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ソニーの経営問題(その10)(EVAで「失われた15年」を作り出したソニーは ROIC導入でどのように復活したか、ソニーがウェブ3.0時代にAR技術開発で圧倒的に期待される理由、「スキー場、F1…ソニー盛田昭夫の長男・英夫 蕩尽の果て――そしてすべてを失った 巨額の資産をめぐる骨肉の争い(8)/終) [企業経営]

ソニーの経営問題については、3月27日に取上げた。今日は、(その10)(EVAで「失われた15年」を作り出したソニーは ROIC導入でどのように復活したか、ソニーがウェブ3.0時代にAR技術開発で圧倒的に期待される理由、「スキー場、F1…ソニー盛田昭夫の長男・英夫 蕩尽の果て――そしてすべてを失った 巨額の資産をめぐる骨肉の争い(8)/終)である。

先ずは、3月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したビジネス・ブレークスルー(BBT)大学大学院客員教授の大津広一氏による「EVAで「失われた15年」を作り出したソニーは、ROIC導入でどのように復活したか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/299929
・『「資本コスト」「コーポレートガバナンス改革」「ROIC」といった言葉を新聞で見ない日は少ない。伊藤レポートやコーポレートガバナンス・コード発表以来、企業には「資本コスト」を強く意識した経営が求められている。では、具体的に何をすればいいのか。どの経営指標を採用し、どのように設定のロジックを公表すれば、株主や従業員が納得してくれるのだろうか? そこで役立つのが『企業価値向上のための経営指標大全』だ。「ニトリ驚異の『ROA15%』の源泉は『仕入原価』にあり」「M&Aを繰り返すリクルートがEBITDAを採用すると都合がいいのはなぜか?」といった生きたケーススタディを用いながら、無数の経営指標の根幹をなす主要指標10を網羅的に解説している。すでに役員向け研修教材として続々採用が決まっている。 そんな『経営指標大全』から、その一部を特別に公開する』、興味深そうだ。
・『EVAを使いこなせなかったソニーの「恨み節」  2000年代初頭、花王と並んでEVA(経済付加価値)採用企業としてもっとも著名であった日本企業は、おそらくソニー(現ソニーグループ)であろう。当時の会長兼グループCEOの出井伸之氏が肝いりで始めたソニーのEVAは、ソニーの先端的なイメージと重なり、経営指標として大きな脚光を浴びた。総合電機業界の多くの企業がEVA、またはそれに準ずる経営指標を導入する流れを作り出したといっても過言でない。 しかし、ソニーはその後の業績の急速な悪化により、2003年にはソニーショックと呼ばれるソニー株の暴落を引き起こした。道半ばで2005年6月に退任した出井氏とともに、EVAはソニーから完全に姿を消した。 出井氏は退任後に出版したソニー時代を振り返る著書『迷いと決断』の中で、EVAに対する思いを2ページにもわたって以下のように綴っている(*1)』、「EVA」の何が「ソニー」に適していなかったのだろう。
・『理解されなかったEVA  ソニーのように、全く性質の異なる事業をいくつも抱えている企業にとっては、それぞれの事業を出来るだけ公平に評価するための「共通の尺度」が求められます。 そこで私は、EVA(経済的付加価値)という指標の導入を試みました。EVAはアメリカ生まれのコンセプトですが、ソニーのような複合企業には大変適した尺度です。複数の性質の異なる事業を1つの企業が統治している場合に、通常のバランスシートでは内実が見えにくいので、事業ごとに「仮想的に」バランスシートを分離して評価してみようというのが、このEVAの考え方です。 EVAで重要視されるのは「資本コスト」。平たく言えば、その事業にどれだけの資本が投入され、どれだけのスピードでその資本が回転して、どれだけの利益を生み出しているか、という点です。例えば、パソコンなどの組み立て産業には、投下資本はあまり必要ありませんが、販売・サポートなどには沢山の人手が必要になります。反対に、半導体の生産には大きな設備投資が必要で、変化のスピードも速いので、短期に資本を償却してしまいます。こうした性質の異なる事業を、「売上げ」と「利益率」という2つの尺度だけで評価するのではなく、売上げを立てるためにどれだけの「資本」が必要だったのかに注目したのがEVAなのです。 大規模な投資が必要な事業では資本回収のスピードを速くするなど、EVAは具体的施策にも直結する優れた指標なのです。またこれは、事業の性格を責任者に理解させ、事業のスピードアップを促すためのもので、毎月の売上げ数値の競争を誘発するような性質のものではありません。ところが、この基本が理解されずに、「ソニーはEVAを指標に使っているから長期的な投資が出来なくなった」などと、頓珍漢な批判が内部からも出されたりしたのは残念なことでした。 