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医療問題(その38)(【男性注意】前立腺がんが急増している「意外すぎる理由」、「ギフテッド」ゆえに無視され 孤立した小中時代 40歳フォトグラファー女性が経験した“高い知能”こその苦難、知能が高すぎる「ギフテッド」で精神を病んだ40歳女性が見つけた希望 自ら望んで「閉鎖病棟」へ入った理由) [生活]

医療問題については、本年3月17日に取上げた。今日は、(その38)(【男性注意】前立腺がんが急増している「意外すぎる理由」、「ギフテッド」ゆえに無視され 孤立した小中時代 40歳フォトグラファー女性が経験した“高い知能”こその苦難、知能が高すぎる「ギフテッド」で精神を病んだ40歳女性が見つけた希望 自ら望んで「閉鎖病棟」へ入った理由)である。

先ずは、5月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した産業医・内科医の森勇磨氏による「【男性注意】前立腺がんが急増している「意外すぎる理由」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/322217
・『人生100年時代は、健康こそ最大の資産です。 しかし40歳を越えると、がん、糖尿病、腎臓病といった病気を避けては通れません。国立がん研究センターによれば、40~49歳のがん患者数は、30~39歳と比べると3倍以上です(2018年)。もちろん50代、60代と年齢を重ねるにつれ、がん患者数はどんどん増えていきます。 本連載は、毎日の食事から、大病を患ったあとのリハビリまで、病気の「予防」「早期発見」「再発予防」を学ぶものです。著者は、産業医×内科医の森勇磨氏。「予防医学ch/医師監修」の管理人でもあり、動画は「わかりやすい説明で参考になる」「怖いけど面白い」と評判で、チャンネル登録者は27万人を超えています。初の単著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を出版し、感染症医・神戸大学教授の岩田健太郎氏が「安心して読める健康の教科書」と推薦文を寄せています』、興味深そうだ。
・『前立腺がんの意外な話  前立腺がんは日本で急増しており、男性のがんの罹患者数1位です。今後も増えていくことが予想されています。前立腺がんの主な症状は次のとおりです。 ・前立腺がんが膀胱(ぼうこう)や尿道を刺激してしまい「頻尿」になる ・おしっこの通り道である「尿道」をふさいでしまい、おしっこが出なくなる ・背骨の「腰椎(ようつい)」という場所に転移しやすく、転移が起こると強烈な腰の痛みを感じる 高齢の男性にとても多い病気である「前立腺肥大」と「前立腺がん」は症状だけでは区別できません。症状があっても「年のせい?」と様子を見てしまう人も多いです。 前立腺がんが急増している原因としては、食生活の欧米化もありますが、最も関連があるのが「PSA検査の普及」です』、「前立腺がんが急増している原因としては・・・最も関連があるのが「PSA検査の普及」です」、「PSA検査の普及」で「前立腺がんが急増」、とはどういうことだろう。
・『PSA検査とは?  PSAとは前立腺で分泌されるタンパク質のことです。前立腺にがんができると、このPSAの数値が上昇するため、早期発見のスクリーニングとして測定されます。 このPSA検査が1990年代に急速に普及し、前立腺がんの診断数が急激に増加しました。つまり前立腺がんに「なる」数が増えたというより、「発見される」数が増えたというわけです。 一見よいことのように思えますが、そう単純ではありません。まず大前提として、アメリカ予防医学専門委員会は「PSA検査はメリット・デメリットを知ったうえで、個人の選択に委ねる」というはっきりしない姿勢をとっています(※1) 日本の厚生労働省は「推奨しない」という指針を出しています(※2)。しかし一方で、日本泌尿器科学会は「PSA検査は絶対に行ったほうがいい」と主張しており、意見が真っ二つに分かれてしまっているのです。PSA検査についてのエビデンスは、まだ決着がついていません。 41万人の男性を対象に行われたイギリスの研究(※3)や「PLCO試験」(※4)という研究ではPSA検査の有効性は証明できませんでした。 一方、「ERSPC試験」(※5)という18万人を対象としたヨーロッパの研究データでは、死亡率を下げたという結果も出ています。PSAの問題は日本だけでなく世界的に大激論が行われています。 しかし、なぜ発見数が増えているにもかかわらず、死亡率が下がらないデータが存在するのでしょうか?』、「日本の厚生労働省は「推奨しない」という指針を出しています・・・しかし一方で、日本泌尿器科学会は「PSA検査は絶対に行ったほうがいい」と主張しており、意見が真っ二つに分かれてしまっている」、「PSAの問題は日本だけでなく世界的に大激論が行われています。 しかし、なぜ発見数が増えているにもかかわらず、死亡率が下がらないデータが存在するのでしょうか?」、なるほど。
・『がんを見つけないほうがよかった?  1つには、前立腺がんの「進行の遅さ」が関係しているといわれています。前立腺がんは早期の段階だと、手術などの治療をせず、PSAの数値を観察し続け、定期的に組織を採取するという選択肢があります(PSA監視療法)。 進行が遅いので「監視する」という選択肢もある珍しいがんです。進行が遅いがゆえに、死ぬまで悪さをせずだらだら体で過ごすパターンもあります。 こうした「死因とは関係ないが解剖してみたらたまたま見つかったがん」のことを「ラテントがん」と呼びます。遺体の解剖をしたら80歳以上の遺体のなんと約60%にラテントがんが存在したという報告もあります(※6)。 となると「知らなくてもよかったがんの存在を知ってしまう」ケースもあるため、「PSA検査」を行うことで幸福度を下げてしまうおそれもあります。 しかしこの話は「結果論」でしか語れないのが難しいところで、前立腺がんが転移して命を落とす場合もあります。楽観視できるわけでもありません』、「進行が遅いので「監視する」という選択肢もある珍しいがんです」、「「知らなくてもよかったがんの存在を知ってしまう」ケースもあるため、「PSA検査」を行うことで幸福度を下げてしまうおそれもあります。 しかしこの話は「結果論」でしか語れないのが難しいところで、前立腺がんが転移して命を落とす場合もあります。楽観視できるわけでもありません」、なかなか難しいところだ。
・『PSA値はがん以外でも上がる  またPSA値はがんだけでなく、「前立腺肥大」や「炎症」でも上がることがあります。精密検査をしても前立腺がんではなかった、という「空振り=偽陽性」のケースが比較的多いことも問題視されています。 現段階では明確に「PSA検査が有益だ」という決着がついていません。ただし、比較的最近導入された検査なので、今を後長期的な研究で効果が証明される可能性はあります。 またアメリカ予防医学専門委員会からは「PSA検査が少なくなってから、がんが転移してから見つかるケースが増えた」というネガティブな報告もあります。こういった事情からも日本泌尿器科学会は「PSA検査」を推奨しているのです。 現段階でのPSA検査の結論としては、次のようになります。 ①前立腺がんを「発見」するには確実に役に立つ検査 ②ただし寿命を延ばす影響があるかどうかは確定的な根拠はない ③比較的新しい検査なので、今後の研究で判断が変わるかも』、私も「PSA検査」で高目の数字が出て、「前立腺」に針を刺して組織を取り、これを培養して検査する生検を2回も受けたが、がん細胞は発見できなかった。なお、私の家系では「前立腺がん」で死亡した人はいない筈だ。
・『PSA検査を受けるべき人は?  PSA検査は「過渡期」の段階にあり、議論にはっきり決着がつくのはもう少し先になりそうです。現時点では、「メリットとデメリットを並べて比較して、自分で決める」しかありません。 例えば、「前立腺がんの家系なのでリスクが高いから、定期的に確認しておきたい!」という人はPSA検査を受けるほうがいいでしょう。一方で、「がんが見つかったら絶対に心を病んでしまう。有効性が証明されていないのも不安」という人は検査を受けないほうがいいかもしれません。 個人的には、家系に前立腺がんの人がいる場合は、がんのリスクが上がるのでPSAで確認したほうがいいと考えます。 今後もし「PSA検査が死亡率を下げる」と有効性がはっきり証明されれば状況は変わってきます。いつの日か、すっきり皆さんにPSA検査を勧められる日が来るのを心より願っています。(本原稿は、森勇磨著『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』を編集・抜粋したものです)』、「「PSA検査が死亡率を下げる」と有効性がはっきり証明されれば状況は変わってきます。いつの日か、すっきり皆さんにPSA検査を勧められる日が来るのを心より願っています」、私も検査を信頼して受けられる日が来てほしいと思う。

次に、5月27日付けAERAdot「「ギフテッド」ゆえに無視され、孤立した小中時代 40歳フォトグラファー女性が経験した“高い知能”こその苦難」を紹介しよう。なお、これは医療で取上げたが、教育の方が適切だったかも知れない。
https://dot.asahi.com/dot/2023052600027.html?page=1
・『さまざまな領域で特別な才能を有する「ギフテッド」と呼ばれる若者たち。だがその能力の高さゆえに、周囲からねたまれたり、いじめにあったり、無視されたりするなど、生きづらい人生を送ることも多い。フォトグラファーの立花奈央子さん(40)もそんなギフテッドのひとりで、かつてつらい体験をしたという。彼女はどのような学生時代を過ごし、フォトグラファーとして活躍できるようになったのか。その軌跡を紹介する。<阿部朋美・伊藤和行著『ギフテッドの光と影 知能が高すぎて生きづらい人たち』(朝日新聞出版)より一部抜粋・再編集>』、「ギフテッド」とは興味深そうだ。
・『「やっと光をあててくれた」  金髪の女性が歩いてきた。青い蛍光色のスタジャンを羽織り、スーツケースを引いている。「こんにちは」。明るい声で呼びかけられた。待ち合わせた人だと気づくのが遅れた私に、立花奈央子さん(40)は陽気に笑いかけてきた。 東京・新宿で写真スタジオを営むフォトグラファー。20代後半から、女装する男性を美しく撮ることをライフワークとし、これまで数々の写真展を開いたり、タレントのマネジメントをしたりしてきたという。他にもアイドルプロデュース、SNSブランディングなど、多彩な仕事を手がけている。 私が立花さんを知ったのは2022年春。立花さんが投稿サイト「nоte」に、「ADD(注意欠陥障害)を疑って調べたら、高IQ(ギフテッド)だった話」という文章を載せていたのを読んだ。「ギフテッド」とオープンにしている人は珍しい。インタビューを申し込んだ。 立花さんは「やっと光をあててくれて嬉しい」と言ってくれた。インタビューは2時間を超えた。生い立ちから、家族のこと、社会人になり心を病んだことなど、立花さんは質問の意図を的確に理解し、少々早い口調で、ざっくばらんに話してくれた』、「高IQ」とは凡人には羨ましいが、「社会人になり心を病んだこと」まで悩むことまであるとは再認識した。
・『一度読めばわかる教科書  立花さんは1982年、千葉市で生まれた。千葉市といっても沿岸の都市部ではなく、内陸部の田畑や牧場に囲まれた農村地帯。父は工務店を営み、母が店を手伝った。4人きょうだいの長女で、自宅には父の見習いの青年も住み込みで働いていた。幼児のころから読書とお絵かきが大好きな子どもだったという。) ただ、親や周りの評価は「変わった子」。目に入るものすべてに興味を示すからだ。例えば、活字を読んでいないと落ち着かず、ごはんを食べながら、食品のパッケージに書かれた栄養成分表示や、新聞を隅から隅まで読んでいたという。「全部目に入れてましたね。情報を吸収していないと気が済まない子でした」と立花さん。 小学校は、当時はまだ1クラス40人の大人数学級。立花さんは、授業は毎日、とても退屈に感じていたという。教科書をひととおり読めばだいたい理解できるのに、先生は、同じことを黒板に何度も書いたり説明したりする。「答えがすぐわかる問題をわざわざ出すのはなぜだろうと常々思っていました」。 授業中は、プリントの裏に落書きをして時間をつぶしていたという。鉛筆回しもよくやった。先生からは「態度が悪い」「もっと授業をちゃんと聞きなさい」と叱られたことを覚えている。学年が上がるごとに、退屈な授業や学校生活を、苦痛に感じるようになっていった。 勉強はしなくても、テストはいつも満点をとった。通知表は、体育以外はすべて「◎」。その代わり、同級生とは話が合わなかった。勉強していないのにできるからだろうか、いつの間にか嫌われていたという。 「無視されたり、工作でつくった作品を隠されたりしましたね。遠足の班分けは、いつも自分だけ最後まで残っていました。だんだん、自分が悪いことをしているからいじめられるのだと思うようになっていきました」 ただ、両親は学校に行くのは当たり前だという考えだったため、理由がなければ学校は休めない。「おなかが痛い」「頭が痛い」と言って学校を休むようになった。 中学ではさらに孤立した。同級生が話すアイドルや恋愛話にはまったく興味が湧かなかった。友達がいないと学校生活はつらいことばかりで、無理に話を合わせることもあった。だが、一人で「石に意識はあるのか」というテーマで漫画を描いたり、宇宙や時間についての専門書を読みふけったりすることのほうが楽しかったという。学校に行くよりも、母が買ってくれたパソコンで自身のサイトを立ち上げたり、当時はまっていた漫画「封神演義」のファンの集まりに行ったりするほうがよっぽど楽しかった。 小中学校ではどんな子どもでしたか。私が聞くと、立花さんはしばらく考えた。「みんなの『わからないこと』がわからず、浮いた存在でしたね。自分を否定されたくないからなんとか話を合わせようとはしていました。でも、心の中ではずっと生きづらさを抱えていました」) そんな息苦しさから解放されたいと、高校は「中学の同級生が誰も行かない」という理由で、千葉県内の進学校を選んだ。電車やバスを乗り継ぎ、通学に1時間以上かかる女子校。小中学時代を知る人はおらず、新しい友達はできた。見える世界も広がった。だが、勉強をすることが嫌いになっており、成績は良くなかった。 「ギフテッドといっても、勉強しなければ当然わかりません。周りは受験勉強を一生懸命しているので、どんどん差がつきました」 そもそも、立花さんには大学へ行く選択肢はなかった。父から「大学に行かせる金はない」と言われていたためだ』、「教科書をひととおり読めばだいたい理解できるのに、先生は、同じことを黒板に何度も書いたり説明したりする。「答えがすぐわかる問題をわざわざ出すのはなぜだろうと常々思っていました」、「高校は「中学の同級生が誰も行かない」という理由で、千葉県内の進学校を選んだ。電車やバスを乗り継ぎ、通学に1時間以上かかる女子校。小中学時代を知る人はおらず、新しい友達はできた。見える世界も広がった。だが、勉強をすることが嫌いになっており、成績は良くなかった。 「ギフテッドといっても、勉強しなければ当然わかりません。周りは受験勉強を一生懸命しているので、どんどん差がつきました」 そもそも、立花さんには大学へ行く選択肢はなかった。父から「大学に行かせる金はない」と言われていたためだ」、高校の先生がもっと丁寧に進路指導をしていたら、よかったのだろうが、先生にも「ギフテッド」への理解がないなかでは、まともな指導は出来なかったのかも知れない。
・『心を削り続けた職場  最終学歴が中学の父は根っからの職人気質。また、4人きょうだいで、家計の苦しさから、父は娘を大学へ行かせようとは思っていなかったそうだ。「公務員になれ。自衛隊でもいい」。そんなことを父から言われていた立花さんは、言われるがまま高校3年で就職活動をし、東京都内の区役所に採用された。「自分のやりたいことよりも、相手が求めているものに合わせるような人間になっていました。自分が何をしたいのかは考えなくなっていた」という。 当時を、「泥の中にいるような感覚だった」と表現する立花さん。「他人とうまくいかないのは自分が悪いからだと思っていたんですよね。だから、いつのまにか自分のことを過小評価する人間になっていた」とも言った。 就職して一人暮らしを始めても、自分の居場所は見つけられなかった。 若手職員として、区のスポーツのイベント企画や高齢者福祉などを担当した。「公務員にあるべき服装を無理して考え、地味なスーツやブラウスを嫌々着ていましたよ」と笑う。 選挙の事務の仕事をして臨時の収入が入った時は、どう使おうか考えた末に、胸にタトゥーを彫った。だが、職場でそれが見えて上司や同僚に知られると、白い目で見られた。自分の好きなことをしても否定され、周りの視線や雰囲気に合わせ仕事をする日々が繰り返された。 1年ほど働いた19歳のある時、立花さんは心を病んで休職した。「公務員としてこうあるべきという枠にきちっと入らなければと思えば思うほど、自分の心を削っていっていたのだと思います」。(年齢は2023年3月時点のものです)』、「選挙の事務の仕事をして臨時の収入が入った時は、どう使おうか考えた末に、胸にタトゥーを彫った。だが、職場でそれが見えて上司や同僚に知られると、白い目で見られた」、「1年ほど働いた19歳のある時、立花さんは心を病んで休職した」、やはり「職場」でも孤立していたのだろう。

第三に、この続きを、5月27日付けAERAdot「知能が高すぎる「ギフテッド」で精神を病んだ40歳女性が見つけた希望 自ら望んで「閉鎖病棟」へ入った理由」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023052600028.html?page=1
・『知能が高さゆえに周りから浮いてしまうことも多い「ギフテッド」。【前編】では、何事もできすぎるあまり小中学校ではいじめられ、勉強が嫌いになっていった立花奈央子さん(40)が社会人になるまでを紹介した。高卒で公務員になった立花さんは、いつしか精神を病み「うつ病」になっていた。そこで彼女が取った選択は、自らの意思で精神科病院の閉鎖病棟に入ることだった。<阿部朋美・伊藤和行著『ギフテッドの光と影 知能が高すぎて生きづらい人たち』(朝日新聞出版)より一部抜粋・再編集> 【前編】<「ギフテッド」ゆえに無視され、孤立した小中時代 40歳フォトグラファー女性が経験した“高い知能”こその苦難>より続く』、「自らの意思で精神科病院の閉鎖病棟に入る」、何故そう考えたのだろう。
・『自ら望んで閉鎖病棟に3カ月間  躁状態の時は、ストレス解消や現実逃避のため、デパートで好きな服を大量に買った。しかし、家に帰ると、いつのまにか買い物をした記憶がなくなっている。 一方、気持ちが沈んでいる時は、「死にたい。トラックが突っ込んできてほしい」と願う。精神科に行った。「うつ病」「解離性遁走」と診断された。突然どこか遠くへ行ってしまい、気がつくと自分がなぜそこにいるのかわからないことが続いた。しまいには知らない場所で警察に保護されていた。 「このままではだめになる。徹底的に治さなければ」と、精神科病院の閉鎖病棟に自ら望んで入った。約3カ月間すごし、外で生きられない患者たちの姿を目の当たりにした。外部から遮断され、あらゆる自分の時間が、他人によって管理されている中には、これ以上いたくないと思った。 今変わらなければこのまま人生が終わると思った。この閉鎖病棟での3カ月間で、自分の気持ちに向き合おうと決めた。 自分が本当に好きなことは何か、自分にとって大事な人は誰か、本来の自分とは何者か。突き詰めて考えた。 哲学や宇宙など、自分が興味のある話を、とことん人と語り合える時間が最も楽しい。そんな気の合う人たちとの時間を大切にしたい。自分の気持ちを抑えつけるのはやめようと決めた。) まず、区役所をやめた。自分を偽り、親が望む人間になろうという思いも捨て、退院後に身を寄せていた実家も出た。渋谷駅のハチ公前で、ストリートアートをしていた人たちに話しかけた。自分も一緒に描いたり、路上ミュージシャンと友達になったり。どんどん周りに自分の好きな人たちが増えていった。すると、ライターや撮影、ヘアメイクなどの仕事がフリーでできるようになっていった』、「約3カ月間すごし、外で生きられない患者たちの姿を目の当たりにした。外部から遮断され、あらゆる自分の時間が、他人によって管理されている中には、これ以上いたくないと思った。 今変わらなければこのまま人生が終わると思った。この閉鎖病棟での3カ月間で、自分の気持ちに向き合おうと決めた。 自分が本当に好きなことは何か、自分にとって大事な人は誰か、本来の自分とは何者か。突き詰めて考えた。 哲学や宇宙など、自分が興味のある話を、とことん人と語り合える時間が最も楽しい。そんな気の合う人たちとの時間を大切にしたい。自分の気持ちを抑えつけるのはやめようと決めた」、「入院期間」は、これまでの偽りの自分を見直す、いいきっかけになったようだ。
・『ようやく解けた「本当の私」  実家の父から久しぶりに電話がかかってきたのは、2019年。36歳になっていた。1歳下の弟が、知能検査を受け、発達障害だと診断されたとのことだった。立花さん自身も、自分が発達障害やADD(注意欠陥障害)かもしれないと思っていたため、一度検査を受けてみることにした。 「WAIS-IV」という知能検査を受けた。その結果、全般的なIQ(知能指数)が平均を大きく超える137だった。また、同検査の四つの指標のうち、ことばの理解力や推理力、思考力を示す「言語理解」はIQ130、目で見た情報から形を把握し推理する「知覚推理」はIQ128、情報を一時的に記憶する力の「ワーキングメモリー」がIQ131、作業の速度を測る「処理速度」がIQ130と、指標のすべてが平均を超える高い数値となっていた。 驚いた。臨床心理士からは「発達障害の可能性はほぼない。単に、知能が世の中の人より高いだけの健常者ですね」と言われた。立花さんはそれまで、自分の生きづらさは発達障害のせいだ、となんとなく思っていたが、それは間違っていたことがはっきりした。この時、初めて自分の特性が何なのかを知りたい、と思った。 結果を知人に言うと、「ギフテッドじゃん」と言われた。初めて聞く言葉だった。「ギフテッド」に関する専門書を片っ端から読んでみた。 特徴として書かれていた「情報を素早く理解」「いつも何かにのめり込み徹底的に調べる」という良さだけでなく、「注意散漫に見える」「同級生との関係づくりが下手」といった弱点までが、いちいち自分に当てはまった。「これ私のことだ」と思うと、胸がすっとした。 普通と違う私。他人に合わせ、ずっと生きづらさを抱えてきた私。子どものころから、本当の自分は何なのかと思ってきた疑問が、ようやく解けた気がした。「パズルのピースがはまるような感覚だった」という。 立花さんは言う。「私は、自分のことを『天才』とは思いません。ただIQが高いという個性があるのだということがわかりました。そのせいで、これまで息苦しさや孤独を抱えていたのだと理解できて本当に良かったです」。 そしてこう思った。きっと、同じような仲間がいるのではないか。自分の特性を理解してくれたり共感してくれたりする仲間ともっと話がしたい、と。もし、子どもの時から知っていたら? 「MENSA」という国際組織を知人が教えてくれた。IQの上位2%の人だけが入会でき、日本支部があるという。さっそく入会した。 MENSAは、1946年にイギリスで創設された国際組織だ。世界100カ国以上に13万人以上の会員がいるとされる。日本支部には約4700人の会員がおり、定期的に開かれるミーティングで話し合ったり、趣味や考えが合う会員同士がオフ会などで交流したりしているという。入会するには、独自の入会テストを受けて一定のスコアを出すか、知能検査の結果を示さなければならない。 立花さんは、MENSAで出会った人たちと、「性とは何か」「既成の価値観に縛られていないか」といった深い話をすることが楽しい。人のつながりが増え、好奇心があふれ、知的欲求が満たされるという。 ようやく好きなことを仕事にし、仲間にも巡り会えたという立花さん。ただそれはたくさんの回り道をして得たものだった。「もっと早くに知能検査を受けておけばよかったという後悔はないか」と聞くと、立花さんは「後悔はない」とはっきり言った。過去のつらい時期があったからこそ、充実した今があると思っているから、と。 ただ、どうしても考えてしまうことは、あるという。「もし、子どものころに自分の特性を知り、それを理解した教育や子育てをしてもらっていたら、あんなつらい経験をせず、もっと様々なことを学べたのではないか」と。いま後悔していないと言えるのは、浮きこぼれていてもはい上がることができたからではないか。自分と同じように生きづらさを抱えたまま悩んでいる人が、今もきっといるはずだ』、「2019年。36歳になっていた・・・「WAIS-IV」という知能検査を受けた。その結果、全般的なIQ(知能指数)が平均を大きく超える137だった」、「結果を知人に言うと、「ギフテッドじゃん」と言われた。初めて聞く言葉だった。「ギフテッド」に関する専門書を片っ端から読んでみた。 特徴として書かれていた「情報を素早く理解」「いつも何かにのめり込み徹底的に調べる」という良さだけでなく、「注意散漫に見える」「同級生との関係づくりが下手」といった弱点までが、いちいち自分に当てはまった。「これ私のことだ」と思うと、胸がすっとした」、「「MENSA」という国際組織・・・IQの上位2%の人だけが入会でき、日本支部があるという。さっそく入会した・・・日本支部には約4700人の会員がおり、定期的に開かれるミーティングで話し合ったり、趣味や考えが合う会員同士がオフ会などで交流したりしているという。入会するには、独自の入会テストを受けて一定のスコアを出すか、知能検査の結果を示さなければならない。 立花さんは、MENSAで出会った人たちと、「性とは何か」「既成の価値観に縛られていないか」といった深い話をすることが楽しい。人のつながりが増え、好奇心があふれ、知的欲求が満たされるという。 ようやく好きなことを仕事にし、仲間にも巡り会えたという立花さん。ただそれはたくさんの回り道をして得たものだった」、ずいぶん「たくさんの回り道」をしたものだ。
・『ゴールデン街の会員制バーで  そんな思いを強くした立花さんが始めたのが、「サロン・ド・ギフテッド」だ。19年ごろから週1回、フォトグラファーの仕事のかたわら、東京・歌舞伎町の新宿ゴールデン街にあるバーで開いている。 22年12月中旬、私はそのバーを訪れた。毎週火曜日、オーナーから店を間借りした立花さんが、カウンターに立っている。 重い木製のドアを開けると、立花さんの「いらっしゃーい」という明るい声が聞こえてきた。カウンター席が6席だけのこぢんまりとした店。すでに5人の先客が、立花さんが出すビールやハイボールを飲みながら、会話を楽しんでいた。 サロンは、IQ130以上の条件がある会員制。特別に参加させてもらった私の隣に座っていたのは、この日初めて来たという東京大学に通う女性だった。理路整然とした話しっぷり。ただ子どものころは学校になじめず「つらかった」と吐露した。「だって、先生は私のこと全然理解してくれなかったから」と女性。今はギフテッドの子どもやその保護者を支援する団体に入って活動をしているという。 IQが150ありながら、会社の上司とコミュニケーションがうまくとれず退職したという男性もいた。話すスピードが速すぎて変人と思われないかという不安があり、自分のことを知らない人とは話をするのが怖くなったという。他にも、地下アイドルを「推す」中年男性や、マクドナルドで働く母親など、個性豊かな人たちが胸の内を語り合っていた。 立花さん自身にとっても、他人は他人、自分は自分と実感できる場所だという』、「サロンは、IQ130以上の条件がある会員制」、前述の「MENSA」という国際組織・・・日本支部には約4700人の会員」、高度な「IQ」を持ちながら、生きづらさを抱えた人がかなり多いようだ。「サロン」や「MENSA」に属してないで、苦しんでいる人々も多いのだろうが、これは有為な人材を埋もれさせた状態で、もったいない限りだ。もっと小中学校の先生でも「ギフテッド」について知り、親にアドバイスできるようにした方がいいのではなかろうか。
・『「ほっといてほしい」  さて、立花さんのトークを収録した朝日新聞ポッドキャストは、22年12月上旬に配信された。「同級生と話が合わない」「なじめたことは一度もない」「授業はクソつまらない」。そんな立花さんの率直な語りぶりが、多くのリスナーの好評を得た。 収録の終盤、司会者が立花さんに「自分の経験を踏まえ、どんな世の中になればいいと思うか」と聞いた。 「ほっといてほしいですね」 即答だった。立花さんが生きやすさを感じたタイミングは、高校生になって行動範囲が広がったり、社会人になって使えるお金が増えたりするなど、自分で選択できることが増えた時だったという。 「子どものころは大人の見守りは当然必要だと思いますけど、普通と違うからと枠にはめようとしたり、周りの子どもと比較したりするのは、やめてほしいですね。ましてや、ギフテッドだから才能をのばさないといけないとか、才能を見過ごしてはもったいない、といった考えは大きなお世話です。その人が、その人らしく生きられるような社会になることが大事なのだと思います」 立花さんのそんな言葉が、多くの人に届くといいと思った。(年齢は2023年3月時点のものです)』、「ギフテッドだから才能をのばさないといけないとか、才能を見過ごしてはもったいない、といった考えは大きなお世話です。その人が、その人らしく生きられるような社会になることが大事なのだと思います」、私の「もっと小中学校の先生でも「ギフテッド」について知り、親にアドバイスできるようにした方がいいのではなかろうか」、は「大きなお世話」かも知れないが、現状よりはましなのではないだろうか。
タグ:「高校は「中学の同級生が誰も行かない」という理由で、千葉県内の進学校を選んだ。電車やバスを乗り継ぎ、通学に1時間以上かかる女子校。小中学時代を知る人はおらず、新しい友達はできた。見える世界も広がった。だが、勉強をすることが嫌いになっており、成績は良くなかった。 「ギフテッドといっても、勉強しなければ当然わかりません。周りは受験勉強を一生懸命しているので、どんどん差がつきました」 そもそも、立花さんには大学へ行く選択肢はなかった。父から「大学に行かせる金はない」と言われていたためだ」、高校の先生がもっと丁寧 「教科書をひととおり読めばだいたい理解できるのに、先生は、同じことを黒板に何度も書いたり説明したりする。「答えがすぐわかる問題をわざわざ出すのはなぜだろうと常々思っていました」、 「高IQ」とは凡人には羨ましいが、「社会人になり心を病んだこと」まで悩むことまであるとは再認識した。 (その38)(【男性注意】前立腺がんが急増している「意外すぎる理由」、「ギフテッド」ゆえに無視され 孤立した小中時代 40歳フォトグラファー女性が経験した“高い知能”こその苦難、知能が高すぎる「ギフテッド」で精神を病んだ40歳女性が見つけた希望 自ら望んで「閉鎖病棟」へ入った理由) 医療問題 「ギフテッド」とは興味深そうだ。 阿部朋美・伊藤和行著『ギフテッドの光と影 知能が高すぎて生きづらい人たち』(朝日新聞出版) AERAdot「「ギフテッド」ゆえに無視され、孤立した小中時代 40歳フォトグラファー女性が経験した“高い知能”こその苦難」 「「PSA検査が死亡率を下げる」と有効性がはっきり証明されれば状況は変わってきます。いつの日か、すっきり皆さんにPSA検査を勧められる日が来るのを心より願っています」、私も検査を信頼して受けられる日が来てほしいと思う。 私も「PSA検査」で高目の数字が出て、「前立腺」に針を刺して組織を取り、これを培養して検査する生検を2回も受けたが、がん細胞は発見できなかった。なお、私の家系では「前立腺がん」で死亡した人はいない筈だ。 「進行が遅いので「監視する」という選択肢もある珍しいがんです」、「「知らなくてもよかったがんの存在を知ってしまう」ケースもあるため、「PSA検査」を行うことで幸福度を下げてしまうおそれもあります。 しかしこの話は「結果論」でしか語れないのが難しいところで、前立腺がんが転移して命を落とす場合もあります。楽観視できるわけでもありません」、なかなか難しいところだ。 「日本の厚生労働省は「推奨しない」という指針を出しています・・・しかし一方で、日本泌尿器科学会は「PSA検査は絶対に行ったほうがいい」と主張しており、意見が真っ二つに分かれてしまっている」、「PSAの問題は日本だけでなく世界的に大激論が行われています。 しかし、なぜ発見数が増えているにもかかわらず、死亡率が下がらないデータが存在するのでしょうか?」、なるほど。 「前立腺がんが急増している原因としては・・・最も関連があるのが「PSA検査の普及」です」、「PSA検査の普及」で「前立腺がんが急増」、とはどういうことだろう。 『40歳からの予防医学 医者が教える「病気にならない知識と習慣74」』 森勇磨氏による「【男性注意】前立腺がんが急増している「意外すぎる理由」」 ダイヤモンド・オンライン 「選挙の事務の仕事をして臨時の収入が入った時は、どう使おうか考えた末に、胸にタトゥーを彫った。だが、職場でそれが見えて上司や同僚に知られると、白い目で見られた」、「1年ほど働いた19歳のある時、立花さんは心を病んで休職した」、やはり「職場」でも孤立していたのだろう。 AERAdot「知能が高すぎる「ギフテッド」で精神を病んだ40歳女性が見つけた希望 自ら望んで「閉鎖病棟」へ入った理由」 「自らの意思で精神科病院の閉鎖病棟に入る」、何故そう考えたのだろう。 「入院期間」は、これまでの偽りの自分を見直す、いいきっかけになったようだ。 「約3カ月間すごし、外で生きられない患者たちの姿を目の当たりにした。外部から遮断され、あらゆる自分の時間が、他人によって管理されている中には、これ以上いたくないと思った。 今変わらなければこのまま人生が終わると思った。この閉鎖病棟での3カ月間で、自分の気持ちに向き合おうと決めた。 自分が本当に好きなことは何か、自分にとって大事な人は誰か、本来の自分とは何者か。突き詰めて考えた。 哲学や宇宙など、自分が興味のある話を、とことん人と語り合える時間が最も楽しい。そんな気の合う人たちとの時間を大切にしたい。自分の 気持ちを抑えつけるのはやめようと決めた」、 「2019年。36歳になっていた・・・「WAIS-IV」という知能検査を受けた。その結果、全般的なIQ(知能指数)が平均を大きく超える137だった」、「結果を知人に言うと、「ギフテッドじゃん」と言われた。初めて聞く言葉だった。「ギフテッド」に関する専門書を片っ端から読んでみた。 特徴として書かれていた「情報を素早く理解」「いつも何かにのめり込み徹底的に調べる」という良さだけでなく、「注意散漫に見える」「同級生との関係づくりが下手」といった弱点までが、いちいち自分に当てはまった。 「これ私のことだ」と思うと、胸がすっとした」、「「MENSA」という国際組織・・・IQの上位2%の人だけが入会でき、日本支部があるという。さっそく入会した・・・日本支部には約4700人の会員がおり、定期的に開かれるミーティングで話し合ったり、趣味や考えが合う会員同士がオフ会などで交流したりしているという。入会するには、独自の入会テストを受けて一定のスコアを出すか、知能検査の結果を示さなければならない。 立花さんは、MENSAで出会った人たちと、「性とは何か」「既成の価値観に縛られていないか」といった深い話をすることが楽しい。人のつながりが増え、好奇心があふれ、知的欲求が満たされるという。 ようやく好きなことを仕事にし、仲間にも巡り会えたという立花さん。ただそれはたくさんの回り道をして得たものだった」、ずいぶん「たくさんの回り道」をしたものだ。 「サロンは、IQ130以上の条件がある会員制」、前述の「MENSA」という国際組織・・・日本支部には約4700人の会員」、高度な「IQ」を持ちながら、生きづらさを抱えた人がかなり多いようだ。「サロン」や「MENSA」に属してないで、苦しんでいる人々も多いのだろうが、これは有為な人材を埋もれさせた状態で、もったいない限りだ。もっと小中学校の先生でも「ギフテッド」について知り、親にアドバイスできるようにした方がいいのではなかろうか。 「ギフテッドだから才能をのばさないといけないとか、才能を見過ごしてはもったいない、といった考えは大きなお世話です。その人が、その人らしく生きられるような社会になることが大事なのだと思います」、私の「もっと小中学校の先生でも「ギフテッド」について知り、親にアドバイスできるようにした方がいいのではなかろうか」、は「大きなお世話」かも知れないが、現状よりはましなのではないだろうか。
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宗教(その10)(【橋爪大三郎・特別講義】日本人が知らない 中国を動かす「儒教の本質」とは?、「下関は統一教会の聖地」論争の不毛 信者も地元民も寝耳に水だったワケ、「安倍晋三元首相」暗殺の闇 なぜ祖父・岸信介は「統一教会教祖」の釈放嘆願書をレーガン大統領に送ったのか) [社会]

宗教(その10)については、本年4月19日に取上げた。今日は、(【橋爪大三郎・特別講義】日本人が知らない 中国を動かす「儒教の本質」とは?、「下関は統一教会の聖地」論争の不毛 信者も地元民も寝耳に水だったワケ、「安倍晋三元首相」暗殺の闇 なぜ祖父・岸信介は「統一教会教祖」の釈放嘆願書をレーガン大統領に送ったのか)である。

先ずは、本年4月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した宗教社会学者で東京工業大学名誉教授の橋爪大三郎氏による「【橋爪大三郎・特別講義】日本人が知らない、中国を動かす「儒教の本質」とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321624
・『「死」とは何か。死はかならず、生きている途中にやって来る。それなのに、死について考えることは「やり残した夏休みの宿題」みたいになっている。死が、自分のなかではっきりかたちになっていない。私たちの多くは、そんなふうにして生きている。しかし、世界の大宗教、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教などの一神教はもちろん、仏教、神道、儒教、ヒンドゥー教など、それぞれの宗教は「人間は死んだらどうなるか」についてしっかりした考え方をもっている。 現代の知の達人であり、宗教社会学の第一人者である橋爪大三郎氏(大学院大学至善館教授、東京工業大学名誉教授)が、各宗教の「死」についての考え方を、鮮やかに説明する『死の講義』は、「この本に、はまってしまった。私たちは『死』を避けることができない。この本を読んで『死後の世界』を学んでおけば、いざというときに相当落ち着けるだろう」(西成活裕氏・東京大学教授)と評されている。今回は、著者による特別講義をお届けする』、「「死について考えることは「やり残した夏休みの宿題」みたいになっている」、「やり残した夏休みの宿題」とは言い得て妙だ。「各宗教の「死」についての考え方を、鮮やかに説明する『死の講義』、とは興味深そうだ。
・『人が人を支配するのは正しい  中国と言えば、儒教。儒教(儒学)は一神教やヒンドゥー教とまったく違った考え方なので、これは宗教なのか、と思うほどです。でも、宗教だと言ってよい。 儒教の根底にあるのは、つぎの考え方です。 [儒教の原理] 人が人を支配するのは、正しい。 人が人を支配することを、政治といいます。政治はどの社会にもある。どの社会でも正当化されているだろう。 でも中国文明では、政治の地位が高い。無条件で正当だと考える。政治がすべてを解決すると考える点に、特徴があります。 これを、一神教と比較してみましょう。 一神教の原理。それは、「神が人を支配するのは、正しい」です。これは、無条件で正しい。ならば、人が人を支配するのは、無条件で正しくはない。 それが正しいのは、「神がそれを命じた場合」に限られる。 そこで西欧では、地上で神の代理をつとめる教会が、王や貴族など統治者より優位に立っていました。教会が認めないと、王は正しい統治者でない。政教分離です。 政治は相対化される、ということです。 中国には、天の考え方があります。天は、神と違って、地上にその代理人がいない。教会がない。中国の統治者(皇帝)は、天命を受けて政治をしている、と主張します。 その証拠があるかというと、特にない。実力で、皇帝になれてしまうということです。儒教はそれを認めます。つまり、皇帝が、天命を受けて、人を支配するのは正しい』、「一神教の原理。それは、「神が人を支配するのは、正しい」です。これは、無条件で正しい。ならば、人が人を支配するのは、無条件で正しくはない。 それが正しいのは、「神がそれを命じた場合」に限られる。 そこで西欧では、地上で神の代理をつとめる教会が、王や貴族など統治者より優位に立っていました。教会が認めないと、王は正しい統治者でない。政教分離です。 政治は相対化される」、「中国には、天の考え方があります。天は、神と違って、地上にその代理人がいない。教会がない。中国の統治者(皇帝)は、天命を受けて政治をしている、と主張します。 その証拠があるかというと、特にない。実力で、皇帝になれてしまうということです。儒教はそれを認めます。つまり、皇帝が、天命を受けて、人を支配するのは正しい」、「儒教」など中国流の考え方は、「統治者」には好都合だ。
・『儒教は、社会秩序をつくり出す  儒教の役割は、中国に、社会秩序をつくり出すことです。 社会がばらばらにならないように、まず、政府が必要。政府は、権力を独占し、税金を集め、官僚が統治を行ない、軍隊が平和を維持する。この全体が政治ですが、これが正しい。 中国全体では、皇帝が1番、皇太子が2番、…と地方の役所の末端まで順番がついていて、上の命令に従う。忠です。 忠とは、政治的リーダーに従うこと。政治の秩序は、経済よりも文化芸術よりも宗教よりも上です。 つぎに、社会の末端では、親族の秩序をつくり出します。儒教は、親族の年長者、とくに親に従うことを要求する。孝です。 忠は官僚だけの義務ですが、孝はすべての中国人の義務。長幼の序は、地域社会に秩序をうみ出し、社会の末端を安定させます』、「忠は官僚だけの義務ですが、孝はすべての中国人の義務。長幼の序は、地域社会に秩序をうみ出し、社会の末端を安定させます」、なるほど。
・『儒教のメカニズム  儒教は、誰が誰に従えばいいのかという順序(序列)を配当するメカニズムです。 政治の領域では、人びとは能力によって抜擢される。皇帝だけは、世襲で決まる。そして、統治階級の人びとは順番がついて、政治秩序が安定します。 親族の領域では、人びとは年齢によって順番がつく。中国は父系社会なので、父系の親族集団をつくります。それが大きくまとまって、安定した秩序をつくり出す。 この秩序は永遠の昔から決まっていて、正しいものなので、これに従うのが人間の道である。そう、儒教の経典に書いてあります。 道徳と宗教と政治が一体化している。それ以外に人間の正しい生き方はない、という考え方です。 以上をまとめると、忠:政治的リーダー(とくに皇帝)に服従する  孝:親族の年長者(とくに親)に服従する  孝は、忠よりも絶対的。親に対する服従は無条件なのです。中国の農業は家族経営なので、孝を強調することで、経営基盤が安定する。税収が増え、政府にとってもメリットがあるのです』、「この秩序は永遠の昔から決まっていて、正しいものなので、これに従うのが人間の道である・・・道徳と宗教と政治が一体化している。それ以外に人間の正しい生き方はない、という考え方です。 以上をまとめると、忠:政治的リーダー(とくに皇帝)に服従する  孝:親族の年長者(とくに親)に服従する  孝は、忠よりも絶対的。親に対する服従は無条件なのです。中国の農業は家族経営なので、孝を強調することで、経営基盤が安定する。税収が増え、政府にとってもメリットがあるのです」、「為政者」には本当に好都合な考え方だ。
・『現在の中国社会と儒教  この儒教の考え方が現代化して広がったものが現代の中国共産党です。中央の官僚機構は総書記が1番で、国務院総理が2番で、政治局常務委員のつぎは政治局員で、中央委員で、…と全部順番が決まっています。 ただし、中国共産党はもう、儒教の古典を読みません。代わりに党の重要文献を読む。そして党の重要文献は、ころころ入れ替わる。はじめは毛沢東選集で、つぎは鄧小平理論で、江沢民や胡錦涛の文献があって、いまは習近平思想です。 学習会に参加させられ、試験もあります。中国共産党では、指導者が変わると、文献が変わる。状況や政策に合わせて、頭の中身をつぎつぎ上書きして行かないといけない。儒教っぽいスタイルだが儒教ではない、権威主義的な独裁政権ができあがっています。 ※本原稿は、2022年11月に大学院大学至善館で行なった講演(https://shizenkan.ac.jp/event/religions_oc2023/)をもとに、再編集したものです。 (橋爪大三郎氏の略歴はリンク先参照)』、「儒教の考え方が現代化して広がったものが現代の中国共産党です」、「儒教っぽいスタイルだが儒教ではない、権威主義的な独裁政権ができあがっています」、確かにその通りだ。

