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台湾(その2)(大前研一「米軍予想"6年以内に台湾有事"はそもそもアメリカが元凶だ」 沖縄 横須賀 横田は標的になる、台湾有事に備え「日本の曖昧性」放置できない事情 アメリカとともに対中抑止構築のための議論を台湾有事に備え「日本の曖昧性」放置できない事情、米国の専門家も危惧 台湾防衛で米国の「弾除け」に使われる日本 日本に「台湾の防衛は日本の防衛」と認める覚悟はあるのか?) [世界情勢]

台湾については、昨年8月4日に取上げた。今日は、(その2)(大前研一「米軍予想"6年以内に台湾有事"はそもそもアメリカが元凶だ」 沖縄 横須賀 横田は標的になる、台湾有事に備え「日本の曖昧性」放置できない事情 アメリカとともに対中抑止構築のための議論を台湾有事に備え「日本の曖昧性」放置できない事情、米国の専門家も危惧 台湾防衛で米国の「弾除け」に使われる日本 日本に「台湾の防衛は日本の防衛」と認める覚悟はあるのか?)である。

先ずは、6月3日付けプレジデント 2021年6月18日号が掲載したビジネス・ブレークスルー大学学長の 大前 研一氏による「大前研一「米軍予想"6年以内に台湾有事"はそもそもアメリカが元凶だ」 沖縄、横須賀、横田は標的になる」を紹介しよう。
・『米国追随で中国と敵対するな2021  年4月16日(日本時間17日)に行われた菅義偉首相とジョー・バイデン米大統領による日米首脳会談を受け、両国が発表した共同声明に、台湾問題が盛り込まれた。これは1972年の日中国交正常化以来初めてのことだ。 フィリップ・デービッドソン米インド太平洋軍司令官(当時)が3月に米上院軍事委員会の公聴会で、中国が6年以内に台湾に武力侵攻する可能性があると発言するなど、ここにきてアメリカは中国に対する警戒を強めている。共同声明で台湾に言及したのは、中国をけん制したいアメリカの意向であり、日本はそれに従ったのだろう。 日本はこれまでも、事あるごとにアメリカの尻馬に乗ってきた。だから今回もアメリカと歩調を合わせ、対中国強硬姿勢をとることをよしとしているのかもしれない。しかし、同盟国だからといって無条件でアメリカに追随し中国と敵対してはならない。アメリカは歴史的に見て、態度を急変する癖があるのだ。日本はこのことをよくわかっておかなければならない。 たとえばアメリカの中東戦略。ジョージ・W・ブッシュはイラクに民主主義を導入するという名目で戦争を仕掛け、イスラム教スンニ派の独裁的指導者であるサダム・フセインを追放し、後に処刑した。ところが、スンニ派のフセインがいなくなった後に民主的選挙を行うと、当然に多数派であるシーア派による政権が発足した。すると、シーア派の盟主であってアメリカと敵対関係にあるイランの影響が強まり、イラクの政情は著しく不安定化したのである。そうしているうちにアメリカはイラクに興味を失って、混乱を残したままイラクから撤退してしまったのだ。 ブッシュの次に大統領に選ばれたバラク・オバマも、アフガニスタンで混乱を発生させた。アメリカの真の敵は9.11の首謀者であるウサマ・ビン・ラディンをかくまう、イスラム原理主義勢力のアルカイダとタリバンの逃避地になっているアフガニスタンだと、米軍のアフガニスタン増派を実行した。しかし、ビン・ラディンが潜伏していたのはアフガニスタンではなくパキスタンだった。アフガニスタンでは、アメリカはNATO同盟国も巻き込み200兆円も使ったにもかかわらず、20年間ほとんど何の成果も上げられず混乱を残したまま、21年9月11日までの完全撤兵が決まった。 エジプトもそうだ。2011年、オバマは中東で市民による非暴力の民主化運動、いわゆる「アラブの春」が始まるとこれを歓迎し、後押しを明言した。しかし、エジプトで30年にわたって独裁を続けていたムバラクが追放され、民主主義に基づいた選挙が行われたものの、その結果政権を握ったのが反米のムスリム同胞団だとわかると態度を一変。裏で糸を引いて自分たちの息がかかった軍人にクーデターを起こさせ、親米の軍事政権を樹立させてしまったのである。民主主義はどこにいった、という批判には耳を貸さなかった。 このように、アメリカという国は、自由、平等、民主という崇高な理念の伝道師のような顔をしてやってきても、それが本当に根づくまで責任をもたないどころか、場合によっては自分たちの都合で、その理念を曲げてしまうことさえ躊躇しないのだ』、「アメリカという国は、自由、平等、民主という崇高な理念の伝道師のような顔をしてやってきても・・・本当に根づくまで責任をもたないどころか、場合によっては自分たちの都合で、その理念を曲げてしまうことさえ躊躇しない」、その通りだ。
