫婦のみ世帯)の急増は、親の介護だけでなく、自分の介護をどうするか、という問題を投げかけています。人材と財源の不足で、今後、介護保険のサービス抑制や利用者の負担増は避けられないだけに、介護難民にならないためには、早めの準備が肝心です。利用者に参考になる情報を集めました』、興味深そうだ。
・『2割の自己負担対象者が増える方向 フルコースの在宅介護は困難に  要介護になっても最期まで住み慣れた我が家で、と願っている人は多いだろう。その願いをかなえるのは、家族とお金である。 高齢者の終活サポートを長年行ってきた黒澤史津乃さん(現・OAGライフサポート・シニアマネジャー)が語る。 「在宅介護の限界は排泄です。赤ちゃんのオムツ替えと違って、高齢者の下の世話は家族もやりたがらないし、されるほうも嫌がる。かといって、オムツをパンパンにしておけないので、ヘルパーさんを長時間入れると、自費負担が増えてあっという間に月の費用が30万円をこえてしまう。それなら、20万円以下の費用で済む施設に移るというようなケースが多いですね」 年末に決着する介護保険の改正論議では、2割の自己負担対象者を増やす方向で話が進められている。それが現実となれば、所得水準よって負担が倍増する利用者が増える。湯水のようにお金が使えなければ、フルコースの在宅介護は夢物語で終わるだろう』、「在宅介護の限界は排泄です・・・ヘルパーさんを長時間入れると、自費負担が増えてあっという間に月の費用が30万円をこえてしまう。それなら、20万円以下の費用で済む施設に移るというようなケースが多いですね」、なるほど。
・『なり手が少なく有効求人倍率は15倍 高齢化が進むヘルパーは絶滅危惧種  「在宅介護は崩壊寸前」と、業界関係者は口をそろえる。 サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などに併設する事業者を除くと、ホームヘルパーを確保できず、廃業する例が相次いでいるからだ。 ホームヘルパーは高齢化が進み、80代の現役も珍しくない。有効求人倍率は約15倍。一人の採用に15社が群がる異常事態が続いている。業界ではホームヘルパーを“絶滅危惧種”と呼ぶ。 なり手が少ないのは当然だ。将来がある若い人にとって、施設で働いたほうが安定した給料が見込め、キャリアアップも期待できる。しかも、訪問介護は危険を伴う。 今年1月、訪問診療先で医師が殺害されるという悲惨な事件が埼玉県内で起きた。この事件を受けて県が行ったアンケート調査に、医師や看護師、ホームヘルパーの半数が暴力やハラスメントを受けた経験があると回答している。 埼玉県は警備会社と契約し複数で訪問するための補助金を出すなどの対策を検討しているが、財源に余裕のない自治体ではとうてい無理な話である。 人手不足解消の切り札として期待される外国人も急激に増えない上に、言葉の問題から、ほとんどが特別養護老人ホーム(特養)など施設での採用になる。 日本の財政が悪化するなかで、政府もない袖はふれないので、介護保険に回す財源は今後も多くを期待できない』、「なり手が少なく有効求人倍率は15倍 高齢化が進むヘルパーは絶滅危惧種」、「訪問診療先で医師が殺害されるという悲惨な事件が埼玉県内で起きた」、「埼玉県は警備会社と契約し複数で訪問するための補助金を出すなどの対策を検討しているが、財源に余裕のない自治体ではとうてい無理な話」、「政府もない袖はふれないので、介護保険に回す財源は今後も多くを期待できない」、やはり「介護」は非効率な自宅ではなく、効率的な「施設」中心になるのだろう。
・『月々の支払いは年金だけが頼りなのに施設の食費や管理費の値上げがつらい  人材や財源が慢性的に不足するなか、2025年には団塊世代のすべてが75歳以上の後期高齢者になる。厚生労働省は、要介護者は600万人を超え、介護職が32万人不足すると予測している。 高齢者の核家族化は、介護難民を増やす要因となるかもしれない。厚生労働省の調査によれば、65歳以上の「おひとりさま」は742万人、夫婦のみの「おふたりさま」も700万世帯に及ぶ(2021年)。(図表:人材と財源の不足で利用者は自己負担増へ はリンク先参照) 最近の傾向として、配偶者の死別後、子どもがいてもそのまま一人で暮らす高齢者が多い。予備軍を入れると1000万人を超える「おひとりさま」は、介護が必要になった時に資金的な余裕がなければ、料金が安い施設への入居しか選択肢はなくなる。 救いは、費用の安い特養が入りやすくなっていることだろう。 2015年に入居条件を要介護3以上に限定したことから、入居期間が短くなり、数百人と言われた待機者もかなり少なくなった。大量の特養が建設された東京の西多摩地区では空きが目立ち、入居者の確保に苦戦を強いられているほどだ。 西多摩地区は立地に難があったが、今後は世田谷区、練馬区などでも東京都の補助金を頼りにした開設ラッシュが続く。親の介護に直面していて、親のお金が十分でないなら、真っ先に検討の対象にするべきだろう。 しかし、特養は要介護3以上の認定が必要で、個室タイプが少ない、なんとなく“施設感”が漂う、など抵抗感を持つ人もいるだろう。 そんな人には、介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が検討の対象になる。特養並みの料金のホームから、入居金が数百万~数千万円のホームまで、選択の幅は広い。 金融資産や自宅の処分で5000万円以上を用意できる「おひとりさま」や「おふたりさま」なら、元気なうちに自立者向けの施設に入り、趣味やスポーツを通して仲間と余生を楽しむという道もある。 今年になって、施設の入居者や入居を検討している人には、インフレの波が重くのしかかっている。主に、月々に支払う食費や管理費の値上げである。月の利用料を年金から払っている入居者には、とても切実な問題だ。「将来、払えなくなって退去を迫られるのはつらいから、といって入居をあきらめた方もいらっしゃいました」と、ある老人ホームの募集担当者が明かす。 親や自分の介護が必要になった時、資産や体の状態に応じて、どのような選択肢があるのか、知っておくことは大切である。頭がしっかりして体が動くときでないと、できない準備もあるからだ』、「配偶者の死別後、子どもがいてもそのまま一人で暮らす高齢者が多い。予備軍を入れると1000万人を超える「おひとりさま」は、介護が必要になった時に資金的な余裕がなければ、料金が安い施設への入居しか選択肢はなくなる」、「救いは、費用の安い特養が入りやすくなっていることだろう。 2015年に入居条件を要介護3以上に限定したことから、入居期間が短くなり、数百人と言われた待機者もかなり少なくなった」、「特養は要介護3以上の認定が必要で、個室タイプが少ない、なんとなく“施設感”が漂う、など抵抗感を持つ人もいるだろう。 そんな人には、介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が検討の対象になる。特養並みの料金のホームから、入居金が数百万~数千万円のホームまで、選択の幅は広い。 金融資産や自宅の処分で5000万円以上を用意できる「おひとりさま」や「おふたりさま」なら、元気なうちに自立者向けの施設に入り、趣味やスポーツを通して仲間と余生を楽しむという道もある」、保有している資産の格差で如実に差が出てくるようだ。
・『介護がまだ不要な富裕層なら自立型の高級老人ホーム  『週刊ダイヤモンド』10月29日号の第一特集は「選ぶ介護」です。急増する高齢の「おひとりさま」や「おふたりさま」(夫婦のみ世帯)は、親の介護だけでなく、自分の介護をどうするか、という問題に対処しなければなりません。在宅でぎりぎりまで頑張るにせよ、施設入居を検討するにせよ、元気なうちに準備しておくことが大切です。 人生100年時代、できれば住み慣れた我が家で最期まで過ごしたいと考えている人は多いでしょう。しかし、身体の状態や認知症などの進み具合によって、地域の訪問介護サービスが十分でなければ、やがて在宅での介護は限界を迎えます。 介護難民になりそうな人にとって救いは、特養があまり始めたこと。ただし、認知症患者や身寄りのない入居者が多い特養は、民間に比べて虐待が発生しやすいともいわれています。医療系が運営主体の特養は、不要な検査を受けさせられたり、入院させられたりすることも。特養を選ぶ際にどんな点に注意すべきか、本特集ではチェック表を掲載しました。 特養には抵抗がある、入居要件である要介護3までの重度者ではない、という人に参考にしていただきたいのが、恒例の「老人ホームランキング」です。 親を入れたい場合には「介護型」、元気な方で早めに入って仲間を作り、第2の人生を楽しみたいという人にとっては「自立型」のランキングが参考になるはすです。自立型は高級ホームが多く、入居金も数千万円から数億円。資金的によほど余裕のある人を除いて、入ったら最後、簡単には退去できません。年齢別、性別など複雑になっている入居金についても、図解で解説しました。 その他にも、親のため、自分のために、介護サービスや施設を選択する際に必要な情報が詰まった一冊です』、「特養」か「民間」か、「介護型」か「自立型」か、「入居金」や生活費などの負担金などの格差が大きいだけに、信頼できる資料に基づいた慎重な検討が必要だ。

次に、5月26日付け日経ビジネスオンラインが掲載したノンフィクション作家の松浦 晋也氏による「「家に帰る」という認知症の入居者、スタッフはどう導くのか」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00444/051100006/
・『2017年3月、「『事実を認めない』から始まった私の介護敗戦」から連載を開始した、松浦晋也さんの「介護生活敗戦記」は、科学ジャーナリストとして自らを見る冷徹な視点から、介護を通した母親との壮絶な体験を、ペーソスあふれる文章で描き、絶大な支持をいただきました。コメント欄に胸を打つ投稿が相次いだのも記憶に残るところです。 この連載は『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』として単行本・電子書籍となり、介護関連の本としては異例の支持を集めました。22年1月には集英社文庫に収録されております(こちら。文庫版にはジェーン・スーさんとの対談が追加されています)。 そして5年後。前回の最後は、松浦さんのお母様がグループホームに入ったところでしたが、今回はそこから今日まで起こったさまざまな出来事が語られます。 介護施設に入居したことで、母親の介護は終わったのでしょうか。 入居後にお母様、そして松浦さんを待っていたのはどんなことなのか。 ぜひじっくりとお読みください。 母のいるグループホームは「看取り(みとり)」に対応している。つまり、入居者がグループホームで最期を迎えることを想定して体制を組んでいる。 グループホームは「健康に問題がない認知症の人」の入る施設だ。このため看取りは、特に悪いところのない老衰による最期を意味する。明らかに病気による衰弱が始まった場合は、医療行為が必要となるので病院に入院することになる。 看取りに対する対応は、グループホームによって色々違うのだそうだ。看取りに対応していないグループホームもあって、その場合は、看取り対応の施設や、病院あるいはホスピスなどに送り出す。 老衰の場合、だいたいの場合は食事が食べられなくなり、体重が落ちていくことで、「ああ、この人は寿命だ」と分かるのだという。「体格にもよるのですけれど、お母様程度の体格の女性の場合は体重40kgがひとつの目安です。これを切ると危険水域です」とは、Kグループホーム長の言である。母のいるグループホームでは、最後の数日については家族の寝泊まりにも対応する。 老人ばかりが入居するグループホームは、けっこうな頻度で入居者が入れ替わる。病気で退居する人との入れ替わりや、老衰死で空いた部屋に新たな入居者が入る。前回の訪問ではリビングで介助を受けながら健啖な食欲を発揮していた人が、次の訪問ではもういない、というようなことが起きる。事情を聞くと「急に食べなくなって、3日で亡くなられました」ということだったりする』、「グループホームは「健康に問題がない認知症の人」の入る施設だ。このため看取りは、特に悪いところのない老衰による最期を意味する。明らかに病気による衰弱が始まった場合は、医療行為が必要となるので病院に入院することになる。 看取りに対する対応は、グループホームによって色々違うのだそうだ。看取りに対応していないグループホームもあって、その場合は、看取り対応の施設や、病院あるいはホスピスなどに送り出す」、どうせなら「看取りに対応している」「グループホーム」の方が便利だ。
・『不安がもたらす症状が突然顔を出す  ホームのリビングは天井が高く、内装は明るく、日差しもきれいに入ってくる。それでも、入居者が入れ替わることで、否応なしに「ここは人が死に至るまでの最後の時間を過ごす場所だ」ということを意識させられる。 新しく入居した方の認知症の症状は、前の方とはまったく異なるのが普通だ。母の見舞いと共に、それらの入居している人々と話し、観察していくことで、自分は、認知症という病気が非常に多様であることを実感した。認知症にはいくつもの原因があり、症状の現れ方は多様であると頭では知っていたが、実地に体験すると、その多様さは予想以上だった。 と同時に、その根底には共通して「不安と安心」があることが見えてきた。 母の入居当初、最初に話をするようになったのは、主に症状が軽い方だった。ご存じの通り、介護保険制度では、介護を受ける人を7段階に区分し、段階に応じた手当を行う仕組みになっている。家事や身支度などの日常生活に他者の支援が必要になり、助けないと次の「要介護」に進行する可能性がある状態を「要支援」、症状が進行して日常生活の動作に常時介護が必要になった状態を「要介護」と定義し、それぞれ「要支援1」「要支援2」、「要介護1」から「要介護5」と7段階に区分しているのだ。 グループホームへは「要支援2」から入居できる。だから「要支援2」や「要介護1」の比較的認知症の症状が軽い人もいる。 こういう方たちは、ちょっと見たところでは普通の人と変わらない。日常的な会話はできるし、私が家の老犬「ロンロン」を連れていくと、「かわいい!」と歓声を上げて集まってきて、代わる代わるだっこしたりする。 ところが、まったくの健常ではないことが、ふとした拍子に分かるのだ。 犬を連れて帰ろうとすると、おばあさんの一人が「あー、楽しかった。じゃあ私も帰ろうかしら」といって立ち上がったりするのである。自分がグループホームに入居しているということの自覚がないのだ。 それまで普通に話をしていた人が、急におかしなことを言うのにはぎくりとする。日常に突如として裂け目が発生して、なにか見てはならない荒涼とした風景が垣間見える気分になる。 そんなときスタッフは決して、「いいえ、あなたは今ここに住んでいるんですよ」といった、諫めるようなことは言わない。「そうですか。もう少ししたらお茶とお菓子を出すつもりだったんですよ」とか、「今日は晩ご飯も食べていきませんか」というように、相手の意識を「帰る」というところから引き離すようにして注意をそらす。すると「あら、悪いわ」とか言いながら、おばあさんは再度腰を下ろし、話をしているうちに帰ろうとしていたことを忘れるのである。 「帰る」ということは、認知症の方には、わりと一般的な観念なのだと、私は知った。では、なぜ帰ろうとするのか?』、「犬を連れて帰ろうとすると、おばあさんの一人が「あー、楽しかった。じゃあ私も帰ろうかしら」といって立ち上がったりする」、「諫めるようなことは言わない。「そうですか。もう少ししたらお茶とお菓子を出すつもりだったんですよ」とか、「今日は晩ご飯も食べていきませんか」というように、相手の意識を「帰る」というところから引き離すようにして注意をそらす。すると「あら、悪いわ」とか言いながら、おばあさんは再度腰を下ろし、話をしているうちに帰ろうとしていたことを忘れるのである」、「認知症」患者の扱いには、思いもかけないノウハウがあるようだ。
・『「泊まっていってください」  入居者の中に、大変活発にお話をするおばあさんがいた。歩行や座る、立つといった動作は一般人と変わりなく、スタッフに呼ばれればさっさと食事の支度に参加し、そつなく会話を交わす。はて、この方はどこが認知症なのだろうと思っていたある日、たまたま事情があってホームを就寝時刻になってから訪問することになった。 就寝時にケアすべきことは多い。入居者に歯を磨かせ、寝間着に着替えさせ、夜中に何回も起きてこなくても済むようにトイレに行かせる。もちろん一人では着替えができない人はいるし、トイレもままならない人もいるから、ケアはけっこうな重労働だ。そんな仕事をこなすスタッフの方と、合間を縫うようにして母の状態について情報を交換する。一段落ついたな、と思った頃、その活発なおばあさんが起きてきた。おや、さきほど「おやすみなさい」と言って就寝したはずではないか、と不審に思う間もなく、「ねえ、なぜ私ここにいるのかしら。もう夜も遅いし家に帰らなくちゃ」と言う。 えっ、と驚く私。まったく驚く様子もないスタッフリーダーのOさん。Oさんは、「大丈夫ですよ。今日は遅いのでちゃんとベッドを用意しました。泊まっていってくださいな。ご家族にも連絡しておきましたから」と柔らかく話しかける。「でも悪いわ。泊まるんならお金払わなくちゃ」とおばあさんが言うと、「もう頂戴してますから払わなくてもいいんですよ」と返す。「……そう、そうなんだ。じゃあお世話になるわ。おやすみなさい」と自室に戻っていくおばあさん』、「大変活発にお話をするおばあさんがいた。歩行や座る、立つといった動作は一般人と変わりなく、スタッフに呼ばれればさっさと食事の支度に参加し、そつなく会話を交わす」、「その活発なおばあさんが起きてきた。おや、さきほど「おやすみなさい」と言って就寝したはずではないか、と不審に思う間もなく、「ねえ、なぜ私ここにいるのかしら。もう夜も遅いし家に帰らなくちゃ」と言う。 えっ、と驚く私。まったく驚く様子もないスタッフリーダーのOさん。Oさんは、「大丈夫ですよ。今日は遅いのでちゃんとベッドを用意しました。泊まっていってくださいな。ご家族にも連絡しておきましたから」と柔らかく話しかける。「でも悪いわ。泊まるんならお金払わなくちゃ」とおばあさんが言うと、「もう頂戴してますから払わなくてもいいんですよ」と返す。「……そう、そうなんだ。じゃあお世話になるわ。おやすみなさい」と自室に戻っていくおばあさん」、「認知症」患者への対応へのあと1つの重要なノウハウのようだ。
・『「帰りたい」のは「不安」だから  が、それで終わりではなかった。少しするとまたひょこひょことリビングに出てきて「なぜ私ここにいるのかしら」と同じことを言う。Oさんも同じ話を繰り返し、おばあさんは納得して部屋に戻り、そしてまた出てきて「ねえ、なぜここにいるのかしら」……。 これを何回繰り返したか。おばあさんが出てこなくなると、Oさんは少しほっとした表情を見せた。「あの方は、夜になると不安になるんですよ。それで毎晩就寝前になると、なぜここにいるんだろう、と起きてくるんです」 このとき、私は理解した。「帰る」のは「不安」だからだ。「不安だから自分のよく知っている、安心できるところに帰りたい」のだ、と。2年半、母を介護していて気が付かなかったのか、と言われれば、「すいません、気が付きませんでした」と言うしかない。 ともかく私は、グループホームで母以外の認知症の方と接することで、やっとこさ認知症の根底に「不安」があることに気が付いた。 不安の根源には、認知機能の劣化がある。本人の主観からは「周りの世界が自分の知らない形に変化してしまう」と見えるのだろう。だから怖いし不安になる。だから安心できる場所に帰りたくなる。 認知症の方の症状は多様だ。それぞれ固有の認知症の現れ方を抱えている。と、同時にその奥底には共通して、「不安」と、不安からの脱出手段としての「帰る」が渦巻いているのである。 もう少し認知症が進行したか、と思える人になると、異常行動が現れるようになる。それは以前も書いた徘徊だったり、靴を自室に持っていったりしてしまうといったものだ。 が、徘徊ひとつとっても、「入居前に住んでいた家に帰ろうとしての徘徊」「もうなくなってしまっている故郷に帰ろうとしての徘徊」「若い頃からの生活習慣として身に付いた散歩の表れとしての徘徊」と、本人の内面における位置付けは様々だ。しかもどこかに帰ろうとしての徘徊には、一緒に住んでいた今は亡き配偶者とか両親や兄弟に会いたいという、切ない心の動きがあったりする』、「認知症の方の症状は多様だ。それぞれ固有の認知症の現れ方を抱えている。と、同時にその奥底には共通して、「不安」と、不安からの脱出手段としての「帰る」が渦巻いているのである。 もう少し認知症が進行したか、と思える人になると、異常行動が現れるようになる。それは以前も書いた徘徊だったり、靴を自室に持っていったりしてしまうといったものだ」、「グループホームで母以外の認知症の方と接することで、やっとこさ認知症の根底に「不安」があることに気が付いた」、やはり「母親」だけを見ているよりは、客観視できるからなのだろう。
・『他人の部屋のものをすっと持っていく人  グループホームのスタッフは、そういうひとつひとつの事情に対応して、接し方を工夫し、異常行動が出ないようにもっていこうとする。それは、「入居者が安心して過ごせるようにする」ということでもある。Kホーム長は、私との会話の中で「僕らからどんなに変に思える行動にも、本人の内面ではきちんと筋の通った理由があるんです」とよく言っていた。どんなに不可解な行動でも、理由を理解した上で不安を無くす方向で接していけば、徐々にでも収まっていくというわけだ。 それは本当にプロの対人技術を必要とする、大変な仕事だと思う。いちど、母の居室で母と話をしていると、突然知らないおばあさんが部屋に入ってきたことがあった。何も言わずにそのまま母の化粧品のひとつをすっと手に取って出ていってしまった。こっちはびっくりして、何もすることはできなかった。 すぐにケアマネのYさんが来て、「ごめんなさい!」と言う。「入居したばかりの方なんですが、他の人の部屋に入ってものを持ってっちゃうんです。多分しばらく続くと思いますけれど、持っていったものは私たちが責任を持って戻しておきますから、許してください」 ホームの介護を受けているこちらとしては、許すも許さないもなく、とにかくこの状況を受け止めるしかない。 その後しばらくして、このおばあさんはものを持ち去ることをしなくなった。おそらくご本人の内面では、なにか理由があってものを持っていっていたのだろう。ものを持っていくという行為が何らかの機序で不安を解消していたのだろう。スタッフが理由を探り、理解し、寄り添うことで、異常行動は止まったのだろう。 さらに認知症が進み、脳の別の部位の萎縮が進行すると、今度は妄想が出てきたりする。表れとしては精神の病に近い。私が遭遇した例では、なぜかテレビに映るアナウンサーの女性に対して、執拗に「このバカ女! バカ女!」と罵声を投げかけるおばあさんがいた。 こうなると、かかりつけの医師の判断で精神科の投薬を受けることになる。時折、老人施設について「精神科の薬でおとなしくさせて、結果一日中ぼおっとなってしまって、認知症が進行する」というような批判を聞くことがある。が、私がグループホームで体験した限りにおいては、精神的・情緒的な病態が出てきた場合には、精神系の投薬はやむを得ない、むしろ必要なものと考える。罵声ぐらいならまだしも、暴れてスタッフがけがをするということもあり得るのだから。後述するが、母もまた症状の進行とともに妄想が出て、スタッフにけがをさせてしまうということが起きた』、「精神的・情緒的な病態が出てきた場合には、精神系の投薬はやむを得ない、むしろ必要なものと考える。罵声ぐらいならまだしも、暴れてスタッフがけがをするということもあり得るのだから」、確かに「スタッフがけがをする」のは避ける必要がありそうだ。
・『スタッフの助けとなる「家族が書く書類」  精神的な問題が出ている場合にも、スタッフの側は「この人の内面では何が起きているのか、なにが不安なのか。なにか本人としては合理的な道筋をたどった結果、このような症状が出ているのではないか。とするなら、どのように接すれば、穏やかに過ごせるようになるか」と考え、実際にそのように接する。繰り返すが、プロの仕事という他ない。 スタッフと入居者との会話の基本となっているのが、入居時に家族が書く書類だ。母がこのグループホームに入居するにあたって書いた書類の中には、母の性格、生育歴に履歴、趣味などを書く欄があった。「なるべく詳細に記入してください。それをとっかかりにして私たちはお母様と会話しますから」と言われたのだが、実際にホームにお世話になって、会話のきっかけが大変重要であることを痛感した。 ひとこと話をすれば、次のひとことにつなげることができる。つなげることができれば、さらに会話を重ねて、相互の信頼関係を構築することができる。信頼関係ができれば、対話の中で入居者の内側に渦巻く不安を解消していくことが可能になる。 ただ、それも時代につれて、色々難しい要素が入ってくるようだ。ある日、私はKホーム長が難しい顔をして、考え込んでいるところに行き合わせた。 「どうしたんですか」という質問に、ホーム長曰く「今度入居する方の書類を読んでいるのですが、この方、スキューバ・ダイビングが趣味だったんだそうですよ」。 それの何が問題なのか分からない私に向かって、Kさんは続けた。 「我々スタッフの中にスキューバダイビングの経験者はいないんです。一体どうやって話を合わせていけばいいんでしょうか」』、「「なるべく詳細に記入してください。それをとっかかりにして私たちはお母様と会話しますから」と言われたのだが、実際にホームにお世話になって、会話のきっかけが大変重要であることを痛感した」、とはいえ、「我々スタッフの中にスキューバダイビングの経験者はいないんです。一体どうやって話を合わせていけばいいんでしょうか」、ニッチな趣味の場合は、確かに難しそうだ。ただ、「スキューバダイビング」をしていた人が、「認知症」になるというのは、何かピントこないものがある。

