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百貨店業界(その5)(西武HDがホテルなどを大量売却、「身軽な経営」シフトで本当に生き残れるか、西武池袋「ヨドバシ」出店 元社長が語る“三つのハードル”「ありえないと思う」、そごう・西武売却延期「史上最低ディール」の裏側 契約実行の無期限延期に「仕切り直すべき」の声) [産業動向]

百貨店業界については、2021年9月9日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その5)(西武HDがホテルなどを大量売却、「身軽な経営」シフトで本当に生き残れるか、西武池袋「ヨドバシ」出店 元社長が語る“三つのハードル”「ありえないと思う」、そごう・西武売却延期「史上最低ディール」の裏側 契約実行の無期限延期に「仕切り直すべき」の声)である。

先ずは、昨年2月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「西武HDがホテルなどを大量売却、「身軽な経営」シフトで本当に生き残れるか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/296175
・『西武ホールディングス(HD)は、ホテルやゴルフ場、スキー場など31施設をシンガポールの政府系ファンドであるGICに売却する。売却額は約1500億円、売却益は約800億円となる見通し。資産売却によって身軽になる=「アセットライト」経営へ方針転換を図り、ウィズコロナ時代に生き残りをかける』、興味深そうだ。
・『ホテルやゴルフ場、スキー場など31施設を海外ファンドに売却  西武ホールディングス(HD)は、ホテルなど31施設をシンガポールの政府系ファンドであるGICに売却する。今回の決定の背景には、新型コロナウイルス感染再拡大など経営環境が激変する中で、生き残るために資産売却に踏み切らざるを得ない危機感がある。 西武HDは、資産売却後もホテルなど施設の運営は続ける。そうした動きを見ると、同社が資産売却によって身軽になる=「アセットライト」経営へと方針転換を図っているといえる。 資産の売却は、基本的に財務内容の改善や収益性の向上にプラスに働く。同社がホテルなどの運営に集中することによって、事業運営の効率性向上が期待できる。 国内外でコロナ変異株・オミクロン株の影響が深刻化し、人流や物流が寸断あるいは不安定な状況が続いている。そうした状況下、「ウィズコロナ」の経済運営に取り組む国や企業が増えている。西武HDがウィズコロナ時代において、どのように効率的なアセットライト経営を実現し、新しいビジネスモデルを作り出すことができるか注目される』、「西武HDは、資産売却後もホテルなど施設の運営は続ける。そうした動きを見ると、同社が資産売却によって身軽になる=「アセットライト」経営へと方針転換を図っているといえる」、「資産の売却は、基本的に財務内容の改善や収益性の向上にプラスに働く。同社がホテルなどの運営に集中することによって、事業運営の効率性向上が期待できる」、結構なことだ。
・『ウィズコロナ時代に生き残りを目指す西武 交通や飲食、宿泊は以前と同様には戻らない  当面、世界経済はウィズコロナを余儀なくされる。どこかの時点では感染を克服するだろうが、いつまた違う変異株が出現するかわからないため、先行きは見通しづらい。 不確定要素が増大する環境下で企業が生き残るためには、身軽になって損益分岐点を引き下げ、収益を獲得しやすい体制整備が不可欠だ。西武HDがアセットライト経営に大胆にかじを切った背景には、そうした危機感がある。 コロナ禍で人々の生き方は激変した。交通や飲食、宿泊などの業界では、コロナ禍以前と全く同じ様相には戻らないだろう。ただし、それは単純に需要が減退するだけでなく、新しい価値観を生み出してもいる。 例えば、ワーケーションやテレワークの一環としてホテルを利用する人が増えている。シェアオフィスを利用する手もあるが、落ち着いた環境で安心して仕事をするのに、相応のサービスが行き届いたホテルやレジャー施設の利用に意義を感じる人が多い。「ホテルは宿泊施設」という既成概念は、コロナ禍の発生によって崩れた。また、コロナ禍を境にアウトドアやキャンプの需要も急増している。  感染状況が落ち着けば、国内の観光需要は急速に回復する可能性が高い。飲食や宿泊、音楽イベントへの参加など、これまで我慢してきた需要(ペントアップ・ディマンド)が一気に表出する。その際にホテル・レジャー施設やイベントの運営者が、どれだけ鮮烈な参加体験を提供できるかが、中長期的な収益獲得に大きく影響する。 西武HDが環境変化に柔軟に応じて業績を回復させるには、そうした新しい価値観に沿った、消費者にとって鮮烈な体験の場を増やす必要がある。