次に、4月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「「下関は統一教会の聖地」論争の不毛、信者も地元民も寝耳に水だったワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/322187
・『「下関は聖地」発言に反感持つ人が出ても致し方ない?  「謝罪を表明し、次の国政選挙までSNSのトップに掲げておいて反省すべき」 「読解力がないことが証明されたな」「知ったかするな、下関の恥さらしめ」 先ごろ衆議院・山口4区補欠選挙に出馬したジャーナリスト・有田芳生氏の「下関は旧統一教会の聖地」という発言を批判した芸能人らがSNSで叩かれている。 事の経緯を振り返ろう。 今回の騒動の発端は、有田氏が選挙演説中に「下関って統一教会(世界平和統一家庭連合=旧統一教会)の聖地なんです」と発言し、それがSNS上で切り取られて炎上したことだ。有田氏本人もツイートされているが、この発言は2年前の旧統一教会幹部の発言に基づいている。教祖・文鮮明氏が日本に入国して80周年を記念した教団の式典が21年3月に開かれ、韓国から来日した方相逸・神日本大陸会長が講演の最後にこのように発言をした。 「山口の下関は聖地と同等の場所です」 これは信者向けの新聞でも報じられている「事実」だ。そのため有田氏の「聖地発言」を「印象操作」「根拠がない」などと批判したお笑い芸人・田村淳さんや、タレントの国生さゆりさんが逆に「事実をねじ曲げている」「勉強不足」などと「正義の鉄槌」を下されているというわけだ。 しかも、「軽蔑する」とツイートした国生さんにいたっては、有田氏のもとに「統一教会裁判の弁護士」から名誉毀損に認定されるので訴訟を検討すべきというメールがきたというから、炎上どころでは済まないかもしれない。 さて、こういう騒動を聞くと、善良な日本人の皆さんの中には、「反日カルト」と腐敗した自民党を叩きのめそうと日々頑張ってくださっているジャーナリスト(有田氏)の足を引っ張るようなことをして恥ずかしくないのか――などと、芸能人に憤りを感じるという方も多いことだろう。 ただ、田村さんや国生さんの肩を持つわけではないが、彼らのように有田氏の「聖地発言」に対して反感を抱いたり、イチャモンをつけたりしてしまう人が一定数現れてしまうのも、しょうがないのではないかという気もしている。 ひとくちに「聖地」と聞いても、そこからイメージすることは十人十色だからだ』、「有田氏の「聖地発言」」、自体が説明不足で誤解を生み易いのも事実だ。
・『「聖地」という言葉の重みは個々で異なることが論争の原因  「聖地」とはどんなものをイメージするだろうか。 ある人はメッカのように、信者たちが毎年ある時期になると、大挙して巡礼に押し寄せる光景を思い描く。信者が誰しも憧れる地で、教団としてもそこを拠点に勢力を拡大してきた事実もある。当然、周辺住民たちも「ここはそういう場所」という認識を持つ、という「自他共に認める聖地」である。 一方で、もっとゆるい「聖地」を連想する人もいるはずだ。その団体から「神」として崇められるような人が、若い時に住んでいたとか、悟りを開いたなどという“ゆかりの地”的なスポットだ。信者は教祖のことを愛してやまないので、その足跡はすべて聖なるものになる。少しでも教祖を感じたくて個人的に現地に赴く。これは人気マンガやアニメの舞台をファンが訪ね歩く「聖地巡礼」と似た感覚だ。 このように「聖地」イメージに、人によって大きな開きがあることが今回のののしり合いの原因ではないか、と個人的には思っている。 どういうことか、他の宗教を例に説明しよう。例えば、幸福の科学では故・大川隆法総裁が生まれた四国・徳島が「聖地」となっており、教団としても以下のように巡礼を呼びかけている。 <四国・徳島には、聖地・四国正心館のほかに、聖地・川島特別支部や聖地・四国本部精舎、聖地エル・カンターレ生誕館があります。これらの地を巡礼し、主エル・カンターレの臥竜の時代に思いを馳せて精進の決意を新たにしましょう>(幸福の科学ホームページ) こういう施設があって信者が押し寄せることは当然、周辺住民なら知っている。だから、もし有田氏がこの地から立候補して、「徳島は幸福の科学の聖地」と叫んだところで、「まあ、そうですけどね」という感じで、あまりいい気分はしないが住民も批判しないだろう。 だが、今回、有田氏の「下関は旧統一教会の聖地」「この土地から自民党との癒着が全国に広がっていった」と叫ぶと、一部の下関市民や下関出身の田村さんはカチンときて批判をした。 なぜかというと、彼らの中で下関は「そういう類の聖地」ではないと思っているからだ』、前述の「「聖地発言」」、自体が説明不足で誤解を生み易い」、ことのためだ。
・『旧統一教会サイドも「聖地認定」していない  「それはそっちの知識不足が悪い!鈴木エイトさんや有田さんの本を読んでしっかり勉強しておけ」という怒声が飛んできそうだが、旧統一教会にそこまで関心のない地元の方が、そういう認識になるのもしょうがない部分もある。 実は有田氏が指摘した「下関は旧統一教会の聖地」という話は、当の信者たちの間でもそれほど有名な話ではない。筆者も知り合いの信者何人かに確認したが、「そうなんですか?」「はじめて聞きました」と首を傾げていた。すっとぼけているようでもなく、心から素直に驚いていた。 なぜこういうリアクションになるかというと、教団としてのオフィシャルな「聖地」は、文鮮明氏が1965年に来日した際に定めた、東京、名古屋、大阪、高松、広島、福岡、札幌、仙台の8カ所だからだ。だから、幸福の科学のように教団として「下関に行って巡礼しましょう」なんて呼びかけもしていない。 教祖も教団も「聖地認定」していない。信者が大挙して押し寄せて“下関詣”もしていない。 だから、下関市民からすれば今回の有田氏の発言は寝耳に水だった。その中で、「何をワケのわからないデマを流しているんだ!」といきり立ってしまう人が現れるのは、サヨクやウヨクだというイデオロギー関係なくしょうがないのではないか。 だが、一方で、有田氏らのように旧統一教会を追いかけてきたジャーナリストや弁護士センセイたちの間では、下関が旧統一教会の聖地だというのは、「議論するのも馬鹿らしい常識」「基礎知識」でもある。冒頭で紹介したように、教団幹部が言及しているという「事実」もある。 なぜこんな奇妙な現象が起きるのか』、「有田氏らのように旧統一教会を追いかけてきたジャーナリストや弁護士センセイたちの間では、下関が旧統一教会の聖地だというのは、「議論するのも馬鹿らしい常識」「基礎知識」でもある」、専門家特有の思い上がり的な色彩もあるようだ。
・『ゆかりがあれば「聖地」ってことに…早稲田大学も「聖地」?  実はこの謎を読み解く鍵は、「早稲田大学」にある。何を隠そう、この大学の周辺も下関と同様に、「旧統一教会の聖地」だからだ。 『早稲田大の周辺、なぜ旧統一教会の「聖地」に?住民から困惑の声も(毎日新聞22年12月2日)』 この記事は、早稲田大周辺で文鮮明教祖のゆかりの地を巡礼する世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者たちの映像がYouTubeで流れていることを報じたものだ。 先ほど紹介したように、文鮮明氏は下関から日本に入った。そして、41年から43年にかけて早稲田大学付属早稲田高等工学校に留学していた。こういう経緯があるので、信者からすれば、早稲田大学周辺というのは、「真のお父様ゆかりの地」という認識だ。その中で、熱心な信者はツアーのように、その歴史的足跡をたどっているのだ。 もちろん、教団はこのような「聖地巡礼」を信者に対して、オフィシャルに呼びかけているわけではない。しかし、毎日新聞がカギカッコ付きで「聖地」と報じているように、信者が聖なる場所だと考えているこことも事実だ。要するに、「みなし聖地」というか「准聖地」のような扱いなのだ。 筆者は、下関もこれと同じだと考えている。それを示すのが、有田氏も引用している方相逸・神日本大陸会長の「山口の下関は聖地と同等の場所です」という発言だ。下関が紛れもない聖地ならば、「下関は聖地です」とスパッと断言すればいい。聞いているのはみな信者なのだから、誰かに気を使って、言葉を濁す理由もない。 しかし、方相逸氏は「聖地と同等の場所です」と言っている。つまり、講演の最後で会場となった下関を持ち上げるというか、「聖地ではないけれど、聖地みたいにありがたい場所じゃないですか、ねえ、みなさん」とリップサービスをしたのではないか。 つまり、下関は確かに「旧統一教会の聖地」ではあるのだが、一般の人が思い描くような信者がわんさか訪れて、信仰を強めていくというような「聖地」ではなく、「ゆかりの地」であって、一般人の我々が理解できるニュアンスとしては、先ほど申し上げたようなアニメやマンガの舞台をファンたちが「聖地」と呼ぶような感覚ではないのか。 「はい、出ました!名誉毀損!有田センセイ、このバカをさっさと訴えてください」という怒りの声が聞こえてきそうだが、筆者は「聖地」という言葉の「受け取る側の認識ギャップ」を指摘しただけで、有田氏や旧統一教会の専門家の皆さんのおっしゃることを批判も否定もするつもりは毛頭ない。 しかも、「聖地」がどうかはさておき、有田氏が主張するように、旧統一教会にとって「下関」という土地が政治的に重要な場所であることは間違いない。有田氏らが選挙戦で訴えたように、安倍晋三元首相と、父・晋太郎氏の政治的地盤だからだ』、「下関は確かに「旧統一教会の聖地」ではあるのだが、一般の人が思い描くような信者がわんさか訪れて、信仰を強めていくというような「聖地」ではなく、「ゆかりの地」であって、一般人の我々が理解できるニュアンスとしては、先ほど申し上げたようなアニメやマンガの舞台をファンたちが「聖地」と呼ぶような感覚ではないのか」、なるほど。
・『選挙で強めの言葉は理解できるが、「法的措置」はいかがなものか  文鮮明氏の反共思想に理解を示したことから距離が縮まったと言われる、安倍元首相の祖父、岸信介元首相の地盤は、旧山口2区で主に山口市が拠点だ。また、安倍家ももともとは長門市が本家で、この地で江戸時代から続く大庄屋だった。つまり、岸家も安倍家も、もともと下関とはそこまで強い繋がりがあったわけではないのだ。 それが、安倍晋太郎氏が1958年に旧山口1区から出馬する際に、下関にも事務所が開設される。そして、その翌年59年、既に韓国で活動をしていた旧統一教会が日本に初進出を果たした。 下関から日本に入った文鮮明氏の宗教が日本に入ってきたのとほぼ同じタイミングで、文氏と信頼関係を結んだ岸信介氏の娘婿が下関に事務所を開設する――。 反自民で政治家をやっていて安倍王国で票を得ようと思ったら、この「奇妙な一致」にフォーカスを当ててそこを叩かないわけがない。「選挙」というものはきれいごとだけでは勝てない。時にライバルを引きずり下ろすくらいのことをしなければいけないものだ。その流れで「下関は旧統一教会の聖地」という強めのワードが飛び出してしまうのも、よく理解できる。 つまり、有田氏の今回の「聖地」発言は、一部の人には誤解を招いてしまったが、反自民という「政治運動」をされていることを踏まえれば、出るべくして出るような類の発言なのだ。 そういう意味では、有田氏の今回の発言は、野党政治家としては妥当だとは思う。しかし、発言を批判されて、すぐに法的措置みたいなのをチラつかせたのは、結果としてあまりイメージがよろしくなかったのでは、と個人的には感じる。 特に立憲民主党は先ごろも、小西洋之衆議員議員らが国会での発言を切り取られたとしてメディアに法的措置を示唆した、と話題になった。政治家なので、自分の主張にそぐわない批判者を黙らせたいという気持ちがあることは理解できるが、権力者がそれを乱発すると、「スラップ訴訟(批判や反対などに対する封じこめの手段としておこす訴訟のこと)」と批判を受ける恐れもある。 また、長いこと危機管理をやってきた立場で言わせていただくと、政治家やメディア、ジャーナリストという「言論」でメシを食う人が、何か言われてすぐに法的措置を持ち出すというのは、「今まで自分は散々人のことを批判してきたのに、批判される側になるとそれか」という感じで、ネガイメージが広まってしまうケースもある。 もちろん、犯罪を犯したなど社会的評価を著しく貶めるような事実無根の誹謗中傷には迅速に対応すべきだが、今回の「聖地論争」のような多様な意見があるものの場合、やはり有田氏のような高名なジャーナリストは、弁護士に何をアドバイスされようとも、まずは「言論」で国生さんの誤解を解いていただきたかったな、と思う。 いやいや、決して批判などではありませんので、どうか法的措置だけはご勘弁を』、「犯罪を犯したなど社会的評価を著しく貶めるような事実無根の誹謗中傷には迅速に対応すべきだが、今回の「聖地論争」のような多様な意見があるものの場合、やはり有田氏のような高名なジャーナリストは、弁護士に何をアドバイスされようとも、まずは「言論」で国生さんの誤解を解いていただきたかったな、と思う」、同感である。

第三に、5月7日付けデイリー新潮が掲載したジャーナリストの徳本栄一郎氏による「「安倍晋三元首相」暗殺の闇 なぜ祖父・岸信介は「統一教会教祖」の釈放嘆願書をレーガン大統領に送ったのか」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05071100/?all=1
・『75年前、GHQの指示で巣鴨拘置所から岸信介氏が釈放された。その岸氏は後に統一教会の教祖、文鮮明氏の釈放を求める文書を米大統領に送る。共産勢力の脅威に対抗するためだ。安倍元総理暗殺の裏で受け継がれてきた保守人脈と宗教の癒着に迫る』、「岸氏は後に統一教会の教祖、文鮮明氏の釈放を求める文書を米大統領に送る。共産勢力の脅威に対抗するためだ」、そんな以前からつながりがあったとは、初めて知った。
・『「やがて起きる出来事は、必ず事前に影を投げかけている」  この予言めいた言葉を残したのは、古代ローマの政治家で哲学者でもあるキケロだった。歴史を変えた戦争や革命、あるいは感染症も決して唐突に襲ってくるのではない。そこに至るまで、いくつも前兆があり、多くの思惑が重なり、やがてクライマックスへ導かれる。 その意味で、奈良の大和西大寺駅前で起きた安倍晋三元総理の暗殺も、そうしたエピソードの一つかもしれない。 世界平和統一家庭連合、旧統一教会の信仰にはまり、多額の献金を繰り返した母、そのために家庭が崩壊したと恨む山上徹也容疑者は、安倍元総理に2発の銃弾を撃ち込んだ。 報道によると、本人は取り調べに対し、「安倍は統一教会とつながりがあると思っていた」「教団を海外から日本に招き入れたのは、(安倍の祖父の)岸信介元総理だ。だから安倍を殺した」旨を供述したという。 その論理はおよそ身勝手で、到底正当化できるものではない。が、凶行に至るまでに、過去、薄暗く長い影が差していたのも事実だ。それを象徴したのが、本誌(「週刊新潮」)2022年7月28日号で紹介した、岸元総理がロナルド・レーガン米大統領に宛てた書簡だった。 日付は1984年11月26日、脱税容疑で起訴され、米連邦刑務所に収監された統一教会の創始者、文鮮明を自由の身にしてほしいという。 〈文尊師は、現在、不当にも拘禁されています。貴殿のご協力を得て、私は是が非でも、出来る限り早く、彼が不当な拘禁から解放されるよう、お願いしたいと思います〉 〈文尊師は、誠実な男であり、自由の理念の促進と共産主義の誤りを正すことに生涯をかけて取り組んでいると私は理解しております〉 すでに当時、日本では統一教会の若者への勧誘や「霊感商法」が社会問題になっていた。その創始者である韓国人「脱税犯」の釈放を、日本の元総理が現職の大統領に訴えた。 それだけでも異様なのだが、そもそもなぜ岸は、こうした要請を送ったのか。その原点と言える、もう一つの古ぼけた文書がある。日付は終戦間もない1947年4月24日、A級戦犯として牢獄につながれた岸を釈放してくれという要請だった。 作成したのは、東京のGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)で諜報や治安維持を担当するG2(参謀第2部)だ。GHQの法務局、国際検察局などへの文書は、巣鴨拘置所にいる岸信介を自由の身にするよう促していた。 〈重要なのは、公式記録では、彼と国家主義または拡張主義的イデオロギー団体とのつながりを示す証拠は全くないということだ〉 〈極東国際軍事裁判での主な戦犯容疑者の訴追は終わったが、岸の満州での活動で十分な証拠がなく、また大政翼賛会での活動も起訴に不十分な場合、G2は、岸を巣鴨拘置所から釈放するよう勧告する〉 日米開戦を決めた東條内閣で商工大臣だった岸が、戦争遂行に深く関わったことはよく知られる。開戦詔書にも署名し、そのため敗戦の年、1945年9月に逮捕され、幽囚の日々を送っていた。 そして、それと同じく検察が注目したのが、戦前の満州での経歴だった』、「GHQ・・・で諜報や治安維持を担当するG2(参謀第2部)だ。GHQの法務局、国際検察局などへの文書は、巣鴨拘置所にいる岸信介を自由の身にするよう促していた」、既に対日政策が後述のように、「逆コース」へと変わっていたようだ。
・『「満州ギャング」  1930年代、日本の傀儡(かいらい)国家、満州国に赴任した岸は、その経済運営を一手に担った。表向き、中国人の大臣がいたが飾りに過ぎず、実権は日本人の官僚が握った。石炭や鉄鋼、自動車など重工業の開発計画を練り、資金を配分し、企業を統制する。それを支えたのが満州の絶対権力者、関東軍だ。 いわば金と権力、人脈を駆使する統治手法で、それをGHQの岸ファイルは、「軍事国家資本主義」「満州ギャング」と形容した。そのギャングの親玉を牢獄から出してくれ、という。これまた異様に聞こえるが、背景には当時の差し迫った脅威、共産主義がある。 すでに東西冷戦が始まり、米国とソ連は世界中で鎬(しのぎ)を削っていた。岸釈放が要請された1947年はCIA(米中央情報局)が創設され、日本でも共産党が過激化していく。 そうした中で占領初期、GHQの力点は、日本の徹底した民主化と軍備放棄に置かれた。すなわち政治犯の釈放と戦犯の逮捕、旧指導者の追放である。また農地解放や財閥解体、労働組合の育成など国家システムを改造してしまう勢いだった。 これに対し、行き過ぎた改革は日本を弱体化し、かえって共産勢力を伸ばすとの懸念が出始める。特に戦前から三井、三菱財閥と縁の深いニューヨークの財界は不満で、米議会やマスコミを使って政界工作を行った。 その結果、大物戦犯は釈放され、財閥解体は骨抜きになり、追放された官僚や実業家も続々と復帰していった。いわゆる占領方針の「逆コース」で、それを見事に示すGHQ指令書がある。 1948年12月23日付けで、翌日のクリスマス・イブに、巣鴨拘置所の戦犯容疑者15名を釈放しろという。そのリストの中に岸信介、児玉誉士夫、笹川良一の名前があった。 いずれもA級戦犯で、やがて岸は政界に復帰し、総理へ上り詰め、児玉や笹川も大物右翼として君臨した。そして、文鮮明が反共を掲げて創設した政治団体「国際勝共連合」を支援していった。 こうして見ると、岸がレーガン大統領に送った文の釈放要請と、G2による岸の釈放勧告は一本の糸でつながる。東西冷戦下、不倶戴天の敵であるソ連との戦いだ。 自由と民主主義を掲げる西側は絶対的正義で、何としても勝たねばならない。そのためなら満州ギャングだろうが、A級戦犯だろうが娑婆に出す。また霊感商法で、献金を強いられ、信者の家庭が崩壊しようと構わない。ましてや脱税など問題ではない。共産主義の脅威に比べ、そんなのは些事に過ぎないとの理屈だった。 1982年7月、ニューヨーク連邦地裁は、脱税容疑で起訴された文鮮明に懲役18カ月、罰金2万5千ドルの実刑判決を言い渡した。70年代初め、米国内にある銀行口座の利子、そして統一教会の関連会社から受領した株式を所得申告に入れなかった容疑である。 弁護側は、口座は教会に属し、文は管財人に過ぎず、そうした手法は他の宗教団体でも見られると反論した。判決を受けて上告したが、1984年5月、米連邦最高裁は棄却、文は同年7月からコネチカット州ダンベリーの刑務所に収監された。岸がレーガンに釈放を求めたのは、その4カ月後である。 だが、それは決して彼一人の思いつきなどではなかったのだ』、「GHQの岸ファイルは、「軍事国家資本主義」「満州ギャング」と形容した。そのギャングの親玉を牢獄から出してくれ、という。これまた異様に聞こえるが、背景には当時の差し迫った脅威、共産主義がある。 すでに東西冷戦が始まり、米国とソ連は世界中で鎬(しのぎ)を削っていた。岸釈放が要請された1947年はCIA(米中央情報局)が創設され、日本でも共産党が過激化していく」、「行き過ぎた改革は日本を弱体化し、かえって共産勢力を伸ばすとの懸念が出始める。特に戦前から三井、三菱財閥と縁の深いニューヨークの財界は不満で、米議会やマスコミを使って政界工作を行った。 その結果、大物戦犯は釈放され、財閥解体は骨抜きになり、追放された官僚や実業家も続々と復帰していった。いわゆる占領方針の「逆コース」で、それを見事に示すGHQ指令書がある。 1948年12月23日付けで、翌日のクリスマス・イブに、巣鴨拘置所の戦犯容疑者15名を釈放しろという。そのリストの中に岸信介、児玉誉士夫、笹川良一の名前があった」、「児玉誉士夫、笹川良一」もこの時に釈放されたとは初めて知った。
・『外務省を迂回か  同年11月、東京で「世界言論人会議」という国際会議が開かれた。これは世界中から約700名のジャーナリスト、学者が集まり、マスコミのあり方を話し合うもので、その最中、議長名でレーガン大統領に書簡が出された。 〈米国で文尊師は評判のよい人物ではありません。彼は共産主義に強硬な姿勢を取り、伝統的な価値観を支持してまいりました〉 〈宗教と報道の自由を掲げる合衆国憲法修正第1条の名の下、速やかな是正措置を取るようお勧めいたします〉 要は、大統領恩赦を与えてほしいという要請だ。この会議の創設者こそ、誰あろう文鮮明であり、東京で名誉議長として登壇したのが岸だった。 さらに翌月、今度は文の代理人を務めるワシントンの大手法律事務所もレーガンに書簡を送った。そもそも裁判の進め方に問題があり、憲法上の疑義があるという。 たった1カ月の間に相次いだ大統領への直訴、これは明らかに統一教会と連携している。岸の働きかけも、その一環とみてよい。それに対し米国政府はどう応じたか。 筆者は、岸の書簡はすでに5年前、カリフォルニア州のロナルド・レーガン大統領図書館で入手していた。ところが、レーガンからの返書は国家安全保障を理由に公開されなかった。それが今回、改めて照会すると手に入ったのだ。 日付は1985年3月5日、文面はまず、レーガン再選に寄せられた岸の祝辞への礼から始まる。そして最近、文の仮釈放が却下され、弁護士が恩赦を要請してきたという。 〈要請は現在、司法省で検討しており、その過程で貴殿の考えも慎重に考察されるものと保証します。見解を伝えていただき感謝します〉 明らかに、やんわりと拒否するニュアンスだ。そして返書を出す前、司法長官代理が大統領の法律顧問にメモを送った。恩赦に反対との内容で、それとは別に、文の裁判記録もホワイトハウスに届けられる。その焦点は、ニューヨークの銀行にある個人口座だった。 70年代初め、文はチェース・マンハッタン銀行に口座を開き、3年間で約160万ドル、そのほとんどを現金で預けた。そこで発生した利子や教会の関連会社から受領した株式を申告しなかったのだが、前述の通り、弁護人は、文は管財人に過ぎないと主張した。 ところが記録によると、資産の一部が、ニューヨーク郊外の文が住む高級住宅の購入費や子供の学費に回されていたという。さらに興味を引くのが偽装工作疑惑である。 口座の金を信者の献金に見せるため、虚偽の入金記録を作ったという。そこで使われたのが「日本家族ファンド」なる帳簿で、数百の日本人信者の名前、献金額、その日付が載っていた。これを担当したのが統一教会の在米日本人幹部の神山威(たける)で、文と共に起訴され、懲役6カ月、罰金5千ドルの判決を受けた。 米国の脱税裁判は図らずも、統一教会の資金ネットワークの片鱗をさらしたのだった。しかも70年代末、米韓関係を調べた米下院の委員会は、文らが祭政一致の世界政府樹立をめざしていたと指摘した。 そして岸も、自分の働きかけが一種のヤバさを含むのを感じ取ったようだ。 レーガンへの書簡を託したのは、当時アール・エフ・ラジオ日本社長の遠山景久、通訳として同行したのが日系2世で元GHQ将校のキャピー原田だった。遠山は、東京の世界言論人会議で反共を訴える講演を行い、原田は、巣鴨拘置所にいた岸の釈放に動いた一人だ。 信頼できる友人を通じて米国に接触し、文釈放を呼びかける。また、その返書も西新橋にあった岸事務所に届けられた。これは取りも直さず、日本の外務省を通していないことを示唆した。外務省を通せば当然、大臣を巻き込み、下手すると将来の政治キャリアに関わる。それを避けるには水面下で進めるしかない。 当時の外務大臣は岸の娘婿の安倍晋太郎、そして、その息子で秘書官を務めていたのが、若き日の晋三だった』、「東京で「世界言論人会議」という国際会議が開かれた。これは世界中から約700名のジャーナリスト、学者が集まり、マスコミのあり方を話し合うもので、その最中、議長名でレーガン大統領に書簡が出された。 〈米国で文尊師は評判のよい人物ではありません。彼は共産主義に強硬な姿勢を取り、伝統的な価値観を支持してまいりました〉 〈宗教と報道の自由を掲げる合衆国憲法修正第1条の名の下、速やかな是正措置を取るようお勧めいたします〉 要は、大統領恩赦を与えてほしいという要請だ。この会議の創設者こそ、誰あろう文鮮明」、「文鮮明」は自らが創設した会議で、恥ずかしげもなく自らの釈放を要求したとは、まさに茶番だ。「「日本家族ファンド」なる帳簿で、数百の日本人信者の名前、献金額、その日付が載っていた。これを担当したのが統一教会の在米日本人幹部の神山威(たける)で、文と共に起訴され、懲役6カ月、罰金5千ドルの判決を受けた」、こんなつながりがあったことは初めて知った。
・『岸のトラウマ  それでも、ここである疑問が残る。そこまで統一教会のヤバさを感じつつ、なぜ岸は、彼らとの関係を深めたのか。その裏には、戦後最大の政治イベント「60年安保闘争」があったと思われる。 1960年の春、国会議事堂周辺は、まるで革命前夜のような混乱に陥っていた。連日、学生や労働組合員、一般市民ら数万人が集まり、議事堂や総理官邸を取り囲んだ。口々に「安保反対!」「岸を倒せ!」と叫び、路上は地響きすら感じられた。 岸内閣が進める日米安全保障条約の改定、それが米国の戦争に巻き込まれるとの国民の懸念を呼んだ。与党の強引な国会運営もあり、大勢の群衆が詰めかけ、機動隊は放水と催涙ガスで応じる。 渋谷の南平台にある岸の自宅にもデモ隊が押しよせ、それは孫の晋三にとっても強烈な記憶だったらしい。当時、晋三は小学校に入る前で、両親や兄と祖父の家によく遊びに行ったという。 「しかしそこも、しばしばデモ隊に取り囲まれることがあった。『アンポ、ハンターイ!』のシュプレヒコールが繰り返され、石やねじって火をつけた新聞紙が投げ込まれた」 「母とわたしたち二人は、社旗を立てた新聞社の車にそうっと乗せてもらって、祖父の家にいった。子どもだったわたしたちには、遠くからのデモ隊の声が、どこか祭りの囃子(はやし)のように聞こえたものだ。祖父や父を前に、ふざけて『アンポ、ハンタイ、アンポ、ハンタイ』と足踏みすると、父や母は『アンポ、サンセイ、といいなさい』と、冗談まじりにたしなめた。祖父は、それをニコニコしながら、愉快そうに見ているだけだった」(安倍晋三著、『新しい国へ』文春新書) だが、孫の前では好々爺(や)然としても、内心、岸のはらわたは煮えくり返っていたようだ。結局、その年の6月、新安保条約は成立したが、岸内閣は退陣に追い込まれる。そして晩年、あそこまでデモが盛り上がった裏には、中国とソ連の工作があったとふり返った。 「彼らが、安保改定の実現を阻止し、日米間にクサビを打ち込むために全力を傾けたことは、彼らにすれば当然の行動であった。確証を握っているわけではないが、このために彼らが投入した物量は、相当の額であろうと推測される。 彼らは、共産党や社会党のような、日本国内の“外郭団体”はもちろん、労働組合内部のシンパに指令を与え、これらシンパが一般組合員や学生に工作して大衆運動の盛り上がりを図った。また、進歩的文化人と称せられるグループが、彼らのちょうちん持ちの役を演じた」(『岸信介回顧録 保守合同と安保改定』廣済堂出版) そして、これら文化人は、共産主義者のどう喝におびえ、政策も理解せず、時代の寵児と錯覚する「売文口舌の徒輩」と批判する。国会と自宅を取り巻いたデモへの恨みがにじむが、この60年安保が岸のトラウマになったのは間違いない』、「この60年安保が岸のトラウマになったのは間違いない」、その通りだろう。
・『反安保を支援した財界  ちょうどこの頃、韓国から日本に進出したのが統一教会だった。南平台にある岸の自宅の隣に本部が置かれ、反共を旗印に「国際勝共連合」が生まれる。左翼に敵愾心を燃やす岸には、この上なく心強い援軍だったはずだ。 これ以降、両者は連携を深めるが、反共のためなら「霊感商法」など取るに足らなかったのだろう。だが、ここで岸は重大な勘違いをしていた可能性がある。 拙著『田中清玄 二十世紀を駆け抜けた快男児』(文藝春秋)で述べたが、岸を憎んだのは共産勢力だけでなく、じつは日本の財界もだった。総理就任以来、岸は、あの満州を彷彿させる経済統制を進めていた。戦中からの友人を政府の要職に就け、企業への介入を強め、それに危機感を抱いたのが財界だ。 このままだと、本当に岸の家来にされてしまう。口では資本主義、自由主義と言ってるが、あの満州国と同じだ。体のいい独裁じゃないか──これが彼らの本音ではなかったか。 そして財界の一部は、右翼の黒幕の田中清玄を通じ、デモ隊の左翼学生を支援していた。右とか左とかイデオロギーではないのだ。 それでも晋三にとって、祖父は尊敬の対象以外の何物でもなかったようだ。 「祖父は、幼いころからわたしの目には、国の将来をどうすべきか、そればかり考えていた真摯な政治家としか映っていない。それどころか、世間のごうごうたる非難を向こうに回して、その泰然とした態度には、身内ながら誇らしく思うようになっていった。間違っているのは、安保反対を叫ぶかれらのほうではないか。長じるにしたがって、わたしは、そう思うようになった」(『新しい国へ』) やがて成長した晋三は、政策も吟味せず革新、反権力を叫ぶ人々をうさんくさく感じ、「保守」という言葉に親近感を覚えたという。そして祖父と共に左翼と戦ってくれた統一教会、その人脈を受け継いでいく。 岸は90歳で天寿を全うするが、その2年後の1989年、東西対立の象徴だったベルリンの壁が崩壊した。やがてソ連が解体し、冷戦も終わるが、統一教会と自民党の関係は残った。そして、それは、かつての反共の同志から目先の選挙支援に変わってしまう。 まさにその間、山上徹也は、家庭を崩壊させた統一教会、それとつながる岸信介、安倍晋三へ憎悪を募らせていた。どす黒い感情はマグマのようにたまり、その帰結点が2022年7月8日、大和西大寺駅前の銃声だった。 そこへ至るまでの薄暗い影、それは75年前のクリスマス前日、巣鴨拘置所を出た岸から伸びていた。その影に何が隠されたか、封印が解かれるのは、これからである』、「60年安保闘争」の時には岸らの保守勢力にとっては、「反共」の「統一教会」は頼りがいがあったのだろう。「そこへ至るまでの薄暗い影・・・その影に何が隠されたか、封印が解かれるのは、これからである」、「封印が解かれる」のが楽しみだ。何が出てくるのだろうか。
タグ:宗教 (その10)(【橋爪大三郎・特別講義】日本人が知らない 中国を動かす「儒教の本質」とは?、「下関は統一教会の聖地」論争の不毛 信者も地元民も寝耳に水だったワケ、「安倍晋三元首相」暗殺の闇 なぜ祖父・岸信介は「統一教会教祖」の釈放嘆願書をレーガン大統領に送ったのか) ダイヤモンド・オンライン 橋爪大三郎氏による「【橋爪大三郎・特別講義】日本人が知らない、中国を動かす「儒教の本質」とは?」 「「死について考えることは「やり残した夏休みの宿題」みたいになっている」、「やり残した夏休みの宿題」とは言い得て妙だ。「各宗教の「死」についての考え方を、鮮やかに説明する『死の講義』、とは興味深そうだ。 「一神教の原理。それは、「神が人を支配するのは、正しい」です。これは、無条件で正しい。ならば、人が人を支配するのは、無条件で正しくはない。 それが正しいのは、「神がそれを命じた場合」に限られる。 そこで西欧では、地上で神の代理をつとめる教会が、王や貴族など統治者より優位に立っていました。教会が認めないと、王は正しい統治者でない。政教分離です。 政治は相対化される」、「中国には、天の考え方があります。 天は、神と違って、地上にその代理人がいない。教会がない。中国の統治者(皇帝)は、天命を受けて政治をしている、と主張します。 その証拠があるかというと、特にない。実力で、皇帝になれてしまうということです。儒教はそれを認めます。つまり、皇帝が、天命を受けて、人を支配するのは正しい」、「儒教」など中国流の考え方は、「統治者」には好都合だ。 「忠は官僚だけの義務ですが、孝はすべての中国人の義務。長幼の序は、地域社会に秩序をうみ出し、社会の末端を安定させます」、なるほど。 「この秩序は永遠の昔から決まっていて、正しいものなので、これに従うのが人間の道である・・・道徳と宗教と政治が一体化している。それ以外に人間の正しい生き方はない、という考え方です。 以上をまとめると、忠:政治的リーダー(とくに皇帝)に服従する  孝:親族の年長者(とくに親)に服従する  孝は、忠よりも絶対的。親に対する服従は無条件なのです。 中国の農業は家族経営なので、孝を強調することで、経営基盤が安定する。税収が増え、政府にとってもメリットがあるのです」、「為政者」には本当に好都合な考え方だ。 「儒教の考え方が現代化して広がったものが現代の中国共産党です」、「儒教っぽいスタイルだが儒教ではない、権威主義的な独裁政権ができあがっています」、確かにその通りだ。 窪田順生氏による「「下関は統一教会の聖地」論争の不毛、信者も地元民も寝耳に水だったワケ」 「有田氏の「聖地発言」」、自体が説明不足で誤解を生み易いのも事実だ。 前述の「「聖地発言」」、自体が説明不足で誤解を生み易い」、ことのためだ。 「有田氏らのように旧統一教会を追いかけてきたジャーナリストや弁護士センセイたちの間では、下関が旧統一教会の聖地だというのは、「議論するのも馬鹿らしい常識」「基礎知識」でもある」、専門家特有の思い上がり的な色彩もあるようだ。 「下関は確かに「旧統一教会の聖地」ではあるのだが、一般の人が思い描くような信者がわんさか訪れて、信仰を強めていくというような「聖地」ではなく、「ゆかりの地」であって、一般人の我々が理解できるニュアンスとしては、先ほど申し上げたようなアニメやマンガの舞台をファンたちが「聖地」と呼ぶような感覚ではないのか」、なるほど。 「犯罪を犯したなど社会的評価を著しく貶めるような事実無根の誹謗中傷には迅速に対応すべきだが、今回の「聖地論争」のような多様な意見があるものの場合、やはり有田氏のような高名なジャーナリストは、弁護士に何をアドバイスされようとも、まずは「言論」で国生さんの誤解を解いていただきたかったな、と思う」、同感である。 デイリー新潮 徳本栄一郎氏による「「安倍晋三元首相」暗殺の闇 なぜ祖父・岸信介は「統一教会教祖」の釈放嘆願書をレーガン大統領に送ったのか」 「岸氏は後に統一教会の教祖、文鮮明氏の釈放を求める文書を米大統領に送る。共産勢力の脅威に対抗するためだ」、そんな以前からつながりがあったとは、初めて知った。 「GHQ・・・で諜報や治安維持を担当するG2(参謀第2部)だ。GHQの法務局、国際検察局などへの文書は、巣鴨拘置所にいる岸信介を自由の身にするよう促していた」、既に対日政策が後述のように、「逆コース」へと変わっていたようだ。 「GHQの岸ファイルは、「軍事国家資本主義」「満州ギャング」と形容した。そのギャングの親玉を牢獄から出してくれ、という。これまた異様に聞こえるが、背景には当時の差し迫った脅威、共産主義がある。 すでに東西冷戦が始まり、米国とソ連は世界中で鎬(しのぎ)を削っていた。岸釈放が要請された1947年はCIA(米中央情報局)が創設され、日本でも共産党が過激化していく」、「行き過ぎた改革は日本を弱体化し、かえって共産勢力を伸ばすとの懸念が出始める。特に戦前から三井、三菱財閥と縁の深いニューヨークの財界は不満で、米議会 やマスコミを使って政界工作を行った。 その結果、大物戦犯は釈放され、財閥解体は骨抜きになり、追放された官僚や実業家も続々と復帰していった。いわゆる占領方針の「逆コース」で、それを見事に示すGHQ指令書がある。 1948年12月23日付けで、翌日のクリスマス・イブに、巣鴨拘置所の戦犯容疑者15名を釈放しろという。そのリストの中に岸信介、児玉誉士夫、笹川良一の名前があった」、「児玉誉士夫、笹川良一」もこの時に釈放されたとは初めて知った。 「東京で「世界言論人会議」という国際会議が開かれた。これは世界中から約700名のジャーナリスト、学者が集まり、マスコミのあり方を話し合うもので、その最中、議長名でレーガン大統領に書簡が出された。 〈米国で文尊師は評判のよい人物ではありません。彼は共産主義に強硬な姿勢を取り、伝統的な価値観を支持してまいりました〉 〈宗教と報道の自由を掲げる合衆国憲法修正第1条の名の下、速やかな是正措置を取るようお勧めいたします〉 要は、大統領恩赦を与えてほしいという要請だ。この会議の創設者こそ、誰あろう文鮮明」、 「文鮮明」は自らが創設した会議で、恥ずかしげもなく自らの釈放を要求したとは、まさに茶番だ。「「日本家族ファンド」なる帳簿で、数百の日本人信者の名前、献金額、その日付が載っていた。これを担当したのが統一教会の在米日本人幹部の神山威(たける)で、文と共に起訴され、懲役6カ月、罰金5千ドルの判決を受けた」、こんなつながりがあったことは初めて知った。 「この60年安保が岸のトラウマになったのは間違いない」、その通りだろう。 「60年安保闘争」の時には岸らの保守勢力にとっては、「反共」の「統一教会」は頼りがいがあったのだろう。「そこへ至るまでの薄暗い影・・・その影に何が隠されたか、封印が解かれるのは、これからである」、「封印が解かれる」のが楽しみだ。何が出てくるのだろうか。
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日本の政治情勢(その65)(岸田首相「会期末解散」戦略は完全パァ…東京28区めぐり公明が自民にブチ切れの深刻度、東京「自公決裂」はデキレースか…早期解散阻止で思惑一致 総選挙で元サヤのシナリオ、〈岸田総理から厳しく注意〉岸田首相一族が首相公邸で大ハシャギ 「階段寝そべり」写真と翔太郎秘書官の「閣僚ひな壇」撮影、岸田首相長男の翔太郎秘書官 来月1日付け交代へ 事実上の更迭) [国内政治]

