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コーポレート・ガバナンス問題(その11)(トヨタ会長「再任賛成率の急落」にみる株主の変容 総会での賛成率が2022年から11ポイント低下、三菱ケミカルグループ 突然の社長交代劇の背景 社外出身外国人から社内出身日本人へ逆戻り) [企業経営]

コーポレート・ガバナンス問題については、2021年7月14日に取上げた。今日は、(その11)(トヨタ会長「再任賛成率の急落」にみる株主の変容 総会での賛成率が2022年から11ポイント低下、三菱ケミカルグループ 突然の社長交代劇の背景 社外出身外国人から社内出身日本人へ逆戻り)である。

先ずは、本年6月16日付け東洋経済オンライン「トヨタ会長「再任賛成率の急落」にみる株主の変容 総会での賛成率が2022年から11ポイント低下」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/679400
・『「私が大きな流れに逆らいながらも前に進むことができたのは、中長期的な視点でずっとトヨタを支えてくれた株主さまのおかげだったと思う」「(新体制では)うまくいかないことのほうが多いと思うが、どうか挑戦を長い目で見ていただき、支援をいただきますようお願い申し上げます」 6月14日に開かれたトヨタ自動車の定時株主総会。豊田章男会長が社長を務めた14年を涙ながらに振り返り、佐藤恒治社長率いる新体制への支援を求めると、株主からひときわ大きな拍手が送られた。 今年のトヨタの総会は、例年にないほど注目された。理由の1つは、アメリカの議決権行使助言会社のグラスルイスが、豊田会長の取締役再任に反対するよう機関投資家などの株主に推奨したことにある。 翌15日に開示された臨時報告書によると、豊田会長の取締役再任への賛成率は84.57%。再任が危うくなるような賛成率ではないが、95.58%だった2022年からは11ポイント低下した。 (豊田会長の取締役再任に対する賛成率はリンク先参照) 議決権行使結果の開示が始まった2010年以降、賛成率は93%を下回ったことがなかっただけに「反対推奨」は一定の影響があったと思われる』、「豊田会長の取締役再任への賛成率は84.57%・・・95.58%だった2022年からは11ポイント低下した・・・議決権行使結果の開示が始まった2010年以降、賛成率は93%を下回ったことがなかっただけに「反対推奨」は一定の影響があった」、なるほど。
・独立社外取締役がポイントに  焦点となったのは独立社外取締役の〝独立性〟だった。 独立社外取締役の候補としてトヨタが選任・提案したのは4人。その中の1人である大島眞彦氏が副会長を務める三井住友銀行は、トヨタの主要取引銀行の1つだ。 大島氏を新任の社外取締役とすることには反対しない。だが、「独立していると言えない」とグラスルイスは判断した。) 大島氏を独立社外取締役にカウントしない場合、トヨタの取締役会は東証がプライム上場企業に求める「独立社外役員が3分の1以上」の基準を満たさなくなる。 「十分な数の独立した社外取締役がおらず、客観性や独立性、適切な監督を行う能力に深刻な懸念を抱く」。グラスルイスはそう指摘し、取締役会議長として責任を負う豊田会長の再任に反対すべきとした。 総会前には、アメリカ最大の公的年金基金であるカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)が、取締役候補10人のうち豊田会長や佐藤社長ら8人に反対票を投じたと公表していた。問題視したのは、やはり取締役会の独立性だ。 カルパースは2000年代前半、企業統治の不備などでアメリカのウォルト・ディズニーに圧力をかけ、経営トップを追い詰めた経験を持つ「物言う機関投資家」として知られる。一方、その姿勢を「ドグマチック(独断的・独善的)」と評する市場関係者も少なくない。 実は、カルパースは昨年も豊田会長をはじめトヨタの取締役候補9人のうち7人に反対票を投じていた。それを踏まえると、今年の賛成率低下は、グラスルイスによる反対推奨の影響が大きく出たと言えそうだ』、「今年の賛成率低下は、グラスルイスによる反対推奨の影響が大きく出たと言えそうだ」、なるほど。