強化すべきは、体験の中身(コンテンツ)の創出だ。その分野に集中するために、同社はホテル・レジャー施設の所有と運営を一体的に行う従来戦略を改める。 グループ経営としては建設子会社を売却する一方、ホテル運営に特化した新会社、西武・プリンスホテルズワールドワイドを設立し、構造改革を加速させる』、「西武HDが環境変化に柔軟に応じて業績を回復させるには、そうした新しい価値観に沿った、消費者にとって鮮烈な体験の場を増やす必要がある。強化すべきは、体験の中身(コンテンツ)の創出だ。その分野に集中するために、同社はホテル・レジャー施設の所有と運営を一体的に行う従来戦略を改める」、「消費者にとって鮮烈な体験の場を増やす」、どんな「体験の場」が出てくるのだろう。
・『世界最大手ホテルチェーン 米マリオットもアセットライトを推進   2021年5月に西武HDが発表した中期経営計画では、アセットライトをテーマに経営改革を断行すると明記された。その後、所有するホテルなどの売却先を探し始め、2月10日に売却先と内容の詳細を発表した。 アセットライト経営とは、バランスシート上の資産(アセット)を圧縮して、財務面の負担を軽く(ライトに)する経営をいう。今回、西武HDは資産を投資ファンドに売却することで、事業運営の効率性向上が期待される。 具体的には、保有資産の減少はコスト削減につながる。また、得られた資金を成長期待の高い分野に再配分することによって、資本の収益率は高まる可能性がある。売却資金を負債返済に充てる場合、財務内容は改善するだろう。 事業運営の観点から考えると、新しいサービスの創出やホテルブランドの価値向上などに集中しやすくなる。その成果によって、投資ファンドなどホテルの所有者は利得を手にする。 もし、期待する利得が実現できなければ、オーナーは別の企業に運営を任せようとするだろう。アセットライト経営によって、所有を前提としたビジネスモデルは大きく変わる。 海外では、積極的にアセットライト経営を強化してきた企業がある。世界最大手のホテルチェーン、米マリオット・インターナショナルだ。同社はホテルの運営受託に特化し、低価格帯から高付加価値型まで多種多様なブランドを確立している。それは、より多くの需要を取り込むために欠かせない戦略だ。 米国では金利が上昇し金融政策の大転換が近づいているが、マリオット株は上昇基調だ。それは主要投資家が、ウィズコロナ時代でもマリオットが人々の価値観の変容に柔軟に対応し、安定的に収益を生み出せると考えているからに他ならない。 わが国ではモノを所有し、その利用権を独占することに意義を見いだす個人や企業が多い。しかし、そうした発想が、常に人々の満足度向上につながるとは限らない。ウィズコロナで事業運営の効率性を高めるために、アセットライト経営を目指す日本企業は増えるだろう』、「海外では、積極的にアセットライト経営を強化してきた企業がある。世界最大手のホテルチェーン、米マリオット・インターナショナルだ。同社はホテルの運営受託に特化し、低価格帯から高付加価値型まで多種多様なブランドを確立している。それは、より多くの需要を取り込むために欠かせない戦略だ。 米国では金利が上昇し金融政策の大転換が近づいているが、マリオット株は上昇基調だ」、「ウィズコロナで事業運営の効率性を高めるために、アセットライト経営を目指す日本企業は増えるだろう」、その通りだ。
・『施設の魅力を磨くだけでなく潜在的な顧客の目を向けさせることが必要  今後の注目点は、西武HDがいかに高付加価値型のサービスを創出できるかだ。20年に実施された国の支援策、Go Toトラベルキャンペーンの際、多くのシニアが自宅から近いエリアで旅行を楽しんだ。特に、首都圏からほど近い箱根や軽井沢などのリゾートが多くの人気を集めた。 どんなに困難な状況下でも、私たちは「日常と異なる空間を楽しみたい」という欲求がある。国の家計調査によると、60歳を超える世代の貯蓄額は、他の世代を大きく上回る。シニア層のレジャーへの支出余地は大きい。 ウィズコロナで、感染に留意しつつ自宅から1~2時間圏内で旅行を楽しむ「マイクロツーリズム」への潜在的な需要は増えるだろう。また、訪日外国人(インバウンド)需要は蒸発しているが、「コロナ禍が収束すれば日本を訪れたい」と考えている外国人は多い。そうした需要を取り込み、業績の回復と拡大につなげるためには、客単価の高い富裕層向けビジネスの強化も必要だ。 西武HDは、国内外の需要を取り込む、新しい動線の確立に取り組むべきだ。そのためには施設の魅力を磨くだけでなく、潜在的な顧客の目を施設に向けさせることが必要だ。 例えば、施設周辺の自然環境の美しさをコンテンツで創出し、それを拡張現実(AR)や仮想現実(VR)などの先端技術を駆使して、より鮮烈な体験につながる形で潜在顧客に伝える。