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資本市場(その10)(東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別、悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠、仕組債問題で批判殺到…金融庁監督局・伊藤豊局長に浮上した「別のスキャンダル」、業績不振・不正で「基準不適合」入りの68社リスト 東証スタンダード・グロース市場の基準に抵触、米国債「格下げ」は想定内でも 警戒すべき投資家の“世界的な思考変化”とは?) [金融]

資本市場については、本年2月6日に取上げた。今日は、(その10)(東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別、悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠、仕組債問題で批判殺到…金融庁監督局・伊藤豊局長に浮上した「別のスキャンダル」、業績不振・不正で「基準不適合」入りの68社リスト 東証スタンダード・グロース市場の基準に抵触、米国債「格下げ」は想定内でも 警戒すべき投資家の“世界的な思考変化”とは?)である。

先ずは、本年5月8日付け東洋経済オンライン「東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/670115
・『「スタンダード市場上場の選択申請の決定に関するお知らせ」。2023年3月、スマホゲーム開発企業のマイネットがリリースを公表した。同社は東証プライム市場に上場しているが、近くスタンダード市場に移行すると表明したのだ。 プライム市場を捨て、自らスタンダード市場に「降格」する――。マイネットを皮切りに、こうした宣言をする企業が相次いでいる。4月末時点で、スタンダードへの移行を宣言したプライム上場企業は9社にのぼる。突如訪れた「降格ラッシュ」の背景に何があるのか』、興味深そうだ。
・『プライム市場「背伸び組」  発端は、2022年4月の市場区分見直しにさかのぼる。プライム市場は3つの区分のうち最も上場基準が厳しく、高い流動性やガバナンスが求められる市場として発足した。 ところが、旧東証1部から横滑りでプライム市場入りした企業のうち、296社は時価総額や流動性などの上場維持基準を下回っていた。東京証券取引所は経過措置を設け、改善計画の策定を条件にプライム市場への移行を許可した。 「背伸び」をしてプライム市場に移った企業群の位置づけは曖昧だった。経過措置の期間は「当分の間」とされており、いつまでプライム市場に残れるのかはわからなかった。改善計画を達成できなかった場合にスタンダード市場へ自動的に移れるのか、改めてスタンダード市場の上場審査が必要なのかも不明確だった。「後者の場合、一斉に移行されると審査の人手が足りなくなる」。証券業界からはこんな悲鳴も上がった。 そこで東証は2023年1月の上場規則改正時、背伸び組に「2択」を迫った。3月期決算企業の場合、2026年3月末時点で上場維持基準に適合しなければ、上場廃止予備軍である「監理銘柄」に指定され、最短で同年9月にも上場廃止となる。スタンダード市場に移る場合には、一度上場廃止してから再度審査を受ける必要がある。 その代わりの選択肢として、早々にプライム市場の上場維持を断念した企業には「特例」を設けた。2023年4月から9月末の間であれば、申請書の提出だけでスタンダード市場に移れるのだ。「上場廃止にならないための、いわば『温情』だ」。東証関係者はこう話す。) 冒頭のマイネットをはじめ、スタンダードへの移行を発表した企業はこの「特例」を選んだ企業たちだ。では、どんな企業が特例を利用したのか。以下は、4月末時点でスタンダード市場への移行を表明した企業の一覧だ。いずれの企業もプライム市場の要件である「流通株式時価総額100億円」を満たしていない。 各社は旧東証1部からプライム市場に移行するにあたり、東証の指示によって流通株式時価総額を引き上げる計画を策定していた。