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新安保法制(その8)中国ガス田開発関連 [外交]

新安保法制に関連して(その8)として、中国ガス田開発問題を取上げよう。

7月23日付け日経新聞は「中国の資源開発けん制 ガス田写真、政府が公表」として、政府が東シナ海での中国によるガス田開発の証拠写真を公表したのは、一方的な資源開発をけん制するためだと伝えた。
これに関しては、7月24日付け日刊ゲンダイ「安保法案“批判”対策か 中国ガス田公表の怪しいタイミング」のポイントを紹介したい。
・このタイミングでの公表には、安倍首相らが繰り返す「安保環境の変化」をあおり、「安保法案」への批判をかわそうという魂胆も
・9月の安倍訪中や日中首脳会談が囁かれる中で、あえて中国を刺激する発表をしたのは、安倍官邸にとって“もろもろ”の理由があった。「1つは来週から再開される参院での安保法案審議に向けたもの。『安全保障環境の変化』という法案の必要性を国民に強く印象づける必要があった
・もう1つは、安倍首相応援団の右派向けのアピール。新たなガス田を指摘したのは、ジャーナリストの桜井よしこ氏の産経新聞への寄稿記事。最近の中国との“融和ムード”を右派は苦々しく見ていたので、対中強硬姿勢を打ち出すことで、支持をつなぎ留める狙いです」(政府関係者)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/162036

次に、軍事ライターの文谷数重氏が7月23日付け東洋経済オンラインに寄稿した「日本は、中国ガス田開発に対抗できない 残念ながら日本の反論は間違っている」のポイントを紹介しよう。
・日本は中国によるガス田開発は止めることはできないだろう。中国の主張を崩すことも、対抗策として反対側で採掘を始めることも難しいためだ
・まず、資源開発用のプラットホーム設置について文句をつけることはできない。中国は中間線西側に設置。これは東シナ海での排他的経済水域(EEZ)分割において、中間線は日本が主張したライン。つまり日本側の主張を守っているのである
・ストロー効果(中間線西側から採掘しても地中では中間線日本側のガスも吸い出す)については中国に認めさせる材料がない。日本は地下でガス貯留層は繋がっていると主張しているが、中国は日本側と繋がっていないと反論。現地の地下構造情報は中国側だけがもっているため、日本はこれに再反論できない
・実力による中国への対抗も困難だ。方法としては中間線の日本側からガス田を掘り、自国寄りのガスを吸い尽くし、中国側からもストローし返すといった方法が考えられる。だが、これはコスト的には非現実的。経済的に見て、東シナ海には大した海底エネルギー資源はない。中国が条件のよい大陸側から試掘しても、ガスを発見できるのが4割に過ぎず、労賃の安い中国人労働者でも商業化は1割しかできない(元石油資源開発の取締役)。日本が対抗的にガス採掘しても原価割れする。帝国石油による試掘等が実施されなかった理由もここにある
・プラットホームの軍事利用も適法。EEZは公海とほぼ変わらない。沿岸国は海底資源開発や漁業利用での権利を主張できるが、それ以外の軍事利用には何の権利も持たない。日本政府は「EEZの非経済的利用はなるべく自由に」といった立場にある。このため「プラットホームが日本EEZに軍事的影響を与える」と無理筋に抗議すると従来主張との整合性が問題に
・仮にそのようなことを言い出せば、中国やインドのような「EEZ内で軍艦は無害通航すべき」や「軍用機上空通過には許可が必要」といった独自解釈に堕してしまう。なによりも中間線の西側にある。暗黙の了解で中国側EEZとされる海であり、抗議はお門違いとしか言いようはない
・プラットホームを軍事的脅威と主張するにも無理がある。「海洋プラットホームにレーダーや、潜水艦を探すためのソナーを取り付けられれば、日本の安全保障での脅威となる」といった主張はおかしい。レーダーやソナーは、すでに軍艦や航空機で使用。中間線日本側でも、琉球列島間の公海部分でも、レーダーやソナーを付けた中国軍艦や航空機は自由に行動。逆に海自も大陸側で同様に行動。そもそも、レーダーやソナーは大した脅威でもない。レーダーでは基本的に水平線までしか探知できない。艦船を監視できる範囲は50キロメートル程度の距離が限界。また、ソナーにしても機械騒音等から、理想とは程遠い配置場所
・海上プラットホームについては何もできない。実務家である外務省や防衛省は無理押しであることを承知しており、プラットホームそのものに抗議はしていない
・では、何をするべきなのか。答えは、現地での監視強化と嫌がらせを行うことだ。すでに、海自は10年前から現地を監視。監視飛行として哨戒機を飛ばし、日本領域の端々を毎日偵察しているが、中でも東シナ海ガス田は重要な監視対象。P-3Cが昼間に低空で真上を飛び、撮影そのほかを実施。中国側はこれに反発
・P-3Cや新鋭機P-1は、かつての100機運用体制から最近では60機運用体制に。ところが、南シナ海監視を追加する話が浮上するなど、哨戒機の出番は増えている。南シナ海監視が実現した時、ガス田監視飛行も継続するには、哨戒機運用数を元の100機に戻す必要。中国の海洋進出に対抗するためには哨戒機の拡充は最優先事項
http://toyokeizai.net/articles/-/77995

当初の政府の発表は唐突で、日経の報道も隔靴掻痒の感があったが、日刊ゲンダイの解説で狙いが理解できた。ただ、文谷数重氏の主張が正しいとすれば、日本政府は安保法制での失地回復を狙ってなのか、相当、無理筋の主張をしたことになる。これでは、中国に馬鹿にされるだけだろう。一般のマスコミも、政府発表に対する健全なチェック役を果たしてもらいたいものだ。
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