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北朝鮮問題(その9)(北が仕掛ける電磁パルス攻撃 米経済マヒで損失数百兆円も、北朝鮮 対話でも制裁でもない「第三の道」、北朝鮮の核保有国化に日本の持つ対抗手段が無力な理由) [世界情勢]

一昨日に続いて、北朝鮮問題(その9)(北が仕掛ける電磁パルス攻撃 米経済マヒで損失数百兆円も、北朝鮮 対話でも制裁でもない「第三の道」、北朝鮮の核保有国化に日本の持つ対抗手段が無力な理由) を取上げよう。

先ずは、9月6日付け日刊ゲンダイ「北が仕掛ける電磁パルス攻撃 米経済マヒで損失数百兆円も」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・北朝鮮が6回目の核実験を強行したことに、米トランプ政権が「北朝鮮を滅ぼす力はある」(マティス国防長官)と激怒している。過敏反応するのは、北朝鮮が「電磁パルス攻撃」の開発成功を示唆したためだ。事実とすれば米国経済をメチャメチャにし、破滅的な結末をもたらしかねない。
・北朝鮮の朝鮮中央通信は今月3日、今回の「水爆」について「高い空で爆発させ、広い地域に超強力な電磁パルス攻撃まで加えられる」と主張。電磁パルス攻撃は目標上空の数十~数百キロの高高度で核弾頭を爆発させる。その際に生じたガンマ線が大気中の窒素や酸素に衝突。巨大な電流が発生することで電磁パルスが地上に襲いかかる。
・「電磁パルスは“空から襲う津波”に例えられます。高高度で爆発するため、熱線、爆風、放射線は地上に届かず、直接死傷する人は出ません。ただ、電子機器・電子回路に過剰な電気が流れることで大規模な停電が起き、インターネット回線などが停止。金融機関などのサーバーが次々にダウンします。原子力発電所も制御不能に陥るとみられています。米国の上空にパルス攻撃が仕掛けられたら、ニューヨーク証券取引所は全面停止に追い込まれ、株価は大暴落するでしょう。バックアップ電源で緊急復旧させたとしても、正常に機能するか定かではありません。その衝撃はリーマン・ショック時の比ではありません。米国経済は麻痺状態に陥り、経済的な損害規模は数百兆円に上るかもしれない。輸送インフラも停止し餓死者も出るでしょう。米国民の生活は西部開拓時代以前に戻ってしまうかもしれません。文明の崩壊さえ危惧されます」(軍事ジャーナリストの世良光弘氏)
・恐ろしいのは、北朝鮮の脅しがあながちハッタリとも思えない点だ。北朝鮮のICBM完成は大気圏突入技術の獲得が“最終関門”とみられている。しかし、電子パルス攻撃は大気圏再突入技術が不要とされる。  「地上を狙うICBMは、大気圏再突入時にミサイルの弾頭部分を高熱から守る技術と、ミサイルの入角スピードを制御する技術が必要となります。その点、電子パルス攻撃は小型の核弾頭を搭載したミサイルを発射し、目標上空で起爆するだけ。今の北朝鮮の技術ですぐにでも攻撃に移せる可能性があります。だから、米国が神経をとがらせているのでしょう」(世良光弘氏)
・今のグローバル経済では、米本土でなくても、日本や欧州などの主要マーケットを狙えば米国経済に打撃を与えることもできる。金正恩とトランプの危ない駆け引きにしばらく注目が集まりそうだ。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/212915/1

次に、在米ジャーナリストの高濱 賛氏が9月1日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「北朝鮮、対話でも制裁でもない「第三の道」 トランプ大統領の本音は「外交的解決や経済制裁など意味ない」?」を紹介しよう(▽は小見出し、――――は聞き手の質問、+は回答内の段落)
――――北朝鮮が9月3日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)用水爆の実験に成功したと発表しましました。北朝鮮の核実験はこれで6回目。トランプ政権が発足して以降では初めてです。米国の反応はどうですか。
・高濱 ドナルド・トランプ米大統領は直ちにツイッターに「北朝鮮が重大な核実験を行った。彼らの言葉と行動は引き続き米国にとって敵意に満ち溢れた危険なものだ」と書き込みました。 そのうえで「北朝鮮はならず者国家で、解決を試みながら成果を上げられない中国にとって大きな脅威であり、悩みのタネだ。私がこれまで言ってきたように、北朝鮮には慰撫など全く通用しない。これ(核実験)で韓国はわかったはずだ」としています。
