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金融業界(その17)(幻に消えたLINE銀行 「金融リストラ」の序章か 証券に決済… 苦戦続くLINEのアキレス腱、SVB クレディと続いた金融不安が「ひと段落」とならない訳...日本はむしろこれから、これだけで済まない欧米金融不安「次の危機の芽」 不動産ファンドの資金流出が投げ売りを招く) [金融]

金融業界については、本年4月1日に取上げた。今日は、(その17)(幻に消えたLINE銀行 「金融リストラ」の序章か 証券に決済… 苦戦続くLINEのアキレス腱、SVB クレディと続いた金融不安が「ひと段落」とならない訳...日本はむしろこれから、これだけで済まない欧米金融不安「次の危機の芽」 不動産ファンドの資金流出が投げ売りを招く)である。

先ずは、本年4月4日付け東洋経済オンライン「幻に消えたLINE銀行、「金融リストラ」の序章か 証券に決済…、苦戦続くLINEのアキレス腱」を紹介しよう。
・『終わったのか――。「新銀行」の開発を受託していた企業の担当者は、流れてきたニュースを見て驚いた。事前の連絡はなく、プロジェクトは唐突に終焉を迎えた。「それなりに開発が進んでいただけに、残念だ」。 3月30日、LINEはみずほフィナンシャルグループ(FG)と共同で進めてきた「LINE Bank」(以下、LINEバンク)の開業を中止すると発表した。 「(サービス開発に)さらなる時間と追加投資が必要であり、スムーズな提供が現時点で見通せない」ためという。新銀行の母体となるはずだった設立準備会社は解散・清算される』、興味深そうだ。
・『開業の意義は失われた  空転の4年半だった。LINEが銀行業への参入を表明したのは2018年11月。若年層を中心に月間7800万人(当時)を誇る顧客基盤を生かし、スマートフォンを起点とする新たな銀行を掲げた。 華々しい構想とは裏腹に、LINEバンクはつまずきの連続だった。 関係者によれば、銀行の心臓部である勘定系システムの開発は富士通が担当していたが、開発費用が想定以上に膨らみ、2021年に韓国のベンダーに乗り換えた。同年に台湾法人がLINEバンクを開業させており、その勘定系システムを開発した実績を評価したようだ。 だが、乗り換え先のベンダーは日本での稼働実績がない。「金融業への規制が違えば、勘定系システムに求められる要件も異なる。海外で実績があるからといって、日本でもスムーズに稼働するとは限らない」。別のITベンダーはそう評する。2021年にパートナーのみずほでシステム障害が断続的に発生したことも、新銀行プロジェクトの進捗に水を差した』、「勘定系システムの開発は富士通が担当していたが、開発費用が想定以上に膨らみ、2021年に韓国のベンダーに乗り換えた」、「2021年にパートナーのみずほでシステム障害が断続的に発生したことも、新銀行プロジェクトの進捗に水を差した」、ずいぶんあれこれと無節操に手を出したものだ。
・『LINEバンクをめぐる年表  もたつくLINEバンクを尻目に、同業のネット銀行は口座数や預金量を着々と伸ばしていった。旧来型の金融機関においても、2021年にふくおかFGが「みんなの銀行」を、2022年には東京きらぼしFGが「UI銀行」を開業するなど、ネット専業銀行の設立が相次いだ。 銀行機能の一部を切り出して提供するBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)の台頭も逆風となった。預金や貸し出し、決済といった銀行機能を事業会社が容易に搭載できるようになり、銀行業への参入障壁は著しく下がった。群雄割拠のネット銀行業界にあって、費用と時間をかけてまでLINEバンクを開業する意義は失われていった。) 見果てぬ夢となったLINEバンク。だが、LINEにとって今回の撤退劇は前哨戦にすぎない。 「重複事業や重複機能に手を入れてコストを最適化する」 2月2日に開催されたZホールディングス(HD)の決算説明会上、坂上亮介専務執行役員最高財務責任者はそう説明した。 同日、ZHDは2023年度中にも傘下のLINE、ヤフーと合併する方針を発表していた。LINEがZHDと経営統合したのは2021年3月。ポータル機能の強化を目指すヤフーとは、もともと重複するサービス・機能が多かったが、組織体制上の問題などから事業再編は進んでこなかった。 目下ZHDでは、収益柱である広告事業が低迷している。合併により事業の整理・統合を加速させて、コスト削減や意思決定の迅速化を図る狙いだ。LINEバンクの開業中止と3社合併についてZHDは「直接の関係はない」とするものの、あるZHD社員は「統合に沿った動きとして、まったく違和感はない」と語る』、タイミングを逃した開発ほど気が抜けたものはない。