第三に、この続きを、6月16日付け日経ビジネスオンラインが掲載したノンフィクション作家の松浦 晋也氏による「身の置き所がない。母、ホームのスタッフにケガをさせる」を紹介しよう。
・『親を「グループホーム」に入れたらどんな介護生活になるのか。 そもそも「グループホーム」とは、どこにある、どんなところなのか? 親が高齢になれば、いずれ否応なく知らねばならない介護施設、その代表的なものの一つである「グループホーム」。『母さん、ごめん2 50代独身男の介護奮闘記 グループホーム編』で、科学ジャーナリスト、松浦晋也さんが母親をグループホームに入れた実体験を、冷静かつ暖かい筆致で描き出します。 介護は、事前の「マインドセット」があるとないとではいざ始まったときの対応の巧拙、心理的な負担が大きく変わってきます。本連載をまとめた書籍で、シミュレーションしておくことで、あなたの介護生活が「ええっ、どういうこと?」の連続から「ああ、これか、来たか」になります。 書籍・電子版で6月23日発売予定です。 本書の前段に当たる、自宅介護の2年半を描いた『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』は、電子版、集英社文庫が発売中です。 2017年の年末から2018年の年頭にかけては、“ハンサムなおじいさん”だったSさんが母の内面に残した余波に、私も揺さぶられっぱなしだった。母は「Sさんが結婚しようと言ってくれた」と繰り返す。私は複雑な気分を飲み込みつつ「そう、良かったね」と返事する。 もちろんSさんはもういない。グループホームを退居したからだ。それだけではなく、病気を患っていたSさんは、ほどなくこの世を去ったと、私はKホーム長から聞かされた。 Sさんはもういない。どこにもいない。が、母は「結婚しようと言ってくれた」と繰り返し、私はそれに「良かったね」と繰り返し答える以外の手を持たない。 が、「結婚しようと言ってくれた」は、事の始まりだったのである。 記録を見返すと、自分がこれに気が付いたのは2018年3月14日のホーム訪問の時だった。この日、お菓子を持って母とお茶にしようと訪問すると、いきなり母から「あの子が帰ってくるって電話してきたから、私一緒に住む。だからもう家に帰る」と言われた。あの子とは在ドイツの妹のこと。もちろん妹は母に電話していない。妹がドイツから帰国するという事実もない。が、母は「あの子が帰ってくるから一緒に住む。だから帰る。ここから出して」と言い募る。 そのうちに「私をこんなところに閉じ込めて、お前はひどい。むごい息子だ」と怒りだし、ぽかぽかと私を叩きはじめた。力が落ちているので痛くはない。が、身に覚えのないことで責められ、叩かれるのは精神を消耗する』、「母は「結婚しようと言ってくれた」と繰り返し、私はそれに「良かったね」と繰り返し答える以外の手を持たない」、確かに真実を打ち明けても、「母親」がそれを受け入れるかは疑問だ。「母から「あの子が帰ってくるって電話してきたから、私一緒に住む。だからもう家に帰る」と言われた。あの子とは在ドイツの妹のこと。もちろん妹は母に電話していない。妹がドイツから帰国するという事実もない。が、母は「あの子が帰ってくるから一緒に住む。だから帰る。ここから出して」と言い募る。 そのうちに「私をこんなところに閉じ込めて、お前はひどい。むごい息子だ」と怒りだし、ぽかぽかと私を叩きはじめた。力が落ちているので痛くはない。が、身に覚えのないことで責められ、叩かれるのは精神を消耗する」、母親は、自分の願望を事実と取り違えてしまったようだ。
・『ついに始まったか  こうなると母と会話するどころではないので、早々に退散してスタッフの方と相談する。この症状は数日前から急に出るようになったのだという。 「『ほら、そこにSさんがさっきまで座っていた』とか言い出しまして……」とケアマネジャーのYさん。「他にも『私、Sさんに結婚を申し込まれちゃったけど言いふらさないで』とか……」。 妹が帰ってくると言っていたんですが、とYさんに問うと「『さっき妹さんが電話をかけてきた』というのもよく言っています。『日本に帰ってくるって。帰ったらお母さん一緒に住もうと言ってくれた』とかですね」。 ついに始まったか――幻覚か妄想だ。 母のグループホーム入居により、私はホームの他の入居者の方の行動も見ることになった。中には明らかに妄想を発現している方もいて、私は脳の萎縮が進めば母もいずれ妄想が出るであろうと覚悟するようになった。認知症の症状は人によって様々だが、それでも一つの傾向がある。症状が進むと妄想が発現するのは、決して珍しいことではない。 母の記憶障害に気が付いたのが2014年7月だから、そこから3年9カ月で、妄想が出るまで症状が進行したわけである。 しかし、こんなに唐突に症状が出るとは思ってもいなかった。もっと緩やかに進行すると思っていたが……と考えていてはっと気が付いた。「Sさんが結婚しようと言ってくれた」――これこそは、妄想の前駆症状ではなかったか。 前兆はあったのだ。しかし気が付いていなかった。認知症を発症した時と同じ過ちを犯してしまったのだ。) 正直自分のうかつさに愕然とした。と同時に、困惑した。ここまで「Sさんが結婚しようと言ってくれた」という母に「そう、よかったね」と受け入れる形で対応してきた。とすると、妄想もまたそれを受け入れる形で対応しなくてはならないのか。「お前はひどい息子だ」と、ぽかぽか殴りかかってくる母に、「そうだねえ」とにこやかに対応しなくてはならないのだろうか。 その通りだった。グループホーム側は、妄想が出始めた母に対して、どのような対応をした介護を行うか、ミーティングを持ってくれた。その結果「松浦さんの場合、大切なのは本人の心の平安なので、受け入れて応対する」ということになったのだ。 これがもう、見ているだけで胃が痛くなるようなことだった。妄想の発現以来、母の症状は徐々に進行し、程なく「誰かが自分のいない間に、自分の家に勝手に入り込んで住み着いている」というものに変化した。そしてその誰かが、その都度周囲にいるスタッフだと思い込むようになってしまったのである。 何かの拍子に母は怒り出す。「なんでお前、私の家に上がり込んで勝手に住んでいるんだ。誰の許しを得てそんなことしているんだ」。すると介護をするスタッフは「はい、すみません」とまず謝る。そして「あんまりきれいなお家だったんで、つい住んでみたくなってしまったんです。ごめんなさい」と続ける。つまりは母の自尊心をくすぐるわけだ。すると勝ち誇った母は「もうしないか?」と問いかける。「はい、もうしません。ごめんなさい」……で、母は納得しておとなしくなる』、「認知症」、「症状が進むと妄想が発現するのは、決して珍しいことではない。 母の記憶障害に気が付いたのが2014年7月だから、そこから3年9カ月で、妄想が出るまで症状が進行したわけである。 しかし、こんなに唐突に症状が出るとは思ってもいなかった・・・はっと気が付いた。「Sさんが結婚しようと言ってくれた」――これこそは、妄想の前駆症状ではなかったか。 前兆はあったのだ。しかし気が付いていなかった。認知症を発症した時と同じ過ちを犯してしまったのだ」、「妄想の発現以来、母の症状は徐々に進行し、程なく「誰かが自分のいない間に、自分の家に勝手に入り込んで住み着いている」というものに変化した。そしてその誰かが、その都度周囲にいるスタッフだと思い込むようになってしまったのである。 何かの拍子に母は怒り出す。「なんでお前、私の家に上がり込んで勝手に住んでいるんだ。誰の許しを得てそんなことしているんだ」。すると介護をするスタッフは「はい、すみません」とまず謝る。そして「あんまりきれいなお家だったんで、つい住んでみたくなってしまったんです。ごめんなさい」と続ける。つまりは母の自尊心をくすぐるわけだ。すると勝ち誇った母は「もうしないか?」と問いかける。「はい、もうしません。ごめんなさい」……で、母は納得しておとなしくなる」、「介護をするスタッフ」も事前のシナリオに従っているとはいえ、やはり大変そうだ。
・『自分の身の上を必死に考えるから  ところが母は記憶が続かない。すぐにまた「なんでお前、私の家に上がり込んで勝手に住んでいるんだ。誰の許しを得てそんなことしているんだ」「はい、住んでました。ごめんなさい」……これを何度も何度も繰り返す。 ケアマネYさんをはじめとして、スタッフの方たちはみな「私らはこれで給料貰ってますからね」と言ってくれたのだが、いくら給料を貰っていたって、これはきつい。精神的にものすごくきつい。 一方で母は私には「家にいる変な人追い出して」という。その都度「うん、やっておくよ」と答える。それはさほどつらいわけではない。むしろつらいのは「私を家に帰せ、戻せ」という要求が強くなったことだ。「準備をきちんとしてからね」と答えると、「お前はひどい息子だ。私をこんなところに閉じ込めて」と非難されるのだ。 「仕事ですから」というのはKホーム長以下、スタッフの口から何度も出た言葉だった。仕事だから、家族にはできないことができる。仕事としてやるから耐えられる。むしろ仕事でなければ、こんなことはできない、と。 しかし「なんで勝手に私の家に住んでいる!」と理不尽に怒る母をなだめてその精神を安定させる仕事というのは、なんと大変なことだろうか。 ロックバンドBUMP OF CHICKENに「ギルド」という曲がある(2004年発売のアルバム「ユグドラシル」に収録※)。「人間という仕事をしてきたが、ふさわしい給料を貰ったという実感はない」といった気持ちを歌い、「休みをください」と哀願する、そんな曲だ――。怒り、勝ち誇る母を支えるスタッフの姿になぜか重なるように思えた。歌のほうは「生きていくことは仕事ではないよ、素晴らしいことがいっぱいあるよ」という内容へと続いていくのだけれど。 ※ 作詞・作曲 藤原基央 なぜ母は「自分の家に誰か住み着いている」というような妄想にとらわれるようになったのか。 「失われつつある能力を使って必死に考えているからなんですよ」とKホーム長は説明する。「認知症の方の主観では、自分の身の上に、納得できないおかしなことが次々に起きているんです。なぜか自分は自分の家じゃないどこか違う馴染みのない場所で、家族じゃない知らない人に囲まれて暮らしている。なんでこんなことが起きているのか、みんな必死に考えて合理的な理由を探すんです。その結果がお母さまの場合、『誰かが自分の家に住み着いている』なんですよ」。 いまひとつ納得できない私に、Kホーム長は続ける。 「お母さまは、今のグループホームにいる自分に納得していないのでしょう。なんでこんなところにいなくちゃいけないのか、それは誰か自分じゃない誰かが自分を追い出して家に住んでいるからに違いない、と考えるわけです。そう考えて原因が分かった気分になれば、自分の精神も安定しますしね。じゃあ、誰が自分の押しのけて自分の家に住んでいるのか。こんなところで自分を世話している人が怪しい、とね。認知症の方の考えは、たどっていくとちゃんと筋は通っているんです」 なるほど。衰えた記憶と知覚と思考力で考えているから、妄想になってしまうということか。 「そうですね。でも真面目に必死に考えた結果ですから、周囲で我々が受け入れてあげると安心して、本人の心も安定するわけです」』、「「認知症の方の主観では、自分の身の上に、納得できないおかしなことが次々に起きているんです。なぜか自分は自分の家じゃないどこか違う馴染みのない場所で、家族じゃない知らない人に囲まれて暮らしている。なんでこんなことが起きているのか、みんな必死に考えて合理的な理由を探すんです。その結果がお母さまの場合、『誰かが自分の家に住み着いている』なんですよ」。 「Kホーム長は続ける。「お母さまは、今のグループホームにいる自分に納得していないのでしょう。なんでこんなところにいなくちゃいけないのか、それは誰か自分じゃない誰かが自分を追い出して家に住んでいるからに違いない、と考えるわけです。そう考えて原因が分かった気分になれば、自分の精神も安定しますしね。じゃあ、誰が自分の押しのけて自分の家に住んでいるのか。こんなところで自分を世話している人が怪しい、とね。認知症の方の考えは、たどっていくとちゃんと筋は通っているんです」 なるほど。衰えた記憶と知覚と思考力で考えているから、妄想になってしまうということか」、「認知症」の人に「妄想」が生まれる背景がよく理解できた。
・『一気に暴力的になってしまった  とにもかくにも母の妄想をスタッフが受け止め続けて半年たった9月のことだった。グループホームを訪問すると、スタッフのOさんの二の腕に長く痛々しいひっかき傷ができていた。驚く私にOさんは口ごもりつつも「いや、ちょっとお母さまにひっかかれてしまいまして。なんでこんなところに私を閉じ込めておくんだ、と」と説明する。 ぽかぽか殴られるだけなら痛くないが、同じ力でも引っかかれるとなるとこれだけの傷になるのか。Oさんに申し訳なくて、私はひたすら頭を下げるしかない。 「いや、いいんです。これが僕らの仕事なんですから。これで給料貰っているんですから」とOさんは言う。が、ひっかき傷に傷病手当なんてないのだろう。まるでひっかかれ損ではないか。 実はそれだけではなかった。その後、Kホーム長から説明を受けたのだが、母が一気に暴力的になっていたのである。9月2日に突如として暴力がエスカレートして、「私をなぜこんなところに閉じ込める」「お前が私の家に勝手に住んでいるんだろ」と入居者、スタッフを問わず突っかかるようになったのだ。当然スタッフが止めに入るが、母は抵抗する。Oさんの腕にできたひっかき傷はその時のものだったらしい。 「なぜ一気にエスカレートしたのか分かりません。一度脳梗塞をやってますから、なにか脳に微細な損傷が発生して攻撃的になったという可能性もあります。が、本当のところは分かりません」とKホーム長に言われ、もう私はすいませんすいません、と頭を下げるばかりである。 9月の敬老の日は、入居者と家族が集まって簡単なパーティを開く。この日も母は機嫌が悪かった。「私を家に帰せ」「誰か家に勝手に住んでいる。お前だろ」とスタッフに突っかかり、せっかくのパーティの雰囲気を壊し続ける。矢面に立つ私は文字通りの針のむしろだ。否、スタッフの方々は毎日がこの針のむしろなのだろうと想像する。 そこに、ホーム入居以来の母の必殺技が炸裂する。「このご飯まずい」。いや、せっかくのパーティメニューにそれはないだろお母さん。 入居者が妄想にかられてスタッフに暴力を振るうということは、グループホームにとって大きな問題であるようだ。「もしも母のような力の弱い高齢者でなかったら」「例えば大柄で力の強いおじいさんが認知症による妄想を起こしたら」と考えれば、それが施設介護における大問題であることはすぐに想像できる。 実際ネットを渉猟すると「入居者の暴力でかなりのけがをした」というような介護職の書き込みが見つかったりするのだ。入居者の振るう暴力は、介護スタッフの離職の原因となることもしばしばらしい。 一体どうすればいいのか……。 そんな日々の中、突如家の電話が鳴った。出ると、「お母さんだけどね……」と、母ではないか。「私帰るからね。早く迎えに来て」という。びっくりして「ちゃんと準備してからね」と返事すると、「早く来て、もうここやだ」という。すぐに電話はスタッフに代わり、「すみません。次に来られる時に説明しますから」と言われて電話は終わった』、「突如として暴力がエスカレートして、「私をなぜこんなところに閉じ込める」「お前が私の家に勝手に住んでいるんだろ」と入居者、スタッフを問わず突っかかるようになったのだ。当然スタッフが止めに入るが、母は抵抗する。Oさんの腕にできたひっかき傷はその時のものだったらしい」、「入居者が妄想にかられてスタッフに暴力を振るうということは、グループホームにとって大きな問題であるようだ」、「入居者の振るう暴力は、介護スタッフの離職の原因となることもしばしばらしい」、本当に困ったことだ。
・『管理室に入り込むようになった母  次の訪問は気が重かった。が、行かないわけにはいかない。なんと母は、「帰る」と、電話のあるホームの管理室に入り込もうとするようになったのだという。スタッフは母が部屋に入ると電話線を抜いて対抗し、「今ちょっと電話が通じませんから後にしましょうね」と母の興奮を静めて部屋から連れ出していたのだが、ついに突破されてしまって、我が家に母から電話が入るという事態になったのだった。暴力性と共に母の行動力もスケールアップしていたのである。 と、同時に私は、母がまだ自宅の電話番号と電話のかけ方を覚えていて、しかも「家に帰りたい」という欲求に対して「電話をかける」という解を見つけたことに驚いていた。明らかに妄想から始まった母の異常行動は、残っている認知能力をも駆動しているではないか。 母の暴力のエスカレートを受けて、ホームかかりつけ医のK医師は、母に精神科の薬を処方すると決定した。処方されたのはリスペリドン。商品名は「リスパダール」だ。基本的には統合失調症に処方する薬で、ドーパミンとセロトニンという2種類の神経伝達物質の働きを緩和する。神経細胞にはこの2つの神経伝達物質を受け止める受容体という仕組みがある。リスペドリンは、受容体に働きかけてドーパミンとセロトニンの作用を抑える機能を持つ。ごく簡単に要約するなら神経の伝達が良すぎて興奮しっぱなしになるのを鎮静させる薬理作用を持つ。 ここで気になるのがすでに母が服用し続けている商品名「アリセプト」「メマリー」という認知症の対症療法薬との飲み合わせだ。アリセプトの有効成分ドネペジルは、神経伝達物質のアセチルコリンの分解を遅らせて一定濃度を維持する機能を持ち、メマリーの薬効成分メマンチン塩酸塩は、同じく神経伝達物質のグルタミン酸の過剰放出を抑制することで神経の正常な機能を維持する。リスパダールとアリセプト・メマリーとの同時服用は禁忌にはなっていない。が、一方でリスパダールの高齢者への投与は慎重に行うようにという指定も出ている。リスパダールの投与は通常1日2回、1mgずつだが、母の場合は1日1回、就寝前に1mgから始め、様子を見て増量するということになった。) 効能の発生機序が異なるので、おそらくは同時服用も可能なのだろう――そう考える。しかし、ここまで来ると、もう素人ではいくら調べても服用させてよいやら悪いやら、まったくわからない。医師を信じて任せるしかない。 確かにリスパダールの服用開始後、母の攻撃的な怒りは収まった。 残念なことに妄想は消えなかった。それまでは「誰かが自分の家に勝手に住み着いている。お前だろう!」と怒りを周囲に向けていたものが、「誰かが自分の家に勝手に住み着いているのよ」と冷静に指摘する口調に変わったのだ。淡々と妄想を語る母は不気味といえば不気味だが、それでも怒りもあらわに暴力を振るう母よりはずいぶんとましである。 怒りは薬効成分の血中濃度が高い午前中は出ず、濃度が下がってくる夕刻から就寝前にかけて出てくることから、リスパダールが効いていることが間接的に確認できた。 グループホームのスタッフや家族に対する、妄想に基づく攻撃的な態度は出なくなった。これは本当にありがたかった。が、同時に意識レベルが若干下がってぼおっとするようになったかにも思える。しかし、そのぼおっとした状態がリスパダールの副作用なのか、それとも認知症の進行によるものなのかは、なんとも判断し難い。 グループホームでの精神科の薬品の処方には、様々な意見がある。「認知症は精神の病気ではない。安易に精神科の薬品を処方すべきでない」とする意見があることは承知している。「薬を飲ませて意識レベルを低下させ、管理しやすくしているんだ」という意見があることも知っている。 その上で、これはもう気を付けつつも処方するしかないのだろう、というのが母の妄想と暴力を体験しての実感である。あのまま暴力をのさばらせ放題にした場合、グループホームのスタッフにかかる負荷は大変なものになっただろうと容易に予想できるのだ。とても家族から「精神科の薬の処方はやめてくれ」と言える状況ではなかったと判断している』、「これはもう気を付けつつも処方するしかないのだろう、というのが母の妄想と暴力を体験しての実感である。あのまま暴力をのさばらせ放題にした場合、グループホームのスタッフにかかる負荷は大変なものになっただろうと容易に予想できるのだ。とても家族から「精神科の薬の処方はやめてくれ」と言える状況ではなかったと判断」、当然だ。
・『鉛筆で描いた絵をざっと消すように  元気な頃の母は、決して暴力的な人ではなかった。認知症により脳が壊れていくことで暴力を抑制していた機能が働かなくなり、急に暴力的になったのだろう。 ひっかき傷の被害を受けたスタッフのOさんがしみじみと話してくれた。 「認知症の方の人格というかその人のあり様というか、そういうものは、鉛筆で描いた絵を消しゴムで、ざ、ざ、と大きなストロークで消していくように感じることがあるんですよ。絵の一部が消えてもその絵が何だったかはわかるんです。認知症になってもその人はその人なんです。でも、消えてしまった部分が増えていくと、あるところで、ふっとその絵がなんだかがわかりにくくなるんです」 その通りだと思った。認知症を患っても母は母だ。だが、妄想を抱いて怒る母は、もう以前の母と同人格とは思えない。 しかし、同時に私は「Sさんね、『ボクは家に帰るよ』と言って出て行ったの」という言葉も思い出していた。この言葉が出たときの母は、認知症以前の元気な頃の母だったのではないか。 だから私はOさんにこう答えた。「でも、その絵は鉛筆であると同時に生乾きの墨絵みたいなところもあって、消えたところに下から墨が染み出てきて、おぼろに以前の形が見えたりもする、と」 Oさんは叫ぶようにして言った。「ああ、そうですそうです!……ほんと、一筋縄ではいかないですね」』、「「認知症の方の人格というかその人のあり様というか、そういうものは、鉛筆で描いた絵を消しゴムで、ざ、ざ、と大きなストロークで消していくように感じることがあるんですよ。絵の一部が消えてもその絵が何だったかはわかるんです。認知症になってもその人はその人なんです」、「その絵は鉛筆であると同時に生乾きの墨絵みたいなところもあって、消えたところに下から墨が染み出てきて、おぼろに以前の形が見えたりもする、と」。「ほんと、一筋縄ではいかないですね」、その通りのようだ。
タグ:「入居者が妄想にかられてスタッフに暴力を振るうということは、グループホームにとって大きな問題であるようだ」、「入居者の振るう暴力は、介護スタッフの離職の原因となることもしばしばらしい」、本当に困ったことだ。 「「認知症の方の人格というかその人のあり様というか、そういうものは、鉛筆で描いた絵を消しゴムで、ざ、ざ、と大きなストロークで消していくように感じることがあるんですよ。絵の一部が消えてもその絵が何だったかはわかるんです。認知症になってもその人はその人なんです」、「その絵は鉛筆であると同時に生乾きの墨絵みたいなところもあって、消えたところに下から墨が染み出てきて、おぼろに以前の形が見えたりもする、と」。「ほんと、一筋縄ではいかないですね」、その通りのようだ。 「これはもう気を付けつつも処方するしかないのだろう、というのが母の妄想と暴力を体験しての実感である。あのまま暴力をのさばらせ放題にした場合、グループホームのスタッフにかかる負荷は大変なものになっただろうと容易に予想できるのだ。とても家族から「精神科の薬の処方はやめてくれ」と言える状況ではなかったと判断」、当然だ。 日経ビジネスオンライン 「突如として暴力がエスカレートして、「私をなぜこんなところに閉じ込める」「お前が私の家に勝手に住んでいるんだろ」と入居者、スタッフを問わず突っかかるようになったのだ。当然スタッフが止めに入るが、母は抵抗する。Oさんの腕にできたひっかき傷はその時のものだったらしい」、 「特養」か「民間」か、「介護型」か「自立型」か、「入居金」や生活費などの負担金などの格差が大きいだけに、信頼できる資料に基づいた慎重な検討が必要だ。 (その8)(介護人材は2025年に32万人不足!要介護者600万人時代に「介護難民」にならない備え、母さん ごめん2 二題:「家に帰る」という認知症の入居者 スタッフはどう導くのか、身の置き所がない 母 ホームのスタッフにケガをさせる) 介護 そんな人には、介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)が検討の対象になる。特養並みの料金のホームから、入居金が数百万~数千万円のホームまで、選択の幅は広い。 金融資産や自宅の処分で5000万円以上を用意できる「おひとりさま」や「おふたりさま」なら、元気なうちに自立者向けの施設に入り、趣味やスポーツを通して仲間と余生を楽しむという道もある」、保有している資産の格差で如実に差が出てくるようだ。 なるほど。衰えた記憶と知覚と思考力で考えているから、妄想になってしまうということか」、「認知症」の人に「妄想」が生まれる背景がよく理解できた。 「救いは、費用の安い特養が入りやすくなっていることだろう。 2015年に入居条件を要介護3以上に限定したことから、入居期間が短くなり、数百人と言われた待機者もかなり少なくなった」、「特養は要介護3以上の認定が必要で、個室タイプが少ない、なんとなく“施設感”が漂う、など抵抗感を持つ人もいるだろう。 「配偶者の死別後、子どもがいてもそのまま一人で暮らす高齢者が多い。予備軍を入れると1000万人を超える「おひとりさま」は、介護が必要になった時に資金的な余裕がなければ、料金が安い施設への入居しか選択肢はなくなる」、 「なり手が少なく有効求人倍率は15倍 高齢化が進むヘルパーは絶滅危惧種」、「訪問診療先で医師が殺害されるという悲惨な事件が埼玉県内で起きた」、「埼玉県は警備会社と契約し複数で訪問するための補助金を出すなどの対策を検討しているが、財源に余裕のない自治体ではとうてい無理な話」、「政府もない袖はふれないので、介護保険に回す財源は今後も多くを期待できない」、やはり「介護」は非効率な自宅ではなく、効率的な「施設」中心になるのだろう。 「Kホーム長は続ける。「お母さまは、今のグループホームにいる自分に納得していないのでしょう。なんでこんなところにいなくちゃいけないのか、それは誰か自分じゃない誰かが自分を追い出して家に住んでいるからに違いない、と考えるわけです。そう考えて原因が分かった気分になれば、自分の精神も安定しますしね。じゃあ、誰が自分の押しのけて自分の家に住んでいるのか。こんなところで自分を世話している人が怪しい、とね。認知症の方の考えは、たどっていくとちゃんと筋は通っているんです」 「「認知症の方の主観では、自分の身の上に、納得できないおかしなことが次々に起きているんです。なぜか自分は自分の家じゃないどこか違う馴染みのない場所で、家族じゃない知らない人に囲まれて暮らしている。なんでこんなことが起きているのか、みんな必死に考えて合理的な理由を探すんです。その結果がお母さまの場合、『誰かが自分の家に住み着いている』なんですよ」。 り大変そうだ。 何かの拍子に母は怒り出す。「なんでお前、私の家に上がり込んで勝手に住んでいるんだ。誰の許しを得てそんなことしているんだ」。すると介護をするスタッフは「はい、すみません」とまず謝る。そして「あんまりきれいなお家だったんで、つい住んでみたくなってしまったんです。ごめんなさい」と続ける。つまりは母の自尊心をくすぐるわけだ。すると勝ち誇った母は「もうしないか?」と問いかける。「はい、もうしません。ごめんなさい」……で、母は納得しておとなしくなる」、「介護をするスタッフ」も事前のシナリオに従っているとはいえ、やは 前兆はあったのだ。しかし気が付いていなかった。認知症を発症した時と同じ過ちを犯してしまったのだ」、「妄想の発現以来、母の症状は徐々に進行し、程なく「誰かが自分のいない間に、自分の家に勝手に入り込んで住み着いている」というものに変化した。そしてその誰かが、その都度周囲にいるスタッフだと思い込むようになってしまったのである。 「在宅介護の限界は排泄です・・・ヘルパーさんを長時間入れると、自費負担が増えてあっという間に月の費用が30万円をこえてしまう。それなら、20万円以下の費用で済む施設に移るというようなケースが多いですね」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン「介護人材は2025年に32万人不足!要介護者600万人時代に「介護難民」にならない備え」 「母は「結婚しようと言ってくれた」と繰り返し、私はそれに「良かったね」と繰り返し答える以外の手を持たない」、確かに真実を打ち明けても、「母親」がそれを受け入れるかは疑問だ。「母から「あの子が帰ってくるって電話してきたから、私一緒に住む。だからもう家に帰る」と言われた。あの子とは在ドイツの妹のこと。もちろん妹は母に電話していない。妹がドイツから帰国するという事実もない。が、母は「あの子が帰ってくるから一緒に住む。だから帰る。ここから出して」と言い募る。 松浦 晋也氏による「身の置き所がない。母、ホームのスタッフにケガをさせる」 「「なるべく詳細に記入してください。それをとっかかりにして私たちはお母様と会話しますから」と言われたのだが、実際にホームにお世話になって、会話のきっかけが大変重要であることを痛感した」、とはいえ、「我々スタッフの中にスキューバダイビングの経験者はいないんです。一体どうやって話を合わせていけばいいんでしょうか」、ニッチな趣味の場合は、確かに難しそうだ。ただ、「スキューバダイビング」をしていた人が、「認知症」になるというのは、何かピントこないものがある。 「精神的・情緒的な病態が出てきた場合には、精神系の投薬はやむを得ない、むしろ必要なものと考える。罵声ぐらいならまだしも、暴れてスタッフがけがをするということもあり得るのだから」、確かに「スタッフがけがをする」のは避ける必要がありそうだ。 「認知症の方の症状は多様だ。それぞれ固有の認知症の現れ方を抱えている。と、同時にその奥底には共通して、「不安」と、不安からの脱出手段としての「帰る」が渦巻いているのである。 もう少し認知症が進行したか、と思える人になると、異常行動が現れるようになる。それは以前も書いた徘徊だったり、靴を自室に持っていったりしてしまうといったものだ」、「グループホームで母以外の認知症の方と接することで、やっとこさ認知症の根底に「不安」があることに気が付いた」、やはり「母親」だけを見ているよりは、客観視できるからなのだろう。 まったく驚く様子もないスタッフリーダーのOさん。Oさんは、「大丈夫ですよ。今日は遅いのでちゃんとベッドを用意しました。泊まっていってくださいな。ご家族にも連絡しておきましたから」と柔らかく話しかける。「でも悪いわ。泊まるんならお金払わなくちゃ」とおばあさんが言うと、「もう頂戴してますから払わなくてもいいんですよ」と返す。「……そう、そうなんだ。じゃあお世話になるわ。おやすみなさい」と自室に戻っていくおばあさん」、「認知症」患者への対応へのあと1つの重要なノウハウのようだ。 「大変活発にお話をするおばあさんがいた。歩行や座る、立つといった動作は一般人と変わりなく、スタッフに呼ばれればさっさと食事の支度に参加し、そつなく会話を交わす」、「その活発なおばあさんが起きてきた。おや、さきほど「おやすみなさい」と言って就寝したはずではないか、と不審に思う間もなく、「ねえ、なぜ私ここにいるのかしら。もう夜も遅いし家に帰らなくちゃ」と言う。 えっ、と驚く私。 ハウがあるようだ。 「犬を連れて帰ろうとすると、おばあさんの一人が「あー、楽しかった。じゃあ私も帰ろうかしら」といって立ち上がったりする」、「諫めるようなことは言わない。「そうですか。もう少ししたらお茶とお菓子を出すつもりだったんですよ」とか、「今日は晩ご飯も食べていきませんか」というように、相手の意識を「帰る」というところから引き離すようにして注意をそらす。すると「あら、悪いわ」とか言いながら、おばあさんは再度腰を下ろし、話をしているうちに帰ろうとしていたことを忘れるのである」、「認知症」患者の扱いには、思いもかけないノウ 「グループホームは「健康に問題がない認知症の人」の入る施設だ。このため看取りは、特に悪いところのない老衰による最期を意味する。明らかに病気による衰弱が始まった場合は、医療行為が必要となるので病院に入院することになる。 看取りに対する対応は、グループホームによって色々違うのだそうだ。看取りに対応していないグループホームもあって、その場合は、看取り対応の施設や、病院あるいはホスピスなどに送り出す」、どうせなら「看取りに対応している」「グループホーム」の方が便利だ。 松浦 晋也氏による「「家に帰る」という認知症の入居者、スタッフはどう導くのか」 「認知症」、「症状が進むと妄想が発現するのは、決して珍しいことではない。 母の記憶障害に気が付いたのが2014年7月だから、そこから3年9カ月で、妄想が出るまで症状が進行したわけである。 しかし、こんなに唐突に症状が出るとは思ってもいなかった・・・はっと気が付いた。「Sさんが結婚しようと言ってくれた」――これこそは、妄想の前駆症状ではなかったか。 そのうちに「私をこんなところに閉じ込めて、お前はひどい。むごい息子だ」と怒りだし、ぽかぽかと私を叩きはじめた。力が落ちているので痛くはない。が、身に覚えのないことで責められ、叩かれるのは精神を消耗する」、母親は、自分の願望を事実と取り違えてしまったようだ。
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英国(その1)(英トラス首相辞任の背景「年金基金で損失25兆円」が他人事ではない理由、スーナク新首相は混乱のイギリスを救えるのか 不穏な元首相、健全財政と景気の両立は難しく) [世界情勢]

今日は、英国(その1)(英トラス首相辞任の背景「年金基金で損失25兆円」が他人事ではない理由、スーナク新首相は混乱のイギリスを救えるのか 不穏な元首相、健全財政と景気の両立は難しく)を紹介しよう。

先ずは、10月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「英トラス首相辞任の背景「年金基金で損失25兆円」が他人事ではない理由」を紹介しよう。
・『英国のトラス首相が10月20日、辞任した。9月6日の政権発足からわずか44日、異例の短命政権となったのはなぜなのか。経済と金融市場が混乱すると、社会全体で閉塞感は高まってしまう。そうならないためにも各国は、英国史上最短に終わったトラス政権の教訓を生かすべきだ』、「トラス政権の教訓」とは興味深そうだ。
・『財源を国債増発に依存するのは無理だった  9月下旬から、世界の金融市場では英トラス政権の財政政策に対する懸念が急上昇していた。世界で物価が高騰する状況下、減税を行い、その財源を国債増発に依存することには無理があった。重要な点は、財政・金融政策の組み合わせ=ポリシーミックスのリスクが一段と上昇していることだ。トラス首相の辞意によって、それは一段と明確化した。 世界的に、エネルギー資源や食料の価格は高止まりし、一般家庭の電力料金なども上昇している。EUでは天然ガス価格の上限設定をめぐり、イタリアとドイツなどで利害が食い違っている。財政支出を増やして、家計への支援を強化しようとする政治的発想は各国で強くなっている。 今後、米国などでインフレ鎮静化のために金融政策は引き締められる。それによって、世界は景気後退に向かうだろう。 そうした状況下で国債増発懸念が高まれば、9月下旬以降の英国のように金利が急騰し、金融市場が大きく混乱するだろう。その結果、社会と経済全体で不満が膨張し、政治基盤は追加的にぜい弱化する展開が予想される。どう財源を確保し、持続可能な政策を運営するか、これまで以上に各国政府の政策運営手腕が問われている』、「トラス」氏は、司法長官、大法官、国際貿易大臣、商務庁長官、外務・英連邦担当大臣などを経験したが、財務大臣は未経験だった。
・『財源不明の大規模減税で鮮明化した矛盾  9月下旬、英国のトラス政権は財源が不明なまま、大規模減税などの経済対策を発表した。特に、減税規模は当初の予想を上回った。総額450億ポンド(約7兆5000億円)の減税策には、予定されていた19%から25%への法人税率引き上げの凍結や、所得税率の引き下げなどが含まれていた。 トラス政権下のクワーテング財務相は財源を明示しなかった。ということは、国債の増発は避けられなくなる。税収が減少する一方で国の債務が増加すれば、財政悪化懸念の上昇は避けられない。減税と国債増発のポリシーミックスは持続可能ではない。 そうした矛盾が鮮明になった負のインパクトは大きかった。まず、英国の国債流通市場では超長期を中心に国債の供給が急増するとの懸念が大きく高まった。主要投資家は英国債(ギルト)を投げ売った。 大型減税が発表される前日の9月22日、イングランド銀行(BOE、英中央銀行)は7会合連続での利上げを決定した。保有する国債売却を開始する方針も発表したばかりだった。これまで以上に英金利の上昇圧力が強まるタイミングで、国債増発懸念が大きく高まったわけだ。短期から超長期までの国債流通利回りは、急速かつ大幅に上昇(債券価格は下落)した。 金利上昇によって主要投資家は、英国経済に深刻な打撃が生じる先行き不安を追加的に高めた。主要投資家は英国株を売却し、スターリング・ポンド(GBP)もドルなどに換えた。 トラス政権の政策の矛盾を発端に、大規模な「英国売り」が発生した結果、国民生活に負の影響が及ぶとの危機感が社会全体で急速に高まった。そのインパクトは大きく、トラス首相は辞意を表明せざるを得なくなった。 持続可能ではない各種政策が社会・経済に与える負のインパクトはこれまで以上に大きくなっている。その一つが、英国の年金基金への打撃だ』、どういうことなのだろう。
・『英年金基金が大規模な資産売却に追い込まれた  9月下旬以降の金利急騰によって、英国では資産売却に追い込まれる年金基金が急速に増えた。英国では、「ライアビリティ・ドリブン・インベストメント」(LDI)と呼ばれる資金運用を行う年金基金が増えてきている。LDIは、「債務に連動した資金運用」などと訳される。 具体的には、将来に発生するキャッシュフローを予測し、それを満たす利得の確保を目指す。そのために、「金利スワップ」(固定金利と変動金利などキャッシュフローを交換するデリバティブ取引)を利用することが多い。 リーマンショック後は、世界的に低金利環境が長期化した。中長期的な金利収入を確保するために、資金を借り入れて(レバレッジをかけて)金利スワップなどデリバティブ取引を増やす英国の年金基金はさらに増加した。スワップ取引を行う投資家は、相手方の金融機関に国債などを担保として差し入れる。 金融市場が落ち着いている場合、レバレッジをかけた資金運用に大きな問題が発生することは少ない。しかし、トラス政権の大規模減税発表によって、英国債は急落した。担保価値の急落によって追加の担保支払い要請(マージンコール)に直面する年金基金は急増した。資金捻出のために年金基金は保有する国債の売却に追い込まれた。 「金利急騰によって英年金基金全体で25兆円の損失が発生した」との報道もある。最終的に、それは年金受給者である国民の厚生を低下させる恐れがある。 トラス政権の減税案は、英国のインフレ鎮静化も一段と難しくさせた。9月、英国の消費者物価指数は前年同月比10.1%上昇した。本来、イングランド銀行は、追加利上げや国債売却など金融引き締めを強化すべき局面にある。しかし市場混乱による年金基金への打撃を緩和するために、臨時の国債買い入れを行わざるを得なくなった。 10月14日に買い入れ措置は終了した。その後、イングランド銀行は、年内は20年超の国債を売却しない方針を示した』、「資金を借り入れて(レバレッジをかけて)金利スワップなどデリバティブ取引を増やす英国の年金基金はさらに増加」、「「金利急騰によって英年金基金全体で25兆円の損失が発生した」との報道も」、「最終的に、それは年金受給者である国民の厚生を低下させる恐れ」、「トラス政権の減税案は、英国のインフレ鎮静化も一段と難しく」、金融市場の反応は予め分かっていた筈だが、それを考慮してなかったとすれば、余りにお粗末だ。
・『先行き懸念高まる世界経済と金融市場  イングランド銀行の金融引き締めは遅れる。その負のインパクトは軽視できない。今後も世界各国でエネルギー資源や食料の価格は高止まりするだろう。となると後々、イングランド銀行が、想定を上回るペースで金融を引き締める可能性が高まったと考えられる。それは、世界の実体経済と金融市場にとって大きなマイナスだ。 急速な英国の利上げ懸念が高まれば、世界全体でリスクオフの動きがさらに鮮明となるだろう。その場合、欧州ではクレディ・スイスの経営に対する不安心理が追加的に高まり、株価が大きく下落する展開は排除できない。 消費者心理は悪化し、EU加盟国の消費、投資などは下振れるだろう。リスクオフの加速により中国からの資金流出も加速する恐れは増す。欧州、中国経済の本格的な景気後退リスクは追加的に高まるだろう。 また、現在は相応の底堅さを維持する米国経済でも、先行き懸念は高まっている。米FRB関係者は、一段と追加の金融引き締めを強化する考えを強めている。今後、金利は一段と上昇するだろう。すると企業と家計の利払い負担は増える。 また、リストラが増えて米国の労働市場は悪化し、個人消費は減少するだろう。それは、世界経済の下支えが弱まることを意味する。金利上昇によって米国の株価がさらに下落する恐れも増している。世界全体が本格的な景気後退に陥る恐れは一段と高まっている。 そうした状況下、各国で、政府により手厚い支援を求める世論が急速に高まることは想像にたやすい。懸念は、政治家が近視眼的に考え、世論に迎合しがちであることだ。 有権者の負担増を避け、財源が不明なまま国債増発を重視する国では、これまで以上に金利が上昇し、追加的に実体経済と金融市場の悪化懸念が高まるだろう。その場合、経済と金融市場の混乱に拍車がかかり、社会全体で閉塞感は高まってしまう。そうならないためにも各国は、英国史上最短に終わったトラス政権の教訓を生かすべきだ』、ポピュリスト的政策がイタリアなどでも強まっているが、それが国債利回りを上昇させることで、ブレーキ役になればいい。しかし、日本では-0.1%の短期金利、長期金利を0%とするイールドカーブ・コントロール(YCC)をしているので、マーケットが警鐘を発するメカニズムを始めから殺しているという極めて危険な状態にある。日本の場合、まずはYCCを外すことからやるべきだが、その場合、国債利回りの急騰、新規国債発行コスト上昇を覚悟する必要がある。

次に、10月25日付け東洋経済オンラインが掲載した第一生命経済研究所主席エコノミストの
田中 理氏による「スーナク新首相は混乱のイギリスを救えるのか 不穏な元首相、健全財政と景気の両立は難しく」を紹介しよう。
・『わずか44日で辞任に追いこまれたトラス前首相。スーナク新首相はイギリスの政局の混乱を収め、市場の信頼に足る財政計画とインフレ対策を両立させるという難題に直面している。 大型減税と規制緩和による経済再建で「第2のサッチャー」を目指したイギリスのリズ・トラス首相は20日、政策迷走による金融市場の混乱と党内外の信用失墜を招き、就任からわずか44日で辞任表明に追い込まれた。トラス政権の経済政策(トラスノミクス)はなぜ失敗に終わったのか。 減税と規制緩和による経済活性化のストーリーは、具体策と説得力に乏しかった。巨額の財政悪化につながるエネルギー料金の凍結と大型減税の発表を先行し、予算責任局(OBR)の財政評価も求めなかったことで、財政規律を軽視していると受け止められた。 イングランド銀行(BOE)が過去の量的緩和で購入した資産の売却(量的引き締め)を開始するタイミングと国債の大幅増発観測が重なり、国債需給悪化に対する不安に拍車がかかった。 国債価格の下落(国債利回りの上昇)により、年金基金の流動性不安が広がった。多くの年金基金は、低金利下で年金の給付水準を確保するため、国債を担保に金融派生商品(デリバティブ)などに投資していた。担保価値の目減りで追加の証拠金の提出が求められ、それに応じるための国債の換金売りが、国債価格のさらなる下落につながるという悪循環をもたらした』、「担保価値の目減りで追加の証拠金の提出が求められ、それに応じるための国債の換金売りが、国債価格のさらなる下落につながるという悪循環」、英国金融界の常識ではあるが、それを無視した「トラス前首相の無知ぶりには驚かされた。
・『後任選びを急いだ保守党  トラス首相は保守党の党首選を通じて、財務省主導の経済運営やBOEの物価抑制の取り組みが不十分と批判してきた。トラス氏は首相就任後、閣僚やアドバイザーの顔ぶれを一新し、自身に近い人物で固めた。盟友のクワジ・クワーテング氏を財務相に任命し、官邸主導で経済運営を取り仕切ろうとした。だが、減税と規制緩和に固執し、政策発表の手順や危機後の対応でも経験不足を露呈した。 トラス首相の後任を選ぶ保守党の党首選は、立候補に必要な推薦議員の数を前回の20名から100名に引き上げ、立候補者を最大で3名に絞るとともに、議員投票の開始から党員投票の結果が判明するまでの期間を前回の約1カ月半から最長でも5日に短縮し、英国各地での遊説も取りやめた。 英国では2010年にデイヴィッド・キャメロン首相が労働党から政権を奪取して以来、保守党による連立ないし単独政権が続いている。2016年の欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票の直後に就任したテリーザ・メイ首相、離脱実現を掲げて2019年に就任したボリス・ジョンソン首相、そして9月に誕生したトラス首相と、過去3代の首相はいずれも保守党の党首選を勝ち抜いた人物で、首相就任時に総選挙で選ばれていない。 スキャンダル続きのジョンソン首相が退陣に追い込まれた後、トラス首相は物価高騰の負担を軽減し、景気を浮揚させるどころか、経済を混乱させただけで終わった。国民が物価高騰に苦しむなかで、さらなる党内抗争を繰り返せば、有権者の一段の保守党離れを招きかねない。一刻も早く後継党首(首相)を選出する必要があった。 後継党首選は、①前回党首選で5回の議員投票をいずれも一位で通過したものの、一般党員による決選投票でトラス氏に敗れたリシ・スーナク元財務相、②党首解任劇からわずか3カ月での電撃復帰を目指したジョンソン元首相、③前回党首選で最終3候補まで残ったペニー・モーダント上院議長兼下院院内総務の3人の争いとなった』、なるほど
・『保守党の支持率は史上最低圏  トラスショック後の金融市場の動揺封じ込めと堅実な政策運営に対する期待から、スーナク氏が順調に推薦人を集めていくなか、不気味な存在感を示したのが休暇先から急遽帰国したジョンソン元首相だった。トラス政権による政策迷走の後、保守党の支持率は史上最低圏に沈み、野党・労働党に大幅なリードを許している。 ジョンソン元首相には2019年の総選挙で、労働党が牙城としてきたイングランド北部の選挙区を次々と奪い、保守党に地滑り的な勝利をもたらした実績がある。次の総選挙で保守党に勝利をもたらせる人物として、ジョンソン氏に期待を寄せる声も浮上していた。同氏は今も草の根の党員から絶大な人気を誇る。立候補に必要な100名の推薦議員を確保し、党員投票に持ち込めば、首相返り咲きも夢物語ではなかった。 だが、相次ぐスキャンダルで3カ月前に辞任に追い込まれたばかりのジョンソン氏の再登板は劇薬となりかねない。保守党の政治倫理は地に落ち、党内の分断が一段と進むおそれがあった。 パーティーゲート(コロナの行動制限規則を破り、パーティーを開催あるいは参加した疑惑)をめぐる同氏の疑惑追及はなおも続いており、再登板後に再び首相退任に追い込まれ、後継党首の選出が必要となれば、保守党の権威は一段と失墜する。 過去の政権運営や党首選でジョンソン氏を支持した強硬離脱派議員の一部もスーナク候補支持に回り、結局、ジョンソン氏は将来の首相再登板を視野に、名誉ある撤退を選択した。モーダント氏も立候補を取り下げ、立候補の届出期間を迎えた24日、スーナク氏の後継党首選出と次期首相就任が決まった。 後継首相の速やかな選出でひとまず結束した保守党だが、英国を二分した2016年の国民投票とEU離脱の評価、ジョンソン政権時代の政治倫理の欠如や強引な政治手法も加わり、党内の亀裂は深まっている』、「ジョンソン」氏が早目に降りたのは、「パーティーゲート」が想像以上に深刻だった可能性がある。
・『次の総選挙ではジョンソン元首相がリベンジ出馬か  新たな党首に選出されたスーナク氏は、選出直後のスピーチで団結を呼びかけた。スーナク氏は若い頃から英国のEU離脱を支持し、2016年の国民投票でも離脱に投票したが、強硬離脱派とは一定の距離を保ち、財務相就任後も離脱のメリットを声高に主張することはなかった。 こうした同氏の姿勢は、党内の右派勢力からは懐疑的に見られがちだが、党内中道・左派勢力との橋渡し役となる可能性を秘めている。自身に近い立場の議員で閣僚を固めたトラス氏と異なり、近く発表予定の閣僚人事では、党内の幅広い人材が登用される公算が大きい。 不安要素もある。ジョンソン氏は出馬を断念した声明を、「私には提供できるものが沢山あると信じているが、残念ながら今はその時ではない」との言葉で締め括った。同時に、「私は2024年の総選挙で保守党に勝利をもたらすことができると信じている」とも語っており、次の総選挙までの首相復帰を匂わす発言もしている。 スーナク氏がジョンソン氏の首相退陣の引き金を引いたのと同様に、スーナク氏が政権運営や党運営に行き詰まれば、ジョンソン氏がいつでも牙を向く機会を窺っている。 トラス首相がクワーテング財務相を更迭し、後任のジェレミー・ハント財務相がトラス減税の大半を撤回した後も、政府債務の均衡には追加で300~400億ポンド程度の財政赤字の削減が必要とされる。 政府は10月31日に前倒しされた中期財政計画の発表と合わせて、新たな増税や歳出削減策を発表する。国民保険料の引き上げ、国防費やインフラ投資の削減、年金給付の抑制などが検討されるとみられ、議会審議は紛糾が予想される』、「10月31日に前倒しされた中期財政計画の発表と合わせて、新たな増税や歳出削減策を発表する。国民保険料の引き上げ、国防費やインフラ投資の削減、年金給付の抑制などが検討されるとみられ、議会審議は紛糾が予想される」、さてどんな「中期財政計画」になるんだろう。
・『マイナス成長への転落は避けられず  財政規律を重視するスーナク首相の誕生で、金融市場の不安心理は後退するとみられるが、大型減税の撤回と追加の財政赤字削減策により、英国景気のマイナス成長への転落は避けられない。家庭向けのエネルギー料金凍結を半年に短縮したことで、来年4月以降のエネルギー料金が再高騰し、物価が高止まりする可能性もある。 政策転換で短期的にはBOEによる利上げ幅の大幅拡大の可能性は遠のいたが、当初の想定以上に利上げ局面が長期化するおそれがある。家計のエネルギー負担の軽減を続けるには、新たな財源を確保しなければならない。スーナク首相は、保守党の信頼回復と党内融和を進めるとともに、緊縮財政と金融引き締め下で、物価高騰による生活困窮対策と景気浮揚を目指すことになり、その前途は多難と言わざるをえない』、「スーナク首相」の「前途は多難と言わざるをえない」のは確かなようだ。
タグ:「トラス政権の教訓」とは興味深そうだ。 英国 (その1)(英トラス首相辞任の背景「年金基金で損失25兆円」が他人事ではない理由、スーナク新首相は混乱のイギリスを救えるのか 不穏な元首相、健全財政と景気の両立は難しく) ダイヤモンド・オンライン 田中 理氏による「スーナク新首相は混乱のイギリスを救えるのか 不穏な元首相、健全財政と景気の両立は難しく」 ポピュリスト的政策がイタリアなどでも強まっているが、それが国債利回りを上昇させることで、ブレーキ役になればいい。しかし、日本では-0.1%の短期金利、長期金利を0%とするイールドカーブ・コントロール(YCC)をしているので、マーケットが警鐘を発するメカニズムを始めから殺しているという極めて危険な状態にある。日本の場合、まずはYCCを外すことからやるべきだが、その場合、国債利回りの急騰、新規国債発行コスト上昇を覚悟する必要がある。 真壁昭夫氏による「英トラス首相辞任の背景「年金基金で損失25兆円」が他人事ではない理由」 どういうことなのだろう。 「担保価値の目減りで追加の証拠金の提出が求められ、それに応じるための国債の換金売りが、国債価格のさらなる下落につながるという悪循環」、英国金融界の常識ではあるが、それを無視した「トラス前首相の無知ぶりには驚かされた。 東洋経済オンライン 「ジョンソン」氏が早目に降りたのは、「パーティーゲート」が想像以上に深刻だった可能性がある。 「スーナク首相」の「前途は多難と言わざるをえない」のは確かなようだ。 「資金を借り入れて(レバレッジをかけて)金利スワップなどデリバティブ取引を増やす英国の年金基金はさらに増加」、「「金利急騰によって英年金基金全体で25兆円の損失が発生した」との報道も」、「最終的に、それは年金受給者である国民の厚生を低下させる恐れ」、「トラス政権の減税案は、英国のインフレ鎮静化も一段と難しく」、金融市場の反応は予め分かっていた筈だが、それを考慮してなかったとすれば、余りにお粗末だ。 「トラス」氏は、司法長官、大法官、国際貿易大臣、商務庁長官、外務・英連邦担当大臣などを経験したが、財務大臣は未経験だった。
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知的財産(その3)(大手出版社が19億円請求「漫画村」の根深い問題 『ONE PIECE』などの「タダ読み」撲滅が難航、損失100億 シャインマスカット「中国流出」の痛恨 中国の栽培面積は日本の30倍 逆輸入の危機も、多くの人が著作権を持つ今、「エセ著作権」に注意 イチャモンや妄想が訴訟につながるケースも) [産業動向]