+そのあと、安倍晋三首相に電話をかけました。日本時間3日午後11時、米東部夏時間では3日早朝でした。大洪水に見舞われているテキサス州への視察を終え、ワシントンに戻る大統領専用機「エアフォースワン」の機内から電話を掛けたそうです。 トランプ大統領は、今回の核実験について「この暴挙は見過ごすことができない」と安倍首相に言っています。それならば、どのような措置を講じるのか。トランプ大統領は3度にわたる安倍首相との電話会談でほのめかしたでしょうが、どちらも「かん口令」をしいているようです。
+「私は前任者(オバマ前大統領)とは異なり、次に何をするかを相手に前もっては言わない主義だ」というのがトランプ大統領の口癖ですから(笑)
――――トランプ大統領はともかく、米政府としての「次の一手」はどうなるでしょう。
・高濱 ホワイトハウスは3日、トランプ大統領、マイク・ペンス副大統領、レックス・ティラーソン国務長官、ジェームズ・マティス国防長官、ジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長らが国家安全保障会議(NSC)安全保障チームによる緊急会合を開きました。会合の後、マティス国防長官がステートメントを読み上げました。
+「米国やグアムを含む米領、そして同盟国に対する(北朝鮮による)いかなる脅威も、大規模な軍事的対応、効果的かつ圧倒的な対応に直面するだろう。われわれには数多くの軍事的選択肢があると大統領に説明した。米国には自国と同盟国である日本、韓国を(北朝鮮の)攻撃から守る能力がある。われわれの関与は揺るぎない」
+「国連安全保障理事会(安保理)が北朝鮮の脅威に対し一致して上げた声に金正恩(朝鮮労働党委員長)は耳を傾けるべきだ。われわれは北朝鮮であれ、どこであれ、いかなる国も完全に壊滅させるつもりはない。ただし、その(壊滅の)ための選択肢は多数ある」
+これまで、トランプ大統領が軍事的解決を口にすると、それをトーンダウンすべく「対話」の可能性をちらつかせてきたのがマティス長官です。そのマティス長官が会合後、ダンフォード議長とともに記者団の前に現れて、軍事的対応も辞さぬ構えを見せました。
▽軍事カードは切れない
――――核実験の強行を受けて、トランプ政権は軍事行動に出るのでしょうか。
・高濱 マティス長官は「多くの軍事的選択肢がある」と言っています。しかしながら選択肢はあってもそのカードを切れない悩ましさがあります。 これまでメディアで報じられてきた「斬首作戦」(金正恩殺害)にしても、「外科的攻撃作戦」(surgical operation=ミサイルによる核施設空爆作戦)にしても、それに踏み切れば、北朝鮮が報復攻撃に出るリスクが避けられません。韓国、日本、そして両国に駐屯する米軍に対し、北朝鮮は死に物狂いの攻撃を仕掛けてくるでしょう。軍事的選択肢は数あれど、敢行すれば、一気に戦争になりかねません。
――――米議会の反応はどうですか。軍事行動に出るとすれば、当然のこと議会の承認が必要になってきますよね。
・高濱 有力議員が日曜日(3日)のテレビ番組に出演していろいろ発言しています。議員の中にはトランプ大統領のツイッターのレトリックを取り上げて、批判する者もいました。 「大統領のツイッターは百害あって一利なし。大統領が挑発的な発言をすればするほど緊張が高まる」(ジェフリー・フレイク上院議員=共和党、アリゾナ州選出) 「外交軍事政策は外交官や軍人に任せておけばいいのだ。大統領は直ちにツイッターをやめるべきだ」(ホワキン・カストロ下院議員 =民主党、テキサス州選出)
+議員サイドから具体的な措置として提案され、注目を集めたのは、「北朝鮮と貿易している第三国に対する副次的制裁(secondary sanction)を検討すべきだ」(アダム・シェフ上院議員=民主党、カリフォルニア州選出)という提案でした。北朝鮮に対する「兵糧攻め」です。 その直後、トランプ大統領も2回目の“つぶやき”で「北朝鮮とビジネスを行っているすべての国との貿易停止を考慮している」と書き込んでいます。
――――北朝鮮と通商関係にある国は中国以外にどのくらいあるのですか。
・高濱 北朝鮮の最大の貿易相手国は中国です。貿易額は年間61億ドル。第2位はインド(貿易額1億4500万ドル)、次いでフィリピン(同8900万ドル)、ロシア(同8400万ドル)と続きます。 あまり知られていないかもしれませんが、北朝鮮は東南アジアや南アジアの国とも通商関係を結んでいます。タイ(同5300万ドル)、パキスタン(同4900万ドル)、ブルキナファソ(同3400万ドル)、ドミニカ共和国(同2000万ドル)、ベネズエラ(同1600万ドル)などです。 ("U.S. Threatens Trade With Countries Over Support for North Korea," Nick Wadhams, www.bloomberg.com., 7/4/2017)