他には、プライベートジェット運営会社との連携を強化し、より快適な移動体験を提供するのはどうだろうか。 そうした取り組みが成果につながれば、新しいホテル運営会社がグループ外施設の運営を受託する展開もあるだろう。アセットライト経営の実践には、自社の経営資源に、社外の新しい発想を結合させる施策が必要だ。より効率的に付加価値を獲得することが、西武HDには求められている』、「西武HDは、国内外の需要を取り込む、新しい動線の確立に取り組むべきだ。そのためには施設の魅力を磨くだけでなく、潜在的な顧客の目を施設に向けさせることが必要だ。 例えば、施設周辺の自然環境の美しさをコンテンツで創出し、それを拡張現実(AR)や仮想現実(VR)などの先端技術を駆使して、より鮮烈な体験につながる形で潜在顧客に伝える。他には、プライベートジェット運営会社との連携を強化し、より快適な移動体験を提供するのはどうだろうか」、「アセットライト経営の実践には、自社の経営資源に、社外の新しい発想を結合させる施策が必要だ。より効率的に付加価値を獲得することが、西武HDには求められている」、その通りだ。

次に、3月9日付けAERAdot「西武池袋「ヨドバシ」出店 元社長が語る“三つのハードル”「ありえないと思う」」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2023030800031.html?page=1
・『セブン&アイ・ホールディングス(HD)が子会社の「そごう・西武」を米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに売却する。注目はフォートレスと連携する家電量販ヨドバシホールディングスの動向だ。西武池袋本店などへの出店が取りざたされるが、元西武百貨店社長の水野誠一さん(76)は「三つのハードルがある」と指摘する(Qは聞き手の質問、Aは水野氏の回答)。 Q:かつて売り上げ日本一を誇ったそごうと、消費文化をリードしたセゾングループの中核を担った西武百貨店は、ともに経営危機に陥り、統合して持ち株会社制に移行した。その持ち株会社(現そごう・西武)は2006年にセブン&アイHDの完全子会社となったが、低価格専門店やネット通販の台頭で閉店は止まらなかった。 21年度までの10年間で赤字は7度にのぼる。 A:私は西武百貨店にいた当時から「百貨店は中途半端な存在だ」と言っていました。マーケットが成熟し、合理性では量販店に、専門性では専門店に、利便性ではコンビニにかなわなくなっていた。これでは消費の高度化に対応できません。「百貨店には一通りの商品があるけど欲しいものがない。そんな業態になるぞ」って。 社長になる話があった時は社内に総投資額約3千億円の出店計画がありましたが、堤清二さん(元セゾングループ代表)に「全部やめたい。先を考えると店を減らして質の高さを目指すべきだと思う」と言って、すべての投資計画をやめたんです。 地域一番店以外の既存店は、ロフトのような専門大店に転換すべきだと考えていました。全国百貨店の総売り上げは当時約10兆円でしたが、「20~30年で半分になるだろう」と取材に答えたこともあります。実際、そうなりました。 前任社長時代の不祥事が発覚し、後処理を見届けた上で辞任しましたが、その後の西武は「普通の百貨店」に逆行してしまい、セブン&アイHDの傘下に入ってからも閉店が進みました。店の質的な変革はなく、売り場を取引先に任せ、ボリュームゾーンだった平場(既製服売り場のように一般的商品を集めた売り場)は利益を生まなくなっています。) 若い人も来てくれません。専門大店をもっと拡充すべきでした。 Q:フォートレスは「1日の乗降客数が約270万人と世界でも3番目の交通量を誇る池袋駅に隣接する池袋本店を含む店舗に、200億円以上の改装と設備投資を行う予定」と発表。ヨドバシHDは「百貨店と連携した新たな店舗」を出す方針だ。注目が集まるのは西武池袋本店(東京都豊島区)で、低層階や北側にヨドバシが入る案が浮上しているという。ただ、水野さんは三つのハードルを指摘する。 第一に雇用を守れるのかという問題があります。ヨドバシカメラに無理に転籍させるなら、辞めたいと言う人も出てくるでしょう。もう一つは土地の多くを所有する西武鉄道側の了承が得られるのかということ。 あと一つは売り場。ほぼ半分がヨドバシになるなら、いまのテナントには移動か退店をしてもらわないといけません。仮に地下1階から4階を渡すなら費用は安く見積もっても700億~800億円はかかるのではないでしょうか。最近改装したばかりの北側部分を渡す話もあるやに聞いていますが、こんな話をテナントに持ちかければ、そごう・西武との信頼関係に大きく影響します。 