・『金融事業にさらなるメスか  これから本格化する事業整理において焦点となるのは、同じくLINEが展開する金融事業だ。不採算が続くうえ、グループ内に「PayPayブランド」の類似サービスが存在するためだ。あるZHD関係者も「グループ全体でPayPay経済圏を強化している中、その牽引役となる金融事業を軸に統廃合が進むのでは」とみる。 赤字額が最も大きいLINE証券は、株式投資の手軽さを訴求すべく1株単位の売買を可能にした結果、小口取引が中心となり、委託手数料が稼ぎにくい構図に陥った。一方のPayPay証券も黒字化には至っていないが、3月31日にはソフトバンク、みずほ証券の3社に対して100億円規模の第三者割当増資を行うなど、着々と事業拡大を進めている。 無担保ローンや信用スコアリングを展開するLINE Creditも、2018年5月の設立以来、純損失が膨張の一途をたどる。2022年12月には、同じく無担保ローンを提供していたみずほ銀行とソフトバンクの合弁会社「Jスコア」と事業統合を行うと発表したものの、抜本的な収益改善は見込みづらい。 LINEにとって金融事業はアキレス腱だ。2021年に「LINE家計簿」、2022年にテーマ型株式投資の「LINEスマート投資」から撤退した。2023年4月末には損害保険サービス「LINEほけん」が終了する一方、一部商品は「PayPayほけん」で引き続き販売される。メッセージアプリを通じた潤沢な顧客基盤を抱えていながら、金融事業では収益に結び付けられていない。 2月にZHDが公表した決算説明資料には、「今後、10程度のサービスクローズ・縮小を検討」と明記されている。LINEバンクの「次」が発表される日は、そう遠くないかもしれない』、「LINEにとって金融事業はアキレス腱だ」、「決算説明資料には、「今後、10程度のサービスクローズ・縮小を検討」と明記」、「LINEバンクの「次」が発表される日は、そう遠くないかもしれない」、その通りだろう。

次に、4月5日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「SVB、クレディと続いた金融不安が「ひと段落」とならない訳...日本はむしろこれから」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2023/04/post-229_1.php
・『<一連の問題は個別の要因で起こったものではあるが、背景には世界の金融システムに共通する「バブルのツケ」という深刻な事情が> 米シリコンバレー銀行の破綻やクレディ・スイスの経営不振など、金融システムに対する不安が広がっている。一連の問題は個別の要因で起こったものであり、金融システム全体に欠陥があるわけではない。 だが、同じタイミングで金融機関の経営問題が複数発生した背景には、アメリカの中央銀行に相当するFRB(連邦準備理事会)の急激な利上げがある。 FRBが急ピッチで利上げを行っているのは、これまで行ってきた大規模緩和策の弊害が大きくなってきたからであり、一連の金融不安は緩和策バブルのツケと考えてよいだろう。 FRBは2023年3月22日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)で0.25%の利上げを決めた。銀行の相次ぐ破綻を受けて、政策金利の引き上げを据え置くとの見方もあったが、FRBはインフレ抑制を最優先し、金利引き上げを継続した。 金利が上昇すると債券価格が下落するため、金融機関によっては損失が発生する可能性がある。金融機関の多くは調達金利と貸出金利の差額(利ざや)を収益源としているので、利上げは本来、追い風となる政策だが、金利上昇ペースが速すぎた場合、資産価格の変動で損失を被るケースが出てくる』、「一連の金融不安は緩和策バブルのツケと考えてよいだろう」、「利上げは本来、追い風となる政策だが、金利上昇ペースが速すぎた場合、資産価格の変動で損失を被るケースが出てくる」、その通りだ。