出井氏が記述している大部分は、EVAが資本コストを重視した、いかに優れた経営指標であるかという点と、特にソニーのように事業が多岐にわたる企業にもっとも適した経営指標であるという点であろう。これらはなんら否定するものではない。しかし、出井氏がこの文章の中でもっとも言いたかったのは、最後の一文ではないかと考える。 「ソニーはEVAを指標に使っているから長期的な投資が出来なくなった」などと、頓珍漢な批判が内部からも出されたりしたのは残念なことでした。 EVAを短期的に上げることは非常に簡単である。儲かっている事業において、できるだけ投資を抑制すればよい。そうすることで、NOPAT(税引後営業利益)から差し引く投下資本は減少し、EVAは上昇する。それで部門の評価や部門長の賞与が決まるとあっては、事業責任者がそうした行動に偏向することは否めない。 安定した事業環境にあれば、すべてをEVAで意思決定する経営も悪くないが、大きな市場や技術の変化が起きているときには最大の注意を要する。将来の果実をつかむための先行投資を禁止する指標となってしまうからだ。 おそらくソニーは過度にEVAを重視した経営、短期的な評価もEVAに基づいて決定されるといった経営をやりすぎたのであろう。それを社員は指摘していたのだから、「頓珍漢な批判」で片づけられる代物でない。 経営指標でありながら、過度にやりすぎてはいけない。まるで矛盾するような示唆だが、ブラウン管から液晶へとテレビの市場や技術が大きな変化を遂げており、サムスン電子をはじめとしたライバル企業が虎視眈々と巨額の設備投資を液晶に向けて行っている下で、EVAを軸にして短期的に業績を評価する企業であっては、取り返しのつかない事態を引き起こす。短期の果実を得た代償として、長期的な優位性を失うトリガーとして、ソニーのEVAは寄与してしまったのではないだろうか。 これはEVAの限界ではなく、本書で紹介しているすべての経営指標の限界である。会計数値に基づいて計算する経営指標である以上、単年度ベースでの算出が基本となる。それが金科玉条だと言われれば、短期的な費用や投資の抑制によって、目標は達成できてしまうだろう。ROE、ROA、ROIC、営業利益、フリー・キャッシュフロー……、すべて同一である。 市場や技術、顧客といった環境変化によって大きな先行投資が必要とされる企業や部門にあっては、経営指標のターゲットの時期や水準の設定において、熟考しなくてはならないことの示唆を与える。イメージセンサーに代表されるソニーの世界的にシェアの高い半導体事業を捕まえて、ソニーの資産が膨らんでいるのは問題だ、などと批判する人があれば、事業内容をまったく理解していない「頓珍漢な批判」と一蹴されることだろう。 5年後のターゲットとしての設定や、3年間累計としての設定など、手法はいくらでもある。経営指標が社員の行動特性を導くのだから、社員に期待する行動特性を見据えたターゲットの設定が不可欠である』、「EVAを短期的に上げることは非常に簡単である。儲かっている事業において、できるだけ投資を抑制すればよい。そうすることで、NOPAT(税引後営業利益)から差し引く投下資本は減少し、EVAは上昇する。それで部門の評価や部門長の賞与が決まるとあっては、事業責任者がそうした行動に偏向することは否めない」、「短期の果実を得た代償として、長期的な優位性を失うトリガーとして、ソニーのEVAは寄与してしまったのではないだろうか。 これはEVAの限界ではなく、本書で紹介しているすべての経営指標の限界である。会計数値に基づいて計算する経営指標である以上、単年度ベースでの算出が基本となる。それが金科玉条だと言われれば、短期的な費用や投資の抑制によって、目標は達成できてしまうだろう。ROE、ROA、ROIC、営業利益、フリー・キャッシュフロー……、すべて同一である。 市場や技術、顧客といった環境変化によって大きな先行投資が必要とされる企業や部門にあっては、経営指標のターゲットの時期や水準の設定において、熟考しなくてはならないことの示唆を与える」、なるほど。
・『ROICの流行は「EVA経営」の再来  さて、出井氏が書籍の中で語っていた文章に今一度目をやり、「EVA」の個所を「ROIC」に置き換えて読んでみてほしい。いかがだろう。まったく違和感なく、文章としてすべて成立していることが確認できよう。 EVAが悪者だという方がもしあれば、それはROICが悪者だと言っていることに等しい。もちろん短期的にはROICやEVAを重視しない成長著しい企業であればそれでも良かろう。しかし第7章で触れたROIC導入を進める日本企業の増大は、形を変えた「EVA経営の再来」と見ることもできるのである。 かくいうソニーもまた、ROIC経営で復活を遂げた企業である。ソニーは2015年に発表した第二次中期計画(2015~17年度)において、図表1の1枚のスライドを示し、ROE重視の経営と、そのためのROICによる事業管理を明確化した。 