SSブログ

日本郵政の新中期経営計画 [経済政策]

日本郵政が4月1日に新中期経営計画「新郵政ネットワーク創造プラン2017」を発表した。同社は昨年2月26日にも中期経営計画を発表していたが、今回は株式上場スキームが日本郵政、金融2社の同時上場に変わったことや経営環境の変化等を踏まえて見直したもの。主幹事証券のアドバイスなどを受けて、成長シナリオを如何に描くかに苦労した形跡が見られるとはいえ、これで成長シナリオが示せたとはお世辞にも言えない出来だ。特に大きな問題点と感じたのは、既に指摘してきた親子同時上場以外にも以下の3点。

①上場後の当面の配当政策として、金融2社とも配当性向の目安を50%以上とした。配当性向は、投資家にとっては高いにこしたことはないが、投資家の株式投資の狙いは、配当よりも、成長に伴う企業価値増大による株価上昇である。成長のためには、利益を内部留保に回し、それを設備投資やM&Aなどに振り向けてゆくことが基本。もっとも、現在の一般的な日本企業は内部留保に溜め込むばかりで、設備投資には余り回ってないことも事実だが、通常は、成長企業は配当よりも内部留保に回す方が一般的だ。大塚家具の議決権争奪戦では、成長戦略よりも、配当を2、3倍への引き上げ競争がクローズアップされた。配当性向は、成長が期待し難くなった企業を中心に100%を超すこともあるが、東証1部上場企業の平均では前期実績ベースで26.1%、予想ベースで26.8%(本日付けの日経新聞から計算)である。金融2社の配当性向50%以上を目安としたということは、成長戦略の自信のなさの裏返しといえるのではなかろうか。

②ゆうちょ銀行では、国債運用などのベース・ポートフォリオ(BP)の収益が国債利回り低下で大幅に減少。これに対し、外国証券や株式投資、ファンド投資などのサテライト・ポートフォリオ(SP)残高を2014見込みの46兆円から、2017には60兆円に拡大することでSP収益を増大させ、コストも削減、この結果、経常利益は同期間で5400億円から4800億円への減少に止めるとの戦略。公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も国債投資から株式や外国証券への投資の比重を高めているが、年金運用は出入りの将来予測が容易なのに対し、定額貯金中心のゆうちょ銀行の調達資金は、一般的な金利の上昇・低下で民間金融機関の定期預金との間で大きく流出入するため、安定性には欠けるため、流動性を欠く運用の比重は抑制する必要がある。さらに、現在はタイミング的には円安・株高で株式や外国証券投資には最悪、無論、ポートフォリオを一気に変えるような馬鹿なことはしないとは思うが、高値掴みにはくれぐれも気を付けて欲しい。

③かんぽ生命では、「募集品質の確保・コンプライアンスの徹底」を謳っているが、2005以降、問題化した「保険金不払い問題」の金融庁調査では、2010までの10年間で不払いの発生は民間保険会社では116万件、1137億円だった。これに対し、かんぽでは件数こそ26.7万件だったが、金額では3524億円と民間の3倍にも達していたことを改めて肝に銘じてもらいたいものだ。
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0