・『不安の払拭に必要な手が打てない  一連の経営不安を払拭するには、利上げを停止する、あるいは利下げに踏み切るといった措置が必要だが、今の中央銀行にはそれができない深刻な事情がある。過去10年にわたる大規模緩和策によって全世界に大量のマネーがばらまかれており、これを回収しなければ、インフレが手が付けられなくなるリスクを負っているからである。 リーマン・ショックをきっかけにアメリカをはじめとする各国の中央銀行は、市場に大量のマネーを供給する大規模緩和策の実施に踏み切った。07年の段階で1兆ドル以下であったFRBのベースマネー(中央銀行が直接、供給する貨幣の量)は、ピーク時には6兆ドルを超える水準まで膨らみ、実体経済の規模を大きく上回った。 経済成長を超えたマネーの供給は潜在的なインフレ要因であり、この状態を放置した場合、インフレが制御不能になるリスクを抱え込んでしまう。 FRBやECB(欧州中央銀行)は金利の引き上げなど、マネーの回収に乗り出しており、膨らみすぎた緩和策バブルの手仕舞いを開始している』、「経済成長を超えたマネーの供給は潜在的なインフレ要因であり、この状態を放置した場合、インフレが制御不能になるリスクを抱え込んでしまう。 FRBやECB(欧州中央銀行)は金利の引き上げなど、マネーの回収に乗り出しており、膨らみすぎた緩和策バブルの手仕舞いを開始している」、その通りだ。
・『利上げなら日本にも混乱が生じる可能性  しかしながら、ここまで肥大化したマネーを回収するのは容易ではなく、その過程においてはさまざまな混乱が発生する。今回の経営不安もまさにその1つであり、こうした問題は正常化が終了するまで続くことになるだろう。 不安の連鎖を恐れる市場からは利下げを求める声が上がっている。中央銀行がこの要求を受け入れた場合、インフレリスクが台頭する可能性があり、逆に利上げを継続した場合には、再び金融システム不安が起こる可能性がある。いずれにしても金融当局にとってはいばらの道にならざるを得ない。 主要国の中央銀行で日銀だけが唯一、大規模な緩和策を継続中でありマネーの大量供給が続く。日本経済は低金利にどっぷりとつかった状態にあり、日本でも本格的な利上げがスタートした場合、今回と同様の混乱が発生する可能性がある。日銀はいよいよ金融政策における正念場を迎えたと言ってよい』、「日本経済は低金利にどっぷりとつかった状態にあり、日本でも本格的な利上げがスタートした場合、今回と同様の混乱が発生する可能性がある。日銀はいよいよ金融政策における正念場を迎えたと言ってよい」、植田新総裁は、慎重に金融政策見直しに取り組むようだが、マーケットがしびれを切らす前に、果断な措置に踏み切れるか、大いに注目される。

第三に、4月7日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「これだけで済まない欧米金融不安「次の危機の芽」 不動産ファンドの資金流出が投げ売りを招く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/664761
・『アメリカのシリコンバレーバンク(SVB)破綻から1カ月が経過しようとしている。第2次リーマンショックをはやし立てるムードが強かった当初と比較すれば、金融市場は平静を取り戻しつつあるように見えるが、依然として「次の危機の芽はどこにあるのか」といった警戒心は漂っている。 この点、アメリカではオフィスやホテルなど商業用不動産(CRE:commercial real estate)に内包されたリスクは常々指摘されている。 特にCREへのローンを束ねて証券化した商品である商業用不動産担保証券(CMBS)の価格急落を指摘する向きは多く、これを抱える機関投資家の損失拡大から危機が伝播するのではないかとの懸念が根強い。 SVB破綻以降、アメリカの中堅・中小銀行の経営不安が高まっているが、商業用不動産の多くがこうした銀行群からの融資に依存しており、懸念は簡単に消えそうにない』、「特にCREへのローンを束ねて証券化した商品である商業用不動産担保証券(CMBS)の価格急落を指摘する向きは多く、これを抱える機関投資家の損失拡大から危機が伝播するのではないかとの懸念が根強い。 SVB破綻以降、アメリカの中堅・中小銀行の経営不安が高まっているが、商業用不動産の多くがこうした銀行群からの融資に依存しており、懸念は簡単に消えそうにない」、その通りだ。