図表1 ソニーグループのROEとROIC重視の経営 事業領域1 成長牽引領域 “成長に向けた施策と集中的な投資により、売上成長と利益を実現” デバイス、ゲーム&ネットワークサービス、映画、音楽  事業領域2 安定収益領域  “大規模な投資は行わず、着実な利益計上、キャッシュフロー創出を目指す” イメージング・プロダクツ&ソリューション、ビデオ&サウンド  事業領域3 事業変動リスクコントロール領域 “事業の変動性や競争環境を踏まえ、リスクの低減と収益性を最優先” モバイル・コミュニケーション、テレビ  EVA時代と異なるのは、事業を大きく3つの領域に切り分け、P/L(売上、利益)とB/S(投下資本)に関する方向性について、対外的に明示したことであろう。時間軸は記載されていないものの、デバイス、ゲーム、映画、音楽が含まれる成長牽引領域は、投下資本を積極的に増加するとしており、短期的にはROICは悪化することもいとわない方針とも読み取れる。 イメージング(主にカメラ)やビデオが含まれる安定収益領域は、売上は横ばい、利益は微増、投下資本は微減と、正に「安定」であることを求めており、過度な成長や投資は、もはや期待していない。
 そして最大の特徴は、事業変動リスクコントロール領域と呼ばれる3つめの領域に、従来のソニーの中心事業でもあったモバイルとテレビが含まれていることである。売上と投下資本は減少させ、利益は黒字化・改善を目指すとされている。 これら市場にはアップルやサムスン電子など、世界で強力なライバルが出現し、2015年時点ではソニーはどちらも赤字が継続する事業であった。もはや規模やシェアの競争では勝ちえない。選択と集中やコストの徹底的な削減、アセットライトの推進によって、確実にROICを生み出す事業にしていきたいという意思表明である。 ソニーのモバイルやテレビに携わる社員からすれば、もはや投資はできるだけ抑制して利益を出しなさいという、ショッキングな経営方針かもしれない。しかし長年にわたって赤字を計上してきた事業であり、ソニー全社のROEへの強いコミットメントに基づいて各事業に対して求められたROIC経営である。 EVA時代はすべてまとめてEVA、かつ足元からの単年度ベースで厳しく管理、といった印象であったが、ROIC経営では、各事業においてどのようにROICを作り出していくのかが経営方針として明示された。社員は自分たちの各事業において何を実行し、どういった数値を作り出すことが求められ、そして実現した際に評価されるのか。道筋は明らかになったものと推察する。 EVAで失われた15年を作り出したソニーが、実質的には同じ経営指標であるROICで復活を果たした。経営指標そのものが良い者、悪い者では決してない。すべてはその運用の仕方だということを明示する好例であろう。 ROIC経営の浸透によって、EVAは影を潜めた印象にあるが、本質的にはROIC経営が目指すところとまったく同一である。資本コストはパーセントで示されるので、同じパーセントであるROICのほうが比較上もわかりやすいというメリットはあるだろう。また、ROICは必ずしも資本コストという言葉を使わなくても、「目標10%」のように具体的な数値で目標を設定してしまっても構わない。 これに対してEVAは計算式の中にWACC(加重平均資本コスト)が存在するため、WACCの設定に苦慮し、計算されたEVAも実額なのでこれを時系列での成長率や、将来予測EVAの現在価値で考えるなど、もう一段の手間を要する。一般の社員からすれば、EVAよりROICのほうが理解しやすい、という面は否めない。 しかし、出井氏の文章で試みたように、EVAをROICと置き換えても意味はすべて通じる。両者の目指す姿、すなわち資本コストに基づいて事業を評価し、企業価値の向上を実現するための経営指標という点において、両者は寸分たがわないのだ。 姿を消したと思われた日本のEVA経営は、ROIC経営という形で、現在進行系で隆盛を極めているのである』、「一般の社員からすれば、EVAよりROICのほうが理解しやすい、という面は否めない」、「EVAをROICと置き換えても意味はすべて通じる。両者の目指す姿、すなわち資本コストに基づいて事業を評価し、企業価値の向上を実現するための経営指標という点において、両者は寸分たがわないのだ。 姿を消したと思われた日本のEVA経営は、ROIC経営という形で、現在進行系で隆盛を極めているのである」、よく理解できた。

次に、9月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「ソニーがウェブ3.0時代にAR技術開発で圧倒的に期待される理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/309919
・『ソニーは、ウェブ3.0に欠かせないAR技術など最先端分野での勝機を狙っている。具体的には、ゲームや音響などの既存技術とARを新しく結合させようと強化している。その一つの成果として、「ToF(Time of Flight)AR」と呼ばれるソフトウエアを公開した。ToF ARによって、スマホ1台でバーチャル・ユーチューバー=Vチューバーに変身できる。ARの世界は一段と身近になるだろう』、「ToF AR」は初耳だが、「スマホ1台でバーチャル・ユーチューバー=Vチューバーに変身できる」、とは凄そうだ。