ところが、業績や株価の低迷によって達成の見込みが立たず、およそ1年で撤回したことになる。 土壌汚染調査や産業廃棄物処理を手がけるダイセキ環境ソリューションは2021年末、3年間で純利益を3倍にする中期経営計画を策定した。ところが、首都圏での大型案件受注が想定を下回り、翌2022年に業績予想を2度下方修正。このまま流通株式時価総額が伸び悩めば上場廃止となるリスクを考慮し、スタンダード市場への移行を決めたという。 東洋経済が試算したところ、プライム市場上場企業の中で流通株式時価総額が100億円を下回る企業は203社存在する(ランキングはこちら)。背伸び組のほか、プライム市場への移行当初は基準を満たしていたが、その後株価が下落し100億円を割ってしまった企業も少なくない』、「東洋経済が試算したところ、プライム市場上場企業の中で流通株式時価総額が100億円を下回る企業は203社存在する・・・背伸び組のほか、プライム市場への移行当初は基準を満たしていたが、その後株価が下落し100億円を割ってしまった企業も少なくない」、203社とはかなり多い。
・『「6月」が分水嶺?  降格ラッシュは今後も続くのか。みずほ信託銀行の八木啓至・企業戦略開発部次長は、「6月までにスタンダード市場への移行表明が増えるのではないか」と推測する。 スタンダード市場に無条件で移行できるのは、前述のとおり2023年9月末が期限だ。一方、3月期決算企業の場合、流通株式時価総額などの上場維持基準は3月末時点の数値を基に審査され、未達の場合は6月末までに改善計画を提出ないし更新する必要がある。 スタンダード市場への移行表明が7月以降にずれこむと、それまでにプライム市場への上場を維持するための計画を公表する必要があり、矛盾が生じる。そのため、スタンダード市場を選ぶ企業は改善計画の期限までに移行方針を発表し、定時株主総会で株主に説明するという見立てだ。 ほとんどの企業が旧東証1部から横滑りしたことから「骨抜きの改革」とやゆされたプライム市場。2022年4月の発足から1年を経て、ようやくプライムの名にふさわしい企業の選別が始まろうとしている』、「2022年4月の発足から1年を経て、ようやくプライムの名にふさわしい企業の選別が始まろうとしている」、踏みとどまれる企業はどの程度あるのだろうか。

次に、6月19日付け東洋経済オンライン「悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/679779
・『優雅に達観した生活を送っているように見える富裕層。ただ陰では投資や税金対策に頭を抱え、時にもがき苦しむ様子が垣間見える。6月19日発売『週刊東洋経済』の特集「富裕層のリアル国内150万世帯、受難の時代」では、富裕層の偽らざる実像に迫った。 「こちらがドル建て債券に関する資料です。足元で金利が軒並み上昇している状況なので、円債に比べて高い利回りを確保できます」 今年初め、ある国内証券会社の営業マンは富裕層の顧客にそう言って1枚のリストを見せていた。提示したリストに載っているのは、海外の銀行などが発行するドル建ての「永久劣後債」だ。 劣後債は発行した企業などが倒産した場合に、弁済する優先順位が普通社債などに比べて後回しになる(劣後する)債券のことだ。 中でも永久劣後債は、5年後や10年後といった満期の定めがない。そのため、投資家にとってはかなりリスクが高く、その分利回りも相対的に大きいハイリスク・ハイリターンの商品だ』、発行体は「クレディ・スイス」と信用力はあっても、「劣後」条件に応じて「高」「利回り」という「ハイリターン」になる。