・『欧州ではECBが異例の警鐘  実はこうした問題はアメリカだけではなく欧州も同様に抱えており、最近では中央銀行自らがその危うさに警鐘を鳴らしている。 ECB(欧州中央銀行)は4月3日、「ユーロ圏不動産市場における投資ファンドの強まる役割」と題し、過去10年で急拡大したファンドによる商業用不動産投資が金融安定のリスクになるとの論説を発表した。 現状、複数のユーロ加盟国で不動産投資ファンド(REIF:real estate investment funds)が強い影響力を有しており、当該国の不動産市況悪化に伴ってREIFも不安定化する展開が懸念される。 ECBは急成長したREIFが「流動性のミスマッチ(the liquidity mismatch)」に直面し、これが金融不安定の種になる可能性を指摘している。不動産ファンドの多くが投資家の払い戻し請求を認めるオープンエンド型ファンドとして資金調達しているため、不動産市況への懸念が高まれば、非常に早く・大きな規模の資金引き出しに直面することが懸念される。) バランスシートの観点から言えば、顧客からの預り金である負債の流動性は非常に高い。 同時に、不動産ファンドは大量の解約に応じるため保有資産の売却に踏み切る必要があるが、資産の性質上、商業用不動産は容易に売却できない。つまり、バランスシートにおける資産の流動性は低い。 流動性が低い資産を急いで売ろうとすれば当然、投げ売り(fire sales)となり損失は広がりやすくなる。しかし、流動性の途絶はファンドとしての「死」を意味する。これを回避するために損失を被っても売りをやめるわけにはいかない。 こうして流動性のミスマッチがファンドの経営難や破綻を引き起こし、金融安定に影響が及ぶというのが目下、ECBの懸念する展開である。SVB破綻以降、「次の危機の芽」として商業不動産を指す論調は増えていたが、中銀自ら明確に指摘するのは珍しい』、「不動産ファンドは・・・バランスシートにおける資産の流動性は低い。 流動性が低い資産を急いで売ろうとすれば当然、投げ売り(fire sales)となり損失は広がりやすくなる。しかし、流動性の途絶はファンドとしての「死」を意味する。これを回避するために損失を被っても売りをやめるわけにはいかない。 こうして流動性のミスマッチがファンドの経営難や破綻を引き起こし、金融安定に影響が及ぶというのが目下、ECBの懸念する展開である。SVB破綻以降、「次の危機の芽」として商業不動産を指す論調は増えていたが、中銀自ら明確に指摘するのは珍しい」、「流動性のミスマッチがファンドの経営難や破綻を引き起こし、金融安定に影響が及ぶというのが目下、ECBの懸念する展開」、その通りだ。
・『不安定化の相互作用でシステミックリスクに  ECBによれば、ユーロ圏の商業用不動産市場に占める不動産ファンドの割合は2012年の20%から2022年には40%にまで倍増し、無視できない存在感を放つようになっている。 (ユーロ圏の商業用不動産市場におけるファンド保有の不動産価値のシェア(%)のグラフはリンク先参照) こうした不動産ファンドの存在感を踏まえれば、商業用不動産(CRE)市場の不安定は不動産ファンドの不安定化に直結し、不動産ファンドの不安定化もまた、CRE市場の不安定化に直結するという相互依存の関係が見出せる。当然、CRE市場にエクスポージャーを持つ銀行や証券などの金融機関も存在し、それらの経営不安にもつながってくるだろう。 こうしてCRE危機がシステミックリスクをもたらす「次の危機の芽」という理解になる。 金融機関経営の不安定化は、貸出厳格化などの信用収縮を通じて実体経済を下押しするため、始点と終点を見れば「商業用不動産市場の崩壊→ユーロ圏景気の減速」といった展開を懸念するに至る。ECBはSVB破綻やクレディ・スイス再編などの域外イベントを背景に、こうした展開が現実化する可能性を見据え始めているようだ。) ちなみに、ECBはアメリカの大手資産運用会社ブラックストーンの不動産投資信託(REIT)である「ブラックストーン・リアル・エステート・インカム・トラスト(BREIT)」が最近、急増する解約請求を制限しなければならなかった例を挙げ、類似の事案が今後も増えてくる可能性を指摘している(英国でもそのような光景が出始めていることを指摘している)。 