知的財産については、2月24日に取上げた。今日は、(その3)(大手出版社が19億円請求「漫画村」の根深い問題 『ONE PIECE』などの「タダ読み」撲滅が難航、損失100億 シャインマスカット「中国流出」の痛恨 中国の栽培面積は日本の30倍 逆輸入の危機も、多くの人が著作権を持つ今、「エセ著作権」に注意 イチャモンや妄想が訴訟につながるケースも)である。

先ずは、8月6日付け東洋経済オンライン「大手出版社が19億円請求「漫画村」の根深い問題 『ONE PIECE』などの「タダ読み」撲滅が難航」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/609405
・『混沌の漫画市場に、秩序はもたらされるか。 小学館と集英社、KADOKAWAの出版大手3社は7月28日、出版コンテンツの海賊版サイト「漫画村」の運営者に対し約19.3億円の賠償を求め、東京地方裁判所に提訴した。 漫画村は2016年に開設され、漫画を中心に7万巻超の出版コンテンツを違法に掲載。閉鎖された2018年4月までの1年弱だけで、アクセス数が5億回を上回る、当時最大の海賊版サイトだった。 閲覧回数に応じて広告収入を得る無料サイトとして、2017年11月には月間で6000万円強を売り上げたとの推計もある。2019年にはサイト関係者の4人が、次々と著作権法違反などで逮捕された。サイト運営者は2021年に福岡地裁で有罪判決が確定した』、「閉鎖された2018年4月までの1年弱だけで、アクセス数が5億回を上回る、当時最大の海賊版サイトだった」、そんな事件があったことをおぼろげながら思い出した。
・『コンテンツが「タダ読みされた」損害  ただ、今回提訴した3社は刑事責任のみならず、自社コンテンツが「タダ読み」された損害を民事でも追及することで、海賊版の抑止を図る構えだ。 損害賠償額は漫画村のアクセス数から推計した1巻当たりの平均閲覧数と販売価額をかけ合わせて算出。最も請求額が大きいのは『YAWARA!』など7作品が掲載された小学館で約10億円。集英社は『ONE PIECE』など2作品で約4.8億円、KADOKAWAは『ケロロ軍曹』など8作品で約4.5億円を請求する。 3社は「(漫画家から)作品を預かっている出版社にとって、漫画村運営者の民事的責任を明らかにすることは、現実的な回収可能性をおいても避けることのできない責務」とコメントした。 漫画村は、アクセスのほとんどが日本からだったが、「日本と国交がなく、著作権が保護されていない国で運営しているため、違法ではない」と主張。連絡窓口も設けられていなかったことから、権利者が削除要請をできないまま、タダ読みされた被害額が3200億円に上ったとされている。 2018年に入り、国会で海賊版についての議論が加速。政府から海賊版サイトに対する緊急対策案が発表され、悪質サイトの閲覧防止措置も検討された結果、漫画村は閉鎖に追い込まれた。 出版科学研究所によると、2021年の漫画市場は6759億円で過去最高を更新。正規ルートの電子コミックが社会に定着し、活況を呈している。しかし、海賊版による被害額は1兆0019億円と、正規市場をはるかに上回る規模に膨張した。 背景には巣ごもり需要だけでなく、漫画村が残した影響が透ける。まず、世界中の悪徳業者に「日本人向けに漫画の海賊版サイトを作れば、膨大なアクセスを集められる」と知らしめることとなった点だ。 海賊版対策を取りまとめる業界団体・ABJの伊東敦氏は「漫画村の運営者は日本に住んでいたが、現在はほとんどのサイト運営者が海外在住」と危機感を募らせる』、「2021年の漫画市場は6759億円で過去最高を更新」、「海賊版による被害額は1兆0019億円と、正規市場をはるかに上回る規模に膨張」、「漫画村閉鎖」後も「海賊版」は根強い人気があるようだ。
・『「漫画村」を機に海賊版サイトが急拡大  ユーザーにとって敷居の低いモデルを生み出した点も大きい。漫画村以前の海賊版サイトは、コンテンツをダウンロードする形式が主流だった。一方、漫画村はよりスマートフォンで利用しやすいストリーミング形式を採用。この「漫画村モデル」が普及することで、ユーザーの裾野は急拡大。「漫画村は海賊版サイトの終焉ではなく、跋扈(ばっこ)の始まりだった」(伊東氏)。 現場の出版関係者も、悲痛な訴えを上げる。「海賊版によって著者の利益が失われ、『漫画家って儲からないよね』と志望者が減ってしまえば、大ヒット漫画の芽を摘むことになる。将来、損をするのは読者だ」(漫画雑誌の元編集長)。 今後、出版大手は国内外を問わず、訴訟や削除要請などの法的措置を加速する方針だ。ただ、足元で漫画の海賊版サイト数は1000に上る。また、動画サイトやSNSでの投稿など、海賊版コンテンツのあり方は多様化しており、いたちごっこに終わりが見えない。 問題解決へ重要性を増すのが、政府を巻き込んだ国際連携だ。足元でベトナム系のサイトが増加する中、外務省が2021年の首脳会談で海賊版対策における連携認識共有を図り、警察庁はベトナム当局と捜査を推進するなど、すでに省庁をまたいだ対策が始まっている。 IT大手の助力も欠かせない。国内では検索サービス大手のヤフーが1月、海賊版サイトへの対応について有識者会議を開くなど、協力姿勢が鮮明になっている。 総務省の海賊版対策の検討会では米グーグルへのヒアリングも進んでおり、著作権法などに詳しい弁護士は「海外のIT大手にも、国を挙げて対策を求める流れになっている」と明かす。 漫画村問題が訴訟で節目にさしかかってもなお、収束のメドが立たない海賊版。官民一体の体制を整え、撲滅に向けた対策が加速するのはこれからとなりそうだ』、「漫画村はよりスマートフォンで利用しやすいストリーミング形式を採用。この「漫画村モデル」が普及することで、ユーザーの裾野は急拡大。「漫画村は海賊版サイトの終焉ではなく、跋扈(ばっこ)の始まりだった」、「今後、出版大手は国内外を問わず、訴訟や削除要請などの法的措置を加速する方針だ。ただ、足元で漫画の海賊版サイト数は1000に上る。また、動画サイトやSNSでの投稿など、海賊版コンテンツのあり方は多様化しており、いたちごっこに終わりが見えない」、「「海外のIT大手にも、国を挙げて対策を求める流れになっている」と明かす。 漫画村問題が訴訟で節目にさしかかってもなお、収束のメドが立たない海賊版。官民一体の体制を整え、撲滅に向けた対策が加速するのはこれからとなりそうだ」、「動画サイトやSNSでの投稿など、海賊版コンテンツのあり方は多様化しており、いたちごっこに終わりが見えない」、一歩ずつ「訴訟や削除要請などの法的措置」をしていく他なさそうだ。気の長い闘いになりそうだ。

次に、9月10日付け東洋経済オンライン「損失100億、シャインマスカット「中国流出」の痛恨 中国の栽培面積は日本の30倍、逆輸入の危機も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/616796
・『日本が誇る高級フルーツ、シャインマスカット。その苗が中国や韓国で栽培され、第三国にまで出荷される事態となっている。 8月29日発売の『週刊東洋経済』では「食料危機は終わらない」を特集。値上げの秋を巡る企業の攻防や、世界で巻き起こる食料争奪戦、日本の農業の大問題に迫っている。 「香港の取引先から、中国産の『晴王』がコンテナで運ばれているのを見たと教えてもらった。梱包用の段ボール箱まで、本物の晴王を入れているのと同じJA岡山のロゴがプリントされているものだったので、一見して本物と区別がつかない」 シャインマスカットの代表的なブランドである「晴王」を出荷するJA全農おかやま(全国農業協同組合連合会岡山県本部)では、担当者が頭を抱える』、日本は農産物の苗などの知的財産保護には、手を抜いているようだ。
・『中国の栽培面積は日本の30倍  糖度が高く皮ごと食べられる手軽さから、高い人気を誇るシャインマスカット。価格は1パックで2000円前後から1万円を超える高級品もあり、贈答品としての需要も高い。 このシャインマスカットは、実は日本発祥だ。農産物の品種開発などを担う農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)が33年をかけて生み出したもので、山梨、長野、岡山、山形県などが産地として知られている。 ところが、この種苗が無断で中国や韓国に持ち出されて現地で栽培され、安価な「海賊版」として第三国にまで出荷される事態になっている。農林水産省の試算では、中国におけるシャインマスカットの栽培面積は、2020年時点で日本の30倍にあたる5万3000ヘクタールにも及んでいる。 中国産のシャインマスカットには、「シャイン」を音で表現した「香印翡翠」(シャンインフェイツィ)や「香印晴王」(シャンインチンワン)といった名称がつけられている。 「晴王」という名称は中国でも商標登録されているため、中国産のものにつけて売れば違法行為となる。ところが、「何十もの農家が勝手に晴王の名前をつけて売っている。商標権侵害を争うことはできるが、1件あたり数十万円コストがかかり、いたちごっこでキリがない」(前出のJA全農おかやま担当者)。 見た目や銘柄で日本産と区別がつかなくとも、価格と品質には差がある。中国産のシャインマスカットは1パックあたり日本円で500円以下と安価なものもあり、日本産の価格の4分の1にも満たない。 品質も劣っているものが少なくない。ぶどう農家でシャインマスカットの栽培も手掛ける林ぶどう研究所の林慎悟氏はこう語る。「シャインマスカットは昼夜の寒暖差が激しい気候で栽培することで甘みを増す特徴がある。中国の冷涼な地域で栽培されたものは果皮が分厚くなり、糖度も日本産より低くなる傾向がある」。 こうした中国産のシャインマスカットは現地で販売されるにとどまらず、シンガポールやタイ、香港、台湾などにも出荷されている。同様に、韓国産もマレーシアやベトナムなどで出回っている。 さらには、日本に「逆輸入」されかけた例もある。2021年、東京税関まで持ち込まれたものに対して開発者の農研機構が輸入差し止め申請を行い、どうにか未然に防ぐことができた。 安くて品質に劣る海外産のシャインマスカットが海外で広く出回れば、日本からの輸出品と競合するばかりか、ブランド価値そのものを毀損することになりかねない。ここまでの野放図になってしまったのにはいかなる背景があるのだろうか』、「中国産のシャインマスカットは現地で販売されるにとどまらず、シンガポールやタイ、香港、台湾などにも出荷されている。同様に、韓国産もマレーシアやベトナムなどで出回っている。 さらには、日本に「逆輸入」されかけた例もある」、情けない限りだ。
・『2007年ごろから複数ルートで流出  シャインマスカットが中国で栽培され、販売されているという情報を農研機構が入手したのは2016年のこと。 すぐに現地に職員を派遣して調査をしたところ、外観などからほぼ間違いなくシャインマスカットが栽培されているとわかった。「2007年ごろから、複数のルートで中国に持ち込まれたようだ」(農研機構)。 もっとも、中国への流出ルートすべてが違法であったとは限らない。 複数の関係者が流出ルートの1つと見ているのが、農家が自家栽培したシャインマスカットの苗を日本人のブローカーが購入して中国人に販売した、というケースだ。これは、植物の知的財産の保護などを取り決める種苗法のもとで違法行為となる。 一方、「ホームセンターなどで販売されていた苗木が海外に持ち出された例が多かったようだ」(農水省輸出・国際局知的財産課)との見方もある。正規に販売されたものであれば、当時は無断で海外に持ち出しても違法ではなかった。 また、海外へ持ち出されたあとに増殖、栽培されるのを防ぐ対策も不十分だったといわざるをえない。ポイントは、現地で品種登録をしていたか否かだ。 品種登録をすれば、無断栽培などの権利侵害に対して、開発者が栽培を差し止めさせたり、損害賠償請求をしたりできるほか、刑事罰の対象にすることもできる。この権利は、品種登録から最長で25年間保護される。 シャインマスカットの場合、開発した農研機構は2006年に国内で品種登録をしているため、国内の農家や企業が農研機構に無断で栽培すれば違法だ。ところが、中国や韓国など海外での品種登録は行っていなかった。つまり、現地で無断に栽培する農家を発見しても、それをやめさせる権限がなかったのだ。 海外での品種登録をしなかった理由について、農研機構の担当者は「当時は海外に積極的に出ていくことを想定していなかった」と語る。ただその結果、日本が被っている損失は毎年100億円を超えると農水省は試算している。 同様に、農産物の知的財産が十分に保護されなかった結果、海外に広まってしまった日本のブランド農産物はほかにもある。1990年代には柑橘類の「不知火」、イチゴの「章姫」や「レッドパール」が韓国に流出し、イチゴに至っては両品種が韓国のシェア8割を占めるまでに拡大してしまった過去がある。 こうした状況を食い止め、日本のブランド農産物を海外で保護しようと今年4月に完全施行されたのが、改正種苗法だ』、「開発した農研機構は」「中国や韓国など海外での品種登録は行っていなかった」、「日本が被っている損失は毎年100億円を超えると農水省は試算」、「農産物の知的財産が十分に保護されなかった結果、海外に広まってしまった日本のブランド農産物はほかにもある。1990年代には柑橘類の「不知火」、イチゴの「章姫」や「レッドパール」が韓国に流出し、イチゴに至っては両品種が韓国のシェア8割を占めるまでに拡大」、驚くほどの脇の甘さだ。
・『改正種苗法で何が変わった?  改正のポイントは以下のようなものだ。まず、正規に販売された種苗であっても、登録品種であれば開発者の許可なしに海外へ持ち出すことを制限できるようになった。 次に、品種登録の出願時には出願者が産地を指定し、それ以外の地域で栽培する際には開発者の許諾を得ることが必要になった。 さらに、登録品種を農家が自家増殖する際も同様に許諾が必要になる。許諾を受ける際には、品種によって許諾料を支払う必要がある。たとえば農研機構が開発者の場合、ぶどうやりんごなどなら1本あたり100円を同機構に支払う。 もっとも、改正種苗法も万全ではない。農産物の知財保護に詳しい農林水産・食品産業技術振興協会(JATAFF)イノベーション事業部の永田明部長はこう語る。 「接ぎ木で増やせるぶどうは小枝をポケットに入れさえすれば海外に持ち出せる。悪意による流出を完全に防ぐことはできない。そして現地で無断に栽培されていたとしても、大手種苗会社ならばまだしも、予算や人員の限られる公的な開発機関や個人の育種家などが権利侵害の有無を監視したり、損害賠償請求などの法的措置を取ることへのハードルは高い」 そこで農水省の有識者会議を中心に検討されているのが、開発者の権利を管理する第三者機関の設置だ。2023年をメドに、農産物の知財や国内外での侵害の管理、法的な対応などを行う民間組織を立ち上げる計画だ。 前出の永田氏は「国外流出や栽培をかたくなに禁止するだけでは問題は解決しない。開発者が認定した海外の農家などに独占的に栽培ができるライセンスを与え、登録料収入を得ながら現地での栽培を適切に管理する仕組みをつくることが必要ではないか」と指摘する。 日本の農業界の知的財産に対する意識は、今でも高いとはいえない。これから付加価値の高い特産品の輸出を拡大していくうえでも、実際に機能する知財の管理体制は不可欠だ』、「農水省の有識者会議を中心に検討されているのが、開発者の権利を管理する第三者機関の設置だ。2023年をメドに、農産物の知財や国内外での侵害の管理、法的な対応などを行う民間組織を立ち上げる計画」、「開発者が認定した海外の農家などに独占的に栽培ができるライセンスを与え、登録料収入を得ながら現地での栽培を適切に管理する仕組みをつくることが必要」、その通りなのだろう。

第三に、10月23日付け東洋経済オンラインが掲載した評者・キャリアアドバイザーの林 雅彦氏による「多くの人が著作権を持つ今、「エセ著作権」に注意 イチャモンや妄想が訴訟につながるケースも」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/627274
・『著作権をめぐる争いと聞くと著作権が侵害された例を思い浮かべがちだが、本書は逆だ。「エセ著作権者」とは、実際には起こっていない著作権侵害を主張したり訴えたりした人々を指し、本書はその事例集だ。誰もが知っている有名事件もある。 内容は、イチャモンや妄想に近いように思われるものから、外野(SNSなど)が騒ぎ出し本人もその気になってしまったもの、著作権への理解が不十分だったもの、訴えた側と訴えられた側との間の出来レースだったものなど、実に多様だ。しかしエセ著作権者として、日本経済新聞社、神戸新聞社、小学館、平等院鳳凰堂、米ウォルト・ディズニー・カンパニー、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、日本将棋連盟といった団体や著作権法の研究者までもが登場するとなると穏やかではない』、「エセ著作権者として、日本経済新聞社、神戸新聞社、小学館」、「といった団体や著作権法の研究者までもが登場」、どういうことなのだろう。
・『著作権は判例法、微妙なケースも  制作・出版社側が十分な検討をせずエセ著作権者や外野の指摘に屈し、謝罪や製品回収、連載打ち切りなどをしたため、結果として作者が社会的に抹殺されてしまった事案には涙を禁じ得ない。これは、編集者なども含め、著作権に関してわれわれがいかに正しい知識に欠けているかという事実を突きつけている。 本書で扱われている例をみてみよう。①シャーロック・ホームズの名を冠した新ドラマ、②タイトル戦の実施と同時にその棋譜をユーチューブでライブ配信すること、③批評上必要と認められる他者のマンガのコマの無断掲載、④北朝鮮で制作された映画や著作などの無断使用。本書では判例なども引きつつ、いずれも問題がないとしている。 この難解な著作権について、本書では4つの鉄則が示される。①著作権を根拠にアイデア自体を独占することは原則不可、②キャラクター名やタイトルは独占不可、③ある状況や文脈の中で当然に採用されるような表現は判断材料から省く(象の鼻は長いなど)、④偶然の一致は著作権侵害に当たらない、とのことだ。 実際に著作権の侵害があったか否かは微妙なケースも多い。判例の積み重ねによる判例法(前例踏襲)の世界ともいえるため、多くの事例から学ぶのが最も有益だ。とくにSNSの普及、インターネット上で誰でも作品を発表できる環境、二次創作者の増加など、多くの人が何らかの著作権を持ち、同時に著作権を侵害する可能性がある時代だ。著作権法判例百選を読むのは難しくとも、本書なら手軽に「楽しく」読むことができる』、「多くの人が何らかの著作権を持ち、同時に著作権を侵害する可能性がある時代だ。著作権法判例百選を読むのは難しくとも、本書なら手軽に「楽しく」読むことができる」、なるほど。
・『著作権についての知識を手軽に「楽しく」  本書を手に取ったとき、ポップな装丁やイエローペーパーを思わせる段組みなどから、一抹の不安を持った。本文には、著者の心の叫びや悪態が、極太ゴチック体でまき散らされている。それは痛快だが、内容は大丈夫かと身構えた。 しかし、著者は長年企業での法務・知的財産実務に携わってきた専門家である。一見乱暴な書き方をしながらも、内容は注意深く慎重に記されているのだ。そして、著作権について知識を持つべき多くの若い創作者に伝えるには、この方法がいちばんだということに気づかされた。途中で挟まれるコラムにも、有益な情報がいっぱいだ。「楽しく」読み進めるうちに、「エセ著作権者になるもならないも人間の器次第」という著者の言葉が心に染み入る』、なかなか洒落た締めだ。
タグ:東洋経済オンライン「大手出版社が19億円請求「漫画村」の根深い問題 『ONE PIECE』などの「タダ読み」撲滅が難航」 なかなか洒落た締めだ。 「多くの人が何らかの著作権を持ち、同時に著作権を侵害する可能性がある時代だ。著作権法判例百選を読むのは難しくとも、本書なら手軽に「楽しく」読むことができる」、なるほど。 「エセ著作権者として、日本経済新聞社、神戸新聞社、小学館」、「といった団体や著作権法の研究者までもが登場」、どういうことなのだろう。 林 雅彦氏による「多くの人が著作権を持つ今、「エセ著作権」に注意 イチャモンや妄想が訴訟につながるケースも」 (その3)(大手出版社が19億円請求「漫画村」の根深い問題 『ONE PIECE』などの「タダ読み」撲滅が難航、損失100億 シャインマスカット「中国流出」の痛恨 中国の栽培面積は日本の30倍 逆輸入の危機も、多くの人が著作権を持つ今、「エセ著作権」に注意 イチャモンや妄想が訴訟につながるケースも) 知的財産 東洋経済オンライン 「農水省の有識者会議を中心に検討されているのが、開発者の権利を管理する第三者機関の設置だ。2023年をメドに、農産物の知財や国内外での侵害の管理、法的な対応などを行う民間組織を立ち上げる計画」、「開発者が認定した海外の農家などに独占的に栽培ができるライセンスを与え、登録料収入を得ながら現地での栽培を適切に管理する仕組みをつくることが必要」、その通りなのだろう。 「開発した農研機構は」「中国や韓国など海外での品種登録は行っていなかった」、「日本が被っている損失は毎年100億円を超えると農水省は試算」、「農産物の知的財産が十分に保護されなかった結果、海外に広まってしまった日本のブランド農産物はほかにもある。1990年代には柑橘類の「不知火」、イチゴの「章姫」や「レッドパール」が韓国に流出し、イチゴに至っては両品種が韓国のシェア8割を占めるまでに拡大」、驚くほどの脇の甘さだ。 「中国産のシャインマスカットは現地で販売されるにとどまらず、シンガポールやタイ、香港、台湾などにも出荷されている。同様に、韓国産もマレーシアやベトナムなどで出回っている。 さらには、日本に「逆輸入」されかけた例もある」、情けない限りだ。 日本は農産物の苗などの知的財産保護には、手を抜いているようだ。 東洋経済オンライン「損失100億、シャインマスカット「中国流出」の痛恨 中国の栽培面積は日本の30倍、逆輸入の危機も」 「「海外のIT大手にも、国を挙げて対策を求める流れになっている」と明かす。 漫画村問題が訴訟で節目にさしかかってもなお、収束のメドが立たない海賊版。官民一体の体制を整え、撲滅に向けた対策が加速するのはこれからとなりそうだ」、「動画サイトやSNSでの投稿など、海賊版コンテンツのあり方は多様化しており、いたちごっこに終わりが見えない」、一歩ずつ「訴訟や削除要請などの法的措置」をしていく他なさそうだ。気の長い闘いになりそうだ。 「漫画村はよりスマートフォンで利用しやすいストリーミング形式を採用。この「漫画村モデル」が普及することで、ユーザーの裾野は急拡大。「漫画村は海賊版サイトの終焉ではなく、跋扈(ばっこ)の始まりだった」、「今後、出版大手は国内外を問わず、訴訟や削除要請などの法的措置を加速する方針だ。ただ、足元で漫画の海賊版サイト数は1000に上る。また、動画サイトやSNSでの投稿など、海賊版コンテンツのあり方は多様化しており、いたちごっこに終わりが見えない」、 「2021年の漫画市場は6759億円で過去最高を更新」、「海賊版による被害額は1兆0019億円と、正規市場をはるかに上回る規模に膨張」、「漫画村閉鎖」後も「海賊版」は根強い人気があるようだ。 「閉鎖された2018年4月までの1年弱だけで、アクセス数が5億回を上回る、当時最大の海賊版サイトだった」、そんな事件があったことをおぼろげながら思い出した。
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経済学(その6)(【ギリシャ元財務大臣が解説する】「なぜ経済を学ぶ必要があるのか?」に対する納得の回答、「高額紙幣の廃止」で犯罪撲滅を図った国の末路 インドと北朝鮮がやらかした壮大な経済失策、ノーベル経済学賞バーナンキ氏 実証と実行が後の理論を先導) [経済政治動向]

経済学については、5月3日に取上げた。今日は、(その6)(【ギリシャ元財務大臣が解説する】「なぜ経済を学ぶ必要があるのか?」に対する納得の回答、「高額紙幣の廃止」で犯罪撲滅を図った国の末路 インドと北朝鮮がやらかした壮大な経済失策、ノーベル経済学賞バーナンキ氏 実証と実行が後の理論を先導)である。

先ずは、9月13日付けダイヤモンド・オンライン「【ギリシャ元財務大臣が解説する】「なぜ経済を学ぶ必要があるのか?」に対する納得の回答」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/309147
・『混沌を極める世界情勢のなかで、将来に不安を感じている人が多いのではないだろうか。世界で起きていることを理解するには、経済を正しく学ぶことが重要だ。とはいえ、経済を学ぶのは難しい印象があるかもしれない。そこでお薦めするのが、2015年のギリシャ財政危機のときに財務大臣を務めたヤニス・バルファキス氏の著書『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』だ。本書は、これからの時代を生きていくために必要な「知識・考え方・価値観」をわかりやすいたとえを織り交ぜて、経済の本質について丁寧にひも解いてくれる。2022年8月放送のNHK『100分de名著 for ティーンズ』も大きな話題となった。本稿では本書の内容から、なぜ経済を学ばなければならないのかという理由を伝えていく』、「バルファキス氏」の解説は平易で分かり易い。
・『「格差」はどんどん広がっている  「どうして世の中にはこんなに『格差』があるのか?」と疑問に思ったことはないだろうか。 世界には一国の国家予算よりも大きな富を持つ金持ちがいる。反面、食べるものが手に入らず、今日1日生き延びるのが精一杯なほど貧しい人がいる。この格差は年々広がっているとすら言われている。 大金持ちと貧しい人との格差がなければ、誰もがあくせく働かなくても豊かな生活を楽しめるようになるかもしれない。 みんな最初は裸一貫で生まれてくるのだから本来平等であるはず。だから、嫉妬も争いもない良い社会が築けると信じて疑わない人もいる。 いずれにせよ、格差があることに怒っている人は多そうだ』、「格差があることに怒っている人は多そうだ」、その通りだ。
・『みんなが経済を学ぶことでより良い社会ができる  世界の格差は、経済的な理由によるものである。「なぜ格差が生まれるのか」を理解することは、良い社会をつくる第一歩。 それには経済をきちんと学び、みずから考え、意見を言うことが重要になる。 誰もが経済についてしっかりと意見を言えることこそ、いい社会の必須条件であり、真の民主主義の前提条件だ。(P.2)』、「誰もが経済についてしっかりと意見を言えることこそ、いい社会の必須条件であり、真の民主主義の前提条件だ」、その通りだ。
・『経済は意外なところから生まれた  経済について学ぶにあたって、経済の誕生から振り返ってみよう。 歴史をひもといてみると、経済が生まれたのは1万2000年前に人類が農耕をはじめたことに由来する。 人々が農耕をはじめたのは、食糧が底をついて多くの人が飢えて死にそうになったから。生き延びるために必死に土地を耕して、作物を育てるしかなかった。 人類が農耕を「発明」したことは、本当に歴史的な事件だった。1万2000年経った今、振り返ってみるとその大切さがよくわかる。それは、人類が自然の恵みだけに頼らずに生きていけるようになった瞬間だったからだ。(P.27) その後、試行錯誤を繰り返し、農耕の技術は洗練されていく。おかげで効率的に大量の穀物を収穫できるようになり、人々は飢えから解放された。 そして、農耕技術が発展により効率的に農作物を収穫できるようになると、余剰が生まれるようになった。 この「余剰」が経済の基本になる。農耕の発展により農作物の余剰が生まれ、余剰を増やしていく過程で経済が大きく動き出していく』、「農耕の発展により農作物の余剰が生まれ、余剰を増やしていく過程で経済が大きく動き出していく」、言われてみれば、確かに「余剰」がなければ、「経済」は成長しない。
・『余剰が通貨を生み、余剰が国家を生んだ  人類が農耕をするようになると、最初のうちは食べる分と来年植える種以外のものが余剰だった。そのうち計画的に余剰を増やし、別の地域と別の種類の食糧と交換するようになる。 そのやりとりは物々交換だったが、次第に通貨を使ってやり取りすることでグローバルな規模で貿易ができるようになる。 通貨を使うにあたって、数字や文字、債務という便利なものも人類は使うようになり、経済は高度になっていく。 さらに農作物の余剰を守るために軍隊が配備され、国家という概念が生まれた。農耕で余剰が生まれたからこそ、国家が生まれたといえる。 このように、経済とは農作物の余剰を守るところからはじまっている』、「計画的に余剰を増やし、別の地域と別の種類の食糧と交換するようになる。 そのやりとりは物々交換だったが、次第に通貨を使ってやり取りすることでグローバルな規模で貿易ができるようになる。 通貨を使うにあたって、数字や文字、債務という便利なものも人類は使うようになり、経済は高度になっていく。 さらに農作物の余剰を守るために軍隊が配備され、国家という概念が生まれた」、「経済とは農作物の余剰を守るところからはじまっている」、「余剰」がここまで経済発展の源になっているとは、感心させられた。
・『「当たり前」を疑うことが大切  経済を学ぶ際に重要なことは「当たり前」を疑うこと。 アフリカの飢餓に苦しむ人々の映像を見て憐れむと同時に、その理不尽な状況に怒りを感じることもあるだろう。 しかし、彼らが安い賃金で栽培してくれた綿花の洋服を、私たちは当たり前のように着ているかもしれない。 知らない間に彼らから搾取して、豊かな生活をしていることに気づいていない可能性がある。人は自分が持っているものを当たり前だと思い込む傾向があるからだ。 「当たり前」の裏には格差の種が潜んでいるかもしれない。なぜ格差があるのかを理解して、自分はどうすべきかを考えて行動することが重要だ。 今の怒りをそのまま持ち続けてほしい。でも、賢く、戦略的に怒り続けてほしい。機が熟したらそのときに、必要な行動をとってほしい。この世界を本当に公正で理にかなった、あるべき姿にするために。(P.43) そのためにも経済の本質を学ばなければならない』、「賢く、戦略的に怒り続けてほしい。機が熟したらそのときに、必要な行動をとってほしい。この世界を本当に公正で理にかなった、あるべき姿にするために」、「必要な行動」とは投票行動なのだろうか。
・『経済を自分の問題として捉える――訳者より  本書は、ギリシャで財務大臣を務めたヤニス・バルファキスが、十代半ばの娘に向けて、「経済についてきちんと話すことができるように」という想いから、できるだけ専門用語を使わず、地に足のついた、血の通った言葉で経済について語ったものです。 本書を原書で読み、「圧倒された」というブレイディみかこさんは、「優しく、易しく、そして面白く資本主義について語った愛と叡智の書」と評しています。 その語りは、娘からの「なぜ格差が存在するのか」という問いに、著者なりの答えを出していくかたちで進んでいきます。その過程で、経済がどのように生まれたかにさかのぼり、金融の役割や資本主義の歴史と功罪について、小説やSF映画などの例を挙げながら平易な言葉で説いていきます。 原書の評判は経済を論じた本らしくなく、「一気読みしてしまった」「読むのを止められない」といった声が多数あがっていますが、実際、本書はまるで小説のように章を追うごとに話が深まっていき、ついついページをめくり続けてしまうみごとな構成になっています。 バルファキスは本書で、「誰もが経済についてしっかりと意見を言えること」が「真の民主主義の前提」であり、「専門家に経済をゆだねることは、自分にとって大切な判断をすべて他人にまかせてしまうこと」だと言っています。 大切な判断を他人まかせにしないためには、経済とは何か、資本主義がどのように生まれ、どんな歴史を経ていまの経済の枠組みが存在するようになったのかを、自分の頭で理解する必要があるのです。 本書のバルファキスのこの言葉を、私も若い人たちに贈りたいと思います。 「君には、いまの怒りをそのまま持ち続けてほしい。でも賢く、戦略的に怒り続けてほしい。そして、機が熟したらそのときに、必要な行動をとってほしい。この世界を本当に公正で理にかなった、あるべき姿にするために」』、「大切な判断を他人まかせにしないためには、経済とは何か、資本主義がどのように生まれ、どんな歴史を経ていまの経済の枠組みが存在するようになったのかを、自分の頭で理解する必要がある」、その通りだ。