日本の政治情勢については、5月16日に取上げたばかりだが、今日は、(その65)(岸田首相「会期末解散」戦略は完全パァ…東京28区めぐり公明が自民にブチ切れの深刻度、東京「自公決裂」はデキレースか…早期解散阻止で思惑一致 総選挙で元サヤのシナリオ、〈岸田総理から厳しく注意〉岸田首相一族が首相公邸で大ハシャギ 「階段寝そべり」写真と翔太郎秘書官の「閣僚ひな壇」撮影、岸田首相長男の翔太郎秘書官 来月1日付け交代へ 事実上の更迭)である。

先ずは、本年5月26日付け日刊ゲンダイ「岸田首相「会期末解散」戦略は完全パァ…東京28区めぐり公明が自民にブチ切れの深刻度」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/323579
・『亀裂は決定的だ。次期衆院選の「10増10減」に伴って新設される「東京28区」をめぐって、自公双方が独自候補擁立を主張しモメていた一件。公明は25日の常任役員会で、擁立を断念するとともに、東京の小選挙区(全30選挙区)では自民候補を推薦しない方針を正式決定し、自民に伝えた。公明の選挙協力がなくなれば、当選が危うくなる自民党議員はゴロゴロいる。岸田首相は「自民党幹事長らに丁寧な対応を指示した」と慌てていたが、これで早期解散どころじゃなくなってきた。 公明の決定は東京の自民との“関係断絶”に近い。東京では衆院選で自民候補を推薦せず、公明候補の推薦も求めないだけでなく、都議選や東京の首長選、都議会での協力も解消するという。公明の石井幹事長が「東京における信頼関係は地に落ちた」とまで言うのだから尋常ではない。 自民の茂木幹事長の求めに応じて、30日にも再び幹事長会談が行われることになったが、石井氏は「方針を一切変えるつもりはない」と言い切った。 選挙を考えれば、さすがにどこかで折り合うかと思われたが、そういう空気ではないようだ。 「20年以上連れ添ってきて夫婦ゲンカはしょっちゅうあったが、今回は妻が実家に帰ってしまった状況。もとのサヤに収まるのか、それとも離婚か。どっちに転んでもおかしくない」(公明関係者) ここまでこじれたのは、東京28区の問題だけじゃないらしい。 大阪・兵庫で維新との選挙協力が期待できなくなり焦っている公明は、「10増」選挙区に望みをつなぎ、東京では2つの選挙区での擁立を模索してきた。ところが、公明サイドの説明によれば、区割り変更にともない東京12区から29区に移る公明現職の擁立についても自民はなかなか容認せず、自民の都連幹事長が「たとえ党本部が公明候補を推薦しても、地元の自民は無所属の自民系候補を応援する」とまで通告してきたという。 こうした軋轢が重なり、公明は頭に血がのぼってしまったわけだ』、「公明サイドの説明によれば、区割り変更にともない東京12区から29区に移る公明現職の擁立についても自民はなかなか容認せず、自民の都連幹事長が「たとえ党本部が公明候補を推薦しても、地元の自民は無所属の自民系候補を応援する」とまで通告」、これは自民党側から売った喧嘩のようだ。
・『協力解消は東京限定だが…  一方の自民も、都連会長の萩生田政調会長は「10増10減で減るのは自民党の選挙区だ」と強気で、28区で自身に近い元職の擁立を画策。都連内からは「今回認めたら、この先も公明の言いなりだ」との反発も上がっていて、感情的な対立はエスカレートするばかりだった。 こうなると落としどころを見つけるのは容易ではない。ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう言う。 「まだお互いの着地点を探すとは思いますが、ここまで感情的にもつれると、ズルズル行ってしまい、自公の連立にもひびが入る可能性がある。今の自民執行部は公明とのパイプが細いですしね。公明の協力がなければ、自民の選挙は当然、厳しくなります。特に東京は公明の発祥の地であり、公明の推薦がなければ落選する人が出るでしょう。この問題が解決しなければ、岸田首相はとても早期解散などできません」 区割り変更前の前回2021年衆院選。自民は東京の小選挙区(全25選挙区)で16人が当選したが、公明の推薦(比例票から分析)がなければ、そのうちの4人は敗北していた。 現状、公明は協力解消を「東京に限る」としているが、既に自民党内は「全国に波及したらどうするんだ」「都連会長は責任を取るのか」などと戦々恐々だ。「サミット成功」と高揚感に浸っていた岸田首相の「会期末解散」戦略は、完全に封じられた』、「自民党内は「全国に波及したらどうするんだ」「都連会長は責任を取るのか」などと戦々恐々だ。「サミット成功」と高揚感に浸っていた岸田首相の「会期末解散」戦略は、完全に封じられた」、政治の世界は不可思議なことが起こるものだ。

次に、早くもこれを否定するニュースが、5月28日付け日刊ゲンダイ「東京「自公決裂」はデキレースか…早期解散阻止で思惑一致、総選挙で元サヤのシナリオ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/323629
・『次の衆院選での候補者調整をめぐる対立から、公明党が東京で自民党の候補者を推薦しない方針を決定した一件が、政界に波紋を広げている。公明との選挙協力がなくなれば、落選する自民議員が少なくないとみられているからだ。 立憲民主党の泉代表が、26日の会見で「政策ではないところで信頼関係が壊れる選挙連合」「全国にも波及する」との見方を披露するなど、自公のガチンコ対立に半ば“期待”するような声も上がっているが、「東京28区をめぐる自公の決裂はデキレースですよ」と、自民党本部の関係者がこう言う。 「公明党は東京12区選出だった岡本三成衆院議員を新29区(荒川区、足立区の一部)に移した上、28区(練馬区東部)にも候補を立てようとした。比例票を減らしていることの焦りから、東京で1つだった小選挙区を増やして得票を増やす狙いです。ただ、28区の候補擁立を自民党が認めなかったために、東京の選挙区では自民党候補を推薦しないと伝達したのには別の思惑がある。G7広島サミットで支持率を上げた岸田首相が早期解散に踏み切る観測が強まったため、それを阻止するための策動でしょう」) 公明は、支持母体の創価学会が高齢化していることもあり、大型選挙の間は少なくとも3カ月空ける必要があるとされる。4月の統一地方選でフル稼働したばかりで、6月解散には対応できないというわけだ。 交渉過程で自民側は公明に対し、28区の代わりに候補者が決まっていない12区(北区と板橋区の一部)か15区(江東区)なら差し出すと打診したというが、話がまとまらず決裂した格好になっている。 「公明側の強硬姿勢は、実は東京の自民党にとっても利用価値があった。15区選出の柿沢未途衆院議員は、前回総選挙で勝って自民党入りしましたが、東京都連との関係が悪く山形県連所属ということもあり、今も正式な支部長に選任されていない。萩生田都連会長は、4月の江東区長選で可愛がっている山崎一輝前都議が落選したことは、柿沢が対立候補を支援したせいだと根に持っていて、『裏切り者は絶対に許さない』と言っています。それで15区を差し出すなどと言い出した。萩生田にとっては、ゴネる公明との決裂は、公明の要求に従いすぎだと不満を高める支持層に対して“押し返した”とアピールできる上、柿沢に圧力をかける材料にも使えて一石二鳥なのです。最終的には、公明に12区を渡して手打ちするシナリオで決着するのでしょう。公明にとっても、12区は太田前代表時代からの地盤で文句はない。東京で2選挙区を手にすれば、元通り東京の自民候補にも推薦を出すでしょう」(東京都連関係者)) 総選挙までの時間稼ぎをしたい公明と、それに乗じた東京都連が演じるプロレスということか。 公明が各小選挙区に1万~2万を持つとされる学会票と、政権与党のうまみにドップリ漬かった両党は麻薬中毒のようなもので、20年以上も連立政権を組んできた自公両党の権力への執着は並大抵ではない。茶番に惑わされない方がよさそうだ』、「公明は、支持母体の創価学会が高齢化していることもあり、大型選挙の間は少なくとも3カ月空ける必要があるとされる。4月の統一地方選でフル稼働したばかりで、6月解散には対応できないというわけだ。 交渉過程で自民側は公明に対し、28区の代わりに候補者が決まっていない12区(北区と板橋区の一部)か15区(江東区)なら差し出すと打診したというが、話がまとまらず決裂した格好になっている」、「萩生田にとっては、ゴネる公明との決裂は、公明の要求に従いすぎだと不満を高める支持層に対して“押し返した”とアピールできる上、柿沢に圧力をかける材料にも使えて一石二鳥なのです。最終的には、公明に12区を渡して手打ちするシナリオで決着するのでしょう。公明にとっても、12区は太田前代表時代からの地盤で文句はない。東京で2選挙区を手にすれば、元通り東京の自民候補にも推薦を出すでしょう」(東京都連関係者)」、「総選挙までの時間稼ぎをしたい公明と、それに乗じた東京都連が演じるプロレスということか」、真相はどうなのだろう。数日中にわかるだろう。

第三に、5月27日付け文春オンライン「〈岸田総理から厳しく注意〉岸田首相一族が首相公邸で大ハシャギ 「階段寝そべり」写真と翔太郎秘書官の「閣僚ひな壇」撮影」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/63159
・『岸田文雄首相の長男で首相秘書官を務める岸田翔太郎氏(32)が、親戚一同とともに昨年末に首相公邸で忘年会を開き、その際、賓客を招く公的なスペースなどで写真撮影に興じていたことが「週刊文春」の取材で分かった。 「週刊文春」が入手した写真の日付はいずれも昨年12月30日のものだ。翔太郎氏の知人が語る。 「この日は、岸田家の親戚あわせて10人以上が首相公邸に集まり、忘年会が開かれたそうです。現在、岸田首相は公邸で、翔太郎氏と2人で暮らしている。ご一行にとっては“親戚の家に遊びに来た”というノリだったのでしょう」 親戚の気安さゆえか、赤じゅうたんの敷かれた階段に寝そべっている写真や、新閣僚がズラリとひな壇に並ぶ様子を模した写真もあるなど、やりたい放題の様子がうかがえる。 寝そべっている男性は、岸田首相の甥で翔太郎氏の従兄弟にあたるA氏です。A氏の父親は岸田首相の3歳下の実弟で、外国人の国内労働を支援する『フィールジャパンwith K』代表取締役の武雄氏。母親はスナック菓子で知られる『湖池屋』創業者の長女と、“華麗なる一族”の家系です。本人は20代半ばで、関西の大学を卒業後、現在は愛知の商社に勤務しています」(同前) 翔太郎氏といえば、これまでも外遊時の公用車を使用しての土産購入や観光疑惑が国会で問題視され、公私の別のなさや脇の甘さが指摘されてきた。ひな壇写真でも首相の位置に立ち、今回の騒動でも中心人物なのは明らかだ』、今回のは、余りに酷い公私混同だ。
・『「“公邸見学”の域を大幅に超えており、常識的には考えられません」  首相公邸はただの“親戚の家”ではない。 「2021年、野党議員の質問主意書に対して政府が公表した答弁によれば、公邸は『内閣総理大臣の職務の能率的な遂行を確保し』『国の事務及び事業の円滑な運営に資することを目的とする施設』とされています。もちろん首相の私的な居住スペースもありますが、迎賓や執務機能も備え、オンラインでの首脳会談が行われることも。万全の警備体制が敷かれ、年間の維持費は約1億6千万円とされています」(官邸担当記者) さらに、ある官邸関係者はこう顔をしかめるのだ。 「親戚一同が“閣僚写真”を撮ったのは『西階段』と呼ばれる場所。昨年8月の内閣改造の際には、本来撮影が行われる官邸の階段が工事中だったため、代わりにこの西階段で新閣僚の撮影が行われました」 政治アナリストの伊藤惇夫氏が呆れる。 「首相が公邸に客を呼ぶことはありますが、あくまで職務に関わる話をするため。公邸で宴会なんて聞いたことがない。撮影された写真は“公邸見学”の域を大幅に超えており、常識的には考えられません」 岸田事務所に質すと、こう回答があった。 「公邸の居住については、決められたルールと手続きに基づき適正に使用しているところです」 25日、松野官房長官は記者会見でこの件について「報道の行為は適切さを欠くものであり、岸田総理から厳しく注意した」と明らかにした。 5月24日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および25日(木)発売の「週刊文春」では、親戚同士で大臣のように振る舞ったり、総理の演説台でポーズを決めるなどの大ハシャギ写真を多数掲載している』、「首相が公邸に客を呼ぶことはありますが、あくまで職務に関わる話をするため。公邸で宴会なんて聞いたことがない。撮影された写真は“公邸見学”の域を大幅に超えており、常識的には考えられません」、たった今、翔太郎秘書官 来月1日付け交代へ 事実上の更迭とのNHKニュースが入った。

第四に、その5月29日付けNHK NEWSWeb「岸田首相長男の翔太郎秘書官 来月1日付け交代へ 事実上の更迭」を紹介しよう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230529/k10014082171000.html
:岸田総理大臣は、長男の翔太郎秘書官について、去年、総理大臣公邸の公的なスペースで親戚と写真撮影するなど、不適切な行動をとった責任を取らせたいとして、来月1日付けで交代させることを明らかにしました。事実上の更迭となります。 翔太郎秘書官をめぐっては、去年の年末に総理大臣公邸で親戚と忘年会を開き、写真撮影をしていたことなどが先週、週刊誌で報じられ、岸田総理大臣が厳重に注意していましたが、野党側からは更迭を求める声が出るなど、批判が相次いでいました。 岸田総理大臣は29日夜、総理大臣官邸で記者団に対し、来月1日付けで翔太郎秘書官を交代させることを明らかにしました。 事実上の更迭となります。 交代の理由について、岸田総理大臣は「総理大臣公邸の公的なスペースにおける昨年の行動が、公的立場にある政務秘書官として不適切で、けじめをつけるため、交代させることとした。G7広島サミット後の地元との調整業務がひと段落したことからこのタイミングにした」と述べました。 そのうえで「当然、任命責任は私自身にあり、重く受け止めている」と述べました。翔太郎秘書官の後任には、去年10月まで務めていた岸田事務所の山本高義氏が起用されます』、今日発表された世論調査でも、この問題が内閣支持率を押し下げていた。今日になって「更迭」とは遅きに失したきらいがある。それにしても、「岸田首相」の親バカぶりには本当に呆れ果てた。 
タグ:日本の政治情勢 (その65)(岸田首相「会期末解散」戦略は完全パァ…東京28区めぐり公明が自民にブチ切れの深刻度、東京「自公決裂」はデキレースか…早期解散阻止で思惑一致 総選挙で元サヤのシナリオ、〈岸田総理から厳しく注意〉岸田首相一族が首相公邸で大ハシャギ 「階段寝そべり」写真と翔太郎秘書官の「閣僚ひな壇」撮影、岸田首相長男の翔太郎秘書官 来月1日付け交代へ 事実上の更迭) 日刊ゲンダイ「岸田首相「会期末解散」戦略は完全パァ…東京28区めぐり公明が自民にブチ切れの深刻度」 「公明サイドの説明によれば、区割り変更にともない東京12区から29区に移る公明現職の擁立についても自民はなかなか容認せず、自民の都連幹事長が「たとえ党本部が公明候補を推薦しても、地元の自民は無所属の自民系候補を応援する」とまで通告」、これは自民党側から売った喧嘩のようだ。 「自民党内は「全国に波及したらどうするんだ」「都連会長は責任を取るのか」などと戦々恐々だ。「サミット成功」と高揚感に浸っていた岸田首相の「会期末解散」戦略は、完全に封じられた」、政治の世界は不可思議なことが起こるものだ。 日刊ゲンダイ「東京「自公決裂」はデキレースか…早期解散阻止で思惑一致、総選挙で元サヤのシナリオ」 「公明は、支持母体の創価学会が高齢化していることもあり、大型選挙の間は少なくとも3カ月空ける必要があるとされる。4月の統一地方選でフル稼働したばかりで、6月解散には対応できないというわけだ。 交渉過程で自民側は公明に対し、28区の代わりに候補者が決まっていない12区(北区と板橋区の一部)か15区(江東区)なら差し出すと打診したというが、話がまとまらず決裂した格好になっている」、 「萩生田にとっては、ゴネる公明との決裂は、公明の要求に従いすぎだと不満を高める支持層に対して“押し返した”とアピールできる上、柿沢に圧力をかける材料にも使えて一石二鳥なのです。最終的には、公明に12区を渡して手打ちするシナリオで決着するのでしょう。公明にとっても、12区は太田前代表時代からの地盤で文句はない。東京で2選挙区を手にすれば、元通り東京の自民候補にも推薦を出すでしょう」(東京都連関係者)」、 「総選挙までの時間稼ぎをしたい公明と、それに乗じた東京都連が演じるプロレスということか」、真相はどうなのだろう。数日中にわかるだろう。 文春オンライン「〈岸田総理から厳しく注意〉岸田首相一族が首相公邸で大ハシャギ 「階段寝そべり」写真と翔太郎秘書官の「閣僚ひな壇」撮影」 今回のは、余りに酷い公私混同だ。 「首相が公邸に客を呼ぶことはありますが、あくまで職務に関わる話をするため。公邸で宴会なんて聞いたことがない。撮影された写真は“公邸見学”の域を大幅に超えており、常識的には考えられません」、今夜、翔太郎秘書官 来月1日付け交代へ 事実上の更迭とのニュースが入った。 NHK NEWSWeb「岸田首相長男の翔太郎秘書官 来月1日付け交代へ 事実上の更迭」 今日発表された世論調査でも、この問題が内閣支持率を押し下げていた。今日になって「更迭」とは遅きに失したきらいがある。それにしても、「岸田首相」の親バカぶりには本当に呆れ果てた。
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資本主義(その10)(岸田首相の“新しい資本主義”に「今更感」が強い理由 何が足りない?、世界の富を独占する「上位0.1%の超金持ち」は“善良”なのか? 哲学者・斎藤幸平が考える 資本主義の限界の克服法、「資本主義体制のまま 気候変動を解決できるか」と問われて…世界が注目する論客 ルトガー・ブレグマンの回答は?) [経済]

資本主義については、昨年3月5日に取上げた。今日は、(その10)(岸田首相の“新しい資本主義”に「今更感」が強い理由 何が足りない?、世界の富を独占する「上位0.1%の超金持ち」は“善良”なのか? 哲学者・斎藤幸平が考える 資本主義の限界の克服法、「資本主義体制のまま 気候変動を解決できるか」と問われて…世界が注目する論客 ルトガー・ブレグマンの回答は?)である。

先ずは、昨年6月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「岸田首相の“新しい資本主義”に「今更感」が強い理由、何が足りない?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304720
・『岸田文雄首相が掲げる経済政策「新しい資本主義」の実行計画の骨子が明らかになった。だが筆者は、その内容に違和感を覚えた。決して目新しいものではなく、以前から認識されていながら有効な手を打てなかった「古い政策課題」ばかりが並んでいたからだ。新政策はなぜ新規性がなく、どのような視点が欠けているのか』、興味深そうだ。
・『「新しい資本主義」に目新しさは全くない  岸田文雄首相が掲げる経済政策「新しい資本主義」の実行計画と「骨太の方針」が6月上旬に閣議決定された。岸田首相は「新しい資本主義」について、「一言で言うならば、資本主義のバージョンアップ」と説明している。 だが、この経済政策は目新しさが全くない。この連載では、自民党はほとんど全ての政策分野に取り組んでいながら、それが「Too Little(少なすぎる)」「Too Late(遅すぎる)」「Too Old(古すぎる)」ことが問題だと批判してきた(本連載第290回)。「新しい資本主義」は、そのことをあらためて痛感させる内容だった。 「新しい資本主義」の実行計画と「骨太の方針」の根幹をなすのは、「人」「科学技術・イノベーション」「スタートアップ」「グリーン・デジタル」の4分野に重点的に投資するという方針だ。 「人」への投資では、これまで以上に「賃上げ」に取り組むとともに、非正規雇用も含めた約100万人に向けて能力開発や再就職の支援を行うとしている。 ただし、この「賃上げ」については、安倍晋三政権期(第2次)にさんざん民間企業に呼び掛けたが、思うような成果を上げられなかったことを忘れてはいけない(第80回・p6)。) 当時は「アベノミクス」による「円安」によって輸出企業の利益が増え、「失われた20年」という長期経済停滞から脱することができた。だが、従業員の賃金は一向に上がらなかった。アベノミクスの最も批判される部分だ(第163回)。 第2次安倍政権の約8年弱の期間、グローバリゼーションによる厳しい競争にさらされた企業は内部留保をため込むばかりで、賃上げを行わなかった。また、一部の企業は年功序列の雇用慣行を廃し、終身雇用の正社員を減らして非正規雇用を増やすことでコストダウンを続けた。 正規・非正規雇用の格差問題が国会で議論されたのは、2001年~06年の小泉純一郎政権期までさかのぼる。だが、この問題は長年解決せず、21年4月にようやく、全ての企業を対象とした「同一労働同一賃金」の原則に基づく政策が打ち出された。 だが、政策の裏をかき、正社員の賃金を下げて非正規雇用に合わせることで同一賃金とする企業が少なくなかった。その結果、格差は縮まらず、賃金も一向に上がってこなかった。 「新しい資本主義」の実行計画には、そうした過去の過ちを繰り返さないという視点も盛り込むべきではないだろうか』、「第2次安倍政権の約8年弱の期間、グローバリゼーションによる厳しい競争にさらされた企業は内部留保をため込むばかりで、賃上げを行わなかった。また、一部の企業は年功序列の雇用慣行を廃し、終身雇用の正社員を減らして非正規雇用を増やすことでコストダウンを続けた」、「「同一労働同一賃金」の原則に基づく政策が打ち出された。 だが、政策の裏をかき、正社員の賃金を下げて非正規雇用に合わせることで同一賃金とする企業が少なくなかった。その結果、格差は縮まらず、賃金も一向に上がってこなかった」、その通りだ。
・『AI投資においては米国の事例を他山の石とすべき  「科学技術・イノベーション」への投資では、大学を支援する10兆円規模のファンドを立ち上げ、人工知能(AI)や量子技術などの高度な研究活動に投資するとしている。加えて、AIの活用や研究開発を国家戦略に据え、科学技術投資の抜本拡充を図る方針だ。 しかし、AIを国家戦略に据えることは、諸外国では10年以上前から取り組まれており、目新しさはない(第113回)。そして、AIの研究や利活用を進めたとしても、必ずしも全国民が得をするとは限らないという結果も出ている。 例えば、米国ではバラク・オバマ政権期(09~17年)から、AI活用を国家戦略に据えてきた。オバマ政権は「製造業を国内に残す唯一の方法は、諸外国に比べて高い生産性を実現することだ」と主張し、多数の雇用を生み出す製造業の米国回帰をAI導入によって目指そうとした。 当時の米国は、工場のオペレーションや製造ラインを、AIを搭載した次世代ロボットに置き換えて自動化することを試みた。安い労働コストを求めて海外に移転した工場を米国に戻すべく、自動化によって人件費を低減しようとしたのだ。 その一方で、「製品設計」「工程管理」「製品の販売」「マーケティング」といった付加価値の高い分野では、優秀な人材の雇用を生み出そうとした。また、これらの作業を担う高度人材を育てるための教育を充実させた。 続くドナルド・トランプ政権期(17~21年)でも、この国家戦略は粛々と続いていた。トランプ氏が「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を打ち出し、国内外の企業に対して、工場を米国に移転させることを強く要求したのは周知の通りだ(第150回)。) 当時、多くの企業がトランプ大統領に従い、工場を米国に移転させた。トランプ政権期、コロナ禍が起こるまでは米国経済は非常に好調だった。しかし、好調な経済にもかかわらず、労働者の雇用は増えなかった。 工場の多くが自動化されたことで、未熟練労働者の働き口がなくなったのだ。そのため、石炭や鉄鋼といった産業の衰退が進む「ラストベルト」地域の労働者が、「トランプ大統領はうそつきだ」と反発する事態を招いた。 だが今の日本は、米国の事例を他山の石としておらず、いまだにAIを「未熟練労働者の代替」だと位置付けている印象だ。かといって、米国のように国を挙げて工場の全面自動化を進めてきたわけでもなく、全てが中途半端である。 その要因はいくつか考えられる。一つは年功序列・終身雇用が今も根強く残り、非正規社員を切り捨ててでも正社員の雇用を守ろうとする企業が多いこと。もう一つは、1980年代に通商産業省(当時)主導で、欧米に先駆けて初期のAIを導入するプロジェクトを推進し、失敗した悪夢があることだ。 もし岸田首相が、新政策によってこうした状況を変えたいのであれば、単にAI関連の研究活動に投資するだけでは不十分だ。過去の失敗事例を踏まえて「AIの発展に伴う雇用面のデメリット」という視点を盛り込み、それに対する改善策を併せて議論すべきではないだろうか』、「今の日本は、米国の事例を他山の石としておらず、いまだにAIを「未熟練労働者の代替」だと位置付けている印象だ。かといって、米国のように国を挙げて工場の全面自動化を進めてきたわけでもなく、全てが中途半端である。 その要因はいくつか考えられる。一つは年功序列・終身雇用が今も根強く残り、非正規社員を切り捨ててでも正社員の雇用を守ろうとする企業が多いこと。もう一つは、1980年代に通商産業省(当時)主導で、欧米に先駆けて初期のAIを導入するプロジェクトを推進し、失敗した悪夢があることだ」、「もし岸田首相が、新政策によってこうした状況を変えたいのであれば、単にAI関連の研究活動に投資するだけでは不十分だ。過去の失敗事例を踏まえて「AIの発展に伴う雇用面のデメリット」という視点を盛り込み、それに対する改善策を併せて議論すべきではないだろうか」、その通りである。
・『日本のスタートアップ投資も遅れており自慢できるレベルではない  実行計画における「スタートアップ」の項目では、新興企業への投資額を5年で10倍に増やすことを視野に入れた「5カ年計画」を年末に策定するとしている。 だが、日本政府のスタートアップ支援は他の先進国に比べて相当に遅れており、今さら「新しいことをやっている」とアピールしていることに違和感を覚えざるを得ない。 というのも、私が大学生だった約35年前、すでに「米国の大学では、最も優秀な学生は起業する」と聞いたものだった。 例えば、大学を中退したスティーブ・ジョブズが、ビデオゲーム会社アタリを経てAppleを共同で創業したのが1976年。ビル・ゲイツがハーバード大学を休学し、Microsoftを共同経営でスタートさせたのは75年だった。 80年代、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれ、日本型の年功序列・終身雇用の企業システムは世界に称賛された時期があった。米国経済は停滞し、日本に追い越されるのではないかと言われていた。 だが、その時期の若者の起業によって生まれた萌芽は、90年代以降、米国経済を劇的に復活させた「IT革命」に結実した。 前述のスティーブ・ジョブズらに加えて、Googleを起業したラリー・ペイジやセルゲイ・ブリン、Facebookを起業したマーク・ザッカーバーグ、Amazon.comを起業したジェフ・ベゾスらが登場して、「GAFAM」と呼ばれる国際的巨大IT企業群が次々と米国で台頭したのだ。 それに伴って、世界における「時価総額ランキング」の顔ぶれも変動。かつて上位を占めていた日本企業は、今では上記の巨大IT企業群に取って代わられてしまった。 企業の開業率でも明確な差がついており、欧米諸国では10%前後に上るのに対し、日本では4.2%にとどまっている(19年時点)。 また、スタートアップに対するM&A(企業の合併・買収)も同様で、18年時点での日本における件数はわずか15件。米国の約1%にすぎなかったという(産経新聞『スタートアップ支援、政府に司令塔、新しい資本主義実現会議、実行計画に反映へ』2022年4月12日)。 米国のみならず中国でも、AlibabaをはじめとするIT大手の成長は著しく、星の数ほどのスタートアップが今も誕生していることはいうまでもない。 岸田首相は、今年を「スタートアップ創出元年」とする意向だという。だが、「元年」だといっていること自体が、世界からすれば笑いもののレベルなのだ。 これだけ後れを取っている中、投資額を増やすだけで、世界と伍して戦えるスタートアップが出てくるのか。教育面など、他の領域においても抜本的なテコ入れが不可欠である』、「岸田首相は、今年を「スタートアップ創出元年」とする意向だという。だが、「元年」だといっていること自体が、世界からすれば笑いもののレベルなのだ」、宏池会出身者とは思えないようなお粗末な経済知識だ。
・『脱炭素シフトの潮流の中で 日本のエネルギー企業は遅れている  「グリーン・デジタル」投資では、「脱炭素社会」の実現のために、今後10年間に官民協調で150兆円の関連投資を行う計画だ。だが、これも胸を張って自慢するような話ではない。 というのも、現在、化石燃料を扱う企業に対して「ダイベストメント(投資撤退)」を宣言する世界の投資家・金融機関が急増している(週刊エコノミストOnline『沸騰!脱炭素マネー:環境対応が遅れる日本企業から投資家が資金を引き揚げている……石油メジャーでさえ「最エネ転換」を宣言 環境対応できない企業には淘汰の道が待っている』)。 そして、石油資源開発(JAPEX)、中国電力、INPEX(旧国際石油開発帝石)、電源開発(J-POWER)、北陸電力、北海道電力、出光興産、ENEOSホールディングスなどの日本企業が、「脱炭素事業戦略」が遅れていることを理由として、ダイベストメントされる事例が増えている。いまだに、石炭火力発電所を多く運用しているからだ。 加えて、日本は「再生可能エネルギー」への取り組みが遅れている。それは、安倍政権以降、東日本大震災によって国内の全基が停止した原子力発電所の再稼働を最優先する方向でエネルギー政策を進めてきたからである』、多くの「日本企業が、「脱炭素事業戦略」が遅れていることを理由として、ダイベストメントされる事例が増えている。いまだに、石炭火力発電所を多く運用しているからだ。 加えて、日本は「再生可能エネルギー」への取り組みが遅れている」、みっともない限りだ。
・『岸田首相の“新しい資本主義”に「今更感」が強い理由、何が足りない?  一方、海外では、ただでさえ強大な力を持っていた「石油メジャー」が再生可能エネルギーに取り組み、「総合エネルギー企業」とでも呼ぶべき企業体への変貌を遂げている。 例えば英BPは、再生可能エネルギーの発電所などを中心とした脱炭素関連事業の年間投資額を、30年までに現状の10倍となる約50億ドル(約5300億円)に拡大する計画だ。水素やCCUS(二酸化炭素の貯蔵・利用)事業も手掛けながら、石油・天然ガスの生産量を削減し、30年までに二酸化炭素排出量を最大40%削減する方針である。 日本のエネルギー企業がダイベストメントされる一方で、海外大手はさらに先に進もうとしているのだ。この差を埋めるにはどうすべきか、日本では官民連携でより深い議論を行うべきではないか』、「日本のエネルギー企業がダイベストメントされる一方で、海外大手はさらに先に進もうとしているのだ」、「岸田首相」はもっと危機感をもって打開策を立案すべきだ。
・『全てが中途半端な自民党政治は厳しく批判されるべき  この連載では、自民党の最大の特徴を「キャッチ・オール・パーティー(包括政党)」だと指摘してきた(第169回・p3)。要は、政策の「総合商社」か「デパート」のようなものであり、一応全ての政策課題に対応している。「新しい資本主義」も、現在の全ての政策課題を一覧に並べたようなものだ。 だが、残念なことに、重点投資4分野は新しい政策課題ではない。以前から認識されていながら、有効な手を打てなかった「古い政策課題」ばかりだ。 それらの課題解決のためのプロセスを決めて、予算を組んで実行して取り組むのは悪いことではない。 だが、そもそも欧米や中国などが何年も前に済ませていることを、「新しいことをやります」と胸を張ってアピールするような自民党や官僚組織の姿勢は、真摯(しんし)さも謙虚さも著しく欠いている。 岸田首相は“どや顔”で計画を発表するだけでなく、「なぜ、これまで長年にわたって有効な手を打てなかったのか」「今回の施策は、従来とどう違うのか」といったポイントが国民に伝わるよう、より詳細な説明を行うべきではないだろうか』、「そもそも欧米や中国などが何年も前に済ませていることを、「新しいことをやります」と胸を張ってアピールするような自民党や官僚組織の姿勢は、真摯(しんし)さも謙虚さも著しく欠いている。 岸田首相は“どや顔”で計画を発表するだけでなく、「なぜ、これまで長年にわたって有効な手を打てなかったのか」「今回の施策は、従来とどう違うのか」といったポイントが国民に伝わるよう、より詳細な説明を行うべきではないだろうか」、全く同感である。「岸田首相」にはもっと真摯に経済政策に向き合ってほしいものだ。

次に、本年3月13日付け文春オンラインが掲載した「哲学者」の斎藤幸平氏と「歴史家」のルトガー・ブレグマン 特別対談 #1「世界の富を独占する「上位0.1%の超金持ち」は“善良”なのか? 哲学者・斎藤幸平が考える、資本主義の限界の克服法」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/61174
・『暴走する資本主義にノーを突きつけ、『人新世の「資本論」』でマルクス主義を21世紀に復活させた斎藤幸平さん。危機意識を共有できる同世代として対話を重ねてきたのが、オランダ出身34歳の歴史家ルトガー・ブレグマンさんだ。 ブレグマンさんは、世界46カ国ベストセラー『Humankind 希望の歴史」で科学に裏付けられた“性善説”を提唱。世界が注目する気鋭の論者ふたりによる、来日特別対談!(全2回の1回目/続きを読む) ルトガー・ブレグマン(以下、ブレグマン) 日本で50万部近いセールスを記録した『人新世の「資本論」』のなかで、斎藤さんは大胆なアイデアを唱えていますね。行きすぎた資本主義の限界や気候危機を乗り越えるため、マルクス主義の立場から経済における「脱成長」が必要である、と。現行のシステムを大胆に変えるべく、いわば“ユートピア”を提案しているのですね。 斎藤幸平(以下、斎藤) はい、理想(ユートピア)を持たなければ、大きな社会変革はできませんから。とはいえ、困難も感じています。「資本主義が危機に瀕しているのは分かるが、『脱成長』は現実的でない」と批判されることもしばしばです。今日は、ポスト資本主義や新たな社会の可能性について、同世代のブレグマンさんと話し合えることを楽しみにしています』、興味深そうだ。
・『人間は本質的に善良である?  ブレグマン こちらこそ。最新刊『Humankind 希望の歴史』のなかで、私も斎藤さんに負けないラディカルな考えを展開してます――「ほとんどの人間は本質的に善良である」。そんなはずはない、と驚かれる人も多いかも知れません。しかしこれは、人類学、歴史学、心理学、社会学などにおける最新の研究からも証明されている事実なのです。 世界的ベストセラー『サピエンス全史』の著者ユヴァル・ノア・ハラリ氏も、「わたしの人間観を、一新させてくれた」という応援の言葉を寄せてくれました。私はこの「新しい人間観」に基づいて、今後の社会や未来をつくっていくべきだと考えています。 斎藤 ブレグマンさんも私と同じく、現行のシステムとは違う新たな“ユートピア”の重要性を感じているのですね。 ブレグマン ええ。でも、それに対して、「無理に決まっている」「過激過ぎる」「現状を破壊する気か」と言ってくる人もやはりいます。ただし気候変動ひとつ取っても、科学的な見地からも、待ったなしなのは明らかなのですが……。』、「ほとんどの人間は本質的に善良である」、私は本当だろうかと、懐疑的だ。
・『なぜ善良な人々が戦争するのか  斎藤 おっしゃる通りです。ただし私自身、じつはブレグマンさんの説への疑問もあるんです。 「ほとんどの人間は本質的に善良である」というあなたの主張にもかかわらず、今この瞬間にも、ウクライナでは戦争が起きています。なぜなのでしょうか。 ブレグマン 確かにヨーロッパの歴史は戦争にまみれています。とくに20世紀の前半は二度の大戦が起こり悲惨でした。 しかし、私が言いたいのはこうです――「ほとんどの人間は善良だ。しかし、権力は腐敗する」。 ウクライナ戦争も、権力を持った独裁的な人間が始めました。まさに私の住んでいる欧州で起きています。だからこそ、民主主義の大切さ、自由に集まり自由に発言できることの大切さを痛感しています。ウクライナは、民主主義のために戦っているのです。 同じようなことが、第二次世界大戦でも起きました。ナチスドイツは、ロンドンを空爆したらイギリスが降参すると思いました。しかし空爆を受けたことで、逆にロンドン市民は頑張り士気は高まったのです。ヒトラーと同じくプーチンも、ウクライナを攻撃すれば、士気を挫くことができると思いました。けれどもご存知の通り、ウクライナは善戦しています。 そもそも、いわゆる“戦争”が起き始めたのは人類史において最近のことなんですよ。農耕文化や定住の始まりが、そのきっかけになったとの研究もあります。 なぜ善良な人々が戦争するのかについては、仲間への共感、社会的な同調という観点からも説明が可能です』、「なぜ善良な人々が戦争するのかについては、仲間への共感、社会的な同調という観点からも説明が可能です」、ふーん。
・『スーパーリッチな人々の実態は  斎藤 仲間や家族を敵から守るために、人間は残虐になってしまうということですね。まさに人間性の持つジレンマです。 一方で「腐敗した権力」という言葉から私が連想するのが、世界の上位0.1パーセントを占めるような現代のスーパーリッチな人たちです。彼らは、他の人の生活を想像し、共感する力に欠けているように思えます。地球環境に悪影響を与えるプライベートジェットやクルーズ船を所持したりと、まるで地球は我々のものだと言わんばかりです。 人権を侵害する独裁者に制限を加えるように、スーパーリッチたちにも制限を加えるべきではないでしょうか。 ブレグマン 私は、スーパーリッチや世界的エリートが集うダボス会議へ出席したことがあります。しかし彼らが傲慢で自己中心的かというと、実際はフレンドリーで人柄もあたたかいのです。そして彼らは、ネットフリックスで放映されている「OUR PLANET 私たちの地球」という環境ドキュメンタリー番組を観て、この地球が破壊されている、と共感して涙を流しているんです。 でも私は、そんなあなたたちが地球を破壊しているのですよ、と言いたい(笑)。だって、1500機ものプライベートジェットでダボス会議に参加しているのですから。 もともと人間は、映画「ダークナイト」のジョーカーのような、悪それ自体を楽しむような邪悪な存在ではありません。にもかかわらず、戦争や環境破壊などが起きてしまうのは、本当に悲劇的ですよね』、「もともと人間は、映画「ダークナイト」のジョーカーのような、悪それ自体を楽しむような邪悪な存在ではありません。にもかかわらず、戦争や環境破壊などが起きてしまうのは、本当に悲劇的ですよね」、「悲劇的ですよね」で逃げて済む問題ではない。正面から捉えるべきだ。
・『「SDGsは大衆のアヘン」なのか  斎藤 共感する能力というのは、人間の強みでもあり、弱点でもあるということでしょうか。 ブレグマン はい。共感する能力、そして集団の一員でありたいという願望は、私たちのDNAに備わっています。日本は文化的にも、とくにその傾向が強いと感じています。人と違う意見を表明して目立ってしまうと、社会的なペナルティを受けるという現象も、日本においては顕著ですね。 とはいえ、おかしいことにおかしいと声を上げないと社会は進歩しません。18世紀に奴隷制廃止のため、19世紀に女性解放のために声を上げて戦った人々には、“嫌われる勇気”がありました。彼ら彼女らは当時、変人扱いされましたし、生きているあいだに目に見える成果を得られなかったかも知れません。でも、そんなペナルティにもかかわらず、声を上げたのです。 斎藤 全く同感です。その意味で、グレタ・トゥンベリさんは本当に勇敢ですね。地球環境が危機的状況にあることを世界に知らしめて、私たちの考えを根本から変えてくれたのですから。 けれども状況はあまり変わっていません。二酸化炭素の排出量は減っていない。私は『人新世の「資本論」』の冒頭で「SDGsは大衆のアヘンだ」と述べましたが、再生可能エネルギーに投資したり電気自動車を作ったりすれば環境によいことをしている、と私たちは安心しがちです。しかしやっていることは、今までと同じくお金儲けなのではないでしょうか。 世界が直面している危機に対しては、もっとほかにするべきことがあります。たとえばコロナ禍の際には、人々の命を守るためにロックダウンや市場介入が実現しました。これらは、政治家や科学者が必要だと提唱したからです。同じような大胆な政策を、環境問題についても行うべきです』、「「SDGsは大衆のアヘンだ」と述べましたが、再生可能エネルギーに投資したり電気自動車を作ったりすれば環境によいことをしている、と私たちは安心しがちです。しかしやっていることは、今までと同じくお金儲けなのではないでしょうか」、「SDGsは大衆のアヘンだ」とは言い得て妙だ。
・『資本主義の限界を克服する方法  ブレグマン だからこそ斎藤さんは、資本主義の限界を克服するために、脱成長を唱えているのですね。 斎藤 はい。脱成長については、マスコミや研究者のあいだでも、多くの反対意見があります。けれども『人新世の「資本論」』への読者からの反響は大きく、とくに若い世代からの支持を感じています。また、企業のSDGs担当者のなかにも、「自分がやっている仕事は、まやかしなのでないか」との矛盾した思いを私に打ち明ける人もいます。大企業に勤める人々も「じつは斎藤さんと、全く同じ意見です」「でも、大胆な変革の仕方が分からない」と悩んでいるのには驚きました。 ブレグマン なるほど、そうなのですね。僭越かも知れませんが、日本社会については部外者ながらに感じていることがあります。それは、無駄な仕事がとても多いということです。人類学者のデヴィッド・グレーバーが“ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)”と呼ぶような「社会に何の貢献もしていない仕事」ですね。 たとえば私が日本の空港に着いたときに驚いたのが、「階段」「注意」と書かれたボードを持って立っている空港スタッフがいたことです。人間が看板の代わりをさせられているんです。 日本には、誰もが何でもいいから仕事をしないといけないという強迫観念があるよう感じます』、確かに「日本」には「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」がある。
・『日本人は明らかに働き過ぎ  斎藤 日本でも、コロナ禍で『ブルシット・ジョブ』がよく読まれました。われわれはコロナを経て、“ブルシット・ジョブ”と“エッセンシャル・ワーク”の違いに気づいたのだと思います。“エッセンシャル・ワーク”は人間の生存に不可欠な仕事です。たとえば看護師や保育士、介護士などですね。自らがコロナに感染する危険をおかして、われわれを守ってくれています。 一方、デヴィッド・グレーバーはとくに、広告、金融、コンサルティングなどに“クソどうでもいい仕事”が多いと指摘しています。これらの仕事は、コロナからわれわれを守ってはくれません。にもかかわらず、広告、金融、コンサルティングの仕事のほうが高収入です。看護や介護などのエッセンシャル・ワーカーにもっと高い賃金を払うなど、資本主義の枠内でも出来ることはあると思うのです。 ブレグマン 私が思うに、ひとくちに資本主義と言っても、「日本の資本主義」と「オランダの資本主義」は、大分違うと感じています。たとえば労働時間を見てみましょう。オランダでは週35時間労働です。一方で日本は、残業も含めると週60時間、70時間の労働も珍しくないようですね。日本人は明らかに働き過ぎです。まずは現行の資本主義の枠内でも、変えるべきことはあるのではないでしょうか。 (ヨーロッパ文芸フェスティバル2022 オープニング対談にて収録)』、「デヴィッド・グレーバーはとくに、広告、金融、コンサルティングなどに“クソどうでもいい仕事”が多いと指摘しています。これらの仕事は、コロナからわれわれを守ってはくれません。にもかかわらず、広告、金融、コンサルティングの仕事のほうが高収入です」、これはどうみても暴論に近い、何が“クソどうでもいい仕事”かは、そんなに簡単には決められない筈だ。