・『ソニーが「拡張現実=AR」で期待されるワケ  世界各国のIT先端分野で「拡張現実=AR」に関する技術開発が加速している。背景には、ITビジネスの成長が鈍化しているという世界的な懸念がある。一例として、米国ではサブスクリプション・ビジネスの成長が鈍化している。そうした状況下、「ウェブ3.0」時代の本格到来を狙い、米アマゾンやマイクロソフト、グーグルなどはクラウド事業の強化に集中し始めている。 わが国も、そうした変化に確実に対応しなければならない。先行きは楽観できないが、ウェブ3.0は、わが国経済が成長を目指すチャンスになるだろう。そのために重要な役割を発揮すると期待される本邦企業の一つがソニーである。 現在、ソニーはマイクロソフト、米マジックリープに次いで世界第3位のAR関連特許件数を持つ。また、超高純度の半導体部材などの分野でも本邦企業の競争力は高い。日本政府は、労働市場の構造改革などを徹底して進め、成長期待の高いAR分野など世界経済の先端分野にヒト・モノ・カネを再配分する環境の整備を急ぐべきだ』、「現在、ソニーはマイクロソフト、米マジックリープに次いで世界第3位のAR関連特許件数を持つ」とは大したものだ。
・『世界のIT分野はどのような転換点を迎えているのか  各国のIT先端分野において、ビジネスモデルの変革が加速している。背景にはまず、リーマンショック後の世界経済の成長を支えたスマートフォンの普及と、SNSなどのプラットフォームを経由したサブスクリプション型ビジネスモデルの成長が、鈍化していることが挙げられる。 2022年4~6月期まで、4四半期連続で世界のスマホ出荷台数は減少している。スマホの機能向上が人々に与える満足感は逓減したといえる。また、一定の料金を支払うことで特定サービスの利用権を享受するサブスクリプション・ビジネスの収益性は低下している。類似のサービスが乱立し、競争が激化したからだ。加えて、米欧を中心に世界各国で個人データ保護に関する規制が強化された。そうした結果、メタ(旧Facebook)などの広告ビジネスの収益性は低下した。 その一方で、米国や中国でクラウド事業の強化に一段と集中する有力なIT先端企業が急増している。背景に、世界がウェブ2.0からウェブ3.0の時代へ向かっていることは大きい。 ウェブ2.0では、人々は必要に応じてインターネットにアクセスし、情報などを得る。関連サービスはGAFA(Google、Apple、Facebook〈現meta〉、Amazon)、など一部の有力企業によって提供される。 それがウェブ3.0では、人々は常にネットとつながる。例えば、リアルな世界で日々の業務をこなすと同時にクラウドなどのネット空間で「アバター(分身)」が他者と交流する。バーチャルな世界と現実が一体化する、「複合現実(Mixed Reality、MR)」が当たり前になるだろう。 ウェブ3.0の構成要件の一つが、拡張現実=ARに関する技術だ。現実の社会にAR関連技術が作り出すバーチャルな世界を重ねることによって、より鮮烈な体験を人々に与える。そのための画像処理半導体などの製造技術の強化、ソフトウエア開発をめぐる競争が激化している。ソニーはそうした環境変化に対応するために、専用ゲーム機の「プレイステーション」を前提としたゲーム事業の運営を見直している』、「世界がウェブ2.0からウェブ3.0の時代へ向かっている」、「ウェブ3.0では、人々は常にネットとつながる。例えば、リアルな世界で日々の業務をこなすと同時にクラウドなどのネット空間で「アバター(分身)」が他者と交流する。バーチャルな世界と現実が一体化する、「複合現実(Mixed Reality、MR)」が当たり前になるだろう」、「複合現実」が夢物語ではなく、現実化するようだ。
・『AR分野におけるソニーと本邦企業のチャンス  ソニーは、ウェブ3.0に欠かせないAR技術など最先端分野での勝機を狙っている。具体的には、ゲームや音響などの既存技術とARを新しく結合させようと強化している。その一つの成果として、「ToF(Time of Flight)AR」と呼ばれるソフトウエアを公開した。ToF ARによって、スマホ1台でバーチャル・ユーチューバー=Vチューバーに変身できる。ARの世界は一段と身近になるだろう。 ToF ARアプリは、まず、スマホに搭載されたLiDAR(ライダー)などのセンサによって対象物体までの距離や、その形状を計測する。その上で、独自の人工知能(AI)処理によって、体の滑らかな動きやハンドジェスチャーなどをデジタル画像として表現する。画像処理半導体などの製造技術向上と、AIなどのソフトウエア開発力の強化が、ソニーのAR技術の革新を支えている。 ソニーのAR事業の強化には、わが国産業界の一部が持つ比較優位性が大きな影響を与えていると考えられる。