・『投資リスクが高いAT1債  先ほどのリストには6?7%台の商品がずらりと並んでいるが、その中で10%超というひときわ高い利回りを示していた債券がある。スイス金融大手クレディ・スイス・グループの永久劣後債だ。別名「AT1(その他ティアワン)債」とも呼ばれる。 クレディ・スイスといえば、富裕層でなくとも投資家であれば誰でも耳にしたことがある、世界的な金融グループだ。その債券で10%もの利回りを得られるとあって、多くの富裕層が飛びつくようにして購入していった。 それが一転して、紙くずになってしまったのは今年3月のこと。クレディ・スイスは経営不安が一気に高まり、同国金融最大手のUBSグループと株式交換による救済的な買収で合意。さらに、中央銀行のスイス国立銀行から流動性支援(臨時の資金供給)を受けた。 スイス連邦金融市場監督機構はそうした支援策が、クレディ・スイスのAT1債が規定する「元本削減条項」に抵触するとして、無価値化すると判断したわけだ。 紙くずになったAT1債の総額は約160億スイスフラン。日本円に換算すると約2.4兆円にも上る。金融庁の調べでは、日本では富裕層を中心に約1400億円分が販売されていた。そのうち約950億円分を販売していた、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対しては、金融庁が顧客対応などについて報告するよう命令を出すなど、騒動は広がるばかりだ』、「約950億円分を販売していた、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対しては、金融庁が顧客対応などについて報告するよう命令」、リスクをきちんと説明した上で販売していたことを祈りたい。
・『仕組み債でも損失の悲劇  急転直下の事態を受け、4月に入ると日本でも企業や富裕層から悲鳴が次々と上がった。 ゲームソフトなどの開発を手がけるコーエーテクモホールディングスは、AT1債への投資によって41億円の損失を計上。「箱根駅伝」で名をはせた青山学院大学陸上競技部の原晋監督は、「平均年収のウン倍」を失ったとインターネット番組で嘆き、大きな話題になった。 足元では金融分野に強い弁護士事務所の間で、被害を受けた富裕層に広く声をかけて集団訴訟に持ち込もうとする動きが広がり始めている。 訴訟に向けて弁護士らが着目しているのが、販売していた証券会社が元本削減条項などのリスクについて、どれだけ説明責任を果たしていたかという点だ。 実際のところはどうなのか。ある証券会社が作成した契約締結前交付書面を見てみよう。 同書面を見ると、元本削減条項という欄に「CET1(普通株等ティアワン)比率が7%を下回ったとき」「公的機関による支援を受け入れたとき」という2つの条件が書いてある。今回はこのうちの後者(支援の受け入れ)がトリガーを引いたことになり、書面上は問題がないように見える。 一方で、大手証券会社の幹部は「販売している側は、CET1比率の部分しか気に掛けていなかったというのが実態だろう。公的機関の支援うんぬんの部分まで、きっちり説明した営業マンは少ないのではないか」と声を潜める。 つまり、販売する側すら目を向けていなかった条項を、顧客にしっかりと説明し理解させていたかと問われると、苦しい立場に置かれるということだ』、「販売する側すら目を向けていなかった条項を、顧客にしっかりと説明し理解させていたかと問われると、苦しい立場に置かれる」、苦しいところだ。
・『仕組み債でも大きな損失  金融庁の幹部は、AT1債で被害を受けた顧客の中には「仕組み債においても、大きな損失を被った人が一定数いる」と明かす。 仕組み債とは、債券と金融派生商品(デリバティブ)取引を組み合わせた金融商品のこと。デリバティブ取引は個別株価や株価指数、為替相場などに連動しており価格変動が大きいことから、債券ではあるもののかなりハイリスクな商品だ。商品設計が複雑なため、投資初心者はリスクの認識が難しい。 それを地方銀行などが「高利回り商品」などとして販売。富裕層や高齢者に過剰なリスクを取らせていたことが問題となり、規制が強化されてきた経緯がある。 その規制の抜け穴として、証券業界で脚光を浴びたのが、まさにAT1債だった。そこで大きな悲劇が発生するのは、もはや時間の問題だったのかもしれない』、「規制の抜け穴」までなくなってしまった。今後はリスクを粛々と説明して販売していかざるを得ないだろう。

第三に、6月19日付け現代ビジネス「仕組債問題で批判殺到…金融庁監督局・伊藤豊局長に浮上した「別のスキャンダル」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111927