第三に、この続きを、3月13日付け文春オンラインが掲載した:「哲学者」の斎藤幸平氏と「歴史家」のルトガー・ブレグマン 特別対談 #2「「資本主義体制のまま、気候変動を解決できるか」と問われて…世界が注目する論客、ルトガー・ブレグマンの回答は?」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/61175
・暴走する資本主義にノーを突きつけ、『人新世の「資本論」』でマルクス主義を21世紀に復活させた斎藤幸平さん。危機意識を共有できる同世代として対話を重ねてきたのが、オランダ出身34歳の歴史家ルトガー・ブレグマンさんだ。 ブレグマンさんは、世界46カ国ベストセラー『Humankind 希望の歴史』で科学に裏付けられた“性善説“を提唱。世界が注目する気鋭の論者ふたりによる、来日特別対談!(全2回の2回目/最初から読む)』、興味深そうだ。
・『小さなグループが世界を変える  ルトガー・ブレグマン(以下、ブレグマン) 「世界を変えるのは小さなグループだ」――これは文化人類学者マーガレット・ミードの言葉にありますし、過去の歴史からも明らかです。良い例でいうと、奴隷解放や女性の権利獲得運動が挙げられます。ともに最初は少数の人々によって始められて広まっていったんです。悪い例ですと、ナチスドイツです。ヒトラーとその周辺の人たちによって、“悪への道”が始まったのです。 いまの世界が直面している行き過ぎた資本主義や、気候変動問題をどう解決していくか。斎藤さんも、小さなグループが世界を変えると主張をなさっていますよね』、「小さなグループが世界を変える」、もう少し説明が必要だ。
・『日本の同調圧力の強さ  斎藤幸平(以下、斎藤) はい、政治学者エリカ・チェノウェスの研究にならって、3.5パーセントの人々が世界を変える、と主張しています。歴史を振り返ると、少数派の人たちが命を懸けたから、社会はよい方向に変わってきました。ただしその際には、多数派の人々が少数派の人々に対して、オープンなマインドを持つ必要があります。ヨーロッパでは、マイノリティの意見からも学ぼうという姿勢があるように感じます。一方で、日本では、なかなか当事者が声を上げても、マジョリティが耳を貸さないことが多い。 ブレグマン あくまで部外者としての私の意見ですが、日本の同調圧力が強いことも関係しているのではないでしょうか。たとえば法律で義務付けられていないにもかかわらず、人混みのない屋外でもマスクを着用し続ける。また、長時間労働も当たり前となっているようですね。しかし、「屋外でマスクをつける根拠はなかった」「週に70時間も働きたくないのは自分だけじゃなかった」とみなが気づけば、事態は急速に変化する気もしています。 革命が起きるときは、1人が2人、2人が4人にと一挙に増えるものです。斎藤さんの『人新世の「資本論」』は、50万部近く売れていると聞きました。しかも若い人たちに読まれているということに、日本における変革への大きな可能性を感じています』、「斎藤さんの『人新世の「資本論」』は、50万部近く売れている」、「日本における変革への大きな可能性を感じています」、大げさ過ぎる印象だ。
・『資本主義体制のまま、気候変動は解決できるか  斎藤 多くの日本人は、現在の経済システムに満足していません。でも他に選択肢はないと思っているから、現行システムを続けているのです。そして、人口問題や、労働環境、気候危機も解決できないと諦めてしまっている。 この状況を変えるために、『人新世の「資本論」』は、とにかく別の未来がありうるということを示すことを目指しました。でもそうしたことをやろうと思ったのも、資本主義への疑問、脱成長への共感が、欧州はじめ各国でも広まりつつあるのに触れたからです。 ブレグマンさんは脱成長についてどう考えますか? 資本主義体制のまま気候変動を解決できると思っていますか?』、どうなのだろう。 
・『テクノロジーには可能性がある  ブレグマン 脱成長についてはじつは私自身、矛盾した思いを抱いています。たとえば資本主義の象徴のひとつである広告について言うと、昔の公共空間には存在しなかった種類の広告は、なくてもよいかも知れません。公共空間(コモン)を取り戻そうという斎藤さんの考えには同感です。 ただし政治的なスローガンとして「脱成長」を掲げるのは、得策ではないかもしれません。「脱成長させますから、私に投票してください」と言うよりも、「成長させます」「豊かにさせます」と言った方が、人々からの支持が集まりますから。 また、ここは斎藤さんと意見が違うかも知れないの ですが、私自身はテクノロジーには可能性があると思います。太陽光や風力発電なども技術の進歩があり、安価に利用できるようなりました。家畜の牛を食べることは環境に悪いかも知れません。1キロの牛肉を得るために、25キロの飼料が必要です。そのため、健康によくて美味しくて安価な代用肉のイノベーションが必要とされているのです』、「テクノロジーには可能性がある」、「政治的なスローガンとして「脱成長」を掲げるのは、得策ではないかもしれません。「脱成長させますから、私に投票してください」と言うよりも、「成長させます」「豊かにさせます」と言った方が、人々からの支持が集まりますから」、なるほど。
・『間接民主主義は「じつは浅い考え」  斎藤 私も技術革新の必要性を否定しているわけではありません。けれども、技術がいくら発展しても、資本主義が大型化や計画的陳腐化を繰り返し、資源やエネルギーを浪費する限りで、環境危機を解決することができないのではないか。「成長しよう」「もっと豊かになろう」という人気取りを繰り返すことも、自分が次の選挙で勝つための無責任なスローガンだと、多くの人は気がつくようになっているのではないでしょうか。 この点と関連して、もう一つ聞きたいのですが、資本主義の危機と並んで、民主主義の危機も深刻な問題です。今、日本では、AIやアルゴリズムを使った「無意識民主主義」という議論が注目を集めています。民主主義というシステムについてはどう思われますか。 ブレグマン 政治家を選ぶために数年ごとに選挙する間接民主主義は、じつは浅い考えです。そもそも選挙は、簡単に操られてしまいますから。じつは古代ギリシャの民主主義は真逆でした。選挙は非民主主義的だと思われていたんです。そのため代表は、抽選によって選ばれていました。 間接民主主義を超えようとする試みは、現代でもあります。ラテンアメリカの一部の国では、市民が予算の使い方を決めるなど新しい試みを行い、うまくいっているそうです。市民を大人として扱えば大人として振る舞う、市民を無能として扱えば無能になるんです。だからこそ私は、ほとんどの人間は基本的に善であり、内なる力を秘めているという「新しい人間観」に基づいて社会設計をすべきと考えているんです。ちなみ にAIやアルゴリズムを使った資本主義や民主主義については、誰が設計するのか、という問題があります。 ) 斎藤 私の本でも、バルセロナのミュニシパリズム(地域自治主義)を紹介しています。スペインでは消費問題相が脱成長を唱えています。より厳しい気候変動の時代を生きることになる若い世代がこの動きをとくに支持しています。そう考えると、10年か15年後には政治勢力図も変わるかも知れません。 新しい経済の尺度も必要ですね。GDPだけではなく、環境への影響や人間の幸福度、社会の安全性などを測る尺度などです。たとえばGPI(世界平和度指数)を見ると、アメリカはナンバーワンではなく、ヨーロッパ諸国の方がランキングは高いのです。世界の見方を変える必要があります』、「民主主義の危機も深刻な問題です。今、日本では、AIやアルゴリズムを使った「無意識民主主義」という議論が注目を集めています。民主主義というシステムについてはどう思われますか。 ブレグマン 政治家を選ぶために数年ごとに選挙する間接民主主義は、じつは浅い考えです。そもそも選挙は、簡単に操られてしまいますから。じつは古代ギリシャの民主主義は真逆でした。選挙は非民主主義的だと思われていたんです。そのため代表は、抽選によって選ばれていました。 間接民主主義を超えようとする試みは、現代でもあります。ラテンアメリカの一部の国では、市民が予算の使い方を決めるなど新しい試みを行い、うまくいっているそうです」、「古代ギリシャの民主主義は真逆でした。選挙は非民主主義的だと思われていたんです。そのため代表は、抽選によって選ばれていました」、というのは興味深い。「バルセロナのミュニシパリズム(地域自治主義)を紹介しています。スペインでは消費問題相が脱成長を唱えています。より厳しい気候変動の時代を生きることになる若い世代がこの動きをとくに支持しています。そう考えると、10年か15年後には政治勢力図も変わるかも知れません」、なるほど。
・『高齢権力者が支配する日本の停滞  ブレグマン 歴史を見ると、大胆な変革には時間がかかることが多いです。奴隷制度の廃止には2世紀以上かかりました。米国での女性解放運動も1世紀かかりました。 これは一般論なのですが、ほとんどの人は30歳を過ぎると変化を好まなくなる傾向があります。日本は高齢権力者が支配している社会なので、とくに停滞しています。 けれども気候変動を回避するために残されている時間は短い。なので、つい悲観的になってしまいます。もしこのまま気温が2度、3度と上がったときに、科学者が示す未来予測は恐ろしいものです。多くの死者が出るかも知れませんし、エコシステムも壊されるでしょう。じつは私の住むオランダは、国土の一番低いところが海抜より7メートル低いんです。ですから地球温暖化への危機感も半端ではないのです。 斎藤 だからこそユートピア的な思想が必要ですね。戦争やパンデミックは、地球環境やわれわれの生活を悪化させてしまう。もし希望を捨てて受け身になれば、さらに悪いかたちの戦争、差別や暴力が生まれるのではないでしょうか。これらのバックラッシュに負けないように、民主主義を打ち立てないと。その意味で、今日ユートピア主義というのは現実主義なのです。 (ヨーロッパ文芸フェスティバル2022 オープニング対談にて収録)』、「私の住むオランダは、国土の一番低いところが海抜より7メートル低いんです。ですから地球温暖化への危機感も半端ではないのです」、「オランダ」の環境意識の高さには、国土の低さが影響しているとは初めて知った。「戦争やパンデミックは、地球環境やわれわれの生活を悪化させてしまう。もし希望を捨てて受け身になれば、さらに悪いかたちの戦争、差別や暴力が生まれるのではないでしょうか。これらのバックラッシュに負けないように、民主主義を打ち立てないと。その意味で、今日ユートピア主義というのは現実主義なのです」、「今日ユートピア主義というのは現実主義なのです」、逆説的だが、説得力がある。
タグ:資本主義 (その10)(岸田首相の“新しい資本主義”に「今更感」が強い理由 何が足りない?、世界の富を独占する「上位0.1%の超金持ち」は“善良”なのか? 哲学者・斎藤幸平が考える 資本主義の限界の克服法、「資本主義体制のまま 気候変動を解決できるか」と問われて…世界が注目する論客 ルトガー・ブレグマンの回答は?) ダイヤモンド・オンライン 上久保誠人氏による「岸田首相の“新しい資本主義”に「今更感」が強い理由、何が足りない?」 「第2次安倍政権の約8年弱の期間、グローバリゼーションによる厳しい競争にさらされた企業は内部留保をため込むばかりで、賃上げを行わなかった。また、一部の企業は年功序列の雇用慣行を廃し、終身雇用の正社員を減らして非正規雇用を増やすことでコストダウンを続けた」、「「同一労働同一賃金」の原則に基づく政策が打ち出された。 だが、政策の裏をかき、正社員の賃金を下げて非正規雇用に合わせることで同一賃金とする企業が少なくなかった。その結果、格差は縮まらず、賃金も一向に上がってこなかった」、その通りだ。 「今の日本は、米国の事例を他山の石としておらず、いまだにAIを「未熟練労働者の代替」だと位置付けている印象だ。かといって、米国のように国を挙げて工場の全面自動化を進めてきたわけでもなく、全てが中途半端である。 その要因はいくつか考えられる。一つは年功序列・終身雇用が今も根強く残り、非正規社員を切り捨ててでも正社員の雇用を守ろうとする企業が多いこと。もう一つは、1980年代に通商産業省(当時)主導で、欧米に先駆けて初期のAIを導入するプロジェクトを推進し、失敗した悪夢があることだ」、 「もし岸田首相が、新政策によってこうした状況を変えたいのであれば、単にAI関連の研究活動に投資するだけでは不十分だ。過去の失敗事例を踏まえて「AIの発展に伴う雇用面のデメリット」という視点を盛り込み、それに対する改善策を併せて議論すべきではないだろうか」、その通りである。 「岸田首相は、今年を「スタートアップ創出元年」とする意向だという。だが、「元年」だといっていること自体が、世界からすれば笑いもののレベルなのだ」、宏池会出身者とは思えないようなお粗末な経済知識だ。 多くの「日本企業が、「脱炭素事業戦略」が遅れていることを理由として、ダイベストメントされる事例が増えている。いまだに、石炭火力発電所を多く運用しているからだ。 加えて、日本は「再生可能エネルギー」への取り組みが遅れている」、みっともない限りだ。 「日本のエネルギー企業がダイベストメントされる一方で、海外大手はさらに先に進もうとしているのだ」、「岸田首相」はもっと危機感をもって打開策を立案すべきだ。 「そもそも欧米や中国などが何年も前に済ませていることを、「新しいことをやります」と胸を張ってアピールするような自民党や官僚組織の姿勢は、真摯(しんし)さも謙虚さも著しく欠いている。 岸田首相は“どや顔”で計画を発表するだけでなく、「なぜ、これまで長年にわたって有効な手を打てなかったのか」「今回の施策は、従来とどう違うのか」といったポイントが国民に伝わるよう、より詳細な説明を行うべきではないだろうか」、全く同感である。「岸田首相」にはもっと真摯に経済政策に向き合ってほしいものだ。 文春オンライン 斎藤幸平氏 ルトガー・ブレグマン 特別対談 #1「世界の富を独占する「上位0.1%の超金持ち」は“善良”なのか? 哲学者・斎藤幸平が考える、資本主義の限界の克服法」 『Humankind 希望の歴史」 「ほとんどの人間は本質的に善良である」、私は本当だろうかと、懐疑的だ。 「なぜ善良な人々が戦争するのかについては、仲間への共感、社会的な同調という観点からも説明が可能です」、ふーん。 「もともと人間は、映画「ダークナイト」のジョーカーのような、悪それ自体を楽しむような邪悪な存在ではありません。にもかかわらず、戦争や環境破壊などが起きてしまうのは、本当に悲劇的ですよね」、「悲劇的ですよね」で逃げて済む問題ではない。正面から捉えるべきだ。 「「SDGsは大衆のアヘンだ」と述べましたが、再生可能エネルギーに投資したり電気自動車を作ったりすれば環境によいことをしている、と私たちは安心しがちです。しかしやっていることは、今までと同じくお金儲けなのではないでしょうか」、「SDGsは大衆のアヘンだ」とは言い得て妙だ。 確かに「日本」には「ブルシット・ジョブ(クソどうでもいい仕事)」がある。 「デヴィッド・グレーバーはとくに、広告、金融、コンサルティングなどに“クソどうでもいい仕事”が多いと指摘しています。これらの仕事は、コロナからわれわれを守ってはくれません。にもかかわらず、広告、金融、コンサルティングの仕事のほうが高収入です」、これはどうみても暴論に近い、何が“クソどうでもいい仕事”かは、そんなに簡単には決められない筈だ。 ルトガー・ブレグマン 特別対談 #2「「資本主義体制のまま、気候変動を解決できるか」と問われて…世界が注目する論客、ルトガー・ブレグマンの回答は?」 「小さなグループが世界を変える」、もう少し説明が必要だ。 「斎藤さんの『人新世の「資本論」』は、50万部近く売れている」、「日本における変革への大きな可能性を感じています」、大げさ過ぎる印象だ。 どうなのだろう。 「テクノロジーには可能性がある」、「政治的なスローガンとして「脱成長」を掲げるのは、得策ではないかもしれません。「脱成長させますから、私に投票してください」と言うよりも、「成長させます」「豊かにさせます」と言った方が、人々からの支持が集まりますから」、なるほど。 「民主主義の危機も深刻な問題です。今、日本では、AIやアルゴリズムを使った「無意識民主主義」という議論が注目を集めています。民主主義というシステムについてはどう思われますか。 ブレグマン 政治家を選ぶために数年ごとに選挙する間接民主主義は、じつは浅い考えです。そもそも選挙は、簡単に操られてしまいますから。じつは古代ギリシャの民主主義は真逆でした。選挙は非民主主義的だと思われていたんです。そのため代表は、抽選によって選ばれていました。 間接民主主義を超えようとする試みは、現代でもあります。ラテンアメリカの一部の国では、市民が予算の使い方を決めるなど新しい試みを行い、うまくいっているそうです」、「古代ギリシャの民主主義は真逆でした。選挙は非民主主義的だと思われていたんです。そのため代表は、抽選によって選ばれていました」、というのは興味深い。「バルセロナのミュニシパリズム(地域自治主義)を紹介しています。スペインでは消費問題相が脱成長を唱えています。 より厳しい気候変動の時代を生きることになる若い世代がこの動きをとくに支持しています。そう考えると、10年か15年後には政治勢力図も変わるかも知れません」、なるほど。 「私の住むオランダは、国土の一番低いところが海抜より7メートル低いんです。ですから地球温暖化への危機感も半端ではないのです」、「オランダ」の環境意識の高さには、国土の低さが影響しているとは初めて知った。 「戦争やパンデミックは、地球環境やわれわれの生活を悪化させてしまう。もし希望を捨てて受け身になれば、さらに悪いかたちの戦争、差別や暴力が生まれるのではないでしょうか。これらのバックラッシュに負けないように、民主主義を打ち立てないと。その意味で、今日ユートピア主義というのは現実主義なのです」、「今日ユートピア主義というのは現実主義なのです」、逆説的だが、説得力がある。
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半導体産業(その9)(半導体産業が九州で復活へ でも実は「読むとショック」なTSMCの報告書、絶頂期を迎えていた日本の半導体メーカーが犯した最大のミスとは、半導体不足から一転 業績悪化が続々!半導体の優勝劣敗とラピダスの行方、政府挙げてニッポンを叩き売り…米台韓大手に“便利な下請け”扱いされる日の丸半導体の哀れ) [産業動向]

半導体産業については、本年2月17日に取上げた。今日は、(その9)(半導体産業が九州で復活へ でも実は「読むとショック」なTSMCの報告書、絶頂期を迎えていた日本の半導体メーカーが犯した最大のミスとは、半導体不足から一転 業績悪化が続々!半導体の優勝劣敗とラピダスの行方、政府挙げてニッポンを叩き売り…米台韓大手に“便利な下請け”扱いされる日の丸半導体の哀れ)である。

先ずは、本年2月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した未来調達研究所株式会社所属 経営コンサルタントの坂口孝則氏による「半導体産業が九州で復活へ、でも実は「読むとショック」なTSMCの報告書」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/318223
・半導体世界大手TSMCが熊本県に工場建設することで、九州が「シリコンアイランド」に復活しようとしている。TSMCのデータや米国の動きを踏まえながら、改めてその意義を考えてみた』、興味深そうだ。
・『TSMCの工場建設で九州の半導体産業が復活  九州が、「シリコンアイランド」として復活しようとしている。近年、半導体関連の投資が増加し、関連企業約1000社が集結。IC(集積回路)の生産は全国の4割を占める。 周知の通り、半導体の受託生産で世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県にて新工場を建設中だ(2024年末までに操業開始予定)。さらに、TSMCは日本で二つ目の工場建設を検討していることも明らかにした。早ければ25年内、熊本の近隣に設立する可能性が報じられている。実現すれば九州の半導体“熱”はさらに上昇するに違いない。 産業界は行政と連携し、九州7県で「九州半導体人材育成等コンソーシアム」も結成。半導体人材の育成や確保を拡充していくと発表している。関連企業の誘致は過去3年で急増し、インフラ整備も急ピッチで進む。 九州は原子力発電所が稼働しているため、安定的かつ(日本の他エリアと比較すると)安価な電力が確保できる。製造業が拠点を置く場所として比較優位性は高い。 TSMCが日本に進出すると報じられた当初は、生産予定の半導体が最先端のものではなかったことから、疑問視する声も相次いだ。しかし、世界中で半導体不足が深刻化したこと、地政学リスクも顕在化したことで、日本政府も尽力したTSMCの工場誘致は、評価されるに至った。 ただし、熊本では今、人材確保に苦労していると聞く。このあたりは引き続き、課題になるだろう』、「九州は原子力発電所が稼働しているため、安定的かつ(日本の他エリアと比較すると)安価な電力が確保できる。製造業が拠点を置く場所として比較優位性は高い」、なるほど。
・『以下は有料記事だが、今月の閲覧本数、残り1本まで無料) 米バイデン大統領の半導体に向けた熱意 他方、米国も、日本円にして数兆円規模の予算を可決し、国を挙げて半導体工場の建設に取り組んでいる。バイデン大統領の評価は分かれるが、少なくとも半導体分野では、あらゆる手を尽くしていると言っていいだろう。21年4月には、ホワイトハウスに半導体やIT関連企業のトップを招き、「CEO Summit on Semiconductor(半導体CEOサミット)」と名付けた決起集会を開いてもいる。 当日の様子はホワイトハウスのホームページやYouTubeでも見ることができる。決起集会におけるバイデン大統領は、わざわざ半導体ウエハーを手に持って、「これがわれわれのインフラ・ストラクチャーであり、多額の投資を行う」と関係者に向けて宣言。多数の企業が米国政府に賛同し、まさに政財界を挙げて半導体の入手に注力している。 そのかいあってか、22年12月、TSMCは米アリゾナ州に二つ目の工場を建設すると発表した。そこで生産するのは回路幅が3ナノの次世代チップだ。TSMCが台湾以外の、海外で最先端型を生産するのは初となる。その意味では、画期的といえるだろう。 そして発表の際、TSMCが出した文章はいろいろな示唆に富んでいた。内容を読むと、アマゾンやAMD、アップル、ブロードコム、NVIDIAといった米国の名だたる企業が、TSMCの工場建設について賛辞を連ねている。 その一方で、TSMCのトップであるマーク・リュウ氏は「米国に連れてきてくれて(has brought us here)ありがとうございます」と述べているのが印象的だ。自ら望んで進出したわけではないけれども、米国に呼んでくれてありがとう――と。この進出は、経済合理性というよりも、政治的な色彩が濃かったと暗に述べているようだ。もっとも、中国への配慮もあっただろう。 いずれにしても筆者からすると、米国の、なりふり構わず半導体を自国に集結しようとする熱情、「どんなことをしてでも産業を守る」といった覚悟は、ある種の狂気すら感じる』、「米国の、なりふり構わず半導体を自国に集結しようとする熱情、「どんなことをしてでも産業を守る」といった覚悟は、ある種の狂気すら感じる」、その通りだ。
・『読むとショックなTSMCの年次報告書(世界の半導体製造(ファウンドリー)を眺めると、TSMCの他にも、韓国のサムスン、米グローバルファウンドリーズなどの大手企業がある。しかし、TSMCの強さは圧倒的だ。世界はTSMCに依存しているといっても過言ではない。 では、なぜTSMCは強いのか。筆者が思うに、サムスンの製品も優れてはいるものの、サムスンと競合する企業がサムスンには注文しにくいといった事情もあるだろう。自社の先端技術を競合のサムスンには開示したくないからだ(もちろん、機密情報の保持はされている前提で)。 TSMCはあくまで半導体製造に特化した企業であり、そうした意味ではバッティングしない。しかも、台湾は「自由主義」経済圏であり、取引先としても付き合いやすい。 TSMCの強みは、営業戦略にもある。ここ数年、筆者はTSMCの年次報告書を熟読しているのだが、これを見ると、いろいろと考えさせられる。ショックだったのは、自動車産業向けの売上高が低いことだ。最新の22年第4四半期の売上高の内訳を見てみよう。 ●ハイパフォーマンスコンピューティング:42% ●スマートフォン:38% ●IoT:8% ●自動車6% ●デジタル消費電気機器:2% ●その他:4% 自動車向けは6%で、TSMCにしてみれば微々たる比率にすぎないだろう。さらに言えば、使っているのは旧世代の回路幅である。自動車メーカーは複数の階層に分かれたサプライヤーを抱え、まるで製造業の王者として君臨しているようだが、こと半導体の売り手側からすると、取引先としての優先順位は決して高いとはいえないことがわかる。 また、同様に年次報告書から回路幅に関する詳細を見ると、最先端の5~7ナノが54%と過半数を占める(!)。自動車が使用する40~65ナノは12%しかない』、「最新の22年第4四半期の売上高の内訳を見てみよう。 ●ハイパフォーマンスコンピューティング:42% ●スマートフォン:38% ●IoT:8% ●自動車6% ●デジタル消費電気機器:2% ●その他:4% 自動車向けは6%で、TSMCにしてみれば微々たる比率にすぎない・・・使っているのは旧世代の回路幅」、「自動車メーカーは・・・こと半導体の売り手側からすると、取引先としての優先順位は決して高いとはいえない」、その通りなのだろう。
・『TSMCが熊本に工場建設する意義  もっとも自動車関連各社が、なぜもっと早く先端のデバイスを使えないのか、といった指摘はあるだろう。旧世代のデバイスを使わずに、新世代のデバイスを使えばいいのではないか、と。 しかし、自動車産業は人命に関わる製品を生産しており、型式証明が厳格だ。安全性を何重にも確認し、試験し、保証しなければならない。だからこそ、選定する部品も実績が確証できるものに限られる。 とまあ、なんだか自動車産業の言い分を述べているようだが、それが現実だ。 改めて、TSMCが熊本に工場を設ける意義を考えると、たとえ新世代デバイスでなくてもメリットは大きい。世界的企業のTSMCはもとより、他の台湾企業との連携が深まるのは望ましいからだ。それに、半導体の需要が減ることは当面、考えにくい。半導体は「産業のコメ」と称されてきたが、時代が進み、コメどころか「心臓」と言っても過言ではない。 それに、日本から海外に向けて売れるモノが多いほど、海外(企業)に対して「日本(企業)にも売ってくれ」といった交渉力の向上が可能となる。その意味でも、九州シリコンアイランドの成功を願ってやまない』、「自動車関連各社が、なぜもっと早く先端のデバイスを使えないのか、といった指摘はあるだろう・・・しかし、自動車産業は人命に関わる製品を生産しており、型式証明が厳格だ。安全性を何重にも確認し、試験し、保証しなければならない。だからこそ、選定する部品も実績が確証できるものに限られる」、「半導体は「産業のコメ」と称されてきたが、時代が進み、コメどころか「心臓」と言っても過言ではない。 それに、日本から海外に向けて売れるモノが多いほど、海外(企業)に対して「日本(企業)にも売ってくれ」といった交渉力の向上が可能となる。その意味でも、九州シリコンアイランドの成功を願ってやまない」、同感である。

次に、2月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したタフツ大学フレッチャー法律外交大学院国際歴史学准教授のクリス・ミラー氏と翻訳家 千葉敏生氏による「 絶頂期を迎えていた日本の半導体メーカーが犯した最大のミスとは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/318251
・『NYタイムズが「映画『チャイナ・シンドローム』や『ミッション:インポッシブル』並のノンフィクション・スリラーだ」と絶賛! エコノミストが「半導体産業を理解したい人にとって本書は素晴らしい出発点になる」と激賞!! フィナンシャル・タイムズ ビジネス・ブック・オブ・ザ・イヤー2022を受賞した超話題作、Chip Warがついに日本に上陸する。 にわかに不足が叫ばれているように、半導体はもはや汎用品ではない。著者のクリス・ミラーが指摘しているように、「半導体の数は限られており、その製造過程は目が回るほど複雑で、恐ろしいほどコストがかかる」のだ。「生産はいくつかの決定的な急所にまるまるかかって」おり、たとえばiPhoneで使われているあるプロセッサは、世界中を見回しても、「たったひとつの企業のたったひとつの建物」でしか生産できない。 もはや石油を超える世界最重要資源である半導体をめぐって、世界各国はどのような思惑を持っているのか? 今回上梓される翻訳書、『半導体戦争――世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』にて、半導体をめぐる地政学的力学、発展の歴史、技術の本質が明かされている。発売を記念し、本書の一部を特別に公開する』、興味深そうだ。
・『絶頂期を迎えていた日本の半導体メーカーが犯した最大のミスとは  半導体メーカーによる過剰投資こそ日本不調の原因だった  ソニーの盛田昭夫は、1980年代、ジェット機で世界中を飛び回り、ヘンリー・キッシンジャーとの夕食、オーガスタ・ナショナルでのゴルフ、三極委員会などでの世界のエリートたちとの交流に明け暮れる毎日を送っていた。 彼は国際舞台でビジネスの賢人として崇められ、昇り竜のような勢いの世界的な経済大国、日本の代表的人物として扱われていた。 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」  「ナンバーワンとしての日本」という意味で、アメリカが教訓にすべき日本の高度経済成長の要因について分析したエズラ・ヴォーゲルの1979年の著書のタイトルとして有名〕の体現者だった彼にとって、この言葉を信じるのはたやすかった。ソニーのウォークマンをはじめとする消費者家電を追い風に、日本は繁栄を遂げ、盛田は財を築いた。 ところが、1990年に危機が襲いかかる。日本の金融市場が崩壊したのだ。経済は落ち込み、深刻な不況へと突入した。たちまち、日経平均株価は1990年の水準の半値近くにまで下落し、東京の不動産価格はそれ以上に暴落した。日本経済の奇跡が音を立てて止まったのだ。 一方、アメリカは、ビジネスの面でも戦争の面でも復活を遂げる。わずか数年間で、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」はもはや的外れな言葉に思えてきた。日本の不調の原因として取り上げられたのが、かつて日本の産業力の模範として持ち上げられていた産業だった。そう、半導体産業である。 ソニーの株価急落とともに、日本の富が目減りしていく様子を眺めていた69歳の盛田は、日本の問題が金融市場より根深いものだと悟った。彼は1980年代、金融市場における「マネー・ゲーム」ではなく、生産品質の改善に励むよう、アメリカ人に説いてきた。 しかし、日本の株式市場が崩壊すると、日本自慢の長期的な思考がとたんに色褪せて見えてきた。日本の表面上の優位性は、政府が後押しする過剰投資という名の持続不能な土台の上に成り立っていたのだ[1]。 安価な資本は半導体工場の新造を下支えした反面、半導体メーカーが利益よりも生産量に目を向けるきっかけとなった。マイクロンや韓国のサムスンといった低価格なメーカーが価格競争で日本企業に勝っても、日本の大手半導体メーカーはDRAM生産を強化しつづけたのである[2]。 日本のメディアは半導体部門で起きている過剰投資に気づき、新聞の見出しで「無謀な投資競争」「止められない投資」などと警鐘を鳴らした。しかし、日本のメモリ・チップ・メーカーのCEOたちは、利益の出ないなかでも、新しい半導体工場の建設をやめられなかった。 日立のある経営幹部は、過剰投資について「心配しだすと、夜も眠れなくなる」と認めた[3]。銀行が融資を続けてくれるかぎり、収益化の道はないと認めるよりも、支出を続けるほうがCEOたちにとっては楽だった。 アメリカの非情な資本市場は、1980年代にはメリットとは思えなかったが、裏を返せば、融資を失うリスクこそがアメリカ企業を常に用心させたともいえる』、「日本の株式市場が崩壊すると、日本自慢の長期的な思考がとたんに色褪せて見えてきた。日本の表面上の優位性は、政府が後押しする過剰投資という名の持続不能な土台の上に成り立っていたのだ[1]。 安価な資本は半導体工場の新造を下支えした反面、半導体メーカーが利益よりも生産量に目を向けるきっかけとなった。マイクロンや韓国のサムスンといった低価格なメーカーが価格競争で日本企業に勝っても、日本の大手半導体メーカーはDRAM生産を強化しつづけたのである」、「日本のメディアは半導体部門で起きている過剰投資に気づき、新聞の見出しで「無謀な投資競争」「止められない投資」などと警鐘を鳴らした。しかし、日本のメモリ・チップ・メーカーのCEOたちは、利益の出ないなかでも、新しい半導体工場の建設をやめられなかった」、なるほど。
・『日本の半導体メーカーが犯した最大のミスは「PCの隆盛を見逃したこと」  日本のDRAMメーカーは、アンディ・グローブのパラノイアや、商品市場の気まぐれに関するジャック・R・シンプロットの知恵から学べることがあったはずなのに、全員でいっせいに同じ市場に投資した結果、共倒れを運命づけられてしまったのだ。 その点、DRAMチップに大きく賭けることがなかったという意味で、日本の半導体メーカーのなかでは異色の存在だったソニーは、イメージ・センサー専用のチップなど、革新的な新製品の開発に成功した。 光子〔光の粒子〕がシリコンに当たると、チップにその光の強さに比例する電荷が生じるため、画像をデジタル・データに変換することが可能になる。したがって、ソニーはデジタルカメラ革命を引っ張るには絶好の立場にいたわけで、画像を検知する同社のチップは今でも世界の先端を走っている。 それでも、ソニーは不採算部門への投資の削減に失敗し、1990年代初頭から収益性が目減りしていった[4]。 しかし、日本の大手DRAMメーカーの大半は、1980年代の影響力を活かしてイノベーションを促進するのに失敗した。大手DRAMメーカーの東芝では、1981年、工場に配属された中堅社員の舛岡(ますおか)富士雄が、DRAMとはちがって電源が切られたあともデータを“記憶”しつづけられる新種のメモリ・チップを開発した。 ところが、東芝が彼の発見を無視したため、この新種のメモリ・チップを発売したのはインテルだった。そのメモリ・チップは一般に、「フラッシュ・メモリ」またはNANDと呼ばれている[5]。 しかし、日本の半導体メーカーが犯した最大のミスは、PCの隆盛を見逃したことだった。日本の大手半導体メーカーのなかで、インテルのマイクロプロセッサ事業への方向転換や、同社の支配するPCのエコシステムを再現できる企業はなかった。 唯一、NECという日本企業だけがそれを試みたのだが、マイクロプロセッサ市場でわずかなシェアを獲得するにとどまった。 グローブとインテルにとって、マイクロプロセッサで利益を上げられるかどうかは死活問題だった。しかし、DRAM部門で圧倒的な市場シェアを誇り、財務的な制約がほとんどなかった日本のDRAMメーカーは、マイクロプロセッサ市場を無視しつづけ、気づいたときにはもう手遅れになっていた。 その結果、PC革命の恩恵を受けたのは、多くがアメリカの半導体メーカーだった。一方、日本の株式市場が暴落するころには、日本の半導体分野での優位性はすでにむしばまれつつあった。) ([著者]クリス・ミラーの略歴、および[訳者]千葉敏生氏のry句歴はリンク先参照)』、「日本の半導体メーカーのなかでは異色の存在だったソニーは、イメージ・センサー専用のチップなど、革新的な新製品の開発に成功した。 光子〔光の粒子〕がシリコンに当たると、チップにその光の強さに比例する電荷が生じるため、画像をデジタル・データに変換することが可能になる。したがって、ソニーはデジタルカメラ革命を引っ張るには絶好の立場にいたわけで、画像を検知する同社のチップは今でも世界の先端を走っている。 それでも、ソニーは不採算部門への投資の削減に失敗し、1990年代初頭から収益性が目減りしていった」、「日本の半導体メーカーが犯した最大のミスは、PCの隆盛を見逃したことだった。日本の大手半導体メーカーのなかで、インテルのマイクロプロセッサ事業への方向転換や、同社の支配するPCのエコシステムを再現できる企業はなかった。 唯一、NECという日本企業だけがそれを試みたのだが、マイクロプロセッサ市場でわずかなシェアを獲得するにとどまった。 グローブとインテルにとって、マイクロプロセッサで利益を上げられるかどうかは死活問題だった。しかし、DRAM部門で圧倒的な市場シェアを誇り、財務的な制約がほとんどなかった日本のDRAMメーカーは、マイクロプロセッサ市場を無視しつづけ、気づいたときにはもう手遅れになっていた。 その結果、PC革命の恩恵を受けたのは、多くがアメリカの半導体メーカーだった」、いま思い返しても腹立たしい世紀の大失敗だ。