ソニーは現在、台湾積体電路製造(TSMC)やデンソーと合弁で、熊本県に半導体工場を建設している。 回路線幅5ナノメートルの最先端のチップ生産などにおいて、わが国産業界の競争力は失われた。しかし、画像処理半導体の多くは、最先端ではなく、汎用型の生産設備で製造される。その分野でわが国は競争力を保っている。加えて、超高純度の半導体部材や半導体の製造装置などの分野でも本邦企業の競争力は高い。 特に、シリコンウエハーなどの半導体部材に関しては、分解してその構造を模倣することは難しい。微細かつ精緻なモノづくりの力を磨き上げることで、本邦企業は加速化する世界経済のデジタル化に対応し、より効率的に収益を獲得することができるだろう。 このように、ソニーのAR関連技術はわが国産業界が磨いてきたモノづくりの力の向上に支えられている部分が大きいと考えられる。そうした力にさらなる磨きをかけることによって、わが国産業界がARなど新しい発想の実現に不可欠な半導体関連の部材や製造装置の需要を取り込み、成長を加速することは可能なはずだ』、「ToF ARによって、スマホ1台でバーチャル・ユーチューバー=Vチューバーに変身できる。ARの世界は一段と身近になるだろう」、「ソニーのAR関連技術はわが国産業界が磨いてきたモノづくりの力の向上に支えられている部分が大きいと考えられる。そうした力にさらなる磨きをかけることによって、わが国産業界がARなど新しい発想の実現に不可欠な半導体関連の部材や製造装置の需要を取り込み、成長を加速することは可能なはずだ」、楽しみな分野のようだ。
・『ソフトウエアの創出力強化に不可欠な労働市場改革  モノづくりの力に加えてわが国は、ソフトウエア創出力を強化しなければならない。そのためには、個々の企業の事業運営体制の改革に加えて、政府による構造改革が必要だ。特に、労働市場の改革は急務だ。 1990年代以降、経済のグローバル化により国境のハードルは低下し、世界全体で生産コストは低下した。アップルやエヌビディアは、チップの設計開発などに集中する一方、韓国や台湾の企業は、米国企業が設計したチップや最終製品の生産を受託し、国際分業が加速した。他方で、バブル崩壊の負の影響も重なり、わが国では終身雇用・年功序列など過去の価値観の温存が重視された。その結果、世界的に見てわが国のデジタル後進国ぶりは鮮明だ。 ウェブ3.0時代の本格到来を見据え、世界各国で新しい発想の実現に取り組む企業は急増している。そうした状況下、ソニーは社員に対して個々人の価値観や発想を重視し、それを成果主義に落とし込むことによってハードとソフトの両面で成長を加速しようとしている。 半導体製造装置分野などでも、報酬によって社員の成果に応える企業が増えている。これは、日本経済の実力向上に決定的に重要だ。政府は、労働市場の構造改革を進めて、ミクロレベルでの変革をより強力にサポートするべきだ。 具体的には、事業運営体制の変革に必要な解雇を行いやすくなるよう規制を緩和する。その一方で、新しい理論の習得などをサポートするために学び直しの制度を強化する。そうした改革を徹底かつスピーディーに進めなければならない。 このように考えると、ウェブ3.0によってわが国経済の環境は大きく変化する可能性がある。自己変革を加速し、先端分野での取り組みを強化する企業が増えれば、ウェブ3.0はわが国経済が産業構造の転換を進め、成長を実現する起爆剤になり得る。それとは反対に、変化への対応が遅れれば、デジタル化の遅れはさらに深刻化する恐れが高い』、「ソニーは社員に対して個々人の価値観や発想を重視し、それを成果主義に落とし込むことによってハードとソフトの両面で成長を加速しようとしている。 半導体製造装置分野などでも、報酬によって社員の成果に応える企業が増えている。これは、日本経済の実力向上に決定的に重要だ。政府は、労働市場の構造改革を進めて、ミクロレベルでの変革をより強力にサポートするべきだ」、大筋としては、その通りだ。

第三に、9月23日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの高橋 篤史氏による「スキー場、F1…ソニー盛田昭夫の長男・英夫 蕩尽の果て――そしてすべてを失った 巨額の資産をめぐる骨肉の争い(8)/終」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/99962?imp=0
・『日本を代表する有名企業をつくった「創業社長」には、どこか共通するカリスマ性がある。しかし、創業社長のカリスマ性が大きければ大きいほど、その去り際、そして去ったあとには、巨大な陥穽が残されることになる。 経済事件取材のトップランナーである筆者が、その圧倒的な取材力と筆力によって構成する最上級の経済ノンフィクション『亀裂 創業家の悲劇』から、「ソニー創業者・盛田昭夫の長男の巨額浪費」後編をお届け(前編はこちら)。 リア王やマクベスを地で行く、裏切りと転落のドラマ』、かねてから噂にはのぼっていたが、詳しい話とは、興味深そうだ。