+中国はもちろんのこと、ロシアやインドもこの「副次的制裁」に反対するでしょう。ですから国連安保理の制裁決議案に盛り込むことは難しいと思います。おそらく米国単独のものになりそうです。
▽北朝鮮の「出稼ぎ労働者」は年間5万~10万人
――――北朝鮮は出稼ぎ労働者を海外に派遣し、外貨獲得に役立てているようですね。河野太郎外相は制裁の選択肢の一つとして、相手国に出稼ぎ労働者の受け入れを制限するよう求めることを上げていますね。
・高濱 米国では、北朝鮮が海外に送り出す出稼ぎ労働者を「state-sponsored slaves」(官製奴隷労働)と呼んでいます。 どの国に、どれだけの数の労働者を派遣するかはすべて北朝鮮政府が決めています。労働者は1日10~12時間、1週6日間、道路整備などの土木工事に従事させられています。
+人権団体の推定によると、年間10万人近く(国連報告では5万人)の出稼ぎ労働者を海外に送り、その賃金を北朝鮮政府がピンハネしているそうです。その額は推定で、年間12億ドル~23億ドル。そのカネが核・ミサイルの開発費用に回されているわけです。
+北朝鮮からの労働者を受け入れている国は、中国とロシアのほか、欧州ではドイツ、イタリア、オーストリア、オランダ。中東のカタールや東南アジアではマレーシアにまで及んでいます。
+米国は、この出稼ぎ労働者を受け入れる数を大幅に削減するよう、国連安保理を通じて、各国に呼びかけようというのです。中国、ロシアはもとより、安価な労働力を得ているドイツやイタリアがすんなり賛成するかどうか、疑問です。 ("100,000 North Koreans sent abroad as 'slaves,'" Tom Phillips, www.terlegraph.co.uk., 2/20/2017)   ("North Korea Sends hundreds of 'State-Sponsored Slaves' To Europe: Right Group," Emma Batha, Reuters, 7/6/2016))
▽「外交的解決や経済制裁など意味ない」?
――――北朝鮮はこのあと9月9日には建国記念日、10月10日には朝鮮労働党創建記念日を控えています。またミサイルを発射する可能性が大ですね。相次ぐミサイル実験、核実験ではらわたが煮えくり返っているトランプ大統領の血圧はますます上がりそうです。
・高濱 トランプ大統領のツイッターでの発言を時系列的で分析し検証しているジャーナリストのマイク・アレン氏は、同大統領の深層心理をこう分析しています。 「トランプは、北朝鮮の問題を外交で解決するのは非現実的だ、各国の政治的思惑や利害が絡む国連安保理主導の経済制裁にも限界がある、と見ている」
+「トランプのホンネは、金正恩の火遊びを止めさせるには軍事的選択肢しかない、だ。しかし、そうすれば破滅的な規模の人的被害(a catastrophic human fallout)が出ることもわかってきた。それでも北朝鮮が核・ミサイルで脅威をエスカレートし続けるなら米国も最大限の軍事的圧力をかけねばならないと考えている」  「金正恩に核兵器を放棄させるには、『米国は本当に北朝鮮という国家を壊滅させる』という現実を分からせること以外にない。それがトランプの本心だ」 ("1 big thing: Diplo-tweeting and the cycle of escalation," Mike Allen, Axios AM, 9/3/2017)
▽北朝鮮のエリートに説く
+しかし、それがトランプ大統領の本心であっても、実際には実行できない。そうした中で注目されるのが、2人の専門家が提案している「第三の道」です。 ジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)の下で国家安全保障会議(NSC)東アジア上級部長を務めたデニス・ワイルダー氏(現ジョージタウン大学教授)と、保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」のブルース・クリンガー上級研究員です。
+ワイルダー教授はこう述べています。「金正恩はすでに確固たる決断をしている。核弾頭を搭載できるICBMを実用化して、米本土への攻撃を可能にする戦力を保有するとの決断だ。米国としては、金正恩のこの決断を阻止できるかどうかではなく、北朝鮮のエリート集団を説得できるかどうかが重要だ。彼らに『そんなことをしたら平和や安定を確保するどころか、北朝鮮という国家が壊滅してしまう、だからやめましょう』と金正恩を口説かせる」