第三に、5月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「半導体不足から一転、業績悪化が続々!半導体の優勝劣敗とラピダスの行方」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/322597
・『世界の半導体メーカーの業績が悪化している。不足感から一転、利上げの長期化や景気後退への懸念もあり、半導体市況の「谷」は深まるだろう。ただ、中長期的には「戦略物資としての半導体」の重要性は増すはずだ。目先の市況悪化に耐えつつ設備投資を積み増し新しい製造技術を確立できるかが、メーカーの優勝劣敗を分ける。次世代ロジック半導体の製造を目指すラピダスの行方やいかに』、興味深そうだ。
・『世界の半導体メーカーで業績悪化  足元、世界の半導体メーカーの業績悪化が鮮明だ。背景には、コロナ禍の巣ごもり需要の反動でパソコンなどの需要が減少していることに加えて、一時、半導体不足から在庫を積み上げ過ぎたことなどがある。短期的に世界の半導体の需給が改善するとは考えにくく、当面、厳しい状況が続くとみられる。 米欧の金融引き締めは長引くことも予想され、世界的な景気後退の懸念も一段と高まりやすい。景気の強弱によって需要が大きく変動するのが半導体市況であり、需要の「谷」が一段と深まることが懸念される。 また、先端分野での米中対立の先鋭化も、半導体市況を下押しするだろう。そうした状況下、半導体関連の設備投資を維持できるか否かで、長い目で見た世界の大手半導体メーカーの競争力の差は鮮明化しそうだ。 それは、わが国の半導体産業が再び成長する重要な機会になり得る。わが国では産業界が総力を挙げて、次世代ロジック半導体の製造を目指すラピダスの事業運営体制が強化しようとしている。ラピダスがより迅速に新しいチップの製造技術を実現できるか、中長期的なわが国経済の成長にとっても一つの鍵となるだろう』、「産業界が総力を挙げて、次世代ロジック半導体の製造を目指すラピダスの事業運営体制が強化しようとしている。ラピダスがより迅速に新しいチップの製造技術を実現できるか、中長期的なわが国経済の成長にとっても一つの鍵となるだろう」、なるほど。
・『ほぼ全ての分野で半導体の需要が減少  足元、メモリ、ロジック、アナログなど、ほとんど全ての分野で半導体の需要が減少している。2022年後半以降、世界の半導体市況では、まずメモリ半導体の価格が下落し始めた。 台湾の調査会社トレンドフォース(Trend Force)によると、23年1~3月期のDRAM価格は平均して20%程度下落した。その結果、23年1~3月期、サムスン電子の半導体部門の営業損益は4兆5800億ウォン(約4600億円)の赤字に陥った。営業損益の赤字転落は14年ぶりだ。サムスン電子は減産を余儀なくされるほど需要は減少している。 ロジック半導体の需要も減少し始めた。22年10~12月期までファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の純利益は増加基調だった。TSMCは、アップルやAMD、エヌビディアなどのIT先端企業や世界の自動車メーカーの需要に応じて生産を行う。そのため、他社に比べると在庫の増加リスクには対応しやすかった。 しかし、23年1~3月期、TSMCの増益ペースは前年同期比で2%にとどまった。顧客企業は最終需要の減少に対応するために発注を絞り始めた。 パソコン向けを中心に、プロセッサーなどを生産する米インテルの業況はさらに厳しい。1~3月期、インテルの売上高は前年同期比36%減の117億1500万ドル(1ドル=136円換算で約1兆6000億円)、最終損益は27億5800万ドル(約3800億円)の赤字だった。 その要因の一つに、利益率の高い最先端チップの製造体制を確立できなかったことは大きい。16年頃、インテルは回路線幅10ナノメートル(ナノは10億分の1)の製造ライン立ち上げに失敗した。その後、同社は旧世代の製造ラインを用いて生産されるチップの演算処理能力の向上に取り組みつつ、最先端の製品面ではTSMCに依存した。 さらに、産業分野でのIoT技術の導入や、車載用の画像処理センサーなどの需要が拡大してきたアナログ半導体の分野でも、事業環境は悪化し始めた。この分野の大手である米テキサス・インスツルメンツは4~6月期の一株利益予想を下方修正している』、「ほぼ全ての分野で半導体の需要が減少」、なるほど。
・『当面、半導体市況は一段と悪化する懸念  今後、半導体の市況はさらに悪化しそうだ。特に、スマホ需要の飽和は大きい。米国の調査会社IDCは、23年の世界のスマホ出荷台数が前年から1.1%減少すると予想する。スマホはコモディティー化している。また、パソコン需要も落ち込みが鮮明だ。 それに加えて、IT先端企業のビジネスモデルも行き詰まっている。SNSやサブスクリプション(継続課金制度)の分野で競争が激化し、成長は以前に比べると鈍化した。また、マイクロソフトのように、人工知能(AI)によって検索や広告などの需要を喚起する動きはあるものの、AI利用が世界各国で支持を得ているとは言い難い。新しいビジネスモデルが確立されるにはまだ時間がかかるだろう。 さらに、世界的に設備投資が絞られていることも、目先の半導体需要を下押しする。主要国経済の中でも相対的に底堅さを保ってきた米国でさえ、3月の米耐久財受注統計によると、国内総生産(GDP)の算出に使用されるコア資本財の出荷が減少した。 アジア新興国地域では、中国のスマホ需要の減少、個人消費の停滞などを背景に、4月も韓国の輸出が減少した。半導体は前年同月比41.0%減だった。世界のITデバイスなどの製造拠点としての地位を高めてきた台湾では、鴻海(ホンハイ)精密工業やパソコン受託生産企業のコンパルなどの業績が急速に悪化している。一部で不足感は残ってはいるが、車載用半導体の需給ひっ迫も徐々に解消されている。 マクロ経済面でも、当面、米FRBや欧州中央銀行(ECB)は金融引き締めを続けるだろう。それに伴い、米国の一部中堅銀行の経営不安や、米欧の商業用不動産の価格下落リスクは高まりそうだ。米国などで家計や企業の利払い負担は増加し、個人消費や設備投資は一段と圧迫されるだろう。世界の半導体市況の底入れには時間がかかりそうだ』、「世界の半導体市況の底入れには時間がかかりそうだ」、なるほど。
・『半導体の優勝劣敗とラピダスの行方  中長期的に考えると、経済安全保障体制の強化、デジタル化の加速などを背景に、「戦略物資としての半導体」の重要性は増すはずだ。目先の市況悪化に耐えつつ設備投資を積み増し新しい製造技術を確立できるか否かは、世界の半導体メーカーの優勝劣敗を分けるといっても過言ではないだろう。 一つのシナリオとして、回路線幅3ナノメートルのロジック半導体、次世代チップと呼ばれる2ナノ以降のチップ製造面で、インテルとTSMCの差が一段と拡大する可能性もありそうだ。その展開が現実となれば、米国政府はさらに半導体分野の支援策や対中禁輸措置を強化する可能性も高まる。 今後の世界経済では、「新しい需要を生み出す力」がより、その国の成長に大きな影響を及ぼすだろう。それを念頭に、わが国産業界は対応策を練らなければならない。 注目すべきは、2ナノ以降のロジック半導体製造を目指すラピダスである。自動車・電子機器・素材などを中心に、本邦企業はまだ世界的な競争力を保っている。そうした企業が必要とするチップを円滑に供給し、スマホに次ぐ最終商品を生み出すことができれば、わが国経済の実力向上は可能だ。 また、2ナノのチップ製造に関しては、平面上での回路微細化に加え、チップを積層するなど新しい製造技術の実装が求められる。ラピダスが新しい製造技術を確立するため、わが国の半導体製造装置などの精密な工作機械、超高純度の半導体部材メーカーの力量が発揮できる部分も増えるはずだ。 わが国企業の成長に、ラピダスの成否が与える影響は大きい。かつて業界の盟主だったインテルは、半導体の微細化につまずき競争力を低下させた。世界の半導体市況のさらなる悪化懸念が高まる中、本邦企業のモノづくりの底力が問われている』、「2ナノ以降のロジック半導体製造を目指すラピダスである。自動車・電子機器・素材などを中心に、本邦企業はまだ世界的な競争力を保っている。そうした企業が必要とするチップを円滑に供給し、スマホに次ぐ最終商品を生み出すことができれば、わが国経済の実力向上は可能だ」、「ラピダスが新しい製造技術を確立するため、わが国の半導体製造装置などの精密な工作機械、超高純度の半導体部材メーカーの力量が発揮できる部分も増えるはずだ。 わが国企業の成長に、ラピダスの成否が与える影響は大きい」、「ラピダス」の成功に大いに期待したい。

第四に、5月20日付け日刊ゲンダイ「政府挙げてニッポンを叩き売り…米台韓大手に“便利な下請け”扱いされる日の丸半導体の哀れ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/323213
・『19日開幕のG7広島サミットは、半導体など戦略物資のサプライチェーン(供給網)強化も主要議題。本番を控え、岸田首相は18日、海外の大手半導体メーカーの経営幹部と官邸で面会した。参加したのは台湾のTSMC、韓国のサムスン、米国のIBM、インテル、マイクロンなど7社。世界的な半導体大手の幹部が一堂に集うのは異例だ。 岸田首相は「政府を挙げて対日直接投資の更なる拡大、また半導体産業への支援に取り組んでいきたい」とアピール。参加各社は日本政府の支援を前提に前向きな意向を示した。 面会の場でマイクロンは広島工場での次世代半導体製造に最大5000億円を投じると表明。サムスンも先端分野の研究開発について対日投資を検討していると伝えた。 「海外の半導体メーカーからすれば、日本に製造拠点を置くことは魅力的でしょう。政府支援に加えて、円安のおかげで安価な賃金で優秀な日本人を雇用できるからです。かつて日本の製造業は、人件費が安い中国や東南アジアに製造拠点を移転し、コストダウンを図りました。今、日本は逆の立場になっているのです」(経済ジャーナリスト・井上学氏)』、「岸田首相は18日、海外の大手半導体メーカーの経営幹部と官邸で面会した。参加したのは台湾のTSMC、韓国のサムスン、米国のIBM、インテル、マイクロンなど7社」、「岸田首相は「政府を挙げて対日直接投資の更なる拡大、また半導体産業への支援に取り組んでいきたい」とアピール。参加各社は日本政府の支援を前提に前向きな意向を示した」、わざわざ「岸田首相」に会いに集まるのは、補助金目当てだろう。
・『“日の丸復権”にはほど遠く  熊本に新工場を建設中のTSMCは製造能力の拡張を検討している。世界的な半導体メーカーが国内に工場を次々と建てれば、雇用が生まれ、経済効果も大きい。しかし、それでは“安いニッポン”から抜け出せない。1980年代、日本は半導体分野で世界をリードした。半導体メーカーの日本進出が増えれば、“日の丸半導体”は復権を果たせるのか。 「あくまで日本は“便利な下請け”との位置づけです。海外メーカーは重要な技術ノウハウや知見は教えてくれません。日本の技術で半導体を国産化するのと、海外メーカーの製造拠点になるのは全く次元が異なる。先進国の製造拠点となってきた東南アジアは技術立国にはなっていません。サプライチェーンにしても、メリットは少ないでしょう。半導体が入手しづらくなった場合、ドライな半導体メーカーが日本の製造拠点から、日本のユーザーに優先的に供給してくれるとは考えにくいからです」(井上学氏) 政府は2022年度補正予算で計上した1.3兆円を活用して海外メーカーの対日投資を支援する。安いニッポンの更なるたたき売りは続きそうだ』、「あくまで日本は“便利な下請け”との位置づけです」、それでも「政府は2022年度補正予算で計上した1.3兆円を活用して海外メーカーの対日投資を支援する。安いニッポンの更なるたたき売りは続きそうだ」、情けない限りだ。
タグ:半導体産業 (その9)(半導体産業が九州で復活へ でも実は「読むとショック」なTSMCの報告書、絶頂期を迎えていた日本の半導体メーカーが犯した最大のミスとは、半導体不足から一転 業績悪化が続々!半導体の優勝劣敗とラピダスの行方、政府挙げてニッポンを叩き売り…米台韓大手に“便利な下請け”扱いされる日の丸半導体の哀れ) ダイヤモンド・オンライン 坂口孝則氏による「半導体産業が九州で復活へ、でも実は「読むとショック」なTSMCの報告書」 「九州は原子力発電所が稼働しているため、安定的かつ(日本の他エリアと比較すると)安価な電力が確保できる。製造業が拠点を置く場所として比較優位性は高い」、なるほど。 「米国の、なりふり構わず半導体を自国に集結しようとする熱情、「どんなことをしてでも産業を守る」といった覚悟は、ある種の狂気すら感じる」、その通りだ。 「最新の22年第4四半期の売上高の内訳を見てみよう。 ●ハイパフォーマンスコンピューティング:42% ●スマートフォン:38% ●IoT:8% ●自動車6% ●デジタル消費電気機器:2% ●その他:4% 自動車向けは6%で、TSMCにしてみれば微々たる比率にすぎない・・・使っているのは旧世代の回路幅」、「自動車メーカーは・・・こと半導体の売り手側からすると、取引先としての優先順位は決して高いとはいえない」、その通りなのだろう。 「自動車関連各社が、なぜもっと早く先端のデバイスを使えないのか、といった指摘はあるだろう・・・しかし、自動車産業は人命に関わる製品を生産しており、型式証明が厳格だ。安全性を何重にも確認し、試験し、保証しなければならない。だからこそ、選定する部品も実績が確証できるものに限られる」、「半導体は「産業のコメ」と称されてきたが、時代が進み、コメどころか「心臓」と言っても過言ではない。 それに、日本から海外に向けて売れるモノが多いほど、海外(企業)に対して「日本(企業)にも売ってくれ」といった交渉力の向上が可能となる。その意味でも、九州シリコンアイランドの成功を願ってやまない」、同感である。 クリス・ミラー氏 千葉敏生氏 「 絶頂期を迎えていた日本の半導体メーカーが犯した最大のミスとは」 『半導体戦争――世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防』 「日本の株式市場が崩壊すると、日本自慢の長期的な思考がとたんに色褪せて見えてきた。日本の表面上の優位性は、政府が後押しする過剰投資という名の持続不能な土台の上に成り立っていたのだ[1]。 安価な資本は半導体工場の新造を下支えした反面、半導体メーカーが利益よりも生産量に目を向けるきっかけとなった。マイクロンや韓国のサムスンといった低価格なメーカーが価格競争で日本企業に勝っても、日本の大手半導体メーカーはDRAM生産を強化しつづけたのである」、 「日本のメディアは半導体部門で起きている過剰投資に気づき、新聞の見出しで「無謀な投資競争」「止められない投資」などと警鐘を鳴らした。しかし、日本のメモリ・チップ・メーカーのCEOたちは、利益の出ないなかでも、新しい半導体工場の建設をやめられなかった」、なるほど。 「日本の半導体メーカーのなかでは異色の存在だったソニーは、イメージ・センサー専用のチップなど、革新的な新製品の開発に成功した。 光子〔光の粒子〕がシリコンに当たると、チップにその光の強さに比例する電荷が生じるため、画像をデジタル・データに変換することが可能になる。したがって、ソニーはデジタルカメラ革命を引っ張るには絶好の立場にいたわけで、画像を検知する同社のチップは今でも世界の先端を走っている。 それでも、ソニーは不採算部門への投資の削減に失敗し、1990年代初頭から収益性が目減りしていった」、「日本の半導体メーカーが犯した最大のミスは、PCの隆盛を見逃したことだった。日本の大手半導体メーカーのなかで、インテルのマイクロプロセッサ事業への方向転換や、同社の支配するPCのエコシステムを再現できる企業はなかった。 唯一、NECという日本企業だけがそれを試みたのだが、マイクロプロセッサ市場でわずかなシェアを獲得するにとどまった。 グローブとインテルにとって、マイクロプロセッサで利益を上げられるかどうかは死活問題だった。しかし、DRAM部門で圧倒的な市場シェアを誇り、財務的な制約がほとんどなかった日本のDRAMメーカーは、マイクロプロセッサ市場を無視しつづけ、気づいたときにはもう手遅れになっていた。 その結果、PC革命の恩恵を受けたのは、多くがアメリカの半導体メーカーだった」、いま思い返しても腹立たしい世紀の大失敗だ。 真壁昭夫氏による「半導体不足から一転、業績悪化が続々!半導体の優勝劣敗とラピダスの行方」 「産業界が総力を挙げて、次世代ロジック半導体の製造を目指すラピダスの事業運営体制が強化しようとしている。ラピダスがより迅速に新しいチップの製造技術を実現できるか、中長期的なわが国経済の成長にとっても一つの鍵となるだろう」、なるほど。 「ほぼ全ての分野で半導体の需要が減少」、なるほど。 「世界の半導体市況の底入れには時間がかかりそうだ」、なるほど。 「2ナノ以降のロジック半導体製造を目指すラピダスである。自動車・電子機器・素材などを中心に、本邦企業はまだ世界的な競争力を保っている。そうした企業が必要とするチップを円滑に供給し、スマホに次ぐ最終商品を生み出すことができれば、わが国経済の実力向上は可能だ」、 「ラピダスが新しい製造技術を確立するため、わが国の半導体製造装置などの精密な工作機械、超高純度の半導体部材メーカーの力量が発揮できる部分も増えるはずだ。 わが国企業の成長に、ラピダスの成否が与える影響は大きい」、「ラピダス」の成功に大いに期待したい。 日刊ゲンダイ「政府挙げてニッポンを叩き売り…米台韓大手に“便利な下請け”扱いされる日の丸半導体の哀れ」 「岸田首相は18日、海外の大手半導体メーカーの経営幹部と官邸で面会した。参加したのは台湾のTSMC、韓国のサムスン、米国のIBM、インテル、マイクロンなど7社」、「岸田首相は「政府を挙げて対日直接投資の更なる拡大、また半導体産業への支援に取り組んでいきたい」とアピール。参加各社は日本政府の支援を前提に前向きな意向を示した」、わざわざ「岸田首相」に会いに集まるのは、補助金目当てだろう。 「あくまで日本は“便利な下請け”との位置づけです」、それでも「政府は2022年度補正予算で計上した1.3兆円を活用して海外メーカーの対日投資を支援する。安いニッポンの更なるたたき売りは続きそうだ」、情けない限りだ。
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医薬品(製薬業)(その7)(モデルナが「製薬業界のアマゾン」だといえる2つの理由~『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』(田中道昭 著)を読む、アステラス製薬が過去最高8000億円の買収 不運の連鎖を断ち切る「大博打」の全貌) [産業動向]

医薬品(製薬業)については、2021年10月5日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その7)(モデルナが「製薬業界のアマゾン」だといえる2つの理由~『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』(田中道昭 著)を読む、アステラス製薬が過去最高8000億円の買収 不運の連鎖を断ち切る「大博打」の全貌)である。

先ずは、昨年2月22日付けダイヤモンド・オンライン「モデルナが「製薬業界のアマゾン」だといえる2つの理由~『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』(田中道昭 著)を読む」を紹介しよう。
・『視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします』、興味深そうだ。
・『コロナ禍前までは製品販売の売り上げがゼロだったモデルナ  オミクロン株のまん延によって、新型コロナウイルスと人類の闘いの出口が見えづらくなってきた。今後どんな変異株が登場するか、予測がつかないからだ。ワクチンと特効薬の開発、そして日常生活での感染対策を続けるとともに、一人一人が当事者意識を持って、ウィズコロナへのシフトを考えていかなければならない。 ワクチンに関しては、ファイザーに続きモデルナも、オミクロン株に対応したワクチンの臨床試験を開始したと報じられている。日本における新型コロナウイルスワクチン接種は今のところ、この2社製に限られており、有効性の高いワクチンの開発に期待したいところだ。 さて、もはやほとんどの日本人にその名が知れ渡ったモデルナだが、どのような企業なのか、ご存じだろうか? 海外では有名な、製薬大手と思っている人もいるかもしれない。だが実はモデルナは、2010年に米国で設立されたばかりのバイオベンチャーなのだ。 わずか創業10年余りのベンチャー企業が、170年以上の歴史を誇る巨大製薬会社であるファイザーと、コロナワクチンでは肩を並べているのは驚くべきことだ。しかもモデルナは、2019年度まで市販製品が一つもなく、製品販売による売り上げはゼロだったという。) 本書『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』は、モデルナをはじめ、アップル、アマゾン、アリババといった企業の戦略が世界の医療・健康(ヘルスケア)産業を激変させる可能性を探っている。 著者の田中道昭氏は立教大学ビジネススクール教授で、テレビ東京の「WBS(ワールドビジネスサテライト)」コメンテーターを務める。シカゴ大学経営大学院MBA、専門は企業戦略&マーケティング戦略。『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH』(日本経済新聞出版)など多数の著書がある。 モデルナは、2020年1月10日に中国の科学者によって新型コロナウイルスの遺伝子情報がインターネット掲示板に公開されてから、たった3日でワクチン候補の設計を完了した(モデルナは遺伝子情報の開示を1月11日と捉え、2日で完了したとしている)。そこから臨床試験の準備完了までは42日。それまで、このプロセスの最速は20カ月だったというから、業界的にはとても信じられないスピードだったことが分かる』、「モデルナは、2020年1月10日に中国の科学者によって新型コロナウイルスの遺伝子情報がインターネット掲示板に公開されてから、たった3日でワクチン候補の設計を完了した(モデルナは遺伝子情報の開示を1月11日と捉え、2日で完了したとしている)。そこから臨床試験の準備完了までは42日。それまで、このプロセスの最速は20カ月だったというから、業界的にはとても信じられないスピードだったことが分かる』、よくぞここまでスピードアップできたものだ。
・『「一石○鳥」を狙うmRNAプラットフォーム戦略  モデルナが驚異的な速さでワクチンを開発し、しかもその有効性が認められ世界中で使われるようになった理由について田中氏は、「プラットフォーム」と「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という二つのポイントを指摘している。 まず、モデルナの「mRNAプラットフォーム戦略」から説明しよう。 知っている人も多いだろうが、ファイザー製とモデルナ製のワクチンは「mRNAワクチン」である。mRNA(メッセンジャーRNA)は、体内の細胞でタンパク質を作り出すのに必要な「設計図」を伝える働きをする物質。各細胞にはヒトの全遺伝子情報が格納されたDNAがあり、mRNAはその一部をコピーして細胞の外に持ち出し、タンパク質の「工場」であるリボソームに伝える。リボソームでは、mRNAがもたらした情報をもとに、特定の機能を担うタンパク質を作り出す。 mRNAワクチンは、体外から人工のmRNAを注入し、特定のタンパク質を合成させる。新型コロナウイルスワクチンの場合は、コロナウイルス特有のスパイクと呼ばれる細胞を覆う突起部分となるタンパク質を作らせる。スパイクという異物が体内にできれば、それを排除する免疫機能が働き、抗体ができる。そうすれば次にコロナウイルスが体内に侵入しても、抗体がスパイクを目印に撃退するので、感染や重症化を防げるというわけだ。 mRNAは設計図なので、どんなタンパク質を作るかによって自在に書き直しができる。遺伝子情報さえ分かれば、短時間で対応する設計図(mRNA)を設計することが可能だ。モデルナが3日でワクチンの設計を完了できたのは、mRNAを使ったからなのだ。 設計図を簡単に書き直せるということは、新型コロナウイルス以外にも有効なワクチンや薬品を短時間で開発できることを意味する。すなわち、mRNAという共通の基盤(プラットフォーム)の上で、多種多様な、あるいは一度に複数の疾患に対処する医薬品を開発できるということだ。 これは、これまでの製薬の常識を覆す破壊的イノベーションと言えるだろう。すなわち、これまでは個々の疾患ごとに治療法を考え、それに応じた薬を開発していた。しかし、mRNAを共通のプラットフォームとして開発すれば、mRNAを使った同じ仕組みでさまざまな疾患に対処できるようになる。) モデルナは、創業当初から、こうしたmRNAの可能性に着目し、より効率的でスピーディーに開発できる「mRNAプラットフォーム」を構築してきた。その最初の成果が新型コロナウイルスワクチンだった。 mRNAプラットフォームは、言ってみれば「一石○鳥」を狙うものだ。mRNA(一石)を使うことで、複数の疾患(○鳥)に対応できるからだ。 アマゾン ジャパンで新規ビジネス立ち上げに携わったキャリアを持つ太田理加氏が著した『アマゾンで私が学んだ 新しいビジネスの作り方』(宝島社)によると、アマゾンでは「イノベーションは誰にでも起こせる」という意識が全ての社員に浸透しているそうだ。 太田氏もそうした意識を持ち、イノベーションを「一石二鳥の問題解決」と分かりやすく解釈し、二つ以上の問題を同時に解決するにはどうしたらいいか、という視点で新規ビジネスを考えていったという。 太田氏も指摘しているが、アマゾンの典型的な「一石二鳥」にAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)がある。AWSは今や世界一のシェアを誇るクラウドサービスだが、もともとは自社の業務用であり、クリスマス前などの繁忙期以外は、サーバーに余剰が発生していた。その問題と、他社の業務改善という二つの問題を「一石」で解決しようとしたのがAWSというわけだ。 『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』で紹介されているアマゾンのヘルスケア事業の一つに「アマゾン・ヘルスレイク」がある。病院、薬局などのデータをAIによって整理・インデックス化・構造化するもので、AWSの機能の一つに位置付けられている。アマゾンも、AWSというプラットフォームを活用して多事業展開をしているのである』、「mRNAは設計図なので、どんなタンパク質を作るかによって自在に書き直しができる。遺伝子情報さえ分かれば、短時間で対応する設計図(mRNA)を設計することが可能だ。モデルナが3日でワクチンの設計を完了できたのは、mRNAを使ったからなのだ。 設計図を簡単に書き直せるということは、新型コロナウイルス以外にも有効なワクチンや薬品を短時間で開発できることを意味する。すなわち、mRNAという共通の基盤(プラットフォーム)の上で、多種多様な、あるいは一度に複数の疾患に対処する医薬品を開発できるということだ。 これは、これまでの製薬の常識を覆す破壊的イノベーションと言えるだろう」、「アマゾンの典型的な「一石二鳥」にAWS・・・がある。AWSは今や世界一のシェアを誇るクラウドサービスだが、もともとは自社の業務用であり、クリスマス前などの繁忙期以外は、サーバーに余剰が発生していた。その問題と、他社の業務改善という二つの問題を「一石」で解決しようとしたのがAWSというわけだ」、「mRNA」に通じる考え方だ。
・『モデルナは創業当初から「デジタルを前提とした」製薬会社  田中氏が指摘するモデルナのもう一つの成功ポイントが、「DX」だ。モデルナの場合、前述のmRNAプラットフォームを機能させるのに、DXが前提となっているとのこと。より多くのデータの集積・解析や実験・臨床試験、それらによる、より効果のあるmRNAによる医薬品や治療法の開発のためにはデジタル技術が必須だからだ。実際、モデルナは創業以来、自動化やロボティクス、アナリティクス、データサイエンス、AIなどに1億ドル以上を投資しているという。 モデルナのDXは、製薬会社がデジタル技術を取り入れて効率化を図るという次元ではない。モデルナは、最初からデジタルを前提とした、これまでにない新しいタイプの製薬会社なのだ。田中氏は、プラットフォームとDXをセットで展開するモデルナを「製薬業界のアマゾン」とみなしている。 モデルナは、2021年5月に開催した「Moderna Fourth Annual Science Day」において、生命活動におけるDNA、mRNA、タンパク質の関係を、コンピューターのストレージ、ソフトウエア、アプリケーションの関係にたとえて説明している。 すなわち、DNAは全てのタンパク質を作るための設計図を格納したストレージであり、mRNAはそのストレージのデータをもとにタンパク質を作るよう指示を出すソフトウエア、タンパク質は体内のさまざまな機能を実行するアプリケーション、というわけだ。これは、モデルナがまさしくテクノロジー企業の考え方で製薬ビジネスを展開していることを、如実に表している。 このように、異分野のシステム同士の類似性を見つける「見立て」は、さまざまなイノベーションのヒントになるだろう。なかなか新しい発想が浮かばない時には、「一石○鳥」で問題を解決できる方法はないか、異分野の似たシステムに「見立て」ることはできないか、と考えてみてはいかがだろうか』、「実際、モデルナは創業以来、自動化やロボティクス、アナリティクス、データサイエンス、AIなどに1億ドル以上を投資しているという。 モデルナのDXは、製薬会社がデジタル技術を取り入れて効率化を図るという次元ではない。モデルナは、最初からデジタルを前提とした、これまでにない新しいタイプの製薬会社なのだ」、「生命活動におけるDNA、mRNA、タンパク質の関係を、コンピューターのストレージ、ソフトウエア、アプリケーションの関係にたとえて説明している。 すなわち、DNAは全てのタンパク質を作るための設計図を格納したストレージであり、mRNAはそのストレージのデータをもとにタンパク質を作るよう指示を出すソフトウエア、タンパク質は体内のさまざまな機能を実行するアプリケーション、というわけだ。これは、モデルナがまさしくテクノロジー企業の考え方で製薬ビジネスを展開していることを、如実に表している」。「モデルナのDXは、製薬会社がデジタル技術を取り入れて効率化を図るという次元ではない。モデルナは、最初からデジタルを前提とした、これまでにない新しいタイプの製薬会社なのだ」、すごいビジネスモデルのようだ。

次に、本年5月25日付けダイヤモンド・オンラインが転載した医薬経済ONLINE「アステラス製薬が過去最高8000億円の買収、不運の連鎖を断ち切る「大博打」の全貌」を紹介しよう。これは有料記事だが、今月はあと2本まで無料。
・『今年の大型連休は平日の5月1日と2日に有給休暇をとれば最大9連休となり、帰省や旅行に出かけた人も多いと思う。その大型連休の真っただ中にアステラス製薬が“サプライズ”を発表した。眼科領域の治療薬を開発する米アイベリック・バイオ(ニュージャー州)の買収で、5月1日の午前8時に発表。日本ではあまり知られていない企業の買収のうえ、連休中の早朝で寝ていた記者もいたようだが、買収額がアステラスとしては過去最高額の約59億ドル(約8000億円)というのを知り、一気に目が覚めるニュースだった。 アステラスの岡村直樹社長CEOは急遽、午前11時からオンライン記者会見を開くと、買収の戦略的意義を約1時間にわたり説明。アイベリックが米国で承認申請中の加齢黄斑変性の開発品を獲得するのが狙いで、主力品である前立腺がん治療剤「イクスタンジ」の特許切れによる売上高減少を補えると期待した。イクスタンジの23年3月期の売上高は約6600億円で、連結売上高の4割強を占める。が、27年頃から特許切れを迎え、後発品の参入で収益激減が予想されており、ポスト・イクスタンジの新薬をどう揃えるかが、目下の経営課題となっている。 4月に社長になったばかりの岡村氏は、就任早々からトラブルに見舞われてきた。まず副社長となり岡村氏を支えるはずだった菊岡稔財務担当(CFO)が突然、「一身上の都合」を理由に退任。社長就任直後からCFO不在という異例の船出となっている。さらに3月末には中国当局が社員をスパイ容疑で拘束する事件が発生。早期解放に奔走するとともに、20年代後半に2000億円規模をめざす中国事業に水を差された。 相次ぐトラブルから「運のない社長」と不名誉な呼称さえ囁かれる岡村氏だが、今度は大型買収というサプライズである。果たして、このサプライズは「吉」となるか』、「主力品である前立腺がん治療剤「イクスタンジ」の特許切れによる売上高減少を補えると期待した。イクスタンジの23年3月期の売上高は約6600億円で、連結売上高の4割強を占める。が、27年頃から特許切れを迎え、後発品の参入で収益激減が予想されており、ポスト・イクスタンジの新薬をどう揃えるかが、目下の経営課題」、「4月に社長になったばかりの岡村氏は、就任早々からトラブルに見舞われてきた。まず副社長となり岡村氏を支えるはずだった菊岡稔財務担当(CFO)が突然、「一身上の都合」を理由に退任。社長就任直後からCFO不在という異例の船出となっている。さらに3月末には中国当局が社員をスパイ容疑で拘束する事件が発生。早期解放に奔走するとともに、20年代後半に2000億円規模をめざす中国事業に水を差された」、確かに「運のない社長」だ。
・『9年前から狙っていた開発品  アステラスが買収するアイベリックは米国で07年に眼科領域に特化したバイオ医薬企業として設立。社員数は約260人とそれほど大きくない企業だ。パイプラインは、米国で承認申請中の加齢黄斑変性を対象とした補体因子C5阻害剤「アバシンカプタドペゴル」(ACP)を除けば、残りは前臨床段階であまりパッとしない。だが、その申請中のACPが「ブロックバスター」になる可能性を秘めており、しかも、米国食品医薬品局(FDA)から優先審査の指定を受けて8月19日には審査を終える予定。順調に承認されれば早期に収益を確保できそうだ。 老化で網膜の中心部である黄斑に障害が起こり、視力が低下する加齢黄斑変性には大きく分けて2つのタイプがある。ひとつが網膜の下にできた異常な血管から出血などを起こす「滲出型」と呼ばれるタイプ。現時点での加齢黄斑変性治療薬の主戦場で、バイエルの「アイリーア」やノバルティスの「ルセンティス」が鎬を削る。 もうひとつが網膜の下にある網膜色素上皮が痛んで弱っていく「萎縮型」で、このタイプは米アキュセラなどが開発に挑んできたが失敗。長きにわたり治療薬が望まれ、ようやく今年2月に米アペリス・ファーマシューティカルズの「サイフォブレ」が米国で初めて地図状萎縮症(GA)の適応で承認を取得した。1バイアルあたり2190ドル(約30万円)と安くはないが、GA治療の「ゲームチェンジャー」と目される。続いてアイベリックのACPが承認を得れば、2番手ながら標準治療に喰い込めるポテンシャルがある。米国のGA患者は160万人おり、この市場を狙ってノバルティスや米ビライト・バイオも開発を急ぐ。 アステラスはGAを対象に自社開発品の第I相試験を進行中。以前からアイリベックの開発品にも注目してきたそうで、岡村氏は14年頃から「実はウォッチしていた化合物。臨床試験のデータなどがだんだん明らかになり、当初は米国外のライセンス案件としてアイベリックと話してきた」と語る。それが今年3月に急展開。アイベリックから会社買収も視野に入れた提案があり、とんとん拍子で買収が決定した。 前々から注視していた開発品だけに失敗はないと願いたいが、買収にリスクはつきもの。20年に約3200億円で買収した米オーデンテス・セラピューティクスの遺伝子治療薬「AT132」には、500億~1000億円の製品ポテンシャルがあると期待をかけるが、臨床試験で死亡例が多発して開発が遅延。また、前臨床段階の複数の開発品では有効性が確認できず中止となり、4月に500億円の減損損失を計上した。 最近、バイオ医薬品の買収額は高騰気味である。米ファイザーは今年3月に米シージェンを430億ドル(約5兆7000億円)で、米メルクは4月に米プロメテウス・バイオサイエンシズを108億ドル(約1兆4500億円)で買収すると発表した。アステラスが吹っかけられてオーデンテスの二の舞になれば運がなかったでは済まない』、「最近、バイオ医薬品の買収額は高騰気味である」、今回の「アイベリックのACP」買収が「吹っかけられ」たものでないことを祈る。
・『日本市場は期待薄か  では、ACPはどれほどの「金のなる木」になりそうなのか。アステラスはイクスタンジの特許切れで失う売上高減少分を、尿路上皮がん治療剤「パドセブ」と更年期障害治療薬「フェゾリネタント」に、ACPを加えることで埋める戦略を立てる。パドセブはピーク時3000億~4000億円を見込む。また、フェゾリネタントに関してはピーク時5000億円と試算。岡村氏はACPについて、「フェゾリネタント、パドセブに次ぐ第3の柱と申し上げているところから、だいたいの規模をお察しいただければといいなと思う」と述べており、ピーク時1000億~2000億円は固そう。 ただ米国で8月に承認されても勝負はこれから。先行するサイフォブレとの競合は避けられない。サイフォブレは臨床試験で18~24カ月の間に病変の拡大を最大36%減少。一方、ACPは12カ月で最大27.4%抑制した。岡村氏は「現在の症例の臨床試験の結果から議論するには時期尚早」と話すが、勝つ自信はあるようだ。 当然、米国以外でも開発しグローバル製品として展開したいところで、欧州と日本での開発を精査中という。ぜひ日本でも開発してもらいたいところだが、市場としての魅力は米国に劣るかもしれない。というのも米国では萎縮型の患者が多いが、日本ではほとんどが滲出型とされる。稼ぎは欧米市場が中心になると見られる。 アステラスは21年5月に発表した経営計画で、研究開発戦略「Focus Areaプロジェクト」を進めて、30年度にはイクスタンジの穴を埋める5000億円以上の製品確保を掲げる。しかし、残念なことに臨床のPOC(注)はこの2年間でゼロ。テコ入れをしているものの、とても目標達成には「比較的後期開発品でないと間に合わない」(岡村氏)ことから、アイベリックの買収に踏み込んだ。計画達成のための切羽詰まった判断で、焦りにも見えなくもない。 岡村氏は、前任の安川健司氏が策定した経営計画を託されるかたちで社長となった。就任会見では「結果にこだわる会社でありたい」と表明しただけに、運のせいにはできない。強引にでも運を引き寄せることができるかも力量。今回のサプライズ買収で流れが変わればいいのだが』、「アステラスは21年5月に発表した経営計画で、研究開発戦略「Focus Areaプロジェクト」を進めて、30年度にはイクスタンジの穴を埋める5000億円以上の製品確保を掲げる。しかし、残念なことに臨床のPOC(注)はこの2年間でゼロ。テコ入れをしているものの、とても目標達成には「比較的後期開発品でないと間に合わない」(岡村氏)ことから、アイベリックの買収に踏み込んだ。計画達成のための切羽詰まった判断で、焦りにも見えなくもない」、「焦り」でないことを願うばかりだ。
(注)POC:「概念実証」という意味。新しい概念や理論、原理、アイディアの実証を目的とした、試作開発の前段階における検証やデモンストレーションを指します(IoT用語辞典)
タグ:医薬品(製薬業) (その7)(モデルナが「製薬業界のアマゾン」だといえる2つの理由~『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』(田中道昭 著)を読む、アステラス製薬が過去最高8000億円の買収 不運の連鎖を断ち切る「大博打」の全貌) ダイヤモンド・オンライン「モデルナが「製薬業界のアマゾン」だといえる2つの理由~『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』(田中道昭 著)を読む」 『モデルナはなぜ3日でワクチンをつくれたのか』 「モデルナは、2020年1月10日に中国の科学者によって新型コロナウイルスの遺伝子情報がインターネット掲示板に公開されてから、たった3日でワクチン候補の設計を完了した(モデルナは遺伝子情報の開示を1月11日と捉え、2日で完了したとしている)。そこから臨床試験の準備完了までは42日。それまで、このプロセスの最速は20カ月だったというから、業界的にはとても信じられないスピードだったことが分かる』、よくぞここまでスピードアップできたものだ。 「mRNAは設計図なので、どんなタンパク質を作るかによって自在に書き直しができる。遺伝子情報さえ分かれば、短時間で対応する設計図(mRNA)を設計することが可能だ。モデルナが3日でワクチンの設計を完了できたのは、mRNAを使ったからなのだ。 設計図を簡単に書き直せるということは、新型コロナウイルス以外にも有効なワクチンや薬品を短時間で開発できることを意味する。すなわち、mRNAという共通の基盤(プラットフォーム)の上で、多種多様な、あるいは一度に複数の疾患に対処する医薬品を開発できるということだ。 これは、これまでの製薬の常識を覆す破壊的イノベーションと言えるだろう」、「アマゾンの典型的な「一石二鳥」にAWS・・・がある。AWSは今や世界一のシェアを誇るクラウドサービスだが、もともとは自社の業務用であり、クリスマス前などの繁忙期以外は、サーバーに余剰が発生していた。その問題と、他社の業務改善という二つの問題を「一石」で解決しようとしたのがAWSというわけだ」、「mRNA」に通じる考え方だ。 「実際、モデルナは創業以来、自動化やロボティクス、アナリティクス、データサイエンス、AIなどに1億ドル以上を投資しているという。 モデルナのDXは、製薬会社がデジタル技術を取り入れて効率化を図るという次元ではない。モデルナは、最初からデジタルを前提とした、これまでにない新しいタイプの製薬会社なのだ」、 「生命活動におけるDNA、mRNA、タンパク質の関係を、コンピューターのストレージ、ソフトウエア、アプリケーションの関係にたとえて説明している。 すなわち、DNAは全てのタンパク質を作るための設計図を格納したストレージであり、mRNAはそのストレージのデータをもとにタンパク質を作るよう指示を出すソフトウエア、タンパク質は体内のさまざまな機能を実行するアプリケーション、というわけだ。これは、モデルナがまさしくテクノロジー企業の考え方で製薬ビジネスを展開していることを、如実に表している」。 「モデルナのDXは、製薬会社がデジタル技術を取り入れて効率化を図るという次元ではない。モデルナは、最初からデジタルを前提とした、これまでにない新しいタイプの製薬会社なのだ」、すごいビジネスモデルのようだ。 ダイヤモンド・オンライン 医薬経済ONLINE「アステラス製薬が過去最高8000億円の買収、不運の連鎖を断ち切る「大博打」の全貌」 「主力品である前立腺がん治療剤「イクスタンジ」の特許切れによる売上高減少を補えると期待した。イクスタンジの23年3月期の売上高は約6600億円で、連結売上高の4割強を占める。が、27年頃から特許切れを迎え、後発品の参入で収益激減が予想されており、ポスト・イクスタンジの新薬をどう揃えるかが、目下の経営課題」、 「4月に社長になったばかりの岡村氏は、就任早々からトラブルに見舞われてきた。まず副社長となり岡村氏を支えるはずだった菊岡稔財務担当(CFO)が突然、「一身上の都合」を理由に退任。社長就任直後からCFO不在という異例の船出となっている。さらに3月末には中国当局が社員をスパイ容疑で拘束する事件が発生。早期解放に奔走するとともに、20年代後半に2000億円規模をめざす中国事業に水を差された」、確かに「運のない社長」だ。 「最近、バイオ医薬品の買収額は高騰気味である」、今回の「アイベリックのACP」買収が「吹っかけられ」たものでないことを祈る。 「アステラスは21年5月に発表した経営計画で、研究開発戦略「Focus Areaプロジェクト」を進めて、30年度にはイクスタンジの穴を埋める5000億円以上の製品確保を掲げる。しかし、残念なことに臨床のPOC(注)はこの2年間でゼロ。テコ入れをしているものの、とても目標達成には「比較的後期開発品でないと間に合わない」(岡村氏)ことから、アイベリックの買収に踏み込んだ。計画達成のための切羽詰まった判断で、焦りにも見えなくもない」、「焦り」でないことを願うばかりだ。 (注)POC:「概念実証」という意味。新しい概念や理論、原理、アイディアの実証を目的とした、試作開発の前段階における検証やデモンストレーションを指します(IoT用語辞典)
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中国情勢(軍事・外交)(その15)(なぜ中国の科学技術は飛躍的に向上したのか…中国のスパイがアメリカの研究機関から山ほど盗んだもの 留学生や研究者を脅して機密情報を盗ませる、国内13大学が「中国政府の宣伝工作拠点」に?“孔子学院”の危険な実態、アメリカ密入国めざす中国人が急増 一体なぜ?教師やエンジニアら知識人も逃亡) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、本年2月21日に取上げた。今日は、(その15)(なぜ中国の科学技術は飛躍的に向上したのか…中国のスパイがアメリカの研究機関から山ほど盗んだもの 留学生や研究者を脅して機密情報を盗ませる、国内13大学が「中国政府の宣伝工作拠点」に?“孔子学院”の危険な実態、アメリカ密入国めざす中国人が急増 一体なぜ?教師やエンジニアら知識人も逃亡)である。