・『50年前に犯したニクソンの歴史的愚行  バイデン政権の要職の顔ぶれを見ると、トランプ政権ほどではないものの明らかに反中色が濃い。バイデン自身はこれまで中国に対してそれほど厳しい姿勢はとってこなかったはずだが、アメリカ人の中国に対するイメージを徹底的におとしめたトランプの後遺症が残っていることを考えると、中国に甘い顔をできないことは理解できなくもない。 だからといって、中国が台頭をしてきてアメリカを脅かそうとしているから気に食わないというのは、そもそも筋が通らずおかしな話だろう。なにしろ、今の中国をつくったのはアメリカ自身だからだ。 1971年に中華人民共和国(共産党)が国連に加盟し安全保障理事会の常任理事国メンバーになると、それまで常任理事国だった中華民国(国民党)は国連から追放された。ベトナム戦争終結に中国の協力が必要になったため、当時のニクソン米大統領とキッシンジャー大統領補佐官が画策したのだ。これは翌年のニクソン訪中、さらに79年の米中国交樹立につながっていく。 このニクソン・キッシンジャー外交は今でも高く評価されているようだが、私に言わせればとんでもない愚行だった。2人ともアジアの歴史に疎かったのだ。 中国は第2次世界大戦の戦勝国だったが、当時の連合国側で中国代表とされていたのは国民党政権(中華民国)で、事実カイロ会談に中国代表として参加していたのは、毛沢東ではなく蒋介石だった。終戦後、中国では国民党と共産党との内戦が再開。49年に毛沢東が北京で中華人民共和国の建国を宣言すると、国民党は台湾に逃れて政権を維持、現在も中華民国こそが中国の正統政権と主張している。 アメリカがどうしても中華人民共和国を国連に引き入れたかったのであれば、その前に共産党政権と国民党政権の間に立って和平協定を締結させ、ひとつの中国にすべきだったのである。それで2度と国共で戦闘をしないよう、国共内戦の最後の戦場となった福建省の厦門アモイあるいは金門島か馬祖島に議会を置く。ニクソンとキッシンジャーがそのような提案をすれば、〓小平ならきっと受け入れたはずだ。 結局、敗戦国で立場の弱い日本もアメリカに従わないわけにはいかず、田中角栄が周恩来と握手して日中国交正常化した。そのせいでそれまで仲の良かった台湾(中華民国)には、大使も送れなくなってしまったのである。 アメリカはその後も中華人民共和国をWTOに加盟させたり、大量の学生を自国に留学させ成長と発展のノウハウを教えて送り返したりと、中国の発展に手を差し伸べ続けた。同時にアップルなどのアメリカ企業の生産工場としても利用していった。その結果、中国は成長する経済力を背景に軍事力も高め、気がつけばアメリカの覇権を脅かすほどになっていた。まさに現在の中国の脅威の原因は、中華民国を国連から追い出し、中華人民共和国を国連安保理の常任理事国にしたニクソン・キッシンジャー外交であり、アメリカ自身なのだ』、「現在の中国の脅威の原因は、中華民国を国連から追い出し、中華人民共和国を国連安保理の常任理事国にしたニクソン・キッシンジャー外交であり、アメリカ自身なのだ」、その通りだ。
・『台湾有事では日本も戦場に  さて、今後6年以内にも起こりうると言われる米中間で台湾有事が勃発したら、日本も無傷ではいられない。安倍前政権が集団的自衛権を認める安保法を策定したから、アメリカが有事の際、日本も参戦できるようになった。日本は戦争に関わりたくないから基地を使わないでくれとは言えないのである。まず、沖縄の嘉手納や普天間は間違いなく狙われる。アメリカ第7艦隊が配備されている横須賀、それから横田も中国の攻撃対象となるだろう。佐世保や岩国もやられるかもしれない。台湾問題でアメリカと共同歩調をとると言ったら、そこまで覚悟しなければならないのだ。 米中にも相当な被害が及ぶと思われる。米中は政治的には対立しているが、経済的には現在供給不足が深刻な半導体や先述のアップル製品が代表されるように、サプライチェーンがガッチリ構築されて結びついている。従って、台湾有事となれば、経済活動が世界規模で停滞するだろう。 台湾自体は物理的に破壊される可能性大。軍事大国化した中国相手では、いざ事が起これば、カナダやオーストラリアあたりに逃台湾有事は誰にとってもいいことはひとつもないげ出す台湾人は続出するだろう。つまり、台湾有事は誰にとってもいいことはひとつもないのだ』、「台湾有事は誰にとってもいいことはひとつもない」、同感である。