+問題は、エリート集団にどうアプローチするか、です。 これについてクリンガー氏が具体案を示しています。「『対話と制裁』という手段はこれまで成功しなかった。北朝鮮が無条件対話を望んでいる限り、対話は時期尚早だ」
+「米国は持っているすべての国力を総動員して包括的、総合的な対北朝鮮戦略を実施することだ。米国が有している国力とは、国連安保理への影響力、米国および同盟国を防衛するための軍事力、経済・財政面の影響力、人権擁護を提唱する力、情報を伝播させる力、サイバー力だ。これらの力を総動員して北朝鮮に住むエリート集団や一般大衆に国際社会の通念を伝え、金正恩を説得させる。それがだめなら、現体制を段階的に崩壊させる方向に彼らが動き出すよう、そそのかすことだ」 ("Deter North Korea Elite Instead of Kim," Dennis Wilder, The Cipher Brief, 9/3/2017) ("North Korea Responds to Trump's "Fire and Fury" Threats with a Hydrogen Bomb," Bruce Klingner, The National Interest, 9/2/2017)
+短絡的なトランプ大統領がこの2人の提案に耳を貸すかどうかは別問題です。しかし保守系の識者からこうした提案が出ている点を注視すべきです。つまりトランプ大統領のホンネがどこにあろうとも、米国内には軍事的解決は無理だと考え、「第三の道」を模索する“余裕”がまだあるということです。
▽10月の中国党大会を前に緊張高まる米中関係
――――最後に北朝鮮情勢は米中関係にどのような影響を与えそうですか。
・高濱 新たな核実験を受けて中国外務省は「断固とした反対と強烈な非難」を表明しました。中国は国連決議に従い、北朝鮮からの石炭や水産物などの輸入を止めていますが、北朝鮮を追い詰めかねない石油の禁輸には反対してきました。
・4日午前から始まった国連安保理の緊急会合で、米国が提案する石油禁輸や北朝鮮労働者受け入れ規制などを中国が容認するかどうか。 10月18日から開催される中国共産党大会を控えて、習近平国家主席が米国に譲歩するとは思えません。政権基盤を確固たるものにするためにも「朝鮮半島における混乱と戦争は容認しない」(劉結一・中国国連大使)というのが習氏の基本姿勢です。米国の軍事行動を阻止するためにロシアと「共同戦線」を組む可能性だってあります。金正恩氏の一挙手一投足をにらんで米中関係は緊張度を強めそうです。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/261004/090500055/?P=1

第三に、軍事ジャーナリストの田岡俊次氏が9月7日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「北朝鮮の核保有国化に日本の持つ対抗手段が無力な理由」を紹介しよう(▽は小見出し)。
・北朝鮮は8月29日午前5時58分頃、中距離弾道ミサイル「火星12」の発射実験を行った。このミサイルは北海道南部の渡島半島と襟裳岬上空約500kmを通過、同岬の東方約1180kmの太平洋に落下した。 次いで9月3日午後0時29分頃には咸鏡北道豊渓里の地下核実験場で6回目の核実験を行い「弾道ミサイルに搭載できる水爆弾頭の実験に完全に成功」と発表した。
・日本では弾道ミサイルの北海道上空通過に大衆は強い反発を示したが、実は水爆実験の方が大きな危険だ。米国と北朝鮮の威嚇競争が一段とエスカレートしかねないだけでなく、日本にとっても北の「核保有国」化が現実のものになりつつあり、第二次大戦後、最悪の危機局面だ。
▽日本に届くミサイルは20年以上前からある 「グアム」は報復恐れて回避
・8月29日の「火星12」の発射実験では、ミサイルの高度は550kmに達し、北海道の上では軌道の頂点を過ぎていたが、500kmはあったと考えられる。 この高度では、日本の領空とはいえず、「領空侵犯」と非難はできない。 宇宙がどの国にも属さないのは自明のことだ。地球は自転していて、北海道上空の宇宙は1時間後には中国上空になるからだ。