・『証券取引等監視委員会が、リスクの高いデリバティブ(金融派生商品)を使った複雑な仕組債を "素人” に売りつけたとして、千葉銀行と傘下のちばぎん証券などを行政処分するよう金融庁に勧告した』、興味深そうだ。
・『金融機関になめられている金融庁監督局  仕組債の危険性はかねて指摘されており、対応が不十分だったとして金融庁監督局の伊藤豊局長への批判も高まっている。金融庁の締めつけで販売自粛する金融機関がある一方、無視して継続するメガバンク系証券もあり「局長はなめられている」(金融庁関係者)という声も上がる。 伊藤氏は出世コースの財務省大臣官房秘書課長を経たエリートで、自他共に認める金融庁長官候補となった。 仕組債問題は汚点だが、伊藤氏には別のスキャンダルもある。 医療ベンチャー「テラ」を巡る金融商品取引法違反事件の法廷で、竹森郁被告が「高額接待をしたうえ1本5万円の高級ワインを贈った」と爆弾発言したのだ。竹森被告は有罪判決を受けたが、当時、「永田町のフィクサー」として知られる矢島義也氏の側近として政官要人の接待係を務め、資金も負担していた。 それだけに証言には真実味がある。加えて「国家公務員倫理規程違反の告発も考えています」(竹森被告)と、まだ終わった話ではない。仕組債問題と接待疑惑―。金融庁のエリート官僚に荒波が押し寄せている』、「金融庁長官候補」に2つも問題が出てきたとは大変だ。

第四に、7月18日付け東洋経済オンライン「業績不振・不正で「基準不適合」入りの68社リスト 東証スタンダード・グロース市場の基準に抵触」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/686508
・『東京証券取引所のスタンダード・グロース市場に上場する企業のうち少なくとも68社が今年1月から6月末までに新たに上場維持基準に抵触し、計画書を提出したことが東洋経済の集計でわかった。 2022年4月に新市場区分に移行して約1年が経過。移行当初は基準を満たせたものの、業績悪化や不正会計の発覚などで株価が下落し基準を満たせなくなる例が続出している。プライム市場では57社が基準未達になった(東証プライムから新規50社超の「脱落危機」リスト)。 スタンダード市場への移行、という救済措置が用意されているプライム市場とは異なり、スタンダードやグロース市場の上場企業には、逃げ道がない。 例えば3月末決算企業の場合、2026年3月までに基準を満たせない場合は上場廃止基準に該当する可能性があるとして監理銘柄に指定される。その後も基準を満たせない場合は最終的に上場廃止となる。 そもそも、スタンダード市場の上場維持基準は流通株式時価総額が10億円とプライム市場が要求する100億円より格段に低い。流通株式比率も同様で、プライム市場が35%以上を求めるのに対し、スタンダードでは25%以上でいい。グロース市場の基準はさらに低く、流通株式時価総額は5億円以上を求めている』、「スタンダード市場への移行、という救済措置が用意されているプライム市場とは異なり、スタンダードやグロース市場の上場企業には、逃げ道がない」、もともとは「逃げ道がない」のが普通だ。真剣勝負で臨んでもらいたいものだ。
・『安定株主への対応に苦慮  各社が開示した計画書には、担当者の苦悩が滲む。 「安定株主の皆様に対し、これまでの保有に感謝申し上げるとともに、今後、当社株式の市場への放出にご協力いただけるよう要請してまいります」 消防・防災関連など各種ゴム製品の専業メーカー、櫻護謨は6月29日に東京証券取引所スタンダード市場の基準に適合していないことを適時開示した。流通株式時価総額と流通株式比率の2つで基準未達となった。大株主に売却を依頼する企業は多いが、感謝のコメントを添えた開示はめずらしい。) 「役員及び役員の2親等以内の親族」に対して保有株の売却を促すとしたのはヒューマンホールディングス(スタンダード市場上場)だ。開示によれば流通株式比率が20.85%となり、新たに基準に抵触した。 同社の大株主欄には佐藤耕一会長をはじめ、社長の佐藤朋也氏など佐藤姓の株主が並ぶ。3月には新たに佐藤姓の個人が「安定株主として保有」目的で9.1%の大量保有を報告している。はたして2025年3月末までに売却は進むのだろうか。 ほかにも「特定の元従業員の不正行為」に言及し「かかる事案の及ぼす影響も考慮すべきである」とした会社や、「普通銀行に売却を打診」すると記載した企業など、各社各様の工夫で上場維持基準の適合に向けた計画を公表している』、「普通銀行に売却を打診」がどのように「上場維持基準の適合に向けた計画」に相当するのかは不明だが、各社とも知恵を絞っているようだ。