調整には時間がかかるし、訴訟にでもなれば、さらに長期化することになりかねません。この三つのハードルをどう越えるつもりなのか、全く見えてきません。 Q:調整は難航し、当初2月1日とされた売却時期は3月中に延期された。現役社員らは売却差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てた。エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドがある百貨店と家電量販店の連携は難しいのか』、「フォートレスは「1日の乗降客数が約270万人と世界でも3番目の交通量を誇る池袋駅に隣接する池袋本店を含む店舗に、200億円以上の改装と設備投資を行う予定」と発表。ヨドバシHDは「百貨店と連携した新たな店舗」を出す方針だ。注目が集まるのは西武池袋本店(東京都豊島区)で、低層階や北側にヨドバシが入る案が浮上」、しかし、「水野さんは三つのハードルを指摘する。 第一に雇用を守れるのかという問題があります。ヨドバシカメラに無理に転籍させるなら、辞めたいと言う人も出てくるでしょう。もう一つは土地の多くを所有する西武鉄道側の了承が得られるのかということ。 あと一つは売り場。ほぼ半分がヨドバシになるなら、いまのテナントには移動か退店をしてもらわないといけません。仮に地下1階から4階を渡すなら費用は安く見積もっても700億~800億円はかかるのではないでしょうか。最近改装したばかりの北側部分を渡す話もあるやに聞いていますが、こんな話をテナントに持ちかければ、そごう・西武との信頼関係に大きく影響します。 調整には時間がかかるし、訴訟にでもなれば、さらに長期化することになりかねません。この三つのハードルをどう越えるつもりなのか、全く見えてきません。 Q:調整は難航し、当初2月1日とされた売却時期は3月中に延期された。現役社員らは売却差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てた。エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドがある百貨店と家電量販店の連携は難しいのか」、「ほぼ半分がヨドバシになるなら、いまのテナントには移動か退店をしてもらわないといけません。仮に地下1階から4階を渡すなら費用は安く見積もっても700億~800億円はかかるのではないでしょうか」。「調整は難航し、当初2月1日とされた売却時期は3月中に延期された」、確かに「エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドがある百貨店と家電量販店の連携は難しい」、ようだ。
・『百貨店の役割を理解しているか  A:私はヨドバシカメラを否定しているわけではありません。大阪の梅田では複合商業施設を運営していますし、必需品を中心にネット販売も大いに結構だと思います。配送態勢がしっかりしていて便利ですから私も時々利用しています。 ただ、百貨店の役割と意味をどれほど理解しているのでしょうか。百貨店はお客様にじっくりと商品を試していただき、店員と商品にまつわる会話を楽しんでいただき、豊かな気分でお買い上げいただく。そうしたプロセスを楽しんでいただく場所です。物質的な充足を得る文明的消費ではなく、心の豊かさにつながる文化的消費を提供するのが役割で、売り方なども含めたクオリティーが問われます。つまり存在意義が異なるのです。) エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドは西武が他に先駆けて日本に導入したものですが、(西武池袋本店の)現在の最適な場所から、ヨドバシの都合で移動しろということになれば、かなりの軋轢(あつれき)が生じることになるでしょう。ヨドバシの名前がついている店舗にブランド品を買いに来るのかという問題もあります。 ヨドバシカメラと百貨店の混在は、私はありえないと思います。 Q:昨年12月には豊島区の高野之夫区長(今年2月に死去)が西武池袋本店の存続を西武鉄道の親会社の西武ホールディングスに嘆願した。池袋の文化戦略の中心が西武だとして、ヨドバシの参入により文化のまちの土壌が喪失してしまうと訴えたが……。 A:高野さんは池袋を文化都市にする強い思いを持っておられました。美術館をいち早くつくり、書籍や音楽の専門店も立ち上げた西武に対し、文化の担い手としての期待感があったと思います。しかし最近の西武は、そのあたりがおろそかになっていました。街に人を呼ぶには演劇や映画、食事、買い物など総合的なアートやアミューズメントが必要ですし、百貨店も画廊や展覧会、催事などにもっと注力しなければいけません』、「エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドは西武が他に先駆けて日本に導入した」、かつての「西武」は先進的だったようだ。「文化の担い手としての期待感があったと思います。しかし最近の西武は、そのあたりがおろそかになっていました」、なるほど。