・『特別な思いでスキー場開発に乗り出して  (盛田)英夫はいよいよ没落の色を濃くしていく。 2011年10月、英夫が所有する神奈川県箱根町の別荘について横浜地裁小田原支部は強制競売の開始を決定した。申し立てた債権者は国であり、さらに言えば東京国税局だ。芦ノ湖に面し遠く富士山を望むこの別荘はもともと父・昭夫が求めたもので、テニスコートだけでなくヘリポートまで備えたそこはマイケル・ジャクソンはじめ海外の名だたる賓客を過去にもてなした一族自慢の場所だった。それがいまや差し押さえられてしまったのである。 つまりは、こういうことだった。 遡ること4年前の2007年1月、英夫は三井住友銀行から約23億円を期限80日で個人的に借りていた。その大金を散財してしまったのだろう、英夫は返済ができなくなる。同年9月、借金を肩代わりしたのは清算手続き中のガラヒ産業だった。拠り所としたのは2002年10月の取締役会決議とされる。当時のレイケイは英夫の「現在及び将来負担する一切の債務」について約61億円を限度額に銀行に対し根保証を差し入れていた。 肩代わりの3年後、前述した税務訴訟でガラヒ産業の敗訴が確定する。この時点で同社の金庫は空っぽで、一方、追徴税は未納付となっていた。2010年9月、東京国税局は取り立てのためガラヒ産業が持つ英夫に対する求償権(根保証実行の見返り債権)を差し押さえ、英夫も債務承諾書を差し入れた。その実行がなされないため、東京国税局は箱根の別荘について競売手続きに踏み切ったわけである。 もっともこの時、英夫はすんでのところで一族誇りの別荘を手放す事態だけは回避している。母・良子に譲渡することで納税資金を工面したのである。とはいえ、良子のほうでもそれほど潤沢に資産が残っていたわけではなかったと見える。直前、良子は所有していた絵画を東京国立近代美術館に売却していた。手放したのはジョルジュ・ブラックが描いた「女のトルソ」ほか2点で、この時についた値段は5億8000万円だった。 美術品放出はさらに続く。箱根の別荘を英夫から買った半年後にはホアン・ミロの「絵画詩」を2億1000万円でやはり東京国立近代美術館に売り払い、2013年11月にはアレクサンダー・カルダー作「モンスター」を同様に売却した。2015年3月、昭夫亡き後も東京・青葉台の邸宅に住まい続けた良子は85歳で天寿を全うするが、喪主を務めたのは長男の英夫ではなく、ソニーで国内音楽部門のトップなどを歴任した二男の昌夫だった。 競売の危機を乗り切ったものの、英夫の資金繰りが火の車であることに変わりはなく、公私混同ぶりは極まっていた。英夫はあたり構わずカネがあるところからそれを毟り取っていた。早くも2008年頃から手を染めていたのは関連公益法人からの借財である。盛田株式会社の流れを汲み英夫が代表を務める個人会社「盛田アセットマネジメント」がまず流用したのは「鈴渓学術財団」の基本財産だった。1978年に父・昭夫の肝いりで設立された財団の目的は歴史社会研究に対する助成であり、本来なら基本財産はそのために使われなければならない。英夫はそれを拝借することにしたのである。 2008年3月期、その額は4億円近くに上った。同じように翌年からは「盛田国際教育振興財団」の資金にも手をつける。同年8月までに流用額は5億3000万円に上った。財団が貸し付ける際、形式上それらには年間数%の利子が課されることとされたが、実際にそれらが払われることはなく、ましてや元本が戻ってくることもなかった』、「まず流用したのは・・・財団」の基本財産」、「本来なら基本財産はそのために使われなければならない。英夫はそれを拝借」、「数%の利子・・・実際にそれらが払われることはなく、ましてや元本が戻ってくることもなかった」、ボンボンは無駄遣いの尻拭いをこんな違法な手段でしたとは酷いものだ。
・『それでも止まらない散財  ある時から英夫は東京の住まいを首相官邸近くにそびえ立つ「東急キャピトルタワー」の高層階に定めたが、2014年初頭、その賃料支払いは滞った。クレジットカードも同様である。その年の5月から6月にかけ英夫は相次ぎ提訴される。未払い賃料は600万円余り、カードの未払いは1100万円余りに上っていた。英夫は代理人弁護士を立てず、裁判所に答弁書を出すことさえしなかった。 裁判に証拠提出されたカードの利用明細を見ると、未払い直前である2013年暮れの段階でも英夫の蕩尽ぶりは少しも改まっていないことが分かる。12月10日には銀座の「バーニーズニューヨーク」と「銀座かねまつ」でショッピングを楽しみ約56万円を支払い、同月16日には名古屋で高級ブランドの「ロエベ」と「ルイ・ヴィトン」に計66万円、さらに同月20日には「ザ・プリンスパークタワー東京」で約98万円を利用――そんな具合である。これらはほんの一例で、この月にはほかにも高級料亭で数十万円単位の支出を複数回行っている。とてもではないが資金繰りに詰まった人間の使い方ではなく、もはや呆れるしかない。 やがて英夫が家業からも追われる日がやって来る。 