先ずは、本年3月15日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの池上 彰氏による「なぜ中国の科学技術は飛躍的に向上したのか…中国のスパイがアメリカの研究機関から山ほど盗んだもの 留学生や研究者を脅して機密情報を盗ませる」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/67295
・『中国は世界でどのような諜報活動を行っているのか。ジャーナリストの池上彰さんは「情報機関に属する職員だけではなく、留学生や研究者などの民間人が国から要請を受け機密情報を盗むなどのスパイ活動を行っている」という――。(第1回) ※本稿は、池上彰『世界史を変えたスパイたち』(日経BP)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『アメリカが警戒する「孔子学院」の正体  2010年代以降、米中対立が強まる中、アメリカが「中国がアメリカ国内の対中言論をコントロールするプロパガンダの拠点になっている」として警戒しているものの一つが、各大学などに設置されていた「孔子学院」です。 表向きには「中国語や中国文化を無償で教える教育センター」だとして、中国はその地域の教育機関などと連携し、世界中にこの孔子学院を設置してきました。中でもアメリカはこの孔子学院の最大の進出国で、その数は最盛期には120校にものぼっていました。 しかしその実態は中国のインテリジェンス機関である統一戦線工作部から資金や指示の出ている、まぎれもない中国の工作機関なのではないか、との指摘が相次ぎ、2014年頃から2020年までの間にかなりの数の孔子学院が閉鎖されてきました。 こうした、一見スパイ活動や対外情報活動とは関係なさそうな組織を使うのは中国の得意技です。他にも、海外に多く居住している中国系の住民(華僑)なども含め、関係国との間に友好団体を作り、文化や芸術、交流活動などを行いながら、実際には中国・共産党の意向に沿った情報活動や、中国に友好的な外国人を獲得し、育てる役割も果たしています』、「「孔子学院」・・・表向きには「中国語や中国文化を無償で教える教育センター」だとして、中国はその地域の教育機関などと連携し、世界中にこの孔子学院を設置してきました。中でもアメリカはこの孔子学院の最大の進出国で、その数は最盛期には120校にものぼっていました。 しかしその実態は中国のインテリジェンス機関である統一戦線工作部から資金や指示の出ている、まぎれもない中国の工作機関なのではないか、との指摘が相次ぎ、2014年頃から2020年までの間にかなりの数の孔子学院が閉鎖」、「最盛期には120校・・・かなりの数の孔子学院が閉鎖」、「文化や芸術、交流活動などを行いながら、実際には中国・共産党の意向に沿った情報活動や、中国に友好的な外国人を獲得し、育てる役割も果たしています」、手の込んだ偽装工作だ。
・『中国の法律にある恐ろしい内容  さまざまな理由で海外にいる中国人を、情報機関の職員でもないのに自国の情報活動に利用する。現在も、これが中国のインテリジェンス活動の大きな特徴です。 しかも、中国では2017年に国家情報法が施行されました。この法律には「いかなる組織及び個人も、法律に従って国家の情報活動に協力し、国の情報活動の秘密を守らなければならない。国は、そのような国民、組織を保護する」(第7条)と定められています。 つまり、海外にいる中国人であっても、「国家に必要な情報を提供しなさい」と命じられれば、それに従わなければならない、ということです。 実際、日本の大学に留学していた中国人留学生が、サイバースパイの片棒を担がされていた事件が発覚しています。 中国のハッカー集団が足場として使っていたレンタルサーバーを、留学生が偽名で契約していたのです。この留学生は、中国在住の女性から「レンタルサーバーを偽名で借りてほしい」「日本のUSBメモリを購入して中国に送ってほしい」などと頼まれ、言うことを聞いてしまったのです。 しかし徐々に注文がエスカレートし、「日本企業しか買えないセキュリティーソフトを、日本企業に成りすまして購入しろ」と指示され、断ったところ「国に貢献しろ」などと協力を強要されたといいます』、「「日本企業しか買えないセキュリティーソフトを、日本企業に成りすまして購入しろ」と指示され、断ったところ「国に貢献しろ」などと協力を強要された」、酷い話だ。
・『「中国にいる親族がどうなってもいいのか」  留学生など、一般の中国人をこうした工作に参加させる場合、「祖国に貢献したくないのか」と迫るケースの他に、「中国にいる親族がどうなってもいいのか」と脅迫するケースもあるようです。 留学生に協力を迫ったこの女性の夫は、中国人民解放軍のサイバー攻撃部隊に所属していたこともわかっています。そして女性の夫が所属する部隊は、実際に日本のJAXA(宇宙航空研究開発機構)や航空関連企業に対してサイバー攻撃を行っていたのです。 元留学生は間接的にかかわったにすぎませんが、全体としてみれば日本に対するサイバー攻撃の一端を担ったことになってしまいました。 中国軍のサイバー攻撃のために、在外中国人、それも留学生まで使う。こうした中国のやり方に、アメリカは警戒感を強めています。 2022年7月には、ロンドンでMI5(保安部)のマッカラム長官と、FBI(アメリカ連邦捜査局)のレイ長官が合同で企業向けの講演会を行い、「中国のやり方に気をつけろ!」と警告を発しました。 それによれば、中国は欧米企業の機密情報を盗むためにさまざまな手段を講じており、サイバー攻撃はもちろん、協力者を使った情報の窃取を行っているといいます。 そして習近平が掲げた「中国製造2025」、つまり中国が2025年までに製造業で世界の頂点に立つという目標を達成するために、手段を選ばず攻撃を仕掛けてきている、と断言しました』、「「中国にいる親族がどうなってもいいのか」と脅迫するケースもある」、「ロンドンでMI5(保安部)のマッカラム長官と、FBI(アメリカ連邦捜査局)のレイ長官が合同で企業向けの講演会を行い、「中国のやり方に気をつけろ!」と警告」、「「中国製造2025」・・・目標を達成するために、手段を選ばず攻撃を仕掛けてきている、と断言」、大いに気を付けるべきだ。
・『スパイの約4割が民間人  最も気をつけるべきは「千粒の砂」という戦略で、「中国共産党は、かつてのように外交官を偽装する工作員を使わない。さまざまなチャンネルを通じて情報を集めている」と指摘したのです。 「千粒の砂」とは、いわゆる工作員や外交官を使うのではなく、世界中に散らばっている中国人をその都度、情報活動に利用する戦略のことです。 もともと中国は、特定のスパイに基づかず、多くの人手を使ってできるだけ多くの断片情報を集め、そこから使える情報を精査する手法を使っていました。これを「千粒の砂の中に一粒の砂金がある」と称したことから、中国の情報活動の姿勢や方針が「千粒の砂」戦略と呼ばれるようになりました。 実際、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)が、2000年から2019年初頭にかけてアメリカで起きた中国と関連したスパイ事件を確認したところ、137件の事件報告のうち、57%が「中国の軍人または政府職員」だった一方、36%が「中国の民間人」だったと指摘されています。 実にスパイ事件の4割近くが、特別な訓練を受けたわけではない「民間人」とは驚きます』、「スパイ事件の4割近くが、特別な訓練を受けたわけではない「民間人」とは驚きます」、その通りだ。
・『中国の科学技術力が上がった要因  こうした、広範囲の一般人を情報活動に使う中国の戦法を前に、防諜側は、一体誰を、どこまでの範囲の人間をスパイと考えて対処すればいいかがわからなくなります。 また、全体で見れば大きなスパイ行為であっても、多くの人間が少しずつ関係し、しかも当人はスパイ行為を行っているという自覚もないとなれば、仮に発覚しても司法で裁くことができません。 さらに留学生で言えば、先のサイバー事件のように具体的な指示を受けるだけでなく、実際に留学生として欧米の大学で見聞きした情報を、中国に持ち帰って祖国の発展に生かせ、という大きな方針も打ち出されています。 受け入れる欧米側の大学としては、優秀な中国人留学生や研究者であればあるほど、自国での研究・開発成果を中国に持ち帰られる危険性が常に存在している、ということになってしまいます。 また、実際に研究者の立場で世界中の研究機関や催しに参加し、そこで情報を得たり、意見交換したり、各国の研究者と知己を得たりすることは、当然、スパイ行為にはあたりません。そのため、中国はこうした立場の人間や、それに成りすました工作員をうまく使い、アメリカなどの科学技術情報を得ては国家の技術力向上に生かしていたようです』、「受け入れる欧米側の大学としては、優秀な中国人留学生や研究者であればあるほど、自国での研究・開発成果を中国に持ち帰られる危険性が常に存在している、ということになってしまいます」、「中国はこうした立場の人間や、それに成りすました工作員をうまく使い、アメリカなどの科学技術情報を得ては国家の技術力向上に生かしていたようです」、なるほど。
・『「豊かになれば民主化する」と思っていたが  中国は1988年に中性子爆弾の開発に成功しました。FBIはこれを「中国が独自に開発したものではなく、アメリカの国立研究所から獲得されたものだ」と分析しています。特にアメリカの軍事技術にかかわる研究や開発を行っている機関は、中国としては狙い目です。 アメリカは近年の中国の技術開発能力の飛躍は、留学生や研究者、さらにサイバー攻撃によってアメリカから盗んだ技術によって達成されたものであると考えているのです。 こうした中国式の情報収集は1970年代から行われてきたのですが、ここへきてアメリカが警戒感をあらわにしているのは、「中国は豊かになれば民主化し、共産党一党独裁体制から脱却するだろう」という見通しが間違っていたことを認識したからです。 さらに中国の科学技術力の伸びが想像以上に早く、サイバー領域での中国の活動があまりに活発なことが影響しているのでしょう。そのサイバー攻撃の足掛かりになっているのが、中国製の通信機器なのではないか』、「ここへきてアメリカが警戒感をあらわにしているのは、「中国は豊かになれば民主化し、共産党一党独裁体制から脱却するだろう」という見通しが間違っていたことを認識したからです」、甘い認識というより期待の誤りを遅まきながら、気付いたようだ。
・『日本はどうするのか  機器にバックドア(外部からシステムにアクセスできるような経路=ドアのこと。中国の場合は海外に販売する際に前もってこのドアを作っておき、外部からの情報窃取やサイバー攻撃の経路としている)が仕掛けられていて、米国内の通信情報がすべて中国に筒抜けになっているのではないかと危惧しているのです。 特に中国の通信大手企業であるファーウェイに対する警戒感が強まっていますが、そこにはバックドアの問題に加え、国家情報法の規定に基づき、「ファーウェイが業務上、アメリカで知り得た情報を、中国当局からの要請があれば政府に提供するのではないか」と考えられていることも含まれています。 これが、米中対立の中でも「経済安全保障」と言われる分野で、アメリカから中国製品の排除が進められている一番の理由です。 中国製品を排除し、中国系企業を減益させることで、次世代製品の開発や、戦略物資と言われる半導体製造技術を磨くための資金を絶ちたい。 アメリカの研究を中国人留学生や研究者が持ち帰るのを阻止し、中国の科学技術力の成長を鈍化させようという狙いがあるのです。 米中の間に挟まれた日本も、当然無関係ではいられません』、「日本」でも「経済安全保障」の視点で「中国製品」への警戒が高まっており、警戒心を一層高めて臨むべきだろう。

次に、5月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村 悠氏による「国内13大学が「中国政府の宣伝工作拠点」に?“孔子学院”の危険な実態」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323000
・『米国で閉鎖が相次ぐ孔子学院 国内13大学で設置が確認  政府は5月12日に閣議決定した答弁書において、国内の少なくとも13大学に、中国政府による教育機関「孔子学院」が設置されていると明らかにした。 日本で設置が確認されたのは、早稲田大、立命館大、桜美林大、武蔵野大、愛知大、関西外国語大、大阪産業大、岡山商科大、北陸大、福山大、山梨学院大、立命館アジア太平洋大、札幌大の13大学である。 この孔子学院は、中国政府が世界各国の大学などに非営利教育機構として設置を進めていたが、中国共産党のスパイ・プロパガンダ(政治宣伝)機関との指摘が相次ぎ、文部科学省は運営の透明化を大学側に求めていた。 米国においても2000年代後半~2010年代前半までに米国大学100校超のキャンパスにおいて開講されていたが、学問・表現の自由の侵害およびスパイ活動・知的財産窃盗などの可能性について連邦議会が懸念を表明、米国内では同学院の閉鎖が相次いでいる。だが、世界全体で見てみると、今も160以上の国や地域に550を超える孔子学院が存在するといわれる』、「日本で設置が確認されたのは・・・の13大学である」、「米国大学100校超のキャンパスにおいて開講されていたが・・・米国内では同学院の閉鎖が相次いでいる」、なるほど。
・『孔子学院の実態と要注意の国内大学とは  孔子学院は、2004年に「外国における中国語・中国文化の普及」を目的として韓国に初めて設立された。 その形態は、非政府組織(NGO)であるが、その実態は中国教育部(文部科学省に相当)傘下の国家漢語国際推進指導小組弁公室(漢語事務局)が運営機関であり、背後で中国共産党指導部が意思決定をしている国家プロジェクトである。 ちなみに、孔子学院には儒学の始祖「孔子」の名を冠しているが、儒学に関する教育機関では一切ない。 日本で孔子学院を開校する際には、大学と漢語事務局との間で契約を結ぶ。法令による設置認可や届け出が必要ないため、文部科学省などの認可は不要である。 そのため、孔子学院の運営に関しては、中国政府が設置先の大学に資金提供をし、教職員の採用方法などについても契約で自由に取り決めることができる。 日本の大学からすれば、孔子学院設置費用や運営費は、中国政府が援助するため、大学側はほとんど負担することなく、中国語教育を安価で学生に提供でき、学生も併せて募集できるため、メリットが多い。 日本における孔子学院設置の流れは以下の通りである。 (図表:日本における孔子学院設置の流れ はリンク先参照) 上記孔子学院設置校のうち、★印を付けた3大学における孔子学院は要注意である(その1つである工学院大学孔子学院は21年3月末閉鎖)。 まず、工学院大学と提携していた北京航空航天大学は、中国の軍需企業を管理する国家国防科学技術工業局に直属する国防七校の1つであり、同大は、大量破壊兵器であるミサイル開発の疑いがあるとして、貨物や技術の輸出時には経済産業省の許可が必要な「外国ユーザーリスト」に記載されている。 また、立命館大学、早稲田大学と提携している北京大学は、準国防大学といわれ、国家国防科学技術工業局が管理している大学である』、「日本の大学からすれば、孔子学院設置費用や運営費は、中国政府が援助するため、大学側はほとんど負担することなく、中国語教育を安価で学生に提供でき、学生も併せて募集できるため、メリットが多い」、ただ、「北京航空航天大学は・・・大量破壊兵器であるミサイル開発の疑いがあるとして、貨物や技術の輸出時には経済産業省の許可が必要な「外国ユーザーリスト」に記載」、「北京大学は、準国防大学といわれ、国家国防科学技術工業局が管理している大学」、など問題も抱えている。
・『孔子学院が危険な3つの理由  孔子学院の危険性は3点ある。 一点目は、孔子学院と受け入れ大学側との契約内容が不透明であることだ。 米国上院国土安全保障・政府問題委員会の報告によれば、 ●中国政府が孔子学院に関連し、米国教育機関に1億5000万ドル(約200億円)以上の資金を提供 ●中国政府が孔子学院の予算・教育内容・人事の全てを管理 ●孔子学院の教職員が中国の国益擁護を誓約 ●孔子学院と大学との契約内容を非公開 としており、極めて問題のある契約を孔子学院と受け入れ大学側とで締結している可能性があると指摘。日本においても契約内容は文部科学省などが審査する構造になっていない状況となっている。 二点目は、文部科学省をはじめ日本政府機関の審査などを経ずに、日本の大学内に中国政府の統制下にある機関(孔子学院)が設置されるため、大学および日本の自治に極めて重大な懸念があることである。 中国共産党のスパイ機関・プロパガンダ工作を行うと世界から指摘を受けている孔子学院に対し、日本はその設置を許容したままとなっている。 なお、一部メディアによれば、2010年に大阪産業大学の理事が孔子学院を運営する漢語事務局をスパイ機関と呼んだことで、キャンパス内の中国人留学生などから大きな反発を受けて謝罪して辞任し、この話が中国共産党機関紙の人民日報に掲載されたという。 いずれにせよ、中国政府の統制の下、教育内容が管理され、教育の自由を侵害している。これが、後述のプロパガンダ工作につながる。) 三点目は、プロパガンダ工作・スパイ活動の危険性である。 それは具体的にどのようなものなのか、以下解説したい』、「孔子学院と受け入れ大学側との契約内容が不透明」、「文部科学省をはじめ日本政府機関の審査などを経ずに、日本の大学内に中国政府の統制下にある機関(孔子学院)が設置されるため、大学および日本の自治に極めて重大な懸念がある」、「プロパガンダ工作・スパイ活動の危険性」、やはり大きな問題がありそうだ。
・『孔子学院を使った中国政府のプロパガンダ工作とは  孔子学院によるプロパガンダ工作は「シャープパワー」と位置付けられている。 シャープパワーとは、軍事力などの「ハードパワー」と、文化・教育・価値観といった「ソフトパワー」との中間に位置付けられている。 一般的に、ソフトパワーによって相手国の世論に対し、自国に対する親近感や好感を醸成し、対象国の世論を味方につけて自国の利益に資するようにする手法をパブリック・ディプロマシーという。 孔子学院はその手法の代表例であったが、中国のような権威主義国家ならではの強引・横暴な要素が大きいことから、シャープパワーとして批判されている。 その手法はこうだ。 まず、孔子学院において、友好的な文化・教育交流として、中国の文化や言語に多く触れてもらう。そして、学生に中国の文化に親しみを持たせた上で、中国への留学や招待を実施し、親中派として育て上げる。注意すべきは、このプロセスにおいてウイグル人権問題や香港弾圧について触れず、台湾問題や尖閣問題などについては中国の主張をソフトに教育・浸透させていくのだ。 中国に長く留学した私の知人(日本人)と会話した際、彼にウイグル人権問題の話題を投げかけてもけげんそうな顔を浮かべ、「留学して思ったが、そもそも証拠がないだろう。中国の現地では誰も問題にしていない」などとけむに巻こうとする。 尖閣問題についても、「中国の主張も聞かなければならない。日本の主張ばかり聞いても仕方ない」と中国目線で答えるのだ。さらに、「中国に来ればわかる」とまで言われてしまった(私が中国に行ったら、おそらく反スパイ法で拘束されるだろう)。 また、孔子学院の社会人学生として、例えばメディア関係の人間を中国旅行などに誘い、現地の“良い部分”の情報に多く触れ、親中派として育て上げる。同様の手法は企業幹部や政治家にも及ぶだろう。 要は、孔子学院を経て中国に“都合の良い情報”のみを与え、可能であれば感化させ、親中派を孔子学院の設置国で拡大させていくプロパガンダ工作である。そして、こうした取り組みが、日本の有力な大学において、日本政府(文部科学省)が関知することなく行われているのだ。 ちなみに、中国による工作はこれだけではない。 例えば、日本国際問題研究所の桒原響子氏によれば、台湾有事における一つの想定として、中国は、日本と米国の分断を目指し、「台湾有事における在日米軍や自衛隊の活動により、日本は戦争に巻き込まれる」と訴えることで、日本の軍事アレルギーを刺激し、批判的なデモや抗議活動を活発化させようとしていると述べている。 台湾有事に限らず、これに似た状況は、既に日本国内でも散見されているが、その背景に中国の思惑が働いていることは明白であろう』、「一般的に、ソフトパワーによって相手国の世論に対し、自国に対する親近感や好感を醸成し、対象国の世論を味方につけて自国の利益に資するようにする手法をパブリック・ディプロマシーという。 孔子学院はその手法の代表例であったが、中国のような権威主義国家ならではの強引・横暴な要素が大きいことから、シャープパワーとして批判されている」、「孔子学院を経て中国に“都合の良い情報”のみを与え、可能であれば感化させ、親中派を孔子学院の設置国で拡大させていくプロパガンダ工作である。そして、こうした取り組みが、日本の有力な大学において、日本政府(文部科学省)が関知することなく行われているのだ」、恐ろしい主権の侵害だ。
・『孔子学院によるスパイ活動とは  まず、孔子学院が設置されている大学が保有する研究情報などの知的財産に加え、中国人留学生のコミュニティー情報、有力人物の人脈等について極めて近くで触れられる環境にある。 また、中国の「千粒の砂戦略」のように、中国はビジネスマンや留学生などのさまざまなチャネルを利用して技術情報の窃取を試みる。事実、中国人留学生による諜報事件は近年、日本国内でも幾度か検挙されている。 特に悪質なのは、中国政府機関系の人間が善意の留学生に接触し、スパイ活動に加担させる点だ。 2008年夏、北京五輪の聖火リレーが開かれた際、中国大使館などの指示を受け、中国人留学生学友会を主とした中国人留学生が全国から動員されたが(当時の報道によると、3000~5000人が集まったとされる)、善意の留学生であれ、中国政府の意向には従順である。したがって、中国政府が孔子学院を通じ、情報収集や工作活動を指示すること、または同活動にリクルートすることは当然想定される。 さらに、3月初旬に、日本に留学していた女子留学生が香港に一時帰国した際、SNSで香港独立に関する情報を流したとして国家安全維持法違反の容疑で逮捕された件や、中国非公式警察による在日中国人コミュニティに入り込んだ監視活動を鑑みても、孔子学院がプロパガンダ工作を行うだけではなく、これら反体制動向の監視活動に関与、情報提供などの支援を行っていると推察することもできる』、「中国政府が孔子学院を通じ、情報収集や工作活動を指示すること、または同活動にリクルートすることは当然想定される・・・孔子学院がプロパガンダ工作を行うだけではなく、これら反体制動向の監視活動に関与、情報提供などの支援を行っていると推察することもできる」、なるほど。
・『孔子学院に対して政府は対応策を示すべき  今回、参政党の神谷宗幣参院議員の質問主意書に答えた形で、報道において孔子学院がクローズアップされた。 2021年には、参議院文教科学委員会質問において、自由民主党の有村治子参議院議員が孔子学院について取り上げ、萩生田光一文部科学相(当時)が初めて孔子学院への対応を明言した。また、過去には自由民主党の杉田水脈衆院議員が予算委員会(第四分科会)において、孔子学院について取り上げている。 これまで、孔子学院について、各国が閉鎖などの措置を進める中で、日本においてはその対応が明確になされることはなく、前述の議員たちの行動によってクローズアップされては世間からの関心が薄れ…ということを繰り返している。この状況は、現在の厳しい国際情勢の中で日本の立場として懸念すべきではないだろうか。 日本として明確な対応策を示す必要がある。 そして、社会もこの問題について関心を高めるべきだろう。 最後に断っておくが、中国の文化に触れ、中国の言語を学び、互いの理解を深めるのは素晴らしいことであり、筆者にも素晴らしい中国人の友人がいる。 一方で、本稿において、それとは区別して孔子学院への懸念に対し、社会において改めて認識され、日本の対策がわずかでも進むことを期待したい』、「孔子学院に対して政府は」、大学任せにせず、「対応策を示すべき」、その通りだ。

第三に、5月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家・ジャーナリストの莫 邦富氏による「アメリカ密入国めざす中国人が急増、一体なぜ?教師やエンジニアら知識人も逃亡」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323114
・『米国に密入国した密航者の中に現れた中国人  深夜、メキシコと米国との国境地帯。地続きの国境線の向こう側に立っている米国の警察官が、懐中電灯で国境線に沿って作られた鉄条網のメキシコ側の河畔を照らしている。なぜか。 群衆がその河畔を移動しているのだ。中には乳飲み子を抱えている男性もいる。米国に密入国しようとする者を取り締まる米国の警察官が、照明の便宜を与えているこの滑稽な光景に、今日の米国密入国における現状の一つの側面を見いだすことができる。 メキシコと米国との国境を突破して米国に密入国した人たちの群れに、最近、新しい顔が増えた。中国人だ。 中南米ルートを使って米国とメキシコの国境にたどり着いた中国国民の数は最近急増しており、米国国土安全保障省の統計によると、昨年10月以降、中国人密入国者が6500人を超え、前年同期の15倍に跳ね上がり、歴史的なピークに達したという。 私は、1990年代初頭、中国人密航者の非合法旅行を操る業者「蛇頭」と密航者たちを追跡して取材したことがあるだけに、このニュースを知り、大きな驚きを覚えた。中国社会も大きく変化し、中国人の密航者はいなくなったと思っていたからだ』、「昨年10月以降、中国人密入国者が6500人を超え、前年同期の15倍に跳ね上がり、歴史的なピークに達した」、「米国」への「密入国者」で「中国人」が急増しているとの報には驚かされた。
・『中国人密航者を操る『蛇頭』、やがて下火になったが…  1994年に、私が日本語で書いたノンフィクション書籍『蛇頭』は日本でベストセラーとなった。ベトナム難民を装った福建省出身の密航者が多かった時期にも一致したため、同書に対する日本社会の関心度が高く、日本メディアでの露出も多かった。 故・立花隆さんは『週刊文春』の連載で『蛇頭』を取り上げ、絶賛してくれた。テレビ局をはじめ、1日で7、8社のメディアの取材を受けたこともある。日・米・英・仏・独・露・伊などの国々の多くのメディアに取り上げられ、中国でも話題になり、世界知識出版社が『点撃蛇頭』という書名で中国語版を出版してくれた。 出版後の波及効果も大きかった。『蛇頭』を読んだ映画評論家の馳星周さんが同書にインスピレーションを得て冒険小説『不夜城』を書いた。本が出版された時、馳星周さんは『蛇頭』を参考にして書いたことをわざわざ本の中に明記していた。 『蛇頭』は、福建省出身の密航者問題で頭を痛めた日本の警察当局からも注目された。ある地方自治体の警察本部が一度で500部を購入した。警察学校では『蛇頭』が警察研修用の副読本にもなり、おかげで私の名前を覚えた警察官も相当いた。 香港の映画監督・映画プロデューサーのイー・トンシン(爾冬陞、Derek Yee)さんは『蛇頭』を読んで、新宿を舞台にした映画『新宿インシデント』(中国語は「新宿事件」)を作った。2009年に公開されたこの映画の主演はジャッキー・チェンさんで、日本人の映画俳優陣には、竹中直人さん、長門裕之さんらがいた。映画のエンディングに、私の名前も入っている。 中国経済の急速な発展で、08年北京オリンピック以降、多くの中国人が自由に海外旅行へ出られるようになり、いまや多くの国々の観光事業を支える重要な顧客にもなった。こうした社会事情の変化もあり、『蛇頭』もやがて絶版となった。 ベストセラーの作品が絶版となったことに対し、私はむしろ中国社会の進歩を表した一つの現象だと受け止め、中国はもう密航者を作りださないだろうと信じた。 こう信じていただけに、米国とメキシコとの国境を目指す中国人密入国者が大勢いるという最新の報道を読んだ私は絶句したのだ』、「中国経済の急速な発展で、08年北京オリンピック以降、多くの中国人が自由に海外旅行へ出られるようになり、いまや多くの国々の観光事業を支える重要な顧客にもなった。こうした社会事情の変化もあり、『蛇頭』もやがて絶版となった・・・もう密航者を作りださないだろうと信じた。 こう信じていただけに、米国とメキシコとの国境を目指す中国人密入国者が大勢いるという最新の報道を読んだ私は絶句した」、なるほど。
・『南米まで行けば…米国への密航に希望を持つ中国人  15年に米国の国境警備隊は、米国国境を密航という手段で突き破ろうとした中国出身の密航者を48人取り押さえた。しかし、14年まで米国当局には記録がないとし、「(同国境で)中国国民を捕まえたことは一度もない」と述べた。 しかし、22年末から情勢は急転した。米国への密入国を狙う群れの中にいる中国人は、日を追うごとに増加しているのだ。ある米国在住の中国人関係者はSNSを通しての私の取材に、次のように述べた。 「今年3月までにパナマにある難民キャンプはほとんど中国人に占領されている。ある現地の撮影者から、1日に車十数台分の密航者が運び込まれていて、ほとんどの乗客は中国人だったと証言があった。パナマ政府の発表によると、今年1月から3月の間に3855人の中国人密航者がコロンビアとパナマの国境地帯にあるダリエン地峡を通過した。目的地はアメリカだ」 太平洋の端にある中国から遠く離れた米国までの道のりは遠い。中国のパスポート所持者に対してビザ免除措置を与える南米の国が増えたことで、米国に近い南米のいくつかの国までは飛行機で移動することができるようになった。米国への密入国を希望する人にとっては、好都合だ。 エクアドルは、現在多くの中国人が選んだ重要な着地点である。そこからは「蛇頭」が引率する隊列について徒歩で行進する。最後は米国とメキシコとの国境を突破すれば、米国入国が実現できる。 拙著『蛇頭』を取材していた頃、蛇頭は比較的貧しい暮らしをしていた福建省出身者がほとんどを占める密航者を「鴨子(カモ)」と呼んでいた。しかし、いまは、知識人が多く、密航者は自らのことを「走線人(ルート走破者)」と呼ぶ。密航者の構成内容の変化に、中国の社会事情が色濃く影を落としている』、「「今年3月までにパナマにある難民キャンプはほとんど中国人に占領されている。ある現地の撮影者から、1日に車十数台分の密航者が運び込まれていて、ほとんどの乗客は中国人だったと証言があった。パナマ政府の発表によると、今年1月から3月の間に3855人の中国人密航者がコロンビアとパナマの国境地帯にあるダリエン地峡を通過した。目的地はアメリカだ」、「中国のパスポート所持者に対してビザ免除措置を与える南米の国が増えたことで、米国に近い南米のいくつかの国までは飛行機で移動することができるようになった。米国への密入国を希望する人にとっては、好都合だ」、「ビザ免除措置を与える南米の国が増えた」ことが引き金になっていたとは皮肉だ。
・『中国人密航者は本国で「いい職業」についていた人も多い  米国に密入国できた中国人を助けるために、米国の中国系住民は生活品や食品などを寄付する支援活動を開始した。 ロサンゼルスにほど近い郊外都市・モントレーパークで行われた寄付活動に参加した友人は現場の光景に驚いた。 「寄付品を受け取りに来る人が非常に多い。ホテルの周りに長い列ができている。男も女もいて、年長者は50歳前後、幼い者は10代前半。彼らは一人一人身なりが清潔で、顔つきや行動が落ち着いている。想像していた密航者のような苦労を重ね、ろうばいしている姿は見られない」 友人が寄付活動を呼びかけたリーダーに確認したら、以下のような情報を得た。 「密航者たちは山東、江蘇、浙江、湖北、陝西など多くの省から来ている。中国ではいい職業を持っていた。その多くが中国の自動車免許証を持っていることから、中国では車を所有していたことがわかる。職業もさまざまだ。以前の密航者のほとんどは福建省の農村出身だったが、いまは中学校の教師やエンジニア、保険外交員、金融業従事者、さらには自分で会社を作ったことがある人も多い」 彼らは皆共通語で交流している。多くの人がパソコンを使い、英語ができる人も結構いる。インターネットを利用して、自分の子どものために米国の学校に入学手続きを申請することもできる。寄付された書籍を選ぶ人もいた。 しかし、厳しい密航移動や海外の移民生活に耐えられない人も多い。せっかくメキシコに着いたものの、密航ルートの厳しさを実感して、米国への密入国をあきらめ、所持している中国パスポートを使って、そのまま中国に戻った人もいれば、米国に運よく密入国できたが、非合法移民の日常に動揺を覚え、住み慣れた中国に帰る選択をした人もいたという。 『蛇頭』絶版後、その続編を書く必然性はもうないと思っていたが、ひょっとしたら、続編を読みたいという市場ニーズがまた出てきそうな気がした。本棚に飾っている『蛇頭』を見つめながら、ぼうぜん自失になった』、「「密航者たちは山東、江蘇、浙江、湖北、陝西など多くの省から来ている。中国ではいい職業を持っていた。その多くが中国の自動車免許証を持っていることから、中国では車を所有していたことがわかる。職業もさまざまだ。以前の密航者のほとんどは福建省の農村出身だったが、いまは中学校の教師やエンジニア、保険外交員、金融業従事者、さらには自分で会社を作ったことがある人も多い」 彼らは皆共通語で交流している。多くの人がパソコンを使い、英語ができる人も結構いる」、「せっかくメキシコに着いたものの、密航ルートの厳しさを実感して、米国への密入国をあきらめ、所持している中国パスポートを使って、そのまま中国に戻った人もいれば、米国に運よく密入国できたが、非合法移民の日常に動揺を覚え、住み慣れた中国に帰る選択をした人もいたという」、中流階級らしい行動だ。今後、中南米経由の「米国」「密入国」がどうなるのか、注目したい。
タグ:中国情勢(軍事・外交) (その15)(なぜ中国の科学技術は飛躍的に向上したのか…中国のスパイがアメリカの研究機関から山ほど盗んだもの 留学生や研究者を脅して機密情報を盗ませる、国内13大学が「中国政府の宣伝工作拠点」に?“孔子学院”の危険な実態、アメリカ密入国めざす中国人が急増 一体なぜ?教師やエンジニアら知識人も逃亡) PRESIDENT ONLINE 池上 彰氏による「なぜ中国の科学技術は飛躍的に向上したのか…中国のスパイがアメリカの研究機関から山ほど盗んだもの 留学生や研究者を脅して機密情報を盗ませる」 池上彰『世界史を変えたスパイたち』(日経BP) 「「孔子学院」・・・表向きには「中国語や中国文化を無償で教える教育センター」だとして、中国はその地域の教育機関などと連携し、世界中にこの孔子学院を設置してきました。中でもアメリカはこの孔子学院の最大の進出国で、その数は最盛期には120校にものぼっていました。 しかしその実態は中国のインテリジェンス機関である統一戦線工作部から資金や指示の出ている、まぎれもない中国の工作機関なのではないか、との指摘が相次ぎ、2014年頃から2020年までの間にかなりの数の孔子学院が閉鎖」、 「最盛期には120校・・・かなりの数の孔子学院が閉鎖」、「文化や芸術、交流活動などを行いながら、実際には中国・共産党の意向に沿った情報活動や、中国に友好的な外国人を獲得し、育てる役割も果たしています」、手の込んだ偽装工作だ。 「「日本企業しか買えないセキュリティーソフトを、日本企業に成りすまして購入しろ」と指示され、断ったところ「国に貢献しろ」などと協力を強要された」、酷い話だ。 「「中国にいる親族がどうなってもいいのか」と脅迫するケースもある」、「ロンドンでMI5(保安部)のマッカラム長官と、FBI(アメリカ連邦捜査局)のレイ長官が合同で企業向けの講演会を行い、「中国のやり方に気をつけろ!」と警告」、「「中国製造2025」・・・目標を達成するために、手段を選ばず攻撃を仕掛けてきている、と断言」、大いに気を付けるべきだ。 「スパイ事件の4割近くが、特別な訓練を受けたわけではない「民間人」とは驚きます」、その通りだ。 「受け入れる欧米側の大学としては、優秀な中国人留学生や研究者であればあるほど、自国での研究・開発成果を中国に持ち帰られる危険性が常に存在している、ということになってしまいます」、「中国はこうした立場の人間や、それに成りすました工作員をうまく使い、アメリカなどの科学技術情報を得ては国家の技術力向上に生かしていたようです」、なるほど。 「ここへきてアメリカが警戒感をあらわにしているのは、「中国は豊かになれば民主化し、共産党一党独裁体制から脱却するだろう」という見通しが間違っていたことを認識したからです」、甘い認識というより期待の誤りを遅まきながら、気付いたようだ。 「日本」でも「経済安全保障」の視点で「中国製品」への警戒が高まっており、警戒心を一層高めて臨むべきだろう。 ダイヤモンド・オンライン 稲村 悠氏による「国内13大学が「中国政府の宣伝工作拠点」に?“孔子学院”の危険な実態」 「日本で設置が確認されたのは・・・の13大学である」、「米国大学100校超のキャンパスにおいて開講されていたが・・・米国内では同学院の閉鎖が相次いでいる」、なるほど。 「日本の大学からすれば、孔子学院設置費用や運営費は、中国政府が援助するため、大学側はほとんど負担することなく、中国語教育を安価で学生に提供でき、学生も併せて募集できるため、メリットが多い」、 ただ、「北京航空航天大学は・・・大量破壊兵器であるミサイル開発の疑いがあるとして、貨物や技術の輸出時には経済産業省の許可が必要な「外国ユーザーリスト」に記載」、「北京大学は、準国防大学といわれ、国家国防科学技術工業局が管理している大学」、など問題も抱えている。 「孔子学院と受け入れ大学側との契約内容が不透明」、「文部科学省をはじめ日本政府機関の審査などを経ずに、日本の大学内に中国政府の統制下にある機関(孔子学院)が設置されるため、大学および日本の自治に極めて重大な懸念がある」、「プロパガンダ工作・スパイ活動の危険性」、やはり大きな問題がありそうだ。 「一般的に、ソフトパワーによって相手国の世論に対し、自国に対する親近感や好感を醸成し、対象国の世論を味方につけて自国の利益に資するようにする手法をパブリック・ディプロマシーという。 孔子学院はその手法の代表例であったが、中国のような権威主義国家ならではの強引・横暴な要素が大きいことから、シャープパワーとして批判されている」、 「孔子学院を経て中国に“都合の良い情報”のみを与え、可能であれば感化させ、親中派を孔子学院の設置国で拡大させていくプロパガンダ工作である。そして、こうした取り組みが、日本の有力な大学において、日本政府(文部科学省)が関知することなく行われているのだ」、恐ろしい主権の侵害だ。 「中国政府が孔子学院を通じ、情報収集や工作活動を指示すること、または同活動にリクルートすることは当然想定される・・・孔子学院がプロパガンダ工作を行うだけではなく、これら反体制動向の監視活動に関与、情報提供などの支援を行っていると推察することもできる」、なるほど。 「孔子学院に対して政府は」、大学任せにせず、「対応策を示すべき」、その通りだ。 莫 邦富氏による「アメリカ密入国めざす中国人が急増、一体なぜ?教師やエンジニアら知識人も逃亡」 「昨年10月以降、中国人密入国者が6500人を超え、前年同期の15倍に跳ね上がり、歴史的なピークに達した」、「米国」への「密入国者」で「中国人」が急増しているとの報には驚かされた。 「中国経済の急速な発展で、08年北京オリンピック以降、多くの中国人が自由に海外旅行へ出られるようになり、いまや多くの国々の観光事業を支える重要な顧客にもなった。こうした社会事情の変化もあり、『蛇頭』もやがて絶版となった・・・もう密航者を作りださないだろうと信じた。 こう信じていただけに、米国とメキシコとの国境を目指す中国人密入国者が大勢いるという最新の報道を読んだ私は絶句した」、なるほど。 「「今年3月までにパナマにある難民キャンプはほとんど中国人に占領されている。ある現地の撮影者から、1日に車十数台分の密航者が運び込まれていて、ほとんどの乗客は中国人だったと証言があった。パナマ政府の発表によると、今年1月から3月の間に3855人の中国人密航者がコロンビアとパナマの国境地帯にあるダリエン地峡を通過した。目的地はアメリカだ」、 「中国のパスポート所持者に対してビザ免除措置を与える南米の国が増えたことで、米国に近い南米のいくつかの国までは飛行機で移動することができるようになった。米国への密入国を希望する人にとっては、好都合だ」、「ビザ免除措置を与える南米の国が増えた」ことが引き金になっていたとは皮肉だ。 「「密航者たちは山東、江蘇、浙江、湖北、陝西など多くの省から来ている。中国ではいい職業を持っていた。その多くが中国の自動車免許証を持っていることから、中国では車を所有していたことがわかる。職業もさまざまだ。以前の密航者のほとんどは福建省の農村出身だったが、いまは中学校の教師やエンジニア、保険外交員、金融業従事者、さらには自分で会社を作ったことがある人も多い」 彼らは皆共通語で交流している。多くの人がパソコンを使い、英語ができる人も結構いる」、 「せっかくメキシコに着いたものの、密航ルートの厳しさを実感して、米国への密入国をあきらめ、所持している中国パスポートを使って、そのまま中国に戻った人もいれば、米国に運よく密入国できたが、非合法移民の日常に動揺を覚え、住み慣れた中国に帰る選択をした人もいたという」、中流階級らしい行動だ。今後、中南米経由の「米国」「密入国」がどうなるのか、注目したい。
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パンデミック(経済社会的視点)(その25)(「ワクチン打て!」から突然「打たなくていい」に…WHOがヤバすぎる方針転換を決めた驚愕の背景、「2000人以上が接種後に死亡…」WHO突然の「追加接種不要」発表で問われるワクチン接種のヤバすぎる実態、マスクに感染予防効果はない? 世界的機関「コクラン」が論文公開、給食時の「黙食見直し」で学級閉鎖は増えたか 千葉県小中学校のデータを用いて影響を検証) [パンデミック]

パンデミック(経済社会的視点)については、本年2月25日に取上げた。今日は、(その25)(「ワクチン打て!」から突然「打たなくていい」に…WHOがヤバすぎる方針転換を決めた驚愕の背景、「2000人以上が接種後に死亡…」WHO突然の「追加接種不要」発表で問われるワクチン接種のヤバすぎる実態、マスクに感染予防効果はない? 世界的機関「コクラン」が論文公開、給食時の「黙食見直し」で学級閉鎖は増えたか 千葉県小中学校のデータを用いて影響を検証)である。