・『英連邦のような緩やかな連合体の「中華連邦」をつくるしかない  中国と台湾に関しての私の持論は、ニクソン・キッシンジャー以前に戻り、英連邦のような緩やかな連合体の「中華連邦(コモンウェルス・オブ・チャイナ)」をつくるしかないということだ。実際、私が台湾の経済顧問を務めていたときに、当時の李登輝総統にこれを提案したことがある。彼はたいへん乗り気だったが、北京側が連邦制を認めたがらなかったため残念ながらそのときは実現しなかった。だが、香港や新疆ウイグル自治区の統治で世界中から非難を受けている今なら、台湾を無傷で統治できるようになる連邦制を中国が受け入れる可能性はゼロではないだろう。 ただ、キッシンジャーを超えるような外交力はバイデン政権にはないだろう。日本がアメリカに「中華連邦」のような構想を提言する手もあるが、「ジョー」「ヨシ」と呼び合って首脳同士の親密さをアピールする程度の外交力では期待するだけ無駄であろう。 本稿で述べたとおり、中東だけでなくまさに中国に対しても態度を急変させてきたアメリカに従属して、今(日本にとっては2000年も付き合いがある)中国と敵対することは絶対にしてはならない。中国とは経済的結びつきを強化して、日本は衰退からの脱却を図る。米中のはざまに置かれた日本外交は、このことを確実に肝に銘じるべきである』、習近平時代になって、「中華連邦」は現実味を失った。なにやら、現在の「戦狼外交」に突き進む習近平にとっては物笑いの種にしかならないだろう。

次に、6月7日付け東洋経済オンラインが掲載した調査報道チームのAPI地経学ブリーフィングによる「台湾有事に備え「日本の曖昧性」放置できない事情 アメリカとともに対中抑止構築のための議論を」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/432231
・『米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。 独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく』、興味深そうだ。
・『アメリカの戦略的曖昧性政策  台湾有事が勃発した際、日米両国はそれぞれ、もしくはともにどのような対応をするのか。これは過去50年にわたる東アジアの国際政治において非常に敏感な問いとして扱われ、その答えは曖昧にされてきた。 中国と国交正常化をするなかで日米両国は台湾の主権問題に関する中華人民共和国政府の立場を「認識する」(アメリカ)または「十分理解し、尊重する」(日本)としたが、自国の立場は明確にせず、あくまでも両岸問題が当事者間で平和的に解決されるよう求めてきた。 しかし中国の軍事力が増大し、米中関係、中台関係の融和的時代がともに終焉を迎えている今、日米ともにその従来の曖昧な立場を見直す声が出ている。中国に対して、両岸問題は武力ではなく平和的な方法でしか解決の道はないと思わせ続けるために、日米は台湾有事への対応を粛々と検討し、備え、対中抑止の一貫としてそれを戦略的に発信するべき時に来ている。 台湾有事をめぐる日米の曖昧な立場は、それぞれ異なる歴史的、戦略的背景のもとで形成された。アメリカの政策は一般的に「戦略的曖昧性(Strategic Ambiguity)」と呼ばれる。これは両岸問題の平和的な解決を実現するために、アメリカがいつ、どのように、台湾の防衛に介入するかを曖昧にすることで、北京、台湾の両政府による挑発的・冒険的な行為を抑制するという政策だ。) 1979年、アメリカは台湾の中華民国政府と同盟関係を解消したが、国内法の台湾関係法によって台湾防衛に寄与し続けることを約束した。一方で、中華人民共和国政府を「中国の唯一の合法政府」と認めた限り、アメリカは台湾の法的な独立(De jure independence)を能動的に支持しない立場をとった。 