次に、9月19日付け東洋経済オンラインが掲載したSWIFT社 元CEOのゴットフリート・レイブラント氏、 SWIFT社 元コーポレートアフェアーズ部門責任者の ナターシャ・デ・テラン氏による「「高額紙幣の廃止」で犯罪撲滅を図った国の末路 インドと北朝鮮がやらかした壮大な経済失策」を紹介しよう。
・『現金は追跡が困難であることから、百ドル札などの高額紙幣は、日常生活ではそれほど頻繁に使われず、むしろ犯罪など地下経済で重宝されている。であれば、高額紙幣を廃止すれば犯罪を減らせると考えることは自然だが、事はそう簡単ではない。決済オタクであり、SWIFT(国際銀行間通信協会)の元CEOでもあるゴットフリート・レイブラント氏の新刊『教養としての決済』(ナターシャ・デ・テランとの共著)から、高額紙幣を廃止して国内で混乱を巻き起こした事例を紹介する』、「高額紙幣を廃止して国内で混乱を巻き起こした事例」とは興味深そうだ。
・『犯罪者にとって都合がいい高額紙幣  高額紙幣の量と使用状況のデータに基づいた試算の中には、アメリカのような先進国においてさえ、地下経済の規模はGDPの25%にまでおよぶとするものもある。そこには脱税のほか、麻薬や人身売買などの犯罪行為もふくまれる。 アメリカの麻薬経済の規模は年間1000億~1500億ドルと推定され、そのほとんどは現金で支払われており、そのうちの大部分が高額紙幣であると考えられる。ところが興味深いことに、アメリカの紙幣の90%にコカインの形跡が残っているのに対して、百ドル札ではその割合が著しく低い。 高額紙幣が麻薬の支払いに用いられる一方で、小額紙幣にはまったく異なる用途があるらしい。 経済学者たちは、各国政府がマネーロンダリングに対して厳しい体制を敷いている一方で、 高額紙幣を刷っていることの本質的な矛盾について長らく指摘してきた。 高額紙幣は明らかに、犯罪者にとって都合がいい。100万ドルを一ドル札で用意すれば重さが1トン以上、体積が1立方メートル以上になるが、百ドル札で用意すればおよそ10キログラム(22ポンド)になり、ブリーフケースひとつにきれいにおさまる。 さらに高額な五百ユーロ札の場合は、同じ100万ドルが、重さはたったの2キロになり、小さいバッグ──あるいは大きな胃袋──におさまるようになる。実際、2004年に不運な「ユーロ運び屋」がコロンビアへの道中で捕まったが、彼は胃袋の中に20万ユーロ分の五百ユーロ札をおさめていた。) とはいえ、犯罪者なら誰しも高額紙幣にこだわるというわけではない。コロンビアの運び屋が400枚の五百ユーロ札を飲み込む20年前、よく知られているように、オランダの醸造王フレディ・ハイネケンが誘拐された。ハイネケンはオフィスを出て家に帰る途中、お抱えの運転手とともにさらわれた。オランダの中央銀行からわずか200メートルの場所での出来事であった。 誘拐犯たちは、追跡されやすく交換が難しいのではないかという懸念から、千ギルダー札(500ドル超の価値)を敬遠した。代わりに、かれらは前代未聞の3500万オランダ・ギルダー(およそ2000万ドル)の身代金を、4つの通貨の中位の額の紙幣で支払うように要求した。不運にも、この選択もまた、身代金を扱いにくくするものだった。身代金が、約400キロもの重さになったからだ。 実にオランダ人らしく自転車で逃走することにしたこの一味は、アムステルダム郊外の林に戦利品を埋めるはめになり、ほんの4分の1ほどを回収したところで、散歩中の人に隠し場所を発見されてしまった。まちがいなく恐ろしい経験をしたであろうにもかかわらず、ハイネケンは21日間の監禁生活を生きのび、話し上手としての名声すら保った。 というのも、彼は後にこの経験についてこう語ったのだ。「犯人たちは私を拷問した……カールスバーグを飲まされたんだ!」』、「アメリカの麻薬経済の規模は年間1000億~1500億ドルと推定され、そのほとんどは現金で支払われており、そのうちの大部分が高額紙幣」、「アメリカの紙幣の90%にコカインの形跡が残っているのに対して、百ドル札ではその割合が著しく低い」、「高額紙幣は明らかに、犯罪者にとって都合がいい。100万ドルを一ドル札で用意すれば重さが1トン以上、体積が1立方メートル以上になるが、百ドル札で用意すればおよそ10キログラム(22ポンド)になり、ブリーフケースひとつにきれいにおさまる」、確かに「高額紙幣は明らかに、犯罪者にとって都合がいい」。「ハイネケンは21日間の監禁生活を生きのび」、「彼は後にこの経験についてこう語ったのだ。「犯人たちは私を拷問した……カールスバーグを飲まされたんだ!」商売敵の「カールスバーグ」を飲まされたとは、「ハイネケン」氏にとっては「拷問」」なのだろう。
・『なぜ政府は手をこまねいているのか?  スタンダードチャータード銀行の元最高経営責任者ピーター・サンズは、『悪者たちにより困難に』(Making it Harder for the Bad Guys)の中で、状況を簡潔に要約してみせた。彼は高額紙幣を「現代経済における時代錯誤」と形容し、「正規の経済活動ではほとんど役割を果たしていないが、地下経済においては重要な働きをしている。皮肉なことに、犯罪者たちが利用するそのような紙幣は、国家が用意しているのだ」と述べた。 では、なぜ一部の国々では、かつてないほど厳格なマネーロンダリング防止規制を銀行に課しながら、自国の高額紙幣が脱税、犯罪、テロ、汚職に使われることには目をつぶっているのだろうか?) たしかに、高額紙幣を見直そうとしている政府もある。しかし、現金──ないしあらゆる類の決済──を廃止することは、口で言うほど簡単なことではない。感情は昂り、愛着は強く、慣習はびくともしないように見える。そしてロジスティクスも容易ではない。 カナダは2000年に千カナダ・ドル札の発行を、シンガポールは2014年に一万シンガポール・ドル札の発行を終了したが、ユーロ圏ではそう簡単に物事は進まなかった』、「彼は高額紙幣を「現代経済における時代錯誤」と形容し、「正規の経済活動ではほとんど役割を果たしていないが、地下経済においては重要な働きをしている。皮肉なことに、犯罪者たちが利用するそのような紙幣は、国家が用意しているのだ」と述べた」、「カナダは2000年に千カナダ・ドル札の発行を、シンガポールは2014年に一万シンガポール・ドル札の発行を終了したが、ユーロ圏ではそう簡単に物事は進まなかった」、「ユーロ圏」では現金志向が強いのだろうか。
・『紙幣に対する信頼が揺らぐ  同年、ユーロ圏の19の中央銀行のうち17行が悪名高き五百ユーロ札の印刷を終了した。現金の利用が盛んなドイツとオーストリアも、抗議がなかったわけではないが、2019年にこれに続いた。 当時、ドイツ連邦銀行総裁のイェンス・ヴァイトマンは、この紙幣を段階的に廃止することは「犯罪対策にはほとんどならず、ユーロに対する信用を傷つけるだけだ」として異議を唱えた。五百ユーロ札はもはやほかのユーロ圏の国々(およびイギリス)では通用せず、交換もできないものの、ドイツとオーストリアではいまだ法定通貨となっており、商業銀行での交換や再流通が可能である。この2つのドイツ語圏の中央銀行が新しい五百ユーロ札の発行を停止したため、理論的には五百ユーロ札はやがて姿を消すことになる。 このような妥協によって問題が一挙に解決されることはないかもしれないが、もっとひどい結果──現金に対する信頼を損なうこと──を回避することはできる。これがヴァイトマンの主張の要であった。 すなわち、五百ユーロ札を受理しなくなることで、ほかの紙幣にも同様の措置が適用されるのではないかと人々を不安にさせる可能性がある、ということだ。その不安から、人々は二百ユーロ札、ひいては百ユーロ札さえも使うのを拒否するようになるかもしれない。 何より、これはとくにドイツ語圏の国々において、現金に対する絶対的な信頼を維持することが中央銀行にとって重要であることを示している』、「五百ユーロ札は」「ドイツとオーストリアではいまだ法定通貨となっており、商業銀行での交換や再流通が可能である。この2つのドイツ語圏の中央銀行が新しい五百ユーロ札の発行を停止したため、理論的には五百ユーロ札はやがて姿を消すことになる」、「五百ユーロ札を受理しなくなることで、ほかの紙幣にも同様の措置が適用されるのではないかと人々を不安にさせる可能性がある、ということだ。その不安から、人々は二百ユーロ札、ひいては百ユーロ札さえも使うのを拒否するようになるかもしれない」、これはとってつけたようなヘリクツのような印象を受ける。
・『比較的高額な紙幣に対してもっと大胆な行動をとった場合には、すさまじい混乱が生じることがある。 2016年、インド政府は「グレーマネー」を表に駆り出すことを目的として、流通している紙幣のうち最も高額な2つ──五百インドルピー(7.5ドル)と千インドルピー(15ドル)──の通用を廃止した。当時、この2つの紙幣が現金通貨の86%を占めていたが、実際には残りの14%を占める小額紙幣が、日常的な仕事の大半を担っていた。 その年の11月8日、ナレンドラ・モディ首相は、この厄介者の紙幣を午前零時──すなわち、わずか4時間後──に使用禁止にすることをテレビの生放送で発表し、国中を震撼させた。通用が廃止された紙幣を銀行で新紙幣に交換するために数週間の猶予が与えられたが、新紙幣の印刷は間に合っていなかった。 結果として貨幣危機が発生し、何千万ものインド人が、現金がない状態に陥るか、あるいはすこしの現金を手に入れるために毎日何時間も列に並ぶはめになった。事態が落ち着くまでには数週間を要し、GDPにもかなりの悪影響が及んだ。 その間、インドで通貨の代替品として好まれている金の価格は、20~30%上昇した。この施策の最終的な成功は、きわめて限定的なものであった』、「インド」での「五百インドルピー」と「千インドルピー」「の通用を廃止」は、準備不足などやり方が余りにお粗末だ。
・『グレーマネーは撲滅できたのか?  紙幣の追放の根拠となった考えは、現金の出所を正当化できる人々だけが旧紙幣を新紙幣に交換することになるので、グレーマネーの保有者の手元には無価値の紙幣だけが残るはずだ、というものであった。 しかし2年にわたる徹底した会計検査の後、インド準備銀行は、廃止された紙幣の実に99.3%が、追放されることなく銀行システムに戻ってきたと報告した。グレーマネーはモディが想定していたよりもすくなかったのか、あるいはインドのマネーロンダリングのしくみは、紙幣を追放するしくみよりも有能なのであろう。) そして、北朝鮮である。この「隠者の王国」の政府がポジティブな国内向けニュースを流すことに特化している一方で、同国にまつわるネガティブなニュースを伝えることに力を注ぐ海外勢力もある。 どちらのニュースも慎重に受け止める必要があるが、それでもなお、同国の直近の通貨切り下げに関する報道を見る限り北朝鮮が悲惨な状況にあることはまちがいない』、「インド」では「廃止された紙幣の実に99.3%が、追放されることなく銀行システムに戻ってきた」、「グレーマネーはモディが想定していたよりもすくなかったのか、あるいはインドのマネーロンダリングのしくみは、紙幣を追放するしくみよりも有能なのであろう」、なるほど。
・『突然の北朝鮮ウォンの切り下げ  現在の最高指導者の父、金正日は、2009年11月、北朝鮮ウォンの切り下げを突然命じた。政府はただちに紙幣からゼロを2つ切り落とし、旧紙幣を法定通貨からはずし、新紙幣に交換できる旧紙幣の量を制限した。 これによって巨額の貯蓄が失われただけでなく、新紙幣が流通する1週間前に旧紙幣が引き揚げられたため、その間、経済の大部分が停止するにいたった。この動きは、窮地に陥ったウォンを強化するどころか、政府が発行する貨幣に対する国民の信頼を失わせ、人々が外貨の保有に殺到するという事態を引き起こした。結果としてめったに起きない国内の反乱が生じ、1ドル30ウォンから約8500ウォンへと通貨が劇的に暴落した。 2013年には、同国の215億ドルの経済圏のなかで推定20億ドルのアメリカドル紙幣が流通していた。アンクル・サム〔アメリカ〕にとっては好都合だが、金一家にとってはそうでもない』、「北朝鮮ウォンの切り下げ」は、「政府が発行する貨幣に対する国民の信頼を失わせ、人々が外貨の保有に殺到するという事態を引き起こした。結果としてめったに起きない国内の反乱が生じ、1ドル30ウォンから約8500ウォンへと通貨が劇的に暴落した。 2013年には、同国の215億ドルの経済圏のなかで推定20億ドルのアメリカドル紙幣が流通していた。アンクル・サム〔アメリカ〕にとっては好都合だが、金一家にとってはそうでもない」、これも余りにお粗末な事例の1つだ。

第三に、10月21日付け日経ビジネスオンラインが掲載した東京大学大学院経済学研究科教授の青木 浩介氏による「ノーベル経済学賞バーナンキ氏、実証と実行が後の理論を先導」を紹介しよう。
・『2022年のノーベル経済学賞は「銀行と金融危機に関する研究」に対してベン・バーナンキ、ダグラス・ダイヤモンド、フィリップ・ディビッグの3氏に授与された。 ダイヤモンド氏とディビッグ氏は銀行に関する標準理論モデル「ダイヤモンド・ディビッグ・モデル」を構築したことが評価された。銀行が資金の「満期変換機能」を果たしていることをこのモデルは理論的に示している。 満期変換機能とは、銀行が預金者からいつでも引き出せる「要求払い預金」を集め、それを使って企業の長期投資に資金を融通することをいう。また、その機能を果たしているが故に銀行は不安定な存在であり、取り付け騒ぎのリスクにさらされることを示した。一方、バーナンキ氏は、20世紀初頭の大恐慌における銀行危機の役割を解明したことが評価された。 大恐慌が歴史上まれに見るほど深刻な不況になったのは、多くの銀行が倒産したからだということを実証的に示した。 本稿はバーナンキ氏に関するものである。ダイヤモンドとディビッグ両氏に関しては、本シリーズ2022年10月17日掲載の植田健一教授の寄稿をご参照いただきたい。また、バーナンキ氏は2006年から2014年までは米連邦準備理事会(FRB)議長を務めた。2009年に発生した世界金融危機時に米国金融政策のかじ取りをしたことを、多くの読者がご存じだろう。 しかし、本稿ではバーナンキ氏の政策担当者としての側面ではなく、授賞理由となった学術研究の解説をする。最後に、バーナンキ氏が米プリンストン大学教授だったときに、筆者は大学院生として講義を受け、博士論文の審査委員も引き受けていただいた(指導教員は、現在は米コロンビア大学のマイケル・ウッドフォード教授であった)。その時のエピソードも紹介したい』、「プリンストン大学教授だったとき」を中心に「紹介」してくれるとは、興味深そうだ。
・『銀行危機により恐慌が長く深刻に  世界大恐慌は、1920年代終わりから30年代に発生した、非常に深刻かつ世界的な景気後退である。多くの経済学者が大恐慌を理解すべく努力してきた。マクロ経済学の生みの親ジョン・メイナード・ケインズの代表作は36年刊行の『雇用・利子および貨幣の一般理論』(翻訳書は岩波文庫)であるが、これも大恐慌に強い影響を受けている。 バーナンキ氏自身、「大恐慌はマクロ経済学における聖杯である」と述べている(参考文献1)。聖杯(the holy grail)とは「非常に探すのが難しいもの」、「非常に高い目標」という意味だ。 バーナンキ氏は、銀行危機の発生こそが大恐慌を深刻かつ長い不況にしたということを明らかにした。銀行危機により経済の金融仲介が損なわれ、特に農家、中小企業や家計といった銀行への依存度が高い経済主体の消費・投資支出が大きく減少したことを実証的に示した。 現在の視点では、それは当たり前ではないかと思うかもしれない。読者が当たり前と思うという事実こそ、バーナンキ氏の研究成果が直接的、間接的に、広く人々の間に知られていることの証左だと思う。 授賞理由の主要業績に挙げられているバーナンキ氏の1983年の論文は「Nonmonetary effects of the financial crisis in the propagation of the Great Depression」(参考文献2)という題名である。この「Nonmonetary effects(非貨幣的な効果)」という部分にバーナンキ氏の新規性がある。 バーナンキ氏の論文以前の主流な仮説はミルトン・フリードマン氏とアンナ・シュワルツ氏のものである。両氏の研究は、大恐慌時における貨幣量の急激な減少に注目した。標準的なマクロ経済理論によれば、貨幣量が減少すると消費や投資などの総需要が減少し、物価が下落する。両氏によれば、貨幣量が急激に減少し、それに対して当時の連邦準備銀行が有効な政策を実行しなかったから大恐慌が深刻化した。 フリードマン、シュワルツ両氏も銀行危機の影響に注目しているが、バーナンキ氏の視点は異なる。フリードマン、シュワルツ両氏によれば、銀行危機とそれに伴う預金流出が急激な貨幣量の減少につながったとされる。注目しているのは貨幣量減少の効果、すなわち「Monetary effects」である。 一方、バーナンキ氏は銀行危機がもたらした金融仲介機能の毀損こそが、大恐慌を深刻なものにしたと考えた。金融仲介とは、貯蓄をする家計から資金を集め、必要とする企業へ資金を貸し付けることである。企業へ資金を提供する際には、企業の投資案件の審査や企業のモニタリングが必要であり、通常はそれを銀行が効率的に担っている。 そこで、銀行危機により、ある企業と通常取引している銀行が倒産したとしよう。その企業は倒産した銀行の代わりに資金を貸してくれる銀行を探すか、代替的な資金調達手段を探さなければならなくなる。代わりの銀行が見つかったとしても、普段取引をしていなかった銀行なので貸出金利が高くなるかもしれない。もしくは、借り入れそのものができなくなったりするかもしれない』、「バーナンキ氏は銀行危機がもたらした金融仲介機能の毀損こそが、大恐慌を深刻なものにしたと考えた」、なるほど。
・『金融部門と実体経済の連関を実証  この効果は資金調達を銀行に大きく依存している中小企業や家計で顕著になる。また、一度損なわれた銀行と借り手の関係は修復するのに時間がかかる。その結果、不況の回復も時間がかかる。これらのことが、バーナンキ氏の言う「Nonmonetary effects」である。氏はこれらを歴史資料と計量経済学を使って、厳密に実証した。 より広い見方をすると、バーナンキ氏の研究は、経済変動において金融市場が持つ役割についての我々の考え方を変えた。従来は、金融部門は実体経済を単に反映したものであり、金融部門の問題が実体経済の停滞に波及しているわけではないという考え方が根強くあった。例えば、貸出量が減少しているのは、生産量や投資量が減少した結果、資金需要が減少したからだという考え方である。 それに対するバーナンキ氏の考え方は、金融部門と実体経済は相互に連関しているというものである。さらに、金融部門の問題は実体経済の変動を増幅する効果があるとされる。これらは、「フィナンシャル・アクセレラレーター」もしくは「クレジット・チャネル」と呼ばれており、金融政策の波及経路の研究にも取り入れられている。バーナンキ氏の研究はこれらの考え方の先駆的なものとして認識されている。 ▽「マクロ経済学では色々な分野の勉強を」(バーナンキ氏は、79年に米マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学の博士号(Ph.D.)を取得後、85年に米プリンストン大学経済学部教授に就任。2002年にFRB理事として転出する前は学部長も務めていた。 筆者がプリンストン大学大学院に入学した時、1年目のマクロ経済学の講義をバーナンキ氏とウッドフォード教授が担当しており、初回講義はバーナンキ氏が担当だった。彼は冒頭、マクロ経済学がどのような学問であるかについて説明した。彼が次のように話したことをよく記憶している。 「マクロ経済学は色々な分野の応用なので、色々な分野を勉強しなければならない。失業を研究したいならば労働経済学を勉強する必要がある、インフレーションを研究したいならば貨幣経済学、経済成長ならば経済発展論、マクロ経済政策ならば公共経済学……景気循環は、マクロ経済学固有の研究課題だが、経済史とつながっている」。ここで、経済史を学ぶことの重要性を学生に説いていたことが非常に印象に残っている。 大恐慌の研究を現代経済の理解と後々の金融政策運営に生かしたバーナンキ氏のこだわりが、この冒頭講義に表れていると思う。講義では黒板に数式を多く書くことはあまりなかった。むしろ、経済理論や実証方法を直観的な言葉で説明していくスタイルだった。) バーナンキ氏は学生に対しては大変親身になって指導していた。論文の草稿を渡すとわずか2、3日のうちに詳細なコメントが返ってくるのには、大変ありがたく思ったと同時に「いつ自分の研究をしているのだろう?」と驚いた』、「バーナンキ氏が」、「次のように話したことをよく記憶している。 「マクロ経済学は色々な分野の応用なので、色々な分野を勉強しなければならない。失業を研究したいならば労働経済学を勉強する必要がある、インフレーションを研究したいならば貨幣経済学、経済成長ならば経済発展論、マクロ経済政策ならば公共経済学……景気循環は、マクロ経済学固有の研究課題だが、経済史とつながっている」。ここで、経済史を学ぶことの重要性を学生に説いていたことが非常に印象に残っている」、「マクロ経済学は色々な分野の応用なので、色々な分野を勉強しなければならない」、とは大変だ。
・『日本の金融政策にも独自の見解  博士論文の口述試験の日のこともよく覚えている。00年初夏のことである。口述試験が終わり、バーナンキ氏の研究室にお礼の挨拶に行った。そこで、「日本の金融政策はどうすればよいと思いますか?」と質問した。当時日本はすでに名目金利がゼロ下限に達しており、利下げの余地はもはやなかった。筆者の質問に対して氏は「いくらでもすることはあるよ。色々な資産を買えばよいのだ」と答えた。 当時主流となりつつあった「ニューケインジアン経済学」の理論は、名目金利が下限に達したときの金融政策として、人々の将来利子率に関する予想への働きかけを重視していた。今の言葉で言うと「フォワードガイダンス(先行き指針)」である。その一方で、資産購入政策の有効性については懐疑的な見方をする理論だった。 バーナンキ氏自身、ニューケインジアン経済学の分野でも重要な学術的貢献をしている。そのニューケインジアン経済学の分野で博士論文を完成させたばかりの当時の筆者は、恥を忍んで告白すると、「習った理論と違うことをおっしゃるなあ」と感じたことを覚えている。 世界金融危機が発生したとき、バーナンキ氏が連邦準備銀行議長として様々な資産購入政策を導入したことは周知の通りである。後日、「量的緩和の問題は、実際には効くのですが理論的には効かないということなのですよ」という言葉を残している(参考文献3)』、「量的緩和の問題は、実際には効くのですが理論的には効かないということなのですよ」、難し過ぎて、理解不能だ。
・『理論・事実・経験の絶妙なバランス  しかし、その言葉の後、彼は実際には日本の経験や大恐慌から学んだこと、フリードマン、シュワルツ、ウッドフォード、ポール・クルーグマンなどの研究者の名前を挙げながら、金融政策立案は学術研究の蓄積にも依存していることを強調している。同時に、金融政策は学会と政策当局が互恵関係にある典型的な例であるとしている。 1983年の論文が発表された当時、銀行理論はまさに開発されつつあった段階で、それを組み込んだマクロ経済モデルはほとんどなかった。同様に、世界金融危機の後になって、中央銀行の資産購入政策を分析する理論枠組みが本格的に開発され、ニューケインジアンモデルに組み込まれていった。 これらのことを考えると、バーナンキ氏は、その時々に支配的な理論の枠組みだけにとらわれることなく、理論、実証的事実、経験の全てにバランスをとりながら柔軟に物事を考える学者だったと思う。そのことによって、研究者時代は新たな領域を切り拓き、政策当局者としてその学術的知見をいかしながら新たな政策を立案した、まれな人物と言えよう』、「バーナンキ氏は、その時々に支配的な理論の枠組みだけ にとらわれることなく、理論、実証的事実、経験の全てにバランスをとりながら柔軟に物事を考える学者だったと思う」、お弟子さんが書いたとはいえ、やはり偉大な人物のようだ。 
タグ:「「高額紙幣の廃止」で犯罪撲滅を図った国の末路 インドと北朝鮮がやらかした壮大な経済失策」 「プリンストン大学教授だったとき」を中心に「紹介」してくれるとは、興味深そうだ。 青木 浩介氏による「ノーベル経済学賞バーナンキ氏、実証と実行が後の理論を先導」 「バルファキス氏」の解説は平易で分かり易い。 日経ビジネスオンライン 「北朝鮮ウォンの切り下げ」は、「政府が発行する貨幣に対する国民の信頼を失わせ、人々が外貨の保有に殺到するという事態を引き起こした。結果としてめったに起きない国内の反乱が生じ、1ドル30ウォンから約8500ウォンへと通貨が劇的に暴落した。 2013年には、同国の215億ドルの経済圏のなかで推定20億ドルのアメリカドル紙幣が流通していた。アンクル・サム〔アメリカ〕にとっては好都合だが、金一家にとってはそうでもない」、これも余りにお粗末な事例の1つだ。 「インド」では「廃止された紙幣の実に99.3%が、追放されることなく銀行システムに戻ってきた」、「グレーマネーはモディが想定していたよりもすくなかったのか、あるいはインドのマネーロンダリングのしくみは、紙幣を追放するしくみよりも有能なのであろう」、なるほど。 「誰もが経済についてしっかりと意見を言えることこそ、いい社会の必須条件であり、真の民主主義の前提条件だ」、その通りだ。 (その6)(【ギリシャ元財務大臣が解説する】「なぜ経済を学ぶ必要があるのか?」に対する納得の回答、「高額紙幣の廃止」で犯罪撲滅を図った国の末路 インドと北朝鮮がやらかした壮大な経済失策、ノーベル経済学賞バーナンキ氏 実証と実行が後の理論を先導) 経済学 「格差があることに怒っている人は多そうだ」、その通りだ。 「彼は高額紙幣を「現代経済における時代錯誤」と形容し、「正規の経済活動ではほとんど役割を果たしていないが、地下経済においては重要な働きをしている。皮肉なことに、犯罪者たちが利用するそのような紙幣は、国家が用意しているのだ」と述べた」、「カナダは2000年に千カナダ・ドル札の発行を、シンガポールは2014年に一万シンガポール・ドル札の発行を終了したが、ユーロ圏ではそう簡単に物事は進まなかった」、「ユーロ圏」では現金志向が強いのだろうか。 確かに「高額紙幣は明らかに、犯罪者にとって都合がいい」。「ハイネケンは21日間の監禁生活を生きのび」、「彼は後にこの経験についてこう語ったのだ。「犯人たちは私を拷問した……カールスバーグを飲まされたんだ!」商売敵の「カールスバーグ」を飲まされたとは、「ハイネケン」氏にとっては「拷問」」なのだろう。 ナターシャ・デ・テラン ゴットフリート・レイブラント 東洋経済オンライン 「大切な判断を他人まかせにしないためには、経済とは何か、資本主義がどのように生まれ、どんな歴史を経ていまの経済の枠組みが存在するようになったのかを、自分の頭で理解する必要がある」、その通りだ。 「賢く、戦略的に怒り続けてほしい。機が熟したらそのときに、必要な行動をとってほしい。この世界を本当に公正で理にかなった、あるべき姿にするために」、「必要な行動」とは投票行動なのだろうか。 「計画的に余剰を増やし、別の地域と別の種類の食糧と交換するようになる。 そのやりとりは物々交換だったが、次第に通貨を使ってやり取りすることでグローバルな規模で貿易ができるようになる。 通貨を使うにあたって、数字や文字、債務という便利なものも人類は使うようになり、経済は高度になっていく。 さらに農作物の余剰を守るために軍隊が配備され、国家という概念が生まれた」、「経済とは農作物の余剰を守るところからはじまっている」、「余剰」がここまで経済発展の源になっているとは、感心させられた。 「農耕の発展により農作物の余剰が生まれ、余剰を増やしていく過程で経済が大きく動き出していく」、言われてみれば、確かに「余剰」がなければ、「経済」は成長しない。 「インド」での「五百インドルピー」と「千インドルピー」「の通用を廃止」は、準備不足などやり方が余りにお粗末だ。 「アメリカの麻薬経済の規模は年間1000億~1500億ドルと推定され、そのほとんどは現金で支払われており、そのうちの大部分が高額紙幣」、「アメリカの紙幣の90%にコカインの形跡が残っているのに対して、百ドル札ではその割合が著しく低い」、「高額紙幣は明らかに、犯罪者にとって都合がいい。100万ドルを一ドル札で用意すれば重さが1トン以上、体積が1立方メートル以上になるが、百ドル札で用意すればおよそ10キログラム(22ポンド)になり、ブリーフケースひとつにきれいにおさまる」、 「高額紙幣を廃止して国内で混乱を巻き起こした事例」とは興味深そうだ。 「バーナンキ氏は、その時々に支配的な理論の枠組みだけ にとらわれることなく、理論、実証的事実、経験の全てにバランスをとりながら柔軟に物事を考える学者だったと思う」、お弟子さんが書いたとはいえ、やはり偉大な人物のようだ。 「量的緩和の問題は、実際には効くのですが理論的には効かないということなのですよ」、難し過ぎて、理解不能だ。 その不安から、人々は二百ユーロ札、ひいては百ユーロ札さえも使うのを拒否するようになるかもしれない」、これはとってつけたようなヘリクツのような印象を受ける。 「五百ユーロ札は」「ドイツとオーストリアではいまだ法定通貨となっており、商業銀行での交換や再流通が可能である。この2つのドイツ語圏の中央銀行が新しい五百ユーロ札の発行を停止したため、理論的には五百ユーロ札はやがて姿を消すことになる」、「五百ユーロ札を受理しなくなることで、ほかの紙幣にも同様の措置が適用されるのではないかと人々を不安にさせる可能性がある、ということだ。 ここで、経済史を学ぶことの重要性を学生に説いていたことが非常に印象に残っている」、「マクロ経済学は色々な分野の応用なので、色々な分野を勉強しなければならない」、とは大変だ。 「バーナンキ氏が」、「次のように話したことをよく記憶している。 「マクロ経済学は色々な分野の応用なので、色々な分野を勉強しなければならない。失業を研究したいならば労働経済学を勉強する必要がある、インフレーションを研究したいならば貨幣経済学、経済成長ならば経済発展論、マクロ経済政策ならば公共経済学……景気循環は、マクロ経済学固有の研究課題だが、経済史とつながっている」。 「バーナンキ氏は銀行危機がもたらした金融仲介機能の毀損こそが、大恐慌を深刻なものにしたと考えた」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン「【ギリシャ元財務大臣が解説する】「なぜ経済を学ぶ必要があるのか?」に対する納得の回答」
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メディア(その34)(日経新聞で何が起きているのか 記者の大量退職、“物言う株主”に狙われたテレ東の運命は、日経新聞“金融専門メディア”編集長が二代連続で処分される“異常事態”、【元外交官が語る】「日本のニュース」が「世界標準の報道」からズレる理由 『世界96カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門』著者・山中俊之インタビュー) [メディア]

メディアについては、7月13日に取上げた。今日は、(その34)(日経新聞で何が起きているのか 記者の大量退職、“物言う株主”に狙われたテレ東の運命は、日経新聞“金融専門メディア”編集長が二代連続で処分される“異常事態”、【元外交官が語る】「日本のニュース」が「世界標準の報道」からズレる理由 『世界96カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門』著者・山中俊之インタビュー)である。

先ずは、6月24日付け文春オンライン「日経新聞で何が起きているのか 記者の大量退職、“物言う株主”に狙われたテレ東の運命は」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/55249
・『ジャーナリスト・小松東悟氏による「日経新聞で何が起きているのか」(「文藝春秋」2022年7月号)を一部転載します。 最大の焦点は「天下りの禁止」  これからピークを迎える大手企業の株主総会シーズン。そのなかで、財界が密かに注目しているのが6月16日に予定されているテレビ東京ホールディングス(HD)の株主総会だ。民放大手、いわゆるキー局のなかで格下の扱いであるテレビ東京の総会がそこまで関心を集めるのは、今回の総会のテーマが同社の筆頭株主である日本経済新聞社との関係だからだ。そして、それは日本の経済報道をリードしてきた日経が覆い隠してきた宿痾の病巣でもある。 テレビ東京HD(以下テレ東)は日経が32.6%を出資する持分法適用関連会社だが、同社の社長は1973年就任の佐藤良邦氏以来、半世紀にわたって日経からの「天下り」ばかり。実質的には植民地だ。 それがテレ東の経営効率を下げている、とかみついたのが、香港を拠点とする米国系投資会社、リム・アドバイザーズだ。アクティビスト・ファンド(いわゆる「物言う株主」)として著名な同社は4月14日、テレ東の定時株主総会に合わせて株主提案書を送りつけた。そこには、普段は日経からの指弾を恐れている財界人が溜飲を下げるような批判が並んでいた。 リムの提案は以下の7項目だ。 1 日経からの天下りの禁止 2 顧問等の廃止 3 社外取締役の選任 4 取締役報酬の個別開示 5 資本コストの開示 6 政策保有株式の売却 7 剰余金の処分 これらの論点はいずれも相互に関連しているが、最大の焦点は「天下りの禁止」である。 テレ東の取締役トップ3である小孫茂会長、石川一郎社長、新実傑専務はいずれも日経で取締役を経験した人物だ。さらに、この6月からは同じく日経出身の吉次弘志・常務執行役員が常務取締役に就任する。そうなれば社内取締役7人のうち4人が日経、プロパーは3人のみになる。) ほかの民放大手にも全国紙の資本が入っており、新聞社から経営者を迎える慣行はある。しかし、テレ東以外の局ではプロパーの社長も出ており、出資比率3割強の日経によるテレ東への強権支配は異様といっていい。 こうした要求を突き付けられ、テレ東はもちろん日経もパニック状態となった。翌日には、東洋経済オンラインのスクープにより株主提案の内容は市場の知るところとなった』、「テレビ東京の」「総会のテーマが同社の筆頭株主である日本経済新聞社との関係・・・それは日本の経済報道をリードしてきた日経が覆い隠してきた宿痾の病巣」、「テレ東以外の局ではプロパーの社長も出ており、出資比率3割強の日経によるテレ東への強権支配は異様」、興味深そうだ。
・『日経に牙をむいた元記者たち  パンドラの箱を開けたのはリムの日本投資担当者である松浦肇氏。実は日経新聞出身だ。1995年に入社し、主に証券部で数々のスクープを放ったが、ニューヨーク特派員を最後に退職。現地で産経新聞の編集委員を務めた後、金融界に転じた。 実父の松浦晃一郎氏は駐仏大使やユネスコ事務局長を務めた大物外交官。「日英仏のトリリンガルで、米コロンビア大学で複数の修士号を取得するなど経歴的にはピカピカ。だが、本人は坊主頭で筋骨隆々、むしろ野武士を思わせる人物だ。これまでの投資先を見る限り、本気で『世直し』のためにアクティビストをやっているふしがある」(元同僚)。 その野武士が、テレ東の新たな社外取締役候補として連れてきたのはこれまた日経OB。自らが師と仰ぐ阿部重夫氏だ。在職中に日本新聞協会賞を2回受賞した古豪である。 阿部氏は退社後に複数の媒体で編集長を務めた。月刊誌『選択』編集長時代には、2003年に当時の鶴田卓彦社長が退陣に追い込まれた際に日経の内情を徹底的に暴いた。 この事件は、当時日経新聞ベンチャー市場部長だった大塚将司氏が、社員株主として鶴田卓彦社長解任動議を提出した騒動に端を発する。子会社ティー・シー・ワークスでの融通手形操作によって巨額の損失が発生したことと、不適切に会社経費を使用した疑惑によるものだ。鶴田氏はスキャンダルにまみれて退場したが、大塚氏も1度は懲戒解雇された後味の悪い展開だった。『選択』2003年3月号は、日経の企業風土を端的に描いた。 〈組合は御用組合、融資銀行は日経に気兼ねしてモノ申せない。株主投票は記名式で、秘書室は開封して×をつけた株主をチェックする。逆らった社員には人事の報復が待つ。まさにコーポレートガバナンスの北朝鮮である。だから企業から『企業統治のお説教だけは日経から聞きたくない』と言われるのだ〉』、普段は「企業統治のお説教」を垂れている「日経」が、「株主投票は記名式で、秘書室は開封して×をつけた株主をチェックする。逆らった社員には人事の報復が待つ。まさにコーポレートガバナンスの北朝鮮」、「コーポレートガバナンスの北朝鮮」とは言い得て妙だ。
・『鶴田元側近の「OK戦争」  鶴田事件当時の経営風土が今も変わらぬことを象徴するのが、日経とテレ東それぞれの最高実力者だ。 日経のトップである岡田直敏会長、テレ東の小孫茂会長は、鶴田事件の前後に秘書室長を務めていた。ともに鶴田氏の毎夜のクラブ通いに付き添い、ゆがんだ統治構造にどっぷりつかり、それに順応してきた。 2人はともに1976年に日経に入社した。20人ほどしか採用されなかったという少ない同期のなかで、早くからお互いを意識していた。小孫氏は日経の多数派だった早稲田大学出身で、岡田氏はこのころは珍しかった東大法学部卒。記者としての力量に自負が強い小孫氏は、事務処理能力がとりえで入社当初から経営者になりたがっていた岡田氏のことを軽んじていたという。 性格は対照的だ。寡黙な岡田氏に比して小孫氏は気性が激しく、ゴルフ場でもキャディーを怒鳴りつける悪癖で知られる。大企業トップには珍しいキャラクターの持ち主というほかない。「最近は怒鳴るのは我慢し静かな口調でおどすので、よけいに怖い」(テレ東関係者)。 一方の岡田氏は「そもそも人づきあいが苦手で、記者時代も取材対象への食い込みを競うスクープ合戦とは無縁。さしたる功績もなかったが、企画づくりの手際はよかった。日経新聞の仕事はニュースの解説だと思っているようだ」(日経のベテラン記者A氏)。これでは水と油だろう。 日経の本流である経済部のエリートコースを歩んだ2人は社長レースでもデッドヒートを繰り広げた。社内で「OK戦争」と言われる全社を巻き込んだ争いの結果は岡田氏に軍配が上がり、小孫氏は涙をのんでテレ東に転出した。それまでテレ東社長の座は、歴代の日経トップが論功行賞のために側近を「天下り」させるポストだった。そこに岡田氏に敗れた小孫氏が派遣されたことは、日経の人事抗争に上場会社であるテレ東を巻き込む結果となった。岡田氏が意に添わぬ人材をテレ東に放逐する一方で、小孫氏は同社の独立王国化を図ってきた。 たとえば2020年度にはテレ東本社ビルの貸し主である住友不動産の株を政策保有株(いわゆる持ち合い株)として大幅に買い増した。これは、政策保有株の存在は企業経営を歪めると紙面で繰り返し論じてきた日経の方針と相容れないはずだが、テレ東が押し切ったかたちだ。 日経に遺恨を抱える「天下り」に勝手なことをされるテレ東こそいい面の皮だ。「ニュース番組に、テレ東側は望んでいない日経記者の出演を押し付けられることも増えた」とテレ東関係者は語る。 今回、リムがコーポレートガバナンス(企業統治)について疑義をつきつけたことに、テレ東の現場社員は内心声援を送っている。同社経営陣は対決姿勢をとっているが、これはまさに天に唾するもの。読者にガバナンスの重要性を説いてきた企業の独善性を自ら暴露した』、「今回、リムがコーポレートガバナンス(企業統治)について疑義をつきつけたことに、テレ東の現場社員は内心声援を送っている。同社経営陣は対決姿勢をとっているが、これはまさに天に唾するもの。読者にガバナンスの重要性を説いてきた企業の独善性を自ら暴露した」、「読者にガバナンスの重要性を説いてきた企業の独善性を自ら暴露した」、とは手厳しい。
・『外資が問題視する「天下り」  テレ東が無傷だったのは、アクティビストも日経を恐れていたからだ。それが証拠に、TBSHD、テレビ朝日HD、フジ・メディアHDなどほかのキー局はすでにアクティビストからリストラや増配などを厳しく求められてきた。PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回るのが共通点で、現預金や不動産を豊富に持っているわりに利益水準は低い。要は資産を有効に使えていないのだ。 2022年3月末時点でテレ東HDの純資産は898億円に及ぶが、足元の時価総額は約540億円。PBRは0.6倍にすぎない。同業他社と同じメタボ体質ということになる。テレ東だけが無事だったのは、日経を敵に回して記事で報復されるのは、一般企業はもちろんアクティビストにとってもリスクだからだ。 テレ東は5月12日にリムによる株主提案に対する「取締役会意見」を公表したが、事前に予想された通り一切要求に応じない「ゼロ回答」だった。株式市場関係者をあきれさせたのは、資本コストの開示を拒否したことだ。資本コストとは企業の資金調達に伴うコストのこと。資本コストを超えた事業収益率をあげていないビジネスは投資家の期待に応えているとはいえない。 テレ東は「競争に影響を与える情報である資本コストを広く一般に開示すると、当社が今後実施する成長投資へ向けた交渉等において、不利益が生じる恐れがある」として開示を拒絶した。同時に「当社グループは放送事業の免許を受け、災害報道等では国民に広く早く、かつ切れ目なく情報をお届けする義務があり(中略)相応の余裕資金や自己資本が必要です」と正当化した。 災害報道うんぬんの事情はどこのテレビ局でも同じ。他局と比べてテレ東の情報開示に関する姿勢はひときわ消極的で、経済報道を看板とする企業とは思えない。) 政策保有株については「段階的かつ可及的に速やかに売却していくことが適当」としながらも「様々な経緯を踏まえて現在の状態になっている」と開き直った。 日本の株式市場で大株主や主要取引先からの「天下り」禁止は大きなテーマになっている。リムは2021年には平和不動産、2022年には鳥居薬品に、取引先や親会社からの天下りの禁止を求める株主提案を行った。 コーポレートガバナンスに詳しいギブンズ外国法事弁護士事務所のスティーブン・ギブンズ氏は、一般論としつつ、「大株主の企業で出世できなかった人間を『天下り』させるのは、子会社の経営効率を悪化させる。これはまさに、大株主には利益となる一方、子会社の一般株主には不利益をもたらす『利益相反』に当たる」と話す。 こうした議論は外国人を中心に機関投資家の賛同を得やすくなっており、松浦氏はそこに勝機を見出しているのだろう。 5月20日にテレ東はオンライン形式で2022年3月期の決算説明会を開催した。その場では投資家、アナリストから「日経との提携による売り上げ、営業利益の比率はどれだけあるのか」「6月からの人事案では社内取締役の過半数が日経出身となるが、狙いは何か」といった質問が飛んだ。リムの株主提案を受け、日経との関係に投資家からも厳しい目が向けられている。 リムのテレ東株の所有比率は1%台と見られる。今後の焦点は6月16日のテレビ東京HDの定時株主総会でリムの提案がどれだけの賛成票を集めるかだ。日経が3割強の株を押さえていることを考えれば、いずれかの議案で10%以上の賛成票を集められればリムとしては満足だろう。その場合は来年以降も繰り返し株主提案をつきつけ、テレ東のガバナンス改善を求めるとみられる』、6月16日付けの「テレビ東京HDの定時株主総会」の決議通知によれば、会社側提案が可決、株主側提案は否決されたようだ。
・『現場を殺す「デジタルシフト」  アクティビスト襲来という「外患」の前に、日経は「内憂」も抱えていた。岡田氏が進めてきたデジタル路線の行き詰まりと記者の大量離脱だ。 ジャーナリスト・小松東悟氏による「日経新聞で何が起きているのか」は、「文藝春秋」2022年7月号と「文藝春秋digital」に掲載されています』、「デジタル路線の行き詰まりと記者の大量離脱」、とは穏やかではないが、ここではこれ以上は分からないので、今後、分かれば改めてお知らせしたい。