・『「初めて」のもの強く求められる  百貨店は入居するブランドのおかげで一定の客が動員できるので、自ら文化的魅力を作り上げる力が退化しています。その結果どの百貨店も差異がなくなってしまっています。その代わりブランド側が文化的発信をしています。 いまルイ・ヴィトンではアーティストの草間彌生さんとのコラボが人気です。伝統にあぐらをかくのではなく、新しい文化を先取りして進化し続けているわけです。 Q:かつての西武百貨店はどんな店だったのだろうか。水野さんは高校生時代に、流行し始めていたアイビールックのブランドを扱う西武百貨店に興味を持ち、通い始めたという。 A:大阪で産声を上げた「VAN」が、東京では池袋の西武など数カ所にしかなかったんです。西武は情報に敏感だと感じ、始終入り浸っていた思い出があります。入社後は婦人服の売り場に配属されました。) 若手でもアイデアを出すと「面白いからやってみろよ」と言ってくれるような風土でした。堤さんからはモノではなくライフスタイルを売る生活総合産業を目指す意思が非常に伝わってきましたね。 かつての西武は「よそが売れているからウチも……」ということは絶対にやらず、絶えず他社がやっていないことに挑戦しました。歴史がないので老舗と同じことをやっては勝てない。冒険して新しいことを提案する必要があったのです。 お客様に「初めて」のものをどれだけ提供できるか。これはいまも変わらない百貨店の役割ですし、今後はむしろそれが強く求められる時代になっていくのではないでしょうか。 Q:では水野さんならどうするのか。 A:様々なサブカルチャーやライフスタイルを打ち出す専門店の集積に力を入れます。現代は「必要なモノ」はいくらでもネットで買える時代ですから、まさに「欲しくなるモノ」を見つけられなければ、専門店や百貨店までわざわざ来てくれない。 また、同じモノを売ればおのずから価格競争に陥ってしまいます。デフレが続いた日本で安いものが売れるのはわかりますが、他方では質の高い商品を求める人は確実にいます。明確な「ワケ」と「ナットク」があれば高くても買ってくれる顧客です。これは家電量販店とは完全に異なる風景です。 さらに世界に目を向けると、欧州ではSDGsの時代に即して、人や社会、環境に配慮したエシカル消費に特化した小型百貨店が出現しています。また中国の北京にある「SKP」という小ぶりな百貨店はハイブランドに特化し、店内に最新のアートロボットなどを展示するなどアミューズメント性のある店づくりを進め、年間2千億円以上売り上げています。 今回の売却話は、百貨店のあり方をゼロから考え直すラストチャンスだと思うのですが……』、「若手でもアイデアを出すと「面白いからやってみろよ」と言ってくれるような風土でした。堤さんからはモノではなくライフスタイルを売る生活総合産業を目指す意思が非常に伝わってきましたね。 かつての西武は「よそが売れているからウチも……」ということは絶対にやらず、絶えず他社がやっていないことに挑戦しました。歴史がないので老舗と同じことをやっては勝てない。冒険して新しいことを提案する必要があったのです」、かつての「西武」は堤の影響もあって、文化的な香りがあり、「絶えず他社がやっていないことに挑戦しました。歴史がないので老舗と同じことをやっては勝てない。冒険して新しいことを提案する必要があったのです」、なるほど。「デフレが続いた日本で安いものが売れるのはわかりますが、他方では質の高い商品を求める人は確実にいます。明確な「ワケ」と「ナットク」があれば高くても買ってくれる顧客です。これは家電量販店とは完全に異なる風景です」、やはり「ヨドバシカメラと百貨店の」相性は悪いようだ。

第三に、5月15日付け東洋経済オンライン「そごう・西武売却延期「史上最低ディール」の裏側 契約実行の無期限延期に「仕切り直すべき」の声」を紹介しよう。