先ずは、本年4月10日付け現代ビジネス「「ワクチン打て!」から突然「打たなくていい」に…WHOがヤバすぎる方針転換を決めた驚愕の背景」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108729?imp=0
・『「ワクチンを打て!」とさんざん言われてきたのに、突然「打たなくていい」と方針が変わった。WHOの方向転換の裏には、いったい何があるのか。そして日本はいつまでワクチンを打ち続けるのか』、興味深そうだ。
・『日本政府は「努力義務」として推進してきた  「今さら『子どもや若者はワクチンを打たなくてもいい』と言われても、取り返しはつきません。必要ないと分かっていたら、子どもや孫には打たせなかったのに……」 深いため息をつきながら語るのは、神奈川県に住む主婦の安藤恵子さん(75歳・仮名)だ。 「全国旅行支援を使うのに必要だったから、19歳の孫に3回目の接種を受けさせたんです。ところが接種後、下半身に痺れが出るようになった。その後も孫は坐骨神経痛を患ったままで、日常生活を送るにも苦労しています」(安藤さん) 政府は3回目以降の追加接種を「努力義務」として推進してきた。結果、一人あたりの平均接種回数でみると、日本は約3.1回で、韓国(約2.5回)やドイツ(約2.3回)、イギリス(約2.2回)を引き離して世界一となった。 ところが3月28日、WHO(世界保健機関)は、追加接種について驚きの発表をした。 WHOはこれまで、全世代でのワクチン追加接種を「推奨」してきたのだが、今回、「健康な成人」と「すべての子ども」について、3回目以降の接種を「推奨しない」と真逆のことを言い出したのだ。WHOは「公衆衛生政策の優先度や費用対効果などに基づく各国の判断に委ねる」としている』、「神奈川県に住む主婦の安藤恵子さん(75歳・仮名)だ。 「全国旅行支援を使うのに必要だったから、19歳の孫に3回目の接種を受けさせたんです。ところが接種後、下半身に痺れが出るようになった。その後も孫は坐骨神経痛を患ったままで、日常生活を送るにも苦労しています」、深刻な副反応だ。それにしても、「WHO」の突然の指示変更の理由は何なのだろう。
・『今になってWHOの「責任逃れ」?  だがこれは、いささか奇妙ではないか。WHOは新方針の中で、念押しするかのように「ワクチンは安全かつ有効」と記載している。しかし「何回打っても大丈夫」なら、わざわざ「推奨しない」と表明する必要などないはずだ。北海道の、ほんべつ循環器内科クリニック理事長、藤沢明徳氏は首を傾げる。 「WHOは、経済的な側面を理由に接種の是非を各国に丸投げしています。しかしワクチンに何の問題もなく、高い効果があるなら、こうした発表をする必要はないはず。子どもや若者への接種のリスクを分かっていて、何か起きた時の『責任逃れ』としてこんなことを言い出したのではないかと疑わざるをえません」 ワクチンに危険性があることを、WHOは当然認識しているはずだ。 '21年9月、当時FDA(米食品医薬品局)のワクチン研究・審査局長だったマリオン・グルーバー氏は、WHOに所属する科学者とともに『3回目の追加接種は必要ない』という論文を発表している。現在はワクチンの研究をする非営利組織IAVIの副社長を務めているグルーバー氏が語る。 「治療方法も確立せず、感染が拡大し続ける状況での1~2回目接種は必要でした。しかし3回目接種は効果が不十分というデータが出ており、次々にワクチンの副反応も見つかっていた。だから私たちは追加接種に異を唱えたのです。 ところが我々の意見は完全に無視され、追加接種に猛反対した私はFDAを離れることになった。今回のWHOの発表は遅すぎるくらいです」』、「'21年9月、当時FDA(米食品医薬品局)のワクチン研究・審査局長だったマリオン・グルーバー氏は、WHOに所属する科学者とともに『3回目の追加接種は必要ない』という論文を発表している。現在はワクチンの研究をする非営利組織IAVIの副社長を務めているグルーバー氏が語る。 「治療方法も確立せず、感染が拡大し続ける状況での1~2回目接種は必要でした。しかし3回目接種は効果が不十分というデータが出ており、次々にワクチンの副反応も見つかっていた。だから私たちは追加接種に異を唱えたのです。 ところが我々の意見は完全に無視され、追加接種に猛反対した私はFDAを離れることになった。今回のWHOの発表は遅すぎるくらいです」、なるほど。
・『インフルエンザワクチンでは「ありえない」発表  インフルエンザのワクチンでは、「追加接種を推奨しない」などといった発表がされることはない。安全性が確立されており、「打たなくていい」とわざわざ言う理由がないからだ。 しかし新型コロナのワクチンでは、異例の発表が行われた。その「意味」を、慎重に検討する必要があるだろう。 病院で診察をする医師は、ワクチン接種回数が増えるなかで異変を感じているという。前出の藤沢氏は語る。 「追加接種をした人ほど、副反応の症状が悪くなっていると感じています。特に2回目接種と3回目接種との間には大きなギャップがある。3回、4回と接種した人は接種後の予後が悪く、強い倦怠感に襲われたり、認知症のような状態になってしまう人も珍しくありません」 偶然、接種後に体調が変化しただけなのでは?そうした捉え方もある。しかし、実際に接種後に亡くなった人の遺族からは、「死因はワクチン以外考えられない」という声があがっている。 日本政府が3回目以降のワクチン接種を努力義務として推進してきた中、突如として行われたWHO(世界保健機関)による「追加接種不要」の発表。この発表が本当に意味するものとは、そして日本人はいつまでコロナワクチンを打たないといけないのか。 後編記事『「2000人以上が接種後に死亡…」WHO突然の「追加接種不要」発表で問われるワクチン接種のヤバすぎる実態 』で引き続き紹介する』、「追加接種をした人ほど、副反応の症状が悪くなっていると感じています。特に2回目接種と3回目接種との間には大きなギャップがある。3回、4回と接種した人は接種後の予後が悪く、強い倦怠感に襲われたり、認知症のような状態になってしまう人も珍しくありません」、WTOとしては、責任回避のための政策変更のようだ。

次に、この続きを、4月10日付け現代ビジネス「「2000人以上が接種後に死亡…」WHO突然の「追加接種不要」発表で問われるワクチン接種のヤバすぎる実態」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108730?imp=0
・『日本政府が3回目以降のワクチン接種を努力義務として推進してきた中、突如として行われたWHO(世界保健機関)による「追加接種不要」の発表。この発表が本当に意味するものとは、そして日本人はいつまでコロナワクチンを打たないといけないのか。 前編記事『「ワクチン打て!」から突然「打たなくていい」に…WHOがヤバすぎる方針転換を決めた驚愕の背景 』に引き続き紹介する』、興味深そうだ。
・『「2000人」が接種後に死亡  高齢の両親にうつさないよう弟はワクチンを接種した。なのに、こんな結果になるなんて……」 そう声を震わせるのは、神奈川県在住の青木一志さん(50歳・仮名)だ。一志さんの弟・雄二さん(仮名)は、2回目のワクチン接種から3日後に亡くなった。死因は心不全だった。 雄二さんは47歳で、健康診断で引っかかったこともなければ既往症もなかった。それどころか休日には野球を楽しむスポーツマン。突然死するような理由は思い浮かばない。 一志さんに心当たりがあるとすれば、ワクチンだけだった。雄二さんの逝去後、家族から光が消えた。 「弟の接種を止められなかったことで母は自分を責め、心身のバランスを崩して心療内科を受診しています。弟の死後、私たちはワクチンの危険性、そして遺族の後悔を再三訴えてきましたが、接種は止まらない……それどころか国は追加接種を続けている」(一志さん) これは特殊なケースではない。ワクチン接種後に亡くなった事例はすでにおよそ2000件判明している。しかもこれは国に報告があった数にすぎず、あくまで氷山の一角である』、「ワクチン接種後に亡くなった事例はすでにおよそ2000件判明している。しかもこれは国に報告があった数にすぎず、あくまで氷山の一角である」、なるほど。
・『「ベネフィットが上回る」が建て前の「厚労省」  これまで国はワクチン接種との因果関係を頑なに否定してきた。しかし3月10日、愛知県に住む42歳の女性が昨年11月に亡くなったケースで、初めて「ワクチン4回目接種との因果関係は否定できない」と認めた。今後も調査、研究が進むなかで、ワクチン接種の本当の「リスク」が明らかになっていくとみられる。 それでも当面は、厚労省などの方針は変わらず、「ワクチンにはリスクがあるものの、ベネフィットが上回る」という建て前は続くだろう。 だが、肝心の「ベネフィット」についても、大きな疑いが生じ始めている。確かに高齢者や持病がある人にとって、ワクチンによる重症化リスクの予防は一定の効果がある(これらの人に対してはWHOもワクチン接種を推奨)。 しかし、健康な成人や若者、子どもはどうだろうか。 「感染初期の武漢型ウイルスやデルタ株は毒性が強く、ワクチンはそれなりの役割を果たしたと思っています。しかし今流行っているウイルスは弱毒化しており、健康な人や子どもが感染しても重症化することはほとんどない。 健康な人は、発熱などの副反応覚悟でワクチンを打つか、あるいは社会に集団免疫ができあがるまで感染覚悟でワクチンを打たないでいるか、自分で決めたらいい。ヨーロッパでは、ワクチンと感染による集団免疫が出来つつあるのでマスクを外すことができています」(国立病院機構仙台医療センターウイルスセンター長の西村秀一氏) 日本では大人はもちろん、子どもにも「努力義務」が課されてきた。これは「強制」ではないが、「接種を受けるように努める必要がある」という規定である。一方、集団免疫を前提にする日本以外の主要国には「努力義務」など存在しない。リスクも考慮し、個人の判断に任せられている。 ではWHOの方針転換を受けて、日本は今後の追加接種をどうしていくのか。厚労省に聞くと、以下のような回答が返ってきた』、「感染初期の武漢型ウイルスやデルタ株は毒性が強く、ワクチンはそれなりの役割を果たしたと思っています。しかし今流行っているウイルスは弱毒化しており、健康な人や子どもが感染しても重症化することはほとんどない。 健康な人は、発熱などの副反応覚悟でワクチンを打つか、あるいは社会に集団免疫ができあがるまで感染覚悟でワクチンを打たないでいるか、自分で決めたらいい」、「ワクチン」の意義が低下したようだ。
・『8.8億回分の在庫、すでに1兆円越えの支払い  「WHOの声明とも矛盾はありませんし、ワクチンの安全性についても問題ありません。今後は感染症の状況や変異、ワクチンの供給状況も見ながら専門家の意見をもとに接種していきたいと思っています。現時点で大きな懸念はありません」 5月8日には新型コロナが感染症法上の「5類」に移行し、季節性インフルエンザと同じ位置づけとなる。空港などでの法律に基づいた水際措置も終了する予定だ。 だが今後も、時期を区切って追加接種が続けられることが決まっている。高齢者や医療従事者などは、5月8日から接種が開始され、9月にも再度接種が呼びかけられる。健康な人も、9月以降の接種が実施される予定だ。多い人では'23年度中に6回目、7回目の追加接種をすることになる。 接種費用は引き続き無料。インフルエンザのワクチンは3000~5000円かかるのに、同じ5類のコロナワクチンは税金で賄われる。 WHOの方針が変わっても、接種を推奨し続ける。そこには日本政府の事情もあるようだ。 「厚労省は昨年までに、製薬会社4社とワクチン8.8億回分の供給契約を結んでいました。すでに約1兆457億円を支払ったとされており、全国民に計8回ワクチンを打たないと在庫がはけないと考えているのでしょう」(全国紙政治部記者) 世界がワクチンの安全性と「コスパ」を冷静に判断して追加接種をやめても、日本だけはバカ正直に追加接種を続けている―。後になってそれが「重大な判断ミス」だった、などということにならない保証はあるだろうか。 「週刊現代」2023年4月15・22日号より 関連記事『【遺族証言】「娘はコロナワクチンで血を噴いて死んだ!」1919人の日本人死者数が意味するもの』もぜひあわせてお読みください』、「厚労省は昨年までに、製薬会社4社とワクチン8.8億回分の供給契約を結んでいました。すでに約1兆457億円を支払ったとされており、全国民に計8回ワクチンを打たないと在庫がはけないと考えているのでしょう」・・・世界がワクチンの安全性と「コスパ」を冷静に判断して追加接種をやめても、日本だけはバカ正直に追加接種を続けている―。後になってそれが「重大な判断ミス」だった、などということにならない保証はあるだろうか」、「厚労省は昨年までに、製薬会社4社とワクチン8.8億回分の供給契約を結んでいました」、これは初めて知ったが、引き渡しは数年間を織り込んでいる筈で、キャンセルの一定のキャンセル料を払えば可能な筈だ。不必要なのに、買った分は使い切る馬鹿なマネまでは厚労省の役人でもするまいと信じる。

第三に、3月26日付け日刊ゲンダイ「マスクに感染予防効果はない? 世界的機関「コクラン」が論文公開」を紹介しよう。
https://hc.nikkan-gendai.com/articles/278865
・『厚労省は、マスクの着用に関して屋外では原則不要、屋内では原則着用を推奨してきました。しかし、令和5年3月13日から、マスクの着用は個人の判断を基本とする方針に変更されました。行政が一律にルールを策定するのではなく、個人の主体的な選択を尊重するというのが方針変更の大きな理由です。 一方で、感染リスクに対するマスクの有効性を疑問視する声も多く、加えてマスクの感染予防効果を検証した研究データも限られているのが現状でした。そんな中、質の高い医療情報の発信で世界的に定評のあるコクランという非営利団体が、ウイルス感染症に対するマスクの有効性を検討した研究論文を2023年1月30日付で公開しました。 この研究では、これまでに報告されているマスクの感染予防効果を検討した研究9件分のデータが統合解析されています。新型コロナウイルス感染症のみならず、インフルエンザ感染症など呼吸器(喉や鼻、気管支など)に感染するウイルスが検討対象となりました。) 解析の結果、ウイルス感染症の症状は、マスクを着用していた場合で1000人あたり152人、マスクを着用していない場合で1000人あたり160人と、マスクを着用していた場合で5%の低下傾向を認めましたが、統計学的に有意な差は示されませんでした。 ただし、解析に含まれた研究の中でも最大規模のデータは、マスクの直接的な感染予防効果を検証した研究ではなく、マスクの着用を推奨する教育的な取り組みの効果を検証した研究でした。たしかに、個人に対するマスクの有効性は必ずしも高いものではないように思います。しかし、この解析結果は、集団における感染拡大の抑止に対するマスクの効果を否定するものではありません』、「これまでに報告されているマスクの感染予防効果を検討した研究9件分のデータが統合解析されています。新型コロナウイルス感染症のみならず、インフルエンザ感染症など呼吸器(喉や鼻、気管支など)に感染するウイルスが検討対象となりました。) 解析の結果、ウイルス感染症の症状は、マスクを着用していた場合で1000人あたり152人、マスクを着用していない場合で1000人あたり160人と、マスクを着用していた場合で5%の低下傾向を認めましたが、統計学的に有意な差は示されませんでした」、「統計学的に有意な差は示されませんでした」のであれば、「マスクの効果はなんともいえない」とみるべきだ。「解析に含まれた研究の中でも最大規模のデータは、マスクの直接的な感染予防効果を検証した研究ではなく、マスクの着用を推奨する教育的な取り組みの効果を検証した研究でした。たしかに、個人に対するマスクの有効性は必ずしも高いものではないように思います。しかし、この解析結果は、集団における感染拡大の抑止に対するマスクの効果を否定するものではありません」、なるほど。

第四に、5月23日付け日刊ゲンダイが掲載した医療ガバナンス研究所 理事長の上昌広氏による「日本のコロナ対策が迷走した原因は「国民の健康より国家の都合」な厚労省の体質にある」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/323329
・『なぜ、我が国のコロナ対応は迷走したのか。コロナ対策の主体は厚労省だ。その前身である厚生省は昭和13年に内務省から分離独立した。今回の迷走劇を考える上で、内務省を理解することは重要だ。 内務省は、征韓論を端緒とする明治6年の政変をきっかけに設立される。初代内務卿に就任した大久保利通は、内務省を通じた治安維持の強化をもくろんだといわれている。次官、警保局長、警視総監を「内務三役」と称したことなど、その象徴だ。 明治7年、明治政府は日本初の総合的医療・衛生制度である「医制」を公布する。中心となったのは、文部省医務局長や東京医学校(現在の東京大学医学部)の校長を務めた長与専斎だ。状況が変わったのは、翌8年に「医制」の所管が、文部省から内務省に移った時だ。明治19年には衛生局が設置されるが、警保局が所管した衛生警察行政の影響を受ける。 警保局は、大逆事件を機に、明治44年、思想警察である特別高等警察(特高)を設置、大正14年に制定された治安維持法を所管した部局だ。当時、警保畑の内務官僚は、衛生警察と特高をローテーションした。これが我が国の公衆衛生のひな型となる』、「警保畑の内務官僚は、衛生警察と特高をローテーションした。これが我が国の公衆衛生のひな型となる」、「衛生警察と特高をローテーションした」とは、厚労省が高飛車な背景が理解できた。
・『現在も影響は残っている。感染症法は、患者の検査や治療を受ける権利には言及せず、国家による強制隔離を認めている。基本的な枠組みは明治以来変わらない。 問題は感染症法だけではない。旅館業法も同様だ。同法では、ホテルに宿泊する際には、氏名と住所を記さなければならないと規定されている。その目的は伝染病の蔓延を防ぐことだが、交通機関や飲食店と旅館を区別して扱う合理的理由はない。平成7年のオウム事件で、偽名で宿泊した信者が逮捕されるなど、現在でも別件逮捕の口実に使われている。 厚労省の歴史を振り返れば、国民の健康より国家の都合を優先した事例は枚挙にいとまがない。厚生省が内務省から分離したのは、陸軍省の要請を受けてのもので、筆頭局は体力局だった。国民体力法を制定し、徴兵制度を推し進めた。 コロナ禍で、厚労省の医系技官や周囲の医師は、「日本の病院を守るため」や「保健所を逼迫させないため」などの理由で、国民が検査や医療を受ける権利を制限した。これは世界的には異様だ。 患者と国家の間で軋轢が生じれば、医師は患者の味方をしなければならない。これはギリシャ・ローマ時代以来のプロフェッショナルとしての責務だ。彼らが、こんなことを言って平気だったのは、国民の権利より国家の都合を優先する内務省以来の価値観が残り、そのことを感染症法などが法的に規定しているからだ。我が国の感染症対策は、国民主権で抜本的に見直さねばならない』、「厚生省が内務省から分離したのは、陸軍省の要請を受けてのもので、筆頭局は体力局だった。国民体力法を制定し、徴兵制度を推し進めた」、「コロナ禍で、厚労省の医系技官や周囲の医師は、「日本の病院を守るため」や「保健所を逼迫させないため」などの理由で、国民が検査や医療を受ける権利を制限した。これは世界的には異様だ。 患者と国家の間で軋轢が生じれば、医師は患者の味方をしなければならない。これはギリシャ・ローマ時代以来のプロフェッショナルとしての責務だ。彼らが、こんなことを言って平気だったのは、国民の権利より国家の都合を優先する内務省以来の価値観が残り、そのことを感染症法などが法的に規定しているからだ。我が国の感染症対策は、国民主権で抜本的に見直さねばならない」、厚労省がここまで「国民の権利より国家の都合を優先する内務省以来の価値観が残」しているとは、改めて驚いた。「我が国の感染症対策は、国民主権で抜本的に見直さねばならない」、完全に同感である。 
タグ:パンデミック(経済社会的視点) (その25)(「ワクチン打て!」から突然「打たなくていい」に…WHOがヤバすぎる方針転換を決めた驚愕の背景、「2000人以上が接種後に死亡…」WHO突然の「追加接種不要」発表で問われるワクチン接種のヤバすぎる実態、マスクに感染予防効果はない? 世界的機関「コクラン」が論文公開、給食時の「黙食見直し」で学級閉鎖は増えたか 千葉県小中学校のデータを用いて影響を検証) 現代ビジネス「「ワクチン打て!」から突然「打たなくていい」に…WHOがヤバすぎる方針転換を決めた驚愕の背景」 「神奈川県に住む主婦の安藤恵子さん(75歳・仮名)だ。 「全国旅行支援を使うのに必要だったから、19歳の孫に3回目の接種を受けさせたんです。ところが接種後、下半身に痺れが出るようになった。その後も孫は坐骨神経痛を患ったままで、日常生活を送るにも苦労しています」、深刻な副反応だ。それにしても、「WHO」の突然の指示変更の理由は何なのだろう。 「'21年9月、当時FDA(米食品医薬品局)のワクチン研究・審査局長だったマリオン・グルーバー氏は、WHOに所属する科学者とともに『3回目の追加接種は必要ない』という論文を発表している。現在はワクチンの研究をする非営利組織IAVIの副社長を務めているグルーバー氏が語る。 「治療方法も確立せず、感染が拡大し続ける状況での1~2回目接種は必要でした。しかし3回目接種は効果が不十分というデータが出ており、次々にワクチンの副反応も見つかっていた。だから私たちは追加接種に異を唱えたのです。 ところが我々の意見は完全に無視され、追加接種に猛反対した私はFDAを離れることになった。今回のWHOの発表は遅すぎるくらいです」、なるほど。 「追加接種をした人ほど、副反応の症状が悪くなっていると感じています。特に2回目接種と3回目接種との間には大きなギャップがある。3回、4回と接種した人は接種後の予後が悪く、強い倦怠感に襲われたり、認知症のような状態になってしまう人も珍しくありません」、WTOとしては、責任回避のための政策変更のようだ。 現代ビジネス「「2000人以上が接種後に死亡…」WHO突然の「追加接種不要」発表で問われるワクチン接種のヤバすぎる実態」 「ワクチン接種後に亡くなった事例はすでにおよそ2000件判明している。しかもこれは国に報告があった数にすぎず、あくまで氷山の一角である」、なるほど。 「感染初期の武漢型ウイルスやデルタ株は毒性が強く、ワクチンはそれなりの役割を果たしたと思っています。しかし今流行っているウイルスは弱毒化しており、健康な人や子どもが感染しても重症化することはほとんどない。 健康な人は、発熱などの副反応覚悟でワクチンを打つか、あるいは社会に集団免疫ができあがるまで感染覚悟でワクチンを打たないでいるか、自分で決めたらいい」、「ワクチン」の意義が低下したようだ。 「厚労省は昨年までに、製薬会社4社とワクチン8.8億回分の供給契約を結んでいました。すでに約1兆457億円を支払ったとされており、全国民に計8回ワクチンを打たないと在庫がはけないと考えているのでしょう」・・・世界がワクチンの安全性と「コスパ」を冷静に判断して追加接種をやめても、日本だけはバカ正直に追加接種を続けている―。後になってそれが「重大な判断ミス」だった、などということにならない保証はあるだろうか」、 「厚労省は昨年までに、製薬会社4社とワクチン8.8億回分の供給契約を結んでいました」、これは初めて知ったが、引き渡しは数年間を織り込んでいる筈で、キャンセルの一定のキャンセル料を払えば可能な筈だ。不必要なのに、買った分は使い切る馬鹿なマネまでは厚労省の役人でもするまいと信じる。 日刊ゲンダイ「マスクに感染予防効果はない? 世界的機関「コクラン」が論文公開」 「これまでに報告されているマスクの感染予防効果を検討した研究9件分のデータが統合解析されています。新型コロナウイルス感染症のみならず、インフルエンザ感染症など呼吸器(喉や鼻、気管支など)に感染するウイルスが検討対象となりました。) 解析の結果、ウイルス感染症の症状は、マスクを着用していた場合で1000人あたり152人、マスクを着用していない場合で1000人あたり160人と、マスクを着用していた場合で5%の低下傾向を認めましたが、統計学的に有意な差は示されませんでした」、 「統計学的に有意な差は示されませんでした」のであれば、「マスクの効果はなんともいえない」とみるべきだ。「解析に含まれた研究の中でも最大規模のデータは、マスクの直接的な感染予防効果を検証した研究ではなく、マスクの着用を推奨する教育的な取り組みの効果を検証した研究でした。たしかに、個人に対するマスクの有効性は必ずしも高いものではないように思います。しかし、この解析結果は、集団における感染拡大の抑止に対するマスクの効果を否定するものではありません」、なるほど。 日刊ゲンダイ 上昌広氏による「日本のコロナ対策が迷走した原因は「国民の健康より国家の都合」な厚労省の体質にある」 「警保畑の内務官僚は、衛生警察と特高をローテーションした。これが我が国の公衆衛生のひな型となる」、「衛生警察と特高をローテーションした」とは、厚労省が高飛車な背景が理解できた。 「厚生省が内務省から分離したのは、陸軍省の要請を受けてのもので、筆頭局は体力局だった。国民体力法を制定し、徴兵制度を推し進めた」、「コロナ禍で、厚労省の医系技官や周囲の医師は、「日本の病院を守るため」や「保健所を逼迫させないため」などの理由で、国民が検査や医療を受ける権利を制限した。これは世界的には異様だ。 患者と国家の間で軋轢が生じれば、医師は患者の味方をしなければならない。これはギリシャ・ローマ時代以来のプロフェッショナルとしての責務だ。彼らが、こんなことを言って平気だったのは、国民の権利より国家の都合を優先する内務省以来の価値観が残り、そのことを感染症法などが法的に規定しているからだ。 我が国の感染症対策は、国民主権で抜本的に見直さねばならない」、厚労省がここまで「国民の権利より国家の都合を優先する内務省以来の価値観が残」しているとは、改めて驚いた。「我が国の感染症対策は、国民主権で抜本的に見直さねばならない」、完全に同感である。
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悪徳商法(その6)(「指の骨が砕けるほどの拍手で歓迎」入会者を2日間で洗脳する巨大イベントのヤバい光景 幕張メッセ3000人の前で芸能人が…、大学生を狙う「闇堕ち」の罠の実態 カルト宗教・闇バイト・特殊詐欺…、「アムウェイ」にハマる人々のありふれた心理 10年取材して見えた「ねずみ算式」の魔術) [社会]

悪徳商法については、2020年10月30日に取上げた。久しぶりの今日は、(その6)(「指の骨が砕けるほどの拍手で歓迎」入会者を2日間で洗脳する巨大イベントのヤバい光景 幕張メッセ3000人の前で芸能人が…、大学生を狙う「闇堕ち」の罠の実態 カルト宗教・闇バイト・特殊詐欺…、「アムウェイ」にハマる人々のありふれた心理 10年取材して見えた「ねずみ算式」の魔術)である。

先ずは、2021年3月20日付けPRESIDENT Onlineが掲載したライターの雨宮 純氏による「「指の骨が砕けるほどの拍手で歓迎」入会者を2日間で洗脳する巨大イベントのヤバい光景 幕張メッセ3000人の前で芸能人が…」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/44233
・『マルチ商法などの悪徳商法は、どのようにして構成員を集めているのか。ライターの雨宮純氏は「その手法はカルト集団と類似しており、手口が分かっていても簡単には抜け出せない。勢力は拡大しており、幕張メッセに約3000人を集めて、有名芸能人のネタ披露を催したこともある」という——。(第4回)』、「幕張メッセに約3000人を集めて」とは本格的だ。
・『「君ら、何かの宗教とちゃうよね?」  「君ら、何かの宗教とちゃうよね?」 大規模コンベンションセンターのステージでは、テレビでよく見る若手芸人がネタを披露した後、こう不安げに茶化して、参加者約3000人の笑いを取る。これは悪徳商法集団の「環境」で開催されている「全体会議」の一コマだ。 「初回参加のDさんです! 意気込みをどうぞ!」 別のプログラムでは、ステージ上に会員が立ち、求められるままに一言メッセージを述べる。すると、約3000人の構成員たちが異常にも思える拍手で祝福する。 この連載で取り上げている悪徳商法集団の「環境」では、多額の上納金や不衛生なシェアハウス、激しい勧誘といった負担を構成員に強いている。このような負荷を掛けながらも大勢に所属させ続けるため、「環境」ではセミナーで繰り返し承認を与えて動機付けを行っている。 本稿では彼らのセミナーと、そこで与えられた承認により団体の活動を手伝わせる「プロジェクト」という名のタダ働きの実態について迫る。なお、前回と同じく元会員への取材をもとに構成している』、私が環境やセミナーでネット検索しても、一般的なものが多いためか、肝心のものには行き着かなかった。
・『2泊3日でセミナー漬けにされる  「環境」のセミナーには、大きく分けて内部セミナーと外部セミナーがある。このうち優先度が高いのが外部セミナーだ。これは外部の業者に委託しているセミナーで、入会者全員に勧められる基礎コースは2泊3日で行われ、会場は大阪にあるという。 この期間中、入会者は全員セミナー漬けにされる。セミナー費用は約10万円で、東京に住んでいた脱会者のDさんの場合は宿泊交通費を入れると10万円を越えたという。もちろん、全額自己負担だ。「部外者にはセミナーの内容を口外しない」という趣旨の誓約書を書かされているため全容は語らなかったが、集団を密室に閉じ込め、精神的に動揺させられるゲームや瞑想を行うようだ。 また、外部セミナーと言いつつトレーナー役は全員師匠やリーダー(一定数の勧誘実績がある構成員)で、人生の目標も「環境」での活動に結び付けられる。 そして、このセミナーの最後には、ある意味で“強制的に感動させる演出”が待っていた』、「外部セミナー」は「外部の業者に委託している」とはいえ、「基礎コースは2泊3日」、「セミナー費用は約10万円」、「トレーナー役は全員師匠やリーダー」、「外部委託」は形式に過ぎず、実質的には「環境」が仕切っているようだ。
・『感動的な演出で“スイッチを押されたかのよう”に泣いてしまった  「セミナーの最後に『家族や友人、師匠のことを思い浮かべて下さい』と言われて瞑想が始まり、しばらくして促されるままに後ろを振り向くと、紹介者が立っていたんです。そして『これから一緒に頑張っていこう』という内容の手紙を渡されます。 ずっと密室で過ごしていたのと、感動的な音楽が掛かっていたこともあり、気付いたら感動し泣いていました。今思い返すと、まるで何かのスイッチを押されたようでした。」 自己啓発セミナーでは巧妙な集団心理操作が行われ、運営側が狙った心理状態へと誘導される。これにより勧誘にいそしむ動機を植え付けていると考えられ、外部のセミナーを優先して受けさせていることもうなずける。 また「環境」には多種多様な内部セミナーがある。入会するとまず100人規模の「スタートアップセミナー」が行われ、これが終わるとマインドセットや活動内容を学ぶ「基礎トレ」、その復習やロールプレーイングを丸一日かけて行う300人規模の「ワークショップ」が行われる。 そのほかにも、各管轄で結果を出しているメンバーが表彰されスピーチをする500人規模の「ビジネスセッション」というイベント性の高いセミナーもあるという。 これを1カ月サイクルで毎週末に繰り返していく。「環境」では、「成果=やる前提×やり方×やる量」という方程式が重要視されており、やる前提とやり方を基礎トレで学び、やる量である現場をこなすことで成果につながると指導される』、「内部セミナー」はかなり組織的なようだ。「感動的な演出で“スイッチを押されたかのよう”に泣いてしまった」、通常はクールな執筆者でも泣くとは驚かされた。
・『「指の骨が砕けるほどの拍手を!」と指示される  また、セミナーでは入会数はもちろんのこと「初参加」「新規友人数」「プロジェクト参加(プロジェクトについては後述)」といった形で行う表彰が毎回行われる。表彰の基準は厳しくないため、真面目に活動していればかなりの割合で表彰されるが、これにちょっとした高揚感があるそうだ。 セミナーではオーバーリアクションが推奨されており、表彰されると耳が割れんばかりの拍手が沸き起こるという。これは幹部から「指の骨が砕けるほどの拍手を!」と指示されているからだ。 この他にも師匠の話を聞く『師匠の部屋』や、師匠がさらに上位の幹部に質問する『東京カリスマ』など、幹部とのコミュニケーションが取れるセミナーもあるという。また、脱会者のDさんがもっとも記憶に残っていると語ったのが、「自己投資」と呼ばれる毎月15万円の上納金を達成していると参加できる限定セミナーだ。 このセミナーは上納金を支払っているだけで「自己投資を達成した」ということで表彰される。活動の成果ではなく、単にお金を払っているだけで表彰されることに衝撃を受けたという。 「環境」では毎週末のセミナーを通じてある種の勧誘マニュアルを教え込んでいるが、それは同時に承認の場にもなっている。数百人の前で熱烈に承認される場を普段から得られている人は稀であり、頻繁に承認儀礼を行うことで所属の動機付けをしていると考えられる。 そして、この動機付けとして団体内で強く機能しているのが「全体会議」だ』、「セミナーでは・・・表彰されると耳が割れんばかりの拍手が沸き起こるという。これは幹部から「指の骨が砕けるほどの拍手を!」と指示されているからだ」、カルト的な儀式そのものだ。
・『有名芸能人も多く参加する「全体会議」  「全体会議」というのは毎月行われる「環境」全体のセミナーで、月初か月末の土日で開催される。例年は関東か関西のコンベンションセンターで開催されていたが、数千人が集まるイベントということもあって昨年の緊急事態宣言でいったん中断された。 だが、宣言解除後に復活し、今年の緊急事態宣言発令後も行われているようだ。内容としてはセミナーや表彰のほか、ゲストを招いてのインタビューや余興など、さまざまなプログラムが用意されている。また、テレビでよく見る芸能人もトークショーなどに参加していたという。 全体会議の様子。 筆者が確認したゲスト一覧には、テレビにもよく出演している辛口で有名な女性芸能人や若手お笑い芸人など、芸能人が数多く含まれていた。「有名芸能人がゲストとして来ているのを見ると、すごい団体に入会したような気持ちになった」とDさんが語っており、この芸能人のゲスト出演によって、入会者の心をつかんでいたと考えられる。 芸能人への出演交渉は、クラウドファンディングなどの運営を行う「環境」のフロント団体が取り仕切っているという。なお、現在でもフロント団体のホームページには、全体会議のゲストも含めた芸能人へのインタビュー記事が掲載されている。 また、初回参加の場合は、それだけで紹介者も含め会場の座席を前方に設定される。前方に座れるのは成果を出している人で、団体内では名誉なことだとされている。 さらに、新規入会というだけで壇上に上がることができ、表彰された上にスピーチの機会まで与えられる。数千人の前で拍手されるという非日常的な経験をすることで、多くの参加者が充実した気分を味わうという。このように新規参加者に充実感を与える仕組みを作っているのだ』、「芸能人のゲスト出演によって、入会者の心をつかんでいたと考えられる。 芸能人への出演交渉は、クラウドファンディングなどの運営を行う「環境」のフロント団体が取り仕切っている」、「新規入会というだけで壇上に上がることができ、表彰された上にスピーチの機会まで与えられる。数千人の前で拍手されるという非日常的な経験をすることで、多くの参加者が充実した気分を味わう」、よく練られた仕組みだ。
・『オンラインサロンでは身分証明書を提出させている  ほかにも、「太っている人集合」や「童貞集合」というミニイベントも開催されていたようだ。普通なら指摘されたくないネガティブな特徴だが、壇上で顔を売れるのは気分が良いため、多くの構成員が登壇していたという。 普段は自分から言うと恥ずかしい特徴も、それを材料にして目立ち、肯定されるのは快感だ。これには強引に自己開示を行わせ、承認することでカタルシスを得させて組織への所属欲求を高める効果があると考えられる。 「全体会議」は関東か関西で行われるため、長距離移動が多く発生する。その実態も過酷なものだった。 「『全体会議』への移動には『環境』が借り上げたバスが使われます。バスは四列シートで、人数が多いため補助席で過ごす人もいました。金曜日の夜に出発し、月曜日の朝に帰ってくるのですが、そのまま出社するためスーツを持ち込む人も多かったです。 補助席で東京から大阪と聞くとハードに聞こえると思いますが、当時は普段から深夜まで勧誘やミーティングをしていたため、何も現場を入れる必要のない出発前はむしろ楽でした。さらに、月曜日に帰ってきた日か、その翌日の夜には振り返りのミーティングが設定されていました。 学習してから48時間以内に振り返りを行うことで、内容を定着させるためです。また、『全体会議』に参加するためには、『環境』が管理している月額1万円のオンラインサロンに登録する必要があり、これが参加チケット代わりとなっています。この登録にはなぜか運転免許証やパスポートといった身分証明書の画像提出が必要でした。」 「環境」ではオンラインサロン登録時に身分証明書を提出させるため、ここで主な個人情報を握られてしまう。このため、取材の中でも身元割れが強く警戒されており、実際に取材を直前でキャンセルした脱会者がいた』、「普通なら指摘されたくないネガティブな特徴だが、壇上で顔を売れるのは気分が良いため、多くの構成員が登壇していたという。 普段は自分から言うと恥ずかしい特徴も、それを材料にして目立ち、肯定されるのは快感だ。これには強引に自己開示を行わせ、承認することでカタルシスを得させて組織への所属欲求を高める効果があると考えられる」、確かによく出来た仕組みだ。「『全体会議』への移動には『環境』が借り上げたバスが使われます。バスは四列シートで、人数が多いため補助席で過ごす人もいました。金曜日の夜に出発し、月曜日の朝に帰ってくるのですが、そのまま出社するためスーツを持ち込む人も多かったです」、「月曜日の朝に帰ってくるのですが、そのまま出社するためスーツを持ち込む人も多かった」、信じられないようなハードスケジュールだ。
・『構成員を動員して通販サイトのランキングを操作  「全体会議」をはじめとしたセミナーの運営は構成員によって行われており、無給であるという。「環境」ではこのような活動を「プロジェクト」と呼ぶ。 具体的には、店舗の手伝いが「店舗プロジェクト」、大規模イベントや出版の手伝いが「全体プロジェクト」と呼ばれている。「店舗プロジェクト」はオーガニックショップ開店準備や仕入れの手伝い、飲食店の従業員などを指す。 飲食店の場合は給料をもらえることがあるようだが、オーガニックショップの場合はほぼ無給。このため、無給労働を行わせる場合は、従業員ではなくインターンとして働く趣旨の誓約書を書かされるという。 また、「全体プロジェクト」というのはイベントや出版の手伝いがメインだ。全体会議の開催前にスタッフ募集のメールが流され、構成員はGoogleフォームで応募する。 この際、応募条件には「自己投資15万円達成」や「勧誘実績3人以上」といった参加資格が設けられている。出版については、幹部が出版した本をWeb購入するよう指示され、恣意的にランキングを上昇させていたという。 同様に、団体が応援するアーティストの曲を同時期にダウンロードしたり、師匠のブログにアクセスすることもあったようだ。しかも、支払いは自腹である。一方で、「プロジェクト」に参加しているとセミナーで表彰されるため、無給労働や自腹購入と引き換えに構成員に承認を与える仕組みになっていたと考えられる』、「「プロジェクト」に参加しているとセミナーで表彰されるため、無給労働や自腹購入と引き換えに構成員に承認を与える仕組みになっていたと考えられる」、なるほど。
・『勧誘の初期段階で連絡を絶つべき  「環境」はさまざまセミナーで承認機会を繰り返し用意し、芸能人を呼んで組織の大きさを印象付け、特に新入りは特別扱いして組織に染めていく。集団の前で繰り返し承認する方法はカルト集団と類似しており、所属への強力な動機付けとなっている。 そうして所属し続けているうちに、15万円の上納金を支払うだけでなく、「プロジェクト」という名のタダ働きにも参加してしまう。数千人の前で壇上に立ち、はちきれんばかりの拍手を向けられれば、手口が分かっていても心理的影響を受けることは十分に考えられる。勧誘の初期段階で連絡を絶つことを強くおすすめする。 【第1回】「洗脳するまで目的は伝えない」起業を夢みてセミナーに通った20代女性の悲惨な末路 【第2回】「月20万円でカビだらけのシェアハウス住まい」起業を夢みる若者を狙う洗脳の実態 【第3回】「高級外車でタワマンに送り…」起業志望者を地獄に落とすマルチ勧誘の手口』、「集団の前で繰り返し承認する方法はカルト集団と類似しており、所属への強力な動機付けとなっている。 そうして所属し続けているうちに、15万円の上納金を支払うだけでなく、「プロジェクト」という名のタダ働きにも参加してしまう。数千人の前で壇上に立ち、はちきれんばかりの拍手を向けられれば、手口が分かっていても心理的影響を受けることは十分に考えられる。勧誘の初期段階で連絡を絶つことを強くおすすめする」、その通りだ。