・『基準未達企業がすがる意外な逃げ道  こうした基準未達企業は今後も増え続ける可能性がある。ただ、東証が市場区分の移行に際して用意した経過措置の適用を受けられるのは2025年2月まで。それ以降は上場維持基準に抵触した場合、監理銘柄となり、それでも基準を満たせない場合は上場廃止となる。 プライム市場の上場企業であれば、経過措置終了後も再度上場審査を受けることで、スタンダード市場へ鞍替えすることができる。ではスタンダードやグロースの上場企業は座して上場廃止を待つほかないのか。 市場関係者の間で上場廃止を回避する秘策として噂されているのが、地方市場への上場だ。札幌、名古屋、福岡などの証券取引所が想定されている。 上記の3市場では、東証などほかの証券取引所で上場している企業が新規に上場する場合、証券会社による上場審査を実質的に免除する仕組みがある。元々は東証や旧大阪証券取引所などとの重複上場を促すための制度だが、上場維持基準もスタンダードやグロースよりさらに低く、東証からの移行がしやすくなっている。 ある地方市場関係者は「東証がダメならうちで、という営業はしていないが、市場なので品物は多いほうがいい。上場してくれる企業が増えること自体は歓迎」と話す。 ただ、現時点で東証の市場再編を理由に地方市場に上場した企業はまだない。逃げ道を確保するよりもまずは業績の改善や流通株式比率の向上など、目の前の課題解決を図るほうが先決だ。(▽基準未達なら「上場廃止」の可能性もー新たに上場維持基準不適合となった東証スタンダード・グロース市場上場企業ーの表はリンク先参照)』、「現時点で東証の市場再編を理由に地方市場に上場した企業はまだない。逃げ道を確保するよりもまずは業績の改善や流通株式比率の向上など、目の前の課題解決を図るほうが先決だ」、その通りだ。

第五に、8月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「米国債「格下げ」は想定内でも、警戒すべき投資家の“世界的な思考変化”とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/327512
・『信用格付けサービス3位のフィッチによる米国債格下げは、想定の範囲だった。今回の格下げは、短期的にみると、日本株が下落するきっかけになったことは否めない。ただ、中長期的にみると、米国債の格下げが日本株の下落につながるかは不透明だ。むしろ、フィッチの判断は、投資家が主要国の物価や財政問題などを背景とする金利上昇のリスクを再確認・再評価するきっかけになった』、興味深そうだ。
・『「米国債格下げ」のタイミングで長期金利が上昇の波紋  8月1日、大手信用格付け会社のフィッチ・レーティングスは、米国債の格付けを最上位のAAA(トリプルエー)からAA+(ダブルエープラス)に引き下げた。見通しは「安定的」だ。 既に、同じく有力格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、2011年に米国債をAA+に格下げしている。大手格付け会社のうち、AAA(Aaa)格はMoody’s(ムーディーズ)を残すのみだ。 フィッチは格下げ要因として、主に三つを指摘した。(1)今後3年間での米財政の悪化懸念、(2)高水準かつ増加する公的債務、(3)債務上限を巡る政治対立の激化など債務管理体制の不安――だ。コロナ禍をきっかけに米国で財政支出圧力は強まった。フィッチの指摘は周知の事実ではある。 注目すべきは、格下げとほぼ同じタイミングで、金利とリスク資産の関係に変化の兆しが表れたことだ。米国をはじめ各国で長期金利は上昇し、世界的に株価は下落した。