・「空気のある所までは領空」との定義にはどの国も反対していないが、徐々に空気は薄くなるから、領空と宇宙との線引きは困難だ。このため「人工衛星が飛ぶところは宇宙だろう」との説が何となく一般化した。人工衛星には最低高度が100km程度で周回した物もあったから「一応100kmまでは領空」と言われてきた。  高度500kmもの宇宙をミサイルが通っても「領空侵犯」とは言えないから、日本政府は2006年7月の国連安保理決議1695以来、国連が何度も北朝鮮に求めている「弾道ミサイル計画に関わる全ての活動の停止」に対する違反だ、として抗議した。
・北朝鮮が日本のほぼ全域を射程内に入れる弾道ミサイル「ノドン」(推定射程1300km)を1993年頃から配備を始めて以来、すでに20年以上たつ。北朝鮮は今回以前にも4回、日本上空の宇宙を通るコースで弾道ミサイル、あるいは人工衛星用ロケットを発射していてきた。
・今回の場合、北朝鮮は8月21日から31日までの米韓合同演習(これは部隊を動かさない指揮・通信訓練で、大規模なコンピューターゲーム だ)に反発し、「グアム周辺30kmないし40km(米領海外)の海上に4発のミサイルを撃ち込むことも検討」と発表していた。 だが、もしそれを行えば、米軍はグアムに配備したミサイル迎撃ミサイル 「サード」(射程100km)などで撃破しただろう。 もし狙いが外れて領海や島に落ちれば、米国は北朝鮮に報復攻撃をするおそれもあったから、さすがにそれは控えて、代わりに1発だけ北太平洋に発射し、米韓の合同演習に対抗した形を示したのだろう。米国と威嚇し合う「チキンレース」で速度を落とした形だ。
▽水爆の威力は都心を狙えば 半径6.6km圏で致死的な火傷被害
・一方で、9月3日の水爆実験は日本に対する脅威を著しく高めるだけでなく、米国と北朝鮮の威嚇競争を数段エスカレートしかねない。 前回、昨年9月9日の核実験では、日本の気象庁はマグニチュード5.3と計測、韓国国防省は「TNT爆薬10キロトン相当の爆発」と発表した。今回の核爆発では気象庁は「マグニチュード6.1」と発表。威力は「前回の10倍以上」すなわち100キロトン以上としている。マグニチュードが1上がると震源のエネルギーは31.6倍になる。今回のマグニチュードは前回より0.8高い。
・同日のCNNによれば、米国の専門家は「威力は120キロトン」と推定したという。防衛省は同日「70キロトン」との推定を発表、5日に「120キロトン」に修正。さらに6日に「160キロトン」とした。韓国国防省は「50キロトン」と言うが、これは国民の動揺を案じてか、低目の推定値を採ったのかもしれない。
・原子爆弾では威力は自ずと20キロトン(TNT2万トンに相当)程度になるもので、広島型では約15キロトン、長崎型で23キロトンだった。それに比べ今回の威力ははるかに大きいから、北朝鮮が水素爆弾の製造に成功したことはまずたしか、と見ざるをえない。
・威力10キロトンないし20キロトンの原爆では、爆心地から約3km以内で第2度の火傷(やけど)を起こし、体の表面の30%以上に第2度の火傷を負うとすぐ手当しないと致命的だ。2km以内では大部分が火傷で死亡、火災が発生する。 爆風は約2km以内で大部分の建物を倒壊させ、中性子とガンマ線は約1.4km以内の人を1ヵ月以内に死亡させる。巻き上げられた土砂は風下50kmないし100平方kmで致死的放射線量を発する。
・北朝鮮の水爆弾頭の威力が、160キロトンと仮定し、威力15キロトンの広島型原爆の10.7倍の威力とすれば、破壊力の半径は3乗根になるから(爆発力は前後左右にも上にも拡がる)、2.2倍だ。「熱効果」(2度の火傷を起こす)が原爆で約3kmのところ、水爆では約6.6kmになる。
・仮に国会議事堂を爆心地とすれば、原爆なら北は水道橋、南は三田、西は千駄ヶ谷、東は八丁堀が3kmの熱効果の半径内だ。だが6.6kmの半径になると、北は巣鴨、南は大崎、西は中野、東は錦糸町付近までが圏内に入る。東京23区の人口密度は1平方kmに1.5万人だから約205万人あるいはそれ以上が被災すると推定される。
▽落とせる数に限界 ミサイル迎撃システム
・だが弾道ミサイルを迎撃する態勢は不十分というより、むしろ形ばかりだ。 核ミサイル対策として日本は現在イージス艦6隻を持つが、うち4隻が弾道ミサイル迎撃用の「SM3ブロック1a」ミサイル(射程1000km)を8発ずつ搭載している。 それを大幅に進歩させた「SM3ブロック2a」(射程2000km)を積むために他の2隻は改装中で、さらに2隻を建造する予算も付いていて、数年後には計8隻となる。
・加えて本来艦載用のイージス・システムを陸上型にした「イージス・アショア」を2ヵ所に配備する方針だ。  イージスは弾道ミサイルが軌道の頂点付近に達し、速度が落ちたところを狙うが、それが撃ち洩らした弾道ミサイルは航空自衛隊の短射程迎撃ミサイル「パトリオットPAC3」が破壊することになっている。