・『業績は絶好調のセブン&アイ・ホールディングス。しかし物言う株主から揺さぶられて袋小路から抜け出せない。『週刊東洋経済』5月15日(月)発売号では「漂流するセブン&アイ」を特集。イトーヨーカ堂の改革やそごう・西武売却の舞台裏を徹底取材、なぜ構造改革を進められないのかその理由を探る。「抵抗するなら(そごう・西武の)社長をさっさと交代させるしかないんじゃないか!」 今年2月、セブン&アイ・ホールディングスの本社では、こんな怒鳴り声が響いた。 事情に詳しい関係者によれば、声の主はフォートレス・インベストメント・グループ日本法人の山下明男氏。セブン&アイから傘下の百貨店、そごう・西武の全株式を購入する契約を結んでいる米投資ファンドの日本代表だ。 山下氏は、「机をたたきながら、かなり怒っていた」(セブン&アイ関係者)というが、それも無理はない。セブン&アイが契約を一向に実行せず、期日の延期を繰り返しているからだ。 2022年2月、セブン&アイはコンビニエンスストア以外の事業からの撤退を求める米バリューアクト・キャピタル・マネジメントに応える形でそごう・西武の売却を決断。2度の入札を経て、11月11日にフォートレスに全株式を2000億円超で売却する契約を締結した』、「米投資ファンドの日本代表」が怒るのも当然だ。
・『契約が実行されないばかりかメドさえ立たず  ところがだ。期日の2月1日になっても契約が実行されないばかりか、メドさえ立たず、セブン&アイは「3月中」に実施すると期日を延期したのだ。 「延期になっている障害が何も解消していないのに、解決しますから大丈夫です』と繰り返していた。それで結局、契約を実行できないのだから山下さんも怒るよ」とセブン&アイ関係者はあきれる。 しかし、いよいよ3月に入って延ばした期日さえ守れそうにないことがわかると、さすがに井阪隆一社長ら幹部は慌てて、対処方法の検討を始める。そこで出たのが、①2月、3月と延期したから、さらに4月まで延期、②株主総会前の5月に延期、③期限を定めない無期限延期、の3案だった。) 最終的に井阪社長らは、繰り返し延期するのは印象が悪いとの理由から無期限を選択。3月30日になって、「譲渡が完了した際に速やかにお知らせいたします」という前代未聞のリリースを発表した』、「最終的に井阪社長らは、繰り返し延期するのは印象が悪いとの理由から無期限を選択・・・「譲渡が完了した際に速やかにお知らせいたします」という前代未聞のリリースを発表」、無責任な姿勢だ。
・『仕切り直すべしとの声も  投資ファンドの幹部たちが、「無期限延期なんて、聞いたことがない史上最低のディール」と口をそろえる今回の売却劇。話がまとまらないのは、フォートレスが家電量販大手のヨドバシホールディングスをビジネスパートナーに選んだことにある。 ヨドバシは多額の資金を拠出し、西武池袋本店や、そごう千葉店の一部などの不動産を取得する見込み。そこにヨドバシカメラを出店する意向だ。関係者によると、ヨドバシは西武池袋本店について、「当初、最も好立地の本館北エリア地下1階から地上6階への出店を主張していた。それが今では中央エリアや別館にも拡大し、全体の5割をよこせと言っている」。フォートレスの山下氏もセブン&アイに「四の五の言わずに半分、よこせばいいんですよ」と言い放ったという。) だが百貨店の顔である1階を含めた半分がヨドバシの店舗になるのは、そごう・西武としては受け入れがたい。ヨドバシと隣り合わせになる高級ブランドが逃げるのは必至で、客離れが加速し事業継続すら危ぶまれかねないからだ。 こじれているのはそれだけではない。フォートレスへの売却には、そごう・西武の労働組合、西武池袋本店の土地の一部を所有する地権者の西武ホールディングス(HD)、そして地元自治体である豊島区の3者の承諾を得ることが条件。だがセブン&アイは、いまだ得ていないのだ。 「契約に盛り込まれているなら即座に話し合いの場を持ち、時間をかけて説得に当たるべきなのに、井阪社長は西武HDの後藤高志会長の元に、あいさつに行っていなかった。最近になってようやく後藤会長と面談したようだが、あまりに遅すぎる」(そごう・西武関係者)との声が上がる。 そもそも西武HDは、ヨドバシの進出に否定的だった前豊島区長が進めてきた「文化を基軸としたまちづくり」を支持しており、西武池袋本店の低層階へのヨドバシ入居に難色を示している。 そうした経緯があるにもかかわらず「何の説明もなかった」と、西武HD側は不満を募らせていた。それゆえ「こじれた関係をほぐすハードルは高い」(西武HD関係者)との見方がもっぱらだ』、「フォートレスへの売却には、そごう・西武の労働組合、西武池袋本店の土地の一部を所有する地権者の西武ホールディングス(HD)、そして地元自治体である豊島区の3者の承諾を得ることが条件。だがセブン&アイは、いまだ得ていないのだ」、「井阪社長は西武HDの後藤高志会長の元に、あいさつに行っていなかった。最近になってようやく後藤会長と面談したようだが、あまりに遅すぎる」・・・との声が上がる。 そもそも西武HDは、ヨドバシの進出に否定的だった前豊島区長が進めてきた「文化を基軸としたまちづくり」を支持しており、西武池袋本店の低層階へのヨドバシ入居に難色を示している。 そうした経緯があるにもかかわらず「何の説明もなかった」と、西武HD側は不満を募らせていた。それゆえ「こじれた関係をほぐすハードルは高い」、放置してきた「井阪社長」の責任は重大だ。