2015年11月、ジャパン・フード&リカー・アライアンス(JFLA)は突如としてその年9月期決算の公表を延期した。会社は4ヵ月前、監査法人からある指摘を受けていた。会長である英夫の交通費や経費の支出が異常であり、さらにはその実質支配企業である「モリタフードサービス」に対する貸付金の回収に関し看過できない疑義があり、ほかにも個人的な関係先への業務委託料などについて不合理な点があるとされたのだ。会社は弁護士らからなる調査委員会を設置して調査を依頼し、その結果は10月中旬に報告された。ただ、それでもまだ解明すべき点は残り、追加調査が必要だった。経営体制刷新も迫られていたが、その調整は途上だった。そこで決算発表が延期となったのだ。 疑義のなかでももっとも金額が大きいモリタフードサービスへの貸付金に関し明らかになったのは次のような経緯だった』、「英夫は相次ぎ提訴される。未払い賃料は600万円余り、カードの未払いは1100万円余りに上っていた。英夫は代理人弁護士を立てず、裁判所に答弁書を出すことさえしなかった」、ふてぶてしい。「2月10日には銀座の「バーニーズニューヨーク」と「銀座かねまつ」でショッピングを楽しみ約56万円を支払い、同月16日には名古屋で高級ブランドの「ロエベ」と「ルイ・ヴィトン」に計66万円、さらに同月20日には「ザ・プリンスパークタワー東京」で約98万円を利用――そんな具合である。これらはほんの一例で、この月にはほかにも高級料亭で数十万円単位の支出を複数回行っている。とてもではないが資金繰りに詰まった人間の使い方ではなく、もはや呆れるしかない」、よくぞここまで無駄遣いを放置したものだ。
・『そしてすべてを失った  同社は英夫がハワイの資産管理会社を通じて全株を握る個人会社で、JFLAは2012年9月末の段階で2億4600万円を貸し付けていた。その年10月9日、モリタフードサービスは一部事業を名古屋の飲食会社「子の日」に譲渡する。子の日は英夫の叔父・和昭が根城とするイズミックの子会社だ。譲渡代金は3億3000万円だった。JFLAによる貸し付け条件は定かでないが、本来ならこの時点で返済を求めてもよかったはずだ。ところが、モリタフードサービスは6日後、譲渡代金のうち2億6000万円を盛田アセットマネジメントに貸し付けてしまった。財団から基本財産を借用した英夫が代表のあの会社である。結局、翌年12月以降、モリタフードサービスからの弁済はストップしてしまう。JFLAの貸付金が取り立て不能となったことは言うまでもない。 こうした構図はこれまで何度も見てきた英夫による公私混同ぶりの典型例である。個人の借金を会社に肩代わりさせ、公益法人の財産を金詰まりの会社に流用するといった話と同じだ。しかし、上場企業であるJFLAとして許されるものではない。決算発表延期から1ヵ月後の12月9日、英夫はJFLAの会長を辞任した。実質的には追放である。翌年2月には小林武司社長ら長年の子飼い役員も退任に追い込まれ、JFLAは新興飲食グループ「阪神酒販」の傘下に入ることとなる。 盛田家16代当主の英夫はこうしてほぼすべての資産や地位肩書を失ったのである。(文中敬称略)』、「英夫による公私混同ぶりの典型例である。個人の借金を会社に肩代わりさせ、公益法人の財産を金詰まりの会社に流用するといった話と同じだ。しかし、上場企業であるJFLAとして許されるものではない。決算発表延期から1ヵ月後の12月9日、英夫はJFLAの会長を辞任した。実質的には追放である。翌年2月には小林武司社長ら長年の子飼い役員も退任に追い込まれ、JFLAは新興飲食グループ「阪神酒販」の傘下に入ることとなる。 盛田家16代当主の英夫はこうしてほぼすべての資産や地位肩書を失ったのである」、本来ならもっと早く会社から追放しておくべきだった。この前編では、スキー場開発、F1などでさらに巨額の損失を出したようだ。ソニーとは関係ないとはいえ、創業者の放蕩息子にも困ったものだ。
タグ:かねてから噂にはのぼっていたが、詳しい話とは、興味深そうだ。 盛田家16代当主の英夫はこうしてほぼすべての資産や地位肩書を失ったのである」、本来ならもっと早く会社から追放しておくべきだった。この前編では、スキー場開発、F1などでさらに巨額の損失を出したようだ。ソニーとは関係ないとはいえ、創業者の放蕩息子にも困ったものだ。 高橋 篤史氏による「スキー場、F1…ソニー盛田昭夫の長男・英夫 蕩尽の果て――そしてすべてを失った 巨額の資産をめぐる骨肉の争い(8)/終」 「ソニーは社員に対して個々人の価値観や発想を重視し、それを成果主義に落とし込むことによってハードとソフトの両面で成長を加速しようとしている。 半導体製造装置分野などでも、報酬によって社員の成果に応える企業が増えている。これは、日本経済の実力向上に決定的に重要だ。政府は、労働市場の構造改革を進めて、ミクロレベルでの変革をより強力にサポートするべきだ」、大筋としては、その通りだ。 「ToF AR」は初耳だが、「スマホ1台でバーチャル・ユーチューバー=Vチューバーに変身できる」、とは凄そうだ。 