アメリカが軍事的に介入する可能性を残すことで中国の台湾侵攻を抑止し、アメリカが介入しない可能性を残すことで台湾の冒険的な行為も抑止するという「二重の抑止(Dual deterrence)」を確立し、台湾海峡における一方的な現状変更を防ごうとしてきたのである。 この戦略的曖昧性政策の是非は、冷戦終結後ソ連が崩壊し、米中関係が見直されるたびに議論されてきた。2000年2月には、両岸問題は「平和的」かつ「台湾の人々の同意のもとに(with the assent of the people of Taiwan)」解決されなければいけないとクリントン大統領が発言したが、これは台湾の民主化という大きな変化を汲み取ったうえでの政策の更新であった』、「アメリカが軍事的に介入する可能性を残すことで中国の台湾侵攻を抑止し、アメリカが介入しない可能性を残すことで台湾の冒険的な行為も抑止するという「二重の抑止(Dual deterrence)」を確立」、という「戦略的曖昧性政策」は微妙なバランスの上に成立している。
・『「戦略的明瞭性」よりも  最近では昨年9月にアメリカ・外交問題評議会会長リチャード・ハース氏等の記事を発端に、本政策の見直し議論が活発化している。香港での一連の動向や人民解放軍による台湾海峡での威嚇行為などから「当事者間での平和的解決」への悲観的観測が広がっていること、戦略的曖昧性政策の基盤であったアメリカの圧倒的な軍事的優位性が揺らいでいることを受け、アメリカは中国が台湾侵攻を行えば介入すると明言し対中抑止を強化すべきという意見が提示されたのだ。 こうした「戦略的明瞭性」政策への転換を求める声に対し、アメリカの国家安全保障会議・インド太平洋調整官カート・キャンベル氏は先月上旬、「戦略的明瞭性」よりも、外交や防衛技術革新、アメリカの軍事力を背景にして、中国政府に一貫したシグナルを送ることこそが台湾海峡の平和と安定に最も効果的な方法だと継続性を訴えた。 アメリカの同盟国であり、台湾と地理的に近接する日本もまた、台湾有事における対応を曖昧にしてきた。だがここで特筆すべきは、日本の曖昧性はアメリカのそれと本質的に異なり、北京・台湾それぞれに向けた「二重の抑止」を目指した戦略に基づくものではないということだ。 冷戦時代、この議題が国会で議論されることはあっても、その焦点は台湾有事におけるアメリカの在日米軍基地使用を認めるのかという議論が中心だった。日米同盟における事前協議制度について本稿で詳しくは扱わないが、現行の日米安保条約では、もしアメリカ政府が台湾での「戦闘作戦行動」のために在日米軍基地を使用する場合、日本政府への事前協議が求められており、その際日本の立場は「イエスもノーもありえる」というのが政府の見解だ。 日中国交正常化の2カ月後である1972年11月に発表された政府統一見解において、当時の大平正芳外相は、台湾有事における日米安保条約の運用について「わが国としては、今後の日中両国間の友好関係をも念頭に置いて慎重に配慮する所存」であると述べた』、「日本の曖昧性はアメリカのそれと本質的に異なり、北京・台湾それぞれに向けた「二重の抑止」を目指した戦略に基づくものではない」、「焦点は台湾有事におけるアメリカの在日米軍基地使用を認めるのかという議論が中心」、なるほど。
・『玉虫色の統一見解  しかし当時の外交資料によれば、日本政府は即座にアメリカ政府に対して、この「をも」という助詞に注目するよう訴え、「日米関係の重要性はわが国にとって最も重要であり、安保条約の運用にあたってはこの点を第一義的に考慮する」と説明した。台湾防衛をめぐる日米同盟と対中外交の対立をくぐり抜けるために作られた、まさに玉虫色の統一見解だった。 冷戦後、日米ガイドラインの見直しに伴い周辺事態法が制定された際も、日本が米軍への後方支援を行う「周辺事態」に台湾有事が認定されるか否かはあくまで事態の性質によるという答弁がされてきた。 日中国交正常化交渉に携わった外交官、故・栗山尚一氏は回顧録でこう語っている。 「万が一に台湾海峡有事になった時に日本がどう対応するかは、アメリカにとっては当然のことながら一大関心事なのです。一大関心時だけれど、あらかじめ日本を問い詰めれば、藪から蛇が出るような形になりかねないとアメリカは分かっている。 日本の責任ある政治家も、問い詰められた時に台湾を守るとはっきり言うことは、いろいろな意味で問題が起きるとわかっているのですね。