・『組合側も態度を硬化  組合側も態度を硬化させている。「インサイダー情報に当たる」としてセブン&アイが説明してこなかったためだ。つまり、「バリューアクトにいい顔をしたくてディールの成立を急ぐがあまり、事前にやっておくべき対応をおろそかにした結果」(投資ファンド幹部)なのだ。 さらにここにきて混迷に拍車をかける出来事が起きている。売却話が出てから1年が経過した今年2月、セブン&アイの株主が取締役を相手取り、売却の差し止めを求める仮処分を申し立てたのだ。東京地裁は却下したものの株主はこれを不服とし、東京高裁に即時抗告。近々、取締役を相手取り、株主代表訴訟にも打って出る構えだ。 「ここまできたら一度、ディールを取りやめ、仕切り直すべきではないか」と市場関係者は口をそろえる。だが、そうなればフォートレスはヨドバシに多額の違約金を支払わなくてはならなくなり、認めるはずがない。そごう・西武の売却は袋小路から抜け出せそうにない』、「セブン&アイが説明してこなかったためだ。つまり、「バリューアクトにいい顔をしたくてディールの成立を急ぐがあまり、事前にやっておくべき対応をおろそかにした結果」・・・なのだ」、「セブン&アイが説明してこなかったため」、問題をこじらせた責任は極めて重い。「井坂」氏が「バリューアクトにいい顔をしたくてディールの成立を急ぐがあまり、事前にやっておくべき対応をおろそかにした」とは、信じられないような不手際だ。本当にどうするつもりなのだろう。 
タグ:ダイヤモンド・オンライン 百貨店業界 (その5)(西武HDがホテルなどを大量売却、「身軽な経営」シフトで本当に生き残れるか、西武池袋「ヨドバシ」出店 元社長が語る“三つのハードル”「ありえないと思う」、そごう・西武売却延期「史上最低ディール」の裏側 契約実行の無期限延期に「仕切り直すべき」の声) 真壁昭夫氏による「西武HDがホテルなどを大量売却、「身軽な経営」シフトで本当に生き残れるか」 「西武HDは、資産売却後もホテルなど施設の運営は続ける。そうした動きを見ると、同社が資産売却によって身軽になる=「アセットライト」経営へと方針転換を図っているといえる」、「資産の売却は、基本的に財務内容の改善や収益性の向上にプラスに働く。同社がホテルなどの運営に集中することによって、事業運営の効率性向上が期待できる」、結構なことだ。 「西武HDが環境変化に柔軟に応じて業績を回復させるには、そうした新しい価値観に沿った、消費者にとって鮮烈な体験の場を増やす必要がある。強化すべきは、体験の中身(コンテンツ)の創出だ。その分野に集中するために、同社はホテル・レジャー施設の所有と運営を一体的に行う従来戦略を改める」、「消費者にとって鮮烈な体験の場を増やす」、どんな「体験の場」が出てくるのだろう。 「海外では、積極的にアセットライト経営を強化してきた企業がある。世界最大手のホテルチェーン、米マリオット・インターナショナルだ。同社はホテルの運営受託に特化し、低価格帯から高付加価値型まで多種多様なブランドを確立している。それは、より多くの需要を取り込むために欠かせない戦略だ。 米国では金利が上昇し金融政策の大転換が近づいているが、マリオット株は上昇基調だ」、「ウィズコロナで事業運営の効率性を高めるために、アセットライト経営を目指す日本企業は増えるだろう」、その通りだ。 「西武HDは、国内外の需要を取り込む、新しい動線の確立に取り組むべきだ。そのためには施設の魅力を磨くだけでなく、潜在的な顧客の目を施設に向けさせることが必要だ。 例えば、施設周辺の自然環境の美しさをコンテンツで創出し、それを拡張現実(AR)や仮想現実(VR)などの先端技術を駆使して、より鮮烈な体験につながる形で潜在顧客に伝える。他には、プライベートジェット運営会社との連携を強化し、より快適な移動体験を提供するのはどうだろうか」、 「アセットライト経営の実践には、自社の経営資源に、社外の新しい発想を結合させる施策が必要だ。より効率的に付加価値を獲得することが、西武HDには求められている」、その通りだ。 AERAdot「西武池袋「ヨドバシ」出店 元社長が語る“三つのハードル”「ありえないと思う」」 「フォートレスは「1日の乗降客数が約270万人と世界でも3番目の交通量を誇る池袋駅に隣接する池袋本店を含む店舗に、200億円以上の改装と設備投資を行う予定」と発表。ヨドバシHDは「百貨店と連携した新たな店舗」を出す方針だ。注目が集まるのは西武池袋本店(東京都豊島区)で、低層階や北側にヨドバシが入る案が浮上」、しかし、「水野さんは三つのハードルを指摘する。 第一に雇用を守れるのかという問題があります。ヨドバシカメラに無理に転籍させるなら、辞めたいと言う人も出てくるでしょう。