当然、こうして窮地に陥ったファンドは流動性確保のため保有不動産の売却はもちろん、資金調達にも勤しむため、市場全体の資金調達コストは押し上げられる。後述するように、それは将来的な利下げ可能性を高める話になる』、「商業用不動産(CRE)市場の不安定は不動産ファンドの不安定化に直結し、不動産ファンドの不安定化もまた、CRE市場の不安定化に直結するという相互依存の関係が見出せる。当然、CRE市場にエクスポージャーを持つ銀行や証券などの金融機関も存在し、それらの経営不安にもつながってくるだろう。 こうしてCRE危機がシステミックリスクをもたらす「次の危機の芽」という理解になる。 金融機関経営の不安定化は、貸出厳格化などの信用収縮を通じて実体経済を下押しするため、始点と終点を見れば「商業用不動産市場の崩壊→ユーロ圏景気の減速」といった展開を懸念するに至る」、「CRE危機がシステミックリスクをもたらす「次の危機の芽」」というのは確かだ。
・『部分的に現実化しつつある危機  ユーロ圏において商業用不動産(CRE)と不動産ファンドは過去10年で猛烈な伸びを示してきた。すでにCRE市場のシェアが10年で倍増したことは言及したが、絶対額で見た場合、不動産ファンドの純資産総額は2012年から2022年の10年間で、3230億ユーロから1兆40億ユーロへ3倍以上に膨らみ、うち80%がオープンエンド型(つまり常時解約可能)という。 この所在地を国別に見た場合、不動産ファンドは5つの加盟国(ドイツ、ルクセンブルク、フランス、オランダ、イタリア)に集中している模様だが、直接的に不動産投資をする形態以外に債券など金融商品の形態で保有している場合もあるため(ECBによれば30%程度)、商業用不動産や不動産ファンドの不安定化がこれらの国々だけで限定されるとは限らない。 商業用不動産市場の不調はパンデミックによるリモートワークやeコマースの隆盛、その他行動様式の変化が真っ先に指摘されるものの、その終息と入れ替わるように主要国で利上げが行われ、資金調達コストが上昇し始めたことも無視できない。) 上述したように、パンデミックに至る直前までは極めて速いペースで価格が上がっていたこともあり、「調整余地も大きい」と捉える雰囲気は強い。 過去1年で投資家における高値警戒感は一方的に強まっており、資金調達環境のタイト化もかなり進んでいる。市況の悪化を感じ取る投資家が多数となる中、直近では域外での金融不安も重なり、商業用不動産(CRE)を取り巻く環境はかなり悪化している。 2022年10~12月期、商業用不動産にまつわる取引がにわかに細っているというデータもあり、これに伴って価格も下がっている事実をECBは指摘する。 ここまで考えるとCRE危機は深刻化の余地をはらみながら、部分的にはすでに現実化しているとも言える』、「CRE危機は深刻化の余地をはらみながら、部分的にはすでに現実化しているとも言える」、恐ろしいことだ。
・『カギはやはり「流動性のミスマッチ」  冒頭に述べた通り、危機が起きると想定した場合、やはり「カギとなる脆弱性(A key vulnerability)」は不動産ファンドに対する解約請求が押し寄せた際に直面する「流動性のミスマッチ」問題である。 「解約請求に対応するまでの期間」と「保有資産を現金化するまでの期間」を比較し、前者が後者より顕著に短い場合、ファンドは資金繰りに行き詰まる(流動性のミスマッチに直面する)ことになる。 現状、その危機にさらされやすい加盟国を特定するのは難しいものの、域内の金融安定を監視する欧州システミックリスク理事会(ESRB)の調査によれば、2021年7~9月期時点、オープンエンド型不動産ファンドの31%が流動性のミスマッチを抱えている。) 特に、商業用不動産市場における不動産ファンドの存在感が大きいフランス、オランダ、アイルランドでは「オープンエンド型投信を抱えつつ現金バッファが小さい国」であるとしてその脆弱性が指摘されている(反対にイタリアやポルトガルが現金バッファの大きい国として紹介されている)。 実際、商業用不動産市場の雰囲気が悪くなるのに従って不動産ファンドへの資金流入は細っており、すでにオランダなど一部の国では大幅な純流出に直面している。不動産ファンドを取り巻く環境が一変しているのは間違いなく、ショックに対して脆弱性が増している状況が読み取れる。 