したがって、端的に言えば、どっちとも言わないということに意味があるのだということで理解していると思うのです」(栗山尚一著、中島琢磨、服部龍二、江藤名保子編、『外交証言録沖縄返還・日中国交正常化・日米「密約」』(岩波書店、2010年)117-118ページ)) アメリカの同盟国であり、台湾と地理的に近接する日本もまた、台湾有事における対応を曖昧にしてきた。だがここで特筆すべきは、日本の曖昧性はアメリカのそれと本質的に異なり、北京・台湾それぞれに向けた「二重の抑止」を目指した戦略に基づくものではないということだ。 冷戦時代、この議題が国会で議論されることはあっても、その焦点は台湾有事におけるアメリカの在日米軍基地使用を認めるのかという議論が中心だった。日米同盟における事前協議制度について本稿で詳しくは扱わないが、現行の日米安保条約では、もしアメリカ政府が台湾での「戦闘作戦行動」のために在日米軍基地を使用する場合、日本政府への事前協議が求められており、その際日本の立場は「イエスもノーもありえる」というのが政府の見解だ。 日中国交正常化の2カ月後である1972年11月に発表された政府統一見解において、当時の大平正芳外相は、台湾有事における日米安保条約の運用について「わが国としては、今後の日中両国間の友好関係をも念頭に置いて慎重に配慮する所存」であると述べた』、「今後の日中両国間の友好関係をも念頭に置いて」、とは「曖昧性」の極致だ。
・『玉虫色の統一見解  しかし当時の外交資料によれば、日本政府は即座にアメリカ政府に対して、この「をも」という助詞に注目するよう訴え、「日米関係の重要性はわが国にとって最も重要であり、安保条約の運用にあたってはこの点を第一義的に考慮する」と説明した。台湾防衛をめぐる日米同盟と対中外交の対立をくぐり抜けるために作られた、まさに玉虫色の統一見解だった。 冷戦後、日米ガイドラインの見直しに伴い周辺事態法が制定された際も、日本が米軍への後方支援を行う「周辺事態」に台湾有事が認定されるか否かはあくまで事態の性質によるという答弁がされてきた。 日中国交正常化交渉に携わった外交官、故・栗山尚一氏は回顧録でこう語っている。 「万が一に台湾海峡有事になった時に日本がどう対応するかは、アメリカにとっては当然のことながら一大関心事なのです。一大関心時だけれど、あらかじめ日本を問い詰めれば、藪から蛇が出るような形になりかねないとアメリカは分かっている。 日本の責任ある政治家も、問い詰められた時に台湾を守るとはっきり言うことは、いろいろな意味で問題が起きるとわかっているのですね。したがって、端的に言えば、どっちとも言わないということに意味があるのだということで理解していると思うのです」(栗山尚一著、中島琢磨、服部龍二、江藤名保子編、『外交証言録沖縄返還・日中国交正常化・日米「密約」』(岩波書店、2010年)117-118ページ)』、「あらかじめ日本を問い詰めれば、藪から蛇が出るような形になりかねないとアメリカは分かっている」、「曖昧さ」を残すのも外交交渉ノテクニックのようだ。
・『対中抑止戦略から考える台湾有事への政策を  しかし米中パワーバランスが変化し台湾有事の蓋然性が相対的に高まる今日、日本は従来の曖昧性を再検討し、対中抑止という観点から台湾有事への対応を検討・準備し、対内的に議論、対外的に発信する時期に来ている。 まず台湾有事と一言にいってもそのシナリオによって日本の自衛隊の活動範囲や内容はおのずと変わってくるため、想定されうるシナリオごとに外交、軍事、経済面それぞれで対応できるよう粛々と準備を行う必要がある。 日本には台湾関係法のように、平時から台湾と直接的に軍事協力を行う法律的根拠はないが、たとえば台湾有事の際に同時に在日米軍基地や南西諸島という日本の国土が攻撃されれば、日本は自衛権を発動し自衛隊を動員することになる。よって、日本はまず日米安保条約の運用、もしくは南西諸島防衛という文脈から、平時から台湾とも情報交換などの協力を行っていく必要がある。  また、台湾有事の日本の対応の選定には、言うまでもなく日本の世論が重要になるため、平時からさまざまなシナリオへの国民理解を醸成していく必要がある。軍事面以外でも、主権国家ではなく経済地域としても加入できる多国間貿易協定への台湾の加入をサポートするなど、戦略的に国際社会を巻き込む努力が必要だ。 一方、こうした台湾有事をめぐる日本の準備や議論の主たる目的は対中抑止であり、最終的には中国がそれをどう受け止め認識するかが重要だということを忘れてはならない。