次に、9月16日付け文春オンライン「日経新聞“金融専門メディア”編集長が二代連続で処分される“異常事態”」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/57331
・『「編集長が二代連続で処分され、『うちの会社のコンプライアンスは大丈夫なのか?』と疑問の声が挙がっています」 こう嘆息するのは、日本経済新聞社の現役社員・A氏である。
・『けん責処分の理由は?  社内に波紋が広がったのは、8月23日のこと。 「社内のイントラ(社員間の情報共有ツール)で、『日経フィナンシャル』編集長と論説委員を兼務するX氏の同日付のけん責処分が発表されたのです。会社からはX氏の処分理由について具体的な説明はなく、『部下へのパワハラではないか』などの憶測を呼びました」(同前) 日経フィナンシャルは、紙の新聞の部数減に歯止めがかからない中、デジタル化を推し進める日経の渾身の一手だった。 「一昨年、社運を賭けて始まった新媒体で、“金融の未来を読むデジタルメディア”として華々しく売り出しました」(同前) その価格設定もなかなかの強気だ。 「金融業界でバリバリ働くビジネスマンをターゲットにしたコンテンツが満載で、月額6000円の購読料は日経本紙よりも高額。ですが、会員数はすでに1万6000人を超えました。岡田直敏会長が社長時代に始めた肝煎りの事業。創刊1年目で黒字に転換したことで長谷部剛現社長から社長賞も授与されています」(同前)』、「月額6000円の購読料」で「会員数はすでに1万6000人を超えました」、とは大したものだ。
・『X氏は将来の社長候補  花形メディアを率いるX氏は有名私大を卒業後の1993年に入社。経済部で金融や財界を担当した後、ロンドンやシンガポール、ニューヨークへの駐在を経て、20年11月に編集長に就任した。 「帰国子女で英語がペラペラ。国際金融に明るく、大手メガバンク幹部らにも深く食い込んでいる。社内では王道の経済部出身で海外経験も豊富。同世代にライバルも少なく、将来の社長候補の1人と目されている」(日経社員B氏) そんなX氏に一体何があったのか。小誌が入手した「処罰辞令」のイントラ画面の写しには、X氏の名前とともにこう記されている。〈就業規則第七十七条一項十一号により、けん責とする〉』、「将来の社長候補の1人と目されている」人物が、「けん責」とは大変だ。
・『店の店主と揉めて…  就業規則を読むと、同条文には「他人に暴行、脅迫を加え、または迷惑をかけたとき」とある。 「X氏は取材熱心で毎晩のように取材先と会食を重ねているのですが、そこで店の店主と揉めてトラブルとなってしまったのです。後日、その店から日経本社にクレームが入って事態が露見。今回の処分となりました」(同前) 実は日経フィナンシャルの編集長が処分されるのはこれが初めてではない。 「2年前に初代編集長が後輩記者に悪質なセクハラをしたとして、就任後わずか半年で突然解任され、退社した。その後を託されたのがX氏でした。編集長が二代連続で処分され、社内では“異常事態”といわれています」(同前)』、「編集長が二代連続で処分され」、いくら「編集長」のプレッシャーが強いとはいえ、「“異常事態”」だ。
・『日経広報室の回答は  X氏の周辺を取材するとこんな声も聞こえてくる。 「Xさんは仕事面ではいわゆる“できる男”で経歴もピカピカなのですが、普段から部下に対して歯に衣着せずにものを言うタイプで緊張感が漂っている。その矛先が今回はお店の人に向いてしまったのでは。お酒はなんでもよく飲みますし、飲むととにかく長いんです」(日経社員C氏) 日経広報室に問い合わせると、こう回答した。 「ご質問の社員は、社内規定に基づき処分しました。事実関係は公表していません」 酒席での失態に、反省しきりだというⅩ氏。金融の未来は読めても、自身の未来は読めなかった……』、日経でのけん責処分の重さは分からないが、一般的にはそれほど重い処分ではなく、リカバリー可能なのではなかろうか。

第三に、8月18日付けダイヤモンド・オンライン「【元外交官が語る】「日本のニュース」が「世界標準の報道」からズレる理由 『世界96カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門』著者・山中俊之インタビュー」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/306523
・『日本で生活していると「日本の報道」に触れることはあっても「世界の報道」に触れる機会はなかなかない。しかし、じつは世界では大きく報道されているニュースでも、日本ではほとんど報道されていないものもある。今回は『ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門』の著者で元外交官、世界96カ国を訪れた経験を持つ山中俊之さんに「日本人に理解してもらいたい世界の時事問題ベスト3」を聞いてみた。さらに、山中さんがおすすめする「日本目線」だけでなく「世界の目線」に触れられるメディアも必見(Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『知っておくべき「世界の時事問題」  Q:山中さんは外交官として活躍され、その後も含めると世界96カ国を訪問されているのですが、日本と世界を比べた場合、報道されているテーマや内容に違いを感じることはありますか? 山中俊之(以下、山中):ものすごくあります。もちろん、どの国も「自分たちの国の目線」はありますし、それぞれに関心があるテーマは違うのですが、日本のメディアは「特にここが弱い」と感じることがあります。 Q:たとえば「いま、日本人にもっと知ってもらいたい時事問題」を挙げるとしたら、どんなものがあるでしょうか。 山中:一番は移民・難民問題です。ロシア・ウクライナの戦争が起こり、避難民のことはけっこう報じられましたが、世界的に見て、日本の人口あたりの難民の受け入れ率や申請して受け入れられる人数は非常に低いです。 移民・難民は世界では大問題で、アメリカ大統領選挙でも主要な論点になります。イギリスがEUから離脱する問題、いわゆるブレグジットも移民・難民の問題が根底にあります。 しかし、日本ではあまり話題になりません。避難民の話が多少あったとしても、総選挙で「難民の受け入れをどうするか」「移民についてこうしていこう」なんて話はまず論点に上がらないですね。それだけ国民の関心が低いということです』、「移民・難民は世界では大問題」だが、「日本ではあまり話題になりません」、その通りだ。
・『なぜ、日本の報道はズレるのか?  Q:世界では大きな論点になるのに、日本ではならないのはどうしてなのでしょうか? 山中:島国で、移民や難民が陸路で来ることがないのは1つの理由でしょうね。物理的に国境を越えて、やってくるのが難しいという点です。 そうした地理的環境も手伝って、日本人のマインドというか、問題意識が非常に低いというのはあるでしょう。かつてベトナム難民を相当数受け入れたことがありましたが、それ以降は大きく受け入れたことはほぼありません。 じつはこれは世界では恥ずかしいことでして、国際会議に参加したことのある人であれば、そうした日本のスタンスが話題になり、恥ずかしい思いをしたことがある人も多いはずです。 「難民を受け入れる、受け入れない」以前の話として、もう少し世界の大問題に関心を持つことは必要だと感じます。 以前、ある海外メディアの日本語版をつくっている編集者が「(海外版では載っていても)日本語版にするときに扱わないテーマがあって、それが移民・難民の問題だ」と言っていました。 このテーマを扱っても売れないんだそうです。こういったことが積み重なって、「日本の報道」と「世界の報道」との間に大きなギャップが生じていくのだと思います』、「かつてベトナム難民を相当数受け入れたことがありましたが、それ以降は大きく受け入れたことはほぼありません。 じつはこれは世界では恥ずかしいことでして、国際会議に参加したことのある人であれば、そうした日本のスタンスが話題になり、恥ずかしい思いをしたことがある人も多いはずです」、その通りだ。
・『「再生可能エネルギー」への関心が低い日本  Q:移民・難民問題とは別に、世界と比べて特に日本のメディアが報じないテーマはありますか? 山中:再生可能エネルギーに関する話題ですね。もちろん日本でも再生可能エネルギーに関する報道はありますが、世界に比べて圧倒的に少ないですし、私の肌感覚ですが、国民の意識も低いと感じます。 脱炭素を実現する動きは世界では活発に議論されていますし、EUのなかでも特にドイツは熱心に再生可能エネルギーに関して主張していますね。 といっても、社会のなかで、なんでもかんでも賛成、賛同されているわけではありません。 「自然を破壊してソーラーパネルを設置しているなんておかしいじゃないか!」「壊れたらどう対処するのか!」などの反対意見もありますし、「風力発電の騒音の問題」など賛否両論いろんな意見が出て、活発に議論されています。 日本もそうですが、世界の国々だって、旧来の電力系の会社から多くの献金を受けている政党や政治家はいますから、どの国も、ものすごく再生可能エネルギーへの移行が進んでいるわけではありません。 そこは一筋縄ではいかないんですよ。ただ、再生可能エネルギーの問題が日本に比べて盛んに報道され、活発に議論されていることは間違いありません』、「日本でも再生可能エネルギーに関する報道はありますが、世界に比べて圧倒的に少ないですし、私の肌感覚ですが、国民の意識も低いと感じます」、残念なことだ。
・『日本は「個人の影響力」を軽視している  Q:地球環境を考えれば、再生可能エネルギーの問題を考えることの大切さは日本人も理解していると思うのですが、そこへの関心が低かったり、活発な議論にならないのはどうしてなんでしょうか。 山中:アメリカやヨーロッパでも関心のある人とそうでない人の差はあるので、そこは日本も同じだと思います。ただし、報道のされ方というか、討論番組のつくりにはちょっと違いを感じます。 Q:「番組のつくり」が違うとはどういうことですか? 山中:日本のテレビでも討論番組はそれなりにあるんですが、あそこに出てきている人たちは、立派な肩書きがある人ばかりのように感じるんですよ。 政治家や弁護士はもちろん、さまざまな活動をしている人が出演する場合でも、NPO法人の代表、一般社団法人の代表みたいな人が多いですよね。 Q:確かにそうですね。 山中:一方、アメリカやヨーロッパでは、こうした社会課題に対して個人で精力的に活動している人がどんどん番組に出て、活発に議論しているんです。 個人的な印象ですが、日本はそうした個人の活動家の影響力をやや軽視しているように感じます。 海外では、そうした人たちが株主総会にもシェアホルダーとしてガンガン入ってきて「企業の意思決定に影響力を及ぼしていこう」という動きが活発です。企業側の人たちにとっても、無視できない影響力を持ってきているんです。 日本企業の役員たちでも、そうした動きに敏感な人たちは積極的に対応しているのですが、まだまだ「そんなに重視しなくていいよ」「適当にあしらっておけ」「めんどくさい連中」くらいにしか捉えていない人もたくさんいます。 その辺りからも「個人の影響力が軽視されている」と感じますね。 でも、日本でも少しずつ、そうした影響力を無視できないようになっていくと思います。株式総会のシェアホルダーとしてやってきて「環境問題に詳しい人が取締役に1人も入っていないじゃないか!」「そんな決議は賛成できない」と言い出す人は出てくるでしょう。 もちろん、そうした人がたくさんの株を持っていることは稀でしょうから、最終的に提案は通らないでしょうけど、でも、少しずつ議論は活発にはなっていくと思います』、「討論番組のつくり」、「日本のテレビでも討論番組・・・に出てきている人たちは、立派な肩書きがある人ばかり」、「政治家や弁護士・・・NPO法人の代表、一般社団法人の代表みたいな人が多い」、「アメリカやヨーロッパでは、こうした社会課題に対して個人で精力的に活動している人がどんどん番組に出て、活発に議論」、「日本はそうした個人の活動家の影響力をやや軽視しているように感じます。 海外では、そうした人たちが株主総会にもシェアホルダーとしてガンガン入ってきて「企業の意思決定に影響力を及ぼしていこう」という動きが活発です」、「海外では、そうした人たちが株主総会にもシェアホルダーとしてガンガン入ってきて「企業の意思決定に影響力を及ぼしていこう」という動きが活発です。企業側の人たちにとっても、無視できない影響力を持ってきているんです。 日本企業の役員たちでも、そうした動きに敏感な人たちは積極的に対応しているのですが、まだまだ「そんなに重視しなくていいよ」「適当にあしらっておけ」「めんどくさい連中」くらいにしか捉えていない人もたくさんいます」、彼我の違いは大きいようだ。
・『日本のメディアは政治関連のウェイトが高すぎる  山中:最後にもう1つ挙げるとしたら、やはり「新冷戦」というか「世界の安全保障」についてでしょうね。ロシア・ウクライナの戦争が起こったことで世界は再び分断に向かっているとは思うんです。 これからロシアが中国とさらに結びついていく可能性はありますし、少なくとも、軍事力によるバーゲニングパワー(国際間の交渉・折衝における対抗力)は強まったと思います。 実際に軍事行動を起こさないまでも、軍事行動を起こすギリギリのところまでいってから妥協点をみいだす。そんな外交手段、外交圧力がもっともっと起こってくるかもしれません。 2008年にロシアがジョージアに侵攻しましたが、それ以前の国際政治の専門家が現代の状況を見たら、この現状に驚嘆すると思います。それくらい軍事力による外交は起こりやすくなっているのが実態です。 核兵器はもともとバーゲニングパワーですし、軍事力全般を含め、外交におけるそのウエートは高まったと言わざるを得ません。 それは国家間の緊張を高めてしまうだけでなく、国の予算が軍事力に割かれるようになって、福祉や教育への割り振りが少なくなってしまうなど、私たちの日常生活にも直接影響してきます。そうしたことに、もっと私たちは目を向けていかなければならないと思います。 Q:日本で生活していると、どうしても「日本目線の報道」にしかなかなか触れることができないのですが、少しでもグローバルな情報、視点をキャッチするために「これはチェックしておいた方がいい」というメディアはありますか。 山中:できれば、英語メディアを取り入れたいです。「ニューヨーク・タイムズ」は、玉石混合のネット情報とは一線を画する信頼性の高さで購読者数が世界で増加しています。 世界での影響力という点では、「エコノミスト」や「タイム」といった雑誌を目を通すことにも意味があります。日本語版で出ているものとしては、「ニューズウィーク」が良いと思います。英語メディア以外では、世界各国の報道が日本語で見れるNHK BS1の「ワールドニュース」がお奨めです。 私はよく新聞記者の方ともディスカッションさせていただくのですが、日本の報道は政治に寄りすぎているように感じます。もっと世界情勢や経済、ビジネスの最先端などの報道がされてもいいのにと常々思っています。 首相が何を言ったとか、何をしたとか、選挙がどうなっている、などもいいのですが、政治家の失言やスキャンダルも含めて、政治の話題が多すぎますよね。 そういう意味でも、ときには世界のメディアに触れて、いつもとは違った目線で世界や社会を見つめることが非常に大切だと思います。)(著者紹介はリンク先参)』、「軍事力による外交は起こりやすくなっているのが実態です。 核兵器はもともとバーゲニングパワーですし、軍事力全般を含め、外交におけるそのウエートは高まったと言わざるを得ません。 それは国家間の緊張を高めてしまうだけでなく、国の予算が軍事力に割かれるようになって、福祉や教育への割り振りが少なくなってしまうなど、私たちの日常生活にも直接影響してきます。そうしたことに、もっと私たちは目を向けていかなければならないと思います」、「「ニューヨーク・タイムズ」は、玉石混合のネット情報とは一線を画する信頼性の高さで購読者数が世界で増加しています。 世界での影響力という点では、「エコノミスト」や「タイム」といった雑誌を目を通すことにも意味があります。日本語版で出ているものとしては、「ニューズウィーク」が良いと思います。英語メディア以外では、世界各国の報道が日本語で見れるNHK BS1の「ワールドニュース」がお奨めです」、「ときには世界のメディアに触れて、いつもとは違った目線で世界や社会を見つめることが非常に大切だと思います」、このブログでもこうした「世界のメディア」の注目記事は出来るだけ紹介するようにしている。
タグ:6月16日付けの「テレビ東京HDの定時株主総会」の決議通知によれば、会社側提案が可決、株主側提案は否決されたようだ。 「今回、リムがコーポレートガバナンス(企業統治)について疑義をつきつけたことに、テレ東の現場社員は内心声援を送っている。同社経営陣は対決姿勢をとっているが、これはまさに天に唾するもの。読者にガバナンスの重要性を説いてきた企業の独善性を自ら暴露した」、「読者にガバナンスの重要性を説いてきた企業の独善性を自ら暴露した」、とは手厳しい。 「軍事力による外交は起こりやすくなっているのが実態です。 核兵器はもともとバーゲニングパワーですし、軍事力全般を含め、外交におけるそのウエートは高まったと言わざるを得ません。 それは国家間の緊張を高めてしまうだけでなく、国の予算が軍事力に割かれるようになって、福祉や教育への割り振りが少なくなってしまうなど、私たちの日常生活にも直接影響してきます。そうしたことに、もっと私たちは目を向けていかなければならないと思います」、 (その34)(日経新聞で何が起きているのか 記者の大量退職、“物言う株主”に狙われたテレ東の運命は、日経新聞“金融専門メディア”編集長が二代連続で処分される“異常事態”、【元外交官が語る】「日本のニュース」が「世界標準の報道」からズレる理由 『世界96カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門』著者・山中俊之インタビュー) メディア 「日本でも再生可能エネルギーに関する報道はありますが、世界に比べて圧倒的に少ないですし、私の肌感覚ですが、国民の意識も低いと感じます」、残念なことだ。 「かつてベトナム難民を相当数受け入れたことがありましたが、それ以降は大きく受け入れたことはほぼありません。 じつはこれは世界では恥ずかしいことでして、国際会議に参加したことのある人であれば、そうした日本のスタンスが話題になり、恥ずかしい思いをしたことがある人も多いはずです」、その通りだ。 ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門 ダイヤモンド・オンライン「【元外交官が語る】「日本のニュース」が「世界標準の報道」からズレる理由 『世界96カ国で学んだ元外交官が教える ビジネスエリートの必須教養 「世界の民族」超入門』著者・山中俊之インタビュー」 日経でのけん責処分の重さは分からないが、一般的にはそれほど重い処分ではなく、リカバリー可能なのではなかろうか。 「編集長が二代連続で処分され」、いくら「編集長」のプレッシャーが強いとはいえ、「“異常事態”」だ。 「将来の社長候補の1人と目されている」人物が、「けん責」とは大変だ。 「月額6000円の購読料」で「会員数はすでに1万6000人を超えました」、とは大したものだ。 文春オンライン「日経新聞“金融専門メディア”編集長が二代連続で処分される“異常事態”」 「デジタル路線の行き詰まりと記者の大量離脱」、とは穏やかではないが、ここではこれ以上は分からないので、今後、分かれば改めてお知らせしたい。 「ときには世界のメディアに触れて、いつもとは違った目線で世界や社会を見つめることが非常に大切だと思います」、このブログでもこうした「世界のメディア」の注目記事は出来るだけ紹介するようにしている。 「「ニューヨーク・タイムズ」は、玉石混合のネット情報とは一線を画する信頼性の高さで購読者数が世界で増加しています。 世界での影響力という点では、「エコノミスト」や「タイム」といった雑誌を目を通すことにも意味があります。日本語版で出ているものとしては、「ニューズウィーク」が良いと思います。英語メディア以外では、世界各国の報道が日本語で見れるNHK BS1の「ワールドニュース」がお奨めです」、 普段は「企業統治のお説教」を垂れている「日経」が、「株主投票は記名式で、秘書室は開封して×をつけた株主をチェックする。逆らった社員には人事の報復が待つ。まさにコーポレートガバナンスの北朝鮮」、「コーポレートガバナンスの北朝鮮」とは言い得て妙だ。 日本企業の役員たちでも、そうした動きに敏感な人たちは積極的に対応しているのですが、まだまだ「そんなに重視しなくていいよ」「適当にあしらっておけ」「めんどくさい連中」くらいにしか捉えていない人もたくさんいます」、彼我の違いは大きいようだ。 「テレビ東京の」「総会のテーマが同社の筆頭株主である日本経済新聞社との関係・・・それは日本の経済報道をリードしてきた日経が覆い隠してきた宿痾の病巣」、「テレ東以外の局ではプロパーの社長も出ており、出資比率3割強の日経によるテレ東への強権支配は異様」、興味深そうだ。 「日本はそうした個人の活動家の影響力をやや軽視しているように感じます。 海外では、そうした人たちが株主総会にもシェアホルダーとしてガンガン入ってきて「企業の意思決定に影響力を及ぼしていこう」という動きが活発です」、「海外では、そうした人たちが株主総会にもシェアホルダーとしてガンガン入ってきて「企業の意思決定に影響力を及ぼしていこう」という動きが活発です。企業側の人たちにとっても、無視できない影響力を持ってきているんです。 「討論番組のつくり」、「日本のテレビでも討論番組・・・に出てきている人たちは、立派な肩書きがある人ばかり」、「政治家や弁護士・・・NPO法人の代表、一般社団法人の代表みたいな人が多い」、「アメリカやヨーロッパでは、こうした社会課題に対して個人で精力的に活動している人がどんどん番組に出て、活発に議論」、 文春オンライン「日経新聞で何が起きているのか 記者の大量退職、“物言う株主”に狙われたテレ東の運命は」
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コーポレート・ガバナンス問題(その11)(フジテック社長 株主総会1時間前の「敵前逃亡」 物言う株主の反対運動で 再任議案を取り下げ、社外取締役は“最”上級国民!「全9400人」の実名公開!高齢、高報酬、サボりに兼務…あきれた実態、「役員報酬1億円以上」が過去最多に!最新事情を東京商工リサーチが解説(有料、あと今月2本まで無料)、「長期的株主」は 企業にとって本当にありがたい存在なのか?) [企業経営]

コーポレート・ガバナンス問題については、昨年7月14日に取上げた。今日は、(その11)(フジテック社長 株主総会1時間前の「敵前逃亡」 物言う株主の反対運動で 再任議案を取り下げ、社外取締役は“最”上級国民!「全9400人」の実名公開!高齢、高報酬、サボりに兼務…あきれた実態、「役員報酬1億円以上」が過去最多に!最新事情を東京商工リサーチが解説(有料、あと今月2本まで無料)、「長期的株主」は 企業にとって本当にありがたい存在なのか?)である。

先ずは、本年6月24日付け東洋経済オンライン「フジテック社長、株主総会1時間前の「敵前逃亡」 物言う株主の反対運動で、再任議案を取り下げ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/598994
・『「株主が力を持ち、変化を起こせることを示した」 香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントの最高投資責任者であるセス・フィッシャー氏は、6月23日の午後に開いた説明会でそう振り返った。 オアシスは同日開催された東証プライム上場のエレベーター・エスカレーター大手、フジテックの株主総会に向け、創業家出身の内山高一社長(70)の再任議案への反対運動を展開してきた。内山氏が個人の利益のために権限を濫用していると指摘し、独自の調査に基づく資料を公開。ほかの株主の賛同を得ようと動いており、その結果が株主総会で明らかになるはずだった』、何があったのだろう。
・『株主が意見表明する機会を奪った  ところが、総会が開かれるわずか1時間前の午前9時、フジテックが衝撃の発表をした。内山社長の再任議案を取り下げたのだ。総会当日に会社が提案した現職社長の取締役再任案を撤回するのは、まさに異例の事態だ。 内山氏の再任以外の議案は予定通り株主総会に諮られ、すべて可決された。内山氏は代表取締役から外れ、取締役でも執行役員でもない「会長」となる。後任の社長には副社長を務めていた岡田隆夫氏が就くことになった。 総会当日という異例のタイミングで撤回に至ったのはなぜか。オアシスのセス氏は「大幅な反対票で負けることを避けるためだろう」と指摘し、「株主は異議を唱える機会を奪われた」と批判をしている。 株主総会の決議では、事前に議決権行使をするケースは少なくない。ギリギリまで事前行使の状況を見て、判断したとセス氏はみているわけだ。内山氏の再任に対しては、米議決権行使助言会社のISSやグラスルイスも反対を推奨していただけに、相応の反対票が集まっていたとしても不思議ではない。 これに対しフジテック側は、「票読みとは一切関係がない」と否定。内山氏の再任については、「継続的に議論を尽くし、(株主総会の)前日に取締役会で決議した」としている』、「総会が開かれるわずか1時間前に」、「フジテックが」「現職社長の取締役再任案を撤回」を発表。「後任の社長には副社長を務めていた岡田隆夫氏が就く」、こんな「ギリギリ」での議案撤回は「異例」のことだ。
・『内部告発で新たな疑惑も浮上  騒動はまだ終わりそうにない。フジテックが内山氏の取締役復帰の可能性をにおわせるからだ。 フジテックのリリースでは、「(第三者委員会による)調査の結果、指摘を受けた関連当事者取引その他行為に問題のないことが確認された際には、改めて、同氏の取締役就任の是非を株主の皆様に諮るべき」と記されている。 一方のオアシスも「フジテックを守る取り組みは続け、より強化していく」(セス氏)としている。今回、内山氏の疑惑に関する資料を公開した後、新たに7人からの内部告発があったことも明らかにし、追加の疑惑も生じているという。 新たな疑惑はどんなものなのか。第三者委員会の委員は独立性のあるメンバーになるのか、調査の結果はどうなるのか。焦点は数多く残されており、今後も波乱含みの展開が予想される。 他社にとっても、今回の動きは無視できないものと言えるだろう。オアシスは今回、詳細な調査に基づく資料を公開する形で社長再任の反対キャンペーンを展開した。中には公開情報以外の情報も含まれており、市場の注目を浴びていた。それにより、再任議案撤回に至ったことは、新手の手法が一定の効果を示したといってよい。 セス氏も「すべての投資先に対して、今後のデューデリジェンス(投資対象の価値・リスク調査)の一環になると捉えている」としている。今回のオアシスの手法は、これからのアクティビストたちの新たな武器となる可能性を秘めている』、「フジテックのリリースでは、「(第三者委員会による)調査の結果、指摘を受けた関連当事者取引その他行為に問題のないことが確認された際には、改めて、同氏の取締役就任の是非を株主の皆様に諮るべき」と記されている」、「新たに7人からの内部告発があったことも明らかにし、追加の疑惑も生じている」、「オアシスは今回、詳細な調査に基づく資料を公開する形で社長再任の反対キャンペーンを展開した。中には公開情報以外の情報も含まれており、市場の注目」、「(第三者委員会による)調査」の結果が大いに注目される。

次に、8月3日付けダイヤモンド・オンライン「社外取締役は“最”上級国民!「全9400人」の実名公開!高齢、高報酬、サボりに兼務…あきれた実態」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307403
・『企業のガバナンス改革の急加速で、バブルに沸く社外取締役。しかし、内実は女性や外国人のアリバイ選任や「お飾り」でも高報酬の社外取がはびこっている。ダイヤモンド編集部は上場企業3700社の社外取「全9400人」を徹底分析。“老人支配”や赤字でも高報酬、サボりや過剰な兼務の実態などを浮き彫りにする』、「社外取」の「実態」とは興味深そうだ。
・『社外取は“最”上級国民!? 大赤字でも報酬2500万円  社外取締役は日本の“最”上級国民――。編集部の総力取材で上場企業3700社の社外取「全9400人」を分析すると、そんな実態が明らかになった。 経営トップに隠れ、スポットライトを浴びる機会の少ない社外取だが、今や上場企業のトップ人事を左右する存在で、国や産業界が進めるガバナンス改革の主役に据えられている。 ところが、である。実際にはサボりまくりの完全なお飾りポストで、それでいて高年収のお気楽な特権階級なのだ。 社外取の岩盤利権構造を示す第一が年齢。『社外取締役「高齢&長期在任」ランキング【トップ100人】最高齢99歳、上位にシャープや新日鐵出身の大物も』では、“老人支配”の実態を明らかにした。社外取全体の6割強を65歳以上が占め、最高齢はなんと99歳だ。 次が報酬だ。会社が1兆円を超す大赤字を計上していても、2500万円の報酬を平気でもらっている(『赤字・解散価値割れ企業なのに「高報酬な社外取締役」100社273人の実名、赤字1兆円超で報酬2500万円も!』参照)。しかも、社外取の3~4社兼務で数千万円規模の高額報酬を得るのは当たり前だ。 にもかかわらず、取締役会への出席率が異様に低い社外取も多い。大手キー局には、サボりまくっている名門私立大学元総長もいる――。『社外取「取締役会出席率」ワーストランキング【全55人】フジテレビで“7回中4回”の元私大総長も』ではワースト55人の実名を公開している。 あなたの会社は大丈夫?そんな疑問に答えるため『社外取締役・実名ランキング【上位4000人】報酬、兼務、業績で9400人の全序列を初試算』で、社外取「全9400人」を実名でぶった斬った。 トップ人事のみならず、企業の重要な意思決定を下すということは、「社外取が腐れば会社も腐る」のである』、「社外取全体の6割強を65歳以上が占め、最高齢はなんと99歳だ」、「次が報酬だ。会社が1兆円を超す大赤字を計上していても、2500万円の報酬を平気でもらっている」、「社外取の3~4社兼務で数千万円規模の高額報酬を得るのは当たり前だ」、「取締役会への出席率が異様に低い社外取も多い」、「フジテレビで“7回中4回”の元私大総長も」、確かに「トップ人事のみならず、企業の重要な意思決定を下すということは、「社外取が腐れば会社も腐る」のである」、今後、「社外取」の取締役選任議案はしっかり検討することにしたい。

第三に、8月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した「「役員報酬1億円以上」が過去最多に!最新事情を東京商工リサーチ情報部が解説」を紹介しよう。これは有料記事だが、私の場合、あと今月2本まで無料。
https://diamond.jp/articles/-/307879
・『上場3870社の2021年度決算(2021年4月期~2022年3月期)の有価証券報告書が7月31日までに提出された。この中で開示された役員報酬額1億円以上は432社、人数は926人だった。前年度より社数は50社、人数は165人増え、開示制度が始まった2010年度以降の最多を更新した。これまで浸透していた業績重視の原則が崩れ、新たな報酬ルールの流れが鮮明になった』、興味深そうだ。
・『役員報酬トップは約43億円 上位10人の顔ぶれは  今年5月、ある政治家の「上場企業の社長は、報酬を必ず1億円もらう」趣旨の発言が話題になったが、現実はそう甘くない。企業は上場、未上場を問わずコーポレートガバナンス(企業統治)が重視され、役員報酬の決め方や報酬額の妥当性を問われている。従業員や株主、金融機関などのステークホルダー(利害関係者)への説明責任が重みを増している。) 2021年度に役員報酬1億円以上を開示したのは432社で、上場企業3870社の1割(構成比11.1%)だった。開示制度が始まった2010年度の開示は229社、人数は368で、11年間で社数が1.8倍、人数は2.5倍に増えた。この背景には、ビジネスのグルーバル化で外国人役員の積極的な登用がある。 2021年度の役員報酬トップは、Zホールディングス(東証プライム)の慎ジュンホ取締役の43億3500万円。2014年度のオリックスの宮内義彦元代表執行役会長(報酬額54億7000万円)に次ぐ、歴代5位の報酬額。ただ、報酬内訳を見ると基本報酬は1億500万円で報酬額の2.4%にすぎない。大半はストック・オプションで、41億700万円と報酬額の94.7%に達する。 2位は、セブン&アイ・ホールディングス(東証プライム)のジョセフ・マイケル・デピント取締役の23億8800万円(固定報酬2億2200万円、賞与21億6500万円)。 3位は、第一交通産業(福証)の黒土始相談役で19億400万円(固定報酬2億4000万円、退職慰労金7000万円)だった。同氏は6月の株主総会で代表取締役会長を退任し、特別功労金15億9400万円が加算された。 4位は、ソニーグループ(東証プライム)の吉田憲一郎会長兼社長CEOの18億8800万円。定額報酬、業績連動報酬のほか、ストック・オプション4億4900万円、譲渡制限付株式8億2500万円と非金銭報酬が約7割(67.4%)を占めた。 5位は、武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長兼CEOの18億5800万円。基本報酬、賞与のほか、業績連動株式ユニット報酬8億6500万円、譲渡制限付株式ユニット報酬3億9900万円と株式報酬(役員報酬BIP信託)が約7割(68.0%)を占めた。 トップ10のうち、日本人役員は4人と半分に届かず、外国人役員が多いのも特徴だ。(2021年度役員報酬額ランキングはリンク先参照)』、総じて「固定報酬」の割合は小さく、「業績連動報酬」や「ストック・オプション」などの割合が大きく、「外国人役員が多いのも特徴」だ。
・『業績連動型の定着で進む役員報酬の高額化  報酬額別では、報酬額10億円以上は14人で、前年度(6人)の2.3倍に増えた。また、9億円台は5人(前年度4人)、8億円台も2人(同1人)と、それぞれ前年度から人数が増えた。 一方、構成比は同1億円台が70.1%(同71.7%)、同2億円台が15.3%(同15.5%)、同3億円台が5.6%(同6.7%)と、前年度より低下した。 これまで役員報酬額は基本報酬が中心で、退職慰労金など多額の報酬額が押し上げるのが日本企業特有のシステムだった。だが、近年は外国人役員が増え、欧米型の業績連動型の報酬体系が定着してきた。金銭報酬以外のストック・オプションや譲渡制限付株式などは企業価値を高めた対価報酬で、ある意味、役員として正当な報酬でもある。だが、これが外国人役員に多く、日本人役員は従来の報酬制度が踏襲されているところにいびつさを残している。 2021年度に開示された926人のうち、前年度と連続して2021年度も1億円以上を受け取ったのは609人だった。このうち、前年度より報酬が増えたのは416人で、約7割(構成比68.3%)。一方、減額は138人(同22.6%)で、同額は55人(同9.0%)にとどまる。 また、前年度に開示されなかったのは317人で、2021年度に開示された926人の約3割(同34.2%)を占めた』、「近年は外国人役員が増え、欧米型の業績連動型の報酬体系が定着してきた」、「金銭報酬以外のストック・オプションや譲渡制限付株式などは企業価値を高めた対価報酬で、ある意味、役員として正当な報酬でもある。だが、これが外国人役員に多く、日本人役員は従来の報酬制度が踏襲されているところにいびつさを残している」、なるほど。
・『開示人数の最多は日立製作所の18人  企業別の開示人数を見ると、トップは日立製作所の18人。同社は2017年度18人、2018年度17人、2019年度18人、2020年度15人と、毎年多くの役員報酬1億円以上を開示している。 次いで、三菱UFJフィナンシャル・グループ(前年度11人)と会社分割で揺れる東芝(1人)の各13人、GMOインターネット10人(同7人)、大和証券グループ本社と三井物産の各9人(同9人)、東京エレクトロン(同8人)とバンダイナムコホールディングス(同6人)、三井不動産(同6人)の各8人と続く。 開示人数の上位は東証プライムに上場し、グルーバル展開する企業が多い。また、コロナ禍でも円安を追い風に、業績好調な海外事業部門の担当役員が開示されたケースも目立つ。 今年4月、東京証券取引所は市場区分を分けたが、市場別でのトップは、東証グロースではそーせいグループ4人(同3人)、東証スタンダードはユニバーサルエンターテインメント4人(同3人)で、個別開示を行った432社では40番目の多さだった。また、福証は第一交通産業の2人(各2人)で108番目だった。その他の市場の個別開示はなかった。 432社のうち、前年度と連続して開示したのは337社で、人数が増加したのは81社(構成比24.0%)、減少は28社(同6.4%)、同数は228社(67.6%)だった。前年度は開示がなく、2021年度に開示したのは95社だった。 人数別では、1人開示が226社(前年度212社)と半数(構成比52.3%)を占めた。また、2人は99社(構成比22.9%、前年度93社)、3人が45社(同10.4%、同31社)で、5人以上は39社(同9.0%、同30社)だった。 (2021年度役員報酬開示人数ランキングはリンク先参照)』、「開示人数の最多は日立製作所の18人」、「次いで、MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)」、「東芝」の「各13人」。「福証は第一交通産業の(各2人)」、なるほど。
・『目立つ外国人役員の高額報酬 従業員平均の100倍以上は3人  2021年度の上場3213社の平均給与(変則決算・持株会社除く)は、605万5000円(前年度比1.7%増)だった。前年度(595万1000円)から10万4000円増え、3年ぶりに増加した。 上場企業は役員報酬だけでなく、従業員の給与も増えた。前年度と比較可能な3102社で見ると、約7割(67.2%)の2087社で平均給与が前年度を上回り、この10年間で最高を記録した。平均賃金が伸び悩む中小企業を尻目に、上場企業の羽振りの良さを見せつけた格好だ。 ただ、円安や資源高、ウクライナ情勢などで物価上昇が大きく、実質賃金のアップは実感がないとの声は多い。役員報酬(基本報酬と賞与の合計)と従業員の平均給与の格差を見ると、最大がセブン&アイ・ホールディングスで、ジョセフ・マイケル・デピント取締役(報酬額23億8800万円)と従業員の平均給与(738万8000円)の格差は323.2倍に達する。 このほか、電通グループのウェンディ・クラーク取締役(報酬額14億9400万円)は115.3倍(従業員の平均給与1295万円)、トヨタ自動車のジェームス・カフナー(James Kuffner)取締役(報酬額9億600万円)は105.7倍(従業員の平均給与857万1000円)と、従業員の平均給与との格差が100倍以上は3人だった。 日本企業は欧米に比べ役員報酬が低いといわれるが、従業員との格差は大きく、さらに上場企業と中小企業の格差も課題になっている。 役員は業績だけでなく、企業価値の向上への責任も負う。役員報酬額の決定方法は、有価証券報告書に記載されているが、まだ記載内容や決定方法は企業によって温度差が大きい。オーナー社長かサラリーマン社長か、それも大きな判断の違いだろう。また、役員報酬を抑え、配当収入が大きいケースもある。役員報酬の決定は、企業への貢献度、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みなど、ステークホルダーへの説明責任が欠かせない。 (役員報酬1億円以上開示企業_社数・人数推移のグラフはリンク先参照)』、「役員報酬・・・と従業員の平均給与の格差を見ると、最大がセブン&アイ・ホールディングスで、ジョセフ・マイケル・デピント取締役(報酬額23億8800万円)と従業員の平均給与(738万8000円)の格差は323.2倍・・・電通グループのウェンディ・クラーク取締役(報酬額14億9400万円)は115.3倍(従業員の平均給与1295万円)、トヨタ自動車のジェームス・カフナー(James Kuffner)取締役(報酬額9億600万円)は105.7倍(従業員の平均給与857万1000円)と、従業員の平均給与との格差が100倍以上は3人」、やはり「従業員の平均給与の格差」は大きいようだ。