もう一つは土地の多くを所有する西武鉄道側の了承が得られるのかということ。 あと一つは売り場。ほぼ半分がヨドバシになるなら、いまのテナントには移動か退店をしてもらわないといけません。仮に地下1階から4階を渡すなら費用は安く見積もっても700億~800億円はかかるのではないでしょうか。最近改装したばかりの北側部分を渡す話もあるやに聞いていますが、こんな話をテナントに持ちかければ、そごう・西武と の信頼関係に大きく影響します。 調整には時間がかかるし、訴訟にでもなれば、さらに長期化することになりかねません。この三つのハードルをどう越えるつもりなのか、全く見えてきません。 Q:調整は難航し、当初2月1日とされた売却時期は3月中に延期された。現役社員らは売却差し止めの仮処分を東京地裁に申し立てた。エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドがある百貨店と家電量販店の連携は難しいのか」、 「ほぼ半分がヨドバシになるなら、いまのテナントには移動か退店をしてもらわないといけません。仮に地下1階から4階を渡すなら費用は安く見積もっても700億~800億円はかかるのではないでしょうか」。「調整は難航し、当初2月1日とされた売却時期は3月中に延期された」、確かに「エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドがある百貨店と家電量販店の連携は難しい」、ようだ。 「エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランドは西武が他に先駆けて日本に導入した」、かつての「西武」は先進的だったようだ。「文化の担い手としての期待感があったと思います。しかし最近の西武は、そのあたりがおろそかになっていました」、なるほど。 「若手でもアイデアを出すと「面白いからやってみろよ」と言ってくれるような風土でした。堤さんからはモノではなくライフスタイルを売る生活総合産業を目指す意思が非常に伝わってきましたね。 かつての西武は「よそが売れているからウチも……」ということは絶対にやらず、絶えず他社がやっていないことに挑戦しました。歴史がないので老舗と同じことをやっては勝てない。冒険して新しいことを提案する必要があったのです」、 かつての「西武」は堤の影響もあって、文化的な香りがあり、「絶えず他社がやっていないことに挑戦しました。歴史がないので老舗と同じことをやっては勝てない。冒険して新しいことを提案する必要があったのです」、なるほど。「デフレが続いた日本で安いものが売れるのはわかりますが、他方では質の高い商品を求める人は確実にいます。明確な「ワケ」と「ナットク」があれば高くても買ってくれる顧客です。これは家電量販店とは完全に異なる風景です」、やはり「ヨドバシカメラと百貨店の」相性は悪いようだ。 東洋経済オンライン「そごう・西武売却延期「史上最低ディール」の裏側 契約実行の無期限延期に「仕切り直すべき」の声」 「米投資ファンドの日本代表」が怒るのも当然だ。 「最終的に井阪社長らは、繰り返し延期するのは印象が悪いとの理由から無期限を選択・・・「譲渡が完了した際に速やかにお知らせいたします」という前代未聞のリリースを発表」、無責任な姿勢だ。 「フォートレスへの売却には、そごう・西武の労働組合、西武池袋本店の土地の一部を所有する地権者の西武ホールディングス(HD)、そして地元自治体である豊島区の3者の承諾を得ることが条件。だがセブン&アイは、いまだ得ていないのだ」、「井阪社長は西武HDの後藤高志会長の元に、あいさつに行っていなかった。最近になってようやく後藤会長と面談したようだが、あまりに遅すぎる」・・・との声が上がる。 そもそも西武HDは、ヨドバシの進出に否定的だった前豊島区長が進めてきた「文化を基軸としたまちづくり」を支持しており、西武池袋本店の低層階へのヨドバシ入居に難色を示している。 そうした経緯があるにもかかわらず「何の説明もなかった」と、西武HD側は不満を募らせていた。それゆえ「こじれた関係をほぐすハードルは高い」、放置してきた「井阪社長」の責任は重大だ。 「セブン&アイが説明してこなかったためだ。つまり、「バリューアクトにいい顔をしたくてディールの成立を急ぐがあまり、事前にやっておくべき対応をおろそかにした結果」・・・なのだ」、「セブン&アイが説明してこなかったため」、問題をこじらせた責任は極めて重い。 「井坂」氏が「バリューアクトにいい顔をしたくてディールの成立を急ぐがあまり、事前にやっておくべき対応をおろそかにした」とは、信じられないような不手際だ。本当にどうするつもりなのだろう。
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