そこで注意すべきは、日本の台湾統治の歴史から中国政府・国民が日本の意図を誤認識する危険性、またはそれを政治利用する危険性である。 中国にとって、中国「百年来の屈辱 (century of humiliation)」の時代に台湾を統治していた日本が台湾の防衛に関わることは歴史的・政治的に重大な意味を持ち、従来から中国政府は台湾防衛における日本の役割が拡大することを非常に警戒し、アメリカ以上に猛反発してきた』、「中国「百年来の屈辱 ・・・」の時代に台湾を統治していた日本」、中国にも複雑な感情があるようだ。
・『日米間での焦燥感や不信感が生まれるリスクも  もし日米が共同で台湾との協力を深めても、中国が日本だけをターゲットに批判キャンペーンを繰り広げ、さらには経済的な報復を行うなど、地経学的な争いに発展する可能性は高い。その場合、経済界を中心に日本の世論は動揺し、分断され、結果として日米間の足並みが崩れ、日米間での焦燥感や不信感が生まれるリスクも考慮する必要がある。 また台湾有事に向けた準備や協力に関して戦略的な発信の努力を怠れば、逆に習近平政権が台湾への強硬政策に乗り出す国内政治上の口実を与えてしまう危険性もある。日本政府は台湾海峡の平和と安定が日本国民の生命と財産を守るうえで重要であること、台湾海峡での一方的な現状変更を支持しないことを繰り返し発信し、この原則の下に日本の対応を説明していく必要があるだろう。 (寺岡 亜由美/プリンストン大学 国際公共政策大学院安全保障学博士候補生)』、「日本政府は台湾海峡の平和と安定が日本国民の生命と財産を守るうえで重要であること、台湾海峡での一方的な現状変更を支持しないことを繰り返し発信し、この原則の下に日本の対応を説明していく必要」、曖昧さがあっても、具体的問題で大いに情報発信してゆくべきだ。

第三に、7月2日付けJBPressが掲載した軍事社会学者の北村 淳氏による「米国の専門家も危惧、台湾防衛で米国の「弾除け」に使われる日本 日本に「台湾の防衛は日本の防衛」と認める覚悟はあるのか?」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65874
・『岸信夫防衛大臣は米メディア(ブルームバーグ)のインタビューに答える形で、台湾の平和と安定は「日本に直結している」との認識を示した。台湾の防衛が日本の防衛と直結していることを認めたことになる。 日本が中国を仮想敵に据えている限り、台湾の防衛と日本の防衛は切っても切り離せない関係にあるというのは極めて当然の原理である。しかしながら、日本の防衛大臣や総理大臣がこの“原理”を公に語ることは稀であるため、アメリカ軍や政府関係者たちの間で岸大臣の発言は歓迎されている。 日本の防衛大臣が「台湾の防衛は日本の防衛」という趣旨を語ったということは、「中国に攻撃された台湾を防衛するため、アメリカが軍事的支援を実施する場合、日本も当然アメリカの同盟軍としての役割を果たすであろう」とアメリカの軍人や政治家、安全保障専門家などの多くは(単純に)理解しがちで岸大臣ある。したがって、日本の「決意」はアメリカの国益と一致しており、大いに歓迎されるのである』、「岸大臣の発言は」「歓迎されている」とはいえ、ここまで明確に述べるのは問題がありそうだ。本来は審議会などで審議すべきだろう。
・『「不安定な状態」を維持したいアメリカ  ここでいうアメリカの「国益」とは、「中国と台湾の間に不安定な状態が続くこと」を意味する。日本がアメリカの同盟国としての役割を果たすことは、「不安定な状態」の維持に寄与するというわけだ。) ただし注意が必要なのは、「不安定」といっても、アメリカの軍事的介入が必要になるほど激しい軍事対立では困る、というのがアメリカ側の真意だ。そうではなく、「中国が台湾に軍事侵攻する危険性が高いものの、現実に軍事攻撃が実施されることはない」という「曖昧な不確定戦争」といった状態が続いているのが望ましいのだ。 このような状況ならば、アメリカが実際に中国軍と戦火を交える必要はないものの、台湾を軍事的に支援する大義名分を掲げて、台湾海峡や東シナ海、南シナ海に空母艦隊や爆撃機などを展開させて「アメリカが台湾という民主主義国家を守っている」というデモンストレーションを展開することができる。 そして日本政府や日本国民が「台湾の防衛は日本の防衛」と認識しているのならば、アメリカ軍による台湾防衛のためのデモンストレーションはそのまま日本防衛のデモンストレーションにもなるのである。 したがって、アメリカ軍が日本国内に確保してある軍事拠点を大手を振って好き勝手に用いても何も気が咎(とが)めることはない。なんといってもアメリカ軍は台湾防衛(すなわち日本の防衛)のために巨額の運用費がかかる空母部隊や爆撃機などで中国側を“威嚇”しているのだ』、なるほど。