第四に、10月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した大阪公立大学大学院経営学研究科・商学部教授の宮川壽夫氏による「「長期的株主」は、企業にとって本当にありがたい存在なのか?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/311656
・『発売されるや、「ワクワクして眠れなくなる」「大発見が散りばめられている」と専門家からも絶賛の声が寄せられている異色のファイナンス本、『新解釈 コーポレートファイナンス理論 「企業価値を拡大すべき」って本当ですか?』。 この連載では、著者・宮川壽夫教授(大阪公立大学大学院)のガイドのもと、同書の一部を転載・紹介していきます。今回のテーマは、多くの上場企業がありがたい存在と信じている「長期的株主」についてです』、「長期的株主」の意義とは興味深そうだ。
・『本当に長期株主がほしいですか?  企業経営者やIR(Investor Relations)担当者と話をしていると、よく出てくるのが「長期的株主」という言葉だ。「長期的株主に株を保有してもらいたい」ということを必ずと言っていいほど異口同音に表現される。一方の投資家のほうも「長期的視点から企業を評価している」とこれも異口同音に自分が長期的株主であることを表現される。 しかし、コーポレートファイナンス理論から見れば株式評価は長期的視点であることがあたりまえだ。たとえばDCF法は企業が永久に存続することを前提に計算される。図のように将来のキャッシュフローを文字どおり長期的に予測し、それを資本コストで割り引いて株主価値を算出するという考え方だ。 では短期的株主とはナニモノか? おそらく企業や投資家が言うところの短期的株主とは、目先の材料のみを頼りに短期間で売買し、株価の瞬間的な変動によって鞘を抜くような株主、そういう人々を想定しているのだと思う。しかし、目先の材料で短期的な売買をしたのか、当初の長期的な予想に変化が生じたために保有後まもなく売却したのかは、その投資家に聞いてみないとわからない』、「コーポレートファイナンス理論から見れば株式評価は長期的視点であることがあたりまえだ。たとえばDCF法は企業が永久に存続することを前提に計算される」、「企業や投資家が言うところの短期的株主とは、目先の材料のみを頼りに短期間で売買し、株価の瞬間的な変動によって鞘を抜くような株主、そういう人々を想定しているのだと思う。しかし、目先の材料で短期的な売買をしたのか、当初の長期的な予想に変化が生じたために保有後まもなく売却したのかは、その投資家に聞いてみないとわからない」、その通りだ。
・『IR担当者が、取材の際に足元の業績ばかりを話題にして長期的な視点での議論ができない投資家やアナリストが多いと言って困惑顔を見せることがある。しかし、いくら長期的な視点で投資している株主でも、彼らにとって足元の状況はなにより重要だ。 図のように長期的なキャッシュフローの予測をする場合、近い将来の予測ほど確実性が高くなる。多くのモデルでは、一定期間を過ぎた後はキャッシュフローが定率で成長すると仮定して予測するので、足元の状況に変化が起きるとキャッシュフロー予測のモデル全体を作り直さなければならなくなってしまう。モデル全体を左右する直近の予測をなるべく正確なものにするためには、まず足元の状況に注意深く目を配る必要があるのは当然だ。なによりも将来の成功と失敗は今日の投資によって決まるのだ。今日行ったことのリストのどこかに将来を見通すカギが埋もれているかもしれない。 また、長期的な予測をしていたとしてもなにか他の原因で株価が上昇し、自分の予測が間違っていたと思えば売却して利益を確保しなければならないこともあるだろう。もちろん逆の見込み違いもあるかもしれない。売りは買いの結果にすぎないのだ』、「いくら長期的な視点で投資している株主でも、彼らにとって足元の状況はなにより重要だ」、「長期的なキャッシュフローの予測をする場合、近い将来の予測ほど確実性が高くなる。多くのモデルでは、一定期間を過ぎた後はキャッシュフローが定率で成長すると仮定して予測するので、足元の状況に変化が起きるとキャッシュフロー予測のモデル全体を作り直さなければならなくなってしまう。モデル全体を左右する直近の予測をなるべく正確なものにするためには、まず足元の状況に注意深く目を配る必要があるのは当然だ」、その通りだ。
・『もしも自社の株主が文字どおり長期的な株主で株を買ったまま売らない人ばかりだったらどうなるだろうか。IR部門がどんなに情報開示をしても株価が動くことはないということになる。IRの仕事は退屈なものになってしまうだろう。一度買ったらずっと保有し続ける株主も大事かもしれないが、株価が情報を適切に織り込みながら健全な価格形成を実現するには企業の情報に敏感に反応しながら株式を売買してくれる株主のほうが大事であるように思う。むずかしく言えば、株主の情報生産効果を活用することが可能だ。 ひところ「ファン株主」という言い方をする人がいた(今でも言うのかもしれませんが)。ファンである企業の株式を買ったら、その企業がたとえどのような状況になってもずっと保有し続けてくれる株主のことを意味するらしい。そんな株主が本当にいるのかなと思う。絶対にいないとは言わないが、実務でブローカー業務や株主調査を行った私の経験の中では少なくともそんな株主に出会ったことはない。 ただ、決まった企業の株式ばかりを繰り返し売り買いするという個人投資家は意外に多い(決まってそういう人はベテランの頑固ジジイだったりします)。特定の銘柄しか買わない。その銘柄が上昇したら売るし、状況が悪化したら売るが、またしばらくしてチャンスだと思えば再び同じ銘柄を買う。売ったらまたその銘柄を買うチャンスを静かにうかがっている。他の銘柄には目もくれない。突然「例の銘柄な、今が買いだぞ!」なんて電話がかかってくる。そういう人のほうが「ファン株主」と呼ぶにふさわしいのではないだろうか。 「好きですねえ、この銘柄」「いやね、この銘柄とは長年の付き合いだからさ、だいたいわかってんのよ、いつ買っていつ売ればいいか。何度も損したけど、何度も儲けさせてもらってるからね。ま、実は通算するとトントンてとこだけど」 最近では長期保有の株主が有利になるような株主優待を行う企業が増えている。しかし、こういういぶし銀の個人投資家にこそ株主優待で報いてあげたほうがよほど公平であるような気がするが、どうでしょうか。いいときに買って悪くなったら売る、自由な株式市場において一体なにが悪いのだろう。常に株主が入れ代わり立ち代わり入ってきては出て行くような企業のほうが、流動性の実証などというむずかしい話をするまでもなく賑わっていていいような気がする。 企業のファンダメンタルズにかかわらず割安の株を買って割高の株を売るアービトラージャー(裁定業者)も嫌われる株主のひとつだ。しかし、アービトラージャーがいるから行き過ぎた株価が修正されることもある(逆もある)。 長期保有の株主もいれば、目先の材料でごろごろ売買を繰り返す短期株主もいて、強気な人も弱気な人も、豪胆な人も臆病な人もいて、自由な売買が繰り返される。しかも企業が開示する同じ情報に対してもポジティブに捉える人もネガティブに捉える人もいる。こうしてある時は間違いを犯しながらも株価は正しい居場所を目指してさまよっているというわけだ』、「長期保有の株主もいれば、目先の材料でごろごろ売買を繰り返す短期株主もいて、強気な人も弱気な人も、豪胆な人も臆病な人もいて、自由な売買が繰り返される。しかも企業が開示する同じ情報に対してもポジティブに捉える人もネガティブに捉える人もいる。こうしてある時は間違いを犯しながらも株価は正しい居場所を目指してさまよっているというわけだ」、確かに多様な投資家に支えられてこそ、「株価は正しい居場所を目指してさまよっている」もののようだ。
タグ:(その11)(フジテック社長 株主総会1時間前の「敵前逃亡」 物言う株主の反対運動で 再任議案を取り下げ、社外取締役は“最”上級国民!「全9400人」の実名公開!高齢、高報酬、サボりに兼務…あきれた実態、「役員報酬1億円以上」が過去最多に!最新事情を東京商工リサーチが解説(有料、あと今月2本まで無料)、「長期的株主」は 企業にとって本当にありがたい存在なのか?) 「総会が開かれるわずか1時間前に」、「フジテックが」「現職社長の取締役再任案を撤回」を発表。「後任の社長には副社長を務めていた岡田隆夫氏が就く」、こんな「ギリギリ」での議案撤回は「異例」のことだ。 東洋経済オンライン「フジテック社長、株主総会1時間前の「敵前逃亡」 物言う株主の反対運動で、再任議案を取り下げ」 総じて「固定報酬」の割合は小さく、「業績連動報酬」や「ストック・オプション」などの割合が大きく、「外国人役員が多いのも特徴」だ。 「「役員報酬1億円以上」が過去最多に!最新事情を東京商工リサーチ情報部が解説」 ダイヤモンド・オンライン 「社外取全体の6割強を65歳以上が占め、最高齢はなんと99歳だ」、「次が報酬だ。会社が1兆円を超す大赤字を計上していても、2500万円の報酬を平気でもらっている」、「社外取の3~4社兼務で数千万円規模の高額報酬を得るのは当たり前だ」、「取締役会への出席率が異様に低い社外取も多い」、「フジテレビで“7回中4回”の元私大総長も」、確かに「トップ人事のみならず、企業の重要な意思決定を下すということは、「社外取が腐れば会社も腐る」のである」、今後、「社外取」の取締役選任議案はしっかり検討することにしたい。 「社外取」の「実態」とは興味深そうだ。 ダイヤモンド・オンライン「社外取締役は“最”上級国民!「全9400人」の実名公開!高齢、高報酬、サボりに兼務…あきれた実態」 「フジテックのリリースでは、「(第三者委員会による)調査の結果、指摘を受けた関連当事者取引その他行為に問題のないことが確認された際には、改めて、同氏の取締役就任の是非を株主の皆様に諮るべき」と記されている」、「新たに7人からの内部告発があったことも明らかにし、追加の疑惑も生じている」、「オアシスは今回、詳細な調査に基づく資料を公開する形で社長再任の反対キャンペーンを展開した。中には公開情報以外の情報も含まれており、市場の注目」、「(第三者委員会による)調査」の結果が大いに注目される。 「役員報酬・・・と従業員の平均給与の格差を見ると、最大がセブン&アイ・ホールディングスで、ジョセフ・マイケル・デピント取締役(報酬額23億8800万円)と従業員の平均給与(738万8000円)の格差は323.2倍・・・電通グループのウェンディ・クラーク取締役(報酬額14億9400万円)は115.3倍(従業員の平均給与1295万円)、トヨタ自動車のジェームス・カフナー(James Kuffner)取締役(報酬額9億600万円)は105.7倍(従業員の平均給与857万1000円)と、従業員の平均給与との格差が 「開示人数の最多は日立製作所の18人」、「次いで、MUFG(三菱UFJフィナンシャル・グループ)」、「東芝」の「各13人」。「福証は第一交通産業の(各2人)」、なるほど。 「近年は外国人役員が増え、欧米型の業績連動型の報酬体系が定着してきた」、「金銭報酬以外のストック・オプションや譲渡制限付株式などは企業価値を高めた対価報酬で、ある意味、役員として正当な報酬でもある。だが、これが外国人役員に多く、日本人役員は従来の報酬制度が踏襲されているところにいびつさを残している」、なるほど。 「長期保有の株主もいれば、目先の材料でごろごろ売買を繰り返す短期株主もいて、強気な人も弱気な人も、豪胆な人も臆病な人もいて、自由な売買が繰り返される。しかも企業が開示する同じ情報に対してもポジティブに捉える人もネガティブに捉える人もいる。こうしてある時は間違いを犯しながらも株価は正しい居場所を目指してさまよっているというわけだ」、確かに多様な投資家に支えられてこそ、「株価は正しい居場所を目指してさまよっている」もののようだ。 「いくら長期的な視点で投資している株主でも、彼らにとって足元の状況はなにより重要だ」、「長期的なキャッシュフローの予測をする場合、近い将来の予測ほど確実性が高くなる。多くのモデルでは、一定期間を過ぎた後はキャッシュフローが定率で成長すると仮定して予測するので、足元の状況に変化が起きるとキャッシュフロー予測のモデル全体を作り直さなければならなくなってしまう。モデル全体を左右する直近の予測をなるべく正確なものにするためには、まず足元の状況に注意深く目を配る必要があるのは当然だ」、その通りだ。 「コーポレートファイナンス理論から見れば株式評価は長期的視点であることがあたりまえだ。たとえばDCF法は企業が永久に存続することを前提に計算される」、「企業や投資家が言うところの短期的株主とは、目先の材料のみを頼りに短期間で売買し、株価の瞬間的な変動によって鞘を抜くような株主、そういう人々を想定しているのだと思う。しかし、目先の材料で短期的な売買をしたのか、当初の長期的な予想に変化が生じたために保有後まもなく売却したのかは、その投資家に聞いてみないとわからない」、その通りだ。 「長期的株主」の意義とは興味深そうだ。 宮川壽夫氏による「「長期的株主」は、企業にとって本当にありがたい存在なのか?」 コーポレート・ガバナンス問題
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携帯・スマホ(その9)(だらだらスマホ触る人ほど「脳が疲れる」驚きの訳 スマホ依存かどうか調べるチェックリスト、楽天グループ株価下落で価値は半値に…“悪夢再来”に気を揉む日本郵政、社内資料で判明!楽天モバイル巡る「横領疑惑」と楽天エクスプレスの“接点”) [産業動向]

携帯・スマホについては、6月8日に取上げた。今日は、(その9)(だらだらスマホ触る人ほど「脳が疲れる」驚きの訳 スマホ依存かどうか調べるチェックリスト、楽天グループ株価下落で価値は半値に…“悪夢再来”に気を揉む日本郵政、社内資料で判明!楽天モバイル巡る「横領疑惑」と楽天エクスプレスの“接点”)である。

先ずは、9月18日付け東洋経済オンラインが掲載した日本認知症学会専門医・指導医 おくむらメモリークリニック理事長の奥村 歩氏による「だらだらスマホ触る人ほど「脳が疲れる」驚きの訳 スマホ依存かどうか調べるチェックリスト」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/618430
・『「スマホを肌身離さず持っていなければ落ち着かない」「暇な時間があるとスマホをつい触ってしまう」「SNSを確認するだけのつもりが、気づいたら数時間もスマホを操作していた」。これらにもし思い当たる節があるなら、気づかないうちに「スマホ依存」になっているかもしれません。 スマホ依存はさまざまな心身の不調の原因となります。日本認知症学会専門医・指導医であり、多くのスマホ依存症の人を改善に導いてきた『スマホ脳の処方箋』の著者・奥村歩氏が、スマホ依存の仕組みと引き起こされる心身の不調について詳しく解説します』、「スマホ脳の処方箋」とは興味深そうだ。
・『スマホ依存の危険は薬物レベル?  現在、スマホ=「プチ麻薬」といっていいほどスマホ依存が深刻な問題になっています。「そんな大袈裟な!」と思われるかもしれませんが、最近の医療現場では、スマホはお酒やたばこ、薬物と同じ危険な「依存性物質」と認定されています。 依存症を引き起こす依存性物質には次の共通した特徴があるのですが、スマホはこの①〜⑤の依存性物質の特徴をバランスよく満たしています。 ①気持ちよさをもたらす ②飽きない ③無限性 ④確実・手軽 ⑤一見すると安全 脳は依存性物質に対して飽き性なため、同じ刺激では次第にドーパミンの分泌が減少します。そのため、依存症の人はさらに強い刺激を求める傾向にあります。 例えばアルコール依存症では、初めは缶ビール1本で気持ちよく酔っぱらうことができていたのに、それがビールを2本、3本、さらにウイスキーなどより度数の強いお酒に手を出すようになります。このように摂取する依存性物質の量や質がエスカレートしていくのが依存症の怖さです。 スマホはその点で特筆すべきものがあります。SNSやウェブサイトでは、視聴者が飽きないように、毎日、刺激が強いコンテンツを無料で配信し続けます。膨大な情報が次から次へと脳へ流れていき脳のエネルギーを消耗させるのです。 さらに他の依存性物質と違って、人に迷惑をかけない点もポイントです。これが⑤にあたり、例えば地下鉄では多くの人がスマホを触って移動しています。電車のなかでたばこを吸ったり、お酒を飲んだりすれば非難の視線を浴びますが、スマホを利用しても白い目を向けられることはほぼありません。 スマホは他の依存性物質と同様に危険な一面があるのに安全そうに見える。だからかなり問題なのです。 スマホ依存は、本人に依存症になっている自覚が乏しいです。自覚しないと対策もしないため、脳の疲れがどんどん悪化して「脳過労」となります。脳過労とは脳の使いすぎによって脳の機能が低下した状態のことです。 本来、聡明な方であっても脳過労の状態になると、依存症から逃げ出すことが困難になります。脳過労では、行動を柔軟に変えていく前頭葉の働きが低下するためです』、「最近の医療現場では、スマホはお酒やたばこ、薬物と同じ危険な「依存性物質」と認定されています」、「スマホはこの①〜⑤の依存性物質の特徴をバランスよく満たしています。 ①気持ちよさをもたらす ②飽きない ③無限性 ④確実・手軽 ⑤一見すると安全」、「スマホ依存は、本人に依存症になっている自覚が乏しいです。自覚しないと対策もしないため、脳の疲れがどんどん悪化して「脳過労」となります」、確かにこれではやっかいだ。
・『スマホ依存で脳過労となり、心身の不調も現れる  スマホ依存になると脳過労になると述べました。この脳過労を改善するには仕事や家事から解放される「ひととき」の活用がとても有効なのですが、現代人はこれがうまくできません。例えば、人工的な情報を遮断して四季の移り変わりを感じる。自然のなかに身を置き、一息つく。脳はそういうぼんやりとした状態でリフレッシュされ、疲れが癒やされます。 ところが、脳を休めることができる暇なときにも、多くの人がスマホなどで「ネットサーフィン」をしています。これが悪影響を及ぼします。ラインやゲームアプリ、インターネット情報などをなんとなく閲覧するなどといった「だらだらスマホ」は、情報量がとてつもなく巨大です。 リラックスしてスマホを操作しているつもりでも、脳には多大な負担がかかっています。スマホを長時間使用し続ければ、脳のセロトニンが枯渇して、やがては脳過労の状態が増悪してしまうでしょう。 脳過労の状態が増悪すると、多様な心身の不調を引き起こします。上の図をご覧いただければわかるとおり、それらは頭痛や身体の痛みなど症状が多岐にわたっています。 そのため、一般の病院では脳過労が原因であることを見過ごしてしまうことも少なくなく、長期的に症状に悩まされている患者さんもよくいらっしゃいます。) 参考までに、下の図は脳過労が原因になっている可能性がある診断名です。これらは客観的な異常が視覚的に示されない心身の不調が中心であるため、「精神的な問題」として片づけられることもよくあります。 ですが、これらの症状は身体の各部位や精神的な問題ではなく、スマホ依存によるセロトニンの枯渇が脳過労の状態を増悪させて発生している場合が多くあるのです』、「脳を休めることができる暇なときにも、多くの人がスマホなどで「ネットサーフィン」をしています。これが悪影響を及ぼします。ラインやゲームアプリ、インターネット情報などをなんとなく閲覧するなどといった「だらだらスマホ」は、情報量がとてつもなく巨大です。 リラックスしてスマホを操作しているつもりでも、脳には多大な負担がかかっています。スマホを長時間使用し続ければ、脳のセロトニンが枯渇して、やがては脳過労の状態が増悪してしまうでしょう。 脳過労の状態が増悪すると、多様な心身の不調を引き起こします。上の図をご覧いただければわかるとおり、それらは頭痛や身体の痛みなど症状が多岐にわたっています」、「心身の不調」は「「精神的な問題」として片づけられることもよくあります。 ですが、これらの症状は身体の各部位や精神的な問題ではなく、スマホ依存によるセロトニンの枯渇が脳過労の状態を増悪させて発生している場合が多くあるのです」、「脳過労」が「心身の不調」まで引き起こすとは恐ろしいことだ。
・『あなたはスマホ依存? スマホ脳の処方箋  みなさんも次のような行為に思い当たる節はありませんか? メールが届くとすぐに確認する メールがあるかどうか1日に何度もチェックする グループラインで回っている情報を知らないのは怖い  たいして役に立たないとわかっているサイトを皆が見ているといった理由で定期的に訪ねる スマホが手元にないと不安に感じる このような行為に少しでも心当たりがあるなら、スマホ依存を原因とした脳過労になっている可能性があります。スマホ依存は、生活習慣を変える必要がありますが、まずはあなたがスマホ依存であるかチェックするリストを拙書『スマホ脳の処方箋』より抜粋し下記に記載いたしました。ぜひ一度自身の状態を確認してみることをお勧めします。(チェックリストはリンク先参照)』、私自身は「スマホ」を持たない主義だが、このブログの読書は是非、「チェックリスト」で「確認」されたい。

次に、7月7日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの重道武司氏による「楽天グループ株価下落で価値は半値に…“悪夢再来”に気を揉む日本郵政」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/307886
・『楽天グループの株価下落が止まらない。6月20日には一時582円と年初来安値を更新。その後も600円前後と昨年末比半値水準での取引が続く。最大の目玉だった携帯通信料金「ゼロ円」プランの今月廃止で加入者離れが進み、「モバイル事業の赤字が一段と膨らむとの警戒感から投資家らが売りを加速させている」(市場関係者)のだ。 こうした展開にひとしきり気を揉んでいるのが日本郵政だ。保有楽天株の減損リスクが顕在化しかねないからだ。幹部の一人も「毎日ハラハラどきどき」と苛立ちを隠さない。 日本郵政が楽天の第三者割当増資を引き受けたのは2021年3月。中国のゲーム大手、テンセントや西友とともに総額2423億円の資本増強に応じたもので、うち郵政は1500億円と最大の資金の出し手となった。物流分野などでの相乗効果を狙ったのだ。 この時の引受価格は1株当たり1145円。その価値が今やほぼ半減である。 国内の会計ルールでは保有有価証券の時価が取得原価より50%以上下がった場合にはその価格に回復の見込みがない限り、原則として減損処理をしなければならないことになっている。仮に楽天の株価が572円を割り込むような事態になれば、郵政は「少なくとも750億円の損失計上を覚悟しなければならない」(金融筋)ことになる』、現在、「株価」は650円前後で横ばいを続けている。
・『加入者離れと株価下落の本格化はこれから  そうなると郵政首脳らの頭をよぎるのが国際物流大手、豪トールを巡るM&Aとその蹉跌だろう。6200億円もの巨費を投じて買収しておきながら業績立て直しに失敗。減損と事業売却損合わせて最終的には約4680億円をドブに捨てるハメに。同社は「杜撰」「無能」などと投資家らから袋叩きにされた。そのいわば「悪夢」(日本郵便幹部)が再来しかねないわけだ。 まして楽天株引き受けに際して当時郵政はまだ国の支配下にあったこともあって「事実上の一般事業会社への国費投入では」などと批判を浴びたいきさつもある。 楽天の携帯ゼロ円廃止は新規加入者ばかりか、既加入者も対象だ。それでも10月まではポイント還元拡大で実質ゼロが維持される見込みだが、11月からはそれもなくなる。市場からは「加入者離れと株価下落が本格化するのはむしろこれから」といった囁きも漏れてくる』、「「加入者離れと株価下落が本格化するのはむしろこれから」なのであれば、当面、「楽天」の「株価」から目が離せないようだ。

第三に、10月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した東京経済取締役東京本部長の井出豪彦氏による「社内資料で判明!楽天モバイル巡る「横領疑惑」と楽天エクスプレスの“接点”」を紹介しよう。これは有料記事だが、私の場合、10月中あと3本まで無料で読める。
https://diamond.jp/articles/-/311635
・『楽天グループ傘下の楽天モバイル(東京都世田谷区)の基地局設置に関して、元社員と協力業者が結託した大掛かりな横領疑惑が取り沙汰されているが、不正に関与していたとされる物流会社の「TRAIL」(東京都港区)は、失敗に終わったあの「楽天エクスプレス」事業の幹線輸送を担っていた取引先だったことが分かった。このほど当時の楽天の社内資料を入手した』、「大掛かりな横領疑惑」とはどういうことなのだろう。
・『売上高が3年で20倍 急成長したTRAILが事業停止  TRAIL代表による「元従業員の皆様へ」と書かれた10月7日付の文書(リンク先参照) 「楽天エクスプレス」は楽天グループがECサービスについて自前の配送網を整備するため2016年に鳴り物入りで始めた事業だが、昨年5月、唐突に打ち切りが発表された。 今回の楽天モバイルと同じ構図で、社内の責任者と下請け業者の癒着によるキックバック疑惑(昨年11月の拙稿参照)が取り沙汰され、先月も当時軽貨物配送を手掛けていた業者から契約違反などに基づく5億円強の損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こされるなど、いまだに混乱が続き、泥沼化の様相を呈している。 楽天モバイルから基地局設置業務を受託し、業績が急拡大していた日本ロジステック(東京都千代田区、年商405億円)は、楽天モバイルから不正に加担していたとして8月19日付で銀行の預金口座の仮差し押さえを受け、同月30日、東京地裁に民事再生手続き開始を申し立てて経営破綻した。負債は151億円と物流関連業界で今年最大の大型倒産となった。 楽天モバイルは「元従業員が取引先と共謀し、当社に対して不正な請求を行い、金銭的利益を得ていた疑いが生じた」とのコメントを出し、併せて警察に告訴状を提出したことを明らかにしている。 TRAILは2014年に神奈川県厚木市で設立。18年に相模原市に移転し、昨年本社を東京都港区に構えた。この間、20年には電気工事業の許可も取得し、楽天モバイルの基地局設置に関する部材の物流サービスや基地局設置工事を一括して受託する態勢を整え、日本ロジステックの下請けで急成長してきた。19年3月期に9億円だった年商は、わずか3年後の22年同期に20倍の192億円となった。 しかし、日本ロジステックの倒産に連鎖する形で9月1日以降はほぼすべての事業を停止し、9月29日付で従業員を解雇したことが判明している。 TRAIL代表の濱中治氏が「元従業員の皆様へ」と宛てた10月7日付の文書(冒頭写真)によれば、9月分の賃金は未払いとなっており、健康保険証も9月30日以降使用できないという。 同文書では賃金について、TRAILの破産手続き開始決定が出た後、各自で破産管財人に問い合わせて独立行政法人労働者健康安全機構(JOHAS)が運営する「未払賃金立替払制度」を利用すれば最大で8割が支払われるなどと説明するが、肝心の破産手続きを申し立てる時期が「未定」というから、何をかいわんや。「元」従業員の間では困惑と怒りが広がっている。 なお、TRAILの子会社で、日本ロジステックの倉庫への人材派遣などを手掛けていた「IMAX」(相模原市中央区)は、一足早く9月15日付で全従業員に解雇通知を出し、9月30日付で東京双葉法律事務所の島本泰宣弁護士ら4人の弁護士を代理人として破産手続き開始申し立てを行う予定であると債権者に通知した』、「TRIAL」は「楽天モバイルの基地局設置に関する部材の物流サービスや基地局設置工事を一括して受託する態勢を整え、日本ロジステックの下請けで急成長してきた。19年3月期に9億円だった年商は、わずか3年後の22年同期に20倍の192億円となった。しかし、日本ロジステックの倒産に連鎖する形で9月1日以降はほぼすべての事業を停止し、9月29日付で従業員を解雇」、「9月分の賃金は未払い」、らしいが、大元の「日本ロジステック」倒産の背景には何があったのだろう。
・『社内資料で判明した楽天エクスプレスとTRAILの関係  今回入手した楽天エクスプレスに関する楽天の社内資料は、2020年5月14日付の「新規幹線事業者交渉状況」と題されたもの。楽天エクスプレスの採算改善のため、幹線輸送を委託する事業者を変更してコストを削減する計画が、パワーポイント5枚で記されている。 社内資料の表紙 50余りの幹線ごとに「現行幹線事業者」として社名と価格が記されているが、それによれば、当時、楽天エクスプレスの幹線輸送はTRAILが6割、某大手運送業者が残り4割を占め、事実上2社で分け合っていたことが分かる。それを新規に参入させる予定の3社が出している見積りと比較し、最も安い業者へシフトすれば年間で1億円の費用削減ができるとある。 この社内資料が作成された背景について、関係者は次のように解説する。 「当時からTRAILという、たいして実績のない会社が物流大手と並んでなぜこれほど楽天エクスプレスの仕事を受けられるのか不思議だという声があった。2020年5月というタイミングは、楽天エクスプレスの担当執行役員が取引先を自らの言いなりになる業者に本格的に入れ替えるタイミングに当たる。現在楽天に対して訴訟を起こしている軽貨物運送業者が『自社化』を名目に営業資産を一方的に奪われたのも同じ時期だ。TRAILはそこで楽天エクスプレスの仕事からはほぼ外されたが、もともと楽天社内に太い人脈があったのだろう。遅くとも19年から、基地局設置に巨額の予算が付くモバイルの仕事をもらうことができていた。その際、楽天モバイルからは直接受注することができず、倉庫を持っている日本ロジステック経由で仕事をもらう取引形態になったわけだが、実務は楽天モバイルを懲戒解雇された元社員S氏とTRAIL代表の濱中氏のホットラインを軸に進んでいたはずだ」 とにかく楽天モバイルの予算は潤沢で、「日本ロジステックの千葉県流山市の倉庫には作業量に関係なく、集められるだけの派遣社員を集めろと号令がかかっていた。1人一日いくらで楽天モバイルに請求できる仕組みで、実際には仕事がなくても関係がなかった。荷物の量についても請求の単位であるパレットが1個で済むものも、少しでもはみ出れば2個口、3個口とカウントし、どんどんエスカレートしていった」(前出関係者)。取引先は「濱中氏はレーシングチームのオーナーになるなど、ここ1~2年で急に金回りがよくなった。倉庫には高級車が何台も止まっていた」と振り返る』、「倉庫を持っている日本ロジステック経由で仕事をもらう取引形態になったわけだが、実務は楽天モバイルを懲戒解雇された元社員S氏とTRAIL代表の濱中氏のホットラインを軸に進んでいたはずだ」 とにかく楽天モバイルの予算は潤沢で、「日本ロジステックの千葉県流山市の倉庫には作業量に関係なく、集められるだけの派遣社員を集めろと号令がかかっていた。1人一日いくらで楽天モバイルに請求できる仕組みで、実際には仕事がなくても関係がなかった。荷物の量についても請求の単位であるパレットが1個で済むものも、少しでもはみ出れば2個口、3個口とカウントし、どんどんエスカレートしていった」(前出関係者)。取引先は「濱中氏はレーシングチームのオーナーになるなど、ここ1~2年で急に金回りがよくなった。倉庫には高級車が何台も止まっていた』、「元社員S氏」は「楽天モバイルを懲戒解雇された」、その理由は下記にあるようだ。
・『不正発覚の端緒は高級マンションの購入  不正発覚の端緒は、S氏が今年1月、三菱地所レジデンスなどが分譲した港区高輪の超高級タワーマンションの最上階(135平方メートル)をキャッシュで購入し、国税局から目を付けられたことだとささやかれている。この部屋の販売価格は3億円は下らないとみられる。S氏はほかに高級車を10台以上所有していたとの話もある。  ほどなく楽天モバイル社内でS氏に関する金銭着服疑惑が浮上したとされ、大手法律事務所の検事出身の弁護士をトップとするチームが調査した結果、S氏らによる46億円もの横領疑惑が浮上した。 楽天モバイルは8月12日にS氏を懲戒解雇するととともに、先のタワーマンションやS氏の実家のある京都府で2年前に新築した一戸建てを仮差し押さえしたことが不動産登記で確認できる。 また、直接の水増し請求に関与していたのは日本ロジステック取締役のM氏だったため、日本ロジステックの預金も併せて仮差し押さえに踏み切り、同社が経営破綻に追い込まれたのは最初に記した通りだ。 その仮差し押さえを東京地裁が決定した際の「請求債権目録」の文書には、S氏とM氏と濱中氏による共謀があったと明記されている。19年10月から今年3月までの間にS氏の妻が代表を務めるT社に対し、コンサルティング料名目などとして支払う額を水増しして日本ロジステックから請求させることでS氏夫妻が私的な利益を得ていたという。 S氏の京都府の実家を本店として登記されているT社は、20年2月に福岡県から京都府に本店を移転しているが、福岡当時の代表だった人物がTRAILの人材派遣子会社のIMAX(前出)で幹部を務めていたもよう。その父とされる人物も19年7月からTRAILの取締役をつとめている。 楽天モバイル基地局設置に関し社内で強い裁量を持つS氏、その直接の委託先である日本ロジステックのM取締役、さらにその下請けのTRAILやIMAX、コンサル名目でフィーを抜いたT社が一体となってこれほどの不正が仕組まれたのだ。46億円というのは業務上横領の被害額としてこれまで例がないほどの高額だという。 楽天モバイルではS氏がタワマンを購入した2カ月後の今年3月に山田善久社長が辞任し、「家庭教師のトライ」を展開する「トライグループ」の代表に転じた。突然職を失ったTRAILやIMAXの従業員の間では「楽天は横領の被害者かもしれないが、これほどの不正を見逃してきた管理・監督責任は重大だ」との不満がくすぶる。 楽天関係者は「警察が正式に立件した後に社内で第三者委員会を立ち上げて原因究明を行うことにならざるを得ない」と明かす。 なお、ダイヤモンド・オンラインは楽天グループに対し、下記5つの質問を送付した。 1.楽天モバイル元従業員のS(質問状では実名)氏らによる46億円の横領疑惑に関与している運送業者の「TRAIL」は、昨年5月に貴社が打ち切った「楽天エクスプレス事業」で大手のA社(質問状では実名)と並んで幹線輸送を担っていたとの情報を得ましたが、事実ですか?また、TRAILにその業務を委託した時期はいつで、経緯はどのようなものですか? 2.TRAILが日本ロジステックを経由して楽天モバイルの基地局設置業務に携わることになったのはいつからで、それはどのような経緯ですか? 3.TRAILや子会社のIMAXの従業員は職を突然失い、9月分の賃金も支払われていません。楽天モバイル元従業員のS(質問状では実名)氏に対する管理・監督責任はどのように認識されていますか? 4.楽天モバイルの山田善久前社長が3月に辞任したのは今回の不正と関係がありますか? 5.早急に第三者委員会を立ち上げるなど原因究明を図るべきとの声がありますが、今後どのように対応されますか? これに対し、楽天グループからは下記の回答があった。 個別の取引先については回答を控えさせていただきます。 このような事態が発生したことは誠に遺憾です。本件については社内で判明し、警察に相談のうえ、既に告訴状を提出し、捜査に全面的に協力しております。 当該元従業員は社内規程に基づき2022年8月12日付で懲戒解雇としており、今後は取引先を含め、刑事上および民事上の責任追及を行っていく予定です。 当社および楽天グループでは本不正行為が発生したことを厳粛に受け止め、社内調査、内部管理体制の一層の強化、社内規程の周知およびコンプライアンス教育を徹底し、グループ全体で再発防止に努めてまいります。 なお、社内調査はこれまでも行ってきましたが、2022年9月13日に改めて「社内調査委員会」を設置しており、引き続き事実関係の確認、原因究明および再発防止策の策定等を行っていきます。 山田は事業の立ち上げフェーズの終わりが見え一定の役割を果たしたため、2022年3月31日付で退任しました。ご指摘の事案と退任との関係はございません』、「楽天モバイル基地局設置に関し社内で強い裁量を持つS氏、その直接の委託先である日本ロジステックのM取締役、さらにその下請けのTRAILやIMAX、コンサル名目でフィーを抜いたT社が一体となってこれほどの不正が仕組まれたのだ。46億円というのは業務上横領の被害額としてこれまで例がないほどの高額だという」、「楽天」が「基地局設置」をいくら焦っていたはいえ、「46億円」もの大規模な「不正」が行われていたとは、由々しい問題だ。「楽天」の経営から目を離せない状態が当面続きそうだ。
タグ:「スマホ脳の処方箋」とは興味深そうだ。 奥村 歩氏による「だらだらスマホ触る人ほど「脳が疲れる」驚きの訳 スマホ依存かどうか調べるチェックリスト」 東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン 「「加入者離れと株価下落が本格化するのはむしろこれから」なのであれば、当面、「楽天」の「株価」から目が離せないようだ。 現在、「株価」は650円前後で横ばいを続けている。 重道武司氏による「楽天グループ株価下落で価値は半値に…“悪夢再来”に気を揉む日本郵政」 日刊ゲンダイ 「楽天モバイル基地局設置に関し社内で強い裁量を持つS氏、その直接の委託先である日本ロジステックのM取締役、さらにその下請けのTRAILやIMAX、コンサル名目でフィーを抜いたT社が一体となってこれほどの不正が仕組まれたのだ。46億円というのは業務上横領の被害額としてこれまで例がないほどの高額だという」、「楽天」が「基地局設置」をいくら焦っていたはいえ、「46億円」もの大規模な「不正」が行われていたとは、由々しい問題だ。「楽天」の経営から目を離せない状態が当面続きそうだ。 「元社員S氏」は「楽天モバイルを懲戒解雇された」、その理由は下記にあるようだ。 「TRIAL」は「楽天モバイルの基地局設置に関する部材の物流サービスや基地局設置工事を一括して受託する態勢を整え、日本ロジステックの下請けで急成長してきた。19年3月期に9億円だった年商は、わずか3年後の22年同期に20倍の192億円となった。しかし、日本ロジステックの倒産に連鎖する形で9月1日以降はほぼすべての事業を停止し、9月29日付で従業員を解雇」、「9月分の賃金は未払い」、「日本ロジステック」倒産の背景には何があったのだろう。 「大掛かりな横領疑惑」とはどういうことなのだろう。 井出豪彦氏による「社内資料で判明!楽天モバイル巡る「横領疑惑」と楽天エクスプレスの“接点”」 私自身は「スマホ」を持たない主義だが、このブログの読書は是非、「チェックリスト」で「確認」されたい。 「最近の医療現場では、スマホはお酒やたばこ、薬物と同じ危険な「依存性物質」と認定されています」、「スマホはこの①〜⑤の依存性物質の特徴をバランスよく満たしています。 ①気持ちよさをもたらす ②飽きない ③無限性 ④確実・手軽 ⑤一見すると安全」、「スマホ依存は、本人に依存症になっている自覚が乏しいです。自覚しないと対策もしないため、脳の疲れがどんどん悪化して「脳過労」となります」、確かにこれではやっかいだ。 脳過労の状態が増悪すると、多様な心身の不調を引き起こします。上の図をご覧いただければわかるとおり、それらは頭痛や身体の痛みなど症状が多岐にわたっています」、「心身の不調」は「「精神的な問題」として片づけられることもよくあります。 ですが、これらの症状は身体の各部位や精神的な問題ではなく、スマホ依存によるセロトニンの枯渇が脳過労の状態を増悪させて発生している場合が多くあるのです」、「脳過労」が「心身の不調」まで引き起こすとは恐ろしいことだ。 「脳を休めることができる暇なときにも、多くの人がスマホなどで「ネットサーフィン」をしています。これが悪影響を及ぼします。ラインやゲームアプリ、インターネット情報などをなんとなく閲覧するなどといった「だらだらスマホ」は、情報量がとてつもなく巨大です。 リラックスしてスマホを操作しているつもりでも、脳には多大な負担がかかっています。スマホを長時間使用し続ければ、脳のセロトニンが枯渇して、やがては脳過労の状態が増悪してしまうでしょう。 (その9)(だらだらスマホ触る人ほど「脳が疲れる」驚きの訳 スマホ依存かどうか調べるチェックリスト、楽天グループ株価下落で価値は半値に…“悪夢再来”に気を揉む日本郵政、社内資料で判明!楽天モバイル巡る「横領疑惑」と楽天エクスプレスの“接点”) 携帯・スマホ
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民主主義(その9)(『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史』翻訳者・岩本正明インタビュー ①【ウクライナ、台湾、アメリカの分断…】世界同時的に民主主義が劣勢に陥った根本理由、②日本人が当たり前に行う「多数決」その重大な欠点 子どもの対話力と決める力を奪っている、③ぶっ壊れた政党に民主主義を乗っ取るカルト政治 ブラジル大統領選 蔓延する少数派の横暴、④「普通選挙が民主主義のゴール」と思う人、思わない人の決定的な差) [政治]