その勢いが強まれば、世界経済は減速に向かうだろう。となると、新興国から資金を引き揚げる投資家も増えるはずだ。フィッチによる米国債の格下げは、予想外の形で世界経済の不安定さを増すことになるかもしれない』、「米国をはじめ各国で長期金利は上昇し、世界的に株価は下落した。その勢いが強まれば、世界経済は減速に向かうだろう。となると、新興国から資金を引き揚げる投資家も増えるはずだ。フィッチによる米国債の格下げは、予想外の形で世界経済の不安定さを増すことになるかもしれない」、既に「S&P」が「格下げ」をしているとはいえ、かつて最上格の「米国債」の「格下げ」はやはり影響が大きい。
・『フィッチが格下げに踏み切った経緯と背景  振り返れば5月、フィッチは米国の信用格付けの見通しを「ネガティブ」(信用力は下向き)に修正していた。背景として、政府債務上限を巡る民主党と共和党の対立激化は大きかった。長期的な財政運営の不透明感は増し、米財務省は一部の公的年金基金の新規の投資をストップするなど臨時措置を取ったが、それは長く続けられる措置ではない。 期日までに、与野党が債務上限の引き上げなどに合意できないリスクもあった。長期的な財政運営の安定性、予見性、財政再建に向けた政治的リーダーシップへの不安などを背景に、フィッチは米国債の信用格付けを最上位のAAAから引き下げる可能性を示唆していた。 6月初旬、米上院は債務上限の効力を2025年1月まで停止する法案を可決した。前回のピンチ(11年)に比べれば幾分か時間はあったが、今回も米連邦政府は資金の枯渇を土壇場で回避した。 こうした背景もあり、フィッチが米国債の格付けを引き下げたことは、5月の見通し修正に沿ったものだった。大手の信用格付け業者が米国債を格下げするのは、今回が初めてではない。11年の債務上限問題では与野党が合意した後に、S&Pが米国の格付けをAA+へ1段階引き下げた。 S&Pは世界の信用格付けサービスの最大手である。米証券取引委員会(SEC)によると21年、世界全体の信用格付け(国債、非国債、証券化商品などが対象)のうちS&Pの割合が50.4%、ムーディーズが31.6%、フィッチが12.4%だった。3社の中でフィッチの規模は小さく、格下げのインパクトも限られる。残るは、ムーディーズが米国の格付けをどうするかだ。8月10日時点で、ムーディーズは米国債をAaa格(S&PなどのAAAと同じ)で維持している。 5月の見通し修正、その後の米債務上限問題の推移を踏まえると、フィッチによる格下げは想定の範囲だった。今回の格下げは、短期的にみると、日本株が下落するきっかけになったことは否めない。ただ、中長期的にみると、米国債の格下げが日本株の下落につながるかは不透明だ』、「米証券取引委員会(SEC)によると21年、世界全体の信用格付け(国債、非国債、証券化商品などが対象)のうちS&Pの割合が50.4%、ムーディーズが31.6%、フィッチが12.4%だった」、S&Pのシェアが想像以上に大きいことに驚かされた。
・『徐々に進む金利上昇リスクの再確認  むしろ、フィッチが米国債の格下げを発表したことは、投資家が主要国の物価や財政問題などを背景とする金利上昇のリスクを再確認・再評価するきっかけになった。その点を冷静に考えることが重要だ。 11年にS&Pが米国債を格下げした時と今回を比べると、世界経済の環境は異なる。リーマン・ショック後、日米欧の中央銀行は金融緩和を強化した。世界経済の回復ペースは緩慢であり、物価も上昇しづらかった。「中央銀行が景気減速に配慮して金融緩和を強化する」と予想する投資家は増えた。こうした認識が、世界中の投資家の記憶に強く刷り込まれた。 ユーロ圏やわが国ではマイナス金利政策も実施され、金融緩和は強化された。「低金利環境は続くはず」といった主要投資家の思い込みは強まった。主要国の財政悪化に対する投資家の警戒感、関心は薄れた。 しかし、20年以降の世界はコロナ禍をきっかけに一変した。各国で財政支出は増大し、物価は上昇。短中期を中心に金利も上昇した。 世界的に現金の給付や、失業保険の特例措置が実施された。現在、米国では家計が過剰な貯蓄を抱え消費は減少していない。