・『自衛隊が“多国籍軍”の先鋒に  では万が一、中国による台湾に対する軍事攻撃が実際に起きた場合には何が起こるのか。その場合、沖縄、佐世保、岩国、横須賀、横田といった米軍基地は最良の前進軍事拠点となる。日米安保条約や日米地位協定の取り決め以上に日本側が「台湾防衛は日本防衛」と考えているからには、日本各地に点在する軍事施設を米軍が自由に用いることが保証されることは疑う余地がない(と米軍側は考えるであろう)。 そして「台湾の防衛は日本の防衛」であるならば、アメリカが主導して編成する台湾支援“多国籍軍”(注)の先鋒として、自衛隊艦隊や航空戦隊、それに水陸両用部隊などが投入されることになるであろう。なんといっても台湾を巡る戦闘においては、日本の地理的位置は民主国家のうちでも群を抜いているからだ。多国籍軍の先鋒を務める海・空・陸自衛隊諸部隊は、数千発の各種ミサイルが降り注いで生活のインフラを破壊された台湾の人々を救援・救出するため、台湾に接近上陸することになる。 (注)中国が安保理常任理事国である以上、国連軍が編成されることはあり得ず、アメリカが音頭を取って編成する多国籍軍の可能性が高い。ただし、相手が中国であるため、多国籍軍に参加し軍隊を派遣する国がいくつ集まるかは大いに疑問である。 このような困難かつ危険極まりない先鋒任務をアメリカ自身が行う必要はない。「台湾の防衛は日本の防衛」である以上、隣国の日本が「唯一に近い日本の真の友好国」である台湾の人々を救出するのは当然だからだ』、「多国籍軍」とはいっても、日本の他には、オーストラリア、ニュージーランド程度で、他のアジア諸国は参加をためらうだろう。
・『弾除け的に使われる“属国”  このシナリオのように、属国や従属国を弾除け的に使うのは、アメリカの軍事的師匠筋にあたるイギリスがしばしば用いた伝統的手法である。 イギリスは第一次世界大戦きっての激戦であったガリポリ上陸戦で、最も困難な激戦地点にオーストラリア軍とニュージーランド軍の部隊を投入した。) 同様に第二次世界大戦においても、日本との戦端が開かれた場合に、イギリスの極東最大の拠点である香港を日本軍が攻略することは目に見えていたため、全滅する可能性が高い香港防衛部隊をカナダ軍にあたらせていた。 そしてヨーロッパ戦線でも、ディエッペ上陸作戦の主力としてカナダ軍部隊を投入した。ディエッペ上陸作戦は、西ヨーロッパ全域を占領したドイツ軍への反抗拠点を確保する実験的上陸作戦であり、極めて危険な自殺的作戦であった。 このようにイギリスは、英連邦内の“二級国家”オーストラリア、ニュージーランド、カナダなどの“二級国民”による志願兵部隊を、当初より多大な犠牲が見込まれる作戦に投入したのである。 一方の“二級国家”側も、イギリスの本意は承知してはいたものの、真の独立国としての地位を勝ち取るために自国民の犠牲はやむを得なかった。結局、第二次世界大戦後、イギリス自身の軍弾除け的に使われる“属国”事的地位が低下したことも相俟って、それら諸国は真の独立国家としての地位を獲得したのである』、「弾除け的に使われる“属国”」、とは哀れだ。日本がこんな使われ方をされても文句はいえないだろう。
・『日本列島に撃ち込まれる長射程ミサイル  アメリカにとっても、台湾を巡って中国と本格的な戦争へ突き進むことは99.9%避けなければならない。しかし、中国による台湾への軍事攻撃に際して何もしないのではアメリカの軍事的威信は地に墜ちる。そこで台湾の人々を救出するという大義を押し立てて、アメリカの“属国”である日本の“二級国民”を危険かつ困難な先鋒部隊として台湾に突入させ、自らは「出動宣伝効果」は極めて大きい空母部隊2セットを沖縄南方200海里沖付近と沖縄西方100海里沖付近に展開させ、多国籍軍先鋒を務める勇敢な自衛隊部隊を支援する態勢をとるのである。 