・「PAC3」は発射機34基があり、各4発のミサイルを積んでいる。1地点に発射機2基、8発が配備される。射程は20km以下だから、ごく狭い地域しか守れない。迎撃用のミサイルは、故障、不発があることも考え、1目標に2発ずつ発射するのが普通で、「PAC3」も「イージス」も8発では弾道ミサイル4発にしか対抗できない。  「PAC3」は射程を30kmに伸ばした「PAC3MSE」に換装中だが、それでも1地点しか守れないことは変わらない。
・ミサイル防衛にはすでに1兆8000億円近くが投入されたが「今後さらに1兆円掛かる」と言われる。だが多数の弾道ミサイルがほぼ同時に発射されれば突破されるのは避け難い。 北朝鮮は旧式の「ノドン」だけでも300発はあると言われている。核弾頭は20発程度(量産開始の可能性がある)としても、通常(火薬)弾頭付きのものとまぜて発射されれば区別が付かないから、防御側はすべてに対処せざるをえない。
▽「敵基地攻撃力」は困難 目標の位置が分からない
・ミサイル防衛は十分な守りにはならないから「敵基地攻撃能力を保有すべきだ」と自民党政務調査会は今年3月政府に提言した。 だが目標の位置が分からなくては攻撃はできない。偵察衛星は地球を南北方向に1周約90分で周回し、世界各地の上空を1日約1回、時速約2万7000kmで通過する。固定目標は撮影できても、常時1地域を見張ることはできず、移動式発射機に載せて山岳地帯の無数のトンネルに隠されている弾道ミサイルを発見するのは不可能に近い。北朝鮮の新型の弾道ミサイルはトンネルから出て来て10分程で発射可能とされる。
・赤道上空を高度約3万6000kmで周回する静止衛星は、この高度だと地球の自転速度と釣り合って地表からは静止しているように見える。米国の早期警戒衛星もその一種で北朝鮮を常時監視することも可能だが、地球の円周4万kmに近いこの距離ではミサイルは見えず、発射の際の大量の赤外線を探知できる程度で、発射前に攻撃する役には立たない。
・ジェットエンジン付きの大型グライダーのような無人偵察機「グローバル・ホーク」を日本も3機、約630億円かけて導入するが、公海上空から斜めに撮影するのでは、北朝鮮北部山岳地帯の谷間のトンネルなどは撮影できない。 多数の無人機を常に北朝鮮上空で旋回させておけば、発射機が出て来たところを発見できるとしても、領空侵犯であり、高度は2万メートル以下で低速だから、旧式の対空ミサイルでも簡単に撃墜される。 米軍にとっても北朝鮮の弾道ミサイルの位置をすべて、リアルタイムで知ることは不可能だ。
・また、もし北朝鮮の弾道ミサイルの位置がすべて確実に分かるのなら、圧倒的な航空戦力を持つ米韓軍が攻撃して処理できるから、自衛隊の出る幕はない。「邪魔だから来るな」と断られそうだ。
・北朝鮮空軍は1990年代以降、極度に衰弱したため、韓国空軍は防空の必要が薄れ、戦闘機約480機のうち、約310機を対地攻撃任務にあてている。陸軍は射程300kmないし500km(弾頭重量による)の「玄武2型」弾道ミサイルをすでに約1700基も配備している。米空軍も戦闘機約40機、対地攻撃機24機を韓国に置いており、攻撃能力自体には不足していない。
▽Jアラートは予告なしの発射に対応しきれない
・日本の残るミサイル防衛手段としては住民の避難がある。 Jアラート(全国瞬時警報システム)は全国1741自治体すべてに通信衛星を経由する警報の受信機を配置したが、今回、8月29日のミサイル発射以前にJアラートの警報が出されたのは2012年12月と2016年2月の2回だけ。北朝鮮が「テポドン2」で人工衛星を打ち上げた際だけだった。
・この時には北朝鮮は発射の時間帯や場所、予定軌道などを事前に公表していたから、集中的に監視を行い、1回目は発射の6分後、2回目は4分後に沖縄でJアラートの警報が出たが、度重なる日本海へのミサイル発射実験では予告がなかったからJアラートは機能しなかった。
・8月29日は、発射が5時58分、警報は4分後の6時2分に出たから、初めて北朝鮮の予告なしでも警報が出たわけだ。安倍首相は「ミサイル発射直後からミサイルの動きを完全に把握していた」と得意気に記者団に語った。 だが、首相は前夜から公邸に泊まって待機していたことが後に分かった。北朝鮮は発射を誇示するために偵察衛星が撮影しやすい平壌郊外の順安飛行場に、ミサイルを引き出していたから、予告があったのと同然だった。
・ただ、どこへ向けて発射するかは分からず、北朝鮮はグアム周辺の公海上に4発のミサイル発射を検討している、と言っていた。 実際は、米軍の「早期警戒衛星」がミサイル発射をすぐ探知し、日本にも情報が伝わり、熱源の移動でおよそどの方向に向かうかも分かるから、「南のグアム方向ではなく、東に向かう」と判断、北海道から長野県にかけ1200kmもの広大な地域に警報を出したようだ。