・『運用会社が気候変動関連で株主提案  今年のトヨタの総会でのもう1つの注目点は、欧州の機関投資家が行った株主提案だった。デンマークの年金基金AP、ノルウェーのストアブランド・アセット・マネジメント、オランダのAPGアセットマネジメントが共同提案していた。 定款を変更し、「気候変動関連の渉外活動が及ぼす当社(トヨタ)への影響とパリ協定の目標との整合性に関する評価及び年次報告書の作成」などを規定に追加することを求めたのだ。 この提案にグラスルイスは反対を推奨したのに対し、グラスルイスと並ぶ議決権行使助言会社のISSは賛成を推奨。カルパースも賛成票を投じていた。 会社側は「このような課題に対し、(中略)柔軟かつ多様な経営判断を行い、(中略)速やかに実行していくことが求められます」「定款には(中略)規定せず、現行の定款を維持したい」と、株主提案への反対を表明していた。) 結局、株主提案への賛成率は15.06%にとどまり、否決された。 定款変更には、出席株主の3分の2以上の賛成が必要となる。取締役選任など過半数で成立する議案よりハードルは高い。提案することで環境問題への注目を集めることが目的だったと思われる。 トヨタは総会を無事に乗り切ったが、多くの上場企業で株主総会が本格化するのはこれからだ。6月29日には東証上場(3月期決算)全体の26%に当たる595社で総会が開かれる。株主提案を受けた企業は90社にのぼり、過去最高だった昨年の77社を上回る。 取締役会や社外取締役の独立性が厳しく問われるのは、もちろんトヨタだけではない。 これまではメインバンク出身の社外取締役には独立性がないと判断されてきた。今は主幹事証券会社や株式の持ち合い先の出身者も同様に独立性がないとみなす機関投資家が出てきている。株主側の判断基準は年々厳しくなっている」。大和総研の鈴木裕・主席研究員はそう指摘する』、「これまではメインバンク出身の社外取締役には独立性がないと判断されてきた。今は主幹事証券会社や株式の持ち合い先の出身者も同様に独立性がないとみなす機関投資家が出てきている。株主側の判断基準は年々厳しくなっている」、なるほど。
・『気候変動問題への姿勢が一般に問われる時代  また気候変動に関するトヨタへの株主提案は、機関投資家が一般企業に対しても気候変動への取り組みをシビアに判断する時代が到来したことを示している。 株主提案を行う主体は、これまで非政府組織(NGO)や環境団体が中心だった。電力卸のJ-POWER(電源開発)に対しては昨年、今年と2年連続でフランスのアムンディなど資産運用会社が株主提案を行っているが、同社はエネルギー関連企業だ。 株主提案がされていないからといって安心はできない。グラスルイスは「取締役会レベルで気候変動に対する取り組みを監督する体制が整っていない」として、日産自動車の内田誠社長の取締役再任に反対を推奨している。 株価や業績の向上は当然。ガバナンス体制の整備や環境問題への取り組みも怠ってはならない。加えて、株主といかに対話していくか。経営に求められるものは増える一方だ』、「株価や業績の向上は当然。ガバナンス体制の整備や環境問題への取り組みも怠ってはならない。加えて、株主といかに対話していくか。経営に求められるものは増える一方だ」、その通りだ。

次に、12月28日付け東洋経済オンライン「三菱ケミカルグループ、突然の社長交代劇の背景 社外出身外国人から社内出身日本人へ逆戻り」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/724378
・『唐突感のある社長交代劇になった。 総合化学大手の三菱ケミカルグループ(以下、三菱ケミカルG)は2023年12月22日、ジョンマーク・ギルソン社長が退任し、副社長の筑本学氏が新社長に昇格する2024年4月1日付人事を発表した。 同社では、社長を含む執行役の任期は1年間。指名委員会が10月頃から成果や事業状況を議論して、翌年度(4月1日以降)の体制を決める。 指名委委員長で社外取締役の橋本孝之氏は、「この先数年間の業界の変化や当社の変革を考えたときに、新たなリーダーが必要であるという結論になった」と説明。ギルソン氏には12月18日に伝えたといい、「(ギルソン氏が)落胆の色を見せなかったと言えばウソになる」と様子も語った。 社長交代の発表会見にもかかわらず、ギルソン氏の姿はなかった』、「総合化学大手の三菱ケミカルグループ・・・は2023年12月22日、ジョンマーク・ギルソン社長が退任し、副社長の筑本学氏が新社長に昇格する2024年4月1日付人事を発表・・・確かに「唐突感のある社長交代劇」だ。