民主主義については、昨年8月13日に取上げた。今日は、(その9)(『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史』翻訳者・岩本正明インタビュー ①【ウクライナ、台湾、アメリカの分断…】世界同時的にwお民主主義が劣勢に陥った根本理由、②日本人が当たり前に行う「多数決」その重大な欠点 子どもの対話力と決める力を奪っている、③ぶっ壊れた政党に民主主義を乗っ取るカルト政治 ブラジル大統領選 蔓延する少数派の横暴、④「普通選挙が民主主義のゴール」と思う人、思わない人の決定的な差)である。

先ずは、10月6日付けダイヤモンド・オンライン「【ウクライナ、台湾、アメリカの分断…】世界同時的に民主主義が劣勢に陥った根本理由 『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史』翻訳者・岩本正明インタビュー」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/310801
・『日本で「民主主義」という言葉を知らない人はいないだろう。しかし、民主主義が歴史とともに変っていった背景を知る人はそう多くはない。加えて、現在もたくさんの国で変化が起き続けている。民主主義は政治に強い関心のある人が知っておけばよい知識ではない。すべての人の生活に深く関わる社会制度である。そこで、今回は、「いま、なぜ民主主義の通史を学ぶのか」という問いを、『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史』の翻訳者・岩本正明さんとともに掘り下げていく(Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『民主主義への不満が世界中で高まっている  Q:最近、『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史』も含め、世界中で民主主義に関する書籍の出版が目立ちます。これにはどういった社会背景が影響しているのでしょうか? 岩本正明(以下、岩本) 本書の冒頭でも指摘されていますが、世界中で民主主義に対する不安や不満が高まっていることが最も大きな原因だといえるでしょう。「民主主義の敗北」ともいえるような事態が各国で起きています。 30年ほど前までは、民主主義の前途は明るく見えました。軍事独裁政権の崩壊やアパルトヘイトの撤廃など、市民の力を軸にした民主主義の力強さを感じることができたのです。しかし、現在は、ベラルーシ、ミャンマー、香港で起きている出来事など、世界中で民主主義への不安を感じずにはいられない状況になっているといえます。 Q:いわゆる「民主主義の揺らぎ」はデータでも裏付けられているのでしょうか? 岩本 はい。本書でも触れられていますが、2019年に27ヵ国を対象に実施したある調査によると、半数以上の回答者がいまの民主主義のあり方に「満足していない」と答えています。加えて、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットの研究者は、2007~2017年にかけて民主主義に対する自信が失われており、さらに政府の透明性や説明責任、不正に対する懸念が大きくなっていることを明らかにしています。 しかも、どの国においても民主主義の満足度は特に若者の間で低くなっていることがわかっています。 将来を担う若者の間で、民主主義への満足度が低いというのは気がかりですね。 岩本 日本でも同じような傾向が見られます。例えば、総務省のデータで見ても、20代、30代の若者の投票率が平成に入ってから特に顕著に下がり、その後、波はあれど減少傾向が続いています。 これには、政治への関心の低さという問題もあるかもしれませんが、いわゆる日本の高齢化の進行による「シルバー民主主義」を肌で感じ、無力感にさいなまれているという要因もあるのではないかと思います。若者たちは、「自分たちが投票したところで、結局、数で圧倒する高齢者向けの施策が優先されるに違いない」と感じているのかもしれません』、「30年ほど前までは、民主主義の前途は明るく見えました。軍事独裁政権の崩壊やアパルトヘイトの撤廃など、市民の力を軸にした民主主義の力強さを感じることができたのです。しかし、現在は、ベラルーシ、ミャンマー、香港で起きている出来事など、世界中で民主主義への不安を感じずにはいられない状況になっているといえます」、由々しい事態だ。
・『自由民主主義の国は大幅に減少  Q:「30年ほど前まで、民主主義の前途は明るく見えた」とおっしゃいましたが、世界的にどのような変化が起きているのか教えてください。 岩本 30年前といえば、ちょうど米国の政治学者であるフランシス・フクヤマがベストセラー『歴史の終わり』を出版した頃です。ここでは、民主主義が人類の政治制度における最終形態であると述べています。当時は世界中にソ連の崩壊がセンセーショナルに伝えられ、フクヤマの考えに違和感を持つ人は少なかったのです。 ところが、現在、民主主義の力は大きく失墜しています。民主主義について専門的に調査・研究をしているVーDem研究所の2022年のレポートによると、自由民主主義と区分される国の数は2012年がピークで、現在では1995年の水準にまで下がっていると公表しているのです。つまり、この10年間は民主主義が世界的に後退しているようなのです。 Q:自由民主主義が衰退したのであれば、どのような考え方が台頭しているのでしょうか。 岩本 VーDem研究所は、専制主義に区分される国の数が増加傾向にあると指摘しています。驚くべきことですが、現在では世界の人口の7割が広義の専制主義国家の市民であると分析しています。また、2021年は過去50年間の中で最も多くの国が専制主義に向かったと評しています。EU内ですら、ハンガリーやポーランドなど2割の国が専制主義に傾いているようです』、「自由民主主義と区分される国の数は2012年がピークで、現在では1995年の水準にまで下がっている」、「専制主義に区分される国の数が増加傾向にある」、「現在では世界の人口の7割が広義の専制主義国家の市民である」、「世界の人口の7割が広義の専制主義国家の市民」とは衝撃的だ。
・『いま、なぜ民主主義の歴史を学ぶのか?  Q:民主主義から専制主義に傾いていく世界の中で、改めて民主主義の歴史を学ぶ意義とはどういったことでしょう。 岩本 現在、民主主義に対する懐疑的な見方が広がっているからこそ、民主主義の歴史を改めて学ぶ意義があると思っています。民主主義の基本的な仕組みは学校で学びますが、その歴史をご存じの方は多くはないでしょう。実のところ、民主主義の形態は時代とともに大きく変わっています。本書ではまさにそれを知ることができます。 つまり、今の時代の人々もこれまでの民主主義の形を厳守する必要はないのです。本書は一貫して民主主義を擁護する立場を取り、民主主義こそが人類が発明した最も強力な武器だと伝えています。しかし、それは普遍で強固なものではなく、国の状況によって変容する、しなやかさを持ったものだということも本書が主張するところなのです。 Q:民主主義に対する不満が高まっているのは、単に既存の民主主義の形式が時代、あるいは国とマッチしていないからということでしょうか。 岩本 はい、時代に合わないのであれば、時代に合うように変えていけばいい。また、その国ならではの発展を遂げてもいいということが著者の主張だと思います。本書を読んで、民主主義の変遷を知れば、そうした意識が高まり、専制主義に目移りし、極端な方向へ暴走するのではなく、「民主主義の形式を変えていけばよい」という柔軟な考え方ができると思います。 ただ、「まやかしの民主主義」に対しては、注意をしてほしいです。例えば、トルコのエルドアンやロシアのプーチンなどの独裁者は、人民の同意に基づいて独自の民主主義を実践していると主張しています。しかし、実態は国民生活にまで入り込み、監視し、権力に抗う者を屈服させようとしています。民主主義のお題目の下、専制主義が生まれうることを私たちは常に理解しておかなければいけないでしょう。 Q:確かに、「民主主義」と一言で言っても多様な形態がありますよね。国によって、多様な形がありうることを理解するのに本書は役立ちそうです。 岩本 おっしゃる通りです。例えば、紀元前のアテネの民主主義はいわゆる直接民主主義でした。プニュクスという丘に全ての市民が集まって、みんなが顔をそろえて政治や政策について語り合い、方針を決めていったのです。 一方、国家の規模が大きくなるにつれて、市民全員が集まって議論するのは現実的に難しくなりました。そこで生まれたのが、いわゆる代議制民主主義という近代多くの国々が採用している形式です。これは、有権者が選挙で代表者を選んで、その代表者が国民に変わって政治や政策について話し合う民主主義の形態です。 Q:最初から代議制民主主義ではなかったのですね。民主主義の歴史の初期の段階から、大きな変容が起きていることがわかります。では、現在の民主主義の傾向とはいかなるものなのでしょう。 岩本 本書でも述べられていますが、現在は議会や政党だけではなく、NGOなどの草の根の団体が権力の監視役としての力を強めており、民主主義の裾野はますます広がっています。 例えば、環境保護団体のグリーンピース。環境問題を政府に頼るのではなく、直接意見を発表したり世論をリードしたりして、具体的な活動の力を持つようになっています。本書では、こうした様々な団体が、政府や大企業などの権力組織を監視・牽制する仕組みを「牽制民主主義」と名付けています。この「牽制民主主義」は新しい概念で、今後より注目が集まっていくでしょう。 今回お伝えしただけでも、民主主義が多様であることはご理解いただけたはずです。この状況を理解できれば、民主主義に対してただ不満をためこむのではなく、時代に合った民主主義の形式に変えるように主体的に関わっていこうと、前向きな機運が高まるのではないかと期待しています』、「本書を読んで、民主主義の変遷を知れば、そうした意識が高まり、専制主義に目移りし、極端な方向へ暴走するのではなく、「民主主義の形式を変えていけばよい」という柔軟な考え方ができると思います。 ただ、「まやかしの民主主義」に対しては、注意をしてほしいです。例えば、トルコのエルドアンやロシアのプーチンなどの独裁者は、人民の同意に基づいて独自の民主主義を実践していると主張しています。しかし、実態は国民生活にまで入り込み、監視し、権力に抗う者を屈服させようとしています。民主主義のお題目の下、専制主義が生まれうることを私たちは常に理解しておかなければいけないでしょう」、「NGOなどの草の根の団体が権力の監視役としての力を強めており、民主主義の裾野はますます広がっています」、「こうした様々な団体が、政府や大企業などの権力組織を監視・牽制する仕組みをこうした様々な団体が、政府や大企業などの権力組織を監視・牽制する仕組みを「牽制民主主義」と名付けています。この「牽制民主主義」は新しい概念で、今後より注目が集まっていくでしょうこうした様々な団体が、政府や大企業などの権力組織を監視・牽制する仕組みを「牽制民主主義」と名付けています。この「牽制民主主義」は新しい概念で、今後より注目が集まっていくでしょうと名付けています。この「牽制民主主義」は新しい概念で、今後より注目が集まっていくでしょう」、「牽制民主主義」とは興味深い動きだ。

次に、この続きを、10月7日付けダイヤモンド・オンライン「日本人が知らない民主主義トリビア公開!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/310838
・『民主主義については教科書で学んだものの、やや記憶がおぼろげ……。そんな人も多いかもしれない。大人になって、民主主義にまつわる知識をアップデートする機会はそう多くはないだろう。現在、世界中で民主主義にまつわる書籍が多数刊行されており、改めて注目が集まっている。そんな中で、今回は「え? そうなの」と意外性あふれる民主主義の知識をお届けしたい。『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史』の翻訳者・岩本正明さんに話を聞いた(Qは聞き手の質問)』、「意外性あふれる民主主義の知識」とは興味深そうだ。
・『「民主主義=選挙」ではない  Q:『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史』では民主主義に関して、私たちの常識を覆すような話が続々と出てきますね。 岩本正明(以下、岩本) 私は本書の翻訳を担当したのですが、その過程は驚きの連続でした。いかに自分が民主主義について無知であったのかを痛感したんです。私はアメリカのビジネスメディアであるブルームバーグで記者をしていました。その中で、政治についても人並み以上に勉強していたはずなのです。でも、知らないことがたくさんありました。 Q:おそらく多くの社会人も、民主主義について十分な知識を持ち合わせていないと思います。 岩本 高校の公民科の授業で基本的なことを習うだけで、それ以降は大学で専攻しない限り、民主主義について深く学ぶ機会はありません。現在は18歳で投票できますから、気がつけば選挙権が与えられて、選挙で投票しているような状態かもしれませんね。 さらにいうと、「民主主義=選挙」という、型にはまった考え方の人も多いでしょう。本書では、必ずしも「民主主義=選挙」ではないということを取り上げています。もちろん選挙や法の統治は民主主義において欠かせない要素ですが、そうしたステレオタイプにはまる社会制度ではないということを本書では気付けるはずです。民主主義に対する理解や関心を深める機会として本書を開いてほしいです』、我々は「民主主義」を「ステレオタイプにはまる社会制度」誤解していたようだ。
・『民主主義発祥の地はどこか?  Q:本書を読んで、岩本さんが一番驚いたことはどんなことでしょうか。 岩本 何よりも、民主主義の起源が古代ギリシャではないという点ですね。著者はこの通説を、19世紀に語られ始めたロマンチックな物語だと一蹴しています。確かに紀元前5世紀ぐらいにギリシャで唐突に生まれたというお話は、ストーリーとしてはおもしろいんですよね。 著者は、民主主義の原型は現在の中東のシリアやイラク、イランあたりの地域で生まれたと伝えています。民主主義が西洋オリジナルの政治体制だという言説は、単なるでまかせだという主張です。現在では、紀元前2500年ごろの中東で民主主義の原型が生まれたというのが専門家の間で定説になっているようです。 Q:おぼろげな記憶ですが……、私たちが学校で習った内容とは違いますね。 岩本 そうですよね。私もこの史実を知った時は驚きました。ただ、確かに冷静に考えると、紀元前のとある時期に、ヨーロッパの特定の地域で、突如民主主義という政治制度が花開いたと考える方が不自然といえば不自然です。なぜならば、経済や政治、文化というのは、それぞれの地域が互いに影響を与え合って発展するのが自然だからです。 そう考えると、世界最古の文明が栄えた中東の地域にすでに民主主義の原型があり、古代ギリシャに影響を与えたと考えた方が腑に落ちます』、「紀元前2500年ごろの中東で民主主義の原型が生まれたというのが専門家の間で定説になっている」、我々が学んだ「西洋」中心の考え方は間違っていたようだ。
・『民衆の煽動者に対して厳しい目を向けたギリシャ人  Q:民主主義に関してほんとうに知らないことが多いのだな、と痛感しました。他に、岩本さんが印象的だった内容はありますか。 岩本 古代アテネの民主主義がデマゴーグと呼ばれる目立って民衆を煽動するような存在の危険性を強く意識していたという点も、非常に興味深かったです。賛同者の人数が一定数に達することを条件に、民衆を煽動するような人気取りの政治指導者をアテネから10年間、追放することができたといいます。 つまり、当時のギリシャ人は民主主義の負の側面ともいえるデマゴーグの危険性を十分に理解し、警戒しており、そういった事態から国を守る制度をあらかじめ作っていたということです。民主主義をよく理解し、濫用の危険性に対して、現在よりもずっと厳しい目が向けられていたことを意味するように思います。 Q:現代でいうと、トランプ前大統領を思い浮かべました。 岩本 そうですね、もし古代アテネの制度があれば、賛同者の人数が一定数に達すれば、トランプをアメリカから追放できたということです。 民主主義の文化が濃ければ濃いほどポピュリズム(大衆に迎合して人気をあおる政治姿勢)が生れる危険性も高くなります。ポピュリズムは、既存の政府や政党に対する怒り、不満の裏返しだと思います。アメリカではいわゆる中西部の白人労働者の怒りや不満が露骨に表出した結果、「トランプ現象」が起きたと考えることができるでしょう』、「古代アテネの民主主義がデマゴーグと呼ばれる目立って民衆を煽動するような存在の危険性を強く意識」、「賛同者の人数が一定数に達することを条件に、民衆を煽動するような人気取りの政治指導者をアテネから10年間、追放することができた」、トランプ、イタリアのメローニ新首相あたりは、「デマゴーグ」の典型だ。
・『代議制民主主義の誕生はスペインの地  Q:史実から学べることはたくさんありますね。 岩本 その通りです。他にも、代議制民主主義という政治制度の根幹といえる議会の誕生が、イギリスやフランスではなく、スペイン北部だったということもおもしろい学びでした。 イスラム教徒の侵略に危機感を抱いた当時の国王が、キリスト教徒を団結させるために教会と貴族、一般市民からそれぞれ代表者を集めて、世界初の議会を開いたというのが歴史に残っているんです。 Q:たしかに、近代民主主義の発祥の地といえば、イギリス、アメリカ、フランスというイメージがどうしても強いですよね。 岩本 そうですね。私自身、イギリスやアメリカに住んでいた時期があるのですが、その際に年齢や立場に関係なく議論することが文化として根付いていると感じたんです。互いに意見を出し合って決めていくスタイルが日本よりも全然強かった。ですから、本書に出会うまではスペインが発祥だとは考えてもみませんでした。 見方を変えれば、影響力のある国によって、歴史が都合良く書き換えられることがわかりやすく表れた例だともいえるかもしれませんね』、「代議制民主主義」の発祥は、「イギリスやフランスではなく、スペイン北部だった・・・イスラム教徒の侵略に危機感を抱いた当時の国王が、キリスト教徒を団結させるために教会と貴族、一般市民からそれぞれ代表者を集めて、世界初の議会を開いた」、初めて知った。
・『民主主義は多様であり、土地に合わせて変容する  Q:前回は、民主主義がその国や状況に合わせて変容するとおっしゃっていました。民主主義というと、どうしてもアメリカの民主主義やイギリスの民主主義をイメージしてしまう。しかし、その思考自体がやや実態からズレているのかもしれませんね。 岩本 はい。本書では、民主主義には非常に多様な形態があることが指摘されています。例えば、アフリカのセネガルやインドの民主主義は、現地の文化や宗教と密接に絡み合っており、いわゆる欧米型の自由民主主義とは、その内容がずいぶんと異なっています。 こうした傾向を、民主主義が西洋的、白人的なものから、それぞれの土地に根差したものに変わっていると著者は前向きに捉えています。私はこの思いを読んで、オーストラリア出身の著者ならではの、過度に欧米寄りではない、バランスの取れた民主主義の解釈の仕方だと感じました。 Q:そうですね。インドも民主主義に含められるのだと驚きました。平等で法の統治が機能していることが民主主義の要件だと思い込んでいたので。 岩本 インドではたしかに選挙は行なわれているのですが、「国民主権がどこまで果たされているか」といった民主主義の中身に目を向けると、疑問が湧くのは当然でしょう。実際に、民主主義の調査・研究を行なっているV-Dem研究所では、インドは専制主義の国だと分類されているんです。つまり、専門家の中でも意見が割れている。世界一の人口を誇る国ですから、今後より注目が集まっていくことは間違いないでしょう。 Q:なるほど、広義の民主主義で捉えるか、狭義の民主主義で捉えるかでも、その位置付けが変わってきそうですね。ただ、「多様な民主主義が世界に存在している」という考え方はきちんと踏まえておきたいです。 岩本 はい。本書で引用されているフランスの哲学者のジャン・リュック・ナンシーは「民主主義は形の決まったものではない」と伝えています。水と同じように絶えずその形を変えるのが民主主義なのです。 これまで当然とされていた生き方に抵抗することが、民主主義の真の魅力だと著者は考えているのではないかと私は思っています』、「アフリカのセネガルやインドの民主主義は、現地の文化や宗教と密接に絡み合っており、いわゆる欧米型の自由民主主義とは、その内容がずいぶんと異なっています。 こうした傾向を、民主主義が西洋的、白人的なものから、それぞれの土地に根差したものに変わっている」、「多様な民主主義が世界に存在している」というのは、西欧型がモデルとする従来の考え方への挑戦で興味深い。

第三に、この続きを、10月8日付けダイヤモンド・オンライン「「民主主義の理解」がビジネスパーソンの必須能力になってきた特殊事情」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/310857
・『民主主義と資本主義はセットで語られることが多い。しかし、それらがどのような関係性になっているのか、またどう結びついているのかについて語れる人はそう多くはないのではないだろうか。政治に関心がない方の中には、「自分には関係ない!」「今さら学んでも意味があるの?」と思う方もいるだろう。そこで、今回はビジネスパーソンが知っておきたい、民主主義と資本主義についてお届けしたい。『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史 ビジネスパーソンとして知っておきたい教養』の翻訳者・岩本正明さんにお話を聞いた(Qは聞き手の質問)』、「ビジネスパーソンが知っておきたい、民主主義と資本主義」、とは興味深そうだ。
・『ビジネスパーソンには民主主義の理解が不可欠になってきた  Q:『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史 ビジネスパーソンとして知っておきたい教養』というタイトルにあるとおり、ビジネスパーソンも教養として民主主義の通史を理解する必要はあるのでしょうか。 岩本正明(以下、岩本) はい。知っておくことで、経済の仕組みへの理解がより深まるはずです。ビジネスパーソンの方の主たる関心である目の前の営業成績の向上やサービスの改善に、民主主義の通史の理解が直接役立つことは少ないでしょう。ただ、より俯瞰した視点でビジネスや経済を見る立場となった際には、政治や国際情勢に対する理解が不可欠になってきます。そうした知見をベースに、意思決定が求められることもあるでしょう。 Q:たしかに、つい現場の業務に追われてしまいがちですが、ビジネスは世界の政治と切り離せないものですよね。 岩本 おっしゃる通りです。政治と経済は切り離せません。マルクスは経済を下部構造、政治や社会を上部構造として、上部構造は下部構造に依存しているという唯物史観を示していました。 現実社会を見ても、資本主義は民主主義に、民主主義は資本主義に影響を与え合っていますよね。 Q:イメージではわかるのですが、具体的にどう影響し合っているのでしょうか。 岩本 本書では、現在の民主主義に対する不満の多くは、貧富の格差の拡大に行き着くということが指摘されています。言うまでもなく、貧富の格差拡大は現在の資本主義システムの構造によって生み出されています。つまり、資本主義は大きく民主主義に影響を与えているのです。 Q:日本に目を向けると、岸田文雄首相も格差拡大を意識しているのか、「新しい資本主義」というスローガンを掲げていますね。 岩本 岸田首相の掲げる「新しい資本主義」は、競争や成長よりも、分配や格差の是正を強く意識しているように感じます。つまり、日本の政府も現状の資本主義のあり方に対しては課題意識を抱いているのだと思います。日本らしい資本主義を作り上げていってほしいですね。 Q:「【ウクライナ、台湾、アメリカの分断…】世界同時的に民主主義が危機に陥っている理由」 では、多様な民主主義の形態があることを伺いました。例えばアメリカなどの民主主義を正解として追うのではなく、日本ならではの民主主義を作り上げていくことが重要なのでしょうか。 岩本 そうです。いわゆる、イギリスやアメリカが標榜するような「デモクラシー」が正解だというわけではありません。 比喩として正しいかわかりませんが、日本の「柔道」は世界中に「JUDO」として広がっていますよね。フランスでは、日本よりも柔道人口が多いと聞きます。日本人が目指す武道としての「柔道」と、世界に広がるスポーツとしての「JUDO」ではやはり目指すところが違うように思うんです。しかし、そのどちらが正解でどちらが間違っているということはありませんよね。ある種、文化の違いといえると思います。こうした差異が民主主義の理解にもあるように思うんです』、「現在の民主主義に対する不満の多くは、貧富の格差の拡大に行き着くということが指摘・・・貧富の格差拡大は現在の資本主義システムの構造によって生み出されています。つまり、資本主義は大きく民主主義に影響を与えているのです」、「日本人が目指す武道としての「柔道」と、世界に広がるスポーツとしての「JUDO」ではやはり目指すところが違うように思うんです。しかし、そのどちらが正解でどちらが間違っているということはありませんよね。ある種、文化の違いといえると思います。こうした差異が民主主義の理解にもあるように思うんです」、ずいぶん深い考え方だ。
・『資本主義が民主主義に与えた影響とは?  Q:歴史を振り返ると民主主義と資本主義が相互に関係し合ってきたことを、本書では度々指摘していますね。 岩本 そうですね。過去には、資本主義が民主主義の発展を助長した時期もありました。資本主義が物質的豊かさを生み出したことで分厚い中産階級が生まれ、民主主義の素地を築いたという考え方です。さらに、労働組合や社会保障の充実などによって守られた労働者による大衆運動は、市民社会の発展に寄与したとも言えるでしょう。 Q:ただ、冒頭でおっしゃっていた内容を踏まえると、現在は、貧富の格差の拡大などを招く資本主義は民主主義にあまりよい影響を与えていないようにも感じました。 岩本 おっしゃる通りです。最近では資本主義は格差の拡大という形で、民主主義に対してマイナスの作用が目立つようになりました。また、資本主義が生み出す金融危機が社会や経済の混乱につながり、民主主義を足元から揺るがしていることも事実です。日本におけるバブルの崩壊や世界的なリーマンショックなど、資本主義がもたらしたショックが、政治の舵取りに大きな影を落としたことはいうまでもありません。 Q:資本主義が民主主義に与えた影響で、象徴的な出来事はありますか。 岩本 アメリカのトランプ前大統領の誕生は、象徴的な出来事だったといえるのではないでしょうか。資本主義の競争社会に取り残された人々の心情を巧みに掬い取り、選挙で歴史的な勝利を収めました。 トランプ前大統領だけではありません。南米やヨーロッパでも国民の不満や怒りを利用したポピュリズム(大衆に迎合して人気をあおる政治姿勢)的指導者の台頭が見られます。資本主義の暴走をコントロールできない、いまの政治に対する国民の不満により、専制主義的な指導者が各国で生まれているという側面はあると思います』、「トランプ前大統領だけではありません。南米やヨーロッパでも国民の不満や怒りを利用したポピュリズム(大衆に迎合して人気をあおる政治姿勢)的指導者の台頭が見られます。資本主義の暴走をコントロールできない、いまの政治に対する国民の不満により、専制主義的な指導者が各国で生まれているという側面はある」、その通りだ。
・『民主主義は経済成長を後押ししない?  Q:資本主義が民主主義に影響を与えている状況は理解しました。逆に、民主主義は資本主義にどのような影響を与えているのでしょうか。 岩本 ここ20年間のデータからは、民主主義が経済成長にマイナスの影響を与えている可能性が示唆されています。例えば、中国は言うまでもなく、中 東やアフリカの専制主義の国々の成長率も、最近では各民主主義国家のそれを上回っているのです。 30年前まで、「経済成長のためには民主化が不可欠だ」といわれてきました。しかし、現在ではもはや経済成長のために民主化が必要だというロジックは通用しなくなっているのです。厳しい表現ですが、経済成長という飴を餌にして、新興国に民主化を求めることはできなくなっています。 Q:民主主義が経済成長に寄与しないとすると、ある種、資本主義と民主主義はお互いに負の影響しか与え合っていないということになるのでしょうか。 岩本 お伝えした通り、資本主義は勝者総取りで、格差拡大を後押しする機能を持っています。一方で民主主義は平等と分配を後押しする機能だと思うんです。そういう意味で、資本主義と民主主義は性格的に真逆の作用を持つ制度として、補完し合う関係性であるという見方もできるでしょう。 実際に、民主主義と資本主義を共存させ、共に発展させている国もあります。例えば、北欧はうまく資本主義の暴走を抑えるような制度設計をしているように思います。一方で、イギリスやアメリカは資本主義のマイナスの側面よりもプラスの側面を軸に制度設計をしている。つまり、資本主義の持つ活力をどの程度発揮させるのかを調整するのが民主主義だという見方はできると思います。 Q:グローバルにビジネスが広がっている今、各国の民主主義と資本主義がどういった関係性になっているのかを知ることは非常に重要なことだと感じました。 岩本 その通りです。政治と経済、民主主義と資本主義が相互に影響し合っている現状を考えると、資本主義の中で戦うビジネスパーソンにとって民主主義の理解は大切だと思います。 民主主義の歴史というのは、現在に通ずる政治の歴史と考えても間違いではありません。過去を知ることで、政治が今後、どのように変わっていくのかを理解しやすくなります。そうすれば、経済や社会がどのように変化していくのか、その見通しも立てやすくなるのではないでしょうか』、「民主主義の歴史というのは、現在に通ずる政治の歴史と考えても間違いではありません。過去を知ることで、政治が今後、どのように変わっていくのかを理解しやすくなります。そうすれば、経済や社会がどのように変化していくのか、その見通しも立てやすくなるのではないでしょうか」、その通りなのかも知れない。