旺盛な需要を背景に、インフレ率は2%を上回っている。22年3月以降は急速に利上げが進み、短中期を中心に金利は上昇した。それでも株価は高い。大規模な財政支出により、経済はゆがんだ。 ウクライナ紛争も、財政支出圧力を高めた。1970年代半ばにベトナム戦争が終結して以来、約50年ぶりに、かつての東西陣営を巻き込んだ戦争が長期化している。 ウクライナ紛争が起きて以降、各国で国防関連の支出は増えた。ドイツは国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上に引き上げた。台湾を取り巻く危機意識に対応するために、日米欧の政府は産業政策の方針も転換した。戦略物資として重要性が高まる半導体の自国内生産を増やすために、補助金を積み増す動きが顕著になっている』、「ウクライナ紛争が起きて以降、各国で国防関連の支出は増えた。ドイツは国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上に引き上げた。台湾を取り巻く危機意識に対応するために、日米欧の政府は産業政策の方針も転換した。戦略物資として重要性が高まる半導体の自国内生産を増やすために、補助金を積み増す動きが顕著になっている」、なるほど。
・『金利と株式などリスク資産の関係に変化の兆し  理屈で考えると、財政支出の増加によって、長期、超長期の金利は上昇する。今回の格下げは、主要投資家がそうしたリスクを冷静に考える機会になった。 格下げとほぼ同じタイミングで、世界的に金利と株価の関係は徐々に変化し始めている。7月26日まで、ニューヨークダウ工業株30種平均株価は13連騰を記録していた。生成AIの登場が大きなインパクトとなり、IT産業への成長への期待が膨らんでいる。米連邦準備制度理事会(FRB)が、景気の減速に配慮して秋口にも利下げに転じるとの見方も高まった。米国の2年金利は低下し、株価上昇は勢いづいた。 他方、7月28日、日本銀行はイールドカーブ・コントロール(YCC)政策を修正し、10年金利の上限を1.0%に引き上げた。「米財務省が国債の発行を増やす」との見方も増えた。フィッチの米国債格付け判断を、見極めようとする警戒感も高まっただろう。一般的に信用格付け業者は見通しを修正した後、2カ月程度で新たな格付けを付与することが多い。 米国経済が過熱気味であることも、金利上昇の警戒感を高める要因になった。4~6月期、実質GDPの成長率は予想を上回った。物価安定のためにもFRBは金融引き締めを続けなければならない。8月に入ってからの世界的な株価下落は、金利上昇リスクに身構える投資家の増加に影響された部分が大きい。 8月10日時点で、ムーディーズは米国の信用格付け見通しを修正していない。ごく短期間で米国が最高位の格付けを失うことは考えづらい。また、世界の金融環境は緩和的な部分を残している。短期的には、世界の株価は相応の値動きを伴いつつ、高値圏を維持する可能性はある。 しかしその後、金融市場の不安定感は増すだろう。中期的には、米国の長期金利は上昇し、株や商業用不動産などの価格が下落する恐れがある。それが現実となれば、世界的にリスクを削減する投資家が増えるはずだ』、「短期的には、世界の株価は相応の値動きを伴いつつ、高値圏を維持する可能性はある。 しかしその後、金融市場の不安定感は増すだろう。中期的には、米国の長期金利は上昇し、株や商業用不動産などの価格が下落する恐れがある。それが現実となれば、世界的にリスクを削減する投資家が増えるはずだ」、なるほど。

なお、明日は、更新を休む予定である。