・『大胆な改革を期待し社外から外国人を起用  ベルギー出身でフランスの化学メーカーCEO職にあったギルソン氏が、三菱ケミカルGの社長に就くことが発表されたのは2020年10月のこと。外国人経営者ならではの大胆な改革を期待しての起用だった。 2021年4月の就任後は、高付加価値事業に集中する筋肉質な企業への脱皮を目指してきた。2021年12月には、石油化学(以下、石化)事業などの切り離しの方針を発表。2023年度(2024年3月期)から3年間の中期経営計画内で改革を実行している最中でもあった。 だが、石化事業の分離は思うように進んでいなかったようだ。) そもそも石化事業は汎用品が多く低採算で、三菱ケミカルGが志向する高付加価値路線とはそぐわない。二酸化炭素の排出量も多く、脱炭素への対応の負担も大きい。 業界全体で見ても、石化事業の再編は共通課題だ。国内にあるエチレンプラント12基は、需要に対して多すぎることはコンセンサスになっている。どこかが縮小や撤退するか、統合するかして、国内の供給力のサイズダウンを進める必要がある。 そこで、石化事業からは手を引き、ヘルスケアや半導体関連、モビリティー関連など高付加価値事業に経営資源を集中する――。ギルソン社長のもと、三菱ケミカルGは思い切ったリストラ策を描いていた。 本来の予定では、2023年内に石化事業を他社との合弁会社にし、そこから3年以内に新規株式公開(IPO)することを目指してきた。しかし、年の瀬を迎えても何の発表もなかった』、「石化事業」だけを取り出すと赤字になってしまうのであれば、分離は不可能だ。
・『事業環境の悪化が誤算?  石化事業の切り離しが思うように進んでいない裏には、方針を発表した当初よりも事業環境が悪化しているという事情がある。 2021年4~9月期、三菱ケミカルGの石化事業は265億円の事業利益を稼いでいた。それが、2023年4~9月期は25億円の事業赤字に沈んでいる。 低迷の理由には景気の悪化もあるが、ほかに根本的な問題もある。 近年、中国企業が相次いで石化製品の生産設備への投資を実施。過剰な供給力によって中国市場からあふれた製品が、日本企業の主力販売先であるアジア市場の需給バランスを大きく悪化させている。今後、多少景気が回復しても、こうした需給構造は変わらない。) そうした中、三菱ケミカルGが当初考えていたような取引条件による事業の切り離しは難しくなったようだ。ギルソン体制で石化事業を所管してきた筑本氏は、「われわれがフェアと思うことが相手にとってフェアではないこともある」とも述べ、交渉の難しさをにじませた。 キャリアのほとんどで石化事業に携わってきた筑本氏。石化事業の今後については、「(必ずしも)切り離すという発想ではない。強い会社として独立させることしか考えていない」とコメントし、構想の仕切り直しを示唆した。 決着の時期については「相手があることなのでいつまでにというのは難しい」と話す。2024年秋までには石化を含む今後の事業戦略を公表したいという』、「2021年4~9月期、三菱ケミカルGの石化事業は265億円の事業利益を稼いでいた。それが、2023年4~9月期は25億円の事業赤字に沈んでいる。 低迷の理由には景気の悪化もあるが、ほかに根本的な問題もある。 近年、中国企業が相次いで石化製品の生産設備への投資を実施。過剰な供給力によって中国市場からあふれた製品が、日本企業の主力販売先であるアジア市場の需給バランスを大きく悪化させている。今後、多少景気が回復しても、こうした需給構造は変わらない」、なるほど。
・『人材流出に危機感も  筑本氏は「(ギルソン氏の就任以降)多くの優秀な人材が流出したことは間違いない」とも明かし、「もう一度、(社内外から)サポートしてもらえるような求心力が必要だ」と語った。 ギルソン社長が進めてきた事業構造改革に対する軋轢も少なからずあったようだ。) 指名委が2020年10月にギルソン氏を次期社長に決めたとき、最終候補者は7人、うち4人が社外の外国人だった。当時も指名委の委員長だった橋本氏は、思い切った改革の必要性を念頭に「社内よりも社外、日本人よりもしがらみのない外国人と考えた」と選考のポイントを説明していた。 それが一転して社内の日本人に交代することについて、橋本氏は「3年前とはだいぶ状況が変わり、厳しい事業環境になった。知見があり、人脈がある人が動かしていくほうがいいだろうという判断になった」と述べた』、「一転して社内の日本人に交代することについて」「3年前とはだいぶ状況が変わり、厳しい事業環境になった。知見があり、人脈がある人が動かしていくほうがいいだろうという判断になった」、なるほど。