一連の金融引き締めや3月以降続いている国際金融不安は、商業用不動産市場やそれを主戦場とする不動産ファンドにとって「泣きっ面に蜂」ともいえる動きであり、依然として利上げや量的引き締めを政策オプションから外せないECBは大きな葛藤を覚えていることだろう』、「オープンエンド型不動産ファンドの31%が流動性のミスマッチを抱えている。) 特に、商業用不動産市場における不動産ファンドの存在感が大きいフランス、オランダ、アイルランドでは「オープンエンド型投信を抱えつつ現金バッファが小さい国」であるとしてその脆弱性が指摘されている・・・実際、商業用不動産市場の雰囲気が悪くなるのに従って不動産ファンドへの資金流入は細っており、すでにオランダなど一部の国では大幅な純流出に直面している。不動産ファンドを取り巻く環境が一変しているのは間違いなく、ショックに対して脆弱性が増している状況が読み取れる」、なるほど。
・『解約ストップは逆効果  多くの不動産ファンドが流動性のミスマッチに備え始めれば、資産売却と資金調達が盛り上がることになる。それは資産価格の下落と資金調達コストの上昇につながる。 ECBは今回の論説の結びとして考えられる政策対応を示している。現状、オープンエンド型ファンドには解約請求の停止という手段が与えられているものの、これはファンド経営の不安定化を宣言するようなものであり、いわゆるスティグマ(汚名)リスクを伴う。 よって、ファンド出資者に対しては解約コストや最低保有期間の導入、解約通知期間の長期化など、多様な流動性管理手段(LMT:Liquidity Management Tool)の導入をECBは提唱している。また、不動産ファンドに関してはそもそも解約が容易なオープンエンド型ではなくクローズド型しか認めないといった規制面からのアプローチもECBは言及している。) 実際、構造的に流動性の低い資産(不動産)を抱える不動産ファンドの性質を踏まえれば、「解約のハードルを上げる」というのは本質的な一手ではあり、すでにいくつかの国では導入されているという。こうした規制傾向は今後、強まるものだろう。 しかし、目下、金融市場が注目するのは、”商業用不動産(CRE)危機”が注目される中、政策金利がどのような影響を被るのかだ。流動性危機におびえるファンドの挙動によって資金調達コストが押し上げられ、それがシステミックリスクに直結する可能性が見えている以上、中央銀行が何もしないことは考えにくい。 上述したような不動産ファンドの運営にまつわる制度的な修正は中長期的に進めていくのだろうが、それと同時に短期的には無リスク金利である政策金利を下げることも催促されやすくなっていくのではないか』、「”商業用不動産(CRE)危機”が注目される中、政策金利がどのような影響を被るのかだ。流動性危機におびえるファンドの挙動によって資金調達コストが押し上げられ、それがシステミックリスクに直結する可能性が見えている以上、中央銀行が何もしないことは考えにくい。 上述したような不動産ファンドの運営にまつわる制度的な修正は中長期的に進めていくのだろうが、それと同時に短期的には無リスク金利である政策金利を下げることも催促されやすくなっていくのではないか」、「短期的には無リスク金利である政策金利を下げることも催促されやすくなっていくのではないか」というのは不動産業界の希望的観測の影響を強く受け過ぎたのではあるまいか。
・『問題提起は利上げ幅縮小の布石?  現状ではCRE危機というフレーズが市民権を得るほどの事態にはなっていない。しかし、仮にそうなってしまえば、眼前のインフレを犠牲にしてでも利上げ路線の急旋回(例えば0.5%利上げから0.25%の利下げへ、など)を強いられるリスクはある。政策金利の急変動は市場にボラティリティをもたらし、要らぬ混乱を招く。 ECBが今回、このタイミングでCRE危機にまつわる問題提起を行ったということは、極めてわずかではあるが、引き締め路線のブレーキを踏む意図を持ちつつあるということなのかもしれない。 5月4日の政策理事会では0.5%から0.25%への利上げ幅縮小に注目したいところである』、「ECBが今回、このタイミングでCRE危機にまつわる問題提起を行ったということは、極めてわずかではあるが、引き締め路線のブレーキを踏む意図を持ちつつあるということなのかもしれない」、これも希望的観測に近いのではあるまいか。
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