・ミサイルが上昇して、水平線の上に現れ、イージス艦のレーダーや、九州西方の下甑島や佐渡島の巨大レーダー「FPS5」がそれを捉えれば軌道計算ができ、どこに向かうか詳しく分かるだろう。だがとにかく早く警報を出そうとすれば、対象地域は広くならざるをえない。
・北朝鮮から日本に向かう弾道ミサイルは8分程で飛来するから発射後4分で警報が出れば4分の差があり、運が良ければ地下室などに逃げ込んで助かる人もいるだろう。 だが今回のように日本列島の北半分という広大な地域に警報が出ると、ほとんどの人にとっては「カラ振り」となる。今後も北朝鮮は太平洋への発射を続ける構えで、何度も広域に警報が出れば警報慣れして無視する人が多くなる。
・そもそも警報システムは退避すべきシェルターと一対になって意味がある。有効な隠れ場所を用意せず警報を出しても片足だけ靴をはいたようなかっこうで、住民が「どうしろと言うのか」と当惑するのは当然だ。
▽石油禁輸は自暴自棄に走らせる 核保有を認めれば日本は従属の立場に
・北朝鮮は石油の約90%を中国に頼っているから、中国が石油輸出を停止すれば決定的打撃となるが、命脈を断たれる北朝鮮は自暴自棄となり、1941年8月に米国の石油禁輸を受けた日本が対米戦争を決意したようになりかねない。
・そうなれば韓国、日本や中国にとっても危険が大だ。米国では「北朝鮮の核放棄を求めても応じるはずがない。むしろ核保有国と認め、国交を結んで懐柔する方が現実的では」との声も一部に出る。 それだとたしかに当面の危険は避けられるが、米国に核保有を認められ、国交を結んだ北朝鮮は日本、韓国などに対し、核を背景にさまざまな要求を続け、日本は従属を続けざるをえなくなるだろう。一度、恐喝に応じれば次々と脅かされる結果になる。日本は第2次世界大戦後最悪のピンチに陥ったようだ。
http://diamond.jp/articles/-/141251

第一の記事にある 『電磁パルス攻撃』、は 『大気圏再突入技術が不要・・・今の北朝鮮の技術ですぐにでも攻撃に移せる可能性があります』、 『米国の上空にパルス攻撃が仕掛けられたら、・・・米国経済は麻痺状態に陥り、経済的な損害規模は数百兆円に上るかもしれない。輸送インフラも停止し餓死者も出るでしょう。米国民の生活は西部開拓時代以前に戻ってしまうかもしれません』、というのは本当に恐ろしいことだ。米国側も、迎撃し損ねて、攻撃を受けた場合の対抗措置を検討しているのかも知れないが、実効性ある対抗措置を既に保有しているのであれば、北朝鮮の発表に直ぐに反撃した筈だ。それが、ないということは、やはり実効性ある対抗措置はない、ということなのかも知れない。
第二の記事で、国連の追加制裁については、 『中国はもちろんのこと、ロシアやインドもこの「副次的制裁」に反対するでしょう。ですから国連安保理の制裁決議案に盛り込むことは難しいと思います。おそらく米国単独のものになりそうです』、というのでは、実効性は余り期待できそうもなさそうだ。 「第三の道」については、 『短絡的なトランプ大統領がこの2人の提案に耳を貸すかどうかは別問題』、としているが、まわりくどく時間がかかる提案は、直ちに却下する可能性の方が高いのではなかろうか。
第三の記事で、 『弾道ミサイルを迎撃する態勢は不十分というより、むしろ形ばかりだ』、 『ミサイル防衛にはすでに1兆8000億円近くが投入されたが「今後さらに1兆円掛かる」と言われる。だが多数の弾道ミサイルがほぼ同時に発射されれば突破されるのは避け難い』、ようだが、安部政権にとっては、実効性などはどうでもよく、国民の危機感を煽って、米国からイージス・アショアなど巨額の武器を購入すれば目的達成なのだろう。 今回、Jアラートが、 『初めて北朝鮮の予告なしでも警報が出たわけだ。・・・・だが、首相は前夜から公邸に泊まって待機していたことが後に分かった。北朝鮮は発射を誇示するために偵察衛星が撮影しやすい平壌郊外の順安飛行場に、ミサイルを引き出していたから、予告があったのと同然だった』、についても、「なあーんだ」である。 『有効な隠れ場所を用意せず警報を出しても片足だけ靴をはいたようなかっこうで、住民が「どうしろと言うのか」と当惑するのは当然だ』、 『何度も広域に警報が出れば警報慣れして無視する人が多くなる』、などから、Jアラートのあり方を抜本的に見直すべきだ。 『核保有を認めれば日本は従属の立場に』、というのは深刻な問題で、まさに悪夢だ。私も残念ながら、まだ答えを持ち合わせていない。