次に、本年2月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した三菱総合研究所による「大学生を狙う「闇堕ち」の罠の実態、カルト宗教・闇バイト・特殊詐欺…」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/318235
・『若者による闇バイトが社会問題になっています。効率よく高収入を得られると軽い気持ちで応募したところ、特殊詐欺の片棒を担がされるハメに……。2022年4月1日には、20歳から18歳への成年年齢の引き下げが施行されました。つまり大学生になる方のほとんどが成年となります。自分の判断でできることが増える分、そこにつけ込んでくる悪質な業者が出てくることも事実。大学生になればそういったリスクも新たに増えてきますが、どのように対応すればいいのでしょうか?そこで今回は『大学生が狙われる50の危険』(青春出版社刊)から大学生になるときに知っておくべきリスクについて抜粋し、紹介します』、興味深そうだ。
・『新入生勧誘にひそむ“わな”  大学でのクラブやサークル活動は、学生生活を彩る貴重な課外活動です。学部や学科、学年を超えた新しい出会いに加え、他大学の学生との交流の場も待っています。 入学時期は、クラブやサークルにとって新しい仲間を集める大切な時期で、キャンパスやSNS上で活発な勧誘活動が繰り広げられます。同じ大学に入学する仲間とのSNSを通じた交流は、入学前から始まる場合もあり、友だちができたり、いろいろな情報交換ができたりと良い面もあります。 しかし、中には怪しい参加者も紛れているかもしれません。実際に会ったことのない人との交流には注意が必要です。) たとえば、勧誘時とは話が異なり、ひとたび足を踏み入れてしまうとなかなか抜け出せなくなるような怪しい団体も存在します。表向きは文化系のサークルを装い、さまざまなボランティア活動や国際交流を行っていると言ったり、スポーツ系のサークルを装って初めてでも気軽に始められるなどと言ったりして本来の活動を隠し、あの手この手で新入生を勧誘します。 しかし、実態としては反社会的な活動を行っていたり、教祖の経済的搾取などのために信者を利用したりする団体もあります』、「反社会的な活動を行っていたり、教祖の経済的搾取などのために信者を利用したりする団体もあります」、開放的になった「新入生」にこのような問題ある「団体」が、「本来の活動を隠し、あの手この手で新入生を勧誘します」、とは困ったことだ。
・『宗教団体からの勧誘が毎年トラブルの上位に  大学生協のアンケート調査『CAMPUS LIFE DATA 2021』で、大学入学後に遭遇したトラブルでは「宗教団体からのしつこい勧誘」が毎年上位となっています。こうした勧誘は、入学式の季節に限らず1年を通して行われています。 こうした団体に入ると、次のような危険に遭遇する恐れがあります。 ●会費と称して大金を払わされる ●さまざまな活動への参加を強要され、授業への出席が困難になる ●やめようと思っても抜け出すことができない ●自らも勧誘活動に手を染め、貴重な友人を失ってしまう  不審に思ったらまずは断り、友人や両親、大学に相談することが重要です』、「宗教団体からのしつこい勧誘」には、確かに多くの「危険に遭遇する恐れがあります」、「不審に思ったらまずは断り、友人や両親、大学に相談することが重要です」、その通りだ。
・『勧誘を断りにくいケースなどはすぐに信頼できる人に相談を  最近では、多くの大学で注意を喚起する呼びかけやチラシなどを準備し、オリエンテーションなどでその危険性を学生に伝えるようにしています。悪質な団体には、オリエンテーション前や入学手続きのころから勧誘活動を始めるところもありますので、十分に注意してください。 断る勇気、抜け出す勇気が必要です。簡単に断れないケースや友だち、親にも相談しにくい場合もあるかもしれません。そのようなときは大学の相談窓口などを利用しましょう。 一人で悩んでいても問題は解決しません。一歩、踏み出す努力をしてみてください。それだけで、悩みが解消されることも多いのです』、「勧誘を断りにくいケースなどはすぐに信頼できる人に相談を」、その通りだ。
・『“ネット上のプライバシー”実は個人の特定は現実よりも簡単  あなたはインターネット上でなら身元を明かさずに行動できると思っていませんか? 実は、インターネット上での行為は現実(リアル)社会よりも特定が簡単なのです。 なぜなら、情報を掲載する際には必ずインターネット接続会社や携帯電話会社のネットワークを通じて情報が送られますし、SNSや掲示板などではログ(過去のやりとりの記録)が保管されています。 たとえばSNSのアカウントに名前を登録していなかったとしても、スマートフォンで撮った写真にはGPS情報(位置情報)が埋め込まれていることがあるので、そこから場所を特定することができます。天気などの話題から地域を特定することも可能です。 よくやりとりをしている友人のアカウントに本名や学校名などが登録されていて、そこから通学する学校などを特定されることもあります。投稿した自動車の写真でバックミラーに所在地の情報が映っていたり、写真に写っている人の瞳に撮影者が写り込んでいたりしたというケースもあります。 このようなやり方を組み合わせることで、かなりの確率で個人が特定できます』、「“ネット上のプライバシー”実は個人の特定は現実よりも簡単」、なので大いに気を付けるべきだ。
・『ネット詐欺には就活生の不安や悩みにつけ込むものもある!  インターネット上には数多くの重要な情報や有益な情報が存在します。しかし情報を掲載するだけであれば誰でもできるため、間違った情報やあなたをダマそうとしている情報も少なくありません。 大学生が引っかかりやすいものとして就活詐欺があります。 たとえば、就活を有利にするために、SNSに掲載されている情報から無料のセミナーに参加してみると、そこで有料のセミナーに誘われることがあります。 就活詐欺のバリエーションはさまざまあり、就活では見た目が重要だからとエステの勧誘につなげたり、企業の面接対策、筆記試験対策の講座や、自己啓発セミナーにつなげたり、もしくは有名企業の社員とのネットワークを作る場に案内したりというものがあります。 これらは実際に就活に役に立つケースもないわけではないようですが、たいていの場合、そんなにお金をかけなくても手に入る情報や、会社の説明会に行けば手に入るような情報でしかないものも少なくないようです』、「ネット詐欺には就活生の不安や悩みにつけ込むものもある!」ので、十分に気を付けるべきだろう。
・『詐欺の片棒を担ぎ逮捕される学生も  インターネット上には現実にはないうまい話がある、裏技があると思ってしまう人がなぜか多いのですが、基本的にそのような都合のいい話はあり得ない、ということを覚えておいてください。 口コミで信頼できると書いてあったとしても、それすら悪質サイトがばらまいている情報かもしれないというのがインターネットの世界です。 さらには、みなさん自身が、これらのサクラをやるというアルバイト募集を見かけることがあるかもしれません。しかし、高額なアルバイト代につられて手を染めるようなことは決してしないでください。アルバイトであっても大学生が詐欺容疑、組織犯罪処罰法容疑(組織的詐欺)で逮捕された事例があります』、NO FREE LUNCH(タダ飯より怖いものはない)との言葉をかみしめて、気を付けたいところだ。
・『知らないうちに資金洗浄に協力してしまったケースも  最近では手口がさらに巧妙になっていて、実際にお金が振り込まれるという詐欺もあります。 SNSなどで○万円、△人限定で配っていますという書き込みを見かけることもありますが、これに実際に申し込むと当選連絡が来て、口座番号などの登録を求められます。) 当初は、この情報を転売されるという詐欺が横行していましたが、最近ではその口座に本当にお金が振り込まれます。 ただ、当初約束された金額よりも多めに振り込まれていて、お金を振り込んだという人から「振り込みすぎたので◇◇万円をATMで引き出して、□□という公園に持ってきてくれませんか」などという連絡が来ます。これに対応すると、実はこのお金は犯罪収益で、知らないうちにオレオレ詐欺の出し子になっているというものです。 そもそも振り込まれた時点で資金洗浄に協力していることになるのです。 お金のやりとりが発生する場合は特に気をつけなくてはなりません。 大学という新生活を迎えるということは、こうした詐欺などのリスクのほかにも地震や大雨などの災害や交通事故など様々なリスクに自分で対応していく必要が出てきます。 そうした時に「知らなかった…」でせっかくの大学生活を台無しにしないために、“リスクの存在”を知っておくことが重要です』、「大学という新生活を迎えるということは、こうした詐欺などのリスクのほかにも地震や大雨などの災害や交通事故など様々なリスクに自分で対応していく必要が出てきます・・・“リスクの存在”を知っておくことが重要です」、同感である。

第三に、5月20日付け東洋経済オンラインが掲載した作家・ジャーナリストの金田 信一郎氏による「「アムウェイ」にハマる人々のありふれた心理 10年取材して見えた「ねずみ算式」の魔術」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/671967
・『私は原稿を喫茶店で書くようにしている。すると、いやでも聞こえてくるのが、大きい声で話すマダムたちの会話だ。マスク着用の緩和もあって、先日も「あの話」が店内に響きわたっていた。 「世の中って、絶対に儲かる仕組みってあるのよねえ」 チラッと見る。バッチリ化粧をしたマダムが、知人を前にして、自信たっぷりに話している。 「え、それ大丈夫?」 「って思うでしょ。私も最初は疑って勉強したわよ。先生に質問してさ。家にもお邪魔して、確信したわ。世界が違うのよ」 知人は黙ってお茶を飲む。 「奥さんも親戚もやってるのよ。で、みんな余裕なわけ。冬は全員、ハワイに飛んで、コンドミニアムで過ごしてるからね」 「で、どういう仕組みなの?」 「私も勉強中だから、まず100万円やってみる。それで、詳しくなったら話すね」 「なんで100万円かかるの?」 「最低限の投資よ。そういう仕組みなの。そんなの何百倍、何千倍になって返ってくるんだから」』、有閑マダムたちのいかにもありそうな会話だ。
・『「夢の生活」見せてカネを投じさせる  怪しい話である。1つ言えることは、「絶対に儲かる」なんて都合のいい話が、世の中に転がっていないことだ。超低利の普通預金でも銀行破綻というリスクがある。そんな中で、百倍、千倍を狙う投資は超高リスクである。まあ、字のごとく、「投(げる)資(金)」、つまり「投げ銭」になるだろう。おそらく、マダムの100万円は返ってこない。 「それは犯罪じゃないか。なんで、止めてやらないんだ!」。そんなお叱りの声もあるだろう。だが、残念ながら、これは犯罪行為ではない。元締めが特殊詐欺グループの「ルフィ」のような人物なら別だが、合法的なビジネスとして成立しているケースが多い。 夢の生活を見せて、会員を増やしてカネを投じさせる。そのカネは組織ピラミッドの頂点に位置する一部の人に集中配分される。 私は、そんなネットワークビジネスを長らく見続けてきた。 原点は、やはり喫茶店だった。 新人記者時代、PR会社の女性社員と喫茶店で会った。それまで、中小企業の情報を提供してくれていた彼女は、この日、席に座るなり洗剤の話を始めた。その洗剤は洗浄効果が高いという。どうやら、いつもの企業紹介ではなく、その洗剤を買う会員になれ、ということらしい。 「いや、自分で洗濯しないんで」 そう言って、やんわりと断ろうとすると、奇怪な話を始めた。 「使わなくてもいいの。良さを周りの人に伝えれば、今の会社より高い収入が入るから」 「いや、そもそも、その良さがわからないから、友人に伝えられないしなあ。キックバックがあるなんて、後ろめたいし……」 その瞬間の彼女の冷めた表情が忘れられない。すぐに伝票をつかんで立ち上がり、出て行った。それがアムウェイとの出会いだった。) それから、私は日本アムウェイの本社に通うようになった。当時は上場企業だったので、決算発表や会見を開く。だが、「怪しい」という風評から、大手メディアの記者はほとんど参加しない。 いつしか私は歓待を受けるようになった。なにせ、熱心に通い、質問を続けるのだから。そして、一緒に飲みに行くようになり、本音も聞けるようになった。 パーティーにも出席させてもらった。広い会場に幹部やディストリビューター(販売員)が出席する。私のテーブルの女性は、分厚いアルバムを見せてくれた。国内と米国に豪邸があり、プールで泳いだり、ワイングラスを傾ける写真が並ぶ。 夢の生活を見せつけるのである』、「日本アムウェイ」については、1997年に国会で問題が取り上げられて以降、マスコミに叩かれ、2000年には売上がピーク比半減、9月には上場廃止、10月には米国でも上場廃止になった。
・『ネットワークビジネスの収益構造  私は分析記事を書くため、約10年間、あらゆるネットワークビジネスに顔を出した(もちろん、会員にはなっていない)。そこには、さまざまな商品があった。せっけん・洗剤、化粧品、サプリ、健康飲料、浄水器、羽毛布団などなど。 商品には共通の特徴がある。費用対効果がわかりにくいのだ。高額でも「効果がある」と言えば、真偽を確かめることが難しい。 あるセミナーで、トップ販売員がこんな説明をしていた。 「このサプリ、ほかの商品に比べて高すぎる。そういうバカなことを言う人がいます。そういう人には、こう言ってください。あなたが赤いフェラーリに乗っていて、赤いカローラに乗っている人に『同じ赤いクルマだね』って言われたら怒るでしょ、って。同じにされちゃ困るんですよ」 え、その例え話、ヤバいでしょ。苦笑いをしながら横を見ると、皆まじめな顔でうなずいている。 マジか。彼らはそう言って売り込んでいくのか。これでは議論のすり替えではないか。 だが、彼らにとっては、そんなことはどうでもいい。手っ取り早く、自分の傘下に人を集めるトーク術がほしいのである。納得しない人は「はい、さようなら」だ。 そんなネットワークビジネスの収益構造を紐解(ひもと)くカギがある。アムウェイは上場時、財務諸表を公開していた。それを時系列で見ると、売上高を10として、原価3、販売手数料3、その他コスト2、という比率を続けている。ほぼブレない。販売員への報奨は約3割で固定されている。ちなみに同様の商品を扱うメーカーの平均原価率は5割程度。アムウェイ製品の価格が高いのは、多額のボーナスを支払うためとも読める。 そのボーナスも、組織ピラミッドの上位層に集中的に投下する。集中的な配分で「夢の生活」をする成功者を見せつけるのだ。 おおまかに言うと、自分が勧誘した販売員グループが月間に100万円を大きく超える売り上げ実績をあげられるようになれば、自身の年収が数百万円に達するレベルに手が届く。そこから上に行けば、アムウェイの仕事だけで生活できる(かもしれない)。 「目の前にニンジンをぶら下げて走らせる。だから(会社が)急成長できる。一方でマネーゲームになりやすく、ボーナス目当ての無理な販売や在庫を抱えるトラブルが発生しやすい」(業界団体幹部) 社会問題になっても、このビジネスは永遠に消えない。なぜならば、「楽をして、ぜいたくな生活がしたい」という人々の夢が消えることはないからだ。 だからして、100万円を払って夢を追うマダムは、これからも現れる。横で私は「そのカネで2000回、コーヒーが飲めるのに」とソロバンをはじく。 だが、それは2000回、原稿をシコシコと書き続けることを意味する。一方、マダムは札束が1000倍になる夢を見る。 どっちのカネの使い方がいいのか、それは私にもわからない。 
【情報提供をお願いします】東洋経済ではあなたの周りの「ヤバい会社」「ヤバい仕事」の情報を募っています。ご協力いただける方はこちらへ』、「ネットワークビジネス」と筆者は名付けているが、典型的なねずみ講である。上層部は優雅に暮らせるだろうが、それ以外、特に末端になるほど悲惨な暮らしを余儀なくされるのが実態だ。筆者は「どっちのカネの使い方がいいのか、それは私にもわからない」と逃げているが、悲惨さを取上げていないので、およそ不完全な記事だ。 
タグ:「幕張メッセに約3000人を集めて」とは本格的だ。 雨宮 純氏による「「指の骨が砕けるほどの拍手で歓迎」入会者を2日間で洗脳する巨大イベントのヤバい光景 幕張メッセ3000人の前で芸能人が…」 PRESIDENT ONLINE (その6)(「指の骨が砕けるほどの拍手で歓迎」入会者を2日間で洗脳する巨大イベントのヤバい光景 幕張メッセ3000人の前で芸能人が…、大学生を狙う「闇堕ち」の罠の実態 カルト宗教・闇バイト・特殊詐欺…、「アムウェイ」にハマる人々のありふれた心理 10年取材して見えた「ねずみ算式」の魔術) 悪徳商法 私が環境やセミナーでネット検索しても、一般的なものが多いためか、肝心のものには行き着かなかった。 「外部セミナー」は「外部の業者に委託している」とはいえ、「基礎コースは2泊3日」、「セミナー費用は約10万円」、「トレーナー役は全員師匠やリーダー」、「外部委託」は形式に過ぎず、実質的には「環境」が仕切っているようだ。 「内部セミナー」はかなり組織的なようだ。 「感動的な演出で“スイッチを押されたかのよう”に泣いてしまった」、通常はクールな執筆者でも泣くとは驚かされた。 「セミナーでは・・・表彰されると耳が割れんばかりの拍手が沸き起こるという。これは幹部から「指の骨が砕けるほどの拍手を!」と指示されているからだ」、カルト的な儀式そのものだ。 「芸能人のゲスト出演によって、入会者の心をつかんでいたと考えられる。 芸能人への出演交渉は、クラウドファンディングなどの運営を行う「環境」のフロント団体が取り仕切っている」、「新規入会というだけで壇上に上がることができ、表彰された上にスピーチの機会まで与えられる。数千人の前で拍手されるという非日常的な経験をすることで、多くの参加者が充実した気分を味わう」、よく練られた仕組みだ。 「普通なら指摘されたくないネガティブな特徴だが、壇上で顔を売れるのは気分が良いため、多くの構成員が登壇していたという。 普段は自分から言うと恥ずかしい特徴も、それを材料にして目立ち、肯定されるのは快感だ。これには強引に自己開示を行わせ、承認することでカタルシスを得させて組織への所属欲求を高める効果があると考えられる」、確かによく出来た仕組みだ。 「『全体会議』への移動には『環境』が借り上げたバスが使われます。バスは四列シートで、人数が多いため補助席で過ごす人もいました。金曜日の夜に出発し、月曜日の朝に帰ってくるのですが、そのまま出社するためスーツを持ち込む人も多かったです」、「月曜日の朝に帰ってくるのですが、そのまま出社するためスーツを持ち込む人も多かった」、信じられないようなハードスケジュールだ。 「「プロジェクト」に参加しているとセミナーで表彰されるため、無給労働や自腹購入と引き換えに構成員に承認を与える仕組みになっていたと考えられる」、なるほど。 「集団の前で繰り返し承認する方法はカルト集団と類似しており、所属への強力な動機付けとなっている。 そうして所属し続けているうちに、15万円の上納金を支払うだけでなく、「プロジェクト」という名のタダ働きにも参加してしまう。数千人の前で壇上に立ち、はちきれんばかりの拍手を向けられれば、手口が分かっていても心理的影響を受けることは十分に考えられる。勧誘の初期段階で連絡を絶つことを強くおすすめする」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 三菱総合研究所による「大学生を狙う「闇堕ち」の罠の実態、カルト宗教・闇バイト・特殊詐欺…」 『大学生が狙われる50の危険』(青春出版社刊) 「反社会的な活動を行っていたり、教祖の経済的搾取などのために信者を利用したりする団体もあります」、開放的になった「新入生」にこのような問題ある「団体」が、「本来の活動を隠し、あの手この手で新入生を勧誘します」、とは困ったことだ。 「宗教団体からのしつこい勧誘」には、確かに多くの「危険に遭遇する恐れがあります」、「不審に思ったらまずは断り、友人や両親、大学に相談することが重要です」、その通りだ。 「勧誘を断りにくいケースなどはすぐに信頼できる人に相談を」、その通りだ。 「“ネット上のプライバシー”実は個人の特定は現実よりも簡単」、なので大いに気を付けるべきだ。 「ネット詐欺には就活生の不安や悩みにつけ込むものもある!」ので、十分に気を付けるべきだろう。 NO FREE LUNCH(タダ飯より怖いものはない)との言葉をかみしめて、気を付けたいところだ。 「大学という新生活を迎えるということは、こうした詐欺などのリスクのほかにも地震や大雨などの災害や交通事故など様々なリスクに自分で対応していく必要が出てきます・・・“リスクの存在”を知っておくことが重要です」、同感である。 東洋経済オンライン 金田 信一郎氏による「「アムウェイ」にハマる人々のありふれた心理 10年取材して見えた「ねずみ算式」の魔術」 有閑マダムたちのいかにもありそうな会話だ。 「日本アムウェイ」については、1997年に国会で問題が取り上げられて以降、マスコミに叩かれ、2000年には売上がピーク比半減、9月には上場廃止、10月には米国でも上場廃止になった。 「ネットワークビジネス」と筆者は名付けているが、典型的なねずみ講である。上層部は優雅に暮らせるだろうが、それ以外、特に末端になるほど悲惨な暮らしを余儀なくされるのが実態だ。筆者は「どっちのカネの使い方がいいのか、それは私にもわからない」と逃げているが、悲惨さを取上げていないので、およそ不完全な記事だ。
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健康(その24)(人間が病気になる原因は"2つ"だけ…名医が「自律神経・血管・腸」を重視する理由【2022編集部セレクション】 免疫力を高める日々のリカバリー術、若々しさを保つ「テロメア」は延命効果よりがんリスクの方が高い?) [生活]

健康については、本年3月28日に取上げた。今日は、(その24)(人間が病気になる原因は"2つ"だけ…名医が「自律神経・血管・腸」を重視する理由【2022編集部セレクション】 免疫力を高める日々のリカバリー術、若々しさを保つ「テロメア」は延命効果よりがんリスクの方が高い?)である。

先ずは、5月12日付けPRESIDENT BOOKSが掲載した順天堂大学医学部教授の小林 弘幸氏による「人間が病気になる原因は"2つ"だけ…名医が「自律神経・血管・腸」を重視する理由【2022編集部セレクション】 免疫力を高める日々のリカバリー術」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/69396
・『2022年下半期(7月~12月)にプレジデントオンラインで配信した人気記事から、いま読み直したい「編集部セレクション」をお届けします――。(初公開日:2022年7月28日) 自律神経研究の第一人者である小林弘幸・順天堂大学医学部教授は「免疫力を高めるためには、『自律神経』『血管・血液』『腸』のトライアングルが重要です」という。人体が「健康」という状態を作り出すために24時間365日途切れることなく果たしている、その驚くべき機能について、セブン‐イレブン限定書籍『自律神経を整える』から紹介する──。 ※本稿は、小林弘幸『自律神経を整える』(プレジデント社)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『細胞に必要な“栄養”と“酸素”を運ぶ「血液」  私たちが心身ともに健康でいるためには、いったい何が必要なのでしょうか。これについて少し考えてみましょう。 私たち人間の体は、約37兆~60兆個もの細胞が集まってできています。この細胞1つひとつが、それぞれの役割を果たして機能してこそ、健康を維持し元気な日々を送ることができます。 細胞1つひとつが機能するためには、十分な栄養と酸素が必要です。そして、全身の細胞に栄養と酸素を行き渡らせるために機能しているのが血液であり、血管です』、「人間の体は、約37兆~60兆個もの細胞が集まってできています。この細胞1つひとつが、それぞれの役割を果たして機能してこそ、健康を維持し元気な日々を送ることができます。 細胞1つひとつが機能するためには、十分な栄養と酸素が必要です。そして、全身の細胞に栄養と酸素を行き渡らせるために機能しているのが血液であり、血管です」、その通りだ。
・『血液は免疫細胞も運んでいる  私たちは栄養と酸素を、食事と呼吸によって体内に取り込み、さらに栄養は腸で、酸素は肺で吸収し、それらを血液にのせて各細胞に運んでいます。新型コロナウイルスなどの病原体やがん細胞を退治する「免疫細胞」を運んでくれるのも血液です。 細胞の隅々まで質のよいきれいな血液が流れれば、十分な栄養と酸素が届けられ、すべての臓器が適切かつ十分に働き、免疫力も高まります。 また、体内に溜まった不要な老廃物を体外に送り出すのも血液の働きです。細胞を常にきれいな状態に整え、栄養や酸素を取り入れやすくするためになくてはならない重要な役割を担っています。 それにより、肌や髪の毛、爪なども美しく、見た目の若々しさも維持できます』、確かに驚くほどよく出来た仕組みだ。
・『自律神経の乱れは血液の状態の悪化を招く  私たち人間は、血液がなければ生きていくことができません。そして、健康維持のためには、きれいな質のよい血液とスムーズな血流がとても重要です。 その重要な「血流」をコントロールしているのが自律神経です。 交感神経は血管を収縮させ、副交感神経は血管を拡張させます。両者がバランスよく交互に働くと、血管の収縮と拡張がリズミカルに繰り返され、血液はスムーズに流れて全身に行き渡ります。 ところが、両者のバランスが崩れてどちらか一方が過剰になると、血流の状態が悪くなります。 とくに交感神経が過剰に優位になると、呼吸が浅くなって心拍数が上がり、血管が収縮して血流が滞ります。その結果、血液がドロドロになって血管がダメージを受け、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす血栓が生じやすくなっていきます』、「交感神経は血管を収縮させ、副交感神経は血管を拡張させます。両者がバランスよく交互に働くと、血管の収縮と拡張がリズミカルに繰り返され、血液はスムーズに流れて全身に行き渡ります。 ところが、両者のバランスが崩れてどちらか一方が過剰になると、血流の状態が悪くなります」、「交感神経」と「副交感神経」の「バランス」は 生きていく上で、極めて重要なようだ。
・『体内にもさまざまな悪影響が  体にも、さまざまな不調が起こります。全身に栄養と酸素が行き届かないだけでなく、体内に不要な老廃物が溜まってしまうからです。 たとえば、臓器がダメージを受けてしまえば、免疫力や体力、脳の働きも低下して、頭痛などの不調が現れやすくなります。また、いざというときに体調が崩れる、ここぞというときにやる気が出ないなどといった心(=メンタル)の不調にもつながります。 加えて、代謝が落ちて太りやすくなったり、生活習慣病の発症リスクが高まったりします。 それだけではありません。がんやうつ病、年齢を重ねることで発症リスクが高まる認知症や骨粗鬆症こつそしょうしょう、フレイル(健康な状態と要介護状態との中間)やサルコペニア(筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態)なども、自律神経の乱れから生じていることが少なくないと私は考えています』、「自律神経の乱れ」がこんなにも広範な悪影響を及ぼすとは、初めて知った。
・『自律神経と血管・血液、腸は互いに影響し合う  さらにもう1つ、自律神経がコントロールしている重要なものがあります。それは「腸」です。 自律神経と血管・血液、そして腸は、互いに影響し合う関係にあります。 自律神経は血流と腸の働きをコントロールし、腸は自律神経のバランスをコントロールすると同時に血液の質(十分な栄養と酸素をのせ、老廃物を回収できているか)を左右しています。血管・血液は自律神経からは血流、腸からは質の影響を受けていることになります。 交感神経は日中、アクセル役として体を活発な状態に導いてくれますが、胃腸の働きについては、夜の間に副交感神経がアクセルの働きをして蠕動ぜんどう運動を活発にします』、「自律神経と血管・血液、そして腸は、互いに影響し合う関係にあります。 自律神経は血流と腸の働きをコントロールし、腸は自律神経のバランスをコントロールすると同時に血液の質・・・を左右しています」、なるほど。「胃腸の働きについては、夜の間に副交感神経がアクセルの働きをして蠕動ぜんどう運動を活発にします」、「翌朝の排便の準備をしてくれている」重要な役割だ。
・『免疫機能を左右する「トライアングル」  朝の排便が理想的なのは、夜中のうちに副交感神経の影響で腸が活発に働いて、翌朝の排便の準備をしてくれているからです。朝、自然とトイレに行きたくなるのは、夜の間に副交感神経がしっかりと働いてくれた証拠です。 つまり、自律神経のバランスが崩れて副交感神経の働きが衰えると、血流が悪くなると同時に、腸の機能も低下して便秘になったり、腸内環境が悪化したりして(腸内に有害な細菌が増えます)、さまざまな不調や病気の原因になるということです。 また、自律神経と血管・血液、腸のトライアングルは、体の「免疫機能」にも深く関わっています』、「自律神経と血管・血液、腸のトライアングルは、体の「免疫機能」にも深く関わっています」、なるほど。
・『自律神経が整うと免疫細胞のバランスも整う  人が病気になるのには、大きく分けて2つの原因があります。「血管系」のトラブルと、「免疫系」のトラブルです。この2つのトラブルは、どちらも自律神経の働きと大きく関わっています。 「血管系」のトラブル、自律神経の乱れから起こる血管・血液のダメージによる心身への影響については前述しました。ここでは「免疫系」のトラブルと自律神経の関係について説明しましょう。 私たちの体には、「免疫」という病気から体を守るシステムが備わっています。 新型コロナウイルスのようなウイルスや病原菌に感染することによって発症してしまう「感染症」から体を守ってくれるのが「免疫機能」で、コロナ禍でもっとも耳にした用語のひとつかもしれません。 同じ環境で同じように仕事をしていても、よく風邪を引く人と引きにくい人がいます。こうした相違こそ、「免疫力」の違いがもたらすものにほかなりません』、「免疫機能」の重要性については、コロナワクチンで十二分に知らされた。
・『自律神経が整うと免疫力が高まる  免疫力が高ければ、体内に侵入したウイルスや病原菌をしっかり排除できるため発症しませんが、免疫力が低いと、体内に入ったウイルスや病原菌を排除しきることができずに発症してしまうのです。  免疫機能は、外部から侵入してくる異物に対して働くだけでなく、体の中で生じる異物に対しても働きます。 体内の異物の代表ががんです。がんは、私たちの体をつくっている細胞が、遺伝子の突然変異によってがん化、増殖してしまう病気です。 がんというと特別な病気と思われがちですが、実は健康な人でも体の中では毎日何千個ものがん細胞が生まれています。そして、がんが発症するかしないかを決めているのは免疫力です。免疫力が高ければ体内にがん細胞が生まれても、それらをしっかりと排除することができます。 免疫力の低い人は風邪を引きやすいだけでなく、がんにもなりやすいということです。免疫力の高さこそ、病気に対する抵抗力の強さです。 そして、自律神経が整うと免疫力が高まって、風邪を引きにくくなると同時に、がんにもなりにくくなる。まずは、このことを覚えておいてください』、「免疫力の高さこそ、病気に対する抵抗力の強さです。 そして、自律神経が整うと免疫力が高まって、風邪を引きにくくなると同時に、がんにもなりにくくなる」、その通りだ。
・『免疫機能の中心を担う白血球  少々専門的になりますが、もう少し詳しく説明しましょう。 免疫機能の中心を担っているのは、血液中の「白血球」です。白血球はいくつかの「免疫細胞」で構成されますが、それは次の3つに大別されます。 1つが病原菌など比較的大きめの異物を処理する「顆粒かりゅう球」、もうひとつがウイルスなどの小さな異物を処理する「リンパ球」、そして感染に対する防御の開始に重要な役割を果たす「単球」です。 近年の研究で、交感神経が優位になると顆粒球が増え、副交感神経が優位になるとリンパ球が増えることがわかってきました。 交感神経が働くと顆粒球が増えて病原菌に対する免疫力は高まりますが、過剰に優位な状態が続くと、体内に異物(病原菌)がいないときでも顆粒球が過剰反応して、健康維持に必要な「常在菌」を殺してしまうことがあります。 顆粒球は、自らが持つ「分解酵素」と「活性酸素」によって異物を処理します。ところが、増えすぎた顆粒球が体内に余ってしまうと、細胞としての寿命を終えたときに、持っている活性酸素を体内にばらまいて、健康な細胞を傷つけてしまうのです』、「増えすぎた顆粒球が体内に余ってしまうと、細胞としての寿命を終えたときに、持っている活性酸素を体内にばらまいて、健康な細胞を傷つけてしまう」、恐ろしい副作用だ。
・『日々のリカバリーが大切  一方、副交感神経が働くと、リンパ球が増えてウイルスに対する免疫力が高まります。しかし、過剰に優位になってリンパ球が増えすぎれば、異物(抗原)に敏感になりすぎて、アレルギーを起こしやすくなります。 つまり、免疫力は高ければ高いほどいいというわけではなく、高すぎることにも弊害があるのです。 交感神経と副交感神経のバランスが整うことによって、顆粒球とリンパ球がともに増え、免疫細胞のバランスがよくなることで、免疫機能が適度に効果的に働くというわけです。 もちろん、自律神経の乱れがすぐに免疫力の低下に反映されるわけではありません。一時的に交感神経優位の状態になったとしても、顆粒球がすぐに増えるわけではないのです。交感神経優位の状態が続くことを放置せずに、日々リカバリーをすることが大切です』、「交感神経優位の状態が続くことを放置せずに、日々リカバリーをすることが大切です」、ただ、「リカバリー」はどうすれば出来るのだろう。

次に、5月16日付けNewsweek日本版が掲載した作家・科学ジャーナリストの茜 灯里氏による「若々しさを保つ「テロメア」は延命効果よりがんリスクの方が高い?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/akane/2023/05/post-57_3.php
・『<米ジョンズ・ホプキンス大医学部の研究者たちが長いテロメアを持つ人たちの健康状態を調査したところ、毛髪などの若々しさが保たれていた反面、一般の高齢者に比べてがんになりやすいことが分かった。その理由をテロメアの発見史とともに解説する> 細胞核を持たない一部の生物(細菌や古細菌などの原核生物)以外の動物や植物は、真核生物と呼ばれます。染色体の両端に「老化のカウント装置」と考えられている「テロメア」と呼ばれる部分を持っています。 テロメアは、特徴的な繰り返し配列を持つDNAとタンパク質でできています。細胞が分裂するときは染色体の遺伝情報がコピーされますが、テロメアは重要な遺伝情報を確実にコピーできるようにする保護キャップの役割をしています。 また、細胞には分裂回数の限界があり、それを超えると細胞の増殖は止まります。これが、「細胞の老化」です。1回の分裂ごとにテロメアが少しずつ短くなることから、細胞の分裂回数はテロメアの長さが制限していると考えられています。 細胞が老化すると、細胞が作り上げている組織や臓器も老化して機能が衰えます。なのでかつては、細胞のテロメアを長く保つことができれば皮膚や内臓は若く保たれ、個体の寿命も長くなると考えられていました。 けれど今回、米ジョンズ・ホプキンス大医学部の研究者たちは、実際に長いテロメアを持つ家系の人たちの病歴を調べて、「長いテロメアを持つ人は、白髪が少ないなどの若々しい特徴が見られた反面、がんになりやすかった」という研究成果を世界四大医学誌に数えられる「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」(5月4日号)に発表しました。 長いテロメアは、私たちの健康にどのように影響するのでしょうか。テロメアの発見史とともに概観してみましょう』、「1回の分裂ごとにテロメアが少しずつ短くなることから、細胞の分裂回数はテロメアの長さが制限していると考えられています。 細胞が老化すると、細胞が作り上げている組織や臓器も老化して機能が衰えます。なのでかつては、細胞のテロメアを長く保つことができれば皮膚や内臓は若く保たれ、個体の寿命も長くなると考えられていました」、しかし、「米ジョンズ・ホプキンス大医学部の研究者たちは・・・「長いテロメアを持つ人は、白髪が少ないなどの若々しい特徴が見られた反面、がんになりやすかった」という研究成果を」、「発表しました」、なるほど。
・『テロメアの長さとヒトの寿命  テロメアの染色体の末端保護機能は、1930年代に後のノーベル生理学・医学賞受賞者であるハーマン・J・マラー氏とバーバラ・マクリントック氏によって、提唱されました。 1970年代になって分子生物学が発展すると、細胞分裂の際にDNAをコピーするときはプライマーと呼ばれる核酸の断片が必要で、この部分はコピー後に除去されるため、コピーされたDNAはオリジナルよりも短くなることが分かりました。そのままでは染色体上の遺伝情報が段々と削られてしまいますが、それを保護する役割をしているのが重要な遺伝情報は持たずに切り離しても影響がない部分であるテロメアです。 さらに、ヒトの体細胞の分裂に回数制限があることは、1960年代にレイナード・ヘイフリック氏らによって発見されていたので、テロメアの長さが分裂回数を制限している可能性も示唆されました。) その後の研究で、テロメアの長さはヒトの老化や寿命にも関係している可能性があることが報告されています。 たとえば、東京都健康長寿医療センター研究所の研究チームは2011年に、思春期に白髪や骨粗鬆症など加齢症状を示す早老症(ウェルナー症候群)の患者の骨格筋組織や皮膚組織では、テロメアが短縮していたことを報告しています。慶応義塾大と英ニューカッスル大の国際研究チームは15年に、100歳以上の長寿者とその家族ら約1500人を分析し、長寿者はテロメアが長く、老化を促進させる炎症マーカーの値が低かったと発表しました。 もっとも、テロメアが長いことは良いことばかりではありません。 09年にノーベル生理学・医学賞を受賞したエリザベス・H・ブラックバーン氏は、テロメアの配列を同定し、テロメアを伸長する酵素「テロメラーゼ」を発見した業績で知られています。 ブラックバーン氏は、ノーベル賞を同時受賞した教え子のキャロル・Wグライダー氏とともに「通常、体細胞はテロメラーゼ活性がないため、テロメアが限界まで短縮すると細胞は増殖できなくなる。対して、がん化した細胞ではテロメラーゼでテロメアの長さが修復されるため、細胞が無限に増殖できる」ことも発見しています。つまり、長いテロメアは異常細胞の排除を防ぐ役割を果たしているということです』、「がん化した細胞ではテロメラーゼでテロメアの長さが修復されるため、細胞が無限に増殖できる」、なるほど。
・『速やかに排除すべき変異細胞の耐久性も向上  では、実際に長いテロメアを持つ人の健康状態はどのような特徴があるのでしょうか。その疑問を解決しようとしたのが、今回のジョンズ・ホプキンス大の研究です。 研究チームは、テロメアの長さを制御する遺伝子「POT1」が変異したため生まれつき長いテロメアを持つ人を探し、7歳から83歳までの5家族17人を見つけました。17人のうち13人のテロメアの長さを測定したところ、全員が一般の人よりも90%長いテロメアを持っていました。また、70代の6人は全員が白髪になるのが遅かったと話し、若々しさが長く保たれていることが確認されました。 けれど、彼らの健康状態を2年間、追跡調査したところ、17人中12人が甲状腺腫(甲状腺肥大)、子宮筋腫、黒色腫、リンパ腫、様々ながんなどの良性あるいは悪性腫瘍を経験し、これらの中で複数の病歴を持つ人もいました。また、そのうち4人は研究期間中に死亡し、リンパ腫、結腸がん、白血病、脳腫瘍を患っていました。 さらに参加者のうち12人の血液を調べたところ、8人(67%)で異常な造血幹細胞が増殖する「クローン性造血」の兆候がみられました。 クローン性造血は、血液のがんだけでなく、心血管疾患や脳血管疾患のリスクとなることが知られています。加齢によって頻度が高くなり、通常は70歳以上の10~20%で起こります。長いテロメアを持つ参加者たちで見られた割合は、一般の高齢者と比べてはるかに高い値でした。) また、研究チームは、長いテロメアを持つ参加者たちは、一般的なテロメア長を持つ人々よりもテロメアの短縮速度が遅いことも発見しました。 研究を主導したジョンズ・ホプキンス大医学部教授のメアリー・アルマニオス氏は「私たちの発見は、長いテロメアが老化から守るという考えに疑問を投げかけます。参加者たちは長いテロメアによって、加齢に伴って生じる突然変異を持つ細胞の耐久性も向上したようです」と説明します。 長いテロメアの効果で正常細胞の分裂回数の制限が増えれば、皮膚や毛髪は若々しさを長く保てます。しかし、本来ならば速やかに排除すべき変異細胞の耐久性も上げてしまうことで、変異は蓄積され、がんのリスクが高まった可能性があります。 試験管で細胞そのものを取り扱う実験では、テロメアの短縮が起きなければ細胞の寿命は尽きないことが示されています。1951年に今回の研究と同じジョンズ・ホプキンス大で女性患者のガン細胞から分離された「ヒーラ細胞」は、不老不死の細胞として現在でも世界各地で研究に使われています。テロメラーゼ活性化により、テロメアが細胞の分裂を止める引き金となる長さまでは短縮されないことが原因です。 対して、個体の寿命に関しては、長いテロメアによって細胞分裂の回数は引きのばせても、がんが現れやすくなり死亡リスクが高まると一筋縄ではいかないようです。今後は、細胞に突然変異を蓄積させない方法が開発されるかもしれませんが、今のところテロメアの長さを維持したり伸ばしたりするだけでは不老不死には至らないでしょう。これらに見られるある種の「バランス」には、生命の神秘を感じずにはいられませんね』、「個体の寿命に関しては、長いテロメアによって細胞分裂の回数は引きのばせても、がんが現れやすくなり死亡リスクが高まると一筋縄ではいかないようです。今後は、細胞に突然変異を蓄積させない方法が開発されるかもしれませんが、今のところテロメアの長さを維持したり伸ばしたりするだけでは不老不死には至らないでしょう。これらに見られるある種の「バランス」には、生命の神秘を感じずにはいられませんね」、「科学ジャーナリスト」の筆者が「生命の神秘を感じずにはいられませんね」、と締めたのには、若干の違和感を感じた。ひょっとして、筆者はクリスチャンなのだろうか。
タグ:「交感神経は血管を収縮させ、副交感神経は血管を拡張させます。両者がバランスよく交互に働くと、血管の収縮と拡張がリズミカルに繰り返され、血液はスムーズに流れて全身に行き渡ります。 ところが、両者のバランスが崩れてどちらか一方が過剰になると、血流の状態が悪くなります」、「交感神経」と「副交感神経」の「バランス」は 生きていく上で、極めて重要なようだ。 確かに驚くほどよく出来た仕組みだ。 「人間の体は、約37兆~60兆個もの細胞が集まってできています。この細胞1つひとつが、それぞれの役割を果たして機能してこそ、健康を維持し元気な日々を送ることができます。 細胞1つひとつが機能するためには、十分な栄養と酸素が必要です。そして、全身の細胞に栄養と酸素を行き渡らせるために機能しているのが血液であり、血管です」、その通りだ。 小林弘幸『自律神経を整える』(プレジデント社) 小林 弘幸氏による「人間が病気になる原因は"2つ"だけ…名医が「自律神経・血管・腸」を重視する理由【2022編集部セレクション】 免疫力を高める日々のリカバリー術」 PRESIDENT BOOKS 「自律神経と血管・血液、そして腸は、互いに影響し合う関係にあります。 自律神経は血流と腸の働きをコントロールし、腸は自律神経のバランスをコントロールすると同時に血液の質・・・を左右しています」、なるほど。 「自律神経の乱れ」がこんなにも広範な悪影響を及ぼすとは、初めて知った。 健康 (その24)(人間が病気になる原因は"2つ"だけ…名医が「自律神経・血管・腸」を重視する理由【2022編集部セレクション】 免疫力を高める日々のリカバリー術、若々しさを保つ「テロメア」は延命効果よりがんリスクの方が高い?) 「胃腸の働きについては、夜の間に副交感神経がアクセルの働きをして蠕動ぜんどう運動を活発にします」、「翌朝の排便の準備をしてくれている」重要な役割だ。 「自律神経と血管・血液、腸のトライアングルは、体の「免疫機能」にも深く関わっています」、なるほど。 「免疫機能」の重要性については、コロナワクチンで十二分に知らされた。 「免疫力の高さこそ、病気に対する抵抗力の強さです。 そして、自律神経が整うと免疫力が高まって、風邪を引きにくくなると同時に、がんにもなりにくくなる」、その通りだ。 「増えすぎた顆粒球が体内に余ってしまうと、細胞としての寿命を終えたときに、持っている活性酸素を体内にばらまいて、健康な細胞を傷つけてしまう」、恐ろしい副作用だ。 「交感神経優位の状態が続くことを放置せずに、日々リカバリーをすることが大切です」、ただ、「リカバリー」はどうすれば出来るのだろう。 Newsweek日本版 茜 灯里氏による「若々しさを保つ「テロメア」は延命効果よりがんリスクの方が高い?」 「1回の分裂ごとにテロメアが少しずつ短くなることから、細胞の分裂回数はテロメアの長さが制限していると考えられています。 細胞が老化すると、細胞が作り上げている組織や臓器も老化して機能が衰えます。なのでかつては、細胞のテロメアを長く保つことができれば皮膚や内臓は若く保たれ、個体の寿命も長くなると考えられていました」、しかし、「米ジョンズ・ホプキンス大医学部の研究者たちは・・・「長いテロメアを持つ人は、白髪が少ないなどの若々しい特徴が見られた反面、がんになりやすかった」という研究成果を」、「発表しました」、 、なるほど。 「がん化した細胞ではテロメラーゼでテロメアの長さが修復されるため、細胞が無限に増殖できる」、なるほど。 「個体の寿命に関しては、長いテロメアによって細胞分裂の回数は引きのばせても、がんが現れやすくなり死亡リスクが高まると一筋縄ではいかないようです。今後は、細胞に突然変異を蓄積させない方法が開発されるかもしれませんが、今のところテロメアの長さを維持したり伸ばしたりするだけでは不老不死には至らないでしょう。これらに見られるある種の「バランス」には、生命の神秘を感じずにはいられませんね」、 「科学ジャーナリスト」の筆者が「生命の神秘を感じずにはいられませんね」、と締めたのには、若干の違和感を感じた。ひょっとして、筆者はクリスチャンなのだろうか。
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