・『発表後に株価は急落  三菱ケミカルGの株価は、12月22日に社長人事を発表した午後1時半時点で937円だったが直後から急落。27日の終値は発表直前から7.7%安の864.5円まで下がっている。石化事業などの再編の先行きに不安が広がったことに加え、市場から不信感を買った可能性もありそうだ。 というのも、10月20日に開いた投資家向け説明会では石化事業などの切り離しの進捗について懸念する質問が出たが、「計画通りに進んでいる」「遠くない将来に実現させる」などと、順調であるかのようにアピールしていたからだ。 また、事業構造改革を進める中でも従業員エンゲージメントのスコアは上がっているとも説明していた。今回の社長交代会見で語られたトーンとはかなり乖離がある。 新社長に就く筑本氏には、石化事業再編の道筋をつけることと同時に、市場からの信頼を取り戻すことが求められる』、「新社長に就く筑本氏には、石化事業再編の道筋をつけることと同時に、市場からの信頼を取り戻すことが求められる」、市場と接触するに際しては、正直に接触する必要がある。
タグ:「新社長に就く筑本氏には、石化事業再編の道筋をつけることと同時に、市場からの信頼を取り戻すことが求められる」、市場と接触するに際しては、正直に接触する必要がある。 「一転して社内の日本人に交代することについて」「3年前とはだいぶ状況が変わり、厳しい事業環境になった。知見があり、人脈がある人が動かしていくほうがいいだろうという判断になった」、なるほど。 「2021年4~9月期、三菱ケミカルGの石化事業は265億円の事業利益を稼いでいた。それが、2023年4~9月期は25億円の事業赤字に沈んでいる。 低迷の理由には景気の悪化もあるが、ほかに根本的な問題もある。 近年、中国企業が相次いで石化製品の生産設備への投資を実施。過剰な供給力によって中国市場からあふれた製品が、日本企業の主力販売先であるアジア市場の需給バランスを大きく悪化させている。今後、多少景気が回復しても、こうした需給構造は変わらない」、なるほど。 「石化事業」だけを取り出すと赤字になってしまうのであれば、分離は不可能だ。 「総合化学大手の三菱ケミカルグループ・・・は2023年12月22日、ジョンマーク・ギルソン社長が退任し、副社長の筑本学氏が新社長に昇格する2024年4月1日付人事を発表・・・確かに「唐突感のある社長交代劇」だ。 東洋経済オンライン「三菱ケミカルグループ、突然の社長交代劇の背景 社外出身外国人から社内出身日本人へ逆戻り」 「株価や業績の向上は当然。ガバナンス体制の整備や環境問題への取り組みも怠ってはならない。加えて、株主といかに対話していくか。経営に求められるものは増える一方だ」、その通りだ。 「これまではメインバンク出身の社外取締役には独立性がないと判断されてきた。今は主幹事証券会社や株式の持ち合い先の出身者も同様に独立性がないとみなす機関投資家が出てきている。株主側の判断基準は年々厳しくなっている」、なるほど。 「今年の賛成率低下は、グラスルイスによる反対推奨の影響が大きく出たと言えそうだ」、なるほど。 「豊田会長の取締役再任への賛成率は84.57%・・・95.58%だった2022年からは11ポイント低下した・・・議決権行使結果の開示が始まった2010年以降、賛成率は93%を下回ったことがなかっただけに「反対推奨」は一定の影響があった」、なるほど。 東洋経済オンライン「トヨタ会長「再任賛成率の急落」にみる株主の変容 総会での賛成率が2022年から11ポイント低下」 (その11)(トヨタ会長「再任賛成率の急落」にみる株主の変容 総会での賛成率が2022年から11ポイント低下、三菱ケミカルグループ 突然の社長交代劇の背景 社外出身外国人から社内出身日本人へ逆戻り) コーポレート・ガバナンス問題
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