タグ:「ウクライナ紛争が起きて以降、各国で国防関連の支出は増えた。ドイツは国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上に引き上げた。台湾を取り巻く危機意識に対応するために、日米欧の政府は産業政策の方針も転換した。戦略物資として重要性が高まる半導体の自国内生産を増やすために、補助金を積み増す動きが顕著になっている」、なるほど。 「米証券取引委員会(SEC)によると21年、世界全体の信用格付け(国債、非国債、証券化商品などが対象)のうちS&Pの割合が50.4%、ムーディーズが31.6%、フィッチが12.4%だった」、S&Pのシェアが想像以上に大きいことに驚かされた。 「米国をはじめ各国で長期金利は上昇し、世界的に株価は下落した。その勢いが強まれば、世界経済は減速に向かうだろう。となると、新興国から資金を引き揚げる投資家も増えるはずだ。フィッチによる米国債の格下げは、予想外の形で世界経済の不安定さを増すことになるかもしれない」、既に「S&P」が「格下げ」をしているとはいえ、かつて最上格の「米国債」の「格下げ」はやはり影響が大きい。 真壁昭夫氏による「米国債「格下げ」は想定内でも、警戒すべき投資家の“世界的な思考変化”とは?」 ダイヤモンド・オンライン 「現時点で東証の市場再編を理由に地方市場に上場した企業はまだない。逃げ道を確保するよりもまずは業績の改善や流通株式比率の向上など、目の前の課題解決を図るほうが先決だ」、その通りだ。 「普通銀行に売却を打診」がどのように「上場維持基準の適合に向けた計画」に相当するのかは不明だが、各社とも知恵を絞っているようだ。 「スタンダード市場への移行、という救済措置が用意されているプライム市場とは異なり、スタンダードやグロース市場の上場企業には、逃げ道がない」、もともとは「逃げ道がない」のが普通だ。真剣勝負で臨んでもらいたいものだ。 東洋経済オンライン「業績不振・不正で「基準不適合」入りの68社リスト 東証スタンダード・グロース市場の基準に抵触」 「金融庁長官候補」に2つも問題が出てきたとは大変だ。 現代ビジネス「仕組債問題で批判殺到…金融庁監督局・伊藤豊局長に浮上した「別のスキャンダル」」 「規制の抜け穴」までなくなってしまった。今後はリスクを粛々と説明して販売していかざるを得ないだろう。 「販売する側すら目を向けていなかった条項を、顧客にしっかりと説明し理解させていたかと問われると、苦しい立場に置かれる」、苦しいところだ。 「約950億円分を販売していた、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対しては、金融庁が顧客対応などについて報告するよう命令」、リスクをきちんと説明した上で販売していたことを祈りたい。 発行体は「クレディ・スイス」と信用力はあっても、「劣後」条件に応じて「高」「利回り」という「ハイリターン」になる。 東洋経済オンライン「悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠」 「2022年4月の発足から1年を経て、ようやくプライムの名にふさわしい企業の選別が始まろうとしている」、踏みとどまれる企業はどの程度あるのだろうか。 「東洋経済が試算したところ、プライム市場上場企業の中で流通株式時価総額が100億円を下回る企業は203社存在する・・・背伸び組のほか、プライム市場への移行当初は基準を満たしていたが、その後株価が下落し100億円を割ってしまった企業も少なくない」、203社とはかなり多い。 東洋経済オンライン「東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別」 資本市場 (その10)(東証プライムからスタンダードへ「降格ラッシュ」 「骨抜き」批判から1年、始まったプライムの選別、悲劇の舞台は「仕組み債」から「永久劣後債」へ 富裕層らが2.4兆円の大損!海外債券投資の罠、仕組債問題で批判殺到…金融庁監督局・伊藤豊局長に浮上した「別のスキャンダル」、業績不振・不正で「基準不適合」入りの68社リスト 東証スタンダード・グロース市場の基準に抵触、米国債「格下げ」は想定内でも 警戒すべき投資家の“世界的な思考変化”とは?) 「短期的には、世界の株価は相応の値動きを伴いつつ、高値圏を維持する可能性はある。 しかしその後、金融市場の不安定感は増すだろう。中期的には、米国の長期金利は上昇し、株や商業用不動産などの価格が下落する恐れがある。それが現実となれば、世界的にリスクを削減する投資家が増えるはずだ」、なるほど。
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