真壁昭夫氏による「ソニーがウェブ3.0時代にAR技術開発で圧倒的に期待される理由」 「一般の社員からすれば、EVAよりROICのほうが理解しやすい、という面は否めない」、「EVAをROICと置き換えても意味はすべて通じる。両者の目指す姿、すなわち資本コストに基づいて事業を評価し、企業価値の向上を実現するための経営指標という点において、両者は寸分たがわないのだ。 姿を消したと思われた日本のEVA経営は、ROIC経営という形で、現在進行系で隆盛を極めているのである」、よく理解できた。 市場や技術、顧客といった環境変化によって大きな先行投資が必要とされる企業や部門にあっては、経営指標のターゲットの時期や水準の設定において、熟考しなくてはならないことの示唆を与える」、なるほど。 「英夫による公私混同ぶりの典型例である。個人の借金を会社に肩代わりさせ、公益法人の財産を金詰まりの会社に流用するといった話と同じだ。しかし、上場企業であるJFLAとして許されるものではない。決算発表延期から1ヵ月後の12月9日、英夫はJFLAの会長を辞任した。実質的には追放である。翌年2月には小林武司社長ら長年の子飼い役員も退任に追い込まれ、JFLAは新興飲食グループ「阪神酒販」の傘下に入ることとなる。 亭で数十万円単位の支出を複数回行っている。とてもではないが資金繰りに詰まった人間の使い方ではなく、もはや呆れるしかない」、よくぞここまで無駄遣いを放置したものだ。 「英夫は相次ぎ提訴される。未払い賃料は600万円余り、カードの未払いは1100万円余りに上っていた。英夫は代理人弁護士を立てず、裁判所に答弁書を出すことさえしなかった」、ふてぶてしい。「2月10日には銀座の「バーニーズニューヨーク」と「銀座かねまつ」でショッピングを楽しみ約56万円を支払い、同月16日には名古屋で高級ブランドの「ロエベ」と「ルイ・ヴィトン」に計66万円、さらに同月20日には「ザ・プリンスパークタワー東京」で約98万円を利用――そんな具合である。これらはほんの一例で、この月にはほかにも高級料 「まず流用したのは・・・財団」の基本財産」、「本来なら基本財産はそのために使われなければならない。英夫はそれを拝借」、「数%の利子・・・実際にそれらが払われることはなく、ましてや元本が戻ってくることもなかった」、ボンボンは無駄遣いの尻拭いをこんな違法な手段でしたとは酷いものだ。 「ToF ARによって、スマホ1台でバーチャル・ユーチューバー=Vチューバーに変身できる。ARの世界は一段と身近になるだろう」、「ソニーのAR関連技術はわが国産業界が磨いてきたモノづくりの力の向上に支えられている部分が大きいと考えられる。そうした力にさらなる磨きをかけることによって、わが国産業界がARなど新しい発想の実現に不可欠な半導体関連の部材や製造装置の需要を取り込み、成長を加速することは可能なはずだ」、楽しみな分野のようだ。 「世界がウェブ2.0からウェブ3.0の時代へ向かっている」、「ウェブ3.0では、人々は常にネットとつながる。例えば、リアルな世界で日々の業務をこなすと同時にクラウドなどのネット空間で「アバター(分身)」が他者と交流する。バーチャルな世界と現実が一体化する、「複合現実(Mixed Reality、MR)」が当たり前になるだろう」、「複合現実」が夢物語ではなく、現実化するようだ。 「現在、ソニーはマイクロソフト、米マジックリープに次いで世界第3位のAR関連特許件数を持つ」とは大したものだ。 これはEVAの限界ではなく、本書で紹介しているすべての経営指標の限界である。会計数値に基づいて計算する経営指標である以上、単年度ベースでの算出が基本となる。それが金科玉条だと言われれば、短期的な費用や投資の抑制によって、目標は達成できてしまうだろう。ROE、ROA、ROIC、営業利益、フリー・キャッシュフロー……、すべて同一である。 「EVAを短期的に上げることは非常に簡単である。儲かっている事業において、できるだけ投資を抑制すればよい。そうすることで、NOPAT(税引後営業利益)から差し引く投下資本は減少し、EVAは上昇する。それで部門の評価や部門長の賞与が決まるとあっては、事業責任者がそうした行動に偏向することは否めない」、「短期の果実を得た代償として、長期的な優位性を失うトリガーとして、ソニーのEVAは寄与してしまったのではないだろうか。 「EVA」の何が「ソニー」に適していなかったのだろう。 (その10)(EVAで「失われた15年」を作り出したソニーは ROIC導入でどのように復活したか、ソニーがウェブ3.0時代にAR技術開発で圧倒的に期待される理由、「スキー場、F1…ソニー盛田昭夫の長男・英夫 蕩尽の果て――そしてすべてを失った 巨額の資産をめぐる骨肉の争い(8)/終) ソニーの経営問題 『企業価値向上のための経営指標大全』 大津広一氏による「EVAで「失われた15年」を作り出したソニーは、ROIC導入でどのように復活したか」 ダイヤモンド・オンライン
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