第四に、この続きを、10月9日付けダイヤモンド・オンライン「「普通選挙が民主主義のゴール」と思う人、思わない人の決定的な差」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/310874
・『現在、世界中で民主主義を問い直す書籍が話題となっている。その一つが、『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史』だ。翻訳者・岩本正明さんは、本書の著者ジョン・キーンがこれからの民主主義を占う上で重要な提言をしていると指摘する。世界各国で専制主義の指導者が台頭する昨今において、私たちは民主主義のアップデートをどう考えていけばよいのか。岩本さんに話を聞いた』、「民主主義のアップデート」とは興味深そうだ。
・『新しい民主主義のかたち、「牽制民主主義」とは?  Q:現在、世界中で民主主義への不満が高まっていると、以前の記事 でお話を伺いました。『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史』では、一貫して民主主義の重要性を伝えていますよね。 岩本正明(以下、岩本) そうですね、民主主義を否定するのではなく、民主主義のアップデートが必要なタイミングに入っていると本書で著者は伝えています。専制主義が台頭するこの激動の時代において、権力の集中をいかに抑制していくかは重要な課題です。 こうした時代背景の中で生まれたのが、牽制民主主義(monitory democracy)です。これは本書の著者の造語で、戦後に発展した新たな民主主義の概念といえます。本書では、牽制民主主義を近代に発展した選挙や政党、議会を中心とする選挙民主主義とは、はっきりと区別しています。集会民主主義と選挙民主主義の違いと同じくらいに、選挙民主主義と牽制民主主義にも違いがあると伝えているのです。 Q:牽制民主主義は具体的にどのような機能を持っているのでしょうか。 岩本 牽制民主主義は、権力を監視、抑制するための新たな仕組みや機能を特徴としており、著者によると、あらゆる地域や分野で、権力に対抗するためのそうした機関が雨後の筍のように立ち上がっているといいます。 国民が民主主義に対して不満を持っているのは、「自分たちの民意が政治や政策に反映されていない」という思いに由来します。必要なことは、それがうまく反映される仕組みを作ること。近代では「選挙」がその発明でしたが、選挙とは違う形で民意をくみ取るための仕組みとして、牽制民主主義が期待されているのです。 Q:世界的な環境保護団体であるグリーンピースのような組織をイメージするといいのでしょうか? 岩本 おっしゃる通りです。グレタ・トゥンベリさんの登場なども象徴的ですね。こうした新しい力は、市民の草の根の運動を端緒とするという共通点があります。こういった組織の台頭と歩調を合わせて、政党や議会が市民の利害を代表する力は弱まっていると著者は指摘しています。 市民が選挙や議会に頼ることなく、自らの利害を守ったり、意見を訴えるチャンネルが増えている。この牽制民主主義こそが、「最もバイタリティに満ちた民主主義の形態」だと著者は評しています。 Q:牽制民主主義と選挙民主主義の違いを教えてください。 岩本 選挙民主主義には大きな欠点があります。選挙制度は多数派が勝利する仕組み。そのため、「多数派の意思に無制限に従わなければならない」という弊害が引き起こされるのです。牽制民主主義では、議会に頼ることなく、市民一人ひとりがそれぞれの利害を守る手段を持っているため、選挙民主主義の欠点を補うことができると考えられます。 それまでの民主主義は、あくまで政府の権力を抑制するための手段でした。牽制民主主義では、恣意的な権力の拒絶が、社会生活全般において可能となりました。そのため、政治がこれまで介入することのなかった職場でのいじめやセクハラ、人種差別、動物虐待などに対しても監視・抑制機能が生まれるようになったのです』、「選挙民主主義には大きな欠点があります。選挙制度は多数派が勝利する仕組み。そのため、「多数派の意思に無制限に従わなければならない」という弊害が引き起こされるのです。牽制民主主義では、議会に頼ることなく、市民一人ひとりがそれぞれの利害を守る手段を持っているため、選挙民主主義の欠点を補うことができると考えられます。 それまでの民主主義は、あくまで政府の権力を抑制するための手段でした。牽制民主主義では、恣意的な権力の拒絶が、社会生活全般において可能となりました。そのため、政治がこれまで介入することのなかった職場でのいじめやセクハラ、人種差別、動物虐待などに対しても監視・抑制機能が生まれるようになったのです」、「牽制民主主義では、」「政治がこれまで介入することのなかった職場でのいじめやセクハラ、人種差別、動物虐待などに対しても監視・抑制機能が生まれるようになった」、本当に機能するようなら素晴らしい。
・『世界に広がる専制主義に対抗する力が牽制民主主義  Q:牽制民主主義が登場する一方で、専制主義も力を増しているように感じます。 岩本 確かに牽制民主主義が発展する一方で、中国を筆頭とした新しい専制主義国家の台頭も今の時代の特徴といえます。著者は、ロシアやトルコ、ハンガリーなどはトップダウンの政治構造を持ち、これまでになかった手法で国民の忠誠心を操っていると指摘しています。毎日ニュースで流れるロシアの振る舞いを見ていれば、それは明らかなことでしょう。 Q:近年登場している専制主義的指導者たちは、どうやって民衆の心を掴んでいるのでしょう。 岩本 現在の専制主義国家は暴力や力による支配というよりも、巧妙に国民の心理を操作して、自発的に服従させる術に長けているといいます。そういう意味では、より厄介な存在といえるかもしれません。 例えば、アメリカのトランプ前大統領のことを「SNSによって生まれた大統領」と評価する専門家もいるほど、トランプ現象とSNSは密接に関連しています。SNSは確かに民衆を扇動しやすいツールでしょう。しかし、だからといってSNSに問題があるわけではない。テクノロジーには、プラスの面もあればマイナスの面もあるものです。トランプ前大統領の例は、その前提を理解した上で付き合う必要がある、と警鐘を鳴らしたといえます。 Q:こうした専制主義台頭の背景にはいったい何があるのでしょうか。 岩本 変化の激しい時代だからこそ、決断までに時間のかかる民主主義よりも、トップが即断即決できる専制主義の方が有利だと主張されているのです。例えば、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大した当初、合議的に方針を決定する欧米と、トップダウンで方針を打ち出す中国との対応には大きな差が出ました。混沌とした時代には、スピード感を持った強力なリーダーシップが求められやすいのです。 先が見えない社会において、頼りになるリーダーを迎えたくなる民衆の思いもあるでしょう。しかし、現在のロシアを見ればわかる通り、新しい専制主義国家も本質的には昔の専制主義国家と変わりません。つまり、真に求めているものは権力の集中であり、その権力を他者に恣意的に行使することです。力と暴力を使って、自分たちの都合のいいように世の中を変えていくというのが今も昔も専制主義の共通項なのです』、「先が見えない社会において、頼りになるリーダーを迎えたくなる民衆の思いもあるでしょう。しかし、現在のロシアを見ればわかる通り、新しい専制主義国家も本質的には昔の専制主義国家と変わりません。つまり、真に求めているものは権力の集中であり、その権力を他者に恣意的に行使することです。力と暴力を使って、自分たちの都合のいいように世の中を変えていくというのが今も昔も専制主義の共通項なのです」、同感である。
・『民主主義の意義は多元主義の擁護  Q:民主主義は一気に専制主義に転じることがありうるということでしょうか。 岩本 そうですね、歴史的に見ても民主主義の中から専制主義が生まれることはありました。ヒトラーの誕生前はドイツは民主主義であり、民主的な手続きを経てヒトラーが首相に選ばれたわけです。国民をうまく先導できれば、民主主義の手続きを経て選ばれたトップがその国を専制主義国家に変えることができるといえるでしょう。 また、独裁的な振る舞いの目立ったトランプ前大統領を見ればわかる通り、民主主義国家の内部にも専制主義的な要素が息づいています。 Q:民主主義の歴史を学ぶことで、民衆がどう専制主義に転じていくのかを知ることができますね。現在のような混沌とした時代だからこそ、改めて民主主義を学び、支持する理由があるように感じました。 岩本 本書では、民主主義の目的は多元主義を擁護することにあると結論づけています。つまり、人々の多様な生き方を最も尊重するのが民主主義であるという考えです。また、民主主義は権力を抑制するための終わりなき過程であるとも著者は語っています。 民主主義は時代や場所によってその形を変化させていきます。生き方の多様性を受け入れながら形態を変えていくその柔軟性こそが、民主主義が今後も生き残っていく強みなのかもしれません。 イギリスの思想家であるジョン・アクトンが「絶対的権力は絶対的に腐敗する」と述べたことは有名ですが、もしそれが真理なのであれば、やはり今後も民主主義は必要とされていくでしょう。権力を監視、抑制する機能を考えると、牽制民主主義こそが理想的な政治制度だといえるのではないでしょうか』、「本書では、民主主義の目的は多元主義を擁護することにあると結論づけています。つまり、人々の多様な生き方を最も尊重するのが民主主義であるという考えです。また、民主主義は権力を抑制するための終わりなき過程であるとも著者は語っています。 民主主義は時代や場所によってその形を変化させていきます。生き方の多様性を受け入れながら形態を変えていくその柔軟性こそが、民主主義が今後も生き残っていく強みなのかもしれません」、「権力を監視、抑制する機能を考えると、牽制民主主義こそが理想的な政治制度だといえるのではないでしょうか」、同感である。
タグ:民主主義 (その9)(『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史』翻訳者・岩本正明インタビュー ①【ウクライナ、台湾、アメリカの分断…】世界同時的に民主主義が劣勢に陥った根本理由、②日本人が当たり前に行う「多数決」その重大な欠点 子どもの対話力と決める力を奪っている、③ぶっ壊れた政党に民主主義を乗っ取るカルト政治 ブラジル大統領選 蔓延する少数派の横暴、④「普通選挙が民主主義のゴール」と思う人、思わない人の決定的な差) ダイヤモンド・オンライン「【ウクライナ、台湾、アメリカの分断…】世界同時的に民主主義が劣勢に陥った根本理由 『世界でいちばん短くてわかりやすい 民主主義全史』翻訳者・岩本正明インタビュー」 「30年ほど前までは、民主主義の前途は明るく見えました。軍事独裁政権の崩壊やアパルトヘイトの撤廃など、市民の力を軸にした民主主義の力強さを感じることができたのです。しかし、現在は、ベラルーシ、ミャンマー、香港で起きている出来事など、世界中で民主主義への不安を感じずにはいられない状況になっているといえます」、由々しい事態だ。 「自由民主主義と区分される国の数は2012年がピークで、現在では1995年の水準にまで下がっている」、「専制主義に区分される国の数が増加傾向にある」、「現在では世界の人口の7割が広義の専制主義国家の市民である」、「世界の人口の7割が広義の専制主義国家の市民」とは衝撃的だ。 「本書を読んで、民主主義の変遷を知れば、そうした意識が高まり、専制主義に目移りし、極端な方向へ暴走するのではなく、「民主主義の形式を変えていけばよい」という柔軟な考え方ができると思います。 ただ、「まやかしの民主主義」に対しては、注意をしてほしいです。 例えば、トルコのエルドアンやロシアのプーチンなどの独裁者は、人民の同意に基づいて独自の民主主義を実践していると主張しています。しかし、実態は国民生活にまで入り込み、監視し、権力に抗う者を屈服させようとしています。民主主義のお題目の下、専制主義が生まれうることを私たちは常に理解しておかなければいけないでしょう」、「NGOなどの草の根の団体が権力の監視役としての力を強めており、民主主義の裾野はますます広がっています」、 「こうした様々な団体が、政府や大企業などの権力組織を監視・牽制する仕組みをこうした様々な団体が、政府や大企業などの権力組織を監視・牽制する仕組みを「牽制民主主義」と名付けています。この「牽制民主主義」は新しい概念で、今後より注目が集まっていくでしょうこうした様々な団体が、政府や大企業などの権力組織を監視・牽制する仕組みを「牽制民主主義」と名付けています。この「牽制民主主義」は新しい概念で、今後より注目が集まっていくでしょうと名付けています。この「牽制民主主義」は新しい概念で、今後より注目が集まっていくでし ょう」、「牽制民主主義」とは興味深い動きだ。 ダイヤモンド・オンライン「日本人が知らない民主主義トリビア公開!」 「意外性あふれる民主主義の知識」とは興味深そうだ。 我々は「民主主義」を「ステレオタイプにはまる社会制度」誤解していたようだ。 「紀元前2500年ごろの中東で民主主義の原型が生まれたというのが専門家の間で定説になっている」、我々が学んだ「西洋」中心の考え方は間違っていたようだ。 「古代アテネの民主主義がデマゴーグと呼ばれる目立って民衆を煽動するような存在の危険性を強く意識」、「賛同者の人数が一定数に達することを条件に、民衆を煽動するような人気取りの政治指導者をアテネから10年間、追放することができた」、トランプ、イタリアのメローニ新首相あたりは、「デマゴーグ」の典型だ。 「代議制民主主義」の発祥は、「イギリスやフランスではなく、スペイン北部だった・・・イスラム教徒の侵略に危機感を抱いた当時の国王が、キリスト教徒を団結させるために教会と貴族、一般市民からそれぞれ代表者を集めて、世界初の議会を開いた」、初めて知った。 「アフリカのセネガルやインドの民主主義は、現地の文化や宗教と密接に絡み合っており、いわゆる欧米型の自由民主主義とは、その内容がずいぶんと異なっています。 こうした傾向を、民主主義が西洋的、白人的なものから、それぞれの土地に根差したものに変わっている」、「多様な民主主義が世界に存在している」というのは、西欧型がモデルとする従来の考え方への挑戦で興味深い。 ダイヤモンド・オンライン「「民主主義の理解」がビジネスパーソンの必須能力になってきた特殊事情」 「ビジネスパーソンが知っておきたい、民主主義と資本主義」、とは興味深そうだ。 「現在の民主主義に対する不満の多くは、貧富の格差の拡大に行き着くということが指摘・・・貧富の格差拡大は現在の資本主義システムの構造によって生み出されています。つまり、資本主義は大きく民主主義に影響を与えているのです」、「日本人が目指す武道としての「柔道」と、世界に広がるスポーツとしての「JUDO」ではやはり目指すところが違うように思うんです。しかし、そのどちらが正解でどちらが間違っているということはありませんよね。ある種、文化の違いといえると思います。こうした差異が民主主義の理解にもあるように思うんです」 、ずいぶん深い考え方だ。 「トランプ前大統領だけではありません。南米やヨーロッパでも国民の不満や怒りを利用したポピュリズム(大衆に迎合して人気をあおる政治姿勢)的指導者の台頭が見られます。資本主義の暴走をコントロールできない、いまの政治に対する国民の不満により、専制主義的な指導者が各国で生まれているという側面はある」、その通りだ。 「民主主義の歴史というのは、現在に通ずる政治の歴史と考えても間違いではありません。過去を知ることで、政治が今後、どのように変わっていくのかを理解しやすくなります。そうすれば、経済や社会がどのように変化していくのか、その見通しも立てやすくなるのではないでしょうか」、その通りなのかも知れない。 ダイヤモンド・オンライン「「普通選挙が民主主義のゴール」と思う人、思わない人の決定的な差」 「民主主義のアップデート」とは興味深そうだ。 「選挙民主主義には大きな欠点があります。選挙制度は多数派が勝利する仕組み。そのため、「多数派の意思に無制限に従わなければならない」という弊害が引き起こされるのです。牽制民主主義では、議会に頼ることなく、市民一人ひとりがそれぞれの利害を守る手段を持っているため、選挙民主主義の欠点を補うことができると考えられます。 それまでの民主主義は、あくまで政府の権力を抑制するための手段でした。牽制民主主義では、恣意的な権力の拒絶が、社会生活全般において可能となりました。そのため、政治がこれまで介入することのなかった職場でのいじめやセクハラ、人種差別、動物虐待などに対しても監視・抑制機能が生まれるようになったのです」、「牽制民主主義では、」「政治がこれまで介入することのなかった職場でのいじめやセクハラ、人種差別、動物虐待などに対しても監視・抑制機能が生まれるようになった」、本当に機能するようなら素晴らしい。 「先が見えない社会において、頼りになるリーダーを迎えたくなる民衆の思いもあるでしょう。しかし、現在のロシアを見ればわかる通り、新しい専制主義国家も本質的には昔の専制主義国家と変わりません。つまり、真に求めているものは権力の集中であり、その権力を他者に恣意的に行使することです。力と暴力を使って、自分たちの都合のいいように世の中を変えていくというのが今も昔も専制主義の共通項なのです」、同感である。 「本書では、民主主義の目的は多元主義を擁護することにあると結論づけています。つまり、人々の多様な生き方を最も尊重するのが民主主義であるという考えです。また、民主主義は権力を抑制するための終わりなき過程であるとも著者は語っています。 民主主義は時代や場所によってその形を変化させていきます。生き方の多様性を受け入れながら形態を変えていくその柔軟性こそが、民主主義が今後も生き残っていく強みなのかもしれません」、 「権力を監視、抑制する機能を考えると、牽制民主主義こそが理想的な政治制度だといえるのではないでしょうか」、同感である。
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金融関連の詐欺的事件(その13)(【現職大臣も関与?】大手航空会社社長までも騙される「M資金詐欺」がヤバすぎる 昭和事件史(6)前編、「返済不可能なローン組まされた」全国に400人超 スルガ銀行追及「R調査班」第2弾、スルガ銀行株主総会 社長解任議案は否決 「多くの人救済を」) [金融]

金融関連の詐欺的事件については、4月14日に取上げた。今日は、(その13)(【現職大臣も関与?】大手航空会社社長までも騙される「M資金詐欺」がヤバすぎる 昭和事件史(6)前編、「返済不可能なローン組まされた」全国に400人超 スルガ銀行追及「R調査班」第2弾、スルガ銀行株主総会 社長解任議案は否決 「多くの人救済を」)である。

先ずは、8月8日付け現代ビジネスが掲載した編集者・ライター・昭和文化研究家のミゾロギ・ダイスケ氏による「【現職大臣も関与?】大手航空会社社長までも騙される「M資金詐欺」がヤバすぎる 昭和事件史(6)前編 」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/98216?imp=0
・『戦後の高度経済成長期以降、無数の前例があるにもかかわらず、被害者を出し続けている不思議な詐欺の手口がある。「M資金詐欺」である。この詐欺の類型では、大企業の経営者や多くの資産を有する実業家などが被害に遭っている。「M資金詐欺」とはどんなものか? なぜ、被害が後をたたないのだろうか? (※事件発生当時の朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、週刊文春などの報道をもとに構成しています。またわかりやすさの観点から、当時の紙面・誌面を平易な文章に修正している箇所があります)』、いまだに「M資金詐欺」類似の事件が起きていることから、元祖の事件を振り返ることにも意義が大きい。
・『「存在が証明されたことがない」謎の資金  終戦後、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が日本で接収した莫大な資産をもとに秘密裏に運用され続けている「M資金」と呼ばれる資金がある……。 一般的な「M資金詐欺」は、上記を前提とした詐欺である。 ただし、M資金について、日本政府が公式に言及したことや、司法機関やメディアなどが存在を立証したことは1度もない。つまり、一種の都市伝説である可能性も高いのだ。 一方で、GHQの水面下での動きは謎の部分も多く、その背景がM資金に「あってもおかしくない」と思わせる妙なリアリティを与えていた。 なお、M資金の「M」は、GHQ経済科学局・局長のウィリアム・マーカットの頭文字だとされるが、ダグラス・マッカーサー(GHQ最高司令官)、フリーメイソン (またはフリーメイソンリー) 、MSA協定(日米相互防衛援助協定)などの頭文字だという説も存在する。もっとも、存在しなければ名称の由来を探ること自体が無意味だ。 他方、一部には「M資金は存在する(した)」と主張する声もあるが、その点については深追いしないこととする。なぜなら、本稿の主題であるM資金詐欺において、これから明らかにするようにM資金の存否は「重要ではない」からである』、「M資金の存否は「重要ではない」」のは何故だろうか。
・『「 M資金詐欺」の典型的な手口  M資金詐欺において、主なターゲットとされるのは、経営者、事業家など普段から大金を動かしている人たちである。詐欺師は、そうした人々の「自尊心」や「山っ気」を絶妙に刺激する。そのベーシックなシナリオは以下のようなものだ。 まず、国家の中枢部に近い立場にあると自称する人物(詐欺師)が面会を求めてくる。そして、「実はM資金と呼ばれる巨大な秘密資金がある。選ばれたごく一部の人しかその存在を知らない。あなたは、その一人に選ばれたので、M資金のなかから多額の融資を受けられる」といった旨が説明され、他言無用であることが強調される。 「社会に役立てるための融資である」といった理由で、無利子、無担保、返済義務ナシなど通常ではありえない条件が示されることもある。また、これまでに資金を託された企業や人物などのリスト(ニセモノ)、資金の存在を証明する公的書類(ニセモノ)、詐欺師と要人(ホンモノ)とのツーショット写真などを見せられ、別の地位の高い人物(ニセモノ)との対面などもセッティングされる。 こうした演出によりすっかり信じ切った被害者は、「自分は選ばれし特別な人間である」といった優越感に酔いつつ、巨額融資によるメリットに浮足立つ。そうなれば、詐欺師の思うつぼだ。融資の前提として、手数料、紹介料といった名目で金銭の振り込みを請求するのだ。 何十億円、何百億円の融資を受けられると信じ込んだ人は百万円単位、千万円単位の金などチップに過ぎないと感じるのか、被害者が求められた金額を指定口座に振り込んでしまう。着金を確認した詐欺師が以後、連絡を断つのはいうまでもない』、「無利子、無担保、返済義務ナシ」というあり得ないような好条件で、「何十億円、何百億円の融資を受けられる」のであれば、「手数料、紹介料」の「百万円単位、千万円単位の金などチップに過ぎないと感じるのか、被害者が求められた金額を指定口座に振り込んでしまう」、欲の皮が突っ張ると、常識的判断など吹っ飛んでしまうのだろう。
・『詐欺師にとって重要なことは?  「M資金詐欺において、M資金の存否は“重要ではない”」と前述したが、それは、原則的に詐欺師には最初から融資を斡旋するつもりがないので、M資金が存在しなくても目的(金銭の詐取)に影響がないからである。 また、相手に“巨大な資金から多額の融資が受けられる”と思い込ませることができれば、資金の名称がM資金である必要もない。実際に、他名称の架空資金をネタに同じような詐欺を働いた手合いもいるし、「M資金はインチキだが、この●●資金は実在する」といったロジックを用いた詐欺師もいた。 ただし、M資金をネタにした詐欺犯罪の事例が多かったこともあり、巨大資金から多額の融資をもちかけ、金銭を騙し取る犯罪行為そのものを「M資金詐欺」と総称することがあるのだ。ここからは、事件当時の報道をもとに、「M資金詐欺」のアウトラインをなぞってみよう』、「M資金の存否は“重要ではない”」と前述したが、それは、原則的に詐欺師には最初から融資を斡旋するつもりがないので、M資金が存在しなくても目的(金銭の詐取)に影響がないからである」、なるほど。「「M資金詐欺」のアウトライン」とは興味深そうだ。
・『「元首相の親族」を名乗る  「またM資金サギ 融資話で1億5千万円」(朝日新聞1980年1月21日付夕刊) まずは、“正統派”ともいえるM資金詐欺の例から紹介しよう。経営難から融資を求めていた経営者に「M資金から3億円を融資できる」ともちかけ、380万円を「運動資金」としてだまし取っていた金融ブローカー・岩谷建蔵(57=仮名)が逮捕された。 「岩谷はこのほか都内の十社や群馬、九州の小企業主から計一億五千万円をだまし取っていた」(同上) 容疑者の岩谷は中小企業経営者の前に高級外国車に乗って現れ、「アメリカ大使館の嘱託顧問」を名乗ったり、元首相夫人の親戚だと吹聴したりしたという。インターネットのない時代、被害者はそうした怪しいプロフィールを容易に確認する術はなかったのだ』、現在では、「そうした怪しいプロフィール」は、インターネットで「容易に確認」できる。
・『「M資金で1億円詐取 組員ら三人を逮捕」(朝日新聞1978年11月6日付夕刊)  M資金の噂は反社会勢力にも利用された。 警視庁組織暴力犯罪取締本部と本富士署は六日までに、詐欺会社を作り、『M資金、CIAやオイルダラーの資金を融資してやる』『おたくの銀行に数億円を預金してやる』などうそをついて企業や銀行から謝礼金などの名目で総額一億一千万円だまし取った暴力団関係者の三人を逮捕した」(同上) 「オイルダラー」とは一般的には産油国がドルで蓄積した資金を指す言葉であり、M資金とはまったく筋が違うものだ。また、CIAと関連性があるものでもない。繰り返しになるが、詐欺師にとって資金の存否や名称はどうでもいいことなのだ。このケースでは、騙されたというより、脅し取られたというニュアンスが近い可能性も考えられるが、言われるままに金を払った人たちが何人もいたのは紛れもない事実なのである』、「言われるままに金を払った人たちが何人もいたのは紛れもない事実」、現在の資金余剰の時代とは異なり、かつては、資金不足時代だったことも背景にある。
・『「『M資金』に前社長念書 詐欺師の小道具に」(朝日新聞1983年4月26日付朝刊) メーカーの経営者・中田信三氏(59=仮名)が架空の資金からの200億円もの融資話に乗り、融資の念書にサイン・捺印をした。詐欺師は中田氏から手数料を騙し取ったとともに、中田氏のサイン入り念書を別の経営者2名を同様に騙す小道具に利用し、そこでも金銭を詐取している。 「二人とも中田氏の社会的地位から、この念書にある二百億円の支払いを信じて疑わなかった、という」(同上) 犯人は、他にも同様の手口で各地の経営者、事業家などにM資金詐欺を働き、被害額は数千万円単位に及んだとされる』、「中田氏のサイン入り念書を別の経営者2名を同様に騙す小道具に利用し、そこでも金銭を詐取している」、「中田氏」の責任は重大だ。
・『大企業をゆるがす大スキャンダルになった例も  この事件のように、「M資金からの融資」を前提とした念書が、大企業を揺ゆるがすスキャンダルに発展したこともある。1969年、当時の全日本空輸(以下:全日空)の中野富士夫社長(仮名)のもとに、「M資金という資金が眠っているが、管理者はそれを有効活用したがっている。全日空と連名でこれを利用したい」といった旨の申し出があった。 「話を持ち込んできたのは佐藤博志(仮名)という元代議士で、彼にはレッキとした紹介者がいた。現職運輸大臣牧田仁代議士(仮名)と、前運輸大臣の小岩英二代議士(仮名)(役職はいずれも当時)。中野氏は、この二枚の名刺にすっかり心を動かされてしまったらしい」(週刊文春1976年3月11日号) 中野社長は「借受け保証念書」に社長印を押して振込先口座を指定。ところが、その口座に金が振り込まれることはなかった。通常のM資金詐欺と異なるのは、佐藤元代議士が手数料などを求めなかったことだ。つまり、全日空側は1円も損をしなかった。ただし、件の念書のコピーが出回り、のちに大問題となった。 「中野氏が念書に、全日空社長印を使っていたのが、致命的だった。株主総会で、『社長の経営責任』を追及された中野氏は就任後1年あまりで社長のポストを投げ出した」(同上) 実は、融資を持ちかけた佐藤元代議士は、落選後、詐欺行為で複数回の逮捕歴のある曰く付きの人物だ。中野社長がそのことを把握していたかどうかは不明だが、元代議士という肩書、2名の現役代議士の紹介は佐藤元代議士を信用するに十分な要素となったのかもしれない。なお、当該の代議士2名は後日、この件について「記憶にない」「(紹介状を書いたが)内容については知らない」と深いつながりを否定した』、「全日空側は1円も損をしなかった」とはいえ、「件の念書のコピーが出回り、のちに大問題となった」、「元代議士という肩書、2名の現役代議士の紹介は佐藤元代議士を信用するに十分な要素となったのかもしれない」、政治家は気易く「紹介」したりするので、それを信じたとすれば、「中野」氏の完全な手落ちだ。
・『ロッキード事件が関連…?  では、佐藤元代議士の目的は? 当時のマスメディアの多くは、戦後史に残る疑獄事件「ロッキード事件」につながった中野社長の社会的な信頼失墜が目的だったのではないかという見方をしている。 「ロッキード事件」とは、アメリカの航空機メーカー「ロッキード」社による主に同社の旅客機「トライスター」の受注を目的とした世界規模の汚職事件である。中野社長が在任当時、全日空はロッキード社のライバルであるダグラス社の航空機の購入する方針を固めていた。ところが……。 「中野氏在任当時は、考えられもしなかったトライスターが上昇してくる」(同上) その後、全日空のトライスター導入は現実のものとなるのだ。結局、ロッキード事件にまつわる数々の謎や疑惑はクリアになることはなく、全日空に対するM資金融資騒動は真相が明らかになることはなかった。ただ、いずれにしてもなんらかの思惑のためにM資金の名前が利用されたことは間違いないだろう。 全日空の一件を経て、M資金はそれまで以上に要注意ワードとして広く認識された。しかし、しばらくすると、今度はテレビドラマに主演する人気俳優がM資金詐欺の被害者となったことで世間はざわつくことになる。後編<超有名ドラマの主演人気俳優を死に追いやった「M資金詐欺」の暗部がヤバすぎる>では、引き続き、各時代の報道をもとにM資金詐欺について迫ってみたい』、「中野社長が在任当時、全日空はロッキード社のライバルであるダグラス社の航空機の購入する方針を固めていた」、事件後、「全日空のトライスター導入は現実のものとなる」、とすれば、「事件」は「ダグラス社」側が仕掛けた可能性も否定できない。こんな裏面があったとは、初めて知った。

次に、7月7日付けRKBオンライン「「返済不可能なローン組まされた」全国に400人超 スルガ銀行追及「R調査班」第2弾」を紹介しよう。
https://rkb.jp/news-rkb/202207072282/
・『先月、「投資用マンション」の購入をめぐりトラブルに巻き込まれたと訴える福岡市の男性会社員を紹介しました。この男性と同様に静岡県に本社を置く「スルガ銀行」から返済不可能な額のローンを組まされたと訴えている人は、全国で400人以上に上っています。 被害を訴える男性「融資額は6億なんですね。どうせ融資が下りないと思ってたんですよ。サラリーマンで6億円の融資ってありえないじゃないですか、常識的に。僕の資産の改ざんがあって、通帳やら源泉徴収とか。もう一つは家賃の改ざん。レントロール(家賃明細表)を改ざんして割り出した。6億7千万。実際は3~4億の物件を高値づかみをさせている」 今年4月、福岡市のJR博多駅近くの公園に集まった人たち。職業や住んでいる場所は異なりますが、みな投資用のアパート・マンションのオーナーです。スルガ銀行の不正融資により、本来は買えるはずもなかった物件を不当に高い価格で購入することになったと訴えています』、「サラリーマンで6億円の融資ってありえないじゃないですか、常識的に。僕の資産の改ざんがあって、通帳やら源泉徴収とか。もう一つは家賃の改ざん。レントロール(家賃明細表)を改ざんして割り出した。6億7千万。実際は3~4億の物件を高値づかみをさせている」、書類を「改ざん」したとはやはり悪どい。
・『立ち上がった被害者  冨谷皐介さん「多くの方が銀行、公的機関である金融機関が、詐欺・不正をはたらくなんて思うわけないんです。そういう世間の期待を裏切って不正をはたらいていたのがスルガ銀行なんです」 消費者問題の被害者を救済・サポートをする社団法人の代表・冨谷皐介さん。「スルガ銀行から不正な融資を受けた」と訴える投資用アパートやマンションのオーナーたちが結成した「スルガ銀行不正融資被害者同盟」の支援を続けています。 冨谷皐介さん「みんなで一斉に日にちを決めて、集まって困っているという窮状を、嵯峨社長に見せたいんです」) 冨谷さん自身も6年前、スルガ銀行でローンを組むことを条件に、東京都内のシェアハウス「かぼちゃの馬車」1棟を1億9000万円で購入した、元被害者です。 家賃収入が一度も入らないまま、シェアハウスの運営会社は破綻。借金だけが残り、物件を売却しても数千万円の損失が出る状況から、同じ境遇の購入者とともに被害者同盟を結成した冨谷さんは、スルガ銀行の不正融資を追及し続けました。 その結果、銀行側が不法行為を全面的に認め、物件を手放す代わりに借金を帳消しにして損失を負担することで2020年に和解。地獄の手前から奇跡の生還でした。 冨谷皐介さん「悪いことをしたとシェアハウスの問題を認めたわけですから、『中古1棟アパ-ト・マンション』の問題にも真摯に対応していただきたい」』、「シェアハウス」では、「銀行側が不法行為を全面的に認め、物件を手放す代わりに借金を帳消しにして損失を負担することで2020年に和解」。まさに「奇跡の生還」だ。
・『被害者400人超 ローン総額は1000億円超  冨谷さんが支援する「スルガ銀行不正融資被害者同盟」のメンバーは、国の内外に438人。メンバーがスルガ銀行から借りたローンの総額は、1051億円にも上ります。 被害者同盟のメンバー「レントロールと預金残高。貸せないはずなのに、通帳の改ざん。お金がなくなってしまって、生活を養えなくなって、それで離婚しました」 「みんなここにいる人たちは、死を覚悟したり。銀行が私利私欲のために改ざんなんかしないでまともな業務を行っていれば、私たちも今ここに立っていなくてすみますし。憎しみしかないです」 「私と同じように、スルガ銀行の返済に1人で悩み、家族を残して自殺をした同僚もいます」 被害を訴える同盟のメンバーは、「スルガ銀行」に対し、冨谷さんがかつて購入したシェアハウスと同様に、購入した物件と高額なローンとの相殺を求めて調停中です。 果たしてこの調停は、解決に向かっているのか? 50人の弁護士が名を連ねる被害弁護団に話を聞きました。 河合弘之弁護士「不正な売り付け、高値づかみ売り付けと、それに対しての融資という意味では、(シェアハウスと)同じなんです。その手法も、レントロール(家賃明細表)の偽造、預金通帳の偽造、売買契約書の偽造、払ってもいない手付金の領収書の偽造、全部からんでいる」』、「「スルガ銀行不正融資被害者同盟」のメンバーは、国の内外に438人。メンバーがスルガ銀行から借りたローンの総額は、1051億円」、これらも「不正な売り付け、高値づかみ売り付けと、それに対しての融資という意味では、(シェアハウスと)同じなんです。その手法も、レントロール(家賃明細表)の偽造、預金通帳の偽造、売買契約書の偽造、払ってもいない手付金の領収書の偽造、全部からんでいる」、「シェアハウスと同様に、購入した物件と高額なローンとの相殺を求めて調停中」、まだこんなにあるとは驚かされた。
・『内部資料は「偽造の裏付け」と弁護団  弁護団が「偽造の裏付け」とする資料の数々です。左が、不動産会社から入手した賃貸明細表。右が、融資の際にスルガ銀行に提出された明細表です。同じ平成28年(2016年)3月ですが、空いているはずの部屋がほとんど入居したことになっていて、家賃収入も2倍近く水増しされています。 こちらは、家賃の改ざんです。全ての部屋で、実際の家賃より1万円から2万4000円も上乗せされています。自己資金を示す預金通帳は、38万円ほどの残高が1538万円に、90万円が1090万円に改ざんされています。 実際には払っていない手付金の領収書や、契約した不動産会社とは別の会社の名前が記載された売買契約書もあります。 さらに弁護団は、スルガ銀行の行員と不動産会社の社員とのラインのやりとりも入手していました。 不動産会社の社員から、家賃収入明細表がスルガ銀行の行員に送られています。満室時の家賃は600万円程度、実際の家賃収入は450万円ほどです。この後、訂正分としてすぐにほぼ満室に近い家賃収入が記載された明細表が送られています。 預金通帳の偽造についてとみられるやりとりには、履歴の改ざんの指示と偽装が発覚しないための注意が記されています。) 河合弘之弁護士「スルガ銀行は、すでに非を認めています。非を認めているけれど個別事情が強すぎるから、一括解決はできないと」』、「「スルガ銀行は、すでに非を認めています。非を認めているけれど個別事情が強すぎるから、一括解決はできないと」、個別の交渉では時間がかかりそうだ。
・『株主総会で対決へ  非を認めながらも個別にしか対応ができないとするスルガ銀行に対し、一括での和解を求める「スルガ銀行不正融資被害者同盟」のメンバーは、次の一手を打ちます。「株主提案権」の行使です。 同盟のメンバーと弁護団は、スルガ銀行の株を4万3800株購入。議案を提出できる3万株以上を保有して10の議案を記載した「株主提案権行使書」をスルガ銀行に提出しました。 (1)4月24日に提出提案書の影ナレ真の経営再建をめざすため嵯峨行介社長の解任を強く求める。 (2)アパートマンション不正融資事件について全く解決していない。迅速に正しい解決をすること  株主総会の約3週間前に、「スルガ銀行」は異例の通知を出します。新型コロナ感染対策を理由に株主総会の出席に抽選を導入し、3万人を超える株主の中で、出席者をわずか206人にとどめる決定をしたのです。 迎えた株主総会当日。会場には、約300人の同盟メンバーが集まりました。撮影・録音が禁止された物々しい雰囲気の中、抽選に当選した70人が会場に入っていきます。 RKB植高貴寛「株主総会の真っただ中なんですが、スルガ銀行の本店の前ではデモ活動が始まっています」 「スルガ銀行は、まっとうな銀行に生まれ変われー!」 「不正があったのは事実なので、早く僕たちのことを助けてほしいです」 「銀行は社会のお金のベースだから、そこに問題があると社会が成長しない。まだ諦めてないです」』、「株主提案権行使書」に対抗して、「新型コロナ感染対策を理由に株主総会の出席に抽選を導入し、3万人を超える株主の中で、出席者をわずか206人にとどめる決定をした・・・迎えた株主総会当日。会場には、約300人の同盟メンバーが集まりました。撮影・録音が禁止された物々しい雰囲気の中、抽選に当選した70人が会場に入っていきます」、総会での模様は第三の記事を参照されたい。
・『「通帳偽造を容認した銀行、歴史上ない」  被害弁護団 山口広弁護士「株主総会ではありましたが、実質的には、被害者側が抗議をする、不正融資の早期解決を求める、という発言がほとんどでありました」 弁護団によると、スルガ銀行の嵯峨社長は不正融資の問題について「早期解決を追求します」という発言を繰り返したといいます。しかし、いつまでにどのような形で解決をするかという具体的な質問については、「個別対応で考えている」というこれまで通りの回答にとどまったということです。 河合弘之弁護士「預金通帳偽造を容認した銀行なんて、歴史上ないんですよ。こんなことをして、反省もしないで、被害者の救済もしないで生き延びる銀行があるなんてことは、日本の金融界にとっては大変な禍根を残すことになります。ですから、金融関係者は全員この問題に注目して、『日本の銀行の信用をなくすようなことをするなよ』と言ってほしいですね」』、今後の動向を注視したい。

第三に、10月22日付けNHK NEWS WEB「スルガ銀行株主総会 社長解任議案は否決 「多くの人救済を」」を紹介しよう。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/shizuoka/20220629/3030016389.html
・『アパートなどの投資用不動産向け融資の書類の改ざんをめぐりオーナー側と交渉を続けているスルガ銀行の株主総会が29日、沼津市で行われ、被害者団体が提出した社長の解任などの議案はすべて否決されました。 総会のあとオーナー側の弁護団が会見し「救済を求める声を経営陣に突きつけたのは意味があった。多くの人が救済されるようにスルガ銀行を説得する」と述べ交渉を継続する方針を示しました。 大規模な不正融資の問題が明らかになったスルガ銀行では、シェアハウスへの融資についてはほぼ解決しましたが、アパートなどの投資用不動産向け融資の書類の改ざんをめぐっては融資で被害を受けたとするオーナー側と交渉が続いています。 29日、沼津市で行われたスルガ銀行の株主総会の会場前には200人以上の人が集まり「不正融資の早期解決を」と書かれた旗を持って救済を訴えていました。 午前10時から始まった株主総会では、株主でもあるオーナー側が提出した嵯峨行介社長の解任や、不正行為の内容の株主への開示などを求める議案の採決が行われましたが、すべて否決されました。 オーナー側の弁護団によりますと株主総会のなかで嵯峨社長は、弁護団が解決を要求している430人あまりおよそ1050億円のアパートやマンションの融資について「不正行為が一部にあったのは確かだが、一律に不正行為と認めることはできないので個別案件ごとにみていかざるを得ない」と述べたということです。 総会のあと弁護団が会見し、弁護士の山口広団長は「被害者株主が救済を求める声を経営陣に突きつけたのは意味があった。多くの人が救済されるようにスルガ銀行を説得する」と述べ交渉を継続する方針を示しました。 総会に参加した株主は、「去年に比べると怒号などはなかったと思います。会社の経営が改善される方向に進んでもらいたいです」と話していました』、「一律に不正行為と認めることはできないので個別案件ごとにみていかざるを得ない」、と「個別案件」ごとの処理では、かなり時間がかからざるを得ないだろう。第二記事にあるように「通帳偽造を容認した銀行、歴史上ない」ほど、「スルガ銀行」は悪質極まりない。今後の展開を注目したい。
タグ:「M資金の存否は「重要ではない」」のは何故だろうか。 いまだに「M資金詐欺」類似の事件が起きていることから、元祖の事件を振り返ることにも意義が大きい。 「【現職大臣も関与?】大手航空会社社長までも騙される「M資金詐欺」がヤバすぎる 昭和事件史(6)前編 」 ミゾロギ・ダイスケ 現代ビジネス 金融関連の詐欺的事件 (その13)(【現職大臣も関与?】大手航空会社社長までも騙される「M資金詐欺」がヤバすぎる 昭和事件史(6)前編、「返済不可能なローン組まされた」全国に400人超 スルガ銀行追及「R調査班」第2弾、スルガ銀行株主総会 社長解任議案は否決 「多くの人救済を」、「みんクレ」1億円賠償にみる投資被害回復の困難 裁判で全面勝訴した投資家に10%も戻らない) 「無利子、無担保、返済義務ナシ」というあり得ないような好条件で、「何十億円、何百億円の融資を受けられる」のであれば、「手数料、紹介料」の「百万円単位、千万円単位の金などチップに過ぎないと感じるのか、被害者が求められた金額を指定口座に振り込んでしまう」、欲の皮が突っ張ると、常識的判断など吹っ飛んでしまうのだろう。 「M資金の存否は“重要ではない”」と前述したが、それは、原則的に詐欺師には最初から融資を斡旋するつもりがないので、M資金が存在しなくても目的(金銭の詐取)に影響がないからである」、なるほど。「「M資金詐欺」のアウトライン」とは興味深そうだ。 現在では、「そうした怪しいプロフィール」は、インターネットで「容易に確認」できる。 「言われるままに金を払った人たちが何人もいたのは紛れもない事実」、現在の資金余剰の時代とは異なり、かつては、資金不足時代だったことも背景にある。 「中田氏のサイン入り念書を別の経営者2名を同様に騙す小道具に利用し、そこでも金銭を詐取している」、「中田氏」の責任は重大だ。 「全日空側は1円も損をしなかった」とはいえ、「件の念書のコピーが出回り、のちに大問題となった」、「元代議士という肩書、2名の現役代議士の紹介は佐藤元代議士を信用するに十分な要素となったのかもしれない」、政治家は気易く「紹介」したりするので、それを信じたとすれば、「中野」氏の完全な手落ちだ。 「中野社長が在任当時、全日空はロッキード社のライバルであるダグラス社の航空機の購入する方針を固めていた」、事件後、「全日空のトライスター導入は現実のものとなる」、とすれば、「事件」は「ダグラス社」側が仕掛けた可能性も否定できない。こんな裏面があったとは、初めて知った。 RKBオンライン「「返済不可能なローン組まされた」全国に400人超 スルガ銀行追及「R調査班」第2弾」 「サラリーマンで6億円の融資ってありえないじゃないですか、常識的に。僕の資産の改ざんがあって、通帳やら源泉徴収とか。もう一つは家賃の改ざん。レントロール(家賃明細表)を改ざんして割り出した。6億7千万。実際は3~4億の物件を高値づかみをさせている」、書類を「改ざん」したとはやはり悪どい。 「シェアハウス」では、「銀行側が不法行為を全面的に認め、物件を手放す代わりに借金を帳消しにして損失を負担することで2020年に和解」。まさに「奇跡の生還」だ。 「「スルガ銀行不正融資被害者同盟」のメンバーは、国の内外に438人。メンバーがスルガ銀行から借りたローンの総額は、1051億円」、これらも「不正な売り付け、高値づかみ売り付けと、それに対しての融資という意味では、(シェアハウスと)同じなんです。その手法も、レントロール(家賃明細表)の偽造、預金通帳の偽造、売買契約書の偽造、払ってもいない手付金の領収書の偽造、全部からんでいる」、 「シェアハウスと同様に、購入した物件と高額なローンとの相殺を求めて調停中」、まだこんなにあるとは驚かされた。 「「スルガ銀行は、すでに非を認めています。非を認めているけれど個別事情が強すぎるから、一括解決はできないと」、個別の交渉では時間がかかりそうだ。 「株主提案権行使書」に対抗して、「新型コロナ感染対策を理由に株主総会の出席に抽選を導入し、3万人を超える株主の中で、出席者をわずか206人にとどめる決定をした・・・迎えた株主総会当日。会場には、約300人の同盟メンバーが集まりました。撮影・録音が禁止された物々しい雰囲気の中、抽選に当選した70人が会場に入っていきます」、総会での「株主提案」は粛々と否決されたのだろう。 確かに「通帳偽造を容認した銀行、歴史上ない」ほど、「スルガ銀行」は悪質極まりない。今後の展開を注目したい。 NHK NEWS WEB「スルガ銀行株主総会 社長解任議案は否決 「多くの人救済を」」 「一律に不正行為と認めることはできないので個別案件ごとにみていかざるを得ない」、と「個別案件」ごとの処理では、かなり時間がかからざるを得ないだろう。確かに「通帳偽造を容認した銀行、歴史上ない」ほど、「スルガ銀行」は悪質極まりない。今後の展開を注目したい 「一律に不正行為と認めることはできないので個別案件ごとにみていかざるを得ない」、と「個別案件」ごとの処理では、かなり時間がかからざるを得ないだろう。第二記事にあるように「通帳偽造を容認した銀行、歴史上ない」ほど、「スルガ銀行」は悪質極まりない。今後の展開を注目したい。
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