タグ:電子機器・電子回路に過剰な電気が流れることで大規模な停電が起き、インターネット回線などが停止。金融機関などのサーバーが次々にダウンします。原子力発電所も制御不能に陥るとみられています その際に生じたガンマ線が大気中の窒素や酸素に衝突。巨大な電流が発生することで電磁パルスが地上に襲いかかる 電磁パルス攻撃は目標上空の数十~数百キロの高高度で核弾頭を爆発 北朝鮮のエリート集団を説得できるかどうかが重要だ。彼らに『そんなことをしたら平和や安定を確保するどころか、北朝鮮という国家が壊滅してしまう、だからやめましょう』と金正恩を口説かせる 弾道ミサイルを迎撃する態勢は不十分というより、むしろ形ばかりだ 米国は持っているすべての国力を総動員して包括的、総合的な対北朝鮮戦略を実施することだ。米国が有している国力とは、国連安保理への影響力、米国および同盟国を防衛するための軍事力、経済・財政面の影響力、人権擁護を提唱する力、情報を伝播させる力、サイバー力だ。これらの力を総動員して北朝鮮に住むエリート集団や一般大衆に国際社会の通念を伝え、金正恩を説得させる。それがだめなら、現体制を段階的に崩壊させる方向に彼らが動き出すよう、そそのかすことだ 短絡的なトランプ大統領がこの2人の提案に耳を貸すかどうかは別問題 “空から襲う津波 2人の専門家が提案している「第三の道」 中国はもちろんのこと、ロシアやインドもこの「副次的制裁」に反対するでしょう。ですから国連安保理の制裁決議案に盛り込むことは難しいと思います。おそらく米国単独のものになりそうです 水爆の威力は都心を狙えば 半径6.6km圏で致死的な火傷被害 高度500kmもの宇宙をミサイルが通っても「領空侵犯」とは言えないから、日本政府は2006年7月の国連安保理決議1695以来、国連が何度も北朝鮮に求めている「弾道ミサイル計画に関わる全ての活動の停止」に対する違反だ、として抗議 北朝鮮の核保有国化に日本の持つ対抗手段が無力な理由 軍事カードは切れない 田岡俊次 高高度で爆発するため、熱線、爆風、放射線は地上に届かず、直接死傷する人は出ません そのマティス長官が会合後、ダンフォード議長とともに記者団の前に現れて、軍事的対応も辞さぬ構えを見せました 北海道の上では軌道の頂点を過ぎていたが、500kmはあったと考えられる。 この高度では、日本の領空とはいえず、「領空侵犯」と非難はできない これまで、トランプ大統領が軍事的解決を口にすると、それをトーンダウンすべく「対話」の可能性をちらつかせてきたのがマティス長官 日刊ゲンダイ トランプ大統領は3度にわたる安倍首相との電話会談でほのめかしたでしょうが、どちらも「かん口令」をしいているようです 今回の「水爆」について「高い空で爆発させ、広い地域に超強力な電磁パルス攻撃まで加えられる」と主張 米国に核保有を認められ、国交を結んだ北朝鮮は日本、韓国などに対し、核を背景にさまざまな要求を続け、日本は従属を続けざるをえなくなるだろう ダイヤモンド・オンライン (その9)(北が仕掛ける電磁パルス攻撃 米経済マヒで損失数百兆円も、北朝鮮 対話でも制裁でもない「第三の道」、北朝鮮の核保有国化に日本の持つ対抗手段が無力な理由) 核保有を認めれば日本は従属の立場に 初めて北朝鮮の予告なしでも警報が出たわけだ。安倍首相は「ミサイル発射直後からミサイルの動きを完全に把握していた」と得意気に記者団に語った。 だが、首相は前夜から公邸に泊まって待機していたことが後に分かった。北朝鮮は発射を誇示するために偵察衛星が撮影しやすい平壌郊外の順安飛行場に、ミサイルを引き出していたから、予告があったのと同然だった Jアラートは予告なしの発射に対応しきれない 敵基地攻撃力」は困難 目標の位置が分からない 北朝鮮問題 北が仕掛ける電磁パルス攻撃 米経済マヒで損失数百兆円も ・ミサイル防衛にはすでに1兆8000億円近くが投入されたが「今後さらに1兆円掛かる」と言われる。だが多数の弾道ミサイルがほぼ同時に発射されれば突破されるのは避け難い 北朝鮮、対話でも制裁でもない「第三の道」 トランプ大統領の本音は「外交的解決や経済制裁など意味ない」? 日経ビジネスオンライン 米国経済は麻痺状態に陥り、経済的な損害規模は数百兆円に上るかもしれない 輸送インフラも停止し餓死者も出るでしょう。米国民の生活は西部開拓時代以前に戻ってしまうかもしれません 高濱 賛 今の北朝鮮の技術ですぐにでも攻撃に移せる可能性があります 電子パルス攻撃は大気圏再突入技術が不要とされる 米国の上空にパルス攻撃が仕掛けられたら
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