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孫崎亨著「小説外務省」(現代書館、2014)の紹介 [外交]

昨日の続きとして、孫崎亨著「小説外務省」(現代書館、2014)を紹介したい。
これは、出版社4つから断られた問題作。中堅外交官を主人公とした小説形式をとってはいるが、多くは要人たちの発言などを基にしたノンフィクションである。私が特に衝撃を受けたポイントを箇条書き風に列挙すると
・現在の翼賛的体制へ異議を唱えようとすると、鳩山由紀夫、小沢一郎など「人物破壊」で葬り去ろうとする圧力。2012にイランを訪問した鳩山由紀夫氏の場合、ワシントン・ポスト紙のコラムで米国政府役人が鳩山氏をlooppy(頭がおかしい)と言っていると茶化し、それを日本の新聞が無批判に転載。野田首相は当初イラン訪問に「頑張って下さい」と励ましていたのに、掌を返して批判。「人物破壊」手法は米国では頻繁に使われるが、オランダ人ジャーナリストのウォルフレンは「不快で野蛮なやり方」、「いわば殺人の代用方法」と厳しく糾弾。
・日本人以外では、米情報機関がジュリアン・アサンジ氏を女性支援者宅での性的暴行事件で追い詰め、ウィキリークスの活動は殆ど停止。2012の仏大統領選挙では米国協調路線のサルコジの政敵、ストラス・カーン元IMF専務理事が有力だったのを、2011年5月にニューヨークのホテルの女性清掃員への婦女暴行容疑をかけられた。事件はうやむやになったが、同氏は大統領の立候補取り下げたなどの例。
・米国には日本を操るジャパンハンドラーが存在。代表的なのは、戦略国際問題研究所のアジア・日本部長のマイケル・グリーン、リチャード・アーミテージ元国務副長官ら。橋本首相の「米国債売る誘惑」発言の翌年、内閣崩壊、汚職事件も発覚した例も。なお、ジャパンハンドラーについては19日付けで紹介したニューヨークタイムズ紙東京支局長も言及。私は一般的な「陰謀論」には与するつもりはないが、ここで描かれた米国のジャパン・ハンドラーに代表される対日工作を読むと、国際政治の世界では「陰謀論」的色彩も否定できないと考えるようになった。
・石原都知事の尖閣諸島購入発言は、2012.4にヘリテージ財団主催のシンポジウムで表明したが、その背景には、石原と親しいスタンフォード大名誉教授のメイ(CIAと密接)が、石原に「中国に対して厳しい発言をすれば米国保守系は歓迎」とそそのかした事実。
・尖閣棚上げ問題では、日本政府は尖閣諸島が「固有の領土」で棚上げの合意はないと強弁。しかし、当時条約課長だった栗山元外務次官によれば、周恩来・田中の首脳間、トウ小平副首相・園田外相間で「暗黙の合意」があった。当時、北京の高崎連絡事務所に外務省から出向していた田熊によれば、首脳会談の3回目で、田中首相が突然「尖閣諸島についてどう思うか」と言い出したが、周は「今これを話すのはよくない」と打ち切り、田中も同意。中国側顧問の回顧録にも記載。日本が合意の存在否定に転換したのは、日米軍事同盟推進派の池田行彦が外相になってから。
・尖閣問題では、74に田中首相の訪中を知ったキッシンジャーが「汚い裏切り者どものなかで、よりによって日本人野郎がケーキを横取りする」と怒り、中国担当のハメルに中国を尖閣に向かわせることが出来ないかと打診。沖縄返還時には、尖閣諸島を「安保条約の対象ではあるが、領有権問題には中立」と曖昧にして日中間にくさび。これはキッシンジャーの差金だった可能性。
・サンフランシスコ講和条約では、米英は、日本に放棄させる千島列島の範囲を曖昧にすることで、北方領土で日ソを永遠に争わせることに。
・安保条約で米国は日本防衛の約束は実質的にしてない。交戦権は議会にあるので、議会に諮る必要がある。NATOでは「必要と認める行動を直ちに執る」のとは大違い。
・普天間基地問題では、1995の少女暴行事件を契機に米国は普天間の閉鎖だけを決めた(橋本・モンデール会談)。辺野古移設に利益を見出すグループが「閉鎖問題」を「移設問題」にすり替えた。外務省、防衛省は省をあげて普天間の県外構想を阻止。沖縄県知事選挙でグアム移転を主張する宜野湾市長の伊波を阻止するため、前原は中国漁船衝突事件を利用。海上保安庁はそれまで「日中漁業協定で対処」との方針で、中国漁船に接近したり囲い込んだりせず、外交ルートで処理してきたが、逮捕することに行動基準を変え、紛争深刻化の素地を作った。
・尖閣は固有の領土論は、ポツダム宣言にある「主権は本州・北海道・九州・四国と戦勝国が決定する諸小島に極限」を受諾した以上、通用せず。1895に日本のものにしたとの「先占の法理」は今では国際的に通用せず。

本の紹介は、以上であるが、関連情報として、「日本が中国の尖閣沖侵犯に抗議しなくなった理由」(天木直人のブログ2月19日付けも、見逃せない重大な事実なので紹介したい。英国が公開した機密外交文書の中に、サッチャー英国首相が1982年に訪日した際、当時の鈴木善幸首相が、尖閣問題は棚上げする事で中国と合意していることをサッチャー首相に伝えていた事実が暴露。この共同通信のスクープを大手メディアは黙殺、政府の対応だけがコッソリ変わったらしい。ここまでくると、日本の外交の余りのお粗末さに、空いた口が塞がらず、呆然自失になるのは私だけではない筈だ。
http://www.amakiblog.com/archives/2015/02/19/
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