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アジアインフラ投資銀行(AIIB)への日本の参加問題 [外交]

中国が提唱したアジアインフラ投資銀行(AIIB:Asian Infrastructure Investment Bank)への参加問題で、今朝の日経新聞は、日本政府は創設メンバーになるための今月末までの参加判断を見送る方針を伝えた。この問題に対し、米国と日本は、既にアジア開発銀行(ADB)があること、AIIBの組織運営の透明性や融資審査の公平性などが不透明として慎重姿勢を取り、関係国にも働きかけてきた。しかし、今月中旬以降、英国を皮切りにドイツ、フランス、イタリア、スイスなどの欧州主要国が無条件での参加を表明。日本政府内にも一時、容認論が出ていたのが、来月の日米首脳会談や、6月のG7首脳会議などをにらんで、判断先送りを決めたもの。創設メンバーになると、AIIBがかかわる案件で優先権が得られるらしいが、これは断念した模様。
この問題については、人民日報社の人民網日本語版が24日付けで「日本はAIIB創設メンバーになり得るか 31日期限」と題して、(条件を付ける)「日本は創設メンバーとしての参加の決意を欠いている」と報じていた。
http://j.people.com.cn/n/2015/0324/c94476-8867731.html

AIIBは資本金1000億ドル、当面はその半分で発足、出資は加盟国のGDPに応じ、中国が最大で50%まで出す。アジアでの膨大なインフラ投資需要に対し、IMFやADBが課しているような環境や人権などに配慮した融資基準をつけずに貸し出すという魅力の前には、投資受入国のみならず、インフラ関連ビジネス提供国にとっても、米日の建前論は太刀打ちできなかったことに。特にビジネス提供国にとって、プロジェクト情報はインナーサークルに如何に入るかがポイントとされるだけに「勝負あった」というよう。インフラ関連ビジネスを成長戦略の1つとするアベノミクスにとっても打撃であろう。
参加表明国は、人民網日本語版23日付けによれば、35カ国を超える見込みとのこと。中国とは仲が良くないベトナム、ADBが本店を置くフィリピンを含むASEAN10カ国の他にも、インド、モンゴル、パキスタンからサウジアラビア、さらには前述の欧州主要国などである。米国から圧力を受けている韓国はミサイル迎撃システムの配備問題も絡んでまだ迷っており、オーストラリアは参加を再検討中と伝えられる。

現在のADBは、応募済資本金1628億ドル、参加国・地域67、うち域内が48。1966の創立以来、日本が最大出資国として総裁を出してきた。出資比率(議決権比率)は、日本15.7%(12.8%)、米国15.6%(12.7%)の次には中国6.5%(5.5%)、インド6.4%(5.4%)と続く。中国はかねてから出資比率引上げを要求してきたが、米日にかわされてきた。GDP規模で世界第二位となった中国にとって耐え難い状況にあったことも事実。ただ、これだけギャップが生じた出資比率の見直しはADBのあり方自体の見直しにつながるだけに、先送りしてきた米日の対応にもやむを得ない面もあった。しかし、結果論ではあるにせよ、見直しに応じ総裁ポストも渡すなどの方策で、中国をADBの枠内に留める可能性もあったのではなかろうか(当事者以外にはわからないが)?

AIIB問題を深く掘り下げて論じたファイナンシャル・タイムズ紙の18日付け(翻訳したJB PRESSの19日付け)は、「米国の同盟国を引き寄せる中国のマネー磁石」と題して、「AIIBのエピソードは、アジアにおける影響力を巡る戦いで中国が持つ最強の切り札は同国の高まる経済力だということを浮き彫りに。これに対して米国が持つ一番の切り札は、軍事力と安全保障条約のネットワークだ」としている。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43232

現時点では「腹水盆に帰らず」なので、日本としては、創設メンバー入りは断念するとしても、米国に寝返られないよう気を付けつつ、アジアでの孤立化を避けるためにも、面目を失わない形で参加出来るよう期待するほかないようだ。
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