そして、台湾問題に日本が軍事介入したことを口実に中国軍が日本列島に長射程ミサイルを連射して、日本の戦略要地が大損害を受けた場合には、国連安保理で停戦協議を開始するのだ。 話を冒頭に戻そう。アメリカ側の多くの人々は、日本が「台湾の防衛は日本の防衛」と認識していることを歓迎している。だが、日本の防衛政策の現実を熟知している専門家の間では、「台湾の防衛は日本の防衛」ということは日本が上記のような流れに巻き込まれることを意味し、とても日本政府がその種のシナリオを是認した上で何らかの具体的戦略を持っているとは考え難い、との疑義が持たれている』、どう考えても「台湾の防衛は日本の防衛」などと安易に発言すべきではない。岸大臣はここまでの覚悟で発言したのかも知れないが、国民の大多数はそのまで覚悟している訳ではない。
タグ:台湾 大前 研一 東洋経済オンライン プレジデント JBPRESS 北村 淳 API地経学ブリーフィング (その2)(大前研一「米軍予想"6年以内に台湾有事"はそもそもアメリカが元凶だ」 沖縄 横須賀 横田は標的になる、台湾有事に備え「日本の曖昧性」放置できない事情 アメリカとともに対中抑止構築のための議論を台湾有事に備え「日本の曖昧性」放置できない事情、米国の専門家も危惧 台湾防衛で米国の「弾除け」に使われる日本 日本に「台湾の防衛は日本の防衛」と認める覚悟はあるのか?) 「大前研一「米軍予想"6年以内に台湾有事"はそもそもアメリカが元凶だ」 沖縄、横須賀、横田は標的になる」 「アメリカという国は、自由、平等、民主という崇高な理念の伝道師のような顔をしてやってきても・・・本当に根づくまで責任をもたないどころか、場合によっては自分たちの都合で、その理念を曲げてしまうことさえ躊躇しない」、その通りだ アメリカがどうしても中華人民共和国を国連に引き入れたかったのであれば、その前に共産党政権と国民党政権の間に立って和平協定を締結させ、ひとつの中国にすべきだった 「現在の中国の脅威の原因は、中華民国を国連から追い出し、中華人民共和国を国連安保理の常任理事国にしたニクソン・キッシンジャー外交であり、アメリカ自身なのだ」、その通りだ。 「台湾有事は誰にとってもいいことはひとつもない」、同感である。 習近平時代になって、「中華連邦」は現実味を失った。なにやら、現在の「戦狼外交」に突き進む習近平にとっては物笑いの種にしかならないだろう。 「台湾有事に備え「日本の曖昧性」放置できない事情 アメリカとともに対中抑止構築のための議論を」 「アメリカが軍事的に介入する可能性を残すことで中国の台湾侵攻を抑止し、アメリカが介入しない可能性を残すことで台湾の冒険的な行為も抑止するという「二重の抑止(Dual deterrence)」を確立」、という「戦略的曖昧性政策」は微妙なバランスの上に成立している。 「日本の曖昧性はアメリカのそれと本質的に異なり、北京・台湾それぞれに向けた「二重の抑止」を目指した戦略に基づくものではない」、「焦点は台湾有事におけるアメリカの在日米軍基地使用を認めるのかという議論が中心」、なるほど。 「今後の日中両国間の友好関係をも念頭に置いて」、とは「曖昧性」の極致だ。 「あらかじめ日本を問い詰めれば、藪から蛇が出るような形になりかねないとアメリカは分かっている」、「曖昧さ」を残すのも外交交渉ノテクニックのようだ。 「中国「百年来の屈辱 ・・・」の時代に台湾を統治していた日本」、中国にも複雑な感情があるようだ。 「日本政府は台湾海峡の平和と安定が日本国民の生命と財産を守るうえで重要であること、台湾海峡での一方的な現状変更を支持しないことを繰り返し発信し、この原則の下に日本の対応を説明していく必要」、曖昧さがあっても、具体的問題で大いに情報発信してゆくべきだ。 「米国の専門家も危惧、台湾防衛で米国の「弾除け」に使われる日本 日本に「台湾の防衛は日本の防衛」と認める覚悟はあるのか?」 「岸大臣の発言は」「歓迎されている」とはいえ、ここまで明確に述べるのは問題がありそうだ。本来は審議会などで審議すべきだろう。 「多国籍軍」とはいっても、日本の他には、オーストラリア、ニュージーランド程度で、他のアジア諸国は参加をためらうだろう。 「弾除け的に使われる“属国”」、とは哀れだ。日本がこんな使われ方をされても文句はいえないだろう。
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